衆議院

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第4号 平成16年11月10日(水曜日)

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平成十六年十一月十日(水曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 船田  元君

   理事 中谷  元君 理事 西田  猛君

   理事 三原 朝彦君 理事 渡辺 具能君

   理事 小泉 俊明君 理事 末松 義規君

   理事 藤田 幸久君 理事 佐藤 茂樹君

      宇野  治君    大島 理森君

      川上 義博君    木村 隆秀君

      左藤  章君    斉藤斗志二君

      桜井 郁三君    竹本 直一君

      武田 良太君    谷川 弥一君

      谷本 龍哉君    玉沢徳一郎君

      寺田  稔君    西村 康稔君

      浜田 靖一君    平沢 勝栄君

      宮澤 洋一君    望月 義夫君

      山口 泰明君    泉  健太君

      市村浩一郎君    大石 尚子君

      大出  彰君    岡島 一正君

      吉良 州司君    篠原  孝君

      島田  久君    神風 英男君

      首藤 信彦君    鈴木 康友君

      園田 康博君    寺田  学君

      中川 正春君    中野  譲君

      長妻  昭君    本多 平直君

      赤松 正雄君    丸谷 佳織君

      赤嶺 政賢君    照屋 寛徳君

    …………………………………

   外務大臣         町村 信孝君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      大野 功統君

   防衛庁副長官       今津  寛君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  林  幹雄君

   政府参考人

   (防衛庁長官官房長)   北原 巖男君

   政府参考人

   (防衛庁防衛局長)    飯原 一樹君

   政府参考人

   (防衛庁運用局長)    大古 和雄君

   政府参考人

   (防衛庁人事教育局長)  西川 徹矢君

   政府参考人

   (外務省大臣官房外務報道官)           高島 肇久君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            吉川 元偉君

   政府参考人

   (外務省経済協力局長)  佐藤 重和君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    鹿取 克章君

   衆議院調査局国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラク人道復興支援活動等に関する特別調査室長        前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十日

 辞任         補欠選任

  嘉数 知賢君     谷川 弥一君

  岸田 文雄君     望月 義夫君

  竹本 直一君     左藤  章君

  西銘恒三郎君     木村 隆秀君

  本多 平直君     泉  健太君

  牧  義夫君     園田 康博君

同日

 辞任         補欠選任

  木村 隆秀君     西銘恒三郎君

  左藤  章君     竹本 直一君

  谷川 弥一君     嘉数 知賢君

  望月 義夫君     岸田 文雄君

  泉  健太君     寺田  学君

  園田 康博君     牧  義夫君

同日

 辞任         補欠選任

  寺田  学君     中野  譲君

同日

 辞任         補欠選任

  中野  譲君     本多 平直君

    ―――――――――――――

十一月四日

 イラク多国籍軍からの自衛隊の撤退に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第三〇号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第八五号)

 同(吉井英勝君紹介)(第八六号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第一三六号)

 同(石井郁子君紹介)(第一三七号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一三八号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一三九号)

 同(志位和夫君紹介)(第一四〇号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一四一号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一四二号)

 同(山口富男君紹介)(第一四三号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一四四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動等に関する件


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     ――――◇―――――

船田委員長 これより会議を開きます。

 国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動等に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官林幹雄君、防衛庁長官官房長北原巖男君、防衛庁防衛局長飯原一樹君、防衛庁運用局長大古和雄君、防衛庁人事教育局長西川徹矢君、外務省大臣官房外務報道官高島肇久君、外務省中東アフリカ局長吉川元偉君、外務省経済協力局長佐藤重和君、外務省領事局長鹿取克章君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

船田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

船田委員長 この際、政府から説明を聴取いたします。防衛庁運用局長大古和雄君。

大古政府参考人 イラク人道復興支援特措法に基づく自衛隊の部隊の最近の活動状況について御報告いたします。

 サマワの陸自部隊においては、安全確保に十分配意しつつ、宿営地における給水活動を初め、ムサンナ県内のサマワ、ヒドル、ブサイヤ及びルメイサにおける学校補修、ナジミ、ワルカ及びサマワにおける道路整備を引き続き実施しています。また、病院における医療活動も引き続き実施しています。

 給水活動に関しましては、現在一日当たり百八十トンから二百六十トン程度を給水しております。これは、仮に一人一日当たりに必要な水を四・五リットルとした場合に、給水量を二百五十トンとしても約五万六千人程度の所要量を満たす計算になります。なお、三月二十六日から十一月九日までの間に、計約三万八千トンを給水しました。

 七月二十四日に補修を開始したウルク遺跡の外さく補修については、このたび工事を完了し、十一月八日に竣工式を実施したところです。

 なお、現地部隊においては、これらの活動により、一日当たり三百名から五百名程度の雇用を創出しているところです。

 また、現在、現地で活動する第三次復興支援群は、十一月五日に派遣命令が発出された第四次復興支援群に部隊交代を行い、業務の引き継ぎを実施後、十一月から十二月にかけて順次帰国する予定です。

 十一月一日以降のサマワ周辺の情勢については、本日まで特筆すべき事案は発生しておりません。

 なお、現地時間十一月七日、非常事態宣言が発出されましたが、現時点において、ムサンナ県においては、この非常事態宣言を受けて何らかの具体的な措置がとられたといった情報はございません。

 現地部隊においては、さまざまな情勢を踏まえ、その活動も慎重に行っているところであり、引き続き安全確保に細心の注意を払いつつ、活動を実施してまいります。

 航空自衛隊の部隊については、十一月一日から九日までの間、我が国からの人道復興関連物資、関係各国、関係機関等の人員の輸送を計五回実施したところです。

 引き続き、イラク国内の各飛行場の安全性や輸送ニーズ等を慎重に勘案しつつ、C130機による輸送を行ってまいります。

 以上でございます。

船田委員長 次に、外務省中東アフリカ局長吉川元偉君。

吉川政府参考人 最近のイラク情勢について御報告申し上げます。

 今後のイラクの政治プロセスにおいて、国民議会選挙が予定どおり明年一月末までに実施されることがかぎであると認識しております。

 選挙準備につきましては、本年五月末に独立選挙管理委員会が発足し、現在、同委員会が国連などの支援を受け準備作業を進めているところです。十一月一日には有権者登録が開始され、国連の発表によれば、五百カ所を超える全国の有権者登録センターの大半で有権者登録作業が開始されました。登録手続は十二月十五日まで行われる予定であると承知しております。また、政党及び個人立候補者の登録につきましても十一月一日から開始されたと承知しております。

 イラクの治安情勢ですが、脅威の度合いは地域により異なるものの、駐留多国籍軍と武装勢力の衝突、民間人の拘束、殺害等さまざまな事件が国内各地で頻発しており、依然予断を許さない状況が続いております。

 十一月七日、イラク暫定政府は、七月七日に公布した国家治安維持令に基づき、北部のクルド地域を除くイラク全土に対し非常事態を宣言しました。その具体的な内容につきましては、アラウィ首相が翌八日の記者会見において、イラク暫定政府の決定としまして、第一に、現地時間の八日午後六時よりファルージャとラマディという二つの町で外出禁止令を発令する、第二に、バグダッド国際空港を八日の夕方から四十八時間閉鎖する、第三に、シリアとヨルダンとの国境を封鎖し、食料運搬車両以外の通行を禁止するといった措置をとった旨述べたと承知しております。

 ファルージャにつきましては、イラク政府がこれまで事態の平和的解決に向けた努力を行ってきましたが、八日、イラク治安部隊と駐留米軍はファルージャの反政府武装勢力に対する掃討作戦を開始したと承知しております。

 イラク暫定政府はこれまで、治安要員の強化、国家治安維持令の公布、恩赦の決定など硬軟両様の措置を講じてきておりますが、国家治安維持令に基づき発出された今回の非常事態宣言やファルージャにおきます掃討作戦は、治安の改善に向けたイラク暫定政府の断固とした決意のあらわれと認識しております。日本政府としては、このような措置が早期に奏功し、治安情勢が速やかに改善されることを期待しております。

 なお、現時点におきまして、自衛隊が活動しているムサンナ県では、今回の非常事態宣言を受けて何らかの具体的な措置がとられたといった情報はありません。引き続き状況を注視してまいりたいと思っております。

船田委員長 これにて説明は終了いたしました。

    ―――――――――――――

船田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。神風英男君。

神風委員 今回、当委員会に初めて所属をさせていただきました民主党の神風英男でございます。

 名前は神風で好戦的に見えますが、本名でございまして、極めて本人は平和的な人間でございますので、よろしくお願いを申し上げます。

 まず最初に、今回のアメリカ大統領選挙の結果について、その御感想なり、あるいはどのような評価、分析をされているのか、特にニューヨークで御勤務の経験もございます町村外務大臣に、簡単で結構ですのでお伺いをしたいと思います。

町村国務大臣 アメリカ大統領選挙の結果をどう見るかというお問い合わせでございます。

 まだ緻密な分析をやるほどのいとまもありませんけれども、特徴的なことをマスコミ報道を通じて知るところでございますけれども、一つは、投票率が非常に高かったということで、従来、ややもすると投票率四割台というのがかなり多かったと記憶をしておりますが、六割前後ですか、非常に高かったということがあります。それから、ブッシュ大統領の得票率が五一%ですか、五割を超えたというのも、これもある意味では十数年ぶりという珍しい得票率の高さということであったのかなと思います。

 我々、日本にいると、どうも、専ら争点はイラクのことばかりで選挙が行われたかのごとき印象を受けますし、そういう報道も多いのですが、実際よく見てみると、国内問題、例えば、むしろ道徳の問題とかあるいは家族の問題でありますとか、そういう問題がかなり重視をされて、投票行動にそれが反映されたという面もかなりあったようでございます。この辺の分析は、もう少しよくやってみないとわかりませんけれども。

 いずれにしても、安定した得票でブッシュさんが再選をされたということでございまして、日米関係、これからますますしっかりと同盟関係を強化できる基盤が今回の選挙によってできたのではないだろうか、かように受けとめております。

神風委員 実は、私自身も湾岸戦争の当時ニューヨークに滞在しておりまして、ワールド・トレード・センターは、本当に日常の風景の一部でございました。ですから、九・一一が起こったときには、私自身、本当に眠れない一夜を過ごした経験がございます。

 日本人の私でさえもそれぐらいの大変大きなショックであったわけでして、当のアメリカ人にとっては、それを考えますと、恐らく我々の想像を超えるような本当にすごい衝撃であったのではないかなと思っております。

 そういう意味で、開戦当初、私自身もアメリカあるいはブッシュ大統領の行動に対して、一定の理解あるいは共感を覚える部分もかなりあったんですが、その後、最近になって、大量破壊兵器の存在の有無あるいは現在のそうしたイラク情勢を見るにつけて、苦悩するアメリカ、まさにそれが今回の選挙結果の中で本当に二分をされた、真っ二つに分かれたアメリカの姿というものが選挙結果の中でも反映をされているのではないかなと思うところでございます。

 最終的には、キリスト教右派の動員によってブッシュ大統領が辛うじて勝利をおさめたということではないかなと思いますが、いずれにしても、これからは、選挙中に封印をされていた、本当にイラク戦争は成功したのかという課題が共和党の中からも起こってくるのであろうと私自身は考えるわけでございまして、これに対して、本当に、日本の対応、自衛隊の対応を含めて、相当神経を集中させていかなければならないなと思うところでございます。

 その意味で、まず、十月の二十二日また三十一日に自衛隊宿営地の方にロケット弾が撃ち込まれたわけですが、これに関してその後何か確認できたようなことはございますでしょうか。

大古政府参考人 サマワにおきましては、現地時間でございますが、十月二十三日にはロケット弾が宿営地内において発見されました。また、十月三十一日、これも現地時間でございますが、宿営地内にロケット弾が着弾したと思われる事案が発生してございます。

 十月三十一日の事案につきましては、現在に至るも、宿営地の内外においてロケット弾なりその痕跡については発見されておりません。

 これらの事案の背景等につきましては、現地治安機関等と密接に連絡をとり、鋭意、情報収集、分析しておりますけれども、だれがかかわってこうしたかということを含めまして、確たることを申し上げられる段階にはないということでございます。

神風委員 これまで何度となく議論をされてきたところではあると思いますが、防衛庁長官あるいは外務大臣ともに交代をされましたので、改めて整理を含めてお伺いをしたいと思いますが、戦闘地域、非戦闘地域の定義についてでございます。

 先日、八日に小泉総理も、サマワは依然非戦闘地域であるという認識に変わりがないということを強調されたそうですけれども、この非戦闘地域、定義によりますと、現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで行われる活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域ということでよろしいでしょうか。もうイエス、ノーだけで結構です、確認ですから。

大野国務大臣 おっしゃるとおりでございます。

神風委員 さらに、その中で述べられておる戦闘行為とは何かということについては、国または国に準ずる者による組織的、計画的、継続的、国際的な武力紛争の一環として認められる争いによって人を殺傷し、または物を破壊する行為である。これでよろしいでしょうか。イエス、ノーで結構です。

大野国務大臣 イエスでございます。

神風委員 それでは伺いますが、現在ファルージャで展開されております武装勢力との交戦状態、これは戦闘行為に当たるんでしょうか。つまり、ファルージャの武装勢力が国または国に準ずる者ではないということになれば、けさもニュースの報道で流れておりましたけれども、あれだけ激しい戦闘状態であっても非戦闘地域ということになるわけですが、そういう理解でよろしいんでしょうか。

