衆議院

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第1号 平成28年4月26日(火曜日)

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平成二十八年四月二十六日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

  法務委員会

   委員長 葉梨 康弘君

   理事 安藤  裕君 理事 井野 俊郎君

   理事 城内  実君 理事 鈴木 馨祐君

   理事 吉野 正芳君 理事 井出 庸生君

   理事 逢坂 誠二君 理事 國重  徹君

      あかま二郎君    青山 周平君

      井上 貴博君    大塚  拓君

      岡下 昌平君    奥野 信亮君

      門  博文君    上川 陽子君

      今野 智博君    笹川 博義君

      田所 嘉徳君    辻  清人君

      冨樫 博之君    藤原  崇君

      古田 圭一君    宮澤 博行君

      宮路 拓馬君    八木 哲也君

      若狭  勝君    階   猛君

      柚木 道義君    大口 善徳君

      吉田 宣弘君    清水 忠史君

      畑野 君枝君    木下 智彦君

      上西小百合君    鈴木 貴子君

  厚生労働委員会

   委員長 渡辺 博道君

   理事 秋葉 賢也君 理事 江渡 聡徳君

   理事 小松  裕君 理事 後藤 茂之君

   理事 白須賀貴樹君 理事 初鹿 明博君

   理事 古屋 範子君

      赤枝 恒雄君    大串 正樹君

      木村 弥生君    新谷 正義君

      田中 英之君    田村 憲久君

      高橋ひなこ君    谷川 とむ君

      中川 俊直君    永岡 桂子君

      長尾  敬君    丹羽 秀樹君

      丹羽 雄哉君    比嘉奈津美君

      福山  守君    堀内 詔子君

      牧原 秀樹君    三ッ林裕巳君

      山下 貴司君    井坂 信彦君

      大西 健介君    岡本 充功君

      郡  和子君    重徳 和彦君

      中島 克仁君    柚木 道義君

      伊佐 進一君    角田 秀穂君

      中野 洋昌君    高橋千鶴子君

      堀内 照文君    河野 正美君

    …………………………………

   法務大臣         岩城 光英君

   厚生労働大臣       塩崎 恭久君

   法務大臣政務官      田所 嘉徳君

   厚生労働大臣政務官    三ッ林裕巳君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  大島 一博君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  井上  宏君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 宮川  学君

   政府参考人

   (厚生労働省職業能力開発局長)          宮川  晃君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           石井 淳子君

   政府参考人

   (厚生労働省老健局長)  三浦 公嗣君

   法務委員会専門員     矢部 明宏君

   厚生労働委員会専門員   中村  実君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案(内閣提出、第百八十九回国会閣法第三〇号)

 出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案(内閣提出、第百八十九回国会閣法第三一号)


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     ――――◇―――――

葉梨委員長 これより法務委員会厚生労働委員会連合審査会を開会いたします。

 先例によりまして、私が委員長の職務を行います。

 第百八十九回国会内閣提出、外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案及び出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 両案の趣旨の説明につきましては、これを省略し、お手元に配付の資料をもって説明にかえさせていただきますので、御了承願います。

 これより質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山下貴司君。

山下委員 自由民主党の山下貴司でございます。

 本日、両委員会の委員長また同僚議員の皆様の御配慮でこの本当に大切な法案の質疑に立たせていただきまして、大変光栄に存じます。私自身も個人的にも、検事やあるいは外交官として、外国人の労働問題あるいは入国問題に携わってまいりました。そういった思いも込めて、本日、質問をさせていただきます。

 なお、初めての連合審査ということで基礎的な問いもさせていただくかと思いますけれども、どうかおつき合いいただきますようお願い申し上げます。

 まず、技能実習制度について伺いたいわけでございますが、この技能実習制度は、国際貢献のため、開発途上国などの外国の方を日本で一定期間、OJT、つまりオン・ザ・ジョブ・トレーニングということで技能を移転するという制度でございます。平成五年に制度創設以来、多くの外国人の方に利用されていると聞いております。

 この技術移転によって日本のすばらしい技術を移転して、そしてその母国で役立てていただく、これは非常に大きな意味もあろうかと思いますし、また、そうやって来日してくれた方々が親日的になり、あるいは、今後、日本企業がその母国に行ったときに、そういった技術を使って非常に頼りになる存在として活躍していただける、そういった制度であろうと思っております。

 現在、この技能実習制度の現状につきまして、資料一として配らせていただきましたけれども、二十七年度末において大体二十万人程度が来ておられる、五年前に比べると大体五万人ぐらいふえているということでございます。これまでの実績を見ても、相当実績を上げた制度だというふうに考えております。

 しかしながら、こういった制度には、すべからくと言っていいんでしょうけれども、光の部分もあれば影の部分もございます。

 私、昔、検事やあるいは外交官として影の部分も見てまいったわけでございますけれども、そういった影の部分として指摘されますのが、例えば、去年、平成二十七年では、受け入れた側で不正行為を行ったとして通知を受けた機関が二百七十三機関あったというふうに言われております。また、去年、平成二十七年に失踪した外国人実習生が五千八百人いたということも指摘をされております。

 確かにいろいろと、送り出し国あるいは受け入れ国の日本のブローカーなどに対する過剰な保証金であったり、あるいは賃金の不払い、長時間労働、受け入れ先でのパスポートの取り上げ、そういった不正行為なども散見されるということで、アメリカの人身取引報告書にも取り上げられたということを聞いております。

 そういった影の部分を意識しながら、今回の技能実習制度の見直し、この法律をつくる背景には、実習実施機関等による入管法や労働関係法令違反が発生していることを重く受けとめて、管理監督体制の抜本的強化を行う。その一方で、先ほど申し上げたように、技能実習制度に対する評価、そして、送り出し国、受け入れ国双方にとっても非常に有用であるということから、対象職種の拡大であるとか実習期間の延長の拡充の要望がある。そういったことを踏まえて、管理体制の強化と対象の拡充を両輪で行うというふうに聞いております。

 ただ、やはり、対象の拡充の大前提として、影の部分、管理体制の抜本的強化ということをなぜやらなければならないのであろう、まずそのことを伺いたいと思っております。

 そこで、まず、これは当局で結構なんですけれども、現行制度での不正行為が指摘されておりますけれども、その原因はどこにあるのか、そして、今回の法律を制定することによってどのように改善されるのか、そういったことについて、管理体制の抜本的強化策を中心に伺いたいと思います。

    〔葉梨委員長退席、渡辺委員長着席〕

井上政府参考人 委員から、現在の技能実習制度の問題点と新制度における改善の見込みにつきましてお尋ねがございました。

 技能実習制度につきましては、委員から御紹介がございましたように、開発途上国への技能移転を通じた国際貢献を目的とする制度でございますが、残念ながら、一部において、制度の趣旨を理解せず、安価な労働力として技能実習生を受け入れる監理団体や実習実施機関が存在し、また、保証金を徴収しているなど不適正な送り出し機関が存在すること、関係機関による監理団体や実習実施者などに対する指導監督が不十分で、入管法令や労働関係法令の遵守が不十分であるということ、さらには、人権侵害行為等が依然として見られ、かつ、被害に遭った技能実習生の保護体制が不十分であることなどの課題や問題点の指摘を受けているところでございます。

 そこで、本法案では、監理団体の許可制や技能実習計画の認定制、主務大臣による立入検査、改善命令、監理団体の許可取り消し、技能実習計画の認定取り消し等の権限を定めるほか、技能実習生に対する人権侵害行為については、禁止規定や罰則を定めています。

 また、法務省と厚生労働省の両省所管で、技能実習制度の運用管理を一元的に行う機関として外国人技能実習機構を創設し、同機構に、技能実習計画の認定、監理団体の許可に関する調査、実習実施者等に対する実地検査等の管理監督業務を行わせるほか、技能実習生に対する相談対応や援助等の技能実習生の保護業務を担わせることとしています。

 さらに、法案の内容以外にはなりますが、不適切な送り出し機関を排除するため、各送り出し国との間で取り決めを作成することとしています。

 法務省としては、このような見直しを行い、共同の主務官庁であります厚生労働省と連携いたしまして、技能実習制度の問題点を解決するとともに、技能実習制度の趣旨の徹底を図り、制度の趣旨にのっとった適正な受け入れを進めてまいりたいと考えております。

山下委員 今御説明のあったこと、いずれも大変重要なことだと思います。現状、そういった仕組みがなかった、そのことがやはり不正行為を多く生んだ原因であろうと思います。

 そういったことで、例えば送り出し国にも問題があろうというところで、しっかりと政府間取り決めを結んでいただいて、送り出し国の法執行機関やあるいは入管当局などとも連携しながら、しっかりと送り出し国側の問題も解決していただくことが必要であろうと思います。

 また、監理団体については許可制ということでありますけれども、その許可あるいは実習実施者で届け出ということでありますが、その把握もやはりしっかりしていただきたいと思います。

 そういったことで、外国人技能実習機構を創設する、実地検査等の業務を実施するということで、やはり、こういった本当にしっかりした組織がないと、もう不正は防げませんし、仏つくって魂入れずではありませんが、こういった機構であるとか届け出制、許可制をつくるのであれば、それを実効的にやっていただきたいと思っているところでございます。

 ただ、こういったことで器をつくったということではあるんですが、やはり指摘されているところで、実習生の賃金が不当に低いというふうな指摘も非常に多くされております。そういったものについてどういうふうにお考えなのか。例えば同等報酬要件などもございます。そういったことを含めてお答えいただきたいと思います。

宮川(晃)政府参考人 お答えいたします。

 技能実習生の賃金につきましては、現行の入管法令におきまして、「日本人が従事する場合の報酬と同等額以上であること。」と定められておりますが、新制度におきましても、技能実習法案に基づく主務省令におきまして同様の規定を盛り込むことを想定しております。

 今後、技能実習計画の認定を申請する際には、実習実施者が、日本人が従事する場合の報酬と同等額以上であることにつきまして、外国人技能実習機構に対して説明し、認定を受けることとしております。

 また、技能実習計画の認定後におきましても、実習実施者が、認定を受けた計画に従って日本人との同等処遇を担保していないと認められる場合には、是正指導や改善命令等により、実効性を担保していきたいと考えております。

山下委員 ちょっと重ねての質問になるんですが、そういった賃金が低いことの原因の一つとして指摘されるのが、送り出し国のブローカーにおいて保証金を多額に取られるとか、そういったことで、結局、手取りが大変低いということが報道などで指摘されます。

 今、実習計画において報酬というのが明示されるということでありますが、それは、例えば保証金を取られたとかそういう場合であっても、しっかりと手取りの部分は保証されるというふうなことになるんでしょうか。

宮川(晃)政府参考人 お答えいたします。

 保証金等の問題につきましては、二国間協定などによりまして、送り出し国と政府の方できっちりやっていただくという形のものを考えておりますし、今先生御指摘の賃金の問題につきましては、これはこれとして、約束された賃金がきっちり支払われる、それが日本人と同等以上であるということを担保していこうと考えているところでございます。

山下委員 送り出し国との二国間協定であっても、実効性が漏れる場合があるんですね。裏で保証金を取られているようなことがないように、ぜひそこら辺の管理監督もしっかりやっていただきたいと思っております。

 先ほどちょっと指摘もしたんですが、やはり外国人技能実習機構という存在が非常に重要だと思いますが、この機構自体が、実効性のある指導監督を行うために十分な体制を今後構築していただけるんでしょうか。今御検討中のものを含めてお答えいただきたいと思います。

宮川(晃)政府参考人 お答えいたします。

 外国人技能実習機構につきましては、想定される業務量等に鑑み、本部及び全国十三カ所の地方事務所などを設置することとし、本部約八十名、地方事務所約二百五十名、合計三百三十名程度の体制を予定しているところでございます。

 これらの職員につきましては、厚生労働省及び法務省からの現役出向のほか、民間からも職務に応じた適切な人材を確保し、適正な業務運営ができる体制を確保したいと考えております。

山下委員 機構については、しっかりやっていただきたいと思います。

 ただ、その機構をしっかりするとともに、新制度において、実習を担当する監理団体あるいは実習実施者、これもしっかりと管理をしていかなければならないところでございますが、新法では、こういった監理団体や実習実施者に対して、先ほど、計画を認定制にする、あるいは実施者は届け出制にする、監理団体については許可制にするという指摘がありましたけれども、その内部でどういった体制を整備させるのかということについて、お答えいただきたいと思います。

井上政府参考人 お答えいたします。

 監理団体や実習実施者の内部における適正化のための体制の整備についてのお尋ねでございました。

 監理団体の体制につきまして、本法案におきましては、監理団体の許可基準として、主務省令で定める基準に従って適正に行うに足りる能力を有するものであることということを求めております。

 主務省令の具体的な内容は、法案の成立後に確定していくことになりますが、例えば、実習実施者に対する監査の実施、技能実習生からの相談への対応などを定める予定でございまして、監理団体としての許可を受けるためには、そうした監査や相談対応を適正に行うに足りる体制が組まれていることが求められます。

 また、傘下の実習実施者と密接な関係を有しない役員、いわゆる外部役員でございますが、それを置く、あるいは外部監査の措置を講ずるということも求めることとしてございます。

 このほか、技能実習生の受け入れ準備や実習実施者への指導助言、技能実習生の保護など、監理団体としての基本的な業務を統括管理させるため、事業所ごとに、監理事業の責任者を明確に定めることを求めています。

 次に、実習実施者側の体制でございますが、これは、技能実習計画の認定手続の中で確認していくことになります。

 その認定基準の中では、技能実習を行わせる体制及び事業所の設備が主務省令で定める基準に適合していることという要件を定め、主務省令で具体的な内容を確定していくことになりますが、その中で、例えば、一定の経験を有する技能の指導者を置くこと、あるいは生活の指導を担当する者を置くこと、さらには事業所ごとに技能実習の実施に関する責任者が選任されていることなどを要件とすることを定めることとしてございます。

 以上でございます。

山下委員 今、るる御説明いただきました。そういった体制をとにかくしっかりやっていただく。実は、今までこれがなかったということがやはりいろいろ生んできたので、せっかく今回の立法で通るのであれば、これにしっかりと魂を入れていただかなければなりません。それがあって初めて拡充策ということが許されるのであろうと思いますので、その点は重ねてその執行をお願いしたいと思っております。

 それでは次に、拡充策につきましてお尋ねしたいと思います。

 今、お手元に資料三ということでお配りしておりますけれども、今回、技能実習制度の仕組みで、新制度の内容を赤字で含ませていただいております。この中では、例えば、技能実習期間、優良な監理団体については延長するというものであったり、あるいは先ほどお話しいただいた機構の役割であったり、そういったものが記載されております。そして、在留資格の変更、取得について、技能実習三号ということで、対象職種、対象者、監理団体及び実習実施者ということが定められております。

 今回、こういった仕組みを設けるということで、そもそもこういう仕組みを設けることにニーズがあったと思うんですが、そのニーズについて御説明いただくとともに、効果として、そのニーズにどうしっかり応えていくのかということについて御説明いただきたいと思います。

宮川(晃)政府参考人 お答えいたします。

 今回の見直しにおきましては、国際貢献を目的とするという趣旨を徹底するため、制度の適正化を図るとともに、御指摘のような制度の拡充を行うこととしております。

 その効果といたしまして、一つは、優良な受け入れ機関に限って技能実習期間の延長や受け入れ人数枠の拡大を認めることから、受け入れ機関による適正な技能実習の実施に向けた自発的な取り組みを促せるということ、それから、技能実習期間の延長によりまして、実習生がより高いレベルの技能等を修得することが可能となり、母国で一層の活躍が期待されること、それから、対象職種の拡大や複数職種の技能実習により、多様な技能などの移転を求める送り出し国のニーズにより一層対応できることなどを想定しているところでございます。

 こうしたことによりまして、制度趣旨に沿った形での一層の活用が促進され、ひいては、実習生が母国におけるさまざまな企業、なかんずく日系企業などで活躍するなど、日本企業の海外への事業展開に資する面もあるものと考えているところでございます。

山下委員 実習期間の延長につきましては、いろいろ地元を回っていると、技能実習生の方は、やはり三年では必要な技能のイロハの本当にイ、ロぐらいしか学べないんじゃないかという御指摘もあります。日本の物づくり技術であるとかあるいは技能について、やはり適正な管理のもとに、ある程度の時間を持って技能を修得していただく、これは大変必要なことであろうかと思います。

 ただ、先ほどお話しのありました、延長対象となる優良な監理団体等という話がありましたけれども、ここがやはりしっかりしていないと、抜け穴みたいになっては困るということであるんですが、この優良な監理団体の例えば認定基準とか、そういったものはしっかり運用していくということになっているんでしょうか、お答えください。

