衆議院

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第3号 平成16年11月1日(月曜日)

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平成十六年十一月一日(月曜日)

    午後三時三十三分開議

 出席委員

   委員長 船田  元君

   理事 中谷  元君 理事 西田  猛君

   理事 三原 朝彦君 理事 渡辺 具能君

   理事 小泉 俊明君 理事 末松 義規君

   理事 藤田 幸久君 理事 佐藤 茂樹君

      宇野  治君    奥野 信亮君

      川上 義博君    岸田 文雄君

      左藤  章君    桜井 郁三君

      武田 良太君    谷本 龍哉君

      玉沢徳一郎君    寺田  稔君

      中西 一善君    西村 康稔君

      浜田 靖一君    平沢 勝栄君

      古川 禎久君    宮澤 洋一君

      市村浩一郎君    大石 尚子君

      大出  彰君    岡島 一正君

      吉良 州司君    篠原  孝君

      島田  久君    神風 英男君

      首藤 信彦君    鈴木 康友君

      中川  治君    中川 正春君

      長妻  昭君    伴野  豊君

      本多 平直君    牧  義夫君

      赤松 正雄君    丸谷 佳織君

      赤嶺 政賢君    東門美津子君

    …………………………………

   外務大臣         町村 信孝君

   国務大臣        

   (内閣官房長官)     細田 博之君

   国務大臣        

   (防衛庁長官)      大野 功統君

   防衛庁副長官       今津  寛君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  増田 好平君

   政府参考人

   (防衛庁防衛局長)    飯原 一樹君

   政府参考人

   (防衛庁運用局長)    大古 和雄君

   政府参考人

   (法務省大臣官房長)   小津 博司君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  三浦 正晴君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 鶴岡 公二君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            吉川 元偉君

   政府参考人

   (外務省経済協力局長)  佐藤 重和君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    鹿取 克章君

   衆議院調査局国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラク人道復興支援活動等に関する特別調査室長        前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月一日

 辞任         補欠選任

  嘉数 知賢君     奥野 信亮君

  竹本 直一君     左藤  章君

  西銘恒三郎君     中西 一善君

  山口 泰明君     古川 禎久君

  篠原  孝君     中川  治君

  鈴木 康友君     伴野  豊君

  照屋 寛徳君     東門美津子君

同日

 辞任         補欠選任

  奥野 信亮君     嘉数 知賢君

  左藤  章君     竹本 直一君

  中西 一善君     西銘恒三郎君

  古川 禎久君     山口 泰明君

  中川  治君     篠原  孝君

  伴野  豊君     鈴木 康友君

  東門美津子君     照屋 寛徳君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動等に関する件


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     ――――◇―――――

船田委員長 これより会議を開きます。

 議事に入るに先立ちまして、一言申し上げます。

 イラクにおいて武装集団に拘束されていた香田証生さんが不慮の死を遂げられました。テロの犠牲になられたことはまことに痛恨のきわみであり、極めて卑劣かつ許しがたい行為であります。

 ここに、香田証生さんの死を悼み、謹んで黙祷をささげたいと存じます。

 御起立をお願いします。――黙祷。

    〔総員起立、黙祷〕

船田委員長 黙祷を終わります。御着席願います。

     ――――◇―――――

船田委員長 国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動等に関する件について調査を進めます。

 この際、イラクにおける邦人人質事件について政府から発言を求められておりますので、これを許します。町村外務大臣。

町村国務大臣 在イラク邦人人質事件につきまして御報告を申し上げます。

 政府としては、昨日、イラク市内で発見された遺体の身元確認を行った結果、極めて残念ながら、それが香田証生さんの御遺体であるということを確認しました。

 十月二十七日に香田さん拘束の第一報に接して以来、政府として、香田さんの一刻も早い解放のため、アンマンの現地対策本部や関係在外公館と連携し、イラク暫定政府を初めとする関係各国や関係者の協力も得つつ、全力を尽くしてきました。それにもかかわらず、香田さんがテロの犠牲になられたことは、痛恨のきわみであります。衷心から哀悼の意を表するとともに、御家族に対し心からお悔やみを申し上げます。

 現在、御家族の御意向を確認しつつ、可及的速やかに御遺体を日本へ移送できるよう、関係方面と調整を進めているところです。

 無辜の民間人の生命を奪った今回のテロは、卑劣きわまりない行為であり、改めて強い憤りを覚えます。こうした行為は、断じて許すことはできません。我が国は、国際社会と協力し、今後とも断固たる姿勢でテロとの闘いを続けなければならないと考えます。

 他方で、イラクの復興は道半ばであり、イラクは国際社会の支援を引き続き必要としています。我が国として、イラクの復興に引き続き積極的に関与していくことが重要であると考えています。

 今回、最悪の結果となってしまいましたが、本件につき御協力をいただいた関係者の方々に対し、改めて心より御礼を申し上げます。また、本件に関する、国会を初めとする国内各方面の御理解と御協力に対して御礼を申し上げます。

    ―――――――――――――

船田委員長 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官増田好平君、防衛庁防衛局長飯原一樹君、防衛庁運用局長大古和雄君、法務省大臣官房長小津博司君、法務省入国管理局長三浦正晴君、外務省大臣官房審議官鶴岡公二君、外務省中東アフリカ局長吉川元偉君、外務省経済協力局長佐藤重和君及び外務省領事局長鹿取克章君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

船田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

船田委員長 この際、政府から説明を聴取いたします。防衛庁運用局長大古和雄君。

大古政府参考人 イラク人道復興支援特措法に基づく自衛隊の部隊の最近の活動状況について御報告いたします。

 まず、十月二十八日以降のサマワ周辺の情勢についてですが、現地部隊においては、現地時間三十一日午後十時三十分ごろ、日本時間十一月一日午前四時半ごろ、何らかの爆発音を確認しました。細部については、現在確認中であります。現地部隊については、必要な退避措置をとり、人員等に異状がないことを確認しました。詳細について現在確認中であります。

 サマワの陸自部隊においては、安全確保に十分配意しつつ、宿営地における給水活動を初め、ムサンナ県内のサマワ、ヒドル、ブサイヤにおける学校補修、ナジミ、ワルカ及びサマワにおける道路整備を引き続き実施しています。これらの活動により、一日当たり三百から五百名程度の雇用を創出しているところです。また、病院における医療活動も引き続き実施しています。

 給水活動に関しましては、現在一日当たり二百トンから二百八十トン程度を給水しております。これは、仮に一人一日当たりに必要な水を四・五リットルとした場合に、給水量を二百五十トンとしても、約五・六万人程度の所要量を満たす計算になります。なお、三月二十六日から十月三十一日までの間に、計約三万六千トンを給水しました。

 航空自衛隊の部隊については、十月二十八日から三十一日までの間、我が国からの人道復興関連物資、陸自関連及び関係各国、関係機関等の物資、人員の輸送を計一回実施したところです。

 引き続き、イラク国内の各飛行場の安全性や輸送ニーズ等を慎重に勘案しつつ、C130機による輸送を行ってまいります。

 以上でございます。

船田委員長 次に、外務省中東アフリカ局長吉川元偉君。

吉川政府参考人 最近のイラク情勢につき御報告申し上げます。

 外務省の報告は、別途御配付申し上げました資料のとおりですが、十月二十八日の先回の理事会で御報告申し上げました諸点との関係で、変更点のみ申し上げます。

 サマワでございますが、サマワにおきましては、十月三十一日の午後十時三十分ごろ、日本時間では十一月一日午前四時三十分ごろですが、ただいま防衛庁から報告いただきました事案が発生しております。サマワがイラクの他の地域と比べ比較的安定している状況に変化はありませんが、今後もテロ等発生の可能性を否定することはできません。

 以上でございます。

船田委員長 これにて説明は終了いたしました。

    ―――――――――――――

船田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。川上義博君。

川上委員 川上でございます。

 まず、香田さんに対しまして、心から御冥福をお祈りいたしたいと思います。

 なお、両大臣には、連日、心の休まることがなくて、大変御苦労さまでございます。これからも頑張っていただきたいと思います。

 実は、私は最近、アラブの何人かの皆さんと話をする機会がありました。その話をもとにきょうは質問をしてみたいと思います。

 実は、歴史的に、アラブは中東と言われたくないと皆さんおっしゃっていまして、我々は西アジアなんだ、何ゆえ中東と日本の皆さんがおっしゃるのか、中東という言葉は嫌いなんだとおっしゃっておりましたけれども、極めて歴史的に親日感を持っておりました。ロシアと戦って勝利をして、経済成長も驚異的に行った日本に対して、大変、尊敬とともに、親しい国だと思っていますというのが基本にありました。

 ところが、最近、日本の政府がとったイラク政策というのは、アメリカの同盟国であるということはわかりますけれども、どうも印象としては、追随、従属と見られているんだということをおっしゃるんですね。我々は本当に心からがっかりしているんだというふうなことを皆さん異口同音におっしゃっておりまして、私もそれを聞いてびっくりしたわけでありますが、それで、ついにはロケット砲、迫撃砲が宿営地に撃ち込まれるという状況になってきておるわけです。

 これについて、防衛庁長官は、自衛隊に対する脅威が当初よりますます深まっているんだ、進んでいるんだというふうにお考えなのかどうか。依然として予断は許さないということなんですけれども、依然としてというよりも、どんどん脅威が深まっている、増加しておるというふうに素直にお考えかどうか、お伺いしたいと思いますし、前回の特別委員会で、ロケット砲が入ってきたらブロックできる安全装置がしっかり考えられるんだというふうなことをおっしゃっていましたが、実は、既に現実、ロケット砲が、信管つきではありませんけれども、入ってきているわけですね。だから、今回もロケット砲のような、まあ爆発音があったということでありますが、そのあたりのことをぜひ、非常に危険なんだという認識なのかどうか、お伺いしたいと思います。

 それと同時に、外務大臣に、同じイラク国内で治安が、ますます拡大しているというふうにお考えであるかどうか、大臣にもお伺いしたいと思います。

大野国務大臣 まず、香田さんの事件につきまして、まことに言語道断、卑劣な許しがたい行動である。犠牲になられました香田さん、御家族の方々に心から弔意を表したいと思います。また同時に、テロには屈してならない、こんな思いでございます。

 さて、御指摘になられました、先生御自身、アラブの問題を十分研究なされて、アラブ人から見ると、対米追従じゃないか、日本のよさを失っているんじゃないか、こういう御指摘でございます。

 私は、サマワにおける自衛隊の活動でございますけれども、自衛隊の活動はさまざまな面で地元では評価されている、このことは申し上げたい。特に、例えば七夕さんを一緒にやるとか、そういう活動もやっています。地元のメディアにはもう七十回以上こういうことが報道されて、例えば、自衛隊の皆さんが通りますと、一緒に公共事業をやっていた相手国の関係者が手を振ってくれたり、あるいは学校を修復した、している、そういう場合には、子供たちが本当に自衛隊の皆さんに手を振ってくれる、こういうような関係にあることを基本に考えたいと思います。

 ただ、問題は、一体、今回脅威がふえているのか減っているのか、どう見るんだ、こういう問題かと思います。

 治安については、もう先生御存じのとおり、南東部というのはイラクの中で比較的治安については問題がないところであり、その中でサマワは治安が一番よいとされています。それでもやはりいろいろな問題が起こっている。特に、せんだって、二十三日でございましたか、ロケット弾が、信管がないとはいえ宿営地の中に落ちてきた、南端に落ちてきた、これをどう見るんだ、こういう問題。あるいは、きのうでしたかの問題もございます。そういう問題で脅威が増しているんじゃないか。

 ずっと振り返ってみますと、四月と八月にはいろいろな事件があって、その事件の主なるものは、例えば、サマワの警察当局、治安当局に対する問題、あるいはオランダ軍との衝突、あるいはムサンナ県知事に対するデモ行為、こういうことはあるわけでございます。

 そういうことを背景にして、どうも日本の自衛隊に対する嫌がらせが起こってきているのではないか。私は、やはりこの問題はきちっととらえて、その背景、本当に自衛隊をねらってきているものなのかどうなのか、ここも情報をきっちりとっていかなきゃいけない、それから背景を十分把握していかなきゃいけない、当然のことであります。この問題、十分に研究をさせて、情報収集させていただいております。

 また、自衛隊隊員自身の安全問題については、ここで詳しくは申し上げませんけれども、それなりの措置はとっております。このことを申し上げます。

町村国務大臣 イラクの治安状況についてのお尋ねでございました。

 決して予断を許さない状況が続いているというのが現在の、一言で言えばそういう姿だろうと思います。依然として、駐留多国籍軍と武装勢力の衝突、民間人の殺害、拘束事件等々が起きているのは御承知のとおりであろうかと思います。

 そこで、今、イラク暫定政府が治安回復のためのいろいろな努力をやり始めております。したがって、こういう努力が一層成功して治安が回復することが期待されておりますが、当面非常に大きいのは、来年一月までの実施が予定をされております国民議会の議会選挙、これが一つの大きなポイントであろうということであります。

 先般、イラク復興信託基金に関する会合に出席をされましたサレハ・イラク副首相と話をしましたけれども、副首相も、この選挙をきちんとできるかが大きなかぎを握っていると。逆に言うと、それに向けての、妨害するテロリストたちの活動が非常に強くなってくるという心配が当然あるということでございましょう。そういう意味で、私どもは、この選挙を成功させるためにいろいろな支援をしていかなければいけない、こういうことでございます。

 なお、これは御参考まででございますけれども、アラウィ・イラク暫定政府首相がアメリカ議会で演説をしておりまして、イラク十八県のうち十五県ではあしたにでも選挙を実施することが可能である、そういう治安状況であると。どうしてもマスコミ等々では、西側のメディアが、危険な地域、危険な状況と、大体、スンニ・トライアングルと言われている地域のことを指しているんだろうと思いますが、そこは確かに問題があるけれども、十八の県のうち十四、五県までは完全に安全だということがほとんど報道されていないのはまことに残念だということをアラウィ首相は言っておられるようでございます。

川上委員 時間がどんどんなくなって、質問する時間がないんですけれども、まず、いろいろ言いたいんですけれども、基本計画の時期が来ているんですね。まあ総理が言っていますけれども、総合的に勘案する、あるいは、もう延長は既定路線なんだという、どちらをとっていいかわからないんですけれども、長官のお考えは、これを延長するお考えなのか、あるいは、延長するとすれば、基本計画の内容自体を、今六百名で、治安が非常に悪化しておるんであれば、それをふやすのか。もっと支援強化といいますか、支援の体制をつくるのか。基本計画をどうされるのかということをお伺いします。

 それと、外務大臣、我が国は伝統的に、日米同盟と国際協調という二つの路線でやってきたわけですね。ところが、一つの柱がもう崩れつつあると私は思っているんです。余りにも日米同盟に重点を置きながら、我が国がずっと戦後とってきた国際協調、国連中心主義といいますか、それがどうもなおざりになっているんじゃないか。

