衆議院

メインへスキップ



第5号 平成15年10月3日(金曜日)

会議録本文へ
平成十五年十月三日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 衛藤征士郎君

   理事 赤城 徳彦君 理事 浅野 勝人君

   理事 中谷  元君 理事 松下 忠洋君

   理事 末松 義規君 理事 中川 正春君

   理事 赤松 正雄君 理事 赤嶺 政賢君

      荒巻 隆三君    伊藤 公介君

      金子 恭之君    金田 英行君

      北村 誠吾君    小島 敏男君

      新藤 義孝君    杉浦 正健君

      高木  毅君    谷田 武彦君

      谷本 龍哉君    仲村 正治君

      蓮実  進君    林 省之介君

      福井  照君    松浪 健太君

      松宮  勲君    森岡 正宏君

      吉野 正芳君    一川 保夫君

      大畠 章宏君    岡田 克也君

      桑原  豊君    佐藤 公治君

      中塚 一宏君    中野 寛成君

      原口 一博君    肥田美代子君

      山口  壯君    吉田 公一君

      渡辺  周君    高木 陽介君

      丸谷 佳織君    大森  猛君

      今川 正美君    金子 哲夫君

      金子善次郎君    山谷えり子君

      山村  健君

    …………………………………

   内閣総理大臣       小泉純一郎君

   外務大臣         川口 順子君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     福田 康夫君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      石破  茂君

   防衛庁副長官       浜田 靖一君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   防衛庁長官政務官     嘉数 知賢君

   外務大臣政務官      田中 和徳君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    秋山  收君

   衆議院調査局国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラク人道復興支援活動等に関する特別調査室長        高木 孝雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月三日

 辞任         補欠選任

  牧野 隆守君     蓮実  進君

  松宮  勲君     林 省之介君

  伊藤 英成君     中野 寛成君

  中塚 一宏君     岡田 克也君

  前原 誠司君     肥田美代子君

  木島日出夫君     大森  猛君

  山谷えり子君     金子善次郎君

同日

 辞任         補欠選任

  蓮実  進君     牧野 隆守君

  林 省之介君     松宮  勲君

  岡田 克也君     中塚 一宏君

  中野 寛成君     伊藤 英成君

  肥田美代子君     前原 誠司君

  大森  猛君     木島日出夫君

  金子善次郎君     山谷えり子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出、第百五十六回国会閣法第一二一号)




このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

衛藤委員長 これより会議を開きます。

 第百五十六回国会、内閣提出、平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法の一部を改正する法律案及びこれに対する前原誠司君外三名提出の修正案を一括して議題といたします。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。赤城徳彦君。

赤城委員 おはようございます。自由民主党の赤城徳彦であります。

 きょうは総理に出席をいただきまして、ありがとうございました。議題となっておりますテロ特別措置法についてお尋ねする前に、もう一つの国民的な関心事でありますイラクの復興支援に対する総理のお考えを伺いたいと思います。

 イラクに対して自衛隊の部隊を派遣するかどうか、さまざま賛否があるようでございますが、基本のところ、これからイラクをどうしていくんだということを考えれば、おのずと答えは明らかだと思います。

 イラクにおいて基本的に戦闘は終結しました。今は、イラクをどうやって復興していくのか、そういう局面であります。そのために各国が持てる力を出し合って、力を合わせて、イラクが再び豊かで平和で、テロとか大量破壊兵器の脅威のない、そういう国にしていく。そのために我が国としても、さきの通常国会でイラク新法、いわゆる復興支援法をつくりました。

 今、一番困難なときであります。復興支援は待ったなしだと思います。一方、今アメリカ、米軍等が襲撃されて危険だから行くべきではない、そういう声もありますが、アメリカはそういう困難に耐えてなおイラクの復興のために頑張っているんだという側面をこそ見るべきではないかと思います。

 もちろん、この法律また憲法の規定にのっとってでありますから、活動する地域は現に戦闘が行われていない地域であるとか、安全については十分に配慮するとか、そういう要件を満たしていく、安全に十分配慮する、これは当然のことであります。その上で、確固たる決意でもってこのイラクの復興支援に我が国としても持てる能力をもって参画をしていく、このことが大事だと思います。

 そこで、一方、これまでイラクに対して随分調査団が出ております。政府の調査団も何回か出ております。この特別委員会も現地調査をいたしました。各党の調査団も行きました。現地から見ると、日本は随分調査には来るけれども一向に本隊が来ないな、そんなふうに半ばあきれられているのではないかという心配もいたします。

 今までの調査の中で、現地にどういうニーズがあるかということもおおよそ明らかになってまいりました。水を浄化する、水を提供する。電気が滞って停電になる、では発電機を送ろう。あるいは、日本が協力してつくった病院が十四あります。その医療はなかなか今困難な状況にあります。そのほか、いろいろな物資を輸送する、こういうニーズもあります。そういうことも明らかになってまいりました。

 総理は、これまでの委員会あるいは本会議の答弁の中で、今の政府の調査団の報告を受けて具体的に決定していきます、こういうことでございますけれども、もうこの段階でありますから、具体的に、まあ最終決定はこれからだとしても、おおよそどういう活動をしようとしているのか、いつごろを目途に現地に派遣するのか、派遣に向けての基本的な方針、これをお示しいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 イラクの支援に対しては、イラクの国づくりのための復興支援と人道支援、これに日本は国力にふさわしい貢献をしようということで、今検討しております。

 各委員会、国会の議員の皆さんも調査に赴かれた、そういう方々の報告も聞いております。また、政府調査団が今現地に赴いて、各地区、調査されております。そのほか、個別にいろいろな方々の意見を聞いておりますが、まず考えられるのは、人道支援、復興支援ということを考えれば、どなたにも喜ばれる、またイラクにとって必要なのは、医療面、それと生活面におきましては水ですね。給水活動とか、あるいは電力の面を考えれば給電活動等。そういう面については、日本としてもできることが十分あるというふうに認識しております。

赤城委員 今そういうお話をしていただきました。これは大変大事なことでありまして、日本はその持てる能力、持てる役割を果たしていくんであって、アメリカと同じようなことをするわけではない。いわゆる掃討作戦とか、そういうことをするわけではない。しかし、イラクの治安を回復する、また人道支援のためにそういうバックアップをしていくんだ、そういう役割だということをぜひ一般の方に知っていただくということが大事だと思います。

 それからもう一点、これはなぜこういうことを伺ったのかといいますと、そういう支援をするためには、現地イラクに行くというのは初めてのことでありますから、いろいろな準備が必要であります。ところが、現地調査団の報告を受けて具体的に確定するということになって、それから、では、砂漠用に防じんフィルターをつけるとか、あるいは輸送機であれば、地対空ミサイル対策としてのチャフ、フレア、こういうものをつけなきゃいけないとか、いろいろな装備を整えなければいけない。また、人員についても訓練が必要だ。基本的な言葉とか生活習慣とか、訓練が必要です。そのために何カ月もかかるということになりますと、一番大事な、困難なときに部隊が派遣できないということになりかねないと思います。

 私は、その基本的な方針を示していただいて、できる準備をもう早速にも始めろ、こういうことで指示をしていただきたいと思っております。部隊の準備は今どういうような状況になっているか、お答えをください。

石破国務大臣 先生御指摘のとおり、現在調査団が出ておるところでございます。多面的に、多角的に、いろいろなニーズを今把握しておるわけでございます。それが帰ってまいりまして、では、実際にどのようなニーズがあるのか、治安状況はどうなのか、その治安状況において我々はいかなる装備を有するべきなのかというようなことをきちんと決めていかなければいけません。

 今行っております調査団には、当然のことでございますけれども、実際に赴く制服の自衛官たちもその中に入っていろいろな調査をしておるわけでございます。周到な準備をいたしませんと、これは、戦闘地域か非戦闘地域かという話ではなくて、九条に定められている防衛庁長官の安全確保義務、安全に配慮する義務に反することに相なります。周到な準備が必要です。ですから、ニーズ、治安状況というものが把握をできた時点で政府の決定をいただくということになるだろうと思っています。

 現在、私どもといたしましては、こういう場合にはどのような装備が必要になるであろうか、こういう場合にはどのような訓練が必要になるであろうか、そういうことにつきまして、頭の整理というものはきちんと行っております。決められて、政府の意思の決定ができて、それから考えるというようなことになりますと、先生御指摘のようなことが起こりかねません。

 いずれにいたしましても、政府の方針、政府の方向というものがはっきり決まりまして、その後、速やかに行動ができますように、現在、可能な範囲におきまして私どもとしては鋭意努力をしておるところでございます。

 しかしながら、シビリアンコントロールというものに反した行動というものができないということは、先生よく御案内のとおりでございます。

赤城委員 十分な準備をしていくということは、隊員の安全のためにも、また任務を十全に発揮するためにも大事なことでありますから、ぜひその準備に遺漏のないようにお願いをいたします。

 さて、時間がなくなりますので、本題のテロ特別措置法であります。

 これは、一昨年の九・一一同時多発テロ、あのテロ事件のことを改めて思い起こさなければいけないと思います。世界の多くの国がテロ撲滅のために参画をしております。テロリストが海路を伝って逃走するということを抑止する、そのための海上阻止行動というのを今十カ国がやっております。それに対して、洋上で油を補給するという大事な、地味ではありますけれども、非常に大事な部分を担っているというのが日本であります。今この時点で、この法律が延長できずに日本が現地から引き揚げるということになったら、これは世界からどういうふうに見られるか。また、ひいては、テロリストをいかに利することになるのかということも我々考えなければいけないと思います。

 改めて、このテロ特別措置法の延長に向けて、また、テロというのはもっといろいろなものがあります。九・一一の脅威の除去というこの法律、大変長い題名でありますけれども、この法律の対象に限らず、ありとあらゆるテロリストというのを根絶していく、世界からテロの脅威をなくしていくという努力もあわせて必要だと思いますが、総理の、この法律の成立に向けた、そしてテロ根絶に向けた基本的な決意をお伺いします。

小泉内閣総理大臣 九月十一日のニューヨークでのテロ事件以来二年が経過しましたけれども、その後テロ活動は終結したかというと、そうでもない。各地区でテロは起こっております。発生しております。

 そういう中にあって、テロ特措法に基づく、各国の活動に日本におきましても自衛隊を派遣して、それぞれ支援活動を行っております。各国軍隊に対する給油活動をしておりますが、それだけではございません。各国の治安当局と連携しながら、テロ組織あるいはテロにかかわりそうな人物に対する情報交換、意見交換、表面に出ていない分野でもかなり効果を発揮している面もございます。

 あるいは、テロ活動に対する資金、これも国際協調が必要だと。テロ組織あるいはテロリストに対する資金源を断とうということで、資金凍結の問題につきましても、日本一国ではできません、またアメリカ一国だけでもできないでしょう。各国の機関と協力しながら、テロ資金に対する資金源をいかに断つかという面においても、いまだ協力関係を解くという状況にはございません。

 あるいは出入国管理、これについても、日本においてはテロリストの拠点をつくらせない、テロリストを日本に入国させないという面におきましても、各国との協力が必要であります。各国それぞれ、自国にテロリストの拠点をつくらせてはならない、またテロリストを入国させてはいけないということで、それぞれが必要な対策を打っているわけであります。そういう面の情報交換、これはまた極めて重要であります。

 そういう活動が、二年たったから、はい、いいですよということには私はならないと思います。そういう面においてテロは終わっておりません。テロとの闘いは引き続き継続していかなきゃならない。そういう努力を各国が覚悟しながらやっている中、今日本が、はい、期限が切れましたからさようならと、そんなことを、果たして、国際協調体制を我が国の外交の基本方針としている中、私はできるとは思いません。日本の選択肢はないと思っております。そういう面において今回の延長をお願いしているわけであります。

赤城委員 インド洋で海上自衛隊が行っている活動、極めて地味な活動でありますけれども、大変な困難を伴う活動です。

 私は、防衛庁の副長官として八月に現地部隊へ激励に行ってまいりました。甲板に卵を置いておけばそのまま目玉焼きができると言われるぐらいの暑さでございまして、さはさりながら、少しでもその居住環境を改善していきたいと思っております。そのためにいろいろな対策を指示してまいりました。

