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第4号 平成15年4月16日(水曜日)

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平成十五年四月十六日(水曜日)
    午後一時開議
 出席委員
   委員長 村井  仁君
   理事 逢沢 一郎君 理事 砂田 圭佑君
   理事 蓮実  進君 理事 松下 忠洋君
   理事 伊藤 忠治君 理事 細野 豪志君
   理事 漆原 良夫君 理事 東  祥三君
      石田 真敏君    岩永 峯一君
      大村 秀章君    金子 恭之君
      上川 陽子君    亀井 久興君
      北村 誠吾君    滝   実君
      竹下  亘君    橘 康太郎君
      谷田 武彦君    谷本 龍哉君
      福井  照君    星野 行男君
      松浪 健太君    松野 博一君
      宮澤 洋一君   吉田六左エ門君
      石毛えい子君    枝野 幸男君
      後藤  斎君    今野  東君
      近藤 昭一君    島   聡君
      平岡 秀夫君    山内  功君
      山田 敏雅君    横路 孝弘君
      西  博義君    桝屋 敬悟君
      黄川田 徹君    西村 眞悟君
      春名 直章君    吉井 英勝君
      阿部 知子君    北川れん子君
      保坂 展人君    山谷えり子君
    …………………………………
   総務大臣         片山虎之助君
   国務大臣
   (内閣官房長官)     福田 康夫君
   国務大臣         細田 博之君
   内閣府副大臣       米田 建三君
   厚生労働副大臣      木村 義雄君
   内閣府大臣政務官     大村 秀章君
   総務大臣政務官      岩永 峯一君
   総務大臣政務官     吉田六左エ門君
   政府参考人
   (内閣官房内閣審議官)  藤井 昭夫君
   政府参考人
   (総務省行政管理局長)  松田 隆利君
   政府参考人
   (外務省大臣官房長)   北島 信一君
   衆議院調査局個人情報の保
   護に関する特別調査室長  小菅 修一君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月十六日
 辞任         補欠選任
  北村 誠吾君     上川 陽子君
  大畠 章宏君     枝野 幸男君
  中村 哲治君     近藤 昭一君
  保坂 展人君     阿部 知子君
  江崎洋一郎君     山谷えり子君
同日
 辞任         補欠選任
  上川 陽子君     北村 誠吾君
  枝野 幸男君     大畠 章宏君
  近藤 昭一君     山田 敏雅君
  阿部 知子君     保坂 展人君
同日
 辞任         補欠選任
  山田 敏雅君     中村 哲治君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 個人情報の保護に関する法律案(内閣提出第七一号)
 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案(内閣提出第七二号)
 独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律案(内閣提出第七三号)
 情報公開・個人情報保護審査会設置法案(内閣提出第七四号)
 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第七五号)
 個人情報の保護に関する法律案(枝野幸男君外八名提出、衆法第一〇号)
 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案(枝野幸男君外八名提出、衆法第一一号)
 独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律案(枝野幸男君外八名提出、衆法第一二号)
 情報公開・個人情報保護審査会設置法案(枝野幸男君外八名提出、衆法第一三号)


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     ――――◇―――――
村井委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、個人情報の保護に関する法律案、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案、独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律案、情報公開・個人情報保護審査会設置法案、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案及び枝野幸男君外八名提出、個人情報の保護に関する法律案、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案、独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律案、情報公開・個人情報保護審査会設置法案の各案を一括して議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 各案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官藤井昭夫君、総務省行政管理局長松田隆利君及び外務省大臣官房長北島信一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
村井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
村井委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。枝野幸男君。
枝野委員 民主党の枝野でございます。
 官房長官においでをいただきましたので、きのう官房長官いらっしゃらなかったので突っ込めなかった部分について、順次お尋ねをしていきたいというふうに思います。
 まず、行政機関の個人情報保護に関する部分でございますが、きのうも申し上げましたとおり、昨年のこの法案の審議が途中でとまってしまいましたのは、いわゆる防衛庁リスト問題に対してこの政府案が対応できるのかどうかということでありました。出し直してこられたので、当然のことながら、今度の法案では、防衛庁リスト問題のような事件が起こらないように、起こった場合にはきちっとした対処ができるようにという中身になっているのかなと思いましたら、残念ながら、政府案ではああした案件に対して罰則を科するというようなことはできない、そんな内容になっています。
 この経緯に当たりまして、これは一方では、防衛庁のリスト問題が具体的にどういう事実関係であり、それに対して防衛庁としてどういう行政的な措置をとり、あるいは、これは情報公開法の施行に絡んでの話でありますので、その情報公開法に対する周知徹底をどうするのか、あるいは個人情報を保護するという観点からどうするのか、内閣官房としてはどのような調整を行ってこられたのか、官房長官にお尋ねします。
片山国務大臣 行政機関個人情報保護法も、まだ保護法案ですね、これも情報公開法も私どもの方の所管でございますので私が答えさせていただきますが、昨日も一部御答弁いたしましたけれども、この法案を策定する過程において、総務省が、全省庁集めまして連絡会議を開催の上、個別の法令協議を行い、内閣官房、防衛庁を含め、各省庁と十分調整を行った上で提案しているものでございます。
 防衛庁の事案は現行法制で対応いたしましたので、防衛庁の責任において、十分調査の上、処分を行っております。
枝野委員 私は、内閣官房としてどういう調整をされたんですかとお尋ねしているんです。
福田国務大臣 一般論として申し上げれば、行政府内の最高かつ最終調整というのは内閣官房で行います。しかし、今回は片山大臣の調整で十分行ってまいった次第でございます。
枝野委員 官房長官もあのとき委員会室にいらしたかどうかは私も記憶がありませんが、昨年の、主に私と総務大臣との内閣委員会でのやりとりというのは十分御承知であったというふうに思いますし、それから、防衛庁リスト問題が大変重大かつ深刻な問題として、メディア、世論も含めて大きく取り上げられていたことも当然、官房長官は御存じであったと思います。
 当然のことながら、こうした問題に対して内閣全体として調整を図る、特に、防衛庁リスト問題がどのような原因で生じたのかということは基本的には防衛庁の中の問題でしょうし、一方では、この法案は総務省の問題でしょうし、そこのところを、まさに高度な政治的な問題も含めて、官房として扱うに値する問題だと判断されなかったんでしょうか。
福田国務大臣 一般論として言えば先ほどの答弁でございますけれども、今回の法案の主務大臣、これは総務大臣でございます。
 この法案を策定する過程において、総務省が、全省庁による連絡会議を開催の上、法令協議を行い、内閣官房、防衛庁を含め、各省庁と十分調整を行った上で提案したもの、こういうように承知しております。
枝野委員 ですから、その程度の問題だと。防衛庁リスト問題も行政機関の個人情報保護法案もその程度の問題なんですね。
福田国務大臣 その程度の問題かどうかということは別として、十分なる調整は行った上で提案はしております。
枝野委員 外務大臣のかわりのようなことをされる暇はあるようですが、本来の内閣官房としての業務については、こういう重要な案件も人任せで、何か総理に似てこられたようですが。
 きのうも総務大臣は、防衛庁リスト問題についてでしょうか、周知徹底が十分なされていなかったというような趣旨のことを答弁されました。官房としてもそういう認識なんですか。
片山国務大臣 官房としての答弁は後ほど官房長官からあると思いますが、周知徹底の努力はしましたけれども、受け取る側のあれもありますので、そこのところは末端までしっかりと認識していただいたかどうかについては、我々ももう少し努力が足りなかったのかな、こういうふうに思っておりまして、以降、さらに周知徹底の努力を会議や通知やその他研修等で行っておりまして、今後とも、新法ができるわけでありますので、さらに周知徹底を努力してまいりたいと思っております。
福田国務大臣 今担当大臣から答弁されたとおりでありますけれども、担当大臣の発言というものは、これは重いものである、このように認識しております。
枝野委員 周知徹底がなされていなかったというのは、何について周知徹底がされていなかったんですか。これは総務大臣で結構です。
片山国務大臣 とにかく必要最小限度の扱いをする、個人情報については、目的に従って。目的外利用的なことについては、これは厳重にチェックしていく、こういうことでございまして、関係のないようなところが知り得るような状況をつくるということはよろしくない。こういうことについて、現行法の問題ではありますけれども、現行法を含めて、新法はそれを発展的に解消というのか大きくするものでございますから、その辺の個人情報保護の必要性、重要性、そのあり方についてさらに周知をしていきたい、こういうことであります。
枝野委員 総務大臣は、防衛庁の職員に対して周知徹底する権限をお持ちなんですか、内閣法や国家行政組織法上。
片山国務大臣 防衛庁については、行政機関の長である防衛庁長官に責任がございますが、防衛庁長官について、法律の所管大臣としていろいろなことをやれる仕組みになっておりますから、そういうことで我々は要請をするわけであります。
枝野委員 ほかの法案の審議に御迷惑を余りかけたくないと思ったので、防衛庁長官は必要ないと思ったんですが、そういう御答弁なら、防衛庁長官に来ていただいて、どういうふうな周知徹底ができなかったのか、そういうことをちゃんと聞かないと先へ進めないと思うんですが。
村井委員長 枝野委員に伺いますが、それは防衛庁長官の出席を求めるという御趣旨ですか。(枝野委員「そうです」と呼ぶ)それであれば、委員長において、別途理事会でお諮りいたします。
 枝野君。
枝野委員 官房としてはどういう把握をしているんですか。つまり、横並びの省庁ですから、総務省、総務大臣と防衛庁長官との関係で、防衛庁長官が庁内でどういう把握をし、どういう調査をしということは、総合調整である官房長官のところには連絡が入り、把握をする責任も権限もあると思うんですが、官房長官として、この防衛庁のリスト問題はどういう部分がどういうふうに不徹底だから生じたのか、どういう認識ですか。
福田国務大臣 これは国家行政組織法第二条第二項にあるんですけれども、「国の行政機関は、内閣の統轄の下に、その政策について、自ら評価し、企画及び立案を行い、並びに国の行政機関相互の調整を図るとともに、その相互の連絡を図り、すべて、一体として、行政機能を発揮するようにしなければならない。」こういうふうなことでありまして、総務大臣としてその任に当たっておるわけであります。
枝野委員 では、具体的に、本当に総務大臣がされていたんだったら、防衛庁の中のどういう部分が不十分で不徹底だったんですか。お答えください、防衛庁のことについて。
片山国務大臣 それは先ほど答弁いたしましたように、防衛庁の中における周知徹底は、それはそれぞれの大臣の責任でやっていただく。我々の方は、周知徹底をするように要請をする立場でございますし、あと場合によっては、報告をとるとか、いろいろなことについての調査をするとか、そういうことはあるわけでありますし、意見を言うとか。それは二次的に我々がやるわけでありますが、当面はそれぞれの行政機関の長であります、法律の建前も。
枝野委員 今、官房長官が、連絡その他の権限が総務大臣にあるんだとおっしゃったから、どういう連絡を受けているんですか、防衛庁長官から。防衛庁リスト問題が、どういう周知徹底が不行き届きでこんなことが起こったのか。当然、総務大臣のところには報告が上がって、連絡が上がっていないと、上がっているということで自分じゃないと今お逃げになったんだから。総務大臣、いっているんでしょう。
片山国務大臣 私どもの方では、何度も言いますけれども、各省庁に対して、防衛庁を含めて、周知徹底方のための会議だとか打ち合わせだとか通知だとか報告徴収だとか、そういうことをやったわけでありまして、具体にそれぞれの、どういう方策をとるかは各省庁においての御判断でやっていただく、こういうことでございまして、細部まで私が知り得る立場にはありません。
枝野委員 ちなみに聞きますが、行政機関のこの法律ができ上がった、何らかの形でもし成立をした場合、その後も同じ構造ですね。
片山国務大臣 法律が通りますれば、もう通る前からいろいろな打ち合わせや会議をやっておりますけれども、さらに徹底してまいりたいわけでありますし、いろいろな報告をもらうわけでありますから、今度の新法に基づいて。そういうことはしっかりとやっていきます。
枝野委員 だけれども、実際に具体的にやるのは、各役所の中の所管大臣がされるんで、各所管大臣がどのように各省内で周知徹底を図るのか、片山大臣に聞いてもわからないということは、これは全大臣そろっていただかないと審議できないということをみずからお認めになっているんですよ。
片山国務大臣 それは、賢明な枝野委員よく御承知のように、内閣はそれぞれの所管大臣が責任を持って行うわけでありまして、私の立場は、新しい法律に基づいていろいろな調整をやる、あるいは、場合によってはいろいろなチェックをさせていただく、こういうことでございまして、そういう立場でやっていく。防衛庁のことまで総務大臣が全部やる、何とか省まで全部入っていってやる、そういうことには今の内閣制度でなっていないんですよ。
 私は、所管大臣としては、連絡や調整や、あるいは不備があればそのチェックなんということはやらせていただく、こういうことであります。
枝野委員 だから、実際にこれは法律がつくられても、現に、今までも似たようなコンピューター関係の法律があって、そういう法律がありながら防衛庁には周知徹底されていない。これは大臣がきのうおっしゃったんですからね。周知徹底されていなくてああいう結果を招いてしまった。
 この法律をつくっても周知徹底されなければ、これで保護すべき国民の権利というものが保護されないことになるかもしれない。では、どんなふうに周知徹底するんですかといったときには、当然のことながら、どなたか周知徹底をする責任者の方にお答えいただかなきゃならないけれども、それは私は片山大臣か官房長官だと思っていました。
 でも、そうなんだとすれば、過去の件についてなぜ周知徹底されなかったのか。具体的なことについてどちらかにはお答えいただかないと、防衛庁リスト問題の反省を踏まえて、では、これはどうしてそういうことが起こったのか、なぜ周知徹底できなかったのか、そのことをだれかに答えていただかなければ、それは前へ進みようがないじゃないですか。
片山国務大臣 私は、周知徹底されてなかったとは言っていないです。周知徹底が不十分であったと。だから、防衛庁……(枝野委員「一緒だ」と呼ぶ)なかったと不十分とは違いますよ。だから、それについては、例えば海幕三佐については懲戒処分が行われたわけでありますから、そういうことが行われないのが、それはベターなんですよ。しかし、結果としてああいうことが、いろいろな事情で、本人の不注意か何かわかりませんけれども起こりましたので、それについては周知徹底の程度が不十分であったのかな、こういうことを私自身は思っておるわけでありまして、それは、防衛庁は防衛庁で調査した結果の判断で、御承知のような懲戒処分をしたわけでありますから、そういう意味では、その周知徹底の不十分さについて防衛庁としての責任はとったわけであります。
枝野委員 だけれども、周知徹底の問題だとおっしゃったのは大臣なんですからね。防衛庁長官が、どこかで周知徹底が行き届かなかったんでとおっしゃったんじゃないですからね。
 周知徹底が行き届かなかったんでと防衛庁長官も御認識で、内閣として御認識ならば、処分の相手が違うじゃないか、きのう申し上げたとおりですよね。そんな現場の、一番末端の、いわゆるトカゲのしっぽ切りみたいな、そういう処分じゃなくて、周知徹底を防衛庁内でするべき責任者こそが処分を受けるべきなのであって、それはどういう認識なんですか。それは防衛庁とどういう話をしているんですか。その話を聞いているんです。
 しかも、こんな大きな問題なんだから、主務大臣や所管大臣限りの話じゃないですよ。内閣官房として総合調整して持ってくる話ですよ。官房長官、どうですか。
片山国務大臣 いや、それは、言いましたように、これは隅々の、すべての人が十二分に法律やいろいろな仕組みを了解して、認識してやるということができれば一番いいんですよ。だから、そのためにいろいろな手だてはとりますけれども、今回の場合には、御承知のような海幕三佐の事案が起きたので、それは大変遺憾であり、周知が不足したのかなと考えておるわけでありまして、しかし、それは行為をした人について、行為責任を国家公務員法で防衛庁はとらせたわけでありまして、内部についてのいろいろな反省は、あるいはそれは防衛庁として行ったと私は聞いております。
枝野委員 今、「かな」とかおっしゃっていますが、言葉の揚げ足取りをするつもりはありませんが、周知徹底ができなかったせいで防衛庁リスト問題のような問題が起こった。それが不十分だったせいで起こったのか、それとも周知徹底はそれなりになされていたのに本人の問題として起こったのか、それとも組織全体の体質として、周知徹底されていても、こんなものいいやと思っていたのか、それによって全然やるべき対応が違うわけですよ、組むべき法律も違うわけですよ、対応するために。そのことを総務大臣が認識していないということを今お認めになったんですよ。全然総合調整ができていない、あの事件を踏まえていないということを自分でお認めになっているんですよ、今のは。
片山国務大臣 国家公務員法に基づく懲戒権の発動は懲戒権者がやるんですよ。だから、懲戒処分に該当する事由があるんなら、懲戒権者が十分調査の上やったんで、あの結果は、行為をした海幕三佐に責任があるという懲戒処分だと理解しております。
枝野委員 多分、頭のいい大臣のことだから、わざとずらしているんでしょうが、私は、処分どうこうという話をしているんじゃないんです。
 あの事件が発覚をして、発覚をした上で新しい法律に出し直してくるんですから、当然のことながら、あのような事件が二度と起こらないようにと、それなりの配慮がなされたのは当然でしょう。そうだとしたときに、なぜあんな事件が起こったのかということは、処分をどうこうするか、それは防衛庁長官の問題ですよ。だけれども、どうしてああいう事件が起こったのかということを、少なくとも内閣としてきちっと共通認識を持って、そして法案を出してこなければ、あの事件の教訓を生かしたことにならないですね。
 したがって、それは官房長官がきちんと把握をした上で、総務大臣と調整をされて、ああいう事件が起こらないようにとされるべきだと私は思いますが、それをお二人の間で押しつけ合って、どちらがどうでも構いませんが、それは総務大臣が、いや、それは防衛庁長官が自分で調べて、責任を持って処分したんだからと。処分の問題はそうでしょう。だけれども、それに基づいて、どういう事実関係だったのか、どうしてあんなことが起こったのかということを大臣が大臣として認識をしていなければ、それを教訓にしてこの法案を出してきたということにはならないですね。
片山国務大臣 防衛庁の事案だけじゃないんです。防衛庁の事案も一つありますけれども、万般の、前の法律についての国会の御議論や、あるいは世論というんでしょうか、そういうことを含めまして、すべてのことを総合勘案して、与党とも調整の上に今回の法律を出したわけでありまして、もともと、前の法律も現法に比べると相当進んでいる、それをさらに処罰規定を追加することによって万全を期した、こういうことでございます。
枝野委員 わかっておっしゃられているんだと思うので、もう本当に、半分腹が立つのですが、その罰則が、今回の防衛庁リスト問題のようなケースは対象にならない、そういう中身になっているわけですよ。
 そういうことについて判断される以上は、なぜ防衛庁リスト問題が生じたのかということについて、もちろんほかの理由もあって出し直したのでしょうが、そのことについてもきちんと内閣として把握をして、その上で、これこれこういう理由であの問題はこう起きた、そういうふうに少なくとも認識していると。官房長官から聞いたのか、調整を受けて聞いたのか、防衛庁長官と直接やったのかは、それはいろいろあるかもしれませんが、そこはきちんと大臣として把握をしていなければおかしい。
 もし、それを把握しないのなら、できないのなら、それは、法律をつくった後の執行の問題だから各大臣だというのだったら、実際にこの法律を執行するのは各大臣なんだから、関係する全省庁大臣に出てきていただかないと、あなたの役所はどうやって周知徹底するんですかと聞けないじゃないですか。
片山国務大臣 今回の防衛庁の事案は、今回の新法の罰則規定は、五十三条、五十四条、五十五条に追加いたしましたよね。そのいずれも、事実認定されれば罰則の対象になり得るのですよ。ただ、最終的な事実認定は司法がやるわけですから、厳重ないろいろな、刑罰ですから、犯罪ということで刑罰になるわけですから、そういう意味では捜査というのでしょうか、単なる調査でなくて、そういうことの上で事実認定されれば、これは刑罰の対象になる。だから、こういうことは相当な抑止効果があるということを私は昨日も申し上げました。
