衆議院

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第8号 平成19年5月11日(金曜日)

会議録本文へ
平成十九年五月十一日(金曜日)

    午後二時六分開議

 出席委員

   委員長 浜田 靖一君

   理事 石破  茂君 理事 渡海紀三朗君

   理事 中谷  元君 理事 西村 康稔君

   理事 松浪健四郎君 理事 神風 英男君

   理事 原口 一博君 理事 田端 正広君

      安次富 修君    伊藤信太郎君

      伊藤 忠彦君    石原 宏高君

      今村 雅弘君    宇野  治君

      越智 隆雄君    大塚  拓君

      金子善次郎君    北村 茂男君

      清水鴻一郎君    杉田 元司君

      鈴木 馨祐君    冨岡  勉君

      中根 一幸君    中森ふくよ君

      長島 忠美君    西本 勝子君

      橋本  岳君    町村 信孝君

      松本 洋平君    三原 朝彦君

      吉川 貴盛君    池田 元久君

      楠田 大蔵君    古賀 一成君

      後藤  斎君    武正 公一君

      中川 正春君    長島 昭久君

      長妻  昭君    江田 康幸君

      丸谷 佳織君    赤嶺 政賢君

      阿部 知子君

    …………………………………

   議員           笹木 竜三君

   議員           末松 義規君

   議員           原口 一博君

   議員           山口  壯君

   外務大臣         麻生 太郎君

   防衛大臣         久間 章生君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     塩崎 恭久君

   外務副大臣        岩屋  毅君

   防衛副大臣        木村 隆秀君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    宮崎 礼壹君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  鈴木 敏郎君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  宮崎 信敏君

   政府参考人

   (内閣法制局第二部長)  横畠 裕介君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 長嶺 安政君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 伊原 純一君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            奥田 紀宏君

   政府参考人

   (外務省国際法局長)   小松 一郎君

   政府参考人

   (防衛省防衛参事官)   小川 秀樹君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局長)  大古 和雄君

   政府参考人

   (防衛省運用企画局長)  山崎信之郎君

   政府参考人

   (防衛施設庁長官)    北原 巖男君

   政府参考人

   (防衛施設庁施設部長)  渡部  厚君

   政府参考人

   (防衛施設庁建設部長)  千田  彰君

   衆議院調査局国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラク人道復興支援活動等に関する特別調査室長        金澤 昭夫君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十一日

 辞任         補欠選任

  北村 茂男君     長島 忠美君

  山井 和則君     長島 昭久君

同日

 辞任         補欠選任

  長島 忠美君     北村 茂男君

  長島 昭久君     山井 和則君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第八九号)

 イラクにおける自衛隊の部隊等による対応措置を直ちに終了させるためのイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法を廃止する法律案(原口一博君外四名提出、衆法第一九号)


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     ――――◇―――――

浜田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法の一部を改正する法律案及び原口一博君外四名提出、イラクにおける自衛隊の部隊等による対応措置を直ちに終了させるためのイラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法を廃止する法律案の両案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官鈴木敏郎君、内閣官房内閣審議官宮崎信敏君、内閣法制局第二部長横畠裕介君、外務省大臣官房審議官長嶺安政君、外務省大臣官房参事官伊原純一君、外務省中東アフリカ局長奥田紀宏君、外務省国際法局長小松一郎君、防衛省防衛参事官小川秀樹君、防衛省防衛政策局長大古和雄君、防衛省運用企画局長山崎信之郎君、防衛施設庁長官北原巖男君、防衛施設庁施設部長渡部厚君及び防衛施設庁建設部長千田彰君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

浜田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

浜田委員長 この際、政府から発言を求められておりますので、これを許します。久間防衛大臣。

久間国務大臣 先般の当委員会での私の発言について、一言申し上げます。

 テロ対策特措法は、一連の国連安保理決議がなされていることにかんがみ、我が国が国際的なテロリズムの防止及び根絶のための国際社会の取り組みに積極的かつ主体的に寄与することを目的としています。

 したがって、本法律は、対米支援を直接目的としたものではありませんが、国際社会のかかる取り組みに対して我が国として適切に対応していくに当たり、九・一一のテロ攻撃によってもたらされている脅威の除去に努めている米軍に対して協力を行うことは当然想定され、対米支援の性格をもあわせ持つことになります。

 このようなテロ対策特措法と、国家再建の努力を支援するというイラク特措法の趣旨との比較を強調するために、私は、テロ対策特措法は、戦争をすることについて、これは支援する法律といった発言を行いましたが、これは、本法律がテロとの闘いを支援する法律という性格を有しているという意味で申し上げたものであります。

 なお、このテロとの闘いには、九・一一のテロ攻撃によってもたらされている脅威の除去のため、国連憲章第五十一条の個別的または集団的自衛権の行使として行われる憲章の目的達成に寄与する米国等の活動も含まれております。

 戦争という言葉につきましては、一般的な意味で用いたものでありますが、今日、国際法上、戦争が違法化されている状況にかんがみ、必ずしも適切ではなく、テロとの闘いという趣旨であることを改めて申し上げ、御理解を賜りたいと考えています。

浜田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。池田元久君。

池田委員 民主党の池田元久でございます。

 まず、今の久間防衛大臣の発言からお尋ねをしていきたいと思います。率直にお答えをいただきたいと思います。

 まず、総括的にお聞きしますが、人類の歴史、特に二十世紀に入ってからの戦争非合法化の人類の努力、歴史をどう考えるか、久間大臣にお尋ねをしたいと思います。

久間国務大臣 どう考えるかと言われますけれども、自衛権の行使というのは、これはやはり避けては通れないわけでありますので、自衛権の行使としての戦い、これはまあやむを得ないというようなことでありますが、それ以外の戦いといいますか戦争といいますか、これはやはり違法である、そういうような一般的な認識があるんじゃないかなと思っておりまして、私はそれは自然の流れであろうと思っております。

池田委員 テロ特措法を、戦争を支援する法律と言って国民の皆様の理解が得られるとお思いでしょうか。

久間国務大臣 戦争という言葉を闘いというふうに置きかえるのは、これは世間ではまだそれほど、いわゆる法律知識といいますか、国際法の分野に親しんでいない方については、闘いという場合と戦争というのは同義語に使っておりますので、私自身も含めて、わかりやすく話すときに戦争という言い方を、テロとの闘いという言い方なら許されるがテロとの戦争と言ったらいかぬという、そこまでの認識はみんなはなかなか持っていないんじゃないかな、そういう気がいたしますので、わかりやすい言葉でつい戦争という言葉を使ったわけでございますけれども、やはり、厳密な意味でいきますと、国際法上、戦争というのはすべて非合法といいますか違法である、そういうことになっておるわけでございますから、正確を期すとすればテロとの闘いというような表現をしなければならないんじゃないかなと思って、先ほど、冒頭述べさせていただいたわけであります。

池田委員 もし戦争を支援する法律ということになれば、その地域が紛争地域になってしまうわけで、政府の現在の法解釈では自衛隊を出すことがおかしいことになるわけで、その点でも久間大臣の考えは矛盾しているのではないでしょうか。

久間国務大臣 いや、それは必ずしも、闘いをする場所で支援するわけではない場合に、その闘いそのものは、そのときの闘いというのも、戦争の戦という字を書いちゃいかぬそうですから、あえて速記のためにも言いますけれども、闘いと言うときには闘争の闘だそうでございますから、私もこれから先は気をつけますけれども、そこまで厳密に言わなければならぬかなという思いもございます。

 いずれにしましても、闘いが行われているその場所に出ていくことは武力行使の一体化とみなされることが非常に強いわけでございますから、そういう意味で非戦闘地域、そういう場所で行う、そういうふうに法律をつくるときにはしたわけでございまして、やはりそこは地理的にも区別をしたはずでございます。

池田委員 いずれにいたしましても、戦争が非合法化されている状況で我が国の防衛大臣がテロ特措法を戦争支援法だと公言するのは、極めて不穏当、許されないのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

久間国務大臣 わかりやすく言うときに、闘いという言葉を使わずに、そこで戦争が行われているという表現は一般的にはよく使うわけでありますから、こういう委員会等の場は別としまして、ほかのところでわかりやすく話をするときに、戦争が行われている場所、そういったところは避けて、違うところでその戦争自体のバックアップになるようなことをやるんですよ、そういうことは表現としてはあり得るんじゃないか。

 全部の人にそういうことを厳密に言っていきますと、みんな講演するときに、こういう言葉は使っちゃいけませんよと言われたときに言葉選びで非常に難しいときが中にはございますが、それとちょうど同じようなことになりますので、私が言った趣旨は先ほど言ったような趣旨でございますので、その辺をぜひ御理解いただきたいと思います。

池田委員 私は、アニメなどで使われる戦争というのとやはり違うと思うんですね、国会で一国の防衛大臣が発言したわけですから。

 久間さんはテロとの闘いという趣旨で述べたと言っているわけで、戦争という言葉については不適切であるとも言っていらっしゃるわけですから、率直にこの発言を撤回されるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

久間国務大臣 この委員会でありましたかあるいは安保委員会でありましたか、どちらかの委員会で、戦争という表現がまずいならば私のその発言を削除していただきたいということも申し上げておりまして、その点も議事録に載っているわけでありまして、私自身が、そういう言葉で誤解を生むようならばそれは削除してもらいたいという希望を出しております。

 しかしながら、今言いましたように、これから先もそうですけれども、言葉について厳格さを強調いたしますとやはり非常に表現がかたくなっていきますので、その辺については私たちもやはり避けて通りますけれども、これから先も注意していきますが、言葉については、その背景、言いたかったこと、あの場合も、テロ特措法とイラク特措法の違いというのを非常に強調したかったのでそういうふうなことになったわけでございますから、その背景についてもひとつ理解していただきたいと思うわけであります。

池田委員 テロ特措法とイラク特措法の比較ということは私もよくわかります。しかしながら、国会で防衛大臣が、しかも初代の防衛大臣がテロ特措法を戦争を支援する法律と公言したことは、非常にこれは問題がある。

 したがいまして、御本人も自覚されているようでありますから、削除してもいいということではなくて、言い方がもし適切でないなら削除してもらいたいとおっしゃっているわけでありますから、御自身で、それこそ主体的な判断で、削除をする、訂正する、これは撤回するとこの場でおっしゃっていただきたいと思います。

久間国務大臣 それは私自身が、テロとの闘いという形で書いてもらいたい、戦争という言葉が誤解を生むので削除してもらいたいということを委員会でも言っているわけでございますので、私自身の気持ちとしてはそうでございます。

 ただ、それを認めるか認めないか、削除するかどうかは理事会初め皆様方によって決めていただかなければ、一たん吐いた言葉を御了解なしに削除しますというわけにはいかぬと思いますので、私の希望としては、削除していただきたい、そういう希望をもう既に述べているところであります。

池田委員 削除してもらいたいとはっきり一国の大臣がおっしゃったわけですから、理事会でそれを正面から受けとめて対処していただきたいと思います。

 浜田委員長、よろしくお願いいたします。

浜田委員長 理事会で協議させていただきます。

池田委員 さて、私はきょうの質問、いつもそうなんですが、このイラク問題については、やはりイラクでの流血をできるだけ減らして一日も早い復興を願うという立場、これはだれしも同じだと思いますが、それと同時に、日本の国際貢献を進めていく上で、しっかりとした法的、制度的枠組みの中で自衛隊などが活動できるようにすべきだという立場から、以下、少し議論をしていきたいと思います。

 まず、イラクが国連の決議を無視したり違反してきたことは事実であるとしても、大量破壊兵器について戦争に訴えるだけの決定的証拠はなかった、緊急性もなかったと私は思います。また、国際的な合意もありませんでした。私は、あのときも今も、査察は続行すべきであったと思っております。また、武力でフセイン政権を倒しても、その後どうするか、展望がなかったと私は思います。その後の大混乱は御承知のとおりです。

 外務省の首脳だった方が、最近、政策論としてほかにやり方があったのではないか、開戦前に、イラクの周辺に展開した多国籍軍でイラクに圧力をかけ続け、徹底した査察に応じさせれば、大量破壊兵器があったかどうかわかったはずだと述べております。全く同感であります。

 麻生外務大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 今、外務省の何とかという人がだれかはよくわかりませんけれども、池田先生、終わった後、ああすればよかった、こうすればよかったという話は、余り私は、選挙に負けた後いろいろ反省することはよくありますけれども……(池田委員「選挙とけんかとは違う」と呼ぶ)いや、選挙もけんかも似たようなものだと私は思っているんですけれども。

 だけれども、そういった意味では、この種の話をさせて、ああすればよかった、こうすればよかったという話は、軍事の専門家がその種の話をされるというのは傾聴に値するとは存じますけれども、そういった御意見があるということだけは拝聴いたしておきます。

池田委員 長屋で談義している場合は確かに私もそういった言葉は耳に入りますが、しかし、やはり違うと思うんですね。物事は、やはり行動に対して総括があって、次にまた行動に踏み出す、こういう繰り返しでありますので、そこのところは、一国の行動、国際的な行動ですから、御理解をいただきたい。

 二〇〇一年のたしか八月だったと思うんですが、予算委員会の視察で、ここにいらっしゃる久間防衛大臣らとイラクに入りました。久間さんは陸路からと、私は空路から入れるんじゃないかと言って、結局、空路でバグダッドに入ったわけであります。実は私は、その十一年前のイラクのクウェート占領直後に、同僚議員四人とバグダッドに入って、日本人を含む人質の解放を求めて交渉したこともございます。しかし、久間さんたちと一緒に行ったとき私が感じたのは、十年間で、継続した累次の経済制裁で随分疲弊をしているなと。久間さんもお感じになったと思うんです。しかし、バース党は健在で、統治機構は機能していたと私は思います。

 そのようなフセイン政権のイラクに米英軍が国境を越えて進攻した結果、大変なパンドラの箱をあけてしまったと私は思います。宗派、民族対立が潜在していたイラクのパンドラの箱をあけてしまったというわけでございます。

 久間大臣の所見をお伺いしたいと思います。

久間国務大臣 今、麻生外務大臣が言いましたように、後になって、あのときこうすればよかった、そういうことを言ってみてもどうにもならない点があろうかと思いますが、私も今おっしゃられましたような気持ちがないわけじゃなくて、アメリカに行くたびに、バース党の中でも優秀な官僚がおった、しかしながら、フセイン政権で、圧制の中で嫌々それに参加しておったやつもおったはずだ、そういうやつを、バース党を全部切ってしまうということになると、そこはいかがなものでしょうかと。日本でも、やはり戦後の復興をやるために、戦前軍隊にそのまま従っておった人たちでも、優秀なやつについてはまたバックさせて戦後の統治に使った、こういうようなことについては考えた方がいいですよということを何回も言いました。そして、それについては、そうだなというようなことをアメリカの皆さん方も言ってくれた。

 立場は今の防衛大臣じゃございませんでしたけれども、そういうような経験がありますので、そういうような点からも、やはり統治機構の中にそういう優秀な人間を入れるということは非常に大事なことでございまして、優秀な人間がそうたくさんおるわけじゃありませんので、大事にしなきゃいかぬという思いは今でも持っております。

池田委員 そのイラクの最近の状況でございますが、きのうCNNのニュースを見ておりましたら、イラクのハシミ副大統領、スンニ派ですが、連邦制を導入する憲法が改正されなければ連邦議会からスンニ派の議員全員を離脱させるということを示唆した、そういうニュースを見たんですが、イラク議会で何が起きているか、外務省に端的に説明をいただきたい。

奥田政府参考人 現時点でのイラクの政治情勢でございますけれども、今お尋ねの、国会で今何が起こっているかということでありますが、我々が承知しているところ、五月八日でありますけれども、ハシミ副大統領はCNNとのインタビューにおいて、マリキ首相に一週間の猶予を与えるが、その間に、民兵解体が実現し、憲法修正作業が開始されなければ、イラク合意戦線、これはスンニ派の最大派閥でございますけれども、このイラク合意戦線は政府、議会から離脱する旨述べました。これに対しまして、八日、マリキ首相の報道官は、おどしではいかなる政治的努力も成功しないと述べております。

 以上です。

池田委員 この問題は非常に注目される問題だと思います。いわゆる宗派対立がイラクの議会にまで波及して顕在化したと言えると思います。議会に亀裂が入って機能停止に及ぶ可能性もある。大変深刻だと思うんですが、日本政府はどう対処しますか。

麻生国務大臣 よその国の政府にどう対応するかというお話を聞かれても、これは下手すればまた内政干渉になりますので、うかつなことは申し上げられない、率直にそう思っております。