 ぜひ、浜田防衛庁副長官には、この居住環境、勤務環境を少しでも改善するように御努力をいただきたいということをお願いしたいと思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

衛藤委員長 これにて赤城徳彦君の質疑は終了いたしました。

 次に、赤松正雄君。

赤松(正)委員 公明党の赤松正雄でございます。おはようございます。

 私は、短い十分間の時間でございますので、三点にわたって総理のお考え方を聞かせていただきたいと思います。ショートクエスチョンでいきますので、ショートアンサーでお願いいたします。

 まず第一点目は、今もお話がございましたけれども、国際テロの時代における安全保障観という問題であります。

 まず、戦後――戦後というのは、あの第二次大戦後長い間冷戦が続きました。その後、一九九〇年代から、言ってみれば冷戦後の時代が続きました。そして今、あの九・一一以降、言ってみれば、国際テロのもとにおける新しい戦争の時代という規定づけもされております。このとらえ方。

 冷戦の時代、日本は、言ってみれば一国平和主義という格好で来たんだろうと思います。そして、冷戦後の時代というのは、大胆に言えば、アメリカ一国覇権主義に寄り添うという生き方をしてきたんじゃないのかなという気がいたします。今、先ほど申し上げました新しい戦争とも言われる国際テロの時代にあって、日本の安全保障をどうしていくのかというのは、極めて重要な問題だろうと思います。

 私は、国家の安全保障だけではなくて、人間の安全保障に力点を置いたそういう安全保障観が求められている、言ってみれば、新しい時代における新しい平和主義の確立というものが求められている、こう公明党は思いますが、総理に、まずこの点についての、新しい時代における平和主義の確立という考え方についてお考え方を聞かせていただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 一国の平和と安全を確保する、どの国も最も重要な政府の責務だと思っております。

 日本だけ平和であればいいという時代ではないと思っております。世界の平和と安定の中に日本の安定もあるんだという考え方で、いかに日本は、日本独自の安全保障を考えるのは当然でありますが、同時に、各国と協力しながら、世界の平和の定着に日本として何ができるかということを考えなければならない時代でもあると思っております。

 まず、日本としては、日本独自の平和と独立を確保するためには、アメリカと安保条約、日米同盟を重視しよう、これが基本であります。日本一国で他国からの侵略に対処できるかと。これには、費用面においても実際の現実面においても限度があるのではないかということから、日本としては、アメリカと協力しながら日本の安全を確保しようということで、日米安保条約を締結しております。

 そういう中で、一国平和主義、これは、日本が小さい経済力の時代であったら、日本は日本のことを考えればいいという時期もあったかもしれませんが、今や日本は、援助をされる側から、アメリカに次ぐ経済力を持っているいわゆる経済大国になってまいりました。そういうことから、日本としてふさわしい、人間の安全保障面、国だけじゃない、国境を超えた、各個人の安全を確保する、あるいは必要な対策を行う意味において、人間の安全保障という考え方も日本独自の考え方を提起して、各国と協力して今やろうとしております。

 難民等の問題、国境を越えて各地域で困難に遭遇している難民の方々もたくさんおられます。そういう意味において、人間自身の、国とは違った面で、人間個人の安全保障面からとらえた日本の協力は何かという点も、もう考える時代じゃないでしょうか。一国平和主義ではないし、一国だけの、自分の国のことだけ考えていいという時代でもない。やはり、世界の国々と協調しながら、平和においても、人間の能力向上、安全保障についても考える時代ではないかなと思っております。

赤松(正)委員 次に、二点目の質問に入ります。

 この十年、私、当選して十年になりますけれども、PKO法の制定から始まって、周辺事態安全確保法、そして、きょう議題になっておりますこのテロ特別措置法、そして有事法制、そしてイラク復興支援法と、この数年の間に、十年の後半における国会における議論というものは、私、突き詰めていけば、憲法の範囲というものをどう見るかという問題が非常にやはり究極の焦点だっただろうと思います。

 石破防衛庁長官はいつも、ぎりぎり詰めていくというのを口癖のように言われますけれども、憲法の範囲をめぐって、拡大解釈なのか、縮小解釈ではないのかというふうな、そういう論争というものも長い間行われてまいりましたけれども、先ほど一点目で申し上げました、言ってみれば新しい戦争の時代、国際テロの時代、こういった時代状況の中で、今、憲法について、憲法九条の精神や、そして前文も含めて、これを変えるんではなくて、恒久平和主義というものをうたったこの憲法九条、憲法前文の国際貢献、こういう物の考え方というものをしっかり踏まえた上で、今の時点における、政治がどうこの憲法というものを考えるのか、憲法九条、前文のいわゆる精神というものをどう考えるのかということについて、明確なやはり姿勢を出すべきだと私は思います。

 今、内外からさまざまなそういう認識ギャップについて問われているわけですけれども、私は、今の時点で小泉総理御自身が、この憲法九条、前文におけるところの恒久平和主義に関する物の考え方について、言ってみれば小泉見解とでもいうようなものをやはりぜひ出すべきだ、こんなふうに思いますが、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 これは、憲法の条文をめぐってどう解釈するかというのは、専門家の間でも分かれる点がかなりあるんですね、日本の憲法の中で。例えて言えば、一番問題になっている憲法九条の問題と前文の問題も、解釈によって、国連の決議があれば多国籍軍にも自衛隊を派遣できるという解釈もあれば、いや、憲法九条があるからそれはとても無理だという意見もあります。あるいは、現在の憲法の中で自衛隊は憲法違反だという論議が、国会議員の中だけじゃない、法律の専門家の中にも、自衛隊は憲法違反である、いや、違反ではないという議論がいまだにあるんですよ。

 だから、そういうことを考えて、私独自に法律を解釈してというよりも、それだったらば、もう憲法を改正して、そのような専門家の間で、違反だ、違反じゃないという議論よりも、はっきりして、もっと国民の理解が得られるような解釈ができるような、わかりやすい文章にした方がいいじゃないかという議論もあるし、私はどちらかというとその立場です。

 例えば、九条だけじゃないんですよ。憲法八十九条、公金を慈善事業とか教育事業に支出してはならない。では、私学等に国の税金を支出しているのに、憲法違反という議論が起きないんだろうか、国会で議論が起きないんだろうかという点もありますね。だから、憲法九条だけじゃないんです。

 そういう面において、私は、総理大臣の解釈を変えて、今までの憲法によってできないことをできるようにしろというよりも、はっきりと憲法を改正して、できなかったことも必要だったらやれる、あるいは、国民にわかりやすい、だれが見ても、ああ、これだったらば当然の活動だなというような点に憲法全体の文章を見直して、独自の、国民にわかりやすい憲法をつくって、それにのっとってわかりやすい解釈をしていくという方が筋が立っているんじゃないかな、私はそう思っております。

赤松(正)委員 総理の考え方はわかりましたけれども、憲法を改正する、その前段階においてやはりきちっとした整理をしておかないと、どれだけ先になっていってしまうかわからないという部分もありますので、やはりきちっとした物の考え方というものを出すべきだ、やはり法制局頼りというのではいけない、政治のリーダーシップが必要だ、こういうことを申し上げまして、私の質問を終わります。

衛藤委員長 これにて赤松正雄君の質疑は終了いたしました。

 次に、山谷えり子君。

山谷委員 保守新党、山谷えり子でございます。

 私は、この夏、イラク、アフガンに行ってまいりました。五十度を超える、砂あらしが時折吹きすさぶ中で、イラクの復興にさまざまな国々が協力支援しているという姿を見てまいりました。バース党の残党、それから外国の組織兵、プロの殺し屋が大量に入って治安問題を複雑化しております。

 また、アフガンでは、カルザイ大統領の自宅に招かれてゆっくり話してまいりました。アフガンは道半ば、まだまだ解決していないのに、日本の国会議員でことし来てくれたのはあなた方が初めてだと言われました。三千万ドル近い地雷処理に日本は貢献しております。それでもまだ一カ月百人以上が地雷によって死傷するというアフガン。そしてまた、二百万人難民が戻ってきた。そこへ、緒方貞子さんがリーダーシップをとって、難民定住のために教育支援、また雇用の創出をしておられる。日本に対しては本当に感謝の言葉が述べられました。

 イラク、アフガニスタンを破綻国家にしてはならない。破綻国家にしたならば、再びテロリストの温床になってしまいます。

 また、私は、インド洋で補給活動をしている「とわだ」、そして護衛艦「はるな」に乗ってまいりました。五十度を超える輻射熱、甲板の上で玉のような汗を流して貢献していらっしゃる、補給活動をしていらっしゃる方たち、四分の三の方は、また行くかと聞けば行くと言われるというような非常にモラルの高い中で御努力していらっしゃる。一回、四、五カ月行くたびに数キロやせるということでございました。しかしながら、この二百九十二回、三十二万キロリットルにわたる給油活動によってテロリストたちの活動が防がれ、そして海上行動で十分な抑止効果があるというふうに私は思いました。

 別れるときに、インド洋を挟んでどんどんどんどん船が遠くなっていく、手を振り合いながら別れましたけれども、私は胸が詰まる思いがいたしました。世界平和のためにテロは許すまじ、そして諸外国との連帯の中であの方たちが、自衛官の方たちが活動しておられる。何と本当にすばらしい活動だろうというふうに思いましたけれども、総理御自身は、この活動の意義、評価、どのようでございましょうか。

小泉内閣総理大臣 私は、あの厳しい環境の中で活動している自衛隊の諸君、本当に頭の下がる思いであります。酷暑の中でまさに額に汗して、みずからの仕事に誇りを持って任務につかれている。とても普通の人では、一日でも耐えられないような環境の中で活動されている。心から敬意を表しております。

 そういう活動を各国の軍隊も一緒にされているわけであります。その中で、日本の自衛隊として後方支援として給油活動等を展開しておりますが、これまたアメリカ軍だけじゃなくて、各国の軍隊に給油活動をされて、非常に高く評価され、感謝されております。

 自衛隊の士気の高さ、練度の高さ、これに対しても各国から高い評価をいただいております。すばらしい自衛隊諸君だなと。また、責任を感じながら、誇りを持って活動している自衛隊の諸君に対しては、厳しい任務であるがこれからも続けてもらいたいということに対しても、自分たちの仕事は一生懸命やりますという、士気の面においても今は心配ない状況だ。

 こういう状況の中で、テロとの闘いはまだ終わっておりません。各国がまた日本の協力も期待しております。そういうさなかにあって、これからも、日本としては、テロとの闘いについては国際協調をもって対応していかないとテロの活動を防ぐことはできない、防止することはできないということで展開しているわけでありますので、今回、二年の期限が切れたといって、ここで引き揚げるということは、日本全体の利を考えても、また国際社会と協力していこうという立場を考えても、それは日本政府としてはとり得る選択ではないと思って延長をお願いしております。

山谷委員 本当に、平和というのはそこにあるものではなくて、現在進行形で常に常に努力をしながらつくり続けるものだというふうに思います。そういう意味でも、強い意思を持って私たちは今の活動を継続すべきだというふうに思います。

 以上です。

衛藤委員長 これにて山谷えり子君の質疑は終了いたしました。

 次に、岡田克也君。

岡田委員 民主党の岡田克也です。

 きょうは、総理に幾つかの点を御質問したいと思いますが、まず、ちょっと順序を変えますが、イラクへの自衛隊の派遣の問題、先ほど赤城委員も質問されました。このことについてお聞きをしたいと思います。

 民主党の立場は明確であります。現在のイラク復興支援法に基づく自衛隊の派遣には反対であります。

 そこで、総理にお聞きしたいわけですが、先ほどの赤城委員の質問に対する答えを聞きましても、総理としての、イラクに対する現時点での自衛隊の派遣についてどう考えておられるのか、明確な答えはなかったと思います。いろいろおっしゃいましたけれども、明言を避けておられます。年内に自衛隊を派遣する、あるいは派遣しない、どちらなのか明確にしていただきたい。そして、派遣する場合に、どういった任務で、どのぐらいの規模で派遣するということなのか。ぜひ、このテレビも入っております前で、国民に対しても、総理としてきちんと説明責任を果たしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 私は、はっきり申し上げているつもりであります。

