衆議院

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第8号 平成15年7月3日(木曜日)

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平成十五年七月三日(木曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 高村 正彦君
   理事 浅野 勝人君 理事 中谷  元君
   理事 浜田 靖一君 理事 松下 忠洋君
   理事 末松 義規君 理事 中川 正春君
   理事 赤松 正雄君 理事 一川 保夫君
      荒巻 隆三君    伊藤 公介君
      金子 恭之君    北村 誠吾君
      小島 敏男君    小西  理君
      新藤 義孝君    菅  義偉君
      杉浦 正健君   田野瀬良太郎君
      高木  毅君    谷田 武彦君
      谷本 龍哉君    仲村 正治君
      平井 卓也君    福井  照君
      牧野 隆守君    松浪 健太君
      松宮  勲君    宮腰 光寛君
      森岡 正宏君    吉野 正芳君
      伊藤 英成君    大畠 章宏君
      桑原  豊君    原口 一博君
      平岡 秀夫君    前原 誠司君
      山口  壯君    吉田 公一君
      渡辺  周君    佐藤 茂樹君
      丸谷 佳織君    佐藤 公治君
      中塚 一宏君    赤嶺 政賢君
      木島日出夫君    今川 正美君
      金子 哲夫君    山谷えり子君
    …………………………………
   内閣総理大臣       小泉純一郎君
   外務大臣         川口 順子君
   経済産業大臣       平沼 赳夫君
   国務大臣
   (内閣官房長官)     福田 康夫君
   国務大臣
   (防衛庁長官)      石破  茂君
   防衛庁副長官       赤城 徳彦君
   外務副大臣        茂木 敏充君
   防衛庁長官政務官     小島 敏男君
   外務大臣政務官      新藤 義孝君
   政府特別補佐人
   (内閣法制局長官)    秋山  收君
   政府参考人
   (内閣官房内閣審議官)  増田 好平君
   政府参考人
   (防衛庁長官官房長)   山中 昭栄君
   政府参考人
   (防衛庁防衛局長)    守屋 武昌君
   政府参考人
   (防衛庁運用局長)    西川 徹矢君
   政府参考人
   (防衛庁人事教育局長)  宇田川新一君
   政府参考人
   (法務省刑事局長)    樋渡 利秋君
   政府参考人
   (外務省条約局長)    林  景一君
   衆議院調査局イラク人道復
   興支援並びに国際テロリズ
   ムの防止及び我が国の協力
   支援活動等に関する特別調
   査室長          前田 光政君
    ―――――――――――――
委員の異動
七月三日
 辞任         補欠選任
  金子 恭之君     小西  理君
  高木  毅君     吉野 正芳君
  宮腰 光寛君     菅  義偉君
同日
 辞任         補欠選任
  小西  理君     金子 恭之君
  菅  義偉君     平井 卓也君
  吉野 正芳君     高木  毅君
同日
 辞任         補欠選任
  平井 卓也君     宮腰 光寛君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法案(内閣提出第一二〇号)
 平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第一二一号)


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     ――――◇―――――
高村委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法案、平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法の一部を改正する法律案及びイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法案に対する伊藤英成君外四名提出の修正案を一括して議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 両案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官増田好平君、防衛庁長官官房長山中昭栄君、防衛庁防衛局長守屋武昌君、防衛庁運用局長西川徹矢君、防衛庁人事教育局長宇田川新一君、法務省刑事局長樋渡利秋君及び外務省条約局長林景一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
高村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
高村委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。浜田靖一君。
浜田委員 おはようございます。
 連日、大変貴重な議論を積み重ねさせていただいておるわけでございまして、本当に御苦労さまでございます。
 きょうは、私の質問は、いわゆるテロ特措法につきまして御質問をさせていただきたいと思います。
 早いもので、もう二年の歳月が過ぎたわけでありまして、我々はその二年というのは大変早く感じるわけでございますけれども、しかしながら、実際に行っている隊員の状況というのは、大変厳しい中で、あれだけ暑いところで、その意味では大変評価の高い活動をしておられるわけでありまして、自衛隊員諸君の努力、そしてまたその活動については心から敬意を表する次第であります。
 今後またこれを二年延長するというお話であります。ただ、延長するに当たっては、国民の皆様方に理解を求めるという意味では、しっかりとした理由がなければならない、このように思うわけでございまして、その点につきまして、まず延長の理由というものをお聞かせ願いたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
福田国務大臣 九・一一のテロが発生しまして、もう一年半以上たつわけでございます。我が国も、アフガニスタンにおけるテロの根源となるアルカイダの撲滅という国際社会の活動に協力をする、こういうような立場で諸外国と行動をともにしているということであります。ただ、我が国としては、当然のことながら、我が国のできる範囲ということがございますので、自衛隊を中心でありますけれども、懸命な努力をしておるということであります。
 実際問題、申し上げまして、アフガニスタンにおけるアルカイダの残存勢力、これがいまだに各地で相当程度の活動をしているということで、それに対する掃討作戦というのは引き続き行われている。もちろん、かなり改善をしてきているわけでございまして、際限のないものではないだろう、そういうふうに思っておるところでございますけれども、いまだにアフガニスタンの国内において三十数カ国、またインド洋の洋上におきましても十一カ国からの諸外国の活動がある、こういう状況でございますので、我が国もその中の一員として協力活動を進めている、こういう状況であります。
 このアルカイダの勢力がどうなっていくのか、こういう将来的な見通しにつきましては、また外務省からの報告をいただきたいと思っておりますが、その活動もそうすぐ終息するというような状況でもないように見受けております。そうなりますと、諸外国の活動も当然継続されるというように思いますし、我が国もそれに対して協力していくという立場を貫くということが、国際社会の一員として活躍する我が国の立場というものもはっきりするということになると思います。
 そういう意味で、今後この活動を延長するという意味におきまして今回この法律の改正をお願いしている、こういうことであります。今の現行法制の期限が十一月一日ということでございますので、十月中には決めなければいけない。または、準備とかそういうことも考えれば、その前にぜひ決めていただきたい、そういうようなこともございますので、この国会にぜひ御承認いただきたい、このように思っておるところでございます。
 もうじきこの国会も終わりますし、臨時国会がいつ開かれるかというようなこともまだ決まっていない、こういう状況でございますので、この国会でお決めいただければ十一月以降の活動についても支障なく行える、こういうことでありますので、ひとつどうか御理解を賜りたいと思っておるところでございます。
浜田委員 このテロ特措法の場合には、九・一一のアメリカでのテロ攻撃、その中で我が国の国民の皆様にも犠牲者が出たということでありますので、その意味では、我が国にとっては、当然のごとく、テロに対する怒り、そしてまたその対処の仕方とすれば、まさに国際協力の中でこのオペレーションが行われておるわけでありますので、当然これは参加をすべきところがあったわけであります。
 そういう意味において、今後、これで二年たって法律が切れるということでありますが、我々は安全保障委員会でも基本計画の延長の際にいつも議論をしてきたわけでありますが、ただ、我々にも、我が国の安全というものを考えたときには、北朝鮮の問題もいろいろございますし、そしてまた海上自衛隊の実際の任務としての艦艇、そういうもののローテーションも含めて大変厳しくなっているということをお聞きしているわけでございまして、逆に言えば、この延長を機に、例えば海ではなくてほかのものに形を変えていくというようなことも含めてお考えがあるのかどうか、お聞かせ願えますでしょうか。
石破国務大臣 これは政府全体で判断をしていくことに相なりますが、先生御指摘のように、自衛隊の本来の任務に支障を与えないということになっております。法律そのものがそういうふうな構成になっておるわけでございます。
 北朝鮮の状況あるいは日本国内全体の状況等々もにらみながら、それは可変的な要素は常にあり得ることだと思っております。
 他方、今官房長官から答弁がありましたように、では、どうなんだ、我が国の国民も犠牲になったあのテロの脅威というものは本当に除去をされたのかといえば、除去をされていないので、法案の継続というのをお願いいたしておるわけでございます。
 その両方をにらみながら、何が一番テロの根絶に資するものであるのか、同時に、私どもが我が国周辺においてきちんと果たさねばならない任務と両立ができているのかということも勘案しながら常に検討されるべきものだというふうに考えております。
 現在、具体的な検討に入っておるということはございません。しかし、私どもの本来の任務に支障を来さない、そしてまたテロの根絶に我が国としてきちんとした国際的な責任を果たす、この二つの両立は常に考えていかねばならないことだと認識をいたしております。
浜田委員 ありがとうございました。
 結局、どれだけ日本が主体的にこのオペレーションに参加をしているかということは大変重要なことでありますし、しかしながら、今長官もおっしゃったように、両にらみというのは、これは当然のことであろうと思いますけれども、ただ、やはり我々とすると、そこのところは、さはさりながら、自国の防衛、そしてまた自国の今ある現有勢力の中での、要するに艦艇をどのように配置してどのようにしていくのかということを、これはやはりしっかりと根本に据えていかないといけないのだと私は思いますので、その意味では、今行われている海上自衛隊の輸送、補給というものをやっていくのに、もう少し考えを入れていった方が、国内における護衛艦隊の組織、そしてまたその運用を含めてもう少し考えを入れて、よく考えて、新しいものができるんであれば新しいものに変えていただきたいなと私自身は思っている次第であります。
 そしてまた、このオペレーションがいつまで続くかという問題は、これはなかなか難しい問題だとは思うんです。この単純延長で二年延長というのが、確かに必要だ、いつ終わるかわからないという先ほどの官房長官のお話ではあったわけでありますが、しかしながら、これを引く際というのが一番難しいと思うんですね。ですから、これはどのように判断されていくのかというのがこれからのまた課題になろうかと思うんですね。二年延ばしておいて、短くするには構わないというふうにはなっているわけでありますが、しかしながら、そこのところ、できれば目安になるものがあれば教えていただきたいと思います。今の状況で結構です。
福田国務大臣 最初の方に、これからの活動の内容についておっしゃいました。これは、本当に我が国としてできる一番効果的なものは何かということは常に模索していかなければいけないものだろうというように思っております。これは今後の検討課題というふうにさせていただきたいと思います。
 それから、目安という話でございますけれども、これは、正直申しまして、目安というのは明確に申し上げるものはないのでありますけれども、しかし、残存勢力がまだ活動を続けているとか掃討を続けなければいけないという状況、この状況が残っている限りは、これは続けなければいけない。そしてまた、国際社会がどういうふうにこの問題に対峙しているのかということですね。国際社会の判断ということもあろうかと思います。ですから、今後もいろいろと各方面の情報を入手しながら、我が国として最終的には主体的な判断をしていくということになろうかと思います。
石破国務大臣 たしか、昨日でしたか一昨日でしたか答弁で申し上げましたが、確かに量は減っている、しかし回数というものは減ってはいないということでございます。
 アメリカの船はどでかい船が多いですから量は多いということになりますが、しかし、回数自体は決して、どんどん減っているというものではございません。その辺が、今官房長官から御答弁がございましたように、国際社会がどのようにそれを考えるか、決して惰性に流れていいとは私は思っておりませんけれども、実際にニーズがあるということは、まだテロ根絶という目的が達せられていないというふうに国際社会が認識をしておるということだと私は考えております。
浜田委員 情報の収集そしてまたそれを的確に分析するということをぜひやっていただいて、我々にとりましても、これがずるずる続いていくということが本当にいいことなのかどうなのかというのは、これはまた一つ別の問題としてあるわけでありますので、ぜひその点は、主体的に政府で判断できるように、常に引き際というのをお考え願いたいというふうに思う次第であります。
 ですから、今後の対応の仕方をぜひ我々にも教えていただきたいと思いますし、その内容というのはなかなか判断するのは難しいわけでありますけれども、ぜひその情報というのは我々にも提供していただきたいと思うわけであります。
 そして、今の護衛艦隊というのが、状況というのは何とか回っているというお話でありますけれども、しかし、それが今実際に海上自衛隊になって負担になっているところがあればやはりそれは改善しなきゃいかぬと思うのですが、現状としては、長官、これは質問通告しておりませんけれども、どういう状況なんでありましょうか。それを教えていただければと思います。
石破国務大臣 負担ということから申し上げれば、やはり補給艦の負担は非常に重いと考えております。
 補給艦「はまな」という船は、もう先生御案内のとおり、三回出ておるわけでございます。もちろん、隊員は入れかわりがございますから、みんながみんな三回行っておるというわけではございませんけれども、補給艦の負担は非常に重いということはございます。
 また、随伴いたします護衛艦にいたしましても、これも護衛艦であれば何でもいいというお話にはなりません。例えば「いしかり」とか「ゆうばり」とかいうものを出すわけにもまいりません。そうしますと、ああいう遠いところまで行って長い時間オペレーションができるという護衛艦のローテーションというのも決して楽なわけではございません。
 また、イージス艦、DDH、これをどうするかという御議論も安全保障委員会で随分賜ったところでございます。
 私どもは、そんなに余裕があるのかという御指摘をいただいたこともございますが、本当に余裕があるわけではございません。余分というのを持っているわけでもありません。その中で、もう本当にぎりぎりの繰り回しで動かしておりますので、隊員の負担の軽減というものもあわせて考えなければいけませんし、まず、委員が最初におっしゃいましたように、本当に我が国の防衛というものに遺漏なきを期すということで、この辺はきちんと常に検証していくべきことだというふうに思っておるところでございます。
浜田委員 ぜひ、その辺のところは長官が一番よく御存じなわけでありますので、いろいろなオプションを考えていただいて、その中で、我が国の防衛というものをしっかりと体制づくれるような形を常に持っておいていただきたいというふうに思うわけであります。
 そこで、テロの関係はこのくらいにいたしまして、イラク特措法について御質問させていただきます。
 我々の自民党の三部会、いわゆる外交、防衛そしてまた内閣部会、内閣部会が中心でありますが、その際にもいろいろ議論が出ました。その中で、当然のごとく、武器使用基準の問題も含め、そしてまた、こういうものは恒久法でやるべきなのではないかというような議論も確かにあったわけであります。しかし、それを、議論の中で我々が、今回の法案については、しっかりとした政府の体制がつくれるならばということで、了承しながら来たわけであります。
 そしてまた、その中で、いわゆる基本計画、今後この法案が通った後には当然これをつくることになるわけでありますけれども、この基本計画をつくるということになりますと、当然のごとく、今まで政府でも調査をしておるわけでありますが、さらに、この法案が通った後に調査というものが行われるべきであろうし、また、その辺のところは当然我々の議論の中でも出てきたわけであります。
 この基本計画をつくるまでに大体どのくらいかかるのかというのも教えていただきたいと思います。
石破国務大臣 私の方からお答えをいたします。
 基本計画をつくるのにどれぐらいかかるかということですが、各国の例、もちろん法律の仕組みが同じわけではありませんが、各国の派遣例を見ましても、派遣に当たりましては二カ月から三カ月の準備を要するという事例もございます。
 では、委員御指摘のように、まず見てこなければいけない。見てまいりまして、法案にございますような基本計画に必要な事項を定めるのに、必要な情報というものを仕入れてまいるわけでございます。
 これは何度も答弁申し上げましたように、実際に行く人間たちが彼らの目で見てくるということが必要でございまして、まず調査というものを行います。法案第四条第二項にございますような基本計画に定める事項というものを定めるために、必要ないろいろなインフォメーションというのを調査してくるということに相なります。
 そこで、治安の状況でありますとか、また現地のニーズでありますとか、あるいは調整をどのようにするかということ、そして、それから導き出されます、場所をどこにするか、部隊編成をどのようにするか、武器はどのようなものを持っていくのか等々を基本計画において定めることに相なります。
 やはりそれには、もちろん現地のニーズというものに的確に迅速にこたえることが必要でございますけれども、これが数日間とか数週間でできるというものではございません。可能な限り急いでまいりますけれども、やはり諸外国の例と同じような期間というものは予想しておるところでございます。これが疎漏なものになりませんように、しかしながら迅速に対応できますように政府としてはやってまいりたい。
 あわせまして、まさしく自由民主党の三部会の御提言にもございましたように、そのことがきちんと国民にわかりやすく説明をされなければいけない。そのあたりは、国会や、あるいは与党また野党とも御相談をしながら、実際に何をやるのだ、この法律は確かに枠組み法ではあるけれども、何をやるのだ、その地域はどのような治安状況なのか、本当に安全に任務というものが遂行できるのかというようなことを国民の皆様方にもわかりやすく提示をするということは政府の責任だと認識をいたしております。
浜田委員 その点は、今回多くの委員が質問に立ちまして、議論をされてきたわけであります。
 まさに基本計画をつくるまでの時間、そしてまたそれを、では実際に今のどこのどういった部隊を使っていくのか、そしてどういう編成にするのかというのは、おのずとそれの土台になるものがなければつくれないわけであります。
 実際に装備につきましても、多くの方々がおっしゃるように、まさに国内仕様、海外仕様ではない自衛隊でありますので、当然のごとく、これは装備から含めて、迅速にはやられることになるのかもしれませんが、しかし拙速であってはならないというのもありますので、その部分は、部隊をつくるまでにこれはどのくらいかかる、そしてまた部隊の構成、逆に言うと、それに対する隊員に対する施策等も含めて、これは詰めるとなったらかなりの時間がかかるわけでありまして、他の国のお話を聞いても、最低でも三カ月、四カ月かけて準備をしているというお話も聞いているわけであります。
 それはきちっと、今長官がおっしゃったように、我々にもしっかりとした、どういったものをどういった部分にどういうふうに出していくのかというのはこれからもまだお知らせをいただいて、当然のごとく、その部分に対しての議論というのはさせていただかなきゃならぬわけでありますので、何かあった際には、何かあったというか、わかって、こういうものをやるというときにはぜひこれを報告していただきながら、きちっとした形で出せるようなものを出していっていただければと思います。その点をよろしくお願いしたいと思いますが、いかがでございましょう。
石破国務大臣 おっしゃるとおりだと思っております。
 法文上は、基本計画を国会に報告するということが書かれておるのみでございますけれども、当然、どのような地域で何をどのようにしてやるのかということ、この法案の審議の中でもるる申し上げましたように、これは枠組み法でございます。その中で、どれをやるのか、どのような地域でどのようにやるのかということは、国民の皆様方に、ということは、つまり国会あるいは各党に随時御説明しながら御理解をいただいて、迅速でなければならないが拙速であってはならないという委員の御指摘をよく肝に銘じながら、私どもとして説明責任を果たしていかねばならない。繰り返しの答弁で恐縮でございますが、そのように考えておるところでございます。
浜田委員 そこで、我々も、今回の特措法以外の、以外と言ってはおかしいんですが、それをきっかけにして、いろいろな議論が我が党にもあるわけでありまして、その意味では、民主党の皆さん方とも同じような議論もあったわけであります。
 当然これは、武器使用の件につきましては、やはり任務遂行のための武器使用というものをやるべきだというお話もあり、そしてまた、実際にこういうものに特措法を積み重ねていくことによって対処していくのには、なかなかこれは防衛庁・自衛隊自身の対応の範囲というのが限界があるんではないか。本来であるならば、そういうものを恒久法として定め、そしてそれを、あるんだけれども、しかしそれは主体的に判断をして使わないということがあってしかるべきだと私は思っております。
 常に我々はそういう議論をしてきたわけでありますので、その点については、やはり我々の安全保障を考えたときには、しっかりとした根本をなすものをつくっていくべきだと私自身は思っておりまして、そういう意味においては、このテロ特措法も含め、このところいろいろな形での法案が出てきているわけでありますが、本来の安全保障のあり方としての議論というのはこれからもしっかり進めていかなきゃいかぬというふうに私自身は思っております。それが、あくまでもこれは自衛隊が外に出ていくための法律をつくるんじゃない、それは我々の安全保障にとって、すべての安全保障政策の中の一部であるべき国防の論議をしたときには、やはりしっかりとしたものが必要だと私自身は思っております。
 ですから、大変、私は、持論なんでありますが、各党いろいろな安全保障に関する御意見はあるわけでありますが、その基本になるものは何かといえば、当然、我が国を守るために皆さん方なりの、一つ一つ考え方は違っても、国を思う、国を憂えるための安全保障政策というものを大いに議論していくべきだと思っておるわけでございます。
 ですから、そういう意味においては、今後、やはり我々の責務とすれば、こういう法案をつくることは重要なことであると私自身も認識をしておりますけれども、それを一歩でも二歩でも進めて、しっかりとした国防の議論をし、そして恒久法をつくり、その中で、我々は持っているけれども使わないという勇気をどこかで持てば、国民の皆様方にもしっかりとした御認識をいただけるのではないか。
 よくあるわけでありますが、例えば、いろいろなところで、ナイフというのは、鉛筆を削ったり物を切ったりするには非常に有効なわけでありますけれども、しかし、その用途を間違って人を刺してしまう。刺すとこれは殺傷能力があるわけであります。例えば、ある中学校でそういう事件が起きた、教師を刺してしまったといって、翌日から一体何が起こるかというと、その翌日から中学校にはもうナイフがなくなってしまう、ナイフを持ってきちゃいけないよというような話になる。これはそうじゃなくて、本来こういうものは人を刺すために使っちゃいけないんだよ、当たり前の話なんですが。持たせなかったら安全だということではなくて、やはりそれを、使い方によって、自分の良心、常識によってそれを使わないということが、持っていても使わない、そういう自分の、自己の確立というか、国家としての考え方というのがあっていいと思うのです。
 やはり、ないから今というのではこれは困るわけで、持っているけれどもそれは今は使わない、これには使うという、しっかりとしたそういう情報の集積とまさに意思決定の能力というのを、持っていないから大丈夫なんじゃなくて、持っているから、持っていてそれをなおかつうまく使うんだということを、やはりこれを多くの人に知らしめることが重要だと思うので、そういう意味において私が言っているのは、恒久法というのは必要であって、やはりその中での使う、使わないをしっかりと判断していくというのが大変重要だと思っているわけでございます。
 ですから、今後、我々のやらなきゃいかぬことというのは、当然のごとくそういう部分を、例えば今になって、昔、いろいろありました、機関銃を一丁持っていく、二丁持っていく、これは問題だという話になって、うちは豆腐屋じゃないというような議論もあったわけでありますけれども、しかし、それはしっかりと、持っていって使わない、やはりそれをしっかりと知らしめることが重要だと私は思うわけでありますので、そういう意味では、しっかりとした教育をし、何か今は、これをやっちゃうと、一つの原因を、要因を与えるとすぐこういう結論になってあらわれるから、ここを、もとを断っちゃおうみたいな話が多くて、私は少々それはいかがなものかと思っております。
 ですから、ぜひそういう議論を今後もさせていただきたいと思いますけれども、長官に、一言コメントがあればお教えいただきたいと思います。
石破国務大臣 当委員会のいろいろな御議論を聞いておりまして、与党のみならず、野党の先生方の御指摘にも随分教えられることがございました。
 委員御指摘のように、本当に国をどうやって守るんだということについて、随分と共有できる部分がふえてきたなという思いを持っております。それじゃ、特措法ではなくて、恒久法でどうなのだと。
 今の自衛隊法の仕組みからいきますと、そのたびそのたびに百条系列の特措法をつくっていかなければいけないみたいなことになってまいります。特措法等は別に百条みたいなものがあるわけでございますが、これでは本当に迅速な対応もできないだろう。そのときそのときにいろいろな議論が錯綜してしまって、本当にきちんと国民に、我が国が国際的な責務を果たすためのスキームみたいなものを提示することにもならないだろうと思っております。
 私は、一昨年の九・一一の後、特措法ではなくて恒久法みたいなものが書けないかということで、随分と考えてみたことがございました。実はそんなに簡単なことではない。そして、PKO法との整合性をどうするかということもございます。国連との関係をどうするかということもございます。
 これから先、本当に恒久法というものをつくるとすれば、どのような理念で、どのようなことであるべきなのか。そして、それがあるから常にやらなければいけないということではなくて、それをどう使っていくかという使う側のマインドもございます。そういう意味で、理念なり仕組みなりというものをきちんと議論した、そういうような法律をつくるということは、私は本当に議論をされるべきことではないだろうかというふうに考えております。
 これは、政府としてそのような考え方を固めたというものでもございません。これは政府全体で決するべきものでございますが、国会でも御議論をいただき、私ども政府もよく勉強、勉強というのは単なるお勉強ということではなくて、していかねばならないことだと思っております。この委員会におきます御議論も踏まえまして、政府としてもよく議論をしていかねばならない、そのように思っておるところでございます。
浜田委員 時間が来ましたので終わらせていただきますけれども、ぜひその点は、我々も一生懸命努力をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。そしてまた、当委員会で積み重ねられた議論、イラク特措法については大変いろいろな御指摘があったわけでございますので、それをしっかりと踏まえて今後の基本計画の作成に当たっていただければと思います。
 その点をお願いして、私の質問を終わります。ありがとうございました。
高村委員長 次に、山谷えり子君。
山谷委員 保守新党、山谷えり子でございます。
 テロ特措法の改正案についてお伺いいたします。
 まず、テロ対策特別措置法、基本方針に、
 現在、世界の国々が、立場の違いを超えて非人道的なテロリズムを非難し、力を合わせてこれに立ち向かっている。
  我が国としても、国際的なテロリズムとの闘いを自らの問題と認識して、国際的なテロリズムの防止及び根絶のための取組に積極的かつ主体的に寄与するとの立場に立ち、憲法の範囲内でできる限りの支援、協力を行うことが重要である。
本当にそのとおりだというふうに思います。
 あの貿易センター、アメリカをつい最近訪ねましたけれども、今もう整理はされておりまして、地下のところで工事が進められております。そして、その手前に、ビルが崩れる中を階段を上って助けようとして亡くなられた消防士たちの写真とメッセージが掲げられておりました。
 それで、まず、先日の六月二十七日の質問のときにも言ったんですけれども、アメリカではこの九・一一のアタックの後に、六週間後に包括テロ対策法というのがつくられて、千十六条にわたるものでございますが、テロの定義、通信傍受、送金のあり方の見直し、国境保全のあり方、移民規定の見直し、行政機関の協力体制のつくり方、貿易制裁、大統領、安全保障の権限の見直し、テロリズムによる被害者、家族支援のあり方というような、もろもろが包括されたテロ対策法が六週間でできたわけでございます。
 アーミテージ国務副長官が、日本の拉致はテロであるというふうにおっしゃったのが、二月三日、アメリカの国会の公聴会でございました。私たちが、横田御夫妻、増元さん、蓮池さんらと行った三月五日にも同じことをおっしゃいました。
 その後、帰国後、川口大臣と家族会の皆さんとでお会いして、拉致はテロなのかと言ったときに、川口大臣は、通常の思いならそうだろう、しかしながら、きちんとした定義もないしというようなことをおっしゃいました。あの時点では本当に、そのとおりのお答えしかできなかったんだろうというふうに思っております。
 六月五日、拉致はテロであると小泉総理は本会議でおっしゃったわけでございますけれども、今やっと、遅まきながらといいますか、国交省が次の臨時国会で、国が安全不備の船を入港拒否できる法案を提出するというようなことも出ておりますし、また、外為法の改正も自民党の部会で通ったというふうに聞いておりますけれども、その二つはもちろん早急に検討していただいて、さらに包括的なものが必要だと思います。