井上政府参考人 お答えいたします。

 技能実習三号、延長した分でございますね、そこの監理を行うことができる監理団体につきまして、法案の中におきましては、実習状況の監査その他の業務を遂行する能力につき高い水準を満たすかどうかという観点から、主務省令でその基準を定めることとしてございます。

 具体的な基準につきましては、法務省と厚生労働省の合同の有識者懇談会の報告書におきまして、優良と判断する際の視点が掲げられております。具体的に申し上げますと、過去三年分の実習生の技能評価試験での合格率、あるいは実習生に対する適切な相談体制または指導体制の整備、あるいは行方不明者が発生しないことなどの例が示されているところでございまして、こうした有識者懇談会の意見も踏まえながら、制度の趣旨に沿った適正な技能実習が行われるインセンティブとなるように定めていきたいと考えております。

山下委員 ありがとうございました。

 この技能実習制度、本当にきちんと運用すれば、先ほど言ったメリットがたくさんある。しかし、適正な運用がなされなければ、せっかく来ていただいた外国の方が、日本でひどい目に遭って、日本に対して非常に悪い印象を持って帰っていくという逆効果になりますので、その点はしっかりと運用していただきたいと思いますし、適正な運用が拡充の大前提だということを改めて御指摘しておきたいと思います。

 では次に、入管法改正について伺いたいと思います。

 お手元に資料四として、「介護に従事する外国人の受入れ」という資料、これは法務省提供資料でございますが、提示させていただきました。

 今回につきましては、例えば要介護者が非常にふえている、また、一方で介護従事者が足りないという非常に需要が逼迫している中で、せっかく日本で外国の方が、介護福祉士養成施設で留学して資格を取得しても、我が国で介護業務につけないというようなことが背景にあったというふうに聞いております。

 そういったことも踏まえて今回の入管法改正がなされたと聞いておりますが、こういった趣旨、そして今回の入管法改正においてどういう効果が見込まれるのかということをお答えいただきたい。

井上政府参考人 まず、今回、在留資格「介護」を設ける趣旨、大きく分けて二つございます。

 その一つは、専門的、技術的分野の外国人を積極的に受け入れるという観点でございます。

 我が国は、これまでも専門的、技術的分野の外国人については積極的に受け入れてきたところでございますが、我が国経済の活力を維持、発展させていくためには、新たに人材のニーズが生じてくる分野につきまして、それが専門的、技術的分野と評価できる分野であれば、その分野に外国人を積極的に受け入れていくことが求められております。この点、介護分野は、高齢化の進行に伴い、質の高い介護に対するニーズが高まっているところ、我が国で介護福祉士の国家資格を取得した者には一定の専門性、技術性が認められると評価するに至ったことが第一点目でございます。

 もう一つは、留学生の卒業後の活躍支援という観点でございます。

 外国人留学生は、我が国を留学先に選び、我が国の文化にも触れながら我が国で学んだ、我が国のよき理解者と言ってよい存在でございまして、その受け入れを積極的に図っていくべきであると考えております。

 そのようなことから、閣議決定された「日本再興戦略」改訂二〇一四におきましても、介護福祉士等の国家資格を取得した外国人留学生について、引き続き国内で活躍できるよう、在留資格の拡充を含め、就労を認めることについて制度設計を行うこととされたところでございます。

 このような二つの観点を踏まえまして、介護福祉士の国家資格を取得した者を対象とする新しい在留資格を創設することとしたものでございます。

 この制度の効果ということでございますが、新しい在留資格の活用の見込みということでございましょうが、現在は、介護業務に従事する者に該当する在留資格がなくて、介護に従事したいという外国人の数を把握、予測することはなかなか困難なところがございますが、今回、新たに在留資格の介護が創設されれば、介護福祉士として就労することを希望する外国人が一定数存在してくるものと考えております。

山下委員 こういった形で新しい在留資格が認められる、そして活躍されるということで、例えば、資料四にもありますけれども、養成施設が四百校近くあるという中で、年間数百人の方ができるのではないかという報道もされております。もちろん、我が国の事情というだけではなくて、本当に日本流のおもてなしというのでしょうか、思いやりに満ちた介護技術、そういったものを学んでいただいた方が日本でも活躍していただく、そういうことは非常によいことだと思っております。

 ほかに、これについてはEPAもございますけれども、やはりちょっとEPAについては、いまだ低調に推移しているというふうに言わざるを得ません。そういったことのEPAにつきましてもちょっと聞きたかったんですが、時間もありませんので、EPAについてもしっかりと活用していただくということをぜひ両省にはお願いしたいと思います。

 以上、法案について伺ったところでございますが、最近、特に介護に関して報道がなされたので、そのことについて伺いたいと思います。

 先ほどの技能実習制度については、直接介護職種の追加というのは今回の法改正においては明示されていないわけですけれども、そういうものを追加するのかという検討もしているということも聞くところでございます。

 また、資料五としてお配りしたところではあるんですが、これは二十二日の日経新聞でございますが、日本型介護の輸出を後押ししようというふうな動きもあると聞いております。

 確かに、私、個人的には、アジアにおいて今後高齢化がどんどん進んでいくわけであります。また、アジア各国では、障害者に対するケアが実は十分ではない国も多うございます。そういった中で、介護あるいはそういった障害者対策、世界的に見れば先進国です。そういった先進国である日本の技術や制度を学ばせ、そして母国でやっていただくということは、技能実習の中で、そういった制度趣旨にも沿うのではないかと思います。

 私の地元に旭川荘という障害福祉施設があります。そこでは、亡くなられたんですが、江草元理事長のリーダーシップのもと、上海市当局など中国政府機関とも連携の上、中国語で介護テキストを作成して、中国の教師の方を呼んで、そして日本流の介護技術を教えて中国で活躍していただいて、大変感謝されている、そういうこともございます。そういったことを適正な管理のもとで進めるべきだと思います。

 日本型介護の輸出後押し、こういう報道もなされているんですが、こういったことを政府の中において検討しているという事実はあるんでしょうか。その関係についてお尋ねします。

大島政府参考人 自民党の国際保健医療戦略特命委員会が四月の二十二日に開催されまして、健康長寿産業のアジア展開に関する議論が開催されたと承知しております。

 政府におきましては、総理を本部長とする健康・医療戦略推進本部のもとに、厚生労働省や外務省ほか関係省庁局長クラスをメンバーとします医療国際展開タスクフォースというのを設けておりまして、この傘のもとで医療の国際展開を支援しているところでございます。

 今後、アジア諸国におきましては、委員御指摘のとおり、高齢化が急速に進展してまいりますので、医療と同様に介護につきましても潜在的な需要は大きいと考えております。

 そのため、介護を初めとする健康長寿産業の国際展開に関しましても、アジアの需要を見据えつつ、今後、省庁横断的な対応を図ってまいりたいと考えております。

山下委員 そういった輸出後押しということになると、先ほどちょっと指摘しましたけれども、技能実習において介護を職種として追加するのかという問題もあろうかと思いますが、その点について政府は検討しているんでしょうか。検討状況をお答えいただきたいと思います。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 介護分野の職種追加ということでございますが、有識者等に参加いただきました検討会の取りまとめにおきまして、日本はほかの国と比べましても高齢化が急速に進展しているということ、そして、認知症高齢者への対応など福祉ニーズの多様化、高度化に対応している日本の介護技術、これを海外から取り入れようとする動き、先ほど先生からも御指摘がございましたが、そういう動きも出てきているということも指摘をされているところでございます。

 途上国、とりわけASEANの諸国におきましては、今後、日本以上に速いペースで高齢化が進展することが予測をされております。これまで日本が蓄積をしてきました認知症のケアあるいは自立支援等の介護に関する知識、技術の修得や、あるいは人材の育成に対するニーズが大変増大するものと考えております。

 さらに、具体的に、ベトナム及びモンゴルから技能実習生を送り出すことに対する要望が出ております。それから、日本介護福祉士養成施設協会が加盟施設に実施した調査によりますと、既にこの養成施設の留学生の入学者は年平均数十人を超えておりまして、平成二十六年度は五十九名が入学しております。

 こうした具体的な動きがございますので、日本の介護技術を他国に移転することは、大変この技能実習制度の趣旨にかなうのはもちろん、国際的にも意義があると考えて検討いたしております。

山下委員 それでは、大臣の決意を伺いたかったんですが、時間が参りましたので、最後にぜひ両大臣に、この技能実習制度あるいは入管法について本当にしっかりした適正な執行をお願いして、私の質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、柚木道義君。

柚木委員 おはようございます。連合審査で質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。民進党の柚木道義でございます。山下委員に続いて岡山つながりで、引き続き岡山の柚木でございます。よろしくお願いいたします。

 きょうは、前回、法務委員会でも質疑をやりとりさせていただいて、法務大臣からは最後に、制度の適正化なくして対象職種等の拡充なしという力強い御答弁をいただいたわけで、中でも、きょうは連合審査でございますから、介護職種追加等について議論させていただきたいと思っているんですが、資料にもおつけしておりますように、本当に多くの委員の皆さんもいろいろな形でかかわってこられていると思いますが、熊本地震の対応策ですね。

 介護、あるいは、私は災害医療の支援チームの方に同行させていただいて、先週末、現地にも伺わせていただいた。そういう意味では、これからやや避難が長期化する可能性も含めたさまざまな対応が求められていると思っておりまして、ちょっと冒頭、そのあたりから質問させていただいた上で法案審議に入りたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 厚生労働大臣、けさの報道にもさまざま、ノロウイルス感染症対応であったり、エコノミー症候群、多くの方がそういった形で本当に健康が悪化しつつある、こういう報道もなされております。大臣御自身も災害対策本部で、感染症予防が大きなテーマであるとか、あるいは厚生労働省として被災地への介護職員派遣を依頼とか、今まさにさまざまな取り組みが進められるさなかでございます。

 また、補正予算、これはまさに与野党が協力をして対応していく。自然災害、震災対応に当然党派は関係ありません。予算規模、これは本当に報道によってけさもまちまちですね。六千億から八千億、三千億、五千億から六千億と、これは報道によって全部違うんですが、いずれにしても、ハードに加えてソフトの部分の対策が非常に重要であるという認識を私自身も持っております。

 また、各党、それぞれ党首会談等も通じて、まさに熊本地震災害に対する補正予算等の編成、これから議論という段階で、しっかりと協力をしていくために具体的な対応策についても提案もさせていただきたい、そういう段階でございます。

 きょうは、そういった中に入っている項目も含めて、ちょっと冒頭、私の方から、現地に伺ったことも踏まえて質問をさせていただきたいと思います。

 まず、資料にもおつけしておりますが、感染症対策でございます。

 これはけさの報道ではないんですが、まさに私も伺った南阿蘇村の体育館、ノロウイルスが検出されて、これは二十五人とか、報道等で、実際そういう疑いがあると。そして、手洗いの徹底であるとか、あるいは、トイレが感染源になっている可能性が高いということで、これは資料の三ページ目にもつけておきましたが、実際に私が伺った際に撮影をした写真でございます。

 ちょっと皆さんには小さくて恐縮なんですが、トイレに表示がしてあるんですね。私も行って非常に驚いたんですけれども、物すごく掃除をしていたんですよ、ちょうど行ったときに。二十四時間体制でやっているんですね。なぜそこまで物々しくやっているのか。私が伺った翌日にまさにこのノロウイルス感染の報道が出まして、そういうことだったんだなと。しかも、我々も実際に災害医療支援チームの皆さんと伺っているので、これは非常にまずいな、感染症が発生、拡大し得る状況じゃないかと。

 つまり、この写真のとおり、ポリバケツの水をバケツに入れてまず入って、ちょっとここに写真がないんですが、業務用の青い大きな、水がいっぱいに入ったバケツがあって、その水は、外に、消防の方が一生懸命小さいプールみたいなものをつくって、そこからくんで搬送して、そして、くむものがあって、それで流す。「バケツをもとにもどす」とか書いてあるんですが、そのたまっている水とかで手を洗ったり、要は、衛生状況等も含めてこの表示が正確に理解をされていたのかどうなのかもありますし、あるいは、私がその後、消毒のためのプッシュのポンプでちゃんと体育館に戻る方はどの程度いるかなと確認しても、必ずしも全員がそういうことではないんですよね。

 そういうことも含めて、これは危ないなという状況の中で、やはりそういう報道が出たということでございます。これは、厚生労働大臣、水道の復旧等もまだかなり時間がかかるというような見通しの中で、今この瞬間も、トイレの衛生、利用環境を含めて、非常に注視すべき状況にあるというふうに考えております。

 御案内のように、順番待ちになるのは女性の方が多いということで、女性の方が水分の摂取を控える、逆に体調の悪化につながる。そういう、トイレの衛生状況や利用状況が体調の悪化にもつながりかねない、そして感染症の拡大にもつながりかねないという状況があるわけでございます。

 これは本当に対策が急務だと思われる中で、補正予算の対応も含めて、今まさに、あるいは今後、厚生労働省としてどのような感染症対策を講じているのか、いくのか、御答弁をお願いします。

塩崎国務大臣 先生御指摘のように、感染症対策は極めて重要になっておりますし、また、これから気温も上がってまいりますので、そういうことが起きやすい状況もあるわけでございます。

 二十二日にノロウイルスの集団感染のあった南阿蘇中学校につきましては、日赤の医療チームと保健所職員が、まず患者を隔離することが大事でありますので、できる方は医療機関への入院をしていただく、それから、そうではない方々については避難所内の別室で隔離をするということで、まずこれが第一でございました。

 国立感染症研究所の専門家も派遣をしておりまして、消毒薬などの必要な衛生材料、検査キットを搬送するなどの措置を指導するという形でやっているわけでございますし、それから、今お話がございましたように、やはり一人一人が手洗いをきっちりするということが基本でありまして、いわゆる消毒薬を手にする、病室なんかに入るときによくやりますが、あれでは完全な消毒にはならないということで、基本はやはり手洗いということで、こういったことをポスターに掲示いたしまして、今、トイレから出てくる方々がしっかり手洗いを励行しているかどうかも見ていただいたようでございますけれども、やはりこれを周知徹底するということが大事です。

 そういう意味で、専門家の感染症研究所の者が指導に当たっているということで、二十四日以降は新規の患者はこの南阿蘇中学校では発生をしていないわけで、全体で二十二人、南阿蘇中学校で出まして、そのほかの避難所等では七人、熊本市内などで見つかっているということでございます。

 問題は、この南阿蘇の中学にしても、やはり水が大事でございます。今お話しのとおりの状況でありますけれども、私どもとしては、トイレの数につきましても、基本的に避難されている方二十人に一つの割合でトイレがあるべきだということを徹底しております。それを県、市町村を通じて言っておりまして、それに足りないところは、私ども厚生労働省にトイレを請求してくれということを言っております。

 それともう一つは、やはり水の復旧を待つことが大事であって、これは市内も市外も同じようでございますが、これについて、今、全国からの応援を、日本水道協会そして官公需組合双方から部隊を投入していただいて対応して、断水状態、あるいは出が悪いというところがありまして、これだと流れないんですね。それを避けるためにも、水道を直していくということを今やっているわけでございます。

 もちろん、指導に当たる方々として、今、DMATからJMATというか、内科医の方々を中心とするチームに変わっておりまして、きのうでJMAT等の医療チームが百五十チーム回っております。それに加えて、保健師のチームが他県からの応援も含めて六十以上回っていただいて、こういう方々にまた、避難されている方々に指導をしていただく、体調の不良な方のお話を聞いて即座に対応するといったようなことをやらせていただいているわけでございますので、引き続きこれについてはしっかりと対応してまいらなければならないというふうに考えているところでございます。

柚木委員 ぜひよろしくお願いします。

 私が伺ったタイミングが、ちょうどDMATからJMATに、救命救急のあたりからまさに慢性期、回復期、維持期の対応へと徐々に移っていく、そういうタイミングだったので、そこはそういうフェーズに今移りつつあるとは思っていますが、やはり私が感じたのは、避難所を整備するとか、人をいろいろな形で、とにかく自衛隊も含めて多くの方の御協力をいただいて送り込むとか、そういうことももちろん重要なんですが、実際に現場でどういうことが行われているのか、これはやはり現地に行かないとわからない部分もありまして、まさにそういう、うわっ、これは本当に感染症が起こりそうだなと、行った瞬間、やはり専門家が行けば思うんですね。しかし、それを、ではどういう対策をするかという判断、決定権がある人がそこにいるかどうかが非常に重要です。

 私、そういう意味では、きのうもちょっと省庁の方とやりとりしたんですが、今回の初動対応、十四日に前震、後ほど前震ということになって、十六日が本震。総理がすぐに伺うという話も当時あった中で、その一週間後の二十三日にお伺いされたわけですが、私は正直、初動対応がもう少しきっちりできていれば、このエコノミーの問題あるいは感染症の問題は防ぎ得たのではないかと思うんですよ。

