衆議院

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第10号 平成16年4月1日(木曜日)

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平成十六年四月一日(木曜日)

    午後四時九分開議

 出席委員

   委員長 斉藤斗志二君

   理事 小野寺五典君 理事 中谷  元君

   理事 西田  猛君 理事 三原 朝彦君

   理事 末松 義規君 理事 中川 正春君

   理事 藤田 幸久君 理事 河合 正智君

      井上 信治君    今津  寛君

      江藤  拓君    梶山 弘志君

      金子 恭之君    木村  勉君

      岸田 文雄君    倉田 雅年君

      近藤 基彦君    桜井 郁三君

      竹下  亘君    橘 康太郎君

      谷本 龍哉君    玉沢徳一郎君

      西川 京子君    萩生田光一君

      望月 義夫君    山下 貴史君

      池田 元久君    生方 幸夫君

      岡島 一正君    城井  崇君

      首藤 信彦君    田嶋  要君

      達増 拓也君    長島 昭久君

      伴野  豊君    前原 誠司君

      松本 剛明君    山田 正彦君

      横路 孝弘君    遠藤 乙彦君

      丸谷 佳織君    赤嶺 政賢君

      照屋 寛徳君

    …………………………………

   外務大臣         川口 順子君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      石破  茂君

   防衛庁副長官       浜田 靖一君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   政府特別補佐人

   (公正取引委員会委員長) 竹島 一彦君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局審査局長)        楢崎 憲安君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    瀬川 勝久君

   政府参考人

   (防衛庁運用局長)    西川 徹矢君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 齋木 昭隆君

   政府参考人

   (外務省大臣官房領事移住部長)          鹿取 克章君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            堂道 秀明君

   政府参考人

   (外務省経済協力局長)  古田  肇君

   衆議院調査局国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラク人道復興支援活動等に関する特別調査室長        高木 孝雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月一日

 辞任         補欠選任

  金子 恭之君     梶山 弘志君

  野田 聖子君     井上 信治君

  原口 一博君     城井  崇君

  赤松 正雄君     遠藤 乙彦君

同日

 辞任         補欠選任

  井上 信治君     野田 聖子君

  梶山 弘志君     金子 恭之君

  城井  崇君     原口 一博君

  遠藤 乙彦君     赤松 正雄君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動等に関する件


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     ――――◇―――――

斉藤委員長 これより会議を開きます。

 国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動等に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として公正取引委員会事務総局審査局長楢崎憲安君、警察庁警備局長瀬川勝久君、防衛庁運用局長西川徹矢君、外務省中東アフリカ局長堂道秀明君及び外務省経済協力局長古田肇君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

斉藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

斉藤委員長 この際、政府から説明を聴取いたします。防衛庁運用局長西川徹矢君。

西川政府参考人 イラク人道復興支援特措法に基づきます自衛隊の部隊の最近の活動状況について御報告いたします。

 陸上自衛隊の部隊につきましては、残余の派遣部隊が、三月二十二日にクウェートに到着し、二十七日にサマワの宿営地への移動を完了しました。これですべての派遣部隊がそろったことになります。

 公共施設の復旧整備や給水といった人道復興支援活動につきましては、所要の準備が整ったことから、逐次、活動を開始したところでございます。具体的には、公共施設の復旧整備として、まず、三月二十五日にムサンナ県ダラージ村の中学校の補修を開始し、続いて、三十日にはルメイサ近郊の道路整備を開始しました。また、給水活動については、二十六日からサマワ宿営地において給水車への配水作業を開始しました。

 なお、以上のような活動を行いつつ、現地の治安状況等に関する情報の収集や人道復興支援活動実施のための諸調整を引き続き実施いたします。

 次に、航空自衛隊の部隊についてでございますが、三月二十五日から三十一日までの間、人道復興関連及び関係各国、関係機関等の物資、人員、陸自部隊の生活関連物資その他の補給物資の輸送を計三回実施いたしたところでございます。

 引き続き、イラク国内の各飛行場の安全性や輸送ニーズ等を慎重に勘案しつつ、C130機による輸送を行ってまいります。

 続いて、海上自衛隊の部隊につきましては、輸送艦「おおすみ」、護衛艦「むらさめ」が、クウェートにおきまして陸上自衛隊の車両等の陸揚げを完了し、現在、本邦へ向けて航行中です。

 最後に、ムサンナ県では、サマワを東西に横断するユーフラテス川が二十年ぶりの増水に見舞われまして、被災民が発生しております。このまま放置しますと被害の拡大等が予想されますので、関係当局の要請を受け、我が国政府として、同地域の被災民救済のための緊急援助物資テントを供与することとし、今後速やかに当該テントをクウェートから被災地まで航空自衛隊C130輸送機と陸上自衛隊車両により輸送することとしております。また、あわせて、現地の情勢に応じまして、サマワの現地部隊において、はんらん対処措置の実施に協力することとしております。

 以上でございます。

斉藤委員長 次に、外務省中東アフリカ局長堂道秀明君。

堂道政府参考人 イラクの治安情勢について御報告申し上げます。

 イラクの治安情勢につきましては、先週御報告して以降もテロが継続しており、引き続き、全般として予断を許さない状況が続いております。

 イラク南東部におきましては、イラクの他の地域に比べ比較的安定している状況に変化はございませんが、現地の治安情勢については、引き続き、十分に注意を払っていきたいと考えております。

 イラクの政治プロセスに関しましては、三月二十八日、ブレマー行政官は、イラク保健省での式典におきまして、イラク保健省は正式には六月末以降に享受する権限を有することとなる、今後六月末までの期間に完全な権限を得る省がさらにふえることを期待している旨、発言いたしました。残された課題は少なくありませんが、イラク人による平和で民主的な国家の再建に向けて、六月末の統治権限の移譲及びその後の選挙実施等の政治プロセスが円滑に進むことを期待しております。

 国連の動向に関しましては、三月二十六日、国連報道官より、国連の選挙チームがバグダッドに到着した旨、発表がありました。同報道官によれば、同選挙チームは来年一月末までに行われる選挙の準備のための技術的な活動を行う由でございます。また、ブラヒミ国連事務総長特別顧問も近々イラクを訪問予定と承知しております。我が国としましては、今般の国連の選挙チームの活動を通じ、イラクの政治プロセスが進展することを期待しております。

 イラクに対する復興支援に関しましては、三月二十六日、保健・医療、電力、水・衛生等の分野で五件の対イラク緊急無償資金協力の実施を決定したところであります。

 また、ムサンナ県では、トルコ、シリア、イラク北部地域におきます集中豪雨により、サマワを東西に横断するユーフラテス川が二十年ぶりの増水に見舞われており、ムサンナ県側の説明では、三月二十八日現在で約三百世帯が家屋浸水により被災民となっており、今後とも拡大するおそれがあるとのことであります。こうした事態に対応するため、政府は、三月三十日、ユーフラテス川はんらんによる被災民支援のため、ムサンナ県に対し、テント二百四十張、約二千百万円相当でございますが、供与することを決定いたしました。

斉藤委員長 これにて説明は終了いたしました。

    ―――――――――――――

斉藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田嶋要君。

田嶋(要)委員 民主党の田嶋要です。よろしくお願いします。

 まず冒頭、イラクの戦争が始まってから一年余りが過ぎたわけでございますが、前回、私が委員会で質問をした内容とも重なるんですが、期待と現実のギャップということで、最近、マスコミにもいろいろと書かれております。

 現在、自衛隊によって現地で採用されている方々というのは百五十名、非常に小規模ということで、大きな期待が自衛隊に寄せられていたにもかかわらず、実際にふたをあけてみると、その期待とはかなり違う現実が徐々にローカルの、地元のイラク人の方々の間で認識として深まってきているというような状況が報告をされています。

 番匠隊長もお電話を大臣の方にされたということでございますが、自衛隊にできることには限りがあるということでこれから中長期的な支援を進めていきたい、そういうような発言があったというふうに聞いておりますが、最初のみつ月期を越えて、当然予想された不満の少しずつの高まりというものに対して、これから自衛隊としてはどういうふうに彼らの過剰なというか、実際にできること以上の現地側の期待感をコントロールあるいはマネージしていこうとされておるのか、まずその点に関しまして、防衛庁長官、御答弁をお願いします。

石破国務大臣 先生がいみじくもおっしゃいましたように、過剰なというものがあるのだろうと思っています。我々にできることには当然限りがございますし、いつも私申し上げますが、魔法のつえを持っているわけでもございませんし、アラジンの魔法のランプを持っているわけじゃありませんし、我々はゼネコンでもないわけでございます。

 したがいまして、期待値と実現値の乖離をいかにして埋めるかということであります。自衛隊にできることというのはこういうものですということはきちんとお示しをしていく、そしてまた、今後、外務省が中心となられて、サマワの復興のために、何も一年や半年でイラクが日本のようになるわけではございませんで、ロードマップと申しますか、いつごろこんなことはできますよと、いつになるかわからないということが不平不満になるわけで、それがいろいろと条件が整ってまいりましたときに、いつごろ何ができるということをきちんと政府としてお示しをしていくということが大事なのではないかと思っております。

 私どもとして、過剰な期待というものが仮にあるとするならば、その過剰部分というものは下げていかねばならないだろう。同時に、実現値というものも上げていかねばならないだろう。しかし、自衛隊は基本的に自己完結でございますから、先生御指摘のように百名以上の雇用は創出しておりますけれども、それが急にふえるということはございません。私どもとして、できることをきちんと誠実にやっていくということだと考えておる次第でございます。

 一方、もう一つは、不公平感というのがあるのだろうと思っています。これは、例えて言えば、あの学校はよくなったのに何でうちの学校はとか、そういうような不公平感みたいなもの、そういうものがあるのかもしれません。しかし、そこもきちんきちんと御説明をしていきながら、最も必要とされるところに私どもはやっていく、そういうことを御説明することが肝要だと考えております。

田嶋(要)委員 では、その自衛隊のイラクへの派遣の直前に起きた日本人外交官の殺害の件に関しまして、質問をさせていただきたいと思います。

 この通常国会が始まってすぐの部門会議に私も出ておったときに、外務省の方、どなたかの御発言で、職場の同僚の方が亡くなったのだから殺害の真相を一番知りたがっているのはまさに自分たちだということを非常に語気を強くおっしゃられたことを覚えております。全くそのとおりだというふうに私も思っております。

 事件が起きてから四カ月余りがたったわけですが、そのように外務省の方自身がおっしゃったにもかかわらず、いまだに真相が何もわからない。これはもう国民すべてが認めていることだろうと思いますけれども、例えば、第一報が大使館に入るのに六時間もかかったとか、あるいは襲われた車が三カ月も放置をされていたという事実に関して、野党のみならず与党の方からも、誠実な対応とは思えないというようなコメントが過去にあったと思いますが、現時点において、今日までの真相解明の取り組みに関してどのような御所見があるか、外務大臣の方からいただきたいと思います。

川口国務大臣 真相を一番多く知りたい、一番知りたいと思っているのが外務省の職員あるいは御家族の方々であるということは、以前と全く変わらないと思います。

 それで、外務省といたしまして、ずっと真相の解明、究明に努めてきておりますし、それから、警察、日本の警察、現地の警察あるいは米軍等にも御協力をいただいているわけでして、お出しできていることが少ないというふうに皆さんがお思いでいらっしゃるということは認識をしておりますけれども、我々としては、今まで、これは当初から、わかったことで、捜査、その後のことに支障がない範囲で、できることはできるだけ早くお出しをするという方針でやってきておりまして、今まで、国会でも、わかっていることについてはきちんと御説明を申し上げてきているつもりでおります。つもりと言うと、つもりでは困るとおっしゃられるかもしれませんが、実際に御説明をしてまいってきております。