 ただ、今の事態というのは、大統領はクルド、それで副大統領がスンニ等々、総理がシーア、何とかがスンニと、ずっと比率で割ってあったりするというのは最初から出ておりましたので、顕在化するであろうということは、大体、こういう人種割り、宗教割りにしたら最初からそういうことになり得るであろうということは、池田先生初め多くの方が予想しておられたと存じます。

池田委員 普通の国でそんなことは外務大臣に聞きませんよ。それは御本人もおわかりのとおり、今、イラクの復興支援をやっているわけですから、ようやくできた政府でありますから聞いたわけであります。

 私はここで、先ほど麻生大臣いろいろおっしゃいましたけれども、やはり物事は、重大なことが起きたときは、それに対していろいろ問題点を洗って、反省なり総括して、そしてこれからの未来に役立てる、そういうことがごく普通のやり方であると。一々こんなことを言う必要はないんですが。

 開戦当時の判断について、今、総括といいますか、いろいろ皆さん、各国首脳がおっしゃっております。米英の首脳は、開戦の理由とした大量破壊兵器は存在しなかった、これについての誤りを認める発言をしております。ブッシュ大統領も、二〇〇五年十二月の演説で、イラクでの大量破壊兵器に関する情報が間違っていたことを認めております。また、イギリスのブレア首相は、この問題が引き金となって退陣をしますが、二〇〇四年の九月、労働党大会の演説で、大量破壊兵器の情報について、イラクが持っているとの判断と現実は違っていたと述べて、自分も他の人間と同じように間違いを犯す人間だと語って、謝罪をしているわけです。

 これについて、日本政府の立場から、小泉内閣を継承している安倍内閣、その塩崎官房長官にお考えをお聞きしたいと思います。

塩崎国務大臣 日本が安保理決議に基づいてとられた多国籍軍の行動について支持をしたということについてのお話は、もう何度もお話をしてきたところでございますが、今、アメリカないしはイギリスで、大量破壊兵器がなかったということで謝罪を首脳がしているという御指摘がございました。それについて日本政府としてどうなのか、こういうお尋ねでございます。

 まず、ブッシュ大統領が誤りを認めたのは、対イラク武力行使の決定自体ではなくて、大量破壊兵器に関する情報が誤っていたということについて、率直にその過ちを認めているということで、それともう一つは、その後の占領政策のあり方についてもその非を認めている部分があったということでございます。一方で、二〇〇五年十二月十四日のブッシュ大統領は、私のサダム・フセインを放逐するとの決断は正しかったということを明確に言っておられます。

 それから、ブレア首相が謝罪をしたということでございますけれども、これもやはり、イラクの大量破壊兵器に関するイギリス政府の情報の過ち、誤りについて率直に間違いを認めているということでありますけれども、これも同時に、自分はサダム・フセインを取り除いたことについては謝罪しないというふうに言っておられるわけであります。

 したがって、政策判断をするときの、その際に使った情報に過ちがあった、情報が間違っていたということを率直に認めているわけでありますが、政策としてとった行動についての謝罪はしていないというのが実際であろうと思います。

池田委員 私もその点は正確に言ったつもりです。

 今、日本政府の立場の発言をしないで、アメリカ、イギリスの首脳の発言の解説をしていただきました。随分日本の官房長官も余裕があるなと思いますが、アメリカの大統領が大量破壊兵器情報の誤りを認めているんですから、もう遠慮は要らないんですよ。率直におっしゃっていただきたい。

塩崎国務大臣 先ほど申し上げたように、日本が今回の米国などの行動について支持をしたということについては、もう何度も申し上げてきたので、余り細かく言う必要はないかなと思って総括的に申し上げたところでありますけれども。

 では、もう一回改めて申し上げるとすれば、先ほど先生もおっしゃったように、累次の国連決議、安保理決議に違反を続けて、そして、国際社会が平和的な解決の機会を与えたにもかかわらず、それを生かさなかった。それから、国際社会のいろいろな努力がありましたけれども、それにこたえなかったということで、安保理決議に基づいた行動がアメリカなどによってとられた、それを支持したということであります。

 日本は、自国の国益に照らして判断をし、その後は、国連安保理決議に基づく自衛隊による人的貢献、あるいはODAによる支援とか、そういうようなことで、一貫してイラクの安定化に向けての努力を続けてきているわけであって、それはあくまでも主体的な判断で日本はやってきたということで、大量破壊兵器の有無だけで日本は事を判断したわけではないわけでありますので、その点はあしからず、申し述べさせていただきたいと思います。

池田委員 塩崎さんは、昔は随分金融問題では率直なことをおっしゃっていましたが、言いわけといいますか、ほとんど解説に終始して、非常に残念であります。

 久間防衛大臣は、ことし一月、日本記者クラブの講演で、これは何度も引用されたと思いますが、核兵器がさもあるかのような状況でブッシュ大統領は戦争に踏み切ったのだろうが、その判断が間違っていたと思うと明快に語っておりますが、これは確認できますね。

久間国務大臣 核兵器を持っておったというような判断は私は違ったんじゃないか、そういうふうにそれは言いました。

池田委員 先ほど私が紹介した言葉を信じたいと思います。

 私は、この問題で、特にアメリカのパウエル国務長官の態度がやはり非常に大事だと思うんですね。開戦前の二〇〇三年二月、国連の外相会合ですか、生物兵器の移動工場は七つもあると、イラストを入れて大々的に紹介しましたね。これについて、翌年の七月、情報源は不正確で間違っていた、私は失望し悔やんでいると述べています。また、翌年九月には、この演説について、人生の汚点になるであろうと。随分だれかと違いますね。人生の汚点になるであろう、そういうことまで言っている。重い判断をして後で間違ったとわかれば、そうした発言をするのは当然であると私は思います。

 開戦当時、アメリカ政府の主張をうのみにして追従した政府は、今どう考えるか。先ほどの官房長官の発言では出てこない。当時のアメリカの立場を弁護したり、やむを得なかったなどと言いわけをしないで、今日の時点に立って、日本政府はしっかりと総括し、反省すべきではないかと私は思います。

 官房長官、これ以上答弁は前に進まないようですから、民主党の答弁者に答弁をお願いします。

笹木議員 今、質問者の質問の中でもありましたが、先ほど官房長官が、政策決定においての情報が一部誤っていたような、そういうニュアンスのお話をされましたが、言ってみれば、その政策決定、開戦をするという、戦争をするという、そのときの中核情報が、大量破壊兵器があるかどうかということだったと思います。

 パウエルさんが安保理で示した、今お話があった、そのことをもって国連決議を一生懸命決議させようとした。しかし結果的に、その決議も、武力行使を容認するものを決議することはできなかったわけですね。それは決定的に、あのときにあった移動式の生物兵器の製造、それとウラン濃縮のためのアルミ管、これがなかったということは、決定的な、中核的な情報が間違っていたということです。

 そのことについて、アメリカのブッシュさんも、ブレアさんは、イラク戦争についての判断について、その対応をきっかけに、きのう退陣を表明していますが、こういうことがあるわけですけれども、日本の政府は全く、それに対して何のコメントもしていない。これが非常に問題だと思うんです。これは、今後もアメリカにただただ追従していって、どこで線を引くか、もちろん協力することはしないといけませんが、そのけじめがやはりないということにつながっているんじゃないか、そういうふうに感じます。

 先ほど、戦争が終わってからの理屈云々というお話がありましたが、民主的な議会ができたという、これこそ戦争後の後づけの理屈であって、開戦のときの理屈には一切なかった理屈だと思います。

 話を戻しますと、全くけじめがない、このことが、単に追従していく今の姿につながっていると非常に心配するものであります。

池田委員 全く明快です。けじめがないんですよ。

 もうこれでやめようかと思うんですが、この時点ではもうアメリカに遠慮は要らないんですよ。大量破壊兵器の情報の誤りを認めているわけですからね。それこそ、皆さんが言葉でも文書でも主体的判断、主体的判断と言うのであれば、うのみにして追従した政府は今主体的にこう考えているということをおっしゃっていただきたい。久間大臣、どうですか。

久間国務大臣 私は、あの当時閣内にいなかったわけでありますし、そしてまた、いたとしても、アメリカの武力行使に踏み切ったことを、政府としては、総合的に判断しながら、国益としてそれを支持するかしないかというときに、支持するという決定をしたわけでありまして、現在の安倍内閣も、そのとき支持をしたのは正しかったというような判断をしておるわけでございますから、アメリカがそういう前提となった情報がどうだったかは別として、戦争に踏み切ったときに、日本は支持するか支持しないかどちらに回った方がいいかというのは、やはり国益を考えて支持をするという決定をしたわけでありまして、それを今の政府としても踏襲しているわけでありますから、私は、それはそれで一つの説明がつくんじゃないかなと思っております。

池田委員 経過の説明は私はいいと思うんですが、では、次に移りたいと思います。自衛隊と多国籍軍の関係についてお尋ねをしたい。

 私は、しっかりとした法的裏づけのもとに自衛隊などの国際貢献活動を行うべきだという立場です。今回、自衛隊のイラク派遣についてですが、昨年八月の当委員会でも取り上げましたけれども、九〇年十月二十六日の政府統一見解があります。お手元に行っていると思うんですが、要約すれば、多国籍軍、ここでは国連軍ですが、その指揮下に入り、その一員として行動することは、目的、任務が武力行使を伴うものであれば憲法上許されないなどの内容です。

 久間大臣に内容を確認したいと思います。

久間国務大臣 九〇年当時の参加と協力の議論というのは、今もそのままそれは理解しておりますし、踏襲しております。

 ただ、参加という言葉が、日本語ですから、参加という言葉自体がその当時の言葉でどこまでかという感じはしますけれども、その当時の参加という言葉が、指揮命令を受けるということを含んでいるんじゃないかというふうに理解をしております。

池田委員 この統一見解には、二つの要件、要件と仮にしましょう、一つは、多国籍軍の指揮下にあるかどうか、もう一つは、多国籍軍の一員であるかどうかということです。

 まず一つ目ですが、今回派遣された自衛隊は、多国籍軍の指揮下にはないといいながら、統合された司令部、米議会でのロドマンさんですか、政府の証言では、アメリカの司令部のもとにあって、同司令部との間で日本の自衛隊が連絡調整を行うとされています。

 指揮下にはなくても、司令部の傘下にあって、指揮を受ける立場に近いんじゃないですか、久間さん。

久間国務大臣 あくまで自衛隊員は総理大臣並びに防衛大臣の指揮を受けるのであって、国連軍といいますか多国籍軍の指揮を受けているわけではございません。だから、食い違ったときにどっちに従うかによってそれが決まってくるわけでありまして、防衛大臣あるいはその上官であります総理大臣の命に従うということになっている以上は、向こうの指揮下には入っていないということであります。

池田委員 今の御主張に従えば、今回派遣の自衛隊は米軍の指揮下にはない、多国籍軍の、つまり米軍の指揮下にはないということにしておきましょう。

 では、もう一方の要件である多国籍軍の一員であるかどうか、この点はいかがでしょうか。

久間国務大臣 これは、多国籍軍の一員にならなければあそこにおいていわゆる外国人としての地位が確保されませんので、いろいろな特権がですね。そういう意味では、多国籍軍のグループに入っているといいますか、そういうもとにあるという形にはなっておるわけであります。

 これは非常にあの当時としても難しい点がありましたので、先ほど言いましたように、指揮下にあるかないかについては、外務省を通じまして、イギリス当局と、そしてアメリカ当局と打ち合わせをして、指揮下には入っていない、しかしながら、グループとしては多国籍軍の中で連絡調整員としてそのもとにある、そういうことで、イラク政府が行った、今までは国連加盟国であれば全部よかったんですけれども、多国籍軍だけに地位を与えるというような決定をしましたときに、その調整をした結果、今みたいなすみ分けといいますか整理をしたわけであります。

池田委員 多国籍軍の一員である。今久間大臣が言ったように、お墨つきをもらいましたよね、コアリションのパーソネルというんですか、それだけではなく、多国籍軍の統合された司令部のもと、これまでと同様に司令部のもと人道復興支援を中心に活動する。普通の言葉で言えば、これはもうまさに一員ですよね。

 多国籍軍の指揮下にない、また一員でないということであれば憲法上許されることになるわけですが、まず指揮下にはないということを認めれば、二つのうち一つの要件は満たされる。しかし、多国籍軍の一員であるということですから、もう一つの要件は満たされない。したがって、政府統一見解に沿えば、今回の自衛隊のイラク派遣は統一見解を紛れもなくはみ出し、逸脱し、憲法上許されないということになると思うんです。意見としてではなくて、事実としてですね。

 この点、久間大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

久間国務大臣 あの当時の統一見解のうち、参加という言葉について、これが、指揮下でない、そういう意味だというふうにとればそれほどの違いはないわけでありまして、要は、もし先生がおっしゃるようなあれで今の場合が違うということになりますと、地位そのものが認められなくなるわけです。そうしますと、今は帰ってまいりましたけれども、イラクで自衛隊が復興支援をやっておりますときに何かあったときに、事件その他が全部イラク国内法が適用されてくるわけですね。向こうの裁判所の管轄になるわけですよ。そういうことをすべきかどうかというときに今みたいな整理をしたわけであります。

 だから、私は、当時の整理の仕方として、司令部のもとにおって連絡調整等をやるけれども向こうの指揮命令の系統には入らない、そういうことにしたわけでありますから、そういうことについては、その辺の背景についても御理解賜りたいと思うわけであります。

池田委員 久間大臣の、法的地位でそうなったという一面はわかります。しかし、この了解事項についても、さっき申し上げたように、統合された司令部のもとで活動するんだと。要するに、だれが見ても一員なんですよ。ですから、二つの要件のうちの一つは満たされていないんです、これは。それはやはりお認めにならなければいけないと思います。

 民主党の答弁者、お願いします。

原口議員 池田委員が御指摘のとおりだと思います。

 まさに、この一九九〇年十月二十六日における政府統一見解は、二つのことが要件だったわけです。ところが、今久間防衛大臣がお話しになりましたように、多国籍軍の一員としてでないとイラクで活動ができないということが後でわかって、それに法解釈を合わせている。現実に自分たちの原則を合わせているということは、まさに無原則そのものである、このように考えます。

池田委員 論理からいって、久間大臣、今回の派遣された自衛隊が、統一見解からの逸脱を認めるか、そうでなければ、論理的には統一見解自体をほごにするしかないと私は思うんですよ。いかがでしょうか。

久間国務大臣 御指摘の平成二年の政府統一見解の中で、「「国連軍」の司令官の指揮下に入り、その一員として行動すること」というのは、続いた一体の言葉というふうに理解しておりまして、指揮下に入るということとは別に一員として行動するというような、そういうことが憲法上の問題の独立要件だというふうには考えていなかったんじゃないでしょうか。

 この辺は、私も法律の専門家じゃありませんからあれですけれども、私は、現在の自衛隊は、多国籍軍のグループ内には入っているけれども、それは指揮命令を受けていないわけですから、だから、これ自体はそれほど問題は生じていないと思っておりまして、現在の派遣されている自衛隊員が何か問題があるかのように言われますとそれは困るわけですから、そうはなっていないと思いますよ。

 過去の解釈の仕方がどうだったこうだったというのは、それは、それを今も踏襲していると、一部政府としてやっておりますけれども、その当時の背景と今の背景とが必ずしもイコールでないときに、昔の言葉を持ってきて、ぴたっと当てはまらないから、今の自衛隊は法的地位は与えられないんだぞとか、そういうことを言われますと、自衛隊の隊員の身分の問題に関係しますから、私は、そういうことはなくて、今の場合は、一員であるけれども指揮命令は受けていない、そういうふうにすんなりと理解してもらった方が大変ありがたいんですけれども。

池田委員 別に不安定とかなんとか言っているんじゃなくて、やはり自衛隊員、自衛隊の存在のためにも明確な法的な裏づけが必要だということを私は言っているわけですからね。それで、論理からいって、今申し述べてきたように、今回の自衛隊派遣は統一見解を逸脱していることは率直に認めるべきだと私は思います。

 それで、法制局がいろいろ考えていらっしゃるかもしれませんが、ちょっと法制局から、端的に今の点をお尋ねしたい。

宮崎政府特別補佐人 多国籍軍の一員として行動するということと指揮下に入るという問題につきましては、ただいま防衛大臣のおっしゃったとおりですが、なお、もう少し敷衍して御説明申し上げたいと思うんですけれども、問題のポイントは、多国籍軍の一員として行動しても、これが憲法違反にならない場合があるのかということだと思います。

