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第3号 平成15年4月15日(火曜日)

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平成十五年四月十五日(火曜日)
    午前十時八分開議
 出席委員
   委員長 村井  仁君
   理事 逢沢 一郎君 理事 砂田 圭佑君
   理事 蓮実  進君 理事 松下 忠洋君
   理事 伊藤 忠治君 理事 細野 豪志君
   理事 漆原 良夫君 理事 東  祥三君
      石田 真敏君    岩永 峯一君
      大村 秀章君    金子 恭之君
      亀井 久興君    北村 誠吾君
      滝   実君    竹下  亘君
      橘 康太郎君    谷田 武彦君
      谷本 龍哉君    福井  照君
      星野 行男君    松浪 健太君
      松野 博一君    宮澤 洋一君
     吉田六左エ門君    吉野 正芳君
      石毛えい子君    枝野 幸男君
      後藤  斎君    今野  東君
      島   聡君    中村 哲治君
      長浜 博行君    平岡 秀夫君
      山内  功君    横路 孝弘君
      西  博義君    桝屋 敬悟君
      黄川田 徹君    西村 眞悟君
      春名 直章君    吉井 英勝君
      北川れん子君    保坂 展人君
      山内 惠子君    江崎洋一郎君
    …………………………………
   議員           細野 豪志君
   議員           山内  功君
   議員           達増 拓也君
   総務大臣         片山虎之助君
   国務大臣         細田 博之君
   内閣府副大臣       米田 建三君
   総務副大臣        若松 謙維君
   内閣府大臣政務官     大村 秀章君
   総務大臣政務官      岩永 峯一君
   総務大臣政務官     吉田六左エ門君
   政府参考人
   (内閣官房内閣審議官)  藤井 昭夫君
   政府参考人
   (警察庁刑事局長)    栗本 英雄君
   政府参考人
   (総務省行政管理局長)  松田 隆利君
   政府参考人
   (総務省総合通信基盤局長
   )            有冨寛一郎君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    樋渡 利秋君
   衆議院調査局個人情報の保
   護に関する特別調査室長  小菅 修一君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月十五日
 辞任         補欠選任
  松野 博一君     吉野 正芳君
  大畠 章宏君     枝野 幸男君
  保坂 展人君     山内 惠子君
同日
 辞任         補欠選任
  吉野 正芳君     松野 博一君
  枝野 幸男君     長浜 博行君
  山内 惠子君     保坂 展人君
同日
 辞任         補欠選任
  長浜 博行君     大畠 章宏君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 個人情報の保護に関する法律案(内閣提出第七一号)
 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案(内閣提出第七二号)
 独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律案(内閣提出第七三号)
 情報公開・個人情報保護審査会設置法案(内閣提出第七四号)
 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第七五号)
 個人情報の保護に関する法律案(枝野幸男君外八名提出、衆法第一〇号)
 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案(枝野幸男君外八名提出、衆法第一一号)
 独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律案(枝野幸男君外八名提出、衆法第一二号)
 情報公開・個人情報保護審査会設置法案(枝野幸男君外八名提出、衆法第一三号)


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     ――――◇―――――
村井委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、個人情報の保護に関する法律案、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案、独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律案、情報公開・個人情報保護審査会設置法案、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案及び枝野幸男君外八名提出、個人情報の保護に関する法律案、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案、独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律案、情報公開・個人情報保護審査会設置法案の各案を一括して議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 各案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官藤井昭夫君、警察庁刑事局長栗本英雄君、総務省行政管理局長松田隆利君、総務省総合通信基盤局長有冨寛一郎君及び法務省刑事局長樋渡利秋君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
村井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
村井委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。桝屋敬悟君。
桝屋委員 おはようございます。公明党の桝屋敬悟でございます。
 昨日に引き続きまして、質問に立たせていただきます。
 きょうは、こうして皆さんおそろいでありまして、何よりでございます。委員長のお取り組みに敬意を表したいと思います。ありがとうございます。
 きのうも申し上げましたけれども、私は、ぜひ、この個人情報保護関連法案、審議がこうして始まる中で、本当に感慨ひとしおでありまして、特に私ども与党も随分と、今までの国会の審議を通じまして、真摯に、やはり国民の皆さんの声に耳を傾けながら修正作業等も行ってきたわけでありまして、そういう意味では、野党の皆さん方が、やはり個人情報保護に関する法整備が必要である、早急な法整備が必要であるという御認識にお立ちいただいて、そして、骨格においては政府案をベース、まあ、ベースにされたかどうかですが、それに相当近い形で法案を、対案をおまとめいただいた、この御努力に私は敬意を表したいというふうに思っております。
 そう申しますのも、決して与党、野党の立場で申し上げているわけではなくて、随分私どももこの法案を、私は六年ぐらいもうずっとかかわってきておりまして、形をつくる上で私自身も悩んできたわけでありますから、そういう意味で、本当にこれからの審議、いい審議をしたいというふうに思っておる次第であります。
 昨日は、本人関与、自己情報コントロール権、それからセンシティブ情報の取り扱い、それから第三者機関、さらには適用除外、この四点を政府側と議論いたしました。きょうは同じ論点で野党提案者の方にぜひお伺いをしたいというふうに思っております。
 きのうも申し上げたことですが、プライバシー、まず本人関与、自己情報コントロール権でありますが、私も何とか法文の中で明記できないか悩んできた一人でございます。そういう意味で、野党の皆さんのお取り組みも理解をするわけでありますが、ただ、残念ながら、自己情報コントロール権あるいは本人関与ということについて、自己情報コントロール権ということについてもう何十年と議論をしてきているわけでありますが、やはりその概念が不明確である、学説上やはりなかなか定着をしていない、こういうことがある中で、政府案は、きのうも議論しましたが、開示あるいは訂正請求、利用停止までの具体的な本人関与の手段を権利として整理しているということでありまして、何とかぎりぎり、私は、きのうも大臣とはやりましたが、自己情報コントロール権というその実態を整理できたのではないかと思っているわけであります。
 野党案を見まして、第三条の理念規定の中に人格権との関係で慎重に取り扱うべきということが既に政府案でも明記されているわけでありまして、その中で、改めて目的規定の中にあえて例示として本人関与ということを明記する必要はないんではないかというふうに思っているわけであります。
 野党案を見て一番感じていることを端的に申し上げますと、この法案については、決してメディアを規制するつもりは全くなかったわけでありますけれども、大変不幸なことに、相当メディアの方から御批判もいただいたわけでありまして、そういうメディアの方々の懸念、不安、これを払拭する意味で、基本原則を外したという思い切った修正をしたわけであります。
 そうしたことを考えますときに、この自己情報コントロール権、本人関与という規定を入れていただきますと、取材活動への不当な干渉に道を開きかねないという改めての不安、懸念が示されているわけでありまして、報道の自由との調整ということはなかなか困難な問題だと思いますが、野党提案者のお考えをお聞きしたいと思います。
山内(功)議員 桝屋先生、おはようございます。
 最初に、昨日の審議の開始から少し与党の対応が異常な審議の対応をされまして、こちらの方も少し当惑したんですけれども、野党案については、野党四党でかなり時間をかけて十分に協議をして対案を出したつもりですので、十分な御理解を委員会審議を通じて賜れば喜びます。
 野党案では、具体的には、目的外利用の制限の例外事由を政府案より縮小したり、利用目的の通知、公表については原則通知にしたりするなどしておりますが、そうした本人関与を充実させる努力のよって立つ考え方として、自己情報コントロール権の基本的な考え方、すなわち、自己情報への本人関与の重要性を第一条の目的規定に頭出ししたものでございます。野党案は、自己情報コントロール権について、その要件効果が学説においてもなお検討過程にあることでございますので、確定的なものとしては明記はしていないものの、その基本的考え方を十分に反映させた画期的なものであると自負もしております。
 自己情報コントロール権は確かに表現の自由と緊張関係にあることは、事実であろうと思います。しかし、だからこそ第一条で、政府案にはございませんが、第一条の中に野党案では「表現の自由を尊重しつつ、」と規定をしておりますし、具体的には、野党案の六十五条で適用除外の範囲を広くとることなどにより、政府案より格段に表現の自由は尊重されたものとなっていると考えております。
桝屋委員 今の野党提案者の御説明、表現の自由の尊重というものを目的規定に入れている、これで自己情報コントロール権とのバランスをとっているという、この二つの概念がバランスをとるんだというこの御説明でありますが、お考えはよくわかります。私もそんな思いでずっと来たものですからよくわかるんですが、逆に、今までの法案の、国会に提出されてから今日までの経緯を見たときに、改めて、こうやって二つが並ぶと、二つを並べて、この二つの法益を、そのバランスをどうとるかということを比較考量、これは今例外規定をふやしているという話もされましたが、必ずそうなるわけでありまして、今までの法案審議の経過からしても、メディアの方が改めて不安、懸念を大変に持たれるのではないかというふうに私は思うわけであります。
 どうでしょうか。我々もメディアの方と随分議論してきましたけれども、既に社説等で、あるいは新聞記事等でそういう、改めてこの自己情報コントロール権というものが入った、それで表現等の自由が、また問題が新たに出てきているという認識をメディアの方がお持ちでありますが、そこは本当に払拭されているか。そこは、恐らくメディアの方は、ではその二つを比較考量するときに、どのような場合に、どの程度、どう表現の自由が尊重されるのか、あるいは自己情報コントロール権が優先するのかということが不明確になるんじゃないかということで、今申し上げた改めての不安、懸念が出てくるのではないか、私はこう思っておりますが、その辺はどうでしょうか。
山内(功)議員 桝屋先生も自己情報コントロール権を法律に明記することができないかということを随分悩まれたということでございますけれども、その御苦労は私たちも大変理解しているつもりでございます。
 野党案は、個人情報の実効的な保護と表現の自由のバランスをより高いレベルで実現していると考えておりますので、どうか御理解をいただきたいと思います。
 六十五条の点でお聞きになればと思って、そのときに詳しくお話しすればと思ったんですが、少しここで六十五条の関係と含めて説明をさせていただきます。
 本法では、報道、著述、その他の表現行為に対する義務規定の適用除外等を通じて、個人情報の保護と表現の自由との調和を図ろうと考えています。私どもは、個人情報の保護の必要性を認識しつつも、報道、著述、その他、社会に事実とか思想とか意見とか創作物等の情報を発信する、つまり、社会的な広がりを持つ言論行為については、民主主義社会の基盤をなすものとして、その価値を極めて重く見ておりまして、これらが個人情報の保護のための義務規定によって制約されてはならないと考えています。
 そこで、表現の自由、言論の自由を最大限に尊重すべきであるとの観点に立って、野党案第六十五条一号から三号までで表現の自由の確保のための適用除外を定めていますが、特に三号は、不特定多数の人々への情報の発表、伝達行為は、特に政府案よりも踏み込んで、表現の自由に重きを置いて規定しているものでございます。
桝屋委員 先ほど私、ぜひ伺いたかったのは、二つが比較考量されるとどういう場合にどの程度尊重されるのかというような問題が必ず出てくるということで、具体的な判断基準といいますか、そうしたことが改めて問われるようになるだろう、こう思っているわけであります。加えて、せっかくメディアの方にやっと理解していただいたなというふうに思っていたところ、改めてこの問題が噴き出るんじゃないかという懸念を持っているわけですね。
 具体的な話を一部されましたけれども、私も具体的にどうしても伺わなきゃならぬのですが、全部お答えいただけるとは思いませんが、例えば具体の問題としてどういう問題が出てくるかというと、もう既にメディアでも言われておりますが、例えば、高級官僚が事件を起こしてメディアの取材対象になった、不祥事を起こして取材対象になった、自己情報コントロール権を根拠に、裁判等で取材ノートの開示とかあるいは誤り記事の訂正などを求めるということも、容易に考えられるわけであります。そうした根拠を与える。あるいは、民間企業の従業員の勤務評価等の情報について、その従業員が自己情報コントロール権を根拠に、人事記録の開示とかあるいは評価情報の訂正等を求めるというようなことも出てくるのかなと。こうした場合、どう考えていくのか。
 あるいは、山内議員も弁護士さんであられますけれども、例えば弁護士さんが、地元の弁護士会を通じてよく公務所あるいは公私の団体に情報照会をするという事例があろうかと思いますが、情報照会をされたその情報の本人が裁判等で公務所や公私の団体に弁護士会への報告を差しとめるというようなことも出てくるのではないかというような、いろいろな事態を考えるわけであります。
 こうした具体の対応については考えれば考えるほど切りがないわけで、できるだけそこは基準を明らかにしなきゃいかぬと思いますが、そうした今私が申し上げたような疑問に対して、メディアの方が、またメディアの取材について支障が出てくるんじゃないかという懸念が私は改めてあるんじゃないかと。本当に懸念を払拭することに成功しているかどうかというのは、この法案審議で私は極めて大事な視点だというふうに考えておりますけれども、どうでしょう、メディアの皆さんとお話をされましたか。今の点について、お考えがあれば。
山内(功)議員 メディアの方々と情報交換、意見交換をしたかという質問でしょうか。(桝屋委員「その前の具体の話なんかも。判断基準等が、お考えがあればお聞きしたい」と呼ぶ)
 たくさんの団体名を言われたので一々覚えていませんけれども、私たちは、まず、団体とかあるいは機関とかということを適用除外の、組織あるいは属性によって判断するということは考えておりませんで、その目的が私たちが規定する六十五条の規定にかなえばまず原則として尊重するということで仕切りをしております。
桝屋委員 山内さんとはぜひ具体の話を議論したいなと思いましたけれども、あえて質問通告もこの部分はしていなかったものですから余り議論しませんが、一つだけ提案者にお聞きしたいんですが、一等最初に私が事例として申し上げた、この議論で随分あったのは、メディアとの関係では巨悪を許すことになりはしないか、取材規制というものに材料として使われるのではないかということをずっと懸念をしてきたわけでありまして、メディアの方からもそう言われてきた。例えば、一等最初に申し上げた、高級官僚が不祥事を起こして取材の対象になるというような事例は容易にあると思うんですね。そうした場合に、自己情報コントロール権を盾に情報開示やあるいは訂正要求というような動きが出てきた場合、これはどう考えるか、その点だけでもお考えをお聞きしたいと思います。
山内(功)議員 昨年の末に廃案になりました政府案がありますね。それは、まさに基本原則が規定されていることによって、そういう懸念というか、具体的に政治家が取材を拒否できる根拠を与えていたと思うんですね。ですから、それが、この出し直しをされた政府案によって、その部分は少しは解消をされているとは思っています。
 私たちの野党の方でも、まず私たちは、特に取材の部分については、自主的な取材行動についての規範を自主組織でつくっていただけるものだと信じておりますし、政府案は、それは自主努力だということで法案に記して、自主的に自主規制を考えろというようなことを法律で命ずるような規定ぶりがあるので、それは私はおかしいと思っているんですけれどもね。そういう自主的な努力も行われると思っていますので、その緊張関係にある場合は、双方が良心とかバランス感覚で解決される問題だと思っています。
桝屋委員 私の不勉強かもしれませんが、なかなか論議がかみ合わないわけでありますけれども。
 それで、自主努力の問題はあともう一回、大事な点でありますから議論したいと思いますが、いずれにしても、恐らく今の御答弁では、巨悪を許す、取材活動をこれで制限するという趣旨ではないという多分お答えなんだろうと思いますが、自己情報コントロール権と表現の自由という問題は極めて困難な、整理が難しい問題でありますから、この困難性をあえて法律表現の中に置いておくと、法律というのは必ずしもいい方向へ運用されるわけではなくて、必ず変な方向へ持っていくやからも出てくるわけでありまして、私は、あえてリスクを法律の表現の中に残す必要はないのではないか、こういうふうに思っているわけであります。
 それから、もう一点だけこの自己情報コントロール権で言いますと、野党案では、先ほどの説明の中で、「目的」の中に「表現の自由」ということを例示として言われていますけれども、当然ながら、いわゆる個人情報の有用性というのは我々もずっと考えてきたことでありますが、この有用性の中で表現の自由のみを取り出して尊重すべきというふうに書いてあるように誤解を受ける、見えるのでありますけれども、憲法上の他の権利、学問の自由とか信教の自由というのは尊敬しなくていいのかというふうに思われやしませんか、ここもバランスを欠くことになりはしませんか、こう思うのでありますが、この点いかがでしょうか。山内議員にお尋ねします。
山内(功)議員 先ほどの自己情報コントロール権と取材の関係の緊張状態の中での答弁の中で、取材ノートの開示については、野党案によっては絶対に認められることはないということは断言しておきたいと思っています。
 政府案も、開示とか利用あるいは訂正、そういう権利を認めておられます。私たちは、その開示請求の仕方とか説明の仕方とかあるいは訂正の仕方、申し入れ方などについて、個別にいろいろ、自己情報コントロール権に基づいた規定の仕方を意識してしているんですけれども、与党の案の中にもそういう規定があるんですね。では、それは、よって立つところは、個人のどういう権利に基づいて、それとか開示とか訂正申し立てとかそれから説明要求とか、そういう案を政府案は規定されているんでしょうかという疑問があるんですね。それはまさに、自己情報をコントロールする権利が個々人にあるからこそ、政府案でもそういう権利を随所に認められた法律にされているんじゃないかと私は思っているのですが、どうなんでしょうか。
桝屋委員 もう少し事前に山内さんと議論の論点を明確にしておかなきゃならぬかったなと今反省しているところでありますが、私の時間、あと十分になっちゃいまして、あとセンシティブなものとそれから第三者機関の議論をしたいんですが、どうも時間がなさそうであります。
 今の自己情報コントロール権、山内さんの方から、政府案に対する、政府案との比較のお話もございましたが、細田大臣、今の野党提案者の御説明を聞かれてどのようにお感じになったか、率直な御感想をお聞きしたいと思います。
細田国務大臣 もうちょっと提案者に法律的な点を詳しく御説明していただきたかったなと思っておりますが、政府案におきましても、開示、訂正、利用停止、第三者提供に当たっての本人の同意などについて明確に規定していることは、やはり個人のそれぞれの権利を明確にしているものであるということは言えると思います。
 ただ、私は、個人の自己情報コントロール権といった場合には、あたかも、その言葉がひとり歩きいたしますと、すべての自己情報がすべての法律等においてすべて自分のコントロール下にある、そういう請求権を持つというように誤解されたり拡張されたりしても困るわけでございます。
 民法等の規定でも、プライバシーの権利というものがだんだんに判例上確立していくときには、長い間かかって、なるほど、プライバシーの権利というのはこういうものだな、最近においては、いろいろ出版の差しとめの、もちろんこれは私法の分野でありますけれども、あるいは民法上の分野にわたって、長い間そういった積み重ねがあって一つの権利ができ上がってきたものと思いますが、あらかじめこういう言葉を使って当然の権利であるというにしては、概念がまだ明確でないのではないか、今後いろいろな考え方、例を積み上げていくべき権利なのではないかな、こう思っておるわけでございます。
桝屋委員 それで、残された時間、もう一点、先ほど山内提案者がおっしゃった自主努力の話、ここは何とかかみ合えるかなと思いますので、議論させていただきたいんです。
 先ほど、山内提案者の御説明では、この自主努力義務を法律で規定するのはいかがか、こういう話がありました。私は、やはり第四章の個人情報取扱事業者のさまざまな義務規定との比較をしても、バランスからしても、少なくとも自主努力はやってもらわなきゃならぬというふうに思っているわけであります。例えば、メディアの方だけでも、それは自主努力はしなくていい。いや、やっているんですよ、先ほど山内さんおっしゃったように、みんなやっているんだと。やっているんだからこそ私はやればいいというふうに思っているんですが、ここはやはりバランスを欠くのではないか。
 何よりも、例えば、山内さん、私はこの個人情報をやってきて、こういう事件に出くわしました。看護師さん、実は、この議論を六年前ぐらいに始めたときは守秘義務規定がなかったんです、保助看法の中に。守秘義務規定が書いてなかったんです、驚くことに。要するに、看護師さんはいい人たち、個人情報を漏らすようなことはないという性善説に多分法律が立っていたんだろうと思いますが、ところが、医療情報がどんどん流れるという事件が東京とか関東周辺でありました。だれが流したのかということになって、犯人捜しが始まったわけでありますが、そのときに、看護師さんは守秘義務規定がないものだから捜査対象にならなかったんですよ。実は、看護師さんが流したんじゃないかということも漏れたりして、下手に疑われたということがあります。
 やはり守秘義務規定があるかどうかというのがまさにステータスになっているわけでありまして、私は、そういう意味では、メディアの立場に立っても、自主努力ということ、この義務規定をうたってあげる、うたうのが――やはりバランスを欠くやり方ではないか。ここはやはり、国民の皆さんがメディアだけいいよということでは理解をしてくださらないのではないか、この議論をずっとやってきて私は思っておりますが、山内議員のお考えをお伺いしたいと思います。
山内(功)議員 今具体的なお話をされました看護師さんの問題ですね、そういうようなこともありますので、野党案では、センシティブ情報についてはしっかりと基本理念としてうたい込んで、大切にしようと。そういう視点が政府案にはございません。その点、政府案の不備の、私たちが不備だと言っている大きな論点の一つでございます。
 最初の自主努力の問題についてお答えしますが、自主努力といえば聞こえはよいのですが、特に旧政府案、昨年末廃案となりました政府案のように、基本原則や主務大臣とセットになって表現の自由を規制しようという意図が押し出されれば、恣意的な運用によって強制的な努力につながりかねないと考えています。報道に限らず、国民の社会的言論行為を適用除外したものでありまして、国民の理解は得られると思っています。特に表現の自由については、憲法の学説上は、他の自由権に比べても優越的な地位が認められておりますので、その点からもこの野党案の見解の方が正しいと確信をしております。
 個人情報保護法ができるわけですから、国民一人一人が、また報道機関がそれぞれ判断して自主的に努力すればよいわけでございますので、条文にそれを書き込むということは逆にいかがなものかと考えております。
桝屋委員 そこが本当に提案者と私どもの立場の違いかな、考え方の違いかなと思いますが、ねらっているところはほとんど同じだろうと思います。ただ、この個人情報保護法、我が国初めて、個人のプライバシーを守ろう、個人情報を守ろうという社会的な価値を今社会に定着をさせようという作業をスタートするときに、表現の自由という点だけで自主努力の義務規定まで取ってしまうということは、私はまさにメディアの立場からいっても適切でないのではないか、メディアの皆さんと話してみてもそう感じているわけでありまして、かえってメディアの皆さんが社会的に誤解を受ける、そういうことになるのではないか、こんなふうに感じさせていただきました。
 まだあと三点ほど残っておるのでありますが、どうでしょうか、時間がありましたら、また次回ぜひ議論をさせていただきたいと思います。
 以上で終わります。ありがとうございました。
村井委員長 続いて、砂田圭佑君。
砂田委員 自由民主党の砂田圭佑でございます。
 近年は、IT化の進展に伴いまして、民間事業者からの個人情報の漏えい事件や、いわゆる名簿業者による個人情報の売買など、個人情報の取り扱いが社会問題化するような事例が多発をしております。我が国においても、現在民間部門においては、個人情報の取り扱いについては、規律した包括的な法制度はありません。基本的には各事業所の自主的な取り組みにゆだねられているのが今の現状であります。
 我々は、国民のプライバシーに対する不安を解消することなくしてIT社会の健全な発展はあり得ないというふうに考えているわけでございます。そのためにも、個人情報保護法の制度は、IT時代の基盤法制として早急に整備する必要があると考えているところであります。
 その一方で、個人情報保護法制を整備するに当たっては、保護と利用のバランスをとることも重要であります。個人情報の保護のために過度の規律を民間事業者に課することは、新しいビジネスチャンスの芽を摘むことになりますし、IT化を通じた経済活性化を阻害しかねません。また、消費者の側にとっても、IT技術を利用した自分の好みに応じた多様なサービスなど、IT化のメリットを享受する機会を失うことになりかねません。
 そこで、細田大臣にお尋ねをいたしますが、個人情報の保護と利用のバランスについて、政府案においてはどのように考えておられるのでしょうか、お伺いをいたします。
細田国務大臣 まず、個人情報の保護と利用のバランスについてでございますが、このほど野党におかれましても、野党案というものをまとめられました。その基本的な目的は非常に近いものがございまして、IT化の進展した現在、個人に関する情報が膨大な蓄積が行われ、それに伴っておかしな形での漏えい、移転等が行われて、非常に個人にとって被害が発生しておるから何らかの法制が必要だという意味では、与野党が一致した認識に立ってのこの法案の審議の開始だと承知しております。このことは非常に意味のあることであると思っております。
 そこで、政府といたしましては、こういった個人情報の取り扱いがますます拡大している中で、個人情報の適正な取り扱いを通じまして個人の権利利益を保護すること、これが第一の目的でございます。しかしながら、個人のニーズを事業に的確に反映させたり、迅速なサービスの提供を実現し、事業活動などの面でも国民生活の面でも欠かせないということにかんがみまして、政府案第一条におきまして「個人情報の有用性に配慮しつつ、」と規定し、個人情報の適正な取り扱いを確保するに当たっても、こうした側面を十分に踏まえて個人情報の利用と保護の調和が図られなければならないということにしておるわけでございます。
砂田委員 政府案においては、必要な個人情報の利用が妨げられないようきめ細かく規定をされていることは、今のお話でも理解ができるところでございます。
 そこで、大臣、野党案を拝見しますと、この保護と利用のバランスから見て、民間の事業者に過重な負担を課しているのではないかと思いますが、具体的な問題点を御指摘いただきたいと思います。
藤井政府参考人 具体的な話なので、私の方から御説明させていただきます。
 事業者等の規制に当たっての基本的な物の考え方というのは、今大臣からお答えしていただいたとおりでございます。
 そういう考え方に沿いまして、例えば、利用目的の通知等の方法につきまして、野党案は、十九条では、「個人情報取扱事業者は、個人情報を取得した場合は、速やかに、その利用目的を、本人に通知しなければならない。」ただし書きで多額の費用等ある場合の例外はお認めなんですが。これに対して政府案は、十八条でございますが、「本人に通知し、又は公表しなければならない。」となっている。いわば通知と公表という選択制になっている。むしろ、野党案の問題点というよりは政府案の物の考え方は、普通、直接個人情報を取得される場合、こういった場合は当然直接通知する機会もあるわけですし、本人がその際に提供するかどうかということを適切に判断していただくという意味からも、確実にその本人に対して伝達するというような考え方でつくっております。
 これに対しまして、それ以外の場合でございますが、通知、公表という趣旨は、やはりそれ以後の本人関与といったものが適切になされる、そのためのいわば基盤ということになるわけでございまして、そういう観点からは、本人が知ろうと思えば知られる状態に確実にしておくということの方がより重要であり、それが必要な範囲での事業者の負担というふうな考え方から、通知、公表は区別していないということでございます。
