衆議院

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第13号 平成16年5月27日(木曜日)

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平成十六年五月二十七日(木曜日)

    午後五時二分開議

 出席委員

   委員長 斉藤斗志二君

   理事 小野寺五典君 理事 中谷  元君

   理事 西田  猛君 理事 末松 義規君

   理事 中川 正春君 理事 藤田 幸久君

   理事 河合 正智君

      宇野  治君    江崎洋一郎君

      江藤  拓君    金子 恭之君

      木村  勉君    岸田 文雄君

      倉田 雅年君    桜井 郁三君

      塩崎 恭久君    竹下  亘君

      谷  公一君    谷本 龍哉君

      玉沢徳一郎君    葉梨 康弘君

      萩生田光一君    早川 忠孝君

      望月 義夫君    池田 元久君

      生方 幸夫君    大谷 信盛君

      小宮山泰子君    篠原  孝君

      首藤 信彦君    達増 拓也君

      長島 昭久君    原口 一博君

      前原 誠司君    松本 剛明君

      山田 正彦君    横路 孝弘君

      赤松 正雄君    丸谷 佳織君

      佐々木憲昭君    阿部 知子君

    …………………………………

   外務大臣         川口 順子君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      石破  茂君

   内閣官房副長官      杉浦 正健君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    瀬川 勝久君

   政府参考人

   (防衛庁運用局長)    西川 徹矢君

   政府参考人

   (公安調査庁長官)    大泉 隆史君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 兒玉 和夫君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            堂道 秀明君

   衆議院調査局国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラク人道復興支援活動等に関する特別調査室長        高木 孝雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十七日

 辞任         補欠選任

  今津  寛君     江崎洋一郎君

  近藤 基彦君     葉梨 康弘君

  橘 康太郎君     早川 忠孝君

  西川 京子君     谷  公一君

  山下 貴史君     宇野  治君

  田嶋  要君     篠原  孝君

  伴野  豊君     大谷 信盛君

  赤嶺 政賢君     佐々木憲昭君

  照屋 寛徳君     阿部 知子君

同日

 辞任         補欠選任

  宇野  治君     山下 貴史君

  江崎洋一郎君     今津  寛君

  谷  公一君     西川 京子君

  葉梨 康弘君     近藤 基彦君

  早川 忠孝君     橘 康太郎君

  大谷 信盛君     伴野  豊君

  篠原  孝君     田嶋  要君

  佐々木憲昭君     赤嶺 政賢君

  阿部 知子君     照屋 寛徳君

    ―――――――――――――

五月七日

 イラク特措法廃止に関する請願(阿部知子君紹介)(第一八二五号)

 イラク派兵反対、自衛隊の撤退に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一八五九号)

 同(石井郁子君紹介)(第一八六〇号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一八六一号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一八六二号)

 同(志位和夫君紹介)(第一八六三号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一八六四号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一八六五号)

 同(山口富男君紹介)(第一八六六号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一八六七号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第一九一五号)

 同(石井郁子君紹介)(第一九一六号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一九一七号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一九一八号)

 同(志位和夫君紹介)(第一九一九号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一九二〇号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一九二一号)

 同(山口富男君紹介)(第一九二二号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一九二三号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二〇二三号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二〇二四号)

 イラク派兵反対、自衛隊の撤退等に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一九一四号)

同月十二日

 イラク派兵反対、自衛隊の撤退に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二一六六号)

 同(石井郁子君紹介)(第二一六七号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二一六八号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二一六九号)

 同(志位和夫君紹介)(第二一七〇号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二一七一号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二一七二号)

 同(山口富男君紹介)(第二一七三号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二一七四号)

 同(山口富男君紹介)(第二二五九号)

同月十七日

 イラク派兵反対、自衛隊の撤退に関する請願(石井郁子君紹介)(第二三〇〇号)

 同(山口富男君紹介)(第二三〇一号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第二三八六号)

 同(石井郁子君紹介)(第二三八七号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二三八八号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二三八九号)

 同(志位和夫君紹介)(第二三九〇号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二三九一号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二三九二号)

 同(山口富男君紹介)(第二三九三号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二三九四号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第二四四八号)

 同(志位和夫君紹介)(第二四四九号)

 同(山口富男君紹介)(第二四五〇号)

 自衛隊のイラクからの撤兵に関する請願(東門美津子君紹介)(第二三五一号)

同月二十六日

 自衛隊のイラクからの撤兵に関する請願(照屋寛徳君紹介)(第二四七六号)

 イラク派兵反対、自衛隊の撤退に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二五一一号)

 同(石井郁子君紹介)(第二五一二号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二五一三号)

 同(山口富男君紹介)(第二五一四号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第二五五四号)

 同(石井郁子君紹介)(第二五五五号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二五五六号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二五五七号)

 同(志位和夫君紹介)(第二五五八号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二五五九号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二五六〇号)

 同(山口富男君紹介)(第二五六一号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二五六二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動等に関する件


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     ――――◇―――――

斉藤委員長 これより会議を開きます。

 国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動等に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として警察庁警備局長瀬川勝久君、防衛庁運用局長西川徹矢君、公安調査庁長官大泉隆史君、外務省大臣官房審議官兒玉和夫君及び外務省中東アフリカ局長堂道秀明君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

斉藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

斉藤委員長 この際、政府から説明を聴取いたします。防衛庁運用局長西川徹矢君。

西川政府参考人 イラク人道復興支援特措法に基づく自衛隊の部隊の最近の活動状況について御報告いたします。

 まず、サマワの陸自部隊においては、安全確保に十分配意しつつ、宿営地における給水活動を初め、ムサンナ県内のダラージ及びヒラルにおける学校補修やワルカ及びサマワにおける道路整備、病院における医療活動を引き続き実施しています。

 二十二日には、サマワ総合病院及びサマワ母子病院での活動に加えて、ヒドル総合病院において、自衛隊医官が医療器材の技術指導等を実施したところです。

 また、十六日以降、人道復興支援活動としての給水に支障のない範囲で、オランダ軍に対する給水を実施しております。

 第一次復興支援群にかわって今後現地で活動する第二次復興支援群は、逐次、クウェートへ向けて本邦を出国してきましたが、二十二日までに出国を完了しました。派遣部隊は、クウェートで所要の準備を行った後、順次、サマワ入りしているところであります。また、第一次復興支援群は、後任の部隊へ引き継ぎを行った上で、逐次、本邦に帰国しているところであります。

 サマワ周辺の現況に関し、現地時間二十七日午前二時過ぎ、サマワの市街地の方向からの爆発音を確認し、また、サマワ市内への何らかの砲弾の着弾があったことは確認しておりますが、事案の詳細については、オランダ軍及びイラク警察等治安当局が確認を行っております。なお、現地部隊には異常なしとの報告を受けております。

 また、現地時間二十日未明、航空自衛隊のC130機による人道復興支援活動で利用しておりますタリル空港付近に砲弾が着弾したとの事案につきましては、現地部隊等において、さまざまな情勢を踏まえ、安全を確認した上で、引き続きタリル空港を利用して空輸活動を実施しているところであります。

 イラクの情勢は、全般として予断を許さない状況が継続しており、また、依然として、サマワを含むムサンナ県についてはイラクの他の地域と比べれば比較的安定しているものの、今後もテロ等の可能性を否定することはできないと考えております。いずれにせよ、最近のサマワで生じている一連の事案も踏まえつつ、現地の情勢については、予断することなく、引き続き細心の注意を払ってまいります。

 最後に、航空自衛隊の部隊につきましては、五月十九日から五月二十六日までの間、陸自関連及び関係各国、関係機関等の物資、人員の輸送を計三回実施したところであります。

 引き続き、イラク国内の各飛行場の安全性や輸送ニーズ等を慎重に勘案しつつ、C130機による輸送を行ってまいります。

 以上でございます。

斉藤委員長 次に、外務省中東アフリカ局長堂道秀明君。

堂道政府参考人 イラクの治安情勢について御報告申し上げます。

 イラクの治安情勢につきましては、状況の緊迫化が見られ、引き続き予断を許さない状況が継続しております。

 ファルージャにおきましては、引き続き小康状態が継続しています。

 サドル師支持者への対応につきましては、米軍はサドル師の拘束または殺害並びにマフディ軍の解体を追求しており、二十二日夜、ナジャフ及びクーファにおいて連合軍とマフディ軍との間で戦闘が発生しマフディ軍兵士多数が死亡、二十五日夜から二十六日朝にかけて、ナジャフにおいて戦闘が発生しマフディ軍兵士多数が死亡する等、予断を許さない状況が続いております。カルバラでは、マフディ軍が市内から撤退し、撤退後はイラク警察が市内のパトロールに当たり、通常の生活が戻りつつある模様です。