 東日本大震災、あのときも私は災害医療支援チームの皆さんと一緒に伺いました。石巻日赤から南三陸町と回らせていただきました。あのとき、いろいろな教訓があったはずなんですね。それが十分に生かし切れたかどうか。正直、今回の初動の対応、いささか問題があったんじゃないか、私はそういうふうに思うんです。今はもちろん災害の対策が急務ですから、それを最優先にやるんですが、この検証も同時に進めていかないと今後も同じようなことが起こりかねない、そういうふうに思うんです。

 厚生労働大臣、初動の対応ですね。何らかの反省点、今後へ生かしていかなきゃいけない点、今回の感染症の拡大、エコノミー九十七人とか出ていますが、そういう認識はお持ちですか、現段階で。

塩崎国務大臣 今回の場合には、避難所のみならず、車の中で避難をされている方々がたくさんおられる、その中でエコノミークラス症候群の方々が発生しているという状況でございまして、こういったところに、一人一人に、体調管理、あるいは体調の状態をお聞きしながらどう御指導申し上げるかという、その体制について今鋭意対応しているわけでございます。

 これは、私どもの方からも、厚生労働省から医官が五名行っております。延べでもう十七名になっておりますけれども、本部の方に行って、各市町村、熊本市内を回らせておるわけでございますし、もちろん、先ほどのように、DMATから今度はJMAT等々、日赤のチームあるいは済生会のチーム、さまざま回っていただいておるわけでございまして、もちろん、いろいろ足りないところもあるわけでありますから、そこは、派遣次第直ちに県あるいは市町村とよく連携をして、足らざるところを補っていくということでやってまいったわけでございます。

 熊本県あるいは熊本市、そして他の市町村の皆様方も最大限の努力をしていただいているわけでございますので、私どもも、きのうも厚生労働省の現地の対策本部とテレビ電話をつないだ上で打ち合わせをいたしましたが、我々としては、遺漏なきように万全を尽くしていきたいと思いますし、やはり先に先に回っていかなきゃいけないというふうに思いますので、先生方からのいい御提言をまた聞かせていただきながら、それを吸収して実行してまいりたいというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたしたいと思います。

柚木委員 足りないものがあったという認識の中で今一生懸命やっているということなんですが、やはり私は、総理が当初伺うというあの一週間、もちろん、オペレーションの問題もありますから、行けばいいというわけじゃない、それはわかっています。しかし、この一週間のラグの中で、私は、感染症の拡大やあるいはエコノミー症候群の拡大は防ぎ得たんじゃないかと正直思いますよ。ですから、そこについてはしっかり検証いただきながら、今後の対策をしっかり進めていただきたいと思うんです。

 資料につけておりますが、この間の週末も含めてボランティアの方が非常にたくさん行かれています。

 私たちは、先ほどの感染症の拡大防止も含めて、被災者あるいは避難者の健康悪化防止のための特別対策の必要性、きょうも、党首会談も含めたいろいろなチャンネルを通じて具体的に提案をさせていただきます。

 その中で、このボランティアの方の、ちょっとおこがましいんですが、有効な生かし方、活用させていただく、今、御用聞きとか資材の仕分けとか、いろいろ頑張っていただいているんですが、今議論をしている、例えば、先ほど言われたような手洗いとか、あるいは、実際におなかの調子が悪い方がトイレから出てきて普通に歩いていらっしゃるわけですよ、体育館の中とかも含めて、十分に消毒できているかわからない状態で。そういうことも含めて、福祉人材の方々がいろいろ頑張って現地に入って応援をされるという厚生労働省の要請も必要なんですが、ボランティアの方も含めてそういう役割を担っていただいて、もっと言うと、これは、あえて私が被災者、避難者の健康悪化防止と申し上げたのは、施設に来られている方ばかりじゃない、車中の方、在宅の方、正直、在宅の方は福祉避難所の利用率も低い、置き去りになっている可能性があるわけですね。

 そういうことも含めて、ボランティアの方々、そして福祉施設から派遣をされるそういう専門の職員の方々に対する支援と、そしてしっかりそういう指導体制の中にも入っていただく、そういうオペレーションですね、それに対する支援を、今回、補正予算の編成等に当たって、ぜひこういうことも組み込んで対応を講じていただきたいと思うわけでございますが、これは、厚生労働大臣、通告もしておりますので、こういった対策をしっかりと前に進めていくということをここでぜひ明言いただきたいと思います。

塩崎国務大臣 一般の市民あるいは学生などによるボランティア活動については、発災後、市町村あるいは県の社会福祉協議会などにおいて、各地域の安全確保の状況を見ながら、現時点で十四カ所の災害ボランティアセンターというのを開設していただいております。

 現在、ボランティアの方々には、避難所における支援物資の仕分けをする、清掃をする、あるいは物資をお届けするといった避難所運営支援、それから被災家屋の片づけ等を中心に支援活動をしていただいているわけでありまして、避難所の避難者のほか、今御指摘のとおり、車中を含む在宅被災者の健康管理、これは委員の御指摘のとおり大変重要で、見落とすことのないようにしないといけないということで、保健師等が、避難所、公園、駐車場、御自宅、これを今、先ほど申し上げたチームが回っております。

 健康状態の把握を絶えず行うということで、今後長期化する避難生活による被災者の健康悪化防止等のために、自治体のニーズに応じて、保健師などと協力をしながら、健康維持のための体操を紹介するとか、ボランティア活動として可能な範囲で被災者への保健を含めた支援ができるように、関係者による情報共有を促してまいりたいと思っております。

 こういうところは、やはりチームを組んでいく、公的な保健師さんなどとボランティアの皆さん方がチームを組む、あるいは、NPOでもNGOでも、特にこういう分野に強いNPO、NGOがあることは私も親しい方々におられるのでよくわかっておりますので、そういうところともしっかりと連携をする、そのために私どももオーガナイズをしっかりやっていくということが大事だというふうに思っているところでございます。

柚木委員 本当にスピードが重要ですので、今おっしゃっていただいたことを補正、予備費、いろいろな形で、もちろん、スキームをしっかりつくって、現場のニーズを把握して、そこについては一定の時間がかかるわけですが、ぜひスピーディーにお取り組みをお願いしたいと思います。

 法務大臣にもせっかくきょうお越しいただいておりまして、介護分野なのでどうしても厚生労働大臣になるんですが、一点、次の資料につけているんです。

 今回、御案内の方も多いと思うんですが、熊本地震発災直後にこういうことが起こっているんですね。熊本の朝鮮人が井戸に毒を投げ込んだぞ、そういう差別的なツイートが投稿されていて、戸惑う益城町民、妙な投稿はやめてくれ、まさにヘイトスピーチだ、虐殺が起きた関東大震災模倣、こういう記事ですね。ツイッター社の広報担当者が、一連のデマツイートについて、そのようなツイートがあったことは理解しているとしたが、削除したかどうかについては、個別案件はお答えできないと。実際には投稿が一部消えているということで、一定の対応をしていると。

 まさに今、ヘイトスピーチの法案、議員立法の議論があって、前回も議論させてもらいましたが、こういうことも含めて、これは到底、表現の自由じゃないですよ。

 ぜひ、法務大臣、こういうことが起こったとき、あるいは起こらないための対応をしっかり進めていただかないと、こういうことをきっかけに、リアルの社会、世界の中で本当に何か衝突が起こりかねない、そのように危惧するわけですが、この点について、通告もしておりますので、法務大臣として御見解をいただけますか。

岩城国務大臣 インターネット上に委員が御指摘のようなことが掲載されている事実は承知をしております。これは、いわゆるデマであるとともに、特定の民族や国籍の人々を排斥したり、その尊厳を傷つけたり、そういった方々に対する差別意識を生じさせかねないものでありまして、あってはならないものと考えております。

 そこで、法務省としては、外国人に対する偏見や差別の解消を目指してさまざまな啓発活動を実施してまいりましたが、今後も引き続き粘り強い啓発活動に取り組んでまいりたいと考えております。

 また、御指摘のような掲載につきましては、具体的な被害申告があり、その申告内容が人権侵害の疑いがあると認められた場合は、人権侵犯事件として調査を開始するなど、適切な対応に努めてまいりたいと考えております。

柚木委員 ちょっとここでは時間に制約があるので、その対応だけで本当に実効性のある形でこういうことを防ぎ得るのか、あるいはその後の対応、拡散、拡大を防ぎ得るのか、私は大いに疑問も持っておりますので、それについてはちょっとまた今後議論を深めさせていただきたいと思います。

 法案に関係して、先ほどの山下委員の質問とは重複しないように一つちょっと飛ばしますが、厚生労働大臣、今回の外国人技能実習制度の拡充に伴って、介護職種追加の議論があるわけですね。一億総活躍、介護離職ゼロ、本当にそういう方向で政府として一丸となって、あるいは我々も、介護報酬の引き上げ、これは保育士も同様です。そして、やはり質の低下を招いてはいけない、安全を確保した上で受け皿をふやしていく、これは保育も介護も一緒なんです。

 今回、介護職種が仮に追加をされて進んでいくとした場合に、まさに処遇の底上げが求められている中で、最低賃金程度、水準も問題視されているような技能実習、ここに介護職種が追加をされるということが介護全体の賃金相場の低下につながりかねない、逆効果になる、こういう懸念もあるわけです。

 もちろん、私も人材の不足は承知しておりますから、このままでいいとは思っていません。しかし、冒頭申し上げましたように、制度の適正化、まさにそういう賃金の同等以上という部分も含めてしっかり確保されずに、拡充だけが進んでいく、先行するということになれば、介護職全体のむしろ人手不足を招いてしまう、介護は外国の方がやることだ、そういう状況にも陥りかねない、そのように思うわけであります。

 大臣、そのような事態を招かないための同等以上の報酬の実効性をいかに担保いただけるのか、それについて、全国の介護事業者や従事者が安心できる、あるいはサービスの利用を受ける方が、災害のときも含めて、本当に、外国の方が技能実習で来ていただくときに、ちゃんと質も確保されるだけのレベル、それは一つはやはり報酬の水準だと思いますので、同等以上の報酬の実効性確保策をいかに担保いただけるか、御答弁をお願いします。

塩崎国務大臣 基本的に、介護は日本人にやっていただくというのが原則だと思います。

 今回の制度で、日本人との同等処遇の確保については、介護以外の職種も含めまして、技能実習計画の認定を申請する際には、実習実施者に、日本人が従事する場合の報酬と同等額以上であることについて、外国人技能実習機構に対して説明責任を課すということになっております。

 技能実習計画の認定後においても、実習実施者が認定を受けた技能実習計画に従って日本人との同等処遇を担保していないと認められる場合には、是正指導あるいは改善命令などによって実効性を担保するという仕掛けになっているわけでございます。

 特に、介護分野について、EPAの経験を踏まえまして、実習実施計画の認定の段階において、日本人、実習生問わず適用される賃金規程が整備をされていること、さらに、技能の向上に伴って日本人と同等に昇給する運用ルールが確立されていることを確認することとなっております。

 また、実習開始後については、監理団体による監査において、目視での賃金規程の確認、それから、本人、技能実習責任者、他の職員等からのヒアリングも実施をして、実効性を担保していかなければならないと考えております。

 こういった考え方に基づいて、今後、監理団体のマニュアルとか、あるいは業界団体によるガイドラインの作成などを通じて、適切な処遇を確実に担保するための取り組みを進めていかなければならないというふうに考えております。

柚木委員 時間が参りましたのでもう終わらなきゃいけないんですが、私、被災地に伺って、これだけはちょっと伝えてくれということがあったので、一つ短く言います。

 今、熊本の皆さん、とにかく一日も早く原状の生活に戻りたいとみんなが願って、みんなが協力している。しかし、東京・永田町に来れば、衆参同日選挙とか、そんな報道が飛び交っている。厚生労働大臣、私は、そういう報道が、あるいはそういう議論が飛び交うこと自体が、被災地の皆さんにとって、自分たちのことに本当にしっかり対応してもらえるんだろうかという心の動きになっているんですよ。

 この解散の議論、これは今、一旦封印すべきだと私は思いますが、命、健康を守る厚生労働大臣として今の議論をどう思われるか、ちょっと一言最後にコメントをください、被災地の皆さんに向けて。

塩崎国務大臣 解散は総理の専管でございますので、私どもは、被災地の皆様方の健康を守る、これが最優先ということでございます。

柚木委員 以上で終わります。ありがとうございました。

渡辺委員長 次に、初鹿明博君。

初鹿委員 おはようございます。民進党の初鹿明博です。

 きょうは連合審査ということで、法務大臣、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、外国人技能実習制度ですけれども、この制度の最大の問題は、法の目的と実態が大きく乖離しているということにあるんだというふうに思います。これは誰もが思っていることだと思います。

 法律の目的では、海外に日本の技術を移転する、国際貢献の一環だと言っておりますが、では、実際のところ、本当にそうなのかといったら、介護の分野に拡大をするというお話でもそうですけれども、先ほど柚木議員も言っていましたが、労働力が不足している、その不足している労働力を補うことに明らかになっている。そして、実習生の側も、日本に技能を学びに来るという意識というよりも、明らかに、お金を稼ぎたい、そういう意識で来ている、それは私は間違いないんだと思います。それを取り繕いながらこの制度があることがやはりさまざまな問題をもたらしているということをまず冒頭指摘させていただきたいと思います。

 ただ、そうはいっても、では、外国人の労働者がいなくなって今の日本の経済が回るか、産業がうまくいくかというと、やはりそうではないわけですよ。

 今、お手元に資料をお配りさせていただいておりますが、「日本における外国人の就労の状況」という資料を出しております。

 日本で単純労働者を受け入れないと言いながらも、もう既に約九十・八万人の外国人が日本で就労しているわけですね。ここのa、b、c、d、eとありますが、例えばbの、「身分に基づき在留資格を有する者(永住者、日本人の配偶者等)」、これは三十六・七万人ですが、これを除いたとしても五十四万人ですよ。技能実習生十六・八万人といっても、三二、三%ですね。つまり、六〇%ぐらいの人は、それ以外の資格で実際に働いているという状況なんです。

 ここでちょっと一つ法務大臣に指摘しておきたいんですけれども、資格外活動で十九・二万人が働いているんですよ。この質問をするに当たって、法務省に、では、資格外活動の許可を得ている人の在留資格はどういうものなんですか、割合はどうなっているんですかと。私は、イメージとして圧倒的に留学が多いと思っているんです。それ以外の在留資格というのはほとんど、ほかでその資格で収入が得られるものですから、留学が多いと思って、留学がどれぐらいなんですかということを聞いたら、そういうデータはとっていないと言うんですよ。

 これは私、ちゃんととった方がいいと思うんですよね。何でかといったら、留学生の中には、例えば東大の大学院に行ったり、本当に優秀で、勉強するつもりで来ている人もいる一方で、私の地元の平井という町は中国人の日本語学校が三校あるんですが、そこに来ている人たち全てとは言わないですけれども、やはり、学校に行くということを口実にして、実は日本に稼ぎに来ている、そういう割合が多いんじゃないかと。実際に、留学の在留資格を取るときに、資格外の許可も同時に申請しているわけじゃないですか。

 ですから、では、留学生の中で資格外の活動許可をとっている人はどれぐらいいるのかと言っても、その数字はわからないと言う。これでは、本当に、日本に来ている外国人が、働きに来ているのか勉強に来ているのか、どっちなのか、その数がどれぐらいなのか、また、それを吸収するこちらの側の、労働者として必要としているのがどれぐらいあるのかという実態がつかめないと思うんですよ。

 私は、資格外活動の許可をどういう在留資格の人に出しているのか、それをきちんと調べる必要があると思いますが、いかがでしょうか。

岩城国務大臣 おただしのありました資格外活動許可の件数については、在留資格ごとに集計しておりません。留学の在留資格で在留している者で資格外活動許可を受けている者の割合に係る統計はございません。しかしながら、留学生の相当数が、現実にはアルバイトに従事しているものと考えられます。

 そこで、在留外国人の在留状況を把握する観点から、委員の御指摘も踏まえまして、今後、在留資格ごとに資格外活動許可の件数を集計することについて検討してまいりたいと考えております。

初鹿委員 それに加えて、例えば留学の資格で来ているんだったら、大学なのか短大なのか、それともその他の学校、日本語学校とかなのかというのもきちんと分析していった方がいいと思うんですよ。

 恐らく、大学院とかに行っていても、やはりこちらで生活するのは生活費がかかるからアルバイトしているという人もいるとは思いますけれども、それ以外の、短大とか、大学以外のところだとほとんどの人が働いていますということになったら、では本来の目的はどっちなんですかということになるので、そういう実態はきちんと調べていただきたいと思います。

