衆議院

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第15号 平成16年6月18日(金曜日)

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平成十六年六月十八日(金曜日)

    午後一時一分開議

 出席委員

   委員長 斉藤斗志二君

   理事 小野寺五典君 理事 中谷  元君

   理事 西田  猛君 理事 末松 義規君

   理事 中川 正春君 理事 藤田 幸久君

   理事 河合 正智君

      今津  寛君    木村  勉君

      岸田 文雄君    倉田 雅年君

      近藤 基彦君    塩崎 恭久君

      菅原 一秀君    鈴木 恒夫君

      竹下  亘君    橘 康太郎君

      谷本 龍哉君    玉沢徳一郎君

      萩生田光一君    福井  照君

      松島みどり君    松野 博一君

      宮下 一郎君    山際大志郎君

      池田 元久君    市村浩一郎君

      生方 幸夫君    大出  彰君

      岡島 一正君    小宮山泰子君

      神風 英男君    首藤 信彦君

      田嶋  要君    高山 智司君

      武正 公一君    手塚 仁雄君

      伴野  豊君    前原 誠司君

      笠  浩史君    遠藤 乙彦君

      丸谷 佳織君    赤嶺 政賢君

      阿部 知子君

    …………………………………

   外務大臣         川口 順子君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     細田 博之君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      石破  茂君

   内閣官房副長官      杉浦 正健君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  増田 好平君

   政府参考人

   (内閣法制局長官)    秋山  收君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    瀬川 勝久君

   政府参考人

   (防衛庁防衛局長)    飯原 一樹君

   政府参考人

   (防衛庁運用局長)    西川 徹矢君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 鶴岡 公二君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 西宮 伸一君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 吉川 元偉君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            堂道 秀明君

   政府参考人

   (外務省条約局長)    林  景一君

   衆議院調査局国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラク人道復興支援活動等に関する特別調査室長        高木 孝雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十八日

 辞任         補欠選任

  江藤  拓君     山際大志郎君

  金子 恭之君     菅原 一秀君

  近藤 基彦君     松島みどり君

  桜井 郁三君     鈴木 恒夫君

  谷本 龍哉君     松野 博一君

  西川 京子君     宮下 一郎君

  望月 義夫君     福井  照君

  達増 拓也君     高山 智司君

  長島 昭久君     市村浩一郎君

  原口 一博君     武正 公一君

  松本 剛明君     手塚 仁雄君

  山田 正彦君     神風 英男君

  横路 孝弘君     大出  彰君

  赤松 正雄君     遠藤 乙彦君

  照屋 寛徳君     阿部 知子君

同日

 辞任         補欠選任

  菅原 一秀君     金子 恭之君

  鈴木 恒夫君     桜井 郁三君

  福井  照君     望月 義夫君

  松島みどり君     近藤 基彦君

  松野 博一君     谷本 龍哉君

  宮下 一郎君     西川 京子君

  山際大志郎君     江藤  拓君

  市村浩一郎君     笠  浩史君

  大出  彰君     横路 孝弘君

  神風 英男君     山田 正彦君

  高山 智司君     達増 拓也君

  武正 公一君     原口 一博君

  手塚 仁雄君     松本 剛明君

  遠藤 乙彦君     赤松 正雄君

  阿部 知子君     照屋 寛徳君

同日

 辞任         補欠選任

  笠  浩史君     長島 昭久君

    ―――――――――――――

六月十六日

 一、国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動等に関する件

の閉会中審査を本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動等に関する件(イラクの主権回復後の自衛隊の人道復興支援活動等)


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     ――――◇―――――

斉藤委員長 これより会議を開きます。

 国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動等に関する件について調査を進めます。

 この際、イラクの主権回復後の自衛隊の人道復興支援活動等について政府から報告を求めます。細田内閣官房長官。

細田国務大臣 イラクの主権回復後の自衛隊の人道復興支援活動等について御報告申し上げます。

 今月八日、国連安保理決議一五四六が全会一致で採択され、三十日をもってイラクに完全な主権が回復されることとなり、イラクの復興に向けた新たな局面が開かれました。今後、イラク暫定政府の要請のもとに、多国籍軍が国際社会の総意を反映してイラク支援のために駐留することとなり、国際協調体制が再構築されることとなります。

 これまで、我が国の自衛隊は、日本国憲法のもと、イラク人道復興支援特措法及びその基本計画に基づき、イラクの人々のため、人道復興支援を中心とする活動を行ってきました。その活動は現地で高い評価を得ており、イラク暫定政府のヤーウェル大統領から小泉総理に対しても、自衛隊はイラクで駐留する外国部隊の中で最も歓迎されている旨、述べられているところであります。

 我が国の復興支援については、国際社会の責任ある一員として、イラクの完全な主権の回復後も、引き続き、イラク暫定政府からの同意と法的地位を確保した上で、イラク人道復興支援特措法に基づく人道復興支援を中心とした自衛隊の活動を継続することが極めて重要であります。

 その際、新たな決議において、これまで我が国の自衛隊が行ってきたような人道復興支援活動が多国籍軍の任務に含まれることが明らかになったこと、また、多国籍軍の中ではなく個別に活動を行う場合、さきに述べたイラク暫定政府からの同意と法的地位を確保することが事実上不可能であることなどを踏まえ、自衛隊は多国籍軍の中で今後とも活動を継続することとします。

 三十日以降、自衛隊は多国籍軍の中で活動しますが、統合された司令部の指揮下に入るものではありません。自衛隊は、引き続き、我が国の主体的な判断のもとに、我が国の指揮に従い、イラク人道復興支援特措法及びその基本計画に基づき、イラク暫定政府に歓迎される形で人道復興支援活動等を行うものであり、この点については、米英両政府と我が国政府との間で了解に達しています。

 また、これまで同様、憲法の禁じる武力の行使に当たる活動を行うものではなく、いわゆる非戦闘地域要件を初め、イラク人道復興支援特措法及びその基本計画の要件にのっとってこれまでと同様の活動を行うものであり、他国の武力の行使と一体化するものではありません。

 なお、これら方針にのっとった活動が困難となる場合、自衛隊は活動の中断、撤退等の措置をとることとなります。この点についても、米英両政府と我が国政府との間で了解に達しております。

 本件につきましては、関係省庁により検討を続けてきたところでありますが、安全保障会議の審議を経て、本日、以上に述べたような政府の見解を整理した閣議了解、また、基本計画及びイラク人道復興支援特措法施行令の所要の改正を行いました。

 そのうち、基本計画については、基本方針の部分に新たに、決議一五四六の採択を受け、イラクに完全な主権が回復され、イラクの本格的な復興に向けた新たな局面が開かれる中で我が国として一層の支援を継続することの必要性を規定するとともに、連合軍司令部施設の名称変更等、関連する部分についての所要の修正を行っています。

 また、施行令については、我が国が実施する人道復興支援活動及び安全確保支援活動の根拠となる国連安保理決議として、今般採択された決議一五四六を追加しています。

 今後も、政府が一体となってイラクの復興を支援し、国際社会の平和と安全のために貢献することができるよう、皆様の一層の御理解と御協力をお願いする次第であります。

斉藤委員長 これにて報告は終了いたしました。

    ―――――――――――――

斉藤委員長 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官増田好平君、内閣法制局長官秋山收君、警察庁警備局長瀬川勝久君、防衛庁防衛局長飯原一樹君、防衛庁運用局長西川徹矢君、外務省大臣官房審議官鶴岡公二君、外務省大臣官房審議官西宮伸一君、外務省大臣官房審議官吉川元偉君、外務省中東アフリカ局長堂道秀明君及び外務省条約局長林景一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

斉藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

斉藤委員長 この際、政府から説明を聴取いたします。防衛庁運用局長西川徹矢君。

西川政府参考人 イラク人道復興支援特措法に基づきます自衛隊の部隊の最近の活動状況について御報告いたします。

 まず、サマワの陸自部隊におきましては、安全確保に十分配意しつつ、宿営地における給水活動を初め、ムサンナ県内のヒラル、サマワ及びマジッドにおける学校補修、ワルカ、サマワ、スウェイルにおける道路整備、病院における医療活動を引き続き実施しています。

 六月十三日には、サマワ総合病院、サマワ母子病院及びヒドル総合病院での活動に加え、ルメイサ総合病院において医療技術指導を実施いたしました。

 六月十五日には、サマワ市内にあるオリンピックスタジアムのグラウンドの補修工事を開始しております。

 また、三月二十五日に開始したダラージの学校補修につきましては、このたび工事を完了し、六月十三日に現地で竣工式を実施したところであります。

 このほか、五月十六日以降、人道復興支援活動としての給水に支障のない範囲でオランダ軍に対する給水を実施してまいりましたが、同軍の給水能力が回復したことから、六月十日をもって同軍への給水を終了いたしました。

 現地部隊からの報告によりますと、六月九日及び十日を中心に隊員の一部に下痢症状を訴える者が発生いたしましたが、いずれも症状は軽く、部隊の活動に影響は出ておりません。十五日以降新たな患者は発生しておらず、状況は終息した模様でございます。原因等につきましては、現在調査中であります。

 サマワ周辺の現況につきましては、前回の御報告以降、特に大きな事案は発生していないとのことでございます。

 現地部隊におきましては、さまざまな情勢を踏まえ、その活動も慎重に行っているところであり、引き続き安全確保に細心の注意を払いつつ活動を実施してまいります。

 最後に、航空自衛隊の部隊については、六月十一日から六月十七日までの間、人道復興関連及び関係国、関係機関等関連の物資の輸送を計二回実施したところでございます。

 また、六月十五日にC130機の交代機二機がクウェートに到着いたしました。これに伴いまして、これまで任務に従事しておりましたC130機二機が近くクウェートを出発し、本邦に向かう予定でございます。

 引き続き、イラク国内の各飛行場の安全性や輸送ニーズ等を慎重に勘案しつつ、C130機による輸送を行ってまいります。

 以上でございます。

斉藤委員長 次に、外務省中東アフリカ局長堂道秀明君。

堂道政府参考人 イラクの治安情勢について御報告申し上げます。

 イラクの政治プロセスに関する最近の大きな動きとしましては、六月八日、国連安保理公式会合が開催され、イラク暫定政府設立の是認、占領の終了及びイラクの完全な主権の回復の歓迎、国連の役割の明確化、多国籍軍の任務の明確化等を内容とする安保理決議一五四六が全会一致で採択されました。

 今回の決議は、イラクに主権を有する政府が設立され、政治プロセスが新たな局面に入ったことを明確に示し、イラク人自身による国家再建への努力を奨励するとともに、このようなイラク人の取り組みを支援する国際社会の結束強化に資するものであります。我が国としましては、この決議の採択を歓迎し、共同提案国である米国、英国、ルーマニアを初めとする安保理理事国のこれまでの努力を評価します。

 八日から十日まで開催されたシーアイランド・サミットに関連した動きは次のとおりであります。

 サミットの議長総括及び拡大中東・北アフリカ地域とのパートナーシップに関する政治宣言の中で、安保理決議一五四六の全会一致の採択を歓迎し、一致団結してイラク暫定政府を支援することが確認されました。サミットにおいて、総理よりは、イラクの復興はイラク人自身の手によってなし遂げられなければならないことを強調の上、我が国として引き続きイラクの復興を支援する用意があることを表明いたしました。

 八日、日米首脳会談におきまして、総理より、日本として、イラク暫定政府にも歓迎される形でイラク人道復興支援特別措置法に基づく自衛隊の派遣を継続する考えであり、これとODAを活用した資金協力を車の両輪としてイラクの再建に努めていく考えである旨、表明し、ブッシュ大統領より、日本の貢献を高く評価する旨、発言がございました。

 また、サミット後の内外記者会見では、総理より、今後とも日本としては、全会一致の国連の新決議を受けて、国際社会の責任ある一員として日本に相ふさわしい支援、協力を検討していきたいと思っている、多国籍軍が形成されることと思うが、その中で日本にできること、いわゆる人道支援、復興支援を継続していく方向で検討していきたいと思っている旨の発言を行っております。

 九日、総理は、ヤーウェル・イラク大統領と立ち話を行う機会がありましたところ、総理からは、イラク人自身が主体性を持ち復興に取り組む意欲を国際社会に示すことが重要であり、そうすれば国際社会は喜んで支援の手を差し伸べるであろう旨、述べられ、ヤーウェル大統領より、努力したい、自衛隊はイラクで駐留する外国部隊の中で最も歓迎されているとのやりとりがございました。

 イラク国内の動きにつきましては、十一日、シスターニ師は、安保理決議の採択を歓迎する意向を表明し、また、十一日、ムクタダ・サドル師は、暫定政府の発足は、過去のいさかいを水に流し、統一イラクの建設へ前進するよい機会となるとの趣旨の発言を行った、さらに、サドル師の側近は、サドル師は米軍の駐留を終わらせるとの条件つきで暫定政府と話し合う用意がある旨、述べたとの報道がございます。

 イラクの治安情勢につきましては、状況の緊迫化が見られ、引き続き予断を許さない状況が継続しております。

 ファルージャにおきましては、小康状態が継続しておりますが、六月九日にはファルージャのイラク人治安部隊の基地に迫撃砲による攻撃があったとの報道もあり、今後とも注視が必要です。

 サドル師支持者への対応については、六月五日、セナーCPA報道官は、四日午後よりナジャフの状況は大きく改善され、現在、ナジャフ及びクーファからマフディ軍が撤退し、イラク警察が連合軍とともに共同パトロールを実施している旨、述べております。他方、七日、米中央軍は、同七日、クーファのモスクにおいて大きな爆発があった旨の発表を行っており、状況を注視していく必要があります。

 サマワにつきましては、六月に入りこれまでのところ大きな事案はありませんが、これまでサマワで生じている一連の事案も踏まえつつ、現地の情勢については、予断することなく、引き続き十分に注意を払っていく考えです。なお、十一日、オランダ政府は、七月中旬に終了期限が迫っていた同国軍のイラク派遣期間を八カ月延長することを決定しました。

 六月五日、CPAは、クルド民主党、クルド愛国同盟、イラク国民協約等の九つの主要な組織との間で、民兵組織の社会への統合に関する交渉が合意に達し、約十万人の民兵が市民生活に復帰、あるいは、国軍、警察等の国家治安要員になることとなる旨の発表がありました。なお、この合意の当事者にサドル師は含まれておりません。

 また、六月十二日にバッサム・クッバ外務次官、十三日にはカマル・ジャラハ教育省局長、十六日には国営北部石油会社幹部のガジ・タラバーニ氏が殺害されました。これとは別途、十三日にはバグダッド東部において車両が爆発し、イラク人十二名が死亡、十四名が負傷、十四日及び十七日にもバグダッドで車両が爆発し多数の犠牲者が発生する等の事案が発生しております。最近は石油パイプラインの爆破も相次いでおり、現地の治安状況については、引き続き予断を許さない状況が継続しております。

 以上です。

斉藤委員長 これにて説明は終了いたしました。

    ―――――――――――――

斉藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。河合正智君。

河合委員 公明党の河合正智でございます。

 官房長官、外務大臣、防衛庁長官、法制局長官並びに政府参考人に質問いたします。

 まず最初に、確認させていただきたいことがございます。六月十四日の政府・与党連絡会議で、我が党の神崎代表が確認を要請した点が四点ございます。

 以下、一、多国籍軍の指揮下に入るのかどうかという点で、日本の判断で活動を行い、撤収できるのか。その担保がとれているのか。二、活動地域は非戦闘地域に明確に限定されているのかどうか。三、活動内容は、人道復興支援と医薬品、食料などの輸送の安全確保とのイラク特措法の活動範囲に限定されているのかどうか。四、武力行使と一体化しない活動に限定されるかどうか。

 本日の閣議了解でどのように具体化されましたか、確認させていただきます。

細田国務大臣 御指摘のように、総理が先週末サミットへ出席され、帰国された後、月曜日に政府・与党連絡会議が開かれ、そこで神崎代表が四点について確認を要請されました。その後、検討を経まして、そして本日、閣議了解が行われたわけでございます。

 そして、その閣議了解にもございますとおり、「六月三十日以降、自衛隊は、多国籍軍の中で、統合された司令部の下にあって、同司令部との間で連絡・調整を行う。しかしながら、同司令部の指揮下に入るわけではない。自衛隊は、引き続き、我が国の主体的な判断の下に、我が国の指揮に従い、イラク人道復興支援特措法及びその基本計画に基づき、イラク暫定政府に歓迎される形で人道復興支援活動等を行う」ものであります。

 また、「自衛隊は、これまで同様、憲法の禁じる武力の行使に当たる活動を行うものではなく、イラク人道復興支援特措法に基づき、いわゆる「非戦闘地域」において活動するものであり、他国の武力の行使と一体化するものではない。」とも明記されております。