 例えば五十三条でいいますと、個人の秘密に属する事項について、正当な理由がなく他に提供するということが刑罰の対象になるわけです。しかも、それは過失でなくて故意でなきゃいかぬ。だから、正当な理由があったかないかの事実認定、個人の秘密に属する事項であったかどうかの事実認定、故意か過失かの事実認定、これは、それこそ刑事当局が、司法が法と証拠に基づいてしっかり捜査をして、その結果、事実認定できれば罰則の対象になる、こういうことであります。
枝野委員 その答弁はきのうもお聞きをしたのですが、あの事件に今さらこの法律を適用して処罰しろだなんて言っていないんですよ。
 あのような事件の性質は、少なくとも行政的には把握をしているわけですよね。行政的に把握をして、それで懲戒処分をしているわけですよ。その行政的に把握をした事実に基づいて、これは周知徹底が不十分だったのか、本人の個性の問題なのか、組織的な体質の問題なのか、そういうことを判断して、その上であの手のところまで、つまり、我々の案と政府案との一番の違いは、その職務の用以外の用に供する目的というものの有無ですね、そこのところで広く処罰の対象にしないと我々はいけないと思ったわけですよ、あの防衛庁リスト問題で。
 そこのところについては、少なくとも、これこれこういう事実関係で、行政的にはこういう事実関係で把握をしています、原因はこういうところにあります、したがって、こういうところの処置をこうすれば処罰をしなくても、つまり、そういう処罰を広げなくてもこれは抑止できます、そういうことの御答弁がなければ、あれを教訓にしたということにはならないと思うんですが、官房長官にお尋ねします。
 今のようなことについて官房長官は調整をしたのですか、していないのですか。事実関係です。いや、事実関係です。官房長官の認識の問題、事実関係です。
片山国務大臣 官房長官の御答弁があるかもしれませんが、今は五十五条の話ですね。五十三、五十四は野党案も政府案も同じですからね。五十五条は、私どもの方は、専ら自己の職務の用以外の用に、こういうことでございまして、そこが皆さんの方の野党案は落ちている。
 そこで、刑罰というものは何でもかければいいというものじゃないんですね、これは釈迦に説法ですけれども。当罰性がなきゃいかぬ。
 そこで、熱心な余り、自分の職務の範囲のことについて行き過ぎた、こういうものについては刑罰にすることが適当かどうかという議論があるものですから懲戒処分にしたわけでありまして、したがって、今の防衛庁の事案につきましても、海幕三佐も懲戒処分の対象になりましたが、御承知のように、官房長も文書課長も総務課長も懲戒処分の対象になっているわけであります。
枝野委員 いいですか。聞かれていないことに答えていただきたくないし、今のお話はきのうもお聞きをしました。
 処罰に値する行為なのかどうかということというのは、それは議論があります。前提として、当然のことながら、あれだけ問題になった防衛庁リスト問題について、これはこういう原因で、こういうところに根拠があって、こういうことになったんだ、その事実の認識があった上で、だから、そこまでは処罰をする必要はなくて、懲戒処分で足りますからそこは対象に含めませんでしたということになるのか。それとも、やはりそこまで処罰の対象にしておかないと抑止できないということになるのか。
 いわゆる立法事実の問題としてどこまで把握されているのですかということについて、総務大臣はきちんと把握されていない。それは、防衛庁が防衛庁の責任で事実関係を調査して処分をされた。
 それで、事実関係として、官房長官は、例えば、防衛庁がどういう理由に基づいて、どういう調査結果に基づいてどういう処分をしたのか、そういうことについて詳細な報告は受けているのですか、受けていないのですか。官房長官の認識の問題です。
福田国務大臣 そもそも、内閣におきましては、政策ごとに担当大臣というのを決めているわけでございます。この個人情報保護法案については、細田IT担当大臣または片山総務大臣が法案の担当大臣でありまして、この両大臣が内閣を代表して答弁等に当たっておるわけでございます。
 ですから、私の方に調整があったのかどうかというふうにお尋ねでございますけれども、これは、必要な調整はもちろんいたしますけれども、しかし、担当大臣はそういうことで決まっておりますから、担当大臣が防衛庁とよく相談をして諸事決めていくもの、このように承知しておるわけでございます。
枝野委員 その防衛庁長官から、少なくとも官房長官はしっかりとした認識の連絡を受けていないということは、この間の議論で、きょうの議論でも明らかになったじゃないですか。調整が不十分だった。少なくとも、この法案の立法事実となるべき今回の防衛庁リスト問題がどういう理由でああいうことになったのか、周知徹底が不十分であったようだみたいなことはおっしゃっていますが、具体的な認識を大臣はお持ちにならないできのうから答弁しています。これは議事録を全部見ていただければ改めて確認できます。
 そういう事実認識しかしていない総務大臣が、防衛庁とはちゃんと調整しました、それで出してきましたということにはならないので、当然、現場での調整が不十分だったら官房長官が調整をしていただくしかないじゃないですか。
片山国務大臣 私どもの方は、この事件が表ざたになってから、調査をするようにも防衛庁に話しましたし、防衛庁もしっかり調査して、その報告は受けておりますし、その結果に基づきこういう懲戒処分を行いたい、それもすべて相談を受けております。その結果、我々としても、そういう処分が妥当ではなかろうか、こういうことを申し上げましたが、あくまでも処分をやるのは法律に基づいて防衛庁長官でありますから。今の内閣制度はそういう仕組みになっているので、我々としては、法律に基づいて、現行法に基づいて、現行法に基づく限りのいろいろな関与はいたしたわけであります。何にもしなかったわけじゃ全くありません。
枝野委員 だけれども、結果的になぜあんな事件が起こったのかということについては、言葉の揚げ足取りをするつもりはありませんから、周知徹底が不十分ということの意味を細かくは聞きませんけれども、きのう来の御答弁を議事録ができたらきちっと御本人にも読んでいただければわかると思いますが、少なくとも、そのことがどういう原因だったのかということについては、あいまいな御答弁しか一貫してしてきていないわけです。その事実認識についてあいまいなままで今度の法案では対応できますということの説明には全くならないわけであります。
 そろそろ時間のようなんですが、確認します。
 この法律ができ上がった後も、各行政の内部で、違法なとき、つまり処罰しなきゃならないような問題のときは、これは司法が動くでしょう。警察、検察が動くでしょう。そこに至らないけれどもこの法律に反するような行為が疑われた場合、これは全部、やはり主務大臣、所管の大臣がそれぞれの役所のことについてやる、それで間違いないですね。総務大臣がそこについて調査をしたり、ほかの役所について調査をしたり、あるいは処分をしたり、そういう権限はないですね。確認いたします。
片山国務大臣 現行法における権限をほぼ引き継いでおりまして、例えば、個人情報ファイル簿のいろいろな項目については報告を受けるとか、それについては我々の方がいろいろな調査ができるとか、意見を言えるとか、いろいろな権限がありますから、それはそれに基づいてやっていきたい、こういうふうに思いますし、今度は処罰規定が入りましたので、自分の仕事の範囲で犯罪が起こったと思料すれば、これは告発の義務が生ずるわけでありまして、そういうことでは現行法よりは相当変わってくる、こういうふうに思っております。
枝野委員 私がお尋ねしているのは、防衛庁のリスト問題についても周知徹底が不十分だったとすれば、それは、防衛庁長官、防衛庁の問題なのか、それとも総務省の問題なのか。だけれども、今の法体系の中では、それは各所管大臣の責任になるんですよね。それは、総務大臣としては各大臣には言うけれども、その大臣が各省内を徹底するかどうかというのが今の法体系ですよね。私はその内閣法自体変えるべきだと思っていますが。そういう体系の中で、では、各省庁はこの法律をどういうふうに省内に徹底をさせていくのか。
 実は、同じことは個人情報保護法の方にも言えるわけで、これも民間に対する監督が各主務大臣ですから、細田大臣が、この内閣が続いていたとしても、経済産業大臣に対して何か言えはするんでしょうけれども、具体的に現場の人間に周知徹底する権限を持たないわけですよね。そうすると、それは各役所でどういうふうに周知徹底をさせるのかということについては、各役所の大臣に来ていただいて、あなたの役所どうするんですかと聞いていくか、全体についての総合調整をされる福田官房長官に来ていただいて、内閣官房の責任で全体として総合調整こうしますとおっしゃっていただくかだと思います。したがって、そのどちらかに出てきていただきながら審議しないと、具体的にどう執行されていくのかという審議はできない。
 なお、さらに加えて、今の総務大臣の御答弁では納得できませんので、直接、防衛庁リスト問題がどういう原因で起こったのかということについてどういう認識をされているのか、防衛庁長官の出席を求めたいと思いますので、御配慮ください。
 終わります。
村井委員長 次に、石毛えい子君。
石毛委員 昨日、私は、個人情報保護法制の体系に関しまして細田IT大臣に質問をいたしましたが、本来、この質問は官房長官にということで要請をさせていただいていた質問でございます。また、きのうの細田大臣の御答弁でもまだ私としては十分に納得し得ないというところもございますので、改めてきょうは、官房長官に御出席をいただきまして、この点から御質問をさせていただきたいと思います。
 まず、百五十一国会で個人情報保護法案が提出されました際に、事務方から個人情報保護法制の体系イメージというものが示されました。そのイメージに関しましては、時間の都合もありますから繰り返しませんが、この中で個別法の制定ということが明瞭に示されております。
 個別法か包括法かということでは、表現の自由とかかわりまして、別の観点から、個別法こそ先行すべきという強い御主張、御意見もあるわけですけれども、私は、まず官房長官に、個別法の制定に関して内閣としてどのような方針、プログラムをお持ちかということをお尋ねしたいと思います。
細田国務大臣 まず簡潔に私からお答え申し上げて、後ほど官房長官にお願いしたいと思っております。
 各府省におきましては、法六条三項の趣旨を受けまして、所管する個別分野における個人情報の取り扱いの実態等も踏まえまして、幅広く追加的な措置を検討する必要があると思います。
 何分、一般法制では、大規模な、例えば五千人以上ということで切るような形での個人情報の保護でございますから、先般、看護師等について新法で特別の立法が行われましたように、これは、たとえ一件、二件であっても、個別法においてしっかりと監督等をする必要があるような分野については個別に検討をすべきである、この点について各省との連携を強化してまいりたいと思っております。
石毛委員 昨日の細田大臣の御答弁では、議事録を確認すれば間違いないかと思いますけれども、きょうの御答弁とトーンが違っておりまして、今国会に提案されました個人情報の保護に関する法律案は、事業者への勧告はあらゆる分野に及ぶので足りているのではないか、足りているという表現はお使いにはなりませんでしたけれども、そういう発言を一方でなさり、一方では、医療分野、金融、信用等々をお挙げになられて、電気通信についてはガイドラインがあると御答弁になりました。
 それから、ただいまお触れになりました保助看法に新しく守秘義務を規定したということについてもお触れになりましたけれども、追加的措置が必要というような明確な御答弁はなく、むしろ私は、事業者への勧告はあらゆる事業へ及ぶのでという、ある種、二重答弁であったように伺っているわけですけれども、その点、もう一度確認させてください。
細田国務大臣 きょうは昨日の御質問の補足的な御質問と承知しておりますので、前段はきのうお答えした関係でちょっと省略させていただきましたが、もちろん、この個人情報保護法自体は全般的にあらゆる分野に及ぶ法制である、しかし、この法律に基づく対象となる場合には、きっちりした個人情報保護のための主務大臣の業務を行うわけでございますが、それだけではどうしても及ばないケースも今後とも考えられるわけでございます。
 極めて個人の秘密性の高い情報を取り扱う組織等もございますので、そういった場合には補足的に個別法で考えていただかなければならないということも申し上げましたので、ちょっとそういう意味で前段を省略いたしましたが、変わっておりません。
石毛委員 それでは、改めて細田大臣に御確認いただきたいと思いますけれども、その個別法とは、具体的に現段階でお考えになられている分野ではどのような分野がおありになるのかということ、それから、きのう、具体的に各省庁とどのような協議をされているかということ、あるいは、いつまでにそうした検討をされるのか、着手されるのか、あるいは法制定されるのかというようなことをお尋ねいたしました。その点も、もう一度明瞭に御確認ください。
細田国務大臣 これまで、社会的な事象としましてそれぞれに個人情報は取り扱われてきておりますから、例えば病院、医療機関においても、長い間、カルテその他の情報が処理されてきておりまして、医師には個別に義務がかかっておったのが、やはり保健師、看護師または准看護師の場合も、業務上知り得た秘密を漏らしてはならないというふうにそれぞれの事例がございまして、必要性があるものをやはり法改正しようではないかということで、社会的な要請を反映いたしまして立法が行われたものと見ております。
 例えば、金融分野においても、やはりいろいろな問題があるということで、今、金融審議会において金融分野における個人情報の取り扱いについて検討しておりますし、電気通信分野におきましては、電気通信事業における個人情報保護に関するガイドラインを運用するとともに、本年二月から研究会を開催して、必要な措置のあり方についても御議論をいただいているところでございます。
 きのうは、石毛先生は、教育の分野等でも、ほかの分野でも必要なものがあるのではないかという御示唆もいただきましたが、どういう事例があって、これはいけないという事例が出ましたら、やはり個別に、なるべく早期に各省と連携しながら対応していくべきものだと考えております。
石毛委員 私は、教育では、例えば偏差値の問題ですとか、それから不登校の問題ですとか、個人の情報としては極めてセンシティブな情報はたくさんあるというふうに認識をしております。そういう意味で、私の方からは教育ということも指摘をさせていただきました。
 協議は進行中の部分もあれば進行中ではない部分もあると思いますけれども、私、ちょっと、今細田大臣の御答弁は少しずれているのではないか。保助看法では、確かに保健師、看護師、助産師が、職能の専門性からいって、患者さんないしはクライアントといいますか利用者に関して知り得た情報を守らなければいけない守秘義務というのがあるというのは、これは当然のことだと思います。
 個人情報保護法は、情報を取得するに際して相手にきちっと説明をして同意を求めるとか、大変私は不十分だと思いますけれども、政府の法案でも適正な取得というようなことを定めているわけですから、保助看法ですとか、それから、カルテ開示に関する医師の今持っている守秘義務というような責務では足りない。それが個人情報保護法に匹敵するような内容を備えているというふうには到底言えないわけで、やはり新しい内容の法律が必要だというふうに思いますので、その点、大臣はどういうふうにお考えになりますか。もう一度御答弁をお願いします。
細田国務大臣 個人情報の中には、おっしゃいましたように、病院等で取り扱っておったり、あるいは福祉施設、教育機関その他で取り扱う情報のように、一つ一つが重要な個人情報である。ですから、今この個人情報保護法で御審議いただいておりますのは、あくまでも大量の情報をいわば一括して、あるいはその中から選択して漏らすような事例があることに対処する面もあるわけでございますが、それだけでは足りない、今委員が御指摘になったようなケースというのはいろいろあると思っております。
 しかも、病院等ではだんだん電子化が進んでおりまして、あらゆるレセプトですとかカルテですとかどんどん電子化されると、いろいろな形での情報保護が必要になるというふうに考えております。
石毛委員 必要性があるという御指摘を大臣がなさったことに関してはわかりました。
 それで、いつごろまでにそうした協議を調えていくというふうにお考えになるんでしょうか。
細田国務大臣 あらかじめ何でも網をかぶせて規制するということも大変でございます。もちろん、中には、国家公務員であったり地方公務員であったり、別の規制が当然、独立行政法人等あるわけでございますから、それはそれといたしまして、やはり問題発生ごとに、こういうことは不都合なことがあるじゃないかという提起が行われますたびに、主務大臣と協議をしながら、確かに必要なものは国会にも御審議をいただきまして、何か不当な介入になったり行政機関が強過ぎたりということも避けなければならないと思いますけれども、事案ごとに検討して、より的確な個人情報保護体制、先ほどの三角形の中の個別法での対応も充実していく体系が必要であると思っております。
石毛委員 それで果たして本当によろしいんですか。問題が生じたら、事案ごとに主務大臣の判断によって法案をつくっていくということは、それは第六条の三項をある種、倫理規定として置いたような話でありまして、個人情報保護法制の体系、イメージというふうな中で明瞭に位置づけているというふうには、明確な位置づけだというふうには大臣の御答弁では私には受け取れません。
 ですから、主務大臣が関与するような案件がどれだけの量、蓄積されたらできるのかとか、そういう話に移っていきましたら、いつつくるのか、つくらないのかということに関しては、何と言ったらいいんですか、担保できない御答弁ではないかというふうに今伺いました。
細田国務大臣 そういう御指摘でございますが、例えば教育で、先ほど、内申書ですとか生徒の個別の事情ですとか、そのほかさまざまな家庭の事情も含めた、親との面談の結果だとか、いろいろな情報が多分あるんですね。その情報は、公務員である場合には当然一件たりとも流してはいけないわけでございますが、では、ほかの、私立の学校の場合どうか、あるいは、そこに働く事務員さんがコンピューター処理をしているという場合に、その人までも規制をするのかどうかとか、病院についてもそうでございますが、そういった一つ一つの問題を検討していかなきゃならないわけですが、やはり何といってもそれが百件にならなければいけないというのではなくて、一件でも二件でも社会問題になるような態様で発生すれば、それに対応するというのがまず第一だと思います。
 それから、石毛委員がおっしゃったように、いや、こういう問題は必ず出るからあらかじめ整備するべきではないかという声が高まれば、それはやはり所管省であらかじめ措置することが妥当なケースもあると思っております。
石毛委員 これまでのこの委員会の質疑ではほとんど議論になってこなかったかと思いますけれども、第五十条の適用除外の中で、報道機関について随分、表現の自由を侵害するということで議論になってまいりましたけれども、この適用除外の中で、第一項第三号、「大学その他の学術研究を目的とする機関若しくは団体又はそれらに属する者 学術研究の用に供する目的」というこの第一項第三号がございます。
 これは、学術研究ということですから幅広くとられているわけですけれども、例えば医学、医療です。医学、医療の分野というのは、個人情報にかかわる中身が大変多い分野、ここが適用除外になっているわけですね。適用除外になっているわけですけれども、まさに、例えば医療、医学の分野といいますのは、個人情報の、個人のアイデンティティーとか尊厳性とかということから考えれば大変重要な重みのある情報でして、そこの分野が適用除外になっている以上は、何らかの、例えば医療情報に関する保護法案というようなことをきちっとつくっていかなければ、全体としての個人情報を保護する、基本的人権としての個人の情報を守っていくという意味で陥没しているところがある、そういうふうに認識をしておりますので、ずっとこの問題にはこだわっているわけですけれども、いかがでしょうか。
細田国務大臣 今御指摘の、例えば医療機関と研究機関が一緒になって、医療情報とか疫学情報とか血液のサンプルとか、そういうものを集めて、今どういうふうになっているのかというような情報処理が行われ始めていることは事実でございます。
 病院に行かれますと、患者さんの同意を得て、それぞれの血液のサンプルを研究に使わせてくださいということで、了承を得た人は提供するというような活動も始まっているわけですね。そのことは、やはり日本の医学の発展のために、また日本におけるそれぞれの遺伝子情報や病気の情報を集積するためには大変大事なことではあると思っております。そこの研究を進めることは、また学問の自由という面もありますし、あるいは科学技術の発展、これからの医薬の開発等に資するものであると思っております。
 ただ、そのことが、個人個人の例えば採血した血液がどういう遺伝子を持っておって、この人がどういう病気を持っておってということが人に漏れていくような事態があれば非常に問題であるわけでございますが、今は、それを全体として集積しながらさまざまな分析に使われておるようでございます。
 したがって、この法律の趣旨は、あくまでも大量にサンプル等を集めながら、コンピューター等によって全体の分布や状況を解析するために使われているようなことを前提としておりますが、それがだんだんおかしなことになって、個人情報がすべて流出して、だれがどういう遺伝子を持っておるのだというようなことにつながるようなことになってはいけません。しかし、それは国立の機関であったり医師であったりすれば当然別の規制がかかっておるわけでございますが、今後の大きな問題であることは私は否定はいたしません。
石毛委員 大臣は、例えば血液を採取して、そこから解明する遺伝子の情報が蓄積されていけば先行きはというような、ある種、将来的なスタンスで問題をとらえておられましたけれども、問題はそれ以前の段階で、例えば自分が採血をされて血液を供給するときに、そのことが何に使われていくのか、あるいはその中にどういう情報が含まれているのか、そうしたことをまさに個人情報の主体である自分自身がちゃんと知らされているか、知っているか、そのことに対して納得しているかどうか、そこのところが個人情報の保護という意味では大変重要です。
 自分の情報が一たん、いかに専門家であろうと他者に移譲されていて、その他者がそれを守秘義務にのっとって守っているかどうかというのは次のステップの話でありまして、きのう来問題になっていますように、あくまでも個人情報について、その情報を知り、管理する主体は自分であるということ、とりわけ、学術研究の分野でも医療とか健康に関する情報は非常に重要であって、それに関してきちっとした保護の手だてが法律としてちゃんとしていない以上は、この法案全体の体系を是認することはできないのではないかというのが、私のきのう来の主張したいことであるわけです。
 事実、ずっと過去の個人情報保護法案が形成されてまいりますそこの推移をたどってみますと、九八年でしたでしょうか、推進本部で基本方針が出ているわけですけれども、この基本方針では「個人信用情報や医療情報等、機密性が高く、かつ、漏洩の場合の被害の大きい分野については、法規制等の公的関与が十分検討されるべき」ということでスタートをしております。
