第8号 平成19年11月5日(月曜日)
平成十九年十一月五日(月曜日)午後一時三十分開議
出席委員
委員長 深谷 隆司君
理事 田中 和徳君 理事 中谷 元君
理事 西村 康稔君 理事 西銘恒三郎君
理事 浜田 靖一君 理事 鉢呂 吉雄君
理事 渡辺 周君 理事 赤松 正雄君
新井 悦二君 伊藤信太郎君
伊藤 忠彦君 石原 宏高君
越智 隆雄君 大塚 拓君
北村 茂男君 北村 誠吾君
河野 太郎君 杉田 元司君
鈴木 馨祐君 冨岡 勉君
中根 一幸君 中森ふくよ君
西本 勝子君 野田 聖子君
橋本 岳君 増原 義剛君
松本 文明君 松本 洋平君
三原 朝彦君 矢野 隆司君
吉川 貴盛君 若宮 健嗣君
大島 敦君 川内 博史君
近藤 昭一君 田嶋 要君
長島 昭久君 伴野 豊君
松野 頼久君 三谷 光男君
田端 正広君 富田 茂之君
笠井 亮君 阿部 知子君
糸川 正晃君
…………………………………
参考人
(拓殖大学大学院教授) 森本 敏君
参考人
(軍事アナリスト) 小川 和久君
参考人
(医療法人健祉会理事長) レシャード カレッド君
参考人
(東京外国語大学大学院教授) 伊勢崎賢治君
衆議院調査局国際テロリズムの防止及び我が国の協力支援活動並びにイラク人道復興支援活動等に関する特別調査室長 金澤 昭夫君
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委員の異動
十一月二日
辞任
古賀 一成君
同日
補欠選任
下地 幹郎君
同月五日
辞任 補欠選任
北村 茂男君 松本 文明君
宮澤 洋一君 若宮 健嗣君
赤嶺 政賢君 笠井 亮君
阿部 知子君 保坂 展人君
下地 幹郎君 糸川 正晃君
同日
辞任 補欠選任
松本 文明君 北村 茂男君
若宮 健嗣君 宮澤 洋一君
笠井 亮君 赤嶺 政賢君
保坂 展人君 阿部 知子君
糸川 正晃君 下地 幹郎君
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十一月二日
テロ特措法の延長と新法に反対することに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第四〇四号)
同(石井郁子君紹介)(第四〇五号)
同(笠井亮君紹介)(第四〇六号)
同(穀田恵二君紹介)(第四〇七号)
同(佐々木憲昭君紹介)(第四〇八号)
同(志位和夫君紹介)(第四〇九号)
同(塩川鉄也君紹介)(第四一〇号)
同(高橋千鶴子君紹介)(第四一一号)
同(吉井英勝君紹介)(第四一二号)
同(赤嶺政賢君紹介)(第四八六号)
同(石井郁子君紹介)(第四八七号)
同(笠井亮君紹介)(第四八八号)
同(穀田恵二君紹介)(第四八九号)
同(佐々木憲昭君紹介)(第四九〇号)
同(志位和夫君紹介)(第四九一号)
同(塩川鉄也君紹介)(第四九二号)
同(高橋千鶴子君紹介)(第四九三号)
同(吉井英勝君紹介)(第四九四号)
テロ特措法の廃止と海上自衛隊のインド洋からの撤退を求めることに関する請願(近藤昭一君紹介)(第四五七号)
同(辻元清美君紹介)(第四五八号)
テロ特措法の延長反対に関する請願(横山北斗君紹介)(第四八五号)
同月五日
新テロ対策特別措置法の制定に反対することに関する請願(笠井亮君紹介)(第五四八号)
同(近藤昭一君紹介)(第五四九号)
同(志位和夫君紹介)(第五五〇号)
同(阿部知子君紹介)(第五九九号)
同(赤嶺政賢君紹介)(第六〇〇号)
同(太田和美君紹介)(第六〇一号)
同(保坂展人君紹介)(第六〇二号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法案(内閣提出第六号)
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○深谷委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、テロ対策海上阻止活動に対する補給支援活動の実施に関する特別措置法案を議題といたします。
本日は、本案審査のため、参考人として、拓殖大学大学院教授森本敏君、軍事アナリスト小川和久君、医療法人健祉会理事長レシャードカレッド君、東京外国語大学大学院教授伊勢崎賢治君、以上四名の方々に御出席をいただいております。
この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じます。よろしくお願いいたします。
次に、議事の順序について申し上げます。
最初に、森本参考人、小川参考人、レシャード参考人、伊勢崎参考人の順に、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
なお、御発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人は委員に対して質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。
それでは、森本参考人にお願いいたします。
○森本参考人 今日、日本が置かれている政治情勢というのは大変厳しく、また、日本を取り巻く国際情勢も大変厳しいのですが、その日本にとって、今日、当委員会で御審議いただいている特別措置法はとりわけ日本の国益あるいは将来の日本のあり方を決める極めて重要な法案であり、これを審議する当委員会にお招きいただいたことを大変光栄に考えます。
言うまでもなく、日本は、資源、食料の多くを海外に依存し、対外的な経済依存度が極めて高い国でありますので、国際社会の平和と安定というのがとりわけ日本にとって重要な意味を持っており、すなわち、つまるところ、日本ほど国際社会の平和と安定のために積極的に貢献しなければならない国は他にないということだと思います。
九・一一以来の国際社会にとって、国際テロ、これと核兵器が結びつくという脅威こそ最大の脅威でありますが、アフガニスタンの中では、二〇〇一年十月以降、いわゆる不朽の自由作戦あるいは国際治安支援部隊などの多国籍部隊の活動に四十カ国もの国が参加をし、アフガンにおけるテロ闘争と国内の治安維持に努めているというところであり、これに関連するいわゆるOEF・MIOという海上阻止行動がインド洋、北アラビア海で行われていて、この海域における活動は、いわゆるアフガンの中にいるテロリストたちが、パキスタンを経由して海上に出て、麻薬等を持ち出し、これを資金にかえ、武器弾薬を買って再び戻るという活動を洋上において阻止する極めて重要な活動で、これこそがテロの活動及び資金を対外的に拡散することを防止する非常に大切な活動であると考えます。
この活動の効果というものは確実に上がっており、これによって抑止機能を十分果たしているということであり、しかしながら、一方において、アフガンの地上を見るとタリバンの勢力が回復しつつあり、隣国パキスタンの国内情勢は極めて不安定な状態にあることから、この地域の安定のために我が国が必要な貢献をするということは、とりわけ我が国にとって重要であると考えます。
そもそも、我が国は、二〇〇一年十一月の、もとあったテロ特措法に基づいて、海上でこの活動に参加して必要な補給支援をしてきたわけですが、これが日本の国益との関係においてどういう意味を持っているかということについては、国際テロ克服への協力あるいは日米同盟協力ということのほかに、いわゆるシーレーン防衛や情報の共有といった日本の国益に直結する活動であり、これを継続し、新しいこの法律を成立させていただいて、できるだけ速やかに海上自衛隊を再び同海域に派遣することが我が国の国益にかなうと考えます。
これとの関連で、三つ、私がこの国会における審議を通じて感じたことを取りまとめ、最後に申し上げてみたいと思います。
第一は、同法に関する今までの議論を見る限り、政府・与党はどちらかというとこの一連の活動の必要性、重要性あるいは効率性というものを強調し、一方、野党は合法性がないあるいは適法性がないという点を指摘し、両側、つまり与野党の議論は必ずしもかみ合っていないと考えます。しかし、こういう国益に直結する重要な問題を立法府で議論していただくときに、政党間の駆け引きではなく、真に我が国の国益がいかなるものであるかということを考え、議論をし、集約させるということがとりわけ必要であると考えます。
情報開示というのは、確かに民主主義国家におけるこの種の活動にとって極めて重要であり、国民の理解と支持なくしてこのような活動はできないわけでありますけれども、しかし、本来、軍事作戦というものの性格を考えると、すべての活動を法律を適用して説明することにはおのずから限界があり、かつまた、情報開示を行うことによって、抑止機能の低下や、あるいは他の国々の兵員の安全を損なうことがあってはならないと思います。その意味において、軍事活動の面における情報開示には一定の限界があるということを理解すべきではないかというふうに考えます。これが第一点です。
二点目は、アフガンにおける地上の作戦とインド洋における海上の作戦を考えた場合、我が国がこの新しい新テロ特別措置法を通して海上自衛隊の活動を引き続き行うことは極めて重要でありますが、私は、先進国の主要メンバーである日本が、憲法にあるように国際社会における日本の名誉ある地位を維持するためには、これだけの活動では不十分ではないかと考えます。
できれば、地上及びインド洋における海上での活動を引き続き行うというか新たに行うことについては検討すべきでありますし、その際、民主党ができれば対案をきちっと法律の形で示し、これを与野党の協議に提供して、最終的な我が国としてのあり方を議論することが必要ではないかと考えます。ODAなど非軍事面での協力は重要でありますけれども、これをもってインド洋における対テロ支援協力を進める必要がないという議論にはならないと思います。
恒久法あるいは一般法を検討すべきでありますけれども、まず、新テロ特措法を成立させ、海上自衛隊を送ってから、速やかに与野党の協議に入るのが正しい道なのではないかと考えます。
最後に、この法律あるいは海上自衛隊の活動をめぐる一連のメディア及び国会での議論を通じて、現在の防衛省のあり方に少し私は疑問を持っております。
特に、防衛政策と、それから個々の兵器体系の調達というものを、一定の少人数に権限が集中するというあり方は、防衛庁を省に移行させたからには、もう一度見直し、防衛省の機構あるいは組織を根本的に見直す時期に来ているのではないかと考えます。
いずれにしても、新テロ特別措置法を速やかに成立させて海上自衛隊をインド洋に派遣することが我が国の国益にかなうものであり、このことを理解し、これを支持する世論がゆっくりとふえつつあるということを私個人としては望ましい現象であるというふうに考え、私の冒頭のお話ということにしたいと思います。
委員長、ありがとうございました。(拍手)
○深谷委員長 ありがとうございました。
次に、小川参考人にお願いいたします。
○小川参考人 御紹介いただきました小川でございます。
私は、六年前の十月十三日、テロ対策特別委員会で、やはり与党側の参考人として論点の整理を求めた立場でございます。六年を経て、我々はまた同じような議論をしている部分がありはしないか、そういったようなところをもう一度整理し、日本国の平和実現への志にふさわしいあり方を明確にしていただきたいと思っております。
私自身は、この十五分間でかなりたくさんのことをしゃべりたいと思っております。ですから、お手元にレジュメを配りまして、これに沿って駆け足でお話をさせていただき、後ほど、舌足らずの部分は質疑応答の中で補足をさせていただきたいと思っております。
まず最初に申し上げたいのは、新しい特措法を成立させ、そして早急な給油再開を求めます。そしてその中で、テロ克服への本格的な取り組みを審議していただきたい。最初にお願いしたいのはこれでございます。
ただ、テロ克服への本格的な取り組みということになりますと、これは、同盟国アメリカに対して支援をするといったような矮小なものではありません。やはり国家の原理原則と国益からテロ克服に取り組むべきであろうと私は思っております。
ここにもありますように、ざっと三点を出してまいりましたが、原理原則ということで申し上げますと、日本国憲法前文の精神、世界平和を実現するために行動することを誓うということを言っている、それにふさわしいあり方でこの問題は考えなきゃいけないだろう。
それから、国益の問題でいいますと、幾つも出てまいりますが、一番大事なことは国家の安全でございます。イスラム原理主義過激派アルカイダなどは、文明国をターゲットとする傾向がございます。これはステレオタイプな言い方かもしれませんが、そういう傾向は否めない。その中で、脆弱な文明国である日本国は標的の上位にあるということを前提として、そういったことを封じ込めていかなければいけない。これは国益上最も重要な点でございます。
いま一つ申し上げますと、経済立国の条件でございます。とにかく世界が平和でなければ日本国は安全ではない。そして、世界が平和でなければ、安全な自国の上に基盤を置き、世界を活動の舞台とする日本企業の経済活動はあり得ない。したがって、安全なくして繁栄なしという順序で考えなければならないだろう。こういったところからテロ克服への本格的な取り組みをお願いしたいと思うわけでございます。
ただ、そのためには、整理しておくべき問題がかなりたくさんあるだろう。きょうは二点だけ申し上げますが、一つは、テロとの闘いは対米支援ではありません。その辺を明らかにしなきゃいけない。いま一つは、テロ克服のためには日本なりのロードマップを示し、できることなら、それによって世界各国をリードできるようなあり方が求められるだろう。そのことを申し上げたいと思います。
とにかく、六年前に整理したはずでございますけれども、テロとの闘い、これはアメリカとの同盟関係を前提に考えるべきではない。これはあのときも申し上げたわけでございます。とにかく、同時多発テロの被害国は同盟国アメリカであった、だから何とかしなきゃいけないという思いが出るのは、これは自然なことなんです。ただ、それではほかの国が同じような被害に遭った場合、我が日本国は行動しないのかという問題を突きつけられます。そこからいかなきゃいけない。だから原理原則の問題なんです。
同盟関係を優先すれば、とにかく、当時であろうと今であろうと変わらないと思いますが、望みもしない集団的自衛権の議論に頭を突っ込んでしまって、自衛隊を派遣するどころではなくなる。集団的自衛権の問題は、当然ながらきちんと議論しなきゃいけないんですが、政局的にいいますと、望んでいないわけであります。こんなものに足をとられたくない。そういった問題もありますよということは、当時、同時多発テロ直後に総理官邸にも申し上げた話でございます。
とにかく、アメリカとの関係で申し上げますと、結果として、最も多くの軍事力を提供している同盟国アメリカの役に立てばいいんだ、それが自然の流れであるということははっきりしておかなきゃいけない。だから、この間のアメリカの日本に対する給油をやってくれとか再開してくれよという働きかけというのは、我々が最も軍事力を割いているからという条件をつけてもらわなければ非常に迷惑であるということを、アメリカ側にも私の立場では伝えたわけでございます。
そういう中で、私は、二〇〇一年十月十三日、参考人としての立場から、ここにありますようなコメントをしたわけでございます。同時多発テロは日本の平和主義への重大な挑戦であり、日本国民も二十四人が犠牲になった。テロリストと大量破壊兵器開発国の結合は日本にとって深刻な脅威となる。日本は国際社会と共同して、容疑者が国際的な裁きの場に立たされるまで、当事者として主体的に行動すべき立場である。憲法の制約の中であるけれども、地球上のどこであろうと自衛隊を派遣できなければならない。
そういうような整理が行われる中で、当時の小泉首相も、いろいろな立場の方から意見を求められ、日本として主体的に行動するという言葉を使われるようになったし、日米同盟を語られる場合にも、日米同盟と国際協調というワンセットできちっと語られるようになっていったということなんです。
そういう整理の結果、テロ特措法の正式名称は、読むのがつらいぐらい、百十二文字という長い名前になりました。これは日本の官僚機構のすぐれた能力がここに発揮されていると思うんですが、とにかく、小沢一郎さんが重視する国連の関与がこれでもかというほど盛り込まれたんです。最初は、米軍に対する支援といったような名前がついていた。その次は、諸外国の軍隊に対する支援といった名前がついていた。これじゃ、多分、日本国としてはまずいだろうということで整理が行われた結果でございます。六年前にここまで行っちゃっているんですよ。
あるいは、自衛隊を派遣するということは集団的自衛権の行使じゃないかという御指摘もあります。しかし、日本はそういう立場から自衛隊を派遣しているわけではないということは、今までのお話でおわかりだと思います。確かに、NATO諸国は、NATO条約に基づいて、集団的自衛権の行使として軍事力を展開している、これは事実であります。しかし、日本の場合、武力行使についても集団的自衛権についても、国内のコンセンサスが得られていないんですから、やはり、国際平和協力活動とか集団安全保障として考えて取り組んでいく方が自然であろうと思いますし、今後は、恐らく、集団的自衛権の問題ではなく、集団安全保障という格好で世界各国が取り組んでいく流れが主流になってくるだろうと私は思っております。
それから、整理しておくべき問題の第二点でございますが、テロ克服のロードマップでございます。
これは、私自身、医学の表現に例えて、三つのアプローチを同時に進めなければ、テロの克服はあり得ませんよ、あるいは、平和の構築はあり得ませんよということを言ってまいりました。日本の場合は、とにかくこの一部しかテロ克服については語られることがないし、あるいは、自衛隊を派遣するかどうかというのはこれのごく一部でございます。それなのに全体を語ろうとしない。これは、国家として、恐らく、意思決定、政策決定において欠陥がある証拠ではないかと私は思っております。