 したがいまして、御指摘の四項目、すなわち、第一に、日本独自の判断で活動、撤収できること、第二に、活動地域を非戦闘地域に限定すること、第三に、活動内容をイラク特措法及び基本計画の範囲に限定すること、第四に、武力行使と一体化しない活動に限定することのいずれもが確保されております。

 御指摘の点はすべてこのように閣議了解においても明確に述べられており、政府としては、このような立場に従いまして、今後とも人道復興支援活動を中心とした活動を継続していく所存であります。

河合委員 大変ありがとうございます。多国籍軍に参加する四原則が明確になったと思います。

 法制局長官にお伺いいたします。

 従来、多国籍軍に参加しないという政府見解については、今回の閣議了解はどのような整合性を持たせたとお考えでしょうか。

秋山政府参考人 従来、累次の政府答弁におきまして、多国籍軍につきましては、まず、目的、任務に武力の行使を伴う多国籍軍につきましては、自衛隊がこれに参加することは憲法との関係で問題がある、ただ、この場合の参加とは、当該多国籍軍の司令官の指揮下に入り、その一員として行動をとるという意味であるというふうに述べてきてまいりました。

 この理由は、ただいま申し上げたような意味で当該多国籍軍に参加することは、たとえ自衛隊が直接に武力の行使を任務としない場合でありましても、まさに当該多国籍軍の司令官の指揮下で、その命ずるところに従い、武力の行使に関連する行動をとるという意味におきまして、自衛隊の活動が武力の行使に及んだり、他国の武力の行使と一体化することがないという前提を確保することが困難であるというふうに考えたためであります。

 ところで、これまたかねて一般論として申し上げてきておりますが、いわゆる多国籍軍にも、かつての湾岸型のもののように軍事的手段により平和と秩序の回復を図るというだけのものではなく、いろいろな類型のものが考えられるし、現に出てきているわけでございます。

 個々の事例によりその目的や任務が異なりますので、我が国がその中で活動することができるかどうか、これを一律に論ずることは難しく、国連決議の内容、多国籍軍の目的、任務、編成など具体的な事実関係に沿って、我が国として武力の行使を行わず、また、我が国の活動が他国の武力の行使と一体化しないことがいかに確保されるかということを基本として、その中に入って活動することができるかどうかを検討すべきものであるというふうに考えてまいりました。

 今回、自衛隊は、先ほど報告がありましたように、六月三十日以後も引き続きイラクにおきまして人道復興支援などの活動を行うことが決定されましたが、このような自衛隊の活動は、多国籍軍の中で司令部との間で連絡調整を行いつつも、その指揮下に入ることはなく、我が国の主体的な判断のもとに、我が国の指揮に従い、イラク人道復興支援特措法に基づいて行われるものであります。

 この法律は、御承知のように、我が国として武力の行使を行わず、また、我が国の活動が他国の武力の行使と一体化することがないということを仕組みとして確保しているものでございますので、このような活動を自衛隊が行うことが憲法との関係で問題を生ずることはないものと考えております。

河合委員 ただいまの官房長官、法制局長官の御見解を承りました。

 これに対しまして、各方面からの異論、反論がさまざまございます。そういう異論、反論を踏まえまして質問させていただきたいと思います。

 まず、イラク特措法を根拠とする理由につきまして、今回のケースは、従来と違いまして、イラク暫定政権からの要請に基づくものであります。特措法が前提としております状況と正当性の根拠が少し異なるのではないか。

 といいますのは、イラク特措法におきましては、第一条に、イラク特別事態を受けて、イラクの国民による自主的な努力を支援し、及び促進しようとする国際社会の取り組みに関し、我が国がこれに主体的かつ積極的に寄与するため、人道復興支援活動及び安全確保支援活動を行うとしておりますけれども、イラク暫定政権が主権を移譲された段階におきましては、それが正当性の非常に強い根拠になり得るはずでございます。そうであるならば特措法は本来改正すべきであって、政令の修正で読み取れるとした理由につきまして官房長官からお答えいただきたいと存じます。

細田国務大臣 お答え申し上げます。

 イラク特措法に基づきまして自衛隊がイラクにおいて活動を継続するに当たりましては、イラク暫定政府の同意と法的地位の確保が不可欠でありますが、自衛隊が多国籍軍の中ではなく個別に活動を行う場合、我が国が独自にこれらを確保することは、イラク暫定政府にかかわるさまざまな不確定要素の存在によりまして、現実問題として不可能であります。

 また、イラク暫定政府の要請に基づき、国連安保理が全会一致で採択した新たな決議に基づく多国籍軍は、国際社会の総意を反映しているものと考えられ、我が国の自衛隊が多国籍軍の一員とならずに個別に活動を行うこととすれば、イラク暫定政府の理解や国際協調体制のもとで、我が国としてふさわしい活動ができなくなるおそれがございます。

 したがいまして、我が国としては、人道復興支援を中心とする活動を行う自衛隊がその能力を十分に発揮できる環境を整備することが重要であります。

 以上のような観点から、政府として十分な検討を行った結果、国際社会の責任ある一員として引き続きイラクの復興支援活動を続けるためには、多国籍軍の中で活動することが適切であると判断したわけでございます。

河合委員 ただいま官房長官から二点にわたりまして理由を述べられました。国際社会の総意であるという点はおっしゃるとおりだと思います。

 ただ、もう一つの点、自衛隊の法的地位のみを理由として多国籍軍に参加するということでありましたならば、例えば、来年一月にイラクで正式な選挙によって選ばれた政権が誕生する予定でございますが、そこと地位協定を個別に結ぶまで、暫定的に多国籍軍に参加するという選択肢はあり得るのか。もしそれが可能であるとするならば、これはイラク特措法が想定した要件どおりでございますし、国民にもわかりやすい。この点につきましてどのようにお考えでしょうか。

川口国務大臣 おっしゃったように、これは法的な地位の確保、もちろん政府の同意ということもそうですが、が必要であるということでございまして、そうして、これについては、イラクの暫定政府ですけれども、これが、イラクでの政治プロセスを決める基本法、これに従いまして、完全な主権の回復後に活動する軍隊については多国籍軍のパートナーであるということを前提としていろいろな調整を行ってきたわけでございます。そして、そのような調整を経て、イラクの暫定政府から多国籍軍の駐留が要請をされまして、これが安保理決議一五四六、これでも確認をされたという経緯があったわけでございます。

 それで、そのようなイラクの暫定政府や国際社会の努力にもかかわらず、我が国の自衛隊に限って個別の同意や法的な地位の確保を六月三十日までにしかるべく行うということは、これはイラクの暫定政府にかかわるさまざまな不確定要素がございますので、現実問題として不可能であるというふうに考えております。

 したがいまして、自衛隊が多国籍軍の中で活動すると整理をして、所要の同意及び法的な地位に関する問題を解決するということが必要であると考えたわけでございます。

河合委員 次に、アンダー・ユニファイドコマンドという文言の解釈につきまして、従来は統一された指揮、指図と解釈してまいりましたけれども、今回、「統合された司令部」ということで説明されておりますけれども、この点につきまして御説明いただきたいと存じます。

川口国務大臣 この解釈でございますけれども、そもそも、昨年の十月に安保理で決議がございまして、これは一五一一ですけれども、そこにおきまして、一五四六と同様にユニファイドコマンドという言葉がございまして、それを「統合された司令部」というふうに訳したわけでございます。ということでございまして、今回変えたということではございません。これまで「統合された司令部」というふうに訳してきておりますのは、米側に照会をいたしましたところ、これがCJTF7、これを指しているという説明を踏まえたものでございます。

 また、安保理決議の一五四六が採択をされて、改めて米側に照会をいたしました。それによりますと、従前のCJTF7より組織改編されたMNFI等が統合された司令部に当たる、そういうことなどを踏まえまして、統合された司令部という訳を行ったということでございます。

 いずれにしても、各国の軍隊が、統合された司令部からそれぞれの国内法に反することを行うことを求められるということではない。我が国としては、新たな決議のもとで国際社会がイラクの復興支援等々の各種の支援を行う中で、イラク暫定政府に歓迎される形で、自衛隊が、引き続き、我が国の主体的な判断のもと、我が国の指揮に従いまして、イラク人道復興支援特措法に基づいて、いわゆる非戦闘地域におきまして人道復興支援を中心としました活動を継続するということは適切であると考えております。

河合委員 そこで、自衛隊は統合された司令部の傘下に入るのか、指揮下に入るのか。司令部にどのような形でかかわるのでしょうか。

 また、統合された司令部の指揮下に入らないということにつきまして米英側の了解を取りつけたということを聞いておりますけれども、これはどういうことなのか、具体的にお伺いしたいと存じます。

石破国務大臣 後段につきましては外務大臣から答弁がございます。

 前段についてでございますが、多国籍軍との関係につきましては、先ほど法制局長官からお答えを申し上げたとおりでございます。指揮下に入ることはございません。これは、連絡調整ということは行います。

 私どもが行います活動は、これは今までと何ら異なるものではございません。今までも指揮下に入ったことはございません。これから先も指揮下に入ることはございません。我が国の主体的な判断のもとで、我が国の指揮命令のもとに行動するのでございまして、多国籍軍の指揮に入るということは一切ございません。

川口国務大臣 了解について御質問がございましたので、その部分についてお答えをさせていただきたいと思いますけれども、自衛隊が多国籍軍の中で活動する場合の活動のあり方につきましては、六月八日、我が方の在英国大使館公使と英国外務省高官との間で、そして六月九日、我が方の在米国大使館公使と米国国務省高官との間で了解に達しております。

 この了解につきましては、これが政府間の公式な了解として確立するように、事前にそれぞれの政府部内で正式な検討が行われたものでございます。また、米英両政府は、我が国がこの了解を公表することについても異存なしというふうにしております。

 ということでございまして、以上のとおり、この了解は、外交慣例にのっとりまして、政府間で公式に確認をされた了解でございます。

河合委員 次に、非戦闘地域の要件を満たさなくなった場合及びそのほか政治的な理由から撤退をする場合も含めまして、日本が主体的に判断できるというのは何によって担保されているわけでございますか。

石破国務大臣 先生の質問の根幹は、要は何によって担保されるんだということであろうと思います。これは、まさしくこの国会において御審議いただき成立をし、そして、それに基づいて我が国が活動しておるところのイラク特措法が担保をしているのだということでございます。

 日本国の自衛隊は、日本国の法令に従って、それのみに従って行動しておるのでございまして、それ以外の活動はいかなる場合もできません。したがいまして、要件を満たさなくなった場合、それは当然活動を続けることができません。したがいまして、担保をしておりますのはこの特措法ということでございます。

 あるいは、政治的な判断ということもございますが、これはまさしく我が国の主体的な判断、いろいろな、これは法的な要件と重複する場合も多々あろうかと思いますけれども、国内的に見て、これはもう継続はできない、もう復興支援の目的を果たし得ないというふうに判断をされました場合も、これは我が国が主権国家として判断を行うものでございまして、私は、担保というふうに先生がおとりになるとするならば、それは主権国家としての我が国の立場が担保だというふうに考えております。

河合委員 そもそも国民にとって非常にわかりづらい点がございます。それは、そもそも多国籍軍というのは一体何なのか。

 これは、ペルシャ湾岸戦争、ボスニア・ヘルツェゴビナの紛争、コソボ、それから東ティモール、ハイチ、一口に多国籍軍と言いましてもさまざまな形態がございますけれども、それぞれについて、概略で結構でございますが、大臣から御説明をお願いいたします。

川口国務大臣 そもそも多国籍軍とは何かわかりにくいということでございます。

 国連憲章上、集団安全保障制度の一環として、憲章七章の四十二条、四十三条ですけれども、これに基づいて国連軍が編成をされるということになっているわけですけれども、憲章七章に基づいて編成される本来の意味での国連軍というのは、いまだに設けられたことがないわけでございます。一方、現実的には、いわゆる多国籍軍、これが安保理決議等に基づいて設置をされまして、国際の平和と安定のために対応してきているということでございます。

 おっしゃったように、いわゆる多国籍軍につきましては、これは、目的、任務、編成等さまざまであります。その概念というのは必ずしも明確ではないということですが、湾岸戦争当時の多国籍軍のように、専ら武力の行使、これ自体を目的、任務とするものから、近年で、例えば東ティモールやハイチの多国籍軍のように人道復興支援活動に関する活動も任務として規定される多国籍軍、これも設立されるようになってきております。そして、今回の一五四六によりまして、これは、多国籍軍の任務としまして、治安維持活動と並んで人道復興支援そのものも含むということが明確化されたわけでございます。

 ということで、おっしゃいましたように、多国籍軍の目的、任務、これは多様化をしてきているということを申し上げられると思います。

河合委員 ありがとうございます。ただいまの御説明にありました東ティモール、ハイチにおきましては、人道支援、復興支援がその目的に入っていた。

 それでは、なぜここに日本の自衛隊は参加しなかったのかについてお伺いさせていただきます。

川口国務大臣 なぜしなかったかということですけれども、実際に、ある多国籍軍の活動に我が国として関与するかどうかということにつきましては、これは、国連決議の内容ですとか多国籍軍の目的、任務、編成等、それから、それのみならず、国際社会が当該事案に対応する上で我が国として果たすべき役割、責任、また、その当該事案が我が国に対して与える影響、そういった外交政策上の考え方といったものを含めた総合的な判断が必要であるというふうに考えております。

 一般的に申し上げてそういうことでございますけれども、今回について言いますと、そういう意味で、これは、イラク暫定政府の要請のもとで、多国籍軍が国際社会の総意を反映して駐留をするということになったわけでして、国際協調体制が再構築をされたということがあったわけでございます。したがって、人道復興支援を中心とした活動を自衛隊がするということは極めて重要であるというふうに考えたということでございます。

河合委員 もう少し詳しくお伺いさせていただきたいと思います。

 ウェストファリア条約以来、国際法におきましては、主権国家は平等である、したがって、その国内問題については干渉しないという非常に大きなルールがございます。しかし、そうだからといって、コソボ、ボスニア・ヘルツェゴビナで起きたような、隣の国で虐殺が行われているという場合に、それを不介入でいいのかという大変根本的な問題に今国際社会は直面しているわけでございますけれども、我が国が行っているイラクへの人道復興支援というのは、そもそも、我が国の国益を中心に据えた立場から考えているのか、それとも、国際社会全体が関与する責任があるとする立場なのか。支援の位置づけにつきまして、我が国のスタンスについてお伺いさせていただきたいと思います。

川口国務大臣 まず、主権国家間の平等あるいは主権の尊重というのは国際関係の中で基本的な原則であって、この考え方は国連憲章等にも反映をされているということでございます。

 そういった中で、ある国で例えば人道上の問題が発生をした、そういったときに、他の国あるいは国際機関が支援をするに当たっては、これは基本的に領域国の同意を得る必要があるというふうに考えられている。したがいまして、国連決議の要請にこたえてイラクにおいて我が国やほかの国が人道復興支援活動を行う、あるいはほかの活動を行うといった場合に当たっても、イラクの同意を得るということが必要になっているということでございます。

 それで、我が国の国益か国際社会の一員としての責任かということでございますけれども、国益にとって重要である、国益に直結をしているということは論をまたないと思います。これは、例えば石油資源ということを考えてもそうでございますし、イラクが平和的な、民主的な国家として再建をされるということが、中東地域の平和と安定にも、それはひいては国際社会の平和と安定ということにも重要であるということですから、国益という観点からも論をまたない。

 それから、国際社会全体における我が国の責任という観点から考えましても、イラクが破綻国家となりテロの温床となるというようなことになりますと、これは大変に大きな問題でして、国際協調をしてこれに対応していかなければいけない、取り組んでいかなければいけないということであって、であればこそ、国際社会が今まで、例えばマドリッド会合というものを開きまして国際協調を訴えてきたということで、我が国としては、世界の中でも大きな国でございますから、その一員としてしかるべき責任を果たしていくということであろうかと思います。

河合委員 この点につきまして、私どもの政務調査会が先ごろ開きました政策懇談会に緒方貞子さんをお招きいたしました。そこで緒方さんはこういうことをおっしゃっております。

 人間の安全保障を考えることを前提として、その前提として、急速にグローバル化しつつある世界の実態、その中では脅威を国境線でとめることはできないと考えています。人もお金も物も情報も、交流が国境を越えて行われているからです。日本にアフリカから帰ってまいりまして、国益論が盛んですけれども、相互依存の世界の中の一部としての国益ということが日本の国内でどれくらい認識されているのか、非常に疑問を感じました。相互依存の世界では、国家だけでなく個人も常に、自己の行動が他者にどういう影響を与えるのかということについて十分配慮しなければなりません。こういうことを述べられております。