 もう繰り返しませんけれども、きょう官房長官においでいただきましたのは、確かに個人情報保護法案は細田大臣の御担当かもしれませんけれども、行政機関、独立行政法人の個人情報保護、そして、今細田大臣との間で交わしました、さまざまな分野に関する個人情報保護法の個別性を含めて、全体とすればこれは内閣としてきちっと統括をしていただかなければならないということで、私は官房長官への御質問ということで提示をさせていただいてきたわけです。
 今の質疑をお聞きいただきまして、官房長官からも御所見をお願いいたします。
福田国務大臣 今国民生活も、あらゆる分野においてコンピューターまたネットワーク、これを利用して大量の個人情報が流通している、こういうようなことでございますので、この個人情報の大量流出によって社会問題化している、こういう事例は、これは特定の業種だけの問題ではない、こういう状況になっておるわけでございます。
 ですから、あらゆる分野を通じまして、個人情報保護のための必要最小限の一般的な法制度を定めるということ、これは必要なことでございます。
 ですから、政府としても、今回提案しております諸法案、また各府省で検討中の個別の保護措置、また地方公共団体の条例等、こういうものが相まって実効的な個人情報の保護が図られる、こういうふうに考えておるところでございます。
石毛委員 恐縮ですけれども、官房長官は各省庁の個別の通知というふうに……。各省庁の個別の、その次にどういうふうに御答弁いただきましたでしょうか。
福田国務大臣 個別の保護措置ということでございます。言い間違えたかどうかちょっとわかりませんけれども、個別の保護措置ですね。各府省で検討中の個別の保護措置、そしてまた各地方公共団体等でつくります条例等、そういうものが相まって有効な、実効のある個人情報保護が図られる、こういうことでございます。
石毛委員 自治体の条例については、それは自治体の権限の方ですからそれでよろしいかというふうに思いますけれども、私は、今官房長官がおっしゃいました個別の保護措置というのは大変納得しかねるところがございます。
 保護措置というのは、いろいろな意味で、各省庁がかなり出しておられるわけで、私も、この委員会の質問の準備のために、厚生労働省で健康情報関係でさまざまなガイドラインや指針を出しておられる、それを全部そろえていただくように依頼しまして、やっとこの直前に届きましたけれども、それだけでも厚みでこれぐらいございます。それを少しめくってみましても、必ずしも、本人に説明をきちっと果たしていくというような点ですとか了解を得るとか、そうしたことが全部に全部明瞭に規定されているわけではございません。
 保護措置といいましても、それはこれまでの段階でつくられてきたわけですから、この法案の第六条にも規定されていますように、個別法は必要なものはきちっとつくるということが必要なことだというふうに私は思います。
 繰り返しになりますけれども、これまでの基本方針等には、高度情報通信社会推進本部決定でも、先ほど申し上げましたように「個人信用情報や医療情報等」という記載がございまして、いつの間にかそれが、ここまで来る過程の中で包括法主体の法案として政府からは出されてきまして、個別法については、今の官房長官の御答弁のように、何か置き去りになっているというふうに言わざるを得ないと私は理解をしているわけですけれども、個別法をつくるということに関しまして、ぜひ明確な御答弁をいただきたいと思います。官房長官にお願いいたします。
細田国務大臣 個別法の必要性については、ぜひ立法機関である国会の方でもさまざまな御審議をいただきながら、本当に、片方で、研究のため、学問の自由という側面から必要なこともありますし、他方では、個別に情報についてのさまざまな問題が生じて、個人の利益を侵害するケースがあり得る。その主体もまた、国家公務員であったり地方公務員であったり、免許を持って、それがきちっとした守秘義務を持っている医師であったり看護師であったりする場合と、その先におります、そのいずれでもない人たちにおいてどのように起こっていくのかという、今後の研究の面と個人情報の保護という面は、今後さらに検討をしていかなければならない面があることは事実でございますが、ぜひとも、実態にも合い、個人の情報が保護されるような形で検討が行われるべきであろうと思っております。
石毛委員 細田大臣の御答弁は私は納得できません。
 第六条第三項は、「個人情報の性質及び利用方法にかんがみ、個人の権利利益の一層の保護を図るため特にその適正な取扱いの厳格な実施を確保する必要がある個人情報について、保護のための格別の措置が講じられるよう必要な法制上の措置その他の措置を講ずるものとする。」ということで、政府法案の第六条第三項に明確に規定されているものです。
 そこを先ほど来大臣の御答弁は、これから主務大臣の関与の過程の中で出てくる案件に沿って講じられていくべきだと考えるという、これは法文とは離れているのではないですか。
細田国務大臣 当然のこととしてそこを申し上げなかったわけでございますけれども、個人情報を取り扱う人が、本人が知り得るように通知、公表等については当然義務づけているわけでございます。そうでない分野というのがあるではないか、個別法によって対応すべき分野があるではないかとおっしゃいますので、それは確かにあるので、それについては対応措置を今後考えていかなきゃならないこともあろう、そういうことで申し上げておりますので、もちろん、この対象になることにつきましては、さまざまな側面で通知、公表その他はしっかりとやらなければならないと思っております。
石毛委員 時間がなくなりましたので、官房長官、もう一度、先ほど個別の保護措置というふうにおっしゃいましたけれども、法制上の整備を行っていくということについて、内閣としてどのように責任を果たされていくのかということを御答弁ください。
福田国務大臣 担当大臣から今お話ししたとおりでありますけれども、今後、必要に応じてそういう保護措置を講じていかなければいけないということでございます。それは何かといったら、実効的な個人情報保護ができるように、図られるように、こういうことでございます。
石毛委員 私は、きょうの質疑の中では、第五十条の適用除外の一項第三号、「学術研究を目的とする機関」、ここから適用除外になった部分についてどのように個人情報を守っていくのかということについては明瞭な御答弁をいただいたというふうには受けとめておりませんということを申し上げまして、質問を終わります。
村井委員長 続いて、吉井英勝君。
吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。
 私は、個人情報の保護というものを考える上で、政府の考え方と異なる考え方を持つ人々も含めて、思想、信条を初めとする基本的人権の尊重、これがそもそもこの個人情報保護を考える上での出発点になるものだ考えているものであります。
 その点で、官房長官に質問する前に、まず少し見ておきたいんですが、実は、けさの参議院本会議で藤原議員の質問に対する細田大臣の答弁が問題になりました。
 一部に、この原子力発電問題につきましてさまざまな、いわば汚らわしいという感覚で議論をされる方もたくさんおられますと。これは随分意見が出まして、汚らわしいということは世論の問題として申し上げましたということなんですが、私は、政府の物の考え方と異なる意見を持つ人はいっぱいいるわけですね、そういう人たちに対して汚らわしい考えだという発想というのは、これはもう大問題だと思うんですよ。
 細田さんは後で言いわけをされて、表現上、汚らわしいという表現を使ったことについて、私の意を尽くさなかったと言った上で、原発については、有効性、重要性を全く否定する、環境汚染だけをもたらす極めてマイナスばかりあるような発電であるというような指摘で、一切の原子力発電を廃止しろというような議論があるという意味で申し上げましたというのが、これはまだ未定稿ですが、会議録に出ているわけですね。
 原発について細田さんと意見を異にする人について、私はこれは非常にゆがんだ見方をしていると思うんですよ。もともと経済産業省と違って、推進官庁と違うはずなんですね、細田さんが科学技術担当をやっておられるのは。私は、こういう発想では、まず原子力の担当としてもふさわしくないし、そして個人情報の担当としても、これはふさわしくないじゃないかと、こういう物の発想じゃ。
 これは、福田官房長官に、まず最初にこのことを伺っておきたいと思うんです。
細田国務大臣 私の参議院本会議での発言についてお話がありましたので申し上げます。
 全然違います。私は、そういう発言が汚らわしいなんて一つも言っていません。これ、議事録の写しがあります。そうじゃなくて、原子力はいろいろな有用性がある、それは前段は長く、略しますが、それに対して、残念ながら、一部に、この原子力発電問題につきましてさまざまな、いわば汚らわしいというような感覚で議論される方もたくさんおられますけれども、これは私ども政府の責任としても、藤原議員がおっしゃいましたように、これからも、今後とも大いに国民の理解をいただかなければならないということを申し上げておるわけでございまして、何か汚らわしい意見があるということは全然申しておりません。
吉井委員 同じ会議録を見ているわけです。
 それで、要するに、政府の考え方と違う人の考え方というものは、これは汚らわしい考え方という発想で物を考えていくということが私は間違いだということを言っているんです。
 私も原子力を研究してきましたから、もう数十年前になりますが、私が一緒にやってきた仲間で原子力を進めている人間もおれば、さまざまな人間がおります。原発に賛成の人とか反対の人とか、反対とまでいかなくても批判的な人とか、さまざまな人がいるわけです。それを汚らわしい、そういう立場からこの原発問題を見ているというのは、あなたがそういう人たちを汚らわしいと言っているというのは、そんなこと僕は言っていないからね。
 異なる意見の人たちが汚らわしい立場から見ているというふうな、そういう見方というのは、これは一人一人の思想、信条を含めた個人情報やプライバシーを尊重する、あるいは表現の自由というものを尊重するという、このことを扱う担当大臣の基本的な考え方として、私はこれは非常に問題がある。それは、基本的な立場について、これはやはりこの衝にあること自体が問題だ、個人情報保護という立場からすると、それは考えなきゃいかぬということを私は官房長官に言っているわけです。
細田国務大臣 先ほど申しましたように、この原子力発電問題につきましての感覚で申し上げたわけでございます。しかも、その後、議場騒然となりまして、もう一度それを言えとおっしゃいましたので、私の意を尽くさなかったところがありましたので申し上げますが、原子力発電については、その有効性、先ほど申し上げましたように、エネルギー上の重要性を全く否定するような、しかも環境汚染だけをもたらす極めてマイナスばかりあるような発電であるという指摘で、一切の原子力発電を廃止しろという議論があるという意味で申し上げましたので、その発言を訂正させていただきますということを言ったんです。
 私は訂正する必要はないと思いましたけれども、そこの、早口でしゃべっておる中で何か汚らわしい議論があるかのように思われては困るという意味で申し上げたんですが。
 この原子力発電問題、重ねて申しますが、残念ながら、一部に、この原子力発電問題につきましてさまざまな、いわば汚らわしいというような感覚で議論をされる方もたくさんいらっしゃいますけれども、これは私ども政府の責任としても、藤原議員おっしゃいますように、これからも、今後とも大いに国民の理解をいただかなければならないということで申し上げているわけでございますので、私は、日本語としても決しておかしくはないと思っております。
吉井委員 原発問題についてはいろいろな立場があるんですよ。それを、政府の立場と違う立場で考えたら、それを汚らわしいという感覚で見ちゃいけないということを言っているわけです。
 これは、私は、きょうの本題に戻しますから、いずれにしても、そういう発想で担当されるような人じゃ困るということを申し上げて、次の質問に移ります。
 中央公論編集者や改造社の人、著述家を初めとする六十人余りの人々に対する大規模な言論弾圧事件、横浜事件、これは完全なでっち上げ事件で、拷問を受けたり獄死した人など被害者が多数生まれました。被告となった被害者が訴えて、昨日判決が出たわけですが、拷問をかけた側は、読売の解説などにも紹介されているように、拷問を加えた特高警察官がその有罪判決が確定したとかあるんですが、長いこと被害者が被害者として置かれてきたわけです。
 これは、ポツダム宣言受諾以降の治安維持法による判決は、治安維持法自体が無効だから、再審決定というだけにとどまらず、言論弾圧の大もとである治安維持法の不当性を明らかにしました。報道、表現の自由に対して国家権力の介入というのは排除する、そのためにどう取り組むのかというこの根本問題について、実は昨日、立法上の問題は担当者とやるとして、そのことを福田大臣に伺っておきたいということで、きょう来ていただいたわけです。どう取り組むかをまず福田大臣に伺います。
細田国務大臣 報道機関について、自主規制を強いているのではないかという法案第五十条三項の問題については、昨日もお話し申し上げましたけれども、報道の自由は憲法上も保障されており、個人情報保護法案においても、その自立性が確保されるべきものと認識しているところでございます。
 こうした観点を踏まえ、政府案においては、報道分野に対し、主務大臣による勧告、命令などの関与を伴う法案第四章の個人情報取扱事業者の義務について適用除外しているところでございます。
 一方、報道分野におきましても、人格尊重の理念のもとに個人情報を慎重に取り扱うべきことに変わりがないことから、政府案では、法案第五十条三項の努力規定を設けて、個人情報の適正な取り扱いを確保するための必要な措置をみずから講じていただくこととしているが、これはあくまでも自律的な措置であり、報道機関に対しまして規制効果を持っているものではございません。
吉井委員 立法上の問題はきのうやっているんです。同じことを言ってもらってもしようがないんです。
 私が、昨日、この横浜事件の判決もあって伺っているのは、歴史の教訓を踏まえても、報道、表現の自由に対して国家権力の介入を排除する、そのためにどう取り組むかというこの根本問題は、やはり内閣としてきちんと考えを聞かせてもらわなきゃいけないということで伺っているわけです。
 今大臣からあった五十条三項の努力義務規定については、これは報道機関が自律的に定めるルール、倫理規定を国が法律で定めて指示することは国家が報道に規制を及ぼす可能性を生み出すという問題について、既にきのう議論したところです。
 五十条一項一で「放送機関、新聞社、通信社その他の報道機関 報道の用に供する目的」、二の「著述を業として行う者 著述の用に供する目的」とあるわけですが、横浜事件で弾圧された雑誌社とか出版社とか、雑誌や書籍が一項の適用除外になるのかどうかという問題は、これは法文では示されていないわけですよね。一項一の報道目的か二の著述目的かを報道の定義に基づいて判断するのは、トラブルが持ち込まれた後の話ですから、そのときに主務大臣が判断するというだけで、定義に基づいて報道目的かどうかを判断するのは主務大臣ではないかという質問に対して、結局、細田さんの答弁は逃げの答弁でした。
 そこで、私は官房長官に、その立法上の議論はまた改めて機会がありますからやりますけれども、要するに、大本営発表の報道とならないように、これは昨日、読売の社説などを使いましたので省略してそこへいきなり行くわけですが、個人情報保護法制を考える場合にも、国家が報道に規制しないという保障がこれはやはり必要なわけで、そのことについて、福田官房長官として、つまり内閣としてどのようにお考えか、このことを聞いているんです。
細田国務大臣 すぐ官房長官からお答えしてもらいますが、きのうのことを引用されましたので、きのうのことを正確に私から申し上げたいと思いますが、あくまでも目的が報道であり著述であり、そういう範囲にある限りは主務大臣はございませんということは申し上げまして、そして、全く違う情報サービス業とかその他の分野について苦情が持ち込まれた場合には、またその報道なり著述の範囲であるかどうかという判断はやはり必要であろうということで申し上げておりますので、誤解のないようお願いします。
福田国務大臣 ただいま担当大臣が答弁したとおりでございます。
吉井委員 法律上の議論はまたやると言っているんですよ、時間ありますから。
 官房長官には、昨日も紹介しましたけれども、あなたに聞こうと思って紹介したんですが、四五年十月二十五日の読売の社説でも、戦前の放送や新聞報道は「軍閥、財閥、官僚等の特権階級の手先となり、戦争への国民の駆立て、戦争の拡大に果した罪は限りなく大きい。」「事実と全く反対の報道を臆面もなく散じて国民を瞞し、」「その眼を眩ませた罪に至つては」「万死に価する。」こういうふうにしているわけですね。これは、報道機関の自主性を貫けなかったという報道機関の側の反省とともに、国家権力が報道機関に弾圧を加えて規制し、大本営発表の誤った報道を強制したということが根本問題としてあるわけです。
 だから、報道、表現の自由への権力の関与を排除するということは、歴史の教訓と憲法上の要請で非常に大事なことなんで、そのことについて福田さんに、基本の問題について質問しているわけですから。
福田国務大臣 報道なんかの分野につきましては、一般の事業者が遵守すべき種々の義務の適用を除外しておるわけでございまして、報道等の分野においても個人情報が適正に取り扱われるべきことに変わりはありません。個人情報の適正な取り扱いについての自主的な取り組みが求められている、こういうことでございます。
吉井委員 時間が参りましたので、かわります。
村井委員長 春名直章君。
春名委員 日本共産党の春名直章でございます。
 今の、細田大臣、質問通告していないんですが、恐縮ですが、一点だけ、細田大臣よろしいですか。
 吉井議員の質問の原発のことについてなんですが、要するに細田大臣は、原発問題につきましてさまざまな、いわば汚らわしいというような感覚で議論をされている方もたくさんおられます、こういう発言をされているんですね。要するに、どこに汚らわしいからだめだと言っているような人がいるのか。だれのことをこれは指しているんですか。
細田国務大臣 だれのことを指しているわけでもございませんが、下に補足いたしましたように、エネルギー上の重要性を全く否定する、しかも環境汚染だけをもたらす極めてマイナスばかりあるような発電であるという指摘で、一切の原子力発電を廃止しろという議論があるという意味で申し上げましたので、そういう議論があるということは御存じのとおりでございます。
春名委員 そういう発言もあるということだけれども、そうすると、そういう発言を汚らわしいと、反対運動をしている人は汚らわしいんだということになるわけですね。(発言する者あり)いや、そうですよ。いいですか。この原子力発電問題につきましてさまざまな、いわば汚らわしいというような感覚で議論されている方もたくさんおられますと言っているわけですね。
 つまり、汚らわしいという感覚でやっている人がいるというのをあなたは言っているわけです。それは反対運動をしている人のことでしょう。反対運動をしていることに対してそういう発言をされることは、その方々への侮辱だと思いますので訂正すべきだと思うんですね。その点をはっきりさせておいてください。
細田国務大臣 先ほど明確に申し上げましたように、原子力発電問題につきまして、汚らわしいというような感覚で議論される方、つまり、原子力発電というもの自体の存在が汚らわしいという意味で申し上げたつもりでございますし、そのようにきちっと記録も残っております。
 したがって、いろいろな論者は、別にその人が間違っているとか合っているとか言っているんじゃなくて、したがって、私は、その後にきちっと、これは私ども政府の責任としても、藤原議員おっしゃいましたように、これからも、今後とも大いに国民の理解をいただかなければならないということを申し上げているわけでございます。
春名委員 ですから、汚らわしいというような感覚で議論されている方もたくさんおられますと言っているわけですよ。これはそうですね。これはもうそのまま書いてあるわけですから。ですから、汚らわしいというような感覚で議論されている方というのは、どこにいらっしゃって、どういう人のことをあなたは想定して言っているのかと聞いているんです。
細田国務大臣 私は、再度申し上げますように、後で補足説明申し上げましたように、原子力発電は一切不要である、あるいは環境汚染だけをもたらす極めてマイナスばかりあるような発電である、一切の原子力発電を廃止しろと言う方はいらっしゃいますよね。御存じないですか。いますよ。だからそれは……(春名委員「それが汚らわしいと考えているのかと聞いているんです」と呼ぶ)いや、そのことを私も、言葉の表現はよくなかったことは感じまして、時間の関係もありましたので一言で言ってしまった点がございますので、きちっと補足説明したつもりでございますが、そういう論者について、一切価値観を持って言ったつもりはありません。したがって、我々政府の責任として、そういう国民の御理解をいただかなければならないということを申し上げたわけでございますので、私は首尾一貫していると思っております。
春名委員 ですから、汚らわしいということについて、それ自身は訂正されるということでよろしいですね、これは侮辱になりますからね。それだけ確認してください。
細田国務大臣 汚らわしいという言葉がいろいろ誤解を招きましたので、一言で言ってしまいましたので、後で修正したことを言いたかったということは申し上げます。
春名委員 では、次に進みたいと思います。
 防衛庁のリスト問題について、官房長官を中心にお伺いしたいと思いますが、情報公開請求者に対して、請求書に記入していない秘密事項まで調査をして、各部局に回していた、こういう事件でございます。
 情報公開はすべての省庁を対象に行われておりますので、これは防衛庁のみの問題ではないということで、昨年五月の二十九日、総理出席の内閣委員会で、我が党の吉井議員が総理に対しても、すべての省庁を調査対象にした情報公開業務でのリスト作成の状況について調査をお願いしたわけですね。
 昨年八月二十八日にその結果が発表されております、こういう分厚いものがありますけれども。法案を預かる政府の個人情報保護に関する姿勢を問う問題として、官房長官を中心に、この調査結果に沿って問題点をただしていきたいと思います。
 まず、この調査結果を分析して、内閣としてどのような問題点があったと認識をされているのか伺います。
村井委員長 松田行政管理局長。(春名委員「違いますって。何しに出てきているの」と呼ぶ)
松田政府参考人 事務的に、調査の内容にかかわる話でありますので……(春名委員「だめです、だめです。だめ、だめ。事務的な話じゃない。どういう問題があったかというのを聞いているんです。だめ」と呼ぶ)
村井委員長 事実を説明を……(春名委員「違いますって。もう事実はわかっているんです。この中身についてどういう問題があったと認識しているかと内閣に聞いているんです。事実関係は知っているんです。ですから、どういう問題があったかを聞いているんです」と呼ぶ)