ただ、ここで簡単に申し上げますと、まず公衆衛生学的アプローチ。伝染病をなくすためには生態系を破壊しない範囲で蚊とかハエを駆除しなきゃいけないだろう。そういった考え方のもとに、テロの根底にある貧困とか差別、格差、宗教対立、民族対立をなくしていくために、特に先進国が協力して発展途上国の向上に取り組まなきゃいけない。その中心になるのは、多分、政府開発援助、ODAのような資金かもしれない。しかし、これは五十年、百年という長きを視野に入れながら、地道に取り組んでいく必要がある。アフガニスタンにおける民生面での支援も、そういった位置づけのもとに強力に進めなければならないと私は思っております。
予防医学的アプローチ、これは日本国が最も欠けている部分でございますが、世界に例えばテロ組織はどういったものがあるかということを各国が独自にハイレベルで調査研究し、その情報を共有し、そして、個々の国が自国にとって最も高い脅威に対して有効な対策を開発するというプロセスなんです。テロ組織に関する情報をくれと日本の情報組織が言ったってくれないんですよ、通り一遍のものしか。ほかの国はリスクを冒してとってきているんですよ。
情報はキャッチボールです。だから、これは別に007を活動させるようなそういう子供じみた話じゃなくて、高いレベルの地域研究を行うシンクタンクを整備する、あるいは、それに関連するテクノロジーをハイレベルで研究する、そういうシンクタンクを整備する、その中で可能になっていく問題だと私は考えております。
また、三つ目の対症療法的アプローチでございますが、これがまさに日本でよく言われるテロ対策でございます。これは二つの柱で成り立っておりますが、一つは、自分の国の中のテロ対策のレベルを国際水準にふさわしいレベルに常に向上させておく。その中で、テロをやりにくい環境を常につくり出す。また、やられても被害が局限できるような準備をしておく。同時に、テロリストが拠点にしそうな混乱した地域や国がたくさんございますので、その優先順位をつけ、世界各国と協力しながらその安定に取り組んでいかなければ、それを拠点としてやられるわけでございます。
とにかく、イラク戦争に反対した国だって、それをもって自分の国がテロから免れられるとは思っていない。だからこそ、イラク戦争があった後も、アフガニスタンへの関与はフランスだってドイツだって続けているという問題でございます。その辺はきちんと整理をしなければならないだろうと思います。海上阻止行動もやはりこういう位置づけにあるんだということは明確にしておかなければならないだろうと思います。
ところが、日本の議論は、あれかこれか、自衛隊派遣かアフガンでの民生支援か、二者択一、幼稚園のレベルではないかと外国人に言われております。
私の大好きで尊敬している例えばペシャワール会の中村哲さん、前の参考人のときは横に座っていましたよ。僕は彼が大好きなんです。彼のことはもっと国はバックアップすべきだと思っているけれども、彼は平和の象徴だ、自衛隊は戦争の象徴だ、ばか言うなという話なんです。どっちもちゃんとやらなきゃいけないという話なんですよ。
井戸掘りだけでは平和は来ない。井戸掘りや医療支援ができる環境というものは、常に一定の安定というものがなければあり得ないわけでございます。そういったことを前提に我々は取り組まなきゃいけない。だから、中村哲さんが井戸掘りをやっている隣接した地域で武装勢力が跳梁ばっこをし、そこにおいて虐殺や略奪が行われていることに目をふさぐわけにはいかないわけでございます。
そういう中で、中村哲さんが政府を批判するから、外務省はあいつはだめだとかいう話になりがちなんだけれども、やはり、いかに政府を批判しようとも、中村哲さんを強力にバックアップをし、平和構築の足場を固めていく。そして、日本のイメージも向上させていくということは当然もっとやらなきゃいけない。
しかし、同時に、やはり、暴力の連鎖を断ち切るために、民主主義のシステムによってコントロールされた強制力としての軍事組織を投入し、武装勢力が敵対していれば、それを割って入って引き離して安全な状態をまず生み出す。そこにおいて井戸掘りや医療支援という順番になってくるということは、我々はきちんと押さえておかなきゃいけない。暴力の連鎖を断つために投入される軍事組織は高速道路の中央分離帯の役割でございますから、そういった考え方のもとに国連の平和維持活動、PKOも行われているということを我々は整理しておく必要があるだろう。
だから、必要があれば自衛隊を派遣する、必要がなければ自衛隊を危険にさらす必要は何もない。これはほかのことをやればいいんです。みんな必要なことを国家としてやっていくことが求められている。日本の平和主義は本物かにせものか、真贋が問われているというのが今回の議論であろうと私は思っております。
駆け足で参りますが、そういう中で日本モデルを実行して平和を構築するということが必要だろう。アフガニスタンだけじゃなくて、イラクやほかの地域でもテロ克服のための取り組みをきちんとやっていくべきであろう。自衛隊の派遣が必要なところはやる、必要ないところはやらないという話でございます。
アフガニスタンについても、国際治安支援部隊、ISAFについて、あんなもの持っていって反感が生まれるだけだとか危険が生まれてくるだけだとかいう指摘がありますが、それは、ISAFの大部分の部隊はアフガニスタンの人たちを見下して、ドイツの部隊を見てください、しゃれこうべを振りかざして変なことをやって写真を撮ったり。ところが、我が陸上自衛隊は、例えばイラクでどれぐらいきめ細かいやり方をして、最初から信頼関係の構築に取り組み、成功したかということを、同じように議論してもらっては困るのです。
私も直接かかわった当事者として申し上げますが、例えば陸上自衛隊は、とにかく自分の身を守るために必要な武器も編成も許されなかった。だから、まず自衛隊としては、イラクの市民との信頼関係を構築しなきゃいけないから、人がいたり、町の中で行動する場合には、各国の部隊はリスクを下げるために猛スピードで通過する、陸上自衛隊はスローダウンしてスピードを落として撃たれるリスクをとりながら、しかも、当時の番匠群長の説明だと、左手で手を振る、にっこり笑う、そして装甲車の中に自動小銃を置き、右手の人さし指を引き金にかけている。この芸当というのは相当訓練しなきゃできない。そういったところから信頼関係をつくっていった。
また、総理官邸の側も、とにかく、これは私自身が直接かかわったのですが、スンニ派の長老のパチャーチという大統領候補になった長老がいるのですが、彼のところに、シーア派を含めて宗教指導者に対してちゃんとメッセージを出してくれと頼んで、これは一定の効果を生み出しました。どういうことか。自衛隊に死傷者が出たら日本は撤収しなきゃいけない、つまり、日本はイラクの復興から手を引く、日本の関与なくしてイラクの復興はあり得るのか、それをイラクの人々に伝えてほしいというメモでございます。
だから、サマワにおいては、報道においてかなり偏った部分はございますが、直接情報収集をしていた立場でいいますと、自衛隊を外側からイラクの人たちが守ろうとする機運が相当醸成されていた。これが、一発の銃弾も発射することなく任務を終了することができた、その一番根底にある問題でございます。
そういったような取り組み、あるいは、これは政府・与党が構想を描き、実現は中途半端になった問題でありますが、メソポタミアの湿原の復元という大規模な構想のもとに、その中身は土地改良事業であり、農地整備事業でありますから、これは単純労働でありますし、大規模雇用を容易に創出することができる。
職がないから民心が荒れる、そこにつけ込んで武装勢力の活動があるわけでありますから、そういった取り組みを、我々は中途半端になりましたけれども、再びイラクの安定した地域において展開をし、安定した地域を拡大することによってイラクの安定をより確かなものにし、同じような発想のモデルをアフガニスタンにおいても実行する。そして、この給油の中断を受けた日本国の平和構築へ向けての意思表示として、こういった構想を示すことが求められているのじゃないかと思います。
ただ、平和の構築には自衛隊派遣に関する恒久法が必ず必要になるだろう。これは、この条件などはもっと徹底して議論すればいいのですが、やはり当てにできる国かどうかというのは問われるのですよ、平和主義と言ったって。いつでも対応できる国じゃないとうそつきになるのです。あちこちで、私は国際会議に出るたびに、日本はうそつきだ、安保理の常任理事国になりたいなんて百年早いと言われていますよ。やはり、きちっとやっていかなきゃいけないという話であります。
だから、そういった議論をちゃんとやっていただく。その中で、例えば陸上自衛隊についても、武力行使について定義をし、例えばここにありますような連隊戦闘団を編成するのは憲法改正をしなければ無理だけれども、その範囲内での武器や編成の取捨選択できちんと対応できるようにしていくとかいった議論をより深めていただきたい。
そういう中で、こういったロードマップのようなものが出てくるといいのですが、やはりこれは、現在の官僚機構のあり方では無理なんです。これは、どんなに優秀な官僚がそろっていても縦割りになります。だから、やはり今継続審議になっております国家安全保障会議、日本版NSCに関する法案をぜひ上げていただき、その中で実現をしていただきたい。
この日本版のNSCは、今の与党だけじゃないですよ、民主党にとっても共産党にとっても社民党にとっても、政権をとったら必要不可欠なものですから、こういったものをつくらずしてばらばらな議論をしていたら、やはり日本国は衰退するだろうと思っております。
時間が参りましたのでこの辺にしておきますが、あと、海上阻止行動について私が申し上げたいことはここにありますので、もし必要でありましたら、おただしいただきたいと思います。
御清聴ありがとうございました。(拍手)
○深谷委員長 ありがとうございました。
次に、レシャード参考人にお願いいたします。
○レシャード参考人 ただいま御紹介にあずかりましたレシャードです。
私は、アフガニスタン出身でありまして、日本で留学して、そして日本におきまして大学を卒業して、今は、アフガニスタンにおきますNGOを立ち上げて、医療と教育面でアフガニスタンを支援しております。私は、その立場におきまして、アフガニスタンの現状を少し皆様方に御理解いただいた上で、特措法の話をその次にさせていただきたいと思っております。
この中で、先生方はアフガニスタンの問題は大変よく御存じだろうと思いますし、これだけ騒がれております関係上、あえて今さら申し上げるべきではないでしょうけれども、アフガニスタンの今まで置かれた立場、あるいは来た歴史を少しお話しさせていただきたいと思います。
御存じのとおり、アフガニスタンは、一九七九年にソ連軍の侵攻に対して徹底的な抵抗をすることを目的に、多くのアフガニスタン人がムジャヒディンとして結集し、恐れをなすことなく戦場へ繰り出していきました。その中には、子供、大人、老人までがそういう神聖な気持ちを持って参りました。しかし、彼らが持っていたものは、わずかな古い時代おくれの武器しかなかったんです。そのときに、対ソ連軍の最新兵器には当然歯が立たず、多くの人々が犠牲になりました。
冷戦時代のあおりを受けて、西側、特にアメリカ合衆国を中心とした国々が、ソ連軍の敗北が政治的な勝利のためのチャンスとみなして、大量の武器をアフガニスタンあるいはムジャヒディンに手渡すことにしました、もちろんアフガニスタンだけではなくて周辺の諸国もそうですが。当然のことながら、それだけの武器を使えるということは彼らにできず、方々で素人に軍事訓練が行われ、そして彼らが軍隊として育てられてまいりました。
結果的に、十年間という長い戦争の末、アフガニスタン人百五十万人とソ連軍三万人の犠牲者を出すことになり、アフガニスタンの全土が破壊された状況が残されました。勝者も敗者もいない現実の中で、戦いに終止符を打つことになりました。
だれもがこの戦争の終結でアフガニスタンには平和が訪れると確信しておりましたけれども、残念ながら、大量の武器が人々に静かな生活をする猶予を与えませんでした。個人的な利益や部族間の憎しみのためにあおり立てられるように内戦が始まり、その間、一般市民の犠牲者が五十万人と言われ、多くの町、村が破壊されました。武器を提供した国や勢力は、この悲劇に対して知らぬふりをして静観しておりました。
このような状況が、結果的に、アフガニスタンではタリバン政権、世界ではアルカイダの発足につながり、当時は、この無関心さが世界じゅうを恐怖と悲しみのどん底に陥れるはめになることは、だれも予測はしていませんでした。
ニューヨークの破局的なテロやその後のアフガニスタンの運命、そしてイラクへの進攻等は、もう皆様方御存じのとおりのことですが、このような流れやその結果を踏まえて、アフガニスタンではタリバン政権崩壊後に新政権が発足し、平和を構築するためには国際社会はこれらの武器を集める必要があることをおくればせながらやっと認識し始めて、これが日本の支援によって行われてきた武装解除あるいは動員解除、DDRのことであります。
しかし、大きな問題は、今まで軍閥に雇われて戦いや人殺しで食べていた人々は、武器を取り上げられた後は何をして食べるすべにすればいいのかという問題であります。職業訓練を行うとされてはおりますが、産業らしいものは工場もなく、農場はまだ地雷だらけであり、地方では治安が安定していない状況の中で、衣食住の確保という当たり前の生活をするためにだれがどこで勤めてどういうふうに収入を得ればいいかということは、考えられていないのが現状です。
想定期間中に登録された六万人が武器を手渡しましたが、登録されていない人々はその倍を数えるという現実がいまだに認識されていないのです。一方、周辺の国々から毎日のように新たな武器が輸送され、軍閥に手渡されていることは、この問題をますます複雑にしております。
一方、最近、地方におきまして治安が悪化し、多くの一般住民が犠牲になっております。その理由の一つは、国際援助の不公平かつ効率の悪い分散の仕方にあります。開発や復興の名においてばらまかれている援助金によって都市部と地方の格差が広がり、就職の機会や収入の額などにおける差別が政治に対する不信につながり、結果的に治安の悪化の誘因の一つになっております。
しかし、この現実には多くの政治家やその支援者たちは目を向けることなく、すべての犯罪行為はタリバンの残存者による犯行として処理されて終わらせております。
二〇〇一年九月十一日の米中枢部の同時多発テロの後、米英軍はアフガニスタンのタリバン政権に対して、アルカイダ指導者をかくまっているということで軍事攻撃を行い、崩壊に追い込みました。
当時は、パキスタンを除くアフガニスタンの隣国はもともと反タリバン組織の北部同盟を、あるいは、イランはシーア派のハザラ族を宗教的、民族的なつながりで支援しておりまして、双方ともタリバン政権の崩壊を歓迎しておりましたので、米英軍に対して支援しました。
一時はこの作戦は成功したかのように思われましたが、米英軍事介入後のしばらくは多額の資金支援、外交的介入、国連を初めとする人為的な支援が功を奏して秩序も保たれるようになりましたが、時間がたつとともに国際社会の関心が薄れ、支援や外交的な努力がイラクに傾くことで、カルザイ大統領が用いる政府の権威が限局化し、威光が首都カブール以外の地方に及ばないというのが今の現状であって、国民の不満が最高潮に達している状況です。
その中で、パキスタンが間接的な支援をするタリバンの残存勢力が台頭し、軍事的な攻撃が続き、治安を再び悪化させ、一般市民や国民を恐怖の渦に巻き込んでおります。中には、政府に対する不満と将来に対する不安から反政府勢力に加担する分子もあらわれています。当然このような不満は、カルザイ政権に対する直接的な反応であるかたわら、米政権に対する不信感にもつながり、結果的には米政策の失敗に終わることを危惧しております。
そこで、米政権を初め日本政府、NATOなどはもう一度アフガニスタンに対する政策を見直されるということで、イラクでの失敗を補うかのようにアフガニスタンに関心が傾けられるようになりました。
新たな関心と関与がどこまでこの傾向に歯どめをかけることができるのかは不透明です。しかし、現地の需要も考えずに、国際情勢の渦の中で先の見えない軍事援助は、再びアフガニスタンが政治のおもちゃになることを意味し、アフガン国民の立場としては、このような先の見えない行動は迷惑な話であります。
アフガニスタンにおきまして、テロの犠牲者は年々増加し、皆様方の手元にお渡しさせていただきました資料は、アフガニスタン政府そのものが、十月三十一日、ちょうど数日前の発表によりますとことしの自爆テロによる犠牲者は千二百人を数え、その多くは一般市民であります。このテロや自爆に使われる武器は、アフガニスタン国内で製造されているものとは到底考えられません。当然周辺の国々から運ばれて使われていることは、容易に想像できます。
一方、アフガニスタンにおける麻薬の栽培や輸出は大きな国際問題であります。この麻薬もまた、武器と逆ルートで周辺や隣国に運ばれ、国際市場に提供されています。
御存じのごとく、アフガニスタンは内陸部にあり、周辺はパキスタン、イラン、中央アジアの国々に囲まれております。今述べました武器の輸入にしても麻薬の輸出にしても、このような国々を経由して行われていると思われるのは自然です。当然、国際社会を恐怖に巻き込んでいる国際テロ、アフガニスタンにいるとすれば、アルカイダの行き来するルートもこのルートであるはずです。もし、海上、特にインド洋に流れるとすれば、それは国境を通るものの何分の一にすぎないと想像されます。
