衆議院

メインへスキップ



第5号 平成17年5月12日(木曜日)

会議録本文へ
平成十七年五月十二日(木曜日)

    午後一時三十分開議

 出席委員

   委員長 船田  元君

   理事 石崎  岳君 理事 中谷  元君

   理事 三原 朝彦君 理事 渡辺 具能君

   理事 末松 義規君 理事 藤田 幸久君

   理事 佐藤 茂樹君

      宇野  治君    大島 理森君

      嘉数 知賢君    川上 義博君

      岸田 文雄君    斉藤斗志二君

      坂本 剛二君    桜井 郁三君

      竹下  亘君    竹本 直一君

      武田 良太君    谷本 龍哉君

      寺田  稔君    西村 康稔君

      浜田 靖一君    平沢 勝栄君

      宮澤 洋一君    山口 泰明君

      稲見 哲男君    大石 尚子君

      大出  彰君    岡島 一正君

      吉良 州司君    篠原  孝君

      島田  久君    神風 英男君

      首藤 信彦君    鈴木 康友君

      長妻  昭君    長安  豊君

      本多 平直君    牧  義夫君

      赤松 正雄君    丸谷 佳織君

      赤嶺 政賢君    山本喜代宏君

    …………………………………

   外務大臣         町村 信孝君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      大野 功統君

   防衛庁副長官       今津  寛君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   政府参考人

   (防衛庁防衛局長)    飯原 一樹君

   政府参考人

   (防衛庁運用局長)    大古 和雄君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 小笠原倫明君

   政府参考人

   (外務省大臣官房国際社会協力部長)        神余 隆博君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            吉川 元偉君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   林  景一君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    鹿取 克章君

   衆議院調査局国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラク人道復興支援活動等に関する特別調査室長        前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十二日

 辞任         補欠選任

  馳   浩君     坂本 剛二君

  市村浩一郎君     長安  豊君

  照屋 寛徳君     山本喜代宏君

同日

 辞任         補欠選任

  坂本 剛二君     馳   浩君

  長安  豊君     市村浩一郎君

  山本喜代宏君     照屋 寛徳君

    ―――――――――――――

四月二十八日

 イラクからの自衛隊の即時撤退に関する請願(第六一二号)は「今野東君紹介」を「石毛えい子君紹介」に訂正された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動等に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

船田委員長 これより会議を開きます。

 国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動等に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として防衛庁防衛局長飯原一樹君、防衛庁運用局長大古和雄君、総務省大臣官房審議官小笠原倫明君、外務省大臣官房国際社会協力部長神余隆博君、外務省中東アフリカ局長吉川元偉君、外務省国際法局長林景一君及び外務省領事局長鹿取克章君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

船田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

船田委員長 この際、政府から説明を聴取いたします。防衛庁運用局長大古和雄君。

大古政府参考人 イラク人道復興支援特措法に基づく自衛隊の部隊の最近の活動状況について御報告いたします。

 現在、サマワの陸自部隊においては、安全確保に十分配意しつつ、ムサンナ県内のサマワにおける養護施設の補修、サマワにおける低所得者用住居の補修、サマワ、マジット、ヒラル、スウェイル、ナジミ、ワルカ及びルメイサにおける学校補修、サマワにおける道路整備、ワルカにおける浄水場補修等を引き続き実施しています。これらの活動により、これまで一日当たり三百名から千名程度の雇用を創出しているところです。また、病院における医療活動も引き続き実施しています。

 なお、五月五日、安全確保支援活動として、負傷した韓国軍兵士に対し、クウェートのアリ・アルサレム基地からクウェート国際空港までの間の輸送支援を実施しました。

 四月二十七日以降のサマワ周辺の情勢については、四月三十日、サマワ市内のサマワ市評議会の建物近くのユーフラテス川にかかる橋付近において爆発物が発見されたところ、五月三日までに現地消防局が処理したことを確認しています。

 また、現地時間十一日二十一時ごろ、現地部隊において発射音及び飛翔音を確認しました。現地部隊においては、当該発射音及び飛翔音を確認した後、適宜退避措置を講じたところであり、人員等に異状はございません。なお、本件の詳細については現地部隊において現在確認中であるものの、当該発射音及び飛翔音については宿営地付近で生起しておらず、本件は宿営地に対する攻撃ではないと考えています。

 現地部隊においては、引き続き安全確保に細心の注意を払いつつ活動を実施してまいります。

 四月三十日、オーストラリアのヒル国防相が陸上自衛隊サマワ宿営地を訪問し、陸自現地部隊と意見の交換を行い、陸自部隊とオーストラリアの部隊との緊密な連携の重要性を確認しました。現地部隊においては、イギリス軍及びオーストラリア軍と緊密に連携をとりつつ活動を実施してまいります。

 航空自衛隊の部隊については、四月二十七日から五月十一日までの間、我が国からの人道復興支援関連、陸自関連及び関係各国、関係機関等関連の人員、物資の輸送を計四回実施したところです。

 引き続き、イラク国内の各飛行場の安全性や輸送ニーズ等を慎重に勘案しつつ、C130機による輸送を行ってまいります。

 最後に、五月十日未明に判明したイラクにおける邦人行方不明事件については、防衛庁としても情報収集に協力してまいる所存であります。

 以上でございます。

船田委員長 次に、外務省中東アフリカ局長吉川元偉君。

吉川政府参考人 イラク情勢及びイラクにおける邦人行方不明事件に関し、報告させていただきます。

 まず、政治プロセスについては、四月二十八日にイラク移行政府が発足しました。我が国は、イラクの民主化に向けた重要な一歩であり、イラクが新たな段階に入ったものとしてこれを歓迎します。

 次に、治安情勢については、一月末の国民議会選挙後及び四月末の移行政府の発足後も、脅威の度合いは地域により異なるものの、駐留多国籍軍・イラク治安部隊と武装勢力の衝突、車爆弾、ロケット弾等によるテロ等の事案が発生しており、依然予断を許さない状況です。

 サマワについては、予断は許さないものの、イラクの他の地域と比較して安定している状況に変化はありません。

 イラクにおける邦人行方不明事件については、日本時間五月十日未明、ハート・セキュリティー社ロンドン支店より在ロンドン日本国総領事館に対し、同社イラク支店でコンサルタントを務める邦人、齋藤昭彦さん四十四歳がイラクで行方不明になったとの連絡が入りました。同社からの連絡によれば、齋藤さんは、イラク時間八日夕刻、米国基地へ物資を運ぶ車両の警護の後、イラク西部のヒート近郊をハート・セキュリティー社関係者十数名で車両にて移動していたところを何者かに襲われた模様です。その際、死亡者が出たほか、行方不明者が出ています。生存者もおり、その目撃情報によれば、齋藤氏は襲撃を受けた際にかなりの負傷を受けた可能性がありますが、拘束されているかどうかも含め、齋藤氏の安否はいまだ不明です。

 政府としては、現在、外務省や関係在外公館等を通じ、齋藤さんの御家族、ハート・セキュリティー社及びイラクや米国等の関係国政府と緊密に連絡をとりつつ、事実関係を調査中です。引き続き現地における齋藤さんの安否確認を急ぐとともに、仮に齋藤さんの拘束が事実であるとすれば、一刻も早く無事に解放されるよう、全力を挙げて取り組む考えです。

 以上で報告を終わります。

船田委員長 これにて説明は終了いたしました。

    ―――――――――――――

船田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。藤田幸久君。

藤田(幸)委員 民主党の藤田幸久でございます。

 きょうは、齋藤さんという、イラクにおける拘束事件を中心に、両大臣にお伺いをしたいと思います。

 特に外務省におかれましては、外務大臣、十一月に引き続いて、皆さん不眠不休の努力をされておられるということに敬意を表したいと思いますし、昨年の四月、十一月の人質事件の際もそうでございましたが、民主党の立場とすれば、人命尊重という観点から、情報提供を含め、与野党の壁を超えて政府に協力する用意があるという姿勢で、月曜日の日に早速談話を発表して、私どもも限られた形の中で努力をしているつもりでございます。

 それで、まず外務大臣にお伺いしたいと思いますが、齋藤さん拘束事件の一番最新の情報、特に健康状態、安否等についての最新情報をお聞かせいただきたいと思います。

町村国務大臣 外務省に対して激励のお言葉をいただきまして、まことにありがとうございました。限られた能力でございますが、一生懸命取り組んでいるつもりでございます。

 今藤田委員お尋ねの、齋藤氏の安否でございます。先ほど吉川局長が御報告をいたしましたように、齋藤氏は襲撃を受けた際にかなりの負傷を受けた可能性がありますという報告を受けているわけでございますが、どの程度の負傷、そもそもこの情報が正しいかどうかというのを今別途チェックをしているわけでございますが、間違いないこととは思うのでありますが、絶対ということが言えるかどうかはわかりません。また、軽い負傷なのか重い負傷なのかということもわかっておりません。あるいは命に影響があるのかどうか、その程度、問題もまだよくわかっておりません。

 また、どこにいるのかということも、襲撃をしたであろうグループのホームページといいましょうかを見ると、彼らが拘束をしているという可能性が相当程度あるんだろうとは想像できるわけでありますけれども、その点も今各種情報がいろいろありまして、これといって今まだ断定できる状態にはない。大変心配をいたしているところでございまして、安否を含め、情報収集に全力を挙げているところでございます。