 その上で、次のページを見ていただきたいんですけれども、技能実習生の、終わった後の、帰国技能実習生フォローアップ調査という調査の中から抜粋をさせていただきますが、「来日の目的」というところを見てください。「技術の修得」「日本語の習得」「お金を稼ぐ」「日本での生活を経験」とありますけれども、一番多いのは「お金を稼ぐ」なんですよ。つまり、実習生の意識からすると、やはりお金を稼ぎに来ているということなんですよ。

 そして、実習生を受け入れている実施機関の意識からしても、技能を教えるというよりも、やはり労働力の不足をここで確保したいと思っている。実習実施機関といっても中小企業が多いわけですから、そういう中小企業のニーズに合っているわけですよ。だから、目的と実際が違っているわけですよ。

 大臣、今の技能実習制度はこういう労働力の不足を補うような実態になっているという認識をお持ちでしょうか。いかがですか。

岩城国務大臣 技能実習制度は、技能、技術または知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う人づくりに協力することを目的とする制度でありまして、我が国の国際貢献において重要な役割を果たしているものであります。

 ただ、残念ながら、一部で、この制度の趣旨が労働力の確保策と誤解され、問題事例が生じていることも事実であります。

 そこで、まさに今回の法案によりまして、その適正化を図りつつ、その制度趣旨に沿ったものとして技能実習制度を活用していくべき、そのように考えております。

初鹿委員 一部じゃなくて、この来日目的を見ればわかりますけれども、お金を稼ぐために来たと言っている人が七四・二%だから、一部なのは、海外に技術を移転する、技能を修得させて国際貢献をするという方がごくごく一部であって、ほとんどは、日本の国内の労働力の不足を解消するためにこちら側はあって、向こうから来る実習生は、日本でお金を稼ぎたいというので来ているんですよ。まずそういう認識をきちんと持っていただいた上でこの制度について考えていかないと、きちんとした適正化は図っていけない、そして実習生の人権を守るということはできないということをまず指摘させていただいて、具体的な中身に入っていかせていただきます。

 この技能実習制度の問題は、まず、向こうの送り出し国に送り出し機関というのがあって、そこで一つ機関がかみます。それで、こっちに来たら監理団体というものがあって、そこでもう一つかんで、そして働く場所、実習をする場所に行く。三重構造になっているわけですね。そして、その送り出し機関また監理団体のところで、搾取とは言わないですけれども、何らかのそういう金銭的なものがあったりして、実際に実習生の手元に渡る賃金が非常に低く抑えられている、場合によっては自由を制限されるようなことにもなっている、それが強制労働だという指摘を受けているというのが現状なんだと思います。

 特に送り出し機関は、我が国の法律の規制がなかなか届かない相手国にあるわけですから、そこが不適正なことをしていても、こちら側でそれを是正するということがなかなか難しいわけでありますね。

 今回は、その送り出し機関の送り出し国との間で取り決めをする、そういう仕立てになっているんですが、この取り決めというのは一体どういう性格のものなのかをお伺いしたいと思います。これは条約なんですか。法的拘束力はどれぐらいあるものなんですか。

宮川(学)政府参考人 お答えします。

 先生御指摘の取り決めでございますが、取り決めは、不適正な送り出し機関を排除する等を通じて制度の適正化を図るためのものでございます。この取り決めを作成することによりまして、技能実習制度に関する送り出し国と我が国との間の共通の認識及び共通の意図について文書で明示的に一致するということがございます。加えて、不適正な送り出し機関の排除のためには、両国間の協議を通じてそういったことを確保してまいります。

 以上にもかかわらず、万が一、送り出し国によって認定された機関が不適正な送り出し機関であると将来的に考えられる場合におきましては、外交ルートを通じまして、我が国として相手国に対し照会をするとともに、必要な対応を求めていく所存でございます。

初鹿委員 条約ではないということでいいんですよね。条約ではないし、この取り決めは、相手国に対して法的な拘束力を持たせるものではない、そういう認識でよろしいんですよね。

宮川(学)政府参考人 先生御指摘のとおりでございます。

初鹿委員 これだと、本当に実効性があるのか、私は非常に心配なんですね。

 もう一つお伺いします。

 取り決めをすることになっていますが、現状、取り決めはしていないわけですよ。では、この法律ができたら、ちゃんと相手の国と取り決めを交わしたことが受け入れをする要件になるんですか。法務大臣、これはいかがですか。

田所大臣政務官 送り出し国との取り決めにつきましては、できるだけ速やかに順次交渉を開始したいと考えておりますけれども、まとまる時期やその取り決めの内容は、相手国との交渉にかかわっている面もあります。

 二国間取り決めの存在を当該国からの技能実習生受け入れの条件とした場合には、技能実習生の受け入れが全く行われない状況や、一部の国からしか技能実習生を受け入れられない状況が相当期間生じてしまうということがございます。そのような事態は、我が国で技能を学びたいと願っている各国の若者たちにとって不幸なことでありますし、取り決めができないことを理由として、一時的とはいえ、脈々と続いてきた技能実習生の送り出しと受け入れの関係を我が国の側から途絶えさせてしまうことにもなってしまいますので、相手国との関係上も得策ではないというふうに思っております。

初鹿委員 おかしいと思いますよ。受け入れが滞るからと言いますけれども、取り決めをしないで、日本に来た実習生の人権侵害がそのまま放置をされている。こちらの方が問題なんじゃないですか。そういうことをそのまま放置するんじゃなくて、せっかく取り決めをするようにするんだったら、取り決めをしたことを条件にするべきじゃないかと思うんですよね。まずそのことを一つ指摘させていただきます。

 それでは、次に伺いますが、では、取り決めをやって、不適正な送り出し機関だとわかった。でも、なかなかその送り出し国はそこにペナルティーをかけない。外交ルートを通じてと言っていますが、それが実現するまでには時間がかかる。そういったときに、その送り出し機関からの受け入れをとめることができるか、もしくは、その送り出し国からの受け入れも私はとめるべきだと思うんですけれども、その点はいかがですか。

田所大臣政務官 送り出し国との取り決めがまとまるまでの間も、監理団体の許可や技能実習計画の認定手続の中で個別に必要な証明を求めることによって、不適正な送り出し機関の関与を排除しながら技能実習生の受け入れを行いつつ、取り決めのまとまった国から順に、取り決めに基づいた受け入れをするという取り組みに移行してまいりたいというふうに考えているわけでございます。

初鹿委員 私が質問したのは、この取り決めをやったとしても、何か不適正なことがあった送り出し機関にペナルティーが下るまで時間がかかるでしょう。そうなったときに、その送り出し機関からの受け入れを、相手国が何もペナルティーを与えない段階でとめることができるのか、場合によってはその国からの受け入れ自体をとめることができるんですかということを聞いたんですよ。ちゃんと質問を聞いて答えてくださいよ。

田所大臣政務官 送り出し機関は、外国の機関であるために、不正が疑われたとしても、その事実を我が国の地方入国管理局等が調査をして実態を解明することは容易でありません。また、外国にある機関に対する権限行使ができないために、不適正な機関を確実に排除するのは非常に難しいのであります。

 そういう中で、技能実習生の権利を侵害するような不適正な送り出し機関は確実に排除できるようにするために、新体制のもとでは、各送り出し国との間で取り決めを作成することによって、送り出し国政府の協力を得ながら送り出し機関の適正化を図るということでございます。

初鹿委員 答えになっていないんです。送り出し国との間でと言っていますけれども、その送り出し国が何ら対応してくれない、そういうときに、では、その機関からの受け入れは一時的にやめましょう、そういうことができるんですかということを聞いているんですよ。

田所大臣政務官 我が国が不適正な送り出し機関に対する必要な調査や処分を強く求めていても送り出し国側の真摯な対応が得られないときには、当該送り出し機関が関与する技能実習計画を不認定としてしまいます。そして、当該送り出し機関からの受け入れを認めないということになるわけでございます。

 なお、当該送り出し国政府の対応ぶりが著しく問題であれば、同国政府が認定している他の送り出し機関についても認定のあり方に疑義を生ぜざるを得ず、そうした場合には、同国の他の送り出し機関についても、技能実習計画認定等の手続において逐一厳格な審査を行うなど、厳しく対応することにしたいというふうに考えているわけでございます。

初鹿委員 ここは徹底をしていただきたいと思いますね。相手の国がきちんと対応してくれるかどうかがわからないということなわけですから、そこはきちんとこちらの側で、その国からは受け入れませんということをはっきりとできるようにしていただきたいと思います。

 では次に、今度は監理団体の方に移りますが、今度は監理団体が許可制になるということであります。二十八条ですか、いかなる費用も徴収してはならないというような規定になっておりますが、監理費等については、あらかじめ明示した上で徴収することができるということになっています。

 許可をする以上は、やはりきちんと許可したとおりの運用がなされているかというチェックが必要だと思うんですよ。毎年きちんと事業報告をしてもらって、そして特に財務状況や収支の報告をしてもらって、法外な役員報酬を取っていたり、また、監理費という名目で徴収しているものが法外な金額であったりということがないような、チェック機能をきちんと果たせるような報告をさせる必要があると思いますけれども、いかがでしょうか。

三ッ林大臣政務官 初鹿委員にお答えいたします。

 監理団体に対しましては、法案に基づきまして、定期的に監理事業に関する事業報告書を主務大臣に提出させることとしております。許可を受けた後も、事業の実施状況を確認できるようにしてまいりたいと考えております。

 定期的な事業報告の具体的な内容につきましては、法案成立後に主務省令とあわせて検討することとなりますが、例えば御指摘の監理費や役員報酬などを含めた監理団体の財務状況については、適切な指導監督が行われるよう検討してまいります。

初鹿委員 ここも結構重要なところだと思うので、かなり厳しくやっていただきたいと思います。

 では、ちょっと具体的な条文に入っていきますが、大分時間が押してきたので、多少まとめていきたいと思います。

 まず、四十六条ですけれども、実習監理を行う者が強制労働をしてはならない、そういう規定になっているんですが、実際に働かせているというか実習を行っているのは実習実施機関になるんですけれども、この実習実施機関が実習を行わせる者となっていないということは、これは労働基準法五条の使用者ということで対応できるから、そういうことでよろしいんですか。

三ッ林大臣政務官 お答えいたします。

 その理解でよろしいと思います。

初鹿委員 では、技能実習生に関して今まで労働基準法第五条が適用されたことはあるんでしょうか。

三ッ林大臣政務官 お答えいたします。

 平成二十六年に実習実施機関を労働基準法第五条、強制労働違反として送検した事例はありません。

初鹿委員 ないわけですよね。ないんですけれども、海外からも、この技能実習制度は強制労働の疑いがあるという指摘がされている。でも、法律で今まで一回も、摘発した、適用したことがない。つまり、今のままだったら実効性がないわけですよ。ここで適正化を図ると言っているんだったら、この法律できちんと実習実施機関に対しても規定をはめるべきだと思うんですよ。それがないのは、やはりこれは実効性に少々問題があるんじゃないかと言わざるを得ないなと思います。

 そして、加えて言えば、今問題となっているのは、送り出し機関の職員が日本に常駐をして実習生に圧力をかけている場合が多くあるわけですね。そういうことがいろいろ報告をされております。

 実習生にとってみると、監理団体や実習実施機関以上に送り出し機関というのは怖い存在なんですよ。なぜならば、帰国した後もそちらの国にいるわけだから、向こうの国で、これからの人生、ずっとつき合うというか、監視をされ続ける、かかわり続けなければならない存在なわけであるから、ここで送り出し機関が対象にならないということだと、本当の意味での強制労働を防ぐことにはつながらないと思います。

 送り出し機関も本来なら対象にすべきだと思うんです。外国のことだからできないということなんですが、この送り出し機関に対して、強制労働をやっている疑いがあったときにはどういう対応をされるんですか。

田所大臣政務官 御指摘のように、送り出し機関の職員が日本で活動する場合もあり得るわけでありますが、仮に、そうした送り出し機関の職員が日本国内で、例えば旅券を預かったり、私生活の自由を制限するなどの人権侵害行為を行っていることが判明した場合には、主務大臣や外国人技能実習機構、今般できるわけでありますけれども、直ちにこれによって技能実習生の保護措置を命じるとともに、当該送り出し機関による人権侵害行為があったことの記録を残していく、そして、事後において、監理団体の許可や技能実習計画の認定手続の中で、当該送り出し機関の関与を排除することとなるということでございます。

 また、送り出し政府に対しても、こうした事実があったことを通知し、不適正な送り出し機関として排除を求めていくということになっていくわけでございます。

初鹿委員 やはり送り出し機関に関しては、あくまでも向こうの国任せになってしまっている、そうならざるを得ない。やはりこの制度自体の問題なんですよ。だから、私は、この制度自体を見直さないといけないということを指摘させていただきたいと思います。

 今、強制労働についての質問をしましたが、逆に今度は、実習生の意思に反して、実習生はまだこのまま実習したいという意思を持っているのに、都合が悪いことがあったときに実習生が強制帰国させられる、そういう事例が幾つかあるんですよ。

 今、資料をつけておりますけれども、こちらの資料、妊娠したということで強制帰国させられそうになったという事案です。後ろにその根拠が記されています。これは、送り出し機関との間で保証書という形で結んでいるんですが、ここで、妊娠していたら実習が終了しますよということが書き込まれているわけですよ。これもやはり送り出し機関との間なんですね。

 これは、送り出し機関だけではなくて監理団体等もそうですけれども、強制帰国を禁止するような規定も本来設けるべきだったのではないかと思いますが、いかがですか。

田所大臣政務官 いわゆる強制帰国が、実習実施者が技能実習生の意思に反して技能実習を打ち切り帰国させるということであれば、その対処策は以下のとおりであります。

 実習実施者に対しましては、まず、技能実習計画の途中で技能実習を一方的に打ち切れば、技能実習計画に沿って技能実習を行わせていないことを理由とする計画認定の取り消しが可能となります。認定を取り消されれば、当該技能実習実施者は、以後五年間は新たな認定が受けられないということになっていくわけであります。

 監理団体に対しては、いわゆる強制帰国に関与した場合に、技能実習計画に従った実習監理を行う義務に違反したことを理由に、監理事業の許可の取り消しが可能となるということでございます。

 刑事罰や法令違反での対応としては、意思に反して技能実習を打ち切り帰国させる過程で、実習継続困難時の報告義務違反、雇用に関する労働関係法令違反、暴行、脅迫等があれば、技能実習法案の百十二条、労働関係法令や刑法等の刑事罰の適用対象ともなっていくわけであります。

 さらに、事前の予防措置といたしまして、帰国を迫られるなどした技能実習生からの相談に対応できる母国語相談窓口を外国人技能実習機構に整備する予定になっておりまして、これらによって防止をしていきたいというふうに考えているわけであります。

初鹿委員 時間になってしまったので、もう少し突っ込みたいことがたくさんあったんですが、これで終わらせていただきます。まだ質問したいこともありますので、ぜひ連合審査をもう何回かやっていただきたいとお願いをいたします。

渡辺委員長 次に、郡和子君。

郡委員 おはようございます。民進党の郡和子です。

 余り時間がないものですから、私も早速質問をさせていただきたいと思います。

 制度の拡大策について、私はまず伺わせていただきたいと思っています。

 法案では、技能実習三号の創設がうたわれていて、優良な監理団体及び実習実施機関、優良な技能実習生について、二年以内の実習期間の延長を認めるというふうになっているわけです。先ほど山下委員の質問、そして御答弁もあったわけですけれども、さらに確認をしたいと思いますし、提案をしたいと思いまして、この質問をします。

 延長期間を認める優良なという判断基準は、法案では高い水準等というふうにされておりますけれども、具体的な内容というのは主務省令で定めるというふうになっているわけですね。優良の基準次第で単なる拡大策に落ちてしまうおそれ、これは否定できないと思っております。したがって、具体的にどのような基準を設けるのか、これを確認したいというふうに思っているわけです。

 例えば、技能実習生については、技能実習三号への移行条件として、技能検定三級の合格を法文にきちんと明記することが必要ではないか。また、監理団体及び実習実施機関において、技能検定三級の合格率を定めた上で一定の労働条件の確保を条件とすることなど、可能な範囲で法案によって方向づけをする必要があるんじゃないかというふうに思うわけです。いかがでしょうか。

    〔渡辺委員長退席、葉梨委員長着席〕

岩城国務大臣 優良性の判断の基準についてでありますが、法案では、実習実施機関については、技能等を修得させる能力につき高い水準を満たすかどうか、監理団体については、技能実習の実施状況の監査その他の業務を遂行する能力につき高い水準を満たすかどうかを着眼点として定めております。