 三百二十人の特定失踪者問題調査会の問い合わせにも、福田官房長官は、先日、対象をどうするかといったことがございます、警察当局等々の意見も聞かなければいけませんけれども、そういう調査の実態とあわせて考えるべきことだと思っておりますというふうに答えられたんですが、やはり包括的な、家族支援も含めて、テロの定義も含めて、この外為法の改正と特定船舶の入港の禁止法案だけじゃなくて、もう少し大きな視野で御検討はいただけませんでしょうか。
福田国務大臣 テロのような突発性の高いもの、これについて、いかに迅速に、また有効な対応ができるかということ、このために政府としてもいろいろな体制というものは考えてまいりました。現行は、もう御案内のとおりでございますけれども、警察、海上保安関係法とか自衛隊法とか、そういうようないろいろな法律に基づいて機能機能で有効に機能する、こういうふうなことでございまして、それはそれなりに機能的に動いているということでございます。
 しかし、今委員が御指摘のように、米国では、いろいろな機能をすべて集約して包括的な、こういうふうなことを御指摘になりましたけれども、我が方も、そういう今の体制でいいかどうかということについては、これはもう常々検討いたしております。ですから、目的は、こういうテロ対策として強化できるところはどういうところなのか、それをどういう体制で対応すべきか、こういったような観点からやるわけでございますので、それはそれで今後非常に大事なこととして考えてまいりたいと思っております。
 昨年、九・一一があった直後に米国は直ちに対策組織をつくった、こういうお話でございますけれども、我が国も、九・一一がありまして、テロ対策本部というものを立ち上げました。これは内閣総理大臣がヘッドでございますけれども、それで各省庁のいろいろな機能を総動員するという体制を組んだわけでありますけれども、そういうような、包括と申しますから、機能を集約できるような、そういう体制というものも視野に入れながら考えてまいりたいというふうに思っております。
山谷委員 外為法の改正について、きのう、決算行政委員会で自民党の水野委員が質問なさっていらっしゃいまして、経済産業大臣が理解、議員立法でございますけれども、まあポジティブなイメージの答弁をなさいました。この外為法の改正についてはどういうふうにお考えでございますか。
福田国務大臣 外為法は私の所管でありませんけれども、今いろいろ議論がされているところでございまして、その議論を私どもも見守っておるというところであります。
 基本的には、いろいろな懸念がございます。そういう懸念を払拭するためにどういうことがいいのか、そのために今現在は現行法をフル稼働するというような形でやっておりますけれども、そういう体制で今後いけるものかどうか。それは今後の検討、また与党の中でもいろいろな議論があるようでございますので、それを注視してまいりたいと思っております。
山谷委員 万景峰号の入港についても、政府は、以前は、既存の法律では政府として入港を禁止できないと言ったんですが、自治体が通常の積み荷、船荷の検査をすると言ったら、入港できなかった。やはりもうちょっとやるべきことをきちんと、今ING形でテロリズムが行われているという認識のもとに行っていただきたいと思います。
 せんだっての本会議で、民主党の渡辺周議員がファン・ジャンヨプの来日招請についてお話しになられました。そのときに小泉総理は、情報収集を初め必要な取り組みを行っていく考えだ、ただ、正式な訪日希望を表明されておりませんというようなことをおっしゃったわけですが、ファン・ジャンヨプ氏、北朝鮮からの亡命者として、最高位でいらっしゃる最高人民会議議長を十一年間なさっていらっしゃいまして、先日韓国に訪れました家族会のメンバーにお会いして、招請に対してぜひ訪日したいと意欲を示されたわけでございますけれども、国会証言のための招致を求めるもう少し積極的な御答弁はいただけませんでしょうか。
川口国務大臣 ファン・ジャンヨプ氏が新聞等で日本においでになりたいとおっしゃっていらっしゃるという報道は見ておりますけれども、政府に対して直接御本人からそういうことをしたいというお話は、今のところまだございません。そういうお話が、御本人のお気持ち次第ということで、その上で判断をしたいと考えております。
山谷委員 先ほど浜田委員の方から恒久法のことについて質問、御意見がございまして、私も、国際的平和回復の協力のための恒久法を制定していくということは大変大事なことだというふうに思っております。
 自衛隊、百条関係で対応していくという、任務遂行に支障を生じない限度においてというような位置づけで果たしていいのかとか、あるいは国連決議により自衛隊参加を認めるようにしてはどうかとか、官房長官の私的諮問機関、国際平和協力懇談会の報告書も読ませていただきましたけれども、PKOを自衛隊の本来任務に格上げ等々、いろいろ書かれておりました。
 福田官房長官、私的諮問機関でございますから、この報告書をお読みになられて、官房長官としてはどのような感想をお持ちでございますか。
福田国務大臣 まず最初に申し上げておきますけれども、このいわゆる明石懇談会、例の国際平和協力懇談会でございますけれども、これは総理大臣の諮問機関なんです。これは誤解をされている向きがありますので、今訂正をさせていただきたいと思いますが、そういうことなんです。
 これは、まさに我が国が国際社会の中でどういうような任務を果たすべきか、国際協力を果たすべきか、それは国際社会の平和と安定のために尽くすことが我が国の発展にもつながることであるという基本理念から発しているわけでございまして、そういう観点からいろいろと御討議をいただいた。
 その中で、自衛隊、または文民とか警察官とか、いろいろな方々がこの活動に、国際的な活動に参加できるような仕組みをつくるべきではないか、そして、基本理念は先ほど申しましたようなことでありますけれども、その基本理念を貫き通すための体制をどうすべきかといったようなことを明石懇談会でいろいろ議論していただいたということでございます。
 これは、私、今回の法律、イラクの新法もそうでございますけれども、テロ特措法もそうである、またPKO法、これもそうなんですね。国際平和協力のためにやるんだというその理念をしっかりと打ち出すということが必要なのでありまして、そういうふうな理念に基づいた、どういう、自衛隊も含めていろいろな方の参加ができるか、そういうことについて、具体的な法体系というか体制整備というか、そういうものをしていかなければいけないのではないか。一々、イラクで問題があれば、そのときにはこういう特措法をつくっていくというようなことでは、やはり十分な、また国民の納得いく活動ができないのではないかといったようなことがあってはいけませんから、そういうことのないような、納得のいく体制整備をしてまいりたいというふうには思っております。
山谷委員 国民は広く理解を始めていると思いますので、ぜひそのような方向で御努力をお願いしたいと思います。
 六月の十日、保守新党といたしまして、「イラク新法承認に際し、保守新党の見解」というのを福田官房長官に私が届けさせていただきました。その中に、国家安全保障体制の一層の強化を図るため、防衛庁の省昇格を最優先課題として取り組むことを約束した、去る平成十四年十二月の与党三党の幹事長、政調会長の覚書の速やかな実行を図るべきであるという一文がございます。
 保守新党は、きょうたまたま、代表も幹事長も、国会議員、スタッフ全員、大型バスで北朝鮮の工作船を見に行っているんです。きのう小泉総理も見られて印象を語っておられましたけれども、こんな漫画もつくって、防衛庁、中央省庁再編で一府十二省庁、たった一つだけ防衛庁が庁として残されてしまった、ディフェンスエージェンシーという省の下のランク、代理店か警備会社なのなんという感じでですね。
 とにかく、サリン事件、阪神大震災、さまざまな無差別テロが起きる、そんな中で危機管理をしっかりしていく、それから国際的な平和の回復、発展に貢献するため、もう軍国主義にはなりません、私たちは、戦後、平和協調、国連重視、そのような形でやってきて、世界の人々の信頼も集めているわけです。それは世界に出ればわかることで、国内で自虐的に議論をしているのとは全く違う温度を皆さんお感じになられることが多くなったというふうに思っております。
 アジアの国々もすべて省でございますし、環境庁も省に昇格したわけでございまして、法案をつくったり予算要求もできないというこの状況、危機管理をしっかりするためにも、また、国際的な平和の回復と発展に、より機動的に効率的に貢献するためにも、防衛庁の省昇格を課題としていただきたいと思いますが、その辺については、官房長官、いかがでございましょうか。
福田国務大臣 国家が自分の国を自分で守るんだという気概、これを持たなければ、国としての成り立ちはないんだろうというように思っております。そういう意味で、先般の有事立法というものも御審議いただいて成立をさせていただいた、そういう経緯もございます。そのことは、極めて国家として大事な、国の形づくりのためにも大事なことであると思っておりますので、国家存立の基本という認識、それは十分理解をいたしております。
 その上で、庁の省昇格ということにつきましては、これは保守新党さんにおいては大変熱心に主張なさっていらっしゃるということでございまして、党首会談においても何度も確認をされているという経緯もございます。ですから、このことは重く受けとめてまいらなければいけないと考えております。
山谷委員 先ほど、テロ特措法に関して浜田委員が、アフガンの現状や、そして二年延長の根拠などを質問なさいましたけれども、もう少し詳しく、カルザイ暫定政権をどう見ておられるかというようなことで何か御意見ありましたら、よろしくお願いします。
川口国務大臣 カルザイ政権ですけれども、考えてみますと、二〇〇一年の十二月にボンでの合意がございまして、それ以降さまざまなことが動いてきたわけでございます。翌二〇〇二年の一月には、東京で復興会議がございました。
 それで、現在どうかということですけれども、おおむねそれ以降着実に進展してきていると考えておりますが、カブールにおきましては、これはISAFが展開をしておりますので、大体おおむね安定をしているということだと思います。ただ、地方では、現在も約二十万人に上る武装勢力が存在をいたしておりまして、軍閥の間で武力衝突が散発的にあったりいたしております。
 テロとの闘いという意味では一定の成果を上げつつはございますけれども、依然として、ウサマ・ビンラーデンですとかあるいはオマル師等といったアルカイダ、それからタリバンの主要メンバーは拘束をされていない状況です。また、アフガニスタンの南部、南東部を中心に、タリバンの残党あるいはアルカイダ、それからヘクマティアル派の活動が活発化をしております。最近、これらの人たちによる、援助関係者、国際治安支援部隊、国連関連施設等に対するテロの事件も発生をしてきております。例えば、国際赤十字の人が殺されたり、ISAFのドイツ兵が襲撃をされたりといった事件がございました。
 それで、今後ですけれども、ことしの十月に憲法制定ロヤジェルガ、これが予定をされております。そして、来年の六月までに本格的な政権が発足をするというスケジュールになっております。現在のところの最重要課題は、その十月の憲法制定ロヤジェルガ、これを成功させ、そして治安を確保するということが最重要課題になっているということでございます。
 いろいろまだ、道中、困難はあると思いますけれども、我が国としても、国際社会と一体になって、平和定着、和平のプロセスの進展、アフガニスタンの国家再建、これに協力をしていきたいと思います。
山谷委員 まだ二十万人の武装勢力が不安材料となっているということでございますけれども、十月の憲法制定に向けて、また、憲法が制定された後、行政能力の向上とか教育、保健衛生面、インフラの整備、経済システムの構築等々、また新しい形で日本が貢献できる分野というのもあるというふうに考えておりますけれども、その辺はどのようにお考えでございましょうか。
川口国務大臣 我が国は、昨年の一月の復興会議において、お金を五億ドル、二年半でということをコミットいたしました。そのうち、ほぼ、約四億ドルが既に支出をしております。
 平和定着のための協力、それから、ユニセフを通ずる学校への支援、そして、DDRと言われていますけれども、兵士が武器を手放して定着していくための支援、そういったことをやっておりますし、それから、緒方イニシアチブと言われていますけれども、緒方貞子さんが、これは兵士の、地域に対して住みついて定住をしていくということの促進とも関係がございますが、地域開発のイニシアチブをとられておりまして、そういった面で支援をしてきております。
 近々、緒方さんがまた再度アフガニスタンを御訪問になられるということも御予定をしていただいておりますので、我が国として引き続き関与をきちんとしていきたいと考えております。
山谷委員 緒方貞子さんがまたアフガンにいらっしゃるという記事を私も読ませていただきました。計画として、どのようなところを回って、どのような計画をつくるためにお出かけになられるんでしょうか。
川口国務大臣 緒方さんには地方にも行っていただくということを予定していますけれども、地域開発については、例えばカンダハルですとか、そういうところでもいろいろ考えております。
 地域中心の安定的な平和の定着ということから始まって、アフガニスタン、国が全体として発展をしていくという形になるためには、地域、地方でそのような動きが出てくることが非常に大事でして、そういう意味で、緒方さんのイニシアチブですとか、あとは、アメリカと日本とサウジアラビアと一緒になりまして道路を建設中でございます。これについても、順調に進めば、ことしいっぱいぐらいで道路の補修を中心として完成するということになると思いますので、それもまたカブールと地域の間の交流をきちんと進めていくための重要なツールになるだろうと思います。
 そういった動きを通じ、これは、いわゆる国家の体をなさなくなった国に国際社会がかかわって国として再建をしていくという意味で、国際社会におけるモデルケースであります。今、イラクその他いろいろなところで問題がございますので、国際社会の関心がそういったところに移っていってアフガニスタンから目が離れているということが危惧されるわけですけれども、これはモデルケースでございますから、国際社会として必ず成功させなければいけないというふうに日本としては考えておりまして、G8の場等でもこの議論はしております。そういった努力を重ねていきたいと思います。
山谷委員 このテロ特措法の中に、協力支援活動、捜査救助活動、この捜査救助活動はまだやっていないということでございますが、被災民救済活動、いろいろあるわけでございますが、「協力支援活動の実施に関する重要事項」の中に、「外務大臣の指定する在外公館長は、外務大臣の命を受け、協力支援活動の実施のため必要な協力を行うものとする。」とあります。大臣はいろいろな御命令をなさったと思うんですけれども、在外公館としてはこうすればもっとよりよい形で動けるのにというような要望等々、上がってきたというようなケースがありましたらお聞かせいただければと思います。
川口国務大臣 在外の公館としてすることはたくさんあると思います。
 やはり基本的なところとしては、情報の収集、これは安全情報も含め、それから、どのような支援のニーズがあるかということも含め、さまざまな情報の収集活動というのがあると思います。
 それから、邦人の安全ということがもう一つ大事でございますので、そういった情報をベースに、邦人の方々との連絡体制をきちんとつくって、住所を把握し、あるいは安全情報について定期的にきちんと連絡ができる体制をつくっておくということがあると思います。
 特に、NGOの方を通ずる復興活動というのは非常に重要でありますから、そういった方々の支援、これも公館の重要な事項だと思います。
 それぞれ、使命感に燃えて、きちんとした仕事を今までもやってくれていると思いますし、今後もそうありたいと思っています。
山谷委員 この「基本方針」の中に、「積極的かつ主体的に寄与するとの立場に立ち、」という中には、本当に情報収集ということが大事になってくると思いますけれども、協力支援活動として、艦船による艦船用燃料の補給を主としてきたわけでございますが、どういう情報収集で、そしてまた、今後何か新しいメニューの展開というものが予定されているのかどうか、あればお聞かせください。
石破国務大臣 これは私どもに限って申し上げますと、先ほど浜田委員にもお答えをいたしましたが、現在、新しいメニューというのを検討しておるわけではございません。
 ただ、状況は刻々変化をいたしますので、これがニーズとも相まって、何が一番私どもとして必要な責任の果たし方なのかということは常に検証し、検討してまいりたいと思っております。
山谷委員 私も「スパイ・ゾルゲ」を見ましたけれども、日本はスパイ防止法もないし、やはり情報収集体制のあり方というのを考えていかなければいけないと思うんですが、三月二十八日、情報収集衛星の打ち上げが成功したということで、解像度一メートル、これは、分析、評価する人材というのがなかなか、育つまでに何年かかかる。
 今、何人ぐらいの体制で、どういうような形でやっていらっしゃるんでしょうか。
福田国務大臣 ちょっと、予告がなかったものですから人数を把握していないんですけれども、大体三百人強だというように記憶しております。
山谷委員 これは各省庁が参加して運営していくわけでございますけれども、自民党の部会の中でも、運営体制が不十分じゃないかというような意見も上がったようでございますけれども、今後の運営体制のあり方も含めて、どのように、この情報収集体制、情報収集衛星のあり方、それから、もっと大きく情報収集体制のあり方について、お考えがあればお聞かせくださいませ。
福田国務大臣 情報収集は、安全保障の問題もありますが、また防災上の問題、それから気象とか、そういうものを把握するというようなことにとって非常に有効であるというように承知しております。ですから、そういう情報を網羅していかに役立てていくのかということ、広く日本国家の安全保障ということで役立てていく、こういうことになります。
 そういうことで、平成十三年に内閣衛星情報センター、これを設置いたしまして、本年三月に情報収集衛星打ち上げということを行って、それが徐々にその成果を今上げつつある、こういう情勢でございます。
 これから、先ほど御指摘の体制、特に人的体制、この整備は非常に重要だと思います。また、これは非常に経験を要する仕事のようでございまして、その辺の能力を蓄積していかなければいけないということでありますので、今すぐすべて有効にということになるのかどうか、できるだけそういう時期が早く来るようにということで、懸命な努力をいたしておるところでございます。
山谷委員 最後に、一部繰り返しになるかもしれませんけれども、石破防衛庁長官に、これまでアフガンでやってきた実績等々をどのように評価なさっていらっしゃいますでしょうか。
石破国務大臣 実績につきましては、先般も委員会におきましてお答えをしたところでございますが、もう一度申し上げます。
 現在、インド洋北部におきまして、護衛艦「こんごう」「ありあけ」、補給艦「はまな」らが活動中でございます。平成十三年十二月二日以降、本年七月一日までに、艦船用燃料を米英軍等の艦艇に対しまして、二百六十七回、三十一万三千キロリットルを提供いたしております。また、平成十四年二月二十一日には、補給艦「とわだ」によりまして、米艦艇に対しまして物品、これは予備品、日用品等、約一トンでございますが、輸送を実施いたしております。また、タイの建設用重機等の輸送のため、護衛艦「いかづち」が本年二月三日に横須賀、輸送艦「しもきた」が同年二月四日に呉を出まして、タイからインド洋沿岸国まで当該輸送を完了し、同年三月二十八日にそれぞれ横須賀及び呉に帰港したところでございます。
 実績というのはそういうことでございますが、要は、非常に多い回数、多くの国の艦艇に対して補給を行っておる、それはもう委員もよく御案内のとおり、非常に厳しい環境の中で正確に任務を行っておるということでございます。各国からも非常に信頼され、頼りにされております。そういう中におきまして、私どもは、私どもとしてできます国際的な責務を隊員たちも本当にきちんと果たしてきたと思っておりますし、また、先生初め多くの先生方の御理解、国民の御理解のもとにこういうことができておるというふうに考え、感謝をしておるところでございます。
山谷委員 九五年のカナダのハリファクス・サミット以来、テロ対策閣僚級会合が開かれて、そして今度の九・一一というような形で、本当に世界の各国がテロリズムとの闘いを団結してやっているわけでございます。我が国を含む国際社会の平和と安全の確保に資するため、憲法の範囲内でできる限りの支援、協力を行うことが重要であるというふうに考えますので、今後の深い議論の高まりを願っております。
 ありがとうございました。
高村委員長 次に、佐藤公治君。
佐藤(公)委員 佐藤公治でございます。
 本日は、今までのいろいろな専門家の方々の議論を聞かせていただいた上で、重なることもあるかもしれませんが、整理をしながら、一つのケースを想定しながら質問させていただければありがたいと思います。
 先般、防衛庁長官ともお話をし、交戦権のことについての御教示みたいなお話もございましたが、それもこの中に入れ込んで聞かせていただければありがたいと思います。
 官房長官は後半にいらっしゃらなくなるということですけれども、前半、私の質問に対してできる限り答えていただけたらありがたいと思います。本来は防衛庁長官、外務大臣が答えるべきところかもしれませんけれども、やはり官房長官の認識というものを聞くため、わかるためには、できる限り答えていただきたいというふうに思います。
 まず最初に、戦闘地域という一つの地域が存在する、その中にアメリカ軍に守られている非戦闘地域というようなところ、こういうようなことというのは、この前も参考人の皆さん方からもお話がございました。今の現状でいえば、空港、空港周辺ということもあり得るのかもしれませんが、全体が戦闘地域、しかし、アメリカ軍に守られているという部分は、ここは内部は非戦闘地域、こういうようなケースというのはあり得るんでしょうか。
石破国務大臣 そういう地域は非常に考えにくいことだと思っております。また、私どもの中で、この法案をお読みいただければおわかりいただけますように、戦闘地域という概念は、この法案上存在をいたしておりません。書いてありますのは、我々が行う活動は非戦闘地域でなければいけないということが書いてあるわけでございます。ですから、非戦闘地域であるところと非戦闘地域でないところ、これは法的概念としてそういうものが存在をいたします。
 委員御指摘のように、では、周りじゅうみんな戦闘地域である、その中で、アメリカ軍に守られておることによって、そこにおいては戦闘は存在していないという概念が、それはつくろうと思えばできないことはないのかもしれません。しかし、そこがエアポケットのように、台風の目のように、そこは戦闘地域における非戦闘地域なのだよということを概念として創出、創出といいますかつくりまして、では、だからそこで活動ができるのだよということは、なかなか設定しにくい状況だと思っております。
佐藤(公)委員 今、設定しにくいということをおっしゃられましたけれども、あり得ることもある、そういうふうにとらえてよろしいんでしょうか。イエスかノーかで結構です。
石破国務大臣 全くないとは申しません。しかし、実際問題、そういう地域を非戦闘地域であるというふうに指定して、そこにおいて我々が活動を実施するということは、現在のところは非常に想定しにくい状況だということを申し上げております。
 概念として全くないか、イエスかノーかと言われれば、これは、大変あいまいな答えで恐縮ですけれども、全くないとは言えないというお答えになろうかと存じます。
 しかし、実際に、周りじゅうは戦闘地域である、アメリカ軍に守られておってそこは非戦闘地域である。確かに、そこのピンポイントの地域においては、そういうような国際的な武力紛争またはそれが発生するおそれがないかと言われれば、全くないとは申しません。
 ただ、それを私どもは、これも何度も委員にお答えをいたしましたように、現に発生していない、また活動する期間内において発生することが予測されないという二つの意味を持っております。そうしますと、そこにおいて予測もされないということが言えるかどうか、そういう点から考えましても、設定しにくいというお答えを申し上げました。
佐藤(公)委員 では、一応仮定として、戦闘地域の中に非戦闘地域というものがあったとする。これは実際、周りが非戦闘地域でも設定としては構わないかもしれません。ここに、長官のおっしゃられる山賊とか、まあ部族だかわかりませんけれども、そういったのが攻撃をかけてきた、なだれ込んできたとします、その米軍に守られているところに。そこで自衛隊も活動していたとします。ここに、長官の言われる山賊がなだれ込んできた。まさに米軍と日本軍、相入り乱れて、その山賊との間でドンパチが始まってしまった。攻撃を受けてドンパチが始まってしまった。
 こういうとき、まさにここで、この前お話ししていた交戦権のことですね。ドンパチが始まったときに、アメリカ軍が日本の自衛隊に関して、武器使用に関しての基準、またはアメリカ軍のまさにROEと言われるそのルール、一つのマニュアルに沿ったもの、どういう状況で引き金を引くのかお互いがわかっていなければ、最悪のケースは、アメリカ軍が横にいる日本軍に同じような感覚で期待をし、だけれども、期待をしたけれども引き金を引いてもらえなかった、おかげでアメリカ軍が何人も負傷し、また亡くなる、こんな事態も想定されると思います。
 こういうことを考えれば、当然、イギリス軍、アメリカ軍、そういったマニュアルに関してのすり合わせ等は私はしていると思いますけれども、日本も当然そういう形で、ある程度の最低限のすり合わせというのは、日本は、まさに防衛そして緊急避難的というような幾つかの目的、これはアメリカ軍とは違うといっても、最低限の武器使用に関してのすり合わせはすべきですし、そうしないと、いざというときの対応というのができないと思いますが、長官、いかがでしょうか。
石破国務大臣 委員は交戦権とおっしゃいましたが、交戦権というのは憲法九条二項で出てくる概念でございます。私どもは、交戦権という言い方はいたしておりません。そして、交戦規則という言い方もいたしておりません。ROEもしくは部隊行動基準というような言い方をいたしておりますので、念のため申し上げておきます。
 そこで、日本軍という言い方も私どもはいたしません。あくまで自衛隊という言い方をいたしておりますので、これも念のため申し上げておきます。
 その上でお答えを申し上げますと、これは、私どもは海外において当然武力の行使をしないということが前提でございます。そしてまた、ともに戦う、ともにドンパチということも考えておりません。私どもがやりますのは、委員もまさしく御指摘になりましたように、自分の身を守るための必要最小限の武器使用を行うということでございます。これは明らかになっておることでございます。
 そしてまた、仮に、アメリカ軍に守ってもらっておるとか、アメリカ軍と一緒に行動しているということを設定いたしましても、アメリカの指揮のもとに私どもは行うわけではございません。あくまで日本が日本として行動するということも累次お答えをしておるとおりでございます。
 そうしますと、すり合わせということが何を示すのかがよくわかりませんけれども、私どもとしてどこまでできるのか、どこまでできないのかということを考えますときに、諸外国がどのようになっているのかということを、もちろん全部明らかにするわけではございませんし、これはもう軍対軍、軍同士のいろいろな情報交換というものもございます。そこにおいて、任務が円滑に遂行できるように、しかし、我が国は、あくまでどの国の指揮を受けるわけでもございません。そして、ともに戦うということも想定をいたしておりません。十七条に定められておりますように、自分の身を守るために必要最小限という武器使用を行うときにおいて、それがどのようなものであるのかということを、それは、最低限理解し合うということはございます。
 しかし、それは、もう何度も同じことを申し上げますが、ともに武力行使をするわけでもございませんし、我々は、必要最小限、自分を守るためにということでありまして、そこのところを各国にきちんと御理解いただくということは必要なことだと考えております。
佐藤(公)委員 では、最低限のすり合わせというか、お互いの武器使用に関しては話し合いは持つということですね。
石破国務大臣 これはすり合わせということが、それによって我々の内容が変わるのかといえば、そのようなことはございません。それは、委員のおっしゃいますすり合わせということがそういうことを含むとするならば、我々は十七条というものの域を出るものではございません。
 したがいまして、我々が使っております部隊行動基準、ルール・オブ・エンゲージメントというものを、それは相手に対しましても全部オープンにするというものではございませんが、理解をいただくという意味においての行為、これはあり得ることでございます。
佐藤(公)委員 つまり、理解があり得るということは、最低限の武器使用に関しては話し合うということ、これはまさに、いざというときには必要なことだと思います。しかし、これは、政府の今の解釈の状況からいえば、集団的自衛権の事前打ち合わせみたいにもとれるケースというのがあり得る。だから、そういう部分を十分注意して長官は今御発言をしているというふうに私は思います。
 では、ドンパチ始まってしまった、そういう中でまさに正当防衛、まあ防衛ということに関しての自衛隊の武器使用の根拠というのは刑法三十六条の正当防衛ということ、これを根拠として考えていくことになっているんでしょうか、いかがでしょうか。
石破国務大臣 三十六条、三十七条が根拠なのではございません。あくまで根拠になっておりますのは本法案の十七条でございます。三十六条、三十七条のとらえ方は危害許容要件としてとらえるべきものでございまして、これは根拠ではございません。
佐藤(公)委員 では、山賊が襲ってきた、目の前でアメリカ軍がその山賊によって殺されようとしている。その山賊に対して自衛官はどういう立場でどういうふうに対処したらいいのか。本当にもう今にもその山賊はアメリカ軍を殺そうとしている、銃によって殺そうとしている。そのときに自衛官はどうしたらいいのか。
 一つのケースとしては、じっと見守っている。もう一つのケースは、すぐさま自分の持っている銃によってそのイラク、まあイラクの人というのは言い方がちょっと、決めつけるとよくないかもしれませんけれども、山賊を背中から撃つ、そういう行為が許されるのか、できるのか、そこの部分というのはいかがなんでしょうか。
 というのは、私はさっき刑法の三十六条と言ったのは、ここにおいて「他人の権利を防衛するため」、こういったものが趣旨に入るというのであれば、ここを根拠として、その他人、つまりアメリカ人、アメリカ軍の権利ということを考えれば正当防衛の範疇内に入り得るというふうに私は思った部分があるんですが、そういったケースの場合はいかがなんでしょうか。
石破国務大臣 正当防衛の要件を満たします場合、つまり急迫不正ということも含みますが、急迫不正というものを満たす場合には、それは刑法上は違法性阻却事由でございますから、刑法上の違法性が阻却されるということはあることでございます。
佐藤(公)委員 ということは、では、自衛官がその山賊に対して後ろから、背中から撃ってしまった、この場合というのは、もう撃っちゃったといった場合にはどうなるんでしょうか。それは認められることになるんですか。
石破国務大臣 個々のケースでどうなのだということにつきまして具体的にお答えをすることは、これは不適切だと思っております。それはその場その場において、それはいいかげんなことを言っておるわけではなくて、正当防衛、緊急避難というものが満たされるかどうかということにつきましては、いろいろな裁判例もそうでございますが、いろいろな、それが急迫であったか、急迫不正をどのように考えるか、また、委員が御指摘のように、では背中から撃つことがどうなのだということは、そのときの状況がどのように設定されているか、これは、裁判におきましてもそうですし、非常に詳しい検証がなされた上で決せられるべきことでございます。
 したがいまして、これはいいかげんなお答えを、不誠実なお答えということをしているわけではなくて、今この場において、ではそういうケースについてはどうだということはお答えをいたしかねるところでございます。