大野国務大臣 この問題、イエスかノーかでは答えるわけにいきませんので、若干説明をさせていただきたいと思います。

 先生がおっしゃるのは、いわば非常事態宣言が出ている、それから、多国籍軍、米軍のファルージャへの総攻撃である。このことにつきましてはアラウィ首相も了解しているわけでありますけれども、私どもが申し上げております非戦闘地域というのは、イラク特措法第二条第三項に基づいて非戦闘地域に自衛隊を派遣します、そこで、非戦闘地域で安全を確保しながら人道復興支援をやります、こういうことでございます。

 したがいまして、我々は、非戦闘地域を判断する立場であります。したがいまして、どこが戦闘地域ということにつきましては、常識的な答えはあろうと思いますけれども、それは私は、防衛庁長官として、非戦闘地域はここですよ、これには責任を持たせていただきます。

神風委員 今の質問は、今交戦状態にあるファルージャが戦闘地域に当たるのかどうかということでございますので、それについて明確な答弁をお願いします。

大野国務大臣 もう一度繰り返しますが、防衛庁長官といたしましては、自衛隊を海外へ派遣して、そしてそこで活動する場合に、この場所は絶対に非戦闘地域でなきゃいけない、こういう判断をする立場でございまして、その他の地域について判断する立場にはございません。

神風委員 それでは、昨日、町村外務大臣が記者会見の中で、ファルージャ情勢に関し、法律上は、国または国に準ずる組織と戦争状態に入る地域を戦闘地域と言っている、攻撃対象のテロリストは定義には当たらず、ファルージャは戦闘地域には当たらないと述べておられますが、防衛庁長官と外務大臣とで認識が違うんでしょうか。

大野国務大臣 私が申し上げておりますことは、イラク特措法、あるいはその他の場合もそうですけれども、第二条第三項で、自衛隊が活動する期間にわたって、これは憲法上の問題がありますから、非戦闘地域というのはこういうところであるという定義を先ほどから議論しましたけれども、そういう定義に基づいてここは非戦闘地域、こういうことを申し上げているわけでありまして、どこが戦闘地域というような話をする立場にはありません。

神風委員 そうなりますと、逆に、仮にサマワではなくてファルージャに自衛隊を派遣するということは、選択肢としては可能なんでしょうか。

大野国務大臣 それは十分検討して決めるべきことでございましょうが、今そういうお答えは、仮定の問題でのお答えは控えさせていただきます。

神風委員 仮定の問題ではなくて、これはもう完全にシミュレーションの問題だと思います。それに関して定義がはっきりもう決まっているわけですから、それに照らして判断できる回答だと思いますが、いかがですか。

大野国務大臣 たびたび申し上げておりますけれども、我々は自衛隊の皆様に、まず、非戦闘地域である、そして非戦闘地域の中で自衛隊員の生命、身体の安全を確保して、安全の条件のもとに人道復興支援活動をしてもらう、これが問題でありまして、そういう問題について我々は回答を出しているわけでございます。その他について判断をする立場にはございません。

神風委員 それでは、ファルージャに派遣することに仮になった場合に、それを判断されるのはだれなんでしょうか。防衛庁長官ではないんですか。

大野国務大臣 ファルージャに派遣することになったらという御質問ですか。基本計画にはそういうことは一切書いておりません。ファルージャは入っておりません。基本計画には、イラク南東部ということを書いて、ムサンナ県ということを書いて、実施要項にさらに、サマワを中心とする、こういうふうに書いてあるわけであります。ファルージャに派遣することは今の特措法上できません。

神風委員 それでは外務大臣に、昨日、記者会見でファルージャは非戦闘地域であると述べられたことに関して、そういうお考えなのかどうか、確認をしたいと思います。

町村国務大臣 私が会見で申し上げたものが一言一句手元にあるわけじゃございませんが、国または国に準ずる組織がその相手であるという場合であって、その場合が戦闘地域、非戦闘地域の一つのメルクマールになります。今回の反乱軍といいましょうか掃討されている相手は、国または国に準ずる組織ではありませんよね、そういうことを、今日本のイラク特措法の法律に従って考えれば、そういう組織じゃないということを私は申し上げただけであります。

神風委員 外務大臣はファルージャも戦闘地域に当たらないということを述べられておりますが、それに関してはいかがですか。

町村国務大臣 今申し上げたように、法律の定義を私は述べたのであって、ファルージャで今行われている戦闘の相手側は国または国に準ずる組織ではないということだけを申し上げたんです。

神風委員 そうしますと、この記者会見で述べられた、戦闘地域には当たらないというのは、これは誤報だということでしょうか。

町村国務大臣 さようでございます。

神風委員 そうしますと、現在イラクで行われておりますいろいろな武装勢力による交戦状態、すべてイラク全土が非戦闘地域ということになると思いますけれども、防衛庁長官、それはいかがですか。

大野国務大臣 たびたび国会で御説明申し上げております。イラク全体につきましては、治安について考えてみた場合、地域によってそれぞれ違うと思います。今まで御説明申し上げておりますのは、イラクの南東部、つまり、自衛隊が活動しておりますムサンナ県、サマワ、ここは比較的安定しておる、こういうふうにお答えしておりまして、地域地域でやはり相当治安については違う、このことを申し上げたいと思います。

神風委員 外務大臣にお伺いしますが、ファルージャで行われている武装勢力の相手が国または国に準ずる者ではないと判断された根拠はどこにあるんでしょうか。

町村国務大臣 いろいろな報道あるいはいろいろな調査によるところによれば、それはいろいろなグループの混成であろうという見方が一般的であろうということで、国または国に準ずる組織ではなかろうということを申し上げたんです。

神風委員 サマワの自衛隊の宿営地に撃ち込まれたロケット弾に関しては、国または国に準ずる者であるかもしれない、その可能性があるということが非戦闘地域であるということからわかるわけですけれども、それはどうやって判断されるわけですか。外務大臣にお願いします。

町村国務大臣 それは必ずしも私がお答えする立場かどうかわかりませんが、それは今現在、だれが撃ち込んだかというのは、現地において調査中だという答弁であります。

神風委員 自衛隊に撃ち込まれたロケット弾の主体に関しては今調査中であって、ファルージャに関しては、これは明確に国または国に準ずる者ではないと言える根拠はどこにあるんでしょうか。私には全くわかりませんが。

町村国務大臣 それは、もとより私ども、軍事情勢なりあるいはファルージャにおける状態を子細に分析する、そういう独自の情報網がもとよりあるわけではございません。ただ、いろいろな情報を私どもなりに考えてみたときに、要するに、例えばあの反乱軍といいましょうか武装勢力が国でないことは、これはだれの目にも明らかだと思います。あるいは国に準ずるというものでもなさそうだと。

 それは、ある者はフセインの残党であるかもしれない、ある者は外国から来たテロリストかもしれない、いろいろな人たちの混成ではないかということが想像できるのではないかという印象論を申し上げたのであって、そういう意味で、厳密な、ではそこを、その地域のことを、今申し上げたように、私どもは現地に行って調査をしたり、現に戦闘してそういう調査をしているわけじゃございませんから、それはわからないわけであります。

神風委員 けさのファルージャの報道を見ていても、実際に武装勢力というのは三千ぐらいの数だと推定がされるという程度の報道であって、実態はよくわからない。しかも、その中で一般市民も多くいらっしゃるわけですね。まだあそこに何万人という方がいらっしゃる。一緒になって戦っている形跡もある。実際に一般市民にもかなりの被害が出ている。

 そういう中で、ファルージャで戦闘されているのが国または国に準ずる者ではないと明確に言える根拠というのは全くないと思いますが、一般市民も一緒になって戦っている形跡は十分あるわけですから、それに対してどういう御見識なのか、お伺いしたいと思います。

町村国務大臣 だから、申し上げているように、一般市民が入っているかどうか、そこは私ども、現にその場にいるわけじゃないから、今そういうお問い合わせがあっても、判断はできないわけであります。

神風委員 ちょっとこれを繰り返していても堂々めぐりになるのかなと思いますので、次の質問に移りたいと思います。

 サマワの宿営地にロケット弾が撃たれたわけですけれども、これに関して、その以前にも、これまでの自衛隊宿営地付近への攻撃の日数を挙げてみますと、二〇〇四年の四月の七日、二十九日、八月の十日、そして八月の二十一日から二十四日にかけて、これはもう三夜連続でロケット弾が撃ち込まれた。それで、二十二日、三十一日には宿営地内に撃ち込まれたわけです。

 この経過を見れば、普通、その組織性、計画性、継続性というものは当然あると判断するのがごく自然の理解であると思いますが、それをそうではないと言われる根拠というのは、どういう根拠に基づいてそう考えられるのか、防衛庁長官にお願いしたいと思います。

大野国務大臣 今先生おっしゃったように、四月に二回、八月に四回、十月に二回、それぞれ迫撃砲あるいはロケット弾が撃たれております。それが自衛隊宿営地の方向へ向かって撃たれておりまして、十月の二発は確かに宿営地内に落ちております。しかしそこで、なぜ信管がなかったんだろうか、これはどういう意図を持っているのか、こういう情報はきちっと収集していかなきゃいけません。

 それからもう一つは、やはり治安全体との関係でございます。

 たびたび申し上げておりますけれども、治安自体を考えますと、サマワあるいはムサンナ県というのは比較的治安がいいところでございます。もちろん、これから予断は許せません。また何が起こるかわからない、こういう細心の注意はいたしております。

 それで、問題は、そういうロケット弾なり迫撃砲弾を撃ってこられたことに対する背景なり情報収集でございますが、この点は、現地の治安当局あるいはいろいろな方面と十分連携しながら収集しているわけでございます。

 今の段階で確たるお答えをすることができない、これは残念でございますけれども、そういういろいろな情報を収集して、全く何の情報もないというわけではありません。だけれども、確たることを言えないということを申し上げたいのでありますが、今のところ、いろいろな情報を収集した上でこれが直ちに、例えばムサンナ県、サマワが戦闘地域、非戦闘地域ではなくなったとか、そういう判断は全くできません。非戦闘地域でございます。

 また、治安についても、ラマダンが始まっておりますけれども、特段の衝突事件とかいろいろな事件が起こっているという状態でもありません。他の地域に比べれば極めて安定しているわけでございまして、サマワが所在するムサンナ県における事件は相変わらず少ない、傾向として少ない、このことは絶対に申し上げられるわけでございます。

神風委員 あくまでサマワが非戦闘地域という概念であれば、それは恐らく政府がつくり出したフィクションにも似た概念だと私自身は思いますので、それはそうなってしまうのかなという気がしますが、非戦闘地域であっても、サマワの危険が増大しているということは事実であろうと思います。

 そういう意味で、かつて前防衛庁長官は、非戦闘地域イコール安全な地域ではない、安全な地域であることを意味しないということを述べられているわけですが、そうしますと、非戦闘地域と認定をされていても、現実的な危険が増大をすれば自衛隊は撤退をするということはあり得るんでしょうか。

大野国務大臣 今のは、非戦闘地域の中で治安が悪くなってという問題でありますけれども、自衛隊員の安全確保義務、これは防衛庁長官にあります。したがいまして、安全に人道復興支援に活動してもらう、これが大事なことでありまして、もし安全でないということになればもちろん、活動は一時中断する、休止する、あるいは最終的に撤退する、こういうことも、万々が一そういう事態になればもちろん当然やりますけれども、今の状態では安全確保をきちっとやっておりますので、今後とも、細心の注意を払って安全確保に万全を期してまいります。

神風委員 そうしますと、サマワは非戦闘地域ではあるけれども、これから一層危険性が増せば撤退もあり得るということであろうかと思いますが、逆に、現在のサマワが危険ではないという根拠は何なのか。逆に言えば、実際に自衛隊に被害が出なければそれは安全なんだ、そういう御認識なんでしょうか。

大野国務大臣 治安は比較的安定している、他の県に比べて比較的少ない、その傾向は続いております。先ほど申し上げましたように、ラマダンの季節でございますけれども、衝突案件はふえておりません。

 ただ、私が再々申し上げておりますのは、ロケット弾、迫撃砲が飛んでくる、これは重大に受けとめていかなきゃいけない、その背景なり情報収集に努めているところでありますということを申し上げております。

 しかし、その情報収集、確たることを今申し上げられませんけれども、その情報収集した結果では、今のところ非戦闘地域ということには変わりがない。問題は、先生がおっしゃいますように、治安が悪くなれば、これは仮定の問題であります。ロケット弾は重大に受けとめております。しかし、その他の件につきましては比較的安定している、この状態はずっと続いているわけであります。

 したがって、仮定の問題として、これから悪くなるというお問いであれば、そういうお問いに対して先ほどお答えしました。今治安が悪くなっているんですねということであれば、それは従来に比べて悪くなっておりません。ここでピリオドでございます。

神風委員 これまでの議論を見ていても、本当に、イラク特措法というのがいかに無理に無理を重ねてつくられてきた法案なのかということが理解できるわけでして、恐らく、この中で述べられている非戦闘地域の概念をもってすれば、イラク全土が非戦闘地域ということで認定ができるんだろうと思います。

 そういう意味で、このイラク特措法、民主党としては、これから廃止をして、本当にこれからのイラクの復興に寄与できるような、そういった新たな法案をつくっていきたいと思うところでございます。

 そして次に、自衛隊の撤退について伺いたいわけですが、今回、期限が十二月の十四日まで、一年間という形で決められておりますが、これに関しては、何か根拠があって一年間ということで決められたんでしょうか。