 それで、申し上げられない部分というのも確かにございまして、それは、今、捜査をしているという状況ですので、それにかかわる部分については申し上げられないという部分はないわけではございません。ただ、言える範囲のことについては、きちんと御説明を申し上げてきています。わからないことについてもまだございます。それはまだわからないということでございます。

 それから、車についてですけれども、今、日本で警察に調べていただいておりますけれども、バグダッドの大使館の人たちの数というのは非常に少のうございまして、いろいろな状況、日本とは全く違った、安全に問題がある状況、脅威情報がある中で、大使館にいる人たちがベストを尽くして、手続をして、いろいろな周りの協力を得て日本に運んできたということでございまして、なかなか進んでいないというふうにお思いになられる方がいらっしゃるというのは理解しておりますけれども、私どもとしては、できる限りのことをして、また、できる限りのことを、出せることをお出ししているということでやらせていただいているわけでございます。

 今後とも、そういったことについては引き続き最善を尽くしていきたいと思っております。

田嶋(要)委員 先日のテレビの番組でも取り上げられておりましたけれども、その番組の中で、事件が現在調査中ということであるけれども、今、現地の捜査はだれがどのように行っているのかという質問を、テレビ局が外務省に出したということだったと思います。その質問に対する回答としまして、こういうような回答をファクスで返された。現地において犯人は捕捉、捕まっておらず、本件捜査は現地イラク警察及び現地米軍関係者により引き続き行われていると承知していますと。

 これはテレビなので、そこでちょっと終わってしまったんですが、これは、私のみならずテレビを見ている方々の共通の印象として、どうしてこういう、承知していますといった、あたかも人ごとのような報告、これをテレビのリポーターは無責任な表現というふうに言っていましたが、恐らく多くの国民がその番組を見ていてそのような印象を受けたのではないかと思いますが、どうしてそのような表現にとどまるのでしょうか。

堂道政府参考人 お答え申し上げます。

 この事件につきましては、先ほど大臣より御答弁いたしましたとおり、外務省としても、本件事件の実行犯の逮捕及び事件の真相解明を強く望んでおりまして、そのための最大限の努力を行っていくという姿勢でございます。この点については、変わりはございません。

 テレビ番組で報道された点でございますけれども、テレビ局の方から取材依頼があり、一定の事項について御質問があり、この点について私どもの回答した点が報道されたわけでございますが、御指摘の表現がやはり一部に誤った印象を与えてしまったということでありまして、この点については、非常に残念であり、私どもとしても責任者として自戒すべきところだと考えております。

 この現地調査に関しましては、これまでに、現地大使館におきまして、現地調査を含めて必要な情報収集及び調査を行ってきておりまして、今後とも、そういう取り組みを続けていく所存でございます。

田嶋(要)委員 先ほど申し上げたような内容のファクスで回答されたということですが、では、承知していますということではなくて、イラク警察及び現地米軍関係者により引き続き行われているというふうに訂正をするということですね。

堂道政府参考人 そのとおりでございます。

田嶋(要)委員 今、イラク警察そして米軍ということですが、日本政府自身は、この現地調査に関しまして、これからやるという計画はあるのでしょうか、外務省。

堂道政府参考人 お答え申し上げます。

 現地調査につきましては、事件が起きた直後に、私ども、イラク人の専門家を派遣いたしまして調査を行っておりますが、さらに、館員を派遣いたしまして調査を行っているところであります。

田嶋(要)委員 そうすると、現地調査は行うということですね。――わかりました。

 例えば、奥大使らが御出席をされる予定であったというティクリートでの打ち合わせ、これはほかのいろいろな現地責任者というか要人も参加をする予定であったというふうに理解していますけれども、そういう方々からの聞き取り調査というものはされるのでしょうか、されたのでしょうか。外務大臣、いかがですか。

堂道政府参考人 お答え申し上げます。

 現地の警察当局及び米軍等に関しましては、先ほど私の方で申しましたとおり、我が方のイラク人の専門家を派遣した際にもあるいは館員を派遣した際にも、聞き取りの調査を行っておりまして、面談をしてございます。

田嶋(要)委員 もう一度確認しますけれども、これから現地調査を日本政府としてされるのでしょうか。それと、先ほど申しましたとおり、同じ会議に出席をされた、されようとした方々からの直接の聞き取り調査はされるのでしょうか。

堂道政府参考人 お答え申し上げます。

 この調査でございますが、もう一度確認させていただければと思いますが、我が方の館員を派遣いたしまして調査を行ったということでございます。

 今後の計画については、今のところ、そういう計画を持っているわけではございません。その過程におきまして、現地の米軍及びイラク警察等について、その聴取を行い、また、資料の収集を行った、こういうことでございます。

田嶋(要)委員 では、司法解剖についてもお伺いいたします。

 十二月五日に司法解剖が行われたというふうに理解していますが、そのときにも、死因のみの発表がなされているということで、これも、多くのマスコミ等で、どうしてほかの情報が出ていないのかということの指摘が出ていると思いますが、その点に関して、どうしてほかの情報を出さずに死因のみについての発表があったのかという点に関しまして、外務大臣、お答えください。

川口国務大臣 まず申し上げたいのは、これについては、外務省は警察と一緒になって、政府一体となって調査を進めているということでございます。

 司法解剖の結果につきましては、これは日本の警察当局がやっていただいたことでございまして、その結果として何がわかったかということを、当局の御発表があったということでございます。我々は、外務省としては、その警察当局から発表があったこと以上のことを知っているわけではございません。

 それから、これは私の立場から申し上げるということでもないかもしれませんが、警察におかれては、これ以外にも、弾丸の鑑定ですとか、必要な捜査を今やっていらっしゃるというふうに聞いております。

田嶋(要)委員 今度の四月十日までに車の鑑定結果が出るということももちろん報告をされておるわけでございますが、その発表の日に具体的にどういう情報が発表されるのか、その件に関しまして御答弁願います。

堂道政府参考人 この事件につきましては、国内では、外務省及び警察当局が緊密に連絡を保ちまして、一体となって調査を進めているということでございますが、御指摘の被害車両の鑑定につきましては、現在、警察当局が実施しておりまして、その結果について、外務省として現時点では承知しておりません。

田嶋(要)委員 七・六二ミリの銃弾の金属成分、これが今非常に多くの方が知りたがっている情報だと思うんですが、この点に関しては四月十日の報告内容の中に含まれるというふうに理解してよろしいでしょうか。外務大臣、よろしくお願いします。

川口国務大臣 これについては、警察当局が今どのようなことをしていらっしゃるかということについて、私どもは存じませんので、御発表はまさに警察当局の御判断ということでございます。

田嶋(要)委員 もちろんそうだと思うんですが、ただ、その情報が、今全くわかっていない、一体どういう原因で外交官二人が殺されたかというところに関して決定的な情報だというふうに言われておりますので、外務省として、それをぜひ情報として出して、出させて、そして公表するというところに関してはお約束をしていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

川口国務大臣 私どもとしても、警察当局がお調べになっていることが、できるだけ事実関係が明らかになるような、そういった発表につながっていくことを強く希望いたしているわけでございます。

 ただ、これは警察当局がまさに調査をしていらっしゃる、調べていらっしゃることでして、私どもとして、その結果について、これを含めるべきだとか含めるべきでないとか、そういうことを申し上げるつもりはないわけでございまして、ただ、希望としては、できるだけ多くの情報がそこに含まれているということを希望しているということでございます。

田嶋(要)委員 いずれにしても、先日のテレビ、二つの番組を多くの国民の皆様が見ていて、非常に驚かれたというようなメールがいろいろ入ってまいっております。

 そういった中で、そういった事実を私どもの民主党の同僚議員が説明したのみならず、同じ番組に出られておった逢沢外務副大臣が非常に不安そうな視線で、これはメールが実際に来ているんですね。目が泳いでいたということで、あれが国民に、ああ、やはり何か隠しているのかなというようなことを、多くの方が印象を受けたというようなことをメールでいただいておるわけなんですが、その点に関しまして、御本人から一言御答弁いただきたいと思います。

逢沢副大臣 私の目線のことについて大変関心をお持ちいただき、光栄かつ恐縮に思っておりますが、たしかあの番組では、傍聴なさっておられます参議院議員の若林先生が事件の前後を推論された。そのことをかなり長時間にわたりましてテレビで放映をされた。私もたまたまそのテレビ番組に出演をいたしておりまして、それを聞く立場にあったわけであります。

 残念ながら、ちょっと時間の関係で、大半の時間が、若林先生の推論の説明、また、それに対する、同席をなさっておられたコメンテーターの方々の発言にとられまして、私から発言する時間的ゆとりといいますか余裕が十分なかったことが大変残念であったわけでありますが、私どもといたしまして、米軍の誤射による、そういったことを思わせる情報には一切接していないという立場でありますし、また、私自身も、副大臣として、また政治家としてそのように確信をいたしているわけでありまして、改めてこの場所でそのことを明確に申し上げておきたいというふうに思います。

田嶋(要)委員 時間になりましたけれども、立場というのは余り重要じゃないと思います。とにかく事実が何かということを、最近の報道で、国民の皆さんも本当に知りたいというふうに思っていると思います。

 もちろん、私ども同僚の若林議員もテレビでもおっしゃられているとおり、中立、全くニュートラルな立場で、どちらに関しての確証もないというわけなんだと思うんですが、くれぐれも、国民が今大きな関心を寄せているこの事件の真相ということに関して引き続き政府として誠実な情報の開示に努めていただきたい、そのように考えております。

 以上申し上げて、私の質問を終わります。

斉藤委員長 次に、首藤信彦君。

首藤委員 民主党の首藤信彦でございます。

 さて、イラクなんですが、状況はもう本当に混沌としてまいりました。特に、パレスチナにおけるシェイク・アハマド・ヤシン、ヤシン師の暗殺以降、さらに、テロあるいは反外国人といいますか、そうした行動が各地で起こり、特にイラクでも紛争が激化している状況であります。既にアメリカ軍の死者も六百名を超えることになりました。そして、重傷者も三千五百名を超えている。同盟軍側も百名に近い犠牲者を出すようになってまいりました。本当に深刻な状況にあって、その中で、さらに、いわゆるソフトターゲットという、軍服を着た者以外の人間に対しても盛んに攻撃が行われているというのがここ一週間の状況であります。

 こうしたところにおいて、一方では、その治安を回復するためにも経済復興が重要だという点は、私たちも非常に理解するところであります。ですから、復興支援に関しては、それが公正であり、私たちの国民の税金がしっかりと使われて、公正に使われて、そして、イラクの人々に帰するところがあれば、それは私たちも大いに賛同し、また、協力させていただきたい、そういうふうに思っております。

 しかし、一方、昨今の不祥事、特に外務省の不正な経費、経理というものに関しては、国民の厳しい視線があり、それにまた、ODAそのものに対しても、この不況下において、厳しい国民の監視が行われてしかるべきではないか、そういうふうに考えているんです。

 特に、補正予算を実行するに当たって、五百五十九億円の補正予算を外務省が組まれて、それを三月末、ああ、もう三月末は終わりましたね、今は四月でございますけれども、もう実行されたということだと思いますが、まず第一に、この総額五百五十九億円、これをどのような対象に配算され、どのような組織に配られ、そして、どのような形で私たちの国民の税金の五百五十九億円が担保されているか、それを外務大臣にお聞きしたいと思います。

