衆議院

メインへスキップ



第8号 平成14年11月18日(月曜日)

会議録本文へ
平成十四年十一月十八日(月曜日)
    午前九時二分開議
 出席委員
   委員長 保利 耕輔君
   理事 伊吹 文明君 理事 熊代 昭彦君
   理事 虎島 和夫君 理事 山本 幸三君
   理事 伊藤 忠治君 理事 金子善次郎君
   理事 山名 靖英君 理事 東  祥三君
      伊藤信太郎君    石田 真敏君
      岩倉 博文君    奥谷  通君
      小西  理君    近藤 基彦君
      谷畑  孝君    西川 京子君
      萩野 浩基君    菱田 嘉明君
      福井  照君    増原 義剛君
      松野 博一君    三ッ林隆志君
      水野 賢一君    宮澤 洋一君
      山本 明彦君    吉田 幸弘君
      吉野 正芳君    渡辺 博道君
      家西  悟君    石毛えい子君
      岩國 哲人君    佐藤謙一郎君
      鮫島 宗明君    首藤 信彦君
      田中 慶秋君    永田 寿康君
      山井 和則君    山元  勉君
      桝屋 敬悟君    丸谷 佳織君
      都築  譲君    大森  猛君
      春名 直章君    藤木 洋子君
      菅野 哲雄君    中川 智子君
      日森 文尋君    井上 喜一君
    …………………………………
   内閣総理大臣       小泉純一郎君
   総務大臣         片山虎之助君
   外務大臣         川口 順子君
   財務大臣         塩川正十郎君
   文部科学大臣       遠山 敦子君
   厚生労働大臣       坂口  力君
   農林水産大臣       大島 理森君
   経済産業大臣       平沼 赳夫君
   国土交通大臣       扇  千景君
   国務大臣
   (沖縄及び北方対策担当大
   臣)           細田 博之君
   国務大臣
   (経済財政政策担当大臣) 竹中 平蔵君
   国務大臣         石原 伸晃君
   内閣府副大臣       米田 建三君
   外務副大臣        茂木 敏充君
   財務副大臣        小林 興起君
   厚生労働副大臣      鴨下 一郎君
   農林水産副大臣      北村 直人君
   政府参考人
   (特殊法人等改革推進本部
   事務局長
   兼内閣官房行政改革推進事
   務局長)         堀江 正弘君
   政府参考人
   (特殊法人等改革推進本部
   事務局次長)       熊谷  敏君
   政府参考人
   (人事官)        佐藤 壮郎君
   政府参考人
   (公正取引委員会事務総局
   審査局長)        鈴木 孝之君
   政府参考人
   (外務省大臣官房文化交流
   部長)          糠澤 和夫君
   政府参考人
   (外務省経済協力局長)  古田  肇君
   政府参考人
   (厚生労働省医薬局長)  小島比登志君
   政府参考人
   (国土交通省総合政策局長
   )            三沢  真君
   政府参考人
   (国土交通省土地・水資源
   局水資源部長)      小林 正典君
   政府参考人
   (国土交通省河川局長)  鈴木藤一郎君
   衆議院調査局特殊法人等改
   革に関する特別調査室長  遠山 政久君
    ―――――――――――――
委員の異動
十一月十八日
 辞任         補欠選任
  金子 恭之君     近藤 基彦君
  河野 太郎君     奥谷  通君
  谷本 龍哉君     谷畑  孝君
  西川 京子君     吉野 正芳君
  萩野 浩基君     渡辺 博道君
  松野 博一君     水野 賢一君
  永田 寿康君     家西  悟君
  山井 和則君     石毛えい子君
  瀬古由起子君     大森  猛君
  日森 文尋君     中川 智子君
同日
 辞任         補欠選任
  奥谷  通君     河野 太郎君
  近藤 基彦君     金子 恭之君
  谷畑  孝君     三ッ林隆志君
  水野 賢一君     松野 博一君
  吉野 正芳君     西川 京子君
  渡辺 博道君     萩野 浩基君
  家西  悟君     永田 寿康君
  石毛えい子君     山井 和則君
  大森  猛君     藤木 洋子君
  中川 智子君     日森 文尋君
同日
 辞任         補欠選任
  三ッ林隆志君     山本 明彦君
  藤木 洋子君     瀬古由起子君
同日
 辞任         補欠選任
  山本 明彦君     谷本 龍哉君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 独立行政法人国民生活センター法案(内閣提出第一一号)
 独立行政法人北方領土問題対策協会法案(内閣提出第一二号)
 平和祈念事業特別基金等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第一三号)
 独立行政法人通信総合研究所法の一部を改正する法律案(内閣提出第一四号)
 地方公務員災害補償法の一部を改正する法律案(内閣提出第一五号)
 独立行政法人国際協力機構法案(内閣提出第一六号)
 独立行政法人国際交流基金法案(内閣提出第一七号)
 電子情報処理組織による税関手続の特例等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第一八号)
 独立行政法人日本万国博覧会記念機構法案(内閣提出第一九号)
 放送大学学園法案(内閣提出第二〇号)
 日本私立学校振興・共済事業団法の一部を改正する法律案(内閣提出第二一号)
 独立行政法人日本スポーツ振興センター法案(内閣提出第二二号)
 独立行政法人日本芸術文化振興会法案(内閣提出第二三号)
 独立行政法人科学技術振興機構法案(内閣提出第二四号)
 独立行政法人日本学術振興会法案(内閣提出第二五号)
 独立行政法人理化学研究所法案(内閣提出第二六号)
 独立行政法人宇宙航空研究開発機構法案(内閣提出第二七号)
 独立行政法人労働者健康福祉機構法案(内閣提出第二八号)
 独立行政法人福祉医療機構法案(内閣提出第二九号)
 独立行政法人労働政策研究・研修機構法案(内閣提出第三〇号)
 独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園法案(内閣提出第三一号)
 中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案(内閣提出第三二号)
 独立行政法人雇用・能力開発機構法案(内閣提出第三三号)
 独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構法案(内閣提出第三四号)
 独立行政法人医薬品医療機器総合機構法案(内閣提出第三五号)
 社会保険診療報酬支払基金法の一部を改正する法律案(内閣提出第三六号)
 独立行政法人農畜産業振興機構法案(内閣提出第三七号)
 独立行政法人農業者年金基金法案(内閣提出第三八号)
 独立行政法人農林漁業信用基金法案(内閣提出第三九号)
 独立行政法人農業技術研究機構法の一部を改正する法律案(内閣提出第四〇号)
 独立行政法人緑資源機構法案(内閣提出第四一号)
 独立行政法人水産総合研究センター法の一部を改正する法律案(内閣提出第四二号)
 独立行政法人日本貿易振興機構法案(内閣提出第四三号)
 情報処理の促進に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第四四号)
 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法案(内閣提出第四五号)
 中小企業総合事業団法及び機械類信用保険法の廃止等に関する法律案(内閣提出第四六号)
 独立行政法人中小企業基盤整備機構法案(内閣提出第四七号)
 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構法案(内閣提出第四八号)
 独立行政法人国際観光振興機構法案(内閣提出第四九号)
 独立行政法人水資源機構法案(内閣提出第五〇号)
 日本下水道事業団法の一部を改正する法律案(内閣提出第五一号)
 日本勤労者住宅協会法の一部を改正する法律案(内閣提出第五二号)
 東京地下鉄株式会社法案(内閣提出第五三号)
 独立行政法人自動車事故対策機構法案(内閣提出第五四号)
 公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第五五号)
 海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第五六号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――
保利委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、独立行政法人国民生活センター法案等特殊法人等改革関連四十六法律案の各案を一括して議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 各案審査のため、本日、政府参考人として特殊法人等改革推進本部事務局長兼内閣官房行政改革推進事務局長堀江正弘君、特殊法人等改革推進本部事務局次長熊谷敏君、人事院人事官佐藤壮郎君、公正取引委員会事務総局審査局長鈴木孝之君、外務省大臣官房文化交流部長糠澤和夫君、外務省経済協力局長古田肇君、厚生労働省医薬局長小島比登志君、国土交通省総合政策局長三沢真君、国土交通省土地・水資源局水資源部長小林正典君、国土交通省河川局長鈴木藤一郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
保利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
保利委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。金子善次郎君。
金子(善)委員 民主党の金子善次郎でございます。
 このたびの一連の委員会審議の中で、既にスタートをしております独法、それも含めまして多くの問題点が指摘されたことは御承知のとおりであります。
 幾つかの点についてまずちょっと申し上げてみたいと思っておりますが、各省庁の外郭や研究機関など、本省から分離されたものにつきましては、いわばレッテルを変えたと申しますか、看板のかけかえというような、新たな特殊法人づくりではないかというような点、あるいは、資本金が百億円に満たない独法については、いわゆる専門家の会計監査が必要ないというようなことで、すべてとは言いませんけれども、現在の特殊法人のようなつじつま合わせの決算報告書で、言ってみれば、赤字を出そうが借金漬けになろうがだれも責任をとらないというような無責任体制に陥る危険性があるというようなことも指摘をされたところであります。
 また、各独法につきましては、三年から五年の中期業務計画を立てまして、それに従って予算を確保して仕事をして、主務官庁の業績評価委員会のチェックを受けるというようなことになっておりますけれども、仮に評価委員会の構成メンバーが、よくないと申しますか、業績が悪いというような評価を判断した場合につきましては、その責任というものがどうなるのか、これもはっきりしていない面があるわけであります。
 また、そもそも独法にはなじまないのではないかというようなものも数多くあったわけであります。要は、もともと利益を出していくというような構造ではなくて、国の予算をもらってそれで運営をしていくというようなことでは、なかなかコスト意識というものが出てこないのではないか、そもそも独立行政法人というものになじむのかどうかということが懸念されるという点もございました。
 それからスリム化、これが一つの目的であったわけでございますが、むしろ足し算と申しますか、統合によりまして巨大組織を生み出しているというようなものもあったわけであります。
 また、独立行政法人の理事長ポストの任命権は専ら主務大臣が握っているわけでございますが、さらに言えば、実質的には、常勤理事のポストを含めまして、従来の特殊法人と同じように官僚の天下りが頻繁に行われるおそれがあるというようなことも大いに議論、審議されたところでございます。
 これらの点につきましても、後ほど時間があればもう少し突っ込んだ審議をお願いしたいと思っておりますけれども、まず、今国会では、四十九の特殊・認可法人を独法などに改編する四十六の法案が提出されている。四十九の法人の内訳を見ますと、四十二法人が三十八の独立行政法人に、六つの法人が学校法人や共済組合などに、さらに、帝都高速度交通営団が特殊会社の東京地下鉄となる、こういうようなことになっております。
 そこで、ほとんど事業の廃止というようなものは行われていない、本来、この独立行政法人制度というものは、垂直的な減量を行うということが制度そのものの基本的な考え方だというふうに思いますが、それが多くの場合、無視されているのではないだろうかというふうに思うわけであります。
 そこで、幾つかの例があるわけでございますけれども、今回、法案として提出されております一つの例をちょっと申し上げてみたいと思いますが、これは財務省所管でございますが、万博記念協会、これは、もともと六十五人しか職員がいないのに十人の役員がいたというようなケースでございました。今回の独法化によりまして役員の数を五人に減らしたとは言っているわけでございますが、そもそも存続の必要性がどうかなというような気がしたわけでございます。
 私も、今回、当委員会の民主党の理事を務めさせていただきましたので、各省庁から一通りの説明は、ヒアリングという形で受けさせていただいております。そうした感想、あるいはこれまでの当委員会の審議の状況からの私の印象から考えまして、どうも改革としては不十分ではないだろうかというふうに思うわけでございますが、この点、行革大臣、石原大臣、いかがお考えですか。
石原国務大臣 この点につきましてはいろいろな御議論が、ただいま金子委員が御指摘されましたように、当委員会で、改善すべき点もるる御指摘をいただいたと思っております。
 しかしながら、今回の改革というものは、特殊法人等を廃止いたしまして独立行政法人を設立する際、委員は不十分であるというような御指摘をちょうだいしたわけでございますけれども、組織形態の見直しにとどまらず、事業の内容あるいは仕組み、そして子会社をも含む事務事業の方法等にさかのぼりまして実は見直しをさせていただき、その結果として組織の変更になったわけでございます。
 しかしながら、本委員会の議論の中でいろいろな意見が出てきたということも事実でございます。公共性という美名の陰で現場が実は組織の維持拡大をねらっているんではないか、今の委員の御指摘もそういうことを示唆されているのではないかと私は考えておりますし、あるいは業務の肥大化を意図しているんではないか、そして、これも一番議論のあったところでございますけれども、評価委員会、評価委員会による評価では実はチェックが本当にできるのか、その委員の人選はどうなっているのか、あるいは大きな批判になっております、今委員も御指摘された天下りの問題が払拭されているのか、さまざまな御指摘をちょうだいいたしました。
 これらの御指摘を踏まえまして、この改革というものを実りあるものにしていくために、政府の方でもフォローアップを十分にさせていただき、改革はこれにて終わるということのないように取り組ませていただきたいと考えております。
金子(善)委員 制度が変わるという場合に、そこで働く人々、職員、この方々への影響というものは当然大きなものになるということは、我々が想像する以上に、現場において、いろいろなことが話題になり、いろいろな不安が出たり、そういう面があるということを我々は強く意識をしておかなきゃならない点があることは言うまでもないことだというふうに思っております。
 特殊法人がそのまま独法になるというようなことになりますと、事業が廃止されまして、一たん解職して再雇用の形にするとか、その場合に、悪く考えますと人員整理が行われるんではないかというような懸念を持ちやすいということ、あるいは、業務が分離されまして、別の法人あるいは国に移るといった場合でございますけれども、当然事業が縮小されるわけでございますが、こういうケースの場合に、そういう現場で働いている職員の方々が意欲を持って新たな場所で働いていく、そうした環境を整えることも極めて重要な点だと私は思います。組織は人なりとよく言いますけれども、単なる制度だけを、仕組みを変えるということではなくて、やはりそこで働く人、人間の面に視点を注いでいくことも極めて重要な点ではないかというふうに思います。
 そこで、お伺いするわけでございますが、実は、個別法では、権利義務につきましては一括継承するというようなことに大部分の個別法ではなっております。もともと基本法におきまして附帯決議もございましたが、いわゆる雇用労働条件の継承、あるいは関係職員団体も引き続き労働組合として機能させると申しますか、できるといいますか、そういうことをすべてのものに明示することが大切だというふうに思います。
 ところが、労働者健康福祉機構、それから農業・生物系特定産業技術研究機構、これは個別法でございますけれども、これにはその規定がございません。また一方、この個別法の一般的な権利義務の継承という表現だけではなくて、ただいま申し上げました雇用労働条件の継承あるいは職員団体を労働組合として機能させるというようなことをあえて明記しているのが、宇宙航空研究開発機構、労働政策研究・研修機構、医薬品医療機器総合機構、これらにつきましては、そのことが明示をされているわけでございます。
 これは、特に差異があるわけでございますけれども、どうしてこういう差異があるのか、行革大臣からお伺いしたいと思います。
石原国務大臣 ただいま、前段、まず委員が御指摘されました雇用の問題というものは、これからの大きな改革の中で、そこで働く方々の御理解を得、また、そこで働く方々がやる気を持って働いていただく上で大変重要なポイントであると政府としても認識をしております。
 また、委員会は違いますけれども、昨年、特殊法人改革基本法の審議の中で、衆議院、参議院の内閣委員会で、「職員との良好な労働関係に配慮するとともに、関係職員団体の理解を求めつつ、その雇用の安定に配慮すること。」という決議をいただき、政府としても配慮をし、整理合理化計画の中に同文の文言を入れさせていただいたところでもございます。
 後段の、委員が御指摘されました、法人名は重複いたしますので省略させていただきますが、一言で申しますと、国の行政機関が、すなわち公務員型の組織が非公務員型の新独立行政法人に移行する場合のみ、委員が御指摘をされた承継規定というものを置いたところでございます。
 その場合には、その特殊法人等々が解散した際に、その権利及び義務は新たに設立される独立行政法人が承継することが規定されておりまして、この契約もこの一切の権利及び義務に含まれるため、その他の法人については民間企業に準じまして特定の規定を置いていなく、前に申しました、公務員型から非公務員型の場合についてのみ規定を入れさせていただいたということでございます。
金子(善)委員 その法律の書き方の問題、いろいろな法体系の整合性の問題等々あるかもしれませんが、あえてそういうことについて必ずしも書けない話ではないと私は思います。
 そういうことで、いずれにいたしましても、これらの点につきましては、あくまでも雇用労働条件の継承、それから職員団体を労働組合、あるいは逆のケースも出てくるかもしれませんけれども、それらについてもほかの独法の場合と同じような考え方で臨まれるということを、一言、イエスかノーかということで、確認のために御答弁をお願いしたいと思います。
石原国務大臣 その点につきましては、先ほどるる申し述べさせていただきましたように、すなわち、民民の組織変更の場合には一切の権利及び義務ということにこの雇用関係が含まれるということはもう委員御承知のとおりだと思いますが、それ以外の、要するに公務員型から非公務員型の場合にこういう承継規定というものを入れさせていただきましたが、良好な雇用関係を確保するという観点におきましては、そのとおりでございます。
金子(善)委員 それと、行革大臣にお伺いしたいと思いますが、あくまでも独立行政法人というものは、いわゆる公のものと民間のもの、こう考えた場合に、より民間に近いことを求めていくんだということでこれはよろしいわけですよね。
石原国務大臣 説明が長くなりますので、方向としてはそういうことでございます。
金子(善)委員 そうした場合でございますけれども、実は、これは厚生労働省が五年ごとに実施をいたしております労使関係総合調査というものがございます。それによりますと、調査対象の企業数の半分、それから労働組合が設置されているところではその八五%というようなことで、大部分のところで行われている労使協議制という仕組みが機能している。労使協議制があるところでは、八割が有効に機能しているというような調査の結果が出ているわけであります。
 これからの方向として、私はやはり、民間により近い組織ということであれば、労使協議制、要は使用者サイドと働く人々の労働者サイドとの話し合いというようなものも、これは今後導入していく方向で対応していくべきではないかというふうに考えるところでございますが、この場で大臣が導入するとか導入しないとか直ちには答弁できないかもしれませんけれども、方向性として民間企業に近づけていくんですよということであれば、民間企業の、ただいま申し上げましたように、労働組合のあるところでは八五%が労使協議制というものが導入されている、しかもその八割が有効に機能されているというような、これは労働省の公的な調査でございますから、そういう結果が出ているわけでございますが、これについての、今御答弁できるところで結構でございますので、答弁をお願いしたいと思います。
石原国務大臣 民間企業においてはまさに委員の御指摘のとおりでございますし、その方向性は我が党内にもさまざまな御議論がございますけれども、私は、個人的には、そういう方向を目指していかなければならない。しかし、公務員型の独立行政法人においてはまだその機は熟していないというのが現状でございますし、あわせて、公務員制度改革の中で各般にわたるその点についての御議論がこれから年度末に向かって深まっていく、そういうふうに考えております。
金子(善)委員 それから、評価委員会のことについてお伺いしたいと思います。
 石原大臣は、当委員会の審議におきまして、今度の独法の機能がうまくいくというところで強調されましたのは、外部の評価がなされるんだというようなことで、責任体制もそれなりに明確化してきますよ、あるいは、業務の中期計画と申しますか、そういうものの見直しというものは随時、二、三年ごとに行われるというようなことになるんで、評価委員会の評価というものも反映されてうまくいくんだというようなことを強調されておったように感じております。
 そこで、総務大臣にお伺いしたいと思います。
 実際のところ、評価委員会のメンバーでございますが、これは私が全部調べたわけではございませんが、幾つかの点について調べてみますと、学者の方に非常に偏っている。それと、審議会等の委員も非常に兼任をされていらっしゃいます。
 そこでお伺いしたいんですが、例えば、総務省の評価委員会の評価委員の二十一人中十二人が審議会等の委員も兼務をなさっておられるわけでございます。こういうようなことで、日ごろからいろいろな形でおつき合いをされている方が評価委員会の委員だというようなこと、あるいは、学者の方というのはそれぞれの分野でそれなりの業績を上げられている方であることは言うまでもないとは思いますけれども、ただ、しかもおっしゃっているのは、これから民間の企業を目指していくんだというようなことを言われていることを考えますと、どうもそこはうまく評価委員会というものが機能しにくいんではないか、形は整うかもしれないけれども。というようなことで、要は、形骸化しないかというおそれが非常にあるわけでございます。
 私は、一つの提案を含めて申し上げますと、労働組合そのものの、それぞれの各独法の労働組合とまでは言わないにしても、労働界の代表であるとか、あるいはユーザーというようなものもあるわけでございますから、ユーザーの方々も、その独法の仕事によるとは思いますけれども、そうした外部の、本来の外部の意見というものも取り入れた形にしていくべきではないかというふうに思います。
 それにつきまして、大臣、答弁をお願いします。
片山国務大臣 今度の独立行政法人制度で、この評価委員会というのは大変大きな役割を担うことは委員御指摘のとおりですね。
 どういう人を選ぶかということなんですが、それぞれかなり専門的な仕事ですから、それに詳しい人である必要がありますね。だから、そうなると、やはりその省の審議会や何かでいろいろ学識を持って御議論、御審議いただいている方が選ばれるということはやむを得ないと思いますが、今委員が言われましたように、学識経験者、学者の方だけではなくて、例えば公認会計士だとか会計専門家、あるいは企業経営者なんかも私どもの方には入ってもらっておりますし、大体そういう方々の割合が全体で二割ぐらいですね、全省庁の評価委員会を見ますと。
 今の御提案は、ユーザーというのでしょうか、あるいは労働界、こういうことでございましょうけれども、これはそれぞれの委員会の仕事の性格にもよると思いますので、それは各省でそれなりに考えて人選をしたものだと思っておりますので、我々としては、評価委員会の今後の活動を見守りたいと思っております。
金子(善)委員 見守っていきたいということでございますけれども、まさにいい方に見守っていただきたい、このように強く要請をしておきたいと思います。
 それと、私もまだ、この評価委員会のいわゆる事務体制と申しますか、それについて深く調べたわけではございませんけれども、一般に言われておりますことは、評価委員会を開いていろいろそこには資料から何から当局の方で出していくのだろうと思いますが、どうも専門の事務局体制が余りにも弱いのではないかというようなことも指摘をされている面がございます。
 本来の評価委員会、特に総務省の場合は全体を通ずる評価委員会というようなことになっている関係もございますので、その事務体制、評価委員会にかけるいろいろな資料を出したり、あるいは参考になるような意見というものは事務局の方からも出していく必要が十分あると思うんです。そういう体制づくりというものをもう少し考えていかなきゃならないのではないかというふうに思いますけれども、総務大臣の御意見はいかがでございましょうか。
片山国務大臣 評価委員会は初めての仕組み、試みですから、試行錯誤の面があると思いますが、各省では大体、文書課、政策課、それからそういう評価の専門的な官や組織をつくっているところがありますから、それがやっております。私どもの方の総務省では、官房政策評価広報課というのがやっております。これは総務省だけのものですね。全体を通じるものは行政評価局が全部でやっているんですよ。各省庁の評価委員会の横断的な調整やいろいろなことをやるのはそこでやっておりますので、これも、おまえはすぐ見守ると言うと言われるかもしれませんが、状況を見ながら、場合によっては強化してもらうように検討いたします。
金子(善)委員 その点、よろしくお願い申し上げます。