飯原政府参考人 イラク特措法自体四年の時限立法でございますが、対応措置につきましては、イラクの復興支援という観点から、ある程度長期間を要するものであると考えられましたことから、一年間の期間ということになっております。

神風委員 けさの読売新聞をちょっと拝見しまして非常に驚いたんですが、ほかの新聞には載っておりませんでしたけれども、読売新聞にだけ「イラク派遣一年延長」と。「政府・与党は十二月十四日に期限切れを迎える自衛隊のイラク派遣について、一年間延長する方針を固めた。」「十二月上旬にも、イラク復興支援特別措置法に基づく基本計画の変更を閣議決定する見通しだ。」ということが述べられておりますが、これは事実ですか。

大野国務大臣 事実ではございません。

 いまだに、あらゆる面から総合的に判断して、その中の二つの要素、御存じでございますが、イラクの復興の道のり、そして治安情勢の問題、この二つを中心に総合的に判断して決めていこう、こういうことでございまして、報道については、私は報道で知りました。

神風委員 そうしますと、この読売新聞の記事も誤報であるということでしょうか。

大野国務大臣 新聞につきましては私はコメントを差し控えますが、政府の立場、我々の立場というのは、先ほど申し上げましたとおり、これから決めていこう、こういうことでございます。

神風委員 期限の延長については、アメリカから具体的にどのような要請があったんでしょうか。

町村国務大臣 要請はございません。

神風委員 では、この期限の延長は、あくまでも日本が独自に自分の判断でもって延長したということですか。

町村国務大臣 政府全体の判断になるわけでございますが、延長するしないは、もちろんですけれども、我が国が独自で判断をし、主体的に判断することでございます。

神風委員 とても日本独自で判断して決められているという姿が見えてこないものですから、そういうことを伺ったわけです。

 それでは、これまで小泉総理は、実際にイラクに訪問をされて、御自分の目で、例えばサマワの状況あるいはそういったイラクの状況というものを見られたことがあるのか。

 これまで、例えば各国の首脳のイラク訪問を見ますと、昨年の十一月の七日にはアメリカのブッシュ大統領、あるいはスペインのアスナール首相、ポーランドのクワシニエフスキ大統領、イギリスのブレア首相、オランダのバルケネンデ首相、イギリスのチャールズ皇太子、オーストラリアのハワード首相、ブルガリアのパルバノフ大統領、イタリアのベルルスコーニ首相、ポーランドのベルカ首相、それぞれ、相当の規模を出しているところの首脳は、こうやって皆さんイラクの方に訪問されて、御自分の目で戦地というかイラクの状況を把握しているわけですが、小泉総理の場合、これまでそういうことがあったのか、あるいはこれからそういう予定はあるのか、いかがですか。

町村国務大臣 総理御自身も、イラクを訪問して自衛隊の活動を自分で直接視察をしたい、あるいは激励をしたいという気持ちを持っておられることはそのとおりだろうと思いますが、他方、現地の復興状況、地域情勢につきましては、現地の部隊あるいは在外公館、いろいろな国からの情報を得てやっておりますので、今後の対応について総理が現場に行って判断しなければならないということではなくて、全体を総合的に、総理のもとに情報を集約して判断すれば、それでできるのではないか、こう思っております。

神風委員 政府の言うとおり、イラクが非戦闘地域であって、しかも危険でもないということであれば、それはもう十分に可能なことであろうと思いますので、ぜひ実現をしていただきたい。

 また、加えて、自衛隊派遣を延長するにしても、あるいは撤退をするにしても、余りにも我々委員会としても情報がないというのが現実であろうと思っております。そういう意味では、国会の義務あるいは立法府の責任として、当委員会としてもサマワへの現地視察みたいなことを実施すべきではないかと私自身は思うわけでございまして、既にオランダでは国会議員がそういう行動を行っているやにも伺っております。ぜひこの点は船田委員長にその実現をお願いいたしたいと思いますが、いかがでしょうか。

船田委員長 ただいまの件につきましては、後日理事会等で協議をさせていただきます。

神風委員 ぜひそちらの方の御検討をお願いしたいと思います。

 時間が参りましたので、これで終了いたします。

船田委員長 次に、島田久君。

島田委員 まず最初に、委員長にお願いしたいことがございます。

 私が国会議員になってちょうどこれで一年になろうといたしておりますけれども、小泉総理大臣の、イラクに自衛隊を派遣したことについての所信表明もまだ一度も聞いたことがないんです。国会議員として国民に説明責任を果たす、議員としての責任を果たすためには、やはり本会議場においてきちっとした総理大臣の所信の表明を聞くことが、私どもに与えられたもう一つの大きな責任だと私は思っています。その辺のことについて、ぜひ委員長にお取り計らいをお願いしたいと思います。よろしくお願いします。(発言する者あり)

船田委員長 ただいまの件につきましても、理事会の議論になじむかどうかわかりませんが、そちらにおいて協議をしてもらいたいと思っております。

島田委員 皆さんは聞いたと言いますけれども、議事録などを全部調べてみると、正確な所信表明というものはしていないんですね。例えば、最初の私どもの特別国会における所信表明においても、イラク特措法に基づくところの議論はあっても、国会の開会中以外のところで閣議決定がされて、基本計画はされた。だけれども、本当の意味での所信表明を私どもは聞いていない。それだけは事実ですから、ぜひその辺の、何らかの形、例えば北朝鮮問題については、議長の計らいで総理大臣に国会に対しての説明を、サミットについてもそういう形でとられたわけでありますから、ぜひその辺はよろしくお願いしたいと思います。

 そういう意味において、私どもにとっても、やはりイラク問題は重要でありますから、そういうことについて国民に対してきちっとした説明責任を果たしていく。閣議決定によってこの重要な問題を決めていくということは、将来にわたっても、例えばシビリアンコントロールの問題、あるいは民主党が提案をしている、国会に対して事前に承認を得るという、そういう問題を含めて、重要な問題でありますけれども、こういうことについては、私どもは、理事会等でお諮りをしていただくそうでありますからぜひよろしくお願いしたいと思いますけれども、そういうことについて、両大臣の所信をまず聞かせていただけないでしょうか。

町村国務大臣 もう累次にわたって総理は、このイラク問題について、あるいは自衛隊の派遣問題についてお答えをしているし、また、ことしの一月の所信表明演説においてそのことについて当然触れているわけでございますので、私は、正式にとかきちんととかおっしゃる意味がどうもよくわからないのでありますが、総理の所信表明の中にはきちんとそのことが述べられております。党首討論というのもまさにそういうために行われておるわけでありまして、総理がそのことについて触れていないという委員の御指摘は全く当たらないと思います。

大野国務大臣 イラクへの自衛隊の派遣の意義につきましては、特に、昨年十二月、基本計画を閣議決定した直後、小泉総理から記者会見を通じて国民の皆様にメッセージを送らせていただいております。

 そういう意味で、明快なメッセージは伝わっておると思いますけれども、事の起こりといいましょうか、思い出してみますと、九月十一日の出来事でございます。これは、ニューヨークの世界貿易センターが攻撃されましたけれども、その中には日本人もいた、いろいろな国籍の人がいたわけですね。そういういろいろな国籍の人がいらっしゃったという意味で、私どもは、テロというのは、アメリカだけの問題じゃなくて、地球に住む人類共通の問題である、テロというのは共通の敵である、こういう認識がまずあったと思います。

 テロが一番恐ろしいというのは、やはり、例えばテロが大量破壊兵器を保有する、こういう状態が一番恐ろしいわけでありまして、言ってみれば、独裁専制者が大量破壊兵器を持つことの恐ろしさ、こういう人類共通の問題があると思います。

 それからもう一つは、地政学的に見て、イラクというのは中東の中央に位置して、そしてこの中東の中央にある国が安定するということは、ひいては中東全体の安全、平和につながってくるし、世界平和にもつながってくる。その中東から我が国は、我が国の必要な石油の九割方を輸入しているわけでございます。

 したがいまして、このイラクをテロの温床にしてはならない、そして中東が安定することは、世界の平和、世界の経済にも大きく影響するんだ、こういう認識を私どもは特に必要とするのではないか。そのことは、イラク復興に積極的に寄与していくこと、それ自体が我が国の国益にも合致するし、世界平和のためにもなるんだ、我が国としては、人道復興支援とODAを車の両輪としてこのイラク復興支援に貢献していくんだ、こういう立場でございます。

 国際社会の責任ある一員として、主体的に日本はこの問題に対応していく、こういうことでございますので、どうぞ御理解のほど、よろしくお願い申し上げます。

島田委員 これらの本質の問題、まだ、これからも事あるごとに私どもは追及していきたいと考えておりますので、次の質問に入らせていただきます。

 海外危険情報等、在留邦人の安全確保対策についてお伺いをしたいと思います。

 まず、香田さんの死をむだにしない、政治にかかわっている者としてその責任を認識し、自分の経験の上に立ってテロと人間尊重に対峙し、国の危機管理はどうあるべきかということを認識して取り組まなければならないと私は思っておりますので、これから具体的に質問をさせていただきたいと思います。

 九・一一同時テロ以降は、一時よりは減ったとはいえ、我が国の海外渡航者数は約一千三百三十万人に及び、また、海外に三カ月以上の長期にわたり滞在する者である在留邦人の数は、二〇〇三年十月一日現在で約九十一万人となっています。

 一方、国際社会においては、冷戦終結後も引き続き、開発途上国を中心に、民族や宗教等に起因する内乱、クーデター、暴動や武力闘争等が続発している。とりわけ、九・一一同時テロを契機に、アメリカのブッシュ大統領がテロを戦争と認識し、対テロ戦争をしかけて以来、世界の至るところに戦場となる可能性があると私どもは認識をいたしております。

 在外公館があるなしにかかわらず、緊急事態が発生したときにおける在外邦人の国外退去や、海外渡航予定者に向けた海外危険情報の発出等をいかに敏速に、的確に実施するか、重要な課題だと思っているんですけれども、その辺、具体的な確保対策等がありましたらお聞かせ願いたいと思います。

鹿取政府参考人 御指摘のとおり、海外への渡航者及び在留邦人の安全確保は極めて重要な任務と考えておりまして、外務省としましては、海外に渡航、滞在する邦人の安全のためのテロ情報を含む渡航情報の発出等の、まず情報提供、次に、実際に事件、事故に巻き込まれた邦人への援護、今御指摘のありましたような緊急事態における邦人の安全確保、このような努力を強化してきております。

 また、具体的に、渡航情報につきましては、九・一一テロ以降、平成十四年四月でございますが、渡航情報の制度を利用者にとって使いやすく、わかりやすく、そういう観点から改めてきております。

島田委員 それで、最近、危険度五という形の中から新しく方針を変えたようでありますけれども、危険度五から危険度四か何か変更したというそのパンフレットがあるんですけれども、それはどういう事情によってそういう変更があったんでしょうか。

鹿取政府参考人 今御指摘のとおり、平成十四年に私どもは危険情報のあり方を改定いたしました。これはまさに、九・一一テロもございましたし、また政府部内でもう少し危険情報をわかりやすくしてはどうかという御指示もありましたので、我々としては大きな見直しをいたしまして、かつては五段階、数字で表記していたものを四段階の文章、これを中心にして改めました。

 大きなポイントは、文章にすることによって、よりきめ細かに、どうして危ないのか、あるいはどういう点に注意をしたらいいのかということをより詳しく、きめ細かく説明することにいたしました。

 もう一つは、かつてはいろいろな情報、例えばAという国の情報を調べるときに、さまざまな部門をクリックして情報を入手しなくてはならなかったんですが、平成十四年の改定によりまして、例えばAという国をクリックすると、そのAの国の危険情報あるいはその他の関連情報が全部入手できる、こういう国本位のシステムに改めました。

 また、平成十四年の改定によりまして、さまざまな速報、我々今これをスポット情報と呼んでおりまして、これを、例えばイラクについても頻繁に出しておりますけれども、こういう速報をできるだけ多く出して、時々刻々の情勢の変化、こういうものについて情報提供する、こういうことを主眼として平成十四年に改定をいたしました。

島田委員 そこで、私も経験したことでありますけれども、実は、私が経営している、これは国会議員になる前なんですけれども、修学旅行で北京にずっと行っていました。九・一一後の十一月に行くということで、この危険情報というものに対してどう対処したらいいかということで自分なりに苦しみもしました。

 その中で、外務省にまず行って、渡航したらいいのかどうかということを情報として得なければならないと思って、安全情報センターに行きました。渡航の自粛ということにはなっていましたけれども、実際上、行っていいのか悪いのかというような的確な情報を得ることはできなかったんです。

 その上に立って、私どもとしては、こういう九・一一テロ後の渡航というものはどうあったらいいかということについて、きちっと取り組んでいかなきゃならないということで悩みましたけれども、私自身が北京に行って情報を探ってみたり、あるいは、先生方としては、スポーツ新聞で、アフガンの隣にある新疆ウイグル自治区が民族問題でもめているからテロが起きるんではないか、そういう状況の中でこれを実施しなきゃならないという苦しい立場でありました。

 その中で、一番情報として考えられたことは、テロは戦争であるから、海外旅行のための保険適用がされないということでありました。その上で修学旅行を実施するということは、経営上も、自分の学校がつぶれるかつぶれないかというようなことをかけて、そのことを実施しなければならないという重要な決断に迫られたわけであります。

