衆議院

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第6号 平成16年12月1日(水曜日)

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平成十六年十二月一日(水曜日)

    午前九時四分開議

 出席委員

   委員長 船田  元君

   理事 中谷  元君 理事 西田  猛君

   理事 三原 朝彦君 理事 渡辺 具能君

   理事 小泉 俊明君 理事 末松 義規君

   理事 藤田 幸久君 理事 佐藤 茂樹君

      大島 理森君    岡本 芳郎君

      嘉数 知賢君    川上 義博君

      岸田 文雄君    斉藤斗志二君

      桜井 郁三君    竹本 直一君

      谷本 龍哉君    玉沢徳一郎君

      寺田  稔君    西村 康稔君

      西銘恒三郎君    浜田 靖一君

      平沢 勝栄君    宮澤 洋一君

      山口 俊一君    山下 貴史君

      市村浩一郎君    大石 尚子君

      大出  彰君    岡島 一正君

      吉良 州司君    篠原  孝君

      島田  久君    神風 英男君

      首藤 信彦君    鈴木 康友君

      園田 康博君    中川 正春君

      長妻  昭君    本多 平直君

      牧  義夫君    赤松 正雄君

      丸谷 佳織君    赤嶺 政賢君

      阿部 知子君

    …………………………………

   議員           末松 義規君

   議員           鳩山由紀夫君

   議員           前原 誠司君

   議員           穀田 恵二君

   議員           横光 克彦君

   内閣官房副長官      杉浦 正健君

   防衛庁副長官       今津  寛君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   防衛庁長官政務官     北村 誠吾君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    阪田 雅裕君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  増田 好平君

   政府参考人

   (防衛庁防衛局長)    飯原 一樹君

   政府参考人

   (防衛庁運用局長)    大古 和雄君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 遠藤 善久君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            吉川 元偉君

   政府参考人

   (外務省経済協力局長)  佐藤 重和君

   衆議院調査局国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラク人道復興支援活動等に関する特別調査室長        前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

十二月一日

 辞任         補欠選任

  宇野  治君     山下 貴史君

  武田 良太君     山口 俊一君

  山口 泰明君     岡本 芳郎君

  鈴木 康友君     園田 康博君

  照屋 寛徳君     阿部 知子君

同日

 辞任         補欠選任

  岡本 芳郎君     山口 泰明君

  山口 俊一君     武田 良太君

  山下 貴史君     宇野  治君

  園田 康博君     鈴木 康友君

  阿部 知子君     照屋 寛徳君

    ―――――――――――――

十一月二十九日

 イラクからの自衛隊撤退を求め、派兵計画の延長反対に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一〇五七号)

 同(石井郁子君紹介)(第一〇五八号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一〇五九号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一〇六〇号)

 同(志位和夫君紹介)(第一〇六一号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一〇六二号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一〇六三号)

 同(山口富男君紹介)(第一〇六四号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一〇六五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法を廃止する法律案(鳩山由紀夫君外七名提出、衆法第九号)

 国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動等に関する件


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     ――――◇―――――

船田委員長 これより会議を開きます。

 鳩山由紀夫君外七名提出、イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法を廃止する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官増田好平君、防衛庁防衛局長飯原一樹君、防衛庁運用局長大古和雄君、外務省大臣官房審議官遠藤善久君、外務省中東アフリカ局長吉川元偉君及び外務省経済協力局長佐藤重和君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

船田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

船田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。三原朝彦君。

三原委員 きょうはそこに、ネクストキャビネットなるものがありまして、そこの外務大臣と防衛庁長官及びそのたぐいの偉い人たちがお座りですから……(発言する者あり)失礼しました。まあ、理事会でお聞きしたら、末松理事の方にはまだ何か肩書がないそうですから、国務大臣相当ぐらいなんでしょう。そういう人に、今こういう方たちが我が国をリードしておるとしたならばという気持ちでお答えいただこうと。私は、何も神学論争みたいなのをしたいと毛頭思っておりませんので、常に対案をもって現政府を批判すること、野党として大いに結構だと思いますから、お答えいただきたいと思うんであります。

 同盟、一時期は、我が国は、日米同盟などと言われると、いや、同盟などという言葉を使うのはどうもよろしくないみたいな風潮が一昔前あったことは確か。今は堂々と、我々は日米の同盟のもとでこの東アジアの安全、安定を享受しておるし、なおかつ、その地域は広がってもいっておる。グローバル化された政治の中では、ただただ地域限定みたいな形、地理的限定みたいな形では同盟は語れない状況にもなっておることは、もう皆さん御承知のとおりだと思うわけであります。

 同盟と言う以上は、私流に定義しますならば、同盟に入っておる当該国家が外国といろいろなトラブルが生じたときに、当該国家を直接、間接に支援する、援助する、協力する、そして当該国家の所期の目的を達成することを希望することが同盟なんであると私は思っておるわけであります。今日のイラクの状況を見てみたときに、自衛隊を今復興のために派遣するというのも、実は、それは同盟の一環として、我々は共同作業としてやっておるわけであります。

 ただ、同盟といっても、常に硝煙のにおいがするようなことばかりではなくて、古くは、皆さん御承知のように、我が国が日露戦争で戦ったときに、日露戦争が始まる前、日英同盟というのがあって、例えばバルチック艦隊がより近く、スエズ運河を通りたいと思ったら、それをノーと言ったというような話があったりするようなこともある。同盟といっても、いろいろな形の同盟がある。今回の我が国の、イラクに自衛隊を派遣したのは、一種の幅広い意味でのODAなんだ、そんな気持ちで私は見ておるわけであります。

 それで、一方では、今我々は同盟の一環としてイラクにそうやって自衛隊を派遣していますけれども、反面、我々、この東アジアを見たときに、我が国にとっての今の心配事というのは朝鮮民主主義人民共和国、北朝鮮の行動なんであります。

 拉致問題は国民一人一人の問題に関係していますけれども、いま一つは、国家としての、我々が常に注意を喚起しておかなければならないことは、北の、私から見ると予測不可能な行動。既に起こりましたけれども、人工衛星を上げたんだというような言い方をしてみたりとか、もう一つは、我々の頭を越えてミサイルを飛ばしたような、そういうこともあったわけです。それに対して、我が国が何とかして対応して、国際社会の中に、国際法を守って、ちゃんとした常識的な行動をとってもらいたいと思うんだけれども、なかなかそうやってもらえない。まして、今では、今の状況の中で、核兵器あたりに対する執着を持ってやっているような国家が隣にいる。

 そうなったときに、何とかして、我が国はそれに対して、開かれた状況の中で、やめてほしいと念ずるところで、念じたところで、彼らは何もそれに対してこたえようとしない。むしろ、力には力で対抗するんだという、それを信奉するような国家が近隣にいるということを考えたときに、これは今度は、我が国が同盟を結んでいるアメリカに対して、力には力で対抗する国にはやはり力でお願いするということは、これは選択の幅として我々がとらざるを得ない状況でもある。

 そういうことから考えたら、ある面では我々は協力する、ある面では協力される、こういう状況がある中での我々のイラクへの自衛隊の派遣でもあるという認識を私は持っているんですけれども、何といいますか、こちらでは助け、こちらでは助けられる、そういう友好関係を維持しながら国際社会の中で我々は生きているということに対して、民主党さん、ネクスト外務大臣はどういうふうにそれをさばかれますか。そのことをちょっとお聞きしたいと思います。

鳩山(由)議員 お答えを申し上げます。

 三原委員もかつてアメリカにおられたこともあろうかと思いますし、私も六年ほどアメリカにおった時期がございます。基本的にアメリカ大好き人間の一人でございまして、その意味で、日米関係というものが日本にとって最も重要な二国間関係であることは論をまちません。私どももそのように一貫して思っているわけであります。

 同盟というのは困ったときにお互いに助け合うものだ、それもさようだと思います。ただ、もっと言えば、困らないようにするために、危ないことをしそうになったときに、それはいかぬと、戦争というもので物事を解決しようというような状況に差し迫ったときには、日米同盟、真の意味での友人であれば、むしろ諭して、やるなと、戦争ではない形での解決法があるのではないかというところから、本来ならば、日本人としてあるいは日本政府として行動すべきではなかったか、私はそのように思っています。

 さはさりながら、戦争を起こしてしまった、その後での対処の仕方、終わった後どうするかという問題が当然あろうかと思います。

 私は、戦争の大義がなかったから、だからイラクへの復興支援というものを行うべきではない、そのように思っているわけではありません。むしろ、大義がない戦争で傷ついたイラク人が多ければ多いほど、その人たちのために、大義がなかっただけに、余計、彼らを救うための復興支援は行わなければならないと思っています。

 ただ、その方法が、ならば自衛隊の派遣というやり方が正しいのかどうか。日本というものに対して、憲法が当然ございます。私は憲法に対しても自分なりの考えを持っている人間ではありますが、現在の憲法という枠の中で、大変、ある意味での苦し紛れにイラク特措法というものをつくってしまった。そのイラク特措法というものにもう既に該当しない、すなわちイラクにおける自衛隊の派遣というものが適当でないという状況になったときには、やはりこれは憲法に、そして法にのっとって撤退をするということが正しい選択である、私はそのように考えています。

 ただし、ならば何も復興支援をしなくてよいという話ではありません。必ずしも自衛隊の派遣のみが、日本が今、アメリカとの間での同盟関係と呼ぶんでしょうか、日米関係を良好なものにしておくために必要な唯一の手だてだとは私は思っていません。むしろそうではない形で、より効率的なやり方があるぞ、支援の仕方があるぞということを、先般、藤田議員、大谷議員などとともにヨルダンなどに参って、私なりとして実感として感じてきたところでございます。

 なお、当然、今最後のお尋ねの、北朝鮮に対する脅威にどう対処するのかということになれば、私は、既に日本は米軍に基地を、特に沖縄を中心に大変多くの基地を提供しているという実態がございます。そのことが、イラクへの自衛隊の派遣よりもはるかに大きな日米の協力関係だと申し上げておきます。

 そのことが、決して、イラクの自衛隊が撤退をするということで揺らぐようなちっぽけな日米同盟ではないと私は思っておりまして、当然のことながら、北朝鮮の何らかの脅威がさらに高まったときに、アメリカとしては、日本にたとえ自衛隊の問題があろうとも、十分に、日米同盟は揺らがずに行動をとってくれるものだと私は確信をしています。

三原委員 自衛隊がいろいろな意味で、まあ、これは別の法律で行ったんですけれども、カンボジアとか東ティモールに行って大いに成功したのは、一つには、やはり組織立った一つの形であって、なおかつ自己完結型でいろいろなことができる、技術的な意味でも大いに現地のために役立つということ。

 私は質問の途中でちょっとODA論みたいなことを言ったんですけれども、一番厳しい過酷なところでは、ある面ではまだまだ一〇〇%安定ではないというところで活躍するためには、それでまた効率的に、組織的にするためには、私は、ODA論の中でも、自衛隊法の百条の中でも本体の業務の中にそれを入れてというようなことも大いに議論されていますが、そういうことだって、やはりこれから先の国際社会を見る上では、まさに鳩山委員が言われたように、平和のために自衛隊を使うことも大いにいいんだと思うんですよ。そのためには、私は、今の場合には自衛隊こそが、今の状況の中でのイラクの国家の復興のため、そしてまた、一月に向けて安定した状況の中で選挙をするためには一番効率的だと思うからこそ我々は自衛隊にお願いしておる。