佐藤(公)委員 これは、今、人ということでお話ししましたけれども、まさに、山賊がロケット砲を持っている、無反動砲を持っている。目の前に米軍歩兵を輸送中のトラックがある、それをねらっていた。もうまさに引き金を引こうとしている、後ろから自衛官が撃った。現地ではまさに英雄ですね、助けたということで。それが日本に帰ってきたらば犯罪者扱いになることもあり得る。こういうことがあってはいけないということを僕は思っているし、言っているつもりなんです。
 そういう意味では、中途半端なちんちくりんな法律は出すべきじゃないということをずっと言っているんですよ。ちんちくりんですよ、もう。
 では、この次。後ろから撃ってしまった、それを見ていたイラクの山賊の人たちが、このやろう、この自衛官ひどいやろうだととっ捕まえて捕虜にされちゃった、連れていかれちゃったとします。このとき、今までの各委員からの質疑の中で、これはジュネーブ条約に適用しないということでの川口大臣からの御答弁がたくさんありましたけれども、では、ジュネーブ条約の捕虜の規定の中に紛争当事国とありますよね。紛争当事国というふうに盛んにおっしゃっておりましたけれども、では、この紛争当事国というのは一体全体だれがどういう形で決めるんですか。
林政府参考人 ジュネーブ条約そのものが、基本的に戦争その他の武力紛争に適用があるというのが基本になっておるわけでございますけれども、そういう武力紛争の文脈におきまして紛争当事国という言葉がジュネーブ諸条約の中にあらわれております。
 そういうものに当たるかどうかということでございますけれども、基本的には、今のようなジュネーブ条約の立て方から、紛争当事国とは、武力を用いた争いの当事者たる国を指すものと考えております。では、ある事態が実際にそういうジュネーブ諸条約上の武力紛争に当たるか否か、その当事国になっているかどうかということでございますけれども、については、諸条約に照らして個別具体的に判断されるべきものと考えられます。
 では、こういう条約の実施解釈というのは一体どういう基準でだれがやるんだということでございますけれども、そこは一義的には、関係締約国により、条約の趣旨、目的に照らして判断されるというのがジュネーブ諸条約の仕組みということでございます。
佐藤(公)委員 つまりケース・バイ・ケースで、紛争当事国というのはいろいろな国や人によって変わってくるということですね。だって、そういうことでしょう。通常の場合ですと、皆さんも議論の中で御存じのように、相手国もしくは国に準ずるという形は残っている。しかし今回は、通常、普通交戦の場合は残っていても、今回はない。こういう部分も含めて、どういうふうに紛争当事国、当事者というものを決めていくのかはケース・バイ・ケース。
 では、イラクの残党の人たちが、例えばフセインさんも捕まって幹部も捕まったとする、司法という国際司法上で裁かれることになる。彼らにとってみれば紛争当事国、彼らにしてみればアメリカもイギリスも日本もみんな当事国だといったら、それは、彼らの主張の当事国というふうに言われるケースだってあり得るわけです。第三者がそれを全部を見てやってきたことを考えれば、日本では幾らそれは後方支援だ、別々だ、違うと言っても、第三者が判断した場合には、これは全部当事国としてみなされることもあり得るということも可能性としてあるわけですよね。それからしたらば、日本のこういった今の国会での議論というのは、もしかしたら世界に通用しないということも十分あり得る、こういうことですよね。
林政府参考人 一義的に、関係締約国により、条約の趣旨、目的に照らして判断されるべきだというふうに私が申し上げたときに、締約国が好き勝手に、恣意的に解釈していいということを申し上げているわけではございません。これは条約につきましても、その解釈の仕方というのはおのずと……(佐藤(公)委員「そんなこと言ってないですよ」と呼ぶ)おのずとルールがあるわけでございます。その文脈によって、その趣旨、目的に照らして誠実に判断するというのが、それは条約法条約なんかにもあらわれております条約解釈の基本でございまして、それは、およそ武力紛争、武力の行使をもう明々白々にしておる者が、いや、武力の行使をしておりませんと、そういったことは通用しないわけでございます。
 我が国の立場として御説明を申し上げておりますのは、我が国は武力の行使に当たる行為を一切行いません、それから、その行動がいわゆる非戦闘地域で行われるということになっておるわけなんですから、これは念のため、そういうことになっておりますので、そういう意味におきまして、ジュネーブ諸条約上の紛争当事国、武力紛争の当事国になることはあり得ないということを申し上げておるわけでございます。
佐藤(公)委員 それは局長が判断していることであって、第三者の方が見て、やっていることを見たら、武力行使に匹敵するということになり得る、こういうこともあり得るということを今言ったようなものだと思います。
 では、そういう中で、川口大臣、捕虜になりました、ジュネーブ条約は適用されません、この人たちは軍人じゃないですからと。では、捕まえた残党の人たちが、イラクも当然ジュネーブ条約に加盟している国です、この残党の方々がジュネーブ条約を遵守してきちっと扱っていた場合、この場合に、そのときでも、イラクのそういう残党に対して私たちは、それは適用を外せということですか。これは外せということになったら、極端なことを言ったら、その自衛官の人権を放棄するようなものになりかねないんです。
 どういうことか。もしもジュネーブ条約から外れたら、人を、イラク人を殺した犯罪者として扱われた場合には、その場で抹殺されます、死刑にされます。そういったケースはあり得るんですか。大臣はずっとこの前からそういう答弁をしているじゃないですか。では、それを外すようにする、返してくれと言う。外した段階で、返してくれというよりも、もうその場で、犯罪者扱いしたら、向こうだったら死刑にされちゃう可能性がある。
 こういうような、自衛官の人権を無視したようなことのケースというのはおかしいんじゃないんですか。大臣、いかがですか。時間がないので、簡単にお願いします。
高村委員長 条約局長。
 外務大臣、私のあれに従ってください。条約局長と言っています。
林政府参考人 捕虜についてのジュネーブの第三条約の適用ということでございますけれども、これは紛争当事国の軍隊の構成員ということが明定されておるわけでございまして……(佐藤(公)委員「だから、それはイラクの残党がそう見てそう扱っている」と呼ぶ)イラクの残党とおっしゃる。これは、ちょっと実態の問題と法律の問題とを重ねておっしゃっているんだろうと思いますけれども、イラクの残党というのがイラクの国家を代表してジュネーブ条約を遵守するような立場にあるのかどうかということ自体もいかがなものかと思いますけれども、いずれにしても、私どもとしては、そういう人間は、我が国の自衛隊の要員を、捕虜として抑留するどころか、そもそも捕獲すること自体が不法だというのが私どもの立場でございまして、捕虜ということになれば、それは戦闘の終結まで抑留する権利は向こうにあるわけでございますけれども、そういう立場は認められない、直ちに釈放されるべきだというのが私どもの行うべき主張でございます。
佐藤(公)委員 もう時間がないので、この議論、ずっとしたいんですけれども、あと二、三分しかないので、もうあと最後一問させていただいて終わりにしたいんです。
 では、襲われた馬賊だか部族だか、二つのケースが考えられます。それをとっ捕まえたらば国に準ずる者だったという場合にはどうなるのかということが一点。
 そして、今まで議論の中で、自己完結、自己完結というが、襲われた、まさにこっち側では自衛隊員の足が飛び、こっち側では腕がもがれ、そしてアメリカ軍が本当に腹を削られ、頭が削られる、いろいろなケースで、もう本当にみんなが苦しんでいる状況、地獄のような状況になっている。このときに、では、どうやってその人たちを手当てするのか、輸送するのか、または高等な外科手術をするのか。自己完結型というのであれば、最悪の事態を想定したことでのすべての準備だと思います。そこまでのことを考えているのか。
 では、長官もしくは官房長官も含めて、自己完結型という定義は、一体全体何を前提にして自己完結型というんですか。アメリカ軍が千人程度と言ったから千人程度の枠組みの中でやっているんじゃないんですか。いかがですか。
石破国務大臣 私どもは、とっ捕まえるということはいたしません。仮にそういうような状況になったとするならば、それは現地の治安当局に身柄を引き渡すということは行いますけれども、とっ捕まえるという行為はいたしません。(佐藤(公)委員「後からわかったらじゃないですか」と呼ぶ)
高村委員長 続けてください。
石破国務大臣 よろしゅうございますか。
高村委員長 答弁を続けてください。
石破国務大臣 答弁を続けさせていただきます。
 それで、自己完結とは何を指すのかということでございます。
 それは、では、大病院の、本当に大手術をしなければいけないようなセットまで持っていくのかということで自己完結というふうに申し上げているわけではございません。もちろん医官も行くことになるでありましょう。そしてまた、衛生の隊員も行くことになるでありましょう。
 しかしながら、それではパーフェクトに全部できるかといえば、その段階においては、そういう能力を持っているほかの国の部隊にお願いをすることもございます。それは、すべてのものがパーフェクトで自己完結というふうに申し上げておるわけではございません。しかしながら、現地において、水あるいは食糧、電力、薬品、そしてまた最低限必要な医療、そういうものができるような意味で自己完結、そういうことで申し上げております。
 パーフェクトな意味で自己完結かということに言われますと、それはもう本当に野外手術セットを全部持っていかなきゃいけない、こういうようなことになりますが、それが本当に適当なことなのかということは、それは状況を見て、それこそ基本計画の中で考えていくことになります。
 自己完結型というのはすべてパーフェクトを指すのかと言われれば、必ずしもそういうことを指すものではございません。
佐藤(公)委員 もう時間です。聞きたいことは山のようにありますけれども、こんな入り口論のところでもめている。私は、審議の継続を強く要求したいと思います。
 そして、きのう、私どもの達増委員がふまじめと言いました。かなり皆さん怒られたと思います。私は不誠実と言いました。石破長官、そしてここにお座りの中谷さん、あなた方は、わかっているのにやらないというのは一番不誠実なんですよ。わかっているのにやらない。それを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。
高村委員長 次に、末松義規君。
末松委員 今の議論、私ものめり込みたいんですけれども、多分一般質疑の最後の時間なんで、取り残した質問等についてちょっとお話をさせていただきます。
 まず、一昨日でしたか、暫定当局のブレマーさんが、最近のイラクの治安状況は極めて厳しいということで、この武装勢力は、組織的そして訓練を受けたプロフェッショナルのしわざだということで、これは長く続くということを言われました。これは、前にマキャナン米軍司令官がイラク全土がコンバットゾーンと言ったことと基本的には軌を一にしていると思いますけれども、このブレマー発言について防衛長官はどうとらえられますか。
石破国務大臣 ブレマー行政官の発言につきましては、七月一日のバグダッド等での米兵への襲撃につきまして、同日、フセイン政権を支持する勢力による計画的な襲撃という見方を強調いたしました。
 それで、先生もごらんになったとおりで、私も見たのですが、そこで言っていることは、彼らは軍や治安機関での経験を持つプロフェッショナルである、不満を持った人々による思いつきではないという旨を述べるとともに、こうした勢力は一般の国民からは孤立をしており、イラクの復興に影響は出ないという旨の発言をしております。
 そしてまた、私どもといたしまして、その背景となります事情、事実関係の詳細につきまして、現時点で具体的に承知をしておるわけではございません。
 他方、マキャナン中将のお話はこの委員会でも何度か議論になりました。これはもういたしません、このお話はいたしません。
 そうしますと、結局のところ、私どもとして、非戦闘地域なのか否かということを決しますときに、これはもう累次答弁をしておりますから、繰り返すことはいたしませんが、そこにおいて、アメリカがこのように言っておる、あるいはマキャナンがこのように言っておる、その中において、我々が非戦闘地域を我々の法的概念として定めるというのはどういうことなのかということを実際に定めますときに、きちんとした調査団を出して、かくかくしかじかで非戦闘地域であるということを明らかにする責任はあると思っております。
 アメリカ、ブレマー氏やマキャナン氏が言っておることがそのまま我々にとっての戦闘地域ということになるかどうか、それはまた別物だと思っております。これはもう、前も委員に御答弁したのかどうか知りませんが、アメリカの考え方、アメリカの例えばコンバットゾーンを戦闘地域として訳すかどうか、その訳し方の問題、それは委員も外交官でいらっしゃいましたからよく御案内のとおりでありますが、日本としてなぜこれを非戦闘地域というふうに定めたのかということは、きちんと御説明をする義務が私どもにあると心得ております。
末松委員 今、長官、もっともらしく答えられたんですよ。ただ、日本に情報がないというのが正直なところなんですよ。だから、米軍の司令官、あるいはまさしく占領軍のヘッドが言っている、ブレマーさんが言っていることは、当然それが参考にならないはずはない。彼らが言っていることが一番の大きな参考ですよ。
 さっき調査団を出されると言われましたね、長官。調査団、一回行ってどうするんですか。その逐次逐次で情勢が変わるわけじゃないですか。そのような答弁はやめてください。だから、きちんと、調査団じゃなくて、常時チェックし得る体制を政府の方でやるというのが当たり前の話じゃないですか。一回調査団を出したからいいという話じゃないでしょう。累次やったってだめなんですよ、これは。
 いいですか。これを続けているとまた一時間たっちゃいますから、きょうはこの次に進めたいと思いますが、では、戦闘区域というのは、むしろそれをやらないわけですよ。非戦闘区域がどこか、その中の実施区域がどこかというのが政府が勘案しているところだと思うんですけれども、その前にもうちょっと具体的に聞きましょう。
 例えば、ファルージャとかああいった地域ですね、中西部の非常に危険と言われているところ。それは非戦闘地域ではないだろうと私は思うんですね。では、アマラ、これは英軍兵士が六人やられたというところですね。これも戦闘地域ということで、非戦闘地域ではないだろう。
 そういった、例えばアマラなんかは、念のため聞いておきます、あれは戦闘地域ですか、非戦闘地域ですか、英軍兵士が殺された。そこはどういうふうに考えられますか、具体的に。
石破国務大臣 最初にお答えしておきますが、イラクに今、大使館を開いております。もちろん、調査団が見て、そのことだけということではございません。調査団の報告だけではなくて、現地の大使館、そしてまた、あらゆる情報というものを入れてやらせていただきたいと思っております。それは言い方が足りなければ、お許しをいただきたいと思います。
 特定の地域を指定して、ここは戦闘地域か非戦闘地域かということになりますと、それはもう、またいつものとおり、国または国に準ずる、こういうお話になってまいります。それが、米軍兵士が殺害を受けたところが、その殺害をした者が国または国に準ずる者ということであるとするならば、あるいは活動を行う期間においてそういうことが生起する可能性があるとするならば、それは非戦闘地域ではないということになろうと思います。
末松委員 いや、つまり、今一般論を言っているから、そこは楽な答弁なんですよ。ただし、そういった具体的な事実が上がってきたときに、英軍兵士が死んだ。ただ一回だけだ。二回、三回起こった。あるいは、例えば今言われたように、国または国に準ずる者が攻撃してきた。そう言ったかどうかというのはわからないんですよ、基本的にわからない。それは、私は国に準ずる者ですと言うわけがない。
 この前から議論しているように、あるときは略奪者になり、あるときはフセイン政権の残存勢力として活動する、これが実態なんですね。そういった場合に判別しにくい。では、判別できなければ、戦闘地域じゃないんです、非戦闘地域ですかと言われたら、ううんとうなるわけですよ。
 ではもうちょっと、アマラの例がわからぬけれども、バグダッドでまた何人か殺されたというのがありますね。またというのは最近じゃないですよ。バグダッドの一部地域で殺された場合に、バグダッド全体に非戦闘地域ということが当てはまらなくなるのか。つまり、私が言っているのは、例えば中部を中心に幾つか継続的に米軍兵士とか殺されていますよね、あるいは発砲事件が起こっています。どの辺、どれを指すのか、つまり、例えば、バグダッドの北部でそういった事件が二、三回起こったら、それはもうバグダッド全体が非戦闘地域から外れるのか。それはどういうことなんですか。考え方を教えてください。
石破国務大臣 あくまで考え方でございますが、私ども、答弁の中で、組織性とか計画性とか継続性とかいうことを言ってまいりました。そして、偶発的なものは含まないというふうに申しました。つまり、これが国または国に準ずる者であるとするならば、それは当然、組織性あるいは継続性を伴うものだと思います。
 そういたしますと、そういう組織性ですとか継続性、おっしゃいましたように、組織的かどうかは外見上非常に判別が難しい場合がございます。しかし、やはりそういうような組織であるとするならば、国または国に準ずるような組織であるとするならば、それが散発的であるはずがない。それは継続が伴うものでありましょうし、それがずっと続く、散発的なということはないと思うのです。それが組織性というものの一つの傍証みたいなことになるだろうと思っております。
 したがいまして、国際性、継続性、組織性ということを申し上げました。それがメルクマールということになります。なるだろうといういいかげんなことは申し上げません、それがメルクマールであります、それだけではございませんが。
 国際性と申しましたのは、それが一国にとどまらないということを担保するために国際性ということを申しました。
 日本があくまで、何度も申し上げておりますように、非戦闘地域という概念を設定いたしますのは、我が国が武力の行使をしてはならないという憲法上の要請を担保するために行うものでございます。したがいまして、そういうようなメルクマールというものを用いております。
末松委員 きょうの新聞で、そういった幾つかのメルクマールを防衛庁長官が置いたというのは読みました。それは一歩前進だろうと思います。
 そうすると、例えば米兵が固まっていて、十人ぐらい一挙に、どこかの、バグダッドの北でやられたといった、これは偶発的だから、ひょっとしたらこれからあるかもしれないし、ないかもしれない。でも、一回、つまり継続性がないということであれば、例えばバグダッドの北部でやられたとしたら、そこは非戦闘地域のままなんですね、そういう解釈ですね、今の考え方でいくと。
石破国務大臣 例えば、それが日々の糧を得るためということであればという答弁を何度かいたしました。それが、国または国に準ずる者でない者から日々の糧を得るために十人殺されたということであるとするならば、それは非戦闘地域の概念にまだ入る地域だと思っております。
 それは、委員よく御案内のとおりでございますが、二つあると思うんです。
 一つは、国または国に準ずる者であるか否かということは、非戦闘地域か否かということを決するということの一つのメルクマールというか、判断基準でございます。
 他方、襲われたときに、これが国または国に準ずる者なのか、それとも強盗のたぐいなのか、見ただけじゃわからないということが多うございますね。そのときに、もしもし、あなたは国または国に準ずる者でいらっしゃいますかというようなことを聞くようなことは当然ないのでありまして、その場合に、自分を守るために必要最小限の武器使用を行うということは、相手が国または国に準ずる者であろうがそうでなかろうが、これは十七条として同じ取り扱いになります。
 ですから、この二つのことを……(末松委員「それはわかっていますから」と呼ぶ)いや、先生はわかっていらっしゃると思いますが、そこのところが混同されないように私ども御説明をしてきたつもりでございますけれども、あえてここで機会をいただきまして申し上げさせていただきました。
末松委員 今、二つの概念があるんですよ。そういった戦闘地域、非戦闘地域、これは憲法上の要請を担保するもの。そして、今、後段でおっしゃったのは安全性の問題なんですよ。
 安全性について、武器の使用も含めてそういうことでやるということなんですけれども、さっきのお話でいくと、例えば十人米軍が殺されようが、そこは、散発的あるいは一回とかいうことであればこれは非戦闘地域だということをおっしゃった、そこが今政府の考えておられることだろうということであります。私は、そこは非常に問題にもなり得る発言だとは思います。ただ、概念上、私がここで申し上げたいのは、憲法上の要請というフィクションのややばからしさ、ここがそこでは明らかになるということでしょう。我々が実際に行くときに問題なのは、やはり安全性なんですね。
 そこで、では、もうちょっとこの議論を、少し角度を変えて議論していきます。
 自衛隊はまだいい、丸腰じゃないから、安全という面では。民間あるいはイラク復興職員、この安全性、これは私、いろいろとこの前議論させていただいて、私の方から提案ということで、安全区域の指標を具体的につくれと。
 さっきの防衛庁長官の発言だと、例えば戦闘地域、非戦闘地域、その四つのメルクマールだと、かなり戦闘地域が狭まるんですよ。そして、かなり多くの部分が非戦闘地域になっちゃうんですね。そういった中で安全か安全でないかという話をするときに、そっちの安全基準がないと、やはり邦人は、あるいはイラク復興職員は困るんですよ。
 だから、そこについて、それこそ具体的なメルクマールと、それから、この地域は比較的安全だよ、例えば危険度一だよ、こっちは危険度五だよと。例えば、米軍が十人殺されたようなところは、非戦闘地域とおっしゃったけれども、これは危険度十だよとか、そういったところの指標を具体的にやはりつくっていかないと、これは政府の責任の回避あるいは条文違反ですよね、安全上の配慮をすると言っているんだから。そうだと思いますけれども、それについてお考えをいただけますか。
福田国務大臣 自衛隊の派遣もそうでありますけれども、文民の場合には一層の安全を求められるということであります。
 そのために何をするか、どういうことをするかといういろいろな観点からの御議論あるんだろうと思いますけれども、地理的なことでもって、今御指摘のような、安全という地域を区分けするといったような方法も一つの方法かと思います。言うならば安全マップみたいなものをつくるべきかどうか。余り小さい区域の中で、例えば、バグダッド市内でここが安全でここは安全でないとかいうようなマップをつくるのはどれほどの意味があるかというふうに思いますが。
 いずれにしましても、その辺のことについては情報をよく入手して、そして、そこで生活するわけですから、生活上のことも含めて安全を図る、そういういろいろな情報入手をすべきだと思っております。
末松委員 一般論を言っているんじゃないですよ。
 私は、内閣の官房副長官補室から、「安全のために何らかの判断の基準を設けていくことも検討していくべきものと考えている。」ということをいただいて、これは理事会の席で配られたものなんですけれども、そういったことをきちんと、安全マップというものを含めて具体的に、安全基準、指標、それを考えていくべきものだということを、そこは態度をはっきりしてもらいたいんですよ。
 もう一度答弁をお願いします。
福田国務大臣 今でも、例えばイラクは危険だ、しかし、地域によって、都市によって安全度が違うというようなことで、外務省もそういう都市別の安全情報というものも出していると思います。そういうものをもう少しきめ細かくといったようなことで、いろいろ検討できる余地はあるんだろうというふうに思っております。また、安全のためにそれが必要だということであれば、当然しなければいけないと思っております。
末松委員 自衛隊は防衛庁長官の責任なんです、安全は。そして、こっちのイラク復興職員ですか、これは内閣の責任ですから、そこは、例えばもし万一のことが起こったときに、家族とかそういうことから、きちんと政府の責任はどこまで果たしたんだということをはっきりさせるためにも、あるいは逆に、家族の方から万が一そういった訴訟が、政府は安全対策を怠ったんだ、あるいは怠らなかったかという判断の基準のためにも、しっかりとしたそこの安全基準とそれから指標をつくってもらいたい。重ねて申し上げます。
 官房長官がおられなくなったので、審議官の方からお答えをいただきたいと思いますけれども、さっき官房長官が言われたように、イラクは一般邦人は渡航自粛地域なんですね。外務大臣、そうですよね。ちょっと確認してください。
川口国務大臣 退避勧告が出ておりまして、これは一般邦人の方ですけれども、渡航について、情勢が安定するまでの間、延期するということをお勧めいたしています。
末松委員 退避勧告なんですよ。行っちゃいけないんです。なぜかというと、危険だから。行っちゃいけないんです。
 しかし、これはイラク復興のために行かなきゃいけない人たちのための根拠法なんですね。ということであれば、まだ法律に担保されている方はいいんです、イラク復興職員あるいは自衛隊の人。一般で、企業で協力をしようという人たちは、退避勧告が出ているのに、イラクの復興を民間の方から支援しよう、こういった人の場合どうするんですか。退避勧告のままで行かせるんですか。
川口国務大臣 まず、退避勧告が出ているということを申しましたけれども、これは、ビジネスや観光を目的としている一般国民を対象にしているわけです。つまり、その背景としてございますのは、自助努力によって安全対策の確保をするということが限定されているからということであります。
 それで、この支援法に基づいて、この支援の目的で渡航する政府職員やこれに関連する邦人についてですけれども、その方々は、この公的な目的に照らして、現地大使館の支援や現地治安当局の協力、助言を得て安全確保のための諸措置をとることが可能であって、この危険情報は必ずしもこうした政府職員、邦人の活動を制限するということを目的としたものではございません。
 それで、この法案自体、私が担当ではございませんので、申し上げることが適切かどうかわかりませんけれども、それでは、そういう退避勧告が出ているところで、この法案の目的に沿って行く普通の一般の人に、行くということを強制できるかということが御質問の趣旨でございましたら……(末松委員「いや、行く人を保護できるかと」と呼ぶ)保護できるかと。ですから、そういうことでいえば、この退避勧告は、その人たちがこの退避勧告に基づいて行動してくださいということではない。退避勧告というのは、危険情報というのはそういう趣旨のものであるわけです。
 それで、安全をいかに確保するかということについて言いますと、これは、現地にございます大使館としては、できるだけ情報収集を行い、連絡ができる体制をとる等をやっていくということでございます。
 それ以外のことについては、ちょっと外務大臣の立場というか、官房長官の御所管になると思いますので、外務大臣として申し上げられるのは、現地の大使館としては、情報収集、その提供、そういったことを通じて安全を確保するための極力のことを行う、そういうことでございます。
末松委員 今言われたのは、確かに所管が違うので、私たちはできることしかできませんよと。ただ、退避勧告というのを変える気はない、依然として危険だと。それはそうでしょう。
 それに対して、これは通産大臣に聞いた方がいいのかもしれませんね。イラク復興に、より本当に実効的なものは企業の方々かもしれないですね。ただ、ビジネスですから、でも彼らは、行けと言ったら、自助努力で安全もやれよということなんですが、もしそういった、例えばフセインの残存勢力からいろいろと被害に遭って大変な状況になった、巻き込まれたといった場合に、これはあなたたちは単にビジネスでやっているんだから、お金もうけでやっているんだから、それはあなたたちが勝手にやってそうなったんだから仕方がない、そういう態度ですか。あるいは、見舞金的なものとか、政府が、この法でカバーはできないのかもしれませんが、どういう形で、配慮か何かするんですか、しないんですか。
平沼国務大臣 通産省とおっしゃいましたけれども、経済産業省でございますが、現在、経済産業省の通商政策局の企画官が一名、それから民間人が三人、これが、連合の暫定施政当局に比較的安全だと言われているバスラに行っているわけであります。さらに民間の方からも希望があるやに聞いておりますけれども、私どもとしては、政府職員、こういう一つのくくりの中で、民間の方々にも参画をしていただきながら、安全性というものをやはり非常に重視しなければいけません。しかし、あくまでも、連合の暫定施政当局の中での活躍、活動、こういうことでございます。
 いわゆるCPAと言っている組織の中に入ってやっているわけでありまして、そういう状況ですから、いろいろな危険があるわけでありますけれども、冒頭申し上げたようなバスラというような地域であるし、そういう中で安全性を確認しながら今一生懸命活動している。しかし、御指摘のような、そういう危険が起こった場合、これは我々としてはそういうことが起こらないような、そういう中でやらなければならない、そんなふうに思っているところであります。
末松委員 苦しい答弁です。
 二点あります。一つ、問題は、経産大臣は余り御存じないかもしれない、今CPAの中にと言ったんです。これは別に質問する気もなかったけれども、そこを我々として看過できない。
 これはどうなんですか。外務大臣、あるいは経産大臣の認識を問うた方がいいのかな、指揮下という形でやっているんですか、あるいはそういう形で派遣しているんですか、そこを、外務大臣ではない、経産大臣、もう一度。
平沼国務大臣 それではお答えをさせていただきますが、これは、広義に解釈すれば外務省の職員、そういう中で行っているということは御了解をいただきたい。(末松委員「民間人というのは違うんだな」と呼ぶ)民間人は、やはり政府職員という一つのくくりの中で行っている、こういうことです。
川口国務大臣 今平沼大臣がおっしゃったとおりでございまして、民間の方も、ただいま、外務省員として、私の指揮のもとに現地にいるということでございます。(末松委員「CPAの指揮下に入っているのかどうか」と呼ぶ)いえ、CPAの指揮下には入っていない。私の、外務大臣の命により現地に出張をしていて、外務大臣の命で行動をしている、このことは前から申し上げてあるとおりです。
 それからもう一点、先ほど委員が前提としておっしゃった部分について、ちょっと関係がありますので、一言だけ追加をさせていただきたいと思います。
 危険情報の件なんですけれども、六月の中旬に、外務省として担当者を現地に派遣いたしまして改めて治安状況の調査を行いまして、現在、外務省の中において、調査の結果を踏まえてイラクの中の一部地域について危険情報の見直しが可能かどうかという検討を行っておりますので、御参考までに追加を申し上げておきます。
末松委員 宣伝のようなことは言わなくて結構ですよ。もし一部だったら、どこなんですか。バグダッドですか、それとも、それ以外にも何か広範にやっているんですか。
川口国務大臣 今はちょっとそれを申し上げられる段階ではございませんけれども、検討が終わり、それが可能であるという結論に達しました段階で発表をすることになると思います。
末松委員 私が申し上げたいのは、細かいことは別にいいんですけれども、さっきのCPAの指揮下に入っていないということ、そこは再度確認させていただきたいと思います。
 それから、本当に渡航、つまり退避勧告が出ていて、それに対して、ビジネスでも行っているということに対して、やはりある程度の配慮がないと、それはすべて彼らの意識からいえばビジネスですけれども、でも、国のためにもなっていますよという意識もあると思うんですね。だから、そこはぜひ配慮をしていただきたいということ。
 それから、これは私も商社の方なんかとも話しましたよ。今アメリカが主に、ベクテルとかあるいはケロッグとかハリバートンとか、そういった企業がほとんど独占的な力を発揮してマーケットを占有している、復興市場は、経産大臣はよく御存じだと思いますけれども。