松田政府参考人 調査につきましては、防衛庁の開示請求者リストの問題を契機としまして、昨年六月一日現在で、すべての行政機関を対象に調査いたしたものでございます。(春名委員「わかっているって、そんなことは。出てくるな」と呼ぶ)国のすべての行政機関、全国で約千八百官署になるわけでございますが、これの情報公開についての受付簿、管理簿、整理簿等につきまして、開示請求者名が記載されているものについて調査したわけでございます。
 その結果、全国では千三百の……(春名委員「全部見ていると言っているんだ」と呼び、その他発言する者あり)つくられておりますが、その中で個人情報保護に関しまして問題になるような事項につきまして調査をいたしたわけでございます。
 開示請求書記載事項以外の情報を記載している受付簿につきまして、連絡先として勤務先などを記載したものが三十二件、それから、開示請求と関係のないその他の情報を記載したものが七件ございました。それから、作成課室以外の課室に提供されている受付簿等がございますが、これも開示請求に関係する課に提供されているもの、あるいは関係なく課室に提供されているものがございました。
 いずれにしましても、この結果でございますが……(春名委員「委員長、もういいって。出ていけ」と呼び、その他発言する者あり)関係省庁の対応としまして、その他の情報の記載等問題となりましたものは、いずれにしましても防衛庁関係でございまして、そして慎重な取り扱いを必要としたものが若干ございましたが、それについては適宜、訂正、改善されているということでございます。
春名委員 冗談じゃないですよ、こんな運営をされて。どういうことですか。
 私は、今言われたことは全部理解した上で、その評価について内閣はどう考えているのかと聞いているんですよ。要らぬこと、何を言っているんですか。ちょっと議論してください。速記とめてください。
村井委員長 わかりました。
 それでは、その評価について……(発言する者あり)
 整理しております。
 ただいまの春名君の質問につきまして、明確な閣僚レベルの答弁を求めます。
片山国務大臣 今お尋ねの件でありますが、防衛庁リスト問題を契機として、情報公開法を所管している総務省において、全行政機関を対象に、情報公開の受付簿等であって開示請求者名が記載されているものを対象に調査を行い、昨年八月二十八日に公表したところであります。
 その結果、防衛庁の問題となった事例を除けば大きな問題はありませんでしたが、受付簿等の提供先の範囲、安全確保措置、アクセス制御など、関係行政機関間においての個人情報のより慎重な取り扱いという観点から、さらに適切な方法がないか十分検討していただかなければならない事項もございました。これらについては、関係省庁において見直され、所要の措置がとられております。
 政府としては、今後とも、各行政機関が、個人情報の取り扱いについて、国民から不信感を抱かれることのないよう適切に対応してまいりたいと考えております。
春名委員 大きな問題はなかったと言うんですが、その結果、受付簿などのリストを作成していたのが千四十七課室で、千二百九十六件。驚くことに、十一機関の三十二部署で、開示請求書に記載された事項以外のもの、請求者の勤務先、新聞社名、所属団体、企業、職業、学部名などの個人情報を記載したリストが作成されております。これは大きな問題が全然なかったという認識でしょうか。
片山国務大臣 今お話しの事例につきましては、開示請求者と連絡をとらなければなりませんね、その後いろいろなことについて。そういう意味で、住所や電話番号を補完する形で所属団体だとか勤務先だとか、そういう社名等を記載していただいているものでございまして、その意味では格段の問題はないと考えております。
春名委員 今大臣おっしゃった、連絡をとるためのもの、本人から得たもので問題ないという答弁なんですが、その連絡をとるためとの収集目的や、本人から得たという収集方法について、それは各省庁からの申告をまとめただけのものなのか、それとも、内閣あるいは総務省が各省庁にそれが事実かどうか具体的に追跡調査をして確認したものなのかどうか、一体どちらでしょうか。
片山国務大臣 今委員が言われる点は、法律は禁じているわけじゃないんですよ。それは、開示請求者に後でいろいろな連絡なんかありますよ。そういうことで、開示請求者の方と話し合ってそういうことを記載していただいたわけでありまして、私は、各省庁の判断で、法の範囲内のことであれば格別の問題はないと考えております。
春名委員 開示請求者と話し合って書いたというふうになっているんですが、そういうことが、つまり、私が聞いたのは、申告をやっているわけです、アンケートをとっているわけです。そのアンケートをそのままうのみにされて報道しているのか、公開したのか。そういう三十二の部署の問題についてはきちっと後づけ調査をやって、確証を得て、それできちっとやっているのか。どっちですかと聞いているんですね。そこを答えてください。――局長要らないって。
村井委員長 いや、事実問題でしょう。
 松田行政管理局長。
松田政府参考人 調査に当たりましては、膨大な調査票によりまして調査をさせていただいたわけでありますが、中には、各省に対して、事実関係の照会それから整理に当たってのヒアリング等々を行いまして、整理をさせていただいたところでございます。
春名委員 大臣に聞いているときには大臣が答えてください。
 今、ヒアリングをやっているというふうにおっしゃいました。どこの省庁のどのリストについてヒアリングをやったのか答えてください。
松田政府参考人 すべての省庁に対しまして、それぞれ御提出していただきましたものにつきまして、照会をしたり、あるいは整理のためのヒアリングを行っているわけでございますが、特に、先ほど先生御指摘になられましたような、連絡先等が書かれているところにつきましてもヒアリングをさせていただいているところでございます。
春名委員 そうすると、八月の二十八日にこれは調査報告を出していますけれども、その同じ日に一枚の通知書、一層慎重かつ厳正な運用に努めてくださいという通知書だけ出しているんですね。今おっしゃったのは、この調査をやって、全省庁にヒアリングをやって後づけ調査をやって、その上で三十二の、問題がありそうなものはもう一回やっていると。本当にやっているんですね、それ。やっているのであれば、そのヒアリングの中身を全部公開してください。
松田政府参考人 調査の内容につきましては、先生お手元にございます結果報告書のみならず、それぞれの個票につきましても、公開、公表をさせていただいたところでございまして、そういう中で、今御指摘のヒアリング内容等についても盛り込まれているところでございます。
春名委員 いや、ですから、ヒアリングをやったというふうにおっしゃっているわけだけれども、そのヒアリングで三十二項目について、連絡をとるためのものでやったんだ、本人から得たもので問題ないんだというふうに総務省は断定されているということなんだけれども、それは一つ一つどういうヒアリングをやって、本当にそうだったのかということの確証を私はいただきたいんです、そんなものはここには何もありませんので。それを明確にしてくださいと言っているんです。
松田政府参考人 お答え申し上げます。
 繰り返しになって恐縮でございますが、そういう調査、ヒアリング等をさらに重ねまして、先ほどの膨大な報告書並びに個票を、これもフロッピーでできておりますが、それを公表させていただいているところでございます。
春名委員 では、警察庁の情報公開室は、具体的に聞きますからね、全部やっていると言うんだから。所属団体及びその種類という項目を設けて、マスコミ、市民グループなどの記載があったということが言われていますね。いいですね。調べているんだから答えてくださいよ。はっきり言って、防衛庁と同様のリストをつくっているわけですね、警察庁の情報公開室は。
 それから、原子力安全・保安院、国土交通省の四国地方整備局、これは、請求者の役職名まで全部書いてあるわけですね。後者の四国整備局の話は、港湾管理課に対する情報公開請求十三件のうち八件について、請求者の会社名、役職や連絡先電話番号を記したリストをつくっていたということになっているわけです。
 情報公開に所属団体の種類や役職は必要ありません。何のためにこれを記載したのか、どのようにして集めたのか、当然、追跡調査されているというんだったらわかりますね。具体的に答えてください。
松田政府参考人 お答え申し上げます。
 一例でございますが、警察庁の関係でございますが、警察庁から、本人の申告によるもの、または開示請求書に記載されていたものを受付簿等に記載したものでありまして、開示請求者に対する連絡等のために必要な情報ということを聞いております。
 それから、防衛庁のリスト問題の御指摘がございますが、防衛庁の場合には、こういう連絡先としての、例えば職業ですとか、あるいは事務所ですとか、あるいは団体先ですとかいうことではなくて、さらに、海幕三佐の問題ですと、アトピーで不合格になったとか、こういう情報公開、開示請求と何ら関係のない情報が入っている。その点で警察庁の問題とは違うと思っております。
春名委員 では、二点、総務大臣に聞きます。
 警察庁の場合は、マスコミ、市民グループというのが記載されていたわけです。それはさっきお話が出ました。こういうものを情報公開請求者でリスト化する、どうして必要なのかということを総務大臣はどう考えますかということと、こういうリストをつくること自身が現行の行政機関個人情報保護法に違反していませんか。個人情報ファイルの作成は必要な場合に限り、記録する項目も作成目的に必要な限度を超えない範囲とする、第四条に明確に定められております。
 こういうものについて、これはおかしいよという指示はしたのでしょうか。違反だというふうな指摘をしたのでしょうか。この二点お答えください。大臣に聞いていますからね。
松田政府参考人 事実関係として申し上げますが、開示請求に当たりましては、住所、氏名、それから連絡先としての電話番号ということが開示請求書の記載内容になっておるわけでございますが、さらにそれにつけ加えまして、この開示請求に当たりまして、文書をいろいろ特定しなければなりません。そのためにいろいろな連絡が開示請求者との間であるわけでありまして、例えば勤務されている方ですと、その勤務先に連絡してほしいとか、あるいは、ここの団体に所属していればここに連絡してほしいとかいうことがあるわけでございます。
 また、開示請求内容によりましては補正をいろいろお願いしなければならないわけでありますが、その補正に当たっても、そういう連絡、やりとりが当然生ずるわけでございまして、単にその開示請求者の御住所だけでは円滑な開示請求が行われないということで、本人、開示請求者の側からいろいろなそういう連絡先の御連絡があるわけでございます。
 そういうものが記載されているものと承知しております。
春名委員 大臣に聞いていて、大臣が出てこずに、全然私の答弁と違うことを答えるんですね。全然話にならないですよ。もう一回大臣に聞きますからね。
 第四条に、個人情報ファイルの作成は必要な場合に限り、記録する項目も作成目的に必要な限度を超えない範囲とする、現行の行政機関の個人情報保護法でこう定められているんですが、市民グループとかマスコミとか、あるいは企業とか職業とか学部名とか所属団体とか、そういうことも備考欄などに書いてある。そういうリストをつくってこれはいいのかということを具体的に聞いているわけでありまして、大臣の御見解を聞きます。
片山国務大臣 役所の組織というのは、春名委員御承知のように、全部大臣がやるんじゃないんですよ。組織、機関が全部動くんですよ。その上に私は代表者でおるわけで、細かいヒアリングの結果がどうだとか、それは報告書にあるでしょう。そういうことは局長が一番よく知っているんですよ。局長よりは課長が知っているんですよ。だけれども、局長は参考人ですから答えているので、それを頭から否定するようなことは、ちょっとあれだと思いますよ。
 そこで、今のマスコミだとか何とか団体だとかというのは、本人が納得してというのか、本人がそういうことで名刺を出されたり話をされて、それを受けて書かれているんでしょう、普通の場合には。したがって、それを現行法の個人情報ファイルに入れても、入れなくてもいいんですよ、仮に本人の納得があって入れても、それは違法とかなんとかという問題じゃないと思います。
春名委員 さらに、担当課室内でアクセス制限されていないケースが五十二件あったという報告であります。原子力安全・保安院では、職員がアクセスできるネットワーク内の共有フォルダにこのリストが保管されておりまして、請求を受けた各課の情報公開担当者が書き込めたり、肩書きや職業などの情報が閲覧できる状態になっておりました。請求を受けた各課の情報公開担当者が書き込める、そして閲覧できるということになっていた。
 担当者以外で何人、何回当該情報にアクセスがあったか、こういう追跡調査もしっかりやらないとだめですね、こんなことがあったら。担当者以外が閲覧できれば、当然他の目的に使うことができるようになりますし、悪用も可能になってしまいます。どういう改善の指示を出したのか、全部チェックしたというふうにおっしゃるので、具体的にお答えください。
松田政府参考人 お答え申し上げます。
 受付簿等が電子媒体に記録されて、例えばサーバー内で保管されているという場合にアクセスをするわけでございますが、その際、調査の結果によりますと、担当者のみアクセスが可能なのが四百八十九件でございました。それから、担当課室内のみアクセス可というのが五十二件でございました。それから、担当課室を超えて、局内とかあるいは府省庁内とか、そういうところからもアクセス可能なのが九件ございました。
 この担当課室を超えて、例えばある部あるいは局の中からアクセスが可能になっているものにつきましては、ややアクセス可能範囲が広いのではないか、個人情報の慎重な取り扱い上やや問題があるのではないか、しかも業務の実態等によりますので、そこは各省で適切に改善をしていただくということで、この九件については所要の改善措置がとられたところでございます。
 それから、担当課室内のみのアクセス可能が今五十二件という御指摘でございましたが、こういう情報公開業務というのは、その課の中で一担当者のみが行っているわけではなくて、一体としてあるいは相互に協力しながら行っているケースが多いのが通常でございますので、この五十二件はやむを得ないのかなと考えている次第でございます。
春名委員 官房長官、おいでているので最後に聞きますけれども、要するに、この法案、非常に大事な法案でして、議論を真摯にやろうということでやっているわけですけれども、その前提として、去年八月に報告された、こういう情報公開の請求者のリストについて、別の項目を平然と書いている、それがたくさんある、しかもアクセスがいろいろな人ができるようにしている、こういうふうな状態がそのまま続いていたとしたら、そしてそのままきちっとした対策もとっていないとしたら、政府のこの個人情報保護に対する姿勢自身が私は問われると思うので、これを前提の問題として議論しているわけですね。
 今の議論を聞いていただいて、官房長官、これはどうですか、しっかりやってほしいと思うんですけれども、こういう問題は。
福田国務大臣 おっしゃるとおり、国民からも疑念を抱かれないような、そういう対応を政府としてきちんと立てていかなければいけないと思っております。そのために努力をしてまいりたいと思っております。
春名委員 引き続き議論は深めていきたいと思います。以上で終わります。
村井委員長 続いて、北川れん子君。
北川委員 社民党・市民連合の北川れん子と申します。
 昨日なんですが、きょうは官房長官が集中して御出席いただくということだったんですけれども、昨日、私どもは、保坂議員が要求をいたしておりました、官房長官の出席を。そうしましたら、事前に事務方の方から、官房長官が答えるにふさわしいかどうかというような問いをされて、制限されているわけです。
 官房長官にお伺いしたいんですけれども、このことは、官房長官の積極的な出席の姿勢が見えないことが事務方にこのような発言を生んだのではないかと思うんですが、官房長官のお考えはいかがでしょうか。官房長官にお伺いしているんです。官房長官にお伺いしているんですけれども。
細田国務大臣 どうも私の役所の者が取りに伺ったようですから、そのことも申し上げます。
 若干誤解もあったようでございますが、まず、官房長官はきょうは御出席になるということでもちろん方針が決められたわけでございますので、あとは、質問の内容は、関係省庁が交代あるいは役割分担でお伺いしに行って準備をさせていただくという慣例がございますが、何か一つずつの御質問を伺ったときに、これは○○大臣に対する質問として適当ではないかというようなことを言ったのかもしれませんが、そういうこともやりとりとしてはあることでございます。ただ、いろいろ誤解があったのであれば、私の方からよく注意をいたします。
福田国務大臣 積極的に出席すべきというような御趣旨でございますが、そもそもこれは、内閣においては、政策ごとに担当大臣が内閣を代表して答弁を行う、こういうことになっているんですよ。今回のこの法案の担当大臣は、これは細田IT担当大臣と片山総務大臣が法案担当大臣でございまして、両大臣が内閣を代表して答弁をするということになっているんです。ですから、この両大臣が御出席であれば、基本的に言えば、私は出席の必要はないということを御理解いただきたいと思います。
北川委員 個人情報保護法の審議が、どんな重要広範議案であるかということの認識が政府全体としてないという、そして廃案になって修正という今の段階に来ていることの認識が少ないというふうに思うわけです。
 実は、きのう、保坂議員の方は、インターネットやカーナビ利用者は個人情報取扱事業者になってしまう、そういうふうな行政のお答えがあり、政府答弁の食い違いなどがあって、残念ながら、きょうは法務委員会の名古屋刑務所への出張ということでここには来れないんですが、それで、前回のように議員の質問の質疑権、また人格権を侵害されたということもございますので、次回は、要求をした場合は御出席いただけるということを官房長官どのように今認識されているのか、明確な御答弁をお願いいたします。
福田国務大臣 明確に申し上げますけれども、これは基本的には委員会でお決めになることでございますから、委員会からどうしてもということであれば、これは出席することにやぶさかではございません。
北川委員 委員会はもとから明確に要求をいたしておりますし、御出席のもとということの原則で始まっておりますので、きょうのようなイレギュラーな立て方というのはおかしいということをお伝えしておきたいと思います。
 そして、次に片山総務大臣の方にお伺いしたいと思うんですが、これは結局、八八年法からデータファイルの範囲が広がったということなんですが、現実に今、管理をされていないマニュアルとか散在しているデータファイルというものがございますが、この目的外利用や外部提供の実態、状況などを把握するような内部調査を現在行っていらっしゃるのかどうか、お伺いしたいと思います。
松田政府参考人 実態の問題でございますので、私の方からお答え申し上げます。
 先生御指摘のように、現行法の対象になっております電算処理個人情報ファイルでございまして、それの目的外利用・提供につきましては、昨日も御答弁申し上げましたが、施行状況調査をいたしまして、毎年公表をさせていただいているところでございます。
 平成十四年八月一日現在で、公表の対象になっている個人情報ファイルは千九百七十九ファイルございますが、このうち、法律の第九条第二項の規定に基づきまして、九の行政機関が保有する三十六の個人情報ファイルにつき五十五件の目的外利用・提供が行われて……(北川委員「済みません、八八年法を見てもない部分です、ファイルされていない方です」と呼ぶ)はい。
 今回の法案で、電算個人情報ファイルにとどまらず、紙のファイル、それから、さらに行政文書に散在して記録されている個人情報も対象になるという、大変規制が強化されるわけでございますが、その目的外利用・提供の実態につきましては、把握はいたしておりません。
北川委員 短くお答えいただいて、把握はしていないということなんですが。
 では、大臣、このときの、今の現行法ではもうわかるんですよ、公表もされているから、どの程度の相当な理由、特別な理由というものがわかるんですけれども、今、管理外の分のデータファイル、調査もされていないということなんですが、相当な理由、特別な理由というのは、どういう範囲ということで思っていらっしゃるのか、御答弁いただきたいと思っています。
片山国務大臣 これは、もう既に答弁させていただきましたが、原則禁止の例外として認めるわけですから、だれが見てもなるほどなという、納得ができるような客観性がなければならない、こういうふうに考えておりまして、個別案件ごとに厳格に判断すべきもので、行政機関の恣意的な解釈を認められるものではない。
 さあ、それがどうだと。これはやはり、経験的に積み上げていきますから、抽象的に言うのは難しいんですよ。だから、今言ったような、客観性がある、だれでもが納得できる、恣意的要素はない、こういう厳格な選別による理由でございます。
北川委員 きのうの御答弁でもそうだったんですけれども、データマッチングやそういうことをお伺いすれば、目的外利用は厳重だと。しかしながら、審査会にかけたらどうだ、第三者担保をしたらどうだとお伺いすれば、大変な膨大な量になると。
 厳格、厳密にやれば、大変膨大な量になることはあり得ないわけで、そういう点において、福田官房長官にお伺いします。
 情報公開制度や八八年法があって、今度新たに個人情報保護法がつくられようとしている今も、政府の対応というのはあのようなものなんですけれども、官房長官、四十九条から五十一条で総務大臣の権限が書かれているんですけれども、総務相自身、また、ほかの省庁が、必ずしも適切とは言えない、今の防衛庁リストの問題もそうだったと思うんですが、そういう判断をした場合には、内閣の調整機能をお持ちの官房長官の管轄に入ってくると思うんですが、そういう場合にはどういうふうな対応をされようとしているんでしょうか、お答えいただきたいと思います。官房長官にお願いします。きょうの貴重な時間ですので、よろしくお願いします、委員長。
片山国務大臣 今は電子計算処理された情報だけなんですよ。新法は全部の個人情報なんですよ。それの目的外利用の、厳格にはやるんですよ、厳格にやるのは当然なんだけれども、それは膨大な量になるんです。それを一々事前に第三者機関にかけているというと、第三者機関もくたびれますし、行政機関もくたびれる。本来の行政が大変なマイナスの影響を受ける。こういう判断で、我々は、第三者機関関与というものは、現在の個別の決定に対する不服にしよう、こういうことにいたしたわけであります。
 それから、適切でない判断をする、法を所管する総務大臣が法に定められた権限を行使するに当たって。それは、法治国家ですから適切な判断をするのは当たり前ですよ。それはもう当然のことです。
 私に対して、おまえはちゃんとやれるのかどうかと。これは北川委員、あるいは議論があるかもしれませんが、組織がやるんですから、法律に基づいて、大臣機関説でございますので、ぜひその点は御心配なく。そういう不適切なことをやったら、総理大臣の罷免権の発動もあるでしょうし、内閣がおかしければ、どうぞ不信任とかいろいろなことがあるわけでありますから。それが今の議院内閣制だと思っております。
北川委員 いや、ですから、主務大臣の中で、全銀協の問題も主務大臣の周知徹底が行われていなかった、今回の防衛庁リストも周知徹底が。みずからの省庁がやっていなかったということが暴露しているわけじゃないですか。