 何としても、二十一世紀の海外におけるいろいろな渡航なり行動ということに対して、もう一つは香田さんの死というようなものをやはりむだにしてはならない、そういうことも考えながら、より積極的な海外における活動もしなければならないという側面も考えてみますと、これらの状況の中で的確な情報というものを外務省なりが提供していく、あるいは、そうではなくて、自主的に判断するための何らかのきちっとした処置というものを事前に、対応するための対策も立てていかなきゃならないというようなことをつくづく感じたわけであります。

 そういうことについて、今現在、外務省としてどういう手だてと具体的な行動をとられているかについてお伺いをいたします。

鹿取政府参考人 今御指摘がありましたように、海外に渡航される方にとって、情報というものは安全にとって極めて重要であると考えております。

 かかる観点から、私どもといたしましては、まず、危険情報、それからいろいろな速報であるスポット情報、これを非常にきめ細かく出していると同時に、これらを各種、さまざまな媒体、ファクスであるとかホームページであるとか、あるいは直接メールで送るとか、さまざまな方法で送るようにしております。

 今、外務省のホームページには月二百万から三百万件のアクセスがありますけれども、外務省の危険情報については相当広く認知され知られているものと思いますが、引き続きまた努力してまいりたいと思います。

 そのほかに、外務省といたしましては、本邦においてあるいは在外において、危機管理セミナー、こういうセミナーをいろいろ開催いたしまして、テロ情報であるとか進出企業にとって役に立つような情報、こういうものを交換したり協議しております。

 また、各国在外においては、大使館と在留邦人の方々との組織として安全協議会をつくっておりまして、これも定期的に開いてさまざまな情報交換をしている、こういうことに努力しております。

 また、国民の方々の安全の問題を考えるに当たって役に立つようにさまざまな啓発活動も行っておりまして、安全キャンペーンであるとか各種講演において安全問題について考える、そういう場をつくっております。

 引き続きこういう努力をまた強化してまいりたいと思っております。

島田委員 これらの危険情報に関して、短期の海外渡航者に対して、香田さんの例があってはいけない。あるいは、今後イラクへの渡航者に対して、現在具体的にはどういうような行動を起こして、指示をしているのでしょうか。お伺いをします。

鹿取政府参考人 例えば今のイラクについて申し上げますと、イラクについては、危険情報のほかスポット情報という形で、終始イラクの情勢についての安全情報、こういうものをできるだけ広く周知するように努力しているところでございます。

 また、香田さんのお話が出まして、本当に我々としてもこういう結果になったことは痛ましいことだと思っておりますけれども、例えばヨルダンにおきましては、日本人の方々がよく泊まるホテルにおきましては、イラクにおける危険情報を提示したり、あるいは、もしもイラクに行かれるという話であれば大使館に連絡をしていただく、あるいは、ぜひイラクの危険について説明して、イラクへの渡航は差し控えるように説得していただく、こういう努力も行っております。

 また、そのほか、イラクにつきましては、さまざまな講習会等においても我々はその危険についてさまざまな形で情報発信しているところでございます。

島田委員 実際上、本当に香田さんの悲しい死というものを受けながら、何としてもこういうことが起きてはならない。そういう面で、国の危機管理ということについて、これらの具体的な渡航者に対して国として責任を持って臨んでいかなければならないということがこれからの危機管理を進める上でも重要な大きな課題になると思うんですけれども、外務大臣の所見をお伺いさせていただきます。

町村国務大臣 ただいま局長の方から、るる、これまでの危険情報発出あるいは海外のそれぞれの国の危険度の情報、今までもやってきたし、いろいろな事件を経るごとに改善を図ったりしてきているわけでございます。最大限の情報提供をする、それに基づいて最終的にはそれぞれの方々が判断をされるということであります。

 あの事件の折にも、一部の方から、渡航禁止という措置を法律をつくってやったらどうかという御意見も確かにございました。一つの課題だとは思っておりますけれども、現実に憲法で認められている移動の自由あるいは海外移住の自由といったようなことも考えたときに、なかなかこれは法律論、立法論としては難しいところなのかな。したがって、私どもとしては、できる限り最大限のことをやってまいりますけれども、絶対にその地域に立ち入らせないということまでができるかというと、それは正直言って難しい面があるのは委員よく御理解をいただけるところではないかと思います。

島田委員 これは具体的な手だてをしていかなきゃならないし、あるいは渡航者みずからが自主的に情報判断、どう収集していくかという問題等もありますけれども、今後ともなるべく具体的な手だてをしていただくことを特に要望しておきたいと思っております。

 次に、イラク全体の非常事態宣言が出て、サマワにおけるこれらの関連についての質問をさせていただきたいと思うわけであります。

 先ほども質問がありましたように、サマワは非戦闘区域である。非常事態宣言がされて新たなる状況に入ってきていることだけは間違いないと思うんですけれども、政府の方は、治安も安定しているというような考え方。しかし、例えばイラク・サマワの警察庁長官そのものが、相当日本に対して、あるいは自衛隊に対しても厳しい見方をしているというような報道等もあるわけでありますけれども、これらについて、非常事態宣言がされた状況の中で、現状における治安の状況というものは変わってきていると私どもは判断をしているんですけれども、その辺はどういう認識をしているんでしょうか。お伺いをいたします。

吉川政府参考人 お答え申し上げます。

 冒頭の外務省の報告で申し上げましたように、七日にイラクの暫定政府は、クルド地域を除きますイラク全土に対して非常事態宣言を出しました。しかし、これまでのところ、具体的な措置が実施されているのはファルージャとラマディとバグダッドのみでございまして、この非常事態宣言の発出をもってイラク全土が同じ程度に危険であるというふうにされたわけではないと承知しております。

 サマワが首都でありますムサンナ県におきましては、先ほどの報告でも触れましたとおり、今回の非常事態宣言を受けて何らかの具体的な措置がとられたという情報はございません。引き続き状況について注視していく必要があるというふうには考えております。

大野国務大臣 サマワについてのみ申し上げたいと思います。全体については今外務省からお答えがありました。

 サマワにおける問題でありますけれども、治安は比較的よい。ただ、ロケットあるいは迫撃砲が飛んでくることについては重大に受けとめています。

 その上で申し上げます。

 まず、自衛隊は現地の住民に大変評価されております。例えば、学校の修復、道路の修復などをやっております。学校の修復を終えて隊員が通りますと、子供たちが手を振ってくれる、こういうことであります。

 また、自衛隊の皆さんも住民の間に溶け込もうということで、例えば七夕祭りをやっておる。こういういろいろな行事をともにやっているということであります。この状況は、現地の報道には七十回以上報道されている、こういうことであります。

 さらに、ハッサーニ・ムサンナ県知事がせんだって日本に参りましたけれども、そのときに本当にハッサーニ知事が言うには、あの自衛隊の皆さんは、サマワ県から見ると家族のように思っている。私の方から、治安だけはお願いします、こういうことを言いましたら、頑張ります、こういうことであります。

 それからもう一つは、今県警本部長か何かのお話をなさいました。この件につきまして、具体的問題でございますけれども申し上げますと、十月二十四日午前、現地時間であります、現地部隊を訪問したカリーム・ムサンナ県県警本部長が、記事に書いてあるような内容は発言していない、こういうことを述べているということであります。

 以上です。

島田委員 しかし、非常事態宣言がされた後というのは、やはり全体の状況が変わってくることだけは間違いないはずですね。

 それともう一つは、ロケット弾にしても、組織的な形で宿営地に砲弾がぶち込まれている。まだ調査中とはいえ、やはり非常事態宣言が出る前と現状においては変わってくることだけは間違いないと思うんです。先ほどは安全確保のために努力しているんだと言っておられますけれども、その辺の認識がこれからの大きな問題ともなるはずだし、重要だと思うんですが、どうでしょうか。

大野国務大臣 我々は現地の自衛隊と電話でしょっちゅう連絡をとり合っております。

 それで、先ほども外務省から答弁がありましたけれども、ムサンナ県においては何ら具体的な措置はとられていない、これは非常事態宣言に関連してですけれども、何ら具体的な措置がとられていない、こういうことが一つあります。

 現在の状況を申し上げますと、非常事態宣言が現地部隊の活動に特段の影響は与えておりません。しかし、いずれにしましても、現地部隊の活動というのは、安全確保義務が防衛庁長官にありますから、安全確保に十分注意をして活動を続けているということでございます。必要に応じ、宿営地外の活動も当然やっております。現在、宿営地外の活動も普通のとおりになっておりますけれども、こういうことでありまして、現状におきましては、あの非常事態宣言が自衛隊の活動には影響しておりません。

 ただ、もちろん緊張感を持って、いかなることが起こるかもしれない、予断を許さないという感じは持っていますから、それは緊張感を持ってやっておりますけれども、現状でいいますと、何ら影響は与えていない、このことを申し上げたいと思います。

島田委員 それにしても、非常事態宣言そのものの中から、相当反米的な住民の動きというものも出てくる可能性だってないとは言えないはずだと思うんですね。そして、そういう非常事態宣言によって、全体的には、自衛隊が宿営地から外に出ての人道復興支援というものはやはり従来よりうんとできなくなると思うんですけれども、その辺はどう考えているんでしょうか。

大野国務大臣 住民の感情の問題でございますが、その点も今現在は何らございません。

 それから、自衛隊が宿営地外に出て活動する問題でありますけれども、これも通常の活動をいたしております。

島田委員 通常の活動は、現状はできていても、将来というよりも、少なくともここ一週間内において、あるいは十日間において、あるいは今月いっぱい内において、情勢の大きな変化が出てくる。そして、特措法で規定している人道復興支援そのものが、宿営地内の活動はできても、宿営地外に出て、今まで言われている人道復興支援というものが予定どおりできるというわけには、保証はないはずですね。そういう場合について、防衛庁長官としてはどう考えているんでしょうか。

大野国務大臣 決めつけてこう言われますと困るんですけれども、もちろん予断は許されません。しかし、現状では衝突件数もないし、それから今度の非常事態宣言によって何らか影響があったかというと、ありません。具体的な措置もとられておりません。電話連絡で伺ってみましても、特段の問題はないようでございます。ただ、非常事態宣言があって、ファルージャ、ラマディ、バグダッドにおいて具体的措置がとられておりますから、これはやはり緊張感を持ってやっていかなきゃいけない。ただ、ムサンナ県、サマワにおいては特段の影響は出ていない。

 お尋ねは、将来どうなるかということであります。将来のことは、たびたび申し上げておりますけれども、予断を持って考えてはいけない、このように申し上げているところでございます。

島田委員 それでは、少し具体的に、宿営地内で行われている現状の人道復興活動というのはどういうことなんでしょうか。

大野国務大臣 宿営地内におきましては、一つ、給水活動として、近傍の運河から引いてきた水を浄水する。そして、現地水道局が運行する給水車に毎日供給している。その供給量はおおよそ五万人分程度ではないかということでございます。五万人というと、大体サマワの人口の三分の一ということであります。

 二つ目、医療支援として、救急車搭乗員への教育を実施しております。

 三番目、人道復興支援活動を実施するに当たり、必要な調整を現地関係機関、業者等との間で恒常的に実施いたしております。

 これが宿営地内での活動でございます。

島田委員 宿営地内の活動は、現在までの活動の状況の中で、予算的な規模の中でどのくらいの、これは済みません、通告していなかったですけれども、予算全体の中で、宿営地内で活動している人道復興支援というものは、現在の予算執行の中に占める割合だけでもいいですから、どんな状況なんでしょうか。

大野国務大臣 予算的に占めると言われますと、例えば食費をどう配分するかなんという問題が出てまいりますので、ちょっと申し上げにくいので、その辺は勘弁していただきたいと思いますが、日数で申し上げたいと思います。

 まず、本年一月十九日に先遣隊がサマワ入りいたしました。翌日から宿営地外における人道復興支援活動を始めております。十一月八日までの二百九十四日間で、合計九日間以外はほぼ毎日宿営地外に出まして、医療支援、学校等公共施設の復旧整備等の現地指導、関係機関との調整、部隊運営に必要な物資輸送等の活動を実施いたしているところでございます。

 あと、特殊な事情として、何か、例えばロケットが撃ち込まれた、こういう場合、ちょっと自粛して活動しないということがありますけれども、宿営地内外における迫撃砲、ロケット弾の事件が発生いたしますと、宿営地外における人道復興支援活動については慎重を期して、例えば一日から十日間程度宿営地外での活動を自粛する、中断する、こういうことはございます。見合わせておりますが、その見合わせた日数については、今まで、八回の事案後、合計で約三十日ございます。

島田委員 もう時間がありませんので、最後に、現状における宿営地内の、予算的には今までどういう形で、それからある程度の、漠然としたというよりも具体的に、それは今後、非常事態宣言によって多分宿営地内の活動以外はできなくなると私としては考えているので、本当の意味で特措法が法律根拠というものがなくなってくるのではないか。人道復興支援といえ、あるいは非戦闘区域であるといえ、規定そのものの意義というもの、法律的な根本的な根拠というものがなくなってくるというふうに私は理解しておりますので、ぜひ、そういう面での具体的な議論をする上でも重要な資料となりますので、御提示していただきますようによろしくお願いします。