 それで、例えばベクテルが企業説明を、そのニーズの説明なんかをアメリカで行ったときに、二千社ぐらい集まったというんですよ、世界各国から。そこに入らないと仕事がとれない。そういう、アメリカは血を流したから、だから商売も全部独占できるというような風潮が広がっているというのを実態として聞きました。それはおかしいんじゃないかと私は思うんですね。それに対して、経産大臣は、何か日本の方で対応しましたか、あるいは全くしていませんか。
平沼国務大臣 今米国の例の御紹介がありましたけれども、今現地というのは、先ほど来の御討議に出ていますように、非常に治安状況がよくないし、また、いろいろ問題もあるところであります。
 ただ、今後の問題に関しては、やはり七〇年代から八〇年代に関して、相当、通信でありますとか医療ですとか、日本はインフラで貢献をした実績があります。ですから、そういった面に関しては、私どもは、今後必ずそういう要求も出てくる、こういうふうに思っておりまして、今アメリカがそういう形で、自分たちが戦いに勝ったんだから自分たちが全部仕切る、こういうことは、今後、それは各国のいろいろな意見等もあり、我々としては、今の段階では、そうやって実績を持っているけれども、大挙して行くような状況ではまだない。
 状況を見ながら、そして、必ず、そういう実績がありますから、日本が復興に貢献できる、そういう案件も必ず出てくる。そういったところには、いろいろな状況を見きわめながら私どもは参画していくべきだ、こういうふうに思っています。
末松委員 まさしくそこは、アメリカ一国で、お伺いを立てて商売をもらうんだという発想ではなくて、それはおかしいだろうということで、EUとかそういったところと連合を組んで、そこで、アメリカならアメリカに対してはっきりと物を申していく、そういった姿勢が私は非常に重要だと思うんですね。そこは、ぜひそういった形で、うまくアメリカを取り込んで、つまり、外堀を埋めていく、その努力をぜひしていただきたいと思います。そういった中で、日本が、ここの地域については我々がやってきたんだからそこはさせろ、復興として協力するんだという強い意思を示していけば、それはアメリカも配慮せざるを得ないと私は踏んでいるのですけれども、そういった努力をこれから頑張っていただきたいと思います。
 と同時に、もう一つこの観点で聞きたいのは、貿易保険。今貿易保険が五十億ドル程度滞っていて、イラクに対して日本の企業はなかなか貿易保険がおりないから行けないんだという声も聞くんですよ。それは、イラクには特例的に復興ということで新たな貿易保険を使っていく、私ども民主党の調査団の報告でも、そのことが必要だと思っているのですけれども、それで案として提出しているのですけれども、経産大臣、どう考えられますか。
平沼国務大臣 現在のイラクというのは、御指摘の貿易保険に関する多額の延滞債務を負っている、こういう事実があります。元本と利息で約三十六億三千万ドル、四千三百三十億円、こういう巨額なものがありまして、これに相当額のいわゆる遅延損金等が加算される、これだけ巨額のものがあるわけです。
 ただ、現状、先ほど来申し上げておりますけれども、政治体制が不安定かつ大変不透明である、こういうことがあります。対イラク貿易保険の全面再開を検討するためには、やはりこういった問題点の解決にある程度めどがつかないと私どもは無理だというふうに思っています。
 しかし、一方で、議員御指摘のとおり、当省として我が国企業によるイラク復興事業を支援することについても、これは非常に重要なことだ、こういうふうに思っておりまして、今の段階では、イラク以外の第三国や国際機関が、代金支払いでありますとかあるいは代金保証を行うような輸出案件に関しては、五月十九日からでございますけれども、短期の引き受けを再開しているところでありまして、順次状況を見ながら、私どもは、そういった復興に力になるような貿易保険、そういったことは状況を見ながら判断していくべきだ、こういうふうに思います。
末松委員 今度の九月の支援国会合では共同議長国になるという話ですから、そこはその名に恥じないように、ぜひ経産大臣がイニシアチブをとってやっていただきたいと思います。
 同じく、今問題になっている、きょうの新聞なんかに書かれていますけれども、イランのアザデガン油田ですか、自主開発原油にしようとしている、これがアメリカから横やりが入った。私が外務省にいるときも、イランのダムの関係でアメリカから横やりが入って、いろいろと苦労した経験を持っているんです。
 そこはどうなんですか、この新聞報道を見る限り、日本とイランとの関係は友好関係はあるわけですから、そこはイランに対して、確かに検証しなきゃいけないところは、言うべきことは言わなきゃいけないけれども、その関係をアメリカから一方的に今度言われて、そこでそのことを引っ込めてしまうような、そういうことはまさかないとは思うんですが、いかがでしょう。
 これから、特に、例えばイラクのシーア派の動きとイランの協力関係などによって、イラク国内でアメリカとイランがさらに衝突する可能性が出てきているんですよ。そういったところで日本の権益をきちんと守れるのか、そういった観点からも見ていますから、じゃ、それを踏まえて答弁を行ってください。
平沼国務大臣 御指摘がございましたアザデガン油田というのは、ちょうど二〇〇〇年の十一月に私どもは優先交渉権を獲得いたしまして、そして民間コンソーシアムが結成されて、締結に向けてずっと努力を継続中のことであります。
 そういう中で、今イランの大量破壊兵器の問題ですとか原子力の問題、こういった問題が出てきまして、新聞報道に出ているような、そういう話もあることは事実です。
 しかし、私どもは、イランに対しても、そういう国際的に不信を招いていることに対してはしっかりと態度で表明してほしい、こういうことは申し入れているところでございますし、また、ちょうど時期を同じくして、日本はアラビア石油が持っていたサウジアラビアの利権を失った。そうすると、エネルギー政策上、安定供給上、やはり非常に大切な案件であります。ですから、私どもとしては、イランが国際社会の不信を招かないような努力をしてもらうということを既にもう要求しておりますし、これからもしっかりとイランには言うべきことは言ってまいりますし、これは民間のコンソーシアムが今やっているところでございまして、私どもとしては、この大切な日本のエネルギー安定供給の交渉がうまくいくように見守っていきたい、こういうふうに思っております。
末松委員 見守っていくんじゃだめなんですよ。アメリカがもしそんなことで不当な、不当かどうかは知らない、圧力をかけるんだったら、日本のエネルギーの安全保障はあなたのところが保証してくださいよ、では、どれを日本にくれるんですかというぐらいの迫力で迫っていただきたいんです。我が国はエネルギーの安全保障からきているんですから。別にアメリカのために我々は生きているわけじゃないんですから。
 そこを、アメリカだってこういうふうに、激してくるとよくないんですが、イラクで武器の体系を、ソ連、フランス、中国の体系から全部アメリカの体系に変えようという動きが既に始まっていると言われていますよね。これはまた大きな、ビッグな市場なんでしょう。そして、さまざまなことが親米化してくる、イラクがアメリカ化してくるという、その過程にもあるのかもしれません、現実の冷徹な見方からいえば。
 そういった中で、アメリカが、次の標的はイランだというふうなこともいろいろなところからささやかれ始めているところなので、そういったところで、イラクで大量破壊兵器ということを理由にして攻撃を行って、いまだに見つけ出せないというぶざまな格好になっているわけですけれども、日本とイランとの関係も極めて歴史がありますから、アメリカに対して言うべきところをしっかりと言ってもらわないと、我が国のエネルギー安全保障から本当に問題だと思いますから、ぜひそこは頑張っていただきたいと思います。(発言する者あり)そうですね。では、そこの決意を言っていただきましょう。
平沼国務大臣 私どもといたしましては、日本のエネルギーの安定供給にとっては非常に重要な案件だと思いますので、民間のコンソーシアムが今一生懸命交渉をしておりますから、そういった中で、外交交渉ですから、多くは私はここでは申す立場にないわけですけれども、言うべきこと、やるべきこと、それはしっかりとやっていかなければならない、こう思っています。
末松委員 日本一国でやろうとするんじゃなくて、いろいろと、中国とか、あとはほかのヨーロッパともうまく連携をしながらやっていっていただきたいと思います。
 時間がなくなっちゃったので、聞きたいことがまた積み残すんですが、最後に防衛庁長官にお聞きしますが、例えば、自衛隊がイラク復興職員あるいは民間の人の警護というのはできないんですか。自衛隊がせっかく行くんだったら、その警護任務というのは、今、自衛隊の部隊、原子力施設とか米軍とか、そういったところは警護していますけれども、そういう物騒な、危ないところの邦人警護というのは全く考えられないのか、あるいは検討しているのか、そこをお答えください。
石破国務大臣 警護につきましては、PKO法のときも随分と議論をいたしました。
 本法案に基づき自衛隊の部隊が実施する業務には、警護というものは含まれておりません。御指摘のような、イラク復興職員ですとか本邦から来訪する要人または在イラク邦人の安全確保に当たることは、基本的に想定をされておらないのでございます。それは、警護の内容というのが非常に複雑多岐であって、業務を的確に遂行するための武器使用のあり方と密接な関係があることから、種々の観点より、憲法上の問題も含め検討すべき課題であるというふうに認識をいたしておるところでございます。
 これはPKO法の改正で、先生御案内のとおり、「自己の管理の下に入った者」というものをつくりました。例えば総理大臣であっても、これは改正前は守れなかった。しかし、自己の管理のもとに入ってくれば、それは総理大臣であれ、守れるという形にいたしました。
 それで、どういう形でやっていくか。もちろん、警護すべきだというお考えもあります、それをするべきだという話もありますが、そうしますと、そこにおいて自衛隊が何をするのだ、それがまた任務遂行のための武器使用との関連をどうするのだという議論はいたしております。ここは本当に私どもとしても、憲法に違背しない範囲で、どういうような形でできるかということは今後も議論をしてまいりたいし、こういう形でどうだということで、もしまた御教示いただけることがあれば、私も考えてみたいと思っております。
 現行の法案には含まれておりません。しかし、今後議論が必要なことだと強く認識をいたしております。
末松委員 まさしくそこは検討していただきたいと思います。
 それから、この法案で、自衛隊が行く、危ないから行くんだと。例えば民主党の法案だったら、危ないのに丸腰の職員だけが行く、これはだからおかしいんだという批判があります。自衛隊が行くからといって、別に今の警護任務をやるわけじゃない。結局、自衛隊は自衛隊が行くところに行くのであって、イラクの復興の職員はまた別のところでやるわけですから、ここは誤解があると思うんですね。
 そういった意味で、この法案、私自身は非常に厳しく見て、これはおかしい法案と考えますので、私ども民主党は反対だということを再度この場で確認をいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
高村委員長 次に、赤嶺政賢君。
赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。
 私は、きょう、総理の出席のもとに締めくくり総括質疑をやって採決にまで行こうとしている、こういう審議のあり方に強く反対をしてまいりました。公聴会を開くべき。それから、各党が現地に調査団を送ったけれども、その調査報告は極めて政府の立場を反映した調査報告になっているということが、野党の見てきた報告に照らしても明らかでありました。委員会全体として現地に行くべきだ。そして、とりわけ今の委員会の審議の中で、政府が、憲法で禁じられている武力の行使、あるいは武力行使と一体化しない、その根拠として設けている非戦闘地域、これは、野党がそろって、フィクションではないか、こういうことを指摘し続けてまいりました。
 そこで、これらの問題が明らかにならないうちに採決していくのは反対だということをまず冒頭申し上げておきたいと思います。
 そこで、その非戦闘地域で、突き詰めていくと国また国に準ずる者という話が何度も出てまいります。現在、イラクにおいては国はないわけですから、国に準ずる者ということになっていくわけですが、例えば、今、イラクにおいては、フセイン政権の残存勢力、これは、イラクの全土というよりも、比較的北西部あるいは中部を中心に活動している。報道上もそういう様子が見てとれます。
 国に準ずる者という場合に、イラク全土では行動していない、イラクの国土の中でも部分的な地域で行動している、そういう勢力というのは国に準ずる者ということに入りますか、それとも入りませんか。いかがですか。
石破国務大臣 国際性、計画性、組織性から見まして、それは国に準ずる者になることは排除されないと思っております。それで、それがフィクションとおっしゃいましたが、これは本当に法的な要請を担保するものでございまして、フィクションではございません。フィクションではありませんが、法的な概念でございます。
 そこで、組織性、計画性、国際性というものがメルクマールになるのはなぜかということは、先ほど末松委員のお尋ねにお答えをしたとおりでございます。そういうようなものを満たした場合には、それが地域限定のものであったとしても、国または国に準ずる者になることがすべて排除されるわけではないと考えております。
赤嶺委員 それでは長官は、今、北部や北西部で活動しているフセインの残存勢力、これは国に準ずる者というぐあいに認識しておられるということでいいんですね。
石破国務大臣 それは、具体的にどうか、これはどうかと言われて、それはそうです、ですから今の時点で北西部というものは非戦闘地域ではございませんというふうに断言をすることはできません。それはやはり個々具体的に判断をされるということになります。
 それは、基本計画をつくりますときに、それが国際性や組織性や計画性、そういうものから見まして国または国に準ずる者であるかどうか、そこで活動することが我が国憲法九条が禁じることに抵触をするかどうかということで個々具体的に判断をされるものでございまして、今この時点についておまえはそのように判断するのだな、国または国に準ずる者と判断するのだなと言われまして、そうでございますという御答弁はいたしかねるところでございます。
赤嶺委員 そういう地域的な限定はないと言いながら、一番活動している、地域で活動している勢力、これを国に準ずる者という認識もこれからの調査ということでありました。
 それで次に、その国に準ずる者という点で、石破長官は、指揮命令系統、これをおっしゃっておりました。具体的にどんな指揮命令系統がこれらの部隊に存在をしておれば、それが国に準ずる者ということになりますか。
石破国務大臣 それは、組織性ということを申し上げました。組織性を有しておるかどうかということを判断するときにも、指揮命令ということは一つの要素となり得るということでございます。
 では、その指揮命令が、例えば電話によって行われているのか、手紙によって行われているのか何なのか、それはわかりません。
 それは例えば、指揮命令系統というふうに申し上げましたのは、それがたった一人でやっている、たった一人でやっていて、だれの指揮命令系統も受けないでやっているという場合には、これは、国または国に準ずる者、組織ということにはならないだろうと思っております。
 それは、組織性というものを判断いたしますときに指揮命令系統ということを申し上げておるわけでございまして、それが例えばバース党の残党ということであれば、それは指揮命令に従ってやっておるということになるのでありましょう。それが個々の人がばらばらにやっているということであれば、それは、指揮命令系統というものがなく、組織性を具備しないということになろうかと思います。
赤嶺委員 そのバース党の残党という場合に、例えば、今行方がわからなくなっているフセイン、フセインから指示が出ていることが指揮命令系統の前提になりますか。
 それとも、それぞれ部隊が独立して活動しているという場面が十分に想定されております。その部隊部隊には部隊なりの指揮命令系統というのがあります。その場合には、これは指揮命令系統ということになりますか。
石破国務大臣 それは、サダム・フセインの指揮があるということは別に必要要件ではございません。あるとすればそれは大変なことでございまして、当然具備することになりますが、サダム・フセインから指揮があるかどうかが明らかでないからといって、別に組織性を否定するというものでもございません。
 要は、その地域において活動することが、我が国が国際紛争の一環としての武力の行使をしたというふうな法的評価を受けるか否かということでございます。
 そういう観点からいたしまして、そこにおいて行われていることが、その要素を、例えば組織性ですとか計画性ですとか国際性ですとか申しましたのは、それが憲法によって禁じられていることを我が国がやらないということをどうやって法的に担保するか、逆に言えば、それをやっているということを法的に評価されないようにするためにはどうするかということで、例としていろいろ申し上げておるわけでございます。
 ですから、これはどうだ、これはどうだというふうにそれぞれぎりぎりお詰めをいただきますと、それはお答えできないということが生じますのは、それが法的にそういう評価を受けるか否かということは、いろいろな要素を考えて評価されるからでございます。
赤嶺委員 ですから、そのいろいろな要素、先ほどからメルクマールという話もありましたけれども、いろいろな要素の中に、長官は、重要な要素として指揮命令系統というのが言われてきたんです。そして、フセインからの指揮命令というものはこれを要件とはしないと。
 それじゃ、今イラクでは、部隊ごとに活動している、部隊ごとに行動している、その部隊には部隊長による指揮命令というのが存在をしております。そういうものは指揮命令系統という要件に当てはまりますか、それとも当てはまらないんですか。
石破国務大臣 それは、指揮命令系統があればすべて国または国に準ずる者になるわけではございません。それが、国際性とか計画性とか申し上げておりますが、組織性というものを判断いたしますときに、指揮命令系統というものがあって組織性というものがあるのだろう、指揮命令系統がなければ単なる烏合の衆でございまして、それは組織とは申さないというふうに考えております。
 要は、繰り返しになって恐縮ですが、先ほど言いましたいろいろなメルクマールの中の一つとして組織性があり、組織性というものを構成するためには指揮命令系統というものが必要だろう。それが、委員がおっしゃいますように、部隊ごとに行動しておる、それはその部隊ごとの連携があるかどうかは存じません。しかし、その部隊なるものが、例えて申し上げれば、サダム・フセイン政権の再興というものを企図し、そしてそういうような思いのもとに米英と戦うのだということであれば、それは国または国に準ずる者による組織的、計画的な武力の行使の一つとして考えられることがあるのではないだろうかという例示のお話でございます。
 他方、それが、たとえ指揮のもとに行われていても、とにかく食べるものがないからですとか発電用の油がないからですとか、そういうことをやっておるとするならば、それは組織性は有しているけれども国際性も何も有していない、大きな大きな強盗の集団であるということの評価になるわけでございます。
赤嶺委員 それじゃ、今活動しているこれらの部隊について、フセイン政権の再興を目指して活動しているというようなものは、どうやって我々は認識できますか、あるいは政府はどうやってそれを認識しますか。
石破国務大臣 それはさまざまな要素によって認識をすることになります。
 ですから、例えば委員が今おっしゃいましたように、部隊ごとに構成をされているというようなことの認識が、それがすべて外形標準で出てくるとは限りません。我こそフセイン政権の再興を目指してやるんだというようなメッセージが発せられ、そういうようなお家の旗でも掲げてやっていれば別でございますが、そういうケースは恐らく余りないのだろうと思っています。ですから、それは、外から見て、明らかにそうだ、そうでないという判断ができるわけではございませんけれども、総合的な判断によって行うことになると思っています。
 ただ、それはもうでたらめに、これは組織的、計画的な国または国に準ずる者であり、これは違うんだということではなくて、今申し上げましたようなメルクマールというものを総合的に勘案しながら非戦闘地域というものを定めますときに、これは防衛庁長官が定めることになるわけでございます。それは、基本計画において非戦闘地域という概念をつくりまして、最終的には閣議で決するということになるわけでございます。
 それはもう地域地域によって千差万別、いろいろございますけれども、いずれにせよ、それは我が国が武力の行使を行わないということを担保するために定めておるものでございまして、だれが判断するのだということをお問いになれば、そういうようなお答えになると思います。
赤嶺委員 一たん設けた組織性、国際性、継続性というこの概念に基づいて現実に起こっているということを当てはめていく前に、やはり今イラクの現状はどうなっているかというところをきちんと精査して、そのことを国民に説明していくことが私は大事だと思っておるんです。
 それで、例えば最近アルカイダのことも言い出されておりますが、アルカイダは国に準ずる者に該当しますか。
石破国務大臣 それは、委員がおっしゃいますように、これは冒頭、浜田委員のお尋ねにもお答えをいたしましたが、そういうような情報というものは可能な限り御説明をしていくという義務というか責任を私どもは負っておると思います。
 それで、アルカイダは国または国に準ずる者かということでございますけれども、アフガニスタンにおきまして今暫定政権というものができ、統治が行われておるわけでございます。かつてのアルカイダというのは、それは国に準ずる者であったと思いますが、現時点のアルカイダは、かなり組織性というものを欠いてきた段階にあるのではないかと思っております。これは、アフガニスタン国土においてそういうことを現在、アフガニスタン国内において私どもは計画をいたしておりませんので、そのことについてどうなのだという確定的なお答えをするだけのすべての材料を持ち合わせておるわけではございません。
赤嶺委員 米国は、そういうアルカイダ勢力もいろいろ挙げ始めているわけです。
 そこで、組織性、計画性について具体的に聞いていきたいんですが、この間は道路を走行している米軍の車両がロケット砲で襲われました。バグダッドでそういう事件が相次ぎました。こういう勢力のこういう攻撃というのは、組織性、計画性、いわば不意打ちの攻撃が相次いでいるわけですね、米軍に対して、三十日、一日と含めてバグダッドで。そういうものについて、不意打ちの攻撃、これが組織的、計画的であるかないのか、そういうのはどうやって判断するんですか。
石破国務大臣 組織的、計画的の反対概念は何かといえば、それは偶発的であり、非組織的なものということになるだろうと思っております。
 何かの意図を達成いたしますためには、それは継続して行うことが必要でございます。不意打ちをずっと継続的に行う。テロの典型的なものは、手口の一つは、不意打ちをあちらこちらで予想に反して行うということだと私は思っておりますが、しかし、それが散発的なものであっては、それは継続的なものにはならない。やはり何らかの目的があり、その目的を達成するためには、散発的ではなくて継続的であることが必要でありましょう。そしてまた、その目的を達成するためには、組織性がなければできないことでございます。
 したがいまして、散発的にぽんぽんと起こっておるようなことは、それはやはり偶発的なものということに整理をされることになると思います。
赤嶺委員 私、この間、民主党の末松委員のお話を興味深く聞いていたんですが、イラク人の国民性について、いわば散発的に攻撃をしかける、ある目的を持って散発的に攻撃をしかけるというのもイラクの戦術としてとり得るわけですよ。単なる散発的なものをもって偶発性と評価する、だから組織的、計画的な攻撃ではないんだということにはならないと思いますけれども、いかがですか、それは。
石破国務大臣 それは私も、末松委員の御発言には大変関心を持って承ったことでございました。それは、長くイラクに勤務をされた末松委員ならではのお話だったと思っております。
 イラクについて、またはイラク人という、そういうような簡単な仕分け方は、これはできないというふうに私は教わっておりますけれども、いろいろな態様はあると思います。すべて我々の尺度で、組織性、計画性あるいは国際性ということではかっていい、一律にはかっていいとは思っておりません。ですから、イラクにおいて何がそれを指すものなのかということは、当然我々は考慮に入れていかなければいけないことだと思っております。
 ですからそれは、繰り返して申し上げますが、それぞれのメルクマールはございます。しかし、それを総合して、我が国が武力行使を行ったと評価されない、そのための制度的な担保として非戦闘地域で行うという概念を設定いたしておるわけでございます。したがいまして、個々のことについて、これはどうなのだ、これはどうなのだ、イラクと日本は違うぞ、確かにそのとおりでございます。そういうことを本当に総合的に勘案して非戦闘地域というものを設定し、その中で活動を行うということなのであります。
赤嶺委員 今までの防衛庁長官の答弁を聞いてみますと、とにかく、見分けは今の段階でつけられない、しかし、一つのメルクマールを持って臨むので、それは憲法違反にならないんだということがありました。
 そこで、ただし、イラクでは、長官も答弁されているように、子供がにこにこ笑いながら近づいてくる自爆テロもあり得ると。極めて偶発的な攻撃、とっさの攻撃、これが起こることは当然想定され得るし、その場合に、その攻撃をした相手が組織的、計画的であるか、それは先ほども、聞くわけにもいかないからわからないということを言っておりました。
 攻撃されてもわからないような場面というのが、先ほど自由党の佐藤委員からの質問にもありましたが、そのときにも答えておりますが、改めて長官の答弁を読み上げますと、「みずからの身を守るために必要な武器の使用であれば、それは認められることになります。もちろん、危険を回避し、そしてまた休止しということを行うわけですが、それをしながらも、」「撃たれているというようなことがあった場合には、自分の身を守るための武器の使用までこれは排除したものではございません。」と答弁しています。
 応戦する相手が国に準ずる者で、それが組織的、計画的なものであるかどうかというのはにわかには判断がつかない。つかないけれども、しかし、武器の使用は認められているんだ、とっさの攻撃を受けて避難する、そういうゆとりがない場合には、身を守るための武器の使用は認められているんだという答弁を続けてまいりました。
 結局それは、今のイラクの実情に合わせて考えていけば、応戦をするということになりはしませんか。応戦をした結果、それは武力行使につながっていく、そういうことになりはしませんか。
石破国務大臣 なりません。
赤嶺委員 それが何で、武器の使用であって、応戦にならないという説明ができるんですか。
石破国務大臣 それは昨日も法制局長官がるる答弁をしたとおりでございますが、正当防衛、緊急避難、これに限っているわけでございます。
 先生がおっしゃいますような応戦という概念に、正当防衛、緊急避難に限って認められる武器の使用というものは、九十五条はとりあえず置きまして、というものまで、それは応戦なのだ、武力の行使なのだ、集団的自衛権なのだというふうに概念を広げられますと、これは話がどうも食い違ってくるような気がいたします。
 それは、正当防衛、緊急避難に限って自己を守るための武器使用ということに限定しておるわけでありまして、応戦でもなければ武力の行使でもございません。ましてや、集団的自衛権という概念、これにつながるものでもございません。そういう意味で、ありませんというふうに答弁を申し上げました。
赤嶺委員 武器の使用という場合に前提条件がついておりまして、その場合には、そういう身の危険を感じた場合には一度回避しなければいけないわけですよね。回避するということがあるわけです。しかし、回避するいとまがない場合に武器の使用に移っていくわけですよね。
 そういう、回避するいとまがない、まさに今イラクで起こっている出来事の一つ一つは、回避するいとまがなくて、部隊ごとによる指揮命令系統の指揮に基づいて攻撃があるかもしれない。これはラムズフェルド国防長官も、プロの集団のやっていることだ、そういうことを言っているわけですよ。
 ですから、応戦そのものがやむことがない、そういう事態が発生し得るわけですよ。発生し得るんですよ。いかがですか。
石破国務大臣 発生し得ません。
 それはなぜかと申しますと、回避できるときは回避をするのです。そして、十七条というのは、回避をすることができなくて、自分の身に危険が迫った場合に正当防衛、緊急避難で武器の使用ができるということなのでございまして、これは、相手が国または国に準ずる者であろうがなかろうが、それは十七条の使い方というのは一緒なのでございます。正当防衛、緊急避難に限って自己を守るために武器の使用をするということは何ら変わるものではございません。
 しかしながら、それを、相手が国または国に準ずる者であった場合には、これは活動を一時休止し、危険を回避し、そして中断するかどうかということを防衛庁長官が決するわけでございます。あるいは実施区域の変更ということを行うことに相なります。
 それは、あくまで正当防衛、緊急避難において武器の使用を行うのでありまして、応戦という概念は、これは全く当たるものではございません。これは先ほど答弁を申し上げたとおりでございます。
赤嶺委員 結局、皆さん方が考えておられる基準あるいはメルクマールと言われているものは、いざ現実にイラクに行ってみたら、それは武力の行使につながるような事態に巻き込まれ得る、したがって、そこにおいて野党はこぞってフィクションだと言っているんだということを申し上げまして、時間が来ましたので、私の質問を終わりたいと思います。
高村委員長 次に、今川正美君。
今川委員 社会民主党・市民連合の今川正美です。
 今、他の野党からの質問に対して防衛庁長官などの答弁を聞いていまして、非常にやはり我が国の自衛隊という武装組織は他国の軍隊とはいろいろな面で違っていまして、とりわけ海外での武力行使はかたくこれを禁ずるということがあるだけに、石破長官おっしゃるとおり、憲法の許容する範囲内でとはおっしゃいますけれども、現実を見る限り、限りなく武力行使という概念の中に入っていかざるを得ない、それがイラクの現実だと私は思います。
 そこで、まず最初に、改めて私は確認のためにお尋ねをしたいと思いますが、今回の政府提出の法案では、戦闘行為ということを、「国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為」というふうに定義をしておりますね。あわせて、この国会答弁では、国または国に準ずる者による組織的、計画的な攻撃と説明をされております。これは、国際的な常識あるいは軍事上の常識からしましても、非常に狭く定義、解釈をされているように思います。
 そこで、改めて、この法案で言う戦闘行為というのはどういうことであるのかを簡潔に説明ください。
石破国務大臣 まさしく先生が今御説明いただいたとおりのことでございます。これは累次答弁を申し上げておりますので、ここで繰り返すことはいたしませんが、「国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為」これが戦闘行為というものでございます。
 何度も御答弁申し上げまして恐縮でございますが、この法案におきましては、非戦闘地域で行わねばならないということを決めてあるわけでございまして、この法案におきまして戦闘地域というものが想定され、法案が成り立っておるわけではございません。
今川委員 これは、そうしますと、イラクに派遣された自衛官が、おっしゃるように正当防衛や緊急避難で我が身を守る、当然のことでしょうね。しかしながら、今政府の定義なり説明による戦闘行為ということになってきますと、かつてのベトナム戦争とか中国における内戦、随分古い話なんですが、それに類似したような事態が生じたときに、これは戦闘行為ではないんだという形で、結果としてそういう内戦状態に介入していけるという可能性が出てくるんではないですか。そういう意味で今お聞きしたんです。石破長官、どうですか。