藤田(幸)委員 通告をしておりますが、まず、日本政府、バグダッドの大使館、大使ほかがどういうアプローチをしているのか。恐らく、ハート・セキュリティー社、アメリカ軍、それからイラクの移行政府にアプローチをし、接触して情報収集をしていると思いますけれども、それぞれどういうアプローチをして、どういう情報を得たのか、お答えいただきたいと思います。

町村国務大臣 ハート・セキュリティー社、米軍関係者、イラク政府、それぞれ、大使あるいは公使、大使館員が、直接会う、あるいは電話で連絡をとる等のことをやっております。

 それぞれどういう情報であったかということは、機微にわたる点もございますので、この人はこう言った、この人はこう言ったという点につきましては、恐縮でございますけれども、今はちょっと申し上げかねるところでございます。私どもなりに、そうしたいろいろな情報あるいはイラク以外の他国の政府からの情報もございます、そうしたものを総合して、まず間違いなくこの情報の収集状態で言えるのはここまでかなというのを先ほど局長の方から御報告し、書き物にして皆様方にお配りをした内容であるということでございます。

藤田(幸)委員 目撃者証言というのが、これはハート・セキュリティー社の生き残ってといいますか逃れた方の証言だろうと思いますが、そのハート・セキュリティー社のホームページによりますと、全く希望を失っていないけれども、つまり、齋藤さんが生きているということに対して望みを捨てていないけれども、致命的な傷になっていた可能性が高いというような表現だろうと思います。

 外務省の方もこの直接の目撃者と連絡をとったんだろうと思いますが、これは、間接的であってもハート・セキュリティー社の人間に会ったとするならば、ここまでホームページに出ているかなり具体的な記述についての確認をしたはずなんですね。ということは、その確認に基づいて、断定ができないまでも、恐らくそういった望みは捨てていないものの、極めて致命的であろうということについては、それを覆す情報というのはあるんでしょうか。

町村国務大臣 私どももこのハート・セキュリティー社のホームページを常にウオッチしております。それによりますと、目撃者の報告によると、事件の際にこうむった傷は命にかかわるものであったかもしれない、メイ・ハブ・プルーブド・フェイタル、こういう英語になっておりますので、相当な傷で、命に別状があるおそれもある、こういう表現であります。

 この目撃者というのは一人でございまして、その報告者も、齋藤さんについて最終的な確認というものが必ずしもできていないという状況のようでございます。したがいまして、メイ・ハブ・プルーブドといったようなかなり慎重なというか抑えた表現になっているようでございます。

 ただ、別の情報によると、これとは多少違う他の機関からの情報もあるものですから、ここに書いてありますように、致命的な傷を負った可能性があるとの目撃者証言がありますが、安否その他不明ですという、とりあえず、こういうかなり外務省としても限定をつけた物の言い方に今とどめているところでございます。

藤田(幸)委員 この現場に、ヒートというところのようですが、大使館員あるいは現地職員を含む館員、あるいは大使館が依頼、委託した人員を現場方面に派遣して情報収集に当たっているかどうかについてはいかがでしょうか。

町村国務大臣 現地に人を派遣するかどうか、かなり厳しい治安状況にあるということを考えながら慎重に判断する必要があるということでございまして、現時点において、私ども日本政府の大使館員あるいはそれにかわる者を事故の現場に派遣してやっているわけではございません。主としてバグダッド市内において、いろいろな人と会い、あるいはいろいろな機関を訪問するという形をとって情報収集しているところでございます。

藤田(幸)委員 犯行を名乗ったグループがサイトを出したりしていますけれども、このグループに対するアプローチ、これは、直接接触をする、間接に接触するということばかりではなくて、今回は発信を何もしていない。昨年十一月のケースは、町村大臣自身がアルジャジーラで電波を通じて発信したりしましたが、今回何も発信をしていないと理解しておりますが、なぜでしょうか。

町村国務大臣 その犯行をしたと称し、彼らのホームページで一たん発表したわけでありますけれども、まあ間違いはないと思うんですが、本当にそのグループがやったかということも実はまだ確証がとれていないわけでございます。そして、その後何ら発信もない状態で、コンタクトがあるかないかということはちょっと差し控えさせていただきますけれども、そういう状態の中で、私どもが直接マスコミを通じて例えば解放を呼びかける、前回そういうことをやったわけでございますが、その手段を今とることが適切かどうなのかということについては、今そのタイミングではないのではないかということで、やっておりません。

 その犯行を犯したであろうと想像されるグループへの何らかの接触をとる努力はいろいろやっておるわけでございますけれども、接触がとれたかとれないか、あるいは先方が何を言っているか言っていないかという点は、今、ちょっとこれは機微にわたる部分でございますので、報告は差し控えさせていただきたいと存じます。

藤田(幸)委員 昨年の十一月も、あるいは昨年の四月も、犯行グループが特定されていない段階で発信をしていたんだろうと思うんです。それから、今回の違いは、まず、この齋藤さんという人が、つまりフェイタルである可能性とか程度の違いはあっても、要するに傷を負っている可能性が非常に高いという状況の中では、昨年の二回の場合は、自衛隊の撤退とかいう政治的な課題との関係での発信が多かった。つまり、撤退はしないとか、そういった行動に対しては屈しないとかいう意味でのことだった、それから解放しろという話だったんです。

 今重要な発信は、とにかく、相手がだれであっても、齋藤さんという人の治療というか健康というか、人命の尊重をしてほしいという発信は私はできるんだろうと思うんです。これは、グループがだれであっても発信はできるわけです。去年の段階も、相手が特定されなくても、当時は香田さんでしたか、犯行をしているグループにという言い方をしてたしか大臣は発信をしたんだろうと思うんです。

 発信は一方通行ですから、発信をすることは可能であって、今現在重要なことは、解放しろと言う以前に、とにかく人命尊重、それで、もし傷を負っているならば、ぜひ人道的な観点から治療なりしてほしいということの発信だけはできると思いますが、いかがでしょうか。

町村国務大臣 私、委員の御意見にあえて異を唱えるつもりもありません。それも一つの方法かなと思うのでありますけれども、それをやることの有効性とかやるべきタイミングとか、それは、するなら早くやった方がいいじゃないかという反論も当然返ってくるのかもしれませんけれども、いろいろ検討もしてみたんでありますけれども、今回について言うと、ちょっと前回と事情が違う面もあるのかなと。

 確かに、前回だって、明確にこのグループと最初から特定できていたわけではなかったわけでございますが、その後すぐ追っかけて声明が出たり、あるいは条件といいましょうか、要求というものが出たりしました。

 今回は、その後ぱたっと何もないという状態なものですから、そういう状態の中で委員のおっしゃるようなことを言うという意味は確かにあるのかもしれません。いろいろ考えて、ちょっと私どもそれは今までやっておりませんでしたけれども、今あえて委員の御指摘でございますから、早急に考えてみたいと思います。

藤田(幸)委員 ありがとうございます。

 つまり、可能性の中で、全くその犯人グループなるものの手になく、どこか路頭で齋藤さんがかなり重い傷を負ってだれも手がつけられないでいるという可能性も含めて、これは、発信というのは放送ですから、それを見た民間人の目に触れるということも含めまして、そういった発信をぜひ検討していただきたいというふうに思います。

 それから、今回、齋藤さんなる日本人がイラクの中に入っていったということについてなぜ把握できなかったのか。今までの政府の答弁は、要するに、水際といいますか国境でこれがチェックできなかった。つまり、会社がまとめて恐らくビザ等の手配をしたんではないかという話でございますけれども、いろいろ齋藤さんのパスポート、身分証明書等を見ておりますと、DOD、ペンタゴンの身分証明書等もありますし、これは、今のいわゆる民間警備会社等が入る場合にはペンタゴンが、ビザあるいは入国関係も含めて、会社と会社同士でやりとりをしているというふうにも聞いておりますので、したがって、少なくとも米軍は、全部じゃないにしても、かなりの確度で、このハート・セキュリティーほかの民間警備会社等が雇用契約を持っているイラク人以外の人々の入国に関して、少なくとも米軍の段階では情報を持っていたんではないかと思いますが、いかがでしょうか。

吉川政府参考人 事実関係にわたる御質問、私の方からお答えさせてください。

 先生御指摘されたように、最初の犯行声明の中に、ウエブサイトにいろいろな身分証明書がついております。DOD、アメリカ国防総省の発行による身分証明書というのがあります。それから、アラビア語で書かれたものを読んでみますと、これはイラク政府がどうも発行した武器の携帯証明書というようなものも、私はアラビア語はわかりませんが、読んでみますとそういうことが書いてあるようです。

 したがって、先生がおっしゃったように、例えばアメリカの国防省の発行する身分証明書があるわけですから、米軍は齋藤さんの個人情報を把握していた、多分そうでしょう。それから、イラクについても、その武器の携行証を出しているわけですから、政府・内務省なりは、これは国籍が書いていないですけれども、そういうものがあったということは、個人情報を持っていたでしょう。