 次に、ハワイ大学の国際コミュニケーション学部の教授でありますマジッド・テヘラニアン教授は、その著作「文明間の対話」の中でかねてから次のように述べております。

 世界的なテロリズムに対する戦争には、一つ、アメリカの単独主義、二つ、NATOの多国主義、三つ、国連の多国主義、こういう三つの異なる戦略上の選択肢があり得る。しかし、アメリカの単独主義につきましては、アメリカの友好国も敵対国も、ともどもに批判的である。それから、NATOの多国主義に対しましては、これは、国連の多国主義的対応と協調しない場合、NATOの行動は、西洋世界対イスラム世界の戦争、もっと悪いことに、世界の富裕諸国対貧困諸国の戦争といったイメージになるおそれがある。したがって、新たなテロリズムの原因も結果も、今や世界の全体に及ぶ規模のものであるから、対応策も世界の全体に及ぶものでなくてはならない。国連は、不備な点があることは確かであるけれども、それでも大変有用な組織であり、この組織のもとで用意周到に計画された方策があれば、暴力、テロリズム、貧困を撲滅する戦いが可能である。

 こういう見解を示されておりまして、まさに今回の国連決議を中心とする取り組みというのはこの方向に沿っていると私は思います。

 これに対しまして、野党、特に私は民主党の一部のお考えが理解に苦しむところでございますけれども、アナン事務総長との会見におきましては、国連決議がある多国籍軍には参加する用意があるとまで発言された前党首のいらっしゃるところで、撤退論がそこにもあるということにつきまして、私は、これは果たして国際社会の中で是認されるのかどうか、この点につきまして川口大臣の見解をお伺いしたいと思います。

川口国務大臣 おっしゃるように、イラクを平和で安全な国にしていくということは、テロの問題あるいはいろいろな問題を含めて全部これは国際社会全体の問題である。今、国連で決議をまとめて、そして、これから国連、国際社会が一体としてこのイラクの復興支援に貢献をしていこう、取り組んでいこうということで、その利益はそれぞれの国にも及ぶわけでございます。そういった中で、これだけ中東地域と大きな関係を持っている我が国、そこから大きな利益を得ている国が、ここで自衛隊を撤退させるということは適切ではないというふうに考えております。

河合委員 大変ありがとうございました。

斉藤委員長 次に、中川正春君。

中川(正)委員 民主党の中川正春です。

 私は、質問に入る前に、ひとつ、きょうの委員会について大枠の話をしておきたいというふうに思うんですが、本来は総理大臣が国会に対して説明責任を負うべきところであるということ、これは、国民だれしもあるいは国会もそういう意向でありました。ですから、この委員会も理事会でそのことを皆で確認し、また、国会の国対の方もそういう意味合いで、官邸に対しても、総理大臣がこの委員会に出席をしなさい、そういう話を持っていったはずであります。

 これについて、総理大臣、逃げちゃったんですけれども、これはどういうことだったんですか。官房長官、まずそこからお答えをいただきたいと思います。

細田国務大臣 各党の国会対策委員会あるいは委員会において御協議があったことは仄聞しておりますけれども、御指示に基づいて対応しておるわけでございます。

中川(正)委員 いや、御指示に基づいてじゃないでしょう。総理大臣が、きのうの党首会談、これをもって説明としたい、あるいは、日曜日を含めてこれからテレビでしっかり説明するので、それでいいだろうということを言っていますよと私の方に返事が返ってきていますよ。

 これは、総理大臣自身も全く大きな間違いをしている。我々は国会に対する説明責任を問うているんですよ。まずそれがあってすべてがスタートをする。今回は特に、総理大臣が勝手に言って、もうどうしても断り切れないようなそういう状況に自分自身を追い込んでいきながら、こうした勝手な決断をせざるを得なかった。それに対して与党そのものも反発をしていたじゃないですか。だからこそ、改めて国会での説明責任ということを言っているわけです。

 さっきの話では返事になりません。もう一度答えてください。

細田国務大臣 中川先生の御意見は拝聴してよく総理大臣にもお伝えいたしますが、私どもは、委員長、委員会の御指示に従い、また、国会対策の調整を経て、閉会後でございますが本日この審議に私どもが誠実に対応しておるつもりでございます。

中川(正)委員 こんな話ですから、委員長、もう一度私たちはこの委員会を開催する必要があるんだろうというふうに思うんです。それで、その上で総理大臣が出席をして改めて議論をしていくということ、このことを、実はこの委員会が始まる理事会の中でも、私たちはそのような提案をさせていただきました。

 これは委員長において、改めて理事会の中で相談をしながら、ぜひ対処をしていただきたいというふうに思います。どうでしょうか。

斉藤委員長 ただいま質問者の中川委員から御発言がございまして、総理の出席を求めて委員会を開催したらいかがかというお話がございますが、その件については、理事会で協議をさせていただきたいというふうに思います。

 なお、その前段で、本日の開会につきまして、理事懇また理事会においてそれぞれ協議を重ねてきたところでもございますが、総理の出席については、努力をするということが私の理解だったかなというふうに思います。したがいまして、委員会として出席を確約したということではなかったというふうに私は理解をいたしております。

中川(正)委員 その答弁で十分だと思うんです、委員長。努力をするということは、我々の意思としては、総理、出てきなさいよということだったんですよ。だから、それは調っているんです。それをさっきのような話で、こちらのせいにして出てこなかったというふうなこと、これは間違いです。そのことを指摘しておきたいと思います。これは、総理の意思で出てこなかったんですよ。そのことを改めて指摘しておきたいというふうに思います。

 その上で、質問に入っていきたいというふうに思います。

 先ほども河合委員の方から少し話が出ましたが、これまで、東ティモールやハイチなんかは、その決議の中に、いわゆる国連の決議の中に人道支援等々も含まれておったということ。それで、さまざまな形で今回のようないわゆる多国籍軍への参加――後でこの「参加」という言葉についてはもう一度確認していきます。さっきの話だと、同じ人が言っているのに、参加と、加わると、それから、またそれは別個なんだというのと、同じ自衛隊の立場が、その局面、局面によって言葉の使い方まで違うという、そんなばかな話はないと思うんですが、そこについてはまた後でお話しします。

 そういうことで、いわゆる多国籍軍への関与、こういう枠組みの国連決議が幾つもあった、特に最近そういう形の包括的な動きになってきたということなんですが、これまではそれには参加をしてこなかった。そのことについて、今回は参加をする、参加という言葉なのか、これは後で定義をもう一度統一してもらわなきゃ困るんですが、今回は多国籍軍の中でやるということになったわけですね。そこがこれまでとどう違うのか。さっきの答弁だと、これまでとどう違うのかというのは答えていなかったんですよ。何が変わったのか、それを答えてください。

細田国務大臣 イラクで活動する自衛隊は、多国籍軍の中で統合された司令部のもとにあって、同司令部との間で連絡調整を行うが、同司令部の指揮下に入るわけではありません。自衛隊は、引き続き、我が国の主体的な判断のもとに、我が国の指揮に従い、イラク特措法及びその基本計画に基づきまして、イラク暫定政府に歓迎される形で人道復興支援を中心とした活動を行うものでありまして、この点については、米英両政府との間でも了解に達しております。

 また、これまで同様、自衛隊は、憲法の禁じる武力の行使に当たる活動を行うものではなく、イラク特措法に基づき、いわゆる非戦闘地域において活動するものであり、他国の武力の行使と一体化するものではありません。

 以上のとおり、自衛隊が多国籍軍の中で活動をすることは、憲法との関係で許されないとしてきたいわゆる多国籍軍への参加に関する従来の政府の見解を変えるものではなく、また、いわゆる非戦闘地域において人道復興支援を中心とした活動を我が国の主体的な判断のもとに行うものであることから、憲法上の問題は生じないと考えているわけでございます。

中川(正)委員 官房長官、私は憲法上の話を聞いているんじゃないんですよ。ちゃんと聞いてください、質問を。

 東ティモールやハイチや、これまで同じような枠組みであった、いわゆる決議があった、そのものについては日本は参加をしないということを貫いてきた。ところが、ここでは、加わるんだということになっているわけですよね。何が違う、何が変わってきたのか、そこを答えてもらいたいということです、官房長官。

川口国務大臣 先ほど別な委員の御質問にお答えして申し上げましたけれども、まず、多国籍軍にはいろいろな形のものが、いろいろな任務というのがありますということ、目的、任務、態様、いろいろありますということは繰り返しませんけれども、そして、実際に我が国としてある多国籍軍に関与するかどうか、これについては、国連決議の内容、多国籍軍の目的、任務、編成等によって判断をするわけですが、それだけではなくて、国際社会が当該事案に対応する上で、例えばハイチですとかティモールですとか、そういった対応をする上で我が国が果たすべき役割、責任、そして、この事案が我が国に対するどういう影響を持つかということを外交政策上総合的に判断して、そして関与の仕方を決めているということでございます。

 それで、イラクについてなぜ関与したかというのは、先ほど別な委員に申し上げましたので改めて繰り返しませんけれども、そういう観点から見たときに、東ティモールはどうかということで申し上げますと、東ティモールにおける多国籍軍、INTERFETでは、これは人道支援活動に関する活動も任務として規定をされております。ただ、ほぼ時期を同じくして設立をされましたPKO、これは国連東ティモール暫定行政機構、UNTAETといいますけれども、これがその後INTERFETの任務を引き継いで、その任務に人道復興支援の提供が含まれていました。ということで、我が国としては、国際平和協力法、これに基づいてUNTAETの中で支援を行うこととしたということでございます。

中川(正)委員 もっとこれをはっきりさせると、こんな聞き方があるかと思うんですが、自衛隊をそのままそこで継続して参加をさせていこうと思ったら、この多国籍軍の枠組みを使うよりほかに選択肢がなかったということなんですか。そういうことなんでしょう。

川口国務大臣 一般的に言いまして、一国の軍隊が他国の中で活動をするというときには、その国の同意、そして法的な地位の確保、これが必要になります。そして、我が国の自衛隊は今イラクの人たちに歓迎される形でイラクにいるわけでございますけれども、この自衛隊が今後イラクの中で、サマワにおいて活動をし続けるということのためには、イラクの政府の同意、法的な地位の確認ということが必要になるわけでございます。

 それで、暫定政権、暫定政府が六月の三十日に向けて、主権の回復に向けてのいろいろな準備を今しているわけでございますけれども、この時点で、六月三十日までに我が国について法的な地位の確認をするということは、現実的な問題として非常に困難であろうかというふうに考えております。

中川(正)委員 だから、この閣議決定の中の文面にもあるように、法的な地位を確保するために、ただその目的だけのために多国籍軍の枠組みを使った。逆に言えば、それ以外のポジションで、それ以外の形で継続をすることができたんですか、できなかったんですか、そこだけ答えてください。

細田国務大臣 各国の部隊が完全な主権の回復後のイラクで活動を継続するに当たりましては、イラク暫定政府の同意を得ることが必要である、また、活動に当たっての法的地位をしかるべく確保することも必要であります。

 このような中で、イラク暫定政府のメンバーは、ブラヒミ国連事務総長特別顧問とイラク各派との協議を経まして六月一日に決定したばかりでありまして、その後、イラク暫定政府は、イラクでの政治プロセスを定める基本法に従い、完全な主権の回復後に活動する軍隊については、多国籍軍がイラク軍のパートナーであることを前提として種々の調整を行ってきました。今般、このような調整を経ましてイラク暫定政府から多国籍軍の駐留が要請され、また、これが安保理決議一五四六でも確認され、全会一致で採択されたところであります。

 このようなイラク暫定政府や国際社会の努力にもかかわらず、我が国の自衛隊に限りまして、個別の同意や法的地位を六月三十日までにしかるべく確保することは、イラク暫定政府に係るさまざまな不確定要素の存在により、現実問題として不可能と考えられるということでございます。

 また、イラク暫定政府の要請に基づきまして、安保理が全会一致で採択した新たな決議に基づく多国籍軍は、国際社会の総意を反映しているものと考えられ、我が国が多国籍軍の中で活動しないことを前提にイラク側と交渉を行うことは、イラク側に過大な負担をかけることとなることなどから、適当ではないと判断したわけでございます。

 したがいまして、自衛隊が多国籍軍の中で活動すると整理をいたしまして、所要の同意及び法的地位に関する問題を解決することが必要であります。

中川(正)委員 だから、別な言い方をすれば、さっきの説明を聞いていると、これは、日本の意思でもって多国籍軍に入っていくあるいは加わっていくということよりも、そういう状況に追い込まれて、法的な立場、地位を確保するためには多国籍軍に入るよりほかないんだという選択肢、それだけの理由で今回の話があったということだと思うんですね。そのようにさっきの答弁で解釈をさせていただきたいというふうに思っています。

 そして次に、参加、それから、協力とかあるいは加わるとか、こういうことが、それぞれの説明する中身によって変わってきているんですが、加わるというのはどういう意味なんですか。

秋山政府参考人 従来、憲法との関係で多国籍軍をどう考えるかということで、「参加」ということ、あるいは「協力」、「「参加」に至らない「協力」」、そういう言葉を決めて論じてきたわけでございますが、それ以外の、加わるとか一員となるとかいう言葉は、いわば一般の通念上の言葉でございます。

中川(正)委員 総理大臣が我々野党党首に説明をしたときには、参加なんですよ。さっきの官房長官の話では、加わる。これまでは協力とか。これは統一してください。どういう位置づけなんですか。

細田国務大臣 六月三十日より、自衛隊は多国籍軍の中で活動するわけですが、あくまで我が国の指揮に従い活動するものであります。これは、一般的な意味の言葉においては、多国籍軍に参加すると言ってもよいと考えております。

 従来は、指揮関係に焦点を当て、司令官の指揮下に入るとの限定された意味において「参加」という言葉を用い、政府として見解を示してきたものでございますが、このことは、先ほどのように、一般的な意味で参加と申し上げることと矛盾するものではございません。

 重要なのは、自衛隊が多国籍軍の中で活動を行うに当たっては、あくまでも我が国の指揮に従い、イラク特措法及び基本計画に基づき、いわゆる非戦闘地域において人道復興支援活動を我が国の主体的な判断のもとに行うということであります。このような考え方に基づく我が国の活動は、憲法の禁じる武力の行使に当たるものではなく、憲法上の問題は生じないということでございます。

中川(正)委員 「参加」という言葉で統一をされるということ、その中身が、指揮権、指揮のもとに入らないというふうなことですね。そういうことだろうと理解をさせていただきました。

 これは、そうすると、どういうふうに解釈するんですか。アメリカで、これは盛んに報道されていますが、マクレラン報道官が十五日の記者会見で、いわゆる日本の自衛隊については、ポーランド、英国、イタリアの各軍隊と同様に、明らかに自国の指揮系統のもとにあると。しかし、その最終のところで、一方で、多国籍軍の主力が米軍になることを踏まえて、多国籍軍全体は米司令部によって監督される、これはオーバーシーンという言葉で表現をされていますね。

 これは、私は二つ聞きたいところがあるんですよ。

 私は、今の「参加」という言葉の定義から、その中身からいって、日本は特別なんだろうと。ほかの国とは違うということであったから、わざわざ米英と外交上の確認をしたというさっきの話だったんですね。

 ところが、この報道官の話では、ポーランド、英国、イタリア等々、英国ともありますが、そこのところは大体同じなんですよ、それぞれの主権を重んじなければいけないというところは同じなんですよというこの表現がある。これは、日本が特別だということを言っていないんですよ。これは、どういうふうにここを政府は説明するのかということ。

 それからもう一つは、この最後の、アメリカがオーバーシーン、アメリカによって、これは監督下と見るのかな、そういう訳になっていますが、そういう状況でオペレートするのだということですね。これについて、これこそが指揮権でしょう。

 だから、どっちにしたって、さっきのユニファイドコマンドが問題になっていますけれども、ユニファイドコマンドを指揮権と訳さないとまるっきり国際文書が統一できないということ、これはまた後で証明しますけれども、そういうこともあるんですよ。日本だけが勝手な訳をつけて、日本だけが勝手な解釈をしてこれは説明しているわけですけれども、現実、アメリカでは全く違った話で説明をされているということが今起きているわけですね。

 これについて日本政府は説明をしなければならない義務があるんだろうというふうに思うんです。明らかにしてください。

川口国務大臣 おっしゃったマクレラン報道官あるいはロドマン国防総省次官補の発言については承知をいたしておりますけれども、私がその方々に成りかわって、私の発言はこういう意味でしたということを申し上げるというのは、いささか難しいというか、できないということですけれども。

 したがって、しんしゃくをして言う、そのことについてこういうことだろうと言うのは余り適切ではないかもしれませんが、そういうことで、あえて意味するところというのはこういうことかなということでございますけれども、まず、ほかの国と統合された司令部との関係について日本の立場で何か言うことはできない、これはもうおわかりいただけるだろうと思います。

 それで、はっきりしていることは、我が国として、我が国の自衛隊の活動は、これは統合された司令部のもとの指揮下において行われるものではなくて、あくまでも我が国の主体的な判断のもとで、我が国の指揮に従って、イラク特措法に従って活動をするということであって、これは先ほど申しましたけれども、アメリカ、イギリスとの間では、我が国としてはそれぞれ先方の外交当局の高官との間で確認をし、政府間として了解をしているということでございます。