 我が国が、特に外務省がやる役割というのは、もっと、来年の自由選挙、その実現のために外務大臣みずからが、ロシアとか中国とかドイツとかフランスとか、あるいはシリアとかイランとか、ずっと回って、みんなでイラクの治安安定のために努力しましょうと。米軍独占だけじゃないんです、アメリカ独占じゃないんです、みんながやりましょうということで、日本が主導権をとった方がいいんじゃないですか。

 私は、ぜひそれを外務大臣にお願いします。それができましたら、外務大臣、ノーベル平和賞をもらえるかもしれませんので、ぜひこの努力をお願いしたいと思います。

大野国務大臣 まず、イラクの安定、復興がやはり国際社会の安定、安全につながってくる。特に日本としては、石油資源の九割を中東から入れておりますから、そういう意味でも大変大きな問題であります。イラクが破綻国家になって、もしテロの温床になると、これは絶対的に国際社会の平和と安全にとって深刻な問題になることは言うまでもありません。こういう基本的な考えのもとに、やはり自衛隊の活動というのは、ODAの活動と車の両輪となって、安定、復興に努めていかなきゃいけない。

 さて、そういう基本的な考え方のもとで、基本計画を延長するのかどうか。いつも申し上げておりますとおり、これはイラクの復興の状況、これはまだ道半ばと言わざるを得ません。もう一つは、治安の問題でございます。これらを総合的に考えて、今後検討して決定してまいる、こういうことでございます。

 また、その際、基本計画の中身をどうするのか。これはやはりニーズを十分に考え合わせ、また、自衛隊が活動できる範囲、許された範囲の中でやっていく、当然のことであります。自衛隊が活動できる範囲を超えるわけにいきません。そういうことで検討してまいるつもりでございます。

町村国務大臣 私どもは、もちろん日米関係も重要ですが、同時に、国連あるいはいろいろな国際機関というものの重要性、それらとの協調を図っていくということを決しておろそかにしてはおりません。いろいろな議論はそれはあるかもしれませんけれども、私どもがイラクの武力行使を正当なものだと認定をした根拠は累次の国連決議にあるということは、御承知のとおりでございます。

 それとあわせまして、今私どもも、いろいろな国際的な努力、外交上の努力も必要であろうということで、先日の、申し上げました、イラク復興信託基金に関する国際会議というものを日本が主催いたしまして、資金面での協力、そして、その中で、先ほど申し上げました、選挙が重要だということで、選挙面での、例えば日本は、資金協力約四千万ドル、これに拠出しよう。あるいは、どういう形になるかわかりませんが、もし事情が許せば、選挙監視等も行っていこうということもあります。

 さらに、十一月下旬ごろには、これはイラク暫定政府が主催する形で、G8諸国とイラクの周辺諸国との会合ということで、国際社会が一致してこの暫定政府を支え、選挙を成功させようという会議もございます。それらにもぜひ参加をして、日米だけで日本の外交をやっているわけではないという現実もございますし、また、このイラク問題についても、そういった多国間での協調の中で取り組んでいくという姿勢を今後とも明らかにしていきたいと考えております。

川上委員 時間がなくなりましたが、最後に二つほど質問いたしたいと思います。

 オランダ軍が、来年三月撤退というか、検討しておるようでありまして、仮に撤退すれば、日本として、イギリスに頼むか、アメリカに頼むか。仮に米英に頼むとした場合、ますます日本は米英と一体になっているという印象を受けるわけでありますが、その際、オランダ軍が撤退した場合は、自衛隊はだれに守ってもらうんでしょうかということ。

 それから、フセインのときに、債権、我々は相当お金を貸しているわけです。フセインのときの債権があるんですけれども、その債権放棄をフランスは五〇%とかイギリスは九十何%とかするような決定をしていますが、今四十億ドルか五十億ドルなんですけれども、日本はどのぐらいの債権放棄をお考えでありますかということであります。

 そして最後に、やはり空爆で十万人規模のイラク人が亡くなったりしているわけなんですね。だから、これが、アメリカと日本は一体となっているんだという印象をどんどん与えられると困るので、私が言ったように、このアメリカ軍の動きと日本は区別をする、しっかり区別するんだというふうな外交政策というのを打ち出さないと、もう私はだめだと思うんですね。だから、今言ったように、どんどん外交を展開して、ぜひ外務大臣が世界に発せられることをお願いいたしたいと思います。

大野国務大臣 三つ御質問になったようでございますけれども、最初の一問だけ私の方から。

 オランダ軍のイラク駐留につきましては、去る六月の同国政府の決定によりまして、明年三月半ばまで延長されたと聞いておりますけれども、それ以降のオランダ政府の方針につきましては、今後、同国が主体的に判断するものと考えております。

 また、自衛隊のイラク派遣の基本計画では、派遣期間が本年十二月十四日までとされておりますけれども、その後の対応につきましては、イラク復興の状況やイラク治安の情勢等を総合的に勘案して検討して、適切に判断していく、こういうことでございます。

町村国務大臣 二点のお尋ね、一つは債権放棄の問題でございます。

 今、いわば債権国会議ともいうべきパリ・クラブというところで、大体いろいろな国の債権放棄問題というのを議論しているわけでございまして、まだ結論が出ているわけではございません。今、十一月中だったかに答えを出すべく、関係国で詰めております。

 御承知のように、どのくらいの債権放棄が必要かということで、必ずしも関係国で意見がまとまっているわけではございません。幾つかの国は五割程度、幾つかの国は九割ぐらい削減が必要だということでございまして、ただ、基本方向は、六月のシーアイランド・サミットで、G8として、イラクの債務をやはり削減しなければイラクの国家としての存続ができなくなるということで、基本方向においては一致をしておりますので、これらについて、どのくらいの削減にするのかということをできるだけ十一月いっぱいぐらいをめどにまとめなければいけない、こう思っております。

 対日感情が悪くなるのではないかという御指摘がありました。そこのところは、確かに外交の面でも十分留意をしなければいけない問題だ、こう思っておりますが、幸いなことに、伝統的に日本はイラクとは大変いい関係を保ってまいりました。イラクの経済的な発展、社会的な、文化的な発展を支えてくるということを随分長い間やってきました。

 そんなこともありまして、実は、これは一つの調査でございますけれども、オックスフォード・リサーチ・インターナショナルという会社がやった、ことしの二月、三月、六月の世論調査、サンプル約二千数百というものでございますけれども、常に、どの国と一緒に再建をしていったらいいかという一位に日本が来ております。二番目がアメリカです。三番目がフランスであったりイギリスであったりということで、日本に対する期待の大きさというのは非常に大きなものがある。

 その辺を踏まえながら、今後ともしっかりとした、今は自衛隊の活動ですが、だんだん平時に戻れば、また今度は、より民間主体のいろいろな支援活動をやっていくということが必要であろうと考えております。

川上委員 どうもありがとうございました。

船田委員長 次に、赤松正雄君。

赤松(正)委員 公明党の赤松正雄でございます。

 アフガンの事態をきっかけに制定されましたテロ特措法がちょうど三年を迎えたその日ともいうべきときに、大変に、きょうの委員会の冒頭でみんなで黙祷をいたしましたけれども、本当に残念な、極めて残念無念なことが起こったことを、本当に私も激しい憤りを持って感じているところでございます。

 今回の事態を迎えるに当たりましてといいますか、私は、全体のとらえ方というのは、やはり九・一一もさることながら、その前の、一九九三年から九・一一を含めて五回にわたる、九三年、九四年、九八年、二〇〇〇年、そして二〇〇一年と、世界各地でさまざまなテロが起こった。そういうものが前段にあって、そして九・一一、そしてその後の現在にまで至る事態が起きている。つまり、国際テロとの闘いということがよく言われますけれども、大胆に言えば、新しい戦争の時代、こんなふうにも言えるんじゃないか。

 そういう状況の中で、日本人、初めて人質という状態の中で、国際テロリスト、アルカイダとの関係が深く言われている残虐非道な集団によって彼が殺されたということ、前二回のケース、奥さんとかあるいはジャーナリストたち四人が亡くなられたということにも加えて、全く新しい事態が起きた、そんなふうに思うわけでございますが、緊急の事態にかんがみて、外務大臣に特に、事前にお話を申し上げていないんですが、最初に外務大臣に認識を改めて確認させていただきたいことがございます。

 それは、今も私申し上げましたように、まさに国際テロの時代、新しい戦争の時代、こんなふうに言える状況の中で、言ってみれば、日本が人道復興支援、こういう形に特化させて、日米同盟というもちろんきずながあり、そして、国際社会の一員として国際社会の多くの国々と、もうほとんどすべてと言っていい国々との協調の中で日本は人道復興支援というものに取り組んでいるわけです。しかしそれは、今も自由民主党の委員の方からもお話がございました、しかしそれはこちらの考えであって、あるいはさっき外務大臣が、非常に重要な世論調査の、イギリスですか、話をされておりました。そういう声が幅広いイラクの国民の中にあるということはわかりますが、国際テロリストには通用しないんではないかということを強く感じるわけでございます。

 そこで、先ほど、冒頭の外務大臣の報告の中に、「今後とも断固たる姿勢でテロとの闘いを続けなければならない」。テロとの闘い、断じて屈してはいけないと私も言いますし、みんな言います。そのことと、一方、「他方で、イラクの復興は道半ばであり、」云々、「我が国として、イラクの復興に引き続き積極的に関与していく」。これは、今、当面は、さっきも大臣がおっしゃっていたように、自衛隊の皆さんを中心とした、中心というか今の時点ではすべてでありますが、サマワの宿営地における一連の人道復興支援を指しておられるんだろうと思うんです。

 ここで二つ確認したいんですが、「テロとの闘い」というのは、独自に今の時点で日本があるのかどうか。恐らくなくて、後段の部分、人道復興支援というのがそれに当たるんだろうと思いますが、非道なる国際テロリストにはそういうことは通用しなくて、残念ながら、我々が一生懸命やっている、支援している自衛隊のサマワでの行動そのものがまさに断固たるテロとの闘いというふうに恐らく映っているんであろう、そんなふうに思うんですね。

 これは長官には聞きませんが、長官が先ほどの答弁の中で、これはより確実を期しておっしゃったことだろうと思うんですが、自衛隊をねらっているのかどうか、一連のこの砲弾着地がとおっしゃったが、それはもう僕は間違いなくねらっていると。それで、次のテーマとして自衛隊に激しいショックを与えることを起こしてこようとしているというふうに見なくちゃいけない、そんなふうに思うんですが、冒頭、外務大臣に、まず基本的なそういう国際テロ時代における日本の役割というか、それがどうとらえられているか。先ほどはイラク国民に対するとらえ方がありましたけれども、もっとシビアに、国際テロリストたちにとってどういうふうに受け取られているのか。

 余り聞くべきことでもないかもしれませんが、基本的なそういう認識をまず外務大臣にお聞きしたいと思います。

町村国務大臣 私も余りテロリストなる人たちとつき合ったことがないものですから、どういう考えを彼らが持っているのか確信を持てるわけではないんですが、いろいろ報道されるところにより、いろいろな原因でテロリストを生んでいる、こう思います。

 それは、一つには国内の貧困問題というのもあろうかと思います、それぞれの国、地域のですね。あるいは、それぞれの国、地域における民族対立、部族対立といったようなこともあろうかと思います。宗教的な対立もあろうかと思います。さらには、大きな国と国の代理戦争的な意味でのテロリストというのもいると思います。いろいろな事情でテロリストというものが発生をしてくる、これが今の時代なんだろうなと、こう思います。

 そういう意味で、やはり日本がそうしたいろいろな原因でできてくるテロというものを、テロリストの発生のその基盤を、背景をどうやったらばきちんと対処できるかということだろうと思います。なかなかこれは、宗教問題にどこまで日本が入っていくことができるか、考えると非常に気が遠くなるような難しい問題であります。

 でも、多分日本が一番やりやすいことというのは、一つは、そういった経済的な面での大きなギャップがあるところを埋めていくための仕事、これが多分日本の経験も踏まえて言えば一番やりやすいことなのかな。直ちにそれがODAと直結させるつもりもありませんが、それも一つの方法ではなかろうかと、こう思ったりもいたします。

 ただ、今、アフガンのテロ特措法あるいはイラク、こういった面で日本は、一つは国際協調、国際的に結束をしてテロとみんなが一緒に闘うんだという姿勢を示しております。それは、国連の場においてもテロ防止条約の審議というのが行われていることにもあらわれておりますけれども、そういった国際協調の中でのテロ対策、その一環としてアフガンでの自衛隊の活動それらもあるというようなこともありますし、それから、テロの資金源を断つ等々の――ごめんなさい、答弁が長くて。そうした情報の流れ等をいかに遮断していくのか。そのために、まさに武力行使できる国々がある。それをある意味では、広い意味で後ろで支えているのが日本、そういう役割もあろうかと思います。

 したがって、すべてのことに日本が有効な活動ができるとは申し上げませんが、随所に日本らしい役割がテロ対策で果たすことができるのではないかなと、このように考えます。

赤松(正)委員 私が言いたいのは、極めて楽観は許されない、非常に極めて厳しい状況に今立ち至っているということを言いたいわけでございます。

 私どもは、この今日に至る事態のきっかけとなる部分では非常に憂慮をしまして、アメリカの決断に対しても小泉総理の判断にしましても、非常に苦渋の決断であったと。その決断そのものはあの時点では認めましたけれども、その後のアメリカのネーションビルディングの部分は、やはり非常に極めて乱暴なところが多いと言わざるを得ないというふうに見ているわけです。

 国際テロリスト、さっき外務大臣はそういう人と会ったことないとおっしゃっていましたけれども、先ほど冒頭で申し上げましたように、九・一一よりももっと前から、もう十年近く前から、もっと淵源は深いかもしれませんが、世界の中に大きなテーマとして浮かび上がってきたのは、もっと前からそういう国際テロリストたちのばっこという問題はあるわけで、ある意味で、私も含めて、あのイラク事態、昨年の三月二十日ですか、あの事態以降少し安易な、楽観的な見通しがなかったとは言えない、そんなふうなことを感じるわけであります。そういう意味で、しっかりと、つまり、国際テロの時代、新しい戦争の時代に中立はない、そういうふうに思います。

 私も含めて、イラクに自衛隊を出しているということは、非常に貴重な、人道復興支援に限定した形で出しているというのは、私は、公明党として新しい平和主義というものを打ち出して、その一つの例としてそれを語ることが多いわけですけれども、しかし、その実態というかこれから先というのは極めて危うい場面もあるということをしっかり踏まえて、まあそんなことはお二人に言わずともわかっていることでしょうけれども、していかないといけないということを改めて感じたことを冒頭に申し上げさせていただきました。

 と言って、もう時間がなくなってまいりましたが、引き続き、私のこれから質問することは、国際テロ時代と言うからには、日本も、日本そのものに国際テロの侵入というかそういうものが来る可能性というものをしっかりと排除していかなくちゃいけない、そういう観点から、質問を一つ二つさせていただきます。