 日本政府としては、これは繰り返しお話ししている点ですが、イラクに在住する日本人の居どころ、それを把握しようとする努力はいろいろなルートを通じて最大限やってまいりました。

 齋藤さんにつきましては、去年の十二月以来イラクにおられたようですけれども、まず、御本人から大使館なりに、御家族も含めてですが、一切連絡がなかった。そこが一番大きい点だと思います。さらに、アメリカ軍にしろイラクの政府にしろ、その手続の段階ではわかっていたのかもわかりませんが、それについて日本政府に積極的な情報提供をいただいたというわけではございませんので、そういうことから、結果的には、齋藤さんがイラクにいたというのはこの事件があって初めて知った、そういうことでございます。

藤田(幸)委員 ということは、ハート・セキュリティーを初めいろいろな、主に欧米系の民間の警備会社がイラクで活動をしておりまして、そのほとんどが米軍基地あるいは米軍の関係機関に出入りをしているわけです。それから、私が知っている範囲では、いわゆる民間警備会社、民間軍事会社はイラクの内務省に登録しています。それから、今吉川局長が答弁していただいたように、武器も登録しているわけです。ですから、大臣、今からでもイラクの内務省及び米軍に照会をすれば、少なくとも、日本語読みをする名前を持った、イラク人以外の人の情報は確実に入るんだろうと思うんです。

 御承知のとおり、米軍は、米軍本土なりからイラクに行く、あるいは外国に行く方々については、DNAから、歯型から、指紋から全部情報を持っているんです。したがって、恐らく、そういう情報管理はイラク内務省、米軍関係はこういう民間警備会社、軍事会社の関係者の情報を持っているはずですから、今からでも、少なくとも第二の齋藤さんが起きないように、調査を積極的に未然防止の観点からもすべきだろうと思いますが、いかがでしょうか。これは大臣です。

町村国務大臣 邦人保護、大変大切な我々の仕事だと心得ております。したがいまして、可能なことは何でもやっていかなければいけないと思っております。

 イラク政府あるいは米国防省、国防省の話は今局長がお答えいたしましたけれども、網羅的に、すべて包括的に把握して、しかも、これを関係国に通報するという体制は必ずしもとっていないんだろうと思います。したがって、問い合わせてどれだけの答えが返ってくるかという問題かなと思います。

 今度は、彼らの政府の中でどういう規制なりなんなりがあるかよくわかりません。例えば米国の場合でありますと、個人情報保護というのがかなり徹底した国でありますから、私どもよく、別の委員会で、先般沖縄で起きたヘリコプターの事故のパイロットの名前を明らかにしろという話をしても、米国は、それは米国の国内法制に従ってできませんと言う、その是非は別にしてそういうようなこと。したがいまして、イラク政府がどういう個人情報保護という仕組みをとっているのかよくわかりませんが、日本政府として可能な努力は行っていきたい、こう思っております。

 ただ、基本的に、確かに邦人保護はやらなきゃいけないんですけれども、こういう民間警備会社に働く方々というのは、ある意味では危険だからその場所に行って、高い報酬も得てという部分があるわけでありまして、だからけがをしてもいいとか、そういうことを言うつもりは全くございませんけれども、基本的に、イラクがどういう治安状態にあるかというのは、これらの方々が一番わかっているからこそ、ある意味ではその危険な場所に行くという方々なんだろうと思います。

 したがいまして、そういう方々でも、やはり私どもは邦人の保護という観点から全力を尽くさなきゃいけないと思いますが、仮に、イラクが危険な場所ですよと、我々が普通の一般の方々に情報を提供する、同じことをやってみても、彼らは、もうそのくらいは当然、半ばプロとしてわかり切っている、こういう反応なんだろうなと想像できるわけであります。

 さはさりながら、やはり危険な場所だからできるだけ行かないようにという、渡航を見合わせるような活動はこれからもまた熱心にやっていきたいし、今委員御指摘のような、どれだけの邦人がいるのかというようなことについて特にイラク政府と話し合ってみたい、こう思っております。

藤田(幸)委員 今大臣がおっしゃった、まさに危険だから高い報酬を求めて行くような方々、だから、危険ですよと言っても、わかり切っているといって現地に行っている民間警備会社をバグダッドの日本大使館は雇っているんですね。バグダッドの日本大使館は、英国のコントロール・リスク社を雇って大使館員を守っているわけです。それから、日本の報道機関も同じ会社を雇って守っているわけです。それから、サマワの宿営地内に住んでいらっしゃる外務省の職員も同じ会社を雇って守っているんです。今まさにおっしゃったその理由で、危険だからこういったプロに守ってもらっているわけです。

 それで、そのバグダッドの、今まさに大臣がおっしゃったような方々の内容、民間、このコントロール・リスクの何人を雇っているのか、どんな国の方々なのか。それから、外務省は、今高い報酬とおっしゃいましたけれども、年間予算、どんな契約内容を持っているのか。これは、民間会社ということですから、契約をしているわけです。その内容についてお答えいただきたいと思います。

吉川政府参考人 今の先生の御質問に対しましては、次のようにお答えしたいと思います。

 在イラクの大使館に勤務する外務省員、それからサマワで勤務いたします外務省員の安全対策については、民間警備会社の活用を含めまして、なし得る限りの対策を講じて外務省員の安全確保に万全を期すように努めております。その双方におきます民間警備会社の詳細、例えばどういう会社であってどういう国籍の人を何人雇っているのか、これは、言ってみれば我が方の警備能力の手のうちを公表するということにもなりますので、大変申しわけありませんが、安全に支障が及びかねない、そういう観点から、詳細に関しては説明を差し控えさせていただきたいと思います。

 それから、先ほど年間予算額の御質問がございました。恐縮です、私、ちょっと担当しておりませんので、これについては別途お答え申し上げたいと思います。

藤田(幸)委員 本当は私は詳細でなくてもある程度答えていただかなければいけないと思いますが、時間の関係であれですけれども、少なくとも、大臣が先ほどおっしゃったような理由でこういった民間のイギリスの警備会社を雇っているんだろうと思うんですけれども、それではなぜ、サマワの自衛隊の宿営地の中で活動する外務省の職員にもこういった、まさに危険だから行っているような、高い報酬を払うような民間の警備会社の人が必要なのか。

吉川政府参考人 お答え申し上げます。

 私も現場で活動内容を見てまいりましたが、自衛隊の宿営地の外で外務省員が働く場合に、二種類ございます。

 第一種類は、自衛隊の皆さんと一緒に自衛隊の支援にかかわる業務を、外務省員として例えばアラビア語を使うとかそういう格好で御一緒にするときには、自衛隊の部隊と行動をともにしておりますので、自衛隊の部隊の車両に乗車してその管理下で働くという、これが第一のタイプです。

 二番目は、外務省員が任務遂行上独自に動かないといけない、例えば知事さんに会いに行く、市長さんに会いに行く、またODAで独自にやっているような現場を見に行く、こういう場合には、この場合の安全対策は、現地の状況を慎重に見きわめながらやっておりますが、自衛隊の警備なり車両を使うことができませんので、民間警備会社を活用して行っているということでございます。

 それから、先ほどのお答え申し上げられませんでした経費の問題ですが、イラクにおける民間警備会社のために年間予算どのくらい使っているのかということでございますが、一つの数字の目安として申し上げますと、イラクとアフガニスタンにおける身辺警護業務に係る経費の総額は、平成十六年度予算では八億円弱という規模でございます。

藤田(幸)委員 サマワの話が出てまいりましたので、順番を逆にしまして、大野防衛庁長官にお伺いしたいと思いますが、けさの読売新聞に、サマワの太田群長と外務省の小林所長の記事が出ておりました。私ども委員会のメンバーも、二週間ぐらい前でしょうか、市谷の防衛庁の本部からテレビ電話でこのお二人とも会談をさせていただきました。

 きょうのインタビュー記事を見ていますと、要するに、これから復興を進める上でJICAなどによる民間支援が必要だろうと。それに対して、外務省の方は、まだ民間が出ていける安心できる状況じゃないというのに対して、太田群長は、私は意見が違う、一〇〇%安全ではないけれども、今の治安状況なら宿営地の中に入って我々と一緒に活動することは可能と思う、我々には大きな復興プロジェクトを進めるノウハウがないけれども、JICAやコンサルティング会社だったらやってくれるし、そうした彼らの活動を自衛隊が手助けすることを考えてもいいと思うと。

 私は、よくここまでおっしゃっていただいて、多分そのとおりだろうと思うんです。サマワの中についてはもう少し踏み込んだ活動に変えていってもいいと思って、この太田さんの話は非常に好意的に思ったわけですが、このことについての長官のコメント、それからさらに敷衍をしたお考えをお聞かせいただければ幸いです。

大野国務大臣 我々は、イラクの復興につきまして、自衛隊の行う人道復興支援活動、それからJICA、ODA経済援助、その他の経済援助系統の活動、これを車の両輪だと、この車の両輪でイラクの復興支援をやっていくのだ、こういう御説明をしてまいっております。