とすると、アフガニスタンから世界に脅威になる武器、麻薬、テロを制限し監視するであるならば、海上で管理するよりは、国境で管理し監視する方がよほど理にかなっているのではないかと私は思います。もちろん、特措法は、米軍や連合軍との協調の意味では重要かもしれませんが、アフガニスタンの国だけの事情を考えるならば、二の次の問題ではないかと私は思っております。
その中で、我々カレーズの会は、二枚だけお配りさせていただきましたが、最も治安の悪い地域であるカンダハルにおきまして医療の現場で活躍をし、過去五年間で十二万人の患者の診察を現地のクリニックで行いました。そのうち約一〇%は無医村や難民キャンプへの往診によるものでありました。そのような無医村では、教育の機会のない子供たちには寺子屋方式の学校を立ち上げ、約三百人の子供たちの教育も行ってまいりました。しかし、残念ながら、治安の悪化とともに、このような地方の活動も制限されるようになりました。
また、昨年九月から始めました、子供や母親に対して施行された予防接種は一万七千人を超えております。しかし、皆様にお配りいたしました資料の中でもおわかりのように、アフガニスタン全土におきまして新生児の死亡率は一千出生に対して百四十三、簡単に言えば一四・三%と高く、そして、お産のときに多くの母親が犠牲になっています。お産で亡くなるのは、十万のお産に対して千六百から千九百、一人のお母さんが七回お産するということになりますと、約七人に一人がお産で死ぬという計算になります。
そして、皆様方にお配りさせていただいた資料を見ますと、カブールではこれが一〇%台でありますけれども、六〇%という地方があって、二人に一人が犠牲になるというこの地域格差も、皆様にぜひとも御確認していただきたいと思います。
また、五歳未満の子供の死亡率も、その資料の中は二百五十七ということになっていますが、けさのNHKのテレビでちょうど、百九十一まで改善したけれども、世界の四位で大変最悪な状態であるという報告がありました。百九十一に訂正させていただきます。特にこの状況は地域格差が大きく、アフガニスタンの現状は大変厳しい状況にあります。感染症が多く、インフラの基本である衣食住がままならないだけでなく、方々で敷かれている地雷の恐怖が日々の生活を圧迫しています。電気も水道の恩恵も国民のほとんどが受けることはありません。
この状況の中で、アフガニスタンにとって自衛隊による支援が必要不可欠であるかどうかということをお考えいただきたいと思います。
しかし、NGOや民間レベルでの支援や援助の需要が多く、インフラ整備が最重要課題であります。アフガニスタン国民は日本に対して好意的な印象を持ち、日本は自分の利益のみを押しつける国ではないと思っています。アフガニスタンの人々のことを心から気遣って援助しているとみんなそう日本を判断しております。このようなよい印象と信頼を、自衛隊の派遣や援助金の無駄遣いによって損なわれないことを心から願っています。
最後になりましたが、さきの森本先生あるいは小川先生もおっしゃっておられたんですが、今や日本は政治的、経済的に世界の第二位の先進国であり、国際社会からさまざまな貢献を期待されています。また、国連の常任理事国を目指している日本にとりましても、ODAを通じた、調和のとれた国際貢献を行う責任を果たすべき時期に来ていると思います。そのためにも、広い視野に立った、偏りのない、平等と奉仕の精神に基づいた貢献を行うことが必要不可欠ではないかと思います。
日本政府が一日も早くこのような役割を果たすことで世界の信頼を得ることを期待して、私のきょうのお話を終わらせていただきます。
ありがとうございました。(拍手)
○深谷委員長 ありがとうございました。
次に、伊勢崎参考人にお願いいたします。
○伊勢崎参考人 皆さん、きょうはこういう場に招かれまして、私、大変個人的に光栄に思っております。どうもありがとうございました。
私の説明は、お手元のレジュメに沿って行いたいと思います。カラーの図が入っているものでございます。
私伊勢崎は、二〇〇三年から二〇〇四年まで、日本政府の一応武装解除の方の代表といたしまして、国の一員としてアフガンに駐在しておりました。武装解除のことは、これからまた説明いたします。
それ以来アフガンには足を踏み入れていないんですけれども、いろいろと国際会議その他で呼ばれることがありまして、ついこの九月、先月であります、冒頭にありますアワー・エンゲージメント・イン・アフガニスタン・インターナショナル・パーラメンタリー・ラウンドテーブル・イン・ベルリンという、これはドイツ政府とカナダ政府が協賛で、アフガンに出兵しているNATOもしくは部分的に非NATO加盟国の国会議員、つまり与党側の国会議員です。反対勢力ではなくて、アフガンの出兵をそのまま維持したい、それぞれの世論と闘いながらアフガンへの貢献を維持したいという国会議員の集まりでありました。それに加えて、アフガニスタンより、内務大臣を中心とした議員団も一緒に参加いたしまして、日本からはなぜか僕だけが招待されて行ったわけであります。
そのときに、これはクローズド会議でございまして、とにかく密室で言いたいことを言おう、アフガン政策に対して本音をぶつけ合おう、そういう会議だったのでございます。ですから、これはミニッツその他は全然公開されておりません。
それで、その要点であります。このアフガンにおける最重要課題、特にNATO加盟国がどう考えているかということが以下の三点であります。
一つが、まず治安問題。これは当たり前でございます。でも、ただの治安問題じゃなくて、土台からの再構築というふうにこれは書いてあります。土台とは何か。これが後で言うSSRもしくはルール・オブ・ロー、法の支配ということなんですけれども。
特に今、国際部隊の作戦は、大きくOEFとISAF、これは部分的にプラスPRT。
ISAFというのは、つい最近までカブールだけだったんですけれども、国際社会の要請に応じてカブールの外に出る。これは、PRT、地域復興チームという形で出ていったわけでありますけれども、このマンデートの混乱ということが大変重要な懸念事項になっております。
OEFというのは、御存じのように、NATOの集団的自衛権から発した、テロリストをせん滅するという戦争でございます。ISAFというのは、どちらかというとブルーヘルメットに近い。国連が指揮権を持っているものではありません、NATOの指揮下でありますからブルーヘルメットではありませんが、一応、国連憲章第七章に準じて国連の承認を得ているということで、これはブルーヘルメットに近いものであります。これはマンデートの混乱ということなんです。
つまり、NATOの加盟国の中には、この両方の作戦に同時に出している国もあるんですね。これが法的根拠も持っていく武器も全然違う作戦でありまして、目的が違いますので。このマンデートの混乱が特にISAFの方で起こっている。つまり、平和維持目的で行っているのに戦争をやらされている、そういうことですね。それで、議員たちは世論からの突き上げに大変苦労しているわけであります。それをどうするかという話でありますね。
この象徴的なのは、次に言うコラテラルダメージです。これはISAFもあるんですけれども、ほとんどがOEFです。
つまり、テロリストのせん滅のためにピンポイント爆撃を行う、その周りの、戦闘員には絶対になり得ない女子、子供が巻き添えになるという、これは今大変な数に上っております。これが、いわゆる国際部隊作戦に対するアフガン世論の反感を買っているわけであります。特に南東部での反感を買うと一般の農民がタリバンの方に寝返ってしまう、そういうジレンマを抱えながらこの国際部隊の作戦は続いているのでございます。コラテラルダメージでございます。
次に、これもアフガンの今の問題を象徴する問題として、麻薬問題です。
去年までは約八割の生産高、つまり世界で流通する天然ケシの八割がアフガン産、ことしになってから九三%、九割以上になりました。史上最凶の麻薬国家、これが今、アフガニスタンの現状でございます。
なぜ、不法である、特にイギリスを初めとしてその取り締まりに力を入れている麻薬対策が失敗して、どんどんこれがふえているのか、これは政治が腐敗しているからでございます。内部の問題でございます。
その象徴が次のGOLIAGという、これは現地で使われている言葉ですけれども、ガバメント・リンクド・イリーガル・アームド・グループ、これが一番問題なわけであります。
これに腐敗した警察が加担して、国家レベルで、つまり、どういうことかというと、我々が武装解除として免罪符を与えた元軍閥たち、そのほとんどが今閣僚もしくは政治家になっているわけでございます。これがその地域地域で、不法に武装させた若い者たちを使わせて農民を指導し、脅迫し、麻薬生産に邁進している、これが今の状況なわけであります。
つまり、国際部隊の作戦というのは、いかに表面的に外国人部隊が戦ってもしようがない、ここの土台の部分が崩れている。やはり、アフガン政府が独自の力、法の支配、ルール・オブ・ローをしっかりしないと国際部隊の作戦までもうまくいかない、そういう状況なわけであります。
実は、この考え方というのは、二〇〇三年当時、武装解除を始めたときから、アメリカの軍事作戦の一角、これはアメリカの方針です。それが次に言うSSRというアフガンの治安分野改革、つまり、健全な軍、国軍、健全な警察、健全な司法システムをアフガン社会にどうつくるか。このアイデアを出したのはアメリカです。これはアメリカの軍事作戦の一部なんです。アメリカは、当時からSSRをOEFの土台として考えてきたんです。
そこに、不可避的に非常に貴重な貢献をしたのが日本です。日本が成功させたDDRというのは、これは職業訓練みたいなことに考えがちですけれども、アメリカにとっては軍事的な貢献なんです。極めて必要不可欠な軍事的な貢献なわけであります。
しかし、このSSRが今崩壊しております。これが二番目の、支援国・コーディネーションの再構築。
つまり、SSRというのは、アフガンにおいては五つの柱がありまして、その根幹が当時は武装解除だったわけでありますけれども、武装解除だけが成功しちゃったんです。ほかの、国軍もまだまだ、警察は腐敗の温床であります。警察がうまくいかなければ、司法がうまくいくわけがありません。麻薬は元軍閥たちの資金源になります。これもうまくいっていない。そうすると、武装解除だけが成功しちゃったわけであります。
これは、武装解除としては失敗であります。日本が百億円の血税を投じてやった武装解除は完了しましたが、SSRという中身では失敗です。なぜかというと、力の空白を生んでしまったわけであります。
武装解除というのは必ず力の空白を生みます。どんな邪悪な武装勢力があろうと、それがある期間、一定、その地方にあることによって、ある程度のパワーバランスが生まれます。そのパワーバランスを崩すんです、武装解除というのは。当時から僕はそれを警告していて、武装解除というのは必ず単独では成功させてはいけないという、それが今できていないわけであります。
その力の空白の問題というのはどこに向かうか、タリバンなんです。つまり、我々が武装解除したのは、九・一一後の報復攻撃後、タリバン、アルカイダ掃討作戦のために米軍と一緒に地上戦を戦った北部同盟なんです。彼らを武装解除したんです、我々は。ですから、この力の空白が埋まらなければ何が起こるかというと、タリバンは復活します。それが今の状況であります。
その後で、日本はDIAGというDDRの後継プロジェクトを今やっておりますけれども、これは非常に評判が悪いです。うまくいくわけがないのでございます。なぜかというと、これは内務省、警察を通じてやっていますので、それが腐敗の権化なわけです。うまくいくわけがないわけです。とにかく、今このコーディネーションの中で一番問題となっているのは、警察、内務省改革、これをどうするかという問題です。
三番目でございます。これがちょっとショッキングだと思うんですけれども、タリバンとの政治的な和解。このクローズドミーティングでは、かなり重要な議題として、けんけんがくがくの議論がありました。テロリストとの和解でございます。
これは日本では全く報道されませんでしたが、ことしの三月、いわゆる恩赦法、アムネスティーローがアフガン国会を通過いたしました。これはどういうものかというと、すべての戦争犯罪、タリバンを含めてです、すべての戦争犯罪、一般兵からトップリーダーまで、あのオマル師まで含めて、すべてを許すということです。戦争犯罪を問わないということであります。これは、大変に欧米社会にショックを与えました。つまり、あのカルザイ政権がテロリストとの和解のために法的な枠組みをつくってしまったということであります。
これは、もちろん、今の閣僚の中にはタリバン以上の戦争犯罪をした人間がいますので、彼らの免罪符のためだという側面もあります。と同時に、これはやはり戦争犯罪を扱うものですから、国連を中心にした人権団体が大変警戒感を示しています。でもしかし、不可避的なもの、こういうふうになるだろうという一つのあきらめを伴った、もうこれしかないのではないかということになっております。
事実、ことしになってから、イギリスは、アフガン戦においては、これは長期戦になる、長期戦と言うというのは、多分十年や二十年では終わらないということですね。新任の防衛大臣が労働党の大会で、これも報道されましたけれども、タリバンとの政治的な和解というのは考えなきゃいけないと言い始めております。アメリカの最重要同盟国のイギリスでさえです。
もちろん、タリバンが潜伏しているのは、歴史的にトライバルエリアと言われるパキスタンとの国境です。今、反米、反ムシャラフ、反カルザイがタリバンになっちゃっているわけであります。だから、このタリバンとの政治的な和解ということは、対パキスタン政策の側からも同時に考えなきゃいけないという問題であります。
この三点であります。
こういう現実の中で日本が何を果たすべきか、これが以下に書いてあるものであります。
今、小川先生から、対テロ戦を日本独自に主体性を持って考えることが必要であるというのは、これは本当にそのとおりでございます。
僕は、対米協力という意味でも、日本が主体的にアフガンにおける対テロ戦にかかわるには、やはり、一時期日本がヒーローであったSSRの復活、今は崩れてしまいましたけれども、それを再建、再構築するのが、一番日本が独自性を発揮できて、なおかつ、アメリカが喜び、もちろん、アメリカのだれが喜ぶかということが問題ですよ、ブッシュさんではないと思いますけれども。
カウンターパートナーだったアメリカ軍の首脳部、彼らは僕らには頭が上がりません。なぜかというと、僕らのおかげで、アメリカが担当している新しい国軍が、今、地上のOEFの作戦で戦っているんです。彼らの死亡者の方が、国際部隊の死亡者よりも多いんです。
とにかく、再構築をするためには日本の独自性、これは当時、美しい誤解、ビューティフルミスアンダースタンディングとか言われていたんです。これは、日本が言った言葉ではなくて、そういうふうに自然に言われてきたんです。
最難関プロジェクトであった武装解除が、つまり、みんな武装解除したくないのに、そういうやつらを説得して日本がなぜできたのか。最初はみんな失敗すると思っていたんです。僕らは非武装で、ODAを使ってやりました。それも、口だけです。非武装で、特に北部の方ではまだ巨大軍閥の二つが重火器を使って戦争しているときなんですね。そこに入っていって、停戦させて、それで重火器を中心とした武器回収を我々が行ったわけであります。
これをなぜ日本ができたか。これは、美しい誤解、つまり、武力を背景にしてごり押しをしない、大変力のある中立な国だというふうにアフガンでは見られているんです。これは、ナイーブかもしれませんけれども、本当です。軍事的にも本当です。あの軍閥たちもそうでした。日本人に対して大変な信頼を向けております。
この美しい誤解が今、崩れつつあります。なぜかというと、例のテロ特措法によるインド洋の貢献というのは、つい最近までアフガン社会では全く認知されていませんでした。あのカルザイ大統領でさえ、こちらが言うまで知りませんでした。つまり、僕は、当時はうそをついていたわけです。美しい誤解を利用した。つまり、日本はアメリカと軍事的に貢献していますが、それを伏せて、僕らは美しい誤解を使って武装解除をやったわけであります。
この美しい誤解は、今、崩れつつあります。本当は、テロ特措法はあのまま静かに終えんするのが一番よかったんです。でも、今回、日本が目立たせてしまいまして、今、全員が知ることになっております。これは大変危険なことだと思います。
とにかく、この美しい誤解を日本の特質と考えて、アメリカの軍事作戦においても日本しかできない貢献の分野と考えて、GOLIAGをターゲットに政治浄化、特に内務省改革、こういうところで現地での政治手腕を発揮するのが僕は一番重要な貢献だと思います。
それと、タリバンです。これもやはり日本の美しい誤解。タリバンとの交渉というのは、大変にこれから難航をきわめると思います。だけれども、それしか出口がないというのが、今、共通認識なわけでございます。そこに日本が決定的な役割をできると僕は信じております。
最後ですけれども、人道援助は代替案になるか。代替案というのは、自衛隊を出すかわりに代替案になるか。これは、僕はならないと思います。
なぜかというと、今、同じ会議に出席したバーネット・ルービンというアメリカの大変高名なアフガン専門家がいるんですけれども、彼の言葉です。最初僕が言った、今アフガニスタンは史上最凶の麻薬国家になっているわけです。彼は、北朝鮮とアフガニスタンを比べました。つまり、世の中に害を及ぼしている国という意味で、北朝鮮と比べたんですね。北朝鮮の方がひどいと言っているわけです。