 その他にも、例えば、目的外利用・提供の原則の例外事項ということで、これは政府案も野党案もそれぞれ規定の仕方がちょっと違っておるわけですが、例えば、野党案十九条第五項第二号、それから第二十四条第一項第三号、それぞれ利用、提供の例外ということになるのですが、「当該個人情報取扱事業者の権利又は正当な利益を著しく害する」場合、「著しく」という言葉を使っておられる。それから、「当該事務の遂行に著しい支障を及ぼすおそれがある」というような、「著しい」という言葉を使っておられるわけでございます。
 これに対して政府案は、いろいろ法令事務遂行とか、その他の適用除外事項もあるのですが、基本的に、事業者の権利それから正当利益という点につきましては、著しいかどうかを問わず、やはり正当に保護されるべきであるということで、適正に保護されるというようなことで、著しいという言葉は使っていないということでございます。
 その他にも、訂正とか利用停止とか、ちょっと条文は省略させていただきますが、私どもはあくまでも、基本的に訂正とか利用停止もその必要な範囲で訂正、停止できればいいという考え方でつくっているわけですが、野党案は、そういう必要性の範囲というようなところが事業者に対して若干厳しくなっているのではないかというふうに感じているところでございます。
 以上でございます。
砂田委員 それでは、野党の答弁者の方に伺いますが、野党案の規定では、事業者に過剰な負担を課すとともに、実際の経済活動に支障が生じるとのことであります。そこのところをぜひともお伺いしたいと思います。野党においては、このような点についてはどのようにお考えでありましょうか、お願いいたします。
山内(功)議員 三条か四条ぐらいの条項を、先ほどちょっと後ろ向きで聞きにくかったのですけれども、言われたようですかね。(砂田委員「いや、特別そういう問題じゃなくて」と呼ぶ)大体野党案の基本的な考え方ということでよろしいのでしょうか。(砂田委員「そうです」と呼ぶ)はい。
 御指摘のように、野党案は、政府案と違いまして、取得に際しての利用目的は原則通知、政府案は、通知または公表と並列で挙げられております。事実上、事業者は手間のかからない公表を選択するであろうことが予想されますが、これでは、消費者保護の観点からも、個人情報に対する本人関与の度合いが弱いというのが私どもの立法に当たっての政策的な判断でございます。
 しかし、野党案の十九条の第一項を見ていただけばわかりますけれども、多額の費用を要することとなる場合などには公表で足りると規定しておりますので、民間事業者に過重な負担を強いるものではないと考えております。
 それから、利用目的を通知しない旨の決定や個人データを開示しない旨の決定をしたときにはということで、例えば、政府案では二十八条で「本人に対し、その理由を説明するよう努めなければならない。」と、努力義務として規定されておりますが、野党案は「困難な事情があるときを除き、」「理由を説明しなければならない。」と、事業者の義務として明確に規定をしております。これも本人関与の度合いを強める観点から、こういうふうに規定を設けております。確かに政府案より強い規定ではございますけれども、これも困難な事情があるときはという場合には除かれているわけですから、無理なことを言っているわけではないと考えております。
 政府案より本人関与の規定を強めつつ、個人情報の有用性、現実の企業活動とぎりぎりの両立を図った結果でございまして、御理解をいただきたいと思います。
砂田委員 我々としては、包括的な法制としては必要最小限の規律とすることが保護と利用のバランスの観点からも望ましいと考えておりますが、その一方で、さらに高いレベルの規制が必要な個人情報があるのも事実であります。
 そこで、野党の提案者にお尋ねをいたしますが、野党案の考え方も、包括法である野党案に今後個別の措置を上乗せしていくという、政府案と同じ考え方があると考えますが、いかがでしょうか。
山内(功)議員 市民団体などに、包括法ではなく個別法を求める声があるのは、私どももよく承知をしております。その上で、今回の法案を提出させていただいております。市民団体などのそういう御懸念は、心情から、率直に言ってわからないわけではございません。とりわけ廃案となりました旧政府案の内容には、私ども自身も、包括法形式のはらむ危うさを実感しておりました。
 そこで、私ども野党は、何とかして個人情報の実効的な保護と市民生活の自由、とりわけ表現の自由の両立を図ろうと苦労も重ねてきております。
 一つには、対案を準備する過程の中で、義務規定の対象を別表に掲げる特定の事業のみとするポジティブリスト方式も検討をさせていただきました。ポジリストにした場合、主務大臣による恣意的な適用除外は起こり得ないというメリットがございます。また、リストに挙がらない非営利団体や個人には適用されないことになります。しかし、保護すべき個人情報は実に多様な企業や諸活動にまたがって存在し、これを切り分けることは、立法技術上、非常に難しい点がございました。
 そういうような事情がございまして、まず、野党案としては、第一に、主務大臣が大活躍をする政府案とは違いまして、独立した中立公正な個人情報保護委員会を設置し、恣意的な介入、規制を排除する姿勢をまず明確にした。第二に、野党案は、より適切な適用除外の規定を設け、報道機関や著述だけではなくて、普通の市民の表現の自由もきちんと保障する内容にしております。野党案により、包括法につきまとう懸念を払拭するとともに、実効ある個人情報保護が可能となったと私どもは考えております。
 なお、野党案につきましても、これは政府案と同じではございますが、個人情報の性質及び利用方法にかんがみ、特に適正な取り扱いの厳格な実施を確保する必要がある個人情報について、個別の必要な法制上の措置を講ずるとする旨を、政府案と同じように私たちの法案の中にも書き込んでおります。医療、信用情報、情報通信などの分野で、より厳格な個別法を早急につくらなければならないとは思っております。
砂田委員 余り時間もありませんので、包括的な法制としては、政府案のように必要最小限の規律として、さらに厳格な取り扱いが必要な個人情報については個別の対応をしていくということが重要である、また、今後個別分野で具体的な取り組みを進めていくためにも、その基本となるこの法律を早期に制定する必要があるということを述べさせていただいて、先に進みたいと思います。
 続いて、政府案と野党案で意見が分かれているものの第二点目として、個人情報取扱事業者の義務の実効性を確保するに当たっての考え方についてお伺いをいたします。
 政府提出の個人情報保護法案においては、各事業の個人情報の取り扱いについては、各事業所管大臣が主務大臣として必要最小限度の関与をする仕組みとなっていると承知しております。
 一方、野党案を拝見しますと、個人情報保護委員会という第三者機関を設置し、すべての個人情報取扱事業者を監督する仕組みとなっております。野党の先生の先日の本会議での御意見も拝聴いたしますと、第三者機関であれば何の問題もないかのような御説明がなされておりました。
 果たして本当にそうなのでありましょうか。実際、事業者の方々が取り扱っている個人情報というのは、与信、金融機関であれば預金口座や債務残高、学校であれば児童生徒の個人情報、病院であれば医療情報といったように、個々の事業活動とは切り離せないものがあり、またその使い方も、業態に応じて多種多様であります。私は、政府案のように、個々の事業における個人情報の取り扱いを熟知している事業所管大臣が監督する方がより効果的な制度となると考えるものであります。
 そこで、細田大臣及び野党提案者にお伺いをいたしますが、個人情報保護法制の実効性確保の観点から、第三者機関を設置することの是非についてお答えをいただきたいと思います。
米田副大臣 お答えをいたします。
 民間における個人情報の取り扱いは、砂田先生のお説のとおり、その事業実施と一体として行われるものであります。また、その適正な取り扱いの具体的な内容も、当然ながら、業種、業態によってさまざまな形になるわけでございますので、事業ごとに判断することが不可欠であるというふうに考えております。
 このため、政府案の第三十六条では、それぞれの事業を所管する大臣を主務大臣とし、当該事業における個人情報の適正な取り扱いについて行政責任と権限を規定しております。
 野党案のように、新たな第三者機関を設けるとすれば、地方組織を含む大規模な行政組織が必要となるわけでございまして、行政改革の流れに反するとともに、事業を所管する大臣との間に二重行政が生ずるおそれがあるなど、現実性、実効性の観点から大変問題が多いというふうに考えております。
砂田委員 さらに進めますが、野党案では、義務規定が適用除外となる表現活動の範囲についても、報道あるいは著述に加えて、政令で定めるものを除くとしています。
 そもそも、政府案において適用除外が設けられた趣旨は、憲法上の自由権に関する活動に行政機関が介入しないということを保障するためと理解をいたしております。
 このような適用除外の趣旨から考えて、野党案のように、憲法上の自由権である表現の自由に関する適用除外の範囲を政令に委任し、そして行政の裁量で決められるような仕組みにするというのは、問題があるのではないかと考えます。ぜひ、野党提出者の御答弁を求めたいと思います。
細野議員 委員の御質問は、野党案の六十五条の三号、前二号に掲げるもののほか、不特定かつ多数の者に対して、情報を発信し、または伝達する活動を挙げて、その中の括弧書きで、「個人情報を記録した名簿、個人の住宅の所在を明らかにする地図その他これらに類する個人情報データベース等であって政令で定めるもの」、この政令の部分を指されているというふうに解釈をいたします。
 もともと、野党案では、適用除外の項目として、表現の自由にかかわるものとして、報道の用に供する目的、そして著述に供する目的、これをしっかり規定をした上で、なおかつ、さらに、映画であるとか演劇であるとかホームページなどで表現をされるような方々、そういう方にも配慮をするという形で第三号を設けております。
 ただ、その中で、個人の名簿であるとか個人の住宅地図そのほかこれに類するものに関しては、これはまさに個人情報の集積そのものでございますので、適用除外のところからこの部分に限っては除かなければならない、すなわち、個人情報保護の対象としなければならないということでございまして、こういう規定を設けております。
 政令で定めるとは申しますが、ここでは、個人の住宅の所在を明らかにする地図であるとか個人情報データベース等、としっかり例示がされているわけでございまして、その部分に限って技術的にこれを政令で定めるという趣旨でございまして、これが行政の裁量にゆだねるという解釈は私どもはしておりません。
 以上でございます。
砂田委員 細田大臣、この点についてお考えがございましょうか。
藤井政府参考人 お答えいたします。
 政令委任される場合、法律は当然、その範囲あるいは基準、そういったものができるだけ明確にされているということが望ましいというふうに私ども考えておるところでございます。
 野党案では、例示、二つぐらい出しておられるところでございまして、問題は、その例示が、それ以外の政令を定める際に、内閣に対して明確な枠組みなり基準を与えているのかということかと思います。そこは、結構、考え方次第では幅広く考えられる可能性もあるんではないかなということは、ちょっと懸念しているところでございます。
砂田委員 いずれにしても、憲法にかかわる部分ということもあります。慎重にお考えをいただきたい、そういうふうに思う次第でございます。
 少し時間が押してまいりましたので、私の考えはともかく、質問をずばりといたしたいと思いますので、ぜひお答えをいただきます。
 今般、政府が提出した法案は、現行法のすべてを改正するものでありますけれども、どのような点について改善がなされたのでしょうか。若松総務副大臣にお答えを願います。
若松副大臣 現行法に比べて充実強化した点として、五点、大きくございます。
 一点目は、保護の対象となる情報を、電子計算機処理された個人情報のみならず、行政機関が保有するすべての個人情報とすることとしました。
 二点目が、対象機関に内閣官房さらには会計検査院を加えました。
 三点目が、開示請求権に加えて、新たに訂正請求権、現行法では訂正の申し出となっております、さらに利用停止請求権、これを設けました。
 四点目に、開示、訂正及び利用停止の請求に対する決定についての不服申し立てを調査審議させるため、従来の情報公開審査会を拡充しまして、情報公開・個人情報保護審査会を設置いたしました。
 五点目として、独立行政法人等につきましても行政機関と同様の仕組みを整備する。
 以上でございます。
 いずれにしても、この保護法案は電子政府に不可欠な基盤法制となるものでございまして、私どもとしても一日も早い成立をお願いしているところでございます。
砂田委員 行政機関の個人情報保護法案には、なぜこの適法な取得に関する規定、これはかつて官に甘く民に厳しいと言われているところでございますけれども、その問題について、一部には、役人は悪いことをしないという考え方で置かなかったという指摘もありますけれども、私は、そうではなく法制的な理由があると考えますが、若松総務副大臣から国民の皆さんにわかりやすく御説明をいただきたいと思います。
若松副大臣 お答えいたします。
 行政機関が法令を遵守して適法かつ適正に個人情報の取得に努める、当たるということは、日本国憲法、これは七十三条でありまして、「法律を誠実に執行し、」こういうふうに明記されておりまして、当然要請されるところでございます。
 また、職員につきましても、国家公務員法の法令遵守義務、これが第九十八条、「職員は、その職務を遂行するについて、法令に従い、」このようにもなっておりまして、既に法規範として存在しているものを法律で改めて規定していないというものでございます。
 以上でございます。
砂田委員 その一方で、野党案を拝見しますと、第六条として、「行政機関は、個人情報を取得しようとするときは、適法かつ適正な方法によりこれを行わなければならない。」との規定があります。これは確かに、一見すると、行政機関をより厳格に規律したようで望ましいかのごとくでありますけれども、しかし、冷静に考えてみますと、やはり野党案について疑問点が浮かび上がります。
 そこで、野党のように適法にと書かなければならないとするならば、行政機関の行為について定めた他の法律においては、反対解釈により、行政機関の行為は適法に行う必要がないということになりますが、野党案提出者はこの点についてどのように説明されるでしょうか。明確な御答弁をお願いいたしたいと思います。
細野議員 今委員御指摘の反対解釈は、かなり強引な反対解釈だなという感じがいたしておりますが、私ども、国家公務員法で法令遵守義務があるのは承知をしております。
 ただ、国民の懸念は、本当に行政機関が適法にこの情報を取得しているのか、この疑問に関しては非常に強いものがございまして、それにこたえる形で、個人情報保護という観点からこの規定を置くというのは、ほかの法律の趣旨とやはり少し違うわけでございますので、意味があるというふうに考えております。
 ちなみに、政府案の三条では保有に関する制限が書いてあります。しかし、取得に関する規定はございません。さらにもう一点指摘いたしますと、三十六条の利用停止請求のところには、「当該保有個人情報を保有する行政機関により適法に取得されたものでないとき、」という記述があります。利用停止請求について書かれているのであれば、当然、この法律の中に取得について制限をするという規定を書いて、この法律自体でこの趣旨が完結をされるという形にするのが法案としても適切な判断であると考えております。
 以上です。
砂田委員 野党案に関する先ほど来の御答弁、いささか不明確でありますけれども、要するに、行政機関悪玉論あるいは行政機関性悪説に立った感情的な理屈も考えられないわけではありません。およそ法制的に検討されるものとは考えられない部分もあるんじゃないかというふうに考えます。
 政府案の検討に当たっては、当然、適法な取得に関する規定を置くことを検討されたと思いますが、その検討の結果、政府案に適法な取得に関する規定が置かれたものではあります。もちろん、行政機関に過ちがあれば糾弾されるべきでありますが、法律の制定の過程において、野党案のような感情的な面を持って法制論をねじ曲げることは基本的には許されないということになるのではないでありましょうか。
 我が自由民主党としては、野党案のような行政機関悪玉論あるいは行政機関性悪説に立った感情論は極力排除をして、受け入れないということを明確に申し上げておかなければならないと思っております。
 以上であります。ありがとうございました。
村井委員長 続いて、枝野幸男君。
枝野委員 民主党の枝野でございます。
 幾つか政府案と民主党案との違いについて……(発言する者あり)野党案との違いについて、失礼しました、私は野党案の提出者でございますので、主に政府の側に質問をさせていただきますが、まず一点、この法律で報道というのを五十条の二項で新たに定義をしました。「不特定かつ多数の者に対して客観的事実を事実として知らせること(これに基づいて意見又は見解を述べることを含む。)」この客観的事実を事実として知らせることということの中に、例えば、昔、中川秀直先生が何か女性と写真が出ていたとか、山崎拓先生がベッドでいらっしゃった写真が出たとか、こういうものも報道で間違いないでしょうか。
細田国務大臣 報道につきましては、法案の第五十条二項において「不特定かつ多数の者に対して客観的事実を事実として知らせること」括弧は省略しますが、と定義しておることは、枝野議員御指摘のとおりでございます。この客観的事実とは、社会の出来事としてという意味でございまして、それを不特定多数の方々に知らせようとする意図のもとに事業として行われているものであれば、結果的に誤報であるか否かを問わず報道に該当すると考えております。
 したがって、御指摘のような雑誌によるスキャンダル報道等についても、本法案に言う報道に含まれるものと解釈しております。
枝野委員 次に、五十条の「適用除外」を、組織と目的と両方で縛っておられます。
 そこで、念のため伺います。
 四号の「宗教団体」というのは、宗教法人法に基づく宗教法人に限られるのか、それとも、宗教活動をしていれば、法人格を持たない何らかの一定の団体でもいいのか。あるいは、一人で宗教活動をしている、それに供する目的の場合どうなるのか。五号の「政治団体」、これは、政治資金規正法上の政治団体の届け出をしたものに限られるのか、そうではないのか。お答えください。
細田国務大臣 すべからく広く解釈すべきものと考えておりまして、五十条第一項第四号の「宗教団体」には、宗教法人法第二条に規定する宗教団体が該当し、同法上の認証を受けたかどうかは問わないということでございます。
 それから、政治資金規正法上の届け出をしているものと同義かという、一項五号の「政治団体」につきましては、政治資金規正法に規定する政治団体が該当し、同法上の届け出を行ったかどうかは問わないと考えております。
枝野委員 だとしたら、これ、宗教団体とか政治団体とかというので縛っていることの意味はどこにあるのか、私はよくわからないんですが、何か意味があるんですかね。
細田国務大臣 主体として書き込む、書き方として、やはり組織でございますから、宗教団体、政治団体というふうに書かざるを得なかったということでございまして、他意はございません。
枝野委員 ただ、先ほど、宗教団体については、宗教というのは一人でやって宗教と言えるのかという問題はありますが、政治活動の場合は、一人でやっているということはあり得ると思うんですよね。団体には、一人で政治活動をしている人は含まれるんですか。
細田国務大臣 これは団体でございますので、二人以上ということでございます。
枝野委員 そうすると、例えば選挙に出ようと思って政治活動を始めて、ただ、残念ながらまだ仲間がいなくて一人でいろいろな人をあいさつ回りして、名簿がたくさん入ってきた、だけれども活動としては一人でやっている、この場合は入らないということでいいんですね。
細田国務大臣 やはり一人の場合は、二人以上の場合とは違うということでございます。
枝野委員 政治活動の自由との関係で、一人でやった者は規制されて、二人以上でやったら規制されない、そんなものは許されるんですか。
細田国務大臣 政治資金規正法でも政治団体というものを規定しておるわけでございます。同法上の届け出を行ったかどうかは問わないわけでございますが、一人で活動している者については含める必要がないと考えたわけでございます。
枝野委員 今の話もおかしいです。政治資金規正法は、一人で政治活動をしている場合の個人としてのお金の出入りについて、ちゃんと別に規制をしています。個人でやっている政治活動の出入りのほかに、団体でやっている場合についての規制をかけているから、二人以上の場合を団体で定義しているんです。一人の場合も適用されているんですから、全然意味が違いますよ。
細田国務大臣 個人の場合、政府案においては、法目的において、政治活動の自由を含む個人情報の有用性と個人の権利利益の調和を図るとしておりまして、個々の義務規定においても必要な例外規定を設けるとともに、第三十五条第一項においても、主務大臣は政治活動の自由等を妨げてはならないとしておりますので、御懸念は当たらないと考えております。
枝野委員 全くおかしい。そうしたら、五十条一号に「(報道を業として行う個人を含む。)」とわざわざ書いてあることの意味は何なんですか。こっちは個人をわざわざ入れているじゃないですか。全然、矛盾ですよ。
細田国務大臣 非常に個別の、一人の政治活動を行っている者についての細かい御指摘がございますが、私は、五十条というのは、やはり政治団体を法の規定の対象とするということを言っておるわけでございますから、問題はないと考えております。
枝野委員 全くおかしい。一号では報道については個人を含んで、五号では政治については個人を含まないということは、一人でやっている政治活動というのは報道よりも価値が低い、報道の自由と政治活動の自由は、これはどちらも優越的人権で対等だと思いますけれども、政治活動の自由の方が小さい、弱い、そういうことですね。
細田国務大臣 弱いとか必要がないとかいうことを判断したものではございません。
枝野委員 では、何で報道については個人を含んでいて、政治団体には個人を含んでいないんですか。どっちもあり得るじゃないですか。報道だって個人でやる報道はあり得るけれども、政治活動だって一人でやる政治活動はあり得るんですから。それは規制を受ける。でも二人以上だったら規制を受けない。報道だったら一人でも規制を受けない。報道の自由と政治活動の自由と、この区別している根拠、全く示されていません。
細田国務大臣 何遍も申し上げて恐縮でございますが、法五十条一項は政治団体を除外するための規定でございまして、やはり政治団体というものをしっかりと対象とするということが必要であると考えたものでございます。
枝野委員 質問にちゃんと答えてください。
 一人でやっている政治活動については、なぜ規制の対象にして構わないんですか。二人以上の場合は規制の対象から外すのに、なぜ一人だったら規制をしても構わないのか、その根拠をきちんと示してください。
細田国務大臣 一人で政治活動をするという場合は確かにあるわけでございます。しかしながら、五十条の規定は政治団体としての活動を対象としておるものでございまして、一人の活動につきましては、三十五条一項において、政治活動の自由等を妨げてはならないとしておるわけでございますので、御懸念は当たりません。(枝野委員「答えになっていない。答えさせてください。ちゃんと答えてください。間違っているんだよ、これは」と呼ぶ)
村井委員長 枝野君、質問を、そのポイントをもう一度お繰り返しいただけますか。
枝野委員 もう一度だけ言います。
 なぜ一人でやっている政治活動については適用がされ、二人以上だったら適用されなくなるのか、そのことについてきちんと納得できる説明をしてください。
村井委員長 細田国務大臣。しっかり答弁してください。
細田国務大臣 政治及び宗教については、やはり、団体的に行動しているものについて範囲を明確にするために主体を限定しているものでございます。
枝野委員 ですから、では、なぜ二人以上でやっているものだけ優遇されるんですか。一人でやっているのは優遇されないということの説明にはなっていません。今、結果として団体だけを優遇していますと言っているだけですよ。なぜそうなるんですか。一人でやっている政治活動は価値が小さいんですか。そういうことなんですね。
細田国務大臣 価値が小さいとか大きいとかいうことを言っているわけではございませんで、政治団体、宗教団体というのはやはり社会的な通念というものがございますから、これを取り上げておるわけでございます。
枝野委員 今のは政府見解でいいんですね。小泉総理以下内閣としてそういう見解ですね。憲法問題だ、これは。内閣として責任持ってくれますか。(発言する者あり)
村井委員長 今、質疑は続いていますから。
 ただいまの枝野委員の質問に、これはどなたがお答えになりますか。
 細田国務大臣。
細田国務大臣 報道と学術については個人を含むということで規定しておるわけですが、政治と宗教については団体ということにしておるわけでございますので、それでいいかと、解釈であるかと言われれば、そのとおりだと申し上げたいと思います。
枝野委員 違いますよ。聞いているのは、なぜそうしたのかという根拠について聞いているんですよ。
 一人のやる政治活動は規制しても構わなくて、二人以上だったら規制しちゃいかぬということの意味は、それは一人でやる政治活動にはそれだけ保護に値する価値がないということを前提にしなきゃ、そんなこと起こってこないじゃないですか。一人でやろうが二人でやろうが、政治活動の自由というのは優越的地位にあるんじゃないですか。そのことを否定されるということ、内閣として、小泉総理以下一致してそういう見解だということだったら、これは大憲法問題です。
細田国務大臣 法の三十五条で担保してございますので、政治団体ということで線引きしているということが内閣の方針でございます。
枝野委員 三十五条は三十五条で。三十五条でいいんだったら、五十条要らないじゃないですか。何で五十条をつくったんですか。
細田国務大臣 政治家一人の政治団体でも政治団体になり得るんですね。したがいまして、普通は、政治活動をしているものは政治団体でございますので、その外縁がよくわからないような、一個人で自由な活動をしておるというものは、やはり三十五条の方で仕切っておるわけでございます。
枝野委員 いいんですね。この内閣は、一人でやっている政治活動は、二人以上でやっている政治活動、政治団体の活動に比べて価値が低い、そういう内閣だということをお認めになっているということで、先へ進みましょう。大問題だと思います。
 主務大臣を置くのかどうかということが大変大きな問題ですが、幾つかについて、具体的に、だれが主務大臣なのか聞きたいと思います。
 労働組合は主務大臣、だれですか。
細田国務大臣 労働組合の主務大臣は、事業者がどのような目的で個人情報を取り扱うかに応じまして定まるものであります。
 したがいまして、労働組合につきましても、問題となる事案が労働組合活動に伴う個人情報の取り扱いであれば、労働組合活動に関する事項を所管する、所掌する厚生労働大臣が主務大臣になると考えられます。しかし、その他の活動に伴う個人情報の取り扱いであれば、その活動の内容に応じて、その活動に関する事項を所管する大臣が主務大臣となると考えられます。
枝野委員 次、日本弁護士連合会の本来業務について、これについての主務大臣はだれですか。
細田国務大臣 弁護士及び弁護士会につきましては、弁護士が司法制度の一翼を担い、基本的人権を擁護し、社会正義を実現するという重大な使命を有することにかんがみまして、弁護士法上、弁護士に対する広範な指導監督が弁護士会及び日本弁護士連合会にゆだねられているところでございます。
 このような弁護士法の趣旨に照らせば、弁護士の個人情報の適正な取り扱いについても、弁護士会及び日本弁護士連合会が十分な指導監督を行うことが期待されることから、主務大臣において勧告、命令等の権限を行使すべき事態が生ずることは想定しがたいと考えております。
枝野委員 弁護士についてはそのとおりなんですが、日本弁護士連合会の業務について、そもそも主務大臣はだれなんですか、いるんですか。
細田国務大臣 本法案第四章における主務大臣は、法案第三十六条第一項の規定に従いまして、個人情報の取り扱いのうち雇用管理に関するものについては、厚生労働大臣及び当該個人情報取扱事業者が行う事業を所管する大臣等、これ以外のものについては、当該個人情報取扱事業者が行う事業を所管する大臣等となるわけでございます。
 これはあくまでも……(枝野委員「言ったのはわかっているんです。具体的、具体論はどこなんです」と呼ぶ)わかっていますね。(枝野委員「時計をとめてください、もったいないですから。時計をとめてください、そんな手間かかって。ちゃんと通告してあるんですよ、これは大変な問題ですよと。深刻な問題だと最初から言ってあるんですから。時計をとめてください」と呼ぶ)
村井委員長 細田国務大臣。細田国務大臣。しっかり答弁してください。
細田国務大臣 日弁連がいろいろな事業をやるときに、その事業の内容が何であるかということに伴っては主務大臣が発生するケースがあり得ると考えておりますが、これはいわゆる弁護士活動に伴うものではないと。
枝野委員 ですから、本来業務ということを聞いているんですよ。日本弁護士連合会は、当然弁護士の登録を受け付ける機能を持っているわけですから、当然弁護士の名簿を、二万人分ぐらいですか、持っているわけですよ。これは本来業務に関する名簿です、個人情報データファイルです。これについて主務大臣はだれなんですか。いるんですか、いないんですか。
細田国務大臣 弁護士法及び法務省設置法の趣旨に照らしますと、弁護士の個人情報の取り扱いについて、弁護士会及び日本弁護士連合会の指導監督が不十分である場合が生ずるとは想定しておらず、現時点においては、弁護士に主務大臣が権限を行使すべき事態が生じるとは考えておりません。(発言する者あり)
村井委員長 もう一回答えてください。もう一度答えていただけますか。
細田国務大臣 十分お答えしているつもりでございまして、弁護士の個人情報の取り扱いについて、弁護士会及び日本弁護士連合会の指導監督が不十分である場合が生ずるとは想定しておらず、現時点においては、弁護士に主務大臣が権限を行使すべき事態が生ずるとは考えておりません。
枝野委員 弁護士会と聞いているんじゃないですか。弁護士会と聞いている。弁護士なんて聞いていないですよ、僕は。
細田国務大臣 弁護士会においても同じでございます。
枝野委員 だから、その主務大臣、だれなんですかと聞いているんです。行使しないなんて、当たり前ですよ、そんなものは。だれなんですかと聞いているんです。
細田国務大臣 基本的には、自律的に認められている弁護士会でございますので、主務大臣というものはよほど例外的なことがない限りはございません。普通の弁護士活動に付随するものであれば、主務大臣はございません。
枝野委員 日本弁護士連合会の本体業務については主務大臣がない、それでいいですね。
細田国務大臣 事例をすべて今の時点から予測するわけにはいきませんけれども、基本的にそのとおりでございます。
枝野委員 ということは、これは主務大臣監督制にしていますが、主務大臣のないそういう分野があり得るということをお認めになる。つまり、この法律に基づく規制をかけてはいるんだけれども、それに基づく監督ですか、具体的には報告の徴収や勧告、命令等は全く適用されない、そういう対象があるという欠陥法であることをお認めになりましたね。
細田国務大臣 それだけ弁護士会あるいは弁護士の先生方というのは特別な地位を持っておりまして、これだけは例外でございます。
枝野委員 それならそれで、ちゃんと立法上対応しなきゃいけないのじゃないでしょうか。欠陥ではないかということを申し上げておきます。
 あと何点か聞きます。
 ゴルフ場事業、これも本来業務、つまり、ゴルフ場の会員名簿とかを管理している、これについての主務大臣はだれですか。
細田国務大臣 問題となる事案がゴルフ場サービスを行う事業に伴う個人情報の取り扱いであれば、サービス業に関する事項を所掌する経済産業大臣が主務大臣になるのではないかと考えております。
