衆議院

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第7号 平成15年7月2日(水曜日)

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平成十五年七月二日(水曜日)
    午前九時二分開議
 出席委員
   委員長 高村 正彦君
   理事 浅野 勝人君 理事 中谷  元君
   理事 浜田 靖一君 理事 松下 忠洋君
   理事 末松 義規君 理事 中川 正春君
   理事 赤松 正雄君 理事 一川 保夫君
      荒巻 隆三君    伊藤 公介君
      金子 恭之君    上川 陽子君
      北村 誠吾君    小島 敏男君
      近藤 基彦君    新藤 義孝君
      杉浦 正健君   田野瀬良太郎君
      高木  毅君    谷田 武彦君
      谷本 龍哉君    仲村 正治君
      福井  照君    牧野 隆守君
      松浪 健太君    松宮  勲君
      三ッ林隆志君    宮腰 光寛君
      森岡 正宏君    伊藤 英成君
      大畠 章宏君    桑原  豊君
      原口 一博君    平岡 秀夫君
      前原 誠司君    山口  壯君
      吉田 公一君    渡辺  周君
      佐藤 茂樹君    丸谷 佳織君
      佐藤 公治君    達増 拓也君
      中塚 一宏君    赤嶺 政賢君
      木島日出夫君    吉井 英勝君
      阿部 知子君    今川 正美君
      金子 哲夫君    山谷えり子君
    …………………………………
   外務大臣         川口 順子君
   財務大臣         塩川正十郎君
   国務大臣
   (内閣官房長官)     福田 康夫君
   国務大臣
   (防衛庁長官)      石破  茂君
   内閣府副大臣       米田 建三君
   防衛庁副長官       赤城 徳彦君
   外務副大臣        茂木 敏充君
   防衛庁長官政務官     小島 敏男君
   外務大臣政務官      新藤 義孝君
   政府特別補佐人
   (内閣法制局長官)    秋山  收君
   政府参考人
   (内閣官房内閣審議官)  増田 好平君
   政府参考人
   (内閣府国際平和協力本部
   事務局長)        小町 恭士君
   政府参考人
   (防衛庁防衛局長)    守屋 武昌君
   政府参考人
   (防衛庁運用局長)    西川 徹矢君
   政府参考人
   (外務省総合外交政策局長
   )            西田 恒夫君
   政府参考人
   (外務省北米局長)    海老原 紳君
   政府参考人
   (外務省中東アフリカ局長
   )            安藤 裕康君
   政府参考人
   (外務省条約局長)    林  景一君
   衆議院調査局イラク人道復
   興支援並びに国際テロリズ
   ムの防止及び我が国の協力
   支援活動等に関する特別調
   査室長          前田 光政君
    ―――――――――――――
委員の異動
七月二日
 辞任         補欠選任
  金子 恭之君     近藤 基彦君
  高木  毅君     三ッ林隆志君
  宮腰 光寛君     上川 陽子君
  佐藤 公治君     達増 拓也君
  木島日出夫君     吉井 英勝君
  金子 哲夫君     阿部 知子君
同日
 辞任         補欠選任
  上川 陽子君     宮腰 光寛君
  近藤 基彦君     金子 恭之君
  三ッ林隆志君     高木  毅君
  達増 拓也君     佐藤 公治君
  吉井 英勝君     木島日出夫君
  阿部 知子君     金子 哲夫君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法案(内閣提出第一二〇号)
 平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第一二一号)


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     ――――◇―――――
高村委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法案及び平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 両案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官増田好平君、内閣府国際平和協力本部事務局長小町恭士君、防衛庁防衛局長守屋武昌君、防衛庁運用局長西川徹矢君、外務省総合外交政策局長西田恒夫君、外務省北米局長海老原紳君、外務省中東アフリカ局長安藤裕康君及び外務省条約局長林景一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
高村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
高村委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤茂樹君。
佐藤(茂)委員 先週の六月二十三日に繰り上げ当選をいたしまして、三年ぶりに当院に復帰してまいりました公明党の佐藤茂樹でございます。よろしくお願いいたします。
 私は、三年ぶりにこの第一委員室に入らせていただきまして、ずっと委員会の質疑を聞かせていただいたんですが、最初に私のこのイラク復興支援の問題に関して考えるところを述べまして、質問に入らせていただきたいと思うんですけれども、このイラク復興支援の問題というのは、私は、これからの日本の国際平和協力のあり方が問われている問題であろう、そのように一言で言えば言えるのではないか、そのように思うわけでございます。イラクと同様の問題がこれから生じないことを願うわけでございますけれども、しかし、同様に、伝統的なPKOではなかなか対応できない、そういう問題が生じたときにどういう対応を日本がしていくのかということがこれから問われていくモデルケースにこのイラクの問題というのはなるのではないのかな、そういうふうに考えるわけでございます。
 法案の第一条の「目的」のところにも、日本が主体的また積極的に寄与するんだ、そういうふうに言われております。この主体的、積極的に寄与するという意味合いでございますけれども、なかなか政府としては言いにくいんでしょうけれども、しかし、いろいろな新聞で出ておられる識者の論調、またきのうの参考人の御意見なんかを拝聴しておりますと、一つの角度としては、やはり日本が世界第二の経済力を有していて、そして中東に石油の八〇%から九〇%の依存をしておる、そういう日本がイラク復興に協力していくということは当然の国際責務であって、それが日本の国益になるんだ、そういう国益論的な観点というのが一つあると思うんです。
 それに加えまして、私は、やはりもう一つ大事なのは、これから二十一世紀、世界の中で日本としてどういう国であろうとしていくのかという日本の進むべき道が今回問われているんではないのかな、そのように思うわけですね。今まで、国際社会の中にありまして、どちらかというと日本は経済力で貢献をしてきたわけでございますが、これからの二十一世紀にあって、日本の国というのは、やはり人の貢献、また人の顔の見える貢献で世界、また国際社会の中で信頼をかち得ていかなければいけないんではないかな、そういうように私は思うわけでございます。
 そういう意味でいうと、今回のこのイラクの復興支援法案というのは、世界の中の日本として、国際貢献の国日本、また人道支援国家日本というものをきちっと世界の中に示せるかどうかということが問われている、そういう問題ではないのかな、そのように私は考えるわけでございます。そのためにも、私は、やはり派遣されるメンバーの安全をきちっと確保しながらも、今の日本国憲法の枠内で本当にでき得る限りのことを日本が主体的に、また積極的に行っていかなければいけない、それも日本が独自の判断できちっとやっていかなければいけない、そのように考えるわけでございます。
 主張はそのぐらいにいたしまして、この一週間ちょっとの議論の中で、私なりに、政府の答弁としてもあいまいさの残る部分であるとか、また今後、先ほども言いましたようにモデルケースとしていくためには、ある程度あいまいな部分をきちっとしていかなければいけないので、そういう観点で何点か質問をさせていただきたいと思います。
 一つは、自衛隊の必要性ですね、自衛隊のニーズ。今のイラクの現地の社会インフラであるとか生活インフラ、そういうものが十分に機能しておらない、これは各党の派遣団の皆さんの報告でもそのとおりでございます。また、今なお治安が完全でない、そういう地域が存在すること、さらには過酷な気候条件、そういうものを考慮いたしますと、厳しい環境のもとでも、他国の部隊であるとかイラクの国民に依存しなくても効果的な活動ができる、いわゆる自己完結型の組織、そして専門的な知見を有した自衛隊というものが中心となった支援活動でなければいけない、そのように私は考えているわけでございますが、ただ、今週の朝日新聞の世論調査等を見ても、なかなか、自衛隊の派遣ということにつきましては意見が国民の間で分かれている、そういう状況でございます。
 その一つが、私は、委員会の野党の皆さんからの質問に対する答弁でも、そこのテーマになるから仕方がないんでしょうけれども、自衛隊の派遣がどうも、アメリカ、イギリス軍の後方支援のためにだけ行くんじゃないのか、そういう安全確保支援活動ですね、そちらに重きを置いているんじゃないかというようなトーンの論調にどうしてもなりがちなんですけれども、やはり肝心なのは、イラク国民にとって自衛隊が実は必要なんだということを政府がもう少し説得力ある説明をすべきではないのかな、そのように思うわけでございます。
 特に、法案の第一条の言葉を使うと、イラクの国民生活の安定と向上に直接結びつくのは、私は、むしろ一番目の活動である人道復興支援活動の方であろう、それが実はイラクの国民にとって顔の見える貢献になるわけでございまして、そこにやはり日本としても力を入れていかなければいけないであろう、そういうふうに考えるわけでございます。
 そういう意味で、イラク国民の今必要としているニーズも含めて、特に人道復興支援活動、一番目の活動の部分で自衛隊の必要性が大きいんだということを、ぜひまず最初に、政府として、国民にわかりやすい、そういう御説明をお願いしたいなと思います。よろしくお願いします。
福田国務大臣 ただいま委員からお話をいろいろ伺いまして、今回の自衛隊のイラクへの派遣、また、自衛隊だけでない、文民も派遣するのでありますけれども、そのことについての意義、また、それが日本としてのどういう考え方に基づいて派遣をするのかといったようなことについて、総括的にお話をいただきました。私、全く同感でございます。
 ですから、そういう考え方の上に立ってお答えをするわけでありますけれども、ニーズということがございました。これは、今まさにイラクというのは困窮のどん底にあるというように言っても過言でないと思います。過去十年間にGDPも半分になってしまったという状況の中でこの戦闘は行われたということですから、今のGDPはもう見る影もないというぐらいになっているんだろうと思います。
 そういうことでありますから、インフラ整備もおくれている。もちろん、医療とかそういうものも十分でないというように聞いておりますし、また、インフラの中でも、生活の基盤になるような水の補給も、これもあるけれども、しかしきれいではないとか、そういうこと。それから、電力が圧倒的に不足しているといったような状態もあるようでございます。
 そういう状況の中から、イラクが自立できるような形に復興できる、それを支援するというのが我が国の目的というか、役割と申しますか、それは何のためにするかといえば、一番最初に委員が言われたように、これはあの地域の安定ということ、ひいては国際社会の安定、また日本にとってもそれが一番いいんだ、こういう理念に基づくことになるわけでございますけれども、そういうことでもって今具体的なニーズというものについていろいろ検討いたしておるところでございます。
 自衛隊の活動ということについて、いろいろ危惧があるということでございますけれども、なかなかかたい朝日新聞でも、最近の世論調査で、自衛隊を派遣することについて、これは賛成というか、イラクの復興に自衛隊がかかわるべきだというのが六八%ということですね。そうは思わないという人は二三%ですから、圧倒的にやはり日本はそういう役割を果たすべきだというようなことになっておりますし、また、その自衛隊の活動がアメリカの要請に基づいてやるんだというような受け取り方は国民は案外していないというのはこの調査の中でも出ていますね。それよりも、国際貢献になるから、こういった回答が圧倒的に多かったということから見ましても、国民は、我が国の自衛隊の中東、イラクへの派遣ということについて、これは非常に前向きに受けとめているというように考えてもいいんじゃないかなというように思っております。
 かたい朝日でそうでありまして、ほかの調査で、もっと積極的に、こういう回答も出ておりますので、私は今ニーズについて余り具体的に申し上げなかったけれども、これは防衛庁長官からも答弁してもらいたいと思うんですけれども、聞いていただきたいんですけれども、そういうことで、これはぜひ、イラクに対する復興支援というものは何とかやっていかなきゃならぬ。しかし、前提としては安全という問題がありますから、これは十分に配慮して行う、こういう考え方でおるということを申し上げたいと思います。
石破国務大臣 安保理決議一四八三で加盟国に対して要請がなされておるわけでございます。
 まさしく先生が御指摘のように、では、自己完結的にその要請に応じ得る組織がどこにあるんだということを我が国としては考えなければいけない。例えば水でも、どの国にも依存をしてはいけない、電力だって、停電になっちゃったから活動できませんというお話にはならないわけでございます。食料だってそうですし、あるいは、けが人が出た、病人が出たというときに、あの満杯のイラクの病院に迷惑をかけるというようなことがあってはならないわけでございます。国連の要請にこたえ得る組織というのは、それは自己完結的な、ほかの国でいえば軍隊、そして我が国でいえば自衛隊であるということです。
 そして、まさしく、憲法上の要請に従って、武力を行使しに行くわけではございません。しかし、自己完結能力を持ち、武力を行使しないまでも、治安が悪い地域において自己を守るために必要な権限と武器を持って安全に任務を遂行し得る、それは我が国内に何があるんだと言われれば、それは自衛隊しかないと思っております。
 いろいろなテレビを見ましても、また、与野党でも調査団の方々のお話を承りましても、圧倒的に、水はあるけれども飲める水がない、そして電力が圧倒的に不足をしておって、自家発電のための油を売るスタンドには二キロも列ができているということでございます。例えば水には大変なニーズがあるだろうということでございますし、そのほか、そういうような人道物資の輸送というものについてもニーズはある。
 まさしく、それは米英軍だけのためにやるわけではなくて、同じように、安全が確保されている地域においてイラクの国民の皆様方に本当に喜んでいただける活動として我が国において何がなし得るかということを考えてみました場合に、自衛隊しかないということが私どもの結論であり、それは必ずイラクの国民の要請にこたえるものだというふうに政府としては考えておるところでございます。
佐藤(茂)委員 その上で、二点目の、基本的にこの委員会の議論で大きなテーマとなっております点で、次へ進みたいと思うんですが、戦闘地域と非戦闘地域ということにつきましてお聞きをしたいんです。
 防衛庁長官がこの部分についてはよく御答弁されているんですけれども、当委員会での論議を私なりに整理しますと、この法案では非戦闘地域についての定義しか明記されていないんですね。
 それは、「現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる」地域をいう。この「戦闘行為」というのはどういうことかというと、「国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為をいう。」そういうことになっていまして、その「国際的な武力紛争」とは、国または国に準ずる者の間に生じる一国の国内問題にとどまらない武力を用いた争いでありますというように、もう暗記されたようにずっと今まで防衛庁長官も答弁をされているわけですね。なおかつ、非戦闘地域というのは憲法上の要請を制度的に担保するものである、大体まとめたところ、そういう答弁が今までの答弁だったと思うんです。
 そこで、具体的に確認の意味でお聞きしたいのは、イラクで今でも一部で、バース党の残党なのか敗残兵なのかわかりませんけれども、米英軍などへの襲撃の動きというのはずっとマスコミ等を通じても日本に知らされているわけですけれども、それが組織性であるとか、また指揮命令系統から判断して、米英軍をイラクから放逐するためのそういう組織的な戦闘でなければ、もはやこれらの動きというのは国または国に準ずる者ではないし、また、長官の言葉をかりれば、野盗、山賊のたぐいである、そのようにみなすという認識で、まず確認ですけれども、防衛庁長官、よろしいんでしょうか。
石破国務大臣 先生の御指摘のとおりでございます。
 まさしく、憲法の要請を制度的にどう担保するか、我々が海外において武力行使を行わないということをきちんと明確にすることは、私は必要なことだと思っております。したがって、そういうようなことが、国または国に準ずる組織の間において生ずる一国の国内問題にとどまらない武力を用いた争いとして評価されることなのかどうなのか、我が国が武力を用いたというようなことになるかならないかということだと思っております。
 そうしますと、野盗、山賊のたぐい、それはいろいろメルクマールがございまして、組織性とかあるいは国際性とか計画性とかいうものがございますが、そういうものから判断をして、例えて言えば野盗、山賊のたぐいというものは武力紛争の当事者たり得ないということでございます。そういう意味で申し上げております。
佐藤(茂)委員 今の答弁で、代表的なことでお聞きしたんですけれども、今までの当委員会でも議論されてきたことをまとめますと、要は、戦闘地域というものとは単に治安が悪い地域をいうのではないんだ、そういうことであるという認識をこの法案ではやはり持つべきである、法案上、そういうように私は認識しているんですけれども、再度防衛庁長官に。
石破国務大臣 条文上書かれておりますのは、非戦闘地域というものが書いてあるわけでございまして、我々の活動はすべからく非戦闘地域で行われねばならないということが確保されねばならないということを法文上書いておるわけでございます。
 その上で申し上げれば、今先生が御指摘になったようなこと、戦闘地域というのは、単に治安が悪いだけでは戦闘地域とは言えない。ということは、逆に、戦闘地域という概念を、法文上では出てまいりませんけれども、仮に定めるといたしますと、単に治安が悪いよというだけでは、それは国際的な武力紛争というものとは関連の乏しいものであるということだと私は考えます。
佐藤(茂)委員 ですから、私なりに今までの防衛庁長官が中心になった政府の答弁を整理しますと、法文上は非戦闘地域の定義しかないわけですね。それに対して戦闘地域というのがあるわけです。ところが、この非戦闘地域としたものの中に、今のイラクの現状においては、治安の悪いところと、治安はそんなに悪くない、ある程度安全である、はっきり言うと安全な場所である、この二種類が非戦闘地域の中にありますよと。この治安の悪いところについての論議というのは結構いろいろ出ているのかな、そういう感じがするんですね。
 あと、これは別に通告してなくて申しわけないんですけれども、きょう、NHKの朝のニュースで、ブレマー長官の会見というのがニュースで流れていたんですね。CPAの長官ですね。アメリカ軍への攻撃、襲撃というのはフセイン政権を支持する勢力による計画的な襲撃であると。後でテロップが下に流れていまして、この勢力というのは軍や治安機関経歴のあるプロの集団に違いない、そういうようなことが書いてあったわけですが、こういう勢力との掃討作戦というのは戦闘地域であるというように認識してよろしいんでしょうか。
石破国務大臣 必ずそうであるということはなかなか、現場を見ませんとわからないところもございますけれども、実際に、今先生が御指摘のように、元プロで、そしてまた国際性を持ち、組織性を持ち、計画性を持ち、組織としてやっておるというような者に対して掃討作戦を行っているというような場合は非戦闘地域ではないという言い方、それは法文上ですのでそういう申し方をいたしますが、非戦闘地域ではないということに一般的には当たるだろうというふうに考えております。
佐藤(茂)委員 そこで、ずっとこの委員会でも野党の皆さんも取り上げ、新聞の論調を見ても、やはり委員会が終わるまでに明らかにしなければいけないのは、戦闘地域と非戦闘地域の判断基準というものをどうするのかということが、やはりこれから一番、国民に納得していただく上でも非常に大事になってくるんではないかな。
 先週のちょうど二十六日の夜だったと思うんですけれども、テレビのニュースを見ておりますと、福田官房長官が石破防衛庁長官に、戦闘地域と非戦闘地域についてはやはり国民がわかりづらいんじゃないのか、できれば具体的に説明できるような、そういう基準というか、または見解というものを出されてはどうかというような御指示というか宿題を出されたという、そういう報道が流れておりましたけれども、私も全く同感でありまして、ここが一種の抽象的概念であるということで、これはいわば机上ではいいんですけれども、やはり国民も、本当に自衛隊が安全な地域に果たして派遣されるかどうか、どういう判断基準で行かれるのかというところが非常に興味のあるところだと思うんですね。
 私は、政府が活動地域を決める、戦闘地域、非戦闘地域の判断基準のあいまいさをもう少しはっきりさせるような基準というものを、できれば防衛庁長官、お示しいただけないかなと思うんですが、どうでしょうか。
石破国務大臣 国際的な武力紛争の一環として行われるものかどうかの判断基準はどう判断すべきかということでございます。
 それは先ほど申し上げましたように、当該行為の実態に応じ、国際性、計画性、組織性、継続性などの観点から個別具体的に判断をすべきものでございます。
 その意味から申し上げますと、国内治安問題にとどまるテロ行為、あるいは散発的な発砲や小規模な襲撃などのような、組織性、計画性、継続性が明らかではない、偶発的なものと認められる、それらが全体として国または国に準ずる組織の意思に基づいて遂行されていると認められないようなもの、そういうものは戦闘行為には当たらないというふうに考えます。
 そして、国または国に準ずる組織とは具体的にどのようなものなのだということは、事柄の性質上確定的に申し上げることはなかなか難しいことでございますが、あえて申し上げるとするならば、フセイン政権の再興を目指し米英軍に抵抗活動を続けるフセイン政権の残党というものがあれば、これは該当することがあるというふうに考えております。また逆に、フセイン政権の残党であったとしても、日々の生活の糧を得るために略奪行為を行っている、こういうものは該当しないと評価すべきだと考えております。それは、個々具体的に見るものでございますが、それが行為としてどのように認識をされるかということであります。
 それがそれぞれどうなのだということは、それはいろいろ違う場合があり得ることでございますが、具体的に何か基準を示すということになりますと、先ほど申し上げましたような継続性ですとか国際性ですとか計画性ですとか、そういうものに基づいて判断をすることになります。
佐藤(茂)委員 私、今、従来より、多分防衛庁の中でも相当検討されたと思うんですが、一歩進んだ見解を述べていただきまして、少しはっきりしてきたのではないかな、そのように考える次第でございます。
 ただ、これはもう聞きませんけれども、言っておきたいのは、そういう観点から非戦闘地域を決めたとしても、私が先ほど申し上げましたように、やはり治安の悪いところと安全な地域というこの二種類が範疇としては出てくるわけでございまして、やはり自衛隊の安全確保等を考えたときには、具体的に事前の十分な現地調査を実施して、自衛隊員の安全に万全を期す、そういうことをぜひお願いしたいな、そのように思うわけでございます。
 戦闘地域、非戦闘地域につきましては、今防衛庁長官が答弁なさったことを、もう一回議事録を精査して、もし機会があればまたさらにお聞きしたいと思います。
 次に、武器弾薬の輸送ということにつきまして、当委員会でもう一回ちょっとはっきりさせておきたいわけでございますが、私の今回の認識からいうと、今までの自衛隊の海外での活動の枠を従来よりさらに広げている部分として、やはりここの部分があると思うんですね。
 政府の今までの見解によりますと、輸送業務の円滑化を図るために武器弾薬を輸送対象から除外していない、そういう点があるわけでございますが、しかし、私ども、公明党自体もそうなんですが、ここの部分についてはやはり慎重であるべきであるという、そういう懸念を持っているわけでございまして、非戦闘地域といっても、私の先ほど述べました定義でいうと、治安の悪い地域と安全な地域があり得るわけですね。
 具体例を言いますと、治安の悪い地域といえども非戦闘地域という概念の中に包まれる。この治安の悪い地域で実際に武器を使用して治安活動を行っているアメリカ軍、イギリス軍、ポーランド軍というのがこれからもやはり想定されるわけです。この治安の悪い地域でそういう治安活動を行っているアメリカ軍、イギリス軍、ポーランド軍のもとへ武器弾薬を輸送することまでこの法律は排除していないというか、要するに、許される、そういう枠組みになっているわけですね。
 これは、憲法上問題になるのかどうか。そういう憲法との関係につきまして、法制局の方から見解をお願いしたいと思います。
秋山政府特別補佐人 今のお尋ねでございますが、憲法第九条が問題にしておりますあるいは禁止しておりますのは、国際紛争を解決する手段としての武力行使でございます。お尋ねの、他国の武力の行使との一体化の問題も、そのような枠組みの中で生じてくる問題でございます。
 そこで、お尋ねのような、いわゆる治安の悪い地域におきまして他国の軍隊が盗賊団に対して実力を行使している、そのような状況におきましても、それは、今申し上げたような意味での武力行使とは無関係の行為、これは先ほど防衛庁長官からもお答えがあったところでございます。
 したがいまして、これに我が国がその地域で支援活動を行ったとしましても、憲法第九条との関係でいわゆる一体化の問題を生ずることはないものと考えております。
佐藤(茂)委員 わかりました。
 法制局長官から、一体化の問題を生ずることはないという明快な答弁をいただきましたけれども、しかしこれは、それを国民が納得するかどうかというのはいろいろ問題がありまして、我が党としては、そういう武器弾薬を輸送することを主たる任務とするようなことはやはり避けるべきではないのか、そういう主張を持っているということを確認の意味でお訴えして、あと残りの時間を、もう一つの法案でございますテロ対策特別措置法案の改正案につきまして何点かお聞きをしたいと思うんです。
 これにつきましては、当委員会の初日でしたか、中谷委員が、委員というよりも元防衛庁長官として、自衛隊が現地でいかに頑張っているかというお話を質問としてされたわけでございますが、国連安保理決議の千三百六十八号の要請を受けたテロリズムとの闘いというのは私は今でもまだ継続中であるという、当然ですがそういう認識に立っております。
 私は、四カ月後、十一月一日に期限が切れるというこのテロ対策特措法を早期に今の時点でも延長することによって、テロリズムに対する我が国の断固とした姿勢を国際社会及びテロリストにアピールすることは極めて有益な措置ではないのかな、そういう考えをしているんですが、この段階でこの法律の延長を求める政府の考え方を、まず官房長官、お伺いしたいと思います。
福田国務大臣 テロ特措法は十一月一日をもって現行法制の二年間の期限が来る、こういうことでございまして、そういう時期的なものがありますので、間に合うように、こういうことは大前提でございます。大前提というか前提でございますが、その前の前提としては、なぜ延長が必要か、こういうことになりますね。
 これは、今の情勢から考えまして、一年半超えましたけれども、まだアルカイダの残党とかそういうものが根を張っていて、なかなかすべて捕捉していない、それから幹部も捕まえ切っていない、こういったような状況がございまして、今、十数カ国、ちょっと正確に覚えていませんけれども、そういう国々がアフガニスタンの地域において行動をしている、こういう状況にありまして、そのためのいろいろな後方的な支援活動というものは今も継続しているということでございます。
 これがあと数カ月たったらどうなるのか。これは予測になりますが、今の情勢からいいますと、そう簡単に問題解決するというような状況ではないということは明確であるというように考えておりますので、延長は、これはさせていただかなければいけないと思っております。また、ほか、諸外国が活動しているときに、我が国だけ期限が来ましたというわけにもいかない、こういうことがありますね。
 それから、もう一つ、国内的な事情を申し上げれば、これは国会の御都合ということもございまして、この国会は今月で終了いたしますが、それから臨時国会でもって、もし臨時国会で審議をするということになればかなり窮屈な日程になってしまうということになりますし、また、臨時国会も開くかどうかということもまだ決めているわけではございませんので、そういうようなことを考えますと、やはり今の国会でしっかりと延長を決めておくということは、国際社会に対する我が国の姿勢を示すという意味合いにおいても必要なことではないかというふうに考えております。
佐藤(茂)委員 私は、延長に当たって、ただやはり大事なことは、もう二十カ月ですか、果たして二十カ月間どういう活動をされてきたのかということをやはり国民の前に明らかにするということが大事ではないかなというふうに思うんですね。特にPKO法では、第七条で、期間を変更する、そういうときには、期間変更前にそれまでの期間における業務の実施状況というものをきちっと報告しなさいというのが第七条で規定されているんですが、テロ特措法の場合には、そういうことが法律では規定されていないんですね。
 私は、政府として、ぜひそういうことは自主的に国民の前に報告していただく努力をしていただきたいな。その前提の上で、特に協力支援活動の方は現在も実施されて、これからもされていくであろう、補給が中心になっているということなんですけれども、大事なことは、やはり貴重な国民の税金がそれに相当使われているということと、やはりこの前中谷委員もおっしゃっておりましたように、本当に過酷な大変な気候状況の中で、過酷な環境のもとで任務につかれている自衛官の皆さん、自衛隊の皆さんの顕彰、激励の意味も込めて、この二十カ月に及ぶ活動につきまして、政府からきちっと報告をお願いしたいなと。
 特に補給については、どの国に艦艇が何回何リットルの給油を行ってどれだけの額の費用がかかっているのかということを含めて、活動実績というものを御報告お願いしたいと思います。
西川政府参考人 今、テロ特措法に基づきます二十カ月間の自衛隊艦艇の補給等に関する活動状況について報告せよということでございます。
 まず、テロ特措法に基づきます協力活動としましての全体的な数字でございますが、平成の十三年の十二月二日から平成十五年の六月三十日までの間でございますが、まず、総量でいきますと、給油総量が約三十一万二千キロリットルでございます。概算額、額でいいますと、約百十六億円、一一六億円でございます。
 先生今御指摘の、国別にどうかというお話でございますが、十カ国ございます。
 これもまた六月三十日現在でございますが、米国、アメリカでございますが、これが二十九万三千キロリットル、回数にいたしまして百九十回でございます。それから、金額にして百十億。それから、イギリスでございますが、これが七・一、すなわち七・一千キロリットルですね。先ほど二十九万三千と言いましたが、七千百キロリットルでございます。七一〇〇でございます。金額が二・五億円、これが十四回ということでございます。
 それから、細かくて恐縮ですが、フランスにつきましては千六百キロでございまして、約六千万円、回数にいたしまして十一回でございます。それから、ニュージーランドがございます。ニュージーランドが千六百キロでございまして、これまた六千万円、これは九回でございます。それから、イタリアでございますが、これが八百キロです。八百キロで三千万円、四回でございます。それから、オランダでございますが、これが千三百キロリットルでございまして、五千万で、回数は五回でございます。それから、ギリシャでございますが、ギリシャが千三百キロで五千万、これが七回でございます。それから、カナダでございますが、これが四千九百キロリットルで、一億七千万、一・七億円でございますが、回数が二十一回でございます。それから、スペインが七百キロリットルです。これが金額にしまして三千万、三回でございます。それから、ドイツでございます。これが百キロリットル、これで約四百万円でございまして、これが一回。
 こういう、計で二百六十五回という格好の実績でございます。
佐藤(茂)委員 今お聞きしましたように、やはりアメリカがどちらかというと補給対象国としてはほとんどだったわけでございます、量からするとですね。
 最後にちょっと防衛庁長官にお聞きしたいのは、その補給の部分というのが今派遣されている自衛隊のどちらかというと唯一の任務となっている部分なんですけれども、この給油活動に対する需要というのが活動開始時期に比べて非常に大きく減少してきているんではないか、そういうことが報道でも言われているんですね。このような実情からすると、自衛隊の派遣規模の縮小を含めて実施体制の見直し作業に取り組むべきではないのかなと私は考えているんですけれども、防衛庁長官はどのように考えていらっしゃいますでしょうか。
石破国務大臣 私どもといたしましては、海自艦艇によります補給活動のニーズが必ずしも減少してきているとは考えておらないところでございます。
 本年二月以降、フランス、ドイツ等八カ国と、これはもう交換公文をみんな締結して法の範囲内ということを担保しておるわけでございますが、支援対象国として追加をいたしました。これらの国に対しまして、今運用局長からお答えをいたしましたが、四月には二十五回、五月には三十二回、六月には二十回行っておるわけでございます。量的に申し上げれば、確かにアメリカの船は大きゅうございますから、量的に見れば減少したということもございますけれども、しかし、回数的には必ずしもそうとは言えない面がございます。
 これはやはり、テロリズムを防止する、そしてまた、洋上を利用して脱出する人間を捕捉するという意味からいきますと、むしろ、船の大きさというよりも、船の隻数にかかわる部分も多いのではないか。したがって、ニーズが減少したというふうには必ずしも考えておりません。
佐藤(茂)委員 それでは、最後ですけれども、私は当委員会に参加させていただいておりまして、ただし、イラクの問題にもう一回戻るんですけれども、安保理決議の千四百八十三号が採択されてから既にもう本日で四十日たっているんですね。多くの国が速やかに行動に移ったのに比べまして、具体的にはアメリカ、イギリスを除いて十三カ国、また既に決定した国でも十四カ国ですか、検討中も十四カ国という報道もありますけれども、日本はやはり大きく立ちおくれているということはもう否めない、そのように思うんですね。
 やはりタイムリー性というのが国際平和協力では本当に求められる重要な要素でありまして、私は、そういう意味からも、できるだけ早くこの法案を成立させて、日本としても憲法の枠内でできるだけのことをする、そのことを強く訴えまして、質問を終わらせていただきます。
高村委員長 次に、原口一博君。
原口委員 民主党の原口一博でございます。
 冒頭、法制局長官に、先ほどの答弁を少し詰めておきたいと思います。
 イラクにおいて他国の軍隊が野盗を掃討している、そういうものに対して我が国が支援をすること、これは憲法が禁じている武力の行使と一体となる行為とならないというお答えだったと思いますが、それでようございますでしょうか。
秋山政府特別補佐人 繰り返しになりますが、先ほど申し上げましたとおり、憲法で問題としておりますのは、国際紛争を解決するための手段としての武力の行使でございます。したがいまして、野盗等、盗賊団に対します実力の行使は、そのような意味での、憲法が問題といたします武力の行使には該当いたしません。したがいまして、それに対しまして支援を行いましても、憲法九条との関係で、武力の行使をしたとか、あるいは他国の武力の行使と一体化したとかいう評価は生じないものと考えております。
原口委員 私は、集団的自衛権について、その解釈が云々というのはこの間お話をしました。しかし、今のは大変大きな、踏み込んだ御発言ではないかというふうに思います。
 というのは、相手が野盗であるか何か、今わかりますか。バース党の残党が野盗をやっている、あるいは、やりながらテロ活動をやっている。まさに今、イラク人による暫定統治機構もできていない。CPAが、つまり、よその国の人たちが統治をしている。こういうときに我が国がその支援ができるというのは、どういう支援ですか。武器弾薬を供給するという支援ができるということですか、それとも、一緒になってそこと戦うことができるということですか。
秋山政府特別補佐人 それは事実認定の問題でございまして、法解釈といたしましては、まさにそれが国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為なのか、あるいは、そうでない、単なる治安維持のための活動なのかということで区分される、できることを前提としての議論をいたしているわけでございます。
原口委員 単なる治安維持の活動である、つまり、国際紛争の一環として行われる武力行使でないということであれば、我が国は、では、武器弾薬をそこに供給することも、あるいは、今、後段の質問にはお答えになっていませんが、一緒になって戦うこともできるんですか。
秋山政府特別補佐人 いわゆるこの法案の二条三項の非戦闘地域という認定ができる状況でございましたら、そこにおいて、そこまで武器弾薬を輸送するということもこの法案では排除しておりません。
 それから、そこで戦えるかどうかということでございますが、それは、武器使用につきましては、十七条で、いわゆる自己保存のための自然権的な権利という範囲内でしか武器使用はできませんので、積極的な意味での戦闘行為は、それはできないということでございます。
原口委員 いずれにせよ、これは後で議事録を精査して、こういうことがあるから、まさに武力と一体化とみなされない、そのおそれがないということを、私たちは、一定の歯どめの中でずっと議論をしてきました。
 私は、外交政策でいうと、きのうの参考人からあったように、ロープロファイル、つまり、さまざまな厄介事にはかかわらない、だから、積極的に紛争に巻き込まれることを事前に避けていくというこれまでの安全保障政策の、これまでですね、姿勢は、私は正しかったと思います。しかし今、それが今後どうあるべきかということは、これはまた別の問題です。私は、それだけでは済まない問題があるだろうと私個人は思っています。
 しかし、今の解釈は、法制局長官の解釈は、今までの私たちが国会で議論してきたことと大きな違いがある、そういう解釈になってしまうんじゃないかという危惧を感じます。私たちは、さまざまなオペレーションに対して、法と正義に基づいて、やはり一定の抑止を持って、そして法の支配の中でやるべきだ、このことを申し上げます。
 さてそこで、この修正のいろいろな話の中で御苦労された中谷さんや中川さんには大変な敬意を表したいと思います。しかし、私は、官房長官、非常に残念でした。私たちがさまざまな修正をまとめている中途に、御党の幹事長が記者会見をされて、こちらから修正を持ちかけるんだったらそれは受けましょうと、まさに政局絡み、自衛隊や国際貢献という大切な問題を拙速に記者会見をされたことを、非常に私は残念でした。
 そして、きょうここに、これはバビロンの門なんですが、一昨年衆議院の予算委員会で視察をさせていただいたときに、これはバビロンの門、メソポタミア文明、その前の大変な文化の施設ですが、これはフェイクです。つまり、イラク人にとって一番大事な文化の象徴なんですが、これはベルリンにあります。