どういうことかというと、北朝鮮は閉鎖しております。アフガニスタンは、これだけ国際部隊が入って、国際支援が入って、なおかつ麻薬対策ができないんです。これは多分、人類史上極めてまれな、もしくは経験したことのない政治腐敗が進んでいると考えた方がよろしい。こういう国に対して人道援助というのは一筋縄ではいきません。なぜかというと、北朝鮮に今どんなに飢えた人がいても、素直に人道援助とならないでしょう。それと同じ理屈なんです。
だからといって、アフガニスタンに今援助をとめるということじゃないですよ。しなきゃいけないんです。でも、やるんだったら、それだけの覚悟をしなきゃいけないということです。それができるのはだれかということであります。やはり中立に見られる第三者が必要であります。
最後です。補足です。
今、自衛隊を、インド洋の活動を継続する、もしくは、地上部隊としてISAFもしくはPRTの一環としてアフガンに出す、この考え方は日本国の国益にはならないと私は断言いたします。
なぜかというと、まず最初は、日本が本当に主体的に対テロ戦のために貢献できる美しい誤解を崩す、これが一番大きな理由。もう一つが、一番下に書いてあります、民間邦人、NGOへの保安の影響、これが大であります。
皆さん覚えていらっしゃいますでしょうか。鈴木宗男さんのあの事件があった、恫喝事件、ちょっと言葉は選ばなきゃいけませんけれども、二〇〇二年の例の第一回の東京アフガン復興会議ですね。あのときからすべてが始まったわけであります。あのとき以来、日本政府は在外公館も開けない、JICAも危なくて、JICAの職員も送れない、ましてや自衛隊も送れないときに、日本が外交的な顔をつくらなきゃならないといったときに何をしたかというと、公的資金をNGOに託して、NGOを送ったわけです、アフガニスタンに。今NGOとして働いている若者は、自己責任で行ったわけではありません。日の丸を背負ってアフガンに行ったわけであります。
今、私がもしテロリストだったら、戦略的にこう考えます。次のターゲットは日本人です。日本人はソフトターゲットです。アフガニスタンでは、今までだれも犠牲者は出ていません。これは非常にまれなことです。これはすべてが美しい誤解のためだったとは言いません。それはちょっと暴論です。でも、結果として出ていないんです。
我々は、危機管理という文化がありません。自己を管理するという文化がありません。ソフトターゲットです。今テロリストがソフトターゲットである日本人をねらえば、一番政治的な効果が上がると思います。それはつまり、日本がみずから目立たせてしまったこのテロ特措法の問題であります。今、日本人をねらえば、最大のブローを、打撃をアメリカに与えられる、僕がテロリストだったらこう考えます。
最後にもう一度強調したいんですけれども、日本の若者たちは自己責任で行ったわけではありません。
ありがとうございました。(拍手)
○深谷委員長 ありがとうございました。
以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。
―――――――――――――
○深谷委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。三原朝彦君。
○三原委員 四人の先生方、本当に御苦労さんでございました。お一人お一人に短い時間ですけれども質問させていただこうと思っています。
森本先生、私たちなんか、地元に戻ってきますと、国民の人たちは、イラクへの攻撃と今度のアフガニスタンのテロに対する攻撃というのがよくわかっていない。ただ、どちらも軍事的な面がテレビなんかを見ると出てくるものだから、ついつい、何だか攻め込んでいっているような誤解をしちゃうんですよね。それで、明らかに違うんだと僕らも説明をしっかりするんですけれども。その点について、よりわかりやすく、一般市民レベルに対してその差異あたりを説明するとするならば、どういう言い方ができるんでしょうか。
○森本参考人 確かに、先生御指摘のように、アフガニスタンにおけるいわゆる軍事活動とイラクにおけるいわゆるイラク戦争というものをいわば混同して、区別がつかないで議論をしたり理解したりしているという傾向は多く、それがひいては我が国の政策を理解するときに大変大きな障害になっていることは確かですけれども、そもそも、アフガニスタンの戦争とイラクの戦争というのは、私は三つ根本的な違いがあるのではないかと考えています。
第一は、根拠ということであり、アフガニスタンについては、二〇〇一年の九・一一というものが直接の契機になって、最初に行われたアメリカ主導のいわゆるOEFというのは、これは直接安保理決議に基づかないものでしたけれども、いわゆる安保理決議一三六八において確認された個別的自衛権を行使してアメリカ主導で行った活動に、その他の国々が協力をして始まった作戦で、その結果として、タリバンの政権が十一月の末か十二月に崩壊していき、同時に、安保理決議一三八六に基づいて進められた多国籍の部隊がISAFといういわゆる治安維持の活動をやって、その作戦が今日なお続いている。
すなわち、根拠というものが、一つは、いわゆるアフガニスタンでの作戦というのが、最初はテロを掃討するということで始まって、イラク作戦は、二〇〇三年三月の二十日、ブッシュ大統領が説明したように、当時のフセイン政権の大量破壊兵器を四十八時間以内に提出し、フセイン及びその二人の息子が四十八時間以内に国外に出るということがそもそもの戦争の発端であって、いろいろ議論はありますけれども、結果として、直接の安保理決議なしに始まった作戦という見方が一部にあることは御承知のとおりです。
この二つの作戦は今なお続いていますが、第二に、この作戦、戦闘の性格が根本的に違って、イラクの中で行われているのは、いわば結果として見ると、イラクの中における宗派対立をおさめて、イラクの治安を維持回復しようという作戦であり、アフガニスタンについては依然として、アフガニスタン及びパキスタンの国境にまたがる地域に存在するアルカイダの残党兵力とタリバンを掃討するという作戦がアメリカを中心として行われている。つまり、作戦の内容が根本的に違う。
第三に、国際社会のいわゆる理解というものでありますが、アフガンの作戦については、中国、ロシアといえども大きな反対がなく、アメリカの中では民主党さえも、対テロ戦争に多くの国民が支持をしているんですけれども、イラク戦争については、六割以上のアメリカの国民が世論調査によれば反対している。これは、国際社会全体も同様の傾向を示しており、はっきり言うと、イラク戦争については理解がより低く、アフガニスタンの作戦については、今日、国際社会で広い支持を得られている。この三つが私は根本的に違うのではないか、このように理解しているわけでございます。
以上でございます。
〔委員長退席、田中(和)委員長代理着席〕
○三原委員 小川先生、きょう先生がいらっしゃるというので、ちょっと先生の、この前、十一月に出された論文あたりを読んでみました。
そうすると、先生はもう明確に、テロとの闘いを対米支援というようなことで誤解しちゃだめだよということを明確におっしゃっておられて、先ほどもお話しされたテロ克服へのロードマップ、このことを書いていただいて、日本にとってはロードマップがないじゃないか、それがやはりこれから先こういう場面が起こったときに混乱するもとだということを言われて、それで今さっきも説明していただいて、大いに私は共感するところが多かったんです。
そういいながら、我々は常に日米安保条約というものを持っていて、何も、例えば自衛隊をどこかに出すときにもその意識を捨象して行動するというわけはないんですよね。そこのところの誤解を生ぜしめないで、なおかつ、先生が言われたようなロードマップ、僕は大賛成ですが、それを上手にやるという繊細さというかうまさを持たなきゃいけないと思うんです。でないと、次から次に誤解が起こる、これから先あるだろうと思うんです。
そういう点で、もしこれから先、野党の方の言われたのは、ISAFに出しても、これは国連がちゃんと言っておけば出すことだってできるじゃないかという言い方はありましたけれども、今の、十一月一日で終わっちゃったというか途絶えた海上自衛隊を出すのと違って、もしISAFに今から先、平和の構築のためにロードマップに従って出すとしたら、そのときに、より注目、注意しなければならない点が、もし、今さっきの説明以外にもございましたら、ちょっとお話ししていただきたいと思うわけであります。
○小川参考人 御質問ありがとうございます。
私は、ISAFであろうと何であろうと、国連の平和維持活動を含めて、必要なところに必要な形で、日本国憲法の制約の中だけれども、軍事組織としての自衛隊は出していけなければいけないという立場でございます。
ただ、そのときに、日本側で、日本国内で整理しなければいけない問題がかなりある。これは、防衛計画大綱の改定あるいは集団的自衛権に関する議論でも一番大もとのところで整理が求められる話なんですけれども、日本の議論は、例えばアメリカと同じような、世界をまたにかけて行動できる構造の軍事力をあたかも自衛隊が備えているかのような錯覚のもとに議論が行われちゃう。だから変なところに入ってしまうんですね。
実際は、我々は、自分たちの税金で維持されている自衛隊を構造的にきちんと理解しておかなきゃいけない。日本の防衛力というのは、実は日米同盟によって足らないところを補っている形になっておりまして、自衛隊というのは、構造的に見ますと、国家として外国を壊滅させる能力を持っていない。これは国家としての戦力投射能力を備えていない。だから、どこか海を渡っていって外国と本当に戦争できるかといったら、できないんです。そこのところを押さえて議論をしなきゃいけない。
だから、防衛計画大綱についても集団的自衛権についても、そういった議論がないままに進められているから着地点を求められないんですね。とにかく、日本の自衛隊というのは自立できない構造であります。これはアメリカがやはり望んでいるというところがもともとあるからです。
だから、その中においては、我々、選択肢は二つ持っております。
一つは、今の日米同盟で足りないところを補完していくあり方を、より日本の国家の原理原則に基づき、平和主義にふさわしい形に変えていく、私は日米同盟の平和化という言い方をしております。日米同盟をそっちに引っ張っちゃう。恐らくこれが現実的だろう。
もう一つの選択肢は、自立した軍事力を持つということです。アメリカは嫌がるから、安保をこっちから切る。それはいいですよ。アメリカはずっと日本が安保を切ることを怖がっているわけですから。しかし、それでも切る。その場合、日本の安全を今のレベルで維持しようと思うと、大きなコストとリスクが必要となる。
コストは、例えば、自衛隊の兵力、頭数を百二十万人ぐらいにしなきゃいけないだろう。数字はいろいろ出てきますが、大きなものです。国家公務員としての給与を与えると、人件費だけで年間で十三兆円食っちゃう。規模も大きくなるから、防衛費は年間二十九兆円余りです。
とにかくコストをカットしようということになると、国民皆兵という形をとらざるを得ない。これはこれで一つのシビリアンコントロールのあり方として、日本以外では、先進国では通用する考え方なんですが、これを日本国民が取り入れたとしても、年間二十兆円ぐらいの防衛費が必要になる。そして、同盟関係がないから心細い。その中で、いろいろな選択肢を本気で追求することになる。
その中で、一番実現しそうなものとして見えてくるのは核武装論ですよ。ところが、核武装といっても、核兵器だけ持てばいいという錯覚がありますけれども、核兵器が抑止効果を持つためには、みずから通常戦力でそれを守り切る態勢が必要になる。やはりコストは大きいんです。しかも、核武装を選択した瞬間に、民生面で原子力発電をするために七つの国と結んでいる協定を全部破棄してNPTから抜けなきゃいけない。これは、国際的孤立への道であります。
極めて大きなコストとリスクが伴う、そういったことを押さえながら、我々は、やはり日米同盟、なぜ日米同盟を選んでいるのかということを自覚して、周りの国に、こういう構造の軍事力なんですよということをきちんと政府として説明をする。その中で、自衛隊を国際平和協力活動などに幾ら出しても周りの国が懸念を持たないようにしていくということがまず重要であろう。その作業ができるようになった日本国あるいは日本国民であれば、恐らく、ISAFのような活動、あるいはもうちょっと治安任務を担うような、危険が伴うような活動においても、自衛隊をそれなりの安全を保ち得るような編成、装備で出すことも可能になるだろう、そう思っております。
お答えになったかどうかわかりませんが、ありがとうございました。
○三原委員 ありがとうございました。
私は、もっとポジティブに行動すべきだ、こういうことですが、確かに、軍を多くすれば、周りから不安定要因に思われますからね。それは確かに、先生のおっしゃることを念頭に置きながら、これから先の自衛隊の海外での三つ目の柱である活動もしなきゃいけないと思っています。
レシャード先生に次はお尋ねしたいと思いますけれども、先生の話をお聞きしておりまして、それでちょっと疑問に思ったのは、国際援助を、例えば何かもらったって、あっちのところにはたくさんあってこっちに少なくてというようなことで、不公平とか機会の不均等があるから、それがまたトラブルを起こすもとだと。しかし、先生、それを言っていますと、では、だれがどういう手段で、その一番底辺のところにまで、例えば水だ、次は食料だ、基本的な医療だと、そういうのを与える、そういうことができないから今混乱が起こっているので、卵と鶏で、トートロジーみたいなことになると思うんです。
であるならば、僕はやはり、初めにDDRなんかが行われた北の方からやってきて、一種のデモンストレーションエフェクトというかな、争っているよりもそうでない方が実は家庭生活だって安定してくる、子供の死亡率も少なくなる、そしてまた、なおかつ、学校だって行けるようになる、食べ物だって何とか一冬越せるようなものだってつくれるようになるというようなことがあると思うんですよね。
もし間違いがないとするならば、どこか地域を決めておって、より安定したところから集中的に、不均衡であっても不平等であっても、自分の足で立ちなさいというような指導を発揮する、そういう考えは、このアフガニスタンというのは、私は行ったことがないし見たことがないからわからないけれども、そういうのは余りにも夢物語であろうか、その点を先生にお尋ねしたいと思います。
○レシャード参考人 まさに国際支援の、あるいは援助の仕方の基本そのものが問われるような問題で、これはアフガニスタンだけの問題ではないと思いますが、基本的には、どんな援助をすることであっても、そこにそれをちゃんと実施できる能力のあるところをまず育てていくべき問題であって、そこが偏ることによっていろいろな不備が出てくるということではないかなと私は思います。
まさに先生がおっしゃるように、すべてのことを一遍にできるわけではないし、すべての地域を一遍にやるということは無理があります。さっき伊勢崎先生もおっしゃっておられたように、DDRの中の地域ということをやるというのも結構ですし。現実的に、実は日本の援助によって、ODAをJICAを使って、結核対策を今アフガニスタンで進めております。
この結核対策は、全国を一遍に対象にできませんので、今、北部のバルフ州だけを一つのパイロットプロジェクトとしてやって、そこがうまくいったらほかのところに進めていこうということで、私もそれに加わらせていただいているところです。
しかし、大変問題なのは、アフガニスタンにおきまして最初にこのような援助が始まったときには、実は末梢までそういうものが行き届くような一つの方策が考えられて、現実的に、例えば、学校をつくるにしてもあるいは医療サービスにしても、地方まで一応到達できるようになってきたものが、徐々に、さっきのお話であります腐敗が進むことによって、そういう資金が、実は個人的な流用が多くなる、そして地方の方まで到達できないという問題が出てきているのが今の現状であります。
そして、それが逆に、その地域の住民の不満の材料になり、それが治安の悪化、あるいは、例えばタリバンに加担する人たち、分子が出てきているというのは、実は、部族でもあるいは軍隊の者でもなくて、やはり一般市民がそれをかくまうというようなことになる、それは政府に対する不満とかそういうものにつながっていっています。
では、どうすればいいのかという大変厳しいところではありますけれども、私は、正直申し上げて、今、アフガニスタンそのもの、アフガニスタンに限ったものではないけれども、残存する能力をいかに生かすかということで、いわゆる現地のスタッフを現地のレベルでどんどん教育させて、そしてそれを進めて、その人たちをサポートするということが唯一の方法だろうと思います。
ただ、そのサポートには、やはりさっきから話題になっている日本の援助が、多くの方々が向こうで活躍しておりますし、また、現地の住民の中で大変信頼を得ているということもございますので、その信頼を生かして、そういうサポートの形で、現地のもっと細かいところの地方の分子、あるいはそういう潜在能力を持っている人たちを育てていくという方法が、今残されている唯一の方法ではないかなと思っております。
○三原委員 確かに、天はみずから助くる者を助くで、アフガニスタンの人たちが、何が正義であるか、何が不正義であるかということを認識していただいて、みずからの歩む方向を決めないことには、僕らはこっちにいて物質的なお手伝いをして、モラルサポートはしても、やはり自分の国をつくるのに、我が国の若者たちを送って血を流させるわけにはなかなかいかないですね。そういう面ではやはり、アフガニスタンの人たちの正義感というか、社会正義を何とか取り戻してやってもらいたい、こう思う気持ちはありますね。何とか先生も、よく戻っておられるんだろうから、そっちの方面で、医学で人を助ける教育もあるけれども、心の教育もやってください。お願いします。
