衆議院

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第3号 平成17年4月13日(水曜日)

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平成十七年四月十三日(水曜日)

    午前九時二分開議

 出席委員

   委員長 船田  元君

   理事 石崎  岳君 理事 中谷  元君

   理事 三原 朝彦君 理事 渡辺 具能君

   理事 小泉 俊明君 理事 末松 義規君

   理事 藤田 幸久君 理事 佐藤 茂樹君

      井上 信治君    宇野  治君

      嘉数 知賢君    川上 義博君

      岸田 文雄君    斉藤斗志二君

      桜井 郁三君    竹下  亘君

      竹本 直一君    武田 良太君

      谷本 龍哉君    寺田  稔君

      西村 康稔君    馳   浩君

      浜田 靖一君    平沢 勝栄君

      宮澤 洋一君    山口 泰明君

      市村浩一郎君    稲見 哲男君

      大石 尚子君    大出  彰君

      岡島 一正君    小宮山泰子君

      篠原  孝君    島田  久君

      首藤 信彦君    鈴木 康友君

      辻   惠君    長妻  昭君

      本多 平直君    牧  義夫君

      赤松 正雄君    漆原 良夫君

      赤嶺 政賢君    東門美津子君

    …………………………………

   外務大臣         町村 信孝君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      大野 功統君

   防衛庁副長官       今津  寛君

   外務副大臣        谷川 秀善君

   防衛庁長官政務官     北村 誠吾君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  増田 好平君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  樽井 澄夫君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    瀬川 勝久君

   政府参考人

   (防衛庁長官官房長)   北原 巖男君

   政府参考人

   (防衛庁防衛局長)    飯原 一樹君

   政府参考人

   (防衛庁運用局長)    大古 和雄君

   政府参考人

   (防衛庁人事教育局長)  西川 徹矢君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 遠藤 善久君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 齋木 昭隆君

   政府参考人

   (外務省大臣官房国際社会協力部長)        神余 隆博君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            吉川 元偉君

   政府参考人

   (外務省経済協力局長)  佐藤 重和君

   衆議院調査局国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラク人道復興支援活動等に関する特別調査室長        前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十三日

 辞任         補欠選任

  西村 康稔君     井上 信治君

  吉良 州司君     小宮山泰子君

  神風 英男君     辻   惠君

  丸谷 佳織君     漆原 良夫君

  照屋 寛徳君     東門美津子君

同日

 辞任         補欠選任

  井上 信治君     西村 康稔君

  小宮山泰子君     吉良 州司君

  辻   惠君     神風 英男君

  漆原 良夫君     丸谷 佳織君

  東門美津子君     照屋 寛徳君

    ―――――――――――――

三月九日

 イラク多国籍軍からの自衛隊の撤退に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第四六七号)

 同(石井郁子君紹介)(第四六八号)

 同(穀田恵二君紹介)(第四六九号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第四七〇号)

 同(志位和夫君紹介)(第四七一号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第四七二号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第四七三号)

 同(山口富男君紹介)(第四七四号)

 同(吉井英勝君紹介)(第四七五号)

同月二十五日

 イラク多国籍軍からの自衛隊の撤退に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第五七八号)

 イラクからの自衛隊の即時撤退に関する請願(石毛えい子君紹介)(第六一〇号)

 同(金田誠一君紹介)(第六一一号)

 同(今野東君紹介)(第六一二号)

 同(辻惠君紹介)(第六一三号)

 同(近藤昭一君紹介)(第六一八号)

 同(小林千代美君紹介)(第六七九号)

 イラク派兵計画の延長強行に抗議し、イラクからの自衛隊撤退を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第六七〇号)

 同(石井郁子君紹介)(第六七一号)

 同(穀田恵二君紹介)(第六七二号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第六七三号)

 同(志位和夫君紹介)(第六七四号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第六七五号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第六七六号)

 同(山口富男君紹介)(第六七七号)

 同(吉井英勝君紹介)(第六七八号)

四月六日

 イラクからの自衛隊の即時撤退に関する請願(稲見哲男君紹介)(第六八四号)

 同(中川治君紹介)(第六八五号)

 同(藤田一枝君紹介)(第六八六号)

 同(佐々木秀典君紹介)(第七一四号)

 同(島田久君紹介)(第七二二号)

同月十三日

 イラクからの自衛隊撤退に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第九六一号)

 同(穀田恵二君紹介)(第九六二号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第九六三号)

 同(志位和夫君紹介)(第九八九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動等に関する件


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     ――――◇―――――

船田委員長 これより会議を開きます。

 国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動等に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官増田好平君、内閣官房内閣審議官樽井澄夫君、警察庁警備局長瀬川勝久君、防衛庁長官官房長北原巖男君、防衛庁防衛局長飯原一樹君、防衛庁運用局長大古和雄君、防衛庁人事教育局長西川徹矢君、外務省大臣官房審議官遠藤善久君、外務省大臣官房審議官齋木昭隆君、外務省大臣官房国際社会協力部長神余隆博君、外務省中東アフリカ局長吉川元偉君及び外務省経済協力局長佐藤重和君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

船田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

船田委員長 この際、政府から説明を聴取いたします。防衛庁運用局長大古和雄君。

大古政府参考人 イラク人道復興支援特措法に基づく自衛隊の部隊の最近の活動状況について御報告いたします。

 現在、サマワの陸自部隊においては、安全確保に十分配意しつつ、ムサンナ県内のサマワにおける養護施設の補修、サマワ、マジット、スウェイル、ナジミ及びワルカにおける学校補修、サマワにおける道路整備、ワルカにおける浄水場補修等を引き続き実施しています。これらの活動により、これまで一日当たり三百から九百名程度の雇用を創出しているところです。また、病院における医療活動も引き続き実施しています。

 二月二十八日以降のサマワ周辺の情勢について、主な事件等は以下のとおりです。

 三月二十七日、キャンプ・スミッティ付近で英軍が飛翔音及び着弾音を確認しました。英軍によれば、本件はロケット弾による可能性が高く、キャンプ・スミッティ外に着弾した模様であるとのことです。まだ当該ロケット弾自体は発見されていません。

 現地部隊においては、引き続き安全確保に細心の注意を払いつつ活動を実施してまいります。

 三月七日、オランダ軍からイギリス軍へ指揮権が転移され、イギリス軍がムサンナ県における治安維持任務を担当することとなりました。現地部隊においては、これまでオランダ軍と密接な協力関係を構築してまいりましたが、引き続き英軍とも密接に協力しつつ、部隊の安全確保に万全を期してまいります。

 なお、オーストラリア軍が本年五月以降ムサンナ県に派遣されることに伴い、三月三日より、調査チームがムサンナ県を訪れ、陸自宿営地における現地部隊との調整を含め、派遣に必要な調査を実施しました。オーストラリア軍が派遣された後の協力関係については、今後とも、イギリス及びオーストラリアと密接に協議をしてまいります。

 二月二十八日から四月十二日までの間、我が国からの人道復興支援関連、陸自関連及び関係各国、関係機関等関連の人員、物資の輸送を計九回実施したところです。

 航空自衛隊の部隊については、引き続き、イラク国内の各飛行場の安全性や輸送ニーズ等を慎重に勘案しつつ、C130機による輸送を行ってまいります。

 以上でございます。

船田委員長 次に、外務省中東アフリカ局長吉川元偉君。

吉川政府参考人 最近のイラク情勢について報告いたします。

 まず、政治プロセスにつきましては、一月三十日の国民議会選挙の実施を受け、国民議会の初会合が三月の十六日に開催されました。その後、四月三日に開催された会合において、移行政府の国民議会議長にスンニ派でイラク人党のハサニ暫定政府産業・鉱物大臣が二人の副議長とともに選出されました。

 また、四月六日に開催された会合においては、大統領にタラバニ・クルド愛国同盟党首が二人の副大統領とともに選出されました。

 さらに、四月七日には、シーア派で、国民議会選挙で過半数を獲得した統一イラク連合のジャファリ暫定政府副大統領が首相に指名されました。

 このように大統領、首相及び国民議会議長が各政党や会派間のバランスをとる形で決定されたことは、イラクの民主化に向けて重要な一歩であり、我が国は、イラクが新たな段階に入ったことを示すものとして、これを歓迎しております。

 このような動きを受け、今後の政治プロセス、すなわち、八月の十五日までに国民議会による憲法草案の起草を行い、十月十五日までに憲法草案についての国民投票の実施をし、十二月十五日までに新憲法に基づく国民議会選挙の実施をし、十二月末までにイラク政府の発足をするというこのプロセスが、イラク社会の持つ多様性を反映する形で進展することが期待されております。

 我が国は、一月三十日の国民議会選挙に向けて、資金提供、要員訓練といった種々の協力を行いましたが、今後とも、憲法制定を初め、イラク人による国づくりのプロセスを積極的に支援していく考えです。

 次に、治安情勢については、一月三十日の国民議会選挙実施後も、脅威の度合いは地域により異なりますが、駐留多国籍軍・イラク治安部隊と武装勢力の衝突、車爆弾、ロケット弾等によるテロ等の事案が発生しており、依然予断を許さない状況です。

 イラク暫定政府は、昨年十一月七日、北部のクルド地域を除くイラク全土に対し非常事態を宣言しましたが、同宣言はその後国家治安維持令に基づき四回延長され、五月五日まで効力を有することになっています。

 サマワについては、予断は許さないものの、イラクの他の地域と比較して安定している状況に変化はありません。

 最後に、サマワを含むムサンナ県の最近の動きについては、三月七日に、ムサンナ県における治安維持任務がオランダ軍からイギリス軍に引き継がれました。また、三月十五日には、ムサンナ県評議会において同県の知事の選挙が行われ、現職のハッサーニ知事が再選されました。我が国としては、ムサンナ県の復興のために同知事と引き続き協力してまいります。

 以上で報告を終わります。

船田委員長 これにて説明は終了いたしました。

    ―――――――――――――

船田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。牧義夫君。

牧委員 おはようございます。民主党の牧義夫でございます。

 イラクの人道復興支援活動についての質問の時間をいただいたんですけれども、ここへ来て、遠くの中東のこともさることながら、近隣諸国における状況も我が国にとって非常に厳しいものがございます。

 昨晩もニュース番組を拝見いたしておりました。外務大臣におかれても、特に御苦労さまでございますと言わざるを得ない状況だと思います。きのう私も拝聴しておりまして、外務大臣のおっしゃっていること、ほとんど間違いのないことをおっしゃっているなと実感いたしましたけれども、ただ、我が国が間違いのないことを申し上げても、なかなか理解を得られないというのが現状ではなかろうかと思います。

 私も文部科学委員会に所属をいたしておりますので、前の扶桑社の歴史教科書についても一通り目を通したわけですけれども、間違ったことは書いていないわけです。日本人から見れば、日本の歴史ですから、それはどちらから光を当てるかということによってとらえ方もおのずからニュアンスが違ってくるのは当然のことであろうと思いますし、そういう中で、国際的な理解が得られないというのはまことに遺憾でございます。

 これは例えが悪いのかもしれません、お金のことで例えたらちょっと悪いのかもしれませんけれども、ある意味、日本という国は多重債務者のような、複数の債権者から借金の取り立てをされている多重債務者のような立場にあるというふうに私なりに例えたいと思うわけです。我々は金利も含めて元本もたくさん払っているつもりでいても、向こうに言わせると、いや、まだ金利だけしか払っていないよと。我々はとっくの昔にもう元本も払い終えているつもりでいても、向こうは、金利だけしかもらっていなくて、まだ根っこの部分は残っているんだよ、そういうふうにとらえているんじゃないか。これは例えが悪いのかもしれませんけれども、私なりにそんな感想を持っております。

 きょうの質問の通告にはございませんけれども、私は、この際、第三者機関というか、国際的な表舞台でどこか第三者にきちっとけりをつけてもらわなければ、いつまでたっても引きずってしまう問題ではないかと思うんです。これは質問事項にないんですけれども、ちょっと外務大臣の御感想からお聞かせいただきたいと思います。

町村国務大臣 なかなか、今委員御指摘のように、国と国との関係というのはまことに難しいものがあるなということをしみじみ感ずる日々でございます。

 確かに、一つの事実があってもそれをいろいろな面から解釈ができる。歴史というものは、ある意味では解釈でございますから、きのう起きたことでも百年前に起きたことでも、それは確かにいろいろな解釈ができるという面で、しかも、国と国が違えば相当解釈に違いが出てくるということはあるんだなということを痛感いたします。

 しかしながら、それをどこかしかるべき第三者、今委員、そういう御提案がありました。そういうスーパーパワー、スーパー能力のある人が、あるいは機関があって、そういうところで、これはこうですよと決めることができればそれは一つのすばらしい方法かなと思います。

 例えば国際司法裁判所というものがありまして、ここでいろいろな案件を解決する、現に、それはそれで随分国と国との紛争、領土問題などが解決をされた実績もあるわけであります。例えば竹島問題についても、これをそういう形で司法裁判所に持っていったらどうかという御提言を各方面からいただいております。それも一つの方法かなとも思われます。

 一九五四年に日本はそういう提案をしたが、これは相手国も、では国際司法裁判所の判断にゆだねようということで同意をしなければこの提訴は成り立たないという性格でございまして、一九五四年の時点で韓国はそれを応諾しないということだったものですから、領土というある意味ではわかりやすい問題についても、それについて相手が応諾しないから国際司法裁判所のプロセスに入り得なかったという事実もございます。

 事ほどさように、これは歴史が絡み、民族が絡み、国家の主権が絡む問題、ましてそこに解釈という人間が行う行為が絡む問題でありますから、しかるべき第三者の判断ということにゆだねる場もなかなかありませんし、そういうことに関係国が合意をするというのも難しい問題なのかな。やはり二国間でとことん議論する中から妥当な答えを導き出していくしか他に方法がないんだろう、こう思っているところでございます。

牧委員 ありがとうございます。

 私も同感ですけれども、今、二国間で地道に努力を重ねるというお話ですが、それでらちが明かないからこそ私は申し上げているのです。そういった第三者機関、しかるべきところがないというのも事実でありましょう。ただ、そういう機関にゆだねたいと主張することも私は一つの手ではないかなと思ったものですから、申し上げさせていただいた次第でございます。

 また、どうしてこういうことを言うかというと、やはり一事が万事、我々は、今行っていることが歴史の中でどういう位置づけなのか、あるいは国際社会の中でどう評価されるのかということをその都度きちっと確認しながら物事を進めていかないと、また将来にいつ大きな禍根を残すとも限らない、そういう観点から、今ちょっとこの問題から入らせていただいたわけです。

 このイラクの復興支援についても、またしかりであると私は思います。純然たる人道的な復興支援でありますから、これについてとやかくそしりを受ける筋合いのものではございませんけれども、これが一つの大きな歴史の中でどういった意味を持つ活動なのか、そこら辺のところをきちっと認識しつつ我々は進めていかなければ、何よりも、現地に派遣をされている隊員の皆さんにとっても、やはりそういうことがきちっとしていなければ大きく士気にかかわることでもありましょうし、そういった意味で質問をさせていただきたいと思うわけです。

 この特措法に基づく活動については、既に第五次群の派遣ということでございますけれども、そういう中で、細々したことはもういろいろ質問も出尽くした感がございます。

 ここでざっと私なりに振り返ってみると、この一連の流れ、一連というのは、大きな意味で、やはり二〇〇一年九・一一のアメリカにおけるテロ、そこが一つの出発点でなかろうかと思います。

 順を追って大ざっぱに振り返ってみると、その年の十月、テロ特措法が立法化されて、十二月二十二日にはアフガニスタン暫定行政機構が既に発足をしております。翌年一月三十日のアメリカ・ブッシュ大統領の一般教書演説、ここで、イラク、イラン、北朝鮮と、悪の枢軸という発言が盛り込まれたわけであります。この年の十二月には我が国のイージス艦もインド洋に向けて出港をした。翌二〇〇三年三月二十日にイラク攻撃が開始をされて、我が国では七月二十六日にイラク人道復興支援特措法が可決をされた。そして現在に至っているわけであります。

 これを私は一つの一連の流れとしてとらえているんです。大ざっぱな、大げさな言い方かもしれませんけれども、一つの一連の流れということで認識をしておりますけれども、外務大臣はその辺のところの認識はいかがなものでしょうか。

町村国務大臣 委員御指摘のとおりの事実経過を経ていると私も理解をしております。

 ただ、このイラクの問題というのは、確かに九・一一ということで日本が新しい法律を通すというアクションをとったわけでございますけれども、さかのぼると、さらに平成二年の湾岸戦争というものに、あるいはまたそれ以前のイラクの状態というところにまでさかのぼって考えていく必要があるテーマではないだろうか、こういう理解もあるわけでございます。

 平成二年の湾岸戦争当時の国会でも大変な議論があり、特別の立法をすべきということで法案が出され、それが廃案になったという経緯、あるいは、実際に国民一人一人、たしか一人頭百円だったと記憶をしておりますが、一兆円以上の税金を特別に集めて支援をしたけれども、残念ながら、それはもちろん大きなお金でありましたから評価はされたけれども、しかし、国際的な評価というものは実は非常に低かったというような反省から、日本はその後、PKOの法律を成立させ、国際的な問題について可能な限り、資金協力ばかりではなくて、やはり人的協力も惜しまずにやっていくんだということを覚悟を決めて今日までやってきている、こう私は理解をしております。