 なので、あえて福田官房長官にお伺いしますけれども、総務相自身の管轄のところでもデータファイルやたくさん持っているわけですよ。そこは、みずからも不適切なことが起こるということはあり得るわけですから、みずからの検証ということができないということがあると今おっしゃったわけですから、福田官房長官は、全調整機能として、総務相自身が適切でないことを行った場合には、個人情報取り扱いにおいてですね、そういう場合には福田官房長官の権限にかかってくると思いますが、その点はどのようにこの法案審議のときにお考えになっていらっしゃるんでしょうか、お答えください。
福田国務大臣 ちょっと誤解されているんじゃないかと思うんですけれども、この主務大臣は、これは総務大臣それからIT担当大臣なんですよ。私は、その主務大臣でもなければ担当大臣でもないんです。ですから権限も、そういう意味においてはないんです。権限を持っているのは総理大臣ですよ。そうでしょう。おわかりですか。
 おわかりのようなお顔をされていないので申し上げますけれども、今お話しのことにつきましては、行政機関が法律を誠実に執行しなければならないというのは、これは憲法上の要請なんです。ですから、行政機関の長は非常に重い責任を持っている、こういう認識でございます。総務大臣も、このような憲法上の要請に従って適切な判断を行っている、このように承知をいたしておるわけでございます。
 くどいようですけれども、ただいま申しましたように、細田大臣、片山大臣がこの法案については内閣を代表して責任を持っているわけなんです。ですから、本来私は、ここに出てくる、そういう立場じゃないんです、正直申しまして。私が出てまいりましてそういうようなお話ばかりしていて大変申しわけないんですけれども、そのことはひとつ、よく御理解をいただきたいと思っております。
北川委員 御本人の責任を放棄されたというふうにも受けとめられるような御答弁だったと思いますし、では総理大臣の出席を次回求めたいと思います。
 では、次に譲ります。
村井委員長 阿部知子君。
阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。引き続いて質問をさせていただきます。
 福田官房長官が、本来出てくる場所でもないし、あと三時までだしと言われていますので、早急に、ぜひとも、せっかく来ていただきましたのですから、福田官房長官にやはり冒頭お伺いさせていただきます。
 今、我が党の北川れん子が御質問いたしましたように、本来であれば小泉総理、じかにおいでくださるのが私も一番と思います。なぜならば、この内閣の基本的な姿勢が、情報公開ということと、それに伴う、あるいはもろ刃の剣となりかねない個人情報の漏出などなどをどうコントロールしていくかという、極めてこれは内閣の本質にかかわる事案の審議だと思います。
 そして、その中でも、既に施行された情報公開法などでは、これは以前の質疑で取り上げさせていただいたので、福田官房長官、御記憶かと思いますが、例えば開示おくれが外務省でも防衛庁でもあり、三十日、六十日と区切られた期限の中でも開示できないままの案件が残る。
 あるいは、二月二十六日、報道されておりますが、外務省においては、開示請求のあった方に対して、今ちょっと忙しいから、もうちょっと後になるか、ないしはあなたが取り下げるのであればそのようにいたします、手数料を返しますというようなことまでなさるとなると、一体この内閣は、内閣の透明性、行政の透明性、それから、その中で個人情報の保護ということをどう考えておるのか。
 随所で問題が生じているからこそ、きょうは、できれば総理、それから福田官房長官にと。先ほどおっしゃいました、自分は各省庁間の調整官なんだと。調整官ということは、単にウ飼いのウを締めている人ではなくて、きちんと全体がうまく本当にトータルで機能しているかを判断なさる御見識にあると思うんです。その意味でお伺い申し上げていますので、そういうことと理解した上で、一点だけ御答弁をお願いいたします。
 先ほどから石毛委員が、微に入り細にわたり具体的な事例を挙げて、特に医療における研究に供されるような個人の情報あるいは医療情報についても、なかなかこの個人情報保護法だけでは問題がカバーし切れないということを具体例でたくさんおっしゃっていたと思うんです。
 それに対しての諸大臣のお答えを私は伺っておりまして、ここで明確に福田大臣に御答弁いただきたい点は、内閣の挙げての姿勢として、個人情報保護法案はもちろん成立を期すが、このインターネット時代にあって、個別に保護していかなければいけない事案も非常に数多い。ですから、この個人情報保護法案の成立と個別法のこれからの検討、早急な検討は車の両輪であるというふうな御認識をお持ちであると思いますが、その一点にだけ限って御答弁をお願いいたします。
福田国務大臣 この法律で定めました規律は、あらゆる分野を通ずる個人情報保護のための必要最小限のものであり、各府省におきまして、所管する各業種の実態等も踏まえ、追加的な措置の検討を行う必要がある、こういう認識でございます。
阿部委員 その認識が、いわば同時並列的にスタートしていないと問題が生じやすいということもよくよく御理解の上での御答弁と推察いたしますので、本来はあと一問お願いしたいのですが、お時間でございますので、またの、来ていただけることを心から期待して、とりあえず、ありがとうございます。またぜひお越しくださいませ。
 次の質問に移らせていただきます。
 個別のことは個別にと言われましたので、特に医療関係のことで、木村副大臣にお出ましいただきましたので、御質疑をさせていただきます。
 医療におきましては、例えば、この個人情報保護法において、大体どのくらいのデータ数が集まるところを個人情報保護法の対象とするか、このことについては余り法案自身の中に明文はなく、これまでの審議の中で五千件くらいのデータを扱うところだというふうになっておりました。
 木村副大臣も御存じと思いますが、例えば開業のお医者様でいらっしゃると患者のカルテが五千人分ということはないやもしれません、特に開業したてとかですね。そういうこと一つとりましても、例えば個別にカルテ開示法なるものを整備することが必要ではないか。これが一点ですね。
 それから、同じように、この個人情報保護法案では、情報の請求者は生存する個人となっておりますが、カルテ等を見たい、例えば自分の親兄弟、親族が亡くなってそのカルテを見たいとする場合に、この法案のみでは開示に結びつかない。自分の情報のコントロール、あるいは自分と極めて近い個人の情報には手が届かないかもしれないわけです。
 ここで副大臣にお伺いいたしますが、そうした事案について、現段階で、先ほど福田大臣にもお伺いいたしましたが、これはもう同時スタート的にやっていただかないと困るわけですけれども、どのようにお考えか、お願いいたします。
木村副大臣 阿部先生よく御存じのように、まず一診療所当たりのカルテの話なんですが、厚生省の調べによりますと、医科の診療所では平均が大体六千件だそうでございます。これが歯科になりますと四千八百件余ということで、確かに先生がおっしゃったように、五千件というところを区切りますと、御指摘のような問題点が出てくるわけでございます。
 一般的に、カルテ等の診療情報につきましては個人情報保護法における個人情報に該当するわけでありますので、医療機関からは本人からの求めに応じて原則として開示しなければならないということと考えているところでありますけれども、これは、この法律では、生存する個人に関する情報、こういうことにもなっておりまして、じゃ、遺族の方をどうするんだというようなことももちろん出てくるわけでございますし、それから、遺族といってもたくさんの遺族の方がおいでになるので、遺族をどの範囲に限るとか、そういうような問題点もまた出てくるのではないか。
 そこを、先生が官房長官に御質問された、法律でいくのか、あるいはガイドラインみたいなものを決めていくか、そういうことが考えられるわけでありますけれども、御指摘の点に関しましては、カルテ開示や遺族によるカルテ開示の問題等も含めまして、現在、これからの診療情報の提供のあり方について、診療に関する情報提供等の在り方に関する検討会において議論をいただいているところであります。まさに、同時並行的に今やっているところでございまして、今後取りまとめられる結論を踏まえまして、厚生労働省として適切に対応してまいりたいと考えておるところでございます。
 医療の方は、医師会の方が相当細かいガイドライン等も出しているようでございますが、特に歯科においては、この辺さらに、今お話しさせていただきましたように、適切に対応してまいりたい、このように思っている次第でございます。
阿部委員 厚生労働省において検討されているカルテ情報開示等の検討会も、三年目に入りましても、実は明確な前向きの方針というのは、まだ答申としても出ておらないわけです。
 先ほど私が申しましたように、開業したてとか、そこでも、医療ミスとか事故とか、何らかの情報を個人が求める場合も生じてまいりますので、私は、早急にカルテ開示を個別法として法制化なさることを、木村副大臣にはぜひとも御尽力いただきたいと思います。
 その間でも、例えば東京都などは、運用における取り扱い方針、指針ということで、御遺族のカルテ開示請求についても道を開くとか、きちんとそれなりの対応をもう平成九年からやっているわけです。東京都、石原知事で、国をぶっ飛ばすということもおっしゃっていますが、どうかぶっ飛ばされないように、国の全体の枠がきちんとそうした、今、なかなか個人情報保護法の中で到達できない問題をはらんでいる部分について、さらに運用上の取り扱い指針ないしは早急なカルテ開示で対応していただけますように、木村副大臣にはお願い申し上げておきます。
 木村副大臣には、これで終わるかと思います。ありがとうございました。
 それから、引き続いて、行政機関の個人情報保護法について、先ほど来、答弁、違う違うと言われながら立ってくださっている松田局長に伺います。
 私は、ぜひこれは松田局長に簡潔にお願いいたしたいのですが、個人情報の、自分がアクセスしたいということで、なかなかアクセスできない、あるいは却下されたような場合の不服申し立てということに関しまして、実は、今現在のところ、自分の情報を自分の生活地が持っていればいいですが、それが自分とは遠隔地のところに行くこともあるわけで、ただしかし、その場合に不服申し立てをするのは、例えば沖縄の人が不服申し立てをする場合に、その情報が中央、東京にあれば東京まで出向かないと不服申し立てができない仕組みになっております。
 これまでできた情報公開法では、一応八つの管轄区に分けまして、余りに遠い不服申し立ては便が悪いということで、八つに分けて情報公開法では既に施行されていると思いますし、きょう皆様のお手元に配らせていただいています、裁判管轄の特例がなかった場合の訴訟費用の一覧というのを見ていただければわかるように、遠いところ、大阪、鹿児島、那覇などでは、例えば不服申し立てをし一審、二審等々を行っていくと莫大な費用がかかってくるということもあるわけです。
 個人情報保護法案については、この点、どのようなアクセス権を保障されておられるかについて、お願いいたします。
松田政府参考人 お答え申し上げます。
 先生が先ほどおっしゃられました不服申し立ては、裁判の前の段階の話でございまして、これにつきましては、今、情報公開審査会を改組しまして情報公開・個人情報保護審査会ということで、そこで不服申し立てについての大臣の判断について審査をするということになっているわけでございますが、その際に、地方の方々の便宜を図るということで、審査会の委員が地方に出向いてお話を聞くというようなことも法律に盛り込ませていただいているところでございます。
 今先生お話しの裁判の問題は、これは行政事件訴訟法第十二条にございます裁判の管轄の一般原則としまして、被告の所在地の裁判所に裁判を提訴するということになっておるわけでございます。
 これにつきましては、地方からの裁判の提訴の便宜という問題としましては、できるだけ地方の機関に権限を委任いたしまして、地方機関限りで裁判に対応できるようにするように努力してまいりたい、こう考えております。
阿部委員 今松田局長の御答弁のように、その被告の所在地であると。今松田局長は、だんだんだんだんその所管を地方に、地方分権の時代で分権していくのだから、これからは近づいてくるだろうという御答弁ですが、今この法案がスタートした途端にやはり問題は生じ得ることなわけです。
 ここを、主管大臣としての片山大臣に特にお伺いいたしたいのですが、先ほど私がお示ししましたように、既に情報公開法では八つに主管を分ける、これは訴訟へのアクセス権でございますから、そういう便宜が図られておる。これからどんな事態が生じるかは、いろいろな事例が、思いも寄らぬあの防衛庁の情報リストの収集とかもございまして、やってみなければもちろんわからないということがあるわけで、その場合に、そこの所管地が訴えを起こす被告の所在地であれば、当然遠隔地の方は裁判が起こしづらいだろうと思いますが、そこについて、片山大臣の御認識をお願いいたします。
片山国務大臣 裁判の管轄は、被告である行政庁の所在地の裁判所、これは大原則ですね。情報公開のときは大議論があって、御承知のように、今、八つの高裁がある地裁でもできる、これはもう大変な例外なんですね。
 そこで、情報公開法と今回の個人情報保護法の関係なんですが、現行法で開示請求なんかで多いのは何だといったら、医療と教育だというんですよ。そうしますと、かなり地方ですよね。そういういろいろな権限は、例えば国立病院だとかいろいろな学校だとか、こういうところに権限が移っておりますから、私は、情報公開の方は霞が関で開示、不開示の決定をするということが多いんだけれども、個人情報保護の方は、実態から見るとかなりばらけていると。
 それから、今局長が答弁しましたように、できるだけ中央の権限を、地方分権で地方自治体じゃないんですよ、国の地方出先機関の長に権限を委任する。それが今度は、被告である行政庁になりますから、だから、そういうことを運用上フォローしていこう、こういうふうに思っておりまして、そこが情報公開法と違うところなんです。
 ただ、行政事件訴訟法全般についての御議論は、これは裁判管轄の議論として、私は、国会で大いにやっていただくことはあるんだろうと思っております。
阿部委員 裁判管轄の問題は、それはそれとして司法改革の中で十分論じていただく必要もあるかと思うんです。
 今の片山大臣の御答弁の中で、個人情報保護のことについては医療と教育が圧倒的であろうというお話で、さはさりながら、私が申しましたように、圧倒的であっても、それ以外の事例という事態は生じ得るわけです。その場合に、情報の主は個人ですから、その方がもし不服であり、あるいは訴訟したいといった場合に、その住まう地で、中央に情報があった場合に問題が生じるだろうと。
 でも、これはもう片山大臣はよく御存じで、情報公開法の審議がこの八つの、とりあえず分割してやりましょうというところに落ちつくまでの長い論議があり、そしてまた、その方がベターであろうというお考えもあったことと思いますから、私は、この点については、ぜひ今の大臣の御答弁をもう一歩前向きに、もし本当にこれを、個人が自分の情報についてさまざまに、コントロールを自分の手のうちにするための極めて重要な部分と思いますから、お考えをいただきたいと思います。
 もう一点、これも石毛委員の御質疑の中でありましたが、実は医療と研究分野というのは密接不可分で、医療としてとられたデータの中からある部分が研究の用に供されたりした場合に、そのデータについては、採血を行った地方の病院が持っていなくて中央が持っている場合もあるんです。自分のものがどのようなものに利用されたかを、自分の所在地の自分のかかった病院でわからない場合もございます。
 これは、野党案も政府案もともに目的から除外して、研究用はというふうに除外しておりますが、その一方で、さっきの、個別の保護する、例えばその人の遺伝情報とか疾病情報とかいうのは保護する法制が必要なことともあわせて、私は、今後の課題、個人情報の自己コントロールということは今後の課題と思いますので、自己コントロール権という言い方を私ども野党はいたしますが、その点について、片山大臣のお考えを一点お伺いいたします。
片山国務大臣 自己コントロール権というのは、細田大臣からも大分答弁がございましたが、まだこれは権利として確立していないですね、世界の国の中でも、日本の中でも。まだ未成熟の段階ですから、今後の発展を見ないといかぬということですが。今の法制の考え方は、基本的には本人関与を強めるということで、開示の請求だとか訂正の請求だとか利用停止の請求だとか、目的に応じてだけ使え、必要最小限度の範囲でやれ、ただ、目的外利用については、十分な理由があれば、相応の事由があればいい、こういう仕組みですね。
 だから、今後どう考えていくか。個人情報というのは、使い方や場所や環境によっては、みんなセンシティブ情報なんですよ、ある意味では。それを全部コントロールできるようにしますと、ほかのことが何にもできなくなっちゃう。例えば報道なんかは全部ぶつかりますよ。そういうことがあるので、どこに接点を求めていくかということが一番大切なので。あるいは、保護し過ぎると、行政はもうやらぬでよろしいみたいなことになると、これも困るので、この情報化社会の中で。だから、保護をする、しかし個人情報も生かす、報道の自由は守る、こういうことの調和の中にあるんですね。
 そういうことで、委員のお気持ちや御意見は私もわからないでもありませんが、今後ともいろいろな幅広な検討を深めてまいりたいと思います。
阿部委員 そういう御答弁であれば、ぜひ個別法を早急に今おっしゃられた分野で準備していただくというふうに承りましたので、承っておこうかと思います。
 次の質問もできれば片山大臣にも御答弁いただきたいので、いましばしおつき合いいただきたいのですが。
 外務省の北島官房長にお伺いいたしますが、外務省は、去る二月二十六日、今まで、もうできている情報公開法の請求者に対して、ちょっと北朝鮮問題やイラク情勢で多忙のため開示決定が半年以上おくれてしまう、あるいは開示できないこともあるかもしれないので、開示請求を取り下げてくれまいかというお願いをいたしたと、文書で。私も文書をいただきましたけれども、外務省から。
 これが、確かに役所は忙しい、そのことは十分理解しているんですけれども、業務多忙で取り下げてくれまいかというふうに言ってしまっては、行政の透明性、国民に対する姿勢が大きく問われてしまうと思いますが、この件について、まず北島官房長にお願いいたします。
北島政府参考人 御答弁申し上げます。
 情報公開法に基づく開示請求を受け付けた時点で予測できなかった事案の発生によりまして審査がおくれていたという状況の中で、一部の開示請求者に対して、外務省の情報公開室長の名前で、決定期限を守れていないこと、あるいはそのおそれが高いことを通知する書簡を出したということは、御指摘のとおり、事実でございます。
 これは、審査の状況を開示請求者に伝える趣旨で、いわば情報提供の一環として行ったということでございます。このような情報提供が情報公開法に抵触するというふうには考えておりませんで、この点、ぜひ御理解をいただければと思います。
 さらに、取り下げを誘導、慫慂という御指摘がございましたけれども、この書簡は、請求者に対しまして請求を取り下げてもらうといった意図はなく、万が一、時間がかかっていることを理由として取り下げたいということであれば、請求手数料の返還に応じたいとの考えを伝えたということでございます。
 ただし、一部開示請求者に対しまして誤解が生じてしまったということであれば、この点については遺憾に感じております。
阿部委員 そのような外務省の文書を受けて開示要求を取り下げた方は、一件も実際はなかったわけです。受け取られた方も、当然、あ、情報公開ってやっているのに、こんなふうな運用のされ方をするんだと、非常に不透明感を高めたと思います。
 私は、この点について片山大臣に、前回の、開示のおくれとか、あるいは期限を延ばしての延長ということを非常に問題と思い、御質疑いたしましたが、この点について、今後の大臣の御指導でしょうか、について伺います。
片山国務大臣 外務省は恐らく善意で、まだおくれますよ、もう少し待ってください、こういう書状を出したので、それはそれで私は問題はないと思いますけれども、書状を出すのなら、できるだけ早くやった方がいいですな。それは、外務省は忙しいですからね、内憂外患こもごもというようなところがありますから大変忙しゅうございますけれども、できるだけ早くやっていただくように、今後とも外務省には要請してまいりたい。
 外務省は多いんですよ、情報公開の開示要求が。そういうこともありますので、そこは御理解を賜りたいと思います。
阿部委員 外務省が多いのは、開示延長も多うございましたし、不開示も一番多いのでよくわかりますが、ただしかし、今のように、大臣のようにおっしゃると、暇な省庁は早く開示をして、忙しいところは遅くなるというふうな向きにもとられますし、あるいはまた、悪意はなかったんだと言われれば、それは、意図によって情報公開の中身が問われるわけではなくて、そのために法をつくって、原則をつくってそのようにせいということですから、そのように悪意はなかったというふうに言われますと、やはり非常に情報公開の根本自身が問題になると思います。
 関連するような事項はほかにもございますので、この委員会には、私はきょう質疑の時間をいただきましたが、また改めて、福田官房長官御出席のもと、お時間をいただければと思います。
 ありがとうございました。
村井委員長 続いて、黄川田徹君。
黄川田委員 自由党の黄川田徹であります。
 これまでの質疑で重複するところもありますけれども、私からも改めて御質問いたしますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
 まずもって、民主主義の歴史の長い欧州各国では、伝統的にプライバシーに対する関心が強く、しっかりとした包括的な個人情報保護法制が整備されておるところであります。そしてまた一方、アメリカは、社会正義の実現という機能を個々人間の訴訟に求めることが多い、御案内のとおりの訴訟社会であります。プライバシーの保護につきましても、基本的に、争いがあれば裁判で決着させる、そういう仕組みをとっていると承知しております。また一方、日本は、これまで、和魂洋才ということで、海外にすぐれた制度があれば、その制度のよいところを日本の風土や社会環境に最も適した形で柔軟に取り入れてきたというわけであります。
 そこで質問であります。最初に、今回政府より提出されておりますこの個人情報保護法案でありますけれども、個人情報保護の国際標準でありますOECDのガイドラインを参考につくられた、こういうことでありますけれども、欧米諸国の法制と比較いたしまして、いわゆる欧州型と言えるのか、あるいはまた米国型と言えるのか、その特徴について、細田大臣にお尋ねいたしたいと思います。
細田国務大臣 政府案につきましては、OECDガイドラインに示されましたいわゆる八原則の内容を踏まえまして、個人情報取扱事業者に対する義務を規定しまして個人情報の保護を図るものであります。また、本法案は、国民生活の全分野においてITを活用した大量かつ多様な個人情報の利用、流通がなされていることを踏まえまして、欧州各国同様に、あらゆる分野を包括的に対象として、必要最小限度の具体的な規律を設けているものでございます。
 一方、個人情報保護の問題が、分野の特性により大きく実情が異なることや、できるだけ当事者間の迅速な解決を図ることが望まれることから、米国同様に、事業者の自主性を尊重した仕組みも取り入れているわけでございます。具体的には、個人情報を取り扱う事業者に関する法律上の義務を明確にし、まずは事業者の自主的な取り組みを求める一方、問題が生じた場合においては、事後的な主務大臣の関与によってその是正を図るという仕組みとなっております。