 政府はこれまで、多国籍軍の目的、任務が武力の行使を伴うものである場合におきまして、自衛隊が当該多国籍軍の司令官の指揮下に入り、その一員として行動することは憲法上許されないというふうに述べてきておるわけですが、このことはなぜかと申しますと、自衛隊の活動について我が国として主体的な判断を確保することができず、したがって、自衛隊の活動が武力の行使に及んだり他国の武力行使と一体化することがないという前提を確保することが困難であるというふうに考えられてきたためでございます。

 したがいまして、他方、政府としては、従来から、自衛隊の活動が武力の行使に及んだり他国の武力の行使と一体化することがないという前提を確保することが可能であれば、自衛隊がいわゆる多国籍軍の中で活動することは許されないわけではないというふうに考えておりまして、このことは、例えば平成十六年六月十一日の衆議院安全保障委員会におきまして、当時の秋山法制局長官から、「要するに、指揮下に入らない、その結果、武力の行使をしないし、武力の行使との一体化もないということが確保できるような前提があれば、その多国籍軍の一員となると申しますか、それに加わること、これは憲法上の問題はない」というふうに考えている旨述べているところでございます。

池田委員 この政府統一見解にさらにまた新しい条件といいますか、そういうことをつけ加えてきたわけでありまして、法制局としては現状から見ればそういうことをおっしゃるかもしれませんが、この点もう一度、民主党の答弁者にこれに対する感想をお尋ねしたいと思います。

原口議員 一九九〇年十月二十六日の政府統一見解にもございますように、何が自衛のための必要最小限なのかということが最も大事であるというふうに思います。

 今のように、AかつBでなければそれはいいんだという論理構成をやるのであれば、その一員として行動するということは外れていいはずであります。また、これを逆にしても、たとえ一員として行動せず指揮下に入る、ではこれも逆に許されるのか、こんな話になるので、私は、このように武力行使と一体だというようなことをなぜ私たちが抑制的に議論してきたか、そのことから考えると、委員の御指摘の方が正当性を持っている、このように考えます。

池田委員 我々民主党としては、しっかりとした、確固とした安全保障の枠組みづくりというものをこれからも引き続きやっていきたいと思っております。

 さて、話題を、空自の輸送について移りたいんですけれども、航空自衛隊の輸送が現在行われているわけですが、さきの衆議院の本会議で安倍総理大臣は、昨年九月以来、延べ百五十回、四十六・五トンの物資を空輸した、そのうち国連関係は二十五回、二・三トン、人員は七百六人であることを明らかにされました。

 そうであれば、こんなことを一々引き算するのは本当にばかばかしい限りでありますが、多国籍軍の兵員の輸送など安全確保支援活動については百二十五回、四十四トン余りを空輸したことになると思うんですが、それでよいのでしょうか。

山崎政府参考人 御指摘のとおりだと思います。

池田委員 そうしますと、これは回数からいえば、百五十分の百二十五ですから、二十五で割ると六分の五ですね。ですから、八〇%以上が安全確保支援活動ということになります。

 基本計画では、人道復興支援活動に支障を及ぼさない範囲で安全確保支援活動を行うとしているわけで、航空自衛隊の空輸は基本計画を明らかに逸脱しているのではないかと思うんですが、久間防衛大臣、いかがでしょうか。

久間国務大臣 いや、別に逸脱しているわけじゃございませんで、人道復興支援に支障を来していないわけでありますから。支障を来さない範囲でやるというふうに基本計画では書いているわけであります。

 ただ、そのときの状況によって、特に陸上自衛隊が引き揚げましたので、人道復興支援の分野が減ったのは事実でございます。しかし、これから先、人道復興支援がどんどんできるような状況になってくるとまた変わるかもしれませんし、だから、それは法律上はパラレルに、どちらもできることになっておるわけですから、私どもは、そういう、片一方しかできないというような法律なら問題ですけれども、どちらもできることになっている。

 ただ、現在の段階では、こちらの方のウエートが多いという現実はございます。

池田委員 そうであれば、基本計画はその部分は変えるべきじゃないですか。

久間国務大臣 どういう形にこれから先またなっていくか、それを推定しながらでございますから、今度このイラク復興支援法の延長を決めていただけた場合には、そのときの基本計画を変えられるときは、これは内閣官房マターでございますから防衛省じゃございませんけれども、内閣として決定するときには、いろいろな、これから先について、それをパラレルに書くか、今までみたいな書き方にするか、それはまたいろいろ検討をしてもらいたいと思っております。

池田委員 次に、武器弾薬の輸送についてお尋ねします。

 イラク特措法と基本計画では武器弾薬の輸送はできるとなっておりますが、その理由、根拠は何でしょうか。久間大臣。

久間国務大臣 専ら武器、専ら弾薬、そういったことの輸送は原則としてやっておりませんけれども、多国籍軍を運ぶときに武器を外す、弾薬を外すというような、そういうことは事実上なかなかできないわけでありますから、だから、それは法的には可能でありますけれども、基本計画上それをどういうふうに表現しているか、ちょっと事務方から説明させようと思います。(池田委員「次のあれであわせて聞きますから」と呼ぶ)

池田委員 その答弁を受けて、久間大臣、実施要項の方では武器弾薬の輸送はしないとしたわけですね。法律と基本計画ではできる、しかし実施要項では輸送はしないとした、その理由は何でしょうか。

山崎政府参考人 人道復興支援というものを重視して、それを中心として基本計画を策定している。そういう関係で、実際に武器弾薬の輸送を行わないという政策決定をしたわけでございますので、それを受けて実施要項に定めたということでございます。

池田委員 答えになっていないですね。実施要項で、武器弾薬の輸送はしない。基本計画、法律ではできる、しかし、実際は実施要項ではやらないんだと。理由があるわけですよね。理由なく日本の政府はいろいろなことを決めるんですか。

久間国務大臣 実施要項というのは、具体的なそういうニーズがある場合にやはりそれをするかしないか。実施要項でもし書いておりますと、そういうこともさもやっているかのように思いますから。ニーズがない場合にはこれは外すということは、そういう選択肢としてはできるわけでありますから。法律上はできるようになっていても、基本計画上はなっていても、実施要項上は、それをしないものについて、それはしないならしないと書いていいんじゃないでしょうか。

 やはり、法律上なっているから、実施要項にもしないものまで書けということ自体の方がむしろおかしいわけで、政策判断としてでもそれはやっていないという、そっちの方を、そういうふうに理解してもらった方がいいと思います。

池田委員 政策判断でしないんですから、その政策判断は何かと聞いていて、それが全く出てこない。

久間国務大臣 こういう武器を運んでくれ、こういう弾薬を運んでくれというような、そういう要望がなければそれは運ばないわけであります。

 それともう一つは、割合、今までのいろいろな関係でもずっと見ておりまして、武器については他人にゆだねるということは余り各軍ともしないんですね。だから、そういうニーズが出てこないんだろうと。私自身は、なぜそういう要望が余りないのか、そういうのを裏返して考えますと、どうもそういうことの要請はしないようでありまして、だから、周辺事態法のときも、同じように、武器弾薬等についてはニーズがないからといって外しました。やはりなかなか他人に武器をゆだねるということを、余り軍人というのは、軍隊というのはしないんじゃないでしょうか。

池田委員 では、武装兵員の輸送とあわせて聞きましょう。武装兵員の輸送は現に行われていますよね。武器弾薬の輸送をしないというのであれば、武装兵員の輸送の方はどうしてもやらなきゃいけないんですか。武装兵員の輸送を行わないということにならないんですか。

久間国務大臣 それは別でありまして、やはり安全確保活動をやるためのその支援をやるときに、武器を持って、あるいはその武器の中には弾薬が入って、そして乗り込んでくるという、そういう必然性というのはあるわけでありまして、そういうのまでやらないということじゃなくて、そういうのは安全確保支援活動として、法律上もやれるとなっておりますし、現実にまたそれはあるわけであります。専ら武器弾薬を他人にゆだねるということをしないものですから、それは実施要項から外しておるということであります。

池田委員 そもそも武装兵員の輸送、これはいわゆる兵たん、ロジスティクスの中心ですね。近代戦では重要性が高まっていると言われています。武装兵員の輸送は、作戦の、用兵の重要な要素ですね。武力行使と密接不可分なものではないかと思いますが、久間大臣、いかがでしょうか。

久間国務大臣 武力行使という言い方と、例えばいろいろな治安活動に当たっている、この法律上は安全確保活動といいますかに携わっている、我々はそういうところは使い分けておるわけでありまして、だから、イラクは一応戦争は終わったという、そういうような前提に立ってすべて国連の動きも、またそれを受けた形で我々が出ていく場合も、それはそういう建前でやっているわけです。

 ただ、さはさりながら、戦闘地域から一応外したところでやりたい、よりそれが確実にされるということで非戦闘地域で行うという形をやっておるわけでありまして、武器を携行した兵士を乗せないというような選択肢はないわけであります。

池田委員 そもそも武装兵員の輸送、こういう用兵上といいますか、作戦計画、オペレーションで重要な部分を日本の自衛隊といいますか、日本の指揮権のもとで行うことが可能なんですか、大臣。

久間国務大臣 それは可能でありまして、例えば、うちの陸上自衛隊が向こうにおりましたときに、陸上自衛隊がもし運んだとした場合、その陸上自衛隊員が、武器を持って、弾薬を持って、みずから携行してそれに乗り込んできた、それを運べませんということにはならないわけでありまして、武力行使をしている人とそれに一体化するようなことの支援はできませんけれども、それ以外のことについては法律上も憲法上もできるわけでありますから。だから、そこのところの違いをよく理解していただきたいと思うわけであります。

池田委員 私は、法律上、憲法上の話に入る前に、実態的に日本の指揮下でそんなことができるのかなと疑問を呈しているわけでございまして、武装兵員の輸送、統合された司令部、米軍の司令官がいて用兵上いろいろ動かす、それはまさにアメリカ軍の指揮下で動いていると見るのが常識でしょう。日本の自衛隊がそれを指揮できるんですか。

久間国務大臣 アメリカに限らず多国籍のほかの軍の要請によって、この兵士を運んでくれ、そう言われたときに運ぶのが私たちの自衛隊の仕事でありまして、その運ぶ兵隊が兵器を持っている場合もあり得るということを言っているわけであります。

池田委員 運べということであれば、それは指揮に入っているわけですよ、自衛隊は、その部分について言えば。論理的にそうなりますよ。

久間国務大臣 指揮に入っているわけじゃございませんで、それは、連絡調整をしながら、運んでもらいたいという要請に基づいて我が国の上官の命によってそれを運んでいるわけですから。だから、もし向こうが運んでもらいたいと言っても、こちらの方が運ぶなと言った場合にはこちらの命令に従うわけです。だから、どちらの指揮命令に入っているかというのが大事ですよと冒頭に申し上げたのはそういうことであります。

池田委員 本当に苦しい御答弁で、この点、民主党の答弁者の考えを聞きたいと思います。

末松議員 先生のおっしゃるとおり、武装兵員の輸送というのは非常にグレーな部分を含んでおります。本当に、ピストルで自分の身を守るということ以外に、それが小銃、そしてさらに機関銃、そして例えば対戦車砲とか、こういう形で身を守るためだということになってくれば、これは禁止をしている武器の輸送という話になるわけですから。

 ただ、私ども民主党が一番問題視しているのは、これをチェックすることが許されていない、あるいは政府がそれをチェックさせようとしない。ですから、公開はしないまでも、そこ自体が全くアンタッチャブルになっているわけですから、それがどうなっているかわからない。そこは、私どもとして一番問題視しているところでございます。

池田委員 まだまだ、麻生大臣の非常に幼稚発言とかいろいろ聞きたいことはあるんですが、これはまた別の機会にお聞きすることにして、これまで、イラクでの開戦時の判断の総括、そして派遣自衛隊の法的な位置づけ、航空自衛隊の輸送等についてお尋ねしてきましたが、やはり理屈を積み重ねて戦闘地域、非戦闘地域という理論なるものをおつくりになられておりますが、我々としてはそれは虚構の論理でありまして、実態からいうと矛盾等がたくさん出てくる。そして、そういう中で今度は、久間大臣からは、テロ特措法は戦争を支援する法律と。では、イラク特措法は何とおっしゃるんでしょうかね。

 私は、やはりもうちょっと冷静に日本の防衛、安全保障を考えて、自衛隊が本来の任務に沿って十分に活動できるような、国際的にも承認されるような、そういう明確な法的な位置づけ、制度づくりが必要だということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

浜田委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 私は、自衛隊の活動の実態について聞きます。

 先ほど池田先生の方からもありましたが、私の方も、四月二十六日の本委員会で、現在の自衛隊の活動が、回数でも重量でもほぼ九割が多国籍軍の支援になっていると指摘いたしました。

 実態的には安全確保支援活動が中心になっているのではないかという質問をしたのでありますが、久間大臣は、それに対して、人道復興支援活動と安全確保支援活動と両方をパラレルにするためにつくった法律と述べた上で、今後の自衛隊の活動が人道復興支援活動中心になるのか安全確保支援活動中心になるのかについては、その時々でどちらにウエートがかかってくるかということは変わり得る、このように答弁し、先ほどもそういう答弁だったと思いますが、間違いないですね。

久間国務大臣 気持ちとしては、人道復興支援を中心とした活動をもっと積極的にやるようなことになってくれればいいなと思っております。

 ただ、法律上はパラレルでございまして、どちらがふえてどちらが減って、いかぬということにはなっておりません。

赤嶺委員 そうすると、先ほどの質問にもありましたが、今の基本計画は「人道復興支援活動を中心とした対応措置を実施する」、こうなっています。当然、今後の活動については、その時々でどちらかが中心になり得るというわけですから、人道復興支援活動が中心、このように記述されている現在の基本計画の規定、これは変更するんですね。

久間国務大臣 これは、官房長官を初めとして内閣で、全体として、これから先の活動を延長されましたときにどう判断していくかだと思っております。

 ただ、多国籍軍の場合でも、医療活動とかあるいはまた病院の建設を初めとするそういう土木活動とか、こういったのも結構やっているわけでありまして、こういうのは安全確保支援活動とは違って人道復興支援活動というふうにもカウントできるわけでありますから、そういう活動がふえてくると、やはり従来と同じような規定の仕方、基本計画のつくり方、これもあるんじゃないかと思いますが、いずれにしましても、これから先の推移を見ながら、そのときにおいて判断されて作成されるものだと思っております。

赤嶺委員 官房長官、つまり、今の大臣のお話を聞いていても、人道復興支援が中心という基本計画はいずれにしろ改められなければならないという御認識ですか。

山崎政府参考人 ただいま防衛大臣の方からも御答弁申し上げましたように、人道復興支援活動、これは国連に対する支援でございますけれども、そのほかに、国連決議を受けまして、多国籍軍自体も、安全確保支援活動のほかに人道復興支援活動を行っているわけでございます。これはインフラの整備とか医療の支援ということも含むわけでございますけれども、そういうことで、三つ大きな柱があるとして、多国籍軍が安全確保支援活動、人道復興支援活動を行っておりますし、また一つ、国連に対する人道復興支援ということで、政治的な姿勢として当然それは、二つの大きな柱としては人道復興支援活動があるというふうに我々は考えておりますので、中心としてという記述については誤りがないのではないかというふうに考えております。

赤嶺委員 私、この間の委員会の質疑でも、多国籍軍が九割のウエートになっているという指摘をしましたら、いや、多国籍軍も人道復興支援活動をしているんだとおっしゃいましたので、ではそれを確認しているのか、自衛隊が輸送している多国籍軍はそれをしているのかと聞いたら、それは一々確認できないとおっしゃったわけですから、人道復興支援活動が中心という表現が実態をあらわすという担保はどこにもないわけですよ。

 今までは、陸上自衛隊が人道復興支援活動をしているから、人道復興支援活動を中心にと言ってきたわけですよ。当然、今回の基本計画は今の時点に立って検討しなきゃいけないと思うんですが、これは官房長官の仕事、任務でもあると思いますけれども、いかがですか。

塩崎国務大臣 先ほど来、人道復興支援活動を中心にという表現についてお尋ねがあったわけでございますけれども、ここで言う中心というのは、我が国の政策として、人道復興支援を政策的に重視をしていこう、こういうことでこの支援活動を行っていこうということになっているわけでございます。

 先ほど久間大臣からもお話がございましたように、基本計画そのものは、延長させていただいた後に、基本計画の内容について、十分に現地の状況などを踏まえ、また国連あるいは多国籍軍の活動などを踏まえた上で決めていこうということでありますけれども、その際も政策的に人道復興支援活動を重視していこう、こういうことでございます。