 それと、もともと、通則法の制定時でございますが、「独立行政法人の長の選任においては、自律的、効率的に運営を行うという制度の趣旨を踏まえ、広く内外から適切な人材を得るよう配慮すること。」という附帯決議がついているわけでございます。
 今般法律になろうとしている独法については別としまして、これまで既にスタートしている独法について見ますと、理事長そして常勤理事の九七%が役人出身である。理事長で、純粋に民間出身というふうな見方ができるのは、海上技術安全研究所の一件のみだというふうな状況になっているわけでございます。
 既にスタートしているのは、どちらかというと公務員型の独法でございまして、これからが非公務員型がふえるということになるわけでございます。余りにも役員への、これは常勤理事も含めてでございますけれども、民間人の登用、なかなか人選とかが難しいというのはこれまでの審議でもあったかとは思います。これは努めてそうした人材をやはり独法の方に入ってもらうんだという決意を持って臨まない限りは、なかなかこれが本来の附帯決議の趣旨に合うようになっていかないんではないかというふうに思うわけでございますが、この点、総務大臣、いかがでございますか。
片山国務大臣 これまでの独法は、国そのもの、国の仕事、国の機関を分離したんですね。だから公務員型ですよね。そうしますと、今までの仕事をやっているものをそのまま移すわけですから、どうしてもその責任者が役員になるというのが多かったと思いますね。
 ただしかし、いつまでもそれでいいのかどうかというのは議論があると思いますので、これも、それこそ評価委員会が機能して、そういうものについていろいろな注文をつけていく、こういうことが必要じゃないかと思いますけれども、これからのものと今までのものはちょっとそこが違いますから、その点の御理解はぜひ賜りたいと思います。
金子(善)委員 これまでの当委員会における審議の中で、役員報酬の問題についても再三にわたりまして審議が行われました。やはり、これも国民の税金で賄われている、そういうことで、本来の妥当な水準というものを考えていかなきゃならないんではないかという趣旨での質疑が行われたとおりでございます。
 そこで、この法案を提出されるに当たりまして、特殊法人等改革推進本部決定で、「主務大臣は、新独立行政法人の役員の報酬等及び職員の給与の水準を、国家公務員及び他の独立行政法人の役職員と比較ができる形で分かりやすく公表する」というような表現が入っております。
 私は、これはやはり役員や職員の給与の水準を統一的に正確に把握することは重要だと思いますし、これを国会に報告して公表するというような仕組みがどうかということが第一点。
 それから、人事院にお伺いいたしますけれども、人事院のことしの報告、十四年度人事院給与勧告時の報告の中でこれに触れまして、「法人等の役職員の給与水準について、国として一体的に把握していくことが必要であると考えられる。」と報告をしておりますけれども、この趣旨をお聞きしたいと思います。
 まず、これは総務大臣の方から最初の点についてお伺いしたいと思います。
片山国務大臣 今、金子委員御指摘のように、十月十八日に特殊法人等改革本部で言われたようなことを決めさせていただいたわけでありまして、具体的な調査の方法あるいは公表の仕方については、私どもの方で人事院その他と相談しながらガイドラインをつくろうかと思っているんですよ。各省庁にガイドラインを示して、比較の方法はこうしてください、公表の方法はこうしてくださいと、こういうことを今考えております。
 そこで、それについて国会に報告したらどうか、こういうことですが、公表しますから、天下周知のことになるんで、国会で取り上げて大いに御議論、御検討いただくのは結構でございますので、よろしくお願いします。
佐藤政府参考人 お答えいたします。
 人事院の報告の趣旨についての御質問でございますけれども、大きく二つあるというふうに思っております。
 一つは、やはり透明性の問題でございまして、現在、独法の給与の支給基準というのは公表しなければならないということになっておりますが、なかなかこれがわかりにくいわけで、だから、具体的に独法の理事さんとか課長さんとかはどの程度の給与をもらっているかというのが非常にわかりにくい。やはりそこは国としてわかりやすい形でそれを把握して、やはり国民の皆さんの納得、御理解も得るということが必要であろうと思います。それが第一点でございます。
 それから二つ目でございますけれども、これは人事院としてより大きな関心事であるわけでございますけれども、今審議されている法案が通りますと、独法の数が非常にふえるわけでございます。かつ、新法人は行政執行型の法人が多いということで、各官庁と独法の間での人事交流が非常に活発に行われることが予想されます。その場合、官庁の国家公務員と独立行政法人の職員の給与の差が余り大きいと、これは人事交流に非常に大きな障害が起きるのではないかというようなことが考えられます。
 したがいまして、人事院としては独法の給与について意見を申し上げる立場にはございませんけれども、国としてやはり具体的に把握していただいて、必要があれば国会で御議論いただくということが必要ではないかというふうに思っております。
金子(善)委員 終わります。ありがとうございました。
保利委員長 次に、大森猛君。
大森委員 日本共産党の大森猛でございます。
 特殊法人の改革問題、その中でも、きょうは特殊法人の談合問題について質問をいたします。
 日本道路公団が発注する道路保全工事の四国支社管内の入札で、ファミリー企業が談合を繰り返していたことが発覚いたしました。
 公正取引委員会から、独占禁止法違反、工事の費用を高くする不当な取引制限に当たるとして四社が排除勧告を受け、二十七社が警告を受けました。
 最初に、公正取引委員会にこの点をまず確認したいと思います。
鈴木(孝)政府参考人 お答え申し上げます。
 公正取引委員会では、日本道路公団四国支社が、公募型指名競争入札の方法により発注する道路保全土木工事について、四国ロードサービス株式会社など施工業者四社が共同して、四国ロードサービス株式会社を受注予定者とし同社が受注できるようにしていた行為が認められたため、独占禁止法第三条、不当な取引制限の禁止の規定に違反するものとして、今月十二日に排除措置を求める勧告を行ったところでございます。
 また、四国支社以外の道路公団の発注部署が公募型指名競争入札の方法により発注する道路保全土木工事について、施工業者二十七社が共同して受注予定者を決定し受注予定者が受注できるようにしていた疑いがある行為が認められたため、同じく今月十二日に、今後同様の行為を行わないよう警告を行ったところでございます。
大森委員 今回の公取委の措置で大変重要だと思うのは、特殊法人である日本道路公団にも要請がされております。
 ファミリー企業などと称される一部の事業者にのみ一般への入札公告前に公募型指名競争入札に関する技術審査基準等の内部情報を伝えるなど、同入札においてこれら事業者のみを利する差別的な行為を行っていたなど、発注者である公団が一体になって談合をしていたことが指摘されております。まさに公団ぐるみの談合事件と言わざるを得ない。
 公取委も、公団に対して、入札制度の趣旨にもとる運用等を行っていたことから、今後、同様の運用及び行為を行わず、情報管理を徹底し、競争入札の機能が生かされる方策を講じるよう要請しております。
 国土交通省として、今回のこの談合事件についてどのような措置をとられたのか、また、ぐるみで談合を進めていた道路公団についてはどのような指導をされたのか、されるのか、お聞きをしたいと思います。
扇国務大臣 大森議員の御質問で、いつも国土交通委員会で私は、道路公団の天下り状況とか、あるいは子会社、孫会社、そして役員の天下りの人数、受注率等々、私は委員会ですべて公表してまいりました。
 そういう意味では、今回、改めて公取からこういう結果が出ましたことで、私は本当に申しわけないといいますか、私の就任以前のこととはいいながら、それでは許されないということで、たまたま私が十一月の六日に、入札手続の再点検、そして総合的な再発防止ということを検討しなさいと言った後の話でございまして、また重ねて十二日の公正取引委員会からの件が出てまいりましたので、私は、本当に改めて再考して具体策として確実にまとめるよう、重ねて指示をいたしました。
 今回は何を指示したかといいますと、それは、十四日に、所管する二十一の特殊法人、それから四つの認可法人、これらすべてを全部点検し直しなさいと。そして、その点検のし直しといいますか、もう一度数字をきちんと出してほしいと言ったのは、どれだけの自分たちの子会社、孫会社があるのか、そして、それらにどれだけの年間受注量をしているのか、また受注金額はどうなのか、天下り人数はどうなのか、そして、少なくとも、みずからどういう方策でこれを予防するか。
 いつも私から指示しておりましたので、今回はみずからの姿勢を正すというので、今週、きょう月曜日でございますので、本当は月曜日かと言いましたけれども、月曜日で無理なこともございますけれども、今週のなるべく早い時期にみずからどう改革するかという案をまず持っていらっしゃいということを改めて指示いたしました。
大森委員 徹底的な調査と報告と改革、ぜひ進めていただきたいと思います。
 具体的に、関連して幾つかお聞きをします。
 これは、十五日の道路関係四公団民営化推進委員会でもこの問題が取り上げられました。公団が設けた入札資格要件が新規参入を阻んでいるということで、入札資格要件の即時撤廃の意見書が出されたようであります。こうしたことを含めて、今も御答弁ありましたけれども、抜本的に、改めて入札制度を再検討、洗い直しをしていく。
 同時に、今回指摘をされた談合の最大の問題は、特殊法人である道路公団が、株式の持ち合い、役員の兼任など、幾重にも密着度を高め、まさにファミリー企業をつくり出していること、公団を本体としたファミリー内で談合し、公共事業である公団外事業の七六%を、しかも高値で受注している。国民の税金を、まさに公金を食い物にしているというその一角が明らかになったと思うんですね。今回の調査、これからの調査については、全面的にこの点を明らかにしていただきたいと思います。
 私は、道路公団の談合疑惑でいえば、通常国会でも、加藤紘一前議員の公共事業あっせん疑惑、これに関連して取り上げました。当時は、ファミリー企業に関する資料要求とやったら、国土交通省の方から返ってきた回答は、ファミリー企業の定義がわからないというようなことでありました。今回、この公取の報告文書の中には、ファミリー企業というのが一定の定義がされております。公取の方で、ファミリー企業とはどういう意味で使っておられるのでしょうか。これは質問通告ありませんでしたが、御回答をお願いできますか。
鈴木(孝)政府参考人 私どもの方では、ファミリー企業といたしましては、この場合、日本道路公団の退職者を役員や従業員として受け入れており、また日本道路公団への取引依存度が高い状況にあります企業をファミリー企業と称させていただきました。
大森委員 今回の談合を醸成するやはり大きな条件、元凶となっているのが、今のお話にありました公団退職者、つまり天下りであります。関連する所管法人、二十一の法人について全部調べ上げるという大臣の御答弁、ぜひ積極的に受けとめたいと思うわけであります。
 今回、公取から勧告、警告を受けた、合計で二十九社でありますけれども、公団からの退職者、天下りはどのくらいなのか、もしわかれば、これはお答えいただきたい。
扇国務大臣 公取から勧告を受けました二十九社、これは、子会社が十一社、関連会社が四社、トータルで子会社、関連会社は十五社でございます。
 それから、それらの天下りといいますのが、代表者が二十名ですけれども、役員数、全部で二百三十六名います。その二百三十六名中、役員数で、道路公団出身者が八十五名、三六・〇%に当たります。
 以上でよろしゅうございますか。(大森委員「国土交通省はどうですか」と呼ぶ)国土交通省からの数字ですか。ちょっとお待ちください。――事務局でわかりますか、総政局長から。
三沢政府参考人 この中には、国土交通省からの出身者はございません。
大森委員 ぜひ、今回の二十九社に関する国土交通省及び道路公団四公団からの天下りの状況、これは資料として当委員会に御提出をお願いしたいと思います。委員長、御検討ください。
保利委員長 これは、お答えをしていただきましょう。三沢総合政策局長、資料を出せと。
三沢政府参考人 調査する方向で検討させていただきたいと思います。
大森委員 この点は、民営化推進委員会に一委員が提出された資料でも二十九社で、道路関係四公団、国土交通省のOB、少なくとも八十九人天下りというので、先ほどの大臣のお答えとほぼ一致をするわけですが、そのうち二十一人が代表権を持つ役員に就任されていると報道されております。こうした状況が、勧告文書でもたびたび指摘をしております内部情報の事前の漏えい、そういうものを促す最大の条件の一つになっていると思います。
 その意味で、調査等を行われることを具体的な答弁がありましたけれども、さらに、そうした調査をもとに、やはりこういう天下りについては思い切って禁止をすべきだ。この点は、石原担当大臣にも、石油公団の際にもこういう質問をいたしました。両大臣から、この点での御決意なり御見解なりを伺えたらと思います。
石原国務大臣 もう大森委員が御指摘されましたように、さきの道路公団民営化推進委員会で意見書をおまとめになり、国交省並びに政府の特殊法人改革推進本部のもとにあります参与会議の方に提出をいただくことになっております。と申しますのも、やはりさまざまな立場でこの問題を周知なまでに明らかにし、改善をしていかなければならない、本当に根深い問題だと考えております。
扇国務大臣 これはもう既に、私は就任以来、すべて明らかなものは公表するという姿勢を貫き続けております。そして、昨年、この四公団問題を初めて小泉総理に指示されて以来、私は委員会を立ち上げまして、そして諸井さんという方に委員長をお願いして、少なくとも、去年の暮れに総理に、すべてそのときに役員の天下りはどうかという基準を私は示しました。それは、五〇%以上道路公団からの仕事を受けているところ、そこに天下りが何人いるのかということもすべて公表してございますので、大森委員は、委員会で既に私が出した資料をすべてごらんになっております。
 けれども、資料を出すだけではなくて、この次善策をいかにするかというのが問題でございまして、今、石原担当大臣の諮問機関としていわゆる第三者委員会というもの、民営化推進委員会でやっていらっしゃいますけれども、私はそれ以前に既に、道路公団では四つの維持管理業務がございますけれども、料金の収受ですとか、あるいは交通の管理、あるいは保全、そして維持修繕、この四つだけでも少なくとも百六十三社もある、その百六十三社の中で天下りしているというものが四十六ありますということも、これはすべて委員会で公表してございます。
 ですから、細切れにすればするほど役人の天下りがふえるわけですね。この間も話をしましたけれども、昔の国鉄のJRというのは、あのときに国鉄の役員が十八名だったんですね。ところが今、民間へJRが七つに分かれました。あのときに国鉄で十八名だった役員が、七つに分かれて、今JRの役員というのは百二十三名いるんです。分ければ分けるほど人数がふえるのは当たり前の話なんですね。そして、道路公団は今役員九名でございます。これが分ければ分けるほど、上下にしたらまた倍になる、倍々ゲームです。
 ですから、そういうことも私、委員会ですべて大森議員に公表してございますけれども、我々は、そのことを含めて、入札というものがいかに公平に行われなければならないかということで、御協力いただいた法案の中で、電子入札というものもすべて書いてございますので、電子入札をされるということによっては私は大いに公正な取引が行われるようになるということを推進していきたいと思っております。
大森委員 全面的に公表して国民の目にさらすというのも一つの有力な規制の措置ではありますけれども、やはり後を絶たないこういう状況でありますから、ぜひきちんと法的な措置をとっていくということを重ねて要求しておきたいと思います。
 特殊法人等の改革の目的でありますけれども、今回道路公団の談合が明らかになったわけでありますが、先般の石油公団の際にも、石油公団のもとでの、直接石油公団ではありませんでしたけれども、しかし深くかかわった談合事件、石原担当大臣にも御質問をいたしました。特殊法人が発注する工事にかかわる入札談合事件は、この五年間で見まして、九七年の首都高速道路公団、九九年の住宅・都市整備公団、日本道路公団に関しては二〇〇〇年にも発覚しております。
 特殊法人の改革というなら、何よりもこういう談合を生み出す体質を徹底的に洗い直す、あるいは、温床となる天下り、こういうものを本当に禁止していく、むだや浪費のための公共事業を抜本的に見直すということが何よりも第一に求められると思います。今回の改革法案は、あれこれの組織のやりくりだけに終始しているんじゃないか。こうした改革の観点がきちんとあるかどうか、石原担当大臣にお聞きをします。
石原国務大臣 ただいま大森委員が御指摘されましたような観点につきましても、特殊法人等の抱える子会社についての事務事業、その事務事業の洗い直しを行う中で、今言われたような入札をめぐる疑惑、こういうものも表になってきております。さらに、道路に限って申させていただきますと、先ほど公取の方から子会社の範囲とは何を指すのかというお話がございましたけれども、それ以外にも関係のある企業というのが多々あるのではないかということで、民間のリサーチ会社にお願いをいたしまして数百社に聞き取り調査を行いまして、どのような問題があるのか、そしてそれはどのように是正をしていくのか、格段の改革を通じまして、そのような疑惑に国民の皆様方の視点が行かないような体制を一日も早くつくることが肝要だと考えております。
大森委員 本当に事業を徹底的に一から洗い直しをして、むだな事業がその中できちんと削られていくかどうかという点を個別に検証してみたいと思います。
 独立行政法人水資源機構法案、これの関連でお聞きをします。
 今回、国土交通省所管の九本の法案のうち、とりわけ国民から強い批判が出ているのが、ダム建設の問題であります。水資源開発公団を独立行政法人水資源機構とするわけでありますけれども、まず、この水資源機構になって、これまでの開発公団とどこがどう違うのか。従前と最も違うのはもちろん業務に関してだと思うわけですが、法案に沿ってお聞きをします。
 法案第十二条第一項第一号で、水資源開発基本計画に基づいて、水資源の開発もしくは利用のための施設の新築、これは「水の供給量を増大させないものに限る。」となっておりますが、または改築を行うとなっております。
 まず、水資源の開発もしくは利用のための施設とは何でしょうか。それから、「水の供給量を増大させないものに限る。」とは、具体的にどういったものを指すのか。御回答をお願いします。
小林政府参考人 お答えいたします。
 まず、「水資源の開発又は利用のための施設」とは何かというお尋ねでございます。
 これに該当いたしますのは、ダム、それから河口堰、湖沼水位調節施設、多目的用水路、専用用水路などがあると考えてございます。
 次に、水資源機構法案第十二条の「水の供給量を増大させないものに限る。」というのは何かという御質問でございます。
 この法案第十二条におきまして、新築事業は「水の供給量を増大させないものに限る。」としておりますが、これは新規の開発事業を行わないということでありまして、「水の供給量を増大させないもの」とは、具体的には、水源施設によって利用可能となる水資源を需要地まで導くための用水路を設ける場合、あるいは、既存ダムの機能低下に伴いまして、現状の水の供給量を確保するため代替施設が必要となる場合等の施設の新築がこれに該当すると考えております。
大森委員 そうすると、「水の供給量を増大させないものに限る。」というのは、事実上、利水を目的にした新たなダムの建設事業は行わない、平たく言えばそういうことですか。
扇国務大臣 着手済みのダム以外、新規のものは一切つくりませんと今申し上げたとおりでございます。
大森委員 では、附則第四条「業務の特例」では、法案要綱で見ますと、機構は、当分の間、水資源開発公団法の廃止前に開始した業務等一定の要件を満たす水資源の開発、利用のための施設の新築に関する業務等を行うことができるとなっておりますが、今公団が建設事業中のダムのうち、一定の要件を満たすものはどれであり、満たさないものはあるのかどうか。それから、当分の間というのはいつまでなのか。期限はあるのか、建設が完了し事業開始までの期間なのか。この点、はっきり御回答をお願いします。
小林政府参考人 附則第四条におきまして、当分の間という規定がございます。これは、現在水資源開発公団が実施している事業を指してございます。
 それから、当分の間とはいつまでかという御質問でございます。これは臨時的なものでありまして、現時点におきまして特定の期限を予定しているものではございません。
大森委員 全くの無期限に近い状況であるわけなんですが、そうしますと、結局、今建設計画中のダムというのは九件なわけですが、そのうち、見直しをやって中止をやるというのはどれだけなんですか。
小林政府参考人 お答えいたします。
 水資源開発公団の事業の再評価によりまして、中止事業は、具体名を申し上げますというと、利根川水系の平川ダムそれから栗原川ダム、この二ダムを中止といたしております。
大森委員 その最初の方にお答えになったものは既にもう何年か前に決定済みのもので、現在計画中のものでということでいえば九件、そして、そのうち取りやめというのは一件だけですね。八件はやるというわけですね。ですから、総事業費約一兆二千億円と言われておりますけれども、ほとんどこれはそのまま継続をするということになるわけであります。
 ですから、逆に言えば、この法律でもって、この八件のダム、これは、既にそれぞれの個別のダムについては随分、関係の皆さん、関係住民の皆さんから強い批判が出ているこの八件について、この法律で最後まで保証する、そういう今回の法案になってしまうわけではないでしょうか。この点、つまり法律でお墨つきになる、そういう法案が今回の特殊法人改革の法案になってしまうんじゃないかと思いますが、これはいかがですか。
小林政府参考人 ただいまお答えいたしましたとおり、新しい水資源機構では、現在実施中の水資源開発公団の事業を当分の間引き継ぐということになります。当然、引き継いでやる上で、先ほど申しましたような厳正な再評価、これを適宜行いまして、真に必要な事業を着実に推進していくというふうに考えてございます。
大森委員 結局、従来の事業をほとんどそのまま継続ということになっているわけですね。
 私、石油公団の際にも石原大臣に申し上げたんですが、石油公団で一番批判を浴びていた成功払い融資制度、これについても、債務保証というような形で、形は変え、やや減額はされますけれども、本質的には、一番批判の多かった成功払い融資制度、そういうのはそのまま継続されたわけでありますけれども、今回のこの水資源機構、これに関しても結局事業をそのまま、逆に法律で、これは最後まで、完成するまでお墨つきを与えるような、そういうものになっていると思います。
 中には、思川開発なども、これはもう約四十年前に計画したものでしょう。その後、社会情勢等々も大きく変わっている、水需要も大きく状況も変わっている、にもかかわらず、結局継続する、そういうものになっているわけであります。今回の法案の提出、作成に当たって、個別のそういうそれぞれの問題について検討されたのか。思川開発、この関係のダムなどについてはどういう検討をされたのでしょうか。
鈴木(藤)政府参考人 御説明を申し上げます。
 まず、先ほどの質問に関連いたしますが、私どもは、事業を採択して事業を実施していくという過程において、一度決めたものはもう一切関係なしにどんどん進めていくということではないということは、再三委員会等々で御説明しているところで、その点については御理解いただいていると思います。
 公団事業につきましても、事業採択後、一定期間ごとに、一回再評価したらもう終わりということではなくて一定期間経過ごとに、主務省において、事業の進捗状況、事業をめぐる社会経済情勢等の変化、事業コストの縮減の可能性、事業の投資効果分析等々、第三者の意見を聞くなどして評価を行って、事業の継続、事業規模の見直し、事業の中止、休止等を決定してきているところでございます。
 ただいまの思川開発事業に関して、具体の例で申し上げますと、思川開発事業につきましては、平成十年度に事業評価制度に基づいて再評価をまず実施しております。第三者機関であります事業評価監視委員会におきまして、事業の必要性、妥当性が検討されまして、この段階では事業の継続が妥当とされたわけでございます。
 その後、大谷川から取水した水を南摩ダムに導水する大谷川分水について、地元今市市の反対が強く、早期の理解を得ることが困難であったため、平成十二年に、与党三党による公共事業の見直し勧告等を踏まえまして、南摩ダムについては事業を継続する一方で、大谷川分水については、評価委員会に事業を中止するということで報告、了承し、大谷川分水の中止を決定したものでございます。
 大谷川分水の中止を踏まえた事業の見直しに当たりましては、各県に対し、利水参画を改めて照会したところ、栃木、茨城、埼玉及び千葉の各県から参画の意向が示されたことから、平成十四年四月に、開発水量を七・一トンから三・二トン毎秒でございますが、そういったものに減量し、総貯水容量を一億百万立米から五千百万トンに縮小する、このような事業計画を策定したところでございます。
 ただいま具体の例で申し上げましたように、この事業については、早期の完成の要望が高いことを踏まえて引き続き事業を進めてまいりますが、ほかの事業についても適切に事業の再評価等をお願いしながら事業を進めてまいりたいと考えております。
大森委員 時間が参りましたので終わりますけれども、再評価と言いながら、若干の縮小はしながらも、総事業費一兆円を超える事業はそのまま継続、逆にそれを法律でお墨つきを与えるような、こういうやり方では本当の改革と言えないんじゃないかと思います。そういう点で、事業の徹底的な洗い直しを行うよう強く求めまして、私の方の質問を終わります。ありがとうございました。
保利委員長 次に、家西悟君。
家西委員 前回に引き続きまして、私、足が悪いので、座ったままで質問させていただくことを皆様に御了解、また委員長に御了解いただければと思います。
保利委員長 どうぞ着席のまま御質問ください。
家西委員 民主党・無所属クラブの家西悟ですけれども、前回に引き続きまして、坂口大臣及び石原行革担当大臣に御質問をさせていただきたいと思います。
 新しく独立行政法人、今回の新しくなる法律において予定されている医薬品総合機構が薬の認可と安全と監視を一体化させることについて、石原大臣の方から、その際、大臣は、金融の世界も監視する側と検査をする側が一緒でありますと、今委員が指摘されたような誤解や間違いが生じてきた、このことを肝に銘じてこの分野でも取り組んでいかなければならないと痛感しましたと。医薬品の研究開発部門と認可、監視、救済の部分は切り離していかなければならないと痛感されたというふうに私は理解をしました。
 この点について、坂口大臣はどのように御認識されているんでしょうか。御答弁いただければと思います。
坂口国務大臣 前回にも御質問をいただいたところでございますが、石原大臣からも御答弁をいただきました。その石原大臣が御答弁をいただきました内容は、審査とそして安全体制と、両方の分野において、審査をするときに安全体制というものが引っ張られてはいけないし、そしてまたその逆もあってはならない、そこは明確にしておくべきだ、こういう御主張であったというふうに先日お聞かせをいただいたところでございます。