 そういう意味で、今回のイラク復興についての立法というものもまたその中で大変重要な位置づけがある、こう思っております。また、自衛隊の諸君が現在汗を流し一生懸命努力をしている、これは、日本の国益に直結する中東地域、イラクというところの安定の取り組みのために日本が人的貢献を行ったという意味で、また、日本が国際社会の責任ある一員として国際社会の他の国と同様に活動している、その点について国際社会からも評価をいただいているという意味で、私は、大変意義深い自衛隊派遣であった、そして、その活動が今日もまた続いている、かように認識をしているところでございます。

牧委員 なかなか一般国民には、理解できても頭の中で整理しづらいものがあろうかと思います。これは、自衛隊の任務、国際平和協力ということももちろん任務の中にあるわけです。私が今この一連の流れで申し上げたのは、周辺事態とかそれは別として、国際的な平和協力活動の中で、やはり自衛隊の活動、PKOからもう一歩踏み出した形というのがこのテロ特とイラク特だと思います。そういった意味で、その始まりが九・一一だということを申し上げたわけで、この辺の話がどういうふうにリンクしているのか、そこら辺のところをもう一度整理しておく必要もあろうかと私は思っております。

 というのは、さっきの話に戻りますけれども、二〇〇二年、アメリカのブッシュ大統領の一般教書演説の中で悪の枢軸という話があって、そして、その翌年三月にイラク攻撃が開始をされているわけです。その間、我が国の海上自衛隊はインド洋においても活動しているわけで、ともすると、アフガニスタンのタリバン政権、アルカイダの掃討作戦だけじゃなくて、ひょっとするとイラク攻撃というものを前提にしながら、これは時間が前後しますけれども、我が国の海上自衛隊というのはテロ特に基づいてイラク攻撃の準備にも加担していたのかなというふうにとらえられても、これは時系列的に見るとおかしくないわけですけれども、そこら辺のところの整理というのはきちっとつくものなんでしょうか。

町村国務大臣 ちょっと、私さっき一人百円と申し上げましたが、百ドルの間違いでございまして、訂正をさせていただきます。百円だと百億円ぐらいにしかなりませんので。済みませんでした。

 委員御指摘のように、確かに今お話しのような時系列があって、特に九・一一というのが大変大きなきっかけになった。テロとの闘いというものがそこで大きくクローズアップをされてアフガンのテロ特措法というものになり、さらに、イラクは直接テロ対策という位置づけではございませんが、イラクの人道復興支援というものを目的としてこの法律ができたという意味であります。

 しかし、広い意味で、イラクが不安定になり、またイラクの復興というものが順調に進まないと、そこがまたテロの温床になる、そうなってはいけないという意味で、やはり幅広い意味でのテロ対策ということになるんだろう、こう私は考えているわけでございます。

牧委員 今の御説明はよくわかります。私は別にこれを非難する意味で申し上げたんじゃなくて、当然のことだと思いますのであえて聞いたんですけれども、そこら辺のところを確認だけはやはりしておいた方がいいと思って質問したわけです。

 防衛庁長官にもお尋ねしますけれども、つまりは、今の外務大臣の御説明によると、イラクの人道復興支援法、これは二〇〇三年の七月ですけれども、それまでの間、例えば自衛隊のインド洋におけるイージス艦の活動なりあるいは米軍艦船に対する補給活動等というのは、これはアフガンの話もあれば、イラクに対する作戦行動に関する件も全部ひっくるめて行われていたというふうに理解してよろしいんですね。

大野国務大臣 今外務大臣から御説明がありましたとおり、広い意味でのテロとの闘いという意味では、テロ特措法の方は、テロを撲滅する、こういう国際的な行動に対する後方支援をやっている、こういう意味でございますし、それは当然ながら国連の安保理の決議があってやっていることであります。ただ、そういう後方支援ということになりましたのは憲法上の制約があることはもう言うまでもないことですけれども、テロを撲滅するという国際的な枠組みの中で日本としてできる限りのことをやった、こういうことでございます。

 それから、イラクの方は、これは外務大臣もおっしゃっていましたとおり、テロというのは、とにかく不安定な地域に入ってきて、そこでいろいろなテロ活動をやる、テロリズムを起こす、こういうことであります。そういうことにならないように、日本としてイラクの復興に人道復興支援という観点から参加している。治安の維持とかそういう意味でなくて、人道復興支援という立場から参加している、こういうことでございます。

 したがいまして、両方とも国連の決議がある、そしてテロとの闘い。こちらは直接攻撃するのに後方支援をする、イラクの方は、テロが入ってこないように、テロが再び活動しないようにイラクの復興に努めている、こういうような立場でございます。

牧委員 またこの件についてはゆっくり後日やりたいと思います。

 時間がございませんので、確認だけさせていただきます。その今のテロ特ですけれども、二〇〇三年に二年延長して、ことしの十一月にこの法律が切れるわけです。また、その前に派遣期間についてもこの五月に一たん切れるわけですね。両方あわせて、派遣期間の延長、それから十一月の法律そのものの延長についてはどのようにお考えなのか、お聞かせください。

大野国務大臣 十一月の法律の期限切れ、それから五月の延長問題、こういう問題につきましては、鋭意これから検討してまいりたいと思っています。

牧委員 それをなぜお尋ねするかというと、ここへ来てもう一つの悪の枢軸と名指しをされたイランの問題もございます。

 ことしのブッシュ大統領の一般教書演説の中に、イランの国内外で活動する反政府の立場にある方に対して、自由のために立ち上がれば米国は支援する、このようにはっきり断言をされているわけでありますし、そういった活動家を支援する予算ももう既に計上して、プロジェクトを募集しているというお話もございます。

 また、ライス国務長官も、北朝鮮、イランに対して、核兵器開発の確証が得られなくとも手ぬるい対応をしてはならないと語っているわけですね。これは恐らく、先月の三十日ですか、独立調査委員会の報告があったわけで、これに対して、そんなことには左右されないということの強い意思表示も含めてのお話であろうかと思いますし、また、このたびアメリカの国連大使に指名されたボルトン国務次官、この方は、特に今までイランの核問題等では激しい表現で非難を繰り返してきた方でもあります。

 そういった状況からすると、イランに対する武力行使なり、それに準ずることというのも十分予測されると思うわけです。そこら辺のこともあわせて考えると、今、私、テロ特をいつまで延長するのかと聞いたのもそういう観点からお聞きしたわけでありますけれども、その辺の御認識をまず伺いたいと思います。

町村国務大臣 イランの位置づけ、イランに対する、現在米政府がどう考えているのか、いろいろな方々がいろいろな折に発言をしておりますが、例えば、三月十一日にライス国務長官が、イランの核問題についての英仏独がイランと行っている交渉について正式のコメントを発表しているわけでございます。

 これによりますと、平和的かつ外交的手段を通じてイランによる義務の遵守を確保するとの欧州諸国政府の願望を共有するということで、そうした考え方に立って、英仏独の外交努力を支援するための具体的措置を決定するというようなことが発表されているわけであります。具体的支援というのは、イランのWTO加盟申請に対する反対を取り下げる、イランの民間航空機の交換部品の、特にEUからイランに対するものの輸出許可に関して、個別ケースごとに検討することを決定する等というようなことで、こうしたイランに対するEU3三カ国の努力を支援するんだ、こういう考え方を述べております。

 また、三月十六日、ブッシュ大統領が記者会見の中でイランに対する武力行使の検討の事実を否定した、このように聞いておりまして、私は、現時点、アメリカが平和的な外交努力を通じてこのイラン問題を解決していくという考え方であるというふうに認識をいたしております。

 ちなみに、日本もそういう考えでございまして、二月にハラジ・イラン外相が日本に来られたとき、私、先方の外務大臣と話をした折に、EU3とイランとの間の長期取り決めに向けて交渉が合意に至ることを期待するし、そのためにイラン側も最大限の努力をして、IAEAの求めるさまざまな資料提供等々に誠実に取り組むことを強く求める、こういうような話も、先方に日本政府の考えということで伝達をしたところでございます。

牧委員 そういう回答をせざるを得ないと思います。思い返せば、イラクのときだってやはり同様のお話だったと思うんですね。だから、これ以上聞いても、私が質問しようと思っていたのは、では仮にイラン攻撃があったら支持するのか支持しないのか、そこまで聞こうと思いましたけれども、恐らく御回答は大体読めておりますので、時間がもったいないからやめておきます。

 ただ、やはりそういうこと、今参考人の方も手を挙げられておりましたけれども、恐らく何らかの情報はあろうかと思いますから、イラクのときと違って、今度こそきちっとした対応を私どもはとりたい、そういう観点から、あえて一応質問だけはさせておいていただいた次第であります。

 もう一つお伺いしたいのは、テロ特、そしてイラク特と来て、今、仮にということでイランの話も引き合いに出させていただきましたけれども、今後こういうことを時限立法でずっとこういう形で繰り返していくのか。それとも、もう我が国が国際社会で求められている行動についてはおおよそ国内外の理解も得られてきたわけでありますし、そういった意味で、そういうことにきちっと対応できるような恒久法について何らかのお考えがあるのか、既に検討に入っているのか。そこら辺のところをちょっとお聞かせいただきたいと思います。

大野国務大臣 現在、特措法で対応いたしております。これは一般法で対応することが、憲法上の制約の問題があって、なかなか一般法で対応できない。一つは武器使用の問題、それから武器使用と一体化になるという問題があります。もう一つは、PKO五原則の問題もあります。

 したがいまして、特別措置法で対応させていただいているわけでございますけれども、この点は十分御議論をいただいて、そして一般法にするのか、これは我々としてはまだそこまで検討はいたしておりません。検討を開始しておりません。おりませんけれども、やはり今後十分議論をして、なるべくならネガリストにしていくのが筋かなと私は思っております。ポジリストで、これはできるんだ、これはできるんだ、こういうことばかり言っていると、なかなか制約が大きくなってくるわけでございます。

 国際活動が日本の安全保障それから世界全体の安全と平和のために大変重要な時期になっている、重要な時代になっている。こういうときに、その点は十分これから議論をさせていただきたいと思っておりますが、具体的にはまだ検討に入っておりません。

牧委員 これについても、特に今、大野長官、憲法上の制約等についてのお話もございましたけれども、これまでのPKOの実績もあり、別にこれは憲法にこだわる必要はないと私は思います。PKOの原則を踏まえて一般法、恒久法をこしらえるということは決して不可能なことでもございません。

 そしてもう一つ、その前に、自衛隊の本来任務、今のイラク特というのは雑則で定められた部分で活動しているわけですけれども、こういった問題というのも、やはり現場におられる隊員の皆さんの士気にも大きくかかわる問題だと思います。まずその前に、恒久法の前に、自衛隊法の改正ということは考えておられるのか。当然考えておられると思うんですけれども、どうしてそれが本来任務化できないのか、そこら辺の見解をお聞かせいただきたいと思います。

大野国務大臣 牧委員から我々の思いを大変的確にお示し、御指摘いただきました。

 私は、やはりポスト九・一一の世界的な安全保障環境というのは全く新しく変わってきている。その一つは、大量破壊兵器の問題があります。これは科学技術の進展によりますけれども、これも国際的な協調、つまり情報の共有とかいろいろな意味で国際的な協調がなければできないことである。それから、もう一つのテロでございますが、テロというのは、領土、領域を持たない集団であって、どこで出てくるかわからない。まさに国際的な協力が大変必要なことでございます。

 したがいまして、日本の安全保障も日本一国だけでできるわけじゃない。国際的にやはり安全保障環境を改善していく。一遍紛争が起こったら、その紛争の後をきちっと復興支援していかなきゃいけない、こういう問題が出てきておるわけであります。

 そういう意味で、新しい防衛大綱の中でも、国際的な平和と安全は日本の平和と安全と結びついているものだ、したがって、国際的な平和協力活動につきましては、その位置づけを含め所要の体制を整えよう、こういうことが書いてあるわけでございます。そこで、我々は、ぜひともこの国際平和協力活動を自衛隊の本来任務にしたい、このような思いで今取り組んでいるところでございます。

 現在、与党の中で議論をさせていただいております。この問題、これから十分議論しながら、国際平和活動が日本の平和を愛するメッセージとして全世界に出ていくこと、それから、委員御指摘のとおり、厳しい生活環境の中で、一生懸命国際平和のために、人道復興支援活動のために頑張っている自衛隊諸君が本当に誇りと自覚を持ってそういう活動に従事できるようにするために、雑則であるとか付随的任務であるとかというのではなくて、ぜひとも本来任務にして、日本のメッセージ、それから自衛隊員の誇り、自覚、これを持ってもらいたい。私としては、できる限りこういう問題を議論していただいて、早く自衛隊の国際活動というものを本来任務にしていただきたい、このように思っているところでございます。

牧委員 ありがとうございました。一日も早く、とりあえずまず与党内での合意を得られるように努力していただきたいと思います。

 時間が終わってしまいましたので、本当はスーダンのお話もちょっと聞きたかったんですけれども、また別の機会あるいは外務委員会等でお聞かせいただくことにして、きょうはこれで終わります。

 ありがとうございました。

船田委員長 次に、石崎岳君。

石崎委員 自由民主党の石崎岳でございます。

 両大臣、大変御苦労さまでございます。町村外務大臣が間もなく退室をされるということなので、外務大臣にちょっとお話をお聞きしたいと思います。

 私も、昨晩のテレビ番組に外務大臣が出演されているところを拝見させていただきました。本当に今、アジア周辺各国中心に大変な外交の状況でありまして、大臣としても大変御苦労が多かろうと思います。昨晩のテレビを見ておりましても、言葉を選びながら大変慎重に発言されている姿を見て、その御苦労が忍ばれましたけれども、表面的な現象面だけで右往左往するというか、日本の外交というものがそんな簡単に動くということであってはならないのだというふうに思っています。

 いろいろな動きの背景にはさまざまな要素がある。そういうこともいろいろ勘案をしながら、日本は日本として、毅然とした、あるいは長期的な大きな視点で対アジア外交というものを考えていかなければならないというふうに思います。中国の外務省が責任は日本にあるとか、それを受けて日本のメディアが責任は小泉さんにあるとか、そういう短絡的なことではなくて、日本としての国益を毅然と踏まえた対応をぜひお願い申し上げたいというふうに思います。

 イラク情勢について外務大臣にお伺いをしたいと思いますが、一月三十日に選挙が行われまして、もう二カ月以上が経過をし、先般、ようやくと言っても失礼ですけれども、タラバニ大統領、ジャファリ首相が選出をされたという状況にございます。この選出だけで二カ月、またこれから組閣というものがあります。この後には憲法の起草、それからまた選挙というものがあって初めて本格的な政権をつくるという政治プロセスでありますが、ここに至るまで、やはりいろいろな各派の調整、利害対立というものがあって人事でこれだけの時間を要したということでございます。

 外務大臣としては、今後のイラクの政治プロセスの見通し、あるいは、そういうプロセスに対して日本外交としては、今自衛隊が人道復興支援でイラクの一部に派遣をされている、それはそれで大変立派な仕事をしている、それから、無償資金協力あるいはこれから円借款というものも想定されるということでありますが、その政治プロセスというものに日本が何か積極的にかかわっていく、それを促進するための日本の役割というものはどのように考えておられますでしょうか。

町村国務大臣 一月末に選挙が行われ、確かに四月に入るまで主要な人事が決まらなかった。二カ月要して、私どもも最初は、随分時間がかかるものだなと思っておりました。しかし、考えてみると、それ以前、形の上での内閣等々は一応あったわけでございますが、いわばバース党一党独裁という中でやってきた。そういう民主的なプロセスというものに極めてふなれな人たちがまた集まって新しい内閣をつくる。

 日本に例えてはいかがかと思いますが、いわば一緒に連立を組んだことのないいろいろな政党が集まってきて、さあ、どうやってこの人事の配分をするのかということを考えたときに、日本であれば首班指名後二、三日で組閣ということが可能でしょうが、やはりこういう国では、逆に二カ月ぐらいかけた方がかえって幅広い人たちが、もちろんいろいろな政治的な思惑を込めながらではあっても、最終的には一つの固まりとして結集する、そのために必要な時間であったのかなと思います。

 だから、次の選挙の後には多分もうちょっと早く内閣は成立するんだろうと思いますが、こうした二カ月という一見相当な時間を費やしたかに見えるプロセスというのが、まさにこの国が政治的にも再結集をしていくために必要な時間であり、ある意味ではコストであったのかな、そんなふうに私は受けとめているところでございます。いずれにしても、ようやっと大統領、首相が決定をし、いよいよ本格的な政治プロセスが始まらんとしているところでございます。

 四月八日の日に、タラバニ移行政府大統領、それからジャファリ首相あてに、小泉首相から、引き続きイラク復興を支援していくという日本の決意を示す親書を発出したわけでございます。これが非常によくコンパクトにまとまっておりますので、その趣旨をちょっとだけ御説明させていただきます。

 一つは、イラク国民が今後、憲法制定を初めとする政治プロセス、治安の安定、経済復興を、イラク社会の多様性を確保しつつ、さらに進展させていくことを希望する。二番目には、イラクの一日も早い復興のためには、イラク人自身による国家再建への努力が不可欠であり、こうした努力を補完するために、国連を初めとする国際社会が一致して支援を行っていく、日本もその一員であるということを述べております。そして、日本は、二〇〇三年十月のマドリード会議以来、イラクの国民のために既に約十四億ドルの無償資金協力をこれまでやってきました、あるいは決定済みであるということで、今後は、この十四億ドルあるいは十五億ドルの無償資金を含めて最大五十億ドルの支援をしていきますということを申し上げているわけであります。

