衆議院

メインへスキップ



第3号 平成16年1月29日(木曜日)

会議録本文へ
平成十六年一月二十九日(木曜日)

    午前九時二十一分開議

 出席委員

   委員長 斉藤斗志二君

   理事 小野寺五典君 理事 中谷  元君

   理事 西田  猛君 理事 三原 朝彦君

   理事 末松 義規君 理事 中川 正春君

   理事 藤田 幸久君 理事 河合 正智君

      今津  寛君    江藤  拓君

      梶山 弘志君    木村  勉君

      岸田 文雄君    倉田 雅年君

      小西  理君    近藤 基彦君

      桜井 郁三君    塩崎 恭久君

      竹下  亘君    橘 康太郎君

      谷本 龍哉君    玉沢徳一郎君

      西川 京子君    野田 聖子君

      萩生田光一君    望月 義夫君

      山際大志郎君    山下 貴史君

      池田 元久君    生方 幸夫君

      岡島 一正君    木下  厚君

      首藤 信彦君    田嶋  要君

      達増 拓也君    長島 昭久君

      原口 一博君    伴野  豊君

      前原 誠司君    松本 剛明君

      山田 正彦君    横路 孝弘君

      赤松 正雄君    西  博義君

      丸谷 佳織君    赤嶺 政賢君

      山口 富男君    照屋 寛徳君

    …………………………………

   外務大臣         川口 順子君

   国務大臣        

   (内閣官房長官)     福田 康夫君

   国務大臣        

   (防衛庁長官)      石破  茂君

   防衛庁副長官       浜田 靖一君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   防衛庁長官政務官     嘉数 知賢君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    秋山  收君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  増田 好平君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   北島 信一君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            堂道 秀明君

   参考人

   (特定非営利活動法人日本地雷処理を支援する会会長)            西元 徹也君

   参考人

   (特定非営利活動法人日本国際ボランティアセンター代表理事)        熊岡 路矢君

   参考人

   (国際連合大学客員教授)

   (北海道大学大学院国際広報メディア研究科客員教授)            山中 あき子君

   参考人

   (静岡大学人文学部教授) 小沢 隆一君

   衆議院調査局国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラク人道復興支援活動等に関する特別調査室長        高木 孝雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

一月二十九日

 辞任         補欠選任

  金子 恭之君     梶山 弘志君

  赤松 正雄君     西  博義君

  赤嶺 政賢君     山口 富男君

同日

 辞任         補欠選任

  梶山 弘志君     山際大志郎君

  西  博義君     赤松 正雄君

  山口 富男君     赤嶺 政賢君

同日

 辞任         補欠選任

  山際大志郎君     小西  理君

同日

 辞任         補欠選任

  小西  理君     金子 恭之君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法第六条第一項の規定に基づき、自衛隊の部隊等による人道復興支援活動及び安全確保支援活動の各活動の実施に関し承認を求めるの件(内閣提出、承認第一号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

斉藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法第六条第一項の規定に基づき、自衛隊の部隊等による人道復興支援活動及び安全確保支援活動の各活動の実施に関し承認を求めるの件を議題といたします。

 本件審査のため、本日、参考人として、特定非営利活動法人日本地雷処理を支援する会会長西元徹也君、特定非営利活動法人日本国際ボランティアセンター代表理事熊岡路矢君、国際連合大学客員教授・北海道大学大学院国際広報メディア研究科客員教授山中あき子君、静岡大学人文学部教授小沢隆一君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じます。よろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 最初に、西元参考人、熊岡参考人、山中参考人、小沢参考人の順に、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 なお、御発言の際は委員長の許可を得ることになっております。

 それでは、まず、西元参考人にお願いいたします。

西元参考人 おはようございます。ただいま御紹介をいただきました西元でございます。

 私は、法律の専門家でもなく、学者でもございません。あくまで現場の人間でございまして、現場の立場から意見を述べさせていただきたいと存じます。

 今回のイラクの人道復興支援のための自衛隊派遣は、国際社会の平和と安定に、最大の受益者である日本が、危険を冒して世界と自国の繁栄あるいは発展のために望ましい国際秩序を構築するということに積極的に協力するということを、その意思を明らかにしたということで、極めて大きな出来事だと認識いたしております。

 第一に申し上げたいことは、イラクの再建、復興を絶対に挫折させてはならないということでございます。現在進行中のイラクの再建、復興が万一挫折するようなことになれば、イラクが破綻国家となり、テロの温床になるということはしばしば言われておりますけれども、影響はそれだけにとどまらず、二十一世紀の国際秩序に非常に広範かつ深刻な影響を及ぼすものと考えております。

 その第一は、言うまでもなく、アメリカの威信の低下、影響力の低下でございます。このことは、無法国家、テロ支援国家、あるいは国際テロ組織を勢いづかせ、現在の世界の大きな不安定の要因となっております大量破壊兵器、弾道ミサイルの拡散、あるいは国際テロの活動を活発化させる可能性があることであります。

 第三に、これまでしばしば言われておりますとおりに、イラクが破綻国家となり、国際テロの基地となるか、もしくは、民族、宗教、宗派のモザイクと言われているイラクが分裂し、その機会に、これに重大な利害を有する周辺国の介入を誘発して、湾岸地域における力のバランスが大きく崩れるおそれがございます。また、そのような事態になれば、イスラエルとパレスチナの和解はより一層遠のくことになるでありましょう。結果として、石油の宝庫である中東地域全域が不安定化するおそれがございます。

 さらに重大な問題は、アメリカが世界の警察官から手を引くという事態でございます。これは将来、湾岸危機やボスニア・ヘルツェゴビナ問題、あるいはコソボ問題のように、世界が必死になって政治的、外交的に解決しようと努力したにもかかわらず、最終的には力で解決せざるを得なかった事態が将来万一起こった場合、そのとき一体、だれがその主役を務めるのでありましょうか。私は、現在の国連には、残念ながらその能力はないと考えております。

 以上申し上げましたとおり、イラクの再建、復興の挫折は、結局、二十一世紀の国際秩序に重大な影響を及ぼす可能性が大きく、何としてもこれを成功させなければならないと考えております。

 第二に申し上げたいことは、日本はイラクの再建、復興に積極的に協力する必要があるということでございます。

 この狭い島国に一億二千六百万の人口を抱え、資源に乏しい我が国は、今日、世界において、GDP、国連の予算分担率、そしてODA支出額、いずれをとってもアメリカに次ぐ世界第二位の地位を占め、第三位以下のEU諸国とは大きくかけ離れております。その大きな理由は、言うまでもなく国際社会の平和と安定にあったというぐあいに考えます。

 したがって、国際社会の平和と安定の最大の受益者として、また国際社会の責任ある一員として、私は、国際社会の平和と安定には可能な限りの責務を果たすべきだと考えております。

 また、日米同盟は、今日に至るまで、日本の平和と安全を維持するばかりでなく、日本の発展と繁栄を支えてまいりました。その一方のアメリカは、現在、イラクやアフガニスタンで苦闘しております。友が困難な立場にあるとき、そのときこそ手を差し伸べるのが真の友であり、それによって両者の関係は一層強化されると考えます。今後の情勢を考えた場合、そのことは極めて重要なのではないかと思います。

 さらに、中東地域の将来の平和と安定の確保への寄与ということは、我が国自身にとっても極めて重要であります。このことについて多くを申し上げる必要はないと思います。

 次に申し上げたいのは、イラクの再建、復興を成功させるためには、資金協力や物的協力だけでなく、人的協力が必要だということでございます。

 人的協力には、当然、ある程度の危険が伴います。カンボジアにおける国連ボランティアの中田厚仁さん、文民警察官の高田晴行警視、そして中央アジアにおける秋野先生、また今回、イラクにおける奥大使、井ノ上一等書記官などの例を見ても明らかでございまして、それを乗り越えることが、国際社会から真に尊敬され、かつ信頼される国家になるものというぐあいに考えます。

 また、湾岸危機、湾岸戦争の苦い経験から脱却する必要があることについては、多くを申し上げる必要はないと思います。

 さらに、多種多様な文化を理解しつつ、価値観をともにしながら汗を流すことによって、イラク国民が真に必要とする再建、復興に寄与することが可能だと考えます。その効果は、資金協力や物的協力で得られない、代替できない大きなものがあると私は考えております。

 そして、このような支援は、可能な限り早期に実施する必要がございます。

 なぜならば、昨年十一月十五日に合意されたとおり、本年六月三十日までに予定されるCPAからイラクの統治評議会への権限移譲を考慮いたしますと、今後の数カ月は、イラクの再建、復興に極めて重大な、大きな山場と言われる時期でございます。それだけに、そこで協力をするということの効果は極めて大きく、時期を失してはならない、このように考えております。

 また、協力はあくまで相手方のニーズに応じて行われるべきでありますけれども、今まさにそのニーズは広範であり、かつ深刻なものがあると理解しております。この観点からも、可能な限り早く支援を実施すべきであります。

 第四に申し上げたいことは、現在のイラクの現状を考慮しますと、人的協力には自衛隊が最も適しているということであります。

 イラクの再建、復興は、治安と安全の確保、そして社会基盤いわゆるインフラの再建、政治システムの再建と安定、さらに経済の再生、このような段階を踏むものと理解しておりますが、現段階は、治安と安全を確保しながら必要最小限の社会基盤の整備と政治システムの構築に努力が集中している段階だ、このように理解をいたしております。

 このような環境下で、なぜ自衛隊でなければならないのか。

 自衛隊は、インフラの整っていない厳しい環境下で、衣食住や後方支援をみずから律しつつ活動できる最大の組織でございます。ある程度の危険の存在する中でも、危険を回避しつつ活動できる装備を持ち、そのための訓練を積んできた組織であります。

 また、これまでのカンボジアあるいはルワンダ難民救援活動、さらに東ティモールのPKOのように、人的協力に係る幅広い経験を積んですぐれたノウハウを持っており、その規律正しさと誠実、謙虚な行動は、他国の軍隊、治安機関や住民の皆様から信頼を寄せられ、その協力を獲得して、安全を確保しつつ国際平和協力の成果を上げているからであります。

 最後に、すべての先生方に、自衛隊の安全を確保するために必要と考えられる措置についてお願いを申し上げます。

 第一に必要なことは、既に政府として努力されていると思いますけれども、先ほど申し上げました、イラクへの主権の移譲に伴う新たな国連決議を求め、さらに多くの国々がこれに積極的に参加、協力する基盤をつくるということ、そして自衛隊の派遣については、自衛隊が派遣される現地における人々の理解と協力を得ることなど、いわゆる自衛隊の安全を確保するバックグラウンドを固めていただくことであります。このために、既に実施されている経済協力と自衛隊の人道復興支援活動の緊密な連携は特に重要だと考えております。

 次に、派遣される部隊や隊員が堂々と胸を張って後顧の憂いなく行動できるよう、国民の理解とバックアップを得るとともに、名誉や処遇の確立に全力を尽くしていただきたいということであります。このことは、自衛隊員が士気高らかに、団結をかたくして、しかも規律を厳正にして行動できる原点でございまして、究極的にはこれが安全確保につながると確信いたしております。

 さらに、部隊行動基準に基づいて訓練を積んできた自衛隊をぜひ信頼していただき、現地指揮官に可能な限りの権限を委任し、対応の柔軟性を与えるとともに、現地で起こり得るすべてのことについて、ROEに従っている限り、すなわち部隊行動基準に従っている限り、政府が全責任を負っていただくということをぜひ明言していただき、派遣される自衛隊員に絶対の安心感を与えてやっていただきたいと思います。

 ここで特にお願いいたしたい事項は、万一の事態を論ずるよりも、安全対策に万全を期するという観点から御検討を願いたいということであります。

 テロリストに対して日本が及び腰だという印象を与えることは、かえって不安全な状態を招くおそれがありますので、断固とした態度を内外に示すこと、それによって、よりよく安全を確保することにつながると考えます。

 あとは省略させていただきます。

 最後に、ぜひ二つのことをお願い申し上げたいと思います。

 その一つは、国際平和協力は、日本の置かれた立場を考えますと、日本の最も基本的で重要な戦略的活動でございます。したがって、この活動をどういう考えでやるか、日本の国際平和協力に取り組む基本姿勢を明らかにし、そして、国際平和協力に係る意思決定や実施を適時適切に行い、さらに、これまで後ろ送りにされてまいりましたPKO参加五原則あるいは国際平和協力業務の内容、武器使用基準など根本的な問題にメスを入れていただくために、ぜひとも恒久法の検討に着手していただきたい、このように考える次第でございます。

 二つ目は、国家が、あるいは社会が本当に必要とするとき、一身をささげて公事に尽くすという精神は、ジャン・ジャック・ルソーが言っているまでもなく、極めて重要だと考えております。だれかがやらなければならない、そのような公事に献身するという気概に燃えて、これまで、浮かれることもひるむこともなく、粛々と準備を行い行動している自衛隊員をぜひ温かく送り出し、その任務完遂と無事を祈ってやっていただきたい、このようにお願い申し上げる次第でございます。

 先生方の御理解と御支援をぜひともお願い申し上げまして、私のつたない意見陳述を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

斉藤委員長 ありがとうございました。

 次に、熊岡参考人にお願いいたします。

熊岡参考人 おはようございます。日本国際ボランティアセンターの代表理事の熊岡です。

 本日は、お話しする機会を与えていただいて、ありがとうございます。

 私自身は、過去二十四年間、国際協力ということで、紛争地、タイ、カンボジア国境、日本と国交のなかったころのカンボジア、ベトナム、ソマリア、エチオピアなどで活動してきました。その他、短期間ではありますけれども、旧ユーゴ、ルワンダ、最近でいえばアフガン、イラク、パレスチナ等で活動してきました。その一人の働き手の立場から御意見を申し上げたいというふうに思います。

 まず、イラク状況ということなんですけれども、昨年の一月、ちょうど一年前、サダム政権下ですけれども、イラクを訪れ、病院などでの人道支援、それから、子供たちからメッセージと絵を受けるという活動を、「子どもたちのイラク」がありますので、後でごらんください、活動を続けておりました。

 そのとき、イラクの脅威が非常に米国などによって言われていたわけなんですけれども、実際に入って活動したイラクについては――その前に、いろいろな活動地がありますけれども、イラクについては、湾岸戦争後の九一年から九二年、約一年間、水をきれいにする、給水する、それから食料支援、特に子供への食料、ミルクなどの配給で一年間活動しました。それから、今に近い時点でいうと、二〇〇二年の九月から、母子保健病院、イラクのマンスール子供教育病院、ここでは白血病の子供たちとか、がん、難病の子供たちが多く入院していますけれども、その治療を手伝っていました。

 その過程で、昨年一月に入りまして見たイラクは、経済的にも社会的にも本当に疲弊した、脅威というよりはむしろ弱々しい印象を与えた国でした。

 それをあえて分析しますと、前回の湾岸戦争以降十二年間の経済制裁、米英空軍が行った限定的と言われる北部、南部を中心とした空爆、それから、いわゆる大量破壊兵器の査察というものがかなり成功しておりまして、イラクが持っていた軍事的脅威というものは相当減らされていたというふうに見えました。

 また、証言によっては、査察委員会元査察団長等の発言からも、おおむね九一、二年の段階でイラクが持っていた大量破壊兵器の九割から九五%以上はもうないだろう、もう少し査察を強めればほぼ完全になくすことができるというような発表もあったんですけれども、そういう状態でした。そういう中で、いわゆる米軍などにおける攻撃の理由として、大量破壊兵器のこと、これはいまだに発見されていないという意味では、余り根拠はなかったんではないか。

 それから、いわゆる反テロについては、イラク、当時のサダム・フセイン政権が九・一一事件の首謀者と協力、関連しているという前提のもとにこの攻撃が行われた部分があるんですけれども、昨年九月のブッシュ大統領、ライス補佐官の発言によれば、それもほとんど関係がないということが、逆に米国からも発言がありました。

 それから、民主化というのが三つ目の理由だったんですけれども、民主化というのは極めて内発的、自発的なプロセスであるので、言うまでもなく、外国軍がミサイルを何千発も撃ち込んで実現できるものでは全くないということで、これの理由も非常にあやふやである、いいかげんであるのではないかというふうに思います。

 それ以後、軍事攻撃の前後、我々活動しまして、医療の救援、それから子供に関連する救援活動を行いまして、八月に現地に入りました。その日はまさに国連ビルが爆破された時点なんですけれども、この中で、現在どのような時点に来ているかということを簡単に考えたいと思います。

 現在、イラクの人々の苦しみとか犠牲ということについては、一つは治安、安全の欠落というのが一点あります。それから二点目に、インフラの破壊、復旧のおくれということがあります。前回の湾岸戦争のときには、約三カ月で前政権においておおむねインフラの復旧が完了したと言われていることに対して、今回、ほぼ一年たつ中で、まだおくれているということにイラクの人々の不満がかなり募っています。それから関連して、雇用、収入、経済が悪いということによって、個々の家庭、個人、それからイラクの社会全体が非常に不安定化しているという点が挙げられるというふうに思います。

 現在、大きく見るならば、いわゆる占領軍、占領軍行政を含めて、外国軍による軍事占領という部分を、要素を、急にはできませんけれども段階的に、徐々に減少させていく、あるいはその明確なプログラムを出しながら、イラク人による政府、行政、これは警察も含めてですけれども、を強化し、完成していく、明確な段階を明示して具体化していくことが大事であるというふうに考えます。

 それから、人道復興支援などについては、占領軍もしくは軍隊的なものが行うのではなくて、明確に、より中立的な機関、存在といいますか団体に移譲、移行していく、これは通常どこの国でもそれが行われているわけなんですけれども、いくべきだ、そういう時期に来ているというふうに思います。

 それから、我々治安、治安と言いますけれども、大きく言って二つ分かれます。

 一つは一般治安、確かに八月ぐらいまで、小学生、女の子、女性等に対する、暴力事件も含めて強盗、誘拐などの一般治安にかかわる犯罪、事件が多かったんですけれども、九月以降、この一般治安に関してはかなり改善が進んでいます。これら強盗事件などは減っております。この理由は、イラク警察が、非常に苦労していますけれども、徐々に再建されて活動をふやしていく中で、これと並行して、イラク警察の復興、充実と並行して、一般治安はよくなっています。

 政治治安の方、占領軍行政などへの攻撃などに関しては、これは相変わらず悪い。この一週間、一月一日以降だけとっても、多くの攻撃が行われておりまして、残念ながら余り改善の兆しが見えないというふうに見ています。この攻撃については、いろいろな見方があろうと思いますけれども、すべてでないにしても、六割、七割、かなりの割合が占領軍に対する抵抗組織の抵抗運動ではないかと思われる部分もあると思います。

 それから、非常に不幸なことに、占領軍及び占領軍行政だけではなくて、それに関連すると思われるものが、場合によっては国連であったり、これは去年の八・一九、それから去年の十月二十七日、国際赤十字、赤十字国際委員会のビルが破壊されたのですけれども、そういうふうに、占領軍及び占領軍行政と関連していると思われるところも攻撃を受けているということになっています。

 この中でNGOは、後で申し上げるように百以上の団体が活動しています。これは日本の団体も含めてさまざまな国から、あるいは国際NGOとして入っておりまして、これはどうやって自分の安全を守っているかといいますと、軍あるいは軍隊的組織と距離をとることによって安全を確保しています。

 例えば、一例なんですけれども、現在、十一月以降、CPA、占領軍行政が指令四十五条ということで、四十五項といいますかで、全NGOは登録しろ、登録しないと活動できないと言っているんですけれども、我々は、占領軍行政ではなくて、イラクの行政組織のもとでの登録を望んでおります。つまり、占領軍の傘下といいますか仲間といいますか、思われれば思われるほど、我々の活動は難しくなり、存在も難しくなるといいますか、危険にさらされるという点で、あえて占領軍と距離をとることによって安全を確保しております。

 そういう文脈の中で、日本の自衛隊派遣について、憲法それから専守防衛政策から見て問題がある。

 それから、イラク特措法の前提、非戦闘地域という条件があるんですけれども、から見ても、我々が見ても、イラク、全般的には、個々によって、日によって、場所によって違うとは思うんですけれども、全体としては、まだ残念ながら戦争、戦闘が続いているという認識を持っております。

 それから、人道復興援助として見た場合どうだろうか。我々は、まさにNGOとして二十年以上、この分野での専門家であるわけなんですけれども、自衛隊派遣をどう見るかという点についてお話ししたいと思います。

 防衛庁長官は、武装した自己完結型組織自衛隊でなければ、現在のイラクにおいて復興援助はできないというふうにおっしゃっておられるわけですけれども、私たちとしては、具体的に四つの事例を挙げて反論させていただきたいと思います。

 一つは、NCCI、これはイラクにおけるNGO調整委員会、これは各国に普通できるものなんですけれども、がありまして、ここで五十八のメンバー団体が登録され、五十四がオブザーバーとして、合計百十二ですね、百十二団体が人道支援で今でもイラクで活動しております。その中で、六十名から七十名の外国人スタッフと約二千人のイラク人職員が一緒に働いております。つまり、武装していないグループがこれだけ多く活動し、ある意味で武装していないがゆえに活動しているという面もあるんですが。

 あと、二番目に、国連はほとんど撤退したというふうに言われていますけれども、国際職員、余り公表されていませんが、約十名がいて、あと、アンマンとイラクを往復しながら活動していますけれども、約四千五百名のイラク人職員とともに働いております。これも基本的に非武装な、自己完結型でない活動といいますか組織です。

 それから三番目に、日本政府、外務省は、ジャパン・プラットフォームの幾つかの団体、三団体でしょうか、に合計七億、八億という資金提供をしていて、ということは、これらNGOは活動できているという前提で資金を出しているんだというふうに思います。

 それから、私たちJVCもそうなんですけれども、市民、民間の資金のみで活動している日本のNGOも数団体ある。それから、単発的に訪問しているところもあるということで、武装していない、それから自己完結型でないNGO等が、国連も一緒ですけれども、働いているという事実があります。

 それから、自衛隊派遣についての続きなんですけれども、これはより大きな論点なんですけれども、我々は基本的に、軍隊的なものが人道復興援助に関係することで人道援助自体がゆがんでしまい、その中立性が失われ、本来の人道援助機関、団体、例えば国連、赤十字等も含む、我々も含むNGOが危険な立場となるという認識を持っています。

 この観点で、UNOCHA、これは国連の人道援助事務所、それから赤十字、OXFAM、これは十一カ国、十二団体でできている一つの連合体ですけれども、イギリスのOXFAMが中心ですけれども、など多くの機関が、軍隊しかない特別な、極端な場合を除いて、軍、軍隊的なものが人道支援を行うことに反対している、もしくは懸念を表明しています。

 では、翻ってNGO、NGOスタッフはどのようにみずからの安全を確保しようとしているかという点についてお話しします。

 一つは、地域社会、地域の人々に溶け込むことで、安全情報も受け、また、まさに物理的といいますか精神的なものも含めて実態的に守ってもらうということをやっております。

 我々の団体だけで過去二十四年間、日本のNGO約四百団体のうち、三十団体から四十団体が紛争地で活動しておりますけれども、トータルでいえば四十年ぐらい活動している団体もありますけれども、このような方法でみずからを守っています。

 二番目に、武器を持たないことがかえって安全につながる、武器を持つことが武器を持っている人を吸引してしまうという要素がありますので、当然ですけれども、我々も含めて、活動二十年、三十年に及んでも、一切武器を持たないことで、むしろそこが安全につながるというふうに感じています。

 それから三番目、先ほど申しましたように、軍、軍隊的な組織と明確に距離をとることによって安全を確保するということを行っています。

 それから次に、援助として見た場合、この自己完結型であるという点なんですけれども、我々も長い間、国際協力、地域開発、それから紛争地での活動を行ってきましたけれども、先ほど申し上げたように、自己完結型であるとどういうことが起きるかというと、地域社会に根差せないために、ニーズ、必要の把握においても、それから適正な実施においても、援助として成功しない可能性が強い。また、外国人はいずれその地を離れるので、適切な移譲、ハンドオーバーが必要なんですけれども、困難が生ずるという点があります。

 それから二番目に、自己完結型であればあるほど、現地の雇用、収入、経済につながらないという点があります。

 それから三番目に、費用対効果が、非常に、もしくは相当悪くなるというふうに思います。

 現在、イラクで行われている活動では、八万人―十万人を対象にした、水を清める、給水活動においてNGOが活動しておりますけれども、OXFAM、ケアなどが活動しておりますけれども、NGOの場合、数千万円から、機械の装備などを入れても一億円ぐらいの単位で活動を年間行っております、対象人口は十万人ぐらいということで。自衛隊派遣では、中身は私、必ずしも詳細にはわかっておりませんけれども、年間三百数十億円というものが必要となるということで、これは非常に費用対効果が悪いというふうに思っております。

 したがって、この時点で、人道復興援助は、まさに国連、国際NGO、場合によっては、日本でいえばJICA、緒方さんも、あえて危険を冒してでもJICAが動くということがあるべきだというふうにおっしゃっておりましたけれども、JICAも含めて、民間、NGO、それから国連、それから文民で行うべきであるというふうに思っております。

 最後に、私、二十四年間活動しておりまして、現地で、非常に厳しいところで働いておりましたけれども、一人の活動者として、この間、第二次大戦以降の日本の非軍事主義、平和主義と言っていいかもしれません、国際協調主義、より中立的な立場をとろうとする姿勢、人道主義などが背景にあるので、我々国際NGO、日本の国際NGO、あるいは活動者も守られてきたというふうに思っております。今そこは揺らいでいると思うので、ここをもう一回確定してほしい、確認してほしいというふうに思います。

 最後に、現在まさにこの時間、我々のメンバー原文次郎が、イラクとヨルダンを行ったり来たりしておりますけれども、ヨルダンで購入した医療器具を持ってバグダッドに向かっております。十二時ごろ現地に、バグダッドに着く予定ですけれども、この間、二〇〇二年の九月から一貫して活動から撤退しておりません。ずっと続けております。その原文次郎からのメッセージを二つ届けたいと思います。

 ぜひ、このイラクにおいて、私たちNGO、あるいは国連を含めて、民間に復興人道支援を主にゆだねていただきたい、行わせていただきたいというのが一点です。

 あと、二点目は、このまさに最後に書かれていたところであり、「子どもたちのイラク」のことなんですけれども、イラクの子供たち、本当に、戦争の前後、戦争中、戦後、それから特に劣化ウラン弾の影響で小児がんになった子供たちも多いんですけれども、のために働くことを続けるということと、それを理解し、支援していただきたいというふうに電話で先ほど述べておりました。

 どうも長時間ありがとうございました。(拍手)

斉藤委員長 ありがとうございました。

 次に、山中参考人にお願いいたします。

山中参考人 山中あき子でございます。

 短時間ではございますけれども、イラクの復興支援を通して民主イラクの自立を助け、国際社会での日本のプレゼンスを高める、そういうことのために、日ごろ考えていることを述べさせていただきたいと思います。

 大量破壊兵器の有無、アルカイダとフセイン政権との関連など、この戦争の正当性が国際社会で議論を呼ぶ中での派遣であり、また、自衛隊の海外派遣には議論を尽くすべきさまざまなことがあることも確かでございます。しかし、イラク特措法が成立し、既に部隊が派遣されている今、必要なのは、いかにこのイラク派遣を日本の未来にとってプラスにしていけるかという視点かと思います。

 もちろん、今回の自衛隊派遣を教訓として、同盟国米国との関係、国連との関係、そして近隣アジア諸国との関係など、日本が国際社会の一員としてどういう役割を果たすべきか、外交安全保障政策をしっかり議論し、そして将来に禍根を残さないような国の方向を定めるのは、立法府である国会、そのメンバーである国会議員各位の使命であると思います。その意味で、この委員会の採決が終わって一段落というふうにお考えにならないでいただきたい。

 二〇〇二年の十二月、私もメンバーとして、官房長官の国際平和協力懇談会の報告書をまとめました。その中で、日本が、国際社会における平和の構築、平和の定着、そして平和の維持、そしてまた紛争解決や紛争予防、そういったあらゆる局面で、自衛隊、文民警察、地方を含む行政、民間、NGOなどが、どういう条件で、どのような形で、そしてどのように参画できるのか、そのための人材の育成と派遣のシステム、危険の防止とそして保障など、総合的な視座での国際平和協力、いわゆる基本法というものを制定せよというふうに提言しております。

 何か起こるたびに特措法という、パッチワーク的な法整備ではなく、日本のスタンスを国民にもあるいは海外にも明確にわかるような基本法の制定を、この委員会の後、皆さんに速やかに取り組んでいただきたいというふうに思っております。

 さて、イラク復興では、治安、インフラ、経済活動の三つの回復が成否のかぎになります。治安は、戦勝国であり駐留軍を出している英米の責任です。混乱が長引かないように、英米にしっかりと治安をやってもらわなければいけません。では、インフラの整備、そして経済活動、これは日本が非常に積極的に参加できる場面だというふうに思います。自衛隊が扉をあけ、そして治安の回復の状況を見ながら、民間やNGOがそこから敷衍して長期的な経済復興に関与していく、そういうふうなシナリオが必要かと思われます。

 派遣された自衛隊の方々に、今もイラクにいる方々、これから行く方々を含めて、私は、ぜひ政府が次のようなことを配慮していただきたいというふうに思っています。

 まず、プラスもマイナスも含めて、現実を直視するということです。

 二つ目は、陸自は、北海道とまるで違う気候や砂漠地帯での任務ですので、訓練の分のペースを守ろうというふうに思わず、その半分のペースでもいいから、ゆっくりとゆっくりと任務を果たしていただきたい。そういう柔軟性を持つことです。

 三番目は、地元の長老や専門家などと頻繁に意見を交換して、計画を変更する裁量を現場に持たせること。

 それから、任務を明確にし、現地の人たちができるようになった場合には速やかに引き揚げる。必要があればまた行くということもあり得ます。

 そして五番目、相手の文化や風習を尊重し、一方で日本の文化を紹介する余裕を持つこと。

 そして、ストレスがたまり精神不安定になりやすい環境なので、医務官は、現地の人と同時に、自衛隊員の健康管理や精神的ケアを十分できる体制にすること。

 「あなたが生きるために、私は死ぬ」とは、一九四三年にドイツ・ナチスに包囲されたサンクトペテルブルクの若い兵士の言葉です。私たちは、命をかけて出ていった隊員への配慮を決して忘れてはならないと思います。単なる占領軍と見られて憎悪の対象にならないためにも、小泉総理が強調するように、復興人道支援活動を優先させるということが肝要です。

 さて、イラクの人々は、それではどのように考えているのか、イラクの人々の意識を見てみたいと思います。

 お手元に配付しました資料をごらんいただきたいと思います。これは、英国の民間リサーチ研究所の意識調査で、二〇〇三年十月、十一月に、全国十八県のうち十二県の百二十九カ所において、三千二百四十四サンプルを戸別訪問で集めた、そういった信頼性の高い調査でございます。

 まず、資料一をごらんいただきたいと思います。過去十二カ月で一番よかったこと、サダム政権の消滅、これが四二・三%です。

 二番を見てください。過去十二カ月で一番悪かったこと、戦争、爆撃、そして負け、敗戦、これが三五・一%です。二番目は、愛する人の死というのが一三・六%です。

 資料三をごらんください。どういった政府の体制が望ましいか、これは複数回答になっておりますが、一番、群を抜いて多いのが、イラク人による民主主義、八一%です。イラク人は民主主義を求めているのです。二番目は、一人の強いイラク人リーダー、四二%。とても不思議です。ちょっと置きまして、統治評議会というのは二三%なんですが、国連の過渡的政権というのはマイナス八%なんですね。CPAはマイナス二八%。しかし、もっと嫌がられているのは、イラクの軍政、これはマイナス四八%になっております。

 小泉総理がいみじくも述べたように、イラクの人々が望むような政権を確立するために国際社会が協力することは非常に大事な視点で、それをどう実現するか、まさに、日本の国際交渉力、外交手腕が問われています。

 四番目の資料をごらんいただきたいと思います。政府に望むこと、これも複数回答です。トップ四を挙げますと、犯罪との戦い、これが九八%。教育の提供、九七%。雇用の提供、これが九六%。そして、健康・医療に関して、これも九六%というふうな数値が挙がっております。この一、二月にも、また再びこのNGOは調査をいたします。

 つまり、ステージからステージへ、イラクの情勢は変わっているということです。

 昨年五月、私が、イラクの人たちが望むこと、すぐにできること、日本のプレゼンスを高めることという視点で、水、食糧、医療、教育、女性の職業訓練というのを提案しました。このころは、行政も民間もNGOも活動できる状況でした。しかし、今は、自衛隊が武器を携行する状況です。選挙が近づき、選挙法をめぐり国際的な意見の対立、国内の意見の対立が起これば、米軍だけでは解決できない問題も起こってきます。国連の積極的関与が不可欠になってきます。

 国連は国益のぶつかり合いの場である、そういう政治的な場であります。しかし、これにかわる組織は今ほかにありません。それならば、国連の独立性を高め、そして強化することが必要で、ここでもまた、日本の外交手腕が問われる場面が間もなく来ると思います。すなわち、イラクの状況はステージ、ステージで主役がかわるということをしっかりと認識し、イラクの動態の的確な把握、そして、どのようにそれを判断するかということが非常に大事であって、そのためには、客観的なデータあるいは総合的な情報の集約というのが大切なのですが、私は、日本はそれは少し弱いのではないかというふうに思って、危惧をしております。

 日本の責任で実行すべき復興支援というのはたくさんあるわけです。五十億ドルに上る復興予算、とりわけ十五億ドルの緊急プロジェクトは、国際機関への援助も大事ですけれども、日本が顔が見えないというこれまでの轍を踏まないためには、日本の責任で実行すべきだと私は考えております。

 例えば、国際平和協力の非軍事的活動である人材の育成、これを並行して行うことも非常に価値があると思います。一番大事なのは人であります。民主化のため、小中学校の民主的運営能力の強化、あるいはフセイン時代とは違うカリキュラムや教材も必要です。

 また、三度の戦争で六十万人が未亡人となったイラクに、子供を抱えて必死に生き抜いた戦争未亡人の経験のある日本が十分な配慮をすることも非常に大事なことで、幸い、ハビタットを通じて住宅の建設は検討されておりますけれども、こういう人たちが経済的に自立できるような、例えば、コンピューター教育であるというような職業訓練であるとか、あるいは専門家が職場復帰できるように、起業家、アントレプレナーシップ、これを日本が支援していく、そういう視点も非常に大事だと思います。

 また、治安の状況が悪ければ、イラクで研修する必要はないわけで、日本に呼んでくれば、これがまた日本人がイラクの人々と接する機会にもなり、理解を深めるという、そういう波及的な効果もあると思います。

 イラクの主たる輸出品目は、実は、医薬品と、農業製品を中心とした缶詰でした。このことからも、科学技術、医薬の相当のレベルの高い人たちが潜在的にいたということであります。イラクの産業構築の再開のためにも、そういう人たちの、日本が誇る科学技術の分野での人材育成、これも十分検討されると思います。

 今、世界各国、戦争に賛成、反対を問わず、約八十カ国が、イラクの若い外交官を受け入れて研修をしています。残念ながら、日本にはまだ一人も入ってきておりません。

 日本は、もう一方で、長い歴史と文化の国であります。メソポタミア文明のさまざまな文化遺産が散逸してしまった今、文化の、あるいは教育の構築という意味で、そういった博物館あるいは図書館の充実というような視点も、日本ができる大きなミッションになるかと思います。

 各省庁がばらばらに使ってしまうのではなくて、ぜひトータルビジョンを、立法府の皆さんあるいは有為な人材を民間からも登用してチームをつくるなりして、日本の全体の復興支援のビジョンを早急に立てて、日本が主導してこの復興資金を使用する、そういう観点を御期待申し上げたいと思います。

 三つのキーワードを申し上げたいと思います。これは、今私たちがどこにいるかを考えるときに重要になるかと思います。

 一つは、過渡期であるということです。冷戦後、冷戦までのすべての国際秩序も、構築されていたものも非常に不安定な状態になって、今新しい方向が見えない。ですから、NATOが力を失い、EU軍に移っていく、これも一つの現象です。

 それから二つ目は、安全保障の性質自体が大きく変わってきている。

 これは二つの視点で申し上げますと、一つは、伝統的な安全保障である脅威に対する安全保障から、人間の安全保障であるとか、エネルギーの安全保障であるとか、鳥インフルエンザも含めれば食の安全保障、中東においては水の安全保障というような、私たちの食卓、家庭に安全保障が入ってきているという視点。それから、今までは、どこどこに対峙する、敵視するというアゲンストであった安全保障の概念から、その地域を構成するすべての国が、ウイズ、ともにその地域の安全を考えるというふうに変化してきている。

 最後、三つ目は、九・一一以降、コアリション、連係、連帯という視点が大事になってきています。世界一の経済大国であり、世界一の軍事大国であるアメリカでさえ、ユニラテラリズムではいかないという状況に陥ってきています。もちろん、まだ揺れてはおりますけれども。

 そういう視点の中で、日本もバランスを失う危うさに直面していますし、世界もそうです。今こそ、バランスの感覚をきちっと日本が持つということが大事になります。グローバリゼーションの一方で地域化、それからハイテク情報化の時代にプライバシーをどう守るか。それから環境保護と開発、あるいは集団志向と個人主義、物質主義と精神主義、仕事と余暇、男性と女性、そして高齢化と少子化、これはもう既にバランスが崩れておりますので、国や地方行政がバックアップしなければいけません。

 もう一つ、理想は、軍事的なものが何もない方がいいに決まっています。しかし、現実を見ると、軍事的な準備、それと非軍事的な平和構築、これもバランスが必要です。

 私は、対話と抑止の両手の外交ということでこのバランスをとることが、すなわち日本のアイデンティティーを築くことになるというふうに思っております。

 イラク復興支援を通して、民主イラクの自立を助け、国際社会での日本のプレゼンスを高めていく、そんな温かい視点と戦略的外交展開、こういう視点を備えた日本であってほしい、このことが日本に今求められることではないでしょうか。(拍手)

斉藤委員長 ありがとうございました。

 次に、小沢参考人にお願いいたします。

小沢参考人 静岡大学人文学部法学科で憲法を研究しております小沢です。本日は、お招きいただき、ありがとうございます。

 イラク特措法に基づく自衛隊等の対応措置への国会承認案件につき、参考人として意見を求められたことを意義深く受けとめております。ついては、二点、初めに申し上げます。

 まず第一に、法律の制定過程ではなく、その実施過程である承認手続において参考人に意見を求めるのは、本院としては異例のことでしょう。承認手続をそれだけ政治的に重要なものと位置づけていることと思われますが、今後、万が一同様の承認手続の必要が生じた場合にも、欠かさず実施していただくようお願いいたします。それは、主権者国民を代表する国会の本分だと思います。

 第二に、そもそもこの手続が政治的重要性を持つ背景には、特措法それ自体憲法違反の疑いが強く、その帰結として法律の発動に多くの疑義が生じ得るという点があると思われます。それは、今国会の各党代表質問等で、野党各党の党首がいずれも、自衛隊の派遣は憲法に違反するとの見解を示していることにあらわれております。この場で審議を求められていることは、法律そのものの是非ではなく、基本計画と実施要項、それに基づく対応措置の是非であることは承知しておりますが、こうした問題の性格からして、私の意見が、承認の是非を論じる前提として、法律そのものの問題点にも若干説き及ぶことをあらかじめ御容赦ください。

 対応措置への承認の是非は、基本計画と実施要項、対応措置が憲法及び国際法に照らして妥当なものかどうかという点から検討されるべきでしょう。以下、順に述べます。レジュメの方をごらんください。

 まず、対応措置は憲法九条に違反いたします。

 第一に、憲法九条二項の交戦権の行使に該当すると思われます。

 一九八一年四月十四日付の本院の稲葉誠一議員提出の質問主意書に対する政府の答弁書では、交戦権は、「交戦国が国際法上有する種々の権利の総称」とされ、そこには、相手国領土の占領、占領行政も含まれるとされております。自衛隊による今回の対応措置は、現地の占領軍司令部の指揮のもとで行われます。とりわけ安全確保支援活動は、占領軍の活動に深くかかわるものであります。また、自衛隊は、イラクやクウェートなどで裁判権を免除されるなど、軍事要員としての特権を付与されることになっております。このことから、自衛隊の対応措置は、憲法が禁じた交戦権の行使に該当すると思われます。

 第二に、憲法九条一項が放棄をする武力の行使に該当すると思われます。

 PKO協力法の制定に際して、本院の石橋大吉議員の質問に対する政府統一見解では、九条一項に言う武力の行使を、我が国の物的、人的組織体による国際的武力紛争の一環としての戦闘行為とし、自己保存のための自然的権利としての必要最小限度の武器の使用はこれに当たらないとしております。その後、同法二十四条は、武器の使用の際に、上官の命令によるとの規定が追加されましたが、このときの橋本龍太郎首相による一九九八年五月二十日の参議院での答弁では、それでも本質は自己保存のためであって、任務遂行のための部隊としての武器使用ではないとされております。

 私は、憲法九条一項が禁止をする武力の行使をこのように戦闘行為に限定する解釈は妥当でないと考えます。すなわち、安全確保支援活動で占領軍の兵員を輸送することなどはれっきとした武力行使に当たると考えますが、仮に先ほどのような政府の見解に即してみても、今回の自衛隊の対応措置は憲法が禁ずる武力の行使に該当すると思われます。

 なぜなら、今回の基本計画では、陸上自衛隊の部隊は、拳銃、小銃、機関銃のほか、無反動砲及び個人携帯対戦車弾及び活動の実施に必要なその他の装備を有するとされております。石破茂防衛庁長官は、武器の使用は正当防衛だとしていますが、活動の実施に必要な装備の使用は、正当防衛ではもはや説明のつかない、任務遂行のための部隊としての武力の行使にほかならないと思います。

 以上、憲法九条に違反する自衛隊による対応措置は、承認されるべきではないと考えます。

 第二に、対応措置の国際法上の位置についてお話をいたします。米英の占領とそれに協力する行為が国際法上正当性を有するものでなければ、そのことも承認を非とする根拠となるでしょう。

 まず、国際法違反の占領であるということです。

 米英によるイラクに対する武力攻撃と引き続く占領は、国際法に違反するものです。基本計画は、冒頭で、「米国を始めとする国々は、イラクが国際社会の平和と安全に与えている脅威を取り除くための最後の手段として、イラクに対する武力行使を開始した。」このように述べておりますが、この文言は、今回の武力行使が、国連の安保理による平和に対する脅威の認定も、そして武力の行使の容認の決定もなしに行われたこと、そして、国連憲章が武力行使禁止原則の唯一の例外として認めている自衛権の行使にも該当しないことを如実にあらわしているものと思われます。

 イラク特措法の第一条が言及している安保理決議六百七十八、六百八十七、千四百四十一の各号は、いずれも武力攻撃を正当化するものではありません。とりわけ、千四百四十一号からは、武力行使を容認する文言が周到に排除されていたからこそ、米英は、昨年の二月、三月の段階で新決議の採択に執着し、安保理は最終的にこれを受け入れなかったのであります。

 また、米英が主張した大量破壊兵器の保有の事実も、いまだに証明をされておりません。逆に、調査に当たった米当局者からは、なかったという証言すら現在なされております。

 こうして開始された武力攻撃とそれに引き続く占領は、侵略行為として、国連憲章を初めとする現代の国際法に違反し、これを破壊するものであると思われます。

 そして次に、対応措置は国際法上も占領行為であるということです。

 安保理決議千四百八十三は、米英の武力行使と占領の合法性については、周到にも一切言及をしておりません。そのこととは別に、イラクが現に米英統合司令部の占領下にあるというその事実を前提にして、司令部に国際法に従って占領を行うよう規定しているだけであります。

 同決議は、米英以外の国連加盟国の占領への協力は占領当局のもとでなされるとしており、また、すべての関係者に、ジュネーブ条約、ハーグ陸戦規則を含む国際法上の義務を遵守するよう要請していますから、自衛隊の対応措置が、占領当局の指揮のもとで国際人道法の適用を受けて行われるべきことは、すなわち占領行為の一部であることは明白であります。このことは、昨年十二月十二日付のブレマー行政官の日本政府あての書簡でも示されております。