 つまり、私たちは、今回、与党、野党の調査団が行かれて、さまざまな報告をされました。与党、野党で違う点は二つありました。一つは治安の状況の認識、もう一つは復興支援のニーズ、この二つが違ったんですが、私は、まさにこういう文化と伝統に対する配慮がなければ、真の復興はあり得ないと思います。アイデンティティー、自分たちの大切にしている文化や、これは第二次世界大戦のときですから今回ではありません、しかし今回のイラク戦争でも、やはり博物館から大切な文化財が散逸をしてしまっている、そこに対する無配慮が大きな国際問題にもなりました。
 私たちは、復興支援を論ずるときに、官房長官、まずお尋ねをしたいのは、やはりイラクの国民の伝統と文化、あるいは歴史、そして誇り、そこに最大限の配慮をしながらやるべきだというふうに思いますが、官房長官の御所見を伺いたいと思います。
福田国務大臣 イラクの復興、何でもやればいいんだという話ではない、アプローチが大変大事だろうというふうに思います。ですから、その辺は、十分なる配慮を持って、また十分なる調査を事前にして進めていかなければいけないことである。そしてまた同時に、その調査の中には、アラブの人、イラクの人がどのような考えを持っているかということをよく聴取というか調べた上でということもあろうかと思います。
 今、私どもは、自衛隊の活動といったようなことでいろいろと議論をしているわけでございますけれども、いずれ安全性が確保されるという状況が来れば文民の支援もしなければいけないと考えておりますし、我が国が自衛隊の活動というだけに集中しているわけではない、このことはひとつ御理解をいただきたい。
 その中には、例えば、文化のことについても触れられましたけれども、一四八三の決議の中に、文化に対する、文化財保護ですね、この必要性の強調、こういうものが入っております。これはまさに、私は日本が主張したことが取り入れられたんだというようにも思っておりまして、決して、自衛隊の活動ということで強調されるような、例えば軍服を着た、いかめしい、銃を持った、そういうふうなイメージだけでない、自衛隊もそういうふうな形でないものをいろいろと考えていかなければいけない、そんなふうにも思っております。
原口委員 長い伝統と歴史を誇るアジアの我が国であるからこそ、世界に対して、イラクの伝統や文化、あるいはその国民のアイデンティティーについて、そこに対する配慮が、言えるものがたくさんあると思いますので、今の答弁を前向きに受けとめておきます。
 それともう一つは、私が非常に心配しているのは、小さい人たち、子供たちのことです。私は専門が心理学なので、暴力にさらされた子供たちがどういう心理的な状況になるかというのは、これは物すごく深刻なものがあります。暴力にさらされた子供たちは、力に頼ることを覚えます。暴力に対する逆の、反作用を起こしてくる。
 私は、外務大臣にお願いをしたいのは、何人亡くなったかというのはAP通信の数字が出ておりましたけれども、実際にどれだけの方が亡くなって、そしてどういう子供たちが親を亡くし、そしてどういう子供たちの心理的な状況なのかというのは、もっとCPAなり我が政府としても配慮をしていただきたい、このように思います。
 さてそこで、具体的なニーズで一番きのう調査団から大きかったのは、やはり水のニーズでございました。「実施の可能性があると想定される業務の例」の中にも、イラク国内における水の浄化、補給、配給というものを出していただいています。それから、国連が出したものにもウオーターネットワークのリペアということが書いてある。それから、ポンプ施設の、五十一のリハビリテーションというようなものがるる書いてあります。
 そこでお尋ねですが、この今回のいわゆるイラク攻撃によって、もともとイラクというのは水が豊富なところです、しかし、それが今汚染されたのか、あるいは、さまざまな施設が今回の攻撃によってダメージを受けて、そして早急な復旧の必要があるのか。水が汚染されて、あるけれども飲めないというふうに防衛庁長官はおっしゃいましたけれども、それはなぜなのか。
 そして、これは、水というのは最も喫緊なニーズでございますが、今もう他国の政府は入っている。我が国だって、自衛隊こそ出していませんが、今でももうオペレーションしているわけです。ですから、先ほど佐藤委員は大変すばらしい質問をされましたが、最後のところだけは、我が国が乗りおくれたというのは、これは私は違うと思う。現在でももうオペレーションをさまざまな復興人道支援の部分でやっているという前提のもとで質問をしているわけですが、他国の軍隊ないし他国の政府で水のリペアをやっている国、これはどこですか。
川口国務大臣 順番に、いろいろな国がいろいろやっておりますけれども、例えば例を挙げさせていただきますと、ニュージーランド、イラク南部で浄水、電力等の一般施設整備をやるということに決めて、これは派遣を決定した国でございますので、恐らくまだ行っていないというふうに思います。それからカザフスタン、これは水の採取及び地雷撤去作業を予定等々でございます。
原口委員 私は、これは調査団の報告にもありましたとおり、三十年間に及ぶインフラに対する非常な無配慮がもたらしたもので、一気に今出てすぐ何ができるという話ではない。むしろ、水のイラク全土に対する計画を立てて、そしてそこにどのような貢献が各国できるのかということで、地道に長期間かけてやっていく話なんではないかというふうに思いますが、官房長官いかがでしょうか。
福田国務大臣 復旧復興という言葉がございます。復旧というと、今とりあえず緊急な対応をしよう、復興というと、それよりも、今委員おっしゃったような完全なるインフラ整備というものを目指して全国的な展開をするといったようなイメージと私は思っておりますけれども、今は復旧というその段階ではなかろうかと思います。
 とりあえず、何とか衛生的に問題のない水をどうやったら供給できるかとかいった、そういう喫緊の課題に取り組むべきときだろうというふうに考えております。
原口委員 お答えのとおりだと思います。
 このレポートを見てみると、国連のヒューマン・アピール・フォー・イラクという、これは六月に出たものですけれども、ニーズアセスメントをしています。略奪によって水を浄化するための塩素がとられちゃった。だから、塩素がないから、長官がおっしゃるように浄化できない。それから、上水管に穴をあけて水泥棒をやって中途で水を抜くから五割しか行かない。こういうことは緊急のニーズですね。しかし、私は、これでもって、では三カ月後も同じようなことが起きているかというと、それはないと思うのですね。そのことをここで指摘しておきます。
 それで、今回私たちは修正案、午後、その趣旨を説明すると思いますが、少し法的なところで詰めておきたいと思います。
 資料を、委員長、お許しいただいて、二枚お配りをしていますが、まず一つは、最もやはり私たちが危惧をしているのは、武器使用規定、これをどう考えるかということでございます。
 防衛庁からいただいた資料がこの「武器使用規定」、法的な性格、比例原則、危害許容要件、それから現場性・職務性、現場性、防護対象という形で、割とわかりやすく書いてあります。
 そこで防衛庁長官にお尋ねをしますが、今回の法案で、いわゆるテロ特措法のときに定めた武器使用規定、これを大きく変更しているところはないというふうに思いますが、いかがでございましょう。
石破国務大臣 おっしゃるとおり、基本的に大きく変更はいたしておりません。
原口委員 では、与党、野党で、使用規定を緩和しなければ、このまま自衛隊を出していいのかという議論がされていますが、この議論は、防衛庁長官、どのように思われますか。
石破国務大臣 例えばPKOですと、国際的なアコードというものがございますが、しかし、それぞれ、PKOを行われる国によって違う場合がございます。そしてまた、そこにおいて参加いたします国がどのような権限を持つかというのは必ずしも明らかになっておりません。
 そういうことを前提にして申し上げますと、今回のような場合に、では国際標準、これが国際標準ですよというものがきちんとありまして、それと日本の武器使用基準というものがかけ離れているという概念は、なかなか私は成り立ちにくい概念なんだろうと思っております。
 問題は、私どもが持っております自己保存のための武器使用、もちろん武力の行使に当たってはならないわけでございますが、その内容がいかなるものであるかということを精査をいたしまして、では、それを超えてまでやらねばならないものとは何なのだと。
 例えば、任務遂行を妨害する行為に対して武器使用ができるというふうにしなければならないという御意見もございます。しかし、そのときに、自分の身にも危害がなく、あるいは持っている装備品、九十五条を適用されるような範囲においてもそういうような危害がなく、にもかかわらず任務遂行が妨害されているというのはどういうものなのか、それに対してまで我々は武器を使用するということが求められているのかということをぎりぎり考えてみましたときに、私どもが持っていきます武器あるいは与える権限、それが国際標準から大きく外れており、結果として隊員の身を守ることにおいて不完全だというふうには私は考えておりません。
 これは庁内でも本当に何度も何度も議論をいたしました。それが本当に隊員の身を守るために不完全なものであるということであれば、それは本当にもっと議論しなければならないことだと思いますが、私が何日も何日も、何時間も何時間も議論しました結果といたしまして、隊員を守るために十分な権限というもの、国際標準からかけ離れていない権限、仮に国際標準というものを想定したといたしましても、そのようなものだとは思っておらないところでございます。
原口委員 この法律の第五条において、今の武器使用基準も含めて基本計画の中に盛り込む、そして、この基本計画は「遅滞なく、国会に報告」と、ここは報告になってしまっているわけですね。
 私は、この表にありますように、比例原則、これが一番なんだと思うんです。比例原則というのは、相手が持っている武器に比例してこちらもと。だから、私は、そこがこういう報告で本当にいいんだろうか。
 今、何日も何日も議論を庁内でしたというふうに、まさに正直におっしゃいました。私たち国会は、本当にこれでいいのかというのを、目の前で、具体的なものについて、もちろん限界はあります、相手があることだから、何を持っていく、かにを持っていくなんというのは、そんなオープンなところで議論をすべきでないという話もあるかもわからない。しかし、この比例原則のみで武器使用規定、ほかにもありますけれども、やるのであれば、私は、基本計画に定める、この基本計画そのものを国会に出して、そして、防衛庁の中と同じ精度で議論をしろということを言ってはいません、しかし、少なくとも私たちが、国民の命を預かるその責任を持った立法府が、国民に対して、ある一定の条件を持って、ある一定の情報を持って説得できるだけの議論をしてなきゃいけない。そこは防衛庁にお任せするよということで本当にいいんだろうかというふうに思いますが、防衛庁長官、御所見を伺いたいと思います。
石破国務大臣 それは、正直申し上げて、原口委員のおっしゃることも、私は一つの議論としてあるだろうと思っています。
 しかし、この比例原則というものも、よく御理解をいただいているか。委員がよく御理解なことは、私よく存じておりますが、国民の皆様方に比例の原則というものをきちんと御理解をいただくという努力、そしてまた、何を持ってもいいんだと誤解を与えるような発言をしました、これはおわびを申し上げたところでございますが、それは自分を守るために必要なものということでありまして、おのずからそういう制約はかかるわけでございます。
 相手が例えば四のものしか持っていないのに自分を守るためとはいいながら十のものを持っていっていいわけじゃないんだ、比例の原則というのはそういうものではないんだということを御理解をいただきました上で、国会の御承認というのを実施の可否にかけておるわけでございます。
 ですから、私は、この比例の原則というものはどういうものなのか、そして、あくまでこういう比例の原則のもとにおいて持っていくものは定めるんだよということを国会において御確認をいただく。
 まさしく委員御指摘のように、何を持っていくんだということは、その現場現場に沿ってみなければわからないことでございます。そして、向こうが四のものしか持っていないのに、こっちが七や八のものを持っていっていいわけはないのであります。そこのところを御理解をいただければ、私は、シビリアンコントロールというものはきちんとかかるというふうに考えております。
 それだけでは十分ではないのだ、もっときちんと示せという委員の御指摘は御指摘として、私は、議論としてあるだろうと思っておりますし、それを真っ向から否定するつもりもございません。しかし、政府としては、私が今申し述べたように考えておるところでございます。
原口委員 危害を与える主体がやはり決定的に変わってきていると私は認識をしています。つまり、従来の紛争の当事者というようなことではなくて、相手はやはりレジスタンス、彼らから言うとレジスタンス、私たちから言うとテロ、つまり、自分の中に自爆装置を持ったテロリスト、そこに対してどのように身の安全を、自衛隊員の安全を守るかという議論はきっちりしておかなきゃいけないということを指摘しておきます。
 それからもう一つ、これは、自衛隊派遣を、私は、今回は、後に述べますが、暫定政権ができて、そことのPKO法が発動して、その中で考えればいいという議論です。
 だけれども、自衛隊派遣をする、この中で、やはり自衛隊員の地位あるいは身分に対して法的な担保が要りますね。つまり、地位協定あるいは口上書あるいはMOU、覚書といった、そういうものがなければいけない。相手国の意向やさまざまな、国会がそれにどうかかわるかということも含めて、私たちは、ここでまだそこは議論をしていません。
 ここに派遣の条文を入れるからには、地位協定についても、これは、相手、暫定政権はありませんから今のCPAとやるのかわかりませんが、どのように今準備をされているのか、どのような協定をつくろうとされているのか、それは地位協定のようなものになるのか、覚書のようなものになるのか、そこはどうですか。
川口国務大臣 おっしゃるように、この法案が成立をした暁に外国の領域に自衛隊員を駐留部隊として派遣をする場合に、我が国は、任務の円滑な実施のために、受け入れ国との関係で自衛隊員の法的地位を確保する必要があります。
 その具体的な内容及び形式、口上書なのか何なのかというふうにおっしゃいましたけれども、これについては、受け入れ国側の意向やその期間の長さにもよりますので、今の時点で、一概に、これである、あるいはこれとこれ以外はないとか、そういう形では申し上げられないということであります。
 それから、相手側について、CPAというふうにおっしゃいましたけれども、イラクにおいて、現時点では当局がこれに該当をすると考えられます。すなわち、おっしゃったようなCPAから法的な地位を確保するということが考えられるわけです。
原口委員 私はやはり、地位協定的なものをつくるんであれば、それは、今のいわゆるイラク人にとって外国人によるCPAではなくて、この審議の中で、今月中にもイラクの暫定政権ができる見込みだというような御答弁もございました。私は、CPAではなくて、イラクの暫定政権、ここと結ぶべきだというふうに思います。
 というのは、我が国も、私は三年前に日米地位協定の改定案を法文化して出させていただきました。日米地位協定というものがどれだけ、沖縄県だけではなくて、多くの人たちにさまざまな改定の議論を、必要を起こさせているかわかりません。私は、このことを確認したくて、今の法的な担保の問題を申し上げたわけでございます。
 そこで、もう一枚の紙をごらんになってください。これは内閣府の国際平和協力本部事務局からいただいた紙でございます。先日の我が党の平岡議員の質問に対しての政府統一見解というものなのかもわかりません。
 つまり、あのとき私たちはどのような質問をしたかというと、今の現行のPKO法でイラクの外の国に対して自衛隊を派遣することができるか、その派遣の根拠は何かということでございました。その答えをもう一度、ここに出していただいていますが、外務大臣からお答えをいただきたいというふうに思います。――ごめんなさい。内閣ですね。済みません。
福田国務大臣 ここに、先ほど委員が指摘されましたこの紙にございますけれども、要するに、この内容なんです。
 現在、政府が協力を検討しておりますWFP、これは世界食糧計画でありますけれども、そのWFPなどの国際機関等の活動というのは、これは、イラク国内外の被災民のための人道救援物資を機動的に活用できるようにするために、あらかじめヨーロッパなどからイラク周辺国まで輸送して集積をしておく、こういう考え方に基づく活動と承知しておりまして、このような活動というのは、国際平和協力法上、イラク国外でのみ行われる一つの人道的な国際救援活動、こう言うことができるわけでございます。
 このケースについては、人道的な国際救援活動にかかわる国際平和協力法三条二号の当該活動が行われている地域の属する国にイラクは含まれていないため、イラクからの受け入れ同意というものを得ること等は不要でございまして、イラク周辺国からの受け入れ同意等の要件を満たせば人道的な国際救援活動のための業務を行える、こういうふうな考え方になっております。
原口委員 法制局長官に伺いますが、いわゆるPKO五原則、活動が行われている地域の属する国の同意があること、これはまさにイラクに対する支援でございまして、イラクの暫定政権はないわけですから、その同意はありません。それから、その国が紛争当事者である場合には停戦合意があること、これも停戦合意はありません。なぜならば、ピンポイントでその人たちをけ散らしてきたからです。
 法制局長官に法文上の解釈を伺いますが、イラクに暫定政権が現在ありません。これは事実の認定ですが、その中で、我が国は本当に、当事国の同意なしに他国にその国への国際救援活動をすることを目的に自衛隊を派遣することができるのか、法制局長官にこの解釈を伺いたいと思います。
秋山政府特別補佐人 お尋ねの国際平和協力法でございますが、三条二号で、人道的な国際救援活動が行われる場合に、我が国としてはそのために同じ条文三号の国際平和協力業務を実施しようとするとき、それにつきましては、それぞれ当該活動が行われる地域の属する国、すなわち受け入れ国の同意が必要と法文上されております。
 したがいまして、その人道的な国際救援活動なり国際平和協力業務なりの内容をどうとらえるかという実態の問題でございますけれども、私ども承知しているところでは、現在、内閣府が中心となって検討されておりますイラク周辺国への人道救援物資の輸送という活動は、イラク国内、国外の双方に所在する被災民のための人道救援物資をヨルダンなどのイラク周辺国まで輸送し、集積しておくという人道的な国際救援活動が現に世界食糧計画などの国際機関や国連加盟国によって実施されていることを踏まえまして、我が国としても、このような国際活動のうち、イタリア及びヨルダンの間などの人道救援物資の空輸を分担することとして、それを国際平和協力業務として実施するという内容のものと聞いております。
 このようなWFPなどによる人道的な国際救援活動も、それから、そのための我が国の国際平和協力業務の実施も、イラク国外で行われるものでありますれば、今の法三条二号の当該活動が行われている地域の属する国の当該活動が行われることについての同意も、六条一項二号の当該活動が行われる地域の属する国の当該業務の実施についての同意も、イラク国から得る必要はない。
 要するに、その活動なり業務なりが行われる国においてそのような同意が得られればよいということになろうと思います。
原口委員 つまり、この救援物資の受け入れ国、これはイラクなんですね。イラクですね。ジョルダンではありません。ジョルダンがそれを必要としているわけでもなく、ジョルダンだけ出しちゃいけませんが、ほかの例えばイランだったり周辺国が必要としているわけじゃない。必要としている受け入れ国は、まさにイラクなんです。そのイラクの同意が必要でないというのはどういうことなのか、この法の趣旨に反するんじゃないでしょうか。そうであれば、そこの国が紛争で政府がない、あるいは受け入れがない状況で、私たちは勝手に自衛隊を派遣して周りの国に救援物資を運ぶことができることになるんじゃないですか。そんなことをPKO法は想定しているんでしょうか。
秋山政府特別補佐人 このPKO法で、先ほど申し上げましたような同意を必要とするとしております立法趣旨は、これは、その人道的な国際救援活動なり我が国の国際平和協力業務が受け入れ国の理解と協力を得て安全かつ円滑に実施できるようにすることを担保するために要求されている措置でございます。
 それで、結局、先ほど申しましたように、今回の国際救援活動なり国際平和協力業務なりの実態をどうとらえるかという問題でございますが、私どもが承知しているところでは、今回輸送されます物資につきましては、具体的なニーズが別途把握された上で、最終的に、イラク国内外に所在する被災民のために活用されるということになっておりまして、国際平和協力法を所管しております内閣府によれば、それは、現在の輸送活動とそれぞれの今後行われる配分活動とは別々の活動として認識できるものであるということでございますので、先ほど申し上げましたような答弁になろうと思います。
原口委員 だから、そこの、別々として認識できるというところがおかしいんですよ。まさに受け入れ国というのはイラクであって、それを自分らの勝手な解釈によって変えていくということは大変問題があると思います。
 それでは、お聞きしますが、イラクに暫定政権ができるという御答弁。私たちは、一刻も早いイラクの暫定政権を求めているわけです。暫定政権が七月にも、憲法の制定も含めて立ち上がる、そのことを私は望んでいます。しかし、その見込みであるという答弁もございました。
 法制局長官に伺いますが、イラクに暫定政権ができ、そして、そこの同意があれば、私たちはPKO法を発動して、そしてPKO法によって自衛隊を派遣し、そして、今ここで議論をしてきたような活動、水のニーズだとかそういったことをすることができるんじゃないでしょうか。PKO法の発動要件は満たされるんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。
秋山政府特別補佐人 今後、設立されることが予定しております暫定政権あるいは暫定政府なるものが、国際平和協力法上の受け入れ国というものとして認識、解釈、評価ができるかどうかという問題でございまして、ちょっとこれは実態、国際法の問題がございますので、確定的なことを申し上げることを私は差し控えたいと思います。
原口委員 いや、法制局長官が国際法でも確定的なことが言えないんだったら、私たちは何ができるかわからないじゃないですか。いかがですか。
秋山政府特別補佐人 その暫定政府なるものの性格、それから、どのような設立主体をもってどのような構成でできるかということがまだ決まっておりませんので、先ほど申し上げましたようなことを申し上げたわけでございまして、それが形成される過程で政府部内で検討されて結論が出されることになろうと思います。
原口委員 さっきは実態と法解釈で、それは実態の解釈のことですよとおっしゃって、今、私は法解釈を聞いているんです。イラクの暫定政権が、イラク国を代表とするまさに受け入れ国、活動が行われる地域の属する国、あるいはこれに準ずるその代表であるというふうに法的にみなされたとして、そこの同意があれば、そういう前提を私はつけているわけです。その前提のもとでPKO法を発動できるんじゃないですかということを伺っているんで、何も事実の解釈を聞いているわけじゃありません。
秋山政府特別補佐人 御質問のような、実態がそのように推移いたしまして、国際平和協力法上の受け入れ国であるという解釈ができるような段階になりましたら、その受け入れ国の同意というものは、その暫定政府の同意をもってそのように評価できるという実態ができることになると思います。
原口委員 できるんですよ。だから、何を申し上げたいかというと、こういう今までの法的な枠組みを、私は、やはり自衛隊派遣については一定の原則が必要だと思います。ですから、石破長官とも何回も議論をしました、接ぎ木をして今やっていくような、もとを変えなきゃいけない。だけれども、戦後ずっと過去の総括が行われずに、官僚機構は、過去について総括をしないで、それは全部正しいことになっているから、接ぎ木に接ぎ木をして、法的に詰めていくと、さまざまな欺瞞があるわけです。
 そのことを前提に申し上げると、今回のことで最も議論が分かれたのは、きのうの与党の調査報告、杉浦先生は非常に正直にお答えになりましたが、治安についても、与党の中でも、与党の訪問団の中でも分かれた、意見が分かれて修正するのにえらい大きな努力が必要だったということを正直に述べていらっしゃいます。そして、治安の状況を見てみると、ファルージャでの五月二十七日の衝突、これは、米軍の発砲によって、随分やはりそれから変わっているんです。
 そして、ここの委員会での議論は、戦闘地域と非戦闘地域、戦闘員と非戦闘員が本当に分けられるのかという議論でした。法的に言うと、防衛庁長官がおっしゃるように、憲法の要請から、戦闘地域と非戦闘地域を分けて、そして非戦闘地域で活動させるんだということでしたが、実態をいろいろ議論していくと、本当に分けられないんじゃないか。これは、法的なところでは整合性があっても、実態となってみると、ほとんど分けられない。
 だから、さっき佐藤議員がお話しになったような、基準を示してくれ、もっとあいまいでないものを示してくれということになったわけで、これが、仮想現実、余りにも法的な憲法の要請をもとにつくられた仮想現実であって、現イラクの状況、この治安が安定しない状況とかけ離れているとすれば、この法律によって無理無理出すよりも、PKO法の中で、当事国、しっかりとしたその同意があり、そしてイラクの人たちが納得をしていく中で、仮に我が国の自衛隊が出るんだったら出て、そしてイラクの国民を代表する人たちに受け入れられながら水の問題やさまざまな問題を活動する方がよほどいいんではないか。
 ここで、一カ月、二カ月、拙速にこの法律でもって出すということが、私たちには、質疑の中でそこが詰まると思っていました。質疑の中で、戦闘地域と非戦闘地域は明確に分けることができるんだということをある意味では期待もしましたが、しかし、どうも質疑を深めれば深めるほど、私たちには、確信として、それを多くの国民に説明できるだけの確信にまでは高まりませんでした。
 私は、防衛庁長官、ここのところについてぜひお答えをいただきたいのは、PKO法で、先ほど法制局長官は、イラクに暫定政権ができてそこからの要請があればPKO法を発動できるというふうにおっしゃいましたが、それは、政府の姿勢として、そういうことを考えるあるいは検討する、あるいは、いや、もうそれは必要ない、この法律があるから大丈夫だというふうにおっしゃるのか、政府の基本的な姿勢をお伺いしたいと思います。
石破国務大臣 御指名でございますので、私から答弁申し上げます。
 仮定に基づきまして、イラク国内において我が国が国際平和協力業務、PKOを行うことが可能かどうかについて、確定的な判断を述べることは差し控えさせていただきたいと存じますが、暫定政権が成立した場合を含めまして、PKO法上の要件が満たされるかどうかにつきましては、当該暫定政権の態様等を総合的に勘案して判断することになるだろうということだと思います。ですから、その暫定政権なるものがどんなものなのかということにもよるのだと思います。
 確かに、委員御指摘のように、それができてからでもいいじゃないか、今、無理やり新法をつくってまで急いで行く必要がどこにあるんだということかもしれません。ただ、調査団のお話を聞いてみれば、本当に今すぐ、この間、あるテレビで見たのですが、本当に地獄のようだと、バグダッドは。これから夏になる、酷暑の季節になる、水はない、いろいろなインフラは破壊されている。今まさしく、きょう、あす、今週、来週に何千、何万という人が病気になるかもしれない。水がなくて本当に苦しい思いをしているかもしれない。まさしく今出さねばならない。憲法の範囲内においてそれを可能にする法律をつくる、そしてそれを派遣するということにも私は意義があると考えております。
原口委員 やはりそこで、ダブルスタンダードとは言わないけれども、イラクの周辺国については、イラクの暫定政権がないにもかかわらず、PKO法で派遣をしようとしている。イラクの国内については、暫定政権がどういう性格になるかわからないからPKO法は今のところ適用を考えていないと。私はこれはなかなか、いわゆるブーツ・オン・ザ・グラウンドと言われたから自衛隊を出すんだというふうに私は思わない、しかし、今、説得のある御説明をいただいたというふうにはとても思えません。
 時間が迫りましたので。アメリカはイラク復興予算の計上というのを出しています。二〇〇三年の四月十二日、二〇〇三年度戦時補正歳出法案、HR一五五九というものを出していますが、外務大臣、これはどういうものですか。
川口国務大臣 手元に資料はございませんけれども、米国として、イラクの復興のための予算、これを補正する必要があったという認識で行ったのではないかと考えます。
原口委員 歳出総額七百八十五億ドルの補正予算を、アメリカは二〇〇三年の四月十二日に決めています。この法案、私たちは全部を賛成じゃないけれども、もしこの法案の中で想定されている基本計画をやる、あるいは水のインフラをやるということになると、相当大きな予算の裏づけも必要であるというふうに思いますが、官房長官、この予算の問題について、私たちは法案を審議していく過程で、どれぐらいコストがかかり、どれぐらいそのことについて私たちの国民の御負担を求めなきゃいけないか、このこともあわせて議論しておかなきゃいけない。この予算について、どのような御方針をお持ちでしょうか。
福田国務大臣 正直申しまして、対応措置を今これから決定しようというところです。その前提として法案を審議いただいている、こういう状況でございますので、どのぐらい予算がかかるかということを今申し上げられるような状況ではないということであります。
 しかし、いずれにしましても、法案ができ、そして対応措置を決めるということによって出てくる必要経費、これについては当然のことながら確保しなければいけないことでありますから、適切なる対応は当然とってまいりたいと思います。
原口委員 なぜアメリカのその予算を伺ったかというと、七百八十五億ドルは大きなお金なんですね。これも、アメリカの議会のさまざまなものにアクセスしてみると、一次的な経費だということを言っています。この後また追加の予算計上をしてくるんだと思います。我が国も、これほどのことをやるんだったら恐らく補正で予算計上されるんだろうな、そういうおつもりが、予備費でやれるような話ですかということを詰めておきたくて伺ったわけでございます。そこはいかがですか。
福田国務大臣 どのぐらいの規模になるかということを、予備費の中で対応できるか、それともそれを超えるようなことになるのか、これは今ちょっと申し上げるわけにはいかないので、その段階でまた御検討いただきたいと思います。
原口委員 そういうことも含めて、基本計画やあるいはさまざまな問題を国会との間で詰めてやっていくという姿勢をやはり堅持していただきたい。予算についてはまた別の機会に質問させていただきます。
 きょう、中東和平で新たな動きがございました。パレスチナとイスラエルの間の声明が出た、これは新しいロードマップの大きな第一歩だというふうに思います。このイラクの問題も中東の安定と和平ということを抜きには議論ができない、我が国はここに積極的に関与をしていくべきだということを申し上げておきたいと思います。
 そこで、劣化ウラン弾について、コソボでの報告、これ私、昨晩いただいて、斜めに読んだので、全部読めたとは思えないけれども、一九九九年に起こったコソボ紛争のいわゆる劣化ウラン弾における健康被害が調査をされて、それが影響なしというふうにこれは言えないんじゃないですか。
 いろいろなところを見てみると、劣化ウラン弾は地表で散逸したというようなことも書いてあり、あるいは、長期にわたる健康被害については、これは、特にウランの同位元素というのは、遺伝子あるいは胎児、そういったものを傷つけるわけで、たった一年そこらのもので、これでウラン弾についての影響はありませんでした、そういうふうにはどうやっても私には読めなかった。
 外務大臣、これは今川議員も指摘をされておりましたけれども、やはり唯一の被爆国として、イラクに行くと、どれほど怨嗟の声があったかわからない。実際に、障害を持った子供たち、小児白血病で目の前で亡くなる子供たち、私、目の当たりにいたしました。この劣化ウラン弾について、私は、日本が積極的に調査をし、そして、このことについてもその調査を、何年もかかるその調査を待って対応するというのではなくて、実際に起きている病気に対しては、小児白血病やさまざまな、いわゆる放射性物質に対する、そのがんについても積極的な貢献をすべきだ、今川議員のおっしゃるとおりだと思うんですが、いかがでございましょうか。
川口国務大臣 この国際機関の調査、これは、委員がおっしゃいますように、九九年のコソボ紛争の際に、がん、白血病が発生をしたということで、劣化ウラン弾との関係が疑われて、調査をWHO、UNEP等でしたということであります。
 それで、その報告自体は、環境や健康への害がほとんどなかったというふうにされているわけですけれども、国際的に確定的な結論が出されているとは承知しておりませんので、したがいまして、政府としては、今後の国際機関等による調査の動向を引き続き関心を持って注視をしていくということを考えているわけです。
 それから、イラクの子供たちへの支援、これについては、我が国としてのイラクに対する人道復興の中で医療関係ということも入っているわけですから、そういうことの一環として、具体的にどこで何をするかということの細目はまだこれからですけれども、いずれにしても、医療面での人道復興支援ということは考えております。
原口委員 私は、日本が本当に主導権をとって、そしてこの問題について積極的に世界をリードしていく、この姿勢が必要だと思います。
 国連安保理のさまざまな決定あるいはその権能についても、三月二十日のあのイラク攻撃で大きな亀裂もありました。新たな世界平和の秩序をどう構築していくかということについて私たちはさらに議論を詰めたいと思います。
 ありがとうございました。
高村委員長 次に、桑原豊君。
桑原委員 官房長官が途中でお出になるということなので、少し質問の順序を変えまして、最初に非戦闘地域の問題についてお伺いしたい、このように思います。
 周辺事態のときの後方支援地域、これは日本の領土を除けば公海ということになるわけですし、それから、テロ特措法のときは、非戦闘地域というのは、事実上、活動の内容も含めて海上ということで設定をされたということですけれども、今回初めて、陸上で活動する、そして陸上に具体的な活動を伴う非戦闘地域をつくっていく、こういうことになったわけですけれども、アフガンのあの状況というのも、暫定政権がアフガンにはできているんですね。そして、一定程度、タリバンであるとかあるいはアルカイダ、そういうものを抑えて一定の秩序が保たれた。そういう状況の中にあっても、アフガンでは、陸上ではそういう活動というものをしなかったわけですね。
 それが今回、あえて陸上ということになれば、いろいろな困難が、あるいは危険が非常に格段に強くなると私は思うわけですけれども、そういう状況の中で陸上ということをあえて活動の舞台として選んだ理由、これをまずお聞きしたいと思います。
福田国務大臣 一言で申し上げれば、イラク国内、陸上もしくは空中輸送ということも含めまして、そういう領土上でなければ活動ができない、要するにニーズがない、こういうことです。アラビア湾で例えば掃海作業といったようなこともあるのかなと思いましたら、このニーズはないということでございました。
 アフガニスタンでは、まさに自衛隊が行っても活動できるような状況にない、すなわちアフガニスタンで戦闘が行われている、こういう状況でありまして、戦闘地域、非戦闘地域という区分けをした場合にも、アフガニスタン及びアフガニスタンの周辺の領海というか海上も戦闘地域、こういうふうな分類になる、こういうふうなことで、実際問題いって陸上ではできなかった。
 今回イラクでは、要するに、自衛隊がイラクに行って、そして日本の自衛隊にふさわしいいろいろな要件をクリアして、その要件の中において活動できる、こういうものがイラクの陸上にある、こういう考え方に基づくものであります。
桑原委員 今回この非戦闘地域の問題が大変議論になっているのは、やはり秩序維持の基本になるべき暫定政権、それすらまだできていない、そして、事実上いろいろな殺傷事件が頻発して大変厳しい状態にある、これはだれもが認めるところですね。
 こういうところへあえて出していくということ、私は、これからいろいろな国際的な場面に遭遇して、非戦闘地域というものの議論が行われていくと思うんですけれども、やはりそういった前提になる、少なくとも暫定政権のような、イラク全土を統治していくそういう機構が前提にあるということが、そういった場合に対処していく、特に自衛隊を出していくというふうになる場合に、対処していく大前提だろうというふうに私は思うんですよ。そこら辺の物の考え方として、やはり一つのしっかりしたものを決めておかなければならないんじゃないか、こういうふうに思うんですが、それはどうでしょうか。
福田国務大臣 今、CPAが権限を持っていろいろな活動の中心になっておる、こういうことでありますけれども、それが暫定政権にいつなるか、こういうこともあります。いつなるかまだわかりません。なるべく早く、こういうような意向はあるようでありますけれども、また我が国もそういうふうになってほしいと思っておりますけれども、では、その間どうするか、こういう問題があるわけですね。
 それは、イラクの今の状況というのは大変悲惨な状況だ、こういうことでありますので、そういう状況を我々は見ていればいいのか、暫定政権ができるまで見ているだけなのか、こういうことにもなろうかと思います。そういうことは、日々テレビでもって現地状況が報道される、そういう中で、やはり日本の民間の人だって、あんな悲惨なところを自分は助けに行きたいとかいったような気持ちを持つ人はたくさんいるんだろうと思います。
 しかし、今おっしゃられたそういう治安の問題ということもございますから、そこは、治安についての知識を持つ自衛隊がまず行って活動するというのは、非常に私は妥当な考え方だというふうに思っておるわけであります。
桑原委員 CPAという、そういう占領軍を中心にした統治機構といいましょうか、暫定機構、それがあるがゆえに、逆に大変イラク国民、いろいろな意味の、いろいろな考え方の人がいるわけですけれども、そういうイラク人の反発を受けている、そしてなお治安が悪化する、こういうこともあるわけですね。
 そういう意味で、私はやはり自衛隊という、ある意味では他国の軍隊と違う、我が国の専守防衛のそういう部隊、違うけれども実力部隊であるわけですね。そういうものを送るときの一つの物の考え方として、基準というものをどこかできちっとやはり引いておかなければならないのじゃないか。それが私は暫定政権の樹立というものではないかと思うんですけれども、まあ、それはまたこれからの議論をしていけばいいのではないかと思います。
 そこで、お聞きいたしますが、五月の初めの戦闘終結宣言といいましょうか、そういうものがあって以降も、大変米軍に対するあるいは英軍に対する殺傷事件が相次いでおります。そういった一連の動きの背後には、当然、フセイン支持勢力の反撃といいましょうか、そういう動きがあるわけですけれども、もう六十人を超える米軍が殺されている、こういうようなことですけれども、一連のこの動きを考えたときに、これを戦闘行為というふうに位置づけることができるのか。それは一件一件見なきゃならぬわけですけれども、概括的にそういう動きとして総体的にとらえることができるのか。この点どういうふうに考えておられるのか、お聞きしたいと思います。
川口国務大臣 まず、六十何人というふうにおっしゃいましたけれども、襲撃を受けて殺されたという意味では、二十人あるいは二十一人という数字でございます。
 それから、個別個別のケースについてどうなのかというお尋ねですけれども、政府として、基本的に戦闘が終了しているということを判断として申し上げましたけれども、それに変更はございません。先ほど防衛庁長官が御答弁になったような、組織的な、計画的な云々ということなのかどうかというのは個別個別について具体的に判断をしなければいけませんけれども、判断として、基本的に戦闘が終了したという状況について、変更はないということでございます。
桑原委員 ですから、一連のいろいろなそういう事件があった、その背後には、ブレマー文民行政官もおっしゃっておるように、要するに、フセイン勢力の計画的なそういう行動だと、元プロの。そういうような指摘があるわけですけれども、そういうことを踏まえて、これも、全部が全部とは言いませんけれども、戦闘行為に含まれるものもあるのかというふうにお聞きしておるわけですけれども、それはどうなんでしょうか。