 今後の憲法プロセスについては、それじゃ日本はどういう形で支援をしていくのかということでございますが、これは憲法起草に携わるイラク人の専門家等を五月ごろに日本に呼んで、何も法律のイロハをそこで教えるというわけじゃございませんが、イスラム国家である例えばアジアのインドネシアとかマレーシアがございます。これはやはりイスラムの法典といいましょうか、イスラムの考え方というものをどうやって憲法の中にうまく映し出しているのか、そういう研究を日本でも随分やっている人がおりますので、そうした考え方とかそういうようなものを先方に参考までに、教えるというとちょっと失礼かもしれませんが、情報提供をするというような、これはJICAのスキームで協力をしていこうということを考えております。

 引き続き自衛隊による人的貢献と幅広い意味の政府開発援助を進めることによって、さらに、憲法制定の後に来る国会議員選挙、そして本格的な政権樹立を年内にという政治プロセスが進むように、我々も引き続き努力をしてまいりたいと考えているところでございます。

石崎委員 外務大臣、もう一点いいでしょうか。

 ちょっと御連絡いただきましたが、テロ特措法はアフガンのことでありますが、インド洋での海上自衛隊の給油活動を十一月まで延長するということを内定したという話をいただきました。アフガン情勢については最近報道等で見聞きする機会が極めて少なくなりましたけれども、今回の派遣延長、十一月までということでございますが、現地の情勢との関係、それから政府の決定の判断、この点について外務大臣の見解をお聞きしたいと思います。

町村国務大臣 まず、五月一日期限のテロ特措法に基づく基本計画の取り扱い、これは先ほど大野長官がお答えしたように、まだ政府として決めているわけではございません。現在、いろいろな要素を慎重に検討しているという状況でございまして、しかし、五月一日でございますから、早晩決めなければいけないんだろう、こう思っております。

 アフガニスタンの様子についてのお尋ねがございました。

 私、国会のお許しを得まして四月の五日に現地を訪問いたしました。特に中谷筆頭理事からもぜひ行くようにという強い御示唆もいただきまして、アフガニスタンに行ってまいりまして、カルザイ大統領あるいは先方外務大臣とも話をし、また、日本の支援というものがどんな形で利用されているのか、例えば学校に参りまして、そこにおける日本の協力の姿、あるいはNGO等で活躍する皆さん方とも会って、そうした活動ぶりを拝見し、お話もよく聞いてきたところでございます。

 ことしの九月に国会議員の選挙が行われるということが比較的最近決まりまして、これを何とかクリアしたい、大統領選挙はいろいろな紆余曲折はありましたけれども何とか成功した、今度はこの九月の議会選挙を協力させたいということで、カルザイ大統領が大変力強く、また明るく語っておられました。

 では、実際テロとの闘いはどうかというと、委員御承知のとおりでございまして、ウサマ・ビンラディンを初め多数のテロリストは依然としてまだ逃亡中という状況があり、またいろいろな国で、アルカイダの関与が疑われるようなテロ活動が世界各地で引き起こされているということでございます。

 アフガニスタンの国内におけるテロ活動、もちろん事件はいろいろ起きております。しかし、総じて言うと、これはカルザイ大統領の言をかりますと、自分の国の治安維持能力も年々上がってきており、三年前と比較すれば随分上がってきたけれども、まだまだ不十分である、この能力をさらに高めていきたい。それから、テロ対策もそうだけれども、一般犯罪も結構あるので、警察能力というものも向上をさせていかなければいけない。現実に散発的なテロ活動というのはあるけれども、大分減ってきたというようなことであります。しかし、さはさりながら、まだまだ安心できる状況にはほど遠いんだというような説明でありました。

 したがいまして、こういう状況でございますから、今、OEF、不朽の自由作戦というものをアフガンで展開しておりますけれども、これには現在約四十五カ国が部隊とか将校などを派遣しておりますので、こうした国々ともよく相談をし、またアフガニスタンとかインド洋の状況などもよく見ながら、テロとの闘いを今後どう進めていくかという観点から、この延長問題について真剣に、まず政府部内で議論をし、また国会にもよくお諮りをしたい、こう考えております。

石崎委員 外務大臣、ありがとうございました。

 かわりまして、イラクにしろアフガニスタンにしろ、それぞれ、和平プロセスといいますか復興へ一歩一歩進んでいる。そういうことに対して、国際社会がサポートをし、協力をしていかなければならない、そういう現実、実情があろうかというふうに思います。

 イラクについて考えてみますと、先般、四月十日、タラバニ大統領が多国籍軍の駐留について、イラクが軍と治安部隊を再建し、テロの危険がないことを確実にするまで多国籍軍の駐留は必要である、その期間は二年以内だというような見通しをおっしゃっておられます。防衛庁長官も、イラクに自衛隊を派遣する期限について、ことし年末に期限が切れるから、そこが一つのめどではないかというような発言をされておりました。

 逆にイラクの方は、組閣、大統領、首相選出を見ても非常に時間がかかる。そして、政治プロセスは、ことし選挙をやって本格政権をつくるということで、内政的な治安とか軍とか、その整備というのがその後だんだん進んでいくんだろうな。そうすると、二年以内というのはあながち途方もない数字ではなくて、ある程度理解できる年限かなとも思われますけれども、自衛隊がいつまでイラクで活動するのかということも一つ我々は関心を持っております。

 撤収時期というものの判断基準をどこに置くのか。つまり、イラクが求めればいるのか、イラクの情勢か、あるいは日本の事情、日本が自国の事情のみで判断するのか、あるいは復興支援がどの程度達成されたか、サマワでどの程度仕事をやり終えたか、そういういろいろなメルクマールがあろうかと思いますけれども、このタラバニ大統領の発言と防衛庁長官の見解をちょっとお聞きしたいと思います。

大野国務大臣 タラバニ大統領が、イラクの治安を守るための組織、これが育成するまで、完成するまで二年間ぐらいかかるだろうということで、二年間ぐらい多国籍軍に活動してほしい、こういう要請は理解できるわけであります。また、一方において、報道でございますけれども、ブッシュ大統領は、イラクの治安組織、軍隊も含めてですけれども十五万人になった、これはアメリカがイラクに派遣している軍隊の数よりも多い、こういうこともございます。

 私が一つ、ことしの十二月がそういうことを考えるめどであろうということを申し上げたのは、多国籍軍のマンデート、権限がことしの十二月で切れる、こういうような判断をしているところでありまして、ただ、それはその前に判断していることでありまして、その時点で国際社会がどういうふうに判断していくか、これも一つの見どころであろうと思います。

 我が国としてどういうことを考えていくか、これが問題でございますけれども、一番にやはりイラクの復興状況、これは十分見きわめていかなきゃいけないんだろう。日本の行っている仕事というのは人道復興支援であります。他国の方が治安を守るとか治安組織を育成するとか、こういう業務があって、人道復興支援をやっている国もありますけれども、日本は人道復興支援のみをやっている。そういう意味で、私は、イラクの復興状況、政治プロセスの進展も含めてですけれども、そういうことをきちっと見ていかなきゃいけないだろう、一番は復興の状況だろう。現在の判断でいいますと、まだ復興という意味では道半ばかな、こういうふうなことでございます。

 それから、政治プロセス、もちろんでございます。これは先ほど外務大臣からお話がありましたので割愛いたしますけれども、選挙は、国際社会が見るところは、概要成功したのではないか。もっとも、アンバール県のように大変投票率の低い二%というところもありましたけれども、平均が、例えばムサンナ県でいいますと六五%だったと思いますし、イラク全体でたしか五六%とか八%とかそういう数字で、極めて高い投票率。それはまさに、イラク人がみずからの手で民主国家をつくり上げよう、こういう熱意のあらわれだ。

 そしてその後、政治プロセスでも若干、外務大臣の御説明がありましたけれども、大統領を選ぶのに時間はかかりました。しかし、首相の指名は一日でやっちゃっているんですね。それからまた一カ月内に閣僚の選任ということで、まあまあ、全体で見れば、スローペースなところもありますけれども、順調にいっているんじゃないか、こういうこともあろうかと思います。

 それからもう一つの要素は、治安組織がどういうふうに育っていくか。これも冒頭申し上げましたけれども、現在、例えばムサンナ県だけでいいますと、恐らく、警官、お巡りさんが大体人口百人ぐらいで一人の割合になっている。かなり育成されてきたな、こういう思いでございますが、そこは全体で見るとまだまだという判断がタラバニ大統領の判断かなと思っております。

 そしてもう一つは、これも冒頭申し上げましたけれども、多国籍として、国際社会がどう判断していくんだろう、国連がどう判断していくんだろう。この四つの要素があろうかと思います。

 この四つの要素を踏まえまして、日本としては主体的に判断していきたい。私、防衛庁長官の立場といえば、四つの要素が全部うまくいって、イラクが安定して、民主国家としてよみがえって、なるべく早い時期に自衛隊も撤退できるような、そういう状況が生み出されたらいいな、こういうふうに思っております。

石崎委員 アフガニスタンの方はどうでしょうか。同じようなことで、先ほど外務大臣に質問させていただきましたけれども、海上自衛隊の派遣、五月から恐らく十一月まで延長ということになろうかと思いますけれども、これもいつまでやるのかということがまたいろいろな場面で議論になってくるんだろうというふうに思います。

 先ほど外務大臣から現地の情報についていろいろな御説明がございました。現在、海上自衛隊の艦船三隻ですか、インド洋に派遣をしているということで、海上自衛隊にとっては非常に大きな戦力といいますか、大きな部分がインド洋に行っている。しかし、日本の周辺もちょっといろいろな状況があって問題を抱えているという状況の中で、このインド洋派遣というのをいつまで続けるのかという判断、またさっきと同じ、撤収の判断というのも大変難しい政治判断になってくるんじゃないかなというふうに思いますが、三隻派遣しているこの態勢を変更するというお考えがあるかどうか。

 それから、さっきと同じでありますけれども、テロ特措法の期限も十月までということでありますけれども、その辺の支援継続に対する長官のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

大野国務大臣 まず、日本の海上自衛隊、補給艦を一隻、それから護衛艦を二隻ということで、これは基本計画並びに実施要領できちっと定めております。

 ただ、これは、今御指摘のとおり、日本の海上自衛隊としては船のやりくりという問題があります。一隻は必ず日本の周辺の安全保障のために配置しておかなきゃいけない、このように思っていますから、大変なローテーションでやっているわけでございます。しかし、テロとの闘い、まさに日本として国際社会のテロ撲滅という協力に対して何ができるか、こういうことで、これまでそういう態勢でやってきております。

 今後、五月一日に延長問題が起こってまいります。それから十一月に期限切れという問題が起こってくるわけでございます。先ほど申し上げましたように、今、五月一日の延長問題については鋭意検討しておりますけれども、その後の、要するに法律の期限切れの問題があります。この問題は、まず、護衛艦二隻態勢にするのかどうなのかから始めさせていただきますが、我が国周辺の国際情勢を踏まえながら、やはり我が国の防衛上支障のない範囲で実施すべきであろう、こういうふうに考えております。ただ、実施要領にはきちっと二隻と書いておりますので、その点は御留意をいただきたいと思います。

 そこで、将来の問題として、言ってみればその時々の協力支援のニーズが一つあろうかと思いますし、それから現地の情勢等について考えてみなきゃいけない。したがって、将来、考え直すときには、適切な規模、そこは相当フレキシブルに考えております。ということで、二隻態勢か一隻態勢かという問題は御理解をちょうだいしたいと思います。

 それから、五月一日の延長問題でありますけれども、テロとの闘いが終わっているのか終わっていないか、この点は先ほど外務大臣からお話がございました。現在、米軍がアフガニスタン南部から東部の、一々細かいことは申し上げませんが、米軍がアルカイダ、タリバン等の残存勢力の掃討作戦を実施している、このことはもう御存じのとおりでありますし、パキスタン軍もやはり、アフガニスタンとパキスタンとの国境のパキスタン側において、政府の統治の及びにくい部族地域に恐らく潜伏しているんだろうな、こういうテロリストを対象に掃討作戦をしている最中でございます。海上においてはもちろんのこと、アラビア海を中心に、アルカイダ、タリバンの残党が海路を経て移動するというような情勢がございます。そういう意味でいいますと、まだまだこのニーズはあるんだろうな、こういうことが言えると思います。

 そういう意味で、今後、日本としましては、九・一一テロによってもたらされている脅威が除去されていけばこれは当然必要ないわけでありますけれども、そういうような情勢をよく見守っていきたい、このように思っています。ただ、今現在でいいますと、そのニーズというのは残っているな、こういうことでございます。そういうことで、これから検討していく問題かと思っております。

石崎委員 イラクにしてもアフガニスタンにしても、撤収の判断というのは大変難しい政治的な判断が要求されると思いますが、これはやはり日本として判断をするということを大事にしていただきたいというふうに思います。

 ちょっと視点を変えまして、イラクへの自衛隊派遣、一年余り経過をいたしました。今第五次になっているんでしょうか、第二次は私の地元札幌から出ましたけれども、最初のころは随分いろいろ注目をされ、報道もされ、その活動内容をニュースでも随分取り上げられましたが、最近どうもそういう報道をされる機会がめっきり少なくなってきた。

 ノー・ニューズ・イズ・グッド・ニューズかもしれませんけれども、活動の厳しさとか家族の御心配というのは全く変わらないんだろうというふうに思いまして、せっかく日本の国益を踏まえて現地で大変な御苦労をされている方々、そういった自衛官の方々の活動が我々に伝わってくる、国民にその活動がよく伝わるということが非常に大事ではないかというふうに私は思いますけれども、そういった意味での現地での活動をもっとよく知ってもらう対応、努力というものは、防衛庁としてはどのように考えておられますでしょうか。

北原政府参考人 御答弁申し上げます。

 石崎先生におかれましては、今もお話しいただきましたが、隊員が出発するとき、あるいは帰ってきたときに、隊員また御家族へ激励あるいは御慰労いただきまして、本当に感謝しております。

 そうした中で、私ども、今イラクへ派遣しております人道復興支援活動、この状況につきまして、やはり国民の皆様の理解と支持を得ることが何よりも大事である、そういった認識に立ちまして、隊員の安全を確保しながら、国民の皆様にしっかりと説明責任を果たしていくといった観点から、各種の広報活動を今日まで実施してきているところでございます。

 先生御指摘のように、まだまだ十分ではないところがあるわけでございますが、我々が今努力している点の一端をちょっと御披露させていただきたいと思っておるんですが、我々といたしましては、活動の状況につきまして、適宜、広報ビデオあるいはパンフレットをつくって、これは累次バージョンもアップしております。それからまた、防衛庁のホームページ、これが果たす役割も大変大きいところでございますので、適時、内容を更新いたしているところでございます。

 さらには、防衛庁が協力しております雑誌でセキュリタリアンという雑誌がございますが、そこで特集を組むとか、また、今は映像の時代でございます。テレビあるいはラジオなどの番組を通じまして、さらには新聞広告等を通じまして、努力しておるところでございます。

 これは防衛庁のみならず、内閣官房、政府全体としての政府広報、これが大変また積極的に御協力をいただいておりまして、例えば昨年の二月になりますが、ちょっと急ぎますけれども、活動内容につきまして、大体、全国紙あるいは一部の地方紙を入れますと三千三百万部に全面広告で活動の内容を報じていただきました。さらには、小泉メールマガジンに防衛庁長官あるいは女性自衛官、隊員等の声も寄稿させていただいております。

 それから、今度は取材を受ける側といたしましては、防衛庁長官を初め、隊員、隊長等も積極的にテレビその他に登場させていただきまして、状況を説明しているところでございます。

 それからあとは、恒常的に、常日ごろから東京でブリーフィングを実施し、また結節点では隊長と宇宙映像でのインタビューをやるというようなことをやっておりますが、いずれにいたしましても、重要性にかんがみまして、これからも努力してまいりたい、そのように考えております。

石崎委員 一つ心配なのは、札幌で隊長さんに聞いたら、十三キロぐらいやせたという話を聞きました。精神的にも肉体的にも強いストレス、大変御苦労があろうかと思いますけれども、そういうメンタル面のケアというのはどのようになっておるんでしょうか。

今津副長官 隊員のことを大変御心配いただきまして、どうもありがとうございます。感謝申し上げたいと思います。

 派遣前、それから派遣をしてから、それから派遣の後、それぞれメンタルのケアとかいろいろ対処をしているんですが、何と、先生、今第五次、中部方面隊から行っていますけれども、およそ延べ三千人近くになるんですけれども、おかげさまで、そういうふうな形の中で、治療を受けたりあるいは途中で任務を放棄して帰国をしたり、そういう隊員が一人も今のところいないんです。それはやはり、私は、日本の自衛隊は侍のように優しい心を持った自衛隊だという評価を受けていますが、同時に精神的にも非常に強い自衛隊であるということを証明していると思いますが、万全の策を体してやっていきたいと思っております。

石崎委員 終わります。ありがとうございました。

船田委員長 次に、赤松正雄君。

赤松(正)委員 おはようございます。公明党の赤松正雄でございます。

 若干久方ぶりに開かれました当委員会、私は、防衛庁・自衛隊絡みのお話が続きましたので、外務省を中心に御質問をいたしますが、突然振るかもしれませんから、大臣、お休みになったりしないように聞いていただきたいと思います。

 ちょっと違った角度のお話でございますが、国連のイラク石油食糧交換プログラム、いわゆるオイル・フォー・フードをめぐる不正事件につきましてアメリカ議会が調査活動を展開しているということを報道を通じて知るわけですけれども、この点につきまして、若干、事実関係、とらえ方等についてお聞きしたいと思います。