石破国務大臣 そういうことにならないようにきちんと気をつけなければいけないということだと私は思います。
 まさしくそういうようなケースがあって、日本が例えば、実は戦闘行為であるにもかかわらず、戦闘行為ではないなぞと思って撃ってしまったというようなことがないようにしなければいけませんが、いずれにせよ、私どもができます武器の使用というのは正当防衛、緊急避難にとどまるものであって、あくまで自己の身を守るための必要最小限の武器の使用が認められているだけでございます。
 例えば、国内のみにとどまる内乱とか内戦、これが戦闘行為に含まれるのだろうかということから考えてみますと、今委員が御指摘のようなベトナムあるいはかつての中国のようなものであります。全く国際性がなく、純粋に国内問題にとどまる対立、内乱、騒擾事態や国内治安問題にとどまるテロ行為、散発的な発砲や小規模な自爆テロのように組織性、計画性、継続性が明らかではなく偶発的なものと認められるものについては、それらが全体として国または国に準ずる組織の意思に基づいて遂行されておるとは認められない、よって戦闘行為ではないということになってまいります。
 要は、それがベトナムであればどうか、中国であればどうかということでございますが、私どもが考えなければいけないのは、自分たちのできることはあくまで自分の身を守るための武器使用なのだということに限定されるということをよくよく認識を私どもはしなければいけないというふうに思っております。
今川委員 私の質問と答弁の中身がちょっとずれているんです。
 今、最後のくだりでおっしゃったとおり、散発的な攻撃であるとかおっしゃいました。つまり、例えばあのベトナム戦争でも、南ベトナムの解放戦線というのは国及び国に準ずる者ではないんですね、そうでしょう。
 では、今も、五月二十七日以降は、イラクの現地で米兵は一日平均二人殺害されていっています。非常にそういう意味で危険な場所である。しかし、この地域は非戦闘地域のつもりで自衛隊が活動をしていたはずなのに、まさにいきなり襲ってくるということもあり得るでしょう、可能性としては。そうした場合には、今おっしゃったように、計画性と組織性、そういうものがなければ、たとえ身を守るためとはいえ、こちらが身を守るために正当防衛で相手を撃つ、これも戦闘行為ではないというふうにおっしゃるわけでしょう。そうでしょう。
 だから、そういう解釈を広げていけば、相手方が大規模であろうが小規模であろうが、大規模の場合にはちょっとあれだけれども、小規模といえども指揮系統なり組織性、計画性のないものは、それにどういう形で応じようが、緊急避難あるいは正当防衛という名目のもとに、いわば先ほどもありましたが、応戦してみてもこれは戦闘行為に当たらず……(発言する者あり)いや、死ねとはだれも言っていませんよ、我が身を守るためには応戦するでしょう、当然。(発言する者あり)いや、それを戦闘行為とは呼ばないのかと言っているんです。
石破国務大臣 恐縮です。私の理解が間違っておったらお許しをいただきたいのですけれども、相手が国または国に準ずる者であろうが強盗のたぐいであろうが、自分の身に急迫不正の侵害があった場合には、あるいは緊急避難の要件を満たす場合には武器の使用が認められる、そこまでなのです、私たちができますのは。自分の身を守るために必要最小限の武器の使用ができる。そして、もし逃げられる、回避できるというようないとまがあるとすれば、それは急迫性というものが存在しないという評価になるでありましょう。それしかできないわけでございます。それが戦闘行為ということになるということはございません。
 それは、それぞれの自衛官が個々に武器を使用するわけでございます。もちろん、指揮官がある場合には、上官ある場合にはその上官の命に従うということになっておるわけでございますけれども、それが我が国として戦闘行為をしたなどということになれば、それこそまさしく憲法九条に触れる武力の行使ということになってしまいます。
 でありますから、私どもは、十七条におきまして、こういう場合に限って武器の使用ができるのだというふうにきちんと決め、国会の御承認をいただきたいと申し上げておるわけで、国会の御承認をいただいて仮にそれが成立をした暁に、その法律に従って出ます自衛官は、それは法の遵守義務を負っております。
 その法の遵守というものが担保されなければ、これは私どもの自衛隊は法治がなされておらない、法における支配というものがなされておらない。私は、私どもの自衛隊がそのような組織だとは全く思っておりません。そういうことにならないような法的な担保も、そしてまた部隊の運用も厳格に行っておるつもりでございます。
今川委員 本来ですと、もっと時間があれば今のところは詰めてみたいんですが、ちょっと時間の関係であきらめざるを得ません。
 次に、二点ほどこれもお尋ねしておきたいと思いますが、一つは、今、例えばインド洋方面に約二十カ月間、自衛隊の艦船を出していますね。きょうは一々を申し上げませんが、四カ月から五カ月、補給艦などは半年近く派遣をされますと、やはり隊規の緩み、いろいろな問題が生じております。いずれにしましても、今度は海ではなくて、イラクという陸地に自衛官を派遣するというわけでありますが、そういう長期間の派遣による規律の緩みなどで、いろいろな事件や不祥事の発生もあり得ます。そこは想定しておかなければならないと思います。
 外国の兵隊は、軍刑法とか軍法会議で、間違いが起こったときには処罰をされますけれども、さて、自衛官の場合はどうするのかです。例えば、イラクの地で交通事故があったりあるいは暴発があったり、イラクの市民や同僚、場合によっては外国兵などへの誤射の場合、刑事責任はどうなるのか。
 いわゆる派遣される公務員には刑法の罪というのを適用する条項が、少なくとも派遣する以上はこの法案に必要なんではないかと思いますが、この点いかがですか。
石破国務大臣 これは、すべからく国外犯の規定をどうするかということでございます。ですので、我が自衛隊員の犯罪が国外犯に当たりません限りは、我が国船舶または我が国航空機内で行われたものでない限り自衛隊員には適用されない。例えば自衛隊法の百十八条、百二十一条においてもそうでございます。
 それは、まさしく委員がおっしゃいましたように、軍刑法というものを持っていないではないかということにも関係をすることだと思っております。ただ、これは憲法との兼ね合いにおきましてそういうことができるかどうか。それは、軍刑法というものがあった場合に、軍法会議というものが憲法上置けるか置けないかという議論と関連をするわけでございますが。
 これは、我が国において国外犯に指定をされていない犯罪というものを外国で行った場合には、それは懲戒処分の対象になることはございますけれども、それがストレートに適用されるということにはならない場合がございます。
今川委員 ちょっといま一度。
 私の聞き取り方が間違ったのかもしれませんが、いわゆる刑法第四条で言う公務員の国外犯の規定がございますね。あるいは、今おっしゃった、いわゆる自衛隊法第百十八条なり百二十一条で言う武器の損壊とかそういう規定はありますよ。問題なのは、これは釈迦に説法ですが、諸外国の軍隊と違って、我が国の自衛隊という武装組織は、おっしゃった憲法とのいろいろな兼ね合いがありますので、少なくとも専守防衛ということを基本原則に置き、今度のインド洋派遣、あるいは、このたびこの法が通ればイラクに派遣するということになってくる。そういうことは、自衛隊を創設したときはおよそ想定できなかったんですね。ですから、少なくとも、そういう形で派遣する以上はという立場に立てば、国外でもし自衛官がそういう過ちを犯した場合の規定はこの法案にきちっと明記をしておく必要があるんではないかというふうに私はお尋ねしているんです。いかがですか。
石破国務大臣 先生の御懸念は私どもも関心を持っておるところでございます。
 いずれにいたしましても、本法案に基づきます対応措置は、イラクの復興及び安全確保を支援するために実施するものでございます。対応措置を国外において実施する自衛隊員に対し、我が国の法律に規定する国外犯以外の罪について、あえて我が国の法律に基づく刑事罰を適用するよう本法案に規定する特段の必要はないというふうに考えておるところでございます。
 今先生が御指摘になりましたような業務上過失致死傷、刑法第二百十一条でございますが、それに当たる場合には、先ほどもお答えをいたしましたように、我が国船舶または我が国航空機内で犯されたものでない限り我が国の刑法の適用はない。これは、当該行為が、例えば刑法百九十九条あるいは二百四条、これに当たる場合には我が国の刑法が適用されることになる。これは、軍法の問題であるか、あるいは国外犯の規定そのものの問題であるか、両方あるのだろうと思っております。この法案、つまりイラク特措法というものに特有のものではございませんで、まさしく先生御指摘のようなことはございますが、しかしながら、だからといってこの法案にそういうものを盛り込むかどうか、それはストレートな議論にはなりません。
 これは、国外犯というものをどう考えるかということと同時に、軍刑法というものをどのように考えるかということなのでございまして、いずれにしても、現状は今御説明をしたとおりでございますが、私どもの隊員が仮に国外犯に定められていないものを行った場合には、我が国刑法で罰することはできませんけれども、それはそれにしかるべき懲戒処分ということを行うことになります。
今川委員 いや、だから、今おっしゃった言葉じりをとらえるわけじゃないんですが、しかるべき処分をすると言う以上は、やはりきちっと明記をしておかないと、政府の一存でやるということは無責任だと思いますよ。少なくとも、国会で慎重にこうした審議をする以上はそうすべきだと思います。
 特に可能性が高いのは、意図的にゲリラ兵的な者を撃つというんじゃなくて、そのつもりで撃ったのに、間々間違いがあるのは、間違って、近くにいた全く一般のイラク市民、民間人を撃ち殺してしまう、いわゆるそうした、業務上過失致死というのか過失傷害、あるいはそういうことが生じたときに、部隊が証拠隠滅を図らないのかどうか。
 いろいろなケースが考えられるわけだから、いや、自衛官が悪いことばかりするというふうな立場で言っているんじゃないんですよ。そういうケースがあるわけですから、米軍だって英軍だって。そういうのはきちっとやはり法案に明記をしておくということの方が、派遣される自衛官だって事のよしあしというのをきちっと判断できるんじゃないですか。それをお尋ねしているんです。
石破国務大臣 それは多分こういうケースなんだろうと思います。
 正当防衛だと思って、あるいは思ってかどうか、そういう要件を具備していなければ誤想防衛になりますが、その場合に、撃った、それがほかの人に当たっちゃったという場合はどうなのかといいますと、これは違法性がどう阻却されるかどうかという話でありまして、これが業務上過失致死傷に必ずしも該当するかどうか、それは難しい判断なのかなという気はいたします。
 むしろ、それはこういうことなんだろうと思います。
 まさしく典型的な業務上過失致死で、車を運転していてひいちゃったとか、そういう場合はどうなのだというようなことで、先生がおっしゃいますような、私どもの組織でそういうことはございません、長官の立場としてそう申し上げます。
 いずれにしても、そういうことが隠ぺいをされるというようなことがないようにということは、これはこの法律によって担保するといいますよりも、それはすべてに共通をいたしました我々の部内の規律維持の問題でございます。
 これは、法案にそれをきちんと書いておく、あるいは隠ぺいしてはならないというようなことをこの法案に特に書くわけではございませんで、これは自衛隊法にも規定はございますし、それは隊内の規律全体の問題でございます。
 いずれにいたしましても、そういうようなことが現地において仮にも行われることがないように、それはよく心して行かねばならないと思っております。
今川委員 私が意図するところは、自衛隊のそういう海外派遣に、あるいは派兵に賛同する立場にはないですけれども、派遣するとすれば、いわゆる国内法のもろもろのがありますが、刑法であり自衛隊法、いろいろありますけれども、これが国外において適用できるケースとできない場合とありますから、できない場合には、別途法案の中にきちっと明記をしておくということが必要だということだけ申し上げておきたい。
 もう時間が余りありませんので、ちょっと三番目の項を飛ばして、四番目に、次のことをお尋ねしておきたいと思います。
 いわゆるイラクで政府が想定をしている自衛官による業務の中身を、「実施の可能性があると想定される業務の例」ということを示されました。その中で、「3 具体的な業務の絞り込み」の一項目に「今後の調査や現地情勢の進展、米国等に対する打診・調整の結果等により、上記のイメージとの食い違いが生じる可能性がある。」とございますね。
 そこで、この法案の中には、石破長官、いわゆる戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機への給油及び整備というのがございますが、これ以外のいろいろな支援行為というのはすべて可能なのか。
 続けて、私が専門家の複数の方に聞いてみると、水ということももちろん必要かもしれない。しかし、日々いろいろな行動をしている米軍などは、今、例えばイラクの民間人は列をなして油を買うのに並んでいる。そうすると、米軍等は、戦車であれ装甲車であれ、さまざまな車両の燃料に対するニーズは非常に高い。例えば米軍等から求められたときに、この法案で、今申し上げたことからしますと、装甲車等への給油の実施というのは可能なんでしょうか。
守屋政府参考人 お答えいたします。
 本法案の第八条第六項においては、自衛隊の部隊等が実施する業務には、「武器(弾薬を含む。)の提供」及び「戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油及び整備」を含まないとしておりますので、法文上、法案第三条の業務に規定されたものであれば、第八条第六項の業務を除いたもの、今のものを除いたものを、非戦闘地域の要件を備えた実施地域において実施することは可能であると考えておるところでございます。
今川委員 今の件に関してもう少し。これは石破長官、例えば、フセイン政権の残存勢力とは限りませんけれども、いわゆる米軍などは、ガラガラヘビ作戦とか名づけた新たな作戦に入ったりしていますね。そうしますと、明らかに残存勢力が、ある地域にいる。そうすると、別の地域で、米軍の拠点基地から装甲車などを持っていって掃討作戦をする。そういう装甲車両に燃料給油はできますか。
 作戦行動に発進途上の航空機には燃料提供できない。つまり、恐らく、武力行使との一体化という概念を避けるためにこういうことが法案に明記されたと思うんだけれども、航空機じゃない、戦車であれ装甲車であれ、明らかに敵と思われる勢力を一掃するために出かける手前に、燃料提供はできるんでしょうか。
石破国務大臣 それはなかなか、装甲車であった場合に、これは先生もよく御案内のとおりでございますが、非常に重いものでございますから、燃費は悪うございます。装輪の場合も装軌の場合もございますが、いずれにしても、装甲車でありますから、物すごく重いということでございます。
 ですから、戦闘行為が行われていない地域、つまり、我々は非戦闘地域でやるわけでございますから、どちらにしても、それはガラガラヘビであろうがサソリであろうが何であろうが、戦闘行為が行われている地域においてはやらないわけです。非戦闘地域でしか我々はやらない。
 しかし、米軍がわざわざ重い装甲車を持ってきて、非戦闘地域である、我々が仮に給油作業をやっておるとして、そこでついで、またその重いものを持っていって掃討作戦に行くということは、極めて想定しにくいことではなかろうかというふうに考えております。
今川委員 いや、石破長官、米軍のそういう拠点としている地域が必ずしも戦闘地域とは限りませんよ。米軍がいるところそのものも非戦闘地域であったはずなのに、そういう、ゲリラであれ残存勢力が不意打ちをかけてくるということがあり得るじゃないですか、そういう可能性が。だから、そこの境界線というのは非常に不透明ですよ。今長官が説明なさったようにきちっとそういう線引きが、戦闘地域である、非戦闘地域であるということは、現実に即して考えるとあり得ないと思いますね。私は、そこの危うさを指摘しているんです。
 もう質問時間がなくなりましたし、きょうのこれで、この委員会で私が質問できるのはもうこれが最後のようでありますが、委員長、最後に一言だけ申し上げておきたいと思います。
 一つは、今回、政府はとにかく、自衛隊の能力がどうあろうが、まず自衛隊派遣ありきということから始まったと思います。これは極めて不見識だと思います。むしろ、私どもがしつこいほどに言ってきたように、今イラクの人たちにとって何が必要なのか、いろいろな人道復興支援があります。
 例えば劣化ウランの調査にしても、川口外務大臣の答弁を見る限り、何もやる気はないというのと同然です。まさしく主体的、積極的に、非常に健康に被害の大きいと思われる劣化ウランの調査は、日本のそういういろいろな医療に係る能力は高いわけですからやってみましょうという答弁一つ出てこない。最も必要とされる優先順位からやろうとはせずに、必ずしも自衛官を派遣する必要がないのに、ここにこだわってしまう。だから、いろいろな面で憲法とのかかわり合いが出てくるはずなんです。
 そういった意味で、PKOでは十年余りたちますけれども、もともとやはり私たちが心すべきは、自衛隊が創設されたときの原点です。専守防衛。およそPKO協力法が議論されたときに、私は今でも鮮明に覚えているのは、後藤田正晴元副総理がこうおっしゃった、大きな堤防もアリの一穴から決壊してしまうんだと。まさしくそのような状況が、この十年間、自衛隊の活動のありようを見てみますと、あるんじゃないですか。極めて、自衛隊という組織の運用の無原則性です。
 それともう一つ申し上げておきたいのは、本来ならもっと時間をかけて、まだまだ問題がきちっと国民の前に解明されたわけではありません。現地調査をしたり、少なくとも地方公聴会を一、二カ所で開いて、国民が十分納得のいく上でこの自衛官の派遣問題というのは議論する必要があると思います。こういう非常に審議未了の形で採決を急ぐということには断固反対だということを申し上げて、私は質問を終わりたいと思います。
高村委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時五分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時開議
高村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 内閣提出、イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法案及びこれに対する伊藤英成君外四名提出の修正案を一括して議題といたします。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松下忠洋君。
松下委員 自由民主党の松下忠洋であります。
 与えられた時間は十分でございますので、よろしくお願いいたします。総理と御先祖が同じの鹿児島県の薩摩でございますので、そこの人たちがお尋ねしている、そこの人たちにお答えするということで、気合いを持ってお尋ね申し上げますので、よろしくお願いいたします。
 党内の取りまとめに、内閣部会長として、浜田国防部会長と走り回りました。その中でひとしく我が党の人たちが話しましたことが、国民に対して、自衛隊の活動も含めて、今回のイラクの人道復興支援がどういう意味があるのか、わかりやすい言葉で責任を持って説明することが大事だということが、ひとしく皆さん方から言われました。
 いわゆる政府開発援助、ODA、それから国際平和協力、PKO、そしてアフガニスタンでのテロ根絶のための海上給油活動、こういう展開をしてまいりました。そしてまた今回、イラクの人道復興支援でございます。国際貢献のあり方、そして国際社会の中で日本が果たすべき役割、それを国民にどのように理解し、納得してもらうのか、大変大事なことだと思うわけでありまして、まず出発点に、その根っこのところがしっかりと共通のものとして共有されるべきだと思うのであります。
 せんだっての参考人のいろいろな御意見をいただきましたけれども、池田明史参考人がこう言われました。平和で安全なところから声を上げているだけではいけないのではないか、こういうふうに言われました。
 その中で、我が国の憲法の前文に同じような表現がございまして、私も地元の方でいろいろな話を聞かれるときにそのことをよくお話しするのでありますけれども、こういうふうに書いてあります。「われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。」というふうにうたわれております。大変大事なことだと思うのであります。
 その上で、憲法九条があり、そして武力行使、威嚇、これはしない、これに当たらないんだということで出かけていく。もちろん、日米同盟もあるし、国連決議も受けてやるわけですけれども、そういう根幹の大事なところをしっかりと、国民の皆さん方にわかりやすい言葉で、総理みずからの言葉で理解し、納得してもらうことが大事だと思うのであります。
 そのことが自民党の議論の中でも多くの議員から寄せられたわけでありまして、既に十三カ国が参加をしておりますし、二十カ国を超える国々が準備中であるという状況の中で、我が国が今回これに参加しようということの意味を、総理の言葉でわかりやすく国民に御説明いただきたい、このように思うのであります。
小泉内閣総理大臣 今回のイラク人道復興支援のための法案については、賛否両論あることは承知しております。しかし、反対している人の中にも、イラクの人道復興支援については協力すべきだと考えている方もかなり多いと私は認識しております。日本はイラクの戦争に参加しませんでしたが、その時点から復興支援、人道支援等についてはできるだけのことをするということを表明しておりましたし、こういう考えについては野党の中にも賛同する方もおられたと思います。
 そのような観点から、今回、多くの国々がアメリカやイギリスと協力しながら、イラクの戦後復興にどのような支援をすべきかということで、それぞれ独自の考えに基づいて、支援活動を現に行っている国、あるいは支援活動をするということを表明している国、今後支援活動を検討するという国がかなりの国に上っております。これは、このイラクの戦争を支持した国も支持しない国も参加している。
 日本としては、前々から言っていたように、この復興支援活動に、自衛隊でできることがあれば自衛隊で支援活動をいたしましょう、あるいは、自衛隊でなくてもできるものだったらば、政府職員でもあるいは民間でもNGOでもいたしましょう、そういう支援体制をとりましょうということでやってきたわけであります。
 いろいろ今までの議論を聞いてみますと、一方では、自衛隊に復興支援活動をしてもらうのはよくないという考え方、海外に自衛隊を派遣するということに対して非常に抵抗感を持つ方もおられます。しかし、我々は、過去、今までの、自衛隊が海外に派遣されるからこれは戦争行為に結びつくのかというと、もうその議論は過ぎた、越えたんじゃないでしょうか。自衛隊が海外に派遣されても戦闘行為に結びつかない。平和維持活動については十分自衛隊の能力を発揮して、その国々から高い評価を受けている。できることでも自衛隊だからやってはいけないのか、できることなら自衛隊でもやっていいのかという議論の分かれ目だと思います。
 私は、日本政府としては、戦闘行為でもない、武力行使でもない、その国の復興支援に、自衛隊でもできるんだから、自衛隊にも活躍の役割を与えてもいいのではないかというのが、政府・自由民主党、与党公明党・保守新党の考え方であります。
 私は、できることでも自衛隊だからやっちゃいけないという立場には立ちません。できることだったらば、平和維持活動、復興支援活動に自衛隊でもしっかりやってもらう、そういうことに対して、これからの審議を通じましても、国民に理解と協力を得たいと考えております。
松下委員 ありがとうございました。
 これから基本計画をつくって、いよいよ支援職員を派遣していく、そしてまた自衛隊員を派遣していくということになるわけですけれども、その人たちの安全対策というのは大変大事でございますから、この委員会の中でも随分議論がありました。十分な徹底した調査と情報収集、分析をしていただいて、そして本当に納得した形で出かけていっていただく、そのことの努力をぜひしてもらいたいと思います。
 その上で、せんだっての参考人の質疑のときでもありましたけれども、大野元裕参考人がこう言われました。大切なことは、イラクの人々のニーズ、やってもらいたいと願っていることにこたえることができる自衛隊の活動であること、そしてまた、それにこたえるような人道復興支援であること、このことが、長続きするし、日本が評価を受けるものだというふうにおっしゃいました。
 今回の議論の中でもそのことが大きな柱になりましたけれども、今回、与党も調査団を出しましたし、野党の皆さん方も、民主党を初めとして調査団を派遣されて、現地を調査されました。いろいろな考え方が、いろいろな提案がなされましたけれども、それぞれに謙虚に耳を傾けて、どういう形で取り組んでいけばいいのかということをこれから基本計画づくりにしっかりと盛り込んでいただきたい。そして、本当に実のある支援をしていかなければいかぬ、そのように思うわけですけれども、そのことについて、総理のお考えをお願いしたいと思います。
小泉内閣総理大臣 自衛隊であろうと、あるいは政府職員であろうと民間人であろうと、他国の国に行って、その復興支援に活躍しようという意欲と情熱を持った方、そういう方に対しては、その活動が安全であり、そしてその国の方々から評価される、喜んでもらえる、そういう環境をしっかりと整えるのが、派遣するからには政府の役割だと私は思っております。
 御指摘の点も踏まえまして、立派に支援活動ができるような体制をとって、派遣する場合は、その人々が十分に持てる能力と日ごろの訓練の成果を発揮できるような体制を整えていきたいと思っております。
松下委員 ありがとうございました。
 我が党の議論の中で、対症療法的にそのときそのときに対応するのではなくて、根本のところから恒久的な基本法をつくっていくべきだという強い御指摘もありました。これは党の問題ですけれども、政府の方でもしっかりとそういう問題を踏まえて第一歩を踏み出してもらいたいということをお願い申し上げまして、私の質問を終わります。
高村委員長 次に、中川正春君。
中川(正)委員 民主党の中川正春でございます。
 質問に入ります。
 イラクでは戦争が、いわゆる米軍の侵攻が始まってから七千六百人の人命が失われてきた、こんなふうに言われてきております。米軍が最近攻撃されて、六十人以上という数字はよく出てくるんですが、イラクの国民は七千六百人以上ということなんですね。そんな中で、戦争というのは一番弱いところへやはりしわ寄せが来る。子供たち、そして女性、老人、こういうことだろうと思うんです。
 そんな中で支援をしていくということ、これについては、私たち、今の政府の対応以上にもっとやることがある、もっと人道的には日本が果たせる役割があるということ、このことを強調しながらこの議論にも加わってきました。
 そこで、総理に質問をする前に一つ、福田官房長官のその人格を疑うというか、基本的なスタンスですね。この法案の提出者でもありますが、そのことが危うくなるような話が今飛び出してきておりまして、そのことについて、もうこれは事実関係だけで結構です。こういう発言をしたのかどうか、言ったのか言わなかったのかということだけで結構でありますので、まず、そこのところをお答えいただきたいと思うんですが、これは例の、最近、前閣僚だとかなんとかを含めて、自民党の中でぽつぽつと出てきておる、レイプに対する擁護論なんですね。
 その一連の中で、福田官房長官も、こういう発言をされたということが取り上げられております。言ったのか言わなかったのかということだけで結構ですから、事実関係を述べてください。
 「男は黒豹なんだから。情状酌量ってこともあるんじゃないの? これから、夏になるしね。女性も悪いんだから、女性も気をつけなきゃいけないんだ」こういう発言がなされたということですね。関連のマスコミ関係の記者の人たちも、こんなばかな話はないというようなことが一つ取り上げられております。
 これは、人道支援ということに対する基本的なスタンスにかかわることでありますので、まず、それを確認しておきたいというふうに思います。
福田国務大臣 私は、レイプを擁護するというような、そういう発言は、今までいろいろな会合をしてまいりました、いろいろな発言もしておりますけれども、そういう発言をしたことは一回もございません。
 私は、レイプ、このことについては、これは犯罪行為である、それも凶悪犯罪の位置づけである、こういうことは六月二十七日の記者会見でも明瞭に申し上げているんです。それ以上の考えはございませんし、また、そういう発言をした覚えは一切ございません。
中川(正)委員 この発言を否定されたということでありますから、そのことについてはこの場ではこれ以上は追及はいたしません。
 その上で、総理にお伺いをしていきたいというふうに思います。
 今回の法案、特措法という形で改めて自衛隊の派遣が出てきたということは、PKOの枠組みを超えているということ、あるいはPKOとは違った形の状況の中で自衛隊を派遣していくということであるから、こうした特措法という形態をとって出てきたわけであります。
 総理自身の今整理の中では、今回のイラク派遣は、PKOでできなかったということですから、そのPKOにできなかったところで、特にここが主軸になっているんだ、ここのところをどうしてもやっていかなければならなかったというところがあるんだと思うんですが、それはどの点なんですか。総理、総理です。
小泉内閣総理大臣 非戦闘地域で自衛隊の活動が期待されるところ、こういう点については、日本独自の情報、各国の情報、いろいろ検討して、日本が独自にその派遣地域、どういう人に行ってもらうか決めたいと思っております。
中川(正)委員 非戦闘地域で人道支援をするというのは、これはPKOでできる活動じゃないですか。では、なぜそのPKOという形態がとれる状況、その中でやるということにならないんですか。なかなか、総理、整理ができていないんじゃないんですか、頭の中で。もう一回、総理、答えてください。
福田国務大臣 PKOは私の管轄でございますから、私から答弁申し上げます。
 PKOは、今イラクの国内で展開することはできないということでございます。これは、理由が必要であればまた後ほど申し上げますけれども。今回、自衛隊がイラクの国内で活躍するということ、これが大事だろうということで、これは再三今までの委員会で御説明申し上げてきているところでございますけれども、そういうことで今回この法律をお願いしているということであります。
 自衛隊が今の状況においてイラクの中に法律なしで行くことはできません。それは、平和協力法の五原則というものがございまして、その少なくとも一つには抵触するのではないかというようなことでございますので、できません。ですから、平和協力法では、イラクの国内でない周辺国において活躍をする、こういうようなことで、今そういうような計画も着々と進めております。そういうことでございます。
中川(正)委員 まず、総理、これはアメリカに頼まれて、自衛隊を派遣するという決断が先にあったんじゃないんですか。
小泉内閣総理大臣 いつもそういう議論に持っていきたい気持ちはわかりますが、日本が独自に判断したことであります。それは、アメリカだけではなくてイギリスも、三十数カ国の国が既にイラク復興支援活動に軍隊を派遣している、あるいはしようとしていることを見ればわかると思います。それぞれの国が独自に判断して、イラク復興支援のためには、国連決議でも要請されておる、この要請にこたえて日本も独自に判断してやるということでございます。