 サマワにつきましては、ここ数日来、大きな事件はない模様ですが、最近のサマワで生じている一連の事案も踏まえつつ、現地の情勢については、予断することなく、引き続き十分に注意を払っていく考えであります。

 また、十九日、シリア国境付近で米軍による作戦が行われたことに関し、結婚式を誤爆したのではないかとの種々の報道がなされております。これに対し、米軍は、攻撃後、現場からは多くの外国人の旅券、現金、衛星電話装置、機関銃等の各種武器が発見されており、結婚式の最中といったものではない旨、また、引き続き調査を行っている旨、発言しております。

 政治プロセスに関する最近の動きは、以下のとおりであります。

 二十四日、ブッシュ大統領は、現在、ブラヒミ特別顧問が暫定政府の構成を決めるために協議を行っており、同顧問は今週中にも構成員を発表するであろう、同顧問を支持しており、CPAに対し同顧問を完全に支援するよう指示した等、述べました。

 国連選挙支援チームは、来年一月までの直接選挙実施に向け、選挙管理委員会選出、選挙法制定、政党法制定の三点を主要課題としておりますが、現在、約千八百名の候補から面接を通じて七名の選挙管理委員会メンバー選出に向けて努力が行われております。

 二十四日、安保理非公式協議が開催され、同協議において、米英より、占領の終了、今後の政治プロセス、国連の役割、多国籍軍の位置づけ、復興開発支援などの要素を含む新たな安保理決議案が提示されました。今後、安保理メンバー国間で協議が進められていくこととなります。

 イラク復興に関しましては、二十六日、イラク復興信託基金の第二回ドナー会合がドーハにおいて開催され、我が国が議長を務めました。また、二十日より二十八日まで、JICA事業として、ムサンナ県保健局長及びサマワ総合病院長を含む近郊四病院長が来日中であります。さらに、東京財団の招待により、二十四日より今月末まで、ムサンナ県のアルマイーリ師及びアルワイリ師などが来日中であります。

 以上でございます。

斉藤委員長 これにて説明は終了いたしました。

    ―――――――――――――

斉藤委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

斉藤委員長 速記を起こしてください。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。首藤信彦君。

首藤委員 民主党の首藤信彦です。

 イラクにおいて、私たちの同胞であり日本国を代表する外交官のすぐれた二人がティクリートの近くにおいて何者ともわからぬ者に銃撃され命を落とすという事件がございました。それが何ときのうや先週のことではなくもう半年前であるという、その厳粛な事実に愕然とせざるを得ない、そういうふうに思います。

 そして、ほぼ半年たったこのときに、私たちが常に、毎日毎日求めていた、外務省からのこの事件に関する包括的な報告が出てまいりました。実に半年かかってようやく、こんな、この程度のものが出てまいりました。私たちの国を代表する外交官の命というものはこの程度のものなのか。そして、我が国は、日本を代表するような人材の死に対して、半年もたたなければ報告書がつくれないのか。

 私は、この厳粛な事実に対して、政府、特に外務省に対して、この現実をしっかり受けとめていただいて、国民の負託を受けて外交を、その期待に沿った形で展開されることを切に切に望む次第でございます。

 さて、この五月十二日の報告書です。

 私は、この報告書を長く待ち望んでおりました。そして、私自身、そして民主党の同僚議員、そして日本の社会においても多くのジャーナリストや専門家が、これはきっとアメリカ軍の誤射による事故に相違ないということを主張してまいりました。それに対して、外務省は、決してそんなことはない、テロリストが攻撃したんです、何を見てもそれはテロリストの攻撃、弾が左側に当たっているからこれもテロリストの攻撃、窓ガラスに当たっているからテロリストの攻撃、そういうふうに何度も何度も言っておられたんです。

 しかし、この報告書を見て、私は、愕然とすると同時に、やはり私たちの主張が間違っていなかった、米軍誤射説を否定しているこの外務省の報告書こそ、米軍の誤射こそがこの事件の真相であったということを如実に物語っていると私はお伝えしたいと思います。

 さて、その前に、実は警察庁から、この事件に関してのさまざまなデータが出てまいりました。警察庁は、極めて遺憾なことに、現地調査をしておりません。私は、私の話を聞いている警察の専門家の多くも、恐らくじくじたる思いを持って私の話を聞いていると思います。何ゆえに、日本を代表する二人の外交官の死に対して現地調査すらされていなかったのか。どうして、警察が我が国の人命の損失に対してその真実を明らかにすることができないのか。

 私は、この点に関しても、警察庁、国家公安委員会、関係するすべての方の猛省を促したいと思います。

 さて、警察庁は、科学的警察、科学的捜査ということを常に言っておられました。そして、四月六日、「イラクにおける外務省職員殺害事件の捜査状況について」という二枚の報告書が国会に提出されました。

 これを読んでも、やはり何のことかわからない。一体、イラクから大変な苦労をして日本まで持ってきた、その事故に遭ったランドクルーザー、どことどこにどのように当たっているのか。もっとわかりやすい形で、そして、私たちが実際にその報告に間違いがないということが確認できるように、我々国会議員が国民を代表して実物を見るように、警察庁としても、国家公安委員会としても、そうした対応を外務省とともに進められることを切に期待いたします。

 さて、ここでいろいろなことを述べておられるわけですが、ここで述べられている、そしてまた、これまで、テロリストによってこの事件が起こされたという主張の多くは、カラシニコフという銃、すなわち、一家に一台と言われるぐらい、イラクの人々が成人男子なら必ず一家に一台ぐらい持っている、護身用に持っている、あるいは兵役で使っているという銃が恐らくこれに使われたんじゃないか。

 そういう銃はどこにでも隠しておけますし、持っていてもそれは一家に一台どうしても必要だということで言いわけが立つということで、多くの反占領軍の武装勢力、例えば、毎日毎日テレビで見るサドル派のマハディ軍とか、あるいは以前イラクの軍隊にいた人たちで今占領軍に対して攻撃を行っている人たち、そういう人たちが必ず持っている、あるいはまた、結婚式でもそれを祝砲のかわりに撃ち上げて、それがまた米軍に対する攻撃と目されてヘリコプターから攻撃を受けたりする、こういうような、よく使われている、本当に一般的にどこでもある銃、カラシニコフのAK47がこれに使われたんだということが事件が終わった直後からずっと言われてきたわけであります。

 そしてまた、この警察庁の言わんとしていることは、この事件というものが、道を通っていく、その実際に射撃をした車、そして私たちの外交官二人が乗っていた車、これに対して、ほぼ並走した段階あるいはまたやや後方に向けて銃撃が行われたということを繰り返し述べておられます。これは、この警察庁の数少ない、二枚の証拠のペーパーの中においても、これだけは確かだろうということで述べておられるわけであります。

 しかし、私は、このことに関しては大変疑問を持っております。

 例えば、この銃撃が地上から約一メートル、百センチのところから行われたという記述がございます。私も何度か、例えばイラクでそういうテロリストなんかが使う、そういうような車の助手席に乗って、果たして車高の高いランドクルーザーを普通の車高の低いセダン型から撃てるものだろうかと、いろいろな実験をやってみました。これは、最初から主張しているように、大変難しいということなんですね。

 これは、よく使われているカラシニコフのレプリカです。この銃が一番よく使われているわけですが、これは警察庁でもよく御存じのとおり、銃は肩に当てて撃つか、腰にためて撃つしかないんです。銃は物すごく反動が強いために、必ず肩に当てて撃つか、腰でためて撃つ以外は撃てないんです。御存じのとおりです。

 私たちは、NGOで、若者を危険なところに送ることがあります。そのときに、最後に言うことは、君、そんな危ないことはないけれども、万々が一のときということがあるよといって話すことがある。それは、万が一銃を向けられたら、相手の右側に回り込めということなんですよ。相手の右側に回り込めと。そのときにはもう終わりかもしれないけれども、相手の右側に回り込んでいたら生き残るチャンスもあるかもしれないということを、最後に冗談まじりで話すんです。そんなことはないよねと言いながら話すんです。

 何を言わんとしているか。これがカラシニコフです。この銃は、左手でここを押さえ、右肩に当てて撃つんです。腰でためてもいいんです。それ以外は撃てないんです。ここで撃つんです。ですから、正面を向いて委員長を撃つのは大変苦しい。真っ正面を向いて撃つのは苦しいんです。防衛庁長官、ちょうどいいところにおられる。こちらの方を撃つのも易しいんです。しかし、この銃を右に撃つのは非常に難しい。ここへ撃つのはもうできない。座って撃つとしたらもっと難しいということです。

 すなわち、何を言わんとしているかというと、カラシニコフあるいはAKファミリーと言われる銃を撃つときには、右側を撃つのは大変な苦労であるということですね。ですから、この銃で撃つとしたら、考えられるのは、体全体を窓から出して撃つということなんですよ。百二十キロとか百キロで突っ走っている車で果たしてそれができるかどうか、わかりません。しかし、可能性としてはある。