 まず、テロに対する対策というものについて、九・一一以降、日本も素早い対応をしてきたと思うんですけれども、例えば、アジアにおける共通のテロ対策という観点で、今外務省の肝いりで、JICAを通じてテロ関連分野で毎年、といっても二年ですか、二百五十人、三百人前後のアジアからの研修員を受け入れて、テロの対応ということで研修をしている。一方で、法務省には国連犯罪防止研修所というものがあって、これはテロというよりも一般の犯罪に対する対応ということでやっているようであります。

 言ってみれば、国を挙げてのカウンターテロ対策というんですか、カウンターテロセンターというんでしょうか、そういうのがオーストラリアだとかあるいはマレーシアには、アジアの中にはあるようですけれども、そういうきちっとしたテロに対するアジアの一つのいわゆる横の連携というものをしっかり踏まえた上で、日本が中軸になってそういうテロを防止する仕組みというものはまだしっかりとできていないという指摘をする向きがありますが、そういった点について、今申し上げた法務省の中にある国連犯罪防止研修所なるもの、あるいはJICAが今受け入れをやっているそういうテロ対応の問題、こういうものをひとつまとめて、一括してテロ対策としてのセンターをつくる、こういうふうなお考えがないかどうか、外務大臣にお伺いをしたいと思います。

町村国務大臣 今御指摘をいただきましたJICAのプログラムでございますけれども、二〇〇二年度には二百七十四名、二〇〇三年度には三百六名の研修員を受け入れております。対象は、主として、出入国管理、航空保安、港湾保安、税関能力、輸出管理、警察及び法執行機関の協力、テロ資金対策、生物・化学・核関連物質・核兵器テロ対策、テロ防止関連条約締結促進といった九分野を重点対象としているところでございます。

 それから、例えばことし、マレーシアの東南アジア地域テロ対策センターにおいてJICAが実施した化学テロ事前対処及び危機管理セミナー、こういうものに政府の職員が講師として参加をしておりますし、また、外務省が主催した東南アジア諸国を対象としたテロ防止関連条約の締結促進のためのセミナーにおきましては、警察庁、財務省、金融庁の職員、それから国連アジア極東犯罪防止研究所の教官が講師として参加をしております。

 それを全部ひっくるめた一つの機関にしたらいいのかどうなのかということは、引き続き検討させていただきたいと思いますけれども、いずれにしても、特にアジアの皆さん方を中心としたテロ対策のネットワークづくりということについては今後とも力を入れて、テロ根絶に向けて努力をしてまいりたいと考えます。

赤松(正)委員 まだ、今引き続きとおっしゃったけれども、余り今までそういうことをされたことがないんじゃないのかという気がいたします。したがって、ぜひ、きょうをきっかけにその辺のことの検討を始めていただきたい、そんなふうに思う次第でございます。

 あと、生体認証ですか、バイオメトリックス、偽造旅券を許さないという格好で日本が、二〇〇五年ですか六年ですか、近々にそれを導入するという問題も急がれる課題としてあります。日本だけがやっても、アジアの諸国がそういうことをやらなければ、世界同時にやっていかなければ意味がないことでありますので、そういった点もしっかりと対応を、今申し上げたような、JICA任せじゃなくて、あるいは法務省に既にあるそういう機関もしっかり生かしながら、新たなる、全政府を挙げてのアジアにおけるテロ対策ネットワーク、そういったものをつくっていただくようお願い申し上げまして、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

船田委員長 次に、藤田幸久君。

藤田(幸)委員 今回の残虐なテロリストの蛮行に怒りを覚え、そして香田証生さんの死を悼むとともに、御家族に心からお悔やみ申し上げたいと思います。香田さんの救出に向けた外務省を中心とする、あるいは官邸を中心とする関係者の不眠不休の努力には感謝を申し上げたいと思っております。

 民主党も、四月の人質事件のときには私も逢沢副大臣と同じ時期にアンマンに参りましたが、その四月と同じように、この救出に関しては、政府に情報提供その他を含めて協力するという立場から、二十七日から、私どもも二十四時間態勢での対応をしてまいりました。

 そこで、まず外務大臣にお伺いをしたいと思いますが、二十七日、外務大臣の方で、アルジャジーラ、AP等を通じましてメッセージを犯人グループにあててということで出されたわけですけれども、私は、そのメッセージを読んでみて非常に当惑した次第でございます。その文面、覚えていらっしゃるかと思いますけれども、日本はイラクの人々の復興努力を支援し、自衛隊も復興努力を支援するために派遣されています、日本政府は、最近、イラク復興信託基金に関する会合を東京で主催したばかりですと。

 これは四月であれば、ファルージャを中心としたイラクの地域の方々が感情的に動いたということもありますので、イラク一般の人々に対するメッセージであればこれでよかったんだろうと思いますけれども、まず、これは、ファルージャの一般住民ではなくて、犯人グループがそもそもイラク人ではなくてアルカイダという外国人系だという認識があったのかどうか。これは、外国人であるテロリストグループというよりも、イラクの良識ある一般の人々に発しているメッセージであれば内容がいいんですけれども、そもそもメッセージの内容が異なっていたのではないかという認識を持っておりますが、いかがでしょうか。

町村国務大臣 その時点で、犯人グループがどういうグループであるか、あの画面を見て一定の推測はできたわけでございますけれども、正直言うと、今日に至るも、どのグループが、どういう人たちがということが最終確認できたわけではございません。

 そこで、私どもとしては、これらのグループが全部外国人のテロリストなのかどうかもよくわかりませんから、そこはイラクの人たちも当然いるんであろうということを念頭に置き、さらには、もしその放送を聞くなり見たりして、イラクの方々がもし情報があれば、ぜひそういったグループに説得をしてもらいたい。それは甘いと言われればそうかもしれませんけれども、そういう期待を込めてそうしたメッセージを出した次第でございます。

藤田(幸)委員 いや、イラクの人々に期待を込めてと言いますが、相手は、「イラクで日本人を人質にしているグループへ」とはっきりおっしゃっているわけですね。

 それからもう一つは、確定しているしていないの問題ではなくて、メッセージを出しているわけですから、いろいろなことを想定して有効なメッセージでなければ、つまり、どういう状況でもって、どういった犯人がこういう形で証明できるという証明の問題ではなくて、香田さんの命を救うかどうか、そのためのメッセージであるわけですから、当をついたメッセージでなければ、逆効果になっては意味がないわけであります。

 そして今回は、要は、このメッセージの内容ですと、日本はいかにアメリカと親しいか、いかに暫定政府と親しいかという内容そのものであります。であるとするならば、結果的には逆のメッセージになったのではないか。

 ましてや、遺体が星条旗にくるまれているということは、少なくとも、いかに日本側が説明しても、受け取る側にしてみれば、やはり日本はアメリカと一体であるというふうに見られているという結果がある意味では出ているわけです。そうしますと、このメッセージの内容が、メッセージというのは四十八時間の勝負ですから、だれに対して何を伝えるかということからしますと、私は、四月であって、良識あるイラク人に期待をしてならばメッセージとして妥当であったけれども、今回のメッセージはちょっとずれていたのではないかと思っておりますが、いかがでしょうか。

町村国務大臣 そういう御批判は率直に受けとめて、今後のまた参考にしたいと思います。

藤田(幸)委員 つけ加えますが、最後のメッセージの部分は「香田さんの一刻も早い解放を願っております。」と、何か他人事のようというのではありませんけれども、つまり、解放して命を救ってくださいというようなメッセージがなかったということもつけ加え、岡田さんの方でも、アルジャジーラで、二十九日の段階で、そのときには実際に解放を具体的に求める表現をしております。

 「解放を願っております。」ということをこの人質グループに対して発したとすれば、ちょっとメッセージの内容として必ずしも十分ではなかったのではないかということを申し上げておきたいと思います。

町村国務大臣 アルジャジーラへの質問あるいはメッセージ、あるいはCNN等、多少の違いは、私も今手元に全部資料があるわけじゃありませんが、私は最後の部分で、香田さんの御家族さらに日本国民全員が、香田さんが一刻も早く無事に解放されることを強く強く求めておりますということで、あるいは人質に対する残虐な行為が行われることが決してないよう心から望んでおりますというような表現を使っております。

藤田(幸)委員 私のは外務省のホームページからとっている文章であります。最後の部分は「香田さんの一刻も早い解放を願っております。」ということでございます。

 まして、人質にしているグループに対して、残虐な云々、本当に大臣はおっしゃっているんですか。今のお話ですと、これは「イラクで日本人を人質にしているグループへ」と言って出ていらっしゃるのに、今おっしゃっているような残虐非道なということをおっしゃっているんですか、そのグループに対して。

町村国務大臣 いや、私もメッセージがありまして、これは二十八日のメッセージでございます。アルジャジーラ出演の際のメッセージでございます。今それを私は読み上げているつもりでございます。

藤田(幸)委員 外務省のホームページは二十七日です。外国プレス、アルジャジーラ、APTN、ロイター、CNN出演の際に呼びかけたもの、英語で放送されたものの仮訳、外務省のホームページです。

町村国務大臣 二回、私はアルジャジーラに出ております。私が今申し上げたのは最初のメッセージで、あとは電話という形で、画像は既に撮ったものを使ったようですが、二回目のメッセージは、これは今度、電話インタビューみたいな形だったものですから、そちらの方が今出ているんだろうと思います。一回目の私のアルジャジーラの方は、今申し上げた内容になっております。

藤田(幸)委員 逆でしょう。私が持っているのは二十七日で、大臣のは二十八日ですから、こちらが一回目で、大臣のが二回目じゃないですか。

 いずれにしても、グループに対してこういう言い方では、四月であれば私はいいメッセージだったろうと思いますけれども、外国から入ってきているテロリスト、その人々に対するメッセージとすれば妥当性を欠いていたということを指摘して、時間がありませんので、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 まず、事件が起こってから、バグダッドの鈴木大使は暫定政府のアラウィ首相に要請をされましたが、直接首相に会いに行かずに、電話でこの要請をした。それから、私が理解をしている範囲では、鈴木大使は、このアラウィ首相以外に、重立った暫定政府関係者に直接その要請をするということはなかったというふうに理解をしておりますけれども、やはり、同じグリーンゾーンの中ですから、直接出向いて要請をすべきでなかったかと思いますけれども、いかがでしょうか。

町村国務大臣 日本大使館の所在地はグリーンゾーンの外であります。

 その上で、今、外交団を含めて、バグダッド市内の外出、移動、これには警護が伴います。ある意味では、日本の外交団というのは、先般の事件でもあるように、またあるいは、選挙が近づいているというテンションが高まっている状況の中で非常に危険があるという状況、さらには、切迫した時間の制約の中で邦人救出に向けていろいろな活動をやらなければいけないということで、しかも、アラウィ首相もいろいろな日程があるという中で調整することが困難だったがゆえに、アラウィ首相に対しては電話で協力要請をした。なお、鈴木大使は、アラウィ首相との電話会談を受けて、直接担当であるハマーディという内閣府の長官を訪れまして、さらに協力を要請したということでございまして、可能な限りでの活動をいろいろやってきたということであります。

藤田(幸)委員 特命全権大使がそのクリデンシャルズを提出した相手国によって、このような危機のときに、その暫定政府を代表する首相に対して、直接会わずに電話でお願いをするというのは余りにも失礼であり、もしその日、日程調整がつかないのであるならば、仮にグリーンゾーンの外であってもそんなに何時間もかかるわけではございませんので、事がまさに大変大きな、人命に関することでもあり、日本が国策をかけてイラクに対応している、そしてイラクの暫定政府を承認しているという状況にかんがみ、特命全権大使が首相にお願いに行っていないということは、そういう時間の制約等々では済まされない。当然、直接お願いに行くべきだったんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。

町村国務大臣 まず、グリーンゾーンの中でも我が方の連絡担当者というのがおりまして、そこで必要な要請活動等々はもちろんやっているわけでございます。

 それから、私もアラウィ首相と電話で話をいたしました。お願いをいたしました。そのとき、アラウィ首相は、鈴木大使とのやりとりというものを十分承知した上で私とのやりとりを行っていたという記憶がございますので、たとえ鈴木大使とアラウィ首相との連絡が電話であったとしても、全く用件が通じなかったとか意思疎通ができていなかったということではなくて、必要な意思疎通が十二分に行われていたということを私自身も確認できたところでございます。

藤田(幸)委員 十分でないからこういうことにもなっているんではないですか。十分というのは何をもって十分とおっしゃるのか。一国の特命全権大使がその首都に赴任をして会わないということは、後で電話して事が済んだというたぐいのものじゃないと思いますよ。

 それから、例の別の遺体を間違えたときにも、ティクリートにも結局大使館員が全然行っていない。香田さんが見つかった際の病院にも日本人の館員は全然足を運んでいない。現地人しか足を運んでいない。さかのぼれば、井ノ上一等書記官、奥大使のときにも、亡くなったティクリートに実際に上村臨時代理大使が現場に足を運んだのは二カ月後であった。

 つまり、今回のことに限らず、要は、警備が不十分なので行かないというんじゃなくて、これは行くべきことは行く体制をつくるべきじゃないかということが、単に鈴木大使が首相に会わなかったばかりではなくて、そういった体制をつくる努力を四月以降もしていないということが一番本質的な問題であり、ほかの国に、特命全権大使がこういった危急存亡のときに首相である人に会いに行かないで、外務大臣の後の電話で済んだということで十分だというような、これは外交ではないんじゃないですか。どうですか。

町村国務大臣 極めて限られた時間の中でのいろいろなやりとりでございます。平和な、全く治安の問題のない地域であるならば、それは、大使が相手国元首に会いに行く等々のことが普通でございましょう。しかし、二十四時間、四十八時間、限られた時間の中で、時として電話でやりとりするということがあったって、それは別に何ら不思議なことではないだろう。そのことを問題にされること自体が私にはよくわかりません。

 それから、確認になぜティクリートに行かなかったのかという御指摘がございました。

 それは、バグダッドからかなり離れたところでもありましょう、そこに行くにはやはり相当の安全上の問題があるということであります。

 それから、病院あるいは死体安置所、遺体安置所かもしれませんが、そこになぜ館員が行かなかったかというお問い合わせでございます。

 そこは、一刻も早く、特に指紋を入手したい、あるいはきちんとした写真を撮りたいということで、雇っております警備会社の中に非常に練達の士がおりまして、その人をして早く行った方が、イラク人でございますから、ここでまた警備警備といって警備のことを考えるよりは、その方がはるかにスムーズに早く目的を達成できるという目的合理性からやったわけであります。

 そこのところは、なぜ全部館員がやらぬと。やれる状況なら、それはその方がいいと思いますよ。しかし、そのときの状況状況の中で最善の判断をして最適な、まあ結果がこういうことでしたから、私もすべてが百点満点だとはあえて申し上げませんけれども、しかし、そのとき考えられる、一応よかれと思ってやったことの積み重ねがこうであったということであります。

藤田(幸)委員 時間がないから飛んでいくんじゃないですか。四十八時間という、時間がないから、電話で済まさず飛んでいくというのがこういった場合の対応の仕方ではないですか。

