衆議院

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第7号 平成16年4月22日(木曜日)

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平成十六年四月二十二日(木曜日)

    午前十時一分開議

 出席委員

   委員長 自見庄三郎君

   理事 石崎  岳君 理事 北村 誠吾君

   理事 久間 章生君 理事 増原 義剛君

   理事 首藤 信彦君 理事 平岡 秀夫君

   理事 前原 誠司君 理事 遠藤 乙彦君

      赤城 徳彦君    岩屋  毅君

      江崎洋一郎君    遠藤 利明君

      小野寺五典君    大村 秀章君

      佐藤  勉君    佐藤  錬君

      塩谷  立君    菅原 一秀君

      鈴木 恒夫君    田中 英夫君

      谷  公一君    谷川 弥一君

      中西 一善君    中山 成彬君

      仲村 正治君    西野あきら君

      蓮実  進君    鳩山 邦夫君

      林田  彪君    宮澤 洋一君

      森岡 正宏君    山口 泰明君

      生方 幸夫君    大出  彰君

      大畠 章宏君    奥村 展三君

      鎌田さゆり君    川端 達夫君

      末松 義規君    武正 公一君

      筒井 信隆君    中川 正春君

      中塚 一宏君    長島 昭久君

      楢崎 欣弥君    細野 豪志君

      松崎 公昭君    松本 剛明君

      渡辺  周君    上田  勇君

      大口 善徳君    桝屋 敬悟君

      赤嶺 政賢君    東門美津子君

    …………………………………

   外務大臣         川口 順子君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      石破  茂君

   国務大臣

   (事態対処法制担当)   井上 喜一君

   防衛庁副長官       浜田 靖一君

   総務副大臣        山口 俊一君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  増田 好平君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  大石 利雄君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    瀬川 勝久君

   政府参考人

   (防衛庁防衛参事官)   河尻  融君

   政府参考人

   (防衛庁防衛局長)    飯原 一樹君

   政府参考人

   (消防庁長官)      林  省吾君

   政府参考人

   (外務省大臣官房領事移住部長)   鹿取 克章君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局長)   西田 恒夫君

   政府参考人

   (外務省総合外交政策局国際社会協力部ジュネーブ条約本部長)   荒木喜代志君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局長)   薮中三十二君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    海老原 紳君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)   堂道 秀明君

   政府参考人

   (外務省条約局長)    林  景一君

   衆議院調査局武力攻撃事態等への対処に関する特別調査室長   前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十二日

 辞任         補欠選任

  植竹 繁雄君     西野あきら君

  遠藤 利明君     鈴木 恒夫君

  田中 英夫君     谷川 弥一君

  山口 泰明君     佐藤  勉君

  岩國 哲人君     生方 幸夫君

  大畠 章宏君     大出  彰君

同日

 辞任         補欠選任

  佐藤  勉君     山口 泰明君

  鈴木 恒夫君     遠藤 利明君

  谷川 弥一君     田中 英夫君

  西野あきら君     小野寺五典君

  生方 幸夫君     岩國 哲人君

  大出  彰君     大畠 章宏君

同日

 辞任         補欠選任

  小野寺五典君     植竹 繁雄君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案(内閣提出第九八号)

 武力攻撃事態等におけるアメリカ合衆国の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律案(内閣提出第九九号)

 武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律案(内閣提出第一〇〇号)

 国際人道法の重大な違反行為の処罰に関する法律案(内閣提出第一〇一号)

 武力攻撃事態における外国軍用品等の海上輸送の規制に関する法律案(内閣提出第一〇二号)

 武力攻撃事態における捕虜等の取扱いに関する法律案(内閣提出第一〇三号)

 自衛隊法の一部を改正する法律案(内閣提出第一〇四号)

 日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定の締結について承認を求めるの件(条約第一〇号)

 千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書1)の締結について承認を求めるの件(条約第一一号)

 千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約の非国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書2)の締結について承認を求めるの件(条約第一二号)


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     ――――◇―――――

自見委員長 これより会議を開きます。

 本委員会に付託されております、内閣提出、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案等武力攻撃事態等への対処に関連する七法律案及び日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定の締結について承認を求めるの件等条約三件を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案件審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官増田好平君、内閣官房内閣審議官大石利雄君、警察庁警備局長瀬川勝久君、防衛庁防衛参事官河尻融君、防衛庁防衛局長飯原一樹君、消防庁長官林省吾君、外務省大臣官房領事移住部長鹿取克章君、外務省総合外交政策局長西田恒夫君、外務省総合外交政策局国際社会協力部ジュネーブ条約本部長荒木喜代志君、外務省アジア大洋州局長薮中三十二君、外務省北米局長海老原紳君、外務省中東アフリカ局長堂道秀明君及び外務省条約局長林景一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

自見委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

自見委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大出彰君。

大出委員 民主党の大出彰でございます。

 有事関連七法案プラス三条約の質問をさせていただきます。一番最初ですので、初歩的なところからお話をお願いしたいと思います。

 一つは、防衛のことを考えたときには、基本的に、一体何からこの国を守るのかということがあるわけなんですが、どうも質問をしますと、仮想敵国の話をすると、大概のところ、そういうのはありませんという答えがずっと返ってきているのが現状でございまして、そんなのでよろしいのだろうかと実は思っているところでございます。

 基本的に、この法案あるいは条約の対象としてどこの国を脅威と考えているのかとか、あるいはどこと戦う可能性があるのかとか、いわゆる仮想敵国とよく言われている問題ですが、それについてお答えをいただきたいと思います。

井上国務大臣 今の時点におきまして、どこの国と具体的に戦う、こういうことを想定しているわけじゃありませんで、有事の法制といいますのは、そういう具体的なことを想定いたしまして立法することもあろうと思うのでありますけれども、このたびの場合は、有事一般を想定して、それに対応する国民保護に関連する法制を整備したということでございます。

 武力攻撃事態対処法、これは昨年成立させていただいたのでありますけれども、その法律を実質的に施行するためにはこの国民保護法制が必要でございまして、そういう流れを受けまして、このたびの国民保護法制を提案させていただいたということでございます。

 繰り返しになりますけれども、どこの国を想定してこのようなことを考えたということではなしに、有事法制一般として考えられることを規定した、こういうことで御理解をいただきたいと思います。

大出委員 そういうふうにお答えになられるんですが、私は、日本の防衛議論を聞いていて大変不思議に思うのは、どこがという特定のところはありませんとおっしゃるんですね。それで議論をなさって、さらに国家予算も使っているということになると、例えばターゲットを決めて、それに対して有効な手段をとっていくというのが普通ですので、本当にこういうのでよろしいのだろうかと思うところがございます。

 それでは、なぜ仮想敵国というものを論じないで、この間の防衛議論は、日本の場合、日本国憲法のもとで行われてきたのか、お答えください。

井上国務大臣 これまでの安全保障論議といいますか防衛論議といいますのは、常に仮想敵国がどこだというような議論、これが主だったわけでございまして、それに終始をしたということであります。

 私は、仮想敵国といいますが、現実に敵国になる国を想定してからこの法律を整備するというのは、非常に遅過ぎると思うんですよね。やはり安全保障体制、防衛体制というのは、日ごろから、訓練もするし、いろいろなことを考えておくことが必要でありまして、そうしなければ本当の防衛というのはできないと思うんですよね。あるいは、武力攻撃が起こった場合の国民保護というのは十分に機能しないんじゃないかと私は思います。

 そういうことで、ある意味では、そういった現実に武力攻撃が行われるという事態になる以前にこういった制度はきちんと整えておくべきじゃないか、それに基づいて計画も立て訓練もするということが非常に大事なことじゃないか、こんなふうに考えます。

大出委員 そういうふうにお答えになるんですが、どうもその辺を、本当は、仮想敵国をつくらないというのは、憲法に大体敵というものがない、戦争放棄ということが書いてある憲法ですからね。そこから始まっていると同時に、国連憲章自体が、基本的に国連を中心とした集団安全保障というのが原則でして、地域の安全保障というのは例外ですから、原則的に敵をつくらないという考え方に立っているからではないかと想像をするんですが、その辺はどうでしょうか。

井上国務大臣 現実の国際的な枠組みがどのように機能するか、あるいはその期待にどの程度頼っていくべきかということは、それはそれとして議論がありますけれども、もとより、戦争の事態になるということは好ましい状況じゃないわけでありまして、それは極力そういうことを避けていかないといけないわけであります。

 そこに日本の外交努力が求められるし、また日本の国としてもきちっとしたそういう防衛の体制を整えるということが、これはある意味で抑止力になるわけでありますから、両々相まって、外交努力それから防衛体制の整備ということが日本の安全保障に通じていくんじゃないか、こんなふうに思います。

大出委員 そういうふうにお答えをなさるから、かなりあいまいな議論といいますか、安全保障の中でターゲットを絞らずに、一般的にはこういうのが必要であるという財政、例えば目的が決まっていれば、それに見合ったものをそろえるとかいうやり方があるはずなんですが、総花的にこういうのが必要であるとやっていると、防衛予算も別の意味でふえたりすることも起こるんだろうし、そのことをずっとやってきたんだなと、私は二年生でございますが、感想を持っているところでございます。

 そして、この議論をやっていても仕方ありませんから、大概こういう議論はこれで終わるんですね。

 実は、ここで、アメリカの場合でございますが、北朝鮮を想定して、作戦計画五〇二七というのがございますが、アメリカの場合には、作戦計画としてぼんと、ターゲットを絞ったような形で出してきますね。そういう意味で、どんなものなのか、御説明ください。

石破国務大臣 五〇二七というものがあるということは、報道等によりまして承知をしております。

 当然のことでございますが、五〇二七の内容につきまして合衆国から私どもは説明を受けて承知をいたしておるわけではございません。

大出委員 安全保障条約というのがあって、法律上は同盟という言葉ではない、だけれども同盟という言葉が最近よく使われておりますが、安全保障のお仲間であるとすれば、そういうことを聞いていないなどということがあり得るのかどうか、もう一度御答弁ください。

石破国務大臣 それは、日米に限らず、どの同盟国との間においてもそうだと思いますが、詳細な軍事作戦内容について、すべて自国の作戦計画を同盟国に伝えるということは一般的に行われていないことだと承知をいたしております。

大出委員 しかし、そういう五〇二七という計画がちまたに出ているということもあるわけでございまして、公式にアメリカからではなくて、そういうのでお読みになった、あるいはお話を聞いたとか、そういうことはございませんか。

石破国務大臣 先生御案内のとおり、この五〇二七というのは、米韓連合の作戦計画として報道されておるものでございます。そういうようなものの報道でありますとか、いろいろな論評でありますとか、当然そういうようなものは私自身も読み、それなりの研究はいたしておるところでございますけれども、先ほど答弁を申し上げましたのは、その米韓の作戦内容について説明を受け承知をいたしているものではないということでございます。

大出委員 では、アメリカから聞いたわけでないという中で、そういうものが存在をすること、あるいはそれが概略どういうものであるかということは御承知だと思いますので、これは要するに北朝鮮有事のときの対応の話だと思いますが、それは御存じですよね。

石破国務大臣 ですから、累次申し上げておりますように、これがこういうものだということを合衆国から説明を受けたものではございません。いろいろな報道あるいは論評等を通じて、私が個人的に承知をし、いろいろなことを考えているということでございまして、これが合衆国のそのものであるということに基づいて申し上げているわけではございません。

 したがいまして、それは私どもの公式的なものでもございませんし、そういうようなものに基づいて国会の場であれこれお答えをすることは、かえって失礼に当たるかなと思っているわけでございます。

大出委員 よく、例えば、仮想の質問には答えられませんとお答えなさったりするんですが、防衛議論というのはどだい仮想の議論でしょう。仮想敵と言っているんじゃないですよ、仮想の議論ですよね。こうなったらどうしようかという話でございまして、そういうときに、パートナーであるところの国が考えていることが、ちまたにあるものも正確であるかどうかわからないから言えませんというのでは、議論にならないと思うんですけれどもね。

 どうでしょうかね。私がお聞きしているのは、これは北朝鮮有事のときの対応の計画なんでしょうと聞いているんですよ。

石破国務大臣 いや、先生、もう一度繰り返してのお答えで恐縮でございますが、これは米韓連合軍の作戦計画と言われておるものでございまして、そのことについて米韓が連合して、仮にそういうものが真正であるとして、内容は存じませんが、米韓がどのように連合して作戦をするかという計画でございまして、そのことを日本が知悉していない、あるいは知らないということが日本の平和と独立を守る上において何らかの支障になるかといえば、そういうものだとは私は考えていないわけでございます。

 先生よくよく御案内のことかと思いますが、基盤的防衛力というものはそういう構想をいたしておらないわけでございますので、仮定ということは、そういうことではないということを申し上げておるわけでございます。

大出委員 米韓であるといっても、問題なのはそこなんですね。だって、北朝鮮有事ということを考えたときに、日本と北朝鮮だけの問題なんですか。そうではないはずでしょう。だからお聞きをしているんですよ。だって、全く日本と北朝鮮だけで、ほかの国が関係ないんだったら、諸外国が関係しないんだったら、それは二国間の話だけしておけばいいんですが、そうではないでしょう、現実には。ですからお聞きをしたんですよ。

 だとしたら、一九五〇年、朝鮮動乱がございまして、その後に国連軍と北朝鮮との協定ですよね、どういう状態になっているかについて、お願いします。

海老原政府参考人 お答え申し上げます。

 これは委員全部御存じの上でということだと思いますけれども、一九五〇年、いわゆる朝鮮戦争が発生いたしまして、五三年に停戦が成立をいたしました。それで、現在は依然として休戦協定が有効であるという状態になっております。

 この停戦協定自体は、朝鮮の国連軍司令官、それから北朝鮮の人民軍最高司令官、それから中国人民志願軍司令官の間で締結されたものということでございます。在韓米軍の司令官が朝鮮国連軍の司令官を兼ねているという関係にあるというふうに承知をいたしております。