 その上で、基準の具体的な内容につきましては、技術的かつ細目的な事項にわたることが想定されますので、また施行後の運用状況等を見ながら基準を追加するなど、よりよいものに適切、機動的に改めていくことも考えられますことから、主務省令で定めることとしております。

 このいわゆる優良性の基準の具体的な内容につきましては、法務省・厚生労働省合同有識者懇談会の報告書において、技能検定の合格率のほか、実習生に対する適切な相談体制または指導体制の整備、行方不明者が発生していないことなどの視点が提示されておりますので、こうした意見を踏まえながら定めていきたいと考えております。

 次に、技能実習生についてでありますけれども、技能実習三号に進むことができる技能実習生の要件につきましては、法案の中で、技能実習二号の技能実習計画に記載した目標を達成していることが求められておりまして、これを受けて、主務省令の中で、技能実習二号の技能実習計画においては、技能検定三級またはこれに相当する技能実習評価試験の実技試験の合格を目標に掲げなければならない旨を定める予定であります。

 なお、技能検定三級の具体的技能レベルにつきましては、厚生労働省の省令で、検定職種ごとの初級の技能労働者が通常有すべき技能及びこれに関する知識の程度、このように定められております。

郡委員 大臣、ですから、今お答えになったところで、まだ明らかでないところがあるわけですよ。そこを、方向づけも必要なんだと思うんです。それを法文の中にやはり盛り込んでおくべきだというふうに私は思っています。

 次は、受け入れ人数の枠の拡大について伺います。

 法案の第九条十一号において、これも主務省令で定めるというふうになっているわけですね。

 受け入れ人数枠、現在、常勤の職員数二十人に対して技能実習生一人を原則としながらも、特例枠が設けられていて、五十人以下の実習実施機関では、一律三人の受け入れが可能とされているわけです。これを、有識者懇談会の報告書では、優良な受け入れ機関では現行の二倍程度まで拡充するというふうにされています。

 この結果、優良な実習実施機関では、期間の延長とそれから受け入れ枠の拡大の結果、例えば常勤職員十人未満のところでも、従来の三人掛ける三、つまり九人から、倍の六人、そして延長の五年ということで、六掛ける五、三十人の技能実習生を受け入れることが可能になるわけです。

 これでは、とてもこの制度自体の目的が達成されるとは思えません。したがって、少なくとも受け入れ人数枠の上限、これを法律で定めるべきだと考えますが、いかがでしょうか。

岩城国務大臣 技能実習生の受け入れ人数枠については、現行制度でも、単に常勤職員数の二分の一以内ということではなく、監理団体の法人形態によって基準を書き分け、さらに漁業等の特例を定めるなど、かなり細かく場合分けをして法務省令で定めております。新しい制度でも、現行制度でのこうした取り扱いを踏まえ、受け入れ人数枠については、場合分けをしながら細かく定めることを想定しております。

 さらに、介護の技能実習を認める際には、介護特有の受け入れ人数枠を定めることが厚生労働省の検討会で提言されているところであるなど、今後、職種によって柔軟に特例を設ける必要が生じることも想定されております。

 このように、受け入れ人数枠の上限につきましては、かなり技術的、細目的な内容にわたるため、十分な指導体制の確保という観点から、適切と認められる数を、一定の場合分けもしながら主務省令で定めることとしております。

郡委員 介護の受け入れ枠の拡大については後ほど議論させていただきたいというふうに思うんですけれども。

 そもそも、これはどういうふうに上限を設けるか、細かくやっていくんだということですけれども、実態が、実習生を労働力として求めたいというふうに考えている企業もあるわけなんですよ。ですから、そこのところのそごがやはり出てこざるを得ないんだと思うんです。そうならないように、しっかりとした対応をとってもらわなきゃ困るということを申し上げたいと思います。

 対象職種の拡大についてですけれども、現在、技能実習制度推進事業等運営基本方針において、これは、厚生労働省の職業能力開発局長が、有識者で構成されている技能実習評価試験の整備に関する専門家会議を開催して、その会議の中で、評価の基準、評価の方法、試験実施体制などを確認の上、認定をし、当該評価制度に係る職種、作業を公表するものとするというふうにされております。

 他方、有識者懇談会の報告書では、地域ごとの産業特性を踏まえた職種、企業単独型において社内検定を活用する職種を実習種目に追加するというふうにされているわけです。

 地域ごとの産業特性、地域限定、あるいは受け入れ企業特有の職種に基づくものということでは、やはり国際的な技能移転という制度目的との整合性がこれはもう失われているんじゃないだろうかというふうに指摘せざるを得ないんじゃないかと思うわけです。

 恣意的な職種の拡大を許さないためにも、対象となる職種の拡大については、厚生労働省に置かれる専門家会議の議論を基本的に公開して透明性を確保すべきでありますし、また、送り出し国側の技能実習のニーズについて、これを客観的に確認する手続を採用すべきだというふうに私はやはり思うんです。

 さらに、この専門家会議には、既存の対象職種の検証、これも欠かせないというふうに思いますし、技能実習ニーズを確認する機能も持たせるべきであって、それが技能実習制度の基本方針に反映されるべきだというふうに考えますけれども、いかがでしょうか。

塩崎国務大臣 先ほど来、技能実習制度の趣旨についても御議論がございましたが、今御指摘の技能実習の職種の追加に当たって、現行制度においても、厚生労働省に設けております専門家会議において、技能実習のニーズがあることを送り出し国の行政機関からの要望書によって確認をするということがございます。

 御指摘の地域ごとの産業特性を踏まえた職種、そして企業単独型において社内検定を活用する職種につきまして追加を検討する場合にも同様の扱いをすることとしておりまして、国際的な技能移転という制度本来の目的に沿って追加の可否の判断がなされなければならないというふうに考えているところでございまして、これまでの発想と考え方は変わらないということでございます。

 それから、専門家会議の議事の公開の問題につきましてお話をいただきました。

 厚生労働省の専門家会議におきまして、技能実習生が一年目修了時などに受検をする試験の採点基準とか、あるいは合否の判定基準などを公表することは、なかなかこれは難しいところでございまして、そういう問題についても専門家会議では議論をしております。したがって原則非公開となっているわけでありますけれども、議論の経過がわかるということがやはり大事でありますので、議事要旨については追って公開という形で、これまでも、そして今後も扱ってまいりたいと思っておりまして、透明性の確保は重要でありますので、努めてまいりたいというふうに思います。

 また、この会議において、技能実習のニーズを送り出し国の行政機関からの要望書によって確認もしているところでございます。

 さらに、御指摘の既存の職種の検証につきましては、送り出し国側の技能実習ニーズに疑義がある場合には、やはり必要に応じて厚生労働省の専門家会議において議論をしていただくことにしたいと考えているところでございます。

郡委員 利益にかかわること、それから、これは事前に漏れてしまってはまずいなというふうな会議であれば、それは非公開でも構わないと思うんです。しかし、一律に非公開にしていってしまっては、議論の透明性がやはり確保できないと思うんです。これは、ぜひ傍聴も含めて検討していただけないかというふうに思います。

 次に入らせていただきますが、今の、傍聴も含めてということについては、大臣、お答えいただけますか。

塩崎国務大臣 御指摘は正面から受けとめたいと思います。

郡委員 検討いただくようにお願いをしたいと思います。

 この制度の拡大策というのは、どうしても、これまでの議論を見ましても、また実態を見ても、技能実習制度を国内の労働力不足の対策とするものであるということはやはり指摘をせざるを得ないんだと思うんですね。国際貢献という趣旨から著しくこれは外れていて、もうゆがめられているというふうに多くの皆さんたちが指摘している、そのとおりだというふうに私も思います。

 こうした拡大策ですけれども、技能実習制度そのものの改善が明らかになった後、初めてこれは議論していくべきものではないんでしょうか。私は、少なくともそういうふうに思うんです。

 拡大策にかかわる部分ですけれども、これは実施時期を分けて、制度の改善が確認できた後に改めて実施すべきじゃないでしょうか。どうでしょうか。

塩崎国務大臣 私ども、これは、私が政調会長代理のときに、自民党の中でも随分議論をいたしました。

 趣旨はもう何度も申し上げているとおりでありまして、その趣旨に必ずしもそぐわない運用の仕方であったり、そもそも、その体制自体が、JITCOもそうでありますけれども、推進と規制を同じ組織が担うというようなこともあったり、さまざまな問題点があって、諸外国からも、あるいは国際機関からの指摘もあったということも私どもはよく認識をして、それらを踏まえた上で、今回の改正を、審議をお願いするということになっているわけであります。

 今般の改正には、技能実習制度の適正化策とそれから拡充策の双方が含まれているわけでございますけれども、そのいずれも技能実習の適正な実施を図る、本旨に沿った形での提案を申し上げているというふうに思っております。

 具体的には、監理団体の許可制の導入などの制度の適正化策については、指導監督を通じた不適正な受け入れ機関の排除を行う、技能実習の適正な実施に資する手だてを入れ込んだつもりでございます。

 また、技能実習の期間の延長、あるいは受け入れ人数枠の拡大、先ほど御指摘がありましたが、その制度の拡充策につきましては、技能実習生を指導する能力が高いなど、一定の基準を満たした優良な受け入れ機関に限って認めるということで、どこでも誰でもいいということでは決してない運用にするわけで、受け入れ機関による技能実習の適正な実施に向けた自発的な取り組みを促すというものでございます。

 したがって、今回の改正において、制度の適正化策と拡充策を同時に行うことが私どもとしては適切ではないかというふうに考えているところでございます。

郡委員 では、介護への拡大について伺わせていただきたいと思うんです。

 昨年六月ですけれども、厚生労働省から発表されました、二〇二五年問題ですね、介護人材に係る需給推計というのが出ました。必要とされる介護人材が二百五十三万人、これに対して、これからさまざまな施策によって実際に供給できると見込まれる人材というのが二百十五・二万人、つまり、三十七・七万人の人材が不足するというふうになっていたわけです。

 これを受けて、こうした事態を背景にして、従来のEPAでの受け入れに加えて、今回、入管法の改正による在留資格の介護の新設ですとか、それからまた、技能実習での介護職種の追加というのがなされる方向のようです。これはまさに介護の労働力不足ということを政府自身が認めているんだということだと思うんですよ。

 であるのに、昨年の二月、厚生労働省の外国人介護人材受入れの在り方に関する検討会中間まとめ、これでは、「日本は他国と比較し、高齢化が急速に進展しており、認知症高齢者の増加等、介護ニーズの高度化、多様化に対応している日本の介護技術を海外から取り入れようとする動きも出てきている。こうした介護技能を他国に移転することは、国際的に意義のあるものであり、制度趣旨にも適うものである。」として、技能実習への拡大が具体化されようとしているわけです。人材不足を補う本質を厚化粧で隠しているというふうに言わざるを得ないんじゃないかと思うんです。

 まず、技能実習へ拡大する前に、現在取り組まれているEPAに関する介護人材の育成事業について、その検証が不可欠だと私は考えております。

 そこで、二国間の経済連携協定に基づき、インドネシア、フィリピンそしてベトナムからも介護福祉士の候補者が入ってきております。EPAによる介護福祉士候補者は、在留資格の特定活動のもと、介護施設で働きながら受験勉強をして、原則四年以内に国家試験に合格することが条件で、合格をすればそのまま日本で働くことが可能で、不合格なら帰国させられるんです。合格基準点の五割以上の得点をとって、次の国家試験を受験したいという意思がありますと、一年間の滞在期間の延長が認められるというものなんですけれども、どのようにこれを総括し、実績を評価しているのか伺います。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げましたように、介護人材については、あくまでもこれは日本国内の人材確保によって賄っていく、つまり、介護の基本は、日本人が日本人の介護を行うということが原則でございますので、重ねてこの点については申し上げておきたいと思いますし、今の一億総活躍社会づくりの中での介護離職ゼロを目指してのさまざまな手だても、基本は、日本人の人材確保をいかに実現していくかということで対応しようとしていることでございます。

 今の、EPAによる介護人材の受け入れについての総括はどうなんだということでございますが、平成二十年度から、EPAに基づいて特例的に外国人介護福祉士候補者の受け入れを開始して、現在、先ほどお話があったインドネシア、フィリピン、ベトナムから介護福祉士候補者を受け入れてまいっております。近年、その数は増加傾向にございまして、平成二十七年度までの累積で二千百六名ということで、既に就労中の中で資格取得者が二百四十九名、帰られた中にも資格取得者がおられて、これは百三名おられます。これは昨年の十月一日現在でのデータでございます。

 EPAによる介護福祉士候補者は、各受け入れ施設において就労しながら介護の経験を積んで、介護技能、技術を学ぶということで、三年間で国家試験の受験資格を得て、四年目に受験をすることとなっておりまして、合格率は、平成二十三年度、ちょっと古いですけれども、三七・九%でありましたが、これが二十七年度には五〇・九%にまで上昇をしてきておりまして、その一つの要因として、漢字への試験の際の振り仮名の付記とか、国家試験上の配慮をさまざまやってまいりました。それから、訪日前の日本語研修も拡充するという形でやってまいりました。

 また、試験に不合格であったために帰国された方々、こういった方々については、再受験目的での来日が認められるということで、国内におられるときにうまくいかなくても、また戻られて研さんを積んで、日本においでをいただいて試験を受けるということが可能になっておりまして、帰国者に対して、模擬試験とか通信添削指導の実施、あるいは学習相談窓口の設置などの、いわゆる再チャレンジ支援というのを行っております。

 さらに、平成二十五年の三月にまとめられた、EPAに基づく介護福祉士候補者受入れ施設の配置基準に関する調査・研究報告書によれば、約九割の施設において、候補者の事故、ヒヤリ・ハット事例、クレーム事例は発生していない、あるいは、介護サービスの質について、満足できる水準ではないと答えておられる利用者、御家族はわずか一%程度というようなことで、現場の受けもまずまずではないかというふうに考えているわけでございまして、EPAに基づく介護福祉士候補者の円滑な受け入れにさらに努めてまいりたいと思っております。

郡委員 長々御答弁いただきましたけれども、きょう、私、資料を配っています。「受入れ人数等の推移」ということで、当初、始まったころはそれなりの人数だったけれども、中は落ち込みまして、また最近ふえてきたというふうにおっしゃっています。これは補助金を投入しているからなんですね。かなりの額を投入しています。きょうは資料としてお配りしておりませんけれども、EPAには、外務省の予算それから経産省の予算、厚生労働省の予算が投入をされております。

 外務省の予算でいいますと、去年、平成二十七年はおよそ二十億、看護師のものも含めていますけれども、二十八年はやはり二十億であります。

 それから、経済産業省ですけれども、二十七年は十四億、そして、ことしは十五億の予算。

 そして、厚生労働省ですけれども、これは介護士だけを見てみますと、学習支援事業に二十七年は一億、そして二十八年は九千万ですけれども、候補者受け入れ施設の学習支援事業というのにこの間幾ら投入しているんですか。二十六年度で百九十億、二十七年で二百八十三億、そして二十八年では二百九十億なんですよ。

 これだけ膨大な予算をつぎ込みながら、どの程度の評価がなされているのかというのは、私はとても疑問だというふうに思っております。

 介護福祉士の取得による、それこそ、その後ずっと日本で働くかといえば、そうとも限らない。帰ってしまう人たちも多い。その帰った人たちの追跡調査というのは行われているんですか。これも検証には重要なピースだというふうに思うんですね。

 ところが、そのことを問わせていただきましたけれども、追跡調査は行っていないということなんです。私はとても問題だというふうに思います。

 それから、現在、多くの永住資格者がもう既に介護職として従事をしております。一九八〇年代以降に在留資格「興行」などで来日するなどして、その後、日本人男性と結婚して定住した女性たちが、長期に働ける、人の役に立つ仕事だとしてヘルパー二級養成講座を修了した在日フィリピン人、二〇〇八年時点で既に二千人を超えたというふうに推計されていることを大学の研究者らが共同でまとめております。

 この報告書、大変興味深いんですけれども、先陣を切って参入した在日フィリピン人がどんな思いで介護に取り組んで、いかなる課題を抱えているのか、それを示しているんですね。今後、介護現場で外国人を単なる労働力としてではなく人的資源として活用するためには、言語的な支援に加えて、労働条件の改善が重要な指標だというふうにあります。

 きょう資料を幾つかつけましたけれども、介護報酬をこれまでにないほど引き下げて、そして介護従事者の処遇改善加算をしたというふうに言っても、これは全くつけ焼き刃です。それこそ、本当に問題だ、この根本的なところを改善しないままに外国人の労働者をさらに拡充していくということについては私は問題だということを指摘させていただき、先ほど初鹿さんもありましたけれども、まだまだ課題は山積しております。丁寧な議論、さらなる連合審査を求めて、私の質問を終えます。