赤嶺委員 とんでもない話じゃないですか。二年間法律を延長しようとするわけですよ。延長した後の自衛隊が何をやるかについて言う基本計画で、従来、人道復興支援活動が中心と言ってきた。それは、政府の姿勢としてはそうだと言いながら、実態は違うわけですよ。実態は違うわけでしょう、多国籍軍支援が九割になっているわけですから。

 そういう説明をまともにしないで、基本計画をどうするかということを明確にしないで、法律だけを延長しているというのは通らないんじゃないですか。法律と基本計画は不可分の、一体のものじゃないですか。

久間国務大臣 さっきから言っておりますように、多国籍軍がたくさん乗っているからといって、それは人道復興支援が非常におろそかになっているというわけではないということを先ほど事務方からも答弁させました。

 そういうようなことで、これから先、人道復興支援を中心としてやっていきたいという我が国の政策もありますから、私はこのままでもいいのかなとは思いますけれども、そのウエートがやはりこれから先はだんだん減ってきて、むしろ一般の復興がしてきて、自衛隊が人道復興支援にもう行かなくてもいいというような状況になるのかどうか。

 私は今の計画で何も悪いことはないんじゃないかなという気もしますけれども、それは法律が通ってこれから先の向こう半年間とかあるいは向こう一年間とか、二年間の法律延長でございますけれども、そういうタイムで計画を定めるときに、パラレルに書いてもいいんじゃないかという意見も中には出てくるだろうなと思います。

 そのときはそのときで内閣として決定すればいいわけでありまして、今は、少なくともこれまで法律をつくりまして基本計画をつくってやってきましたときには、人道復興支援が中心に、特に自衛隊が出ていったときはそれが中心だったわけであります。引き揚げても、しかしそれから先、多国籍軍が人道復興支援活動を結構やっておりますから、そういうための多国籍軍の輸送があったとしても、人道復興支援を中心としてという従来からの計画を変える必要はないという判断でこういう決定がされておるわけでありますから、私はそれはそれでいいんじゃないかなと思っております。

赤嶺委員 国連の人道復興支援は、今の治安情勢の悪化によって非常に抑制的になってきました。なかなか国連が人道復興支援を拡大するような状況にない。

 それでは、今アメリカがバグダッドで行っている掃討作戦なるもので本当に治安が安定して人道復興支援活動中心のものができるかといえば、それは、大臣がどう言おうと、全く見通しのないことですよ。今まで、この作戦が終わったら治安が安定するというのがこの四年間繰り返されてきた答弁ですよ。そういう見通しが全くない中で、しかしこれからもパラレルに書いていくんだと。ちょっと変じゃないですか。

久間国務大臣 どうもその辺が、思い込みがちょっと強過ぎるような気がするんですよ。

 アメリカ軍が増派までしてでも安定させようと踏み切ったこと、これについて私は、そこまで決断してやろうとしている、その決意を高く買っているわけですけれども、それはなぜかというと、やはり国連がもう少し人道復興支援あたりもできやすいような、そういう状況を一日も早くつくろう、そういうようなことでやっているわけですから。

 それはそれとして、それが実現するかどうかは、これまたこれから先の推移によりますけれども、そうはならないんだ、治安はますます悪くなるんだ、そういう中で人道復興支援なんてできっこないじゃないか、そう決めつけてしまわれるのはいかがかなと思いますので、この辺はやはり柔軟に、これから先いろいろな展開があるであろう、我々の期待どおり、人道復興支援活動が国連あたりを中心としてもっともっとできるようにしたらいいんじゃないかなという気がします。

 それともう一つは、現在、我が自衛隊の国連職員が減っておりますのは、デンマークが実は輸送関係をやっておりまして、それに国連の職員なんかが乗っている点もございます。しかし、デンマークあたりがいつまでやるのか、これもわからないわけでありまして、そういう意味では、デンマーク等の輸送機が飛ばない場合には、また国連のみんなは我が航空自衛隊の輸送機を使うようになるかもしれません。

 だから、やはり将来のことについては、そういう変化があり得るという柔軟な態度で臨むべきじゃないでしょうか。

赤嶺委員 久間大臣の答弁は、いつも自由自在、柔軟ですから。この間は、アメリカ兵がバグダッドで掃討作戦をしている、あんな乱暴なやり方をするから情勢が悪化するんだ、治安が悪化するんだと言いながら、今、崇高な使命を帯びてバグダッドでアメリカが作戦をしているから安定するんだと。こんなむちゃくちゃな話は通りませんよ。国民への説明にもなっていないですよ。

 私が思い込みどころか、実態を見て、久間大臣の方が都合よく答弁をくるくる変えている。こういうことは許されない、基本計画と法律は一体のものだということを指摘しておきたいと思います。

 それで私、もう一つ、自衛隊が輸送している多国籍軍の人員について聞きたいと思います。

 資料も出しておりますけれども、国連については、昨年九月六日以降本年三月末までの間に、延べ七百六名の人員を輸送したことを明らかにしております。その間に多国籍軍の人員は何名運んだんですか。

山崎政府参考人 お答え申し上げます。

 当委員会でも累次、多国籍軍の人員、物資の輸送について詳細を明らかにせよという御質問がありましたけれども、やはり治安維持という一つの作戦を行っているということが一つの原因でございまして、各国ともその実績を明らかにはしていない。要するに、当然、要員についても国連あるいは多国籍軍の兵士自体を運ぶということは、我が国の自衛隊の航空機は非常に輸送ルートも限られておりますので、そういうことからかなりオペレーションの実態が明らかになるということで、控えさせていただいております。

赤嶺委員 実態を明らかにできないと言っているわけですから、人道復興支援を中心というのは、国民向けの、まさに自衛隊の活動をごまかすものだと私は思うんです。

 きょう私、資料をつくってきたのは、大臣のところにも回っているかと思いますが、ごらんになっていただきたいんですけれども、これは、イラクにおける多国籍軍の航空輸送作戦の実績についてまとめたものであります。実は、米空軍や中央軍のホームページには、エアパワーサマリーという、航空作戦の概要とでもいいましょうか、米軍を初めとして多国籍軍が行った一日の航空作戦の概要をまとめて、毎日報告が届き、そして翌日には公表しているんです。これは、そのホームページの中から、過去一カ月のイラクにおける輸送作戦について抽出してまとめたものであります。

 これによりますと、日本、オーストラリア、韓国、イラクがイラクの自由作戦支援のためにC130輸送機による輸送活動を行っており、毎日の活動を拾っていくと、いつ飛行したのかがわかります。

 米軍については、中央軍全体についてのものですが、一日に何回飛行し、何トンの物資、何名の人員を運んだのか、公表されています。例えばその中から五月六日を拾い出しますと、米国の中央軍は、ソーティーというんですか、往復のことらしいんですけれども、百六十五回。これは、物資の重量が六百九十五トン、人員を二千三百人運んだということが一目瞭然わかるわけですね。

 さっき運用局長は、何か、治安が中心だから、いろいろな任務を帯びているから明らかにできないと言っていたんですが、アメリカは明らかにしているんですよ、何月何日と。米軍自身がどれだけの人員を運んだのか公表しているわけですが、何で日本政府は公表できないんですか。

久間国務大臣 先ほど局長からも言いましたように、各国とも、公表してくれるな、そういうことを言っておるわけでありまして、だから、アメリカ以外の国は、そういうことで自国の運んでいる数字についても公表していない。先生のその資料でも、韓国でもそうですしオーストラリアもそうですけれども、そういうふうなことで、各国とも、また頼んだ国の方も公表してくれるなと言っていますので、それで我々としては公表を控えておるということであります。

赤嶺委員 米国は公表しているんですよ、ホームページで。日本の分まで公表しているんですよ。アメリカは、日本もオーストラリアも韓国もイラクの分も。

 これを大臣見てください。日本の場合どうなっているか。下の方からいきますと、多国籍軍支援のために、四月十三日、十六日、十七日、二十日、二十一日、二十三日、二十四日、二十六日、五月には二日、三日、四日、七日、八日、過去一カ月間で多国籍軍を日本が十三日間飛行したことがわかります。

 米側は、日本が何日何日運んでくれたか、韓国がどうしたか、オーストラリアがどうしたか、公表しているわけですね。恐らく日本の自衛隊は、これ以外に国連支援があると思いますよ、バツ印のところになっているのかどうかわかりませんが。

 私、二十六日の本委員会で、三月以降国連の人員輸送を行っていないのではないかとただしましたけれども、明確な答弁はありませんでした。アメリカは自国の多国籍軍の物資、人員を日本がいつ幾日輸送したか公表しているわけですから、政府が明らかにできないというのは、これは道理が通らないですよね。

 ですから、私は、この際、自衛隊が多国籍軍支援のためにいつ飛行したのか、国連支援のためにいつ飛行したのか、明確にすべきだと思いますが、いかがですか。

山崎政府参考人 まず、御指摘の表につきまして、我が国としては、どの日にフライトをしたか、あるいはしなかったのかという確認については、先ほど来の御答弁にあるとおり、控えさせていただきたいと思います。

 それから、米国につきましても、この注にございますように、これは中央軍全体でございますので、イラクだけではなくて、アフガニスタン、それからアフリカの角というふうに書いてございますので、多分ソマリアにおける作戦の件も含んだ総体的な人員だろうと思いますし、先ほど我が方としても言っていますように、米国の発表しているというのがもし本当であれば、この重量トンなり人員は、どこからどこに、あるいはどういう物資を運んだかについては一切明らかにしていないわけでございまして、趣旨としては私がお答えをしたのと同じものではないかというふうに考えております。

 なお、我が方としては、従来からお答えをしていますように、国連に対しては毎月大体平均して四ないし五回、それで、その四ないし五回を含んで多国籍軍も含めて毎月十七から二十回を輸送しているというふうにお答えを既にしております。

赤嶺委員 中央軍は三つの作戦を今担っていますから、三つの作戦についてこのように公表している。同時に、日本政府が公表をしていない、何月何日多国籍軍の輸送に携わった、韓国が何月何日携わった、これを発表しているわけです。ですから、最小限、日本政府として、何月何日多国籍軍を輸送したか、国連を輸送したか、そういうのは国民に明らかにすべきではありませんか。

久間国務大臣 さっきから何回も言っていますように、まだイラクの治安状況が悪い状況下にあって、国連の方からもとにかく細かいことは言わぬでくれ、また多国籍からもそういうことを言わぬでくれというふうに言われているときに、私たちはそれをつまびらかに、どこからどこまで、何回、何トン、何人運んだというようなことは、要請がある以上はやはりこちらとしても遠慮すべきじゃないでしょうか。

赤嶺委員 もう政府の説明というのは、国民にまともに説明する姿勢はないというのがこれではっきりしたと思いますよ。ですから、基本計画の中に人道復興支援中心と書いても実態が全く離れている。本当に情報公開しないのは、作戦上の安全確保のためではなくて国民に真実を知られるのが嫌だからと指摘されても仕方がないような態度だと私は思います。

 次の質問に移ります。

 イラク戦争についての政府の認識について聞きますが、まず外務省の参考人に確認いたしますけれども、日本政府としては、国際法上イラク戦争は終結したという認識ですか。終結したとすれば、いつの時点で終結したという認識ですか。

奥田政府参考人 イラク戦争が終結したかどうかということに関する認識でございますけれども、戦争とは、一般的に、国際紛争を解決する最後の手段として、二つの国が対等の立場で、国権の発動として武力を行使し合うことを言います。現在の国連憲章下におきまして、安保理の決定や自衛権の行使に基づく軍事行動を別といたしますれば武力行使が一般的に禁止されており、この結果、伝統的な意味での戦争というものは認められる余地はないというのが国際社会に確立した共通の認識であります。

 したがって、御質問のあった戦争の終結といった概念についても、そのままの形で論じるということはできません。米英等による対イラク武力行使は、国際の平和及び安全を回復するという明確な目的のために、武力行使を認める国連憲章第七章のもとで採択された安保理決議六七八、六八七及び一四四一を含む関連安保理決議に合致するものであり、そもそも伝統的な国際法上の意味における戦争には当たりません。

 なお、米英等による対イラク武力行使の結果、二〇〇三年五月一日にはブッシュ大統領による主要な戦闘の終結を宣言する演説が行われました。しかし、サダム・フセイン政権が事実上崩壊し、戦闘が基本的に終了した後、紛争当事者間の終戦合意とか停戦合意があるとは承知しておりません。

 なお、イラク基本法及び国連安保理一五四六に基づきまして、憲法制定や憲法に基づく国民議会の選挙実施等の政治プロセスを経まして、昨年五月にイラク新政府が発足をしたということになっております。

 以上でございます。

赤嶺委員 それじゃ、今の説明を聞いていると、戦争があったのかどうかさえわからぬような話になるんですが、国連安保理決議一五四六に基づいて今多国籍軍が活動しているということなんですけれども、そこでは戦争の終結についてどういう認識を示しているんですか。

奥田政府参考人 今その決議そのものがないのですが、記憶によりますれば、戦争の終結といったことについて、その決議案には書いていないというふうに承知しております。

赤嶺委員 それでは、久間大臣に聞きますけれども、久間大臣は、自衛隊は戦争が終わった後の人道復興支援のためにイラクに行っていると繰り返し説明してきているわけですが、戦争があったのかどうかさえわからぬような国際法上の説明のもとで、戦争が終わった後の人道復興支援という、イラク戦争は終結したとも言えないんじゃないですか。

久間国務大臣 アメリカが武力行使に踏み切ってフセイン政権下のイラクと戦ったわけでありますね。これは、私は、戦争という言葉を今使っちゃいかぬといいますから、これも自衛権の行使としての戦いだ、そういう言い方をしますけれども、いずれにせよ、そういうことで始まったわけです。そして、それが終わりまして、そして、国連が、戦争は終わったけれども後のイラクの復興と安全確保のために各国は協力してくださいよということで、要請を受けて、それの後、法律をつくって我が国は出ていっているわけでありますから。

 だから、戦争が終わった状態で国連からの要請を受けて我が国は出ていったから、戦争が続いている状態の中で我が国が出ていったわけではない。しかしながら、治安状況が非常に悪いと、やはりそこは非常に誤解されるので、戦闘地域を避けて、非戦闘地域でやりますよ、そういう縛りをつくって出ていったということであります。

赤嶺委員 国連決議には戦争が終わったと書いていないというのがさっきの外務省の説明だったんですよ。それを勝手に戦争が終わったと。むしろ、今バグダッドでは、多国籍軍の空爆も行われるなど大規模戦争に逆戻りしているような状態なんですよ。だから、今自衛隊がイラクでやるのは戦争が終わった後の人道復興支援活動なんかではないということも指摘しておきたいと思います。

 それで、もう時間がありませんで、最後の一問ですが、今さっき飛び込んできたニュースなので、ちょっと伺いたいんですけれども、沖縄テレビのきょうの昼の報道で、海上自衛隊の掃海母艦「ぶんご」が、キャンプ・シュワブ周辺海域での環境調査の機材設置作業を支援するため、横須賀港から沖縄近海に向けて出港した、このように伝えております。

 これは事実ですか。そして、目的は何ですか。

山崎政府参考人 私自身、まだ、恐縮でございますが、報告を受けておりませんので、「ぶんご」の個別具体的な活動については承知をしておりません。

赤嶺委員 ちょっと局長、今少し答弁を聞き漏らしたので、もう一度答弁してくれますか。

山崎政府参考人 私自身も今初めて委員の御指摘を受けて知った次第でございますので、「ぶんご」の個別具体的な活動については今のところ把握をしておりません。恐縮でございます。

赤嶺委員 自衛隊がキャンプ・シュワブのために出かけるということはあり得ることなんですか。大臣、いかがですか。

久間国務大臣 それは、ないことはないですね。自衛隊というのは、あらゆることに対応して、それが国民のためになる場合に、法に基づいて可能なことについてはやれるわけですから、ないことはないというふうにしか言えません。

    〔委員長退席、渡海委員長代理着席〕

赤嶺委員 自衛隊が出かけることがある場合というのは、どんな目的だったら可能なんですか。また、それはどんな法的根拠があるんですか。

久間国務大臣 自衛隊といえども、これは国の機関でありますから、官庁間協力でやることもございますし、いろいろな場合があります。あるいは調査活動をやる場合もございますし、あるいはまた情報収集活動を行うこともございますから、いろいろな場合がありますので、その具体的な状況を見てみないと、それは一概に言えないわけであります。例えば札幌の雪祭り、これは皆さん方からも非常に支持されてやっていますけれども、これはやはりそういうような官庁間協力の一環じゃないか。地方自治体から要請されてやる、そういう場合でもございますので、法律上はどこでやるかとよく言われますけれども、そういういろいろな場合がございます。