 こうした事実にかかわらず、日本政府は、自衛隊の対応措置について、ジュネーブ諸条約やハーグ陸戦規則は適用されないとしていることは、私には理解ができません。それを認めてしまうと、自衛隊は占領に参加するのではないという立論の前提が崩れてしまうからだとすれば、それは余りにも国際社会のルールに背を向けた姿勢と言わざるを得ません。

 なぜなら、イラクの占領当局やクウェートからは、軍事要員として裁判権免除などの特権を付与されて、すなわち国際法的には保護を受けながら、日本の国内法との関係では、ジュネーブ諸条約やハーグ陸戦規則は適用されないとして、それらが規定する軍事要員としての義務を負わないとすることは、およそ国際社会から信頼される対応とは思われません。

 日本は、かつての戦争で、捕虜の人道的待遇を定めたハーグ陸戦規則を批准していながら、他国の捕虜を虐待し、また戦陣訓で、生きて虜囚の辱めを受けずと捕虜になることを自国の兵士に禁止をして、双方の人民を苦しめた暗い過去を背負っております。

 今回の政府の姿勢は、問題の内容は違いこそすれ、みずからの都合で国際法を勝手に扱うという点では同じレベルの対応であると言えます。憲法を歪曲して自衛隊の派兵を強行することと、その無理を糊塗するために国際法を軽視することとは、法に対するニヒリズムという点では同根であり、これでは国際社会からの信頼は到底得られないものと思われます。

 もっとも、法に対するニヒリズムの蔓延という点は、日本だけではないようであります。圧倒的な軍事力を背景にして先制攻撃の権利や敵性国家の体制変更を新戦略で掲げるアメリカは、今日、国際社会のルールを破壊する最大の脅威であります。そうしたアメリカの姿勢と行動が、テロに対してもその口実を与えております。

 私たちがなすべきことは、こうしたアメリカに追随することではなく、暴力の連鎖を断ち切る国際的な力の結集をかち取ることであります。テロとの戦いと称してこぶしを振りかざし、無辜の民衆を殺害することではなく、暴力の応酬をとめる平和の力を強めることであります。そのためにも、イラクに対する無法な占領を一日も早く終結させ、イラク人民の手による統治を国連中心の平和的な支援で実現することが求められております。

 自衛隊のイラクへの派遣を取りやめること、それは人類の平和への努力に対する日本の使命であり、国民の多数の願いであります。それをなし得るのは貴院をおいてほかありません。慎重な審議の上、対応措置の不承認の判断をされるよう強く求めたいと思います。

 私の意見を以上で終わりにさせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)

斉藤委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

斉藤委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西田猛君。

西田委員 おはようございます。自民党の西田猛でございます。

 きょうは、早朝から、参考人の皆様方におかれましては、公私御多忙であられます中お集まりいただきまして、そしてまた、大変貴重な、そして高説を聞かせていただきまして、ありがとう存じます。心から御礼を申し上げたいと存じます。

 また、ほとんどの参考人の皆様方から、今回のイラクの活動、そして国際の平和と協力のために活動しながら志半ばに倒れた二人の外交官に対しまして哀悼の意を表されましたこと、本院といたしましても心からありがたく存じ、また、改めて哀悼の意を表したいと存じております。

 そのような中で、四人の参考人の皆様方から意見陳述をいただきましたので、私ども、少しく時間をとらせていただき、お話を伺わせていただきたいと存じております。

 まず、自民党から推薦をさせていただきました西元参考人にお伺いいたしたいのでございますけれども、冒頭、残念ながら現在の国連の能力をもってしては世界の平和と安定のために十分な活動をなし得ないという御発言をいただきましたが、このことにつきましてもう少し詳しく、それではどのように国連がなったらよいのか、どのような組織を持てばよいのかというようなところをお聞かせいただけますでしょうか。

西元参考人 お答え申し上げます。

 現在の国連は、少なくとも、混乱の中にある状況を収拾するという能力は残念ながら欠けていると思います。

 そのことは、一九九〇年八月二日、イラクがクウェートに侵略をした際に、国連は直ちにイラクに対する制裁決議を科し、かつペルシャ湾における海上禁輸執行活動などを承認いたしました。しかしながら、国連自身が力を行使して、その指導のもとにイラクをクウェートから排除したということではなく、このことは、多国籍軍にその力を行使する承認を与え、これを排除したということだと思います。

 また、一九九四年、ボスニア・ヘルツェゴビナにおいて、ミロシェビッチ旧大統領の率いるセルビア勢力が当地におけるイスラム勢力の虐殺を行った際にもさまざまな措置をとりましたが、最終的にはNATOを中心とする力に頼らざるを得ませんでした。このときは、国連は武力行使の承認を与えたと理解しております。

 一九九九年のコソボにおいては、残念ながら、武力行使の承認を受けることなくNATOは人道的介入の目的をもって武力行使をした。

 すなわち、国連の加盟国である、特に常任理事国五つの国に密接な利害の関係のある事項について、国連が意思を統一して安全を確保し、もとの状態に復するという行動は極めて困難だというぐあいに考えております。

 しかしながら、一たんその混乱が収拾された暁に、その国における、その地域における平和の構築、平和の定着、平和維持といったようなことに国際社会の意思を統一するという点では、国連は依然として非常にすぐれた能力を私は持っていると思います。

 したがって、そこは国際社会の中における役割の分担ということをしっかり考えていくべきだと思います。最終的には、私は、国連にその力を与えるということが最も重要な問題だと思います。このためには、国連改革は、特に安保理改革は避けて通れない非常に重要な問題でございまして、拒否権をどうするかとか、あるいは常任理事国の数をどうするかといったような根本問題がぜひ解決されなければならない、このように考えております。

西田委員 ありがとうございます。

 続きまして、熊岡参考人にお伺いしたいのですけれども、熊岡参考人の方からは、今回のいわゆるイラク特措法そのものについて憲法上問題があるという御指摘がありました。そして、私たちといたしましても、熊岡参考人が日ごろ行っておられますNPO活動、そしてまた国際的な平和と安定のためのボランティア活動につきましては、心から敬意を表するものでございますけれども、今回の立法措置、あるいはそれに基づきます自衛隊の活動展開が憲法上問題があるとおっしゃられましたことについて、少し詳しく御説明を、民主党から推薦されました熊岡参考人にお聞かせ願いたいと思います。

熊岡参考人 お答え申し上げます。

 憲法では交戦権を否定しているというふうに理解しております。私たちの方の活動では、まさに紛争地の、戦闘地でもあえてそこを覚悟して入っているわけですけれども、現在のイラクを見た場合、これは米軍の総司令官も認めていますけれども、戦闘状態もしくは戦争状態が続いているというふうに米国自身としても判断しているということです。その米軍を中心にした占領軍行政の中に入る、あるいはそれに協力するという形で自衛隊が派遣されているというふうにとらえているという意味で、憲法に違反しているというふうに思います。

 それから、特措法に関しては、非戦闘地域という条件で派遣が決まったというふうに思うわけで、仮に特措法に基づいたという意味でも、今回の自衛隊の派遣は、自衛隊の皆さんを非常に危ないところに送るという意味で、特措法の趣旨と反しているのではないかというふうに考えております。

 以上です。

西田委員 ありがとうございます。

 次に、山中参考人にお聞かせ願いたいのですけれども、山中参考人の方からは、今イラクに展開している自衛隊の隊員の皆さん、あるいはこれから展開される隊員の皆さんに対しまして、いろいろなお心遣いに富んだお話もちょうだいいたしまして、私たちといたしましても心から御礼を申し上げたいと存じます。

 その上で、公明党から推薦されました山中参考人に、やはり今回のイラク特措法に基づく自衛隊の展開による我が国の国際の平和と安定に対する協力、そしてイラクへの人道復興支援活動については、やはり憲法上適合したものであって、今後とも推進されるべきものであるという論旨だったと存じますけれども、そのあたりを少し敷衍してお聞かせいただけますでしょうか。

山中参考人 私たち人間も同じですけれども、国もそうです。国際社会もそうです。五十年余りという年月というのがすべての状況を変えてきている。そういう意味で、国連も、あるいは日本の憲法も、そしてそれにかかわる私たちの人間の判断基準も変わってきているというふうに思っています。

 憲法そのものに違反するかどうかということに関して、私は多分、今後この一、二年間の間に日本が国民的な議論をして、さまざまな議論があるのは民主主義の国としては当然のことです。一色だったら民主主義ではないわけです。ただし、民主主義のルールに基づいて決まったらそれに従っていくという民主主義の基本を踏まえるとすれば、国民から選ばれた国会で審議をされて議決されて決まってきた法律に基づいてこの自衛隊派遣が執行されていくということは、そのルールの上の遵法精神の国の考え方だと思います。

 ただし、その方向が本当に今後の日本にとってプラスになるかマイナスになるかについて、先ほども申し上げましたように、非軍事的なものと軍事的なものも含めて、基本法も含めた特措法のあり方ということと関連して、憲法がどうあるべきか、これは日本がどういう国になるかということの議論がなしには語れないと思います。

 ゲンシャーが、ゲンシャーというのは、東西ドイツを統合させた名外務大臣と言われたゲンシャーが、外交はプラクティカルでなければならないと言っています。現実を見てどう対応するかということと、将来的なビジョンをどうするかということ、これをきちっと分けて両方扱っていただきたいというのが私の気持ちでございます。

西田委員 ありがとうございました。

 では、続きまして、小沢参考人にお伺いしたいのですけれども、小沢参考人におかれましては、きょうの意見をお聞かせいただいているのは、このイラク特措法に基づく自衛隊の対応措置を行うことの承認を我々は求められているわけですけれども、そういう中の意見陳述ながら、小沢参考人から、本法そのものについての意見を申し述べたいという論旨明快なことを冒頭いただきまして、なるほどと私どもは承っておった次第でございます。その中で、小沢参考人は、本法そのものが憲法に違反するおそれが非常に濃い、したがって、我が国としては、憲法に従えば、早急に部隊を引き揚げるべきではないかという御意見をちょうだいいたしました。

 そこで、私お伺いいたしたいのは、共産党から推薦をされました小沢参考人におかれましては、であれば、我が国として、国の活動としては、今回のイラク問題については、特にこの人道復興支援活動についてどのように対応したらよいというふうにお考えになられるのか、お聞かせいただけますでしょうか。

小沢参考人 最後に、時間の関係で、早口で、しかも簡単にしか申し述べませんでしたが、やはり占領軍に対する、その占領軍の指揮のもとで行われる人道復興活動、これには協力するべきではなく、早く占領軍による占領という事態を終わらせるように国際社会に働きかけていくこと、そして、それをした上で、国連の平和的な支援に基づく現地のイラク国民による統治を早く立ち上げること、これが日本としての重要な役割ではないかと思います。

 先ほど山中参考人が出された資料でも、現地のイラクの人々は国連による統治よりも今の暫定行政当局による統治の方をもっと嫌っているわけでありますから、そういうようなイラクの人々の声に謙虚に耳を傾けていくべきではないか、このように考えております。

 以上です。

西田委員 ありがとうございました。

 西元参考人にお伺いしたいのですけれども、西元参考人はこのようにおっしゃいました。私がお聞きいたしましたところでは、日米同盟関係のより一層の強化というお話の中で、友が必要としているときに手を差し伸べるのが真の友ではないかというふうにおっしゃいまして、もちろん、今回の私どものイラク特措法に基づく自衛隊部隊等の展開につきましては、戦争が終結した後での人道復興支援活動のために、付随的に安全確保支援活動ということもございますけれども、展開されるものではございますので、いわゆる軍事的な同盟関係に基づく展開では全くないわけでございますけれども、しかし、今、西元参考人がおっしゃいましたように、そういう日米同盟関係のより一層の強化、そして友が必要としているときに手を差し伸べるということも必要ではないかというお話からいたしますと、今非常に議論が沸騰してきております集団的自衛権というものをやはり避けて通るわけにはいかないのではないかというふうに考えるのですけれども、これから我が国が進んでいく国際社会の中で、集団的自衛権というものをどのように考えていったらよいのかということにつきまして、豊富な御経験の中から少しお聞かせいただけますでしょうか。

西元参考人 集団的自衛権の行使という、このことにかかわる憲法解釈につきましては、私は、日米協調という観点よりは、むしろ国際協調という観点からより深くとらえるべきだと考えております。

 本日も意見として申し述べましたが、日本は国際社会の平和と安定の最大の受益者であること、これだけはもう間違いございません。そうなりますと、国際社会の平和と安定に積極的に協力するということが必要でございます。

 そして、その協力のあり方は、言うまでもなく、国連の意思決定のもとに行うということが最も望ましいわけでございますが、しかしながら、先ほども申し上げましたとおり、国連にはその能力の限界がございますので、そのような場合には、国際社会の多くの国々が意思決定をしたというそのことに協力をするという観点が必要だと思います。

 そして、そのようなことすら、例えば国連のPKOに出た部隊が国連の管理下にある人員や施設や物資を守るということさえ集団的自衛権の行使に当たるといったような解釈のもとでは、もはや本当の意味での国際協力というのはできないのではないか、このように考えております。

 今のは具体的なほんの一例でございますけれども、私は、現在の集団的自衛権の行使にかかわる非常に狭い限定した解釈が日本の国際平和協力の範囲、規模といったものを著しく拘束している、このように理解しております。

 国際平和協力ということが日本の基本的かつ最も重要な戦略的活動であるというぐあいに認識しております私といたしましては、そのような観点から、一日も早くこの問題はぜひ先生方の御尽力によって解決していただきたい、このように考える次第でございます。

 以上でございます。

西田委員 ありがとうございます。

 山中参考人にお伺いしたいのですが、山中参考人は三つのキーワーズということで、世界の平和という点においては今世界は過渡期にあるという点が一つ、それから安全保障の変質という点、それから三つ目にコアリションですかね、同盟の変質ということをおっしゃいました。

 お話を伺っていて非常に意義深いことだなと思ったのですけれども、特にEUの例を引かれましたが、私自身もかつて近くに二カ月間、EUの研究で向こうに滞在したことがあるのですけれども、経済やそれから安全保障という大きな枠組みを統合して国境を低めようという動きとともに、各地域ごとの国境をむしろ高めようという動きが非常に、英語で言いますとプロボーキングといいますか、挑発的な物の言い方をすれば、その地域地域の国境を高めようという動きもあったように見受けたのですね。

 日常生活をしている範囲内での言葉、それから生活、風習、習慣、日ごろ知っているような人たちと、やあやあ、おはようというふうに、こんにちはと言える仲間、そういうもので一つのコミュニティーをつくっていこうという地域化、山中参考人のお言葉をかりればグローバライゼーションとディセントラライゼーションというところも出てきているように思いました。

 私は、世界的な今後の動きの中で、そういう統合化とともに、やはり地域化というものが必要になってくるんだと思うのですが、そのような中で、これから難しい地球社会の全体としての安全保障をどのように担保していくのかということが非常に重要な問題だと思うのです。

 もう一問お聞かせ願いたいと思っておりますので、そういうこれからの中での世界における安全保障をどのように担保したらよいと山中参考人はお考えか、端的にお聞かせ願えますでしょうか。

山中参考人 基本的には、国家というのは自分の国の国民と国土を自分の手で守るというのが基本ですから、それは基本にありますけれども、北朝鮮が不安定であれば、北東アジア、アジア全体が不安定であるという今の時代を考えますと、先ほど西元参考人がおっしゃいましたように、国連は一定の役割を果たす、しかし、それは調整能力ですから、それぞれの地域が、経済と安全保障が密接に結びついている現在においては、それぞれの地域内での安全保障の能力を高めるという努力をしなければならないというふうに思っています。

 アジアは、非常に複雑な、政治体制も違いますし、経済状況の速度も違いますけれども、やはり日本は、アジアの一員として、アジアの中でどのように安全保障を担保していくかということを考えます。この全体と日本自体が、私たちが石油を依存している中東からのタンカーをマラッカ海峡あたりでハイジャックされたときに、日本が自分の国のタンカーを守れない、こういうような状況でこれからやっていけるのかどうかという視点も含めて、もっと総合的に、自衛隊も含めた日本の安全保障、それから危機管理、これを徹底的にしていく必要があるというふうに思っています。

 ですから、予防国家の発想、つまり、何が起こるかわからないことに備える予防注射のような、予防の段階でのさまざまな施策を講じる。スイスのようなハリネズミ国家もあるでしょう。スウェーデンのような、専守防衛でありながらPKOにはどんどん出している国もあります。日本は何を選択するか、まさにポリティカルウイル、国会、立法府の意思が問われているというふうに思います。

西田委員 時間が参りましたので終わりますが、四人の参考人のすべての皆さん方から、自衛隊に対します、自衛隊の隊員に対します大変なお心遣いのお言葉をちょうだいいたしました。

 私どもは、この国会承認を一刻も早く、猶予なく行うことそのものが自衛隊の皆さんに対する最大の支援である、そして自衛隊の皆さんに対する勇気づけになると考えております。そのような御発言を半数以上の参考人の方からいただきましたことを、そしてすべての参考人の皆様方に御礼を申し上げて、私の質問を終わりたいと存じます。

斉藤委員長 次に、藤田幸久君。

藤田(幸)委員 四人の参考人の皆さん、お忙しい中、ありがとうございます。

 まず、西元参考人にお伺いをさせていただきたいと思います。

 西元参考人におかれましては、たしか玉沢防衛庁長官の時代だろうと思っておりますが、陸幕長のときに、日本の民間人道援助団体難民を助ける会の人道支援物資を自衛隊機で運搬するという最初の決断をしていただいたと思っております。

 それから、退官をされた後でございますが、私も参りましたが、カンボジアの選挙監視活動において、みずからボランティアとして参加されて、隊長をされた。それから、やはり私も取り組みました対人地雷禁止条約におきましては、制服の経験を生かして、代替兵器という方法があるという観点についても御指摘をいただいたという点で、制服の出身の方としては最も人道援助等についての理解と経験のある方である、そういった評価の中から、きょうは大変いい御意見を述べていただいたことに敬意と感謝を申し上げたいと思っております。

 その観点から、いわゆる自衛隊の人的貢献ということと、それからNGOあるいは民間団体の人道復興支援ということの比較優位性、比較についてまず御質問をさせていただきたいと思っております。

 西元参考人御承知かと思いますが、オスロ・ガイドラインというものがございます。これは、軍事政策の立案者の専門家と人道援助の専門家が会した会議でございまして、人道援助活動に関しては、軍や、さらに広げて民間防衛組織よりも、民間組織、NGO組織の方が人道援助に関して言えば比較優位があるんだ、そして、軍がかかわることは本当に最後の最後の手段であるということを軍事面での専門家が認定しておられるということがございますが、まず、そのことについての見解を簡単に述べていただければ幸いに思います。

西元参考人 お答え申し上げます。

 確かに、今おっしゃったとおり、NGOやシビルディフェンスの組織がそのような人道支援に当たるということが完全な形で可能である場合には、私は先生のおっしゃるとおりだというぐあいに考えております。

 しかしながら、治安の状況あるいはインフラの状況その他の状況から、その活動が本当に円滑にできるかどうかという条件もあわせて考慮しなければならない、私は常々そのように考えております。

 したがって、先ほど山中先生もおっしゃいましたとおりに、政府機関、非政府機関、民間、これらすべての力を結集して、日本の顔が見える形での人道支援というものが最も望ましい、私は個人的にそのように考えております。

 今回イラクへ派遣される自衛隊は、これまで最もこの状態に近かったのはルワンダ難民救援だったと思います。このときに私どもは、確かにNGOの方々からは来てほしくないというような話を聞かないわけではありませんでした。しかしながら、行って活動開始している間に、ここに玉沢元長官もいらっしゃいますけれども、その垣根は急速に取り払われたという経験を私は持っております。

 したがって、そのようなこと、少なくとも三つの機関が結集して取り組むことが最も必要だということを申し上げておきたいと思います。

藤田(幸)委員 今御指摘の治安とインフラの件、それからルワンダ難民の件でございますが、今回のイラクが違うのは、今回の自衛隊派遣はCPAという占領軍の一員として行くということが、ルワンダの状況と全く異なっているというふうに思っております。

 そして、治安ということに関しましては、これはまさに西元参考人がおっしゃいましたように、自衛隊員の方々の安全を本当に望むという点からしますと、そもそもの戦争がどういう形で始まったかということが非常に重要だろうと思うんです。

 実は、けさのニュースでもやっておりましたが、アメリカのデービッド・ケイ調査団長が大量破壊兵器がなかったと最近証言したことに加えて、国連査察団のブリクス前委員長が、やはりこれは、大量破壊兵器が存在しなかった、アメリカとイギリスによる魔女狩りであったというところまでおっしゃっているわけです。

 ということは、やがてこういった定説というものが国際的に認知をされていった場合に、その大義なき戦争における占領軍の一員として自衛隊が派遣をされるということよりも、先ほど来、西元参考人がおっしゃっていますように、でき得れば、六月以降、国連の監視下において、統治において、自衛隊の方がまさにPKO活動そのものに参加をされることの方が、参考人がおっしゃっているように、誇りを持って、自信を持って、そして本当に活躍できる形で安全に自衛隊が派遣されるということにむしろなるんではないかということを感じるわけでございますが、いかがでしょうか。

西元参考人 私は、先ほども申しましたが、まず第一に申し上げたいのは、今回の派遣される自衛隊はCPAの指揮下で行動するとは私は考えておりません。あくまでも日本国政府から派遣された人道復興支援に当たる組織である、このように考えております。なぜならば、そこでCPAとの間に地位協定を結ぶわけでもなく、また、その指揮下に入るわけでもないからでございます。

 次に、先生のおっしゃいます、国連が、現在確かに、シーア派の直接選挙を求める行動などに対して、調査のために国連がいよいよ乗り出してまいってきておりますが、その国連が本当にイラクの再建、復興に責任を持って取り組むという段階に至るまでは、まだまだ多くの時間が必要だと私は考えております。

 今求められることは、ことしの六月三十日までにいかにCPAからイラクの統治評議会へ権限をスムーズに移譲することができるか、ここが一つの大きなキーであります。したがって、それを実現させるために、ぜひともこの活動に取り組むというのが、私は今回の本旨だと思います。

 また、イラク戦争の大義については、私にも一つの考え方がございますが、これは時間の都合上、省略させていただきます。失礼いたしました。

藤田(幸)委員 大義あるいは今回のNGOの比較優位性については、かつて同僚であったんでしょうか、小池元防衛庁の局長さんもおっしゃっておられますが、そのことについて簡単にお触れいただきたいことと、西元参考人が先ほど、自衛隊の方々が本当に安心して行っていただくためには政府が全責任を負うことを明言というふうにおっしゃっておられますが、恐らく自衛隊の皆さんからとってみますと、まだ小泉総理が全面的な明言をしていないととっていらっしゃると思っておりますが、いかがでしょうか。

西元参考人 まず最初の御質問でございます、NGOと政府組織の比較優位性というところからお答え申し上げたいと思います。

 私も現在NGOの一人でございますが、そのNGOの最も優位な点は、先ほども熊岡先生がおっしゃいましたとおりに、現地の人々に本当に密着した、要するにかゆいところに手が届くような支援、これはもう明らかにNGOの方々がすぐれていると思います。また、それが、自衛隊を派遣することが憲法上差しさわりがあると言われております紛争の真っただ中においても、こういう方々は人道支援に当たることができるということについては、これもまたそのとおりではないかと思います。

 ただし、その地域あるいは規模、これは限定されざるを得ないのではないか、このように私は自分の経験から考えております。第一の御質問に対しては以上でございます。(藤田(幸)委員「小泉総理は明言したかと」と呼ぶ)

 そのことについては、私は、小泉総理は、北海道千歳で訓練を実施していた部隊に対して、昨年、防衛庁長官にメッセージを託され、そのメッセージは、先崎陸上幕僚長によって、派遣を予定され訓練を行っている部隊に届いたというぐあいに理解しておりますが、そのメッセージの中にはそのように読み取れるものがはっきりとあらわれているというぐあいに考えておりますし、また石破防衛庁長官も、そのことについては、ROEに従う限り我々が責任を負うということを明言していらっしゃるというぐあいに理解しております。

藤田(幸)委員 熊岡参考人にお伺いしたいと思います。

 いわゆる、CPAに入らない、あるいは独自の活動をするということがむしろ安全性を高めるというお話がございました。一方で、先ほど西元参考人の方から、人的支援の重要性について、カンボジアにおける中田厚仁さん、高田警視、あるいは最近のアフガニスタン等における被害者の名前が出てまいりましたが、西元参考人がおっしゃった方々は、これは全部軍人じゃございません、外交官も含めて。

 したがって、私は、NGOがCPAの一員として行かない形の人道援助活動を高めることの方がむしろ文民の犠牲を減らすのではないかという認識を持って先ほどの事例を聞いておりましたが、そのことについて熊岡参考人からコメントいただければ幸いです。

熊岡参考人 お答えします。

 先ほどの意見陳述で申し上げましたけれども、私たちJVCだけではなくて、大きな国際NGO、OXFAM、アメリカのケア、フランスの国境なき医師団、赤十字なども同じ見解ですけれども、占領軍行政に近い、あるいは占領軍行政の中で働けばそれだけ危険が高まるというふうに思っていますので、先ほどのCPA指令四十五項のことでも申し上げましたけれども、そこと明確に距離をとるということで自分たちを守ろうとしています。

 以上です。

藤田(幸)委員 熊岡参考人に引き続きお伺いしたいと思っております。

 今、自衛隊の方で給水あるいは浄水活動が予定されておりますけれども、それに対して、さまざまなNGOが既に、フランスのNGOを含めて給水、浄水活動を行っている。

 そうしますと、例えば現在の段階で五千億円の予算規模があるわけですが、多分NGOの方々の予算規模というのは百分の一か千分の一か、もっと少ないと思っております。仮に数千億円の予算が、国連あるいは国際機関経由でなくて、一部はジャパン・プラットフォーム等を通して直接日本のNGOの方々に回っておりますけれども、仮に数千億円規模の直接的な、日本政府から、日本あるいは国際NGOを含めて直接資金援助等、あるいは後方支援体制等ができれば、さまざまな形での人道支援が現段階の治安状況においても十分皆さんでやっていけるのではないかと思いますけれども、そういう予算措置が可能であったならば、大体どんなことができそうか。あるいは、具体的に、皆さん方の自己による治安維持活動も含めていろいろな可能性があるのではないかと思いますが、そういった可能性についてコメントいただければ幸いです。

熊岡参考人 お答えします。

 国際NGOはさまざまあります。大きいところでは、先ほど申し上げたようなところが現在イラクでも活動しておりまして、具体的に言うと、フランスだとACTEDという団体が、これは欧米の規模でいうと中小のレベルなんですけれども、サマワ、バグダッドなどで給水の活動をしています。それぞれ、七千万円から一億円ぐらいの単位で活動しています。

 それからドイツのAPN、これは技術者の集まりなんですけれども、これは主にバグダッド北のサドルシティー、ハイタリクという地域で浄水、給水の活動をしています。この辺も、費用単位でいうと一億円かそのくらいです。

 その他、OXFAMが南部とバグダッド、それからケアも活動しているということで、いきなり数千億円というのはかなり飛躍したというか大きい額だと思いますので、国連とかそういう大きい組織でということになると思いますけれども、国連と連携しながら、あるいは独自にということで、NGOで現在既に数十億円、二十億円、三十億円以上の規模で、国際NGO、先ほど申し上げたように百十二あるんですけれども、活動しているということで使われています。

 確かに安全、治安の問題がすごく大事なので、これをどうチェックしていくかというのは難しいところなんですけれども、希望的には二つあって、先ほどの、占領軍あるいは占領軍行政から距離を置いてという意味では、より中立的な機構のもとで復興人道支援が確立されるということが一点。それから二点目は、先ほど、九月以降、イラクの一般治安に関しては改善されたと申し上げたんですけれども、イラク警察が力を強めていく、大きく言えばイラク行政全体が力をつけていくというプロセスなんですけれども、それにおいて、イラク人一般も我々外国人の人道支援の活動者の安全も守れると思います。この二つの条件が重なれば、NGO、あるいは国連とNGOの協力を入れればもっとになりますけれども、百億円のオーダーで、例えば水をきれいにする、それから給水する。

 一つ申し上げたいのは、イラクは、一般の途上国と違いまして、先進工業国もしくは中進国以上のレベルになっておりますので、いわゆる地方で仮に井戸を掘るなどということよりは、既にでき上がった上水、下水の仕組みをかなり本格的に直す、メンテナンスすることも求められておると思いますね。この場合にはかなりの額のオーダーが必要になってくると思います。特にバグダッド、首都、人口五百万以上と言われていますけれども、ここの水、非常に困って、どぶの水を飲んでいる人々もいるわけなんです。これを直すには、まさに五十億円から百億円ぐらいのオーダーのものが、国連、場合によっては日本のJICA、政府系機関ですけれども、NGOの協力によってできるのではないかというふうに考えます。

 ほかに、基礎教育、基礎福祉等々も求められている人道支援の分野だというふうに思います。

 以上です。

藤田(幸)委員 山中参考人にお聞きしたいと思います。

 先ほど参考人のお話の中で、基本的に治安というのはむしろ英米の責任であって、その後NGO等が参画すべきではないかというお話でございましたが、例えばデービッド・ケイさん、あるいはブリクス前委員長がおっしゃっているような説がこれから国際的な評価を得ていった場合に、同じ人道復興支援の意味が変わってくると思うんです。

 つまり、いろいろなテロ国家であって、ならず者国家であって、サダム・フセインという大変残虐な指導者がいたので、あるいは大量破壊兵器があったので攻撃をしたということであるならば、いわば悪を追い出した後の人道復興援助になるわけですが、もしそうではなくて、いわれのないとがでイラクが攻撃をされて、いわれのないとがで一般市民が巻き添えになったとしますと、いわゆる占領軍あるいは勝利者に加わって人道復興支援をするのではなくて、むしろ、加担をした加害者の立場で人道復興支援を行うという形にならざるを得ないと思うんです。

 であるならば、同じ自衛隊を送るに当たっても、加害者の立場で行く人道援助なのか、そうではない形で、ある意味では一種の償いの気持ちも持ちながら人道復興援助で出かけていくという大変大きな差になってしまうと私は思うんです。この戦争の大義ということと、同じ人道復興援助であってもその背景が著しく異なってしまうと思うんですが、その場合の人道復興援助のあり方の違いについてコメントいただければ幸いです。

山中参考人 イラクの人たちがどうありたいかという現状を見て人道復興支援をするという観点からいけば、その前提の条件がどうあろうと、日本が一体何ができて、イラクの人たちが何を望んでいて、そして何をしなければいけないかというところは、私は変わりないと思っています。

 ただし、この戦争が正当であったかどうかという議論は、今国際社会の中で結論が出ていないのが、それで動いているわけですから、これが多分、今後、二十一世紀における国際社会の、先ほどの質問にもありました、治安も含めて、安全保障、経済活動、そういったものの今までの、いわばチャーチルの言葉ではありませんけれども、民主主義が完全ではないのです、しかし、それよりいい体制がありますかということで、今回、今置かれている状況で、治安というのは、アメリカ、イギリス、これはもう国際協定できちっとやらなければいけない。それがやれているかどうかということは、話は別です。

 ただし、国連の関与というものが本来はあれば、確かに国際平和維持軍あるいは維持部隊として自衛隊が出られたと思いますけれども、国連が、攻撃されたときに引いてしまった。これは私は国連にとっては大変な禍根を残したと思いますけれども、今イラクにいないという状況であれば、そのもとの、そこがいなくなってしまった状況の中で日本が何ができるかということだと思っています。

 ただし、意義づけ、これが正当であったかどうかということは、今後の国際情勢のさまざまな議論の中で検証されていくことだと思いますし、歴史の中で検証されていくことだと思います。そのときに、正当であれば胸を張れるし、失敗したのであれば、それを学んで、次に同じ禍根を残さない。

 しかし、今は、イラクの人のためにできることをやりましょう、その一点で、日本は、みんなが集まって、そして知恵を出し合って努力すべきときにあるというふうに思っています。

藤田(幸)委員 ありがとうございました。

 民主主義という意味が、その手段によって余りに多くの命が失われる場合の民主主義というのは先ほどのチャーチルの言葉に当たらないのではないかということと、そのことと大義ということが関連しなければ、この人道復興支援の意味が根底から崩れてしまうのではないかというコメントを申し上げまして、参考人の方々に御礼を申し上げまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

斉藤委員長 次に、丸谷佳織君。

丸谷委員 公明党の丸谷佳織でございます。

 四人の参考人の皆様、本当に貴重な陳述をいただきまして、どうもありがとうございました。また、皆様の御意見をお伺いしながら、しっかりと国会審議の方に反映をしていかなければいけないなという思いで学ばせていただいたつもりでございますが、まず、西元参考人からお伺いをしたいと思います。

 現在、特措法の手続に従いまして、実施要項について内閣総理大臣の承認を得た上で、そして自衛隊の派遣について承認をするということがこの国会で必要とされている仕事でございますけれども、一つには、国会の承認案件について、陸海空それぞれの部隊が部隊編成によって日本を出国するたびに国会の承認を得るべきだというふうに言う意見が出ているわけでございます。私どもが考えますのは、もしそういうようなことがあるのであれば、例えば、この部隊については承認をするけれどもこの部隊については承認ができないといったようなことが生じまして、総合的に任務あるいは作戦、活動を有益に実施する上において支障が出てくるのではないかというふうにも考えられます。

 部隊がそれぞれ出ていくたびに承認をするということイコール、シビリアンコントロールにはつながらないというふうに思いますけれども、この点についてはいかがお考えになるでしょうか。

西元参考人 お答え申し上げます。

 私は、陸海空それぞれの部隊が出るたびに承認を求めるという必要はないと考えております。

 なぜならば、その行動には共通の目的、目標があるはずでございます。その共通の目的、目標がいいのか悪いのか、したがって、自衛隊を派遣することが是なのか非なのか、これが承認案件の最も中核的な問題だというぐあいに考えております。

丸谷委員 ありがとうございました。

 続きまして、熊岡参考人にお伺いをします。

 本当に、NGOとしまして、現地にも今国際ボランティアセンターのメンバーの方が入って努力をされているということに心から敬意を表させていただきます。

 現場で活動をしていらっしゃいます国際NGOの方、かなり多くの数が入っていらっしゃると思いますけれども、本日、熊岡参考人から陳述をいただきました内容について、例えば今のイラクに必要なものとして、これはCPA等の各国の軍隊ではないんだ、人道復興支援の部分では、それはNGOであったり国際機関というものが担うべきものであって、かえって軍隊がいることで国際NGOの活動も制約をされるから、あえてNGOの活動をするときには軍隊から離れてやらなければいけない、こういったことは各国のNGOのコンセンサスとしてお感じになっていらっしゃる点なんでしょうか。

 と申しますのは、実際に、現在イラクでは四十カ国近い国から軍隊が派遣をされまして、治安維持活動もされています。その数以上、もしかしたら、各国からのNGOというのは現場で参加をされていると思うんですが、その各国から参加をされているNGO、自分の国の軍隊に対して、来るべきではないんだ、イラクに対して治安維持活動をするべきではない、あるいは自分の国の軍隊が来ることによって非常な困難な点を感じていらっしゃるというのが国際NGOの皆さんのコンセンサスとしてお考えになっているのかどうか。これがちょっと私がわからないものですから、お伺いします。

熊岡参考人 お答えします。

 過去二十年、カンボジア難民とかエチオピア、その他ルワンダもありました、旧ユーゴもありました。近々でいうとアフガン、イラクの活動の中で、先ほど申し上げたような代表的なアメリカのケア、フランスの国境なき医師団、それからイギリスのOXFAM、赤十字などが、例えばアメリカのケアが、アメリカ軍が来るべきでないというふうには言っていません、いないと思います。ただし、先ほどの論点に戻るんですけれども、軍隊的なものが人道支援を行うということがあれば、人道支援を本来行う機関が危なくなるということはアメリカの団体も言っております。

 それからあとは、では、例えばイギリスのOXFAM、クリスチャンエイド、アクションエイドがイギリス軍とどのくらい協力しているかということが一つの例なんですけれども、基本的にはありません。ある意味では、お互いにというか、ある程度の意見交換、情報交換の場は少しはあるようですけれども、それも含めて極力少なくするようにしています。特にNGO側はそうしているというふうに聞いています。

 それは先ほど言った論点にかかわるわけなんですけれども、軍隊と協力的な団体というふうに思われた場合には、先ほど言った抵抗組織の活動が強いような、アフガンもそうなんですが、アフガンとかイラクにおいては自分たちも危なくなるという意味で、そこをきっちり分けようというふうにしています。

 以上でよろしいでしょうか。

丸谷委員 ありがとうございました。

 そうしますと、今のを理解させていただきますと、例えば治安維持活動についてはやはり必要な面があるという認識に立って、治安維持活動については国連を中心にした国際社会が担うものであるけれども、人道復興支援についてはNGOあるいは国連といった大きな枠組みの中でやるべきであるということで、例えば我が国としてやるべきことは人道復興支援のみに限るべきだというお考えでよろしいでしょうか。

熊岡参考人 お答えします。

 治安に関しては、特にアフガン、イラクの場合は、その当時の政権を、米軍を中心として、主に米英でしたけれども、いわば完全に、壊滅というか崩壊というか、吹き飛ばしてしまったわけですね。それで権力の空白が生まれてしまった。

 先ほど山中参考人もおっしゃったように、ジュネーブ協定の中に、そういう事態での治安を守る責任は軍隊、占領軍にあるということが一つあると思います。したがって、治安についてはある程度、特にこのような状況、現行の既にあった政権をいわば吹き飛ばしたような場合には、その責任を持つべきだというふうに思います。

 ただ、その場合でも、先ほどと同じ議論ですけれども、アフガンでは、ある程度進んでいます、イラクでも進むべきであると思うんですけれども、その国の人たちの政権に移行するということにおいて最終的に治安が回復されるべきだということになると思います。

 それから、人道支援については、先ほど申し上げたように別の枠組みで可能であれば、つまり、軍隊しかないところで軍隊が人道支援的なことをすることがアフガンのある地域でありましたけれども、それは認めるけれども、極めて例外的なものだということを国際NGOは認識しております。

 以上です。

丸谷委員 ありがとうございました。

 では、山中参考人にお伺いをしますけれども、実際に参考人も今国連大学の方で教鞭をとられているということで、非常に国連からの情報あるいは人脈も多いと存じ上げております。

 その中で、今回、本当に国連が唯一の国際社会の大きな枠組みあるいは利害調整の場として非常に重要な役割を担っていく。国連改革については、各国がそれぞれの意見を持って今改革の方に進んでいる方向ではありますけれども、その中であっても、今まで国連は紛争地域においていろいろな、選挙への介入であるとか治安安定について貢献をしてまいりました。

 ただ、その中にあって、今回のイラクでは、国連が実際にバグダッドに入りながら、いわゆる丸腰で一生懸命イラクのために活動しているんだけれども、赤十字であったり国連が標的にされるテロが起きて、本当に大きな犠牲を出した初めての大きな痛手ではなかったかなと思います。

 その点について、国際的な紛争にこれから国連がかかわっていく上において、国連の限界が見えたとお感じになられるでしょうか。あるいは、補完的な部分でもっと改革をしていかなければいけないということを今回のイラクからの提案としてあったものというふうに考えていけばいいのか。この点について山中参考人のお考えをお願いします。

山中参考人 本日は国連を代表して話しているわけではございませんので、その点は御了解いただきたいと思いますけれども、いろいろな人が、国連は弱体化した、ですから、国連はもうその責任をとれないのではないかという意見を言っています。

 確かに、現状では、国連自身がどういう役割を本当に果たしているかというのは疑問がありますけれども、逆に見れば、国際社会が、先ほど申し上げたような過渡期にあるときに、国連自体を強める、しかも国連の独立性をどう強化していくかというようなことをもっと真剣に考えていかなければ、調停役がいないままで強い者がどんどん動いていってしまうというような社会になっていく危険性を防げるのは国連だと私は思っております。発足当時から見たら百国以上も多くなってきたわけですから、そういう中で、現在の安全保障理事会のあり方がいいのかどうか、戦勝国の五カ国がああいう形でいいのかどうか、日本がまだ敵国条項等、話は随分出ておりますけれども、やはりそういうことも含めて、もう既に第二次世界大戦後の処理の時代は終わって次の国際的な新しい秩序の構築の時期に入ってきていますから、日本が積極的に、これだけ、一九・八%日本は国連の分担金を出していますから、国連改革のシナリオを書くべきだと思います。

 ただし、日本の国に引き戻って考えてみますと、先ほどから申し上げています国際平和協力懇談会の提言の中の基本法というのは、自衛隊の派遣、これは国際平和協力部隊としての派遣のことでございますけれども、必ずしも国連のお墨つきのもとでなければいけないというふうには考えられません。

 それは、今の安全保障理事会の改革が非常に困難だからです。ですから、どこかが拒否権を使ってしまうとそれ以上の決議が出てこない。そういう状況でも、日本が置かれている状況によっては国際的な平和協力をしなければいけないという状況も出てきます。

 それで、先ほど申し上げたように、地域の国際平和協力あるいは地域の安全保障の仕組みを強めていく努力を日本が率先してやっていくということは、平和国家日本の一つのあり方だろうというふうに思っています。

 国連は、その意味で改めて再構築が必要であるけれども、これにかわる機関はないというふうに思っております。

丸谷委員 ありがとうございました。

 では、小沢参考人にお伺いします。

 今回のイラク戦争を受けまして、国連では各決議がそれぞれなされました。きょう、参考人のお話の中でもその説明があって、それぞれの法的な見解を述べていただいたわけですけれども、例えば決議一四八三号は全会一致で可決をされ、また、国連加盟国に対しての積極的な働きかけを促している内容が含まれています。

 今回の我が国の自衛隊の派遣につきましては、この国連の安保理決議一四八三の精神とたがう部分は私はないというふうに解釈をしております。ただし、参考人がおっしゃるように、特措法のもと、自衛隊の派遣というもの自体が憲法違反であるとするのであれば、この問題点は我が国に問題があるのか、それとも国連安保理決議に問題があるとお考えになるのか、この点、お考えをお伺いします。

小沢参考人 国連決議一四八三についてでありますけれども、この決議は、現にアメリカとイギリスによってイラクが占領されているという事実を前提にして、その事実上占領しているアメリカとイギリスに対して、占領するならばちゃんと国際法にのっとって占領しなければいけない、その義務があるということを定めたものでありまして、アメリカとイギリスの武力攻撃について何ら正当性を付与したものではない、これがまず一四八三の基本的な枠組みだろうと思います。

 ですから、そういう枠組みのもとで、各国に対して、それぞれどのような協力をするか、これは協力をするように求めていますけれども、それは各国のそれなりの判断にゆだねられている、こういう枠組みになっているかと思います。

 そうだとすれば、おっしゃられたように、まさに日本が日本国憲法のもとで今回の占領軍に対して協力をすることが妥当なのかどうかということが問題になるわけであります。その点でいえば、先ほど私も最初に意見を述べさせていただきましたように、憲法九条に照らして、まず交戦権の行使に当たるという点、そして実際に自衛隊が出ていけば、そこで行われる活動は憲法九条一項が禁止をしている武力の行使に当たる、だとすれば、これは出ていくべきではない、こういう結論になるということを申し述べさせていただきました。そういうことです。

丸谷委員 どうもありがとうございました。

 本日、四名の参考人の御意見をお伺いしまして、一つには、山中参考人もおっしゃいましたけれども、各段階に応じて、イラクの民主化あるいは自由化、平和と安定に向けて、過渡期ということを踏まえて、各ステージに合わせてそれぞれ主役がかわっていくように、適宜我が国としても支援の対象あるいは主体を変えていくというやり方が一つあるという考え方と、またもう一つ、今イラクに求められているのは、連合軍、すなわちCPAあるいは国際社会の軍隊のような、こういった関与があるので、いまだにイラクの治安は悪く、平和の構築がなされていないという考え方があるのだというふうに感じました。

 そこで、小沢参考人に、これは最後になるかもしれませんが、お伺いをしますが、例えば、参考人のお考えの中で示されましたように、今イラクに必要なこととしては、まず、CPA、連合軍が出国すること、退くこと、そうすることによって、イラク人の手によって自然と自発的にイラクの民主化が行われ、また、統治機構が設立をされ、その中で一つの関与のあり方として、国連であるとかNGO、そういったソフトな面での支援が行われることによって、イラクの安定と平和、そして発展が雇用面も含めて図られるというお考えかというふうに思いますけれども、実際には、先ほど申しましたように、国連であれ赤十字であれターゲットになってしまうようなこのイラクの現状において、実際に今活動しているCPAが、あるいは自衛隊も含めて各国の軍隊、国の組織が退くことによって治安の安定が図られていく、民主化が進んでいく、このようにお考えになられる根拠が何なのかというのがわからないんですけれども、この点についてお考えをお伺いします。