大出委員 休戦協定であるということで続いているわけですよね。そうしましたら、北朝鮮の有事を考えたときに、何らかのことで行動があった、そうしたときに、休戦協定が破れた状態が当然起こるわけですね。そのときにロシアと中国というのは参戦をするのかどうかという、その辺の根拠も含めて、ちょっとお尋ねをしたいんですが。

海老原政府参考人 これは、中朝間とそれからロ朝間で条約が結ばれているわけでございます。当然のことながら、我が国は当事国でないということなので、有権的に解釈をすることはできないわけでございますけれども、あえて申し上げますと、中朝間におきましては、一九六一年に締結されました中朝友好協力援助条約が依然有効であるというふうに承知をいたしております。この条約の第二条でございますけれども、締約国の一方が戦争状態に陥った場合、締約国の他方は遅滞なく軍事的及びその他の援助を提供するというふうにされていると承知しております。

 また、北朝鮮とロシアの間でございますけれども、これは二〇〇〇年の二月、それまでの北朝鮮と旧ソ連邦との間の条約にかえまして、新しい条約が結ばれたと承知いたしておりまして、この第二条でございますけれども、一方に対する侵略の危険性が発生した場合には、双方は速やかに相互に接触するというふうにされておりまして、北朝鮮が例えば侵略される危険性があるというような場合には、ロシアとの間で接触を行うというふうになっていると承知をいたしております。

 このように、北朝鮮との間では、中国とロシアは、条約上の文言からは、異なる義務を負っているというふうに読めるというわけでございますけれども、いずれにいたしましても、実際に緊急事態が起きましたときに中国、ロシアがどのような態度をとるのかということは、これはそれぞれの国が決定する問題であるということで、私から予断を持って申し上げるというわけにはいかないということだと思います。

大出委員 今の御答弁のように、中朝間には、戦争状態になったときに援助をするという自動参戦条約が生き残っているということですね。ロ朝間は二〇〇〇年で新しくなったということで、これは今協議、協議といいますか、接触ですね。接触を行うということで、私は何かのを読んだら協議みたいなものも書いてありましたが、これ自体は、自動参戦条約をやめたということですね。

 少なくとも中国については、いわゆる休戦協定が破れた状態が起これば参戦をしてくる。そうすると、やはり日本の周辺の有事を考えたときに、当然そちらも相手にしなければならないということを前提で、この有事法制あるいは条約を考えていかなきゃならないということだと思います。

 そこで、ロシアとの関係。今のように、二〇〇〇年で新しくなりましたので、前にミサイルディフェンスの問題で、アメリカ側がロシアに、ロシアのコンピューターを新しくするみたいなことで、ならず者の国家には一緒に闘いましょうみたいな話をしているはずなんですね。だから、今度の場合に、今のお答えのように、その国がどうするかはわかりませんが、ミサイルディフェンスとの関係でいくと、この間にロシアが加わってくる可能性というのは少ないのかどうか、その辺の感触をお伺いしたいんですが。

石破国務大臣 それは、ロシアはロシアとしてミサイル・ディフェンス・システムというものを開発しており、欧州あるいはそのほかの国と共同でシステムができないかという考えを持っておることは承知をいたしております。しかし、それが、例えば日米のミサイルディフェンスのようにきちんとした形をとって、このような形でミサイル・ディフェンス・システムを共有するということが確たる形になってあらわれたとは、私は現在認識をしておりません。

大出委員 今の有事法制を考えたときに、確定的といいますか、自動参戦条約が残っているのは中国だけであるということで、日本で有事関連の議論をするときには、その部分もしっかりと踏まえた上で議論をしていかなければいけないんだという意味で話をしたわけでございます。

 そして、今度は有事関連法案でございますが、これ自体、いろいろ我が党も修正協議等に応じて、そして、なるべくというのじゃなくて、必ずといいますか、憲法の枠内でということで協議をしてきたわけですが、この法案自体、間違いなく憲法の枠内でしかできないという確認でございますが、内閣官房、お願いします。

井上国務大臣 そのとおりでございます。憲法の枠内、憲法の枠をきちんと守りまして、この法案を提出させていただいているということであります。

大出委員 それを前提にしながら話を進めていきます。

 今は、何から守るのかという話だったんですが、今度は、この国は守れるのかどうかという問題が実はありまして、どうも地形的には守りにくいですし、さらには、いろいろ聞いてみて、御努力をいろいろなさっておられますが、大変に難しいことがいっぱいありますね。

 そこで、何を申し上げているかといいますと、例えば三月二十五日に安全保障委員会で、きょうは警察の方とか海上保安庁の方はお呼びしておりませんが、お聞きをしまして、日本には原発が五十二基ある、それをどのように守るのかという話をまずいたしました。さらには、石油とかガスタンクがございますが、これは五百キロリットル以上が一万三千以上もある、これをどうやって守るのかという話をお聞きしたんですね。

 そうしたところ、原発の方は大変御努力をいただいておりまして、二十四時間、常時警備をなさっておるということをおっしゃっておりました。恒常的に警察官を常駐させて警備をしているということをおっしゃっておりましたし、大変御努力をいただいているところなんですね。

 ところが、やはりさすがに石油タンクとかガスタンクが、五百キロリットル以上のものが一万三千以上もあれば、それはもうとてもじゃないけれども、それをすべて警護するということは不可能なんですね。ですから、それぞれの施設を持っているところに、みずからが警備をするということを含めた意味で、最大限の努力を払っていただいているところなんです。

 そういう状況ですから、一つ火を噴けばということが起こるような、非常に石油化学に頼っている日本としては、どこがどうなるかわからないような状況というのが現状だという認識が必要なんだと思うんですね。ですから、私は非常に、この国というのは、原発をさわられてもどうしようもないだろうし、石油、ガスタンクをやられてもどうしようもないだろうと思っているような、それと同時に、国自体も長く、攻めやすく守りにくいところでございますので、とてもじゃないけれども戦争状態にはできない国だなと。

 こんな思いを強くしながら、一つお伺いをいたしますが、この間のとき石破長官に、今日本が核攻撃を受けたら守れるんですかとお聞きをしたんですね。三月二十五日でしたが、質問通告してありますから。そのときに、守れないとは言いたくございませんとおっしゃったんですね。それはどういうことかというと、これは意味をちゃんと解釈すると、守れないんだけれども守れないとは言いたくない、こういう意味にもとれますね。

 私は、今の状態で守れるんだとすれば、どういう具体的な手段で守ろうとするのか。あるいは、基本的には今守るのは無理ですよと。守るということは、要するに、核爆弾がおっこってくることを防げないという意味ですよ。どうでしょうか。

石破国務大臣 私も議事録を手元に持っておりますが、私は、言いたくないとは申し上げておりません。核攻撃を受けたとして、日本が守れないなどということを私は申し上げるつもりは全くございませんというふうに答弁をいたしたつもりでございます。

 それは、まず、何のために核抑止力というものを米国が提供しているかということでございます。これは先生御案内のとおり、予防の局面があって、抑止があって、そして対処、局限、そして復旧、そういうふうにいくわけですけれども、予防外交があり、そしてまた核抑止力というものがありということでございます。まず一つはそういうこと。

 もう一つは、にもかかわらず発射をされたとしたらどうするかということで、ミサイル防衛の予算を含みました平成十六年度予算を国会において御審議をいただき、御承認をいただいたということだと思います。

 かてて加えて申し上げれば、例えば広島で原子爆弾が落ちた、長崎で原子爆弾が落ちた、その後、米軍がやってまいりまして、詳細な調査をしております。私も、全文すべて読んだわけではございませんが、あの広島においても、あの長崎においても、爆心地の近くでありながら落命をされずに生き残った方というのがたくさんおられる。では、どういう状況であれば核攻撃を万々が一受けても被害が局限できるかということは、私ども、同時に考えていかねばならないことでしょう。

 かつて、核シェルターの議論もございました。やはり私どもは、一〇〇%ということは申し上げられない以上、どのようにして被害を局限するかということもあわせて考えていかなければ、防衛の責任は果たせないと思っております。

大出委員 事前対策、事後対策、瞬時の対策その他は当然行わなきゃいけないわけですが、私がお聞きしたのは、核攻撃を本当に受けてしまったら守れるんですかと言っているわけでございまして、余りそのことをお答えにならないで、後の話とかをなさるわけですが、だって無理でしょう、どう見たって。

 では、ミサイルディフェンスで、今の状況でミサイルが来たら、ミサイルで撃ち落とせるんですか。

石破国務大臣 それは持っておりませんから、御承認をいただきました予算を着実に執行いたしまして、早くその能力を持たなければいけないということです。

 先生の御質問は、抑止がもしきかなかったらどうするんだという御質問なんだろうと思います。それは、例えばテロリスト、あるいはそういうようなことがきかない冒険主義的な国家、そういうものが持たないようにどうするのか、それが撃たないようにどうするのかということに今全世界は取り組んでおるわけでございます。

 先生がおっしゃるように、そういうことがあったらどうするんだ、被害がゼロだとは言えないわけです。したがって、どうやってそのような人たちに弾道ミサイルあるいはNBC、それが渡らないようにするかということを目指して今世界各国が努力をしているわけで、今やられたらどうにもならないだろう、しかし、だからといって、では何もしなくていいということではない。

 したがって、今全世界が努力をしている。我が国としてもBMDを持つ、そして核抑止力というものがきちんとワークするようにする。万々が一、それでも来た場合にはどうやって局限をするかということも考えなければならない。それによって、本当に多くの人命というものを救うことができるし、日本の場合には仮に核攻撃をしたとしても被害は本当に少ないねということが、そういうようなよこしまな気持ちを持つ相手に知らしむることができるとするならば、それは撃っても意味がないということになるでしょう。国民保護法制とは、まさしくそれを眼目とするものだと思っています。

大出委員 理性のある国、これは、国際情勢や国内の情勢もいろいろあるでしょう、あるいは時の状況もあるでしょうけれども、今までは、核攻撃をすれば、逆にどこからか核攻撃をされるということであったから抑止力であったわけです。正しい議論であるかどうかわかりませんけれども、理性的でない国が出現をしていてという判断から始まって、すわミサイルに核が載っているのではないかという、こういう話から、北朝鮮は普通ではないんだ、ならず者国家というネーミングもありますが、そういう議論から起こってきているわけでございまして、これ自体も、本当のところ、核を持っているかどうかの把握というのはなかなか難しい話。二、三個持っていると言われていますよね。

 そのときによく思うのは、政治的にどうしても、この国はこんなに悪いんだと、要するに、危機をどんどんどんどん、我が国自体も、あるいは向こうもそうかもしれませんが、増幅をしてしまうということがあると思うんですね。そのことは、決定的な一線を越えたときに後の祭りになってしまうわけでございまして、そういう意味では、やはり、その部分の正確なデータとともに、当然、今、日本の中に拉致問題が北朝鮮の問題でありますから、進展の度合いというのは必ずしもはかばかしくないということでございますけれども、本来的な筋としての外交ということをもっと強調するような発言であってほしいなと実は思うんです。

 そして今、核攻撃でやられるよという話はお答えはなさいませんので、そのときに、前に聞き損ねたものですから聞いておきますが、防衛庁の新庁舎にお伺いをしたときに質問をしたんですね。何を質問したかというと、要するに、本当に核攻撃を受けた場合に、この新庁舎は核攻撃に耐えられますかという話をしたんですね。新庁舎の下の方に例えばシェルターかなんかがあれば、一応何とかなったと言うのかもわかりませんけれども、それをお聞きしたんですが、どうでしょうか、そういうふうに守れますか。

河尻政府参考人 お答え申し上げます。

 先生の御質問は、市ケ谷の新庁舎の建物といいますか、それよりはむしろ地下の指揮所の件ではないかと思いますけれども、御質問自体が我が方の防御能力に関するものでございますので、指揮所自体、一定の強度は持っておりますけれども、お答えしにくい問題でございます。

 また、御質問は、核弾頭の威力、メガトン級でございますとか、あるいは、先ほど大臣からお話がありました広島、長崎のようなキロトン級とか、そういう核弾頭の威力によっても当然変わってまいりますし、あるいは、命中精度、北朝鮮のミサイルは命中精度が悪いとか言われておりますけれども、そういった命中精度によっても変わってまいりますので、核攻撃を受けたら耐えられるかどうかということを一般的な形でお答えするということは、大変難しいところでございます。

大出委員 これは、オープンな中で防衛庁さんも議論をなさっておられますから、よしんば、例えば隠し事があって、核のシェルターがあったらそれはまた問題ですし、そうでないとすると、逆に今度は大丈夫なのかなと思う面もありますしね。そういうものだろうと思います。

 そのときに、私はついでにもう一つ聞いたんですね。そういう問題とともに、私は国民を最初に守るべきだと思うものですから、シェルターはどうかという話をしましたけれども、もう一つ、そういう状況になったときに、アメリカの九・一一のときに、影の内閣といいますか、パラレルガバメントといいますか、影の内閣というのが勝手に、国民を無視して百名ぐらい別に移動しまして指揮所をつくったわけですよ。従業員も百人連れていったわけですね。当然、シェルターの中に入って別行動をとったというのがアメリカでは報道されて、たたかれたというわけですね。要するに、国民に知らせないでやっているからですね。

 ですから、そういう意味の要人の避難ということも考えているんですかとこの間お聞きしたんですが、余り明確には、そのときになったら適正にやりますみたいな話なんですが、なかなか明確には答えておられませんが、本来はそういう問題も国民に周知をさせた上で考えなきゃいけない議題だと思うんですが、この辺はどうでしょうか。

井上国務大臣 核攻撃に対する避難、これについてはまだ十分な議論が深まっていないわけでありまして、本当にこれをどうしていくのかということ、これはやっぱり研究をする、あるいは議論をしていかなくちゃいけないテーマだと私は思っております。