 このようなことを総合して言いますと、政府案では、民間分野について事後チェック型の仕組みとするということで、欧州各国と異なるところもある一方、米国のような民間の自律性に大きく任せることもしていないということで、我が国における社会の実情、制度的な基盤にのっとって、いわゆる欧州型と米国型の利点をミックスしたような規律を目指すものであります。
黄川田委員 OECD加盟三十カ国でありますけれども、整備状況、このうち二十五カ国が既に整備しておるということでありまして、トルコは別にいたしまして、日本、韓国、アメリカ、メキシコですか、この四カ国が検討中ということであります。アメリカは、まあ社会構造、特殊なものでありますけれども。
 我が国の個人情報の法整備、これがほかの国よりおくれていたという、その理由はどこにあるんでしょうか。
細田国務大臣 個人情報の保護法制の整備につきましては、公的部門と民間部門を包括的に規律する欧州型と、必要な特定分野のみを規律する米国型がありますが、我が国では、当面、必要な特定分野から法制化を進めることといたしまして、昭和六十三年に行政機関個人情報保護法が制定されたわけでございます。
 しかし、その後、官民を問わず、コンピューターやネットワークを利用した大量の個人情報の処理、流通が急速に発展をいたしまして、その後、個人情報保護法制の整備の必要性を与野党通じて強く議論されてきたところでございます。昨今において、そういう問題のある事案が急増しつつあるということも御存じのとおりでございます。
 また、この個人情報保護法がなぜおくれてきておるのかというようなことにつきましては、我が国における民間部門に対する規律は、営業の自由の保障との関係もありまして、米国同様自律的な規制にゆだねるべきとの考え方に立脚していたわけでございます。また、現実に、民間部門において個人情報にかかわる問題が大きく顕在化する状況にはなかったわけでございます。
 しかし、官民を問わず、急速にコンピューターネットワークを利用した大量の個人情報の処理、流通が行われるようになり、個人情報の漏えいなどが社会問題化したということを受けて、早急に法案を作成してきた、基本法制の整備が必要な状況に対応しなければならない、こういうことでございます。
黄川田委員 私、市町村行政にかかわってまいりましたので、どうも情報公開であるとかあるいはまた個人情報の保護などというものは、むしろ地方にあって先んじていろいろな仕組みをつくってきているんじゃないか、こういうことを強く感じておりますので、どうも国は、ずうたいが大きくてなかなか進まないじゃないか、こう思っておるものですから、お話しさせていただいたところであります。
 それで、政府案の個人情報保護法案の基本的問題について、これから幾つか質問していきたいと思っております。
 もともと、この個人情報保護法を制定いたしまして自己情報コントロール権を確立する必要性は、行政機関が国民の負担で集めた膨大な個人の情報、これを乱用しないように求めるということであります。
 それで、行政を規制する目的であったのに、政府案は、行政機関はほとんど自由に個人の情報を収集し、利用し、結合し、提供することができて、しかも、これに対するチェック機能が保障されていないというふうな気がするわけであります。これでは行政の透明性を確保するという情報公開の理念とは全く逆なのではないか、こう思うところもあります。行政が個人情報を自由に囲い込んでほしいままに利用するということは、それを合法化するための法案ではないかと言っても過言ではないと思っております。このままでは、せっかく確立しつつある行政の説明責任あるいはまた透明性の確保、この動きがもとに戻ってしまうんじゃないかとも思っております。
 大臣お話しのとおり、コンピューター社会は大変発達しておるわけでありまして、コンピューターによる検索、結合などを瞬時に行うことを可能にしておりまして、行政の前に個人が裸にされる、そういうふうなことが起きているのではないかと思っております。
 そこで、以上の、官の情報の独占、これらについての基本的な考え方、政府案はこれらに対して何ら対応がなされていないということを感じるのでありますけれども、総務大臣の見解を求めておきたいと思います。
片山国務大臣 黄川田委員の言われることは、私は誤解じゃないかと思いますよ。行政機関個人情報保護法は、行政機関に勝手に個人情報を扱わせないということなんですよ。ルールをつくっていくということなんです。しかし、個人情報を使わないと行政はできなくなっているんですね、時代的に。だから、そういう中できちっとルールをつくって透明な制度にし、公正な制度にし、厳重な制度にするということでございます。
 今回の四法案は、行政関係は三法案でございますけれども、個人情報の利用目的を具体的に明確にさせる、その上で、目的外利用や提供を厳格に制限する、個人情報ファイル簿は公表する、また施行状況調査結果による目的外利用等も公表する、こういうことをしておりますし、各省大臣の責任でやってもらいますけれども、総務大臣は、法の所管大臣として、企画立案のほかに個人情報ファイルの保有に関する事前通知、資料要求、意見陳述、そういうことによって総合調整をする。また、先ほども何度も議論になっておりますが、情報公開・個人情報保護審査会というものをつくりまして、個別の不服申し立て事案についての調査、審議を行う。
 こういうことをやっておりますので、私は、制度的な仕組みはできているので、あとは、しっかりと運用することだと考えております。
黄川田委員 地方の行政は、特に住民に身近なものとなって、いろいろな形で進んでいるわけであります。しかしながら、国の仕事といいますか、なかなか見えないところがありまして、そういう中で大量の情報が国家として扱えるということの中で、お上の仕事に心配しているという方々もおるわけでありますので、もちろん、国家公務員としてしっかりと仕事をすれば何も問題ないわけでありますけれども、いろいろ、さまざまな場面で具体の事例が時々出てくるものですから、そういう話をさせていただいたわけであります。
 それでもって、個人情報保護法制として必要不可欠なのは、行政機関個人情報保護法に、行政機関が個人情報を収集、あるいは結合、あるいは提供するに当たって、やはり第三者的な機関のチェックを受けるシステムの確立が大事だと思っております。逆に、このチェックシステムがなければ法制として落第だとも思っておるわけであります。そしてまた、個人情報を利用し、加工し、そしてまた提供等をしたときの記録を保存しまして、それを情報公開の対象にしっかりするんだということも大事だと思っております。
 そこで、政府案でありますけれども、野党案に比べて第三者機関によるチェック機能が欠落していると思っているわけでありますけれども、これに対してどう対応するのか、引き続いて片山大臣の見解を求めておきたいと思います。
片山国務大臣 野党案には、個人情報の目的外利用や提供や、あるいはセンシティブ情報をどう取り扱うかは第三者機関にかけろ、こういう案ですね。しかし、そうしますと、何度も申し上げますように、大変な膨大なものが持ち込まれるおそれがある。審査会の方も大変だし、行政機関の方も大変になる。ということは、むしろ行政の本体が大変な支障が出たり、行政が遅延したり、結果としては国民の皆さんに迷惑になるんではなかろうか、こういうことも考えられます。
 政府案では、開示請求の決定に対する不服申し立てがある場合には、大臣が決めるんですけれども、決める前には審査会にいろいろ議論してもらう、こういうことにしているわけでありまして、目的外利用というのが、例えば、おやめになった方の人事記録からどういう叙勲に据えようか、栄典ですね、そういうことをする場合にも目的外利用なんですね、ある意味では。そういうものを一々一々全部審査会に持ち込むというのはいかがかな、こういうのがあれの考えでありまして、だから第三者機関はそういうことに限定的に使いますけれども、全体としては、制度としては厳重な制度にする、国民の目から見て安心できる制度にする、こういうことでやっているわけであります。
黄川田委員 しっかりした行政をやっておれば、そんなに膨大なものが出てくるとか何かはないというふうに私は思っておりますので、むしろ第三者的に透明性を確保するということの方が最も大事だと私は思っているわけであります。
 それから次に、先ほど来お話がありましたけれども、個人情報保護についての不服申し立て、これの訴訟提起、裁判の管轄の関係なんでありますけれども、先ほどから大臣は、情報公開については、これについては実効性を欠くということから、既に原告住所地を管轄する高裁所在地にある地方裁判所に訴訟の管轄を認める規定を設ける修正をした、これは例外中の例外だという話でありますけれども、やはり先ほど来の議論のとおり、情報公開と個人情報保護は車の両輪だというふうに考えられるわけであります。
 そこで、重ねて伺いますけれども、情報公開法の制定経過、修正ということで取り込まれたわけでありますけれども、それに照らし合わせるなら、今回これを意図的に落としたとすれば、政府提案は国会を軽視するというふうに言われてもしようがないというふうな感じがするんでありますけれども、大臣はこれについてどう考えますか。
片山国務大臣 情報公開法の方が意図的な特例なんですよ。普通は行政庁の所在地の裁判所なんですね。それを、あれは大議論がありまして、修正か何かでああなったわけでございまして、その方が大変な特例なんですね。
 情報公開、できるだけ広く公開するということが制度の仕組みですよね。個人情報は守るんですよ、個人情報保護。ただ、本人に関与させようということ、自己情報については。そこで開示請求ができたり、訂正を請求したり、利用停止をしたり、そういうことをしているので、似ているんですよ。似ているんですけれども、違うところもかなりある。
 そういうことの中で、先ほど言いましたように、割に個人情報保護の方の、今までの法律ですよ、例で見ますと、医療関係や教育関係が多いので、現地で権限がおりて対応できているので、そういうことでどうだろうかというのが今回の考え方でございまして、裁判管轄については、司法制度改革の中での一つのテーマだと私は思いますので、大いに今後議論を深めていただければありがたいと思います。
黄川田委員 いずれ、国民の権利が、実質的にどこに住んでいても行使できる、保障されるようにしていただきたいと思っております。
 それで、基本的なところでありますけれども、この修正案が提出に至った経緯等について、ちょっと改めてお尋ねいたしたいと思います。
 政府が二年前に提出した個人情報保護法案でありますけれども、これは、メディアやあるいは我々野党四党の強い反対によりまして昨年十二月に廃案となり、そして今国会には大幅な修正をして新しい法案が提出されました。
 政府は、旧法案において、政府としては最善のものを考えていると、ずっと内閣委員会で繰り返し答弁しました。そしてまた、メディアからの、表現あるいは報道の自由を侵害するのではないかとの強い批判に対しても、報道、取材活動を侵害することではないと、これまた強く答えてきたところであります。
 そこで質問でありますけれども、今回、修正して法案を再提出してきたということは、これまでの法案が欠陥であることを認めたことなのか。特に、今回再提出された法案では五つの基本原則が削除されております。政府は、前国会まで、基本原則は努力義務でありまして、主務大臣の関与もないから報道、取材活動を侵害することはないと答弁してまいりましたが、それでは、なぜ基本原則を削除したのか。あわせて、これまた改めて細田大臣にお尋ねいたします。
細田国務大臣 前の法案を提出して、早いもので二年が経過するわけでございます。その間、いろいろな議論が行われて、そのことは今日に大変プラスになったと思うわけでございます。そして、かつメディア、その他の御批判もいただきまして、政府としてはそこの規制をする考え方は毛頭なかったわけでございますが、さまざまな憶測もございまして、本法案に対する批判も非常に高まったわけでございます。
 他方、二年たっておりますうちに、政府もe―Japan計画その他、政府にも大量のコンピューターを入れ、かつ光ファイバーを全国に整備し、インターネット等の加入率ももう飛躍的に上がるという状況になってまいりますと、パソコン自体の能力も非常に上がってまいりましたし、大変多量な情報を集める、そして処理をするという民間の企業もふえてきたわけでございます。
 したがいまして、政府としては、今のような状況のもとで、早急に法整備をしなければならないという必要性については、二年前よりもまたさらに強く感じておるわけでございます。そういった中で、誤解の生ずるようなことは本来意図しておりませんので、削除等の措置を施しまして、提出したということでございます。
 また同時に、二年経過いたしまして、野党の皆様からも四党の御提案ということで、やはり何らかのこういう保護法案について必要性を認められて出されて、与党案、野党案でこういう議論が行われることは非常にいいことだと思っております。
黄川田委員 また一方で、基本原則が消えてしまったことによりまして、逆に主務大臣の裁量の余地が広がるのではないかというふうなことも指摘する方々もおられまして、なかなか難しい問題と思っております。
 それで、残り時間が少なくなってきました。ちょっと飛ばしながら聞いてみたいと思います。
 今回の修正では、適用除外となる報道について、「不特定かつ多数の者に対して客観的事実を事実として知らせること(これに基づいて意見又は見解を述べることを含む。)」との定義が置かれたところであります。
 そこで、政府側の説明によりますと、報道の範囲が恣意的に判断されることのないよう定義を置いたとのことでありますけれども、そもそも政府が報道活動を定義してその範囲を決めてしまうこと自体に問題があるのではないかと思われるわけであります。
 また、報道をこのように定義してしまうことによりまして報道の概念が狭くとられてしまうのではないかという、これまた懸念の声が一部のメディアから上がっておるわけでありますけれども、これについて内閣官房にお尋ねいたしたいと思います。
藤井政府参考人 御説明申し上げます。
 報道機関に定義を設けたという趣旨は、今、委員の御説明の中にもありましたけれども、むしろ、適用除外をするという場合にはこの報道という概念を使わざるを得ないわけでございますが、ただ、前の条文では裸に置いていたということで、メディア等の方々が、むしろその報道の範囲を恣意的に判断されるのではないかという強い不安、懸念が示されたということでございます。そこで、この適用除外の趣旨をむしろ明確にするために、条文に定義を置くというふうになったわけでございます。
 また、この定義を置くということで、いわば客観的な基準、報道についての客観的な基準が明示されたということになるので、よりその判断が客観的にできるようになったのじゃないかと思っております。
 それから、広くなったか狭くなったかということでございますが、今回の定義というのは、あくまでも一般的に報道と考えられる範囲、そういったものを定義にするということで設けておるところでございまして、決して従来のような報道の概念を狭くしたりするというものではないと考えておるところでございます。
黄川田委員 今の答弁、なかなか理解しにくいところでありますけれども、報道の方が恣意的にという話でありますが、むしろ行政の方が恣意的な判断の余地が残っているというふうな形にとれるところもありますので、これまた新たな問題が逆に出てきたのかなと思っておるわけであります。
 それでは次に、ちょっと飛びまして、自己情報コントロール権についてお尋ねいたしたいと思います。
 個人情報を使われている個人情報の本人の権利を尊重する立場から、個人情報の本人が自分の情報の流れについてコントロールできるということを明記すべきであると私は思っております。野党提出法案においては、個人情報の取得、利用、第三者提供に関して本人が関与し、その他の個人の権利利益を保護する旨、第一条の目的規定の中に明記されておるところであります。
 そこで、政府案にも同様の規定を置くべきではないかと考えますが、これも先刻いろいろ質問されておりますけれども、改めて細田大臣の見解を求めておきたいと思います。
細田国務大臣 まず、自己情報コントロール権ということは、学者等の間で非常に幅広く議論されております。私、今ここに、憲法の、東大の芦部教授の十年前の「プライバシーの権利に関連する自己決定権」というような論文も見ておりますけれども、読んでみますと、今、野党が提案をされていることを自己情報コントロール権と考えているわけでは必ずしもない。つまり、ほかに今七、八人の学者のおっしゃっていることを比較検討しますと、今出されている内容は、結局、野党案において、このことは自己情報コントロール権であるよということをおっしゃっているという意味はわからないではないのですが、プライバシーの権利と同様、今後、いろいろな判例で積み上げて、この範囲はきちっとやろうねということが、議会においても、政府においても確立していくということが、理想的ではないかと思っております。
 決して私は概念を否定することを言っているのではなくて、学者の間でも、あるいは今後、判例を積み重ねて確立して、個人から見て何がコントロールすべき内容かを積み上げていけと。そうでないと、公益のためにコントロールできない部分もあるし、それから、どうしても研究その他で人類の発展のためにある程度提供しなければならない情報もあるということもあるわけでございます。
 そして、この政府案におきましては、個人の権利利益を保護する観点から、事業者による個人情報の取り扱いに対する本人の関与を重要な仕組みと位置づけまして、開示、訂正、利用停止、第三者提供に当たっての本人同意ということを明確に規定すれば、あえて一つの定義を持つ言葉を使わなくても本人の関与を規定することが可能でございますので、そのような規定が適当ではないかと思っております。
 一つの概念を提起しますと、今度はこの概念が絶対的なひとり歩きをすると、また各種事由との関係はどういうふうに整理するんだというような議論が起こるということもありますけれども、まあそれは副次的な内容として、これから学説的にも判例上も、あるいは我々行政、議会ともに、今後の考え方を整理していくべき大事な課題であると思っております。
黄川田委員 基本的な考え方については、ぜひとも認識していただきたいと思っております。
 それで、個人情報の保護でありますけれども、これは地方公共団体においても重要な課題であると思っております。実際、九九年の宇治市役所から住民基本台帳のデータが大量流出した事案など、地方公共団体からの個人情報の漏えい事件も少なくありません。そしてまた、総務省の調査によりますと、昨年四月現在の数値でありますけれども、約三分の二の自治体で個人情報保護条例を制定しておるわけであります。
 そこで、今後、まだ個人情報保護条例を制定していない自治体や、あるいはまた条例の中身が不十分な自治体については、この個人情報保護条例の制定や見直しが必要であると考えられるわけでありますけれども、このような地方公共団体の保有する個人情報の保護については、基本法である個人情報保護法案においてどのように取り組むべきと考えられておるのか、細田大臣にお尋ねいたします。
細田国務大臣 地方公共団体の具体的な問題については総務大臣がおられますが、本法案の第五条におきまして、個人情報保護に関して地方公共団体の責務を明らかにいたしますとともに、第十一条では、地方公共団体が保有する個人情報について、その性質、保有する目的等を勘案して条例の整備など必要な措置を講ずるよう、地方公共団体に努力義務を課しておるところでございます。
黄川田委員 それでは次に、行政機関の個人情報保護法について具体的にお尋ねいたしたいと思います。
 これもさまざま議論されておるところでありますけれども、今回野党四党が提出いたしました対案の大きなポイントとして、思想、信条といったいわゆるセンシティブ情報の取り扱いを原則として禁止する条項を入れたところであります。私の地元の岩手県の個人情報保護条例第四条でも、思想あるいは信条といったいわゆるセンシティブ情報に関する規定を盛り込んでおります。
 ところが、政府案では、これに関する規定がございません。そこで、本政府案でも、地方公共団体の条例のようにセンシティブ情報に関する規定を設けるべきではないかと私は考えておりますけれども、総務大臣の見解はいかがでしょうか。
片山国務大臣 先ほどお話がございました地方団体の個人情報保護条例、都道府県は大体全部つくっておりますが、市町村でまだつくっていないところがかなりありますね。三分の一か四割ぐらいある。そこで、全部この機会に、国の法律が今審議されているし、成立すると思いますので、ぜひつくってもらいたいということ。
 それから、一斉につくったわけじゃないですね。かなり前につくったもの、最近つくったもの、いろいろございますので、中身についても、国の行政機関個人情報保護法等を参考に見直してくれ、こういうことも申しております。
 そこで、今のセンシティブ情報なんですが、これは何度も当委員会でも議論されましたが、中身がなかなか固まらないですね。何がセンシティブか、これは人によって違う、状況によって違う。例えば、公職選挙法によれば、立候補の届け出には本籍を書いてもらわなければ困るんですよ。これは立候補の資格があるかどうか調べるわけですからね。ところが、就職のときに本籍を書くというのは、これは場合によっては就職差別になるという議論もあるので。
 そこで、このセンシティブ情報ということを、色分けするんじゃなくて、全体の情報について厳重に取り扱う、妙な利用はしない、こういうことが基本ではないかという考え方でございまして、こういうものも、やはりこれからいろいろな過程を経てセンシティブ情報というものが固まってくれば、それが認知されるようになれば、それは大いに検討する必要はあると私は個人的には思いますけれども、今の段階では、今の法制の方がベターではないかと思っております。
黄川田委員 では、大臣に重ねてお尋ねいたしますけれども、地方公共団体の条例にセンシティブ情報に関する規定が盛り込まれておるということについては、どのように評価いたしますか。
片山国務大臣 それぞれの地方自治体の状況に応じて皆さんで議論して決められているわけですから、それはそれでいいと私は思いますし、運用もしっかりやってもらえばいい、こういうふうに考えております。
 また、それが大変いいものであれば、我々としても、今後いろいろ検討する一つの資料にさせてもらえるということはあると思います。
黄川田委員 次に、このセンシティブ情報以外にも政府案には問題があると思っております。
 第一条の目的規定からしても問題があると思っておるわけであります。政府案は、「行政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、」という文言がありますけれども、野党案ではこの文言を規定しておりません。そこで、政府案は、個人の権利利益を保護することよりも行政の都合を優先させているのではないかと考えざるを得ないところもありますけれども、総務省の見解はいかがでしょうか。
松田政府参考人 お答え申し上げます。
 法文の目的規定の読み方でございますが、「行政の適正かつ円滑な運営を図りつつ、」の趣旨でございますけれども、それに続きます個人の権利利益の保護が第一義の目的であることをあらわしているわけでございます。決して、行政の都合を優先させるというものではないと考えております。