 それで、きょうは資料をお配りしましたけれども、これは、外務省から、二十八日の七時半の段階と午後三時の段階でいただいた、一見ほぼ同じような資料でございます。ところが、これは外務省の資料ですから、大臣、御存じだろうと思いますけれども、この二つの資料、つまり、同じ日付の七時半の資料と午後三時の資料。二枚目をあけてください。七時半の資料と午後三時の資料を見比べるように両方ともあけてください。

 そうしますと、上から二、三行目のところですけれども、七時半の資料は、アラウィ首相が鈴木大使と「電話会談」と書いてあるんです。ところが、三時の資料は、アラウィ首相は鈴木大使と「会談」と書いてあります。

 それから、その数行下で、ジバリ外相と町村大臣は「電話会談」と七時半の資料でなっているけれども、その日の午後三時の資料では「会談」と。つまり、町村大臣がジバリ外相と直接会ったというふうに書きかえられております。

 それから、その約十行ぐらい下の、アラウィ首相と町村大臣の、朝七時半の資料ですと「電話会談」となっていますけれども、午後三時には「会談」となっています。

 つまり、大臣、この七時半の資料によれば「電話会談」となっていたアラウィ首相と鈴木大使、あるいはジバリ外相と町村大臣、あるいはアラウィ首相と町村大臣の「電話会談」が、午後三時の資料では「会談」に変わっているんです。これは改ざんじゃないですか。電話会談と会談はまるで違いますよ。これはミスじゃないですよ。朝七時半と午後三時の資料で「電話会談」が「会談」に三カ所も、それからほかのところも変えてありますけれども、こんな、会っていないのに会ったかのように資料が改ざんされている。これは大臣の指示ですか、だれの指示ですか。

町村国務大臣 私が先方外務大臣なり首相なりと会談できるはずがないわけでありまして、これはもう電話会談であることは当然のことでありましょう。現地大使の会談のことは、正確を期して「電話会談」と書くべきであったのでしょう。それは、率直に言って、「電話会談」と書くべきであったことは御指摘のとおりだと思います。

藤田(幸)委員 なぜ明らかなことを、「電話会談」を「会談」と変えなきゃいけないんですか。「会談」となぜ書かなきゃいけないんですか。

 会談というのは、広辞苑によれば、会って話をすることと書いてあります。会談ということは会ったということであり、電話会談ということは会っていないという意味です。なぜ改ざんをしたんですか。

町村国務大臣 まあ、こういう緊急事態の文書でございますから、多少のミスがあったり書きかえがあったりすることは、委員の御指摘の方が正しいわけですから、それはそのとおりに書くべきであったと思います。

藤田(幸)委員 だれの指示でこういう改ざんをして、そしてこういうことになったのか、だれが責任をとられるのか、それについてお答えをいただきたいと思います。

町村国務大臣 私も今御指摘を受けて初めて気がついたことでございますが、責任をとるとかとらないとか、こういう緊急事態の資料の一つ一つについて、一々責任をとるとかとらないとかいう話ではないと私は思いますよ。

藤田(幸)委員 これは、ミスでもなくて、意図的なわけですね。特にアラウィ首相と鈴木大使、「電話会談」ではなくて、これを「会談」と変えたということは、会談というのは会うということが会談と、これはいろいろな辞書にも出ております。電話会談というのは、要するに会っていないということであります。

 これは大変大きなことで、外交上あるいは政治上もそうですけれども、実際に、だれが、いつ、どこで会うかということは、これは政治的にも外交的にも一番重要なことじゃないですか。それが間違っていて、こうした正式な文書に出ているということは大変重要なことではないですか。これは単なるミスとかいうものじゃない。(発言する者あり)疲れているならば、わざわざこういうことを変える必要がないじゃないですか。

町村国務大臣 今後こういうことがないように、十分気をつけたいと思います。

藤田(幸)委員 それでは、しかるべき訂正をし、そして、この経緯についてしっかり報告をしていただくように委員長にも要請をしたいと思います。委員長、報告を。

船田委員長 ただいまの件については、後日の理事会等におきまして報告をしていただくように計らいたいと思います。

藤田(幸)委員 結局、この問題は、やはり、直接会うか会わないかということがイラクにとって非常に重要な問題だということが本質的にあるんだろうと思うんです。

 それで、私が重要だろうと思うのは、特措法ができて、日本政府が国策でこうしたイラクに対する自衛隊派遣を決め、そして暫定政権を認知して大使を送っているということ。大使を送っているということは、やはりその大使なり外交官が、国を代表して十分な活動ができるような体制をとるべきではないかということを申し上げておるわけであります。

 もちろん、治安が悪いといっても、この間もドイツのシュレーダー首相もバグダッドへ行っておりますし、ラムズフェルドさんも行っておりますし、アナンさんも行っているわけです。これは、やはり必要なことに対して必要な措置をとるということだろうと思っておりますけれども、そういった意味では、例えば、既に日本政府も民間の警備会社を使っているわけです。民間のそういう警備会社等を使いながら、最低の外交活動、せめて大使が首都で首相なり必要な人々に会えるような体制等も検討した体制をとるべきではないか。つまり、このことがやはり、人質解放活動に限らず、日本がイラクで活動する外交活動、国の活動にとって不可欠ではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

町村国務大臣 大使館そのものの警備に関しましては、必要な警備要員の配置でありますとか防弾車の配置、コンクリートブロックの設置、事務所の外壁の強化等々、いろいろな対策を講じておりますし、また、大使等の移動時対策をも含んで、さまざまな警備対策をやっております。先ほどちょっと申し上げましたが、現実に民間の警備会社の活用ということもやっておりまして、現実に必要な、十分かどうかは別にして、制約はあるものの、その中で考えられることはかなりやっております。

 ただ、これが十分かどうかというお問い合わせであれば、それは常に見直しをしながら、現地の状況に合わせて、よりよい体制をつくっていく努力は引き続きやらなければいけない、かように考えます。

藤田(幸)委員 外務省、大使館ばかりではなくて、サマワの自衛隊も、防衛庁長官おりますけれども、実際に民間の警備会社を使っているわけです。したがいまして、こういった体制を強化していく時期が私は来ているんではないか。つまり、自衛隊をその警備に充てることもできない。一方で、特措法が機能するためには、単に人手が足りないということではなくて、適切な情報収集活動、分析活動等が必要なわけですから、こうした特措法というものを機能させてイラクで日本が活動するには、そういった体制がなければ、こうした特措法という前提が崩れるのではないか。例えば戦闘地域、非戦闘地域の認定についても、調査活動あるいは実際に動く活動ができなければ、そもそも日本の外交活動というものが機能しないのではないか。

 そんな意味からも、そうした新しい、大使館員等々が活動する最低の治安の確保についてもぜひ努力していただきたいということを申し添えて、せっかく官房長官が来ていただきましたので、官房長官に質問をさせていただきたいと思います。

 今回、冒頭で、官房長官、いらっしゃらないで申し上げましたが、私どもも四月と同じような態勢で、二十四時間態勢で、人質解放に関しては政府に必要なことについては協力するという態勢でやってまいりましたが、今回も、政府の方でも情報開示に努力されたということを評価した上で質問を申し上げたいと思います。

 それは、実は先ほど、町村外務大臣からのメッセージも、今回のテロリストに対するメッセージということが、いわゆるイラク人の人質犯行グループとは違うということがやはり今回ポイントではなかったかというふうに存じているわけでございます。その意味から、小泉総理の方でテロに対する非常に強いメッセージが出されたわけですけれども、いわゆる香田さんという人の解放に関するメッセージの発信が十分であったのかということを私は感じておるわけでございます。

 例えば、いろいろな報道もなされておりますけれども、イスラム聖職者協会の幹部は、こんなに小泉さんの発言で挑発する必要はなかったんじゃないかとか、あるいはバグダッドの方で、どうして自分の国の市民の命を冷淡に扱うのかとか、あるいは、人質を殺すなと強調する。つまり、テロに対する闘いというよりも、人質を殺すなというエッセンスの発信も必要ではなかったかということが実際にイラク及びアラブ諸国から出ております。

 そういった観点から、小泉総理の方で、豊岡の台風被災地のぶら下がりという場面でのメッセージの発信の仕方も含めて、受ける側の受けとめ方という観点からしますと妥当であったのか。その点について官房長官から御答弁いただきたいと思います。

細田国務大臣 たまたま小泉総理が兵庫県に視察に行っておられまして、私は官邸において小泉総理からも電話連絡を受けたわけでございますが、そのときに、事実確認に全力を尽くすということ、事実であれば、解放、救出に全力を尽くして対応に万全を期するということ、そして自衛隊については撤退する考えがないということについて、明確に指示をいただいたわけでございます。

 ただ、公表ぶりについては、そのことは含まれておりますけれども、日本国の自衛隊が国際協調のもとでイラクにおいてイラクの方々のために人道復興支援活動を行っているんだ、我々はイラクの人々と国際社会の平和と安全のために重要な行為を行っているんだということを述べております。いろいろな受けとめ方はあると思いますが、大変残念な結果になったわけでございます。

 しかしながら、私どもは、人命を盾にとりましてみずからの要求を通そうというテロ行為が極めて卑劣な行為であり、いかなる理由でも許されないという基本方針は持っていかなければならないと存じております。

藤田(幸)委員 いろいろな受けとめ方とおっしゃいましたが、これは人生いろいろじゃなくて、やはり具体的にこういう人質事件が起きたわけですから、可能性のある実行犯グループの対象を絞った上で、そこに到達するようなメッセージでなければ逆効果なわけでございます。そして、初めから、少なくともアラブ社会においては、こういった対応の仕方は、フランスであれば外務大臣を現地に派遣してというような例もあるようですけれども、テロリストの方で、これでは人質を長い間かくまっていても意味がないというふうに感じたという説もありますけれども、結局は、むしろ道を閉ざしていったんではないかという見方もかなり現地で出ております。

 その点について、いろいろな受けとめ方ではなくて、やはり可能性の高いメッセージの発信の仕方、基本を崩せとは言っておりませんけれども、その表現、これは受ける側がございますので、そういった点で工夫の余地がなかったのか、その点をお伺いしたいと思います。

細田国務大臣 我が国といたしましては、外務大臣おられますけれども、この間の日本国政府の考え方については、アルジャジーラ等の報道機関等に対して、日本が友好国であるということ、そして日本は人道復興支援のために本当に頑張ってきているということ、香田さんが無辜の民間人であって何らそういうことと関係がないということ等を明確にメッセージを発しておりますし、それから、香田さんの御親族の方からもそのように出しておりますので、そういった努力はいたしておるということを御理解いただきたいと思います。

藤田(幸)委員 時間が参りましたが、無辜の市民云々というよりも、今回、星条旗に包まれたということも含めまして、受けとめる側の方はアメリカと日本が区別がつかない人々による今回の犯行であったという可能性も含めて、今後、単にイラクの中での人質事件ではない、いろいろな可能性も含めた対応を、先ほど来、外務大臣には特に申し上げましたけれども、そういった治安機能の強化を含めた対応をお願いいたしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

船田委員長 次に、末松義規君。

末松委員 まず、質問の前に、香田さんの御冥福をお祈り申し上げますとともに、御家族また御親族等に対しまして深いお見舞いを申し上げさせていただきます。

 私も、今、藤田委員が言われた点について、引き続き質問をさせていただきたいと思います。

 その前に事実関係なんですけれども、これは外務省の方にお聞きをしたいわけですけれども、ザルカウィという集団が、この人質事件、人質をとって事件を起こした、これはもう確認はしているわけでしょうか。

吉川政府参考人 事実関係の点でございますので、私の方からお答え申し上げます。

 今次事件の実行犯はいまだ特定し得ておりません。犯行主体を名乗ります、日本語に訳すとメソポタミアのジハード基地組織という組織である蓋然性は非常に高いと見ております。この団体は、イラクで多くのゲリラ活動、自爆テロ、誘拐等を首謀していると見られておりますザルカウィという人物を指導者とする組織が最近になって使用している名称であるとされております。

末松委員 では、さらに聞きますけれども、その犯人の団体というのは、今蓋然性が高いと言われました。そうしますと、その組織というのは、私も報道でいろいろ聞いていますけれども、過去七人ぐらい、非常に残忍な手口を使った殺害事件が起こっておりますけれども、アルカイダとも関係があるような、そういう残忍な行為がなされる可能性が高いということは外務省で認識していたんでしょうか。

吉川政府参考人 委員が御指摘のとおり、このザルカウィという者が率いると見られております武装勢力によるイラクでの人質事件というのは、ことしの四月以降をとりましても、欧米諸国それからアラブ諸国の国民を対象に十数件発生していると聞いております。正確には確認し得ないものの、そのうち相当数の人質の命が犠牲になったものと承知しており、そういう点では、委員御指摘のとおり、残虐性の高いテロ活動に関与している団体だと考えられます。

末松委員 そうなると、日本人が人質としてとられた場合には、そういう残虐性の高いグループが犯行に及ぶという危険性も外務省としては十分考えておられたんですか、それとも、全くそれは意識していなかったんですか。

吉川政府参考人 先ほど御答弁申し上げましたように、このザルカウィが率いる団体というのは非常に残虐性が高い、そういう点では、四月に起きました人質事件と比べますと性格がやや異なっているという認識は持っておりました。

末松委員 それでは外務大臣に問いますけれども、総理が二十七日に、あの視察中に述べられたコメントですね、事実関係を早急に調べ、そして救出に力を注ぎ、三番目に、自衛隊は撤退しない、こういう発言をあのとき見事なまでに、ワンフレーズポリティックスの象徴でしょうか、そっけなく言ったんですけれども、これは外務大臣から総理にそう言えというふうな指摘をしたんですか、それとも、総理の方からそういう方針が示されたんですか、どちらですか。

町村国務大臣 当日の朝七時五十分ぐらいでしょうか、総理が災害の現地に到着をされたとき、総理と電話が通じました。それで、総理から、必要なことは官房長官に言ってあるからというお話がありまして、官房長官に確認したところ、今委員が言われた三つの点について、既に総理から官房長官にお話があったということを聞きました。

末松委員 官房長官、それは事実ですか。

細田国務大臣 私は七時二十分ごろ官邸に入ったわけですが、七時二十五分ごろ総理と電話で連絡がつきまして、事実確認に全力を尽くすということ、事実なら解放、救出に全力を尽くし、対応に万全を期するということ、自衛隊は撤退する考えはないという指示を受けております。

末松委員 それは外務大臣に伝えたんですね。それも一言。

細田国務大臣 伝えております。

末松委員 先ほど外務大臣は、テロのグループとはつき合ったことがないからわからないと軽口を飛ばされました。私は、これは非常に重い発言だと思うんですよ。

 さっき事務方の方で、ザルカウィというのは非常に蓋然性の高い犯人グループですよね。これが残虐性が強くて、そして扱いが大変だということをあなたは聞いているはずですよね、事務方から。それなのに、総理が自衛隊は撤退しないと最初からああいう形で余りにはっきり言い過ぎるということについて、本来、もっと外交的な配慮はあなたがしなきゃいけなかったんじゃないですか。