 しかし、そうすると、ここに込められた、百センチの水準ではなく、御存じのように、例えばベンツであれば、ガラスのへりまでが九十二から九十五ですよ。そこから体をのぞかせたら、当然のことながら、百二十、百三十のレベルなんです。したがって、このほぼ百というのは、これはそういうところから撃ったのではないということがおわかりになるということですね。

 ですから、ここに込められた、百センチというのは一体どういう可能性があるかということを私も考えてみました。そこで、二つの可能性をお示ししたい。

 一つは、銃撃が始まったときに、撃たれた側は驚いて急に右に切るわけですね。路肩に切るわけです。そうすると、路肩に当然のことながら片側を落とすわけですよ。そうすると、車は当然のことながら傾く。したがって、高いところから撃っても実は下から一メートルのところに当たるということであります。これが仮説の一です。

 仮説の二。この銃でどうやったら何とか一メートルのところ、百センチのところに撃てるか。いろいろな車の上に乗っかって試してみました。ピックアップの上からもやってみました。ならないんです。どうしてもならないんです。それは、百三十とか百四十とか百二十にはなっても、百にはならないんです。私は幾つも考えて、どうしたら百になるかと思って、ふっと考えてみました。実は、これが百なんですよ、これが。この位置でこう撃つと百なんですよ、腰だめで撃ったら。ですから、この銃がほぼ一メートルのところに撃ったというと、それは、とまっている車にだれかが地上から立って腰だめで撃った可能性がある。

 この二つの可能性しかないと思いますが、専門家の御意見はいかがでしょうか。

瀬川政府参考人 お答えいたします。

 私どもの方で得られました車両等に基づきまして鑑定を実施いたしましたのは、弾痕がどういった部分にあるのか、被害の状況はどうなのか、また、委員の御指摘の関係でいいますと、弾丸の射入角が垂直方向、水平方向にどういう角度で撃たれているのかということの調査結果を中心にまとめた、その事実につきまして鑑定結果という形で報告書として国会にも御報告をさせていただいたというものでございます。

 したがいまして、その撃たれたときの状況がどういう状況だったのかということについて、私どもとして、こういう状況で犯行が行われたということを、警察が得られた証拠としては、これを判断する材料は残念ながら持ち合わせていないということでございます。

首藤委員 それでは、政府参考人にもう一度お聞きします。

 先ほど私が示したように、車の中から右の側方、あるいはまして右の後方に向かって、どういう形で、どういう状況で、どういう銃だったら撃てるとお思いでしょうか。それは科学的捜査として当然そのことは実験し、あるいは考察していると思いますが、いかがでしょうか。

瀬川政府参考人 お答えいたします。

 私どもとして、いわば科学的にといいますか、きちっと申し上げられますのは、先ほど御答弁申し上げたような状況についてでございまして、いわば仮説といいますか、仮定といいますか、いろいろなことがそれは考えられるだろうかと思うんですけれども、そういうことについて、こういうことはあり得る、こういうことはあり得ないというようなことをこの状況で申し上げるというのは、いろいろな誤解を生むおそれもございますので、これは差し控えさせていただきたいというふうに思います。

首藤委員 警察として、こういうテレビが入っている公開の場で言うことは難しい、その立場はわかる。しかし、やはり、日本にだってカラシニコフはあります。同じような状況で、どうして、この銃で果たして側方あるいは後方に向かって撃てるのか、あるいは、後方に向かって車高の低い車からカンガルーバンパーの上を通してフロントガラスに撃てるのか、これを科学的に立証して、それが可能なのか不可能なのかを科学的捜査の中で明らかにしていく必要が当然あるんだ、そういうふうに私は思っております。

 さて、外務省の報告に戻りたいと思います。

 私はこの報告を本当に待っておりました。この報告で初めて、ああ、そうだろうなと思ったのは幾つもございます。

 例えば、この事件が発生した十一月二十九日の直後に、翌日ですか、大使館は、上村代理大使は、みずから行けないということで、まず、専門家をすぐ派遣している。専門家は、当然、事故現場に行き、そこで、人にいろいろな質問をしている。聴取している。もちろん、警察にも行き、病院にも行き、情報を集めています。また、第二に、それでは十分ではないということで、数日たってから、同じようにイラクの専門家を現地に派遣して調査している。そしてさらに、ことしになってから、二月二十九日ですか、上村代理大使がみずから行ってその調査をしている。

 そこで、外務省にお聞きしたい。ぜひ、この三つのレポート、三つのレポートには一体何が書いてあって、何が不足したために二度も送って、何が不足したために三度送って、その三つのレポートには何が書いてあったのかをお聞きしたいと思います。外務大臣、いかがでしょうか。

堂道政府参考人 お答え申し上げます。

 外務省が、五月十二日に、この事件の状況や経緯などについて発表しておりますけれども、これは、私どもが派遣したイラク人の専門家、二回にわたる調査でございますけれども、それと上村臨時大使による調査なども踏まえてこれを書いたものであります。そこで出てきた事実については、捜査に支障がない限りできる限り御説明するという観点からすべて網羅したものであります。

 別途、直接、報告書そのものを出してほしいという御要望かと思いますけれども、この点につきましては、報告書の公表が今後の捜査に支障を及ぼすおそれがあるということと、また、現地の米軍や現地イラク警察を含む関係者との間で必ずしも公表を前提とせずそのやりとりを行ってきたこともございまして、その情報の提供を得た相手方との関係からも、公表については差し控えたいということについては前も御答弁しているとおりであります。

首藤委員 いや、これは、委員長、そして理事の皆さん、ぜひ聞いてください。これは、我が国の貴重な貴重な専門家が理由もなく殺され、そして、その真犯人も捕まらない。そして、今、捜査に支障があると。半年たって何ですか。これからどういう新しい情報が出てきますか。その半年の間に、もしそれをやったテロリストがいて、テロリストが一生懸命歩いて国境まで逃げようとするから、捕まえなきゃいけないから半年かかってしまった、そういうことですか。

 このことは一体どういう事実なのか。これはぜひ、秘密会でも結構でございますから、このレポートにある、外務省が公式に出された、外務省のホームページにも載っている、外務省が責任を持って国民に示しているこの根拠を、一、事件直後のレポート、二、数日後のレポート、三、アメリカ軍の調査レポート、四、上村臨時大使のレポート、この四つのレポートを、委員全員とは申しません、理事の中でもしっかり見て、一体、その四つのレポートとここの外務省が国民に示しているものに差異がないか、瑕疵がないか、これをしっかりと国民に担保していただきたい。それこそがこの委員会の使命である。それができないんだったら委員会など意味がない。

 ですから、ぜひこの点を理事会で討議していただき、また、実現していただきたいと思います。こんなことができなければ国民は国会を許さない。委員長、いかがですか。

斉藤委員長 理事会で協議します。

首藤委員 この報告書、驚くことがありますが、重要なことに関して触れてないんですね。例えば、重要なことというのは、警察が直後に見た後、薬きょうがなかった。どうして薬きょうがないのか。この銃は、ここから、右側から薬きょうを排出するんですよ。それで、パンパンパンパンと物すごい勢いで飛ぶんですよ。これは毎日テレビでごらんのとおりです。どうしてこの薬きょうについてこの報告書は述べてないのか、大変に不思議なところであります。

 さらに、証言において、おかしな証言がたくさんあります。例えば、この車、襲撃した車がSUVである、スポーツ・ユーティリティー・ビークル、こういう話が出ているわけですが、一体、こんなのがどうしてわかるのか。

 そして、私たちが本当に驚いてしまったのは、これは米軍からの情報だということになっていますが、この銃が今まで言われてきたようなこうしたカラシニコフあるいはこのファミリーではなくてRPKである、こういう情報が出てきました。これはこの半年たって初めて出てきた情報なんです。RPKというのは、このカラシニコフをモデルにして、銃身を二十センチぐらい長くして、そして、二脚をつけて、台じりを変えたのがRPKという軽機関銃です。

 なぜこれが出てきたか。それは明らかです。

 警察が発表していますように、この被害に遭ったランドクルーザーには三十数発の弾痕がある。これは、撃った弾がすべて当たるわけじゃありませんから、例えば五〇%が当たるとしても、七十数発が撃たれている。それをカラシニコフで、ここに弾倉がありますが、これは三十発入る。実際に使っているのは二十発程度しか入らないですよ。そうすると、ランドクルーザーに対して四丁ぐらいのカラシニコフで撃たないと、あれだけの弾痕にはならないんです。

 だから、これは主張していたように、実は、このカラシニコフのAK47ではなくて、このランドクルーザーは軽機関銃で撃たれたということなんです。ですから、実際にこの犯人がだれかをやるときに、皆さんにお配りしている、この真ん中のRPKというこの機関銃しか思い浮かばなかったわけであります。