 当然のこととして、一般の国民の避難あるいは要人の避難、具体的に、どれをどのように優先して、どこに避難をするかというところまで議論が深まっておりませんので、具体的にお答えすることはできませんけれども、これからきちんと議論をして詰めていくべき大変重要なテーマだというふうに思います。

大出委員 国を守るということ、国民を守るということですが、やはり主権者である国民自体を守ることから基本的に考えていただきたいという思いがございまして、シェルターというのは、いい方法かどうかは別かもしれませんが、とりあえず、もし全部つくったとすれば、それは核攻撃等から国民を守るという、一番あらわれてございますでしょう。

 そういう意味で、視点を国民の側に向けていただいた、当然今回の、国民保護法制の質問をしますけれども、国民保護法制もある意味でソフトな面があります。それは、もう一度この問題で質問いたしますけれども、国民保護法案の場合、これはいろいろ人権の問題が書いてありますが、国民の側というのは、どうしても政府というものを批判的な目で、あるいは疑いの目で見てしまうものなんですね。そして、そのときに、やっぱり国民主権でありますから、国民を優先する、そして人権も優先をするという、そういう基本的なスタンスをお持ちであるかどうか、再度お伺いをしたいと思います。

井上国務大臣 国民保護法案というのは、まさに国民を守るためにどうするかという、こういう法案でありまして、考え方の中心はそこにあるというふうに思います。

 ただしかし、国民を守るというのは、国民を守るということだけを言っておればいいかというと、そうじゃありませんで、やっぱり国を守るというのは、国が中心になりまして、国全体として国民を守っていく体制をつくらなければ、結果として国民は守れないわけでありますから、そういう意味では、国民を守る体制もきっちりしておく必要がある、これも非常に大事なことだというふうに思います。

大出委員 今のいわゆる武力攻撃事態を受けた国民保護法制を含めた七つの法案というのは、やっぱり憲法の枠内でつくろうとして努力をしているんですね。これはなぜかといいますと、それ自体の規定が簡単に言えば憲法にないところがありまして、そういうこともありまして、憲法の価値観の枠を出てはならないことになっているわけですね。

 それは何が一番の価値観かというのは、国民保護法制ですから国民の問題ですが、憲法自体というのは、一人一人の人間はかけがえのない価値ある個性を持った人間だから、それを最大限に尊重しましょうという考え方なわけですね。そして、一人一人を最大限尊重するということを一番大事な価値観だと言っているのが日本国憲法なわけですよ。そういう意味が一方に当然あります。ところが、九条のような戦争に対する否定する考え方と同時に、さらには有事法制と言われるものの規定を直接置いていない、その中でつくっているからこそ、国民の人権を優先的に扱え、こういうことだと思うんですね。

 それで、国民保護法制でございますから、気になるところをちょっと。今回のいわゆる人質の問題について、人質の方々が解放された、某新聞に、この問題について、「人生相談」という方式をとって、日本の話じゃなくてほかの国で同じようなことが起こったのについて答えているのがあるんですね。それをちょっと読ませてもらいたいと思います。

  「匿名希望」さんへ。お気の毒に。あなたの国では、どんなにいいことをするより、他人に(あるいは「お上」に)迷惑をかけないことの方が大事なのでしょう。家に閉じこもって、テレビを見ながら「戦争か、たいへんだなあ」と鼻毛でも抜いてる人がいちばん立派なのでしょう。実をいうと、わたしの国でも同じようなことが起こっています。そのことについて書きます。もしかしたら、あなたたちの役に立つことができるかもしれないから。

  その前に、一ついっておきますが、わたしは、きわめて穏健な生活保守主義者です。わたしは、わたしの国の政府が信じられないぐらい無能で嘘つきの集団だと思っていますが、だからといって革命を起こそうとは思いません。面倒くさいし。たいへんだし。それどころか、わたしは法律で規定された「国民の義務」を遵守しています。つまり、わたしは「寝食を忘れて」働いて得た収入から毎年何百万もの国税を政府に文句もいわずに納めています。

作家の方です。

 そして、わたしは、わたしの払ったその金で、政府の役人や政治家たちを雇っているのです。わたしは、わたしの義務を完全に果たしました。それ以上の義務はなにもありません。あとは、政府の役人や政治家たちに、彼らの義務を果たしてもらうだけです。つまり、彼らにはするべき仕事をしてもらわなきゃなんない。

  ところが、ですよ。信じられないことに、わたしの国の政府の役人や政治家たちは、義務を果たさない。というか、仕事をしたくないっていってるみたいなんですねえ。

  実は、わたしの国でもイラクでボランティア活動をしている人やジャーナリストが誘拐され、人質にされました。そして、やっと解放された。よかったよかった。そしたら、その後、政府のエラい人が「「寝食を忘れて」救出活動をした人」のことを考えろとか文句をいいだしたんですよ。わけがわかんないとは、このことですよね。だって「国民の保護」は、彼らがいちばん先にやらなきゃならない仕事なんですから。やって当たり前。もしかしたら、政府の人たちは「人質の救済」は「サービス残業」みたいなもので、ほんとはやりたくないのに無理やりやらされたと思ってるんでしょうか。法律を知らないんじゃないですか。

  それから「迷惑をかけた」と怒ってる人もいました。ヘンですね。その人はいったいどんな迷惑をかけられたんでしょう。わからない。少なくともわたしはぜんぜん迷惑をかけられてません。でも、人質の人たちのしたことが「迷惑」なら、そういう「迷惑」はどんどんかけてもらいたい。わたしの「血税」はそのために是非使ってもらいたい。大歓迎です。それから、「金がかかったから払ってもらえ」といってる人もいましたが、この人もヘンですねえ。だったら、その前に為替差損で何兆円も国に損をさせた人や誰も来ないホテルを年金基金の金で建てた人に請求書を回しなさいよ――っていったら、自分たちのところにものすごい額の請求書が来るからイヤか。

  人質の人たちは、いいことをしようと思って個人で海外へ行ったんです。そしたら、彼らの力を超えたものに拉致された。あのね、そういう時のために、わたしたちは政府とか役人とかを雇っているわけです。「海外危険保険」を税金を出して買ってるわけ。まあ、ガードマンみたいなもんですよ。そしたら「保険は効きません」といわれちゃった。どうやら、わたしたちは詐欺にあったみたいなんですねえ。

まあ、ここまでにしておきますが、国民保護の問題でございますから……(発言する者あり)そうですね、いろいろな意見がございます。

 それで、行った方々が未熟な点だとか、あるいは語学等を勉強して行かれたりとかそういうことの必要性とかは当然あるわけでございますが、国民保護であるということから、まず、この点をしっかりと、国民ということを踏まえていただきたいということで、逆の質問をさせていただきたいと思うんです。

 というのは、これははっきり申し上げますが、日刊ゲンダイの四月二十日、これは本当かどうかわかりませんけれども、書いてあるのでお尋ねをしたいと思うんですね。日本政府がその間の人質の方々を前にしてとった行動の中で、一つこういうのがあるんですね。

 バグダッドで取材中のジャーナリスト、橋田信介氏の中に書いてあるんですが、最初の三人の人質事件で、武装グループから二十四時間以内の解放声明が出てから三日以上も時間がかかったのは、ひとえに政府の責任だとこの方は言っているわけですね。それは、どんなことをなさったかというと、アンマンの現地対策本部に頼まれたヨルダン人のスペシャルチームが医療団体に化けてファルージャ入りをした、ところが、途中で正体がばれ、一人が拘束され、余計に現地を混乱させた、そのために解放がおくれたんだとこの方は言っている。

 ですから、こういう事実があったのかどうかと同時に、その捕まったヨルダン人は今も解放されていないというんですが、解放されたのかどうか、この点をちょっとお伺いいたします。

西田政府参考人 お答えをいたします。

 人質の事件が起こりましてから、外務省を含め、官邸の御指導を得て内閣が全力を挙げて無事に救出をするということで努力をいたしました。その間、いろいろな方々の御協力もお願いをし、結果として、委員御指摘のとおり、五人の方が無事に解放されたということでございまして、総理も言っておられますけれども、まことに喜ばしいことであったというふうに考えております。

 その間、事命にかかわることでございますので、それぞれのことについてつまびらかにすることは差し控えるべきだと思っておりますけれども、政府が持っておりますあらゆる手だてというものを使いまして救出に努力をいたしました。

 先ほどの御質問については、そういうことも踏まえまして、お答えを差し控えたいと思います。

大出委員 こういうふうな答え方をいつもなさるんですが、今度はヨルダン人が捕まっているんだとすると、それが解放されたかどうかは聞いておく必要があるんですが、その点についてもお答えできませんか。

西田政府参考人 御質問の具体的なことについては、今の時点では承知をしておりません。

大出委員 外交のいろいろな進みぐあいの中で話してはいけない部分というのは瞬間にはありますが、最終的には全部つまびらかにしていただかないと困るわけで、そういう意味で、もしこれが、こういう事態の中で拘束をされているんだとすると、やっぱり懸命に努力をして救出をしなきゃいけない、そういうふうにお願いしたいと思いますね。

 次に参りますが、国民保護法制の中で、いろいろ法案が出てくるまでの間に、紆余曲折といいますか、報道等でいろいろありまして、少し中身が変わってきたりしているんですね。

 そこで、これは、今は「留意事項」として「高齢者、障害者その他特に配慮を要する者の保護について留意しなければならない。」と九条にあって、これが二〇〇二年の十月の段階では「社会的弱者の保護、外国人の不当差別の禁止、国際人道法の的確な実施等」という形で、一、目的、二、国、地方自治体、指定公共機関の利用等とともに、三の部分でこう書いてあったわけですね。それが翌月、だから二〇〇二年の十一月でしょうか、国民保護法制の輪郭というときには「高齢者、障害者、乳幼児等社会的に弱い立場にあるものの保護に留意」、こういう文言になっていたんですね。

 ここで問題なのは、確かに差別的取り扱いについて禁止するということは当然重要なことなんですが、これは外国人について規定していませんので、まずはこの差別的取り扱いの中に外国人が入るのかどうかということと、入らないんだとすれば、外国人の不当な差別の禁止というのはやっぱり入れておいた方がいいのではないか、そういう意味で御質問をしたいんです。

井上国務大臣 一般的に、外国人も含めまして保護の対象にする、そういう前提で起案をいたしておりますので、特別に外国人ということは記述しなかったわけでございます。

大出委員 そうですね。では、差別的取り扱いというのは外国人もいけません、こういうことで了解していいんですね。――はい、ありがとうございます。

 それで、そのほかに、細かい話になっていくんですね。これは大体、何せ長い、条文の量が多いものですから、本来ならば審議のあり方なども、逐条ごとにやるという審議のやり方も本当はあるんですよね。そうではないので、逐条的にやっていると飽きてしまうこともあるでしょう、後回しにしながら次に行きたいと思います。

 今度の国民保護法制の中には、大規模テロということがございまして、これはいつも問題になるんですが、一体、大規模テロというのはどういう事態を想定しているのかということが、テロの定義、これもなかなか難しい話ですが、この辺を御答弁いただきたいんです。

 なぜかといいますと、どうも勝手に、これもそうだ、あれもそうだと言われてしまうのではないか、類型化等をした方がいいのではないか、そういう観点でお伺いをします。

井上国務大臣 大規模テロの定義というのは、なかなか難しいし、国際的にも一定の定義がないようであります。何かアメリカとかイギリスは、それぞれの法律でそういうことを規定しているようでありますけれども、必ずしも統一をされていないということであります。

 この国民保護法案におきましては、武力攻撃に準ずる手段によりまして大きな被害が出るような事態であって国民の保護の措置が必要な、そういったものを緊急対処事態、こういうぐあいに規定をしておりまして、大規模テロも当然この中に入るということであります。

 今どんなことを想定しているのかということでありますけれども、生物・化学兵器なんかを使って人を殺傷する行為でありますとか、あるいは爆弾ですね、爆弾なんかも使って人を殺傷するようなこととか、そういったことを想定しているのでありますけれども、こういったことにつきましては、もう少しこの指針の段階におきまして詳しく、何といいますか、類型をきちんとしないといけない、こんなふうに思います。

大出委員 同じような悩みがあるようでございまして、なかなか漠然としていますので、ですから、指針の段階で本当に類型化しないと、区別がつかないといいますか、恣意的な判断がなされてしまうのではないかという不安がございますので、ぜひそこのところをお願いしたいと思います。

 そして、細かいのがいっぱいあるんですが、米軍の行動の円滑化法案の方にちょっと飛びますが、ここで一つお聞きをしておきたいのは、韓国と比べた場合に、有事の指揮権はアメリカでなくて本当に日本にあるんですねというところですね。

井上国務大臣 これは、日米の防衛協力のガイドラインに従いまして、日米それぞれが指揮権を持って対処をする、こういうことであります。どちらか一方が指揮権を持って対応するということではございません。自衛隊は日本、米軍はアメリカ、こういう形で、その間の調整を十分図りながら、目的が達成できるように対処していきたい、こういうことでございます。

大出委員 韓国と申し上げたが、韓国の場合は違うということは、どういう経過なんでしょうか。そして、どうもその辺は、また韓国の方に戻すとかいろいろあるようでございますが、その辺はどうなっているんでしょうか。

海老原政府参考人 韓国の場合は、朝鮮戦争が終わりまして、一九五四年に韓米相互防衛条約ができまして、そのときに在韓米軍と韓国軍が分かれたということでございますけれども、その後、一九七八年だったと思いますが、米韓連合軍ということで指揮系統が統一化されているというふうに承知をいたしております。

大出委員 統一がされている、統一とおっしゃいましたね。そうすると、一つ、上下はないということですね。それと、日本のようにそれぞれがというふうな方向ではないんですか、今現在。

海老原政府参考人 米韓連合軍におきまして統一指揮権ということになっているというふうに承知をいたしておりますけれども、その詳細につきましては、現在、資料もございませんので、承知をいたしておりません。