小沢参考人 今の件でありますけれども、CPAがまさに現在占領しているというこの状態をやはり国際社会の総意でもって解決していくこと、これが求められているということでありまして、何か、それが退けば自然発生的にそのような平和な状態がもたらされる、そういうことではないと思います。

 そのためには、当然、CPAを持っているアメリカやイギリスは抵抗するでしょう。そういうことのない、やはり国際社会はちゃんとルールを守ってやっていくんだ、こういうかなり、緊張したといいますか、厳しい議論の末でもってそういう状態がつくり出される、このように考えております。

丸谷委員 では、もう一問質問できそうな時間がありますので、最後に山中先生にお伺いをさせていただきます。

 参考人の陳述の中にもありましたけれども、昨年末、南部の指導者が小泉総理に会いに日本にいらっしゃった際に、メソポタミア湿原の話をされていました。南部の皆さんにとっては、非常に、農業であり漁業の糧であったこの湿原が、実際にはフセイン政権によって世界最大の環境破壊をもたらしたということで、UNEPですとかFAOも今まではこの湿原の回復に向けて努力をしてきたようですけれども、今はそれがストップしている。ぜひこの湿原に向けて、イラク人のためにも、また、雇用が百万人規模でこれは生まれるわけですから、日本に協力をしていただきたい、こういったお話をされてお帰りになりました。

 日本もこれは協力を惜しまないという姿勢を示させていただいているわけですし、自衛隊の力だけではなく、本当にお金も、また人も、そして文化面、環境面でも貢献できる大きな力であります。この点について、最後、御意見をお伺いします。

山中参考人 大変いいプロジェクトと思っております。一つは、世界遺産級の湿原という歴史的なものの復元であること、二つ目は、今御指摘の、雇用の創出を長年にわたって、これは長期的なものですからできるということ、そして、日本の、例えば釧路湿原の回復などの科学技術を生かせるということ。

 ただし、一つ注意していただきたいというか注文をつけたいと思っていますのは、日本とイラン、それから国連機関というだけではなく、一九七〇年代の終わりから、イギリスの亡命イラク科学者とイギリスの科学者がもう復元の計画を立てています。それから、一九九七年には、イギリス外務省の中東専門家の中の水の専門家が本を出しておりまして、その中に湿原について大変詳しく述べております。さらに、バロネス・ニコルソンという、今、貴族院の議員でEUの議員の女性が、もう昨年四月の戦争の最中から、私、カタールの国際会議で同席しましたけれども、その湿原の復元についてEUにも働きかけ、イギリス国内でもずっと働きかけております。

 ですから、ここをいいチャンスとして、日本は、ちょっと言いにくいんですけれども、時々、こつこつとやってきたものをお金に飽かせて日本がわっと入ってきちゃうというふうに国際社会から見られている面もないわけではありませんので、ぜひ、イランも含めて、イギリスも含めて、EUも含めて、そういうマルチの、日本の、イラン、イラクだけではなくて、中東の復興の、自然の回復のシンボルという形で位置づけていただきたいというふうに思います。

丸谷委員 以上で終わります。ありがとうございました。

斉藤委員長 次に、山口富男君。

    〔委員長退席、小野寺委員長代理着席〕

山口(富)委員 日本共産党の山口富男です。

 きょうは、参考人の皆さん、意見の陳述をありがとうございました。

 私は、イラクという、占領が続き戦乱が続いているもとに重火器で装備した自衛隊を出そうというわけですから、これは、二十一世紀の世界と日本の平和と安定にかかわる重大問題だと思います。それだけに、国際法から、また日本国憲法から、その原則や運用の実態から厳しく吟味することが欠かせないというふうに思います。

 まず初めに、小沢参考人にお尋ねしたいんですけれども、先ほどの御意見ですと、今度のアメリカやイギリスによるイラクへの武力行使というものは、国連憲章自体は戦争を違法化しておりますけれども、そういうもとで、国連憲章上もやはり違法な、認められない戦争になるというお話がありました。その中には侵略行為でもあるというお話がありましたが、こういう違法な戦争は、国際社会から見た場合に、侵略の戦争であるという性格づけをすることは可能なんですか。

小沢参考人 純粋に法的な観点から見れば、国連憲章に基づいて、そしてまた、その後、国連が侵略の定義を決議でやったりしておりますので、そういった決議に基づけば、今回のアメリカとイギリスの行為は、これは、国連憲章では禁止をされている違法な武力行使、すなわち侵略に当たるというふうに認定することは可能だと思います。

 ただし、それは、国連憲章で定められている第七章に基づいて、平和に対する脅威としてこれを認定することになるわけですが、まさにこの認定するための場は、国連安全保障理事会です。安全保障理事会の場でその認定が通ればいいわけですけれども、恐らくアメリカとイギリスはそれに対して拒否権を発動しますでしょうから、なかなか難しい。

 ですから、そういう状況であって、客観的には国際法的には違法であるということでありますが、手続として国連安保理の場でもって認定するということがなかなか難しい、こういう問題の性格かなというふうに思っております。

山口(富)委員 そうしますと、国連憲章上、法的に見た場合も手続上もこれは違法な行為だ、違法な戦争であるということははっきりしたと思うんですが、実態論上も、この問題、さまざまな面から指摘されているところです。

 さて、先ほど熊岡参考人からは、イラクの政権が吹き飛ばされたというような話もありましたけれども、小沢参考人にお尋ねしたいんですが、今のイラクの現状について、軍事占領が続いているわけですけれども、これは、国際法上、一体どういう性格の地域があのイラクだというふうに見たらいいんでしょうか。

小沢参考人 軍事占領は、国際法的に見れば、なお戦争が継続している状態、こういうふうになろうかと思います。

 法的な意味での戦争の終結というのは平和条約の締結をもってなされるということでありまして、日本もサンフランシスコ平和条約によって、法的な意味での戦争が最終的にあそこで終結したということになりますから、現在のアメリカとイギリスの当局による占領というのは、これは、法的な意味ではなお戦争の状態が続いているということであるというふうに言えます。

 実際にそこでもって戦闘が行われているか否かという問題とは別次元の問題として、法的にはそういうことだということです。

山口(富)委員 小沢参考人、もう一点それに関連してなんですが、戦争状態が続いているという認定なんですけれども、となりますと、軍事占領というのは武力行使の一形態というふうに考えてよろしいんですか。

小沢参考人 伝統的な国際法によれば、実際にドンパチをして、武力行使をして実際にその相手国を占領するというのは、これは一連の行為でありまして、まさに、戦争をする権利という意味での交戦権、それとその後に引き続く占領というのは、それもまた含めて交戦権だというふうにされている。これは伝統的国際法に基づけばということでありますけれども、そういうものとして理解されておりますから、おっしゃるとおりだということになります。

山口(富)委員 続きまして、熊岡参考人にお尋ねしたいんですが、先ほどの陳述で、私、ちょっと一点確認させていただきたいんです。

 いただきましたお話の要綱では、一ページ目の(三)の一番下なんですが、NGOも軍と距離をとることによって安全を確保するという際に、現地の権力の傘下に入れという話があったということだったんですが、その点、もう少し詳しくお話ししていただけませんか。

熊岡参考人 お答えをいたします。

 CPAが、いわば占領軍行政として、現在イラクで活動しているNGOの登録をするというふうに言ってきました。これは、先ほど言った四十五です。

 実際どうなるかわからないんですけれども、もし登録をしないと、例えば私たちが、ヨルダンとか、イラクから見て外国の国から医薬品その他人道援助に必要な物資を運ぶときに無税にするというような扱いをできないよというような言い方とつながっています。すぐできるかどうかまだわかりませんけれども。今のところでは、いわば正統なるイラク政権がない状態なので、我々、国境を、人道援助の物資を持って税金を払わないで済む形で入っていますけれども、これがどうなるのか。

 それで、NGOの、すべてではないかもしれませんけれども大半の、それからNCCIというイラクにおけるNGO調整委員会の要望としては、その登録に関して、いずれ必要であろうと。つまり、税金を払う払わないということもありますし、きちんとした援助の物資が来るということの確認にもなると思うので、登録というような流れはいずれあるであろうが、その場合、イラクの、仮に暫定臨時政府のようなものであっても、あとは、今は過渡的にイラクも、教育省、それから保健省等が一応存在しているので、そういう傘下で登録する仕組みにしてほしいということで、そういう要望のもとに、CPA及び保健省、もしくはイラクの行政機関と交渉中の状態です。

 以上です。

山口(富)委員 四十五というのは、ブレマー書簡なんかに見られるCPAの命令、あれは十七号ですけれども、その命令四十五号という意味なんですか。

熊岡参考人 はい、そのように理解しております。

山口(富)委員 ありがとうございました。

 それで、NGOの皆さんが人道支援をされる場合に、原則としまして公平性、中立性というのを大変強調されます。そして、きょうは、軍事と一線を画すことが大事だというお話もありました。

 それで、これは国際的に非常に強いルールになっているといいますか、人道団体においては共通の認識になっているというふうに考えていいのか、あるいは、それを支える何らかの約束事ですとか体系があるのか、その点、お聞かせください。

熊岡参考人 お答え申し上げます。

 今おっしゃった公平性、中立性、それから山中参考人もおっしゃったんですけれども、現地の文化を尊重しという部分と、軍と一線を画すというようなことは、長い、第二次大戦以降でも四十年、五十年にわたる紛争地などでの人道支援の経験の中からある程度確立され、これは二つ、一つはルワンダの活動の後、一部NGOの行動に問題があったということも含めて、簡単に言えば中立性とか公平性を欠いた部分があったということで、赤十字国際委員会、OXFAM、ケア、国境なき医師団等々、日本のNGOも一部参加して、それから赤十字・赤新月社系も参加して、コード・オブ・コンダクト、つまり行動基準というのをつくりました。

 それと相前後して、スフィアプログラムというんでしょうか、国際協力のNGOが、これは長期の地域開発と紛争地での人道援助、緊急救援に分かれると思いますけれども、カテゴリー的には同じような項目を共通のものとして認識しようということで確立されてきています。

 以上です。

山口(富)委員 引き続き熊岡参考人に。

 その中には、昨年三月に国連が人道支援のガイドラインを出しておりますけれども、六月に改定されたようですが、この立場というのも、今説明を受けたそういう公平性、中立性を確保しなさいと。それから、軍が存在する場合の注意点も書かれているようですが、そういう国際的に確立された人道支援上のルールとみなしてよろしいんでしょうか。

熊岡参考人 昨年の三月、これらNGOの意見も反映しながら、UNOCHA、UNの人道援助事務所というものがあるんですけれども、ガイドラインを発表しております。

 基本理念として、人道性、これは当然のことですね、人間の苦しみに対応して、特に弱い立場の人々、子供、女性、老人に配慮する。と同時に、援助であるがゆえに、これらの人々の尊厳と人権を尊重せよというのが一点です。

 あと、中立性。当然ですけれども、政治的、宗教的、思想的な対立の中でまさに活動することであればこそ、敵対行為にかかわったり、そのように見えるような偏りをしてはいけない、あるいは一方の側を支援してはならないということもあります。

 公平性においては、民族、ジェンダー等々さまざまな背景が人間にはあるわけですけれども、そこにおいて差別したりしてはならないというような三つを一つの理念として、ガイドラインとして発表しております。

 これは、多分、法的拘束力はないかもしれませんけれども、国際NGO及び国連の人道機関、関連機関、それから各国政府機関も守ろうというふうに努力しているガイドラインだと理解しております。

山口(富)委員 もう一点、続けて、関連した質問なんですが、先ほど小沢参考人の方から、イラクというのは戦争の継続した状態の地域だというお話がありました。そのもとで国連が、今は国際人道法と呼ぶようですが、その法規をきちんと遵守しなさいということも決議で言っております。

 となりますと、国際人道法上、占領国がやるべき復興人道の支援があります。これは、武力行使によってインフラを含めて破壊しちゃっていますから、それを立て直すというのは当然の仕事なんですね。そういう、占領国がやらなきゃいけない復興の仕事と、それから、皆さん方がNGOとしてやられている公平性、中立性を保つ面からの人道復興の支援の仕事と、これはきちんと区分けをした方がよろしいんですね。その点、お尋ねしたいと思います。

    〔小野寺委員長代理退席、委員長着席〕

熊岡参考人 これは、国際NGOも含む国際社会で非常に難しい議論になっています。つまり、一つは、当然、壊した軍なり国が直すべきだという議論があります。これはこれで正当性があると思います。あと、亡くなった人命その他けがなどに対して補償せよという要求もアフガン、イラクなどに関して出ております。

 他方、いわば攻めていった国あるいはその軍隊が、行政部分も含め、それから援助の部分も含め、いつまでもやるのは好ましくない。であるがゆえに、治安が悪くなるというか、なかなか改善が認められないという点で、どこかの時点でこれを切り離す分かれ道、分け目をつくるのが多分非常に難しいと思うんですけれども、極力早く、これは先ほどの論点に戻りますけれども、より中立的な存在に復興人道支援をゆだねよというのがあって、これは一般論できれいな基準があって、アフガンはこう、イラクはこうとなかなかきれいに当てはめられないと思うんですけれども、そのような論議の中でいわば綱引きが続いている状態です。

 以上です。

山口(富)委員 そうしますと、皆さん方の立場からしては、やはり軍事と一線を画して、公平性、中立性は保ちたいというお立場なんですね。わかりました。ありがとうございます。

 小沢参考人に続けて質問したいんですが、先ほど、イラクの状態について、戦争の継続の状態だというお話がありました。

 それで、そこに派遣される自衛隊の国際法上の地位なんですけれども、これは当然、国連が求めるように、国際人道法、かつての戦時国際法に、それを守るという、そのもとに入るわけですね。そのことを確認したいと思います。

小沢参考人 はい、入ると思います。ですから、CPAの指令十七号というのはまさにそのことを示している。あるいは、クウェートとの間で、今回の参考人に呼ばれるに当たりまして資料をいただきましたけれども、取り交わされた協定も、これもまたそういった、クウェートに出ていく自衛隊は国際法上の規律を受ける、そういうことに基づいてなされているんだというふうに理解しております。

山口(富)委員 先ほど小沢参考人の最初の意見陳述の中で、一方でそういう国際法上の特権といいますか保護を受けながら、もう一方で、国際人道法の適用を受けないという政府の幾つかの答弁があるわけです。これは成り立たないというお話がありましたが、国際的に見て、本当にこれはどういう面で通用しない議論なのか、もう少しお話しいただきたいと思います。

小沢参考人 これも資料を拝見いたしましたところ、このように政府の方は答弁しているようであります。交戦権は交戦国に発生するものであって、日本は交戦国ではないから交戦権を持つ法理論上の根拠がない、このような政府の見解のようでありますけれども、しかし、この考え方は、戦争それ自体が違法なものではなかった伝統的国際法の考えを引きずっているというふうに理解します。

 国連憲章は、御承知のように、武力行使禁止の原則を定めております。これによって、国連加盟国は、伝統的な交戦権、すなわち正当な戦争をやり、そしてその正当な戦争の結果として正当な占領をやる、こういう伝統的な交戦権というのはもはや持っていない、こういうことになります。

 これは日本だけではなくて、アメリカもイギリスも、国際法上、正当とみなされる交戦権はもはや今は持っていない、こういうことになりまして、ですから、日本だけが持っていないのではなくて、すべての国が持っていないということになります。

 そうなってきますと、交戦国の正当な権利としての交戦権が消滅した後に今何が残っているのかといいますと、それは、他国を不法に占領してはならない、こういう国際的なルールのみが残っているというふうになりますから、それを日本もまた守らなければならないのはごく当然のことである。出ていく自衛隊員が軍事要員としての地位を得るということは、占領行為をやるということがはっきりしていますから、それは許されない、このようになろうかというふうに思います。

山口(富)委員 そうしますと、憲法九条が禁じている、国の交戦権は認めていないわけですけれども、それはイラクにおける占領に、先ほどのお話ですと武力行使の一形態ということになりますから、それにかかわることになるのでこれは憲法上許されないという結論になると思うんですが、もう一点確認しておきたいんです。

 先ほど、武力行使について、日本政府の立場は狭いとらえ方であるというふうにお話がありました。現実にイラクに重火器で装備した軍事要員を送った場合に、国際社会は当然それを軍隊として認知して、戦時の国際法も含めまして、守れ、そういう立場で見てくるわけですね。となりますと、例えば、現地で旧政権下の勢力との事実上の戦闘等が起こった場合に、これは、武器の使用にとどまらず武力行使になるんじゃないでしょうか。その点、お願いいたします、小沢参考人。

小沢参考人 現地で組織的な戦闘行為を行うということは、もう紛れもなく武力行使に当たります。ですから、任務の遂行のために持っていった装備を使うというのは、私は、個人としての正当防衛権の行使ではなくて、まさに組織としての、組織体としての武器の使用になりますから、これは武力行使に当たるというふうに思います。

 それと、先ほど言いました政府の考え方は狭いというのは、これは、兵たん活動なんかも含めて私は武力の行使というふうに考えております。政府の考え方はまさに戦闘行為という狭い形でとらえていますけれども、しかし、そもそも憲法が禁じている武力の行使というのは、後方の兵たん活動も含む一切の軍事的な活動というふうに考えている、そういうことであります。

 以上であります。

山口(富)委員 ありがとうございました。

斉藤委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社会民主党の照屋寛徳でございます。

 きょうは、参考人の皆さんに大変貴重な御意見を拝聴させていただきまして、心から感謝を申し上げたいと思います。

 実は、私は、一九四五年の七月にサイパン島のアメリカ軍の捕虜収容所で生まれました。捕虜が産んだ捕虜であります。だから、当時、国際法上、捕虜であった両親の間に生まれた捕虜でございまして、その後、翌年に、基地の島沖縄に引き揚げました。私は、二十七年間、いわば沖縄戦が終わって後のアメリカの軍事支配、アメリカの統治下、日本の主権が及ばない、そういう中で生きてまいりました。そういう経験なども踏まえて、何点かお聞かせをいただきたいと思います。

 最初に、熊岡参考人にお尋ねをいたします。

 私、熊岡さんの神奈川新聞のことし一月九日のインタビュー記事、それから「世界」にお書きになった論文などを読ませていただきました。

 私の友人なども、沖縄で市民運動をやっている人たちが、沖縄の人たちの、イラクの民衆というか子供たちへの思いを伝えるということで、ボランティアで医薬品を確保してイラクの病院や施設に届けたというそのお手伝いを私もさせていただいたことがございます。長年にわたって熊岡さんが、NGOの一員として、本当に身の危険を顧みず活動をしてこられたことに、私は心から敬意を表したいというふうに思っております。

 そこで、「世界」に書かれた論文の結びの中でこのようなことをおっしゃっているんですね。三月十九日以前に戻すことが不可能な状態の中で、米国に対しては、早く撤退してほしいという思いと、ここまで壊した責任をとってほしいという、全く相反する考えと感情が錯綜する。それでも中長期的には、イラク人による政権実現への道程を一刻も早く明らかにすべきである。二に、復興人道支援の中心を、米軍(占領軍)から明確に切り離して、積極的に、国連など、より中立的な機関に移していく。理想的な答えが直ちにつくれない中で、現実にはこの二点を求めていくしかない、こういうふうなことを書いておられるわけであります。

 今、人道復興支援の名のもとに、自衛隊がイラクへ派遣をされました。私は、大変過酷な米軍支配下のもとに生きてきた経験に照らして、熊岡さんがおっしゃることはとてもよくわかるんです。しかしながら、今は、この復興人道支援、自己完結型の組織である自衛隊でないとだめなんだ、こういうふうなことを政府はしきりに言っておるわけであります。

 熊岡さん、国連など、より中立的な機関に復興人道支援の中心を移していく、その手だてとして、日本は何ができるんでしょうか。熊岡さんの体験を通して、具体的な提言等をお聞かせいただければありがたいと思っています。

熊岡参考人 ほかの参考人の方もおっしゃいましたように、一四八三ですか、国連の安保理の決議があって、少なくとも昨年の三、四月の事態よりは、米国側とある程度意見の違うドイツ、フランス側、それから、広く言えば国連側が妥協ポイントを見つけようとして動いているという時期が、昨年の九月、十月から来ていると思います。

 この一四八三の決議が出た後、十月ですか、スペインのマドリッドでイラク復興支援国会議というのがありまして、私、NGOの参加者として出席することができました。その時点で目撃したことは、ある程度動き出したんですけれども、まだまだヨーロッパ、特にドイツ、フランスなどを中心にして引いているなという印象を持ち、ドイツなどはイラク警察を育成するというか支援するということで復興の中にもちろんかかわっていますが、国連加盟国百九十ぐらいある中で軍隊的なものを送っているのは三十幾つで、ほかは送っていないということにもあらわれています。それから国連も、八月十九日のショックが大きかったこともあって引いていたものが、徐々に戻ろうとしている状態だと思います。

 そこで、日本政府として、日本の社会として、ぜひこの動きを実現するように、いい意味で、米英側とそれに意見の遠いグループの間に入り、それから、何度も申し上げているような意味でのイラク人政権への計画といいますかステップは一部確立しつつあるようですけれども、それを促進する。それから、治安、安全という意味では、これはイラク人の、まずもってイラクの人々の安全でありますけれども、イラクの警察などを強化するような形で協力できるのではないかなというふうに思います。

 ということで、日本政府においては、より占領軍行政に加担しているというふうに見られるよりは、より中立的に動くことによって、物すごく中東諸国の日本に対する感情は一般的にはこれまでよかったので、それも活用する中で、より中立的な動きを持つ中で、亀裂の入った国際社会をまとめる、あるいは国連の復帰を図れるような方向で努力してもらえればというふうに希望しております。

 以上です。

照屋委員 熊岡参考人にお伺いいたしますが、陸上自衛隊本隊が派遣をされるサマワを含めて、イラクは、部族社会というんでしょうか、さまざまな、そして数多くの部族が存在をする、こういうふうに言われておるわけであります。

 復興人道支援に当たって熊岡さんが先ほど述べておられた意見の中で、軍隊的なものでない組織による、地域社会、地域社会の人々に溶け込んでいくことが大事だというふうなこともおっしゃっておりました。同時に、地元社会の人々の雇用や収入や経済、それにつながるような実のある復興人道支援、これを追求すべきだというふうなこともおっしゃっておったわけです。

 この部族社会、私は現地へ行ったことはありませんので、そういうイラクの社会の構成と、軍隊による復興人道支援の障害、それから、そうでないNGOがやった方がいいという、そのかかわりなどについて御意見があればお聞かせいただきたいと思います。

熊岡参考人 イスラム社会以外でも当然なんですけれども、地域社会との協力関係があって、あるいは信頼関係があって初めて支援、援助、協力が成り立つということは、国連の援助関係、それから日本の政府の援助関係、NGO、当然認めているところであり、それがベースであります。

 その中でさらに、イスラム世界、我々でいうとソマリア、パレスチナ、ヨルダン、アフガンもそうですが、イラクで活動してきましたけれども、さらに強い団結力とかを持っている。つまり、日本もかつてそうかもしれませんが、一つの村が全部親戚であったような社会ですね、一つの大きな意味での家族、もしくは幾つかの家族でできている強固な連帯といいますか助け合いの集団だという中で、だから非常に厳しいときにも生き延びていけるという部分もあるんですけれども、そこに入ろうと思ったら、やはり言葉の問題、それから文化、歴史の理解も含めて、調査期間も含めて、今回、調査期間も非常に少なかったと思うんですけれども、人間関係が成り立って初めてできる支援とか援助とか協力だというふうに思います。

 それからもう一つ、自衛隊の場合は、当然チームで動き、コマンダーなりの指示がなければ動けないということで、一人ずつばらばらになって地域社会に入るということはそもそも不可能だと思いますね。だからそういう意味も含めて、復興協力には向かない組織だなというふうに思います。

 外務省の方で、十一月亡くなられた奥克彦さん、十年来の知り合いだったんですけれども、彼がいろいろな調査に行くときに防弾チョッキを着たくないとおっしゃっていた気持ちなど、本当によくわかります。つまり、そういうものを着てしまえば相手との距離ができてしまうので、それがまた、自衛隊だけではありませんけれども、軍隊的組織ではもちろん軍隊の秩序、それから軍隊の服装、装備、装備の中には銃とか、場合によってはカービン銃というかさまざまなものが入ると思いますけれども、それ自体がやはり本来の協力援助をするということの、残念ながら基本的な妨げになるというふうに理解しております。

 以上です。

照屋委員 熊岡参考人にお伺いいたしますが、いよいよ先遣隊それから本隊が派遣をされることになって、私がもう一つ大きな心配を抱いているのは、イラクでも米英軍が使用したと認めた、そのことは国連環境計画の報告書で明確になっているわけでありますが、劣化ウラン弾の放射能汚染による自衛隊の生命身体の安全に対する危険、これに対して、私は、日本政府は配慮が足りないんじゃないかというふうに思っているんです。

 送り出される自衛隊員、自衛隊員の家族というのは大変大きな心配を持っているわけなんですね。防衛庁長官は、いやいや、線量計を携行させるから心配ないんだと。それは、何か一説によりますと、防衛庁は新たに六百個調達をして全員に持たせるんだというふうなことも言っているわけですね。

 イタリア軍はもうイラクで七名が被曝をして引き揚げたということも言われておりますし、イギリス軍は南部のバスラで一・九トンの劣化ウラン弾を使用した、こういうふうなことを言われているわけです。湾岸戦争で百万発の劣化ウラン弾が使われて、アメリカ社会で深刻な湾岸戦争症候群というのが言われたわけですね。

 イラクは、砂あらしのようなもので本当にミクロのような状態の放射能が拡散されて、それが体内に吸収されて体内被曝をするというようなことが大変心配なわけですが、熊岡参考人が現地で目撃をされたり、あるいはまた現地で見聞をした劣化ウラン弾による被害の実態等についてお聞かせをいただければありがたいと思います。

熊岡参考人 お答えします。

 皆さんにお配りしてある「子どもたちのイラク」の、文章としては七ページです、写真を含めたところで言うと八、九のこのラナちゃんという子は、これはあくまでも推測なんですけれども、前回の湾岸戦争で使われた劣化ウラン弾によると思われるもので白血病になった子供です。それでこの子は、昨年一、二月、私たちに絵とかメッセージを提供してくれたんですが、戦争の始まる前後、病院を離れなければいけなくて、実家に帰っている間に亡くなりました。

 我々、白血病の子供たちの治療の手伝いをしているんですけれども、非常に残念ながら、劣化ウラン弾と思われる原因によって生ずる白血病では、発病、言いかえれば、治療の開始から二年以内ぐらいに八割以上の子供が死ぬというような高い死亡率を示しています。

 それで、今の件なんですけれども、これをなかなか科学的に立証するのは難しいとは言われていますけれども、前回の湾岸戦争、それからユーゴにおけるNATO、実際上は米英空軍による空爆の中で使われて、現地の人々、アメリカ及びイギリスの兵隊の側にも被害ができていることで、結構調査を求める要求は出ています。

 今回も、米軍の現地司令官が八月ぐらいの記者会見で、使ったことは認めました。ただ、どこでどのくらいというようなことは言っていません。サマワでジャーナリストが線量計で調べたところ、場所によって非常に危ないところがあるという発言をしています。

 ちなみに、我々も線量計を持ち、それからメンバー、特にある程度長く、一カ月以上いる人間については血液検査などをして、ある種その影響を受けていないか、発病していないかというチェックをしております。

 したがって、ここで、イラク特措法の中に現地の環境の調査あるいは改善ということも書いてあるんですけれども、第一次的に言えば、私にとって言えば、もちろんイラクの人々、それからイラクにいる外国人、つまり今回自衛隊派遣が既になされていますので、の健康、安全のためにもそこはきちんと調査されるべきで、線量計のみならず血液検査などで、それからそれ以前に、できればというより絶対必要だと思うんですけれども、米軍から、どこでどのくらい使ったかという情報を確保するというようなことが必要である、大事であるというふうに思います。

 以上です。

照屋委員 小沢参考人にお伺いをいたします。

 この間、いろいろな議論を通しても、どうもイラクへ派遣される自衛隊と自衛官の国際法上の地位がどうなるかということについては、政府の答弁を聞いてもなかなかうまく理解できないんですね。

 例のCPA命令第十七号がございますね。それと、CPAが昨年十二月十二日に在イラクの上村司日本の臨時代理大使にあてた書簡を見ますと、イラクへ派遣された自衛隊、自衛官は、連合国暫定当局命令、CPA命令十七号に定められているように連合国の要員として処遇されるというふうなことを明確に書いてあるわけですね、書簡に。

 しかしながら、どうも政府は、占領当局であるCPAの指揮下には入らないとか、恐らく、CPAとの関係が明確になると憲法九条の交戦権との関係で問題だなというふうに思っておるんだと思いますが、ぜひ国際法の立場で明確に、イラクに派遣される自衛隊の国際法上の地位はこうなるんだということをずばりお聞かせいただけたらありがたいと思います。

小沢参考人 国際法上の地位は日本が勝手に決めるわけにはいかない事柄でありますから、国際法上の地位は何かというふうに問われれば、今おっしゃいましたようにCPA十七号に基づく地位だということになって、これは明らかに、日本の自衛隊員は軍事要員としてCPAのもとに入るということになろうかと思います。

 ですから、それを日本政府は、そうではない、国際人道法の適用もされないそういう要員だ、日本はそのつもりで出すんだというふうに言うのは、これは日本政府の勝手な解釈だろうと思います。

 ですから、このような、憲法もないがしろにし、そして国際法のルールにものっとらない手前勝手な派遣をすることは、やはりやめるべきだというのが私の意見であります。

 以上です。

照屋委員 西元、山中両参考人にもお伺いしたかったんですが、時間がございません。

 貴重な御意見をいただきまして、四名の参考人の皆さんに感謝を申し上げて、質問を終わります。

斉藤委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人の皆様方に一言ごあいさつを申し上げます。

 参考人の皆様方におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

斉藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、お諮りいたします。

 本件審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官増田好平君、外務省大臣官房長北島信一君及び外務省中東アフリカ局長堂道秀明君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

斉藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

斉藤委員長 これより政府に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。横路孝弘君。

横路委員 イラクへの自衛隊の派遣の承認を求める議論がいよいよ始まるわけですが、大変重要な問題でありますので、十分この委員会でも時間をとって、尽くした議論を、審議をしなければいけない、このように思っております。

 ただいまの本会議で小泉首相は、二十七日の本会議でイラクのサマワ市評議会が存在し機能しているという答弁を撤回いたしました。そして、その撤回の根拠としてオランダ軍とCPAを挙げたわけですが、これは日本政府としては確認されていないんですか。確認されての上なんでしょう。

川口国務大臣 サマワの市の評議会議員が総辞職をしたということにつきまして、これにつきましては、二十五日の定例の治安会議におきまして現地の治安を担当しているオランダ軍から、二十四日、サマワ市評議会は最後の会合を開催して議員は総辞職をした、そういう旨の説明を受けております。それから、CPAのサマワ関係者からも、二十四日、サマワ市評議会は評議会メンバーが総辞職をしたという説明を受けております。

 我が方といたしまして、事態の推移を今後とも注視していきたいというふうに考えております。

横路委員 いや、そのサマワ市評議会の方を含めて、日本政府はそれを確認されたんですかという質問です。

川口国務大臣 情報についてはいろいろなソースからとるということでございまして、一つのソースはCPAであり、もう一つのソースはオランダ軍であるということでございます。その二つからは情報をとって、今申し上げたようなことでございます。

 それからもう一つ、評議会の議員、これは十二名おりますけれども、その人たちが何と言っているかということについて、聞いているかということですが、これについては、ずうっと現地において努力をいたしておりますけれども、巡礼に行った等の理由で現在の時点ではまだ直接に確認を彼らからはしておりませんけれども、基本的にCPA及びオランダ軍がこの地域については責任を持って対応しておりますので、そこから聞いたこと、そこからとった情報ということでお答えをしたということでございます。

横路委員 つまり、日本政府としては確認をしないで、CPAとオランダからの情報に基づいて先ほど総理大臣は答弁を撤回されたということですね。

 つまり、今回、この問題、まず派遣ありきが先にあって、それにあわせて、先遣隊の方も駆け足で、本当に確認すべきところをやっぱり確認していない、極めて不十分な用意なまま行われているということを示していると私は思います。

 そして、その情報、情報の確認、情報の処理、情報の伝達、情報の管理、こういう問題が何も整備されていない、防衛庁そして外務省、官邸の間で。それで総理大臣にああいう虚偽の答弁をさせてしまったということですね。

 これは、官房長官、どこに問題があるんですか。余りにも、ともかくスケジュールを決めて、自衛隊の派遣ありきでやっているからこういうことになっているんじゃないですか。

川口国務大臣 まず先にお答えをさせていただきたいと思いますけれども、確認をしないというふうに今横路先生おっしゃいましたけれども、情報というのは、片方だけからとるということではなくて、数多くのソースからとる、しかも責任のあるソースからとる。

 この問題について言えば、CPAというのはこの地域において今責任を持っているのであり、また、治安についてはオランダ軍が責任を持っている、そこのソースからとった情報であるということで、確認をしていないということではないということでございます。

横路委員 私は、日本政府がサマワ市の評議会そのものに確認をしたんですかということを御質問申し上げたわけですが、そこはどうも確認していないようでございます。

 それで、官房長官、今回のようなことになった情報の処理や伝達、管理、こういうことについて官房長官はどのように考えていますか。

福田国務大臣 事実関係、事実の発生、それから、それを日本において、また政府において政策等に反映するというような過程において時間的なギャップができてしまったということもあるかもしれません。

 基本的に申し上げれば、やはり政府内でもって情報の伝達がこのことに関しては少し時間がかかり過ぎた、こういうふうに思います。その結果、国会にも大変御迷惑をかけたというようには思っております。

 そういうことで、今後、政府が全体一体となって、情報の伝達を含め、政策判断も含め、しっかりとした対応をしてまいりたいというように思っているところでございます。

横路委員 実は、今回の撤回で、私は、補正予算の審議、これもやっぱりやり直しをしなければいけないんじゃないかというように思いますよ。

 市の評議会が機能していないということになりますと、補正予算に計上している千百八十八億のうちのイラクへの直接支援等五百五十九億、これをどのように使うのかという予算委員会での質問に対して、川口外務大臣は、これは統治評議会の各省庁、それと地方政府がこの予算執行の対象であると。地方政府とは何か、それは市などの評議会であるという答弁をされているわけですね。その評議会がないわけですから、じゃ、この予算の執行どうなるんだということで、これも、この川口さんの答弁、しっかりやっぱり訂正しなければいけないわけでしょう。

 ですから、やっぱり予算委員会もちゃんとやり直しする必要が私はあると思いますよ。

川口国務大臣 補正予算の中にございます経済協力予算につきまして、これは、我が国の経済協力の進め方をきちんと守って、透明性、効率性を持って予算の執行をするということは大事であるというふうに考えております。

 それで、イラクの場合でございますけれども、先般申し上げましたように、中央政府、各省庁、例えばパトカーのケースについては内務省というふうに申し上げました。そういったものもございますし、それから、例えば地方について言えば、地方政府というふうに申し上げましたけれども、サマワ市の評議会が今そういう状況であるとしても、ムサンナ県、この県の機能というのは、といいますか、県はちゃんとあるわけでございます。

 それから、イラクの中においては、サマワだけが対象ではございませんで、いろいろな市の評議会、例えばバグダッドでも市の評議会を対象に既にやったことがあるわけでございまして、そういう意味で、対象として、我が国が話をし、この予算を執行していく対象ということはきちんとあるわけでございます。

 逆に申し上げれば、この執行をきちんとした形でやっていくということについては非常に重要であるというふうに考えておりますので、そのきちんとした執行が確保されない、そういう状況であれば、そこを対象にして予算の執行は行わないということでございますし、今の時点で我々が持っている情報からいえば、この補正予算に計上されている千百八十八億円については、きちんと執行していく相手方、これがあるということでもございます。

 以上です。

横路委員 これらの問題は、この後、達増議員や首藤議員の方でもってさらに詰めて議論をしていくことになっていますので、しっかり答えていただきたい、このように思います。

 いずれにしても、初めに派遣ありきで、どうも駆け足でどんどんどんどん進めているという嫌いがいたします。

 そこで一つ、こういうことの真実もマスコミの報道でわかったわけですね。私ども、現地の事情、状況がどうなっているのかということを含めて、マスコミがやはりしっかりとした報道をしてくれるということが大変大事だと思っています。

 防衛庁の長官にお尋ねしますが、一月九日付で、名前は事務次官の名前で、しかし長官みずからがマスコミの編集責任者を集めて、取材についての要請を行っていますよね。その要請について、特に次のことについて報道を自粛してほしいということで、八項目挙げています。

 これをずっと見ますと、一つ一つの議論はしませんけれども、これだとほとんど取材できないということじゃないんですか。全面、取材はお断りという感じの要請じゃないでしょうか。これは、私は撤回すべきだと思いますよ。

石破国務大臣 委員御指摘の八項目というのは、こういうことでございます。

 イラク特措法に基づく自衛隊部隊の派遣に関する取材及び報道に当たっては、次に示す隊員の生命及び安全に関する事項についての報道を自粛するようお願いいたします。まず「部隊、装備品、補給品等の数量」それから「部隊、活動地域の位置」「部隊の将来の活動に関わる情報」「行動基準、部隊の防護手段、警戒態勢に関わる情報」等々でございます。

 それが、取材ができないではないかとおっしゃいますけれども、例えば「部隊、活動地域の位置」、それが本当に全部オープンになっていいのだろうか。あるいは「将来の活動に関わる情報」、それがオープンになって本当にいいのだろうか。「行動基準」というものがオープンになった場合には、その裏をかけば何でもできるということになってしまいます。

 私どもが申し上げておるのは、ここでも冒頭に申し上げましたように、「隊員の生命及び安全に関する事項」ということでございます。累次御答弁申し上げておりますように、私は、この法律の九条に基づきまして、派遣される自衛隊部隊の安全に配慮するという義務を負っております。

 私たちは、すべてのものを報道規制しようとか、委員御指摘のように、何にもわからないとか、そんなことをやろうとしているわけではございません。今申し述べましたように、「部隊の将来の活動に関わる情報」や「活動地域の位置」、それが明らかになることによって部隊の安全が保たれないということは、これは当然あるわけでございます。そういうものについて自粛をお願いしているものであって、これをオープンにできなければ全く取材ができないというような御指摘は、それは当たらないものと考えております。

横路委員 自衛隊を迎えた現地の事情がどうなのかとか、それから自衛隊派遣の要件に一体合致しているのかどうかとか、やはりこれから、非常に重要な要素というのはたくさんあるわけですよ。これを細かく拡大して解釈していけば、幾らでも報道に対するコントロールになるわけで、しかも、記者証を発行するときに、同じようにこの八項目の自粛要請を出して、そして、これに従えない場合には記者の登録を抹消して取材を断りますよということもおやりになったわけですよね。

 私は、官房長官に、つまり、これからの国民保護法制、有事法制とも関連してくるわけなんですけれども、報道の自由というのは、取材をし、分析をし、編集をして報道するということで、民主主義社会の根幹なわけですね。これだけ国民が非常に大きな関心を持っている問題で、しかも、マスコミのサイドも、もちろん自衛隊の皆さんの安全ということは十分考えて報道しますよということは既に表明をしているわけです。そこは、やはりマスコミに私どもはお任せするしかないと思うんですね。考えてやってもらうということで期待をする。こういうことはだめですよということで取材制限をするということになって、結局、現地における取材を控えてもらいたい、ホームページや本庁のブリーフィングで情報を提供したいということになれば、これはもう大本営発表しかないわけですよ。しかも、その上で、中央のさまざまな記者会見の回数は減らすということでございますから、本当に発表したことだけを報道しろと。これはもう報道機関としての使命を果たすことにならないわけなんです。安全については、十分報道機関は配慮するということを再三表明しています。

 私は、官房長官に、これは今度の国民保護法制の中でも、あるいは有事法制の中でも、指定公共機関の、民放を含めたマスコミ関連で、総理大臣の指示権とか実施権との絡みで表現の自由がどうかということがやはり大きな議論になってきたところですね。どうもこれを前例にして、その後さらに厳しくしていく一つの前ぶれではないかというように、私はこの自粛要請を見て考えたわけですが、官房長官からお答えをいただきたい。報道の自由についてどのように考えるか。――いやいや、防衛庁長官はいいんですよ、わかっています。官房長官に、報道の自由、表現の自由についてどう思うかということを伺います。

福田国務大臣 先ほど防衛庁長官からもお答えをしたとおりでございますのですが、今回、報道について注意をしていただきたいということを特に防衛庁からお願いをしたということは、やはり現地において、場合によっては命にかかわる、そういうような場面が多いのではないかということ。特に、実態的に見ましても、サマワに先遣隊が到着するときには、途中においてカーチェースのような取材をしたといったようなことで、かなりひんしゅくを買っている部分もあったわけですね。そういうようなことを見ていますと、やはり節度のある、これは抽象的な言葉でありますけれども、節度のある取材というものは当然あってしかるべきだろうというように思います。

 これは、報道陣の方々の生命のこともあるんですよ。そういうこともやはり自衛隊としては心配をしなければいけないという立場だろうと思います。と同時に、先ほどの防衛庁長官の答弁にありますとおり、自衛隊の隊員の生命ということも大変心配なわけでございますから、そういうことについては、まず極力安全を確保するという、そういう安全確保義務というものも法律にありますので、配慮しながらやっていかなければいけない。やはりそれは、取材の仕方、取材のあり方というものは取材陣にもよく考えていただかなければいけない、そういう面があるんだろうというふうに思っております。(横路委員「報道の自由」と呼ぶ)ですから、報道の自由は侵されるものではありません。しかし、節度のない報道の仕方というのは、おのずからそれは考えなければいけない問題ではなかろうかと思います。

横路委員 私は、今回の、サマワ市評議会、存続しているかどうかということですね、これはマスコミの人の報道がなければわからんかった。情報は、外務省、防衛庁知っているけれども、それでもって答弁通されたかもしれないわけですね。我々、何もわからんかったかもしれない。

 ですから、報道の果たす役割というのは、やはり真実を明らかにするという意味で大変大事なんですよ。それは、やはりこういうことがあったから皆さんの方だって情報の管理について再チェックをして、点検されたわけでしょう。やはり報道の自由の持っている重要性ということを皆さんにまず申し上げておきたい、このように思います。

 それで、今回の自衛隊の派遣でございますけれども、これはもちろん従来のPKOとは全く違うわけですね。時によっては、ロケット砲やミサイルが飛んでくるかもしれないという相手と向かい合わなくてはいけないかもしれない。反撃を余儀なくされて、戦闘に巻き込まれて、交戦状態になることさえ考えられるわけです。したがって、海外で初めての無反動砲などの武器を持っていくことになるわけですね。

 私は、アフガニスタンで、日本はアメリカの戦争というものを、後方支援という形で軍事的な支援活動を行ったわけです。そして今回は、戦争状態が解消されていない、アメリカの占領下にあるイラクへ陸上を含む自衛隊を派遣するわけですね。これはもう明確に他国の戦争を支援するという行動でございまして、日本の国土を防衛する、専守防衛を柱とする自衛隊の基本を私は変えるものだ、このように思っています。

 従来のガイドライン、そして周辺事態法が成立して、日米の軍事協力の関係というのは一気に強化されたわけですけれども、それでもベースは、日本の国土防衛、日本の平和と安全をどう守るのかということがベースになっていたと思うんですね。今回はそういうベースもなくなっています。

 今回のことを前例として、ここで、予算委員会で行われた戦闘地域、非戦闘地域、武力行使、これはもうまさに政府が神学論争をやっているというように思いましたが、あんな定義に従えば、日米同盟を理由にして、アメリカから言われれば世界じゅうアメリカ軍と行動をともにするということになるんじゃないですか。歯どめはどこかにありますか、これは。

石破国務大臣 今回のイラク派遣がPKOやあるいはテロ特と全く一緒である点が一つございます。それは、武力の行使を目的としないという点において、そしてまた、いかなる場面においても武力の行使ということはない、その点はすべて共通をしておるわけでございます。