中川(正)委員 この議論を通じてはっきりしてきたのは、さまざまな復興支援に対するニーズは確かにある。ところが、考えてみたら、必ずしも自衛隊、自衛隊と言わなくても、民間のさまざまな活力、特にある程度発展したイラクの社会インフラから見てみると、それを縦横に活用した形で復興を組み立てていく。特に、まずやらなきゃいけないのは、現地の政府でありますが、それをつくっていく過程の中で、民間のそうしたインフラを活用する、そのことが一番雇用創出ということにもつながってくるし、それぞれの官僚組織の組み立て、民間のビジネスの開始等々含めて、この国にとっては一番大事なことだという、そんなことが一つ浮かび上がってきているということ。
 それからもう一つは、治安維持あるいは占領ということになると、これはどこまでが、例えばガラガラヘビの話が何回も出てきましたけれども、これは掃討作戦で組織的に武器を取り上げていく、あるいは反米軍勢力というものに対して抑圧をかけていって掃討をしていく、これはもう戦闘行為ですが、その戦闘行為と、一般的な泥棒だとか野盗だとかということを対象にしていく治安行為、警察行為と、こんなものが全部合わさった形で今イラクの国内で展開されている米軍等の軍隊の活用、これに対して日本の自衛隊がどこまで憲法の範囲内でそれを後方支援していけるかというと、一つ例をとってもわかるように、戦闘地域、非戦闘地域に対して、その定義をしろ、あるいはその中身が何だということ、この一つを議論するだけでも混乱があって、中からしっかりとした中身が出てこない、完全にこれはフィクションで成り立っている、そんなようなことなんですね。
 だから、その環境の中にあえて自衛隊を出すということ、これがいまだPKOを超えて、その超えた中での自衛隊の活用というものに対してはブレーキをかけるべきだという、そんな事柄がこの委員会の議論を通じて今浮かび上がってきているんだろうというふうに思うんです。
 そんな中で、なぜ、総理、自衛隊、自衛隊と、まず自衛隊ありきということを強調するのか。そこのところが国民にとっても理解ができない。私たちも理解できない。これは、どっちにしてもアメリカに対する支援であって、イラクを本来考えた支援の形態になっていないということ、これが本質だというふうに私は思っております。そこについて、総理、国民にわかる説明をやるべきだと思うんですが、どうですか。
小泉内閣総理大臣 何回も申し上げていますが、立場も違うと思いますけれども、自衛隊にできることをなぜ自衛隊がやっていけないのか。NGOなり民間がやってよくて、自衛隊がやって悪いという理由はないと思います。戦闘行為じゃないんですから、武力行使でもないんですから、イラクの復興支援ですから。私は、そこがまず見解の相違だと思います。自衛隊ができるのに、自衛隊だからやってはいけない、民間ならやっていい、これは私は理解できない。
 同時に、アメリカを支援するためにやっているのであって、イラクの支援じゃないと言っていますけれども、アメリカを支援したいからやっている国ばかりじゃありませんよ。この戦争に対しては、アメリカを支持しなかった国も既に軍隊を派遣して、イラク復興支援に活動しよう、あるいはこれから検討してやろうという国も多数ある。では、今支援活動をしている国々は、全部アメリカの支援のために行っているんですか。そうじゃないと思いますね。
 日本も、イラク復興支援のために、自衛隊でも政府職員でも民間人でも、できることをやろうとしているんです。自衛隊だからやってはいけないという理由は、私は理解できません。自衛隊でもできることだったら、日本の国力なんですから、自衛隊も大変貴重な能力を持っている、政府職員、民間人にない訓練もして、能力を持っている、それを生かさない、活用しないということが私は理解できない。戦闘行為じゃないんです、戦争行為ではないんです、武力行使もしないんです、復興支援活動なんです。
 今、イラクに政府がありませんから、暫定的に各国が協力して、イラク人のイラク人によるイラク人のための政府をつくろうと努力している。その支援活動をするのに、自衛隊であろうが政府職員であろうが民間人であろうが、できることをやるというのは私は当然だと思います。できることを自衛隊だからやっちゃいけないという、その方が私は理解に苦しんでおります。
中川(正)委員 これは話のすりかえがありまして、私たちが言っているのは、自衛隊だからやったらいけないと言っているんじゃないんです。(小泉内閣総理大臣「いやいや」と呼ぶ)そうじゃないんです、そうじゃない。
 これは、一つは、自衛隊でやるよりももっと効果的に日本が貢献できる道筋がある。それは、一つは民間を活用すること。そして、政府の職員を派遣するということについては否定はしない。これは、十分に連絡をとりながら、国連、日本の政府の間でできることを模索しながら、やるべきことはやっていくということ。これと同時に、本当のニーズというのは、自衛隊が行ってそこでイラクのためにやるということになると、それよりも、自衛隊よりも民間の中で起き上がってくる社会インフラの整備という方が日本としてはふさわしいし効果的だ、これがまず一つです。
 それからもう一つは、日本の憲法の範疇の中で考えていったら、今イラクは自衛隊が行くだけの条件がそろっていないということ、これがもう一つです。それは、占領軍、CPAというのは、これまでのいきさつの中で、私たちが本来国連ということを中心にした中で、そしてその国に本来できてくる政府ということを中心にした中で整理をした自衛隊の派遣とその役割というのを定義してきたはずなんです。それを超えてCPAだけでその大義をつくるというのは、私たちの憲法の範疇の中からいけば、これはまだ条件が整っていない。
 それは、強いて言えば占領軍なんですよ。まだ戦闘行為というのがその中で行われているという、これは実際に、この占領軍のトップ、マキャナン現地軍司令官が六月十二日の記者会見でみずから言っているんですよ、軍事的にはイラク全土が戦闘状態で、しばらくその状態は続くんだと。そういう状況の中では、いまだ自衛隊の派遣ということを日本が判断すべきではないということ、このことを私たちは申し上げているのであって、条件がそろっていく中ではまた自衛隊もその職務を遂行していく時期が来るであろうということ、このことも改めて強調をしておきたいというふうに思っております。
 さらに、そのCPAの問題があろうかと思うんですね。これは、アメリカで、あるいはイギリスでもそうですが、特にイギリスの国会の議論の中で今出てきています、イラクの軍事侵攻に対する大義という問題であります。
 改めて総理に聞きたいんですけれども、例えばイギリスではブレア首相が、アメリカのプードルという表現をしていますけれども、犬じゃないのかというふうなことで批判をされたり、これまでうそを言ってきたということについて、確実にその政治的な信頼を失ったということ、このことが取りざたされています。
 その裏づけは何かというと、このイラク侵攻のために情報を捏造したということ、このことが実際に具体的に出てきた。例えば、あの報告書は大学院生の書いた論文をそのまま引用して、情報ソースとして使ったという話であるとか、アメリカへ行けば、ウランの買い付けをイラクがやったということに対して、その本国にアメリカのCIAが調べに行って、その結果、本国では売っていない、この事実はなかったということがわかってきたにもかかわらず、大統領の演説の中にそれが取り込まれて、イラクは核を持っている、その準備をしているということ、このことを根拠にした攻撃が行われた。
 これは、先制攻撃というのは情報がすべてです。情報が捏造されたということであれば、この先制攻撃も、これは大義としては成り立たないということであります。そのことについて、今総理はどういうふうにこの一つ一つの情報を分析してこれを評価しているのか。アメリカはやはりうそを言っていたんでしょう。――これは総理です。総理の今の価値観というのを改めて確かめておきたいと思います。
小泉内閣総理大臣 私は、国連憲章、決議にのっとって、正当性があるから、米英の武力行使を支持しました。その考えに今も変わりありません。数次にわたる国連決議をイラクは誠実に履行しなかった、これは幾たびか国連の安保理決議で論じられたことであります。
 正当性がある、ないは、立場が違うから、中川さんは正当性がないと言っている、私は正当性があると言っている。これは平行線ですよ、何回やったって。日本は日本の立場で、国連憲章にのっとって、正当性があるから支持したんです。イギリス、アメリカの国内事情は国内事情でありまして、それはイギリス政府が判断することであり、アメリカ政府が判断することであります。日本は日本として、私が判断した。正当性があるから支持したわけであります。
中川(正)委員 これからの世界秩序を論じていくのに、アメリカの一国主義というものをどのように日本として評価していくかという、これが一つの大きなポイントになってくるんだろうと思うんです。
 この後続いてくるのは、イラクだけじゃなくて、イランの問題が具体的にあります。午前中の議論でも、ここで再び出ましたが、日本に対して、イランの大量破壊兵器、このことを、これはイラクと同じパターンですが、牽制するために日本も協力しろ、ついては、油田の開発を日本もあきらめろ、こういう話がアメリカから今、現に来ている。これに対して、総理はどのように今判断されていますか。――いや、総理、総理です。
小泉内閣総理大臣 いろいろ状況を検討して判断いたします。
中川(正)委員 今どのように見ていられますかと言っているんですよ。
小泉内閣総理大臣 各国の状況がありますから、その状況を検討して判断いたします。それが今の私の考えでありますし、詳しいことは外務大臣が答弁すると思います。
川口国務大臣 イランについて、大量破壊兵器の開発の疑惑があります。それから、原子力開発についての国際的な疑惑があるわけでございまして、我が国としても、この疑惑ということは共有をしております。そして、イラン側に対して、国際社会の懸念を早く払拭する、これを重く受けとめて懸念を払拭するように働きかけを行っているわけです。
 他方で、石油のお話でございますけれども、これは我が国は御案内のように、石油資源に非常に乏しいわけでして、そういう意味で、アザデガンの油田開発というのは、二〇〇〇年の十一月に優先開発権を得て以来、これは重要な案件としてイランと交渉を続けてきているわけでございます。原油の開発も、そして大量破壊兵器の懸念の払拭も、これは両方とも我が国にとって非常に重要な課題であるということでございます。こういった基本認識に立って、きっちり対応していきたいと考えています。
中川(正)委員 さっきの答弁、両方とも、日本の政策がないということだと思うんですよ。何も一言も出なかったでしょう。ないんでしょう、総理。総理、ないんでしょう。
小泉内閣総理大臣 日本として独自に判断するんですよ。民主党の考え、それはあるでしょう。政府の考えもあるんです。状況を見て判断をする。今判断を下すべきかどうか、はっきりしたことを言うべきかどうか。そういうイランの情勢もあります、IAEA核疑念もあります、核不拡散の問題もあります、そういうのを総合的に判断すればいいのではないか。
 時期が来ればきちんと判断いたします。
中川(正)委員 こういう答弁でずっと終始してきて、結局のところは日本の意思というのが出てこないんですよ。それだったら、流れるままに外交が流されていきますよ、それでいいんですよと言っているのと同じだ。だから、アメリカの一国主義の中に引き込まれていって、その世界の秩序というのを日本が自動的に承認していって、ブッシュから、自衛隊を派遣してくださいよと言ったら、ああ、そうですかと言ってこんな形で出していく。こういう外交というのが日本をどういう状況に今導いているか、私は危機感を持っております。
 改めて聞きます。
 アメリカの一国主義の今の流れ、もっと言えば、逆に言えば、フランスやドイツというのはそれに対して危機感を持ちながら、ヨーロッパをまとめて、何とかバランスのとれた世界秩序をつくろうとしている、そういうことだと思うんです。またもう一方で、中国という存在もある。そんな中で、総理は、一体どういう世界秩序を今求めていこうとしているのか。それぐらいのことは、総理、一遍答えてくださいよ。これも、時期が来たらわかるですか。そんなことはないでしょう。
小泉内閣総理大臣 日本の外交政策の基本は、日米同盟を重視していくことと国際協調体制を重視していく、これを両立させるということであります。フランスと同じようにしろというわけではありません。中国と同じようにしろというわけではありません。アメリカと同じようにしろというわけではありません。アメリカもフランスも中国も核兵器を保有しております。日本は核兵器を保有する意思はありません。
 それぞれ独自の外交をして、日米同盟重視と国際協調体制を重視していく、これは一貫した基本方針であり、これからもこの方針を堅持していきたいと思っております。
中川(正)委員 そのことをずっと前へ進めていけば、イランの話も、ああ、そうですかと言って、油田はあきらめろと日本のジョイントベンチャーに言うんですか。
小泉内閣総理大臣 核不拡散、これも重要であります。IAEAの核疑惑、これに対して日本も協力するのも重要であります。イランとの友好関係も重要であります。アメリカとの友好関係も重要であります。石油資源の確保も重要であります。
 総合的に判断して日本は対応したいと思います。
中川(正)委員 わかりません。そうしたわけのわからない国際政治論といいますか、それは国家の意思というのがないですよ、それだと。
 改めて聞きます。
 イランの今回の話というのは、先に延ばせるような話じゃない。具体的に来ているんですよ、あきらめろ、一緒に協力しろと。私は、この話ともう一つの核拡散それから大量破壊兵器、これは話が違うと思うんですよ。それをトータルでひっくるめて、アメリカの絵の中で日本も踊れという話だと思うんです、これは。
 それに対して、日本が言うべきことを言わないでどうするんですか。まだ先延ばしするんですか。同じ答えですか。
小泉内閣総理大臣 交渉中のことで、言うべきことと言うべきでないことがあるんです、外交交渉には。言うべきことを言う。そんなに卑下しなくていいですよ、日本は立派に評価されています。アメリカ一国主義といえば、日本は卑下して言うべきことを言わないとか、余り自虐趣味に陥らない方がいいです。一国主義と裏返しになってしまう、余り卑下しない方がいい。日本は独立国であり、そして平和活動にも世界から高く評価されている、ODAにしても。だから、そういう点において、今交渉中の問題であります、余り卑下しないで、日本は独自の外交を展開している。
 民主党も、これから政権を担うんだったらば、アメリカとも友好関係を保っていこう、日米同盟を重視していこう、国際協調体制をとっていこうという姿勢をやはりよく理解して、ブッシュ政権は危険な政権だというような認識を持っていると、これは日米友好関係が果たして維持できるのか。日米同盟関係の重要性をどう認識するのか。やはり、政権をとろうという政党だったら、最大の友好国であるアメリカと友好関係を保ちながら国際協調体制を築いていこうという姿勢は、私は大事ではないかと思っております。
中川(正)委員 私も余り、自虐的なとさっき話が出ましたが、その言葉を避けようと思って、これで大分コントロールしてきたんですけれども、これは自虐的というんじゃなくて、実際、我々、こうした外交問題というのを議論していると、本当に情けない気持ちになってくるということは確かなんです。
 それは、特に、総理それから外務大臣から自分の意思が出てこないから。国家の意思というのを述べることができないようなリーダーがどこにありますか。そこが一つ。
 それからもう一つは、さっきブレアの問題が出ました。ブレアはプードルですが、こんなことを日本の総理大臣に私は言いたくなかったので言わなかったが、日本はポチだと言われているんです。これは、アメリカ追随で、逆に言えば、小泉総理の支持率がブッシュと連動をさせている、そのためにアメリカ追随にあるという、その心理が働いているのは外から見るとよくわかるんです。日本の国家のために日米同盟というんじゃないんですよ。これは小泉政権のための日米同盟なんです。そこのところを、私自身もこの議論を見ながら、これで本当に日本がいいんだろうかということをもう一つ感じているということ、これを申し上げておきたいというふうに思います。
 その上で、もう一つお尋ねをしていきたいというふうに思います。
 アメリカに対して、どうですか、この際、CPAを国連のもとに統合していけ、その中で、国連という枠組みの中でこれはやはりもう一度やっていくべきだということ、これを私は日本は主張していくべきだというふうに思うんです。
 今、世界がアメリカをどういう目で見ているかといったら、それは、CPAによって、やはりあのイラクそれから中東周辺地域の利権構造につながっている、アメリカのコントロールのもとに置きたいんだ、こういう意思が働いているという、そこがあるから、皆、アメリカの一国主義というものに対して抵抗しようとしているんですよ。それは、私は正しいことだと思います。やはり国連の枠組みというのが、最終的には日本もその中で伸び伸びと主張をしていけるという、そこのところがあります。
 どうですか。総理、改めて聞きますが、国連の枠組みに、CPA、していくべきだということを大統領に対してしっかり働きかけていく、あるいはヨーロッパと組んでいく、その試みを具体的にお話しいただきたいというふうに思います。
小泉内閣総理大臣 CPAにつきましても、今回のイラク復興支援につきましても、イラクに対する戦争では国連安保理でも意見が分かれましたが、今回のイラク復興支援については全会一致ですよ。CPAに対して、国連がこれに協力しながら、各国がイラク復興支援のために支援体制をとろうという決議なんです。アメリカ一国じゃないんです。アメリカは、世界の中で国際協調をとろうと努力してきて、そして国連決議が全会一致で採択されたんでしょう。その要請に基づいて、日本も国力にふさわしい貢献をしようとしているんです。余り、日本の外交がないとか、卑下しない方がいいんじゃないですか。
 日本は外国と違うんです。武力行使しないんです。戦闘行為にも参加しないんです。しかし、復興支援についてはやろうというんです。どの国とも違いますよ、対応は。日本独自の外交があるんです。いろいろな議論は、政党も違うし立場が違うから意見は分かれますけれども、余り自虐的に卑下しない方がいいと思いますね。日米関係がうまくいっているということはむしろ喜ぶべきことであって、非難されるべきことじゃないと私は思っております。
中川(正)委員 自虐的じゃなくて、民主党に誇りを持って我々はやっていますよ。
 やはり意思がない。国家の意思をつくれないようなリーダーというのは、リーダーの資格はありません。
 以上、そのことを申し上げて、質問を終わります。
高村委員長 次に、一川保夫君。
一川委員 自由党を代表いたしまして、質問させていただきます。
 この法案の質疑が今日まで続いてきましたけれども、総理は初日は出席されましたけれども、その間、三大臣を中心にいろいろな質疑もされてきました。今もいろいろな話題が出ましたけれども、私の率直な印象としましては、本当に今我々が知りたいこと、国民が不安に思っていること、そういったことに対するやりとりが、やりとりをすればするほどわからなくなっていくというような、そういうちょっと強い印象を持ちながら、最終的にこの段階で、総理を含めて基本的なところを確認しておきたいということで質問させていただきたい、そのように思っております。
 私は、総理にも本会議で若干この問題に触れましたけれども、アメリカの同時多発テロ以来、国際的な平和ということについての我が国の国民の関心もだんだん深まってまいりました。それで、その後、アフガンのいろいろな戦争、またそれに対するテロ特措法を初めとしたいろいろな質疑、そして今回のイラク戦争、そしてまたその復興支援ということでの今回のこういう質疑が行われてきておりますけれども、こういうことは、私は、我が国の戦後なかなか定まっていない国際的な平和に対する原理原則をしっかりと打ち立てる一つのチャンスであったというふうに思いますけれども、どうもその努力を日本の政府はしていないのではないか、何となく場当たり的ではないかという印象を持っております。
 今回も、この質疑を通じて、もっともっと国民の世論といいますか、いろいろなコンセンサスが収れんしていくような格好に政府の皆さん方も努力されていないのではないか。今、総理の発言でも相当一方的な発言もちょっと目立ちましたけれども、こういった質疑を通じて、せっかく安全保障に対する国民的な関心がある時期に、議論をもっともっと深めて、それを一つの方向へうまくコンセンサスを得るような方向になぜもっと努力されないのかというふうに思いますけれども、その点、総理、いかがですか。
小泉内閣総理大臣 これはどの国でも、民主主義社会だったらば、一つの問題に対して賛否両論あります。それは、アメリカ国内においても、フランス国内においても、日本国内においても、賛否両論、議論が分かれるところがたくさんあると思います。
 特に日本におきましては、自衛隊というのは各国のように軍隊とは位置づけられていない、しかし、よそから見れば、外国に出れば、自衛隊は軍隊扱い。そして、自衛隊が海外に派遣されると、これは一方では、すぐ戦闘行為、戦争のために行くんだという議論、いまだにある。
 しかし、ようやく、戦後五十年間の国際情勢を見ながら、自衛隊が海外に出ても、戦闘行為に結びつかない、平和維持活動もあるんじゃないかということでPKO活動が認められている。これについては大方の、もちろん反対はありますけれども、大方の国民の理解も、自衛隊の海外派遣については、平和維持活動等理解が得られてきている。
 なおかつ、憲法の問題も、これまた非常に難しい点があります。
 それは、憲法の前文、全体の文章じゃなくて前の文、前文には、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない、世界から、隷従と専制、圧迫から逃れようという、そういう国民を支持して、民主的政権を各国がとる、それを、日本としても国家の名誉にかけてこの崇高な目的達成を誓うと高らかにうたっております。国際社会の中で名誉ある地位を占めたいと思うと高らかにうたっているんです。そういうところと、やはり自衛隊を海外に派遣しようという、これで、戦後、憲法をめぐって、自衛隊を海外に派遣するということについては何回も議論が重ねられてきた。
 ようやく、戦闘行為でない、武力行使ではないんだったらば自衛隊を派遣してもいいということで、今回、このイラクの問題、この法案について同じような議論が展開されております。私は、テロのときもそうでありました、テロ特措法もそうでありました。今回のイラク支援法案も、いわば憲法の問題と自衛隊の派遣の問題が議論されております。
 こういう点につきましては、今議員が指摘されましたように、恒久法的な、国連と日本との行動をどのように一致させていくか、そして、自衛隊の活動に対して、事が起こったときにその事態に合わせて法案をつくるよりも、自衛隊の活動が、平時といいますか、常時といいますか、あるべき自衛隊の海外における活動はどのような法的整備が必要かという議論、出てまいりました。本会議でもこの委員会でも議員は指摘されました。
 こういう点については、やはり、真摯に受けとめ、今後検討する価値が私は十分あると思います。この点も今後議論を、委員会審議でも行われておりますし、国民の世論も、かつての、自衛隊だから海外派遣してはいけないという議論だけではないと思っております。国連と協調しながら、戦闘行為ではない、武力行使ではない自衛隊の活動というのは海外でどうあるべきかという点を、私は今後真剣に議論する価値は十分あると思っております。
一川委員 今総理が憲法の前文を取り上げましてお話しされたことは、それは書いてある言葉はそうでございます。
 ただ、我が国が特に海外に向けて唯一の軍事力を有する自衛隊を派遣する場合のやはり基本的な原理原則めいたものがはっきりしていないということが、いろいろな面でいろいろな不安感が募り、いろいろな心配が出てくるわけでございまして、今回のこの質疑の中でも、例えば総理は、戦闘行為はさせないんだ、武力の行使はしないんだということはおっしゃいますけれども、しかし、現実問題、ではそういうことに対する疑念がみんな払われたかといったら、全然そうじゃないんです。そういうことも含めて、私は、我が国の憲法の理念を生かしていくということであればあるほど、やはり内外ともにそれを宣明できるようなしっかりとした考え方を確立すべきだというふうに思っております。
 総理も、本会議の答弁では、国民的な議論の推移を見守るとおっしゃいましたですか。その推移を見守るという消極的なスタンスよりも、やはり、こういうことが起こった、この一つの問題を質疑する中で、逆に、国民の皆さん方にいろいろなことを呼びかけながら、世論をもっともっとコンセンサスを得るような方向に引っ張っていくというような努力を私はしてほしかったなというふうに素直に思うわけです。
 そこで、ちょっと確認するわけですけれども、先進国の中で、国連のこういった平和活動に対して軍事力を海外に派遣することについて、原理原則を持たないで、その都度、新規立法をしているような先進国というのは、日本以外にどこかあるんですか。
福田国務大臣 我が国は、他国に見ない憲法という制約を持っております。そういうことから、今回も、自衛隊の海外における活動については法律をつくっていただかなければいかぬ、こういうことでお願いをしているところでございまして、そういう観点から、一回一回法律をつくるという、そういう国はないと私は承知をいたしております。
一川委員 そういう状況であればあるほど、私たちは、二十世紀における、また昭和史におけるいろいろな教訓を生かしながら、これから二十一世紀の国際協調、平和というのは、やはりそういうしっかりとした原理原則的な基本的なルールを、我が国としては、国内はもちろんのこと、海外に向けてしっかりとそれを宣言する必要があるのではないか。そういう中で自衛隊なら自衛隊の行動原則というものを明確にしておくというふうにしておかないと、やはり、その都度いろいろなことが話題になって、せっかく派遣される自衛隊にしても、自分の命をかけて、なおかつ任務を果たす、そういう名誉的なものが出てこないんではないかということを非常に強く感じました。
 総理はどう思っているか知りませんけれども、この委員会の中で完全に賛否が分かれてしまうということは非常に不幸なことだというふうに思いますし、十分質疑をする時間も不足していたという感じを私は持っております。そういう面では、私は、イラクの復興に対する支援のやり方は、今すぐ議論が収れんしていない自衛隊を出すよりも、いろいろなやり方が、すぐできることがたくさんあるというふうに思います。
 そこで、先ほど総理も国連のお話をちょっとされましたけれども、今回のイラク戦争の前後からのいろいろな話題の中で、国連の機能が非常に低下したという中で、これからの我が国としては、国連を中心的に、先ほどのお話のような日米関係と両立させながら国際的な平和を果たしていきたいということであれば、国連の機能を従来以上に機能アップして、しっかりとした働きができるような状態に持っていくために、私は相当の努力をしないと難しいんではないかなと。
 そのために、日本の政府としては、今、具体的に何をやろうとしているのかというところをお聞かせ願いたいと思います。
川口国務大臣 国連の機能をさらに高めていくために必要なことというのは、やはり国連の改革であるというふうに考えています。
 それで、外務省として、あるいは日本国政府として、二つの点を中心にして国連の改革を働きかけておりますが、一つは安保理の改革でございます。これは、常任理事国五つあるわけですけれども、この理事国の数をもっとふやす、拒否権をどうするか、どこの地域から幾つふやすかといったような問題がございます。
 それからもう一つは、我が国にとってもう一つ重要なことがありますが、これは敗戦国条項でございまして、これについても働きかけを行っております。
 両方とも、過去十年ぐらいずっと働きかけを行ってきておりますが、今回、総理にもブッシュ大統領との間でお話しいただいて、アメリカからも理解をもらって、協力をする、フォローアップをするという話もございます。一段と拍車をかけて国連の改革に取り組んでいきたいと考えております。
一川委員 私は、国連のそういう機能再構築に向けて我が国は本当に汗をかいて、やはり、さすが日本という国はちょっと違うなというふうな印象を与えるような活動をぜひやるべきだなというふうに強く要請をしておきたい、そのように思っております。
 それで、今回の質疑の中で、イラクの国内の実情等についてのいろいろな食い違い的なことも含めて、現状把握ということも含めて、非常にわからない点が幾つかあるわけですけれども、各党は調査団を派遣して、それなりの掌握はされている部分もございます。しかし、その調査団の結果をお聞きしても、意見が食い違っている面もございます。我が党は今回、この問題については、現地調査をする以前の問題として判断すべき事項が多いということで、現地調査を出しておりませんけれども。
 では今、大量破壊兵器が見つかっていない、しかしイギリスとかアメリカでは、そこの国のトップリーダーが戦争の正当性についていろいろな面で疑惑を招いている、疑問を持たれて、だんだんだんだん国民の不安感もふえてきているというような報道がされておりますけれども、こういう報道について小泉総理はどうお感じですか。
小泉内閣総理大臣 各国それぞれ、国内の意見は違うと思います。その国内の意見を踏まえて、民主主義体制であれば、その国の政府が判断しているわけでありますので、各国政府は、そのような国内の状況を見ながら、どういう対応が正しいかということで、その時期、時期に応じて対策を練っているわけでありまして、私が日本政府の立場で、その国の政府、国内の議論があるから正しいか正しくないかと言う立場ではない。そういう議論を踏まえて各国は対応している。
 日本としては日本の独自の判断があるわけですから、その点につきましては、日本としては、各国の情勢をにらみながらも主体的に判断していくのが一番いいのではないかと思っております。
一川委員 主体的に判断されるという、それは結構でございますけれども、これから恐らくイギリスなりアメリカでそういう話題がだんだん広がり、そしてなおかつ、調査内容等がいろいろと公表されてきた場合に、イギリスなりアメリカの責任者がある程度責任をとらざるを得ないという事態になった場合には、私は、日本の総理大臣としては、日本の国民に対してその経過なり実態をやはりしっかりと説明する責任があるというふうに思いますけれども、それについてはいかがですか。
小泉内閣総理大臣 私は、いつの時点でも、政府の対応ということに対しては、国民に説明する責任があると思っております。今までも説明をしてきましたし、だからこそ日本には国会があるわけであります。衆議院、参議院、本会議、委員会、それぞれの場で審議を尽くしてまいりました。これからも、どのような事態になったとしても、私は国民に対する説明というのが必要だと思っております。
一川委員 今回のイラク戦争というのは、米英軍主導による戦争でありまして、今の現状では、米英軍の軍政下のもとの占領状態でございます。そういう中に我が国の自衛隊が、戦闘行為は行わない、戦闘区域には入らない、あるいは武力の行使はしないと言いつつ、現実は武力を持ってこの国に入っていくということについては、私はやはりまだまだそういった面でのコンセンサスが得られていないというふうに思っております。
 そこで、今イラクにおいて、アメリカ軍等が中心となっていろいろな治安をやっているというふうにお聞きしていますけれども、しかし、連日いろいろな残念なニュースが流れてきますよね。例えば、イラクを今占領している米英軍がイラク人を拘束したとき、それはいろいろな、強盗のたぐいだとかいろいろなことも、よく防衛庁長官もおっしゃいますけれども、そういうことでいろいろなことを犯す人もいるでしょうし、あるいは、フセインの残党と称する人たちが、いろいろな一種のテロ的なことをやる場合もあるでしょう。そういうイラク人を今占領軍が拘束したときには、そういう人たちをどういう扱いをしているんですか。
川口国務大臣 まず、米英軍は、国連の決議一四八三によって、事実上、警察権を行使する権限を与えられているということでして、今、ではイラクにどのような法律があって、それに基づいて対応をしているかということについては、残っている法律も、イラクの法律で使われているものもございますし、そうではない、CPAとして出したものもあるということでございます。
 したがって、その権限に基づいて正当な形で警察権の行使が行われているということでありますけれども、では具体的にどのような扱いを受けているかということについて、具体的に見たわけではございませんので申し上げられませんけれども、いずれにしても、米英両国は国際法に基づいて行動をする国であるわけですから、そういった点について何ら問題はないと考えております。