伊勢崎先生、何度か先生の講演を聞かせていただいたことがありますし、先生がいらっしゃるというのでいろいろな論文あたりも読ませてもらいましたけれども、先生が政府の派遣で向こうでリーダーとして、アフガンだけじゃない、前のシエラレオネのときにも命がけでやられた、私は大いに尊敬をいたすところであります。
やはり、命をかけてやるというのはそう簡単にできない。なおかつ、知行合一じゃないけれども、言っていることとすることを、実際やってみようというのは、そうそう常人ができるものじゃない。そういう強い先生だからでしょう、お願いした政府あたりの人も、先生が出てきて何か政府の批判をされるんじゃないかと心配している向きもありましたけれども、そんなことを心配するなと私言ったんです。先生も日本のため国益のため世界の平和のために頑張っておられるんだから、先生から学ぶことはあっても、そんなおろおろすることない、こう言っておきましたから、誤解のないようにしてもらいたいと思います。
ところで、先生、美しい誤解と言うけれども、これは小川先生も言われたことなんですが、優しさだけでもやはりだめなんだと私は思う。私も、三泊ですけれども、アフリカなんかにもかなり行って、実際にドンパチやっておるところまで行ったことはなかったが、しかしながら、やはりアフリカで言うところの、ミュルダールの言うソフトステートばかり、ふにゃふにゃ。何かやっても、上の方から下まで、がしっとしていない。ハードステートになり切れない。それで、みんなおかしくなって、上の方の人はインモラルで、これをやってということ。
しかし、それを正すためには、やはりある面では範となるようなところがなきゃだめ。範となるというのは、つまり、残念だけれども、今レシャード先生に申し上げたら、それはだれかがやはり範とならなきゃいけないから、それがやはり、使い方によるけれども、私はISAFでありということだと思うんですよ。
だから、一概に、何かミリタリーみたいなことを、ミリタリーの人たちも使い方だと私は思う。先生もそういった面では、ちゃんとコントロールして、警察と軍とがディシプリンを受けたら、その人たちが基本になって国づくりだとおっしゃった点はあるけれども、そのためには、やはり今のところは海外の力もかりぬとやっていけぬと僕は思うんです。
美しい誤解ばかりでもいかぬなと思うけれども、その点は、先生、どうですか。
○田中(和)委員長代理 伊勢崎参考人、恐縮でございます、時間が来ておりますので、簡潔にお願いしたいと存じます。
○伊勢崎参考人 美しい誤解というものは、多分美しい誤解だから優しいものだとお思いでしょうが、大変緊迫したものでして、これは脅迫に近いんです。はっきり言って、内政干渉でございます。
つまり、武装解除といういわゆる社会の通念がないときに、特に我々が武装解除を始めたときは、相手はムジャヒディンですからね、聖戦の戦士ですよ。武士です、戦国時代の。彼らにとって、武器というのは武士の魂なんです。武装解除という言葉を発することでさえタブーだったんですね。その社会通念を変える。これは、広報戦略も含めて我々は戦略的にやったんですけれども、それにも増して、とにかく日本国民の血税である我々の支援金を中立性が確保されないプログラムには使わせないということを我々は迫ったわけであります。
その一環としてやったのが、当時の一大軍閥に握られていたアフガン政府の国防省、これはアメリカの責任だったんですけれども、アメリカができなかったんです。それを、リシャッフルせよと。国防大臣以下、次官も含めてすべて改革をいたしました。それに六カ月かかったんです。それから我々は始めたんです。これは内政干渉でしょう。相手国の、それも一番強大な一省庁に対して、人事改革をせよと我々は迫ったんです。
我々は脅迫を受けましたよ、反対勢力から。当時の在カブールの日本大使館なんというのは警備をやっていませんでしたからね。今はやっと警備体制が整いましたけれども、何も警備体制がなかったんです。大使でさえボディーガードがついていなかったんです。こんな警備体制というのは、先進国の大使館の中では唯一でした。その中で我々はやったんです。これは大変な危険を伴う問題でしたけれども、我々は屈しなかったわけであります。その意味で、アメリカは今大変感謝しているんです。彼らがやるべきだった国防省改革、一番ヘッドエーク、頭痛の種だったんですけれども、それを我々がやったわけであります。
つまり、ソフトパワーというのは、やる方の覚悟と、大変これは脅迫に近い、脅迫という言葉はちょっと強過ぎると思うんですけれども、いい内政干渉といいましょうか、それをしっかりやっていかないと全然成立しない概念であることをつけ加えさせていただきます。
○三原委員 どうもありがとうございました。
○田中(和)委員長代理 次に、田端正広君。
○田端委員 公明党の田端でございます。
きょうは、四人の先生方、大変に御苦労さまでございます。ありがとうございます。
早速ですが、まず森本先生、先ほどからいろいろお話しいただきまして、日本は海外依存度が大変高い国である、だからこそ国際的な安定、そしてまた、国際的に日本がどう貢献していくかということが大事だ、だから新しい法律の制定ということが必要である、一言で言えばそういう趣旨かと思います。ついては、民主党の対案というものが出てきて、そして議論をして、与野党協議という形でできるだけスムーズに、そういうお話だったかと思います。
それはそれで私たちも納得なんですが、そこが、まだ民主党さんの対案というものもはっきりお示しになっていないということと、それからまた、昨日、小沢党首の辞任という大きなニュースが入りまして、そこがどういうふうに民主党としてお考えになっているのかということも我々としても気がかりなところであります。
したがって、この国会、会期延長するかしないかということもございますが、そういう意味で、非常にここが難しい問題であろうと思いますが、再度、その辺についての先生のお考えと、同時に、もう一つは、党首会談で問題になったと言われている、つまり恒久法といいますか、そういったことについても、議論の先にそこのところを見詰めるべきなのかどうか、その辺のところの御判断をお願いしたいと思います。
○森本参考人 まず、民主党の対案というのは、そもそも、小沢代表がいろいろなところに書いたり、あるいはお述べになっておられることを民主党としてどう受けとめ、具体的な法案として示すということが、一番、民主党としての考え方をわかりやすく国民が理解し、かつ、立法府における審議の進め方にとって重要であり、かつ、それが民主党としての政権担当能力を国内に示すというために必要であろうと考えます。
当然のことながら、その際、その対案なるものは恐らく民主党の中ででき上がっていると思いますが、党として最終的に御審議いただいて提示するというところにまでは至っていないのではないかと思いますが、私は単なる専門家として関心を持っているのは、その対案なるものの中に、いわゆる軍民協力といいますか、自衛隊をどのような形で参加させる、協力させるのかということをどういう形で含ませるのか。単に、例えばODAとかあるいは文民の協力ということであれば、新たな法律が要らない可能性も多いわけですから、当然、自衛隊を海外に出すというときに必要な法案としての対案をどのような形で示され、それこそが、いわゆるこれから与野党協議の対象になる、スタートラインになるということになるのではないかと思います。
しかし、この場合重要なことは、実は、それと、今我々がこの委員会で御審議いただいている新テロ特措法に基づく海上での活動とどのような関係になるかであります。つまり、るる議論になっているように、アフガニスタンの地上でどのような協力をしていき、日本がどのような取り組みをするのかということと、今審議をしていただく法律とはいわばどういう関係にあるかです。
私は、先ほど申し上げたように、地上でどのような活動をするにせよ、まず、一たん引いてしまった海上自衛隊を速やかにインド洋に派遣するためのこの新テロ特別措置法を速やかに成立させることが重要であって、陸上、地上でどのような協力をするかというのは、その次に考えるべき方策なのではないかと思います。
恒久法も、まさにそういうコンテクストで議論すべきであって、まずこの法律を通し、その後に恒久法、一般法なるものを御審議いただくときに、果たしてこれを今の憲法の枠の中で考えるのか、あるいは憲法を含めた大きな枠の中で考えるのかは、その次に出てくるステップであって、同時にこの議論を進めるということには少し非現実的な面があるのではないか、このように考えているわけでございます。
以上でございます。(田端委員「恒久法の話、一言でいいですよ」と呼ぶ)恒久法については、当分は、まずこの法律を通してから、その次に恒久法の与野党での協議に入っていくのが望ましい姿なのではないかということを強調した次第でございます。
以上でございます。
〔田中(和)委員長代理退席、委員長着席〕
○田端委員 ありがとうございます。
次に、小川先生にお願いいたします。
先生には、六年前、この委員会でいろいろ御示唆をいただきました。そして、そのときにも小川先生が強調されたことは、今回の前の、新じゃなくて旧の方のテロ特措法のときの議論の中でも、これは対米支援ではないんだ、あくまでも国際平和活動に日本がどう参加していくかという議論なんだという基本的なスタンスをお示しいただいたと思いますが、これは新法においてもまた同じ原理だと私は思います。
それで、十一月号の先生の論文も読ませていただきましたが、大変参考になったことは、パキスタンというものの存在を大変強調されていた、こう感じます。パキスタン海軍が参加していて、そのパキスタンの海軍がインド洋におけるいろいろな船を立入調査する。その場合に、決してイスラム圏以外の人間ではできない、パキスタンの人たちだからこそできる、アラーの御名においてということで宣誓して乗船して検査をするという意味においては、これは大変大きな功績があったということをおっしゃっていて、そして事実、このテロの活動というものが、インド洋における出入りとか照会件数とか、そういう意味で、数字の上でも減ってきているということをお述べになっていますが、私はそういう意味では大変よかったと思います。
ところで、そのパキスタンが今ややこしくて、一昨日ですか、非常事態宣言等になっていますが、そういう意味で、パキスタンがそういう不安定になることが非常に私は心配なんですが、まずその点、ちょっとお伺いしたいと思います。
○小川参考人 御質問ありがとうございます。
パキスタンの不安定な政情というのは、とにかく、テロ克服のための取り組みからしても、これは無視できない要素だと思います。ただ、これはパキスタンの中で、例えばブット元首相がまた帰国をしてきて爆弾テロが起きる、そういうような大変複雑な状況がございます。また、そこに乗じて、イスラム原理主義者あるいはアルカイダにかかわる人たちの活動もある。ですから、これは、日本としてどれぐらいパキスタンの安定にかかわることができるかというのは、非常に思い描くことが難しい問題でございます。
ただ、これまでの日本とパキスタンとの友好的な関係からいいまして、パキスタンの安定にとって、つまり、テロとの闘いがどうのこうの以前に、やはり日本ができることは何かという角度からきちんとアプローチをし直し、結果としてパキスタンの政情が安定をし、それがテロ克服に非常に資する、そういったような道筋をかく。これは、そんな遠回りな、そんなまだるっこしいことはできないよと日本ではやじを飛ばす側が必ず言う話でございますが、やはり遠回りに見えても、正面から取り組んでいくのが一番早いんですね。そういった取り組みをパキスタンについてはまずすることが大事ではないかとちょっと思ったりしています。
ありがとうございました。
○田端委員 もう先生のおっしゃるとおりだと私も思います。
アフガニスタンとパキスタンとの国境のパキスタン寄りのところのFATA地域、そこが、先ほど来からもいろいろな議論が出ているテロの拠点といいますか、そういう意味では、パキスタン側もこれはしっかりと、ここはちゃんとやっていただかないと、国境を挟んで行ったり来たりしているわけですから。そういう意味では、パキスタンに対する日本の経済支援のあり方、民生支援のあり方、これもまた、テロを抑止していくという意味では大変大きな影響力を持っていると私も考えています。
それで、先日もこの委員会で、外務大臣にもお尋ねして、より一層このパキスタンの民生支援、ODAを強化すべきだということも主張させていただきましたが、それは、先生にイラクのときにもいろいろ御指導いただきました、先ほどお話ございましたメソポタミア湿原に対しての自然再生、復元ということで、UNEPを通して、そしてそれを自然再生させることによって雇用対策とか民生の安定になるとかという、これがまだ中途だけれどもというお話でしたが、しかし、大きな成果をおさめたことは事実だと思いますので、そういう意味で、パキスタンを通して、そういう形でアフガンの民生安定に一つの方向として日本もまだまだやるべきことがあるのではないかというふうに考えているわけでありますが、お考えをお願いしたいと思います。
○小川参考人 どうもありがとうございます。
私どもが考えがちなのは、パキスタンだったらパキスタン、アフガニスタンだったらアフガニスタン、イラクだったらイラクと、個別の国あるいは個別のテーマで何かをやれないかという話になりがちだということなんですね。
ただ、これは、広く言いますと平和の構築、もうちょっと絞り込んでテロを克服するという営みの中で、例えば、アフガニスタンへの日本独自のかかわりがあり、それがパキスタンからの日本独自のかかわりと相まって、国境地帯、トライバルエリアにおけるイスラム原理主義者の活動を封じ込めていく。あるいは、イラクにおける、それこそメソポタミア湿原の復元の構想をさらに進める、それが、北部クルド地区からの韓国側の安定化政策と協力し合ってイラク全体の安定に大きく資する。そういう中で初めて、アフガニスタンあるいはパキスタン、イラク、あるいはアフリカのスーダンのダルフール、そういったところにおける安定をもたらす、そういう動きになってくると思うんです。
ですから、我々が描くべきロードマップというのは、広くその辺を見据えて、そしてきちんと、どういう取り組みをするか、どういう効果が出るのか出ないのか、そういう話にしていかなきゃいけないんですね。例えばインド洋における海上阻止活動にしても、効果があるかないかとか、抑止効果が上がったから活動する船は減ったというのは、これは認めるべきことだと思います。もちろん、大部分は密輸船だったかもしれない。ただ、職務質問するお巡りさんの数が多ければ、泥棒はだんだん減っていくわけであります。
やはりこういったことは同時にやりながら、しかし、アフガニスタンの陸上において、ISAFの中のPRTにどう日本の軍民がかかわっていくかとか、日本なりの取り組みをどうするかとか、同時にやっていくことをきちんとかくのがロードマップだと思うんですね。ですから、パキスタンの問題についても考えるときは、アフガニスタン側からイラクの問題、スーダンの問題、そういったことを視野に入れて我々は語り、また具体化を進めていくべきではないかと思います。
ちょっとお答えになったかどうかわかりませんが、ありがとうございました。
○田端委員 と申しますのも、補給支援活動法の一日も早い制定、そして今中断になっている給油活動の再開ということと、そして民生支援によるそれぞれの国に対する日本の貢献ということ、やはり私はこの二つが両輪となって動く、それが大事だろうという趣旨でお尋ねしているわけでありまして、そういう意味で、今後もまたいろいろと御指導のほどお願いしたいと思います。
次に、伊勢崎先生にお尋ねいたします。
「武装解除」を大変感動深く読ませていただきましたが、私も、〇一年九月だったと、浜田先生なんかと一緒に、東ティモールにPKOを出すか出さないかで、ある調査団の一人として行かせていただきました。ちょうどそのころ、県知事をやっていたという時期じゃないかと思いますが。デメロさんと我々も会って、そのデメロさんが、この中にもバグダッドで亡くなられたときの一文を書かれていて、本当に思いを深めたわけでありますが、非常にまた人格者といいますか人柄のいい方といいますか、我々もそういう印象を受けたわけであります。
つまり、DDRをずっとやってこられて、そういう中で、関係者にやはりすぐれたリーダーがいたから先生の活動もまた成功裏におさめられるようなことにもなったのではないかなと。だから、アフガニスタンにおいても、どういう方とカウンターパートナーとなってやっていられたのかわかりませんが、やはりいろいろな関係、軍の関係の人あるいは警察関係の人とか、こういうことになったんだろうと思うんです。
そういう意味で、治安の問題ということは非常に大事で、しかも一番骨格をなす問題。先生のおっしゃっているSSRという、五つですね、武装解除と警察、そして麻薬と司法と国軍という。この武装解除、DDR、まず非武装にし、そしてまた武器の回収等をやられたと思いますが、この御苦労は、本当に、この中でもいろいろお書きになり、また「世界」でしたか、インタビューも拝見させていただきまして、また非常に参考になるわけでありますが。
そういう中で、これらの問題の、私は、やはり人との関係、そこの信頼関係がベースにある、こう認識しているわけで、軍事関係とか民生関係とかいろいろあるにしても、結局は人と人とのつながりではないのか。そこから仕事ができていくんだろう。だから、いかに状況が厳しくても、信頼関係があることによってそれが成り立っているなということを実感として感じたんですが、その点、いかがでしょうか。
○伊勢崎参考人 まさしくそのとおりでございます。
二〇〇三年当時のアフガニスタン、我々のカウンターパートは二人の重要人物がおりまして、一人は当時のUNAMA、国連の政治ミッションですね、それの特別代表であったラクダル・ブラヒミ特使であります。