 ただ、これは、PKOが国連の活動であるということに比べて、ではどうなんだと言われれば、これは国連決議の要請にこたえて派遣をしたものであるという点で、活動の主体がだれであるかという点においては、それは異なるという言い方はできるでありましょう。

 しかし、基本的に武力の行使を目的とするものではないということ、そして、今回イラク特措法というものをつくり、国会の御審議をいただき、国会において限時法としてそれが成立し、それに基づいて派遣をしようとしているということ、そしてまた、今回まさしくこうやって国会の御承認をいただこうとしておること、そのようなことを考えたときに、歯どめというのはまさしく民主主義である、この国会である、それを歯どめと言わずして何と言うか。これがまさしく民主主義の国におけるシビリアンコントロールというものであり、憲法を守るというものにほかならない。歯どめは何かと言われれば、我々、日本国の民主主義であるというふうに申し上げます。

横路委員 一九八七年のイラン・イラク戦争のときに、当時アメリカはイラクを支持していたわけですけれども、ペルシャ湾に機雷が敷設されて、それで障害が出てきたということで、掃海艇を出してもらいたいという話が出てきて、当時、中曽根さんが総理大臣で後藤田さんが官房長官でございますけれども、海上自衛隊の掃海艇かあるいは海上保安庁の巡視艇を出したらどうかということになったときに、官房長官後藤田さんが反対されたんですね。

 その反対した理由は何かというと、自衛隊の基本的な性格というのは、他国からの不法な侵略を防ぐためにのみ存在を許される。したがって、その行動の限界はどこにあるかといえば、国内に限ってのものであって、海外の武力行使というのは断じて認められないと。ペルシャ湾はイラン、イラクの交戦海域で、しかも、アメリカを中心とする連合国に参加してしまう。日本のタンカーを守るといっても、攻撃を受ければ反撃せざるを得ない。軍事紛争に巻き込まれるおそれのある行動は絶対にとってはいけない。日本は正当防衛を主張しても、相手は交戦行為と見る、それが常識ではないかと言って、後藤田官房長官は当時の中曽根総理を説得したんですね。

 これは、当時はイラクへの支援の話なんですけれども、私は、この後藤田さんの議論というのは、今も通用する、説得力ある議論だと思いますが、この後藤田さんの考え方をどう思われますか。

石破国務大臣 今委員御指摘の、イラン・イラク戦争のときにそのような議論が後藤田長官と中曽根総理との間で交わされたということは、承知をいたしております。

 その後、テロ特あるいはイラ特、その前にもPKO法というのがございますけれども、そのどれもその趣旨をきちんと踏まえて、間違っても武力の行使にならないように、そして、神学論争というふうに委員はおっしゃいますけれども、戦闘地域、非戦闘地域、そういうように地域を二分するものではございませんが、そのような概念を設けて、近傍で云々という規定を設けましたのは、まさしく、我々の自衛隊が海外において憲法で禁ずるがところの武力行使を行わないように、後藤田、中曽根両先生の間で交わされた議論がその後の法律にもきちんと生かされているということだと私は認識をいたしております。

横路委員 そこで、ちょっと今話が出ましたからお伺いするんですけれども、戦闘地域であるかどうかというので、予算委員会でも議論されていましたよね。防衛庁長官の答弁を見ていると、相手方がどうなのかということだけが議論の焦点になっているんですね。

 例えば、今戦争があって、そしてアメリカ、イギリス軍の占領下にある。アメリカ、イギリスの占領軍が最近もよく掃討作戦というのを展開していますよね、いろいろな武力を使って。その掃討作戦を展開しているというのは、まさにこれは戦闘行為でしょう。今までの議論、何か相手のことばかり言っていますけれども、戦闘地域というのは何も、今占領している占領軍が行動している地域、戦闘行動を行っている地域というのは戦闘地域になるんじゃないですか。

石破国務大臣 累次御答弁申し上げておりますように、イラクを、ここは戦闘地域である、ここは非戦闘地域であるという評価をすることをこの法律は予定をいたしておりません。我々の自衛隊が行動する地域は非戦闘地域でなければならない。ですから、例えば今回活動いたしますサマワという地域において、委員御指摘のように相手がどうのこうのということも含めまして、この地域においては戦闘地域というような認定ではなく、この地域は非戦闘地域であるというもとにやっておるわけでございます。

 要は、私どもが活動します地域が、戦闘が現に行われておらず、活動の期間を通じて行われると認められない地域であるかどうかということが肝要なのでありまして、我々が活動します地域はその要件を満たした地域でなければならない。仮にそうでなくなった場合の対応をどうするかということも、法に定められておるとおりでございます。

横路委員 国際法というか戦時国際法の中で、戦闘地域という定義はないんですよね。交戦関係のある地域は、戦地というのがあります、リージョン・オブ・ウオー。それから作戦地域というのがあります、ゾーン・オブ・オペレーションズ・オブ・ウオー。それから戦場というのがあります、シアター・オブ・ウオー、これはいわゆるバトルフィールドですね。戦闘地域というのは、いわば作戦上の、戦術的な用語でして、ある地域のここをこの部隊が担当しているというのを戦闘地域と言っているだけの話なんですね。

 ですから、戦時国際法なんかに基づいて解釈すれば、軍隊が現に戦闘している、例えば掃討作戦をやっているという地域は戦闘地域になるんですね。戦闘地域にあらざる地域というのは、戦場でない地域を指すわけです。戦場というのは、戦闘が行われている地域並びに終わった後のまだ不安定な状態というものを指すんですね。

 ですから、どうも特異な概念をつくり上げてやっているわけでして、今イラク全体が、そんな意味では、占領軍がまだ掃討作戦をしなければいけないような状況であるということは、イラク全土がまだやはり戦争状態にある、戦場になっているんだということじゃないんですか。

石破国務大臣 それは、この法律をつくりますときから、では、コンバットゾーンという言葉を使って、ほら戦闘地域じゃないか、あるいはウオーエリアという言葉を使って、戦闘地域じゃないか、いろいろな御議論がございました。

 私が注意しながら答弁を申し上げておりますのは、日本国憲法第九条によって禁ぜられるような行為を我々は行わないということを担保しなければいけないということを申し上げておる。我々、日本国の法律に基づいて出します以上は、日本国憲法九条における国際的な武力紛争、国際紛争を解決する手段としての武力の行使とは何かという定義をきちんと押さえた上で議論をいたしませんと、これは日本の憲法の範囲内においてつくる法律の議論が成り立たないわけでございます。

 何が国際紛争を解決する手段としての武力の行使か、何が戦闘行為であるかということは、何度も答弁を申し上げましたので、繰り返すことはいたしません。

横路委員 フセインが逮捕されてからも、まだ自爆テロだとか、あるいはさまざまな襲撃、攻撃が行われているという状態にありますので、私は、まだまだイラクの状況というのは実質的には戦争継続の状態にある、このように思います。

 もう一つ、さっきの後藤田さんの話なんですけれども、もう一点後藤田さんが中曽根さんに反対した理由というのは、中東政策について意見を言われたわけですね。我が国の中東外交政策の基本を変えるんですかと。今まで日本はフリーハンドでやってきて、ある意味でいうと、イランにもイラクにも物を言うことのできるたった一つの先進国だ、今回の問題でペルシャ湾に自衛隊を派遣して実質的にイラクを応援するということになれば、それは、イランは必ず日本を敵視するようになるよということを後藤田さんは言って中曽根さんを説得したんですね。つまり、二つの理由で彼は当時の自衛隊の派遣に反対をしたわけです。この二つとも、私は今も通用する。

 みんながやはり心配しているのは、この後どういうイラクに政権ができるのか、シーア派、スンニ派、クルド、この三つのグループがうまく連携して政権ができるかどうか。これは、まずくするとすぐ周辺に波及をする、中東大混乱になるわけですね。

 日本は、今回アメリカに従ってこういう形で協力をすることになって、それがこれから後の中東、日本の政策にどういう影響を与えていくのか。やはりアラブのいろいろな声を聞くと、日本は今までは平和的で中立な国だと思っていたけれども、今回はこうなったのかということで、やはり敵視をする人がふえてくるんじゃないかということをみんな心配しています。

 基本的に、このことで今後の中東政策、後藤田さんのこのときの指摘というのを外務大臣はどのように思われますか。それを聞いて私の質問を終わります。

川口国務大臣 結論から申し上げれば、このことによって中東政策が変わるということは一切ない。むしろ、変わらないからこそ、すなわち、中東地域が日本にとって非常に重要であると思うからこそ、イラクにおいてイラクの復興を助けるための人道復興支援を行うことにしているということだと思います。

 また同時に、イランとも我が国はずっと伝統的に友好的な二国間関係を持っておりまして、私は先般イランに行ってまいりましたけれども、その際も、そういうことを先方のハタミ大統領初め皆さん方と確認をしてまいりました。

横路委員 終わります。

斉藤委員長 次に、生方幸夫君。

生方委員 民主党の生方幸夫でございます。

 先日の予算委員会に引き続いて、イラクの問題で質問をさせていただきたいと思います。

 まず冒頭、この間の予算委員会で総理の国連に対する発言というのを私聞いて、やや唖然とした思いがあったんですけれども、まず川口外務大臣に伺いたいんですが、国連は日本の平和にとってどんな役割を果たしているというふうにお思いになりますか。

川口国務大臣 我が国は、日米同盟とともに国際社会との協調ということを非常に大事にして外交をやってきたわけでございます。その国際社会との協調という意味では、国連を初めとするいろいろな国との協調ということで、これは重要であるというふうに認識をいたしております。

 小泉総理の御発言についてお触れになりましたけれども、小泉総理もこのことについてはずうっとおっしゃってきていらっしゃるわけでして、この認識は小泉総理も全く同じであって、この間の御発言は決して国連を軽視したという趣旨でおっしゃったわけではないということですと私は考えます。

 この間の総理の御発言は、まさに国連が……(生方委員「いや、発言じゃなくて、国連の、日本の平和にとってどういう意味を持つんですかとだけ聞いているんです」と呼ぶ)ですから、先ほど申しましたように、日米同盟と並んで、国連を初めとする国際社会との協調というのは非常に大事であるということが我が国の外交政策の基本的な考え方であるということを申し上げたわけです。

生方委員 ちょっとはっきりしていないんですけれども。

 防衛庁長官にも伺います。国連は日本の平和にとってどういう役割を果たしているんですか。

石破国務大臣 それは、例えば我が国の国防の基本方針というものがございます。昭和三十二年につくられました国防の基本方針の中で、国連の活動を支持しというふうにきちんとうたってございます。国連というものを位置づけた上で、そしてまた、国連がきちんと機能するまでは日米安全保障条約がそれを補完するというのが、正確な表現ではないかもしれませんが、国防の基本方針の中に、国連の位置づけ、そしてまた日米同盟の位置づけは記されております。それが四十六年たちました今日も変わっておらないということは、その位置づけをそのまま私どもは堅持をしておるということでございます。

生方委員 では、ちょっと質問を変えますけれども、総理の発言の趣旨は、国連は、言葉はいろいろ違っているかもしれませんけれども、国連と日本は同盟関係を結ぶことはできない、日本とアメリカは同盟関係を結んでいる、国連が何か日本にあったとき助けてくれるわけじゃないから、我々はアメリカと同盟を結んでいるんだというのが総理の発言の趣旨だと思いますね。

 この国連は日本を守ってくれるものではないという総理の認識に対して、川口さんは同じ認識ですか。

川口国務大臣 それはそのとおりだと思います。

 それはどういう意味でかというふうに申し上げますと、国連の重要性ということは、再三申し上げていますように、国際協調をいわばする場として重要なわけですけれども、総理がおっしゃったこと、そして私もそう思いますことは、仮に我が国に対して武力攻撃が発生をした場合には、我が国は同盟国であるアメリカ、ここが日米安保条約に基づいて我が国の防衛についてコミットをしているということであるわけです。他方で、国連憲章第七章に基づく正規の国連軍というのは、いまだに正式に編成をされていないということであるわけでして、そういう意味では、総理がおっしゃったとおりであるというふうに思います。

生方委員 直接的に守るのは、日米同盟があるからアメリカかもしれませんけれども、間接的に、国連があることが日本の平和にとって重要であるという認識は、これは日本国民全員が持っているわけでしょう。この間の総理の発言というのは、そうした日本が国連に対して持っている思いというのを本当に軽くしているんですね。

 発言、読んでみましょうか。いいですか。ここで、一番肝心なところだけ読みますと、日本とアメリカと同盟を結んでおりますが、国連と同盟を結ぶことはできない、今日本の安全を守るためには、日本がいざ侵略された場合、国連が日本を守ってくれるかというと、そうでもない、そういうふうに言っているんですよ。

 だけれども、日本は、国際の平和を保つためには、安保理事会というのが開かれて、そこで決議をされることによって紛争を未然に防止しているわけでしょう。今度の場合だって、イラクに対してアメリカが根拠としたのは、もうさんざん予算委員会で答弁していましたけれども、一四四一というものを根拠にしながらアメリカは攻撃をしたわけでしょう。要するに、国連の枠組みの中で攻撃をしたわけでしょう。アメリカはそう言っているわけでしょう。我々はそうは理解していませんけれども。

 だから、国連が果たしている役割というのは世界の平和にとって極めて重要であるにもかかわらず、総理は、日本を守ってくれるのはアメリカ、日米同盟だけだということを極端に言えば言っているんですよ。(発言する者あり)言っているんですよ。だって、現実に、だけと。

 国連が重要だ、国連と日米同盟と二本立て、まあ、私はアジア外交も非常に重要だと思っていますから、その三極で日本の平和を守っていかなければいけないというふうに思っておりますが、総理の認識は、日米同盟の方に比重がぐっと移っているんですよ。それは聞いていればおわかりじゃないですか。

 国連を我々は重視して、国連中心の外交を展開してきたにもかかわらず、国連を異常に軽視した発言をするというのは、日本のこれまでの外交方針に反するんじゃないか、あるいは逸脱しているんじゃないかというふうに私は考えているんですが、いかがですか。

福田国務大臣 総理はかねがね、日米同盟それから国際協調、国際協調というのは国連を中心にした、こういう意味で考えてもいいと思うんですけれども、この二つは外交の基本だということはもう何度も何度も言っているわけなんですよ。そういう中で、現実的なことで、今攻められたらどうか、こういうふうな話になると、そういう一つの例えとして申し上げたということはあるかもしれませんけれども、基本的に、総理の考えておられることは、国連を無視するとか国連を軽視するとか、そういったような話ではないんですよ。

 日米同盟は大事、また、形を変えて、国連という枠組みも大変大事であるということは、これはいつも言っていることですから、そこで御理解をいただきたいと思っております。

生方委員 少なくとも、私と論議したとき、国連を重視しているような感じにはとても受けませんでした。

 それでは、ちょっと質問を変えますけれども、総理はこのようにもおっしゃっているんです。国連に国際紛争すべてを未然に解決する能力はいまだにありませんというふうに言っているわけです。日本は日米安保条約がございますね。こういう二国間の条約を結んでいない国もたくさんあるわけですよ。国連だけに平和をいわば頼っている国というのはたくさんあるわけですね。そういう国は、国連にいまだにそういう能力がないという場合はどういうふうにすればいいというふうに川口外務大臣はお考えになりますか。

川口国務大臣 国連がずうっと、国連ができて以来、国際の平和と安定、これを守るために懸命に努力をしてきたということは、そのとおりだと思います。そして、その努力というのは、別に国連という組織がというよりも、国連の加盟国であるメンバーが国連にそのように機能してもらいたいと思って努力をしてきたということであると思います。その点については、先ほど官房長官がおっしゃられたように、我が国としても、PKOを初めいろいろな実績を国連は積み上げているわけでして、それは大事だと思いますし、今後とも、国連を国際社会の協調の場という意味で非常に大事にしていきたいというふうに考えております。

 その上で、それぞれの国がどのような政策をもってその国の国防を、あるいは安全保障を守ろうとしているかということについては、これは私は全部について承知をしているわけではありません。多くの国は、例えばNATOですとか、いろいろな形で同盟関係を持っておりますし、そうでない国はそれなりに自分の力で守るための努力もしておりますし、それはそれぞれの国に対する脅威がどのようなものであるかという現実と認識に応じて異なってくるだろうというふうに考えております。

 いずれにしても、国連が今後国際社会で機能していくように努力をしていくということは、非常に重要なことであるというふうに考えております。

生方委員 総理がおっしゃっている中で、日本は国連の安保理事国でもないんです、日本の平和と安全を確保するということは、日本独自で考えなきゃならぬことでありますと。このあれでいうと、安保理事国以外は自分の安全を国連で担保できないということになっちゃうじゃないですか。でないんですからというふうに言っているんですよ。

 だから、この続きでいうと、日本は一国では日本の平和と安全を確保できない、どうやって日本の平和と安全を確保するかということで、アメリカと協力していこう、同盟を結ぼうということで日米安保条約を締結している、では、国連に強力な国連政府ができて、国連軍が創設された場合、今はされていません、だから国連は今は平和を守る力がないんだというふうに言っているわけですよ。

 国連安保理事会の役割というのは、世界の平和を守るための役割を果たしていないということを言っているわけですよ。少なくとも機能はしていないということを言っているんですよ。いかがですか。

川口国務大臣 世界の人類が国連の果たす機能について期待をしている、その期待に国連が現時点で十分に必ずしもこたえていない、こたえ切れていない、これは事実そうであるというふうに思います。そういった事実はきちんと認識をしなければいけないと思います。

 その上で、安保理の理事国であれば、これは直接に自分の思うこと、あるいはそうあるべきであると考えることを安保理での議論に反映ができるわけでございますから、より発言権が大きいということは言えるだろうと思います。

 いずれにしても、我が国は国連の加盟国であり、かつその国連の分担金も非常に大きいものを払っているわけですから、国連がよりよい機能を発揮していけるように、国連の改革をきちんとやっていく必要があるというふうに考えております。

生方委員 私は、総理とはあのとき、一時間十五分、主にこの問題について一時間ぐらい話をいたしましたですけれども、やはり私が受けた印象というのは、これまで日本が国連の中で非常に大きな役割を果たしてきたわけですよ、国連も大きな役割を我々は果たしているというふうに期待していたにもかかわらず、総理の口からは、国連というのは非常に地位が軽いものだなという印象を私は非常に強く受けました。国連中心にやってきたというふうに言っておきながら、国連をあれほど軽く総理が思っていたということに対して、私は非常に強い失望を覚えました。そのことは、後、次の日の新聞もそういう論調で書いていたのもございますし、きょうの朝日新聞にも社説でそういうことが書かれておりました。

 私は、総理に対して、認識をもっと改めていただきたいということは、これから予算委員会の場においてまた総理とこの問題について論議をしていきたいというふうに思いますので、次の問題に移らせていただきます。

 先ほども話題に出ておりましたが、サマワの地方評議会を含めて地方評議会というのは、そもそもどのようなもので、どんなふうにつくられて、どんな機能を果たしているのかということを、まずお伺いしたいと思います。

川口国務大臣 まず、一番最初にイラクの制度について御理解をいただきたいことは、今イラクは新しい形での制度を生み出していく過程にありまして、いろいろなことが進化の過程にある、そういう状況であるということをまず御理解いただきたいと思います。

 それで、地方の評議会ですけれども、これは県、市レベルで行政サービスの提供を企画、監督する立場にあるということでございます。一般に、中央集権政府であったフセイン政権が崩壊をした後で、各地の知識人や宗教家などの有力者が自発的に集まるなどいたしまして、日常生活についての公共サービス、これを提供したり、あるいは再開するということになっていったわけでして、その提供、再開を企画、監督する、そういう組織であるということです。

 それで、どのような方法で選ばれているかということをおっしゃいましたけれども、冒頭申し上げましたように進化の過程にあるわけでして、その選出方法はさまざまであります。

 例えばサマワ市のあるムサンナ県の場合ですけれども、これは幾つかの都市がありますが、その最大のものがサマワ市ですけれども、そのサマワ市を皮切りに、順番に、より小さい都市に向かって評議会をつくっていった、その選挙が順番に行われたということであります。

 それで、そういった過程を経て、より今までよりも民主的な制度、コーカス制度に今移りつつある、それが確立される過程にあるというふうに承知をいたしております。

 そういう意味で、今、制度、一様ではないわけですけれども、それぞれがそういうより民主的な制度に向かって動いている、そういう過程であるということです。

生方委員 外務省のサマワ復興支援計画というのが私のところにも届けられましたですけれども、これも具体的に今度の五百五十九億円の無償援助の中に入っているというふうに理解していいんですか。

川口国務大臣 先ほど別な委員の御質問に対してお答えをいたしましたけれども、この新しい補正予算でいただいたうちのイラクに直接に渡される約五百五十億ですけれども、そのお金につきましては、これはきちんとしたやり方で、対象として、その対象たる組織を選んでやっていくということで考えております。

 千百八十八億円というのはイラク全土に対してのお金でございまして、それぞれのところで、先ほど申しましたように、中央政府の官庁を対象にすることもありますし、地方の県レベルの評議会を対象にすることもありますし、それから市レベルの評議会を対象とすることもございます。

 いずれにしても、きちんとして機能している評議会ないし、あるいは県なり、あるいは中央政府なり、それを対象にやっていくということは、国民の税金を使って経済協力をやる以上は当然のことでございます。

 サマワ市について言えば、対象としてサマワを対象、すなわち、例えば病院が、十三病院の一つがサマワにありますから、そこに対して支援をしようというふうに考えておりますけれども、それをだれと、無償の資金供与をする相手として選ぶかということは、もしそのサマワ市の評議会がその時点で機能をまだしていないという状況であれば、それは別なところを対象に、例えばムサンナ県とか、そういうところを対象にやっていくということを合意していく、そういうことになるわけです。

生方委員 「サマーワに対する経済・文化協力」というのがございますよね、外務省の一月二十六日のこの文書。これは総額幾らなんですか。

川口国務大臣 今の時点で、どこの都市に幾らということではっきりわかっているわけではありません。したがいまして、サマワに対しての経済、文化協力で、これについて、これは補正予算でやるのもございますし、例えば湿原の話が書いてありますけれども、これは補正予算というよりは、むしろ十六年度以降の予算に反映をされるということでございまして、今の時点でこれの対象の予算金額が幾らであるということを申し上げるということは、まだできないということでございます。

 それで、さらに申し上げれば、その五百五十九億円のうち、サマワに行く分も当然にあります。それについては今話し合いをしているところでございまして、例えば、先ほど申し上げた十三病院の話ですとか、それから特殊車両、警察車両等についてというのもございます。

 それで、先ほど六百二十台の警察車両ということを申し上げましたけれども、それはこの補正予算じゃなくて十五年度の予算でやりましたけれども、それは対象は内務省であったということで、サマワ市に行く予算が全部サマワ市評議会を対象にしているということでも必ずしもないということです。

生方委員 だから、今年度で支出されるサマワへの支援は幾らなんですかということを聞いているんです。(川口国務大臣「十五年度」と呼ぶ)そうそう、十五年度の。だから、これから四月までに、三月いっぱいまでに幾ら支出されるんですかと。

川口国務大臣 おっしゃっている御趣旨は、補正予算ではなくて十五年度の通常予算ということでございましたらば、それで行いましたのは、お答えは、結論的に申し上げれば、それは今の時点ではっきり申し上げることはできないということであります。

 例えば、六百二十台のパトカーということを言いましたけれども、これは内務省を相手にして、それは何を何台、どこの市に何台出すかということも内務省と話をしながら、サマワには約二十台ということが議論の結果としてまとまったということでありまして、十五年度の予算、補正予算も含めても、そのうちどれぐらいの部分がサマワ市に行くということを今の時点ではっきり申し上げるということはできないわけですけれども、我々としては、サマワ市に対してこれはできるだけ回していくように、そういう希望を伝えている、そういうことでございます。

生方委員 これを聞いているのは、だから、もう先ほどから問題になっているように、サマワ市の地方評議会というのはないわけですよ。ないんでしょう、今現実に。いつできるかわからないわけでしょう。だけれども、予算は何となくつけられてお金が出ていくのであれば、一体どこに日本の、我々の税金が出ていくのか、受け取り手はだれなのか、それが幾らであって、では今度はどういうふうに執行されたのをだれがチェックできるのかということがきちんとわかってなきゃいかぬわけでしょう。今の外務大臣のお答えでは、幾らがサマワ市に渡るのかわからない。

 要するに、だから、お金の出方が一体どういう形になるんですか、どこへ出すんですかと。お金は出ていくわけでしょう。一体だれが受け取るんですか。額もわからない、何もわからないで、何で補正予算が五百五十九億って出てくるんですか。金額が出ているなら、少なくともその内訳は出ているわけでしょう。何に何億、何に何億、それはどこどこにやって、きちんと受け取り手がいて、だれが事業を発注してどうのこうのということがわからなければ、そんないいかげんな形で国民の税金が使われたらたまりませんよ。

川口国務大臣 先ほど別な委員に御説明を既にいたしたわけですけれども、もう一度繰り返させていただきますと、経済協力の予算を、補正予算にせよ通常予算にせよ、これは国民の税金を使っているわけですから、経済協力の原則に従って、効率性、透明性を持つ形でやっていくということは非常に重要であると私どもは考えております。

 それで、補正予算に計上されている例えば千百八十八億円、これの相手方として考えられるのは幾つかありまして、例えば中央政府の各省庁、それから地方政府、それから地方政府でも県評議会もあれば市の評議会というのもあるわけです。これはイラク全土についての予算を千百八十八億円でいっているということであるわけです。

 それで、ここで計上されている、あるいは積算されている案件についてですけれども、これは、今まさに相手方と詰めているという過程でございまして、どの分がサマワに行くとか、そういうことを今の時点ではっきり申し上げるということは難しいということですけれども、例えば、これは先ほど申しましたが、サマワ市の評議会の選挙がそれに間に合うように行われていないというような事態があるとすれば、サマワ市ではなくてムサンナ県というのがあるわけでございますから、それは、その相手としては、きちんと予算の執行をするのにふさわしい相手を選んでやっているということです。

 いずれにしても、支援に対するニーズについては変わらないということでございますので、その実行をするのにふさわしい相手方と細部を詰めて合意をする、そういうことで考えているということです。

 それから、これも先般申しましたけれども、この経済協力について、どのような使われ方をしたかということについて、きちんとその後で、全部その執行が終わった後で適切な情報公開をしていくということは大事なことでありまして、これは情報公開については相手方の合意というのが必要でございますから、それは前提にしなければいけませんが、政府としてはそれも十分に情報公開をやっていく考えで進めております。

生方委員 今のお答えを聞いていますと、何かお金だけ先にあって、どこに払うのかとこれから交渉するというような話ですよね。

 サマワの地方評議会がなくなった。恐らく、私も行っていないからわかりませんけれども、サマワだけじゃなくて、幾つかの地方評議会がなくなったりしているところもいっぱいあると思うんですよ。イラクの電力省とか、いろいろここに書いてございますよね、供与先として。これだって機能していないところもたくさんあるということは、要するにまずお金だけつけて、そのお金がきちんと渡るかどうかという交渉をこれからやるということなんですね。

 だから、具体的にサマワに幾らかもわからないわけでしょう。サマワにやるのかムサンナ県にやるのか、あるいはどこどこの省にやるのかもわからないけれども、大体こんな需要があるんじゃないか、大体これぐらいかかるだろう、それをこれから交渉しようという話なんですね。

川口国務大臣 これは、おっしゃったような形ではない。最初にお金がありきで、お金をベースに交渉をするということではなくて、きちんとニーズの把握をした上で、それを今詰めているということであるわけです。

 申しましたように、例えばサマワ市に何を出すかということについてサマワ市のニーズはあるわけでして、もしその時点でサマワ市の相手方が我が国が合意をするのにふさわしいような状況を整えていなければ、例えば代替としては中央政府とやってサマワ市にそれを出すということもありますし、県ということもできるということでありまして、いずれにしても、我が国としては適切でない相手と合意をしないということでありますし、支援のニーズはあるわけでして、これについては適切な相手と合意をしてやっていく、そういう考え方で補正予算をお願いしているということであります。

生方委員 極めていいかげんですよね、これは。だれが相手なんだかわからない。(発言する者あり)ちっともいいかげんじゃないって、いいかげんですよ。これを国民の方たちが聞いていて、今の外務大臣の答えで納得する人なんかいないですよ。

 だれに幾ら出すかということも決まっていないで、交渉相手もわからない、それで、交渉相手がいなくなったら、ではだれとやるのかわからないって、こんなことでお金だけきちんと五百五十九億なんというのは、どうやってこのお金が積算できたんですか。大体、イラクでどういう公共事業をやったらだれがやって幾らかかるのかなんて、これじゃわかりようがないじゃないですか。何でそのお金が、五百五十九億とか百六十億とか、こういうお金が出てくるんですか。交渉相手もわからない、相手だって、どういう人が事業をするのかもわからない、それで何でこんなものが出てくるんですか。どこの市に幾らかということすらわかっていないんでしょう。交渉相手もわかっていないんでしょう。こんないいかげんなことで、そんな予算なんかつけるわけにいかないですよ。

川口国務大臣 先ほど来、ニーズはちゃんと把握をしているというふうに申し上げました。すなわち、例えばパトカーであればどういったところに幾らぐらいのニーズがあるということは、パトカーの場合は内務省ですけれども、内務省と話をしているということであります。

 それで、例えばサマワの、先ほど総合病院というお話もしましたけれども、これについての相手方としては保健省あるいは病院、どちらかということを想定しているわけでして、具体的な積算が何で出てきているかというと、例えばパトカーであれば、一台当たり幾らということはわかるわけですし、病院であれば、どれぐらいの機材のニーズがあるということがわかるわけで、それで積算はできるわけです。

 今、サマワに幾ら金額としてあるか申し上げられないと言ったのは、具体的な金額について、これはまさに先方と詰めている最中なので金額について申し上げることはできないということで、ニーズはきちんと相手方と話して把握をしているということであります。

 市評議会がそのときまでに機能するような状況になっていれば、サマワ市の評議会とやっていくということもあるかもしれませんし、それがそうでなければ、相手方としては、例えばムサンナ県ということを対象に、相手として合意をするということもあるかもしれない。それは、ふさわしい相手とやるわけでして、むしろ、今から、初めに全部決まっているということではなくて、それは交渉しながら考える。

 ニーズについてはちゃんと相手と議論をして把握をしているということであり、そのニーズに基づいて積算もきちんと行っているということであって、ちっとも物事がいいかげんであるということではないということを申し上げたいと思います。

生方委員 それは、いいかげんなのは、ここを見たって、「被供与先は電力省を想定」ですよ。電力省と決まっているわけじゃないわけでしょう。想定なんでしょう。これから、電力省というのは、私、機能しているんだか、だれが大臣だかも知りません。もうイラク政府はないんですから、だれがこれをやっているのかもわからぬし、職員がいるのかどうかもわからないし。(発言する者あり)ありませんよ、政府は。政府があるという認識なんですか。どうですか。

川口国務大臣 きのうかおとといも答弁申し上げましたけれども、イラクの中央政府、省庁というのはきちんとございます。また、その省庁のそれぞれの大臣もちゃんとおります。

 そういうことで、機能をしていないということでは全くない。もちろん、日本の中央政府が機能している形ということから考えれば、それと全く並行して、パラレルに比べるということはできないかもしれませんけれども、それは今のイラクの過程、この段階できちんと機能している政府があるということでございます。そういうところときちんと話をしながら、細部を今詰めている段階であるということであります。

斉藤委員長 時間が参っておりますので。

生方委員 あと一点だけ。

 では、その省というのはCPAの配下にある省ということですか。

川口国務大臣 省庁、中央政府の省庁というのは、統治評議会のもとにございます。

斉藤委員長 時間でございますので。

 次に、達増拓也君。

達増委員 本日十二時半から開会されました本会議、非常に嘆かわしい本会議でありました。総理大臣が答弁を撤回する。この十年に一度、あるいは五十年に一度と言っていいかもしれません、極めて重要な案件、イラクへの自衛隊派遣という重要な案件について国会の承認を求める、その質問に対する答弁の中で、これまた前代未聞の撤回ということをしなければならないような答弁、事実と反する答弁をしてしまった総理大臣。この小泉内閣というのは一体どういう内閣かという思いを新たにした次第でございますが、こういう事態は本当にあってはならないことでありますので、内々お知らせしておりました質問項目の八番、この総理答弁に関する質問からさせていただきたいと思いますけれども、内々にお知らせはしていませんでしたけれども、官房長官に伺いたいと思います。

 といいますのは、先ほど私、目にしたんですけれども、一月二十八日、きのう付の「サマーワ市評議会の解散に関する情報の流れ」という一枚紙の資料がございます。これは、政府からこの委員会の理事会に提出されたものと聞いておりますけれども、きのう提出された資料のようでありますが、これによりますと、官房長官がこのサマワ市評議会の解散について知ったのがいつかということ、ここに書いてあるのは、一番下ですね、二十七日火曜日午後、官房長官、本件に関する予算委員会での議論の後、認知、二十七日火曜日の午後に認知したと書かれてあります。

 しかし、その前の日の月曜日の午後、予算委員会の中で、民主党首藤委員がこのサマワ市評議会が既に解散されているという共同通信配信の新聞記事を取り上げて、全閣僚の皆様方に、サマワの市評議会は解散されているそうですよ、それでも援助ができるんですか云々という質問を月曜日の午後しているわけであります。

 それなのに官房長官は、そのサマワ市評議会が解散されているということを認知したのが火曜日の午後だとここには書いてあるわけですが、ということは、その前日の、私は官房長官もたしかそこの辺に座っていらっしゃったというのを見ていたんですけれども、その委員会審議は聞いておられなかったんでしょうか、官房長官。

福田国務大臣 私も時々記者会見で抜けますので、そのときにいたかどうか記憶ないんですけれども、そういう話が出たというその記憶も実はないんです。

達増委員 防衛庁長官に伺いますけれども、防衛庁長官は、やはりこの「サマーワ市評議会の解散に関する情報の流れ」という資料によれば、二十七日正午過ぎ、防衛庁長官、予算委員会の答弁勉強会の後に本件につき認知と書いてあるんですが、前の日、月曜日午後の予算委員会では、その審議の中身を聞いておられなかったんでしょうか。

石破国務大臣 クロノロジーでお示しをしております、二十七日火曜日正午過ぎ、私が予算委員会の答弁勉強会の後に本件につき認知ということは、それがどういうような状況であるか、分析、評価というのは予算委員会が終わった後いたしましたというのは答弁で申し上げたとおりでございますけれども、これがどういうことかということを政府としてまず認知したというのがこの時点でございます。

 それまでに、では首藤委員の質問を聞いていなかったのかと言われれば、政府として私が認知したのはこの時点ということでございまして、それまでにはいろいろなことが報ぜられている、その中の一つとして、委員がおっしゃったような記憶、それは私にはございます。

 ただ、クロノロジーでお答えをしましたのは、政府として認知した、政府としてそのようなラインを通じ、担当局長からこういうようなことであるということを承知したのがこの時点ということを申し上げておるわけでございます。

達増委員 けさの新聞を読んで驚いたんですけれども、どうもきのう、官房長官は防衛庁と外務省の担当の職員を呼んで、情報をきちんと上げなければならない、連絡や報告はきちんとしなければいけないと、外務省と防衛庁などの担当者を呼びそのような指示を出したのに加え、記者会見でも、連絡や報告はきちんとしなければならないという強い不快感を示したと書いてあるんですけれども、そもそも、月曜日の午後の予算委員会で民主党から、サマワ市評議会はもう解散されちゃっていますよ、これでいいんですかということを指摘していたわけです。ある意味では、担当局長よりも先に、閣僚の皆さん、小泉内閣の皆さんの方が先にそのことを知らされていたのかもしれませんよ。

 簡単なことなんですよ。後ろに秘書官、あるいは横に担当課長がいるわけですから、我々がそれを指摘したときに、調べておけとか、どうなっているとか言えばよかったのに、なぜそれを放置して、部下から報告が上がってくるまでそのことをほうっておいたのか。これは防衛庁長官、いかがですか。

石破国務大臣 それは、委員も外交官、外務省にお勤めでいらっしゃいましたから、役所の中のシステムというものはよく御案内のことだと思います。

 外務省の中で、あるいは、私は他省庁のことを申し上げる立場にはございません、防衛庁の中でも、それは特に今回の場合には現地に先遣隊が出ておる、外務省の方も行っておられる、いろいろな情報が上がってくるわけでございます。私としてどうなのだという判断は、やはり役所の中のそういうようなしかるべき者から上がってきて、それからすることになります。

 ただ、委員御指摘のように、そのときにもっと気をつけておかなければいけなかったのではないか、そういうようなことをもっときちんとすべきではなかったのかということを言われれば、私も足らざるところ多い人間でございますので、委員の御指摘というものは真摯に受けとめていかなければならないとは思っております。

達増委員 NHKの中継が入っていて、全閣僚そろったところで、民主党首藤委員が質問の中で、サマワ市評議会はもう解散しているぞ、大変だ、どうするのかということを訴えたわけであります。にもかかわらず、翌日の本会議で総理大臣が、そのことについて、サマワ市評議会が存在しているというような答弁をしてしまった。

 これはすごい内閣だと思いますよ。どうしてだれもそれを食いとめようとしなかったのか。これはもう内閣総辞職に値するようなことだと思います。そういった内閣のもとでイラクに自衛隊を派遣するというのは、本当にこれは危なくてしようがない。このまま国会承認など、そもそも検討にも値しないんじゃないか。そういう内閣から国会承認と言われても、これは本当に困ってしまうわけであります。

 総理が、そのような、撤回しなければならないような答弁をしてしまったことについて、私は、内閣全体の責任だと思いますよ。全員ここにそろっていたわけですから、サマワ市評議会がもう解散されているということを聞かされたときには。ただ、自衛隊の運用の責任はやっぱり防衛庁長官にあるわけですよ。ですから、その内閣を代表する、内閣を総理する総理大臣にあのような答弁をさせてしまった責任について、防衛庁長官はどのようにお考えですか。

石破国務大臣 総理は、あのような形で撤回をなさいました。委員おっしゃるとおりでございます。今後このようなことがないようにしていかなければならない。しかしながら、私が答弁しますと、それは、治安の問題なんか今聞いていないというふうによくおっしゃいます。でも、必要なことは、このサマワの評議会というものが総辞職をしたということと治安がどうなのかということをどのように評価するかということ、それが自衛隊の安全を保つ上において最も肝要なことであると私は承知をいたしております。

 テレビ等々で報道されておりますように、あるいは私どもが受け取っております報告からも、サマワの評議会が総辞職をしたということと現地の治安がどうなのかということに連関をした情報は、今上がってきておりません。それは、評議会が総辞職をしても、あるいは、外務大臣が先ほど答弁なさいましたように、今ある評議会はCPAから任命をされたものである、シーア派の勢力も、あるいは女性の勢力もきちんと反映をされていない。それを、コーカス方式というものの提案がなされておるわけで、むしろこれは民主化に向かって進む動きである、市民の中にはそうとらえることが多いという報告をその後受けております。

 そういたしますと、治安の状況については安定をしている、しかしながら、委員御指摘のように、そのようなことが、治安にかかわるようなことで影響があるようなことがあっては、これはならないことだと思っております。私ども、より慎重を期し、政府内の体制にさらに万全を期すべく努力をしてまいりたいと思っております。

達増委員 今の答弁は、とんでもないロジックに基づいて答弁されていたんですけれども、要は、政府の判断だけ聞いていろと。それの根拠になっている事実は、事実と正反対のことを政府が発表しても気にするなと言っていたわけですよ、今の答弁は。

 これは、冗談じゃないんですよ。判断だけを出せばいいというものではない。判断の根拠になる事実を、しかも国会答弁でしょう。さっき、防衛庁長官、何とおっしゃいましたか。最後の歯どめは国会だと。シビリアンコントロールの最後の歯どめは国会だと言っている、その国会に事実と違う、事実と正反対の答弁をしたり、事実と正反対の報告書を理事会で配ったりして、それで国会が歯どめと言うのは、これはもう、自分の言っていることとやっていることが全然違います。

 そこで、官房長官に質問しますけれども、それだけ内閣が、月曜の午後の時点でこのサマワの評議会の解散という事実が民主党予算委員会委員から指摘されていたのにもかかわらず、内閣全体として一晩そのままでいた。それは大変重要な事実であるはずなのに、きのうのこの委員会の理事会に出された「サマーワ市評議会の解散に関する情報の流れ」については、全然そのことが、閣僚たちは二十六日の予算委員会で指摘されていたというような事実が全部抜けて、あたかも二十七日になってから、その遅くになって官僚が情報を上げてきた、官僚が勉強会で教えてくれたから、あるいは二十七日の予算委員会で初めて知ったというようなことを書いている。

 このペーパー自体、またそういう虚偽の、事実と違うことを国会に対して提出し、また、けさの各新聞とかテレビとか、このペーパーに沿った報道ぶりをしていますよ。閣僚たちは二十七日になって初めて聞かされた、初めて知ったというような報道をしている。

 またこの問題で国民をミスリーディングしているじゃないですか。国会をミスリードして、国民をミスリードしている。官房長官、このことについてどう責任をとられますか。

福田国務大臣 先ほどから御説明しているとおりなんですけれども、その総理の発言については、最初の発言については、これは撤回したわけです。それはやはり撤回しなければいけないということを考えてしたわけなんでございますので、撤回したら、それじゃ済むのかということを言われたいのだというように思いますけれども、しかし、それは本会議の壇上で総理が撤回したわけですから、これはもう誠意を尽くして対応している、国会対応しているというように考えていいんじゃないでしょうか。

達増委員 この「サマーワ市評議会の解散に関する情報の流れ」という紙、これがきのうの本委員会の理事会に提出され、そして、きょうのこの委員会が開かれるに至った経緯は、きちっとこの情報の流れについて説明がされなければこの委員会を開けないという野党の主張に対して、政府がこれを提出して、この結果、きょうの委員会が開かれていると私は聞いているんですけれども、この紙は重要な事実をあえて記載せず、国会や国民をミスリードする、誤解をさせるような紙でありまして、このような紙がそのまままかり通ったままでは、きょうの委員会の開催の前提が崩れていると言わざるを得ないと思いますけれども、委員長、いかがですか。(発言する者あり)

斉藤委員長 もう一度、もう一度御発言ください。もう一度、もう一度、もう一度ください。(発言する者あり)

 もう一度、もう一度御発言ください。もう一度ください。確認をしたいと思いますから、確認をしたいと思いますから、もう一度御発言ください。

達増委員 私は、理事会に提出されたこの「サマーワ市評議会の解散に関する情報の流れ」というのは、重要な事実をあえて書かず、国会や国民を誤解させるようなペーパーでありますので、これが理事会に提出されたということを根拠に、今開催されている委員会の質問をこれ以上続けることはできないと考えますが、いかがでしょうか。

斉藤委員長 私は――ちょっとお下がりください。お下がりください。

 ただいま達増君からお尋ねのありましたこの時間の流れの資料でございますね、これを問題ないというふうに私は思っております。

 どうぞ、御質問をお続けください。

達増委員 もう一度確認しますけれども、防衛庁長官は、月曜日の午後の予算委員会の時点で、既に首藤委員の指摘については認知していた、これは事実ですか。

石破国務大臣 報道として、そのようなことがあるということは承知をいたしました。

 これは、よくある話といいますか、報道としては承知をしておる、しかしながら、それをきちんと役所として確認をしたというのが二十七の午後といいますか、正午過ぎということであるということを申し上げた。虚偽を申し上げているわけでも、欺くつもりでもございません。事実を事実として申し上げておるわけでございます。

達増委員 このサマワの状況に対する問題意識の低さを物語っていると思います。委員会で指摘されているにもかかわらず、その晩、その問題について、内閣全体としてそのままにしていたということは、これは非常に内閣のあり方として問題である、そのことが、ひいてはきょうのこの本会議での総理の答弁撤回という空前の不始末につながったということを改めて指摘させていただきたいと思います。

 ちなみに、きのうの日本テレビの夕方のニュースで、サマワ評議会のファディール・アサブ事務局長が、サマワ評議会について、十二人のメンバーのうち、議長を含む六人がメッカ巡礼に行っているが、それは一時的な欠席で、解散もしていないし、だれもやめていないと述べた旨、テレビで報道されております。

 これはまた新しい事実関係が報道されておりまして、これが事実かどうか。この「陸自派遣に伴う最新の現地治安情勢等について」というペーパー、防衛庁でつくった紙でありますので、その防衛庁長官に、これが事実であるかどうか伺いたいと思います。