 それは、隊員諸兄一人一人の生命というようなことを考えれば、私だって心から、安全に行って安全に帰ってきてほしいということを思うことは人後に落ちませんよ。しかしながら、今の状況の中では、今から国家を再構築していこうという国にとっては、自衛隊の今の活躍が一番効率的であるし、我々も安心してお願いできると思うんですけれども、ネクスト防衛庁長官、どうですか、その点に関して。あなたはどう考えておられる。

前原議員 同盟論については鳩山提出者がおっしゃったことと絡んでまいりますけれども、一つは、同盟関係というのは、広い意味での同盟関係と、そしてまた安保条約に基づく狭い意味での同盟関係があって、今回のイラク復興支援特別措置法に基づく自衛隊の派遣、イラクでの協力というのは、これは安保条約ではありませんね。つまり、広い意味での同盟関係の中で行っていることだと思います。その中で特措法というものをつくって出ていった。

 二つのことを申し上げたいんですが、一つは、主体となって今のイラクにかかわっているアメリカのやっていることが本当に正しいのかということを、しっかりと同盟国として物を言っていったり、あるいは総括する必要があると私は思うんですね。

 今のアメリカのイラクでの状況を見ると、とてもじゃないけれどもイラク国民の人心を掌握できるような活動をしているとは思えないわけです。例えば、二度にわたるファルージャの掃討作戦に見られるように、テロリストの掃討だといって、結果的には罪のない一般国民を犠牲に巻き込んで、アメリカへの憎悪というものがどんどん高まっていって、そして結果的には一月の選挙も本当にできるかどうかわからない状況になっている。

 イラク復興支援の今の方向性についてもう一度考え直す時期に来ているのではないか。このままついていくことが、果たして、長い意味での同盟関係についてもいい影響を及ぼすかどうか、私はわからないと思っています。先ほどお話がありましたように、私も日米同盟関係は極めて重要な関係だとは思っておりますけれども、下手にこれに協力をして失敗した、そして同盟関係が傷つくということもあるわけですね。

 だから、そういう意味では、私は、この同盟関係が大切であるがゆえに、また国民世論というものが同盟関係を維持していくためには極めて重要であるという点において、うまくいっていないこのアメリカのイラクの統治、あるいはイラクへの関与について、同盟国だからこそ、ついていくのではなくて、もう一度国際協調の枠組みをつくり直すなどの、物を言っていくということが真の同盟関係の役割ではないかというふうに一つは思っております。

 もう一つは、自衛隊の活動に関して申し上げれば、私は、この自衛隊の活動というものの二つの問題点を申し上げたいと思うんです。

 一つは、戦闘地域、非戦闘地域という分け方がなされていますけれども、政府から出されている定義というのは、国もしくは国に準ずる者が武力の行使を組織的に行う地域が戦闘地域であって、それを行っていない地域が非戦闘地域ということになっていますが、国もしくは国に準ずる組織というのはそもそもないというのが我々の認識でございます。そういう意味では、戦闘地域、非戦闘地域などというのははなから存在しない、内閣法制局の憲法上の解釈をクリアするための方便にすぎないというふうに私は思っております。

 テロというのは、いつ襲われるかわからない、今平穏であったって、いつそれがまさに攻撃を受けるような状況になるかわからないという意味においては、戦闘地域、非戦闘地域の分け方はまさにナンセンスだというのが私の認識であります。

 もう一つは、九条の隊員の安全確保ということを考えた場合に、宿営地の中にもロケット弾が撃ち込まれて、夜だったから、あるいは宿舎というか、宿営地の中でありますが、寝泊まりしているところではありませんでしたので被害は出ませんでしたけれども、私は、撤退のリスクも含めて考えて言えば、この九条の要件を満たすような状況にもなっていないということも含めて言えば、自衛隊だからできるということの理屈は、精神論としてわかりますけれども、法治国家として、今は法律の要件は整っていないし、初めからフィクションに基づいてこれを出しているというのが我々の見解でございます。

三原委員 それは明らかに見解の違いなんでして、我々は、一年間やってきて、何とか言いながらも、我々の踏み込んだ形のイラクでの派遣というのは明らかに成功しておるという事実から見れば、これは物の見方の、こっちのサイドから見るのとあっちのサイドから見るのとの明らかに違いである、こういうふうに思わざるを得ないのであります。

 考えてみても、実は私たち、毎週イラクの理事会を開いて、それで防衛庁、外務省から報告を受けるんですけれども、その中で、やはり着々とこの一年間、地元の人たちが日々の生活を安定していく上で、学校の問題だ、病院の問題だ、水の問題だということで、成功してきておるんですね。その実績はどう隠そうとも隠せない事実でもあるし、プラスの結果であると私は信じて疑わないわけですけれども、それをより明確に、事実だけを役所の方から、我々が自衛隊員を送り出しているその成果というものをちょっと示してほしいと思っております。

大古政府参考人 お答えいたします。

 自衛隊の現地における活動の実績ということで御説明させていただきますが、まず給水活動については、今までに約四万三千トンの浄水を供給してございます。

 あと、公共施設の復旧整備として、学校補修については十校、道路補修については五カ所、その他施設四カ所の計十九カ所の補修を完了してございます。

 それから、医療支援として、ムサンナ県内の四つの病院におきまして、現地医師に対して助言指導をしているところでございます。

三原委員 何かもう質疑時間が終了しちゃったので、中途半端で何だかおもしろくなかったですけれども、次回、やれるときがあったら大いにやりましょう。

 我々の現状認識の差異というのが、やはり、同じ目で見てもあんなに違うかなと感じたことを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。

船田委員長 次に、丸谷佳織さん。

丸谷委員 公明党の丸谷佳織でございます。

 まず、イラク特措法を廃止する法律案について、提出者の皆さんに質問をさせていただきます。

 この法案を提出された理由としまして、「イラクにおける最近の情勢等にかんがみ、自衛隊の部隊等による対応措置を終了させる等のため、イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法を廃止する必要がある。」というふうにされておりますけれども、自衛隊の撤退ということについては我が国一国だけの問題ではないという側面も、これは否定なさらないのではないかというふうに考えております。

 もちろん、自衛隊の活動期間あるいは活動内容等については我が国が主体性を持って判断していくべきものではございますけれども、多国籍軍に参加している各国及びイラクそのものに対する影響、どんな影響があるのかということを考えていく必要もあるのではないかというふうに考えておりますので、この点から質問をさせていただきます。

 例えば、現在のイラクの状況を考えてみますと、本年六月の二十八日にイラク暫定政府へ主権が移譲されて、そして本格的政府樹立に向けて来年一月三十日までには国民議会選挙が行われ、また、そこで選ばれた議会議員の皆様が憲法を制定するという流れの中で、今この時点で我が国の自衛隊が撤退するということがこの選挙に与える影響というものも考慮されなければいけないのではないかというふうに私は考えます。

 各党のイラク政策に対する主張は学習してきたつもりでございますけれども、例えば民主党さんはホームページで、暫定政府はイラク国民に選出された内閣ではなく、まず、イラク国民の求める公正な選挙が実施されるように支援を傾注するべきであるというふうに主張されておりまして、この選挙を確実に成功に終わらせるということは、与野党関係なく、我が国のコンセンサスと言ってもいいのではないかというふうに思います。

 ただ、今自衛隊が撤退をすることが、我が国がこの選挙に対して、成功に終わらせるかどうかというような興味を失った、あるいは積極的な関心事ではないといったような誤ったメッセージにならないのかどうか、あるいはイラクの将来に対して見切りをつけたといったような誤ったメッセージにならないか、これを危惧するところでございますけれども、本案を提出するに当たって、このような影響をどのように考えていらっしゃるのか。この点についてお伺いします。

末松議員 ただいまの御質問は、自衛隊の撤退が選挙をやることについてマイナスの影響を与えないかということであろうかと思いますが、選挙に対してマイナスの影響を与えるということは、治安の関係でマイナスの影響があるかどうか、こういうことだと思います。

 自衛隊があそこにいるということは、治安ということとは関係ございません。結局、そこで支援を行っているだけであります。治安活動は、自衛隊はやっていないわけです。だから、直接そこはタッチをしていないということであります。

 もしサマワで治安の関係が出てくるとすれば、例えば、給水活動を急にやめる、それがやや現地で混乱を引き起こしたりするとか、あるいは、今まで雇用していた方々が急にここで解雇される、それで少し治安が悪くなるとか、そういったことが考えられると思うんですね。

 そういった場合に、例えば給水なんかは、撤退するときに設備をイラク側に渡して、イラク人できちんと給水活動をできるようにすればいいんです。そしたら、彼らが自分たちでやります。また、公共工事、何か道路の補修とか病院の補修をやっていますけれども、それも実際に指導して、機材を向こうに渡して、そこできちんと彼らにやってもらえば、彼ら自身が活動できるようになるわけです。

 そういったことを考えれば、むしろイラク人に実際にやらせて、自衛隊は撤退をするということが、先ほどほかの提出者からもありましたけれども、自衛隊の安全確保義務という意味からも私はいいんだろうと思うし、逆に、治安が悪くなって自衛隊が逃げ帰るような印象を与えることそのものが、国際社会にとって日本の信用をおとしめることになると思います。

 以上です。

丸谷委員 今私がお尋ねをしましたのは、実際に動いてきているイラクの政治プロセスの中で、来年一月という選挙を考えたときに、今自衛隊が撤退することが、実際に自衛隊の活動内容を停止すること自身が選挙にどのような影響を与えると考えているのかといった質問ではなくて、自衛隊を撤退することのメッセージ性についてはどう考えているのかという質問をさせていただいたわけなんですけれども。

 それでは、例えば今、自衛隊がこの廃止法案によって撤退をした、では、一月に行われるであろう国民議会選挙において我が国がどのような貢献をできるというふうに考えるのかということを聞かせていただきたいと思うんです。

 民主党さんは、例えば国連とか欧州諸国の動向を踏まえながら、治安状況を見定めつつ、我が国も選挙監視団を送る等の考えがあるということもおっしゃっておりますけれども、では、今の時点で、イラクの状況を踏まえてこの廃止法案を出されたという、背景にある治安状況を踏まえながら考えたときに、もうすぐ一月になるわけですけれども、監視団を送るというお考えはおありなんでしょうか。

前原議員 先ほど、出ていることを前提に、引くことのデメリットという話をされましたけれども、我々の立つスタンスというのは、そもそも法律というものが、先ほど三原委員に御答弁したように、戦闘地域、非戦闘地域の問題も含めてフィクションであって、その前提状況というものは、我々と与党のお立場は違うということを申し上げました。したがって、出ていることを前提にという議論については、私は若干違和感があるということはまず申し上げたいと思います。

 それから、二つ目なんですけれども、自衛隊というのは、これは、総理あるいは政府が何度も答弁されましたけれども、多国籍軍に入っている、その憲法上の問題等は横に置いておきまして、自己完結型で、みずから決断をして入ったり出たりできるというのが政府のもともとの考え方だったと私は思います。