 既に、少なくとも一年以上、もっと前からかもしれませんが、この調査は続いておりまして、この計画で百億ドル以上の不正な資金がフセイン政権や、あるいはアナン事務総長の身内という、国連関係者だけじゃなくて、フランスやロシアあるいは中国という国の関連企業にもそういったお金が流れたとされる、そういう驚くべき事実が次々と、一部新聞はかなり詳しく、ほかの新聞はそれに引きずられる格好で、最近かなりそれに便乗した形で報道されているのを散見するわけです。こういったことにつきまして、現時点での状況をどのように今把握しておられるのか、吉川局長にお聞きしたいと思います。

吉川政府参考人 赤松先生から、イラクにおきますいわゆるオイル・フォー・フード、OFFの疑惑についての外務省の現在の認識についてお尋ねがございました。

 先生今おっしゃいましたとおり、日本では比較的報道が少ないと思います。欧米では長くこの問題が一面トップで報じられており、米国の議会、それから、その後、国連の独立調査委員会の設置ということで、国連自体、アナン事務総長自体が、別に息子の問題が出ているからということではなく、国連の管理体制についてどういう問題があったのかということをみずからの手で調査すべく、アメリカの連邦準備制度理事会の前議長でありますポール・ボルカーさんを委員長にして、独立の調査委員会というのを設置しております。

 この設置されました委員会がことしの二月と三月に既に二回の中間報告を出しており、最終報告はことしの夏に出るということになっております。この間、アメリカの連邦議会の方も上下両院の関連委員会において公聴会を繰り返し開催するなど、本件の究明に努めていると承知しております。

 私どもは、この問題につきましては、国連の信頼にかかわる重大な問題であると認識し、その動向を注視してきております。また、先ほども申し上げたとおり、アナン国連事務総長自身、この疑惑問題に対して国連自身がきちっとした答えを出し、きちっとした処分、処理をするということが国連に対する信頼回復のためにも非常に重要だ、こういう認識のもと、御自身が陣頭指揮をしておられるというふうに認識しております。

 先生からの御指摘を踏まえまして、私どもとしても、引き続き国連の独立調査委員会、それからアメリカの議会における動き、こういうものを注視してまいりたいと考えております。

赤松(正)委員 今私が指摘したこと、また吉川さんからお話があったこと、こうしたことはかねてから、イラク開戦時からうわさされていたことだと思うんですね。フランスやロシアなど、米英両国のフセイン政権攻撃に強く反対した国々があるわけですけれども、反対した理由というのは、不正資金の流れが暴露されることへの懸念や恐れがあったんだ。先ほど紹介をされた、欧米では一面トップでいろいろ書かれている、そういうふうなことがあるわけですけれども、その辺が専らだという見方があります。

 吉川さんは、経済協力局審議官時代、二〇〇三年に「イラク問題と国際連合」という論文を雑誌「国際問題」に発表されているのを知りました。この中で吉川さんはこう言っているんですね。「この計画はイラク政府に対し安保理の分断を図るための手段を与えたとの評価もある。これまでの同計画の総支出額は二八〇億ドルにのぼっているが、この巨額な計画を受注した企業の内訳についての報道をみると、イラク寄りの安保理常任理事国と近隣諸国が上位を占めているのが注目される。」こんなふうに書いているわけですけれども、これは二年前の論文。

 これは結構抑制をきかせた書き方をしておられるわけですけれども、当時の状況から今日に至るまでの約二年間、現時点での、先ほどは概括的な報告がございましたけれども、二年の歳月を経て今日の状況を見たときに、どういうふうな認識をしておられるのか、改めてお伺いしたいと思います。

吉川政府参考人 お答え申し上げます。

 先生から御指摘いただきました、私が個人の資格で書きました二年ぐらい前の論文の趣旨は、私が長く国連に関与しておりましたので、国連の観点から見てイラク問題というのはどういう意義を持ったのかということを、軍事的な措置であるとか制裁のあり方、それから大量破壊兵器の査察というような格好で、どういうレッスンを与えたのかという観点から書きました学術的な論文であって、政府の見解を代弁するものではありませんし、当時、私は、このポストにつくなんということも全く考えておりませんでしたので。

 ここで書きましたことは、イラクに対して制裁をやった、そうすると、当時の記憶にありますように、サダム政権は、この制裁のおかげで子供たちがミルクももらえないじゃないか、産婦が病院にも行けないじゃないか、こんなひどいことをやったのは国連だ、アメリカだ、こういう議論をしたわけです。

 それに対して、アメリカも含めて、やはりたたきたいのはサダムであって、子供たちをたたきたいわけじゃないから、では、どうやってこの制裁をより有効なものにできるかということでつくられたのがこのオイル・フォー・フードという、イラクに石油を売らせる、その代金を使って医療品や食糧を与えようじゃないか。

 これをやっていく過程で、オイル・フォー・フードを推進するアメリカと、反対した幾つかの常任理事国があって、しかし、動き出していく。動き出していく過程でいろいろなことが出て、いろいろな報道が出ておりますが、主要な常任理事国であるとか近隣の諸国が、その契約のほとんど、非常に多くの部分をとった。例えば、日本は一切、一切と言うと語弊がありますが、ほとんどこの契約からは外れております。

 結果として私の言いたかったことは、オイル・フォー・フードという、制裁の緩和のために導入した措置が、イラク側、当時のサダム政権に、安全保障理事会の中で政治的な分断を図る、また、本来の目的以外に使う、そういう便利な道具をかえって与えてしまったのではないか、こういうところについて検証が必要ではないかという趣旨を言おうとしたものであります。

 したがって、それ以上のことを言おうとしたものではございませんが、その後、イラクの問題につきましては、一連の安全保障理事会の決議を経て、米英の武力行使、それからサダム政権の崩壊、今日の民主的なイラクの政権成立、そういう過程につながってきたというふうに見ております。

赤松(正)委員 お立場上、極めて抑制をきかせた言い方をしておられるわけですけれども、先ほど来申し上げてきたこと、極めて私は、日本としてしっかりと見ていかなくちゃいけないテーマだろうと思います。

 私はアメリカの行動に決して全肯定も全否定もしないわけでありますが、イラクの事態、私は、この場でかねがね、いわゆる十三年戦争決着、アメリカの先制攻撃というよりも、十三年続いた湾岸戦争以来の状況に決着をつけるための攻撃であったという見方をとるべきだということをずっと言い続けてまいりましたけれども、そういう過程の中で、フランスやロシア、ドイツも中国も入るわけですが、そういった国々が反対をしてきた。これは当時から、やはり国際政治の流れの現実としてそれぞれの国にそれぞれの理由があって、決してきれいごとだけでは済まない側面があるということを言ってきたわけですが、こういう側面を見ると、半ば、なるほどなという思いもしますし、半ば、国連という非常に大きな期待を日本として持ってきた機関も、それこそ、余り適切な言い方じゃないかもしれませんが、ブルータス、おまえもかという感じもしないでもない。非常に残念な思いもいたすわけです。

 ここは、別に、イラク戦争をめぐっての欧米両方を、どちらを高からしめ、どちらを低からしめるというような意図ではなくて、現実をつぶさに見定めていくという部分でしっかりとウオッチをしていかなくちゃいけない、そんなふうに思うんです。

 この問題について、外務大臣はお帰りじゃないと思って事前には言っていませんでしたが、外務大臣、ちょっと、このオイル・フォー・フードをめぐる問題について、御感想というか御意見を聞かせていただきたいと思います。

町村国務大臣 この問題については夏ごろに最終報告書が出るというふうに聞いておりますので、その結果を私どももしっかり見て、また分析もし、今後のことをいろいろ考えなければいけない、こう思います。

 委員御指摘のように、やはり国連という場所は、ある意味では日本ほど純粋でピュアに国連にかかわりを持ってきた国というのは多分希有の国ではないかと言っても過言ではないぐらい、よく日本人は国連信仰という言葉を使いますが、そういう意味では、国連の、例えば人権の面あるいは大量破壊兵器の不拡散とか、いろいろな面で本当に日本は国連の活動について純粋に貢献をしてきた、こう私は考えております。

 それに対比してと言うとちょっと言い過ぎかもしれませんが、それぞれの国がそれぞれの国の現実の利害を持って絡んできていろいろな意思決定にかかわりを持つ、それがいい悪いということはございません、それが現実だと。

 しかし、その現実を我々はややもすると見過ごしがちでありまして、どうしても建前ですべて物を考えてしまう。そういうことではないんだよということを今回のこのオイル・フォー・フードの汚職疑惑というものが、改めて、そうした国際場裏における現実を教えるものとして、やはり日本もよくこうした実態というものを見きわめ、参考にしながら取り組んでいかなければいけないということであろうと思います。

 委員の御指摘になったような問題のとらえ方というのは大変重要な御指摘ではないだろうか、かように私も考えているところであります。

赤松(正)委員 いろいろな意味で、今、日本の外交、国際政治における日本の位置というものは大きな転機を迎えている。

 今、大臣がいみじくもおっしゃった国連信仰ということは、私も含めて日本の中においてそういう傾向があったということは否めないと思うんですが、そういった問題も含め、あるいはヨーロッパの国々の対応、このイラクの事態に対してのアメリカ、イギリス以外の主なる国々の対応という部分も、しっかりと冷静に腰を落ちつけて見定める一つの大きな教訓に満ちたレッスンではないのかなという感じがいたします。

 次に、イラク本体の話でありますが、実は三月下旬に、国連大学で、イラク人道復興支援の国際協力を考える円卓会議、こういう長い名前の国際会議が開かれたわけです。これは、国連大学と日本イラク友好議員連盟が協力して開催をいたしました。背後には、元衆議院議員の山中あき子現国連大学教授や自由民主党の久間議連会長たちの多大な尽力があったわけですけれども、これに私も出席をさせていただきました。自民党、民主党、公明党、各党から一人ずつ参加をしたわけですが、吉川さんも政府を代表して参加をされておりましたね。

 ここでは、イギリスの貴族院議員でEU議会議員のバロネス・エマ・ニコルソンさんという、この人は、イラク南部の湿原地帯やイラン側の難民の人道支援を十数年続けてきた、大変にイラクの復興について強い関心と実績を持ったなかなかの政治家であるわけですが、この人を、山中さんとの関係ということで、連れてきてというか招待いたしまして、基調講演をされたわけです。そこでは、幾つかの大事な視点、日本がこれからイラク復興に果たすべき役割、そういった部分で極めて示唆に富んだ幾つかの提案がございました。

 私ども公明党としまして、この二月の時点で、予算委員会、私どもの政調会長の井上義久が外務大臣に、概括としてのイラク復興支援、今は自衛隊の皆さんがサマワで一生懸命頑張ってくれているわけですが、一方で治安というものをにらみながら、治安がよくならなければいろいろなことはできないねというのも一方であるんですが、同時に、先ほど申し上げましたイギリスのニコルソンさん、あるいはイラク大使、イギリス大使等が参加をしたり、あるいは大学の教授も参加をされておりましたけれども、一方で、そういう自衛隊の人的復興支援の一つの象徴的な形としての活動と同時に、できることから着実にやっていってほしい、そういう要望があったわけです。そういう中で、外務大臣は、どういうニーズがあるか、近隣諸国で今、恐らくこれはヨルダンなんでしょうね、ヨルダンを中心とした近隣国で調査をしている、こういうふうな包括的な御答弁があったわけです。

 その後、そういう調査を踏まえて、大枠としては五十億ドル、そして、約十五億ドルぐらいの無償供与というのがもうあって、残り三十五億ドルについてはこれからさまざまな手だてを講じて使っていくということなんでしょうけれども、その後のこの計画の進展状況、きめ細かい調査の結果、どういうニーズがあるというふうに認識されているのかということをまずお聞きしたい。

 あわせて、そのときに、先ほど申し上げました、私どもが参加をいたしました円卓会議の場でニコルソンさんが、例えばということで幾つかの提案をされていますね。一つは補助的な水の浄化装置。これは、恐らく考え得るに、自衛隊がサマワでまとめてどんと水を浄化しているというよりも、各家庭に小さい単位での水の浄化装置というようなものを配ることによって子供たちの疾病がかなりの程度、七〇%ほど減るというような数字を挙げておられました。そういうこととか、あるいは医療器具で、簡単な、各家庭で使えるようなものも配るというふうな、そういう非常にきめ細かいというか小さい、少額でも重なったら大きな額になるでしょうけれども、そういった人道復興支援の必要性をあの場で訴えておられたんですが、その辺についても含めて、どのように検討されているのか、お伺いいたしたいと思います。

町村国務大臣 赤松委員も大変熱心なメンバーとして御参加をされたと私も聞いております。先ほど御指摘のあった円卓会議、今お話のあった山中教授からも私もちょっと、簡単でございますが、お話を伺ったわけでございます。

 イラクに対するODAの支援、既に平成十五年の十二月から十六年三月まで一回調査を行っておりまして、さらに昨年の十二月から調査をやっておりまして、三月に調査団が帰国して今調査結果を取りまとめ中でございまして、またこの結果もわかり次第御報告をしたい、こう思っております。JICA調査団をアンマンに派遣して、そこからいろいろな調査を行っているということでございます。

 バロネス・エマ・ニコルソン議員のお話、よりきめ細かい草の根支援、人道支援、こういったものが大切であるという御指摘があったと今伺いました。

 私ども、ODAの支援では、これはかねてから、先方政府あるいはムサンナ県の知事等からも、とにかくインフラがずたずたになっているから、電力あるいは衛生保健とか道路でありますとか、こうしたかなり大規模なインフラ整備に一つはお願いをしたい。またあわせて、イラク国民の生活に直結するような、どちらかというと小規模あるいは草の根レベルに直接裨益するような両方の支援、もちろんどちらも大切である、こういうようなお話を先方からもいただいておりますし、我々もそういう考え方でやっていきたいと思っております。

 既に草の根レベルでの人道支援の例、先ほどお話のあったムサンナ県の浄水装置六台、給水車三十八台、給水タンク三百四基、これは随分何度も何度もお話ししている話で、大分知れ渡っておりますけれども、例えばバグダッド市内の小学校の水とか衛生設備の応急修復の支援でありますとか、あるいはサマワの病院に対する医薬品、医療器材の供与もよく言われておりますが、そのほか、そうした医療器材の緊急支援もやっておりますし、あるいは小学校の整備、学校の学用品の供与、こういうようなものもかなりきめ細かく心がけてやっております。

 委員御承知のとおり、外務省の予算の中で草の根・人間の安全保障無償資金協力というのが項目として立っております。原則として一件当たり上限一千万円ということでございますから、そう大規模なものとはもちろん言えないわけでございますが、こうしたものを、これはイラクのみならず、それぞれの国でニーズに応じてきめ細かく供与しているところでございます。

 人々の生活に直結するような支援というものも非常に重要だ、こういう認識で、特にこのイラク復興支援に当たっては重点を置いて考えてまいりたいと考えております。

赤松(正)委員 ありがとうございました。この間の円卓会議では、大規模なインフラもさることながら、草の根の人道支援をという話が強調されたわけですけれども、ぜひ両方しっかり見据えた上での活動を展開していただきたいと思います。

 あと、もう時間が少なくなりましたので、ちょっとこれも趣の変わった話でございますが、今非常に大事な問題なので、ちょっとイラク人道復興支援のこの委員会とはなじまないかもしれませんが、最後に外務大臣にもぜひお聞きしておきたいと思うことがあります。それは、いわゆる中国の反日デモ等の一連の動きについてでございます。

 先日、安全保障委員会の場で私は町村外務大臣に、中国における江沢民前主席の、いわゆる江沢民の十三年と言われる時代における反日教育というものが大きな影響を及ぼしているんだということを指摘いたしまして、このことをぜひ日本外交として、中国にきちっとそういうものはやめるべきだというふうなことを主張すべきだということを申し上げました。

 今日の事態は、中国の歴史認識の問題というものが根っこにあって、その上で、いわゆる時流の問題というか、日本の国連安保理常任理事国入りの問題が一つの契機、きっかけになっているという見方が専らであります。

 そういう中で、私たち日本が、イラク、アフガンに対する一連の自衛隊の活動、また、インドネシア、インド洋のいわゆる大地震・大津波に対する自衛隊の活動、こういったそれぞれに約千人規模の人的貢献をしている。同時に、ここで細かく言おうかと思ったんですが、例えば中国とは比較にならないぐらいの多額の経済的な支援もしている。どこから見ても、国連という場における日本のありようというものは、後ろ指を指されたり、どうこうされるものは全くなくて、むしろ中国に言いたいことはいっぱいあるわけであります。

 そういうことを言うこともさることながら、この場面はしっかり冷静に落ちつく必要があるということで、結論的に言いますと、いわゆる歴史の共同研究という部分が大事になってくると思うんですね。

 実は、私の学生時代の同級生で慶応義塾の小此木政夫教授がいるわけですが、先般、彼を招いていろいろ懇談をしたんです。例えば韓国との間で、彼が座長になっていわゆる日韓における歴史共同研究もやって、大体一まとまりして提出をしたと。日韓における歴史の共同研究は、決して歴史認識を一致させようというんじゃなくて、どこがどう違うかという違いをはっきりさせる、共通点はどこか、違いをはっきりさせる、こういう作業をやっているんです。

 例えば、私は二つ聞きたいんですが、一つは、対韓国との間における歴史共同研究が一区切りついた。その区切りがついたところに、今回の韓国と日本との間における、竹島の日をきっかけにしてこういう韓国の対日批判というのが起こった。これを踏まえて、日韓歴史共同研究をどうされるおつもりか、まず、その点だけについてお聞きしたいと思います。

町村国務大臣 先般、三月二十六日に、この日韓歴史共同研究委員会第六回全体会合というものが東京で開かれまして、第一回目は二〇〇二年の四月でございますから、ちょうど三年がかりの研究作業でございました。私も、この最終会合の後、委員会の皆さん方と一緒に会合を持ちまして、一人一人の方から、いろいろな成果あるいは難しかった点等々についてお話を直接伺うことができました。小此木先生もその一員としておられたわけでございます。