町村国務大臣 どういう配慮をすればよかったか。それは、今冷静になって考えれば、あれほど直ちに言うことがどうだったかという議論は、後から見ればそれはあるかもしれません。

 しかし、私はあの時点で、むしろ総理大臣の、国策の根幹にかかわることをきちっと言うということは、それはそれで大切なことなのかな、こう思ったものですから、私は、総理大臣の指示というものをきちんと体現してやっていこう、こういうふうに判断をいたしました。

末松委員 それは、官房長官とか総理とか、余り中東を知らない、そして情報もそれほど大きく上がっていない方がやる場合であって、外務大臣の方は、そこはいろいろな情報を集めて、それは大変だということで、むしろ発言のトーンをそちらの方に、つまり、人命を優先していくという配慮も必要だったと私は思うんですよ。

 自衛隊の話は自衛隊の話としてそれはあるでしょう。それはありますけれども、でも一方、人命について最初からああいうふうに言うということは、あの中東の常識からいけば、早く処刑しろとテロリストあるいは犯人グループに言っているのと全く一緒ですよ。そこが全く外務大臣として判断できなかったんですか。

 もう一度私はコメントをお聞きしたいのです。

 つまり、人命救助よりも国の政策を述べることが余りに優先されているから、そちらの方が第一等で、二番目が人命救助なんだ、そういう理屈づけ、プライオリティーづけをされたんですか。

町村国務大臣 どちらも重要だ、こう考えました。

末松委員 ならば、どうして総理の発言に軌道修正をかけていかなかったんですか。あなたがその配慮をした形跡は全く見られないじゃないですか。そこらあたりをもう一度お答えください。

町村国務大臣 人命を大切にすること、また、それと同時に、国策としての自衛隊の人道復興支援活動はそれぞれ重要であるということ、どちらも重要なことである。どちらが先でどちらが後ということではないと私は考えました。

末松委員 でも、あなたの対応、そして小泉総理の対応を見ていると、最初に自衛隊は撤退しないとあそこまでクリアにしたら、それはあの犯人グループからは、もう処刑しろよ、日本として何らも人命を尊重していないよと。

 現に、アラブの報道機関、人たちが、さっき藤田委員の御指摘で明らかになっているじゃないですか。日本はあれはやり過ぎじゃないか、もっと言い方があったはずじゃないか。本当に人質問題というのは非常に機微なだけに、その辺の危機管理の配慮が足らなかったと言わざるを得ない、私は本当にそう思いますよ。これは外務大臣として適格性を欠くと私は思っている。

 では、外務大臣、さらに聞きますけれども、この前の人質事件、奇跡的に幸運で解放されました。その後、外務省として六十数回警告を発したとかやっていますけれども、何の予防策がとられたんですか。

町村国務大臣 私どもとしては、四月の邦人拘束事件の教訓というものを踏まえまして、渡航情報の内容、ユーザーの拡大、それから発出の頻度ということに意を用いてまいりました。

 具体的に申し上げますと、渡航情報を随時更新、発信するとともに、海外のホームページ上での退避勧告というものをより目立つ表示に変える。あるいはユーザー拡大との観点から、NGOあるいは旅行会社等に対しても、各団体のホームページとのリンクを行うようにしております。

 また、四月の人質事件発生以降、誘拐、テロの脅威及び退避勧告、これらに関するスポット情報を三十六回発出するなど、量的にも一段と強化をしてまいりました。政府広報においてもイラク等の退避勧告発出地域への渡航を差し控えるように呼びかける。

 したがって、現在でも一部のメディアの方がおられるようですけれども、現実に、私どもの知り得る限りでは、ほとんどの方がイラクには行かなくなってきているという事実が何よりもの証明ではないかと思います。

 それから、現地での対応ということで、ヨルダン大使館では、多くの邦人が利用するホテル、今回の香田さんがお泊まりになったホテルもそうだろうと思いますけれども、これについて、渡航情報の掲示を日本語でするように依頼しておりますし、現に掲示をされているそうでございます。また、ホテルの関係者にも、日本人が来た場合にはまず大使館に連絡してくれ、あるいは、ホテルの関係者からその渡航者にイラクに行くことを控えるように説得するというお願いをして、現にホテル側はそうした説得までしてくれているということを承知しております。

 また、その他の在外公館におきましても、在留邦人との間で安全対策連絡評議会といったようなものを開催しておりまして、現地の治安状況等についての情報提供、意見交換等を行っておりまして、全世界の在外公館でこうした会議を開くように、さらには、海外進出企業の関係邦人を対象とした危機管理セミナーというものを内外で開催する等、危機管理意識の向上を図っているということでございます。

 さらには、個人個人の方がみずからの安全を確保する上では、危険を十分認識して、自分の判断で危険に遭わないように慎重に行動するということが大切だと考えておりまして、若年層を中心に、一般邦人を対象とした海外安全キャンペーンという啓発運動を一層強化しているほか、外務省海外安全相談センターによる一般国民への海外の安全意識浸透のための各種講演活動をやっているところでございます。例えばホームページなどをつくっておりまして、非常にアクセス数が多いであるとか、海外安全ホームページに月平均二百五十万から五百万件のアクセス数があるというようなことで、かなりこの点は、ことしの四月の事件以降の浸透は図られつつある、かように考えております。

 しかし、こういう事件が起きてしまったということはまことに残念でありまして、では、どうしたらこういう方の入国を阻止することができるんだろうか、さらに考えていきたいと思いますし、また、末松委員からも適切なアドバイスがあれば、ぜひ教えていただきたいと思っております。

末松委員 いろいろな努力をされておられることは、今私も承知をさせていただきましたけれども、本当に、ボーダーで、日本人については一度大使館との協議がなされるような仕組みとか、そういう形でとめざるを得ない。

 今いろいろなことを言われましたけれども、結局この事件が起きてしまった。そして犠牲者が出たわけですよ。それは幾らあなたが百万言言ったって、結局は出て、またもし出たら、それはもう大臣、責任を当然とるべき話になりますよ。

 そして、私は官房長官に聞きたいんだけれども、香田さんの葬儀には御出席をされるつもりですか。いかがですか。

細田国務大臣 これから、御遺体が戻り、そしてまた今後のいろいろな段取りが決定されると思いますが、そういうことについてはまだ決定しておりません。

末松委員 今度は、先ほど藤田委員からありました米国旗に包まれた御遺体という話で、今、迫撃砲からロケット砲に変わりつつある攻撃、サマワの自衛隊の状況についてお伺いをしたいと思います。

 多分、岡島議員の方からさまざまな御質問があるかと思いますけれども、このロケット砲というのは、さらに深刻な状況になってきているという話なんですね。これを回避する手段が実際にはないという状況の中で、石破前防衛庁長官が、昨年、撤退云々についてどういうふうに考えているかと私の質問に答えたときに、身の安全が図れないような状況になれば、戦闘地域という中で、これは撤退も考える必要があるという話もあったんです。

 ロケット砲がどんどんこれからやってくる、今も、爆発音が聞こえたということで、さらに厳しい状況になったと思うんですけれども、官房長官の御認識はどうですか。

細田国務大臣 きょう未明に爆発音が聞こえたということで、その後、調査をしております。調査中でございますが、詳細は間もなくわかって、報告されるものと思っております。

末松委員 何も答えていないんですけれども。

 これでもって、十二月十四日に切れるあのイラク特措法、これを国会閉会中の審議にするというようなことは、これだけ国民の皆さんが本当に大きな関心を持っているのであれば、国会開会中にしっかりとした審議を何回かやっていくべきだと思いますけれども、官房長官のお考えをお聞かせください。

細田国務大臣 イラクの復興は道半ばでありますので、我が国にふさわしい分野において引き続き復興に積極的に貢献することは重要であると考えております。

 ただ、自衛隊のイラク派遣の基本計画では、派遣期間が本年十二月十四日でございます。その後どうするかにつきましては、イラクの復興の状況や現地治安情勢等を総合的に検討して、適切に判断してまいりたいと思っております。現在のところは判断しておりません。

末松委員 ちょっと、単に答弁資料を読めば国会が済むという話じゃないんですよ。これだけ大きな、犠牲者まで出してやってきている問題で、自衛隊が今度身に降りかかるかもしれないことを国会で協議しようという話なんですよ。そんな、いつも総合的に判断して決めるだけで終わっていたら、こんなに楽なことはありませんよ。

 人の命についても何か人ごとのように、勝手にやったんだから自己責任でしょうというようなところが国民に見えるから、非常に、何というか、冷たいなという意識を持っているんですよ。自衛隊はみんな国として派遣させているわけですから、そこの安全状況についてももっと審議をしていきましょうと言うぐらいの気概を示してほしいんですね。

 私は委員長にもお願いしたいんです。ぜひ今国会中に、開会されている間に、この十二月十四日に切れる特措法の審議をぜひ御検討をお願いしたいと思います。

船田委員長 ただいまの件につきましては、後日理事会等で協議をさせていただきます。

末松委員 防衛庁長官に同じことを聞きます。

 今ロケット砲が飛んできていますね。信管を外したという話がありました。これについて、実際にあなたの認識はどんな認識なんですか。

大野国務大臣 サマワの自衛隊の活動の重要性につきましては、これはもう末松先生、優秀なる元外交官でございましたから、くどくど申し上げません。

 ロケット弾それから迫撃砲、あわせて考えますと、四月に二回、八月に四回、今回二十三日に一回。そして、昨日の事件がどういうものか調査中でございますけれども、合わせまして八回なんですね。これはやはり、我々、もっともっと情報収集をきちっとしていかなきゃいけない。やはり何といっても、そういう迫撃砲、ロケット弾が自衛隊の宿営地の方へ向かっている、このことは重く受けとめて、さらに安全確保、この問題についてはきちっとしていかなきゃいけない。

 安全確保の問題につきましては、たびたび申し上げておりますので、ここで御説明申し上げませんけれども、現状で、あらゆる手段、監視装置、それから航空監視装置、いろいろな装備をしております。また内部でも、いざというときにどういう対応をするか、訓練もしております。そういう意味で御理解をいただきたいと思います。

末松委員 確かに、こちらの防御手段をあらかじめ言っちゃったら、逆に犯人グループが聞けばまずいという話、それは確かにそうでしょう。

 では、お聞きしますけれども、どうなったら撤退という、そういった基準は防衛庁長官としてはお持ちなんですか。それとも、米国がいいと言うまでやるんですか。

大野国務大臣 一番に申し上げたいのは、内閣総理大臣並びに防衛庁長官には安全確保義務というのがあることでございます。もちろん、憲法上の問題について申し上げますと、非戦闘地域でなきゃいけない、こういう問題はございます。

 それからもう一つは、安全に自衛隊の皆様にイラクの人道復興支援のために活躍、活動してもらいたい、こういう問題がございます。

 また、そういう危険性の問題ではなくて、一般論として申し上げれば、たびたび御説明申し上げておりますように、イラクの復興、民生の安定が一定の段階に達する、あるいは、自衛隊が撤収しても、イラク人自身あるいはその他の国際機関、ほかの国等の支援によってイラクの人々の生活が安定されることが見通しがついた、あるいはイラク新政権との関係、そしてまた国連の動向並びに国際情勢の推移等という問題があろうかと思います。

 ただ、たびたび申し上げておりますとおり、我々は、やはりイラクの復興の状況、そしてまた治安の問題等を十分勘案しながら決めていきたい、こういうことでございます。

末松委員 それは一般論として官房長官が言うべき話なんでしょう。あなたの方は、自衛隊の隊員の皆さんの安全問題、これで叫んでいかなきゃいけない立場なんですよ。もし犠牲者が出たりしても、それは今言った一般論で、いろいろな総合的な観点から、だからやるんですと言うおつもりですか。

大野国務大臣 何度も申し上げております。我々には安全確保配慮義務というのがあります。私には安全確保配慮義務というのがあります。安全のためにあらゆる手段を講じております。手段の中身については、たびたび申し上げておりますが、敵に手のうちを見せるようなことになる場合もありますから、どうぞ御勘弁くださいますようお願い申し上げます。

 ただ、安全確保義務、それはあらゆる手段を通じてやっているし、そして現地の部隊も、対応措置をどういうふうにしてやるか、そういう訓練をやっていることを申し上げたいと思います。

末松委員 では、これだけ八発も攻撃を受けて、そして、もし今度本当に隊員の皆さんに犠牲者が出たら、それはあなたが安全確保義務を怠ったとして責任をとるんですよね。

大野国務大臣 まず、すべての事案は夜間に起こっております。夜間の場合には宿営地に入っているケースが多うございます。具体的にどういう状況になるのか。場合によっては責任を問われる、こういうことは当然出てくるだろうし、しかし、仮定の問題でございますので、ちょっと仮定の問題にはお答えしにくい、これは御理解をいただきたいと思います。

末松委員 今言われた、自衛隊が撤収しても、現地の経済あるいはそういったものが問題ないようになる。これはどこまでというのは、本当に限りないところと同時に、それから、私はこういう新聞報道を見ているわけですよ。

 これはことしの五月十三日、東京新聞なんですけれども、外務省が約四千万円の無償資金協力をフランスのNGOのACTEDというところにやったわけです。それで水の補給をやったんですけれども、このNGOがやっている事業はフランス人は全然従事していなくて、現地でイラク人だけがやっているんです。これが、何と一日の給水能力が最大七百トンなんですね。

 この見出しは、フランスのNGOは陸自の八倍、こういう見出しが載っていて、陸上自衛隊の方は、これでは約八十トンと書いていますが、今は二百トンから二百八十トンと、きょうもらった資料に書いています。それでも、フランスのこのNGOがやっているのは七百トンですから、それの倍以上、NGOがやった方が効果が高い、効率が高いと言われている。

 さらに、自衛隊がやっている、無意味とは言いません、でも、道路の補修とか、いろいろな学校の補修、これもイラク人を使ってやれば、もっともっと安く上がって、いいんだということがたびたび報告されているわけですよ。

 結局、自衛隊は何のために残っているんだというまた根本の問題に突き当たって、ブーツ・オン・ザ・グラウンドだろうということ、これがまたそこで明らかになるわけです。

 ただ、そのときにぜひ、自衛隊員の安全確保は、それはもう防衛庁長官が身を挺してやらなきゃいけないから、もし何かあったら自分が責任をとるというぐらい、ここで一言、そういったことでしっかりと確認してもらわないと、その意気込みじゃないと、現地の自衛隊員は心細くてやっていられないですよ。ぜひそこを、もう一度、意気込みを示してください。