 したがいまして、私たちも、新法人におきましては審査や安全性が甘くなってはいけない、そこを明確にしておかなければならないというふうに思っている次第でございます。したがいまして、新法人におきましては、業務ごとの組織や勘定を明確に区分すること、そして、積極的に情報公開を進めることによりまして、業務実施に当たっての公平性、中立性、透明性を確保しておくことが必要であるというふうに思っております。
 そして、このような基本的な考え方に立ちまして、実際の業務の実施に当たりましては、それぞれの部署において相互に独立に業務を行っていることについてチェックを行うことのできる体制の整備を図ってまいりたいと考えているところでございます。
家西委員 今そういうふうに言われますけれども、石原大臣は、あのときにこのように言われているわけですよね、一緒でありますと、一緒でありますとというふうに御答弁いただいたわけです。このことの方が私は重要ではないかというふうにとらえていますし、これは、厚生大臣と行革担当大臣の石原大臣とがお考えが一致していないんだろうというふうに思えてなりません。
 そして、もう一つ申し上げるとするならば、今回、医薬品救済機構の総合機構法の改正で、ここの医薬品救済機構に、一年間で一体どれぐらいの金額が入ってくるんでしょうか。
 これは質問通告していませんので、御答弁をもしできないのなら結構です。私の方から申し上げます。
 今現在、年間百八十三億円、そして患者の救済に充てる予算が十三億円だと、あらあらですけれども、お聞きしています。そして、今回この機構法が新たになった場合、感染症の枠もふえてくるわけです。そうすると、私自身、この週末少しお聞きしたお話から申し上げると、年間約三百億円の収入がこの機構には入ってくる、そして、新たな分野を加えたとしても、患者の救済は二十億円弱じゃないかと。全くおかしな話です。
 そして、この機構の理事長は、せんだって、前回も申し上げました元厚生省の医薬安全局長の方です。理事長にもう既に就任されているわけです。メーカー側から研究開発振興云々という形で助言やいろいろするというふうに言われていますけれども、これは一体おかしな話じゃないのかと私は思えてなりません。
 先ほど来、国土交通省を初めとした天下りの問題が指摘されています。これこそ天下りの典型ではないんでしょうか。しかも、年間三百億円余りの収入を得ていこうというような、こういった独立法人、非常に問題があるのではないんでしょうか。しかも、研究開発部門と審査、安全監視、救済部門が表裏一体となったものというものが許されていいんでしょうか。私はそう思えてなりません。
 もし御答弁いただけるのなら、石原行革担当大臣、どのようにお考えでしょうか。
石原国務大臣 公務員の天下りの問題は、今委員が御指摘されましたような、いわゆる各府省の所管する特殊法人等々への天下りの問題、さらには、関連する業界、民間企業への天下りの問題の二つが分かれて存在していると思っております。
 天下り問題の根本的な是正には、やはり六十まで役所で勤めていただけば天下らないで済むわけですから、早期勧奨退職制度の是正というものを、総理の指示のもと、今具体化の作業を詰めております。さらに、子会社を含む特殊法人、独立行政法人等への再就職の状況は、今委員は個別の法人名を出されて言われておりましたけれども、これを公にすることによりまして、透明化というものを推進していかなければならないと思います。
 さらに、御指摘のような、厚生労働大臣と機構の長の判断によって役員の人選というものがなされていくわけですけれども、やはり、私は、その個人がどの局長をされて、どんな方かということは存じませんけれども、官だからいけない、民だからいいという議論は間違いであって、官民ともの適材適所、そして委員御指摘のような天下り批判にたえ得るものを構築していくことが今回の改革の趣旨だと御理解をいただきたいと思います。
家西委員 これはあくまでも一般論的な話であって、医薬品救済も含めた医薬品の安全監視、承認及び研究開発とか、そういった分野が全部一体化になるということの問題。
 しかも、今までこういうふうにはなっていないというものを新たに構築されようという話だったら、これはまだ理解できます。しかし、承認審査やそういったものについては、今まで別の機関で、しかもある種の独立行政法人でやっているわけですよ、独立行政法人というのは適正かどうかわかりませんけれども。そういうところでやっていたものを無理やりひっつけていこうというやり方、この方が問題じゃないですか。
 しかも、その法人がなくなるわけじゃない。国立予防研とかそういったところではちゃんとやっているわけですから、それは残すわけですから、そこでそのままにしておいたらいいじゃないのかなというふうに私は思います。そして、新たな分野をもう一度直そうというふうな話だったら、これは理解できます。しかし、わざわざ、今までやっているところを残すんですよ。数的には何らふえも減りもしないという形で、中身だけが統合されていくことの方が問題ではないのかなというふうに思うから、御指摘させていただいたということです。
 それと、役員体制についてお伺いしたいと思うんですけれども、この中に、役員の中に、私は、医療消費者と言われる人を入れてもいいんじゃないのかなというふうに思えてなりません。こういった分野について、いかがお考えなんでしょうか。坂口大臣、御答弁いただければと思います。
坂口国務大臣 先ほども御答弁を申し上げましたとおり、内容につきまして明確にしていくということが大事だというふうに思いますし、それから、今までのいろいろの機関を一つにまとめまして、三者一体にいたしまして一つにしたわけでありまして、それぞれの今までの機関の中でやっておりましたことを一体にして、その中で一律にやる、こういうことにしたわけでありますので、そこは何ら変わってはおりません。
 そして、そのことに対して、これは厚生労働省といたしまして、その中心になります部分は管理監督を明確にしていくわけでありまして、規制の問題も振興の問題も、あるいはまた審査と安全の問題も、それぞれの今までの分野で変わりなくそれはきちんとやっていくということでございまして、最終的には厚生労働大臣がそれを決定するわけでありまして、最終責任をとるようになっておりますので、そこはひとつ御理解をいただきたいと思います。
家西委員 それでは、もう一点。これは、私が質問した後に新聞報道されています。企業からの社員については規制をしていくというような趣旨のことを、厚生省の幹部は法成立後に定める規定を設けるというふうに言われていますけれども、いかがされるのか。これは本当にそうされるのかということについてお伺いしたい。
 それと、役員というものは法的には理事長、理事、そういった人たちをいうわけでしょうけれども、それ以外の、一般社会的に考えたときの部長や課長、そういった人たちはどうなるんでしょうか。その辺も御答弁をいただければありがたいと思います。
坂口国務大臣 現職の製薬企業の役員が法人の役員になることができないことを個別法において定めた趣旨を、ここをしっかりと踏まえまして、厚生労働大臣は、製薬企業等の元役員を原則として理事長に任命しないこととする考え方でありまして、新法人の理事長が理事を任命する際にも、このような考え方をひとつ示していきたいというふうに思っております。製薬企業等の休職者や一時退職者が理事や理事長の対象とならないのは当然でございます。
 それから、それ以下のところでございますが、それ以下の分野につきましては、新法人の理事長が中心になりましてみずから決めることになっているわけでございますから、私から余り具体的なことを申し上げることはできませんが、採用基準等を策定いたしまして公表する必要があると考えております。こういう基準でやりますということを明確にさせていただきたいと思っております。
 製薬企業等と新法人との関係について疑念を持たれることのないように、役員の任命や職員の採用につきましては、厚生労働省と新法人とで相談をいたしまして、適切な組織体制を構築していくようにしたいと考えております。
家西委員 時間がもう来ていますけれども、私は、何もこういった人たちがいけないとかいう話だけをしているわけではありません。こういうふうにすると、非常にさじかげんが甘くなるんじゃないか、逆に、薬害、私がこうむったような薬害の温床になるんじゃないかということを非常に危惧しています。透明性の確保という問題をぜひとも守っていただきたい。
 それと同時に、三百億円もの、これはあくまでも私自身が単純に計算してそれぐらいになるんじゃないだろうかというふうに思う、今後百億円余りの金額がどうも入ってくるんだろうというふうに思います。これだけふえていながら、グレーゾーンと言われる患者さんたちは救済もされず苦しい思いをしながら、責任も問われずやっていくということ自体の方が問題じゃないんでしょうか。患者救済を、無過失救済制度としてつくられたこの医薬品救済機構というものをぜひとも守っていただきたいし、グレーゾーンの人たちにも対象を広げていただけるような分野にしていただきますよう、心よりお願い申し上げて、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。
保利委員長 次に、山井和則君。
山井委員 民主党の山井和則でございます。
 本日は、たった二十分しかありませんので、三点についてお伺いします。一つは、不良債権処理に伴う雇用のセーフティーネット、二つ目、三つ目は、雇用・能力開発機構、高齢・障害者雇用支援機構についてお伺い申し上げますので、よろしくお願いいたします。
 まず、坂口大臣にお伺いします。
 こういう雇用に関する独行法人化の前提として、不良債権処理に伴う雇用のセーフティーネットをどうするのかということは非常に重要な問題であります。全国平均では失業率五・四%でありますが、私の住んでおります近畿地方ではもう七・六%、さらに不良債権処理の加速により、ある調査機関の推計では、全国平均の失業率は七%を超え、失業者も新たに百万人以上ふえるんではないかという予測もあります。また、少なくとも、昨日も坂口大臣が「日曜討論」で、十五兆円の不良債権を処理すると六十万人強の離職者が発生し、このうち三十万人強が失業者になり得るという見通しを述べられました。
 小泉内閣は、不良債権処理に伴う雇用のセーフティーネットには万全を期すと述べていますが、今までいただいております資料では、全くけた違いに不十分であります。私自身、不良債権処理の加速には賛成でありますが、その前提は、雇用の万全なセーフティーネットであります。
 坂口大臣、三十万人新たに失業者がふえるということでありますが、その具体的な雇用創出策について、坂口大臣の、まだまだ合意はもちろんできないんでしょうが、お気持ち、決意をお聞かせ願えればと思います。
坂口国務大臣 今回の不良債権処理につきましては、その全体の額がどのぐらいの額に及ぶのか、そして、それはまた何年間で行われるのかというそのスピード、そうしたことがまだ明確ではございません。そして、そこが決まったといたしましても、その後のいわゆる産業の再生と雇用の推進というこの二本を柱にいたしました本部ができ上がって、産業の再生というものがどこまでそこで行われるのかというこの前提によりまして、失業者の数は私は変わってくると思っております。
 それらのことがもしなかったとしたら、そして十五兆円という不良債権が、一気に処理されるとしたらという前提のもとに、しかも内閣府が昨年試算をいたしましたその試算方法を用いればという、こういう前提のもとに昨日申し上げたわけでございまして、そうしたことも念頭に置きながら我々は雇用対策というものを考えていかなければならないというふうに思っております。
 現在、当面は、まだ補正予算の問題、これは具体的になってきていないわけでございますから、この十四年度、既にでき上がっております予算の中で、どう前倒しをし、どのようにその中で組み入れることができるかということでございまして、その中で、今まで基金としてやられておりましたものを、それをどう新しい立場から使っていくかといったようなことで、新しくもしそこで失業者が出てくれば、その人たちを雇い入れてくれる企業に対する支援、それから新しく企業を起こす人たちに対する支援、そうしたことを中心にしてそれらを使おう。あるいはまた、特別交付金として市町村に既に平成十五年度、十六年度の分をお渡ししてございます二千億円、これを前倒ししてお使いをいただけるような体制をつくり上げよう。これらのことを少なくとも十二月一日か、あるいは半ばまでにはそれをはっきりさせて、そしてお示しをしたいというふうに思っております。
 そして、二弾目といたしましては、今回の不良債権処理がどういう内容かということに合わせて、そして補正予算が組まれれば、その中でセーフティーネットをぜひ構築するように我々も努力をしたい、こういうことを私は考えているわけでございます。そうしたことを申し上げたわけでございますし、そういうふうにしたいと思っているところでございます。
山井委員 いろいろな交付金、奨励金、メニューはあるわけですけれども、十分な雇用が創出できるとは到底思えません。そこで、民間の活力を引き出しながらも、やはり早急に公的な事業による雇用創出ということも必要になってくると思います。私自身としては、不良債権の処理を急ぎながらも、同時に早期に大型の補正予算を組むべきだと考えますが、この補正予算について、坂口大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
 それと同時に、坂口大臣も今までから、雇用効果の高い補正予算ということを発言されておられます。私も同感でありまして、大型の建設型の従来の公共事業よりも、医療、介護、環境、教育というような分野の方が雇用効果が二倍ぐらい高いということも調査によってわかっております。かつ、介護や医療というのは、そこを充実すると老後の安心がもたらされて、ある意味で日本で問題になっております高齢者の貯蓄も減る、それで消費も拡大するということも言われております。そういう意味ではやはり、一石二鳥ということで、医療や介護にこれから補正予算の中で重点を置いていく、そして老後の安心をもたらすことによって消費も活性化していくようにしていく、こういう補正予算のあり方が必要ではないかと私は思います。その補正予算というものについて、坂口大臣の御見解をお伺いします。
坂口国務大臣 補正予算は私の願望を申し上げればぜひお願いをしたい、こう思っておりますけれども、ここは財務大臣なり総理大臣がお決めになることでございますから、これ以上私から申し上げることはできません。ただ、今おっしゃいましたように、これからの雇用対策としてその効率の高いところをぜひ行っていかなければならないというのは私も同感でございます。
 ただ、今お挙げになりました医療でありますとか、あるいはまた介護の問題、そこに集中してというお話ございましたが、確かにここはさらに雇用を生む可能性のあるところであるというふうに思っておりますけれども、しかし、医療そのもの、介護そのもの、ここに切り込んでいくと申しますか、ここを大きくしていくということになりますと、医療費あるいは介護に対する費用がさらにまた膨らむということにもなってくるわけでありまして、この医療費や介護費を今後どうするかということとのこれは合意の話でなければならないというふうに思っております。
 ただ、医療ですとか介護ですとか、そうした周辺に、いわゆる健康産業という形で、これからさらに大きな費用が待ち受けているであろうということは私も想像いたしておりますし、そうしたことも含めて、全体としてのいわゆる第三次産業としての場をつくり上げていくということには私も賛成でございますし、そうした努力はしなければならないと思っているところでございます。
山井委員 まさに今、医療費や介護の費用の増大という議論がありましたが、欧米と比べて日本はやはり従来から公共事業が多過ぎるということが言われておりました。そういう意味では、今のばらまきの公共事業の部分を減らして、そしてトータルの負担がふえることなく医療や介護をふやして安心感を高めていくということが、私はこれから政策転換として必要であると思っております。
 そこで、高齢・障害者雇用支援機構についてお伺いしたいと思います。
 この中で、これから障害者の雇用をふやしていかないとだめなわけですけれども、新障害者プランの策定や支援費制度の導入ということで、在宅重視ということを今厚生労働省さんもおっしゃっておられます。
 しかし、幾らこの高齢・障害者雇用支援機構の動きによって、在宅での生活をふやして、そして雇用を創出していっても、福祉と雇用政策との連携というのがまだまだ不十分であると思います。旧労働省、旧厚生省の縦割り行政があると思うんですが、これから、そういう地域での障害者の暮らし、また障害者の雇用をふやしていく面におきまして、雇用政策と障害者福祉の連携、うまくどうやっていくか、そのことについて坂口大臣の御見解をお伺いします。
坂口国務大臣 雇用に対しまして、先ほども御指摘になりましたように、介護の分野でありますとかあるいは福祉分野におきます雇用が大きな影響を与えることは、私もそのとおりというふうに思っているわけでございます。ただ、先ほど申しましたように、やり方によりましては、国民の皆さん方の御負担をまた大きくするということにもなりかねませんので、そこは注意をしてやらないといけないというふうに思っている次第でございます。
 厚生労働省でございますから、雇用の問題とそして福祉の問題と両方、両輪相まって進めていかなければならないわけでございますし、そこは十分に考慮をしていく必要があるというふうに思っております。
 介護等の問題につきましては、かなりケアハウスのところも民営化をいたしましたり、あるいはまた特養につきましても、これは特区でございますけれども、民営化を試みるといったようなこともこれから念頭に入れながら、そして規制改革に努めて、そこにより多くの雇用が生まれてくるように私たちも心がけていかなければならないというふうに考えている次第でございます。
山井委員 今の特区での特養やケアハウスの民営化ですが、私は、質が十分担保できるのかということで少し懸念を持っております。
 今の障害者雇用と障害者の福祉についてなんですが、最初述べました不良債権処理に伴う雇用のセーフティーネットの中でぜひともお願いしたいのが、真っ先に今障害者が首を切られているという現状があります。ですから、雇用のセーフティーネットという議論をするときに、その中に障害者の雇用もセーフティーネットで守るという視点を入れていただきたいと思います。ぜひとも、この不況の折に障害者のことを忘れないでいただきたいんですが、坂口大臣、雇用のセーフティーネットの中に障害者雇用というものをしっかり組み込んでいくということについて、御見解、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 障害者が最近雇用の場から除外されているということは、これは御指摘のとおりでございまして、平成十三年度におきましても、前年に比べまして六〇%解雇者の率がアップをしているわけでございます。
 そうしたことも踏まえまして、今月の五日にも、経済団体に対しまして、私の名前で雇用の維持及び雇用の場の確保につきまして一層のお願いを申し上げたところでございます。また、全国の労働局長に対しまして、緊急の障害者雇用支援対策を立てるように今命じているところでございまして、公共職業安定所における緊急雇用支援の窓口の設置をとにかく行う、そして雇用の維持及び雇用の場を確保するための事業主団体への要請も、より積極的にひとつ行ってほしいということを今指導しているところでございます。
 行政機関の官公需における障害者多数雇用事業所への発注の配慮。いわゆる、たくさん雇っていただいているところに対しまして、さまざまな事業を行っているところがあるというふうに思いますが、公的な機関からそういうところにより積極的に注文をして、そしてそこがやっていけるようにやはり支援をするといったようなことも大事ではないかというふうに思っておりまして、それらのことをあわせて積極的にやる体制を今とっているところでございます。
山井委員 私の知り合いの障害のある方も、今回の不況でリストラされて困っておられます。また、私の近所のグループホームの住人も四人中二人が今回リストラをされておりますので、そういう視点を忘れないでいただきたいと思います。
 続けて、坂口大臣にお伺いします。
 このような障害者雇用を支援するのがまさに高齢・障害者雇用支援機構なわけです。独行法人化により中期目標を立てて業績評価も導入することになりますが、このような機構の何が目標になるのでしょうか。
 この機構は、障害者の法定雇用率が未達成の企業が払う月五万円の納付金が事業の大きな部分を占めております。つまり、障害者雇用率が上がるほど、財政は逆に厳しくなってしまいます。実際、民間企業の平均障害者雇用率は一・四九%で法定雇用率一・八%を大きく下回り、企業の五六%がこの法定雇用率を満たしていません。皮肉にも、その結果、機構の財政は非常に豊かになってしまっております。
 そこで提案したいんですが、独行法人化を機に、この機構の評価基準や中期目標を今後作成される際に、ぜひ、障害者雇用率のアップを数値目標で入れたり、法定雇用率に達していない違反企業を減少させる数値目標を中期目標として入れるべきではないでしょうか。行革というと合理化ということが言われがちですけれども、財政だけではなく、その本来の目的である障害者雇用が進んだかどうかということをきっちりとチェックしていただきたいと思います。坂口大臣、いかがでしょうか。
坂口国務大臣 高齢・障害者雇用支援機構が財政的にピンチになるぐらいなら結構な話というふうに思っております。むしろそういうふうになることを私は期待しているわけでございますが、残念なるかな、現在はそういう状況になっておりません。
 それで、今御指摘をいただきましたように、実雇用率に対する中期目標を立てる、そして実雇用率のアップということを数値目標に掲げるべきではないかというお話でございますが、これは非常に適切な御提言というふうに受けとめさせていただきまして、そういうふうなことをこれから取り入れていきたいと思います。
山井委員 ありがとうございます。ぜひとも、財政が豊かになったということを中期目標にしないでほしいと思います。
 それで、あと少しだけ時間がありますので、石原大臣にどうしても確認したいことがあり、早口になりますが、お伺いします。
 先週から、天下りの大臣承認のことについて繰り返し質問してまいりました。私には、大臣承認制により天下りが民間企業に対して減るとは到底思えないのです。私の知人の公務員制度改革を専門とする大学教授から、次のようなメールをいただきました。長いですが、早口で読ませていただきます。
 石原大臣の大臣承認制についての答弁を聞いていて、黙っていられずメールを書いています。天下りが減らないのは、人事院の各省庁に対する力関係が弱いからではないでしょうか。人事院はここ数年、公務員の天下り承認をなかなか認めない方向へ規制強化しようとしていました。それで、天下りをさせないと人事が回転しない各省庁から不満が爆発したというのが、今回の公務員制度改革大綱が出てきたいきさつです。多くの省庁からは、大臣承認になれば、やっとうるさい人事院から解放され、ほっとしたはずです。ですから、石原大臣の言うように大臣承認制により天下りを減らすなんてとんでもない、絶対に無理です。民間と公務員との間の人の動きについては、中立性や公平性という観点から、絶対に人事院のような第三者機関の介在が必要です。行政法や行政学の多くの研究者はそう考えています。こんな理不尽な改革案、日本の公務員制度の将来のためにも許してはいけないと思います。この問題は公務員制度の根幹にかかわることですというメールです。
 ついては、国家公務員から民間企業への天下りは、二〇〇一年度末で、課長以上が七十人、課長補佐以下が八百二十七人で、合計が八百九十七人、ほぼ九百人です。
 そこでお伺いします。
 公務員制度改革大綱による大臣承認制を実施することによって、天下りの数は現状の九百人より減るのですか、ふえるのですか。お答えください。石原大臣。
石原国務大臣 将来のことについて数値でお示しすることは現在はできませんが、承認基準は厳しくさせていただきます。
山井委員 石原大臣、お答えください。減らすのかふやすのか、これは根幹にかかわる問題です。もう一回答弁してください。
石原国務大臣 何度も申しますように、年度によってやめる方の人数が違いますし、早期勧奨退職制度の是正をするんですから、それを見なければ人数なんか言えるわけありません。
山井委員 もし天下りがふえたらバッジを外すということをここで宣言してください。それぐらいの覚悟で改革をやってほしいと思います。大臣。
石原国務大臣 私が議員であるか議員でないかは、有権者の方がお決めになることです。
山井委員 まさにそのような、ふえるか減るかもどうかわからない。やはり、そういうふうなことではこの国家公務員制度改革、本当に禍根を残すことになります。今回のことをじっくり、一年、二年後覚えておいていただいて、またそのとき改めて石原大臣の責任のとり方を問いたいと思います。
 ありがとうございました。
保利委員長 次に、中川智子君。
中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子です。
 きょうは、先ほど家西議員が御質問されました医薬品機器総合機構の問題について再度質問をしたいと思います。
 私は、議員になりました後、薬害ヤコブ病訴訟の皆さんと出会いまして、私なりに皆さんとともに闘ってまいりました。その中で、繰り返し被害者の皆さんがおっしゃったのは、自分たちはこんなにつらい悲しい目に遭ったけれども、この思いをもう二度とほかの人たちに味わわせたくない、薬害を繰り返さないために闘い続けているということを口癖のようにお話をされていました。
 私は、被告席に座られるのは厚生大臣が一番多いわけですね。サリドマイドの裁判以降、三十九年間、間断なく厚生労働大臣は被告席に座り続けてきた歴史がこの日本にあります。そして、薬害エイズのときに、この教訓を生かそうということで、旧厚生省の薬務局、そこが、薬害エイズ事件以降、審査、安全対策と研究振興を一つの組織で行うことをやめて、分離解体した組織としてこれまでやってまいりました。
 ところが、今回のこの独法の中で再びこれが統合される、一つ屋根の下に研究振興、審査、安全対策、被害救済、すべてが同じ組織の中に入るということで、私はやはり、二度と薬害を繰り返さないという約束、厚労省の前にも碑がありますが、そこに誓ったことを、今回は、このことによって再び瓦れきのように崩してしまう、その心配、そしてまたその心配がきっと現実になるのではないか、そのことによって再び薬害で苦しむ人をこの国に生む、そしてまた国が被告席に座る、そのようなことがあってはならない、絶対これは切り離して、しっかりと運営していくべきだという強い思いで質問をさせていただきます。
 今回は制度の大転換でございますけれども、なぜこの新しい機構法の改定が出てきたのか。私どもから見ますと、非常に唐突のように思われます。この構想はいつごろからあったでしょうか、再び一緒にすべて一つの機構でやるということ。大臣、お答えください。
坂口国務大臣 感染病被害救済制度は昨年から議論をされてきたところでございます。
 十三年の十二月十九日に特殊法人等整理合理化計画が閣議決定をされましてから、それが加速されてまいりました。昨年から、この感染病被害救済制度につきましては、中川議員からも何度か御質問をいただきましたし、そしてまた、みずからも法案をおつくりになったりいたしまして、御努力をいただいていることもよく存じ上げているところでございます。そうした中にあって、やはり政府といたしましてもこの感染病被害救済制度というものをぜひつくりあげていかなければならないということを心がけてきたところでございます。