大出委員 資料がないというならお答えはないでしょうから、あれですね。

 そこで、イラクの問題のときに、日本はCPAに所属しているのではないかと思っているんですが、どうもそういうふうにおっしゃらなくて、この辺は、CPAに所属していると言うとまずいんでしょうか。それとともに、どうなのかをお尋ねいたします。

西田政府参考人 お答えをします。

 累次、同種の御質問をいただいておりまして、我が国より派遣されております自衛隊はCPAの指揮下にはないということでございまして、独自の指揮のもとで活動をさせていただいております。

大出委員 大体そういうお答えのようでございます。でも、現実には、いろいろ共産党さんの質問等を見ていて、本当なのかなと疑うところがかなりありまして、まあ、そうおっしゃっているから、そういうことにしますが。

 それで、これはいつも思うんですが、米軍の行動円滑化なんですが、米軍自体は、日本の法律を尊重するということで、遵守義務はないと。ですが、対等だとおっしゃっているんだとすると、野方図、何でも無制約というのはおかしな話だなと思っていまして、この何らかの制約というのは明記したりはしませんか。どうですか。

井上国務大臣 これは、日米の安保条約なりあるいは地位協定というのが大きな土俵だと思いますが、そういう中で日米が共同行動をとるのでありますけれども、日本の協力は、そういう共同対処をする、武力攻撃事態に備える、そういう目的の範囲で必要な限度ということになっているわけでございます。これは、米軍の行動関連法案の中にもそのように規定しているところでございます。

大出委員 ですから、この部分、今の話を含めて、地位協定にいろいろ問題があるわけですよね。ですから、今回のを機に一緒に地位協定の見直しをぼんとやるべきではないかと思うんですが、どうでしょうか。

海老原政府参考人 まず、日米地位協定につきましては、武力攻撃事態等におきましても現在と同じように適用があるということでございます。

 いろいろと問題の御提起があるというのは承知をいたしておりますけれども、地位協定につきましては、運用の改善ということで問題に対処するというのが一番迅速かつ効果的に対応できるというのが、従来から申し上げている政府の立場でございます。

大出委員 大体、質問すると、運用の改善なんですね。ですが、その運用の改善という言い方も改善してほしいんですね。見直していただきたいと思いますね。

 私なんかも戦争を知らない世代ですが、やはり、こういう地位協定も含めた条約というのは、国家が本当のパートナーになれるのかなれないのかということにかかわってきますから、やはりこれは、意を決してしっかりと、対等なんだというところで見直さないといけないということを申し上げたいと思います。

 そして、政府は国民に対して米軍の行動に関する情報提供を適切に行うということになっていまして、これがまた、情報提供の問題はここだけではございませんけれども、まず、適切な判断はだれがするのかというのが一つありますよね。そして、相手が特に米軍だからまずここで話しているんですが、本当に情報を提供するんだろうかという思いがあるんですね。そこで、情報提供をするんだというのかどうか、これが二つ目ですね。

 それから、私ずっと見ていまして、今のアメリカもそうですが、情報操作をされるのが一番困るわけなんですね。それと同時に、日本の場合、質問をしますと、右か左か、イエスかノーかで終わってしまうんですね。本当は、ここは言うことができない、軍事上の問題あるいは外交上の問題で言うことができない、だけれどもここまでは言える、そういう情報の出し方の訓練をというか研究をちゃんとしていただきたいと思うんですね。どう見ても、言うと、そこでもう木でくくったようにといいますか、答えがシャットアウトされてしまうので、そういう意味で、このアメリカ軍の情報についても、まずその点についてお聞きをしたいと思います。

井上国務大臣 必要な情報の提供といいますのは、都道府県とか市町村が国民の保護の措置をとる場合にもこれは必要だと思うんですね。どこへ避難をするのか、どういうような救援をするのかとか、あるいはどんな道路を使うのか、そういう上でも必要でありますし、また、片や米軍の方から見ましても、米軍の行動を円滑化していくという点については、いろいろ国民の支持を、理解を得ないといけないと思いますので、米軍の行動の円滑化という点からも必要なことだと思います。

 したがいまして、問題は、どのような情報を適時適切に出していくのかということでありまして、一般的な基準といたしましては、米軍がどういうような行動をしているかとか、そういったことが中心になるわけであります。もちろん、軍事機密にわたることにつきましては、作戦行動に関することにつきましては制約がありますが、極力この情報を国民に知らせていくということが必要だと思うのでありますが、具体的に、やはりその情報を出します場合、よく検討しまして、やはり国民の理解を得るというような視点に立ちまして、そのときそのとき、どの程度までこの情報を知らせるのかということを決めていかないといけない、適切な決定をしていかないといけない、こんなふうに思います。

大出委員 その辺を、今の基本線をよろしくお願いしたいんです。

 というのは、御存じのように、アメリカの九・一一以降を見ていますと、戦略的な意味でうその情報を流すというような局をつくったわけですね、当然つぶれましたけれども。要するに、戦略を含めて、それでも構わないんだと言ってしまう方向に行ってほしくないわけですね。

 やはりぎりぎりのところまで考えて出せる、なるべく多くを国民の皆さんに知らせるという努力をしていく姿勢であってほしいものですから、今の答弁は好意的に受けているわけですが、それを貫いていただきたいということを申し上げます。

 もう一つ、最後になりますが、大変心配をしているのは有事ACSAのところでございまして、何が一番心配かというと、米軍に物品及び役務を提供するわけですが、常々言われていることは、アメリカが先制攻撃をしたときに物品、役務を提供してしまうんではないか。そうすると、これは集団自衛権の行使になるだろう。この部分について、そういうことはないのだということがあるならばお答えをいただきたいのと同時に、これはもともとアメリカが先制攻撃戦略をとっている点に問題があるので、これについて、イエスなのか、やめた方がいいというのか、その辺について、最後に伺います。

海老原政府参考人 まず、ACSAについてでございますけれども、これは自衛隊が米軍に物品、役務の提供を行うという場合には、これは例えば、新しい五条でございますけれども、これは武力攻撃事態等でございますが、このような場合に提供する場合にも、あくまでその権限の範囲内でということが明記されてございます。つまり、それぞれの国内法、日本の国内法に従って行われるということになっているわけでございます。

 これは、例えば周辺事態であれば周辺事態安全確保法に基づくということになっているわけでございまして、国会で御承認いただいた国内法に従ってということである以上、集団的自衛権に抵触するということはないわけでございます。

 また、米国の先制攻撃ということをおっしゃいましたけれども、これは米国の国家安全保障戦略、二〇〇二年でございますが、その中で先制的な行動ということはございますけれども、国際法違反のいわゆる先制攻撃を米国がするというようなことは我々は考えておりませんし、またACSAの関係で申せば、ACSAの中に、米国が受領した物品、役務というものは、国際連合憲章に両立する形で使用しなければならないということも書いてございまして、米国が先制攻撃をするというようなことは、我々は考えておりません。

大出委員 質問を終わります。ありがとうございました。

自見委員長 次に、川端達夫君。

川端委員 民主党の川端です。各大臣、よろしくお願いいたします。

 前国会からいわゆる有事法制が審議をされてきたということで、武力攻撃事態だけではなくて、いわゆる緊急事態に国が、あるいは国民が国を守り、国民の生命財産を守るという大変大きな使命をどう果たしていくのかということの議論がされ、法整備が今進んできたという状況は、長年そういうことを主張してきた立場としては、大変いいことだというふうに評価をしております。

 当然ながら、法整備と同時に、いわゆる不断の努力と備え、訓練も含めて、そういうことが大変重要な問題になってくる。総理もよく、備えあれば憂いなしとしょっちゅう申されますけれども、私は、憂いなければ備えなしだと思っているんですが、それはおいておきまして。

 そういう中で、いろいろ法整備をし、国民を保護する、そして政府がこういうふうに行動をするということでやっていく大前提としては、国民が協力してほしいというふうなことの表現なんですが、意識として、みんなで自分たちの命や財産、そして、ひいては国をみんなで力を合わせて守っていくんだというその意識の共有化というんですか、コンセンサスというものが醸成されていなければ、幾ら体制をつくっても絵にかいたもちになるということではないのか。法以前の問題として、そのことは大変大きな問題だと私は認識しています。

 そういう中で、最近の風潮を見ると、いわゆる地域社会の崩壊であるとか、個人主義というのが、ある意味で行き過ぎた個人主義みたいなものが横行しがちであるとかというふうな部分を見ると、何かいろいろな危ないことが起こってきたら、金と時間、お金のある人と言ったら語弊があるのかもしれませんが、逃げられる人は、どこか海外へ、安全なところへしばらく逃げておいて、いろいろなややこしいことはみんなでやっておいてよ、また落ちついたら帰ってくるわというふうなことにもなりかねないのではないかということさえ私は心配をします。

 そういう部分で、今こういう法体系を整備しようということの目的として、国民の生命財産を守り国を守るということをやる国民意識の大前提というものの現状をどのように両大臣認識されているのか、まずお尋ねをしたい。

井上国務大臣 備えあれば憂いなし、この言葉は、備えなければ憂いなしという言葉もありまして、これのアンチテーゼとしまして言われている言葉だと思うのでありまして、私は川端委員と同じ見解を持っていると思いますが、やはり備えはきちっとしておかないといけないし、しかもまた、その場合に、やはり国を守るということでありますから、やはり国が中心になりまして対応していくということになるのは当然でありますけれども、しかし、国だとか地方公共団体だけで国が守れるかといいますと、そうじゃありませんで、やはり国民全体の協力がなければ国を守るということはできないと思うんですよね。

 ただ、国民意識がかつてとは大分違ってきていることは御指摘のとおりでありまして、そういう意味では、国を守ることの大切さですね。あるいは、お互いにそういうことに責任を持つような、そういうような意識につきましての啓発というんですか、そういうようなことも必要だと思いますし、あるいはそれは、単に学校なんかで教えるということだけではなしに、現実に訓練なんかを通しまして、そういった意識の啓発も必要だと思うのであります。

 いずれにしましても、やはりみんなで守っていくんだという、こういう体制、こういう意識、これが非常に大事だと思いますし、そういう中で国の果たす役割というのは非常に大きいんじゃないか、こんなふうに思います。

石破国務大臣 あるいは先生も御案内のことかと思いますが、内閣府が世論調査をずっとやっていまして、外国から侵略された場合、あなたどうしますかということを問うております。

 これをずっと聞いているわけですが、平成十四年度は、外国から侵略されたら、あなたどうしますかというときに、何らかの方法で自衛隊を支援するとお答えいただいた方が過去最高の四八・九になっている。自衛隊に参加して戦うという、これはどういうやり方があるか難しいですけれども、下手するとゲリラになっちゃいますから。それはさておき、こういう方が五・八%おられるわけですね。足すと過半数。武力によらないで抵抗するとおっしゃる方が一八・三、一切抵抗しないという方は七・七みたいなことになっておるわけです。

 そうしますと、確かに地域社会の崩壊とかいろいろなことは言われますが、この世論調査を見ます限り、何らかの方法で自衛隊に協力する、あるいはともに戦う、これの当否は別にいたしまして、という方が国民の過半数になっているということは、やはり、私どもできちんとした意識を持って国民の皆様方に働きかけていく。やはり国民の権利は大事です。基本的な人権は何よりも守っていかなければいけないものだけれども、それはふわふわっとして空中に浮遊しておるものではなくて、それが侵されたときにだれがこの基本的人権を守ってくれるのといいますと、今の世の中では国家がそれを守るということになる。その国家がなくなってしまったときに、では、だれが基本的人権を守ってくれるのということなのだろうと私は思っています。

 そういうときに、決して強制を伴うものではございませんけれども、この国民の意識というものを私どもはきちんと受けとめて、どうやってそれに対して期待をし、そして、国を守るときにおいて国民お一人お一人に何を期待するかということではないかと思っています。

川端委員 私は、基本的には、日本の国民の意識は非常に健全だと思っているんです。ただ、トレンドは非常にその部分が崩れてきているのかなというときに、今、防衛庁長官がいみじくもその世論調査の部分をおっしゃいましたけれども、国防というものが自衛隊にリンクした答えなんですね。それは設問にもよるんですけれども。

 結局、自衛隊も国防というものに関して、国防というか緊急事態の対処に対して非常に重い任務を負っておられることは事実なんだけれども、実は、そういうことと同じぐらいにいわゆる民間防衛というものが大事であるということ自身が理解もされていないのが現状であるということなんですよね。

 この民間防衛の部分は、後の議論のときにもう少し詳しく申し上げたいと思いますが、そういう部分で言ったときに、そういう、みんなが自分のことを守っていく、そして、国も地方も含めてやってくれる、自衛隊も頑張ってくれるということの、いわゆるみんなで守るというものはこういうことであり、こういうことをみんなでやらなければいけないということの啓蒙や教育というものが、それが地域社会とリンクした中でやられないといけないんだろう。そのときに、それは、政府の立場で言えばどこが主体的におやりになるんですか。

 個々人にお伺いすると、大事なことだと思うとおっしゃるんですけれども、私は防衛庁ではないと思うんですよ。防衛庁は、軍事的な業務、軍事的防衛をする、専任。自衛隊しかできない。その部分ではなくて、いわゆる非軍事的な部分での、民間防衛というと、昔のイメージでは何か竹やりを持って行くような言葉として流れているけれども、実はそうじゃなくてというときの、そういうことの基礎的な認識も含めて、言うことはきちっと国民の皆さんもよく理解をし行動するということが前提でないと何も機能しないのではないかというふうに思うんですが、どこがやるのか、どうなんですか。

井上国務大臣 国を守るというのは、これは国の政治の究極の目標だと思うんですね。国を守るというのは、単に国土とかそういうものを守るということだけではなしに、やはり国民を守るということでありまして、これは国を挙げて実行していく問題でありますので、政府の組織としては、当然、内閣の内閣官房が中心になりまして、各省がそれと歩調を合わせて対応していく、行動していくということだと思います。各省がばらばらでやる話でもないと思いますし、まして、今お話しのように、自衛隊だけで国を守るということでもないと。広く国民の支持の基盤の上に自衛隊だって活動できるものでありますし、また、国民が全体として連帯をして守っていくんだという意識ですね、こういうのも大切だと思います。