 したがって、多国籍軍に影響があるかどうかというよりは、それはみずからの国が主体的に考えるということの中で、ほかの国も撤退を自分たちの考え方の中で決めている、オランダとかハンガリーとか、ポーランド、あるいはフィリピンも含めてそうでありますけれども。そういった決断をしているところは、私は、それはみずからの判断として国際社会は受け入れるんだろうと思います。

 選挙監視団についてでありますが、先ほど申し上げたように、私は、今のイラクの状況というのは、完全にアメリカの関与の仕方が間違っていて、一月の選挙が本当に行われるかどうかもわからない状況であるというふうに思っていますし、治安も極めて悪い状況だと思っています。もちろん、国連がどういう要請をしてくるかということを今後見きわめたいと思いますけれども、今の状況を前提としてであれば、私は、イラクは到底そういう選挙監視団を出せるような状況にないというふうに思っています。

丸谷委員 今イラクに自衛隊が派遣されているということを前提に撤退後の影響について議論するのは余りと、お互いの意見の相違があるということでございましたけれども、実際に、例えばイラクの暫定政府あるいはムサンナ県の首長さんが日本に対して、現在行われているこの支援に対しての謝辞を述べられている、また、これからも継続してほしい旨のお話をされています。こういった要望に関しては、それではどのような形でこたえていくべきだというふうにお考えになっているのか。

 また、撤退したことについて、どのような説明をしていくべきだというふうにお考えになっているのか、この点についてはいかがでしょうか。

鳩山(由)議員 お答えを申し上げます。

 丸谷議員も御承知のとおり、先般の委員会でも申し上げたことがございますが、例えば、フランスのACTEDというNGOがございます。そのNGOは、今の自衛隊の主たる任務である給水活動をある意味でかなり激しく、より経済的に、順調に行っている団体でもございます。

 私は、ムサンナ県のトップの方がぜひ自衛隊に残ってくれという話をされているのも事実だと思いますが、一方で、サマワあるいはその周辺の方々の中で、かなり自衛隊に対して不満を持っておる方もおられる。その不満の理由の一つが、例えば雇用問題などが非常に厳しい状況の中で、必ずしも自衛隊の行動が彼らの雇用問題に対してプラスの方向にはなっていない。

 そのフランスのACTEDというNGOは、イラクの方々を雇用して、その方々を利用しながら、現在までのところ、六万七千人の方々に、六十五の村と言っておりましたが、給水活動、大体一人当たり四リットルの飲料水、また七、八リットルのトータルとしての水を供給しているという話でございました。例えば、こういう給水活動がとまって困るという話であるならば、そのような形での支援の仕方をムサンナ県あるいはサマワにおいて行うことができると思います。

 さらに、日本の支援のやり方というのはいろいろあろうかと思っておりまして、必ずしも自衛隊がおらなくなっても、その穴を十分に埋めて、さらにイラクの方々に喜んでいただけるような支援のやり方は十分に考えられる、私どもはそのように考えております。

丸谷委員 我が国の自衛隊が撤退するということを、我が国の国内問題として国際社会にどう説明していくのかというところは、提出者のお考えが私にはちょっとわからなかったんですけれども、やはり我が国が、国際社会における地位、位置を考えたときに、なさなければいけないことはある。実際に今動いていることに対して、それをやめることに対する説明責任というのも、国際社会に対しては私はあるのではないかというふうに思っています。

 また、政治プロセス、イラクの中での動きを見ても、先日、エジプトでイラク復興支援の閣僚級会議が開かれ、そして、国際社会の一つのコンセンサスとして、多国籍軍の駐留については、一つの政治プロセスがある時点に至るまでという、これはすなわち、考えれば来年の一月の国民議会選挙があって、また来年の十二月末までに憲法を樹立して本格的政府が樹立されるというこの来年一年間をめどに、フランス、ドイツのようなアメリカの行動に反対をしていた国も含めて、また、イランとか、そういったイラクの中東周辺諸国も含めた国際社会のコンセンサスとして、来年一年間の多国籍軍の駐留を認めた決議がなされているというふうに私は理解をしておりますけれども、こういったことを踏まえながらであっても、今自衛隊が撤退することが我が国の国際社会における地位から考えた国益につながるのかどうか。この点は、御意見があればお伺いしたいと思います。

前原議員 一つだけまず申し上げたいのは、立場は違えども、自衛隊が今まで一年間やってこられたことについては、私は高く評価をしています。大変な地域において、危険な状況において、あんな武器使用の手足を縛られた状況の中で、しかも治安はオランダ軍は守ってもらって、オランダ軍に何かがあっても自分たちはオランダ軍に何もできない、そんな状況の中でしっかりとやってこられている、その現実については、私どもは評価をしております。したがって、ぜひ無事に帰っていただきたいという思いを持っているということはまずお話をしたいと思います。

 その中で、今、自衛隊がサマワでやっていることは三つあると思うんです。一つは水、給水の問題、それから地元の壊れた施設あるいは道路等の復旧、そして医療支援などであります。一番最後は、いろいろな器具を入れたりということで、これはむしろODAの形でやられているという話を聞いておりますし、前者二つにいたしましても、これは日本の草の根無償の援助で、ムサンナ県の広い地域で、今自衛隊が行っている以上の給水能力のある施設の建設が完成をしたという話も聞いております。

 それから、復興支援については、いろいろな、傷んだ道路、建物の支援につきましては、先ほど鳩山提出者がおっしゃったことの繰り返しになりますけれども、自衛隊自身がやるのではなくて、地元の人たちを雇って雇用の機会を生み出す中で、いかに地域の経済にもプラスの影響というものを与えていくかということが大変重要なことでございます。

 そういう意味では、資金的な援助というのは全体で五十億ドルやると表明している。これは、国際社会に対する説明責任というのは、五十億ドルというのはアメリカに次いで二番目の多額の援助を出すわけですし、それについて我々は否定もしておりません。また、債権放棄についても一兆円近くに上る可能性がある。そういうことを含めてやると、日本のやり得ることは十分に果たせているということで、六百人の自衛隊がサマワに居続けることがイラク全体に影響を及ぼすということにはなっていないというふうに私は思っております。

丸谷委員 これだけの資金提供をしたので自衛隊はもう撤退します、そういうおつもりでお答えになったのではないというふうには思いますけれども、なかなかそこは、やはり、国際社会に対する責任あるいは説明にはつながらないのではないかというふうに私は考えます。

 昨年の六月二十七日に本委員会で質問させていただいたんですけれども、自衛隊を派遣することに関して、派遣をすればいいということではないというふうに私は考えております。出口政策というのも必要なのではないかという点で本委員会で質問させていただいたんですけれども、その際に、官房長官のお答えの中で、一義的にお答えするのは難しい、ただ、一般論で言えば、イラク国民によるイラク国家の再建の進展とか国際社会の取り組みの状況を総合的に判断して決めることであるというような御答弁をいただきました。

 昨年の六月では一義的には難しい状況であったかもしれませんけれども、先日、大野防衛庁長官は、NHKの番組の中で、来年十二月に発足予定のイラク新政権との話し合いの中で、これは、多国籍軍の任務が終了するということもあって、一つの区切りではないかという趣旨の御発言をされています。今、日本政府は、この自衛隊の進退に対して、出口政策というのをもうそろそろ明らかにしていくべきだと思いますし、また、先日、朝日新聞が行った世論調査の中でも、回答者の六七%が撤退の時期というものを求めているという調査結果が出ております。

 この出口戦略について、十二月というのが一つのめどになるのかどうか、この点は政府にお伺いします。

今津副長官 撤退の時期ですけれども、願っておりますことは、イラク復興支援というものがきちっとでき上がって、自衛隊が、苦しい中でも立派にその任務を果たして、そして胸を張って全員で帰ってくるということが私たちが一番願っていることでございます。

 当面の、いつ撤退をするかということは、基本計画には派遣期間が十二月十四日ということになっておりまして、それ以降どうするかということは、現地の治安状況あるいは復興支援の状況などを総合的に考えて決めていくということになると思います。

 大野長官の発言につきましては、今先生からお話がありましたけれども、プロセスの問題で、多国籍軍の仕事が、来年の十二月にイラクの国民会議の新しい憲法によって新しい政府が成立をするという時点で終了するということを考えて御発言なさったということだと私は認識をいたしております。

丸谷委員 質問時間が終わりました。

 実際に、私は、出口戦略というのは今日本政府に対して求められていることであり、また国民に対する説明というのも十分に行うべきであるというふうに考えております。また、総理の口からそういったことを国民に対して説明していく必要性というのも、きょうの審議を通しまして十二分に感じたところでございます。

 本年の四月にスペインが撤退したときに、スペインと関係のあるような中南米各国にも動揺が広がりました。また、さきに質疑の中で述べましたように、来年いっぱいというのが多国籍軍の活動の一つの政治的なコンセンサスで、国際社会のコンセンサスである中で、我が国が何をするべきなのかということを考え合わせながら自衛隊の活動の継続というのはしていくべきなのではないかというふうに感じた感想を述べて、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

船田委員長 次に、本多平直君。

本多委員 民主党の本多平直でございます。

 きょうは、せっかく我が党を含め法案を提出しております。まずは提出者に、提出理由はるる述べられているわけですけれども、特に、一生懸命審議をしていってもなかなか政府側からかみ合った答弁をいただけない大変悔しい思いをしてきたこの問題に関して、そういう思いを含めて、提出者のこの提出への思いをお聞かせいただければと思います。

末松議員 先ほどから提出理由についてはいろいろと述べられていますので、私は思いを述べさせていただきます。

 イラク戦争を始めたことそのものについては、大義がないとかあるいは国際社会の一致した合意がなかったとか、いろいろあります。また、紛争下で自衛隊を派遣するという憲法上の問題、こういったものをそもそも論として私ども持っております。

 ただ、今考えなきゃいけないのは、ずっと、ロケット砲も八発ぐらい自衛隊の方に、いろいろと迫撃砲も受けて、安全確保義務も本当に果たし得なくなった。それを政府の方が、まだ非戦闘地域だというような虚構の中で説明をしているということ。これはやはり私どもとしてきちんと、十二月十四日に基本計画が終わるわけですから、そこに対して区切りをつけるということが一番重要だろうと思います。

 先ほど申し上げましたけれども、政府が、じゃ、いつ撤退するんだということを明らかにしていない。これからまたかなり状況が厳しくなって、自衛隊の方々にもし人的被害なんか起こったら、そこで逃げ帰るのか。あるいは、オランダ軍が来年三月に撤退をした後、今度はイギリスに大きな負担が、治安の負担がかかるわけですよ。逆に日本の自衛隊がいるがためにそんな負担が出てくる。こういうことも含めて、はっきりと撤退の時期を示さなきゃいけないということがあります。

 私どもは、国内法に沿って、先ほど丸谷議員の御質問がありましたけれども、私たちはできる範囲でできる協力をする、みんな派遣国はそうやっているわけですよ。我々も国内法に従って正々堂々とこういう形で撤退をすべきだと言っているのでございます。