 まず、自衛隊は武力行使をしない、戦闘行為に参加しない、非戦闘地域においてイラクの人道支援、復興支援のために自衛隊の能力が必要だというんだったら自衛隊を派遣します、その状況を見きわめて、すべきときはします。はっきり申し上げております。

岡田委員 総理が今言われたことは、法律に書いてある要件をそのまま述べただけですよね。しかし、前国会において、あの法律の成立を急いだのは政府ですよ。そして、そのときに与党の調査団も、今具体的なニーズはある、派遣すべきだと、そういった調査の結果を出して、そして政府として、我々は反対をしましたが、半ば強行採決に近い形であの法案を通したじゃないですか。急いだということは、具体的に派遣する必要があると判断したから通したんじゃないですか。今なぜそんなに逡巡しておられるのですか。総選挙前だから逃げておられるのですか。はっきり答えてください。

小泉内閣総理大臣 これも今までもはっきりお答えしております。イラク支援法案は自衛隊を派遣しなければならないという法律ではございません。自衛隊を派遣することもできるという法律であります。現地調査をして、民間人ではできない、あるいは民間人よりもより必要な活動ができる、民間人よりもいろいろな能力を備えている、装備も備えている、そういう点において、状況が許せば自衛隊も派遣できるというのがイラク支援法案であります。自衛隊を直ちに派遣しなければならないという法律ではございません。

岡田委員 前国会を、この委員会の審議を思い出していただきたいと思うのですが、もちろん法律としてはそういう構成ですよ。だけれども、必要だからつくったんでしょう。そして、そのときに、必要だという説明を政府は何回もしていますよ。出すからつくったんでしょう。それを今なぜ逡巡するんですか。選挙が終わってから出すことにするんですか。国民をだますんですか。どうなんでしょうか。

小泉内閣総理大臣 逡巡もしておりません。国民もだますなんということは全く考えておりません。法律にのっとって考えるのがなぜいけないんでしょうか。法律にのっとって考えているだけじゃないですかと今岡田さん言われた。法律にのっとって考えるのがなぜいけないんですか。法律にのっとらないで考えるのがなぜいいんですか。

 私は、法律にのっとって、状況をよく調査して、自衛隊の派遣が必要だと考えれば自衛隊を派遣します。あの法案は、繰り返しますが、自衛隊を派遣しなければならないという法律ではありません。必要であるならば自衛隊も派遣できるという法律であります。

岡田委員 何度も言いますけれども、法律はもちろんそういう法律ですが、必要だと判断したから、その派遣できる法律をつくったわけでしょう。もしそうじゃないんなら、あの国会で無理してつくる必要なかったわけですよ。なぜあの国会で急いだんですか。総理は調査していると言いますが、どれだけ調査するんですか、いつまで調査するんですか。何カ月たっているんですか。単に引き延ばしているだけじゃないですか。いかがですか。

小泉内閣総理大臣 早く出せ出せという論理なら、そういう論理も展開できると思います。状況を見て、状況が許せば出せるという法律でありますので、今、政府調査団が現地へ赴いて調査しております。必要があれば自衛隊を派遣するということでありますので、なぜ出さないんだ、なぜ出さないんだと民主党は言いますが、そこはやはり状況を見て、法律にのっとって、法律にふさわしい活動ができるならば自衛隊を派遣するということで、今調査をしている段階でございます。

岡田委員 状況を見てというのは、具体的にどういうことですか。与党は、自衛隊派遣を、ニーズはあるし派遣できる状況にあると、調査団を出してそういう調査報告を国会でしていますよ。状況を見てというのは、どういう状況が満たされたら出すんですか。

小泉内閣総理大臣 それは、与党でも、政党に関係ない人でも、今でも十分自衛隊が活動できる地域があると言う方もおられます。自由民主党のみならず、公明党の皆さんも保守新党の皆さんも、民主党の皆さんも、野党の皆さんも現地調査をされたと思います。そういう中で、今政府としては調査団を派遣しております。その中で、各地域それぞれ事情が違うと思いますが、イラク国民の復興支援のために自衛隊の活動がふさわしいなという地域があれば、また活動があれば、日本としてはできるだけ早く派遣もしなければなりませんし、その準備もしなければならないと思っております。

 そういう点について、派遣が遅過ぎるという批判は批判として、それは結構でございます。しかし、状況をよく見きわめて、安全面にも十分配慮して派遣するということが私は必要でないかと思っておりますので、よく状況を見きわめて、その報告を待って、自衛隊の派遣が必要であるならば派遣するということでございます。

岡田委員 先般、テレビニュースによりますと、自民党の安倍幹事長はケリー国務次官補に対して、年内に自衛隊を出すと約束したんじゃないですか。明言していませんでしたか。いかがですか。

小泉内閣総理大臣 そういうことは聞いておりません。年内であろうが年明けだろうが、必要であれば、状況が許せば、政府としては派遣するつもりでございます。

岡田委員 これはいつまで議論していても同じなんですが、結局、総理を見ていると、まず国会が開いている間には決めない、決めたら国会での議論にさらされる、それはもたないことがわかっている。あるいは、できれば選挙が終わってから決める。つまり、国民に対して説明責任を果たさない。もうそういう姿勢が見え見えじゃないですか。

 なぜ今決められないんですか。なぜ今説明できないんですか。出すことはもう決めているんでしょう。なぜ今決められないのか。拙速に出せと言っているんじゃないです、ちゃんと説明責任を果たせ。我々は反対です。出すというなら説明責任をきちんと果たせ、そういうふうに申し上げたわけです。いかがですか。

小泉内閣総理大臣 民主党が、それほど出せ出せと言うとは思いませんでした。

 私は、今、国会が開会されておるし、こうして議論している。選挙、いつあるかわかりません。国会が開会されていようが再開されていないであろうが、いつも国民に説明する責任を政府としては持っております。仮に選挙が行われた後でも国会はすぐ開会されます。いつでもすぐ議論できるんです。まして、もし仮に選挙があれば、各党の考え方を国民に向かって述べればいいのです。民主党が早く出せ出せと言うんなら、それは選挙で言えばいいし、今でも言えばいい。

 政府としては、よく状況を見きわめて、自衛隊を派遣する場合に十分安全面にも配慮して、派遣する場合には準備も要るでしょう、よく状況を見きわめて派遣するときは派遣しなきゃならない、十分な配慮をしながら慎重に考えなきゃいかぬということで今検討している最中で、早く出せ出せと言うのはそれは勝手ですけれども、それは、私は、よく状況を見きわめなきゃいかぬと思っております。

岡田委員 準備も必要だからこそ、意思決定は早くする必要があるんじゃないんですか。

 それから、今の総理の御答弁ですが、早く出せと民主党が言っている、そんなこと一言も言っていませんよ。発言取り消せ。

小泉内閣総理大臣 いや、私はそういうふうに聞こえたから言ったんであって、自分が違う――私もはっきり申し上げているのに、岡田さんは、はっきりしていないと言っているでしょう。それは私も迷惑ですよ。これだけはっきり言っているのに、岡田さんは、はっきり言っていない。じゃ、はっきりそれは、民主党は出すなと言っているんだったら、はっきり言っていただければ私は別に批判しませんよ。別に、御自由です。

岡田委員 私は、一番最初に民主党の立場を申し上げました。現在のイラク復興支援法に基づく自衛隊の派遣は反対であります。

 この議論をしていても意味がありません。国民の皆さんが、この議論を見て、総理が国民に対して責任を果たしているかどうか判断されると思います。

 次に行きますが、しかし、我々は、イラクに対して将来にわたって自衛隊を派遣すべきでないと言っているわけではありません。

 例えば、総理は、こういう考え方、アナン事務総長の考え方です。まずイラク人の手による暫定政府をつくるべきだ、その暫定政府の要請に基づいて国連が多国籍軍を出す、こういうことをアナンさんは言っていますね、提案していますね。総理は、この考え方についてどういうふうに評価されますか。

小泉内閣総理大臣 私は、国際社会、国連が関与をする中で、各国が協力するというのが望ましいと思っております。

岡田委員 我々民主党も、今のこのアナン提案、イラクの暫定政府をつくり、その暫定政府、つまり、イラク国民の手による政府が国連に要請をし、そして国連決議が明確になされて多国籍軍が出るというときに、もちろん、その多国籍軍は、武力行使をするための多国籍軍ではありません、治安維持のための多国籍軍。それに対して日本が自衛隊を派遣して、武力行使そのものはできません、憲法の枠の中でその多国籍軍に対して協力をしていくということに対して、我々は否定するものではありません。そこは議論の余地はあるというふうに考えています。

 しかし、今のイラクに行っている現実は、米英軍です、占領軍です。その占領軍に対して自衛隊が協力することはできないし、同時に、現時点ではまだ戦闘地域、非戦闘地域の区分けもできない状況である、事実上、戦闘状態が続いている。そういう中で、我々は自衛隊を派遣することに反対しているわけです。いかがでしょうか。我々の見解はどうでしょうか。

小泉内閣総理大臣 これも、私、よくわからないんです。自衛隊派遣に反対だと言いながら、必ずしも反対でもないと。国連で決議されて多国籍軍が形成された場合にも必ずしも反対ではないと言いますが、治安活動に多国籍軍が参加する場合に果たして日本の世論が、国連決議で多国籍軍が治安活動する場合に自衛隊が参加できるでしょうか。これまた大きな議論が出ると思いますね。それは、治安活動に多国籍軍が参加するという場合は治安活動が不安だということでありますので、それに対して自衛隊が派遣できるんでしょうか。

 私は、今回のイラク支援法においても、自衛隊は武力行使しない、戦闘行為にも参加しない、治安活動にも参加しないということで人道復興支援に参加することを決めております。国連決議があったから、それは治安活動に日本の自衛隊が参加していいという議論は、その議論はわかります。岡田さん、別に否定するものではありません。しかし、だからといって、政府が憲法解釈にのっとって自衛隊が参加ができるかどうかというのは、これまた大きな議論を呼ぶんじゃないでしょうか。それについて、私はまだ明言できる自信がありません。

岡田委員 総理は全く、私の言うことをいいところだけをつまみ食いして議論しているわけですよ。

 まず、私が言ったのは、イラクの、イラク人の手による暫定政府ができて、その暫定政府が国連に要請するということを言っているんです。今はそういう状況にないわけですよ。ここが全く違う。そして私は、憲法の枠の中で自衛隊が協力することはと申し上げました。つまり、武力行使をするとか、治安活動に参加するなんて言っていないわけです。後方支援の範囲の中でやるということですよ、それは。それを小泉総理は勝手につまみ食いして議論を展開しているわけですよ。まあ小泉さんのお得意のやり方ですからね、それは。

 私が申し上げたのは、今申し上げたとおりです。イラクの、イラク人の手による暫定政府ができて、国連に要請をする、そして、その国連の決議が明確になされて、それを多国籍軍と呼ぶか何と呼ぶかは別ですが、治安維持のためのそういった各国からの軍隊の派遣がなされたときに、日本が憲法の枠の中でそれに協力していくということは、それは考え得ると言っているわけです。総理は勝手に私の意見をつまみ食いして言っておられますが、まあこれは総理のお得意のやり方かもしれません。

 それでは、資金協力についてお聞きしたいと思います。

 まず、このイラク復興支援のための資金協力について、いろいろな議論がなされております。一説には、日本に最終的には多年度にわたって一兆円近い資金負担が求められるのではないか、こういう議論もあります。

 総理としては、日本国としてこのイラクの復興支援にどの程度の資金支援をするおつもりですか。どういう形で資金支援をしようとお考えでしょうか。お答えいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 イラク復興支援、人道支援のために資金協力はするということは明言しております。

 額はどの程度になるか、昨日も議論が行われ、それぞれの試算が行われております。また、今月下旬には支援国会合も開催されます。そういう中で、日本としては、日本にふさわしい資金協力においてもするつもりでございますが、現在の時点で額をはっきり言えと言われても、今の時点で額をはっきり言える状況ではございません。