 オーバーシーという意味は、大きく言って、監督をするというような意味であろうかというふうに思いますけれども、それは、お二人のおっしゃっていることの意味ですけれども、あえてあえてしんしゃくをすれば、これは、多国籍軍の中において各国の軍が行う治安維持活動ですとか人道復興支援活動ですとか、そういったさまざまな活動、これを効果的に実施をしていくために、多国籍軍の司令官が各国の軍、これの活動を取りまとめるといった、そういう趣旨を述べているのではないかというふうに理解をいたしております。

中川(正)委員 さらにこの問題について、さっきちょっと言及されましたが、ロドマン次官補が下院の軍事委員会に提出をした文書があるんですね。これは、そんなオーバーシーというような話じゃないんですよ。

 これはどういう経緯の中で説明しているかというと、アメリカとそれからイラク、それのセキュリティーパートナーシップ、いわゆる安全保障、治安についての関係、パートナーシップの関係について説明しているわけでありますが、これは、また後でこの問題も出ますが、イラク軍とそれから多国籍軍の関係について、それを総合的に調整あるいは統括をしていく委員会、国防委員会あるいは安全保障委員会というんですか、それを形成していく過程の中でこの話が出ているんですけれども、「ユニファイド コマンド イズ アンダストゥッド イン プレゼント サーカムスタンシーズ ツー ミーン USコマンド」。だから、ユニファイドコマンドはアメリカのコマンドだというふうに、はっきりとアメリカ議会に対してはアメリカ政府は説明しているんですね。

 だから、こんなのは、これを日本のような訳で訳せといったって、全く通じなくなってしまうということ、これがあります。

 そのほかにもいっぱいこういう表現が出てきまして、特に「MNF アンダー ユニファイド コマンド」とか、前提としては、これはやはり指揮なんですよ。指揮権、指揮そのものを言っているということ、これが前提でないと話が通じなくなってくるという、そういう前提でアメリカでは説明をしている。

 それに対して、日本は、全く都合のいい、へ理屈を通すための訳文を使って説明をしているわけですけれども、こういうところの破綻というのは、これは余りにも恥ずかしい、すぐばれるような破綻なんですが、そういう結果になってきているということ、このことについてどのように説明されますか、官房長官。

細田国務大臣 ロドマン国防次官補とかマクレラン報道官がさまざまな御発言をされているということは承知しております。

 しかし、これは、各国軍の治安維持その他の軍の活動を取りまとめるといった趣旨で述べていると理解いたしますが、我が国は、自衛隊の活動は統合された司令部の指揮下で行われるものではなく、あくまでも我が国の主体的な判断のもとで、我が国の指揮に従い、イラク特措法に基づきこれまでの活動を継続して行うということで、このことは米英とも了解に達しております。

中川(正)委員 私が質問したことに答えていないと思うんですよ。私が質問しているのは、アメリカが言っているユニファイドコマンドと日本で皆さんが説明しているユニファイドコマンド、これは中身が違いますねということを言っているんです。

川口国務大臣 我が国の自衛隊が我が国の指揮のもとにある、これについて、これは確認をしているわけでございます。米英との間で確認をしている。ですから、このユニファイドコマンド、我が国は、「統合された司令部」、これは前から、一五一一のときもそのように訳しているわけで、我が方としてはそれは正しい訳であるというふうに思っているというのは先ほど別な委員に対して御説明をいたしましたけれども、そして、我が国の自衛隊は我が国の指揮のもとにある、これは全く不動のことであって、変わらないわけでございます。

中川(正)委員 これは、これまでの国連の中の議論をずっと追ってくるとよくわかるんですが、アメリカ自体の思惑と日本の思惑がそれぞれ国内向けに食い違っているというところからくるんですね。

 今、何が国連の中で争われてきたかといったら、この指揮権について、アメリカはそれを持ち続けるという前提で、今のCPAのもとにあるコアリションを多国籍軍に振りかえていく。その多国籍軍という名目の中で、実質的にはアメリカが指揮権を持ち続けながら占領政策を続けていくという前提、このことを議会には説明しなければならないから、アメリカが指揮権を持っていきます、こういう話で来たわけですね。

 ところが、日本については、そういう状況の中でこの中に参加をしていくという決断をしたわけですよ。参加をしていくという決断をした。しかし、もう一方で、指揮下に入れば、この中には武力行使と一体化していくそういうミッションが入っている。それを含めて指揮下に全体ありますよというような話にしていくとそこのところの整合性が合わなくなるから、日本のミッションは、多国籍軍とは一線を画した指揮下の中で日本は人道支援だけをやるということを貫くんだということを我々に説明しているわけでしょう。

 そういう二枚舌というか、いいとこ使いというか、お互いの国が、都合のいい話で、こうした国会に対する、あるいは国民に対する説明をしながら、実質的に国連で、本来はこのコアリション以外の国がこうした活動に参加をして、トータルでこのアラブという全体のミッションを完成させていかなければならない、そういうことであるにもかかわらず、アメリカのそうした指揮権に対するこだわりが見え見えなために、フランスやドイツあるいは他の国々がいまだ多国籍軍にも参加をするという意思表示がない。しかも、逆に、これまで参加していた国々がそれから引き揚げてくるという形で、国連の名前だけを冠して、中身が見透かされているから本当の機能がここから生まれてこない、こういうことが明らかになってきた、そういうことだと思うんですよ。

 そんな中で、日本政府がさっきのユニファイドコマンドをゆがめた形で翻訳しているわけですが、これはどっちが正しいのか、はっきりしてください。

鶴岡政府参考人 二点申し上げたいと思います。

 一点は、ただいま御指摘の……(中川(正)委員「私、指名していません。大臣」と呼ぶ)

斉藤委員長 この後、この後。私が指名しました。

鶴岡政府参考人 アンダー・ユニファイドコマンドについてでございますが……(中川(正)委員「私はもともとそういう通告していない」と呼ぶ)先ほどから大臣も御説明申し上げているとおり……(発言する者あり)

斉藤委員長 しっかり答えてください。私が指名しました。

鶴岡政府参考人 CJTF7という……(中川(正)委員「話が違うじゃないか。答えないと言っていたでしょう。座っているだけだという前提でこっちは言ったんじゃないか」と呼ぶ)

斉藤委員長 その後、答えさせますから。はい、どうぞ。

鶴岡政府参考人 二点お答え申し上げますが、一点は、訳の問題として、委員御指摘のアンダー・ユニファイドコマンドについて政府が用いております「統合された司令部」という用語でございますが、この用語はこれまで一貫して使用してきたものでございまして、一五四六決議になって用いたものではございません。一五一一決議でもそうでございますし、これまでの国連の地位協定などでも使われてきた用語をこのように訳してきております。これが第一点でございます。

 もう一点でございますが、一五四六安保理決議という決議は三部構成になっております。決議本文、そしてそれに付随いたします二つの書簡がございます。

 一本の書簡は、アラウィ暫定首相、イラクの暫定政府の首相でございますアラウィ氏から、多国籍軍の協力を安保理を通じて国際社会に求めるという趣旨を含めた書簡でございます。もう一本の書簡は、その多国籍軍を代表する立場から、米国の国務長官であるパウエル氏が出しておる書簡でございまして、その中に多国籍軍の任務が書かれております。

 したがいまして、安保理決議のもとでイラクの暫定政府が求めておりますのは、多国籍軍による協力でございます。

 以上でございます。

川口国務大臣 アンダー・ユニファイドコマンドでございますけれども、今、鶴岡審議官からお話をしたこととダブりますけれども、昨年の十月の一五一一ですけれども、ここではユニファイドコマンドを「統合された司令部」ということで訳してきています。これまで、「統合された司令部」ということで訳してきていますのは、これは米側に照会をしましたところ、これがCJTF7、連合軍司令部ですが、これを指しているという説明を踏まえたものでございます。

 それで、一五四六が採択をされまして、改めて米側に照会をしたところによりますと、これは従前のCJTF7より組織改編をされましたMNFI、イラク多国籍軍司令部といいますが、等が統合された司令部に当たるということなどを踏まえまして「統合された司令部」という訳を行ったということでございます。

 それから、先ほど審議官が言いましたように、国連軍地位協定関連の国際約束等におきましても、この訳は「統一司令部」ということで訳しているわけでございます。

中川(正)委員 それでは、別の意味合いで聞いていきたいと思いますが、さっきのロドマン次官補が、アメリカの議会の中で説明しているユニファイドコマンドは、現在の状況下では米軍の指揮だということと理解されると言っているんですが、これは、日本政府としてもそこは認めるんですか。――いやいや、大臣だよ。

斉藤委員長 その後、大臣から答弁してもらいます。

鶴岡政府参考人 ただいまの御質問でございますが、ロドマン国防次官補が議会に対して提出をいたしました文書の中で、先ほど委員、英語でお読みになられたとおり「ユニファイド コマンド イズ アンダストゥッド イン プレゼント サーカムスタンシーズ ツー ミーン USコマンド」という表現があることは承知しております。

 これを両方とも同じ言葉で、ユニファイドコマンドというのを、私ども、「統一された司令部」「統合された司令部」というふうに訳しておりますが、先ほど申し上げたとおり、パウエル長官は、米国を統合された司令部を代表する国といたしまして安保理に対する定期報告を求められておりますし、その立場で書簡を安保理に対して出しておりますので、その意味におきますUSコマンドであるというふうにも理解できると思います。

川口国務大臣 事実関係について政府参考人から答弁をしてもらいましたけれども、いずれにしてもはっきりしていることは、我が国として「統一された司令部」というふうに訳していますのは、これは米軍と、米政府と話をして、先ほど申し上げたようなそういうものを指すのであるということをベースにしているということと、それから、今までも、別に今回初めてそれを使ったわけではない、今回の都合によってそういうふうに使ったということではないということでありまして、さらに、我が国の自衛隊は我が国の自衛隊の指揮のもとにあるということについても、既に米英両政府と確認済みであるということでございます。

 したがって、「統一された司令部」というふうに訳し、そして、我が国が、実際に自衛隊がそういった理解のもとで行動するということに何ら問題は生じないというふうに考えております。

中川(正)委員 いや、アメリカとしては、我が国だけじゃなくて、どの国も皆同じようなポジションですよ、こう言っていて、それで、その上で指揮権はアメリカにある、こういうふうにはっきり言っているわけですよ。それを、日本だけが特別だと言って国会に説明しているのは日本の政府なんです。アメリカでは特別だと言っていない、これ。

 そういう、二枚舌というか、それぞれが勝手な説明をしてこれが成り立つんですかというのが私の一つの問題提起、ここが一番説明し切れていないところですよという指摘をしておきたいのと、それからもう一つ、さっき、もう一回聞きますけれども、全然答えていない。このアメリカの指揮権、いわゆるユニファイドコマンドというのがアメリカンコマンドなんだということ、これに対して日本政府はどういう見解を持っているんですか。事実関係を説明しろと言っているんじゃないんですよ。日本政府はどういう見解を持っているんですか、これでいいと言っているんですか、それともおかしいと言っているんですか、これを聞いているんです。

川口国務大臣 米軍は多国籍軍の中で非常に大きな割合をその人数の上からいって占めているわけでございます。そして、多国籍軍のトップ、司令官、これは米国人であるということは、これは既に言われていることでございます。我が国としてそれがおかしいということを申し上げるつもりはないわけです。

中川(正)委員 さっきの話でも前提になっているのは指揮権なんですよ。アメリカが一番多い、だから指揮権はアメリカに任すと日本政府は言っているんでしょう。

川口国務大臣 我が国の自衛隊は、多国籍軍の統一された司令部と連携をし、調整をし、活動をしていくということでございます。

 それで、先ほど申しましたように、多国籍軍の統一された司令部のトップは、これは米国人であるということであって、我が国はそういう理解で、それについて米英政府と確認をしているということでございます。

中川(正)委員 いや、確認をしていても、アメリカではその確認が生きていない。全く違った説明をしていて、日本も例外でないということになっていますよということですよね。そこのところを改めて指摘しておきたい。

 これ、こうやってやっていても水かけ論で、日本がいかに自分の都合のいい、ここで詭弁を使っているかというのがだんだんだんだん私もわかってきましたけれども、そういう流れの中での今回の多国籍軍の議論ですねということ、これを確認しておきたいというふうに思っています。

 さて、次に話を進めたいと思うんですが、問題は武力行使と一体化というところ、これを、抽象論ではそれはいろいろ議論ができると思うんですが、一番問題になるのはいわゆる現場の隊長だというふうに思うんですね。それぞれこんなことが起きたときに、政府としてはこれをどういうふうに解釈していくのかということを個別具体的にこの際、答えておいてもらいたいというふうに思っています。

 後方支援で、これは後方支援、入っていますから、飛行機の輸送、多国籍軍の兵たんや隊員を輸送中に攻撃され、飛行場での応戦というのが展開されたとき、このとき隊長はどういう判断をするのかということですね。特に、その周辺で多国籍軍が戦っているという状況があるときに、自衛隊だけどこかへこもってじいっとしている、そういうことになるんですか、どうなんですかと、こういうこと。

 それから、まだあるんです。道路工事の現場だとか学校の補修に今行って、その報告をたくさん受けていますね。ここで襲撃されて応戦をしていく、こういうケースが考えられますね。それに対して、どういう立場で応戦をしていくのか、どこまでやっていくのか。特に、その際にも、多国籍軍、これは今オランダ軍がサマワ周辺にいるわけですが、これとの連携の中で、治安維持というのはオランダ軍がやっているんでしょう。第一次的に例えばオランダ軍がそれに応戦をしてくれた、それに対して日本の自衛隊というのはどういう立場をとっていくのかということですね。

 それからさらに、自衛隊のキャンプ地に、最近そういう可能性が、近くに落ちたということで何回も出ましたけれども、自爆テロやあるいは迫撃砲あたりを撃ち込まれた。それに周辺の多国籍軍が応戦をした。それに対して、自衛隊というのはあくまでも自衛隊のキャンプの中にこもり続けているのかということですね。

 これはみんな共通しているんです。ケース、ケースで、まさに起こりそうな、まさにそういうリスクを抱えながら今自衛隊の皆さん頑張っているんですけれども、そのときに、さまざまに、多国籍軍との関係でどう判断していくのかというところですね。そういうところ、具体的に答えてください。

    〔委員長退席、小野寺委員長代理着席〕

石破国務大臣 これは、先生当然御案内のことと思いますが、今回、多国籍軍の中に入って活動を継続するということと別に関係が変わるわけではございません。今までと全く一緒でございまして、答弁といたしましては、イラク特措法を御審議いただきますときに十七条の解釈について御説明をいたしました。それと何ら答弁は変わりません。

 るる申し上げておりますとおり、今回、閣議決定、閣議了解をいたしましたが、そのことは別に根拠法となるイラク特措法の改正を伴うものでもなく、新法の制定を行うものでもございません。したがいまして、特措法十七条に書かれておりますとおりの対応をすることに相なるわけでございます。

 それは、例えば、武器使用の権限について申し上げれば、それが自己保存のための自然権的権利の行使ということに該当するのかしないのかということ。あるいは、「自己の管理の下に入った者」というふうな解釈がその場合に成り立つか成り立たないかということ。あるいは、宿営地に迫撃砲が撃ち込まれたという状況で、治安を維持するオランダ軍がそれに対して応戦をしている、応戦といいますか、応戦というよりも、日本に撃ち込まれているわけですから、応戦という言葉が必ずしも適当かどうかは存じませんが、その勢力に対しまして攻撃を加えている。じゃ、日本がそれに対しての加勢ができるかといえば、必ずしもそうならない場合があるであろう。すべてはケース・バイ・ケースということになるのだろうと思っています。

 しかし、この法律を根拠にして活動を続けます以上、非戦闘地域でございますから、一体化の議論というものは当然起こりません。

 そして、隊長の判断だというふうに先生がおっしゃいました。第一義的には隊長の判断でございます。隊長は、この法律というものをすべて存じて行動しておりますので、法十七条の趣旨もすべて理解をしておりますので、適宜適切に行動するものでございます。

 今回の多国籍軍との関係と、武器使用あるいは武力行使との一体化を避けるというものは、全く関係なく、同じ議論でございます。

中川(正)委員 さっきちょっと話を出しましたが、今回、暫定政権と多国籍軍の間に、具体的な要件を決定していく国家安全委員会というのが設立をされて、それにいわゆるユニファイドコマンドが参加をして、来てくださいよと、書簡の交換の中でそのような設定がされて、さらに読んでいくと、この国家安全委員会というのは、中央レベルだけじゃなくて、それぞれの段階で形成をされていくということ、それで、それがイラク軍自体のいわゆる警察あるいは治安部隊とそれから多国籍軍の調整をしていきます、こういう想定になっているんですよね。