 今、太田群長の話あるいは藤田委員のお話は、この車の両輪を一つにして一輪車にしたらどうだ、一つの考え方だと思います。

 しかし、ちょっと待って考えてみなきゃいけない。これはやはり治安の問題ではなかろうか。サマワというのは、イラクの他の地域に比べて比較的治安は安定いたしております。しかしながら、なかなか治安も予断を許さないところがあるし、自衛隊以外の主体が安全に活動を実施し得るのかどうか。私は、まだまだ自衛隊以外のものは安全に実施し得るような状況にはない、このように判断しております。したがってこそ、自衛隊の活動の安全確保は防衛庁長官の責任として、私も真剣に取り組んでいるところでございます。

 全体として見ますと、日本政府として、サマワのあるムサンナ県を含めまして、イラク全土において邦人の退避勧告を出しているわけでございます。ですから、こういうふうに一本になってやる、これも一つの考えだと思いますけれども、私は、今のような状況を十分考えていただきたい、このように思うわけでございます。

 もう一つ申し上げたいのは、これは考えていただきたいのですけれども、自衛隊の活動が日本のメッセージとして本当に、経済援助とか、それはそれの一つのメッセージになりますけれども、人的な支援が一つの住民の共感を呼んでいる。私はこれをソフトパワーと申し上げておるのですが、こういうソフトパワーのメッセージ、それからJICAとかそういうメッセージ、これをどう考えていくか、こういう問題もあろうかと思います。

 民間による支援は大変重要なことでございます。しかしながら、今現在そういう一輪車にするということは少し早いのじゃないか。それと同時に、私が考えますのは、やはり一日も早くイラク全体が復興して、そして治安も安全になって、確保されて、民間による支援が安全にできるような状態になる、このようなことのためにさらに頑張ってまいりたい、このように思っております。

藤田(幸)委員 時間が参りましたが、治安が大丈夫だというのが太田群長の話だったと理解しております。そのように読んでおります。

 それでは、残念ですが、時間が参りましたので質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

船田委員長 次に、首藤信彦君。

首藤委員 民主党の首藤信彦です。

 まず、イラクの現状について外務大臣にお聞きしたいと思います。

 四月の二十八日にいよいよ移行政府が、事実上発足したといいますか、閣僚も調ってスタートしたと言われておるんですけれども、ところが、たった二週間ですね、二週間の間にさまざまなテロや攻撃がありまして、約四百人のイラクの方がお亡くなりになった、こういう記事が載っておりました。

 要するに、移行政府というのはなぜあるかというと、フセイン政権が倒れて、もう戦闘がおさまって、武装勢力も鎮火されて、では、次は本格的な政府のための移行政府ですよ、ですから、あなたたちの責任ですよと。その移行政府がそういうふうにするためには、当然のことながら、治安が維持されているんですよ、これが前提、移行政府ということの意味であります。しかるに、現状は、今までよりもっと速いペースで攻撃が行われ、たった二週間で四百人の死者が出ている。

 では、今のイラクにおける治安維持の現状のシステムは一体どうなっているのか。一体だれが、例えばイラクの国民、そしてそこに働く外国人、あるいはサマワにいる自衛隊かもしれません、そういう人たちのセキュリティーを守っているのか。どういう形で、だれが責任を持ってやっておられるのか、外務大臣にお聞きしたいと思います。

町村国務大臣 委員御指摘のように、四月二十八日に移行政府が発足をし、民主化に向けてのまた重要な一歩を踏み出した、こう思い、私どもも、この政府の発足というものを歓迎しているところでございます。今後、この移行政府が、憲法制定を初めとする、年末に向けた政治プロセスにしっかり取り組んでいってほしいし、それを私どももいろいろな形で支援していこう、こう思っております。

 そういう中で、今、治安はどうなのかというお尋ねでございました。地域によって脅威の度合いというのは異なると思われるわけでありますが、その状態というのは相変わらず予断を許さない状況だ、こういうことであります。新しい首相になりましたジャファリ首相も、最優先課題は治安対策だということを言って、治安部隊の再建を急ぎたい、こういうことでございます。

 それで、どういう形で今やっているかというと、今、イラク自身の治安組織は一生懸命拡充努力を続けておりますし、また、これへの支援も諸外国がやっております。

 これは、五月二日時点での米国務省の発表によりますと、イラク軍及びイラク警察のうち、必要な訓練と十分な装備を持った要員は十六万二千人ほどである、それから、軍、警察ではないけれども、施設の防護に当たっている施設防護隊という人たちがおるようでありまして、これらが七万五千人いるということでございます。

 ただ、なかなか、これらの人たちだけではまだまだ十分な治安維持ができないということもこれありまして、現在、二十六カ国がイラクにおりますけれども、うち十八カ国の部隊が治安維持活動というものに当たっている、このように理解をいたしているところでございます。

首藤委員 今、その中でアメリカ軍が一体何をしているかという役割が話されていないわけですが、アメリカ軍の死者が今千五百名を超えまして、負傷者はもう大変な数になるわけですが、一方で、アメリカ軍は沖縄に大量に兵員が戻ってきたりしている。それから、私自身もことしの初めに中東を調査したときに、アメリカ軍の早期撤退という話が国連筋からもたくさん出ていました。

 では、こんなにアメリカ軍が死傷者が激減している、状況が悪化しているのにアメリカ軍が激減しているというのは、それはアメリカ軍の数が非常に減っているということを意味しているんじゃないかと思うんですが、その辺は、同盟国の防衛庁長官として、大野長官、一体どのように把握されていますか。アメリカは実数はどの程度おられるんですか。

大野国務大臣 突然のお尋ねなものですから、数字がすぐ出ませんで、失礼しました。

 これは米国防省による情報でございますけれども、五月十一日現在、十三万八千人の米軍兵士がイラクに展開していると承知をいたしております。

 ちょっと全体の数字がございませんので、チェックしてまたお届けいたします。

首藤委員 別に意地悪しているんじゃないですよ。しかし、長官、そんな漫画みたいなものを見て言わなくても、やはりそれぐらいの数字は頭の中に入れておいていただきたいと私は思うんですよ。

 こういう状況で、結局、アメリカ軍も実際にはきちっと対応できていない、どんどんどんどん減っているんじゃないかということが予想されるわけですが、それも公式なそういう数字だけで、現実にはどうかわからないということだと思うんですね。

 このような形で、予定していたイラクの正式政権発足のプロセスはどうなるかということですね。少なくとも八月には憲法制定の草稿が出て、十月にはそれの国民投票が行われ、十二月には最終的な選挙が行われて、来年の一月、ということはもう本当に半年ちょっとでありますけれども、そこには正式な、完全に独立したイラク政府というのができるわけです。その最初の、一番最初の取っかかりの憲法制定プロセスというのは、もう八月には憲法の草案は出ていなきゃいけないわけですね。もう二カ月しかないわけですが、その草案というもののアイデアも骨子も、我々は何も聞いていない。

 一体、この憲法制定プロセスというのはどうなっているのか。どこまで、憲法のストラクチャーといいますか、どのような平和憲法であるとか、あるいは多民族許容憲法であるか、あるいは分権制であるか、そうした憲法の草稿がわかっているのか。そして、我々が肝心な、日本も貢献を求められている選挙は、果たして、十月に憲法の国民投票、そして十二月の選挙というのは実際にできるのか。その見込みは、外務大臣、いかがでしょうか。

町村国務大臣 私ができるとここで今言い切っても、多分それは余り意味のないことなんだろうと思います。

 今委員御指摘のように憲法を八月十五日までに草案をつくるということで、私の知識が正しければ、現在も、憲法という名称であったかどうかは忘れましたが、ある種の基本法は既に存在をしているわけでございます。その中にはかなり、例えばクルドの自治を大幅に認める等々の内容が既に盛り込まれたものが、憲法という名称ではなかったと思いますが、基本法というものがあって、それをどう、今のイラクの実態あるいは選ばれた議員さんの意向を踏まえながら、よりよいものに磨き上げていくのかということが作業としてあるんだろう。全く更地に、第一条、何々といって憲法を書く作業をやるということではないと私は聞いております。

 ただ、やはり本格的な国づくりでございましょうから、日本としても協力をしたいということで、先方の議員さんであるとか学者であるとか政府の人を十名前後、日本にお越しをいただいて、そして、日本国の明治憲法あるいは戦後の憲法の制定の経緯などに詳しい方々、さらには、インドネシアとマレーシアだったと思いますが、イスラムという宗教を基本としながら憲法を持っている国々の学者、そういう方々をお招きして、日本で少しくそうしたことをお互いに議論してもらって、知的貢献をしていこうというようなお手伝いをすることにしております。

 また、選挙については、絶対的な治安の維持が前提だということは委員の御指摘のとおりでございますが、選挙実務も、ことしの一月末選挙をやったとはいえ、まだまだな面もあると思いますので、昨年に続き、ことしに入ってからももう一回、選挙管理の実務の研修とでもいいましょうか、それを、JICAが中心になって、先方の政府あるいは選挙管理委員の職員の方を招いてする、いわば選挙管理研修といったようなものをやったらどうか、そんなようなことを今準備しているところでございます。