 先国会に、薬事法が改正をされましたときに、なぜその中に入らないかという御指摘をお受けしたこともございました。残念ながらその中に入れることができなかったわけでございますけれども、これは、この新しい独法をつくる過程におきまして、ここでその内容につきましては取り上げていきたいというふうに思いますが、法律といたしましては、年が明けました来年の通常国会におきまして提案を申し上げたい、こういうふうに考えているところでございます。
 今御指摘の、その中の振興の部分とそれから規制の部分が一つ屋根の下になるのではないかということでございます。
 確かに、今までの薬害等を踏まえまして、この規制と振興の部分を分けたことも事実でございますし、規制の部分は、現在の厚生労働省でいえばこれは医薬局の中にあり、そして振興部分は医政局の中にあるわけでございます。行政的な部分、その大事な中心の行政的な部分はここがこれからも担当することは当然でございますし、そして、新しい独法の中で、そこで議論をされましたこと、研究をされましたことが上がってまいりました場合に、最終的な判断をするのは厚生労働大臣でございます。その両行政部門におきまして十分に検討を加えた上で厚生労働大臣が判を押すことになっているわけでございますので、私は、そこは明確に守っていくことができ得る、そういうふうに思っている次第でございます。
中川(智)委員 私たちが議員立法で出しましたものは、やはりこの機構の中に医薬品だけであって医療用具が入っていない、薬害ヤコブの場合は、乾燥硬膜という医療用具として承認されたものなので、それを入れてほしい、そして、感染被害に対して、それも救済の対象にすべきだということでございます。審査部門と規制、この組織に関しましては全く言及はしておりませんで、分かれてしっかりやることということがきっちりした独立性を担保できる、国の責任を明確にできるということで、その議員立法には一切入っておりません。
 そして、今大臣が昨年から議論というふうにおっしゃいましたが、この新たな独法におきまして、この組織がなぜ問題かといいますと、直接命や健康に直結する部分である。ですから、ほかのものと横並びではなく、このような大改革、本当に機構の大きな大転換に関しましては、以前から、ちゃんと審議会や検討委員会を設けたり、そして薬被連の方々から意見を聞いたりというプロセスがあってしかるべきでしたが、そのようなものがないということを申し上げているわけです。ほかのものとは違う、これは命と直結する部分であるからこそ一つ屋根にすること、組織の大改革に関しては慎重にすべきだ、その経過が見えないということを申し上げました。ほかのものとは違う慎重な形で、審議会やらいろいろ薬害で被害に遭った方たちの意見、それはきっちり聞きましたでしょうか。そのようなプロセスを経たかどうかということを伺っています。
坂口国務大臣 この法案をつくるに当たりましては、それぞれの立場の皆さん方の御意見もお伺いをしたと聞いております。
 そして、何よりも大事なことは、今御指摘になりましたように、いわゆる規制と振興が一体になってしまってはいけない、規制を行うときに振興の方のことがそこに入ってきてはいけない、あるいはまた振興を進めていくときに規制の分野のことを忘れてしまうようなことがあってはいけない、そこを明確にしろという御意見なんだろうというふうに思いますし、そこは、私たちもしっかりと明確にしていかなければならないというふうに思っているところでございます。
 先ほども家西議員にもお答えをしたところでございますが、組織的にもあるいはまた会計の上からいきましても、内容につきましては明確にしていきたいというふうに思っておりますし、いずれにいたしましても、現場で行われますそうしたことを、今度はそれを最終判断するのはあくまでも厚生労働省の中で行うわけでございますし、厚生労働省の中で、これまでどおり規制と振興の分野は医薬局とそして医政局とに分かれて、その中でやっているわけでございます。ここで明確にそこを踏まえながら、そして最終判断を厚生労働大臣がするということになっているわけでありますので、そこが何ら変わったわけではございません。
 したがいまして、今までの経緯を踏まえ、今までの反省も踏まえて、そこはしっかりと私たちもやっていきたいというふうに思いますし、先ほどお答えを申しましたように、この新法人の情報公開ということも、そこはしっかりとやっていきたいというふうに考えております。
 また、内部で、いろいろとそういう誤解を受けないような体制をどうするかといったことにつきましても、細心の注意を払って明らかにしていきたい、こういうふうに思っている次第でございます。
中川(智)委員 大臣は、この間の答弁のときに、ライオデュラの承認審査のときは厚生労働省の担当が一人だった、人員的に本当に不足だった、そのような反省もあってというふうにおっしゃいました。ですから、厚労省の中でその組織強化をするならわかるわけですけれども、プロの方々に、いわゆる機構に丸投げをして、そしてそこで集めたデータなどで、そして判こを最終的につくのは厚労相だという形の今度の独法だと考えるんですね。
 ですから、大臣がいかに、組織の中で明確にしていく、ちゃんと審査の部分、そして研究開発は外からもきっちり見えるようにやっていくんだとおっしゃっても、組織として一体になっているのですから、外から見れば同じ穴のムジナがやっているように見えるのですよね。
 ですから、そこが一番大事であって、研究開発とそして承認審査を同じ組織でやって公平性が担保できるなどというのは、素人で考えてもそれは明らかにできないだろうという、そのようなところから出発をするから、明確に組織は分けるべきだということを主張していますが、大臣がしっかりやるとおっしゃっても心配は残るわけです。
 小島局長に伺いますが、ただいま大臣がいろいろな方々の意見を聞いたとおっしゃいましたが、明確に答えていただきたいんですが、この機関の中で、審議会の意見を聞いたりいわゆるパブリックコメントを求めたり、そのような具体的なことをしたか、しないか。したなら、どこの、どのような機関でやったか答えてください。
小島政府参考人 独法化法案につきましては、先ほど大臣が御説明いたしましたように、平成十三年十二月十九日の閣議決定に基づきます合理化計画によりまして決定を見たものでございます。
 私どもは、さきの薬事法改正が衆参で審議をされた際の御審議の状況を踏まえまして、この八月から法案の準備作業に入りました。被害者団体の方々には、九月中旬から案をお示ししていろいろな御意見を承ってきて、今現在でも承っているわけでございますが、審議会あるいはパブリックコメントというふうな扱いはいたしておりません。
中川(智)委員 お答えはその最後の部分で結構なんですね。パブリックコメントや審議会はしていない、現在でも案を示していると。こうやって法律が出ていて、案を示してどうなるんですか、質問したって変わらないのに。
 大臣は、先日、国の責任は明確になっている、薬害が起きたときの最終的な責任は国にあるとおっしゃいましたが、機構の責任にして逃げるということはないわけですね。国の責任のとり方は今までと一切変わらないということでしょうか。
坂口国務大臣 そこは何ら変わっておりません。国が責任をとることでございます。
 そして、いろいろ今お話がございましたけれども、具体的な問題につきましては、これはやはり研究者、そうした技術者にゆだねる以外にないわけでございます。今まで国の機関、厚生労働省の中でやってきたものもございますし、それから、あらゆる研究機関にお任せをしたものもございますけれども、そうしたことは、やはり専門家にお任せをする以外にないというふうに思っております。
 そして、今まで厚生労働省がそれをやろうと思いますと、人数の制限も非常に大きかったわけでありまして、十分な体制がやはりどうしてもとれないといったこともございました。先日来の食品の安全性に対する問題にいたしましても、なかなか検査をいたします人員がとれないといったようなこともございました。そうしたことで、今回のこの独法化によりまして人員体制も倍増させることができ得ると思っているわけでございまして、そうしたプラスの面もあることも御理解をいただきたい。
 そして、最終的なその責任は厚生労働省がとる、これはもう何ら変わっていないということを明言しておきたいと思います。
中川(智)委員 先ほどの質問にもございましたが、それならば、やはり役員、職員構成というのが大事だろうと思います。
 ただいま大臣は、専門家の御意見と言われました。それは専門家はとても大事だと思いますが、この機構というのは、当初、医薬品の被害救済機構、そして研究振興というのが後についてきたものでございます。専門家という人たちと同様に、その被害に遭われ、その被害者たちは本当にしっかり闘う中で、勉強をし、さまざまな別の見地から意見も申してきたところでございます。
 その職員なり、現在でも、門前払いが非常に多い。副作用があった、申請書を持って機構に行く、それでも窓口で断られる人が非常に多い。非常に不親切であり、そこのところでまた再び傷つくということが多いんですね。当初の目的は、これは被害救済であったはずです。
 そこで、その質問もしたいんですが、今回、現職は役員になれないということをおっしゃっています。でも、理事や役員に関しては理事長に丸投げという形になりますが、そこでやはりこれは公平性が保たれないのではないか。人事に関しては厚生大臣は意見をお述べになりますか。
坂口国務大臣 これは先ほど家西議員にもお答えをしたところでございますが、理事長や理事につきましては明確にいたしております。そして、その下の職員につきましては、これは理事長が決めることではございますけれども、そこの決め方につきましては、おのずからいろいろの決め方があるというふうに思いますし、理事長や理事を決めますときの考え方というものは、やはり職員を決めますときにもその考え方というのは当然のことながら導入されるというふうに思っております。
 したがいまして、それだけでは御理解いただけないでしょうから、厚生労働省と新しい法人との間で、職員の決め方につきましても、こういう基準で決めていくという基準を明確につくり上げて、そうしていきたいというふうに思っている次第でございます。
中川(智)委員 大臣、もう一歩踏み込んで、透明性の担保が本当に大事だと思いますが、その基準というのは、ガイドラインのような形できっちり外にもお示しいただけるものとして理解してよろしいでしょうか。
坂口国務大臣 それは、外部にも明確にお示しをしたいと思っております。
中川(智)委員 私も、この間、夏に、人事異動とか退職ではがきがたくさん参りますが、宮島薬務局長が今度の独法の方の理事長就任というごあいさつ状をいただきましたときに、あの方もずっと被告席に座られていて、どひゃあとびっくりいたしました。
 官僚と企業の癒着、私自身はお一人お一人一生懸命頑張ってくださっていると思います、立派な方々だと思いますが、やはりそのポストにつくと、急に、言うこと、そして顔つきまでが変わってしまうということをこの六年で結構見てまいりました。大臣は相変わらずいい顔をしていらっしゃいますけれども、やはりそのような中で、誤解をまず生んでしまう人事というのが非常に心配です。理事長も、変なことをしたら本当に大臣が即刻緊急回収命令を出すみたいな気構えでやっていただきたいと思いますし、ただいまガイドラインという名称を出されませんでしたが、ガイドラインというふうにしっかりとしたものを出していただきたい。そのような形で出されると期待もし、理解もいたします。
 続きまして、先日の私の質問のときに、最後に、大臣、もう時間がなくて、私も時間がなくて、被害救済のウエートがとても低い、現在も一割に満たないわけですね。百三十億の予算のうち、被害の救済が十三億。最初は被害救済で始まったんです。それが、どんどん研究振興にお金を使われて、全く逆転している。今度、約三百億と言われている予算のうち、被害救済に使われるのは二十億にも満たないだろうと言われています。これでは全く本末転倒、いつまでたっても被害者は救われない状況が続きます。
 これに対して、私は、名称を変えてくれと申しまして、それと同時に、被害救済にウエートをとの質問に対して、坂口大臣が、そこはきちっと見直しをいたします、この一言で終わっております。どのような見直しの中身なのか、お答えをお願いします。
坂口国務大臣 先日は時間がなくて、私も急いでおりましたので、一言だけ申し上げたわけでございますが、被害救済業務をしっかりやっていくべきだというお問いかけに対して、私は、それはそのとおりだ、そうしますということをお答えしたつもりでございます。
 三百億というのはどこから出てきた数字かわかりませんし、聞いたこともございませんし、そんな大きな数字になるかどうかということも全くわかりません。しかし、この被害救済の方につきまして、これは一つの基準に基づいてやっているわけでございますから、その基準で、これは、やるべきものはそれは当然のことながらやらなければいけないわけでございますから、その救済につきましてしっかりとやっていくということは御答弁を申し上げていいのではないかというふうに思います。
 ただ、全体としてそんな何百億というような大きな額が集まるかどうかということは、これはちょっと試算をしたこともございませんし、聞いたこともございませんし、私はそれは少し不可能な数字ではないかというふうに思いますけれども、その中で、この被害者救済につきましてやはり全力を挙げてやっていきたい、そういうふうに思っております。
中川(智)委員 大臣、この間の御答弁は、きっちり見直しますとおっしゃったんですね。しっかりやっていきますではないんですね。
 今の基準ならば、門前払いが非常に多い。そして、スティーブンス・ジョンソン症候群の方々もおっしゃっておりますが、何度も書類申請をやり直させられる。そして、医療機関に行ってもう一度書いてもらったら、それに対して手数料が一万数千円取られてしまう。不自由な体で何度も機構を訪れて書き直されたりすることと、そしてまた、これじゃ書類がちゃんとしていないということで、ほとんど請求が却下されるという状況なんです。被害救済のためにつくられた機構が全く逆転している。
 私も、その三百億というのは、概算ですし、きっと将来そうなるであろうというところですが、私が申し上げているのは、今の基準を見直すべき、もっと被害救済に力を入れるべきではないかと。それに対する大臣の見直すという発言だったと思います。
 被害救済にもっと力を入れるということに対してもう一度明確なお答えと、同時に、対応する部署をつくっていただきたいんです。そこの職員が、やはり被害救済のウエートがこんなに軽くなっているということは、そこの機構全体で被害救済よりも研究振興の方に重きを置いていますので、窓口も非常に親切な方もいれば、冷たい方もいる。そこに被害者などのメンバーを職員として採用する、そのような態度がなければ、明確に外から見える、そして透明性が担保できるということは図られないと思います。
 大臣、ここは、そのような専門の窓口をこの今度の独法の中でつくっていくべきだということをお答えいただきたいと思います。
坂口国務大臣 被害者の皆さん方に対しましては、不十分だというようなことがないように、そこは見直していきたいというふうに思います。
 ただ、どういう窓口をつくるかとか、そこは、新しい機構がまだこれからでございますから、できました中でどういうふうに皆さん方に対応していくかということを考えていく以外にないというふうに思います。
 それから、いろいろの書類を出しても、それが大変多くの書類を出していかなければならないといったようなことであれば、そこでもう少し簡略にできないかといったようなことは考えていかなければならない、そういうふうに思います。
中川(智)委員 簡略にするということも大事ですが、多くの苦情は、それはそういう薬を出したお医者さんが悪いんだ、医者の方の責任を問えと言われることがとても多いんですね。結局それは裁判しかない。そうしたら、被害救済に行ったけれども、もう一度医療機関に行って、もう裁判なんかはできないということであきらめてしまう、そのような実態が大変多いということなんです。
 小島局長に伺いますけれども、申請と不採用被害、昨年度で結構ですが、どれぐらいの被害があり、そして機構に対して申請がどれぐらいあって、救済実態はどれぐらいかということを、資料をお持ちだと思いますので、お答えください。
小島政府参考人 平成十三年度の数字で申し上げますが、機構に対する請求件数は四百八十三件でございまして、そのうち、支給件数が三百五十二件、不支給件数が六十四件というふうになっております。
中川(智)委員 もっとその前に、スティーブンス・ジョンソン症候群の方々のお話を伺っていますと、被害救済するような機構などがあるということを知らなかったという方がとても多いんですね。私も、その名称から被害救済というのを抜かないでほしい。それがあっても、そのような窓口があるということは知らなかったとおっしゃっている方がとても多いんですね。
 私は、先日の質問のときに、名称をもう一度考え直してくれないかということと、被害をもっと救ってほしいということを話しましたときに、見直ししますとおっしゃったので、いろいろな方々が、まあ、名称がもとに戻るんですねと喜ばれましたが、それではなかったというのは大臣の表情から酌み取れましたので、でも、もっと広報を徹底していただきたいと思います。副作用の被害の救済の機関があるのだということを、今後はもっと、より広く徹底していただきたい、そのことを最後に大臣にお願いして、もう一言いただきましてから質問を終わります。
坂口国務大臣 いろいろのお話をちょうだいいたしましたので、それぞれの分野、適切に対応できるように頑張ります。
中川(智)委員 どうもありがとうございました。
保利委員長 次に、首藤信彦君。
首藤委員 民主党の首藤信彦です。
 私は、国際協力機構法と国際交流基金に関して質問をするわけですが、時間が限られておりますので、基本的なところからまずお聞きしたいと思っております。
 行革大臣にまずお聞きしたいわけですが、一体、そもそもこの国際協力機構法、要するにいわゆるJICAと言われるものが、どうして今独法化しなければいけないのかということですね。例えば、今外務省改革というのが大変な問題になっておりまして、私たちも約一年これに取り組んでおりますかね。それで、もう中間報告が出た、もう最終報告が出る。もう出ると思ったら、また今度は十二月だ、しかしもうすぐ出す、こういうことを盛んに言っておるわけですね。
 同じように、外務省それ自体と同時に、援助の問題、援助のあり方、特にODAのあり方が非常に問われているわけですね。どういうふうにODAを変えていこうかということが非常に問われているわけですが、その中で常に、ODAのやり方をこういうふうに変える、外務省の組織をこういうふうに変える、だからJICAをこう変えようという論議を我々一年間ずっとやっているわけですよ、今でもやっているわけですね。
 一方、こういう形で急に独法化というふうになってしまうわけですが、一体どういう目的で独法化をされようとしているのか、行革大臣、いかがでしょうか。
石原国務大臣 ただいま首藤委員は、JICAについて、個別法人を御指定されての御質問でございますが、総論、これももう何度も言っていますので簡潔に申し述べたいと思いますが、特殊法人はそれなりに機能として十分に役割を果たしてきたと思っております。当然、JICAもそうだと思います。しかし、時代の変遷とともに、この特殊法人という組織形態が肥大化し、責任が不明確になってくる、その点については、ODAの援助についても、これまでもるるいろいろな点で問題点が指摘されてきております。
 そこで今回は、この特殊法人の抱える弊害を克服する制度として、行政のアウトソーシングの出先機関としての独立行政法人というものを仕組ませていただいた。その中で、民間に任せられるものは民間に、地方にゆだねられるものは地方にと整理をさせていただきまして、その結果として、このJICAは独法としてもう一度組織を洗い直し、そしてこれまでどおり、役割を示してきたことについてはもっと仕事をしていただく、あるいはもう必要ないのではないかと言われるものについては業務を縮小する、そういう形で物を整理させていただいたところでございます。
 詳細につきましては、川口大臣にお尋ねをいただきたいと思います。
首藤委員 一番大まかな話としてはそういうことだと思うんですけれども、ただ、大臣、JICAの特殊性というのを意外と御存じないんじゃないかなと思うんですね。例えば、民営化というのは、効率化とか責任の明確化とか透明化というのが非常に必要だ、そういう方向にあるということはわかりますよね。しかし、組織というのはミッションというものがある。ミッションというのは、その組織が一体何であるか、どういうことをやらなければいけないかということを規定しているわけですね。JICAというものは、その組成上、実は政府の根幹の部分とかなりかかわっているわけですよ。だから、政府が本当はやるべきなんだけれども、政府がやるにはちょっと難しいかなというところをJICAというものをつくってやっていたわけですね。
 例えば、このJICAの中に、この法律の中においても全く変更がなく記載されている業務の中には、国際緊急援助隊というのがございます。援助、それはわかるんですよ。社会が変わっていくから、だんだんNPOもふえてきて、NGOもふえてきた、ではそういう人たちに任せていこう、それのお助けをしましょうかというのはわかります。しかし、国際緊急援助隊というのは、大臣、これはよく御存じか御存じでないか知らないけれども、日本のPKOと密接な関係があるんですよ。例えば、JICAの中からこれから関係していこうという平和再建、日本のPKOと非常に密接な関係があるんですよ。それから、紛争地において、要するに地震が起こったりする、洪水が起こったりする、そういうところでは治安が非常に悪くなったりするわけです。これは極めて国家的なことなんですよ。非常にリスクが高い。だから、これは、命令をもってやってもらわないといけないわけですね。
 では、欧米でそういう危険な地域に行っている人たちはどうするんだ、犬一匹連れて行っている人はどうするんだ。それは個人の哲学に基づいて、あるいは宗教的理念に基づいて、もしかしたらそこで死ぬかもしれない、しかし死んでいくことが私の教会のそのミッションにとっては非常に重要だ、ここで死ぬかもしれないけれども、私は世界平和のためにはすべてをなげうってやっているんだ、これはいいんです。しかし、組織として、独法として、行政と民間の非常に中間的な組織でありながら、国際緊急援助隊をどうやってできますか。大臣、いかがですか。
石原国務大臣 国際緊急援助隊の活動については私も報告を読ませていただいたことがありますが、なぜ独法でできて、なぜ特殊法人でできないのかという理由はないと思います。
 独立行政法人は、先ほど申しましたように、民に任せられないこと、あるいは地方にゆだねられないこと、国の仕事としてやっていかなければならないものをより透明度を高めて運営するために仕組んだ組織でございまして、特殊法人、最初に申しましたように、これまで十分に仕事をしてきた部分はございます。JICAも当然だと思います。しかし、要らなくなってしまった仕事を自分でやめるということができない組織である以上は、やはり組織を改めるということも時代の要請ではないかと考えております。
首藤委員 これは石原大臣、結局、国際緊急援助隊の持っている難しさとかセンシティビティーとかあるいはそのリスクというのは恐らくおわかりになっていないでおっしゃっているんだろうと思うんですね。これは非常に大きな問題であると思いますけれども、こればかり言っていればそれだけでもう一時間ぐらいがたってしまうので、ほかの点も質問させていただきます。
 同じように、このJICAが、この組織、この機構が民間に近いところにある、そういうことのためには、もう一つ大きな、社会の変化というものを考えなきゃいけないんですね。もちろんほかの独法も、関係しているところは全部社会の変化が関係しています。しかし、このJICAが今直面しているものぐらい大きな変化にさらされているところというのは本当に珍しいわけですね。
 今ここに、これからの将来のJICAが目指す方向として平和再建とか復興とか、そういうものも入ってくるわけですけれども、一体どういう哲学に基づいて、今社会に起こっている変化を取り入れながら、どういう基本的な考え方、人間の安全に関する、人間の復興に対する、人間の人権に対する基本的な考え方に関して、今までJICAであったものが今度独法のJICAになるわけですが、それはどういうような考え方に基づいているとお考えでしょうか。石原大臣、どうでしょうか。
川口国務大臣 ただいま首藤委員がおっしゃられた時代の新しい考え方、これをJICAあるいは今後の独立行政法人たる国際協力機構において的確に取り入れて、それを業務に反映していくということは、私は非常に大事であると思います。
 JICAの時代に既に、例えば人間の安全保障ですとか環境ですとかジェンダーですとか、そういった問題についてはこれに取り組んできておりまして、例えば、私はことしの五月にアフガニスタンに参りましたけれども、そのときに、女性問題担当大臣にお会いをいたしました。そのときその大臣は、これから日本から女性の問題の政策の企画をやるということのためにアドバイザーが来ることになっているということを言って大変に喜んでいらっしゃいましたけれども、これもJICAから派遣をされた人間であるわけです。
 それで、独立行政法人になった後、JICAとしては、当然に今よりもある意味ではもっと柔軟に、こういった時代の新しい風、考え方というのは取り組んでいくことができるだろうと思います。政府としては、その中期計画ということでこれをちゃんと確保していくということでございますし、後で評価もありますので、そういった中で、それをもしやられていないということであれば、そういう評価が当然についていくわけですので、それを改めなければいけない、そういうことになると思います。
首藤委員 川口大臣、どうもありがとうございました。
 これからの、今度独法化になりました国際協力機構に関しても、その中期計画や評価に関して、今おっしゃったような社会的な変化、特に国際社会のニーズに対して、例えば人間の安全保障であるとか、ジェンダー的な視点であるとか、平和再建などの視点、民主化の視点というものをきっちりと受け入れて、組み込んで、その計画及び評価をしていただきたい、そういうふうに思います。
 さて、この法律案自体でございますけれども、ここにはもちろんいろいろ、総則から始まりましてずっとあるんですけれども、私の見る限り、一番重要なのは、この法律の中でエッセンスともいうべきものは第十三条であるか、そういうふうに思うんですね。ですから、「機構は、第三条の目的を達成するため、次の業務を行う。」ということで、開発途上国からの技術研修とか、それから途上地域において人員を派遣したり、途上地域において国際的な開発に関して基礎調査を行ったり、いろいろなことが書いてあります。
 では、これをだれがするかということなんですが、当然のことながら我が国国民、それからいわゆるNPOとか、そういう組織がやるということになっております。民間の団体の奉仕活動または地方公共団体もしくは大学の活動とあるんですが、ここがちょっと腑に落ちないわけですね。
 なぜこれは大学でなきゃいけないのかということですね。これは、御存じのとおり、現在、いろいろ紛争地で子供たち同士が、例えば日本で阪神大震災で被害を受けた地域の子供さんたち、あるいはそれと同じようにボスニアで戦乱に巻き込まれてきた子供たちが絵を交換したりしているわけですね。ですから、別にこれは大学だけではなくて、高校や中学や、あるいは、最近は大学じゃなくて単科大学院、大学院だけしかない大学院だってあるわけですね。
 どうしてこれは大学しか書いていないのか。これでは法律として非常に欠陥があると思うんですけれども、外務大臣、いかがでしょうか。
古田政府参考人 御答弁申し上げます。