 この国家安全委員会に対しての自衛隊あるいは日本の位置づけというのはどういうふうになるんですか。

鶴岡政府参考人 ただいま御質問の点は、安保理決議一五四六において定められました安全保障パートナーシップの仕組みにかかわるものだと思いますので、その概要をまず御説明申し上げたいと思います。

 これは、安保理決議パラ十一におきまして、この観点から、主権を有するイラク政府と多国籍軍との間の安全保障パートナーシップを確立し両者間の調整を確保するための枠組みを示そうとするということで、この書簡の中に含まれているものに言及がございます。

 この書簡に記述されました安全保障機構は、イラク政府と多国籍軍が、機微な攻撃作戦についての政策を含む基本的な安全及び政策問題の全範囲について合意に達成するためのフォーラムとなり、緊密な調整と協議を通じ、イラク治安部隊と多国籍軍の間の完全なパートナーシップを確保することに留意すると書かれております。

 したがいまして、任務は治安でございまして、調整は、イラクの治安部隊と多国籍軍の間で行われることが想定をされておるということでございます。

中川(正)委員 だから聞いているんですよ。だから聞いている。そこで、日本の自衛隊、特にサマワでのこの委員会と日本の関係、これはどうなるんですかということを聞いているんです。

 これは大臣だと思うんですけれどもね。関係ないんですか、日本は。大臣ですよ。

石破国務大臣 それは今外務省から答弁をしたとおりでございますが、私どもがサマワにおきまして人道復興支援活動あるいは安全確保支援活動を行います場合に、それは、それぞれの機関と調整、連絡をとることは当然あり得ることでございます。

 いずれにいたしましても、私どもはどこの指揮を受けるわけでもございません。日本が主体的に活動し、日本国の指揮のもとに行うわけでございますが、活動の円滑化のために、あるいはよりよい目的達成のために、あるいは安全確保のために、いろいろな方面と連絡調整を行うことは当然あることでございます。

中川(正)委員 そんなことを聞いているんじゃないんです。

 具体的には、この調整も、それこそユニファイドコマンドを通じて、ということは、多国籍軍を通じてそこから調整に入るんだろう。恐らくこの中には、地域でもこの安全保障委員会がつくられるということですから、その想定としては、日本がその地域でどういう活動をするかということは、当然、調整事項として中に入るはずなんですよね。それを直接日本がその委員会に参加して調整をするということじゃなくて、多国籍軍のコマンドが代表して入っていく、それで調整をした結果、その指揮権のもとに日本におろしてくる、こういうことだと思うんですよ、想定としては。

 そういう意味で、私が言いたかったのは、勝手に、関係ない、日本は日本の統治権のもとに、あるいは統帥権のもとにやるんだということがなり得ない。客観情勢からいって、そういう形の対応というのはできないという状況であるにもかかわらず、そこのところは何とか逃げなきゃならないという感覚が私は実はわからない。わからない。どうして指揮権にこだわるか、そこが一つわからない。これは、まるっきり入っていってもいい話ですよ。

 では、どうして指揮権にこだわるかというと、これは想定が違うんですよ。それぞれの国の役割に応じて、例えば、治安維持、いわゆる武力を伴う治安維持、あるいは人道支援、あるいは後方支援、これは、国によって役割を分担していくというようなそういう想定の議論じゃないんですよ。これをトータルにしてそれぞれの国に対して支援をしてほしいという、トータルな話なんです。そのトータルな話でないと恐らく現実的なオペレートはできないということが想定されていて、その中にあの昔の東ティモールの問題もあった。今回もそれが変わらずにある。

 それを、日本の今の状況というのは、どうしても自衛隊というのにこだわるから、あそこへ派遣しなきゃいけないからというので、その中から人道支援だけ勝手にぽっととってきて、それにへ理屈を合わせて、地位協定だけは結ばなきゃというそういう追い込まれた状況の中で、多国籍軍に今回は参加をしていくんだということでないと立ち行かなくなったというそんな状況が浮かんできましたねということだと思うんです。

 そういう意味で、ほかの国を含めて、この現在の国連決議はこうしてあったものの、実態はCPAの延長線上にある。しかも、アメリカが指揮権を崩そうとはしない。これは、それこそ侵攻したままの統治だということ、これが続いている。そんな国際的な了解の中で、例えばドイツやフランスがこの問題に対しては一線を画した形で見ているということ、そこがあると思うんです。

 だから、その原点に戻っていったら、やはり日本ももう一回、アメリカの大義が崩れているだけに、この問題は見きわめて、自衛隊というのを基本的に、形だけこうして中途半端なもので駐留をさせていくということについては、これは見直していかなければならない。もう一回原点に戻って、日本ができること、これを議論していく必要があるんだろうというふうに思います。

 そのことを申し上げながら、私の質問時間が来たようでありますので、終わります。

小野寺委員長代理 中川君、答弁は。

中川(正)委員 いや、答弁は要りません。あと、緻密にこちらの方からついていきます。

 以上です。ありがとうございました。

小野寺委員長代理 次に、前原誠司君。

前原委員 民主党の前原でございます。

 まず、内閣法制局長官にお伺いをいたします。

 昭和五十五年の十月二十八日の政府答弁書を引用して、平成二年十月二十六日に国連特別委員会、衆議院の特別委員会において中山太郎外務大臣が答弁されているのが、一応政府の統一見解になっているわけであります。その内容について、少し事実関係だけお伺いをしたいなと思います。

 この当時の中山外務大臣が引用されている部分、ちょっと読みます。

 当該「国連軍」の司令官の指揮下に入り、その一員として行動することを意味し、平和協力隊が当該「国連軍」に参加することは、当該「国連軍」の目的・任務が武力行使を伴うものであれば、自衛隊が当該「国連軍」に参加する場合と同様、自衛のための必要最小限度の範囲を超えるものであって、憲法上許されないと考えている。

こう書いてありますね。

 それで、長官にお伺いしたいのは、「当該「国連軍」の司令官の指揮下に入り、その一員として行動すること」と「目的・任務が武力行使を伴うもの」、この二つが、憲法上、必要最小限度を超えるという判断になっているわけでありますが、この二点は、一つでも成り立ち得るのか、あるいは、これは、いや、二つないとだめなんですと。つまりは、指揮下に入り、その一員としてする行動がなければ、武力行使を目的、任務とするものでもいいということなのか。そしてまた、逆もありますね。指揮下に入っても、目的、任務が武力行使を伴わないものであれば、それは大丈夫なのか。かつになっているのか、またはになっているのか。またはの場合は二通り組み合わせがあるわけですけれども、どういう解釈のもとにこれが成り立っているのか。その点、御答弁いただけますか。

秋山政府参考人 五十五年の政府答弁書、それから平成二年の中山外務大臣答弁、申し上げていることは既に今委員が御指摘のとおりでございますが、そのような考え方をとりましたゆえんは、目的、任務に武力行使を伴うような多国籍軍に、当該多国籍軍の司令官の指揮のもとに入り、その一員として行動するというようなことになりますと、たとえ自衛隊が直接に武力の行使を任務としない場合でありましても、まさに、当該多国籍軍の司令官の指揮下で、その命ずるところに従い武力の行使に関連する行動をとるという意味におきまして、自衛隊の活動が武力の行使に及んだり他国の武力の行使と一体化することがないという前提を確保することが難しいと考えたからでございます。

 したがいまして、お尋ねにお答えしますと、五十五年答弁書にありますように、「当該「国連軍」の目的・任務が武力行使を伴わないものであれば、自衛隊がこれに参加することは憲法上許されないわけではない」ということになりますし、それから、当該国連軍の目的、任務が武力行使を伴う場合にありましても、これは平成二年の外務大臣答弁にありますように、「参加」という概念を、今の、指揮下に入るというふうに決めまして、それ以外の広い関与形態も含んで全部を「協力」といいまして、その上で、今の意味での「「参加」に至らない「協力」については、当該「国連軍」の目的・任務が武力行使を伴うものであっても、それがすべて許されないわけではなく、」、今は国連軍と申し上げておりますが、この考えは多国籍軍にも当てはまる、後ほど政府の答弁がございますが、「当該「国連軍」の武力行使と一体となるようなものは憲法上許されないが、当該「国連軍」の武力行使と一体とならないようなものは憲法上許されると解される。」今の中山大臣答弁の第四項にそのように書いてあるところでございます。書いてあるというか、大臣はそのように答弁されたところでございます。

前原委員 ちょっと最後の方がわかりにくくなったんですが、もう一度確認をいたしますと、この二つのポイントは両方相まってのみだめである、いわばかつということであって、片方であれば憲法上疑義が起きるとは考えられない、こういうことですか。

秋山政府参考人 個別の事態に応じて詳細に検討すべき点はあると思いますが、基本的には、かつでございます。

前原委員 はい、わかりました。

 それで、なぜ私がそういう質問をしたかといいますと、憲法上許されないと考えられている行動というものがこの二つを満たすものであればということでありますけれども、では、仮に、そういう多国籍軍でもいいですし、国連軍でもいいですし、その指揮下に入り、その一員として行動するという条件が満たされていて、かつ、その目的、任務が武力行使を伴うものであっても、我が国はそれに直接は参加しない場合であっても憲法上許されるのかどうなのか。その点をお伺いしたいと思います。

秋山政府参考人 目的、任務に武力行使を伴うか伴わないかというところについて微妙な問題がございまして、例えば、具体的に申しますと、今回のイラク法に基づきます安全確保支援活動あるいは人道復興支援活動、これも、例えば事態が非常に危ない状態になってまいりまして、それで我が国として法律十七条に定められておりますような武器の使用を超える武器の使用をせざるを得なくなるような状態があるとか、あるいは、安全確保支援活動について申しますと、いわゆる非戦闘地域の要件が崩れてきて、それでもなお支援を命令によって継続されなければいけないような状況が出てくるかどうかとか、そういうようないろいろな具体の状況、その任務、それから編成のあり方とか、あるいは司令のあり方とか、そういうものについて具体的に判断されるものであろうと思います。

 ともかく、武装した、武器を携帯した組織を海外に送るということでございますので、どのような状況になろうかということは、それぞれかなり詳細に、具体的に考えなければいけない面があると思います。

前原委員 今のは、済みません、答弁よくわかりませんでした。もう一度聞きます。

 つまりは、二つの条件が重ならなければだめだと。そして、私が今聞いているのは、当該国連軍あるいは多国籍軍の指揮、司令官の指揮下に入って、そしてその一員として行動していると。それで、その国連軍の目的、任務が武力行使を伴うものであるけれども、日本としては武力行使の任務についていないと。今まで法制局は、海外での武力行使はできません、それから、武力行使の一体化もだめです、こう言ってきましたね。それに当たらない活動であったとしても、つまりは、今申し上げたように、日本は任務、目的に武力行使を伴っていないけれども、その国連軍の任務がそういうものを伴うものであれば日本は参加できるのかどうなのかということを聞いているわけです。

秋山政府参考人 そこはなかなか一概には言えないのでございまして、先ほど冒頭に申し上げましたように、それによって我が国が武力の行使を行い、あるいは武力の行使と一体となるような行動を、司令官の指揮に従うことによって、そういうことを行う法的な義務が生ずるような事態があるかないかということで判断されるべきものであると思います。

前原委員 つまりは、やはりこの二つのポイントの「目的・任務が武力行使を伴うものであれば、」ということについてはさらに条件がつくということですね、今の話だと。

 つまりは、日本の活動というものが、海外での武力行使の可能性があり、武力行使と一体化するという疑念があるときに、これが当てはまるということであって、日本が全くそういう活動をしていない場合においても、目的、任務そのものは武力行使であっても、それは憲法上認められるということを示されたということなんですよ、今の御答弁は。

秋山政府参考人 その多国籍軍の任務、目的、あるいは編成のあり方などを具体的に検討いたしまして、それで、その状況において、我が国の組織が武力の行使を行ったり、あるいは他国の武力の行使と一体となるような行為を行うというような可能性があるかどうかということを具体に判断すべき問題であると思います。

前原委員 つまりは、この平成二年の中山外務大臣の答弁というのはまだ解釈を拡大できるということをおっしゃったということなんです。

 もう一遍、短い文章ですので読みますけれども、

 「参加」とは、当該「国連軍」の司令官の指揮下に入り、その一員として行動することを意味し、平和協力隊が当該「国連軍」に参加することは、当該「国連軍」の目的・任務が武力行使を伴うものであれば、自衛隊が当該「国連軍」に参加する場合と同様、自衛のための必要最小限度の範囲を超えるものであって、憲法上許されないと考えている。

つまりは、ここには日本の活動内容は書いていないんですよ、この政府の統一見解には。

 今、法制局長官のお答えというのは、日本の活動についてはその中身を吟味しないと一概には言えないということは、仮に日本が武力行使の一体化あるいは武力行使そのものをしなかった場合においては、仮にこの目的、任務が武力行使を伴うものであれば、もちろんその指揮下に入るという前提条件づきですよ、でも必要最小限度を超えるものではないという答えをされたことにならないですか。後で質問することにかかわってくるので、そのことでこれは聞いています。

秋山政府参考人 平成二年の中山大臣答弁は、やはり、当時、具体的に問題となりましたものが湾岸多国籍軍であるということを前提としたものでございます。一方、その後、累次、私もお答えしておりますように、多国籍軍の任務、目的、編成についてはいろいろな類型のものがあり得るのではないかということから、これは平成十三年の津野内閣法制局長官の答弁でございますが、

 国連決議に基づく多国籍軍への我が国の参加の可否につきましては、その国連決議の内容とかあるいは多国籍軍の目的、任務、編成等、具体的な事案に沿って判断すべきものと考えているわけであります。

ということでございまして、多様な類型のものが出てきたという前提のもとでは、やはり個別の状況に照らし、あるいは我が国の、もちろん国内法に基づく授権の内容とか、そういうものに照らして判断すべきものであると考えます。

前原委員 ということは、この文章そのものに縛られるわけではなくて具体的な判断ということは、これからも広げられるということを示されたことになると私は思います。それが趣旨ではありません。これは、次に聞くことを前提としてお話を聞きました。

 官房長官、今回のイラクへの多国籍軍についての自衛隊の活動というのは、「参加」なんですか、それとも「協力」なんですか。

細田国務大臣 六月三十日より、自衛隊は、多国籍軍の中で活動をいたしますが、あくまで我が国の指揮に従い活動するものであります。これは、一般的な意味の言葉においては多国籍軍に参加すると言ってもよいと考えております。

 従来は、指揮関係に焦点を当て、司令官の指揮下に入るとの限定された意味において「参加」という言葉を用い、政府として見解を示してきたものでございますが、このことは、先ほどのように一般的な意味で参加と申し上げることと矛盾するものではないと考えております。

 重要なのは、自衛隊が多国籍軍の中で活動を行うに当たりましては、あくまで我が国の指揮に従い、イラク特措法及びその基本計画に基づき、いわゆる非戦闘地域において人道復興支援活動等を我が国の主体的な判断のもとに行うということであります。

 このような考え方に基づく我が国の活動は、憲法の禁じる武力の行使に当たるものではなく、憲法上の問題はないと考えております。

前原委員 官房長官、後でまた質問しますけれども、私の質問のところだけ、コンパクトにまとめて御答弁ください。

 秋山長官、それに基づいてもう一度質問いたします。

 先ほど私がなぜあれにこだわったかというと、安全確保支援活動というのが、やりますよね。つまりは、米兵などを輸送するということでありまして、治安活動を行って、任務、目的が武力行使を伴うものである活動を行う米軍などを輸送するということなんですね。確かに、これは、日本そのものが武力の行使をしているわけではない、あるいは武力の行使の一体化ではない、こういうことですね。

 もちろん、ここでは、後でまたしつこく質問しますが、指揮下に入るという前提条件がついてはおりますけれども、仮に指揮下に入っていると仮定をした場合、純法理論的に答弁していただきたいのですけれども、つまりは、この目的、任務が武力行使を伴うものであればだめだと言っているけれども、指揮下に入っていると仮定をした場合であっても、この安全確保支援活動、兵員の輸送などはできるのかどうなのかということをお聞かせいただけますか。これもちょっと後での質問にかかわってくる話なので、法律論としてお答えいただきたいと思います。

    〔小野寺委員長代理退席、委員長着席〕

秋山政府参考人 先ほども安全確保支援活動につきましてちょっと触れましたけれども、仮に、多国籍軍の司令官の指揮に基づいてこの安全確保支援活動を行うといたしますと、これは、もちろんそれ自体は武力の行使ではございませんけれども、例えば、同法の、この法律の定めます非戦闘地域の要件を満たさない地域で他国の武力の行使を支援するのだということを命ぜられる可能性があるわけであります。

 したがって、我が国の主体的な判断が確保される、逆に言いますと、多国籍軍の司令官の指揮に入らない形でやることがやはり憲法上の要請であろうと思います。

前原委員 つまりは、今おっしゃったように、法律の要件である非戦闘地域ということを確保するためには指揮下に入らないということが前提条件であって、指揮下に入るということになれば安全確保支援活動というものは憲法上認められない、こういうことでよろしいですか。――はい、わかりました。