枝野委員 社団法人制のゴルフ場の場合、どうするんですか。
細田国務大臣 業に着目しておりますので、同じでございます。
枝野委員 そうすると、こういうことになりますね。固有名詞を挙げるのはやめましょう。社団法人制のゴルフ場で、会員制のゴルフ事業をやるということが主目的で、これは文部大臣、文部科学大臣だったと思います、ゴルフ場事業について社団法人の認可を与えているのは。経済産業省、通産省ではないと思いますが、その場合でも通産省、経済産業省なんですね。
細田国務大臣 ゴルフ場のサービス業としての業に関するものであれば、経済産業大臣であります。
枝野委員 ところが、会員制ゴルフ場の会員がそこでゴルフをするのは本当にサービス業なんですか、どうなんですか。
 つまり、社団法人制と預託金制のゴルフ場というのは、似ているのですが、法的には全く意味が違っています。預託金制というのは、自分がサービスを受けるためにお金を払って会員権を買っている。社団法人制のゴルフ場というのは、自分たちのうちわサークルとして法人格を取ったようなものです。ですから、社団法人制のゴルフ場で、メンバーじゃない人が来てプレーする、これはサービス業だと思います。では、会員が自分が会員になっているゴルフ場で社団法人制の場合にゴルフをする、これは本当にサービス業なんですか、どうですか。
細田国務大臣 サービス業というのは、不特定多数の人たちにサービスするかどうかを問わず、サービス業であることは事実だと思います。
枝野委員 いいですね。主務大臣として関係省庁との調整をして出てきているということなので、また後でこのことについては、大臣として責任を持っての御答弁ということで、今の件をもう一回確認させてください。今のは、大臣として、政府として調整をして整理をした結果ですね。いいんですね。
細田国務大臣 基本的に結構でございます。
 ただ、従来、相撲協会とかいろいろな文化的な団体で、それぞれの省で認可を、許可を受けたという公益法人もございますので、そういったものはケース・バイ・ケースの場合もあるかもしれませんが、基本的には、サービス業の場合には、これは経済産業大臣であると思っております。
枝野委員 ケース・バイ・ケースって、そこで持っている個人情報について何か変なことをされましたといったときに、どこの役所に駆け込んだらいいのかわからないじゃないですか、そんなものは。ケース・バイ・ケースという話はちょっと、今のは答弁が滑ったんじゃないですか。
細田国務大臣 個人情報を基本的には何のために使ったかということに関して申しておるわけでございますので、サービス業については経済産業大臣であると思っております。
枝野委員 別のことを聞きましょう。
 インターネットオークションに関する、このオークション業務についての主務大臣はだれですか。
細田国務大臣 問題となる事業が小売業であるインターネットオークション事業に伴う個人情報の取り扱いであれば、小売業に関する事業を所掌する経済産業大臣が主務大臣になると考えております。
枝野委員 IT担当でもいらっしゃるんですね。インターネットオークションと一般に言われる場合は、前国会で成立をした、いわゆるインターネットオークションのことを指しているつもりなんですが、その場合もそうですか。
細田国務大臣 基本的には私がお答えしたとおりでございます。
枝野委員 インターネットオークションの場合は、いわゆる競り売りとかをして、つまり、本人が買い受けて売るのではなくて、中古品などを売りたいという人が申し込んで、それを受けてインターネット上で買い受けたいという人が買い受けの申し込みをして、そこで売買が当事者間で直接成立する、この手のものも、それは今の答弁でいいんですね。
細田国務大臣 仲介をするためのサービス業でございますので、そのとおりだと思っております。
枝野委員 古物商は。
細田国務大臣 これは、古物営業法では、犯罪その他との関係があるので、御存じのとおり、警察庁の方で所管をしておりますので、古物商の業法上の登録をしているものは警察庁と考えております。
枝野委員 それで、去年の秋に古物営業法が改正になって、我々は反対しましたが、いわゆるインターネットオークションについてもその古物営業法の中に取り込まれているからどうなんですかと聞いているんですが、いいんですね、今の最初の御答弁で。
細田国務大臣 基本的には、サービス業であるということで経済産業省であると思います。それが実際に警察の認可を受けてやっておる事業かどうかによって共管が発生する可能性は、おっしゃるようにあるとは思っておりますが。
枝野委員 いいですか、認可を受けているかどうかで分かれるんですね。つまり、古物商としての認可を必要とするんだったら警察庁も絡むけれども、そうでなければいわゆる小売サービス業だ、そういう区別でいいんですね。政府の見解としてそれでいいんですね。
細田国務大臣 基本的には業で把握すべきであると思っております。
 ただ、枝野議員が今言われます個別のケースにおいて、サービス業として政府が把握するよりも、犯罪防止その他の観点から、特定のところが所管しているものも確かにございますから、そういう場合にはまた観点が違うわけでございますけれども、基本的には私が今申し上げたとおりでございます。
枝野委員 よくわからないです。三十六条一項二号には「事業を所管する大臣等」とちゃんと書いてあるんですが、それは何なんですか。やっている業に着目をするんですか。それとも、それが認可制とか登録制だった場合、認可や登録をしている先なんですか。これは物すごい大事なことなんで、ケース・バイ・ケースなんという答えじゃないでしょう。どっちなんですか。つまり、警察への届け出を要する、例えば風俗営業みたいなものとかも、これは警察に届け出ですか、何か要りますよね。だけれども、業としてはサービス業ですよね。どうするんですか。
細田国務大臣 基本的には業で考えるべきであろう、したがって、サービス業、小売業、卸売業というようなものは経済産業省が基本であると考えております。
枝野委員 内閣としてその見解で間違いないですね。確認します。
細田国務大臣 基本的にはそのとおりでございます。
枝野委員 もう一点だけ、主務大臣、主任の大臣について聞いておきますが、新聞社とかの報道機関についても、報道目的以外でやる、例えば新聞社等が著述目的以外の学術研究をしていた場合とか、新聞社の社史編さんのために個人情報を集めていたとか、こういった場合には、主任の大臣があって、その主任の大臣が新聞社等に対して主任の大臣としての権限を行使できる、これは間違いないですね。
細田国務大臣 社史の編集、編さんにつきましては、その利用方法及びその性格を見た上で判断する必要があると思いますが、著述に該当する可能性が非常に高いのではないかと考えております。この場合、本法案の義務規定の適用はなく、主務大臣の関与はあり得ないことから、主務大臣の存在を議論する必要はないと考えております。
枝野委員 もう一つの方はどうですか、学術研究は。著述目的以外の学術研究を報道機関等がやっている場合、どうなるんですか。
細田国務大臣 学術研究がどういう中身であるかということはわかりませんけれども、やはり著述に当たると考えております。
枝野委員 著述を目的としない学術研究はたくさんあるから、五十条一項三号を置いたんじゃないんですか。今度は、五十条一項三号の存在意義がわからない。こんな、すぐ終わると思ったところで余りひっかかりたくないんですが、著述を目的としない学術研究はあるじゃないですか。そのことを聞いているんですよ。
細田国務大臣 そういう例が実際あるのかどうかというのは非常に問題でございまして、学術研究を専ら報道機関がやる目的でそういうこと、研究をしておるということは余りないと思います。
枝野委員 余りあるかどうかということを聞いているんじゃなくて、どうなるんですかと聞いているんです。あり得ると思いますよ。それは、だって、例えば新聞社がやる世論調査なんかについてのいろいろなノウハウの蓄積で、著述を目的としてはいないけれども、社内で、こういう世論調査について、こういうデータでこういうふうにやればこういう結果が出ますねとか、そういう研究を独立した部局を持ってとかということは、これはたしかあったと思いますよ。そういうことは十分あり得る。だから、あり得ないと思いますよなんて勝手に判断はできない話なんで、理論的にどうなりますかと聞いているんですよ。
細田国務大臣 余り例を見ないとは思いますが、そういう全く報道や著述活動に該当しない活動を行っていることがあれば、その活動に応じまして、その関係の大臣が主務大臣となると考えておりますが、しかし、報道、著述活動に密接に関連する活動については三十五条も明記しておりまして、表現の自由等を妨げてはならないということを明記しておりますので、主務大臣が関与する余地はないと思っております。
枝野委員 何度も議論をする場はあると思いますので、大事な点はほかにもありますから、聞いておきますが、今のように、いろいろな役所に分かれて、自分のところの所管がどこなのかも今聞かれても余りよくわからなかったりする、それぞれの部局で、本当に個人情報保護の趣旨、そして個人情報の取り扱いについてどうするべきなのか、それに対してどういう配慮をするべきなのか、そんなことをあらゆる役所のあらゆる担当のところに全部周知させるコストと、それから、そんなに大がかりじゃなくても、トラブルがあったときに対応するということで個人情報の保護に関する専門的な委員会をつくっておくというのと、コストが一方的にどちらかが大きいとは必ずしも限らないんじゃないですか。
 あらゆる役所について、すべて、かなりきちっとこのことを徹底させなきゃならないんですが、後で聞きますが、例えば、情報公開法について防衛庁の末端には徹底されていなかったという事例があるんですよ。そういうことを考えたら、本当に主務大臣がやるということでいいんですか。
細田国務大臣 私どもは、野党案が、独立した委員会組織をつくった方がいいのではないかということで法律案を提出しておられますが、それも一つの考え方ではございますが、今の行政機構の中で、次々に新規産業等が起こる中で、行政的にも、問題が発生すれば、それぞれ対応してきております。ゴルフ場でも、昔は所管省というものが全くないと言われておりましたが、会員権等の問題で問題になったときに、経済産業省の所管だということに各省の話し合いでなったような経緯がございます。
 これからも、新規産業に対する対応等も含めまして、事業所管省が、これはあくまでも問題が生じた場合の対応でございますので、適切に対応できるものと思っておりまして、新規の組織を立ち上げるコストに比べますと、まだ非常に効率的であると考えております。
枝野委員 まさにあらゆる役所、これは地方にも委任したりするんですからね。あらゆる役所にそういったことを徹底してトレーニングをきちっとするということのコストを考えれば、これはどの程度問題が生じてきて対応しなきゃならないケースが出てくるかも読めませんから、最初は小さな組織でスタートするということでいいと思うんですよね、委員会だけはちゃんとつくっておいて。ということであれば、案件がたくさんあるようだったら、結果的にどこかがやらなきゃならないんだから、人員をどこか削ってふやすということをすればいいわけだし、少なければ、小さな形で本当に問題が起こってきたのだけ対応すればいいんだし、その方がずっと合理的だと思いますが、やっておかなきゃならないことが幾つかあります。
 総務大臣がおいでいただきましたので、総務大臣に、念のためお尋ねをさせていただきたいと思います。
 この問題は、いわゆる住民基本台帳問題と大きく関連をしています。この法律ができようができまいが、住民基本番号という話はだめだと私は思っているんですが、それを裏づけるような話で、どうも銀行が本人確認のために住民基本台帳番号を提示させた、提示を受けたというケースがいろいろとあると言われているのに対して、二月十七日の予算委員会での細野委員への答弁などで、全銀協からの報告でそういった事実はないということを総務大臣は明確にお答えになっていますが、本当にそうなんですか。その後、いろいろなところで実は違っていたという調査結果、つまり、本人確認に使ってしまっていたというような話ではないんですか。総務大臣、お答えください。
片山国務大臣 確かに、あれは二月十七日の予算委員会ですかね、その時点で、全国銀行協会に聞いたところ、そういう事実はない、こういう報告を受けたということは答弁させていただきました。
 その後、国会でのいろいろな経緯があり、やりとりがありまして、全銀協が中心で調査をいたしまして、その結果、そういう事実はあったけれども、それは銀行側が提示を求めたのではなくて、告知を求めたのではなくて、本人の方が本人確認のためにそういうコードを見せた、こういう報告を聞いております。
枝野委員 総務大臣の予算委員会における答弁が間違っていた、そういう話なんですが、これはそれだけで済むんでしょうか。しかも、まさにこの住民基本台帳番号の話というのは深刻な問題だとずっと言われてきているわけで、民間が勝手に使うんじゃないかと。それは今の御答弁だけで済まされるんでしょうか、大臣。
片山国務大臣 その時点で、全銀協との話というか、聞いたところ、そういうことはないということを全銀協が答えたということを私は事務方から聞きましたので、そのとおりを答弁いたしたわけであります。その時点での話であります。
枝野委員 だから、私は、大臣がうそを言ったと今追及しているんじゃないですよ。ほかのケースとちょっと違いますよ。だけれども、この時点で、いろいろちゃんともっと調べた方がいいんじゃないかとか、いろいろなことがあったのに対して、そういう報告を受けているんだからいいんだ、大丈夫なんだというニュアンスのことをお答えになっているわけですよ。
 その後、何でそんなことがわかったんですか。大臣の方で心配になって、つまり役所の方からの調査の結果としてわかったんですか。それとも報告が上がってきたんですか。
片山国務大臣 それは、国会でも大変そういう議論があり要請がありまして、金融庁が、それではそれを全銀協を通じて調べます、こういう話で、数字はちょっとどこかにありますが、そういう住民票コードで本人確認をしたという事実はある、ただ、それは告知ではない、こういうような報告を聞いております。
枝野委員 要するに、今の話は、個人情報保護法ができようができまいが今のようなことがきちっと現場に徹底されていない、しかも、アングラなところでやっていたんならともかくとして、いやしくも銀行が、本人からなのかどうか、そこも私は疑わしいと実は思っておるんですが、住民基本台帳番号を結果的に利用したのは間違いない。そこまでお認めになっているわけで、住民基本番号制度について危惧されている問題について、全くその危惧を抑制できる形になっていないということが一つはっきりしている。このことは、別にこの法律ができようができまいが関係ありませんよね。今議論している法律とは関係ないですよねということを指摘しておきたい。いずれにしても、今の制度はだめだということを申し上げておきたい。
 時間がなくなってきているので、ちょっとこれももっと突っ込みたいんですが、そもそも前の国会、前国会だったか前々国会だったかでこの法案についての審議が行き詰まったのは、いわゆる防衛庁リスト問題です。防衛庁リスト問題のような案件に対して、政府の行政機関個人情報保護法では対応ができない。できるのかできないのかということで、大臣と相当やり合いました。いずれにしても、具体的には適用できないわけですね。今度の法案ではできるんですか、あのような案件には。
片山国務大臣 あのときは内閣委員会でございましたが、大分枝野委員ともやりとりした記憶がございますけれども、それはどんな完璧な制度をつくっても、不心得な者がおってということになると、全く、一切の不正、違反が起こらないかと、それはそういうことではないと思いますよ。
 しかし、前の、現行法よりは、今回の法律は相当整備されたものですから、しかも罰則もしっかりと規定しているわけですから、私は大変な抑止効果があると思う。それから、対象の官庁も広がる。対象の文書も、すべての個人情報になる。本人関与も、現行法では、御承知のように、開示請求と訂正については、これは申し出ですよね。今度は請求権になる。利用停止の権限もある。第三者機関である審査会もできて、決定に対して不服があればいろいろなことの不服申し立てができるというような総合的なことを考えれば、私は、今回は大変な抑止効果を持つし、防衛庁のような事案も相当防げなければならない、こう思っておりまして、あとは各省庁、各末端、各個人まで十分徹底することだ、こういうふうに思っております。
枝野委員 まあ、あのときもやり合った話で、そのことを具体的に細かいことはやり合わない、今さら蒸し返しませんが、隠れて勝手につくっていたという案件ですよね、防衛庁リスト問題というのは。隠れて勝手にやっていた問題を、審査会をつくろうが何つくろうが、関係ないんですよね。隠れてやっていたということがばれたときにどういうペナルティーがあるのか、ここが問題なわけですよ、隠れてやるということは。公然とやるときには、それはいろいろな抑止効果はあるでしょう。防衛庁リスト問題は隠れてやっていたことが問題なんですが、隠れてやっていたことに対する何か抑止効果、今回の法律で高まっていますか。
片山国務大臣 防衛庁の事案は、海幕三佐ですか、あるいは空幕三佐の問題、あれは隠れてじゃないんでしょうね。やはり、いわゆる個人情報保護、現行法の十分な認識がなくて、例えばリストをつくるとか、あるいは教えるべきでないところに教えたとか、こういうことでございまして、それは制度の欠陥もありますよ。しかし、それはやはり周知徹底が不十分だったということもあるいはあるわけでありますから、今度は制度も相当整備されてくる、ああいうことが大きな学習効果を各省庁に与えたんではないかということを含めますと、私は、相当防げるんではないかと。ただ、もう一つもないか、隠れてどうだと、これはまた別の議論でございます。
枝野委員 周知徹底ができていなかったからということで、やった人たち、これはたしか懲戒処分しているんじゃないですか。周知徹底ができていなかったからやっちゃったという話なら、もっと上の人、周知徹底の責任者が処分を受けなきゃならないんですが、これはどこなんですか、総務省なんですか、内閣官房なんですか、内閣府なんですか、そっちが処分を受けなきゃならないじゃないですか、現場の末端を処分して。今の答弁はめちゃくちゃですよ。
片山国務大臣 それは、懲戒処分は、それぞれ事実を調査して、懲戒権者が適正にその処分をしたわけでございますから。だから、その周知徹底というのはどこの責任か。みんなの責任なんですよ、ある意味では。それが懲戒処分の対象になるかならないかというのはまた懲戒権者の判断でございますので、それがいい悪いということをここで必ずしも私が言う立場にはない。
枝野委員 懲戒権者の権限とおっしゃいますけれども、本当に本来周知徹底をしてもらうべき現場の何とか三佐とか、そういう人たちがそういうことを周知徹底してもらえていなくて結果的にやってしまったことなら、彼らに懲罰を与えるのはおかしくて、周知徹底すべきつかさつかさの責任者いるはずなんですから、それは防衛庁の中なのか、それともほかの役所なのか、そっちこそ処分されるべきなんであって、本当に周知徹底されていないことが原因だったらですよ。だから、今の話は全く、どっちにしても自己矛盾が発生してきますよ。
 それはやはりきちっと法律で、こういうことをしたら処分もされるし刑罰も受けるというような法案をつくらないと、去年の議論、内閣委員会での議論を受けたことにならない。リスト問題のようなケースが起こっても処罰できませんよね。隠れてなのか、完全に隠れてなのかどうかは、役所の中ではある程度の人は知っていたかもしれないけれども、少なくとも国民に対しては隠れて勝手にリストをつくっていましたという問題について、政府案ではやはり処罰できないんですよね、野党案なら処罰できますが。違いますか。
片山国務大臣 罰則の規定は、五十三条と五十四条は、政府案も野党案も同じですよね。できないかどうかというのは、これは事実認定の問題ですよね。今の海幕三佐の問題でも、例えば病気で自衛隊に不合格になった、これが秘密に属する、個人の秘密に属するという事実認定を司法当局がすれば、正当な理由がなく、こういうことになりますよね。そういうようないろいろな観点において、これは事実認定の問題で、それは私は、それが故意であれば十分罰則の適用になるわけでありまして、政府案ではならなくて野党案ではなる、それはなかなか私は理解できない。
枝野委員 野党案を読んでいないんですか。野党案の五十五条のところには、政府案の五十五条と似た規定がありますが、「専らその職務の用以外の用に供する目的で」という文言を抜いています。つまり、個人に使う目的だったとかというわけじゃない。あの防衛庁リスト問題もそうです。役所でうまく使いたい、何かに使えるんじゃないか、そういうケースの場合でも、やはり隠れてこそこそつくっていちゃいかぬということで、我々の方の五十五条では、「専らその職務の用以外の用に供する目的で」という目的規定を外しました。
 それから、五十六条では、そもそも、正当な理由がないのに、個人情報ファイル簿に掲載されていないファイルを利用すること自体をだめだと言っています。ここで我々は、あの防衛庁リスト問題に対応できるようにしてあります。ああいうことをやったら刑罰の対象になるようにしてあります。明確に違っているじゃないですか。
片山国務大臣 五十五条が違っているのは、今委員が言われましたように、「専らその職務の用以外の用に供する目的で」、それがないわけですね。
 我々は、職務に属する範囲でやったことについてまで刑罰をかけるのは、刑罰という仕組みのいろいろな性格からいっていかがかな、こっちの方は懲戒処分で対応すべきではないか、当罰性が低い、刑罰に当たる行為としての性格は弱い、こういう総合的な判断で関係のところが相談しまして、そういうことにいたしたわけでありまして、その点だけの相違は確かにあります。
枝野委員 本人の目的が職務に使う目的であれば、お役人さんは個人情報について変なことをしてもいい、そういう思想に立っていらっしゃるわけですね。
片山国務大臣 考え方はそんなに違いはないんですよ、野党案も政府案も。問題は、職務の用に供した場合の行為について当罰性まで、そこまで認めるかどうか、こういう議論なんですよね。
 だから、私どもの方は、そこまで刑罰として制裁を加えるのはいかがかな、これはむしろ懲戒処分の方で対応すべきではないか、こういう考え方でございまして、しかも、それが仮に懲戒処分でも刑罰でも、特に刑罰については事実認定がしっかり要件にはまらなければなりませんですよね。そこのところを申し上げているわけであります。
枝野委員 だから、そこがまさに問われているわけですよ。つまり、今の日本の役所の皆さんも、それはたまには例外はいますけれども、やはりみんなモラルは高いですよ。つまり、自分の金もうけのためとか自分の私的なことのために悪いことをする人はそんなには多くないと思いますよ。総体的に、ほかのいろいろな国と考えて。
 むしろ心配なのは、これは職務のために必要だと本人は主観的には思っているのに、だけれども、社会的なルールの上からは許されないことをしてしまう。そういうことはだめなんですよと初めからきちっと厳しくかけておいてあげないと、逆に、それは違法だからやっちゃいけないよね、これは処罰されちゃうからやっちゃいけないよねということで抑止効果がちゃんと図られるんで、それは全く逆じゃないですか。まずきちっと、役所のためだと主観的に思っていることでもだめなことはだめと明確にさせないといけないんじゃないですか。
片山国務大臣 こういうことを言うと誤解を招くかもしれませんが、仮に、職務熱心で、これが職務遂行のために必要だという判断でやった場合、それについてまで刑罰を科することは刑罰の性格上行き過ぎではないか、こういう判断で、それに対応するのは懲戒処分だと。
 それがいいとは言っていないんですよ。だから、法律上は、専ら職務の用に供する目的以外のことにやる場合には刑罰をぴしゃっとやる、職務の用に供することで行き過ぎがあった場合には、これは懲戒処分で対応する、こういう考え方であります。
枝野委員 行政というものに対する基本的な考え方がもしかすると違うのかなと今伺っていましたけれども、まさに、国民との約束に基づいて、つまりそれは国会でつくられた法律に基づいて、本人が幾ら主観的に、これは国のために役に立つ、社会のために役に立つ、職務のためにやったんだ、その主観ということは国民との関係では全く関係ないんですよ。国民の側でどういう権利が侵害されたのか、そことの兼ね合いでやはり考えないと、過失でやってしまったとかというケースについては、それはあるかもしれない。だけれども、法の不知は、処罰の対象というのは一般国民も含めて全部一緒ですからね。ということを考えると、今の理屈はとても通らないと私は思うんです。
 官房長官にお尋ねをしたいと思っているんですが、その防衛庁リスト問題について、防衛庁が処分をした、処分をするに当たってはさまざまな事実認定をいろいろした、そこで処分をした、それからそこでの事実関係、そのことと、今回総務大臣が出し直されてきたこの法案、そして民間の個人情報保護法案との関係、こういったことについて、内閣官房としてどのような調整を官房長官はされたんでしょうか。
片山国務大臣 それは、行政機関の個人情報保護法制関係につきましては、私のところが中心で、関係の省庁と十分協議いたしましてこの法案を出し直し、もちろん与党との調整もいたしました。そういうことでございます。
枝野委員 そんなことは聞いていないんです。
 私は、この少なくとも三つの役所にまたがる、法案そのものについては別ですよ、法案そのものについての調整は別として、少なくとも法案相互の関係と防衛庁リスト問題での処分という問題との兼ね合いについて、内閣官房は、行政各部の施策に関するその統一保持上必要な総合調整に関する事務というのを内閣官房の所掌事務で、内閣官房長官がその事務を統括すると内閣法に書いてある、それに基づいて内閣官房長官の御見解をお尋ねすると通告もしてありますので、お答えいただけないんだったら、これ以上質問を続けられません。
片山国務大臣 防衛庁のリスト問題につきましては、行政機関個人情報保護法の所管大臣として、防衛庁とは十分な連絡をとって、私の方がいろいろな相談に乗ってきたわけであります。
 ただ、この処分については、防衛庁長官が、何度も言いますように、任命権者であり懲戒権者でありますから、その判断を尊重したい、こういうことでございまして、内閣官房とも十分な連絡調整はいたしております。
枝野委員 内閣官房がまさに相談をされた、その相談で内閣官房としてどういう調整をされたのかということを官房長官にお尋ねしないと、これは、リスト問題で前回の国会がとまって出し直しということに至った、少なくとも、主観的には皆さんどうかわかりませんが、客観的経緯としてはそうなんですから、そこのところの調整を内閣官房としてどうされたのかがお答えいただけないんだったら、審議のしようがありません。(発言する者あり)
片山国務大臣 いやいや、答えられない立場じゃないですよ。内閣は一体で、私はこの関係の所管ですから。だから、もちろん官房長官とも相談いたしますけれども、内閣としての所管で、調整は、この件については私だ、こう思っております。
村井委員長 ちょっと速記をとめて。
    〔速記中止〕
村井委員長 速記を起こして。
 それでは、ただいまの枝野委員の官房長官に対する質問でございますが、これにつきましては理事会で協議をさせていただきます。よろしゅうございますか。
枝野委員 それが出てくるまで質問できませんので、来たら質問を続けます。だから、理事会が終わりましたら。
村井委員長 理事会で相談させていただきます。
 この際、暫時休憩いたします。
    午後零時九分休憩
     ――――◇―――――
    午後二時十三分開議
村井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。石毛えい子君。
石毛委員 民主党の石毛えい子でございます。
 最初に、個人情報保護法案をめぐりまして、何点か質問をいたします。
 まず最初の質問でございますけれども、個人情報保護法体制といいますか体系といいますか、この国会では、個人情報の保護に関する法律案及び行政機関、独立行政法人等々ということでございますけれども、百五十一国会で当初個人情報保護法案が提出されましたときに、明示の仕方は若干変わっているところがあったかと思いますけれども、こういう図がよく示されておりました。
 まず最初に、個人情報保護法体制を貫く基本法制、基本原則ですとか国等の責務、施策等々を基礎に置いて、民間部門、公的部門、それぞれ保護法案を構築していくということで、今回は、民間事業者に対する個人情報保護法案と、それから行政機関等という形で出ております。
 もう一つ重要な部分として、個別法についても言及されてまいりました。そのことは、この保護法案におきましても、第六条の中でそうした規定も盛られているというふうに私は理解しているわけでございますけれども、きょう改めまして、六条三項が規定する個別法というのはどういう内容なのかということ、それから、その内容を御指摘いただいたとするなら、その内容に関しまして、関係省庁との協議がどの程度まで進んできているのかということ、そしてまた、最終的にその個別法をいつまでに制定していくという見込みであるのか、そうしたことをまずお尋ねしたいと思います。
細田国務大臣 政府案第六条第三項に基づきまして、本法案の規律を上回る追加的な保護措置を講ずる必要がある個人情報とは、その性質や利用方法によっては個人の権利利益の侵害のおそれが高いもののことであります。
 これに該当する個人情報については、例えば金融分野における個人信用情報等が考えられるわけでございまして、具体的には、個別分野を所管する各省庁、府省において検討すべきであると考えております。
 さらにお尋ねがございましたので、やや細かく申しますと、個別に見ていきますと、例えば一昨年六月に、それまで守秘義務がかかっておりませんでした看護師等についても新たに守秘義務を設けるための法改正が行われたあのときの議論でもおわかりのように、必要なもの、しかもこの法案そのものが、非常に大量に情報処理をする者を前提に考えておりますので、そうでなく、個別にも、職業上、いろいろな意味で守秘義務を課した方がいいものが、コンピューター時代になりまして、さまざま出てきておるのが実態でございます。
 しかも、これは業種、業態によっても違うということで、先ほどの医療分野、看護師等だけでいいのかどうかという問題もあるでしょうし、あるいは金融分野については、今金融審議会等で検討をすることとしておるようでございます。それから電気通信分野においても、電気通信事業における個人情報保護に関するガイドラインを運用するとともに、本年二月から、そういった具体的な検討に入っていると聞いております。それぞれの業態に応じまして、この六条三の必要な措置というものは考えられるわけでございます。
石毛委員 今の大臣の御答弁で、個人情報保護法案がこの百五十六国会に提出された法案に限らないということは受けとめさせていただきましたけれども、私の質問の中には、関係省庁との協議がどのようで、これにつきましては若干お触れいただいたと思いますけれども、いつまでに法制定を目指していくのか。当然、全体系として構想されているわけですから、そこのところはきちっと明示をしていただいてもよろしいかと思いますので、そのいつまでにということ。
 それから、医療、金融、信用、電気通信というふうに御指摘いただきましたけれども、大変、個人のアイデンティティーですとか尊厳に触れる、機微に触れるそうした情報とすれば、教育関係なんかも重要かと思いますけれども、そうしたことは今どのような状況であるのかということもあわせてお示しいただければと思います。
細田国務大臣 まずは、この法案、これまでにない法案でございますし、これが制定され、実行されますと、内容的にはこれまで手の及ばなかったところに及ぶという意味で画期的な法律であると思います。
 それから、あくまでも、そこにございます、前から説明しております三角形をした考え方、これは、まず基本法としての対応、それから、その中での個人情報の事業者に対する監督はあらゆる業種に及ぶという面で、例外はございますけれども、教育や通信やその他も含んで、今後、おそれのあるいろいろな業種に及ぶということでございますので、まずは、この法律を実施するということが大切であるとは思っております。