赤嶺委員 今キャンプ・シュワブでやっているのは、防衛施設庁の違法な環境調査であります。それ自身が環境アセス法に違反している行為であるのに、それに対して、もし沖縄テレビ報道が事実であれば、自衛隊の艦船までキャンプ・シュワブに派遣する、これは官庁間協力などという性格のものではありません。軍艦まで沖縄に押し寄せる、これが事実であればとんでもないやり方だ、また、今の大臣の答弁も、あり得るということでしたので、こんなのは許せないというのを指摘しまして、私の質問を終わります。

渡海委員長代理 次に、長島昭久君。

長島(昭)委員 民主党の長島昭久です。

 官房長官、記者会見がおありということで、どうぞ。そのかわり、早く帰ってきていただきたいと思います。

 これはイラク特措法の延長の議論の委員会でありますが、その前に、先ほど我が党の池田委員も質疑をいたしましたけれども、防衛大臣の発言についての質疑のフォローアップをしていきたいというふうに思います。

 私は、防衛大臣がおっしゃったことはかなり正確なのではないかというふうに思っています。これがまた久間防衛大臣のある意味で持ち味でありまして、そこが物議を醸してしまっているところなんですが、私は別に揚げ足取りをしようとして質問をいたしません。ですから、考えておられるところを率直に御答弁いただきたいというふうに思うんですが、そもそもテロとの闘いというのは何だったのか、ここに思いをはせなければならないと思うんです。

 二〇〇一年の九月十一日に未曾有の出来事が起こった。結果的には三千人でしたけれども、当初は五千人と言われていました。日本国民も二十四人入っていました。こういうことが起こった。実は、突然起こったわけではありませんね。もうその数年前から、ケニアそれからタンザニアのアメリカ大使館が爆破をされる、あるいはモスクワにおける爆弾テロが頻発する。その都度その都度安保理の決議が出て、これを何とかしなければいけないと。そのケニアとタンザニアについてはクリントン政権のときでした。このときは、やはり、タリバンにかくまわれているオサマ・ビンラディンのまさに兵力であるアルカイダに対して空爆を行っていますね。

 ですから、アメリカも、もう九〇年代の終盤から、いよいよ二十一世紀は平和の世紀になるかと思ったらテロの世紀になるかもしれないということで、国全体で身構えていた。そこに、事もあろうにニューヨークとワシントンが攻撃を受けて、まさに世界が驚愕をしたわけです。

    〔渡海委員長代理退席、委員長着席〕

 そうなりますと、今まで積み上げてきた我が国の法体系も多少かすんでしまうこともやむを得ないと思っているんです。これはもう与党も野党も、当時、本当に、この未曾有の事態に対して我が国の国民の生命と安全と財産を守るためにどういうことをすべきかということで、私は当時まだ国会議員になっていませんでしたけれども、恐らく相当真剣な議論が闘わされたんだというふうに思っています。そのことをまさに、恐らく当時は筆頭理事をされていたと思うんですけれども、そういう立場でつぶさにごらんになっていたからこそ出てくる答弁だったというふうに私は思うので、私は、そう簡単に撤回したり訂正したり削除したりということをしてほしくないんですね。おっしゃったことの意味というのは非常に重いので、そこから、それをどういうふうに国民の皆さんに説明していくかということをぜひ久間大臣には考えていただきたいんです。

 きょうは、ここはせっかくの機会ですから、私も委員でないのに代打で出させていただきましたので、これは与野党でぜひ考えていきたい、きょうは民主党の提出者の皆さんも来ておられるので、ぜひ真剣にもう一度考え直していきたい、こう思うんです。

 九月十一日、テロが起こった。九月十一日に起こって、十二日には安保理の決議が出ました。これが決議一三六八。この決議は、もう先ほど来何度も出ておりますけれども、まず、テロリスト活動によって引き起こされた事態、これは国際の平和と安全に対する脅威だというふうに認定をして、「あらゆる手段を用いて闘うことを決意し、」というふうに国連安保理で決められています。あらゆる手段というのは、当然のことながら、軍事的手段も恐らく含むんでしょう。それと同時に、「憲章に従って、個別的又は集団的自衛の固有の権利を認識し、」と言っていますね。これに基づいて米英軍が動き出すわけです。

 あるいはNATOも、その後引き続いて、少し遅くなりますが十月の二日、北大西洋条約の第五条、集団的自衛権の行使というものを、冷戦時代にも適用しなかったこの条項を初めて適用して、アメリカとサイド・バイ・サイドで闘う、こういう決意をしました。

 それに先立つ九月十四日に、オーストラリアはいち早くANZUS条約に基づいて集団的自衛権の発動を決めているんです。

 日本が普通の国であったら、恐らく、日本国民も当時犠牲になっておりますから、集団的自衛権の行使ということでこれに続いたんでしょう。しかし、日本の場合は、御承知のとおり憲法の制約がある、さあどうするかというところだったんですが、日本も意外と早くて、九月の十九日、十一日から一週間、十日足らずで小泉総理の記者会見が行われ、当面の措置七項目が発表されました。

 その当面の措置七項目の第一項目がこうです。安保理決議第一三六八号において国際の平和及び安全に対する脅威と認められた本件テロ、九・一一テロに関連して措置をとる米軍等に対して、これは恐らく、米軍及び英軍、多国籍軍、こういうことを念頭に置いているんでしょう。米軍等に対して、医療、輸送、補給等の支援活動を実施する目的で、自衛隊を派遣するため所要の措置を早急に講ずる。

 これは恐らく、普通の事態であれば、この前も石破理事も質疑の中でおっしゃっていましたけれども、我が国の軍事組織である自衛隊というものを海外に出すということについては相当慎重でなければならないというのが、我々の、今でもそういう立場であるし、戦後の、国会でもあるいは世間でも、ずっとそういうことが信じられてきた。

 しかし、この未曾有の事態に直面をして世界じゅうが動き出したところで、小泉総理は、つまりこれは当時の閣議決定の後ですからね、十二日に政府対処方針というのが閣議決定で示されていますから。その後、相当法律的な議論も恐らく政府部内でなされたんでしょう。その結果として、自衛隊派遣を含めて米英軍等に対する所要の措置を早急に講ずる、この決定があったんですね。この決定があって、しかし、既存の法律を見たときに、これをオーソライズするものが一つもなかった。そこでつくられたのがこのテロ対策特別措置法だ、こういうことになったんだと思う。

 つまりは、ある種自衛隊派遣を直接容認するような国連決議はなかった。ただし、テロというのは国際の平和と安全に対する脅威だということは認定した。そして、国際社会全体でテロに対して立ち向かう努力をする。二つ言っていますね。これらテロ攻撃の実行者、組織者及び支援者を法に照らして裁くために、すべての国に対して共同して迅速に取り組むことを求める。それからもう一点、安保理決議一二六九号、これはケニア、タンザニアに対するテロがあった直後の決議でありますが、それを初めとする国連安保理決議の完全な実施によってテロ行為を防止し、抑圧するため、一層の努力をするよう国際社会に求める。

 この二つの求めに応じて、日本政府が考えて発表したのが七項目の措置、その冒頭に今申し上げたような自衛隊の派遣を含む措置があった、こういうことであります。

 さあ、このことによってテロ特別措置法がつくられるわけですが、その前に、十月七日、米英軍がアフガニスタン攻撃を開始します。これは、オペレーション・エンデュアリング・フリーダム、OEFと呼ばれているオペレーションでありますが、十一月十三日には首都カブールを制圧するという非常に迅速な軍事活動、軍事作戦が行われた。当時アメリカでは、ウオー・オン・テラーと言っていましたね。つまり、テロとの闘い、ウオーなんですよ。戦争なんです。

 ですから、防衛大臣が先ほど我が党の同僚議員に相当批判を受けておられましたが、まさにアフガニスタン戦争と呼んでいますからね。アフガニスタン戦争をやっている米英軍に対する支援の措置を認めたわけですから、これはまさしく戦争に対する支援の行動であるということが言えるんじゃないですか。

 もう一度、今私が少し助け船を出させていただきましたので、御自身の御発言ですから、自信を持って率直におっしゃっていただきたいと思います。

久間国務大臣 今おっしゃられたのは、まさにそのとおりの動きでございました。やはりこれは、我が国がもしこういう攻撃を受けたときに、我が国はやれるんだろうか、何か反撃ができるんだろうか。我が国だったら、憲法の制約からできないじゃないか。そうなってくると、国連がこういう決議をして、そしてアメリカ、イギリスがそういう形でアフガンを攻撃して、テロを撲滅する、そういうことをやろうとするなら、我が国としてはやはりこれは支援すべきではないか、そういう意見については、これは与野党の垣根を越えて一致した動きでございました。

 そういうことで、私は、そういう意味ではテロとの闘いに対する支援であるというような、そういう意味で、先ほど言いましたように、このテロ特措法という法律はちょっと今までの法律とは異質なんですよということを強調したかったわけであります。

 それを、戦争の支援のための法律だと言いますと、今度は戦争支援法という言葉がひとり歩きして非常に誤解を受けるし、ウオーと英語で言えばいいのかもしれませんけれども、なかなかやはり国際法上は、戦争というのは、自衛権の行使というようなことはあったとしても、それも違法性が阻却されているにすぎないのであって、戦争という言葉は言っちゃいかぬ、そういうような国際風潮の中では使うべきでなかったんじゃないかなと思ったので、先ほど言ったように、言葉を削除していただきたいということを申し上げたわけであります。

 私の気持ちとしては、今言ったように、そういうテロとの闘いをここで乗り切らなかったならば、日本としては後々大変な、自分がもしやられたときに太刀打ちできないぞというような思いの中でこの支援策をやろうというふうにみんな一致結束して向かったということについては、間違いございません。

長島(昭)委員 私たちは、イラク戦争については、つまりイラクの開戦の判断については相当程度誤ったというふうな認識を持っているんです。ですから、当初からイラク戦争については反対を鮮明にしてきたんです。それはそれ、それはお互い政府とは立場が違うかもしれませんが、そういう立場。今、そちらの方が正しいということがアメリカの国内でも言われている状況ですけれども。

 このアフガニスタンでの戦闘というのは、イラク戦争にもついてこられなかったフランスやドイツも含めて、まさに国際社会が一致して、ここはやはりテロの根絶のために、根元を絶つために、あのアルカイダという恐るべき組織をかくまっているタリバン政権というものをある種打倒しなければいけないんだということで一致していたんですね。まさにそういう戦争なんですよ。だから、中身が全然違うんですね。中身が違う。

 だから、その中身をやはりもう少しきちんと議論しないで戦争と言うと、何となく大それたイメージがあって、戦争協力法なんと言うとどこかの党に選挙に利用されるんじゃないかとか、そういう話でそれを撤回するのでは、国会の議論というのが実はなかなか深まらない。つまり、この言葉は言っちゃいけない、あの言葉も言っちゃいけない、これでは本来の議論ができない。言葉の遊びはそろそろやめていかなければいけないと昔私は石破大臣にも申し上げて、不評を買ったところがあるんですけれども。

 それで、申し上げたいのは、そういうことに対する協力、これはもう一回確認したいんですけれども、戦争と呼ばないということだったらそれでも結構です。しかし、紛れもなく米英の自衛権の行使、米英軍による自衛権の行使としての戦闘活動に対する、これは最終的にやったのは補給ですから、インド洋で今もやっていますけれども、補給活動。

 二つ質問します。

 これは米英軍の自衛権行使に対する支援ですか、まずこれが一つ。それから、その支援の形態も、軍事的支援ですか。この二つ、お答えください。

久間国務大臣 軍に対する支援であるという意味では、軍事的支援だと言えると思います。

 それと、米英軍だけではなくて、米英軍等にということで、そのほかの多国籍軍に、参加した多国籍軍に対しても補給活動を行っておりますから、米英だけに限定したわけではありません。

長島(昭)委員 軍に対する支援だと。そうすると、形態としては軍事的支援ですよね。もう一回お願いします。

久間国務大臣 それは、軍事的支援だと思います。

長島(昭)委員 ここなんですね、ポイントの第一は。つまり、これを法理論的にどういうふうに解釈するか、私もまだ迷いがあるんですけれども、自衛権を行使している軍事行動に対して支援を与える行為が、トータルとして自衛権の集団的行使というか共同行使に当たらないのか当たるのか。ここはどうお考えですか。

久間国務大臣 そこのところが、私はかねがね言っているんですけれども、集団的自衛権という言葉が集団の自衛権かのような言葉として歩いている、そこが非常に誤解を生んでいるんじゃないかと。集団的自衛権であろうと個別的自衛権であろうと、国連憲章にあるように、個別的または集団的な自衛のための固有の権利、そういう規定をほとんどはしているのに、集団的自衛権と個別的自衛権と二つあるかのような言い方をしますと、集団的自衛権というのはある種の集団のための自衛権だというようなとらわれ方になってしまうことだってあるんじゃないかということで、この概念規定の仕方について、私は、かねがね自分自身はいろいろ疑問を持っているわけであります。

 だから、そういう意味で、今おっしゃられたのに的確に私は答弁することはできないかもしれません。

長島(昭)委員 いや、実は大臣、これは民主党の考え方とかなり似通っているんです、大臣の考え方は。私たちも、個別的、集団的という今までの神学論争はもう超克しよう、乗り越えよう、自衛権というものの性質に着目しよう、こう言って議論を今やっているところなんですね。

 そこでお尋ねしたいのは、個別でも集団でもいいでしょう、とにかく米英軍が自衛権を行使している、その自衛権を行使している軍事活動を支援する行為というのは自衛権の行使とは違うんですか。

久間国務大臣 それを、だから、自衛権の行使とかそういうような言い方でそれを認定するのではなくて、そういう自衛権を行使している軍事的活動に我が国としては憲法上許される範囲で何ができるかというようなことからあの法律をつくって、そしてやれる範囲でやりましょうと。

 しかしながら、憲法上我が国は武力行使を他国に対してやってはならないということがありますから、自衛権を行使している、そういう米英等ですかね、米英軍に対してそれが一体化にならないような配慮をしながら法律をつくって、その中でやりましょうというようなことから、あの法律をつくるときも、あえて戦闘地域でないところでやりましょうという形で区域も設営したわけでありまして、そういう点では、自衛権の行使として闘っている、そういう軍事行動に対して支援をするという、そういうことをやったわけであります。

長島(昭)委員 ここがやはり一般の国民の皆さんもわかりづらいところなんだろうと思うんですね。自衛権の行使、我が国も自衛権の行使で参加すると言えれば、これが一番すっきりしていると思うんです、論理的には。そう思いませんか。

久間国務大臣 いや、我が国が攻撃されているわけでございませんから、我が国の自衛権の行使には少し無理があるんじゃないかなと思うわけです。

 例えば、アメリカがニカラグアと、あるいはベトナムと戦っているときに、日本がそれを支援するのは日本の自衛権の行使かと言われますと、私は、同盟関係を結んでいたとしても、日本の存続に危うさが伴わないような状況で、それが自衛権の行使と言えるのかどうか。

 だから、そこはちょっと、自衛権の行使と言えればさっといけるじゃないかと言われますけれども、そういう論理構成は現在の憲法下ではできないんじゃないかなと思っております。

長島(昭)委員 そうなんですよ。現在の憲法下ではなかなか難しい。だから政府も苦労してロジックを組まれたわけですね。(発言する者あり)いやいや、それが私は事実だと思いますよ。ですから、非常にすっきりはしないんだけれども、すっきりはしないんだけれども、これを自衛権で、オーストラリアやイギリスやNATO諸国のように自衛権という概念でとらえて、そして参加することができれば、一番それはすっきりする。

 しかし、我が国の場合は、憲法上の制約があって、自衛権という概念ではこの行動を正当化することができないので、あえて武力行使と一体化をしないとか、戦闘地域で活動しないというような、そういうある種ハードル、つい立てを置いて、そして、しかし、ここがわかりにくいところですけれども、軍事的な支援を行う、こういう苦しいロジックを展開していて……(発言する者あり)いや、苦しくないですか。民主党の提出者にもその後お尋ねしたいんですけれども。どうぞ。

久間国務大臣 軍事的な行使と今言われましたので……(長島(昭)委員「支援、支援」と呼ぶ)いや、軍事的な支援と言われましたので、私がさっき言った言葉でちょっと誤解されていればいけないなと思ったのは、軍事的なじゃなくて、軍事上のですね、軍事活動をする米英軍を初めとする、そういったところに支援をするという意味で、これを、だから軍事上のと言いますかね、何かそういうニュアンスが、軍事的な支援と言ってしまいますと、軍事的なアタックを、それを自分がやるかのようにとられたら、そこはちょっと誤解を受けますので、そこはみずからの制約としてできないという前提がございますから、軍事的な行為はできないという、そこのところのニュアンスを、私の表現の仕方がまずいのかもしれませんが、軍事上のといいますか、軍事的な活動をしているそういうような米英軍等に支援をするという、そういうことをやっておりますということでございますので。