彼は、国連の中ではカリスマですけれども、日本を本当に、日本の中立性を前に出して僕らを元気づけていただいた。もちろん当時、国連は、ここらはアメリカの戦争の土壌ですので、いわゆるロープロファイルに徹したわけですね。我々とラクダル・ブラヒミさんは、ライト・フットプリント・アプローチという国連のアプローチをずっと固持していて、国連が前に出ないというアプローチをずっとやっていたんですね。だから、日本をかわりに前に出して、中立性を前に出して武装解除を行うということ。彼の協力なしでは武装解除はできなかったと思います。
もう一人は、米軍です。米軍のカール・アイケンベリー、当時は、少将、二つ星ジェネラルでしたけれども、我々のカウンターパートで、いわゆるSSRを取り仕切っていたんですけれども、そこからも、二つ星ジェネラルをSSRの担当者に置くということからしても、米軍がいかにSSRというものを戦略として考えていたかというのがわかると思うんです。後に彼はOEFの方の最高司令官になりました。今はNATOに米軍の代表として赴任しております。
彼も、やはり日本の特性を生かして、軍人という立場で助言し、サポートしてくれ、もちろん、僕らも彼を助けたわけですけれども、さっき言いましたように、本当は米軍がやるはずであったアフガンの国防省改革、これを我々がプッシュして内政干渉ぎりぎり、まあ、ほとんど内政干渉ですけれども、をやって、持ちつ持たれつの関係にあったということですね。
とにかく、この二人は大変に心に残り、なおかつ、対米協力という面でもこのカール・アイケンベリーというのは一番日本の理解者であったことは間違いないです。
ありがとうございます。
○田端委員 そこで、先生は御苦労なさって、このSSRを再構築するということが大事だ、特に警察、内務省の改革、そして司法関係が非常におくれているというお話でございますが、この問題について、今のこのアフガニスタンの現状で日本として実際に現地に入ってどうこうというのはなかなか難しいという状況の中で、先生の大きなテーマ、問題提起、では、どうしたら日本は、何ができるのかということが大きな問題だと思うんですが、その点はどうでしょうか。
○伊勢崎参考人 これをやるべきだということは僕も自信を持って言えるんですけれども、果たして、日本が現実的にそれを責任とってやる場合、日本に人材がいるのかいないのかという、その辺の問題を考えなきゃいけないと思うんですね。
でも、僕の構想では、これはDDRがそうであったように、協力者を、つまり国際社会を一枚岩にする、そういうロビー活動がまず前提にあるんですけれども、それができる少数の日本人のチーム、それとそのヘッドである全権を持った大使、それが行けばこれは可能だと思います。
全権を持った大使というのは、これは多分、外務省も外部まで採用の枠も広げて、いわゆる官僚的ではない人、少し政治的な発言もできる、そういう粘りのある、なおかつ少しセクシーなことも言える、発言もできる、そういう人を任命して、外部採用ということも念頭に置きながら、それでアフガンにおける国内政治を引っ張るということですね。まず国際社会を一枚岩にして日本の後ろにつけて、アフガン政府に対峙するということです。これは大変困難なことです。でも、できると思います。
我々は、武装解除のときにそれをやりました。でもしかし、武装解除のときよりもそれはもっと困難になっています。なぜかというと、武装解除のときには、我々が相手にしたのはアフガンの暫定政権です。今ではちゃんとした独立政権ですから、特に自分たちの不利益の法案は全く通さないという元軍閥たちが国会議員になっているわけであります。大変これは困難ですけれども、できると思います。
○田端委員 ありがとうございました。
もう時間が参りました。レシャード先生、済みません、時間がなくなりました。
どうもありがとうございました。
○深谷委員長 次に、三谷光男君。
○三谷委員 民主党の三谷光男です。
四人の参考人の皆様には、きょうは大変お忙しい中を御出席いただきまして、またそれぞれに大変貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございました。
今、田端委員も少し触れられましたけれども、我が党、大変な激震に見舞われておりますけれども、大変大事なテロとの闘い、あるいは国際貢献、我が国がこれからどうしていくかという大変重要な問題を扱う審議でありますし、またきょうは貴重な参考人の方々からお話を聞く審議でもありますので、こうした大激震に惑わされることなく、有効な質疑を心がけてまいりたいと思っています。
まず、伊勢崎参考人にお尋ねをいたします。
伊勢崎参考人は、まさにアフガニスタン武装解除政府特別代表として、大変難しいと思われていましたDDRにおきまして大変大きな成果を上げられました。実際にこの困難な仕事をなし遂げられた方でありますので、先ほどのお話の中にも、大変説得力のあるお話として受けとめられました。今も、どういうふうに日本が果たすべき役割、SSRの再構築が必要だ、これを再構築していく、大変、内務省改革一つとりましても、お話を聞くだけでも、容易な話ではないというふうに思います。
今もお話をいただきましたけれども、もう少しそこのところを詳しく、あるいは権限もこれはきちんと持たなければいけないと思います、枠組みもつくらなければいけないと思います。構想が頭の中にあるというお話もございました。どのような構想でしょうか。もう少し詳しくお話をしていただけたらというふうに思います。
○伊勢崎参考人 構想は、まず現地に飛ばないと詳しい計画ができないんですけれども、基本概念は一緒です。それはどういうものかというと、現場に全権を置くということであります。日本のODA政策すべての全権を置くということであります。なぜかというと、ODA大国というのは一番政治的な発言ができる地位にいるわけですね。なぜかというと、言うことを聞かなければODAをとめると言えばいいわけであります。それを言える権限のある人間を現場に置くということであります。これは大変大切であります。
これはちょっと残酷のように聞こえるかもしれませんけれども、私が冒頭発言させていただいたように、アフガンというのは大変今腐敗した国家であるということ、これを忘れてはならないということであります。つまり、人道主義というのはなかなか真っ正面に働かないということです。どんなに貧しい人がいても、援助をそこに届かすには、それなりの方策をとらなきゃいけない。もし政権がしっかりしていればその政権に委託して援助することはできますけれども、それができない状況です。それが腐敗している状況ですね。もう破綻国家に近いことです。だからといって、援助をとめろということではないですよ。心してやるということであります。
この前提で、やはりODAをやるかやらないかの全権を持たせた大使を現場に送り、そこにSSRを再構築するためのロビーイング、これは繰り返しますけれども、国際社会、特に主要国、米英独伊、そういう主要国、それらが一枚岩となるようなロビーイングです。一枚岩となったからこそアフガンに対して大きな力で、これはまた不用意な言葉を使うようですけれども、いわゆるいい脅迫をしていくということであります。
それで、やはりその切り口として今強化しなければいけないのは、今DDRの後継プロジェクトとして外務省がやっているDIAGの政治的な地位を高めるということであります。これは、内務省を通して一応やっていますから、内務省を改革するにはいい口実になるわけであります。そのようにして、僕らはDDRを口実にして国防省を改革したわけであります。同じことをもっと強くやればいいわけであります。
さっきも言いましたように、当時と今ではその困難さが全然違います。今の方が難しいです。ですから、当時は僕には全権がありませんでしたけれども、今回はよほど心して、現場の最高責任者に全権を持たせるということ、JICAの援助も含めて現場の大使に全権を持たせるということ、それで日本の政治的発言の威力を高めるということです。
それで、DIAGを通じて、とにかく武装勢力と何らかのつながりがある、それが証明されただけでその政治家は罷免するような法案を通さなきゃいけません。これは大変に困難な作業であります。もちろん、その反動も来ます。その代償として、少し一般市民の命も奪われるでしょう。でも、この痛みを経ないとアフガンは浄化されません。これが、今の世界テロ戦の行き詰まっている元凶なわけであります。
○三谷委員 もう一点、これは簡潔にお答えいただければと思います。
伊勢崎参考人に、美しき誤解を生かすためには、もう消えたかもしれませんけれども、ISAFにもあるいはPRTにも安易に自衛隊を送り出すということは、やはりなかなか難しい話だと私も思います。ただ、今後のことも含めまして、どういう形なら、あるいはどういう状況なら、アフガンの治安回復やあるいは経済復興に自衛隊が行って役割を果たすということも、状況によってはあるのではないかというふうに思います。もしそれがお考えの中にあれば、お話をいただきたいというふうに思います。
○伊勢崎参考人 私は、いわゆる軍の存在を否定する立場は政治的にとっておりませんで、同じような話を自衛隊の幹部学校でも講師として毎年二回ずつやっておりますし、私は、自衛隊というのは日本独自の平和的な活用ができる極めて優良な軍事組織だと思うし、それを実感しております。
その前提で物を言いますと、アフガンにおいて、果たして、日本の自衛隊が日本にしかできないような貢献をする、できるような状況になるのはいつか、わかりません。本当にわかりません。なぜかというと、今何も見えない状態です。この実感をぜひ政治家の皆さんにわかっていただきたいんですね、行けばわかるんでしょうけれども。
それで、行って、とにかく現場の指揮官たちに会えます、時々カブールに来ますから。それで、一番聞いていただきたいのは、アメリカの指揮官もそうなんですけれども、アメリカと協力している最大支援国であるイギリスとか、現場の指揮官の、時々彼らはカブールに召還されますから、そのときを見つけて、彼らの本音を聞いていただきたいということなんです。
さっきも言いましたように、OEFとISAFのマンデートの混乱、これは大変深刻な問題として軍事的に認識されておりますし、その出口はやはりSSR、土台の部分だというのが軍人の意見であります。
○三谷委員 次に、レシャードカレッド参考人にお伺いをいたします。
先ほどもお答えがございましたけれども、日本は民生支援をしています。多分、先ほどのお話というのは、今のやり方ではまだまだ足りないよ、あるいは、やり方にもまずいところがあるよというお話ではないかというふうに思います。
ぜひ遠慮なく述べていただきたいと思います。どのようなことをもっと厚みを持って日本が援助をすればいいか、そうすればアフガンの、今のお話の中にもございます今の大変悲惨な状況が改善をするのか、率直な参考人のお考えを聞かせていただきたいと思います。
○レシャード参考人 ありがとうございます。
私が申し上げたいのは、まさに今、大変多くの国際支援、特に日本のODAもたくさんアフガニスタンにおいては入っております。残念ながら、それが十分に生かされていないというのが現状であります。
今、伊勢崎参考人からもお話ありましたように、大きな問題は、PRTという問題は、実はこれは、アメリカ軍がいわゆる民間の団体を支援しながら地方へ行って、そして活動をするということですが、ただ、このやり方、手法には、実は民間の団体というのか、特に医療関係者あるいは教育関係者では大変迷惑していることが多々あるんです。ただ軍事的な作戦の一環としてやられちゃう場合は、民間としてやっている活動は実は台なしになって、それこそ、さっきから問題になっている、信頼関係を失うというようなやり方がありますので、もし、さっきの話ではないけれども、自衛隊がPRTの支援に行くとすれば、これはむしろ反感を生むような方法が大きいのではないかというのがまず一つです。
もう一つは、国際支援のやり方という部分に関しましては、まさに、アフガニスタンのみならず、今のODAの仕方としては、現地の需要を十分に考えて、その需要に見合った活動をしなければならない。これも、私、伊勢崎参考人と全く同感なのは、そういうものを日本で考えて、日本で実施計画を立てて持っていくのではなくて、やはり現地に強いスタッフあるいはチームがいて、そして向こうの需要を引っ張り出して、その需要に見合った活動を常に行う、そして、時によっては、状況が変わるとともに、そこにちゃんとやり方を変更するということが一番大きな部分だろうと思います。
もう一つは、アフガニスタンの問題は、大変長い戦争によって、大変崩壊しております。一年や二年、三年の経過だけでは何とかなるものではありません。少し腰を据えて、しっかりとした計画に基づいた方法でない限り、今のプロジェクテッド形式というのは、二年、三年で終わるようなプロジェクト方式では、全く効果が上がらないまますべて終わってしまう可能性がある。そういう意味では、きちっとした計画を立て、そして長期戦で、長期な視野に立って物事を考える。
例えば、医療あるいは教育という分野におきましては、何年も何年もたって初めて人が、医者あるいは看護師が育てられて、学校の先生が育ってくるのには何年も、十年もかかるかもしれません。でも、その対策は、最初のかじりだけをかじってあとはほっぽり出すということが、まさに今の崩壊状態になってしまっているのではないかなと私は思います。そのためには、さっき申し上げましたように、やはり長期戦、長期な視野で見て物事を考えたりしていただくべきものであります。
三つ目は、私としては、DDRというものは大変効果を上げておりますが、一つ疑問に感じております問題は、武器を渡して、そして田舎へ帰った人たちがどこでどう仕事をすればいいか。産業は全く存在しないアフガニスタンに、それから農業国であるアフガニスタンにおきましては、まだまだ地雷の問題あるいは水の問題が存在している中では、武器は渡したけれども食べていくすべがないとなると、また軍閥によってたくさんのお金と武器を渡されて、また同じような方向に行ってしまうのではないかなと。
だから、私は、民間という援助とともに投資というものも一つ必要ではないかと。むしろ、ある意味では、アフガニスタン人そのものが自分の手足を使って収入を得る方法、方策も少し考えていく、それこそ長期的な視野に成り立っている方法ではないかなと思いますので、ただただ与えるだけではだめです、与えるだけでは人間は甘えてしまいますので、ちゃんと自分たちで得るすべをつくってあげることが今一番重要な部分ではないかなと私は思っております。
○三谷委員 ありがとうございました。
与えるだけではだめ、そしてニーズをきちんと酌み取らなければだめということだと思います。参考になりました。
もう一つ、今度は、森本参考人、そして小川和久参考人にお尋ねをいたします。
これまでのこの新法、法案審議の中で我が党の委員の中からも、補給活動ではなくて海上阻止活動そのものに我が国が当たる、海上阻止活動の正面に立てばいいのではないか、こういう提案がございました。この新法は、これは私が思うことでありますけれども、安全かつ安上がり、感謝をされているから補給活動だけは続けたい、そういう縮み思考ではなくて、対テロ活動への我が国の積極的な取り組みとして、我が国海上自衛隊がインド洋上での海上阻止活動そのものに参加すればいい、こういう提案が審議の中でもございました。
あわせて申し上げると、燃料補給は、これは油はまざりますので、この審議の中でもずっと、政治問題と言ってもいいかもしれません、転用の疑いがずっと審議の対象にもなってまいりました。あるいは、OEF掃討作戦に使われて戦争支援ともみなされる。これは先ほどの伊勢崎参考人のお話にもつながることだと思います。自己完結型でという意味合いもございます。そして私自身も、大変これは有効な、そして重要な提案だというふうに思っています。今後の審議あるいは議論の参考にさせていただきたいと思います。
まさに、この考え、それぞれ国際関係あるいは軍事の専門家でいらっしゃるお二人の参考人に評価あるいは御意見をちょうだいしたいというふうに思います。お願いします。
○森本参考人 もともと、二〇〇一年の十月に始まったいわゆる今のOEF、十一月から徐々に始まったOEFの海上阻止活動に、当時、まだ大変国内で支持率の高かった小泉政権が、どういう取り組み方をしたらよいかということを政府部内で検討した結果、今御指摘のように、海上における阻止活動に直接指揮下に入って多国籍部隊としての活動をすることには従来の憲法解釈上少し無理があるということで、いわば、日本としては、政治的、法的な範囲の中でぎりぎりできる活動の内容として、既にもう廃案になった法律に三つの種類の目的、活動を入れて、その中にいわゆる補給支援活動というものを入れて、海上自衛隊がこれに従事してきたわけです。
私は、今回の新しい法律の中でさらに任務を絞った形になっているのですが、本来、我が国海上自衛隊を、インド洋という日本のいわゆるタンカールートにとって大変重要な海域に部隊として出して、多国籍の海軍と共同活動をするということなわけですから、したがって、できれば、海上自衛隊としての本来任務であるいわゆる警戒監視あるいは哨戒活動といった、海上自衛隊が当然公海上で行う正面活動というものを法律の中に書き入れて活動をし、同時に、もちろん給油、給水という任務を与えるのですが、本来、海上自衛隊が持っている機能を最大限に発揮して活動できるように法律の中に書き込むのが、いわゆる一般常識としての海軍を領域外に出すときの常識だったのではないかというふうに今でも考えています。