川口国務大臣 少し長くなりますが、お許しをいただきたいと思います。

 まず、平成十五年度の補正予算を国会で御承認いただきました後、イラクの復興支援のプロジェクトにつきましては、具体的な内容あるいは金額につきまして、供与先との間で協議を続けてまいりました。その結果を受けまして、三月二十六日に、平成十五年度の補正予算千百八十八億円のうちイラクへの直接支援に充てることとしている五百五十九億円、これにつきまして、これから申し上げるような支援を実施するということを決定いたしまして、発表いたしました。

 それで、その内容ですけれども、まず、電力分野につきましては、イラク全土に二十七台の移動式変電設備を供与する計画を支援するためにイラク電力省に約七十九億円、次に、保健・医療分野では、十三病院のうち南部四病院のリハビリ及びこれらの病院に医療機材を供与する計画を支援するためにイラク保健省に約五十六億円、水・衛生分野では、バグダッド市に浄水設備三十基を供与する計画を支援するためにバグダッド市に約六十一億円、さらに、イラク全土に七十台の消防車を供与する計画を支援するためにイラク内務省に約二十二億円を供与、これは総額約二百十八億円になりますが、これを決定いたしました。

 また、電力分野で、タジ・ガスタービン発電所、モスル・ガスタービン発電所及びモスル水力発電所を復旧する計画を支援するためイラク電力省との間で、それから、保健分野で、十三病院のうち残る九病院のリハビリ及びこれらの病院に医療機材を供与する計画を支援するためイラク保健省との間で、水・衛生分野で、ごみ処理車両及びバキュームカー等の特殊車両を供与する計画を支援するため地方公共事業省及びバグダッド市との間で、それぞれ詳細な調整を行っておりまして、調整が終わり次第、これらに対しても所要額の支援を直接支援として実施する考えでおります。

 これらの支援によりまして、予定されていた直接支援分、これを実施するということとなるわけでございます。

首藤委員 それで、前回も、私、予算委員会で質問させていただきましたけれども、全国の治安状態の向上のためにパトカーを供与しようというのがございました。六百台ぐらいというふうに最初に予定されていて、それは高過ぎるのではないかと指摘したら、たちまち競争入札になりまして、それが倍の数の千百台になったということなんですが、それに関して、予算委員会の中で、私が、これはひょっとしたらどこかで情報の共有がある、端的に言えば談合があるんじゃないかということを、具体的な数字を挙げて示させていただきました。

 この点に関しては、公正取引委員会の委員長に調査をされたいということを強く主張したわけですが、その結果はどういう結果が今あるのか。まさか、その調査の明確な結果なしにこれが実行されるというようなことはまだないと思いますが、いかがでしょうか。

竹島政府特別補佐人 予算委員会に引き続いて同様の御質問をいただいて恐縮でございますが、予算委員会でも御答弁申し上げましたが、公正取引委員会の調査といいますのは、行政調査ではございますが、社会的影響がそれなりに大きなものでございまして、特に相手企業にとっては大変な負担になるものでございますから、よほど慎重に行使されるべきであるというふうに私ども思っております。

 要するに、談合について具体的な情報、これは相当クロだなということを我々が証明できるような情報を持って立入調査等を行っているわけでございまして、それなくしては、なかなか、権利の濫用という批判も招きかねませんし、問題である。

 そこで、具体的な情報とは何かと申しますと、談合の場合には、関係の企業の間におきましていわゆる基本合意というものがあるかないかというのが大変大事でございます。基本合意というのは、例えば、五社いれば五社が順番に受注しましょうという約束のもとに受注調整をするとか、営業努力を一番した者がとるという合意のもとにやるとか、また、その中でどうしても二社が最後まで譲らない場合には話し合いによって決めるという、そういったルールが基本合意でございますが、それに基づいて受注調整が行われ、いわゆるチャンピオンというものが決まって、それが入札予定価格に近いもので高どまりして受注をする、その他の者はそれが受注できるようにより高い入札価格で応札をする、こういうものが一般的でございます。

 そういう意味からしますと、予算委員会でも申し上げましたように、今回の警察車両の入札につきましては、そういったいわゆる我々の経験則に照らしてこれは非常にクロだと思われるような具体的な情報はございません。

 そういうことで、調査をせよというお話でございますけれども、最初に申し上げましたような基本的スタンスからいって、現在の情報では私どもとして行政調査をするということには残念ながら至らないということをぜひ御理解いただきたいと思います。

首藤委員 いや、竹島参考人、ちょっとそれは違うんじゃないですか。国会の場で、それは調査をお願いしますと言ったんですよ。ですから、それがそれに値しないなら、値しないと返答いただきたい。それが重要なことでしょう。違いますか。

竹島政府特別補佐人 三月四日の予算委員会で御質問いただいたわけでございますが、私は、答弁の中で、今申し上げたようなことを申し上げております。「我々の審査対象にはならないということでございます。」という御答弁を申し上げております。

首藤委員 その後を読んでください。「そういう御答弁もあると思いますけれども、こうしたものに関して、公正取引委員会あるいは公正なる入札に関係する機関は、ぜひこの問題に関しても調査していただきたい」、なぜそれが必要かということをるる述べているじゃないですか。いかがですか。それは、あなたの経験則に基づいて、私はお願いしているんですよ、こういう問題に関しても、たとえ緊急のものであっても。

 今、こういうような時代に、国民もODAに関して非常に関心を持っている。それに対してどうして公正取引委員会が対応できないんですか。調査されなかったんですか。それをお聞きしたい。

竹島政府特別補佐人 我々といたしましては、まさに談合とカルテルはあってはならないものでございますから、独禁法に基づいて厳正な調査をやっておりますし、与えられた権限の中で最大限の努力をさせていただいているつもりでございます。

 今、この具体的な件につきましては、固有名詞は申し上げませんが、ある商社が一番安い値段で落札をしているという事実がございます。ほかの者はそれ以上の、落札ですからとれなかったということでございますが、じゃ、それが談合であったかどうか。一般的には違うわけでございます。

 それは、談合である場合は、とった業者を含めまして、その業者はもっと高い値段で落札をするというのが談合でございまして、安い値段で落札した者が受注をするというのは、そういう事態に対して、さらに何か具体的な、いや、かくかくしかじか、違うという具体的な情報があれば別でございますが、そういう程度の情報では調査というわけにはまいらないわけでございます。

    〔委員長退席、西田委員長代理着席〕

首藤委員 参考人、私は、だからここの場で、国会の場でお願いしたんですよ。だから、それが値しないのだったら、早々と、これは談合に値しない、公正取引委員会としてはこういうものに関知しないと文書で出されたらどうですか。それを、今、私たちが参考人としてあなたをお呼びするまで、国会を軽視しているんですか、あなた。大変な問題ですよ。

 あなたは専門分野と思うかもしれないけれども、国民は、公正取引委員会というものは国民のために予算の公正を保つものとして考えているんですよ。あなたはそれを否定されるわけですね。何ですか、公正取引委員会というのは、それだったら。こういうときにこそ会計検査院とか公正取引委員会が、最後のゴールキーパーとして不正から守ってもらえる、国民はそう期待しているんじゃないですか。

 あなたはこの場では言い逃れだけしていて、調査したのなら調査したと、そして民主党の首藤が言うようなことは全然ないんだ、そういうふうに報告されたらどうですか。

 いずれにしろ、この問題はまだペンディングだということですよ。外務大臣、ですから、この車に関しては、まだ一切発注も、また輸送もされていないと思っていますが、いかがですか。

川口国務大臣 これにつきましては、政府といたしましては、このイラクの警察車両供与計画に従いまして警察車両の入札、調達が行われる過程におきまして、おっしゃっているような入札者の談合があったとか政府からの情報流出があったとか、そのような認識はいたしておりませんので、これについて、引き続き粛々とこの経済協力のプロジェクトを進めているということでございます。

首藤委員 外務大臣、これは私、公正取引委員会もよく覚えておいてください、長く追いますよ。

 しかし、こんな問題、もう新聞には出ているんですよ。「イラクへの寄贈パトカー、第一陣が出発へ」、もう名古屋の埠頭に積まれて出発することになっているんですよ。そうしたら、一体何だ、この予算委員会というのは、何だ、この国会というのはということですよ。

 ですから、私は、一方では国会で審議をやりながら、一方では粛々と進めてしまう、こういう体質というものが、今の外務省にとって、今の外務省というものが本当に問題があるんだ、そこを反省していただかないといけないと思うんですね。

 さて、このイラクでございますが、イラクの問題に関して、同僚議員からも話がありましたけれども、今、イラクで外交官が二人亡くなられました。私たちは、これはアメリカ軍による誤射ではないか、非常に緊張していたティクリートにおいてアメリカの隊列に近づき過ぎたために起こった事件ではないか、事故ではないかということでも、その可能性も調べているんですね。

 というのは、なぜこの二人が亡くなられたかというのはまだわからないんですよ。テロリストあるいは反フセイン勢力あるいはまた昔のフセイン勢力、いろいろな人たちがこういう可能性がある。最近の説によると、アメリカ軍がたくさんの民兵を雇って怪しげな車両を排除していた、こういううわさすらあるわけですね。

 そこで、これに対していろいろ分析が行われているわけですが、警察庁にお聞きしたいわけですが、その分析結果に関しては四月十日までに公表されるということですけれども、その銃弾の成分に関してはどの程度までわかっておられるでしょうか。全体的な図というものは、どの弾丸がどの角度から入ってどこへ抜けたかとか、それは恐らく四月の最終レポートで書かれるんだと思いますが、銃弾の成分に関して、この内容を教えていただきたいと思います。

瀬川政府参考人 お答えいたします。

 警察といたしましては、御指摘のように、今、両外交官の方の御遺体の検視でありますとか司法解剖、あるいは車両の検証、あるいは御遺体、被害車両から発見された銃弾の一部と見られます金属片の鑑定など、入手可能な証拠資料の検証、鑑定ということで一生懸命真相究明に努めているところでございます。

 被害車両につきましては、今、検証を続行しているところでございますが、車両から非常に多数の資料が採取をされているということで、今、鑑定を鋭意やっているところでございます。

 御指摘の金属片の金属成分等につきましても、これまで得られました証拠資料等も総合して整理、分析を行いまして、おおむね四月の上旬を目途に可能な範囲で公表をしたいというふうに考えております。

首藤委員 全然答えていないですよ。

 では、もう一度、もう時間もだんだんたってきますからお聞きします。

 既に私の出した質問主意書の中で、司法解剖の中で摘出された弾丸と見られるものの破片が六点ある。そのうち、車内で見つかった一点、二・五四グラムを除くと、五点が恐らく体内から発見されているわけですか、それの分析というのが当然わかってしかるべきですね。それはもちろん、破壊しなくたってそれはわかるわけですけれども。それが、例えば今言ったお二人の体内から発見された銃弾の破片を総合しても、これは総計で三グラムなんですよ。わかりますか。

 今、二つの銃弾が疑われていますよね、七・六二ミリに関しては。カラシニコフの銃弾は八グラムですよ。NATOが使っている、より長い七・六二ミリが、NATO弾と言われるものは九・五グラムですよ。その三分の一しかない。二人の体内から出てきた銃弾の破片を合わせて三分の一にしかならない。そんな破片で本当に大の男二人がお亡くなりになるものだろうか。