川口国務大臣 これは、個別個別のケースを具体的に承知をしていませんので、ここで、これはこうであるということを一概に申し上げるということは非常に難しいのですけれども、全くないというふうに否定はできないだろうと思います。ある可能性について否定はできない。
 ただ、基本的に戦闘状況が終了したということについての判断は変わっていないということです。
桑原委員 非戦闘地域の定義で、現に戦闘が行われていない、それから活動の期間を通じてそういう戦闘行為が予測されない、こういうような定義がございますけれども、現にというのは、どういうことを言うのか。例えば、直近、どれくらいの期間の中でそういうことがなかったということを前提にするのか。それから、活動の期間を通じてそういうものが想定されないという場合に、活動の期間というのは一体どういうことを指して言っているのか。その定義内容を少し詳しく説明していただきたいと思います。
増田政府参考人 お答えいたします。
 「現に戦闘行為が行われておらず、」の「現に」とは、各活動を実施する時点でという意味でございます。また、「そこで実施される活動の期間を通じて」という文言でございますが、これは、各活動の開始から終了に至るまでの期間を通じてという意味でございます。したがいまして、各活動を実施する地域につきましては、基本計画に定める派遣期間に基づき現地において当該活動が開始されてから終了するまでの間戦闘行為が行われることがないと、実施する時点において判断されることが必要であろうと考えております。
桑原委員 そうしますと、活動を開始する時点でそういう事態がないということと、それから活動の期間というのは、例えば具体的な補給活動というようなことがいつからいつまでというふうに基本計画の中で一応定められるわけですけれども、その計画期間中を通じてそういうことが予想されないということになるということですか。
増田政府参考人 まさに委員の御指摘のとおりだと存じますが、もう一回繰り返しますと、まさに基本計画に定めます派遣期間に基づきまして現地において活動が行われる、その開始から終了までの間戦闘行為が行われることがないということでなければならないというふうに考えております。
桑原委員 普通は大体、そういう活動の期間というのはどれぐらいなんですか。
増田政府参考人 これから、まさに私どもとしては調査をして、基本計画、また防衛庁長官が実施要項を定めて活動を実施していくわけでございますので、現時点におきまして、その派遣の期間もしくは活動の期間というものを一概に申し上げることは困難かと存じます。
桑原委員 まず、そういう期間の設定そのものも、そういう事態が生起するというようなことをあらかじめはかっていくには極めて不適切な内容ではないかというふうに私は思います。
 活動の期間もそのときになってみないとよくわからないとか、そして活動を開始する時点で起きていなければいいんだと。その前に、あるいは直近に、あるいは一定期間前にいろいろなことがそこで起きたというようなことなんかも当然考えられるべきだろうというふうに私は思うんですけれども、この期間のとり方だけでは非常に不確かな判定しかできないんではないかというふうに思うんですけれども、どうでしょうか。
増田政府参考人 まず、活動の期間について今御指摘をいただきましたが、まさにこれから調査をして決めるということなので、現時点で確定的なことを申し上げることは私どもとしては困難だということを申し上げたわけでございますけれども、ただ、例えば今、テロ特措法に基づいて活動しておりますその基本計画は、一応半年の有効期間ということでやってきておるという実態はございます。
 それから、二点目の御指摘の点でございますけれども、この「現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる」という要件は、再々御答弁をさせていただいておりますように、憲法上の要請を担保するという性格のことでございますので、この文言上、文理上、先ほど私が述べましたような解釈になろうと思っております。
 ただ、実際にかかる判断をいたしますにおきましては、先ほど委員の御指摘のような状況も踏まえて判断をしていくことになるのではないかというふうに考えておるところでございます。
桑原委員 この審議の期間中、これは憲法要請に基づいて机上でつくったフィクションだ、仮想現実だ、こういうような指摘が再三再四なされているわけですけれども、私はやはり、現在の状況というものを考えたときに、もう本当に何十万という武器を持ったそういう人たちがどこにいるかわからぬ、安全と言われたところがいつ危険な状況に何かのきっかけで転化するかわからない、こういう状況の中でこういう決め方をやってもほとんど意味がないんではないか、こういうふうに私は思います。
 加えてお聞きしたいんですが、実施区域というのを長官が指定をされるわけですけれども、これはすべからくいわゆる非戦闘地域だということになるわけですけれども、この実施区域というのはどういう単位といいましょうか、範囲、そういうもので指定をしていくというふうに想定されておられるんでしょうか。
西川政府参考人 お答え申し上げます。
 この実施区域、先生今御指摘のとおり、非戦闘区域という地域の要件を満たすという形で防衛庁長官が定められる場合には、当該活動の安全確保に十分留意しながら決めることになっております。
 先生の今御質問の、どのような方法でということでございますが、これにつきましては、都市名だとか、あるいは経度だとか緯度、そういうものを用いることも考えられるところでございますが、現在、自衛隊によります活動の具体的な内容だとか、現地調査等を通じまして我が国が独自に入手しますそういう情報、あるいは諸外国の国際機関から得られました情報等を踏まえて決定するという形でございまして、現時点において、どれだ、これだということについてはまだ決めかねているところでございますが、まだちょっとここはお答えできる段階にはございません。
 いずれにいたしましても、活動の必要性、非戦闘地域の要件あるいは活動の安全性、安全確保といった点を最も適切に反映できるような方法をとりたい、こういうことでございます。
桑原委員 例えば、バグダッドならバグダッド一円をそういう形で指定をするのか、あるいは、バグダッドの中でも西部、中部、いろいろな区域を一つの単位にして指定をしていくのか、あるいは、一つの施設を実施区域というふうにしていくのか、そのやり方というのは全く今考えていない、調査をしてからだ、こういうことなんでしょうか。
西川政府参考人 それにつきましては、いわゆる任務の形態とか態様等々ございますし、そういうものも考えながら、今、頭の体操的なことはいろいろ、先ほど申しました緯度、経度だとか、あるいは都市名、いろいろなことを言っておりますけれども、まだ確定というようなことには、調査を終えなきゃできない、こういう状況でございます。
桑原委員 今、新聞などでも、あるいは、きのうの参考人の現地調査をされた御報告の中でも、例えば、バグダッドの空港五里四方を米軍が猫一匹入ることができないように固めている、そこは安全だ、その中で活動するというようなことなども提言をされておられたようですけれども、例えば、米軍がそういうふうに治安を完全に維持しているというようなところも、いわゆる非戦闘地帯、実施区域の対象として考えておられるんでしょうか。そこをお聞きしたいと思います。
石破国務大臣 非戦闘地域でも、安全なところと安全ではないところがございます。これは、佐藤委員からの冒頭の御質問にもございましたが、戦闘地域だって実は治安のいいところもあるかもしれない。でも、治安の悪いところもあるかもしれない。非戦闘地域でも、治安のいいところもあれば、治安の悪いところもあるということだと思います。
 例えば、今、委員がおっしゃいましたバグダッド空港をピンポイントで、では、この部分だけはアメリカがガードをがっちり固めているから大丈夫だよという地域が仮にあったとしたらどうだろうか。それは個々具体的に即して判断をすることになりますが、やはりそれは、その地域全体というものは戦闘地域ということになるケースが多いのだろうと思っております。
 いずれにいたしましても、非戦闘区域、地域の中でなければできない。その中で治安のいいところでやるということでございますから、まず前提条件として非戦闘地域というものを充足し、その中で治安のいいところで活動する。そういうところを実施区域として定めるということになると考えております。
桑原委員 米軍が圧倒的な力で治安を維持していないと維持できないようなところというのは、まさに非常に危険なところだという認識なんでしょうか。
 私は、自衛隊は自己完結だということを一つの自衛隊の特性として、だから、今のような事態のときには自衛隊の派遣が必要なんだ、自衛隊でなければそういう任務にはたえられないんだ、こういうような理由づけが一つあると思うんですね。
 ところが、米軍に安全を完全に守ってもらって、その中で、安全だから自衛隊で活動する、こういう考え方は、では、とらないということですね。そこは確認しておきたいと思います。
石破国務大臣 自己完結的と申しましたのは、我々の場合の自己完結という意味でございますが、安全確保の面だけでの自己完結ということで申しますと、私どもの部隊がやりますのは、非戦闘地域で、かつまた治安の比較的いいところというところで自己完結的と申し上げておるわけでございます。自分の身を守るための自己完結というのは、各国においてそれはおのずから差があるものだというふうに考えております。我々は、武力の行使はできない、そしてまた、自己を守るための武器使用ならばできるということにおいて自己完結的と申し上げております。
 アメリカががっちり守っているところというのは、確かにそこは危険ではないのかもしれません。アメリカが本当にもう全力を挙げて守っている。その中で台風の目みたいに安全なところが仮にあったといたしましょう。しかし、その周りはもう大戦闘が行われているということになりますと、やはりそれは、戦闘地域の中で、戦闘地域という概念を非戦闘地域という概念の反対概念として仮に設けたといたしますと、非戦闘地域ではない地域において治安が保たれているというような概念になってしまうのだろうと思います。
 ですから、個々具体的にどうだろう、どうだろうと言われても、そのまま正確にはお答えはできませんが、やはり、そういう場所は非戦闘地域には該当しない場合が多いのだろうというふうに考えます。
桑原委員 それでは、次に質問したいと思うんですが、先ほど法制局長官が、いわゆる第三国の軍隊が、イラクにおいて野盗対策といいますか、治安のためにいろいろ反撃をする、そういう行動を日本の自衛隊が支援するということについては、それは、いわゆる国際紛争といいましょうか、そういうものに当たらないんだから、武力の行使と一体化しない、あるいは武力の行使には当たらない、こういうような解釈を示されたんですけれども、私は、そこら辺はかなり疑問がございます。
 というのは、第三国の軍隊、そして野盗といえども、現状では、野盗でもあり、またフセイン勢力の残党でもあるということが十分あり得るわけですし、加えて、第三国の軍隊とその勢力というのは、ある意味じゃ国際的な一つの戦いになるわけですね、違うわけですから。
 そういう意味で、それを支援していくということが単純に武力行使の一体化にならないというような考え方で割り切れるものなのかどうなのか、これは現状で考えてみると非常に問題があるのではないか、私はこういうふうに思うんですけれども、それはどうでしょうか。これは、外務大臣あるいは長官、どちらでもいいんですけれども。
石破国務大臣 報道等々で明らかになっておりますとおり、例えば、サダム・フセインは、米軍が攻めてくるというか攻撃をしてくるときに、政治犯もみんな武器を持たせて釈放しちゃったというようなこともございました。したがって、治安はまことによろしくないわけでございます。
 私どもが申し上げておりますのは、その活動、例えばアメリカならアメリカの活動がイラクの治安を回復するために行われておる活動であるとするならば、それは支援をすることが、安全確保活動の支援としてできるだろうということを申し上げております。
 例えば、本当にそのような泥棒でありますとか、あるいは生活の日々の糧でありますとかそういうものを得ようと思って銃を撃ちまくっておる、そういう勢力を取り締まる、あるいは抑えるために活動しておる、それはもう国際紛争とは関係のないものでございます。それはわからぬじゃないか、あるときはフセインの一味で残党であり、あるときは生活の糧を得るものなのだ、こういうふうに言われますが、それはその場その場で判断をすることになるだろうと思います。
 しかし、この場合にはどのように判断をするのだというような、いわゆる道しるべのようなものでしょうか、ガイドラインのようなものでしょうか、それはつくらねばならないと思っています。
 それがどのように区別をできるかというのは、この場合、この場合というふうに具体的に判断するのをここでお示しするのは極めて難しいことですが、例えて言えば、アメリカ軍の行動というものがイラク国内の治安の安定に資する、その目的のために行われておるものであれば、その支援をいたしますことは憲法上何ら問題のあることだとは考えておりません。
桑原委員 それはまた、イラクの現状というものを考えて判断をするときに、極めて私は理屈先行の、理屈立てだけの考え方ではないかと。現実には、治安の維持ということそのものが、ある意味じゃフセインのそういう残党狩りというものと一体化しているんだろう、そこら辺を分けることができないというふうに私は思うんですね。
 政府側や与党側の考え方の中でも、例えば人道支援も、あるいは安全の確保の話だって、これもみんな、ある意味じゃもうイラクの状況の中では一体的なものなんだ、こういうふうなとらえ方をされておられる方が相当おいでるわけですけれども、私は、それほどいろいろなことがそんなに簡単に、これはこっちで、あれはこっちだというふうに区分けをできないような、現状は混乱の状態にある。そこでどうするか、こういう話だろうというふうに思うので、それもためにする話になってしまうのではないかと私は思います。
 そういう意味で、やはり相当抑制的にこれに対処するということをしない限り、私は、武力の一体化、武力行使、そういうものに安易につながっていく、そういう危険性が非常に大きい、こういうふうに指摘をせざるを得ません。
 次に、昨日の朝のNHKのテレビで、六月の三十日で任期切れになったUNMOVICのブリクス委員長が、退任に当たってNHKのインタビューに応じたようですけれども、それが放送されておりました。
 その中で、ブリクス前委員長は、アメリカが行ったパウエル長官の二月の国連安保理でのいわゆる大量破壊兵器の問題についての演説、この演説で破壊兵器の存在を強調したことについて批判をされておられました。アメリカ軍などが集めた機密情報を、明らかに米軍はそれを拡大解釈したのではないかと思う、亡命者、衛星写真などの情報をもとに、特定の場所に査察をするように、こういうふうな要請をされたようですけれども、大量破壊兵器は見つからなかった、だから、我々は米軍の情報には懐疑的になった、こういうふうに彼は述べておりました。
 それから、いまだに米軍がイラク国内で大量破壊兵器を見つけられないということに対しては、イラクに大量破壊兵器が存在する可能性を全く排除することはできない、しかし、こうして時間がたてばたつほど、やはり存在しないのではないかというふうに思われてくる、何も見つけられずに時がたてば、発見の可能性というのはなお一層少なくなるだろう、米国の破壊兵器の捜し方は当初から余り組織化されず、おくれが目立っていた、彼らは査察よりも戦争の準備に熱心だった、こういうふうに彼はテレビで述べておりました。
 そういう見解なんですけれども、これはまさに国連の査察の第一線の責任者としてそういう考えをお持ちだったということについて、まず、このブリクス委員長の表明を受けてどのように思われるか。
 そして、こういうことで、アメリカ一辺倒の情報で我々が重大な問題の判断をしたということで、もしこれが間違いだった、出なかった、なかった、こういう結果になったらどうするのかということは、ずっと今まで聞いてきたわけですけれども、今の段階で、いろいろな疑惑が出されている、あるいはブリクス委員長もこんな見解を持つ、そういう段階で、日本としてはどうすべきなのか。その点について、大臣。
川口国務大臣 ブリクス委員長がテレビでそのような感想をお述べになっていらっしゃるということは承知をいたしておりますし、おやめになったブリクス氏のお立場としてそういう考えをお述べになられたというふうに思います。
 それで、我が国の立場として、これは何回か申し上げていますように、イラクが過去において実際に大量破壊兵器を使用した、そして、まさに国連の査察団によってイラクに対して大量破壊兵器の疑惑が提示をされている、かなり明確に提示をされているわけであります。
 それから、国際社会がたびたびの安保理の決議によって、イラクが安保理決議の重大な違反を犯してきているということを言い、一四四一で明確にそれは規定をしているわけですけれども、我が国としては、国連の査察団の報告等をきちんと読み、そして、その関連の国の情報も参照しながら、大量破壊兵器の疑惑については考えをまとめてきているわけでございまして、イラクに対して大量破壊兵器の疑惑があるということは、これは国際社会の認識として一致をしたものであると思います。
 それで、今、アメリカは、千人から千三百人の査察団を国内に入れて、あるいは国外にも一部いると聞いておりますけれども、コンピューター等の精査をしたり、可能性のある地域を子細に調べたり、あるいは書類を分析したりということをやっているわけでございます。ブッシュ大統領は、時間がかかってもとことんこれはやるということをおっしゃっていらっしゃるわけでして、我が国としては、この作業を注視していきたいというふうに考えております。
 それで、我が国の対応に問題がなかったかどうかということをおっしゃっていらっしゃるわけですが、これは、武力行使なしに大量破壊兵器の脅威を除去し得ないそういう状況になって、我が国としては、国益に照らして、同盟国であるアメリカの行動を支持した。平和的に解決をしたかったわけですけれども、そうならないという状況になって支持をしたということでございまして、この我が国の対応に問題があったとは全く考えておりません。
桑原委員 例えば、アメリカの情報をもとにブリクス委員長は特定の場所を査察した、しかしそこには見つからなかったというようなことについては、その時点でちゃんと情報として把握をされて、どうしてそうだったのかということなどについてみずから検証したというようなことはあったんですか、日本政府として。
 もうアメリカが、先ほどおっしゃられたことは、過去に持っていたとか、そういうことがあったとか、国連決議があったとかという話の説明ばかりずっとされていますけれども、必ず持っている、そういうことに確証を持ってあの戦争に支持を与えたわけですから、そういうふうなアメリカの査察の状況などを把握されて、どうしてかというようなことで日本なりに何か行動を起こされたり検証したようなことがその時点であったんですか。ずっとアメリカの言うことをそのまま信頼して信じて、うのみにしてきたんじゃないんですか。日本として何かあったんですか。
川口国務大臣 イラクに大量破壊兵器の疑惑はないということは、これを証明しなければいけないのは、何回も申し上げていますけれども、イラクであります。それが国連決議によってイラクがやらなければいけないことであるということを、まず申し上げたいと思います。
 それから、我が国が、イラクの大量破壊兵器の疑惑についてのいろいろな判断は、国連査察団の報告をベースに、そしていろいろな国の資料を参照した、それで疑惑について疑いを深めていったということであります。
 我が国がその当時、国連査察団と一緒になってイラクに行ってそれを検証するというようなことは、やっておりません。
桑原委員 ないということを証明しなければならぬのはイラクだ、そのおっしゃり方もわかりますけれども、では、そのないということの証明というのは、どういうことをもって、これが証明だというふうに考えて、そういうふうなことをおっしゃってきたんですか。何が証明なんだと。
 何か、ないということを証明しろ、ないということを証明しろばかり言ってきていますけれども、何がないということの証明なんだということについて、どう考えておられるんですか。
川口国務大臣 ないということをどうやってイラクが証明するかということは、これは、まさに国連査察団が、イラクのやったことについて、そういうことをイラクがやったかどうか決める話でございまして、例えば、いろいろ言われていますが、廃棄をした証拠を示す、あるいは、引き続き持っているのであれば現物を見せる等々のことが言われてきたわけでございます。これは、査察団がイラクにおける査察において判断をすることであります。
桑原委員 そのことのために査察を継続して、査察でもってそのことを明らかにしていくということだったんじゃないんですか。自分でこのことの真相究明について、何かしっかりしたことをやることもなしに、ただただアメリカの言うことをそのままに受けとめて、そして戦争という、本当にある意味ではもうこれ以上の手段が、あってはならない手段なんですけれども、そのことについていとも簡単に支持を与えてしまった。
 そこが大変な問題になって、私たちはこの戦争の、武力行使の正当性をどんなことがあっても容認できないというのは、やはりそこにあるわけですよ。そこから出発して、自衛隊というものを送ることの理由づけも、とても、その戦争を認めた以上は、そういったことを認めるということはその戦争の正当性というものを逆に是認することになってしまう、そこがこの問題の非常に大きなところだというふうに私は思うんですよ。
 具体的にイラクの人のためにどうこうこうこうというのはもちろん大事なんですけれども、それ以前に、そういう問題がしっかり解決をされていない、そのことについての日本政府の姿勢が極めておかしい、間違っている、そこに原点があるということをもう一度指摘して、質問を終えたいと思います。ありがとうございました。
高村委員長 次に、達増拓也君。
達増委員 イラク新法での自衛隊の活動と安保理決議一四八三との関係について、ちょっと詰めて伺いたいと思います。
 まず、安全確保支援活動についてでありますが、これは法案には次のように書いてあります。イラクの国内における安全及び安定を回復するために貢献することを国際連合加盟国に対して要請する国連安保理決議第千四百八十三号云々。
 安保理決議一四八三でそういうことがどこに書いてあるのかなと思って探してみますと、第一段落に、「加盟国及び関係機関に対し、」「本決議に従いイラクにおける安定及び安全の状態に貢献するよう訴える。」とあります。法案のここに書いているのはこれのことなんでありましょうか。
 ちなみに、そうだとしますと、国連決議の方には「貢献するよう訴える。」と書いてあります。英語はアピール、訴える。要請するとは書いていないんですね。だから、もし安保理決議のこの部分、第一段落を引用して「基づき、」というのであれば、ここは「加盟国に対して要請する」というのは間違いなので、「訴える」というふうに直すんでしょうか、という修正が必要になると思いますが、いかがでしょうか。
林政府参考人 決議一四八三に基づきまして、何か我が国が義務を負っているという関係に立つわけではございません。
 決議一四八三が、それは確かに第一項において、今、アピールという言葉が訳語として何が適当かということについて御指摘がございましたけれども、しかし、ここで趣旨として申し述べているところは、加盟国に対して、安定及び安全の状況に寄与するということを求めるという意味で、広い意味での要請をしているということは言えようかと思います。
 また、念のために申し上げますけれども、パラグラフの二十六のところにおきましては、コールズ・アポンという言葉を使っておりますけれども、この決議の実施のために寄与するよう加盟国等に要請するということが、これは包括的に要請がなされているというところでございます。
達増委員 非常に包括的な要請ということで、では、もう一つの人道復興支援活動についても質問します。
 これは、法案の方で、「イラクの国民に対して医療その他の人道上の支援を行い若しくはイラクの復興を支援することを国際連合加盟国に対して要請する国連安保理決議千四百八十三号」云々とあるんですけれども、こういうことがどこに書いてあるか探しますと、第二段落に、「その立場にあるすべての加盟国に対し、国連及びその他の国際機関のイラクのための人道アピールに直ちに応え、食糧、医療品並びにイラクの経済インフラの復興及び復旧に必要な資源を提供することによってイラク国民の人道上その他の要請を満たすよう支援をするよう要請する。」という言葉が決議にあります。ここのことを指しているんでしょうか。
 もしそうだとすると、一つ疑問がわきますのは、国連決議が要請しているのは、「食糧、医療品並びにイラクの経済インフラの復興及び復旧に必要な資源を提供すること」と書いていますので、物品供与をここでは要請しているのであって、人を出せ、出してほしいという要請ではないのかなと。安保理決議のこの「必要な資源」というところには、人的資源というものも入るのでしょうか。
林政府参考人 何がどこまで入るか、支援のあり方として厳密に線引きがなされているということでは必ずしもないと思います。ただ、人的貢献も排除されているものではないというふうに考えます。
達増委員 どうも、安保理決議に厳密に基づいて、安保理決議に対応した支援をするというような法律の構成にはなっていないようであります。
 これは無理もないことだと思います。といいますのは、今回のこの安保理決議、イラク戦争に参加しなかったロシアやフランスも賛成してできた安保理決議、恐らくロシアやフランスという国々は、軍隊をイラクには送らないのでありましょう。多分、アメリカ、イギリスは、ロシアやフランスの軍隊には来てほしくないと思っているんだと思います。したがって、加盟国が軍隊を送ることを要請するような決議文にしてしまっては、要請があるのに送らないという国が出てきて、きまりが悪いことになってしまいますから、もちろん、この国連決議は加盟国を義務として拘束するものでもないんですけれども、義務でないにしても、かなり弱い呼びかけ。
 これは、例えば十年前のあの湾岸戦争のときの国連決議で、加盟国にあらゆる手段をとることをオーソライズするというふうに決議したとき、それに対する協力を要請する、そこではリクエストという強い言葉が使われておりました。今回の国連決議はアピール、訴えるという表現。せいぜいコール・アポンで、要請する。まして、米英に加わって、米英とともに軍隊を送って活動させることについては、そういうことができると留意すると前文に触れられているにすぎません。したがって、非常にこれは決議としては弱いものになっていると思います。
 他方で、そのような弱い決議ではありますけれども、国連決議に基づいて自衛隊を海外に派遣させようというときには、PKO法があるわけですね。これは原口一博議員も盛んに先ほど主張していましたけれども、せっかくこういう立派なPKO法というものがあり、今回の新法で定めようとする活動にちょうど対応するような国連平和維持活動でありますとか、人道的な国際救援活動というものがPKO法にあるわけですから、これで対応していくというのが基本だと思うんですけれども、この点はいかがでしょうか。
増田政府参考人 お答えいたします。
 いわゆるPKO法、そして多分委員の御指摘の活動というものは、そのPKO法に定めます国際的な人道救援活動というものを念頭に御質問かと存じます。
 ただ、PKO法に基づきます、まず国際的な人道救援活動のもとでは、今回、今御審議いただいています法案が予定しております安全確保支援活動というようなものは想定されておらないと認識しておりますし、また、人道復興支援活動の中で考えております、例えば行政事務に対する指導助言というようなものも、PKO法に基づきます国際的人道救援活動では想定されていないのではないかというふうなことがまず一つございます。
 それから、国際的な人道救援活動に関します、例えば、先ほど来の御議論がございます受け入れ国の同意とか、また停戦の合意という要件も、私どもとしては満たしていると言い切れないというふうに考えておりますので、PKO法に基づきます国際的な人道救援活動で、今イラク、この御審議いただいています法案のもとで想定しております活動をすべて実施するということは困難かと存じております。
達増委員 PKO法が適用できないということは、今の答弁でるる細かく述べられましたが、このいわゆるイラク特別事態ということが国際法的にも非常に異例な状況だということを意味していると思います。
 このイラク特別事態という言葉も、よくぞ考えついたと思う、非常に気持ちの悪い日本語でありますけれども、何か満州某重大事件、これは張作霖爆殺事件のことでありますが、あるいは満州事変のような、そういうのを思い起こします。
 ちなみに、今回のイラク特別事態というのは、実は満州事変にそっくりなんですね。最初から指導者を殺してしまうことを目的として、そして日本に有利な体制、アメリカに有利な体制を打ち立てることを目的としているわけでありますけれども、日本が戦後GHQに占領されたときには、ポツダム宣言というのを受諾しまして、ポツダム宣言の中には連合国が占領するというのが書いてあったんですね。それを日本政府が受諾したから占領したわけでありますが、満州事変のときはそういう合意なく日本軍が占領しておりますし、今回のイラク事変においてもそういう合意なく、今、米英当局が占領国として占領してしまっている。
 そこに日本も自衛隊を送ろうということになるんですが、国際法上、占領されている国の同意なくそこを占領してしまっていると、イラク国民からすれば、これは自衛権の行使として、勝手に来ている外国軍隊を排除するという攻撃が自衛権の行使として肯定され得ると思いますよ。これは米英に対してもそうですが、日本の自衛隊が行った場合でも、イラク国民が、我々の許しもなく勝手に外国軍隊が入ってくる、けしからぬ、よくないといって、自衛権の行使としてこれを攻撃するということが国際法上はあり得ると思うんですけれども、この点、いかがでしょう。
林政府参考人 事実の問題として抵抗等の動きがあるかどうかというのは別の問題でございますけれども、法律的に申し上げますと、これは、何にもない事態でいきなり武力紛争が発生して今の事態に至ったわけではございませんで、累次政府が申し述べておりますとおり、米英によります武力行使というものが、これは御議論あろうかと思いますけれども、政府の立場として申し上げておりますように、関連の安保理決議に基づいてこれは正当な武力行使として実施されたものである、その正当な武力行使が行われた結果として、権力の空白が生じている。
 そういう状況においては、武力行使を行った当事国である米英が占領当局として、そこにおける民生あるいは治安等についてその後適当な措置をとらなければならないというのが国際法上の仕組みでございまして、そういう意味で、全体として適法な、米英の側から見まして適法な行動がとられているというのが基本でございます。
 そういう適法な行動というものを前提にいたしますと、自衛権というお話がございましたけれども、自衛権というのは基本的に要件といたしまして急迫不正の侵害ということを一つ言っておりますけれども、やはり不正な侵害があるということが前提でございまして、現在の状況と申しますのは、正当な行動、正当な占領行為というものがなされているというふうに認識しておりますので、法律的な問題としてはそういう問題はないということでございます。御指摘のような問題はないということでございます。
達増委員 戦争というのは国際法の解釈の違いから起きてくるものでありますけれども、例えばこの決議一四八三では、占領国当局は、「イラク国民が自らの政治的将来を自由に決定できる状態の創出に向けて努力する」、そういうことが当局に義務づけられているわけでありまして、イラク国民の側が、自分たちの政治的将来を自由に決定できないようにしていると思えば、たちまち、イラク国民から見れば、当局とその一緒に行動している外国軍隊というのはこの決議に違反している、イラク国民にとっては、直ちにそうみなして、それを排除することは正当化されるだろうという主張をイラク国民がなし得る。
 もちろん、それに対して、占領国やその一緒に行動している国々は、いや、そんなことはない、これはこの決議に従ってやっているんだと言うんでしょうが、その対立をどう解決していくのかというときに戦争というのは起きるものでありまして、実際、このイラク事変については、休戦協定もなければ停戦合意もないし、講和条約とかそういったものもなく、国際法上は戦争が終わっていないわけですよね。最初から、戦争と位置づけないように、特別事態とかいう、そういう事変みたいな言い方をしているわけでありますが、そういうところに日本の自衛隊が行くというのは、もうこれは国権の発動たる戦争ということだと思うんですよ。つまり、その国の国民を代表する当局の正式な合意なく、その国民の合意なく外国の軍隊がそこに入っていくということは、これはもう戦争なんじゃないですか。
 第二次大戦のとき、ナチス・ドイツはオランダにどうっと軍隊を進めました、受け入れなく。ドンパチはしない。オランダはほとんど抵抗せず降伏するんですけれども、武力の行使、ドンパチはなくても、戦争、そういう国際法的な環境にイラクは今あると思うんですが、どうですか。
林政府参考人 国権の発動たる戦争というその部分につきましては、憲法解釈にかかわる話かと思いますけれども、国際法のもとにおきましては、戦争というのは、厳密に申し上げれば、戦前におきまして、いわゆる戦時国際法などがそのまま適用されるような時代に、まさに国権の発動としての戦争というものが究極的な手段として戦われる、それで、そのこと自体は合法であるという世界というものがあったわけでございますけれども、今日の国際法のもとにおきましては、そういう意味の戦争というのは違法であるということで、では、そこで行われる武力行使というのは実態としてはあるわけですが、これは何かと位置づければ、これは自衛権の発動であるのか、あるいは安保理の決議に基づく行動であるということで基本的に整理されておるわけでございまして、そういうものとして米英等の武力行使が行われているわけでございますけれども、我が国につきましてはそういう武力の行使に当たることは行わないということになっておりますので、それは、伝統的な意味に照らして考えてみても、国権の発動たる戦争に該当するということはないというのが政府の認識でございます。
達増委員 米英等は戦争のつもりで行っているから、彼らは彼らなりにやると思うんですけれども、日本はそうじゃなくイラクに行くというのは本当につじつまが合わないということを指摘して、終わります。
高村委員長 次に、金子哲夫君。
金子(哲)委員 社会民主党・市民連合の金子です。
 まず、私は最初に、原口委員も指摘された劣化ウラン弾の問題について、少しだけ指摘をしておきたいと思います。
 この問題は、先般、徳島の病院のお医者さんが現地へ医療の現状視察ということで出かけられまして、この二十七日に帰国をされて、二十八日だったと思いますけれども記者会見をされて、その記事が掲載をされておりますし、私の手元にその報告が載っております。
 専門家のお医者さんが行かれての調査結果ですから、そのことについて、例えば小児がんのバスラの病院の調査などが行われて、例えばバスラの病院では、一九九〇年と比較して二〇〇二年には小児悪性腫瘍者数が約八・四倍になっている、発症率も四・六倍になっているというような具体的な数字が出ております。出されております。
 もちろん、その報告の中にも、これはフセイン体制の時代の数字であるから、ある程度再検討しなければならないということが言われておりますけれども、現実の数字としてそういうことが出ておりますし、例えば、バスラでは、先天奇形の発生率が一九九〇年には一千出産当たり三・〇四であったのに、二〇〇一年には二十二・一九まで増加している、七倍にも増加をしているという具体的な数字が出されております。
 その中で、子供たちの状況というのは大変な状況にあるということでありますし、そのことが、川口外務大臣が言われるように、WHOが調査をした問題で必ずしもすべての因果関係が証明されているかどうかという問題は、検証しなきゃならない課題はたくさんあると思います。
 しかし、今回、イラクで現実に今そういう小児がんとか白血病とかそういうものが多発している現状の中で、それの支援活動を通じて、救援活動を通じて、そしてお医者さんを派遣することによって実質的な救援、医療的な救援と同時に調査を行うということは、実は私は、日本の国は可能だというふうに思うんですよ。
 それで、先ほど、WHOの調査結果について、私も先回にも申し上げましたけれども、一九九九年に使用されて、二〇〇一年の調査では、率直に言って、まだそれが発症事例として出る期間ではありません。低線量で被曝した場合、それから、この劣化ウラン弾のように胎内から吸収した場合には、細胞を侵すということで、出てくる小児病とか発がんの状況というのは五年もしくは十年先ということですから、その意味では、今イラクへ行って、イラクの現地の子供たちの治療のための援助をすると同時に実態を調査するということは、極めて有効性があるし意義があるというふうに思うんですよ。
 そういう意味で、私どもは、劣化ウラン弾の被害の責任があるなしということをとりあえずおいたとしても、現実のイラクに起きている、イラクの中で起きている、バスラとかバグダッドとか、過去、湾岸戦争である程度劣化ウラン弾が使われただろうと想定されている地域にそういうことが発症しているわけですから、そこにお医者を派遣し、医薬品を送り治療することと同時に、そのことを通じてその状況というものを日本が調査していく。そのときに、やはり広島、長崎の医療知識というものが非常に生きてくるということを申し上げているわけでして、人道支援の中の一つの柱に、そういう劣化ウラン弾による被害であろうと思われる子供たちのそういう症状に対する救援というものを大きな柱にしてほしい。そして、そのことを通じて、できれば、先進的な知識を持つ我が国が、この劣化ウラン弾との因果関係についても、その実例に基づいた調査結果というものを出していただく。そういう役割が求められているし、そういう働きをしてほしいということを私たちは言っているわけでありまして、その点について、外務大臣、どうお考えでしょうか。
川口国務大臣 今の委員のお話は一つの示唆として承らせていただきますけれども、実際に我が国がイラクにおいてどのような支援をしておくかということは、これは、いろいろなイラクが持つニーズの中で我が国として何をやるのが適切であるか、そしてまた、そういった能力があるか、さまざまなことを勘案しながら考えていくわけでして、実際に今の時点でお医者さんをバスラに送ることが支援の中に含まれるかどうか、あるいは、それを行うことが我が国としてほかの国とのそれぞれの持っている比較優位との関係でいいかどうか、全部これはこれからの話であります。
 それから、劣化ウラン弾の影響の問題については、今後、国際機関のやる調査について注視をしていくということについては再三再四申し上げていますけれども、さまざまな、今まであった、例えば公害病を思い浮かべていただいてもいいわけですけれども、いろいろなことが、ある現象がある病気の原因であるかどうかということの調査、因果関係の究明、あるいはその機序がどうであるかというようなことを調べるためには、相当の調査、あるいは相当の大がかりなことがあって初めて結果が出ていく、そういうことであろうかと思います。
 それで、今、そういう意味で、国際機関が、UNEPなりあるいはWHOというその面での専門家集団がやっているわけでございまして、したがって我が国としてそれを見守っていくということを申し上げているわけでして、仮に治療にお医者さんを送ることがあるとして、そのお医者さんがそういう、何というんでしょうか、的確な言葉が出てきませんけれども、医学的なそういう研究をし、機序が解明できる、そういうようなことができる人とはまた別な人ではないだろうかという感じもいたします。
 いずれにしても、一つのお話として承らせていただきたいと思います。
金子(哲)委員 このことだけで時間をとりたくないんですけれども、大臣、今この法案の中は二つの大きな柱があるわけですよ。一つは人道復興支援ということでしょう。その人道復興支援で我が国こそができる活動として私たちは提起しているわけですよ。そのことを、いや、これからイラクのニーズがどうかということを検討しなければ、これから考えてみなきゃわからないということではなくて、きのうも参考人のお話もあったように、非常に重要な課題として受けとめることがなぜできないんですか。これほど重要な問題が、子供たちの問題が、それを新たにもう一度検討しなきゃできるかどうかわからないというレベルの人道復興支援しか我が国政府は考えていないんですか、この法律を提案して。