 三つの分科会に分かれてやったということのようでございまして、相当なボリュームの調査報告書が近々完成をしてくるということのようでございます。

 両国の学者、学識経験者が集まって議論して、もちろん共通の認識を持てる部分も相当あったということですが、一致しないところはなかなか一致しないものだなと。特に近現代史になってくると非常にこれが難しくて、象徴的なことを言うと、その近現代史の分科会の方では千百ページの大部の報告書ができ上がってくるんだというお話まで聞いたところであります。

 しかし、私は、大変貴重な作業であった、委員の方々には大変なエネルギーを投入していただきましたが、貴重な作業だった、こう思っております。

 したがって、これを受けまして、私は先般、イスラマバードにおきまして、先方、潘基文外交通商部長官とお話をして、これは引き続きやろうではないかという話をいたしまして、そうしようということになりました。ただ、この三年間なさった方々はエネルギーをかなり、消耗したと言っては失礼かもしれません、ということもあったものですから、新しいメンバーにして、特に若い世代の学識経験者の方々に新たに参加してもらってこの共同研究を続けようということで、日韓両政府で合意いたしました。

 したがって、これからそれぞれ相談しながら人選をして、できれば早い機会にこれを立ち上げるようにしてまいりたいと考えているところであります。

赤松(正)委員 小此木さんも頭が痛いと言っておりましたが、今のお話をどう受けとめるかという感じがいたします。

 最後に、こういう日韓の関係より、私のとらえるところでは若干レベルが少し後ろかなというのが日中の関係だろうと思うんですね。日中では知的交流支援事業という格好でやってきているわけですが、日韓よりは少しおくれているのかなという感じがします。

 ぜひとも、今度、外務大臣、外相級で会われる、これこそ非常に大事な場面だと思いますけれども、そういう日中知的交流支援事業の現状を踏まえた上で、いろいろ難しい問題もあろうかと思いますが、地道な、どこが一致できて、一致できないかという両方のきちっとした、学者レベルにおける日中共同歴史研究というものをぜひ提案していただきたいということを申し上げまして、何かありますか。ちょっとだけお願いします。

町村国務大臣 今度、日曜日か月曜日かに、先方、李肇星外交部長と会おうと思っております。その際に、日中間でもそういった共同研究の場を立ち上げるかということについても、今委員の御指摘もございました、外務省もちょっとそういう必要があるのかなということで、今内部で議論しているところでございますので、先方の合意があればそういうものを立ち上げるのは一つの有力な方法ではなかろうかとも考えております。

赤松(正)委員 終わります。

船田委員長 次に、篠原孝君。

篠原委員 民主党の篠原孝でございます。

 この委員会では初めて質問させていただきます。外務大臣、十一時にほかの委員会に行かれるということで、ちょっと質問の順番が通告と異なりますけれども、外務大臣の方に質問させていただきたいと思います。

 イラク問題を考えるに当たって、防衛なり安全保障について我々日本国民の意識がどう変わってきたかというのを考えますと、非常に急激に変わってきたんじゃないかなと私は思っております。

 私の学生時代、今から三十数年前ですけれども、防衛大学校を卒業された方が、大学院で土木を勉強したいということで、私がおりました大学がその大学院生を受け入れたわけです。そうすると、違憲の存在の自衛隊、そこにくっついている防衛大学校の卒業生を受け入れるとは何事だというので全学ストになって授業が行われなくなって、我々は遊べてよかったんですけれども、ちょっと私はそのときに正気のさたではないと思いました。ですから、そういった運動というのには一切くみしませんでした。

 それから三十数年ですけれども、いろいろ変わってきたんですけれども、一九八〇年ごろ、あの前後の事件で、例えばイランで人質事件が起きました。外交官にちょっかいを出すというか、そういうことをするというのは大変なことですから、世界各国はすぐイランに対して経済制裁をした。イランは危険な国なわけです。今も議論されていますように、いろいろ問題がある国です。

 ところが日本は、石油がなくては生きていけない国だからといって知らぬふりして石油を輸入し続けて、世界からひんしゅくを買ったというのがあるんです。これは皆さん忘れておられるんじゃないかと思います。それほど世界の軍事情勢とかいうのには余りにのうてんきだったんじゃないかと思います。しかし、私はこれはよくないんじゃないかと思います。

 それで、先ほど牧委員との議論の中で、牧委員は、九・一一から今回のいろいろな一連の動きが始まったのではないかと言うのに対して、外務大臣は、いや、そうじゃないんじゃないか、それもあるけれども、湾岸戦争から始まったんじゃないかと。これは外務大臣の御指摘のとおりだと思います。あのころから、日本の意識というのはちょっと考えていかなくちゃいけないというムードが生まれたんじゃないかと思います。

 それで、外務大臣が百円と百ドルを間違えたとおっしゃったあの件ですけれども、一兆円ほど出した。金だけ出したけれども人を出さなかった、血を流さなかった、そういう議論がありまして、それで考えなくちゃいけないというムードが一気に高まった。

 しかし、よくよく考えてみると、本当にそういう声が日本では、まじめですから、先ほど国連に対して国連信仰がある、まじめ一方だというのがありましたけれども、国際的な声に対して日本ほどまじめにこたえている国は私はないんじゃないかと思います。それで、いろいろ探したわけです、私。外務省にも資料要求をいたしました、そういう声があったのかと。例えば、今で言えば町村・ライス会談とかで、かつて単刀直入にそういうことをしてくれというふうに言われたとか、そういう事実があったのかどうか。日本が国際的な貢献として外国に自衛隊を派遣すべきだという明々白々な要求というのはあったのかどうか、私自身調べました。それから、外務省にそういった事実があるのかどうかと。

 ところが、資料としては全然出てこないんです。そういった声というのは、例えば先ほど吉川局長の論文がありました。ジョセフ・ナイさんという立派な学者もいます。外交評論家もいます。外交評論家の声でもいいんですが、日本はもっと軍事的に国際貢献していくべきだというような声、そういったものが実際にあったのでしょうか。

 例えば、具体的に言いますと、最近ので言いますとBSE絡みで、ブッシュ大統領は直接小泉総理に電話をかけてきて牛肉の輸入を再開してほしいという明々白々な要求があるわけです。そういったものがあったのかどうかということをお聞かせいただきたいと思います。

吉川政府参考人 お答え申し上げます。

 具体論になりますと、幾つか外に出ているもの、例えば、米国連邦議会の調査部というのが一九九一年の報告書という何か長いものを出しておりまして、そういう中で、当時の海部政権に対して、ブッシュ政権、お父さんですね、当時のブッシュ大統領から、日本が物理的な存在を湾岸において示してほしいということを言ったというようなことが伝えられております。

 当時の出ております日本の外交青書の中では、湾岸危機の段階において、日本の協力について遅過ぎる、少な過ぎる、いわゆるツーレート・ツーリトルだったという批判、日本の協力に人的側面の協力が含まれていなかったことについての批判があったというふうにみずから書いておりますが、先ほど申し上げたような、アメリカの中における指摘というのは幾つか出ていると認識しております。

篠原委員 今初めてお答えいただけたので、そういう資料を私にいただきたい。私が探した限りでは、余りない。

 どういうことかというと、やはり日本はまじめ過ぎて、ひとり相撲をとってきている。つまり、何を申し上げたいかというと、非常に憶病だった。しかし、正常に戻っていくのはいいんですが、一気にまたぶれ過ぎているんじゃないか、そういう懸念があるわけです。

 例えば、最近ですけれども、読売新聞が「続 小泉外交」というので、おもしろいといえば、我々読者からすると非常におもしろい記事を書いています。そこの中にも、三月二十九日のにありました。ローレス国防次官補代理が、今から二年半ぐらい前、二〇〇二年の十月に、イラク戦争後のイラク国内の治安維持を日本も担ってもらいたいが、恐らく無理なんだろうね、日本の今までの対応からして無理なんだろうねと言っている。それに対して、これは暗黙の支援要請だと。これは、外務省じゃなくて官邸筋がそういうふうに受けとめていろいろ検討し出したということなんですね。

 それから、日本ではこれまた神様のように信仰されております前の国務副長官のアーミテージさん、この方も、湾岸戦争と同じようなことは日本に対して言わない、日本に戦費負担は求めない、日本は戦争中には無理する必要はない、復興支援はちゃんとしてほしい、これは自衛隊の派遣はしてほしいと言っておられますけれども、こういうことを言っている。

 非常に抑えて、日本のスタンスというのは非常によくわかっているのが国際社会じゃないかと思います。日本は何十年もそういうスタンスをとり続けてきた、それはやはり評価されてしかるべき態度じゃないかと思っております。その点では、私はちょっと行き過ぎた感じが今回のイラクの派遣やなんかにはあるんじゃないかと思います。

 この点については、本家本元のアメリカやイギリスで検証しているわけです。一回じゃない。最初はCIAが、ダルファー団長なんかが行って、大量破壊兵器はなかったと。そして最近、独立調査委員会がまた、ほとんどの情報機関の情報は間違っていたと。しかし、大統領は知らぬ顔をして、情報機関のせいにしちゃったりして、政策が間違ったとは言っておりませんけれども、そうやって検証をしておるわけです。

 日本もここで、防衛安全保障政策全般ですけれども、特にイラクの問題について、これを派遣したりして、どういう情報に基づいて、どうやって派遣したのかということを検証してみる必要があるんじゃないでしょうか。外務大臣にお答えいただきたいと思います。

町村国務大臣 イラクの状況について、外務省を初めとして日本政府全体で、それはさまざまな情報収集等々はやってきたわけであります。しかし、あのサダム・フセインの政権のもとでのイラクで、例えば大量破壊兵器があるかどうかといったような情報活動、インテリジェンス活動が日本が本当にできていたかといえば、日本独自の活動というものは、ほとんどそういう能力がかの地においてはないということであったと私は思います。

 そして、それは何もそこの地域だけサボっていたとかいうことではなくて、日本全体が、戦後の社会の中にあって、そういうインテリジェンス的な活動はやってはならないんだ、いわばそういうコンセンサスのもとで、これは国会ももとよりでありますが、日本社会全体が、そういう活動には手を染めてはならないというようなことで、ある意味では社会全体がインテリジェンスの重要性を軽視してきた、あるいは無視してきたという状況の中で今回のイラクの状況が生まれてきたんだと思います。

 ただ、私が申し上げたいのは、しかし、私どもが独自のそういうインテリジェンス情報がなかったから、したがって、ただ追随しただけではないかという御指摘かもしれませんが、イラクに対する武力行使、そして私どもがそれに基づくさまざまな復興支援をやってきたというのは、あくまでも、イラクがあるいはサダム・フセイン政権が、相次ぐ国連安保理の決議、一九九〇年、九一年にまでさかのぼる安保理決議を累次無視してきた、そして最後のチャンスを与えたにもかかわらずそれに従わなかったということを理由にして今回の武力行使に正当性ありという判断をしたのであって、大量破壊兵器があるかないか、あれば正当だ、なければ正当でないという議論をして、私どもは今回のイラクに対する武力行使の妥当性というものを判断したのではないんだということは、もう何度も何度も申し上げておりますし、当時の小泉首相の談話あるいは内閣の決定における文書の中にもそのことは実は再三明示がしてあるところでございます。

 したがいまして、私どもとしては、何か新しく調査をして新しく報告書をつくってという必要性は実は全くない、こう考えているわけであります。

篠原委員 私も、日本に調査機関があってそういうことをできるとは全く思っておりません。それはいいんだろうと思います。ですから、もうちょっと素直に考えていいんじゃないか。

 露骨に言えば、イラクの復興支援、そういうことを言っています。しかし、どなたの胸にも、それもありますけれども、アメリカとの関係を考えると、アメリカと一緒に行動しなければならないんだ、仕方がなかったんだということで、私はそれはそれでいいんじゃないかと思う、正直に日米関係が大事なんだと。だから、例えば北朝鮮のことを考えてみても、アメリカの協力なしにはやっていけない、ずっとアメリカとの同盟関係を大事にしてきたんだ、世界じゅうで、延べでいえば三十カ国から四十カ国、イラクにみんな軍隊を派遣している、何で日本だけが行けないんだ、それで僕はいいんだろうと思います。

 しかし、本家本元の間違っていた情報で振り回されるというようなことがあったんだ、日本が悪いんじゃないけれども、まあアメリカの情報機関もそれほど信用できないんだ、だから、もっともっと日本独自に判断していったらいいんじゃないかというようなことで私はいいんじゃないかと思います。

 日本は、いやいや、そうじゃない、日本は日本で独自に判断したんだということをそこまで言い張っている必要もないんじゃないかと思います。例えばアメリカだって、国民は、最初は七〇%ほどイラクの攻撃を支持したけれども、今となれば半分以上、五三%ほどがやはり間違っていたんじゃないかというふうに思っているわけです。それはそれで私はいいんじゃないかと思います。日本もやはりそういう素直な態度をとっていくべきじゃないかということを申し上げたいだけでございます。

 そういう状況になってきたわけでして、どんどん事情が変わってきているわけです。私は、対米協調というのは大事だと思います。それはちゃんと果たしてきた。そして、今タラバニ大統領が誕生し、先ほど大野防衛庁長官のお話にもありました、首相はさっと一日で決まった。いろいろな面で非常にスピードアップして進んできているんじゃないかと思います。

 政治的プロセスを見て撤退の時期を考えるということをおっしゃっていました。新体制ができました。まだ、憲法をつくって、またきちんとした体制を整える必要があるわけですけれども、一応国家としての体裁を整えつつある。そういうことですから、日本はまたもとに戻って、日本にできる、経済援助とかそういったような得意なことをやればいいのであって、今でき上がりつつある指導部と協議を始め、本格的な復興支援をするべく、一たん撤退するということも現実的じゃないかと思いますけれども、外務大臣、いかがでしょうか。

町村国務大臣 新しい政権、執行体制ができました。これからいろいろな活動を新政権はやらなきゃいけない。今委員が御指摘になった民生の安定ということも大変大きなテーマだろうし、また経済の復興ということもあると思います。さらには、まだまだ不安定な治安情勢を改善していくということも重要な仕事だろう、こう思っております。そういう意味では、いろいろな面でまだ民主化努力は道半ば、復興も道半ばというかまだ緒につくかどうかという段階だろうと思います。

 したがいまして、これは私が先般イスラマバードのACDの会議に行ったとき、ある国の外務大臣と話し合ったとき、中東の国なんですけれども、その外務大臣の言葉をかりますと、大臣はいる、局長もいる、しかしその部下がほとんどいない。したがって、いろいろな話をしても、大臣の答えは返ってくるんだけれども、それを実際、いざどういう形で実行するのか、ちょっと詰めた話になると実は答えが返ってこない。そういう意味では、政府全体の統治能力といいましょうかあるいは行政能力といいましょうか、これらがまだまだ不足していると思いますよという説明を受けて、なるほど、そういう面も確かにあるんだろうなと。すべての行政機関がそうだとは私も思いません。特に、治安部門ではかなりの程度、警察力等のレベルが上がってきているとは思います。しかし、それとてもまだ不十分なのかもしれません。

 そういったことを考えたときに、今、新しい政府ができたんだから直ちに自衛隊を撤退していいではないかということに私はならないんだろうと思っておりまして、まだ当分の間は、自衛隊による人的貢献と、またODA、これもまだ十分なODAの支援をやるに至っておりません。無償資金協力十四億ドル強、さらに今後三十五億ドル程度の円借款をと。しかし、その円借款を出そうと思っても、それを受ける、相談する相手がまだまだ、さっき申し上げたような状態というのも一部見受けられるわけでありますので、こうしたことは、今後、車の両輪として進めていく必要性というのはまだ当分続くのではないのかな、私はかように考えているところでございます。

篠原委員 いろいろな考え方があるし、いろいろな声があるのはわかります。先ほど伺っていますと、タラバニ大統領は、あと二年ほど治安維持活動ということで駐留してほしいというふうに明確に言っておられると、さっき大野防衛庁長官の答弁の中にありました。しかし、大統領はそうおっしゃっていますけれども、イラク国民の声としていろいろな声があるはずです。スンニ派なんかは反米というのを明確にしておりますから、そういった方の勢力では、もう解放軍ではないし占領軍だ、いつまでいるんだという声が起きつつあるわけです。ですから、どこにもいろいろな議論があるんでしょうけれども、駐留軍すら、いつまでいるんだと。

 先ほどの外務大臣のお答えを、売り言葉に買い言葉で申し上げれば、それはそうなんです、下の方はいない、部下はいない、治安もそれほどよくはなっていない。そういうことを考えたりしたら、最初のころの義理は果たしたんだから、日本は復興支援についてこそ本格的に、先ほどの赤松委員の議論の中にありました、大規模なものもやる、草の根もやる、日本はそういうのは得意なわけです。それは本格的にやるけれども、今のぐちゃぐちゃした状態ではちょっと日本の一番得意分野を生かせないから一たん引くというようなことがあってもいいんじゃないかと思いますけれども、自衛隊は一体いつまで、防衛庁長官としては駐留させておくつもりでしょうか。

 先ほどの答弁、それから前に三月十八日のところで、記者会見でことしの十二月までというようなことをおっしゃっておられます。しかし、ほかの国、いろいろな国がありまして、出してはいたけれども人質問題で帰ったフィリピンなどもあります。イタリアの場合は、記者が捕まってそして解放されて、それを米軍が銃撃してというようなごちゃごちゃがあって、九月撤退ということを明確にしておるわけです。私は、そういう、いろいろな国がいろいろな自主的な判断をしている、それをアメリカも許している、日本も本格的に撤退の時期というのは考えるべきだと思います。