大野国務大臣 安全確保の義務、これは長官にあります。このことは重く感じておりますことを申し上げたいと思います。

末松委員 では、私の質問時間がここで終わりましたので、あとは岡島議員に引き継ぎますが、ぜひそこのところの自衛隊員の安全確保はよろしくお願いしたいと思います。

 終わります。ありがとうございました。

船田委員長 次に、岡島一正君。

岡島委員 民主党の岡島一正であります。

 きょうは、香田さんの事件の結末などを踏まえて、外務大臣及び防衛庁長官にお聞きします。

 まず、香田さんの今回の結末、お亡くなりになったことに対しましては、深く御冥福をお祈り申し上げたいと思っております。質問が、民主党できょうは三人目ですから、同じような質問をまたするかなというところがあるかもしれませんが、実は大事なことは繰り返して聞くこともあるかもしれません。よろしくお願いします。

 町村外務大臣にお聞きします。今回の事件はなぜ防げなかったのでしょうか。今回の事件というのは、香田さんのことであります。

町村国務大臣 事前にあれだけの危険情報等々を発出し、そして、現実にほとんどの、一部のマスコミの方以外はイラクに入国をしておられないという中で、現実に香田さんが入られたということですね。どうやったら本当に入国を防ぐことができるんだろうかということを、いろいろ私もずっと考え続けております。いろいろな、きょうの午前、午後、御議論の中で、具体論を言われる方もいらっしゃいました。

 しかし、それでもなおかつ、なかなか、本当に入国を阻止する方法、新規の立法をしたらという御提案をいただいた方もいらっしゃいました。しかし、仮に法律を新しく通したとしても、じゃ、実効を担保できる方法があるか。これもなかなか難しそうだなということで、まだ、率直に言って……。要するに、入国さえなければああいう事件は起きなかったわけですから、その入国をとめる一番的確な方法は何があるだろうか。今、私は、率直に言って、絶対これならば平気だという答えが見当たらないのが現状でございます。

岡島委員 自分なりの考えがまだまとまっていない、見つからないということは、なぜ防げなかったのかはまだ解明できていないということになります。

 先ほどの藤田議員や末松議員の質問にお答えになっているときに、これまで、広報活動といいますか危険情報などは、やるだけのことはやってきたというお話がありました。ただ、香田さんは、テロというものの怖さ、特に今イラクにおけるテロの怖さ、いわばテロの概要といったものを本当につかんでいたんでしょうか。外務大臣、どのようにお考えになりますか。

町村国務大臣 それは私にもわからないわけでありますけれども、そういう極めて凶悪な、残忍無比なテロリストがいるということを香田さんがもし本当に認識をしておられれば、多分入国はされなかったのではなかろうかな、あくまでも推測ですが、そう思います。

岡島委員 外務省のいろいろな情報宣伝活動の中にホームページの運用があるというふうに、先ほど何回もお話しになっておりました。外務省の安全情報を提供するコーナーにさまざまな情報が書いてあります。あの中に、テロの概要というコーナーがあります。危険情報と、テロの概要というコーナーがちゃんとあります。

 テロというものは何かわからない、特に、これまで日本人は、テロといったものを自分たちの問題ととらえたことがなかった我々にとって、テロとは何か、そして日本人にどう関係しているかということを、そういったところを見て勉強するんだろうと思います。そのために外務省も努力されているんでしょうし、外務大臣も指示されていると思います。

 テロの概要の中に、日本や日本人への脅威という最後の項目があります。外務大臣、御存じでしょうか。ホームページの安全情報のコーナーのテロの概要、外務大臣が指示しておつくりになっているところです。

町村国務大臣 恐縮ですが、私は、ちょっと今そこまでの記憶がございません。

岡島委員 しかし、これは、外務大臣がさっきおっしゃった、安全情報を全世界の邦人に流すための情報手段としてホームページは非常に有効だというお話があったと思うんですね。そのテロの概要の情報更新は、二〇〇三年十二月から行われておりません。日本の脅威、日本人への脅威という項目のところに日本人外交官の殺害事件の情報は書いてありますが、ことしに入って起きた高遠さんらの事件、そして橋田信介さんの殺害事件、その情報は、テロの概要という、そこを読めばテロとは何かわかるというコーナーには一切書かれていない。更新情報は二〇〇三年十二月。

 大臣、本当に、すべての努力をしたとおっしゃったんですが、そのとおりですか。

鹿取政府参考人 お答えいたします。

 私どもは、渡航される邦人にとってやはり情報が一番重要だと考えておりますので、いろいろな形で情報を発信しております。一つは危険情報という形で発信しております。また、危険情報に加えて、より速報的なスポット情報という形で、もう既に六十回以上出しております。そのスポット情報の中で、最近イラクで起こっているテロについては常に紹介しております。

 また、それ以外に……。

岡島委員 そんなことは、私は毎日見ていますからわかっています。

 が、テロとは何かということが、もともと日本人にとっては、意識してもらわなければ自分の問題としてとらえられない。それが起きているからみんな騒いでいる。それが日本人に初めて向けられた。

 とすれば、ホームページの中に堂々とテロの概要と見出しになっているんですよ、見出しに。その見出しの一番最後のところに、日本人への脅威というコーナーがある。二〇〇三年十二月から一度も更新されていない。こんなことで、外務省は努力したんですか、言えますか。危険のスポット情報と、テロを分析してそういったことを説明するのは全然意味が違う。一次情報の伝えることと、分析情報は意味が違うんです。

 いかがですか、外務大臣。大臣、いかがですか。

鹿取政府参考人 事実関係ですから、私からお答えさせていただきます。

 外務省の発信している情報には幾つかの種類がございます。

 一番……(岡島委員「私はテロの概要について言っているんですよ。更新してないですね」と呼ぶ)テロの概要については……(発言する者あり)テロの概要というものは、非常に広く、かつ包括的に書かれた文書でございまして、これについては、改正はそれほど頻繁には行っておらず、半年に一度あるいは一年に一度、そういう形でやっております。

 他方、我々が渡航のために非常に重要だと考えております危険情報については、大枠として三カ月に一回、それに加えまして、いろいろな出来事が起こりますと速報という形で、常に渡航者に対する情報を発出しております。

岡島委員 そこがおかしいんです。何が起きた、今回も、二十七日にこういうのが起きたというのがおくればせながら載りました。だけれども、過去を教訓にしてこれからいろいろなことを防止するんです。起きたことの背景や、その事件が起きたことはなぜだったのかということをきちんと分析、説明することが、テロの概要の一番最後に奥大使のことなんか出ているじゃないですか。それなのに、ことしのことは一個も出ていない。半年に一回更新と言いましたが、テロの概要は、一年近くたって一度も更新されていないんですよ。もうこのことはいいです。

 というように、外務大臣、事実関係は、されていないんです。そのことは、外務大臣、大臣になったばかりですけれども、一〇〇%外務省はやっていないということの証明なんです。と思いませんか。

町村国務大臣 それは、ホームページ、いろいろなコーナーがありますから、常に最新のものを入れる努力をしなさいという御指摘は、そのとおりだろうと思います。

 私ももちろんホームページを見ておりますけれども、ただ、それでは、今回の事件に、仮にその最新情報が載っておれば、本当にあの方が入らなかっただろうか。もしかしたら入らなかったかもしれない。しかし、もしかしたら入ったかもしれない。そこはわかりませんよね。

 ただ、いずれにしても、私どもとしては、常にそういう最善の努力をしなさいという御指摘は、そのとおり受けとめさせていただきます。

岡島委員 私は、コンストラクティブに発言したいと思いますので、いずれにしても、そういったことは更新すべきだ、きちんとしていただければと思うのであります。

 そして、質問がダブるかもしれませんが、今回の小泉首相の発言について、やはりあの発言が、事件が起きてからわずか数時間のうちに、撤退はしないと言い切った、このことの影響というのはやはりあったのではないかと思われるわけであります。

 というのは、今回は、四十八時間以内に撤退しなければ殺害するという予告をしてきました。そのグループは、ザルカウィ氏が率いている武装勢力。そして、彼らは、ことし、これまで十四件の誘拐事件など、十六人を殺害している。少なくとも、それは彼らがやったと確定できなくても、彼らがやったという情報が一番高い状況では、まずは人質の命を守るために時間稼ぎをするのが普通であります。それができなかった。

 結果として、小泉さんが犯人たちにこの行為を急がせてしまった、いわば見殺しにする形につながってしまったとも言える発言だったと思いますが、これを外務大臣はどのように思いますか。

町村国務大臣 私どもが、人質、香田さん救出のためにやったオペレーションの詳細の一々をもし話すことができると、もう少し委員の御理解もいただけるのかと思います。

 ただ、現実に、そのグループがまだ人質を、外国の方ですけれども、人質を持っている可能性が高い、あるいは、さらに今後もそのグループが活動していく可能性もあるといったようなこと、さらには情報を交換している外国のいろいろな機関との信義というような問題がありますので、今ここで私どもが、今言われたような、時間稼ぎという表現をされましたけれども、いろいろな方法で、この事件が四十八時間以内に起きないようなさまざまなオペレーションを私どもなりにやりました。

 しかし、それは、今申し上げましたような事案の特殊性からいって、それを全部申し上げることはできないわけでありますけれども、ただ手をこまねいて、何もしないで、四十八時間たったらそういう結果が出るであろうということだけを見ていたわけでは決してないということだけは、ぜひ御理解を賜りたいと思います。

岡島委員 私は、今、本来ならば、ここに小泉首相がいらっしゃれば、小泉さんにお聞きしたいと思っております。つまり、国家の判断というのは、その裏には、特に国際的問題があればあるほど、情報源を持ち、情報を確認し、把握し、そして熟慮した上に判断していくだろうと思います。

 今回は、事件の発生知らされてからわずか数時間のうちに、撤退はしないという結論から入った。なぜそのときに、町村外務大臣がアルジャジーラなどで言ったという、復興支援活動をしている自衛隊の説明などがあったかもしれない、そういう、自衛隊は復興支援のために行っているというならば、じゃ、復興のことをきちんと説明して、自衛隊の姿を説明して、犯人たちに理解を求めるといった言動を首相はとれなかったのか。内閣の一員として、外務大臣、そういった行動をとらなかった小泉さんの発言、軽率でなかったかとお思いでないでしょうか。

町村国務大臣 そこは外務大臣の責任において、私が日本の政府の考え方というのをアルジャジーラ等を通じて正確に伝えればいいと、これは私の判断でございます。

岡島委員 外務大臣が日本政府の考えを外務大臣として伝える前に、日本の首相は結論を言っていた。外務大臣の努力は初めからむなしいものだったということにもなりかねません。

 次に、私は、ことし、既に六月ごろから、中東地域の複数の日本大使館が、世界からイラク国内に外国人のテロリスト、四千から五千人が入国している、そして、イラクの国民には反米感情も広がっており、テログループが入り込む環境が保たれており、すぐに治安が回復するとは考えられないといったような報告を上げていると聞きます。

 また、イギリスの国際戦略研究所の報告、いわゆるミリタリー・バランスは、イラクに今国内で活動するテロリストは千人以上入っている、そういうことも発表しております。

 実際に、今、ワシントンにあるブルッキングス研究所が毎日更新している統計によりますと、これまでにイラク国内で百五十三人の外国人が誘拐されました。とりわけ暫定政権が誕生して以降、七月、八月、九月と続けて毎月三十人前後の外国人がイラク国内で誘拐されています。これまでにイラク国内で誘拐され殺害されたのは三十二人、そのうちの二十四人がこの七月、八月、九月以降に殺害されました、四分の三が。

 こういった事態、日本の大使館でさえそういう情報を上げているという中で、イラク情勢が悪化していること、治安が悪化していること、外務大臣はどうとらえていらっしゃいますか。

町村国務大臣 イラクの治安情勢につきましてお問い合わせでございますけれども、確かに、駐留している多国籍軍と武装勢力、その中もまたいろいろなグループがあるんだろうと思いますけれども、その衝突、あるいは民間人の殺害、拘束、人質、こういったことが起きておりまして、全体としては予断を許さない状況ということが今の現状認識でございます。

 実際に、国際テログループという新しい、いわば新しい要素かもしれませんが、そういったものが浸透する、あるいはイスラム過激派の台頭、あるいは、これは旧政権のバース党等の残党がいる、あるいはイラク人の犯罪者等の活動が活発化している、いろいろな要素が複合的に重なり合って現在の治安情勢が生まれているんだろう、こう思っております。

 特に彼らが活動を活発化させているのは、やはり来年の一月の選挙が真っ当に行われてしまうと、彼らの出番がなくなると言うと変な言い方でありますけれども、活躍の余地が少なくなるということを考え、一月に向けてこうしたテロ活動がどんどん頻発化してくるというような状況にあるんだろう、こう思います。

 そしてもう一つ、これは確かに、今よく、通常言われておりますスンニ・トライアングルという地域にそれがかなりの程度集中しております。では、ほかの地域はどうか。これは、アラウィ首相が九月にニューヨークで語ったところによれば、国際的な報道はすべてトライアングルのことを報道する、もちろん、他の地域が全く安全というわけではないけれども、十八程度ある県、日本で相当する県のうち、十四、五は非常に安定しているし、今でも選挙をやろうと思えばすぐにでもできる、問題は、残った三つ、四つの県のところがどうなるかで、そこの治安回復に全力を挙げている。そういう見方もあることは、ぜひ御承知おきをいただければありがたいと思います。

岡島委員 問題は、暫定政権が発足して以降、明らかに外国人の誘拐事件がふえ、殺害される人がふえたという事実、その事実を踏まえると、この香田さんの事件に絡んでも、とにかく最も危険に、本当にとんでもない状況になっているという事態だろうと思っております。

 そういった状況は既に把握していらっしゃるとおっしゃっていますけれども、殺害された外国人の四分の三は、とにかく七月以降。ということは、これからますますそういった問題が起きてくるだろうと思うわけであります。(発言する者あり)だから、気をつけなきゃいけないんです。

 それで、今回の事件を起こしたザルカウィ氏は、今後、ビンラディンの傘下に入る、アルカイダに入るということを先月十七日に声明を発表しております。そういう意味では、このザルカウィ氏の組織的犯行というのは、今後はアルカイダの組織的犯行として認知しなきゃいけない事態に入ったと思うわけであります。

 そういった意味におきましては、今回の香田さんの事件はイラクで起きましたが、アルカイダが事件を起こしたのは、あの九・一一もやったと言っているわけですから、そのほかを含めて、全世界がテロの対象になっている。とすれば、全世界の在外邦人は皆テロの標的になり得ると私は思うのでありますが、全世界の在外邦人をどう保護するのか、それについて外務大臣にお聞きしたいと思います。

町村国務大臣 論理的には確かに委員のおっしゃるとおりであって、それは、ロンドンであろうと東京であろうとバグダッドであろうと、そういう全世界規模でのテロリストの活動というものがあり得る、そういう意味で、人質は起こり得るということは言えると思います。

 ただ、現実に、それが起こしやすい環境というのがやはりある。それは、イラクであったり、あるいは場合によればアフガンとか、そういう地域かもしれない。では、東京で起こせるか。それは、東京でも絶対起きないという保証はございません。ございませんけれども、東京の治安も大分悪くなってきたとはいえ、世界的に比べればまだまだ東京の治安はいい、それだけの治安組織というものがある。そういう意味で、起こりやすい地域、起こりづらい地域というものの違いはあるだろうと思いますが、論理的には、全世界的に起こり得る状況だというのはごもっともでございます。