 ですから、私たちはそのことを明らかにしていただいて、これは自衛隊の問題と直接関係ないんです。自衛隊を派遣することとは関係なく、今できる復興人道支援として、外務省の柱の中に今置いてもおかしくない、やるべき課題ではないかということを申し上げているわけで、その点についてなぜ答弁できないんですか、今この場所で。
川口国務大臣 そういう意味で一つの御示唆として承らせていただくということを言っているわけでございまして、委員が考えていらっしゃる、例えば白血病等々の治療については、我が国はそれなりに比較優位を持っているお医者さんはいると思います。それで、チェルノブイリその他についてもそういうことは支援をしてきました。
 ただ、今非常に、普通に申し上げているんですけれども、イラクのニーズ、これはたくさんのニーズがあるわけですね。我が国が、限られたイラク支援のための資源、人の面でもお金の面でも、いろいろな意味での資源、それをベースに何を我が国として人道復興支援の一環としてやっていくかということは、まさにいろいろな状況を見ながら考えて、要するに今の時点では何も決まっていない、そういう状況で、委員の御示唆については、それは承らせていただきますということを申し上げているわけでして、やらないというふうに申し上げているわけでは全然ありませんが、総体的に、重要なことというのはたくさんありますので、何がふさわしいかという観点で考えたいということで申し上げているわけです。
 それから、あわせてもう一つ申し上げた、委員がおっしゃったそのお医者さんに因果関係の調査を一緒にしてもらったらいいじゃないかということについては、先ほど申しましたように、こういったことの因果関係の解明、それからこれが起こってくる機序の解明、これは学術的な研究であって、治療の片手間でそういうことができ、我が国としてこういうことがわかりましたということを申し上げられるようなことかどうか。
 これについてWHOやUNEPがまだ、おっしゃったように二年目の調査ですから、これが国際的に確定的な結論であるとは思っていないということは申し上げているわけで、そういう意味で、調査をしていくということを言っているわけですから、それは今後見守っていきたいということを申し上げているわけです。
 原因解明には、やはりそれなりにきちんと科学的な手続とそれに基づく解明があってこそ、国際的に認知され、国際的にそれが評価をされる、そういうことであり、それがその後の行動につながっていくということだと思います。
金子(哲)委員 広島で白血病が発症したときも、この委員会でもどなたかが発言されたと思いますけれども、もともとそういうことが証明されていたわけではないんですよ。どうもおかしい、白血病が、患者が普通よりも多いということをお医者さんが、普通のお医者さんが疑問に思われて、そういうことを提起され、そしてその問題が出てきたわけですよ。
 だから、現場に行って、そのことを、今出てきていることをちゃんと見るということは非常に大事で、私は、それだけで調査すべてが終わると何も思っていないんですよ。だけれども、まず第一は、お医者さんを派遣する、それに専門的な人を派遣する、現実がどうなっているかをきっちりと把握する、このことぐらい約束できるんじゃないですか。
 官房長官、この柱は、法案としては自衛隊の問題がいろいろ論議になっておりますけれども、人道支援ということは極めて大きな柱だ、そして、これは法案ができなくてもやらなきゃいけない課題だということになっていると思うんですよ。
 そういう観点からいうと、これだけ指摘がある問題については、私は政府として、特に、何度も申し上げておりますけれども、日本は被爆国だ、そして被爆者に対する治療、放射線医学に対してはかなりの見識と知識等豊富なものを持っているという期待があるわけです、現地から見ると。そういうことにこたえるということは、これはもうこの戦争以前から実はあったんですけれども、経済封鎖などがあってなかなかできなかった、今、支援活動として政府も取り上げてできるということになれば、そういうことは最優先の課題として取り上げてもいい課題ではないかというふうに考えるんですけれども、どうでしょうか。
福田国務大臣 それはいろいろ調査が行われているというような状況もございますが、本当にニーズがあり、そしてまたそれに対応できる能力はあるということであれば、日本の支援としてやることはこれは可能であり、またそういうものを選択するのは妥当なものだというふうに私は思っております。
金子(哲)委員 今、ニーズの問題もありますけれども、ぜひ前向きに検討していただきたいというふうに思います。
 それから、これは通告しておりませんけれども、ちょっとお伺いしたいんです。きのうの夕刊に、ラムズフェルド米国防長官が三十日、イラクの戦後復興に関して、これまで七十カ国に軍派遣を要請したことが明らかになったということが報道されておりますけれども、我が国に対しては、米国政府から正式な要請があったのか、あったとすればいつなのか、それとも全くなかったのかということをお伺いしたいと思います。
西田政府参考人 お答えをいたします。
 総理、官房長官、外務大臣、累次御答弁申し上げておりますけれども、アメリカ政府から具体的な形での、イラクに対する我が国の自衛隊の派遣という形の要請はございません。
金子(哲)委員 ということは、日米関係、極めて重要と言われておりますが、この七十カ国の国の中には日本は対象にならない、なっていないということになるんですか。
西田政府参考人 お答えをいたします。
 御指摘の報道、私、詳細にわかりませんので、そのこと自身についてはお答えできませんが、国防省を含むアメリカの政府から、一般的にイラクにおける情勢、あるいは一般的にアメリカとして考えるいわばニーズでございますね、というものについて説明を受けるということはございました。(金子(哲)委員「最後ちょっと、ありましたか」と呼ぶ)あります、ありました。それで、七十かどうか私は覚えておりませんけれども、そういう形で一般的に同盟国等に対して説明をされたということは、一般的な外交の接触の中で行われたということでございます。
金子(哲)委員 つまり、日本にはあったわけですか。あったら、あった内容はどういう内容ですか。
西田政府参考人 お答えをしておりますけれども、御説明申しましたように、イラクに対して、日本を含め、各国に対して軍隊を出すというような意味における要請はなかったということと、それから、米英が考えておりますイラクにおける現在の、それぞれの時点でございますが、情勢の判断、あるいは彼らの考える一般的な意味でのニーズというものを各国にシェアするというようなことが行われた、そのような中で日本に対してもそのような説明が行われたということを申し上げたんです。
金子(哲)委員 ということになると、日本はアメリカから要請を受けていないということになれば、別にアメリカへの協力を行う必要はないわけですよね。
西田政府参考人 お答えをいたします。
 これも累次説明をさせていただいたと思いますけれども、今般、このような形での、イラク特措法という形でお諮りをしております考え方につきましては、日本政府が主体的にあくまでも決定したということでございます。
金子(哲)委員 主体的にはいいんですけれども、七十カ国にアメリカから要請があったと。だが、我が国には要請がないけれども、主体的にどんどんアメリカについていきますよということですよね。
西田政府参考人 お答えをいたします。
 要請があって、それを受けて我が国がアメリカに追従したのではないということを累次御説明しておるところでございます。
金子(哲)委員 もう答弁はいいんですけれども、要請がないけれども一生懸命やる、こういうのが日本の姿勢だと。他の国はどんどん要請を受けているけれども、日本は要請も受けないけれども、とにかくやりますということがこの法案の中身のようですから、そういうふうに受けとめながら、あと論議したいと思います。
 それでは、法案の第三条の二で言う国連加盟国が行うイラクの国内における安全及び安定を回復する活動とは、具体的にはどういう内容なんでしょうか。
西田政府参考人 お答えをいたします。
 今回の決議というものは、各国、すなわち国連加盟国に対しまして、イラクに対しいろいろな形での支援というものを要請するものでございます。したがいまして、そのような要請を受けまして、加盟国が独自の判断でニーズ及びみずからの能力というものを判断して、適切なそれぞれの活動をするというものだと思います。
金子(哲)委員 いや、私は具体的な活動のことを言っているわけではなくて、この法案で言う国連加盟国が行うイラクの国内における安全及び安定を回復する活動は、具体的にどういうことかということをお尋ねしているんですよ。そのことについてお答えください。
西田政府参考人 今回の法案において想定をされています活動は、人道復興ということと、それから安全の確保を支援するための活動ということでございます。
金子(哲)委員 よく聞いて答弁していただきたいと思うんですよ。具体的に三条の二号に書いている国連加盟国が行うイラクの国内における安全及び安定を回復する活動とは、具体的に何を指しているかということを言っているんで、法案全体の支援活動を聞いているわけじゃないじゃないですか。日本が行うということを聞いているわけじゃなくて、国連加盟国が行うイラク国内における安全及び安定を回復する活動とは、どういうことを指しているんですかということを言っているんです。
増田政府参考人 お答えいたします。
 決議の一四八三は、フセイン政権崩壊後におけるイラク国民の福祉増進の観点から、イラクの国内における安全及び安定を回復するために貢献することを加盟国に対して要請しておりますが、その内容としては、犯罪の防止等によってイラク国民の生命、身体の安全、ひいては社会全体の安全を確保するとともに、イラク国民の生活を安定させることによって社会秩序を回復させるための活動を指すと考えておりまして、それが法案に言います安全及び安定を回復するための活動と考えているところでございます。
金子(哲)委員 では、具体的に、例えば今米軍がやっている掃討作戦と言われるガラガラヘビ作戦などは、その中へ入っていますか。
増田政府参考人 御指摘のいわゆるガラガラヘビ作戦というようなものがどのようなものであるかという点について、今私どもとして確定的に判断をする材料を持っておりませんけれども、いずれにしても、先ほど申し述べた内容があるとすれば、それは法案に言う国内の安全及び安定を回復するための活動に当たると考えております。
金子(哲)委員 その答弁じゃ納得できないですよ。今ここであなた方が提案しているわけですから、安全及び安定を回復する活動を支援するわけでしょう。そのもとになる活動が何かということが明らかにならなきゃ、ガラガラヘビ作戦はどっちになるかわからないというようなことだったら、どこまでの範囲が支援の対象になるかどうか明らかじゃないじゃないですか。もう既に報道でもされているわけですから、その点についてはどう判断されるか、ぜひここの場で答えてください。
増田政府参考人 同様の答弁になって恐縮でございますけれども、私どもとしては、この法案に言います安全確保支援活動の対象となる活動というものにつきましては、先ほど申し述べましたような活動を指すと考えております。
 そこで、今御指摘の個別の米軍の作戦がそれに当たるかどうかにつきましては、まず、その作戦の内容というものを把握した上で判断をする必要があろうと考えております。また、加盟各国なりが行っておりますこの安全確保支援活動の対象になる活動というものは、必ずしも御指摘のガラガラヘビ作戦に限るものではないというふうに考えております。
金子(哲)委員 でも、先ほども言いましたように、きょう始まったことじゃないわけですよ、この作戦行動は。既に開始をされて時間がたっているわけですよ。そして、調べようとすればその内容も調べられる。あすは、いいですか、まだ法案の審議の最中で、このことに、例えば具体的な問題に説明ができなければ、その時々によってだれが一方的に判断するんですか。この委員会に対して、今少なくとも起きている事象はこの対象になるのかならないのかという、法案で言う安全及び安定を回復する活動になるかならないかぐらいは説明できなきゃ、未来に起こることなどもっと判断ができないじゃないですか。そんないいかげんなことでこれを提案されるわけ。それによって自衛隊が行える活動と行えない活動が出てくるじゃないですか。
 この安全及び安定を回復する活動とは一体何かということが明確にならなきゃ、今のような米軍の大軍事行動も、作戦もこの中に入るのか入らないかということを明確にしてほしいんですよ。
石破国務大臣 それは、結局二つあると思うんです。
 とにかく、我々が国際的な武力紛争の一環としての武力行使は行わないという憲法上の要請というのが一つあります。これは満たさなければいけないということは、当然のことであります。
 そしてまた、そのガラガラヘビであろうが何であろうが、その活動が、そういうような武力紛争の一環ではなくて、専らイラクの治安というものの安定に資するものである、そういう活動であるということでなければ、我々はその支援はできないということを申し上げておるわけでございます。
 それで、今の時点において、では砂漠のガラガラヘビ作戦とは一体どのようなものであって、子細にそれを教えてくれということをアメリカ軍に申し上げて、それをアメリカ軍が教えてくれるはずがないというのは、それは軍事常識として当然のことでございます。かくかくしかじかかくなるもので、このようにやっておるのだということを詳細に我々は知り得る立場にございません。
 しかし、我々が支援をいたします場合には、あくまで憲法の要請に従いまして、それが武力行使ということにつながらないように、そしてまた、アメリカがやっておるそのような活動というものが、国際的な武力紛争の一環をなすものではなく、イラクの治安というものの安定に資するものであるということでなければ支援はできないということを申し上げておるわけでございます。
金子(哲)委員 ですから、その大前提としての議論をしているわけですよ。
 もちろん、おっしゃるとおり、自衛隊が軍事作戦に共同行動をとることは当然できないことは明らかで、そのことを言っているわけではなくて、このこととどのこととどのことはこの法律に言う安全及び安定を回復する活動と認定されるのかどうかということがはっきりしなければ、それに対して支援を行うという自衛隊の活動そのものが規定できないじゃないですか。
 今防衛庁長官が言われるように、その作戦は軍事的な目的いかんによって、聞いても答えてもらえないということになれば、では、判断のしようがなくなるじゃないですか、それ自身は。いいですか、自分たちに判断ができない、少なくとも、大前提となる国連加盟国が行っている安全及び安定を回復する活動の定義づけができなければ、具体的にこの行動はそうだ、これはそうではないということが明らかにならなければ、どこまでいっても、それに対して自衛隊が何をできるかという判断ができないということを言っているわけですよ。
 では、少なくとも、あすもまた審議がありますから、あすまでに調べて、このガラガラ作戦なるものは安全及び安定を回復する活動にできるかどうかをぜひ答弁してください。
石破国務大臣 これは、我々の活動が我々の憲法の要請に従って行われるわけですから、私どもがそれをどう判断するかということなのでございます。
 我々の自衛隊の活動というものはあくまで憲法の範囲内で行われなければいけない。したがって、我々がそれをどのように主体的に判断するか。そして、その基準を示せというお話でございますが、それは、これはどの国の軍隊でもそうだと思うのです。我々の作戦は、子細に、このような内容であって、このようなものを対象にして、このような範囲でやっておるぞというようなことを、それはアバウトなことは示してくれるかもしれません。しかしながら、それを判断材料として、あくまで我々が主体的にそれを判断することになる、それは憲法上の要請をきちんと満たさねばならない、そういうことでございます。
金子(哲)委員 だからこそ、それを判断しなきゃいけないわけですよ。
 先ほど法制局長官は、例えば野盗、強盗のたぐいを制圧するために行くときは弾薬の提供もできるような発言がありましたけれども、その行動の範囲を識別できなければ――一体そこでだれが線を引くことができるかということですよ。だから、この法律の中で言う支援活動に入るかどうかということは、個々具体的にやらなければ、我々にも理解できるようにしなければ。それは現地だけでやるという問題ではないと思うんですよ。
 例えば、もう一つお伺いしたいと思いますけれども、第八条の六項の一、武器の提供ということはできないということになっております。「武器(弾薬を含む。)」という、この「提供」というのは、一体どういう行為を言っているんですか。
増田政府参考人 御指摘の「武器(弾薬を含む。)の提供」の「提供」とは、例えば、自衛隊が保有しております武器弾薬を第三者に渡すということを意味しております。
金子(哲)委員 ということは、もう輸送はどこまででもいいということになるわけですか。
石破国務大臣 どこまでもということが何を指すのかよくわかりませんが、それは非戦闘地域で、そして、その中において比較的治安のいいと申しますか、実施区域に定められたところでなければできません。どこでも輸送ができるというものでは決してございません。
金子(哲)委員 もう時間になりましたから終わりますけれども、やはり定義のところですらあいまいなままでこの法案を動かすことは、それこそ、外国に行って自衛隊という武装した勢力が戦闘行動にも巻き込まれる危険性が極めて大きいということを指摘して、私の意見を終わりたいと思います。
高村委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時三分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時二分開議
高村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 この際、イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法案に対し、伊藤英成君外四名から、民主党・無所属クラブ提案による修正案が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を求めます。伊藤英成君。
    ―――――――――――――
 イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法案に対する修正案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
伊藤(英)委員 ただいま議題となりましたイラク人道復興支援特別措置法案に対する修正案につきまして、民主党・無所属クラブを代表し、その趣旨を御説明申し上げます。
 民主党は、イラクの大量破壊兵器問題に対し、徹底的な国連査察を通じた平和的解決を訴え、米国等によるイラク攻撃に反対しました。しかしながら、イラク国民がこれ以上の惨禍に見舞われることを回避するとの人道的見地のほか、イラクの安定が及ぼす中東和平、ひいては中東全体の平和と安定への影響、国連安保理決議一四八三号の採択、同盟国たる米国からの支援の要望等に照らし、我が国はイラク復興支援に積極的に取り組んでいくべきとの見解を既に明確にしております。この立場から、先月、民主党はいち早くイラクに調査団を派遣し、現地のニーズをつぶさに検証してきました。
 民主党は、現地のニーズ、憲法上の問題、対イラク・対中東政策に関する戦略、そして、米国同時多発テロ以降、多様化する世界の脅威に対し、国際社会の安定した枠組みをいかに構築していくかのビジョンなしに、政府・与党が自衛隊派遣ありきでこの政府案をなし崩し的に通過させようとしていることは、日本の国益にとって禍根を残す事態であり、断じて看過できないと考えます。特に、政府がイラク攻撃を支持する理由とした大量破壊兵器は、いまだ発見されていないどころか、米英両国では情報操作の疑惑が指摘されています。つまり、政府がイラク攻撃を支持した前提が崩れかねない状況にあります。
 民主党は、イラク国民に対する人道支援及び復興支援を第一義的な目的とする修正案を提出いたします。その具体的内容は、お手元に配付した修正案のとおりでありますが、以下、その概要を申し上げます。
 第一に、イラク攻撃の正当性の根拠として、法目的に挙げられている安保理決議第六七八、六八七及び一四四一号を削除することです。
 第二に、戦闘地域と非戦闘地域、戦闘員と非戦闘員の峻別は困難であり、海外での武力行使、武力行使との一体化の可能性も生じ得るのに加え、自衛隊でなければ果たせないニーズが特定できないこと、また、自衛隊を派遣した場合、実質占領軍とともに活動すること等の判断により、自衛隊の活動に関する項目を削除することです。
 第三に、施行から四年を経過した日に失効するとありますが、流動的な現地の状況から、二年の期限に短縮することです。
 委員各位におかれましては、本修正案の趣旨につきまして十分に御理解を賜り、慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
 以上です。(拍手)
高村委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終わりました。
    ―――――――――――――
高村委員長 これより両案及び修正案を一括して質疑を行います。
 伊藤公介君。
伊藤(公)委員 いよいよイラク特措法などの両案の審議も大詰めに来たように思います。そうした中で、民主党の修正案も提案をされてきました。新聞紙上では、政局絡みでこの法案には賛成できないなどという記事もございますが、国際貢献という、我が国が国際社会の中できちっとした役割を果たしていく、その重要な法案が、政局絡みで賛否が問われたり、選択をするとすれば、我々は、これから十年後、今日のこの国会の論議が検証されるときが来ると思います。特に、きょう、今提案席に座っている民主党の皆さんも、これから日本の政界で活躍をされていく皆さんだと思います。皆さんが政党の枠を超えて、我が国が果たす役割を大胆に、しかし、もちろん慎重に議論を尽くしてその選択をしてほしいということを、私はまず冒頭に申し上げておきたいと思います。
 民主党提案の具体的な質問をする前に、官房長官に伺っておきたいと思います。
 これまでこの法案について、本会議あるいは委員会の質疑を通じまして、恐らくすべての会派が、アメリカ等によるいわゆるイラク武力行使の正当性に関する意見の相違はある、しかし、国連安保決議のいわゆる一四八三の要請にこたえて、人道的な見地からイラクの国家再建を支援する、促進する、この国際社会の取り組みに対して、人的な協力はしていこう、貢献をすべきであるという点では一致をしていると私は思います。
 しかし、民主党案の提案の中にも最も大事な点として指摘をされているので、これらのことは後に質問させていただきますが、自衛隊を海外に派遣すること自体がいわゆる憲法違反であるとか、あるいは国連安保決議の一四八三の要請を受けて派遣をする自衛隊は、これは占領軍たる米英軍の指揮下に入る、これは戦争協力ではないか、あるいはまた、自衛隊による武器弾薬の陸上輸送は米英軍の武力行使と一体化するものだ、あるいは憲法の禁じているいわゆる集団的自衛権の行使となり得るのではないか、こういう意見を反対の皆さんがこの委員会でも主張してこられました。
 あるいは現地の報告も、私は、それぞれの政党の皆さんが厳しい環境の中で現地調査をされてきたことについては敬意を表したいと思いますが、どうも現地報告を聞いておりますと、先ほどいみじくも趣旨説明の中にございましたが、我々は自衛隊派遣が先にありきだと御批判をされることがしばしばあるわけですが、むしろ、私は、野党の皆さんに、自衛隊を海外に送らない、できるだけ外に出したくないという前提で現地調査をしたりあるいは物事を判断したとすれば、おのずとその調査報告もスタンスが変わってくるのではないかというふうに思うわけであります。
 自衛隊の派遣を含めるべきか否かというこの問題について、私は、どうも、かつて五五年体制のもとで、自衛隊は憲法違反だという呪縛からまだ解放されない人たちがいるのではないか。私は、今自衛隊というものがむしろ国内でも、そして国際社会でもそれなりの重要な役割を果たしていかなければならないと思いますが、この自衛隊あるいは軍隊に対するアレルギーからむしろ発生をしているのではないかという考え方でありますけれども、まず、福田官房長官から御認識を伺っておきたいと思います。
福田国務大臣 ただいま委員からお話ございましたとおり、イラクに対する復興について、これは復興支援をした方がいいというその思いについては、各党、すべてとは申しませんけれども、そういうことについては同じ気持ちを持っているんだろうというふうに思います。ただいまの民主党さんの説明によりましても、支援はする、そういうことは既に確認をしている、こういうことでございます。
 ただ、問題は、方法論によるのだろうというように思います。要するに、自衛隊が出動すべきかどうか、イラクの復興支援に自衛隊が協力すべきかどうか、この点につきまして意見が異なる、こういうようなことがあります。
 自衛隊の活動については、これはもうこの十年、国民の認識も随分変わってまいりました。国際的な平和協力活動に限るのであれば自衛隊は積極的に海外に出て国際社会に協力すべきだ、これは一致した国民世論だろうというふうに思っております。
 そういうように国民の意識も随分変わってきているということを前提にして考えた場合に、今回もやはり同じように国際平和協力活動なんですよ。ですから、そういう観点から考えれば、やはり今回も自衛隊に活動してもらうのが一番好ましいのではないか、その方が一番効率的、効果的に活動できる。そしてまた、そのことが国際社会に対しても日本の姿勢というものを十分に示すことができるし、また、そのことによってあの地域に平和がもたらされるということであれば、これはあの地域だけのことでなくて、我が国にとってもいいことだし、そしてまた国際社会にとっても、全体にとっていいことだ、こういうことだと思います。
 そういう意味において、政府は、今ぜひともこの法案を通していただきたいということでお願いを申し上げているわけでございますけれども、自衛隊に対する認識も、先ほど申し上げたようなこともございますけれども、全般的な認識として随分国民の中における理解も進みまして、今回の活動につきましても、共同通信では賛成五〇、反対四〇、これはイラクへの自衛隊派遣についてでございますけれども、それから朝日新聞については賛成が四六で反対が四三、こういうことでございますので、私は、随分国民の御理解は得られてきているというように思っております。
 また、自衛隊そのものについても、昔よりもさらに自衛隊に対する期待は高まってきている。そして、自衛隊に対する印象というものも、国民はよい印象を今持っている、こういうことであります。三十年前の昭和四十七年の調査では、自衛隊に対してよい印象を持っている、それから悪い印象は持っていない、両方合計しまして五九%。今は、両方合計しますと八〇%というんですよ。ほとんどと言っては言い過ぎかもしれぬけれども、国民の大方の御理解は得ているのが今の自衛隊の活動だというように思っております。
伊藤(公)委員 官房長官の報告を伺えば、私は、今、国民の意識というものが、あるいは自衛隊に対する考え方というものが随分変わって、そして理解が深まったという認識を持つわけであります。
 政府の見解については、もし後ほど時間があったら伺いたいと思いますが、きょうは、これから民主党の修正案についてまず伺っていきたいというふうに思います。
 この修正案について、私、現物を先ほどいただいて読んだばかりですけれども、自衛隊による活動を認めない、我が国としては文民の派遣のみによってイラクの復興支援に貢献すること、こうされておられますが、まさにこの点こそ、先ほど申し上げたように、この法案の論点だということは私も承知しているわけであります。
 これまでの調査によれば、あるいは皆さんの調査報告を伺いましても、現在のイラクは、治安が依然として非常に不安定、そういう地域ではある、しかし、医療やエネルギーなど、社会的なインフラが非常に不十分だ、あるいは、子供たちが今いっときを争って救いを求めている、そういう御報告もございました。
 そのような状況を踏まえた場合に、私は、我が国としてふさわしいいわゆる貢献を行うためには、厳しい環境の中であればあるほど、効果的に活動を遂行できるいわゆる自己完結性を備えた自衛隊の派遣こそ、一番現地において活躍ができるのではないかというふうに思います。
 戦地ではありませんが、私は、あの阪神・淡路の復興を一年後託された仕事をしてきた者でございます。あの阪神・淡路のちょうど三日後に私は現地に入りました。大変な状況でした。もちろん、警察や消防や地域の皆さんやボランティアの皆さんが大変なバックアップをしていただきましたが、非常に訓練をされた自衛隊の現地におきます活動というものは、地域の住民の皆さんにとっては大変な力強い戦力になったと思います。
 私は、そんな経験を踏まえて、自衛隊が厳しい環境の中であるほどその役割を果たしていただけるのではないかというふうに思いますが、民主党さんの提案の中では、自衛隊はだめなんだ、しかし文民の派遣のみだ、こういう提案をされているわけですけれども、どんなふうにお考えか、伺いたいと思います。
前原委員 今の御質問にお答えする前に、二つだけ申し上げておきたいと思います。
 まず、政局絡みでこういった対応を民主党がしたのではないかという指摘を先ほどされましたけれども、それは全く当たりません。我々は、一番初めにイラクに現地調査団を出し、本当のニーズは何なのかという視点から、イラク復興支援には積極的に取り組むべしという我が党の考え方をもとに、どういった支援策が求められるべきかという観点からこの判断をしたところであります。
 自衛隊がなぜだめなのかということについては、御質問でありますので、後ほど詳しくお答えをしたいと思います。
 二つ目に、自衛隊を送らないことを前提にしたのかということにつきましても、そうではございません。むしろ、私は、自衛隊の一番大きなニーズは現地の治安維持活動にあるんだろうと思います。しかしそれは、今定められている憲法上の制約、例えば占領軍、CPAのもとで行う交戦権の行使につながるのではないかとか、あるいは、治安維持活動そのものが海外での武力行使あるいは武力行使の一体化につながるのではないか、そういう制約の中でできるものを考えたときに、我々は、ニーズとしては極めて少ないのではないか。そういうことで、自衛隊の必要性も含めて検討した結果、こういう法案を出させていただいたということは、まずお話をしたいと思います。
 その上で、なぜ自衛隊ではないのかということでありますけれども、私は、二つの点でその点についてお答えをしたいと思います。
 まず一つは、本当に与党はこの武器使用基準でイラクに行かせるのかということを私は問いかけておきたいと思います。
 つまりは、石破長官や政府の方々の答弁を聞いておりますと、非戦闘地域、戦闘地域という分け方をされております。非戦闘地域が必ずしも安全な状況ではないということは御答弁されていますけれども、では、そういう地域に本当にPKOの、いわゆるaタイプと言われるような緊急避難、正当防衛、あるいは武器等防護の武器使用だけで行かせることが、本当に今の現下のイラクの情勢を考えたときに、自衛隊に真っ当な任務を遂行できるような状況なのかどうなのかということを考えたときには、私は、極めて大きな問題があると思います。仮に死傷者が出たときに、どうやって与党の皆さん方はその責任をとられるつもりなのか、そのことを逆に私は皆さん方にお訴えをしたいと思います。
 それから、二つ目には、我々の案を見ていただきますとおわかりになりますけれども、暫定統治機構がイラクにできた暁におきましては、これは、例えばPKO三原則の受け入れ同意とかあるいは停戦合意に当たるような環境が整うわけでありまして、そういったときには自衛隊の派遣というものを全く我々としては否定をしていないということでございまして、そういう意味で、今送ることについての問題が多い、そして、民生面での活動というものに特化をして現段階は日本として貢献をすべきであるというふうに思っております。
伊藤(公)委員 政局の話は、私が申し上げているのではなくて、新聞に書いてあったということでございます。
 防衛庁長官にちょっと伺ってもいいですか。私は、いわゆる自衛隊というものが、もちろん御案内のとおりで、二つの面を持っていると思うんですね。いわゆる戦う集団である。同時にまた、これは先ほど私、阪神・淡路のことを申し上げましたけれども、災害とか、そういう支援をしている。そういう二面があると思うんです。もちろん、日本の自衛隊は、外国のように戦うことはできない。けれども、そういう二面性をきちっと持っていて、そして、国際社会でも憲法のきちっと許す範囲内で自衛隊が活躍できる、そういうことをきちっと統一見解として政府がむしろ明確にしておく必要があるんじゃないかと私は思いますが、防衛庁長官の見解をちょっと伺っておきます。
石破国務大臣 統一見解を出すかどうかは、また政府として判断をさせていただきたいと存じます。
 自衛隊の持つ二面性というのは、まさしく先生おっしゃるとおりだと思います。あえてつけ加えれば、三面性と言ってもいいのかもしれません。自衛権の行使として武力が行使できる、あるいは治安出動や海上警備行動のように警察権を行使するという形、そして災害派遣のような形、この三つを持っているのだと思います。一番この委員会の最初に、赤松委員の方から、災害派遣を海外でやる、そういうようなイメージではないか、正確にはとらえていないかもしれませんが、私はそういうイメージなのだろうと思っています。
 しかしながら、なぜ自衛隊でなければいけないか、あるいはなぜ自衛隊が必要ないかという議論が、先ほど伊藤委員と、そしてまた民主党の提案者の方から御議論がございました。これは繰り返しになって恐縮でございますが、そういう阪神・淡路と似たような状況かどうかはわかりませんが、非常に過酷な環境下にあって、水も電気も、あるいは食料も燃料も、ほかにだれにも頼らなくていい、そういう組織は自衛隊しかないであろう。そして、どの国も軍隊を出しておるわけで、いろいろなコミュニケーションはやはり民間ではだめであって、我々はPKOでずっとほかの国の軍隊との信頼関係、コミュニケーションを築いてまいりました。それでなければいかぬだろう。
 そして、PKOでもいいではないか、暫定政権ができてから、それでもいいではないかということですが、これは、多くの先生方御案内のとおり、ではそのときになってPKOで行きましょうということを決めたといたしましても、準備には何カ月も何カ月もかかるわけでございます。通常、PKOというのは、では行くと決めて一週間や二週間で行けるものではございません。いろいろな物資も調えねばなりません。そうしますと、では十月とか十一月とか、その暫定政権の性格もわかりませんけれども、そのときに仮に決めたとしましても、出るのはもう来年とかいうことになるでありましょう。それが国連の要請に本当にこたえることになるのかという思いを政府としては持っているところでございます。
伊藤(公)委員 それでは、民主党さんに伺っていきたいと思いますが、自衛隊の問題はもう少し後ほども触れられればと思いますが、仮に民主党の提案によって文民のみを派遣するということにした場合に、では、現在のイラクの治安情勢を踏まえて直ちに文民を派遣するということを考えていられるのか。あるいは、文民の派遣が直ちに行けないとすれば、それは一体いつごろできると考えていられるのか。あるいは、暫定統治機構の発足を待って派遣をするという場合に、派遣は、今お話にもありましたけれども、私はかなり時間がかかるのではないかというふうに思います。
 この委員会で数々の現地報告がございました。もう写真入りでも報告がありました。今、既に多くの国々が現地でさまざまな活動を展開していただいています。そのときに、文民を送るということが、今の民主党さんの案で、一体どういうスケジュールでできると考えているのかを伺っておきたいと思います。
前原委員 我々の案は、政府案をベースにした修正案でございます。その柱というのは、イラクの復興支援職員を出すということと自衛隊を出すということが政府案の根幹になっております。そして、それに対して安全確保であるとか、あるいは人道支援活動というものがあり、そして基本計画をつくって、それが事後承認というのが、私はこの法案の大まかなフレームワークだろうというふうに思います。
 我々が申し上げているのは、その自衛隊の活動というものを落とす、こういうことでございますので、政府案で指摘をされております復興支援職員の活動については、政府が考えておられるようにやればいい、それについては、送ってどんどん活動されたらいいということを申し上げているわけでありまして、別に政府と違う活動を、我々が何か新たなものを出してやりなさいと申し上げているわけではありません。我々は……(発言する者あり)いや、ニーズがあるからこれを出されたんでしょう。中谷委員さん、あなたは、今、ニーズがあるからこの法案を出されているんじゃないんですか。ちょっと筆頭を、うるさいですから黙らせてください。
 あなた方が出されている法案の修正案を出しているわけです、我々は。つまりは、人道復興支援職員と自衛隊の活動が二本柱になっていて、その自衛隊の活動を落として、そして政府の復興支援職員についてはどうぞやってくださいということを我々は申し上げているわけです。そして、我が党は、イラクの復興支援についての民生面での必要性については、しっかりと提案を民主党として行っているところでございますので、そういった面をしっかりやればいいというふうに思っております。
 また、十月ごろに出されるという話でありますけれども、間に合わないから自衛隊を今出さなきゃいけないんだと。PKOあるいは暫定行政機構が発足してから、それを待たなきゃいけないんだということになれば、先ほど申し上げたように、では、今の武器使用基準で危険な地域に、限定した、手足を縛った状況で行かせて、それが自衛隊の活動として本当に全うできるんですかということを逆に私は与党の皆さん方に自問自答していただきたいと思います。
伊藤(公)委員 現在のイラクにおいては、国内における安全確保、すなわち治安の維持が大きな課題であります。そのために活動を行う必要性が高まっている状況にあると私は思っています。
 こういう状況の中で、修正案では、我が国として自衛隊の派遣は行わない、今言われているように。治安維持活動への支援については、その支援対象から軍隊を除外して、そして文民によるものに限るというわけですけれども、現実問題として、そのようなことが一体可能なんだろうか。その場合、文民の活動として具体的にどういう業務を民主党さんは考えていられるんですか。イラクにおいてどういう調査を行った上でそのような業務に対するニーズが存在していると判断をしていられるのか。文民だけによる対応で我が国として国際社会の期待に私は必ずしもこたえることはできないと思います。
 もちろん、日本の国内にいるときよりははるかに現地は危険は伴うと私は思います。この委員会でも質疑がございました、一〇〇%安全なんということはあり得ない、危険は伴うと思います。だから、訓練をしている自衛隊がまず先行して派遣されて、そして現地で、日本の自衛隊のできる、もちろん憲法の範囲内での活動をして、そして文民も同時に現地に送るということができたらいいのではないかと私たちは考えているわけですが、なぜ自衛隊が、文民を送るということの方がむしろ危険なんじゃないですか。
前原委員 伊藤委員も御承知のとおり、四月の十日ぐらいからの資料しか私は持ち合わせておりませんけれども、それから以降で、米軍で八十名以上の死者が出ておりますし、けがをされた方はもっとたくさんあります。また、イギリス兵もこの間六人亡くなられて、私が持っている統計では、十人以上の方がお亡くなりになっているという話を聞いています。
 つまりは、軍隊であるということで逆にゲリラ組織にねらわれるということもあるわけでございますし、聞くところによりますと、ある国の軍隊は、絶対に、アメリカ、イギリス軍とは違うんだという色の帽子をかぶって、我々は米英軍ではないですよということを明らかにした上で活動をしている、余儀なくされているという話を聞いております。
 そういうことを考えると、今委員が御指摘をされた、危ない地域だから軍隊が行った方が大丈夫なんだという議論は、私はむしろ逆の部分があるんではないかと思っております。
 したがって、イラクのために、本当に復興支援に対して必要だということであれば、文民の方が出ていかれる、そしてそのニーズについて、本当に必要なことをやられているんであれば、私は襲われることはないというふうに思います。
伊藤(公)委員 このことも委員会では随分議論になりました。どういうところが危険なのか、危険でないかという話も随分やられました。
 民主党さんの修正案には、いわゆるCPA、連合暫定施政当局、これは占領行政を担うものであるから、その同意を得て、協力をして自衛隊が活動するのは、いわゆる憲法の禁止する交戦権の行使につながる可能性がある、こういう指摘をしているわけであります。