 さて、そこで問題になってくるのは、やはりこの指揮下に入るかどうかなんですね。

 きょう、私、三人目の質問者ですけれども、三回目の質問をしたいと思います。ここは、私も、先ほど中川理事が質問されたように、最大の問題点であるというふうに思っております。河合委員そして中川理事の質問は全部聞いておりました。その上で、もう一度質問をしたいと思います。ユニファイドコマンドについてであります。

 これはちょっと英語のお勉強になるのですが、これを「司令部」と、「統一された司令部」と訳すことの、今まで訳してきたからそうなんだという話でありますけれども、英和辞典をひもとくと、この「司令部」とかあるいは「管理下の部隊」というのは、英語で言うとカウンタブルなんですね。つまりは、数えられる名詞なんですね。

 ということは、このユニファイドコマンドというものについて、もしそういう形で訳するとすると、冠詞、定冠詞もしくは不定冠詞かもしれませんが、定冠詞をつける、不定冠詞をつける、もしくはコマンドのcを大文字にするということが「司令部」では求められているということでありますけれども、この書き方だと、やはりどう英語で読んでも「司令部」とは読めない。

 つまりは、これはやはり「統一された指揮命令」ということしか読めないのでありますが、これは英語でそういうふうになぜ大文字になっていないのか、あるいは冠詞がついていないのか、それはどう説明されますか。

鶴岡政府参考人 アンダー・ユニファイドコマンドの訳語でございますが、先ほど御説明いたしましたとおり、まず、昨年十月に採択されました安保理決議一五一一で既にユニファイドコマンドという言葉が出てまいりましたので、これが何を意味するかにつきまして、この決議についても共同提案国でございましたアメリカに問い合わせをいたしました。そうしましたら、米側からの回答は、このユニファイドコマンドという言葉は、CJTF7、当時の連合軍司令部を指すという回答を得たものでございます。それを踏まえた訳を作成したということでございます。

前原委員 二つのことを申し上げたいのです。では、その回答を得た文書を出してくださいよ、国会に。いや、聞きましたとか確認しましたではだめなんですよ。つまりは、この大前提というのが、ユニファイドコマンドというものが本当に指揮下でないかどうかということが一番大きな問題なんですよ。

 それで、さっきから私、答弁を聞いていて不思議に思うのは、アメリカに照会と言うばかりで、安保理事国というのは十五カ国あって、その十五カ国がどのようにそのユニファイドコマンドという言葉を解釈したかということは非常に大きな問題でしょう。アメリカだけに聞く話じゃないと思うんですね。いろいろな、アメリカ以外の十四カ国からもこのユニファイドコマンドというのはどういう意味なんだということをやはり確認した上で、それで、このユニファイドコマンドというものがおっしゃるような「統一された司令部」なのかどうなのかということが判断されるわけで、アメリカの照会でどうのこうのというだけでは答えにならないでしょう。

 だから、文書を示してもらいたい。それと同時に、あと十四カ国がどういう判断を下したかということの回答も示してもらいたい。それがないと、これは審議にならないですよ。

川口国務大臣 まず、ユニファイドコマンドの意味の確認についての方のお答えでございますけれども、これは、先ほど来申し上げていますように、我が方のそれぞれの大使館の公使とそれぞれの国の高官、外交当局の高官との間で確認をいたして了解に達しているわけでございます。

 それで、この了解は政府間の公式な了解でございます。それは、そのような了解が公式な了解として確立するように事前に政府の中で検討をしております。正式な検討が行われ、そして米英は、それについて外に言ってもよろしいということで、今申し上げているわけでございます。ということで、外交慣例にのっとりまして、これは政府間で公式に確認された了解だということで申し上げているということでございます。

 それから、その次に、では何でアメリカ、イギリスとの間だけで十分でほかの国についてやらないのかという御質問がございましたけれども、これについて言いますと、米国、これは、米国が多国籍軍及び統合された司令部を代表する立場にあるということは言える。それはなぜかといいますと、安保理の決議の一五四六のパラ三十一、ここで、米国より多国籍軍の活動について多国籍軍を代表して安保理に報告するということが要請されているわけであります。

 それから、英国ですけれども、これは、我が国の自衛隊が活動するサマワを含むイラク南東部に派遣されている各国部隊の活動を調整する立場ということであります。

 それから、さらに申し上げれば、米英両国は、この安保理の決議の提案国であって、多国籍軍、そしてその統合された司令部の主要な構成国であるということでございます。したがって、自衛隊と多国籍軍との関係、多国籍軍の統合された司令部との関係については米国及び英国の了解を得ることが必要であり、かつ十分である、必要十分であるというふうに考えております。

 したがって、今私が口頭で申し上げたことというのが、もし必要でしたら何を了解したかということを口頭で申し上げますけれども、これが公式に確認をされた了解であるということでございます。

前原委員 先ほど秋山長官がおっしゃったように、安全確保支援活動をやるということは、もしこれが統一された指揮下のもとでは憲法違反なんですよ。憲法上は疑義があるという話になるんです。ということは、今のこのユニファイドコマンドの訳の問題というのは、この法案が、政令に落とし込んで、そして多国籍軍に出すかどうかということのポイントの問題で、これは、言葉だけで確認をしましたからそれで了解してくれと言われても了解できるものではありません。

 したがって、これはちゃんと委員会に文書を出してもらって、どうやって確認をしたのか。だって、ロドマン国防次官補は違う発言をアメリカの中で、国会の中でしているわけですから、私は幾らでも待ちますよ。ですから、そういうやりとりをしているんだったら、そういうものを見せた上で議論することが当たり前のことでしょう。それ以上じゃないと質問できません。

川口国務大臣 どのような了解に達したかというその内容は、次に申し上げるとおりでございます。

 まず、人道復興支援が多国籍軍の任務に含まれることは、新たに採択された安保理決議パラ十五及びパウエル米国務長官発安保理議長あて書簡において確認されている。それが一点目。

 二点目は、完全な主権の回復後、イラクで活動する自衛隊は、多国籍軍の統合された司令部のもと、これまでと同様に人道復興支援を中心に活動する。

 三点目、イラクにおける自衛隊は、あくまでも、イラク特措法に基づき我が国の指揮のもとにおいて活動を継続し、多国籍軍の指揮下で活動することはない。

 四点目、すなわち、自衛隊はイラク特措法に基づき活動し、さらに、イラク特措法や基本計画に定める自衛隊の活動に係る要件が満たされなくなった場合や、我が国が政策的に適切と判断する場合には、自衛隊の活動を我が国の判断により中断する、あるいは自衛隊が撤収することができる。

 五点目、自衛隊のイラクでの活動に対するイラク政府よりの同意及びその活動に関するしかるべき法的地位は、多国籍軍の一員として確保される。

 よって、多国籍軍の司令部から我が国に対する、他国の武力の行使と一体化するような活動の要請はそもそも想定されない、万が一あっても拒否できるということが明らかでございます。

前原委員 中身の長々説明を聞いているのではなくて、証拠を出してほしいと。そういう文書を示した上で我々は納得して質疑を続けられるということで、口頭でいろいろ言われたって、それを信じろと言われても、そこが憲法上の問題になっているという、今までの私の質問でも明らかになっているわけですから、そういうものをはっきりとこの委員会に示されることが質問を続ける前提になりますので、私、今のような答弁だけでは質問を続けることはできません。文書を出すのかどうかですよ。(発言する者あり)

斉藤委員長 御静粛に願います。

川口国務大臣 これは、今まで申し上げておりますように、我が国と米国政府及び英国政府の間の正式な了解、確認された了解でございます。

 したがいまして、今までいろいろな、まさにこういう形で了解をするということは外交慣例でございまして、すべて文書によってそういったことが確認をされなければいけないということではない。両国間のそれぞれの信頼関係があるわけで、そういう形で確認をされている。

 しかも、今、国会で申し上げていますように、それはそういった了解がなければ我が国政府として申し上げることはできないわけでございまして、この了解をこういった形で公表するということは米英両政府とも異存がないということを言っているということでございます。

前原委員 昨日、党首会談がありました。我が党の岡田代表もそれに参加をされましたけれども、今の米英了解というのが問題の一つになりました。

 そのときに、総理は、口頭で言ってもだめだったら文書で明らかにすると約束したんですよ。今の答弁と食い違っているじゃないですか、総理は出すと言ったんですから。総理は出すと言ったんだから出せるんですよ。では、総理の言ったことと違うじゃないですか、今の話は。出してくださいよ、文書を。正式な文書をしっかり出すと、きのう党首会談で総理は約束されたんですから、出してくださいよ。

斉藤委員長 ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

斉藤委員長 速記を起こしてください。

 席へどうぞ。どうぞ、席へお戻りください。――それでは、細田官房長官。

細田国務大臣 きのうの野党党首と小泉総理の会談に私も同席しておりましたが、確かに、書いたもので出せないのかとおっしゃいまして、何となく総理もうなずくような感じでおりましたけれども、いずれにしても……(発言する者あり)最後まで聞いてください。最後まで聞いてください。つまり、明確に書いたもので出しますということはおっしゃらなかったんですが、ただいまの答弁の内容、つまり米英両政府との了解に達した内容について、答弁ははっきりといたしたわけでございますが、書いたものでお出しいたします。

前原委員 いや、今外務大臣が言われたことをただ単に書いて、文書にして、出しましたと言われても意味ないんですよ。本当に米英側とどういう形で了解をしたのかというところが欲しいわけですよ。いや、だって、外交官の人たちが出ているでしょう。そのとき必ず、いろいろな会議でも速記をとっているでしょう。ちゃんとメモをとっていて、外電とかでやっているでしょう。だから、そういうものはありますよ。その部分だけ抜き取って、そういう了解を、このユニファイドコマンドについてはそういう話し合いをしたというものを出してもらったらいいんですよ。出せるはずですよ。そんなものも出せないんだったら、国会で議論する意味ないですよ。

川口国務大臣 先ほど申し上げました内容、これが米英両政府との間で了解をした事柄であって、それについてこういった形で公表してもいいということがあったからこそ、外務大臣として国会という大事な場で答弁を申し上げているわけでございます。

 それがお答えといいますか、それがまさに内容であって、そこで外務大臣が合意をしなかったことを申し上げるということはおよそ想定されないわけでございまして、まさに外交の慣習といいますか、そういうことは、そういう形で公表する、合意されたことを申し上げるということでありまして、両国間の合意の文書を一つ一つ文書で公表を提供するということは、通常、慣習ではない。両方、準備をして政府間の正式な了解として了解があったということは、再三申し上げているとおりでございます。

前原委員 全く、答弁、無意味なんですよ。だって、外務大臣の発言に信頼を置けていないと言っているわけですから。だからこそ、ちゃんとしたものを出してほしいと。あなたの言っていることをすべて文書にして、自分の言ったことだ、外務大臣が言ったのだから信用してくれと。信用できないから質問しているんじゃないですか。

 では、そのロドマン国防次官補の発言はどのように受けとめるんですか。ロドマン国防次官補は、このユニファイドコマンドについては、「統一された指揮権」と言っているじゃないですか。だから、それはだめですよ。文書を出してください。絶対にメモとか残っているはずですから、そういうものでどういう合意がなされたかということを出してください。そのぐらいは国会として大事なことです。

 もう一つ、私が先ほど質問したのは、では、アメリカ、イギリス、それ二つを除いてあと十三カ国はどういう解釈をしているのか、そのこともしっかり出してくださいよ。

川口国務大臣 一番最後の、ほかの国がどう考えているかという御質問ですけれども、我が国としては、これは、先ほど申し上げたような理由により、米英と了解をしているということで必要十分であるというふうに考えております。それぞれの国が、それぞれの活動の内容は違っているわけでございますし、その活動の態様に応じて多国籍軍との関係をつくっているということでございますから、我が国としては、我が国のあり方について米英両方と確認をしていれば必要十分と。それはまさに、米国が多国籍軍の代表といたしまして安保理に報告するということが決議によって要請をされているということからでも十分であり、それから、英国については、これはイラク南東部に派遣されている各国部隊の活動を調整する立場にあるということでして、この二つの了解で必要十分であるというふうに考えております。

 それから、ロドマン国防次官補についてのお話があって、米国議会に証言をしているその意味は何かということが前半の部分でございましたけれども、この意味するところ、これは、先ほど申しましたように、ロドマンにかわって私がこういう意味ですということをきちんと申し上げるということはできないわけでございますけれども、あえてその意味するところをしんしゃくして申し上げればということですけれども、これは、現状においては、多国籍軍の統合された司令部は米軍の司令部であるということを言っているのではないかというふうに思います。英語で言うと、「ユニファイド コマンド イズ アンダストゥッド イン プレゼント サーカムスタンシーズ ツー ミーン USコマンド」と言っているわけでございます。

 それで、この点に関連をしまして、安保理決議一五四六パラ三十一、これは先ほど申し上げたところですけれども、多国籍軍の活動について、米国が多国籍軍を代表して安保理に報告するということが要請されているわけでございまして、米国が多国籍軍及び統合された司令部を代表する立場にあるということは明らかであるというわけでございます。それがその意味であるということです。

 それから、当然に米国は英国と並んで多国籍軍及びその統合された司令部の主要な構成国であるということは、先ほど申し上げたとおりでございます。(前原委員「委員長、だらだら同じ答弁やめさせてください」と呼ぶ)先ほどの繰り返しではございませんで、今、ロドマンについて申し上げたことは、今回初めて申し上げたことでございます。

前原委員 いや、意味ないと言っているんですよ、大臣の答弁なんか。信用していないと言っているわけですよ。だから、証拠を出してその上で議論しましょうと言って証拠を出せないんだったら、これ以上、質問できませんよ。

細田国務大臣 いやしくも日本の外交責任者の外務大臣が、他国との話し合いの中身を、こうであった、こういう了解が得られたといって出すのは、相手国のことを考えると異例のことであります。そのことも全く信用できないというようなことは、私は、極めて問題があると。むしろ、外務大臣の責任において相手国との責任あるやりとりの中身はこういうことであるということを提出することで十分であると思います。

前原委員 だって、米英が了解しているから言っているんだというんだったら、出したらいいじゃないですか。なぜ出せないんですか。その説明にはなってないじゃないですか。そんな、大臣の権威がどうのこうのということじゃなくて、私は中身で議論しているんですよ。

 だから、米英の了解を得てしゃべっているんだったら、そのやりとりの中身を出して、我々にこういう議論をしているからということを出すべきだということを言っているのに、何がおかしいんですか。

細田国務大臣 中身のやりとりというのは、外交上の国際的な慣例上、それは出さないことになっている。しかし、これは、両国で合意に達した、話し合った事項については出しましょうと言っているわけですから、外交の責任者が。それが信用できないというふうにおっしゃることがよくわからない。

前原委員 だから出してくださいと言っているんですよ。(発言する者あり)

斉藤委員長 先ほどから大臣は答弁をされておられます。答弁をされておられます。納得する、納得しないは、また大臣にさらにただしていただきたいというふうに思います。

 どうぞ、質問を続けてください。――再度、先ほどの答弁をわかりやすくお答えいただきたいと思います。どうぞ、川口外務大臣。

川口国務大臣 委員長から、先ほど私が申し上げた了解の内容、これについて簡単にわかりやすく申し上げるようにという御指示でございますので、そうさせていただきたいというふうに思います。

 一つは、この人道復興支援が多国籍軍の任務に含まれているということは確認をされているということであります。

 それから二番目に、多国籍軍の統合された司令部のもと、自衛隊はこれまでと同様に人道復興支援を中心に活動するということでございます。

 それから三番目に、自衛隊は、我が国の指揮のもとにおいて特措法に基づいて活動を継続し、多国籍軍の指揮下で活動することはない。

 それから四番目に、自衛隊の活動を我が国の判断により中断する、あるいは自衛隊が撤収することができる。

 五番目に、多国籍軍の一員として自衛隊の地位、これは確保される、また、イラク政府の同意というのも確保されるということでございます。

前原委員 先ほどから申し上げているように、資料を出してください。それが、確たる、ちゃんと米英間での了解があったかどうかということが確認できなければ、憲法にかかわる問題だと前提条件で秋山長官が言っているじゃないですか。それが、外務大臣の答弁だけでは我々としては納得できないから資料を出してと言っているわけですよ。

 お互い合意を交わしているんだったら、それを出すのが当たり前でしょう。憲法上にかかわる問題なんだから。米英が了解をしているんだったら出せるでしょう。(発言する者あり)

斉藤委員長 ちょっとお戻りください。お戻りください。お戻りください。自席へお戻りください。(発言する者あり)もう既に答えていますよ。

 申し上げます。

 ここは衆議院の第一委員室、最も権威のある委員室だと思っております。その中で、政府を代表して、外務大臣、それぞれ御答弁をしておられます。それは議事録にも残されてまいります。重いものだと思っています。その上で、前原委員からの御発言がありました。これについては理事会で協議をさせていただきます。