 私は、この説には大変疑問を持っています。この型は必ずしもイラクでは多くない。アフガニスタンでも多くないんです。軽機関銃で一番使われているのは、この一番下にある、アメリカ軍のM二四〇Bです。ですから、私は、このこともまた、実はアメリカのハンビーの固定銃架から軽機関銃によって撃たれた被害であるということを示すんだ、そういうふうに思っているんですね。

 そしてまた、ここに、同じようにアメリカ側から提供されたという情報の中に、撃った人間がヘルメットをかぶっていたというのがあります。しかも、ケブラータイプのヘルメットとあります。これは、いわゆる鉄かぶとではなくて、ガラス繊維で補強したり、そうした防弾装置を持った新しいヘルメットですよ。長官、そうですよね。日本の自衛隊もそうですよね。ケブラータイプのヘルメットがどうしてイラクにあるのか。そして、テロリストがどうしてケブラータイプのヘルメットをかぶっているのか。

 テロリストというのは、常に人々の間に隠れて行動するんですよ。日ごろは普通のビジネスマンのような格好、あるいは普通の家族のような格好をしながら撃つわけですよ。ところが、道路を通っているときに、しかも、この道路、幹線道路は何十人、何百人という米軍通報者がいて見張っている。こういうところにどうしてヘルメットをかぶったテロリストが存在できるのか。ケブラーのこれをかぶっているのは、イラクにおいては米軍しかないんですよ。ですから、このことも実は米軍説であるということを保証しているわけであります。

 同じように、ここで子供の証言が出てきます。ここに幾つかの証言が出てくるわけですが、これは十三ページでしたか、ここの十三ページにAからHまでの証言者が出てきます。中には、「俺は何も知らない。」なぜこういう人が証言者になっているかわかりませんが、おれは知らない、あいつは知っているとか、そういう人をたくさん並べてありますが、この中で、見たということを言っている人はいるんですが、それが子供なんですが、子供は、米軍が撃ったと言っているわけですよ。米軍が撃ったとだけ書いてあればそれは困るのかもしれませんが、そこはいろいろな追加的な情報があって、後ろに大人がいて子供につねって言わせた、こういうことまで書いてあるんですね。そんなのだったら、科学的な捜査にならないじゃないですか。そんなのだったら、報告書にならないじゃないですか。

 ですから、子供の言っているのは真実であり、実は、別のテレビ番組の中でも、事件を見た子供というテレビ番組もあったわけですね。ですから、この証言というのは大変信憑性があるわけです。

 そこのところで米軍を見たという情報は、実は、数日後ではなく事件直後から出ているんです。これは十四ページの脚注にある。道路わきの食料品スタンドのハッサン・フセインさん、この方が、実は米軍の車列がほぼ同時に通り過ぎたということを何度も繰り返し証言されているんですよ。

 では、外務省にお聞きします。このハッサン・フセインさんというのは、十三ページに表記されているAからHまでの証言者のどの方に相当するわけですか。

堂道政府参考人 お答え申し上げます。

 外務省としての調査で、これらのいわゆる証言といいますか聞き込み情報でございますけれども、これについては、我が方が行った調査の中で、現場付近にいたと称する者で我が方関係者が直接に具体的に話を聞くことができた者については、AからHとしてすべて言及しております。

 なお、このAからHの中のだれがだれであるかということにつきましては、これも報告書の中に書いてございますけれども、犯罪の予防とかあるいは鎮圧、あるいは今後の捜査に支障を及ぼすおそれがあるということから、特定し公にすることについては控えさせていただきたいと思います。

 報告書の中でも書いてございますけれども、現地の調査において、これはイラク人の専門家もそうでしたけれども、かなり危険な状況があるということでございます。その中で調査を行っているわけでございまして、特定の人がだれだということがわかることについてはやはり差し控えたいと思いますので、御理解いただきたいと思います。

首藤委員 それでは、特定しないでいいです。このハッサン・フセインさんというのは、AからHの中におられますか、おられませんか。もしおられなかったら、どうしてハッサン・フセインさんをこのAからHまでから抜いて脚注に回したんでしょうか。いかがでしょうか。

堂道政府参考人 お答え申し上げます。

 このハッサン・フセインさんといいますのは、新聞報道で出てきた人でございまして、委員御承知のとおり、この事件が起きた直後、つまり、その被害車両の直後に米軍が通っていったということを証言したとされている人であります。それにつきましては、私どもも、当然、関心を持って、その人と見られる人については証言を得るべく努力をしております。

 この中で、AからHということについて特定をすることはできないということについては申し上げたとおりでございますが、現場の地域にいる住民については、すべて、我々が接触できる限り接触して話を聞いたということだけ申し上げたいと思います。

首藤委員 全然答えていないよね。どうしてそういうのをごまかすのか。

 だから、もう一度、委員長にお願いします。

 この報告書に込められた、インタビューした記事も、内容をきっちりと私たちに公開していただきたい。それでなければ、この点はもう限りなく米軍誤射説であるということを、私は、きょうの委員会、そしてこのレポートをもって確定した、そういうふうに思っております。

 米軍あるいは米軍指揮下の軍事組織によって行われた可能性もある。確かに、ファルージャなどで民間人が殺された、これはブラックウオーターという、アメリカの民間の軍事会社の方なんですけれども、こういう方がもう実際一万人ぐらいイラクに入っておられる。そういうことを考えると、その場合、可能性すらあると思います。

 いずれにせよ、このことに関しては、国連決議上、現地の治安に責任を持つアメリカ軍の指揮下にあったわけでありますから、この問題に関して、私は、日本の財産、そして日本の若者の生命が失われたということに関して、アメリカ政府及びアメリカ軍に対して、事実の徹底的な調査とその公開、そして、その責任がアメリカ軍にあった場合は、その損害賠償を当然のことながら求めたいと思います。

 以上で終わります。

斉藤委員長 次に、中川正春君。

中川(正)委員 きょうは、今さまざまに進展しています問題をトータルで整理していきたいというふうに思うんですが、その前に、ちょっと通告が遅かったので恐縮だったんですけれども、一つ確認をしていきたいというふうに思います。

 日本でもアルカイーダの系列のテロ容疑者、ヒム容疑者あるいはデュモン容疑者、これも明らかになって、潜伏をしていたということなんですが、その辺がはっきりとしてまいりました。

 これは、公安の方で、今回の事件といいますか、この容疑者の背景と、具体的にどのように日本でのテロが起きる可能性があるのかというところも含めて、説明をまず冒頭いただきたいと思います。

大泉政府参考人 今般のアルカイダ活動家逮捕という件につきまして、お答え申し上げます。

 本件に関しましては、私ども公安調査庁におきましても、本年の早い時期から、テロのネットワーク解明の観点に立ちまして、関係機関から情報を入手いたしまして、これに基づいて当該人物の日本国内における動向の把握に努めてまいっておりますが、今お尋ねのように、当庁がどのような情報を把握しているかという点についてお答えいたしますことは、当庁の今後の業務遂行に支障を来すおそれがあり、現在、警察当局において捜査中ということでもございますので、答弁は差し控えさせていただきたいと存じます。

中川(正)委員 いいですか、今、国民はここのところを一番知りたいんですよ。これは、自衛隊が派遣されているということに関連をした犯行声明というか犯行予告声明、日本もねらいますよという声明があるだけに、実際、こういう具体的な形で犯人が抽出されてきたという事実に対して、これをどう解釈したらいいのかという、その解釈ができる立場にあるのはあなたなんですよ。

 それで、さっきの答弁というのは対照的なんです。アメリカは、この二十六日、アシュクロフト米司法長官がみずから、数カ月内にテロが起きる可能性があるから、すべての組織に対して、あるいは国民に対しても、そうした心の準備といわゆるまさかのときのための態勢に入っていくようにと。これが私は正しいんだと思うんですよ。

 さっきのような答弁で、何のためにあなたはあるんだということなんですね。もう一回答えてください。

大泉政府参考人 お答え申し上げます。

 国際テロの我が国における危険という問題についてのお尋ねでございます。

 私どもとしましては、昨今の国際テロ組織の動向に照らしますと、我が国が米国と同盟関係にあること、あるいは、繰り返しアルカイダやその関連組織が我が国を名指しする、攻撃対象として挙げていることなど、またさらに、国際テロ組織の構成員が我が国への浸透を図っているという情報は、今回に限らず、私どもとしても把握しておりましたところであり、国際テロの脅威が我が国にとって現実の脅威になっているということを強く認識して、これに対応する必要があるものと考えているところでございます。

中川(正)委員 それでは答えになっていない。では、具体的に質問していきます。

 新聞報道で言われているように、今回の潜伏というのは、資金調達あるいはマネーロンダリングを、日本の国内を経由して、あるいは日本の国内でやるために潜伏していたものと解釈しているのか、それとも、テロの直接行動というのを、日本の中に組織をつくったり、あるいはそうした目的を持って潜伏していたのか、どちらと解釈しているんですか。