 しかし、現在のイラクにおいて、いわゆる決議一四八三によって、CPAは、イラクにおける実効的な施策を通じたイラク国民の福祉増進に関する権限を付与されているんです。文民を派遣する場合であっても多分、民主党さんの文民を派遣するときでも、当然、CPAとの連携をとることになるんじゃないですか。私は、CPAが、今現在、現地の情報を一番持っているところだと思います。
 修正案では、派遣をされる文民は、具体的には、CPAとはいかなる連携をとることを考えているのか、CPAと連携をとらなければ、最も確かな情報を得ることはできないと私は思いますけれども、いかがお考えでしょうか。
末松委員 このCPAとの連携、確かに委員がおっしゃるように、協力という意味では、この連携は図っていかなきゃいけない、それは私どもも認めております。
 そういった意味で、私も調査団で行ったときに、あのときに、CPAに、外務省出身ですか、奥参事官という方がおられました。ただ、奥参事官の位置づけも、これも政府として、CPAの監督下というんですか、指導下には入っていないという形だろうと思います。それはある意味じゃ独立的に協力関係にあるということですから、そういった意味で、私どもも、協力関係にあるということを十分に踏まえながら、これは協力ができる話であり、政府のベースと同じ形でできる話だと思っております。
伊藤(公)委員 もう一つ、民主党の案によりますと、イラクにおいて、いわゆる戦闘地域あるいは非戦闘地域、戦闘員と非戦闘員の峻別が困難であるということで、もし本当にそうであれば、どうして派遣をする文民の安全を確保するつもりなんですか。皆さんの方は、戦闘地域も非戦闘地域もなかなか峻別できないというなら、文民を送る場合は大丈夫なんですか。
前原委員 それは、福田官房長官か石破防衛庁長官に聞かれたらいかがでしょうか。
 つまりは、この自衛隊の活動というのは、今伊藤委員の御質問だと、では、日本でNGOあるいは文民の方が行ったら、その方々を守るんですか、自衛隊の活動は。違うでしょう。補給とか、あるいはバグダッド、他の国の間の輸送業務をやるわけでしょう。ということは、今の御質問だと、根本的に、政府が出されている法案によると、自衛隊を出す、それはまさに自衛隊が文民を守るために出すような法案じゃないですか。そんなふうに我々は今までの議論では前提にしていません。そういうことを前提として御質問されるのであれば、今の御質問というのはまさに政府に聞かれるべき話じゃないでしょうか。
 つまりは、自衛隊が文民を守らないということであれば、どうやってその文民を守るかということは、出された政府が責任を持って答えられるべきだと思います。
伊藤(公)委員 自衛隊は出さないとおっしゃるんですね。文民は出す。しかし、そこが戦闘地域であるか非戦闘地域であるかはわからないとおっしゃっているわけでしょう。文民を送るんですよ。危険もあると皆さんは報告されたんでしょう。その危険のあるところに、自己防衛もできない文民を皆さんは送るんですか。文民ならいいというのは、私にはわからない。
末松委員 まさしく前原委員が言ったように、戦闘地域、非戦闘地域、難しいということで、これは政府も私たちも、民主党の案も、ほとんど同じベースに立っているわけですね。ポイントはやはり安全か安全でないか。つまり、戦闘地域か非戦闘地域かという分類以上に、非戦闘地域の中でしか活動しないわけですから、その中で安全がどの程度なのかということをきちんとやはり政府の方でも公表をして、いろいろな危険度を分けていく、あるいは安全基準についてきちんとした対応をこれからとっていくべきだと思っています。
 私どもも、そういった意味で、安全度について、区分けをしながら、そして安全に、人間のやることですから完全ではないかもしれませんが、そこで私たちはやっていく。これは、まだ政府としてそこまではっきりした考えを私は聞いたことがございませんので、その辺について民主党は考えていくということです。
伊藤(公)委員 これ以上このことをやってどうかと思いますが、私は、一般の国民の皆さんがこの議論を聞かれたら、危険はある、しかしそこに自衛隊は送れない、文民は送ります、そしてCPAの情報を得て行くんでしょう、でも自衛隊がCPAと連絡するといけない。CPAの命令でやるんじゃないんですよ、私たちが考えているのは。だれだって、最新の確かな情報を得て、外国に文民であろうと自衛隊であろうと命をかけて行く人たちに、我々もその決意で送り出さなきゃなりませんよ。
 だから、自衛隊はだめだ、だけれども文民はいいという民主党の提案には、私はくみするものではありません。
 時間があれですので、私は次の質問をさせていただきます。
 民主党さんの主張によれば、いわゆる中長期的な視点の対イラクあるいは中東政策に対する戦略が政府の提出案には示されていない、こういう指摘もされてまいりました。
 今、既に現在、イラクには、アメリカ、イギリスを含めて、カナダ、オーストラリア、イタリア、デンマーク、スペイン、チェコ、ポーランド、ラトビア、リトアニア、ヨルダン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、韓国などなどの国々が既に軍隊を派遣していますし、さらに十四カ国が、タイ、ニュージーランドも軍隊を派遣することを決定しています。我が国として、文民の派遣によって、今後、いかにして日本の国益を、文民だけで日本の国益を守れると考えているのか。
 このイラクを含めた中東は、さまざまな議論の中でも御指摘されましたけれども、日本にとってはエネルギーの生命線です。中東に、今日、石油の八七%を我々は依存している国です。しかも、その中東は、世界のエネルギーの、まさに埋蔵量でも、産油、石油を生産するのでも、大変な大事な地域であります。そういうことを考えたときに、私たちは、このイラクに対して総合的に我々の役割を果たさなければならないという決意でこの法案に臨んでいるわけであります。
 民主党さんの御提案のように、自衛隊の実施する活動をすべて削除するというのは、私は全く現実を踏まえていないものだと思いますし、民主党は、これまでの議論を通じて、派遣される文民の安全確保を最も問題にしていたにもかかわらず、これをむしろ、私はないがしろにしているものではないかと思いますが、もう一度お考えを伺っておきます。
前原委員 委員御承知のとおり、イラクというのはかねてから親日的な国柄であるという話を私も聞いておりますし、委員も聞かれていると思います。
 まさに今占領統治が行われていて、それに対する反発もある。御承知のとおり、サダム・フセインがいなくなったのはよかった、しかしアメリカも出ていってほしい、これが多くのイラクの国民の今の心情ではないかと私は思います。
 我々民主党は、先ほどから何度も御答弁をしていますように、イラク復興支援に対して日本は何もすべきでないということを申し上げていることでは全くありません。我々も、やれることについてはしっかりやればいいということを申し上げているわけでありまして、現時点においては、私は、民生面での支援というものに限定をし、そして、暫定行政機構ができた暁には、PKO法などに基づいて自衛隊を派遣することも考えればいいということでありますので、国益観については委員と全く同じ認識でおります。
伊藤(公)委員 次に、民主党さんはこれまで、米英などによる対イラク武力行使は違法だと言ってこられました。我が国がイラクの復興支援を行う、このことについての関係を私は伺っておきたいと思います。
 今度の米英などによる対イラク武力行使は国際法上違法なものであって、本法案の目的における安保理の決議六七八、六八七、一四四一を削除するという修正を行っていると伺っています。
 しかし、もしイラクに対する武力行使が国際法上に正当なものでなければ、これは論理的な帰結として、その結果であるイラクの復興支援に対する協力もまた行うことができないのではないかと私は思うんです。現に、武力行使に反対した、例えばドイツ、フランス、ロシアは、現時点においてもイラクの復興支援のために軍隊を派遣しておりません。そして、その検討もしていないと私は認識しています。
 民主党として、対イラク武力行使に反対しているにもかかわらず、その上でイラクの復興支援には協力するということはどういう理由からなんだろうか。そういう主張をすることは、私はむしろ自己矛盾ではないかと思いますが、いかがですか。
前原委員 今でも、イラクへの米英などによる攻撃は国際法違反の疑いが強いと思っております。
 六七八、六八七、一四四一というものをベースにということでありますが、私が逆にその席から外務大臣に対して質問をさせていただきましたように、六七八、六八七をベースにしたとしても、これは、大量破壊兵器がどこにあるかということがわかっていて、そして、実際攻撃してみたらやはりそこにあったという確証があれば、私は、六七八、六八七をベースにすることは、それには全くはくみしませんけれども、ある程度説得力のある話だろうと思います。
 それが、いまだに大量破壊兵器は発見されていないじゃないですか。しかも、アメリカやイギリスの中でさえ、情報操作、証拠隠滅などのいろいろな疑いというものが持たれ始めていて、攻撃をしたアメリカやイギリスでさえ、その正当性に対して問題が投げかけられている、こういう状況であることは委員も御存じのとおりだと思います。
 また、一四四一につきましても、アメリカのネグロポンテ国連大使がおっしゃっているように、これは武力行使の自動性を認めたものではないということから、これについても、武力行使を容認したものではないということから、我々は、この国連決議に基づいての攻撃というものが国際法違反であるということをいまだ持っているのは、その修正案に書かせていただいているとおりであります。
 ただ、攻撃が行われ、フセイン政権が崩壊をいたしました。この攻撃に反対をしたからといって、では、今イラクの人たちが困っている、実際に復興支援を求めている、しかも、一四八三という国連決議については、これはシリアの棄権がありましたけれども、棄権を除いて、すべて国連決議というものが賛成でまとめられたということがあったわけです。国連に加盟している我が国として、実際、イラクの、今復興支援が必要な状況を目の当たりにし、また国連決議が今申し上げたような状況であれば、攻撃をした根拠についてはこれからも徹底的に問題を追及していきたいと思いますけれども、その復興支援に当たることは、我々は、人道上、国連に加盟をしている国の責務として私は当然であろうというふうに思っております。
伊藤(公)委員 民主党さんは、対イラク武力行使が国際法上違法である、それに引き続くCPAとの協力を拒否することを主張しております。
 その場合に、全会一致で採決されたいわゆる安保理決議一四八三においてCPAが特別の権限を認められていることをどのように理解するんでしょうか。こうした内容を含む決議一四八三、これを踏まえた上でも、依然として対イラク武力行使やあるいはCPAの協力を拒否すると主張されるんでしょうか。伺っておきます。
前原委員 CPAの前身であるORHA(オーハ)、ORHA(オルハ)と言う方もおられますけれども、それに対して職員を派遣することについて、我が党としても徹底的な議論を行いました。そして、先ほど申し上げたような経緯の中で、我々、ORHAに対しては政府職員を派遣して、そして情報収集、そしてORHAとの調整で何が我が国が行うべき、また我が国が得意とすべき活動分野なのかということの情報収集を行うことについては認めるべきだ、こういう考え方を我が党としては持っているところでございます。
 そしてまた、その後のCPAにつきましても、同じような意味で、我々は、文民、政府職員を派遣して、そしてそれに対して、情報交換、そして日本が行い得る活動内容というものを調整することについては否定をするつもりはありません。
 ただ、これは、この委員会あるいは外務委員会で議論がORHAのときにありましたように、占領行政に対して人を派遣するとき、なおさらそれが自衛隊であるときについては、それは交戦権の行使にならないような十分な配慮が必要であるということは、これは外務大臣もあるいは内閣法制局長官も御答弁されているところであり、そういう意味から、我々は、自衛隊については武力行使や交戦権の行使に当たる可能性ありというところで、疑念を表明しているところであります。
伊藤(公)委員 時間が迫ってきましたので、法案の、有効期限について質問をさせていただきます。
 民主党さんの修正案では、法律の有効期間を四年から二年に短縮する、こうされているわけですけれども、この合理的な理由を伺いたいと思います。
 例えばこれまで、コソボでは、一九九九年六月、これ以来、約四年を経過した現在でも国連の活動が継続しています。あるいは東ティモールでも、国連の活動は、一九九九年の十月、UNTAETの設立がありまして、それから二〇〇二年の五月まで、期限である二〇〇四年五月までの四年七カ月間となる見込みです。
 こうした例を考えますと、イラクの復興について二年という期間は、私はむしろ短いのではないかとこれまでの例を考えながら思うんですけれども、いかがお考えでしょう。
前原委員 四年が合理的な期間であり、また二年は短過ぎるというのも、それもまた私は主観的に変わり得る年数だというふうに思っておりますけれども、確かに、おっしゃったような長期にわたる占領統治、あるいはそういう暫定行政機構が発足するまでの期間があったと思います。日本につきましても六年間のGHQの統治下にあったわけでありまして、そういう意味で、二年というのは短過ぎるんじゃないかという御意見はあるんであろうというふうに思います。
 我々がなぜこれを四年から二年にしたかということを幾つか申し上げますと、まず一つは、これはいわゆる占領行政を前提にしたものだということでありまして、国連あるいは暫定行政機構の設立に基づいたイラクの復興、そして独立というものができるだけ早く求められるべきであるという観点から、そのCPAを前提としたものの四年というものには長過ぎるということで、二年とさせていただいたところであります。
 なお、もう一つ理由を申し上げますと、我々二年と申し上げておりますが、それは二年ぽっきりで終わるべきということではなくて、その現地の情勢を見て、もう少し必要である、期間が長い必要性があるということになれば、延長を妨げていないところでありますので、まずは二年間でそういう意思も含めて切るというところが民主党の考えのもとにあるということを御理解いただきたいと思います。
伊藤(公)委員 民主党さんに対して最後に、これまでの自衛隊の国際貢献についてどのような評価をされているかを伺いたいと思いますが、これまでPKOや、最近ではテロ特措法ですね、日本の自衛隊が国際的に非常に大きな役割を私は果たしてきたと思います。こういう国際社会において、自衛隊の評価に対してどのように考えていられるのか。
 私は、この大事なときに、自衛隊は派遣をしない、しかし自衛隊以外の人たちを送るという、どうもこの民主党さんの提案には理解ができないのですけれども、これまでの日本の自衛隊の海外におきます貢献についてお伺いをします。
前原委員 私も、もう七、八年前だったと思いますけれども、ゴラン高原に、当時与党でございまして、調査団の一員として視察に行きました。PKOをゴラン高原に出すかどうかという調査団の一員として行ったわけでありますけれども、やはり、平和維持活動において、我が国も人を出して積極的に貢献をするということの必要性については、私は、委員が御指摘をされたように、極めて重要だと思っておりますし、今まで自衛隊が行ってきたPKO活動においては大いに評価をしたい。そしてまた、今後も、そのPKO活動については、日本でやれることについては積極的に関与すべきだという考え方を持っております。
 さはさりながら、このPKO活動というのは参加五原則というものがございますし、また、最近の自衛隊を海外に出す活動というのは、PKO活動から違ったもののようになってきています。つまりは、テロに対する支援活動であるとか、今回はまさにアメリカ、イギリスによるイラク攻撃が行われた占領行政において自衛隊が活動するというのは、今までのPKO活動として自衛隊を送るということとは全く異質のものでございまして、その点を問題にしているわけです。
 何度も申し上げますけれども、PKOの武器使用基準、つまりはaタイプ、任務遂行のための武器使用基準を認めないで、本当に今までと違った活動、違うフェーズに入るような自衛隊の活動を認めていいのかどうかということは、私は、与党の皆さん方にもう少し真剣に考えていただきたいということをお願いしておきたいと思います。
 御質問の点については、今までのPKOというものについては、我々は、必要性を認識し、高く評価しているところでございます。
伊藤(公)委員 あと一分ぐらいあると思いますが、政府側から、きょうの、自衛隊のイラクへの派遣をめぐってやりとりをさせていただきましたが、どのような御感想をお持ちか、一言伺えればと思います。どちらでも結構です。
福田国務大臣 今までのいろいろ質疑を伺っておりまして、そんなにやはり違いはないんだろうというように思います。もうちょっとというところで、もうちょっとの御理解を賜りたいなというように思っております。
 そして、本当に日本人が胸を張って、国際的な平和活動に力を尽くしているんだということを国民一人一人が思えるような、またそういう活動をこれから自衛隊また文民にもしてもらいたいな、こんなふうに思っておるところでございます。
伊藤(公)委員 ありがとうございました。
高村委員長 次に、中川正春君。
中川(正)委員 冒頭、質問に入る前に、委員長に一言申し上げておきたいというふうに思うんです。
 先ほど、この委員会の理事会の席で、与党の筆頭理事から、これまでは非常に関係がうまくできておりまして、友情は育ってきておるんですが、きょうになって急に距離が開いてきまして、あした採決をやりたい、しかもこのイラクとテロとあわせた形での採決をやりたい、こういう提案がございました。
 私は、憤りを感じております。一つは、この審議が始まったときに確認をさせていただいた事項、それは、たまたま特措法が二つおりてきましたけれども、本来は、これは目的が違うから特措法なんです、だから、そういう意味では、別々に審議をされるものが都合で二つ一緒におりてきた。
 しかもテロの方は、これは十一月のことでありますから、だからそれであるとすれば、もう期限が決まっておれば、こんな延長期間中におろしてくるんじゃなくて、もし必要とあらば、しっかり決まった通常国会の期間内にセットができる、あるいは臨時国会でもセットができる、ちゃんとセットのできる中身を延長した審議の中にほうり込んできたということ自体、これがまず解せない。そういうことから、これは私たちも慎重審議をしていくべきだということ。それには、まずイラクの法案をしっかりと審議をし、その上でテロ、実質的には分離をして審議をしていくべきだということ。
 このことを申し上げて話し合いをした結果、委員長によって裁定がありまして、イラクをまず中心にやっていこう、その心はお互いが酌み取って、これからの審議、国民にしっかりと理解をしてもらう、そういうレベルの深まりと、大事なことですから、そうした充実した中身の審議をしていくということ、このことをお互い理解した上で進んできたはずであります。
 ところが、突然、あしたになって、二つを同時に。しかも、テロについては審議をしていません。そういう意味合いでは、委員長の裁定が生きているんですよ、我々の審議の中で。
 そのことを改めて委員長に申し上げて、高潔な人格とこれまでの公平なこの委員会の運営、このことを念頭に置いて、信頼をしておりますので、これから先の我々の話し合いの中で国民に説明のできる結果を導いていただきたいというふうに思うんです。
 それと同時に、もう一つ加えて言えば、私は、あした即採決だという、それもテロとイラク、テロは全然審議していないにもかかわらずすぐ採決だという、この考え方の背景には、その後ろには、これは中谷さん個人とは言いませんよ、その後ろにいる背景には、これこそ政局なんですよ。だから、その政局を云々言うならば、今の与党の中でそれぞれが思惑で動いている、この事実というのを改めて私は指摘をしておきたいと思います。
 だから、先ほどの話を改めてこういう形でお返しをさせていただいて、審議に入っていきたい、質問に入っていきたいというふうに思います。
高村委員長 私は答えなくていいんですか。
中川(正)委員 では、答えてください。
高村委員長 裏に政局があるかどうかわかりませんが、もし政局的なものがあるとすれば、与野党とも政局から離れて、この委員会は公正に審議をしてまいりたいと思いますし、そして、できるだけ与野党の合意が得られればそれにこしたことはないわけでありますから、信頼関係が失われた、こう言いましたが、両筆頭、信頼関係を取り戻して、合意が得られるように最大限の努力をしていただきたいと思います。
 それでは、中川君。
中川(正)委員 それでは、ここで質問に入っていきたいというふうに思います。
 私は、ここでは、我が党の修正案、こうして議論に移していただいたわけでありますが、そんな中で、論点の整理をするつもりで、これまでのそれぞれの中で積み重ねてきたことを土台にしてお尋ねをしていきたいというふうに思っております。
 まず、簡単なところからいきます。
 さっきの続きになりますが、四年を二年にという話がありました。これは、先ほど民主党のサイドからは答えていただいたわけでありますが、逆にお聞きしたいんですけれども、政府の方はこれまでテロなんか二年という前提で組んできたものを、逆になぜ四年ということにしたのか、そこのところの根拠をはっきりしていただきたい。これまでテレビの記者会見等で見ていますと、いかにも他人事のような答えしか返ってきていなかったんですが、それなりの根拠を見せていただきたいのと、それから、もしどうでもよかったら、どうですか、この際二年にしておきませんか。そのことも含めて答えをいただきたいと思います。
福田国務大臣 先ほど、伊藤委員から質問の中で説明ありました。そういうことなんです。今行われていますコソボとか東ティモールにおける活動、そういうものを見まして、やはり今回のものは復興支援ですから、復興ということになればそれは短期に終わるということはないんだろう、そういうことです。
 四年というのは、今言った、そういう今行われているPKOとかそういうものを参考にして申し上げているわけでございまして、二年というのはちょっと、今お願いしているテロ特措法の延長、もう一年半以上たってしまったんです、あっという間でございますけれども、あれを見ましても、やはり四年ぐらいはこの復興支援には必要かなというように思います。
 二年にすればほかはすべて御同意をいただけるというんであれば、これはこれでまた与党筆頭と御相談をいただきたいと思います。
中川(正)委員 その程度のものであれば、これはさっきの民主党の議論にあったように、二年を経てまた見直しという機会、それが、国会のチェックが入って現地の状況をつかめるということの中で機能を果たしていくわけでありますから、そこのところをぜひ与党サイドから改めて修正案でも出してきていただくということを希望しておきたいというふうに思います。(発言する者あり)自衛隊は一番最後の議論でやっていきたいというふうに思います。
 次に、もう一つ修正点がありまして、これは、国連決議のお話がさっき出ましたが、六七八、六八七、一四四一、これを削るべしという話ですね。
 これも、これまでこの委員会を通じて何回も議論を積み重ねてきました。そして、政府もそれなりの理論構築をされたわけでありますが、どうも最近の状況を見ていると、一つは、イギリスのブレアさんが、雑誌なんかで見るとブライアーと言われたり、Bをつけてライアー、うそつきだ、そういうような国民に呼び方をされたり、あるいは、具体的に、大学院生の論文を盗作した形で報告書がつくられたということであるとか、あるいは、ザイールの方からウラン原料を輸入したということについて、どうも、本国で確認した部分では、これはその事実はなかったということがわかっていたにもかかわらず、この報告書の中に記載がされて報告がされたという事実であるとか、こういうことがどんどん出てきておるわけでありますね。その中で、捏造されたということがほぼ確定的になってきておるという状況、これがあります。
 それと同時に、何でわざわざこの問題をですよ、ということは、事前に国際的な世論でもアメリカの一国主義というものに対してごうごうとした非難があった、しかしそれをアメリカがあえてしたということの中で、国際的にその事実を認めざるを得ないという力の政治がここで働いているわけです。それがわかっていながら、なぜ、あえてこの条項をこの本文に、この法律の中にわざわざ書き込まなきゃいけないのか。これは一四八三で十分じゃないかということだと思うんですね。
 そこがあるから、うちの方は後でまた答えていただきますが、なぜというところは、うちの方からも改めて答えを求めますけれども、そういうことだと思うんです。
 まず、政府の方から、このことについて改めて答弁をいただきたいというふうに思います。
福田国務大臣 そもそも今回のこの法律、この法律は国連決議一四八三に基づくものでございまして、国際協調のもと、イラクの復興支援に協力しよう、こういうことでございます。これは、国連安保理事国の全会一致で決まった決議でございます。
 そういうような復興をするという、そういう事態に至った経緯を今この与党の提出している法案の中に記載している。これは筋道を書いているんですよ。何に起因してこういう事態になったのか、こういう筋道でございまして、六七八とか六八七、一四四一、こういう関連する安保理決議に基づいて武力行使を行うという事態に至った、そしてその結果、今復興支援をしなければいけない。すべて国際社会が認定した決議でございまして、国際社会の同意に基づいて行ったということであります。
 武力行使が正当化するとかそういったような言い方はされますけれども、今申し上げたのはその筋道を言っているわけでありまして、武力行使を正当化するとかそういう話ではないんですよ。それはおわかりになりますよね。
 そういうことでなくて、我が国だって、武力行使をしたくてアメリカはやっているというふうには思っていません。アメリカだってイギリスだって、武力行使は何とかして瀬戸際で、ぎりぎりのところで避けたいという気持ちはあったんだろうと思いますよ。しかし、それにまさる有効な手段がなかったということによって武力行使が行われたんだ、これはそういうことでありまして、別に、それが正当化とかそういったような話ではないのであります。
 ですから、その経緯、そしてこういう事態に至った根源を説明したということでありますので、そういう御理解をいただきたいと思っております。
中川(正)委員 アメリカの武力行使を心から支持をしているわけではないというさっきの答弁は、小泉さんと違いますね、ちょっと。そこのところについては後日に、最終的にはまた総括質疑があるんだと思うので、後日に譲りますが、民主党から改めてこの問題について、これを削った理由、それから、先ほどの与党の考え方に対して民主党はこう考えるというところを述べていただきたいと思います。
末松委員 この点につきまして、先ほど前原委員が申し上げたように、私ども民主党として、安保理決議六七八、六八七、そしてそれを前提とした一四四一というその言い方で大量破壊兵器というものの存在を理由にして攻撃を行ったということに対して、それはおかしいという立場をとっております。
 そういった意味であれば、国連決議一四八三という、この攻撃の正当性を認める国と認めない国の形の中でこの決議そのものがなされたという、そういったことを踏まえれば、中川委員おっしゃるとおり一四八三ということを前提にしていけばいいのであって、その前の決議を武力行使の正当性を主張する国々だけの主張でもってこの法案に書き込んでいるというのは、私ども民主党としては容認できないと思っています。
中川(正)委員 先ほどの発言で気になるところがおありだったようですが、小泉さんと話が違うというところ、それを反論していただいても結構ですし、それからもう一つは、あえて言えば、筋道を立てるためにこれをつけるというふうにおっしゃいましたけれども、あれを読んでいる限り、そういうことじゃなくて、この三つ、六七八、六八七、一四四一も一つの根拠にしているという脈絡で読めるんですよ。これは法制局がいればいいんだけれども、だれも呼んでいないので。そういうことだと思うんです。
 だとすれば、先ほどの答弁をされたのであれば、これも要らないところじゃないか。そんなに、こんなところで日本の意思をまげて伝えることはないということだと思うんですが、どうですか。改めてお尋ねをしたいと思います。
福田国務大臣 民主党さんのおっしゃるように、この国連決議、これは安保理事国、全理事国が賛成したことですからね。好きな国がやったという話じゃないんですから。ですから、そういうことは非常に根拠のあることだと思っております。消す必要はないんです。
中川(正)委員 それでは、次に移らせていただきます。
 次は事前承認のポイントなんですが、これは民主党案では自衛隊の項目をすべて消し込んだものですから、具体的にはこの法案の中には反映されてこないんですけれども、従来からの民主党の主張は、事前承認すべし、事前承認だけじゃなくて情報提供とそれから終結についての国会決議ということも含めて、国会のコントロールをしっかりとここへきかせていくべきだ、こういうことが従来からの主張でありました。
 本来は個別法の中に、これは個別法なんですが、個別法の中に普通はかなり具体的な派遣計画、活動計画というのが付与されておって、トータルの中でイメージが描けて国会で議論をしていくということ、このことが特措法であるところの体質なんだと思うんです。体質というか、そうあるべきなんだというふうに思うんですね。
 ところが、議論がおかしくなっているのは、特措法の中で枠組みをつくろうとしているんですよね、それで具体的な話というのは基本計画でまた別個出してきますよという話なんですよ。だとすればそれは、具体的な話の中に事前チェックというのは当然あるということなんだろうと思うので、そこのところを改めて政府にお聞きをしていきたいというふうに思います。
福田国務大臣 ちょっと具体的なことは防衛庁長官から説明させていただきますけれども、そもそも特別措置法であります。この特別措置法の目的、大目的、これは明確な目的があるわけです。イラクの国家再建への寄与、こういうことで、第一条に記載されております。それが大目標なんですよ。その中で、例えば基本原則、いわゆる非戦闘地域、受け入れ同意の要件とか、対応措置の内容、また自己防衛等のための必要最小限の武器使用、また基本計画の決定、変更、終了時の国会報告、安全確保の配慮、有効期限、これだけ、言ってみればこの自衛隊の活動の基本的な要件というものが全部ここに書いてあるわけですよ。
 ですから、こういうような法案が、目的もはっきりしていますし、法案が成立すれば、自衛隊の派遣については国会の同意が得られた、こういうふうに考えてもいいのではないかというのが我々の考え方であります。
 もちろん、自衛隊の対応措置の実施は、措置を開始した日から二十日以内に国会の承認を求める、こういうことでございます。
 もし逆に、事前承認を必要だというように改めればどういうことになるかと申しますと、派遣に必要な装備の調達、装備の調達というのは契約なんかも入りますけれども、承認後にしかそういうような契約とか調達なんかができなくなってしまう、こういうことでございますから、派遣に非常に時間がかかってしまうということがございます。
 また、国会でもって審議しなきゃいかぬということもございますね。審議日数がどのぐらいになるのか、それから、休会中にはどうするか。休会中に、暑いときでも出てきていただけるのかどうかといったようなこともございます。
 いずれにしても対応措置が速やかに行われないというおそれが生ずるわけでございますので、そういうことは、臨機応変に最もふさわしい協力をするということが場合によってはできなくなるということだと思っております。
中川(正)委員 地元に帰って、今ここで議論していることの中身について国民に尋ねますと、具体的なイメージがわいてこないと。イラクに支援をするといっても、ここで、それこそこの委員会で何回も何回も出てきている、一体何をしたいんだと。戦闘地域、非戦闘地域でこういうフィクションみたいな話を繰り返していたって、こんなものは前向きな議論にならないでしょうというやはり指摘が多いんですよ。我々もそう思うんですね。
 これを逆に、基本計画をそのままここに出してきてくれて、それをいいか悪いかという議論をするというのは、これは一番わかりやすいし、やはり説明責任というのはそこでしっかり果たせるんだろうという気がしております。
 そのことも兼ねて、民主党のこれまでの、従来の主張というのを、改めてこの事前承認について、まとめてやっていただきたいと思います。
前原委員 自衛隊というものを活動に付す場合、それが日本の有事、あるいは待機命令、治安出動、あるいは海警行動、また治安出動、それから災害の問題にしても、迅速性は必要でございますけれども、やはりそういった実動部隊を出すということについては、最高のシビリアンコントロールが必要であるというのが我が党の見解でございます。
 したがって、先ほど官房長官から、事後承認でないと装備の調達等がなかなか難しいという話がございましたけれども、政府の意思で、それを国会に通していただくという意思を持てば、官房長官なり防衛庁長官が責任を持ってその準備に対して指令を出されれば、私はタイムラグが生ずることはないと思いますので、文民統制を働かせるという意味で、特に海外に出す、特に今回は、先ほど申し上げたように、一般のPKOではございません、そういう意味で、事前承認が、まさに自衛隊を出すという前提では妥当ではないかというふうに考えております。
中川(正)委員 説得力はあると思うんです。国民もそれを求めていると思うんですよ。
 そこについて改めてじっくり考えていただいて、それを直していただいたからこっちも言うことを聞くということにはならないかと思うんですが、しかし、国民にとってわかりやすい、あるいはシビリアンコントロールとして健全な形態をつくっていくために、ぜひ修正を考えていただきたいというふうに思っております。
 次に、さっきの話に関連してくるんですが、具体的に何をするかというのはかなりこの委員会の議論の中で出てまいりました。今まで私が理解をしておるのは、C130による輸送、これをやっていきたいということと、それから、バグダッドの空港の近くに池が何かあるんですか水源地が、そこへ向いて水の浄化装置というのを何台か入れて、そこで水を浄化して供給をしたいということ、この辺がイメージとして出てきているんですけれども、それでいいのかどうか。さらに加えて、今考えている具体的な中身、これを述べていただきたいというふうに思います。
石破国務大臣 これは、与党の調査団の報告やあるいは政府の調査団の報告というのを踏まえまして、現時点でニーズがあるということであればどういうことかということを考えてみましたときに、今先生御指摘のような、浄水、水をきれいにする、あるいは給水、水を配る、そして航空輸送というものがニーズとして現時点では考えられるということでございます。
 バグダッド空港でやるかどうか、それはまだ確定をいたしておりません。池があると申しましたのは、大統領宮殿の敷地内に例えば池があるというお話ですし、チグリス・ユーフラテス川のほとりでやってもそれはよいのであります。それは、まさしくニーズがあるかという点と、その地域が非戦闘地域であることは当然のことでございますが、治安のよい地域であるかどうかということにおいて実施区域を定めるということになるわけでございます。
中川(正)委員 もう一つ、そこで目的を確認したいんですが、いわゆる人道支援というのと、それから治安維持、米軍の部隊そのものが直接に活動する治安維持とそれから掃討作戦なんかを含めたいわゆる軍隊としての行動と二通りありますよね。
 さっきのところは、C130はどちらの物資を主に運ぶんですか。人道支援物資ですか、それとも、米英兵あるいは軍隊を中心にしたところの物資を運ぶという想定なのか。これが一つ。これは武器も含めて、そういう想定になっているのか。
 それからもう一つは、陸上の水の補給ですが、これはだれを対象に水の補給をしようとしているのか。いわゆる民生用なのか。一般の人たちが対象なのか、それともそれぞれの駐屯をしている兵力に対して、いわゆる後方支援という形でそれをなそうとしているのか。これはどちらですか。
 それともう一つ。陸上輸送、これはしないということですか。陸上輸送はしないということなんですか、さっきの想定からいくと。水の支給だけだったんで。陸上輸送というような話が出てこなかったから、説明の中で。輸送というのはしないんですか。輸送業務というのはしないのかということです。
石破国務大臣 これは両方排除するものではございません。安定支援活動も、それから人道支援活動も、これは両方ともそれを行うことがございます。
 基本的にはイラクの人道支援ということがより重点を置かれることになるかとは思いますが、実際問題、それでは安定化支援活動というものを排除するかというと、そういうことにはなりません。それが、我が方が行う行為が武力の行使に当たらないということであります限り、そしてまた、再三答弁申し上げておりますように、例えば米軍の行う活動が、それが国際的な武力紛争の一環としてのものではなくて、地域の安定化に資するものであるとすれば、それを支援することは何ら問題になるとは考えておりません。
 そしてまた、陸上輸送を排除しておるではないかという御指摘ですが、それは決して排除しておるわけではありません。例えて申し上げればということで言ったのでありまして、これは与党の調査団にいたしましても、これはあるいは民主党もそうかもしれませんが、十分な時間をとって子細にニーズを見たわけではない、民主党にしてもごらんになったわけではない、そういうようなニーズがもし現場にあるとすれば、これは陸上輸送を排除するものではございません。
 それから、武器弾薬につきましては、これも再三答弁を申し上げているとおりでございますが、そのこと自体が憲法に触れるものだとは考えておりません。それが治安のよくない地域、ましてや非戦闘地域ではないというふうにされる地域において、そういうことをやらないのは当然のことでございます。
中川(正)委員 そうすると、武器弾薬も含めて、それぞれ、C130でもそれから陸上輸送でも輸送をするという前提で、今、基本計画が組まれているということですね。
石破国務大臣 それは、まだ基本計画というものの作成という行為には入っておりません。
 この法案でお示しをしておりますのは、輸送でありますとか医療でありますとか、そういうことをメニューとして並べさせていただいておりまして、その中から、現地に具体的などのようなニーズがあるかということの議論の中で、私どもとして、例えて言えば航空輸送、例えて言えば浄給水というようなことが、現時点において政府あるいは与党の調査団の報告に基づいて考えられるということを答弁申し上げておるわけでございます。
中川(正)委員 だから見えてこないのですね。だから、こういう話というのは、やはり基本計画を事前に我々の中で議論をしていくということが大切なんだろうと思うのです。
 もう一言言わせてもらえれば、前回のガラガラヘビの話に戻るんですが、これはやはり組織的に、CPAのいわゆる軍事業務の中に、これは治安維持もあれば、掃討作戦というのは、これは組織的に鎮圧するということであります。それは武力の行使に当たらないという話でもありませんし、もし戦闘地域というこのあいまいな定義を使うとすれば、やはりこれは戦闘しているんだと思うんですよ、鎮圧という意味で。組織的にそれぞれが起き上がってきているという情報も刻々と入ってきております。
 そういう意味での占領軍というのは要素がさまざまで、ここの地域では治安維持だ、ここの地域では警察的な業務をやっている、こっちは行政、こっちは掃討作戦、こっちは戦闘と、これを区別して、こっちとこっちとこっちだというような話は到底できないという前提なんだろうというふうに私は思っております。それをトータルで考えるときに、こうしたフィクションでただくくるだけでは、これは余りにも無謀な話だということになっていく。そこのところを指摘しておきたいというふうに思うんです。
 反論しますか。どうぞ。フェアにいかないといけないですから。
石破国務大臣 済みません。フィクションというお話ですが、別に私どもはフィクションで申し上げておるわけではございません。
 これはもう本当に答弁するのは百回目ぐらいになってまことに申しわけありませんが、非戦闘地域というのを定めるのは、憲法上の要請というものを制度的に担保するために行っておる法的な概念でございます。非戦闘地域というものを定めるということは法案上要請をされておるところでございまして、戦闘地域と非戦闘地域、これは、我が国の自衛隊の活動が海外において武力を行使するものではないということを担保するために設けた法的な概念でございます。