 以上で終わらせていただきます。

船田委員長 次に、川上義博君。

川上委員 川上でございます。先般は時間がなかったものですから、再度また質問をいたします。御配慮いただきまして、まことにありがとうございます。

 先ほどから防衛庁長官、話を聞いていましたら、テロ、テロとよくおっしゃるんですけれども、私はどうも違和感があるんですね。テロだけじゃなくて、少なくともレジスタンスの側面もあるということをやはりお考えいただかないと、一方的にテロ、テロと言われると、何かイラクの戦争はテロの戦争だ。ところが、レジスタンスも生んできているんだということをやはりお考えいただいた方がいいんじゃないかなと思います。私は、第二のパレスチナになるんではないかという危惧を持っているんですね。最終的には、例のインティファーダという、子供が石を持って抵抗するというふうな、大変な状況になることを恐れておるわけです。

 今の事態で、アメリカの国防長官も、これは長期化する、厳しい作戦なんだと。アナン事務総長も、大量のイラク人を殺害している、国連にとって難しい状況に立たされてしまうんだというふうな発言があります。それから、スンニ派も選挙のボイコットをする、シーア派もファトアというものを発して、要するにイラク兵に参加を自制しろというふうなことを言っているという状況なんですね。

 したがって、こういう状況の中で、来年の一月の選挙の実施は本当にできる可能性があるのかどうかということをお伺いしたいと思うんです。これは重要なことだと思うんです。一月の選挙の実施ができるか、多分これはわかりませんというふうな答弁があるかと思いますが、可能性としては、私はほとんどないのではないかなというふうに単純に思っているんです。

 例えば、国連とアフガンで合同の選挙運営機構というのをつくったんです。今の選挙制度は国連がどのように関与しているのかということを、選挙制度はどうなっているのかということもあわせてお伺いしたいと思います。これは極めて重要な話でございます。

逢沢副大臣 質問にお答えをさせていただきたいと思います。

 来年の一月に選挙が予定されているわけでございますけれども、イラクの新しい国づくり、復興のプロセスを考えますときに、来年の一月の選挙を予定どおり実行し成功させる、そのことがその後のイラクを考えますときに圧倒的に重要であるという認識を持っております。

 委員みずから、来年一月の選挙がなかなか厳しいのではないか、そんな所感を表明されたわけでありますが、例えば、アラウィ首相は強い決意で来年の一月を成功に導く、累次の発言でそのことを強調しておられます。あるいは、十八の地域の中で、今現在でも十五の地域ではすぐにでも選挙を行うことができる、そういう状況である、問題は、残りの三つ四つの県あるいは地域である、そこの治安の確保が大事なんだ、そういう趣旨のこともおっしゃっておられるわけでございます。

 現に、選挙人の登録が始まりました。また、比例代表の選挙でございますから、政党の登録あるいは被選挙権を行使したい方の登録も既にイラクのそれぞれの地域で順調に進んでおるという報告にも私ども接しているわけであります。

 今、ファルージャで大変緊張が高まっているわけでありますが、このファルージャを平定する、ファルージャの治安を確保するということは、イラク全体の治安の確保に大変大きな影響がある。アラウィ首相初め暫定政府も政治的にそのように強い判断をし、イラクの治安要員にそのことを指示したというふうに私どもは承知をいたしております。

 また、選挙でございますけれども、実は、イラクで予定をされている国民議会選挙、全国を一選挙区とする比例代表制の選挙が予定されております。総定数は二百七十五定数でございます。同時に、クルド自治区における議会選挙、あるいは自衛隊が展開いたしておりますムサンナ県を含む各県における県評議会選挙がそれぞれ実施されるということでございます。そのことは、本年五月末にイラクの独立選挙管理委員会が発足し、国連等の支援を受けつつ、今報告させていただきました選挙の全体の枠組みをイラクの独立選挙管理委員会がみずからの責任において決定いたしておる、そのように承知をいたしております。

川上委員 副大臣が今アラウィ暫定政府の首相の話をされましたけれども、私は、いろいろな向こうの西アジアの人たちの話を聞きますと、暫定政府そのものがどうもイラクの国民から信頼されていないし、暫定政府の内部も相当な分裂に陥っているような状況なんだというふうな情報をもらっているわけなんです。だから、この選挙の実施というのは、今おっしゃったように本当にできるのかという、実際にもうある地区ではできるんだというふうなことなんですけれども、その辺はちょっとおかしいなというふうに思うわけです。

 ところで、安保理決議の一五四六の中で、一月に選挙を実施するという決議があるわけですね。仮にこれが一月に実施されなかったら、和平復興人道支援の重要な政治プロセスが破綻する可能性があると思うんです。一月に実施されなかったら、この安保理決議そのものがおかしくなる。その際に、自衛隊が出ていく存在意味というのがなくなるのではないかなというふうに思うわけなんですが、一月の選挙によってはどのように自衛隊の存在をお考えなのかというのを防衛庁長官にお伺いしたいと思います。

大野国務大臣 我々の課題は、まず十二月十四日に基本計画が終了しますので、それを延長するかどうか、これを解決してから後の課題でございますが、御質問の向きは、自衛隊が派遣されているんだけれども、選挙が……(川上委員「選挙がなくなれば自衛隊の存在意味はあるか」と呼ぶ)これは仮定の話、十二月十四日から延長して後の話になりますけれども、自衛隊の人道復興支援活動に従事している意味合いというのは、やはりイラクの復興支援、これが大事である。それを安全な場所で、自衛隊の安全確保をしながらやっていく、これが大事なわけでございます。

 イラクの復興が大切だということはさきにも申し上げておりますので再び繰り返しませんが、御理解いただけていると思います。

川上委員 私は、立場としては、この種の問題は、与野党がどうのこうのという立場じゃないと思うんです。これは真剣に考えなければいけないと私今思っているんですよ。

 ぜひ長官もお考えいただきたいんですけれども、先ほどから迫撃砲とか、前回もそうなんですけれども、ロケット砲の話がありましたが、一体これはだれが一連の行為を行っているのか。同一の組織なのか同一の集団なのか、あるいはテロの単独なのか部族の一部なのか、武装勢力なのかこれらの複合なのか、その情報を一体お持ちになっていますかということなんです。

 例えば、一番最初の自衛隊派遣の、自衛隊先遣隊の文書があるんですね。これは、伝統的な部族社会を中心に生活しているサマワでは、外部からの不審者が隠密裏に行動することは困難である、住民は不審者を積極的に通報するんだと。だから、勝手にロケット砲が飛び出すようなことは、必ず住民が、部族がキャッチしているはずなんですよ。

 だから、そのあたりの情報がとれないということで安全確保が本当にできるのかなと私は思うんですけれども、そのあたりの情報というのはオランダ軍とかイギリス軍からもらっていないんですか。それと同時に、仮にもらっていなければ、情報の共有というのが例えば日米同盟、多国籍軍の、要するに、同じ立場なら情報がなければ、これは従属国みたいな話になっちゃいます。だから、ぜひそのあたりのことを明快におっしゃってもらわぬと困るわけなんです。

大野国務大臣 まず、情報収集しっかりやれ、こういうことでございます。

 現地のサマワの治安当局とも十分に連携をとりながら情報収集をいたしております。そしてまた、オランダ軍あるいは米軍等との関連も十分に緊密にしながら情報収集に努めております。

 私が申し上げておりますのは、確たるお答えができない段階であって、情報を全くとれていないという意味ではありません。確たるお答えができない段階である、こういうことを申し上げております。

 それから、もう一つの問題点は、現地でロケット、迫撃砲が撃たれるのはすべて夜でございます。昼間であれば、先生おっしゃるように、あの社会の中でだれがやったんだろうかとすぐわかるのではないか、これはそのとおりかと思います。しかし、夜の事件でございますので、なかなかその辺の情報も、確たる情報がとれていない、このことは御理解をいただきたいと思います。

川上委員 長官の今の発言で、一部というかある程度安心したんですけれども。要するに、確たる情報はないけれども、ある程度の情報は把握をしていますということなんですね。ある程度の情報は把握している。したがって、安全対策も、その対応はできるということだろうと思います。

 それでは、迫撃砲が撃ち込まれたりあるいはロケット砲が撃ち込まれた、先般も議論がありましたけれども、メーカーはどこなんですかという話になる。私も今、国内のメーカーをいろいろ当たってみました。これはある程度特定できるんじゃないですかという話もありましたが、その残骸は今どちらにありますか。

大野国務大臣 弾は現地警察に渡してあるそうでございます。

川上委員 ロケット砲はどうですか。

大野国務大臣 それは全く我々の把握の外の問題になってまいります。弾は現地警察に渡してあります。発射台等の問題については把握しておりません。

川上委員 普通であれば、撃ち込まれたものを、どこの製品だろうか、中国だろうかロシアだろうか、ひょっとするとアメリカの製品じゃないかということがあるかどうかわかりませんが、それはすぐアメリカ軍なりに照会するなり、あるいはそれを本国に持ち帰るなりしたらいいのではないかなと思うんですけれども、そのあたりのことは非常に重要だと思うんですね。長官、再度御答弁をお願いします。

大野国務大臣 これは、ライセンス生産等の問題も含めていろいろな要素があって、私も詳しくわかりませんけれども、どこの製品であるということは特定できない、このような事情でございます。

川上委員 要するに、弾の中に刻印があって、どこどこのものだというのは必ずあると言っているんですね。だから、システムとして、ライセンスとかというのは関係ないんですね。それはそうなんです。だから、それをいいかげんに答弁されては非常に困るなとは思うんですが、まあこれ以上あれですけれども。だから、それをはっきりおっしゃっていただいて別に何ら問題はないと思うんですけれども。

大野国務大臣 同じことの繰り返しでございますが、どこの国のものとは判明いたしておりません。

川上委員 まあこれ以上やってもしようがないと思うんですが。

 実は、外務省にちょっとお伺いしますけれども、今サダム・フセインは一体、サダム・フセインだけ捕まえればあそこには平和が訪れるという話でやったんですけれども、フセインは、一体今どのような状況に置かれて、今後どうなるんでしょうかということが一つ。

 それから、米軍が毎月これから五十億ドル、今までもかかったかどうか知りませんけれども、五十億ドルのお金が毎月出るというんですね。その維持費たるや大変なことなので、これからどんどん泥沼化していくと、毎月五十億ドル、必ずこれは国連か日本に負担を強いてくるというふうなことも考えられるんではないかなと思うんです。

 したがって、長官、長官に質問するかどうかちょっとあれなんですけれども、閣僚の一員とされまして、そういった負担をやってくれ、こう言われましたら、どのように対応されますか。外務省と……。

逢沢副大臣 フセイン元大統領がどのような状況に置かれているか、また、今後の司法手続の状況ということでありますが、去る七月一日、イラク暫定政府は、フセイン元大統領に対するいわゆる訴追手続を開始いたしたわけであります。現在、イラクの特別法廷において公判の開始に向けた準備が行われているというふうに我々は理解をいたしております。

 フセイン元大統領その人が今どういう状況に置かれているかということでありますが、法的にはイラク暫定政府に引き渡されたということでありますが、物理的には多国籍軍が元大統領を拘束しております。暫定政府側のいわゆる施設でございますけれども、刑事施設等々が整備されたところで物理的にも身柄がイラク側に引き渡される、そのような整理になっております。

 なお、全体の状況の中で、拘束場所につきましては公表がされておりません。

 フセイン元大統領を初めとする旧イラク政権指導者が、言うまでもないことでありますけれども、公正な裁判のもとで正当に裁かれるということは、今後のイラクの国づくりを考えたときに大変重要なことであります。いわゆる法の支配、民主主義の確立のために、ぜひ公正な手続による透明度の高い裁判が進展するということを期待いたしております。

大野国務大臣 たびたび申し上げておりますとおり、自衛隊の人道復興支援活動、そしてODAによるイラク復興への貢献、これを車の両輪として考えております。軍事費の負担などということは頭の中にありません。

川上委員 時間が来ましたので、最後に、これは西アジアの何人かの人たちと話をしたんですけれども、日本が貢献できるというのは、物すごく自衛隊の派遣も感謝していると言うんですよ。これははっきり申し上げておきます。感謝していると。

 ただ、もっと我々が望むのは、イラクの人々は、非常に混乱しておるので、技術力も物すごく落ちている、いつも内戦状態ですから。だから、要するに、イラク国民の学生とかあるいは技術者、これをぜひ日本に留学させて、日本に入国させて、研修とか技術のために何とか引き受けてもらえないだろうか、これをやって初めてイラクの再建ができるんだというふうなことを熱っぽく皆さんおっしゃっていましたので、そのあたりのこと、留学生の引き受け、それから技術者の引き受けをどのようにお考えなのか、外務省にお伺いしたいと思います。

逢沢副大臣 大変重要な点を御指摘いただきました。まさしく委員と私ども、同じ思いを持たせていただいております。まさに、国の将来を担う人づくりこそが、復興、新しい開かれた民主的なイラクの国づくりの基礎になる、そのような認識を持っております。したがって、そのような認識のもとに、いわゆる人づくり、教育を含めた人づくりの支援を、今までも積極的に行ってまいりましたが、今後も引き続き積極的に取り組んでまいりたい。

 一、二、具体的に申し上げさせていただきますと、JICA等を通じまして、特に保健医療の分野あるいは電力の分野、教育等の分野において、これまで八十七名のイラク人研修員を日本に、本邦に迎え入れてまいりました。私自身も数名のグループの方に直接お目にかかった、そういう経験を持つわけでありますが、例えば、バグダッド大学総合病院の関係者、ムサンナ県の保健局長、あるいはサマワを含む近郊の四つの病院の病院長等々を日本にお招きして、研修をいただきました。