 十三条の規定についての御質問でございますが、国民等の協力活動の対象となります団体につきまして、法案上、大学を特に明記しておるわけでございますが、これは、大学が国際協力に関するさまざまな知見を有する高等教育機関であるということに加えまして、JICAがこれまで実施してきました類似の事業における大学との協力の実績があるということを勘案して書かせていただいておるわけでございます。
 もちろん、この国民等の協力活動は、国内のより広い層の人材の参加による国際協力を促進する事業というふうな考え方でございますので、こういう観点からは、知見を持つ教育機関であれば、大学以外であってもこの事業を委託する対象から排除するものではございません。法文上は、その他民間の団体等の奉仕活動ということで読んでまいりたいというふうに思っております。
首藤委員 その解釈で結構だと思いますが、そこでもう一つ、ここでは、第十三条の三でございますが、非常に重要なことが書いてございます。イ、ロ、ハとありまして、「開発途上地域に対する技術協力のため、国民等の協力活動を志望するものからの提案に係る次の事業であって外務大臣が適当と認めるもの」云々とありますが、やはりここが、実はこの法律の中で一番問題なんじゃないかと思うんですね。
 御存じのとおり、今までの援助というのは国家がやりました。しかし、それでは現実のニーズに合わない。それから、緊急性のあるものはもっとやらなければいけないし、もっと地域に密着したものをやらなければいけない。こういうところから、今までの援助も、大型のODAから草の根無償というふうなものにだんだんと細分化されていまして、より地域ニーズに合った、現実ニーズに合った、時局のニーズに合ったものにしていこう、こういうふうになっているわけですね。
 そこで、末端に行きますと、それはもう大変なものでありまして、例えばケニアのようなアフリカなんかに行きますと、草の根案件でも、もう何百と書類を見なきゃいけない。現場の人たちが見て、首藤さん、これ見てください、申請書というのはこんなものですよと言って、ルーズリーフのノートをびりびりっと破ったそこに、もう本当にそういう紙に手書きで、ボールペンで走り書きしていてやっているわけですね。しかし、本当にそれでも重要であり、本当に必要なニーズなんですね。本当に必要な援助なんですよ。
 ですから、このJICAの援助というのもやはりそういう方向に行かなきゃならない。まして、独法化をやり、より現実のニーズに近づけるということであればそういう方向性があるんですが、どうしてこれまた先祖返りして、外務大臣が適当と認めなければいけないのか。一体どういう形で、こんなにたくさんあるものを外務大臣としてやられるか。もちろん、それは私がやるのではなくて私の部下がやるんですよというお考えもあると思いますけれども、そもそも、こういう独法化していこうという動きと、それから世の中の世界の流れと、市民社会のNGOがどんどん出てきている、こういうような流れと、こうした外務大臣が認可するということは、まさに先祖返りというか逆行していると思うんですが、外務大臣、その見解はいかがですか。
古田政府参考人 御答弁申し上げます。
 JICAが実施する技術協力でございますが、これにつきまして必要な業務は、相手国の政府との間で政府間の何らかの合意のもとで行われる政府ベースの技術協力ということでございます。
 今回の改正で、おっしゃるような草の根の技術協力事業を積極的に活用していくという視点からこの条文が入っておるわけでございますが、この考え方は、まず個人、NGO、地方公共団体等の御提案をいただく、その御提案をいただいて、JICAがその中で選んで、当該提案者に委託をするという格好でやるわけでございますが、その際、外務大臣といたしましては、相手国政府と何らかの了解、合意を取りつけるということで、JICAの政府ベースの技術協力であるというベースを確保する必要がある、そういう意味で「外務大臣が適当と認める」というふうに書かせていただいておるわけでございます。
 これは、JICAが政府ベースの技術協力を行う、そのベースの上に立って、最大限、NGOその他の草の根の技術協力を積極的に取り込んでいこうということで書かせていただいておるわけでございます。
首藤委員 いや、それは異なことをお聞きした。では、何のためにこんな独法化なんかするんですか。では、政府がやればいいじゃないですか。政府目的で援助をするというなら、政府が直接やればいいじゃないですか。
 やはり、今の世の中では国家間の関係だけじゃなくて、実は、国家間では嫌な国であってもしようがないから国としてつき合う、しかし人間の安全保障という考え方では、その地域で、その地域その地域の人、むしろその政府が圧迫している、圧迫されている人たちも助けなきゃいけない。それが援助でしょう。それが自由にできるということが独法化なんでしょう。だから、全然違うじゃないですか。
 それから、技術的な面に関しても、では、そうした地域地域の、もう要するにモニタリングもできない、一体この援助していく団体が、本当にそれは政府が援助すべき団体なのかわからないという、確認できないような条件の中で、どうやって具体的に技術的に援助できますか。外務大臣、いかがですか、どうお考えですか。
川口国務大臣 独立行政法人になりまして、そういった、国際協力機構が実施をしていくときに今までよりもはるかに大きな自由度、透明さというものを持ってやっていくということでございまして、私は事実関係を確認したわけではございませんけれども、例えば、政府が今まで、どういう自動車を使うかということについて、それを決めるようなことまであったという話がありまして、この事実関係、私はわかりませんが、例えばそういうようなことを考えたときに、独立行政法人が行うということによってはるかにその自主性とそれから透明性が生かされる、そういう考え方でございます。
 ですから、実施のところはまさに独立行政法人らしくやっていく、そういうことであると思います。
首藤委員 それは大臣、私の質問の半分にしか答えていないわけですよ。
 今の、現在の世界の中で、国家は必ずしも民衆や市民やあるいは民族を守っているとは限らないんですよ。いわゆるローグネーションと言われるように、もうでたらめな国があったり、あるいは国家が麻薬カルテルと結託していたり、いろいろな問題がある。だから、実際に我々が援助しなきゃならないという人は、必ずしも国家関係とは違う視点でやっていかなきゃいけない。そのためにこそ自由度を持つこういう独法化の組織が、JICAが初めて生きてくるんじゃないですか。そのことが担保されなかったら、こんな独法化なんかやめた方がいいんですよ。政府が直接やればいいんですよ、ここに残っているように国際緊急援助隊もあるんですから。まさに政府の直轄組織としてやっていけばいいんですよ。だから、これはもう、まさにおっしゃっていることは逆行していると言わざるを得ないんですね。
 例えばもう一つ、十八条というのがあるんですよ。十八条も、これは十八条の三で、こうした問題に関して関係行政機関の長と相談するということになっています。こうした考え方はまさに逆行しているのでありまして、関係機関の長というのは一体何なんですか。どうしてこれが必要で、昔のODAをめぐる四庁体制とか四者体制とか四者協議とかいうのと、全く変わらないじゃないですか。では、何のために独法化するんですか。外務大臣、いかがですか。
古田政府参考人 御答弁申し上げます。
 先ほど申し上げましたように、政府ベースの技術協力をベースに国際協力事業団の事業があるわけでございまして、政府として相手国政府と何らかの合意、了解を取りつけるということをやった上で、JICAが当該草の根の提案者に委託をするということになるわけでございますので、政府として相手国政府と了解、合意を取りつける際に、政府全体として、関係する行政機関にも相談をして外務省としては先方との了解を取りつける、そういう手順を書いたものでございます。
首藤委員 これは外務大臣に答えていただかないといけないんですよ。これはもう我が国の外交の、我が国の援助の理念なんですよ。その理念に基づいて、現実政治、現実社会、現実世界の中でどういう方向性を、我が国の国際社会における名誉を高めるためにどういう形で援助をしていくか、そしてその実行機関としてのJICAをどういう形でつくっていこうかというために私たちはここでやっているわけですよ。
 ですから、今のような答弁だったら、それはもう政府とやればいいじゃないですか。どんな悪い政府でも、どんな独裁者の政府でも、政府との国際関係が、国家関係があるなら、そことやっていればいいという話ですよ。そうじゃないでしょう。今、こうした冷戦後の社会ではいろいろな地域紛争があって、いろいろな価値観が錯綜している。その中において、私たちが正しい、私たちが人道的に必要だということをやらなきゃいけない。そのためにこそJICAは独法化していって、そうした社会のために働こう、それが私たちの国民の総意ではないか。そういう方向にあるんでしょう。外務大臣、いかがですか。そこが一番重要なところですよ。
川口国務大臣 これはやはり、国が集めている税金、それが使われるということでございます。政府として、先ほど古田局長からお答えをいたしましたように、相手国の政府と何らかの合意を取りつけたもの、それから、これは政府としてということでございますから、外務省だけではなくて、もしほかの省庁に関係がある場合があれば、そこでやはり今までの政策と整合性がとれているかどうか政府としての立場からチェックをするということです。
 日本全体として、多くNGOの方もいらっしゃいますし、民間団体もたくさんあって、それぞれの民間団体がその考え方に応じてNGO活動をやっているということは現に起こっているわけでございますし、それが広がれば広がるほどいいと私も考えておりますけれども、この国際協力機構がやる仕事というのは、法律上、相手国政府と何らかの合意を取りつけたことをやるということでございますから、おのずからその意味というものは実際のその仕事の仕方に反映をされなければならないと思っております。
首藤委員 外務大臣、外務大臣がおっしゃっていることは十年古いですよ。今、あなた、世界を見てみなさいよ。例えば地雷問題、軍人はみんな反対しますよ。おい、冗談じゃない、おれたちがやっているのにと。なぜ、例えばノルウェーやフィンランドやベルギーやそうした政府は銃の削減やあるいは地雷問題とかに取り組むんですか。それは、それこそ防衛庁に行けば、いや、冗談じゃない、おれたちの要員をPKOで出たときにどうするんだと言うに決まっているじゃないですか。だから、今そうした一本化した、単純な価値観じゃなくていろいろな価値観がある中で、この日本は生きていかなきゃいけない。そのために、より自由度のあるJICAをつくっていこうというんじゃないですか。御答弁は全く納得できないですよ。一〇〇%納得できない。
 残念ながらもう時間がないので、次のもう一つの法律である国際交流基金の問題について、一つだけ質問させていただきます。
 この法律においても非常に文言的にも怪しげなところがあって、文化などという言葉を安易に使っておりますけれども、私はそれは大変疑問だと思っています。しかし、そんなことを言っていると時間がないわけですから。
 こういう協力基金を使って、より民間に近い形でやるというんですけれども、今、御存じのとおり、援助コミュニティーというんですけれども、NGOとかそういう市民団体とかいろいろあって、もうお金を集めるのに本当に苦労しているんですね。そして、そうした日本の中で潜在的にお金を提供しようという人たちは、どちらかというと税の控除が目的であったり、あるいは、私は国連にも寄附しています、ユニセフにも寄附しています、こういう、要するにどっちかというと広報活動としてやっているわけです。そうすると、こうした政府機関、準政府機関みたいな形でこういう基金が入ってくるということは、ただでさえ少ないその援助の、支援のサークルから、そういうこれから伸びていかなきゃいけない市民の力、これから本格的に育てていかなければいけないNGOを、まさにクラウドアウトしてしまうわけですよ。
 ですから、この基金が民業、民間のこれから立ち上がっていく市民組織を阻害しないという担保はどこにあるんですか。外務大臣、いかがですか。
茂木副大臣 私、首藤委員言ったような御懸念が出てくるぐらいな形にならなくちゃいけないんじゃないかなと逆に思っております。
 例えば、今国際交流基金の運用の資金全体、九百八十三億円でありますけれども、そこの中で民間の出資は六百十万円、そして寄附金を合わせても九億円で一%いかない、こういう状態でありまして、ほとんど政府が丸抱え、こういうことになっているわけでありまして、もっと民間の方からお金が入ってくるようにしなければいけない。
 そんな意味で、現在、損金算入されない、出資ではなくて出捐、すなわち寄附による場合がほとんどと、今六百十万と九億という話をしたわけですけれども、このような実態を踏まえまして、今回の法律においても、出捐を受ける制度について法律中に改めて明記をさせていただいた。こういう形でありますけれども、これから交流基金が実施していきます事業、クラウディングアウトするというより、むしろ民間の活動を支援していく、こういう方向でも考えていきたいなと。
 ただ、御懸念のような形に国際交流基金が、例えば、今の基金の中で、大半の部分を民間から持ってきて、NGOに本来だったら行くようなお金がどんどん流れてきている、こういう実態にはなっていない、そう思っております。
首藤委員 終わります。
保利委員長 次に、東祥三君。
東(祥)委員 自由党の東でございます。
 外務大臣、先週のこの特別委員会におきましても今の首藤議員の質問にしても、外務省のもとで今回国際協力事業団並びに国際交流基金が独法化されていく、その本当の意味といいますか、それが非常に明らかでないということがこの特別委員会での議論を通じて逆に明らかになっているんだろうと思います。
 他の独法化される特殊法人の中身を見ていたとしても、結局、何らかの形で制度疲労を起こしてきた行政のシステムを何とか変えなくちゃいけない、そういうもとで形だけ整えなくちゃいけないということで独立行政法人に変える、そういうことなんだろうというふうに僕は思わざるを得ないんであります。
 独立行政法人にすることによって出てきている違いというのは何かといえば、独立行政法人の通則法というものが加味されることによって、いつも石原大臣から言われているところの部分が付加されているにすぎない。今回外務省のもとで行われるこの独法化の二つの機関にしても、特殊法人の中に独法の通則法と同じようなものを入れればそれで事足れりの話なんじゃないのか、こういうふうに思います。
 問題は、外務省というのは、いわゆるODAという問題に関しての頭脳になっているわけであります。実施機関であるJICAあるいはまた国際交流基金、先週は両総裁にも来ていただいて、ここでのお話をいただきました。話を聞く限りにおいては、本質的な問題というのは、それは実施機関でありますから、外務省から与えられている大目標に向かって一生懸命やっているんだろうと思うんです。問題は、外務省、いわゆる政府の外交政策というのは一体何なのか、外交政策における重要な手段であるODAと言われるものを一体どのように活用しようとしているのか、そのことが不明確であるがゆえに、何が何だかさっぱりわからなくなってしまっているんだろうと思うわけであります。
 そういう角度からきょう質問させていただきたいというふうに思うんですが、外務大臣、私は、資金だけに頼った外交というのはもう終わりを告げてきているんだろうというふうに思うんです。ただ、今までの日本のODA、それもすべて基本的に外務省における経済協力局を中心にして、これは膨大な力を持っているわけですね、そこで行われてきた日本のODA政策というのは、日本の国益にとっていかなる利益を、プラスをもたらしているんでしょうか。まず、そこからお聞きしたいというふうに思います。
 日本のODAが日本の国益にとってこのようにプラスになってきたではないか、その点について、外務大臣、お答え願えますでしょうか。
川口国務大臣 非常に大きな御質問でございまして、短くお答えするというのは難しいかと思いますけれども、そもそも我が国の外交の目的が何かということで言いますと、これは当然のことながら、我が国の平和と、そして安定であると思います。そして、我が国の平和と安定を確保することができるためには、我が国としては、資源もない国でございますから、当然に平和と安定が国際社会にあるということが必要であると思います。そして、我が国の周辺の地域で平和と安定が確保をされるということのために、例えば、我が国のODAというのはアジア中心に使っているということであるわけです。
 それからまた、もう一つ例示的に申し上げますと、国際社会において、テロというのが大変な脅威として認識をされているわけでございますけれども、我が国としては、そうしたテロ対策等についてもその資金を使ってやっているということであるわけですし、アフガニスタンとかあるいは東ティモールですとか、パレスチナもそうでございますけれども、そういったところでの平和の構築、そういったところでさまざまな改革の支援ですとか平和の構築のための仕事、業務をやっておりますけれども、それもODAのお金を使ってやっているということでございます。
 例示的に申し上げればそういうことでございますし、もし全部を統括的に話をした方がいいということであれば、またそういうふうにさせていただきますけれども、とりあえずそういうことでお答えをさせていただきます。
東(祥)委員 外務大臣、基本的には僕は同じ考え方だと思います。
 これまでは、例えば日本のODAというのがアジア中心に行われてきた。結果として、例えば元総理大臣の福田総理の時代における福田ドクトリン、僕は大成功したんだろうと思うのです。アジア地域を中心にして膨大な政府開発援助を行うことによって、地域における経済発展を推進し、日本との間の二国間関係を推進してきて、その結果として、多くの日本企業が東南アジアに進出することによって、また莫大な利益を得ることができたのではないか。そういう意味においては、ODAがそれなりに寄与してきたことは間違いない、私が申し上げている国益というものの中に、当然、国民の生活、そしてまた国民の経済の繁栄という側面も入っていますから。
 しかし、今論じている国益というものは、ただ単に経済的な利益のみならず、一億二千六百万人の生命をどのように守ったらいいのかという安全保障の側面も強く浮かび上がってきているのだろうというふうに思うわけであります。
 この数年における日本のODAというものは、先ほど来議論されているとおり、いろいろな角度から見直しが議論されている。そしてまた、外務省内においてもいろいろとやられているかもわかりません。しかし、いつになったとしても、日本の外交政策の根幹をなすODAだという言葉だけは乱舞しておりますけれども、具体的な日本の外交政策の方向性なり、また国益を守る外交とは一体どういうことなのかということについては一切方針が示されていない。そういう中で、この独法化の議論が出てきているのだろうというふうに思うのです。本質がどこかに行っちゃっているわけであります。
 そういう次元から考えたときに、昨年の九月十一日以来、ある意味で、世界じゅうで、いわゆる政府開発援助あるいはまた援助に対しての考え方が、国際的な潮流としても大きく変わってきていると思います。アメリカにしてもあるいはまたEUの国々にしても、もう一度改めて、国際社会の不安定な状況を踏まえた上で、この援助問題というものを取り上げよう。
 日本の場合、そこで議論されることは何かといえば、額の問題だけになってしまうわけであります。ともすれば、日本の提出するODAが、世界各国の極めて、まあ、ずるいと言ってしまえばそれまでなんですが、国際政治にたけた人々がいろいろな国々に出てきて、できることならば、日本から提出されるお金をうまく利用して、そしていろいろなビジネスをやっていこうという動きも出てきているわけであります。
 そういう側面からすると、日本の政府として外交政策をどういうふうにしていったらいいのか、そしてまた、それとの関連におけるODAというものをどういうふうに考えていったらいいのかということを、今こそ至急に結論を出していかなくちゃいけないんだろうというふうに思うわけであります。
 先ほど申し上げましたとおり、東南アジアを中心にして、日本のODA政策というのはそれなりの効果を示したかもわからない。しかし、昨今における状況、とりわけ冷戦構造崩壊後の状況、また、近年におけるODA政策というのは必ずしも僕はうまくいっていないのではないのかというふうに思います。
 例えば、より具体的な形でもって質問させていただけば、対中国への膨大な日本のODA資金、一説によれば、政府の無償資金だけでも三兆円、あるいはまた、有償まで入れればプラス三兆円されて六兆円というふうになっている。しかし、そのことを踏まえた上で、日中関係というのは本当にうまくいっているんですか。今、中国市場に向けて全世界が、大きな市場ができたということで、我先に市場進出しております。本来、日本のODAが功を奏しているとするならば、今こそ日本の企業が中国において、本当に国から守られた形でもって進出しながら、そして種々の事業が、ある意味で芽を吹き、花が咲けるような状況にしていたとしてもおかしくないんだろうと思います。
 基本的には、これはODAの原則にもかかわってきます。一九九二年だったと思いますが、ODA大綱が出され、あの四つの諸点を踏まえた上で、二国間関係等を総合的に勘案した上でODAを実施していくんだ。ことごとくODA原則に反してきたのが、僕は、対中国に対しての日本のODAだったんじゃないのか。
 昨今見られるとおり、例えば、最近の例でいけば、先日行われましたAPECの会議において、江沢民当時主席から、小泉総理の靖国神社問題に対して、行くな、行くべきではないと、内政干渉まがいのことを言われながら、あるいはまた、瀋陽事件に見られるような形でのあのような応対をし、その後、日本の外交というのは対中国に対して一体何をやっているんですか、そういう思いも出てきていると思います。あれだけの援助をしておきながら、一部の日本の有識者の間、一部の人たちの間には、嫌中感というものも大きく巻き起こってきております。
 日中友好三十周年のもとに、一万人以上の方々が中国を訪問し、国会議員の方々も何百人行ったというふうに聞かれておりますけれども、それは形だけの問題でありまして、基本的に、日中間の状況を見たときに、嫌中感が漂い、そしてまた、本当にこれでよかったのかということが改めて今出てきているんだろうと思いますが、最近におけるODAの、対東南アジア、アジアで構いません、とりわけ対中国に対して、それは成功したと外務大臣がお思いになられるものがあるとするならば、ぜひ教えていただきたいというふうに思います。
川口国務大臣 まず、前提として委員がおっしゃられました、今の時期、我が国の外交政策あるいはその考え方とツールであるODAの関係が明確であるということは非常に大事なことだと私も思っておりますし、それを明確にする努力を、まだ十分ではないかもしれませんが、これもいたしております。例えば、私は九月に読売新聞に投稿しましてそういう考え方を出しておりますし、この間の経済財政諮問会議におきましても、その点についてはきちんと説明をさせていただいております。
 ですから、それがないということでは決してございませんで、あるいは見え方は十分でないかもしれませんけれども、それはきちんと踏まえております。先ほど統括的に御説明をすることが必要ならばと申し上げたのはそういうことでございますけれども、時間も限りがございますので、ここでは省かせていただきますけれども、きちんとそうした我が国の外交戦略、政策、アジアが大事、あるいは委員もおっしゃったように安全保障の観点、それから、例えば国際社会の責任ある一員としての人間の安全保障、そういったさまざまな観点を踏まえて、ODAはそういうことで使っているという考え方で、そういうつもりでおります。
 それで、中国に関してでございますけれども、我が国の隣国、非常に人口の大きい中国に対して我が国がODAをどのような考え方でやっているかということを明確にすることは大事なことだと私も思います。そして、その考え方というのは、中国が安定的に発展をして、そして日中の関係が友好的に発展をしていくということは、我が国にとっても重要でございますし、それから、我が国のみならず、近隣のこの地域の国々、これにとって非常に大事であるということが考え方の基本であると思います。
 そういう考え方に基づきまして、我が国としては、これはODA大綱というものを持っておりまして、中国の援助の需要ですとか、あるいは経済社会の状況ですとか、あるいは日中の二国間関係を総合的に勘案をいたしまして対中の経済協力をやっているということでございます。
 委員がおっしゃったような、中国の経済発展に対する我が国の見方、そして厳しい我が国の経済状況、財政状況、そして中国が軍事費を増大している、あるいは第三国に援助をしている、そういったことを背景として、我が国の中国に対する見方は非常に厳しいものがあるわけでございますが、昨年の十月にこの点について対中国経済協力計画を策定して、新しい対中経済協力方針を打ち出したわけでございます。
 これに基づきまして、我が国としては、一件一件案件を精査して、その上で中国に対して支援をしている。今までと違って、単年度でこれを考えていくということでやっておりまして、その結果、総合的に検討しました結果、我が国の中国に対する援助の規模、これは平成十三年度でございますけれども、円借款について申し上げれば、前年度比約二五%の減額になったということでございますし、その金額のうち、五四%、半分以上が環境分野である、そういう形になっております。
 中国に対していろいろな見方はあると思いますけれども、中国が経済協力のみで我が国に対する考え方を変えることができるかどうか。これは、いろいろな要素が日中の両国関係には働いているわけでございますし、中国に対する経済協力を考える上でやはり基本的な問題として踏まえていかなければいけないことは、先ほど申し上げましたもろもろのことに加えまして、中国の多くある人口のうち約二億人が依然として一日一ドル以下で生活をしている、そういう国であるということであるかと思います。
東(祥)委員 僕は極めて機微な問題だと思いますけれども、しかし、日本のODAの極めて大きな部分が中国に投下され、そして、その結果として今の二国間関係がつくられているんだろうというふうに僕は思います。その意味において、あえて中国という名前を出しながら申し上げさせていただいているわけでありますけれども、大臣のお考えで、日本のODA、対中国というのは成功だったと思われますか。
川口国務大臣 先ほど申し上げましたように、中国と我が国が平和で友好的な関係にあるということは、我が国にとっても、この地域にとっても非常に重要なことであると思います。
 そうした観点から考えますときに、中国がこれだけの経済発展を、国の一部であると思いますけれども、遂げ、そして世界の中の、国際社会において責任のある国として今活動をし始めているということは、我が国の経済協力がまさに成功した、そういう証左であると私は思っております。
東(祥)委員 ODA大綱の第三番目にあるわけでありますけれども、先ほどの外務大臣の御指摘の中にもありました、中国で約二億人の方々が一ドル以下の生活を強いられている。しかし、中国は他方において、大量破壊兵器、ミサイルの開発・製造、武器の輸出入等、存分にやっているわけであります。
 そしてまた、射程距離からいくならば日本が十分入る東風という、東という名前をつけているので僕は非常に不愉快でありますけれども、東風という、北朝鮮におけるノドンと同じような型のものも一生懸命開発しているわけであります。
 本来、中国は、自国の国民の生活を豊かにしていくとするならば、そういう部分を横に置いておいて邁進させるということも、日本政府として中国側に言っていかなくちゃいけない問題であり、一方における軍事開発を横に置いておいて、日本は、大綱の中にも書かれている基本的な理念、発展途上国における一人一人の国民の生活を何とかして支援していってあげようと。それはとうといことでありますけれども、その結果として、将来、国際政治上の戦略的な地位がどういうふうに変わってくるかもわからない。