 もちろん行政も、国民の安全、福祉等のために重要な役割を果たしておるわけでございまして、個人の権利利益の保護を一面的に図るということだけではなく、行政の適正かつ円滑な運営との適切な調和を図りつつ権利を保護していくということであると考えております。
黄川田委員 いずれ、大量の情報を取り込まれるということは、本当に国民にとって不安感が募ることが多いわけでありまして、国民の権利の保護ということの中にあっても、どうも行政への不信感につながってしまうというところがありますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、データマッチングについてお尋ねいたしたいと思います。
 IT化が進展しますと、コンピューターを用いて簡単にデータを結合させることができるわけでありますが、特に、利用目的が異なる二つ以上の個人情報ファイルをコンピューターを用いて照合し、あるいはまた結合すると、思いも寄らぬところで個人の権利侵害につながりかねないと思っております。
 野党案では、このいわゆるデータマッチングについて、「個人の権利利益を侵害するおそれがあることに配慮しなければならない。」と明確に規定しておるわけでありますけれども、政府案ではなぜこのような規定がないのかを、これまた総務省にお尋ねいたしたいと思います。
松田政府参考人 お答え申し上げます。
 データマッチングは、個人情報ファイルをコンピューターにより照合または結合させるということでございますが、個人の権利利益を保護するために重要なことといたしましては、個人情報をみだりに目的外利用・提供させないということであると思っておりまして、データマッチングが行われるかどうかによるものではないのではないかと考えております。
 政府案では、まず、個人情報ファイル単位の利用目的を具体的に明確にさせますとともに、その上で、目的外利用・提供を厳格に制限していく、さらに、個人情報ファイル簿の公表、あるいは施行状況調査結果によりまして目的外利用・提供の状況の公表等、透明性を図っていくということによりまして、いわゆるデータマッチングも含めまして、行政機関により、みだりに目的外利用・提供が行われ、国民に不安感を抱かせることのないようにしていきたいと考えております。
黄川田委員 アメリカでは、八八年にデータマッチング規制を導入しておると聞いております。したがって、日本でも原則的にそれを禁止しまして法案に盛り込む必要があるのではないかという指摘、これは法曹界から出ておるところであります。
 政府は、目的外使用はしないと主張いたしておりますけれども、現状では、住基ネットですか、そういうもののデータをどんな形で行政機関が利用、活用するのかという不安な面もあるわけでありますので、いずれ、何の措置もとらなければ何か大変なことになるのではないか、こう思っておる次第であります。
 残り時間があと三分ぐらいでありますので、罰則規定についてちょっとお尋ねいたしたいと思います。
 昨年、防衛庁において情報公開請求者のリストが違法に作成されまして国民に大きな衝撃を与えたことは、記憶に新しいところであります。この防衛庁リスト事案の発生を防げない昨年の政府案が廃案になった、これも当然だと思っております。
 また、一方、昨年の国会審議で、政府は、行政機関の職員については既に国家公務員法の守秘義務などの罰則があるから、これ以上の罰則は不要である、こう説明しておられました。しかし、新たに提出された政府案では罰則が設けられておるわけでありますが、罰則は不要であると説明しながら、今回罰則を設けた理由はなぜなのか、最後に総務大臣にお尋ねいたします。
片山国務大臣 確かに、昨年の審議で、旧法、この前の法案で、罰則がなくてもやれる、既存の罰則の運用と懲戒処分、行政処分の組み合わせで十分機能できる、こういうことを答弁したことは事実ですけれども、国会でのいろいろな御指摘、御意見があり、世論の動向その他を考えて、与党とも十分すり合わせの上、今回は、必要なものは罰則を入れようじゃないか、こういうことになったわけでありまして、私は、去年の答弁でも、具体的な権利利益の侵害があって、明確な構成要件が規定できるのなら、罰則を入れることも一つの考え方だ、こういうことはもう何度も答弁しております。それが一つの考え方だという答弁はしておりますが、しかし、それは一つの考え方であって、旧法で十分やれるということを何度もまた答弁させていただきましたが、諸般の状況、国会における皆さんの議論を含めた上で、今回は処罰規定を導入いたしたわけであります。
黄川田委員 いずれ、罰則規定に基づく職員がふえないように、しっかりと総務大臣の仕事をお願い申し上げまして、終わります。
 ありがとうございました。
村井委員長 次に、漆原良夫君。
漆原委員 公明党の漆原でございます。
 個人情報保護法制についての政府案、野党案が出そろいまして、これにより、本会議における質疑、あるいは本特別委員会における各党の質疑がほぼ一巡したと大変喜んでおります。
 政府案、野党案についての論議が深まって、一致する点も相当あると感じられます。すなわち、IT社会の進展に伴う個人情報保護法制の早急な整備の必要性については、まず、すべての与野党で異論のないところであります。また、IT社会における個人情報の保護に関しては、業種、業態を超えた相当程度広範な法制が必要であるということも同様であるというふうに思っております。
 他方、私は、四つほど大きな論点の違いがあるというふうに考えております。
 第一点は、自己情報コントロール権やセンシティブ情報の取り扱いなどの、ある意味では理念的あるいは原理的な問題と言ってもいいかもしれませんが、それの趣旨を実定法の規定に明文化することの是非、メリット、デメリットがあります。
 第二番目は、監督機関や苦情処理に関し、第三者機関の創設に対して、各所管大臣、民間の個人情報保護団体その他の複層的苦情処理システム等の組み合わせのどちらがいいのかどうかという問題点があります。どちらが実効的かという論点があります。
 三番目は、情報主体の権利利益と個人情報を取り扱う事業者側の基本的人権を含む有用性とのバランス、どの程度事業者側に負担を課すかという問題点があると思います。
 四点は、実際問題として、メディア規制法案反対という運動に見られましたように、メディア等の本法案に対する不安、懸念がこの法制の整備をおくらせる要因の一つとなったということは否定できませんが、両法案がこのような不安解消に成功しているのかどうかという点があると思います。
 きょうは、このような論点について、政府、野党の双方に見解を述べていただいて、コンセンサスの得られるところをさらに拡大していきたいと考えていたところでありますが、本日は、主として政府案について議論をするということになっておりますので、それぞれ論点ごとに政府の考え方をお尋ねしたいというふうに思っております。
 質問の順序を逆にしまして、まず、メディア関係についてお尋ねしたいと思います。
 メディアとの調整の問題でありますが、政府が平成十三年に提出した個人情報保護法案においては、表現、報道の自由と個人情報の保護の両立を図れるよう十分な措置をしてあったと私は考えております。にもかかわらず、メディアの不安、懸念を払拭することができず、昨年末に廃案となった。このような二年余にわたる経過にかんがみても、メディアの不安、懸念を十分解消できるものになっているかどうかは重要であると考えております。
 そこで、今回の政府から提出されました新法案における修正でメディアの不安、懸念を払拭できると考えていらっしゃるのかどうか、細田大臣からの答弁を求めます。
    〔委員長退席、松下委員長代理着席〕
細田国務大臣 旧法案につきましては、本来、メディア規制を内容としたり目的としたりするものではなく、その意図も全くなかったところでございます。しかし、残念ながら、いろいろな条文が存在して、それを読まれた方から非常に不安、懸念が表明されたということも事実でございます。
 したがいまして、先国会で廃案になるに当たりまして、新しい法案を提出しようということで諸準備を行いまして、与党各党からもこういう形で修正してはどうかという御意見もいただいて、これを参考にしながら政府として法制局と内容を詰めてまいったわけでございますが、表現の自由と個人情報の保護の両立を図るとの旧法案の趣旨を一層明確にすることを基本として修正をいたしました。
 具体的に申しますと、第一に、旧法案で万人の努力義務として定めていた五つの基本原則を削除いたしたわけでございます。第二に、第三十五条二項において、報道機関等に情報を提供する個人情報取扱事業者についても、表現の自由を妨げることがないよう、主務大臣が関与しないということを明確化いたしたわけでございます。そして第三に、報道の範囲が恣意的に判断されることがないよう、第五十条第二項で報道の定義を条文に明記いたしまして、第四に、フリージャーナリスト等の不安、懸念に配慮し、第五十条第一項第一号で、義務規定の適用除外となる報道機関に個人も含まれることを明確化いたしたわけでございます。第五に、著述を業として行う方についても、大量の個人情報を取り扱う可能性があるかどうかという点はありましたが、だんだんコンピューター時代になって、そういう可能性もあるかもしれないということから、その認識に立って、第五十条第一項第二号で、これを義務規定の適用除外とすることを明記いたしました。
 これらの修正によりまして、旧法案に関連する各方面の方々の不安、懸念は払拭できるのではないかと考えております。
漆原委員 今大臣御説明いただきましたように、今回の再提出に当たっては、適用除外の対象として著述というものが新たに加えられて、報道以外の表現の自由についても、政府が関与しないということが明らかになったわけであります。
 政府にお尋ねしますが、政府案における著述の定義はどういうことになっているのか。それから、現在、著述に係る表現の媒体とかあるいは方法も進化しておりますが、このような表現方法の多様化も踏まえて、著述の定義はできるだけ広くとるべきだと考えておりますが、政府の考え方をお尋ねしたいと思います。
藤井政府参考人 著述の定義について御説明いたします。
 著述の定義自体は法律には規定していないところですが、一般通念によるということになるわけでございますが、その趣旨は、私どもとしては、一つは、著述とは、小説、評論、そういった、ジャンルを問わない、人の知的活動により創作的な要素を含んだ内容を言語を用いて表現するというものである。また、御指摘のとおり、その表現方法や手段、例えば出版物、放送、インターネット等、そういうものを問うてはおりません。
 それから、委員御指摘のとおり、現在、著述に係る表現活動のジャンル自体がボーダーレス化し、加えてまた、表現の媒体、方法も進化するなど多様化しているところでございます。こうした表現方法の多様化を踏まえ、政府としましては、著述の定義をできるだけ広くとるべきとの観点から、あえて定義づけを法律には明記していないというところでございます。
漆原委員 今回の政府案では、適用除外となる報道の定義が加えられました。野党案では、報道の定義がありません。
 報道とは一体何か、先ほど来いろいろな議論がなされておりますが、実は、これはきょうの朝日新聞の「私の視点」というところで、日本雑誌協会個人情報・人権等プロジェクトチーム座長、山了吉さんという方の文章があります。その中で、「むしろ改悪といえる条文もある。その最たるものが、適用除外の対象である「報道」の定義ぶりだ。」というふうに、報道を定義したことをもって改悪の最たるものだというふうな御主張がなされておるのです。
 ただ、これは報道が適用除外の要件になっているわけですから、与党案であれば主務大臣、野党案であれば第三者機関が、適用除外する報道とは何かというのは、必ずこれはどこかで判断せざるを得ない。適用除外の要件になっているわけですね。
 したがって、これをむしろ定義しないということは、主務大臣あるいは野党案においては第三者機関に、適用除外の要件である報道という概念を白紙委任することに等しいと私は思うわけですね。
 したがって、むしろ、主務大臣もしくは第三者機関の解釈権限を明確にする。自由なといいますか、白紙委任をしたわけではないわけだから、報道の定義を明確にして客観的な基準を設けるということは、むしろ主務大臣やあるいは第三者機関に自由な解釈権限を与えないということで、私はぜひとも必要だと思いますが、大臣の所見を求めたいと思います。
細田国務大臣 きょうも、なおこの定義につきまして疑問を呈する方があるわけでございます。
 今、漆原議員がおっしゃいましたように、はっきりとした定義を持つ言葉を使わなければならない。かえってそれは非常に法の目的にそぐわないことになるということがございまして、日本はこういう慣習法の国ではなくて、きっちりとした条文上の言葉の定義をしていかなければならないということがございます。
 戦後ずっとこの定義を調べておりますが、過去に、報道という定義は一切ございません。かつ、報道機関とかそういう引用は昭和二十六年ごろにありますが、これは何か水害でも起こったときに報道機関もこれに協力して市民に知らせなさいというような書き方だけでございますから、別に問題はないんです。
 権利義務等と関係いたしますので、やはり定義が必要だという法制局の法律的見解で入っておるわけでございまして、その場合、「不特定かつ多数の者に対して客観的事実を事実として知らせること」ということは、報道の方々もそういう意図でやっておられると思います。
 では、事後的に、これが事実でないことがわかったらどうするのかというような議論が非常に不安であるということをおっしゃいますが、これは事実として、当然報道の方はそう考えられて報道されることは明らかでございますから、これで足りる。結果的にそれが事実と若干違っておったとか、そういう場合はまた別の問題である。
 例えば、司法の問題等はどこでも起こっておりますが、この個人情報保護法上は、客観的事実として知らせる行為については、その内容の正しさいかんにかかわらず、報道であるということで、法制局ともしっかりと確認をしております。
漆原委員 私も最高裁に確認をして、報道を定義した判例はあるのかというふうに確認したところ、報道とは何かということについての判例そのものはないようなんですね。
 そこでお尋ねしたいのですが、五十条二項、今大臣がおっしゃった「不特定かつ多数」というふうに条文には書いてあります。「不特定かつ多数の者に対して」云々と。これは、「不特定または」にしないで、重畳的に「不特定かつ」という二つの要件を必要にした理由は一体何なんでしょうか。
藤井政府参考人 御説明申し上げます。
 「不特定かつ多数」とした趣旨は、もともと、一般的に報道というのは社会的な出来事をあるがままだれにでも知らせることということの、その、だれにでも知らせることという意味で「不特定かつ多数」という言葉を使っているということでございます。
 委員御指摘のように、不特定または多数ということであれば、逆に言えば、特定していなければいい、あるいは少数でなければいい、限定であってもいいということになって、例えば会員誌とか機関紙とか、その辺との接点がちょっと難しくなるのじゃないかなというふうに考えております。
漆原委員 例えば、特定の多数、これは報道にならぬわけですね。不特定の少数、これも報道にならない、こういうことですね。
 例えば、一般の業界紙なんかありますね。弁護士会では弁護士会の新聞があります。新聞協会には新聞協会の新聞があります。その業界の者しか読まないという新聞がありますね。だけれども、弁護士会であれば一万数千人の人が読んでいるわけですね。その業界でも、特定の人ではあるけれども、何万人の人も読んでいる。
 我が党にも公明新聞というものがあるわけです。これも大体公明党の支持者が読むわけであって、それでも何百万部という発行部数があるわけですが、これは報道にならぬのでしょうか。
藤井政府参考人 委員御指摘の例の中でおっしゃった業界紙ということになると、結構、不特定という場合もあり得るのじゃないかと思っております。
 ただ、クローズドにされた団体、労働組合なんかもそうかもしれませんけれども、そういった組合の中だけで流通するような機関紙、そういったものについては、むしろ、報道としての保護の必要性よりは、また別の観点からの保護の必要性というのはあるのかと思うんですが、やはり従来、報道ということで議論されてきた問題とは違うということであろうと思っております。
細田国務大臣 ちょっと抽象的に申しましたけれども、別の面でと言いましたけれども、その場合は、ほとんど著述に当たります。
漆原委員 私は、ほかのものに当たるかどうかお伺いしたのじゃなくて、なぜ報道が「不特定かつ多数」なんだという理由を聞いているのであって、例えば、先ほど申しました我が公明新聞は報道に当たるのですか、あるいは自由新報は報道に当たるのでしょうか。
藤井政府参考人 御説明いたします。
 あくまで立案担当者の見解ということでお聞きいただきたいと思うんですが、公明新聞になると、多分購入される方は、買おうと思ったら自由に買えるのじゃないかと思うんですが、そういう場合は、やはり不特定ということになろうかと思います。
 私も浅学なのでございますけれども、ヨーロッパなんかでも、ジャーナリズムといった場合、だれにも邪魔されずにオープンにされた情報源にアクセスすること、これが報道の本質だというふうなことで議論されてきているというふうに承知しておりますので、そこで日本語的な通念的な言い方を最初に申し上げましたけれども、社会的な出来事をあるがままだれにでもというところが、やはり報道の本質として理解されてきていたのじゃないかと思います。
 ただ、これは蛇足でございますけれども、今回私どもの立案している定義は、単にそういう社会的な出来事をあるがままにということだけじゃなしに、普通の実態としての報道というのは、大体、そういう事実についての主観的な物の考え方、意見、見解、そういったものが一体となっているのが通例でございますので、その部分も含めての報道と定義して適用除外にしているということは、御案内のとおりでございます。
漆原委員 今審議官がおっしゃった、アクセスがオープンだということは、これは重要なことなんでしょうね。少数の特定の固まりしか見られませんというのと、見られませんというのと見ているかどうかは別の話であって、だれでも購入したい、読みたいという、オープンになっているのであれば、これはやはり現実的には、ある意味では、公明党なら公明党の支持者の人しか見ていないかもしれないけれども、しかし、アクセスにおいてオープンであれば、これはやはり不特定だというふうに解釈する、これは非常にいいメルクマールだと私は思いますね。はい、わかりました。
 そこで、もう一つの要件として「客観的事実を事実として知らせる」と。一般的に、事実ということを真実というふうにお感じになる人がたくさんいらっしゃるんですね。事実は真実ではないと私は思う。ここで言う「客観的事実を事実として」というのは、真実を指すという言葉ではないというふうに思うんですが、まず解釈をしてください。「客観的事実を事実として知らせる」ということの、「客観的事実を事実として」云々ということの解釈をお願いしたいと思います。
藤井政府参考人 御説明いたします。
 これも繰り返しになるかと思うんですが、一般的な報道に対する物の認識のされ方として、社会的な出来事をあるがままにという、その社会的な出来事をあるがままにというのをいわば法律用語として置きかえたのが、「客観的事実を事実として」というふうにしているつもりでございます。
 では、主観的事実ということをすぐ頭に浮かべる方がいらっしゃるかもしれませんが、私どものいろいろの調査結果分析等を通じまして、主観的と申しますか、そういったものは、むしろ、著述なんかに見られるように、人の意見、見解、そういった別のメルクマールで従来保護されてきていたわけでございまして、報道が報道たるゆえんというようなのは、そういう内にある認識とか意見とかそういうものではなくて、むしろ、外在する社会的な出来事をあるがままにということで認識されていたというふうに考えて、こういう「客観的事実を事実として」という言い方で表現しているということでございます。
漆原委員 本会議の席上で私は、客観的事実が客観的真実と違った場合、いわゆる誤報でも、それは報道になるのかというふうに大臣にお尋ねしたら、なるというふうにおっしゃっておられた。私は正しいと思っておりますが、その場合に、客観的真実でないことを客観的事実と伝えたこと、これは報道ですよね、そこに報道側の故意過失を問うのか問わないのか。これはいかがでしょう。
藤井政府参考人 御質問の件でございますが、なかなかちょっと故意過失というとらえ方が難しいのかなというような気がしております。
 と申しますのは、ここで言っているのは、あくまで報道機関が報道目的で個人情報を取り扱うとき、その場合の報道という概念ですが、もっと平たく言えば、いわば報道機関の業とする利用目的のようなものでございますので、もともと故意過失というようなことを、目的ですから結構主観的な要素が入っているとは思うんですけれども、故意過失ということとはちょっと違った局面かなと思っております。
 違った御説明の仕方をするならば、例えば、誤った報道を意図的に流そうとしたかとか、あるいは正しい報道を意図的に流そうとしたか、あるいは誤った報道を過失で流そうとしたかという場合は、多分、刑法上の名誉毀損とか民法上の不法行為のところではあるいは問題になるのかもしれませんが、私どもの御提案している法案では、あくまで報道機関の個人情報の取り扱いの利用目的が報道目的かどうかということを言っているわけで、先ほど委員御指摘のとおり、そこで個々の報道の内容が結果的に誤っていようがどうが、利用目的さえ報道目的であれば、それは適用除外の対象になりますというようなことになるということでございます。
細田国務大臣 明確に言っておきましょう。報道の方もたくさん聞いておられますし、いろいろ長く説明するといろいろ誤解があってはいけませんから。
 そういう問題は、あくまでも民事法あるいはもし刑法等の要件に当たるかどうかということで、別の次元で処理されるべきものだと割り切っております。
漆原委員 私、そのとおりだと思うんですね。
 要するに、こう書いたことによって、きょうも実は、先ほど申しました山さんの話の中では、「修正案は「報道」の定義にあたって、「客観的事実」という言葉を論議なしに使っている。」という一文があるんです。ただ、これは、私は多分に誤解に基づくものだと思うんですね。客観的事実とは客観的真実じゃないんだということも何回も言っている。報道の性格によって、性質によって判断されるんであって、中身じゃないんだということを何回も大臣もおっしゃったし、私もそう思っています。だから、あえて今、極論をした御質問をさせてもらったわけなんですが。
 誤った報道を、客観的真実と異なる報道を意図的に流した、これでも報道に当たるんだというのであれば、私は安心。判断基準が、内容ではなくて、客観的事実として知らせたかどうかという外形上で判断するんだというふうに私は判断しているんですが、大臣、よろしいですね。
細田国務大臣 まさに、報道というのは多くの人にそういうことを知らしめる役割でございますので、全くおっしゃるとおりでございまして、その内容が結果的に事実と違っておるかどうかということとは一切関係がございません。
漆原委員 明確な答弁、ありがとうございました。
 もう一つだけ報道についてお尋ねしたいんですが、報道と密接不可分なものとして取材活動があります。報道を適用除外とした以上は、私は、メディアによる取材活動も当然適用除外になるというふうに思っておりまして、最高裁の判例を調べましたが、昭和四十四年の最高裁大法廷の判例がありました。