岡田委員 ということは、ブッシュ大統領の訪日が予定されていますが、そこで金額をコミットすることはないということですね。

小泉内閣総理大臣 ブッシュ大統領が日本を訪問された際に意見交換をいたしますが、ブッシュ大統領がどういう意見を開陳されるか定かではございません。また日本として、ブッシュ大統領が今の時点でどれだけの額を協力してくれと言うとも私は思っておりませんし、いろいろな案件がありますので意見交換をするつもりでございますが、そういう中で、今、ブッシュ大統領はこう言うだろうという前提でお答えする立場にはございません。

 ただし、日本としては、イラクの復興人道支援のためにできるだけの協力はするという姿勢は鮮明にしておりますので、その意見交換の中でどういう意見をブッシュ大統領が開陳されるか、その中で私は判断していきたいと思っております。

岡田委員 今の総理の答弁は、私の質問に対して明確に否定しませんでしたね。だから、コミットする可能性を残しましたね。しかし、まず国民にきちっと説明すべきじゃないですか。あるいは、イラク国民に対してきちんと説明すべきじゃないですか。

 今回のこの資金協力の問題や自衛隊派遣の問題、結局、国民の目から見ても、すとんと落ちないところがある。私も資金協力は必要だと思いますよ、イラク国民のためなら。日本の責任として果たしていかなきゃいけない。だけれども、やはりこの戦争そのものがおかしかったんじゃないか、大義がなかったんじゃないか。そのために引き起こされたイラクの国土の破壊、それに対する資金協力。それに対して、すとんと落ちないものがあると思うんですよ。

 そういう状況の中で、その戦争を始めた責任者であるブッシュ大統領に対してコミットをする、いわば手形を切る、そんなことは絶対やらないでください、国民のためにも。やるなら、イラク国民に対してきちんと約束してくださいよ、日本国民に対して約束してくださいよ、アメリカじゃなくて。明確に、ブッシュ大統領に金額をコミットすることはないんだ、そのことを約束してください。

小泉内閣総理大臣 私は、日本国民のためにもプラスになるから、イラク復興支援に賛成しているんです。ブッシュ大統領のためにとか、そういうことではありません。日本は、日米協力と国際協調を基本方針にしております。それは日本国民のためなんです。イラクの安定、これは日本国民のためなんです。イラク国民のためでもありますけれども、日本国民のためでもあるんです。

 そういう中で、今回のイラク開戦も、岡田さんは間違っていたと思う、それは御自由です。私は正しい選択だったと思っています。それは見解の相違であります。そういう中での議論でありますので、別にブッシュ大統領のために資金協力するとか、そんなことは考えておりません。日本国民の利益のために、イラクの安定、復興は日本国民にとってプラスになる、国際協調体制をとって、日本も国際社会と協力していく、アメリカとも協力していく、それは日本国民のためにプラスだと思うからやっているんです。

岡田委員 また議論をすりかえているんですね。

 だから、私も、国民のために、そして同時に、イラク国民のためにお金を出す、こういうことを言っているわけですよ。そうであれば、国民に対してきちんと説明責任をまず果たすべきで、いきなりブッシュ大統領にコミットするような、そういうやり方はやるべきでないと言っているんですよ。それに対して、小泉総理は明確に否定しないじゃないですか。

 なぜ、国民にきちんとこの国会の場で説明する、それをやらないで、ブッシュ大統領が来たらいきなりコミットするんですか、その余地を残すんですか。それで本当に国民のために資金負担をしていると言えるんですか。どうなんでしょうか。

小泉内閣総理大臣 なぜそういうふうに解釈するんですか。

 アメリカの大統領が日本を訪問される。日米友好、最高首脳が日本を訪問される。いろいろな意見を交換する。ブッシュ大統領がどう言うか、来てから話は伺います。そういう中で、日本としては、アメリカの意見も聞くし国連の意見も聞くしEUの意見も聞くし、いろいろな意見を聞いて、日本が主体的に考えるべきことであって、アメリカに協力することが、あたかも、日本のためにならない、イラク復興支援のためにならないということではない。

 どういう判断をするか。岡田さんも言っているじゃないですか、イラク復興支援に資金供給するのは反対じゃないと。私も、資金供給はしますよ、日本国民にふさわしい資金供給をしますよと言っています。アメリカ大統領が言ったからそれはアメリカの言うとおりになるんだ、それもまた短絡的じゃないですか。見解がどうしてこう違うのか。

 政権をとって、最大の友好国であるアメリカと緊密な意見交換をするのは、私は当然だと思いますよ。アメリカの意見も聞く、EUの意見も聞く、国連の意見も聞く、国際社会の意見も聞く。そういう中で、日本として何がプラスか、イラク支援のために何が必要か、それを独自に、主体的に、各方面の意見を聞きながら判断する、これがなぜ批判されるのか、私はわかりません。

岡田委員 テレビをごらんいただいている方にはおわかりいただけると思います。

 つまり、私が言っているのは、ブッシュ大統領にいきなり金額を約束するようなやり方じゃなくて、これは国民の税金ですから、税金ですよ、まず国民に対してきちんと説明責任を果たした上で、それはブッシュさんに、日本国政府として主体的にこういう金額を決めた、そういうふうにお話しされるのならいいんですよ。いきなり首脳会談の中で金額が出てくるような、そんなことはやめてくれと言っているわけですよ。

 それを総理は議論をすりかえて、いや、相談するのが何が悪いと。相談の話をしているんじゃないです。いきなりブッシュ大統領に対して、国民も聞いたことのないような金額が出てくるような、そういうやり方はやめてくださいということを申し上げているわけです。まあ、ここは、これ以上議論してもまたすれ違いでしょう。

 大量破壊兵器の話について、限られた時間ですが、申し上げたいと思います。

 このイラクの戦争について、大義がなかったんじゃないか、大量破壊兵器が出てこない、今そういう議論の中で、ブッシュ大統領もあるいはブレア首相も、国内政治的にはかなりの窮地に陥っています。この二人と並んでこの戦争を支持した小泉総理、あなたも共同責任があります、説明責任があります。

 小泉総理は、大量破壊兵器が出てこないということに対して、前の国会では本当にひどい答弁をされましたね。フセイン大統領も出てこない、だからといって、フセイン大統領はいなかったと言えるのか。同様に、大量破壊兵器が出てこないからといって、なかったと言えるのか。まさしく詭弁です。国民を愚弄していますよ。私は一回なら冗談と思いましたが、何回も繰り返しました。まずあの答弁を取り消すべきだと思いますが、いかがですか。

小泉内閣総理大臣 なぜおかしいんですか。フセイン大統領はいまだ生死も判明していない、見つかっていない。大量破壊兵器、見つかっていない、まだ。だからないと断定できるのかと。あの答弁を私はおかしいと思っていません。おかしいと批判する方がおかしいと思っています。何回も答弁しています。なぜおかしいんですか。

 では、何でもおかしいおかしいと批判されますけれども、どういう点がおかしいんですか。フセイン大統領がまだ見つかっていないから、フセイン大統領はイラクにいなかったと言えますか、それじゃ。過去、イラクは大量破壊兵器を自国民にも使っているんですよ。既に自国民にあのフセイン政権は大量破壊兵器を使って、何千人の遺体も発掘されている。あるいはそのほかに、何千人じゃない、何万人も遺体があるかもしれないと言われている状況、そういう状況の中で、いまだに大量破壊兵器が見つかっていないから、大量破壊兵器はなかったんだと断定できる方がおかしいじゃないですか。

 私は何回も言いますよ。いまだにフセイン大統領が見つかっていない。フセイン大統領がそれだからいないと言えるのか。大量破壊兵器が見つかっていない、現時点で。だからないと言えるのか。何回も言います。どうしてこの答弁がおかしいんですか。

岡田委員 今の総理の御答弁の中で、確かに過去に大量破壊兵器を使ったこと、こんなのは世界じゅうわかっているんですよ。クルド人に対して大量破壊兵器を使った、それは周知の事実ですよ。問題は、あの戦争が始まったときに大量破壊兵器があったのかどうかの問題でしょう。議論をすりかえないでくださいよ。

 そして、そのことについて千二百人のアメリカの調査員が調べて、いまだに出てこない。今、世界のリーダーの中で、戦争が始まったときに大量破壊兵器があったなんて言っているのはあなただけですよ。本当にあなたはいまだにそういうふうに言われるわけですか。大量破壊兵器がなかったと言えないと言っているじゃないですか。多くの世界の常識は、千二百人が探しても出てこない、だから、一〇〇%断定はできないかもしれませんが、九九%なかった、こういうことじゃないですか。

 総理は、その大量破壊兵器があるという前提で武力行使を合理化したわけです。しかし、それが今出てこないということに対して、どういうふうに責任をとられるんですか。

小泉内閣総理大臣 私は、国連憲章にのっとって、米英の攻撃を支持したわけであります。

 大量破壊兵器が九九%ないといまだに断定できません。あの国連の決議におきましても、過去何回もイラクに対して無条件に査察に応じなさいと。それをイラクは応じなかったんです。あの戦争も、国連決議にのっとって直ちに無条件にイラクが査察に応じていれば、戦争は起こらなかったんです。そういう中で、あの戦争は間違っていたというように言われるのは自由ですよ。私は批判しません。それは岡田さんの意見でしょう。それはいいです。しかし、日本としては、これは、イラクがあのとき無条件に査察に応じていれば戦争も起こらなかったし、イラク国民がフセイン政権で苦しんでいたことも事実ですし、かつてフセイン政権がイラク国民に大量破壊兵器を使って多くの人を殺害したということも事実です。

 そういう中にあって、今国際社会が、過去の対立はさておき、今後協調してイラクの国民のための復興支援に協力していこうという中で、どういう対応をとろうかということで日本も真剣に考えている。そういう中で、日本としては、ふさわしい、自衛隊の派遣も状況が許せばしましょう、民間の協力もしましょう、資金の供給も、日本にふさわしい協力もしましょうと言っていることであって、私はこの選択が間違っていたとは思っておりません。

岡田委員 世界の国の中で、あの武力行使を支持した国はアメリカ、イギリス、スペインそして日本。ほとんどの、常任理事国も含めて、まだ査察が必要だ、見きわめができない、そう主張しました。もうこの議論を繰り返すつもりはありませんが、やはり、武力行使をしていくということに対しては慎重でなければいけない。あの戦争で、この前も申し上げました、恐らく一万人の方が亡くなっていますよ。そういう戦争について、やはり、武力行使についてはぎりぎりまで控えていかなきゃいけない。まだ査察団は査察しなきゃいけないと言っていた。

 しかも、一昨日、山口委員の質問にありました。いまだに毎週千人単位で人がイラクで亡くなっているかもしれないという情報もあります。そうしたら、百八十日で、六カ月で一体どれだけの人が亡くなっているんですか。数万人の人が亡くなっているかもしれない、その戦争に対して、少なくとも一万人は戦争で亡くなった、そういった戦争を始めたことに対して、小泉総理は支持をしたわけです。そのことに対して、どう考えておられるんですか。

 そして、結果的には大量破壊兵器は、今の調査ではなかった可能性が極めて高い、もうなかったと言っていいと思いますよ、私は。結局、あなたは大義名分のない戦争をしたわけですよ。そのことに対して何も責任を感じないんですか。説明責任を果たさないんですか。いかがですか。

小泉内閣総理大臣 常に説明しております。

 岡田さんは間違ったと言っていますが、私は、国連憲章にのっとって支持したのであって、間違ったと思っていません。正しい選択であったと思っております。今も、国際社会はイラクの復興支援のために協力しようとしている。私は、岡田さんが言うように間違ったとは思っておりません。

岡田委員 総理は今、国連憲章に基づいてと言われました。国連憲章に基づいたものかどうかというのは、これは議論が分かれるでしょう。我々は国連憲章に基づいていないと考えますが。

 しかし、それが国連憲章に仮に、万が一基づいたとしても、それは法律的に、つまり国際法上合理化するにすぎないわけです。しかし、そのことが、あの大義のないイラク戦争を正当化することにはならないわけですよ。そうして、ルールには合ったかもしれないけれども、判断としては間違った、つまり大量破壊兵器がないにもかかわらずやってしまった、そのことに対する責任を聞いているわけです。いかがですか。