首藤委員 大臣がおっしゃるとおりですよ。だから、かくも憲法制定プロセスというのはおくれているわけですよ。

 ですから、私が質問しているのは、一体イラクがどうなるのかではなくて、それがゆっくり時間がかかるのは、それはゆっくり時間がかかるのもあるかもしれない。しかし、我が国の軍隊がそこにいるわけですね。そしてまた、イラクの復興には膨大な我が国の税金をつぎ込んでいるわけですね。ですから、その見込みがどうなっているのかということをさっきからお聞きしているわけです。これに対して、政府が明確な回答を答えられるようにぜひしていただきたいと思うんですね。

 さて、先ほどから同僚議員の藤田委員からも質問しているわけですが、今イラクで起こっている齋藤昭彦氏の拘束事件のことについて具体的にお聞きしたいと思うんです。

 このハート社という会社ですけれども、ハート社には日本人はこの齋藤さんだけだということが伝えられているんですね。しかし、ではほかにどこかにいるんじゃないかという危惧を私たちは持つわけです。いや、そんなこと言ったって、たくさん、世界じゅうにコンサルタントなんというのはごまんといるんだからわからないよと言われるかもしれませんけれども、少なくともイラクに関しては、ファルージャで問題となったブラックウオーター、先ほども話がありますコントロール・リスクス、それからグローバルリスク、それからこのハートとか、いわゆる御三家ぐらいで大きなところはあるわけですね。

 その主要セキュリティー会社あるいは民間警備会社、こういうものに関して、ほかに日本人が働いていないのかどうか、その点は、外務大臣、いかがでしょうか。

町村国務大臣 セキュリティー会社、情報によりますと、これに働く人たちが万単位でいる、イラク人もいるでしょうし外国人もいるだろうということでございます。したがいまして、今それらのところに何人日本人がいるであろうかということについて、私どもは今情報を持っておりません。おりませんのですが、先ほど藤田議員からのお問い合わせもありましたので、早急に、この事件を契機として、可能な限りの調査をしてみなければいけないな、このように思っております。

首藤委員 いや、外務大臣、私は、今目の前で起こっている齋藤昭彦さんの拘束事件、これは本当に、フランス語ではデジャビュという言葉がありますけれども、既視体験ですよ。前の高遠さんの事件、安田純平さんの事件、香田証生さんの事件、そのたびに、把握できなかった、把握できなかった、把握できなかったと言うんですよ。

 しかし、おかしいじゃないですか。国際電話をかけて、主要な電話へかけて、おたくの会社では日本人は雇っていないだろうな、ちょっとチェックしてくださいと言えば済むだけの話なんですよ。どうしてこれがチェックできないかなんですよ。

 今回は、コンサルタント会社、セキュリティー会社で起こりました。しかし、同様に、今猛烈な数で、例えばアジア系の人、韓国の人、そういう人たちがエンジニアとして入ったり、あるいはインスペクターで入ったり、そういう形で今どんどんどんどん入っているわけですよ。ですから、民間企業でもこれはたくさん入っている可能性があるんですね。ですから、そういうのは、当然のことながら、チェックしようと思えばチェックできるんですよ。どうしてそれをおやりにならないかというふうに私は思うんですが、私たち、今回、どういう会社がイラクで働いているかわからない、そういうことに関しては、前から要求しているんですけれども、何も出てこない。

 そこで、委員長、私は、イラクにおいて活動している建設やエンジニア会社などのコントラクターの数と内容、それからイラクで活動しているNGOの数と内容、そしてイラクで活動しているセキュリティー関係、警備会社などのセキュリティー会社の数と内容、この三つをやはりこの委員会でもしっかりと把握しておいて、将来起こるリスクに備えたい、そのように思い、委員会からぜひ外務省に対してこの資料の提供を求めます。いかがでしょうか。

船田委員長 ただいまの首藤委員からの申し出につきましては、後日理事会において協議をさせていただきたいと思います。

首藤委員 さて、齋藤さんを雇用していたHART GMSSCO、この会社は、新聞なんかを見ますと警備会社というふうになっています。しかし、本当に警備だけやっていたのかなというふうに私は疑問に思うんですね。

 というのは、例えばこの代表は、元SAS出身のリチャード・ベテル卿ですよ。そして、今は、新聞なんかを見ますと、これはキプロスに本社があるというふうになっていますけれども、ついこの間までバミューダに本社があると言っていた。非常によくわからない会社ですね。そして、この活動というのを見ると、果たして本当に警備だけをやっているのかというのを疑わせるような情報があるわけですね。

 例えば、検索しますと、このハート社で出てくるのは、二〇〇四年にクートで殺害されたグレイ・ブランフィールドというハートの雇用社員の名前が出てくるんです。この人はどういう人かというと、南アフリカの人というふうに簡単に載っていますけれども、これは例のアパルトヘイト政権時代に黒人の、その当時は反政府グループであったANC、今は政権与党になっているわけですが、それの海外に逃れていた人間の暗殺部隊だったんですね。それを指揮していた人がこの方なんですよ。そして、現実に、クートで殺されたときも、決して何か物の警備をしていたんじゃなくて、やはり小さいチームをつくって何らかの行動をしていたときに攻撃されて殺されていたわけですね。

 ですから、このハート社というのがそもそも、一体本当に警備会社なのか、あるいは警備以外の、いわゆる隠密行動といいますかクランデスタインといいますか、そういう活動をしている軍事会社ではなかったのか。そして、齋藤さんが一体どのような仕事をしていたのか。外人部隊で非常に経験もあり、曹長にまでなって、四十四歳で、現場の軍人としてはもうかなり高齢になってきている。そういう方が、これだけの経験を持たれた方が、例えば物の、トラックの警備をしているのかということを考えると、この方、そしてハート社は一体イラクにおいて何をしているのか。そのことはやはり外務省としてもしっかり把握していかなければいけないと思うんですが、このハート社及び齋藤さんは一体イラクでどういう活動をしているのか、お答え願いたいと思います。

逢沢副大臣 ハート・セキュリティー社につきまして、現在知り得ている限りのことについて報告をさせていただきたいと思います。

 リチャード・ウェストバリー卿によって設立された等々のことについては既に委員から指摘があったとおりでありますが、正式には、一九九九年に設立をされ、キプロスの本社、本店、そして世界各国七カ所にブランチを持ち、危機管理や警備のサービスを提供している会社である、そのように承知をいたしております。

 イラクにおいても活動を積極的に展開しているハート・セキュリティー社でありますけれども、二〇〇三年の対イラク軍軍事活動のころから、正確にはその以前から、戦争中も含めまして、企業等の非軍事要員の警護を行っておられます。また、送電線の安全の確保、警備、あるいは、選挙がございましたが、その際には選挙関連活動の警備等も行っております。

 比較的イラク南部における活動が中心とは聞いておりますけれども、その活動範囲はイラク全土にも及ぶということでございます。危機管理を専門とする、また実行部隊も擁している、そういった会社でございます。

首藤委員 実態はおいおい明らかになるし、齋藤さんがやっていたことも少しずつ明らかになるでしょう。

 私は、この齋藤さんの話を、第一報を聞いたのは十日の頭ですけれども、すぐ頭に、十日の早朝に外務省の方を呼んでその情報を聞きました。私がその外務省の方に説明を求めたのは、齋藤さんは自衛隊の勤務経験があるのか、もし経験があるとしたらどこの部隊に所属していたのか、これを何度もしつこく聞きました。そうしたら、外務省の方は、いや、自衛隊勤務の経験は把握していません、それはないというふうに言われたんです。私は本当に驚いてしまって、そういう全く経験のない人を、例えばフランスの外人部隊が雇い、やがて結果的にはハート社が雇う、そんなことはあり得ないと思ったんですが、そのようにおっしゃった。

 私は、その意味で、外務省の情報管理の把握というのがいかにずさんか、いかに、もう何度やってもリスクをみずからおびき寄せてしまうか。町村大臣、苦笑しておられますけれども、町村さん自身がかつては外務省の情報収集能力について強く指摘してきた一人じゃないですか。今あなたはその立場にあるんだから、どうしてこういうことを徹底されないかというふうに私は思います。

 さて、そこで問題になるのは、私も、NGOとして、あるいは平和解決のため、いろいろな紛争地へ行きます。つくづく会うのは、多くの日本人に会うんですが、その多くは自衛隊出身者です。そして、どこに勤務していたのと言ったら、習志野と言うんですよ。第一空挺団ですよ。要するに、そういう方が物すごく多いんですね。それで、現実に外人部隊にもたくさんの日本人がいるんですよ。これは、外人部隊の中でもかなり多い。少なくとも、まともな、いわゆるお金のたくさんある国から来ている集団としては物すごく多いんですよ。

 そこで問題となるのは、まず第一に、一体何人ぐらいおられるのかという点ですね。要するに、フランスのレジオンだけではなくて外人部隊、それから民間の軍事会社、こういうのに自衛隊出身者が一体どれだけいるのか、大野長官、いかがでしょうか。

大野国務大臣 第一空挺団等自衛隊出身者が外国の警備会社等にどのぐらい働いているのかという御質問でございます。

 自衛隊を退職した方々がいかなる企業でどのような仕事をしているのか、これは、個人的な問題であります、私的な問題であります。防衛庁といたしましては、それは全く把握いたしておりません。退職者全員の再就職先や勤務実態等は把握いたしておりません。したがいまして、わかりません。