 したがいまして、私は政府でありますけれども、具体的に言えば内閣官房が中心になって対処するべきものと考えます。

川端委員 私もそうだと思うんですね。しかし、法案が出てきてというときに、そうあるべきだと思うというのはいかがなものかと。やっていないということなんですか、どうなんですか。

井上国務大臣 いや、質問がそういうことでありましたので、素直に質問にお答えをさせていただいたということでございます。

 現実にそういうことで努力をしている、そういう実績を積み重ねてきている、そういう評価はいただきたいものと考えます。

川端委員 まあ、聞き方が悪かったのかもしれませんが、そう実績が上がっていると私は認識をしていない。少なくとも、こういう法案が出てきたときの現実の対応の部分で言えば、国民の皆さんがどう行動するかということの前提ですから、これは、同時期に政府として少なくともこういうことをやるということが、この民間防衛の要するに意識の問題も含めてきちっと対応するべきだというふうに思います。

 また別の機会にもう少し聞きたいというふうに思います。

 それで、今、民間防衛は非軍事ということでありますが、防衛庁の防衛白書は、自衛隊の活動のみならず、まさに国の守りということでは民間防衛も議論、議論というか、当然白書の中には書かれているということで見てみましたら、平成十二年の「日本の防衛」という防衛白書には、「有事法制の研究など」という項目の「有事法制の研究」ということと同時に、同じ重さのパラグラフとして「民間防衛」という項目があります。そして、

  我が国に対して万一侵略などがあった場合、国民の生命、財産を保護し、被害を最小限にとどめる上で、国民の防災や救護、避難のため、政府、地方公共団体と国民が一体となって民間防衛体制を確立することが必要である。このような民間防衛の努力は、国民の強い防衛意思の表明でもあり、侵略の抑止につながり、国の安全を確保するため重要な意義を有するが、現在、我が国においては民間防衛に関してみるべきものがない。今後、国民の合意を得ながら、政府全体で広い観点から慎重に検討していくべきであると考えている。

これは平成十二年です。

 十三年の「日本の防衛」というふうな部分を見ますと、これも「民間防衛」というのが、「有事法制への取組など」という中の「有事法制への取組」と同じ重さで「民間防衛」というのが、全く同文でありますが、記載をされている。ところが、十四年版になるとないんですよ。十五年版もないんですよ。

 それで、有事法制と同じ重さで民間防衛という書き方を二年間してきているのに、有事法制が進んできたというときに、同時に民間防衛は、先ほど申し上げたように、同じ重さで大変大事であるという認識がされていた十二年、十三年が、十四年、十五年になると項目として全く記載をされなくなった。

 そして、平成十五年には、「日本の防衛」といういわゆる防衛白書では、「諸外国の緊急事態法制」ということで、ドイツ、アメリカ、韓国、スウェーデン、スイスというのが、いわゆる緊急事態法制が紹介してあって、その中に、韓国には民間防衛基本法、スイスには民間防衛に関する組織のことがかなり詳しく紹介をされている。「スイス市民権を持つ男子で兵役義務などを負わない者全てに民間防衛の服務義務があり、居住自治体の民間防衛組織に参加する」「住民の義務として、」云々というふうなことが書いてある。ところが、紹介してあるだけで、民間防衛が云々とは一切書いていない。私は、逆ではないのかと、流れは。

 確かに、防衛庁自身が主体的に民間防衛を云々されるお立場にないのは理解をします。しかし、防衛白書で、当然ながら、防衛をするということにおいて、自衛隊力と同時に、同じ重さで必要な部分に関して、どうしてこういう認識をしておられるのか理解に苦しむというように思っておりますが、何か御見解があればお聞かせください。

石破国務大臣 十五年版白書は私の責任において取りまとめたものでございます。御指摘はそのとおりの部分があろうかと思います。十六年度白書におきましてはきちんと書きます。

 問題は、十五年度もそういうようなのを全く失念したわけでもなく、意識的に没却をしたわけでもなく、先生御指摘のように、そういう意識はきちんと持ち、昨年、有事法制、有事関連三法が成立したことも受けて、いわゆる国民保護のための措置ということの解説というものをきちんとしたつもりではおりますが、民間防衛という言葉が落ちている。ではその点、十六年、きちんとどういう形で書いたらいいか、議論をして書きたいと思います。

 ただ、先生が御指摘のように、私も、五年も六年も前、もっと前だったかもしれません、民間防衛と聞いたときに、竹やりでB29を落とすのかという印象がどうしてもあるわけです。シビルディフェンスという言葉でやると、何のことだかよくわからぬね、しかし、民間防衛という言葉でやると、竹やりでB29を落とすんだ、こういう話になってしまいまして、ここのところ、どう認識をしていただくか。そして、災害と有事との違いがあらばこそ民間防衛ということが大事なんだよということをどう御認識いただき、私どもはそれを強制措置を伴うものとはしておりませんが、それでどうやって実効を上げ得るかということも、よく国民の皆様方にもお願いし、問いかけていかねばならぬということだと思っております。

 十五年度について落としたつもりはございませんが、御指摘を踏まえまして、十六年度におきましては、さらに御意見も踏まえまして充実努力をしてまいりたいと思います。

川端委員 長々とやるつもりはありませんが、いわゆる民間防衛というと、そういう何か竹やりの世界みたいな部分にリンクする、あるいは国民の生命財産を守るというものの延長線上で、国を守るというと、お国のためという議論があるというふうな部分の、非常に、過去のいろいろな議論のセンシティブな部分があることは承知をしていますが、そうだからこそ、そしてこの有事法制を今こうして議論し、やろうとしているときこそ、大事な議論を、私は防衛庁は逃げたとしか思えない、残念ながら。だって、一番大事な部分を一番肝心なときに抜くなんというのは、私は非常に残念でありました。十六年度に期待をしたいというふうに思います。

 そこで、大臣、まさに国民保護法制が今回出てきたんですが、これを見ますと、国民保護で、「国、地方公共団体等の責務」というところを見ますと、ちょっと省略しながら読みますと、国は、国民の保護のための措置の実施に関する基本的な方針を定めるとともに、武力攻撃事態等においては、その組織及び機能のすべてを挙げてみずから国民保護のための措置を的確、迅速に実施しというのは、これは自分でやりますということと、地方公共団体等が実施する国民保護のための措置を支援して、そして国全体として万全の態勢を整備する責務を有すると。自分がやる責任と地方がやるのを応援する責務があるという。地方公共団体は、地方公共団体がみずから国民の保護のための措置を的確に実施し、推進する責務を持っている、国民の保護のための措置を実施する責務を持つというふうに、両方あると。

 これはわかるんですよ、両方あると。突き詰めて言ったときに、自分の命は自分で守る責任はあるんですけれども、国民一人一人が。同時に、私の命は、いろいろ、国、いわゆる大きな言葉で言う政府という部分では、究極的には国が守るという責務を負っている、地方もバックアップはするけれどもというふうに私は認識しているんですが、それでよろしいんでしょうか。

井上国務大臣 国の有事の場合、特に武力攻撃事態等におきましては、やはり国が中心になってといいますか、責任を持って対処する、そういう前提で制度が仕組まれておりますから、委員の言われるようなことでよろしいかと思います。

川端委員 国が中心となって、地方も協力してやるということなんですが、最終的には国が責任を持っているということでよろしいんですねということをお伺いしたんですが、それでよろしいですね。

井上国務大臣 責任といいますか、責務があるということだと思います。

川端委員 という意味でいいますと、特に、緊急事態が起こって、武力事態に対処する部分は自衛隊を中心として、本当に命がけでやっていただくということになるわけですが、国民保護という部分で、まさにいろいろなことをやるときの部分で、国もやるし地方もやるんですよね。それで、いろいろ連携をし、協力をするということなんですが、結果として、状況の部分でいえば、国が責任を持つということを私がなぜ聞いたかというと、そういう行動のときに、一時的あるいは部分的であっても、自治体を国のもとに置くということは避けられない事態は想定をしているということじゃないかというふうに思うんですよ。

 国もやり地方もやる、しかし責任の最終主体は国にあるという意味は、いろいろな事態が起こったときに、自治体を、一時的にせよ限定的にせよ、国のコントロール下に置くということになるということでよろしいですねと言っているんです。

井上国務大臣 武力攻撃事態等におきましては、国を挙げて対処する必要がございまして、そういう意味では、国が地方公共団体の事務にも関与をしていくということは、一定の限度におきましては必要だというふうに考えておりまして、表現として、コントロール下に置くという表現が適切なのかどうかわかりませんけれども、いずれにしましても、そういう自治体の事務に関与する、一定限度を国が介入していく、それはそのとおりでございます。

川端委員 コントロールという表現がいいかどうかは別にして、逆に言えば、国がいろいろやるときに、地方がアンコントローラブルであっては何もできないということは当然あるわけですから、その部分で、反対語で言えばコントロールするということになる。要するに、最終の責めを負っている者は、やはり最終の責めを負っている部分でいえば、そのことを、言うことは聞いてもらわなければいけないという立場にあるんですねという確認をしたので、それでよろしいということだと思います。

 それで、きょうは総務大臣が参議院の総務委員会に重なってしまったので、副大臣においでいただきまして、こちらへ座っていただいた方がいいんじゃないかと思いますが、この国会でも非常に大きな議論として、地方分権、三位一体改革という言葉が随分出ました。地方の自立性を尊重し、財源も補助金も交付金も含めて、地方が自主的に、自立的に意欲を持ってやれるように地方を変えていくんだ、こういうことでありまして、これはもっとも、当然な流れであるということだと思います。やり方、中身に関しては、我々は非常に不満を持っておりますが、それはそれとして、流れはそうだ。

 というときに、憲法九十二条では、「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。」と書いてある。それから、これを受けた地方自治法の第一条、「この法律は、地方自治の本旨に基いて、」と書いてある。よく議論になるのは、「地方自治の本旨に基いて、」と書いてあって、今度は地方自治法を見たら「地方自治の本旨に基いて、」と、本旨は何かというのはかねがね議論になってまいりました。

 そういう中で、この国会ではまだこの部分が余り議論されていないんですが、平成十四年の三月の総務委員会の議事録をたまたま手に入れたのですが、この件に関してのいろいろな問いのときに、当時の片山総務大臣は、

  国と地方の関係は、対等、協力の関係ですね。分担と協力と言ってもいいのか、対等で、お互いが役割を分担して、協力していく関係だと私は考えております。

また、後段で、

  団体自治というのは、国とは別の独立した人格を持つ団体として意思決定ができ、行動ができる、

ということだと述べておられる。

 それで、十四年の五月には、法制局長官が同じような議論の中で、

  まず、地方自治の本旨ということの内容でございますけれども、これは、憲法九十二条に規定する地方自治の本旨といいますのは、地方公共団体の運営は原則として住民自身の責任においてみずからの手で行うという住民自治の原則と、それから、国から独立した地方公共団体の存在を認め、これに地方の行政を自主的に処理させるという団体自治の原則をともに実現するという地方自治の原則をあらわしたものであります。

これが内閣法制局の答弁です。

 福田官房長官は、

  ただいま法制局長官から答弁申し上げましたけれども、憲法第九十二条、地方自治の本旨の規定がございます。国から独立した地方公共団体が、その住民の意思に基づいて、みずからの判断と責任のもとに地域の実情に即した行政を展開していくということでございます。

ということで、しつこく述べましたけれども、国と地方は対等であり、独立してみずからの判断と責任で行政を展開するというふうに決めてあり、確認をされているということでありますが、総務副大臣、それでよろしいですね、確認として。

山口副大臣 大臣は総務委員会でございますので、かわりましてお答えさせていただきます。

 今、川端先生いろいろとお話をいただきまして、まさにそのとおりだと思っております。まさにこの本旨というのは、国から独立をした地方公共団体が、その住民の意思に基づいて行政を展開するというふうに理解をしております。

 今いろいろお話がありましたが、従来の解釈によりますと、団体自治と住民自治があるんじゃないか。そして、団体自治につきましては、国から独立をした団体を、これは地方公共団体でありますが、設けて、この団体がみずからの事務をみずからの責任において処理する。そして、住民自治に関しましては、地方公共団体の運営は住民自身の責任でみずからの手で行うというふうな二面から成るというふうに理解をさせていただいております。

川端委員 ということで、井上大臣、本来そういうものだというときに、この国民保護法制あるいは緊急事態対処という部分で、先ほど、国が最終的にはトータルの責めを負うという部分で、その部分でいわゆる関与もあるというときに、ぎりぎり言えば、やはりこの地方自治の憲法の趣旨を含めた部分で言うと、微妙な問題、きつく言えば、いかがなものかという、その部分が存在をしているというのは間違いないと思うのですが、その見解だけお伺いしておきたいと思います。

井上国務大臣 確かに、委員の言われるような、地方自治の本旨と、それから、このたびの国民保護法制で国と地方自治体との関係を規定している部分、たくさんありますけれども、これらの点については、微妙な点があるとは思いますけれども、ただ、やはり地方自治といいますか、自治体の事務の中にもいろいろな性格の事務がありまして、国との関係が非常に濃厚なといいますか、濃いいわば国の委任事務ですね、そういうようなものもあるわけでありまして、そういった国の委任事務というのも自治体の中の事務の一つとして位置づけられているわけでありまして、まずまず、私どもは、現行のそういう自治の制度の中におさまっていくんだろう、こんなふうに考えます。