石破国務大臣 サマワ市評議会事務局長とされるイラク人の方が、本邦プレスとのインタビューで、市評議会は解散していないとの発言をしたとの報道は承知をいたしております。本件発言につきましては、外務省のサマワ事務所を通じまして、外務省からも、当然そうでございますけれども、事情を照会すべく作業するように指示が出ておるところでございます。

 いずれにいたしましても、私どもは、二十五日の定例治安会議におきまして、現地の治安を担当いたしておりますオランダ軍より、二十四日、サマワ市評議会は最後の会合を開催し、議員は総辞職した旨の説明を受けております。また、CPAサマワ関係者からも、二十四日、サマワ市評議会は、評議会メンバーが総辞職したとの説明を受けております。私どもといたしましては、事態の推移を今後とも注意深く見ていかねばなりませんし、そういうようなことだと思っています。

 報道はさまざまございます。今、日本テレビとおっしゃいました。日本の国はさまざまなテレビ局もあります、新聞社もあります、そうではないのもあります、いろんな方がいろんなことをおっしゃいます。すべてのことをきちんきちんと確認をしていかねばならないのは、それはある意味政府として負うべき義務なのかもしれません。

 しかし、委員も御案内かと思いますが、現地に行っております人員、それが、それぞれ、すべてのことについて、きちんと全部リアルタイムで確認をできるか。それは、委員も外交官としてあちらこちら赴任をなさって、現場がどういう状況であるか、そのときに政府として何をしなければならないかということはよく御案内のことだと思っております。そういうような状況は存じておりまして、今、サマワ市事務所を通じまして確認をするということを行っております。

 しかし、重ねて申し上げますが、治安というものはどうなんだ、安全はどのように確保されるんだということに、私としては最大限配意をいたしております。現場で本当に現場を歩いている、そして宗教の指導者の方なり、あるいは部族の長の方なり、土地を持っておられる方なり、現場を歩いているその自衛官からどのような報告が入ってくるかということが最も重要なことでございます。そういうことをしておるわけでございます。そういう点に私どもとして配意をしていかねばなりません。

 今の治安がどうなのか、サマワの評議会がそうなったということによって治安がどのようになってきたのか、それを現場から上がってくる情報をすべて確認する。もちろん、それには相当の時間がかかる。Aという事態が起こればBという事態が起こる。Aという情報が発信されれば全く反対のBという情報が起こる。その一つ一つを精査するということはやってまいりますが、そのすべてが明らかにならない限りはそれはだめだということになりますと、これは現在の状況に応じまして極めて困難なことだ。しかし、政府として、確認の作業を放棄しているということを申し上げているわけではございません。

達増委員 サマワ市評議会というのはサマワ市民を代表する最高の組織であって、そのサマワ市民を代表する最高の組織が、これは外務省の答弁、きのう外務大臣の答弁にもありましたけれども、米英等連合軍当局のCPAと対立した結果今のような状態になっているということが、治安の問題に関してあたかも大したことがないかのような答弁を繰り返されることに、私は、これは全く理解ができません。

 この報道によりますと、サマワ評議会のファディール・アサブ事務局長は、自衛隊が来てからのことを聞かれ、自衛隊の先遣隊がサマワ入りして以降、評議会に何の連絡もないといって怒っていたということなんですけれども、自衛隊先遣隊は評議会に何の連絡もない、これは事実ですか。

石破国務大臣 報道で、Aという人が怒っている、それが真実かどうか確かめよ、Bという人が怒っている、真実かどうか確かめよ、そういうことをやっていて、本当に現地でできるだろうかということです。

 私たちは、本当に委員にも御理解いただいていることだと思いますが、現地が本当にぎりぎりいっぱいの中で、治安の状況も現地のニーズもすべて確認しながらやっておるわけでございます。その中で、今、市評議会が知っていないといって怒っているがどうなのかということをおっしゃいました。

 私は前の委員会でも答弁申し上げたかと思いますが、二十日の日にまだ評議会は動いておったわけですね、二十日の日ですから。二十日の日に動いておった。そこに、部族長の方、宗教指導者の方、そして市評議会議長の方もおられたということを申し上げました。市評議会議長の方に、自衛隊が来ました、これから先いろいろな協力をいただきながら、意見交換をしながらやっていきましょうということを代表の方に申し上げておるわけでございます。その中で、評議会が承知をしていない、私はそのようなことだとは考えておりません。

達増委員 シビリアンコントロールにおいて国会が歯どめだとおっしゃった方が、先ほどから質問に対して直接答える以外に、どうも、一々マスコミのことを調べていられないとか、何でそういうことをしつこく聞いてくるというような、いかにも不快感をにじませながら答弁をするということは、非常に理解できません。民主党の指摘があったから答弁の撤回ができたわけであって、そういう質問の一つ一つに誠実に答えないというのは非常に異常なことだということを委員長に申し上げたいと思います。

斉藤委員長 答弁者、どなた。今の答弁。今の質問は、どの大臣に御質問でございますか。

達増委員 今のは、質問ではなく、適切な答弁がなされていないという指摘です。委員長への指摘です。あとは理事に任せます。

斉藤委員長 その前の質問に対して的確な答弁がなされていないということでございますので、もう再度、石破防衛庁長官、御答弁ください。

石破国務大臣 先ほどお答えをいたしました繰り返しになって恐縮ですが、二十日の日に、当時、有効に機能をしておりましたサマワ市評議会の議長にお目にかかりまして、それは、その席には部族の長あるいは宗教指導者も御同席でした。そのときに、有効に機能をしておりましたサマワ市評議会の議長にその場でお目にかかり、自衛隊が来ます、来ました、先遣隊です、これから先、協力しながらやっていきましょうということで申し上げたということを答弁したとおりでございます。

達増委員 このサマワの市評議会について総理が答弁を撤回するきっかけとなったのは共同通信社の配信の情報でありますけれども、やはりマスコミの取材、報道があったから国会が歯どめとして機能したわけでありまして、そのようなマスコミの役割は軽視できないと思います。

 マスコミに差し迫った危険、記者に危険が迫るのであれば、その旨、助言指導はあり得ると思いますけれども、記者に危険が迫らない限り、マスコミに対する取材自粛要請等はすべきではないと思うんですね。

 ところが、石破長官は、二十五日放映の「報道二〇〇一」で、自衛隊の安全を脅かすような報道が実際にあったということをテレビで述べられました。これは私も驚いたんですけれども、自衛隊の安全を脅かすような報道なんというのはないと思うんですね。ところが、長官はあったとおっしゃった。

 いろいろ考えてみますと、これは福田官房長官がかんかんになって怒ったという、自衛隊の出発日についてマスコミがスクープし、それで福田官房長官が怒って出発日を変えた、そして、そのことがあって、石破防衛庁長官に、もうマスコミには情報を流すなというふうに叱責したというような報道があるんですけれども、その出発日にまつわる報道のことを自衛隊の安全を脅かすような報道とおっしゃったんですか。

石破国務大臣 先ほど横路委員の質問にもお答えをいたしました。自衛隊の安全を脅かす報道、どれがそうなのかということは、これは申し上げることをいたしません。申し上げることが適切だとも思いません。

 それは、ごらんになればそれはおわかりになることですし、サマワの圧倒的多くの市民は、テレビをごらんになればそれこそおわかりのように、自衛隊、来てくれてうれしい、そういう人たちが圧倒的多数であります。しかしながら、その自衛隊に危害を加えようとする者、テロリスト、それの立場に立って読んだときに、そうなのかというような情報、それはお知らせをすべきだと私は思いません。それは、報道の自由ということと同時に、自衛官の安全ということも考えていかねばならない、それは当然のことであり、自衛官の安全をよく考えるようにというふうによく民主党からも御指摘を受けておる、そのことにも私はかなうものだというふうに思っております。

 それから、先ほど委員は、危険、脅かすようなことが、記者に危険が迫らない限りというふうにおっしゃいました。危険が迫ってからではどうなるのだということでございます。これは、日本政府として邦人保護という義務も政府には負わされておるわけでございます。迫ってから、じゃどうするのかということを考えなければいけない。報道の方々ももちろん現地で取材をなさる。今退避勧告が出ておるけれども、いらっしゃって、いろんな報道をなさろうとしておられる。しかし、彼らの命を守るということも日本政府に課せられた義務でございます。

 危険が迫らない限り何をやってもいいんだという御指摘だとすれば、私は、そのこととまた邦人保護、政府が負っております義務をどのように考えるかということをきちんと論じなければいけないことだと思っております。

達増委員 長官は、政府の機密保持の問題とマスコミ対策の問題をごっちゃにしておられるんですよ。自衛隊を危険にさらすような情報は、政府として機密保持すればいいんですよ。何もそんな、機密情報、秘密情報を全部マスコミにオープンにせよと言っているわけではないんです。そうじゃない。自衛隊の安全にかかわらない情報だけを記者ブリーフすればいいだけの話でありますし、現地における取材だって、普通の人が見えるところを記者たちも見て取材しているわけであって、そういった記者に、普通の人がアクセスできる情報以上の、自衛隊を危険にさらすような機密情報を政府が出さなきゃいいだけの話です。

 したがって、記者に対して、記者の身に危険が迫っているときは、それは危ないという、この場にいない方がいいという、そういう指導助言はした方がいいと思うんですけれども、一般的な取材自粛要請というのは、これは本当にあってはならないことなんじゃないですか。

石破国務大臣 これは、委員と議論したかどうかは私記憶が定かではありませんが、戦前の有事法制のときに、委員も御記憶かもしれませんが、戦前の言論統制の法律や通達というのはこんなにあるんですね。ここまで規制をするかというような、新聞の紙に至るまで報道規制がなされていた。今の世の中においてそのようなことが可能だとは思いません。

 そして、私どもも、自衛隊が何をやっているかということについて国民の皆様方に正しく御認識をいただくという意味で、広報というものはやっていかなければいけない。その過程において、これは出してもよい、これは出してはいけないということは、自衛官の身の安全、あるいは記者の方々の身の安全にかかわらない限り、それは積極的にやっていくべきだというふうに思っております。

 私どもがやっておりますのは、先ほど来、統制というお言葉をお使いでございますが、今の世の中において統制ということができるはずもない。私たちがやっておりますのは、あくまでお願いという形でございます。

 同時に……(発言する者あり)いや、それは、ペーパーにわざわざ「お願い」ということを付しておるのはそういうことで、役所から出します文書に「お願い」というのを付するのはどういう意味か、よく御案内のとおりでございます。

 政府として、どのようにして邦人を守るか、そして報道を行うか、そして記者の方の安全を図っていくか、その三つを鼎立させていくのは何なのだということを今後もきちんと見ていかなければいけないけれども、政府として、あるいは防衛庁・自衛隊として、お知らせすべき情報はきちんとお知らせする、その体制をきちんと確立をするということだと思っております。

達増委員 では、最後に確認しますが、自粛のお願いというものは撤回しないということですね。

石破国務大臣 お願いをいたしておるわけです。そしてまた、そのお願いを撤回するということをするつもりはございません。

 お願いの内容は、先ほど来申し上げておりますようなことで、それを自粛をお願いする、それはある意味当然のことではないでしょうか。そのことによって……(発言する者あり)いいえ。そのことによって、もし危害が生じたとして、それはどうなるのだということでございます。

 一々、それについてどうだこうだという論評をすることは申し上げません。私は、政府として、自衛隊員の安全、そしてまた邦人の安全というものには、政府全体として責任を負っておるところでございます。

達増委員 時間ですので終わります。

斉藤委員長 次に、首藤信彦君。

首藤委員 民主党の首藤信彦です。

 さて、石破長官、今ずっと我が同僚の達増議員がいろいろ言っていたように、もう先遣隊がサマワに入って、評議会の方々、評議会の議長とも会ったりして、一体どういう問題があるかということをチェックしたということを、この数回の委員会でわかってきたわけですね。

 そのサマワに入った先遣隊の隊長は、サマワの市評議会の議長と会って、どういうことをはっきりと聞かれたわけですか。

石破国務大臣 詳細な議事録をとっているわけではございませんので、あいさつでございます。そこで、私どもの方からは、参りました、よろしくお願いしますという旨申し上げました。

 そういうようなことをこちらから申し上げ、いろいろな方々との、そのときは交渉ではございません、あいさつでございますので、そこでいろいろなことが取り決められた、具体的にということだとは承知をいたしておりません。

首藤委員 いや、それは石破長官、軍事の専門家であり、また日本の軍事の頂点に達している長官のおっしゃることとは違いますよ。

 これは、ビジネスマンが行って、やあやあやあ、名刺交換しましょうというんじゃないんですよ。それはまさに議事録の世界ですよ。やったことをすべてきちっと、何時に、何とか一、二分、○○、何時に会ったというようなことをきちっと書いているわけですよ。だから、先遣隊はだれと会ってどういう話をされたか、それをきっちり言ってください。

石破国務大臣 これは議事録はとっておりません、とるべきだったという委員の御指摘かもしれませんが。

 最初に行きまして、私たちが大事だと思いましたのは、個々ばらばらに会うのではなくて、部族の長、そして大変な影響力を持っている宗教指導者、そして評議会、そういうような方々と一堂に会して、まず自衛隊というのはだれに偏るわけでもない。それぞれ力関係というものは、いろいろ委員からも御教導いただいたこともありますが、それぞれ違う。そして、部族も強弱いろいろ分かれている。部族間の間に、AとBは仲がよく、BとCは仲が悪く、AとCは仲がよいとか、いろいろなことは事前の情報としては承知をいたしております。

 しかし、そこへ行ってみて、我々日本でもそうじゃないでしょうか、初めて選挙に出ますときに、よろしくお願いしますということをやる。まずそのことをやらせていただいた。いろいろな方がお集まりになっておられるところで頭を下げ、よろしくお願いします、そのことに最大の意義を見出しており、その所期の目的は達したと承知をいたしております。

首藤委員 いや、それは石破長官、大変なことですよ。我が国の先鋒隊が行って、一番最初に行って会うというのは、どういう話で会うか、ラグビーだってそうでしょう、ファーストスクラムと言うんですよ。始まったとたんにがあんとぶつかって、それをファーストスクラムと言うんですよ。ですから、先遣隊が行ったって、最初に会って、だれと会って、どういう話をするか、だれと握手したというのは物すごく重要なことですよ。そんなことが、やあやあやあで済みました、一般的な話を聞きましたではしようがないですよ。

 そして、ではその人たちは、やあやあやあを言うために行ったのか。これはボランティア活動でやあやあやあと言うために行ったのか、そうじゃないでしょう。我が国の自衛隊の本隊が出るかどうかを決めるために行ったわけでしょう。それがそんな話じゃないじゃないですか。

 では、そうすると、一体我々は先遣隊の報告というのを、内容が何もないということですか。すべての情報は結局オランダ軍から来なければならない、したがって、先遣隊の書いてきた報告書に基づいては私たちは自衛隊の本隊を送れないということですね。よろしいですね。(発言する者あり)意味がわからないと。

 要するに、それぐらい、だれと会い、何時に会い、どういう話ができたか、だれと話をしましたか、話を詰めましたか、そういうものがきちっとした報告でない限り、我々は次のステップへ進めないということじゃないですか。いかがですか。

石破国務大臣 私どもが参りました意義、つまり、人道の支援に参りました、日本国として人道支援をこのサマワ市においてやらせていただきたい、ぜひ御協力をいただきたい、そしてその後はいろいろな懇談というものでございます。

 初めて行って、委員御指摘のように、それは委員もいろいろな現場を歩かれて、事情に通暁した上での御発言かと思いますけれども、最初に行って、ぎりぎりそういうような、それではまず治安について話をしましょう、こうなったらば、A部族、B部族、C部族、その方々はどのように行動していただけますかということではなくて、私たちとしては、まず、来ますということで、初めて顔を合わせ、この人間は信頼できる人間だという信頼を築く端緒としてそういうことをやったということでございます。

 そういうことで、それではその報告は確かなのかというようなことになるのだろうと思いますが、累次申し上げておりますように、今まで専門調査団も参りました、それはイラク特措法に基づくものではないが。そういうものを積み重ねていって今回の報告に至った。では、市議会のだれに会ったかということをお尋ねいただくとするならば、それは、当時有効に機能しておった市評議会の議長にお目にかかったということでございます。

首藤委員 この報道によりますと、東京の陸上幕僚監部は、到着直後の二十日に最優先で評議会を訪問するつもりだったが、結局いつ会えるかわからない、サマワの市評議会のアリ・ダファーイ議長以下、評議員十二名のうち九名はもうとっくに巡礼に出発して、いない、そういう報告がされているんですよ。これは私が二十六日の委員会で質問した内容じゃないですか。岩手日報、二〇〇四年一月二十四日の、まさにこの一連の論議の原点になったことでしょう。どうしてそんなに、いもしない、巡礼に行っている人にお会いになることができたんですか。

石破国務大臣 議長さんとお目にかかったのは二十日というふうに申し上げました。

首藤委員 それは二十日で、議長に会ってきちっとその話をされたということですね。それは確かですね。

石破国務大臣 そこへ行って、我々がサマワに来た意義、御説明をし、御理解をいただくような端緒としたということでございます。そこには、やはり私は思いますけれども、最初のあいさつというものが極めて重要であって、そこにおいて本当に友好的な関係というものをつくる、その端緒として非常に大きな意味があった、それがなくて活動はできなかったということを考えておるところでございます。

首藤委員 これは、私、なぜこんなことをしつこく聞いているかというと、本当にだれと何時に会って、その人に今度また頼れば私たちは情報がしっかり得られるのか、そして、どの程度この市の評議会というものが私たちの援助の受け皿になるのかということを確定したいわけですよ。

 ですから、実際に本当に行ったのか、本当に隊長が評議会の議長に会ったのか、そしてそういう話をされたのか、それを聞いているんですよ。いかがですか。もう一度確認してください。

石破国務大臣 すべてその席におられた方々の氏名を全部今ここに挙げろと言われても、なかなかそれは難しい。その時点でそこの場所に、当時有効に機能しておった評議会の……(発言する者あり)いや、二十日の話でございますから、二十日の時点のお話でございます。

 二十日の時点で、その評議会の議長さん、あるいは議長さんだけではなくて、宗教指導者であり、そしてまた部族の代表の方であり、そういう方々とごあいさつをさせていただいたということであります。

首藤委員 これは何度も言っているように、私が二十六日の質問をしたのは、二〇〇四年一月二十四日付の岩手日報、これを引いて言っているわけですよ。そこに書いてあるでしょう。最初に私が、あれを見てくださいよ、予算委員会の速記録の速報版その二を見てください。私が質問しているの、そうでしょう。私はこの記事を、共同通信の及川記者の記事を引用しながら言っているわけですよ。何度も言っているわけですよ。サマワ……(発言する者あり)え、誤報なの。誤報だという証拠はあるの。

 サマワ市議会関係者によると、評議会のアリ・ダファーイ議長以下、評議員十二名のうち九人、ほとんどですよね、それがCPAに通告しないまま巡礼に出発しちゃって、もういないと。だから、評議会が解散されるとかなんとかいうよりも、ともかくだれもいないというときに、だれもいないのにどうしてその評議会に会ったか。十二人のうち三人に会ったって、たとえ三人が全部残っていたとしても、それは評議会にならないわけですよね。

 ですから、おっしゃっていることが正確でないと言っているわけですよ。これはアバウトな話じゃなくて、日本が最初に、自衛隊をこの極めて危険な地域に送り出そうということですよ。ですから、そんないいかげんな情報に基づいていて、しかもくるくるくるくると防衛長官の言うことが違うんだったら、もう話が進まないじゃないですか。時間のむだだよ。

石破国務大臣 累次答弁を申し上げておりますように、総辞職をしたのが二十四日ということを確認をいたしております。そして、二十日の時点で、そこに市評議会の議長さんがおられ、そこにおいてごあいさつをさせていただいたということを申し上げておるわけでございます。

首藤委員 これは委員会に求めたいと思いますが、この新聞、もしかしたらそれは誤報かもしれませんよね、おっしゃるとおり。そういうことはある。しかし、そうでなかったら、自衛隊の最高権威者である長官がありもしないことを言っているということで、大変な虚偽の答弁になるから、問題ですよ。

 ですから、それは、実際の事実関係を明確に、責任を持ってやっていただきたい。責任を持って統一見解を出していただきたい。それがないと先へ進まないではないですか。

 時間とめてください。時間とめてください。

石破国務大臣 先ほど来答弁を申し上げているとおりでございまして、二十日の時点で、多くの方にお目にかかった、そこに市評議会の議長さんもいらっしゃったということを答弁申し上げておるとおりでございます。

 そこにおられたと何度も申し上げておるわけで、これ以上何を申し上げたらよろしいのか。そこで会ったと申し上げておるつもりでございますが。

斉藤委員長 首藤君。(発言する者あり)どうぞ質問をしてください。どうぞ質問を続けてください。

首藤委員 やはりこれは、本当に我々の最初の点だから、最初の出発点だから、情報をしっかりやらなきゃいけない。

 だから、本当にこの記事に書いてあるように、もうみんな、サマワの市評議会の議長も巡礼に出発して、いないのか。あるいは、長官がおっしゃるように、隊長が行ったら、そこの評議会があって、人がたくさんいて、宗教指導者もいて、そこでしっかり話ができたのか。それを、本当にそうだということを御確認ください。それがしっかり、はっきりわかるまで先へ進まないじゃないですか。

石破国務大臣 具体的に何を話し、向こうがどう応答したかということは、議事録をとっておりませんので、それは申し上げることはできません。しかし、そこに二十日の日に行って、お目にかかった、話をしたということは事実でございます。

首藤委員 これは、だから、やはりきっちりと出してください。きっちりと事実関係、だれとどこで会って、だれとどこで会って、だれとどこで会って、いいですか、だれとどこで会って、どういう成果が上がったのか。そんな、ただ行って、やあやあと言っただけのはずがないんですよ。それをしっかり出してください。それに基づいて、果たしてあなたが虚偽の言論を言っているのか、あるいはこの新聞が間違っているのか、それがわかるじゃないですか。どうですか。

石破国務大臣 だれと会ってということがわかる範囲できちんと御説明をするというふうに努力はいたします。しかし、先生御指摘ではございますが、そこに行って、そこに何人いたか、日本が来たということで本当に喜んでいろいろな方が来ておられる。あなたのお名前は、あなたのお名前は、所属はということで、すべての方のお名前、役職、そういうものが、これがすべて出せるかどうか、そこはわかりません。

 実際問題として、最初にごあいさつをする、それは、日本が来た、こういう人道支援をしに来た、現地の方々に喜んでいただく、理解の第一歩になる。そして、治安の情報というのはいろいろな方向からとり、私に報告が上がってきているものでございます。

首藤委員 それは委員長、もうこんな話をずるずるずるずる、少しずつ少しずつ話が変わっているんじゃ、話、進められませんよ。それは明確にそれを出していただいて、答弁していただいて、明確にしていただかない限り、これ以上進められませんよ。

 時計とめてください、まず。

斉藤委員長 ただいまの質問について、再度、石破防衛庁長官、御答弁いただきたいと思います。(発言する者あり)戻ってください。戻ってください。

石破国務大臣 二十日の日に、宗教指導者あるいは市評議会の方、あるいは部族の方、お目にかかり、その中に市評議会の議長がおられたということでございます。この答弁は一貫をしております。

斉藤委員長 首藤君。(発言する者あり)答弁しています。答弁をいたしております。

 どうぞ席へお戻りください。お戻りください。(発言する者あり)いえいえ、どうぞ質問を続けてください。質問を続けてください。

 どうぞ席へお戻りください。大臣は答弁をしています。どうぞ質問を続けてください。答弁はしていますから、質問を続けてください。答弁をしていますから。答弁をしていますから、質問を続けてください。

 もう一度答弁をお願いを……(発言する者あり)ちょっと待ってください。その前に、どうぞお戻りください。自席へお戻りください。

石破国務大臣 二十日の日に現地の多くの方々と一堂に会してお目にかかりました。それは、それぞれ別個にお目にかかるよりも、一堂に会してお目にかかるというところに意義がある、そういう判断もございました。その場に、市評議会の議長さんがいらっしゃったとの報告を受けております。

斉藤委員長 首藤君。(発言する者あり)後刻、理事会で協議します。後刻。

 どうぞ、どうぞ質問をしてください。(発言する者あり)後刻、後刻。どうぞ、どうぞ質問を続けてください。答弁者、大臣はしっかりと答弁をいたしております。どうぞ質問を続けてください。

 どうぞ着席してください。どうぞ着席をしてください。(発言する者あり)いや、大臣は答弁をしましたから。どうぞ質問を続けてください。

 再度、ゆっくり、わかりやすく御答弁いただきます。石破防衛庁長官。

 どうぞ自席へお戻りください。お戻りください。答弁をさせますから。お戻りください。

石破国務大臣 我々の先遣隊が参りまして、サマワ市の議長さんあるいは宗教界の代表、部族の代表、そういう方々とお目にかかりまして、訪問の趣旨を、そしてまた我々がサマワに参りました理由を御説明いたしました。そして、その席にはサマワ市評議会議長さんがいらっしゃいました。そこにおいて、サマワ市評議会議長さん、そしてまた宗教指導者の方々、多くの方々から、懇談をし、そしてまた日本の派遣について歓迎するというような意、それは表されたということは累次答弁を申し上げております。

 繰り返して申し上げますが、その場に市評議会議長さんがいらっしゃったという報告を受けております。(発言する者あり)

斉藤委員長 どうぞ質問を続けてください。(首藤委員「質問に答えていないでしょう、どこでだれに会ったかということを聞いているんですから」と呼ぶ)質問を続けてください。どうぞ質問者は質問を続けてください。大臣は答弁をいたしました。

 石破防衛庁長官。

石破国務大臣 その席に市評議会の議長さんがいらっしゃったという報告を受けております。私は、その報告というものを尊重したいと思っています。そこに市評議会の議長さんがいらっしゃった、そして、我々の訪問意図というものを御理解いただいたということでございます。

    〔委員長退席、小野寺委員長代理着席〕

    〔小野寺委員長代理退席、委員長着席〕

斉藤委員長 次に、池田元久君。

池田委員 池田元久でございます。首藤委員に続いて質問をいたします。

 イラクに対する自衛隊の派遣問題、大変重要な問題でございます。私は、外交政策的な観点から、北朝鮮とのリンケージといいますか、そういうものを含めてお聞きしようと思ったんですが、大変ゆるがせにできない問題が今論議をされておりますので、その点から入りたいと思います。

 イラクに対する自衛隊の派遣、ああいう状態のところに自衛隊を派遣するというのは、日本にとっても初めてのことであります。十分国民や議会に対する説明、納得がなければ、そのそもそもから、派遣自体の、やるべきかどうか、そこに立ち返ってやはり我々としては考えなければいけない。

 そこで、先遣隊が行きました調査の信頼性、この問題が今焦点になっていると思います。大変重要な問題だと思います。それで、先遣隊が果たしてサマワ及びルメイサの評議会とどのような接触をしたかというのがポイントだと私は思います。二十日に先遣隊が評議会の議長を含む何人かの方に会ったというような話も出ておりますが、具体的な日取り、そして相手の方、場所などについて、正確にお答えをいただきたいと思います。

石破国務大臣 日付は一月の二十日、場所は県知事のオフィスと報告を受けております。お目にかかった方すべての名前をここで申し上げることは、それは差し控えますが、先ほど申し上げたようないろいろな方々にお目にかからせていただいた。それをもう一度申し上げますと、部族の代表、あるいは政党の代表、宗教界の代表、女性の方の代表、そしてまたサマワ市評議会の議長さん、そういう方々と意見交換をし、ごあいさつをさせていただいたというふうに承知をいたしております。

池田委員 その所要時間と、それからどんな話題が出たのか、全部を言えとは申し上げませんが、お答えをいただきたい。

石破国務大臣 所要時間どれぐらいであったか、詳しくは承知をしておりません。

 ただ、こんにちは、さようならという数分間のものではなくて、それぞれ、我々が来た目的、意義等々御説明を申し上げ、そこにいらっしゃる方々から意見が表明をされたということでございますから、これは数十分ないし一時間前後というふうに承知をいたしております。

 これは、何分かかったかということが、もし正確に、御要求があれば、これは調べて御報告を申し上げます。

池田委員 本末の末の方はいいですから、肝心なところを教えてほしいと思いますが。

 人数もざっとおっしゃっていただき、時間も数十分から一時間以内、そのあたりも、約五十分とかあるはずですから、ちゃんとこれは、我々がどこか遊びに行って人と会うわけじゃありませんから、大事な話ですから。何が主要のテーマであったか、あるいはテーマがなくてただ表敬だったのか、その点も含めてお答えいただきたい。

石破国務大臣 主要な目的はごあいさつです。

 私たちが参りました意義、そして、これから皆様方の御協力をいただきながらこのサマワの復興ということをやっていきたいという最初のごあいさつを申し上げ、それぞれの方々から意見の表明があった。そして、それぞれの御意見の表明の中で、自衛隊の安全や我々の安全面を含めた活動について歓迎する旨のお話があり、それを阻害するようなことはなかったと承知をいたしております。

池田委員 評議会の議長がそこに居合わせたというか、あるいは集められた、参加したというふうに聞いていますが、その評議会議長とのやりとりはどうですか。

石破国務大臣 そこに市の評議会の議長さんがおられたと報告を受けております。

 アラビア語を日本語に訳しておりますので、細大漏らさず確かであったかどうか、そしてまた、御発言の内容がすべてお話しできるかどうかは別といたしまして、これは、日本隊が来たのは歓迎をする、日本隊が来たのは平和のあかしである、その旨の発言があったと報告を受けております。

池田委員 それを、今の話を聞けば、本当にあいさつ、表敬、そういうふうに受け取れて、我々が外国へ行ってそういうこともしますので、よく想像できます。

 しからば、評議会のメンバーといいますか、しっかりと公式にといいますか、訪問をしたのかどうか、お尋ねをしたいと思います。

石破国務大臣 私が受けております報告は、評議会の議員さん一人一人を、委員の表現をかりれば、しっかりと訪問をしたという報告は受けてはおりません。

池田委員 評議会のオフィスに行ったんですか。

石破国務大臣 県知事のオフィスにおきまして、それぞれの方々とお目にかかったと報告を受けております。

池田委員 一番大事な、プライオリティーの高い評議会にはどうして行かないんですか。

石破国務大臣 なぜ行かなかったかという報告は受けてはおりません。

池田委員 あなたも防衛庁長官をやっていてその必要性はわかると思うんですが、どうですか。必要じゃなかったんですか。

石破国務大臣 これは委員も御承知のことと思いますが、現地は、市評議会、そしてまた部族長、宗教指導者、あるいは政党、いろいろな方々で成り立っております。それぞれがいろいろな関係をとりながら町を運営しておるわけで、もちろん市評議会の重要性というものは私もよく認めておるところでございます。

 しかし、その場に市評議会の議長さんがいらっしゃり、日本が来たというのは平和のあかしであり歓迎するというふうにおっしゃった。そして……(発言する者あり)おっしゃったとおり申し上げておるわけでございますが、そして、部族長の方あるいは今申し上げたような方々、そういう方々とお話をし、そして、周りを、現地を歩いて、治安の状況というのはどうであったか。やはり私は、現地を歩いて実感をした人たち、そしてまた、昨年来現地に行って見てきた人たち、その人たちの報告をもとに考えておるわけでございます。

池田委員 質問に答えていないですね。評議会と直接接触したかどうかということを今聞いているわけですよね。それについて何も答えていない。歩いたとか、訪問すればそれは歩くでしょう。そんな、ちょっと時間がむだですから、そういうことをおっしゃらないでいただきたい。まじめに議論していただきたい。

 評議会に行っていないですね。

石破国務大臣 評議会に行き一人一人の方とお目にかかったということはいたしておらないと承知をしております。

池田委員 もう一度答えてください。

斉藤委員長 もう一度答弁を願います。石破防衛庁長官。

石破国務大臣 評議会に行ったとの報告は受けておりません。

池田委員 そこまでおっしゃるのに時間がかかるので、もうちょっと早く、防衛庁長官ですから、迅速をもって旨とするところもあるんですから。

 評議会に行っていないということがわかりました。

 それで、先遣隊ではなくて、日本の政府職員が評議会に行ったのは、前に行ったと聞いておりますが、いつでしょうか。外務大臣、おわかりになりますか。

川口国務大臣 ちょっと私の記憶には直ちにないものですから、これは至急調べたいと思います。

池田委員 川口外務大臣とは、お近くでいろいろ論議を聞いておりましたが、これは非常に重要なことですよ。日本の政府がやはり、派遣候補地のところ、当時は決まってはいなかったかもしれませんが、予定地のところの方々とできるだけ早く会う、会っていらっしゃると思うんですが、大体その時期は、外務省職員も含めて、わからなければいけないと私は思うんですよね。

 それで、外務省の方から同僚が聞きましたら、去年の秋だというふうに聞いております。したがって、これだけ重要な先遣隊の調査で、去年の秋に行ってからずっと接触はないわけですから、当然行くべきですね。重要な条件が欠落していると言わざるを得ません。

 この調査、十分だったと思いますか。

斉藤委員長 どの大臣に質問でいらっしゃいますか。(池田委員「防衛庁長官」と呼ぶ)

 石破防衛庁長官。

石破国務大臣 十分なものと思っています。

池田委員 十分じゃないでしょう。どうして十分なんですか。

石破国務大臣 治安、ニーズその他について、その他と申しますのは、治安、ニーズ、あとは現地の方々の御協力の度合い、あるいは宿営地がつくれるかどうか、そのような各方面の情報から総合して、十分だというふうに判断をいたしたものでございます。

池田委員 あきれました。一番大事な当事者から話を聞いていない、接触をしていない。それで、何か十分だということを強弁しておりますが、日本語の十分というのはあなたの使っている十分というのと違うんですよ。こういうのをまさに不十分だと言うわけです。

 では、その評議会、実質的に機能しているというふうに前の文書で出ているわけですが、この評議会の状況はどうなっていますか。防衛庁長官。

川口国務大臣 評議会でございますけれども、これはやっている仕事というのは、行政サービス提供を企画、監督する立場にある組織でございます。

 それで、今現在、オランダあるいはCPAから我々が把握をしている情報によりますと、委員の人たちが辞職をしたという情報に接しているわけですけれども、今後の見通しということでいいますと、信頼すべき情報筋の見方でございますけれども、恐らく三月の前半にも新たな選挙が行われるであろうということでございまして、そして施政当局としてはCPAが選挙管理をするということでございます。

 今サマワの町で日常的な行政が滞っているとか、治安が危なくなってきているとか、非常に問題が起こっているとか、そういう情報には全く接しておりませんで、物事は今まで同様に動いている、そういう情報を我々は把握いたしております。

池田委員 外務大臣も何か病気にかかったんじゃないかと思うんですが、直接答えていただきたい。要するに、今評議会の存在、機能についてお尋ねしているわけですから。

 ルメイサ市の評議会も、CPAとの対立から、二十一日、全員が辞任したということもありますが、サマワでは、十二人のメンバーのうち六人ないし九人がメッカ巡礼に出たと、きょうも別の報道機関からこの記事が入っておりますが、このような評議会、現在まさにお休みだと思うんですが、石破長官にお聞きします。

石破国務大臣 二十四日の日に総辞職をしたということで、評議員、評議会議員と言ったらよろしいのでしょうか、これが存在していないということでございます。

池田委員 まさにそういうのは、少なくとも機能は停止しているということは、もうはっきりしているんじゃないでしょうか。そういうことなんですよね。

 それで、その評議会に接触していない。きょうの報道によれば、市評議会事務局長は、自衛隊の先遣隊がサマワ入りして以降、評議会に何の連絡もない、こう言っておりますが、そうですね。違いますか。

石破国務大臣 事務局長さんがそのようにおっしゃったという報道は承知をいたしております。そして、私どもは、評議会との接触は、先ほど来申し上げておるとおりのことでございます。

池田委員 今私の言う接触は直接の接触を言っているわけですから、自衛隊の先遣隊がサマワ入りして以降、評議会に何の連絡もない、直接評議会に来る、そういう連絡がないというふうに事務局長が言っているわけですから。そんなことでいいんですか。

石破国務大臣 それは行くべきものだと思っています。それは順番、つまり、ニーズも把握をしなければいけない、治安の状況も、そしてまたオランダ軍との調整も行わなければいけない。そしてニーズが、実際に水がどうであり、あるいは学校がどうであり、病院がどうでありということも把握しなければいけない。もちろん、おれのところへあいさつに来ていない、おれのところへ来ていない、けしからない、そういうことはあるのだろうと思う。しかし、一遍に全部行うということは難しい。そして、先ほど来申し上げているように、二十日の日に大勢の方がいらっしゃった、その中に評議会の議長さんがいらっしゃったとの報告を受けている。

 したがって、評議会と全く接触なく、評議会にあいさつもせず、例えば、これはもう同じ例で適切かどうかわかりませんが、町議会にあいさつをするというときに、議長さんにあいさつに行く。議会事務局長さんにももちろん行くべきだろう。しかし、代表者たる方にまずごあいさつをするということをもって接触をしたということは、この場合も同様のことが言えるのではないか、これは私の推量でございます。

池田委員 評議会に直接接触し、連絡もとり、そして訪問しなくていいんですか。たまたまあなたは、知事のところで評議会の議長に会った、表敬をした、あいさつをしたということを盾に、そこだけ言っておりますが、私の質問に全然答えていない。いいんですか。

石破国務大臣 評議会と接触をしたのかという御質問でしたので、評議会の議長さんがそこにおられ、そして日本の、先ほど委員がお尋ねになりましたが、評議会というものに初めて日本政府としてお目にかかったわけではありません。ずっと従来から、それは奥大使、井ノ上書記官、多くの者たちが接触をしてきたのだろうと私は承知をしております。そのときに初めて会ってこんにちはということではなくて、日本としてどうなのか、そして日本から自衛隊が来るということについてどうなのか、いろいろなお話をしてきた。その自衛隊を歓迎するという旨の御発言があったとするならば、それは今までの接触の継続性というものはあるのではないかと思っています。

池田委員 そのあいさつをしたことを後から理由にしているわけですから、そんなおかしな答弁ないですよ。私もいろいろ質問していますけれども、そんな大臣いませんよ。

 私が聞いているのは、評議会に訪問していない、連絡をとっていない、あなた認めたじゃないですか。そのことを、またもとに戻って、あいさつに行ったとかなんとか。

 それで、先遣隊の調査、こんなずさんなことでいいんですか。自衛隊が今度新しい一歩を踏み出すわけでしょう。そういう自衛隊の派遣先の調査で、その地方の組織、暫定的な、政府というか自治組織といいますか、その評議会に連絡もとらない、訪問もしない、それで済むと思いますか。あいさつしたからいいとかという、そういうすりかえではなくて、直接答えてくださいよ。

石破国務大臣 外務大臣から答弁がございましたが、今もサマワにおいて行政は機能しておるわけでございます。

 それは、市評議会とは何であるか、もちろん重要な機関であります。重要な機関であり、それが何をやっているかというと、イラクにおける主要な戦闘が終了し、旧政権崩壊後の状況の中、各地で知識人、宗教家などの有力者が集まり、各地域での日常生活に係る公共サービス提供再開を企画、監督するものであるということでございます。そういうものだと位置づけております。そういうものの重要性というものを私は軽視しておるわけではございません。

 しかし、報告書が、それではずさんとか十分ではない、そういうふうには私は承知をしておらないところでございます。

池田委員 これはお聞きになっていれば、いかに今の答弁が無理な答弁であるかということはおわかりだと思います。評議会というのは主要な要素ですからね。端っこじゃないんですよ。しかも、支援の先になる可能性が非常に高いところでしょう。そういうところに、評議会に訪問もしたこともないし、そして向こう側は何の連絡もないと言っているわけですから、これをずさんと言わずして何と言うんですか。こういうときにずさんという言葉を使うんですよ。

 それで、その評議会自体、結局、十二人のうち多くが巡礼に行っている。機能していない。機能していませんね。

石破国務大臣 二十四日に総辞職をしたと承知をしております。

池田委員 そこで、もう一点。

 そもそも、評議会が日本政府にサマワは安全な町だと発言したとされていることについては、この事務局長は、安全というのはサマワ市民は善良という意味で、治安上の安全を確保するという趣旨ではないと。善良ということで、善良だから安全だとは言えないわけですよね、これはだれにお聞きしてもわかるとおりです。何でこれは安全なんですか。

石破国務大臣 そういう報道がある、そして、サマワは安全であるということは、サマワ人は善良であるという意味である、私その報道を正確には承知いたしませんが、それは事務局長とおっしゃる方の御見解としてそのようなことがあるということは承りました。

 それは、私はそれによってサマワの治安情勢が我々の権限、能力、装備をもってして安全が確保されないような状況に至っていると判断をしていないということでございます。

池田委員 私は、この問題を初めて取り上げるんですが、今の一連のお話をお聞きして、こんなことで本当にいいのかなと思います。我々は別に与党、野党ではなくて、自衛隊の隊員の方々をイラクへ派遣する、先遣隊が一日半調査して、評議会にも直接会っていない、訪問していない、連絡もとっていない。そんなことで、自衛隊の派遣をあくまでやるというのは、果たして多くの方々が納得できることでしょうか。それを石破長官にお聞きしたいと思います。

石破国務大臣 今の時点で、私は、サマワの評議会議員が総辞職をした、そのことが治安に影響を与えるという判断はいたしておりません。しかしながら、今後、状況は日々刻々変わるということも申し上げました。そのことが、治安においてあるいは安全において、今の段階で私は安全と判断をしておりますが、今後変わる状況というものは注視をしていかねばならないと思っています。

池田委員 評議会もそうなんですが、今度の予算もそうなんですけれども、援助をする対象の要件といいますか、何か基準はあるんでしょうか。

川口国務大臣 これは、今までの経済協力の相手方ということで申し上げますと、NGOもございますし、それから病院等もございますし、国もございますし、地方政府もあるということで、いずれにいたしましても、我が国の税金を使って効率的な、透明な援助をすることができる、そういった団体あるいは組織であるということでございます。

 現実的には、本当に、NGOから大きな国のような組織までさまざまあるということでございます。

池田委員 ですから、そのスタンダードというか基準。大切なお金を使うわけですよね、しかも有効に使いたい。ですから、当然、お役所ですから、要件、基準はあるはずです。それをお示しいただきたい。

川口国務大臣 ですから、先ほど申しましたように、これは効率的に、透明に使っていかなければいけない。それで、我が国の援助について言えば、そういったことを確保するための細かいいろいろなルールは決まっているということでございます。それを満たす相手方に対して援助をして、経済協力のお金を使っていく、そういう考え方でおります。

池田委員 それは当然あるわけですから、原則、四項目とか五項目とか、得意の五項目というのがありますけれども、それを説明していただきたい。

川口国務大臣 先ほど申し上げたような、能力がある団体ということで考えておりまして、それぞれの相手方がそれに合うかどうか、要するに適格かどうかということについては、個別に、そのケースそのケース、その相手方その相手方で判断をしております。

池田委員 今のお話だと非常に無原則に聞こえますが、それでいいんですか。

川口国務大臣 一概に申し上げることは非常に難しいわけでございまして、きちんとやれるということで考えております。例えばNGOであれば、きちんと設立をされているとか、その活動とか、そういうことをチェックしていくということでございますし、それは、国であれば違いますし、また地方政府であれば違う。

 いずれにしても、援助をした結果、どのようなお金の使い方がなされたかということについては、相手方の了承を得た上で十分に情報公開をさせていただいているわけでございまして、それを見て御判断をいただくということかと思います。

斉藤委員長 池田君、時間が参っております。

池田委員 同僚議員の了承を得ました。

 全く驚きましたよ、これには。本当ですか。ルール、原則がない、私は信じられない。今ここで口先で答弁するのはいいとしても、あるのなら書面で出していただきたい。

川口国務大臣 ルールがないということを申し上げておりませんで、経済協力の相手方として、すなわち、効率的に透明性を持って国民の税金を使うということに適切である団体、その適格性を持っている団体ということで、ケースケースについて判断をしているということです。

 それで、その判断が間違っていたかどうか、ある特定の団体等につきまして。それはその後、支出をした後、きちんと情報公開をしているわけですから、それに基づいて判断をしていただくということであるかと思います。