 特に、私は、井ノ上さんの死亡というものを大変疑問を持って見ているわけです。というのは、井ノ上さんは助手席に乗っておられた。ですから、当然のことながら、車の進行方向に向かって左側から撃たれている銃弾は、防弾ガラスを抜け、場合によっては運転手の方を抜けて当たるかもしれない。あるいは、どこかで跳弾があって、しかし防弾ガラスを抜けていますからかなりのエネルギーを吸収されて、しかもこんな粉砕状態になっていたら、エネルギーは非常に小さくなって当たった。それがどうして井ノ上さんの死に直結されるのか。

 今まで質問主意書で出しました、〇・〇七グラム、〇・二〇グラム、〇・四三グラム、一・〇三グラム、一・五六グラム、このうちのどの破片が井ノ上さんの死に直結されたでしょうか。いかがでしょうか。

瀬川政府参考人 発見されました金属片は、御指摘のとおり、極めて微細なものばかりでございまして、弾丸の形状そのものといいますか、完全な形で出たものは一つもございません。

 いずれにいたしましても、検視、司法解剖をしっかりやりました結果、奥大使の死因といたしましては左側頭部銃創による頭蓋内損傷、また、井ノ上書記官の死因は左上腕部の銃創による失血死ということにされておりまして、どの破片がこの死因に結びついたかということにつきましても、四月上旬までに予定しております総合的な整理、分析の結果として御説明させていただきたいというふうに思います。

首藤委員 もうそのレポートを待つしかないわけですが、しかし、私はここで指摘しておきたいわけですよ。

 二人で合わせても銃弾の三分の一にしかならないような微細な破片、それが、何度もエネルギーを吸収されていたのが、今、井ノ上さんに関しては上腕の動脈と言いましたね。どうして、左側から撃ってくるのに、骨に当たらずに、筋肉に当たらずに、そして上腕に当たるか。上腕の内側を通っているんですよ。

 これは、よく子供のとき、血をとめる遊びなんかしましたよね。ここに定期なんか挟んでぎゅっと押すと、ぴゅっととまるんですよ。よく工事現場なんかで時々大変な事故のあったとき、ぴゅうっと噴き出すんです。それをきゅっととめるんですよ。

 私の質問は、こんな微細な、もうエネルギーを吸収された跳弾になっていく破片が、これがなぜ、井ノ上さんの腕に当たらずに後ろ側から入って、わきの中を通ってここを抜けていって、そして、その微細な破片がこの動脈をきちっと切断する、それによって心臓に近いから大量に出血して死亡された、こんなことってあり得るんでしょうか。

 それは、現実は死であるからそうだというのもあるかもしれないけれども、このことだけをとっても、この死亡というものに対して大変疑問を感じるんです。それはなぜかというと、もしそうであれば、井ノ上さんにも助かったチャンスが幾らでもあったんじゃないかということですよね。

 この事件で非常に不思議なのは、事件が起こります、これは十二時三十分ぐらいでしょう。十時に出発して、十一時に定時報告して、十二時にも上村臨時大使のところへ定時報告があって、その後なくて、もう二時にはこのティクリートの会議が始まる。どうしてこんな危険なところで定時報告がないのか、どうして外務省がそれを調べなかったのかということなんですよ。

 なぜそう言うかというと、もし、それが十二時にあって一時になかったときに、大使館が、どうなっているんだ、どこかでぶつかっているんじゃないか、事故に巻き込まれたんじゃないかといって必死で捜したら、ちょうどその翌日に起こった韓国の業者に対する死亡のように、アメリカ兵がすぐ見つけて、それをヘリコプターでアメリカ軍の病院に運んで緊急治療したら、二人の方が助かられたんでしょう。だから、もし、最初言われたように、胴を銃弾が貫いた、そうじゃなくて、井ノ上さんの場合も、手の動脈が切れた、もし早い時期にやっていれば十分に助かったのではないか。

 私の弟も医者ですから、いろいろ聞きます。暴走した車、オートバイなんかひっくり返って、それでさらに車にひかれたような若者もいます。もう血圧が低くなって低くなって、血圧二十ぐらいでも蘇生するんですよ。十分に蘇生するんですよ。ですから、もしきちっとした対応ができれば、できたはずなんです。

 まして、奥さんの場合は、発見され、警察へ通報までに一時間、それから、何だか知りませんけれども、米軍の病院でなくて普通の市立病院へ運ぶのに一時間、そしてさらに病院の中で一時間、生きておられた。事件発生から三時間、生きておられた。その、米軍が、米軍の病院に入れる、ヘリコプターを使う、早期に手当てをする、どれをやっても、この日本の貴重な人材は死ななかったんじゃないですか。

 射撃したのは、それはだれか知らない。その犯人はわからない。テロリストかもしれない。フセイン派かもしれない。しかし、この二人の死に直結したのは、そうした大使館の、外務省の対応じゃないですか。こうした危険な状況において、一体、この二時間、三時間の間に外務省は何をしていたのか、これを私は知りたい。

 先ほど、中東アフリカ局長から、館員も派遣して行っていると。驚きましたよ。記事が載っていますよ、ちゃんと。何と、上村臨代がティクリートに行っているんじゃないですか。ティクリートに行ってそれを調査しているということですよ。

 それは一体どういうことですかね。その時期というのは、私たちが何度も何度も、外務大臣にも聞いて、行くべきだ、派遣すべきだと言ったら、それは危ないから行けない、こういう話をしていた時期ですよ。

 では、上村臨代は、本当にいつ行かれたのか、何を調査されたのか、そして、それは警察庁のどのような指導に基づいて、捜査共助に基づいて行われたのか。外務大臣、いかがでしょうか。

    〔西田委員長代理退席、委員長着席〕

逢沢副大臣 お答え申し上げます。

 在イラク大使館の上村臨時代理大使は、本年になりましてから、現地に、つまり事故現場でありますティクリート、現地に赴いたわけであります。米軍及び現地イラク警察関係者等とも会って、これまでの調査の裏づけ等を行う、そういう活動を現地、ティクリートで行いました。

 その内容につきましては、先ほどから警察からも答弁がございました、現在まだ捜査、調査続行中ということでありまして、詳細を申し上げることは差し控えたいというふうに思いますが、いずれにいたしましても、外務省、警察と一体となって真相を究明していく、その一環であるというふうに御理解をいただきたいと思います。

首藤委員 外務副大臣、全然答えていないじゃないですか。いつ行かれました。いつ行かれたんですか。何を調査してきたんですか。そして、警察のどのような指導に基づいて、どのような捜査共助に基づいて行われましたか。

 それは、なぜ言うかというと、これって証拠隠滅ですよ、はっきり言うと。刑法における証拠隠滅ですよ。科学的な捜査、科学的な質問、捜査における質問、これがなくて、我々が予見を与えることになるんですよ。ですから、勝手にインタビューしたりしたら、それは予見を与えることになる。これは証拠隠滅ですよ、ひょっとしたら。同じように、そこから、奥さんが持ってこられたパソコン、今、外務省の職員の手の中にあるじゃないですか。いつ、警察の手に渡しましたか。こうした事実を警察はいつ知りましたか。これは、私はひょっとしたら証拠隠滅ではないかと思うんですよ。

 ともかく、この問題、この二人の、日本の貴重な外交官の死にはなぞの四時間があります。この時間こそが、実はこの二人の貴重な人材の生命を奪ったんです。その意味で、この問題に関して、すべての証人である上村臨時大使の本国召還と参考人招致を求めます。

 以上で終わります。

斉藤委員長 次に、藤田幸久君。

藤田(幸)委員 きょうは田嶋議員、そして先日は若林議員、参議院ですが、それから今の首藤議員の外交官の殺害事件についての質問に続きまして、私も同じテーマについて質問をさせていただきたいと思います。

 今、田嶋議員ほかが中立的な立場でという前提のもとで質問いたしましたが、私は、きょうは、むしろ外務省の職員の立場で質問したいと思っております。したがって、主に堂道局長にお伺いをしたいと思います。

 もし仮に、自衛隊の方に事故が起きていたといたしますと、石破長官であったならば恐らく現地に行かないかもしれないけれども、中谷長官であったならば、同じ自分の自衛隊の仲間に何かあったといったのであるならば、恐らく中谷長官は飛んでいったのではないかというようなことを想像しながら、外務省の職員の皆さんが、恐らく何千人の方々が、同じ仲間の外交官が殺されたということに関して、この数カ月間、じくじたる思いで、良心のいろいろな意味での傷を負いながら、そして、何らかの形でぜひ真実を解明したいという思いで頑張っておられるのではないか。

 そうした中で、堂道局長は、部下であった奥さんがこういう形で命、あるいは井ノ上さんも亡くなったわけでございますけれども、こういった事件があって、まず、外務省あるいは政府の人間が現場に飛んでいっていない。そのことについて、これからやがていろいろな真相が解明されていくに当たって、堂道さん自身が例えばここで答えたということが後で繰り返し繰り返しテレビでも放映される可能性がある、そして、局長の後ろには数千人の外交官の方々が大変な思いでいらっしゃるという前提の中で、ぜひ正直に答えていただきたいと思っています。

 まず、こういった中で外務省の局長としてどういう気持ちを持っていらっしゃるかということと、なぜ現場に政府の人間が行かなかったかということについて、お答えをいただきたいと思います。

堂道政府参考人 お答え申し上げます。

 この事件につきましては、非常に心を痛める事件でございました。特に、最初、日本人らしき者が殺害されたという報告がございまして、他方、運転手については、レバノン人の運転手ということで必ずしも情報は正確ではなかったわけでございますけれども、私ども、ティクリートにその両名が向かっているということは承知しておりましたし、この一報があってから、携帯で連絡を試みても全然通じないということで、空白の六時間とありますが、その後も、両名が最終的に身元が確認されるまでの時間というのは、大変心を痛めるときでございました。またさらに、御遺体の身元を確認するものが何もなかったということでございまして、それにかなりの時間を要したわけでございます。

 私どもとしましては、この一報を受けましてから、直ちに大使館とも相談いたしまして、現地に入るということについても当然検討しております。もう夜に近くなっている時間でございましたけれども、どういうふうに行けるのかということについて、米軍の協力も得て、どういうふうに行けるかというのを真剣に検討したわけでございます。

 しかしながら、現地におきましては、まず、車で向かう、ヘリコプターで向かうということについても、今危険だということで、動かない方がいいというアドバイスがございました。さらに、御遺体の搬送についても至急取り組むべき問題でございました。

 こういうことを同時にやるということで、極めて少人数の中で上村臨時代理大使を初めとしてやったわけでございますが、当初すぐに館員が行けなかったということについてのじくじたる思いというのは上村臨時大使も私どもも共有しておりますが、しかし、具体的に……(藤田(幸)委員「その後行っていないんでしょう、現場に」と呼ぶ)その後、韓国の人たちがやられたということもありますように、やはり危険な状況だったことは間違いないと思います。

 その後、行かなかったか、行っていないかどうかにつきましては、上村臨時大使がさらに現地に行って今までの調査の裏づけ等確認をしているところであります。

藤田(幸)委員 まず、先ほどの上村臨時大使の話は、ティクリートに行ったという話はありましたが、現場に行ったという話は先ほどの答弁になかったと思います。

 現場に日本政府の人間が最初にいつ行ったのか、今までに何回行っているのか、それを答えてください。

 上村臨時大使は行っていないわけでしょう。ティクリートで米軍関係者等と会ったけれども、現場には行っているという先ほど答弁はなかった。簡潔に答えてください。

堂道政府参考人 お答え申します。

 上村臨時大使は、ティクリートにおきますイラクの警察、米軍及び現場にも訪れております。

藤田(幸)委員 まず最初に日本政府で現場に行ったのはだれか、それから上村臨時大使が現場に行ったのはいつですか。簡潔に答えてください。

堂道政府参考人 政府として大使館員が行ったのは上村臨時大使が初めてでございまして、二月でございます。

藤田(幸)委員 二月の何日ですか。

堂道政府参考人 二月の二十九日です。

藤田(幸)委員 二次災害とかいう話がありましたが、私は、思い出しますけれども、タリバンに日本のジャーナリストが数年前に拘束をされたことがありますが、そのときに、当時の沼田パキスタン大使は、私は直接お話を伺いましたけれども、パキスタンの兵士数十名を雇って、前後、トラックだったと思いますが、軍用トラックに守られて、沼田大使自身が日本の民間人の人質の救出に出ているんです。