 いつまで駐留しているのか。どうしてこれを申し上げるかというと、治安維持云々は、治安がよくなったら帰るというのがあるわけです。復興支援は、一挙にできませんから、ずっと続くわけです。では、どこまでが自衛隊がいるべきかというのがあるわけです。私は、もう十分頑張っていただいた、役割は、終わってはいませんけれども、相当終わりつつあるというふうに考えておりますが、いかがでしょうか。

大野国務大臣 まず、篠原委員の、政治プロセスはある程度進んでいる、こういうポイントでございます。それも一つの切り口だと私は思っております。

 しかしながら、今後のイラクにおける政治プロセスを考えますと、一つは、閣僚を全部選定して、それから八月には憲法起草をしなきゃいけない、憲法について国民投票して、そして恒久政府のための選挙をやらなきゃいけない、本格政府、恒久政府の発足がことしの末である、こういうプロセスがまだ残っているわけですね。そういうことも見きわめていかなきゃいけないな、こういう問題があります。

 それからもう一つは、日本としての役割は一体何だろうかという問題であります。この点は、日本の役割は、たびたび申し上げておりますように、イラクの人道復興支援という立場で、国際社会のイラク支援に対して日本としての立場から貢献している、こういうことでございます。

 それがどういう意味を持つのだろうか。考えてみますと、まず、イラクの方からどう見られているか、この観点も必要だと思うんです。イラクの方から見ますと、日本の自衛隊、実力組織であります。軍隊とあえて言いませんけれども、実力組織というのはまさに平和のハトというような表現で言われることもあるわけであります。だから、そういう意味で、非常な共感を呼んでいる、この面は忘れてはならないし、それから、復興支援というのはやはり引き続いて必要だ。それは私は、サマワでハッサーニ・ムサンナ県知事と会いましたときにも、復興の需要が大変あるんだ、こういうことを言っているわけであります。

 問題は、その復興の需要がどういうふうに変わっていくのか。そして、もしイラク人の手で復興ができるならば、それはイラク人の手に渡していくべきではないか。そういう意味で申しますと、浄水活動というのは、本年の二月四日までやりまして、五日以降はODAの方の機材をもってイラク人の手で浄水をやっている、こういう状態になっているわけであります。

 したがいまして、復興支援ということはまず先方のニーズがあります。だから、先生のお考えもわからないではありませんけれども、先方のニーズがある以上はやはりそれにこたえていくのがイラク復興のための国際社会の努力の中で日本がやるべきことではないか、こういう問題が出てくると思います。

 そしてまた、国益として考えた場合の問題は、もう改めて言いませんけれども、いわばイラクの安定と安全というものは、やはり中東の安定と安全、その中東に石油エネルギーの九割を、日本が必要とする九割を依存している、こういう問題が当然あるわけであります。

 その中で、繰り返しになりますけれども、実力組織である自衛隊が本当に地元の皆さんに共感をもって迎えられている、このことはすばらしいことだと思っております。これは、イラクと日本の将来の関係を考えますと、私は、そういう意味で、今の自衛隊の活動、先生がおっしゃるように、だから撤退することを考えていいんじゃないか、こういうことではないと思います。

 ただ、問題の、質問の本質に戻りますけれども、これは、私は、ことしの末を一つのめどとして撤退すべき、撤退の時期だと言ったのではなくて、撤退の一つのベンチマークというかめどが、多国籍軍のマンデート、権限の終了であるな、そのときに一度考えるという視点もあるな、こういうことを申し上げたわけで、もう一度申し上げますけれども、政治プロセス、それから治安の状態、イラクの復興、そして関係各国がどう考えるか、こういうことを総合的に考えて、自主的に主体的に考えていく、こういうことでございます。

篠原委員 ベルルスコーニ首相、イタリアの首相も、別に絶対撤退すると言ったわけではない、九月から撤退ということを考えると言われただけで、いろいろ考える必要があると思います。

 国益という話が、防衛庁長官から出ました。アメリカは厳然たる国益でもって動いていると思います。ですから、彼らはやる必要があると思います。先ほど赤松委員のところにもありましたが、バグダッドを陥落したら真っ先に何をしたか。非常に露骨ですよ。石油省にまず行って、そこから、イラク攻撃に反対している中国、ロシア、フランスの石油の秘密協定の書類を取り出す。それから、余り協力的でない国連の、先ほどもありました百億ドルの疑惑の問題の、そういった資料を取り出してと。それはアメリカにとっては石油が大事だ。大義で自由で民主化だと言っていますけれども、やはり石油の利、石油が必要だ。先ほど、日本にも石油が必要だというのがありました。ですから、イラクを、アメリカの意のとおり動くというわけじゃないですけれども、そういった国にしようという厳然たる国益があります。

 我が国の国益は何かというと、そんな軍隊もないわけですから、アメリカとの同盟関係ぐらいでいいわけでして、そこは現実的に考えるべきじゃないかということで、ちょっと申し上げますと、今、だんだん駐留する国が少なくなってくる。そして、防衛庁長官お答えのとおり、日本の地位というのは日本が考えるよりもうんと重いんじゃないかと思います。

 東欧諸国が撤退したって何ともない。イタリアも撤退する、だんだん少なくなる。少なくなっても比重が増す。協力している国ということで、かつての西側の同盟国のフランスとドイツよりも、軍事的なものはないんですが、プレゼンス、存在としての重みというのはあるようになってくる。そうすると、身動きがだんだんとれなくなって、簡単に撤退できなくなってしまうというおそれが僕はあるんじゃないかと思う。

 ですから、そこのところは考えて、そろそろ、十二月というのは、私はこれは賢い記者会見だったと思います。日本はいつまでもいるんじゃないぞということをおっしゃったのは非常にいいことだとは思いますけれども、もっと早く撤退して、それで、ずっと撤退すべきだと私は言っているわけじゃないんです。本格的な復興支援をするんだ、ひとまず撤退だということが国民の大半が望んでいることではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

大野国務大臣 復興支援というのは、先ほど外務大臣もおっしゃっていましたけれども、ODAと自衛隊と車の両輪のごとき関係でやっていっているわけであります。

 それで、もしすべて治安が安定し、政治プロセスが完了し、そして復興がある程度目に見えてきた、そしてさらに、国連等関係諸国がもう多国籍軍のマンデートもこの辺でいいかな、こういうふうな判断をしたときに、私は自衛隊は行くべきではないと思っています。これは、完全に民間の、例えばNGO、NPO、こういう人たちが活躍する場が開けてくるわけであります。まさに今はそういう方々が活躍できるほどの治安の安定がない、だから自衛隊が行ってそういう人道復興支援をやっているわけであります。

 もし仮に治安が安定し、何ら問題がない、生活環境もある程度問題がない、そうすれば、ODAと民間のそういう底力、これが大事なんだ。私は、そういう意味で、自衛隊の外国での活動というのは、相手の要請があって、そして国際社会が国連でそれをやろうという決意があって、そして日本の立場からいろいろな観点から問題を検討してやっていく、これが本来の姿だな。そういう意味で、ODAと民間活動、それから自衛隊の活動、今は車の両輪でやっていますが、将来、安定した場合には検討しなければいけないと思っています。

篠原委員 皮肉な話になりますけれども、アメリカは一生懸命民主化と言っています。一つの皮肉を申し上げますと、民主化すればするほどアメリカは出て行けというふうになって、アメリカの思惑から外れるというのがあるんじゃないかと思います。

 これと同じのが今の日本の状況にもありまして、アメリカにくみしているからテロに攻撃される。テロとの闘いと言いつつ、テロと闘っているのはアメリカであって、日本がアメリカとくみしているから攻撃対象になる。それを、日本がアメリカとくみする態度をなくして、日本に自衛隊が帰ってくれば、アメリカと手を組まなくなったなということでテロの対象にならなくなり、安心して民間レベルで復興支援もできるんじゃないかと思います。そういった柔軟な発想も必要なんじゃないかと私は思います。

 それで、こんなことで申し上げるのもなんですけれども、小泉政権というのは武部幹事長とかサプライズ人事がいっぱいありますけれども、政策においてもサプライズがあってもいいので、もうこういう時期になったからイラクから撤退するというようなことをされれば、急に人気が、支持率も上がるんじゃないかと思います。そうなることを願いまして、私の質問を終わらせていただきます。

船田委員長 次に、市村浩一郎君。

市村委員 民主党の市村でございます。これから質問をさせていただきます。

 実は質問通告していなかったんですが、先ほど篠原委員の話の中で石油のことが出てきましたけれども、ちょっとだけ、基本的な質問なんですが、今、中東の石油というのは、日本またはヨーロッパは、決済はドル建てでやっているんでしょうか。ちょっとそれだけ、外務省の方、わかりますか。

吉川政府参考人 突然のお尋ねで、政治のことだと答えられるんですけれども、多分、ドルで国際石油市場の決済はやられているというふうに聞いております。

市村委員 例えば、今、ユーロが登場して、ヨーロッパでユーロ建てで決済をしようとする動きは見られないんでしょうか。外務省、わかったら教えてください。

吉川政府参考人 先生、申しわけございません。この場で正確な答えを出すことができませんので、追ってお返事申し上げます。

市村委員 突然でしたので、済みません。

 ただ、その辺、私も前々からこれは重要な問題だなと考えておるところがありまして、通貨の問題というのは、実はこのイラク戦争の背後にも絡んでいるんじゃないかという指摘が前からされておりますのでちょっと質問しましたが、また改めてこの場をかりて、後日、チャンスが与えられれば質問させていただきたいと思います。

 では、そもそもの話に入ってまいりたいと思います。

 大量破壊兵器の議論、先ほど篠原委員ともありました。まず、イギリスのブレア首相は、下院の質疑で、誠実に提供された情報が結果として誤りであったことについてはすべての責任を負い謝罪すると述べていらっしゃいます。また、アメリカでも、独立委員会報告書でも、大量破壊兵器の存在について情報が誤っていたことが報告をされています。

 外務大臣、今お戻りのところすぐで申しわけないんですが、このように結果的に大量破壊兵器が発見できなかったことにつきましてどのようにお考えか、改めてお聞かせいただきたいと思います。

吉川政府参考人 市村先生、恐縮です。多分、大臣は質問の部分をきちっと聞き取れなかったと思います。私の方から。

 これまで外務大臣からお答えしているとおりでございまして、今、ブレア首相の謝罪ということを御指摘ございました。ブレア首相がおっしゃったことは、自分たちの情報というものが結果として誤りであったということについては自分は責任を負って謝罪する、他方、サダム・フセインを取り除いたということについては自分は謝罪しないと……。

市村委員 そこはわかって、あえて聞いているんです。つまり、私がお聞きしたいことは、大量破壊兵器がなかったことについては、その後のことは言っていません。なかったことについては、イギリスのブレア首相も謝罪をし、アメリカの独立委員会報告書でも、アメリカの場合は謝罪というよりも、誤っていたことは認めているんですね。これについて外務大臣はどのようにお考えかということを聞いているわけです。その他のことじゃないんです、このことについてだけ聞いています。

町村国務大臣 済みません。決算委員会に呼ばれていたものですから、戻ってきてちょっとやりとりをよく承知しておりませんでしたので、恐縮でございます。

 大量破壊兵器がなかったことについて外務大臣はどう考えるのか、こういうお尋ねでございます。

 あったことなかったこと、それは、事実としてなかったということがそれぞれの調査結果で出ているんでしょうから、なかったものはなかったものとして、率直になかったんだということを認めることで十分なのではないでしょうか。

市村委員 なかったことを認める。

 ただ、先ほど議論もありましたけれども、もともと、先ほどからよく出てきている国連安保理決議を無視したということにつきましても、そもそも何だったかというと、大量破壊兵器の存在について査察をさせろさせないという話だったと思います。だから、今の段階で、なかったということをさらに、なかったからなかったのでしょうねと言って、これはそんな簡単に済まされる問題かどうかということは、やはりここはしっかりと考えなくちゃいけない問題だと私は思っているのですが、外務大臣、いかがでしょうか。

町村国務大臣 これは、かつて大量破壊兵器を使用したことがある、そういう実績があるイラクが安保理決議に累次従わなかった、国連査察団が大量破壊兵器をめぐる疑惑を否定し得ないという報告も当時したという、極めてある意味では異常な状態のもとでの国連安保理決議に基づき、国際の平和と安全の維持を確保するための決議に基づいた行動をアメリカ等々がとったということでございますから、私はそれを支持するのが当然のことであったと思います。

 また、過去にそういった兵器を使用した事実であるとか、国連査察団が数々の未解決の問題を指摘しているわけでありまして、したがって、イラク武力行使が開始された当時大量破壊兵器があると想定することは、当時としては極めて自然であったのだろう、それに足る理由は当時としてはあったのだということだろうと私は思います。

市村委員 なぜ私があえてこれをお聞きするかといいますと、今の外務大臣の御発言、本当は全然違う観点から質問していたのですが、外務大臣が、なかったのだからなかったのでしょうねということでは、これはそういうことではないのじゃないかと思います。もうちょっと真摯に反省の弁があった上で、この経過について、なかったということについて御発言すべきだったと思います。

 なぜ私はこれを質問しているかといいますと、先ほどの議論にもありましたインテリジェンスのことなんです。確かにこの国は、さっきの外務大臣の御発言だと、やってはならなかったのだというお話もありましたけれども、国家のていとして、国防をつかさどるものとしてしっかり、国防というのは大切ですね。独自の情報収集を日本はしていないということについて、それも何か戦後の中でやってはならなかったとかいうことじゃなくて、私はこんなのは当たり前にやっているものだと信じておりましたけれども、やはりやってなかったのかと。疑いは持っていました、ひょっとしてやってなかったのかな。どうもやっていないということであれば、これはどんな国なんだということを私は率直に思わざるを得ないのです。

 例えば、地震が起こったって危機管理体制がなっていないという反省があって、いろいろな危機管理の法制もできてきた。また、例えば治安の問題にしても、私も別の委員会でいろいろ追及しておりますけれども、捜査報償費といっていわゆるインテリジェンスに近い分野で使われているべきお金が、結局全部裏金化されて、そして官の飲み食いに使われていたとか、そういう疑惑は出ているんですね。この国は一体どうなっているんだ。治安は、任せておいたら何かおかしくなっている。国防だって、さっきから話を聞いていますとどうも一次情報はとっていない。そして、何か聞いたことをそうなのかということでやってきた。それではこの国は一体どうなっているのだということを率直に思わざるを得ないのです。

 それをさっきから、いや、それは戦後だからやってはいけないような雰囲気がありましたとか、それから、なかったんだからなかったんでしょうねとか、そんなことで簡単に済ませていい問題なんでしょうか。外務大臣、これはいかがでしょうか。

町村国務大臣 そういうインテリジェンス機能を整備充実してこなかったことは大変問題であるという観点で私は先ほど申し上げたので、それがよかったとかいうことを申し上げるつもりはさらさらございません。

 昔から、戦後の二大政党のもとで、自由民主党、社会党、そして自由民主党が政権を握ってまいりました。しかし、国会の議論で当時の野党の社会党の皆さん方は何と言ってきたか。多分これは先生がまだお生まれになる前の時代の国会での議論だろうと思います。そういうようなことをおよそ議論することすらおぞましいというような雰囲気の中でこの国会というものが動いてきたのです。

 したがって、私は、それではいけない、そういう状態はやはり変えなきゃいけないということで、少しずつはそれは努力はしてきているんですよ。衛星を打ち上げてみたり、いろいろな活動もやってきております。そういう中で、私どもも、例えば今、ちょっと正確な名称はあれですが、内閣情報官ですか、兼元さんを中心にした体制というものが、それでも少しずつは整備されてきているんです。ですから、全くそういうことを軽んじてきたし、全く何もやってこなかったということを言うつもりはありません。

 ただ、例えばイラクという極めて特殊な、フセインが独裁的な政治をやっている、そういう国の中で、日本が、核兵器、大量破壊兵器があるかないかといったようなインテリジェンス活動までできるような能力を持っていたかといえば、残念ながら持ち得るには至りませんでした。それはなぜかといえば、さっき申し上げたような大きな政治的な背景があったからです。幾ら整備しても整備しても、なかなかそこの水準にまでは残念ながら到達していない。

 今、むしろ市村議員が大いにそういう能力を高めるべきであるという御指摘はまことにありがたいことであるし、私はぜひそういう方向で、ではどういうふうにしてそれを高めていくのかということをぜひ建設的な御議論をいただきたいし、我々も積極的にそれにこたえていきたいし、また、私は、外務省の中でも今改めてそういう収集、いろいろな努力をやっております。

 よく言われているように、九割五分まではオープン情報というもので大体入手できる。あとはそれをいかにうまく整理し、分析をして政策決定に結びつけるかというようなこともあるわけでありますけれども、これまでもそうした努力はしておりますが、さらにこうした能力をどうやって高めることができるかというようなことを、これから政府全体としても私は能力向上に努めていかなければならない、こう思っておりますし、ぜひその際、市村議員からも積極的な御意見、御提言を賜れれば幸いだ、こう考えております。

市村委員 我々は民主党であって、社会党じゃありませんので、全然政治状況は変わっていると思います。

 それで、社会党時代いろいろあったということも、もちろん私は生まれていましたし、小学校とか中学校のころ勉強させていただいておりますし、多少知っておりますけれども、ただ、この十年、十五年、湾岸戦争が起こったのが一九九一年ですよ。ああいう状況があって、九三年に日本新党が出てきた。あの政治状況の中で、もはや社会党的なものというのはかなりなかった。だから、今さら社会党的なものをそうやって持ち出されているのもちょっとおかしいなと私は思います。やはり一次的な情報を入手するということです。一次的な情報を入手するような手だてをしっかりしていなかったんじゃないかと私は思います。