したがって、先ほどのお話の繰り返しになるのですが、海上における活動、そして陸上における活動、今の憲法及び憲法の解釈の枠の中で何ができるかということを考えたときに、今先生の御指摘のように、海上阻止活動に直接指揮下に入って活動するということになりますと、場合によっては、拘束するテロリストたちが武器弾薬を十分に買って持って帰ろうとするときに、それを使って反撃するという可能性がある。したがって、武力の行使、武器の使用という領域に入るリスクが高いということを考えれば、先ほど申し上げたように、やはり今回の法律のように補給活動にとどめ、しかしながら、今申し上げたように、一般的な海軍としての一般任務を法律の中に書き込んで活動するというのがよろしいのではないか、このように考えているわけです。
以上でございます。
○小川参考人 御質問、どうもありがとうございます。
私はやはり、新しい法律は、これは逃げだという評価をしております。もともとの特措法の中で最大限海上自衛隊の能力を活用する、そういう考え方を整理していくということが本来だったろう。給油あるいは給水活動、補給については、もちろん日本が高い能力を持っておりますから期待される部分がございますけれども、やはり当時の議論を考えましても、例えば情報収集活動、これは哨戒とか捜索救難を含みますが、そこに我が海上自衛隊が九十機のオーダーで持っているP3Cの哨戒機を陸上から行動させるといったようなことも、大きな役割を果たすことになるだろう。
当時は、海上幕僚副長であった古庄さんと、今の防衛部長の河野さんが防衛課長で、お二人とイージス艦の派遣についてちょっと話し合ったことがあるんですが、これもまた、日本の国内の議論が整理をされていれば、それなりの役割分担としてもう少し積極的に派遣ができたんじゃないか。
ところが、当時は、自民党の大物と言われるような議員さん方までが、イージス艦は強力な攻撃力を持っているからなんて、どこに攻撃力があるんだという感じがするんですけれども、そういう誤解のもとに派遣に反対される。だから、派閥の領袖を前にして、私がそこの評定で説教しなきゃいけないようなことが結構ありました。
イージス艦の情報収集能力というのは極めて大きいし、アメリカとのデータリンクについて国内の議論を整理すれば、それなりの役割分担で派遣できただろうということもあります。ただ、イージス艦については、北朝鮮の弾道ミサイルの問題もあって余り向こうに出してばかりいられないだろうということもあって、引っ込めたわけであります。ただ、そのぐらいの活動をきちんとする中でテロの克服についての日本なりのロードマップを描くというのが本来だろう。
ただ、給油の問題につきましては、目的外使用について大変厳しい指摘が行われてまいりました。これにつきましても、十月十八日にアメリカの国防総省が公式に発表した見解が、多分、給油の実態に一番近いだろうと思っています。本来、交換公文に基づいて禁じられている目的外使用はないんだけれども、やはりグレーゾーンは残りますよ、それを追跡しようと思うとかなり複雑な作業を伴う、これは当たり前なんです。
ただ、グレーゾーンというのはどこから生じているかというと、例えば、アフガンにおけるテロとの闘い、そしてイラク戦争、これについて我々が国内の議論を整理していない結果から生まれている面もある。アメリカから見れば、イラクにおける闘いも、テロとの闘いの範疇で考えている。では、日本はそのイラク戦争における武力行使をどういう根拠で支持するのか。そういったところが整理されていれば、この辺の問題についてはクリアできるような議論が出てくるだろう。
イラク戦争が始まる一週間ほど前ですが、総理官邸から聞いてこられました、武力行使を支持するためには総理のコメントはこれでいいと思うかと。いろいろな方に聞いていらっしゃるんでしょう。私が申し上げたのは、アメリカとの同盟関係があるから支持するというのはだめですよ、それから、大量破壊兵器をイラクが持っているから武力行使を支持するというのも、裏をとる能力が日本にはないからだめですよ。
日本なりに、大量破壊兵器開発疑惑国とテロリストの結合は日本にとって脅威になり得るから、そういったことをやめてくれと各国に働きかけてきた。イラクに対しても、外交的にそういったことについての疑念を晴らすように働きかけてきた。最終的には、茂木外務副大臣を派遣して、サダム・フセイン大統領にそういったことを働きかけた。
ただ、日本のそういった外交的努力にもかかわらず、イラクは、当時、国連の査察に対して拒否をしたり妨害するような行動に出て、それに対して、国連の決議を拡大解釈したかどうかという議論はありますが、武力行使という選択がアメリカ、イギリスから出てくる。それに対して反対をしたのがフランス、ドイツあるいはロシアであった。
日本は、外交的な努力をした上で、それが実を結ばなかったという立場から武力行使を支持したというのであれば、それはテロとの闘いという整理の仕方はできたと思うんです。ところが、それがまだ十分に行われていない。そういったことをきちっとやれば、例えば海上における活動も、おっしゃるとおり、補給に限らず、あるいは給油、水ということに限らず、もう少し日本の海上自衛隊の能力をフルに発揮して、しかも貢献できるようなあり方があるのではないか、私はそう思っております。
どうもありがとうございました。
○三谷委員 ありがとうございました。
質問を終わります。
○深谷委員長 次に、笠井亮君。
○笠井委員 日本共産党の笠井亮です。
きょうは、四人の参考人の方々、お忙しいところ、貴重な御意見、本当にありがとうございました。時間の許す範囲で幾つか伺っていきたいと思います。
まず森本参考人に伺います。
これまでも幾度かテレビ等の場も含めて御一緒に議論する機会がありまして、日米同盟やテロ特措法の問題では立場は違うんですけれども、しかし、米戦略論などについては識見を拝聴してまいりました。
そこで、まず、アメリカのイラク、アフガニスタンを含むこの地域での戦略にかかわってなんですけれども、米軍は、あの海域でいえば海上安全保障作戦、MSO、それからイラク作戦、OIF、それからアフガニスタン作戦、OEFということで、この三つを一体のものとして実施している。私、調べてみたんですが、二〇〇三年以来、ことし九月まで見ますと、中央軍第五艦隊の作戦地域に空母打撃群、それから強襲揚陸艦の遠征打撃群が相互に途切れなく投入されて、その数は、数えてみたら三十一回あったんですね。米軍はなぜこうした一体作戦を展開しているのか、その背景にある現在のアメリカの戦略についてどう見ておられるか、御意見を伺いたいと思うんですが、いかがでしょうか。
○森本参考人 九・一一が起きてから、アメリカの基本的な戦略は、今まだ見直し中のものもあり、海洋戦略については、先々週、例えば新しい戦略概念が公表されたところですが、全体としてとらえた場合には、アメリカの主たる戦略目標は二つに要約されると思います。
一つは、九・一一以降のアメリカにとっての最大脅威は、先ほど申し上げたように、国際テロ、そして、国際テロが場合によって核兵器を入手してこれを自由社会に対して使うというリスクをいかにして未然に防止をし、これを排除するかというのが第一。第二は、これに伴ってアメリカのホームランドディフェンス、ホームランドセキュリティーという、アメリカの国土というものの安全をいかにして確保するか。
この二つの戦略目標をトータルで合わせたときに、アメリカが、今余りそういう言葉を言いませんけれども、不安定の弧と称する地域、海域に主たる兵力を海外に展開させて、できるだけこの脅威を未然に軽減する、削減するといいますか、ゼロにはなりませんけれども、レベルを低くし、その脅威がアメリカの本土に届かないようにする、基本的にはそう考えているのではないかと私は思います。
以上でございます。
〔委員長退席、田中(和)委員長代理着席〕
○笠井委員 そういう軍事戦略という点でいうと、ブッシュ政権の戦略ですけれども、とりわけイラク政策についてはアメリカの国内でも批判が高まっているというふうに承知をしております。
ブッシュ政権は、この間、全体、先制攻撃戦略という形で進めてきたと思うんですが、今さまざまな戦略の見直しの動きがあることについて、森本参考人はどのように見ていらっしゃるでしょうか。
○森本参考人 確かに、先生御指摘のように、アメリカのイラク作戦というのは、九・一一が起きたときに、アメリカが全く考えもしない、アメリカの国内が直接攻撃を受けて三千人弱のアメリカの国民が一瞬にして生命を失うという、アメリカにとって大変衝撃的な事件のトラウマの中にまだあって、その後の作戦の中で、イラク作戦は、恐らく後世アメリカが大きな過ちをしたという結果が反省されることになるのではないかと思います。
この過ちというのは、全体としてイラクの戦争を始めたことは間違っていないにせよ、その後の戦争主導において、いわばイラクの中でのイスラムの宗派対立の中に軍事力を入れたこと、並びに、アメリカが自由や民主主義といった価値観を中東湾岸地域に拡大しようという、いささか民主主義の原理原則と反する考え方を導入し、それがイスラム世界の大きな反発を受け、グローバルな反米感情を招いた。結果として、アメリカの国民の六割以上の人々が、イラク戦争の過ち、イラク作戦からアメリカの兵力を撤退すべきだという考え方に今やなりつつあるということは、深刻な問題だと私は思います。
しかし、アメリカは、民主党も含めテロ戦争については依然としてきちっと対応するということに変わりなく、仮に民主党政権になったらどうなるかということを単純に考えると、イラクに向けている兵力の重点をアフガニスタンのテロ戦争に向けるというやり方をして、イラクからは手を引くがアフガンはむしろ増強をしてテロ戦争を続けるということについては、民主党も共和党よりもその点は鮮明な形で、テロ戦争を継続するという作戦目的を持っているといいますか、国家の目標を持っているということになるのではないか、このように考えているわけです。
以上でございます。
○笠井委員 次に、レシャードカレッド参考人に伺いたいと思います。
二〇〇一年のあの九・一一のテロの後、十月にアメリカが報復戦争をやったその直後に、私も、アフガニスタンとの国境近くのパキスタンのペシャワールまで行きまして、アフガン難民キャンプや病院、それから学校などを訪問しまして実態を目の当たりにしました。
とても印象的だったのは、アフガニスタンの子供たちの学校に行ったときに、子供たちの絵がかけられていまして、その中に、アフガニスタンの地図の上に白いハトが飛んでいるという絵があったことであります。戦争を憎む、平和が欲しい、それがキーワードだということがよくわかりました。あのときに関係者から、アフガニスタンを決して忘れないでほしい、こういうふうに言われた言葉が今も強く残っております。
アフガニスタンは、ともかくも、ソ連の侵略、私たちも断固反対しましたが、あの侵略以前は平和な国だった。それが、今、二十代の青年たちも戦争しか知らない。そういう中で、今日までこういう事態が続いて、掃討作戦がある、自爆テロがある、そして悪循環みたいな形になって市民が殺される。安心して暮らせる、そういうアフガニスタンに早く戻せというのが共通の思いじゃないかと私は思っています。また、多くの方の気持ちだと思うんです。
そこで参考人に伺いたいんですが、二つです。
一つは、今、アフガニスタン国民の不満は最高潮と先ほど言われましたが、国民の一番の思いというのはどういうところにあるか。もう一つは、そういう中で、国内でも、政府の中からも平和と和解のプロセスというのが始まっているということを聞いているんですが、その点で何か具体的に参考人がつかんでいらっしゃる情報といいますか動きがあれば教えてください。
○レシャード参考人 ありがとうございます。
前半につきましては、アフガニスタンの思いというのは、本当に大変な、アフガニスタン人が長い間の戦争の中で犠牲になったり、国から追われて難民としていろいろな痛い目に遭ったりして大変厳しいところがあります。まさに先生がおっしゃっておられたように、今の二十あるいは若者が平和というものを知らないんです。戦争の中で生まれて、戦争の中で大きくなって、そしてその中で死んでいっている子供たち、あるいは大人もいるわけです。だから、平和という言葉を我々がいろいろと説いてみても、平和ってそんなにいいものですかということで、自分たちの今の生活が精いっぱい、暮らしていくのが精いっぱいであるというのは、それ以上のものは夢を見られないという人たちも中にはいるんです。これが大変残念で、私は、実はその辺を一番危惧しております。
と申しますのは、幾ら厳しいところでも、夢を持つ、夢を見るような人間は、そういうつらさをこらえて、いずれは何かそういう方向に頑張っていけると思いますが、夢を持たない人間というのは、そこであきらめてしまうわけなんです。今のアフガニスタンの現状を見ていただきますと、二〇〇一年のアメリカの空爆の後に、私もその十月にアフガニスタンのカブールまで入りました、空爆の真っ最中にジャララバードから陸路で。そして、そのさまを見せていただいて、いろいろと経験しましたけれども、その後に少しは明るい兆しが見え出して、そして少しいい方向に国が動いて、あるいは国際援助にしても、あるいは秩序も少しずつ保たれるということが、正直申し上げて、みんなにこの長いトンネルから少しは出ていけるんだなという希望を持たせていました。しかし、徐々にその希望ももう一回トンネルの奥深くにはまったような感じで、先が見えないような状況になっているのが今です。
今まさにアフガニスタンの人々が世界じゅうに求めているのは、静かな暮らしだけであって、別に豊かな暮らしでなくてもいいから安心して眠れる日々が欲しいということなんです。
私自身の父親が、ドアをかたく閉めた音で飛んで逃げて布団の下に入ったというのを経験しています。それが、必ずやどこかの武器で撃たれたというような、そういう精神的な状態になっているのがアフガニスタンの現状です。
その中で、私がさっきから訴えておりますのは、アフガニスタンに対する関心が大変薄れてきている今の中で、もう一回、アフガニスタンそのものがなぜこうなったのか、そのためにどうすべきなのかということをぜひとも御理解していただいて、考えていただきたいと思います。
後半の、アフガニスタンの政府がそういう平和のプロセスを考えているということの中で、まさに伊勢崎さんのお話にもありましたように、タリバンを含む多くの人たちに免除とか赦免を与えるということが一つのやり方であります。
ただ、大変困ったことに、あるいは残念なことに、その中には戦争犯罪者とか、そういう方たちもすべて一様に免除されることによって、またその人たちがのさばって、軍閥を堂々とつくって、それがまた今の平和を脅かしている状況になっています。
今大切なことは、アフガニスタン政府そのものには、正直申し上げて平和を構築できる能力はないと私は思っています。やはり、多くの国々とか、特に日本のように、東京会議をつくったときと同じように、もう一回関係者を集めて、そして彼らを説得して、もう一回、アフガニスタンで何をやるべきなのか、どういう方策でやっていくべきなのか、そういう積極的な関与が今一番求められている時期ではないかな。その後の支援とか、そういう細かいことはあくまでも後の話でありまして、基本的なスタンスは私はそういうことじゃないかと思っております。
ありがとうございます。
○笠井委員 ありがとうございます。
伊勢崎参考人に、関連して伺いたいんですが。
今、レシャードカレッド参考人からもお話がありましたが、伊勢崎参考人も、アフガニスタンの現在の最大の問題というと治安の悪化だということも強調されて、そして、回復する上で政治的解決の道ということも言われました。先ほどタリバンとの政治的和解というふうなことも進んでいるんだというお話があったんですが、私も先日の質問でも紹介したんですが、九月には国連で潘基文事務総長とカルザイ大統領が共同で記者会見しながら、平和と和解のプロセスということが進み始めているんだというふうに言われました。それも、大統領の言われているのも、なかなかタリバンというのは一色じゃないんだと。つまり、圧倒的なタリバンというのはテロリストでもアルカイダの一部でもないと。その現実を踏まえてそういう努力があるんだなというふうに思ったんですが、伊勢崎参考人はこうした動きをどう評価されておられるか。
それから、今お話もあったんですが、国際社会、とりわけ日本がそういう政治的な解決、和解の動きを後押しするとすれば、どんなことをやる必要があるというふうにお考えか、伺いたいと思うんですが、いかがでしょうか。
○伊勢崎参考人 タリバンの政治的な和解に関しては、私のレジュメに書きましたように政治的な打撃というのはかなり大きくて、その一例は、冒頭で説明しました九月のベルリンでのクローズド会議では、アフガンからの議員の代表団の中に女性議員が三人いたんですね。我々がタリバンとの和解のことを議論し始めたら、女性議員がかなりヒステリックになって、立ち上がって、やめてほしいみたいなことを言われたんですね。それは、やはりタリバン時代に女性への迫害ということがあって、女性というのはタリバン時代の負の遺産の本当の犠牲者ですから、女性の国会議員のリアクションを見ても、タリバンとの政治的な和解というのが一筋縄にいかないということは確かです。
でも、カルザイさんの立場に立ってみると、やはり、パシュトゥン族、つまりタリバンを生んだ土壌となった民族ですね、そこの出身の大統領であるということと、北部同盟を中心に、これはタジク系でタリバンと戦った人間ですよね、これが今政界の中で大変政治力を持ち続けているということ、そのバランスをとるために和解という道をとらざるを得ないという背景もありまして、これは一筋縄にはいかない問題であります。
でもしかし、これは強調しますけれども、この和解という問題は戦争犯罪云々の話にもなりますので、人権的にも大変センシティブな問題なわけであります。
これと似たケースというのは、国連でシエラレオネのケースで、これはアフリカの問題ですけれども、アメリカが特にクリントン政権のときに大変に和解の問題にかかわったケースなんですけれども、あのときは非常に大きな恩赦を与えたんですね、戦争犯罪に対して。そのリアクション、つまり、その後のいわゆる国内のモラルですね、戦争犯罪を許したというモラルの問題というのが大変に深刻だったわけであります。