前原委員 いや、理事会で協議って、その前提が崩れれば憲法上問題があるということが先ほどの質問で明らかになっているわけですから、それが明らかにならないと質問できないじゃないですか。

斉藤委員長 外務大臣は答弁をしておられます。――どうぞ、続けてください。前原君。

前原委員 出してもらいたいものをもう一度申し上げます。

 米英と日本政府の間で合意がされているのであれば、その合意、電話でされたのか、あるいは担当者が話をされたのかは別として、これは絶対にメモは残っているはずですよ。メモというか、そういう文書は残って、それは大事な文書ですよ、合意をしたのであれば。そんなもの、口頭だけでメモをとっていないことは、私の十一年の国会議員経験からして絶対あり得ない。だから、それについて米英が話していいよということを了解しているのであれば、出せるじゃないですか。

 要は、そのメモ書き、残しているものを、外務省のメモ書きを出してもらいたい、そういうことを申し上げているんです。

斉藤委員長 ただいま前原委員の方から御発言があり、御要求にありました件については、理事会で協議させていただきます。

前原委員 委員長、理事会で協議してもらうのはいいんですが、それをベースに議論を組み立てているわけですから、また、これは閉会中ですよ、開会中じゃないので、理事会協議をした後にもう一度やはりこれは議論をしないと意味ないと思いますね。その点も含めて議論してください。

斉藤委員長 理事会で協議をするということを申し上げました。

前原委員 それでは、そのペーパーを出していただきたいということ、メモか何かわかりませんが出してもらいたいということと、あとは、それをベースにまたぜひ質問をする機会というものが確保されるように、これは与党の理事さんにもお願いをしておきたいと思います。

 それで、私が先ほど申し上げたもののもう一つは、米英はわかりましたよ、ほかの国がこのユニファイドコマンドというものをどう解釈しているか。それもちゃんと調べて、そして政府の考え方として出していただきたい。このこともあわせて理事会でお取り計らいください。(発言する者あり)いや、さっき答弁はされていましたよ。

斉藤委員長 いや、米英以外の件については、まだ直接されていませんから。――では、どうぞ、川口外務大臣。

川口国務大臣 我が国がどのような、その指揮という点について多国籍軍の統合された司令部との関係にあるかということについては、米英両政府と了解を持っているということを申し上げました。

 各国、多国籍軍の中でどのような活動をするか、これはさまざまな活動がございます。そして、各国はそれぞれの立場で国内的にはいろいろな考え方をしていると思いますけれども、我が国として、それを知り得る立場にもございませんし、ましてやそれを公表する立場にもないということでございます。

 我が国との関係について言えば、それは先ほど申し上げたとおりでございまして、時間の点もございますから繰り返しません。

前原委員 答弁は伺いましたが、十三カ国がどういう解釈をユニファイドコマンドという言葉のもとで行っているのか、その点についても、調べた上、理事会で協議をしていただいて、委員会に資料として提出をしていただきたいと思います。

斉藤委員長 理事会で協議をいたします。

前原委員 よろしくお願いします。

 それでは、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 官房長官、この間のサミットにおいて、少しのタイムラグではあるんですけれども、小泉総理は、多国籍軍への参加については、国連決議が固まる前にその表明をおっしゃいましたね、日米首脳会談において。これは、国連決議が固まっていない状況のもとで多国籍軍への参加というものをおっしゃったことについては、これはいささか、私は、内容を確認せずにそういうことをおっしゃるというのは軽率じゃないかと思いますが、官房長官、どう思われますか。

細田国務大臣 アメリカにおいては、総理は、実は参加という言葉は全然使わずに、復興人道支援等、今イラクで行っております自衛隊の活動を継続したいということを発表されました。

前原委員 いや、ですから、でも、その後の記者会見では、参加ということもおっしゃっていますね。記者会見の中では、多国籍軍の中でということをおっしゃいましたね。ということは、多国籍軍に事実上参加するという前提で結局は表明されたということではありませんか。

細田国務大臣 まだアメリカでは、多国籍軍の中で活動を継続することを検討すると言っておられまして、至急、月曜日、日本国へ帰られましてから、午後に参議院のイラク特などでの審議がありましたし、政府・与党連絡会議等がございまして、徐々にこの考え方が煮詰まってきたということでございますので。

前原委員 先ほど力強く、大臣の言葉というものについての意見の御披露がありましたけれども、まさに内閣を預かる官房長官として、しかも、そのときは官房長官は総理の代理でしょう。私は、そんな後追いの議論というものを追認するのではなくて、やはりその点についてはしっかりと、総理の発言についてはフライングがあった、そして後追いで、結局、それで与党の中でもごたごたしていたわけじゃないですか。そういう意味で考えると、やはり中身が固まっていないのにそういう事実上の表明をされることは、私は、軽率のそしりは免れないというふうに思いますよ。

 その点、もう一度御答弁をください。

細田国務大臣 国連決議も、ちょうど安保理決議も行われまして、その中で総理がアメリカにおいて御判断をされておっしゃったことだと思いますけれども、それは、日本の国内においてさまざまな詰めを行ってから決めなければならないということは当然御存じの上言われたものと思っております。

前原委員 官房長官、別の質問をします。

 今回の多国籍軍への参加というのは、自衛隊が今まで行ってきた活動の新たな領域だと思われますか、それとも、いや、今までの、従来の活動の範囲の中だと思われますか。どう思われますか。

細田国務大臣 先ほども申しましたけれども、今回、多国籍軍に参加するということを一般的な意味の言葉においては表現しておりますが、指揮関係に焦点を当て、司令官の指揮下に入るとの限定された意味において「参加」という言葉を用いてこれまで政府として見解を示したものでありますが、一般的な意味で参加と申し上げたことは矛盾をしない。

 重要なことは、繰り返しになりますから言いませんけれども、多国籍軍の中で活動を行うに当たりまして、あくまでも我が国の指揮に従って、特措法及びその基本計画に基づき、いわゆる非戦闘地域において、人道復興支援活動等を我が国の主体的な判断のもとに行うということは問題がないと考えております。

前原委員 官房長官、それは私の質問と違う答弁資料を読んで答弁されていますよ。私が聞いているのは、指揮の問題ではなくて、多国籍軍に入るということが自衛隊の活動領域の新たな領域に入ったと思われますか、それとも、今までとは変わらないというふうに考えられますかということをお伺いしているわけです。今の答弁資料、違う答弁資料ですよ。

石破国務大臣 政府としてお答え申し上げますが、全く変わらない、新しい領域に入るものでもない、全く従来と変わらないと考えております。

前原委員 多国籍軍というものに、まさに今まで憲法解釈の中で大きな議論になってきて海部内閣のときには見送った多国籍軍に初めて入ることについても、全く変わらないと本当に言えますか。私は、それは官房長官に聞いているんです。

細田国務大臣 従来の政府見解をいかなる意味でも変えるものではありません。

前原委員 見解が変わるか変わらないかではなくて、新たな領域に入ったと考えないのかということですよ。

 つまりは、自民党政権ですよ、湾岸戦争のときの海部内閣が多国籍軍に加わらないと判断したのは。それをまさに、解釈を変えていないと法制局はおっしゃると思いますけれども、しかし、多国籍軍に加わるということは初めてのことじゃないですか。そうすると、今までは日本の国内しか自衛隊は活動しない、しかし、訓練では外に出る、PKO、それからテロ特措法、イラク特措法ということで、徐々に活動範囲が広がってきたわけじゃないですか。

 先ほど石破長官がおっしゃったのは、活動内容の視点に立った場合には変わらないという点があるかもしれませんが、まさに政治的な意味の中で、多国籍軍の中に入る、加わって活動するというのは初めてじゃないですか。それが新たな領域でなくて何と言うんですかということを私は聞いているわけです。

細田国務大臣 全くいかなる意味でも変わるものではなく、従来続けております自衛隊の任務を今後継続するということでございまして、その内容については先ほどいろいろ申し上げたとおりでございます。

前原委員 いや、多国籍軍に入ることが全く新たな領域に入っていないと言うことは、これは私は内閣としては非常に暴言だと思いますよ。

 中身については変わらないかもしれない。つまりは、まさにそちらの立場に立って言えば、特措法に基づいて同じ活動をするんだから変わらないという言い方はありますよ。しかし、私は今、政治の説明責任の中で、なぜこれだけ大きな問題になって閉会中審査までしているのかといえば、まさに新たな国連決議に基づいて、それで結成される多国籍軍に入るということについて、全く変わらないと言うことが本当に、それは官房長官、政治家としての言葉として妥当だと思われますか。

細田国務大臣 新たな領域に入ったのではなくて、内容において変わりません。

前原委員 対応についてではなくて、政治的な意味について変わらないかと聞いているわけです。

細田国務大臣 政治的な意味において、皆様方が、例えば前原議員が、違うのではないか、変わったのではないかとおっしゃるお気持ちは、今回のイラクの自衛隊を即刻我が国に戻せというお立場を前提におっしゃっていますから、そのお気持ちは別といたしまして、我が国としては政治的な意味も全く変わっていないと私は考えております。

前原委員 政治的な意味においても変わっていないということは、私は、極めてこの重みをわかっておられないと思いますよ。政治的な意味において、私は、随分変わったものだと思います。多国籍軍への参加ということを決めたということは極めて重いと私は思います。

 ですから、先ほど、立場の違い云々かんぬんと、そういう議論をしているんじゃないんです。小泉さんはいつもそういう議論をされますけれども、そういう観点で議論しているのでは全くなくて、私は、国民に対して、これは私も地元に帰っていろいろな人と話をしました。要は、イラクの復興支援は大切だ、そしてまた、保守的な考え方の人ですよ、その方々がおっしゃるのは、いや、多国籍軍に参加するというのは、それはだめだったんじゃないのと。

 それは、細かい、さっきの秋山長官の話とかそういうものをベースにした議論を国会でしますけれども、一般の国民の感覚からすれば、多国籍軍に入るということは全然違う意味を持つということなんですよ。その意味において、政治的な意味においても全く変わりませんと言うことは、私は、余りにもそれは官房長官として自覚に欠けた御発言だと思いますよ。

 まさにその根底にあるのは、この法律の援用をするためにはそういう答弁でしかいけないんだというベースがあると私は思います。まあ、石破長官はそのことがよくわかっておられるので先ほど明確にああいう答弁をされたんだと思いますが、私は、政治的には、やはりこれは全く違う領域に入るということを自覚されるべきなんではないか。これは、意見が違うということであれば、私の考え方を申し上げておきます。

 その上で、この間、私は外務委員会で質問をさせていただきました。このイラク復興支援法の援用でいいのか、つまりは、新たな法律というものが必要でないのかということを観点に私は質問いたしました。そのことについて、二点について政府の見解というものを示していただきました。

 私の結論から申し上げますと、この「第一条の規定について」という政府のお考え方では、これはなかなか納得できるものではないと思います。二条については、私は、政府の答弁についてはある程度理解ができました。しかし、この「第一条の規定について」ということで、「「統治組織」にイラク暫定政府が含まれるか否かといった個別具体的な当てはめを同条において行うことが法律上必ずしも求められているわけではなく、」という判断が、全く意味がわからない。つまりは、なぜその「統治組織」にイラク暫定政府が含まれるか否か判断されていることを求められていないのか、そのことについて私は御答弁をいただきたいと思うんです。

 私の質問時間が終わりまして、先ほどのお取り扱いで、私は、もう一度こういった議論がなされると思っております。きょうはちょっと時間の配分を間違って、そもそもイラク、今後、本当にどうしていくのかという国際協力の関与のあり方というものについても議論をしていかなくてはいけないと思います。それはまさに立場を超えてしていかないといけない話だと思います。国連決議がまとめられても、結局は、参加をしている国は変わらないどころか減りつつある。本当にイラクの復興というものができるのかどうかということが問われているんだと私は思います。

 したがいまして、またいろいろ質問をさせていただきたいと思いますが、今の一点だけ、つまりは、なぜ第一条に定める「統治組織」にイラク暫定政府が含まれるか否かというのは法律上必ずしも求められているわけでないという答弁になったのか、その点についてお答えをいただきたいと思います。官房長官に。

増田政府参考人 お答えいたします。

 先日の外務委員会でも御答弁させていただきましたけれども、第一条の「目的」にあるポイントは、「国際社会の取組に関し、」という国際社会の取り組みということで、その国際社会の取り組みの一つとして、先生が御指摘の「民主的な手段による統治組織の設立等に向けた」という動きをとらえているわけでございます。

 したがって、まさにその一つ一つの、この「統治組織」という文言に今回のイラク暫定政府が当たるか否かということがこの法全体が今の状況に適合し得るかどうかということとは必ずしもつながらないというふうに申し上げたわけでございます。

前原委員 時間が過ぎていますので、今の答弁は全くこの間と一緒で、「向けた」ということについての解釈が全く違いますので、この点についてはまたしっかりとこういう閉会中審査を精力的に行っていただいて、我が党でもしっかりやらせていただきたいと思います。

 終わります。

斉藤委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 昨日、総理は、野党党首会談で、多国籍軍に参加するとはっきり表明をし、先ほど、官房長官から、その立場について説明がありました。

 これまでの政府答弁ですと、当該国連軍、多国籍軍の目的、任務が武力行使を伴うのであれば、自衛隊がこれに参加することは憲法上許されないと考えている、繰り返されてきた政府の答弁であります。外務大臣も、これまでは、自衛隊が多国籍軍に参加できるかどうかについては、安保理決議を待って、任務、目的等を検討した上でという答弁を繰り返しておられました。

 今回の国連決議一五四六の多国籍軍の規定は、それが武力行使を伴う多国籍軍であることは明白であります。そういう多国籍軍に、何で、これまで憲法違反と言ってきたのに参加できるんですか。その説明、これはどういうことで参加できるんでしょうか。外務大臣、答えてください。

川口国務大臣 必ずしも私が答弁申し上げるのが適切かどうかよくわかりませんけれども、これは、従来、憲法との関係で許されないとされてきましたいわゆる多国籍軍への参加とは、かぎ括弧ついて「参加」というふうに書いてありますが、多国籍軍の司令官の指揮下に入り、一員として行動するという、限定された意味で使用されてきたものでございます。

 このような意味で参加が許されないのは、武力の行使を伴う多国籍軍については、その司令官の指揮のもとに入って行動するというような形態で参加をすれば、憲法の禁じる武力の行使に及んだり、他国の武力の行使と一体化することがないという前提を確保することが困難であると考えてきたためであります。これは、湾岸多国籍軍のような専ら武力の行使を目的、任務とするようなものを念頭に置いたものであります。

 その後、多国籍軍のあり方については多様化をしてきているわけでして、安保理決議一五四六において明確にされてきているように、イラクの完全な主権の回復後、イラクに駐留する多国籍軍の任務、目的には人道復興支援活動が含まれています。自衛隊が、このような多国籍軍の中で、我が国の主体的な判断のもと、あくまで我が国の指揮のもとでイラク特措法に基づき人道復興支援活動等を継続することは、これまでと同様、憲法上問題はありません。

 以上です。

赤嶺委員 もうさっぱり意味がわからないんですね。

 これまで、武力行使を伴う多国籍軍には参加しないという政府答弁というのは明確に存在をするわけですよ。

 それが、今回の場合には、多国籍軍のいろいろ性格が違うからと言いますけれども、国連決議一五四六で言われている多国籍軍の任務、目的というのは、一五四六のパラ十でも、「イラクにおける安全及び安定の維持に貢献するために、すべての必要な手段をとる権限を有する」

 パウエル書簡に至っては、何て書いてあるかというと、「治安上の脅威に対抗するために必要な行動を含むものであろう。これは、これらの団体の構成員に対する戦闘行動」、収容その他いろいろ出ていて、徹底した戦闘行動と武力行使、これが中心任務であり目的であるわけですよ。人道復興支援というのは、パウエル文書の中で、いろいろ出てきた後に、「多国籍軍は、イラク暫定政府に要請され、かつ、従前の安保理決議に従い、人道援助、民事支援及び救援・復興援助の提供に必要に応じて参加する」と。「必要に応じて参加する」という書きぶりであって、武力行使を伴うというのが任務、目的なんですよ。

 武力行使を伴う多国籍軍には参加できないというはっきりした政府答弁があるじゃないですか。さっきのは説明になっていませんよ。もう一度答えてください。

杉浦内閣官房副長官 杉浦でございます。

 先ほど川口大臣が御答弁なさったことは、本来、私が御答弁すべきと思ったんですが、御指名で川口大臣が御答弁いただいたわけですけれども、中身は川口大臣が御答弁なさったとおりでございます。