葉梨委員長 以上で郡和子君の質疑は終了いたしました。

 次に、岡本充功君。

岡本(充)委員 民進党の岡本です。

 本日は、法務厚生労働連合審査会ということで、質問の機会をいただきました。

 今回、議論の論点になっている外国人の技能実習、それからいわゆる介護という在留資格をつくっていくということについて、さまざま問題があると思っています。

 冒頭、まずお伺いしたいのは、今度の法改正で新たにできる、外国人技能実習機構設置ということが議論になっていますが、二百五十人ぐらいの職員が地方事務所、本部に八十人、これで、監理団体二千団体、年一回検査、実習実施機関三万機関を三年間で全数網羅する、こういうふうにされている案でありますが、交付金が年間十七億円ということでありますけれども、全体の予算規模はどのくらいになるのか。法外な手数料を取るのではないかなという懸念もあるわけでありますが、どのくらいの手数料を想定しているのか、お答えをいただきたいと思います。

塩崎国務大臣 手数料についてのお尋ねがございましたが、不適切な送り出し機関を排除するために……(岡本(充)委員「答弁違います」と呼ぶ)違う手数料の話でありまして、失礼しました。

 新たにできる機構の手数料についてお尋ねがございましたけれども、今回の法案で御審議をいただいている中で、技能実習計画の認定などについて、申請者は機構に手数料を納付することとされていますけれども、その具体的な金額につきましては、法案成立後の主務省の省令を前提とした審査の要件とか事務の詳細の確定と同時に決定をするという必要がございまして、現時点で具体的にお示しをするということは難しいということなんです。

 しかし、国としても、機構の毎年度の予算に対して、主務大臣たる法務大臣と厚生労働大臣の認可等の手続を通じて、御指摘のような、機構が交付金とそれから手数料、これを二重に徴収して不当な利益を生じるのではないかといった懸念が生じないように、これは適切に取り組んでいかなければならないというふうに考えているところでございます。

岡本(充)委員 年金機構のときもあったんですけれども、保険料で例えば黒塗りの自動車を買うとか、どこまでパソコンを買うのか、批判があったことがありましたね、大臣。

 私は、そういう手数料である意味じゃぶじゃぶとお金が使える環境ができるというのはまずいという話でありまして、事務費の中でどこまで手数料で見るのか、もしくは交付金で見るのか、そこをどのくらいシェープアップするのか、はっきり言っていただきたい。それは通告しています。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたように、今後まだ詰めなければいけないわけでありますけれども、一つは、例えば実地検査などの主要業務、これはやはり国費で措置をしなければならない本業というかメーンの仕事でありますから、これは原則交付金でいくということ。それから、認定、許可の審査などは、やはりこれは実費を勘案して手数料を設定するという考え方かなというふうに考えておりまして、このような大きなデマケを考えながら、さらに詳細を詰めていきたいというふうに考えているところでございます。

岡本(充)委員 時間がないですから、大臣、これは本当に、私は指摘しましたからね。同じような批判を浴びることがないように、予算の費目をしっかり見ないと、同じ批判になりますよ。手数料でじゃぶじゃぶ使っているという話になるのはまずい、それを御指摘しておきたいと思います。

 続いて、今回、管理監督体制に係る件について少し確認をしたいと思います。

 不法残留とか不法就労、失踪等に対する取り締まり、こうしたものが今回の法改正でどのように強化されるのか、これについてお答えいただけますか。

井上政府参考人 お答えいたします。

 不法残留でありますとか失踪、不法就労等に対する取り締まり対策の、まず現状でございます。

 入国管理局では、平成二十六年三月以降、失踪した技能実習生に関する情報や監理団体の受け入れ体制等につきまして、監理団体等から聴取したり、また、退去強制容疑者として退去強制手続を開始した場合には、技能実習生本人から失踪に至る経緯を聴取するなどしております。その結果、実習先を無断で去る技能実習生は、技能実習を、技能等を修得して母国に持ち帰る機会というよりも出稼ぎ労働の機会として捉え、より賃金の高い不法就労先を求めて失踪する場合が多いということが明らかになっております。

 これらの者の摘発につきましては、一般人や関係機関から寄せられる情報提供等を活用し、不法残留となった技能実習生を発見した場合、技能実習先を失踪して他の稼働先で働いていることが判明した場合など、関係機関とも協力の上、摘発をして、退去強制手続をとるなどしておるところでございます。

 課題でございます。

 技能実習生の失踪を防ぐためには、制度の趣旨を理解し、真に技能等の修得に努めようとする技能実習生のみを受け入れることが最も重要であると考えております。

 そのためには、まずもって受け入れの適正化、ここの基盤を整備するというのを、この法案でいろいろメニューをつくってございますが、それが一つございます。もう一方で、送り出し国と連携した技能実習生への啓発、制度の趣旨をよく理解してもらうということも不可欠だと認識しております。またそのほか、摘発をさらに強化していくこと、不法就労者を雇用する事業者やあっせんするブローカーなどにつきましても、関係機関との連携を強化した上で厳正に対処していくことも重要である、そのようなことも進めてまいりたいと考えております。

岡本(充)委員 局長、それは今やっていることですよね。この法律ができたら何が強化されるのか、そこを一点、そこだけでいいです、もう一回答えてください。

井上政府参考人 二つほど指摘させていただきます。

 一つは、まず、海外の送り出し機関との関係で、送り出し国政府と協定を結ぶことにより、送り出し国政府の力も使って、送り出し機関を通じた技能実習生の選抜について、そこで制度の趣旨をよく理解したものにきれいに集約していくという、そこが一つ向上することを期待しております。

 もう一つは、技能実習機構が今度できまして、そこがいろいろ検査とかをする過程におきまして、不適正な取り扱いがはっきりしてまいりますので、そのようなことから、そこを端緒にして不適正な事案を撲滅することによって、いわば不当な侵害を受けたことによって失踪していく、そのような技能実習生を減らしていくことができる、そう考えております。

岡本(充)委員 一点確認したいです。

 現時点で、内部通報もしくは垂れ込みがないにもかかわらず、入国管理局が技能実習の要件で滞在をしている方々の現状を調べに行ったことはあるんですか、おのずから出向いていって。

井上政府参考人 お尋ねの趣旨はパトロールのような感じでございましょうか。だといたしますと、基本的には行っていないところでございます。

岡本(充)委員 これまで行っていないんですよね。

 だから、大きく違うのは、これまでやらなかったことをやる、機構をつくって、情報がなくても、先ほど私が言ったように、三年間で実習実施機関を全部見に行こう、これが変わる、こういうことなんでしょう。そういうふうに答えないといけないんじゃないですか。これまで調べてこなかった。

 技能実習に係る不正行為に対する取り締まり、対策をとられるということですが、いわゆるこれが見つかったらもう一発アウト、その機関は即実習実施機関として不適正という判断になる、この一発アウトは何なんでしょうか。

井上政府参考人 もちろん個別具体的なケースによって情状のよしあしというのはございますが、一般的に申し上げますと、例えば新制度におきまして、暴行とか不当な手段によって技能実習生の意思に反して技能実習を強制する場合でありますとか、意に反した旅券や在留カードの保管、取り上げ、それから、いろいろな不利益を示した上での通信、面談、外出の禁止を告知した場合など、禁止規定や罰則を整備した部分がございます。これらに当たる行為につきましては、基本的に物すごく犯情が悪いということがありますので、もちろん個々の案件によりますけれども、一回で許可の取り消し、認定の取り消しに達する可能性は高い類型かなと。

 あと、現状、不正行為で一番多いのが、賃金の不払い、割り増し賃金不払いでございますが、その金額等も勘案いたしますが、これらにつきましても、対応が悪質であるときには取り消しの対象になるかと思われます。

岡本(充)委員 その中には、不当に高い寮費等を取っているものも一発アウト、同じ賃金の不払いに類似する行為というふうに考えられるということでよろしいですか。

井上政府参考人 具体的には個々の案件を通じて判断いたしますが、その不当な寮費等の徴収が実質的に賃金を下げている、極端に下げている場合にはなり得るだろうと考えます。

岡本(充)委員 ぜひしっかり見てもらいたいと思いますね。

 その上で、本来の趣旨に合致しているのかということで確認をしたいんですが、技術移転が本当にできているのか、帰国後、フォローアップはどうなのか、皆さんのお手元に配りました。残念ながら二〇〇八年約二〇%だった調査の回答率、これがもう一割を切っているという状況です。これでいいとはとても思えない。

 本当に技術移転が進んでいるのか、技能実習生のプラスになったのかということを確認する意味でも、そもそも一カ月後のフォローアップだけでは少なくて、一年後どうなっているのかも見るべきだと思いますし、この有効回答数もふやすべきだと思いますが、これについて厚生労働省はどのような対応をとられるんでしょうか。

塩崎国務大臣 今、フォローアップ調査についての回収率のお話をいただきましたけれども、これは、回収率を高めるというのは本当に大事でありまして、これまでの運用について本来の趣旨を徹底できていないということの一つの例かなというふうに思います。

 本法案によって新たに設置をします外国人技能実習機構が、監理団体や実習実施者に対して、帰国する実習生への調査票の配付や調査への理解、協力を求めるように指導するということがまず第一点。同時に、送り出し国との二国間取り決めを今回新たに導入するわけでありますので、送り出し国政府から帰国後の実習生に回答か返信を強く働きかけてもらう。

 これらによって、法案の成立後、二国間取り決めを交わした送り出し国にあっては、送り出し機関への周知、指導に要する期間も考慮して、当該取り決めの発効の翌年度から、帰国をする実習生を対象にフォローアップ調査の回答割合を、できる限り回収率が高くなるように取り組んでまいりたいと思っております。

 今、回数等々、いろいろ御提案をいただきましたけれども、それらも含めて、今後、改善方を検討してまいりたいというふうに思います。

岡本(充)委員 できるだけ高くじゃだめです。ちゃんと目標値が決まっているでしょう。目標は幾つなんですか。数値が書いていませんか、その答弁書に。

宮川(晃)政府参考人 現状の取り扱いですので、私から説明させていただきます。

 二〇%となっております。

岡本(充)委員 書いているはずですよ、大臣。局長に答えられているようじゃ、大臣、残念ですよ、それは本当に。(塩崎国務大臣「いやいや……」と呼ぶ)いやいやじゃなく。局長が持っていて大臣が持っていないなんておかしいじゃないですか。

 それは、やはり大臣、ちゃんと理解してくださいよ。これは本当に二〇%でも低いですよ。ただ、その二〇すら言えないという大臣は本当に情けないと思いますよ。(塩崎国務大臣「違う、違う」と呼ぶ)いや、私は本当にそう思いますよ。

 その上で、二〇%にするために、大臣、もう一つ提案です。

 二国間協議の中で、ぜひ送り出し機関に対して、やはりきちっと回答する、現地での状況を調べて報告してもらうような要請をし、それが十分できていないような送り出し機関、送り出しっ放しみたいなところ、こういったところはやはりそうした機関から外れていってもらう、こういうことも二国間協議の中で盛り込むべきだと考えますが、いかがですか。

塩崎国務大臣 いや、二〇%はわかっていましたが、私は二〇%では全然低いと思ったので、とりあえず答えさせてみたのであって、もともと私は全然二〇%じゃ足りないということを申し上げているわけであります。

 今、言うことを聞かないところはどうするんだ、こういうことでございますけれども、それは、二国間取り決めで送り出し国政府から帰国後の実習生に回答、返信をしっかりやってもらうように働きかけを、こちらからももちろんするわけでございますけれども、これが一定割合をどうしても下回っていることで直ちに送り出し機関を排除するといったことは、少し極端かなというふうに思います。

 しかし、回収率については、御指摘の二〇%というような水準にとどまらないで、それをさらに上回って高めてもらえるような形で、送り出し国政府に実効ある取り組みを我が国の政府として求めていかなければならないというふうに考えているところでございます。

岡本(充)委員 大臣、そうおっしゃるなら、二〇じゃなくて、大臣の目標をちょっとお答えください。

塩崎国務大臣 それは、数字はともかく、二〇%は低過ぎるぞということを言っているわけであります。

岡本(充)委員 いや、大臣、情けないですよ。だって、そう言われるんだったら、いや、私はこれを目標にしますと。そこでやはり、二〇は、確かに役所として事務方はそう言うけれども、私は例えば三〇を目指すんだ、二五を目指すんだ、少なくともこのぐらいは目指すんだと言ってほしいですよね、そうおっしゃられるなら。具体的に聞けば、いや、できるだけ高くとかごまかされて、だけれども二〇じゃ低過ぎると。本当なのかなと私は思っちゃうわけですね。本当に残念ですよ。

 その上で、今の、送り出し機関をきちっと管理をするということ。たとえ二〇だとしても、今現状、全然返ってきていない送り出し機関もあるようじゃないですか。そんなところがあるんだとすれば、これはやはり退場いただくのが筋じゃないんですか。ちっともフォローアップもしない送り出し機関で本当にいいんですか。

 そしてまた、送り出し機関が多額の保証金やさまざまなお金を現地で取っている、いろいろな意味での理不尽な約束をさせている。先ほども初鹿委員が指摘をされたようですけれども、こうしたようなことがあった場合に、やはり退場いただくということをしっかり二国間協議で取り決めておく。我が国の主権国家としての私は権利だと思いますよ。きちっとそれを結ぶべきだと思いますけれども、どうですか。

岩城国務大臣 送り出し機関の中には、保証金の徴収など不適正な行為をする機関など、問題のあるものがあります。こうした不適切な送り出し機関の関与は技能実習生の人権侵害や失踪などにも結びつくものでありますことから、しっかりと適正化を図っていく必要があるものと考えております。

 そこで、技能実習制度の見直しに関する法務省・厚生労働省合同有識者懇談会報告書にもありますとおり、送り出し国との間で取り決めを結び、送り出し国政府の協力を得て、送り出し機関の適正化を図っていきたいと考えております。仮に、送り出し国によって認定された機関が不適正な送り出し機関であると考えられる場合には、我が国として、相手国に対し照会するとともに、必要な対応を求めていくことを考えております。

岡本(充)委員 その必要な対応はそこで初めて言うのでは、やはり向こうとの信頼関係もあります。あらかじめ二国間協議でこういう場合には退場なんだということを盛り込んでおけば、それはこちらとしても言いやすいわけですよ。二国間協議のときにそれを定めておかずに、後になってから、この機関についてはおかしいんじゃないかと照会をし、そして適切な対応をとるといったって、そのとれる適切な対応は二国間協議で決められている範疇にとどまるはずです。

 そういう意味で、そこで決めておかなければならないということを私は指摘しているのでありまして、大臣、そこでぜひ、対応も含めて、二国間協議で取り決める方向で努力をする、せめてそのぐらいはお答えいただけませんか。

岩城国務大臣 岡本委員の御指摘等も踏まえまして検討してまいりたいと考えております。

岡本(充)委員 ぜひ、そこは外交交渉ですから、最初にきちっと言っておかずして、後から言ったのでは、なかなか、それは二国間協議がもめますから、そこのところの取り扱いをお願いしたいと思います。

 続いて、法務省にお伺いする話ですが、私のお配りしたペーパーの裏面です。

 長く日本にいらっしゃると、永住権、永住資格が発生することがあります。外国人の高度人材ポイント制度、私は、高度人材ポイント制度は大変緩いポイント制度だと思っています。これが本当に高度人材と言えるのかということは懸念をしておりますけれども、現状の制度で、これから先、永住権の申請、許可が三年になる、こういう報道もありますけれども、大臣、よもや三年にするということを法務省として考えているわけではないですよね。

岩城国務大臣 法務省といたしましては、我が国の経済社会に活力をもたらす外国人を積極的に受け入れていくことが必要であると考えておりまして、とりわけ高度な専門的能力を有する外国人の受け入れを促進することは極めて重要であると認識しております。

 ただいま委員から御指摘の点につきましては、現在、事務レベルで検討を進めており、高度専門職に認定された者の永住許可に係る在留実績要件を一定の要件のもとで短縮することを検討しているところであります。

 この件につきましては、委員御指摘のような観点を含めまして、多様な御意見があると承知しておりますので、法務省といたしましては、さまざまな観点から、関係省庁と丁寧に検討を行ってまいりたいと考えております。

岡本(充)委員 そのときに、大臣、ここに書いてありますけれども、日本の永住権の資格喪失、どういうときに永住資格がなくなるのか。

 大臣、どういうときに日本はなくなりますか。

井上政府参考人 永住権を喪失する場合でございますが、典型的には、再入国許可の有効期間内に本邦に再入国してこない場合などがございます。もう一つは、一定の退去強制事由に当たって退去強制手続がとられる場合、この辺が代表的な場合でございます。