 また、研修、人づくりにつきましては、イラク隣国の協力をいただく。日本とエジプト、あるいは日本とヨルダンが協力して、イラクの教育、人づくり、そういったプログラムを進めてまいりました。例えば、日本の支援で整備をしたカイロのカイロ大学附属病院にイラクのお医者様をお招きして、そこで直近の医療、医学情報について勉強していただき、技術についても学んでいただく等々のプログラムも進めてまいりましたが、引き続き、治安を確保しながらそのような活動を続けてまいりたい。よい点を御指摘いただきましたことを感謝申し上げます。

川上委員 どうもありがとうございました。

船田委員長 次に、佐藤茂樹君。

佐藤(茂)委員 公明党の佐藤茂樹でございます。

 二十分という時間をいただきましたので、最初、外務大臣いらっしゃいませんので、防衛庁長官を中心に何点かお尋ねしたいと思います。

 まず最初に、イラク人道復興支援活動に携わっている自衛隊の派遣期間の延長の問題で、十月末からこの十一月初めにかけて、マスコミ各種が世論調査を行っております。具体的に言いますと、例えば、十月二十三日から二十四日に実施した朝日新聞の調査では、延長反対が六三%、賛成が二五%。また、これは東京新聞に出ておりましたけれども、共同通信社が三日に実施した調査では、延長反対が六三・三%で賛成が三〇・六%。そして近々では、毎日新聞が十一月八日付で出しておりましたけれども、延長すべきでないが五一%、延長すべきだが二七%であった、そういう結果が出ているわけです。要するに、反対というのが過半数以上なんですね、いずれも。

 そういう調査結果が出ているわけでございますが、そういう結果に対しまして、自衛隊を派遣しておられる防衛庁長官の見解をまず伺いたいと思います。

大野国務大臣 イラクの復興に対して日本が貢献していく、この大切さ、意義というものは、先生もう十分御存じのとおりでございますが、やはり地政学的に見て、イラクが安定する、これは中東が安定するということであり、この中東に我が国の石油の九割を依存している。そして、中東の安定こそ世界平和につながっていく、世界の経済にも影響してくる。さらに、イラクが破綻国家になる、あるいはテロの温床になる、これだけは避けていかなきゃいけない。こういう国際社会の平和と安全、日本にとっても深刻な大切な問題である、このことはまずお訴え申し上げたいと思います。

 その上で申し上げますと、我が国としては、先ほどからも申し上げておりますとおり、いわば人的貢献とODAによる資金協力、このことを車の両輪として、積極的に行っております。

 我が国のかかる行動というのは国際的にも非常に高い評価を受けている、このことも今さら申し上げることでもないかもしれませんが、国際的に非常に高い評価を受けている。日本という国が国際社会の責任ある一員としてこれからどう生きていくんだろうか、これは、日本という国の将来の生きざまに関係していくことだと思っております。

 したがいまして、憲法上の制約はいろいろありますから、我が国ができる範囲でこういう国際的な平和と安全の分野で活動していくこと、これ自体は、やはり日本にとって大きな大きな意義を有するものであるということであります。この点について、どうか国民の皆様にも御理解をちょうだいしたいと思います。

 世論がそういう向きになっているということは私も十分存じておりますけれども、ただただ、今申し上げましたように、このことの意義、日本にとっての意義、世界にとっての意義、こういうことを考えて、そして、これからも、十二月十四日に基本計画が期限切れとなりますけれども、今申し上げたことを背景にして、イラクの復興状況あるいは治安の問題を考えながら判断していくべき問題であるというふうに思っておりますので、何とぞ御理解のほどをよろしくお願い申し上げます。

佐藤(茂)委員 先週でしたか、本会議で総理も答弁されたと思うんですけれども、次のように延長について答弁された部分があるんですね。「その後どうするかについては、国会における議論や、その時点における国民世論の動向を踏まえつつ、イラク復興の状況や現地治安情勢等を総合的に検討して適切に判断してまいります。」今、世論調査に一喜一憂する必要はないと思うんですけれども、しかし、「その時点における国民世論の動向を踏まえつつ、」ということでいうならば、マスコミの調査とはいえ、過半数以上の方が延長に反対であるというまま不安を乗り越えていくというのは大変ゆゆしき問題であるというふうに私は思っているわけでございまして、ぜひ、世論の動向を注視しつつ、政府として国民に対する説明を尽くしていくということが政府の責任であろう。

 そういう観点から具体的にお聞きをしたいと思うのです。

 反対されているのはいろいろな方がいらっしゃると思うのですけれども、少なくとも、今イラクの灼熱の本当に大変な環境の中で、汗を流して自衛隊の皆さんが十カ月にわたって活動されていることを知らないまま延長反対であるというような、そういう評価をする人だけはやはり残してはいけない。またODAについても、国民の税金ですが、そういうものが行って具体的にイラクが復興しているという姿を知らないまま延長に反対であるというような、そういう人だけはつくるわけにはいかないのであろう。

 私も地元等でいろいろ話をしておりますと、この委員会ではいろいろやりとりがある。ただ、国会の中では知っていることでも、国民の皆さんになかなか伝わっていないことが余りにも多い。

 例えば、自衛隊の十一月七日現在の実績でも、学校の補修が、既に八校が実施済みで四校が実施中であるとか、また道路の補修も、四カ所が実施済みで十一カ所が実施中であるとか、さらに給水活動でも、一日二百トンから二百八十トンで、平均二百五十トンとしても約五万六千人程度の所要量を毎日提供しているんだというようなこと。さらに雇用でも、防衛庁の発表では、一月以降現在まで、累積で延べ約八万一千人を雇用しているんだということ自体が余りにもまだまだ知られていないということを考えましたときに、もっともっと政府からの情報というものを発信していくべきではないか。

 また、先ほど防衛庁長官も語っていただきましたが、こういう委員会だけでなく、いろいろな場で、やはり国民にわかりやすい、例えば防衛庁長官でしたら自衛隊の復興支援活動、外務大臣でしたらイラク復興に向けてODAがどれだけ貢献しているのかということを語っていただきたい。

 その上で、ちょっと気になる資料として、それぞれの省の広報の仕方というものを見てきたんです。時間もないのであれですが、防衛庁はことしに入ってもそれぞれ御努力されて、ビデオを作成したり、いろいろな形、中学校向けの壁新聞、そういうものをつくって、イラクでいかに自衛隊が活動しているかということを広報されているのはよくわかったんですが、内閣府、政府広報という一点で見てみましたときに、昨年度はそこそこ、新聞の記事下広告であるとかテレビの番組とか、この二月まで、昨年度まではいろいろな形でイラク復興支援をテーマにした広報というものをされてきているんですけれども、本年度に入っては、十六年度は全くない。私はそういう情報をいただいたわけでございますが、それは少し怠慢ではないのかな。

 もう既にイラクが復興し出したからいいということではなくて、やはり今年度に入ってから、もう具体的には、その途中経過で、イラクの方々がこれだけ喜んでおられる、先ほども別の方の質問で長官は言われておりました、ムサンナ県の知事さんが自衛隊は家族のように思っているとか、そういう一言でもいいと思うんです。やはり具体的に、自衛隊が中心になった活動実績並びに地元の方々がいかに喜んでおられるかということを政府としてももっと政府広報も含めて発信していくべきではないかというふうに思うんですが、まず最初に、自衛隊を責任持って出されている防衛庁長官の見解を伺い、そして内閣府の見解を伺いたいと思います。

北原政府参考人 御答弁申し上げます。

 ただいまの佐藤先生の御指摘、大変重要と認識しております。防衛庁といたしましては、これまで、自衛隊がイラクで活動しております人道復興支援活動につきましては、何よりも国民の皆様の理解と支持が大事であるといった観点から、隊員の皆さんの安全を確保しながら、できる限りの適時適切な広報に努めてきているところであります。

 先ほど先生から幾つか例示がございましたけれども、私ども、それに加えましてパンフレットをつくりまして、これをさらに更新しまして、配布等に努めております。あるいは新聞広告を使う、また防衛庁のホームページ、これも、防衛庁全体としてのホームページに加えまして、陸上自衛隊あるいは航空自衛隊のホームページ、これも内容を逐次更新いたしております。

 それから、これも先生御指摘いただきましたが、私ども、これまで三回にわたりまして広報ビデオをつくりまして、配布してまいりました。これはさらに一層内容を新たにして、作成、配布してまいりたいと思っております。

 それから、政府との関係でございますが、御承知の、小泉内閣のメールマガジンが大変人気が高うございますので、私ども、それも活用させていただいておりまして、防衛庁長官の寄稿ですとか、あるいは、既に帰ってきた隊員の体験談、これは五回にわたりまして掲載をさせていただいております。婦人自衛官も入っております。

 それから、政府広報誌、これも活用してまいりたいと思っています。

 こうした直接の広報活動に加えまして、やはり報道機関の皆様の御協力あるいは果たす役割が大変重要と考えておりまして、私どもでは、例えばサマワの陸上自衛隊の活動につきましては、原則といたしまして週三回、陸上幕僚監部がブリーフィングを行ったり、あるいは適切な画像を提供したりしております。

 それからまた、節目といたしまして、例えば、新たにこんな部隊が展開したといった場合には、衛星電話等を使いまして記者の方々とのインタビューもやるというようなことに努めております。

 いずれにいたしましても、繰り返しになりますが、佐藤先生の御指摘、大変重要と認識しておりますので、防衛庁・自衛隊といたしまして、いろいろなツールを駆使いたしまして、今後とも国民の皆さんに情報発信に努めていきたい、そのように考えております。

林政府参考人 先生御指摘のように、イラク人道復興支援活動につきましては、その必要性、支援の内容、成果を国民に向けて広報するということは非常に重要であると認識しております。これまでも、「小泉総理ラジオで語る」というラジオ番組、それから小泉内閣メールマガジン、今防衛庁からもお話がございましたが、それらを通じまして、小泉総理並びに関係閣僚みずからが国民に語りかけるという形で、実際に現地で活動している自衛隊員の報告をまたメールマガジンに掲載するなどもしまして進めてきておるところでございます。

 また、お話にございましたように、官邸のホームページそれから防衛庁、外務省のホームページにおいても、自衛隊の活動やODAの支援の状況につきまして継続的に報告してきたところではございます。

 今後とも、我が国の行いますイラク人道復興支援につきましては、実績を踏まえたわかりやすい広報を行ってまいりたいと考えております。

佐藤(茂)委員 それでは、今のファルージャへの総攻撃並びに自衛隊の宿営地のロケット弾のことについて若干お聞きをしたいと思うんですけれども、もう既に三名の方が私の前に質問されまして、重なっている部分は割愛をいたしまして、ただ、非戦闘地域、戦闘地域というお話がございました。これは、私が去年の七月二日に当時の石破防衛庁長官に質問をいたしまして、そのときに初めて、判断基準として四つのことを防衛庁長官が答弁されたのを覚えております。具体的には、当該行為の実態に応じ、国際性、計画性、組織性、継続性などの観点から総合的に判断するんだ、そういうことだったんですね。

 ただ、先ほどから話がありますように、それで判断していくと、非戦闘地域というのは極めて概念の狭いところになってしまいまして、今のイラクの情勢がそれに合うのか合わないのかというのは確かに難しい議論だと思うんですけれども、今自衛隊が宿営をしているサマワの状態を見ますと、非戦闘地域であることには変わりはなくても、非戦闘地域の中でも二種類あると思うんです。ある程度安全な地域であるのか、それとも治安が非常に悪い地域になっているのか、その二種類があると思うんですけれども、徐々に治安の悪い地域になりつつあることはもう間違いない。

 そのときに引っかかってくるのが、この前の本会議の例えば総理答弁でも、自衛隊を撤退させるときには三つ基準があるんだという話をされました。その一番最後の、自衛隊の安全確保ができるのかどうかというところが非常に問われてくるんであろう、そういうように思うわけでございまして、これから、サマワ周辺の治安の状況も見ながら、どう自衛隊が安全に活動でき、また寝ているときも宿営地の安全をしっかり確保するかということが非常に私は大事になってくるんだろうなというように思うわけでございます。

 そこで、一つ防衛庁長官に確認をしていただきたいのは、言えない範囲もあると思うんですけれども、隊員の安全確保の一層強化という点で、今までの宿営地の警備の態勢、そういうものを抜本的に、やはりこのロケット弾の事案またファルージャ総攻撃からの余波というものを考えたときに、きちっと見直していかなければいけないであろう、対応策として。

 一つは、宿営地周辺や部隊の態勢を総点検して、現地の警備態勢の強化というものをまずやっていかなければいけないであろうと私は思います。例えば、日本からの警備要員をそのために追加派遣するとか、現地で民間警備会社がもしあればそういうものと契約するとか、そういう人的な警備態勢を強化する。

 もう一つは、装備の面で、ロケット弾であるとか迫撃砲に対応できるような、どこまで対応できるか、それは限界があるかと思いますが、例えば対迫レーダーのようなものをしっかりと配備していくことを一層具体的に検討していくべきではないかと思いますけれども、防衛庁長官の見解を伺いたいと思います。

大野国務大臣 まず、佐藤先生の御認識の中で、現地の治安はだんだん悪くなっているんではないか、こういう御指摘でございます。

 このところは私も努めて御理解いただけるように御説明申し上げているつもりですけれども、治安につきましては、他の地区についても比較的によい、そして、その後、衝突事件とか、そういうことにつきましても特段注目すべきような動きはないということで、悪くなっているという評価ではないと私は思っております。