本多委員 ありがとうございます。

 当然のことながら、私の思いも一緒でございまして、撤退を求めていくという気持ち、そしてそのために今あらゆる手段を、法律の面からも、そして実態面での議論からも進めている、そういうことだと理解をしております。

 そういった観点から、実は、きょうは政府の方に、もう少し法律の議論をさせていただきたいと思っています。

 それで、前回のこの委員会で、ファルージャの問題が町村大臣との間で、特に神風委員との関係で論争になりました。そこで大変政府の答弁は迷走いたしまして、せっかく神風委員が時間をかけて一生懸命質疑をして、ファルージャは戦闘地域ではないという町村大臣の答弁を引き出したわけですけれども、それを結果としては撤回して、どちらでもないという立場に戻られたわけです。

 ここは、理事会でもそういう報告をされたので、大変遺憾なことですけれども認めたとして、この議論の中で、町村大臣は、ファルージャの武装勢力は国または国に準ずる者ではないとここでも言っているんですね。こちらの方もあわせて撤回をされているのかどうかをお答えください。

逢沢副大臣 自衛隊が人道的復興支援を行う、それはいわゆるイラク特措法に基づいて派遣がされているわけでございます。その要件は、言うまでもないことでありますけれども、非戦闘地域においてのみ自衛隊の活動が許される、また、そこで展開をされる。それは、現に戦闘が行われていないということ、そして、実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる、そういう地域であるということを何度も確認させていただいているわけでございます。

 したがって、自衛隊が活動している地域においては、現に戦闘が行われていない、そして、計画をしている活動の期間を通じて戦闘が行われることがないと我々は判断をしている、認められているということであります。

 したがって、この法律に基づいて言えば、国あるいはまた国に準ずる組織によるいわゆるイラク特措法によるところの戦闘行為は行われていないという判断に立っているわけでありまして、あくまで、自衛隊が活動を行うことを想定する、あるいは行うことを計画する、その地域がどうであるかという判断をこの法律は要請しているというふうに私どもは判断をいたしております。大臣もそういった趣旨に基づいて答弁をさせていただいているというふうに承知をいたしております。

本多委員 副大臣には、今お答えをいただいているとは認識できません。

 町村国務大臣の答弁、もう一回読み上げます。今申し上げたように、法律の定義を私は述べたのであって、ファルージャで行われている戦闘の相手方は国または国に準ずる組織ではないということだけを申し上げたのですと。

 つまり、戦闘地域の話に関してはぼかそうが撤回されようが勝手ですけれども、ここだけは確認をしたいんです。ファルージャでアメリカやイラクの暫定政府が戦闘している相手は国または国に準ずる組織ではないということだけを、これだけは、町村大臣は申し上げたと言っているので、これも含めてきょうの理事会で何か勝手に撤回をされるのか、ここは認めていただけるのか、その確認をさせてください。

逢沢副大臣 先ほど申し上げたとおり、あくまで我が国がつくらせていただいたイラク特措法に基づく、その判断によって活動を行うわけでございます。

 したがって、今委員御指摘の点について、その点も含めて、大臣は誤解を与えたという意味で撤回をするという趣旨を申し上げさせていただいた、そのことをきょうの理事会でも確認させていただいたというふうに承知をしております。

本多委員 こういう非常に大事なことを勝手に理事会で撤回されて、私たちにも伝わるんでしょうが、神風委員はこのことだけに絞って一生懸命議論したわけですよ。それに関して、大臣がこういうふうにはっきり言ったことを勝手に撤回されて、全然議論が進まない。

 私は、そもそもこの法律、皆さん、与党の方もおかしいと思っている方は多いと思うんですけれども、非戦闘地域の話がおかしい以上に、また、この国または国に準ずる者というその下にある定義も全く今のイラクの実情にはそぐわないものになっている、これは非常に問題だと思うんです。もし皆さんがこれを延長したりして、今後も政策としてイラクに自衛隊を残すとしても、私は、こんな法律をもとに残していくというのは本当におかしいと思っているんです。

 ですから、皆さんの政策をとるにしても、つまり、国または国に準ずる者、ファルージャであれだけの戦闘が起こっても、その対象が国に準ずる者ではないというような理屈に立つと、ありとあらゆるものがこの範疇に入らない。範疇に入らなくても自衛隊の安全は別な条項で守っているからいいんだと……(発言する者あり)いや、よく読んでいるんですよ。当然よく読んでいるんですよ。しかし、私はそこはおかしいと思っております。

 そこのところを、なぜこれだけ、私はもちろんサマワの話を今しているわけじゃありません。サマワの話を議論すれば、今、皆さんの政策にとって非常に遂行が難しくなるわけですね。ですから、サマワの当てはめをしろという議論であれば、皆さんがそこを避けたい気持ちはよくわかって、ごまかされてもいいんですが、なぜファルージャまで避けるのかということは、全然別なところなわけです。

 そこで、明らかにわかりやすい例としてファルージャを出したときも、一たん町村大臣は自然な感覚で答弁をしたことをなぜか撤回する。やはりここに、法律上、ここで認めちゃうと、ありとあらゆることが白になっちゃうのか、ありとあらゆることが黒になっちゃうのか、本当に法律が、この条項は憲法を担保するためにあるわけですけれども、それができなくなる、そういう欠陥を示しているものだと、こういう大臣が明言したことを撤回するというような迷走を見ても明らかであると私は思っています。

 もう一点、法制局がこの法案をつくるときにこういう議論をしているんです。これはサマワの話に当てはめでしたいと思うんですけれども、まずその前提として一つお聞きをします。

 この戦闘地域の対象である主体、国または国に準ずる者というのは、イラクの国内にあるAとBというものが戦闘をするかしないかということだと思うんですけれども、当然、日本の自衛隊が明らかに攻撃された場合は、これは戦闘とみなすんでしょうか、法律の解釈として。

阪田政府特別補佐人 ちょっと突然のあれで、真意をつかんでいるかどうかあれですけれども、自衛隊が攻撃された場合は戦闘地域かというお話ですけれども、それはまさに自衛隊を攻撃する相手方がどういうものであるかということ、それから、そういうものの組織的な意思に基づく攻撃であるかどうかということによって決まるのであり、非常に極端に言いますと、盗賊団の集団のようなもので武装した者が襲ってきたとしても、それは戦闘行為である、戦闘地域になるということはないということであります。

本多委員 だとすると、今サマワの宿営地に攻撃が、散発的か継続的かは別にして、かけられているわけです。主体が問題なわけですが、この主体に関しては、さんざん大野防衛庁長官は調査中と言っていますが、まだ調査中なんでしょうか。

今津副長官 四月から八回、迫撃砲、ロケット砲が宿営地の外あるいは中に撃ち込まれているわけでありますけれども、さまざまな現地の情報を総合的にとってみましたが、国または国に準ずる者という判断はいたしておりません。したがって、戦闘行為とは考えておりません。

本多委員 国または国に準ずる者と断定していないことはわかりました。

 では、そうではないという断定もできているんですか。

今津副長官 今委員がおっしゃったように、国または国に準ずる者ではないというふうに考えているわけであります。国または国に準ずる団体あるいは組織ではないというふうに受けとめているわけです、さまざまな情報の結果。

本多委員 まず、その根拠を伺いたいんですが、多分、どうせ出てこないと思いますので、私、確認をしたいんですが、この法律をつくるときに法制局長官はこう言っているんですよ。

 そんなことを言っても、とっさの場合に、突然起きた紛擾事態が、相手側が盗賊団なのかあるいは国に準ずる組織なのかわからないではないか、そういう場合、見きわめがつくまでの間、とりあえずその活動は一時休止するなどして活動の継続を差し控えて、それで法律上の要件が満たされていることが確認された後に活動を再開するということであるべきであると考えますと述べているんですよ。

 要は、今サマワにしかけられているのを、継続性とか別な要件はまた判断しますけれども、国または国に準ずる者ということに関しては、勝手に、大野長官は調査中だったらしいところから何か結論が出たようですが、もしそれが調査中であるとしたら、活動を一時休止すべきという判断になると思いますが、法制局長官、この答弁は変わっていませんね。

阪田政府特別補佐人 今の御紹介があった答弁は昨年七月十日の参議院外交防衛委員会におけるものだと思いますけれども、これは御案内のように、その直前、同じ委員会で、当時の石破防衛庁長官も同趣旨の答弁をされております。

 そこで言いたかったことは、今御紹介のあったようなそういう運用をすること、それが対応措置の実施を非戦闘地域に限るという観点からイラク特措法八条五項の規定の趣旨に合致するんだということでそういう趣旨の答弁を申し上げているということでありまして、そういう考え方は私どもとしては今も変わっていないということであります。

本多委員 だとすると、この主体がどうかということが大変大事になると思うんですよ。見きわめがどっちかでついたんだったらそれで判断すればいいんですが、どういう根拠で国または国に準ずる者じゃないと判断しているんですか。

今津副長官 何回も答弁しているんですけれども、国及び国に準ずる組織だとは判断をしていないということであります。

本多委員 だとしたら、見きわめがついていないということでよろしいですか。

今津副長官 何回も答弁しますけれども、先ほど鳩山先生の御答弁の中にもありましたけれども、例えば部族間の中での雇用に関して不満を持っている人がしたらしいとか、国及び国に準ずる者であるというそういう確定した事実はないということなんです。実証されていないということなんです。

本多委員 そちらの方に確定した事実がないということは、石破長官はアルカイダも国に準ずる者という例に出しているぐらいなんですよ。あんな混乱状態の中で、どこがやったのか犯人を確定しないで、どうしてそんなことが言えるんですか。

今津副長官 各種の情報を総合的に勘案して、当該行為を行った主体が国または国に準ずる組織とは考えられない、その攻撃の態様も踏まえれば、当該行為が戦闘行為か否かを判断することは可能だ、したがって、そういう判断をしたということです。

本多委員 いや、戦闘行為とかの話をしていなくて、主体がわかっていないんじゃないんですか。それがだれかわかっていないものがなぜ国または国に準ずる者ではないという判断をされたんですか。なぜという理由と根拠を聞いているんです。

今津副長官 だから、八回、迫撃砲、ロケット弾、宿営地の外あるいは中。しかし、信管がない場合もありましたね。そういうことで、イラクの警察だとかあるいはオランダ軍の情報だとか、それから、外務省の職員も五人出向しておりますから、そういう情報をとったり、いろいろな状況を考えて、一体だれが迫撃砲を撃ったんだろう、ロケット砲を撃った犯人はだれなんだろう、そういう総合的な調査や情報交換をしっかりとやってきたわけですよ。

 しかし、この犯人が、国及び国に準ずる者ではない、ないというか、それであるという、そういう事実がいまだに確定されないということなんです。国及び国に準ずる者であるという確証がないということなんです。

本多委員 ということは、さっき法制局長官がおっしゃった、見きわめがつくまでの間ということなんじゃないんですか、今のイラクのサマワの状況は。法制局長官。

阪田政府特別補佐人 今の事象が、先ほど委員が引用された石破長官の言葉をかりれば、謙抑的な運用をすべき場合に当たるかどうかというのは、私ども判断する立場にはないわけですけれども、先日、たしかこれは首藤委員の質問主意書に対して政府がお答えしている部分があるわけです。