 私どもが非戦闘地域の中で活動しなければいけないということと、我々が非戦闘地域として定めたところ以外はみんな戦闘地域かといえば、それはそうではないこともございましょう。我々が非戦闘地域ではないと定めたところでも、実は非戦闘地域というのもあるのかもしれない。しかし、私たちがやらなければいけないのは、非戦闘地域というものを定めてその中で行うということは、これは法的な概念として設定をしておるものでありますし、当然、その中でやらねばならないということなのでございます。
中川(正)委員 もうこのフィクションの話はやめておこうかと思ったんですけれども、ちょっと一つ気になる。
 具体的にどういうことなんですか。前の私の説明の受け取り方は、ここだったらいいだろう、具体的にこういう基本計画を立ててきて、地域も、この地域を限定してこれだけの活動をしますよということを基本に、その活動する地域は非戦闘地域なんですよ、こういう理屈でこれを逃れようとしているというのが、私が受け取った理解だったんですね。
 ところが、さっきの長官の話を聞いていると、そうじゃなくて、事前にここは非戦闘地域だというところだけははっきりさせていこう、そこについては基本計画を立てて具体的な活動をしていきますということになりますよという、さっき、そういう理解で聞いたんですが、それはどうなんですか。
石破国務大臣 それは、我々が活動を行う地域は非戦闘地域でなければいけないということがまずあるわけでございます。それは、非戦闘地域というものを定めて、その中で実施区域を決めるというような二つの作業が実際にあるわけではございません。ある作業としては、実施区域を定めるということがあるわけであります。それで、実施する区域の範囲という概念はございますが、それが非戦闘地域というものとぴったり重なるかといえば、それはそうではないということなのでございます。
 ですから、我々――わかりますか……(中川(正)委員「わからないよ」と呼ぶ)わからないですか。
 実施する区域、つまり、活動をどこでやるのだという区域を定める。そして、法文上は、「実施する区域の範囲」という表現もございますね。これは相当に広いものなのです。そして、非戦闘地域というものが持っております意味は何かといえば、我々が行う活動というものはすべからく非戦闘地域でなければならないという意味で、そういう概念がある。それは、憲法上の要請であり、条文上になぜそれを設けたかといえば、それを制度上担保するために設けたということになるわけでございます。
中川(正)委員 やはりわかりませんね。だから、これはだめですよ。私もそんなにむちゃくちゃ頭が悪いという卑下はしていないんですけれども。だから、日本の国民がどこまでこれをわかるかなというと、わからないんですよ、これは。
 だから、ここもお願いをしたいんですよ。与党の方で、これ、わかる話にしてくださいよ。そうでないと、こんな法案、いわゆるわけのわからない法案、それこそフィクションですよ、これは。確かにフィクションだ。聞けば聞くほどフィクションだという感じになってくる。そういう中で、こんなもの、通していくわけにはいきませんよ、やはり。ということですから、そういう意味で、改めてこれは修正してください。
石破国務大臣 例えて申し上げれば、きょうの某新聞にQアンドAの形で出ておりました。私は、あれが非常にわかりやすい整理かなというふうに思っております。
 要するに、確かに、法的な概念であるがところの非戦闘地域という考え方、そして、実際にそれを行う場所というのは、非戦闘地域であり、かつまた、安全なところでなければいけないという考え方、そして、実施する区域の範囲というのは、それよりももっと広い概念です。というのは、これは、法律の仕組みからすればそうなるわけでございますが、一般の方々に御理解くださいというのは、本当に私ども、もっと努力をしなければいけないことだと思っています。
 しかし、大事なことは、私たちが武力行使は決して行わないということ、それをきちんと担保するということであり、そして、活動する範囲、地域というものが、安全な地域とは申しません、しかし、自分を守るための権限、そして武器を持っていけば、自衛官であれば安全に任務が遂行できる地域でなければいけない。この二つを充足するものでなければいけないということは、私は、多くの方々に御理解をいただけるのではないかと思っております。
中川(正)委員 わかりません。まだまだ理解できません。そのことを申し上げて、次に進みたいと思うんですが、時間が迫ってきていますので、最後、一番大事なところ、これは自衛隊の派遣ということであります。
 これは先ほども議論があって、これからもそのお話があるんだろうと思うんですが、逆に、なぜそんなに自衛隊にこだわるんですか。
 トータルな話で、さっきの議論で醸し出されたように、イラクに対する支援というのは、これは、日本としても、その成り立ちはともかく、十分にやっていかなきゃいけない。特に、民間レベルの支援、それから国連を通じた支援というのはもう既に始まっていまして、そうした意味では、このイラクのニーズに応じた、あるいはニーズ調査というのもさらに必要だということの中で、やるべきことをやっていくということは、これはもう共通したコンセンサスだというふうに思うんですね。
 こだわるのは、自衛隊なんですよね。PKOでいいじゃないかというのは、私たちの、あるいは国民が今イメージとして抱いている観念だと思うんです。だから、さっき統計的な話をされましたけれども、国民の方としては、これはPKOなんだという既定概念みたいなものもあるんじゃないか。しかし、中身は違う。また、安全性という意味でも違う。占領統治ということをどう整理していくかという意味でも違う。だから特措法なんだと思うんですよね。
 その中で、どうも議論を聞いていると、自衛隊に何とかしなきゃいけない、ニーズがあろうがなかろうが、とにかく自衛隊を出すということ、これに第一義的な意味がある、そういう政府の意思を今感じるんです。その意思というのはどこから来ているのか、何なのかということですね。そこを中心に話をしていただきたいと思います。
 あと、民主党として、その政府の意思を受けて、民主党としてはそこについて、こういうことだから自衛隊というのはこだわらなくていいんだという、その基本理念みたいなところをお話をいただきたいと思います。
福田国務大臣 今、いみじくも委員から、PKOではどうなのか、こういうような話がございましたけれども、そうなんでしょう。やはり自衛隊をイラクで、PKOで活動してもらいたいという気持ちはおありなんだろうと思いますよ。そのぐらい、やはり自衛隊でなければ活動できないというか、協力できない分野というのはたくさんあるんだろうと思います。
 特に、今イメージしておりますのは、もう何回も申し上げておりますけれども、輸送業務とか、それから補給業務ですか、こういうようなことですけれども、これは、輸送機を持っているとか、それから、補給のためのいろいろな機材等について非常に詳しい、今までのPKO活動なんかを通して詳しい知見を持っている自衛隊、この活動が一番好ましいのではないか。また、好ましいというだけではなくて、結果的に安全なのではなかろうかというように思います。集団で行動するということになれている、そういうチームですから、それも自己完結性を持っているということですから、そういう部隊こそ今イラクに行くべきだ、こういうふうに私どもは思っております。
末松委員 今、政府の考えが示されましたけれども、私どもは、やはり、戦争地域にああいった自衛隊を行かせるということ自体に、戦争終結ということがまだ宣言されていない中で行かせるということ自体に非常に無理があると。だから、戦闘地域、非戦闘地域というようなフィクションを設けなければいけない。そういうことが問題となっているわけです。
 ですから、まず、そういったことがないような、そこはつまり、武力行使の一体化とかあるいは武器使用の問題とか、そういったことで行く人自身も非常に戸惑うわけですね。そういうことはやはり問題だろうという点が一点。これは法的な意味。
 二点目は、援助ということを考えてみた場合に、では、イラク国民の人からすべてにもろ手を挙げて賛成されるような支援というもの、自衛隊のセルフディフェンスフォースというマークを見てやはり複雑な思いがある、そういうことが一点。
 さらには、実際にニーズというものを考えてみた場合に、軍隊組織じゃないとできないようなニーズ、私ども調査に行きましたけれども、やはり民間の人でもできるじゃないかというのが非常にあるわけですよ。そういった面を踏まえていけば、やはりこれは対米関係から、対米配慮、アメリカとのおつき合いといったことが色濃く出ているなという思いがしました。
 そういった意味で、私どもは、ニーズもなければ安全面で問題があるということで、今回、自衛隊の派遣ということは見送った方がいいという判断でございます。
中川(正)委員 ここで論点がはっきりしてきていると思うんですが、安全性とニーズ、自衛隊でなければならないというニーズが今のところ特定できない。やるんだったらもっと具体的に挙げてきたらいいじゃないですか、この議論の中で。具体的な話がないだけに、我々は、自分たちの調査を出した時点でしっかり議論としてまとまっている、その調査結果をもとにして考えていくということであります。それが一つ。
 それからもう一つは、どうも政府の意図は、イラク支援というよりも、これだけ自衛隊にこだわるというのはアメリカ支援なんだと。そこのところをどこまで、今のような外交政策、それから我々のいわゆる戦略ということをしっかりと前に打ち出した形でアメリカと連携していく。アメリカは大事ですよ。それを否定しているわけではない。大事だけれども、今の話でいくと、余りにも主体性がない中で、戦略思考ができていないということ、そのことを指摘させていただいて、私の質問を終わって、次に移っていきたいというふうに思います。
 ありがとうございました。
高村委員長 次に、平岡秀夫君。
平岡委員 民主党の平岡秀夫でございます。
 昨日の参考人の方の意見の中にも、ほかの国が軍隊を出しているんだから、日本もそれに準じた組織である自衛隊を出さなければ存在感がないんだとかというような議論もございました。先ほどの伊藤委員の方からも、文民だけの協力はいかがなものかといったような指摘もございましたけれども、やはり私は、日本が最も協力するにふさわしいやり方で協力をしていくということが、本当に世界に日本の存在感を示していくのではないかというふうに思っているわけであります。
 そういう意味で、今回、民主党は、修正案で自衛隊の派遣の部分を削除したということは、私は、それはそれとして日本の考え方を明確に示しているというものだろうと思いますけれども、伊藤委員が指摘されたような、文民だけの協力というのはちょっと行き過ぎの表現じゃないか。つまり、我々は、ODA大国として世界に非常に協力してきているわけであります。
 今回の国連決議一四八三の中でも、これは前文ということではございますけれども、こういうくだりがございます。「先進七カ国グループの蔵相及び中央銀行総裁による二〇〇三年四月十二日の声明において、メンバー国が、イラクの再建及び発展を助ける多数国間の努力の必要性並びにこれらの努力における国際通貨基金及び世界銀行からの支援の必要性を認識したことに留意し、」というくだりがございます。
 そういう意味で、我が国はこれまでもODAの世界、あるいはマルチのさまざまな援助の世界の中でかなりリーダーシップをとってきたというふうに私は認識しているわけでありますけれども、こうした国連決議の方でも評価されているこの面について、一体日本政府はどのようなイニシアチブをとっていこうとしているのか、この点について財務大臣にお伺いいたしたいと思います。
塩川国務大臣 イラクへの当面の対策といたしましては、我が国は、去る四月に一億ドルの支援を約束いたしまして、これは人道支援として提供しております。現在、約五千ドル近くを支出しているのではないかと思っております。(平岡委員「五千万ドル」と呼ぶ)五千万ドル支出しておる。これにつきましては、今後とも、そういうニーズ、要望に応じまして柔軟に対応していきたいと思っております。
 なお、国連主催によりますところの復興支援準備会合におきまして、十月に予定されておる支援会合までにそうした調査が必要だと認識されておりますが、そこの調査の結果も受けて、また検討いたしたいと思っております。
 我が国としては、こうした国際機関の調査等を踏んまえて、国力にふさわしい貢献をしようということで、その点につきましては国際社会にも約束をしておるところでございます。
平岡委員 余り質問を続けたくはないんですけれども、例えば、今のは、国際機関が調べたら、それに応じて、我が国の国力に応じて協力しようという程度の話にとどまっていたように思うんですけれども、例えば、かつては、世銀の世界にジャパン・スペシャルファンドのようなものをつくって、世界各国の中で優良なプロジェクトを見出していくとかというようなこともやってきたわけでありますよね。そのような日本がマルチの世界を使って独自に何かやっていこうという、そういうようなものは何か考えてはおられないんでしょうか。
塩川国務大臣 まだ平和が確立しておりませんし、ニーズ、アクセスの方がまだしっかりと機能しておりません。
 つきましては、そういう要望があれば、我々としては当然取り上げていきたいと思っておりますが、とりあえず、そういう前に各国際機関、例えば食糧計画とかあるいは国際赤十字であるとか、そういう国際機関を通じた要望に対しまして我々は積極的に取り組んでいきたいと思っておりまして、いずれ、先ほど申しました十月の準備会において一つの方向が示されてくるということになれば、それに我々も積極的に参加していきたいと思っております。
平岡委員 十月会合で何か示されれば積極的に対応というんじゃなくて、その十月会合に向けて我が国政府がもっともっと積極的な役割を果たすということを私はぜひお願いいたしたいというふうに思います。
 外務大臣が何か答弁したそうなので、外務大臣、答弁をお願いします。
川口国務大臣 十月の会議でございますけれども、これ自体、この前に会議がワシントンであったわけですが、その会議を実現するためにイニシアチブをとったのは日本でございます。
 これは、私が前にフラッシュアピールについて日本の立場を表明するときに、国際機関を中心にして会議をやったらどうかという話をして、G8で、サミットでそれがエンドースされ、そして先般のワシントンでの会議になったわけで、今後、十月に再度会議をやるということで、日本はそのコアグループの一員でございます。そういう意味で、ずっとこれについてはイニシアチブをとってきているわけです。
 それで、今度、世銀等でニーズの調査団をイラクに出すことになっているということでございますので、そういったことを踏まえて、また外務省としても、財務省と御相談をしながら、どういう対応が可能かということを考えていきたい。これについては、一貫して我が国のイニシアチブの反映でここまで動いてきているということでございます。
    〔委員長退席、浜田委員長代理着席〕
平岡委員 まだ具体的なことが示せないという状況なんだろうと思いますけれども、この面でも日本が世界に評価されるような、そういうリーダーシップをぜひとっていただきたいというふうに思います。
 次に、イラクに対する我が国の公的債権というのがいろいろある。
 いただいた資料では、国際協力銀行が遅延損害金も含めて約八百億円、貿易保険が約七千六百億円ぐらいあるというふうに聞いておりますけれども、この具体的な金額はともかくとして、これらの公的債権については、今後どのように対応していくということをお考えになっておられるか。
 まず最初に、金額の大きい貿易保険の方、これは事務当局で結構でございますけれども、にお答えいただきまして、その後、財務大臣の方から国際協力銀行、そして全体について御答弁いただければというふうに思います。――経済産業省、いや、財務大臣だけで結構です。
塩川国務大臣 イラクの債務の問題でございますが、さっきおっしゃいましたように、国際協力銀行で約八百億円でございます。それから貿易保険で約七千六百億円。
 今後、この処理につきましては、イラクの本格的な政権の展望、あるいは債務の全体像、あるいは中長期的な経済状況、中でも石油収入の見通し等を考慮した返済能力等も踏んまえまして、十分に検討いたしたいと思っております。
平岡委員 この世界は日本だけが独自に決めるというわけにはいかない、リーダーシップをとるということもなかなか難しい世界なのかもしれませんけれども、イラクの状況をよく踏まえて適切な対応をとっていただきたいというふうに思います。
 それから三つ目の話としては、国連安保理決議一四八三の第二十三項のところに、イラクの前政権あるいは政権にかかわっていた機関、企業といったようなところ、あるいはサダム・フセイン自身、あるいはその政府高官、あるいはそれらの近親の家族の構成員といったような人たちの資金、金融資産、経済資源というものを凍結し、イラク開発基金に移管するということが要請されているわけであります。
 そこで、まず最初に、我が国にはこの安保理決議で指定されている資産についてはどの程度の該当資産があるということは、政府として把握しておられるんでしょうか。もし把握しておられるのであれば、その規模を教えていただきたいと思います。
塩川国務大臣 御質問のとおりでございまして、金融機関等から報告を受けた結果によりますと、我が国において凍結されているイラク政府関係機関の資産の額は、円換算にいたしまして約百二十億円であります。それから、五月二十二日付の国連安保理事会の決議でございます千四百八十三号によりまして、イラク政府関係機関の資産につきましてはイラク開発基金に移管することとなっております。現在、そうした資産の円滑なイラク開発基金への移管について、連合暫定実施当局ですか、との間で協議を行っておるところでございます。
 なお、イラクの中央銀行等のイラク政府金融機関の資産を凍結しているところでございますけれども、フセイン及びその親族の個人の資産は我が国においては存在しておりません。
平岡委員 大臣、先にもう全部、これからのどうするかというような措置についても御答弁いただけたので、ありがとうございました。
 我が国においても、これだけのイラク資産、百二十億円にも上るイラク関係資産というものがあるということでありまして、これがイラクの国民の皆さんのために使われるということを私としても期待したいと思いますけれども、ほかにも我が国としていろいろ協力できることはあるんだろう。資金的な協力、技術的な協力、あろうと思いますので、その点については、よろしく御配慮いただきたいというふうに思います。
 財務大臣、もう結構でございますので、きょうはありがとうございました。
 次に、ちょっときょう議論が幾つか行われた話ではありますけれども、前々から私の方でもお願いしておりました話でありました。資料を配らせていただいております。お手元にございまして、これは私が現在の法律の仕組みを少し整理させていただいたものでございます。
 きょうの午前中の原口委員への答弁の中であった話ではございますけれども、どうも政府は人道的な国際救助活動というものを、この図の中で言いますと、周辺国であるヨルダンにおいて、例えばヨルダンへ向けての輸送であるとかあるいはヨルダンにおける保管であるとか、こうしたもの自身をどうも活動という位置づけで考えておられるようでありますけれども、私は、それはちょっとおかしいんじゃないかというふうに思うんですね。
 この人道的な国際救助活動の定義を見ますと、被災民の救援のために、または紛争によって生じた被害の復旧のために、人道的精神に基づいて行われる活動ということでありまして、この活動自身は、やはり被災民に対して何かしてあげる、その何かしてあげるというところが活動ということであるのであって、輸送、保管ということ自体は被災民に対して直接的に働きかけているものじゃないから、ここではその活動という位置づけはおかしい。
 法律的に言うと、この活動というのは、イラクの国内で行われている、被災民に対して行われているさまざまな支援というものが活動であって、その活動のために行われていることが、今、周辺国ヨルダンに向けて輸送し、そしてそこで保管されている、人道的な国際救助活動のために実施される業務、すなわち、PKO法に基づけば、国際平和協力業務であるということになるわけであります。
 そして、法律的には、これらのことをしようと思えば、まず、紛争当事者である占領国とイラクとの間に武力紛争の停止、そしてその維持の合意があり、そして紛争当事者であるイラクの同意が活動を行うに当たっては必要である、これは法律の第三条第二号であります。そしてもう一つ、法律の第六条第一項第二号で、その活動が行われる地域の属する国、すなわちイラクが行う同意でありますけれども、イラクの業務の実施についての同意、この業務というのは、国際平和協力業務の実施についての同意が必要であるということになっているんだろうと私は思うんです。
 なぜこんなことを言うかというと、例えばの話なんですけれども、例えば今、紛争当事者であるイラクが、日本がイラクに住んでいる人たちに対して人道的な国際救助活動のための業務を行うことについては、この人道的な国際救助活動について、そんなことをしてもらっちゃ困る、それは英米軍等の占領国を利することになってしまう、そんなことをしてもらっては我々は困るんだ、むしろ我々は徹底的に英米軍と戦うんだというような、そういう気持ちをイラク政府なりあるいはイラクの国民が持っておられるときには、これは、日本は特定の紛争当事者に対して肩入れをしてしまうことになる。これはこの前の質問の際に私も申し上げたことなんでありますけれども。
 というようなことで、法律の趣旨に照らしても、あるいは法律の規定に照らしてみても、私は、この周辺国ヨルダンに対する物資の輸送あるいはヨルダンにおける物資の保管といったようなことは、このPKO法に基づいてはできないというふうに思うわけであります。
 この点について、できれば、この前防衛庁長官が丁寧に一つ一つ説明していただいたので、防衛庁長官、答弁していただきたいと思いますけれども、もし難しければ事務当局でも結構です。
小町政府参考人 お答えいたします。
 今、我々が検討しております人道的な国際救援活動への協力でございますけれども、これは、今回のイラクにおける武力紛争に伴い、イラク国内外に発生している被災民を救援するためのさまざまな活動の一つとして、現在、WFPなどの国際機関及び国連加盟国が人道救援物資をヨーロッパ等からイラク周辺国へ輸送しておくための国際的な活動を展開していることに関連してでございます。
 これらの物資につきましては、基本的には、被災民の所在地やその必要とする物資の内容など、具体的なニーズが別途把握された上で、最終的にイラク国内外に所在する被災民のために活用されることとなるところでございますけれども、現在、WFPなどの国際機関や国連加盟国が実施しているこのような活動は、人道救援物資をそのようなイラク国内外の被災民のために機動的に活用できるよう、あらかじめイラク周辺国まで輸送して、集積しておくという考え方に基づくものでございます。これは、PKO法上、三条二号の「人道的な国際救援活動」と言うことができると思います。
 したがいまして、我が国といたしましても、こういった人道的な国際救援活動に参加するため、欧州諸国とイラク周辺国との間、例えばイタリア―ジョルダン等の間で人道救援物資を輸送するという国際平和協力業務を実施することを検討しているところでございます。
 以上のようなケースにつきましては、イラクはPKO法上、第三条二号に言う「当該活動が行われる地域の属する国」に該当いたしませんので、我が国が国際平和協力業務を実施するに当たって、イラクから受け入れ同意を得ることは不要であると考えます。
平岡委員 実は、PKO法の制定の当時にいろいろ議論がされています。その議論を見ると、特に、今まで政府がヨルダンにおいて、ヨルダンに入ってきたイラクの難民の人たちに対してテントを提供したり、あるいはパキスタンに入ってきた難民の人たちに対していろいろな物資を提供したりということについては、確かにそのときの議論の中でも是認をされているということであります。
 しかし、今回のこのイラクの問題について、イラク周辺国において行う業務については、その当時の国会での議論でも明確にはされていないということであります。
 そして今、事務当局の方から説明していただいた中身については、昨日付の内閣府国際平和協力本部事務局と銘打ったものが出されておりまして、それに沿った答弁でございましたけれども、私は、先日の委員会で政府の統一見解を示してほしいというふうに言ったんですけれども、この紙が政府の統一見解ということでいいんでしょうか。これは大臣、お答えください。
浜田委員長代理 小町局長。
平岡委員 大臣。大臣が約束、大臣との議論の中で出てきた話ですから。
福田国務大臣 政府としての見解でございます。
平岡委員 政府の見解ということであるならば、多分、内閣法制局の方でもこの点についての論理的な整理をされたんだろうと思いますけれども、先ほど私が指摘させていただいた二点、つまり、この法律の趣旨からいって、紛争当事者の片方に肩入れをすることになるような国際平和協力業務は行うべきではないというふうに私は考えるという点、そしてさらには、人道的な国際救助活動というものは、あくまでも、物資を輸送し保管するという活動ではなく、そうした物資を被災民に提供したり被災民のために使用したりすることであるというふうに私は考える、それが本来の法律の趣旨であるというふうに思うんですけれども、その点についての見解をお示しください。
秋山政府特別補佐人 お尋ねの第一点でございますが、仮に今後、具体的なニーズが把握された上で最終的にイラク国内に所在する被災民のためにそれが活用されるという段階になりますれば、それにつきまして、我が国として国際平和協力法に基づきましてその業務を行うということになりますれば、そのときには、何らかの、それこそ法律にのっとりまして受け入れ国の同意が必要になるわけでございますので、その前段階において、イラク国内における活動が行われない段階におきまして、それがイラクの受け入れ同意がないからといって法律の趣旨に反するということにはならないのではないかと思います。
 それから、今回の具体的な実態に即しまして、その活動、人道的な国際救援活動というものをどうとらえるかという問題でございますけれども、今回はそのように二段階に分けて、まずヨルダン等に物資を集積する、それから別途、具体のニーズを把握して、イラク内外に所在する被災民のためにそれが活用されるということでございますので、それはそれぞれ別途の活動としてとらえられるというのが政策当局の認識でございます。確かに、法案の審議のときにそこまで具体の論議があったとは承知しておりませんけれども、そういう新しい実態を踏まえて、そのように解することは十分に可能なのではないかと考えております。
平岡委員 政府が統一見解としてそうお示しになるのなら、それはそれで尊重しなければならないとは思いますけれども、そうすることが、場合によっては、これからいろいろな地域で起こる紛争について、まだまだ紛争が続いているんだけれども、何か隣国までなら自衛隊は派遣してもいいんだというような形でどんどん自衛隊が出ていってしまうというようなことは、私は本来の趣旨に反しているんじゃないかというふうに思います。
 これは、我々が政権をとったときには、そうした解釈についてきちっとしたものにしていきたいというふうに思っております。そこは最後にそういうふうに申し上げまして、その点については終わらせていただきたいというふうに思います。
 それから次に、先ほど中川委員の方からよくわからないというふうに話がありました戦闘地域、非戦闘地域、実施区域の関係ということでございますけれども、まず最初に、対応措置を実施する区域の範囲、これは法の四条の二項とかあるいは四項に出ております。そして、防衛庁長官が指定する実施区域というのがございまして、これは対応措置を実施する区域ということで、八条の三項にございます。そして、非戦闘地域というのは二条の三項にございます。一応私は私なりに理解しているつもりではございます。
 そこで、端的に聞こうと思います。非戦闘地域というのはだれが判断するんでしょうか。
石破国務大臣 これは、防衛庁長官が判断をいたしまして、総理大臣が承認するという形になっております。
平岡委員 今、私、非戦闘地域はだれが判断するのかと聞いたのであって、実施する区域をだれが判断するのかを聞いたんではないんですね。やはり防衛庁長官も混同するような、それだけこの概念というのは難しい、わからないということが如実に示されたんではないかと思いますけれども、重ねてもう一度お聞きします。非戦闘地域というのは一体だれが判断するんでしょうか。
石破国務大臣 委員はおわかりの上でお尋ねかと思いますが、要は、その活動を実施する区域がいわゆる非戦闘地域という要件を満たすことについてはどうなのかということで、ひっきょう同じことになるわけでございますが、防衛庁長官が対応措置を実施する区域である実施区域を指定し、当該指定につき総理が承認する際に判断をするということになるわけでございます。ですから、防衛庁長官が指定をし、総理の承認を得る、その折に判断がなされるということになるわけでございます。
平岡委員 その非戦闘地域でありますけれども、これは、実施区域というものと非戦闘地域というものを考えてみれば、今、非戦闘地域ということを考えて実施する区域を指定する、そして承認がされるというお話がございました。多分、一番最初に実施区域を指定する際は、非戦闘地域の中から実施する区域を選んで指定し、そして自衛隊を派遣し、そして国会の承認が得られるという仕組みになるんだろうと思うんですね。
 ちょっと首を振っておられるので、それは違うのですか。後ろの方が首を振っておられたので、もしかしたら防衛庁長官は……(石破国務大臣「いいですか」と呼ぶ)はい、どうぞ。
石破国務大臣 先ほどの答弁で申し上げましたが、行う地域はとにかく非戦闘地域でなければならないということなのでございます。非戦闘地域をまず決めて、それから実施区域を決めるというような作業が行われるかというと、必ずしもそうは限らない。実施する区域というのは、いずれにせよ非戦闘地域でなければいけないということでございます。これはもう先生御案内のとおり、憲法上の要請でございますから、私どもが非戦闘地域でなければいけないという地域というものが法的にございます。
 では、それ以外の地域はみんな戦闘地域なのかねというと、決してそういうわけではございません。我々がやるのは非戦闘地域でなければいけないということを法的に担保しておるという条文の構成になっております。
平岡委員 もう一度聞きます。
 非戦闘地域の中から実施区域が指定されるということでいいんですね。
石破国務大臣 実施区域は非戦闘地域でなければいけないということでございます。
平岡委員 そうだとすると、例えば、実施区域として指定された中に戦闘地域と思われるような地域が出てきたというときには、これはどういうことになりますか。
石破国務大臣 何をもって戦闘区域と思われる地域が出てきたというふうに思うかということでございますが、例えば、それが活動しておる中において、突然、国または国に準ずる者があらわれ、そしてそれが、国際的な武力紛争の一環としてのような攻撃をしかけてきたというような場合は、それに該当するだろうと思います。実際にそれに遭遇した現場といたしましては、これは条文に書いてありますとおり、危険を回避し、活動を休止しということの行為を行います。そしてまた、実施区域を変更しなければならないという場合には、当然、防衛庁長官が実施区域を変更するということになります。
 ですから、現場におきましては、それを休止し、回避し、そして指示を待つということになります。そして、防衛庁長官といたしましては、実施区域の変更が必要か否かという判断をそのときに行うことになります。
平岡委員 防衛庁長官、あなたは間違っているんですよね。今のは、戦闘地域になったらそれを回避しなさいとはなっていないんですよ、この法律は。
 どうやって書いてあるかというと、「自衛隊の部隊等の長又はその指定する者は、当該活動を実施している場所の近傍において、戦闘行為が行われるに至った場合又は付近の状況等に照らして戦闘行為が行われることが予測される場合には、」と。「実施している場所の近傍」なんですよ。(石破国務大臣「それはもちろんです」と呼ぶ)ですよね。これは戦闘地域と直接は関係ないですよね。
 という意味で、これは、戦闘地域であるかどうかというのは、まず現場にいる人が、先ほど言いましたように、そうなったと思ったら、退避しますとかあるいは一時停止するとかということで、戦闘地域の判断というのは現場の自衛官がするんですよ、現場の自衛官が。
 そして、長官はこの前、非戦闘地域というものでなければそもそも自衛隊の活動はできない、それは憲法上の要請で、これはどうしても守らなければいけないもので、抽象的な概念であろうが何であろうが、その非戦闘地域というものを設定しなければならないんだという答弁をされました。
 しかし、実際に現場で非戦闘地域であるかどうかということをまず判断するのは自衛官なんですよね。自衛隊なんですよ。そういうふうに、自衛隊に自分たちがどこにいるべきかいないべきかということの判断がゆだねられるということは、そもそも文民統制の考え方に反するんですよ。これは憲法上問題がある、大いに。
 大臣、これは通告している質問ですから、どうですか。
石破国務大臣 活動を休止し、危険を回避しということの判断は、当然現場の指揮官が行います。休止してよろしいでしょうか、回避してよろしいでしょうかみたいなことを防衛庁長官の判断にゆだねておったらば、それこそ大変な被害が生ずることになります。それは、実際に休止し回避するかという現場の判断は現場の指揮官がやるのは当然であるということ、そのことは非戦闘地域であるか否かということを判断する行為とはまた別個の行為でございます。したがいまして、これがシビリアンコントロールに反して、自衛官の判断によって非戦闘地域であるか否かということを判断させるということにはなりません。
 実施区域の変更というものは、当然防衛庁長官が法に基づいて行うことになるわけでございまして、それは現場の判断に係らしむるものではございません。それは防衛庁長官が、憲法の定むるところに従って、そしてまた隊員の安全というものを考え、そして活動の安全というものを考えて、実施区域を変更すべきと考えれば、変更することになるわけでございます。
平岡委員 一義的には、やはり現場にいる自衛官が判断をして行動することになるということで、神様の目から見れば戦闘地域であるというところを、自衛官が、いや、これは戦闘地域でないんだ、非戦闘地域であるということで頑張って行動すれば、防衛庁長官であろうが内閣総理大臣であろうが、それを決して規制することはできない。そもそもそういう情報は現場の自衛官から防衛庁長官に上がってくるわけでありますから、そういう情報が上がってこないという状況の中で自衛隊が勝手に行動することも大いにあり得る、そういう仕組みになっているということを私は申し上げているということです。
 そういう意味で、この法律では文民統制というものが全然できていない、そういう意味で非常に問題があるということを申し上げています。
 何か、手を挙げておられるので、答弁あるならどうぞ。
石破国務大臣 法的にそのような仕組みにはなっておりません。そういう場合には自衛官の判断によって危険を回避する、そしてまた活動を休止するということがなぜシビリアンコントロールに反すると先生がおっしゃるのか、私には理解ができません。
 それがシビリアンコントロールに反するものではなくて、それは法律上、そういう場合には、危険を回避し、活動を休止しというふうに書いてあるわけでございます。法にそのように書いてあってそのように行わないということがあった場合に、法に書いてあることを行わないことを称して、シビリアンコントロールの縛りがきいていないとか、シビリアンコントロールが制度上担保されていないという御指摘は、必ずしも当たらないものと考えております。
平岡委員 今までのやりとりの中で、それまで非戦闘地域だと思っていたところが戦闘地域になる可能性、あるいは対象地域の中でも戦闘地域になる可能性があるということは、今の議論の中で明白に示されたと思いますけれども、けさの佐藤委員、原口委員の質問の中で、法制局長官は、さまざまな前提条件をつけて言っておられましたけれども、例えば、強盗などに対して、防御のために武器を使用するということについては武力の行使にならないんだ、国際的な紛争を解決するのは武力の行使に当たらないんだという答弁をされておられましたけれども、今度は逆に質問します。
 自衛隊がイラクに入りました。そして、これまで対象地域ということで行動しておりましたら、そこは戦闘地域になりました。その戦闘地域において、バース党の残党など、国際性というのはどういう意味かちょっと後で検証する必要がありますけれども、国際性、計画性、継続性などを総合的に判断して、国または国に準ずると認められる者からの武力攻撃があったとします。その武力攻撃に対して自衛隊がその携行する武器で反撃した場合、これは憲法第九条に違反することになると思いますけれども、いかがでしょうか。
秋山政府特別補佐人 今御議論ありましたように、法案に基づきます自衛隊による対応措置の実施は、いわゆる非戦闘地域において実施することとしておりまして、さらに、当該実施区域の全部または一部が非戦闘地域であることなどの要件を満たさないこととなった場合には、実施区域の変更あるいは活動の中断、一時停止をなすべきこととしております。
 しかしながら、そのような用心をしたとしましても、現に自衛隊が対応措置を実施中の地域において攻撃を受け、当該場所から退避することもままならないといった不測の事態が生ずる可能性は、全く否定することはできないのでございます。
 したがいまして、そのために、法案第十七条においては、「自己又は自己と共に現場に所在する他の自衛隊員、イラク復興支援職員若しくはその職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者の生命又は身体を防衛するため」に、必要な範囲内での武器の使用を認めております。
 このような要件を満たす武器の使用につきましては、これは平成三年のいわゆる国際平和協力法のときから議論を積み重ねてきているものでございますけれども、いわば自己保存のための自然権的な権利と言うべきものでありますので、そのための武器使用、これは、たまたまその相手方が国または国に準ずる組織でありましたとしても、憲法九条の禁ずる武力の行使、すなわち、基本的には国家の物的・人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為をいうと考えておりますが、そういう自然権的なものは、この武力の行使には該当しないものでありまして、憲法九条違反の問題は生じないものというふうに説明してきているところでございます。
平岡委員 今のは手前勝手な議論ですよね。例えば、今回、何を持っていこうかと、バズーカ砲か何か、無反動砲とかも持っていこうかというような議論をしているときに、それで、バース党のようなところからの武力攻撃に対して反撃をするということが、武器の使用という概念の中で自然権的なものにとどまっているというのは、一種の強弁でしかないというふうに思いますね。
 国際法的に見れば、これは十分に自衛権の発動的な武力行使である。そして、それを外国で行うということについては、憲法九条が考えている専守防衛、そうした自然発生的な個別的自衛権の発動というものとは全く違う概念であるというふうに私は考えざるを得ないということであります。
 長官、何か反論があるなら、どうぞ。
秋山政府特別補佐人 その状況におきまして、どのような武器を携行し、どのような態様で使用するかにつきましては、午前中にも防衛庁長官がおっしゃっておりましたように、比例原則という範囲内で行われるものでございましょうけれども、そのような要件を満たす限り、第十七条の規定に基づきます自己の生命等を防衛するための最小限の武器使用は、やはり憲法九条の武力の行使には該当しないものと考えております。
平岡委員 そういうことであるならば、それだけの武器を持ってするなら、どんな紛争地域に自衛隊が行っても憲法違反の問題は生じないという話にもなってしまう。常に自分たちの身を守るだけの武器を持って入るのであれば、どこに行っても憲法違反の問題は生じない、こんな話になってしまうというのは、私は非常におかしい論理だろうというふうに思います。この点については、さらにきょうの議事録を精査した上でまたお話をしてみたいというふうに思います。
 この問題については、前回もちょっと質問しましたけれども、それほどまでに非戦闘地域という概念が重要なものであるならば、そして、戦闘地域を対象区域ということにすることができないのであれば、やはり私は、防衛庁長官が実施区域の指定を変更、特に拡大をするというような場合には、国会の承認を受けた対応措置の実施区域の範囲が異なることになるわけでありますから、当然、改めて国会の承認が必要ではないかというふうに思うんですけれども、重ねてこの問題についてお尋ねしたいというふうに思います。