 しかしながら、二つありまして、この法律だけで十分にカバーし切れないものもあるいはあるかもしれませんし、さらに、きめ細かく規制をすべき、例えば看護師法を変えたときの議論のように、どうしてもこれをやらなければならない、厳密に言うと保健師助産師看護師法でございますが、そういう個別の必要であると認められた事態については、関係省で大いに検討されることを私どもは慫慂しておるわけでございます。
 先ほどおっしゃいました教育の関係というのは、教育のどういう分野かにもよりますけれども、必要であるということになれば、個別法を制定していただくことも歓迎をいたします。
石毛委員 大臣の御答弁は、私はよく理解できない。と申しますのは、率直な疑問ですけれども、一つは、これから教育ももし必要であれば、それは必要であったら入れていただくのはよろしいんですけれども、本当に、では、全体系を政府としてどのように構想して、そして、今回はここまでだと。あえてつけ加えさせていただければ、今回出し直した法案では基本原則の部分を削除しておりますから、具体的に本人関与等々が関係してくる法案は全部開示の請求ですとか、訂正の請求ですとかと入れ込んでいますから、基本原則として機能するよりは、民間事業者に対する規制として機能するようになっていて、この体系自体がかなり変わってきている。変わってきているというふうに今私は差し当たって理解をしておりますけれども、きょうは、そこのところの議論ではなくて、こちらの個別法のところであるわけです。
 大臣の御答弁は、私ははっきり理解しかねるというふうに申し上げましたのは、一つ、大臣は今、事業者への勧告はあらゆる業種に及んで、今回提案の本法の中でもそこはかぶせることができているから、その部分でかなりやれるんだというふうにまずはおっしゃられました。
 その部分があるのも確かだと思いますけれども、六条の三項は、「特にその適正な取扱いの厳格な実施を確保する必要がある個人情報」のために「保護のための格別の措置」というふうに記載されておりまして、そのことに対して、では、この今回提案の本法の中ではどの程度までやれて、そして、特に適正な取り扱い、厳格な実施というのはどういうふうに考えられているのかということを必ずしも明確に御答弁いただかなかったということ。
 それから、もうちょっと待っていただきたいと思いますけれども、医療分野では保助看法の守秘義務が盛り込まれたということだけ大臣はおっしゃっていますけれども、それはもう当たり前のことで、遅きに失したという話だと思うんです。医療分野は、DNAの問題ですとか結核サーベイランスの問題ですとか、個人情報に関しましてはもっと注目されている重要なことがたくさんあるわけで、ただいままでいただきました大臣の御答弁からいいますと、この個別法につきまして政府として責任を持って全体系を構想されているというふうには私は受けとめさせていただけなかったということです。
 大変率直な表現をしておりまして恐縮だという思いは私の中にもございますけれども、もう一度御答弁をいただきたいと思います。
細田国務大臣 この法律、特に民間部分につきましては、あくまでも、これは政令で定めることになっておりますが、大体五千人以上の情報をコンピューターで処理いたしまして、それをもとに営業をしたりさまざまな活動をする、これを対象にしようと。
 なぜそうするかといいますと、それじゃ、町の中にある本屋さんでもパン屋さんでも薬屋さんでも、それは顧客情報というものがあって、最近は、経営上いろいろな個人をコンピューターに打ち込んで自分で管理している、そういう企業はたくさんあるわけですね。したがいまして、そういう一般的な中小企業の方が自分のために、お得意さんを初めとする個人の情報をためて運用している人にまで全部規制が及ぶということは適当ではないんじゃなかろうかということから、量的なところで線を引くという考え方なんですね。
 ところが、大量に処理しておるか否かということと関係なく、今おっしゃいましたような、病院には、一人一人の患者さんが行っていろいろな病気の治療をしてもらうとか処方をしてもらうとかいうときに、当然、最近は、全部の情報はコンピューターに打ち込まれ、だんだん電子カルテになり、いろいろ処理がなされていきますと、個々の情報をいろいろな方が、心得違いの方がそれを悪く使うというような方もあるかもしれません。
 そこで、できるだけそういうものは、職業上の道徳違反であり、かつ、多くの個人に多大な迷惑をかけるといいますか、そういうものについては、たとえその対象人数が少なくても多くても、それにかかわらず、本来、社会的な意味で何らかの罰則を加えなきゃならないということはある。それが行政庁とか何かにもあるわけでございます。
 行政庁は非常に多くの情報を処理しておりますから特に差は出ないかもしれませんが、そうでない仕事、例えば教育の面でも、どういう面で教育とおっしゃっているかわかりませんけれども、そういった情報があって、それが、この法律によって必ずしもすべてを捕捉できないかもしれないというようなものがあれば、それは、個別の省庁が、教育上の観点から見て、個別の情報がこういうふうに漏れるようなことであれば、個人情報保護法の対象ではつかみ切れないものがある、したがって、この点は個別法において規制しよう、こういう考え方が出てくるという意味で申し上げているわけでございます。
    〔委員長退席、蓮実委員長代理着席〕
石毛委員 大変壮大なといいますか、確かに、個人情報の有用性に配慮しつつという両面性もあるのも確かではありますけれども、個人情報を保護していくという基本的人権にかかわる壮大な法案が提出されたというふうに私は受けとめております。
 大臣の御答弁で、保護法の全体系をどのように構想されていらして、その中で今回の法案のポジションというのはここなんだということをもう少し明瞭にお示しいただければというふうに思いましたけれども、この点に関しましては、また別の機会にもう少し質問をさせていただきたいと思います。
 次の質問でございますけれども、今回新しく改定されて出されました法案の中で、第五十条の「適用除外」のところに、第一項も変更されているわけでございますけれども、ここはちょっとおきまして、第二項に報道に関する規定が新しく設けられました。百五十一国会以来の旧法案にはなかった項目でございます。この報道に関する規定が新しく盛られました意味につきまして御説明をいただきたいと存じます。
    〔蓮実委員長代理退席、委員長着席〕
細田国務大臣 旧法案においても、実は、報道の問題に規制の対象としていろいろ介入するようなことは一切考えておらなかったわけでございますが、基本原則とかさまざまな規定の関係でそれを非常に不安視して、そもそもこの法律そのものに反対だというふうにおっしゃる方が報道関係を中心に極めて多かったわけでございます。
 したがいまして、この際、五十条二項においても、報道機関の報道活動を適用除外する制度を設けるためには報道という概念を用いることが不可欠であるが、その範囲が恣意的に判断されることのないように、趣旨を明確にし判断基準を客観化するために、法案五十条第二項において報道の定義を条文に明記することとしたところでございます。
石毛委員 確かに、報道とは何を指すのか、どういうことを意味するのかということは、この法案提案以来多くの論議を呼んできたところだというふうには私も理解をしておりますが、私は、今回この新法の中に報道に関する規定が盛り込まれましたことによりまして、この規定に該当しない、客観的事実とはいうわけですけれども、客観的事実は立場によっても事実に対する判断が違ってくると思いますし、それから時間が動けば違ってくるかとも思いますし、客観的事実が唯一の事実に帰着するわけではないという、そうした観点からしますと、客観的事実がどう判断されるかということによりましては、その判断から外れた部分の客観的事実は適用除外にはならなくて、むしろ民間事業者に対する義務規定がかかることになってしまうのではないかという、そうした危惧、不安を持つわけです。
 午前中、枝野委員の、政治家のスキャンダル、このスキャンダルの事実性に関して、結果的に誤報であったとしてもいいというふうには大臣は御答弁になりました。政治家のスキャンダルは世間的には注目を浴びる最たる事実かと思いますけれども、でも事実にはいろいろな事実がありますし、もう繰り返すことはしませんけれども、客観的事実の蓋然性といいますか、蓋然性と確実性の差というようなことでいいますと、どんなふうに判断される、もしかしたらもっと狭くなってしまうのではないか。
細田国務大臣 これは、客観的事実として報道されたり記述されれば足りるわけでございまして、その内容が結果的に事実に反するかどうかということとは一切関係がございません。したがって、そういう、報道に踏み込む、あるいはこの対象とすることは考えておりません。
石毛委員 そうしますと、あえてこの二項を規定する意味、意図というのはなかったのではないんですか。
 本会議での代表質問の中でたしか、客観的事実であるかどうかということの立証責任は主務大臣にあるという御答弁がなされていると思いますけれども、そうすると、客観的事実であるかどうかということの判断はされるわけですね。判断の主体があるわけですよね。その判断の主体によりまして、これが客観的事実とは多少違うのではないかというふうに主務大臣が判断されたとすれば、ひとまずはそれは客観的事実ではないということになるんだと思いますから、それは報道機関にとっては大変重要な問題になって登場してくると思います。
 もし、それほどこだわることではなくて、ごくごく一般的な規定として置いただけだとおっしゃるんだったら、あえてこの第二項というのは規定する必要はないのではないか、議論の中で報道とはこういうものだということを交わしていけば足りる話でありまして、あえて法文に記載されたということに対して、私はいささかな疑義を持つということでございます。
細田国務大臣 これは意図があるというようなことではございませんで、明治以来、内閣法制局というのは、新しい言葉が出てきた場合に、そしてそれがどういう意味かを求める場合に、何らかの中身を定義づけるという癖がございまして、報道という概念が出てくるわけでございますので、では報道とは何かということをさんざん議論いたしまして、これは主観的な、ほしいままにする、恣意で書くというようなことも書けませんで、これは客観的な事実として云々ということが報道の定義としては最もいいのではないかということで書いてあるわけでございます。
 これが全くないと、また報道とはどんなことかというふうに議論を呼ぶわけでございます。報道機関のお立場としてもやはり、自分たちは客観的事実を報道していないんだからその部分をどうしてくれるなんて言いませんから、皆さん一生懸命客観的事実として報道されているので、結果的にそれが誤りであったかどうか、あるいは誤解であったかどうかを問うわけではございませんので、その趣旨で書いておるわけでございます。
石毛委員 何か随分、入念規定というふうに理解すればよろしいのでしょうか。本当にそれ以上でもそれ以下でもないということでよろしいのでしょうか。(細田国務大臣「そのとおりでございます」と呼ぶ)
 それでは、次の質問に移りたいと思います。少し時間がなくなりましたので、質問を飛ばしてまいります。
 午前中、桝屋委員からの御質問あるいは御議論になりました質問とかなり重なる部分がございますけれども、野党案は、自己情報コントロール権の、こうした表現は明示しておりませんけれども、趣旨を盛り込んでいるということです。私はこれは、個人情報が人それぞれが自分自身に対するアイデンティティーを確認するという意味でも、それから人間としての尊厳を維持する上でも個人情報は大変重要な意味を持ちますから、それに対して自分自身が関与できるということは重要なポイントになるというふうに考えているものです。
 野党案では自己情報コントロール権の趣旨を盛り込んでいるのが私は評価をしているところですけれども、一面では、午前中の桝屋委員の質問にもございましたように、表現の自由が規制されるのではないかと。自己情報に対するコントロール権と表現の自由との緊張関係ということでございますけれども、この両者の関係について、政府見解はいかがなものでしょうか。
細田国務大臣 一つの定義を持った言葉を創設する、しかもそれが権利であるというのには、かなりの検討、広範な検討と、歴史あるいは事例が必要であると思っております。
 自己情報コントロール権を主張される方の思いというのは我々も同じでございまして、およそ自分の持っている個人の情報は、人にも知られたくないし、勝手に扱われたくもないし、漏らしてほしくもないし、迷惑も受けたくない、これが基本でありますから、それは余り差がないのではないかと思っておるんです。プライバシーの権利でも、あれだけ、昭和四十年代に判決によりまして認められて、民法上もまだない不法行為の態様として出てきて、最近も、著作に対して出版の停止だとかいろいろなことがプライバシーの権利でも行われておるわけです。
 この自己情報コントロール権も、個人の情報でいえば、まだ非常に広範に、どこまで踏み込むべきかということについてははっきりした統一的な見解が私はまだないのではないかと思っておりますので、このたびの法案のような形で開示とかその他の要請ができる、そしてあらゆる場面においてそれができるんだという規定で始めまして、それから考えていけばいい問題である。
 かつ、すべてを私どもの政府案は網羅しておるわけでございまして、自己情報コントロール権ということで、明示をするとまた表現の、報道の自由等との調整原理も明らかでなくなってしまうんですね。つまり、自分の情報についてはすべてコントロールできるべきであるという前提をとった瞬間に、それじゃ自分の情報について、いわば、どこかに勝手に書かれたらどうするんだというようなこともあるわけですね。それは何も政治家のスキャンダルに限らず、財産がどうだ、あるいは係累がどうだ、納税額がどうだ、あるいは健康情報がどうだということも含んで、いろいろなことが起こってくる。
 したがいまして、私どもとしては、そういうことがまだ調整原理としてははっきりしていないということで、明確な定義づけで盛り込むよりは、今の政府案のように規定することが当面適当ではないか。しかも、その必要性は迫っておりますので、これからいろいろな類型が出てくると思うんです。そういった類型の中で、個人の情報に対する権利というのは一体何であるかということは、おのずと学説、判例等が積み上がっていくものであると考えております。
石毛委員 大臣は、まだ調整原理が明らかにはされ切れていないということをお述べになりながら、自己情報コントロール権について明確にする必要性は迫っているというふうに最後おまとめになられました。そういうふうに私は伺いましたけれども、野党案はいかがでしょうか。野党案はそこのところを一歩先んじたというふうに理解もできるわけですけれども、野党案はいかがでしょうか。
山内(功)議員 近年の情報化が進展した社会におきまして、私生活の侵害を未然に防ぐ観点から、プライバシーの権利について、自己に関する情報の流れをコントロールするという側面が現在活発に議論されております。
 自己情報コントロール権は生成中の概念ではありますが、基本的人権にかかわる重要な権利であることには間違いなく、私どもは、その趣旨や精神を法案に盛ることによって社会的な認知を後押しするという考え方をとっています。
 野党案でも、自己情報コントロール権につきましては、その要件、効果が学説においてなお検討過程にあるということから、確定的なものとして明示はしていないものの、その基本的考え方を十分に反映させた画期的なものであると自負もしております。
 具体的に言いましたら、目的外利用の制限の例外事由を政府案より縮小しましたり、利用目的の通知、公表については原則通知にしたりするなどしておりますが、そうした本人関与を充実させる努力のよって立つ考え方として、自己情報コントロール権の基本的な考え方、すなわち自己情報への本人関与の重要性を目的規定に頭出ししたものでございます。
 自己情報コントロール権は、確かに表現の自由と緊張関係にあることは事実であります。しかし、だからこそ、野党案では第一条で、まず「表現の自由を尊重しつつ、」と規定をしておりますし、野党案六十五条で適用除外の範囲を広くとることで、政府案より格段に表現の自由を尊重したものとなっていると思っております。
石毛委員 頭出しをして、先に社会的認知を後押ししていくか、大臣は必要性は迫っているというふうに御答弁いただきましたので、多少のタイムラグの差かなというふうに伺いました。早くここのところは整理をされていって、個人が関与する権利とそれから表現の自由の両立を図っていくようにというふうに私としては求めたいと思います。
 最後に、質問飛ばしておりますけれども、総務大臣にお尋ねしたいと思います。
 行政機関の保有する個人情報保護法に関してでございますけれども、裁判管轄に関する明示の規定がございません。ということは、行政庁を被告とする個人情報にかかわる取り消し訴訟については、行政事件訴訟法第十二条第一項「行政庁を被告とする取消訴訟は、その行政庁の所在地の裁判所の管轄に属する。」という規定に基づき行われることになる、こういうことだろうというふうに受けとめますけれども、もう一方で、この国会で、情報公開の審査会とそれから個人情報保護の委員会が新しく統合設置といいましょうか、その法案も提出されているところでございますが、行政機関情報公開法では、訴訟の管轄の特例が定められていて、全国八カ所の地域の裁判所に訴訟提起ができる。それに比べますと、この場合には、それこそ行政庁の所在地の裁判所しかできないわけですから、大変狭い訴訟権といいますか、その行使しかできないという、それは情報主体の個人からすれば大変問題だというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
片山国務大臣 言われるとおりなんですよ。情報公開法は八高裁の地元の裁判所に訴訟が起こせるんですが、情報公開の場合には開示決定、不開示というのが大体各省庁大臣になるんですね。大臣になりますと、東京になっちゃうんですよ。そこで、大変限定されるという議論があって、特例をつくったんです。あれだけなんです、特例は。
 今回は、同じような実は議論があるんですけれども、今回の個人情報保護の場合には、恐らく各省庁権限を地方に相当委任しますから、したがって、実体上は地方でいろいろなこと、訴訟も起こせる、こういうことでございまして、管轄をどうするかというのは、これは司法制度の根幹ですから、情報公開の方が大特例をつくった、それ以外はつくらずに運用上でやろう、こういうことで、今回もそういう法制になったわけであります。
石毛委員 委任できる内容についてはそれはそれでよろしいという解もあり得るかと思いますけれども、委任できない霞が関特有の問題というのもあるわけですから、例えば防衛庁での個人情報の問題というのは、では、霞が関に来るのかという問題がありますので、これにつきましては引き続き討論をさせていただくことにいたしまして、私の質問時間、五十七分までですから、あと九分前後ございますけれども、私は、本来、最初の質問は官房長官ということでお願いをいたしましたので、官房長官への質問を留保させていただきまして、少し早いですけれども、これで終わらせていただきます。ありがとうございました。
村井委員長 それでは、引き続いて後藤斎君。
後藤(斎)委員 民主党の後藤斎でございます。
 昨年五月に、個人情報保護法案四法が国会にかかったときに、冒頭にいろいろな観点から御質問させてもらいました。そういう意味では、一年近くたった本格的な質疑ということで、当時、片山大臣、当時の竹中IT大臣を含めて御質問したものが、ある意味では政府案としてもそれなりに前進を見ているというふうには思っております。そういう観点から、きょう午前中の質疑も含めて、冒頭、野党提出者の方にお尋ねをしたいと思います。
 第三者機関の設置ということが、ある意味では一番大きな政府案と野党提案の、文言ではなくて、制度の仕組みそのものが大きく違う部分だというふうに認識しています。
 本会議でも、小泉総理の方から、二重行政であり、なおかつ行革に反する、二つの視点から野党提案の個人情報保護委員会はまかりならぬというきつい断定を今されているところでもありますが、内容を余り吟味せずに総理初め細田大臣もお話をしているような感じもするので、冒頭、野党提案者の方に、どんな個人情報保護委員会というものをお考えになっているのか、体制も含めて御説明をいただきたいと思います。
細野議員 まず第三者機関に関しては、小泉総理の方からは二重行政という御批判がございましたけれども、特にこの問題に関しては、主務大臣という、午前中の答弁の中でもありましたけれども、一体担当者がだれかわからない、しかも、非常に権限が強い形で個人情報という形で関与されるんじゃないか、さまざまな面で弊害が多い、むしろ、第三者機関をつくって、きちっとそこで担保していった方が客観的でいいんじゃないかという判断を我々はいたしました。
 行政改革についての考え方は、これは当然、不必要なものを削る、そのかわり必要なところはきちっと担保していく、それは制度としてつくっていく、そういう考え方でこの機関については設置をしたいと考えております。
 規模といたしましては、第三者機関の代表的な例である公正取引委員会を例にとりますと、大体その三分の一程度を想定しております。
 組織体制につきましては、これは個人情報に関しても全国各地でさまざまなケースが考えられるわけでございますので、大体全国を八か九のブロックに分けまして、本部の事務局は当然東京に置くということを想定しております。本部や、必要であれば一部の地方事務所については、調査機能を持たせることを検討しております。
 以上でございます。
後藤(斎)委員 細田大臣、今のような話で、三分の一程度というのが具体的に何人かというのはこれからもう少し詰める必要があるのかもしれませんが、諸外国の同種の、要するに監督をする第三者委員会的機関と主務大臣との分離をしているケースは多くあるというふうに承知をしております。
 例えば、ドイツについては、事務局体制を連邦データ保護監督官ということで六十二人、これで苦情処理を年間三千件から四千件やられているということのようですし、イギリスでも、情報保護コミッショナーという第三者機関が情報保護委員会の事務局として大体百人程度、年間の苦情処理は四千件を少し上回るくらい苦情処理をしているというふうな、いろいろな事例がございます。フランスでも、事務局六十人体制で情報処理及び自由に関する国家委員会というふうなこと。
 例えばこの六十人ないし百人程度のものが行革に反するとかいうことよりも、むしろ、きょうの午前中の議論の中でもありましたように、抜け落ちてしまう事例、事案が出てくるとか、国民から見れば、何か監督者と実際の業務をしている人が同一であるという、二重行政というよりも、むしろ、あすから質疑が始まる、食品安全委員会と農林水産省、厚生労働省、要するにリスク管理とリスク評価と同じように、やはり第三者委員会は、できるだけコンパクトなものをまずつくってみて、またそれを進化させていくということも私は必要ではないかなと。
 特に私は、食品安全委員会では五十四、五人の体制から事務局が始まりますが、もっと大きくすべきだという議論を別の委員会でしてきました。例えば五十人、百人くらいの事務局を置いて国民の不安感を払拭する、なおかつ漏れがなくなるという逆に二つのプラスの面があるのであれば、野党案にあるように、個人情報保護委員会、要するに第三者機関的なものをむしろつくるべきではないかなというふうに私は考えますが、細田大臣、いかがでしょうか。
細田国務大臣 こういう個別の事案に対処する方法は、はっきり二通りあると思うんですね。独立の機関を設けてそこで全部やった方がいいじゃないかという考え方と、そうではなくて、個別の行政庁においてやれば足りるのではないかという考え方は、絶対的にどちらがいいというものでは必ずしもないと私は思います。
 ただ、やや事案として似ているものを言うと、消費者保護とか消費者相談というようなものがございまして、関係省に消費者苦情の相談窓口を置いたり国民生活センターを置いたりしながら、自分は被害に遭った、まず相談に行って、ではどういうことが起こったんだということで、例えば電気製品が火を噴いたというのなら、電気製品の規格がおかしくなかったのか、その型番も聞いて、そういうことが頻繁にないかどうかを役所に聞くとか、そういうことでかなり対応しているんですね。それは、消費者相談特別委員会というようなものを置いて、そこでやればいいという考え方もあると思いますが、行政のタイプによっていろいろ一長一短があると思っております。
 それから、方向が二つありまして、独立の行政の委員会をつくると、もうそれ自体が目的化しますから、取り締まりの委員会になって、他方、大変強固な権限を持つというおそれを持つ場合もあるんですね。それからもう一つは、主務官庁に任せておくと甘くなって、癒着か何かがあって、相談に行っても言うことを聞いてくれないんじゃないか。これは両極端があって、きちっとしたところに押さえていかなきゃならない。そういった基準も私どもの法案には書いてあるわけですし、やはり専門性を持った主務大臣が個別に体制を整備する。ここに団体とかいろいろ書いてあるわけでございますけれども、そういったところを通じてまず啓発活動もしなきゃいけないと思うんです。
 エステの情報がホームページに載ったというのは、だれが考えても、あれは、エステの経営者が自分のところへ来るお客の名前を出したり症状を出したりして、もうかるはずがないんですよ。多分、ソフトウエアのあり方を間違ったりして、うかつにもやった。それから、社内の体制が、ソフトウエアを特定のものに限定して外部に漏れないようにしないために、セーフティーネットの観点が非常に甘かったために、悪い社員か何かが全部データをとって人に売り飛ばしたケースがあるとか、まずはそういった事業者のそれぞれの監督体制、社内の自己監督体制をしっかりすればそういう問題はかなり克服できて、その上に、悪意でいろいろ大量な情報を横流ししたりする者が出てくるようなケースが非常に悪質で、取り締まられるべきケースであると思いますので、このような案件が急増するのか、あるいは、皆でそういうセーフティーネットのための工夫、ソフトウエアの採用等をすれば、そういう行為が鎮静化して、本当に悪意のある者だけを取り締まればいいようになるかというのはこれからの問題でもあると思いますので、私は、独立した委員会を今つくって行政組織として大きなお金を使ってやるのは、まだ時期尚早ではないかなと思っております。
後藤(斎)委員 仮に百二十歩譲って主務大臣がやると仮定をしても、その場合一番問題になるのは、では、大臣の下にどんな組織体系を置くかということにつながって、ある意味では、細田大臣が今冒頭おっしゃられましたように、二つの考え方があるということはやはり柔軟に考えていただかなければいけないのかなと。
 例えば総務省も、この個人情報の問題を特別に扱う少なくとも課か室みたいなものを置く、ないし、ある程度官庁の中でも独立性を持って監視監督する、それも主目的は個人情報の保護であるというふうにしていかなければいけないわけですね。
 というのは、いろいろなやりくりをすれば、先ほど御指摘をしたように、仮に五十人ないし百人という体制であれば、それがまさに対応ができるというものが私は前提にないと、ここで余り議論をして、イエス・オア・ノーで、今のところはノーという細田大臣のお話なのでいけませんが。
 片山大臣、去年、大臣は幾つか私との質疑の中で、例えば今回、いろいろな意味で罰則規定も行政機関の個人情報で、追加というか、私どもが考えた趣旨のことも含めて案として出てきています。当時片山大臣は非常に強固にこれが最善の案であるというふうなことを、細田大臣、おっしゃったわけですよ。一年たっていろいろな部分が変わってきたからようやくここに来たというふうに思って、そこについては大変評価を私もしたいと思いますが。
 しからば、先ほど石毛委員の部分で、情報公開法の考え方と個人情報保護、行政機関、ちょっと違うんだよ、情報公開法の方が特例なんだよというお話がありました。これは野党提案者にも同じ質問をしたいと思うんですが、情報公開・個人情報保護審査会というのは、それぞれ何かちょっと思いが行政機関の方で違うような感じも私はするんですが、大臣、簡潔で結構ですから、大臣の、まず政府案についての、情報公開・個人情報保護審査会について、その中身というか組織の考え方についてちょっとお尋ねしたいと思います。
片山国務大臣 情報を公開するというのと個人情報保護というのは似ているようでそうでもないんではないかというようなお考えですが、情報公開法は何人にも情報公開するんですね。個人情報保護は御当人に情報を開示するんですよ。開示、不開示という意味ではそこは似ているんですね。いわば、広く公にやるのか、あるいは御本人だけにやるのか、しかもできるだけ開示しろという原則を課しているわけでございますので、そういう意味では私は共通しているんじゃなかろうか、こう思いますし、不開示する場合というのは、公の利益だとか第三者の利益を、権利利益を守る、こういうことですから、そこも似ているんではなかろうか、こういうふうに思っております。
細野議員 情報公開・個人情報保護審査会の持つべき性格ということでよろしいですか。
 情報公開と個人情報保護ということに関して言いますと、やはり情報公開というのは、あくまで行政をできるだけ明らかにしていく、中身を明らかにしていくということ。個人情報保護の方は、これは個人の個人情報をいかに適切に配慮していくかという問題になるわけですから、その意味で言うと、権利性という意味で言うとはるかにこちらの方が重いわけでございまして、これを、二つを合体させるということになりますので、当然、機能としても役割としても十分な拡充が必要であると私どもは考えております。
後藤(斎)委員 片山大臣も、ちょっと後で別の観点から言いますので、そのときちゃんと答えてください。先ほどちょっと話がかみ合いませんでしたので。
 大臣がおっしゃったように、もちろんイコールの部分がありますけれども、情報公開というのは、まさに行政情報をできるだけ開示しようということですよね。個人情報保護というのは、行政機関とのかかわりからいえば、できるだけ個人情報は保護したい、みずから差しとめを、利用停止をしたいということで、多分ある意味では背反するものが一つの審査会に機能としては入ってくるということですよね、大臣。
 先ほどの議論からいえば、私は情報公開法が特例だというお話をしましたが、審査会は、一つの組織を使えば安上がりだからいいやという発想ではないはずなんです。考え方も、大臣が言ったように、確かに背反する部分はあるけれども、中での組織体系を分けてやれば基本的にはきちっとうまくいくだろうという趣旨ですね。まず、大臣、そこだけちょっと確認をしておきたい。
片山国務大臣 開示、不開示という点では似ているなと。そこで、情報公開審査会がありますから、その似ているところにも着目し、ただ、似ているからといって同じ体制でやれということじゃないんですよ。だから、それは委員の数もふやし、事務局もふやして、中でやり方を分けてやる、こういうことでございまして、開示、不開示というところにポイントを置いて考えているわけでございます。
後藤(斎)委員 その場合、冒頭にちょっと細田大臣にもお尋ねをした第三者機関にも関係をするんですが、大臣、要すれば、情報公開法には見直し規定を置きました。これはまさに情報公開の、日本では平成十三年四月一日からです、二年前からの部分で、二年間たって、いろいろな見直しの作業がこれから出てくると思います。
 今回の個人情報保護法案には、野党提案、政府案も含めて見直し規定は入っておりません。ただ、先ほどもお話をしたように、一年間いろいろな議論を、マスコミの皆さんを含めて国民の皆さんと一緒にやっていくと、政府案が絶対であるというふうに一年前に片山大臣も、当時の竹中大臣も、官房長官もおっしゃいました。それがいろいろな形でやはり進化をするということを考えれば、私は、情報公開法の見直し規定と同じように、この法律、個人情報保護法案、行政も含めてですが、見直し規定を置いて、その部分で国民の今ある御批判を、仮にこのままスタートせざるを得ないという部分になったにしても、そういう部分をきちっとベースに置いてこれから考えていくというお気持ちは、細田大臣、片山大臣、ございませんでしょうか。