池田委員 占領下にあるイラクであるから、なおのこと、どういう要件、どういう条件の相手先にお金を渡すかというのは極めて重要なことですよ。日本のタックスペイヤーだってそんなこと承知しませんよ、そういう基準がなければ。これもまたずさんと言わざるを得ない。もし何か短い文書でも何でも、あったらぜひ当委員会に出していただきたい。

 それから、時間がないので、もう一点だけ最後にお聞きします。

 一般の市の評議会は対象になるわけですね。

川口国務大臣 市の評議会であって、なおかつ、そういった、先ほど申し上げたような基準を満たす、要するに、実施をしていく能力のある評議会ということであれば対象となり得るということでございますし、評議会であればすべてが対象になるということでは必ずしもありません。

池田委員 資料を出すかどうか。

川口国務大臣 基準につきましては、私が先ほど申し上げたことに尽きるということでございます。

池田委員 いや、今の答弁がそうだとおっしゃるんだから、基準はなかったんです。

 調査は一日半で、その肝心の評議会に訪問もしていない、それで、表敬だから、表敬であいさつしたからいいんだ、それから援助先の要件もはっきり決まっていない、こんなことで、我々は、はい、そうですかと言うわけにいきませんよ。

 すべてやり直して、リセットして、出直して我々に提示をしていただきたい。そのことを申し上げ、また後刻、ずさんな調査、ずさんな援助のやり方と言わざるを得ませんので、引き続きこの問題を追及していくということを申し上げて、質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

斉藤委員長 次に、木下厚君。

木下委員 民主党の木下厚でございます。

 まあ、あきれたね。今までの答弁を聞いていて、本当に、戦後我が国の防衛政策を変更しようという大変大きなその転換点にありながら、もう答弁が詭弁とごまかしと、そしてうろたえたこの答弁、これで本当に自衛隊の皆さんが現地へ行って人道復興をする、これはもう自衛隊の皆さんに大変申しわけない、そんな思いがいたします。

 今の答弁を聞いていますと、先般お亡くなりになった奥参事官それから井ノ上三等書記官、この政府のずさんなこうした自衛隊派遣、その手足となって動いた彼らがまさに政府の犠牲になった、そう言わざるを得ない。大変悲しい思いで私は聞いていました。

 そこで、今までの答弁漏れの幾つかの中から質問させていただきたいと思いますが、その前に一つ、先ほど委員長の方から、理事会で協議をするというお話がございました。一体何を協議するのか、それについて全く聞いていないので、撤回されたのか、そこをもう一度御答弁をしていただきたいと思います。何を理事会で協議をすると、それをちょっとはっきりおっしゃってください。

斉藤委員長 前の質問者の、前の前になりますかね、首藤委員の質問時にそのような発言が、お尋ねがあったような気もいたしますが、撤退をされてしまったということもございまして、再度確認をしたいというふうに思いますが。

木下委員 委員長が御自分でおっしゃったんだから、みんなにあれするなり、何を理事会で協議するのか、撤回するのか、なくなったのか、それをはっきりおっしゃってください。

斉藤委員長 その件につきましては、筆頭間で協議をさせるということで私ども承っております。

木下委員 何を協議するのか。何を協議するのか、中身は。

斉藤委員長 首藤委員の質問と石破防衛庁長官の答弁、その間のことだということでございます。

木下委員 では、それはそれできちんと後で協議していただきたいと思うんですが、先ほど来、サマワの評議会、これについていろいろ議論がありました。どうも、評議会の話を聞いていると、おっしゃっていることがよくわからない。

 とりわけ、これは小泉首相も撤回された、あるいは石破防衛庁長官も撤回されたんですが、撤回は撤回としても、このサマワの評議会が存在し機能している、これがまさに自衛隊派遣の唯一最大の根拠になっている、そのためにわざわざ列記しているわけですよ。総理の発言の中にもはっきり出ているわけですよ、一番先に。あるいは、この報告書の中にも、「機能している。」と。これが一つの根拠になっている。そして、非戦闘地域がある、サマワだと。要するに、虚構に虚構を重ねていった上に自衛隊派遣を決定するということなんですよ。

 そのサマワの評議会が機能していないということになれば、これは誤解とか、あるいは先ほどお話があったように、十分な調査をしていない、そういうことになると思うんですが、そこは防衛庁長官、それが一つの大きな根拠になっている、唯一絶対ということではないかもしれないけれども、大きな根拠になっているということは間違いないですね。

石破国務大臣 もちろん、唯一絶対ではございません。そのような答弁をしたことは一度も私どもはありません。

 申し上げておりますのは、先遣隊が向こうを立ちましたのは二十一日、時系列的に申し上げます、それが日本に到着し、私が報告を二時間余りにわたって聞き、議論をしたのは二十三日金曜日夕刻のことであったと記憶をいたしております。その時点ではまだ総辞職ということは行われておりませんでした。

 そこにおいて、評議会の機能だけではございません。実際に部族長の方々がどうであり、そしてまた評議会の方々、あるいは宗教指導者の方々がどうであり、そして現地においてどれぐらいの事件が起こり、そしてそれに対して、それがどのようなものであったか、そして自衛隊のいろいろな予想される、ゼロではないと申し上げているわけですから、それに対してどのような対応が考えられるかということを議論したのが二十三日ということでございます。そして、二十四日に評議会が総辞職をなさったということでございます。

 そして、我々が判断をいたしておる、そして今でもそうですが、その後に起こりました事象ということが、サマワの我々の治安あるいはやろうとしていることの判断に影響を与えるような、この判断を変えなければいけないような事態が、二十四日以降、本日、二十八日でございますが、それまでに発生したかといえば、それは、我々の判断を変えなければいけないような事象は発生をしていないということを私は認識をしておるところでございます。

木下委員 いや、そんなこと聞いていないんですよ。

 要するに、わざわざ総理の答弁の中にも、あるいはこの報告書の中にも書いてあるんですよ。「サマーワ市評議会は住民の意向を反映した構成のため、実質的に機能している。」と。これが一つの判断、まあそれは、さっきおっしゃったようにいろいろなあれがあるでしょうが、わざわざ総理の発言の中に一項目設けて書いてあるんだから。ほかのことは書いていないですよ。ただ、サマワは安定していると書いてあるけれども。それだけ重い意味を込めて書いたんだから、そこをはっきり認識しなきゃだめですよ。大したことないという意味にわざと言おうとしているけれども、そうじゃないんです。そこをもう一回答えてください。

石破国務大臣 そこははっきり申し上げておきますが、そのことが、総理が撤回をなさった、そこが現在において総辞職して存在をしていないということ、それが安全の判断に影響を与えるものなのかどうなのかということが問題なわけでございます。唯一絶対というようなことを私どもはもちろん申し上げておりません。市評議会、あるいは宗教指導者、あるいは部族、あるいは市民の状況、そういうもので安全というのは確保されるのであって、それが唯一絶対であるかのごとく言ったことは、私どもはございません。したがいまして、判断というものは変更がないということを申し上げているのです。

木下委員 今になってサマワ評議会の評価をどんどんどんどん、大したことない大したことないみたいに下げようとしているが、しかし、住民の意向で選ばれた評議会ですよ。(石破国務大臣「違います」と呼ぶ)違いますか。ここに書いてあるんですよ。住民の意向でと書いてあるじゃないか。はっきり答えてください。

石破国務大臣 これも何度か答弁をしておることでございますが、CPAが申しておりますのは、それを、例えばシーア派の方々あるいは女性の方々、そういう意見がさらに反映をされるようにコーカス方式というものをやろうという提案をしたということですね。今も住民の意向を反映した形で、CPAとしては、ではこの代表、この代表ということで選んできたけれども、しかしそれは直接ではないし間接ではないが選挙というものを経たものではない。より民主的なプロセスに近づけてやっていきましょうという提案をしているわけです。

 ですから、今の市評議会が、もう今は総辞職して、ございませんが、それがいろいろな構成を見ながらCPAによって指名をされたものであるということは、木下委員よく御存じのことだと思います。それをシーア派やあるいは女性の意見も反映できるように、より民主的にしようということで提案がなされている、そういうようなのが今の状況であると承知をいたしております。より反映する形になる、そういう提案がなされておるということです。

 ですから、この報告書はどういうものかといえば、いろいろな現地の情勢、構成というものを考え、その時点において反映というものを考えて構成されたもの、しかし、それをより反映されるように、間接ではあるけれども選挙という形をとろう、そういう提案が行われているのが今の状況であると承知をいたしております。

木下委員 何かまあ、言いわけ言いわけしようと思うから長くなるんですよ。

 ここに書いてあるんですよ。それは、いろいろな宗教指導者、部族の人たち、長、そういうものを集めて。そうじゃなくて、もちろんそれもそうでしょう、そういう形もあったでしょうけれども、しかし、その上にあるわけでしょう。それを統合してサマワの評議会がつくられたわけでしょう。それが機能しなくなったんですから。違うんですか。今おっしゃったでしょう、そういうふうに。それぞれの部族の指導者、女性指導者、そういう人たちを集めて、そこからその評議会をつくった、そういうことじゃないんでしょう。要するに市民の代表を移行してつくったわけでしょう、評議会は。そこをはっきりしてください。

川口国務大臣 今まであった市評議会、これがどういうふうにして選ばれたかといいますと、まさに委員がおっしゃったような、いろいろな住民を構成しているグループ、そこに着目をし、それを反映するような形で選ばれた十二人ということです。

 今後、CPAが今話し合っていることというのは、より、先ほど防衛庁長官おっしゃいましたようにコーカス方式といって、間接選挙でこれをやっていこうという方式で、今も既に民意を反映した形、今後はより民意を反映した形ということでやろうということであります。

 それで、これについて話し合いを始めていたところ、CPAが話をしていた県知事がさっさと先に変化をする今度の方向についてそれを発表したことに評議会の十二名が反発をして、やめると言った、それが経緯であります。

 先ほど私が申しましたように、それから防衛庁長官もおっしゃっていらっしゃいますように、これについて、これがやめたからといって、あるいはやめると言ったからといって、実際の市の日常の行政が滞っているわけでは全くない。それから、治安が悪くなってきているということではない。今サマワの治安情勢にこのことが大きな影響を与えるというふうに政府としては判断をしていないということでございます。

 それから、信頼すべき筋の情報によれば、三月の上旬にも選挙を行うという方向で調整もされているというお話もございますので、我々としては今後の展開については注視をしていかなければいけないと思っていますけれども、いずれにしても、このことが治安その他サマワの現在の状況に大きな影響を与えているということは判断をしていない、そういうことでございます。

木下委員 そうすると、このサマワ評議会というのは、CPAからある程度指導を受けて、あるいはサジェスチョンを受けてつくったわけでございましょう。その辺はどうなんですか。

川口国務大臣 これについて、現在イラクの地方の政治制度というのは進化の過程にあるというふうに申しましたけれども、これは地域によってもいろいろあるわけですね。それで、選ばれ方、同じムサンナ県、このムサンナ県には十一の評議会がありますけれども、このそれぞれの選ばれ方も一様ではないというのが現実でございます。大きな市から始めて、どんどん小さい市に移っていきましたので、後になればなるほど、小さな町、市になればなるほど、より民主的なやり方で選ばれているということで、今それが最初のサマワに戻ってきたということでもあるわけでして。

 そういった制度については、おっしゃったように、いろいろな形でCPAが制度づくりには手をかしているというところもないというふうには申しませんけれども、基本的に、フセイン政権が、中央集権的な政権が崩壊をした後で、市民の行政について、あるいは自発的にという部分もあって、それを監督していくところが必要だということでできたというのがその評議会ということでございます。ということでございますので、この行政の監督、企画、そういうことをやっている、そういう組織であるということです。

木下委員 今外務大臣の方から十一の評議会があるというお話がありましたけれども、その十一の評議会については、現在きちんと機能しているわけですか、それとも何か問題があるわけですか。そこをどう把握しておられますか。

川口国務大臣 情勢、刻々変わっていくので、今後注視をしていかなければいけないと思っていますけれども、今私が把握をしている、この時点で持っている情報は、ルメイサについては、やめた、次の選挙が行われるまでの間にあるということでございます。

木下委員 今のお話ですと、CPAが手をかしてつくった評議会もあるということですが、そうなると、これは過渡期だというお話ですが、本当に住民を代表したものかどうか、あるいは住民の意向を十分に酌み入れたものであるのかどうか。現実に、サマワの評議会はCPAと対立をしているという報道がありますが、これについてはどう認識していますか。

川口国務大臣 先ほど申しましたように、CPAが、民主的な制度をより民主的にするということで、サマワ、ルメイサについては話をした。それについて、サマワについては、話し合いの過程で、十分にそれについての、言ってみれば、今十二人の人について、話が終わらないうちに、次、ムサンナ県の知事ですけれども、この人がこれを公表してしまったということについての反発が非常にあって、それでやめるということになったということで承知をしています。

 それで、民主的な、あるいは民意を反映した制度ではないんではないかということでありますけれども、先ほど申しましたように、メンバーの選出方法というのは本当にさまざまあるわけでして、片方でいいますと、この地域の有力者が名簿を提示して、その中からCPAが選んだというところもありますし、それから、既に間接選挙をやっているのもあるということで、申しましたように、制度は今進化の過程にあるということでございます。CPAが手をかしたということについても、もともとの名簿というのは地元から出てきているという意味で、民意は反映されているということであるかと思います。

木下委員 そうなると、まだ住民の意向を十分受け入れた評議会ではないということで、評議会がまだどう変わるか、これはわからないわけですね。評議会が、メンバーがどう変わるかわからないわけですね。そうしたところに日本が五百五十九億円投入するわけですね。それの受け皿がころころ変わる、まだそこまでいかない、きちんとした選挙によって選ばれるかどうなるかわかりませんが、要するに、まだ定着していない評議会にお金を出すわけですね。あるいは、それを積算して、どういう形で積算したかわかりませんが、そこを受け入れとして私たちの税金が使われるということになるわけですね。そこをもう一度、いかがですか。

川口国務大臣 五百五十九億円、これが全部サマワに行くわけではございませんで、イラク全土を対象に五百五十九億円ということでございます。

 それで、これの相手方ですけれども、これについては、NGO、各省庁、県あるいは病院といった組織も対象になるわけでございまして、我々として考えていますのは、これは透明性あるいは効率性云々ということで、実施能力があるところをあまたある適格なところから選んで、それを対象に行うということを考えているわけです。それで、実際に市の評議会であったとしても、そういった先ほど申し上げたような実施能力がないところについては、これを対象とするということは考えていないということでございます。

木下委員 その判断はだれがやるんですか、能力があるかないか。外務省の現地の人たちがやるわけですか、それともだれが判断するわけですか。

川口国務大臣 無償資金協力については、これは今までもそうですけれども、それからほかの国に対してもそうですが、全部、政府全体での判断ということで閣議決定をいたしております。

木下委員 要するに、例えば病院あるいは学校、そういった民間と、いわゆる行政に拠出する、その性格はかなり違ってくると思うんですね。民間に出すときは行政を通じて出すわけですか。それとも、例えば病院とかあるいは学校とか、その他施設とか、そういったところには、それぞれのプロジェクトごとに出すのか行政を通じて出すのか、所在するその行政地域の、そこを通じて出すのか。そこはどうなっていますか。

川口国務大臣 これは、今先生のおっしゃったケース、それぞれあり得ると思います。どこかを通じて、例えば県を通じてお金が流れるということもあるでしょうし、直接に病院に行くということもあるわけです。

 現に、例えばサマワにある、十三病院のうちの一つですけれども、そこに対しての医療器材の協力等については、保健省あるいは病院、それぞれの可能性を考えて今検討をしております。

木下委員 先ほど言いましたように、要するに、行政に国民の税金が行くということであれば、やはりその評議会なり行政がころころ変わるようじゃ困るんですね。ある程度安定して、そして、きちんとしたそこからのニーズがあって、そして、そこからきちんと積算して金額を決めないと。ただ、先ほど、ニーズがあるニーズがある、病院もあれば学校もあれば水もあればというアバウトなだけじゃなくて、それぞれの行政の地域にもし行くとすれば、そこはきちんとやはり安定的に、本当に市民の意向を受けた評議会なら評議会あるいは行政組織、そういったものでないと、突然、最初予定した評議会が解散してしまったということになれば、そこへ行ったお金というのはむだになるわけですね。その辺をどう考えているんですか。

川口国務大臣 先ほど援助の実施能力という言い方をいたしましたけれども、先生がお持ちの問題意識というのは私どもも全くシェアをしておりまして、それを先ほど実施能力という言葉であらわしているわけですけれども、いずれにしても、本当にこれは国民の税金ですから、きちんと使われることが大事であるということであります。したがって、そういうことを念頭に実施能力のある団体を相手方として選んでいくということで申し上げているわけです。

 さらに、それに加えまして、やはり先ほど来申し上げています効率性、透明性、そういった観点は重要でございますので、供与をした資金の使途、これにつきましては、案件管理やそれから資金管理、これを第三者たる専門機関に行わせることや、被供与先に報告書の提出を求めるとか、そういったことによって透明性、効率性を確保する、それを確認する、そういう考え方をいたしております。

木下委員 先ほど、援助規定、しっかりしたものがないと。今おっしゃったのは、あくまでも一つの目安にすぎない。規定がない。要するに、ODAという形でやるわけでございましょう。今までのODAと同じスタイルで今回もやるということになると、これまでODAがいかにむだが多かったか、途中いかに抜かれたか、あるいはいかにだまされたか。そういうことを考えれば、やはりもうちょっとしっかりした規定、これをはっきり明示してもらいたいと思うんですけれども、それは出せますか、このイラクの問題に対して。

 やはりまだ、通常のODAは政権がはっきりしていますよ。だから、きちんとある程度は後追いもできる。しかし、中央政府がなくて、今言ったように、いつ市評議会もどう転ぶかわからないというところに対して、やはり相当なリスクがあるわけですね。それに対してきちんとした、国民の皆さんにもはっきりわかるような援助規定、これをつくる気はありませんか。

川口国務大臣 援助をするときに、二つの視点というのが私は大事だろうと思います。

 一つは、税金を使うという観点からいえば、これが透明かつ効率的な形で使われるということであります。それをどのようにして確保するかという観点からは、先ほど来申し上げているような援助の実施能力があるかどうかということを、ケース・バイ・ケース、それぞれの案件ごとに確保するということに加えて、先ほど申しましたけれども、この場合につきましては、供与した資金の使途について、例えば案件管理、資金の管理を第三者である専門機関に行わせるとか、それから被供与先に報告書などの提出を求めるということを確認するということとしているわけです。

 それから、もう一つの観点というのは、援助が必要である人、ニーズを持っている人たちに対してできるだけ早く的確にお金が届くということであって、その観点からすれば、この無償の資金協力というのは、今まで既にさまざまなやり方で行っているということです。例えばNGOを対象にしているということもあります。イラクについて言いますと、バグダッドの一つの地区の諮問評議会に対して事務所の机とか事務用品とか、そういうことを供与して大変に感謝をされたということが、これは奥大使の時代でございますけれども、なさった仕事ですが、あります。そういうことも必要ですし、それから、行政組織に対して出すということもあります。

 いずれにしても、二番目の観点からは、援助を与える対象というのは、これは物事の性格からして多岐にわたらざるを得ない。それを一つのルールで律するということは非常に難しいわけで、中央省庁とNGOを一緒のルールでやるということは非常に難しいわけで、そういう意味で、我々はケース・バイ・ケースで、案件をきちんと見て、それで透明性を先ほど申し上げたようなやり方で確保する、そういう考え方でやっているというふうに申し上げているわけです。

斉藤委員長 時間がございますので。

木下委員 一つだけ最後に、亡くなった奥大使の身分をどういう形で、ただ長期出張だったのか、あるいは、身分と目的をちょっと簡単にお話ししてください。

堂道政府参考人 お答え申し上げます。

 奥大使でございますが、当時は在英国大使館の参事官でございました。イラクの復興支援に関する我が国政府の種々の任務にかかわるため、イラクへ長期出張をしておりました。奥大使は、これらの任務遂行の過程でORHA、いわゆる復興人道支援局やCPAと緊密に連絡をしておりましたけれども、奥大使はあくまでも外務大臣の指揮下、命令下にあったわけでございます。

斉藤委員長 もう時間でございますので。

 次に……(木下委員「ちょっと、あれしていますので」と呼ぶ)木下君、どうぞ。

木下委員 すると、ORHAにあれしていたんでしょう。事務所はサダム・フセインの宮殿のところのORHAに入って、それで仕事をしていたわけでしょう。

堂道政府参考人 復興人道支援局、支援室でございますけれども、これは、戦中戦後の人道復興支援を目的として設立された組織でございます。これは、最初クウェートに三月に設立されておりまして、四月の二十三日にバグダッドに入っております。

 奥大使は、ORHAと緊密な連絡調整という形で、ORHAと共同で仕事をしておりました。

木下委員 奥大使の身分については非常に不安定な立場だった、これがやはり殺害事件の背景にあるということをまたいずれ質問させていただきます。どうもありがとうございました。

斉藤委員長 次に、伴野豊君。

伴野委員 民主党の伴野でございます。

 幾つか質問をさせていただきたいと思いますが、驚きました。交渉の重要窓口であるところがよくわからないとか、言ったかどうかはわからないとか、だれに会ったかよくわからないとかというようなお話を聞きますと、命令一下で行かされる自衛隊の方々あるいは御家族の立場に立つと、本当に胸が詰まる思いでございます。

 そういった方々の目線、あるいは国民の皆さん方の知りたいという、多分、その賛否にかかわらず、自衛隊の皆さん方が本当に御無事であるということをほとんどの国民は、全員と言ってもいいと思いますが、願っているんだと思うんです。ですから、国民のそういった思いと、だから知りたいという思いにぜひとも真摯にお答えいただければと思うわけでございます。

 まず、評議会は後で多分明らかになるんでしょうけれども、では続いて、州政府には佐藤隊長は行かれているんでしょうか、防衛庁長官。

石破国務大臣 先ほど来お答えしておるとおりでございます。知事のオフィスで知事にお目にかかりました。

伴野委員 では、その席上で、復興は三段階で実施したい、最終的には五年から十年の期間を要するが、長い目で復興に役立ちたいという発言があったかどうか。もしあったとしたら、これは日本政府の公式の発言でいいのかどうか、お答えいただけますか。聞いているんです、事実かどうか。

石破国務大臣 実際そのとおり言ったかどうかは今確認をいたさせますけれども、復興には三年から五年、すなわち、もう水道にしたって電気にしたって相当程度の時間がかかるというようなことは、それは事実として申し上げた可能性はございます。

伴野委員 もし仮に言ったとしたら、この佐藤先遣隊長のお立場で言ったとしたら、これは日本政府の公式の場の発言であり、日本政府の意向だと解釈してもいいということでよろしいでしょうか。

石破国務大臣 今確認をいたさせましたところ、委員が御指摘のような発言を佐藤隊長が行った事実はないとのことでございます。

伴野委員 では、それはそれとして、具体的にまたお聞きしたいんですけれども、では、今自衛隊の皆さん方は何をやっているというふうに問われれば、防衛庁長官、例えばきょう何をやっているんだと聞かれれば、どんなお答えになるんでしょうか。

石破国務大臣 いろいろなことをやっていますが、全部申し上げることは難しい。ただ、本隊というものがまだ国会の御承認をいただいてはいませんが、本隊の受け入れ準備ということ、あくまで準備でございますけれども、そういうこと、あるいはニーズの把握、そういうようなことを並行して行っていると承知をしています。

伴野委員 例えば、地権者の方といろいろ交渉をしてとんでもない法外な金額を要求されたというようなお話も耳にはしているんですが、それはそれとして、そういうようなお話が刻々と防衛庁長官のところにリアルタイムで入ってくる情報体制になっているのか。それはどうでしょうか。

石破国務大臣 現場の裁量というものもございますので、本当にリアルタイムに一分一秒、それは時差もありますし、それがリアルタイムにすべてのものが上がっているかといえば、そんなことはございません。しかし、デーリーで定期的に上がってきているものでございます。

伴野委員 では、外務省の方はいかがですか。職員さんが四人サマワに常駐していらっしゃるというやに聞いているわけでございますが、一つは奥大使の非常に残念な件があったわけでございまして、そういったことを踏まえて、安全の対策をしつつ情報収集しているとか、この四人の方は、例えばきょうは何をやっていらっしゃるんでしょうか。

川口国務大臣 どのような行動をとったかということについては私のところに上がってきております。それで、おおむね、外務省の人たちだけで独自に動くということについては今許しておりませんので、自衛隊の方と一緒に行動をしているという状況でございます。

伴野委員 刻々とリアルタイムにできるだけ入ってきて、それを防衛庁長官なりあるいは外務大臣が、これは非常に機密性の高いもの、これはなかなか公表できないもの、これは国民の皆さん方に伝えていいもの、そういうものをきちっと多分整理されてお伝えいただけているものだと思いますし、また、今後もぜひそうあっていただきたいな、そう思うわけでございます。

 そうした中で、先ほどの生方議員の質問の中にもちょっとあったんで触れさせていただきたいんですが、よく、ニーズにこたえる、ニーズにこたえるというお答えがあるんですが、具体的にそのニーズは現地でどうやって把握されているんでしょうか。

 まず、防衛庁の方はどうやってニーズを把握されているんでしょうか。

石破国務大臣 現地の方々、それは、実際に評議会とは別の行政組織そのものといいますか、そういう行政組織、あるいは部族、あるいは現場の学校、そういうようなところからいろいろなニーズを把握しておるところでございます。

 もちろん、それを精査し、何が現地のニーズかということは、それがそのままニーズというふうに私どもが把握をするというのは意味が異なっております。

伴野委員 ニーズがいろいろ出てくる、それが、市民を代表している、あるいは県民を代表している、国民を代表しているというのであればわかるんですが、むやみやたらに聞いていたら、これは多分限度もないでしょうし、出てきたニーズは、何というんですか、きちっとした手続を踏んだニーズとそうじゃないニーズは、どこで、どういう基準で判断されるんでしょうか。

石破国務大臣 それは、CPAと調整を行う等々によって精査をすることになります。

 委員御指摘のように、すべてやっていたら、それはもうとても国民の税金の使い方として適切なものだとは、すべてが判断されることはないでしょう。

伴野委員 そのときには、先ほど話題になった評議会というのはどうかかわってくるとお思いでしょうか、防衛庁長官。

石破国務大臣 選挙のめどについては、先ほど来お話がございました。

 では、評議会がコーカス方式によって選挙が行われワークするようになるまで何もしないのかということになるのだろうと思っています。

 それは、もちろん、評議会がワークをし、そこも関与をしということになれば望ましいでしょう。私たちが仮に国会の御承認をいただいたとして、実際に本隊を派遣し、宿営地を建設し、なおかついろいろな行動を起こすようになるまで、それはある程度の時間はかかるものと思われます。

 いずれにしても、我々がやりますことがニーズにきちんとかなった形で、評議会がきちんとワークすればそれが最も望ましい方法でしょうし、そうでないとするならば、それまで何もしないということではなくて、CPAなりあるいは部族長なり、そしてムサンナ県当局なり、そういう方々と調整を行うことになると考えております。

伴野委員 それで、本隊の方も行ったと仮定しましょう、といいますか着いたとしましょう。そして、何をやるかという話になってくるわけでございますが、先般防衛庁さんの方から、こういう、ポンチ絵と言ったらいいでしょうか、絵をいただきまして少しイメージができてきたと思いますし、新聞なんかでも取り上げられるところがありますので、国民の皆さん方も少しイメージができてきたんだと思うんです。

 では、例えば、具体的にちょっとお聞きしたいんですが、道路の復旧等をするときに、自衛官の方は現場監督までをやるのか、あるいは整地作業にかかわるさまざまな、ロードローラーとかグレーダーなんかも動かして全部自己完結をされるのか、あるいは、場合によっては現地の方を作業員として雇用することもあり得るのかどうか。そのあたりは、防衛庁長官、いかがでしょうか。

石破国務大臣 基本的に自己完結でございますが、現地の方にお願いできる部分があるとするならば、現地の方を雇用することは否定をいたしません。

伴野委員 午前中のNGOの方だったと思いますが、要するに、自己完結ということがかえって地元の反発を受けかねない。よくニュースなんかでも、地元の人たちは、自衛隊の皆さん方が来ると雇ってもらえるんじゃないかという期待がある、その期待に外れると、場合によっては暴動も起きかねないというような報道もあるわけでございますが、この点はいかがでしょうか。

石破国務大臣 そうならないように注意をしなければいけません。それは私が最も注意をしなければいけないと思っていることです。

 ただ、これはきのうも答弁申し上げたかもしれません、雇用する場合にはどうやって公平に雇用するかということを考えなければいけません。A、B、Cは喜んだがD、E、Fはえらい怒ってしまったということになったら、何のために雇用したのかわかりません。どうやって雇用に公平という観点を導入するか。

 基本的には自己完結です。それは、自分たちでみんなやるということは、逆に申し上げれば現地の方々に御迷惑をかけずに、つまり、雇用も大事でしょう、しかし同時に、学校を直してほしい、きれいな水が欲しい、病院を直してほしいということもあるわけです。すべてを同時に満足するということができないとするならば、優先順位というものはつけていかねばならない。しかし、それが、期待が失望に変わり、委員御指摘の暴動にならないように細心の注意は払っていかねばならないと思っています。

伴野委員 次に、外務省さんが現地において、今まだ検討段階なのかもしれませんが、雇用対策としてやられるというものがございます。

 例えば、サマワにおいて一日五、六百人の雇用拡大に寄与する予定、コミュニティー再建事業、学校再建等というのがございますが、これは具体的に、五、六百人、どういう種類の人をどんなふうに雇われるのか、大臣。

川口国務大臣 おっしゃったプロジェクトは、先般閣議決定をいたしましたプロジェクトでして、国連のハビタットですけれども、人間居住計画、それを対象とするプロジェクトです。

 それで、ハビタットは、イラクの中に、要するに、サマワ等に事務所をつくって、これはイラク人が行うわけですけれども、そのイラク人がイラク人を雇用して、一つは学校の修復です、それからもう一つは貧しい人たちの住宅といったようなことですけれども、コミュニティーのセンターをつくるというプロジェクトです。イラク人が人を雇って、イラク人がその工事をするということで、これはイラク全土、全土といいますか、ほかの町でもやりますので、サマワで行われる分として、雇用に直すと約五、六百人ということになるだろうというふうに考えております。

伴野委員 今、日本国内でも五、六百人も一日に雇ってくれると思ったら多分殺到するんじゃないかと思うんですね。

 先ほど防衛庁長官が、雇うときに公平性が必要だということをおっしゃったんですが、評議会がどうなっているかよくわからない状態で、例えば評議会があればそこで何らかの基準をつくって、こういう職種の人を何人とかというのは一つの基準でできるんでしょうが、今こういう状態で、この五、六百人をどうセレクトしていくんでしょうか、大臣。

川口国務大臣 ですから、これは、申しましたように国連人間居住計画を対象にして我が国が支援するプロジェクトでして、国連人間居住計画は、その職員であるイラク人、この事務所をサマワにつくって、そこがイラク人を雇い、そしてこの工事を監督する、要するにイラク化を行うプロジェクトである、そういうことであります。

伴野委員 さらに細かいことで恐縮なんですが、じゃ雇いました、そうした場合、給料等の支払いは現金で処理をされるんでしょうか。大臣、いかがでしょうか。

川口国務大臣 これは、先ほど申しましたように、援助の対象は国連人間居住計画です。そこが施行をする、実施をするプロジェクトであります。したがって、現金で払うか、あるいは何かほかのことをやるか、恐らく現金で払うのではないかと思いますけれども、それは国連人間居住計画が決めることであります。

伴野委員 いずれにしましても、非常に不安定なところで、本当に職が欲しい方ばかりで、きょうあすどうするというような方のところに、多分最終的には日当というような形で、どなたが払われるかは別として、やられるんだと思いますので、ぜひともそのあたり、御配慮をいただいて対応していただければと思うわけでございます。

 時間がどんどん限られていきますので、またさらにお伺いいたしますけれども、先ほど、佐藤先遣隊長が三段階で云々というお話がございましたが、それはそれとして、じゃ、例えば平成十六年十二月十四日まで、今後どこまでやるイメージを防衛庁長官はお持ちで、その予算総額はどれぐらいになるとお考えか。

石破国務大臣 対応措置の実施期間が十二月十四日までとなっておりますのは、委員御指摘のとおりでございます。

 この間、医療、給水、公共施設の復旧整備、人道復興関連物資の輸送等々を行うということになっておりまして、必要な経費としては、十五年度予備費として二百六十九億円を閣議決定しておるわけでございます。十六年度、つまり来年度におきます陸上自衛隊、航空自衛隊の活動経費といたしまして、予算案に百三十五億円を計上いたしておるところでございます。

伴野委員 具体的に、例えば数量的にもう少し、医療機関は、どれぐらいある医療機関のうちの八〇%あるいは六〇%は復興させるとか、あるいはそのお金で学校の七割ぐらいは普通に授業が受けられる状態にするとか、そんなような何か数量的かつ具体的な、お金の総額というよりも、何か具体的な数字のイメージはないでしょうか。

石破国務大臣 具体的にまだわかりません、それは。

 いいかげんではないか、こういうような御指摘なのかもしれませんが、要は、学校がどれぐらい直るのか、それにどれぐらいなめどがあるのかということが、今の時点では正確にはわかりかねるところでございます。

 それは、私どもとして、何度も申し上げましたが、本格的な学校の建て直しとかそういうことができるわけではございません。現地の方々が、例えば雨露がしのげるようになればいいと言うのか、それとももっと本格的に直してくれと言うのか、建て直しからやってくれと言うのか、それぞれによるのだろうと思います。

 私どもとして、できるだけ早く、少なくともきちんと授業が受けられるような、最低限の医療が受けられるような、その水準まで参りたいとは思っています。

伴野委員 今長官がおっしゃられたように、確かにきちっと仕事が着実にできているかどうかという中身のチェックということも必要なんですが、どちらかというと、国民的な見地から立てば、いつ終わるんだろうかと。それも行ってみなきゃわからない、チェックしてみなきゃわからないというお話かもしれませんが、これは報道が正しいかどうかはあれとして、五年―十年と言われちゃうと、おい、そこまでかかるのかよという感じがするんですね。

 だから、そのあたりが、とりあえず一年としておいて、これが歯どめもなく来年も再来年もとなっていってしまうのか。このあたりはいかがでしょうか。

石破国務大臣 十二月十四日まで一年といたしましたのは、やはり最低一年はめどなんだろうなということを思っています。それは地震復興と一緒に論じちゃいけないことはよくわかっていますが、やはり災害においても、一応きちんと最低のというか、基礎的な市民生活が営めるようになるまでは一年ぐらいの期間はかかるだろう。それで一年というふうに設定をいたしました。

 しかし、例えば水で申しますと、ユーフラテス川から水をくんで浄水をする。しかし、そんなものが未来永劫続くわけではないのです。

 一つは、その施設を、NGOの方かもしくはイラクの方か、その方々がやっていただけるようになるということがございましょう。そうすると、給水というのは当面終わったと言い得るのかもしれません。もう一つは、本格的な浄水施設が建設された時期というものなのかもしれません。これはもっと長い期間がかかります。サマワでそういう御要望が強いということは報告を受けておりますが、そうしますと、じゃ、農水省の集落排水なのか、あるいは国交省の公共下水道方式なのか何なのか、そこも何が一番適当なのかというのを見ていかなければいけない。

 ただ、申し上げたいことは、それがきちんと代替できる施設あるいはその主体というものが見つかるまではそれはやらなければいけないだろうということだと思っています。

伴野委員 いずれにしても、国民の皆さん方は本当に知りたがっていますので。確かに、機密保持しなければいけないところは、これはもうかっちり機密保持していただいて、そして、できるだけリアルタイムで、私は、防衛庁長官の一点を見詰められて訥々と話される語り口というのは嫌いではないので、ぜひそういう語り口で国民の皆さん方に直接語りかけて、今の実情はどうなっているんだということを、ぜひとも説明責任を果たしていただければなと思っているわけでございます。

 そうした中で、今の世論に対してどう防衛庁長官自身が把握をしていらっしゃるのか。新聞報道等いろいろマスコミでも調査しておりますが、今、世論の動きについてどう把握していらっしゃって、今の状況についてどう認識していらっしゃるか、あるいは分析していらっしゃるか、お答えいただければ。

石破国務大臣 この法律ができましたのが昨年の七月でございます。そのときには、自衛隊の活動を支持するという方三九%、支持しない五三%、これはテレビ朝日さんの調査でございます。一月の調査では、支持するが五三、支持しないが四四というふうにひっくり返っている。

 これは、数字というのがすべてだとは私は思いません。設問の仕方にもよります。そして、時点の状況にもよります。ですから、数字が逆転した、あるいは拮抗したから、どうだ、いいだろうなんと言うつもりは、私はちっともありません。

 本当に、各委員から御指摘のように、報道を隠しているとか操作しているとか、そういうふうに思われないように私たちはしていかなければいかぬだろう。そしてまた、かりそめにも政府がやっていることが、信頼性を失わしむるというふうに国民が思われるようなことはしてはいかぬのだろう。それは、謙虚に反省しなきゃいかぬことはたくさんあると思っています。

 その中で、やはり国民の多くが、委員御指摘なさったように、法案に賛成、反対ということはあるでしょう。でも、行った自衛官、きちんと安全に帰ってきてねという思いを一人でも多くの方が持っていただける、望むことができるとするならば意義も御理解いただく、そのために政府は努力をしていかなければいかぬのだと思っています。

 現状の数字は、本当に少しずつ御理解がふえているという認識を持っていますが、これで十分だとはもちろん思っておりません。

伴野委員 どこまでやればいいのか、何回会見をやればいいのかというお気持ちもないわけではないんでしょうが、やはり何回でも、国民の皆さん方が納得するまで、とにかく説明、説明、説明するんだ、真実を伝えるんだという気持ちでぜひ会見等をやっていただきたいと思うわけでございます。

 そうした中で、幕僚長さんの定例会見が廃止になるんでしょうか。この辺あたりはどうなんでしょうか。

石破国務大臣 それこそ、そのような報道があることは承知をし、我々として、提案の中の一つとしてそういうことは申し上げたことはございます。しかし、これは、私は一方的に廃止をするというようなつもりはございません。

 報道というものは、やはり報道される方々、私どもでいえば防衛庁の記者会と申しますか、その御理解がなくしてできることだとは思っていません。大切なことは、真実の情報が遅滞なく、かつ混乱なく伝わるのだということが大事であって、その意識は、記者会の方々と私は共有をしています。

 そのために、それでは記者会見の機会が余りに多い、防衛庁というのは余りに多い。だとするならば、それをどのように、回数は減らすけれども、しかし、早く、正確に、混乱なくということがどうして担保されるのだという認識を共有するということ、それが必要であり、私は、一方的に三幕長会見を廃止するというようなことはいたしません。

伴野委員 また一方で、現地の取材体制のあり方ですね。やはりパパラッチのような状態になって、それを守らんがために自衛隊の方が傷つくというような事件が起こらないように、そのあたりは逆にきっちりとしていただきたいと思うわけでございます。

 時間も参りましたので、何か防衛庁長官は「モーニング娘。」がお好きだというふうに伺っているんです。大変お疲れになっているかもしれませんが、「モーニング娘。」もいいんですが、平原綾香の歌う「ジュピター」というのは御存じですか――そうですか。御存じなかったら、ぜひ聞いてみてください。ジュピターというのはゼウスですけれども、要するに、運命には二通りある、自分で選択できる運命と自分で選択できない運命。今回日本がとった運命が日本の国益にかなうような方向に行くかどうかぜひ注視していきたい、そんなふうに思っております。

 以上です。ありがとうございました。

斉藤委員長 次に、長島昭久君。

長島委員 民主党の長島昭久です。どうぞよろしくお願いいたします。

 初めて国会に上がってまいりましたけれども、きょうずっとお話を伺っていて、大変な決断をされた政府にしては、かなりずさんな情報に基づいて、そして、まさにアメリカ軍が、イラク全土がコンバットゾーンである、こう言っている地域に、戦後始まって以来自衛隊を派遣する、こういう決断をしている政府にしては本当にずさんだという印象を持ったので、本題に入る前に、一つ重要な御質問をさせていただきたいんです。

 小泉総理は、かねがね、情勢を見きわめて自衛隊を派遣する、こういうふうにおっしゃってこられました。仄聞するところによると、昨年の五月のブッシュ大統領との首脳会談の際にいわばイラク派遣を約束されたという話も伺っています。これは、真偽は別に伺おうと思っているわけではありませんけれども。

 それ以来、何度も聞いているように、累次にわたって調査団が派遣をされ、そして、その報告に基づいて恐らく最終的な決断をなさったんだと思うんですが、どうも、今のお話を聞いていても不安になるし、これは五月以来の米軍の死傷者のグラフなんですけれども、これが五月で、ここが十月です、ラマダンが始まるまでの間。この期間に自衛隊を派遣できるような判断が、もちろん、我々の立場は自衛隊を派遣してはならないという立場ですけれども、この間に十分判断のタイミングがあったにもかかわらず、今にまで派遣の時期がずれ込んだ。その理由は何なんでしょうか。

 逆に言うと、いつの段階のどんな情報に基づいて防衛庁長官は総理に、あるいは防衛庁長官が部下から、どんな情報に基づいてどのタイミングでお決めになったのか、ちょっと伺いたいと思います。

石破国務大臣 昨年の七月に法律が成立をした、それは、イラクに自衛隊を派遣することができるという法律なのであって、派遣するということを決したわけではない。その後、夏があって、いろいろな法律ができた後に、現地の状況というものをずっと見てきた。つまり、法律ができた時点ですぐ出せるということではない、そういう判断にはなりませんね。そこですぐ出すべきだという御判断もあるのかもしれないけれども、私たちは、出せるという法律ができたという認識です。

 そこで、まだイラクでは、主要な戦闘は終結したがという段階、そこでアメリカ軍に対する襲撃というものもあった。そのグラフに、委員が持っておられるような、そういう状況であった。かてて加えて総選挙というものもあった。総選挙においては、イラクに自衛隊を派遣するかどうなのかということも大きな争点であった。そのような、情勢を全部見きわめるというのはそういうことだと思うのです。

 地元の、地元というのはイラクの状況、そしてイラクの北部あるいは中部、南部、どこが一番ニーズがあるのだろう、どこが一番安全なのだろう。それこそ、奥参事官や井ノ上書記官は、そういうのを見ながらイラクじゅうを走り回っておられた。どこならばニーズがあり、そしてどこならば安全が保てるのか、そういうことをずっと見てきた。そのうちにあの不幸な事件が起こった。では、それをどのように評価するか、判断するかというので、基本計画あるいは実施要項、この十二月というような時点に至ったというふうに私は思っています。

 ですから、基本計画をつくった時点で、派遣することができるという段階から派遣をするという意思になりました。

 そして、では、それはいつなのだということは、例えば、航空自衛隊は昨年の十二月二十四日という時点で部隊編成というものを終えた、そして陸上自衛隊は一月に入っている、そういうようなプロセスを経ているのだと思うのです。

 派遣することができる、派遣を決定する、ではいつだ、それは、その時点時点の判断によるものだと思っています。それは、この法律の仕組みからいってそういうことに相なるわけでございます。

長島委員 法律ができてもすぐ派遣できない、それはよくわかります。しかし、先ほどお見せしたように、客観的に見て一番厳しい情勢の中でどうも派遣を決められたような印象を私たち持っているんですね。

 いつの時点で、どういう報告に基づいて派遣を最終的に決断されたのか、明確にお答えください。

石破国務大臣 十二月の時点で派遣するということを決めました。しかし、それが何日かということは、それは陸上自衛隊本隊に限って申し上げれば、一月でございます。

長島委員 どういう根拠で、どういう決定的な根拠で、ずっと出さなかった自衛隊を出そうという結論に至ったんでしょうか。

石破国務大臣 これが決定的というものを一つ挙げろと言われれば、それはやはり治安というものだと思います。

 サマワにおいて、つまり、委員がお示しになっておられますグラフは、イラク全体の襲撃のグラフをお持ちなのだと思います。それを、では北部、では中部、では南東部というふうに落としてみて、そしてそれでは南東部の中でもムサンナ県に落としてみて、そしてサマワ市に落としてみたときにどうなるか。それを分析いたしますと、そのグラフのとおりにはなりません。その治安の状況というものを見ながら判断をしたということでございます。