大泉政府参考人 今先生が御指摘のような可能性はいずれも否定できないものというふうに考えているところでございます。

中川(正)委員 両方とも可能性があるということであれば、それなりの情報をやはり国民に知らせていく、その義務は公安もあると思うんですよ。

 それと同時に、この容疑者というのは、八回にわたって日本を出たり入ったりしている。これは入管をすり抜けているわけであります。そういう状況の中から考えていくと、もう一つはっきりさせてもらいたいのは、可能性として、この容疑者、あるいはこの系統一つじゃなくて、既に日本の中には、複数人、さまざまな形でこうした浸透が既に図られているというふうに見るのが自然なんだろうと私は思うんです。その可能性はあるんですか、ないんですか。公安から見て、あるいはその情報の背後から見て、どうですか。

斉藤委員長 大泉長官、しっかり答えてください。

大泉政府参考人 お答え申し上げます。

 先生が御指摘のように、本件に限らず、また、かつても、そういう事例を私どもとして把握できたことがございますし、現在でも、潜伏している者がいる可能性はあるというふうに認識しております。

中川(正)委員 そういう事実をもって、国民に対しては、公安調査庁としてはどういうふうに説明責任、情報開示、あるいは、それに対する体制を、アラートするために知らしめるような形態を考えているんですか。今のような話で、いや、何もしゃべらないという体制なんですか。そこはトータルでどういうふうに考えているんですか。このままですか。

大泉政府参考人 先生が御指摘のように、国民にいろいろなことをお知らせするという必要性があることは私ども承知しております。

 国際テロの動向につきましては、私どもが世界的なテロの展開状況等について調査を行っており、それにつきましては、「国際テロリズム要覧」というような形でお示ししていることもございます。

 また、先般の私どもの会議で、最近の日本に対する脅威の状況というような問題について、私ども職員に調査の重点というようなことで知らしめておく必要があり、そのことはまた、その機会を通じて国民におわかりいただこうということから、先ほどの、現実の脅威になっていること、また、あの時点では、私ども準備していた時点では、今回のデュモン被疑者の関係のことは表に出ていなかった、そういう段階であったかと思いますけれども、私ども、そういう情報があることは承知しておりましたので、そのことについても、さっきちょっと申し上げたように、国際テロ組織の浸透を図っていることがうかがわれる情報があるということを御説明し、また、スペインにおいて発生した列車爆破テロというようなことも、我が国をねらって政治的効果を意図してテロをしかけてくる可能性もあることなどについて御説明をした、公開をしたところでございます。

中川(正)委員 どこでどういうふうに公開したんですか。(発言する者あり)初めて聞いたと与党の理事も言っていますよ。

 もっと言えば、もっと具体的な話でやはりここで説明しなきゃいけない。

 だから、例えばアメリカで、長官が、数カ月以内にテロの起こる可能性がある、ここまではっきり言っているんですよね。日本の場合、こうしたクライテリア、同じような基準でいった場合に、何カ月以内でテロが起こる可能性があって、特にどういう場所でそれが想定されるのかというふうなことをどういうふうに国民に説明するんですか。

大泉政府参考人 現在、そのような具体的な形でお答えできる準備ができておりませんが、現実的な脅威として警戒をしていかなきゃいけないということにつきまして、先般の会議で、その会議には報道機関の方も来ておられ、また、それが若干のマスメディアで報道されたところでございますけれども、そういうような形でお示ししようとしているところでございます。

中川(正)委員 いや、そういう会議で内向きにやっているという話ではだめなんですよ。ちゃんと国民に対して説明責任を果たさなきゃいけない。そういうシステムをしいてください。それで、我々に、私たちの理事会に対してそうしたさっきのような基準ではっきりとまず説明する。この席でもいい、理事会でもいい、説明するという約束をしてください。

大泉政府参考人 検討させていただきたいと思います。

中川(正)委員 委員長、これは、速やかに委員会の意思として一遍まとめていただいて、そこのところの情報開示をはっきりと求めるという体制に入っていただきたいというふうに思います。検討してください。

斉藤委員長 理事会で諮ります。

中川(正)委員 はい、そこを一遍話し合っていきましょう。

 それでは、次に進んでいきたいというふうに思います。

 国連決議の準備が進みつつあって、その中でさまざまな議論が出ていますが、まず一度整理したいのはイラク統治の移行プロセス、具体的にブラヒミ提案というのがありますけれども、そのブラヒミ提案も含めて、現実的に、今、シスターニ師のあるべき姿、あるいは、その状況の中でアメリカとの関係で動いている姿、これを眺めて、具体的にどういうふうに動いていくというふうに分析しているのか、外務省としてどういうふうな見方をしているのか、その説明をまずしてください。

川口国務大臣 御質問の御趣旨をちょっと十分に理解したかどうかわかりませんけれども、基本的な今の物事の動き方という意味では、これは基本法にのっとって物事が進むということでして、いずれにしても、六月三十日に、主権が、あるいは統治権がイラク側に移るということになっているわけです。その時点で、占領は終わり、CPAは消滅し、イラク暫定政権ができるということであります。

 それで、今、ブラヒミ特別顧問がなさっていらっしゃることというのは、そのイラクの暫定政権を担うトップの人たち、これを、イラクの人たちと話をしながら、これはシーア派のシスターニさんだけではありませんで、ほかの大勢の人と話をしながら名前を整理をしているというか、アイデンティファイしているというか、そういう過程に今あるわけです。

 それで、それがいつごろできるかということ、名前が出てくるかということですけれども、これはいろいろな見方があると思いますけれども、今、割に聞こえてくる話というのは、六月のできるだけ早い時期ということをみんな考えているのではないかというふうに思います。ただ、本当にそうなるかどうかというのは、今後のいろいろな動きにもよるかというふうに思います。

 それで、その後、その後といいますか、今同時に動いていることは、国連の決議の案が英米によって二十四日に提案をされたということでございまして、それについて非公式な形での議論が行われている。その中で幾つかの点がイシューになっているということであろうかと思います。

 そのイシューになっていることというのは、例えば、イラクの暫定政権と多国籍軍の関係だとか、それから、どの程度の統治権をイラクが持つことになるのかとか、そういったことを中心に議論が今後展開をしていく。その中で今申し上げたようなことについてどういう答えが出てくるかということは、これからまさに議論をされていくことであって、今の時点で予測をきちんとすることは非常に難しいということだと思います。

 それで、その後、暫定政権ができて、遅くとも来年の一月末までに選挙が行われて移行政権ができるということがシナリオになって、それをベースに今、物事が動いているということであろうかと思います。

中川(正)委員 今、大臣は客観的に事の動きを説明されましたけれども、その中で、特に国連の米英案と、それから、フランス、ドイツあるいはロシア、中国も新しい提案が出てきましたが、それぞれある。そのスタンスに対して、日本政府は今どういう立場にあるんですか。論点を整理しながら、日本政府の立場を説明してください。

川口国務大臣 まず、この英米による決議案が出される過程で、日本として、安保理決議案の要素として、これから申し上げるような要素が含まれることが望ましいということは伝えてきております。

 それは、例えばどういうことかといいますと、占領の終了とイラクの暫定政府による統治権限の引き受けについて明確に規定をすること。それから、イラクの国民の努力及びその努力の支援のための国際社会の協力を改めて呼びかけること。三番目に、国連が政治プロセスの支援において中心的な役割を果たすべきである。治安状況の改善とともに、人道復興支援活動をさらに促進すべきということを明確に規定すべきである。それから四番目に、イラクの安全及び安定を維持するために多国籍軍の権限、これは一五一一に規定をされているわけですが、それを再確認することが要素として入るということが重要であるということを言っているわけでございます。

 今、本当に議論が始まったばかりで、議論の内容についてプレスで、フランスあるいはイギリス、アメリカといったところが、どういうことだということをいろいろ議論していますけれども、まさにこれから、そういった議論の中でいろいろな妥協あるいは考え方の整理が行われていくということになるのではないかと思います。

中川(正)委員 もっと具体的に聞いていきます。

 一つは、暫定政権に対して、アメリカは顧問団の派遣を二百人の規模から考えている。例えば、国防省二十人、内務省二十七人。そういう経緯の中で、実質的に、ほかの国からの顧問団というのを前提にせずに、アメリカが九〇%以上という形でコントロールしていこうとしている。このアメリカの意思に対して、日本はどういうスタンスをとっているかということ。

 それから、多国籍軍に対して、アメリカの指揮権というものを放棄しないという前提で多国籍軍を組もうとしている。そうなると、これは日本の自衛隊との関係も含めて、この先どうなるのかという整理もしなきゃいけない。それを前提にしたときに、日本としてはこの枠組み、いわゆるアメリカが多国籍軍を前提にした中でも指揮権を持ち続けるということに対して、日本のスタンスはどうなっているのか。あるいは、現実にそれが起こった場合に自衛隊をどう整理していくのか。