岡本(充)委員 再入国許可は何年以内にとればいいですか。

井上政府参考人 五年以内でございます。

岡本(充)委員 特別な事由があれば六年でいいですね。これは、六年に一回、日本に一日でも滞在していれば、再入国許可、その日からまた六年延長できますね。

井上政府参考人 原則的には五年ということになりますけれども、許可の時点で要件を満たしておればできるということになります。

岡本(充)委員 つまり、大臣、原則五年、何か特別な事由があれば六年の間に一日でも日本に来れば、永住権は、日本は更新し続けることができるんです。納税の要件もありません。

 世界各国を見ると、ここに書いてあるとおり、こんな緩い永住権の更新手続を認めている国はないんです。実際に住んでいることを求めているんです。

 我が国は何でこんなに緩いのか。この緩い永住権をさらに簡単にプレゼントする、今回の自民党さんで検討されているこの案は、私は、この国のあり方に大きな問題を引き起こすんじゃないかという懸念があるんです。

 短縮をする、永住権をプレゼントするまでの期間を短くするんだ、三年住んでいたら日本の永住権を差し上げます、これだけではなくて、やはりどういうときに日本の永住権をなくすのか、もう少ししっかり、住んでいる、もしくは納税をしている、こういう要件を課すべきだと考えますが、大臣、この点も検討していただけませんか。

岩城国務大臣 ただいま局長から説明させましたとおり、在留資格を失う、そのことについては説明のあったとおりであります。

 そこで、この永住制度でありますけれども、現在のところ、このような現行法の取り扱いにより大きな問題が生じているとは考えておらず、永住者の在留資格を維持するために新たな要件を設けるといった予定は考えておりません。

岡本(充)委員 いや、これは短縮するんですよ。かなり短い日本の在留で永住権を与え、そして、実際に住んでいるか住んでいないかにかかわらず更新することができる、こんな緩い制度で本当にいいんですか。

 大臣、この制度、今、永住権の付与の要件を緩和することを丁寧に検討していると言われました。同様に検討ぐらいはするべきだと私は思いますよ。いかがですか。

岩城国務大臣 先ほどもお答えをいたしましたとおり、さまざまな観点から関係省庁と検討を行ってまいりたいと存じておりますが、その中で、今委員から御指摘のあったこと、そういったことも踏まえて総合的な検討をしていきたいと考えております。

岡本(充)委員 ぜひそれはお願いします。

 我が国において外国人が日本人の雇用や日本人の暮らしを圧迫していくという話になると、これは本当に大きな問題になると思います。ぜひ丁寧な検討をお願いして、私の質問を終わります。

葉梨委員長 以上で岡本充功君の質疑は終了いたしました。

 次に、高橋千鶴子君。

高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。

 本日は、外国人技能実習生、入管法に関し、介護分野を中心に伺いたいと思います。

 先ほど来議論があるように、本来、途上国への技能移転を行うことで国際貢献を目的とする技能実習制度が、現実には単純労働の労働力として活用され、人権侵害ともいうべき実態があることが長年問題となってまいりました。

 今回の法改正は、規制強化とあわせて、緩和でもある。優良な監理団体には、実習期間の延長や受け入れ枠の拡大、対象職種の拡大を図るというものです。そして、その中で初めて、対人サービス、介護を加えることが検討されてきたと思います。

 既にEPAによりインドネシア、フィリピン、ベトナムから順次受け入れてきた外国人介護労働者、そして二つ目には、今回拡大する、留学生が養成施設で資格を取った場合に与えられる在留資格「介護」、三つ目に外国人技能実習生、三つのカテゴリーがあるわけですが、それぞれ最大でどのくらいを受け入れる考えなのかということを聞きたい。

 そしてその上で、外国人介護人材受入れの在り方に関する検討会の中間まとめでは、先ほど来議論があるように、二〇二五年に向けて最大で約二百五十万人の介護人材を確保する必要があること、二〇二〇年までに二十五万人不足することが指摘をされています。不足しているということがあわせて書かれているわけですから、それとの関係で今回の外国人介護人材の受け入れはどうなっているのか、お願いします。

塩崎国務大臣 まず第一に、先ほども繰り返し申し上げておりますけれども、介護人材の確保はあくまでも国内の人材確保対策が基本でありまして、その充実強化を、今、安倍内閣としてもあらゆる施策を総動員して総合的、計画的に取り運んでいるところでございます。

 二〇二五年に向けての二百五十万人規模の介護人材の確保についてお話がございましたが、外国人の受け入れの目標といったようなものは、一切あるわけではございません。

 外国人介護人材の受け入れにつきましては、技能実習は開発途上国等への技能移転、そしてEPAは経済活動の連携強化を目的とした特例的な受け入れ、そして在留資格「介護」の創設は専門的、技術的分野への外国人材の受け入れという、それぞれの制度趣旨に沿って実施をするものであって、人材不足への対応を直接の目的とするものでは決してございません。

 したがって、これらの制度に基づいてどの程度の外国人介護人材を受け入れるという目安を持っているわけではないわけであります。二〇二五年に向けた介護人材の確保や、二〇二〇年代初頭に向けた一億総活躍の緊急対策で示された国内の人材確保対策を充実強化していくことによって対応するというのが大原則であることを繰り返し申し上げておきたいと思います。

高橋(千)委員 聞いていることは、別なことを聞いています。

 基本的には介護人材の対象としないんだとおっしゃった。だから幾らかわからないという話ではないんです。つまり、上限はきちんと設けるべきではないか、外国人介護人材を受け入れる場合に、最大でどのくらい受け入れる考えなのかということを一つ聞いています。

 その上で、二十五万人の介護人材不足については、基本と言うからややこしくなるんですよ。これは、二十五万人は、基本ではなく、日本人で供給するという考えだ、これはきのう確認をしていますが、そのことを確認させてください。二点聞いています。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 今議員から、外国人技能実習生、EPA、そして在留資格「介護」で、上限という形でしょうか、どのくらい設けるということで考えているのかということでございますが、そういう数字を私ども検討しているものではございません。

 現実問題として、既に介護福祉士の養成施設の中で外国人の留学生の方が最近でも六十名ほどおられることはわかっておりますので、もし仮に在留資格「介護」ということが生まれれば、その後、資格が取得できるということで入国される方はよりふえるだろうということは見込むわけでございますが、それは、受け入れ施設の体制もございますし、また、入国に当たっては、N2という日本語要件、非常に高いものがございますので、その資格を満たす方がどのぐらいいるか、あるいはそれを目指してどのように頑張るか、いろいろ流動的な要素がございますので、そういうことも踏まえた場合に、目安とか上限とか、そういうものを示すということはなかなか難しいのではないかと思っております。

 それからもう一つ、二十五万人の不足について基本として日本人で対応するということについての確認がございましたが、先ほど大臣から御答弁申し上げたとおり、やはり基本は日本人で対応する、離職の防止、それから参入の促進といったことを踏まえながら対応していこうということでございます。

高橋(千)委員 ここははっきりさせておきたいと思うんですね、二十五万人は日本人であると。

 その上で、検討していないというのはやはりだめだと思うんですよ。上限をきちんと、全体でどのくらいになるのか、あるいは、なるのかというよりも、抑えるべきだと、そういう思想がなぜないのかということを主張しているんです。

 大臣、私の趣旨はわかったでしょうか。少し検討していただけますか。

塩崎国務大臣 制度の趣旨からいけば、これは技能移転でありますから、日本の介護技能、技術を移転してほしいという要望は、私どもの中でもいろいろと諸外国から要望があるわけでございまして、それの上限を設けるという発想は持ち合わせていないということであって、技能の移転についての協力を求めるということであれば、できる範囲内ではそれにお応えをしていくということではないかなというふうに思います。

高橋(千)委員 あくまで上限を設けないという、この答えも非常に重大だと思いますね。

 EPAだって、一応各国三百人という上限があり、かつ、それに達してはいないわけですよね、現実に。それから、養成施設の場合は、検討会の中でアンケート調査をやって、百八十二校、定員の一〇%としたら九百十人までは受け入れる見通しがありますよという答弁がございました。やはりそういう見通しを持って、幾らでもいいんだという発想ではないというふうな立場に立たなきゃいけないと思うんです。

 こればかりやっていると進まないので、少し、なぜそういう議論をしているのかという意味を込めて質問を続けていきたいと思うんですが、次は岩城法務大臣に伺います。

 第六次出入国管理政策懇談会報告書では、介護の現状についてこういうふうな指摘をしております。介護職員の離職率が他の産業より高い、それから、平均賃金が少ない、これは十万円以上も少ないわけですよね。そういうことを並べながら、「介護人材の確保に関しては、構造的・根本的な問題が存在している」と指摘し、「これらの問題の改善、解決に向けた取組がより一層進められることが必要」とあるわけです。

 私は、これだけの事態をやはり解決しなくちゃいけないし、ここの現場に外国人介護実習生を受け入れるということは、同等の賃金保障だとか、経験ある指導人材を確保しなきゃいけないだとか、むしろ問題が大変なことになってしまうと思うんですね。

 どういう趣旨でこれを書いているのか。つまり、問題はあるけれども、とりあえず受け入れはやるべきだと思っているのか、やはり問題の解決が先だと思っているのか、その趣旨を伺いたいと思います。

岩城国務大臣 高橋委員御指摘のとおり、出入国管理政策懇談会が平成二十六年十二月に取りまとめました報告書では、介護人材の確保に関して、「構造的・根本的な問題が存在している」との記載がございます。この記載は、介護福祉士の資格を取得した留学生の受け入れに関連して、介護人材全般に関する問題として、今後、問題の改善に向けた取り組みが早急に行われる必要があることを示したものと承知をしておりまして、技能実習制度に介護職種を追加することによりこれらの問題を解決すべきとの意見は、いずれの方面にもないものと認識をしております。

 なお、技能実習への介護職種の追加につきましては、厚生労働省において開催されました検討会において、介護職に対するイメージの低下、日本人介護従事者の処遇向上への影響、介護サービスの質の低下や利用者の不安といった懸念が示されており、こうした懸念の解消策が必要と考えております。

 技能実習への介護職種の追加につきましては、技能実習法案に基づく制度の詳細が確定した段階で、介護固有の要件等とあわせて、さまざまな懸念に対応できることを確認し、その上で、厚生労働省において新たな技能実習制度の施行と同時に職種追加が行われる予定であると考えております。

 現在御審議いただいております技能実習法案により、技能実習制度の趣旨、目的に沿った技能等の修得、移転が確保され、かつ、技能実習生の人権確保が図られるなど、制度の適正化が図られるものと期待をしておりまして、法務省といたしましても、関係省庁と連携し、適切に対応してまいりたいと考えております。

高橋(千)委員 早急に解決すべきだという答弁がまず最初にありました。

 構造的な問題である、これはみんなが認識しているんですね。この間、この問題は、我々、介護人材確保の法案まで出しているわけですから、みんなが認識している。それで、イメージが悪いから、低下しちゃだめよって、そういう抽象的な議論ではだめなんです。抽象的な理想だけで言ってはだめなんだ。だから、そういう点で、問題意識を持っているのであれば、やはりそこの解決がまず先なんだという立場に立つべきではないか、このように思っております。ちょっと私の問いが技能実習生だけを聞いたみたいに思ってそういうふうなお答えだったと思いますが、留学生のことも含めて伺いましたので、まずそこが先決ではないかと思います。

 具体的なことでちょっと聞いていきますが、厚労省に伺います。

 介護技能実習生については、受け入れ人数の上限を、常勤職員三十人以下の場合、一〇%までとする、その算定する常勤職員の範囲については、主たる業務が介護職に限定するとした。つまり、三十人と数えたんだけれども、事務職だとか介護をやっていない人も数えてしまうと薄まってしまうわけですね。まずそこが言われています。

 その上で聞きますが、介護施設の配置基準における一人、つまり、三対一が要件であれば、その一人に技能実習生を換算するのかどうか、それから、夜勤業務も日本人と同様に就業させるつもりなのかどうか、伺います。

三浦政府参考人 配置基準などについてお尋ねがございました。

 介護は対人サービスでございます。サービス提供に当たって、その質を担保し、利用者の方々の不安を招かないようにするということが重要であると考えております。

 このため、技能実習制度における介護職種の追加につきましては、産業競争力の強化に関する実行計画に基づきまして、具体的な制度設計、例えば、介護サービスの質を担保するために必要なコミュニケーション能力の水準を確保する方法などについて検討を進め、条件整備を行う予定でございます。

 介護保険の配置基準上の取り扱いなどについては、今後、関係者の意見や、既に実施されているEPAの仕組みなどを踏まえまして検討してまいりたいと考えております。

高橋(千)委員 ということは、今お答えにならなかったんですよね、結局。今は技能実習生を一人として換算できないというのが私は答えとして用意してあったと思うんですが、違うんですか。

三浦政府参考人 現時点では、そのような検討を今後行うということでございまして、そのようなというのは、今後、配置上の基準の取り扱いについて検討を行うということで、結論を出しているわけではございません。

高橋(千)委員 正直ちょっと驚いているんですね。

 EPAの場合も、当初は数えていなかったわけですよね。それが緩和をされて、六月以上というふうなことで、あと、日本語レベルがN2以上、そうした要件を加えることで、もう数えている。そういうことを参考にしながらというふうなお話をされたので、結局、前例があるのでそれにのっとっていくというふうなことになるのかなと思うんです。

 それで、夜勤の場合は非常に難しいわけです。まさか一人で夜勤させるということはまずあり得ないと思うんですよね、指導教官がつかなければならないから。そのときにどういうふうに数えるのかということと、資料の最後のところに、今、参考とするEPAの実態で、どんな業務を候補生と資格を持った人がやっているかという表をつけておきましたけれども、やはりコミュニケーションが問題なので、申し送りですとか会議ですとか、そういうことが非常に困難であるということがはっきりするんですよね。

 だから、EPAのレベルでもこうですから、これを実習生にやらせるということは非常に大変なことだ。そういうことをどのように思って、夜勤もどのぐらいやらせるつもりか、同じぐらいやらせるつもりなのかということを聞きました。もう一回お願いします。

三浦政府参考人 今御指摘ございましたように、EPAにつきましては、既にそのような算定というのが行われているわけでございます。そういうような仕組みがあるということも踏まえて、その実態も私どもとしては理解した上で、さらなる検討をしていきたいと考えているところでございます。

高橋(千)委員 逆に言うと、否定をされないので、私が言ったとおりなのかなと思わざるを得ません。逆に言うと、大変それは危惧されることですよね。

 やはり、だからこそ、現場の皆さんがおっしゃっているのは、EPAでさえもこういう実態なわけですから、技能実習生はさらに日本語のレベルが落ちてもいいということになっているわけです。そうすると、結局は、介護の分野でもどういう技能を移転するかと一応分けているんですけれども、単純労働で、そこに集約されちゃうんじゃないかという懸念が持たれるのは当たり前なんですね。どうお考えになりますか。

三浦政府参考人 先ほどコミュニケーション能力のお話をさせていただきましたし、委員からも、コミュニケーション能力を初めとした技術についてのお話がございました。

 私どもとして、実態として技能実習生の方々の水準というものも認識しながら、今後とも検討していきたいと考えているところでございます。

高橋(千)委員 何というか、とてもじゃないが、これでは心配だらけになってしまうと言わなければならないです。

 資料の三枚目につけたのは、今既に拡大をしましたEPAの、二枚目に総括表があって、三枚目に、わかるような資料になっておるんですけれども、「介護福祉士の主な受入れ機関・施設範囲について」ということで、この黒いところが拡大した部分なんですね。サテライト型でもいい、つまり、車で二十分で行ける範囲の距離にあればそこも対象となりますよとか、有料老人ホームのような特定施設も対象になりますよ、そういうことが既にもう決まっているわけなんですよね。

 では、これが一体、現行、どのくらいの施設が、現行というのは、EPAの受け入れ対象となっていて、これでどのくらい対象施設がふえるのか。やっているかどうかではなくて、対象施設がどのくらいふえるのかということを一つ伺いたいのと、今回は見送られたけれども、訪問介護をEPAに解禁するという考えだと思いますが、確認します。

石井政府参考人 まず、EPAの介護福祉士候補者については、受け入れ開始以降の経験を踏まえまして、本年四月に受け入れ施設の範囲を拡大いたしたところでございます。

 具体的には、従来の、定員三十人以上の入所施設、特養等、そして定員三十人以上の入所施設に併設されている通所介護等の事業所に加えまして、定員三十人以上の特定施設、サテライト型施設、そして定員三十人以上の入所施設に併設されている小規模入所施設を追加したところでございます。