 ですから、二次災害とかいろいろ話ありましたが、先ほどの韓国の例もありますけれども、行こうと思って行けないはずはないと思うんです。要するに、行く意思がなかった、あるいは行ってはまずいと。だから、二月の二十九日まで臨時代理大使自身が現場に行っていない。どう考えたっておかしいじゃないですか。そのことについて答えてください。

堂道政府参考人 お答え申し上げます。

 意思がなかったということはございません。いつでも現場に行こうということはございました。

 一つだけ御説明申し上げたいのでございますが、この十一月から今日に至るまで、特に十一月でございますけれども、我が方の大使館が置かれた状況ということについて一つ申し上げたいと思います。

 十一月には、大使館周辺で銃撃事件が発生するなど、極めて厳しい環境のもとにございました。個々の館員については、安全確保に最大限の注意を払う必要が生じていたということでございまして、館員の数についても、この脅威に応じてかなり削減するということも必要だった状況がございます。この点については詳しく一つ一つの例を申し上げるわけにはいきませんが、そういう状況にあって最善を、車の輸送もそうでございますけれども、最善を尽くしたというふうに認識しております。

藤田(幸)委員 その二月二十九日まで臨時代理大使が現場に行かなかったということに関する意思決定はだれがされましたか。その中には、大臣と官房長官、総理も含まれた意思決定だったでしょうか。簡潔に答えてください。

堂道政府参考人 お答え申し上げます。

 上村臨時大使が行くに当たりましては、当然、安全の問題がございましたので、私どもは、大使館と相談するとともに、大臣も含めて御相談の上、行ったということでございます。

藤田(幸)委員 いや、ですから、官邸、総理も、意思決定、二月二十九日、臨時代理大使が行くことにかかわっていたか、それから、それまでだれも行かないことについて、官邸、総理も含めて意思決定にかかわっておられたか、簡潔に答えてください。

堂道政府参考人 この事件をめぐる状況及び大使館をめぐる状況については、官邸も含めて逐一御報告をしてございます。

藤田(幸)委員 いろんな不可解なことがある一つに、お二人の日本の外交官と、もう一人運転手の方、ジョルジース・ゾラという方が亡くなられましたが、まず、この運転手の方の司法解剖は行ったのか、だれがどこで行ったのか、それから、その結果報告について政府はどう把握しておられるのか、聞かせてください。

堂道政府参考人 この亡くなられたジョルジース・スレイマーン・ズラ、職員でございますが、この司法解剖については行われておりません。この職員の家族が遺体の司法解剖を拒否したためでございます。

 なお、その死因につきましては、ティクリート病院の医師が発行した死亡診断書によれば、死因は銃創によるものとされております。

藤田(幸)委員 この運転手さんの死亡確認は、襲撃があった翌日の現地時間で夕方で、現地の警備会社が死亡確認を行ったというふうに外務省の資料にありますが、であるならば、奥さん、井ノ上さんの死亡確認は、だれが、いつ行ったんでしょうか。

堂道政府参考人 お答え申し上げます。

 奥、井ノ上両名の死亡確認は、現地のティクリート病院の医者が行ったというふうに承知しております。

藤田(幸)委員 ということは、運転手さんは病院にいなかった、したがって、警備会社が死亡確認をしたということですか。

堂道政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘の外務省の資料というのはちょっと手元にないのでございますが、私ども、先ほど御答弁申し上げましたとおり、この職員、運転手の死因についてはティクリート病院の医師が発行した死亡診断書で確認しておる、現地にはこの運転手さんの息子さんも同行されたというふうに承知しております。

藤田(幸)委員 その病院の医師から外務省には、では、どうやって、だれが通報したんですか。

堂道政府参考人 この運転手さんについては、今申し上げましたとおり、御子息が、私どもが派遣したイラク人の専門家と同行いたしまして、病院の方に行っております。それで、息子さんも運転手さんの死亡を確認したということでございまして、その旨については、私どもが派遣したイラク人の専門家から通報があるとともに、また、その息子さんからも確認している、こういう次第であります。

藤田(幸)委員 ということは、外務省、大使館が雇ったそのイラク人専門家の人と、もう翌日、二十四時間後ぐらいには、この運転手さんの息子さんですね、恐らくバグダッドからだろうと思うんですけれども、現地に入っているんじゃないんですか。そのときに大使館員は行っていないんですか。つまり、専門家に翌日行かせているんでしょう、その運転手さんの息子さんと。そのときにだれも行っていないんですか、大使館の人は。

 それで、さっきから言っているように、危ないと言っているけれども、危ないと言っているときに遺族を行かせているんですか。おたくの職員じゃないですか。職員の息子を危ないというときに行かせていながら、大使館の人は行っていないというのはおかしいじゃないですか。

堂道政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほども御答弁申しましたとおり、私どもとしても、できれば行きたかったということでございます。

 大使館については、非常に少数の人数で活動しておりまして、第一に、現場に行くかどうかという判断、第二に、御遺体の移送等今後とるべき措置の準備、こういうことがございました。そこで、この少数の中でどうするかということを検討いたしまして、大使館員については直ちに行かない、ただし、私ども、現場で何があったのか、いろいろ確認しなきゃいけないことがたくさんあるということでございまして、私どもとの関係があるイラク人の専門家を、また彼はティクリートの周辺の出身ということもございましたので、派遣して、その際にこの運転手さんの息子さんも同時に、自分も行きたいということで同行した、こういう次第であります。

藤田(幸)委員 息子さんは行きたいと言ったから行かせて、外務省の皆さんは行きたいと思ったけれども行かなかったというのは、矛盾しているんじゃないですか。そして、その翌日、おたくの職員の方の息子さんは行かせているのに大使館員は行かなかった。仮にその日が危ないにしても、遺体の搬送のことが最優先だと考えたにしても、それから二月の二十九日まで調査にも何も大使館の人間が行っていないというのは余りにもおかしいじゃないですか。

 おたくの職員ですね、この運転手さんは。そうすると、国籍あるいは待遇によって命の重さが違うということですか。あるいは、その遺族の方が行っているということは、その安全について、仮にその方が、息子さんが行くと言ったら勝手に行かせていいというんだったらば、外務省の皆さんだって、自分の仲間の奥が殺されたんだから、行こうと思う人が志願で行きたいならば行かせるということになるんじゃないですか。余りにもおかしいじゃないですか。遺族の息子さんは翌日行かせておきながら、それから数カ月の間大使館の人が現場に行っていないということは、余りにおかしいじゃないですか。

 ちょっと委員長、これは新しい事実で、実際に、遺族の、職員の息子さんは翌日行かせていながら、外務省の人間が数カ月行っていないというのは、これは余りにおかしな事実でございますので、これはやはり上村臨時大使を召喚するということを改めて私からも要求しておきたいと思います。

 それで、時間がないので次に移りますけれども、なぜこういったことを質問したかといいますと、警察庁にお聞きしたいと思いますけれども、結局、いろいろな機材がないので、バグダッドあるいはティクリート、この現場まで行かなかったという話がありますが、先ほどの首藤さんの質問とも関連があるんですけれども、捜査をする場合に、何か成分を調査するとかいう話ばかり出ていますけれども、捜査にとって重要なことは、我が国の外交官が命を失って、殺されているわけですから、犯人を突きとめるということが捜査のポイントでしょう。であるならば、すぐ現場に行くということ、仮に現場に行けないならば、何と何をすぐに調べる、あるいは、現場にいないということは、そのいろいろな捜査の可能性が失われるんだろうと思うんです。

 時間がないので、幾つか端的に質問しますけれども、まず、捜査権は日本にあるかどうかということが一つ。二つ目は、現場に足を運ばないことによって生じる捜査の損失について、いろいろな可能性があると思いますが、それを簡潔に答えてください。

瀬川政府参考人 まず、捜査権の問題でございますけれども、これは日本にも捜査権はあるだろうと思いますけれども、これは国外、イラク国内における犯罪でございますので、これは当然、第一義的には現地のイラクの捜査機関が主体となって行うべきものであるということだろうと思います。

 それから、我が国が捜査権を行使するかどうかということになりますと、その国の主権との衝突といいますか、という問題が生じるということでございまして、一義的には、そういう意味からも、当該国の捜査機関が主体となって行うということだろうと思います。

 それから、現地に行けば何が得られるか、行かなければ捜査資料が得られないのではないかということでございますけれども、それは現地で捜査をするということが捜査上は最も有効だろうというふうに思いますけれども、そういった捜査権をめぐる問題でございますとか現地の治安情勢の中で、我々の意図するような真相究明のための活動が現実にそこで安全かつ円滑に行えるのか、効果的に行えるのかというようなこともあろうかと思いますし、それから、車両の検証等あるいは御遺体の鑑定等々につきましては、これは、でき得れば日本国内で行う方が、体制面におきましてもあるいは装備資機材の面におきましても、それは最良の結果が得られるだろう等々を考慮したところでございます。

藤田(幸)委員 今、最後の部分ですけれども、犯人を捜すということが一番の目的じゃないんですか、つまり、成分を分析するのは日本が一番適しているということが目的ではなくて。

 それから、時間が重要なんじゃないですか。時間というものと現場というものが重要じゃないかということと、先ほどの外務省の説明との整合性の問題ですが、警察庁の方から外務省に対して、こういった資料を集めてほしい、例えば、現場の写真があるのか、今までは遺体の関係と車両の関係ですけれども、現場の地図があって、写真があって、そして地域にどんな方がいてとかいうことを恐らく要請をされたんだろうと思うんですけれども、そんな要請をいつされたのか。

 それから、捜査権は日本にもあるということでしたが、警察庁側から、実際に犯人を突きとめるということに関して、やはり早く行くということ、それからこういったことが必要だということについて外務省側に要求したことはないのか。その点についてお答えください。

瀬川政府参考人 警察といたしましても、本事件は極めて重要かつ重大な事案だと考えておりまして、犯人の検挙というのを非常に強く我々としても求めているところでございます。

 そういった意味で、いろいろ鑑定でございますとか検証という点につきましても、できるだけといいますか、何とかその犯人を特定するに足りるような資料を得たい、あるいは犯行の状況をできるだけ明らかにできるような捜査資料を得たいということで、精いっぱい努めてきているところでございます。

 それから、現場の状況等々、現地の状況につきましては、そういった大変限定された厳しい状況の中でございますが、事件発生直後から、外務省と極めて緊密な連絡をとりながら、関係資料等々につきましても、適宜その提供を要請し、また入手させていただいているところでございます。

藤田(幸)委員 そうすると、いつ外務省と、そもそも捜査について警察庁の方から主体的に捜査をしたいということを意思表示されたのか、されたとするならば、いつなのか。それとも、外務省側から捜査について協力を求められたのが先だったのか、であるならば、それがいつなのか。そして、現地に行くことについてのやりとりが警察庁と外務省の間で最初に始まったのはいつなのか。答えてください。