 そのことをまず二つ聞かせてもらいたいと思います。

川口国務大臣 それぞれ大変に根本的なことでございまして、きちんと、できる限りお話をさせていただきたいと思います。

 まず、アドバイザーの件でございますけれども、これは、まずその前提として、六月三十日にCPAはなくなる、そしてイラクの暫定政府ができるということになるわけでございまして、イラクの暫定政府がアドバイザーをどのように考えるかということが基本であるというふうに考えております。

 それで、その点について言いますと、現在の時点で、イラク側の省庁、ここからアドバイザーの派遣要請ということが既に出てきております。それで、米国は、これを米国だけで手当てするということではなくて、各国が派遣をしてほしいという方針であると考えているというふうに理解をしています。

 ただ、先ほど申しましたように、いろいろなことが今動いているということで、確定的に、これはこうなるということを申し上げるということは非常に難しいわけです。

 我が国としては、それについては、先ほど申しましたように、これは占領終了ということでありますから、イラクは、イラクの暫定政権がどのような形でどのようなアドバイザーを欲しいかということを考えて、国際社会にそれを働きかけるということであるというふうに思っております。これはまさに、六月の下旬以降、イラクが全部自分で決定をしていくということでありますから、そういうことについて、日本もそう思っていますし、そういうことだと思います。

 それで、次の御質問が、多国籍軍とアメリカの指揮ということであるかと思いますけれども、これは、G8の外相会談の後でパウエル長官がたしか記者会見でおっしゃっていたと思いますけれども、多国籍軍の中で、米軍は今、引き続き非常に大きな数がいるわけですから、米軍が主たる、その部分の大きな部分を、人数の上からでも少なくとも当面の間、占めるということであって、その指揮は米国人がとるということを言われたというふうに思います。それで、G8の外相会談の議論を思い返しているわけですけれども、そのことについて何らの反対の意見は出なかったというふうに記憶をいたしております。

 ただ、多国籍軍の位置づけというのがどうなるのかということは、これはまさに安保理の場で決議案を議論する過程で決まっていくということで、はっきり言えば、今、何も決まっていないという状況であるわけです。

 それで、我が国の自衛隊ということでいいますと、これはまさに、その多国籍軍との関係では、多国籍軍がどういう性格のものであるかということがはっきりわかりませんと多国籍軍と自衛隊の関係というのはわからない、申し上げることはできないということが一番正直にお答えをしたところであるわけですけれども、当然、我が国は憲法の制約下にありますから、その制約のもとで動く、これは申し上げるまでもないことであると思います。

 いずれにしても、自衛隊はイラクに引き続きいるということであれば、これはイラクの暫定政府の何らかの形での同意ということを確認する必要があるということであることは今まで申し上げているとおりであります。

中川(正)委員 時間が限られているので、残念なんですが、ちょっとはしょって聞いていきます。

 こういう新しい枠組みあるいは政治的プロセスで、国連が前に出ながら、あるいは形の上で国連と暫定政権の中でやっていく体制ができて、では、治安がおさまっていくか、あるいはテロの活動というのはそのことをもっておさまっていくのかというと、私はそうではないんだろうと思うんです。

 恐らく、今アメリカ国内の議論を見ていましても、アメリカでさえ撤退論が出てきております。そんな中で、日本の今の自衛隊のあり方というのも、いわゆる撤退シナリオも前提にした形、こういう条件が整えば撤退を考えていくというところまで議論をしておかないと、これは、このままでいくと、ずるずるずるずると、アメリカの顔を立てることだけに自衛隊が犠牲になっていくというようなシナリオになっていく可能性があると思うんです。

 そういう意味から、今回の、今の駐留のあり方と、駐留というより、いわゆる人道支援の自衛隊のあり方と、それから、新しい枠組みができたときにどういう条件を前提にして続けるのか、それともやめるのか。あるいは、多国籍軍という形になると、後方支援、そういう話も含めた議論になるんだろうと思うんですが、そこのところを今、これはどちらに聞くのがいいのかわかりませんが、防衛庁長官になるのかな、どういう想定をしながら、まず、撤退シナリオはどういう想定の中で考えていくか。あるいは、継続していくということであるとすれば、何を大義にして、どういう中身で自衛隊が新しい枠組みの中で継続をしていこうとしているのか。その二つにわたって答弁をいただきたいと思うんです。

石破国務大臣 撤退シナリオというのは、一番いいのは、もうイラクの治安が回復し、自衛隊がいなくても民生が安定をし、水も供給され、学校もよくなり、医療も提供されるというのが一番いい撤退シナリオでございます。

 ただ、多分、委員が想定しておられるのはそういうお話ではなくて、そうじゃなかった場合どうなんだということでございますが、法の目的を達成することができなくなる、そういうような状況になったとき、それは戦闘地域ということもございましょう、あるいは危険が高まったということもございましょう、いろいろなことが総合的に勘案をされて、法に定められたような条件を満たさなくなったような場合には、それは、撤退ということはこの法律に基づいても起こり得ることだと考えております。ただ、現在の時点において撤退ということを頭に置いて何か議論をしているかといえば、そういうことではございません。

 他方、本院ではなくて参議院であったかと思いますが、撤退するときというのは非常に難しいんだ、進むときよりも難しいんだという御指摘はよくわかっておるつもりでございます。いずれにいたしましても、私どもとして、あらゆるケースは想定しております。

 先般もサマワの宗教指導者の方々が来られました。あるいは病院長も来られました。皆さん方が口々におっしゃるのは、サマワは平和な町である、自衛隊の人道支援には本当に感謝をしている、これから先も多くの仕事をしてもらいたい、そして、現在治安を悪くしているのはサマワの人々ではなくて外から入ってきた人間であると。そういうようなことを、サマワの宗教指導者、自衛隊を守るべしというファトワを出した人たち、そういう人たちが言っているということも考え合わせてみたときに、決して楽観するわけではございませんけれども、撤退シナリオというものを今、具体的に頭に描いておるわけではございません。

 それから、後段の御指摘の多国籍軍との関係はどうなるかということですが、先ほど来外務大臣が答弁をされておられますとおり、今、どういう形になるのか、あるいは国連決議一五一一との関係がどうなるのか、国連において議論がなされておるところでございます。

 国内法あるいは国際法との関係で、自衛隊が行動を続ける場合にどのような形になるかということ、これは、国内においてのみならず、国連におきましてもきちんとした議論がなされる。私どもとしては、きちんとした根拠のもとに、このまま人道支援を続けるということが必要なのではないかと現在判断をしておるところでございます。

中川(正)委員 時間が来ましたので、一つだけ指摘をしておきたいと思います。

 なぜ撤退シナリオと言うかというと、どうもこのままでいくと、アメリカにもう日本はここまで危険になってきたからいいよということを言ってもらうまで、あるいは、アメリカ自体がもうこの状況でやっていられないから撤退するよという話が出るまで日本は撤退できない、そういうことなんだと思うんですよ。こんなばかな話はない。

 だから、やはり客観的な基準の中でそれを示すということ、それを事前に持っているということ、そうしたバロメーターを持っているということ、これが撤退するときの基本だというふうに私は思うんです。でないと、撤退できない。だから、そのところをしっかりと示す必要がありますよという指摘をさせてもらったということなんです。

 以上、またこれは続けたいというふうに思います。

斉藤委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭です。

 六月三十日をもってイラクに暫定政権をつくるとされまして、イラクをめぐる新たな国連決議案についての議論が行われております。

 そこで、外務大臣に基本的なことをお聞きしたい。現在、イラクの主権はだれが握っているのでしょうか。

川口国務大臣 難しい御質問ですけれども、主権という言葉の意味をどう考えるかということですけれども、非常に厳密に考えれば、主権はイラクに存在をする、それを行使する権限、これを今はイラク人が持っていないということであろうかと思います。

佐々木(憲)委員 主権はイラクにあるが行使する権限は持っていないということは、実態的にはイラクにはない、こういうことですか。

川口国務大臣 ですから、厳密な意味ではというふうに申し上げたわけでございますけれども、イラクを統治する権限、統治するすべての権限という意味に現実的には主権という言葉は使われている、使われる場合もあるかと思います。

佐々木(憲)委員 ブッシュ大統領は、暫定政権の成立によりまして完全な主権を確立すると言っていますし、あるいは、昨日のテレビを見ていますと、完全かつ本物の主権移譲と言っているわけですね。