小泉内閣総理大臣 それは見解の相違です。私は大義があったと思っています。日本政府として正しい選択だったと思っています。間違っていると思っておりません。

岡田委員 この議論をこれ以上してもほとんど無意味でしょうから、テロ特措法の質疑を五分間だけやらせていただきます。しかし、テレビを見ておられた国民の皆さんは賢明に判断されることだと思います。

 それでは、テロ特措法に基づいて質問したいと思いますが、まず私は、どうしてもわからないのは、我々も実はテロ特措法に基づく国会承認については賛成しました、法律には反対しましたけれども、事前の国会承認がないという理由で。承認はしました。しかし、その承認は、当時の閣議決定された基本計画に基づく措置について賛成をしたわけです。そして、その閣議決定の中に明確に期限が書いてありますね。二年間のものとして我々は承認をしたんです。しかし、それを延ばす、それに対して承認が要らない、ここは私は絶対理解できないことです。国会におけるきちんとしたシビリアンコントロール、二年で終わるはずの法律が延びたんなら、もう一回承認が必要だと思いませんか。

小泉内閣総理大臣 二年が切れて、必要がなければ必要はありませんが、必要があれば延長して結構だと思います。あの法律だって事後承認は受けているんですよ、基本計画。事後承認がなかったら引き揚げなきゃならないんです。国会で承認を受けております。私はそれで十分だと思います。

岡田委員 今の総理の答弁は、そうすると、今回延長されたらまた事後承認が必要だということですね。

小泉内閣総理大臣 基本計画の内容が変われば、それは事後承認を受けなきゃならないでしょう。変わらない限りは、同じだったら事後承認を受ける必要ない。

岡田委員 閣議決定された基本計画の中に、派遣期間として、平成十三年十一月から平成十五年十一月までと書いてあるんですよ。ここは変わるんですよ、少なくとも。だから、やはり、総理の今のお話だと承認要りますね。いかがですか。

福田国務大臣 基本計画は、これは閣議決定し国会報告をするということでありますけれども、対応措置の内容につきましては、これは事後承認を求める、こういうことであります。

 ただ、今回のことにつきましては、これは対応措置の内容は変わっていないんです。ただこの法律に基づいて二年延長できるという、その法律に基づいて今回二年を延長させていただく、こういうことでありまして、その二年延長以外の条件については一切変わらない。こういうことでございますので、今申し上げているとおりでやらせていただきたいと思っておるわけであります。

岡田委員 基本計画に明確に期限が書いてあって、そういったものとして、その基本計画に基づく対応措置について我々は承認をしました。その基本計画の期限が変わるんなら、それはもう一度承認が必要だと考えるのは、僕は普通だと思いますよ。余りにも政府は、国会によるシビリアンコントロールを無視していませんか。

 しかも、あのときには、この法律は二年でなくなるから事後承認でいいんだという論理を展開されましたね。延長するんなら、やはり事前承認じゃないですか。事前承認に変えるつもりはありませんか。

石破国務大臣 この法律は必要なときに延長することができるということになっておりまして、二年で終わるということは申し上げておりません。

 そしてまた、官房長官から答弁がございましたとおり、この期間を延ばすということが基本的な変更に当たるかどうかということは、この法律の延長を認めていただくことをこの国会で御審議いただいておるわけでございます。その上なお国会の承認が必要であるということの合理的な理由が私はよく理解ができないところでございます。

岡田委員 今の長官の話を聞けば、国会承認なんて全部必要なくなりますよ。国会で法律を通したら承認要らないというんなら、最初のときだって国会承認要らないじゃないですか。全く論理的に破綻していますよ。国会のシビリアンコントロールというものをどう考えているのか。

 我々は、この法案には賛成できません。

衛藤委員長 この際、一川保夫君から関連質疑の申し出があります。岡田君の持ち時間の範囲内でこれを許します。一川保夫君。

一川委員 民主党の一川保夫でございます。

 小泉総理御出席のもとでの審議でございますから、主に総理を中心に質問させていただきたいと思います。

 前国会で、この特別委員会でも、イラク支援法並びに当法律案につきましてもその質疑に参加してまいりましたけれども、今日まで、今回のこのテロ特措法の期限延長を含む法律改正、それから今のイラクのいろいろな問題に対するやりとりを聞いておりましても、関係する大臣の皆さん方も、質問者の質問に対して本当に誠意を込めて、国民に対してもわかりやすく説明する、そういう態度にどうもちょっと欠けているんではないかなという感じも受けておりますし、何となく、そういう全体の状況をしっかりと把握する中で、今回のいろいろな事態に対する対応、そういったことに対する説明の仕方にちょっとどうも勉強不足があるんではないかなという感じもいたします。

 そういう面では、私は、総理大臣にもきょう、若干の時間ですからそんなに詳しくはお聞きできませんけれども、基本的なところで総理大臣の見解をお聞きしたいというふうに思っております。

 先ほど岡田幹事長のやりとりの中でちょっと気になりましたけれども、近々ブッシュ大統領が訪日される、会談の内容は聞いてみないとわからないというやりとりがございました。通常、こういった両国の首脳会談ということであれば、当然ながら事前に、どういうことについてのやりとりがあるということはいろいろな準備がされておると思いますけれども、どういう話題が出るかわからない、どういうことが内容として含まれているかということも本当にわからないんですか。総理、いかがですか。

小泉内閣総理大臣 それは、北朝鮮とかイラクの問題が話題になるということは予想しております。しかし、どういう発言をされるということは、今まで何回もブッシュ大統領と会談しておりますから、そういう中で率直に意見交換をするということでありまして、どのような話をされるかというのは、そのときに意見を聞きながら意見交換すべきではないかと思っております。

 大枠として、当然イラクの問題も話題に出るでしょう。北朝鮮の問題も話題に出ると思います。

一川委員 イラクの問題が話題に出るであろうということが考えられるとすると、では、イラクの問題の中で、先ほど幹事長が話題に出されたようなああいう支援の内容についてのやりとりも出てくるというふうに思いませんか。

小泉内閣総理大臣 私は、ブッシュ大統領が日本の判断についてあれこれ具体的なことを言うとは思っておりません。お互いの、世界の中の日米同盟という、全体の中で国際情勢の意見交換をしますから、そういう細かいことまで言うような会談にはならないのじゃないかと今の時点では思っております。

一川委員 国民それから世界的にも相当皆さん関心を持っている、そういうイラクの戦争、それからその後の復興支援の問題ですから、国民にわかりやすい、そういうしっかりとした会談の内容でなければ、何となく何を会談したかわからないというようなことであっては非常に私は困るというふうに思います。そのあたりは、当然、日本の最高の責任者ですから、そういう心構えで臨んでいただけると思いますけれども、我々、いろいろな機会があればそういった点をまたしっかりと追及をしてまいりたい、そのように思っております。

 そこで、このテロ問題に関連いたしまして、今回の法律の提案理由の中にも書いてあるわけでございますけれども、テロリストによる攻撃、脅威の状況というのはその後依然として存在しておるという現状認識の中でこの法律の期限延長を考えているというふうに書いてございますけれども、総理は、こういったテロリストによる脅威というものは、現状どのように認識しておられますか、それから、今後どういうふうに推移するだろうというふうに見通しておられますか。

小泉内閣総理大臣 アフガンにおけるテロリストの活動はまだ終わっていないと思っております。

 最近起こった事件につきましても、見ますと、テロリストが関与したと見られる事件の例ですが、八月十六日には、アフガン南東部におきまして、タリバン政権崩壊後最大規模のタリバンと見られる大規模武装集団が警察本部を一時占拠して、翌日もその近郊で同様の事件が発生していると聞いております。また、八月七日には、同じくアフガン南部におきまして、タリバンと見られる武装集団がアメリカの援助団体職員が宿泊する地方行政機関の建物を襲撃しているという情報も入っております。

 こういうことで、タリバン政権が崩壊いたしましたけれども、まだオサマ・ビンラディンが生きているか死んでいるか、生死も判明していない。かなりの幹部が逮捕されているということもありますが、逮捕されていない幹部もいるということでありますので、アフガンの状況、これがテロリストの活動が終わったとは私は見ておりません。

一川委員 今総理も触れられましたけれども、オサマ・ビンラディンとかあるいはイラクのフセイン元大統領とか、依然としてわからない。この二人の人物についての情報というのは、日本政府に対しては、何か一番新しい情報というのはどういうふうに流れてきておるわけですか。

川口国務大臣 情報という意味では、ここで申し上げることができるような新しい追加的な情報というのはございません。先ほど総理がおっしゃったことに尽きます。

一川委員 同時多発テロ、九・一一テロが発生して二年経過した中で、今総理も触れられましたように、依然としてアフガニスタンの国内でもそういう危険な状況が続いている。各国とも、テロ防止、テロを根絶するために、関係国、それなりに全力投球して取り組んできたというふうに思いますけれども、この二年間も要した中で、まだ依然として脅威がなくなっていない。ますます何となく不安感が逆に広がっているような状況というのは、これは各国がこれまでテロ根絶のためにいろいろな面でやってきた内容というものに何か問題があるんでしょうか。そのあたりは総理はどういうふうに認識しておられますか。

川口国務大臣 問題があるということではなくて、まだまだ十分でないということでございます。人、物、金、テロリスト関係のそういった動き、これが国際的に起こらないようにとめる、そして情報の交換も十分にするということで、例えば出入国の管理ですとか、輸出管理ですとか、税関ですとか、資金の凍結ですとか、いろいろなことを国際的に合意をしてやっているわけです。まだまだ、例えば発展途上国でそういうことをやる力が十分にあるかというと、そうではございませんので、先進国が今支援をしていますけれども、そういった意味でもまだ十分ではない。

 それから、国際条約がありますけれども、日本は十二全部批准をしていますが、全部の国がそれを批准したわけではない。これは国際テロですから、国際的にネットワークが十分にできて、みんなで協力をしてとめるということをしないといけないわけですけれども、そういった意味で、考え方あるいはいろいろな方策はありますが、まだまだ十分ではない、そういうことに尽きると思います。

一川委員 では、総理にお伺いしますけれども、今外務大臣の説明のあった内容というのは、テロ対策上、どちらかといいますと、当面の対策といいますか、今早急に対応しなければならないいろいろな事項を取り上げてのお話だったと思うんですね。それはそれとして、当然、まだ引き続き取り組むべき分野がたくさんあると思いますけれども、総理自身は、そういう当面の対策も含め、中長期的といいますか、本当にこういったテロというのはどうして発生してくるかということも含めて、もっと深いところに視点を当てたような政策というのは、私は、やはり日本政府としてはしっかりと力強くやっていく非常に大事な課題だというふうに思っております。

 それは、今回のこの特別委員会の議論の中でも、関係大臣の答弁の中にも、いや、それは単なる貧困の差だけがテロの発生原因ではないとか、テロリストはむしろ金持ちが多いだとか、そういうような答弁もありましたけれども、やはり基本的には、そういう国際社会がグローバル化していく中で、非常に豊かな地域と貧しい地域、あるいは豊かな人たちと貧しい人たちの格差がだんだん開いていくとか、あるいはまた、アメリカに比べてはるかに歴史の長い中近東諸国の方々が、なぜ先進国に対してそういう怒りをぶつけるか、アメリカが先進国といっても、歴史は中近東に比べれば非常に短いわけです。

 私は、やはりそういう中近東の諸国の皆さん方の民族としてのいろいろな誇り、プライドというのは相当あると思うんですけれども、そういうことに対するいろいろな過去の積み重ねが今回のテロの根底に流れているんではないかという感じもいたすわけですけれども、そういうことに対して総理大臣はどのようにお考えですか。

小泉内閣総理大臣 さまざまな要因があると思いますが、これは、貧困もそれは一つの要因だと思いますが、貧困がすべてではないというのは、今、一川議員申されたとおりだと思います。文化の違いもあるでしょう。さらに、一地域の紛争が長引いて、絶望的な境遇でテロに走らざるを得ないというような状況も各地域に見られております。

 これはさまざまな要因がありまして、文化一つとっても、イスラム文化とキリスト教文化、また日本の文化といいますか、宗教、仏教、全然違います。女性に対する接し方も違います。あるいは、その国が楽しむ娯楽の面においても、全然国によって違う面があります。それが、その国同士の感情のよしあしにも影響してくる面もあると思います。