石破国務大臣 これは、条文上、国会の御承認をいただきますのは、可否についてでございます。したがいまして、実施区域というものを、先生まさしくおっしゃいますように広げたときにはどうなのだということでございますが、これはもう条文の仕組みとして、国会の御承認をいただくのは可否ということになっております。
 仮に、実施区域の範囲を広げるという場合に一々国会の御承認が必要だということになってまいりますと、これはなかなか機動性というものは確保されないということになろうかと思います。それは、私どもが実施区域の範囲を広げます、広げるということはなかなか私は、狭めるということはございましても、広げるということがどういうことにおいてあり得るのか、これは中でも議論をしておることでございますが、仮に広げる必要があるということになりました場合には、これは相当に急いでやる、機動性なり流動性なりというものは確保されなければいけないのだろうと思っております。
 誤解を招くといけませんが、その場合も国会の御承認が必要ということになりますと、なかなかそういうような即応性というものは確保されない。しかし、そうだからといって、シビリアンコントロールというものが侵されるということにはならないものだと私は考えております。
 こういう場合のこういう地域であるから、可否について、可と言ったのだとか否と言ったのだとか、そういうことになるのかもしれませんけれども、私は、それと機動性との勘案の問題だろうと思っております。これを国会承認かからしめなかったとしても、これはシビリアンコントロールに反するものだと私は思いません。
平岡委員 機動性、機動性と言われますけれども、狭める場合は確かに急いで狭めないと、自衛隊が危ない地域というか、戦闘地域になるようなところで行動するのはいけないから対象区域を狭めましょうというようなときは、それは緊急性があると思うんですね。だけれども、対象区域を広げてこういうふうにしましょうというときに、一体どれほどの緊急性というのが考えられるのか。本当に緊急性があるのであれば、それは事後承認ということだって手段としてはあり得る。そういうことを考えれば、緊急性を理屈にして国会の承認にかからしめないということは、私はおかしいんだろうというふうに思います。
 ちょっと時間がないので次の質問に移りたいと思いますけれども、実は、イラク復興支援職員の問題についてでございます。
 今回の民主党の修正案の中では、イラク復興支援職員について、積極的にといいますか、国際的な評価を受けられるような活動をしようという趣旨も込めて、その部分のイラクにおける活動については我々も認めるという内容のものを出させていただいたということでございます。
 きょう伊藤委員が、このイラク復興支援職員の安全性はどうするんだというふうに民主党の提案者の方に聞いていましたけれども、全く筋違いの質問の方向であって、本来、私が、この問題はもう随分前からこの委員会でも指摘させていただいて、政府としてイラク復興支援職員、この人たちの法的な地位というのは一体どんなものと考えているのか、そして、その安全性はどう確保するのかということを聞いてきたわけでございます。
 昨日、内閣官房副長官補室(安全保障・危機管理)というところから「本法案におけるイラク復興支援職員の位置付けについて」という文章が出されてまいりました。これを見ると、まず法的な位置づけについては法律を羅列しているだけ、今回提案されている法律を羅列しているだけで、全く私が聞きたいということに答えていただいていないということでございますので、もう少し具体的に私は質問してみたいと思います。
 イラク復興支援職員のイラクにおける活動の内容というのは、だれがだれと、例えば当局、これはCPAですね、当局あるいは国連のイラク特別代表、こういった人たちがイラクに関してはそれぞれ活動されているわけでありますけれども、そういう人たちを含めて、だれがだれとどのようにして決めていくということになるのか、まずこの点についてお答え願いたいと思います。
福田国務大臣 イラクの復興支援職員、これは我が国の要員として、内閣総理大臣の指揮監督のもとに、現地において対応措置に従事するということでございます。
 実際にイラクの復興支援職員がイラクにおいて活動するという場合には、業務の円滑かつ安全な実施のために、現時点であればCPA、当局と呼んでいるその当局と実際の調整、協力を行う、こういうことを想定いたしております。
 ただし、イラク復興支援職員が当局の指揮下に入るというものではなくて、あくまでも我が国の要員としての身分において活動します。
 その際、活動の具体的内容は、最終的には基本計画に従いまして、現地調査、我が国が独自に収集した情報、諸外国や国際機関から得られた情報等に基づきまして、このような当局等との調整、協力も踏まえて、内閣府の長たる内閣総理大臣が決定をする、こういうことであります。
 それから、イラク復興支援職員は、現地において何らかの交渉権限を付与されて交渉を行うというよりも、むしろ活動の円滑な実施のための実際面での調整を当局や諸外国、国際機関と行うということになります。
 それから、安全確保でございますけれども、これは法案の第九条……(平岡委員「それはいいです」と呼ぶ)よろしいですか。
平岡委員 イラク復興支援職員が行う仕事については、内閣総理大臣が指揮監督のもと対応措置をさせるということになるということなんでしょうけれども、イラクの現地におけるイラク復興支援職員の身分というのはどういう身分なんでしょうか。外交官というような身分なんでしょうか、どういう身分で行っているんでしょうか。
川口国務大臣 これは国家公務員、一般職の公務員でございます。
平岡委員 身分としては国家公務員一般職ということになろうかとは思いますけれども、そうした人たちの安全性はどう確保するか。これは、きょうも伊藤委員がなぜか民主党の方に詰め寄っておりましたけれども、むしろ私は政府の方に詰め寄っていきたい。
 この前も言いましたように、イラクに派遣される自衛隊の人たちは、何もイラク復興支援職員を守るために行くという位置づけには全くなっていない。たまたま自己の管理下にあるようなときになったときはそれは守るかもしれませんけれども、いつも管理下にいるわけではない。どこに行くかということについても、政府の法律案の中では、特にこういうところに行っちゃいけませんよという実施区域が指定されるわけでもない。そういう状態で行くわけですよね。かなり自由度が高いわけであります。そういう中で、一体どのようにしてこのイラク復興支援職員の方々の身の安全を守っていくのか。
 この点についてしっかりとした答弁をしていただきたいのでございますけれども、実は、最初にもらっている文書にもいろいろ書いてあります。もしかしたらそれを読まれるのかもしれませんけれども、もしそれを読まれた内容で伊藤委員が納得されるのであれば私も納得したいと思いますけれども、多分納得されないと思いますから、その答弁に基づいてまた質問していきたいというふうに思います。
福田国務大臣 それでは申し上げますけれども、この安全確保、これにつきましては、法案の第九条に明示されております。
 具体的には、基本計画において対応措置の基本的な方針等を定めるに当たりまして、現地調査を十分に行うということ等によりまして、職員の安全の確保には十分配慮をいたします。
 そして、加えまして、派遣の際にも、我が国が独自に収集した情報等に基づき、現地の治安状況等を正確に把握し、治安上も安全な地域であることを十分に確認した上で活動の実施を命ずるということになります。さらに、万一安全に問題が生じるというような場合にあっては、速やかに活動の中断等必要な措置をとる、こういうことになっております。
平岡委員 伊藤委員が納得していただいたかどうかというのはわかりませんけれども、多分納得されていないんだろうと思いますね。そういう意味で、これから伊藤委員とともに政府に対して、このイラク復興支援職員の安全をどう確保していくかということを議論していきたいというふうに思っております。
 次の話に移りたいと思うんですけれども、実は、昨日、参考人質疑をさせていただきました。これは多分ほかの委員の方もこれから質問されると思いますから、ちょっとだけ、私が質問したところに関連するところだけ質問させていただきたいと思います。
 参考人質疑で、大阪市立大学の松田竹男教授が、これまで私が取り上げた問題について次のとおり陳述しておりますので、この意見についての政府の見解を改めて伺いたいというふうに思います。
 まず第一点は、松田教授はこのように言っておられます。イラクに派遣された自衛隊は、実際に武器を発射していないから交戦権の行使にはならないというわけではない、やはり、国際人道法なり武力紛争法で規律されるような行為を行えば、やはりこれは一種の交戦権の行使に当たるというふうに考えられると思いますということでございます。これは、六月の二十四日の本会議で、総理の答弁で、「非交戦国である我が国が本法案に基づく活動を行ったとしても、交戦権を行使することにはならず、憲法九条に違反するものではありません。」という答弁に対しての見解を求めたものでございます。
 まず、この第一点について御答弁願いたいと思います。これは外務大臣でしょうか。
川口国務大臣 松田教授がそのようにお話しになられたということは承知をいたしておりますが、政府の見解は以前申し上げたのと変わりございません。必要でしたら繰り返しますが。
平岡委員 ちなみに、政府の見解というのはだれがどのようにしてまとめ上げたものかということを、この機会にちょっと御紹介していただけますでしょうか、大臣。
川口国務大臣 国際法でございますので、これは外務省の見解でございまして、それを政府部内で御相談して申し上げたということでございます。
平岡委員 外務省の中で整理したということであって、何か学者の方とかにいろいろと相談された上で、あるいは学者の学説というものを踏まえた上で整理されたものなんでしょうか。どうでしょう。
川口国務大臣 これは外務省の有権的な解釈でございます。
平岡委員 外務省も時として時の首脳に左右されるということが多々あったという、まあ首脳でなくても、外務省に影響力のある政治家に大分左右されていたことがございましたので、決してそれだけじゃなくて、本当にいろいろな専門家の意見もちゃんと聞いた上で、こういうふうに学者としても意見をもらっていますというものをぜひ示していただきたいと私は思います。
 それで、第二点でございますけれども、松田教授は、これは衆議院の本会議の総理答弁の話でございますけれども、ジュネーブ諸条約及びハーグ陸戦規則が自衛隊に対して適用されるかという問題でございますけれども、松田教授は、イラクに派遣された自衛隊が活動すれば、当然ジュネーブ諸条約とハーグ陸戦規則の対象になるというふうに考えられますというふうに答弁していますけれども、この点について、外務大臣、改めて政府の見解を尋ねたいと思います。
川口国務大臣 これにつきましても、松田教授の御意見は承知をいたしておりますけれども、この法案に基づいて我が国が行う活動は武力の行使に該当をしない、また、いわゆる非戦闘地域で行われますので、我が国は武力紛争の当事者とはならないわけでございます。さらに、我が国は、この法案に基づいて行う活動によって、武力紛争の当事国としてイラクの領域を実効的に支配することにはならないので、我が国みずからがイラクにおいて占領を実施するということにはならないわけでございます。
 したがいまして、この法案に基づく我が国の活動が武力紛争または占領に当たるとして、ジュネーブ諸条約及びハーグ陸戦規則の規定の適用を受けることはございません。総理が前に答弁なさっていらっしゃいますが、そういうことでございます。
平岡委員 先ほど来の議論から、この対象区域が戦闘地域になる可能性がある、これまで非戦闘地域であったものが戦闘地域になる可能性があるということが法律の前提となっているということはもう証明されているわけでありますから、今の大臣の答弁は、そういうことを全く無視した机上の空論で答弁しているとしか言いようがありません。私は全く納得できないということを申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
浜田委員長代理 次に、達増拓也君。
達増委員 おとといの「TVタックル」で米田建三副大臣が次のような発言をされました。
 国際標準の武器使用権限というのは、諸外国が軍隊を送った時に、任務達成のための武器使用というのは認められているんですよ。ところが我が国の場合は、自然権的な個人的な正当防衛権のみです。分かりやすくいうと、自衛隊員が拉致誘拐された場合、救出作戦ができるか。できない。できない。できない。それはどうすんだと。イラクの警察に一一〇番か、外国軍に頼むしかない。それからまたゲリラが襲ってきた時追い払うことはできるが、二度三度と襲って来させないために制圧できるか。できない。できない。これだとですね、仕事にならんだろうと。
そこで、西村眞悟衆議院議員は、「そこまで分かってるんなら、なんであの法案を出してくるんだよ。」米田副大臣、「おれは反対したよ。」西村議員、「つぶせなかったんじゃないか。」米田副大臣、「おれは反対したんだ。中で。つぶせなかったからおれはいかんといっているんだ。ここで。」西村議員、「反対するのか。」米田副大臣、「おれ一人でつぶせないだろう。」西村議員、「私は内部で反対しました。しかし反対したのは無傷で出ています。」これは米田副大臣の発言を批判的に要約したものですね。
 米田副大臣、「経過の説明をしているんだよ。」西村議員、「あなたがそれに反対するのか、賛成するのか。そこまで言うなら態度を明らかにしてね、言うべきですよ。」そこで、米田副大臣が、「おれはとりあえず賛成する。なぜならば、なぜならば、運用の問題で欠陥をカバーするというこそくな形でも、イラクに日本がプレゼンスすることの国益が大きいと思うから賛成します。」と。
 そこで、米田副大臣に伺いたいんですが、イラクに日本がプレゼンスすることの国益ということは、アメリカ政府高官が言っているように、ブーツ・オン・ザ・グラウンドですとか、観客席じゃなくグラウンドで参加してほしいですとか、そういう意味で、とにかく自衛隊を派遣するんだということだと思うんですけれども、それによる大きな国益というのは何なんでしょうか。
米田副大臣 お答えします。
 当日の報道のほとんどを再現されたので、どうせなら最後までお読み上げいただきたかったと思います。
 それで、今の御質問にまず先に結論からお答えしますが、国際社会における我が国の地位からして、また、この世界の中で貿易国家としても存立をしておる我が国、世界じゅうからお世話になっているわけでありますから、その世界の最重要な安全にかかわる、安定にかかわる課題に関して、世界第二の経済大国家である我が国がきちんとそこで貢献を果たすという、この国益が大きいという意味であります。
 なお、今テレビのやりとりを、西村代議士とのやりとりを再現されましたので、誤解を招かないように私からも説明をさせていただきたいと思います。よくお聞きをいただきたいと思います。
 御指摘の六月三十日に放映された「TVタックル」は、六月二十一日に収録されたものであり、約二時間にわたって収録をされましたが、一時間弱に編集された上で放送されたものでございまして、やりとりの中で放映されなかった部分もあることをまず申し上げておきます。
 収録を通じて私が一貫して述べようとした趣旨は、以下のとおりでございます。
 まず、私は国会提出までの自民党内での議論の経過を説明しようといたしました。ちなみに、私は、自民党安保政策議連の会長として、防衛政策関連の会合にはできるだけ出席し、議論に参加することとしております。
 当初、自民党の国防部会では、イラク新法につきまして強い反対意見が出ておりました。それは、自衛隊に国際標準の任務達成のための武器使用権限を与えず、相変わらず自然権的正当防衛権の延長にすぎない武器使用権限しか持たせず送り出そうという内容なのではないか、それは隊員にとっても危険であるし、また不十分な活動しかできない法案ではないのかという懸念が多くのメンバーにもあったからであります。
 御指摘の、自衛官がさらわれても救出に行けない、繰り返し襲われても、その都度追い払うことはいいが、追いかけていって制圧することはできないのではないかというふうな議論も、武器使用基準にかかわる国防部会での議論の過程で出てきた話であります。
 国防部会の中では、この際、国際的スタンダードに合致した武器使用基準に踏み切るべきだという意見が多くございましたが、しかし、現行の武器使用基準の範囲で細心の注意を払った運用を行うとの説明がございました。すなわち、派遣地域について慎重に判断するという本委員会での政府答弁と軌を一にするものと理解をしておりますが、この運用という言葉の意味を誤解しておられるのではないでしょうか。武器使用基準が現在のままで危険な任務をさせるという意味だと理解して、私はこの番組の中で運用という言葉を使っているわけではないのであります。
 ともあれ、部会では、今後、本格的な法制の整備に努めることを望むという附帯決議を付された上で了承されたわけであります。
 この運用上の工夫によって自衛隊の安全が確保されるならば、先ほど冒頭申し上げたような、イラク問題で我が国が役割を果たすことによる国益の大きさを考え、私は、法案に賛成するという見解を示したわけであります。(達増委員「官房長官がいらっしゃる間に、官房長官に質問させていただいてよろしいでしょうか、四十五分に出られるということなんで。いらっしゃるならいいんですけれども」と呼ぶ)済みません、あとちょっと、五秒だけで終わりますから。
 ただいま申し上げたような趣旨の話は、私は、番組収録中一貫して、かつまた収録後段で念のために改めて簡潔に述べました。しかし、最後にまとめて簡潔に述べた部分は放映されておりません。私は、政府の方針に何ら今日反対するものではなく、これを了承しているところであります。
 以上です。
達増委員 米田副大臣は一切撤回、謝罪等々されませんでしたので、官房長官に伺いますが、この米田副大臣の発言は、これは小泉内閣としてもこのとおりということでよろしいんですね。
福田国務大臣 今米田副大臣が説明をされたんで、大体、まあいろいろな議論はありますからね。ですから、それは政治家米田副大臣の意見として、まあそれはそういうのもあるんではなかろうかというように思います。
 御質問で先ほどありました、プレゼンスというものを、これだけ主張するために自衛隊が行くのかという、それはそういうことじゃないんでありまして、何のためのプレゼンスなのかという中身が必要なんです。それは、今米田副大臣からも答弁があったとおりでございます。
 米田副大臣も豪胆な男でございますから、時としては若干直截的に物を言うということがありますけれども、今の御趣旨のとおりであったと思っております。
達増委員 御趣旨のとおりということで官房長官からのお墨つきも得た米田副大臣の発言でありますが、まさに、この資料で大きく書いてあり下線が引いてある部分ということがこのイラク新法の本質であるということを小泉内閣として今認めたと思います。
 要は、とにかくイラクに自衛隊を出せばいいということ。イラクに自衛隊を出すに当たってさまざまな問題はある、深刻な問題はある、自衛官の命あるいは自衛官の尊厳も侵されるかもしれない、しかし、プレゼンスすることの国益が大きい、そのためのイラク新法だということが明らかになったと思います。ブーツ・オン・ザ・グラウンド、観客席じゃなくてグラウンド、アメリカの政府高官も繰り返しそういうことを言っておりまして、そういった日米のやりとりからいっても、日本政府としての本音がどこにあるかというのは推測できるわけでありますけれども、小泉内閣としてそこを正式に認めたんだと思います。
 先ほど経過の説明という話が米田副大臣からありました。自民党国防部会で反対論が出た、報道等で聞いておりました。また、自民党の総務会、自民党最高意思決定機関とでもいうんでしょうか、総務会でも反対論が噴出して、本当はその日の総務会で決定して閣議決定という段取りだったのが、総務会を翌日もやらなければならなくなってしまったので閣議決定がおくれてしまった。その総務会の中でも、やはりこの武器使用権限の問題でありますとか自衛官の安全についての反対論が噴出したと報道されておりますけれども、ところが、不思議なことに、結論として、大量破壊兵器の処理というところを削除すればいいよという結論になっているんですね。
 つまり、政府・与党の議論の中で、この武器使用問題、自衛官の安全の確保の問題についてはさまざまな反対論が上がっていたにもかかわらず、結果としてイラクに日本がプレゼンスすることの国益が大きいということで賛成をする。
 しかし、これはやはり賛成すべきではない。こういうこそくな形で欠陥をカバーしなければならないような、そういう欠陥を抱えた法律を、しかも自衛官の生命や尊厳にかかわることです。そして軍事の問題ですから、日本という国の主権の、国家主権行使の最大の局面の一つがこの軍隊の問題だと思いますが、そういう国家主権をないがしろにすることでもあります。
 幾らほかにメリットがあるからといって、そういう個人の尊厳を踏みにじり、そして国家主権をないがしろにするような法律案を閣議決定して提案してくるということは全くおかしいと思うんですけれども、米田副大臣、いかがですか。
米田副大臣 私の発言、テレビのやりとりの中ですから、詰まっちゃったり言葉がいろいろありますね。さっき言ったように、二時間の中で、最後に放映されていない部分もあるので、賢明な達増議員はいろいろなことをおわかりの上でこういうやりとりの場をおつくりなんだろうと思いますが、ちょっと大きい字でアンダーライン引いてありますが、この意味を、もう一度私に真意をはっきり言わせてください。
 さっき申し上げましたように、自民党の国防部会でいろいろな議論がありました。真剣な議論が行われました。そのとき、私や私の仲間、同志たちは、この際明確に国際スタンダードの武器使用権限の規定を含む本格的な法案をつくるべきではないかというふうに主張をしたわけであります。しかしながら、結局我々の主張が入れられないという形になった。そのことへの残念な思いを述べているわけでありまして、現行の、提案された法案が法としての構成要件に欠けるとか、法としての構成が不完全なものであるという意味ではございません。
 したがって、先ほど申し上げたとおり、要は説明者側の我々の部会における説明も、いわゆる旧来の、従来の武器使用権限にのっとった行動と部隊の運用を行うという、ある意味では当たり前の説明であったわけであります。
 しかしながら、我々からしたならば、この際一歩進んだものをという思いがあったので、その意味で残念であると。本来、我々が目指すべきだと思っている我が国の今日の海外貢献等でのあり方が今回、百点満点の形で実現できないことを指しまして、私が完全ではないと。そういう意味であります。
達増委員 やはりこういうふまじめな形で出てきた法案というのは、本当にまともに審議するに値しない、まして採決の対象にはならないと思うんです。
 アメリカ軍においては、戦場に一人も仲間を残さないということが非常に徹底されていると聞いております。ソマリア内戦でアメリカ軍が二十人近い死亡者を出し、もっともソマリア側は千人ぐらいの死亡者を出しているんですけれども、大変な犠牲を出して、それでクリントン大統領はソマリアからアメリカ軍の撤退を決めるんです。
 そのときも、とにかく一人でも重傷者が出た場合、その重傷者をちゃんと後方に運ぶために貴重な人を割いてそちらに回すとか、ヘリが撃ち落とされて、そのパイロットを救出するために本来の作戦を変更してそのパイロットの救出に向かうとか、武力集団、軍隊というのはそういうものなんじゃないかと思うんです。
 そういう中で、今回のイラク新法というのは、米田副大臣指摘のとおり、さらわれたとき、自衛隊員が拉致誘拐された場合にも救出作戦はできない、そこに残してこなければならない、そういった内容の、およそ自衛隊の、恐らくこれは自衛隊の誇り、そして自衛官の尊厳――アメリカ軍の場合、生きて帰すというだけではなく、その亡きがらについても必ず持って帰る。それは、安全という価値を超えて、尊厳を重く見ているからそういうことだと思うんですが、そういう尊厳をおろそかにしてまでこの法律をつくらなければならないということが、ふまじめと私が指摘する理由なんですが、石破長官、いかがでしょうか。
石破国務大臣 お言葉を返すようで恐縮でございますが、政府の中で本当にそんなふまじめな議論をしてきたかといえば、私だって全部見ておるわけではありませんから、断言はできません。一〇〇%完全ということは申し上げるわけにはいきません。しかし、私は、自分も何日も何日もこの議論をしてきて、ふまじめな議論をしたことは一度もないつもりです。
 どうすれば尊厳が保たれるかということ、そして、どうすれば犠牲がなくて済むのかということ、それはもうやはり、もちろん野党の委員というお立場はあります、我々政府という立場もありますが、ふまじめだということにつきましては、私はいささかの違和感を覚えます。(発言する者あり)そんなに不誠実でもございません。それは……(発言する者あり)
浜田委員長代理 不規則発言は抑えてください。
石破国務大臣 例えて申しますと、じゃ、武器使用権限という点について、これは午前中もどなたかにお答えをいたしましたが、それでは、bタイプの武器使用であり、かつまた、自己の身に対する攻撃でもなく、そしてまた持っておる装備、自衛隊法九十五条に対する攻撃でもない、それでbタイプとは何なのだ、そしてまた、それに対して武器の使用をしなければいけない必然性は何なのだ、突き詰めればそういうお話になるだろうと思います。
 国際標準というものが、これが国際標準だということが決まっているわけではありませんが、我々ができないことの典型的な例として、このbタイプが挙げられます。
 このbタイプの中で、なおなお厳選していって、そのようなものに対して武器が使用できないということがそれほど非常識なことなのだろうかという議論でございます。
 それは、本当にこのことを考えておる、PKO事務局であり、内閣官房であり、また我々防衛庁であり、制服組であり、あるいは先生がいらっしゃった外務省であり、そこで本当にかんかんがくがく、毎日毎日徹夜をして、仕事ですから当たり前のことです、寝ないで本当に徹底して議論をし、行く自衛官も交えて議論をした。その結果がふまじめだとは私は全く思っておりませんし、不誠実だとも思っておりません。これは、議論をしてきた者の名誉にかけて申し上げておかねばならないことだと私は思っております。
達増委員 今の答弁にもあったように、結局、この程度の武器使用権限でいいのかどうかというのは、行ってみなければわからない、やってみなければわからない、それはもうふまじめな結論ですよ。
 そして、この「TVタックル」はおとといですよ。おとといの夜放映され、きのう一日あって、きょうもあるんですけれども、政府・与党側からだれもこれを訂正しようとか問題にしようとかする動きはなかった。もちろん、今官房長官もこれにお墨つきを与えましたし、副大臣もこれを撤回するつもりはないようですから、これは小泉内閣としてオーソライズされたテレビ放映だったと思うんです。
 でも、国民が国会を中心に真剣にこの問題、法案について議論しているときに、国会で議論している最中に、こんなのがテレビで放映されるんですよ。現職の副大臣が、「おれは大反対したよ。」とか「おれ一人でつぶせないだろう。」とか言って、それで、賛成か反対かと突き詰められて、「おれはとりあえず賛成する。」「運用の問題で欠陥をカバーするというこそくな形でも」云々とか、これがふまじめでない、不誠実でないと言えますか。
 冗談じゃないですよ。ふざけているとしか言いようがない。我々が真剣な議論をこういう場でやっているときに、テレビで現職の副大臣がこんな放言を垂れる、そして、その放言に官房長官がお墨つきを与えるんですから、小泉内閣は何を考えているかということですよ。
 ルビコン川を渡るという表現がありますが、PKO法、テロ特措法、そのときですら認めなかった自衛隊の活動を今回やる。アメリカ、イギリスは、戦争のつもりでイラクに行っているんですよ。だから、攻撃を受けてもそれに対して反撃する覚悟もできているし、犠牲者が出る覚悟だってできている。実際、攻撃されて、五月一日戦闘終結宣言が出た後、既に三十一人も死亡者を出しているし、けが人に至っては、百七十八人のけが人を出している。
 アメリカ、イギリスは戦争のつもりだからいいのかもしれませんけれども、日本はそこに戦争じゃない、非戦闘地域だ、そういう理屈で出す。そういった議論をやっている中に、こういう副大臣の放言を認めて何ら恥じることのない小泉政権とは一体何なのかと私は思うんです。
 もう一つ米田副大臣に伺っておきたいことがあるんですが、米田副大臣、配付した資料の二ページ目に、一歩前進二歩前進というのがあるんだよ。あんたみたいにね、野党の立場で原理主義的なことだけ言って済むと思ってたら政治家できないよと。
 何かさっきも防衛庁長官、野党の立場という言葉がありましたけれども、そういう与党の立場、野党の立場という立場にこだわって仕事をしているのはむしろ与党の方なんじゃないか。与党の立場があるから、原理原則をねじ曲げてやっても、現実の政治に合わせるんだから仕方がないというふうに割り切ってやっているのが与党の立場なんじゃないかと思います。
 西村眞悟衆議院議員は、野党のときであれ与党のときであれ、拉致問題、今米田副大臣は拉致議連のバッジをつけていますけれども、本当にこの第一委員会室で自民党の人たちが、拉致なんて何を言っているんだ、横田めぐみ問題、そんなことを言っていたら何をやられるかわからないぞとかいうやじにもめげずに、原理原則を貫いて拉致問題についてこだわり続けてきたから拉致問題は今のような展開になっているわけで、ぜひこの「野党の立場で原理主義的なことだけ言ってすむと思ってたら政治家仕事できないよ。」という言葉を撤回していただきたい。撤回しますか、米田副大臣。
    〔浜田委員長代理退席、委員長着席〕
米田副大臣 この番組は、「タックル」と名前がついているように、西村さんと私も前回が初めて一緒になったわけじゃないし、こういう一つの番組のキャラクターというものもあるんです。公式な政談演説会じゃないんです。
 これを一つ先に申し上げますが、改めて申し上げます。
 私は先ほど、二時間の収録が行われたものが一時間弱に編集されたものであり、放映されなかった部分もあるということを御説明しました。それからまた、達増委員のおっしゃる御理解と私の趣旨、真意にずれがある、そのことも申し上げました。
 今そこまでおっしゃるので、私はちょっと発言を用意していて、言わないでおこうと思ったことがありますが、これは、その番組のやりとりの中で、西村代議士が、隣同士でありましたが、まず位置づけをされた。法案に本来反対であるのに、政府・与党の人間であるから、無原則に賛成すると言っているんだという位置づけをされちゃった。
 しかし、私がさっき説明申し上げたように、我々同志の、仲間の党内の理念としては、もっと進んだ法律を望んだけれども、政府側が、きちっとした現行の武器使用基準の範囲で、早い話が仕事をする、危ないところには行かせない、平たく言うと。そういう説明があったというふうに我々は認識したものですから、了承したんだ、附帯決議をつけてということを、私はさっき、そういう思いだということを申し上げたはずなんです。
 しかしながら、これをこのまま活字にやられますと、西村議員がそういうまず位置づけをされて、畳みかけるように、あの方は弁護士だけれども、元弁護士じゃなく、追及する側だったのかと思うぐらい畳みかけるように断片的な問いかけをされるから、これを採録するとこんなのになっちゃうんですよ。
 私は、西村さんが原理をきちんと守る立派な政治家であることはよく承知していますよ。友人ですよ。外交防衛政策でも少なからず共通部分がありますから、陰に陽に、理念の人というふうに私はむしろ擁護し、彼を評価してきた人間ですよ。ですから、決してふまじめ、いいかげんなことを言ったつもりはありません。
 しかし、テレビの番組の収録、二時間ある、そして、一つのキャラクターを、それを一つの番組の性格として打ち出している番組である、そのことは西村さんもよく御存じのはずです。
達増委員 そういう番組に現職の副大臣が出て、結果、ああいう放映になるようなことを、先ほど福田官房長官もお認めになりましたから、小泉内閣としては、小泉メルマガとか、総理もラジオに出演して何かトークショーをやっているようでありますけれども、そうやってどんどんテレビに出て好きなことを言っていいという方針なんでありましょう。ただ、それはやはりふまじめなんだと思いますよ、国会、内閣、政府・与党のあり方としては。
 それで、今、米田副大臣の答弁の中で、結局やはり、政府の方から、内閣の方から、危ないところに行かせないからということで党側としても了承したというふうに答弁がありました。危ないところには行かせないんですね、防衛庁長官。
石破国務大臣 これも何度も答弁申し上げておりますが、だれにとって危ないのかということでございます。
 自分を守るために必要な権限、そしてまた、そのために必要な武器を持っていく自衛官が危ないかどうか。逆に言えば、任務を安全に遂行できるかどうかということでありまして、危ないところに、一般人にとって、全くの民間人にとって危ないところでもきちんとした権限、自己を守るためですが、そしてまたきちんとした必要な装備を持っていった場合には危険を回避できる、そしてまたそれから身を守ることができるということでございます。
 そしてまた、これは委員御案内の上のことかと思いますが、あえて申し上げておきますが、例えば、連れ去られた場合にどうするかということでございます。アメリカは確かに一人も見捨てておかない。それは、私どもでも、一人残らずきちんと帰ってこれる、そのためにできる限りのことをする、それはアメリカと何ら変わるものではございません。
 自衛官が万が一、万が一でございますが、拉致され連れ去られた場合には、自衛隊の部隊が、組織としての維持管理機能、すなわち、指揮下にある自衛官の状況を常に把握し、円滑に任務を遂行し得るよう最善を尽くすということは当然でございます。拉致された場合に、その維持管理機能の一環といたしまして拉致された自衛官の捜索を行う、そしてまた、拉致をしておる者に対してそれを見つけた場合には、それを説得を試みる。いきなり撃つというわけには、これは十七条の趣旨からいってまいりません。しかしながら、本当に維持管理機能の一環として、その一人一人の生命、そういうものに万全を期すということでございます。したがいまして、ふまじめだというふうに委員から見ればごらんになれるのかもしれません。
 しかし、私たちは、本当にどうすれば任務が遂行できるか、そして、これはぜひ御教授をいただきたいと思うことなのですが、国際標準なるものがあって、それと足りないのがこれなんだ、これを付与すべきなんだという御議論をいただければ、また議論は実質的になろうかと思います。
 私たちが今考えております範囲におきまして、自衛官の生命、身体、そういうものを危険にさらすというようなことを前提にこの法案を組み立てておるわけではございません。
達増委員 アメリカ、イギリスが戦争のつもりで乗り込んで、各国も国権の発動として軍隊を派遣している中に、そうじゃない形で日本だけが入っていくというのは無理だと思うからこの法案に反対しているのでありまして、そこはもう知恵を拝借も何もありません。今の日本には無理です。
 それで、今ももう一回質問したのは、危ないところに行かせないからというところで国防部会が了承したということだから、危ないところに行かせない、いろいろだれにとって云々とかありましたけれども、その辺をあいまいにしたままで政府・与党内で意思決定がされていたとしたら、これはやはりふまじめだと思うんですが、危ないところに行かせないということは、危なくないところにしか行かない、そういうふうに国民として理解してよろしいんですか。
石破国務大臣 我が党内の議論というのは、それは委員はごらんになる機会がないと思いますが、そんなにいいかげんなことをやっておるわけではございません。
 それで、危なくないところにしか行かないんだねということになれば、それは、自衛官にとって危なくないところ、一般人にとっては危険かもしれません、治安が悪いところかもしれません。しかし、一般人にとっては危険であっても、自衛官であれば、必要な権限、自己を守る範囲において必要な武器、それを与えられた自衛官にとって身の安全が確保でき、任務を、国際社会から与えられた責任をきちんと果たし得る、そういう地域に参るということでございます。
 ですから、だれにとってとかそういうことじゃなくてと委員はおっしゃいますが、だれにとってということを冠しませんと、危険だの安全だのという議論は非常におかしなことになる。安全なところに行くんだったら民間が行けばいいじゃないかという議論があってみたり、あるいは、自衛官を危険なところにやるのかという議論があってみたり、やはり、だれにとってという言葉を冠してその状況を説明いたしませんと、実は、この法案の御理解はいただきにくいものだというふうに私は思います。
達増委員 政府・与党内での意思決定過程もどうも心もとないものだったということが明らかになったと思いますので、まず水の浄化槽とか、水を補給するそういう機械とか装置とか、いろいろなものは早く送ってどんどん貢献すればいいんだと思います。そして、それをやっている間に、自衛隊をどう運用するかについてはもう一度政府・与党の中で考え直すべきということを申し上げ、私の質問を終わります。
高村委員長 次に、木島日出夫君。
木島委員 日本共産党の木島日出夫です。
 私は、きょうは、米英両軍によって占領下にあるイラク国内で安全確保支援活動を行う自衛隊の国際法上の地位について質問をいたします。
 最初は、現在の米英両占領軍によるイラク占領の状態について日本政府がどのように把握しているのか、お聞きをいたします。
 これは国際法学者の高野雄一教授の本でありますが、「占領」、「占領の性質 領土の占領は、領土が現実に敵の権力の下におかれることである。相手方の権力が排除され、大体において住民の反抗も止み、秩序が維持されるにいたった状態である。」一般的な定義なんでしょうか、こう書かれております。
 政府、外務大臣にお聞きしますが、現在のイラクの現状はこのような状況にあるんだと、こう日本政府としても認識をしているんでしょうか。
川口国務大臣 基本的に、戦闘が終わったような状態であるというふうに認識をしています。ただ、散発的な抵抗がないわけではない。特に、クルド地区を除く北部、それから西部、そういったところにあると思います。
 ただ、市民の生活は徐々に平穏に戻りつつあって、商店も、これは全イラクにおいてということではありませんが、開いて、平穏な生活が戻りつつあるというふうに認識をしております。
木島委員 米英両軍によるイラク戦争に続く、そして、現に行われているイラク占領という事態を国際法の視点からどのように把握するかについては、私は、もちろん日本政府としても二つの側面からきちんと見なければならないと思います。
 一つの側面は、占領の国際法上の正当性、合法性があるのかという問題であります。これは、国際法学説ではユース・アド・ベルムと称される分野であります。ユースというのは法です、ロー。アドはアットということでしょう。ベルムは戦争であります。占領の正当性、合法性の側面。
 もう一つの側面は、占領の国際法上の正当性、合法性とは切り離して、現実の占領という事態をそのままのものとしてとらえて関係当事者を規律しようとする問題であります。これは、国際法上はユース・イン・ベロと称される側面であります。
 日本政府、外務省は、軍事占領の国際法上の問題にこのような二つの違った側面があるということをわきまえておるでしょうか。
川口国務大臣 わきまえていると思います。
木島委員 大変結構なことであります。
 では、それを基本的前提にして、これから私は幾つかの問題についてお聞きをいたします。
 最初は、占領の正当性、合法性の問題、ユース・アド・ベルムの世界の問題であります。
 これをきょう余り深く論争するつもりはないんですが、現在の国際社会においては、国連憲章のもとで、原則的に戦争や武力の行使は違法化されました。御存じのとおりであります。合法化、正当化されるのは二つの場合だけであります。一つは自衛権の行使の場合、もう一つは、国連安保理が、ある国に対して国際の平和と安全に対する脅威を認定して、武力による制裁を国連安保理決議によって行う場合のみであります。もう当然、御存じのとおりであります。
 今回の米英両国によるイラクに対する武力の行使、いわゆるイラク戦争がこの意味におきまして合法化されていなかったことは、米英両国や日本政府の皆さん方の主張はともかくとして、これは国際社会においてもう明々白々であると思います。これはユース・アド・ベルムの世界の問題であります。
 問題は、もう一つの側面の、ユース・イン・ベロの側面の問題であります。
 現在の国際社会では、この側面を規律している国際法の主なものは、一九〇七年のハーグ陸戦条約、陸戦規則、また一九四九年のジュネーブ四条約、そして、我が国はまだ残念ながら批准しておりませんが、一九七七年のジュネーブ追加議定書二つであろうと思います。ほかにも幾つかありますが。