瀬川政府参考人 これは事件の発生直後から警察は外務省と連絡をもうとっておりまして、それから……(藤田(幸)委員「外務省から来たのですか」と呼ぶ)いや、外務省からこういう事件が発生したという御連絡もいただき、その中で、こちらの方からも、ぜひ事案の真相究明に警察としても努力をするということも当然これは申しておりますし、それから、何といっても、お二人の御遺体が戻ってくるということがその直後にも判明いたしましたので、その御遺体についての司法解剖等々をしっかり実施をして、そこから犯人を何らか特定できるための材料を得るための捜査を実施したいということで、外務省と緊密に連携して対応してきたところでございます。

藤田(幸)委員 今度、車の分析結果が出るということになっておりますけれども、やはり車だけじゃなくて御遺体の関係、先ほど首藤議員の質問の中でもいろいろな不可解な点があるという点。それから、一部お二人の、あるいはお三名の御遺体の部分が外国の通信社等の映像で流れておりますけれども、いろんなうわさが立っている。

 そうしますと、やはり車だけではなくて、実際に検視をされた慶応大学と東大でしょうか、その方がいらっしゃるはずでございますので、実際にそのお二人からその状況について聞くということが私は非常に重要ではないかと。やはり、余りにも真相究明が遅過ぎて長過ぎるし、余りにも不可解な点がある。これは、恐らく堂道局長を初め外務省の、外交官の皆さん自身が非常に不思議に思っておられるのではないか。

 そういうことから考えまして、委員長、ぜひ検視をされた東大病院と慶応大学病院の担当者の方を参考人としてお呼びしたいということを委員長の方にお願いをしたいと思います。

 そして次に、この会議、つまり、お二人の外交官が出席をされるということになっておりました会議の件でございますけれども、結局は、米軍の第四歩兵師団基地で会議が開かれるようになっていた。そして、この第四歩兵師団基地で、結局、マクドナルド大佐という方がこの最初の死亡の事件について発表されたということになっておりますけれども、これは堂道局長にお伺いしますが、お二人の外交官が出席をされようとしておりましたこの会議がどんな会議で、これは米軍の第四歩兵師団基地で開かれる会議であったということの確認をしていただきたいと思います。

堂道政府参考人 この会議につきましては、ティクリート宮殿で会合がされておりまして、スンニ・トライアングルの地域も含めまして、この地域におきまして復興活動をどのように進めるか、それが重要であるという認識のもとに開かれたわけでございます。

 この会議につきましては、その両名は復興支援という形で我が国がどういうふうな貢献ができるかというのを探るために出た、こういうことでございます。

藤田(幸)委員 そうしますと、同じ二十九日の二時に開会されたという第四歩兵師団基地の会議、これはレイモンド・オディエルノ少将という方が開会をしたということになっておりまして、その直前にこの三名の方が亡くなったという報道をこのスポークスマンがしているわけですが、これは全く別の会議なんでしょうか。あるいは、別の会議であったのになぜこのスポークスマンがその三名の死亡についてリアルタイムで知っていたのかについて、お答えください。

堂道政府参考人 この会議は二十九日に開催されたということでございますが、実際には、二十九日及び三十日の両日開かれております。ティクリート宮殿の開会式、会場も含めまして行われておりまして、二十九日におきましては、したがって、昼食から始まり、宮殿内のツアー、そういうことが行われておりますし、実質的な会談については三十日から始まるというのがスケジュールでございました。

 そういうことから、今おっしゃった報道でございますが、私どもが承知している限り、米軍がこの事件について最初の発表をしたのは二十九日の深夜だったと思います。報道……(藤田(幸)委員「二十九日の二時でしょう」と呼ぶ)二十九日の二時にということでございますが、私どもはそれは何かの間違いではないかと思います。

藤田(幸)委員 いろいろな意味で、先ほどの遺体の関係、それから現地に行っていないということの関係で、いろいろただしていかなければいけないと思います。

 もう一つ、先ほどの証拠隠滅の関係もございますけれども、まず、お二人の外交官が乗っておられた車の中に所持品があったと思いますが、所持品は何が残されていたのか、それは今どこにあるのか。それから、同じように、大使館におけるお二人の所持品、何が残されていたのか、パソコンだとか、パソコンだけじゃなくて電子手帳もあったと言われておりますけれども、それがどこにあるのか。それから、そういったものについて、これはあわせて警察庁にもお聞きしたいと思いますけれども、警察庁の方でそういった所持品について検査をしたのかどうか。

 では、堂道局長と警察庁と、簡潔にお答えいただきたいと思います。

堂道政府参考人 お答え申し上げます。

 遺留品でございますけれども、既に、警察当局が捜査上必要と判断したものについては、御遺族の同意を得た上で、外務省が取りまとめてすべて警察当局に任意提出を行っております。その中には、お尋ねのパソコンや電子手帳もこれに含まれております。

 なお、遺留品でございますが、車の中に残されていたということをおっしゃいましたが、基本的には、身元を判明するものについては当初全く見つからなかった、それを、米軍に協力を要請して、地元民から回収したというのが事実でございます。

瀬川政府参考人 お答えいたします。

 警察としましては、本件に関係するさまざまな資料、情報等につきましては、外務省を通じるなどして適宜入手をしております。捜査に関することでございますので詳細は差し控えさせていただきたいと思いますが、ただいま外務省から答弁がございましたパソコン、デジタルカメラにつきましては、これらの資料に含まれております。

藤田(幸)委員 警察庁に最後の質問をいたしますが、今のお話ですと、さまざまということと適宜ということですから、必要なもの全部というふうではない、それから任意提出だということですから、つまり全部ではないということの確認と、それから、ちょっと細かいことですけれども、一月三十日の発表で、右回り四条の線条痕と発表されておりますけれども、これは、線条痕というのは銃身の中に刻まれた溝と理解をしておりますけれども、一回転する距離の違いが弾丸の痕跡に違いを発生するんだろうと思います。例えば、二十センチメートルで一回転する右回り四条の線条痕を持った銃と三十センチメートルで一回転する右回り四条の線条痕を持った銃、これで特徴的な違いが発生するかどうかについてお答えいただきたい。もしきょうお答えできないのであるならば、また委員会の方にしっかりと提出していただきたい。その二つです。

瀬川政府参考人 お答えいたします。

 まず、一点目の、さまざまとか適宜とかいうことでございますが、これは外務省と本当に緊密な連携をとっておりまして、本件捜査に必要といいますか、関係あると思われる資料につきましては、外務省から御協力をいただいて入手をしているという意味でございます。

 それから、線条痕の関係のお尋ねでございますが、通告が、いただきましたけれども、ちょっと突然でございましたので、とりあえず専門家に聞いたところでございますけれども、拳銃、ライフル銃等の銃器におきましては、銃身の溝がどのぐらいの距離で発射される弾丸が一回転するかというのは、弾丸に与える回転力に影響を与えるということになるわけでございまして、一般論であれですけれども、短距離で一回転する溝を有する銃器の方が弾丸に大きな回転を与える、こういうことになるわけですね。短い間に一回転する方が大きな回転を与える、こういうことになります。

 そこで、お尋ねの、二十センチメートルで一回転する右回り四条の線条痕を持った銃から発射された場合、これは左回りでも右回りでも、何条でもそれは同じことでございますが、それと三十センチで一回転する線条痕を持った銃から発射された場合とでございますけれども、これは当然、弾丸に残された痕跡に違いが生じるということになります。

 ただし、この違いは、銃身の距離といいますか、一回転する距離だけではなくて、実は、銃身がどんどん使用に応じて、使われていきますと溝が摩耗していきまして、回転にずれが生じるということがございます。これが実は、銃から発射された弾丸の痕跡から、銃が同一の銃から発射されたものかどうかということを判定する根拠ということになるわけでございます。ですから、という意味は、どのぐらいの距離で一回転するかというのは、最初溝を切ったときには二十センチ、四十センチと決まりますけれども、使っているうちにそれはなかなか変化をしてくるという状況があるようでございます。

 したがいまして、弾丸に残った腔旋痕、いわゆる線条痕からどの程度の長さで一回転したのかということは、実はずれが生じるということで、必ずしも判別できないということが一つございます。

 それから、今回私どもが押収といいますか鑑定しておりますものといいますのは、実は、先ほども申し上げましたとおり、完全な形の弾丸というのはございませんで、極めて微細に、細かく砕けたいわば金属片というものに近いものでございまして、その中から何とか腔旋痕が残っているものを見つけて判別しているということでございますので、そういった状況のもとで、今申し上げたようなことを判別するのは大変困難なものであるという回答を得ております。

藤田(幸)委員 ありがとうございました。

 外務省の職員の皆さんとともに、真実の解明のために私も一生懸命努力をしたいということを最後に申し上げまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

    ―――――――――――――

斉藤委員長 この際、お諮りいたします。

 政府参考人として外務省大臣官房審議官齋木昭隆君及び外務省大臣官房領事移住部長鹿取克章君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

斉藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

斉藤委員長 次に、中川正春君。

中川(正)委員 話の緊急性を理解していただいて、急遽質問に立たせていただくことを許していただいた与党の理事の皆さんに感謝をしたいと思います。

 その上で、先ほどの議論をずっと総括をしますと、二つ、一つは質問、それから一つは提案をしたいと思うんです。

 一つは、これは国民にとっても我々にとってもそうなんですが、外務省がなぜ総括的にこのことを説明しないのかということ、これが一番問われているんです。説明責任を果たしていないんですよ。そういう意味からいって、警察が四月の初めに何らかの形で証拠について説明をするということが出てきていますが、外務大臣、外務省としては、いつ総括的な説明を国民にする、その期限、これは重要な問題です、だらだらだらだらいったって、ますます疑惑がこんなような形で膨らんでくるんですよ。そこのところを、いつ、どんな形で説明をするつもりですか。

川口国務大臣 まず申し上げたいことは、外務省として、これは事件の発生以来、わかることは、そしてその場で申し上げられること、すなわち捜査等に影響がないことということでございますけれども、そういうことについては、できるだけ早く国民の皆様に提示をするということでやってきているわけでございます。したがいまして、説明責任を果たしていないということではなくて、我々はベストを尽くして、わかっていること、申し上げられることについては申し上げてきているということでございます。それは今まで国会の場できちんと申し上げられることについては御説明をしてきたということでございます。

 ただ、委員がおっしゃるのは、まとめた形では言っていないじゃないか、その時々で情報が御質問に応じて提示をされているということであって、まとまった形で話が出ていないではないかということでございましたらば、それは、まず、その鑑定の結果等々、まだわかっていないことがございますので、そういったことがわかった後で、その後、申し上げられることについてはまとめてお出しをするということについては今現在検討をしているわけでございます。

中川(正)委員 これまでの話は、どんどんどんどん中身が変わってきているんですよ、外務省からの説明は。同時に、外務省が唯一言っていることは、わからない、真相はわからないということだけなんです。そんなもの説明になりません。

 そのことを肝に銘じて、改めて総括的に、外務省の今の捜査をやっている努力、どういう体制でどういう形でやっているのかということと、その結果、どういう解釈、どういう判断をしているのかということ、その二つを含めて説明をすることを求めます。