長島委員 時間がないので次に行きたいと思います。

 私が一番心配しているのは、派遣の是非についてはいろいろな意見があるわけです、我が党にも。しかし、政府が、自衛隊派遣ありきということで、かなり無理をして派遣を決めているのではないか。その無理、政府がしている無理を、派遣された自衛官が一身に背負ってしまうような状況になりはしないか、このことを非常に危惧しているわけです。

 防衛庁長官、長官は、特措法の九条にある安全確保のための配慮義務規定、これに関連して三つのことをおっしゃっている。安全に配慮するための具体的な措置として三つあると。一つは派遣される自衛官の装備、もう一つは与えられた権限、そして能力。この三つの観点から総合的に安全を確保していくんだ、こういうふうにおっしゃっている。今もこのお考えに変わりありませんか。それとも、つけ加えることはありませんか。

石破国務大臣 変わりはございません。

長島委員 私は、もう一つつけ加えたらいいんじゃないかと思っているんです。それは任務の内容です、自衛隊が担わされる任務の内容です。

 つまり、第一番目は、現地のニーズに、ニーズの問題は後で外務大臣にもお伺いしたいんですけれども、現地のニーズに本当に的確にこたえられるような任務を付与されているのか、過重な期待と負荷が派遣された自衛官にかかっていないのかどうか、これが第一番目。そして、長官がおっしゃっていた能力、権限、装備、こういう総合的な観点で考えていかなきゃいけない、こういうふうに思うんですね。

 任務について詳しく伺いたいと思います。

 先ほど来長官もおっしゃっておられますけれども、基本計画において、陸上自衛隊が担うであろう任務、これは医療、給水、施設の復旧整備、そして輸送、この四つが書かれていますね。防衛庁として、それぞれの任務に対する現地のニーズ、具体的にどう見積もっておられるのか、改めて伺いたいと思います。

石破国務大臣 これがニーズのすべてだということを数量的にお示しすることは、現在できません。

 しかし、例えば水について申し上げれば、サマワ市民の四割が今きれいな水に不自由しているというふうに承知をいたしております。その方々に対しまして私どもが供給できます水は、水の使い方にもよりますが、約二万人程度の方々にきれいな水が提供できるというふうに今見積もっております。

 医療について申し上げれば、日本の援助でつくりました病院も十分に機能していない、これは報道でも明らかなとおりでございます。これが機能回復ができるように何ができるか、そういうニーズがあるというふうに承知をしておりますし、それは、器材が古い、傷んだ、あるいは機能していないということにもつながることでございます。

 学校につきましては、幾つもの学校で校舎が破壊をされている、それを直さなければいけないと思っています。

 輸送につきましては、今、具体的にここからここまで何を運ぶということが申し上げられる段階にはございませんが、私どもがそういうような活動をします際に、当然、輸送というものは起こってくる。さらに、人道復興支援、人道支援という観点から輸送というもののニーズがあれば、それは、治安、安全というものを確保した上で行うことはあり得ることだと思っています。

長島委員 今、四万人の需要に対して半分ぐらいは提供できるというお話だったんですけれども、それを提供する部隊はどのくらいの規模で、どういう編成でそういう水を、水に絞りましょう、時間がないので。派遣部隊の編成、規模、これは一つ問題になってくると思うんですね。

 そこで伺いたいんですけれども、これは官房長官かもしれませんね。一月三日付の読売新聞に、陸上自衛隊が当初積算した派遣部隊の規模、これは七百名だった、しかし、官邸が合理的な根拠もなく、これはだめだ、上限五百に制限しろ、そして最終的には、恐らく双方でやりとりがあったんでしょう、足して二で割って六百になった、こういう報道がなされていますけれども、これは事実ですか。

福田国務大臣 派遣する部隊の人員等につきましては、これはすべて防衛庁で決めることです。私の方でそういう数字を指示するということはいたしません。

長島委員 防衛庁長官、今のに間違いございませんか。

石破国務大臣 当然、判断は防衛庁で行うものでございます。

長島委員 それでは、派遣されるその六百上限の今度の陸上自衛隊の本隊の、先遣隊も多分吸収する形で六百になるんでしょうけれども、この内訳をちょっとお聞かせ願えますか。

石破国務大臣 恐縮ですが、この内訳は申し上げることはできません。

 それは、医療に何人、給水に何人ということを具体的に申し上げることは、部隊の能力というものを把握されることになります。このことは長島委員であれば御案内のことかと思いますが、自衛隊といたしまして、これだけの人数でこれだけのことがやれる、そしてまた、当然のことでありますけれども、警護というものを、警備というものを任務といたします部隊も含まれております。安全が確保され、そしてまた任務を完遂し得るに足る編成はこのようなものだと自衛隊、防衛庁として判断をし、決定をいたしたものでございます。

長島委員 防衛庁長官、上限が六百と決まっているんですね。そして、少しでも軍事知識がある者であれば、それを任務に従ってブレークダウンすることは、多分容易なことだと思うんですね。

 ちょっと私が申し上げてもよろしいでしょうか。恐らく、六百の上限の部隊を動かすんですから、それを管理する部隊、これはおよそ三百人ぐらいになると見積もれますね、それは先遣隊で行っている九十人を吸収して。この先遣隊というのは、オランダ軍や外務省の職員や、あるいは復興職員、こういう方との連絡や調整をするんですね。そして、管理部隊というのは、補給をしたり、整備をしたり、輸送をしたり、通信、情報収集をしたり、こういう部隊ですね。そして、今まさに警備とおっしゃった。警備部隊は恐らく中隊規模だと思いますから、百五十から百八十ぐらいですね。そうしますと、残るのはおよそ百五十ぐらいです。

 今、任務が大きくは三つある。輸送は管理の方でやるんでしょうから、そうすると、給水、それから施設の補修、そして医療。単純にいけば五十、五十、五十になるわけですけれども、この五十人で給水をやって、本当に二万人の需要を満たすことができるんでしょうか。

石破国務大臣 これは、数が二万とか一万とか五千とか人数の多寡の問題ではなくて、浄水するセットがどのような能力を発揮するかということでございます。それだけの人数でそれだけの方々の需要を満たすことができる、そういうような算出に基づきまして今数字を申し上げました。

長島委員 私はちょっとルワンダのPKOのことを調べてみたんです。というのは、今回の人道復興支援、総理もおっしゃっておられますけれども、もうPKOの実績があるんだ、いろんな国から理解をされているんだ、歓迎を受けているんだ、だから今回もできるんだ、こういうお話がありました。

 私、調べてみまして、ルワンダのPKOにおける給水活動を行っていた部隊、この比率は、全体で見ると今回の倍あるんですね。今回の展開部隊の、ある意味でマネージする範囲というのは相当広いと思われるわけですけれども、この辺の、ルワンダに比べて明らかに少ないこの給水部隊の状況、長官はどんな感想を持っていますか。

石破国務大臣 それは、私も浄水の専門家ではありませんから、きちんと委員の御質問に的確にお答えできるかどうかわかりません。

 ただ、問題は、そのもととなる水がどれぐらいの水質であり、それを飲める段階にするまでにどれぐらいの時間を要するかということだと思っています。その点がございましたので、私は、ユーフラテス川の水質というのはどれぐらいなのか、それを浄化する、少なくとも飲める、人体に影響がない程度に飲めるまでにどれぐらいかかるのか、それが自衛隊の浄水能力としてどうなのかということは積算をいたさせました。それで今のような数字を出しておるわけでございます。

 私は、ルワンダの水質がユーフラテス川と比べてどうであるかということについては、今正確な知見を擁しません。しかしながら、ルワンダでこうであったということは、当然私ども、今回の部隊編成において織り込み済みでやっておるものでございます。

長島委員 水質の話は、私、伺ったつもりはないんですけれども。

 一番私が心配しているのは、六百上限で部隊を出した、そして現地の治安が思った以上に悪い、そうなると、恐らく警備部隊を補強せざるを得なくなるような状況になるわけですね。その際にどこが削られるかというと、今長官がおっしゃったような、今までずっとアピールされてこられたような、水を供給する、修理、補修を行う、あるいは医療の提供を行う、こういう部隊が削られていく。そうすると、現地にあるニーズや期待にこたえられない自衛隊というのがあらわになって、さっき伴野委員が指摘したように現地の人たちの失望を買う、そしてそれが暴徒化して、逆に治安をさらに悪くする。こういう連鎖の可能性はどう認識しておられますか。

石破国務大臣 ルワンダのことを御記憶の方がどれぐらいいらっしゃるかよくわかりませんので。

 平成六年のことでございますが、ルワンダにおきましては、医療、防疫、給水というのが任務でございました。このときに参りましたのは、二百六十名で行っております。トータル二百六十名、今回の半分以下の人数で行っておるわけでございます。

 実際に、人道支援、委員御案内のとおり、最も近いタイプなのはこのルワンダなのかもしれない。そこにおいて期待が失望に変わるとか、そういうことがないようにどうするか。このルワンダの教訓、私も当時、当選三回だったかな、このことを随分議論した覚えがございますが、このときはザイールがきちんと警備をしてくれたということもございました。しかし、火山活動等々もこれあり、引いたということがございました。でも、このときの教訓、あるいは治安に対する備え、今委員が御指摘のようなこと、それを私どもはルワンダから学んだつもりでございます。さらに御教授をいただければ幸いであります。

長島委員 まさに今長官からルワンダの教訓というお話がありましたので、装備については相当改善が見られたと私も認識をしております。しかし、先ほど申し上げたように、ルワンダのときの給水を行う能力よりも比率的には相対的に低かった、これは指摘したんですけれども、大事なのは権限ですね。ずばり言うと武器使用権限です。ルワンダのPKOの武器使用権限と今回の自衛隊が許されている武器使用権限は全く同じであります。不安はございませんか。

石破国務大臣 ルワンダのとき、機関銃が二丁はだめで一丁ならいい、それじゃ一丁故障したらどうするのなんというような議論がありました。委員御指摘のように、そのような空想的な議論はさすがになくなって、今回のようなことになっているわけです。

 では、権限はどうなのだということですが、私、これは何度も答弁申し上げましたが、実際に行くのは自衛官なんですね。私ではない。その人たちがどうなのだということを聞いて、権限も、自分を守るための権限という分野と任務遂行を妨害された場合に使える権限、これは分けて考えなければいけないというものだと思います。

 自分を守るための権限において、私は、他国と比べて遜色があると認識をしていません。任務妨害のための武器使用の議論は、自己を守るための武器使用の基準とは別の次元で議論されるべきものだと私は考えます。

長島委員 今、自己を守るための武器使用と任務遂行のための武器使用というお話、分けて考えるというお話がありましたけれども、では、一つ例を挙げて伺いたいと思います。

 例えば、車列を組んでA地点からB地点に向かって車を走らせた。そうすると、前に伏在していたゲリラとおぼしき者が前に立ちふさがって、そして攻撃をしかけてきた。応戦することはできますね。自己及び自己の管理下にある者を守るために応戦することはできる。まあ応戦というか、防御ですね。防御のために武器使用することはできる。

 そして相手が退却をした。退却をしたときに、任務防護のための武器使用が認められていれば、この退却した、ゲリラだか何だかわかりませんが、そういうおぼしき者がもう一回襲ってこないように追撃をして逮捕して、そしてイラクの治安当局に引き渡す、こういうところまでやらなければ、本当の意味で、A地点からB地点にまで物を運んだり、あるいはB地点でしなければならない任務を遂行することはできませんね。こういう場合はどうするんでしょう。

石破国務大臣 我々が与えられている任務というのは治安維持ではない。人道支援であり、そしてまた、支障のない範囲においての安全確保支援であるということです。

 今委員御指摘のようなことは、確かに我々は、追撃をしてその者を捕縛、拘束するということはできません。それはできないのです。しかしながら、我々がやるべき任務達成のためにそこまでしなければいけないことだろうか。それは、治安維持というものを任務とすればそういうことに相なりますが、私はそこまで予定をしていないのだというふうに思っています。

長島委員 こういうことだから、私は、派遣された自衛官が本当に無事なのか、無事に帰ってこられるのか、大変心配しているんです。

 最後に一つ。これだけ手足を縛って出しておきながら、一つ伺いたいのは、七月二日の法制局長官の答弁でこういう答弁があるんです。憲法で問題としておりますのは、国際紛争を解決するための手段としての武力行使でございます。したがいまして、野盗、盗賊団に対する実力の行使は、そのような意味で、憲法が問題とします武力の行使には該当しませんと。この解釈に問題ございませんか。

石破国務大臣 憲法九条の解釈論として問題があるとは認識をしていません。

斉藤委員長 時間が参りましたので。

長島委員 委員長、最後。

 もしこれを許したらどういうことになりますか。今、イラクというのは、イラク軍が正規軍として存在しない。テロリストだか野盗だか暴徒だかわからない。これだったら、政府が定義をしているいわゆる戦闘行為あるいは武力の行使、国または国に準ずる者、組織的な攻撃、これに対する交戦、これが武力の行使に当たると言っているわけですね。

斉藤委員長 質問者に申し上げます。時間が来ております。

長島委員 もうこれが最後ですから。

 ところが、これはすごく重要なことですよ。この承認にとっては本当に重要なポイントだと私は思いますよ。

 一方で手足を縛るような、いろいろな武器使用に制限をつけておきながら、実は、国の相手となるような、国際紛争になるような……

斉藤委員長 重ねて申し上げます。時間が来ております。

長島委員 そういう相手がいないところで幾らでも武力が使えるような実力の行使は憲法が禁じていない、そういう言い方をしているわけですね。全く歯どめがないじゃないですか。

石破国務大臣 委員の御理解、それはどこか間違っているのではないでしょうか。

 それは、一つ、第一点申し上げれば、手足を縛ってはおりません。自分を守るために与えられた武器使用の権限は、他国と比べて遜色はございません。これは、自衛官たちにも確認をし、他国にも、内容は申し上げられませんが、自分を守るための権限において他国と遜色があるということはございません。手足を縛って出すということもございません。

 もう一点は、この法律に書いてありますとおり、危害許容要件を、正当防衛、緊急避難として武器の使用ができるということが書いてあるわけでございます。その部分は、相手の者がだれであれ、自己保存の権限として、正当防衛、緊急避難を危害許容要件として武器の使用ができる。この法律の構成に何ら問題を生ずるものではございません。

長島委員 これはまた再度やりたいと思います。

斉藤委員長 長島委員の時間は終了いたしました。

 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 最初に、防衛庁長官にお聞きしたいんですが、二十六日の夕方、陸上自衛隊本隊の派遣命令を下しました。本隊派遣に当たっては、先遣隊から報告を受けて、それから、慎重の上にも慎重に検討して判断した、そういうことでいいんですね。

石破国務大臣 結構です。

赤嶺委員 慎重の上にも慎重に検討したということになっているわけですが、その検討の際には、現地の治安情勢や、あるいは自衛隊派遣に対する地元の反応、これは検討の中心課題に当然なると思います。

 慎重な検討の際に、皆さんが特別委員会の理事会に出されました先遣隊の報告の文書、これは理事会にも総理にも同じものが行っているということが説明としてありましたけれども、その中にあった「サマーワ市評議会は住民の意向を反映した構成のため、実質的に機能している。」そういう情勢認識のもとで検討し、派遣の判断をしたということですよね。

石破国務大臣 おっしゃるとおりです。

赤嶺委員 慎重の上にも慎重な判断というのはそういうことだとお認めになりました。

 ところが、その後、今私が読み上げた部分というのは、発言を防衛庁長官も総理大臣も撤回しているわけですね。撤回はしたわけですが、派遣決定に当たっては、サマワ市周辺の情勢あるいは治安については、「サマーワ市評議会は住民の意向を反映した構成のため、実質的に機能している。」ということを第一の判断基準として判断している。地方統治の機構も機能しているし、協力してくれるということが、サマワは治安は安定しているという最大の根拠としてきた。ここもそのとおりだと思います。

 その最大の根拠が実は崩壊をしていた。今度の答弁撤回劇で明らかになっているわけですね。極めていいかげんな検討だったと思うんですね。虚偽の事実を前提に派遣決定をした、その一連の経過が、慎重の上にも慎重な判断をしたという先ほどの防衛庁長官の答弁になると思うんです。

 そこで、委員長、私、一つの文書を持っているんですが、ちょっと理事会に間に合わなかったために理事会には諮ることができませんでしたが、この文書を紹介したいと思いますので、防衛庁長官と川口外務大臣、それから官房長官にお渡ししたいんですが、よろしいでしょうか。物は説明しますので。

斉藤委員長 どうぞ、結構です。野党にも見せて。

赤嶺委員 野党の理事の皆さん、いいですか。

斉藤委員長 どうぞ結構です。どうぞ結構です。

赤嶺委員 この文書なんですが、実はこれ、一月の二十日に防衛庁運用局運用課が発信して、それから、一月の二十一日に外務省の安全保障課がさらにまた防衛庁に送り返した文書になっています。このペーパーの一番下の段に、防衛庁運用局運用課のファクス番号が書かれております。それから、上の方には外務省安全保障政策課というネームが打たれております。

 この文書は、タイトルが「最新のイラク情勢と陸自派遣の調整状況等について」ということになっていまして、「1 陸上自衛隊先遣隊の日程概要」「一月十六日 出国」、そして、日付は打たれていなくて、「○○日 一部が帰国」それから、「2 治安情勢等」となっていまして、さらにページをめくりまして、「3 宿営地の建設」ということでなっているわけですけれども、一月の二十日段階に作成された文書なんですね。

 先遣隊の調査も一日半で帰ってきて、これで本当に慎重の上にも慎重な調査をして報告したと言えるのかという批判が大分マスコミ等でもありましたが、この文書をつくった一月二十日というのは、まさに現地で先遣隊が本格的な調査を開始する日なんですね。まだ調査も開始されていない、そういうときにこういう文書がつくられているんです。

 この文書は、外務省と防衛庁がやりとりしたというものはわかるんですが、ずっと見ていますと、例えば斜体文字を使っているところもあったりするんです。これをずっと見ていくと、先遣隊の調査報告をあらかじめ用意していた文書、しかも、先遣隊の調査が現地で始まる前につくられていた文書という性格が浮かび上がってきます。

 例えば、これの四枚目に、ファクスのページで九ページになっておりますが、「(3) 自衛隊の派遣に対する地元の反応」、これの「(イ)サマーワ市評議会議長」というのがありまして、ここにこう書いているんです。「サマーワ市は、自衛隊の到来を全面的に歓迎しており、今や遅しと待っている。市民の多くが自衛隊員の身の安全を確保することに協力する意向である。」サマワ市の評議会議長のところにこう書かれているんです。

 その下に、かぎ括弧をしまして、「最新のコメントを再度(可能であれば書面で)確認できれば望ましい」と。つまり、サマワ評議会の議長から、そういう趣旨の発言について、最新であれば望ましいし、可能であれば書面でとってきてほしい、こういうやりとりがあるわけですね。

 「その他」のところに「先遣隊は、本年一月七日」云々とありまして、下から三行目に「自衛隊が安心して活動を実施することができるよう、市民が協力することの重要性について一致し、以下の二点を合意したことを確認。」これをわざわざ斜めに書いてあるんです。

 一致点というのは何かというと、「テロリストの侵入を防ぐため、不審者を見つけた場合は、その場で市民が取り押さえ、警察に通報する。」「デモが暴力につながらないよう、デモ参加者に平和的にデモを行わなければならないことを認識させる。」この点について、これは「資料源が新聞報道であるため、現地において要確認」こう言っているわけですね。

 どうもこの文書全体を見ていくと、いわば地元の評議会というのは大変うまくいっているんだ、機能していて、しかもサマワは治安も安定していて、同時に地元も歓迎をしておりという、そういう資料を集めに先遣隊が行ったんじゃないかという疑いを持たざるを得ないわけですよ。

 先遣隊が、慎重の上にも慎重な調査と判断を下すために、ありとあらゆる視野で本当にサマワの現実を調査してくるというのではなくて、安全だ、そういうようなものをつくるために先遣隊が行った。だから、調査が現場で始まる前に国内ではこういう文書がつくられている。

 そういう調査を先遣隊に負わせたために、皆さん、実際にはサマワの評議会が解散しているにもかかわらず、あるいは解散の予兆があるにもかかわらず、これについて気がつかなかった、こういうことじゃないですか。違うですか。

石破国務大臣 この書類は今初めて拝見をしましたし、だれがいつ送ったものか、今委員が御指摘の……(発言する者あり)いやいや、外務省安全保障課とか防衛庁運用局運用課というふうになっておって、どのように委員がこれを手に入れられたのか、私は存じませんが、いずれにしても、これは、私、初めて拝見をいたしました。

 問題は、私どもずっと申し上げておりますように、この報告書というものは、専門調査団も昨年行った。そして、公明党の神崎代表も行ってこられた。オランダなり、そしてまたイギリスなりから逐次情報を入れている。そして、それを総合し先遣隊が、それと間違いないか、我々が、専門調査団が認識したことと異なるようなことが生じていないか、あるいは新たなことが発生していないか、そういうものを見てつくるということを申し、これは国会でも答弁を申し上げたところでございます。

 報告書というのはそのようにつくられたものでございまして、いずれにいたしましても、このような文書というものの存在を、今、存在自体もそうでございますが、初めて拝見をいたしたものでございます。

川口国務大臣 今防衛庁長官がおっしゃったことと全く同じ感想を持っております。

赤嶺委員 今の防衛庁長官のお話だと、これまでも専門調査団が何度もサマワやイラクを調査しに行ったんだから、あらかじめそういう文書についてつくることはあり得ると。この文書がそうであるかどうかということじゃなくて、あり得るということはいいわけですね。それは、もうそういう知見も持っているということでいいんですよね。さっきの答弁はそうでしたでしょう。

石破国務大臣 何を調査してくるか。それは治安の状況であり、ニーズであり、いろんなことを調査に行くわけです。そして、専門調査団が行って把握をしていることもあるわけです。それを総合する、それと変わった点があるか、変わった点がないか。

 先遣隊の調査というのは、今までの知見というものを踏まえたものである。全く真っさらからやるものではない。しかしながら、だからといって、必要なものを見ないできたということをもしおっしゃるのであれば、それは違うということでございます。

赤嶺委員 先遣隊の前にいろんな専門調査団が行っていたから知見は持っている。だから、それが当たっているかどうかを今度調べに行くというお話だったんですが、先遣隊というのは、本隊派遣の前に、防衛庁長官が答弁したように、慎重の上にも慎重の調査と判断のために行ったわけですよね。そして、総理の承認は法律上必要ないのに、先遣隊の報告を受けて、総理の承認もわざわざとって本隊の派遣命令を出したわけですよね。

 ですから、これまでの調査が本当に現場に行って正しいかどうかというのを、この文書で見る限り、正しいかどうかという冷静な現場の調査よりも、正しかったということを文書で、書面として裏づけとしてとってこい、こういうことが書いてあるじゃないですか。

 だから、皆さんは、サマワの評議会が機能が崩壊していても気づかないで、気づかないどころか、サマワは評議会は機能しているというようなことを報告して、この報告に基づいて皆さんは本隊派遣を命令を出して、そして、今に至って、慎重の上に慎重な判断もどこに行ったのか、答弁まで撤回してしまう。ここには、この文書に見られるのは、皆さんの、自衛隊派遣、先にありき、現場の調査よりも自衛隊の派遣を先に調査する、こういうことになっているんじゃないかと思うんですよ。

 それで、私、先ほど申し上げましたけれども、大体ここには皆さんのおっしゃっていることが書いてあって、特に何か書いてあることじゃないんですけれども、しかし、証拠をとってこいなんという文書を見せられると、この文書が本当にどういう文書であったのか。私は、ここに安全保障政策課、それから防衛庁運用課というものが書いてありますので、この文書が皆さんのものであるかどうかは確かめようと思えば確かめられると思います。いかがですか。事実であるかどうか、確かめられませんか。

石破国務大臣 私どもとして、私もこれは初めて見たということを申し上げましたが、確認をするという予定はございません。

赤嶺委員 先遣隊の調査が、皆さん先遣隊を調査団として派遣するときには、華々しく、慎重の上にも慎重な調査と判断を行うと言って送ったわけですよ。このぐらい、自衛隊員の命が大事だ、一番自衛隊員の命を大事に考えているのは私だと防衛庁長官は言ったじゃないですか。そういう先遣隊の調査が、先に派遣ありきで、しかも安全だということを証明するためにこれこれこれをとってこいということで、あれは絶対納得できないですよ。事実であるかどうか、皆さんがはっきりするまでは私は質問できないと思いますので、委員長、取り計らってください。

石破国務大臣 今お答えをしたとおりでございますが、それは、この文書の真偽等々は私は存じません。調べるつもりもございません。

 それと、私が慎重な上にも慎重に、そしてまた、いろいろな安全面に配慮するということ、それは全く影響を与えるものだというふうには思っておりません。

赤嶺委員 今の長官の答弁では納得できません。委員長をして、ちゃんと理事会で検討してもらうようにお願いします。

斉藤委員長 後刻、理事会で協議します。(発言する者あり)後刻、理事会で協議をします。理事会で協議をします。

 どうぞ質問を続けてください。(発言する者あり)どうぞ質問を続けてください。どうぞ質問を続けてください。

 委員長として、理事会で協議をいたします。(赤嶺委員「簡単でしょう、しかも、慎重の上に慎重にして判断した、派遣命令を出したということでね」と呼ぶ)

 どうぞ質問を続行してください。続行してください。どうぞ、どうぞお戻りください。お戻りください。どうぞ質問を続けてください。(発言する者あり)私は、後刻理事会で協議しますと申し上げました。どうぞ質問を続けてください。(発言する者あり)質問を続けてください。質問を続けてください。

 それじゃ、一番最後に、最後にしてもらいます。(赤嶺委員「調べるということをはっきり確認してください」と呼ぶ)

 それでは、申し上げます。

 赤嶺委員の質問時間、残り十分ございましたが、これを首藤議員の後、最終に回させていただきます。

 その間、現在指摘されました件につきましては、努力していただきたいというふうに思います。(発言する者あり)大丈夫です。(赤嶺委員「調査するわけですよね」と呼ぶ)調査させます。

赤嶺委員 じゃ、しっかり調査して、事実であるかどうか確認してください。

斉藤委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 昨日の予算委員会、それから、ただいまの共産党の赤嶺委員の質問に対する防衛庁長官の答弁等々を聞いておりますと、本当に、情けないというか、強い怒りを禁じ得ないのであります。要するに、先遣隊の報告が、事実確認含めて余りにもずさんであるということが明白になりました。

 このようなずさんな先遣隊の報告に基づいて、防衛庁長官は自衛隊本隊のイラクへの派遣を命令された。これは、とても国会としても承認するわけにはいかないし、ましてや国民もそれを許さないだろうと私は思うんですね。余りにもひど過ぎる、こういうふうに思わざるを得ません。

 それで私は、きょうは最初に、一月の二十六日の予算委員会で、防衛庁長官並びに外務大臣に、イラクへ派遣をされる自衛隊員の劣化ウラン弾による被曝の問題をいろいろお聞きいたしました。その私の質問に対する外務大臣、防衛庁長官の答弁は、とても納得し得るものではない。したがって、きょう、さらに引き続いてお伺いをいたしたいと思います。

 最初に、外務大臣にお伺いをいたしますが、私は一月二十六日の予算委員会で、国連環境計画、UNEP、この報告書についてただしました。その後、私も精査をいたしましたら、昨年の十月二十日付で、国連環境計画、UNEPの中の戦争後評価部隊、PCAU、この報告書が出ておるということについて、外務大臣は承知をしておられるでしょうか。

川口国務大臣 いたしております。

照屋委員 この報告書によりますと、国連環境計画は、米国国防総省とイギリスの国防省は、米国及び英国の連合軍が二〇〇三年のイラク戦争でも劣化ウランでできた爆薬を使ったことを認めました、こういうふうになっていることを外務大臣は承知しておられますか。

川口国務大臣 UNEPが二〇〇三年、昨年の十月にまとめた報告書におきまして劣化ウラン弾について記述があって、今後の調査の必要性について示唆をしているというふうに承知しております。

照屋委員 私が聞いているのは、UNEPの中の戦争後評価部隊、これが昨年十月二十日の報告書の中で、今指摘をしましたように、米英軍がイラク戦争でも劣化ウラン弾を使った、使用した、こういう内容になっているのではありませんか。

川口国務大臣 今委員がおっしゃったUNEPの報告書につきまして、我々としてUNEPに問い合わせをいたしました。そういたしましたら、今月の二十二日ですけれども、当該部分については、二〇〇三年の三月二十六日に米中央軍のブルックス准将が行った会見における発言に基づいて作成をしたという回答がありました。

 それで、この准将の発言ですけれども、これは、米国の軍隊の保有する弾薬のうち、劣化ウランを使用した弾薬がわずかにあるということを述べたものでございまして、米国が今回イラクで軍事行動をした際に劣化ウラン弾を使ったということを言ったということではないというふうに理解をいたしております。

 それから、我々として、これは前にも国会で申しましたけれども、ブルックス准将の発言について米国政府に問い合わせをいたしております。それで、その際の回答としては、実際に今回の対イラク軍事行動で米軍が劣化ウラン弾を使用したか否かについては米国政府は明らかにしていませんし、今後とも明らかにする予定はないという回答を得ております。

照屋委員 外務大臣、この間政府は、今外務大臣答弁のように、米国は使っていないとか、あるいは、少なくとも使ったとは言っていないというふうなことを繰り返し言い続けて、そして、何かしら、イラクにおける米国の劣化ウラン弾の使用を日本の外務省として認めるわけにはいかない、米国をかばい続けているというふうに思わざるを得ないわけです。

 ところが、現実問題として、イラクへ派遣をされる自衛隊員や自衛隊員の家族というのは、劣化ウラン弾による放射能汚染、被曝に対する恐怖を感じているんですよ。

 外務大臣、それじゃ、イギリス軍が使ったということについてはどうですか。

川口国務大臣 イギリス軍は劣化ウラン弾を使ったということを認めているというふうに理解をしています。

照屋委員 それは、外務省は、イギリス軍の劣化ウラン弾の使用については何を根拠にイギリスが使ったということをおっしゃっておるんでしょうか。

川口国務大臣 これは、イギリスみずからが劣化ウラン弾を、一・九トンだったと思いますが、使ったということを言っているということです。

照屋委員 だから、私が聞いているのは、イギリス軍がバスラで一・九トンの劣化ウラン弾を使ったということを、外務省はどういうルートで、何を根拠にそれを承知しておるというふうにおっしゃっておるんですか。

川口国務大臣 これは、イギリスの政府の公表資料でございます。

照屋委員 このイラクにおける劣化ウラン弾、使用された劣化ウラン弾による放射能汚染、これは、派遣される自衛隊の生命身体の安全に対する危険もさることながら、本当に広大な環境破壊ももたらしていることは国連環境計画でも明らかになっているわけですね。

 先ほど外務大臣もお触れになりました国連環境計画の中で、イラク国には劣化ウランで破壊された車両等が今なお放置をされて危険な状態にある、こういう内容になっていることも承知をしておられるでしょうか。

川口国務大臣 いずれにいたしましても、劣化ウラン弾というのは特定通常兵器使用禁止制限条約の規制の対象にはなっていないわけでございます。ということは、その使用は禁じられていないということです。

 劣化ウラン弾の健康被害につきまして国際機関等による調査が行われているわけでして、UNEPあるいはWHOが報告書をつくっていますけれども、国際的に確定的な結論が出されているというふうには承知をいたしておりません。

 政府としては、引き続きこうした国際機関の調査の動向を注視していきたいというふうに考えています。

照屋委員 防衛庁長官にお伺いいたします。

 マスコミ報道によりますと、陸上自衛隊北部方面隊は、昨年の十二月二十日、イラクへの派遣候補要員八百五十名の家族を集めた説明会を開催して、米軍が使用したとされる劣化ウラン弾による放射線の影響には、対策として、隊員一人一人に新型線量計を持たせ、放射線を検知した場所での活動は取りやめる、このような説明をしたと報じられておりますが、それは事実でしょうか。

石破国務大臣 現在、私が承知をいたしておりますのは、イラクへ派遣される陸上自衛隊の部隊には、放射線を測定するため、微量ガンマ線測定器、ガンマ線用線量計を携行させると承知をいたしております。

 今回、陸上自衛隊をイラクに派遣するに際しましては、微量ガンマ線測定器を一台約五十万円で五台調達、ガンマ線用線量計を一台約四万円で六百台調達というふうに承知をいたしておるところでございます。

照屋委員 防衛庁長官は、昨年十二月十六日の参議院外交防衛委員会で、我が党の大田昌秀議員が「サマワに派遣される自衛隊は放射能探知器を持参するとの報道がありますが、それは事実ですか。」と尋ねられて、そういうことを確認しているわけではありません、このような答弁をしておりますが、覚えておられますか。

石破国務大臣 覚えております。

照屋委員 そうすると、イラクへ派遣される自衛隊員に放射線の線量計を持たそう、持参させよう、そういうふうに防衛庁が決めたのはいつの時点なんですか。

石破国務大臣 その後のことでございます。

照屋委員 いや、私が聞いているのは、その後というのはわかりますよ。そうじゃないと、あなた、また虚偽の答弁をしたということになりますからね。

 それは日付は特定できませんか。

石破国務大臣 何月何日ということを今特定できるだけの知見を有しておりません。

照屋委員 じゃ、十二月十六日の時点までは、少なくとも自衛隊に放射能の探知器を持参させようなどとはよもや思っていなかった。その後に持参させることになったわけですね。

 なぜそのような方針に防衛庁は変わったんでしょうか。

石破国務大臣 よもや思っていなかったということはございません。それはいろいろなことがあるであろう。しかしながら、IAEAなりあるいは世界保健機構、WHOなり、そういうところから、日本も大きな役割を果たしている、そういうところからいろいろな報告を受け、知見を得て、そういうような具体的に被害があるとは承知をしていないというふうにはお答えをいたしました。

 しかし、その大田委員の御質問に対する答弁でも、持っていきませんということを私はお答えをしていないはずです。自衛隊員の安全には常に配慮をしなければならないということ、大田委員に対するお答えかどうかは忘れましたが、唯一の被爆国として、いずれにしてもそういうような被害に対して、放射能被害というものに対しては、我が国は鋭敏、鋭敏という言葉を使ったかどうかは記憶をしておりませんけれども、注意を払わねばならない、そういう答弁をしたのであって、よもや考えていなかったものをという委員の御指摘は当たらないのではないかと考えます。

照屋委員 防衛庁長官はそうおっしゃるんですが、大田委員は、「サマワに派遣される自衛隊は放射能探知器を持参するとの報道がありますが、それは事実ですか。」と、持参するという報道、これは事実ですかと聞いたのに対して、防衛庁長官は、そういうことを確認しているわけではありません、このように答えているんですよ。

石破国務大臣 その時点で決まっておらない以上、そのように答弁をするのは当然のことでございます。

照屋委員 それでは、こう聞きましょう。

 派遣された先遣隊は、サマワにおける放射能汚染の実態については調査をされたんでしょうか、さらに、その結果は先遣隊からの報告書には記載をされておるんでしょうか、お伺いしましょう。

石破国務大臣 先遣隊が線量計を持参したということは、もう答弁を申し上げたとおりのことでございます。

 劣化ウラン弾というものが人体に与える評価、影響というのは、皮膚を通過しない、直接採取をしない限り影響は生じない、それも重金属性によるものであるということも答弁を申し上げました。

 しかしながら、念には念を入れて線量計というものを持参させる、それはガイガーカウンターというふうに世の中で言われるものでございます。彼らが活動するときに、それがたとえ放射能ダストというものであるにせよ、普通の人間界、普通の自然界において生じないものがあればその線量計は反応することができるというものでございます。そういうものが反応したという報告は受けておりません。

照屋委員 人体云々じゃなくして、ずばり答えてくださいよ。

 先遣隊は、サマワで放射能汚染についての調査はやられたんですかと私は聞いているんです。

石破国務大臣 放射能の調査というものに特定して調査を行ったということはございません。しかしながら、持っていった線量計が反応したという報告も受けておりません。

照屋委員 私は、自衛隊を派遣するに当たって、劣化ウラン弾による被害というのは、放射能汚染というのは、これはもう防衛庁長官も外務大臣も、湾岸戦争症候群と言われるぐらい、アメリカ社会は、帰還した米兵やその家族などを含めて大変大きな問題になっておるんですよ。

 昨年十二月二十五日の公明新聞を見ますと、神崎代表と一緒にサマワの状況を視察した遠山参議院議員がインタビューでこんなことをおっしゃっているんですね。「イラク南部は劣化ウラン弾が最も多く使用された地域でもあり、その放射能被害を危惧する声がありますが。」こういう問いに対して、遠山議員は、「オランダ軍は劣化ウラン弾が使用された場所を特定し、立ち入り禁止にするなどの対策をすでに行っています。」こういうふうに言っておるんです。

 要するに、私は予算委員会でも言いましたけれども、イタリア軍は既に、劣化ウラン弾による被曝で、もう七名の者が体を壊して帰還しているんです。そして、この公明党の調査団でも、今私が具体的に読み上げたように、公明新聞に載った記事では、オランダ軍は使用された場所を特定して、それによって対策をしているわけですよ。

 でも、自衛隊はそれをやっていないでしょう。それはやはり、私は、派遣される自衛隊の生命の安全に対する余りにも配慮を欠いた、これでは、今度の政府の自衛隊の派遣というのは、イラクで米英軍が使用した劣化ウラン弾、これに加担をするようなもの、よく言われる、放射能戦争あるいは劣化ウラン弾戦争への日本の参加であると言っても私は言い過ぎじゃないと思うんです。これは大変な問題ですよ。あなたが顔をしかめて、これで許されるような問題じゃないんですよ。だから、公明党の調査団も気を使って、私は関心を持って調査したんだろうと思うんですね。

 なぜ自衛隊は、本当に隊員の安全を考えるのであれば、イラクにおいて使用された劣化ウラン弾の地域、その範囲、これを特定するような作業をしないんでしょうか。

石破国務大臣 公明新聞の報道というものは確認をいたしますけれども、私、何度もお答えをしたかと思います。WHOやいろいろな機関によって、劣化ウラン弾の被害というものはない、そして、湾岸戦争シンドロームというお話がございましたが、それも、人体に対する影響が劣化ウランとの関連性は確認されていないとの報告を受けておるわけでございます。

 そういたしますと、現在のところ私どもは、劣化ウランについて、人体に直接摂取でもしない限り、直接摂取した場合もそれは重金属ということを先ほどお答えをいたしました、影響があるとは思っていないけれども、しかしながら万が一ということもある、念には念を入れてということもある、したがって線量計というものを携行していくということ、それを行っているということはお答えをしておるとおりです。

 私が顔をしかめてとか、それで済むとか、そういうことを申し上げているのではない。やはりそういうことに注意をすればこそ、国民の税金を使いまして線量計というものを携行する、そして自衛官の安全を確保する、それを考えなければ、線量計を持っていくなどという判断にはならないと私は思います。

照屋委員 その、今度自衛隊員が携行していく線量計というのは、どこのメーカーの線量計なんですか。

石破国務大臣 線量計のメーカーは、これは特定をいたしております。今ここで名前を申し上げることはできません。これは申し上げてもいっかな構いませんが、現在私が掌握をしておらないということでございます。線量計を携行するメーカーも特定はできております。これは、武器等々安全にかかわるものではございませんので、申し上げても差し支えのないものでございます。

照屋委員 この線量計、どこのメーカーで、それから、一個当たりの値段とか、防衛庁は何個調達をしたのか、その線量計はどういう機能を持っておるのか。これを、委員長、私は当委員会に資料として提出することを強く求めたいと思います。

石破国務大臣 失礼いたしました。

 製造会社はアロカ株式会社でございます。金額は、先ほどお答えをいたしましたが、微量ガンマ線測定器は一台約五十万円、五台調達、ガンマ線用線量計は一台約四万円で六百台調達をいたしておるところでございます。

 微量ガンマ線測定器は、センサー部分を検知対象物にかざし、対象物の放射能汚染の有無及び強度を測定するものでございます。自然界に通常存在しておるレベルの放射線量率を測定することは可能であり、検知対象物、地域の放射線量率が自然界に通常存在しているレベルの放射線量率を超えていれば、その放射線量率の違いを検知することが可能でございます。

 一方、ガンマ線用線量計は、個人の受けたガンマ線の累積量を測定するために使用するものでございまして、隊員個人が携行し、機器前面にガンマ線の累積値が表示をされる、そのような性能を有しているものでございます。

照屋委員 この計量器の性能というか機能については大いに問題があるやに専門家から私も話を聞いておりますので、また機会を見て議論をしたいというふうに思っております。

 次に、官房長官にお伺いをいたしますが、昨年の十二月三日、官邸でアブドルアミール・リカービさんなどと総理との会談が持たれたことがありましたでしょうか。

福田国務大臣 昨年の十二月三日、小泉総理がリカービ氏と首相官邸で会談した、そういうことは新聞等で知っております。

照屋委員 それは総理がお招きになったということですが、このリカービ氏は南部の主要部族のリカーブ族の一族だというふうに言われておりますが、どういう目的で日本へ招待をされたのでしょうか。

福田国務大臣 私はその経緯等についてよく承知していないのでございますので、お答えできません。

照屋委員 外務大臣は、総理がリカービ氏を招致したその経緯は承知しておられますか。

川口国務大臣 経緯という意味では承知をしておりませんけれども、招待をしたのは東京財団だったということは聞いております。

照屋委員 その会議ではいかなることが話し合われたんでしょうか。

川口国務大臣 外務省の人間がその会議に出席をしていたわけではございませんので細かいことはよくわかりませんけれども、その会合の席上でリカービ氏が、イラクの南部湿原の復興も含めてイラクが一日も早く安定をして発展する国になるようにしたいということを述べて、日本が長期的な視野に立った支援を行うように要請したというふうに聞いております。

照屋委員 では、外務大臣もお招きをした経緯等について詳細知らないということでございますので、いずれまた、総理が出席した折にただしたいというふうに思っております。

 ところで、イラクは部族社会だというふうに言われております。やはりイラクの治安情勢を判断するためにも、部族が一体どうなっているかということが関心になるわけでありますが、ムサンナ州に勢力を張る部族というのは幾らぐらいあるんですか。

川口国務大臣 おっしゃるようにイラクは部族社会ということでございますが、ムサンナ県に全部で幾つの部族があるかということについては私は承知をしておりません。サマワについて言いますと、これは分類方法いろいろさまざまあって、幾つですとはっきり申し上げられないのですけれども、主な部族だけで十七から二十二ぐらいということだと承知をいたしております。これは、分類方法がいろいろあるとか、それから、一部の部族には複数の部族長がいるとか、いろいろ実態が、非常に把握するのが難しいということですけれども、主要な部族だけで十七から二十二と承知をしています。

斉藤委員長 時間が参っております。

照屋委員 時間でございますので終わりますけれども、外務大臣、私は、やはりイラク情勢を判断する上で、部族の実態、動向、これを軽視したり無視することは許されないと思いますので、きちんとした調査を要求したいというふうに思います。

 終わります。

斉藤委員長 次に、三原朝彦君。

三原委員 自衛隊のイラク派遣、議論が煮詰まってきておりますけれども、確かに、もののふというのは一番戦を好まないんですね。米英もサダム・フセインに対する話し合いで問題解決ができればと、私たちも思っておったし、日本国民だれもが思っておったことだと思います。

 アメリカの国務大臣のパウエルさん、この人も、皆さん御承知のように、ベトナム戦争の歴戦のつわものでもある。そしてまた、九〇年のイラクのクウェート侵攻のときの統幕議長もした人です。実戦を経験すればこそ、戦の厳しさ、犠牲の生ずることを恐れるがゆえに、何とか平和的に解決したいということをやってきた人でもあります。

 しかし、そのパウエル氏も最終的にはアメリカの決定に賛同してということになって、つまりアメリカは、世界の秩序というものを重んずるがゆえに、それがまさに国益でもあったんですけれども、今回のイラクに対する侵攻ということになったわけであります。

 一方、我が国を見てみますと、我が国とても、何といってもこの五十九年間の平和の中での繁栄というのは、これはやはりいつまでも維持していかなければならないし、また、我々の国益というのは、つまりは、まずは世界じゅうで自由に貿易ができること、そのことが基本でもあるわけであります。