細田国務大臣 やはりこの法案は、初めてここで実施しようと思って提出しておるわけでございまして、何年か積み上げて、またそれぞれ起こってくる事態、またIT化の促進とそれに伴ういろいろな安全性の問題での諸問題、あるいは各機関、先ほどそういう例示もありましたけれども、いろいろな部署での実態が、事件などが起こってくる可能性がありますが、この法律でとりあえず当分カバーすることは私はできると思っておりますので、法案の中に今、何年後には見直さなきゃならないんだというような形での見直し規定は必要はないのではないかと。ただ、弾力的に見直せというような院の御要望とかそういうものはあるんじゃないかと思いますけれども、それ以上のものは必要性は感じておりません。
片山国務大臣 もし後藤委員が第三者機関設置のことを言っておられるんなら、行政機関や独立行政法人の方には私はその必要性は少ないと。いろいろ詳細に規定しておりますし、今の審査会というのが情報公開と兼ねておりますがありますから、その点は直ちにいろいろな検討をしなきゃいかぬということは考えませんが、制度というのは永久不変のものはないんですよ。それは常時見直せばいいんです。ただ、見直して、本当に制度改正するかどうかは、そのときの具体の必要性との、そこの接点でございますので、立法府というのはそういうためにあるので、私は、大いに国会で議論していただいて、必要なことは直していく、これはもう当たり前のことだ、こういうふうに思っております。
後藤(斎)委員 またちょっと行きつ戻りつだと時間がありませんから、少し具体的なお話もさせていただきたいと思います。
 要すれば、もう一つ中身に入ると、一番IT化が推進された中での個人情報保護というもので、特に行政機関にかかわる部分ですが、データがたくさん一つのCDないしに書き込まれて、数百万、数千万というものが一挙に外部に漏れたり、それが悪用されたりする、いわゆるデータマッチングという部分が非常に怖いところがあると思います。これは行政機関の方でも既に、過去、何十万件という住基ネットの部分が外部の名簿業者に利用されたということもございますし、そういう意味では、野党案ではデータマッチングの制限というものを基本的には設けています。政府案では基本的にはそのものはございません。
 大臣、冒頭お聞きをしますが、政府案では、国民のその辺の懸念というものに対する法律的な担保というものはなぜ対応されていないんでしょうか。
片山国務大臣 データマッチングが悪いわけじゃないんですね。個人情報をみだりに目的外に利用する、提供する、必要最小限度を超えて使う、これがいけないんですね。だから、そこについては今の法制では、個人情報ファイル単位の利用目的を具体的に明確にさせて、その上で目的外の利用や提供を厳重に制限して、また同時に、個人情報ファイル簿の公表やいろいろな調査、施行状況調査結果による目的外利用や提供の状況の公表をやる、そういうことで全体を担保しているんですね。
 行政の場合には、データマッチングが必要なことがあるんですよ。この前も答弁しましたけれども、例えば、恩給と年金の支給調整なんというためには、人事・恩給局の持っている恩給受給者のデータと厚生労働省が持っている援護年金の支給データ、これを突き合わせるという必要がありますし、それから、出入国管理と旅券の関係のデータマッチングをしていないと、出入国が不法に行われるおそれもあるんですね。
 そういうことがありますので、データマッチングそのものを規制するんじゃなくて、必要最小限度の利用でやれ、目的外の利用や提供はだめだ、その状況は公表する、こういう考え方に立っているわけであります。
細野議員 データマッチングに関しましては、後藤委員御指摘のように、これはもう現実の危機として持っている方が非常にふえているというふうに認識をしております。
 したがいまして、野党案では、目的外利用に関しても政府案よりはるかに厳しい規定を設けた上で、さらにその目的外利用及び提供制限という十条の八項に、いわゆるデータマッチング規定を新設いたしました。
 条文は読みませんが、この理由としては、電子計算機自体を用いてデータマッチングを行うこと、それ自体に対する懸念が広がっている、その国民の不安にこたえたものであると考えております。
後藤(斎)委員 片山大臣、今の野党案、細かい案は以前ごらんになっていると思いますが、そういうふうな規定を設けながら、大臣がおっしゃるように、目的外利用は、もちろんこれが一番問題なのは当然ですが、ただ、それがファイル化されて、いつもそれがどこに行くかわからないという懸念が、不安がやはりあるわけですね、国民の中には。その部分に対しては目的外利用で足りるというふうにお考えでしょうか。柔軟に、野党案のようにということは考えておりませんか。
片山国務大臣 目的外利用につきましては、相当厳重に規定をしておりますし、運用もそうなるし、先ほども言いましたように、目的外利用の状況等は公表するんですよ。だから、そういう意味で、私は、担保できるんではなかろうかと。目的外利用というと何でも目的外利用されるような感じがややありますが、これは相当の客観的な合理性、納得できる状況でなきゃできないので、それは我々の、総務大臣の方もそういう状況については事前にチェックする権限も与えられておりますので、そういう制度と運用、両面から目的外利用は厳重にやってまいりたい。
 しかし、今言いましたように、必要なこともあるものですから、この点についてはぜひ後藤委員に御理解をいただきたいと思います。
後藤(斎)委員 そういう意味では、大臣、相当な理由があるというのが、いろいろな意味でここがどう意味合いを持つのかということにつながってくるのかなと。
 片山大臣は、昨年の五月のときにも、事案ごとに、情報の性質、利用目的に即した具体的かつ明白な理由であるとともに、客観的であることを求めており、恣意的にできるということは許してはいない、最終的な担保は、不服申し立てや訴訟によるというふうな形で、二段階でお答えになっていますね。この考え方は、「相当な理由」の考え方は今でも変わっておりませんか。
片山国務大臣 最終的な担保は、制度というのはすべてそうなりますね、最終的な担保は司法ですよね。
 ただ、基本的な考え方は変わっておりませんが、それはいろいろな状況を見て、状況というか、去年の議論から今日までの推移を見て、私は、目的外利用というのはもうできるだけ限定的に、厳重にやっていくべきだと考えております。
後藤(斎)委員 しからば、昨年の国会でちょうど審議をしておったときの防衛庁、さっき午前中も問題になりましたが、この事案の場合、今回の政府案では、同種の事例であれば罰則の対象になるんでしょうか。
片山国務大臣 今回、罰則を追加したのは三条ですね、五十三条に五十四条、五十五条で。恐らくは、海幕三佐の事案では、五十三条のケースになるんではなかろうかと私は思っております。個人の秘密に属する個人情報ファイルを正当な理由なく他に提供するというんでしょうか、そういうことでございます。
 ただ、その場合に、例えばその中身が個人の秘密に属するかどうか、それから正当な理由があったのかなかったのか、あるいは故意か過失か、こういう事実認定が要るんですね。この事実認定は、それは司法の最終的には判断でございまして、それは、そういう事実認定があれば、私は罰則の適用になると思います。それがなければ、今私が言ったような三点ですね、正当な理由があったのかないのか、個人の秘密に属することを提供したのかどうか、あるいは故意か過失か、この三点で事実認定ができれば、罰則の十分対象になると思います。
後藤(斎)委員 野党提案者にお聞きをしたいと思います。
 先ほどの相当な理由の部分を、野党提案の部分ではもう少し限定的に、「できなければ当該事務の円滑な遂行に著しい支障が生じる」ということで、なお一層絞り込みをして行政裁量を抑えているという趣旨で理解をしておいてよろしいんでしょうか。
細野議員 この部分に関しては、相当の理由があるときというこの解釈、総務大臣のお話も随分私も伺いましたが、いま一つはっきりしないところがあるというふうに考えておりまして、ここについては、もう少しきっちり枠をはめた方がいいだろうということで、「業務の円滑な遂行に著しい支障が生じるとき。」という書き方をしております。
 加えまして、目的外利用をするときには、基本的には、「情報公開・個人情報保護審査会の意見を聴かなければならない。」という規定を事前に設けることによって、行政のこの部分で乱用を防止するという形をとっております。
 片山大臣が旅券と入管の話なんかをよくされておりますが、こういう典型的な目的外利用を本当に考えられるんであれば、これはだれもが納得をできる理由でございますので、しっかり事前に、そういう典型的、こういう現実に目的外利用をする場合に審査会の意見を聞くというのは、十分合理的であるし、行政の円滑な遂行を妨げるものではないと我々は考えております。
後藤(斎)委員 片山大臣、今の野党案の目的外利用の部分で、審査会の意見を聞いて対応するという点については、その余地はあるんでしょうか。
片山国務大臣 まあ一つの考え方でしょうね。ただ、そうなると、審査会が大変になるんですよ。膨大な量が持ち込まれる。しかも、ある程度スピードを持って処理しなきゃならぬ。そうしませんと、もう審査会でストップになっちゃう。しかも、結局は行政が遅延して国民に迷惑がかかるんですね。そこの兼ね合いなんですね、難しいのは。しかも、その審査会を膨大な人を雇って、中央だけじゃなくて地方にも置いて、こういうことになると、まあそれはスリムにやれるんだという今後藤委員のお話もありましたが、日本ではなかなか簡単にはいきませんよ、スリムには。
 だから、そういうことからいうと、やはり全部審査会の議を経る、意見を聞くというのはいかがかな、こういう感じがしておりますが、審査会の意見を聞くというのは、一つの考え方であります。
後藤(斎)委員 何か、大臣は官を、今回少しは進んできたのかなと思うんですが、やはり性善説に立たれている。もちろん、たくさんの方はそうである。ただ、一般的に言えば、この行政機関の情報保護法案も、一番の、対外的に見れば、やはりまだ行政裁量が強いんだ、それをどう緩和して、行政の独走ではなく、個人の保護というところに軸足を置いていくんだ、私はこの議論を今していると思うんです。
 ですから、大臣、片山大臣、二人大臣がいるので片山大臣、国民の皆さんや、そして実際施策をする職員の皆さんにもそこをきちっと理解させる、午前中もそういう話がありましたが、そういう二つをこれから大臣のお立場では特にやっていっていただかなきゃいけない。
 ですから、その点については、では、審査会にかけるものとかけないものを分けて、その程度によってどうなのか。今でもいろいろな法律、個別法の中で目的外利用の制度はございますよね。そんなにたくさん急に、この法律ができたから、大臣、行政の個人情報の目的外利用はふえるんですか。そんなことないでしょう。
 その前に、では、今、現行ではどのくらいの目的外利用を個人情報でやられておるんですか。整理されておりますか。
片山国務大臣 ちょっと数字は私、知りませんけれども、しかし、審査会というのは、今言いましたように目的外利用でけしからぬと思ったら本人関与ができるんですね、御承知のように、利用停止ができるし訂正もできるので。そういうことからいうと、全部事前にかけるというのはどうかな、こういうふうに私は考えておりますが、今のどのくらい目的外利用があるか、その数字があるかどうかわかりませんが、それはわかればまた後に御答弁いたします。
後藤(斎)委員 ですから、大臣、それはちょっと事務局の方でお話をしていただければと思うんですが、今回、冒頭お話をしましたように、昨年の政府案に比べれば非常に改善はされておりますし、その部分については、私は、大臣初め皆さん方によくやっていただいたなと思うんですが、まだ幾つかの点についてやはりクリアをすればもっといいものになってくる。かたくなに今の部分が最善だというふうなことであれば国会審議なんというもので煮詰める必要はないわけですよね。
 ですから、先ほど細田大臣も第三者機関についても二つの考え方があるんだ、ただ、今はそうでない部分でやっていきたいというお話、私は、将来的にはそういう部分を細田大臣も頭の中に、今国会の質疑の中で出てきたいい傾向だなと思いながら聞いておりました。ですから片山大臣、今の話にもう一回移らせてもらうと、この「相当な理由」という部分よりも、むしろこれからの行政組織等が個人情報をどう扱うかというものが、現状が今どうなっていて、この法律ができて、相当の理由ということで最後例えば決着するにしても、それをどうそれぞれの、大臣が別に全部決裁で判こを押すかもしれませんけれども、職員の方がやって、次官までの決裁と局長までの決裁では今分けておるんですよね。ということで、主務大臣は大臣かもしれませんが、そうではない職員の方がどういう意識を持ちながらやるかというところになると思うんです。
 ですから私は、質問通告していなくて申しわけないんですが、現状について、目的外利用はどのくらいあるのかわかりますか。
松田政府参考人 お答え申し上げます。
 現行法による規制は、個人情報がある程度体系的に電算ファイルとしてファイル化されたもの、これが規制の対象になっておりまして、それをその他の目的に、目的外に利用する、先ほど大臣からお話ございましたように、パスポートの情報を入国管理に使うとかいうような形で、そういうファイルごとの目的外利用は、これは十三年度でございますが、九行政機関におきまして約五十のファイルの他の行政目的への利用が行われております。
 ところで、今回、行政機関の個人情報保護法におきましては、体系化されたファイルだけでなくて、個々の散在情報につきまして規制の対象にしているわけでございます。したがいまして、目的外利用の提供につきましては、法令に定めた事務に使う、その範囲内にする、しかも関係者の権利利益を侵害することがないようにする、そして先ほど申し上げましたように「相当な理由」ということで、原則禁止の例外として認めるにふさわしい、だれでも納得できるような客観的理由のものに限るという厳しい制約をしているわけでございますが、散在情報、一々の情報につきまして目的外に利用することは、その範囲内でありましても多々あるわけでございます。
 例えば、いろいろな関係業務の個人情報を関係行政の企画立案に使うですとか、あるいは統計に使うですとか、あるいはある行政を委託する側の個人情報を受託する側に利用させるとかいうのは多々あるわけでございまして、それを一々事前にチェックするということになりますと、先ほど大臣が御答弁申し上げましたように、審査会としては恐らく極めて膨大な作業量になるわけでありまして、およそ現実的なものにはならないのではないかということで、そういう事前の厳しい制限のもとに、事後に、審査会による不服審査、あるいは本人のその前提としての開示請求、訂正請求等の制度によってその権利保護を担保しようということにしているわけでございます。
後藤(斎)委員 今のお話を聞いていると、現行、ファイル化されたものが五十ファイルあって、これに散在ファイルが入ってくるというのはもちろんわかるんですが、そんな膨大なものになったら、先ほどもお話をしたように、審査会に相談するかどうかは別としても、現在のそれぞれの主務大臣というか、各官庁の中の事務量がべらぼうに大きくなるということになるんですか、本当に。そういうことを大臣は想定されておるんですか。
松田政府参考人 先ほども御答弁申し上げましたように、今回の法律で目的外利用あるいは提供につきましての厳しい制限があるわけでございますが、その制限の範囲内におきましても、現実、行政として行われている業務の中には、ある個人情報を、先ほども申し上げましたように業務上の統計として使うとか、あるいは新たな関連の政策課題の検討のために使うとか、そういう利用が多々あるわけでございます。
 したがいまして、そういう限定の中の、制限の中におきましてもかなりそれは膨大なものとしてあるわけでございまして、それを一々に事前に審査会に御審議願うということはやや現実味を欠くんじゃないか、こう申し上げておるわけでございます。
後藤(斎)委員 片山大臣、事務的ないろいろな部分がある。ただ、今の局長の答弁を私、聞いていて思ったのは、現行は、もちろん個人情報、利用目的のための情報というのは膨大にあるわけです。でもそれを、大臣が先ほどお話しになったように、この「相当な理由」で利用制限をするのは要するに目的外の部分だよと。だからコンパクトな部分でも、例えば審査会も、情報公開と個人情報の審査会を一緒にすることも可能だし、第三者機関をつくる必要もないというお話ですよね。
 大臣、どちらが、局長のあれと大臣が先ほど言った――大臣はどちらを想定されていますか。確かにわからない部分があるかもしれませんが、例えばこの法律をつくって、いや、個人情報の目的外利用がどんどんふえるんだよなんということが今のようなお話だと想定をされるんであれば、今まで話をしてきたことと全然違うと思うんですよ。
 そうではないものをできるだけ圧縮して、「相当な理由」がなければ厳に目的外利用はしないんだよということで、この、今八条の規定に当たるものなんというのは限りなく、現行のこの五十ファイルではないかもしれませんが、そんなべらぼうに、十倍、百倍になんかなるということではないと思うんです。片山大臣、違うんですか。
片山国務大臣 だから、目的外利用というものの範囲をどう考えるかということですね。
 そこで、今、「相当な理由」ですよね。それはだれでも納得できる客観的な合理性がなきゃいかぬと我々は言っておりますが、個別にはもう個別に考えていかざるを得ない、ただ、これからこれだけのIT時代、情報化時代ですから、個人の情報は保護しなければならないけれども、同時に、その個人の情報を活用しなければいかぬのですね。活用する、そういうことになりますと、今言いましたように目的外利用をどう考えるか。ある一つのデータを別のことの企画立案のデータに仮に使うとすれば、それは目的外利用じゃないか、こういう議論になってきて、それを全部事前に審査会のチェックにかけるとすれば膨大になるのではないか。
 しかも、今電算ファイルだけですよね、御承知のように現行法は。ところが、今度は全部ですから。そういう意味では、膨大になるのではなかろうか、こういうことでございまして、今の審査会は、事後で、開示や例の利用停止や訂正や、その決定に不服がある人が審査会にかけるわけですから、これはもう限定されますよね。
 だから、事前にいいものもあれば、いいものもあるなんと言ったら語弊がありますが、全部チェックするということになると第三者機関がパンクしてしまうのではないか、もしこれにスピードを持って対応するとすれば膨大な体制が要るのではなかろうか、これは行革に反するのではなかろうか、こういうことであります。
後藤(斎)委員 国会審議をスムーズにということで、これで終わりますけれども、大臣、ここは、本当に事務量がどれだけになるのかは、もちろん最終的な部分はわかりませんが、この八条の新しい法律体系をつくったことで目的外利用がふえるなんということは、基本的には本来はないはずなんです。
 そうじゃなくて、大臣が先ほどもお話しした別の観点からいえば、利用目的を明確にする、法律や制度の目的をきちっと、それは変更してその部分でやっていくということで、たくさんの膨大なこれからのことに対応してもらわないと、すべて目的外利用を認めるという今の大臣の、ニュアンスに若干聞こえた。
 それは違うということを御指摘をして、後日、今のような話も含めてもう一回対応させてもらいますので、以上で終わります。
村井委員長 続いて、東祥三君。
東(祥)委員 自由党の東祥三でございます。
 まず初めに、ちょっと基本的な問題についてお伺いしたいと思います。
 今回の法案を審議するに当たって、内閣側としては、総務大臣並びにIT担当大臣であります細田大臣が指名されたわけでありますが、これは多分、小泉総理大臣から、細田大臣、あなたはこの法案を担当せよと言われたんだと思いますが、そうですか。
細田国務大臣 そう理解しております。
東(祥)委員 どういうことですか、そう理解しているというのは。
細田国務大臣 実は、私の前任の竹中大臣が当時IT担当大臣に任命されておられまして、その竹中大臣の職務を、竹中大臣は御存じのように、柳澤金融担当大臣の職務を兼務することになられまして、これに伴いまして、IT担当は科学技術、沖縄北方担当である私に兼ねて職務を遂行せよという指示が出たために、これはもちろん辞令上はっきり出ておるわけでございますが、したがって私の担当ということになったわけでございます。
東(祥)委員 直接、大臣から、この個人情報保護法案、関連法案を担当するに当たっての何らかの指示というのは受けたんですか。
細田国務大臣 私は直接は承っておりませんが、二代前の麻生IT担当大臣のときに、IT担当大臣がこの個人情報保護法を担当するようにということは明確に言われたそうでございまして、それがいわば自動的に引き継がれているという状況でございます。
東(祥)委員 内容がどこかでつくられ、そして、それをもとにして担当大臣が総理大臣から指名されて、それを受け継ぐ。普通ならば、当然、こういう個人情報保護法案という極めて重要な法案を扱うに当たって総理大臣とお話をするんじゃないでしょうか。小泉内閣として、この個人情報保護法案なるものをどういう哲学あるいはまた理念で考えていくのか、担当大臣、自分自身はこういうふうに考えている、これをこういう趣旨でぜひ頑張ってもらいたい、こういうのが普通の、ごく当たり前のことなんだろうと思うのですが、今のお話を聞く限りにおいては、そういう話というのは総理大臣から何もなかったというふうに理解してよろしいんですか。
細田国務大臣 国務大臣を拝命したときには、私の方でということでございましたので、内閣委員会等でも御答弁しておったんですが、この新法案を出すに当たって、私が個人情報保護法案の提出に関係して閣議にお諮りしたということがございますので、もちろん、そういう私の職務の内容であることは総理からきっちりといただいているものと考えております。
東(祥)委員 いただいているものと考えている、直接話ししていないんですよ。内閣として細田担当大臣にこういう趣旨で頼むと言われる方は、ここにきょう来ていないんですよね。官房長官も、初めは総理大臣と言ったんですけれども、総理大臣はだめだというふうに言われまして、官房長官、内閣を代表する官房長官に出てもらいたい、そういう質問をさせていただいたにもかかわらず、だれも答えることができない。そういう状況の中で進ませていただいているということを、まずもって、細田大臣、片山大臣、理解しておいていただきたいというふうに思います。
 そこで、さらに基本的な質問なんですが、細田大臣、昨年提出されました旧法案、これはある意味で、個人情報を取り扱う事業者、報道機関も含めてでありますが、それに対しての行政のコントロールは極めて厳しい。また、報道の範囲というものも明確にすることなく、そういう意味において言論統制法に近い。そういう形で世間から極めて鋭い、強烈な批判を受けて、そして廃案の状況になっていったというふうに僕は理解しております。
 さて、その上で、今回の新法が出されるに当たって政府が当初考えていたこと、そして、今回、新法をつくるに当たって何をどのように考えて新しい新法ができ上がったのか、この点についていかがですか。
細田国務大臣 政府として新しい個人情報保護法案を検討し直したわけでございますが、前の法案は、私どもの意に反しまして、報道機関、言論機関等から非常に強い批判を受けたわけでございます。基本理念等において、私どもは、報道関係、言論の自由、表現の自由関係は十二分に配慮したつもりでございましたが、著述業の方も含めて非常に強い御批判を受けたわけでございますので、この点の御批判にもこたえるべく、また、この国会、院内におきましても、野党の皆様を中心にそういった強い懸念を表明され、二十時間以上の審議の大半はその点に集中したということがございますので、まずその点を明らかにしようということで、報道関係等の基本原則を基本方針から除外するということを中心として法案を再提出させていただいたわけでございます。
東(祥)委員 当時の議論を理解している限りにおいて申し上げさせていただければ、今、細田大臣が言われたとおり、政府側としては、別に、報道規制なり表現の自由を侵すような視点で提出したものではない、ただ多くの批判を受けた、だから、いわゆる基本原則なるもの、これがあいまいなまま、いわゆる義務規定が除外されている主体に対して何らかの形で作用を及ぼすといけないので、それを排除したというような趣旨の答弁を総理大臣もされておりましたけれども、政府側として、別にそのような批判ではないと。
 であるとするならば、なぜそれをそのまま踏襲していかないんですか。いかがですか。
細田国務大臣 それは、まず国会の御議論で、各政党の御理解、特に野党を中心とする御理解を得られなかったということは事実でございます。
 相当説明も担当大臣からいたしましたけれども、どうしても納得ができないというお話がございましたので、与党の方の御指示もございまして、これでは緊急に保護すべきいわゆる情報等の問題があるにもかかわらず法律を制定することができないので、かくかくの面を修正し直して提出してはどうかという御示唆をいただいて、修正を施して再提出させていただいたわけでございます。
東(祥)委員 与党からも御指示をいただいてと、細田大臣が指示を受けたんですか。
細田国務大臣 与党三党の国対委員長とも十分な意見交換をしまして、こういった考え方で政府は出し直してはどうかという御示唆をいただいたわけでございます。
東(祥)委員 これは与党の議員立法ですよね。いかがですか。内閣提出のこの閣法と言われているもの、これはどこでその骨子をつくり上げてきたのか、それは三与党がつくり上げてきたものですよね。いかがですか。
細田国務大臣 いや、あくまでも政府といたしましては内閣法制局に相談しながら基本的な骨格を決めていったわけでございますが、もちろん与党のいろいろな御意見は承っておるわけでございます。
東(祥)委員 細田大臣、個人情報保護法案となっていて、非常に難しい話が盛り込まれているんですよね。
 そこで、また基本的なことを質問したいんですが、ここで言っている個人情報とは何なのか、そして、個人情報の何を守らなくちゃいけないのか、どういうふうに大臣はお考えになっているんですか。
細田国務大臣 これは、法律の「目的」に当然書かれているわけでございますので、余りくどく読むのもなんでございますが、「高度情報通信社会の進展に伴い個人情報の利用が著しく拡大していることにかんがみ、個人情報の適正な取扱いに関し、基本理念及び政府による基本方針の作成その他の個人情報の保護に関する施策の基本となる事項を定め、国及び地方公共団体の責務等を明らかにするとともに、個人情報を取り扱う事業者の遵守すべき義務等を定めることにより、個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする。」まさにこの目的でございます。
東(祥)委員 個人情報と言った場合、与野党とも基本的には同じ定義をしているんですけれども、法案をつくる過程において、その法案の目的、それはそれぞれ異なってくるんだろうと思うんですね。そうすると、その基本中の基本は何かというと、個人情報の何を一体守ろうとしているのかというところがよく僕はまだわからないんですね、政府案は何を考えているのか。
 その部分を、担当大臣だから、そして、小泉総理大臣が細田さんやりなさいということを指名されたと聞いている大臣でありますから、したがって、そのことをわかりやすくぜひ説明していただきたいというふうに思うんですが、いかがですか。
細田国務大臣 基本は、これだけIT化が進んでおります我が国社会において、さまざまな出来事が起こってきた、特に個人情報を保護しなければならないような事態が起こってきた。特に、民間等でいえば、コンピューターで何千人、何万人という個人情報が蓄積されているものが情報漏れを起こし、あるいは過失によって流れ出すという事態が起こりまして、これは非常に大きな社会的問題である、これを解決しなければならないということは非常に大きな動機でございます。
 これは、野党の法案においてもそうではないかと思います。
東(祥)委員 要するに、プライバシーの不当な侵害が、とりわけ今の激変する状況の中で起こりやすくなってしまっていると。
 先ほど来いろいろな方々が御議論されているとおり、十年前に比べるならば、今、IT革命という名のもとに、またインターネットが普及することによって、大量の情報が、個人にかかわる情報が一瞬にして多数の方々に伝播されていってしまう。そういう状況の中で、個人の情報というのをどういうふうに守っていったらいいのか、そこに不当な侵害があった場合どうしたらいいのか。不当な侵害というのは、なかなかこれは定義するのはまた難しいんだろうというふうに思うわけでありますが、多分、それをどのように守っていったらいいのかという話なんだろうと思うんですね、抽象論で言えば。
 問題は、そういう個人の情報を、今度、当事者以外で利用する事業者がある。報道機関も含めた上で、あるいはまた行政機関も含めた上で、それを利用する方々がいらっしゃる。そのバランスをどういうふうにとったらいいのかというのが、多分最大のポイントなんだろうというふうに思うんです。
 そこで、また基本的な質問なんですけれども、私はこの法案を読んでいて、どうもしっくりこないところがあるのであります。それは何かといいますと、まず、個人の情報を最も利用するところというのはどこなのかといえば、それは行政なんでしょう。他方、商業を目的とする、商業上の目的を持つ事業者がいる。それに対しての規制というのもちゃんとできている。さらにまた、報道機関を初めとするいわゆる義務規定除外の団体、これも個人情報というのを物すごく扱っているわけでありますね。それと同時に、もう一つの第三者の個人が、いわゆるインターネットを使って大量の個人情報をいろいろな形でもって流すことができる。
 では、それに対して一体どうしたらいいのかという話であるにもかかわらず、いわゆる社会的な影響力を持っている報道機関、これのいわゆる過熱取材というのがございますね。そういう問題を通じて、不当に個人のプライバシーが侵害されている。こういう問題に対してはぽっこり抜けてしまっているんじゃないのかというふうに思えてならないのであります。
 つまり、二〇〇一年十二月二十日に、民間放送連盟がいわゆる自主規制をしているわけですね。集団的過熱取材という新しい用語で自主規制をしているんです。
 集団的過熱取材とは何かというと、これまではマスコミの殺到あるいは集中豪雨的取材あるいはメディアスクラムなどと種々呼ばれてきた用語であります。何を意味しているかというと、大きな事件、事故の当事者やその関係者のもとへ多数のメディアが殺到することで、当事者や関係者のプライバシーを不当に侵害し、社会生活を妨げ、あるいは多大な苦痛を与える状況をつくり出してしまう取材、これはやめましょうという自主規制が行われてきたわけであります。
 ここにいらっしゃる方々は皆さん全員御存じのことだと思いますけれども、例えば九八年の和歌山カレー毒物混入事件、九九年の埼玉県桶川の女子学生ストーカー殺人事件などを経て、過熱した取材ぶりに対する世論の批判が先鋭化。そして、二〇〇一年、事態は急速に進んでいった。二月に、有名女優の次男の覚せい剤取締法違反容疑の裁判をめぐる混乱で弁護士が民放連に厳重抗議、三月には、HIV訴訟の安部被告の公判を前に初めて取材規制の仮処分が申請された。さらに、六月には、大阪教育大学附属池田小学校で、児童八人が殺害される惨事が発生。このときは、児童へのインタビューに視聴者から抗議が殺到、その後の被害者、遺族への取材にも、学校や警察から強硬な自粛要請がなされた。こういう一連の事件があったんだと思うんですね。
 多分こういうものを背景にして、さきの旧法案というのは、多大な被害を受けている人たちもいる、そういうことで何かしなくちゃいけないだろう、そういう要素もあったんじゃないかというふうに僕は思うわけであります。