 正確な数字というわけにまいりませんで、ややラフになることをお許しいただきたいと思いますが、受け入れ施設数につきまして、定員三十人以上の入所施設について、三十人未満の施設を含む形でしか把握できないわけでございますが、従来からの主な受け入れ施設数は約一万三千施設、そして今回新たに受け入れ可能となった主な施設は約五千三百施設というふうに考えております。

 それから、二つ目のお尋ねについて申し上げます。訪問介護を認めるべきではないというお尋ねでございました。

 これも、検討を行いました私どもの検討会でいろいろ御議論を賜ったわけでございますが、この中で、EPAによって介護福祉士となった方については、これはやはり、介護福祉士試験によって、日本人介護福祉士と同様に、専門的知識そして技術を有していることが確認されているということがございます。

 そして、就労の際には、日本人介護福祉士と同様に、その適性、やはり日本人でありましても、訪問に適している方と必ずしもそうでない方もおられたり、あるいは希望しなかったりということはございます。その適性に沿った業務に配置されると考えられることから、その就労範囲を制限することなく、日本人介護福祉士と同様とすることが適当とされたところでございます。

 ただし、この訪問系のサービスを認めることにつきましては、EPAの介護福祉士の受け入れは二国間の経済の連携強化という目的で行われているものでございまして、仮にこのEPA介護福祉士の人権擁護が確実に図られていないと大変な問題になるということでございまして、訪問系サービスの追加に当たりましては、必要な措置をあわせて講ずることが必要とされたところでございます。

 幾つかその例が挙がっているところでございますが、この必要な措置の中身につきまして、この検討会で引き続き議論を行っていくことといたしております。

高橋(千)委員 まず、対象施設がざっくり言って一・五倍くらいになるのかなと思っているのと、一応人権に配慮をすると言いつつも、訪問介護にもサービスの内容を拡大するという方向なわけですね。

 そうすると、今、EPAは、やはり二国間の経済連携協定ですので、一定の条件もあるし、厳しい規制もございます。ただ、さっき議論してきたように、やはりEPAで先鞭をつけて、それで施設もこれだけやれますよねという議論が整っていくと、技能実習生の枠も当然広がってくる、そういうことになりかねないと思うので、これは本当に、慎重にやらなければいけないというのか、やるべきではないというふうに思っております。

 それで、いろいろ問題はあるんですけれども、さっき法務大臣の答弁にも既にあったように、この介護職種の追加、技能実習生の追加については、資料の一枚目の最後のところにも書いてあるように、新たな技能実習制度の施行と同時に追加を行うというふうに中間まとめではあるわけなんです。

 だけれども、ここの表にあるように、本体の制度自体も見直します。そして、介護だからということで固有の要件があります。つまり、日本語要件などは他の物づくりなどにはございません。それをやっておきながら、詳細設計をやらなきゃいけないといって、なぜ同時なんでしょうか。

 そもそも施行日は過ぎています。いつやるつもりなんですか。これは、同時施行なんということは考えられないと思いますが、いかがですか、塩崎大臣。

塩崎国務大臣 介護職種の追加について、そのタイミングについての御指摘、お尋ねがございました。

 やはりASEAN諸国においても高齢化が進んでおりまして、日本がこれまで介護保険などを通じて蓄積してきた介護に関する知識、技術の修得が、人材の育成に対するニーズに応えるという中で意味のあることだというふうに考えておりまして、介護職種の追加というのは、そういう意味で国際的にも意味がある。技能実習制度の趣旨にも当然かなうわけであります。

 一方で、対人サービスとして初めての職種追加となるわけでございますので、対人サービスである介護業務の特性はやはりしっかり踏まえなければいけないというふうに考えております。

 こういうことで、昨年の二月に閣議決定された実行計画に基づいて、介護職種の追加に当たっては、まず第一に、コミュニケーション能力の担保など介護固有の要件の具体的な制度設計を進める、それと同時に、技能実習法案に基づく新制度の詳細が確定した段階で、監理団体の許可制の導入などによる技能実習制度の適正化とあわせて、介護サービスの特性に基づく要請に対応できる状況が整ったことを確認した上で、新制度の施行と同時に職種の追加を行うことにしているものでございます。

高橋(千)委員 時間が来ましたので終わりますが、言っていることが矛盾していると思いませんか。整った上で施行と同時にと、どうしてそうなるんですか。施行日は過ぎているんですよ。これから修正しなきゃいけないわけですよ。そうしたら、同時にいったら始まっちゃうじゃないですか。何も整っていないのに、どうしてそうなるんですか。

 この間、本当に、国連や米国国務省から人身取引の問題での指摘まで受けて、やっと規制強化すると言っているそばから規制緩和も一緒にやっている。これをぎりぎりと詰めていけば、逆に抜け穴ができていく。特区などもありますからね。本当に言っていることが矛盾しているんです。

 やはり国際貢献という本来の立場に立ってどうするべきなのかという議論を改めてするべきだということを指摘して、残念ながらこれで終わりたいと思います。

葉梨委員長 以上で高橋千鶴子君の質疑は終了いたしました。

 次に、河野正美君。

河野(正)委員 おおさか維新の会の河野正美でございます。

 最後の質疑者ということで、重なる問題も多いかと思いますけれども、よろしくお願い申し上げます。

 まず、法改正の意義について伺いたいと思います。

 外国人技能実習制度というのは、もう既に二十年以上経過しているかと思います。この間の制度の実施状況を見ますと、必ず出てくるのが、外国人技能実習生の置かれた環境の過酷さといったものを指摘する声かと思います。最低賃金以下で外国人を働かせている例も見られるということで、人材育成というよりも安価な労働者確保の手段として使われてきたのではないかという声もあります。

 両改正案が施行された後、技能実習制度の適正化が進むことによって、技能実習生の失踪や不法残留などがどれだけ減少し、受け入れ側の違法行為がどの程度抑えられると見込んでおられるのか、また、在留資格「介護」による在留者がどのくらいふえると想定されているのか、まず、この制度改正による効果について政府の見解を伺いたいと思います。

井上政府参考人 今回の技能実習法案と改正入管法の施行による効果についてのお尋ねでございました。

 制度見直しの効果を数値的にお示しするのはなかなか困難でございます。ただ、まず受け入れ機関につきましては、技能実習法案の中で、制度の趣旨に沿った適正な運用を確保するために、監理団体の許可制、技能実習計画の認定制、主務大臣の立入検査、改善命令、許可や計画認定の取り消しの権限などを定めるほか、旅券の取り上げ等に対する罰則などを定めたり、また、制度の管理運用を担う法人として外国人技能実習機構を設立するなど、適正化のための措置をつくることにしてございます。これらによりまして、不適正な行為を行う監理団体や実習実施者をしっかり排除していく所存でございます。

 そして、失踪をどの程度減らすことができるかというお尋ねもございました。

 技能実習生の失踪につきましては、技能実習法案においては、人権侵害行為の禁止規定や罰則を設けるとともに、技能実習生からの相談に対応する体制の整備、受け入れ機関における不適切な処遇を理由に失踪することがないような仕組みを設ける。そのようなことをする一方、入管法の一部改正法案では、出稼ぎ感覚で高い賃金を得られる不法就労先を求めて失踪する技能実習生に対処するための在留資格取り消し事由の拡充等を図っておるところでございます。

 また、そもそも、送り出し国との取り決めを通じて、送り出し機関に、技能実習生が出稼ぎ感覚で来日することがないよう、技能実習制度の趣旨を十分理解させて送り出すことを求めていく。

 このようなことによりまして、失踪技能実習生の問題が相当程度改善されると考えております。

 最後に、在留資格「介護」で入国することとなる人数の見込みでございますが、現状ではそのような資格で働くことができませんので、新しい在留資格ができた場合には我が国で介護に従事したいという外国人の数を正しく推測することはなかなか困難でございますけれども、今後、在留資格「介護」の創設によりまして、介護福祉士として我が国の介護施設において就労することを希望する外国人が一定数存在してくるものと考えております。

河野(正)委員 本改正案によって技能実習生を保護する仕組みや悪質な事業者を排除する仕組みが一定程度は整えられて、現行制度を続けるよりはましだというふうに考えられるものの、そもそもこの制度は、目的と実施状況がかけ離れてしまったことに大きな問題点があるのではないかという意見が我が党の政調の議論の中で出ております。

 こういった指摘につきまして、法務大臣、厚生労働大臣の見解を伺いたいと思います。

岩城国務大臣 技能実習制度は、技能、技術または知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う人づくりに協力することを目的とする制度でありまして、我が国の国際貢献において重要な役割を果たしているものであります。一方、残念ながら、一部でこの制度が労働力の確保策と誤解ないし濫用され、法令違反等の問題事例が生じているのも事実でございます。

 そこで、技能実習法案では、技能実習制度が本来の趣旨に沿って運用されるようにするため、例えば技能実習一号から三号までの各段階の修了時における技能検定等による効果測定を義務づけた上、それを目標として適切な計画及び環境のもとで技能実習が行われることをあらかじめ技能実習計画の認定手続の中で審査することとし、かつ、実際に技能実習が計画に従って適切に実施されているかどうかを監理団体や外国人技能実習機構が監督するという仕組みを構築しております。こうした措置などによりまして、制度の趣旨と合致した適切な運用が図られていくもの、そのように考えております。

塩崎国務大臣 趣旨、基本的な考え方につきましては、岩城法務大臣と同じでございます。

 今般の技能実習法案では、まず第一に、技能実習制度が人手不足対策として利用されることのないように、「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない。」という基本理念を法律上明記いたしたところでございます。

 同時に、技能実習計画の認定制を導入いたしまして、実習の内容や技能実習生の待遇などについて事前に確認する仕組みを導入しました。

 加えて、監理団体について許可制を導入して、問題が多いと言われてきた団体監理型の技能実習について、規制を抜本的に強化することとしております。

 さらに、新たに外国人技能実習機構を設立して、法律上、同機構が監理団体や実習実施者に対して定期的に実地検査を実施する権限を与えることによって、機構の是正指導に従わない場合には、主務大臣と連携をして改善命令や技能実習計画の取り消し等を行う。

 こういったことによって、国際貢献という技能実習制度の趣旨を徹底し、制度本来の目的に沿った活用がなされるようにしていかなければならないというふうに考えております。

河野(正)委員 EPAとの関係について伺いたいと思います。

 今後、技能実習制度の対象を介護へも拡大するということで、先ほど来、一定数の増加が見込まれるのではないかということを答弁いただきましたが、介護分野におきましては、既に、インドネシア、フィリピン、ベトナムとの二国間の経済連携協定、いわゆるEPAで受け入れがされております。今回の改正によって、EPAによる介護福祉士候補者の受け入れ制度にどのような影響があると考えられているのか、政府の見解を伺いたいと思います。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 介護分野における外国人材の受け入れに関しましては、先ほど来何度か答弁申し上げておりますけれども、EPAは経済活動の連携強化を目的とした特例的な受け入れ、技能実習は開発途上国等への技能移転、そして三つ目、在留資格「介護」の創設は専門的、技術的分野への外国人材の受け入れといった、それぞれの制度趣旨に基づき実施されるものでございます。

 このため、技能実習制度への介護職種の追加や、あるいは在留資格「介護」の創設がEPAによる受け入れに直ちに影響を与えるものではないというふうに考えておりますが、ただ、在留資格「介護」につきましては、制度の趣旨から、EPAと同様に、介護福祉士資格取得を目指して日本の介護技術を学ぶ意欲のある方が対象となることから、インドネシア、フィリピン及びベトナム、これはEPAの対象の国でございますが、そこにおきましては、こうした意欲のある外国人につきまして、より選択肢がふえるというふうに考えているところでございます。

河野(正)委員 EPAの場合ですと、非常に言語の問題がありまして、なかなか資格を取るまでに至らないといった面も見られます。国として看護や介護の専門人材や技能を修得する外国人の受け入れを進めていく以上、言語習得に向けた外国人への支援をしっかりと考えておくべきではないかと思いますが、政府の見解を伺いたいと思います。

石井政府参考人 EPAによる介護福祉士、看護師候補者本人や受け入れ施設に対する日本語学習支援につきましては、日本語学校への就学や、あるいは受け入れ施設への日本語講師の招聘等に係る費用の補助、そして就労、研修に必要な日本語等を学ぶ集合研修の実施、さらには候補者向けの通信添削の実施やEラーニングでの学習支援システムの構築などを実施しているところでございます。

 また、技能実習制度への介護職種の追加に当たっては、やはりここでもコミュニケーション能力が大変重要でございますので、利用者や他の介護職員とのコミュニケーションを通じた信頼関係構築に向けて、適切に日本語学習を行うことができる環境の整備に向けまして、Eラーニングシステムの開発などにより、現地におきましても日本語学習ができる環境の整備とか、あるいは入国当初の講習期間、二カ月あるわけでございますが、そこで集中して日本語教育を行うプログラムの策定による就労開始後の学習負担の軽減、さらには監理団体による日本語学習に関する相談、指導などによる実習生に対する自律的、自発的な学習の支援などについて、今後具体的な検討を進めてまいりたいと考えております。

河野(正)委員 EPAにおきましても、制度の目的と実態が乖離しているのではないかという指摘があります。つまり、経済活動の連携強化の観点により行われるとされていながら、受け入れ側は人手不足を少しでも解消したいという点にあり、そこにずれが生じているのではないかという御意見であります。政府の外国人政策、外国人材の活用については、このような建前と本音があるような政策が多く見られるようにも思います。将来的に他国からの有為な人材に敬遠されてしまわないかということを心配するわけであります。

 関係する省庁もさることながら、省庁内でも部局ごとに縦割りとなっており、政府全体で一貫した取り組みが進めにくいこともこのような現状を招いた一因なのかなと思います。政府全体を統括するような組織の設置など、抜本的な外国人政策の企画、実施の体制づくりというのが必要だと考えますが、法務大臣、厚生労働大臣、両大臣の見解を伺いたいと思います。

岩城国務大臣 外国人労働者の受け入れに関しましては、専門的、技術的分野の外国人については、我が国の経済社会の活性化に資することから、積極的に受け入れることが重要と認識をしております。

 他方、専門的、技術的分野とは評価されない分野の外国人の受け入れにつきましては、ニーズの把握や経済的効果の検証のほか、日本人の雇用への影響、産業構造への影響、教育、社会保障等の社会的コスト、治安など、幅広い観点から、国民的コンセンサスを踏まえつつ、委員御指摘のとおり政府全体で検討していく必要がある、そのように認識をしております。

塩崎国務大臣 中長期的な外国人材の受け入れのあり方につきましては、「日本再興戦略」改訂二〇一五において、「移民政策と誤解されないような仕組みや国民的なコンセンサス形成の在り方などを含めた必要な事項の調査・検討を政府横断的に進めていく。」とされております。

 今後、これを踏まえて政府全体として検討がなされていくものと考えておりますけれども、検討に当たっては、専門的、技術的分野とは評価されない分野の外国人の受け入れについては、我が国の労働市場及び国民生活全体に与える影響に鑑みて、国民的コンセンサスが十分できているとは言えないのではないかというふうに考えているところでございます。

河野(正)委員 時間も残り少なくなりましたので、最後に一つお聞きしたいんですけれども、介護に限らず、我が国には、人材不足に悩んでいる現場というのが数多く存在するかと思います。昨今話題となっている保育士というのも、保育士不足が大きな課題になっているところでございます。

 今後の医療や福祉分野への外国人材の受け入れについて政府としてどのように考えられているのか、厚生労働大臣のお考えを伺いたいと思います。

塩崎国務大臣 まず、医療、なかんずく看護師さんですが、この看護の分野における外国人材の受け入れについては、日本の看護師国家試験に合格して日本の看護師資格を取得した外国人の在留が認められているところでございます。

 したがって、ここは外国の方がどう考えるかということだと思いますが、外国人材の受け入れ範囲の拡大につきましては、日本人職員の処遇改善とか国民生活等への影響も踏まえて、国民的なコンセンサスを得ながら、関係省庁と連携して慎重に検討、議論する必要があるものだというふうに考えております。

 保育につきましては、保育園などにおける保育というのは、やはり生涯にわたって人間形成に大きな影響を与えるということで、極めて重要な時期に、その基礎を培うべく教育と養護を行うものでございますので、我が国の保育士資格を有する者により行うことが基本でございます。保育を目的とした外国人材の受け入れということは認められないというふうに考えているところでございます。

河野(正)委員 時間が来ましたので、これで質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

葉梨委員長 以上で本連合審査会は終了いたしました。

 これにて散会いたします。

    午後零時一分散会

     ――――◇―――――

  〔参照〕

 外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案は法務委員会議録第九号に掲載

 出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案は法務委員会議録第十一号に掲載


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