一川委員 そのイラクの現状に対する我が国の把握の仕方が非常に私は弱いなというふうに思うんです。
 それは、今話が出ていますように、この場でもジュネーブ条約の話題だとか国際法上のいろいろな話題も質疑としてはありましたけれども、しかし、今イラク国内において米軍のいろいろな存在が、時間がたつにつれて、米軍は信頼度が高まってきた、イラク国民の評価が非常に上がってきたかといったら、その逆みたいな報道が非常に目立ってきておるわけです。
 イラクの国民に喜ばれないような状態がいろいろと出てきている中で、今外務大臣が御説明になりましたけれども、イラク国民が米英軍に拘束されたときの状態がどうなっているかわからないというようなことは、私は非常に残念なことだと思うんですね。これはやはり、しっかりとした国際ルールなら国際ルールの中で、今現状こうなっていますよ、犯罪者なのか捕虜なのかという話もありましたように、どういう扱いを受けているんだ、日本の自衛隊は、そういう中で現地に乗り込んだときに、そういう問題に対してはどう対応するかということについては、いかがですか。
川口国務大臣 それは、先ほど申し上げましたように、警察権の行使の対象であれば、それはその法律に基づいて、あるいはルールに基づいて行われているわけでございますし、捕虜ということであれば、国際法にのっとって行われているということであります。米英は当然にそういうことをやる国であるということでございまして、現状について問題があるというふうには考えておりません。
一川委員 問題はないというようなちょっと最後の結びの言葉だったんですけれども、私は、やはり外務省としては、イラクのこの現状をもっと正確に掌握されて、それを我が国の国民に対してしっかりと説明する、そういう責任があるというふうに思います。
 そこで、最後に、PKO法に関連した現行法制度のもとでも、できることはたくさんあるではないかという考え方もございます。人によっては、ではイラクのためにPKO法案の一部を手直しかけて例外規定をつくったらどうかという意見を持っている人もいますけれども、私はやはり、現行法制度のもとで、イラクの国民が願っていることに対して、日本国としては積極的に今すぐにでも対応すべきだと思いますけれども、それらについてはいかがですか。
福田国務大臣 PKO法、国際平和協力法に基づく自衛隊の活動ということになりますと、今、イラクの国内は難しいんです。停戦の合意、これが認めるのが困難だろう、こういう状況の中で、我が国として、自衛隊にイラクの中で活動してもらうというのはできない。そうすると、周辺国で活動するわけですね。周辺国はできるわけでございますので、これは積極的にやっていかなければいけないというように思っております。
 この法律を通していただければ、その法律を適用して、周辺国からイラクの国内に入る、こういう可能性というか、そういうこともできることになるわけであります。
一川委員 では、ちょっと関連したことで念のためにお聞きするわけだけれども、アフガニスタンの国連のPKO活動に対して、我が国は参加しなかったというふうにお聞きしていますけれども、これはなぜですか。
川口国務大臣 アフガニスタンにおきまして、PKO活動は行われておりません。(一川委員「間違いないですか」と呼ぶ)ええ。ございません。
一川委員 PKO法はもちろんそうでございますけれども、現行制度のもとで我が国がいろいろな制度を駆使してできることは大いにやはり活用していただきたいというふうに私は思いますし、また、現行法の中で多少なりとも手直しすれば十分活動できる分野があればそちらを優先すべきだったなという感じも私は持っております。
 それで、最後になりましたけれども、この質疑は、先ほど言いましたように、いろいろな面で我々の疑問に思っている点がなかなか解消されていないというところは総理自身も御理解をしていただいていると思いますし、まだまだ課題がたくさん残っているということも含めて、これからの我が国の安全保障、それから国際平和に対する基本的な考え方というものをしっかりと構築して、国民全体の気持ちが一つの方向にだんだん収れんしていくように、我々自身もそれは当然国会議員として努めなければなりませんけれども、政府も御努力をお願いしたいということで、質問を終わらせていただきます。
高村委員長 次に、木島日出夫君。
木島委員 日本共産党の木島日出夫です。
 この法案は、現に米英両軍によって行われているイラク占領、これに、占領している米軍に対して後方支援をするために自衛隊をイラクに派遣する、それが中心的な目的の法案であります。もちろん、イラク国民に対する人道支援という部分もありますが、それはこの法律がなくてもできることであります。
 そこで、総理にお聞きします。
 イラク戦争の前提は、当然、三月二十日に始まった米英両国によるイラクに対する武力の行使、いわゆるイラク戦争であります。これが正当であった、国際法上の合法性を持つものであったということは、三月二十日、衆議院本会議で総理からも説明がありました。私もここで、三月二十四日の予算委員会質疑でそのことをただしましたが、自来一貫した、きょうも民主党の中川議員とのやりとりを聞いておりましたが、あの戦争には正当性、合法性があるという立場に日本政府は立っているという主張を続けられております。この法案もそれを前提にして、しかも、法案の中には、その根拠として安保理決議一四四一、六八七、六七八その他を挙げております。
 お聞きします。しかし、そういう総理の立場、日本政府の立場は、先ほど総理の言葉がありましたが、日本政府の立場なんだということですね。その立場は決して安保理構成の十五カ国全部一致した立場ではない、そう聞いていいですね。
小泉内閣総理大臣 それは、意見集約できなかったわけであります。賛否両論分かれたわけであります。しかし、日本は、正当性があるということで支持したわけであります。
木島委員 お認めになりました。
 もっと具体的に言いますと、安保理を構成する十五カ国を分析しますと、常任理事国五カ国のうち、理屈はいろいろあるでしょうが、三月二十日の対イラク戦争が合法性を持つものだと主張した常任理事国は、アメリカとイギリスのみであります。ロシア、フランス、中国の三常任理事国は、そんな合法性、正当性はない、戦争は国連憲章上、国際法上正しくない、そういう立場でありました。安保理を構成する十カ国の理事国のうち、正当性を認めたのは、たしか二カ国、スペインとブルガリアだけだったと思います。そして、八カ国は正当性を否定する。そういう状況が国連安保理のこの三月の姿だったんだと思うんです。
 だからこそ、アメリカ、イギリス、スペイン等がこの武力行使に国連安保理の正当性のお墨つきが欲しいということで提出をした決議案は見事に失敗した、撤回せざるを得なかった、そういう状況だ。
 総理、それは事実として認識しておるわけですね。――総理です。
高村委員長 外務大臣。
木島委員 外務大臣は、委員長、私は呼んでないです。いや、それは厳格に守ってくださいよ。呼んでないんです。呼んでないんです。(発言する者あり)いやいや、担当大臣だって、呼んでないんです。それは理事会の決議でしょう。(発言する者あり)いやいや、決めてないです。出席大臣に呼んでない。呼んでないんです。総理のみを呼んでいる。それは厳格に守ってください。私は、外務、官房、防衛庁長官は呼んでないんです。
高村委員長 総理大臣。
小泉内閣総理大臣 いいですか……(木島委員「結構です」と呼ぶ)意見が合わなかったんですよね。
木島委員 私は、このことは非常に重要だと思うんです。国連安保理での決議がなかった、要するに、国連安保理での武力行使の承認がなかった、そして始められた戦争であります。
 いいですか、総理。今日、戦争の合法性をめぐっては、歴史は進歩してきました、人類社会は進歩しております。合法性を与えられるのは、二つだけです。国連安保理の決議があって、ある国が脅威をもたらしているという認定があって、国連安保理として、国連としての制裁としての武力行使、もう一つは、ある国が他国から侵略されて自衛するときのみであります。
 そうすると、もう明らかに、今回の米英によるイラク攻撃は、その二つの要件のいずれにも該当していない。明らかじゃないでしょうかね。
 日本政府は、一四四一、六八七、六七八をあげつらって、それが正当性の根拠だといまだに言い続けておりますが、私は、国際社会、百八十数カ国あります、まことに少数派、孤立した立場だということを指摘して、次に進みます。(発言する者あり)認めましたからね。分裂したまま入っていった戦争だということですよ。そんな戦争の後、引き続いて行われている軍事占領に自衛隊が出ていってこれを後方支援するなんということがどんなに間違っているかということを、この一点でも明らかになったんじゃないかと私は思います。
 次に、今回、この法案が、そして日本政府が自衛隊をイラクに送り込む根拠に挙げているのが、国連安保理決議の一四八三です。
 では、お聞きします。この国連安保理決議一四八三は、さきの三月二十日に始まった米英両軍によるイラクに対する武力行使を国際法上正当化するものですか、合法化するものですか。国連安保理決議一四八三をどう評価しておりますか。――川口さん、手を挙げないでください。あなたは呼んでないんだ。
小泉内閣総理大臣 法的にはともかく、確かに武力行使については意見は分かれましたけれども、それは、一四四一までの関連決議に対する決議の解釈の違いで意見が対立したんです。私は、その解釈の観点から正当性があると日本政府として判断した。ところが、そういう中で、安保理事国の中でも、その解釈をめぐって意見の対立があった。
 しかし、戦争が終わってみた後は、イラク復興支援に対しては、対立していた国も全会一致で賛成したわけですね。その決議に基づいて我々は支援しようということであります。
木島委員 それは結構です。そのとおりです。イラク復興支援に国際社会が力を合わせて支援しよう、特に戦争、それと戦争の以前のああいう政治のもとで苦しんでいたイラク国民を、イラク住民を国際社会が救援しようということで一致して今度の国連安保理決議一四八三がつくられたというのは、当然です、承知しています。ですから、そういう立場で日本政府はイラクの住民、国民に対して人道支援を徹底してやらなきゃいかぬと私は思います。
 私が聞いているのは、その分野じゃないんです。質問に答えてないんですよ。国連安保理決議一四八三は、シリアを除く十四カ国、全会一致です。この安保理決議が、三月二十日から米英両軍によって始められたあの戦争、イラクに対する武力行使を国際法上正当化するものになっていますかという質問です。端的に答えてください。――いや、外務大臣は呼んでないんですから。
高村委員長 外務大臣。(木島委員「呼んでないと言ったじゃないですか。答弁資格がないんですよ」と呼ぶ)呼んでなくとも、国務大臣は答弁権あります。今、事務的に確認しました。
川口国務大臣 お答えを申し上げます。(発言する者あり)
高村委員長 総理大臣。
小泉内閣総理大臣 これは、一四八三は触れてないんです。触れなかったんです。
木島委員 明確な答弁であります、触れてないと。要するに、国連安保理決議一四八三は、さきの三月二十日に米英両軍が始めたイラク攻撃、これを正当化するものではなかった……(小泉内閣総理大臣「とは言えないんです」と呼ぶ)触れてないと。
小泉内閣総理大臣 触れてないから正当性がある、ない、別なんです。触れないんです。そういう正当性があるかないかの判断はもうやめようということで、イラク復興支援のために国際協調体制をとるのが大事だということで、私は、国際社会は非常に理性的な対応をされたと思っております。
木島委員 まあ、それで結構ですよ。
 では、念のためにつけ加えておきますと、五月に国連安保理決議が採択されたとき、あの戦争に反対を貫いたフランス、ドイツ、ロシアの三カ国外相は共同記者会見を開いて、国際社会に向かって、国連安保理決議一四八三はさきの戦争を正当化するものではないと明確なる見解を表明しておるということだけ指摘しておきます。要するに、国連安保理決議一四八三によってもあの戦争は正当化されなかったということが本当に大事なことなんです。
 それで、もう一つ、国連安保理決議一四八三について、総理にお聞きします。
 先ほど来、再三総理は、今回の法律によって日本政府がイラクに二つの目的を持って自衛隊を送り込むのは、国連安保理決議一四八三に基づくものだと答弁し続けていますね。では、聞きます。国連安保理決議一四八三は、各国の政府に対して、軍隊をイラクに派遣し、占領している米英両軍を後方支援してほしい、そういう要請はありますか。
小泉内閣総理大臣 それは、軍隊をもって支援活動しろ、そこまで言っていませんよ。各国に支援活動を要請しているんです。だから、日本としては、独自にできることを考えるということで、今回、法案を出しているわけであります。
木島委員 大変大事なことを総理は認められました。国連安保理決議一四八三は、各国政府に対して軍隊をイラクに派遣してくれという要請はないと。これは非常に大事なことなんです。
 なぜか、なぜ大事か、言いますよ。各国の軍隊が他国の領土に入るということは特別の意味を持つということなんですよ。文民と違うんです。特に今度の事態は、米英両国のイラク攻撃、武力攻撃が国際法上の正当性を持つという主張をしている国は少数派、直接に戦争をやった米英両国に、日本とあと幾つかの国のみ。圧倒的世界の国々、特にアラブ諸国は一致して、あの武力攻撃には正当性がない、違法な戦争だ、国際ルール破りの戦争だというところで一致したんでしょう。それに続く軍事占領です。だからこそ、各国の軍隊がこの軍事占領支援のためにイラクに入るということは非常に重大な問題なんです。
 だからこそ、あえて言いますが、フランスとドイツ両国は、軍隊をイラクに派遣するなんということは論外だ、そういう発言もしているのは、軍隊を送り込むというのがどういう意味を持つか、重大な事実を知っているからであります。
 そうしますと、私は、日本政府がこの法案を出して自衛隊をイラクに送り込む、その出発点であるあのイラク戦争の国際法上の正当性も、一致した見解が国連安保理決議は出せなかったということをお認めになっている。今度の一致した国連安保理決議一四八三も、各国政府に対して軍隊を出せというのは要請していないと。そういう状況のもとに、日本の国が殊さらに軍隊をイラクに送り込むというのは、まことに異常なことだと思わざるを得ないんです。ですから、ほかの国も行っていると盛んに言ったけれども、やはり少数派ですよ。少数ですよ、世界百八十数カ国から見たら。
 それで、次にお聞きします。
 イラクでは、状況はどうなっているか。米英軍と現地武装勢力などとの戦闘が今激しくなってきております。泥沼化の様相が濃くなっているんじゃないでしょうか。米英軍のイラク攻撃が、これはもともと国際法上の根拠がない、少なくとも根拠があると主張した国はわずかな国だけ。そういう、世界の国々の多くが国連憲章に根拠を欠く戦争だということから、イラク国民がこういう占領に対して、特にいろいろな手荒なことに対して抵抗するのは、私は当然の成り行きではないかと思わざるを得ません。
 特に、最近米軍が、砂漠のサソリ作戦とかガラガラヘビ作戦などと称して、フセイン政権の残党掃討作戦を強化して、そして、本当に残党なのかどうかわからないような状況のもとでも、イラク国民に銃を向け、理由のない殺傷もしています。五月一日のブッシュ大統領のいわゆる戦闘終結宣言なるもの以降、六十数人の米軍兵士が殺りくされるという逆の事態も生じている。特に、六月三十日には、ジュネーブ条約からも絶対に許すことのできない、イスラム教寺院モスクがミサイル攻撃されまして、そこでイラク人八人が死亡した、六人が負傷したと、カタールのテレビ、アルジャジーラは伝えているわけであります。
 だから、そうした米軍の手荒な行動に対して、これは私は、恐らくフセイン政権残党だけじゃなくて、シーア派初め、フセイン政権は反対だ、しかしこういう手荒な軍事占領も反対だ、そういう声がイラク住民、国民の中からも噴き出してきているんじゃないか。占領支配に抵抗、反撃する激しい行動や武力の行使など、戦闘が各地で激化しているんじゃないか。
 この戦争とその後の占領、その全容がこういう状況を、不穏な状況と言ってもいいかもしれません、そういう状況を生み出しているんじゃないかと私は見ているんですが、総理の、現在のイラク占領状況の局面をどう理解しておるのか、認識をお聞きしたい。
小泉内閣総理大臣 国連決議で当局が、治安活動初め、一日も早くイラク人の政府をつくるためのいろいろな能力あるいは権限を行使することを認めております。いわば、当然日本にはできないことを米英軍は今やっている。しかし、あのような危険な作業は日本の自衛隊には向いておりませんが、その他の分野でできることはあるだろうというのが我々の考えであります。
 現に、NGO、民間人、政府職員も既にイラクの方に入って、どういう状況か調べながらも、また、現実に日々の、日常の生活基盤支援のために活動を展開しております。
 私は、確かに戦闘の可能性が非常に高い地域もあると思いますが、戦闘が行われないであろうという可能性が高い地域も十分あると思っております。例えて言えば、周辺諸国からイラク国内の地域に飛行機で物資を輸送することもできる。また、自衛隊でなければできないであろう給水活動とかあるいは浄水活動、これも場所を選べばやることができる。NGOの皆さんなり、いわゆる民間人だったら、そういう浄水活動、給水活動、他国の国の人の援助をかりないでそういう活動はできないと私は思います。
 ですから、戦闘行為ではない、武力行使ではない、イラクの復興支援のために、日本としても自衛隊がやる分野はたくさんあると思っております。
木島委員 実は昨日、総理のおらないこの特別委員会で、私は、現に今、目の前で行われている米英両軍によるイラク占領という事態を国際法上どう評価するか、そして、現にこの占領下にあるイラクの住民、国民の法的地位というものを国際法上どう理解すべきか、そして、ここに送り込まれていく日本の自衛隊の法的地位というものを国際法上どう理解するか、質疑をやりました。
 それは端的に言って、もう時間もありませんから、二つの側面から物を見なければならぬのじゃないかと提起をいたしました。それは占領法という国際法の特殊な分野から出てくる見方であります。占領法、戦争法というのは二つの側面があるというのは、国際法の社会では常識の分野です。
 一つは、正当性、合法性の問題です。その占領、戦争が国際法上、国連法上本当に合法性を持つかという側面。そしてもう一つは、そういう合法性、正当性とは切り離された立場で、正当か合法かは別にして、現に戦争をやっている両当事者の軍人の命は守らなきゃいかぬ、文民の命は守らなきゃいかぬ、そういう立場から、ナイチンゲールから始まったんでしょうか、国際人道法という分野が発達をしてきまして、正当、違法の分野とは切り離した側面で戦争法、そして占領法の国際法が発達してきた。それが、一九〇七年、ハーグ陸戦法規が出発であります。
 そして、それが発展して、戦後、一九四九年でしたか、ジュネーブ四条約がつくられ、そしてさらに、日本は批准しておりませんが、一九七七年、二つのジュネーブ条約がつくられる、そういう段階にも入ってきた。そういう二つの側面から見なきゃいかぬわけです。
 それで、そういう立場から現在の事態を見ますと、イラクの住民の立場から見るとどうか。戦争が、占領が違法かどうかは別にして、イラク住民に対してもジュネーブ条約が適用されます。占領軍の法的権力はあります。ですから、さっき答弁がありましたが、警察権はあります。支配に服さなきゃなりません。それは正当性と離れた論であります。もう一つの側面、この戦争が本当に正当だったのかどうかという側面からも物を見なきゃならぬ。
 そういう立場からすると、イラクの国民の中に、これは不当な戦争だ、無法な戦争だ、よって、無法な占領だという立場から、この占領は反対だ、米軍は出ていってほしいという立場で行動する人たちがあらわれても、それは国際法上はやむを得ない。いいかどうかは私は論じません。
 そして、現実に米軍の占領が非常に手荒だ。本当に人道支援をやるべき米軍が、雇用も保障してくれない、生活保障もままならない、そういう不満から、今それが米軍に対する怒りとなって、全イラク各地で武力行使が噴き出し始めているんじゃないか。先日、各党の調査団がイラクへ行って見てきたのもそういう状況だった、そういう状況じゃないでしょうか。
 そうすると、ここに送り込まれる我が自衛隊はどういう法的地位に置かれるか。一面では占領支援ですよ。ですから、ジュネーブ条約の支配下にあるでしょう。そしてもう一面では、そういうイラク住民の気分、感情、国際法上の地位、そういうただ中に日本の自衛隊はさらされていくわけであります。
 だからこそ、幾ら非戦闘地域だと防衛庁長官が百万遍ここで唱えても、たまたま非戦闘地域だからといって、そういう状況の中で何が起きても不思議でない、そういう状況にあるのではないかと思うんですね。
 総理、そういう認識には立てませんか。
小泉内閣総理大臣 そういう認識には立てませんが、自衛隊を、今の憲法に照らして違反だと言う人たちもいまだに日本にはおりますし、いや、憲法に違反しないと言う方もおられます。正当性ある、ない、これはいろいろ議論があるところだと思います。
 そして、今回のイラクの復興支援に対しまして、逆に言えば、今の時点で、それじゃ米英初めいわゆるCPAが全部引き揚げますとなったら、私は今以上の混乱が起こると思いますよ。
 イラクの国民の中にもさまざまな考えがあると思います。ああ、フセイン政権を倒して解放された、今のCPAに協力してイラク復興支援、自分たちの力でやっていこうという方々もたくさんおられる。また同時に、いや、アメリカに対して、フセインも嫌だけれどもアメリカも嫌だということで、早くCPA出ていってくれという方もたくさんおられると思います。
 しかし、日本としては、一日も早くイラク人のイラク人によるイラク人のための政府をつくろうとしているCPAに協力して、日本として何ができるか、その際に自衛隊でもできることをなぜやらないのか、いや、できても自衛隊だからだめだという共産党みたいな考え方と、これはもういつまで行っても平行線です、この考えは。
 私は、戦闘行為でもない、武力行使でもないんだから、自衛隊でできることは自衛隊にやってもらおう。そして、自衛隊が行くと危険だ、じゃ、政府職員が行って、民間人で行けば危険ではないのか、これまた別の問題です。私は、政府職員でも民間人でもNGOでもできることはやった方がいいし、自衛隊でも、戦闘行為ではない、武力行使ではない、復興支援活動だったら、いわば自衛隊でなきゃできないこともあるでしょうし、自衛隊でなきゃできにくい仕事もあるでしょう。民間人であれ政府職員であれ、なかなか難しい仕事でも、自衛隊だったらば、ほかの人の援助の手をかりないで、独自にイラク国民が必要とされる活動を、私は、できる分野もあると思います。
木島委員 非常に長い答弁で、私の持ち時間になりましたので質問は終わりますが、米英両占領軍は、ジュネーブ条約に基づいてイラクの秩序、治安をしっかり守る責務があるということ、その責務を果たさなきゃならぬということを私は指摘しておきます。
 そして最後に、質問は最後でしょうから言いますが、今回の政府のこの法案が、国際法上のいろいろな問題も吟味せず、そしてまた憲法上の制約も吟味せずつくられているということを大変危ういものだと思います。
 そして、私は、憲法違反の今回の自衛隊派遣は間違っているということを厳しく指摘し、そして、今日本政府が、日本の国がやるべきことは、本当の意味のイラクの主権の回復、そして人道支援ですよ。それこそが国連安保理決議一四八三の指摘しているところです。自衛隊派遣じゃなくて、そういう本当の意味のイラク住民のための人道支援にこそ日本の国は全力を尽くさなきゃならぬということを厳しく指摘いたしまして、質問を終わります。
高村委員長 次に、金子哲夫君。
金子(哲)委員 社会民主党・市民連合の金子です。
 私は、まず、この法案、既に審議がかなりの時間費やされておりますけれども、残念ながらこの審議の中では、我々が質問したこと、また我々が疑問に感じたことに、政府側、提案者側が明確にその疑問に答えていただくことができなかった。依然として疑問点、問題点は残ったままであるし、さらに深まっているということをまず指摘しておきたいと思います。
 それで、最初に、この法案の目的の一つにうたわれております国連決議の関係について、改めて確認という意味でお聞きをしたいと思います。
 国連決議六七八、六八七、そして一四四一号を、武力行使、イラクへの攻撃の正当性ということで指摘をされておりますけれども、私は、特にここだけ確認しておきたいと思いますけれども、一千四百四十一号にうたわれている中身は、武力行使は容認できないという中身ではないかというふうに思います。
 一千四百四十一号の十一では、UNMOVICとIAEAは、イラクが査察活動に干渉したり武装解除の遵守を怠った場合、これを安保理に報告することを求め、そして、さらに十二では、その報告を受理した場合、安保理が会合を開いて検討する。そして、よく使われる言葉でありますけれども、重大な結果に直面するというのは、そういう上に立って十三で、義務違反が続けば同国は重大な結果に直面するであろうという決議の中身だというふうに思います。
 そうしてまいりますと、今回の三月二十日までの経過の中では、十二、十三、いわゆるUNMOVIC、IAEAの査察の結果は安保理に報告をされ、それに基づいて安保理が結論を出すという過程が経られていないということを言わなければならないと思います。そういう意味でいいますと、したがって、先ほどもありましたように、安保理が武力行使というものについては決議は行わない状況の中で、三月二十日の米英両国による武力攻撃が開始をされた。
 この点については、経過としては、一四四一との関係においてはそのとおりでいいでしょうか、総理。
高村委員長 外務大臣。
金子(哲)委員 外務大臣は指名しておりません。
高村委員長 私が指名している。
川口国務大臣 一四四一がそれ自体で武力行使を正当化するものではないということは、委員がおっしゃったとおりですけれども、それは前に御答弁申し上げたとおりですが、同時に、一四四一は、イラクが六八七を含む関連する決議に基づく義務の重大な違反をこれまで犯し、依然として犯しているということを決定しているわけです。さらに、イラクがこの決議の履行及び実施のための完全な協力を行わないことが、イラクの義務のさらなる重大な違反を構成しているということを同じく決定しているわけです。
 こうしたことに基づき、決議の六八七が、これは停戦決議ですけれども、破られている、守られていないということで、六七八に戻って武力行使が行われたということでございまして、六七八、六八七、一四四一を含む一連の国連決議に基づいて武力行使が行われたということで、これは正当なものであるということです。
金子(哲)委員 私がお聞きしたのは、安保理決議がなかったということと、一四四一に言う十一、十二の履行が行われないまま三月二十日の事態に至ったということを確認したかっただけでありまして、その点だけお答えください。
川口国務大臣 行われております。
金子(哲)委員 では、どういう報告が行われて、どういう安保理決議が出たんですか、その後。
川口国務大臣 これは、決議が出る必要はありませんで、会合をして報告が行われればいい、そういうことでございます。
金子(哲)委員 もうその点、一言だけ申し上げておきますけれども、しかし、少なくとも、そういう報告をしろということがあって、その報告に基づいて安保理が論議をして結論を出して初めてこれが十一、十二、十三といくわけであって、報告はあったとしても、それに対して結論を出さなければ武力行使を正当として認めることにならないということを申し上げておいて、もう大臣の答弁はいいです。
 さて、今までの討論を聞いておりますと、小泉総理は、自衛隊の派遣について、民間にできること、自衛隊ができることがあって、なぜ自衛隊を派遣してはならないんだという論議が言われております。しかし、私は、日本の憲法の中にあって、自衛隊の役割、そして自衛隊の位置づけ、そういうことからいうと、安易に自衛隊を海外に出していくということは極めて慎重でなければならないと思うんです。だからこそ、PKO活動についてもさまざまな制約がつけられているわけであって、そのように、民間にできることと自衛隊にできることと同等だから出ていってもいいという論議というのは、余りにも飛躍し過ぎている論議だと思うんですけれども、その点、どうでしょうか。
小泉内閣総理大臣 極めて慎重だからこそ、自衛隊の派遣について国会の理解と協力を得ようということで、この法案を提出しているんです。私は、審議を十分にされて、整然と国会で賛否両論の質疑が展開され、討論もなされ、国会で多数決によって決していくのが民主主義の基本的なあり方ですから、こういうイラクの復興支援につきましても、自衛隊の派遣だからこそ、この法案を提出して議論をいただいている。決して、軽率どころか、やみくもとかいう言葉は当たらないと思うんです。
 慎重に処したい、憲法と自衛隊の活動について、十分憲法の枠内で、自衛隊が法律にのっとってイラクの復興支援のための活動をするんだ、これは、政府として非常に慎重なあり方だと思っております。
金子(哲)委員 それでは、今のイラクの状況についてお伺いしたいと思いますけれども、イラクの状況というのは、少なくとも、今、米英軍を中心にして占領状況にあるということはお認めになりますか。
小泉内閣総理大臣 法的な言葉の解釈はともかく、イラク人が支配している状況ではないと。やはり、米英を中心とした各国が協力しながら、一日も早くイラク人の政府をつくろうとするために、早く混乱状況を終結して、復興支援活動にイラク人が独自で当たれるような活動をしているということが言えると思っております。
金子(哲)委員 そういうことを聞いているわけではなくて、今の状況というのは占領状況にあるかどうかということだけ。イラクの独自の、イラク国民によるイラク国民の政府をつくる、そのことは当たり前のことだと思うんですけれども、今の状況がどうかということをお伺いしているわけです。
小泉内閣総理大臣 全般的に言葉の解釈、占領というのはどういうものか、そういう解釈もありますから、私は、国連の決議で、「当局」という言葉を使っていますね。オーソリティーですかね。これが占領とどういう言葉の解釈か、そういう点については、言葉の技術的な解釈がありますからそれには触れませんが、イラク人のイラク人による政府でないということは事実だと思います。
高村委員長 外務大臣、簡単に答えてください。
川口国務大臣 一四八三に基づいて正当に施政を行っている占領当局であります。
金子(哲)委員 そういうことではないでしょう。三月二十日から軍事行動を展開して、イラクの政府を打倒して、今やその状況の中で、攻撃をした、侵略戦争を行った米英軍が実態的に支配をしている状況じゃないですか。それは間違いないじゃない。「当局」というのも、そういう意味で使われているわけでしょう。
川口国務大臣 一四八三の、例えば前文のパラ十三ですけれども、「統合された司令部(「当局」)の下にある占領国としてのこれらの諸国の関係国際法の下での特定の権限、」云々ということを言っております。
金子(哲)委員 今、あなたが読まれたとおりですよ。占領国のという言葉が使われているわけでしょう。(川口国務大臣「正当な」と呼ぶ)いや、正当であろうが正当でなかろうが、私が聞いているのは、占領国か、占領状況かどうかということを聞いているだけであって、それは、占領国と認められているように、占領状況にあるということですよ。いいですか、その点は。間違いなく、そのように、今お読みになったとおりを私は繰り返し言っているわけで、占領国、つまりは占領状況にあるということじゃないですか。その占領状況にあるところに自衛隊を派遣するということになるわけですから、そうなってまいりますと、そのことが憲法との関係にあって、どういう関係になるかということになるわけです。
 これは、従来、占領行政への自衛隊の参画は違憲であるということ、憲法で許されないということが政府見解で言われているわけで、だからこそ私は占領状況かどうかということを確認したわけであって、その点がそうであれば、その状況のところに自衛隊を派遣してその行政にかかわるということは、憲法違反ではないですか。
小泉内閣総理大臣 日本は交戦国じゃないんですよ。だから、占領行政じゃないんです。非交戦国ですから。私は、憲法違反には当たらないと思います。