 それを横に置いておいて、一生懸命支援します。その結果として、日中間における関係が、このように国際社会における日本の意思がちゃんと中国側にも伝わっていくようになっていますということならば話は別でありますが、私はどうも、国際場裏の中で見ている限り、そのような形ではいっていないんじゃないのかと思います。
 そういう意味で、またこのことについては今後いろいろ議論もさせていただきたいというふうに思いますけれども、瀋陽事件の対応にしても、何をやっているかさっぱりわからない。中国の大使を召還させるという日本の意思も明らかにすることがない。あるいはまた、瀋陽における総領事だった人が今どこかに行ってしまっている。それもみんな、外務大臣も御存じのことでしょう。
 対中国に対しての日本の意思、つまり、私から申し上げれば、国益というのは、利的な側面のみならず、政治、そしてまた、ひいては、究極には、国民の生命財産をどのように守っていくのかというものを外務大臣自身がもっと言っていただかない限り、国益を果たそう、国益を追求していく外交といったとしても、それは絵にかいたもちになってしまうわけであります。
 それに関連して申し上げさせていただきますけれども、今の北朝鮮との日朝国交正常化交渉のかかわり合いの中で、ある意味で金正日総書記のうそに基づいてつくられた共同宣言でございますが、そこの第二項目めに、日朝国交正常化交渉が終わった後、いわゆる経済協力をするというふうに書いているわけでありますけれども、基本的には、御案内のとおり、北朝鮮というのは、我々の知る限りにおいて、国民の生活を犠牲にして、そして軍備を増強し、他国に対しての脅威を与えてきた国であります。
 日朝国交正常化の内容が、拉致問題並びに過去を含めた上で安全保障の問題を解決しない限り、日朝国交正常化ができないというふうに強く私は思いますし、また政府もそのスタンスを崩していないんだろうと思いますが、基本的には、政府開発援助という視点からいくならば、たとえこの拉致問題あるいはまた核開発の問題、安全保障上の問題が一見クリアになったとしても、すぐさま経済協力というものはできないんではないのか。あるいはまた、人道支援という側面から考えたとしても、国の大半の資金を国民の生活の犠牲の上に軍事費に投入してきた国でありますから、すぐさまそういうことはすることもできないんだろう、こういうふうに思いますが、この点について、外務大臣はどのように思われますか。
川口国務大臣 日朝平壌宣言に、委員がおっしゃられましたように、「国交正常化の後、双方が適切と考える期間にわたり、」云々と経済協力について触れているわけでございますけれども、小泉総理と金正日国防委員長が話をいたしましたときに、双方はそれぞれ日朝平壌宣言を遵守して交渉を行っていくということを約束しているわけでございます。この国交正常化の交渉あるいはその後の過程において、双方が日朝平壌宣言を守っていくということは非常に大事なことであるわけです。
 そして、私どもは、これは北朝鮮に対しては何度も言っていますけれども、日朝平壌宣言が遵守をされない状況、これは委員がおっしゃったような拉致問題も、そして安全保障問題、これは核兵器に関する開発の話ですとかあるいはミサイルの問題ですとか、さまざまなことを含みますけれども、そうしたことについて日朝平壌宣言が守られていないという状況であれば、これは正常化交渉は妥結をしないということでございまして、それは先方にも重ね重ね伝えているわけでございます。そうしたことで、その上で日朝平壌宣言に基づき交渉を行い、そしてその後も、基づいて北朝鮮との関係をやっていくということは我が国の政府の方針でございます。
 それから、先ほどODA大綱等について、中国側に話をしていないのではないかというお話がございましたけれども、これは、例えば軍事費については透明性を増すことが必要であるということは今まで中国側に対して伝えておりますし、私自身、この前中国に参りましたときに、私自身の口からこのことについても中国側に対しては話をしております。
東(祥)委員 もう時間がないので。
 ODA大綱というのは、今見直し作業が進んでいるというふうに聞いているんですけれども、今まで何年かにわたるこのODA大綱に関しての国会での質疑を見ていたとしても、明らかに無理があるんだろう。
 つまり、この第二項目めの原則、その原則が四つあるわけでありますが、三つ目と四つ目において、日本が援助する被援助国において、いわゆる軍事費に一生懸命つぎ込んでいながら、あるいは大量破壊兵器やミサイルの開発・製造、武器の輸出入等をやっていながら、なおかつ二国間関係を総合的に考えてということで、この原則は無視されて、結局、二国間関係をどうするか、そういう視点でもって政治的判断がなされ、そして今日まで行われてきたという事象が幾つか、中国のみならずあるんだろうというふうに思うわけであります。
 この四つの原則、つまり、ODA大綱の主要な部分におけるメルクマールになるわけでありますが、大綱を変えるに当たっての、この部分に関しての外務大臣のお考えというのは、変えていく方向にあるのか、それとも、これはこのままにしておいて、アップ・ツー・デートに何か別のものをつけ加えていこうとするのか、その点についての外務大臣のお考えを聞かせていただきたいというふうに思うんです。
川口国務大臣 このODAの大綱は、平成四年に閣議決定されたものでございまして、ほぼ十年ぐらいたっているということだと思います。今、世の中、物事の変化が非常に激しゅうございますので、十年ぐらいたったものについては、いずれにしても、変える必要があるか、あるいはどこを変えるかといったことから見直していくということは大事であると私は思います。したがって、外務省としては、この見直しの作業をしたらいいではないかというふうに思っております。
 ただ、具体的に何を変えるか、どういうふうに変えるかということについては、これは大勢の方の御意見、いろいろおありだと思いますし、私も今の段階では大勢の方の御意見をじっくり伺わせていただきたい、そういったことをベースに考えていきたいと思っております。
東(祥)委員 外務大臣、いろいろな方々の御意見を聞くというのは大切なことだと僕も思います。
 しかし、外務大臣は、少なくとも総理のもとにおける外交の最高責任者であります。自分自身の方針を決めるために多くの皆さん方の御意見を聞く必要があるのか、決めた上で、なおかつ自分自身が考えていることが果たして正しいことなのかどうなのかを検証するために聞くのか、雲泥の差があるわけであります。
 今申し上げました、いわゆる日本の外交政策の重要な手段でありますこのODAの大綱一つ取り上げたとしても、大臣みずからが、これはこういうふうに変えていく必要があるんだということがない限り、それはなかなか変えようと思ってもできないんではないのか、私はそのように思うわけであります。いかがですか。
川口国務大臣 これは閣議で決定をされる内容のものでございます。私としては、外務大臣として、こういうことはどうだろうかということは幾つか考えておりますけれども、そういったことを今の時点で申し上げるということは適切ではなく、その考え方を、いろいろな方の御意見を聞いて、その御意見を踏まえて修正をしたり、あるいは修正しなかったり、いろいろなことをプロセスを経て大綱というのは決まっていくものであると思っています。
東(祥)委員 時間が参りましたので、一言だけ。
 今、外務省もそうなんですが、一つの重要な問題を決めるに当たって、だれが、どこで、何を、どのように決めたかというプロセスが全くわからなくなってきているわけであります。外務省には、総合外交政策局というのがあります。そしてまた、地域局もあります。法務局であります条約局というのもあります。日本の政府の方針を決めるに当たって、どこで、だれが、何を、どのように決めたのかということを常に明確にできるようにしておいていただきたいということを申し上げて、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。
保利委員長 午後一時二十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時九分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時二十分開議
保利委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。井上喜一君。
井上(喜)委員 保守党の井上喜一でございます。
 独立行政法人の法案、四十六本がかかっておりますが、いよいよきょう、締めくくり総括が行われて採決の運びになっておりますけれども、私は、これまで当委員会におきましていろいろな議論がなされまして、そういった議論を聞いておりまして、私なりの感想を申し上げ、これに対して石原大臣のお考えをいただければ、こんなふうに思います。
 独立行政法人といいますのは、昨年、特殊法人の改革の基本法が成立をいたしまして、それをもとに特殊法人あるいは認可法人のすべての見直しが行われたわけでありまして、あるものは民営化する、あるいはあるものは廃止をする。大部分のものが独立行政法人として今回法律にまとめられて今国会に提出がされた、こういう運びになったと思うのであります。
 特殊法人につきましては、いろいろなことが言われております。私は、悪いことばかりじゃなしにいいこともたくさんあると思うのでありますけれども、主として議論になりますのは、その悪い側面だったと思うのでありまして、これは率直に検討して、直すべきは直していかなきゃいけない、こんなふうに思います。よく言われることに、非効率あるいは自己増殖、不透明、見直しが十分に行われない、こういったことが言われてきたわけでございますけれども、私は、議論を聞いておりまして、しょせんは運用だと思うんですよね。
 いかに独立行政法人になりましても、運用に適正を欠けば、結局今までと同じように単なる衣をかえただけだ、こういうことになろうと思いまして、国民の期待にこたえて運用をいかに透明に公正にやっていくか、これが大切だと思いますけれども、これにつきましての大臣のお考え、また、そのためには、いわゆる所管官庁あるいは独立行政法人に移行します法人の職員の意識改革、こういったものが必要だと思うんですけれども、あわせてお考えをいただきたいと思います。
石原国務大臣 ただいま井上委員が御指摘のとおり、幾らすばらしい制度をつくっても、運用部分が不十分であれば絵にかいたもちに終わるのは言うまでもないことだと思います。
 そこで、定期的な評価を行っていただくための評価委員会を設けたり目標管理をしたり、あるいは企業会計原則を導入することによって、委員御指摘の透明性というものをまた担保していかなければならないと考えております。
 さらに、委員が後段御指摘された点が実は一番重要で、やはり働く方あるいは長の方の意識がこれまでのままであると、実はこれまた全く変わらないおそれがある。先般も、総理のもとに、意識改革が重要であるということから、特殊法人等の役員を任命するときには、徹底して改革意欲を持った人を任命するようにというような指示もいただいたところでございます。
 これからは、まさに現場の意識改革をやっていきませんと、委員が御指摘された自己増殖といったようなことがまた起こってしまう。そこを十分フォローアップしてまいりたいと考えております。
井上(喜)委員 この独立行政法人四十六の中にも、中身の業務を見ますと、行政官庁がやっております仕事に非常に近い業務をやる独立行政法人もあれば、民間がやるのに割合近い仕事をしている独立行政法人もあるわけですね。
 例えば、国立競技場なんかは、私は、ああいうのを運営するのは民間であるとかあるいは公益法人でもできるんじゃないかなというような感じは持つのでありますが、一応この法律ではそういうものも独立行政法人が受け継ぐことになっております。これはこれとしまして、私は、やはりこれから定期的な業務の見直し、入れるべきものは入れていく、あるいは外に出すべきものは出していくような、それが必要だと思うのでありますけれども、これについてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
石原国務大臣 ただいま委員、個別の法人を出されましたので、個別の法人につきましては担当大臣にお話を伺っていただきたいと思うんですが、委員おっしゃるとおり、やはり定期的な見直しというものが本当に必要不可欠であると思っております。
 採算性が本当にとれているのか、とれていないのか、あるいは事業の意義自体が時代にマッチしているのか、いないのか。やはり、こうした見直しによりまして、民間にゆだねることが適切と判断した場合は、委員の御指摘のとおり民間に改めて任せるといったような、不断の見直しを行っていくことが一つの重要なポイントであると考えております。
 国民のニーズや社会の変化に柔軟に対応していくことができる組織、またそれをフォローアップしていくように努めさせていただきたいと考えております。
井上(喜)委員 何か御意見がありましたら、どうぞ。
遠山国務大臣 競技場等の施設の運営につきまして、個別に委託できるものは委託していくという姿勢でいきたいと思っております。
 ただ、日本の国の体育ないしスポーツの振興という角度から、今新たな形での法人としてお願いしているところでございます。今後とも、御意見を体しながら、努力していきたいと思います。
井上(喜)委員 本委員会の審議で、独立行政法人の業務運営の効率化ということが随分議論されたと思います。
 確かに、効率化というのは、組織のスリム化を図っていくとか、あるいは経費を節約していくということも効率化につながる場合もあると思うのでありますけれども、独立行政法人というのは、先ほども申し上げましたように、いろいろな業務を所管しておりまして、やはり十分に研究すべき、例えば試験研究機関なんかはそうだと思うのでありますけれども、効率化の名において中途半端にしますと、これは何にもならないわけでありまして、効率化ということをいいましても、きちっとやるべきことは充実してやっていくということが大切だと私は思うのであります。
 単に、経費を節約するとかスリム化する、そういう意味だけではなしに、もう少し幅の広い意味に効率化ということを理解していただきまして、より充実した業務が遂行できるように取り計らっていただきたいと思います。
 お考えがあれば、お聞かせいただきたいと思います。
石原国務大臣 これまでの議論で、私も、行革相という立場でございますので、効率化とか採算性を確保しろとか、そこの言葉の力が強くなってしまってさまざまな御意見も出てきたんだと思いますが、今回の仕組みの中では、業務運営の効率化に関する事項のほかに、ただいま委員が御指摘されましたような、国民の皆さん方に提供するサービスその他、業務の質の向上に関する項目ということで、効率化ではなく、サービスの質の向上などを含めた総合的な評価というものを盛り込ませていただいているところでございます。
井上(喜)委員 終わります。
保利委員長 次に、岩國哲人君。
岩國委員 民主党を代表して、行政改革全般について、総理初め担当大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
 まず最初に、小泉総理の就任以来、改革について非常に熱意を燃やしていらっしゃる、国民も、また我々も大変期待しているところでありますけれども、改革といいましても、中身は改悪から改革までいろいろありますし、方向もいろいろ違っております。そういった点につきまして、最近の特殊法人を中心にいたしまして、総理自身が、どのような信念、どのような理念で日本の行政改革を指導しようとしておられるのか、その点についてお伺いしたいと思います。
 まず、この行政改革そのものについて、最近は、道路公団の問題にしましてもあるいは特殊法人の問題にしましても、一般の国民には、組織をくっつけたり離してみたり、その場その場で、説明を聞いても、一体それが国民の生活にどれだけプラスになるのかよくわからない。行政というのは、私は、本質的に国民の暮らしに一番身近なものであるべきだと思っております。例えば、役所仕事をどのように改善していくのか、どれだけコストが下がるのか、どれだけサービスが上がるのか。
 そういった点について、今から十年前でありますけれども、アメリカのフォーブスという雑誌が特集を組んでおりました。これは、サービスは下がる、税金は上がる、何事だと。タイトルは「アンフェア」、これはデモ行進ですけれども。アンフェアというのは、日本の辞書には、公平でない、公正でないと書いてあります。しかし、アメリカ人の辞書には違ったことが書いてあります。ひきょうだ、ずるい、悪いと書いてあるんです。それぐらい意味が強いわけです。あの男はアンフェアだと言われたら、あの男は最低だという意味です。
 アメリカ人が何に対してひきょうだ、ずるい、悪い、最低だと怒っているのか。役所仕事に対して怒っているんです。税金は上がる、サービスは下がる、何事だと。税金を上げるならサービスも上げろ、サービスを下げるなら税金も下げろと言っているんです。当然のことだと思います。これは、一九九一年、まさに鈴木行革審が我が国においても行われたそのときと軌を一にして、アメリカにおいても役所仕事に対する不満が燃え上がっております。今回の特殊法人の改革につきましても、いろいろな努力がなされているとは思いますけれども、しかし、この結果として、どれだけコストが下がってサービスが上がるのか。
 あるいは、いわゆる役所仕事、一般にはお役所仕事と「お」の字をつけて敬語でもって言われていますけれども、実際には、あれは敬語ではなくて軽べつ語だと思います。私が出雲市長に就任したときも、お役所仕事、お役所仕事と皆さんが「お」をつけておっしゃいますけれども、お役所仕事と言うときには、あの仕事はいい仕事だ、お手本にしなきゃいかぬ、神棚に上げて拝まなきゃいかぬ、そういう意味ではなくて、あの仕事は最低の仕事、まねをしてはならない仕事、一番能率の悪い仕事。日本語の中で、「お」がついて敬語にならないで軽べつ語になっているのはあの言葉だけだということがわかりました。まさにお役所仕事の改革が必要だと思うんです。
 総理、そこでお伺いいたします。
 もう少し、日本の行政の一般の納税者に一番身近なところで、なるほど、小泉改革で役所の仕事はこんなふうに変わり出したと思わせる一つの点は、窓口サービスの改善もあると思います。もう一つは、年号を、いつまでも、やれ平成だ昭和だばかり使わないで、二十一世紀になって、もっとわかりやすく、よその国と同じように西暦を使ってみせる。役所の文書から変わり出した、これも一つの国際化であり、文書の合理化にもつながっていくと思います。
 総理自身は、こうした役所の業務の改善、合理化、能率化あるいは国際化という観点から、西暦を使うということについてはどのようなお考えを持っていらっしゃいますか。昭和五十三年から平成五年までこの事業はかかりました、はい、何年かかりましたか、そのたびに、ありもしない昭和七十何年かなんかに換算して、それからまた引き算して、それでやっと答えを出す、いつまでこれを続けるんでしょう。役所の文書ぐらいは西暦をきちっとつけることぐらい、私は国を挙げて、そのようなわかりやすい行革、わかりにくい行革は国会でやる、わかりやすい行革はまずやれることからやってみせる、そのような方向が、行革というのは、こういうわかりやすい、そして、一般の生活に身近なものなんだということをわからせる上で、私は大切なことだと思います。総理の御所見をお願いいたします。
小泉内閣総理大臣 元号と西暦、これは西暦だけに統一すれば確かに簡略化という面はあると思いますが、元号というのは、我が国において、長年、伝統と歴史があります。また、国民にとっても、多くの国民が、元号に対して、否定的というよりも、むしろ愛着を持っている。そういうことから、我が国においては元号法というものも制定されて、現在でも、明治の時代、大正の時代、昭和の時代、平成の時代と、事あるたびによく取り上げられるということであります。
 そういうことからしまして、私は、両方使われていいんじゃないか、元号が使われているから特別に支障があるということでもないと思っております。
 また、西暦ということになりますと、これはキリスト教に関係する一つの年号の使われ方でありますが、これは今現在、世界的に用いられていることでありますが、一方では、西暦だけでもないということもあると思います。それぞれ国には歴史があり、宗教があり、伝統があり、そういうことから、日本の独自の歴史、伝統を大事にしながら世界の普遍性にも注目するということが大事ではないかな。私は、殊さら、元号を廃止して西暦に統一すればすぐ便利になる、また、便利になればそれでいいという問題でもないと思っております。
岩國委員 そうした、元号にこだわるということではなくて、外国へ行けば、この日本の元号制度の歴史そのものは総理も御存じだと思いますけれども、もともとは北東アジアで始まって、今中国と言われる地域が使い、今朝鮮半島と言われる地域が使い、そして我が国に伝来し、そして、後ろを見たら、いつの間にか朝鮮半島も中国も全然元号を使っておらない。今、このアジアの中で、日本だけがまだ元号を使っておる。
 もちろん、総理のおっしゃるように、日常生活その他のところで区切りをつけるという点では便利な点もありますから、私は併用すべきだと思うんです。朝日新聞でも読売新聞でも、ちゃんと西暦と年号と併用して、それで一向に抵抗もなければ、むしろその方が便利がいいと。私は、日本の公文書も、一般に読まれている、ほとんど多くの人が読んでいる新聞と同じように、そういった併用するということから始めた方がいいと思うんです。
 何も年号制度を廃止しろとかいうことではなくて、また、今たまたま、西暦はキリスト教云々ということをおっしゃいましたけれども、確かに出発点はそうかもしれません。しかし、世界のキリスト教でない人は、みんなそれを受け入れて使っているわけです。
 では、日本は年号を使っているんだったら、日本人は何教なんですか。ちょっと総理のお考えを聞かせていただけますか。西暦を使っている人はキリスト教だったら、年号を使っている日本人は何教なのか。
小泉内閣総理大臣 日本人は、キリスト教信者もいるし、仏教信者もいるし、イスラム教信者もいるでしょう。やおよろずの神、家庭内には神棚もあるし仏壇もある、クリスマスになれば教会にも行く、お正月になれば神社にも行く、極めて融通無碍といいますか、非常に宗教に関しては寛容な国民だと思います。
 一番多いのは仏教で、やはり先祖を大事にするという面が一番多いのかなと思っております。
岩國委員 そのように、何教かよくわからない、雑教なのか、混乱教なのか、仏教なのか。
 仏教の場合には、特にこだわった年号というものはないわけですから、私は、日本の場合には、西暦を文書の中で使っていくということについてはそれほど大きな抵抗はないし、デメリットがないんであれば、むしろ、今後の能率化、そういった点から、まず西暦を併用する、少なくとも原則は西暦にする、そういったところから、役所仕事は変わったんだ、文書は変わっていったんだ、これが行政改革の一環なんだというふうに持っていくべきではないかと思います。
 次に、行政サービス、特に窓口サービスについて、多くの役所は土曜日も日曜日も閉めております。しかし地方の、特に地方自治体においては、月曜日から金曜日の間になかなか行けない、最近は共働きの御夫婦もふえています。出雲市は、平成元年からずっと、土曜日、日曜日、窓口をあけて、あけてあけてあけっ放し、一遍も閉めたことはありません。市民の皆さんから喜ばれている。
 土曜日、日曜日、窓口をあけて、職員の数をふやしたか。職員の数は減りました。なぜ減ったか。土曜日、日曜日、サービスつき、ショッピングつき、駐車場つき、そういうショッピングセンターでやっていますから、便利がいいから月曜から金曜日のお客さんが減る。減った分だけ、十人並んでおったカウンターの職員が七人で済む。出雲市役所が今でも三割少ない七割の職員で十割の仕事をやっているのは、土曜日、日曜日あけているからなんです。
 閉めれば閉めるほどコストは安くなる、それは行政の世界には必ずしも通用しません。極端に言えば、月曜だけあけてほかは全部閉めてみたら、月曜おいでになるお客さんを対応するのにそれだけの職員を採用しなけりゃならない。閉めれば閉めるほどコストは上がるんです。出雲の実験の場合には、土曜日、日曜日あけたために、少ない職員でそれだけ対応ができる、五日分においでになるお客さんを七日分に平準化することになりますから。サービスはふやす、コストは減らす、それが実現できています。それだけ、当然ふえていくはずだった人件費もふえないままに、ふやすべきだった職員の数もふやさないままに、同じ規模の予算の自治体に比べて七割の職員でやれるのは、土曜日、日曜日もあけて、お客さんをそこで対応しているからなんです。
 こういうわかりやすい、一般市民に、納税者に、なるほど役所がサービスよくなった、だからお役所、役所は役に立つところと書いてあるんだ、お役所仕事というのはこういうことかと思わせるような、それが私は本当の行革じゃないかと思うんです。
 例えば道路公団の改革にしても、上下一体、上下分離、一体それがわかる人がどれだけいるでしょうか。私の世田谷でも、百人にせいぜい二人ぐらいなものです。どこへ行っても、百人に一人もわかる人がいないぐらいのところです。上下一体と上下分離のどちらがいいか、そういうわかりにくい行革よりも、私は、もっとわかりやすい行政改革、役所仕事の改善というのはこういうふうに進めているんだということもわかってもらうこと、私はそれが、地味ではあるけれども、取り組むべき一つの大きな課題だと思います。
 この間、石原行革大臣にも同じ質問をいたしました。残念ながら、石原大臣はそれほど熱意がありませんでした、こうした役所仕事の改善ということについては。
 しかし、大きな行革という仕事に取り組む以上は、私は、一般の納税者、市民の皆さんに、ああ、役所仕事は小泉さんになってからこういうわかりやすいところが変わってきたんだと理解していただくこと、それが政治にも行政改革にも関心を持っていただくことだと思いますけれども、総理、ぜひ、そういった窓口サービスに至るところまでも行政改革をさらに徹底していくというお考えがおありかどうか、御所見をお聞かせいただきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 ただいま御指摘の点、サービスをいかによくしてコストを下げるかというのは、行政改革におきましても大事な視点だと思っております。
 組織論あるいは制度論のほかにも、運用論、これは大事だと思っております。現に、中央の役所よりも地方自治体の役所でかなりサービスがいい点もあれば、それを見習うべきだと私は思っております。あるいは、役所の仕事、役人がやる仕事と民間人のやる仕事におきましても、民間人の仕事の方がサービスがよくて効率的であれば、当然それに委託していけばいい。現に、地方自治体においてはそういう市があります。
 私自身も、そういう市のいい点を見習って、中央でもいいところはどんどん取り入れていくべきでないかということを指示しておりますし、今言われたように、土日窓口をあけてかえって負担が軽減されているという点は、これから大いに参考にしていくべき課題であると思っております。
岩國委員 平成元年、総理が当時厚生大臣として出雲市を訪問していただきましたときに、出雲市が始めた総合福祉カード、ICカードを使ってこれからの診断あるいは治療をもっと合理化していこうという試み、総理は、率先して厚生大臣としてもこういったことは応援していきたいと。私はそれを、小泉厚生大臣のそういった行政改革、役所仕事にチャレンジしていく、そういう精神と受けとめて、大変感銘を受けたことがありました。