浜田委員長 いいですか、先ほどからちょっと小松国際法局長が手を挙げておりますので。

小松政府参考人 恐縮でございます。

 委員の御質問の前提として、アフガニスタンに関連をして、米英軍等が自衛権を行使しているという御質問の前提がございましたけれども、もちろん、九・一一の直後にタリバン政権を放逐するために自衛権を行使したということはございます。

 ただ、その後の状況を見ますと、まず、アフガニスタン国内で行われているいろいろな活動、それから、今委員の御質問にもございました洋上における活動、その双方があるわけでございますが、まず、アフガニスタン国内において行われている活動は、本来でございますれば、領域国でございますカルザイ政権の政府として行うべき治安維持のための活動で、これを力が足りないために依頼をして、同意のもとに米英軍等が活動しているというのが基本的な性格であるというふうに考えております。

 それから、洋上の活動でございますけれども、これも自衛権の行使として説明をしなければならないものではないというふうに私ども理解をしております。

長島(昭)委員 小松局長、いいかげんな答弁をしていただいては困ります。

 今おっしゃった治安の問題とかというのは、例えば、十二月二十日、国連安保理で決議一三八六が採決されました。国際治安支援部隊、ISAFが設立をされた。そういうことでしょう。

 このテロ特措法をつくった段階では、まだ米英軍は自衛の戦争をしているんですよ、アフガニスタンで。十月七日から始まったんですから。十月七日から始まって、タリバンとの闘いをやっている、その最中の十月二十九日に法律が可決しているんですよ。そして十二月にある程度暫定政権が動き始めて、治安を何とか安定化させなきゃいけない、それに向けて支援をしているのは、今小松局長がおっしゃったとおりですけれども、その前に自衛隊は派遣をされているんですよ。十一月三十日に国会で承認され、十二月二日には補給艦がもう既にインド洋で補給を始めているんですよ。この補給を始めている対象は、まさにテロとの闘いをアフガニスタンでやっている、自衛権の行使としての軍事活動に対する支援じゃないですか。

 そんなところを別にわざわざ隠して言うことはないんですよ。そこについて私は異論を唱えているわけじゃないんですよ。今のは本当にいいかげんな答弁ですよ。

小松政府参考人 恐縮でございます。

 もちろん、今おっしゃいましたように、タリバン政権を放逐するために武力を行使した、この根拠が自衛権であるということは私も否定しているわけではございません。

 ただ、海上におけるOEF・MIOの活動につきましては、大量破壊兵器でございますとか麻薬でございますとか、いろいろなものの拡散を防止しようということで協力をしつつやっているということでございまして、基本的には、これは旗国の同意を得て行うと言っているということは、これはアメリカも説明しているところでございまして、武力の行使として自衛権を行使しているということとは性格が基本的には異なると思っております。

長島(昭)委員 局長、本当に僣越に申し上げますけれども、今のは後知恵なんです。ですから、時系列を追って見てください。国連決議がちゃんとあって、ISAFがもっと早く立ち上がっていて、そういう安定化に向けた努力が先に始まっていて、その後この法律ができていれば、今の説明でばっちりなんですよ。それで私も納得しますよ。そうじゃないんですよ。

 とにかくそういう状態じゃなかったんです。そんな安定した国際情勢じゃなかった。テロがあって、みんなある意味で驚愕してしまった、そういう状況の中で何とかしなきゃいけないということで、まず七項目の措置が決まって、そこから動き出しているんです。局長、それはぜひ御認識をいただきたいと思います。

 今のやりとりを聞いていただいて……。

 もう一点、ちょっと確認を。さっきこれも防衛大臣にはぐらかされそうになったので一つ申し上げますと、軍事的支援ではないと。軍事上の支援だけれどもどうとか、ちょっと歯切れが悪かったんですけれども、これは今、小松局長がおっしゃったように、OEFの一環ですよね、洋上の給油活動というのは。そして、OEFというのは、まさにミリタリーオペレーションですよね。ミリタリーオペレーションの一部を構成する、自衛隊がわざわざ行っているわけですから、日本の軍隊が行ってそこで協力をしているんですから、これはまさしく軍事上の、つまり軍事的な支援。ここは別に、何か口ごもってしまうことではないと思うんですけれども。そこは一応指摘をさせていただきます。

 ぜひ法案提出者にお尋ねをしたいのは、今のやりとりを聞いていて、やはり、私のこれは個人的な意見ですけれども、個別とか集団とかは別にして、自衛権で説明ができれば、恐らくこのことはかなりすっきりとした論理でいけるんでしょう。しかし、そういう我々の法的環境ではない。しかし、テロがあって、そして国際社会もある程度ついてくる形でアフガンでの戦争が行われて、これに対して日本が何かしなければならない、こういう状況の中で、今ある、今あるというのはつまり国連決議一三六八ですけれども、この一三六八に基づいて、我が国のある種法的な考え方からいってどういうふうに考えるのが自衛隊を派遣する際に一番すっきりする論理になるのか、そのことも踏まえて御答弁いただきたいと思います。

原口議員 お答えいたします。

 今の委員の御指摘のとおり、現在のアフガニスタンにおけるオペレーションは一体何なのか。それは、国連決議に基づく自衛権の行使として米軍は行っている。そして、NATO軍は集団的自衛権の行使としてその活動をやっている。さすれば、我が自衛隊の活動は何なのか。それは、まさに委員が御指摘のように、洋上の活動であるにせよ、これは軍事的な活動である。とすると、久間発言、久間防衛大臣の発言の問題性がここでやはり明らかになると思います。

 私たちは、戦争という言葉をお使いになったからそれがいけないということを言っているんじゃありません。自衛権の発動としての戦争、この戦争は、違法であるけれども違法性が阻却をされている。では、いつから我が国は他国の自衛権の行使を支援できるようになったのか、どのような法的な枠組みでそれを支援しているのか、まさに戦争を支援しているその根拠は何なのか。

 私は、これが軍事上の措置であるとしたら、まさに不朽の自由作戦を支援する集団的自衛権の行使を我が国も行っている、その疑いが強いのではないか。そのことを言えないから、これもイラクのときと同じように、法的なフィクションとしていわゆる非戦闘地域というものを設けて、そして武力行使と一体とならないというトートロジーをつくっている、法的なフィクションをつくっているにすぎないのではないか、このように考えるわけでございます。

長島(昭)委員 私もそういう認識なんです、首をかしげておられますけれども。ですから、説明の仕方が何となくわかりづらくなってしまうんですよ。

 一つ申し上げますと、恐らくテロ特措法が下敷きにしたであろう法律がその前にできているんですね。それは周辺事態法です。周辺事態法で、これも要するに、特定の場所を言っちゃいけないんですけれども、日本の周辺で、放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るようなおそれのあるような事態、こういう場合はどこかで戦争が起こっているんでしょう、戦闘状態が。そういう状態の中でオペレーションをやっているアメリカ軍に対する後方支援をやるというのが周辺事態法ですよね。

 この枠組みと同じことを、距離は全然違いますけれども、インド洋というかなり離れた距離になりましたが、基本的には同じような法理論的な枠組みで、自衛隊は、今度は米軍という対象ではなくて多国籍軍という対象ですけれども、多国籍軍に対して後方支援活動を行っている、こういうロジックじゃないんですか。

久間国務大臣 いや、似ていますけれども、若干違うんです。

 というのは、周辺事態法のときは、国連決議がなくてもやれるというような、そういう前提になっております。ところが、今の場合は、国連も決議をして、そして米英軍も自衛権に基づいてやっている。そして我が国も、テロリズムを撲滅しなければならないという共通意思を持って、しかし、我が国は憲法上の制約があるからやれる限度がある。そういう中でどこまでやれるかという法律をつくろうということで、これは結果的には民主党さんも最後は反対になったんですけれども、法律をつくるそれまでの過程においては、一生懸命議論を一緒にやって、ほとんど合意を得ておったわけですね。

 最後の段階で、事前に国会承認を得るか得ないかということで、最後は、もうぎりぎりのときに、陸上の輸送をやめよう、そのかわり、とにかく事前承認というのは、アフガンのこの問題のために法律をつくるんだから、それで国会承認と一緒じゃないか、そういうようなことから、我が方は要らないんじゃないかといって、それでトップ同士の、小泉総理とおたくの党首と最後に会ってもらってこれは決めようということで、そこで決裂して賛成、反対が分かれてしまったわけでございますけれども、中身を組み立てるについては、今私が言ったような論理の中でほとんど合意しておったというのも事実でございます。

長島(昭)委員 大臣、確かに大臣の今の御説明は私も納得できる内容なんです。

 ただ、軍事的支援を行う、つまり武力の行使はしないけれども後方地域支援活動の中で軍事的支援を行うという、その形態そのものは周辺事態法と同じですよね。パラレルで論じることができる。そこはちょっと確認しておきたいと思います。提出者。

原口議員 大臣は独特のレトリックで民主党のことをおっしゃいますけれども、私たちは、ある一国の自衛権の行使を軍事上支援できるという法律を予定していたのでは断じてありません。

 先ほど国連憲章のお話をしましたけれども、国連憲章で戦争の違法性が阻却される事由は、長島委員御存じのように二つだけですね。一つは自衛権の行使、集団であろうが個別であろうが。もう一つは集団安全保障であります。まさに国連決議に基づく集団安全保障の枠組みの中で、そこで日本が何ができるかという話を私たちは議論していたわけで、他国の自衛権の行使を日本がインド洋に行ってまでも軍事的に支援ができる、集団的自衛権を行使する、こんなことを考えていたのではありませんので、まさに一国の戦争支援法を私たちがつくっていた、私たちも同じように考えていたと誤解をしておられる大臣には、ぜひ誤解を解いていただきたい、このように思います。

長島(昭)委員 その上で、久間大臣、久間大臣は、この種の活動、つまりテロ特措法に盛り込まれている支援活動を含めた一般法、恒久法をつくることには慎重なお立場をずっと繰り返してこられました。それは私も認識をしているところなんですね。

 ちなみに、自民党の石破私案によると、このテロ特措法に盛り込まれるような内容も含めて一般法をつくるべきだと。私は、実は自分の立場はまだはっきりしておりませんで、久間大臣の立場と石破筆頭の立場の間をうろうろしているところなのでありますが、というのは、これは何かというと、これを一般化することに対するある種のちゅうちょというのはやはりあるんです。

 これはもう一度久間大臣に説明をしていただきたいんですけれども、この種の活動が一般的な法律に盛り込まれ、その都度基本計画を国会で承認するだけでは少し行き過ぎではないか、そういう認識を久間大臣がお持ちだと思うんですが、その辺の御説明をいただきたいと思います。

久間国務大臣 もし一般法でつくれれば、私は何もそれに反対しているわけじゃありません。

 しかしながら、テロ特措法というのは、先ほどから話があっておりますように、今までの自衛隊が海外に出ていった活動の中では非常に異質なものであるから、これをひっくるめた形で法律をつくるというのは立法技術的にも非常に難しいんじゃないかな、憲法九条との関係もやはりかなり整理が難しいんじゃないかなと。

 あのテロ特措法のときは、これはもう、よし、やるべきだという形で、ほとんどみんながわっとなってやった雰囲気の中でつくられましたからあれですけれども、これをやはり一般法としてやろうとすると、国内世論が果たしてそこまで結束するのかな、そういう思いがありますから、私は、一般法を否定するわけじゃございませんけれども、一般法をつくる場合にはどういう形がいいのかなという思いを持つと同時に、慎重にやってもらいたいという思いがあるわけで、決して反対じゃございません。

 それと、そのときに、法律はつくっておいて、ただ、出ていくことについて国会で承認を得ればいい、そういうことも私は一つの方法だろうとは思います。しかしながら、雰囲気が高まったときに出るべきでないと反対をするのが、日本の世論というのは怖い点もありますから、そこはひとつ慎重に判断しながら、冷静なときに法律をきちんとつくった方がいい、そういうことも含めてこれから先の次世代を担う人たちにはまた検討していただきたいという思いがあって、私はあえて慎重論を言っているわけであります。

長島(昭)委員 慎重論は慎重論として私も承りました。

 ただ、テロというのは、周辺事態法を日本の国がつくっていた時期までは、まさかああいう形でテロ攻撃を我が国が受けるとは、我が国はまだ受けたわけではありませんけれども、しかし地下鉄サリン事件なんというのはまさにテロだと思いますけれども、そういうことは想定していなかった。ある種古典的な、伝統的な形の脅威が差し迫ってきた場合にどうするか、ただ我が国だけの自衛のことだけ考えているだけで十分なのか、こういう議論だったと思うんですけれども、二〇〇一年の九・一一以降は、このテロの脅威というのは、ある学者によると、空間横断的、こう言うんですね。つまり、海の向こうで起こった出来事だけれども、しかしあす我が国を直撃するかもしれない、こういう脅威であると。

 したがって、そういう脅威に対するある種の対応措置というものはあらかじめ考えておかなければならない、私はこういう観点ですから、特措法ではなく、その部分も一般法に盛り込むべきではないだろうかという思いもある一方、今防衛大臣がおっしゃったような慎重論もあって、先ほどから申し上げているように、二つの説の間をうろうろしているわけであります。

 これは、これから一般法をつくっていくことについては我が党も、民主党も積極的な考え方を今持っておりまして、それについて、その内容をどうするかについては、今の久間大臣の慎重論も踏まえて、あるいは石破元大臣の積極論も踏まえて、我々、大いにこの国会で一般法制定のため議論していきたいと思うんですが、一般法についての、民主党の提出者の方から、民主党の考え方を含めて御答弁いただきたいと思います。

原口議員 委員が御指摘のように、これは真正面から議論をしていきたいと思います。

 ただ、石破筆頭と久間大臣の間をうろうろしているとおっしゃいましたが、それはかなり危険なことであるというふうに思います。ここに、イラクの特措法に基づく航空自衛隊の支援措置の情報開示を求めた結果がありますが、全部黒塗りですよ、長島委員。これで本当に私たちがシビリアンコントロールを果たすことができるのか。

 一般法の前提としては、やはり情報開示と、それに対して文民統制がきっちりついているということが一番大事なことではないか。そのことが前提として語られるべきで、今のような状況の中で一般法ができるとすると、先ほど久間大臣がお話しになったように、世論の動きやさまざまなファッショ的なものに対してどのように対抗できるのか、あるいは国会がしっかりとそれをチェックできるのか、ここのところが大きな論点になる、このように考えております。

長島(昭)委員 さすが原口さんだと思います。おっしゃるとおりです。

 私、間をうろうろというのは、つまりは、国連の決議があるかどうかとか、あるいはどこまで我が国は自衛隊によって海外でそういう平和協力活動ができるか、そういうオプションについてこの積極論、慎重論の間に自分はいる、こういう説明です。

 しかし、その大前提として、国会の議論が、今おっしゃったような情報開示の現状で、基本計画の承認にせよ法律の可決にせよ、それの前提となる議論が今の状況で十分深まっているかというと、それは全くそうではないと思います。私も、国会に初めて上がってきてイラク特措法の議論に加わったときに、一番フラストレーションを感じたのはその点です。

 恐らく政府の皆さんは、それぞれ秘密の縛りがかかっていますから、こんな衆人環視のところで全部べらべらしゃべれない。片や政治家は、この委員会室から一歩出れば、記者が来れば何でもしゃべる。こんな状況の中でおちおち本当の情報も流せませんよというのが恐らく政府の立場だと思います。

 そこで、私は常々申し上げているんですけれども、国会の秘密会の制度、これはもう欧米には十分普及している制度で、それで民主主義が破壊されているとは仄聞しません。そういう意味で、秘密会の制度をきちんと、単なる憲法上のお題目ではなくて、この国会の運営上、特に国家安全保障に関する問題についての秘密会の制度というものをこれからやはり整備していって、その上で一般法の議論を大いに闘わせていきたい、こんなふうに思っておりますので、ぜひ与野党間で大いに議論していきたいというふうに思います。

 次に、イラクの現状についてに議論を移していきたいというふうに思うんです。

 イラクの現状は大変深刻であります。私が申し上げるまでもなく、米軍、米兵の死者も恐らく三千三百人ぐらいにもう既に達していると思います。一月で百人以上の方が亡くなっている、こういう状況で、私もワシントンに連休中行ってまいりましたけれども、本当に深刻な国内状況でもあり、民主党が議会で多数をとりましたので、民主党から撤退論が相当出てきている、こういう状況であります。