 サマワにおけるロケット弾等の砲撃をどのように評価するかということに対しまして、「政府としては、法に基づき自衛隊の部隊がイラクに派遣されてから平成十六年十一月十五日までの間、」今はちょっとさかのぼっていますが、その後そういう事件はないというように承知しておりますので、今までと言っても変わりないと思います。「サマーワにおいて法第八条第五項の要件に該当するような状況が生じたことがあるとは考えていない。」

 したがって、そこは戦闘行為があったという判断をしたことはないということで、ある意味見きわめができたというふうに認識しているものだと理解しております。

本多委員 残念ながら時間が来たようなんですけれども、こういう議論を何か神学論争だとかいろいろ言われますけれども、こういう当てはめができないようなおかしな法律を出したのは、政府と与党なんですよ。ですから、私たちはそれに合わせてこういう議論をせざるを得ないわけで、そこのところは、何か非常に自衛隊の方の生命を危険にさらして、さらに派遣の延長をされるようですけれども、されるにしても、こんなおかしな法律でやられたら本当にたまらない。

 そして、この延長にしても、撤退の時期というのを、めどを戦略的に持ってやっていただかないと、オランダなんかは、別にアメリカにひんしゅくを買わずに、いろいろ理由をつけながら撤退をうまくしているわけですよ。こういう戦略性を持ちながらやっていただきたいということを強く申し上げて、私の質問を終わります。

船田委員長 次に、吉良州司君。

吉良委員 十一月に民主党に入党いたしました吉良州司でございます。

 私は、さきの通常国会、そして今臨時国会、本来ならば、イラクをテーマとして、二十一世紀における日本の外交、安全保障のあるべき姿を議論し、また、年金をテーマとして、二十一世紀における社会保障のあるべき姿というものについて議論すべきだというふうに思っておりましたが、残念ながら、枝葉末節の議論が多く、自民党は、数の論理を背景にして、結論先にありきということで説明責任を果たさず、かわしの対応に終始し、また同時に、私も所属した党ではありますけれども、民主党も、敵失を追及するということが中心になったというふうに思っております。

 その意味で、このイラクの問題で、ぜひ民主党に、二十一世紀におけるあるべき外交、安全保障について国民への説明責任を果たしていただきたい、そういう思いから質問をさせていただきたいと思っております。

 今回の特措法の廃止法案、これ自体は、法律論、法律解釈論からいえば、先ほどから出ておりますように、非戦闘地域、そして戦闘地域という概念そのものがフィクションである、仮にそれが成立したとしても、非戦闘地域というものがもう成立しなくなっている、このことについては賛同しますので、法律論からいけば即撤退すべきということは、全く異論がないと思っております。

 しかし一方で、提出者の代表である鳩山ネクストキャビネットの外務大臣も、冷戦下における一国平和主義というものは時代の任務を既に終えた、世界の平和と、それからそれによってもたらされる自由貿易、そして自由な経済活動が日本に対して最大の利益をもたらす、日本が国際平和の最大の受益者だ、そのために、日本自体が国際平和の維持、創造に積極的にかかわっていかなければいけないという持論をお持ちだと思っておりますし、それを鳩山試案ということで憲法試案として開示されております。

 そのことについて、民主党を代表するということになるのか、鳩山提案者の日本の外交、安全保障におけるあるべき姿というものについて簡単に開示願いたい、このように思います。

鳩山(由)議員 今、吉良委員がお話しされましたように、私どもが今回イラク特措法廃止法案を提出しました理由は、現下の憲法のもとで、イラク特措法という非常にフィクション的な法律ができているということに基づいているわけでございまして、私は、今、吉良委員がお尋ねの憲法改正の試論というものを自分自身で考えております。

 まず、お断りを申し上げれば、その試論というものは、必ずしも民主党の中で正論となっておる議論ではございません。これから議論をしてまいらなければならない話であることをまず申し上げておきます。その中で、その意味から申し上げたいと思っていますが、私はやはり、この五十年間、日本が世界の中でしっかりとした国際的な役割を果たし得るような、そんな憲法に変えていかなければならないと思っております。

 いわゆる憲法九条でございますが、その憲法九条には、国際的な役割のあり方も書かれておりませんし、また自衛権ということに関しても何も書かれておりません。このようなことでは、将来にわたって立派な国としての尊厳を保つ行動ができないと私は考えております。

 その意味で申し上げますが、憲法九条の第一項に関しては、私は、そのまま、やはりこれはパリ条約なども含めて考えたものでありますだけに、いわゆる侵略戦争というものは行わない、国際紛争を解決する手段としての武力行使はこれからも行うべきではないということは、日本国として守り続けていかなければならないことだと思っています。

 しかし、あわせて、今日的な国際的な環境にふさわしい行動をするためには、やはり、例えば国連、あるいは将来的には、アジア太平洋にEUのアジア版のようなものができたときには、そういったものを見据えて考えるべきだと思いますが、まずは、それがありませんので、国連というものの決議が得られたものであるならば、しっかりと日本としても積極的な役割を果たすべきだと考えております。

 ただ、その場合に、さらに国連のもとで集団安全保障という行動になる場合に、さらに申し上げれば、日本国として主権の一部を制限する、例えば国連の指揮下において行動をするということも十分にあり得る形をとるべきではないかと思っております。

 さらに申し上げれば、自衛隊のことに関しても一言も付言されておらない憲法でありますだけに、自衛軍というものを持つ。それは、持つということによって、集団的あるいは個別的いかんにとらわれず、自衛権というものは当然保障するということになります。

 その場合に、例えば一つ一つに照らしてどのような行動が今回なし得るかという議論が出てくるかと思っておりますが、まずはイラクの戦争に対して、英米軍の戦争に日本が参戦できたかということになれば、私は、新しい憲法試論の中でもそれは不可能だと。すなわち、国連の決議というものがないまま行動したわけでありますだけに、それは無理だと。

 しかしながら、戦争が終わった後のイラクの復興支援に関して何らか積極的な活動をしなければならないという状況の中で、国連決議というものがしっかりと存在をするという状況であるならば、そのもとで日本として行動をする、それは自衛隊なら自衛隊として行動をすることは、新しい憲法試論の中でも可能となります。

 ただ、それをなすべきかどうかということになれば、当然、国益というものをさまざま考えた中で結論を出すべきだということを申し上げておきます。

 以上です。

吉良委員 今の答弁では、やはり日本としても積極的な国際貢献を果たしていくべき、そしてイラクの復興支援についても、原則的には積極的に果たしていくべきと。ただし、今イラク特措法、またその延長というものについては、先ほど来言っていますように、そもそも手続論、法律論として全く適合し得ない、こういうことで反対をされているというように了解をいたします。

 その意味で、非常に厳しい質問かもしれませんけれども、鳩山提案者また民主党の、先ほど言いました日本の国際貢献のあるべき姿というものを語っていただく意味も含めまして、もし今回、仮に鳩山試案に基づく憲法がこの国にあったと仮定し、そして鳩山提案者が総理大臣であったと仮定した場合に、一年前に自衛隊、米国からの要請があったときに派遣の判断をしたのか、しなかったのか。そして、仮にしたとして、このように状況が悪化してきたときに、今、撤退するという判断をされるのかどうか。非常に厳しい質問かもしれませんけれども、先ほどの国のあるべき姿ということに照らして、お答えをいただければと思っております。

鳩山(由)議員 今のお尋ねは、ある意味で本質的な議論であって、すなわち、日本がそれなりに活動というものが制限されないで日本の国益のもとで判断がなされる場合に、それでも今回イラクに対して自衛隊を派遣し得たかどうかというお尋ねでございます。

 私は、やはりこれは、先ほど申し上げたように、国益に照らして、参加をするという道をとる方法もあったでしょうし、参加をしないという方法もとり得たと考えています。しかし、結論として申し上げれば、私は、今回は参加をさせない方が正しい答えであったと考えております。

 なぜかを申し上げます。それは、例えばアメリカ、日米関係ということを考えたときに、それは日米関係に対して影響がないとは言えません。しかし、先ほど申し上げたように、日米関係というものが、基本的に日本が沖縄を中心として基地を提供しているということは大変にアメリカの世界戦略のために有用なわけでありますだけに、このようなことで日米関係が崩れるようなことがあるほどもろい日米関係であってはならないし、あるべきではない。少なくとも、そのような日米関係に育て上げていくことが重要だと私は思っています。

 一方で、それならばイラクのためにどうかという話になります。イラクのために行う行動として、自衛隊の活動以上に、私どもこの間各地を見せていただいた中で、もっと別の形の方がはるかに役に立つ。さらに、先ほど前原提出者が申し上げたように、決して自衛隊の活動に対してけしからぬと申し上げるつもりもありませんし、法律のもとで行かれた自衛隊の方々に対しては敬意を申し上げる。しかも、無事に帰ってきていただきたいと思う気持ちばかりでございますが、しかし、それ以外の方法ではるかに、すなわち国民の税金を使って十分な役割を果たすイラクに対する支援のやり方がある。

 そのことを考えたときに、最終的に申し上げたいのは、今回の戦争は、イラク戦争あるいはその後の状況を考えたときに、これは、私もパレスチナとイスラエルのあの紛争も見てきたんですが、結局は宗教的な戦いの色彩というものが極めて強い。日本は今まで、ある意味では、キリスト教を信じておられる国々、あるいはユダヤ教も含めてでしょうが、それとイスラム教を信じている国々、双方にとって、それなりに尊敬をされ、それなりに理解をされている国であった。それが、一方に偏する行動をとったというふうに見られることによって、アラブ諸国に対して偏見を持たれる可能性が極めて高い。

 とすれば、やはり結論として、今回新しい憲法ができたとしても、イラクに対する自衛隊の派遣は、私としてはとり得なかったと考えています。

吉良委員 お考え、よく理解させてもらいました。

 民主党として、日米同盟、そして国際協調、この二つの外交の柱を最重視していくという方針でございますけれども、今の問題は、先ほど来御指摘のように、小泉政権が余りにも日米同盟重視、米国重視というふうに陥っていると思います。以前の予算委員会の答弁だったかと思いますけれども、小泉首相が、国連が日本を守ってくれるのか、守ってくれるのはアメリカだけじゃないか、このような、正確かどうかはわかりません、私も出ておりましたので、そういうたぐいの発言をされたというふうに思っております。

 その意味で、今回のイラク派遣というのは、ある意味では、サマワの地で、砂漠の地において日本海の防衛に当たれというのが今の自民党政府の考え方だというふうに思っております。

 そういう中で、日本が仮に今回撤退をするという場合に、今、米国がドイツに対して見せているような幾分冷たい対応、これが日本に対しても生じないとは限らない。もちろん、基地を提供している日本、その日米関係はそんな脆弱なものではない、そう信じたい、そうあるべきという議論はわかりますけれども、信ずれば救われるというには、やはり日本人の命、安全を守る立場としては弱いかというふうに思っております。

 そういう意味で、日本が期待するよりもアメリカの日本に対する防衛意識が仮に下がったとした場合に、日本としての、対北朝鮮なり台湾海峡有事等を含めたこの北東アジアに対する危険に、日本の独自性、独立性をより高めるということについてどのようにお考えなのか。これは恐らく前原ネクストキャビネットの防衛庁長官がふさわしいと思いますが、そのことについてのお考えを賜りたいと思います。