 これは非常に難しい問題で、やはり文化とか伝統とか習慣、風俗、それぞれの国によって違いますので、多様性というものを重んじながらも、お互いが各国の紛争において無関心でいいという状況でもないと思います。一地域の紛争が地域全体あるいは世界全体に広がっていくというのは、中東の状況を見ても今回のアフガンの状況を見ても、これは明らかであります。

 そういう観点から、私は、今や世界じゅうが、ある地域において紛争の絶え間ない状況でありますので、こういう紛争において平和の定着に向けて世界がどうやって協力していくかということも、そういう点から出てきているんじゃないかと思っております。

 まさにさまざまな要因が重なり合っているものですので、一方の文化を排除する、一方の考え方をどうしても受け入れない、そういうことから憎悪が生まれている現状を少しでも解消する努力をお互いの国がしていかなきゃならないと思っております。

一川委員 総理もそのあたりは大分認識は共通しておると思いますけれども、私は、アメリカのブッシュ大統領といろいろな会談をされる折にも、やはり日本政府、日本の国民の代表として、そういった非常にいろいろな問題を抱えている国々とそれからアメリカという超大国との間に入って、日本は日本らしいいろいろな役割をしっかりと担って、世界平和のために貢献できるのではないか、そういう分野があるような気がするんです。

 そういう面で、今回の戦争の問題、それはそれとしていろいろな意見がありますし、我々は先ほど岡田幹事長がおっしゃったような方針で考えておりますけれども、やはり日本政府の代表として、ブッシュ大統領に対しては、同盟国であればあるほど、言いづらいことでもしっかりと日本国民を代表して物を言っていただく、そして国際社会の中で、同盟国であるアメリカの、反米感情が広がらないようにするというふうに努力すべきだと思いますし、またアメリカという国を国際社会の中で孤立化させるような方向に持っていってはいけない、そういうスタンスでぜひ臨んでいただきたいというふうにも私は思っております。

 そこで、次の質問で、私は今回のこの法律改正の中で依然としてちょっと理解しがたいのは、二年間経過して、二年間で、インド洋の海域において、自衛隊が派遣され、いろいろな任務に努力してこられた。一方、アフガニスタンの国内では、先ほど総理もおっしゃったように依然として複雑な動きがあって、テロの行動もそうおさまってもいないという、全体として見れば、余り状況は、危険性は変わっていないような感じはするんだけれども、しかし、内容的には相当何か変わってきているような感じもするわけですね。

 そういうアフガンの国内における状況のこの二年間のいろいろな変化、それからインド洋を中心とするあの海域における各国のいろいろな対応の仕方の変化、そういうものがあるにもかかわらず、これから期限を二年間延長して、従来と同じようなレベルで日本が支援を続けようとする、その考え方がよく理解できないのです。もっと日本は、何かもし支援するとしても、その状況変化に応じたやり方があるのではないですか。

石破国務大臣 これは、この審議におきましてもいろいろな御議論がございました。

 私どもといたしましては、今私どもの海上自衛隊がやっております活動によりまして、テロリストの海外への流出、拡散、これが防がれているということにつきましては、私は大きな成果があったというふうに考えております。したがいまして、今回その内容を変えるということは考えておりませんが、今後、先生御指摘のように、状況というのは可変的なものだと思っております。そのときの状況に応じまして、またこれは可変的なものでございますが、国会の御審議、御議論等々を通じまして、我が国として法の目的を達成するのに何が一番ふさわしいのかということは、またその都度御議論を賜りたいと思っておるところでございます。

一川委員 では、最後にちょっと総理にお伺いするわけです。

 これも最近いろいろと報道されておる中で、今度はイラクの復興支援に関して、国連をある程度前面に出していろいろな復興支援を積極的に進めていきたいというような動きが、今アメリカを中心として国連での新しい決議案を求めて、そういうものに基づいていろいろな具体的な施策を進めようとする動きがあります。それにはフランス、ドイツ、ロシアの首脳がいろいろとかかわって、そして、その決議案の内容についてもいろいろな注文をつけながら、コンセンサスが幅広くとれるような努力はされているんだと思いますけれども、我が国の、まあ常任理事国でもありませんからいろいろな動きが制約があるのかもしれませんけれども、我が日本政府としては、こういった新しい決議案についてどのような方針で臨んでいるのか、どういう働きをしているかというのが見えてこないわけです。

 そういったことに対して、我々は前の国会の折にも、野党各党が統一して、イラクの復興支援については野党の一つの決議としてこの委員会にも提案させていただいたわけだけれども、残念ながら否決されましたが、国連主導型のそういう復興支援の方策をしっかりと構築し直してほしいということをお願いしたこともあるわけですけれども、総理大臣は、こういう全体の動きについて、我が国としてはどういうふうな方向で臨まれるか、その基本的な態度を説明願いたいと思います。

小泉内閣総理大臣 日本は今国連の非常任理事国でもございませんし、安保理会議には参加できませんが、国際社会が、イラク復興支援のための支援国会合等につきましては積極的に発言をし、また各国との協議を重ねております。

 そういう中で、私は、イラク復興支援につきましては、国連の関与をより強めるようにアメリカに働きかけております。アメリカが今、国連の決議に対しましてフランス等との交渉を進めているようではございますが、できるだけ各国が協調できるような、国際社会が関与できるような体制が望ましいということを常々申し上げておりますし、今後もその方針でいきたいと思っております。

一川委員 終わります。

衛藤委員長 これにて岡田克也君、一川保夫君の質疑は終了いたしました。

 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 今国際社会は、泥沼化したイラクの再建について真剣な検討を始め、そしていろいろな提案を行ってきております。一体どの道がイラクを泥沼化から再建していく道か、こういう議論が本当に求められていると思います。

 私は、六月には日本共産党の調査団の一員として、そして八月にはこの特別委員会の調査団の一員として、六月と八月に、二回にわたりイラクに行ってまいりました。六月のときには、アメリカの占領当局はイラク国民の敵意に包囲されている、こういうことを実感して帰ってまいりました。八月に行ったら、そのイラク国民を力ずくで押さえつけようとしている米兵に対してイラク国民が反撃を始めている、米兵の中に死者がふえ続けている、こういう事態でありました。混沌とした事態になっていたわけです。

 私たちは、八月三日にバグダッドでデメロ国連特別代表にもお会いいたしました。会って帰国してみましたら、八月十九日にそのデメロ代表が自爆テロによって命を失いました。本当に衝撃を受けました。

 そのデメロ代表が私たちに対して発言したのは、イラクというのは五千年の歴史を持つ、国連の設立当初からの国連加盟国だ、そのイラクをアメリカとイギリスが占領している。説明がつかない状態になっているわけですよ。すべての行政をアメリカが指示し、そして指図する、こういうようなものではなくて、イラク国民に権利を譲って、イラク国民が決められるような、そういう政府を早くつくらなければいけない、このようにデメロさんはおっしゃっておりました。これがイラクにおける国連の努力だったんです。国連はアメリカの占領を応援しているのではない、独立国として再建したい、こういうことでありました。

 ところで、けさの時点で、五月一日にブッシュ大統領が大規模な戦闘は終結したと宣言して以降、米兵の死亡者は二百人に上っております。これも痛ましいことであります。同時に、その米兵の死亡の陰で、多くのイラク国民の民間人の犠牲者が出ております。どれだけのイラクの民間人の犠牲者が出ているか、総理、御存じですか。

川口国務大臣 具体的にはっきりした数字ということは、今存在しておりません。

赤嶺委員 全く政府はこれに関心がないようであります。二月、三月の時点で私がこれを聞きましたら、イラク・ボディー・カウントの数字を答弁しておりました。きょうはその答弁さえ用意しておられないようであります。

 イラク・ボディー・カウントの計算によりますと、最小でイラクの民間人の犠牲者は七千三百五十五人、そして最大で九千百五十五人となっております。民間人に犠牲が出ている。

 この間、自分のお姉さんの結婚式に出ていた男の子が、米兵の誤爆によって結婚式というめでたい席上で撃ち殺される。あるいは、米兵が、家宅捜査をしていた農家で、逃げ出した農民二人を射殺する。反米デモに参加していた少年、十歳の少年です、これが米兵によって射殺される。こういう出来事が、イラク国民に反米感情、敵意を広げているんです。

 今、小泉総理は、アメリカの戦争は正しかった、正しかったということを先ほどから繰り返しておられて、この戦争に全面支持を表明しておられますけれども、こうした事態を招いている。こういう事態を招いていることについて、この戦争を支持した総理は、みずからの責任をどのように考えておられますか。

小泉内閣総理大臣 私は、イラクを安定するために、復興支援、人道支援が必要だと思っております。そのイラクの復興人道支援のために、日本としてもふさわしい貢献をしていくということで責任を果たしたいと思っております。

 そこで、今いろいろな反米感情の点を指摘されましたけれども、確かに反米感情は根強いものがあると思いますが、最近、九月二十四日にギャラップ社がバグダッドで調査を行ったんですね。バグダッド市内で千百七十八人の聞き取り調査を行った。

 その中で、問いが、あなたが米国及び英国の侵攻によりこうむっただろう困難を勘案した上で、個人的に、サダム・フセインが追放されたことに意義があったでしょうか、それとも意義がなかったでしょうかという問いに対して、意義があったというのが六二%、意義がなかったというのは三〇%、バグダッドの市民の中でもこういう調査が出ているんですね。

 さらに、確かに米国に対する見方は、反感は強いです。これが調査結果に出ています。米国に対する見方、米国よくない、余りよくないというものを含めて四四%あります。大体よい、とてもよいが二九%ですから、よくないというのが多い。

 これは、米国、ブッシュ大統領に対しては非常に反感が強いんですが、CPAのブレマー行政官に対しては好感を持っているんですね。これまた不思議なことで、ブッシュ大統領に対して、好意的というのは二九%、嫌いというのは五〇%、ブレマー長官に対しては、好意的が七二%、嫌いというのが二二%。

 そして、今から五年後、イラクは現在に比べ大変よい国になっているでしょうか、あるいは多少よい国になっているでしょうか、それとも多少悪い国、あるいは大変悪い国になっているでしょうかという質問に対して、よい国になっている、多少よい国になっているというのが、何と六九・七%という状況になっております。

 だから、それは見方は、共産党はもう反米感情が一色だというような見方をとられておりますが、フセイン政権が崩壊、破壊されて、これからよくなっていくであろうという見方もかなり根強いんですね。やはりそういう見方もあるのではないかということを今御披露いたしました。

赤嶺委員 ギャラップ社の世論調査を取り上げてみても、バグダッドの市内を走り回っている米軍の戦車が減るわけじゃないんですよ。イラクの国民に米兵が向けている銃口、これがおろされるわけじゃないんですよ。極めて異常な日常がバグダッドで続いているんです。気がめいりそうだ、日本の外務省の職員だってそういうことを言っているんですよ。

 こういう中で、イラクの国民が反応しない、あるいは敵意、反米感情があるというのは総理も認められておりましたが、しかし、反米感情一色で見るのは日本共産党の見方だろう、からは見えるかもしれないと言うが、そうじゃないんですよ。

 今、国際社会は、そういう米軍の占領のやり方では、占領行政では解決しない、反米感情が広がっている、無秩序な状態だ、社会が崩壊状態だ、こういうのを国際社会は真剣に心配しているんですよ。

 今、皆さんは、総理は人道支援、復興支援と言ったんですけれども、実際に、今私たちが審議をしているこの法律、七月に成立したこの法律では、自衛隊の派遣じゃないですか。アメリカのイラクにおける治安を確保する戦闘活動への後方支援じゃないですか。人道支援や復興支援なんかとは無関係ですよ、今皆さんがやろうとしている中心的な仕事は。そうじゃないですか。

小泉内閣総理大臣 私もイラクの状況を心配しております。

 そこで、イラク国民を苦しめている、苦しめていると議員はおっしゃいますが、私は米英軍がイラク国民を苦しめているとは思っておりません。イラク国民を苦しめているのはテロリストなんです。何とかイラクの情勢を混乱に陥れて米英軍を追い出そうとしているこのテロリストの動きに乗ってはならないと思います。