 ただ、防衛庁が把握しております就職先は、もう委員御存じのとおり、例えば、自衛隊員が離職後二年間に、離職前五年間に在職していた防衛庁、防衛施設庁と契約関係にある営利会社の地位につく場合、それからもう一つは、若い自衛官で、就職援護をしてほしい、こういう場合があります。こういう場合には把握いたしておりますが、その他は把握いたしておりません。

首藤委員 大野長官、ぼけた話はいいかげんにしてくださいよ。なぜそういうことを言うかというと、今は、国家の軍隊も民間の軍隊も、これはだんだんだんだんその垣根が近づいてきているわけですよ。世界では、有名なエグゼクティブ・アウトカムズという会社がそれを始めたわけですが、今現在、事実上の軍隊組織を持っている会社組織というのはたくさんあるわけですよ。そこへ就職してそこで活動して、また、場合によっては、単なる警備だけではなくて破壊活動をやっているんですよ。実際、かつてのイギリスの首相の息子さんか何かがそういうことに関係したんじゃないか、クーデターに関係したんじゃないかということで大問題になりました。

 すなわち、軍隊経験やあるいは民間の軍事会社の問題というのは、我が国の、専守防衛の我が国の、平和憲法を持っている我が国の、みずからを守る、自分の国を守るためにある自衛隊の名声や、あるいは日本の国のあり方に大変深刻な影響を結果的に与えるわけですよ。武装した人間が銃撃の中で死んで、いや、日本はサマワで平和的な活動をしていますといっても、一方には、軍服を着て銃を持ち、目の前にはその人が撃ったイラク人がいるような状況の中で、全く関係ないというようなことは、私は、そういう長官の言葉は許すことができない。

 もう時間もだんだん迫っておりますから、最後にお願いしたいのは、この第一空挺団にやはり非常に大きな問題があります。みんなやる気のある人たち、たくさん入ってくるんですよ、能力が高くて。しかし、話を聞けば、何らかの形で精神的なトラウマを抱えて、結局みんなそこから外へ出ていってしまう。それが必ずしもいい結果を生んでいないんですよ。私も、そういう人とつき合って何度も裏切られた思いがあるんです。

 ですから、そこにはやはり、今の自衛隊における第一空挺団の、要するに訓練の仕方、それからミッションの説明の仕方、あるいはそこを卒業した人の身の振り先、あるいはその人の日本の防衛における位置づけ、こういうものをしっかりと把握して、なおかつ、それを日本の防衛力に資する形で展開しなければいけない、そのように考えますけれども、防衛長官の御決意はどうでしょうか。

大野国務大臣 国を守るということは、命をかけることでございます。命をかける国、その価値を高めていくのは、我々国民のというよりも、政治家として愛すべき国にしていかなきゃいけない、当然のことであります。そして、軍事というのは、愛国心とか、あるいは身をかけて、体を張って国を守っていく、こういうことであろうと思います。

 そういう意味でいいますと、今先生のおっしゃったような教育、愛国心、個人と集団の関係、こういうことをやはりきちっと教えていかなきゃいけない、身につけてもらわなきゃいけない。一例で申しますと、例えば、平成十一年でございましたけれども、入間のT33、練習機でございますが、これが故障いたしまして、被害を最小限にする、そのために住宅地をずっと避けて河原まで飛んでいって、河川敷のところまで飛んでいって、二人の自衛官が犠牲になりました。

 そういう意味で、この話は、やはりそういう話をきちっとして、そして実際に今自衛隊の中でやっております、お互いに議論して、そして教育とかお互いの体験を通じながら、そういう気持ち、愛国心、国を守る、これはどんなことだろうな、こういうことを教えていかなきゃいけない、こんなふうに思っております。

首藤委員 余り関係ない話をされたのでちょっと時間がなくなりましたが、最後に、外務大臣、今、イタリアが、イタリアの副首相さんですか、それが、十二月にもうイタリアも兵を引く、国連のマンデートが切れる十二月に引くという話をされています。それは、十二月じゃ難しいかもしれないから、ちょっと延ばして二月ぐらいになるかもしれないというけれども、かのイタリア、あのベルルスコーニさんが、イタリアは何があっても、ジャーナリストが拘束されても頑として変えなかったイタリアが、国連のマンデートに従って十二月に兵を引くということを責任ある人が明言されている。

 では、日本は、同じように国連のマンデートに従って我々がサマワに行っているのであれば、当然のことながら、十二月でそれは時間切れになります。十二月に切れるということは、その半年までには声明を出さなければいけない。したがって、六月までにはもう一月を切っているんです。ですから、今の段階で、十二月を目指して日本も兵を引くということを明言していただきたいと思いますが、外務大臣、いかがでしょうか。

町村国務大臣 今この時点で、十二月末まである自衛隊の活動のその後のことについて判断するのはいかにも時期尚早である、こう考えます。もちろん国際世論、なかんずく国連の動向というものも勘案しなければならない、これは当然のことであろうと思います。

 同時に、いろいろな要素があると思います。イラクにおける政治プロセスが今後、先ほど委員御指摘のあった治安のことも含めてどのような形で進展をしていくのであろうか、あるいはイラク全体の復興というものがこれからどのような形で進んでいくのであろうか、その中で期待される自衛隊の役割というものは今後どういうことになるのであろうか、その辺をさらに総合勘案しながら、また、先ほど申し上げました国際的な動向、いろいろな要素を勘案しながら慎重に検討していくべき大変大きな政策課題である、かように考えております。

首藤委員 それでは、慎重に検討をお願いします。以上で終わります。

船田委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 私は、まず最初に、イラクで拘束されたとしております日本人の齋藤昭彦さんが本当に速やかに解放されるよう、政府に最大限の努力を冒頭求めたいと思います。

 そこで、質問に入りますけれども、一月末に国民議会選挙が行われ、四月二十八日にイラクの移行政府が発足いたしましたけれども、イラク情勢は一向に改善されておりません。最近も、武装勢力の攻撃が激化し、米軍側も軍事作戦を一段と強化して、依然として厳しい状況にあるわけです。

 米軍は、齋藤昭彦さんが拘束されたとされるヒートが属する西部アンバール州のカイムで、七日夜以降、大規模な軍事作戦を始めております。米軍は今どういう作戦を行っているのか、外務省、説明していただけますか。

吉川政府参考人 アメリカ軍がイラクでどういう軍事行動をとっているかの詳細につきまして日本国政府が詳細な情報を得ているわけではございませんが、伝えられているところ、すなわちアメリカ政府の発表等を見ますと、シリアとイラクの国境のアンバール、地域的には非常に広い地域ですが、このアンバール県を中心にして、駐留米軍とイラク治安部隊により、武装勢力に対する攻撃が今おっしゃったように始まっております。米軍はこれをオペレーション・マタドールと呼んでおりますが。

 ファルージャは去年動きがあり、その後モスルに動き、今、伝えられているところでは、テロリストの大きなグループはシリアとバグダッドを結ぶ街道のシリア国境側に集結している、ここがまた同時に密輸のルートにもなっているというふうに伝えられております。今回伝えられました齋藤さんの事件が起きた地域もまさにその真っただ中でありまして、きのう、おとといと新聞紙上に出ていますような多くの犠牲者が出ております武装衝突は、この地域で行われているものでございます。

赤嶺委員 まさに今説明がありましたように、昨年十一月のファルージャ以来の最大規模の軍事作戦、空爆も含み、民間人の犠牲も伴うような作戦になっているわけです。この作戦には海兵隊員を中心に約千人の部隊が参加し、戦闘機や武装ヘリも動員しております。

 米軍は、大規模な作戦をこれまで繰り返してまいりました。ところが、一向にイラクの情勢がよくならない。悪循環が続いているわけですね。政府は、今の対応を続けていけばイラク情勢を改善できるという見通しを持っているんでしょうか。外務大臣、いかがですか。

逢沢副大臣 一月三十日に選挙が行われました。そして、時間を要したわけでありますけれども、最終的に、四月二十八日に移行政府が正式に発足をし、いわゆるイラクの移行政権がスタートいたしました。

 伝えられるところによりますと、いわゆる武装勢力、反政府勢力は、この移行政府による順調な政治プロセスの前進を何としてもこのタイミングに阻もう、どうやらそういう強い政治的な意図、意思を持っているようであります。フセイン政権時代の残党、あるいはスンニ派の過激派、またアルカイダ系の武装勢力、それぞれが独自の活動をする、あるいは場合によっては連携をとっているという見方もあるわけでありますが、このタイミングに照準を合わせて攻撃を繰り返している、テロ活動を強化している、そういう状況であると私どもは認識いたしております。

 この厳しい治安状況を、まず何といっても、イラク政府の治安組織、イラク軍、そして展開をいたしております十八カ国が引き続き治安維持活動を行っているわけでありますが、協力相まってイラクの治安を何としても改善、回復させる、そして政治プロセスを順調に進展させる状況を確保することが必要であり、加えて経済の復興、このことを一体として進めていくということが今非常に重要であろうかと考えているわけであります。

 ジャファリ首相によれば、何といっても治安対策が大切だ、首相自身、治安対策に優先的に取り組む決意を新たにいたしているわけでありますが、日本政府としても、さまざまな面でこの新政権を支えながら新生イラクの国づくりをサポートしてまいりたい、そのように考えております。