前原議員 先ほどおっしゃったことで、言葉じりをとらえるつもりはございませんけれども、我々は政府・与党の敵失を追い求めるようなイラク政策というものを出しているとは思っておりません。

 一つ、法律論は、先ほど吉良委員がおっしゃったように、戦闘地域、非戦闘地域の設定そのものについての問題点、それから第九条の安全確保の状況というものについての疑義、これが二つの大きな柱でございますけれども、そもそももっと大きな理由というのは何だろう。

 例えば、イラクは結果的には破綻国家になったわけですね。まあ、アメリカの攻撃によって破綻国家になったわけですけれども、これから恐らく、他国の攻撃もしくはみずからの内乱によっていろいろな破綻国家が出てくるんだろう、それをどのように国際社会の中でうまくマネジメントして、国際社会に復帰させて、そして、それをうまく不安定要因にならないように国際社会が協力していくかということが、私はいろいろなケースが出てくると思うんです。

 その場合にイラクというのは一つのケースだと思うんですけれども、そのケーススタディー、大事なケーススタディーが悪い方向に行っている。もともと攻撃をしかけたアメリカの理由も大量破壊兵器だったわけでありますけれども、それがなかったということもありますし、また、実際フセイン政権が倒れてからのやり方、先ほどのファルージャの問題を含めて、極めてまずいやり方をして、そして、どんどんどんどん憎悪を招いている。

 これに対して、同盟国であれば、もう一度国際協調の枠組みとか、この成功しなきゃいけないケーススタディーというものがまさに泥沼化の道を歩んでいて、これはお互いにとってよくないんじゃないかということをしっかり議論し合えるというのが、まず私は同盟関係のあるべき姿ではないかということを考えております。

 そういう意味で、何もしないということではなくて、そういう国際社会の再構築、国際協力の再構築というものを図ることの提言をできるのが、まさにイギリスとかオーストラリアとか日本とか同盟国ではないかということを、我々は日米関係を重視する立場からも申し上げてまいりました。

 それから、御質問のところでございますが、日本もアメリカもボランティアで同盟関係を結んでいるとは私は思っておりません。アメリカはアメリカの国益に基づいて日本との同盟関係を結んでいると思っております。したがって、今回イラクから撤退した、あるいは参加しなかったということによって、さまざまな問題点が出てくるのはそれは事実でございましょう。

 しかし、それをもって、では日本との同盟関係をやめてしまうということが果たして得策かどうかと考えたときには、私は全くそういう結論にはならないんだろうと思っております。ただ、逆に、イラクに協力をしたから北朝鮮の問題は全面的にアメリカが協力してくれると考えるのも、私は余りにも甘い考えだというふうに思っております。

 したがって、その前提に立てば、お互いが国益に基づいて同盟関係を結んでいる、しかし、自分の国はやはりきちんと自分で守るということを遅まきながらそろそろやっていって、同盟関係は維持するけれども、いざというときにはノーと言えるような、そういう毅然とした、自分自身の城を確保しておくということも私は今後の防衛政策としては極めて重要じゃないかというふうに考えております。

吉良委員 民主党は、反対政党ではなく、本当にビジョンを持って、かつ国民に提示していく、そういう立場の党であるということを今確認をさせてもらいましたし、これからもぜひ進めていっていただきたいと思っています。

 本当は、そのために、撤退後のイラクの復興支援についてお聞きしたかったのでありますが、残念ながら時間が来てしまいました。できることならば赤嶺先生にその辺も聞いていただくことを念じながら、質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

船田委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 私は、今回の廃止法案を提出された各政党に伺っていきたいと思います。

 先ほど来、与党の方から、イラクはこの一年間成功しただとか、今撤退をすれば日米同盟関係はどうなるかだとか、いろいろ見解、質疑がありました。十二月十四日でイラクへの自衛隊派遣の期限切れを迎えるわけですが、政府はそれ以降も延長する構えのようであります。

 イラク特別措置法を廃止し、そして自衛隊を撤退させるべきと考える理由について、最初に民主党の提出者の方からお伺いをしたいと思います。

末松議員 提案理由、るる申し上げておりますように、最初のそもそも論、民主党のこの特措法に対する反対という立場のそもそも論のほかに、先ほどから申し上げておりますように、サマワにおける状況はどんどん厳しくなってきている。そういうことを踏まえて、この期限が切れる十二月十四日に向けて、今直ちに撤退することが日本の国益に沿うというふうに考えているわけであります。

 一部にアメリカとの関係を云々する向きは当然ございます。私ども考えるのは、あのサマワにおいて自衛隊がやっていることは、実は、この一年間、イラク人にきちんと教え込んで、そして機材も供与すればできることだ、できないわけはない。ただ、その中で自衛隊がずっといるということは、すなわちアメリカに義理立てして、そしてアメリカへの人身御供のような形でいるんじゃないかとも私は個人的には考えております。

 そういったことを踏まえれば、やはりそこで逆に自衛隊が何か人的被害なんかが出れば、それは日本国内でも、これはアメリカのために人的被害が出たんじゃないかと、逆の対米非難ということもあり得ると思います。そういうことも踏まえて私どもはこの法案を提出したわけであります。

赤嶺委員 次に、同じような質問、穀田提出者、お願いします。

穀田議員 私は、三つ理由があると思うんです。

 そもそも、イラク戦争は国連憲章違反の侵略戦争です。査察の継続を求める圧倒的な国際社会の世論を踏みにじって行われたものです。国連安全保障理事会の認定のない違法な武力行使であることは明白です。このことは、アナン国連事務総長が国連憲章に照らしても違法であると言明していることからも明らかです。しかも、この戦争の口実とされた大量破壊兵器の保有が虚偽であったこともアメリカ自身が認めていることであります。

 そして第二に、全土で戦闘の継続するイラクに武装した自衛隊を派兵することは、明白な憲法違反であると考えるからです。ましてや、武力行使を任務とする多国籍軍への参加が憲法上認められる余地は一切ありません。さらに、最近、米軍はファルージャで国際人道法違反の住民虐殺を行っているが、こうしたアメリカ中心の多国籍軍の一員として自衛隊が居座り続けることは、日本が戦争犯罪の共犯者になることだと考えます。

 第三に、しかも自衛隊派兵は、イラク特措法の要件からいっても成り立たなくなっていることは明らかです。もともと非戦闘地域という要件自体、政府が自衛隊派兵の違憲性を言い繕うために虚構の論理をつくり出しました。この一年の経過は、その虚構さえも通用しなくなっていることを示しているんじゃないでしょうか。今や、イラク全土は非常事態宣言が出され、自衛隊の宿営地にも攻撃が繰り返される事態となっています。大体、自衛隊が宿営地に閉じこもっているということは、周りじゅうが戦闘地域になったということをみずから証明する行動ではないかと私は考えます。

 このような事態に至ってなお、自衛隊の活動するところは非戦闘地域だなどといいかげんな答弁で派兵継続することは断じて許されないと思っています。

 先ほど来の議論の中で明らかになっているように、もともとイラクに派兵する根拠が崩れ去っているにもかかわらず、なぜ固執するか。結局、日米同盟、つまりブーツ・オン・ザ・グラウンドというアメリカの要求にこたえるにほかならないということは明らかとなったんじゃないでしょうか。

 私は、自衛隊を直ちに撤退させ、イラクの主権確立を本当に応援する、憲法九条を持つ国にふさわしい非軍事の復興支援こそ求められていると思います。

赤嶺委員 同じような質問でありますけれども、社民党の横光提出者、お願いします。

横光議員 私たち、こうして三党で廃止法案を提出したわけですが、政府・与党の方は、自衛隊の期限が来てもさらに延長しようという流れになっております。しかし、私たち、この委員会の中でも、これまでの質疑を通して、本当に自信を持って自衛隊の延期をしようとしているのかと思えば、そうでもない。やはり非常に不安の中で、与党の皆さん方も非常に不安の中でその延長という考えに賛同しているという気がしてならないわけですね。

 非常に私は、ここになぜそのような状況になっているかということを考えると、やはりこれは、すべての発端から無理に無理を重ねてきた結果ではなかろうかという思いがいたしております。いわゆるイラク戦争からすべて、私は、無理に無理を重ねた結果がこういった廃止法案につながってきているんだという気がするわけです。

 それで、この法案を提案した理由は、先ほどからるるお話がございますように、やはり戦争そのものの大義がなくなった、そして、その大前提としてつくられていた特措法も、結局は、国連憲章、国際法に違反するということが明らかになったわけですので、これはもう当然廃止すべきであるということ。

 それから、このイラクの大変な状況の変化。自衛隊が活動がスタートしたときには、イラクの中でも最も安全な地域サマワを選んで活動を始めたわけですね。しかし、それが一年という期限が来た今日、その間、サマワはどのような状況になったかということをやはりしっかりと認識しなければならない。その状況よりさらに安全になったのならば、恐らくこういった法案は、法律上できているわけですから、我々たちも出すことはできなかったでしょう。

 しかし、なぜ出さなきゃならなかったかということを考えたときには、この一年間のサマワの、イラク全土の状況の変化はもちろんですが、あの安全と言われたサマワまで今非常に状況が厳しくなっているということ、こういったことを考えたときには、やはり国民の皆様方もそういったことを勘案して、六割以上の方々が、やはり期限が来た以上、一回撤退すべきだという意見があるわけでございますので、そういったことを踏まえて、私たち、しっかりと国民の声を反映させるべく出したわけです。そして、出した以上、しっかりと国会の意思を国民に示す必要がある、そういうことをぜひこの委員会で採決をしていただきたいということでございます。

赤嶺委員 どうもありがとうございました。

 それで、今の廃止法案の提出者の答弁を聞いていましても、さらに、私自身のこの一年間、イラクの問題での論議にかかわってきた経過からしても、イラクは安定したどころか、テロリストのいなかった国でテロリストが自由に泳ぎ回る温床になっているという点で、一刻も早くこういう事態を解決するためには、自衛隊の撤退、米軍の占領をやめる以外にない、このように考えています。

 そこで、きょう外務省の出されたペーパーによりますと、ファルージャの問題で、十一月八日に開始されたファルージャにおけるイラク治安部隊と駐留米軍による反政府武装勢力に対する掃討作戦については、十一月三十日現在、戦闘はおおむね終了したものの、武装勢力による攻撃が散発的に発生している模様ですということで、ファルージャの戦闘がまだ続いている旨を述べておられます。

 そこで、外務省にも聞きたいと思いますし、それから提出者の各政党にも質問をしたいのですが、米軍のファルージャでの掃討作戦は多数の民間人の犠牲者を出し続けています。先週ファルージャに入った赤新月社の発表によると、犠牲者は六千人以上だ、このように伝えております。

 米軍がファルージャで行っている攻撃をどのように認識しているか伺いたいのですが、まず政府に対して、ファルージャにおける民間人の犠牲、これについてどのように認識しておられるのか。出ているのか出ていないのか、ここも含めて答弁をお願いします。