 それで、今回の我が国のイラクの支援に関して、その中に国益はどこにあるや、こういうことなんと思いますけれども、私が思うに、まず、やはり何といっても、国連での人道支援をやりましょうという決議があったし、また次には、日米関係というものがどれほど我々にとって重要であるか。特に、アメリカが今友の支えを必要としておるというときには、我々こそ、そのときこそ何とかの形でできる限りのことをしなきゃいけない、これが二つ目の我が国の国益でもあると思いますし、三つ目は、やはりあの中東地域、我々の特にエネルギー源である中東地域が安定であること、このこともまた我々にとって重要欠くべからざるもの、必要欠くべからざるものであると思います。

 そこで、いま一度外務大臣に、国民へ向けて、国益ということに関して、今回の派遣についてどう思われるかということをお話しいただきたいと思います。

    〔委員長退席、小野寺委員長代理着席〕

川口国務大臣 基本的に、今先生がおっしゃられたことに尽きるかと思いますけれども、やはり我が国にとって重要なのは、国際社会が平和で安定をしているということであって、それがなければ我が国の平和と繁栄はないということが一番の基本的な考え方だと思います。

 それで、国際社会が平和で安定をしていくために我が国として貢献をしていくということは、我が国の責務であろうというふうに思います。総理がおっしゃっていらっしゃるように、まさに我が国の平和と繁栄というのは国際社会の平和と安定の中にあるということだと思います。

 それで、特に中東地方というのは、国際社会の平和と安定全体を考えるときに大変に重要な地域であると思います。中東地方は、先ほど先生もおっしゃられましたように、エネルギー資源を豊富に抱えている地域であり、特にイラクは世界第二位の石油の埋蔵量がある国でございます。

 それから、今イラクの安定というふうに考えたときに、中東問題の一番の大事なかぎであるパレスチナ問題、中東和平の問題は、イラクがうまく復興していくということと切っても切れない関係にある。イラクの復興がうまくいかないような状態では、中東和平というのがどういう状況になるか、非常に心もとない状況になるわけでございます。

 それから、今イスラムの原理主義等の過激派、テロリストがあの地域に大勢いるということでして、二十一世紀に世界が立ち向かわなければいけない脅威が何かということを考えますと、これは、テロリストたちの手に大量破壊兵器等が渡って拡散をしていくということが非常に問題であるわけで、その観点からも、この地域が安定をする、平和であるということは大事であるというふうに思います。

 それから、この地域は、もちろん我が国として非常にずっと歴史的に伝統的に友好関係を持っている地域でありまして、この地域が平和に治まっているということは大事であると思います。

 そういった意味で、我が国にとってこの地域は非常に重要な地域であり、国際社会にとっても非常に重要な地域ですから、この地域に我が国が復興のために貢献をしていくということはまさに我が国の責務だというふうに考えておりまして、そういったさまざまな観点から、主体的にこの復興をするということを我が国は決定したということです。

三原委員 国益といえば、地元あたりで質問されるんです。自衛隊が派遣されてイラクに行きます。それで、見ていたら、名前も聞いていないようなちっちゃな国もたくさんイラクに行っていますね。例えばバルト三国、ああいうところが行っている。ああいうところはどういう関係でイラクに行くんでしょうとよく聞かれるんですね。

 だから、よその国の国益まではなかなかはかり知れないかもしれませんけれども、説明するとしたらどういうふうに説明できるんでしょう。

川口国務大臣 委員がおっしゃられましたように、今、米英のほかに三十五カ国の国がイラクの復興のために部隊を派遣しているということでございまして、おっしゃったような小さな国も随分派遣をしています。私も前にマケドニアの外務大臣と話をしましたら、マケドニアもそのころ四十名弱の部隊を派遣しているということを言っていました。

 これらの国がどういう観点からイラクの復興に支援をしているかということは、国によってさまざまであると思います。幾つかの例を申し上げますと、例えばオランダでいいますと、これは、イラクにとって社会の復興が重要だ、治安を改善して民主化を支援していくんだということで、オランダの場合は約千百人の部隊を派遣しています。

 それからスペインも、スペインの外務大臣と私は話をしましたけれども、これは、イラクが民主的な国家として国際社会に復帰をするということは非常に大事であって、イラクが不安定であるということは世界の不安定につながるんだということをパラシオ外務大臣が言っていらっしゃいまして、千三百五十人の部隊をイラクに派遣していますし、また、この観点から、スペインは、昨年ありましたマドリッドの会合も主宰をしています。

 いろいろ、さまざまな国によって考え方がありますけれども、やはりその基本的な考え方として各国共通にあると私が思いましたのは、一つは、イラクの復興が中東の和平のために重要であって、中東の和平というのは世界の平和の非常に重要な部分だという考え方であるかというふうに思います。それから、テロに対して闘っていかなければいけない、そういう気持ち、その二つが共通をしているのではないかというふうに考えています。

三原委員 今度はちょっと質問を変えまして、石破長官に少し教えてもらいたいと思うんです。

 私もこの前、結団式にも出かけて、規律正しい自衛官諸君を見せてもらいましたけれども、気候的にも風土も違う、言葉も全然違う。そういえば、先日テレビで、副司令官が、先遣隊の人たちが着いたときに、初めに教えた、こんにちはというのは何だか言葉を教えたりしていましたね、アラビア語で。

 例えばの話が、そういう言葉にしてもそうでしょう。でしょうけれども、まずは、ああいう風の強い熱砂の地、日較差も激しい、さらには砂漠地形なんて、長官のふるさとに少し小さいのがあるけれども、日本にはないような地形です。ああいうところに行ったときに、たとえ人道的支援に行くといっても、やはり大変なエネルギーを使わなきゃいけないと思うんですけれども、訓練的にはどうでしょう。みんなが心配するのは、雪の降るところで訓練して砂漠がわかるのかななんと言う人がいますけれども、そういう彼らの苦労状況あたりを我々にちょっと教えていただきたいと思います。

石破国務大臣 それは、委員は数カ国語に通暁しておられますが、アラビア語というのは本当に難しい。しゃべれるのに何年もかかり、大体あの字、右から左に読むんだそうですね。これを初歩的な会話は身につける、できれば本隊が参りますときはもっと高いレベルで日常会話ぐらいはできるようにということで、語学というものの教育もカリキュラムに入れております。

 それから、委員おっしゃるように、何で吹雪舞うところから砂漠地帯に行くのという御質問は、私、北海道の方からもいただくのです。いずれにしても、どこの部隊が行くのが一番よいのかは、諸条件、いろいろな部隊の練度、あるいは今までのPKOに行った経験、そのようなものから総合的に判断をし、北海道の部隊ということになったものでございます。

 私の選挙区の鳥取砂丘なぞというのは砂漠でも何でもございませんで、これは何が違うかというと、要は砂の粒の粗さですよね。いわゆる日本の場合にはあくまで粗い砂である。しかし、現地のはパウダー状の砂でございます。これに、では自衛隊の車両、航空機、それが耐え得るかということは、防じんフィルターをどのようなものを装備するかということと同時に、どれぐらいの頻度でそれを交換するか、定期点検の頻度をどれぐらい上げるかということでございます。それは、車両にいたしましても、あるいは航空機にいたしましても、そのような点を十分勘案いたしまして、砂漠でも運行できるということで今回の決定に至ったものでございます。

三原委員 いま一つ、例えば、もちろん心身ともに強い人が行くんでしょうけれども、時にはやはり、ホームシックじゃないけれども、そういうたぐいのものがあってみたりとか、精神的に追い詰められたようになる人があってみたりしなくもないと思うんですよね。そういう点でのケアみたいなことはどのように考えておられますか。

石破国務大臣 一つは、衛星電話等々を通じまして、あるいはインターネット等々を通じまして、御家族とどれだけ頻繁に話ができるかということには相当に意を用いました。週に数回は家族と直接話ができる、声が聞ける、できれば画像も送れるような形で、本隊の派遣にきちっと間に合うかどうか、ちょっと今断言できませんが、やりたいと思っています。

 もう一つは、そのようにいろいろな手を講じたといたしましても、やはり環境が相当違いますので、メンタル的にダメージを受けることがないとは申し上げられません。その場合に、これはオフィシャルライセンスではございませんが、我々自衛隊の中で、メンタルヘルスケアに関しますいろいろな講習を行っております。こういう場合にはこのように対応するのだというような、そのような講習を受けた者を今ふやしておるところでございまして、今回のイラク派遣、仮に御承認を賜ったといたしまして、本隊を派遣いたします折には、これも数カ月交代でかわります、もちろん、何カ月も何カ月も、何年もやれるものじゃございませんから。その間においても、派遣される隊員の中にそういうメンタルヘルスケアに通じた者を派遣する予定でおるところでございます。

三原委員 国を代表して人道支援に行ってもらうんですから、やはり心身ともに健全なもとに戻ってきてもらいたいと思うがゆえにちょっと質問させてもらいました。

 最後にいま一つ、石破長官に、あなたの意見を聞きたいと思うんですけれども、ルーマニアのチャウシェスクさんというのがいましたよね。独裁者といえば、チャウシェスク、サダム・フセイン、リビアのカダフィ、北朝鮮の金正日。ルーマニアのチャウシェスクは自壊しましたよね。サダム・フセインのイラクは英米によって解放された。リビアのカダフィは、学習効果ということなんでしょうかね、今日の世界情勢を見て、みずから、今から少しずつでも門戸開放してやりますということでやっていますけれども、すぐ隣の北朝鮮はどうでしょう、この三つの国家の変化に対して反応するであろうか。今、急なことですけれども、あなたの意見、意識みたいなことをちょっと、石破長官の意見を聞いてみたいなと。

石破国務大臣 私は、あるとすればチャウシェスク型なんだろうということはずっと考えてまいりました。ただ、その前提条件としては、チャウシェスク政権が倒れた際には、一つは、情報がある程度伝わったということがございました。それが一つの条件です。もう一つは、難民という形でそれが外へ出やすいという環境もルーマニアにはあったというふうに承知しています。

 それを北朝鮮に置きかえてみましたときに、それでは、ルーマニアのチャウシェスク政権が倒れたときのように、いわゆるいろんな西側、当時は西側、北朝鮮の場合には諸外国の情報が入る状況にあるかというと、それは必ずしもそうではない。そしてまた、難民というものは、例えば中華人民共和国は、我が国にいるのは不法滞在者であるというふうに言っている状況からすると、難民というものがどんどん出るという状況にもない。

 しかし、総理がよくおっしゃいますように、この北朝鮮の問題を、戦争という事態ではなくて何かの形で平和的に解決するとするならば、私の考えが足りないのかもしれませんが、情報、難民というのが一つの隘路であり、ルーマニアと違うという点であるとするならば、それをどうやって我々は条件として整備、整備という言い方は変ですが、合わせていくのだろう、そういうシミュレーションは、今突然のお尋ねではございますが、私の中ではいろいろと考えておるところでございます。

三原委員 ありがとうございました。

小野寺委員長代理 これにて三原朝彦君の質疑は終わります。

 次に、河合正智君。

    〔小野寺委員長代理退席、委員長着席〕

河合委員 公明党の河合正智でございます。

 防衛庁長官、外務大臣、官房長官初め、お伺いさせていただきます。

 まず、国会承認の件についてでございますけれども、イラク特措法の第六条、「内閣総理大臣は、基本計画に定められた自衛隊の部隊等が実施する対応措置については、」「当該対応措置の実施につき国会の承認を求めなければならない。」となっております。

 この件に関しまして、一般的な実施命令、いわゆる対応措置の実施についての国会承認と理解しておりますけれども、防衛庁長官の見解はいかがでございますか。

石破国務大臣 委員の御指摘のとおりでございます。派遣命令ごとの承認は必要ないというふうに私ども考えておるところであります。

河合委員 主として、今も御意見がございますように、野党の皆さんから、個別の命令について国会承認が必要なのではないかという主張がございます。この件に関しましては、国会承認につきましては、自衛隊法、PKO法、周辺事態法、それからテロ特措法並びに本法等、国会承認に関する我が国の体系的な考え方がございますけれども、内閣法制局長官、ただいま防衛庁長官の解釈につきまして質問させていただきます。

秋山政府特別補佐人 お尋ねのとおり、自衛隊の部隊等による一定の活動に対する国会承認の規定は、自衛隊法七十六条、いわゆるPKO法六条、周辺事態法五条、それからテロ対策特措法五条などに規定がございます。

 ただ、これらの規定のうち、これまでに実際に国会承認が行われましたのは、テロ対策特措法第五条に基づくもののみであると承知しておりまして、したがいまして、先例からルールを導き出すというのにはちょっと難しい状況ではございます。

 いずれにしましても、それぞれの法律の規定の趣旨に基づき必要と考えられる事項について承認を求めるべきものであると考えます。

 それで、今回のイラク特措法の国会承認でございますが、防衛庁長官が、陸上、海上、航空各自衛隊の部隊に対し、基本計画及び実施要領に従い対応措置を実施する旨の命令を発出した昨年十二月十九日が、同法六条一項に規定する「自衛隊の部隊等が」「当該対応措置を開始した日」に当たるものと考えられます。

 それから、今般の承認案件は、人道復興支援活動と安全確保支援活動の二つの活動の実施について国会の承認を求めるものであります。したがいまして、今般の政府が提出しております承認の求めで、イラク特措法上の要件は満たされているものと考えております。

河合委員 次に、陸上自衛隊の本隊派遣についてお伺いさせていただきますが、二十六日、首相官邸で行われました自公党首会談におきまして、我が党の神崎代表は、小泉首相が陸自本隊を派遣する環境が整ったと強い決意を述べられましたのに対して、首相の判断を尊重すると述べ、その折、神崎代表は、自衛隊員の安全確保に万全を期してほしい、また、現地でいろいろな問題が起こったときに正確な情報を提供してもらいたい、三番目に、国民に自衛隊の活動を正確に知ってもらうためにも現地の広報体制を充実してほしい、四番目に、現地では雇用対策への期待が大きい、現実にできるものから着実に実行してほしい旨要望いたしました。

 この件に関しまして、政府としてどのような決意で臨まれるのか、官房長官にお伺いします。

福田国務大臣 先般、御党神崎代表と小泉総理が会談いたしまして、今御指摘ありましたようなことにつきましてお話がございました。

 そのことについてお答えを申し上げますけれども、自衛隊の派遣に当たりましては、実施する活動の内容に合わせて、現地の治安状況等を十分に考慮して活動の実施区域が定められております。

 加えまして、必要な装備、それから武器、部隊運用について入念に検討と工夫を加えるとともに、常に現地の治安情勢の的確な把握に努めて、不測の事態が起こらないよう隊員の安全確保に万全を期す、こういうふうな考え方をいたしております。

 また、万一の問題が起こったときの正確な情報提供という問題につきましては、常に関係機関は連携を図りながら、現地の状況を十分に把握し得る体制をとり、迅速かつ正確な情報を現地の自衛隊の部隊に提供する、そういう仕組みを確立しております。

 万一不測の事態が発生した、こういう場合にも臨機応変に対応できるように心がけるということをするとともに、現地における安全確保に障害が生じないよう配慮しつつ国民への情報開示に努めていきたい、こう考えております。

 また、広報体制につきましては、現地における自衛隊の活動、これを正確に伝えるということは、これは国民の理解、それから協力、支持を確保するというためにも極めて大切でございます。今後とも、安全確保に配慮しながら、報道機関に対する定期的なブリーフィングなどの取材機会を提供するということに努めてまいりたいと思います。

 また、現地に自衛隊が溶け込んで、そして地元から歓迎されている状況を日本国内でも知ってもらえるよう、地元住民との交流の姿なども各種メディアを通じて効果的に広報してまいりたい、そのようにも考えております。

 また、現地での雇用の問題であります、最後でございますけれども。

 当面、自衛隊の宿営地内における各種の役務のために現地の方々を雇用するということを検討しておりまして、実際に、整地のためにブルドーザーなんかを使ってこの間作業を始めたのであります。これは現地の方にやっていただく、こういうふうなことでありまして、まだ限定的ではございますけれども、サマワでの雇用の拡大にも貢献してまいりたいと考えております。

河合委員 ありがとうございます。改めまして、強く要望しておきたいと思います。

 一月の二十一日の本会議におきます菅代表の御発言の中で、こういう箇所がございました。「かつて、ドイツは、NATOの領域内に限られていた軍の活動をNATOの領域外に広げるときに、その基本法、日本でいう憲法の改正をあらかじめやってから行動いたしました。小泉総理は、憲法を変えることもなく、明らかに憲法に違反する行動を命令している。まさに民主主義を破壊する暴挙とこれを言わないで、何を暴挙と言うんでしょうか。」こういう発言がございました。

 ここで確認させていただきたいんですけれども、ここに述べられております事実とは異なりまして、そもそもドイツは基本法の改正は行っていないのではないでしょうか。外務大臣、いかがでしょうか。

川口国務大臣 これは先生がおっしゃったとおりでございまして、御指摘になられましたように、ドイツの連邦軍のNATOの域外派遣の問題については基本法の改正は行われていないということでして、一九九四年七月十二日ですが、ドイツ連邦憲法裁判所がこれについて合憲の判決を下したということでございます。

 もう少し具体的に申し上げますと、この判決は、ドイツの基本法上、ドイツ連邦軍は、連邦議会の過半数による承認があれば、国連安保理決議を実施するためにNATO及び西欧同盟の行動の枠内で行われる活動並びに強制措置をとる場合を含め、国連により組織される平和部隊に参加することが認められる、そういう判断でございました。

河合委員 今自衛隊の皆さんは、インド洋を越え、ペルシャ湾を越えて任務についていらっしゃいます。はるか祖国から、衆議院の本会議場で一党の党首がこのように憲法違反を主張される前提条件が、前提の事実が違うということについては、私は見識を疑うものでございます。官房長官、いかがお考えでしょうか。

福田国務大臣 もうこれは何度もお話というか説明を申し上げていることでございますけれども、今回イラクに派遣されます自衛隊は、戦争に行くんじゃないんですよね、戦闘行為に参加するとか、また、占領そのものを行う、こういうものではございません。

 イラク特措法に基づきます自衛隊の活動というのは、これは人道復興支援を行うことでございまして、また、非戦闘地域の要件を満たす区域において活動を行うということで、憲法に、もちろん違反するものではございません。

河合委員 国連のアナン事務総長は、二十七日、訪問先のパリで、イラクでの総選挙実施の可能性を探る調査団の派遣を正式に発表したと報じられております。また、アナン事務総長が提唱されております有識者ハイレベル委員会、これは、国連改革に関する提言をこの秋にもまとめられると聞いております。

 このように、国連を一つの核として、現在起きております国際情勢への対処に収れんしていこうという動きがございます。我が党は国連中心主義ということは立党時から申し上げているところでございますけれども、イラクの支援に積極的に踏み出せない国、例えばドイツ、フランス、ロシア等が復興支援に参加できる枠組みづくりというのが非常に大切ではないかと思いますが、日本としましても、この問題につきまして積極的に取り組むべきではないかと考えます。

 そこで、まず具体的な提案でございますけれども、日本とフランスとの提携によりますイラクの文化財保護等につきまして、二国間の協力をてこに、フランスも復興に参加できるような環境整備をすべきではないかと考えますけれども、外務大臣の見解をお伺いしたいと思います。

川口国務大臣 おっしゃるとおりでして、イラクの復興が国際社会の幅広い協調のもとに行われていくということは非常に重要であるというふうに考えております。

 フランスとの関係では、我が国は、フランスを含めいろいろな国とそういった協調の枠組みをつくるための努力をしておりまして、先般総理の特使も派遣をされて、そしてフランスには橋本元総理がおいでになられてシラク大統領とお話しになって、まさに、おっしゃった文化を含む二国間協力をして、それによって一緒にイラク復興をしていきましょうということで、具体的にそういった国々を引き込む活動をしております。

 今後ともこういった取り組みをしていきたいと考えております。

河合委員 湾岸戦争以降、特にイラクのバグダッド攻撃に対しましては、英米とヨーロッパ諸国との考え方に大きな溝が存在するように思います。しかし、国際テロに対してどのように対処するかということにつきましては、国際社会共通の二十一世紀の課題でございます。こうした、例えばヨーロッパが米英の先制行動と理解しているこういう問題に対しまして、国際テロに対するいわゆる基準づくりというものが私は必要ではないかと考えます。先ほど申し上げました有識者のハイレベル委員会には、我が国からも緒方貞子さんも入っていらっしゃると聞いております。

 こういう問題に対しまして、我が国としましても積極的に支援すべきではないかと考えますが、外務大臣の見解をお伺いします。

川口国務大臣 これも先生のおっしゃるとおり、我が国としてそういった努力をすることは重要であると考えております。

 基準づくりということについて申し上げれば、今までも国際社会は、テロ防止関連条約をつくったり、それから一定の行為類型、例えばハイジャックとか人質をとるとか、そういったことをテロ行為に該当するというふうに考えて、犯罪としてこれを処罰するということで法的な枠組みをつくってきているわけでございますし、それだけではなくて、やはりテロとの対応という意味では、テロに対抗していくためには、国際社会が一致団結をして、ほかのいろいろな取り組みが必要だというふうに考えています。ほかの外国がテロ防止関連条約を結ぶように慫慂するとか、あるいは関連の安保理決議をつくるように働きかけるとか、そういったことについて我が国も今後とも積極的に貢献をしていきたいと考えています。

河合委員 日本ユニセフ大使でもありますアグネス・チャンさんが、昨年の六月にイラク南部を視察した「イラク緊急報告会レポート」というものがございます。

 そこには、イラクの子供たちに対するあふれんばかりのアグネス・チャンのまなざしが報告されておりますけれども、最後にこういうことを述べていらっしゃいます。地下に資源がたくさんある国だからこういうことが起きたのでしょうか、水もない、食べ物もない、病院も機能していない、しかし、地下にある資源よりも、アグネス・チャン、私にとっては、地上にある子供たちこそ宝としか思えないのに、こういう報告でございます。私も、この報告を聞きまして、絶句するような思いの感動を受けました。

 そこで、日本の戦後の復興において教育が果たした役割というものはまことに大きかったと思います。先日の新聞記事によりますと、アメリカでは、十四年ぶりにイラクからフルブライト計画に基づく留学生を受け入れることになったようでございます。また、アフガニスタンの例でございますけれども、アフガニスタン教育復興支援につきまして、アフガニスタンの指導的女子教育者のための研修というものが、お茶の水女子大学、津田塾大学、東京女子大学、奈良女子大学、日本女子大学等でJICAのプログラムで行われておりますが、こういうことがイラクにおいても、六月以降になるかと思いますけれども、つくれないか、これが一つの質問でございます。

 また、願わくは、例えばアメリカン・フィールド・サービス、これは第二次大戦の野戦病院に勤務した運転手さんたちが、二度とこういう惨事を起こさないためにはどうしたらいいか、子供のころからお互いに交流すれば戦争はしないだろう、こういう理念でつくられたと伺っております。

 この大学間交流並びに教育支援、教育交流につきまして、外務大臣の見解をお聞きしたいと思います。

川口国務大臣 教育、子供を大事にしていく。子供は、国の将来を担う子供たちですから、教育をきちんと支援し、その他、今委員がおっしゃった女性の支援等々を進めていくことは非常に重要であると思います。我が国もその考え方に基づいて、アフガニスタンでも、そして今イラクでも、ユニセフ等を通じて教育を一生懸命に支援しようとしています。

 女性の支援ということで言いますと、アフガニスタンについて、おっしゃったようにかなり進めたわけです。イラクの女性について、これはアフガニスタンよりは多少違った状況に今あるというふうに思っていますけれども、これについても、特にイラクの女性の教員に対して、JICA事業でいかなる研修が適当かということを検討していきたいというふうに考えております。

 留学プログラムも非常に重要でございます。若い人たちの交流も大事でございまして、日本も今かなりの予算をとっております。イラクからも一年に一人ぐらい国費留学生で来ていますけれども、こういった教育、若者の交流等のニーズについて、引き続き検討をしていきたいと考えます。

河合委員 一昨年に続きましてイランを訪問されまして、特にイラクの南部の湿原地帯の回復についてもイランとの会談の中で言及されております川口大臣にお伺いさせていただきますけれども、いわゆるメソポタミア湿原の復活の点でございます。

 古代シュメール人の末裔と言われておりますマーシュ・アラブと呼ばれる人々が独自の生活、文化を守ってきたところでもございますし、渡り鳥の飛来地であり、ペルシャ湾岸の魚の産卵地でもあったという、地球環境という観点からも、また、イラクの復興支援という観点からも、この復興支援というのは非常に大切だと考えておりますが、大臣の所信と、また、計画、構想をお述べいただきたいと思います。

川口国務大臣 メソポタミアの湿原の回復ということは非常に大事なことでございます。この湿原の回復については、各国政府や国際機関やNGOの方々と情報収集や意見の交換を行ってきております。

 私は、環境大臣をしていましたときに、自然の回復ということについて、釧路湿原で自然の回復ということを手がけさせていただきましたけれども、メソポタミアの湿原に水が戻ってくるということは、まさにイラクの復興への努力が終わることのシンボルではないだろうかというふうに思っております。

 ただ、現実は非常に難しい問題がたくさんございまして、例えば、今把握をしている限りでは、調査団等を派遣するためにはやはり治安が大事でございまして、そういった治安状況が今直ちに確保されている状況にはないということと、この湿原自体の面積が広くて、四国よりも広い領域である。それから、ニーズとしても、農業関係とか水の資源の回復、漁業、被迫害住民を帰還させるとか、いろいろなニーズがあるということです。それから、この湿原地帯で部族の社会的な関係が非常に複雑になっているということでございますので、それを踏まえた支援が必要だという状況もございます。また、水の問題というのは非常に微妙なところがあって、イラクを越えて近隣の諸国に影響が及ぶという要素もありますので、こういった間での調整も必要だ。さらに申し上げれば、自然を再生するというその方法論、技術という意味でも非常に検討が必要な難しい問題がある。

 問題はいろいろあるということでございますけれども、まず現状の把握に努めて、それからイラク側とも調整をしながら、関係の国際機関等々とも話をしながら、どのような支援が可能かということの検討を続けていきたいというふうに思っています。

河合委員 大変にありがとうございました。

 最後に、再確認をさせていただきたい事項がございます。

 陸上自衛隊の先遣隊がムサンナ県の知事とともに会った人物、これはサマワ市の評議会の議長ということでよろしいか、確認させていただきます。

石破国務大臣 先遣隊がお目にかかりました、これは一月の二十日でございます、ムサンナ県知事公邸におきまして、アッバース・ムサンナ県知事ほか三十名の方々にお目にかかりました。そこで評議会のファディール・アサブさんという方にお目にかからせていただいております。これは念のために、つい先ほど現地に確認を行いました。ファディール・アサブ氏は議長代理であるということでございます。

 このことは、御本人に会いまして、現地で、あなたの肩書は何ですかということをお尋ねをいたしました。その場におきまして、オランダ軍の方から、この人はこういう人ですよ、こういう人ですよ、こういう人ですよというふうに御紹介を受けまして、私ども、そういう認識をしておるわけでございますが、念のため現地に確認を先ほどいたさせました。お目にかかりましたのは、ファディール・アサブさん、肩書は評議会議長代理ということでございます。

河合委員 以上で質問を終わります。

斉藤委員長 首藤信彦君。

首藤委員 民主党の首藤信彦です。

 今、委員会の委員が、二十日に先遣隊の隊長さんが知事公邸に行って、知事のところへ行って、そして評議会の議長さんにお会いになったということですかね。それで、その方がファディール・アサブさんということだと思うんですが、そのファディール・アサブさんというのは事務局長ではないかと思いますけれども、それが先遣隊が二十日にお会いになった方ですか。もう一度確認してください。

石破国務大臣 今、御本人に確認をいたさせました。ファディール・アサブさん、議長代理ということを、御本人にお目にかかりまして、明確に現地で確認しているとのことでございます。

 要するに、御本人がおっしゃいますのはそういうことであり、サマワ……(首藤委員「いつ会った」と呼ぶ)いえ、先ほどです。(首藤委員「二十日に会ったんですか」と呼ぶ)いやいや、確認をしたのが先ほどということでございまして、お目にかからせていただいたというのは一月二十日のことでございます。

首藤委員 いや、だから、そんな大事なことだって一つも正確でないわけですよ。新聞報道がいけない、これは誤報だなんと言っている人もいましたけれども、評議会の議長はアリ・ダファーイさんということで、知事のところで会ったというふうに打ってあるわけですね。

 きょうの、ファディール・アサブさんというんですけれども、ファディール・アサブさんというのは、いろいろのニュースメディアの取材で、これは二十八日の取材で、この方は、評議会が解散しているのは、自衛隊が来てからは何もしていないから解散になっちゃっているんじゃないかというような質問に対して、それは筋違いだ、自衛隊の先遣隊がサマワ入りして以降、評議会に何の連絡もない、括弧怒り、こういうふうに書いてありますけれども、これは、そういうことで、本当に情報が来ていないんだと思うんですね。

 さて、ずっと同僚議員も主張しておりますように、この評議会の問題というのは物すごく重要だということがだんだんとわかってきました。それは、私たちが五百五十九億円、私たちの血税一円一円、今本当に苦しいこの中で一円一円を、私たちが集めてためた五百五十九億円ですよ。それを今イラクの人たちにお渡ししようとしている。その受け皿がどういうものであるかというところで、やはり一番重要だと思うんですね。

 そこで、評議会ですけれども、その評議会というのが本当に存在するのかというのが問題になりますね。そして、それはその評議会に対して出すわけですが、それが例えば存在していない、そして、議長さんが巡礼に行ってしまう。巡礼に行ってしまうというと、これはもう大変な問題がありまして、巡礼に行って帰ってこない人もいるんですよ。ですから、もう大変な問題があって……(発言する者あり)ちょっと静かにさせてください、委員長。静かにさせてください。(発言する者あり)ちょっと静かにさせてください。

斉藤委員長 静かにしてください。

首藤委員 いや、もう時間が限られているんですから、邪魔させないでください、委員長。

 ですから、本当にそれが存在するのかということなんですけれども、ここは今とりあえず存在していないということですね。

 ですから、サマワに援助をするというのは、やはり将来課題である。これは、ハッジから帰ってくるまでに随分時間がかかるから、将来課題であるというふうに思うんですね。(石破国務大臣「何の課題」と呼ぶ)将来課題、将来課題である。現在ではない、現在あるわけではないですから、将来課題であるということですね。

 さて、外務大臣、これは今サマワの話をしていますけれども、県もそうだし、それから、日本がこれから提供しようという五百五十九億円、これの受け皿、例えば病院、例えば発電所、例えば浄水場、いろいろありますね。しかしそれは、その病院を運営している団体とか、あるいは発電所を回している私企業に出すわけにはいきません。ですから、評議会に渡していくというのがだんだん私たちがわかってきたことなんですが、それでは、イラク全土でどれだけの評議会がきちっとした組織として成立していますでしょうか。外務大臣、いかがでしょうか。

川口国務大臣 市評議会に援助を出すというふうに決めていらっしゃるような御質問でございましたけれども、それは必ずしもそういうことではなくて、私が先ほど来申し上げていますように、これを出す先というのは、市評議会の場合もありますけれども、NGOということもありますし、中央の省庁ということもありますし、県の組織ということもあるわけです。市評議会というのはその可能性の一つであるにすぎないということです。

 したがいまして、しかも、今申し上げたそれぞれの組織について、我が国のまさに血税を使って援助したものを実施していくのにふさわしい能力を持っているところでなければ出しませんから、仮にサマワの市評議会が機能しているといっても、もしこの援助をきちんとする能力がないという判断を日本政府としてすれば、これは対象にならないということであります。

 申し上げていることは、きちんとした援助をする能力があるところ、そこを対象にするということですし、その対象は、市評議会だけではなくて、県もあれば、NGOもあれば、病院もあれば、中央省庁もあれば、さまざまいろいろあるということでございます。

 そこで、委員の御質問についてお答えでございますけれども、イラクの全土で幾つの評議会があるかということについての数字はわかりませんけれども、例えば、ムサンナ県についていえば十一あります。それから、バグダッドについていえば、これは九つとか、そういった数があるわけです。

 したがって、それは援助をする場合に、その援助をする対象としてふさわしいかどうかということを調査の上、案件ごとに対象をきちんと決めるということでございます。

首藤委員 いや、長くしゃべっていただきましたけれども、たった一言ですよ、五秒でいいんですよ。これは要するに、数は知らない、そういうことですよ。

 それならば、どうして五百五十九億円が出せますか。そうしたら、予算そのものが成り立たないじゃないですか。それだったら、予算を撤回して、新しくつくり直してください。それが出なかったらできないですよ。

 いやいや、手を挙げて話さなくても、いや、いいですよ、いいですよ。また次の質問がありますから。いや、次の質問がありますから、手を挙げなくていいですよ。まただらだら話すのじゃなくて、委員長、私は時間がないんですよ。

斉藤委員長 どうぞ、どうぞ。

首藤委員 ですから、この国、イラクの中で、一体、我々が五百五十九億円をつぎ込もうとしている受け皿として、幾つの評議会が、きちっとしたメンバーがいて、きちっとした代表者がいて、きちっとした受け皿があり、きちっとした評価ができるか、それをしっかりと言ってください。

 いいですか、委員長、いいですか、これは厳命してやってください。

斉藤委員長 川口外務大臣、明瞭にして簡潔に御答弁願います。

川口国務大臣 先ほど申し上げているように、市評議会だけが対象ではないということを申し上げているわけです。ですから、市評議会の数が全部で幾つあるとしても、幾つあるかということは、この五百五十九億円の援助を適切に行っていくということとは直接には関係がないわけでございます。これについては、例えばその県の評議会というのもありますし、それから、先ほども言いましたようにバグダッドには九つあるわけでして、そういった評議会も含め、あるいは病院とか、あるいは中央省庁とか、さまざまなNGOとか、さまざまなところを対象にやっていくということであります。

 積算は、別途、ニーズに応じて積算をしているということです。

首藤委員 委員長、もうこれはひどいです。ちょっとひどいよ。ひどい。これはひどい。委員長、責任でやってくださいよ。これはひどいよ。もう時間がどんどんなくなってくるんだから。

 では、もう一度、最後、最終、この問題についてはもう一回確認しますよ。防衛長官、だからもう一度、これは同僚委員もみんな関心を持っていますから。こういうことが大事なんですよ。要するに、評議会はだれが代表しているのか。ですから、そのことに関してもう一度だけ聞きますよ。

 二十日に先遣隊の隊長が、どこで、だれに会って、その肩書は何であったのか、それをもう一度言ってください。

石破国務大臣 一月二十日、午後早い時間、場所はムサンナ県知事公邸でございます。

 我々の方からムサンナ県知事公邸を訪問し、アッバース・ムサンナ県知事以下三十名の方々にお目にかからせていただきました。お目にかかりました市評議会の方はファディール・アサブ氏であります。ファディール・アサブ氏。

 先ほど確認をいたしましたところ、御本人が、自分は議長代理であるということをおっしゃいました。そのことを、もちろん評議員でございます、評議員として名を連ねておりまして、御本人がおっしゃいましたのは、念のため、先ほど確認を行いましたところ、議長代理であると本人が明確におっしゃったということでございます。

首藤委員 それはもう、今、もちろん速記録を見ればわかりますけれども、今までの話と全然違うんですよ。ですから、それは訂正として、きちっと訂正文を出してください。それでなかったら先へ行けませんよ。時間をとめてください。時間をとめてください。

 何度も何度もぐるぐるやって、このことが、ぐるぐるぐるぐる、混乱を招いたんですよ。このことが混乱を招いたんですよ。ですから、このことはきちっとやってください。これができなかったら先へ進めませんよ。

石破国務大臣 御本人にお目にかかりまして、先ほど本人に確認をいたしました。先ほど御本人に確認をいたしましたところ、自分は議長代理であるというふうにおっしゃいました。したがいまして、このファディール・アサブ氏は議長代理であるということでございます。訂正をいたします。

斉藤委員長 首藤君。今答弁しましたから。答弁をしたわけです。どうぞ質問を続けてください。どうぞ質問を続けてください。(発言する者あり)

 首藤委員の質問時間は終了いたしました。(発言する者あり)

 次に、赤嶺政賢君。(発言する者あり)どうぞ。

 再度申し上げます。首藤委員の持ち時間が終了いたしました。

 次に、赤嶺政賢君。(発言する者、退場する者あり)

 民主党・無所属クラブ、日本共産党、社会民主党・市民連合所属委員に理事をして出席を要請いたしましたが、出席が得られません。

 この際、暫時休憩いたします。

    午後七時五十七分休憩

     ――――◇―――――

    午後八時二十五分開議

斉藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。首藤信彦君。

首藤委員 委員長、そして委員の皆さん、そして政府側の皆さん、私は、ここの場に立つのはきょうで三度目です。仏の顔も三度といいますけれども、もう本当にこういうことはあってはいけないんだと私は思っているんですね。

 さて、一体これが……(発言する者あり)うるさい、うるさい。

斉藤委員長 御静粛に願います。御静粛に願います。

首藤委員 この問題は、これもまた何度も何度も言っているように、評議会の問題が一番重要なんです。この問題こそが、このイラクへの支援の中の最大のキーなんです。ですから、この問題に関してはしっかりやろうと、それで質問しているわけです。それに対して、どんどんどんどん話が違ってきているわけですね。

 最大の問題は、石破長官が、評議会の議長と会いましたと何度も何度もおっしゃった。そして、例えば一月二十七日の達増議員の質問に関しては、速記録にちゃんと書いてありますよ、議長と会いましたと。だから、要するに、イラクの人たち、イラクの市民、イラクのサマワの市民を代表している、そういうこともしっかりやっているんですということを何度も何度もおっしゃったわけですよ。しかし、後からそれが違うということがおわかりになったわけですね。そして最後に、私の最後の質問の直前に、公明党の方からいろいろ質問があって、議長ではなく、先遣隊が会ったのは議長代理だった、こういう話になったわけですね。

 それで、議長と議長代理は根本的に違うわけですよ。例えば、議長代理という人が評議会のメンバーであるのかどうかもわからない。議長代理という人が議長と同格の資格を持っているのかもわからないわけですね。ですから、このことに関しては、当然のことながら、アラビア語では何と言うのかもいかないと、日本語の関係で、もうはっきりしないわけですね。

 そしてまた、その議長代理、あたかも議長と同じぐらいの力を持って、議長が不在のとき、議長は既に巡礼のためにどこかに行って、いないわけです、いつ帰ってくるかもわからない。その人を代理できるというのではなく、その方の名前を石破長官はおっしゃったわけですが、その方の名前はファディール・アサブという人なんですよ。しかし、ファディール・アサブというのは、日本テレビのインタビューに答えまして、その方は事務局長という名前なんですね。どうも評議会メンバーであるかどうかもよくわからない、不明確な人なんですね。

 ですから、こうした二転三転をしていたならば、私たちが、この五百五十九億円、今のこの不況の大変苦しい、しかも、ODAの透明性に対して、公正性に対して、効率に対して私たちが非常に疑問を持っているこうしたものに対して、その受け皿であるものが果たして正しいのかということであります。

 ですから、私は、この問題に関しては、単にこの委員会だけではなく、私が二十六日から質問をした予算委員会のものを含めて、最初に戻って、問題を最初からやり直さないとこの問題は解決できないということが第一点です。

 それから第二点は、こんな重要なことをころころころころと繰り返すようでは、国権を代表する、我が国の自衛隊を代表する長官の資格が問われると私は思います。

 ですから、私は、長官の罷免を要求すると同時に、質疑時間がもう終了しますので、以上で質疑を終わります。これ以上の質疑はもうできません。

斉藤委員長 答弁はいいの。

首藤委員 以上で終わります。(発言する者あり)その事実確認を求めます。

 最後にもう一度、最後に長官の一言を、先ほどからお答えしたいようですから、長官の弁明を一言聞いて終わりにします。

斉藤委員長 石破防衛庁長官、御答弁願います。

石破国務大臣 一月二十日、ムサンナ県知事公邸におきまして、先ほど来申し述べております方々との会合を持ちました。そこで、ホストであるムサンナ県知事より、日本側に対しまして、イラク側の同席をしていただいている方々の御紹介があったものでございます。その中で、先ほど来お話にございますファディール・アサブ氏を、市評議会の代表という紹介をいただきました。

 念のため、二十九日、本日ですね、本人に確認、照会をいたしましたところ、本人は、自分はサマワ市評議会議長代理であると述べられたということで、それを御報告をしておるところでございます。

斉藤委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 今の首藤議員の質問にかかわりまして、若干質疑を行いたいと思います。

 先ほどの石破長官の答弁の中に、こういうくだりがあります。「私どもの先遣隊は、CPAを訪問し、今の方々と会談をし、さらに、その際にサマワの評議会の議長さんとも会談をしたということでございまして、私どもの申し上げていることが虚偽に基づくことだという御指摘は、私は当たらないというふうに思っておるところでございます。」こう言っているわけですね。

 虚偽であったということをお認めになられますか。

石破国務大臣 先ほど首藤議員の御質問にお答えをしたとおりでございます。

赤嶺委員 私は、先ほどの長官の答弁を紹介いたしまして、そのときに、御指摘は当たらない、虚偽に基づくことだという御指摘は私には当たらない、このように言いました。

 先ほどの首藤議員へのあなたの答弁を聞いていると、これは虚偽であるかどうか十分に判断ができると思います。あなたはそれを虚偽であったとお認めになりますか。

石破国務大臣 当日、知事さんから、同席をしておられる方々の紹介がありました。そのときに紹介がありましたのは、この方はサマワ市評議会の代表であるという御紹介があったものでございます。したがいまして、私たちはその認識を持っておりました。念のため確認をしたところというのは、先ほど来申し上げているとおりでございます。

赤嶺委員 私、何でこの問題を問題にするかといえば、皆さんの先遣隊の報告の土台になるものが次々崩れているからであります。

 先ほども本会議で総理は、虚偽答弁を、その中身を撤回いたしました。今度の場合にも、明らかに石破防衛庁長官はこう言っているじゃないですか。その際にサマワの評議会の議長さんとも会談をしたということでございまして、私どもの申し上げていることが虚偽に基づくことだという御指摘は、私は当たらないんだというふうに思っているところでございます。

 何で、何であなたの答弁が虚偽に基づくものでないということが言えるんですか。

石破国務大臣 先ほど来申し述べておりますように、知事さんから、この人はサマワ市評議会の代表である、そういう御紹介をいただきました。その認識に基づいて、評議会の代表であると御紹介をいただきました、それをそのまま答弁をしておるわけで、虚偽に当たるものだとは思っておりません。

赤嶺委員 防衛庁長官、同じ答弁を繰り返してその場を逃れようと思ってごまかしてもだめですよ。これは、事柄は、先遣隊で派遣された方々が、自衛隊員の一人の命も殺させない、そういう決意を込めてどれだけ真剣に調査したかどうかにかかっている事柄じゃないですか。それを、先ほどから聞いていると、本当にずさんな、でたらめな、安全ありきの、派遣、先にありきの調査をしてきてこういう答弁を繰り返している。絶対に許せないと思いますよ。

 長官、その後、こういう答弁をあなたはやっているんですよ。「それは、知事はにせものだとか、あるいは宗教指導者はにせものだとか、そのようなことを言い始めてしまったら、これは議論にならない。ひげを生やしたらみんな一緒だなんということを言ったら、もう議論にも何にもならないわけです。」と。

 まさに、こうなったら議論にならないじゃないですか、長官。

石破国務大臣 私はそのようなものだとは思っておりません。現地に行きました佐藤隊長を初め、そういう方々が会っておるのは、テレビで報道のとおりでございます。

 そこにおいて、知事が、ここにいる人たちを紹介するとおっしゃり、そして、ここにいる人はサマワ市評議会の代表であるということをおっしゃいました。

 そこで、CPAの規則……(発言する者あり)いや、ですから評議会というものを御説明申し上げます。

 CPA規則、命令等によっても、明示的、直接的に地方評議会等の地方政府組織について規定をしたものはございません。全国、地方レベルでの組織間を再設置あるいは新規設置のための努力を支援、促進する等、イラク人がみずからの政治的将来を自由に決定するよう権限を行使する旨規定をされているわけでございます。

 はっきりしておりますことは、その場において、知事から、この人はサマワ市評議会を代表する者である、そういう紹介をいただいたということでございます。それが、ずさんなとか不誠実なとかいう御指摘は当たらないものと考えます。(発言する者あり)

斉藤委員長 赤嶺君。赤嶺君。(発言する者、退場する者あり)

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後八時四十九分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.