 米英を中心に国際社会がイラクの安定のために努力している。こういう厳しい状況のためにも、一つの理想を掲げて、善意と好意によってイラクに民主主義体制、平和と安定をもたらそう、イラク国民の、イラク国民による政府をつくろうと思って努力しているアメリカ初め国際社会、これに日本も協力すべきだと思っております。テロリストがイラク国民を苦しめている、私は、そういうテロリストの動きに乗ってはいけないと思っています。

赤嶺委員 大変驚いたイラクの認識です。こういう政府がいるから、この間から開かれている国連総会でアナンさんなんかの演説があったと思うんですよ。

 テロリストがイラクの社会を崩壊寸前に追い込んでいる、この間ロシアの外務省のホームページを見ました。そんなことちっとも書いてないですよ。問題にしているのは米英の占領ですよ。フランスが、アメリカと国連決議案、何とかアメリカと折り合って、国連主導のそういう治安体制をイラクに築いていこう、そのためには、アメリカは占領のあり方について、自分たちが何でもやろうとするな、イラク国民に主権を譲渡せよ、そうしないとイラクの混乱状態は絶対に解決できない、これがフランスの考えですよ。あなたのような考え方を持っている閣僚や首相はおりませんよ。まあ、イギリスにはいるかもしれません。そういう状態なんです。

 非常に、バグダッドの現実、イラクの現実をねじ曲げて、米英の占領を美化しようとする、これは本当に異常な状態だと思います。いかがですか。

小泉内閣総理大臣 それはテロリストの運動を美化しているんじゃないですか。逆に、あえて私は言いたいですよ。テロリストの活動を擁護するという気は、私は全くありません。米英軍初め数十カ国の国が今、イラク復興人道支援のために協力しようとしているんです。イラク開戦に当たっては、フランスとアメリカの意見が対立しましたけれども、フランスもドイツもロシアも、イラク復興支援のためには協力しようとしているんです。そういう中にあって、テロリストの味方とは言いませんが、テロリストの、支援に対してこれを擁護するような、あるいはテロリストに対して同情的な見方を私はすることはできません。

赤嶺委員 アメリカが、米英の占領をここに来てまで美化し、そして米英の占領行政とイラク国民が敵対している、矛盾しているという事実さえ認識できない。今、インドやパキスタンは、アメリカが軍隊を出してくれと言った、しかし、今のような占領の状態ではパキスタンもインドも軍隊は出せないと言っている。これが当たり前の世界なんですよ。こういう当たり前の世界の流れを無視して、そして、そういう世界の流れ、これをまともに提案したら、テロリストに同情的だとかと言う、この程度の議論しかできないような総理には、今のイラク問題は解決できない。本当にイラク問題を解決できるのは、憲法の立場でこそと思います。

 私、バグダッドで十九歳の日本人の女性に会ったんです。中谷前防衛庁長官も一緒でした。彼女は、最後までバグダッドで人間の盾としてイラクに残ったというんです。彼女が今イラク国民に一番贈りたいもの、日本の憲法第九条だというんです。これが当たり前の姿なんです。

 そういうことを申し上げまして、質問を終わります。

衛藤委員長 これにて赤嶺政賢君の質疑は終了いたしました。

 次に、金子哲夫君。

金子(哲)委員 社会民主党・市民連合の金子です。

 私は、今の論議を聞いて、大変びっくりしております。私は、小泉総理が時々論理のすりかえをされますけれども、今の論議、まさにすりかえの論議だと思います。そもそも、今のイラクの状況をだれがつくったのかということが問題になっているわけです。

 いいですか。アメリカの違法な戦争が開始をされたということで、そもそも、本来の問題の根本は、三月二十日のイラクとアメリカ軍の軍事行動が開始をされたことに端を発しているわけです。既に、その根拠とされていた、国連決議の問題が言われておりますけれども、しかし、アメリカがイラク攻撃の最大の根拠としたのは、大量破壊兵器の保有であったと思います。

 しかし、二日、アメリカの下院においても、CIAのイラクの大量破壊兵器の状況を調査した中間暫定報告が出されて、この中で、具体的な証拠は見つかっていない、このことを明言して報告を出されているわけです。しかも、このイラクへの軍事行動に至る経過によるアメリカ、イギリスにおける情報操作、誤った情報による操作が行われたということが両国の国内でも厳しく追及されているわけです。

 そうしてまいりますと、この戦争そのもの、イラクの軍事行動そのものが根本的に私は問い直されなければならない、このように思うわけです。

 小泉総理の先ほどの、大量破壊兵器があるかないかということをフセイン大統領に例えられる問題ではなくて、現実にアメリカ自身が調査をして、この大量破壊兵器が見つからないという報告を出している現実について、まずどのように認識されているか。

 さらには、私たちは、戦争というものは、常にこうした戦争が始まる経過に至るときに、このような情報操作や誤った情報によって戦争が開始をされる。そして、その起こされた戦争によって、先ほども出ておりますように、結局犠牲になっていくのは一般の民衆である。このことは、今までの歴史の中にも繰り返し起こってきたことです。今回のイラクの攻撃も、まさにそのような歴史的な過去の経過と同じような、誤った情報操作とありもしない根拠によって戦争が開始をされた、そうではないですか。

小泉内閣総理大臣 まず、今回の戦争、私は、原因はフセイン政権にあると思います。そこは基本的に議員とは違うと思いますが、クウェートを侵攻して、その後の停戦決議に違反した、査察に応じなかった。無制限、無条件に応じていれば、この戦争は起こっていなかったんです。フセイン政権、自国民に対して専制政治、また多くの国民を殺害した、こういう点が基本的に背景にある。

 その中で、今いろいろな議論がされておりますが、私は、アメリカの国内情勢、あるいはそれぞれの国の国内情勢によって支援の仕方が違います。日本は日本として独自の支援の方法があると思っておりますし、今御指摘のアメリカの状況については、後ほど川口外務大臣からも必要があれば答弁させますが、私は、アメリカもできるだけ国際協調体制をとろうとして、フランスやロシアやドイツ等、開戦前の意見の対立した国とも協議を進めている。できるだけ各国の協力を得ながらイラクの安定、復興支援に臨みたいという姿勢が顕著にあらわれておりますので、日本としても、この問題につきましては、日本にふさわしい貢献をしていきたいと思っております。

金子(哲)委員 それは、私は全く間違っていると思うんですよ。もし、そのようにおっしゃる国際的な協調関係がとられた中で米英軍の軍事行動が始まっていたとしたら、この戦後の処理も、明らかに国連を中心として、各国が協力をした体制の中で復興支援活動が始まったと思うんですよ。しかし、現実は、この米英軍の軍事行動に反対をしたフランス、ドイツ、ロシア、中国を初めとして、依然として復興支援活動の中に協力体制が組めない。この現実こそが、そもそものイラク攻撃の、誤った選択をしたことによって始まったことじゃないですか。

 さらに、アメリカ自身がこの戦争の正当性として言ったのは、大量破壊兵器による我が国への脅威に対して、それを防止するために軍事行動を開始するということを明言しているじゃないですか。そして、そのことを支持されたわけでしょう。その根拠が消えていったとしたら、そもそも、その戦争そのものが間違いであったということは当然じゃないですか。

 いいですか。現にこれだけの間、それほど重要な、そんないいかげんなことで戦争というものが開始されていいわけはないわけですよ。だから、国連も、当時、査察を継続して、その具体的なことを明らかにしようとして努力をしていたわけでしょう。その中で軍事行動を開始したアメリカの行為、そして、今なおそのことの正当性が、日本の政府は一顧だにそのことを検証しようともされない。しかし、アメリカ、イギリス両国においては、この至る経過についてさまざまな論議が行われ、その情報そのものについても真剣な検討が行われている。しかし、我が国にはそのことすらできないわけです。ただ情報にない、見つからないからないとは言えないではないか、そのレベルの論議だけで、このイラクへの憲法違反とも言える自衛隊派遣も決めていく。

 私は、人道復興支援ということは行う、それは大事なことだと思います。だからこそ一致協力してやればいいと思います。さらに、イラクのこの法案に対して、今国連で新たな決議の準備もいろいろ論議をされております。その中で問題になっているのは、イラク法の中で根拠とされている国連決議の一千四百八十三号、このあいまいな内容も疑問になって、これも含めて、これらをほごにして修正すべきだという意見も現に国際社会の中にあるわけです。

 そうしてまいりますと、私はこのイラクの法そのものをもう一遍根本からつくりかえていく、このことが、今私は、日本社会が、日本の政府がやっていく、その中で何を人道支援として行うかということを考えるべきではないか、このように思うのです。

川口国務大臣 総理がお答えになられる前に、事実関係だけ申し上げたいと思いますけれども、アメリカの議会の上下院の秘密聴聞会が開かれて、その情報についての調査は秘密聴聞会で議論はされております。

 そこで、秘密聴聞会ですから中身はわかりませんけれども、中間報告ということで、その後、終わった後で、表の場でプレスに話されたこと、これは、イラクにおいて大量破壊兵器の開発の意図はあったということであって、ないということについてはまだ全然断言をされていない。それはこれから引き続き調査をしていくということであります。

 それからもう一つ、大量破壊兵器について、これは国連の調査において、イラクが自分自身が持っているということを申告し、そして国連の調査団、査察団が、廃棄されたということについてわからない部分がたくさんあるということを言っているわけです。我が国はその国連の調査団、これをもとに判断をしているということでございます。

金子(哲)委員 そういう答弁を繰り返して、今なお国連の、逆に言えば国連だって、あるということを断定したわけじゃないですよ、当時、三月二十日の時点で。だけれども、一方、あるということを前提にして攻撃を開始したわけでしょう。そういう状況の中で戦争が始まったことは紛れもない事実であって、私たちは、少なくともそういうことを前提にしたイラクのこの支援法によって憲法違反の自衛隊が派遣をされるということについては、どうしても反対だということをあえて改めて申し上げておきたいと思います。

 総理にぜひ質問をしたいと思いますけれども、きょう、ロシアの国防相が新たな核戦略を発表しております。この点についてだけぜひお伺いしたいんですけれども、アメリカが、御承知のように、紛争地域での核使用を辞さないという新たなブッシュ・ドクトリンを発表して以降、ロシアも新しいロシアの軍事近代化ドクトリンというのを発表して、戦略核兵器による予防的な先制攻撃権、つまり、限定的な使用を容認するような中身の新しいドクトリンを発表したと言われております。

 私は、七月の予算委員会でもこの点は指摘をしておりましたけれども、アメリカの新たなこのような核戦略構想というものが、新たな核拡散の状況と、そしてまた先制使用の、実際に戦争状況で使われる危険性というものを指摘してまいりました。現実の問題として、このようにロシアの新たな軍事近代化ドクトリンの中で、アメリカと同様の先制使用の考え方が明らかになったということになると、まさに核兵器の使用の危険性というものが極めて危惧をされる状況になってきていると言わざるを得ないと思います。

 そういう意味で、その中にあって、我が国が常に被爆国の総理として、川口外務大臣も国連においてCTBTの早期批准を求めて演説されたことは承知しておりますけれども、このような核状況にあって、いわばまさにイラクで問題になった大量破壊兵器の最大の兵器とも言われる核兵器のこのような使用をも含んだ新たな政策が世界の中で展開されていく。このことについて、我が国の、被爆国の首相としてどのようにアメリカやロシアに対して働きかけをし、その危険性というものを除去するための努力をされるのか、ぜひ総理の御見解をお伺いしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 事実関係は後ほど外務大臣から答弁させますが、私は、ロシアの考え方、核兵器の問題についての考え方、これについて詳細にまだ承知しておりませんが、日本としては核兵器廃絶に向けた努力をしておりますし、核兵器使用を容認するものではございません。

金子(哲)委員 そのことをぜひ私は、ブッシュ大統領が今度訪日されるということでありますけれども、先ほど来、危惧し、指摘をしておりますけれども、やはりアメリカの核戦略の大きな変更というものがこれからの世界の核状況に対して大きな影響を与えてくることは、もう間違いないと思います。