 ただ、きょうお聞きしたいのは、例えば、一次情報、今外務大臣はやっているとおっしゃったけれども、例えば、イラクに関する外務省の中の担当官というのは今何人いらっしゃるんでしょうか。イラク専門でやっていらっしゃる方。

吉川政府参考人 現在、外務省においてイラクを担当しておりますのは、政治分野では中東第二課という中東アフリカ局にあるところでございます。ここは、イラクの政治情勢を見る担当官が二人と、それから、サマワにおける一連の復興事業、自衛隊との調整、こういうものを担当するところに三名つけております。

 このほか、経済協力局では、イラクを担当するための国別第二課というところで、中東を担当する中でイラクを担当する者、一名つけております。

 このほか、国際情報官組織の中では、イラクの情報について各国の情報を総合分析するということをやっておる担当官一人、これはほかの中東関係の仕事もあわせてやっておりますが、大体そのような体制でございます。

市村委員 計七名ということでございまして、これは本当にえらい国家機密ではないかと思うぐらいの情報なんですが、アメリカ、イギリスというのは、御存じかと思いますけれども、特にアメリカの例を言いますと、先ほど大野長官からNGO、NPOの役割ということもおっしゃっていただいたんですが、アメリカに行きますと、インテリジェンスを多分にNPOが担っている部分があるわけですね、シンクタンクという形で。

 ここがしっかりとした情報収集をし、分析をし、かつそれを政策現場に反映させるべく、政治家とのやりとり、政治家への情報提供等、議論等々をやって、政府へも情報提供をするということで、ある種非常に幅広い重層的なインテリジェンスの構造が、単に政府だけがやっているんじゃない、政府、民間一体となってインテリジェンスについて情報収集をしている。今回、結局アメリカはそれを間違えたということで、ブッシュさんももっとこのインテリジェンスの情報収集、分析能力を高めないかぬということは反省しているわけです。

 結局、日本の場合、そういうそもそもの根本的なところが、先ほどは社会党のせいにされていらっしゃいましたけれども、決して社会党のせいだけじゃなくて、そもそもそういうことに対して、国家のていというものを考えたときに、なっていないと私は思っているんですね。当たり前にやっていることを当たり前にやっていないということがそもそもの大きな問題だろうと私は考えております。

 外務省の七名がいるということだって、これはお寒い限りでありまして、たった七名で何ができるんだ、申しわけないけれどもそう言わざるを得ません。しかも、この七名の方がこれだけの情報収集、分析をやっているかというと、そうでないと思います。恐らくいろいろなところに飛び回って、それこそ政治家への説明とかやっていらっしゃるかもしれません。とてもとても追っつかないと私は思います。

 根本的に、外務大臣はそれは必要だ、その観点から話をしたんだとおっしゃっていただいていますし、私ももちろんそれは応援はしますが、しかし、今さらという話も私はありますので、これまでのことについては、特に今回イラクにかかわっての大量破壊兵器の問題についても、情報収集能力について、また分析能力について日本はまだ足りなかったということは、やはりこれは謝罪というよりもしっかりと認めて反省をし、次につなげることが必要だと思うんですが、外務大臣、いかがでしょうか。

町村国務大臣 もとより、委員御指摘のように、これは官庁組織だけですべてできるものではございません。官庁の中にも、外務省ばかりでなくて、公安調査庁の海外部門もあります。あるいは、内調の海外部門もございます。いろいろな部門があるわけでありますし、また、官庁ばかりでなくて、いろいろなジャーナリスト、各国の外交団あるいは大学の研究者、民間の研究者、民間の企業、NGO、幅広いいろいろな分野での情報活動をそれぞれやっておられます。そうしたものを的確に収集しながらそれを分析する、そして政策決定につなげていくということが、これまでも、それは十分ではなかったかもしれませんけれども、心がけてこられたことだろうと思います。

 ただ、それが十分であったかと言われれば、それは委員御指摘のとおり、率直に不十分であることを私は先般来から認めておりますがゆえに、それを強化しなければならないんだということを申し上げているつもりでございます。

市村委員 ぜひとも、これからの反省だと思います。今後のことを考えれば、今回のことを反省して次につなげる必要があると思います。

 例えば今回のことにつきましても、今外務大臣は、情報収集はした、不十分だとはいえしていたんだということもおっしゃいました。それで、もしこれが、仮の話ですけれども、しっかりと日本が一次情報をとれていた場合、果たしてアメリカに対して、イラクへの攻撃に対して日本はイエスと言ったかどうかということも実は考えられるわけです。

 どうも独自情報を入手するとそうでもないんじゃないかといったときに、日本はアメリカ、イギリスに対して、ちょっと待ってください、情報収集した結果、そういうことはなかなか難しい、実際にあるかどうか言えないんじゃないかということにつきましても、日本の独自の判断で、特に日本は、自衛隊というような状況でありますから、なかなかイラクに行くことが難しい状況の中で、あなたたちがやっても私たちはなかなかそれをお手伝いできないという流れの中で、独自の入手をしていればもう少し言い方があった、やり方があったんじゃないかという気も私はしています。

 それは、きょうはもう時間がなくなりましたのでここまでで言いませんが、また改めて時間をいただければやりたいと思います。

 いずれにしても、インテリジェンスにつきまして、外務大臣も大切だということをおっしゃっていただいていますので、ぜひとも、当たり前ですから、当たり前のことを当たり前にできる国になってほしいという思いでおるだけですので、よろしくお願いいたします。

 それから、本当はもう少し外務省の方に御質問したかったんですが、自衛隊の方もありますので、防衛庁長官にもお尋ねさせていただきたいと思います。

 今回、イラクへ自衛隊の皆さんが行っていただいています。今度、第三師団、恐らく私の地元の伊丹からも多くの方が行かれるということで、この間も私、自衛隊の第三師団及び千僧の駐屯地の年中行事がありましたので行ってまいりまして、皆さんともお話させていただきました。

 冗談じゃなく、命がけで行っていただくことになりますので、本当に心から敬意を払っておりますが、しかし、いつも私が思っているのは、行っていただく以上はきちっと行っていただかないかぬと私は思います。今みたいな、憲法九条があって、何か行っていいのかいけないのかわからない、イラク特措法も、非戦闘地域だ何だと、ここで議論を聞いていても、何かむなしくなるようなことしかできないようなことじゃなくて、もっと具体的に、危険地帯に行く中でも、できる限り安全を保ちながら自衛隊に人道支援をやってもらうために何ができるかということは、本当に真剣に考えなくちゃいけないと私は思っております。

 ちょっと話がずれますけれども、大体今まで、イラクへの派遣について、コストはどれだけかかっているんでしょうか。

大野国務大臣 コストというお問いでございます。

 これは十五年度から始まっておりますけれども、予備費と通常予算と両方ございます。計上されておりますのは、十七年度予算まで含めまして六百四十八億円程度でございます。また、支出ベースで見ますと、十六年度まででございますが、四百五十八億円、こういうことになっております。

市村委員 日本はいつも、先ほどからも議論ありましたけれども、非常にまじめ、純粋、ピュアな国際貢献をしているということであると思います。私もそう思います。それこそ、インテリジェンスもなく、とにかく国際社会のために、何か事あれば行こう、事あれば何かやろう。国連を通じたり、また、今回のイラクへの自衛隊のこともそうだと思いますけれども、非常にピュアだと思います。

 ただ、ピュアはいいんですけれども、やったけれども、結果として何にも感謝されないし、結局、日本という国に対して批判ばかり受けるという結果につながっていることが多々あるように思えてなりません。ODAにしてもそうです。

 六百四十八億、これは税金ですね。私たちの国民の税金を使って行っているわけです。しかも、自衛隊は命がけ。命をかけ、金も使いということで、日本は今これだけの貢献をしているということはもっと国際社会に対してアピールをし、別に、尊敬してくれ、敬意を払ってくれということじゃなくて、やはりそれはもっと伝えていくべきだと私は思います。かつ、伝える中で、日本として言うべきは言うということが私は必要だと思っておりまして、もっとこうした情報をどんどん外に出していただきたい。

 今から質問しようと思っていたんですが、今自衛隊が何をしているか、これもしっかりとここでお伝えいただきたいと思います。

大野国務大臣 これは、ホームページあるいは出版物、刊行物等において十分に我々としては広報をいたしておるつもりでございます。もっともっと広報しろ、こういうことにこれからもこたえてまいりたいと思っております。

 そこで、国際的な評価でございますが、こちらの方は、日本のサマワにおける自衛隊の活動というのは本当に国際的に高い評価を受けている。そして、特に地元の住民の皆様からは、本当に、自衛隊の車が出ていきますと、手を振って迎えてくれる、これほどの共感を呼んでいることをまず申し上げたいと思います。

 そこで、現在、どういう活動をしているか。

 水につきましては、ことしの二月四日にやめました。これは、先ほども御質問にお答えいたしましたけれども、ODAで浄水機ができまして、イラク人の手で浄水活動をやっているということであります。

 その他、公共施設の復旧整備でございますけれども、道路補修をやっております。道路補修、学校補修、その他の施設補修、その他という中には、文化遺産の、例えばウルク遺跡とかオリンピックスタジアム等もやっております。具体的な数につきましては、必要でございましたら後ほどお届けします。

 それから、医療活動、当然でございますが、病院において診療、治療指導の助言等を行っております。その他、サマワの救急車センター要員に対する搬送技術指導、あるいは県医薬品倉庫及び県保健局に対する医療技術指導を実施いたしております。

 それから、もう一つ大事な問題点といたしまして、雇用の問題があります。雇用につきましては、地元のニーズもございまして、ただ、自衛隊がやる事業は限られておりますのでそう多くというわけにはいきませんけれども、それでも一日に大体九百人ぐらいの雇用を、いろいろな意味で、いろいろな面でさせていただいております。これは、清掃とか警護とか、通訳も含まれます。そういうことでさせていただいております。

市村委員 ありがとうございます。

 最後に、この場で首藤委員が以前、奥大使、済みません、最後の肩書をちょっと今ど忘れしてしまいましたが、井ノ上さんの銃撃事件につきまして、米軍の誤射じゃないかということをずっと御指摘されたことがあると思います。

 この間、イタリアの人質解放のときに、米軍が誤射をしたのか、それとも誤射じゃなくて、双方の言い分が違っていますので、事実はどこにあったかやぶの中でありますけれども、済みません、外務大臣にまた戻るんですが、さっきのインテリジェンスよりも、国の形に戻るんですけれども、何か疑問があったら言うべきは言うということが大切でありまして、そういう疑問があれば、率直に、米軍が誤射したんじゃないかということをしっかり受けとめて、しかも国会の中でそういう議論が出ているわけですから、それについてはやはり疑問をぶつけて、それをしっかりと検証するといいますか、事実関係を確認するということが大切だというふうに私は思っています。特に、イタリアは言うべきは言っている。

 それで、調べたということなんですが、例えば、車両がありました。なかなか返ってこなかったということもあり、きょう警察庁の方も来ていただいていると思うんですが、返ってこなかったけれども、返ってくるのを待つんじゃなくて、こっちから行くということはできなかったんでしょうか。警察庁の方、そこだけちょっとお答えください。

瀬川政府参考人 お答えいたします。

 イラク外交官殺害事件について、特に車両の鑑定の問題について、日本に来るのを待つのではなくて、現地に行って鑑定をすることができなかったのかというお尋ねだと思います。

 そもそも、一般論で申し上げまして、犯罪の捜査というのは国家主権に非常にかかわるものでございまして、主権の行使としての捜査ということでございますので、当該事件の発生した国の捜査機関が主体となって行うことが原則だろう、こういうふうに思います。

 それから、もちろん、こういった事案でございますので、我が国警察といたしましても最大の関心を持ちまして、できる限りの捜査活動を推進しようという立場でございました。そういった観点で、車両の検証ということが非常に重大なポイントだったと思います。

 その車両の検証を十分にまた的確に行うためには、できるだけ早くその車両を我が国に輸送していただいて、我が国内において専門家によりしっかり鑑定、検証を行うということが有効また最も効果的であろうというふうに考えたところでございます。

市村委員 最後になりますが、昨年、沖縄で米軍機が墜落する事件もありまして、私も四日後ぐらいにその現場に行きまして、あのときも結局日本の警察や日本の消防は米軍から排除されたようなことも僕は事実として聞いております。それは違うとおっしゃいますけれども、私は、現場の声、まさに一次情報を聞くとそうだったんですね。それに対して外務省も抗議したということは私は余り聞きません。

 だから、この国は一体どこを向いているのかということなんです。どこを向いて何をしようとしているのかということが私は本当にわからないんですね。それにつきまして、今の政府のしかるべき立場の、責任を持ったお立場である外務大臣なり大野長官には、ぜひとも、この国がしっかりと当たり前のことを当たり前にできる国にしていただきたい、こう思っておりますので、そのことを最後に申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

船田委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 きょうは、イラクにおける自衛隊の問題について聞いていきたいと思います。

 一月末に国民議会選挙が行われ、その後も、二月にポルトガル、そして三月にシンガポール、四月にオランダというぐあいに、撤退する国が相次いでいます。これまで撤退した国は十三カ国に上っています。今後も、ウクライナ、ブルガリアが撤退しようとしているわけですが、政府は、自衛隊を、いつ、どんな状況になったら撤収させるのか、政府の方針について説明してほしいと思います。

大野国務大臣 自衛隊のイラクからの撤退見通しでございます。

 先ほどからも御説明申し上げておりますけれども、我々は、まず幾つかの要件を検討していかなきゃいけないと思っております。

 その第一は、今先生お触れになったような政治プロセスの問題であります。このことについては繰り返しませんけれども、順調にいけば、恒久政府発足はことしの末という予定になっているわけであります。そういう政治プロセスがきちっと進展していくということであります。

 それからもう一つは、治安の状況というのは大変大事な問題であります。治安につきましては、イラク自体の治安組織、治安を守る組織も育ってはきております。そしてまた、いわば安定しているかどうか、こういう問題を見る場合の一つの物差しとして、例えば襲撃事件が幾つあるか、こういう問題もあります。治安の問題があります。

 それから三つ目の要件として、復興がどうなっているか。私の見たところは、まだ復興道半ばと思っています。

 四つ目、国際社会の動向、国連中心とする動向。

 こういうことを総合的に判断してこれから考えていかなきゃいけない、こういうふうに思っています。

赤嶺委員 今四つのことをおっしゃいましたけれども、その中で、復興がどうなっているかというお話がありました。

 自衛隊のサマワでの人道復興支援活動の中心が給水活動であったことは繰り返されてきたことです。それが、ODAにより浄水設備が稼働を開始したということで、二月五日以来、給水活動は実施していないわけです。

 基本的な任務である給水活動が終了したというわけですから駐留を続ける理由はないのではないかと私は思いますけれども、それはいかがですか。

大野国務大臣 給水が基本的な自衛隊の仕事であったということでありますけれども、それは、公共施設、道路を直したり、学校を直したり、こういう活動をやっておりますし、また医療活動もやっている、こういうことを御理解いただきたいと思います。

 また雇用についても、雇用というのは本当に現地の方々にとっては大事なことでございますが、一日約九百人ほどの雇用をやっております。

 それからもう一つ、現地の声であります。現地の声は、もっともっと自衛隊に滞在してもらって、そして復興に力をかしてほしい、こういう声でございますので、先生のおっしゃるような、水をやめたからもう帰るべきじゃないか、こういうことは私は当たってはいないと思っています。

赤嶺委員 給水支援活動が終わっても、次は学校がある、いろいろなことがあるというお話ですけれども、それでは具体的に聞きます。

 学校でいえば、ムサンナ県内には三百五十の学校があるわけですね。防衛庁の説明だと、そのほとんどが補修を必要としているというぐあいになっています。では、日本はこれからどれだけの学校を補修するつもりなんですか。すべての学校を補修するまでサマワに居続けるということなんですか。

大古政府参考人 お答えいたします。

 ムサンナ県におきまして三百五十校ありまして、その半分以上が修理を要するというのは委員御指摘のとおりでございます。

 自衛隊としては、今までに二十二校について復旧整備をしてきました。このうちの十四校については補修が終わっているわけでございますが、今後とも、現地の行政当局のニーズを踏まえまして適宜実施していきたい、こう思ってございます。

赤嶺委員 よくわからないですね。

 それでは、現地の行政当局のニーズがある限り、イラクに残って、サマワに残って学校の補修をやり続けるという意味なんですか、長官。

大野国務大臣 赤嶺先生は学校というところだけに焦点を当てて議論されております。そういうことではなくて、私は先ほど申し上げましたが、少なくとも四つの局面はあります。それを総合的に考えて、そして我々は主体的に判断していかなきゃいけない、こういうことを申し上げているわけでございまして、学校だけに限ればそれは延々とやらなきゃいけないとおっしゃるのはわかりますけれども、そこだけ見ているわけじゃありません。総合的に考える。

 繰り返しませんけれども、先ほど申し上げたような四つの要素を主に考えて、そして我が国として主体的に考えていく、これが大事なことだと思っています。

赤嶺委員 学校についてどこまでやるかというのを、明らかな形で説明してもらえません。

 それで、総合的にいろいろ考えようというお話の中で、学校だけではないんだということもありましたが、「イラクでの自衛隊の活動状況」、これを出していただきました。この中で、現在実施中の活動として、例えば、サマワの県知事公舎前広場補修、多目的広場の緑化というぐあいにあります。これは何ですか。