 それからもう一つ、これは委員長に提案をしたいんですけれども……(発言する者あり)いや、今求めるんじゃない、改めて総括的に大臣に求めます。

 それからもう一つ、委員長に提案をしたいんですが、これは国内の話だけじゃなくて、日米関係も含めて非常に大きな問題を内在しているんだろうというふうに思うんです。これは、外務省の中で調査をしていくということだけじゃなくて、やはり国会としても、この問題に対しては、しっかりとした根拠に基づいた調査をした上で、我々なりの、やはり国民の代表としての解釈をそこに付すべきだ、それがこれからの、対外的にも、特にアメリカに対して、あるいはイラクという情勢を見詰めていくという立場にとっても必要なことだろうと思います。

 その上で提案をしたいんですが、特別委員会、この問題の究明に対する特別委員会を設置するということ、このことを我が委員会から議長に対してしていくということ、これを提案したいというふうに思っております。

 そのことについて、委員長、どう思われますか。

斉藤委員長 理事会で協議させていただきます。

中川(正)委員 その上で、話題が、これはテロなんですが、拉致あるいは脱北者、北朝鮮の拉致の問題あるいは脱北の問題もテロにかかわるということでありますので、その関連の中から質問をさせていただきたい。特に、大臣が中国へ向けて出発をされるということでありましたので、急遽ここで質問をさせていただくことになりました。

 問題は、尖閣で日本のサイドが中国人を拘束して、それで強制送還をした、こういうことがあります。このことについての是非というのはまた別の機会に議論はあるとしても、そういう配慮を日本はしました。

 ところが、もう一つ、逆のケースが中国と日本の間にはありまして、難民救援基金の野口孝行さん、これが人権救済という形で、もとの在日コリアンが北朝鮮に帰国した、その人たちが脱北をしてきまして、二人いたわけですが、それが中国で拘束をされた。

 一つは、この二人の行方、これを日本政府としては在日として保護するということ、これは当然のことだと思うんですが、その意思表示と、それからもう一つ、普通であれば中国の配慮はそれなりに、人権運動家に対しては、拘束したら一週間か二週間ですぐ解放するわけですが、今回の場合は、十二月の十六日に拘束されて以降、現在まで南寧の看守所に拘束をされたままになっております。

 実は私、現地に行ってきました。その上で、中国サイドにもこのことについて私なりに交渉したんですが、どうも見ていると、日本の交渉レベルがしっかりと高まっていない。そこのところを感じたわけであります。

 中国に対して何でそれだけ物がしっかり言えないんだ、すぐに解放しろということがどうして遠慮がちにしか言えないんだということ、このことに非常に今憤りを感じておりまして、そのことの経過と、それから、大臣自身が今度中国へ行かれる際に、この問題についても、記者会見で触れられたことも知っています、あるいは官邸で福田さんが触れられておることも知っています、その上で、中国に対してしっかり物を言っていくという、その意思をここでしっかり聞かせていただきたいということ。このことを質問させていただきたいと思うんです。

鹿取政府参考人 今の野口氏の件でございますが、私どもとしては、この野口氏の件につきましては、基本的には中国国内法にかかわる問題であり、我が国としては、最終的には中国側の判断を尊重せざるを得ない、こういうふうに考えております。

 しかしながら、外務省としては、さまざまな機会をとらえて、中国側の当局に対して、邦人保護の観点から、野口氏が可能な限り早期に帰国できるよう、配慮方、これは要請しておるところでございます。

川口国務大臣 この案件につきましては、これは私も前に記者会見で申し上げたことがありますけれども、基本的には、まず中国の国内法にかかわる問題でありまして、中国の判断、これを最終的には尊重しなければならない、これはそういうことでございます。

 ただ、当然のことながら、我が国としては、邦人保護という大事な立場を持っているわけでございまして、そういった観点から、先ほど領事移住部長から申し上げましたように、早期の帰国ということについて今までさまざま働きかけてきているわけでございます。

 私としても、この案件には関心を持っております。そういう意味で、日本としてといいますか、私としても、今まで事務レベルでお願いをしていることについては関心を持っているということについて表明をしたいと考えております。

中川(正)委員 一言申し上げたいと思うんですが、国内法、確かに中国も法律で律していますけれども、もう一方で、難民条約に加盟をしている国であります。だから、そういう意味では、北朝鮮から脱北をして、その人たちが北朝鮮へもう一回送り返されるということになると、そこで収容所に入れられて人権侵害がある、それは時と場合によってはそこで命を落とす、拷問にかけられる、そういう可能性がある。それがはっきりしているだけに、条約が国内法に優先するんだということ、このことについてもちゃんとした主張をしていただいて、その上で邦人保護、腹をしっかり据えてやっていただくということ、これが大切だと思うんですよ。

 そういう意味で、今回の訪中をした機会に、大臣レベルでしっかりとこのことについて意思表示をしていくということ、これをぜひここで表明をしていただきたいというふうに思います。

川口国務大臣 私の立場は先ほど申し上げたとおりでございます。

 それから、おっしゃっていらっしゃる脱北者二名、この方々については、既に、我が国の立場として、北朝鮮に送還されることがないようにという申し入れはいたしております。

中川(正)委員 以上です。ありがとうございました。

斉藤委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 昨年の三月二十日、アメリカのイラク侵攻が起こりまして、ちょうど一年を過ぎたところです。それで、よく、この戦争はテロとの闘いだ、このように言われてまいりました。そのテロとの闘いで、アメリカ政府の内部で、文字どおりテロ対策担当の大統領特別顧問のクラークさん、前テロ対策担当大統領特別顧問ということになっておりますが、このクラークさんの発言が問題になっております。アメリカのまさにテロに対する態度をめぐって、どうであったか、こういう議論が起こっているわけです。

 この方が先日、「すべての敵に対抗して」、こういう本を出しておりますが、私のスタッフに大急ぎできょうの質問に間に合わせて中心部分を翻訳してもらいました。それで、ちょうど九月十一日、あのテロのときの翌日の様子がこの本の中に書かれているんです。

 九月十二日の夕刻という書き出しで始まりまして、ブッシュ大統領が、その九・一一テロをめぐって、サダムがこれをやったか、やったのかどうか、サダムがどんな形であれ関与しているのかどうかを調べてほしい、このようにクラークさんに発言している。クラークさんは非常にあっけにとられる。あっけにとられて、そして大統領に、これをやったのはアルカイダです、このように言った後に、ブッシュ大統領が、わかっている、わかっているけれども、サダムが関与しているかどうかを見てほしい、見るだけでいい、どんな断片でもいいから知りたい、こう言っているわけですね。それで、クラークさんは、私たちはアルカイダに対する国家の支援を何度も見つけようとしてきたのですが、イラクとの連携の事実は何も見つけられなかったのです、このようにブッシュ大統領に申し上げたら、ブッシュ大統領は、イラク、サダムを調査しろ、こう言った。こういうくだり、こういう描写がこの本の中にあるんですね。

 テロがあった当初から、テロをこの地球上から撲滅する、テロというのは許されないことですから、これはもう本当に国際社会が力を合わせて追い詰めていかなきゃいけない、こういうときに、テロが起きたその瞬間、サダムとの関係を調べろ、担当官が戸惑う中で、何でもいいから調べろ、こう言っていた。だから、九・一一テロのときからブッシュ政権がイラク攻撃を模索していた、こういう事実は何度も今まで言われてきたわけですが、特に、ここに来て本当に、大統領のテロ対策特別補佐官として任務についていた方がこういうことを言い出した。

 この点について、外務大臣、どのように考えますか。

川口国務大臣 おっしゃったその本の著者のクラーク前米大統領特別顧問が、さまざまなインタビューに答えて発言をしたり、あるいはその中で、その本の中で記述をしているということは承知をいたしておりますけれども、その発言に関連いたしまして、ライス大統領補佐官は、ブッシュ大統領は同時多発テロ発生直後からすべての可能性のあるリンクについて調査をするように指示したが、九・一一とイラクに関連性がないという報告を受けて、アルカイダ及びタリバンを目標とすることになったということを説明しているというふうに承知をいたしています。

 いずれにしても、米国は一貫して、イラクとの関連でいえば、達成すべき目標はあくまでもイラクの武装解除、すなわち、累次の安保理の決議に従っての義務の履行がされていない、そういうことであるということを述べているわけでございまして、ブッシュ大統領のイラクに対する武力行使の決断、これにつきましては、二〇〇二年の九月の国連での演説の以降、さまざまな国際協調についての努力を行った後で、その上での決断であったというふうに私は考えております。

赤嶺委員 やはりライスさんもブッシュ大統領からすべての可能性について調べろということを言われていて、ブッシュ大統領のそばにいたクラークさんは、サダムについて徹底して何でもいいから調べろと言ったことに極めて戸惑いを持ちつつ、その日の様子というのをこの本に出しているわけです。それは九・一一テロのときでした。

 今度は一年前の問題です。三月十八日にブッシュ大統領は最後通告の演説を行っています。この最後通告の演説を読み返してみたんですが、こう言っているんですね。フセイン政権は、イスラム過激派のアルカイダを含むテロリストたちを支援し、訓練し、基地を提供した。テロリストたちは、イラクから入手した生物化学兵器あるいは核兵器を使い、これまで表明してきた意図を達成し、米国や他の友好国の何百、何十万人もの罪もない国民の命を奪うかもしれない。恐怖の日が来る前に、行動が遅過ぎる事態となる前に、危険は取り除かなければならない。このように強調しているわけです。

 フセイン政権が持っている大量破壊兵器がテロリストの手に渡って、幾百万、幾千万の人たちが犠牲になるかもしれない、恐怖の日が来る前に危険を取り除く、このように最後通告を行ったわけですが、三月十八日です。これについて、今振り返ってみて、外務大臣、いかがですか。

川口国務大臣 私は、その演説を今ちょっと手元に持っておりませんので、全体について記憶をしているということではございませんが、それにつきまして私が記憶をいたしておりますのは、国連憲章との関連で、イラクの義務不履行、それについてきちんと述べていらしたというふうに私は記憶をいたしております。

 いずれにしても、アメリカが武力行使を行ったということについては、アメリカの国連大使やイギリスの国連大使が安保理に対して報告をしているように、国連の憲章第七章のもとにおける累次の決議についてのイラクの義務不履行、その結果としての行動である、それに基づく行動であるということを、アメリカ、イギリスは述べていると私は承知しております。

赤嶺委員 あの戦争をアメリカが何を根拠にして始めたかということもるる書いております。同時に、この大量破壊兵器がテロリストに渡ったら大変だという、ここの部分もきちんと大統領は演説の中に使っているんです。それで、皆さんはそういう大統領の宣言や最後通告を支持したわけです。

 その件についてもクラークさんがこの本の中に書いているんですが、テロの対策特別補佐官としてずっとそのとき一緒にやっているわけですから、こう言っているんですね、クラークさんはこの本の中で。

 イラクにテロリストの訓練キャンプを持つアルカイダの関連組織があるのか。ある、サダム・フセインの統制外にある地域、サダムの敵対者によって統制されているイラク北部に。アルカイダの訓練キャンプ、どこにあるか。フセインの統制外にある北部の地域にある。このようにクラーク氏は言っているわけです。そして、イラクとアルカイダの間にある潜在的な可能性のどれも注目すべき援助や支援のレベルではなかった、どんな潜在的な可能性をとってみても、イラクがアルカイダを支援するというようなレベルではなかった、こう言っているわけですね。

 そこで、振り返って、政府は、イラク戦争の開始の時点で大量破壊兵器の保有を断定しました。一方で、アルカイダとフセイン政権の連携については正面から認定してはいなかったように思います。これも一年前の議事録を読み返してみました。ならば、一年たって、アルカイダとフセインの関係を言い、そして側近がそれは全く関係なかったと言われている。