赤嶺委員 決意を聞いたわけじゃないんです。情勢が大変だからといって米軍は軍事作戦を繰り返している、軍事作戦というのがいつまでたっても終結しない、悪循環じゃないか、こういうやり方で本当に情勢はよくなるんですかという見通しを政府に聞いているんですよ。いかがですか、外務大臣。見通しですよ、決意じゃないです。

逢沢副大臣 非常に厳しいイラクの治安情勢、その現状があるということについてはお互いに認識を一にしていると思います。

 先ほど中東局長からも答弁をいたしました。今現在は、いわゆるシリア国境を中心としたイラクの西部あるいは北西部、ここに武装勢力の拠点が数多く存在をしている、あるいはシリア国境近くに大変強い緊張感がある、そういった現状認識が持たれているわけでありまして、特にそこのところに力を入れながら治安を回復していく、そのことが緊急の任務である、要務であるという認識を私どもは持っております。

赤嶺委員 結局、治安がよくなる、あるいは情勢が好転するという見通しについてはついに語られませんでした。情勢は厳しいと言うだけであります。

 私は、やはり、今回のイラクのこの事態というのが、アメリカが国連憲章に違反して始めた戦争、そしてその後、米軍による占領が続いているという事態、そういう問題が続く限り、問題の根本的な解決にはならないと思うんです。

 選挙で勝利した統一イラク同盟が掲げていた公約は、多国籍軍の撤退日程の設定であります。ここにイラク国民の民意があるのは明白です。事態を改善するには、少なくとも占領軍の撤退日程を明確にすることが必要だと考えます。

 そこで、自衛隊の問題について聞きます。

 サマワで活動している自衛隊について、基本計画の派遣期限が切れることし十二月に撤退させる方向で調整に入ったという共同通信の五月五日付の報道があります。これによると、現地情勢を見きわめた上で、九月上旬にも撤退の方針を国会や関係国に通告し、その後は、ODAを軸にした支援に切りかえる方針とされています。

 政府はこういう検討をしているのですか。

大野国務大臣 そのような検討は全くやっておりません。

赤嶺委員 それでは、どういう事態になれば自衛隊を撤退させるのかという問題について聞いていきます。

 せんだって、私は、人道復興支援の問題について、その撤退、撤収、どういう基準で、どこまでやったら撤収するということになっていくのか、その判断について聞きました。全くはっきりしませんでした。

 今回は安全確保支援活動について、この場合はどういう基準で撤収の判断をするのか。いかがですか。

大野国務大臣 安全確保をしながら自衛隊が活動していく、当然のことであります。安全確保という問題につきましては、いろいろな意味合いがありますので、そこは御理解いただきたいと思います。

 例えばロケット弾が宿営地に飛んできた、ことし一月十一日、ああいう事件。ああいうことにつきましては、これは、一両日様子を見るために宿営地外へ出ない、こういう問題がありまして、直ちに撤退という判断にはつながらないし、そういうことは御理解いただきたいと思います。

 そういう意味でいいますと、自衛隊の活動というのは、法律上、戦闘地域であってはならない、非戦闘地域、こういうことであります。この定義をここで繰り返すつもりはありませんが、そういう意味で、非戦闘地域から戦闘地域になれば撤退しなきゃいけない、これは当然のことでありますが、安全確保という意味と、戦闘地域、非戦闘地域という問題とはちょっと別の角度で考えていただきたいと思います。

赤嶺委員 長官、時間も限られた範囲で質問しているんですから、質問を勘違いしないでください。また、防衛庁の方も、しっかりレクして答弁するようにしていただきたいと思うんですよ。安全確保支援活動はと聞いたんです。

 前回、サマワでの人道復興支援活動について聞きました。安全確保支援活動についてはどういう基準で撤収の判断をするのか、そういうことを聞いているんです。

大野国務大臣 安全確保の問題、ちょっと誤解しまして、失礼しました。

 これは、他国の活動に対する安全確保という意味では、きちっとした定義はございません。これは他国の要請の問題があります。その他国の要請に基づいて、人道復興支援に支障のない限りやっていく、こういうことでございますので、明快な定義はございません。

赤嶺委員 そうすると、安全確保支援活動は他国の要請に基づいて行うということになりますと、米軍の活動が継続する以上は自衛隊も支援活動を続けるということになるわけですね。

大野国務大臣 二つ問題がありまして、人道復興支援活動、安全確保支援活動、こうあります。この一つだけ取り上げてお尋ねでございますので、私は、やはり全貌で考えていかなきゃいけない、こういうふうに思います。

 その全貌というのは何か。これは、もうたびたび申し上げておりますので再度繰り返しませんけれども、やはり全体として、こういうことであろう、こういうことになったら撤収の条件、撤収ということを判断していけるのではないか、このように考えたいと思います。

赤嶺委員 前回、人道復興支援活動についても聞いております。そのときの撤収の基準についても、どこまでやれば撤収になっていくのかといえば、その基準も明確でないし、どこまでやるかわからない、どんどん人道復興支援活動の性格がゆがんだ形でやってきている。

 今回は安全確保支援活動、他国の要請がある限りということだったんですが、ちょっと時間がありませんので。

 それで、米軍の要請がある限り続ける、そういう性格を持っている安全確保支援活動において、米軍基地の恒久化の問題が米国において議論をされております。

 これは先月の十一日付のアメリカの議会調査局の報告書に明記されていることなんですが、アフガニスタン及びイラク支援のための軍事基地建設によると、二月に国防総省が提出した二〇〇五年会計年度補正予算の内容について、こう述べています。イラク、アフガニスタン国内及びその支援のための海外軍事基地建設プロジェクトにさらに十億ドルを要求。九・一一同時テロ以降の海外軍事基地にかけた予算が十一億ドルでした。今回は、補正だけで十億ドルも要求している。

 これは何かということが議論になりまして、国防総省の補正予算の説明のために示した資料によると、多くのプロジェクトを、臨時施設の設置を繰り返すことにより費用がかさむのを避け、部隊の生活改善を図るための建設として、また部隊の安全防護の体制を向上させるための建設として位置づけています。中には比較的限定的な目的のプロジェクトもあるが、他方、より長期間使用され得る施設の改善のためにかなりの投資が行われている場合もある。

 国防総省は五年のタームで軍事基地の建設資金を要求しているが、それは標準的な要求期間、つまり標準的なというのは、イラクに臨時的に軍事基地建設ということではなくて、標準的なものとして同じやり方でしている。そして、さらに米軍の駐留が長期化することを示すものとして認識される可能性がある。こういう報告書、恒久化、長期化、これに伴う補正予算がついたということになっているわけです。

 アメリカは、一方でイラク国民の意思を尊重すると言いながら、実際には、イラクに恒久的に駐留しようとしているのではないか。この点について政府はどのように認識していますか。

大野国務大臣 アメリカの方がイラクに米軍をどの程度駐留させるか、これは私の方からコメントすべき問題ではありません。

 ただ申し上げたいのは、安全確保支援活動について、アメリカ軍がいる限りやる、これは違います。我々は、先ほど申し上げておりますとおり、幾つかの切り口から判断をして、日本が主体的に考えていかなきゃいけない。その一つの要素は、もちろん国際協力という問題もあります。国際的な動向という問題もあります。しかしながら、日本としてどう考えていくか、これが大事なことでありまして、アメリカが恒久的に駐留するから、では、日本の安全確保支援活動もそれに引きずられていくんじゃないか、こういう判断では絶対にありません。

 やはりいろいろな意味、その中で、国際協力あります、そういういろいろな、総合的に我が国が主体的に判断していく、こういうふうに申し上げたいと思います。

赤嶺委員 米軍がどうするかはわからない、しかし、米軍の要請に応じて安全確保支援活動はやります、その撤収の基準は日本で考えますという場合に、では、その日本の側の撤収の基準、これについて明確に説明してくれませんか。

大野国務大臣 この問題、何回か御説明しておりますが、再度御説明申し上げたいと思います。

 第一は、政治プロセスがどの程度進んでいるのか。この問題は、本年十二月までに予定されておりますイラクの本格政府成立に向けた政治プロセスの進展でございます。今、移行政権がようやく発足した段階であります。

 二番目の問題は、イラクの治安の問題であります。イラクの治安につきましては、全体として全く予断を許さない。ただしサマワにつきましては、サマワのあるムサンナ県につきましては、他の地域に比べて比較的安定している。例えば、自衛隊の宿営地をねらったかと思われるロケット弾、迫撃砲弾の事案がありました。最後はことし一月十一日でありましたけれども、そういうこと以外に、例えば、自衛隊が鉄砲を撃ったとか鉄砲を撃たれたとか、そういう事案はありません。比較的安定している状態であります。このことは、やはり自衛隊の人道復興支援活動が民生の安定に貢献し、その民生の安定がサマワの治安の安定にもつながっているかな。それから、オランダ軍等が現地の治安機関を育成しております。今、育成された現地の治安機関、五千五百人おりますから、約百十人に一人が治安機関である、こういう状態であります。