大古政府参考人 その点につきましては、県知事公舎の前の広場が整地されていませんので、整地いたして緑も植えるということで、支援事業として行っておるものでございます。

赤嶺委員 県庁ではなくて知事公舎前広場なんですね。どうですか。

大古政府参考人 知事公舎前の広場ということでございます。

赤嶺委員 県庁というのと知事公舎というのと、少し私は受けとめにニュアンスの違いを持つわけです。

 次に、こういうのがあるんですよ。サマワのスポーツクラブ、サマワの屋外バスケ施設、こういうのもやっているんですね。これは何でしょうか。

大古政府参考人 要するに屋外のバスケット場ということでございますが、自衛隊としては、現地のニーズを踏まえまして、公共施設に限定して補修をやっているところでございます。

 あくまでも、現地の行政当局のニーズ、優先順位を踏まえまして自衛隊が対応しているという状況でございます。

赤嶺委員 今お隣の議席から、中谷先生、沖縄でもやっている、どこでもつくっているということでしたけれども、残念ながら、沖縄では終戦直後はつくられなかったんですね。(発言する者あり)今つくっている。まさに今つくっている。

 人道復興支援というのは、これまでは、イラク戦争後のイラク国民に対して人道的に支援するものと言われてきたと思うんですよ。今のような施設がさぞや立派になっていると思うんですけれども、こういうのが何で人道支援に当たるんですか。

大野国務大臣 私たちは、もうちょっとイラクの復興について、ハードな面のみならず、やはり人の心という面も大切にしながら考えていかなきゃいけないと思っております。

 それは何かといいますと、ああいう戦後の荒れ果てた中で、国民の皆様は大変すさんだ気持ちになっていくかもしれない。そういうことを、あるいは文化遺跡の修復によって心に潤いをもたらしていく、こういう仕事も大切なのではないでしょうか。

 私は、そういう意味で、日本の自衛隊がやっております仕事というのが本当にサマワの人々の、ムサンナ県の人々の共感を呼んでいる、言ってみればソフト面の力を大いに発揮している、そのことはぜひとも御理解をいただきたいと思っています。

赤嶺委員 ですから、武力攻撃を受けた町を戦災から復興するというものではなくて、いろいろ、本当に日本の各地でも必要としている公共施設づくりにまで自衛隊が広がっているというのがこの中で見てとることができます。

 それで、最近の、今度は外務省の発表によりますと、サマワの市内やあるいはマジッド郡内で道路のアスファルト舗装のための資金協力を決定しています。両方とも、陸上自衛隊が砂利舗装を行った道路をさらにアスファルト舗装するというものですが、これは何ですか。

吉川政府参考人 ムサンナ県全体におきます道路整備につきましては、陸上自衛隊と、それからODAの資金を使いました経済協力による活動を、まさに車の両輪という格好で進めております。

 陸上自衛隊では、全部で十九カ所、五十キロの道路の補修を進めており、そのうち四十二キロが既にできております。これは、言ってみれば、砂利の舗装を自衛隊の皆さんにやっていただく。ODAでは、合計七十キロですが、道路の補修とその上へのアスファルトの舗装を現地の業者を使ってやっております。

 すべてがそうではありませんが、自衛隊で砂利舗装したところにODA資金でアスファルトをしているところ、それから、ODAの資金で補修から舗装まで全体やっている、そういうのが我々のサマワにおける事業の概要でございます。

赤嶺委員 日本政府が資金援助して、そして現地の業者がアスファルト舗装を行っているということであれば、最初の砂利舗装の段階から外務省の資金援助で行政当局に任せる、そういうのはできるんじゃありませんか。何で、道路の砂利舗装が自衛隊で、アスファルト舗装は地元の業者でなければいけないんですか。

吉川政府参考人 赤嶺先生の今の御質問にお答えするためには、現地における状況を正しく御理解いただく必要があると思います。

 自衛隊員六百名、現地で活動しており、同じ宿営地の中に、外務省のサマワ事務所の合計十名が二交代で勤務しております。ODAの仕事というのは、資金は東京から流します。現場の外務省の職員が実際にその業務に携わっておりますが、この外務省職員は、寝起きする場所、食事、それから現場に行くときの足、これはすべて陸上自衛隊の支援に頼っております。したがって、自衛隊があって、またあの宿営地があって、現在、外務省のODAの機能というものが、サマワにおいてはかなり大きな形で動かしていくことができるわけです。

 その反対に、バグダッド近辺、ほかの地域につきましては、外務省の職員がバグダッドの大使館から、または近隣のヨルダンから遠隔でやっておりますので、なかなか同じような実施が行われていない、そういう状況であります。

 今申し上げたように、両方がそれぞれ分業したり一緒になったりということをやっておりますが、それは決して、では、自衛隊の部分がゼロになって外務省がすべてやれるかと言われると、現在の状況では非常に難しいということを言わざるを得ないと思います。

赤嶺委員 外務省は自衛隊の宿営地があってこそそういう支援ができるというお話ですが、一方で、外務省はイラクの全土でそういう資金援助をして、学校の再建も含めていろいろな人道復興支援活動をやっていますね。ですから、何か、宿営地がなければ、自衛隊がいなければということではなくて、そういう中でも、いろいろ苦労はあるんでしょうけれども、人道復興支援、学校再建なんかも行っているんじゃないですか。

吉川政府参考人 全体的な姿につきましては赤嶺先生御指摘のとおりでありまして、私どもとしては、自分でできない部分を、例えばユニセフ、UNDPといった国際機関を通じて、日本の資金を使っていただいていろいろな事業をやる、復興する、こういうことをやっております。

 私が先ほど御答弁申し上げたかったことは、サマワにおいては、外務省の立場からいいますと、自衛隊の支援をいただいておりますので、ほかの地域に比べればより容易に、また、よりみずからの関与によって事業を行える。他方、その地域については、先ほど申し上げたとおり、バグダッドを通じ、ここは大使館がございます、それからそれ以外のところについては、バグダッドから、または近隣のヨルダンからの一種の遠隔操作によって現地のNGOにお願いしたり、地方自治体にお願いして、資金を流す形でやっておりますので、より苦労が多く、また困難が伴う、そういうことを申し上げたかった次第でございます。

赤嶺委員 できないということではないんですね。本当に人道復興支援活動を必要としている地域はイラク全土に広がっています。そして、そのイラク全土を対象に外務省も復興支援活動をやっている、そういうことになっています。

 ただ一方で、サマワでは、自衛隊がやっている活動というのは、給水は終わり、公共事業なんだけれども、他の地域には見られない、いわゆるこれが人道復興支援かと言われるような、日本の各地で必要とされている施設がつくられていったり、アスファルト舗装ができていったりする。こういうものは全体として本当にこれでいいのか。

 本当に日本が、イラク戦争以後の人道復興支援という場合に何がどうあるべきかということを真剣に検討すべきで、自衛隊の役割は復興支援活動でも、実際には向こうでは果たしていない、役割そのものがないというような今の時点で、人道復興支援活動の面から見ても撤退すべきであるということを申し上げまして、私の質問を終わります。

船田委員長 次に、東門美津子さん。

東門委員 社会民主党の東門です。よろしくお願いいたします。

 イラクと無関係ではないですので、まず第一番目に、沖縄の海兵隊について伺います。

 昨年八月にイラクに派遣された海兵隊員二千二百人が、今月の初めに、CH53Dヘリ六機を含めた二十機とともにイラクから帰還しました。しかし、県知事を初め、宜野湾市長、市民、そして多くの県民は、イラクからの海兵隊員の帰還には反対の意向をはっきりと示してきました。それは、日常生活に大きな影響を及ぼしている航空機騒音の問題、さらに、市民に昨年の沖国大へのヘリ墜落事故を思い起こさせるなど、恐怖を呼び覚ますことになるということが懸念されるからです。

 イラクに派遣された海兵隊が沖縄に戻ってこなければ、沖縄に駐留する海兵隊の約三分の一が削減できたことになったわけですし、海兵隊が沖縄を留守にして不都合があったということは聞いたことがありません。いかがでしょうか、それはあるんでしょうか。

 いや、それどころか、沖縄県警の発表によりますと、二〇〇四年に摘発した県内の米軍人軍属とその家族による犯罪は、前年比五十三件減の五十九件、摘発人数は六十一人減の七十二人と、ほぼ半減をし、犯罪件数は六年ぶりに減少していることが県警捜査一課のまとめでわかっています。

 県警は、減少の理由として、集中的な警戒取り締まりを展開した成果を挙げるとともに、イラク派兵などによる軍人の人口減が背景にあったとしています。この沖縄県警の説明によれば、沖縄に駐留する米軍人の数の削減は、犯罪発生率の低下に直結する効果があることになります。

 海兵隊員の帰還により、沖縄での米軍人軍属による犯罪がふえるのではないかと多くの県民が危惧しております。それは、過去にそういうことを経験しているからだということを私はぜひ強調しておきたいと思います。ベトナム戦争当時です。

 また、沖縄県警などは、イラクからの海兵隊の帰還に伴って、基地周辺の警備、パトロールを強化しているとしています。

 それで伺いますが、沖縄の海兵隊削減と犯罪との関係並びにイラクからの海兵隊員の帰還に伴う県民の不安解消に対する町村大臣の見解をお伺いしたいと思います。

町村国務大臣 平成十六年の沖縄県での米軍構成員等による犯罪の検挙件数、人数は前年比で大幅に減少したということは私どもも承知をいたしております。

 これは、今の警察の御説明があったとおりかどうか、なかなか立証は難しいのかもしれませんが、現実に、在沖縄米軍のイラク派遣に伴うもの、あるいは米軍自身の取り組み、これはリバティーカードというものを昨年六月から導入して、基地の外への外出規制をカードでしっかりコントロールするということを始めているというようなこともあるんだろうし、あるいは警察の活動というものもあるんだろうと思います。

 いずれにしても、こうした事実というのは歓迎すべきことでありまして、こうした犯罪の減少傾向を定着させていくということが必要であろう、こう考えております。

 今回の米海兵隊三一海兵機動展開隊の沖縄帰還に際しましても、政府からアメリカ側に対して引き続き米軍関係者の規律の維持に努めるように求めておりまして、アメリカ側からも米軍関係者の規律維持には引き続き努めるという回答を、三月三十一日、外務省梅本北米局参事官が申し入れたことに対して、在日米軍ラーセン副司令官から回答があったところでございます。

 あともう一つは、なぜ沖縄に戻ってきたのかという趣旨のお問い合わせであったかと思います。

 確かにイラク方面に出ていった。これは一時的な運用ということで沖縄外の地域に出ていったわけでございますけれども、抑止力の維持という観点からはこうした部隊がいることが必要だという米軍の運用上の観点から、これらを沖縄に戻したということでございます。

 私が説明するまでもないことかと思いますけれども、沖縄に駐留する海兵隊、大変機動力も高うございますし即応性もあるということで、在日米軍の重要な一翼を担っているということで、日米安保条約目的達成のために、ヘリの運用を含めて、在日米軍が沖縄に一定数存在し、また、それを訓練を行うということは必要なんだろうと思います。

 ただ、先ほどちょっと申し上げましたように、帰還に関する沖縄県民の懸念があるということは私どもも承知いたしておりまして、こうした面で十分な配慮をするようにということをアメリカ側にも働きかけております。先ほどのことに加えまして、例えば、ヘリの運用は運用上不可欠なものにとどめるとか、あるいは海兵隊のヘリは住宅地域に与える影響を極力最小にとどめるような飛行ルートをとるというようなことが先方からの回答として戻ってきているところでございます。

東門委員 海兵隊の協力だとかあるいは抑止力の維持については、時間がもう少しいただけるときにまた議論をさせていただきたいと思います。

 イラクの現状について伺います。

 イラクは、国民の自主的な国家づくりに向けて確実に歩み始めているようですが、一月の国民議会の選挙で三分の一を女性議員が占めるなど、隣国のサウジアラビアでは女性の参政権も認められていない状況からすれば、極めて異例の結果と言えます。しかし、女性に財産の相続権を認めないなど、イスラムの宗教色が極めて強い傾向がうかがえるシーア派の統一イラク同盟が百四十議席を占め、既に、社会進出を果たしている女性へのシーア派宗教過激派による嫌がらせも起こっているとの報道も見られます。

 独裁的なフセイン体制においてさえも、バース党は男女同権を公言し、女性から離婚が可能であったし、専門職につく女性も一般的でありました。その政権を排して国際社会が多くの犠牲を出してつくり上げた国家において、治安問題の陰でなおざりにされている社会的弱者や少数者の人権擁護について我が国としては積極的に働きかけていく必要があると考えますが、いかがでしょうか。町村外務大臣の御見解を伺います。

町村国務大臣 お言葉を返すようで恐縮でございますけれども、バース党の政権のもとで人権が維持されていたというのは、どうも事実に反するんじゃございませんでしょうか。

 正確な情報は私どももわかりませんが、やれどこそこで拷問が行われた、どこそこで裁判もなく人が殺された等々、相当激しい実態があったからこそ、このフセイン政権というのが打倒される対象になってしまった。そんなにバース党がすばらしい政権であれば、国際社会からも認められ、許され、立派な政権として国際社会の一員になっていたんじゃないでしょうか。

 ちょっとそこの基本認識が、私は別にバース党を敵視するつもりもございませんけれども、それは、北朝鮮労働党が自由と民主主義の国であると強弁しているのにかなり近いようなお話だと受けとめざるを得ないのでございます。

 それはそれとして、女性の権利でありますとか弱者の権利、少数者の人権擁護、これは、例えばフセイン政権のもとでは、まさに少数民族であったところのクルド人が徹底的に弾圧され抑圧されたという事実があって、そこには化学兵器まで使われたということに対しまして、今度は人口の約二割近いそのクルド人からも立派な政権の大幹部が登用されるといったようなことで、私は、基本的な流れはいい方向に向かっているんだろう、こう思います。

 事実、タラバニ大統領が、七日の就任式に際しまして、少数者の権利尊重、多元性の尊重の重要性というものを強調いたしております。また、シーア派の統一イラク連合のジャファリ首相も、これは私どものイラクの鈴木大使に対しまして、憲法は、法の支配やすべての国民の人権を擁護し、国民の一体性を確保しつつ、信条の自由や表現の自由、また、女性の権利を守る内容にしなければならない、こういうふうに述べていることに私どもは大変期待もしておりますし、今後の政治プロセスの中で、イラク社会の多様性を反映する形で憲法づくり等々が行われるということを期待しているところでございます。

東門委員 誤解のないように申し上げておきますが、私は決して、バース党がすばらしかった、そうは申し上げておりません。その中でも男女同権ということは結構守られていた、そして、女性から離婚することも可能であった。これはあそこの社会でですよ。そういうこともあった社会だと言っただけで、決してバース党がすばらしい党だと申し上げたことではないということを強く申し上げておきます。そして、その中で人権擁護が行われていたということでもない。

 しかし、これから民主化ということで、本当に多くの国が、特にアメリカを中心に、そして日本も真っ先に、あるいは二番目にか支持をして出ていった。それであるならば、本当の意味での民主化を私はそこに向けるべきだと思うし、今御答弁にもありましたけれども、社会的弱者あるいは少数者の人権擁護、そこのところをしっかりしていくべきではないか、それを申し上げたかったわけでございます。

 大野防衛庁長官にも一問伺わせてください、せっかくおいでですから。

 サマワにおける陸上自衛隊はいろいろ復興支援活動に頑張っておられるという報告がございましたし、同僚委員からもいろいろ御質問がありました。その中で、現在、公共施設の復旧整備では、学校補修ということで、四月四日にはルメイサ女子中学校の完成点検が行われ、九日にはサマワの男子学校で補修工事の竣工式が行われたようですが、報道によりますと、この竣工式にはムサンナ県のハッサーニ知事も出席され、感謝の言葉を述べた上で、サマワ市民は発電所の建設を待ち続けてきた、市民を代表して、この場で小泉首相に、発電所をいつ建設するのか最終的な回答を求めたいとも述べておられるという報道がございます。

 こうした発言から、自衛隊が行っている活動と地元の要望とには、ひょっとしたらかなりの開きがあるのではないかということがうかがえるわけですが、自衛隊ができる活動と地元の要望との調整はどのように行われて、知事等に対してどのように説明しておられるのか、お伺いします。

 また、自衛隊による人的貢献と政府開発援助、ODAを車の両輪として復興支援を行っていると先ほどから何度も述べておられるのはお聞きしておりますが、今後どのような支援に重点を置いて進めていかれるのか、伺います。

大野国務大臣 まず、どのような活動をしているか、こういう問題でございますけれども、公共施設の改修を実施する、これが基本計画で定められております。現地の当局、例えば水道局、民生局、道路橋梁局、保健局等から具体的なニーズが寄せられるわけでありますけれども、当該施設が果たして公共施設に当たるのかどうか、これはきちっとチェックをしているわけでありまして、求められている事業内容が改修の範囲内かどうか、これは確認して事業を進めているわけであります。

 それから、緊急性とか優先順位、こういう問題もあるかと思います。こういう問題については、現地の部隊の長が十分検討の上、判断してやっている、これが現状でございます。

 それから、もう一つは何だったですか。(東門委員「これからはどのような支援が」と呼ぶ)ということで、地元の調整はきちっと、今申し上げたように、現地の当局とニーズを確認の上、やっているわけでありまして、例えば、車の両輪と言っております。先ほども質問が出ましたけれども、砂利道路とアスファルト道路、こういうものはどうするかなんという問題も出てきます。これは十分お互いに調整をしながらやっているわけでございます。

 そういう意味で、現地のニーズを最大限に優先して考えている、検討している、こういう状況でございます。

東門委員 終わります。

船田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十一分散会


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