 そういう意味で、私どもとしては、常に、海外で働く方々への警戒情報を頻繁に出すとか、あるいはそういうところで、特に企業で働いている方々に対しては、協議会を設けて、新しいこういう動きがありますよといったような情報を提供するなど、従前以上に海外の旅行者あるいは働く方々への安全情報を的確に出していく。先ほど、更新していないというおしかりもいただきましたが、そういったことも含めて、しっかり私ども取り組んでいかなければいけないと思います。

岡島委員 まだまだ外務大臣に御質問したいこともありますが、時間がありませんので、では防衛庁長官にお伺いをしたいと思います。

 サマワの治安問題についてですが、サマワでは、十月八日、日本・イラク友好記念碑が爆破されましたね。二十二日にはロケット弾、信管がなかったが着弾した。きょう未明、恐らくはロケット弾であろうというものが着弾、爆発したということになっております。

 かように深刻化しているわけでありますが、治安は悪化していますが、サマワの自衛隊の現地での部隊として、作業部隊として、復興支援活動を宿営地以外でどの程度実際稼働しているのか、月ごとにどの程度の日数働いているのか、その情報はお持ちですか。

大野国務大臣 まず、自衛隊の活動でございます。

 給水活動は自衛隊の宿営地内で行っております。

 それから、その他の公共施設あるいは医療支援活動、これは外でございますけれども、例えば、四月、八月は、例えば迫撃砲が飛んできたとか、そういう問題がありましたので、かなり宿営地内にいた。例えば、四月でございますと、三週間ぐらいは宿営地内での活動にとどまっていた。八月でございますと、二週間ぐらいは宿営地内でありました。

 それから、二十三日のロケット弾が宿営地内に着弾したという日は一日給水活動、つまり、営内の活動だけで、外の活動はやめております。

 しかしながら、その他の月においては、週に金曜日の午前中休むぐらいでありまして、ほとんど外での活動を続けておるわけでございます。

岡島委員 ということは、活動できないのは、宿営地外が安全確認できない、確保できないときは活動していないということになります。

 今回のロケット弾ですけれども、現地時間二十二日、このロケット弾、どの国の製造で性能など、すべて解明できましたか。

大野国務大臣 まだ解明できておりません。

岡島委員 私は自分で戦争取材をずっとしていましたからわかりますが、迫撃砲と違って、ロケット弾というのは一人や二人では稼働できません。弾を運ぶ車も必要です、人も必要です。一個分隊ぐらいの形で動くのが普通です。

 そういった意味では、一個分隊規模の反米勢力が、自衛隊の基地十キロあるいは十五キロ、もっと近くにいるという事実、これについては把握しておりますか。

大野国務大臣 まず、北の方から飛んできたらしい、こういうことがわかっております。それからもう一つは、なぜ信管がついていなかったんだろうか、それとも信管が途中で落ちたんだろうか、これはまだ解明できておりません。

 そういうことで、まだまだ背景の情報については把握できていない状態でございますけれども、情報収集については、現地の治安当局あるいはオランダ軍等、あるいは、住民の皆さんの理解と協力が一番大切ですから、サマワの住民の皆さんとの協力関係、こういうことを通じて今一生懸命やっているところでございます。

岡島委員 いずれにしても、戦場へ行ったらわかりますけれども、行った経験はないと思いますが、戦場に行ってロケット弾が来るということは、いつ自分の身が危険にさらされてもおかしくないどころか、常に危険だということであります。これは戦場の常識であります。いつ弾が当たってもおかしくないんです、ロケット弾が来るということは。

 そういった中で、今回、自衛隊にどんどん着弾している。けさ、さらにふえたかもしれない。つまり、治安は悪化していると明らかに認識できるわけです。今まで自衛隊の復興支援活動の中で、地元からの要請が強かった発電所、電力関係の大きなインフラ整備などは、実は一切進んでいません。まだまだ、これからは時間も必要だと言われています。ところが、そうした治安が悪化する中で、自衛隊に望まれているような根本的な大型インフラなどを含めた支援活動、今後できるんでしょうか。防衛庁長官はどうお考えですか。

大野国務大臣 いわば自衛隊の人道復興支援活動と、それからもう一つは、ODAによる資金協力、これはやはり車の両輪としてやっていかなきゃいけない事態でございます。ただし、ODAの方が進んでないじゃないかという御指摘であれば、これからの課題として頑張っていくということでございます。

岡島委員 ODAということじゃなくて、私が言いたかったのは、根本的に復興支援活動するには、治安が安全な日がすべてではないという状況の中で、遅々として進まない復興支援活動の実態もあるということであります。

 ODAに絡めれば、石油パイプラインなどの大きな施設をねらったテロというのは、これも七月以降毎月十数件や二十件と、急激にふえているわけであります。ODA絡みのことに関しても、今後ますます困難が予想されているわけであります。

 そうした中で、復興支援活動が治安の悪化、さっき外務大臣も、イラクの方での全体状況の治安の悪化はお認めになっているわけです。そういった中で、サマワは着弾がどんどん近づいている、もう自衛隊が活動できる非戦闘地域ではない、そのことを防衛庁長官はお考えになりませんか。

大野国務大臣 基本的に申し上げたいと思います。

 まず、イラクの南東部はその他のイラクの地域に比べまして治安はよい、こういうことであります。それから、南東部の中で、サマワは一番治安がよい。よいというのは、それは比較の問題ですから、比較で申し上げております。

 それから、一番大切なのは住民との関係であります。サマワの住民の皆様、これも私何度か申し上げておりますけれども、自衛隊と一緒に道路修復活動あるいは学校の建設活動、こういうことをやった相手方は、本当にお互いによく理解してくれている。それから、子供さん方はとにかく……(発言する者あり)ちょっと待ってください。子供さん方は自衛隊が通ると手を振ってくれる、こういう非常にいい関係でやっております。

 その中で、一部の、どういう分子かわかりませんが、そういう分子がこういう行動を起こしている。その行動については、先ほど来申し上げていますように、迫撃砲弾あるいはロケット弾が飛んできている、このことは重く受けとめております。

岡島委員 親しい住民になったとしても、砲撃ができる砲弾を移動できるということは、親しくない人たちの協力があるからできるんです。私は、アフガニスタンもカンボジアも戦場にいました。住民の協力なしにそういう活動はできないんです。そういう事実を踏まえれば、ロケット弾が毎日のように飛んでくるようになってくる、そういう状況になれば……(発言する者あり)毎日じゃないにしても、毎日のようになってくれば、明らかに危険、治安は悪化しているわけです。治安が悪化しているという事実だけはお認めにならないと、今後、その責任は防衛庁長官、あなたが問われることになるんですよ、違いますか。

大野国務大臣 何度も申し上げておりますけれども、自衛隊員の安全確保、このことは防衛庁長官の責任であり、私は、その責任をあらゆる角度から全うしてまいりたい、このように思っております。

岡島委員 新聞各社の世論調査などを見ますと、朝日では六三%、産経などでも、危険が高まれば八〇%の人が自衛隊を撤退すべきだという、国民の過半数以上が今の治安の悪化した状況での自衛隊の支援活動をやめるべきだという意見になっているわけです。そういった中でも、国民の意思に反して復興支援活動という中で自衛隊の派遣をいつまでも続けることは、結局、アメリカ追従で、自分たちは判断できなかった、そういうことになりかねない今の状況だと私は認識しています。

 私は、もう最後ですから、時間もありません。政府がすべきことは、国民の少なくとも命を守ること、これは国益だろうと思っております。フィリピンのアロヨ大統領の言葉を私は長官や外務大臣、日本政府の皆さんに思い出してほしい。フィリピンのアロヨ大統領は、フィリピン軍を撤退するときに、海外にいるフィリピン人の命を守ることは立派な国益だと言いました。

 今、私たちは、私たちの同胞である日本人が海外で命を落とそうというときに、何ら情報も把握できない、バグダッド市内のバス停の情報さえとれない、そんな情報活動の中で、在留邦人の命を守れない。今、もう一度、人の命を守ることは国益だという言葉を思い出していただきたい、そのことを申し上げて、きょうの質問にかえます。

 以上です。

船田委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 イラクの武装集団による無法残虐なテロの犠牲となった香田証生さんに心からの哀悼の気持ちを述べるとともに、御遺族にお悔やみの言葉を申し上げたいと思います。

 同時に、この間の質問でも取り上げましたが、イラクをテロリストの温床にしてしまった、これはアメリカの戦争に大きな原因があります。そのアメリカの戦争に加担した日本政府の責任も重大であり、二度とこういう事態を引き起こさないというのであれば、これまでのかたくなな態度を改めて、イラクから自衛隊を撤退する、そしてイラクの国民が主権を持った国づくりに臨めるようにしていく、こういうことが大事になっているんじゃないか、このように私は考えています。

 そこで、イラクの治安情勢について、特に来年の政治プロセスとの関係で幾つか質問を行っていきたいと思います。

 イラクの武装勢力というのは、いろいろ言われておりますが、一つは、今回のイラクの聖戦アルカイダ組織を初めとする外国人テロリスト勢力、二つ目が旧バース党の残党や支持者、そして三番目にムクタダ・サドル師派のシーア派武装組織、四つ目にファルージャのドレイミ族を中心とするスンニ派の武装グループなど、いろいろ報道では言われているわけです。

 政府の認識では、こうした武装勢力、これはどれくらいの規模を持っていると見ておりますか。

逢沢副大臣 イラクの治安情勢でございますけれども、結論から申し上げますと、全体として、また全般として、予断を許さない状況が続いている、そのように認識せざるを得ないと思います。ただ、先ほど外務大臣が累次にわたり答弁申し上げましたように、地域によって、比較的治安が安定しているところ、また、いわゆるスンニ・トライアングル等々のように、その中でも大変治安が厳しいところ、その厳しさの度合いには差があるということを改めて申し上げておかなくてはなりません。

 それでは、一体、このイラクの治安を混乱させている、それはどういう勢力に分類されるのかということであります。

 報道をひもとかれて委員も若干指摘をされたわけでございますけれども、私どもとしては、例えば、フセイン政権の残党グループ、あるいは、フセイン時代に言ってみれば大変優遇されていた、しかしその後非常に冷遇されている、不満を持つスンニ派のグループ、あるいはシーア派の過激派、そして、先ほど来さまざま議論に上っておりますけれども、いわゆる外国人勢力、ザルカウィももともとヨルダンの出身でありますけれども、外国からイラクの治安を混乱させる、そういった一つの目的を持ってイラク国内でさまざまな活動をしている、そういったグループに大別されるのではなかろうかというふうに理解をいたしております。

 民間人の殺害、誘拐、自動車爆弾、自爆テロ、ロケット弾、さまざまな治安の攪乱をこういった勢力が行っているわけでございますが、それでは、それぞれの勢力が一体どのぐらいの人員であるとか規模か。幾つかの報道がございますけれども、確たる規模的なものについての情報には接することがなかなか難しいということを申し上げておきたいと存じます。

赤嶺委員 スンニ・トライアングルの危険な治安状況というのは、一年も前から同じことが指摘をされ、そして一年たってもなお、政治プロセスを前にしてもなお、そこをめぐる犠牲者が米軍でも民間人でも激化している、これがイラク全体の治安状況に悪影響を与えている、この基本は全く変わらないわけであります。

 私が政府に伺いましたのは、その規模についてわからないということなんですけれども、それは、米軍自身も情報を持っておられないということなのか、それとも米軍からそういう情報が来ていないということなんでしょうか。

逢沢副大臣 米軍を初めとするイラクの治安に責任を持つ勢力が、いわゆる治安を攪乱するグループの掃討作戦というものを展開してまいりました。また、今現在でも行っているわけであります。また、いわゆる武装解除に応じつつある、シーア派の武装解除のことが大きく報道もされておりました。つまり、いわゆる治安攪乱のための要因であったけれども、銃を置き、政治的な取引に応じる、こういった動きも報道されているということは委員も御承知のとおりであります。

 そういった、治安を攪乱する武装勢力は、全体としては数は減少の方向に向かっているというふうに認識いたしておりますけれども、その個別具体的な数ということについて、この場で申し上げる情報を持ち合わせておりません。

赤嶺委員 治安状況の具体的な中身については、なかなか政府も説明できない。

 CPAから暫定政府に統治が移譲されて四カ月たちました。一月には選挙が行われる予定であります。この選挙に向けて、今後のイラクの治安情勢がどんなふうに展開をしていくか、これはとても大事な問題だと思います。治安の悪化は非常に深刻であるわけですが、来年の一月に向かって治安情勢がどんなふうに推移していくのか、この点は、政府はどのように見ておりますか。

逢沢副大臣 イラクの政治プロセスを国際社会が支える中で順調に進めていくということが大変重要なことであるという認識は、お互いが共有できるかと思います。その中で、当面、来年一月に実施が予定されております国民議会選挙、これを何としても成功させなくてはなりません。

 今でも、アラウィ首相の発言によれば、十八の地域、十八の県で、先ほど大臣からも答弁がございましたように、十五の県ではすぐにでも選挙ができる、治安を確保しなくてはならない、問題が残っているところは三つの県あるいは三、四の地域・県といったような認識も表明をされておりますが、全体として治安を確保し、一月の選挙を成功させる、そのために治安を確保する。

 また、治安を確保するという意味では、民生の安定、経済の向上、所得がふえる、雇用の場が提供される、そういった面の確保ということが当然重要になってこようかと思います。

 我が国といたしましても、そういった認識のもと、御案内のように、総額五十億ドルまでの支援を決定いたしております。既に、無償の十三億ドル部分につきましては実施済み、また何に支出をするかということを計画済みでございますけれども、治安を確保しながら順調にそういった経済援助、支援を進めていく、そのことも治安に直接間接に大きなプラスの影響を与えるものというふうに理解をいたしております。

赤嶺委員 国民議会選挙というのは、国土全体でそれこそすべての国民が参加するという条件でこそ、でき上がった議会の国民からの信頼、権威というものが出てくるわけだろうと思います。

 それで、今後の治安情勢を見る上で非常に重大な局面を迎えているのがファルージャだと私は考えています。

 この二、三日の報道でも、見出しを拾い上げてみますと、イラク選挙へ過激派掃討、それから、ファルージャ総攻撃へ、治安回復へ作戦拡大、つまり、治安の回復で総攻撃を始めるという基調が目立ってきているわけです。せんだって、三十日の空爆は、過去二カ月で最も激しい攻撃だ、このように言われております。

 一方で、ファルージャでは住民代表とイラク暫定政府の代表が停戦協議を継続しているという報道もあります。この停戦協議というのはどんな内容が話し合われて、そして今どういう現状にあるんですか。

吉川政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のように、ファルージャをどういうふうにして治安を戻すかということは、イラク政府側それから反政府組織側も重視している、そういう認識にあると思います。