 したがいまして、米英両国によるイラク軍事占領に対しては、その正当性、合法性とはかかわりなく、これらの国際法がユース・イン・ベロの問題として適用される。これは通例、国際人道法とか交戦法規とか中立法規とか言われているわけでありますが、そう理解してよろしいですか、外務大臣。
川口国務大臣 大分お話が難しくなってきましたので、混乱をしないように注意をして御答弁申し上げないといけないと思っておりますけれども、先ほど、一番最初におっしゃられましたユス・アド・ベルムの問題について、これは合法的な正当性がないというふうにおっしゃいましたけれども、これについて意見が違うということは繰り返す必要はないと思いますので、それは申し上げませんが、ユス・イン・ベロの問題ということですけれども、これについては、我が国としては、占領の合法性、正当性ということで申し上げますと、これはイラクの……(木島委員「合法性とは違うということでしょう、ユース・イン・ベロは。正当性、合法性とは切り離された概念として確立している」と呼ぶ)
 それでは、ちょっと申し上げ直しますと、ユス・イン・ベロ、これの問題は、武力紛争下において許容される外的手段や戦闘方法に関する規制、いわゆるハーグ法と、武力紛争における犠牲者の保護に関する規則、いわゆるジュネーブ法、それから成る交戦法規、国際人道法、そういうことでございます。
木島委員 ですから、私が言いたかったことは、ハーグ陸戦法規とかジュネーブ四条約とか、いわゆる戦時国際法とか国際人道法とか言われるそれらの法律の国際法の規律というのは、その戦争なり占領の正当性、合法性とは関係ない。そういう概念とは違った概念、現実に戦争が行われている、現実に占領が行われている、その占領当事者、戦争当事者を規律する。
 捕虜の問題でもそうですよ、文民の安全を守る問題もそうですよ、さまざまな責務、義務が設定されているわけでありますが、それは、戦争の正当性とか合法性、占領の合法性、正当性とは切り離された概念として国際社会はこういう戦争法規を確立しているということで聞いているわけなんです。
 それは外務省も当然そういう前提に立って物を考えていると思うんですが、それでお聞きしたいのですが、この法案の基礎になる五月二十二日の国連安保理決議一四八三も、実はそのような立場で策定されている。
 本文第五項の、すべての関係者に対し、ジュネーブ諸条約、ハーグ陸戦規則を含む国際法上の義務を完全に遵守するよう要請する、こう書かれておりますが、これもそういう立場で、要するに米英両軍によるイラク占領という事態をありのままのものとして認識して、それが合法か違法かとかいう側面ではなくて、ユース・イン・ベロ、そういう立場ですべての関係者に対して、陸戦法規、規則やジュネーブ条約の完全遵守を求めている、そういう趣旨であると私はこれを理解しているんです。
 当然、日本政府もそういうものとしてこの決議一四八三を理解すべきものと考えるわけでありますが、よろしいでしょうか。
川口国務大臣 先ほど、余り議論をするつもりがないとおっしゃられましたけれども、我々政府の立場というのは、そもそもこの戦争は正当であるという立場であります。したがいまして、その後の、ユス・ベロの問題を切り離して、違うものかどうかということで議論をする現実的な意味は余りないということであります。
 それで、ジュネーブ条約あるいはハーグ陸戦規則の問題で言いますと、これは、正当に行われた戦争の後、正当に占領行為が行われているということであると考えております。
木島委員 全然外務大臣はわかっていないですね、国際法を。正当性の問題と、正当性を切り離されたところで規律されている国際法の世界とは違うんだということを言っているんですよ。
 だから私は、日本政府が、あなた方が、アメリカ政府やイギリス政府が今回のイラク戦争を正当だと言っていることは知っていますよ。日本政府がそういう立場で理屈を述べているというのは知っていますよ。我々はそんな立場じゃない。しかし、それは正当性の論争ですよ。フランスやドイツや中国、ロシアが、正当性の問題では、今度のアメリカのイラク戦争は正当性がないという立場に立っている、それはその分野での争いですよ。
 しかし、そのことと、現に占領が行われている、そのときに占領軍に対してどう規律するか、イラク住民の法的地位はどうなのかということを規律しているのがいわゆる戦争法の分野ですよ。それは、占領が国際法上正当か合法かとは関係ない立場で法律はつくられている、国際法はつくられている。
 再三私はそれを言っているんですよ。そこを理解しないで、ユース・イン・ベロの問題まで、そういう立場でジュネーブ条約やハーグ陸戦法規がつくられているのに、外務大臣が答弁しているように、いや、日本政府は占領の正当性の立場から考えているんだなんという答弁をしているんじゃ、全然国際法をわかっちゃいない。こんな国際法をわかっちゃいない外務大臣のもとでこんな法律をつくったら、大変なことになりますよ。国際社会じゃ通用しないんですよ。私の言うとおりでしょう。
川口国務大臣 もう一度繰り返させていただきますけれども、今回の武力行使、これは政府の見解では正当であるということであります。それで、正当な戦争について、安保理決議一四八三、これが占領を正当化したということであります。議論の先取りを少し私の方がしているのかもしれませんが、それはそういうことであります。
 他方で、委員の御質問が、もし違法に行われた戦争というものがあったとして、それにジュネーブ条約、ハーグが適用されるかという御質問であれば、それはもちろん適用されるわけですが、今回の場合にはそれは当てはまらないということを申し上げているわけです。
木島委員 要するに、その戦争が違法であれ合法であれ、現実に占領が行われているという事態をとらえてジュネーブ条約はつくられ、ハーグ陸戦規則はつくられているんですから。
 それで、では、問題の国連安保理決議の一四八三が、あるいは国連決議一四八三によって、あのイラク戦争を正当化したものか、あるいは合法化したものか、よって、イラク占領を国際法上、正当性の面でですよ、ユース・アド・ベルムの問題として合法化したものかどうかについて論を進めましょう。私は、どうもそうじゃない、国際社会もそうとは受け取っていないということを指摘したいと思うんです。
 その指摘する前に、実は、去る六月二十四日、衆議院本会議で、私は小泉総理に対してイラク占領の国際法上の合法性に関する質問をいたしましたところ、小泉総理からこのような答弁がありました。安保理決議一四八三の前文十三パラグラフを引用いたしまして、米英の関係国際法のもとでの特定の権限、責任及び義務を改めて確認した上で、イラク国民の福祉に関する権限等を付与している、こうしたことから、米軍等によるイラク占領は国際法に従って行われているものと考えます、こう総理は答弁をいたしました。
 非常に微妙なことですので、私、なかなかな答弁だなと改めて感じたのは、総理の答弁は、私が、イラク占領の国際法上の正当性を政府はどう考えているのかと質問したのに対して、イラク占領は国際法に従って行われているものと考えます、こういう答弁なんです。恐らく、外務省がしっかり考えた上でこの言葉を使ったんだと思いますが。要するに、言いたいことは、国際法上の正当性を持って行われているという言葉は、総理は賢明にも衆議院本会議答弁で使わなかったということ。そこまで私見ているんですよ、読んでいるんです、総理の答弁を。
 ということは、六月二十四日の私の質問に対する総理の本会議答弁は、国連決議一四八三が、それを引用していますからね、米英両軍による占領のユース・アド・ベルムの側面、要するに国際法上の合法性とか正当性の問題とは切り離しまして、そしてユース・イン・ベロの側面の問題、事実として認識する、そして関係各国を規律する、そういう側面をとらえて策定されているということを総理はよくわきまえて答弁してくれたんじゃないか。これは持ち上げ過ぎかな、後になってひっくり返されちゃってはたまらぬのですが。そのように私はこの答弁をしっかり読み込んだんですが、そうすると、今の川口大臣の答弁はおかしいんですよね。
 ですから、要するに、再度聞きます。日本政府も外務省も、国連安保理決議一四八三というものは正当性の問題とは違う、正当性、合法性とは違う側面のものとして、それはともかくとして棚に上げて、現実の占領支配がある、それに対して国連安保理決議一四八三がつくられたんだ、そして、関係当事国に対する権限とか責務を与えたんだ、こう認識していると思うんですが、外務大臣の認識は違うんですか。
川口国務大臣 いろいろ深読みをしていただいたようですけれども、私が最初から申し上げていますように、今回の武力行使、これは六七八、六八七、一四四一を含む関連安保理決議によりそもそも正当化されているものであるということを申し上げたいわけであります。
 したがって、総理が申し上げましたように、占領の正当性、これにつきましては、そもそも正当に行われた武力行使であって、そして、占領の正当性については、これはイラクの武装解除という目的を実効的に達成するための必要な行動がとられた結果、フセイン政権が崩壊をし、イラクにおいていわば権力の空白が生じたということですが、このような状況下で、米軍等は、支配下に置く地域の民生や秩序を回復し、維持する義務を有しており、このために必要な措置の一環として暫定的な統治を行ってきたわけです。
 その上で、安保理決議一四八三は、占領国としての米英の統合された司令部、当局ですが、の関係国際法のもとでの特定の権限、責任及び義務を確認するとともに、当局に対して、領土の実効的な施策を通じたイラク国民の福祉の増進に関する権限、イラク開発基金やオイル・フォー・フード計画に関する一定の権限、イラクにおける政治プロセスへの一定の関与の権限等を付与しているわけです。
 したがいまして、ここで申しましたように、米英がイラクにおいて行う施政というのは国際法に従って行われているということでございます。武力行使も正当なものであり、占領も正当、正当性がある、そういうことです。
木島委員 だから、そんなむちゃくちゃな立場で国連決議一四八三を理解したら間違う。日本政府は国際法を理解していないというそしりを免れませんよ。
 というのは、この国連決議一四八三は、シリアが棄権したけれども、安保理事国十四カ国全員一致ですよ。あの戦争に断固反対をして、国際法上の正当性がないと主張し続けたフランス、ドイツ、ロシア、中国、全部この安保理決議に賛成したんですよ。妥協の産物だと言われているのはそのことなんですよ。逆に言うと、妥協の産物の意味は裏返すと何か。この安保理決議一四八三は、決して、翻って、米英によるイラク戦争に対してお墨つき、正当性を与えたものじゃないんだ。だから、そういう認識を持ったからこそ、フランスやドイツや中国、ロシアも賛成したんですよ。
 安保理決議一四八三に賛成したフランスのドビルパン外相が、五月二十二日、インタビューに答えてこう言っているんです。安保理決議一四八三はイラク戦争を正当化したものではない、明確に言っているんです。ロシアの大使も、戦争を正当化するものは決議にはない、今回の決議によって戦争前の立場を変えるものではない、こう言っているんです。
 日本政府が、あの戦争は正当だった、だから占領も正当だった、そう思うのは勝手です。しかし、国際社会の上では少数派でしょう。少数派でしょう。私は、この安保理決議をそう理解しないと、これから大変な間違いを犯す。あと、いろいろ質問詰めていきます。
 では、もう一つだけ、国連安保理決議を拾ってみましょうか。よく聞いてください。
 国連安保理決議の一四八三の前文パラグラフ十三項、こういう文言なんですね。アメリカ合衆国とイギリスの安保理議長あての「書簡に留意するとともに、」こういう言葉があるんです、「統合された司令部(「当局」)の下にある占領国としてのこれらの諸国の関係国際法の下での特定の権限、責任及び義務を認識し、」小泉総理が本会議でも引用し、今外務大臣も引用した部分です。この言葉なんです。「これらの諸国の関係国際法の下での特定の権限、責任及び義務を認識し、」この「認識し、」という言葉が非常に大事だと私は考えるんです。リコグナイズなんです。これは決して、特定の権限、責任、義務を付与するという言葉を使っていないんです。付与するという言葉だと、オーソライズというような英語になるんでしょうか。
 ですから、なかなかこれは見事なものですよ、国連安保理一四八三の決議の言葉一つ一つが。やはり正当性を与えないんだと。アメリカやイギリスは、与えてもらいたいという思惑で出したでしょう。しかし、三度にわたって原案が修正されてつくられたのがこの安保理決議一四八三ですからね。ですから、正当性の問題を切り離そうというので、それが貫徹されて、特定の権限、責任、義務を認識という言葉にやはり最後はなっている、これがやはり国際社会の総意だ、安保理全体の総意だと、そこはしっかり直視して、いいですか、日本政府も外務省もこれからイラクの占領の事態にどう対処するか考えないと、間違うんじゃないですか。外務大臣。
川口国務大臣 先ほどの前文の十三、「認識し、」ということでございますけれども、これはもともと、国際人道法上の権限、責任及び義務、これはあるわけでして、したがいまして、これを新たに付与するというものではない、これは認識をするということであります。そして、さらに、新たに領土の実効的な施政を通じてイラクの国民の福祉を増進することを要請している、これは新たに付与をしているわけでございます。
木島委員 まあ、次に進みます。
 次に、占領支配下におけるイラク国民、イラク住民の法的地位について、日本政府がどのように考えているのかお聞きしたいと思うんです。
 先ほど来るる言っているように、米英両国の軍事占領に二つの側面があるということは、もっと詰めて考えますと、占領支配を現実に受けているイラクの国民や住民の法的地位も、これはやはり二つの側面から見なきゃならぬということだと私は思うんです。
 それで、最初の、現実、事実の問題、法的正当性とは切り離されたユース・イン・ベロの側面の問題。
 この問題では、ハーグ陸戦法規やジュネーブ条約が適用されますから、この分野では、占領下のイラク国民は、事実上、占領支配に服さなければならないと私は思います。ハーグ陸戦規則の第三款には、「敵国ノ領土ニ於ケル軍ノ権力」という規定があって、第四十二条から五十六条までずっと、ハーグ陸戦規則は占領支配についての規律を書き込んでおりますが、確かにこの分野では、イラク国民、住民はこれに服さなきゃならぬと思います。そして一方、これら国際人道法による保護を受ける法律上の地位も、イラク住民、国民は持っていると。外務省、それは間違いないですね。これはもうイエスかノーかで。
川口国務大臣 先ほど来、切り離して、切り離してと、こうおっしゃっていらっしゃいますけれども、この場合については、これは繰り返しになりますが、正当な武力行使に基づいて正当に占領が行われているということであります。
 今おっしゃった点については基本的にそういうことでございますが、さらに占領当局は、一四八三によりまして新たな権限も付与されているということです。
木島委員 全然、外務大臣はわかっていないですね。私が勝手に切り離しているんじゃないんですよ。戦争法とか交戦規則とか、ジュネーブ条約とかハーグ陸戦規則というのは、正当性の問題とは違う立場に立ってつくられているんですよ。私が勝手に切り離しちゃって、正当性は論外だと言っているんじゃないんですよ。そこを全然わかっていない。
 それでは、イラクの住民、国民の法的地位についてもう一つの側面があります、国際法は。正当性の側面です。ユース・アド・ベルムの側面であります。この戦争、占領の合法性、正当性の側面では、イラク国民、イラク住民の法的地位は、米英による軍事占領をこれは違法だと、フセイン残党だけではないですよ、イラク一般住民は、米英による軍事占領を違法な占領と見て、そしてこれに抵抗する国際法上の権利を有する、そう解釈されるんです、それは。そういう見方を日本の政府、外務省はしないのでしょうか。
川口国務大臣 繰り返しますが、この武力行使は正当に行われ、占領も正当に行われているわけです。したがって、イラク国民はこれに服さなければならないということであります。
木島委員 それは、だから、日本政府の立場や米英の立場なんですよ。しかし、ドイツやフランスやロシア、中国、圧倒的多数の世界の国々はそうではなかったし、ましてや、アラブ諸国は全部あの戦争に反対、戦争には国際法上の正当性はない、国連決議なかったじゃないか、そして自衛戦争ではないではないか、そういう明々白々な立場からあの戦争は違法だとして反対したのでしょう。
 日本政府の立場はいいですよ。私は賛成しないけれども、あなた方がそんな立場に今でも頑固に立ち続けているというのは知っていますよ。だけれども、イラク住民はそういう立場に立つ義務はないのでしょう。そこが問題なんですよ。
 フセイン政権残党のことは、もうきょうは論外にしておきます。
 イラク国民が占領軍の支配を違法、不当なものとしてこれに抵抗する権利があるということ、国際法上そういう地位にあるということと、現実に抵抗するか否かは別問題だと私も思います。占領支配がうまくやって、抵抗がなければ、それでいいでしょう。それは別問題だとは私も思います。
 しかし、この分野では、昨日当委員会で参考人として陳述された大野さんは、なかなか興味ある示唆をしていただきました。バグダッド陥落後の治安の悪化には四つのパターンがあるとして、四分類を示していました。第一は、戦争のどさくさに紛れての略奪、泥棒、暴行のたぐいであります。第二は、組織犯罪としての強盗、襲撃であります。第三は、米軍との衝突、テロとしての襲撃、狙撃、爆破であります。第四は、特殊なパターンとしての報復、放火であります。
 それで、私は、一と二の問題、戦争のどさくさに紛れての泥棒、略奪、組織犯罪としての強盗、襲撃のたぐい、これらは軍事占領の合法性に疑義があっても絶対許されない犯罪行為として占領軍に摘発され、そして刑事司法が機能していれば処断されて当然の行為だと思うんです。それは間違いないです。しかし、三は、米軍との衝突、テロとしての襲撃、狙撃、爆破というのはちょっと違うんじゃないか。
 そこで私は、再三言っているような占領支配の二つの側面からこれらの行為を見なければならないのじゃないかというわけであります。ユース・イン・ベロの事実の側面では、その側面でこれらの行為を評価すると、占領の正当性、合法性、あるいは占領支配に抵抗する権利のあるなし、有無にかかわらず、それは事実占領が行われているというその事実法の側面から見ると、これらの米軍との衝突、テロの襲撃、狙撃、爆破というのは当然占領軍によって摘発、掃討される対象だとは思います、それは。
 しかし、もう一つの側面が国際法にはあるわけでして、ユース・アド・ベルムの側面、正当性、合法性の側面からこれらのイラク住民の行動を評価すると、これは、日本政府の立場は違いますけれども、このような占領は違法だといって抵抗する行動になるわけであります。こういう行為がいいかどうか、是非善悪はともかくとして、一言で言えば、イラク住民の抵抗権の発動として国際法上は位置づけられるのではないかと思うんですね。それはそういうものとしてやはり見なきゃいかぬ。見たくないかもしらぬですよ、日本政府は。しかし、そういうものとしてやはり見なきゃいかぬのだと思うんです。
 日本政府は、外務省は、イラク住民、国民は現在このような国際法上の地位にあると認識しておるでしょうか。
川口国務大臣 認識しておりません。
木島委員 そうなんでしょうね。認識していないんでしょうね。だから私は間違うんだと思うんですよ。
 次に、では、今回の法案に直接かかわる、こういうイラク占領地において占領米軍による軍事占領活動を、法律の言葉では安全、安定回復活動という言葉ですが、それを自衛隊が支援することについての国際法上の評価、国際法上の地位についてお聞きをいたします。
 イラク特別措置法第三条一項二号の安全確保支援活動は、米英両軍による軍事占領の軍事警察活動の部分を支援するものだと思います。非戦闘地域でのみ行うとか、武力による威嚇、武力の行使に当たるものであってはならないという、そういう制約は、よく聞いてください、我が国憲法上の制約を回避するために政府がつくり出した概念であります。
 それはそれとして、占領支配を受けているイラク住民やイラク国民と自衛隊との国際法上の関係。自衛隊がイラクに上陸すれば、当然イラク住民、イラク国民と自衛隊との法的関係が生まれるわけですから、そういう占領支配を受けているイラク住民、イラク国民と自衛隊との国際法上の関係から見れば、この法律にある非戦闘地域だけでやるんだとか、武力の行使、武力の威嚇であってはならないとか、そういう制約は何らの法的意味を持つものではないのではないか。
 結局、自衛隊は、そういう非戦闘地域だけでやるんだなんて書いてあっても、イラク住民との関係では、米軍占領の一翼を担うもの、占領支配に抵抗しようとするイラクの住民、国民の敵対者としての法的地位に立つと理解せざるを得ないんですが、日本政府は、イラク住民と自衛隊の国際法上の関係ですよ、どのように把握しているんでしょうか。
川口国務大臣 いろいろ委員と意見が異なることが多うございまして、恐縮に存じますが、これについて申し上げますと、これは、一般的に国際法上、自衛隊の部隊等の政府機関が他国の領域内でこの法案にあるような対応措置を実施する場合には、当該国の政府当局が存在をする状況であれば、その同意を得る必要がございます。
 それで、細かいことは略しますけれども、現在これは、今まで御説明をしましたように、当局であるわけでございます。したがいまして、当局の同意を得るということであるわけでございます。イラクの国民というのは当局の施政のもとに置かれているわけでございますから、我が国の自衛隊は、当局の同意をとって、それで活動をする、そういうことになります。
木島委員 ですから、今のイラクの国内の国際法上の状況というのはどういう状況か。イラク戦争があって、政権が壊滅してなくなりました。それで、戦争に勝利した米英両軍が軍事占領をしている。占領軍です。その占領軍の同意のみをもって自衛隊が入り込んでいくわけです。やる活動は、人道支援は別にして、きょうの論議から外して、安定、安全の回復活動の支援ですよね。そういう側面でしょう。
 そうすると、私、さっきずっと論じてきたんですが、自衛隊とイラク住民、イラク国民の法的関係というのは、やはりイラク住民、国民から見たら占領軍の一部と、違うとおっしゃりたいんでしょうが、一部と、いいですか、イラクの住民、国民との法的関係から見たら、そう見られるんじゃないですか。それを直視できないんですか。
川口国務大臣 占領軍の同意を得てとおっしゃられましたけれども、この一四八三、これは、当局に対して、領土の実効的な施政を通じたイラク国民の福祉の増進に関する権限等を付与しているわけでございます。したがいまして、先ほど申しましたように、この当局から我が国は同意を取得するということであります。そして、その後、当局から同意を得た上で、法案に定める自衛隊等による対応措置を実施することになるわけですけれども、これは、あくまで安保理決議の要請にこたえて、国際社会の取り組みに我が国として主体的かつ積極的に寄与をするために活動をするものであります。
木島委員 私の質問に全然答えていないんですよ。当局の同意を得て入っていくというのは当然ですよ。しかし、だからといって、それは、イラク国民、住民、彼らは占領の正当性について考えを持っているでしょう。いいという人もいるでしょうし、反抗する人たちも生まれてきているんですね、今、各地で。旧フセイン政権の残党じゃなくてもたくさん、シーア派の幹部とか、生まれてきている。その人たちは抵抗権の行使だという立場でしょう、国際法上。そういうイラクの住民、抵抗するイラク住民と占領軍の支援のために入っていった自衛隊とは、法的にも敵対関係に立たざるを得ないじゃないかと指摘しているんですが、全然答えない。
 そうしますと、次にもう一点。自衛隊が占領米軍の指揮下に入るか、管理下に入るか、あるいは政府が答弁しているように主体的に独立してやるんだ、指揮下に入らないんだ、管理下に入らないんだ、自主的に日本の自衛隊はやるんだとおっしゃっても、それは、指揮下か管理下か関係なく独立か、それは自衛隊と占領米軍の関係なんです。わかるでしょう。自衛隊と占領米軍の関係なんです、指揮下に入ったか管理下に入ったか。であって、そういう法的関係は、決して、占領支配に抵抗しようとするイラクの住民、国民との関係においては全然関係ない。管理下であろうと指揮下であろうと、一緒になってやっているという事実は、イラク住民の目から見れば同じなんですね。そういうことじゃないでしょうか。
川口国務大臣 問題の法的な側面と、それから事実上のお話と、混同があるように思いますけれども、法的には、これは合法的にイラクの国民が反抗できるということではないということです。
 当局は、一四八三によって実効的な施政を行う権限を付与されているわけでございますから、合法的な関係をイラクの国民との間で持っている、その施政を実行しているわけでして、我が国はその当局の同意を得て入るわけです。したがって、イラクの国民の抵抗、それは事実上全くないということを申し上げるのは難しいかもしれませんけれども、法的にはその抵抗は合法的ではないということです。
木島委員 そういう、今私が論じてきたような法的関係に自衛隊と占領支配に抵抗するイラク住民、国民が立っているとすれば、この法案にあるような戦闘地域か非戦闘地域かという区別は無意味になるんじゃないか。そういう法的関係もあるんだ。それはさっき論じたとおりですよ、正当性の分野と、正当性は超越した、それとは違う事実法の側面と、二つの側面は必ずつきまとうわけですから、占領ということに対しては。
 そうしますと、自衛隊の行動するところ、どこでも攻撃される可能性を持つということじゃないでしょうか。そうすると、それをこの法律に読み直せば、非戦闘地域だと思ったところが、イラクの抵抗住民によっていつでも戦闘地域に転換される、変わり得るということをそれは示すものじゃないか、事実上も法的にも。そういうことになる、ならざるを得ないということを私は指摘しておきたいと思います。
 では、最後に、時間がなくなってきておりますので、自衛隊はどんな装備をしてイラク領内に入り、支援活動するんでしょうか。法律には天井ありません。どんな装備を持っていくのか、基本的な考え、持っているんでしょうか。基本的な考え、どんなものなんでしょうか。防衛庁長官。
石破国務大臣 累次答弁申し上げておりますとおり、自分を守るために必要な武器ということでございます。
木島委員 そうなんですね。そうすると、抵抗が大きくなればなるほど、イラクに入った自衛隊に対する攻撃が大きくなると想定される。そうすると、装備を重装備にしなきゃならぬ、そういうことになるんですね。
 そうすると、そういう考えを日本政府が持っているということはどういう意味かというと、自衛隊と、占領支配に抵抗するイラクの住民や国民が、結局法的には敵対者の地位に立っているということを政府自身が、防衛庁自身が認識しているということをそれは意味するものじゃないでしょうか。そうじゃありませんか。
石破国務大臣 必ずしもそうなるとは限りません。それは、国際紛争の一環としての武力の行使というふうな評価を受ける場合にはそういうことになることもあるかもしれません。しかし、それが野盗、山賊のたぐいであればそうならないということでございますし。
 先ほど来の抵抗権というような話、あるいは自衛隊、米軍と一般住民との話、ここにおいては、基本的に木島委員と私どもの政府との間には理解の差があるのだろうと思っております。したがいまして、法的な評価におきましても違いが出てくるのではないかと思って聞いておりました。
木島委員 時間ですから終わりますが、私は、こういう国際法上の立場、状況がどういうものかをずっと論じてきました。国際法に二つの面がある、占領法規には。ということも論じながら、きちっと分けながら論じてきたわけです。
 こういうところに武装した自衛隊が行って、軍事による占領支配を支援するということ自体が私は許されないんだ、それは憲法九条の許すところでないんだ、その根本が間違っているから説明ができなくなっているんだということを厳しく指摘して、私の質問を終わります。
高村委員長 次に、阿部知子君。
阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
 先週よりもう一週間以上、このイラク支援法並びにテロ対策支援法の延長、論じられてはおりますが、論じられれば論じられるほど、何が何やらわからない、実体が見えてこない審議が続いているように思います。私は、その主な原因は、やはり、答弁なさる政府の側、とにかく言い逃れることばかりで、実際にどういうことを行いたいから、そのことについて国民の理解を求める基本的な姿勢に欠けているように思います。
 本日、民主党の方から対案が出まして、一体自衛隊を送る必要性は何なんだ、任務は何であるのか、そして停戦合意もない、国際的に見れば何らのいわゆる停戦という状態にない事態の中で、一方の占領国に加担するかもしれない形での自衛隊という、ジャパニーズアーミーと言われていますが、そういうものの派遣ということはやはり論外であるとする民主党の皆さんの意見は、私は高く評価したいし、今回、十五分ですので、ちょっと質疑の時間がないので、次回また我が党から質問に立つ者が質疑をしたいと思います。
 きょうは、私がせんだって聞き漏らした問題を、特に石破長官と福田官房長官にお願いしたいと思っています。
 私は、テロ対策支援法にのっとっての自衛隊派遣であれ、あるいは、現在既に行われておるところの、PKO法に基づいての、せんだって私が問題にしたヨルダンへのテントの運搬等々にしろ、いずれにしろ、大きな問題は、恣意的な運用ということが非常にある。これを、こうやって恣意的な運用と言葉で言うとわからないので、私はあえて、さっきの木島先生の骨太の論議みたいな、国際法の大きな枠を持ってきた論議ではなくて、具体的にやってみようかと思って、この前から、テント何張り持っていった、だれがどうして持っていった、どこで決めたという問題をあえて伺わせていただいています。
 まず、石破長官にお願いいたします。またテント問題かと思われますでしょうか。私はやはり、コスト算段もなく、そしてもっと言えば、自衛隊の、果たしてけん銃を持っていく必要があったかどうかの検証もなく行われたこのヨルダンへのテントの運搬ということをきちんと説明していただきたいと思います。
 まず、百六十張りのテントを、三月二十八日の安全保障会議の折に、自衛隊員六十人、そして十四丁のけん銃をつけてヨルダンに送る、その場合に政府専用機をお使いになるということを決定されたことは長官も御存じだと思いますが、なぜ政府専用機でしょうか。これは事務方ではなくて長官が、安全保障会議できちんと会議に出たことと思いますから、お答えいただきたいと思います。
小町政府参考人 お答え申し上げます。
 今御質問の難民用テントの譲渡及び空輸につきましては、御案内のとおり、UNHCRから、難民用テントの調達及び輸送には相当の費用と時間がかかり、緊急に必要とされる難民用テントがイラク周辺国では十分に手配できないという事情から、我が国政府が備蓄しております難民用テントをUNHCRに譲渡するという要請があったわけでございます。
 空輸に当たって政府専用機を使用することといたしましたのは、UNHCRからの要請の緊急性にかんがみ、迅速かつ確実に利用することができる政府保有の航空機によることが適切であったこと。当時、チャーター等の市場は非常に、戦闘行為開始後で、いつチャーター機が確保できるかどうか不透明な状況があったことは御案内のとおりでございます。かつ、UNHCRから要請された難民用テントの量が、おおむね政府専用機二機で空輸可能な量に見合ったものであったこと、そういった理由を踏まえたものでございます。
阿部委員 石破長官も政府専用機に乗られたことがあると思いますし、例えば、小泉首相並びに石破さんのような要人がどこかに行かれるときに乗るわけですね。乗ったことない。では、ちょっとお見せしようかしら。中谷防衛庁長官はないですか。では、テントと首相だけかもしれない、これに乗れるのは。
 こういうふうに、上段は、いろいろな会議室とか、非常に整備された高級な専用機でございますね。どこにテントを入れたかというと、こんな会議室の中にテントを入れるわけにはいかないので、下の、通常サムソナイトバッグを入れるような荷物の部分にテントを入れた。
 これは、本当であれば、例えばカーゴ、C130でもいいですし、ただ、カーゴは、C130は飛行距離が短い。そして、さっきの御答弁にもありました、民間機をチャーターすればもっと効率よく運べる。だって、専用機は、普通、首相がどこか行かれるとき、要人がどこか行かれるとき用に上段は全部整備されて、荷物は下だけしか入らない。
 おまけに、長官、御存じでしょうか。もしも民間の、イギリスが所有しているようなロシアのアントノフあるいはイリューシンという民間の荷物運搬用のものを使っても数千万円しかかからない。そして実は、今回の輸送、幾らかかったか。先回私が申しましたので御存じかと思いますが、ちょっと繰り返していただけますか。
 これは事務方はやめていただきたい、先回私、聞きましたので。
石破国務大臣 かかった費用は一億円でございます。
 なぜB747を使用したかといえば、私どもは、C1、C130、そしてまたこのB747というスリータイプを持っておりますが、一番適したものはこのBの747であった。C1はもっと運べませんので。飛行航続距離も非常に短うございます。C1はだめ、C130はだめということになりますと、B747ということになります。
 その場合に、では、民間機をチャーターすればよかったではないか。先ほど委員御指摘のイリューシンとかアントノフとかいう飛行機は、ロシアの飛行機でございますから英国ではないかと私は思っておりますけれども、それを使いました場合に、確かに費用的に言えばそうなのかもしれません。しかし、迅速性でありますとか、あるいは、この間も委員から、ではなぜそんなに武器を持っていったのだというような御指摘がございました。しかしながら、それは確かに機内の秩序維持ということにはまず使うことはありません、しかし機内の秩序維持ということと、現地におりまして、これは、カーゴの扉をあけましていろいろなものを搬入したり搬出したりしますときに、それは不測の事態があることは想像できることでございます。その場合に備えてけん銃を持っていったということでございまして、トータルで考えてみましたときに、これは費用だけで推しはかれるものではないでありましょう。
 そしてまた、この要請は、UNHCRから求められたものでございます。委員、恣意的にとおっしゃいましたけれども、これは私どもが恣意的に決めてテントを、UNHCRの要請は二千人分ということでございましたけれども、これはUNHCRから来たものでございますので、日本国政府として恣意的に決めたものではございません。この任務を全うしますために何が一番よいかということは、これはそろばん勘定だけではできないということも委員御案内のとおりかと存じます。
阿部委員 いろいろ御答弁いただきましたが、自衛隊員が、この専用機に乗った方は四十人、そして専用機に先立って十人既にアンマンの空港に行っておられます、そのための費用が七百万円。御存じですか、先に自衛隊員が十人行くために、ほかの飛行機で行くために七百万円、そして整備費その他で、とにかくトータルで一億八百万円。本当に私は金がかりだと思います。
 それから、これはイギリスの会社が所有しておるものです。ロシア製ですが、イギリスの民間会社が所有しておる。それで、コスト的にはもっと安い。
 わざわざ自衛隊員をつけて、自衛隊員が行くがために自衛隊員十人が先にアンマンの空港に行って……(福田国務大臣「必要だから行っていた」と呼ぶ)必要だからというそこでの福田長官のお話ですが、普通、物品を運ぶのにけん銃までつけて、そしてそのけん銃は残念ながら、防衛庁長官、この専用機の中の金庫に入れて、実際におりるときには自衛隊員はおろす業務にはかかわらず、現地の職員がおろすのを見ておるという状態なわけです。
 本当の必要性というのは何ですか、再度。
石破国務大臣 これは、恐らく実際に行く自衛官たちがその必要性というのは感じている、それは委員よりも実際の自衛官たちの方がよく知っておるはずです。そういうような任務を行うときに、みずからの身を守る武器というものは持っていかねばなりません。
 そして、先ほどお答えを申し上げましたように、確かに、搬出しますとき、搬入しますとき、それは見ておるだけでありましょうか。そのときに不測の事態が起こるということは完全に排除できるものではございません。それは、いろいろな、世の中に完全というものはございませんし、そしてまた、そこにおいてカーゴを搬入しますときに全く不測の事態が起こらないというわけではございません。そういうことにも備えて持っていったというふうに私は聞いております。
 また、事前になぜ人が行ったのだということでございますが、政府専用機が飛びます場合に、それが受け入れられるものかどうか、そしてまたそれが飛び立てるものなのかどうか、事前に先遣の職員を派遣するのは通例となっております。
阿部委員 アンマンの飛行場の状態くらい、自衛隊が十人行かなくてもわかると思います、どういう機種が着陸できるかどうか。そういうのを詭弁というんです。いつもそのように詭弁を用いて運用するからこそ、この法案だって合意が得られないんだと思います、実像が見えないと。
 そして、おまけに、何度も言わせていただきますが、けん銃は飛行機の機内の金庫に入って、携帯しておりることができないわけです。そして、例えば小泉首相が行かれるとき、SPの方がつきますが、SPの方は首相と飛行機に乗るとき、けん銃は置いていくのです。テントの方が小泉首相よりもけん銃で守られなければならない理由があるのですか、長官。お答えください。
石破国務大臣 それは、テントと総理とどっちが大事だという御質問をされましても、なかなか的確なお答えはいたしかねるところでございます。今回の……(発言する者あり)いやいや、それは質的にどうなのだ、それを同列に議論して、どちらが大事とかどちらが大事じゃない、そういうお答えをすることは、それは当然するべきものでもないということを申し上げておるわけでございます。
阿部委員 私が指摘したかったのは、そういう喜劇的なことをやっておるということなんです。そして、そのために高いお金をかける。
 日本はかつて、第二次大戦のときに、実際に極めて非合理的な戦闘に突入していき、たくさんの戦死者を出しました。今笑われた福田長官、あなたは今、第二次大戦の戦没者、まだ未帰還の遺骨、何体あるか御存じですか。
福田国務大臣 私は存じません。
阿部委員 そういう存じない人に、新たな死者が出るかもしれないこんな法案の提出はしていただきたくないんです。
 第二次大戦で百十万の遺骨がまだ未帰還です。あなたは、内閣官房長官として、それくらいの責任と自覚を持つべきです。知らないなんて、よくも言えたと思います。百十万帰ってきていないのです、三百四十万の死者で。笑って済まされることではないし、今、イラクの国内でも、負傷したあるいは死傷したイラク兵の遺体、家族たちは必死に求めている。それと同じ状態が、まだ百十万の未帰還の方があるのが我が国です。
 だからこそ、自衛隊員にこれだけの負荷をかけて、何を聞いても、戦闘地域、非戦闘地域、ぐちゃぐちゃ、よくわからない。ガラガラヘビ作戦のときどうする、これもわからない。暫定政府ができて、それがきちんとした日本との連動になるのか、これもわからない。わからない、わからない、わからないずくめの中で決められているのは、自衛隊の派遣だけです。本当にあなたは、これで自衛隊員の身の安全、保証できますか。福田長官にお願いします。私は、今のは福田長官にお願いします。
福田国務大臣 今まで随分御説明を、同じことも繰り返しながら説明をさせていただいております。
 自衛隊の安全ということであれば、安全には十分なる配慮をしてこの活動を行うということは、これはもう再三申し上げていることでありますので、その辺は、自衛隊の派遣は絶対だめだというお立場ではいろいろ言い方もあるかもしれませんけれども、私どもはやはり、それは日本のために、また世界のために、中東地域の安定のために、それはイラクの国民のためにということもあるんですよ。そういうことを含めて考えて、そしてこの自衛隊の派遣、活動、これは本当に大事なことだというように考えております。
 相当大きな見解の差が、今委員との間にはあると思っております。
阿部委員 イラクの人々に対する支援において、思いはだれも同じだと思います。ただ、その場合に、現在安全性のどのような担保があるのかわからない自衛隊員の派遣を、かつてどのような状態で兵隊が死んでいったかも知らない官房長官が云々されるとは笑止であるということを申し添えて、終わらせていただきます。
高村委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後五時八分散会


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