 完全な主権というのは、すべての決定権をイラク暫定政府が持つということだと思うんですが、そういうことですか。

川口国務大臣 ブッシュ大統領がどのような主権の定義を使っておっしゃっているかということは、私、ちょっとよくわかりませんけれども、いずれにしても、CPAはなくなる、占領軍は存在しなくなる、そういうことをおっしゃっていらっしゃるんだと思います。

佐々木(憲)委員 現在、国連で新たな決議案が議論されておりまして、報道では、アメリカの決議案によると、六月三十日以後も多国籍軍を駐留させるというわけであります。

 しかし、外国の軍隊である多国籍軍をこれからも駐留させるかどうか、その決定権というのは、完全な主権を持つと言われているイラク暫定政府にあると思うんですが、それはどうでしょうか。

川口国務大臣 今まさにその点についていろいろな議論が行われているということであるかと思います。安保理決議についても案が出ているということでありまして、そしてその前に、大統領、首相といったような人たちを、ブラヒミさんが今、人を選んでいるという過程になっているわけでございまして、そのような過程と、国連決議でその部分をどのようにエンドースするかということが一つの議論の争点であるかというふうに思います。

佐々木(憲)委員 それは、今行われている議論の内容はいろいろあると思いますが、私がお聞きしたいのは、日本政府はどういう立場なのかということです。つまり、多国籍軍を駐留させるかどうか、その決定権というものはつくられるイラク暫定政権にある、そういうふうな立場で見ておられるのか。

川口国務大臣 基本的にはそういうことであるかと思います。

 イラクの暫定政権が仮に多国籍軍に出ていってくれと言ったら、これは外相会議の後の記者会見でもございましたけれども、我々はいなくなるということでありますので、そういう意味ではおっしゃるようなことかなと思います。

佐々木(憲)委員 それでは、具体的に聞きたいんですが、多国籍軍が駐留しているという場合を想定して、その多国籍軍と暫定政府の方針が違った場合、どちらに決定権がありますか。

川口国務大臣 これは、まさに今議論されている問題の一つであるというふうに思っております。さまざまな議論が安保理の中で行われている、何らかの形で具体的に決まったということではないというふうに考えます。

佐々木(憲)委員 川口外務大臣はどちらにあるべきだと思われますか。

川口国務大臣 これは、一概に抽象的に申し上げるということは難しいと思います。例えば、どういうことについて議論がなされているか、どういうことについて方針が違うかということも議論されなければいけないというふうに思っております。

佐々木(憲)委員 では、具体的に聞きましょう。

 暫定政権は、例えば米軍のある作戦が行われるという場合に拒否ができるかどうか。例えば、米軍の指揮権は実際に掃討作戦を行う場合に発動されていくわけですけれども、その掃討作戦について暫定政府が、それはやめてくれ、こういうことを言う場合があり得る。その場合、暫定政府の側に決定権があるというふうに日本政府としては考えているのか。それとも、そうではなくて、米軍に決定権があるんだ、米国に指揮権があるんだと。どちらですか。

川口国務大臣 これも、抽象的に一概に申し上げるということは難しいというふうに思いますけれども、現実問題として考えれば、これは一方で、両方の意見が大きく異なるという場合には、それでは米軍が独自で行動をとることができるかということであると、なかなか難しいという現実があると思いますし、また他方で、安全、治安、この問題についてどこまで多国籍軍が権限を持つかということにもよるというふうに思います。

 ですから、暫定政権でありますから、移行政府ではまだないわけでございまして、そういった過程で、イラクの将来に非常に大きく影響を与えてしまうようなことをどこまで暫定政権として力を持つことができるかというような議論も必要であろうかというふうに思います。

 いずれにしても、両方の意見が一致をする形でないと現実的には難しいということはあるだろうというふうに思います。

佐々木(憲)委員 暫定政権が最終決定権を持っているとは言わなかったわけでありまして、そうしますと、暫定政権に権限が移譲されても、それは極めて部分的であるということになりますよね。極めてといいますか、部分的な権限移譲にすぎない。

 例えば、パウエル米国務長官は二十五日にこういうことを言っているんです。結局のところ、ある時点において、イラク暫定政権が望むようなことと完全に合致しないかもしれない形で、米軍がみずからを守ったり、任務を果たすという場合、米軍は米国の指揮下にとどまり、みずからを守るために必要なことを実行する。つまり、暫定政権と意見が合致しない場合には、米国の指揮のもとで行動をする、こう言っているんです。

 それから、ブッシュ大統領は、五月二十四日のペンシルベニア州の陸軍戦争大学で、駐留米軍は現在の兵力十三万八千人を必要な限り維持する、主権移譲後も米軍と連合軍は重要な役割を担い、米軍は国連の多国籍軍の一部として米軍指揮下で活動する。つまり、作戦を展開する場合には、米軍は米国の指揮下で活動すると明言をしているわけであります。

 したがって、暫定政権に権限を移譲するといいましても、それは完全な移譲ではない。非常に限定された形での権限移譲であって、これは、アメリカが、ブッシュ大統領が完全な主権確立だとか言っておりますけれども、実態はそうではないということは、このことで、みずからの発言でそうおっしゃっているわけですから、明らかだと思うわけであります。

 日本政府は、その米国の主張をそのとおりだと聞いているんですか。それとも、もっと暫定政権に権限を与えるべきだ、こういう立場なんですか。

川口国務大臣 先ほど申しましたように、占領を終わる、これは明確であるわけです。

 それで、今、委員が限定的な主権の移譲であるというふうにおっしゃられましたけれども、それは私は必ずしもそのように申し上げているわけではございませんで、そもそも一番の基本的な議論というのは、移行政権は選挙によって選ばれる政権である、そういう意味で、その国民のトラストが一〇〇%あるというわけですね。暫定政権はそこまでいっている政権ではないということが前提であると思います。

 ですから、例えば、ちょっと例は違いますけれども、石油の利権あるいは発掘権なり開発権を、では、暫定政権が自分の思うようにどこかにばらまいてしまっていいかというと、多分そうではないだろうということがあるわけでございまして、それはおのずから、暫定政権という性格上、イラクの国民がどこまでの力を暫定政権に与えたいかという部分というのはあるだろうということを申し上げているわけです。

 いずれにしても、米軍と、あるいは多国籍軍と暫定政権との関係、これは、先ほど申しましたように、治安の維持のために多国籍軍はいる、あるいは復興支援のためにいるということであるわけですから、そういった形で仕事を、活動をしていくためには、暫定政権と何らかの調整メカニズムができるということである。そのような形になっていくことが望ましいと考えます。

佐々木(憲)委員 私が質問したことにはまともに答えなかったわけでございまして、では、もうちょっと具体的に聞きましょう。

 フランスやドイツなどは、新決議案について、イラク暫定政府の完全な権限が保障されていないというふうに批判をしております。そして、こういう提案をしているんですね。多国籍軍の任務は暫定政府との合意による、それから、イラク国軍の関与が求められた場合、暫定政府は拒否する権利を持つ、それから、警察については暫定政権が全権を持つという提案を、そうすべきだという提案をしているわけです。

 それからまた、中国は、政治、経済、治安維持、司法を初め、石油など天然資源の取り扱いを含む主権を暫定政府に完全移譲する、それから、多国籍軍の駐留期限は来年一月までとし、延長の場合は暫定政府の合意を得て安保理が決める、こういうふうな提案をしているわけです。

 つまり、アメリカ、イギリスの提案に対して、それでは本当の主権移譲ではない、本来ならばこのようにすべきだという提案をしているわけです。

 それで、先ほど、川口大臣の答弁は、一体どこにスタンスが基本的にあるのか、非常によくわからない。アメリカが言っていること、つまり、米軍、多国籍軍の指揮権というものを優先させて、意見が違った場合にはそちらが優先されなければならない、そういうアメリカ側の主張に対しては否定をされない。

 それで、今、そうではないという国際的な議論が高まっている。そのときに、では、日本はどういうスタンスなんですか。ドイツやフランスやあるいは中国のこういう提案について、国際的な議論の中で、こうあるべきだと。日本はどうしたいんですか。そこのところを具体的に言っていただきたい。

川口国務大臣 申し上げていることは、オール・オア・ナッシングではないということを申し上げているわけです。暫定政権ということの性格、これはイラクの国民によって選挙で選ばれた政権ではないということからくるおのずからの、どこまで主権を持った政府として力を行使することができるだろうかということを考えなければいけないということを一つ申し上げて、これは基本的に、根本的に議論をしていかなければいけない点であるということだと思います。

 オール・オア・ナッシングではないということを申し上げた意味は、それは具体的に、中国が石油の利権もとおっしゃられましたけれども、そういう、すべて具体的に何をどうするかという議論があるべきであるということであって、そういったその政権の性格。

 それからもう一つは、実際にこれは七カ月間の政府であって、その間にイラクの治安をいかに回復することができるかという課題も抱えている政権であるわけです。そういった課題を新しい政権としてどのように実行に移していくことができるかということも、もう一つの大きな考えなければいけない要素であるというふうに思います。