 今委員御指摘の、具体的にどういう交渉が現地で行われているかということにつきましては、私どもは直接ここでお答えできるような情報を持っておりません。

赤嶺委員 米軍は停戦協議の真っただ中で空爆を始めたことになるのかな、報道の流れを見ている限り、そんなふうに受け取るわけですが、この点はいかがですか。

逢沢副大臣 ファルージャの件につきまして、先ほど中東局長から、必ずしも停戦協議の状況、またその中身について個別具体的な情報を持ち合わせていないという趣旨の答弁をさせていただきました。そういう動きがある中で、激しい空爆、その背景、原因はといったような趣旨の御質問でございます。

 必ずしも正確な情報に基づくということにならない部分もあろうかと思いますが、いわゆるファルージャにおきましては、フセインの残党、スンニの勢力、これに先ほど指摘をさせていただいた外国人勢力が加担をする、場合によってはザルカウィその人、あるいはまたそれに非常に近い形で連なる人たちのベースになっている、そういった認識が米軍にあるいはまたイラク当局にあるといったようなことについても、いささかの情報に接する場面もあるわけであります。

 極めて軍事的な情報に基づく判断ということになろうかと思うわけでございますが、そういった武装勢力の中でも最も危険な勢力をピンポイントにつぶしていく、そのことは全体の治安を回復するという意味では大変重要なことである、そのことについては私どもも同様な認識を持つわけでございます。

赤嶺委員 停戦協議の中身については具体的なことまではわからないけれども、とにかくファルージャはテロリストの巣窟、ピンポイントは必要だ、こういうことをおっしゃっているのかなと思いますが、一方で、住民は、そこにはテロの首謀者などいない、こう主張しているわけですね。

 そういう中で、ファルージャというのは、八月の中旬以降、数十回に及ぶ空爆の犠牲を出している、その多くは女性や子供など民間人と言われているわけです。日本政府は、多くの民間人の犠牲が出ていることについてはどのように考えていますか。民間人の犠牲もやむを得ない、こういう立場ですか。

吉川政府参考人 委員御指摘のファルージャの意義ということについては、赤嶺先生も大変よく御存じの話で、これまで出ておりませんが、一つだけ申し上げますと、十一月一日、きょうはイラクの内政上大変重要な日でございます。来年の一月の選挙に向けての選挙人の登録が始まる日です。

 先ほど先生まさに御指摘のように、安全保障理事会の決議でも決められていますように、選挙というものがイラクの多様性を反映した格好で行われないといけない、やはりファルージャを中心にしたスンニ・トライアングルの人たちも何らかの格好で新しくできる政治に参加してもらわないと、でき上がる政権の正統性というものは失われる、または弱くなってしまう、こういう認識はあると思います。

 したがいまして、それはいろいろな情報があると思いますけれども、ファルージャを中心としたところの治安が弱いのは、そこが治安上のスポットになってしまって、いろいろな勢力が中に入っている。そこで、イラク政府としては、この地域を安定させない限り来年の選挙ができない、そういう認識のもとに、御指摘のようないろいろな協議や、しかも同時に、武力による鎮圧、それからそれに対する強い抵抗、こういうものが繰り返されているというのが現実だと認識しております。

赤嶺委員 ですから、住民は、テロの首謀者などいないと言っている、そして民間人が犠牲になっていると言っている。国連にも、ファルージャの住民有志が、そういう虐殺をやめてくれという要請書を出している、国連もその間に立ち始めた、こういうことも起きているわけですね。

 そういう中で、掃討作戦であるならば、ファルージャでも民間人の犠牲者が出るのはやむを得ないというような理解なんですか。外務大臣、いかがですか。

町村国務大臣 それは、民間人の犠牲者が出ないにこしたことはないわけです。それは当たり前のことだと思います。

赤嶺委員 その当たり前のことが、ファルージャでは逆のことが行われている。本当に日本政府が政治プロセスと言うのであれば、力ずくでのイラクの国民の支配ではなくて、いろいろな勢力が政治プロセスに入ってくるという、今国際社会が行っている努力、そういう努力の上に立って、アメリカにファルージャへの攻撃をやめろ、こういうことを言うべきだというのを申し上げて、私の質問を終わります。

船田委員長 次に、東門美津子さん。

東門委員 社会民主党の東門美津子です。よろしくお願いします。

 昨日、イラクにおいて、許しがたい卑劣な武装集団によって未来ある若者が殺害されるという悲しい事件が起こりました。亡くなられた香田証生さんに哀悼の意を表するとともに、深い悲しみの中におられる御両親並びに御家族の方々に心からお悔やみを申し上げます。

 さて、今回の事件では、情報が錯綜し無用の混乱を招いたということは否めません。イラクの治安が悪化する中で、事件への対応を米軍に依存せざるを得ないという政府の限界が明らかになったと思います。

 三十日から三十一日にかけてのバラドで発見された別人の遺体についても、米軍からの情報で香田さんにほぼ間違いないとして御家族にも連絡したようですが、米軍からの情報内容を現地で検証することはできなかったのでしょうか。在イラク大使館、在ヨルダン大使館、外務省と米国との連携はどのようになっていたのでしょうか。また、四月に起きた三人の人質事件の教訓は生かされたのでしょうか。米国に対して政府がどのような要請を行ったのか、お聞きしたい。政府の情報収集、検証体制はどのようになっていたのか、外務大臣にお伺いしたいと思います。

逢沢副大臣 香田証生さんがイラクにおきまして人質にとられ身柄を拘束される、その最初の報に接して、直ちに政府は対策本部を立ち上げたわけであります。そして、イラク当局また米軍、またイラクにおいて情報の面で協力がいただけると思われる周辺国を初め約三十の国々の政府に対して、必要な情報提供また問題の解決に向けての協力や助言を要請いたしたわけであります。

 委員御指摘の件につきましては、米軍当局に香田証生さんの、いわゆる身長でありますとか体重でありますとか身体的特徴、そういった基礎的な情報をお伝えいたしておりましたところ、米軍の方から、それに該当する可能性があるアジア人の死体を見つけた、そのような報告が我が方にもたらされたわけでございます。

 しかし、その遺体が本当のところだれのものであるのかということは、厳重に確認をする必要がある。したがいまして、その確認の手段でございますけれども、治安上の問題等々から、その遺体を米軍がクウェートに搬送し、そこで日本人の医務官が直接その遺体に接するという形で確認をとったというのが一連の経緯でございます。

東門委員 イラク全土が戦闘地域になっているというふうな御答弁だったのかなというふうに私は受け取りました。

 私たち社会民主党は、かねてから、イラクはテロリストが跳梁ばっこし、非戦闘地域などあり得ないことを指摘して、自衛隊の撤退を訴えてまいりました。このような形で私たちの主張が証明されたことはまことに残念ですが、自衛隊員に犠牲者を出す前に、一刻も早くイラクから撤退するべきだと思います。

 自衛隊の撤退を論ずるときに、テロに屈してはならないということがよく言われます。しかしながら、イラクでは、軍事行動ではなく人道復興支援活動を行っているというのが自衛隊ですね。そういう政府の言葉をかりるのならば、自衛隊は、掃討作戦を遂行しテロに正面から対峙しているわけではなく、イラク国民を支援する活動を行っているのですから、自衛隊の安全確保を考慮して撤退することが即テロに屈したことになるということは、政府側の論理をもってしても説明が困難だと思います。

 政府は基本計画の延長を検討しているとのことですが、このような現状の中で自衛隊の派遣期間を延長することは、到底容認できるものではありません。香田さんのとうとい命をむだにしないためにも、政府は自衛隊の撤退を決断すべきときを迎えているのではないかと思いますが、いかがでしょうか。防衛庁長官に伺います。

大野国務大臣 治安という問題を考えるときに、これは戦闘地域、非戦闘地域の問題ではございません、これは憲法上も必ず非戦闘地域でなきゃ活動できないことになるわけですから。我々自衛隊としては、サマワという地域を選んで、ここは非戦闘地域である、この判断をしているわけです。

 その上で治安というものを考える場合に、二つあると思うんですね。昔の体制に戻したいという何らかの政治的主張を持ちながらいろいろなテロ活動をしている、こういう場合と、それからもう一つは、貧困によって強盗等の行動をする、こういう場合があると思います。

 それで、後者の場合は、人道復興支援がだんだんよくなっていけば、民生が安定してくればなくなる問題であると思います。そういうことが一つ。

 もう一つの観点は、これは、せんだってお見えになりましたムサンナ県のハッサーニ知事もおっしゃっていましたけれども、自衛隊が存在して、そしてこの復興支援に携わっていること、このこと自体が民生安定に貢献している、こういう言葉をちょうだいしました。

 そういう両面の問題、それから復興支援と治安の関係、これは十分考えていただきたいと思います。

 今たびたび議論させていただきましたが、ムサンナ県というか、サマワの治安状態というのは予断を許しません。これは、ロケット弾が飛んできた、三十一日にまた砲弾が来たらしい。これはまだ確認、やがてできると思いますが、そういうことで、私はやはり治安の問題を重く受けとめております。そしてまた、防衛庁長官として、安全な中でこういうとうとい活動をしてもらいたい、こう思っております。

 そこで、お尋ねの基本計画の延長でございますが、たびたび申し上げておりますとおり、一つは、やはり復興の道のり、それからもう一つは治安の情勢、これらを総合的に判断して検討していく、こういうことでございます。

東門委員 民生の安定ということをおっしゃったわけですが、むしろ、今サマワで自衛隊が行っていることがすべてそこに向かっているか、サマワに存在していることがそういうふうに向かっているかということに私は少し疑問を覚えるわけです。

 といいますのは、政府によりますと、現在、イラクにおける自衛隊の人道復興支援活動において、一日当たり三百人から五百人程度の現地のイラク人を雇用しているとのことです。先ほどの報告、防衛庁からもいただきました。ところが、サマワ周辺には数万人失業者がいると言われているわけですね。これでは、失業者を救済するどころか、現地の人たちの不満が自衛隊に向かってくるということは、私は否めないと思うんです。

 これまで政府は、現地の過剰な期待に対し、自衛隊のできることとできないことを示していくことで期待値と実現値との乖離を埋めていくと説明してきました。しかし、私には、この数カ月間の活動の中で、現地の人たちにこのことを理解してもらえたとは到底思えません。むしろ、自衛隊の活動と地元住民の期待との間のギャップが大きく広がっていっているのではないでしょうか。

 この問題は、本当に説明だけで解決する問題なのでしょうか。このような状態が続いていけば、地元の人たちの失意によって、今後自衛隊に対する風当たりがますます強くなり、ひいては日本に対する印象を悪化させるものと考えられますが、防衛庁長官、御見解を賜りたいと思います。

大野国務大臣 自衛隊に対する評価でございます。

 私、現地の松村一佐と電話でいろいろな情報を伺いました。松村一佐も言っておりましたけれども、本当に、学校を修復した自衛隊の隊員が道を通ると、小学校の生徒が手を振ってくれるんだ、それから、ムサンナ県の知事のハッサーニさんも、自衛隊の皆さんを我が家族のような思いで受け入れているんだ、こういうお話もありました。

 確かに、自衛隊が雇用面でできることは、一日に三百人から五百人かもしれません。でも、考えていただきますと、今日までに、毎日積み重ねていきまして、延べ七万七千人になっているわけでございます。

 さらに、現地の自衛隊に対する姿勢でございますけれども、現地の方といろいろな行事をやっております。

 一例を申し上げますと、八月何日でございますか、七夕祭り、ねぶた祭り、それからサマワ友好プロジェクト、こう全部言いますとかかりますので、これでやめますけれども、現地の方は、本当に自衛隊というものに対して悪意は持っていない。

 ただ、先ほど申し上げましたように、一部の、これがどういう者なのか、その情報がまだはっきりしていないところに申しわけない点はありますけれども、やはりそういうテロリストが、あるいは貧困のためにやっている人がおるのかもしれません。そういう方々の行動については予断を許しません。そのところはしっかりと情報を収集し、かつ安全対策に努めてまいりたい。どうぞ御理解くださいますようよろしくお願いします。

東門委員 最後の質問になると思いますが、経済支援のあり方についてお伺いしたいと思います。

 先月十三日に行われました第三回イラク復興支援国会議において、政府は、来年一月末までに実施予定の移行国民議会選挙を成功させるために、イラク復興信託基金を通じて四千万ドル、日本円にして約四十四億円の支援をする方針を表明しました。これまでも政府は、イラク支援について、自衛隊による人的貢献とODAを通じた支援は車の両輪であると位置づけて、経済協力としては、無償資金十五億ドルと円借款の三十五億ドルの計五十億ドル、日本円にして約五千五百億円の拠出を表明しています。

 しかし、これだけの多額な資金を援助しているにもかかわらず、支援の担い手となる日本人の技術者等が派遣できないほどイラクの治安が悪化しているため、結果として顔の見えない援助になっているのが実態なのではないでしょうか。

 イラクの治安回復の道筋が見えない状況の中で、今後さらに民間人が支援を行える環境が遠のいていくものと考えますが、このようなテロの頻発する状況の中で、これだけ巨額の資金を拠出して、それぞれの予定しているプロジェクトが実行できるのか、極めて疑問を感じざるを得ません。

 果たして政府は、どのような形でイラクの人たちに具体的に顔の見える支援を行おうとしているのでしょうか。外務大臣にお伺いしたいと思います。

町村国務大臣 顔の見える支援、その方がいいですよね。しかし現実に、今イラクの人たちが必要としている電力でありますとか医療でありますとか、水、衛生、治安、こういったものに、すべての治安が例えば日本ぐらいよくなるまで何もしないで待っていていいんでしょうか。たとえ、確かに随所随所を見ればそういう危険な状況はあるかもしれませんけれども、しかし逆に、こういうときであればあるほど、日本として、確かにそれはとりあえず国際機関を通じたりなんかしてお金を出すことになるわけですけれども、しかし、こういうときだからこそ、私は、一生懸命支援をして、将来の発展の基盤をつくるために、日本が電力設備を差し上げたり、つくったり、いろいろな活動をしていくということが今まさに必要なんじゃないでしょうか。

 我々が、危険はなかったかもしれないけれども、本当に貧しい戦後の復興の時代に、アメリカから供与されたガリオア・エロア資金あるいは物資、ああいったものがいかばかりか日本の戦後の発展に役立ったかということを考えたときに、むしろ今だからこそ、日本は、イラクに対する、今言われた車の両輪である資金、人、両面を通ずる復興支援協力というものが必要なんだ、私はそう考えております。

東門委員 時間ですから終わりますが、私が申し上げたのは、どのような形でイラクの人たちに顔の見える支援を行おうとしているのか、いや確かに、今必要ですよ、やらなきゃいけないですよとおっしゃるのはわかるんですが、顔が見える形で支援をしていかれるんですかとお聞きしたのですが、時間ですから終わります。また後で聞きます。

 ありがとうございました。

船田委員長 次回は、来る十日水曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後六時二十三分散会


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