吉川政府参考人 お答え申し上げます。

 日本国政府が、イラクにおけるアメリカ軍の行動について事実関係の詳細を承知する立場にはございませんが、そういう前提で申し上げますと、今回の掃討作戦に至るまでに、イラク暫定政府それから駐留米軍は、ファルージャの住民に対して事前に市外に出なさいという退避勧告を出し、また、その退避のための手配を進めるというような格好で、できるだけ民間人の被害を回避する、そういう努力をしてきたというふうに承知しております。また、住民の多くが市外に、十一月八日の掃討作戦の前に退避したというふうに承知しております。

 もちろん、軍事作戦において民間人の犠牲者をできるだけ少なくするというのはこれまた必要なことだと考えておりますが、この場でも大臣または総理大臣から累次御答弁申し上げておりますとおり、今回のこのファルージャの掃討作戦というのは、来年の一月三十日の選挙の実施に向けて国内全体の治安を回復するため、法の支配を回復するため、これらの目的のための万やむを得ざる措置であったというふうに私ども理解しております。

赤嶺委員 知り得る立場にないと言いながら、民間人の犠牲は最小限にとどまっているだろうとか、今、国際社会にファルージャから伝わっている事態とは全く別の認識を政府が持っていることを本当に遺憾に思います。

 そこで、今回はちょっと共産党の穀田提出者から先にお伺いをいたしますが、そのファルージャの認識について、いかがですか。

穀田議員 今、外務省からお話がありましたけれども、私はとんでもないと思いますね。

 まず第一に、事実というのは明らかでして、十万人の住民が残っていたということは、いかなる報道でも明らかとなっています。そして、今度の攻撃というのは非常にひどいものでして、四月に行われた攻撃の際に犠牲を告発し続けた病院をまず占拠するということをやってのけました。そして、報道によりますと、建物の屋上から、老人、女性、子供の区別なく、動くものすべてに銃撃を加えたというふうに告発されているとおりでありまして、ましてさらに、モスクで海兵隊員が、負傷した無抵抗のイラク人を射殺する光景は全世界に衝撃を与えました。これらが国際人道法に違反するのは明らかだと思います。

 そして、今、治安を回復するためにというお話がありましたが、本当にそうだろうか。国連のアナン事務総長は書簡を送っていまして、武力行使は、特定住民の疎外感を強めるだけでなく、イラク国民にまだ占領が続いていると思わせる、イスラム教スンニ派勢力の選挙ボイコットを誘発しかねず、治安安定への努力を妨げかねない。まさに、妨げているということが大事なんですね。だから、攻撃中止を呼びかけている最中に攻撃したという点からいっても、不届き千万と言わざるを得ないと思うんです。

 実際に、イスラムの聖職者協会が選挙のボイコットを呼びかける声明を出し、スンニ派、クルド人系など十五の政党が国民議会の選挙の延期を求めるなど、政治プロセスにも重要な影響を与えていることから見ても明らかだと思うんです。

 もう一つ言っておきたいのは、小泉首相がこうした攻撃を成功させないといけないと言ったことに対して、私はけしからぬと思っています。そして、住民虐殺は直ちに中止するよう、アメリカ政府に求めるべきと考えます。

 政府は、昨年十二月の国連安保理で、原口国連大使が、日本人外交官の殺害にかかわってこのように言っています。文民に対するあらゆる攻撃は厳しく非難されなければならず、加害者は国際法にのっとって裁かれなければならないと演説しているんですね。日本人の文民の殺害は許されないが、イラクの民間人の女性や子供やお年寄りの殺害を進める作戦を成功させるべきだという立場は全く許されないと私は思います。

 以上です。

赤嶺委員 同じ質問ですが、民主党の方それから社民党の方、よろしくお願いします。

前原議員 我が党もいろいろな情報ソースを、アンテナを張りめぐらせて、特にNGOの皆さん方でございますけれども、三十万人の住民のうち、二十五万人は避難をされたけれども、五万人の方が残られていて、かなりの数の方が犠牲になったんではないかというふうに我々も承知をしております。そういう意味では、避難勧告をして、そして民間人の被害は極めて少なかったんではないかという政府の発言は到底信じがたいというのが我々の現状認識でございます。

 そういう意味では、まさに、国際法、人道的な観点からいっても、アメリカのファルージャ、二度における掃討作戦というものは極めて大きな問題であり、そしてイラク統治に対する大きな汚点を残し、また、これがイラクの復興に大きなマイナスになっているということを我々は認識しております。

横光議員 今度のファルージャ等での米軍の掃討作戦は、米軍の指揮官が、ベトナム戦争以来の大規模市街戦だと発言している人もおるぐらいに、私は大変な武力攻撃をしてしまったなという気がするんですね。

 先ほど政府の方は回避の努力をしたとおっしゃいましたが、それは当然のことであって、しかし、では全員回避してからやったのかというと、そうじゃない。まだいるのがわかっていながらも攻撃をしかけた。しかも、イスラムの象徴であるモスク、もう本当に激しく攻撃している映像がございました。また、国際法に違反するようなこともありました。それは、武装勢力を放逐するということは必要ですよ。しかし、そのために、結局あれだけの武力攻撃をした。

 では、それでおさまったかというと、おさまっていないわけですね。先ほどお話がございますように、まだ散発的な戦争はある。そして、これはさらに憎しみの連鎖を広げて、千六百人の武装勢力を殺害したと言っていますが、これは何十倍の逆の憎しみの連鎖を広げる結果になるだけであって、やはりここは違った形で解決していかなきゃならなかった問題ではなかろうか。

 私は、非常に批判しなきゃならないファルージャ攻撃だったと思っております。

赤嶺委員 最後の質問で、残り時間は少ないんですが、それでは、その場合の我が国の支援のあり方について、ちょっと時間が短いですので、穀田提出者に伺いたいと思います。

穀田議員 今のお話ですけれども、私は、まず、米軍による無法な侵略戦争と占領支配という枠組みが続けられたままではイラクの復興はあり得ないということだと思うんです。したがいまして、私は、まず第一番目に、占領の中止、撤退、このことが第一の条件だと思います。

 そして、その上で日本が行うのは、非軍事的な支援、これに尽きると思います。とりわけ、日本がイスラム社会との友好、信頼を築き上げてきた経過というのは、日本が、憲法九条を持ち、そしてイスラム諸国を一度も侵略したことのない国だからだったと考えます。その日本が、イラク戦争を支持し、米軍の占領に加担するために軍隊まで派遣したことに対し、イスラム社会の人々の深刻な落胆と非難の声が上がっていることはうなずけます。

 したがいまして、日本は、戦争放棄、戦力不保持、交戦権の否認を定めた憲法九条を持つ国であることを踏まえて、それにふさわしい非軍事の復興支援にこそ積極的に取り組む。そしてなおかつ、そのことを現実に行っているNGOの団体がいかに活動しやすくできるか、そういうことを行うべきであると同時に、国際社会に対してそういうメッセージを発することが大事だと考えています。

赤嶺委員 終わります。

船田委員長 次に、阿部知子さん。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 私は、本日の委員会が、三野党、民主、共産、社民党の提案したイラク特措法の廃止をめぐる法案を取り上げていただき、そして、さらに大きな二つの政治的な意思の決断をしていただきたいと思い、その観点から質問させていただきます。

 まず第一点は、日本の国際貢献はいかにあるべきかということに関連して、先ほど来、赤嶺委員あるいは他の委員からも、この間のファルージャの事態が取り上げられております。そして、外務省の御答弁を聞いておりますと、非常に情報の食い違いがある。こんなに事実認識、情報収集に差があったら、とても我が国が将来何をなすべきかを決めていくことができないのじゃないかと、私は非常に不安に思いながらやりとりを聞いておりました。

 そこで、逢沢外務副大臣にお願い申し上げます。

 私は、一昨年の十二月、実はイラクに参りまして、イラクの赤新月社という、国際赤十字の連盟に加入する医療人権団体と会合を重ねてまいりました。その組織から得られました情報によれば、今回のファルージャ攻撃は、まず、先ほど穀田委員のおっしゃったファルージャ総合病院あるいは近隣の診療所あるいは保健センターなどが次々に襲撃され、病人も含めて避難したけれどもし切れず、たくさんの死者が出ておる。

 日本政府として、これまで、どこにどのような問い合わせなり情報収集手段をお持ちか、あるいは国際赤十字関連とはどのような情報収集を行っておられるか、この点についてお願いいたします。私は、先ほど実務サイドのお話を伺いましたので、逢沢外務副大臣にお願いしております。

逢沢副大臣 ファルージャにおいて大規模な、武装勢力、反政府勢力またテログループの掃討作戦が行われた事実関係は、先生も御承知のとおりでありますし、また、私どもも認識をいたしております。

 イラクの新しい国づくり、復興を支えていく、これは国連が国際社会全体に対して要請をいたしているわけでありまして、我が国としても、責任ある国際社会の一員として、イラクで新しい国づくりに積極的に貢献していきたい、そんな立場で、人的な貢献また経済支援を車の両輪として進めているわけであります。

 イラクの治安を確保する、そして政治プロセスを進めていく、また経済の復興を果たしていく、いわゆるイラクの三位一体とも言っていいというふうに私どもは承知をいたしておりますが、そんな状況認識の中、やはりファルージャに反政府勢力、武装勢力、テロリストグループが集結をしている、まさにそういった意味の巣窟となっている。最終的にイラク暫定政府の政治判断によって、もちろん話し合いを続けてきた、話し合いを続けてきたけれども、しかし、最終的にこれは、やはり武装勢力、テロリスト勢力を掃討するということがこれからのイラクの国づくりにはどうしても必要不可欠である、そういった政治判断に立たれたというふうに承知をいたしております。

 中東局長の方からも説明をさせていただいたと思いますが、この武力行使に至る前段としては、もちろん、約三十万人の人口を抱える都市ファルージャに対して、市民の方々に対して、長い時間をかけ、何度も何度も市の外に退避をするようにといったようなプロセス、手続を大切に繰り返してきたということは、私どもも事実関係として承知をいたしております。正確な数字はわからないわけでございますけれども、いろいろな報道によれば、七割あるいは八割、それ以上の市民の方が最終的に市の外に出た。しかし、間違いなく数万人の方はその中に残っておられたといったようなことは恐らく事実であろうかと思います。

 武力の開始については、外に出ないように、こういったことについてもできる限りのメッセージを与えてきたということも私どもは聞き及んでいるわけでありますが、現在におきましては、テロリストグループに対する掃討作戦は終結をしつつある、散発的な発砲その他がまだ残っているようでございますけれども、ほぼ終結を迎えつつある。結果においては、拷問の部屋の跡でありますとか多くの武器や弾薬あるいは武器の製造の拠点、そういうものが発見をされたという情報にも接しているわけでありますが、今の時点に立って大切なことは、委員御指摘のように、多くの市民の方が結果的に残念ながら傷ついた、そういう状況もございます。

 いかにしてファルージャの復興あるいはまた人道支援を行っていくか。これはまさに、恐らくイラク暫定政府としても情報を集めつつあるという段階であると承知をいたしておりますが、イラクの政府、あるいは場合によっては国連機関等を通じて私どもに対してある種の要請が上がってくる、そういうことも想定されるというふうに理解をいたしております。