 それからもう一つは、イラクの経済的復興の問題でありますけれども、これは、私、昨年十二月に行ってまいりまして、まだまだ道半ばである。

 四番目は、国際社会の動向。これは国際社会の協力の中で、枠組みの中でやっているわけですから、やはりこういう問題にもきちっと目を通して、そして、全体を総合的に考えながら主体的に判断していくということであります。

 我々としては、国際社会の責任ある一員としてイラクの復興に頑張っていくということでございますが、私としては、一日も早くイラクが復興して、民主国家として再生して、そして自衛隊を撤収する日が来ることを願っておるところでございます。

赤嶺委員 アメリカはイラクで軍事作戦、掃討作戦を繰り返し、情勢は悪循環です。一向に情勢はよくならない。そういう枠組みもそのままにして、しかも一方で、アメリカは軍事基地の恒久化を考えている。そこに対する安全確保支援活動はどうなるかということを言ったら、きょうも安全確保支援活動について明確な答弁はなくて、サマワは安全であるというような筋違いの答弁でありました。

 これでは、ずるずるアメリカに追随して、いつまでも日本はイラクに居続けるということになってしまう。こういうことは、本当に、憲法に照らしても、イラクの復興の真の支援にはならない。速やかな撤退を繰り返し申し上げて、質問を終わります。

船田委員長 次に、山本喜代宏君。

山本(喜)委員 社民党・市民連合の山本であります。

 まず冒頭、武装グループに拘束されていると言われる齋藤昭彦さんの一刻も早い救出に向けて政府として全力を挙げていただきたいということをお願いしたいというふうに思います。

 そこで、防衛庁長官にお伺いしますけれども、このイラクの現状、米軍が約十四万駐留している。その次に、民間の警備会社、いわゆるマスコミで言うところの、戦争の民営化というふうにも言われておりますが、こうした民間の警備会社というのが約二万人以上というふうに言われております。国と国との戦争というふうな状況ではなくなっている今のイラクの状況、民間の警備会社が戦争にかかわっている、こういう現代の戦争のありようというものをどのようにお考えでしょうか。

大野国務大臣 山本委員の御指摘の問題点は、大変深く考えさせられる問題だと思います。

 第一に、戦争の民営化ということをおっしゃいました。いろいろな官の仕事がありますけれども、それをアウトソーシングしていく、これが時代の流れであります。なぜアウトソーシングするか。それはコスト・ベネフィット・アナリシスであり、効率化、柔軟性、こういう問題があろうかと思います。そういう経済活動の一環のアウトソーシングという流れが戦争という中に入ってくる、これをどう思うか、そういう問題があろうかと思います。

 そしてまた、事実そういうことをやらなきゃいけない場面もある。日本の自衛隊にとりましても、例えば食堂は民間でお願いしている、こういう場面もあるわけですから、効率化という問題は、税金で運営している自衛隊でございます、差し支えないところはぜひともアウトソーシングしていいんじゃないか、こういうふうに思います。

 しかし、大いに考えなきゃいけないところは、これは日本の自衛隊の場合はないと思いますけれども、外国へ行って武力行使をする、武力行使と一体となる活動を自衛隊はしません。だけれども、それをやる場合に、例えば民間、これは、外国人、いろいろな多国籍の人間が入っている警備会社にサポートされることをどう考えたらいいんだろうか。これは本当に深刻な問題であります。そういう意味でいいますと、やはりいろいろ考えさせられることがあるな。

 それからもう一つ申し上げたいのは、戦争というのが、昔と違いまして、軍隊と軍隊との間の戦争でなくなってきている。軍事科学技術力の著しい発展によりまして爆発力が強くなっている。そうすると、戦争をやると必ず無辜の民間人を巻き込んでしまう、こういう問題も考えなきゃいけない。さらに、テロ行為であります。テロというのはどこでいつ起こるかわからない。これも多国籍軍、無辜の民間人を巻き込んでいく行為であります。

 こういうことを考えると、私は、感想といたしまして、ひとつピンポイントな軍事作戦というのを考えていかなきゃいけないんじゃないか。武力の蓄積されているところを攻撃する、こういうことをもっともっと考え、検討してみる必要があるな。

 それからもう一つは、軍事というのは国を守るということですから、愛国心というのをどういうふうに考えるのか。愛国心というのをもっと考えてもらいたい。

 それからもう一つ、これは私、常日ごろ申し上げているのでありますが、自衛隊の場合の国際的な活動であります。やはり紛争を未然に防止する、そのために安全保障環境をよくしていく、そのための自衛隊、こういう意味で、私は自衛隊の価値というものを、もっともっとプレゼンスを高めていきたいな、こういうふうに思っておるところでございます。

山本(喜)委員 今私が聞いたのは、軍事力の行使のありようということを聞いたわけではないわけでございまして、法的に保護されない今の外国人の傭兵の問題、あるいはハーグ条約とかジュネーブ条約、全く法的な問題があるわけです。これがイラクの中でどんどん広がっているという状況、極めて憂慮しなきゃならない。例えば、もし民間軍事会社の人が過って民間人を殺したという場合の法的な問題とか扱い、こうした、国際的規制が全くない中でイラクにおいてどんどん命が失われていくという問題について私は憂慮しているということを言ったわけですよ。

 そこで、今回の民間の軍事会社、外務大臣にお伺いしますけれども、こうした法的な国際的な規制ということをどのようにこれから日本が主導してやっていくべきなのか、お伺いします。

吉川政府参考人 大臣にかわってお答え申し上げます。

 先生御指摘のように、いろいろな格好で新しいアクターが出ている。そういうものに対して、例えば行動規範であるとか倫理規範とかガイドラインをつくったらというものは議論としてあるということは私どもも承知しております。

 特に、いわゆる民間の軍事企業、先ほどからお伺いしていて、必ずしも民間の軍事企業というのは戦争をやるための組織ではないと思います。これは……(山本(喜)委員「現にやっているわけですよ」と呼ぶ)いえ、普通は、軍事コンサルタント、物資の補給とか警備とか要人の警護、こういうことをやっておりますから、必ずしも通常の軍人とは違うと思いますが、これらは欧米系、特にアングロ・サクソン系が多いですが、そういうこともあって、例えばヨーロッパ、イギリスなんかでは、民間の軍事企業はどういうふうにあるべきかということについていろいろな議論がなされているというふうに考えております。

 したがって、そういう国際的なこれからの議論の中で、日本としてもそれに参加し、適切に対処していくということが必要かと考えております。

山本(喜)委員 民間の軍事会社が物資の補給というようなことをやっている。物資の補給は、これはもう明快な兵たん活動でございますから、軍事行動であるわけですね。そうした形での民間の会社の軍事活動への関与ということが非常にイラクの中でも問題になっている、あるいは国際社会の中でも問題になっているわけでございますから、そうした規制について、日本として、国際社会の中でぜひリーダーシップをとっていただきたいというふうに思うわけでございます。

 それから、先ほど、イラクに対しては邦人の退避勧告をしているというふうなお話がございました。きょう、インターネットのニュースでありますが、長崎の公共職業安定所で、二月末、イラクで働きませんか、土木作業で高額報酬、ハローワークが五人紹介というような報道がありました。外務省は、民間人の入国は絶対に見合わせてほしいというふうなことを言っているようですが、公共職業安定所というのは国の機関ですね。こういうことについてはどのように政府としては対応しているでしょうか。

鹿取政府参考人 今委員御指摘のような話あるいは報道というのは私たちも聞いたことがございますが、私どもが調査した限り、そのような公的機関がイラクにおける雇用を募集している、あるいはそういった事実というものは把握しておりません。

山本(喜)委員 何を言っているんだ。私が聞いているのは、ハローワークが募集を紹介したということが問題じゃないのかと言っているんですよ。

鹿取政府参考人 実は私ども外務省の方にも、イラクにおいて何か募集があるようだけれども、そういう話を聞いているかという照会がありました。

 それに対して私どもも調査しましたけれども、実は、そういうような、イラクで仕事をしないかという一部の情報あるいは報道、そういうのがあったことは事実でございますけれども、その背景を調べてみますと、確たることは今までのところ判明しておりません。

 すなわち、どういうことかと申し上げますと、では、本当に具体的な仕事を募集している事実があるかというと、そういうことは今までないわけでございまして、したがって、若干背景は不透明でありますけれども、結論的に申し上げれば、日本において、邦人のイラクにおける就職をあっせん、そういうものはございません。

山本(喜)委員 いや、あるかないかということももちろん問題ですけれども、ハローワークが紹介をしているということが私は問題だと思うんですよ。

 このことについて、大臣、きょうは厚労省は呼んでいませんけれども、こういうふうなことについては今後政府としてきちんとしていかなきゃならないと思うんですが、どうでしょうか。

町村国務大臣 恐縮ですが、私は、そういう事実があったのかどうかよく把握をしておりませんが、もしそれが事実ならば、それはまことにおかしなことでありましょうし、幾ら何でもハローワークがそんなことを載せるとかあっせんするということはちょっと常識的に考えられないので、何かの間違いじゃございませんかねと思いますが、せっかくの委員の御指摘でございますから、よく調べてみます。

山本(喜)委員 時間になりましたので終わりますけれども、このことについてぜひ政府の中できちっと調べていただきたいと思います。よろしくお願いします。

 以上で終わります。

船田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時十六分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.