川端委員 二〇〇〇年ですか、いわゆる地方分権の一括法ということで、国と地方自治体の関与に関しては相当大幅な大整理がされた。その中で、いわゆる助言から始まり、助言、勧告、資料提出の要求、是正の要求、同意、許可、認可、承認、指示、代執行等々ができる。そして、その部分の基本は、法定主義、法に決まったことしかやってはいけない。あるいは、基本原則として、必要最小限の関与しかしてはいけない。自主性と自立性は最大限尊重しなければならない。できるだけ関与はしてはいけない。そして、いろいろ先ほどの関与の仕方も、本来、地方自治法の精神というのは、自主自立、憲法にのっとって自主自立である。そして、国はできるだけ関与せずに、是正勧告や是正指示、代執行とかいうのを規定しているのは、その指示に違反もしくは著しく適正を欠くという状態のときに関与してよろしいという規定なんですね。

 これは、普通の、いわゆる平時に、いろいろ決めたことをちゃんと、機関委任事務も含めて、あるいは地方の責任としてやることということで決めたことは、自主自立で責任を持ってやりなさい。そのときに、それをうまくやっていないではないか、あるいは法律に違反したことをやっているではないかというときに関与してもよろしいというふうに整理をされたんです。その部分で、関与できるという部分で、国と地方自治体の部分でこの緊急事態に対応する部分を読み取るというのは、私は、若干無理があるのではないかと。これはいわゆる平時の想定ですね、当然ながら。

 そして、国の機関委任事務の中で、防衛に関する部分というのは外してあるんですね、適用除外項目なんです。これは、狭義に読めば、防衛、いわゆる自衛隊の活動を国がやるのを、地方に何か機関委任事務でやれという話ではないという、だから、地方の自衛官の採用も、ちゃんとそれぞれ全部部署を置いて、協力はされているけれどもということなんだと思うのですが、今回の緊急事態の国民保護法制で地方が負う責めは、これで法律で決めるということの整理なんでしょうが、実は、先ほど申し上げたように、国に最終責任を持つんですねというのは、阪神・淡路大震災でもありましたように、インフラ、通信網がパンクしたとか、あるいは役所自体の部分がもう機能不全になるということは幾らでも起こり得るわけですね。連絡できないだけじゃなくて、機能不全になる。そういうときに関与するというのと、ここの、いわゆる地方分権一括法で関与ということを決めてあるのとは、別の世界だと思うんですよ。全く別世界だと思うのです。

 そういう意味では、今のような、今、平時で動いている国と地方、そして、その部分で、法定事務という部分で関与の仕方を決めているのに載せた形だけしか想定していない、こういう国民保護の体制というだけでは機能しないんではないかという危惧を持っているのですが、いかがですか。

井上国務大臣 制度的にはいろいろな事務の種類がありまして、それに対する国の関与というのはそれぞれ違うわけでございます。

 かつて、国の機関委任事務と言っておりました事務の中にもいろいろな事務があったわけでありまして、今お話しのように、自衛隊につきましては、これは機関委任事務じゃなしにまさに国の事務でありまして、こういったのは原則的に自治体の事務から外されてくるというのは、これはまた当然だと思うのであります。

 しかし、このたびの措置は、住民に関与する部分が大変大きいわけですね。例えば、避難をする、救援をしていくとか、あるいは被害の拡散を防止していくとか、ある意味では地方自治の事務でありますけれども、国、地方一体としてこれは対応しなくてはいけないということでありまして、こういった事務を、委任事務といいますか、かつてでいえば機関委任事務と言っていいと思うんですけれども、そういうものとして規定をしていくということは考えられていいことじゃないか。

 つまり、事務の性格によりまして国と地方の関係というのは整理をしていくということで、おおよそこういう、この事務は平時では想定されないからだめだというんじゃなしに、有事におきましてもある一定の限度、もちろん、地方自治の本旨の趣旨には十分配慮しながら規定していくことも、これは地方自治の中で許容されることじゃないか、私はこんなふうに考えるわけであります。

川端委員 だめだと言っているのではなくて、機能しないのではないかという事態が起こるのではないかと。

 これを長々と申し上げたのは、憲法も含めて、本来のいわゆる平時の議論として、本来、地方は、分権し、対等、独立の地方公共団体が自主自立的に活動していくんだ、国はできるだけ関与しないという大前提からいうと、こういう事態のときは、その枠組みの中でありながら、どんどんどんどんと緊急のことだからということでやっていること自体は、実は本来の部分からいったらやはり随分フリクションを起こしている話であり、それがいいことかどうかは別として、ぎりぎり議論をすれば、非常に問題があることをいっぱい何となくやってしまうことをつくっているということを指摘させていただいたわけであります。

 先ほど大臣も、この部分は非常に微妙な問題を持っているのではないかと私が言うたら、そういう感じはするとおっしゃっていただいたんですが、そういう部分で、日本国憲法というのはこういう緊急事態、有事を想定はしていないと私は思うんです。そのことに対してはいかがですか。

井上国務大臣 日本国憲法の制定当時におきましては今委員が言われるようなことであったんじゃないか、こんなふうに思います。

川端委員 いや、制定当時というか、制定したらそれは今でも憲法ですからね。経過は別にして、今の憲法では有事を想定した条文は何かあるんでしょうか。

井上国務大臣 制定当時はまさに平時の憲法ということだったと思うのでありますが、現在におきましては、さまざまな状況を考えて、現行憲法の解釈の許す範囲で理解をしていく、解釈をしていく、こういうことになっているんじゃないかと思うのです。

川端委員 いやいや、それは、先ほど大出さんのときにも現行憲法の許す範囲内でとおっしゃっていたんですが、それは当たり前の話であって、条文的に、いわゆる緊急事態が起こったときにはこういう対応をするべしという規定は、衆議院が解散されたときの参議院の緊急集会というもの以外、何かが急に起こったときという規定はない。だから、当然、戦争放棄ということも含めて、背景もいろいろあると思いますが、そういう緊急事態が起こったときということを明確に想定した条文はないというふうに認識しているんですが、それでよろしいでしょうか。

井上国務大臣 緊急事態を想定した直の規定というのは、確かに、言われますように、ないと思いますけれども、現行憲法の解釈としては自衛権があるということでありますから、その自衛権に基づいてさまざまな対応ができるというふうに考えます。

川端委員 また別の機会に政治家井上喜一先生と議論をしたいなというふうに思います。

 結局、先ほど私、総務担当で質問をすることになったので九十二条を中心に伺いましたけれども、やはり地方の自治を九十二条でちゃんと、自主独立でという解釈も含めてやっていくという部分で、国と対等であり独立だということと国を挙げて守るということとは、どこに整合性を持つのかというのはやはり隘路に入っているんですよ、議論としては。

 そして、これはもうかねてからよく議論になりました基本的人権の問題ですね。憲法の条文では、基本的人権というのは大変重く重く書いてあるわけですよね。十一条で、「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。」という書き方であります。そして、第十章「最高法規」、第九十七条、「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。」とまで書いてあるんですね。

 しかし、この事態対処に対する、あるいは緊急事態に対処するいろいろな部分でいうと、基本的人権を何と言うのかということにもなるんでしょうが、ある一定の制約は設けざるを得ないという議論になってきているわけですよね。そうでないと、それはまさに国家として何の行動もできないという部分は当然であり、国民の生命財産を守り、国を守るという部分でいえば、究極の基本的人権を守るというためにその他のいろいろな部分がという議論もあるということですが、やはり改めて読み直してみますと、大変重い重い書き方をしてあるなという感じがします。

 そして同時に、これもしょっちゅう議論になりましたが、第十九条で、「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」といろいろあるのに、これで大丈夫なのかという議論のときに、おさらいですが、これは十三条では、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」というもので、公共の福祉論というのもある。ここでいいんだという話もある。

 しかし、前段、憲法の枠内でとおっしゃいましたけれども、非常に御苦労があり、議論がふくそうする部分では、やはり、この憲法が緊急事態、有事というものを基本的には全く想定した条文を持っていないというところに問題が、こういう事態を招いているんだと私は思います。これをそう思うかと問うてもお答えできないでしょうから。私はそうだと思うんですよね。これが、そんなことはないとおっしゃる人もおられるかもしれませんが、大体そういう認識ではないか。

 現在、憲法議論は随分盛んになりました。院においても憲法調査会が活発な議論をしていただいている、そして、自由民主党小泉総裁も憲法の改正問題について前向きに発言をしておられる、我が党の菅代表も創憲論で憲法案をまとめたいというふうな発言をされたということで、いろいろ議論がされている。これは大変いいことだと思います。そして、項目によっては一定の方向性も、コンセンサスも得られつつある部分もあるのではないかなというふうに思っているんですが、私自身は、本来、憲法上、こういう緊急事態、有事に対応する部分のことは明記すべきだと思っています。それがない部分が、今日のこのふくそうした議論と、大変な苦労をし、憲法の枠内でという議論を招いているのではないかと個人的には思っております。

 そういう中で、現実には憲法改正というのは五年、十年、二十年ということなんでしょうが、そういうときに、本来、憲法に国家のこういう有事に対する基本機能と対応の基準が規定をされていないから、なかなか悩ましい議論が起こる。そういう部分で、国として、あらゆる事態に対応するための国家体制と統治機構について基本的事項を定める、国家としての危機管理のための法体制を整備することがどうしても必要になろう。これは、幸いなことに、前国会からの議論で、与野党で協議を今進めていただいているということなんですが、憲法の空白を埋める基本法の制定がどうしても必要ではないかというふうに思います。

 事態が発生するたびに既存の法令の改正、新規立法を繰り返してきたのが現実です。最近だけで列挙しますと、国際緊急援助隊派遣法、国際平和維持活動協力法、周辺事態法、船舶検査法、テロ対策特別措置法、武力攻撃事態対処法、イラク復興支援特別措置法、それぞれに伴って自衛隊法の改正。今回が国民保護に関する七法案三条約。

 個別法、個別法でやって、だんだん何か話がおかしくなってきて、全体の整合性もよくわからないという事態を招いているので、自公民三党で寄り寄り御協議をいただいているのはいいことだと思うんですが、憲法がそういう部分に関してはきちっと書かれていない現実と、それから、個別法、個別法でやった部分で非常に問題があるという部分で、基本法できちっとしたそういう枠組みを提起すべきだということに関して、政府としてのお立場とお考えをお聞かせください。

井上国務大臣 今御指摘のとおり、これまでずっと個別法でいろいろな事態に対しまして定めてきたわけであります。したがいまして、武力攻撃事態対処法におきましても、そのような考え方であのような立法をしたわけでございまして、その時点までは、少なくとも政府に、基本法でもって総括するような法律といいますか、全体をカバーするような、まさに基本となる法律をつくる、そういう考えはなかったと私は理解をしているのでありますが、この武力攻撃事態対処法の審議の過程におきまして、そういう基本法をつくる必要性があるんじゃないかというような、これは民主党の方からの提案がありまして、与党と民主党との協議の結果、ひとつそれを制定しようという方向で考えていこう、こういうことで合意をされたわけですね。

 それから、それがさらに進みまして、ことしになりまして、基本法をつくるということの確認と同時に、この主要事項については今御審議をいただいております法案の衆議院の通過前に整理をしていこうということでありますし、基本法自身は来年の通常国会中に成立させる、こういう合意が成り立ったわけですね。

 したがいまして、政府としては、今政府がそれにかわって基本法を立案していくという考え方はありませんで、与党と民主党との協議の推移を見ているということでございます。

 もとより我々としても、そういう方向でありますから、よく検討いたしまして必要なことはやっていかなくちゃいけない、それこそ、いろいろな御下問があれば、そういうことに対してお答えをしていかないといけないだろう、こんなふうに考えているわけでありまして、今の時点ではそういうことでございます。

 政府が、今の与党と民主党との協議に先立ってといいますか、あるいはそれと並行して基本法をつくっていくという考えはございません。

川端委員 現実はそうなんですけれども、そしてお答えもそういうふうにしかお答えられないというのもよくわかるんですが、本来、私は、これは政府の怠慢だと思うんですよ。

 国民の生命財産を守り、国を守るというときの部分で、明々白々憲法上にきちっとした指針が示されていないことから、個別法、個別法ということになって、現実に非常にふくそうした議論も起こり、そして整理がその都度必要になるという部分で、かねてからそういう議論があった部分が出されなかった、政府としてそういう部分が、議論はされたのかどうかわかりませんが、そういう形で提起されなかった、そして、過去のいろいろな背景があるんでしょうけれども、武力中心の部分に非常に偏重した議論で進んでしまったということがこういうふうな事態を招いたんだというふうに思います。

 例えば、今、憲法の中でいうと、まさに制定時には想定をしていなかった、考えもしなかった環境権という問題があるということが議論になって、今のいろいろな議論の中では、環境権というのは憲法をこれから変えるときが来るならばきちっと明記すべきであるというのは、ほとんどだれも否定しない議論だと思うんですね。しかし、今憲法には環境権がない。そうすると、公害国会というのが昔ありましたけれども、個別法でいろいろなことをやっていくという部分では、やはり大きな、国としての物事の考え方が必要ではないかということで、環境基本法というのができているわけですね。

 環境も国民には大事です。しかし、あれは議員立法でやったわけではありません。という意味では、まさに有事のときに国を守るということの基本、環境はあっても国を守るという部分にないという部分は、私は本当に変なことだなというふうに思っていますし、幸い各党の御努力で大きな流れができてきたというのはありがたいことだと思っているんですが、私は、今までの政府の怠慢に対して注意と反省を強く促したいというふうに思っております。

 それで、ちょっと時間がほとんどなくなってきましたので、防衛庁長官、私、今週の月曜日に週刊誌を買いました。そうしたら、イラク問題で「自衛官覆面座談会」というので載っていました。これはどこまで本当か知りませんよ。

 見出しを見たときに、新聞の見出しを見て買ったんですよ。一ページ目がこういうもの、大きなものなんですが、おどろおどろしく書いてあることは間違いないんですが、中身がどこまでどうかわかりませんが、その見出しの中の、本文の見出しというか、こういう見出しの下の小見出しというんですか、その中に、「イラク・ファルージャでの日本人拉致事件が解決しても、次は自衛隊が標的になる。「イラク復興支援も、鳥インフルエンザの後始末に出動するのも、いわば雑則の任務だ。本則は国を守ること。自衛官として、おめおめと雑則で死ねるか」」と書いてある。