 ただ、問題は、ロケット弾、迫撃砲弾が宿営地へ向けて、あるいは宿営地内に撃ち込まれてくる、これはもう重大に受けとめておかなきゃいけない。その上で、大変、隊員の安全確保に、佐藤先生、御心配をちょうだいしまして、本当にありがとうございます。今の状態は、もう先生御存じのとおり、ロケット弾、迫撃砲弾、夜間でございますが、撃ち込んできても、宿営地の構造上は安心できる、こういうことであります。それ以上のことは、ちょっと控えさせていただきます。

 あとは、監視態勢として、監視装置あるいは空中監視装置を持っている、自爆テロがやってきても防げる、こういうような状況でございます。

 お尋ねは警備員でございますが、警備員につきましては、何人かのイラク人の警備員を雇わせていただいております。ただ、警備会社との契約ということはやっておりません。

 さらに、対迫レーダーの問題もお尋ねがございました。

 いろいろな必要性、安全を守るための必要性については検討させていただいております。何をどのように検討させていただいているか、これは控えさせていただきたいと思いますが、隊員の活動について、安全につきましては万全を期している、このことだけは申し上げさせていただきたいと思います。

佐藤(茂)委員 外務大臣が戻ってこられましたので、時間がちょっとオーバーですが、最後に確認させていただきたいんです。

 戦闘地域、非戦闘地域の基準となる、国または国に準ずる者においてという件について、きのう来の発言がいろいろ先ほど来の質問者からも取りざたされて、あいまいな部分があったかと思うんですけれども、外務大臣、明快な答弁をお願いしたいと思います。

町村国務大臣 参議院本会議に呼ばれておりまして、中座したこと、失礼いたしました。

 ファルージャの情勢認識をめぐりまして、私の発言についてのお問い合わせでございました。

 改めて御答弁を申し上げますが、政府の見解は、先般、大野大臣が答弁をされたとおりでございます。

 したがいまして、昨日の記者会見、そして、これに関する先ほどの神風委員の御質問に対する私の答弁は、イラク特措法を適用するとの観点からの厳密な判断を述べたものではございませんで、ファルージャの情勢について、報道等に基づく印象を述べたものでございます。

 したがいまして、先ほどの神風委員に対する私の答弁は、謹んで撤回をさせていただきます。

佐藤(茂)委員 最後になりました。

 イラク復興はまだ道半ばでございまして、我が国にふさわしい積極的な貢献をすることは重要であるということをお訴えして、質問を終わります。

 以上でございます。

船田委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 十二月十四日、自衛隊の派遣を延長するかどうか、大きな問題になっています。私たちは、もとより、イラク全土は戦闘地域であり、現にファルージャ等では激しい交戦が展開をされている。そういう地域に自衛隊を派兵するということは、憲法からいっても絶対に許されない暴挙だったと考えております。

 同時に、特措法に基づいて、戦闘地域、非戦闘地域という定義のあいまいさというのは、今の外務大臣の答弁の撤回で、またはっきりいたしました。

 大臣が、いわば戦闘地域、非戦闘地域を、国または国に準ずる者という定義に合わせてイラクを説明しようとしたら、イラクは説明できないんですよ。皆さんの法律の定義ではイラクは説明できないんです。交戦状態があっても、非戦闘地域になったり戦闘地域になったりする、そういうあいまいな説明しかできない。皆さんの法律の定義からいっても、もう非戦闘地域という定義そのものが崩れていると思います。私は、改めて、自衛隊の撤退を強く求めるものです。

 そういう角度からちょっと聞いていきたいんですけれども、一つは、小泉首相が本会議の答弁の中で、自衛隊が活動中止や退避それから撤収する場合として、復興支援活動の目的を達したと考える場合が一つ、二つ目が政治的、外交的な判断として派遣を終了させる場合、三つ目が活動場所が非戦闘地域の要件を満たさなくなった場合、四つ目が危険が迫って安全に活動を続けることが難しくなった場合、これらを挙げました。

 改めて確認をいたしますけれども、首相の挙げたこの四つのケースが自衛隊を撤退させるかどうかを判断する基準になる、このように理解していいわけですか。

大野国務大臣 総理がおっしゃったとおりでございます。

赤嶺委員 それでは、危険が迫って安全に活動を続けることが難しくなった場合について質問させていただきます。

 具体的にはどういう状況を言うのですか。

大野国務大臣 具体的にということでおっしゃられますと、具体的に申し上げましてと言うことはなかなか難しい状況でございますけれども、例えば、もう活動が全く、外へ出るとドンとやられる、これは万が一、仮定の話ですよ、全く仮定の話として申し上げていますけれども、人道復興支援ができなくなるというような場合が出てきたら、それはもう安全確保できませんから、これは撤退する以外にありません。

 ただ、どういう場合がそれに当たるかと言われますと、具体的な場面で議論しませんとわかりませんので、具体的に説明しろと言われると、ちょっと私としてもその能力はございません。

赤嶺委員 大臣が説明能力を欠いたら、自衛隊の派遣延長なんて国民に説明できないんじゃないですか。

 例えば、外に出たらドンとやられる、外で復興支援活動ができないような状態ということをおっしゃいましたけれども、今、自衛隊が外で活動するときには警護隊がついていらっしゃいますか、ついていませんか。

大野国務大臣 サマワは安全でございますが、必要に応じて警護隊がついております。

赤嶺委員 サマワは警護隊がつくような治安状態であるわけですね。これはやはり、外に出たらドンとやられることを警戒しているからじゃないですか。

大野国務大臣 先ほど申し上げましたのは万が一という想定で、例えば、外へ出ると何か危険が迫ってくる、その危険な状態については具体的にどうだということはなかなか説明しにくいということを申し上げたわけでございまして、そのことは御理解をいただきたいと思います。

 外へ出たら危険が迫る、そういう状態では、法律上、隊員の安全確保はできませんから、長官としては、万が一の場合ですけれども、もちろん復興活動を一時中断する、それから、最終的な判断で撤退することもあり得る、このことを申し上げているわけであります。

赤嶺委員 今、イラク全土に非常事態宣言が出されました。具体的な措置はサマワではとられていないということでありましたけれども、非常事態宣言には、外出禁止命令だとか、いろいろ具体的なことが今後起こり得ると思います。

 サマワの市民に対して非常事態宣言で具体的に外出禁止とかと言われると、自衛隊も当然宿営地から出られなくなっていくと思いますが、そういう具体的な措置が非常事態宣言に基づいてとられたときは、これは安全性を検討する一つの基準になりますか。

大野国務大臣 まず第一には、どのような具体的措置が非常事態宣言のもとでとられるのか、これによって判断は変わってくるかとも思います。しかし、現状で、例えば夜間外出禁止という措置がとられた場合、こういう御質問かと思いますけれども、夜間外出禁止令が出て、その場面でどういう状態にあるのか、これも判断の一つの基準であると思います。

 それともう一つは、夜間は自衛隊の外での活動は全くいたしておらない、このことを御参考までに申し上げたいと思います。

赤嶺委員 非常事態宣言というのはいろいろな措置をとり得るわけですよね。いろいろな措置をとり得るわけですから、具体的な措置がサマワにおいて発動された場合、それは皆さんが安全性を検証する一つの基準になりませんか、こういうことを聞いているんです。

大野国務大臣 非常事態宣言のもとで具体的措置がとられましたら、その具体的措置について、どういう状況になるのか、どういうふうに考えるのか、その時点で判断をするのは当然でございます。

赤嶺委員 宿営地のさまざまな攻撃がありますね、今までもありました。その宿営地の攻撃について、これはまさに自衛隊がねらわれているという危惧は、長官、持ちませんか。

大野国務大臣 そういう危惧を持っていればこそ、その背景についてきちっとした情報収集をし、分析し、どのようなねらいを持って、あるいは目的を持って自衛隊宿営地の方向へ弾を撃ってきたのか、このことを今情報収集している段階でございます。

 情報につきましては確たることを申し上げられない段階であることを御理解いただきたいと思います。

赤嶺委員 まさに自衛隊はねらわれているわけですね。サマワがイラクの中で比較的安全とはいっても、警護隊に守られて外に出ていくような治安状況にあるわけです。

 それで、大野長官は、このロケット弾の攻撃について、記者会見で、外国から軍隊が来ているという情報は持っていない、一部部族がやっているのではないかと言われている、そういう発言もなさっておりますが、それはどういうことでしょうか。

大野国務大臣 一部部族という話も聞いておりますということで、確たる情報というわけではありません。そういう風説も聞いておる、こういうことでございます。

赤嶺委員 そうすると、今まで国民に向かって皆さんが、サマワは部族の共同体社会で、横の連携も非常にあって、そして情報も入りやすいんだ、自衛隊との関係も良好だというようなお話をしたわけですが、やはり一部は、自衛隊に反感を持っている部族も警戒しなければいけないようなことになっているんじゃないか、そういうことなんでしょうか。

大野国務大臣 いろいろな情報がございます。したがいまして、今の段階で確たることを申し上げるわけにはいかない、このことをたびたび申し上げているところでございます。

 それから、治安につきましては、これは何度も私が御説明申し上げたいのは、治安というのはイラクの他の地域に比べてよっぽど、比較的ですけれども、よっぽどというのはやはり比較しているんですが、よっぽどいい、これは御理解いただきたいと思います。それから、時系列で見て特段の注目すべき問題はない、このことも御理解いただきたい。

 そういういろいろな情報がありますけれども、真剣に情報収集して、とにかく先生お尋ねの隊員の安全確保、このことにつきましては万全の構えをしている、このことを申し上げたいと思います。

赤嶺委員 長官、基地というのは、どんなに警戒態勢、警護態勢をとったにしても、基地を囲んでいる民衆が反発の感情を持ったときに、もろいものなんですよ。私は沖縄県の出身ですから、沖縄の米軍基地が県民の反発に囲まれたときのもろさというのを何度も体験してきました。

 皆さん、サマワは、部族社会で安定しており、自衛隊との関係も良好だ、こういうことをおっしゃってきたのですが、その部族の一部に自衛隊に反感を持つ勢力があらわれた、そういうようなことも政府としては今注目せざるを得ないことになっているんじゃないですか。

大野国務大臣 このことも何度も御説明申し上げておりますけれども、サマワの住民と自衛隊の関係につきましては良好な関係である、自衛隊が通りますと子供たちが手を振ってくれる、それから、先ほども申し上げましたけれども、ハッサーニ知事は我が家族の一員のように思うと、こういう非常に良好な関係を保っている、このことはぜひとも申し上げたい。

 ただ、あのロケット、迫撃砲が飛んでくる、あるいは道路の記念碑が壊される、こういうことは本当に重大に受けとめて、細心の注意で、どんなささいなことでも注意を払っていかなきゃいけない。その細心の注意の一つが、例えば、先ほど御指摘の、何らかの小規模な勢力によるものを含めていろいろな見方がある、だからそのことを申し上げているわけでございます。

 我々は、一般論としては、本当に治安は、サマワにおいては比較的、比較的というよりもかなり安定している。しかし、その中で、本当に小さなことでも細心の注意を払って安全に努めている、このことを申し上げたかった次第でございます。

赤嶺委員 部族の中で手を振る子供たちがいたりすることも一つの現象でしょう。もう一方で、部族の中には自衛隊に反感を持つ勢力が生まれている、風説ではあるんだがそういう勢力もあるやに聞いているということを皆さん認識しておられるわけですよね。そういう認識をお持ちじゃないのですか。

大野国務大臣 大多数は、圧倒的多数と言っていいと思います、圧倒的多数は自衛隊に対して高い評価を下していただいております。ただ、そういう勢力があるという情報になっている。このことは、我々として本当に細心の注意を払ってやっていく。これが、自衛隊が安全に人道復興支援に従事できることである、このように判断しております。

赤嶺委員 そういう部族も登場してきている。

 そうすると、宿営地の外に出たら、例えば待ち伏せ攻撃だとか、あるいは自爆だとか、いろいろなことが既にもう想定されるような事態になっているんじゃないですか。

大野国務大臣 一般論として申し上げますけれども、治安が悪いといった場合に、大まかに言って二つに分けて考えられるのではないでしょうか。

 一つは、何らかの政治的意図を持って、例えばフセインの残党ということで具体的に御説明できるかと思いますが、そういう残党が何らかの意図を持って治安を乱すという場合と、貧困等によりまして物取りをせざるを得ない、こういう場合もあろうかと思います。

 イラク・サマワが復興していけば後者の場合はそういう不安がなくなってくる、このことはぜひとも御理解いただきたいと思います。

赤嶺委員 私は、政府の現状認識は非常に甘いと思うんですね。

 ニュージーランドがこの間撤退をいたしました。ニュージーランドというのは、一年間、イラクで人道復興支援活動、これは学校や病院の補修とか、日本の自衛隊と同じことをやってきたんですが、ちょっと日本の自衛隊と規模が違うなと思ったのは、一度に二十万人分以上の水を供給できる浄水施設の建設、これもやっていますね。恒久的な貢献ですよ。

 そういうニュージーランドがなぜ引き揚げたか。これはやはり、たびたび迫撃砲による攻撃を受け、宿営地に閉じこもるという状況に追い込まれたからで、この部隊の司令官は、引き揚げるときに、イラクは危険過ぎる、標的を探しているグループがごまんといると。

 このニュージーランドが置かれている状態と日本の自衛隊が置かれている状態とは差異はありませんよ、同じ南部ですから。そういう点で、皆さんの安全という説明はどうしても納得できないと思います。