 ぜひこうした、中央省庁の改革だけではなくて、地方分権の時代だから地方の自治体のサービス改善は地方に任せる、そういう態度ではなく、私は、国も地方自治体も一体になってそういう行政に対する信頼感を取り返すこと、そして納税者の不満を解消していくこと、そのためには、できることから、役所は変わってきた、役所は工夫してくれた、サービスがよくなったということを思わせるようなこともぜひ並行してやっていただきたいと思います。
 残念ながら、国の財政健全化のためには、これからどうしても納税者の皆さんにはいろいろな負担をお願いしなきゃならない時期を迎えているがゆえに、私は、そういった役所仕事に対する信頼感を回復するためには、総力を挙げてきめの細かい指導も地方自治体にはなされるべきだ、そのように思います。
 例えば、道路問題の改革についてお伺いいたします。
 先ほど、上下一体、上下分離、我々国会議員でもなかなかどちらがいいかよくわからない、あるいは、ああいう諮問会議、顧問会議でやっていらっしゃる、発言していらっしゃる方も、どっちがいいかよくわからないで発言していらっしゃるんじゃないかなと失礼ながら思うことがあるわけです。
 道路というものは、この間同じ質問を石原大臣にいたしました、道路は基本的には無料で開放すべきものだと石原大臣もおっしゃいました。私も同じ考えです。納税者の税金でつくり、そしてアメリカでもドイツでもイギリスでも、全部無料で開放しています。だからこそ自分たちの税金が生かされている。自分たちの道路を自分たちが無料で走る、これは当たり前。だからアメリカは、無料だからフリーウエーと言っています。日本は高いからハイウエーと言っています。同じ高速道路でもこれぐらいの格差があるわけです。ハイウエーと呼ばせるから、納税者から見たら税金が高いという意識にどうしても結びついていくんです。
 国が高速道路、基本道路をつくるというのは、私は国の義務じゃないかと思います、国土防衛の点からいっても、あるいは災害に対応する点からいっても。阪神大震災のときもそうでした。あのときに日本海側にもっと立派な高速道路があれば、あの九号国道という細々とした道が役に立ちましたけれども、いざ災害があっても安心だ、国土を防衛する上でも安心だ、自衛隊がすぐにどこへでも移動できる、そういう国土防衛のために、災害対策の上にも、基本的な高速道路は国の責任で国がつくるというのは、これは国家の一番大切な義務じゃないでしょうか。
 それを銭もうけのために、もうかるからつくる、もうからないからつくらない、まるでこれは商人国家みたいなものです。私は、しっかりと道路をつくり、つくった上は無料で、毎日毎日戦争をやっているわけじゃありませんから、開放すべきだと思います。アメリカもあれだけ立派な高速道路をつくり、戦争の好きなブッシュさんでも毎日戦争をやっているわけじゃありませんから、フリーで、無料で開放しているわけです。
 道路は国民の手に返す、野球でいえば直球でノーバウンドで国民の手に返してみせる、それが小泉さんらしいわかりやすい改革だと私は思いますけれども、いかがですか。
小泉内閣総理大臣 それは道路も、税金なり国民の使用料なりで負担し、また新たな道路をつくっているわけであります。基本的な道路はただであれば一番いい、これにこしたことはない、同感であります。
 しかしながら、どうやってつくるかということが問題なわけであります。また、どこが必要か、だれが負担するのかという問題から、ただでつくって利用者も負担しないで済めばいいんですけれども、そういうわけにいかない。今の道路公団方式だと、必要性ばかりが叫ばれる。どの地方に行きましても、税金の負担がないということになれば、みんなつくってくれ、つくってくれと言うのは当然だと思います。しかしながら、回り回って、一体この負担をだれが払わなきゃならないのかという問題が出てきたわけであります。
 そういうことから、今道路公団の問題も、このままで将来の負担はどうなってしまうのかという大きな懸念が出てきた。改革が必要だということで、今、民営化論議がなされております。年内には、推進委員会、七人の今委員が熱心に議論をしていただいております。その結論を尊重して、民営化会社になった場合に、民営化会社がどこまでつくるのか、民営化会社がつくれなかった場合はだれが負担するのかという問題、それと必要な道路はどこかという問題、いろいろ出てくると思います。そういうのを踏まえて、必要な道路はつくる、だれが負担するのかという点もしっかり見きわめながら考えていかなきゃならない問題だと思っております。
岩國委員 この道路問題だけを議論するわけにいきませんけれども、そうした立派な道路を税金でつくって、高速道路、結局、最近の新聞を見てびっくりしましたけれども、「トラック業界が「節約指令」」、とにかく高速道路を使わないで下を走れ、ひたすら下を走れ、こういう指令をトラック業界が出している。したがって、立派な高速道路、道路がほとんど車を運んでおらないわけです。道路が車を走らせないで楽をしている。これを道楽行政というんです。税金を使ってこんな道楽をやっている暇はありますか。
 つくった以上は、できるだけ多くの、道路、車を走らせる。極端に言えば、私の持論ですけれども、無料で走らせる。車が動く、人が動く、物が動く、サービスが動く、だから景気がよくなる。そういう、高速道路の料金を取って商売をしようというのは、私は、失礼ですけれども、けちな根性だと思います。ましてや、国民の公共財を民間会社に売りつけて、民間会社に道路を使って商売させる、どうしてこんな発想が出てくるんでしょう。
 道路は国がつくる。つくった以上、無料で開放する。だから、日本の中を物が動く、人が動く、車が動く。だから景気がよくなる。景気がよくなれば、増収という形で税金の収入にはね返ってくることは、よく、十分考えられることであるわけです。
 そして、プリペイド方式で、ライセンスに、普通の車は年間四千円、そしてハイヤー、タクシーは年間三万円、トラック、大型バスは年間十万円、プリペイド方式で、高速道路料金を前払い方式。人間、前払いで払ったとなると、元を取ろうと思って三倍、四倍走るものです。そういうふうな発想を取り入れて、そして、それだけで二十年で三十八兆円の債務が返済できます。私のホームページに、民主党のそういった政策の中身も私は提案しておりますけれども、そういった債務返済を二十年間で確実に行う。建設費は、一般道路財源の二割を節約しながら、その中で高速道路はつくる。
 つくる方も、そして返す方も、きちっとした、まず高速道路は無料で開放するという前提で考えれば、いろいろなやり方が私は変わってくると思います。
 総理、ぜひ御検討いただきたいと思いますが、いかがでしょう。
小泉内閣総理大臣 それは、輸送機関がただであれば、国民は喜ぶのは事実だと思いますが、国鉄もJRになって、では、国鉄だから料金はただにできたか。そうじゃないですね。鉄道も輸送機関ですし、空港も輸送機関、飛行機もそうであります。そういうことから考えますと、私は、国でやるべき問題と民間でできる問題、いろいろあると思います。
 交通の問題としては、陸海空、総合的に考えるべき問題でもあるし、私は、必ずしも、民間でやったから料金を取るか、あるいは、国でやればただになるから、輸送量がふえて、それぞれの利便性が向上するか、一概には言えない問題ではないか。
 その都度、長年制度が立ち至っていく段階で弊害も出てまいります。その時点で、やはり見直すべき点は見直す必要があるのではないかという観点から、今、道路公団の民営化が論議されているわけでありまして、私は、民営化になった暁に、より負担の少ない、サービスの利便性、そして多くの国民が喜ぶような道路サービスというのはどうあるべきかという点は、不断に行われなければならないと考えております。
岩國委員 私は、この道路問題の混乱は、民営化という発想からすべての混乱が起きているように思います。道路は国民のもの。そして、国土防衛のためにも、災害対策のためにも、電車や汽車と比較することはもうやめていただきたいと思います。
 これは、人間の体でいえば血管そのものです。動脈を流れる血液が心臓から足へ行くのに料金を取る、そんなことはあり得ないことです。動脈、これは動脈じゃなくて金脈だと思っている人もいらっしゃるようですけれども、動脈である以上はしっかりと、私は無料で開放し、そして五体健全、全体の体が、物の動き、人の動きが十分になるような、そのような前提を置いてから、債務をどう返済するか、あるいは建設費をどう工面するか、そういう順序で考えるべきだと思います。
 次に、独立行政法人について、時間がなくなりましたけれども、質問いたしたいと思います。
 昨年発足した、五十七で発足し、今五十九法人、この役員ポストそれから職員の数、あるいは予算等々調べましたら、この中で、そういった予算規模、事業規模を減らしたところはわずか二カ所、それ以外は、まず役員のポストはふえているわ、職員の数はふえているわ、あるいは新規事業をふやしているわ、こういったものが非常に目立つわけです。
 こういった点については、今独立行政法人として新しく、四十六の法案に基づいて三十八ですか、新しい法人がスタートしようとしておりますけれども、まず先発組の五十七、現在五十九と言われているこの一年一組の通信簿、一年間たっての通信簿、これは合格とはちょっと言えないんじゃないですか。石原大臣、答えてください。
片山国務大臣 委員御指摘の五十七法人は去年やったものですが、これは、国の仕事そのものだったものを切り離して独立行政法人にしたわけですね。この一年一組の方は二組とは少し違うんですね。そこで、いろいろそれなりに努力して独立行政法人化したんですが、いろいろな議論があることは事実です。
 そこで、現在、それぞれの省の第三者機関である評価委員会が一応この一年の評価をしまして、それがそろそろ出そろいつつありますので、私の方で、全部集めて横断的にその評価を調整することになっておりますから、その結果を見ながら対応は考えていきたい、こういうふうに思っております。
岩國委員 結局、いろいろな法人をホッチキスでつけ合わせただけであったり、あるいは看板のつけかえだけであったり、あるいは、もう不要になった業務が、独立行政法人という新しい資格を得て、またそれから次々と事業を、減らす方向で見直すどころか、独立ということに名をかりてふやしてみたり、一年一組では大分行儀の悪い生徒がまじっておったんじゃないかと私は思います。
 したがって、今度一年二組でいく場合にはそういったことが起きないように、民主党としては可能な限りいろいろ精査し、そして、今回の四十六の法案について、それぞれ賛成、すべての法案について、全部精神的には行政改革のためには賛成したいところでありますけれども、いろいろな問題点があるがゆえに、お配りしましたように、我々としては賛成しかねる法案が二十三あるということを申し添えて、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
保利委員長 次に、都築譲君。
都築委員 自由党の都築譲です。
 久しぶりに小泉総理に質問する機会をいただきました。今回、特殊法人改革ということで四十六の法案が出されました。しかし、実質わずか六日間という、大変短い、限られた時間の中で、本当に審議が尽くされたのかという思いが私はいたしております。しかしまた、この限られた時間の中でも、随分多くの問題点が各会派から指摘をされたわけでありまして、私自身、これでは本当に改革の実は全く上がっていないのではないか、こんなことについて小泉総理に聞いていきたいと思います。
 今回の独立行政法人に改めていくということについて、正直申し上げて、例えば、役員の数とか、あるいは退職金の額とか、あるいはまた給与の額を少し削りました、これが改革の実効性です、こんなことを言われておりますけれども、では、それで本当に何になったのか、こんな思いがするわけであります。
 例えば、今、大きく政官の問題が取り上げられるときよく言われるのが、政官業の癒着の問題でありますし、また実際に官庁利権の温存の問題でありますし、あるいはまた、じきに、このままいけばすぐ非効率な構造になってしまいかねない。そういったものを本当にどうするんだろうか。
 そういったことを考えたときに、今回の改革自身が、私が考えるには、大きな政治行政改革あるいはまた社会構造の改革の中で、この特殊法人といったものの改革がどういう位置づけであったのか、それと同時に、どういうふうにほかの改革と関連をさせながらやっていかなければいけないのか、そういったビジョンが小泉総理初め担当の石原行革大臣にも全く欠けておったのではないか、こんなふうに思うのでありますが、いかがお考えでございましょうか。
小泉内閣総理大臣 人にはそれぞれの見方があると思いますが、行政改革の一環として特殊法人改革も重要だ。わけても、役所でやらなきゃならない仕事、あるいは役所でなくても民間でできる仕事、長年時間がたって廃止してもいい部門、あるいは廃止も、民間委託、民営化もできない、やはり役所本来の仕事という問題、いろいろ仕分けができると思います。
 そういう観点から、私は、特殊法人の改革の問題というのは、特殊法人の役員の数とか、あるいは人員の削減とか、給料の問題とかいうだけでなくて、いわゆる行政の改革、財政投融資制度、さらに郵政三事業の問題に結びつく非常に大きな改革だと思っております。
 そういう中で一番わかりやすいというのが、よく言われております特殊法人、今自由党は全廃せよという方針だと思いますが、それぞれの意見がありますから、今民営化なり廃止できないものは独立行政法人となりますが、今後見直していって、さらに、時代の進展に合わせて、廃止できるものは廃止する、あるいは本来役所がやるものは役所に吸収していく、あるいは民営化できるものは民営化していくということも、時代の進展に従って、これから独立行政法人になる法人も、そういう時代の趨勢をにらみながら見直しは行っていかなきゃならない問題だと思っております。
都築委員 時代の趨勢をにらみながらというふうなお話でございますが、私自身は、もう既に時代がここまで至り着いている、ここまで来てしまっている、そんな思いがするわけでありまして、国と地方の借金を合わせて七百兆円とか、あるいはまた今回の、例えば通常国会のときに見られた多くの政治家の腐敗あるいはまた口ききの問題、こういった問題を考えたときに、今、中央官庁に金と力が集中し過ぎている。それに業界も、あるいはまた地方公共団体も、みんな群がっている。そこに国会議員が口ききをする仕組みができ上がってしまっている。そういったものを今既に改革しなければならないときが来ている。
 そういう認識で、私ども自由党は、すべての特殊法人を全部やめてしまって三年間で片をつけろ、そして、どうしても本当に必要なものについては、もう一度必要ですということで法案を出し直してきてもらったら、それを一本一本丁寧に審議をして、そして、事業の必要性から、組織、人員の体制から、予算のつけ方から、あるいは事業の評価の仕組みまで、しっかりと議論しましょう、こういうことで提案をしたわけですが、今回四十六本どっと出てきて、六日間、八時間やったとしても四十八時間、一本一時間もかかっていないんじゃないか。
 実は、正直言って、私は何本か見ていますけれども、一問も質疑がなされていない法案がある。それは、みんなが満足しているわけじゃないんですよ。そこまで回る時間がないわけです。そんな状況で、本当にこれで改革になるのか、こんなふうに私自身は思うわけでありまして、野党の委員の皆さん方もみんな同じ思いで、しかし、大変重要な問題について集中的に審議をやっているから、忘れられてしまった法案は何かみんなオーケーだと。
 私なんか、国民生活センターとかあるいはまた万国博覧会協会とか、いろいろ質問させてもらいました。何でこれが全く民営化できないのか、あるいは、国が業務を吸い上げて、それを民間に委託するという方式でもっと効率化できるんじゃないか、単なる役人の天下りのポストをつくるためだけに実は独立行政法人に変えていくということで、本当に国民の信託にこたえるような改革になっているのか、また国会の議論になっているのか、こんなふうに思うわけです。だから、総理、ぜひそこのところを本当にお考えをいただいて、これからもまだやっていくというんだったら、しっかりとやっていかにゃいかぬ。
 ただ、私はちょっと皮肉なお話をさせていただきますが、実は、総理が道路公団の民営化ですったもんだし、また、郵政民営化の問題でこれまたすったもんだ今までしております。しかし、何か抵抗勢力だ守旧派だ、どうのこうのと総理がやるたびに、みんなおもしろくて、わあわあ言ってテレビにかじりついて見ておりますけれども、おもしろいだけでやがて悲しき鵜飼いかなじゃありませんけれども、実は事態はますます悪化して、ますます深刻になっているのじゃないか。その一つの例が、私は年金資金運用基金だと思うんです。
 この間坂口大臣とも、温厚な私が温厚な坂口大臣とやり合う羽目になってしまいましたけれども、実際に、小泉総理が厚生大臣のときに、年金福祉事業団をやめろ、こう言って、私はやめたと思っていたら、何か年金資金運用基金というものに衣がえして、資金運用からグリーンピアから全部そのまま引き継いでやっていた。
 では、過去の実績はどうだったか。自主運用を、この年金原資の百四十兆円のうちの四十兆円を運用させたら、累損が三兆円にもなっている。そして、ことしの四月から六月のわずか三カ月で、実に八千三百億円もの赤字をつくってしまった。
 八千三百億円といったら、繰り返しになりますけれども、いいですか、国民基礎年金、国民年金に加入している、いわゆる基礎年金の加入部分、十六万円です、年間。それの五百万人分の年金保険料をわずか三カ月間の運用でパアにしてしまった。一体だれが責任をとるんだといったら、理事長は相変わらずのうのうと給料を取って、そして退職金もたっぷりもらっていく。こんなことでいいんですか。あなた自身が責任をとるべきじゃないんですか、どうですか。
小泉内閣総理大臣 年金福祉事業団を存続させていたらもっと無責任体制になっていたんですよ、やらなくてもいい仕事であったから。だから、私は廃止すべきだと言ったんでしょう、全部廃止しろと。
 では、今廃止してどうなるのか。具体的な提案は歓迎します。ここは廃止できる、ここは民営化できる、自由党が具体的に提案していただくならば、これからも参考にしていきたいと思っております。
都築委員 正直申し上げて、私どもが提案をしておりますのは、そういった事務事業の全部の見直しも含めて、社会保障制度のあり方全部も含めて、実は「日本再興へのシナリオ」という中で基本政策として掲げております。だから、特殊法人の廃止といったものも、実は、政策的には社会保障制度をどう改革するかということで裏打ちをされておるわけです。提案はさせていただいております。
 だから、総理が時々、野党に対して、提案をしていただければ考えますと言う前に、まずあなた方の方が、それこそ百三十万人の国家公務員を抱えて、大シンクタンクを持っているわけですから、ぜひ堂々と改革の議論を進めていっていただきたい、こんなふうに思います。
 時間が参りましたので、私の質問を終わります。
保利委員長 次に、春名直章君。
春名委員 日本共産党の春名直章です。
 総理は、改革なくして成長なしと唱えられて、その一環としてこの特殊法人改革を提案されてこられました。しかし、この改革は単なる看板のつけかえだ、改革の名に値しないということが審議でも明らかになったのじゃないかと思います。そこで、私は、肝心の経済対策、不況対策について、端的に総理に御認識を伺いたいと思います。
 言うまでもなく、経済の内需を支える二大主役といいますのは、御存じのとおり、設備投資と個人消費です。中でもGDPの六割を支える個人消費の回復は、経済の再建にとって決定的な位置と重みを持っていると私は思います。ですから、私たちは、国民生活の再建なくして日本経済の再建なし、こう考えます。今国会でも、そういう立場から、新たな国民負担増政策を次々やれば、この日本の経済の再建ができない、国民生活の再建どころか破壊になる、こういう立場から論戦をしてまいりましたけれども、総理は、そこについて真剣に聞くという耳を持っていらっしゃいませんでした。
 私、最近、国民の生活がどうなっているかということを少し具体的に紹介したいんですが、これは十月十七日の日経新聞で、家計の過剰債務問題というのが特集されているんです。
 その中で、例えばクレジットカードの不払いなんですが、今まで比較的若者に多かったんですが、最近、働き盛りの四十代、五十代の人がどんどんふえていって、自己破産の申請件数が今激増して、ことし初めて、棒グラフですけれども、二十万件を超えるだろうという大変な予想がされているということなんですね。これは、失業で収入が突然減ってしまって払えなくなる、つまり突然死型の破産がふえているというのが特徴だというんです。
 それから、住宅ローンの返済の焦げつきがふえて、ローン残高の四割を占める住宅金融公庫では、公庫住宅融資保証協会が債務を肩がわりする代位弁済額、これが二〇〇一年度で二千七百億円、一万七千件、過去最悪を記録している。当然所得が激減をして、ローン返済の占める割合が所得の中で激増している。これがグラフなんですね。例えば上のグラフ、これはことしの八月なんですが、住宅ローンを返済している世帯の中で、どれぐらいサラリーマン世帯の中で返済しているかという割合なんですが、二四%まではね上がっている。これは八月単月なんですけれども、ぐんと上がっているわけですね。こんな事態になっている。
 それから、全国私立学校教職員組合連合会の調査では、私立高校一校当たりで平均十三・五人の方が学費を三カ月以上滞納して、理由に父親の失踪、死亡などを挙げるケースがふえている、こういう状況になっている。
 つまり、総理、今こういう国民生活の根本が脅かされるような大変深刻な事態になっていて、そのことが経済を立て直す上で足を引っ張っている、こういう御認識があるのかどうか、これをまず、基本認識ですのでお聞きしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 最近の経済情勢、厳しい状況が続いていると思います。民間消費支出のお話もありましたが、GDP統計では四期連続プラスという状況でありますが、これが必ずしも底がたいものでもない、世界的な状況もあると思いますが。そういう中で、住宅ローンとか、あるいは教育費の問題、困難に直面して、どうやったらいいかと困っている方もたくさんいるのは事実だと思います。
 そういうことに対して、今後政府として、不良債権処理を進めていく上において、どのような安全網対策あるいは総合対応策が必要かということに対しまして、十分配慮しながら対策を打っていかなきゃいかぬというふうに認識しております。
春名委員 国民生活は深刻で配慮しなきゃいけないということは今おっしゃったと思うんですね。ただ、私が憂慮しますのは、今でさえこういう深刻な状況になっているのに、小泉内閣のこれからのプラン、メニューを見てみると、より一層生活を、家計をだめにしていく方向のプランしか見えてこないというこの問題について、どうお考えになっているんでしょう。
 例えば、この不況の中で行われているこの臨時国会では、経済対策としてやったことの一つといえば給与法の改正ですよね。これは〇・一%から〇・二%GDPを引き下げてしまうような事態になって、七百五十万人の労働者に影響が出る、こんな事態になる。それから、企業が競い合って今リストラをして人件費抑制を強行していますので、ことし冬のボーナスは前年実績比で六・五%減で、平均四十二万四千八百円。減額になって、冬のボーナスは過去最悪、これはUFJ研究所の試算なんですね。こんな事態が十二月に待ち受けている。
 加えて、私たちが主張しておりますように、来年四月からの介護保険料の値上げ、それから医療費の三割負担の実施、そして雇用保険料の引き上げ、年金給付の切り下げ、三兆円以上の負担がこれからかぶさってくるということになる。先日は、政府税調が、配偶者特別控除の廃止を確認したという。もし実施をされれば、一千二百万人の方に五千億円の増税になる。外形標準課税の導入も計画をされています。
 総理がやろうとしているプランの中に、家計を温めるどころか猛烈に冷やすプランしかないじゃないですか。こんなことを実施したら経済にどんな大きなマイナスになるのか、取り返しのつかないことになるんじゃないか、総崩れになるんじゃないかという新聞、いっぱい指摘されていますね。こんな認識はないんでしょうか。本当にこのまま突き進んでいいのか、このことが問われているんじゃないでしょうか。いかがでしょう。
小泉内閣総理大臣 民間企業もそれぞれ、この時代に生き残るために必死だと思います。競争相手がたくさんいる、そういう中でリストラしないと競争に勝ち抜くことはできない。できれば給料も上げたいでしょう、人員もふやしたいでしょう。しかし、他の競争相手のことを考える、また自分の会社のことを考えるとそうもいかないということで、合理化に必死になって今努力している最中だと思います。
 国もそうです。今まで借金政策、かなり展開してまいりました。金利も下げてまいりました。しかし、これがなかなか機能しないということから、民間のリストラが進んでいる、国がこのままではいかぬということで、官の方の改革が叫ばれて久しかったわけであります。私どもとしては、その官の改革、今着手しました。
 これから、今言われました保険料とかあるいは医療費の負担等、例を挙げられましたけれども、これも考えてみれば、その負担をしないと結局だれがどこで負担するかという問題が出てまいります。単に、税金で負担すれば国民に負担がないかというとそうでもない。減税しろという一方の議論ばかりしていますと、これまた財政はどうするのかという問題が出てくる。国債を発行して税負担を軽減すれば現在の人は痛みがないかもしれないけれども、じゃ将来の世代はどうするのかという、いろいろな総合的に勘案しなきゃならないのが改革であります。
 共産党の立場はわかりますけれども、共産党は一つの考え方の立場に立って展開しているのはわかります。そうした場合に、ほかの作用、反応はどうなるのか、税負担はどうなるのかという点も考えなきゃいかぬ。一面で、私は、負担がふえるということで負担をせずに税で負担せよという問題も、これは必ずしも国民の負担が軽減される問題でもございません。やはりそういう点をよく考えなきゃいけない問題だと思っております。
春名委員 時間が参りましたので終わりますが、制度を維持するということを言われるんですけれども、それは国民の暮らしがしっかりそこにあって、経済がまともになってこそ制度が維持できるんでしょう。
 そして、財政はどうするかという話がありましたが、まだまだむだ遣い、いっぱいあります。四十五兆円の公共事業をどうするのか、こういう問題もあります。そこにメスを入れる。今やらなきゃいけないことは、これだけの経済の大変な事態の中で、こんな負担増を国民に押しつけたら、本当に取り返しのつかないことになる、そういう認識で物事に当たるべきだということを私ははっきり申し上げておきたいと思います。
 以上で質問を終わります。
保利委員長 次に、菅野哲雄君。
菅野委員 社会民主党・市民連合の菅野哲雄でございます。
 六日間にわたる質疑の最後になりました。この間、十分に審議が行われたかといえば、不十分と言わなければならないというふうに思います。が、この特殊法人改革は今回で終わりではなくて、これから長く議論をしていかなければならない大きな課題だというふうにとらえているものでございます。
 特殊法人改革を議論する場合、これからもそうなんですが、国民利用者へのサービス向上に向けた改革への徹底した政策論議が必要であります。業務内容や事業執行の状況以前に、私は、総理、政策決定過程の検証が大事であるというふうに思っています。
 例えば本四公団、橋を三つつくろうと思ってつくったのではなくて、政治が決定し、行政が指示した内容に従って事業を執行してきた、これが事実だというふうに思います。道路公団もさまざまな問題がありながら、建設決定は総理が議長となって国幹審で決定して、大臣の施行命令の形で出された指示に従って事業を執行してきたのであります。