 先生の今の御指摘について、あえて言わせていただければ、六月三十日をもって多国籍軍が国連決議で新たに編成されるわけですが、その前の、いわば占領軍と言っていいと思うんですが、その性格と全く違った、国連決議に基づくいわゆる多国籍軍が誕生するわけであります。CPAもなくなりますし、新しい局面を迎えるわけでございます。

 私ども、我が国としては、今まで憲法と特措法に基づいて特措法の範囲内で活動してきて非常に高い評価を得ている自衛隊の活動、サマワで人道復興支援を中心にやるという活動を継続したいということから、いろいろ今までの経過があったわけなんですが、あくまでも、今までどおり、我が国の指揮のもとでサマワで人道復興支援活動を中心にしてやっていくということでございます。

 そのマンデートは、一五一一等には別立てになっておったんですが、今度の新決議では多国籍軍の中の任務に加えられてしまったわけですね。そういういわゆる多国籍軍の性格の変化というものもございまして、その人道復興支援活動を今までどおり我が国の指揮のもとでやってまいるということが一番重要だと私は理解しております。

赤嶺委員 多国籍軍の主要な任務はそういう武力行使で、今の官房副長官の答弁を聞いていても、人道復興支援が加えられてしまったという話なんですね。いわば、必要があればやるということで、これが武力行使を伴う多国籍軍であることは明白であります。

 それで、今までの政府答弁との関係で、それに参加することは憲法違反だ、許されないと言ってきた。その答弁を受けて、九〇年には、中山外務大臣が、「「参加」とは、」と定義をして、「「参加」とは、」ということで、この定義は、「当該「国連軍」の司令官の指揮下に入り、その一員として行動することを意味」すると。「「参加」とは、」という定義があったんですよ。

 今、皆さん、「参加」の定義に別の要素を持ち出してこられているわけですが、「参加」以外の関与の仕方として「協力」があり、「「協力」とは、」「「国連軍」の組織の外にあって行う「参加」に至らない各種の支援をも含む」、こう言っているわけですね。「組織の外にあって」、こういう答弁があるわけですね。

 そうすると、どういうことですか。「参加」とは指揮下に入るものなり、外にあって支援することを「協力」という、「「参加」に至らない」と明確に区別してきたわけですが、今、「参加」というものが非常に広がって答弁しているわけですが、その辺、それをどういうぐあいに説明するんでしょうか。

増田政府参考人 今の先生のお尋ねは、平成二年の中山外務大臣の衆議院の国連特別委員会における答弁におきまして、「昭和五五年一〇月二八日付政府答弁書にいう「参加」とは、当該「国連軍」の司令官の指揮下に入り、その一員として行動することを意味」すると。まさにその昭和五十五年十月二十八日付の答弁書において、目的、任務に武力行使を伴うものに参加することは問題があるという答弁があり、まさにその「参加」とは、この「当該「国連軍」の司令官の指揮下に入り、その一員として行動することを意味」するという流れになっておるわけでございまして、今回、いわゆる多国籍軍に参加するという意味は、一般的な意味で参加するというふうに言っておるわけでございますが、平成二年の中山外務大臣は、まさに昭和五十五年十月二十八日付政府答弁書の中に出てくる「「参加」とは、」という限定した形で定義されているというふうに理解しております。

赤嶺委員 そうすると、今回、中山答弁にはなかった、「参加」の中に新しい概念を設けた、広げたという理解でいいんですね。イエスかノーかで答えてください。

増田政府参考人 広げたとか、そういう意味ではなくて、参加というのは日本語でございまして、通常の意味で、参加という意味で用いておるということでございます。

赤嶺委員 本当にひどい話ですよ。「「参加」とは、」ということで明確に定義をしてきた、これを、一般的な日本語の参加があるでしょうって、そういう議論を国民が、だれが信頼しますか。さっきの了解と同じようなものですよ。本当にでたらめ。そして、本当にでたらめな解釈で憲法違反とされてきた多国籍軍への参加を強行しようとしている。怒りを禁じ得ません、こういうのは。

 それで、さっきの了解の問題に移りますけれども、閣議了解でいいますと、「司令部の指揮下に入るわけではない。」とかいろいろ、「米、英両政府と我が国政府との間で了解に達している。」というのを、先ほどの前原議員の質問を聞いても非常に不思議な感想を持ったんですが、この了解というのは何で口頭了解だったのか。いわば憲法違反であるかないかを決める大変大事なポイントですよ。そういう大事なポイントを、何で口頭了解、いわば口約束ですよ、何でこういうもので済ますような程度の外交交渉になったんですか。何でこんな大事なものが口頭了解がふさわしいというぐあいに説明するんですか。国民みんな、そういうものであれば両国間の文書が出てくるものと思いますよ。それを何で口頭約束程度で済ませるような外交交渉、こういうようになったんですか。

 それからもう一つは、だれとだれが交渉したんですか。

川口国務大臣 自衛隊が多国籍軍の中で活動する場合の活動のあり方につきましては、六月八日、我が方の在英国大使館公使と英国外務省高官との間で、また、六月九日、我が方在米国大使館公使と米国国務省高官との間で了解に達しております。

 それで、この了解でございますけれども、これは、政府間の公式な了解でございます。公式な了解として確立するように事前にそれぞれの政府の部内で正式な検討が行われたものでございます。また、米英両政府は、我が国がこの了解をこういった形で、私が申し上げているように、公表するということについても異存がないというふうにしているわけでございます。こういった了解、これは、外交慣例にのっとりまして、政府間で公式に確認をされた了解として扱われるということでございます。

 それから、内容について、どういうことを了解したかと……(赤嶺委員「いや、内容はまだ聞いていません」と呼ぶ)いませんか。失礼。

赤嶺委員 だれとだれがというのは、一般的に言わないで、日本側からはだれが、そして公使であればその公使の氏名、それから、イギリス側であれば、しかるべき高官と言わずにだれ、それからアメリカ側であればだれ、こういうのは向こうが公表を了解しているというのであれば公表していいんじゃないですか。まさにこの程度は公表すべきですよ。だれと口約束してきたのか、いかがですか。

川口国務大臣 これは、先ほど申しましたように、政府間の公式な了解でございます。個人と個人、特定個人と特定個人の間の了解ではございません。したがいまして、だれがということについては、相手方の関係もございまして、明らかには申し上げられないということです。

赤嶺委員 だれが日本国の代表だったのか、だれがイギリス国の代表だったのか、そして、こういう人々との了解によって、かくして日本の憲法は守られるんだという明確な説明がなければだめですよ。日本の代表はだれだったんですか。イギリスを代表した方はだれだったんですか。アメリカを代表したのはだれで、そういう人々とどんな了解を結んだから憲法が担保されていると言うんですか。でたらめじゃないですか、今の言い方は。名前をちゃんと明らかにしてください。

川口国務大臣 先ほど申しましたように、これは、個人と個人の間のお話ではないわけでございます。両方の政府と政府の間の公式な了解でございます。したがって、それは政府間の公式な了解であるということで十分でございまして、個人の名前をここで申し上げるということは控えさせていただきたいと思います。

赤嶺委員 本当に、政府の代表の氏名も明らかにできないような口頭了解ということであります。それで、それは明らかにできないと。

 同時に、なぜ外交文書をもって、これだけ大事ですから、憲法違反であるかどうかを問われるわけですから、政府解釈でいっても。これだけ大事なものを何で口頭了解というレベルの外交交渉にしたのか。文書でちゃんと結ぶ、締結し合うというようなものになぜしなかったんですか。皆さんから見れば、憲法違反であるかどうかを担保するのはこの程度の問題なんですか。

川口国務大臣 この今回の了解でございますけれども、これは口頭の了解でございます。ですけれども、この了解は、政府間の公式な了解として確立をするように事前にそれぞれの政府の中で公式に、正式に検討が行われたということでございます。思いつき的にだれかがだれかに話をしたということでは全くございません。

 また、米英両政府は、我が国がこの了解を今私が申し上げていますように公表する、どういうことを言ったかということを申し上げるということについては異存がないということでございます。したがって、そういう公表があり、この内容はこういうことであるということを先ほど私は申し上げたわけでございます。

 ということで、この了解は、外交慣例にのっとって政府間で公式に確認をされた了解でございます。

赤嶺委員 本当に、まともな説明もしないままに、できないままに多国籍軍への参加を強行しようとしている、そういう政府の姿勢に厳しく抗議して、私の質問を終わります。

斉藤委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 委員長初め各出席の大臣、そして委員の皆さんも、閉会中にもかかわらず、大変に御苦労さまと思います。

 しかしながら、国民的に、本当に今、自衛隊の、継続的に多国籍軍にいわば流用、転用してよいのかどうか、あるいは、派遣されている自衛隊員自身の不安、家族の不安いかばかりかと、いろいろなことを考えますと、きょうのこの審議の中で御答弁いただいた数々は、やはり物事の深刻さ、先ほど赤嶺委員がおっしゃった憲法問題もそうですし、人の命が大きくかかわったことに対しての政治の場での論議としては極めて底が浅いし、不十分であると私は思います。

 まず、冒頭、川口大臣にお伺いいたします。

 私は、きょう外務省がお出しになった資料を読んで、一瞬、我が目を疑いました。どういうことかと申しますと、きょういただきました資料の中に、外務省がお出しになった「イラクの治安情勢」の2の(3)、総理がイラクのヤーウェル大統領と立ち話を行う機会があり云々というくだりがございます。そして、この立ち話の内容が、今度は閣議決定と思われる文書の二の中に堂々と述べられております。

 先ほど来、口約束外交あるいは立ち話外交、私は、こういうことで日本の外交が、あるいは自衛隊員のこれからの駐留の問題が解決されるということは極めて外交の本質からして問題だと思います。

 ここに、わざわざ立ち話ということをお書きになっている。しかし、この立ち話も、当然、メモをとられたんでしょう。いかがですか、大臣。

川口国務大臣 確かに、立ち話という言葉は、普通の日本人が理解するときには、どこか廊下で呼びとめてという感じがしてしまうという意味で、言葉の使い方、若干不注意であったかなという気がいたしますけれども、外交をやりながら立ち話ということをいう場合には、これは、正式な会談というのは部屋に入って座ってお互いにじっくり話をするということを会談というわけで、それ以外にいろいろな場で、例えばコーヒーを飲みながらとか、時間が双方とれないときに立ち話ということが多いわけでございまして、恐らく、この紙をまとめたときに、そういうニュアンスを持って、意味を持って使ったんだと思いますけれども、普通の我々日本人が立ち話というと非常にその場限りのという印象を与えるかもしれないという意味では、若干不注意だったかなという気もいたします。

阿部委員 やはり、その意味では不注意外交の連続です。なぜ、先ほど来、赤嶺委員がおっしゃいました、文書を残さなかったのか。これはアメリカとであります。文書のあるなしによって、将来、例えば自衛隊員がイラクで戦闘行為に巻き込まれ、イラクの人をあやめるかもしれない、あるいは自分たちが傷つくかもしれない、そうしたことがあったときに、大もとになるのは締結された文書であるはずです。それが、何度も言いますが、立ち話や口約束でいいと思ってしまう日本の政治の姿勢が、私は、余りにも今行っていらっしゃる自衛隊員にも非礼であろうし、そして国民の当たり前の感覚から、立ち話なんて使われたら本当にびっくりしてしまいます。その国民の感覚との遠さ。

 小泉さんは、その場限りでブッシュ大統領に参加ということを言い、帰ってきて、いやいや、それは参加ではなくて云々かんぬんとなり、私どもの国民はそんな危うい橋を渡らされるのか、憲法ということも含めて。

 こういう外交ということは、外務大臣、お預かりになっている外交の姿勢として大きく問題と思いますし、先ほど来、資料提出のございましたメモ書き、せめてメモ書き、本来は文書で締結すべきことだと思います。非常に重要です。その文書のメモ書きを委員会としてお出しくださることをお約束いただきましたので、また追ってその折には論議に私も加わらせていただきたいと思います。

 もう一つ、非常に語学が堪能な大臣に、これは本当に心から言っているのですが、質問がございます。

 先ほど来、ユニファイドコマンドという、統合された指揮と申しますか、そういう文章をめぐっての質疑がございました。大臣は国連決議一五四六をしかとお読みと思いますが、このユニファイドコマンドの前に、いわゆる多国籍軍に当たる英訳がございます。大臣、多国籍軍は英語で何と言うでしょう。

川口国務大臣 外務省の事務方はもっと英語に精通をいたしておりますので、英語の質問でございましたら参考人にお声をおかけいただいておくと私よりもより正確な答えができるかというふうに思いますけれども、MNF、マルチナショナル・フォースというふうに書いてあると思います。

阿部委員 これは極めて政治的なことでございますので、大臣に伺いました。

 ここでマルチナショナル・フォースという、いわばフォーシズじゃなくてフォースという単数形を用いているということに大きな意味があります。これは一固まりという意味です、マルチナショナル・フォースという。そしてそれが、ユニファイドコマンド、統一された指揮のもとという後に係ってくる言葉があります。すなわち、我が国がどう勝手に字句解釈しようと、現実は、統合された指令部、一体のものとして、この国連決議の中に繰り返し繰り返し繰り返し出てまいります。

 このことも、では、語学に堪能な外務省の皆さんがきっちりと検証されて、なぜ単数形で使われているのか。これは、石破防衛庁長官も軍を預かる方として、自衛隊をお預かりの方としておわかりだろうと思いますが、指揮命令系統が一つで、それは一体としたものであるということであります。

 そして、私は、時間の関係で、せっかくお戻りいただきました細田官房長官にお伺いいたします。果たして、我が国のイラクへの貢献は、この多国籍軍に参加すること以外の選択肢はなかったでしょうか。

細田国務大臣 今現在、イラクにおいて人道復興支援活動を自衛隊の皆さんがやっておられる。これは本当にイラクから高い評価を受けていますし、これは継続してこそ貢献になるわけです。はい、どうも事情が変わったようでございます、さよならということが本当の貢献なのかといえば、これは、我が国の国民の皆様方がおわかりいただきますように、今、最大の貢献をしております。しかも、もちろんいろいろな方々がNGO等を通じて貢献しておられますけれども、やはり今の形の貢献というものを継続することが大切であり、かつ、最大の意味があると思っております。

阿部委員 私の質問への正しいお答えではないので、これ以外にないのかと伺いました。今のは、継続する、これは国連多国籍軍に加わるということで、以外がないかどうかは御答弁がなかったです。

 そこで、恐縮です、せっかくおいでくださっているので、石破防衛庁長官に最後に伺います。

 パウエル氏の書簡の中に、従来の国連決議にのっとる人道支援ということも担保されてございます。なぜ、あえて多国籍軍に我が国は参加あるいは協力していかなければならないのか。先ほど来、石破長官のお話を伺っておりますと、従来と変わることはないと。なぜ、改めて多国籍軍に入るのですか。そして、多国籍軍は、先ほど来言われておりますように、やはり治安とか戦闘に対してどうするかということを主眼としてつくられたものであります。他に選択肢はないのか、この点についてお願いします。

石破国務大臣 一つは、主権政府というものができる、主権イラク国家というものができる、従来の占領軍ではなくて、主権国家イラクをどのようにして復興支援していくかという、多国籍軍の意味合いが変わってくるということが一つございます。

 それで、では、ほかの選択肢はなかったのかというふうな御下問でございますが、ぎりぎりとやりましたときに、官房長官も何度かお答えになっていらっしゃいますが、日本だけが別に法的地位を得るために地位協定を結ぶというようなことが理論的に全く不可能であるかといえば、それはそうではないかもしれない。

 しかし、今回の場合には、全会一致で、イラクの首相からの書簡に対して国連安保理が、全会一致でやろう、世界みんなで一緒にやろうということが決まりました。そして、イラクは今、主権移譲を控えて極めていろいろな多事多難の中で非常に苦しい環境にある。その中で、日本が憲法に全く沿った形で特措法で行うときに、理論的には可能なのかもしれませんが、それが現実的にあり得る選択肢なのだろうか、それがまた我が国としてやるべきことなのだろうか。

 私どもは、人道支援を中心に安全確保支援も行いながら、本当にイラクの復興をどうやって早かるべく努力をするかということであって、ほかになかったのかといえば、理論的に全くないとは申し上げません。しかし、現実的には極めて困難なことかと存じます。

阿部委員 極めていい御答弁だと思います。

 私は、今回の選択肢は、目は米英の方に向き、イラクの主権にはやはり向いていないと思います。なぜなら、先ほど来の御答弁で、イラクの今回の暫定政府は、あるところでは完全な主権という言葉が繰り返し出てきながら、不安定要素を持っている、あるいは相手への負担が強いという言葉でその道を閉ざしてしまいました。

 完全な主権がある国に対して我が国が行うべき選択肢は幾つもあると私は思います。そのことをきっちり国民は論議してほしいと思っていると思いますし、安易な多国籍軍へのすりかえは私どもも国民も望まないところです。

 終わらせていただきます。

斉藤委員長 本日は、これにて散会いたします。

    午後四時二十五分散会


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