 こういうふうに書いてあります。「報道の自由とともに、報道のための取材の自由も、憲法二十一条の精神に照らし、十分尊重に値するものといわなければならない。」こう判示しておりまして、さらにこの判例が、昭和五十三年五月三十一日、最高裁第一小法廷においても同じくこの判例がそのまま引用されて現在に至っているというふうに私は認識しておりますが、いかがでしょうか。この報道の中に取材活動も含むんだという解釈でよろしいかどうか、確認をしておきたいと思います。
藤井政府参考人 この問題は、当然、委員の御指摘のとおり、含みます。
漆原委員 昨日の委員会では、報道かどうかをだれが判断するかについて、まだ誤解に基づいた議論がなされていると思います。
 そこで、細田大臣にお尋ねしますが、報道機関の主務大臣の関係について、もう一度政府のお考えをお尋ねしたいと思います。
細田国務大臣 報道機関について主務大臣はございません。
漆原委員 報道機関に主務大臣はない。そうすると、報道は、何ら全く報道機関についての紛争を解決するところはないんでしょうか。
細田国務大臣 昨日も多少問題になった点がございます。それは、報道機関が報道と全く関係のない活動をしておった、それに関連して苦情の申し立てその他があった場合、あるいは一部でも報道の一部だと考えられるようなことについて苦情の申し立てがあったりした場合、これについて、後者については、この条文によりまして、一切報道とみなされます。
 実は、そこで、きのうも最後にきっちり答弁したんですが、逆に、結論的に曲解されたような締めくくりをされた方がおられましたけれども、例えば文化センターという、その中身が囲碁、将棋とか俳句やお花とか、そういうものを教えるセンターを別途つくっておられるところも、大変有名なところもありますね。ところが、地方などでそういう活動をやっている、あるいは旅行のあっせんのようなことをやっている事業部的なものがあります。
 万一、全く報道と関係のない業務において何か苦情があった場合は、例えば旅行業であれば関係の省ということもあるし、その他のことについては主管庁が発生することがありますが、それは両者の均衡論なんですね。つまり、子会社でやっておれば、やはり別法人ですから、そこは報道の目的がないわけです。何とか文化センターという、あるいはカルチャーセンターでもいいんですが。
 それと、では、報道の中の事業部としてそういうものがあった場合には、これは報道だから、一切法人の中に入っているんだから全然別扱いになりますよというと、やはり法のもとでの不均衡が発生しますから、専ら、そういう目的があれば、観念的にはやはり主務大臣をその事業について置きますよということだけを申しました。
 しかし、実際そんなことがあるのかといえば、まずなかろうということは思っております。しかも、多量の情報を処理して全く報道と関係のない事業を一部でやっておる、そこで不祥事が発生する、そういう案件はないものと思っております。まずないものと思っております。
    〔松下委員長代理退席、委員長着席〕
漆原委員 報道の関係で最後にもう一点だけ。
 野党案は、適用除外の要件として、個人情報の取り扱いの目的のみを規定して、取り扱い主体の要件を外しています。私は、これでは適用除外の範囲が広範囲に広がり過ぎるというふうに思っております。
 そこで、大臣にお尋ねしますが、野党案のように、適用除外の要件を目的だけとするということの問題点について、具体的に御説明いただきたいと思います。
藤井政府参考人 適用を除外される報道の要件といたしまして、政府案は、報道機関という主体と報道目的の取り扱いという行為の二段階にしておるところでございます。野党案は、その主体を除いておられるということでございます。
 ちょっとそこは、私どもも説明を十分承っていない段階ですので、なかなか批判めいたことは申し上げられないんですが、ただ、例えば一般企業なんかの広報宣伝活動なんか、こういったものとはどういう線引きが可能なのかなというようなのは、ちょっと難しい問題だと思っております。
 それから、野党案では第三号で、単に、不特定かつ多数の者に対して情報を発表し伝達する活動で、二つぐらいの例外の例外を例示されて政令で委任されているわけですが、この二つの例だけでは、実際、閣議決定でどういうものを除いていいのかというところがちょっと不明確かなというようなことで考えているところでございます。
漆原委員 時間がなくなりましたが、最後に自己情報コントロール権についてお尋ねします。
 先ほど来、この自己情報コントロール権というのは日本ではまだ確立した概念になっていないんだ、これを実定法に取り込むことは問題があるというふうな御答弁がなされておりまして、私もそのとおりだと思っております。
 この野党案の中にありますように、自己情報コントロール権というのを日本の法制で取り入れた場合、確立した概念として入れた場合、情報の取得だとか、情報の開示だとか、あるいは取材の適正だとか、そういうところに全部これはかぶってくるわけであります。私はそう思うんですね。
 我々は、メディアに対する配慮という観点から、基本原則を外しました。この基本原則があることによって、メディアが、著しい報道あるいは取材の萎縮効果があるんだ、萎縮を受けるんだ、取材活動を阻害するんだという批判を受けて、今回、新法では、この基本原則という、これは努力義務でありまして、何も法的義務はない、具体的義務はないんだけれども、努力義務なんだけれども、それを根拠にして、メディアが何らかの萎縮効果があるというふうに言われるのであれば、何もメディア規制が目的ではないわけだから、では外しちゃおうということで今回外したわけなんですが、しかし、野党もこれは外しているわけですね。
 しかし、考えようによっては、自己情報コントロール権というものを確立したとなると、概念を認めたとなると、逆に、五原則を外した意味がなくなるんじゃないのか。むしろ、五原則を、あれは努力義務だったんだけれども、今度は情報をとられる方の権利ですから、権利ということは、もっと明確に義務が相手に発生するわけですね。そういう意味では、五原則を規定した以上のメディアに対する報道萎縮効果、規制効果というのはあるんじゃないかなと私は思っているんですが、大臣の所見を求めます。
細田国務大臣 自己情報コントロール権というのは、先ほどもちょっと御答弁の中に申し上げましたけれども、学説としては存在するわけでございますし、それから、プライバシーの権利の一種といいますか、非常に密接な関係のある、幅広い個人の権利である。
 それでは、その中身はどうであろうかということについて、国際的にも、あるいは日本の学者の間でも、さまざまな議論が行われております。最も広義に解すれば、自分に関する情報はすべて自分がコントロールすべきであって、人がいろいろ介入することはすべて排除できるのを大原則とするという最も極端なものがあると思いますね。しかし、それでは世の中が立ち行きませんから、そうではない、公益のために公開をせざるを得ないものもありますし、公益のために使われるものもあるということで、だんだん中身が絞られてくる。
 その絞られ方が、今後もうちょっと、この個人情報保護法の政府案が実施されますと、おのずと明らかになってまいりますし、先ほど来、野党の先生からも御質問がありましたけれども、その中で、特別法でやはりきちっと規制した方がいいものがあるじゃないかというものもあるんですね。
 それは、もうコンピューター時代を迎えて、内容的にはいろいろ問題が発生するものもあると思いますから、余り硬直的に物を考えずに、今後弾力的に考えるということが一つ。それから、やはりこの法案、政府の法案の基本原則、適法、適正な取得、透明性の確保等、はっきりした原則のもとに、余り強いコントロール権を大上段に出してまいりますと、逆に憲法上の自由との関係も、おっしゃるように、検討をさらに深めなければ、そこで利害の衝突が起きる面もございますので、まだそういったことを具体的に、もし自己情報コントロール権に類する概念であるとすれば、まだ時期尚早ではないかと思っております。
漆原委員 以上で終わります。ありがとうございました。
村井委員長 次に、山谷えり子君。
山谷委員 保守新党の山谷えり子でございます。
 今、IT化に伴いまして、民間企業からの顧客名簿の流出やホームページからのさまざまな漏えい事例が頻発しておりまして、新聞報道等をにぎわわせております。漏えいの規模も、多いケースでは数十万件に上って、また、業種を見ましても、デパート、金融、電気通信事業者といったさまざまな分野で事例が発生しております。平成十四年でも、例えば証券会社であるとか食品メーカー、パソコン教室、お見合い情報、エステ、ことしに入ってからも大手の塾などの大きな事例が、件数が発生しております。
 国民生活センターが一昨年、公表しました調査結果によれば、社会や生活の情報化によって自分の個人情報が侵害されやすくなると感じている消費者は七一%に達しております。
 私も子供三人おりまして、さまざまな情報が漏れているなというようなことを感じざるを得ないようなダイレクトメールが我が家に届いておりまして、これは本当に多くの国民の共通の思いではないかと思います。
 また、ある知人は、ある調査会社で調べてもらったところ、自分が何月何日に何を買ったかまで詳細に教えてくれて非常にびっくりしたというようなことを言っておりました。
 多重債務者名簿とか高額納税者名簿、ネット通販利用者名簿などなどは、お金さえ払えば手に入るというような、もう何か丸裸状態というような感じで、このような情報が悪用されるというケースも後を絶ちません。
 民間分野において、個人情報の取り扱いについて規律した包括的な法律はなくて、基本的には企業の自主的な取り組みにゆだねられている状況ですけれども、この状況がこのような状態では非常に不安である。IT社会における個人情報保護法、OECD加盟国すべて整備済みという形で、日本での今回の民間企業における個人情報の取り扱いについての法整備について、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
細田国務大臣 山谷議員がおっしゃいますように、最近ちょっとおかしいなという事例もたくさん出ております。
 例えば、あるデパートのカードをつくりますと、どうも関係のないような、デパートのせいかどうかわかりませんけれども、通販会社から毎度こんな分厚いダイレクトメールが来て、通販で買いませんかというのが来たり、ほかに、おやと思うような教育情報の関係の企業からダイレクトメールが来る。どうしてこんなに住所や郵便番号まで含めてわかっているんだと。あるいは子供の名前まで書いてあるとかですね。
 やはり私は、このコンピューター時代に、個人情報をきっちり守らなければならない状態が本当にふえていると思うわけでございまして、こういった環境の中で、ぜひとも今回きちっとした法整備を行いたいと思っております。
 それで、私は、相当、今までの明らかな情報漏れ、例示として議員の先生方にも漏えい事件というのをお見せしておるわけでございますが、平成十二年から平成十五年までに五十七件例示、大きいものは、何千人、何万人という漏えい事件をお出ししております。その中で、本当に悪意に満ちているとはっきりできるような案件は十五件なんですね。あとは、うっかりミスに違いない案件が四十二件もあります。
 ということは、例えば、ホームページで懸賞募集したらどんどん懸賞募集の氏名が集積して、それが次に応募した人にみんな漏れてしまうようなずさんなコンピューター処理をしている、こういう例が非常に多いんですよ。これは全く初歩的なミスでございますので、行政庁の方できっちり、あるいは関係の団体の方で指導し、こういうソフトウエアをつくれば防護できるよといえば防護できるものがたくさんある。しかし、あと、これからの問題は、故意にこれをやってしまうようなものはしっかりと抑えなければならないんですね。
 それから、カード会社の会員になるときに、よく書いてあるんですよ、よく見ると。私はそういうカードをいっぱい集めてみろと言って集めたんですが、私の系列の会社があなたに御連絡通知をすることがありますよと書いてあるんですね。結構でございますかと書いてあって、ちゃんとノーと書かないとイエスと言ったことになってしまうような記入がある。その中には、あなたの財産は幾らですか、貯金は幾らですか、持ち家ですか、勤務先、幾らですかとみんな書いてあるんですね。
 それは、消費者としてそういうことを書かざるを得ないような、クレジットカードにしても、生命保険にしても、いろいろな要件があって、これらがまたいろいろ漏れるもとになるということで、やはり政府としてそういったものを業種別にもしっかりと押さえていって、個別の事案が生ずるたびにきっちり押さえていくことによって個人情報の保護を図っていくことが喫緊の課題であると思っておりますので、ちょっと長い答弁になりましたけれども、そういった環境整備をするための法律であるということで御理解いただきたいと思います。
山谷委員 初歩的なミスはともかく、個人情報を自分たちの財産としてしか見ていない業界とか、悪質性に気がついていない業界とか、業界によってさまざまなレベルがあると思いますので、まず実態を把握する、それから消費者に対しても教育をしていくということが大事ではないかと思います。場合によっては、業界によっては、本人への通知の義務づけということも考えていいかもしれないというふうなことで、本当に現在進行形の状況なので、さまざまな事案が出てくると思いますので、それに関しては臨機応変に対応していくことが大事だというふうに思っております。
 次に、この法案の成立に向けましてこれまで大きな障害となっておりましたメディアとの関係なんでございますけれども、今回再提出された法案においては、先日、本会議におきまして、総理も、プライバシーの保護と報道の自由を両立させるという法案の趣旨が一層明確になったというふうに答弁されております。
 そこで、細田大臣にお尋ねいたしますけれども、今の委員会の中でもいろいろなやりとりはありましたけれども、報道の自由との調整の考え方について、この修正案を踏まえてお答えいただければと思います。
細田国務大臣 報道の自由は憲法上も保障されておりまして、個人情報保護法案においても最優先にその自立性が確保されるべきものであると認識しております。
 こうした観点を踏まえまして、政府案におきましては、報道分野に対し、主務大臣による勧告、命令などの関与を伴う法案第四章の個人情報取扱事業者の義務について適用を除外しているところでございます。
 なお、再提出法案における修正点としては、こうした趣旨を徹底するために、第一に、法三十五条第二項において、報道機関等に情報提供する個人情報取扱事業者についても、表現の自由を妨げることがないよう、主務大臣が関与しないということを明確化しております。
 第二に、報道の範囲が恣意的に判断されることがないよう、第五十条第二項において、報道の定義を条文に明記しております。
 第三に、第五十条の第一項第一号において、フリージャーナリスト等の不安、懸念に配慮いたしまして、義務規定の適用除外となる報道機関に個人も含まれておることを明確化しております。
山谷委員 昨年廃案になりました法案は、メディアや作家、取材の方たちが本当に不安を感じて反対するのも私は当然だったというふうに思います。今回メディア規制につながるとされた条項がすべて削除されたという意味で、報道の自由、表現、学問の自由に非常に留意したということは評価していいというふうに思います。
 適用除外、第五十条の中に出版社の明記がないんですが、出版社はどのように位置づけておられるんでしょうか。
藤井政府参考人 御説明申し上げます。
 出版社の場合は、主として著述されたものを刊行される場合、それから雑誌社のように報道雑誌というものを出版される場合、本当に、総合メディアと言われるように、いろいろなものがあるというふうに考えております。
 そこで、最初に、報道雑誌を出版されているような雑誌社の方は、これはもう間違いなく報道を業とする者ということになりますので、まさに報道機関そのもので、報道機関の報道目的ということで適用除外になる。
 それから、今回、著述というのを新たに適用除外に設けておりますけれども、それ以外の出版社のほとんどの出版物は、それこそ、先ほども御説明したんですが、ジャンルを問わないわけですし、それから、一連の著述行為を目的とした個人情報の取り扱いであれば、それはみんな著述目的の取り扱いということになりますので適用除外になるというような形で、平たく言えば、報道機関か著述ではほとんど除かれるというふうに御理解いただければと思います。
山谷委員 憲法二十一条には、「言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」というふうにあるわけで、出版という言葉が出ているわけでございますが、ここにあえて明記しなかった、あるいは明記してもいいのか、その辺はいかがですか。再度質問いたします。
藤井政府参考人 御説明いたします。
 これも、今ほど御説明したことと関連しますが、出版社というようなのはやはり総合メディアというふうに認識されているかと思います。総合メディアと申しましても、報道雑誌をやっている方は相当大きなものがあることも事実なんですが、ただ、報道機関のいわば典型例として例示するということであれば、ちょっと出版社というようなのはそぐわないんじゃないかというところで、いわば例として例示していないだけでございまして、法律的な意味としては、もう紛れもない、そういう報道雑誌をやっているところは報道機関ということで適用除外されるということでございます。
 なお、著述については、これは報道のところとは全然違ったつくり方になっておりまして、著述の主体の例示は一切しておりませんので、そういうことで出版社も例示していないということでございます。
山谷委員 実態的には適用除外ということでよろしいわけですね。
 適用除外となる報道機関等も大量の個人情報を現在扱っておりまして、実際、その個人情報の取り扱いがプライバシー侵害になる事例も少なくありません。報道機関や文筆業者といえども、個人情報の取り扱いには十分慎重な注意が必要だと思います。自主的な取り組みが何もないというのでは、やはり多くの人は不安を感じてしまうのではないかと思います。
 そこで、米田副大臣にお尋ねしたいんですけれども、今回再提出するに当たって、引き続き、第五十条第三項の報道機関等の自主的努力義務規定が残されております、野党案にはありませんが。その規定の趣旨や意義について答弁をお願いしたいと思います。
米田副大臣 お答えいたします。
 先ほど大臣が答弁申し上げましたとおり、報道等の分野につきましては憲法上も自由が保障されておるわけでありまして、その点にかんがみまして、政府案におきましては、主務大臣による勧告、命令などの関与を伴う法案第四章の個人情報取扱事業者の義務について適用を除外しているわけであります。
 また一方で、お説のとおり、報道分野におきましても、人格尊重の理念のもとに、個人情報を慎重に取り扱うべきことに変わりはございません。そこで、政府案では、法案の第五十条第三項の努力規定を設け、個人情報の適正な取り扱いを確保するための必要な措置をみずから講じていただくこと、こういうことにしているわけであります。
 ただし、これはあくまでも自律的な措置でございまして、報道機関等に対して規制的な効果を有するものではないというふうに考えております。
山谷委員 報道機関においては、これまでもBROなどの自主規制機関を設置するなど努力をしているわけでございますので、今後ともその努力に期待をしたいというふうに思います。
 続きまして、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案関係についてお尋ねしたいと思います。
 昭和六十三年に現行法である行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律が既に制定されております。きのうの委員会の席上で若松総務副大臣より、今回の法案は、現行法に比べて、対象を、電子計算機処理された個人情報から紙に記録された個人情報を含む、行政機関が保有するすべての個人情報に拡大すること、それから、個人情報の本人による開示請求権に加え、訂正、利用停止を請求権として新たに加えること、また、国民からの不服申し立てを調査審議するため、情報公開審査会を拡充し、情報公開・個人情報保護審査会を設置するなど、現行法を大幅に充実強化するものであるとの御答弁がございました。
 国民の権利利益の保護を図るためにも、また国民からの信頼を確保するためにも、行政機関の個人情報保護法が大幅に充実強化されることは望ましいことでございます。特に情報公開審査会については、既に情報公開制度において、行政機関の長の決定に対する不服申し立てについて客観的立場から調査審議を行うという重要な機能を持っております。
 マッカーサーと昭和天皇のやりとり、会議録を公開せよというときに、省庁の方でいろいろな抵抗があった。それを、いや、すべしというようなことを言われたというのは大変な見識がある審査会というふうに思っておりますけれども、この法律が通りますと、これをもっと充実した組織にすべきなのではないか、そういう事態が生じてくるのではないかと思いますが、その辺はどのようにお考えでございますか。
松田政府参考人 お答え申し上げます。
 先生御指摘のように、この情報公開・個人情報保護審査会は大変重要な役割を果たす機関になるわけでございまして、行政機関の個人情報の取り扱いに関しまして不服申し立てがございました場合に、それを調査審議するということでございます。そのため、審査会は、その委員が両議院の同意を得て任免されるという非常に権威が高い機関と法律上させていただいているところでございます。
 現在、先ほども御指摘にございました情報公開審査会、大変活発な審議をしていただいているところでございますが、これを改組いたしまして、情報公開・個人情報保護審査会ということにしようとしているわけでございますが、この法律施行後におきます人員面につきましては、審査会の業務量を勘案しまして、委員の体制ですとかあるいは事務局の体制を強化いたしまして、審査会が持つ重要な機能に支障を来さないようにしてまいりたいと考えております。
山谷委員 充実した組織にしていただくと同時に、また、国民はこのような審査会があるということを知らないわけですから、十分な広報活動というのもしていただきたいというふうに思います。
 八月に住民基本台帳ネットワークシステムが本格稼働する。市民は非常に警戒感、不信、不安を持っております。電子政府により行政の効率化、スリム化が進むというメリットも大きいわけでございますので、個人情報保護法制は、今のIT時代において、国民生活の保護のために非常に不可欠な基盤整備のための法制であるというふうに考えますので、やはり何らかの最低限のルールが必要である、そのためにも、いつまでもたなざらしにしていいというわけではないというふうに私は考えております。
 また、成立後、恐らくさまざまな問題が出てくるというふうに考えられますので、見直しや検討の姿勢というものを大切にしていただきたいと思います。いろいろな業界におきまして、法施行後、状況の実態把握、分析、見直し等々をしていきながら、このIT時代が、プライバシーの保護とそして利便性の向上というような、両方が両立して国民生活が豊かになるような形で進んでいくことを望んでおります。
 以上で質問を終わります。
村井委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時散会


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