 改革するというなら、政策決定自体の透明性をどう担保していくのか、この検証や、これまでとってきた反省というものがあわせて行われるべきだというふうに私は思うのですが、小泉総理の見解をお聞きしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 本四架橋の例を出されましたけれども、これは確かに政治が決定して、その政治の決定に行政が従ったといえば、そうだと思います。そういう観点から、国の関与がいい場合と、国の関与が大き過ぎるとこれは後々国民負担になってツケが戻ってくるという問題、ケース・バイ・ケースだと思いますが、いろいろあると思います。
 今回、このような特殊法人の問題につきましては、どうしても国の関与の必要性の高いもの、民間ではできない、あるいは廃止もできないという法人については独立行政法人という形で残したわけでありますが、今後も不断の見直しが必要だという点におきましては否定するものではございません。むしろ賛成であります。
 また、政治主導といいますけれども、これは、政治家というのはやはり住民の意見を聞かないと、次の選挙というものを考えるとむげに否定するわけにはいかぬという面も一面ではあると思いますが、やはり国全体のことを考えますと、一地域の負担というのが国全体の負担にかかってくるという問題も考えなきゃいかぬ。必要なものと不必要なものの見分けというのはいつの時代でも大事だと思いますが、政治主導、そして行政の役割、民間の役割、これはやはりそれぞれの時代においてしっかりと見きわめるというのが政治の場においても大変重要だと思っております。
菅野委員 総理、今、政治主導という言葉を使われていますけれども、今特殊法人改革で議論しなければならないことは、先ほどから議論されているように、政治主導が積み重なってきて今日まで来ているというところを、私は、総理大臣として反省すべき点は反省して、今後、政策決定の段階でどう透明性を確保、担保していくのかという点をしっかりと位置づけなければ、今後も同じようなことを繰り返すのではないのかな、そういうことを申し上げております。
 どうか、総理大臣として、この政策決定段階の透明性という部分をどう考えているのか、再度はっきり示していただきたいというふうに思うのです。
小泉内閣総理大臣 特殊法人の改革につきましても、これは透明性が必要である。情報公開等、あるいは財務の問題につきましても透明性の確保というのは重要な視点であるし、これから、そのような御意見に対しましては真剣に受けとめて、より国民がわかりやすいような会計制度、あるいは事業の必要性という点は留意していかなきゃならない問題だと思っております。
菅野委員 それでは次に移りますが、独立行政法人に移行していったとしても、日々改革の努力というものは行われていかなければならないというふうに思うのですね。その改革されるべき問題点というものは、その所在というものは、現場の労働者や利用者が率直につかんでいるというふうに思っています。そして、そういう意味では、当該法人の労働組合とも十分な事前協議や、当該法人の事業を利用している利用者の意向も十分尊重した改革に今後結びつけていかなければならないというふうに思っています。
 労働組合は、労働条件の向上を図ることは当然としながらも、労使協議に基づく政策提言も行ってきております。このことも大事にしていかなければならないと考えておりますし、組織形態にかかわらず、事業、業務の見直しは日常不断に法人みずからが行うべきであって、サービスの向上に向けた効率的な業務執行を図るために、日常的に法人の労使が話し合って決めていくシステムというものも実現すべきであるというふうに思っております。
 総理大臣、今後に向けてどういうふうに思っているのか、この日常的に話し合えるシステムの構築という視点をどう考えておられるのか、お聞きしておきたいというふうに思います。
小泉内閣総理大臣 行政改革の難しさの点は、いかなる法人でも、これが廃止されるということになると、そこに存在している職員の方々は必ず反対します。あるいは身分の問題においても、やはり身分の安定性を考えると現状維持がいいという理由もわからないではございません。
 しかし、時代の変遷に従って、これは現状の形態でなくても、現在の組織でなくても事業は展開できるのではないかということでこの特殊法人改革を進めてきたわけでありますが、その際には、今あります法人の関係者あるいは職員等のこれからの雇用の安定策、こういう点につきましては、さまざまの機会を通じ、意見を伺っております。これから廃止される法人につきましても、あるいは民営化される法人におきましても、現在の職員の雇用の問題につきましては十分配意していかなきゃならないと認識しております。
菅野委員 最後になりますけれども、特殊法人から独立行政法人に移行していく、これで終わりではないというふうに私は思うんですね。国民や利用者への説明責任、そして情報公開の徹底はどうなっていくんだろうか、大きな課題は残っているというふうに思っております。
 透明性が高く、国民利用者のための法人となるように、今後も、役員人事や法人運営の基本問題等について、例えば第三者も参加した法人運営委員会なるものを、評価委員会は設置しますけれども、法人運営委員会のような組織を設けるなどして、その組織に国民利用者の声を反映させる仕組みというものも本気になって考えていかないといけないというふうに思っています。評価委員会はそれを兼ねるということじゃなくて、率直に国民利用者が物が言えるような、意見が言えるようなシステムというものをつくるべきだというふうに思っておりますが、総理の見解をお聞きしておきます。
小泉内閣総理大臣 今後の特殊法人あるいは独立行政法人のあり方につきましては、単に身内の方の意見だけでなく、国民的な、外部の意見も重要だという点については、そのとおりだと思っております。
 そういうことから、今回の特殊法人改革はこれで終わりではなくて、今後不断に経営形態とかこの見直し、さらには透明性の向上、外部の評価、こういう点につきまして、やはり第三者的な、身内意識を持たない広い見識のある方にもこのあり方について不断の見直しを行ってもらおうということで、今九人の民間の有識者から成る行政改革参与会議というものを設けております。今御指摘の点も踏まえまして、常に、真に国民に必要な組織というのはどうあるべきかという観点から、今後も点検、見直しを行っていきたいと思います。
菅野委員 終わります。
保利委員長 これにて各案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
保利委員長 これより各案を一括して討論に付します。
 討論の申し出がありますので、順次これを許します。山名靖英君。
山名委員 私は、自由民主党、公明党及び保守党を代表いたしまして、ただいま議題となりました独立行政法人国民生活センター法案等特殊法人等改革関連四十六法律案につきまして、賛成の立場で討論を行うものであります。
 まず、特殊法人改革は、官から民へ、国から地方への流れのもとで、肥大化した公的部門を抜本的に縮小し、簡素、効率的、透明な政府を実現するために不可欠の改革であります。
 同改革は、昨年議員立法で成立いたしました特殊法人等改革基本法に基づき策定された特殊法人等整理合理化計画に従って実施されているものでありますが、この整理合理化計画においては、特殊法人等の廃止、民営化等を定めており、これまで既に六十九の法人について具体的な措置が講じられたところであります。
 今般の特殊法人等改革関連法案は、残りの法人のうちの四十九法人について改革を実現するためのものであり、四十二の特殊法人等に関し、法人を解散し、またはその事業を徹底して見直した上で、実施する必要のある事業を独立行政法人に移管するとともに、七つの特殊法人等について民営化の措置を行うものであり、その成立を強く望むものであります。
 今回の法案審議を通じまして、個別の法人が抱える課題や問題などが指摘され、熱心な質疑等が行われたところですが、今回の独法移行等はゴールでなくむしろスタートととらえ、法案が成立した後、役員のあり方、事業内容の見直し、厳格な業績評価の徹底など、引き続き適正な取り組みがなされるよう要請するものであります。
 最後に、今回法案が提出されなかった法人についても、今後とも手綱を緩めることなく個別課題の検討、実施を進め、速やかに法制上の措置その他の措置がとられることや、今回の改革によって設置される新法人について、改革の趣旨に沿ってその業務等が実施されているかなどの検証が行われ、改革が着実に進むことを期待いたしまして、私の討論を終わります。(拍手)
保利委員長 次に、伊藤忠治君。
伊藤(忠)委員 私は、民主党・無所属クラブを代表して、議題となっております独立行政法人国民生活センター法案等特殊法人等改革関連四十六法律案に対し、一部賛成、一部反対の立場から討論を行います。
 そもそも、特殊法人等の抜本的改革は、小泉内閣の目玉の一つでした。総理は、原則廃止、民営化という明確な指示を各省庁に出し、民でできることは民に、地方でできることは地方に任せるとの観点から検討が進められてきたはずでありました。
 しかし、今回の四十六法案、改革対象四十九法人を見ると、組織形態を独立行政法人に衣がえしたものが三十八法人と八割近くもあり、廃止、統合が五つ、民営化はわずか七つという状況であります。徹底した事務事業の見直し、整理合理化が進められた結果とは到底思えません。政府は、国の関与を残すべく、改革逃れの駆け込み寺に独立行政法人を活用していると言われても仕方がありません。
 また、昨年四月から先行スタートした五十七の独立行政法人では、役員数が従前よりふえ、トップの大半は所管官庁からの天下りが占めています。民間の手法を取り入れ、業務の効率化、サービス向上を図るという独立行政法人本来の精神から、余りにもかけ離れております。この検証や総括なくして安易に独立行政法人に移行するやり方は、第二の特殊法人化するおそれが大きいと考えます。
 結局、今回の法案は、昨年閣議決定された特殊法人等整理合理化計画に基づいたものですが、そもそもこの計画自体が、小泉総理の当初の意気込みからはほど遠い、極めて不十分な中身であったと言わざるを得ません。
 民主党は、国の事務の実施部門について、独立行政法人として外部化することには賛成であります。しかし、その前提として、中央省庁の権限や財源について、官から民へ、中央から地方への振り分けを行い、その結果、中央省庁に残る事務について、外部委託などスリム化を図ることが重要だと考えます。また、民間からの人材登用も積極的に行うべきであります。
 そうした観点から、民主党は、東京地下鉄株式会社法案など民営化を図るものや、徹底した業務の見直しを図りつつも独立行政法人化やむなしと考える二十三法案について賛成、事務事業の見直しが不十分で予算等が焼け太りしているもの、あるいは民間や地方に任せるべき業務が多く含まれていると考えられる二十三法案については反対いたします。
 民主党は、特殊法人という法人形態をすべて廃止し、官から民へ、中央から地方への観点から、今後さらなる行政改革に邁進していくことを明らかにして、討論を終わります。(拍手)
保利委員長 次に、都築譲君。
都築委員 私は、自由党を代表して、独立行政法人国民生活センター法案以下四十六件のすべての法律案に対し、反対の立場から討論を行います。
 わずか六日間のこの特別委員会の審議がこれで終わります。しかし、果たして四十六件の法案が、この限られた時間の中で、その背景にある一つ一つの特殊法人の実態、すなわち、業務の内容や必要性、予算執行の状況、そのための人員や組織体制、そして今日までの実績の評価などに及んで精査されたかといえば、とてもそんな状況にはなく、中には一問の質問も出なかった法案もあるのです。それは、法案が満足できる内容だからという理由ではなく、問いただしていく時間が絶対的に不足していたからです。これでは、形式的には質疑の機会を与えながら、少数派の意見に耳を傾けるべき議会制民主主義の実質的な否定につながるものであります。
 その意味で、自由党提案の特殊法人等整理合理化法案の方法による改革の道を選ぶべきであったと、今さらながらに、また今からでも悔い改めれば遅くはないからと訴えたいのであります。
 では、以下に反対の理由を申し述べます。
 まず第一に、今回の政府案自体の欺瞞性です。
 役員数、役員給与、役員退職金のカットを改革の旗印に掲げています。しかし、その程度のことで、そのまま独立行政法人に看板だけかけかえて、予算、人事、業務の実態などは変わらず、官庁主導の体制は微動だにしません。もともと、まないたの上のコイみずからが料理の仕方を与党政治家に指示しているがごときこの改革案は、政治が国民の代表として機能すべき民主代表政治をも否定するものだと与党の皆さんにも警鐘を鳴らさざるを得ません。
 第二に、このような案のもと、事業実施や補助金、交付金の支給方法など、政官業癒着の構造や不正の温床となる仕組みは何一つ改革されていないのであります。
 第三に、国民生活センター、万国博覧会協会などの業務を、なぜ国直轄にしたり財団法人など純粋の民間法人にゆだねたりできないのか。徹底的事業のあり方の見直しもせず、ただただ役人OBのポスト確保のためとなっていることは、改革の名にも値しないものだと思います。
 第四に、今回措置されなかった特殊法人、例えば年金資金運用基金などに火急の対応をすべきものがあるのであり、それらを放置して改革と称するは、それこそ政治の怠慢と言わなければなりません。
 第五に、以上のほか、独立行政法人に対する中期目標の設定、運営交付金の仕組み、存続する官庁と独立行政法人間の人事交流、評価委員会の評価の困難性など、形は整えても何一つ改革の実が上がるとは思えないのであります。
 以上の観点から、政府提案の四十六法律案のすべてに反対することを改めて表明し、私の討論を終わります。(拍手)
保利委員長 次に、藤木洋子君。
藤木委員 日本共産党の藤木洋子です。
 私は、日本共産党を代表して、独立行政法人国民生活センター法案等特殊法人等改革関連四十六法案すべてに反対の討論を行います。
 すべてに反対する最大の理由は、今回の特殊法人改革の多くが看板のつけかえにすぎず、改革の名に値しないものだからです。
 国民が期待する特殊法人改革は、むだな部分を思い切って削減すること、天下りをなくして癒着構造にメスを入れること、国民生活に必要な部門は拡大、充実すること、ここにあります。
 ところが、本法案には、こうした内容の改革は皆無です。緑や自然破壊を引き起こし、多大な浪費を生み出した公共事業が依然として温存されている緑資源機構法案や水資源機構法案、大企業奉仕の技術開発事業のすべてを継承する新エネルギー・産業技術総合開発機構法案など、企業、業界支援、むだな公共事業推進部門などは温存されたままです。
 国民の大きな批判が集中している官僚の天下りに、何らの規制がかけられていないことも重大です。
 高級官僚が特殊法人の特定のポストに就職し、数年勤めて高額の退職金を手に入れ、さらに関連ファミリー企業の役員に天下り、仕事を回す、この利権の構造こそ真っ先に改革すべきです。
 ところが、今回の改正では、天下りを受け入れるかどうかは独立行政法人側の判断とされ、その規制は全く放棄されています。役員ポストを減らしたとはいえ、その多くが、将来、官僚の天下りによって占められることは想像にかたくありません。天下りは、民営化してもなくなりません。それ自身の規制が絶対必要です。
 さらに重大なことは、国民生活と安全、文化や芸術の分野での後退が顕著であることです。
 相談件数が全国的にふえている中で、国民からの直接の相談業務を廃止する国民生活センター法案、救済の文字を法人の名称から削り、健康被害救済業務からの後退を顕著にした医薬品医療機器総合機構法案などは、明らかに国民生活と安全の分野での後退です。また、日本芸術文化振興会法案は、本来自主的で創造的であるべき芸術文化活動に対する権力の介入につながるもので、こうしたことを独立行政法人化のもとに行うことは容認できません。
 日本共産党は、真の特殊法人改革に全力を尽くすことを表明して、反対討論を終わります。(拍手)
保利委員長 次に、日森文尋君。
日森委員 私は、社会民主党・市民連合を代表し、ただいま議題となりました独立行政法人国民生活センター法案等特殊法人等改革関連四十六法案につきまして、そのうち八法案に反対の立場で討論を行います。
 特殊法人には、責任体制のあいまいさや経営の自律性の欠如、天下りの固定化、情報開示の不徹底、運営実態の不透明さ、組織・業務の自己増殖、むだな公共事業の実施によってつくられた巨額債務による財務の悪化、ファミリー企業など子会社のあり方を初めとするさまざまな問題があることを指摘してまいりました。
 これらの問題の背景には、政官業の癒着構造、自民党的支配があると言わざるを得ません。もともと特殊法人は、国家的責任を担保しつつ、できる限り経営の自主性と弾力性を認めて能率的経営を行わせようとするものであり、いわば公共性と企業性の調和を理念として設けられたものです。しかし、今回多くの特殊法人が移行する独立行政法人は、イギリスのエージェンシー制度をモデルにして導入されたものですが、実はそのエージェンシーは、日本の特殊法人を例にして導入されたものと言われています。
 なぜ特殊法人では失敗し、独立行政法人ならうまくいくのか、問題は制度論ではないということではないでしょうか。当該特殊法人が本当に国民のためになっているのか、国民利用者へのサービス向上に向けた改革への徹底した政策論議が必要であり、かつまた、政官業の癒着の道具となっていないのか、さらに、もともとの政策決定過程の検証をしっかりと見きわめた上で改革に取り組むことが必要であると考えます。
 以下、反対する法案に対する主な理由を申し上げます。
 国民生活センターは、チェック体制を強化すべきときであり、公的関与の強化が求められていると考えます。
 北方領土問題対策協会は、国が国家として条約交渉を行っているのであれば、政府として責任を持って対応すべきであります。
 平和祈念事業特別基金については、被侵略国側の展示や資料事業に拡大すべきであると考えています。
 労働者健康福祉機構は、労災病院の独法化が含まれており、病院事業が独法になじむのかどうか大変疑問を持っております。
 医薬品医療機器総合機構は、薬害問題の反省で分離した安全対策と業界振興を再び統合するものとなっており、また、製薬会社からの職員採用を禁じておらず、公平性が懸念をされます。
 社会保険診療報酬支払基金は、引き続き公的関与が必要であると考えています。
 水資源機構は、もともと緊急かつ広域的に水供給が必要な七地域に限ってできた特殊法人であり、既に役割が終わったと思います。
 日本下水道事業団の地方共同法人化は、地方に任せるといいながら地方への負担転嫁につながるとともに、下水道整備重視から高度合併処理浄化槽の活用に転換すべきものと考えています。
 以上、国民利用者のサービス向上の観点等に照らして大きな問題が残されているものについて、社民党は反対の立場をとるものです。
 最後に、透明性が高く、国民利用者のための法人となることを願うとともに、改革の具体化に伴う働く者の雇用の安定に万全を期されんことを求め、討論を終わります。(拍手)
保利委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
保利委員長 これより採決に入ります。
 まず、内閣提出、独立行政法人国民生活センター法案、独立行政法人労働者健康福祉機構法案、社会保険診療報酬支払基金法の一部を改正する法律案の各案を一括して採決いたします。
 各案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
保利委員長 起立多数。よって、各案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 次に、内閣提出、独立行政法人北方領土問題対策協会法案、平和祈念事業特別基金等に関する法律の一部を改正する法律案、独立行政法人医薬品医療機器総合機構法案、独立行政法人水資源機構法案、日本下水道事業団法の一部を改正する法律案の各案を一括して採決いたします。
 各案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
保利委員長 起立多数。よって、各案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 次に、内閣提出、独立行政法人通信総合研究所法の一部を改正する法律案、独立行政法人日本万国博覧会記念機構法案、日本私立学校振興・共済事業団法の一部を改正する法律案、独立行政法人科学技術振興機構法案、独立行政法人日本学術振興会法案、独立行政法人宇宙航空研究開発機構法案、独立行政法人労働政策研究・研修機構法案、独立行政法人農畜産業振興機構法案、独立行政法人農業技術研究機構法の一部を改正する法律案、独立行政法人緑資源機構法案、情報処理の促進に関する法律の一部を改正する法律案、独立行政法人中小企業基盤整備機構法案、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構法案、独立行政法人国際観光振興機構法案、日本勤労者住宅協会法の一部を改正する法律案、独立行政法人自動車事故対策機構法案、公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律の一部を改正する法律案、海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の一部を改正する法律案の各案を一括して採決いたします。
 各案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
保利委員長 起立多数。よって、各案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 次に、内閣提出、地方公務員災害補償法の一部を改正する法律案、独立行政法人国際協力機構法案、独立行政法人国際交流基金法案、電子情報処理組織による税関手続の特例等に関する法律の一部を改正する法律案、放送大学学園法案、独立行政法人日本スポーツ振興センター法案、独立行政法人日本芸術文化振興会法案、独立行政法人理化学研究所法案、独立行政法人福祉医療機構法案、独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園法案、中小企業退職金共済法の一部を改正する法律案、独立行政法人雇用・能力開発機構法案、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構法案、独立行政法人農業者年金基金法案、独立行政法人農林漁業信用基金法案、独立行政法人水産総合研究センター法の一部を改正する法律案、独立行政法人日本貿易振興機構法案、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法案、中小企業総合事業団法及び機械類信用保険法の廃止等に関する法律案、東京地下鉄株式会社法案の各案を一括して採決いたします。
 各案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
保利委員長 起立多数。よって、各案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
保利委員長 この際、ただいま議決いたしました独立行政法人国民生活センター法案等特殊法人等改革関連四十六法律案に対し、熊代昭彦君外四名から、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者より趣旨の説明を求めます。金子善次郎君。
金子(善)委員 私は、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、社会民主党・市民連合及び保守党を代表いたしまして、独立行政法人国民生活センター法案等特殊法人等改革関連四十六法律案に対する附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。
 まず、案文を朗読いたします。
    独立行政法人国民生活センター法案等特殊法人等改革関連四十六法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、右各法律の施行に当たっては、次の諸点に留意し、その運用に遺憾なきを期すべきである。
 一 特殊法人等の独立行政法人への移行に当たっては、自律的、効率的に運営を行うという独立行政法人制度の趣旨が充分発揮されるよう、その運用に万全を期すること。
 一 独立行政法人への移行後においても、民間に委ねられるものは民間に委ねるなど、事務・事業や組織の見直しを行い、経営の一層の合理化、効率化と経費の削減に努めること。
 一 独立行政法人の長の選任においては、当該分野に造詣の深い適切な人材を広く内外から起用するよう充分配慮すること。その他の役員の選任についても同様とすること。
 一 独立行政法人の役員の報酬及び退職手当については、独立行政法人通則法の趣旨を踏まえ、法人及び役員の業務の実績を的確かつ厳格に反映させること。また、主務大臣は、独立行政法人の役職員の報酬及び退職手当の水準を、国家公務員及び他の独立行政法人の役員と比較ができる形で分かりやすく公表し、国民の理解を得るよう努めること。
 一 独立行政法人が所期の成果を挙げるためには、的確で厳正な業績評価が重要である。このため、明確かつ具体的な中期目標や評価基準を設定することとし、また、公正で客観性のある厳格な評価を確保するよう、評価者の人事及び評価の方法には細心の配慮を払うこと。
 一 独立行政法人等への移行に当たっては、これまで維持されてきた当該特殊法人等の職員との雇用の安定を含む良好な労働関係に配慮すること。
 以上の附帯決議案の趣旨につきましては、質疑の過程を通じて各委員御承知のことと思いますので、説明は省略させていただきます。
 何とぞ委員各位の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。ありがとうございました。(拍手)
保利委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 熊代昭彦君外四名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
保利委員長 起立多数。よって、独立行政法人国民生活センター法案等特殊法人等改革関連四十六法律案に対し附帯決議を付することに決しました。
 この際、ただいまの附帯決議につきまして、石原国務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。石原国務大臣。
石原国務大臣 特殊法人関連四十六法案を御可決いただき、厚く御礼を申し上げます。
 御審議を通じて貴重な御意見をいただき、ありがとうございました。
 ただいま御議決のありました事項につきましても、政府といたしましても、御趣旨を踏まえ、配慮してまいりたいと存じます。(拍手)
    ―――――――――――――
保利委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました各法律案の委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
保利委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
保利委員長 本日は、これにて散会いたします。
    午後二時五十七分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.