 やはり私は、今振り返ってみると、あのブッシュ大統領の当時の最後通告の演説は誇張があったんじゃないか、誇張だったんじゃないかと思いますが、外務大臣、いかがですか。

川口国務大臣 先ほど申しましたように、いずれにしても、米国は、武力行使をしたということについては、国連憲章第七章のもとで採択をされた六七八、六八七、一四四一、それに基づいて武力行使の権限を与えられているということを説明しているというふうに承知をいたしております。

赤嶺委員 いずれにしてもということは、これは結構です。

 いわゆるそのときの最後通告の演説に、アルカイダとイラクとの結びつきについて、ブッシュ大統領の誇張、誇張の表現があったんじゃないか、こういうことを聞いているんです。

川口国務大臣 大事なことは、米国がどういう権限に基づいて武力行使を行ったかということでございます。

 今おっしゃっている演説、私、手元に持っておりませんので、おっしゃったことについて直接コメントできませんけれども、その演説においても、あるいはその他の場所でも、米国は、武力行使をしたということの根拠は、先ほど申し上げましたように、国連憲章第七章のもとで採択をされた決議六七八、六八七、一四四一、それによって武力行使をする権限を与えられているという説明をしているわけでございまして、それがその武力行使の根拠であるというふうに考えております。

赤嶺委員 結局、この誇張については、外務大臣、触れることができません。このくだりは、一年たった今でも我々には生々しく思い起こさせる出来事であり、政党によっては、テレビ討論等で、スプーン一杯でどれだけの人が犠牲になるかと盛んに言われたものであります。そのことについて答えていないというのは、国民に対しての誠実さが足りないと言わざるを得ません。

 それで、私は、さっき外務大臣は国連憲章第七章に基づいてと言いましたが、実は、このアメリカの戦争というのは、今、有志連合という形で展開をされているわけです。イラク戦争に至る過程では、国際社会と国連は、戦争ではなく査察を継続するように求めていました。求めていたにもかかわらず、ブッシュ大統領は、これも今生々しくよみがえる発言でありますが、安保理はその責任を果たさなかった、こう言ったわけですね。そして、そのアメリカのイラク戦争に賛成する国だけで戦争に突入した。

 国際社会の中で戦争に至る場合に、それが本当に武力行使が必要なのか、あるいは武力行使なくして問題を解決することができるのか、こういうことが本当に国際社会では強く問われると思うんです。私は、そういう意味で、有志連合というのは、国際の平和の秩序、これに対して真っ向からそれを踏みにじるものであり、政府としてこの点をやはり見直すということを強く求めたいんですが、いかがですか。

川口国務大臣 いろいろなことをおっしゃっていらっしゃるわけですけれども、これは、先ほど申しましたように、国連憲章の、六七八、六八七、一四四一、それによって与えられた権限に基づいて武力行使を行ったということでございます。国連の決議によって権限を与えられているという意味において、これは正当であるというふうに我々は考えておりますし、現に湾岸戦争においても同じようなことであったわけでございます。

赤嶺委員 このような国連決議の解釈に立っている国々がまさに有志連合であり、少数の国々であります。国連安保理は責任を果たさなかったというような言い方で国際社会を踏みにじったこの一年の経過は明白だろうと思います。

 それで、今、有志連合の中に亀裂が起こっております。スペインがイラクからの撤退を決める。ホンジュラスも撤退を決める。そして、あの有志連合の中の中心的な存在であったポーランドでさえ、大量破壊兵器問題でアメリカにだまされたと言っている。

 結局、この一年間、アメリカがテロとの闘いだと言い、小泉総理がテロにひるむなと言ってきたけれども、国際社会にはテロが激発し、そしてイラクの中でも、アルカイダがいなかったイラクの中にテロリストを呼び寄せ、治安を混乱させ、アメリカは、テロとの闘いで手段も考え方も国際社会に対する態度もすべて間違っていた、テロを拡大させていた、こういう指摘をされても仕方がないと思いますけれども、いかがですか。

川口国務大臣 今、多国籍軍がイラクに展開をしている。(赤嶺委員「多国籍軍じゃないでしょう、あれは」と呼ぶ)多国籍軍と日本、あるいは幾つかの国は行っていませんけれども、みんな、この多国籍軍というのは、国連の決議によって多国籍軍というふうにオーソライズを今しているわけでございます。そういった国々が、イラクの復興支援、そして治安安定のために協力をしているからこそ、イラクにおいて、政治プロセスについてのカレンダーが決まり、今、主権の移譲に向けて着々と動いているということであって、国際社会がこれに協力をしていくというのは、国連の決議にあるように、これは加盟国としての責務であるということであるかと思います。

 個別の国についてコメントをいたしませんけれども、例えばポーランド、これにつきましては、ポーランドは、安定化任務が成功裏に終了してからイラクを撤退するということを大統領が言っているわけでございまして、これは、何らかの形で委員のおっしゃるように分裂があるということではないということだと思います。

 きょう、四月の一日でございますけれども、六月の終わりに主権の移譲が行われるように、まさに今、各国が頑張っていかなければいけないときであるというふうに考えます。

赤嶺委員 終わります。

斉藤委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社会民主党の照屋寛徳です。

 きょうの委員会の冒頭で、外務省から、イラクの治安情勢について、「先週御報告して以降もテロが継続しており、引き続き、全般として予断を許さない状況が続いております。」との報告がございました。

 関連をして、イラク情勢について最初にお伺いをいたしますが、昨日、三月三十一日に、イラク中部で米軍車両が爆破され、兵士五人が死亡しました。この事件では、占領当局と契約する復興事業請負業者の民間車両も銃撃を受けて、米国人三人を含む外国人四人が殺された、しかも、遺体まで損壊されるという大変衝撃的な事件でございました。

 ニュース報道では、この事件は、少なくとも一部地域では、旧政権の支持勢力だけでなく、民衆レベルでも占領への反発が依然強いことを示している、テロ掃討を理由にイラク人を容疑なしに拘束したり、取材中のアラブ・メディアに米軍が発砲して死亡させたりするなど、米兵の現地での行動に反発が強まっていることも背景にあると見られる、こういうふうに分析をして報道しているニュース報道もございました。

 そこで、この衝撃的な事件について両大臣はどのように受けとめておられるか、まずお伺いをいたします。

川口国務大臣 おっしゃっているのは、北部、ファルージャにおいて外国民間人の車両二台が襲撃をされて、また、バグダッドの西で、道路わきに仕掛けられた爆弾で米兵五人が死亡という、これは新聞報道で我々も承知をいたしております。

 イラクの治安については、先ほど堂道局長から御説明をしましたように、引き続き治安情勢については問題が残っているわけでございます。

 ただ、これは地域差が非常にあるということで、今の話はファルージャ及びバグダッドの西というところでございます。南部等においては比較的平穏であるということも変わりがない。今、主権の移譲に向けて最後の三カ月ということでございますので、それを邪魔しようという勢力は、当然にそれに対しての行動をとるということは考えられるわけでございますけれども、地域差があるということでございます。

 イラクの治安をきちんと安定させるために、今その努力を重ねていかなければいけないときであるというふうに考えます。

石破国務大臣 今外務大臣が答弁されたとおりだと私も思っています。

 先生も御案内のことかと思いますが、つい先般発表されました、NHKですとかABCですとかあるいはBBCですとか、そういうメディアの世論調査、このことも私どもはきちんと見なければいけないことだと思う。

 一年前と比べてイラクはよくなったと答えている国民の方が、一年前に比べてイラクが悪くなったと答えている国民よりも圧倒的に多い。そしてまた、一年後はどうなるかといったときに、一年後はさらによくなっていると答えた国民が七割以上いるわけですね。

 それはもう、一つ一つの事象を見ればそういうことはあるかもしれません。しかし、イラクの国民に対して、日本、アメリカ、イギリスあるいはドイツ、そのメディアが、つい最近の話ですよ、世論調査をしてみたときに、一年前に比べて今よくなったと答えている国民の方が圧倒的に多い。そういう事実も私どもはきちんと認識をしなければいけない、そういうことだと私は思っています。

照屋委員 先日、この委員会でお二人の参考人を呼んで審議をいたしました。その際にも参考人に伺ったことでございますが、改めて、外務省がどのように考えておられるか、分析をしておられるか聞きたいことは、イスラエルによるハマスの最高指導者ヤシン師の暗殺事件でございます。

 御承知のように、ヤシン師は、国内あるいはパレスチナ人の間に大きな信頼と支持を得た人物だったと私も評価をいたしております。ところが、この事件を契機にして、ハマスはイスラエルに対する全面攻撃を表明いたしました。一方、イスラエル側は、アラファト自治政府議長すらも暗殺すると表明をしております。

 実は私も、参議院のころに、お亡くなりになられた小渕恵三元総理を団長として、パレスチナの選挙の監視団の一員で、アラファト議長にお会いをしたことがございます。

 このヤシン師の暗殺事件、これがアラブ諸国やあるいはイラク情勢にどのような影響を与えるものと外務省はお考えになっておるのか、分析をしておられるのか、外務大臣の御意見をお聞かせください。

川口国務大臣 ヤシン師の暗殺につきましては、これは私からも談話を出させていただきましたし、イスラエルのシャローム外相、それからパレスチナのシャース外相、そしてアメリカのパウエル長官にこの件で電話をいたしております。これは正当化できない行動であるというふうに考えております。

 これがあった後、アラブ諸国全体の中でイスラエルについて反発が強まっているということは事実あるというふうに考えております。また、イスラエルが、今後、ハマスの幹部に対しての掃討作戦を強化するということが仮にあった場合には、こういった反発が加速化するということも考え得ると思います。

 しかしながら、このハマスのテロというのはイスラエルに矛先が向けられているということでございまして、イスラエルとそれからイスラエルの占領地に限定をされているわけでございます。イラクの情勢に対してこのことが何か直接的な影響を与えているかというと、そういったつながりは現在見られていないと考えております。

 ただ、中東情勢の中で、イラクの情勢そしてパレスチナの情勢というのは、二つの非常に大事な要素でございます。引き続き、こういった二つの地域の情勢については注視をしていきたいと考えております。

照屋委員 このヤシン師の暗殺事件に関して、酒井啓子参考人が、イスラエルの正規軍によるテロという印象をアラブ諸国に与える、ヤシン師暗殺事件は、当然のことながら、イスラエルをバックアップしているアメリカに対する批判、非難というものもアラブ人を中心に高まってくるということになりますから、イラク情勢との関連では、イラク方面、イラク国内に多く入り込んでいる反米勢力、これがますますふえるという危険性を想定する必要があると思います、こういうふうな参考人としての意見を述べておりましたが、この意見について、外務大臣、どのように思われますか。

川口国務大臣 米国がパレスチナ和平に対してより強く関与をしていくということは重要でございまして、私も、パウエル長官と電話で話をしたときに、日本としても、米国がこのことについて関与を強めていくということを期待しているということは、お話をさせていただきました。それで、アメリカは既に、この地域に対しては代表団も送っておりまして、イスラエルにもいろいろ働きかけをしているわけでございます。

 私がイスラエルの外務大臣、パレスチナの外務大臣と話をいたしましたときに、両国が最大限の自制をして、そして、憎悪と暴力の悪循環、これが生じないように自制をすべきであるということを申しましたし、ロードマップに戻っていくというための努力をする、話し合いをするということも重要であるということを申しております。

 こういった努力が国際社会の中でも今続けられているというふうに感じております。

照屋委員 時間が参りましたので、終わります。

斉藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後六時二十五分散会


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