 イラクの現実を離れて、現実を捨象して制度だけ考えるということはできない。大事なことは、六月三十日に統治権限をイラクの暫定政権に渡すことであり、その先、これが現実的な世界でうまく機能していくような政権となることが必要だということを申し上げているわけです。

佐々木(憲)委員 どうも、いろいろなお話をされますけれども、日本政府としてこうすべきだという主張は持っておられないように思う。今、話を聞いていると、主権は、暫定政権という性格上、一定の制約がある。もっと具体的に、今、提案されている中国その他の意見あるいはアメリカ側の意見、それに対して日本は何を主張するかということについては何もない。これが今、日本のスタンスだということでありまして、これは今後大いに議論をしていきたい。

 日本政府は、どうもアメリカが主張していることについて批判的なことは一切言わないというのがスタンスで、では、日本のスタンスは何か、日本のスタンスは何もないというのが大変よくわかりました。

斉藤委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 私が本委員会に出させていただくのは、実は昨年の七月末に、高村委員長と御一緒してイラクに、中谷元防衛庁長官初め中川野党理事とも行かせていただいた折から数えて十カ月ぶりになるわけですが、その間にも、あのときお会いした国連の特別代表のデメロさんが爆殺され、あるいは、先ほど首藤委員のお尋ねの奥大使や井ノ上書記官がまた銃殺され、本当に暗たんたる思いがする中で、果たして本当に私どもの国がイラクに何ができるのだろうか。一つでもよきこと、私にとってよきこととは、やはり皆さんもそうかと思いますが、イラクの中で人々が生きていくための支援をどうやったら日本が顔の見える外交としてできるのかという思いの中で聞かせていただきたいと思います。

 川口大臣も覚えておられるやもしれませんが、実は、私は本委員会できょう質問に立つために奥大使の「イラク便り」を読み返しながら、去年の五月はパリで、G8で、そのとき川口大臣も奥大使にお会いになっている。

 奥大使が一番望んでいたものも支援ということで、本当に何ができるんだろうとイラク国じゅう駆けずり回っていた彼が思っていたことも、恐らく、イラクの子供たちの写真をたくさん彼は撮っておられますから、やはり未来を担う子供たちのことであったのではないかと私は思うわけです。

 きょうお尋ねいたしたいのは、実は、イラクにおける妊産婦死亡率、要するに、子供が生まれるためにはお母さんが産むという行為が必要ですが、それが、いわゆる十万人当たりで統計いたしまして三百十人というふうに、非常に高くなってきております。一九八九年、湾岸戦争が始まる以前の妊産婦死亡率は百十七人ということで、この十五年余りで三倍に上がる。湾岸戦争があり、経済制裁があり、今度の戦争がありということで、生まれ出る突端からもう子供たちは多くの困難に、生まれ出ることもできないという形になっております。

 国連人口基金のオベイド事務局長が、この間、日本で記者会見されて、イラクでの妊産婦死亡率を下げるために、ぜひとも、イラクでの健康管理システム、これは国連主導ですが、そのための二千万ドルが必要であり、日本円で二十二億六千万円ですが、このうち、日本政府に対し、三分の一の拠出をお願いできまいかと、極めて具体的な提案がございます。

 まず一点、国連人口基金からこうした要望を受けておられますでしょうか。

兒玉政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、イラクにおける妊産婦死亡率につきましては、湾岸戦争、それから経済制裁の影響によりまして、二〇〇二年に十万人当たり三百十人になっておりますし、これは八九年の水準の約三倍、これは先生御指摘のとおりでございまして、昨年のアメリカ、イギリスなどによります対イラク武力行使後は、さらに状況が悪化していると承知しております。

 そこで、こうした状況を受けまして、我が国としましては、イラク全土の基礎保健センターなどを対象とした母子保健サービスや産科サービスの整備強化に向けて、このUNFPAに対して、イラク復興信託基金を通じて七百万ドルの支援を行うこととしております。

 私ども、念頭に置いておりますサービスの内容としては、一例としては、分娩、母子保健関連機材の供与や助産師、看護師の訓練、あるいは家族計画に関する研修といったことを念頭に置いております。

阿部委員 川口大臣に確認ですが、このオベイド事務局長のお申し入れ、私は今、受けておられますかと聞いたのですが、残念ながら、受けている、いないが余りはっきりしない御答弁で、受けていると仮定して、それにこたえていただけますか。私は、極めて、日本が本当にできる支援で大切な部分と思いますので、御答弁をお願いします。申しわけありませんが、繰り返しになるので、川口大臣にお願いします。

川口国務大臣 妊産婦の死亡率を下げるということは非常に重要なことだというふうに考えております。

 我が国のイラクにおける支援というのも、一つの柱はそういった医療面での支援、これは、第三国との協力も含めていろいろなことをやっております。

 それで、もう一つ、特に妊産婦死亡率を下げるということに特化をしたという意味でいいますと、イラク全土の基礎保健センター、ここを中心に、母子保健サービスを強化する、産科サービスを整備強化するということを考えていまして、我が国として、イラク復興信託基金を通じて国連人口基金に対して七百万ドルの支援を行うことといたしております。

阿部委員 およそ三分の一とみなさせていただいて、支援をするという御答弁だったと受けとめます。

 同じように、日本は、八〇年代からイラクに十三の病院をODAのスキームにのっとってつくりまして、この間、約一年前にもこれらの十三病院のエンパワーメントを計画しておられるというふうに伺いました。

 このたび、ムサンナ州からも四人の病院長が来ておられまして、南部方面で四つの病院にとりあえず機材の供与をしましょうということは伺っておりますが、この全体、十三の病院、これは、日本でいえば中核病院的な、四百ベッド内外の地域医療の中核でございます。この病院全体に対するプログラムの進捗状況、あるいはこれからの、私はスピードアップしていただきたいですが、今、随所でいろいろな戦闘状態も起こり、やはり病院の機能、命を支える機能というのは非常に重要になっていると思うのですが、その進め方について、大臣のお考えを伺いたい。

 事務方であれば、私の言ったことを繰り返さないで答えてください。

斉藤委員長 簡潔にお答えください。

兒玉政府参考人 お答えいたします。

 先生御案内の南部の四つの総合病院に対する支援につきましては、既に三月二十六日に決定をして、今まさに入札図書の作成といったようなことで準備を進めておりますので、何とかできるだけ速やかに具体的実施の手はずを整えたいということでございます。

 そして、残った九つの病院につきましても、イラク保健省などの関係者と協議を行って、先方のニーズを十分勘案して、今後順次、鋭意、前に進むように取り組みを行っていきたいというふうに考えております。

阿部委員 イラクの、特に中東地域、親日感情はこれまでもよかったわけです。それは、日本がそういう形で行ってきた支援が非常に相手方にも感謝されていた。今、先ほど来問題にしておりますように、状況は非常に悪い状況になる中で、例えば、自衛隊を派遣して、そこの中で、いわば一日の中、二時間しか活動できないような状態というよりは、随所で日本が命のために頑張っているんだという支援をぜひしていただきたいと私は思っております。

 三問目、これは大臣にお願いいたします。

 実は、私は、おととしの十二月と去年の七月、二度イラクに行かせていただきまして、バグダッド大学の医学部や、あるいは当時サダム教育病院と呼ばれていたところで小児科のお医者さんなどにも会わせていただきまして、うち一名は、日本への留学、来たいというお気持ちでありましたので、市民団体を通じて、現在、日本に入国できる形で研修を受けております。

 やはりこの十年、経済制裁下で、イラクでの医師たちあるいは医療関係者たちのいろいろな実践レベルは低迷、停滞しておる中で、日本として、エジプトと一緒になったような医療スタッフの教育スキームは持っておられますが、今後、日本の国内で学びたい、そういう方も多いと思います。言語の壁はあろうとも、私は、そういう人的交流が長い目で見た平和構築の基盤と思います。

 先ほど、東京大学にも少し人が来られて交流の向きもあるというふうなお話を冒頭おっしゃっておられましたが、こういうメディカルスタッフの我が国国内における受け入れ、あるいは受け入れた病院に対しての支援等々のお考えについてお伺いいたします。

川口国務大臣 この支援というのは、我が国は今までいろいろな国でやってきているわけでして、当面、基本的には、お答えは、今後積極的に取り組んでいきますということですけれども、一定の費用で、エジプトでやった方が言葉その他の点でプラスだという点もありますし、また、日本に連れてきてということもあると思います。いろいろなその時期時期でのニーズを考えながら、これはイラクの保健省の方々とも御相談をしながら最適な組み合わせでやっていきたいと思います。

阿部委員 平和的生存権、だれもが平和のうちに生きるということを保障するような援助をぜひともお願いしたいと思います。

 終わらせていただきます。

斉藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後六時四十四分散会


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