 そういう状況の中で、一月十日にブッシュ大統領によってイラクの新政策が発表されました。そして、新しい作戦が、増派という形で、二万人以上増派して、バグダッドを中心とするテロリスト掃討作戦、米兵とイラク兵合わせて九万人というすさまじい兵力を投入して、今、大掃討作戦をやって何とか治安を鎮静化させよう、こういう努力をしているんです。

 四月の二十日にブッシュ大統領が、治安作戦の効果について判断を下すのは時期尚早であるという、これはぎりぎりの表現ですけれども、必ずしもうまくいっていないということの証左だと思うんですが、今、外務大臣、現状のバグダッドを中心にした情勢、一月十日の新政策が打ち出された後のアメリカの新しい作戦というのは功を奏しているというふうにお考えなのかどうなのか、この辺のところの現状認識を伺いたいと思います。

麻生国務大臣 よく言われているところで、もう長島先生御存じのとおりですが、イラクの中で一番上と言われます北部のクルド人の地域と、それからバグダッド周辺と、それから南部また東部等々、たまたまここは、シーア派の多いところ、スンニ派の多いところ、そしてクルド人の多いところと、大まかに分けて三つに分かれると存じますが、そのバグダッドというところは、旧フセイン政権と同じスンニ派の人の地域と言われております。ここだけが石油が出ないというところまでよく頭に入れておかなければいかぬところなんだと思いますが、そこで今極めて紛争が激しいというのが状況でありまして、ブッシュ政権としては、ここに大増派を行って一挙にということにやろうとしていますが、なかなかうまくいっていないと思っております。

 事実、五月の九日の日には、いわゆるエルビルと言われる北部クルド地域において爆弾テロというか自爆テロというのが発生をいたしておりますので、そういった意味では、過去何年ぶりでしょうか、これは二年ぶりぐらいで起きた事件だと思いますが、こういったところでもそういったものが起きたというのは事実だと我々は頭に入れておかなければいかぬと思っておりますので、いろいろな意味で、国民融和というものが進んでおるかといえば、進んでおるところもあることは事実ですが、これは一番首都がバグダッドということになりますし、そこがスンニ派のいるところでもありますので、今の状況として、その地域において極めて情勢が安定しているとはとても言いがたいのであって、厳しい情勢が続いているという認識が正しいと存じます。

長島(昭)委員 まさにそのとおりだというふうに思います。これは本当に深刻で、アメリカは簡単には撤退できないでしょう。これで撤退したら、何だ、無責任だ、こういう国際非難を浴びるわけですから、進むも地獄、引くも地獄。

 アメリカの民主党は撤退のタイムスケジュールを出せと言いますけれども、これもなかなか現実的とは言えない。タイムスケジュールを出して、これまでに撤退しますと言ったら、よし、その日を目指して頑張ろうみたいな形でテロリストも張り切ってしまう、こういう状況になりますから、これは本当に笑い事ではなくて、そういうことがありますので、なかなか今ジレンマに陥っていると思います。

 ただ、客観的に物事を見るとこれはどういう状況かというと、アメリカが頑張れば頑張るほどかえって治安が悪くなる、こういう悪循環にはまっているので、私は、これは多少発想の転換なんですけれども、アメリカ軍が頑張らなくてもいい、しかし、撤退して後ぐちゃぐちゃになってもいいという無責任な議論ではない、その両方を満たすような解はないだろうかと私も昨晩寝ないで考えたんですけれども、国連のPKOを入れたらどうだろうかという提案を実はさせていただきたいと思っているんです。

 これは、実は、二年ぐらい手おくれかなとも思っているんですけれども、それはどういうことかというと、ちょうど今から三年前、二〇〇四年の六月の二十八日にCPAからイラク暫定政府に主権が移譲されました。あのときに、新しい国連決議が出て、そして主権の移譲が行われ、イラク政府が立ち上がったときに、当時パウエル・アメリカ国務長官が、こういうことになったから、また改めて国際的な枠組みを構築し直そうと思うので、みんなで参加してくれと呼びかけた。そのときに当時のフランスのドビルパン外相は、いや、国連のPKOなら参加してもいいけれども、そういうアメリカ、米英軍の後始末におれたちが利用される事態は困るということで拒否した経緯があるんですね。

 私は、そのときにもう少し日本政府、まあ、我々ももっともっとその議論を当時すればよかったのかもしれませんが、そういう議論を高めていって、我が国ももちろん、当時は既にサマワに陸上自衛隊が展開しておりましたけれども、それを置きかえる形で、脱アメリカ化というか、アメリカ色を抜く形で、国際社会の協力がもっともっと得られるような枠組みをつくってみてはどうだろうか。

 アメリカは当時は突っぱねたわけです。そんなこと言ったっておれたちは頑張ってやるんだと言って頑張り続けて、二年、三年たったわけです。しかし、今さらにさらに深刻な状況を迎えているので、私は、二年おくれ、三年おくれかもしれませんが、提案してみる、努力してみる価値はあるんじゃないだろうか、こういうふうに思うんですが、外務大臣、率直なところ、今、現実の政策をつかさどっている立場から、この点はどう思われますか。

麻生国務大臣 今言われましたPKO、PKFの話につきましては、今、長島先生御指摘になったとおりであります。

 基本的には、長島先生、やはり戦闘というものと治安というものははっきり分けなければいかぬところなんだと存じます。基本的に、治安は警察、戦闘は軍隊ということになるという大前提を混線していると、治安は明らかに、警察が市民の中に溶け込んだ上で治安活動は行うことになっておりますが、軍隊は自己完結型で孤立しておるというのが基本であります。そういった意味で、治安をやろうと思えば警察力の増強ということになりますので、これは外国人ではなくて、自国人をもってそれに充てるのが基本的に正しい。私は、直接アメリカのそういった筋の人に何回かこの話をしたことはあります。

 そういう意味で、今言われましたように、PKFという第三者というものの方が効果があるかないか、これはいずれもちょっと、かつて安保理事会で協議をされたことがありません話題でもありますので、なかなか難しいところなんですが、私どもとしては、今言われました話が、この時期、少なくとも一つの考え方として、アメリカ軍が直接やるよりは効果があるのではないかということなんだと思いますが、これだけ三年、四年というような時期がたちますと、感情論的には、何となく、アメリカ人を見たらもう全部だめというような雰囲気になっているだろうなという感じはいたしますので、そういったところを含めて、どうせ入れるならアメリカ人に全然見えない顔のでもない限りは、感情的にはなかなかかなり難しいだろうなというのが率直な実感です。

    〔委員長退席、中谷委員長代理着席〕

長島(昭)委員 民主党の提出者の中に次の外務大臣がおりますので、山口次の外務大臣にちょっとこの点、どういうお考えを持っておられるか、伺いたいと思います。

山口(壯)議員 今長島さんが言われたものは、私は、ちょうど二日前に外務委員会で外務大臣と、麻生さんとやったときに、こういう話をやって、そのときに比べると、外務大臣は非常に前向きに今答えられたような気はするんですけれども。

 アメリカのパワーというものがすごく今、イラクのためにそがれている。しかも、後遺症についてはベトナム以上になるんじゃないかということも言われてきている。孤立主義に戻ってしまうんじゃないかということが言われ出している。日本にとって、アメリカのパワーが低下するということは非常に望ましくないわけですから、何とかアメリカが抜け出せるようにということを考える一つの案として、私もそのことは一つの案じゃないかな、大事なことじゃないかなと思っています。出口戦略について盟友アメリカと、この間の首脳会談でも、外務大臣との外相会談でも、全く話されなかったということは、非常に私たちはおかしいなという気がしています。その中で、一つのオプションというかアイデアとしてこの話というのはあり得ると思うんですね。

 今麻生大臣の方からは、治安に関しては警察でという話があったんですけれども、ちょっと私もいろいろな例をずっと見てみましたら、ぱっと目が行くところでも、ハイチについて、文民警察が千六百九十二人で、それから部隊が六千六百八十四とか、スーダンについても、文民警察が六百八十、部隊が八千七百三十四。そういう意味では、治安は警察、自国の警察でというふうには必ずしもなっていないし、そういう可能性というのはあるんじゃないのかなという気はするんですね。

 ただ、例えばPKOということでやる場合には停戦合意というものも必要なので、この停戦合意というのも今話がややこしいですね。現実に戦闘がどこで終了したのかということが、ブッシュさんは戦闘終了したと言っているけれども、現実に戦争が終了したのかどうかもはっきりわからないというような段階だから、そういう意味では、この停戦合意というようなものを利害関係者全部含めてできるかということはちょっと難しいかもしれない、現時点で。だけれども、道を開いていくということの意義というのは大きいと思うんです。

 不可能を可能にするという言葉もありますけれども、役人は、不可能は不可能だと言うだけですよね。政治家はやはり不可能を可能にしなきゃいけない。道のないところに道がないと言うのが役人だけれども、政治家はやはり、道がないところに道を開いていかなきゃいけない。そういう意味では、今長島さんが言われたようなことを、例えば五大国の中には中国もいる、こういうのも全部含めて、いろいろ日本が構想力を持って言っていくということの意味は、私は大きいとは思っています。

長島(昭)委員 これは麻生大臣、提案してみる価値が、もちろん、自分で言っているんですから、そう思っているだろうということかもしれませんが。というのは、これからサミットもありますし、アメリカだって、全部自分でやっていくのはしんどいなと恐らく本音は思っていると思うので、花道をつくってあげるという意味もあって、これは同盟国としては提案する価値があると思うし、そのPKOの部隊を、例えばアジアの国々と一緒に日本がやるとかそういうことも考えれば、最近は治安維持にPKOミッションが入ってくる例がふえてきていますので、ここはぜひ検討していただきたいということをお願い申し上げたいと思います。

麻生国務大臣 御提案として拝聴させていただきますけれども、今アジアの国々と言われましたが、長島先生、一番大事なのは、周辺諸国から流れ込んでくるいわゆるテロリストというのがありまして、テロをやっている方はイラク人より多分イラク人以外の人が多いとイラクの人が言いますので、やはり周辺諸国の人たちがPKOみたいな組織に参加してくるというのがすごく大事なところで、前回、周辺諸国拡大外相会議というのをエジプトでやらせていただきましたのも、その種のことを考えていろいろ今、枠組みというのをやりつつあるというように御理解いただければと存じます。

長島(昭)委員 よろしくお願いします。

 もう残り時間が少ないんですが、せっかく官房長官、お戻りいただきましたので、がらっとテーマはかわるんですが、北朝鮮の問題で拉致の問題。

 これは、この前私も外務委員会で外務大臣に質問をさせていただいたんですが、アメリカの国務省が毎年、テロ支援国家についての年次報告というのを出しているのは御存じだと思います。この二〇〇五年版の記述と、つい最近出ました二〇〇六年版の記述に非常に重要な違いが出ているということを既に御承知だと思いますが、今内閣官房の中には拉致担当の補佐官もいらっしゃる、それを束ねておられるのが官房長官ということでございますので、この年次報告書というものの意味をどう考えておられるのか。

 そして、今回の変更、これは御存じない方もいらっしゃるので少し解説をしておきますと、二〇〇五年の記述と二〇〇六年の記述、これはどういう記述かというと、北朝鮮をなぜテロ支援国家と認定しているかという理由づけが書いてあるパラグラフなんですね。この記事が、これは単純な話かもしれませんが、ワードの数、文字数で、去年は百六十一文字だったのがことしは百八文字まで削られているんです。ただ量が削られているだけかといったらそうではなくて、日本の拉致の問題については辛くも書いてあるんです。しかし、韓国の拉致の問題あるいはそのほか、他国の拉致被害の記述についてはすっかり削られているんですね。

 私どもは今までどういう努力をしてきたかというと、これは日本だけの問題ではない、拉致の問題というのは世界的な人権に対する侵害なんだということで、ブッシュ大統領も横田早紀江さんにお会いして、ああいう形で今回の首脳会談でもコミットする発言をされました。

 しかし、肝心かなめの国務省の年次報告書でここまで削られてしまう。このことについて、拉致を担当される部局の総責任者である官房長官としてどういう見解をお持ちか、御答弁いただきたいと思います。

塩崎国務大臣 長島先生は、もう既に外務委員会でこの問題を取り上げていただいているというふうに聞いております。恐らく同様の説明があったかと思いますが、私の個人的な考えもということでございますので、お答え申し上げます。

 もう釈迦に説法でありますが、これは、我が国の政府としては、そして私自身も会う人会う人に必ずこの問題について、テロ年次報告書のテロ支援国家指定の解除は拉致問題の解決を見なければなかなか日本としては納得はできないということを申し上げてきているわけでありますが、この間の六者協議の中で出てきているのも、指定を解除する作業を開始するということであって、それは米国側も何度も、そうだということをブッシュ大統領を含めて私どもは聞いているところでございます。

 そして今回、この表現、確かに違いは私も気がつきはしましたが、これは一義的には米国の政府が決めていることでありますから、それに評価を加えるのもいかがかと思います。

 先般、日米首脳会談、そしてまた日米外相会談が行われて、その中でこの問題についても、拉致問題を考慮に入れるとの立場の表明が米国側からもしっかりあったし、何よりも、日米首脳会談の後の共同記者会見でブッシュ大統領が、この問題に関する議論が、拉致問題に関する自分、つまりブッシュ大統領の強い思いを弱めるようなことがあってはならないということを明言しているということで、本質的なところについて、私どもとしては、米国政府は日本の立場そして懸念というものを理解しているというふうに考えております。

長島(昭)委員 私もそう願いたいんですけれども、大統領の言葉によるコミットメントはもちろん私も評価しますが、しかし、今、例えばクリス・ヒルという北朝鮮と交渉に当たっている方の動きを見ると、明らかに、もう何とか合意を取りつけて物事を前に進めたい、そういう思いが見え見えなんですね。そのクリス・ヒル次官補がいる国務省の現場の認識がここまで弱くなってしまっている。

 しかも、この年次報告というのは、なぜ北朝鮮がテロ支援国家として指定されなきゃならないかという理由づけを書いてあるのに、その最後のセンテンスが、二月十三日の六者協議の合意によって米国は対北テロ支援国家指定解除の手続着手に合意したなんということが書いてあるわけですよ。これは余りにも心もとない。

 六者の合意については、いろいろな人が批判します。右からは、あんな北朝鮮なんという国と交渉するのはばかか、こういう批判もある。左からは、拉致拉致なんて言っていると孤立してしまうぞなんという批判もある。

 だけれども、私は、あの六者合意というのは評価しております。なぜ評価しているかというと、拉致の問題と核問題とをリンクさせた。拉致の問題が動かない以上我々は支援ができませんよ、我々の支援がなかったら本当の意味で六カ国合意は履行されないでしょう、こういうことをアメリカにも中国にもきちんと伝えて、すべてを同じようなペースで動かすという、このことが、私が六カ国合意を評価する唯一のポイントなんです。

 それには、この拉致問題に対するアメリカのコミットメントというのは非常に重要なポイントなんですね。ですから、引き続き官房長官、あるいは今度中山補佐官が中国、アメリカと行かれるようですけれども、この問題についてはゆめゆめ後退することのないようにしっかりと言っていただきたい、このことをお願いして、質疑を終えたいと思います。

 ありがとうございました。

中谷委員長代理 次に、阿部知子君。

阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 お帰りになった塩崎官房長官に早速で恐縮ですが、前回宿題として私がお預けしたことについての御答弁を伺いたいと思います。

 今の長島委員の御質疑とも関係いたしますが、我が国において、横田めぐみさん初め非常に人権侵害の拉致ということが起こり、また同時に、いわゆる従軍慰安婦問題でも従軍慰安婦とされた女性たちの著しい人権侵害が行われたということで、こうした問題は、我が国にとっても、また世界にとっても、きちんと歴史の中で反省し、また今後の人権の世紀をつくっていかなきゃいけない問題であるということは、前回申し述べさせていただきました。

 しかしながら、現在は首相であられる安倍晋三首相が、九七年、今から十年前、歴史教育を考える若手議員の会で編さんされた書物の中では、韓国を称して、簡単に言えばキーセン国家というふうな表現を使って、そういう買春、売春が日常的に行われている国で、従軍慰安婦とされた方たちもそれゆえに名乗り出なかったのではないか、本当に省略して言いますとそういうことをおっしゃっていて、それが文章にも残されています。