 そういう意味でいいますと、やはりロシアに拡大をし、さらには核保有国に拡大する危険性があるという状況を考えてみますと、私は、このような、ロシアもこういう発表をするような状況に至った今日の状況の中で、ぜひ総理がブッシュ大統領との会談の中でも、明確に核兵器廃絶の問題について、そして核の先制使用という考え方の撤回を求めるということは、日本の国民の多くが期待するところだと思うんですけれども、その点について、ぜひ総理の御見解をお伺いしたいと思います。

衛藤委員長 その前に、川口外務大臣。

川口国務大臣 一言だけ。

 ロシアの新しい、新軍事ドクトリンと言われるものですけれども、これは、まさにアナン事務総長が指摘した、突然の警告なしの大量破壊兵器による攻撃、これが今の世界にとって脅威だと認識されている、そういうことを裏書きした、まさに問題意識が適切だったということであって、問題は、突然の警告なしの大量破壊兵器による攻撃に対して国際社会がどう対応しようとしているか、そこに対して解決を見出していくということであると思います。

小泉内閣総理大臣 ブッシュ大統領との間でどのような意見交換を行うかというのは、私も日本の立場を考えながら自主的に判断したいと思います。

金子(哲)委員 時間になりました。終わります。

衛藤委員長 これにて金子哲夫君の質疑は終了いたしました。

 これにて本案及び修正案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

衛藤委員長 これより本案及び修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。丸谷佳織君。

丸谷委員 私は、自由民主党、公明党及び保守新党を代表して、議題となっておりますいわゆるテロ対策特措法の一部改正案について賛成、また、民主党提出の修正案について反対の立場から討論を行います。

 平成十三年にアメリカで起きた九・一一同時多発テロは、卑劣なテロリストの手によって引き起こされた人類史上未曾有の大惨事であり、我が国を含む世界各国の多くの人々のとうとい命が失われました。国連安保理は、このテロを国際社会の平和及び安全に対する脅威と認定し、国連加盟国に対し、その防止等のため適切な措置をとるよう求めています。

 テロの防止及び根絶は世界共通の課題です。国際社会によるテロとの闘いには現在も七十カ国以上の国が何らかの形で参加しており、約三十カ国が部隊、将校等を派遣する形での貢献を行っております。我が国としては、インド洋に海上自衛隊の艦船を派遣し艦船用燃料を提供するなど、テロとの闘いに積極的かつ主体的に貢献してまいりました。

 このような国際社会による取り組みの結果、成果は上がっておりますが、ウサマ・ビンラディンやオマル師等のアルカイダ、そしてタリバンの主要幹部は拘束されておらず、また、国際テロ組織は世界各地にその網を張りめぐらせており、テロの脅威は払拭されておりません。

 このような状況を踏まえ、我が国は、国際協調のもと、引き続きテロとの闘いに寄与し、テロの脅威を払拭し根絶するための粘り強い取り組みを継続することが国際社会の一員としての責務であると考えます。

 このため、十一月一日に有効期限を迎えるテロ対策特措法を延長するための本法案を成立させ、我が国の取り組みを切れ目なく実施できるようにする必要があります。

 なお、民主党提出の修正案は、自衛隊の対応措置の実施に関し、国会の事前の承認を必要とするものであり、政府による対応措置の迅速な実施の観点から、事後的でよいものと考えます。

 以上をもちまして、テロ対策特措法の一部改正案について賛成、また、民主党提出の修正案に対する反対の立場から、私の討論を終わります。(拍手)

衛藤委員長 次に、中川正春君。

中川(正)委員 私は、民主党・無所属クラブを代表して、政府提出のテロ対策特別措置法の一部改正案に反対し、民主党提出の修正案に賛成の立場から討論を行います。

 二〇〇一年九月十一日に米国で発生した同時多発テロは、日本人を含む多くの罪なき人々を巻き込んだ卑劣かつ残虐な行為であります。このようなテロに対して、国際社会は毅然と一致団結して取り組み、テロリストに対するすきを与えてはなりません。

 しかし、もう一方で、我々は今日、複雑かつ多様な脅威に直面しており、このような新たな社会にあって、世界に平和と安定をもたらす新秩序をつくっていくための重大局面に差しかかっています。残念ながら、我々は、テロとの闘いへの有効な方策を依然として見つけ出したとは言えません。専門家の中には、アルカイダの国際ネットワークは広がっており、国際テロもグローバル化しているとの指摘があります。多面的な取り組みが今ほど必要なときはありません。

 しかし、そのような中ではあっても、テロとの闘いという名のもとに、実力組織である自衛隊が政府の恣意的な判断で無原則に海外に派遣されるべきものではありません。

 民主党は、同時多発テロを受けたテロ特別委員会の審議でも、国会によるシビリアンコントロールの重要性を主張し、海外の自衛隊の活動を認める内容である場合、PKO協力法に準じ、原則国会の事前承認であるとの立場から修正案を提出いたしましたが、与党はこれに反対をいたしました。

 同法成立後、二〇〇一年十一月に政府が示した自衛隊の活動に係る対応措置については、期間、活動範囲等が妥当と判断し承認しましたが、その後、政府は、二〇〇二年五月、十一月、二〇〇三年五月の三度にわたって半年ごとの基本計画の期間を延長するとともに、十二月四日、イージス艦の派遣をも決定いたしました。この間、政府は、派遣継続の必要性や、イラク攻撃に加わった米空母キティーホークへの給油問題など、イラク戦争との関係もうやむやにしたまま、オペレーションにかかわる内容はつまびらかにはできませんを繰り返すのみです。

 特に、今回、二年間の時限立法が期限を迎えるに当たり、この二年間、アフガニスタン周辺におけるテロとの闘いがいかなる成果を上げ、今後いかなる課題が残しているか、また、いかなる目的を達成すれば自衛隊の任務が終了すると考えているか等について、明確な説明を行ってはいません。これは、シビリアンコントロールの観点から非常に問題であるということは言うまでもないことであります。

 本法による特別措置を定めた当時からすれば、アフガンの状況は地域紛争地の懸念も指摘される等、地域、国際情勢は変化しているのであります。また、我が国の近隣の安全保障は、北朝鮮の瀬戸際政策がエスカレートしてこの一年悪化していることを考慮すると、我が国近海における自衛隊の運用面の不安もぬぐい切れません。時限立法とした期限を迎えるに当たり、改めて国会の承認に付すことが必要であると考えます。

 民主党修正案では、基本計画に定められた自衛隊の部隊などが実施する協力支援活動、捜索救助活動または被災民救援活動については、内閣総理大臣は、これらの対応措置については、自衛隊の海外派遣の重要性にかんがみ、原則国会の事前承認を得なければならないとしております。また、今回、二年間の期限を迎えるに当たり、現在既に実施されている対応措置を今後の二年間も継続することも、改めて国会に諮り直さなければならないとしております。加えて、政府案は、必要であればさらなる延長を可能にしていますが、特別措置としての本法を漫然と更新することには反対であり、テロ対策特別措置法を今回限りで打ち切るべきと考えております。

 我が国自衛隊が外国で活動するに当たり、過去の過ちを二度と繰り返さないためにも、国民を代表する国会が責任を持って自衛隊を送り出すことが必要であり、国会による事前承認を盛り込むべきであることを重ねて主張し、私の政府案に対する反対討論、そして民主党修正案に対する賛成討論を終わります。

 以上であります。(拍手)

衛藤委員長 次に、大森猛君。

大森委員 私は、日本共産党を代表して、テロ特措法一部改正案に対し、反対の討論を行います。

 テロ特措法は、九・一一テロに対し、アメリカが始めた報復戦争を支援するため自衛隊を海外に出動させるという明白な違憲立法であり、その延長は断じて許されません。

 反対理由の第一は、戦争でテロをなくすことはできず、かえってテロの土壌を拡大するからです。

 報復戦争から二年、アフガニスタンの現状は極めて深刻です。いまだにビンラディンは拘束されておらず、アルカイダのネットワークもなくなっていません。それどころか、タリバンの再結集が伝えられ、新たなテロ組織の拡大さえ伝えられているのであります。

 国連の支援組織や国際的な支援団体が撤退を余儀なくされる事態となっており、アナン国連事務総長は、安保理に対する報告で、治安状況の悪化に対し深刻な警鐘を鳴らしています。まさに、テロと戦争の悪循環に陥っていると言わざるを得ません。今こそ、国連が主体となった司法と警察の国際協力という道に切りかえるべきであります。

 第二に、テロ特措法のもとでインド洋に派遣された自衛隊が一体どのような米軍支援を行ってきたのか、政府が一切明らかにしていないことは重大であります。

 派遣された自衛隊補給艦がイラク戦争に参加する米軍を支援していたという脱法行為が明らかになっています。イラク空爆を行った空母キティーホーク艦長や米海軍の機関誌が、海上自衛隊の補給艦から給油支援を受けていたことを明らかにしているのであります。また、情報公開請求で公開された海上自衛隊司令官の報告書の中には、小泉首相が行っていないと答弁してきた捜索救助活動に関する記述が存在し、その内容は黒く塗りつぶされ、政府は一切説明を行っていません。

 自衛隊の活動実態を明らかにせず、脱法行為をあいまいにしたまま法を延長するなど、もってのほかであり、断じて許されません。

 最後に、米英の占領支配を支援する自衛隊のイラク派兵に強く反対する立場を表明して、討論を終わります。(拍手)

衛藤委員長 次に、今川正美君。

今川委員 社会民主党の今川正美です。

 私は、社会民主党・市民連合を代表して、政府提出のテロ対策特措法二年延長に断固反対する立場で討論を行います。

 振り返ってみると、二年前の九・一一米国テロ事件を契機に、ブッシュ大統領が国際法を無視してアフガンへの報復戦争を始めたのが十月八日でした。以来二年間、アフガンは群雄割拠の状態で、タリバン勢力は盛り返し、国家再興のめどは立っていません。むしろ、引き続くイラク戦争も相まって、傲慢きわまる米国を標的にしたテロ事件は世界各地に拡散しています。

 小泉内閣は、こうした米国の不法な戦争を無条件に支持し、テロ対策特措法の成立を待たずに護衛艦等を出動させ、これまで約二年間にわたって自衛隊をインド洋に派遣しました。この間、何百億円もの国民の税金を浪費しながら、テロの防止、撲滅を目的としたはずの米軍支援活動の成果も示せず、二年間の検証と総括すらこの国会に報告できないありさまです。

 また、湾岸沿岸国で二人の自衛官が死亡し、二度にわたって規則破りの飲酒事件を引き起こし、さらに、イラク戦争に従事する米艦船に給油する違法行為があったにもかかわらず、軍事機密を理由に、一切の作戦行動を国会に報告することはありませんでした。

 こうした国民への説明責任を果たさずに、諸外国から感謝されている、テロ対策は終わっていないという空虚な理屈でテロ対策特措法をあと二年延長するなど、決して許されません。ましてや、連日、武装組織の襲撃で米兵が死亡し、国連現地事務所まで爆破されるイラクに自衛隊を派遣することなど、断じて許されません。

 今、国際貢献や国際平和協力を大義名分にして自衛隊の海外出動が常態化し、それにあわせて、陸海空自衛隊の装備は専守防衛の域をはるかに超えて強化されています。

 何よりも、戦後半世紀にわたって積み上げてきた自衛隊に関する議論や最高規範たる憲法を踏みにじり、戦後半世紀にわたり築き上げてきたアジア諸国との友好関係や中東諸国との信頼関係を台なしにするようなことがあってはなりません。

 私たちは、国際紛争を解決するためには、国連主導のもとで対処し得る体制をつくり出し、我が国なりの国際協力をする原則と仕組みを国民合意のもとにつくらなければならないと思います。世界に冠たる平和憲法を生かすべき好機だとも思います。

 私たち社民党は、このような立場から、テロ対策特措法の二年間延長に断固反対し、イラクへの自衛隊派兵に断固として反対することを表明して、討論を終わります。(拍手)

衛藤委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

衛藤委員長 これより採決に入ります。

 第百五十六回国会、内閣提出、平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、前原誠司君外三名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

衛藤委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。

 次に、原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

衛藤委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

衛藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

衛藤委員長 本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時十六分散会




このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.