 私は、昔の内閣委員会を含めて、いわゆる百条関連にはいろいろ何度となくかかわってきました。そういうときに、私はこれ、今もおっしゃったけれども、気持ちは本当にそうなんですね。

 このいわゆる雑則というのを一度整理してみましたら、九十九条が機雷等の除去、百条の一からずっとあるんですが、土木工事等の受託、教育訓練の受託、運動競技会に対する協力、これは多分国体とかですね。南極地域観測に対する協力、国賓等の輸送、国際緊急援助活動等、国際平和協力業務の実施等、在外邦人等の輸送、ACSAに基づく物品、役務の提供、後方地域支援等。今回、後方地域支援等と合衆国軍隊に対する物品または役務の提供、それから手続というふうに、いろいろな自衛隊に対しての業務が出てくるたびに雑則が追加されていく。

 そして、実は、日本が、総理もよく言われますが、国際的に非常に大きな役割を果たすという中で、自衛隊の諸君の役割がどんどんふえてきて、そして、立派に果たしていただいて、期待もされ、責任も重く、危険も多いという状況の中で、いみじくもこの週刊誌に書いてあるのは、真偽はわかりませんが、本当にそうだなという感じがしました。

 私は、いろんな形で、事態法もそうですし、今回の保護法制もそうですが、いろいろこういう周辺事態も含めて、法律改正のときにその都度自衛隊法が改正されるんですが、こういう非常に大きな、有事に対応する大改正、大法整備も含めて、大きく自衛隊の役割も、国民保護の措置もいろんな形で書いてありますが、そういう部分のときに、自衛隊法というのは一度抜本的に、構成から含めて検討されるべきではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

石破国務大臣 これはもうすごく悩むところでありますが、ただ、先生一番よく御案内のとおりですが、雑則と言うから何となく聞こえが悪いので……(発言する者あり)いやいや、これは付随的任務、こういうふうに私どもは言っておるわけです。

 どこが違うんだ、こう言われますが、要するに、本来的任務と付随的任務とあります。本来的任務というのは、主たる任務である防衛出動、これはもう一番の根幹ですよね。本来任務だけれども、主たる任務以外のものに、海警とか治安とか警護出動とか災害派遣とか、そういうのがありますよね。それはやはり一つのカテゴリーだと思うんです。そうすると、では、それ以外に、雑とは言いませんが、それとはやはりカテゴリーが違う付随的任務というものがあるのだろうという、ここをどのようにして分けていくかというのは、実はすごく難しい議論ではないのかと思います。

 それで、その百条系列の国際的責務の履行のようなものを、仮に本来的任務というふうに持っていきましたときに、これをどのように位置づけるか。それで、PKOと例えばテロ特、イラ特などというのは、おのおの性質が違うと思っています。PKOの場合には国連の仕事ですし、テロ特の場合には自衛権というものですし、イラ特の場合には国連の要請ということであって、それをどういう形で整理するか。先生御指摘の自衛隊法の改正も含めて議論をしよう、それは、立法府の御議論というものはあるべきですし、私ども行政府としても、それは常に、不断に考えていかなければいけないことだと思っています。

 ぜひ先生に御教示をいただきたいのは、どういう形で整理をするのが一番望ましいのか。一方で、政府におきましては一般法、いわゆる国際貢献とか国際協力とかいろんな言葉がありますが、その一般法というものはどうあるべきかという議論もしておりますが、どういう形で整理をするのが望ましいのか、またお考えをお教えいただければ大変にありがたいことだと思っております。

川端委員 かねてから議論は承知しているんですが、いわゆる本来任務と、その中の主たる任務、従たる任務、それから付随的任務という整理をされているんです。

 しかし、今回、例えば国民保護法制の中でいったときに、私はこれはちょっと懸念をしている部分があるんですが、いわゆる国民保護、避難・誘導等々、特に市町村が中心となって活動するときに、自衛隊の応援を要請することができるということがありますよね。本来業務をやっている部分で、有事になって大変なときに、この町、助けに来てよと言われても、現実には、そこに部隊があっても、それは全自衛隊の行動の指揮下のもとにあるわけですから、近くにいるから助けに来るとか関係ないという部分が、ちょっと余り過度に期待してはいけないという部分があると思うんです。

 そういう整理も含めて、今回、随分と業務がやはり現実、具体的になってきた部分が初めて出てきたわけですよね。そういう部分で、難しいから、難しいからということで、付随的任務と言われるけれども、ちゃんと「雑則」と書いてあるんですからね、書いてあるのは。だから、それを含めて御検討をいただきたい。

 それで、本当はきょうは、実は民間防衛の部分について、冒頭に述べましたけれども、この具体的な部分を議論しようと思ったんですが、時間が来てしまいましたので、またの機会に譲りたいと思いますが、この部分が、本当にややもすると軍事的側面を中心とした部分で議論が始まり、そして、国民保護に議論が移ってきたけれども、実は民間防衛の部分がほとんど議論されていないというか、仕組みとしてよくわからないという事態は、大変ゆゆしき問題ではないのかというふうに思っておりますことを申し上げて、終わりにしたいと思います。

 ありがとうございました。

自見委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午後零時五分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時一分開議

自見委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。楢崎欣弥君。

楢崎委員 自見委員長のもとで質問できますことを、同じ福岡県人としてうれしく思います。

 愛想遣いはこの程度にしまして、冒頭、確認しておきたいことがあります。

 有事については、これまでも陰に陽に研究されてきたわけですね。先日、図書館で興味ある書籍を見つけましたので、お借りしてきました。その名もずばり「国家緊急権」という本です。これは六四年に陸上幕僚監部法務課の三等陸佐益田繁人さんの研究されたもので、当時の法務課長、一等陸佐の渡部さんもこの本を推奨しておりまして、それで、印刷配布するからとにかく執務上の参考にしていただきたいと、非常に高く買っておられる本です。

 この中身が非常に興味を呼びまして、これは、平常時において現憲法上立法可能な人権制限事項として、自衛隊の作戦行動に必要な物資の強制調達、それから土地・建物等の強制収用、民防衛・防空そして秘密保護がこれに述べられております。次に、平常時の立法としては違憲の疑いがあるが非常時には立法可能な人権制限事項として、徴兵・強制労働そして物資役務等の統制、次に報道の制限・運輸通信機関の統制、重要産業等の統制・労働運動の規制、そして国家総動員体制・戒厳令とあるわけですね。

 当然、こういうことにならないように、今まさに人権にかかわる審議をしているところですけれども、この前に、五六年に、防衛庁が調査委託された、当時の大西邦敏早稲田大学教授の報告書「列国憲法と軍事条項」の中でも、この大西教授は、新しい戒厳法の制定の必要性を訴えられておるわけですね。

 私はやはり、こういう有事法が研究されてきたその下地に、こういう研究論文がなっていると思うわけです。

 そこで、確認しますけれども、政府は将来的にも徴兵制度、新しい戒厳法の制定というものは想定してありませんですね。

石破国務大臣 そのような考えは現在持っておりません。

楢崎委員 過去を忘れた者は過去を繰り返すといいますけれども、我が国の安全保障政策が今エスカレートしていっている、そういう政府の危険な体質を感じるものですから、一応確認をいたしました。

 そこで、本論に入りますが、政府が憲法との整合性をどう国民に説明できるかがこの関連法案の重要な点であろうと思います。

 まず、基本的なことをお伺いします。

 国民の保護といいますけれども、保護の対象となる国民、それと、事態対処に組み込まれる国民というものが出てきますよね。ですから、その事態に際して、輸送とか通信業務等に組み込まれる国民の保護、安全についてはどのようにお考えでしょうか。

井上国務大臣 お尋ねは、日本国籍を持つ者だけなのか、あるいは外国人にまで及ぶのかというような御質問かと思うのでありますけれども、日本人に及ぶことはもう当然でありますが、外国人に対しましても原則的に保護が及ぶというぐあいに御理解をいただきたいと思います。

楢崎委員 私の言っていることをよく聞いていただきたいんですが、国民保護の対象となる国民と、事態対処に、つまり、業務上、通信業務とか運輸業務とか、そういう事態対処に組み込まれる国民の保護、安全はどのように考えておられますかということですよ。

井上国務大臣 これは、国民一般について保護するということは御案内のとおりでありますけれども、これは指定公共機関に働く人たちの安全ということじゃないかと思うのでありますけれども、当然、そういった機関で働く人たちの安全にも配慮して業務計画をつくる、こういうことに相なるわけであります。

楢崎委員 それから、大臣が先ほど言われました外国人問題ですけれども、きょうの午前中の答弁でも、一般的に外国人も含めて保護すると答弁されています。そういうことであれば、保護法で言う「国民」の定義の中に在住外国人も入ると認識していいわけですね。

井上国務大臣 国民保護法制で言っております「国民」は、あくまで日本の国籍を持つ人でございます。

楢崎委員 では、在住外国人は、これに基づいて、法に基づいて保護するということですか。

井上国務大臣 「国民」の定義は今私が申し上げたとおりでありますけれども、同様の保護は外国人にも与えられる、こういうことであります。

楢崎委員 難民保護についてお伺いします。

 例えばの話ですけれども、朝鮮半島にかかわる事態が発生したときは、半島からの難民が出てくると想定されますね。この難民の保護についてはどのようにお考えでしょうか。

増田政府参考人 先生今お尋ねの、いわゆる朝鮮半島云々のお話でございます。

 ある意味では仮定の御議論でもございますのであれでございますけれども、そのようなことが起こりました場合の対応につきましては、まさに、そのときの避難民の状況また人数、それから、その時点において我が国を取り巻く情勢等に応じて、それぞれ対応というのは異なってくると思っております。

 いずれにいたしましても、関係省庁が連携いたしまして、現行の法令の枠組みの中で、避難民の身柄の保護、それから上陸の手続、スクリーニング等、必要な措置をとることになるものと考えております。

楢崎委員 現実に、保護しなければいけないのは国民以外にも出てくる、自国民保護だけに済まされない問題があるということを指摘しておきます。

 国民保護法というのは、住民の避難・救援を重視する法律ですね。当然、自治体首長の権限、責任が重い。当然、国との連携が重要になってくるわけですけれども、現時点におきます各自治体の国民保護計画の進捗状況、それから国民保護に携わる担当者数とかは把握してありますか。

山口副大臣 お答えを申し上げます。

 今、先生御指摘のように、これはもう大変大事な問題でございますので、御承知と思いますけれども、国民保護の措置の多くというのは、警報の伝達とか避難の指示、誘導ということを初めとして、都道府県及び市町村が実施をするというふうなことにされております。そのために、総務省としても、地方団体の国民保護の措置を実施するための体制整備、これを要請しております。また、平成十六年度において所要の財政措置もとらせていただいたというふうなことでございます。

 御質問でありますが、既にすべての都道府県で国民保護の担当を実は設置しておりまして、また専任職員を配置した都道府県も数多くございまして、着実に充実をしておるのではないかと思っております。また現在、部長級以上の防災危機管理専門職を設けておる都道府県は三十七都道府県に上っております。また、国民保護計画の検討につきましても、国民保護計画の策定に具体的に着手をした団体、例えば岩手県、岐阜県、鳥取県、福井県等もございます。

 それと数でありますが、都道府県における専任の担当職員、これは三十二道府県で百十名、併任の担当職員は、二十八道府県で百十三名となっておりまして、合計いたしますと二百二十三名というふうなことであります。また、指定都市及び県庁所在市における専任の担当職員は、十八市で百三十六名というふうなところでございます。

井上国務大臣 今、あわせて都道府県なり市町村の国民の保護の計画についてお尋ねがありましたけれども、これはこれからつくっていくものであります。まず国が国民保護の基本の指針というものをつくります。そして、それに基づきまして都道府県が都道府県の保護の計画、またそれに基づいて市町村が保護の計画をつくるわけでございまして、これはあらかじめつくっていくものでございます。なかなかこれは大部なものでありますし、いろいろと意見を聞きながらつくっていく必要がありますので、国が指針をつくります場合も、都道府県とかあるいは関係の機関の意見を十分聴取いたしましてつくっていきたいと思います。

 これはかなりな時間がかかりますけれども、できるだけ早くつくらないといけないと考えております。その後に都道府県、その後にさらに市町村となりますから、市町村段階の計画ができるというのはかなり先のことになる、相当急ぎましてもそんなような状況であります。

楢崎委員 ある県知事さんが、各自治体の取り組み方に温度差があるということを心配しておられましたので、それでお聞きしました。

 これからは順を追って具体的に聞いていきたいと思いますので、国民の皆さんにわかりやすい言葉で答弁をしていただきたいと思います。

 まず、警報から入っていきましょうか。

 それで、総理が事態を認定しますと、対策本部が設置されて警報が発令される。まだそのイメージがよくわからないんですね。大戦時はサイレンでしたよね、空襲警報といいまして。今度の場合はどのような形で警報が発せられるんでしょうか。

大石政府参考人 お答えいたします。

 警報の伝達でございますが、警報の内容の伝達は市町村長が行うわけでございまして、その方法でございますけれども、防災行政無線、それからこれを活用したサイレンがございます。これによりまして伝えることがまず中心でございますが、そのほか、市町村の広報車とか消防車両による巡回、それから自治防災組織等の協力をいただきまして住民に伝達することを考えているわけであります。

 さらに、放送事業者でございます指定公共機関、それから指定地方公共機関が速やかに警報の内容を放送するということになっております。

楢崎委員 基本的には放送手段が主になるんですか。

大石政府参考人 まず第一義的には、そういう事態に至ったということを国民に知っていただく必要があるわけでございまして、サイレン等音を発するものでまずそれを承知していただき、その上で、事態が起こったことを知っていただいた方々がラジオなりテレビを通じて警報の内容について知っていただくというのがあるべき姿ではないかと思っております。