 もちろん、委員御指摘の赤新月社、イラク暫定政府あるいは多国籍軍、あらゆるところから、ファルージャの情勢あるいはまたその地域の状況については私どもとしても情報収集する格段の努力を行っておりますし、引き続きそういった努力を重ねてまいりたい、そのように申し上げたいと思います。

阿部委員 長時間で丁寧な御答弁でしたが、特に私が伺いたかった国際赤十字関係、国際機関からの情報の収集、実は厚生労働委員会に私は所属しておりまして、医療関連でこれは尾辻大臣にもお願いをいたしましたが、イラクの赤新月社は、十一月十五日の段階ではアメリカ軍からファルージャの市内に入ることを阻止され、十一月二十四日、やっと現地の事務所を開きました。これから情報量も格段に増してまいると思います。

 日本政府が今まずなすべきことは、戦争の大義いかんによって、どのような大義があっても、やはりそこに、命を奪われ、傷ついた人がいれば、まずそのことに率先して日本が手を挙げ、現実にやれることをやる。医薬品が不足するさまざまな事態が報告されております。この点は、逢沢副大臣に重ねてお願いをしたいと思います。

 もう一点、きょうは大野防衛庁長官がお越しではございませんので、今津副大臣にお願いいたします。

 実は、今、第四次の自衛隊派遣が行われました。このことに関連して、イラクに出向くこの四次の自衛隊員のために千人針が贈られております。副大臣は、このことは御存じでしょうか。

今津副長官 第一次復興支援群が、二月一日、私の地元の北海道旭川市、第二師団から出発をいたしまして、今日まで第四次になりました。

 その間、私は、派遣から任務を果たして帰ってきた隊員の方と随分いろいろなお話をさせていただきました。千人針の話は今初めてお伺いいたしました。

阿部委員 私は、実は義理の父が元自衛隊でございます。そして、元自衛隊員の方々が、今回派遣される自衛隊員の身の安全を案じて千人針を贈られました。仙台から出発する部隊でございました。

 私は、この一つを見ても、いかに今治安情勢をめぐって、あるいは将来戦闘地域になるかもしれないという可能性も含めて、現場で活動しておられる自衛隊員の負担、不安感、御家族の不安、そして、本当にこれが取り返しのつかないことになったらどうしようという思いはここまで来たかと。今まで、自衛隊員が数多く国際貢献をなさったと思います。しかし、千人針を携えていかなければならないような事態はなかったと思います。そのことを、自衛隊員の命を預かる防衛庁の幹部の方が御存じないということは、いかに隊員の不安の心情を察していないか、そして、これは、ひいては国民が感じている不安でもあると思います。

 私は、先ほど我が党の横光委員、提案者のお一人ですが、この一つ一つ進む過程が一つ一つ不安の連続で、今や極に達しておる、だからこそ、今この場で三野党が提案したという発言を重く受けとめます。

 そこで、私は、委員長、ここで動議がございます。

 今回、議事進行に対する緊急動議として、鳩山由紀夫君外七名提出のイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法を廃止する法案、以上について、質疑を終局し、直ちに採決に入るように求めます。

船田委員長 ただいまの阿部知子さんの動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

船田委員長 起立少数。よって、ただいまの動議は否決されました。(発言する者あり)

阿部委員 委員長、きちんと数を数えていただきたいと思います。

船田委員長 ただいまの動議は否決をされましたので、阿部さんには、引き続き質問を続けてください。

阿部委員 私は、ただいまの議事運営に疑義を申し立てたいと思います。

 なぜなら、委員長は当初は数をお数えにならないで、私が、引き続いて数をお数えくださいとお願い申し上げました。やはり極めて、今後の日本の政治、自衛隊員の安全、イラクの復興、そのことを決する委員会にあって、当初の仕切りは委員長にきっちりと私は謝罪をしていただきたいし、運営上問題があろうかと思います。その点について、理事会にお諮りいただきたいと思います。

船田委員長 先ほどの……(発言する者あり)静粛に願います。

 先ほどの動議について採決を行いました結果、賛成少数を数の上で確認をいたしました。したがいまして、動議は否決をされましたので、質問を続行してください。

阿部委員 では、賛否の数と、各委員が正しく差しかえの措置がなされているかどうかについて御確認をいただきたいと思います。

船田委員長 ただいまの阿部さんの質問につきまして、先ほどの動議の採決の数を申し上げますと、賛成十九名、反対二十三名であります。

 なお、差しかえ等の手続は正当に行われていると判断をいたしました。

阿部委員 私どもは、三野党提案という形でこの質疑が行われたこと自身については委員長の労を多といたします。

 ただし、いろいろな先ほど来の御答弁を聞くと、イラクにおける情報収集ということについて全く政府が能力をお持ちでない、現状認識がすり合わせすらできないという中で、これ以上の派遣延長が自衛隊員の身に及ぼす危険というものを、本当に今この場におられる方が政治の責任において、自衛隊員は行かされる立場でございます。中谷元元防衛庁長官もここにはおられますが、隊員の身の不安、そして命の確保ができなければ、特措法の九条に言うところの、防衛庁長官と、そして内閣総理大臣の責務は果たせないわけでございます。

 そのことを求めて私は採択も要求いたしましたし、もう少し冷静に皆さんがこのことをきっちりと、本当に命がかかった問題として、橋田さんの死や香田さんの死や、さかのぼること、奥大使並びに井ノ上参事官の死から一年を経ております。私たち政治の意思が彼らを死に赴かしめた、そのことを皆さんが深くお心にとめて、そしてさらに、本当に十二月十四日の延長の期限が切れるその日まで、しっかりとお考えいただきたいと思います。

 では、名前の確認作業が進んでいるということですので、私の時間の許す限り、ここでいさせていただきます。(発言する者あり)

船田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

船田委員長 速記を続けてください。

 阿部さん。

阿部委員 一つお願いがございます。

 まず速記をとめていただいて、差しかえの札の確認をしてください。大事な採決でございます。もし差しかえが正しく行われていなければ、それでは、その件で理事会をお開きください。

 私は、こうした委員会の差しかえがいいかげんな札で、あるいは札の差しかえもなく行われているような国会運営は禍根を残すと思いますので、この点についてよろしくお願い申し上げます。

 私の今のお願いがきちんと事務サイドで達成されるまで時間をとめていただきたいと思います。(発言する者あり)

船田委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

船田委員長 速記を起こしてください。

 先ほどの動議の採決におきまして、委員の差しかえの手続の正当性について事務方に調査をさせました結果、すべて正当に行われていることを確認いたしました。

 したがいまして、先ほどの動議は、賛成十九名、反対二十三名で否決をされましたので、改めて確認をさせていただきます。

 阿部さん、質問を続けてください。

阿部委員 極めて重要なこの委員会で、例えばその出席委員が本来の手続を経た方であるかどうかについてすら疑義が持たれるということは、国会審議の空洞化の象徴だと思います。

 政治の意思が人命をいかようにも左右するということを私が重ねて皆さんに申し上げて、時間を終わらせていただきます。

     ――――◇―――――

船田委員長 次に、国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動等に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として防衛庁運用局長大古和雄君及び外務省中東アフリカ局長吉川元偉君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

船田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

船田委員長 この際、政府から説明を聴取いたします。防衛庁運用局長大古和雄君。

大古政府参考人 イラク人道復興支援特措法に基づく自衛隊の部隊の最近の活動状況について御報告いたします。

 まず、サマワの陸自部隊においては、安全確保に十分配意しつつ、宿営地における給水活動を初め、ムサンナ県内のヒドル、ルメイサ及びダラージにおける学校補修、ナジミ及びサマワにおける道路整備を引き続き実施しています。これらの活動により、これまで一日当たり三百名から五百名程度の雇用を創出しているところです。また、病院における医療活動も引き続き実施しています。

 給水活動に関しましては、これまで一日当たり二百トンから二百八十トン程度を給水しております。これは、仮に一人一日当たりに必要な水を四・五リットルとした場合に、給水量を二百五十トンとしても、約五万六千人程度の所要量を満たす計算になります。なお、三月二十六日から十一月三十日までの間に、計約四万三千トンを給水しました。

 また、現在、現地で活動する第三次復興支援群は、十一月中旬より順次サマワ入りしている第四次復興支援群に部隊交代を行い、業務の引き継ぎを実施後、今月中に帰国する予定です。

 前回の報告以降のサマワ周辺の情勢について、主な事件等は次のとおりです。

 オランダ国防省のプレスリリースによると、十一月二十四日夜、オランダ軍宿営地から一キロ以上離れた場所において二ないし三発の何らかの砲弾が爆発し、現在、イラク警察が捜査中であるとのことです。

 また、オランダ軍現地部隊によると、捜索のために照明弾を打ち上げたが、何らかの事故でサマワ市街地の家屋に落下して損傷を与えたとのことです。なお、人員への被害はなく、オランダ軍は、イラク警察と連携して補償を行うなど、解決を図ったとのことです。

 本事案において現地部隊に異状がないことを確認しておりますが、現地部隊においては、さまざまな情勢を踏まえ、その活動も慎重に行っているところであり、引き続き安全確保に細心の注意を払いつつ活動を実施してまいります。

 航空自衛隊の部隊については、十一月二十五日から三十日までの間、陸自関連及び関係各国、関係機関等の人員の輸送を計四回実施したところです。

 引き続き、イラク国内の各飛行場の安全性や輸送ニーズ等を慎重に勘案しつつ、C130機による輸送を行ってまいります。

 以上でございます。

船田委員長 次に、外務省中東アフリカ局長吉川元偉君。

吉川政府参考人 前回御報告しまして以降のイラク情勢について御報告いたします。

 今後のイラクにおきます政治プロセスのかぎであります国民議会選挙については、十一月二十一日、独立選挙管理委員会が、選挙を明年一月三十日に実施すると発表しました。

 選挙準備につきましては、現在、同委員会が国連などの支援を受け準備作業を進めており、イラク暫定政府は、選挙を予定どおり一月三十日に実施すると表明しております。我が国としても、選挙が予定どおり実施されることを期待しております。

 イラクの治安情勢につきましては、脅威の度合いは地域により異なるものの、駐留多国籍軍と武装勢力の衝突、民間人の拘束、殺害等さまざまな事件が国内各地で頻発しており、依然予断を許さない状況が続いております。

 十一月七日、イラク暫定政府は、国家治安維持令に基づき、北部のクルド地域を除くイラク全土に対し非常事態を宣言しました。十一月三十日現在、同宣言を受けてとられている措置は、バグダッド、ファルージャ、ラマディ、モスル、バイジ、ハウィジャ、ナジャフにおける外出禁止令等であると承知しております。

 なお、十一月三十日現在、自衛隊が活動しておりますムサンナ県では、今回の非常事態宣言を受けて、同県の治安維持のために何らかの具体的な措置がとられたといった情報はありませんが、引き続き状況を注視してまいります。

 十一月八日に開始されましたファルージャにおけるイラク治安部隊と駐留米軍による反政府武装勢力に対する掃討作戦につきましては、十一月三十日現在、戦闘はおおむね終了したものの、武装勢力による攻撃が散発的に発生している模様です。

 以上でございます。

船田委員長 これにて説明は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時十九分散会


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