 それで、もう時間もありませんが、外務大臣がせっかく答弁を撤回した問題が残っておりますので一つだけ聞きたいんですけれども、外務大臣の先ほどの撤回というのは、つまり、ファルージャは戦闘地域で、イラク特措法は適用できないという理解でよろしいんでしょうか。

町村国務大臣 厳密な意味で、イラク特措法に基づく活動を実施していないファルージャ等々の地域において、戦闘行為に該当するかどうかということについて判断はしていないということで、大野長官は、先般来、サマワについて非戦闘地域だということを申し上げておりますが、それ以外の地域については言わないというのが政府の見解でございます。

赤嶺委員 非戦闘地域がサマワであるという説明以外は政府はやらない、やっちゃいけないということなんですか。

町村国務大臣 別に、いけないと言っているつもりではございません。

赤嶺委員 そうしたら、ファルージャについてちゃんと見解を述べてください、イラク特措法の適用地域であるかどうか。

大野国務大臣 特措法に基づきまして基本計画がございます。基本計画では区域の範囲ということを言っております。その中で、人道復興支援というのはイラクの南東部ムサンナ県中心というふうに言っております。さらに、総理の承認を得て防衛庁長官がつくります実施要項につきましては、ムサンナ県、サマワ中心、こういうふうに書いております。

 ファルージャは、もともと今回の自衛隊派遣の枠外の問題であります。

赤嶺委員 基本計画ではそうなっていますが、基本計画というのは、皆さんも変更は可能なものであります。

 イラク特措法に基づいて、戦闘地域、非戦闘地域のあいまいな発言を繰り返す閣僚のもとで自衛隊が憲法違反の形で派兵されている、安全性についてもきちんと説明できない、こういうものは直ちに撤退すべきだということを申し上げまして、質問を終わります。

船田委員長 次に、照屋寛徳君。

照屋委員 社会民主党の照屋寛徳でございます。

 最初にお伺いをしたいのは、ファルージャへの総攻撃の問題でございます。

 きょうの委員会、多くの委員から質問ございましたが、イラク駐留米軍とイラク政府軍は、十一月八日夜、ファルージャへの総攻撃を開始しました。昨年五月のイラクでの大規模戦闘の終結宣言後、最大級の攻撃となるようであります。

 約三十万人の市民が住んでいる都市に空爆や無差別攻撃をしかけ市街戦を行うことは、断じて認めるわけにはまいりません。診療所や病院へ攻撃が行われ、電気や水道が切断をされ、マスコミが報ずるところによりますと、ファルージャはもう人間の住める町ではなくなったと、ファルージャの市民の声が届いております。既に多くの市民が死傷しており、私は、直ちに総攻撃を中止すべきだというふうに考えております。

 小泉総理は、昨日昼の記者会見で、このファルージャへの総攻撃について、成功させないといけない、治安の改善がイラク復興のかぎですからと、支持を表明されました。

 外務大臣、防衛庁長官、それぞれにお伺いしますが、両大臣は、このファルージャへのイラク駐留米軍とイラク政府軍の総攻撃を支持されるんでしょうか、お答えをいただきたいと思います。

町村国務大臣 イラク暫定政府による今回のファルージャの事態でございますけれども、これまでいろいろな平和的な解決努力を暫定政府はやってまいりましたが、掃討作戦を始めたわけでございます。これは、治安改善に向けたイラク暫定政府の断固とした決意のあらわれだ、このように理解をいたしておるところでございまして、要は、特に来年一月の国民議会の選挙が全土で予定どおり行われるということへ向けての対応ではないか、こう考えております。

 したがいまして、私どもとしては、米国に中止を求めるという考えはございません。

大野国務大臣 町村外務大臣の御発言のとおりでございます。

 ただ、強調をいたしたいのは、イラクの政治プロセスを考えますと、イラク人による新しい国づくり、これが、来年の一月の国民議会の選挙が第一歩となります。そして憲法をつくり、その後、新政権が来年末には誕生する、これへ向けてやはり治安を安定していかなきゃいけない。これは、イラクをテロの温床としないとか、また、イラクをイラク人自身による国づくりの国にする、こういう意味では大変大切なことかと思います。

照屋委員 ファルージャへの総攻撃を契機にして、イスラム派系のイラク・イスラム党が政権から離脱をしたと報じられております。それから、イラク・イスラム聖職者協会が米軍のファルージャ攻撃を非難し、来年一月の国民議会選挙をボイコットするよう国民に呼びかけたとのマスコミ報道もございます。

 防衛庁長官、さっきの答弁をお聞きしますと、来年一月の国民議会選挙に今度のファルージャへの総攻撃が悪影響を及ぼす、こういうふうには思いませんか。

大野国務大臣 先ほど外務省から御説明がありました。イラク十八県のうち、選挙ができないのは三つか四つの県である、こういうことであります。全体の趨勢としては、三つか四つの県を除いては選挙ができるんだ。そこで、来年の選挙に向けて治安を安定していこう、こういうことは、先ほど外務大臣もおっしゃり、私もそのとおりだと思っております。

 報道はいろいろな見方をします。私は、これからの成り行きを見守っていくべきであって、報道がこう言ったからこうだというようなことについてはコメントを差し控えたいと思います。

照屋委員 いや、防衛庁長官、そういう報道があるけれども、防衛庁長官として独自の御判断で結構ですよ、マスコミがどう言っている、こう言っているじゃなくして、防衛庁長官の判断として、総選挙に悪影響を及ぼすとは思いませんか。思うか思わないかでお答えください。

大野国務大臣 新しい国づくりは一番大事なことであります。したがいまして、来年の一月の総選挙へ向けて治安を安定していく、このことが大変重要である。

 だから、それが影響するのかしないのかは推移を見ていかなければ、報道はそういう報道があります、そうじゃないという報道もあるのかもしれません、私、知りませんけれども。そういう意味で推移を見守っていくということでありまして、基本的には、十八県のうち三つか四つの県だけは少し難しいな、趨勢としては大丈夫だ、こういうことのように受けとめられるわけでございます。

照屋委員 外務大臣にお伺いをいたしますが、今現在、イラク暫定政府の支配が及ばない地域というのはイラク全土で何カ所ぐらい、そして、その地域に住んでいる住民というのはどれぐらいおるというふうに外務省は掌握をしておられるのでしょうか。

吉川政府参考人 御指摘の点については、具体的な情報ですとか数値が公表されているということは承知しておりません。

 先ほどから御答弁で、アラウィ・イラク暫定政府首相が述べております、イラク十八県のうち十五県であしたにでも選挙を実施することが可能だ、こういう言及がありますが、では、具体的に残ったところはどこで、どの地域だ、そういう格好での具体的な情報が出ているとは聞いておりません。

照屋委員 それでは、サマワの治安状況について防衛庁長官にお伺いをいたします。

 先日のこの委員会でも、サマワの治安状況というのは、長官は、比較的安定をしているんだ、あるいはかなり安定をしているんだというふうな表現もしておりましたが、私は、むしろ深刻なほど悪化をしているんではないかというふうに思っております。

 陸上自衛隊の宿営地に対する迫撃砲やロケット弾による攻撃は、意図的に自衛隊を標的にしたものとしか考えられません。政府は、これまで、国または国に準ずる者による組織的、計画的な行為でなければ戦闘地域にはならないという立場をとってこられました。

 そこでお伺いをするんですが、宿営地への攻撃主体、いわゆる犯人、これが特定されないと、国または国に準ずる者の判断はできないというお考えなんでしょうか。

大野国務大臣 この点もたびたび御説明を申し上げておりますけれども、現在、だれがどういう意図で弾を宿営地に向けて、あるいは宿営地内へ撃ったのか、このことにつきましては、現地治安機関等と密接に連絡をとっております。事実関係も含めまして、鋭意情報を収集、分析いたしているところでございます。

 ただ、具体的にいかなる勢力によるものかということをはっきりと今申し上げられる段階ではない、このことも申し上げたところでございます。

 そういう我が国が独自に収集した情報、あるいは諸外国や国際機関等から得られた情報、すべて総合的に判断すれば、いろいろ情報収集しているけれども全く情報が入らないというわけじゃないんですよ、ただ、全体としてはっきり申し上げられない、こういう段階でございますが、総合的に判断いたしまして、今回の事件を見まして、いわゆるイラク特措法に基づく戦闘行為とは言えません、認識できません。本件により、直ちにサマワ地区が非戦闘地域ではなくなったというわけにはならない。

 それから、もう一つ御理解いただきたい。くどいようで申しわけないんですが、治安情勢も、一言で申し上げるならば、もちろん予断は許しません、何が起こるか、テロにも注意しなきゃいけない、このことは申し上げておりますけれども、サマワが所在するムサンナ県における事件は少ない傾向が現在も継続している、このことだけははっきりと申し上げられます。

照屋委員 どうも、いつも長官の御答弁は明確でないような気がします。

 それでは、関連して、ぜひ要領よく端的にお答えいただきたいと思いますが、防衛庁として、サマワ周辺の、たくさん部族がおると思うんですが、この部族の武装攻撃能力の実態ということについては、きちんと調査をして掌握しておられるんでしょうか。端的にお答えください。

大古政府参考人 お答えさせていただきます。

 サマワ周辺の治安状況についてはいろいろ情報収集をさせていただいておりますけれども、個々の部族の武装能力を調べているかということについては、ちょっとお答えを差し控えたいと思います。

照屋委員 私は、それをしっかりやらなければ、ロケット砲、迫撃砲の犯人を、政府として、自衛隊としてきちんと追及、特定することは難しいと思いますよ。いずれまた、この点については質問をしたいと思います。

 残された時間で、通告をしておりました、護衛艦「たちかぜ」で発生した暴行事件についてただしたいと思います。

 最近、自衛隊員の自殺者がふえております。また、自衛隊内における事件も多発をしているようであります。私は、一九九九年十一月八日、護衛艦「さわぎり」で発生した三等海曹の自殺事件の調査に加わったことがございます。「さわぎり」における執拗ないじめが原因の、痛ましい自殺事件でございました。この事件は、現在、御遺族が、国を相手に国家賠償の裁判を提起しております。

 さて、護衛艦「たちかぜ」で発生をした暴行事件の概要と、それから、マスコミ報道によりますと、今回から自衛隊は容疑者の氏名を公表しない、匿名でしか公表していないということで随分マスコミの批判を受けておりますが、それは防衛庁独自の、事件があった場合の氏名を公表しないという方針なのか。他の省庁では、私の知り得る限り、きちんと、このような刑事事件が発生した場合に公表しているやに考えておるんですが、なぜそういう処置をされるのか。これはやはり、防衛庁の事件隠しというか隠ぺい体質だというふうにマスコミから強い批判を受けても私は仕方がないと思いますよ。

 その点、事件の概要と、今聞いた、容疑者の公表のあり方についてお答えください。

西川政府参考人 お答え申し上げます。

 先生今御指摘の事件につきましては、事件の概要でございますが、海上自衛隊の横須賀基地の護衛艦「たちかぜ」に所属いたします二等海曹佐藤治、三十四歳でございますが、平成十六年の六月に、同僚の隊員、これは海士長の階級にある者でございますが、これに対し、以前から、髪をパンチパーマにしなさい、こういうことを言って申し向けておったんですが、これに被害者が従わないということで、短髪にしてきたということで腹を立てまして、「たちかぜ」の艦内におきまして、なぜパンチパーマにしていないということ等の因縁をつけまして、正座をさせた上、被疑者が持っておりましたエアガン、これはプラスチック製のものでございますが、いわゆるBB弾を至近距離から被害者に向けて発射する、こういうふうな形での暴行を加えたとして、二日前の八日午前八時二十九分に、横須賀の地方警務隊に暴行の容疑で通常逮捕されたものでございます。

 先生が御指摘のように、この際、実は、公表しておりますが、氏名を出さなかったということでございます。これにつきましては、当方で調べましたところでは、今回の事件については、被害者の被害が大きくないなど比較的軽微な事案であった、こういうふうに思われること、それから、被疑者の家族、妻と小学生の子供二人おりますが、これに対する配慮等を要する、こういうふうなことを勘案して氏名を公表しなかった、こういうことを言っております。

 なお、当方としましては、被害者の被害が大きくはないというような状況がございまして、今件の場合、比較的軽微なものであろうかと思いますが、先生が御指摘のように、強制捜査を伴うものにございましては、今回の対応については必ずしも適切ではなかったんじゃないか。

 なお、防衛庁としての基準はどういうふうになっておるか。

 これは、実はどこの省庁等もそう差はないと思いますが、いわゆる被疑者の氏名を、逮捕、強制捜査した場合に出すかどうかにつきましては、当方では、今のところ、明確な統一した基準等は設けてはおりません。これは、その事件事件の以後の事件捜査に与える影響あるいは被害者の事情、こういうもの等々を個々に勘案しまして、出すべきかどうかということを判断しておるということでございます。

 以上でございます。

照屋委員 それでは最後に一点だけ。

 端的にお伺いしますが、護衛艦にエアガンというのは持ち込みが可能なんですか。私は、これは決して軽微な事件だと思いませんけれども、その一点だけをお聞かせください。

西川政府参考人 お答え申し上げます。

 護衛艦の中に原則として私物は持ち込まないということでございまして、そもそもこれは装備品でも何でもございません。私物は持ち込まないということになっておりますので、このあたりも、現在捜査の過程でございますので、我々も関心は持っておりますので、たまたま彼が持っておったということはございますが、規則上は持ち込まないということになっております。

照屋委員 終わります。

船田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十三分散会


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