 しかし、その後、今申し上げましたとおり、こういうものをもとにした自主規制、いわゆるルールがあるにもかかわらず、例えば最近の例で言えば、御記憶だと思いますけれども、いわゆる拉致被害者に対する報道でそのルールが破られるということもあった。
 最も社会的な影響力を持つ報道機関、それに対して表現の自由を侵すことはできない。憲法上もその部分は明確になっている。しかし、現実の問題として、そういうことに対して政府は一体どのように考えているのか。
 最も個人情報を扱うそのものが、結果として種々の不当な個人のプライバシーの侵害を起こしているというものがある。それがどんどん積み上がってきている。そういうものに対して、この法案を見る限り、個人の情報がちゃんと守られているというふうには私はどうしても思えないのであります。それは、野党の法案に対しても私は全く同じものを感ぜざるを得ないんです。
 つまり、今回出されている法案というのは、個人情報を扱う極めて重要な対象の一部分がぽっかり穴があいちゃっているんじゃないのか。それに対して、今後政府としてどのようにお考えになっているのか。今回出されている法案に、個人情報に対する保護にかかわる問題として全部入っているのか。
 先ほど片山大臣が言われたとおり、制度として完璧なものはない。しかし、その制度の中に、今僕が申し上げた部分というのはすっぽり抜けちゃっているんじゃないのか。それをただ単に自主規制という名のもとに言っているにすぎない。それは、問題が山積しているにもかかわらず、問題が所在しているにもかかわらず、その問題に対して何ら政府として手を打っていない、そういうことなんじゃないのか。その辺の整理をどのように内閣としてお考えになっているのか、その基本的な部分をまずもってお聞きさせていただきたいというふうに思います。
細田国務大臣 東議員がいろいろ問題にしておられることは、この院内においてもさまざまな御意見はあると思います。
 しかし、表現の自由の一つとしての報道の自由ということもございますし、この法律案上は全くおっしゃるとおりすっぽりと抜けておりまして、ただし、ある程度自主的な、みずから必要な措置を講ずるように希望するという項目が五十条三項で置いてあるわけでございますが、それ以上のものではございません。前から同じでございます。
東(祥)委員 細田大臣は素直な大臣で、先生で、僕は大好きなんですけれども、今まさに虚心坦懐に率直におっしゃっていただいた。その部分はすっぽり抜けちゃっていると。
 では、内閣としてこの問題を今後考えていくのか。当然いろいろな問題があります。それがまだ整理されていないからすっぽり抜けているのか。つまり、個人情報保護法案の中にこの問題というのは、大臣のお言葉をかりればすっぽりあいているわけですから、僕も使いました、そうすると、それは当然個人の情報を扱っている極めて社会的影響力ある主体であります。
 では、この問題に対して、いずれ議論を深めることによって何らかの答えを出していく、ある意味でこの法案それ自体が重要な要素が欠落している法案である、こういうふうに理解しておいていいんですね。
細田国務大臣 そういう問題意識は私も理解できるところでございますが、この法律の目的としてはそういうことは想定しておりませんので、しかるべき検討をする場はあるのではないかと思いますし、先ほどもさまざまな例示を挙げられましたけれども、例えばそれを、いわば差しとめ請求とか損害賠償請求というような民事の方法で対応する場合もありますし、何か特別な人権侵害ということが要件に合致する場合には、人権擁護のための法制度によって対応することになると思いますけれども、この法律の対象ではございません。
東(祥)委員 大臣、私が聞いているのは、今回出されている法案の中にはその部分が含まれていないというのは、だれもがわかっているんです。でも、それは個人情報保護にかかわる重要な要素なんではないですかと私は言っているんです。大臣は、それに対して、理解することができると。そうすると、この部分というのは、政府内においても今後極めて重要な問題にならざるを得ないのではないですか。
 現実に多くの被害というものが出ているわけであります。では、それに対して、どのように議論していったらいいのか。どのように問題を整理していったらいいのか。それがまだちゃんとできていないがゆえに、政府としての方針が明確になっていないということなんだろうと僕は推察するわけでありますけれども、その位置づけをどうしたらいいのか。それは主務大臣の範囲を多分超える問題なんでしょう。政府としてその問題をどのようにとらえているのか。
 だから、冒頭に私は聞いたわけであります。内閣総理大臣から、個人情報保護にかかわる問題について、どのような指図、指示を受けたのか、小泉内閣としてどのような基本方針で臨んでいくのか、そのことを私は問うたわけであります。しかし、残念ながら、今、主務大臣であります、この法案を担当しておる大臣には答えることができないわけでありますから、いずれ総理大臣を多分呼んで、ちゃんと明確にその辺のことを質疑しなければならない、そういうことなんだろうと僕は思うわけでありますが、いかがですか。
細田国務大臣 個人情報の保護に関する考え方に、例えば個人情報コントロール権、包括的な、すべての個人のすべての情報について、すべて個人がコントロールできる権利を導入すべきだという立場に立った瞬間に、そもそもそういう政治的な課題、あるいは表現の自由との関係、しかし個人の侵害が起きて、個人の情報についてコントロール権があるにもかかわらず、勝手に使用されたことに対する非難あるいは請求、そういった考え方が起こるのでございますが、まことに器が小さい規定で申しわけないんですが、この法案はそういうことではない、多量に個人情報を処理する人が故意過失等によっていろいろな問題を起こす、それを個人を救済する目的で措置をとることができるようにするという法案でございますので、その点を、きちっとした考え方の整理をしていただく必要があると思っております。
東(祥)委員 そうすると、何が何だかさっぱりわからなくなるわけであります。
 だから、個人情報とは一体何なのか、個人情報の何を保護するんだという話であります。その問題に対して、今大臣の答弁を聞いている限りにおいては、全く私の頭が混乱してきてしまうわけであります。
 要するに、プライバシー保護ということにかかわる問題ですよね。では、そのプライバシー保護というのは一体何なんだという話ですよ。それを利用する事業主体者がある。行政機関という最も権力を持ったところがそれを自由に使っていいという問題ではない。だから、それに対しての規制もそれなりに、我々野党案とは違うわけでありますけれども、基本的に入れている。その中において、最も情報をたくさん扱う、またその手段もたくさん持っている、いわゆる義務規定除外になっている報道機関において、表現の自由を妨げないにしても、妨げちゃいけないわけですから、そこにおいて、結果として種々の問題が出ている、社会現象としてこの数年来多くの問題がわき起こってきている、そういう批判を受けて、報道機関も自主規制に走らざるを得なくなってきている。今までそれを泣き寝入りしていた人たちがたくさんいたわけであります。しかし、泣き寝入りではなくて、みずからちゃんと被害届を出しながら、そしてその問題についての指摘をしている例がたくさん出てきているという問題ですよ。
 それに対して、国会というまさに民衆を代表する、国民を代表するそれぞれの政治家たちが集まっていて、その人たちの筆舌に尽くしがたい苦悩を踏まえた上で議論していくというのは当たり前のことなんではないですか。それに対して、その部分がぽっかりあいていますよということを申し上げている。それを政府としてどういうふうにするんですかということを申し上げている。そういう意味においては欠落してしまっているんじゃないですか。
 でも、大臣が言われる、当初政府が考えている個人情報というのはそういう問題ではありません。とすると、では、どういう個人の情報を保護する法律をつくろうとしているのか。それに対してのちゃんとした手だてをしておかない限り、欠陥法案であるというふうに言わざるを得なくなるではありませんか。いかがですか。
細田国務大臣 おっしゃることは、論理としては理解できないわけではありません。多くのそういう被害者もおられるでしょう。しかし、国会の各党の委員の皆様方あるいは各政党からそういう御意見があるのか。あるいは国民世論、あるいはマスコミも含めてでございますが、そこまで、個人の情報を扱うからにはあらゆる業種に横断的に網羅する個人情報保護法案を制定すべきだというところまで環境が整っていないと私は思います。
 また、そのようなことにしようと思いましても、逆の弊害も出得るわけでございますから、差し当たり、現在発生しつつあります、かつ、それが急成長しつつあります、行政機関も含めてでございますが民間も含めた、個人情報に関する問題に対して対処するための法案を提出しているわけでございまして、野党提案も、よく読んでまいりますと、そういう点は共通したものがあるのではないかなと思っております。
東(祥)委員 まさに、僕が申し上げているとおり、野党提案においてもその部分というのはぽっかりあいてしまっている。
 そうすると、個人情報保護法案にかかわる問題として今僕が申し上げた点というのは、つまりこの法案の中には盛り込まれていない、しかし問題は存在する、そういう意味においては、ちゃんと位置づけなくちゃいけないんだろうというふうに思うんですね。そういう意味では、それをどのように取り扱っていくのか。
 つまり、今はまだ法律にする段階に至っていない、議論も十分熟成していない、しかし、その部分は個人情報にかかわる極めて大きな問題としてとらえているのか、それはもうこの提出されている法案の中で織り込み済みの問題であって、自主規制という名のもとでこの問題は解決されていくというふうに政府は考えているのか、そのことを聞いているわけであります。当然、僕は野党の方にも質問させていただきますが、そのことをどのようにとらえているのかという話であります。
細田国務大臣 当面、緊急の課題でございます、プライバシーを含む個人の権利利益の保護というものが大事である、そのための法制化が必要である、今は法制度も存在しない部分がございますので、その点を緊急に制定するという考え方でございまして、これは野党案も共通の論点ではなかろうかと思っております。
東(祥)委員 そうすると、集団的過熱取材によってこうむる、プライバシーが不当に侵害された場合というのも当然入ってきますね。しかし、入ってきていないんですよ。ここにはないんですよ。そうすると、その問題はペンディングであるという話ですか。どうなんですか。
細田国務大臣 集団的過熱取材というのは、私はよくわからないんでございますが、これがどういう側面で出てくるのか。私どもが想定しておる今の、個人情報の保護が必要だという、IT社会に伴う弊害とはほとんど関係のない事態についておっしゃっておられるような気もいたしますので、もしよろしければ、その関連についてお話しいただきたいと思います。
 もちろん、社会的な問題である、いわゆるパパラッチの問題があったり、それに類するさまざまな問題があるということはだれしも承知しておるわけでございますが、そこまで今、この御審議いただく内容には残念ながら入っておりません。
東(祥)委員 いや全然、IT担当大臣だからそのようにおっしゃるのかわからないですけれども、別にITのことを僕は言っているんじゃありません。個人情報、つまりプライバシーの不当な侵害が起こるという、個人情報を取得していく過程で起こってくるという話ですよ。
 大臣、先ほど僕は説明させていただいたんですが、これは新聞協会が定義している言葉を使わせていただいているんですよ。僕が勝手につくっている言葉じゃない、新聞協会それ自体が定義しているんですよ。「大きな事件、事故の当事者やその関係者のもとへ多数のメディアが殺到することで、当事者や関係者のプライバシーを不当に侵害し、社会生活を妨げ、あるいは多大な苦痛を与える状況を作り出してしまう取材」、それを「集団的過熱取材」。そこに、今ここで議論されている、プライバシーを不当に侵害するということを新聞協会それ自体が言っているんですよ。だから、それはここの本来の案件なんじゃないんですかと僕は言っているんですよ。そうでないというならばそうでないでいいんですよ。どうぞ。
細田国務大臣 それは報道関係者が自主的に対応すべき問題でございまして、そういう意味から内部で御決定いただいているようでございますので、そういったことについては遵守していただきたいと思っております。
東(祥)委員 そうすると、政府としては、そういう集団的過熱取材があって国民が多大な苦痛を受けても、あるいはまたプライバシーの不当な侵害を受けたとしても、それはすべて自主規制に任せていく、そういう話なんですね。
細田国務大臣 この法案によります限り、そうでございます。
 ただ、そのほかに、IT社会に伴う弊害以外に、さまざまな形での人権侵害とかあるいは不法行為とか心の面での損害等、そういう問題については別の角度から御検討いただく必要もあると思っております。
東(祥)委員 大臣の所管でありますITで、これが異常な発達を示すことによって、個々人が、今度は個人がですよ、個人の情報を世界じゅうに伝播することもできるというふうになっている。だから、ある方は、非難中傷である人を徹底的に責めるということで、そういう情報が一瞬にして何百万と流れるかもわからない。そういう問題も当然ここに入ってくるんですね。いかがですか。
細田国務大臣 理念的には、例えば、個人の情報を集積しているところが、その情報を人に漏らすということはすべて網羅されるように書いてありますが、実際の行政手段としてこれを、情報開示を求める、何を求めるという法的な効果を持つ内容として検討した場合には、それは盛り込まれていないということでございます。
 それは、情報集積の量と個人に対する侵害の質等も考えていくということと、それから、やはりこれから、この法律に基づきながらいろいろな措置も行われていくわけでございますから、おのずと全体の考え方が決まってくると思っております。
東(祥)委員 そうすると、また基本に戻ってしまうんですけれども、大臣、やはりこれは、僕らは一般の方々と常に接触しているわけでありますが、説明することができなくなってしまうじゃないですか。
 個人の情報が不当な侵害をされたとしても、それはいろいろなケースがあるわけであります。ここに羅列されている、そこで盛られている問題、さらに、先ほど申し上げた問題、さらにまた、ITを使っての、いわゆるインターネットを使ってのそういう問題が当然生じるということは皆さんわかっているわけでありますよ。
 でも、そういう個人の情報をどのように保護したらいいのか、普通に自問自答したときに、それに対して、個人の情報がちゃんと保護されるんですねと、そういう形でもって僕なんか説明することができませんよ、僕は専門家でも何でもありませんから。だから、そういう種々の問題において、非常にまだ本質論的な形での議論も熟成していないというような印象を持たざるを得ないわけであります。
 これを幾らやっていてもしようがありませんので、野党の提案者の方々に、今私が申し上げましたいわゆる集団的過熱取材の問題について、それはぽっくりあいちゃっているということ、また、それを今後どのように考えていったらいいのかということについて、説明して御答弁していただければというふうに思うのです。
達増議員 四党議員提案の個人情報保護法案と政府提案の個人情報保護法案の際立った違いについて一言で説明する場合、四党議員提案の個人情報保護法案は、自己情報コントロール法案というふうに言ってもいいと思います。
 情報通信技術の急速な発展によりまして、瞬間的にどこへでも、かつ大量に情報が移動する。その中で個人の情報が乱用されたり、また、適正でない取り扱いをされたりする。それを防止するために、本人の関与、自己情報コントロールということを及ぼしていくことが議員四党案の目的、理念でありますので、その意味で、過熱取材によるプライバシーの侵害という問題については、この四党議員提案の提案者からしますと、その問題については答弁できない。
 答弁できないというのはちょっとあれですから、繰り返しますが、自己情報コントロール権ということを明確に意識して、個人情報の乱用防止、適切な取り扱いの確保というところにいかに本人の関与を確保していくかというための法案でございます。
東(祥)委員 大臣、政府案では、個人情報の取り扱いに関して、政府が基本理念と基本方針を定めて、国、地方公共団体の責務を明確にするとともに、個人情報を取り扱う事業者の遵守すべき義務を定めることとなっている。それが本質なんですよ、政府案の。しかし、これだけでは、個人情報の保護という本来の目的に反して、官が情報をコントロールするだけの法案になってしまう懸念が強くある。
 それを踏まえた上で、今、達増先生から説明があった野党四党案におきましては、それをまさに自己情報コントロール権という名のもとに、個人情報の取得、利用、第三者に対する提供等に関して本人が関与することや、個人の権利、権益を保護すること等の自己情報のコントロール権を明確に位置づけている。
 したがって、先ほど申し上げました問題も、こういう角度から考えていったときに、今はこの法案の中にはぽこっとあいてしまっているかもわかりませんけれども、こういう自己情報コントロール権というものを確立しておく必要があるのではないかという必要性が出てくるんだろうと思うのです。
 政府が提出している法案の中においては、そういう基本的な考え方、個人情報の何を守るのかという基本的な哲学がないですから、その場その場の限りで、多くの批判を受ければ、その批判をかわすために、この法案をただ通せればいいんだ、こういう角度でしか出てこないことになってしまうのではないか、このように私は思うわけでありますが、どうして自己情報コントロール権というものをちゃんと入れないんですか、政府は。大臣、いかがですか。
細田国務大臣 先ほどの野党提案者の御答弁というのが野党四党の共通の認識であるとすれば、非常に私は勉強になるわけでございまして、私どもとしては、あくまでも、IT社会に伴って大量に情報を処理する者に対する一種の監督指導等が行われるということを本旨とする法律であり、ただ、これは、行政庁も含めた、独立行政法人その他の法律も含めた一般法の形もとっておりますから、その傘になる規定も当然規定しておるわけでございまして、そういった目的の中で現実に対処していくということでございます。
 現に、個人情報漏えい事件というのが数々起こり始めておって、ことしに入ってからは五件ですが、去年は二十三件、その前は十件、十九件というふうに、かなり、数万人規模の情報漏れもあり、しかも、それを故意に売り渡す、対価をもって売り渡すような者も出てきております。
 しかし、つぶさに調べますと、過失がかなりあります。私の見るところ、半分以上過失でございます。つまり、ホームページ上、一種の懸賞応募のような応募がございますと、ちょっとしたソフトの専門家ですと、応募をされた何万人のデータを取り出すことができるようになっている。つまり、それだけセーフティーのソフトウエアの管理が十分でない。過失が非常にありまして、民間に対してはそういう過失は抑えていかなきゃいけないし、故意については厳しく抑えていかなければならないわけでございますが、そういった社会的な需要が既に生じておりますので、なるべく早くこの法律をこういった角度からまず制定をいたしまして、そして、先ほどおっしゃいましたような自己情報コントロール権とおっしゃいますが、これは私が先ほど石毛委員にもお答えしましたが、これは徐々にだんだん確立されていく問題でもございます。
 例えば今、公益のために、自己情報であってもどうしても公開しなければならないような情報というのはたくさんありますよね。自分の土地や建物があって、登記をしていて、抵当権がかかっていて、どの銀行が幾らの担保をつけているかなんというのは、ある人たちにはわかってしまうわけでございますが、それじゃ、それも自己情報コントロール権で一切自分のそういう財産の所有権なり担保というのは外に見せたくないと言うかどうかとか、そうすると、それに対して、いや、これは取引の安定性上必要なことで、もともと公示制というもので認めているんだからという、いろいろな角度で、先ほどおっしゃったマスコミの問題も含めて、自己情報、自分の個人の情報ならばすべてコントロールが及ぶというふうに考えるかどうかということ自体はまだ未熟なところがあって、徐々にそれが整理されていくんだということが実態であると思っております。
東(祥)委員 多分、大臣がおっしゃりたいことは、自己情報コントロール権という必要性はわかるけれども、まだその概念も明確になっていないと。
 当然、個人でありますから、自分自身のことを知らせたいというのも権利ですよ、知らせたくないというのも権利ですよ。ただ、自分自身の個人の情報がどのように他の人によって取得され利用されているのか、他人にどのようにそれを提供しているのか、それに対して自分自身がかかわっていく、関与をしていく、そういう権利というのは当然あって至極のものなんだろう。だから、それをちゃんと明確に権利として位置づけられるかどうなのか、そういう問題なんじゃないですか。
 まさに、細田大臣が担当されているITという、極めて激変するこの世の中の中で、そうであればこそ、自己のプライバシーが知らず知らずのうちに侵害されているケースがある。そのためにも、自己情報コントロール権というものを明確に打ち出すべきなのではないのか、こういうふうに思うわけであります。
 細田大臣御案内のとおり、環境権というのは、十年前にはほとんど、そんなものは権利になるかというふうに言われていたものですよ。今ではちゃんと確立されているじゃないですか、環境権。まさに情報社会において個人情報をどのように保護していったらいいのか、その中心になる一つの考え方、概念なのではないのかと僕自身思うんですけれども、まだだめですかね。
細田国務大臣 やはり、法律上の概念として何々権と言うためには、プライバシーの権利でさえ何十年もかかり、英米法も参考にしながら、判決も出され、学者もその権利を裏づけて、しかも、その後多くの判例が積み上がって、こういう場合には取り消しを求める、謝罪を求める、賠償を求める、出版停止を求めるというふうに、一歩一歩そのプライバシーの権利を実現してきた歴史があるわけでございまして、頭から、個人情報コントロール権を私は持っているんだというと、私の先祖の問題から、私自身の出生から、家族から、財産から、身体の状況からあらゆる情報、歳費の額は人にわかっちゃっておりますが、そういうことも含めて自分の自己情報なんだ、過去にどういう交通違反をしたとか、ありとあらゆるものは自己情報だから、そんなものは人に一切知られたくないといって済むのかというと、まだ済まないんですね。だから、これを一つずつ積み上げていかなくちゃいけない。
 その対応として、このコンピューター社会において、もう本当に大量の情報が流されていく実態に対応しようという、確かに東委員の目からごらんになると、ちょっと視野が狭くないかとおっしゃいますが、では、視野を広げて、すべての自己情報のコントロール権はこれで保障されるんだ、つまり、役所だろうが、他人だろうが、弁護士だろうが、不動産鑑定士だろうが、自分の周りにあるもの、個人の情報は一切見てはならないんだということを原則にして、その例外を全部法律で決めていくんだというふうになるのなら、それは一つの考え方であろう。しかし、そういう事態はまだ遠いのではないか。もうちょっといろいろな例を積み上げていかなきゃならないというふうにも考えております。
東(祥)委員 時間が来ましたが、与党だけに聞いていてもだめですから、野党の達増議員にもこの点について御答弁願って、私の質問を終わらせていただきます。
達増議員 自己情報コントロール権というものは、生成中の概念ではありますが、基本的人権にかかわる重要な権利であることには間違いなく、我々は、その趣旨や精神を法案に盛ることによって社会的な認知を後押しするという考え方をとっております。
 そういう意味で、第一条、目的で、個人情報の取得、利用、第三者への提供等について本人が関与することと規定しているのでありまして、何もあらゆる自分の情報を人に知られたくない、秘密にしておきたいというようなことは一言も言っていないし、まともな学者とか、まともな社会人はそういうことは言わないと思うんですが、故意にゆがめた解釈、例示を一国の閣僚が国会の正規の審議の場でべらべらしゃべるので混乱が起こったりすると思うので、そういう混乱をなくすためにも我々の法案を成立させていただきたいと思います。
東(祥)委員 どうもありがとうございます。
村井委員長 次に、吉井英勝君。
吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。
 私は、表現、報道の自由に関して質問をしようと考えているんですが、立法上の問題はもちろん担当大臣に聞くということにしておりますが、ただ、この問題というのは基本にかかわる問題でもあり、既に昨年、総理、福田官房長官にも伺ったりしておりますので、それを踏まえての質問を予定しておりました。
 ですから、福田官房長官の出席を求めたわけですが、これは昨年の内閣委員会ではずっと出席されたんですが、今度、何ですか、急にお出になってこられない。議運の仕切りでも出るということになっていたのに出てこないということはとんでもないことであり、これはまず最初に私は抗議をしておきたいと思います。
 それで、なぜ表現、報道の自由、立法上の問題とは別に、この問題が非常に大事な問題かということについては、報道、表現の自由と権力関与の問題ですね。
 実は、私、いつも思うんですが、これは一九四五年の十月二十五日に出た読売新聞の社説の一節なんですが、
 戦争の前後を通じてこの新聞がたとへ弾圧の下にあつたとはいへ、軍閥、財閥、官僚等の特権階級の手先となり、戦争への国民の駆立て、戦争の拡大に果した罪は限りなく大きい。而に度を超えて進んで彼等に阿附するの醜態をさへ演じたのである。ことに真実を伝へざるのみならず、事実と全く反対の報道を臆面もなく散じて国民を瞞し、国民の戦争についての認識を誤らせ、その眼を眩ませた罪に至つては正に万死に価する。
これは、報道、表現の自由と権力関与ということを考えたときに極めて大事な問題でありまして、これは、私は、恐らく立場を超えて、今、だからこそ、報道、表現の自由を守る、権力関与について、そこをきちっとしなきゃいけないということは、これは非常に大事な問題だと思っているわけであります。だから、総理の出席を私たち求めておりますし、きょうは官房長官の出席も求めていたわけであります。
 そこで、委員長にちょっと確認しておきたいんですけれども、私、委員の質問というのは、本来、それを評価して、この質問なら官房長官に答えてもらおう、この答弁は官房長官要らぬとか、そういうことは、委員長であれ理事会であれ、できない話であって、これは質問者の質問権の侵害という問題になりますから、これはやっちゃならないということは委員長も多分お考えのことと思うんです。
 いま一つは、出席を求められれば官房長官の出席を求めるというのは、これは委員長の基本的なお考えだと思うんですが、この点だけ最初に委員長に伺っておきたいと思います。
村井委員長 委員長として、ただいまの吉井委員の御質問にお答えさせていただきますが、仰せのように、内容によって、委員の質問の内容に立ち入るようなことも、また要求に基づいて可能な限り閣僚が出席するということも、これも当然に認められることだと思っております。
吉井委員 ですから、可能というのは物理的に可能であれば可能なわけですから、それは委員長においてまずそこのところはきちんとやっていただきたいと思います。
 それからなお、何ですか、一部に、国会審議というのは官邸の理解が得られるようにしたいというお考えなり発言も私伺っておりますが、国権の最高機関は国会ですから、国会で審議するのに官邸の理解なり了解をもらわないと審議ができないというものではありませんから、国権の最高機関である国会でこの問題を審議するときは、これは委員長におかれましても、物理的に可能なもの、例えば海外へ出張しておられる、出てこいというような、そんなむちゃを我々言うわけじゃありませんから、先ほど委員長は、出席の求めがあれば可能な限り出られるようにするとおっしゃった、まさに物理的に可能であればそれは出席を得て審議できるように委員長として努力をいただきたいと思いますが、まず最初にこのことを委員長に伺っておきます。
村井委員長 あとう限り努力をさせていただきます。
吉井委員 それで、きょうは出てきておられないので、とりあえず官房長官にかかわる分は保留して、質問を続けたいと思います。
 まず、報道機関の問題について、表現、報道の自由にかかわるところで、何ですか、成立しなかったので、いろいろお考えになって修正されたようなお話も先ほどありましたが、五つの基本原則を全文削除して、主務大臣制を残した理由というのは、これは、細田大臣、どこにありますか。
細田国務大臣 主務大臣制があるということは、最も今後の個人情報の保護に関して主務大臣が行政機関の長として実際の行政に当たることが適当であると考えたからでございまして、他意はございません。
吉井委員 五つの基本原則の全文削除も主務大臣制を残した理由も、要するに他意がないということでいいんですね。
細田国務大臣 基本原則においては、いろいろな誤解あるいは反対も野党の皆様方から非常に強く提起されました。このことが、何か表現の自由に対する新しい脅威を生ずるのではないかというような、私どもが意図しなかったような評価をいただきましたので、それらを修正いたしまして、基本原則につきましては簡潔な表現に直したわけでございます。
吉井委員 その意図されたされないの話は、まさにそこに関しては、私はさっきも言いましたように、表現、報道の基本にかかわるところは、これはちょっと官房長官にということで保留して進めますので、先へ進めていきますが、今度の五十条、「個人情報取扱事業者のうち次の各号に掲げる者」、一項で報道機関を適用除外としているわけですが、二項で報道の定義があるわけですね。報道機関かどうか、この定義に基づいて判断する権限は、これは主務大臣ということになるんですね。
細田国務大臣 ちょっと御趣旨が不明確だったわけでございますが、報道関係等においては主務大臣というものを想定しておりません。
吉井委員 もう一遍伺いますけれども、この五十条「適用除外」で「個人情報取扱事業者のうち次の各号に掲げる者」、一項で報道機関を適用除外としていますね。それで、二項で報道の定義というのがあるんですね。報道の定義ということがあるわけですから、この定義に基づいて報道機関かどうかという判断する権限、これは主務大臣にあるわけですね。
細田国務大臣 それはございません。
吉井委員 報道目的、五十条一項一、著述目的、五十条一項二、この判断は主務大臣が行うんでしょう。
細田国務大臣 何かいろいろ問題があった、それで、例えばこの事業が報道に当たらないではないかというようなことがあれば、どこかに苦情が持ち込まれるということはあるかもしれませんが、基本的に報道に当たる限りは主務大臣はないわけでございますので、そういった場合には、全くそれ以上の進展はないわけでございます。
吉井委員 そうすると、五十条一項一の報道目的、五十条一項二の著述目的、これはそれぞれの個人情報取扱事業者、例えば雑誌社なら雑誌社が、では、うちはとりあえず五十条一項一でいかせてもらいますわ、こういうことでいいんですか。
細田国務大臣 それはちょっと主語がわからなかったんですが、とりあえず一項でいかせていただきますと言うのはだれですか。
吉井委員 雑誌社なら雑誌社が、その報道目的の五十条一項一の方だったら報道ですね、著述目的なら著述目的でやっておるということになるわけですよね。しかし、その判断を主務大臣が行うということであれば主務大臣なんですが、主務大臣がやらないんだったら、雑誌社の方が、社長なり編集長なりが、うちはとりあえずこれは五十条一項一でやらせてもらいますわ、こういうふうになるわけですよね。それでいいんですかということを聞いているわけです。