ですから、これは平和をとるか正義をとるかという本当にぎりぎりの選択であるということを皆さんに理解していただきたいということです。つまり、正義を推し進めるために戦争をやっているわけでありますけれども、その戦争が行き詰まったときに、その正義を妥協して、平和を、和解を求めなきゃならないんだというような状況。こういう状況なわけであります。だから、これは本当に大変にセンシティブな問題であるということであります。
日本の役割。その日本の役割は僕は大きいと思います。これはある議員さんから聞いたんですけれども、私はこれは大変恥ずかしながら知らなかったんですけれども、タリバンがまだ力を持っていた時代に、国際社会から孤立していったときに、何と日本政府はタリバンを東京に呼んで、いわゆる和解会議みたいなことをした歴史があるそうです。多分、そういうことをやったのはそのときでは日本が初めてじゃないでしょうか。紛争している連中を第三国に呼んで、利害から離れたところで和解をさせるという手法は、これは平和構築の中で一番いい手法で、日本は多分できる立場にいるんですよね。
これと似たケースというのはインドネシアのアチェのケースでありまして、あのアチェの和平というのは日本が最初に口火を切ってやったんですね。反対勢力とインドネシア政府、独立したい連中とインドネシア政府を両方呼んで和解をさせたところから始まっているんですね。最後はEUにお株をとっていかれちゃいましたけれども。
でも、僕は、日本は大変にポテンシャルがある国で、本当に外務省には頑張っていただきたいという、その一言だけであります。
○笠井委員 時間が参りまして小川参考人には伺えなかったんですが、先ほど日本版NSCという話もあって、共産党が政権をとってもそういうことは必要だろうという御意見もあって、ほかの党のことは別として、うちとしては要らないだろうというふうに思っていますが、その辺も含めてまた別の機会にと思います。
きょうはありがとうございました。
○田中(和)委員長代理 次に、阿部知子君。
○阿部(知)委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
本日は、四名の参考人の方、本当にこのテロ特措法の審議の中できちんとした骨格を提示していただいて、大変に私どもも勉強になりました。少しの時間ですが、私が最後ですので、御質問をさせていただきたいと思います。
まず森本参考人に。
先ほどの共産党の笠井さんとのやりとりをお伺いしながら、たしかことしの夏ごろですか、ワシントン・ポストにパクス・アメリカーナの終えんという形で、アメリカがイラク戦争にかかわり、実は、太平洋戦争よりも長い間の戦いを、そして六十兆円以上のお金を費やし、中南米諸国の反発あるいは中東の反発、さっきおっしゃったように価値観を押しつけようとしたことによる、逆に言うと信頼の失墜などに直面しながら、しかし、このグローバル化した社会、世界の中で、果たして本当にどういうところにこの世界は落ちついていくのか。私は、今はやはり人類未曾有のある種の危機に立ち至っているんだと思うんですね。
特に先生にお伺いしたいのは、せんだってブッシュ大統領がイランへの経済制裁の追加制裁を発表し、あるいはトルコがクルドの方に侵攻するかもしれない危機、パキスタンは戒厳令、こうなってまいりますと、この中東という問題は、アメリカのイラク戦争以降、逆に言うと九・一一以降、大変に紛争のるつぼ、火種を大きくしているというふうに認識せざるを得ないと思うんです。こういう大きな時代的状況の中で、もちろんアメリカの果たす役割もあると思いますが、我が国がよって立つ位置あるいは役割はどのようなものであるとお考えであるか、まず冒頭、一点お願いいたします。
○森本参考人 大変難しい御質問で、これをきちっと答えることができれば、私ももう少し早く大臣か何かになっているんじゃないかというふうに思うんですが、到底その能力はありません。
先生御指摘のように、現在の中東湾岸全域を見ると、二つの大きなリスクというのがある。一つは、例えばパキスタンとアフガニスタンの国境のいわゆるFATAという地域に見られるように、あれは主としてパシュトゥン人の大きな運動で、タリバンというのも実は組織ではなく、タリバンの定義は私は運動だと思うのですが、パシュトゥン人が一つの大きな地域勢力となって、できれば共和国として独立したいというある種の民族的な動きが一つあり、トルコとクルド族の関係も、クルド人という、イラン、イラク、ヨルダン、トルコにまたがる地域でいわゆるクルド人自身が一つの大きな独立国をつくろうという民族運動で、このようなものが地域の安定を損なっているという、いわば民族自決、独立運動に伴う地域的な不安定要因、これが一つ。もう一つは、その中間に位置するイランあるいは北朝鮮からシリアに対する大量破壊兵器の供与、あるいはこういった兵器の拡散、いわゆる大量破壊兵器の拡散が地域全体に波及する。この二つの全く異種の問題が、世界的に見るとこの地域に集中しているということです。
アメリカがこれに全部責任を負うというのは、私はそう思いません。アメリカのやったミスマネジメントもありますが、これはアメリカが手を出さなくても出しても、そもそも深刻な問題として発展し……。
考えてみると、アメリカの共和党政権というのは、できるだけ積極的に国際社会にかかわっていく、時々は軍事力を使ってかかわっていく。その結果、アメリカの財政を傷めるが、同盟国は、はっきり申し上げるとその結果として助かっているという面があるわけであります。伝統的な民主党の政権はそれとは逆で、アメリカの中にやや立ちこもって、しかし、財政を好転させるが同盟国にもっと貢献を求めてくる、こういう政策の繰り返しをずっとやってきたんだろうと思います。
どちらが同盟国としての日本にとって意味があるのか、どういう役割を日本が同盟の中で果たすのが日本にとっての国益に合致するのかということは、そのときのアメリカの戦略を考えながら対応していかないといけない。大変難しい政策の調整を必要とする時期が今後まだ相当続くのではないかと思います。
我々一般国民が考えていることは、政策とは別に、立法府で御審議いただく個々の法律が政策の基盤となるわけですから、もとの話に戻しますけれども、この御審議いただいている法律をきちっと通して日本の国益を追求していただくことが必要で、政策議論はそこから始まるということなのではないか、かように考えています。
○阿部(知)委員 今、国民が抱いている不安、何となくこの時代に対する不安というものをやはり私ども政治家はきちんと受けとめて、例えばインド洋での給油活動にしても方策を立てねばならないのだと私は思うわけです。そこで先生に大局的にまず概観をしていただきましたし、また、例えばアメリカなどでは、キッシンジャーなどはこれまでの核政策を大きく見直して、もっと核廃絶の向きに向けようというふうな大きな仕切り直しをするわけですから、我が国もやはりそうした大局的な目というのは常に一つ一つの外交政策で必要になってくるのかなと私は思うものです。
次に小川さんに伺います。
このアフガニスタンへの進攻、十月七日に始まりまして、当初は、国連決議一三六八は、アメリカの個別的自衛権とNATO諸国の集団的自衛権というものを国連が認めるという形であって、私は国連決議そのもののマンデートに触れられたものではないと思いますが、そういう形で始まって、いわば終わりが見えないというか六年が経過したわけです。
さっき参考人のお話の中にPKOというお話、今までの戦争であれば当事者同士の国対国なりなんなりでPKOスキームというものが一定有効であったし、そういうふうに求めてきたし、今我が国もPKOに自衛隊を派遣するということは国民合意になっているわけですが、このアフガニスタンで行われていることというのは、なかなか国民にはどういう事態であるのか、何を今しなきゃいけないのか見えてこないのじゃないかなと、私もその一人として思うわけです。
先ほど参考人のお話の中で、これからは集団安全保障、これは集団的自衛権とは違いまして、恐らく集団で一つの安全体制をつくるという意味と思いますが、となると、いわば地域的集団安全保障、すなわち、また中東のエリアに戻ってくると私は思うんですね、問題が。そこが非常に不安定で、いわば一つのテーブルにもなかなか着けないということは、やはり平和というものに向けた歩みを考えるとき非常に道が遠く思えるわけです。
小川参考人には、むしろ地域安全保障といいましょうか、そういう観点から見て、今の中東でなされるべきことがあるか、あるいは何ができるだろうかということをお伺いしたいと思います。
〔田中(和)委員長代理退席、委員長着席〕
○小川参考人 御質問ありがとうございます。
地域安全保障といったような形で日本がどれぐらいのものを描くことができるかというのは、私自身も、当事者にしてもらわない限り答えることはできないわけであります。ただ、少なくとも、国連の決議があろうと、国連の関与があろうとなかろうと、日本国憲法の前文の精神に立って、日本が平和を実現するためにどう行動するのか問われている。
先ほど森本参考人に対する御質問でもありましたけれども、アメリカについてそれほど気にする必要があるのかというところが実はあるんですね。アメリカをやはりリードしていくぐらいの国でないと、平和主義なんということを言っても笑われるだけだ。アメリカが一目、二目置くようなかかわりをすべきだ。アメリカという国は、少なくとも強力な同盟国である限り、日本の国益に立った発言に対しては耳をかすということなんです。敵になれば攻撃されます。味方である限り彼らは耳をかす。そこのところをちゃんとわかって、まずアメリカとのかかわりを日本の原理原則にふさわしい形にどんどん変えていきながら、例えば中東におけるアフガニスタン、イラクを中心とする地域の安全保障について日本なりの構想を示す、そこに当事者たち、あるいは世界の主要国、G8のメンバーを中心に引っ張り込んでいくということが問われていると思います。
私は、かつて、ささやかなことでありますが、対人地雷の廃絶の軍事専門家会議に呼ばれたんです。行ったら、アメリカを初め、反対している国を含めて陸軍中将クラスが全部来ている。日本から行っているのは私だけですよ。でも、そこで私が発言をして、ああ、こういうふうにすればアメリカもついてくるなと思ったのは、とにかく対人地雷の廃絶という、マイナーな兵器であるけれども、それを一つの軍縮への突破口としながら、もう一方では核廃絶という取り組みをしながら、それを軍縮という一つの大きなフレームの中に位置づけ、取り組んでいくべきじゃないか。
反対しているアメリカ、あるいはロシア、中国、オーストラリア、そういった国々はそれぞれの事情はあるけれども、そこにどういうタイムテーブルのもとに参加してくるかということを示し、やろうじゃないかという話をしたら、アメリカも中国もロシアも、そういうものが出てくれば我々はそれについて対応することはやぶさかではないと言ったし、そのときカナダの代表は、直ちに立ち上がって、小川の発言に対して全面的に支持するという発言をしてくれた。ささやかな話ではありますが、そのぐらいのことが私ごときにできることを、この大きな日本国ができないはずがないんですね。ただ、そのための意思と能力をどれぐらい国家として備えているかなんです。
だから、例えばインド洋での給油の問題につきましても、市民団体のピースデポがアメリカ政府の公開資料を丹念に調べて、おかしいじゃないかと指摘をしてくる、ああいう取り組みを……。例えばこの間も石破防衛大臣としゃべっていて、何とかしなきゃだめだなということになったんだけれども、我が防衛省が能力を持っていないんですよ、あんな簡単な能力を。もちろん、政党でも持っているところと持っていないところがあるけれども、我が政府ということで言うと、例えばピースデポとかあるいは民主党の政調が持っている能力を持っていない。これをちゃんと整備してもらわなきゃいけないけれども。そういう世界の平和について、あるいは、その中で我々の安全と繁栄についてどう実現していくか、そのために何が必要かという取り組みを国内でも行う。そして、アメリカを引っ張っていく、アメリカを引っ張ることによって当事者にもテーブルに着いてもらうということを実現していくということが求められている。
今は抽象的なことしか申し上げられませんが、どうも御質問ありがとうございました。
○阿部(知)委員 抽象的ではなくて極めて具体的ですし、私はそのように政府が動いてほしい。
先ほどのレシャードカレッドさんのお話ではございませんが、ちょうど二〇〇二年の一月に東京会議がございまして、ボン合意以降、ボン・プロセスが進む中で、東京会議、ベルリン会議、せんだってのロンドン会議と三つ会議があったわけです。今度この東京が、やはり日本がリードする形でそういう周辺国関係者、そして、かつてブラヒミさんがたしかおっしゃったんだと思いますが、ボン・プロセスのときにはタリバンが入っていなかったということが、それはいろいろな事情があるけれども、今日やはりもう一度見直されるべきだということにあるように、そういう場を積極的に日本の政府の外交で動いていただきたい。先ほどのカレッドさんのお話も私はそのように受けとめましたので、与党側の参考人の小川さんがそう言っていただくと、ああ、これは一歩も二歩も進むだろうと思うわけです。
そこで、カレッドさんにお願いいたします。
私はきょう、一九七九年のソビエト侵攻以来、アフガンの国土を本当に奪われ、荒らされ、生きていく基盤をつぶされ続けてきたアフガンの皆さんの声を聞く思いでお話を聞き、大変に参考になりました。
特に伺いたいのは、農業支援のことでございます。
実は、きょう小川さんのお話の中にも中村哲さんが出てこられましたが、もともとお医者さんで、井戸を掘って、次には用水路をつくって、どんどんどんどん命の基盤を何とかしようと思ったら、食べていける、生きていけるという方に道を行かざるを得なくなってくると。
かつて、ソビエト侵攻以前に、日本はアフガニスタンからたくさんの留学生、数はわかりませんが、我が国に農業を学びに来てくれていたと思うのです。日本が今例えばODAでできる支援として、農業用の用水路や、あるいは本当にちょうどやっていらっしゃること、水の支援、会のお名前もそのように書いてございましたので、カレーズの会という、水で潤っていく大地ということですから、そのような意味で、アフガニスタン側から見て今必要な農業支援、それはODAも含めてどのようなものであればよいかということをお願いいたします。
○レシャード参考人 ありがとうございます。
アフガニスタンはもともと農業国であって、アフガニスタンの国民の約八割近い人が農業に携わっていたのが、実はこの戦争前のアフガニスタンの現状です。今もその多くの農場が使えるようになれば、多くの国民がそれを食べていくすべにするだろうと思います。一つの問題は、地雷というのが、まだまだ農地にたくさんありますし、あるいはそれにつながっている地域とか幹線道路等にも残っております。具体的に申し上げますと、一つはそこの部分がある程度考えておくべき課題じゃないかと思います。
もう一つ大切なことは、アフガニスタンにおきましては、数年間の干ばつが大変大きな害を及ぼして、そしてなかなか水がないということですが、この三年間は、幸いに冬場はたくさんの雪が降ったり、水も豊富になっております。そういう意味では、今、日本の農業の技術というのは大変すばらしいものがありますので、アフガニスタンにおきましては大変役に立っていくだろうと思います。
正直申し上げまして、私が実は提案しておりますのは、今、日本の農協の方で、例えば小さなトラクターとかそういうものが大量に残されて、それをつぶすためにお金を集めて、そしてつぶしています。できればそういうものをリサイクル法を使ってアフガニスタンに持っていくことによって、少なくとも、小さなトラクターぐらいだったら小さなところでも十分に発揮できるものがありますので、そういう小さなことが、民間レベルでも結構だし、国あるいはODAのレベルでも結構ですが、やっていける部分が大きいと思います。
もう一つ大切なことは、まさにこの農業のみならず、教育という分野におきましては、日本に呼ぶ留学生と、あともう一つは現地で多くの人たちを育てていく、日本から専門家が行って向こうでやっていくという方法は大変重要な部分だと思います。
実は、同じように、林野庁の方に私はお願いして調査団を出していただいたこともございます。アフガニスタンにおきましては、日本の技術は大変有効に使えるだろうという判断はいただいておりますが、具体的に、やはり治安という問題が大きな弊害になりまして、今そんなに大きな、幅広く活躍できている場は与えられていないというのが現状だと思います。
私は、大変大きな期待できる分野だと思いますので、ぜひとも皆様方の御支援をお願いしたいと思います。
○阿部(知)委員 治安の分野に関しましては、伊勢崎さんがやっておられる治安分野の改革というものの御提言というのは、かつての御経験もおありですし、そこから学んださまざまなノウハウを生かして、ぜひ全権大使を政府の方でも任命していただいて、遺憾なくこの日本の力量を発揮していただきたいと思います。時間の制約で御質問がかないません、申しわけありません。
ありがとうございました。
○深谷委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。
この際、参考人の皆様方に一言ごあいさつを申し上げます。
本日は、参考人の皆様方におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く感謝、御礼申し上げます。ありがとうございました。(拍手)
次回は、明六日火曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後四時二十五分散会