 せんだって来日されている柳基洪さんという、この方は、逆に韓国で正しい歴史教科書のための議員連盟というのを組織しておられる方で、恐らく塩崎官房長官もお会いになったことがある方かと思いますが、日韓の友好議員連盟の中核的な方です。この柳基洪さんが、この表現をごらんになって非常に心外に思われ、また、今後の日韓関係がこうしたことで破綻するということの懸念も強く持たれて、私もお会いしましたし、御意見も伺いました。

 私は、今の日本にとって、本当に、この東アジアの平和構築、そして中東地域の新たな平和の営みということにどうやっても邁進していかなきゃいけないと思いますので、お互い、例えば書いたことにおいて十分意を尽くせなかったあるいは誤解を生んでいることがあれば、政府としてきちんと是正、話し合う、誤解を取る、真意を伝える、これからの取り組みを、六カ国協議でもそうですが、韓国の協力なくして日本の拉致問題も当然解決してまいりません。

 そういう観点で、この前官房長官には、安倍総理は一体このことをどう考えておられるんだろう、そういう表現を文章に残しておられて、それが韓国の政治家の皆さんにも非常に深刻ないわば不快感を与えておるということについて、総理の御見解を承ってきていただきたいとお願い申し上げました。いかがだったでしょうか。

塩崎国務大臣 先生が御指摘になられた本、まだ見ていなかったものですから、私もあの後手にとって見てみました。当該部分についても読みましたが、まず、この問題については、この間も申し上げましたけれども、やはりこれは議員の問題であり、また十年前の、総理就任前の政治家個人としての発言ということでございますので、まず第一に、私、官房長官として、政府としてこれについてコメントする立場ではないんじゃないかなというふうに思っております。

 総理には、まだこの問題について話す機会が得られていません。

阿部(知)委員 私が今申し上げましたように、その文章をごらんになって、韓国の議員の中でも、百十人の議員の連盟がありますが、その中でも問題にされておるということですから、これは外交マターに発展しやすい問題なんだと思います。

 それゆえに、現在の官房長官であられる塩崎さんにも、日韓の関係が本当にお互いの誤解の溝を埋めて進んでいかねばならない。これは我が国の国益にもかかわってまいりますから、誤解を解くような、誤解であればです、もしかして、誤解ではなくて、総理になった途端考えを変えられたということもあるかもしれません。でも、私はあえて誤解という言い方で申しましたのは、やはりこれが本当に国際間のとげになると、またいいことは生まれないと思うわけです。

 その意味で、来週総理と質疑の時間があれば、時間が短いので私も伺えるかどうかわかりませんが、対外関係のあることは迅速に行動していただきたい。広がらないうちに、本当にお互い虚心坦懐に話し合えば、違うことなのかもしれません。そういう御尽力をお願いしたいですが、いかがでしょうか。

    〔中谷委員長代理退席、委員長着席〕

塩崎国務大臣 安倍総理は、この問題について、先般訪米したときにも、率直にブッシュ大統領や議会関係者にも、この従軍慰安婦問題、いわゆる従軍慰安婦問題と呼ばれていることについての心のうちを明らかにしているわけであって、自分、つまり安倍総理ですが、辛酸をなめられた元慰安婦の方々に人間として、また総理として心から同情するとともに、そうした極めて苦しい立場に置かれたことにつき申しわけない気持ちでいっぱいであるといった旨の発言をブッシュ大統領や議会関係者にいたしたところでございます。

 それはアメリカでの発言でありますけれども、我が国においても、国会で、そしてまたNHKの番組などでも、特に、これまで小泉総理を初め何人かの総理がこの女性基金から出ていく資金とともにお手紙を元慰安婦の方々にお送りした、その気持ちと全く自分は同じだということも明快にテレビでお話をされているわけでありまして、こういうことは当然のことながら韓国や中国、あるいはアジアの方々にも報道を通じて伝わっているものではないかというふうに思うわけであって、今外交の問題というお話がございましたが、おっしゃるとおり、それは極めて重要な問題だと思っておりますが、安倍総理としてのお心のうちは、率直に述べて、伝わっていることではないのかなというふうに理解をしております。

阿部(知)委員 何度もこうした貴重な時間を私が使って申し上げるのは、それがそうでない向きに動こうとしているからです。官房長官は、十分総理を支えて、我が国のいわば本当の国益を考える立場ですから、アンテナを高くしてきちんと対処していただきたいと思います。

 では、予定された質問に移らせていただきますが、私は、この間何回かイラク関連の委員会に出させていただいて、だんだんだんだん私自身の頭も整理されてきて、しかしまた大きな疑問もわき上がってきたと思いますので、きょうはその点について、特に久間防衛大臣を筆頭に御答弁をお願いしたいと思います。

 ちょうど昨日、イギリスのブレア首相が引退を表明されました。十年ほど前、鮮烈な、労働党の、政権交代という形で、若手の政治家のホープとして登場されたブレア首相が、特にイラクのアメリカの対テロ戦争支援という形で、最終的にはそのことが非常に国民的な批判も受けて下野されるということは、一つの大きな歴史の節目を私どもは見ているように思います。

 そこほどにいわゆる対テロ戦争というものは難しい、現代という時代が直面した新たな課題であり、このことの答えというのは、本当に単純ではないんだと私は思います。しかし、それゆえに、慎重に事を運ぶとすれば、果たして今、アフガニスタンとイラクにおける対テロ戦争は終わっているのか、終わっていないのか。

 久間防衛大臣、アフガニスタンにおける対テロ戦争、アメリカが担っておられ、NATO軍が集団的自衛権をもってそれと行動をともにしておられるアフガニスタンの対テロ戦争は終わっているのか、イラクにおける対テロ戦争は終わっているのか、この二つをお願いします。

久間国務大臣 イラクの場合は、一応戦争が終わったというアメリカの宣言もございますし、それをまた受けた形で国連が、その後の復興という形で、あるいは治安維持活動ということで国連が要請をしておりますから、戦争そのものは、イラク政府との戦争は終わったと。その後の状況をどういうふうに見るかはまたいろいろな問題があるとしましても、アメリカあるいはイギリスとイラクとの関係の戦争は、また戦争と言ってしまうとあれですけれども、武力の行使は一応終わったと。

 しかし、アフガンの問題につきましては、これは、その後国連が新たな治安部隊をアフガン国内につくって、そしてそれを派遣するというようなことの要請はあっておりますから、それはそれでまた一つの動きですけれども、戦争そのものが終わったと言い切れるのかどうか。

 これについてはやはり、例えば海上阻止行動等は、先ほど外務省の方からは、旗国の同意を得て原則的にやっていますと言いますけれども、それ以外のものがゼロかといいますと、それはゼロとも言い切れないものですから、アメリカ自身も、これは戦争が終わったとは言い切れない状況、そこのところはあいまいな状況になっているんじゃないかなと私自身は思います。

 しかし、これは外務省その他にも聞いていただきたいと思いますけれども、私は、むしろイラクでのフセイン政権との戦いは終わったわけですけれども、アフガンについては、終わったと言い切れるかどうか、ちょっと私自身も自信がございません。

阿部(知)委員 久間大臣は、大変にわかりやすい言葉で、また直截にお話しくださいますから、ほかにも聞いてみればとおっしゃいましたが、ちょっと時間の関係で、今の久間大臣の御答弁をもとに次の質疑を進めさせていただきます。

 実は、アメリカは、イラクに対していわゆる戦争の終結宣言はしてはいないんだと思います。ここにあるのは、きちんとした言葉で表現すると、主要戦闘終結宣言であって、終戦宣言という言葉はあえて使っていないというふうに指摘もされています。そして、その後のいろいろなブッシュ大統領の、年頭の演説を含めて、彼は、いまだにテロとの闘いは終わっていない、そして、そのテロの中に一部フセインの勢力の残党も含むんだという形で言っているわけです。

 私は、少なくとも、日本が国として事をいろいろ起こすときには、果たして、アメリカはそう思っている、我が国はどう思うのか。そして実は、久間大臣いつもおっしゃいますが、相手がどのような定義状態にあるか、あるいは国際社会がどう見ているかということも踏まえて我が国もまた行動するわけで、きょうの私の時間の限りで、まだちょっと許されませんので、アメリカの終結宣言はないのではないかという私の問いかけはいかがでしょうか。

久間国務大臣 あるいはそれは先生がおっしゃるのが正しいのかもしれませんが、我々は、イラク特措法をつくりましたときに、国連からの要請で、イラクの戦後の復興と、そして治安の維持のため活動する、そういった多国籍軍への安全確保支援活動をやってもらいたいと国連が世界各国に呼びかけたわけでありまして、そしてその一環としてイラク特措法をつくりましたが、イラク特措法をつくったときは、一応戦争が終わったというような観念といいますか、そういうような頭の整理をした上であのとき法律をつくったというふうに私は思っておりますから。

 あの後は、今の状態がその後そのときの状況と違うじゃないかというふうなことは場合によってはまた出てくるのかもしれませんが、少なくともあの時点で、法律をつくろうとして国会へ働きかけたときには、終わったというようなことで我々はスタートをしたつもりでございます。

阿部(知)委員 アメリカみずからが終わっていないと言うのですから、終わっていないと見るべきでありましょうが、しかしそれで、主要な戦闘が終結しているということにのっとって、我が国がまた国連決議にのっとって今のイラクの支援法をつくった。

 では、その中で繰り返し繰り返し指摘されますところが、いわゆる戦闘地域かどうか、あるいは戦闘とは何かということでございます。前者のことはまたこの次伺わせていただきますが、久間大臣は、今バグダッドは戦闘地域だとお考えですか。

久間国務大臣 私自身は、戦闘地域とは思っておりません。

 やはり戦闘地域というのは、国または国に準ずる組織と、そういうまた対立する国なら国が、準ずる組織と闘っておるという明白な形の地域が戦闘地域であって、治安が悪いから、そこにはどこからか迫撃砲が飛んでくるからそこは戦闘地域だという言い方にはならないんじゃないか、そういうような認識を持っておりますので、私は、バグダッドが非常に治安は悪いというのは認識しておりますけれども、それでもってあそこは戦闘地域であるという認識は、私自身は持っておりません。

阿部(知)委員 これも繰り返し各大臣御答弁でありますが、先ほど私が例を引かせていただきましたフセイン政権並びにその残党、あるいは外からやってくるアルカイダ等々の組織、テロ組織と、これはある意味で戦闘地域であり、戦闘をしているんだというふうな表現を述べられている大臣もあります。

 麻生大臣、伺います。バグダッドはただいま戦闘下にあるんでしょうか。

麻生国務大臣 治安が極めて悪化しているというのは現実だと存じますが、戦闘地域か、これは定義が難しいところだとは存じます。

 私も久間大臣と同じように、戦闘下にある状況、非常事態かもしれませんけれども、戦闘下かと言われると、ちょっとなかなかそこのところは、組織立って、各国から、周辺国から随分入り込んできているという話はイラク政府からたびたび聞いてはおりますけれども、それが全部組織化されていて戦闘状態になっているかという感じでは、率直、私自身もそういった感じを持っているわけではございません。

阿部(知)委員 では、フセイン並びにその残党と呼ばれる勢力との闘いはどうですか。あるんですか、ないんですか。

 これを私が聞くのは、昔、石破長官が、フセイン並びに組織されたその残党の闘いは戦闘に当たるだろうと御答弁がありましたので、戦闘地域でないと逆におっしゃることは、今アメリカが闘っているのは、いわゆるフセイン政権下の残党との闘いでは、そこにはそういうものはないということですか。

麻生国務大臣 これは、基本的にこの法律上、イラクの特措法というのでいきますと、あらかじめイラク全土を非戦闘地域か戦闘地域かを区分けすることが求められているものではないのはもう御存じのとおりであります。したがいまして、今航空自衛隊が行っておりますところ以外のところがどういう状況かと言われますと、私どもとしてはそれを明確に言うことはなかなか難しかろうと存じます。

 ただ、今言われましたように、いろいろなところから、またこれは戦闘という言葉の定義が先ほどの戦争と同じようになかなか今難しい話になってきておりますので、言い方が非常に、答弁をよほど慎重に行わぬと、何週間かするとまたこの話が出てくることになりかねませんので、慎重に言葉を選びながら、お答えしにくいなと思っております。

阿部(知)委員 幾ら言葉を選んでも、現状が混沌としているから、これは言葉の遊び以外のことにならないような事態が対テロ戦争なんだと思うんですね。それゆえにアメリカ自身も終結宣言はできないんだと思います。

 その中にあって、我が国の法の枠組みは、自衛隊が行くところが戦闘地域か非戦闘地域かをとりあえず決めるというふうに立てたわけです、我が国は。しかし、その戦闘地域か非戦闘地域かも、だれと何を闘っているのかによって変わってまいるわけです。非常に危うい虚構の上にすべてが成り立って、そして今、先ほど、例えばPKOのような仕組みを取り入れたらどうか。しかし、PKOが前提となるためには一回停戦合意というものがなければなりません。そこがまた困難をきわめている。もし戦争が終結していれば、それは停戦合意をとるにもそれなりの方法があるんだと思います。PKO方式にも持っていけないところの苦しさは、戦争が終わったか終わっていないか、戦闘がだれと闘っているのか、見えない影になってきているんだと思います。

 そこで、塩崎官房長官に伺います。

 我が国は、イラクに大量破壊兵器があるというふうに、逆にないことを挙証できなかったイラクに対してアメリカが攻撃をするということを支持いたしました。しかし、その後、闘いが一定終結したところもあり、いろいろあって、しかし、結果的にアルカイダとの関連もなく、大量破壊兵器もなかった。しかし、なおかつ塩崎官房長官は、せんだっての御答弁で、ブッシュ大統領がおっしゃっていることを例に引いて、フセイン政権が続くべきではないということでアクションをとったことは間違っていないとブッシュさんが言ったと。

 では、日本はそのことはどう評価しているんでしょう。フセイン政権が続くことが問題だから攻撃をした、先制攻撃をした、これは日本として了解できるものなのでしょうか。

塩崎国務大臣 日本があのときの行動を支持したというのは、あの時点での与えられた条件、すなわち国連安保理での累次の決議があり、それを履行していない、あるいは国際的な要請に対して誠実にこたえないといったことを理由に多国籍軍が攻撃を始めた。その時点での判断は、支持をする判断を日本政府としてはしたということであります。その後の日本のかかわりは、日本が主体的にどういう支援をすることがいいのかということでさまざまな方途を考えて、最初は陸自プラスODA等々、そういった形での日本独自の支援の仕方というものを考えてきたということであります。

 先ほどのブッシュ大統領の話、あるいは先ほどどなたかの御質問にお答えをいたしましたが、ブレア首相が過ちを認めたことは、いずれも情報の過ちということで、サダム・フセインを排除したことについては二人とも間違っていなかったということを言っているということであって、それと、我々があの時点であの行動をとったこと、いわゆる多国籍軍がアクションを起こし始めたときの支持をしたということとはまた別の問題だろうと思います。

阿部(知)委員 最後の部分がよく理解できませんが、体制転換のための、体制を倒すための戦いであれば、当然これは国連憲章上も問題になりますし、我が国は支持できないものだと理解します。

 そして、これは久間防衛大臣にお願いしたいと思いますが、前者の情報の問題について言えば、せんだって2プラス2で、今後我が国は米国との情報ということにおいても、もちろん情報の秘密保持という部分もそうですが、情報の共有化にさらに取り組むということをおっしゃっていました。しかし、今塩崎官房長官がおっしゃったように、例えば大量破壊兵器があったかなかったか、この情報一つにおいても米国も誤りを犯したわけです。イギリスもそうでしょう。我が国が情報を共有すべき相手が誤りを犯すこともあるわけです。

 では、我が国としては、どういう情報共有のルールなり自己検証の方法を持つのか、これをこういう2プラス2の御発言にのっとってお願いいたします。

久間国務大臣 情報を共有するということは、お互いが得た情報をやはり確認しながら、その精度等を確認しながらやるわけでありますから、情報を共有しておればミスは非常に少ないと思います。

阿部(知)委員 当然です。我が国は、イラクの大量破壊兵器について情報を持たず、そしてなおかつ共有し、支持したわけです。ここにまた大きな問題が生じているんだと思いますが、もう時間ないのですが……。

久間国務大臣 だから、共有したわけではなくて、あのときの閣議決定は、米国の武力行使を支持するということを言ったわけで、アメリカが核兵器を持っていると言ったことを、そういう認識を支持したとは言っていませんから、そこのところは、米国の武力行使を支持する、それも、国益を判断してということになっていますから。

阿部(知)委員 根拠の定かでない武力攻撃だけを支持するのに日本が次々と行動を起こしたら、とんでもないことになりますので、今の大臣の御発言はまた追って質問させていただきます。

浜田委員長 次回は、来る十四日月曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十一分散会


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