細田国務大臣 そのような場合は、当事者がいるわけですね、両方に。この問題について、何か個人情報について争うような。そうすると、もし争いが生ずると最終的に裁判所に持ち込まれるということはあるかもしれませんが、主務大臣がおるということではありません。
吉井委員 今のお話で、個人情報に関するトラブルが行政機関に持ち込まれてきたときには、それが報道か否かを判断するのは、これは主務大臣ですね。
細田国務大臣 持ち込まれたという場合には行政庁が判断をするわけでございますが、ごく一部でもこの項目に合致すると判断されれば、直ちにお断り申し上げるということになります。この五十条の一項に当たるということでございます。
吉井委員 トラブルが持ち込まれたら行政機関が判断するということなんですが、そのときに、それは五十条一項一の方なのか五十条一項二の方なのかということ、それもわからないのでは、一体、判断のしようもないわけですから、個人情報に関するトラブルがまず持ち込まれる前からちゃんとわかっていなければ話にならないわけですが、行政機関に持ち込まれたら、報道か否かを判断するのは主務大臣。もう一遍確認しておきます。
細田国務大臣 それは主務大臣が判断するというよりは、まさにこれに当たるからこちらへ来ないでください、これは私のところは関係ありません、こう申し上げるわけです。
吉井委員 こんな乱暴な、これはちょっとひど過ぎると思うよね。こうだと思うから来ないでくださいと。これはどういうことですか。これはちょっと整理してもらえますか。
藤井政府参考人 ちょっと個別具体的なケースかと思いますので、私の方から説明させていただきたいと思います。(吉井委員「五十条一項一が何で個別なんだよ」と呼ぶ)
村井委員長 とりあえずお聞きください。
藤井政府参考人 今御質問の趣旨は、ある個人情報取扱事業者が、報道を含まれているか含まれていないかわからない段階で個人情報を取り扱っておられる、それで、ひょっとして取り扱いの中に報道目的が入っているかどうかというような場合、これは基本的には個人情報取扱事業者御自身がみずから判断されて、報道に当たらないということであれば、法律の規範に沿って自主的に遵守していただきますし、報道に当たるということであれば、それはみずからの必要な措置を講じていただく、そういう判断をやっていくことになると思います。
 ただ、今御質問の後の方で、たまたまだれか関係者が、その個人情報取扱事業者の取り扱い行為によって何らかの個人情報の適正な取り扱いが侵されている、そういうふうなケースがあるということで、個人情報取扱事業者に直接苦情を持ち込まれる場合もあるでしょうし、どこかの行政機関に持ち込まれる場合もあるということは、それは大いにあり得ることだと思います。その場合において、受け付けた行政機関側は、御指摘のとおりというか、大臣も申し上げたと思うんですが、それはこの法律で適用除外になっている報道機関の報道目的であるかどうかということは、それは判断される機会はあり得ると思っております。
 ただ、その場合にも、これも従来から政府側から御説明申し上げていますのは、今度の場合は新三十五条というのがございまして、そこにいう主務大臣の関与というのは表現の自由を損なってはならないということを強く求めておりますし、あと、これも従来から御説明申し上げているところでございますが、報道であるか否かというのは、雑則で今度定義規定も入りましたけれども、そういう報道が一部でも入っているかどうか、一部でも入っていればそれはもう適用除外ということになるわけでございますので、主務大臣が仮にそういう判断を迫られても、誤った判断をする可能性というのは極めて少ないと思っております。
 そういう二重、三重の手当てをしているんですが、さらに加えて、仮に誤って、本来報道機関の報道目的の取り扱いであるにもかかわらず、主務大臣が何か勧告、改善命令までいってしまったというような場合においても、その改善命令というのはまさに行政処分でございます。行政処分でございますから、それに問題があるということであれば、受けた側は行政事件訴訟法に基づいて裁判を起こせるわけでございます。そういう裁判のプロセスの中には、今回特に定義規定なんかも設けて非常に客観的な要件化をしているところでございますので、公正な判断が得られる。
 四重ぐらいのそういうセーフティーネットをかけた仕組みとしていることでございますので、報道目的のものを、誤って主務大臣が関与するということはほとんどあり得ないというふうに考えているというふうに従来説明しているところでございます。
吉井委員 最後の結論の、あり得ないだけの話なんですけれども、五十条で、一項で報道機関は適用除外としたんだけれども、二項で報道の定義があるんですね。この定義に基づいてそれは報道機関かどうかという判断をする権限というのは、これは主務大臣。この前、本会議なんかで答弁してはるのは、よう聞いていますと、主務大臣の関与という懸念は当たらないという言い方なんですよ。私は関与の話をしているんじゃないんです、判断のことを聞いているんです。この定義に基づいて判断する権限は主務大臣じゃないのですかということを聞いているんですよ。そのときに、報道目的だったら五十条一項一、著述目的だったら五十条一項二だということが答弁としてあるわけなんですが、しかし、それの判断も主務大臣がやるんでしょうと。
 もちろん、言われるまでもなく、個人情報取扱業者側の方は、例えば出版社なら出版社は、私はどっちかというと、これは、出す方は報道の方かなと思ったり、それはそれぞれ判断するでしょうが、しかし、これは報道目的、著述目的と、その判断は主務大臣の方できちんとしているわけでしょう。大臣はさっぱり何もわからない、何もわかりませんというならわかりませんでいいんですけれども。
細田国務大臣 基本的に、やはり報道機関がこれは報道の範囲内であると主張をすればそこで足りると思っておりまして、野党の案は委員会で審議するようですが、その場合にどういうふうに審議されるのか、このこともぜひお聞きになっていただきたいと思いますが、私どもの観点では、基本的に報道にかかわる関係があればすべて門前払いといいますか、お断りすることになると思います。
吉井委員 そうすると、私、聞く前にさっきおっしゃったんですが、今度は大臣の方に聞いておきますけれども、せんだって本会議質問にもありましたが、要するに、主務大臣が報道目的を含まないと誤って判断して、報道機関が命令取り消し裁判を提起した場合、報道目的の有無の立証責任をどっちが負うか。
 今もお話がありましたが、これは本会議答弁でも、主務大臣の側で報道機関の当該取り扱いが報道目的を全く含まないことを立証する必要があると。要するに主務大臣の側で報道機関の扱いが報道目的を含んでいるかどうかという判断をするというわけなんですよね、それを立証しなきゃいけないと。これは細田さんの答弁なんですね。あなたの答弁なんですよ、本会議での。
 そうすると、その判断をする報道の主務大臣は一体だれになるんですか。
細田国務大臣 どういうことが起こった場合にそういうことがあるかという例示がなかなか大変なわけですが、報道機関、例えば新聞社が、よくあることですが、文化センターのような一般市民の教育の機関を有している。これが子会社あるいは関係会社で共同して運営している場合には、これはまさに文化センターの仕事で、茶道、華道とか俳句とか、そういうものを一般市民に教える。そこに会員が入って、数千以上の会員があって、コンピューターで、その名簿が流出したというようなケースにおいては、その文化センターなる事業がどこに所管があるのか、そしてもう一つは、これは報道と関係があるのかないのかということを判断して、どう見てもこれが報道と全く無関係であるということが立証できる場合には、これは余り差をつけることはできませんので、主務大臣も決まりますし、一般原則に従って処理されることはあると思いますが、一般的にそういうものは今ございませんでね。報道機関の本社がいろいろな事業をやって、専ら報道と全く関係のない仕事を独立してやっていて、同じ社内において違う業務を行っているという例も余り知りませんので、やや仮定の御質問になっていると思います。
吉井委員 いや、仮定の質問と言うんだけれども、それで細田さんは本会議で答弁したんですか。主務大臣は報道目的を全く含まないことを立証する必要があると、あなた、答弁したんですね。
 では、報道目的を含んでいるかどうかということを、特に報道機関のですね、その報道の主務大臣がなければ、名前は主務大臣なんですが、だれだかわからない人が立証する必要が出てくるんですか。だから、報道の主務大臣はだれなのかと聞いているんです。
細田国務大臣 何遍も申しますが、報道の主務大臣はございません。報道に関連する問題が起きたときには、当然これは報道のこの規定によって一切規定が働かないわけでございます。
 ただ、唯一あるとすれば、私の答弁のことを言われましたけれども、非常に限定的なケースで、では、全く報道と関係のない活動が独立してあって、そこでいろいろ出てきた場合には、どういう主務大臣の関係があるかと。その事業が、例えば情報処理サービス業であるとか、文化センターのいろいろ市民教育の場であるとか、そういう純粋に、その本社の活動の中で独立した分野である場合にはそれぞれの業として考えるべきである、その独立した業務の主務大臣と考えられる人が立証しなきゃならないということを申し上げたわけでございますが、これはごく例外的なものでございます。
 と申しますのは、やはり先ほど申し上げましたような報道機関も、別法人で文化センターとか教養センターみたいなものをやっている例もありますから、ではこっちはどうなんだと。別会社だから、本来報道機関ではもうなくなっているわけでございますから、それは対象になるし、それを本社機構の中で何らかの別組織でやっているという場合にはまた、いわば法のもとでの等しい取り扱いをしていく必要があるケースもある。しかし、実際はほとんど考えられません。
吉井委員 かつて大阪の方で、今もやってはるかもしれませんが、ある新聞社が菊人形をずっとやっておられましたね、秋になると。菊人形展ですね。これが報道に当たるかどうかなんというのは明白なんですね。私、そんなこと聞いているんじゃないんです。
 しかし、あなたは答弁で、要するに主務大臣の改善命令に対する取り消し訴訟における立証責任という問題だが、行政事件訴訟では、行政が私人に義務や負担を課す処分を行う場合には行政の側には要件事実の立証責任があるとされているのが一般的で、主務大臣の改善命令があったとき、報道機関が報道目的を含む取り扱いであるということを理由として改善命令の取り消し訴訟を提起した場合には、主務大臣の側で報道機関の当該取り扱いが報道目的を全く含まないことを立証する必要があるという答弁なんですよ。
 つまり、主務大臣の側で報道機関の取り扱いが報道目的を含まないことを立証する必要があるとあなたは答弁しているんだから、そうすると、報道機関の問題を扱う主務大臣はどこなのか。報道について主務大臣、わかりませんということを提案している担当の大臣から言われてしまったら、これは質問のしようがないんですよ。
細田国務大臣 同じことをまた申し上げなきゃなりませんが、報道と全く関係のない、それじゃ、菊人形展をやっている、そのことが個人情報保護の観点から問題になるかどうかは別として、そういうことがあれば、その事業についての主務大臣を考える。ただ、菊人形展なんか主務大臣があるとも思えませんので、これはちょっと観念論ですが、もうちょっといろいろな個人情報を集めながらやる事業が仮に報道と無関係であるとすれば、その事業、それが情報処理サービス業であれば経済産業大臣かもしれません。しかし、そういうことは普通存在しないと思っております。
吉井委員 大体、菊人形展なんというようなものはもう明白なんですよ。そんなの聞いているんじゃないわけで。
 だから、要するにこの問題については、あなたは、主務大臣の側で報道機関の扱うものが報道目的を含むか含まないか立証する必要があるとおっしゃったんだけれども、ではだれが主務大臣なのかということについては全く政府としては考えておられなかった。とりあえず、現段階ではそういうことがわかったということにして、次に進んでおきたいと思います。
 五十条三項のことについてこれまでも出ておりますが、取扱事業者は、個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置をとること、取り扱いに関する苦情処理、適正な取り扱い確保措置を講じ、かつ、当該措置の内容を公表するよう努めなければならないと、この努力義務規定があるんですね。報道機関が自律的に定めるルールとか倫理規定を国家が法律で定めて指示する、これは国家が報道に規制を及ぼす可能性を生み出すんではありませんか。
細田国務大臣 法五十条三項のお尋ねがございました。
 報道の自由は憲法上も保障されておりまして、個人情報保護法案においても、その自律性が確保されるものと認識しております。
 こうした観点を踏まえまして、政府案においては、報道分野に対し、主務大臣による勧告、命令などの関与を伴う法案第四章の個人情報取扱事業者の義務について、適用を除外しているわけでございます。
 一方、報道分野においても、人格尊重の理念のもとに、個人情報を慎重に取り扱うべきことに変わりはないことから、政府案では、法案第五十条三項の努力規定を設けて、個人情報の適正な取り扱いを確保するための必要な措置をみずから講じていただくこととしておりますが、これは、あくまでも自律的な措置であって、報道機関に対して規制的効果を有するものではありません。
吉井委員 これは報道でも紹介されておりますが、ことし二月五日の、経済産業省系の研究所主催の、メディアは特権的な存在なのかというシンポで、藤井さんの発言で、五つの基本原則は削除されたのではなく一部残され、メディアにも適用されるというお話なんですが、この五十条三項、努力義務規定というのは、適用除外の五分野にも基本原則と別の努力義務を課すという問題があって、結局、けさほど来の議論にもありましたが、汚職疑惑を報じられた政治家からの苦情に応じるべきだ、こういった要求の口実とされる問題が出てきます。
 それで、例えばこのシンポに出た大石関西大学助教授などは、メディアが自律的に定めるべきルールや倫理について国が法律で指示するべきではないということを言っておられますが、やはり、報道機関が自律的に定めるルールや倫理規定を国が法律でもって定めて指示する、こういうやり方というのは、まさにこれは表現、報道の自由ということを考えたときに、本来やるべきことじゃない。
 こういう点では、国が法律でルール、倫理を規制するようなことはやっちゃならないということについて、担当大臣としてあなたはどういうふうにお考えなのか伺っておきたいと思います。
細田国務大臣 先ほど固有名詞が出ましたので、本人からちょっと事実関係についてはお話ししなきゃならないと思っております。
 これはあくまでも自主的な取り組みを求めているものでありまして、先ほど同じ野党の、四党提案の中の議員から、どうも御趣旨と必ずしも一致しないような御発言があったような気がいたします。それはいいです、本人、ちょっと御退席されたようでございますから。
 私は、先ほど来申し上げておりますように、今吉井議員がお尋ねになりましたような趣旨で、これは全く自主的な取り組みを求めているにすぎず、それ以上のものは全くございません。
 それで、ちょっとお待ちください。
藤井政府参考人 ちょっと、事実だけでございますけれども、私、委員のおっしゃったシンポジウムには出ておりませんので。
 それだけでございます。
吉井委員 それは、それならば、その某新聞社の方に指摘をしておかれたらいいというふうに思います。(発言する者あり)いや、それはもう読んでよく知ってはる話だから。
 それで、小泉総理の、五十条三項、努力義務規定を設けていると言っていることなんですが、これは、適正な取り扱いを確保するための必要な措置をみずから講じていただく、自律的措置であり、規制的効果を有するものではないというわけですが、疑惑政治家の取材活動にクレームをつけて妨害する口実に使われる可能性はある、この点をやはりきちんと考えておかなきゃいけないと思うんです。これは担当大臣に伺っておきます。
細田国務大臣 これは、先ほど来明確に申し上げておりますように、その報道内容が結果的に事実であったかあるいは事実でなかったかにかかわらず、このことは全く関係がない、除外されておることには変わりがないと思っております。
吉井委員 そもそも、それは、自主規制というものをきちんと報道機関がやっていく。それは、世論の中で、さらにもっときちんと自主規制をやりなさいとか、あるいはもっと効果の上がるものにしなさいとか、それは世論もあり、まさにその中で自主規制というものが改善もされていくべきものであって、権力的にそれを努力義務を課してやれというものではないわけです。ですから、大臣がそれをお考えならば、もともとこういうものは、努力義務規定を課して報道機関に義務を課すということはやるべきじゃないし、やっちゃならないことだということを申し上げて、次に移りたいと思います。
 次は、表現、報道の自由の侵害を排除して個人のプライバシーを保護するという、国民の基本的人権に深くかかわるこの個人情報保護の実施機関、これは直接の行政機関でなく、行政から独立性を持った第三者機関で行っていく、こういうことを担当者としてはお考えにならないのか、ここのところを伺っておきたいと思います。
細田国務大臣 ここ数年の実際の個人情報漏えいの事例を私どもはよく調べているんです。野党の先生方にも余り個人情報漏れにならないような範囲内でできるだけお知らせをしておるわけでございますけれども、実は、その中で、非常に悪質なものと単なる無知によるものであるものがありまして、最も多いのは、入学願書の請求者の個人情報がインターネットを通じて閲覧可能な状態になっていたとか、その他いろいろ、ホームページで懸賞応募者の住所、氏名、生年月日、電話番号等の情報が閲覧可能になっておった、食品会社でも同じようなことがあった、住宅メーカーのホームページでもそういうことがあった。これは、ほとんど、悪意というよりは全く過失であり、無知であり、そういう応募のデータが外部からの侵入や閲覧に供されないようにきちっとすべきであるにもかかわらず、そういうことが漏れたというものが大半でございます。
 他方、非常に悪質なものもありまして、ある信販会社の社員が暴力団組員におどされてクレジットカードの顧客情報を持ち出したとか、あるいは大手予備校で模擬試験を受けた受験生の個人データを提供したとか、銀行、証券会社の顧客データが名簿業者に流出したとか、そういうことと混在しております。
 つまり、まだIT化が進んでおって、確かに四年間で六十件ほどの案件が表に出ておる。もちろん隠れた分野もあるし、皆さんも御経験のように、あるデパートのカードの会員になったらその関係会社から商品カタログがどかっと送られてきたというような、明らかに情報が漏れたんじゃないかという例はたくさんありますよね。
 だから、これからつかまえていくにしても、意外に、これまでの案件は過失が半分以上あります。したがって、これは行政的な主務官庁も大体明らかでございますので、これはあなたのところのホームページに載せるときのソフトウエアが悪い、もうこういう人たちはわかっておるわけでございますが、ホームページをきちっとしたセーフティーなファイアウオールを上げて対応すべきだということで対応ができる分野が多いわけでございます。過半数になっております。
 そこで、やはり今後問題は、悪質なものに対応しなきゃならない。そうすると、目下のところ意外に案件も限られておりますし、第三者機関で、そのための専門の行政機関で、地方支部も何十人も置いて、何億円という予算をかけて本当にやる必要があるかどうかという点は、もうちょっと様子を見ていかなきゃいけない。もう抑え切れなくなって大変だ、あるいは行政官庁もサボって実際何もしないというようなことが生ずればともかく、今一生懸命個別対応はしておりますので、私は、第三者機関にゆだねるという問題については、総理もいろいろ答弁しておるとおりでございますが、まだこれは、行革の精神から見ても、そこまで考えるのは時期尚早だなと思っております。
吉井委員 非常に悪質で犯罪性のあるものは、当然、司法が対応するわけです。それから、従来から、国民生活センターなり消費生活センターなり、そういうところでの苦情の受け付け等もやっているわけですが、問題は、個人のプライバシーを保護する、その立場から、国民の基本的人権に深くかかわる個人情報保護の実施機関としては、これは行政からの独立性を持った第三者機関で行うということが必要だということを言っているわけでして、実は、第三者機関そのものについての評価、認識は避けていらっしゃるようなんだが、政府も第三者機関を検討してきたんじゃないですか。
細田国務大臣 いろいろな可能性については検討いたした経緯はあるようでございますが、前の法案を提出して以降、そういった考えはございません。
吉井委員 法制化専門委員の小早川教授は、第三者機関をいろいろ考えたがということで、要するにこういう道を選んだというお話もあれば、同じく法制化専門委員の新美教授の方は、我が国においても各省庁の大臣にゆだねるのでなく独立した監督機関を設立することが考えられると。
 ですから、いろいろな議論があったわけですから、そういう点では、実効性、行革を理由に問題が多いということだけで避けるんじゃなしに、第三者機関そのものについて、やはりこれは独立性の保障、特に個人のプライバシーにかかわってくる問題ですから、それを実施する機関として、本来、第三者機関ということはやはり政府としても考えるべきだと思うんですが、これは、担当大臣として実際にどういうふうに考えたのか、そこを伺っておきたいと思います。
細田国務大臣 今おっしゃいましたようないろいろな先生方にも、当初は可能性としていろいろな案を持っておられた方もおられるようですが、政府の専門委員会の結論を出すときには、やはり行政の実態等を考えて、しかも、第三者機関を独立して設置すると、一部の議員が大変御心配のように、逆に規制のための委員会が自律的に運動を開始するような面もありますので、これは、やはりいろいろな経験を重ねて考えるべきことであると思います。
 もちろん、これが案にも何にもならないということを申し上げているんじゃなくて、二つの考え方はあると。しかし、今発生している事態は、個別に、各業種ごとに、あなたのホームページ、こんな扱いしちゃいけませんよと注意すれば半分以上はこれで足りますし、それから、先ほど、何か違法行為があれば刑法その他でやったらいいじゃないかという、そういうケースはまた余りないんですよ。したがって、何らかの形で指導、助言、監督等もやらなければならないような実態でございますので、そういう考え方の最適解として今の政府案を考えている。
 ただ、これから運用の問題もございますので、それは思わざる展開を示して、もう大変な情報が飛び交うようなことになればこれは問題と思いますが、むしろ、未然にかなりこれはファイアウオールを、それぞれの企業において仕組みをきっちりととる。これは当然、その企業にとっては社会的信用上必要なことで、我々のこの手に、何という具体的な会社がこういう情報漏れを起こしたなんというのは大変恥ずかしい話でございまして、これだけで企業の信用が下がるわけですから、これに懲りてどんどん改善をしております。次にまた出てきますから、それを改善してもらうというようなことで行政が速やかな対応をすることが最も適当であるのではないかと思っております。
吉井委員 先ほど来、行革の話が出たりするんですけれども、行革というのならば、本来、癒着とか汚職とか天下りとか、それを徹底的に根絶して、効率的な行政を実現していく、これが本来の行革なんですから。ですから、行革の名をかぶせれば国民の基本的人権を切り捨ててよしとする、こういう考えになっては全くだめなわけです。
 だから、既存の組織の一部を独立させ、核となる組織に改組して、弁護士さんとか情報技術者などの協力を得て、大きな費用を新たに投じなくても、第三者機関を設置して、現実的そして実効性の上がる個人情報保護の仕組みというのはつくれていくわけですから、そこを考えないで、とにかく行革だと言ったらもうみんな沈黙するだろう、沈黙させる、私は、この考え方というのは本当に発想が倒錯していると思いますよ。事業実施官庁が個人情報保護に取り組むとして、事業者に対する主務大臣の監督権限を行使し、事業者への恣意的な介入、特定業者との癒着、天下りなどの問題を引き起こしてきた、従来の問題を実施官庁に任せておいたらやはり一掃できないんですね。
 ですから、国民の基本的人権にかかわる問題、報道の自由などの保障を考えると、私は、やはり第三者機関は極めて重要だ、その立場に担当大臣としてもきちんと考えていかれる必要があると思うんですが、改めて伺っておきたいと思います。
細田国務大臣 これについては両方ありまして、行政庁でよく、そういう問題発生をした例が出た場合には、すぐに担当の方に連絡して、こういう情報漏れがあるようだが事実かどうかということから始まって、もちろん被害者が出てくるわけでございますから、それをきっちり処理する必要があるのは当然でございますし、今の日本の官庁がそれを何かもみ消すことに利益があったり、あなたは黙ってらっしゃいなんて言うはずがないんです。もう何万件、何千件という情報が漏れたり、自分の情報がどこかへ出ている証拠があるという場合には、当然、行政庁で監督をするだけの環境は整っていると思います。消費者行政でも、関係の官庁が消費者の生活センターとか国民生活センターとか、いろいろな苦情処理を担当していますが、これが非常に弾力的かつ機敏に対応できている実例もあるわけでございます。
 他方、それでは本当に、独立行政機関を設ければその方が理想的でいいじゃないかとおっしゃいますけれども、独立機関はどんどん自己回転を始めますので、先ほど言われましたような規制の面でも、あるいは実際に日本じゅうにそういう問題が転がっていないかどうかというような調査とか、今後の委員会の働きにおいても中庸な働きができるものかどうかということも考えなきゃいけないわけでございます。
 ただ、世の中の需要その他を見ながら、いろいろな可能性があるということは申し上げているので、否定しているわけじゃございません。
吉井委員 あなたの官僚OBの思いは思いとしてお聞きしておくとして、いずれにしても、福田官房長官への質問を残して、本日の質問を終わりたいと思います。
村井委員長 次に、保坂展人君。
保坂委員 ちょっと委員長に伺いますけれども、私も当然ながら内閣官房長官答弁を要求していますけれども、どうも昨今の風潮の中で、委員会において、とりわけ当委員会において、大変重大な法案だということで、内閣委員会から特別委員会設置に我々反対しましたけれども、内閣官房長官に当然昨年来の経過を踏まえて答弁いただきたいというときに、質問が官房長官が答えるにふさわしいかどうかというような不届きな問いを実は事務方からいただきまして、大変立腹しているわけですが、しかしその方も、本人の思いつきで言っているんじゃないということもわかりますので、組織としてそういうふうに言っている。
 ですから、これは、やはり委員長として、議員の質問をふさわしいかどうか、それを見て決めるなんというのは、そういうことをやはり政府側が言わないようにしっかり言っていただきたい。
村井委員長 ただいまの保坂委員の御発言は、重く承りました。
保坂委員 では、官房長官に対する質問はペンディングにして、内容に入りたいというふうに思います。
 きょうは、大変身近になった携帯電話の問題。携帯電話は皆さん、議員各位もお持ちだと思うんですが、一台じゃなくて二台持っているという方もいらっしゃると思います。あるいは三台という方もいらっしゃるかもしれない。高校生か大学生ですかね、大学生の調査で、持っている方が九五%ですか、そのくらいもう普及したということです、PHSなども含めて。この電話と個人情報の扱いについてちょっと考えさせていただきたい。情報はだれのものかということを、この一番初めの質疑で問題を提起させていただきたいんです。
 実は私、極めて珍しい体験をいたしまして、今からちょうどさかのぼること四年前に、私が携帯電話である放送局の記者と会話した内容がマスコミの機関に送られてきたという事件に遭遇したわけでございます。
 これは大変不気味でして、一体どういうことかと。よくその文書を見てみると、確かにこのような会話があったという内容でございました。そうすると、どうやってということがございます。ですから、基礎的な技術などをいろいろ調べまして、これは間違いないだろうということで、四年前の九九年の七夕の日、七月七日に東京地検に告訴をいたしました。その後に捜査を終えたという連絡を受けまして、本来なら時効ぎりぎりまで努力をしていただきたかったんですが、不起訴処分、これは容疑者が見つからなかったということですよという説明を私は受けたのですが、法務省刑事局長、来ていただいていますか。この件について、簡潔で結構なので、どうなったかということをお願いしたいと思います。
樋渡政府参考人 お答えいたします。
 お尋ねにつきましては、東京地方検察庁において、平成十一年七月八日に保坂展人衆議院議員から告訴を受け、さらに同月十九日に全国朝日放送株式会社から告発を受け、電気通信事業法違反被疑事件として捜査を遂げましたが、同十二年十二月二十七日、嫌疑不十分を理由とする不起訴処分をしたものと承知しております。
 なお、お尋ねにつきましては、平成十一年六月末ごろ、保坂議員と全国朝日放送株式会社記者との電話でのやりとりが記載された傍受記録様の文書がマスコミに郵送されましたことから発覚し、上記告訴、告発に至ったものと承知しておりますが、東京地方検察におきましては、所要の捜査を遂げた結果、委員御指摘のとおり、犯人を特定することができず、今後捜査を継続してもこれを特定できる可能性が認められないということから、嫌疑不十分としたものと承知しております。
保坂委員 大変忙しく、目まぐるしい政治の世界ですから、こういったことはもう本当に昔のことということで、御記憶の一端にあるかもしれませんが、騒ぎになったんですね。これは、平河クラブから私の携帯電話に電話があった、そういう過程で、国会開会中に検証が行われましたし、また、一体これはどうなっているんだという声も議運などで上がりました。ですから、これは与野党問わず、議員が電話で何を話しているのかというのは、これは大変な情報です。もちろん、議員以外の個人ももちろんそうです。企業秘密もあるでしょう。
 私は、その体験で大変、個人情報とは何かということを本当に強く感じる出来事がございました。というのは何かといいますと、これは、そういった会話があったという記憶があるんですよ。記憶があるんだけれども、忙しいので一日何回も電話しますね、果たしてその記憶が正確なものかどうかというのはやはり確かめておきたいということで、電話がNTTドコモだったので、NTTドコモにお願いをして、百円を事前に払っておくと、だれに電話したのか、何番に電話したのか、何秒で幾らですよという課金情報というのを出してくれます。ですから、ちょうど二週間ぐらい前ですかね、そのぐらいの電話のいわば私の記録ですね、これは私の電話ですから出してくださいというやりとりをいたしましたけれども、なかなかこれが出てこなかったんですよ、実は。
 いや、正直に言うと、最初は出せませんという話で、私はびっくりしたんです、出せませんとおっしゃいますので。これから百円払っていただくと来月から出しますなんて言われるので、来月のものをもらってもしようがないので、過去のものを知りたいということでございます。
 そのときもちょっと問題にしたんですが、捜査上必要なときに、電話の通信履歴などを、捜索・差し押さえ令状などがあれば当局に電気通信事業者は提出をいたします。だから、本人が必要とするときにどうして出ないのかというやりとりを厳しくした覚えがございますけれども、片山大臣、どうですか。本人がかけた電話の、私の話を聞いて、本人の情報を、しかも、電話をかけたかどうか、何時だったかという情報を必要に迫られて請求をしたときに、やはりこれは出すべきだというふうに思うのですが、こんな扱いされていることを御存じでしたでしょうか。
片山国務大臣 携帯電話の通信履歴につきましては、各携帯電話事業者において、料金請求等のために必要な期間保存している、その間であれば、契約者本人からの求めに応じて開示する取り扱いになっている、こういうふうに聞いております。