金子(哲)委員 それは、戦闘行為を行おうが行うまいが、今現実的に占領を行って、全土が占領の状況の中でそれにかかわっていけば、占領行政に加担することにほかならないじゃないですか。(小泉内閣総理大臣「交戦国じゃないんです」と呼ぶ)交戦国かどうかということは重要な問題ではないんですよ。
 占領行政を行っている状況にあるかどうか、そして、その占領行政に加担するかどうかということが重要な問題であって、戦闘行為を行うかどうかということを私は問題にしているわけではなくて、そういう状況に対して行政を行うということ、それを支援するということ。安定、安全の確保という活動そのものは、占領行政の一環としてやられているわけでしょう。それを支援するということであれば、当然、占領行政を支援するということにつながるのは当たり前ではないですか。いいですか、その点については、なぜ、では占領行政と切り離すことができるんですか。
石破国務大臣 憲法九条にありますように、「国の交戦権は、これを認めない。」ということになっております。その交戦権の内容に占領行政を含んでおります。我が国は、イラクにおいて占領行政をやる主体たり得ません。したがいまして、交戦権を行使することにはなりませんし、交戦権は行使できません。したがいまして、憲法上何の問題もございません。
金子(哲)委員 そういうことを憲法はうたっているわけでなくて、この占領行政というのは、必要最小限度の自衛のための行使としてはこれを認められないということで言っているわけですよ。しかも、主体であろうが附属の協力であろうが、それは問題ではないんですよ。(石破国務大臣「全然違いますよ」と呼ぶ)いや、全然違うというのは、あなたがそういうふうに解釈されるんで。明らかに、占領行政に対して協力することは、なぜそれが、主体でないからいいんだというようなことにはならないんじゃないですか。
 占領行政というのは、あくまでも、戦闘行為のみを指しているわけではないわけであって、治安維持活動もすべて含んでいるわけです。そういう占領行政というのは、では、日本は、我が国は戦後、戦闘行為を行っていなかったから、あれは占領行政でなかったということになるんですか。あれだって占領行政でしょう、戦闘行為がなくても、明らかに。その占領行政に加担をする今回の行為は私は明らかに憲法違反だということをあえて申し上げて、反論があれば、どうぞ。
石破国務大臣 それは何も私が創作を、つくり出した概念で申し上げているわけではございません。これは憲法九条の交戦権というものをどう読むか。これは従来から政府として確立した考え方でございます。「国の交戦権は、これを認めない。」交戦権の内容に占領行政を含む。私どもは、占領行政をやるわけではございません。これはもう本当にやる主体たり得ませんので、もともと成り立たない話です。
 また、加えまして、先ほど外務大臣が答弁をなさいましたように、そこにおける米英軍の行為というものは、国連によって正当と言われておるものでございます。そこにおいて国連決議がかかり、そしてまた、私どもの国は占領行政というものを行い得ない、実際に行っておるものでもないわけでございます。したがいまして、憲法九条の問題は全く生じない。これはもう論理的に明らかなことでございます。
金子(哲)委員 それは明らかに占領行政というものを戦闘行為に矮小化しているんです。そのとおりでしょう。占領行為というのはたくさんの行為があるわけで、戦闘行為だけが……(石破国務大臣「いや、そんなことはない」と呼ぶ)そういうことを言っているわけではないと。
 その行為に対して、今行っている行為に対して支援している活動というのは、占領行政の支援活動そのものじゃないですか。なぜそれが違うんですか。
石破国務大臣 私どもはまた、交戦国でもございませんので、交戦権の行使たり得ないこともございます。また、占領行政ということは、戦闘がすべてではございません。占領行政というものは、いろいろな行政行為も含んでおるわけでございます。
 いずれにいたしましても、私どもの国は、交戦国でもございません、そして交戦権の主体でもあり得ません、占領行政を行う主体でもないわけでございます。
金子(哲)委員 だから、同じことを繰り返すようですけれども、主体、主体とおっしゃいますけれども、主体であろうと協力関係であろうと、それは占領行政にかかわることに違いないじゃないですか。なぜそこを、しかも、今、長官もおっしゃったように、非常に幅広い占領行政にかかわる作業はあるとおっしゃっておられるわけですから。
 私も、別に、戦闘行為だけが占領行政だなどとは何も言っていないわけで、しかも、自衛隊が戦闘行為を行うために、交戦権を行使するためにイラクに、今回法案を提出して、そんなことを求めようとされて法案を出されているなどということを指摘しているわけではないんです。
 いずれにしても、どういう形にしろ、占領行政の中にかかわっていくということは、少なくとも占領行政に参画していることにほかならないんじゃないですか、それは、自衛隊の活動としては憲法に違反するんではないですかということを申し上げているんですよ。自衛隊という武装組織が、しかも海外に出ていって、占領行政に加わっていくということ、協力していくということが、私は憲法違反だということを申し上げているんです。小さいとか大きいとかいう問題ではないんです。その点についてはどうですか。
石破国務大臣 これは、もう何回答弁申し上げても同じことでございますが、大きいとか小さいとか、そういう話をしておるわけではございません。そしてまた、私どもは、交戦国でもございませんし、交戦権というものは認められないということでございます。
 そして、交戦権の内容に占領行政を含むということでございますが、我々日本の国がイラクに行って占領行政をしているわけではない、私どもが行いますことが、それは米英に対するいろいろな協力ということはございましょう。しかしながら、申し上げておりますのは、あくまで武力の行使に当たらない、米英軍がやっておることがイラクの治安回復、治安安定に資するものなのかどうかというメルクマールを安全確保、支援活動にはかけておるわけでございますし、そしてまた、人道支援というものもあるわけでございます。
 これが、憲法九条が禁じておりますところの交戦権の否認、交戦権を認めないということにつながるのだという御議論は、私は、かなり無理な御議論ではないかというふうに思っております。
金子(哲)委員 いや、私は、別に交戦権が占領行政の問題だということだけで言っているわけではなくて、占領行政というのは、交戦権のみならず、それを支援する、みずからが戦争、武力を行使することだけが交戦権ということではないんじゃないですか、その国において。そのことを支援すること自身も武力行使と一体化する問題として問題になっているわけで、その点については、自衛隊が行う活動は、少なくとも、占領行政の一環として行う行動にすぎないんですよ。
 私は答弁を求めていないので、結構です。時間がないので答弁は結構ですけれども、いいですか。――では法制局、答弁してください。
 待ってください。いいですか、明らかに、今イラクで行われているのは、占領行政そのものなんですよ。大臣も認められているように、占領国がいて、占領行政を行っている、そのイラクの領土に入って自衛隊が行動するということは、明らかに占領行政に参画している行為になると考えるんですが、それはどうですか。
秋山政府特別補佐人 いわゆる占領行政についての御議論でございますけれども、占領行政と申しますのは、武力紛争に際して適用されるいわゆる戦時国際法におきまして、一方の紛争当事者が相手方当事者の領土に属する地域を占領した場合に、当該紛争当事者が当該地域において行う統治的行為を指すというふうに解されているものと承知しております。
 ところで、本法案におきまして我が国が行います支援活動につきましては、政府側から累次説明しておりますとおり、安保理決議一四八三に従い、イラクにおいて行われているいわゆる当局の施政につきまして、この決議に基づき、当局の指揮下に入るものでなく、我が国として独自の立場で支援を行うものであります。
 また、武力の行使を行ったことがなく、これに当たる行為を行うこともない我が国がこのような活動を行ったといたしましても、国際法上我が国が交戦国の立場に立つことはなく、したがいまして、我が国が交戦権を行使するという評価を受けることはないものと考えております。
金子(哲)委員 ぜひ、この問題、もう時間もありませんので、今言われましたように、統治的行為ということも言われ、明らかに私は、自衛隊が現地に行ってやる行動は、占領行政行為の、統治的行為の一環を担うということになると思います。
 私は、従来、これらの行為については、政府の統一見解として憲法上許されないということがうたわれていたわけでありますので、この見解が変わったのかどうかということについて、ぜひ政府の統一見解を出していただくように委員長に求めたいと思います。
高村委員長 法制局長官、変わったのか変わらないのかを含めてお答えください。
秋山政府特別補佐人 従来、交戦権というのは、いわゆる占領行政を含む交戦国が国際法上有する種々の権利の総称であるというふうに説明してきておりまして、その中には、いわゆる占領行政もこれに含まれるというふうに考えてきております。
 このような答弁は、ある国が交戦国となった場合におきまして、交戦国について生ずる交戦権の内容についての説明でありまして、我が国は今回交戦国になっていないわけでございますから、したがって、今回のような支援活動を行うことが我が国が交戦権を行使するということになるということはあり得ないことでございます。
金子(哲)委員 私は、その見解には納得できません。なぜなら、本来、我が国は自衛のための、自衛の戦争だけ許されているのであって、そもそも占領するようなことは想定されていないんじゃないですか、憲法で。そのほかのときに、なぜあえてこの問題が、占領行政に対して参画してはならないかということをあえて聞いたということは、今のような状況を想定してそのことは言われているのであって、ですから、私は政府に対して、改めて統一見解を出していただきたい、このことを求めます。(発言する者あり)
高村委員長 質問続けてください。質問続けてください。
金子(哲)委員 では、そのことはいいですか。その点についてまず確認したいと思います。
高村委員長 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
高村委員長 では、速記を起こしてください。
 今、法制局長官から政府の統一見解を述べていただきます。
 法制局長官。
秋山政府特別補佐人 従来、質問主意書答弁書でお答えしておりますことは、憲法第九条第二項が「国の交戦権は、これを認めない。」と規定しているが、ここに言う交戦権というのは、「戦いを交える権利という意味ではなく、交戦国が国際法上有する種々の権利の総称であつて、相手国兵力の殺傷及び破壊、相手国の領土の占領、そこにおける占領行政、中立国船舶の臨検、敵性船舶のだ捕等を行うことを含むものであると解している。」ということでございますが、これは、ここに書いてございますとおり、交戦国が国際法上有する権利の総称であるということでございまして、交戦国でないものにつきまして、今回のような支援活動を行うことが交戦権の範囲に含まれるというふうな意味は全く含まれておりません。
金子(哲)委員 時間になったので終わらざるを得ないんですけれども、しかし、その点は重要な点だと私は思うんです。やはり、憲法にかかわっての基本的なところだと思うんです。
 自衛隊が海外に出ていく。ただ、民間にできることと自衛隊ができることで、なぜ自衛隊がやってはいけないのかという問題ではなくて、やはり、その行く先の状況がどんなところであるかということは極めて重要なことであって、そこの解明なくして、そのものをあいまいにしたままで、このような法案を通過さすことはできない。やはり、依然として、今申し上げた点も含めてこの法案にはたくさんの疑義があるということを最後に申し上げて、質問を終わりたいと思います。
高村委員長 これにて本案及び修正案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
高村委員長 これより本案及び修正案を一括して討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、順次これを許します。浅野勝人君。
浅野委員 私は、自由民主党、公明党及び保守新党を代表して、議題となっておりますイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法案の、政府提出の原案について賛成、民主党提出の修正案について反対の立場から討論を行います。
 本法案は、イラク国内における戦闘が基本的にはおおむね終了していると考えられる中で、イラクの国民によるイラク国家再建のための自主的な努力を支援、促進しようとする国際社会の取り組みに対し、我が国が主体的かつ積極的に寄与することを目的としています。また、国際社会において責任ある立場にある我が国が、イラクを含む中東地域の安定に寄与することは我が国の国益に沿うものと確信いたしています。
 本法案においては、基本原則として、対応措置の実施は武力による威嚇または武力の行使に当たるものであってはならないこと、対応措置は戦闘行為が行われることのない地域で実施することを定めており、憲法との関係で問題が生じないことを制度的に担保しております。この非戦闘地域という要件については、政府が的確かつ多角的な情報収集を行い、最大限の努力をすることによって要件を満たすことは可能と考えます。
 本法案に基づく対応措置としては、人道復興、安全確保の支援活動でありますが、いずれも、安保理決議一四八三に基づき実施されるものであり、国際的に正当性のある活動であるとともに、我が国にとってふさわしい活動だと存じます。
 これらの活動は、自衛隊及び文民によって実施することとしておりますが、イラクの現状を踏まえれば、効果的な活動を遂行できる自己完結性を備えた自衛隊の能力を活用することは必要不可欠であり、自衛隊の活動を削除するような議論は全く的外れであると言わざるを得ません。
 また、本法案は、自衛隊による活動だけでなく、文民による活動も規定しており、イラクの復興を総合的に推進するための法案であります。
 したがいまして、政府に対して、現地のニーズや具体的な活動内容について引き続き調査検討を行い、速やかにイラクの復興に対する活動を実施するよう要請して、政府提出原案に対する与党三党を代表しての賛成討論を終わります。(拍手)
高村委員長 次に、渡辺周君。
渡辺(周)委員 私は、民主党・無所属クラブを代表いたしまして、政府提出のイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法案に対し、政府案に反対、民主党修正案に賛成の立場で討論を行います。
 民主党は、イラク国民がこれ以上の災禍に見舞われることを回避するとの人道的見地のほか、イラクの安定が及ぼす中東全体の平和と安定、国連安保理決議一四八三号の採択等、総合的に考え、我が国はイラク復興支援に積極的に取り組むべきとの立場をとっております。この立場から、先月、いち早くイラクに調査団を派遣し、現地のニーズをつぶさに検証してまいりました。
 この調査団の報告を踏まえつつ、現地のニーズ、憲法上の問題、対イラク、対中東政策に関する戦略、そして、アメリカ同時多発テロ以降、多様化する世界の脅威に対し、国際社会の安定した枠組みをいかに構築していくか等を総合的に勘案しましたが、現時点で自衛隊を派遣することは妥当ではないという結論に至りました。
 今回のイラクにおける自衛隊の活動は、国連のもとで行われる平和維持活動とは根本的に性質が異なる活動であります。国際社会の認知のもと行われてきた自衛隊による世界の平和と安定への取り組みが、いつしか現地で歓迎されない占領軍の活動と同一視されるようになっていたという状況はあってはなりません。政府案における自衛隊のイラクでの活動はこのような懸念がつきまといます。
 以下、申し上げます。
 政府案は、国連憲章違反の疑義があると言わざるを得ない対イラク攻撃を、安保理決議六七八、六八七及び一四四一号に基づくものと「目的」に位置づけている点も、極めて問題であります。また、「基本原則」第二条に、自衛隊の活動はいわゆる非戦闘地域に限るとありますが、戦闘員と非戦闘員を峻別することも困難な現地で、非戦闘地域を特定することはフィクションであります。これがフィクションであることは、最近の米軍や英軍をねらった襲撃、反撃の事例を見れば明らかであります。
 「自衛隊による対応措置の実施」の実施について、国会の事後承認となっていますが、自衛隊派遣の重要性及びイラク情勢、そして民主的統制の観点から、事前承認とすべきであります。
 また、第八条に武器弾薬の陸上輸送を排除していないことは、テロ特措法で安全確保の見地から除かれたことに照らしても、問題であります。武器使用基準のあり方についても、現地情勢等を勘案すると、自衛官の身の安全が危惧されます。
 さらに、本法案は、施行から四年の時限立法でありますが、現在でも刻々と現地情勢は変化しており、期限は二年に短縮すべきであります。
 この点について本委員会で繰り返し質疑を行ってまいりましたけれども、さきの答弁にありましたように、納得いく論理的な答弁は得られませんでした。
 以上、イラク人道復興特別措置法案は、我が国の国益に照らして賛成しがたい法案だと言わざるを得ません。よって、政府案に反対、自衛隊の活動の削除を中心とした民主党の修正案に賛成の立場を表明いたしまして、私の討論を終わります。(拍手)
高村委員長 次に、中塚一宏君。
中塚委員 私は、自由党を代表して、イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法案並びに修正案に対し、反対の立場から討論を行います。
 まず、自民党を初めとする政府・与党の強引で独善的な委員会運営に対し、強い抗議の意を表明いたします。
 本来であれば、このような重要法案は、十分な時間をかけて、公聴会を開催するなどして幅広く国民等の意見を聞きながら、慎重に審議するべきであります。しかし、政府・与党は、本法案を衆議院で何日までに通過させれば今国会で成立できるかと逆算して、前例のないほどの審議を強行し、本日の採決に持ち込みました。その結果、自由党を初めとする野党が指摘した数多くの問題点については、何ら明確な回答が得られないままであります。
 さて、自由党は、今まで同僚議員が繰り返して述べてきた安全保障の原則に基づき、今回のイラク復興支援についても、人道支援はもとより、治安維持についても、国連が平和維持活動として加盟国の軍隊の派遣を決議し、かつ、国連から日本に派遣の要請があった場合には、我が国は当然、自衛隊の派遣も含めて全面的に協力するべきであると考えております。
 しかし、政府がイラク支援法案の根拠としている国連安保理決議一四八三号は、人道支援については国連及びその他の国際機関の任務、治安維持は占領国の業務としており、国連が加盟国に対して占領国への協力を要請したものではなく、自衛隊をイラクに派遣する根拠とはなり得ません。
 しかも、強引に自衛隊を派遣したとしても、これほどまでに不備だらけの法案では、自衛隊に不要な犠牲を強いることは明白です。
 現在、イラクでは今なお、全域においてフセイン軍の残党が散発的に占領軍への攻撃を繰り返し、いまだ占領軍に死者が出ているのが実態であります。
 政府は、委員会の答弁でも、繰り返し、自衛隊は非戦闘地域に展開させると述べましたが、イラクでは、比較的安全と言われる地域においても、日々刻々と情勢の変化があります。また、軍事組織でない強盗などでもかなりの武装をしていると言われており、非戦闘地域の定義が意味をなさないのは明白であり、机上の論理では取り返しのつかない事態が生じる可能性が強いと思われます。
 また、現在イラクが占領国による統治下にあり、しかも混乱状態が続いているとしても、国連機関を通じた人道民生支援は現行法で十分に可能であり、まず日本は、国連やその他国際機関を通じて、食糧、医療品の供与やインフラの整備等を早急に実施するべきであります。
 以上、今回提出されましたイラク支援法案は、法案の定義そのものも、個別具体的な内容についても極めて問題点があるため、反対をいたします。
 なお、民主党提出の修正案につきましては、その方向性は理解はできるものの、原案の抜本的な修正には至らないため、反対することを申し述べ、私の討論を終わります。(拍手)
高村委員長 次に、赤嶺政賢君。
赤嶺委員 私は、日本共産党を代表し、イラク特措法に対し、反対の討論を行います。
 本法案は、イラク国民の将来と世界の平和秩序、日本国憲法にかかわる重大法案であります。この間の審議で、国連憲章と国際法に照らし、米英によるイラク戦争とそれに続く軍事占領に正当性があるのか、法案の前提そのものが問われ、また、全土で戦闘が続くイラク国内にどうして非戦闘地域を設定できるかなど、法案の根幹にかかわる数々の疑問に政府はいまだまともな説明ができないのであります。
 しかも、イラクの現地情勢をどう見るか、与党と野党の現地調査団の報告は真っ向から対立しています。本委員会として、責任を持って現地調査を行うべきであります。法案に対する国民の評価も分かれています。中央、地方で公聴会を開き、国民の声を聞くべきであります。
 にもかかわらず、わずか一週間の審議でこうした重大法案の採決を強行することは、断じて許されません。与党三党に対し、強く抗議するものであります。
 以下、反対理由を述べます。
 第一に、本法案は、イラクの復興人道支援法などではなく、米英軍の軍事占領に日本が参加、加担する、まさに軍事占領支援法であります。
 国連安保理決議一四八三は、無法な戦争に基づく占領行政に合法性を与えておらず、占領行政に対する国連加盟国の協力を要請しているものでもありません。無法な戦争に基づく軍事占領への支援を行うことそのものが違法、不当なものであります。
 米英による軍事占領は、イラク国民から深刻な抵抗、反発を受け、旧政権勢力などとの衝突が続発し、これに対し米英軍は、治安維持の名のもとに掃討作戦を展開しているのであります。その米英軍を自衛隊が支援することになれば、イラク国民の目に占領軍の加担者と映ることは明らかであります。イラク国民と砲火を交えるという危険きわまりない事態も現実に想定されるのであります。米英によるイラクの長期軍事占領支配に日本が参加、加担することは、断じて容認できません。
 第二に、イラクへの自衛隊の派兵が、憲法の平和原則に真っ向から反するものであります。
 本法案は、戦後初めて、現に戦闘が行われている地域に自衛隊の陸上部隊を展開させるものであります。政府は、イラク国内に非戦闘地域が設定できると言いますが、イラクの実情に照らせば、これが全くの虚構の議論であることは明らかであります。現に、米兵に対する攻撃が連日起こっており、米軍の司令官自身が、イラク全土が戦闘地域、戦争はまだ終わっていないと発言しています。このようなイラク国内で、自衛隊が武器弾薬を含む輸送、補給、医療などの後方支援を行い、攻撃を受ければ応戦するのであります。これが、武力による威嚇、武力の行使、交戦権を否認した日本国憲法に反することは余りにも明らかであります。
 第三に、この法案が前提としている米英軍によるイラク戦争は、そもそも正当性がない無法な戦争であることがいよいよ明白であります。
 安保理事会がイラクに対する武力行使を認めていないことは明らかであり、これを追認、合法化することは許されません。ましてや、戦争の最大の口実とされた大量破壊兵器がいまだ発見されておらず、保有を断言した根拠、責任について、政府は何ら明らかにしていません。どこから見ても戦争の大義が根底から崩壊しているのであり、このもとで自衛隊を派兵することが全く道理のないものであることは明らかであります。
 第四に、日本がやるべきイラク支援は、イラク国民の意思を尊重した、国連を中心とする、非軍事の人道復興支援でなければなりません。
 我が党の現地調査団に対しても、医療や水、食糧など、さまざまな分野で日本の支援を求める声が寄せられました。こうした声にこたえるべきであります。イラク国内に自衛隊を派遣し、イラク国民に敵対する軍事占領支援を行うことは、イスラム社会と日本の友好関係に深刻な障害をもたらすことは必至であり、断じて許されません。
 なお、民主党修正案については、自衛隊派兵を法案から削除することは前向きなものですが、米英軍によるイラクの軍事占領支配に日本が参加、加担するという枠組みは残されており、賛成できません。
 最後に、私は、戦後初めて、いまだ戦闘が続く海外に自衛隊を派兵し、イラク国民に銃口を向ける法案を、ブーツ・オン・ザ・グラウンドというアメリカの要求のまま、自衛隊派遣、先にありきで進める小泉内閣の姿勢を強く批判し、反対討論を終わります。(拍手)
高村委員長 次に、金子哲夫君。
金子(哲)委員 社会民主党・市民連合を代表し、政府提出のイラク特措法に反対の討論を行います。
 最初に申し上げたいことは、本法案は、まず自衛隊の派遣ありきから出発したものであり、審議にすら値しない法案であると言えます。審議に当たって、重要な部分では何らまともに答えることができない法案であることが次々と明らかになりました。このような法案は廃案とすべきであります。
 そもそも、本法案の前提である米英両国によるイラク攻撃は、国連安保理の決議もなく行われたものであり、何の正当性もない侵略戦争であったということであります。米国がイラク攻撃を行った最大の理由とした大量破壊兵器もいまだ発見されていません。そもそも、国連決議によらない武力行使は国連憲章違反であり許されませんが、大量破壊兵器の保有という大義すら不確かなものであったということであれば、イラク戦争はまさに一片の正当性もない侵略戦争であったということであります。このような違法、不当なイラクへの侵略、占領に加担することを絶対に認めることはできません。
 さらに、本法案の根拠とされている国連安保理決議一千四百八十三は、加盟国に対し人道的支援とイラク復興を呼びかけたものであり、軍隊を派遣することを求めているわけではありません。自衛隊のイラクへの派遣は、国連決議や国際貢献を名目にしながら、実は米国からの要求にこたえることのみを目的としているのであります。
 真にイラクの人々のニーズにこたえるとするならば、自衛隊の派遣ではなく、劣化ウラン弾被害を初めとする医療や食糧援助、生活インフラの再建などの人道復興支援に全力を挙げるべきであります。そもそも、米英による軍事占領下にあるイラクに自衛隊を派遣することは、占領行政への自衛隊の参画を違憲としてきたこれまでの政府見解にも明確に反するものです。
 具体的条文においても多くの問題があります。
 例えば、自衛隊のイラクでの活動地域は非戦闘地域に限定することとされています。しかし、審議を通じても明らかになったように、非戦闘地域と戦闘地域の線引きをすることなど全く不可能であります。イラクでは、散発的な戦闘が続き、占領軍への襲撃が続いており、今後も米英軍の駐留が長引けば、さらに反米感情が高まり、ゲリラ戦などが拡大することが指摘されています。イラク全土が戦闘地域であり、自衛隊の活動を非戦闘地域に、しかも将来にわたって限るとする本法案は、その前提からして机上の空論にすぎないのであります。むしろ、外国の軍隊が一日も早く撤退し、イラク国民自身による政権を樹立することこそがイラクの安定への近道です。
 さらに、治安維持に当たる米軍に対し、武器弾薬の輸送、武装した米兵の輸送まで行うことは武力行使と一体であります。法案が言う安全確保支援活動は憲法の禁止する武力行使との一体化であり、到底認められるものではありません。
 また、活動内容や装備なども、いずれも基本計画に白紙委任され、国会は事後承認にすぎません。使用装備の内容など、重大な問題が審議で解明されることなく基本計画にゆだねられることなど、許されることではありません。緊急性のないイラクへの派兵が事後承認とされていることは、全く理解できません。
 政府は、イラク戦争の経緯やイラクの人々のニーズなどを真剣に考えることなく、ただただ米国に追随し、自衛隊の海外での活動範囲を広げようとしています。社民党は、平和憲法を踏みにじり、自衛隊という武装組織を海外へ、しかも占領地域へ派兵する本法案を断じて受け入れることはできません。
 戦後半世紀にわたって、日本は、戦争で一人も殺すことなく、一人も殺されることはありませんでした。今イラクに派兵することは、大国に従い外国で人を殺傷し、殺傷される国家への道を歩むことにほかなりません。
 世界に誇る平和憲法の意義をいま一度思い起こし、イラクへの自衛隊派兵を断念されるよう強く訴え、社民党・市民連合を代表してのイラク復興支援特措法案に反対する討論を終わります。(拍手)
高村委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
高村委員長 これより採決に入ります。
 内閣提出、イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法案及びこれに対する修正案について採決いたします。
 まず、伊藤英成君外四名提出の修正案について採決いたします。
 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
高村委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。
 次に、原案について採決いたします。
 これに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
高村委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
高村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
     ――――◇―――――
高村委員長 この際、中川正春君外三名から、民主党・無所属クラブ、自由党、日本共産党及び社会民主党・市民連合の四派共同提案による国連主導によるイラクへの人道復興支援の実現を求めるの件について決議を行うべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を聴取いたします。中川正春君。
中川(正)委員 私は、民主党・無所属クラブ、自由党、日本共産党及び社会民主党・市民連合を代表して、ただいま議題となりました動議について御説明をいたします。
 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。
    国連主導によるイラクへの人道復興支援の実現を求めるの件(案)
  戦争による被災や略奪等の被害に今も苦しみ続けるイラク国民に対し、人道上の見地から、復興支援活動を進めることが、国際社会の喫緊の課題となっている。
  そもそも、イラク戦争は国連の武力行使容認決議に基づいたものではなく、しかも、米国等が開戦の理由としたイラクの大量破壊兵器の隠蔽が確認されていない以上、正当性に欠けている。さらに、イラクの復興について、治安維持等のために国連で平和維持活動(PKO)の決議すらなされていない。そのような中で自衛隊をイラクに派遣することは、断じて容認できない。ましてや、米軍等の後方支援を目的とした派遣は論外である。
  国連中心主義を掲げる日本は、国連憲章及び日本国憲法の理念である平和主義、国際協調主義を最大限にいかすため、まず、国際社会が一致協力してイラクの復興を支援できるよう、国連が枠組みを確立することを国連及び関係諸国に強力に働きかけ、国連を中心とした取組みを実現すべきである。また、国連及び関係諸国が協力してイラク国民自身による暫定行政機構を早期に立ち上げる必要がある。
  同時に国連安保理決議第一四八三号に基づき、日本はただちに国連やその他国際機関を通じて、食糧・医薬品の供与、インフラの整備をはじめ、真にイラク国民の復興ニーズに基づく人道支援を積極的に実施しなければならない。
  以上の施策の実現を日本政府に強く求める。
  右決議する。
以上であります。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。ありがとうございました。(拍手)
高村委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
高村委員長 起立少数。よって、本動議は否決されました。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後三時三十二分散会


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