 総務省としましては、通信履歴については、通信の秘密として厳格な取り扱いが求められるものであり、不必要に記録開示することは許されないものであるが、本人からの開示の求めがあった場合には、保存されているものについては開示してもいいんではないか、こういうふうに考えております。
保坂委員 当時は、実はこれ、この質問に当たっていろいろ準備してみてわかったんですが、郵政省時代のガイドラインがございまして、そのガイドラインに沿っていろいろドコモも取り扱っていたようでございます。私は、実は下四けた全部マスクをされた記録をいただきました。そして、その記録が、その方かどうかということを特別な照会として、特例として答えていただく、こういうドコモからの報告書をもらった、その当時は、本人が求めてもなかなか出すというぐあいではなかったということを押さえておきたいと思います。
 警察庁刑事局長に来ていただいていますが、刑事事件の捜査に当たって、携帯電話の通信履歴や位置情報などを、必要に応じて捜査照会あるいは令状による取得を行っているかどうか。
栗本政府参考人 具体的な事件の捜査の中でどのような捜査を行っているかについては差し控えたいと思いますが、一般論として申し上げまして、警察として、犯罪捜査上必要があると判断いたしました場合には、刑事訴訟法に基づき、裁判所から差し押さえ令状の発付を得るなどの適正な手続を経て、お尋ねのような情報についても入手し得るものと考えております。
保坂委員 ちょっと確認的に聞いておきます、刑事局長に。
 今尋ねたのは、携帯電話の通信履歴や位置情報などを、今、差し押さえ令状とおっしゃいましたけれども、例えば検証令状などでもとる場合があると私は聞いていますが、これまで、例えば検証令状で取得したケースがあったのか。それは相当多いのか。あるいは却下された例ですね、令状請求して、あるのか。
栗本政府参考人 位置情報などにつきまして、お尋ねのように、検証令状で必要な情報を得るということはあり得るかと思います。
 具体的な令状の却下件数等については承知いたしておりませんので、御了承お願いいたします。
保坂委員 私、ちょうど三月の下旬にテレビのニュースを見ておりました。そこで実は報道がありまして、ちょっと話題になった事件ですけれども、北海道で二〇〇〇年の三月に起きた、二十四歳の女性の方が殺された、しかも、容疑者として逮捕されたのはやはり女性でありまして、この三月の末に懲役十六年の有罪判決が下されたという事件のニュースを見ていました。そして、その中で、今話題に出た位置情報という言葉が出てきたんですね。
 ちょっと調べてみましたら、この事件は否認をされ続けている事件なんで、判決の中で、被害者の携帯電話を使って被害者の勤務先や交際相手に被告は電話をした、それが一点ですね。そして、その電話が移動しながらの電話であった。移動しながら電話をかけた。その位置情報によって、犯行現場からその被告が住んでいる町に移動をしているということが裏づけられ、そしてそのことは、その方が犯人であると疑わざるを得ない、こういう内容だったかと思います。
 これは法務省の方にお答えいただきたいんですが、位置情報を公判に提出するというような扱いがされたのは事実でしょうか。
樋渡政府参考人 お尋ねにつきましては、平成十五年三月二十六日、札幌地方裁判所判決に係ります殺人、死体損壊被告事件に関するものと承知しておりますが、同事件におきましては、被害者の使用していた携帯電話の発信・着信記録等を記載した書面が、裁判官の発した差し押さえ許可状により差し押さえられており、同書面は公判において証拠採用され、同判決におきましては、委員御指摘のとおりのような内容で、被告人の足取りが被害者の携帯電話の移動状況と整合していることが指摘されているものと承知しております。
保坂委員 これは、私ははっきり言って驚いたですね。普通、携帯電話を持っているということは、大変便利な反面、位置情報という、私もそんなに知りませんでした。
 それで、ちょっといろいろ調べてみたら、なるほど他に、例えばイギリス人女性のルーシーさんが殺された事件がありますね。なかなか捜査が難航したようでございます。そして、容疑者の身柄をとって調べましたけれども、なかなか発見がされないというときに決め手になったのは、加害者の携帯電話を使って亡くなったルーシーさんが友達に電話をかけたときの記録。そして、三浦半島で見つかったんですね、御遺体は。そこらあたりから携帯電話の位置情報が、つまり、電話をかけていないときもその位置を定期的につないでいるようですね、交換局から。定期的につないで、どこに携帯電話があるかをキャッチしているから電話がかかるという仕組みになっているようですが、どうでしょうか、片山総務大臣、個人情報の一番核心の部分だと思いますが、こういう事実といいますか、こういうことを御存じでしたか。
片山国務大臣 いや、私も余り詳しくなかったんですよ。保坂委員が御質問されるというので私も知ったんです。
 無線基地局がいっぱいありますね。携帯電話は動きますから、どこの無線基地局の管轄に入ったかという情報を常にサービス制御局に送っているんですよね。それですぐ電話がかかるんですよ。
 だから、そういう意味ではなかなか怖い仕組みになっておりまして、業者の中には、本人が求めた場合には位置情報を教えるというところもあります。ただ、全部がそれを教えるという体制になっていないんで、これについて、本人から求めがあれば、私は、教えられれば教えた方がいいと。ただ、これは関係の業界の業者と十分な相談をしなきゃならぬな、こういうふうには思っております。
 しかし、これをやめるということはまた大変不便になるわけで、この辺の兼ね合いがなかなか難しいのかなと思っております。
保坂委員 実は、きのうもNTTドコモさんに技術的なことなどいろいろ聞いてみました。それで、そういう本人からの請求はまだないんだそうですね。では試しに本日私がどこにいたかというのを出してもらえないですかと言ったら、それはちょっとということで。そういう例がないということなんですね。
 しかし、今警察庁お答えいただいたように、あるいは検察庁、両刑事局長がお答えいただいたように、捜査の場合は、これ、出しているんですね。
 では、局長もお呼びしているんで、どうでしょうか。
 実態上、そういう私の位置情報、例えばこれは、自分がどこにいたかというのは自分がよく知っているんで、普通はないと思うんです、こういう請求は。ただ、何かのトラブルに巻き込まれるということは人間社会ありまして、行ってもいないのにそこに行ったという証人がどんどんあらわれて、あいつはそこにいたんだ、よからぬやつだというようなことに巻き込まれるケースがありますね、巻き込まれる。自分はいないんですよ、そこには。そうしたら、そうか、位置情報というのがあるじゃないか、では出してくれという、本人のまさに権益のために請求をするという場合、今までどんな扱いでしたか。正直に言ってください。
有冨政府参考人 今までは、どちらかというと、本人の求めに応じてという観点ではなくて本人の情報を守るという観点でガイドラインをつくっておりましたので、そういう想定で例えば各事業者ともシステムを構築しておりません。したがって、先生今お尋ねのようなことを言われても、すぐには対応できない。
 我々としても、あるものは出していいんじゃないかと思いますが、先ほど大臣申し上げましたとおり、具体的にこれからの話であれば何か工夫があるのかなと思いますけれども、これまでは過度な負担というか余り個人情報をためてはいかぬという基本方針に沿ってやっておりましたので、対応できないということがあったのだろうというふうに思います。
保坂委員 実は、現在個別法がありませんので、電気通信事業における個人情報保護に関するガイドラインという旧郵政省時代の、これによって各電気通信事業者とも運営をやっておると思うんですね。ここにさすがに位置情報というのがあるんですよ。あるんですが、これは要するに、捜査当局にお出しする手続についてそれがありますよと。それから、位置情報を第三者に提供する場合には当該の、いわゆる本人の権益を損ねないようにということだけなんですね。本人の請求というのは、実はないんですね。ですから、それを要求しても出てこないということになる。
 もう一点伺いますけれども、先ほどちょっと警察庁の方に聞いた質問というのは、検証令状で位置情報をいただくこともあるというと、これは、過去どこにいたかという情報とこれからどこに行くかという情報もあるんですね。だから、検証令状で期間を限定しても、これは捜査機関に、例えばこの人物があと一週間どうしているかということをある程度把握する捜査上の必要があるときには出してきたのでしょうか。これは局長に。
有冨政府参考人 捜査の関係について私ども逐一承知しておりませんので、把握しておりません。
保坂委員 では、警察庁刑事局長、いかがでしょうか。二つ聞きます。
 過去の位置情報について差し押さえでとるという場合と、これからの移動について検証令状でとる、あるいはそれが両方なのか、どういう扱いになるのか教えてください。
栗本政府参考人 ただいまのお尋ねは、具体的な捜査の内容をどうしているかということにかかわることでございますので、警察の捜査の中において、今お尋ねの位置情報について、過去、今後についてどのような形と言うことについては差し控えたいと思いますが、一般論としては、令状等に基づいてそのようなものの執行の中で適正な範囲内においてとり得ることはあり得るかと思います。
保坂委員 委員長は国家公安委員長経験者ですからね。
 我々は通信傍受法のときに、私、反対しましたよ。この法案は、しかし犯罪の容疑者になる方について該当する法案でしたね。それでも十分に懸念をし、また吟味をして、相当激しい議論や長い審議もあったと思いますが、総務大臣、どうでしょうか。これからどこに行くかというのは、下手すると、しゃべっている内容というのはこれも通信の秘密に属することですけれども、どこに行くかというのは最も高度なプライバシーじゃないでしょうか。この扱いについてどのように思われますか、今の答弁を聞いて。
片山国務大臣 大変難しい問題ですね。
 それは、一般的な感じからいいますと、余りそういうことまで位置情報でこれをずっと調べていくということは、私は好ましいことではないのかなという感じがいたします。
保坂委員 それでは、藤井審議官に来ていただいていますが、これは、今政府提案の民間の個人情報保護法では、これが成立すれば明らかに扱いは変わるのでしょうか。
 例えば、どういう情報があるかということで、最も高度な情報でございます、どこにいるかというのは。どこに過去行ったかというのもそうですね。そして、通信履歴、だれと会話しだれから電話をもらったのか。こういうことについては、やはり本人にそういう情報があるよということを告知し、さらに本人からの開示の求めがあるときには、これは遅滞なく開示するという扱いになりますか。
藤井政府参考人 政府案では、個人情報というのは、特定の個人が識別されるということと、あと、データベースのような形で体系的に保有されているという要件さえあれば対象になります。
 したがいまして、今のお話をお聞きしておりますと、位置情報なるものも、どうもデータベースか何かの中に入って特定の個人の識別可能な状態で保有されておるのじゃないかと推測するわけですが、そういうことであれば、この法案の対象情報になる。そういうことになりますと、今議員御指摘のとおりでございますが、いろいろ、目的外利用の原則禁止とか本人開示、訂正とか、それから安全管理義務の対象になるとか、そういう政府案に基づきますところの義務規定の対象になるということでございます。
 ただ、個々の規定の運用に当たりましては、どういう期間保有されているか、どういう形で保有されているのか、どういう目的なのかとか、それはまた個々のケースでいろいろ運用が異なってくることがあるかと思いますけれども、お聞きしておる限りにおいては、基本的には政府案の対象の個人情報になります。
保坂委員 それでは、有冨さんにもう一度聞きたいんですけれども、位置情報、今まではこれはそういう扱いじゃなかったと今おっしゃいましたね。しかし、こうやってニュースにもなるぐらい、実は位置情報を使ったさまざまなサービスが出てきているんですね。今私が言っているのはごく普通の携帯電話やPHSに位置情報があるという話で、そもそも位置情報を商品化して、例えば痴呆の御老人にそれを持ってもらうとか子供たちに持ってもらうとか、修学旅行先で修学旅行の生徒に持ってもらうとか、そういった商品は既に開発されているので、大分位置情報という言葉もポピュラーになってきたわけですね。
 今藤井さんからそういう答弁がありましたけれども、可能ですか、これは。本法案ができ上がれば、開示を求められれば対応できますか。
有冨政府参考人 いわゆる位置情報につきましては、先ほど大臣申しましたように、絶えずどこに携帯電話があるかということをフォローしているということでございまして、電気通信事業者の話によりますと、それは動くたびに上書きをしていく。したがって、過去にさかのぼって全部というような形ではありませんし、期間も必要最小限ということなので非常に短いものでございます。したがって、サービスとしてどこまで、どれぐらいの期間をためておくかというのは、これは一つのビジネスだと思いますけれども、ビジネス以外でどこまでやるかというのは必要最小限でいいのかなというふうには思っております。
 したがって、必ずしもすべて本人の方の要請にこたえるというわけにはいかないのじゃないかとは思います。
保坂委員 この辺が、原理原則が通らないようなんですよ。
 片山大臣にもう一度伺いますけれども、私が言っているのは、のべつまくなしに位置情報を出せなんというような話ではないのですね。やはりどうしても民事上のトラブルやなかなか他者に言えない事情で私が過去どこにいたかということを証明したいというときに、捜査の場合は、具体的には言えないと言っていますが、今幾つかの事件の事例を挙げたように出されているもの、それと同様のものをその情報主体である本人にも開示するべき、これは原則的な対応としてあり得べきじゃないでしょうか。大臣の見解を問います。
片山国務大臣 この個人情報保護法制にストレートに対象になるとは私は思いませんけれども、ただ、今言いました位置情報について、事業者の方がいろいろ情報を出せる体制になれば、全部なっていませんよ、なれば、私は、本人の求めに応じてそれを開示することはあってもいい、こういうふうに思います。それから、犯罪捜査やなんかの関係は、別の法律上の観点からの要請にこたえることでございます。
 しかし、大変これからこれが進んでいくと、いろいろな問題が出てくると思いますので、技術的な進歩を含めて、少し研究をすべき問題だなと今思っております。
保坂委員 それじゃ、警察庁にもうちょっと具体的にお聞きしていきますが、捜査照会で、電気通信事業者の管理する個人情報を警察官が取り寄せてしまうという不祥事が昨年ありました。八月十九日の新聞に報道されているんですが、捜査と偽って、埼玉県警の警察官が、携帯電話の契約者名などの個人情報を漏えいされたということで、地方公務員法の守秘義務違反で逮捕されたという記事がございます。
 これは、どんな内容の情報を漏えいさせたという事件だったんでしょうか。
栗本政府参考人 お尋ねの件につきましては、携帯電話契約者の氏名及び住所についてであります。
保坂委員 「など」と書いてありますから、これが位置情報などが入っていなかったことを願いますけれども、多分、それは厳重にガードされていると聞いていますから、そのとおりだったのかとは思いますが、警察庁刑事局長にもう一度伺いますが、捜査照会で出ることはあるんですね。
栗本政府参考人 ただいまのように、具体的な電話番号が判明をし、その電話番号についての契約者の氏名とか住所ということであれば、刑事訴訟法に基づきまして可能かと思っております。
保坂委員 もう一つ、九月十三日の読売新聞には、NTTドコモの携帯電話の通話記録が、ドコモ・システムズという子会社の社員によって持ち出されて横流しされたという事件が出ています。
 これは、依頼者が、交際相手の女性と男性の二人の通話記録を手に入れたい、つまり、自分がつき合っている女性と他の男性との二人の記録を欲しいと言って、これは何と実現をしてしまったというケースですね。そして、実現をしてしまってから、入手した男性が、なぜ頻繁に電話をしているんだということでその男性を問い詰めたということで、どうしてそんなことを知っているんだということで事件になったということのようですが、これはどういうデータですか、警察庁。
栗本政府参考人 ただいまの御質問についてお答えいたしますが、それは、大手電気通信会社の関係で、携帯電話の発信の日時、相手方の電話番号などの情報でございます。
保坂委員 もうそろそろ、この位置情報の話、少しまとめたいと思いますけれども、もう一度局長に伺いますけれども、位置情報といっても、位置登録情報というのもあるようですね。位置情報というのもあって、これは郵政省の中でも大分真剣な議論をしているんですね、これを見ると。
 これは、平成十二年十二月の個人情報保護法制の研究会の最終報告書ですか、これを見ると、やはり、この位置情報の扱いについて、通信の秘密として保護されるべきではないかという意見もあり、あるいは、通信そのものじゃない、通信そのものじゃないけれども、どこにいたかということは大変高度な情報だということで、それはやはり保護されるべきじゃないかということで、いろいろ議論されているようです。例えば、通信じゃないから保護の対象外なんという扱いはしてはいけないといういいことが書いてあるんですが、具体的に、この最終報告書を受けて、現状はどういう扱いで進行していますか。今、個人情報保護法の政府案が出されている中で。
有冨政府参考人 今先生お尋ねのとおりでございまして、特定の携帯電話が一体どこにあるのかについては、これはいわゆるプライバシーの非常に高い情報である、したがって、扱いとしては通信の秘密に準じた扱いをすべきであるというようなことで、事業者に対しましても、不必要に開示、記録するというようなことは許されないということを原則にしてございます。
保坂委員 もう一問行きますけれども、さっきちょっと明確じゃなかったんですが、捜査機関が、それこそ捜査上の必要によって、具体的には言えないけれどもという断りを入れながら、必要に応じて捜査令状やあるいは検証令状で、過去あるいは現在の、あるいは未来の位置情報についての扱いもありというような話になっていると思いますけれども、少なくとも、捜査機関に提供され得る個人の情報というものを、本人が非常に困って求めたとき、あるいはどうしても必要だというふうに求めたときには、その範囲で、つまり捜査機関に出す範囲で出すという原則的な対応はできますか。
有冨政府参考人 先ほど大臣からも御答弁がありましたとおり、非常に難しい問題でもあるという認識をしておりまして、今後の研究課題というふうに考えております。
保坂委員 大臣にお聞きしますけれども、難しい課題ですか。私が言っているのは非常に簡単なことだと思うんですね。要するに、捜査機関が取得する個人情報の、大変重大な個人情報としての、すなわち通信履歴、電話のかけたり着いたり、そういう履歴、そして相手がだれだったかという情報、そしてどこにいたかという、これは実は、位置情報というのは幾つか種類があるみたいなんですよ。電話をかけたときにどこからかけたかという情報も、またそれもあるようですが、それはどんな段階で、どういうふうに出されているのかわかりません。
 しかし、そういうものが、例えば国民一人一人が、あるいは自分に置きかえてみても、必要だと、私はそういう体験をしたわけです、必要だというときに、少なくとも、百円払えば出してくれるはずの、どこに私が電話をかけたという情報すら出すのに大変だったんですよ、当時。ですから、どうも、情報はだれのものかというところで、電気通信事業者もしっかりとした自覚がないんじゃないかと思います。
 ですから、捜査機関に出される範囲の情報を、個人の情報があるとすれば、それは個人の必要があるときには開示する、こういうことをしっかり言っていただきたいんですね。
片山国務大臣 電気通信事業者の方のいろいろな考え方があると思いますけれども、私は、本人が求めるのならば、今委員が言われるような状況なら、原則としてそれは出すのが望ましいのではないかと考えておりますが、今局長が言いましたように、いろいろな技術的な議論もありますので、検討させていただきたいと思います。
保坂委員 実は、私は、ここでかなり片山大臣と平行線の議論をする予定でいたんですけれどもね。というのは、きのうまでの役所の説明は、これはなかなか出せません、これは出すのは無理ですという答えだったので、もし今の大臣の答弁が、これは個人情報保護法の基本にかかわることですから、しっかりそれを指針としてやるというのであれば、これはこの問題に限っては一歩前進だと思いますが、間違いないですか。
片山国務大臣 検討させていただきたいと言いましたけれども、私の気持ちは、何度も言いますように、原則としては、本人が求めるのなら出す方が望ましいと思っております。
保坂委員 それじゃ、ちょっと続けて。
 この個人情報の問題の中で、例えば個人情報取扱事業者というのはどういう概念なのかというのがずっと議論になっていますよね。これは藤井さんに伺いますけれども、例えばカーナビなんかどうなんですかね、カーナビゲーション。あれは電話番号を入力すれば連れていってくれるというような機能も、便利な機能がありますね。本会議では電話帳のことを聞きましたけれども、さすがに電話帳は、これはすべからく行き渡っているので、電話帳については対象外と。しかし、電話帳をディスク化するに当たっては、相当、政府内で議論があって、これはやはりなかなか微妙なものだということで今の電話帳のスタイルになっているとも聞いています。カーナビはどんなふうな扱いですか。
藤井政府参考人 お答えします。
 御質問のケースは、カーナビに電話帳なんかとリンクされていて、それで個人が識別可能なような状態でコンピューターの、一種のデータベースだと思うんですけれども、そういったところに体系的に整理されているものということかと思うんですが、これはやはり個人データベースになります。
 ただ、個人情報取扱事業者かどうかというような御質問だと思うんですが、その場合は、そういう個人データベースを事業の用に供しているのかどうかというもう一つのスクリーニングがございまして、例えばユーザーが自分で運転をするために使っているというようなのは、事業という一般的な意味からいっても、そういったものは事業とは言えないと思います。ただ、それがまた別のいろいろな事業の、まさに商売ですね、商売用なんかにそういうものを使っておられるということになれば、それは個人情報取扱事業者がいわば用いられているものでございますので、それはこの法律の対象になり得ると思っております。
保坂委員 「事業の用に」という法文の中の「事業」というのは、別に営利事業ということを指しているわけじゃないんですよね。これは、事を行うということに近い表現だと思います。それが反復継続して行われるということだと思いますけれども、先ほど言った商売にカーナビを使っている方なんて、かなり多いんじゃないですか。あるいは非営利法人などで、ボランティアで届けに行く、こういう方たちもみんなカーナビを持っていれば事業者、こういうことですか。
藤井政府参考人 御質問の点は、事業の用に供するという場合の「事業」とはどういうことかということかと思うんですが、一般的に事業というのは、いわばある一定の行為を継続的、反復的にやっているということと、先ほども言いましたように、その事業内容自体がやはり社会的な事業として認知され得るものでなければいけないと思いますけれども、そういう要件だけでございまして、特にその目的が営利であるか非営利であるかということは基準には入れておりません。
保坂委員 いや、そんなことを聞いているのじゃなくて、カーナビで、商売に使われて配達に使われたり、あるいはNGO活動、ボランティア活動に使っている場合は、個人情報取扱事業者なんですかと聞いているんです。
村井委員長 藤井内閣審議官。明確に答えてください。
藤井政府参考人 つけ加えるならば、あと、一定量の個人の件数、例えば大臣も先ほど来五千人程度とか申し上げていましたけれども、そういった程度のいわばカーナビに個人情報が蓄積されているというものであれば、御質問のような商売とか、あるいはNGOも、これもちょっと実際どういう事業目的で、事業内容でやっておられるかというものは見きわめる必要があるかと思うんですが、一般論といたしましては事業ということだろうと思いますので、それは個人情報取扱事業者としての対象になるということでいいと思います。
保坂委員 そうですか。電話帳よりは確かにカーナビの方が普及していないかもしれないですが、日本は相当普及している国ですよね、カーナビは。最近安くなってきたし、また、地図を見るよりもカーナビでという人もふえてきた。
 それでは、また携帯電話に戻りますが、携帯ナビというのもあるみたいですね。つまり、カーナビの携帯電話版。これはどういうものですか。局長にお願いします。
有冨政府参考人 これは今、例えばKDDIのau等が提供しておりますが、全地球測位システムと言われますGPS、これを利用いたしまして、パソコンとかあるいは携帯電話によりまして相手の携帯電話の位置を地図に示すというようなものでございます。
保坂委員 そうすると、藤井さん、携帯電話で例えばGPSがついているのがあるんですね、携帯電話会社によっては。それから、まとめてアンテナで、GPSで受けて供給しているというタイプのものもあるようです。その携帯電話の位置をそれこそ位置情報で特定して、その道を右とか三つ目を左とかといってたどり着く。これは、それこそお仕事や営業やあるいは市民活動やその他、反復継続して使っていれば、個人情報取扱事業者ですね。
藤井政府参考人 若干繰り返しの答え方になるのかもしれませんが、やはり事業の用に供しているかどうかという観点からのスクリーニングが必要かと思っております。
 先ほど言いましたように、ユーザーがいわば自分の日常生活の中に使うとか、NGOなんかでもやはりそうだと思うんですけれども、そういうNGOの日常的な運営に使われるということであれば、それは何もこういう行政規制法が進出する必要性のある分野だというふうには考えておりませんし、そういう制度にもなっておりません。
 ただ、カーナビでも携帯でも、非常に大量の個人データをいわばデータベース化されているもの、そういったものを事業の用に供するということであれば、当然その中身については支障のないように安全管理を保っていただくとか、あるいは目的以外の利用はされないとか、そういうような規制をかけることは、それは普通のコンピューターに記録されている個人情報と変わらないというふうに考えます。
保坂委員 何か大変な答弁だなと思って感心していたんですけれどもね。きっと普及するんでしょうね、携帯電話のナビなんというのは。非常に安くなるんでしょう。これは使うためにあるんですね。
 では、細田大臣に聞きますけれども、今の説明では、「事業」というのは営利、非営利問いません。そして、回数の頻度なんかも、どうやって決めるのかということですよね。同窓会活動にも頻繁に使っているというのも事業の用に供するものになってしまうし、また、「データベース等」というのは、非常にこれは考えなきゃいけなくて、カーナビの場合は読み込んでいますよね、例えばDVDとかCDとかで情報を読み込んでいる。だからデータベースに近いんですが、携帯電話の場合小さいですから、そもそもそういったデータベースとつながっているということですね、その本体にはなくても。しかし、機能は同じである。それが個人情報取扱事業者になるのなら、ほとんどの人が事業者になっちゃうじゃないですか。そういうものですか。
細田国務大臣 そういう中小企業とか中堅企業とか個人事業者がたくさんおられまして、さほど多くないお得意さんの情報をいろいろな形で取り扱う、それが千人であったり三千人であったりする。これは、五千人を超えなきゃ対象でない。
 したがいまして、むしろ逆に、NTTと固有名詞を挙げてはいけないのかもしれませんが、通信会社がその情報を全部取り扱うと合計で何百万人になったり何万人になったりする。そこでいろいろな行為が行われる場合には当然事業者として規制の対象となりますけれども、私どもの解釈では、中小、中堅の企業の経営者が、数百人のデータあるいは二千人ぐらいのデータでも、それで使っておっても、これは対象とするつもりはございません。
保坂委員 ちょっと答弁がずれていましたけれどもね。データベースは大変な量なんですよね、カーナビでも携帯ナビでも。それを一日何回使ったかということじゃないだろうと、これは。非営利、営利を問わない。
 片山大臣に聞きますよ。今の藤井さんの答弁だと、カーナビを配達に使う、それから、それこそ市民活動に使う、同窓会に使う、町内会に使う、いっぱいいますよ、そういう人。それから、携帯電話のナビゲーション。それで扱い事業者で、この法案の仕切りで主務大臣がいて全部監督されますよというのは、事前に告知しなきゃいけないんじゃないですか、商品を買っていただく前に。むしろ、こういうことで業界の成長を妨げるという心配はないですか。片山大臣。
片山国務大臣 御指名をいただいて光栄なんですが、これは法律の所管の解釈に係る問題ですから、もう個人的な意見を言う場でないと思いますので、御遠慮いたします。
保坂委員 では、藤井審議官に確認しますけれども、この取扱事業者の定義は「データベース等」ですよね。データベース等の件数は約五千件と言っていますけれども、端末を使ってそれこそ何十万件あるいは何百万件というデータにアクセスして、それを事業の用に供するといったら事業者になるんですね。なるんだとしたら、かなりこれは広範な、国民すべてを対象とした法案だということで間違いないですか。そういう使い方をしても、助言や指導監督等が出てくるというふうに本当に考えていいんですか。
藤井政府参考人 御指摘のケースというのは、今いろいろコンピューターというのは分散処理とかなされていまして、一つのデータベースで構築されている場合だけじゃなしに、全体としてのシステムとしてデータベースを構築している場合があります。要は、それらのデータベースの単位のとらえ方の問題だろうと思っていますけれども、それは私どもとしては、例えば細切れにすれば五千人を崩れるというような形のことを許すつもりはございませんので、やはり一体としてのシステムとしてそのデータベースが構築されているかどうかという判断でいきたいと思っております。
 あと、カーナビの件なんでございますが、答弁の趣旨を変えるつもりはなくて、むしろ、あらゆるコンピューターファイルというのは識別可能であり、それで機械処理されていて、しかも、大量に蓄積されているということであれば、それはこのIT社会での個人の人格とか財産権に対する危険性というのは変わらないという考え方でございますので、媒体とか使われ方は、それはもちろん大事なんですけれども、そこはそういう考え方で整理しているということでございます。
保坂委員 それでは、担当大臣、今の答弁、間違いないですか。カーナビ、携帯電話によるナビ、これも個人情報取扱事業者である、こういうことですね。どうぞ。
細田国務大臣 新しい利用形態の問題でもありますので、ちょっと検討します。(保坂委員「いや、だって言っているじゃないですか」と呼ぶ)しかし、いろいろな利用形態があると思いますので、私もまだ十分勉強しておりませんので、これはよく勉強いたして、どういうケースは当たるということを後ほど申し上げます。
保坂委員 これは委員長にお願いしますけれども、時間終了で終わりますけれども、これは今、だって明確に答弁しているんですから、該当しますと言って。該当しますということを、そうですねと言って、片山大臣はこれは所管じゃないということで、業界を預かる側としてどうかと私、聞いたんですけれども、検討しますと言っているので、これはもう重大事項ですから、ぜひ統一した見解を求めたいと思います。
村井委員長 承りました。よく検討をいたさせます。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後六時四分散会


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