楢崎委員 例えば、目が見えないとか耳が悪いとかいう各種身障者に対する配慮はどのようになりますか。

山口副大臣 こちらの方からお答えをさせていただきたいと思いますが、先生御指摘の高齢者、障害者あるいは乳幼児等いわゆる災害弱者でありますが、まさに緊急事態においてこそ、そうした皆さん方にきめ細かな対応というのがまさに重要だろうと思っております。

 実は、通常の災害対策におきましても、要援護者への啓発とか情報提供、あるいは情報伝達手段の確保とか、あるいは適切な援護だとか、あるいは優先的な災害救助対応の実施等々が必要でありますので、こうした点につきましても、地域防災計画の見直し等におきまして重点を置いてほしいというふうなことで要請をさせていただいております。

 武力攻撃事態等におきましては、高齢者、障害者などへより一層の配慮が必要であろう。このために第九条にもその旨が明記をされておる、これはもう先生御存じのとおりでございます。したがいまして、都道府県及び市町村が策定をする国民保護計画におきましては、こうした点も重点の一つというふうにすることが必要でありまして、そのための訓練等も含めて、消防庁が作成をいたしますモデル的な計画等においても、今申し上げたような必要な事項をしっかりお示しをしていきたいというふうに考えております。

楢崎委員 では、この警報発令といいますか、例えば予防警報とか警戒警報とか、段階的なものがあるんですか。

大石政府参考人 お答えいたします。

 警報の内容というのは、そもそも、これは法案に定めているわけでございますが、「武力攻撃事態等の現状及び予測」、それから「武力攻撃が迫り、又は現に武力攻撃が発生したと認められる地域」、このほか「住民及び公私の団体に対し周知させるべき事項」、こういった内容が警報の内容になるわけでございます。

 この警報の発令のタイミングでございますけれども、予防警報とか警戒警報とかいう仕組みにはしておりませんで、事態に応じまして、つまり、事態というのは武力攻撃予測事態とそれから武力攻撃事態とあるわけでございますが、その事態に応じて警報が発令されるというものでございます。

楢崎委員 今いみじくも言われましたように、予測事態から攻撃事態に変わる、このときの警報は、例えばサイレンだったらサイレンの音色を変えるとか、そういうことなんですか。

大石政府参考人 警報のサイレンを予測事態と武力攻撃事態とに分けて使用することにつきましても検討しているわけでございますが、警報の発令の仕方としましては、当初、予測事態で発令される場合、それから予測事態から改めて武力攻撃事態になって発令される場合、さらには、武力攻撃事態におきまして警報が発令されて、その武力攻撃事態の推移によってさらに新たな警報を発令しなきゃいかぬ場合があると思っております。その場合に、予測事態と武力攻撃事態の警報の音は使い分ける、発信の仕方は使い分けるということを検討していきたいと思っております。

楢崎委員 国民に対する警報とは別に、自衛隊内における警報はどうなっていますか。

石破国務大臣 自衛隊内における警報ということでございますが、国民の保護というものと自衛隊内における警報というものは直接リンクをしておるわけではございません。自衛隊の中におきましても、さまざまな事態に応じましてその発生を告げるようなシステムは持っておりますが、詳細につきましてはなかなか申し上げにくいことでございます。

楢崎委員 後でなぜ聞くかということは言いますけれども、申し上げられないということですけれども、わかっている部分がありますよね。例えば航空自衛隊の場合は、警戒態勢だったら、いわゆるDEFCON、一段階から五段階まである。それから防空態勢にも一段階から五段階まである。要するに、警報にも段階があるわけでしょう。例えば防空警報だったら略称アップルジャック、それから警戒警報だったらレモンジュース、警報解除だったらスノーマン、そこまでは言われているでしょう。もう一度確認します。

石破国務大臣 航空自衛隊におきまして、そのようなさまざまな段階におきまして警報を使い分けておることは先生御指摘のとおりでございます。

楢崎委員 私がお聞きしたかったのは、当然、自衛隊といいますか、防衛庁の方が状況的なものは早く把握できるわけですね。そうすると、そういう自衛隊内における警戒をしくための警報、それから国民に対する警報発令というのは、これは当然時間差は出てきますよね。

石破国務大臣 直接リンクをするわけではないというふうに申し上げましたが、状況の発生に応じまして、私ども、いろいろな段階に分けております。そのことが、先生のお言葉をかりれば時間差がないように、私どもが知りました状況というものが国民の保護、国民の避難というものについてきちんと有益に、遅滞なく伝わるようにというふうには、政府全体の中で努力してまいるべきことは当然だと思っております。

楢崎委員 国民はまず警報によってその事態を認識して行動するわけですから、一応警報について聞いておきました。

 それから、武力攻撃事態については四つの攻撃類型を想定してあるという話でしたね。今度は避難形態に入っていきますけれども、上からの攻撃か、それとも地上攻撃かでは、これは避難形態は変わってきますよね。

大石政府参考人 先生御指摘のとおりでございまして、警報が発令されまして、その警報に基づいて避難措置の指示をするのも対策本部長でございますが、その避難措置の指示というのは、避難をさせる場合と、それから屋内に退避させる場合というのがございます。上空からのミサイル攻撃などの場合には、とりあえずは屋内に避難をしていただくということになろうかと思いますし、着上陸侵攻などの場合におきましては、可能な限り住民を早期に避難させる必要があると考えております。

楢崎委員 では、次に移る前に、基本的なことを聞いておきますけれども、避難場所というのは大体地理的にどういうところを想定してあるんですか。山の中ですか。

大石政府参考人 避難場所につきましては、政令で定める基準によりまして都道府県知事が避難施設をあらかじめ指定しておくことにしております。その避難施設におきまして住民に対する救援活動等が行われるわけでございますから、地理的な条件としましては、救援物資の輸送の利便性は確保されていなければいけないわけでございますが、極力、災害のおそれの少ない場所というのを選んでいく必要があろうかと思っております。

 どういう施設の中からそれを選んでいくかということでございますが、具体的には、学校、公民館、体育館、それから公園等の施設、公共施設が中心になろうかと考えております。

楢崎委員 従来の災害避難と違うのは、人が集まればそこが攻撃の対象となる可能性が強い。つまり、集団的な避難というものがかえって危険な場合があると思われるんですね。その点についてはどうお考えですか。

大石政府参考人 避難措置の指示を受けた都道府県知事が具体的な避難の指示を市町村長を通じて行うわけでございますけれども、その避難対象区域の広さ等に応じまして、極力、避難住民が集中することがないように配慮する必要がございます。この場合に、都道府県知事は市町村とあらかじめよく協議をしまして、都道府県の国民保護計画、市町村の国民保護計画において、避難のさせ方を検討する必要があろうかと思っております。

 なお、攻撃対象になるのではないかという御指摘につきましては、ジュネーブ諸条約第一追加議定書の規定によりまして、文民たる住民は攻撃の対象としてはならないこととされているわけでございます。したがいまして、この規定が遵守される限りにおきましては、集団的な避難がかえって危険だということにはならないわけでございます。

楢崎委員 イラクを見てもアフガンを見ても、そういう論法は通用しない状況が生まれていますから、だから聞いたんですよ。

 言いかえれば、ケースによって特例的な避難場所といいますか施設といいますか、例えば地下鉄構内に逃げ込ませるとか、それからシェルターを設置するとか、そういう状況も想定はされるんですか。

大石政府参考人 都市型の攻撃が行われるような場合に、遠くに避難をするというのではなく、とりあえず身を隠さなければいけないという場合の選択肢として、地下に潜るということは当然あろうかと思っております。そのようなことも含めまして、地下鉄構内の利用というのも考えなければいけないと思っております。

 それから、シェルターの設置の問題でございますが、これにつきましては、私ども、避難施設たるもの、やはり住民の生命を守る拠点になるわけでございますから、そういう避難施設のありようについては十分に調査研究をしてまいりたいと思っております。

楢崎委員 井上大臣は、事態に応じた避難方法があると言っておられました。ですから、ケース・バイ・ケースによって避難の形態というのが変わるわけですから、避難形態の類型化を示す必要があるんじゃないですか。

井上国務大臣 確かに、大規模に避難をしないといけない場合もありましょうし、それほど大規模でなくて、小さな集団の単位で避難する場合もあると思いますし、かつての戦争中のような避難、これは非常に小さな単位で避難をしたと私は思っておりますけれども、そういう避難の仕方もあると思います。

 したがいまして、まさに事態に応じた避難の仕方をしないといけないわけでありまして、そういうようなことをある程度類型的に想定をしておかないといけないんじゃないか、こんなふうに思います。

楢崎委員 類型化を示したいというふうに受けとめます、検討するということで。

 これはこれまでも出ましたけれども、避難・誘導や救援に自衛隊を派遣できる枠組みが設けられていますけれども、これはけさも出たんですかね、現実問題として、侵略防衛業務に携わる自衛隊に自治体を手伝うという余力はありますか。

石破国務大臣 余力というお言葉をお使いになりますと何か余っておる力があるような印象を与えますが、私どもといたしまして、本来といいますか、自衛隊でなければできない敵の侵害排除という任務に支障のない範囲において、国民の避難・誘導というものに私どもの力が使えることがあれば、それは私どもとしてもやらせていただくということでございます。

 それは、余力があるとか余裕があるとか、そういう概念とは少し異なるのではないかと思っております。

楢崎委員 言葉じりをとらえるわけではないんですけれども、日本への侵略排除に支障のない限りということですけれども、支障があるかないかの判断根拠は何でしょうか。

石破国務大臣 それは場合によりけりで、支障があるかないかというのが判断根拠だとしか言いようがないわけでありますが、その場合場合に応じまして、本当に日本に対して武力攻撃をしかけてきているそういう勢力があり、避難をしておられる方がありということで、そういうケースを想定してみましたときに、本当に両方に力を割いたらば、別に兵力の分散投入とは申しませんが、結局どっちもだめになってしまうということはあり得ることでございます。相手とも戦わなければいけないが、十の力をもって当たらねばならぬところを六や五しかもって当たれなかった、これもだめであった、では、住民の避難の方に人を割いたけれども、結果として敵の侵攻を許してしまって、住民の方々も生命財産の危機にさらされたということになりますと、何にもならないわけでございます。

 もちろん、さればこそ、それでは災害のときには、自衛隊も来る、消防も来る、警察も来る、みんな来る。だけれども、武力攻撃事態のときにはそうはならないことがある。したがって、間隙なくどのように埋めておくかということを日ごろから連絡を密にしなければいけないというのは、そういうことだと思っております。

楢崎委員 今言われましたように、警察、消防、場合によっては自衛隊が共同で避難とか救援対策に当たる場合、その指揮はどこがとるようになりますか。

大石政府参考人 避難住民の誘導は市町村の責任で行うわけでございます。市町村は、あらかじめ避難の実施要領を関係機関と協議をした上で定めまして、その上で、警察、自衛隊等に避難の誘導を要請することができることにしているわけでございます。

 指揮系統は、警察、自衛隊それぞれの指揮系統があるわけでございますが、あくまでも市町村長を中心にして避難の誘導が行われるということでございます。

楢崎委員 警戒区域において、市町村長もしくはその職務を行う者がその場にいない場合に限り市町村長の職務を自衛官が代理執行することができるとありますけれども、そもそも、首長の職務を自衛官が代理執行できるんですか。

石破国務大臣 先生が条文を御紹介いただきましたとおり、その場にいない限りにおいてということでございます。それは何ら問題があるものだとは考えておりません。

楢崎委員 では、だれが代理執行を命じるんですか。

井上国務大臣 避難の誘導を市町村長にかわって自衛官がやるということでございます。

楢崎委員 次に、例えばX県からY県にまたがって避難しなければいけない状況のとき、X県の避難誘導は県境まででしょうか。

大石政府参考人 避難住民の誘導は、先ほども申し上げましたように市町村長の責任で行うわけでございまして、都道府県の区域を越えて住民を避難させる場合におきましても、その要避難地域を管轄する市町村長の責任で、その市町村の職員が避難住民を受け入れ地域まで誘導する責任を負っているわけでございます。

 しかしながら、県境をまたがる避難の場合には、都道府県知事はその誘導について補助をさせることができるといたしておりまして、都道府県、市町村の連携のもとに避難が行われるわけでございます。

楢崎委員 ですから、その連携がスムーズにいくためにも、情報の共有化が必要ですよね。その点、国はどういう指導をされますか。

大石政府参考人 広域にわたります県境をまたがった避難のさせ方につきましては、平素の段階におきまして、広域避難についての応援協定というのを結んでおく必要があろうかと思っております。これは都道府県相互間で結ぶことになるわけでございますが、この応援協定の中で、どのように県と市町村が連携を図っていくかということも定めていただく考えでございます。

楢崎委員 次に、消防関係についてお伺いします。

 消防庁長官は、消防災害に関して都道府県知事に指示することができるんですね。その中で、特に緊急を要し、必要があると認められる場合、直接市町村長に対し指示とありますけれども、この特に緊急を要し、必要があるというのは、どういうケースを想定してあるんでしょうか。消防庁長官、来てありますか。

山口副大臣 ただいまお話があった点でございますが、先生も御案内と思いますが、平時におきましては、やはり市町村消防の原則というのがございまして、緊急消防援助隊の出動にかかわる消防庁長官の指示を除いて、消防庁長官の管理に服するものではないというふうになっておりますが、今御指摘のように、武力攻撃事態等におきましては、国とか地方団体が相互にしっかり連携協力をして、国全体として万全の措置をとる必要があるだろうというふうなことでございまして、このために、国と地方の関係も平時とは異なる仕組みをとるというふうなことで、今御指摘のように、指示ということがあるわけでございます。

 中身につきましては、国全体としての体制の整備、あるいは国からの指示等への迅速な対応の確保とか、さらには県境を越えてより広域的な対応の必要性等々から、都道府県知事あるいは市町村長に対して、消防に関してでございますが、消防に関して一定の指示を消防庁長官が行うことができるというふうなことにしておるわけでございます。

楢崎委員 井上大臣は、いわゆる消防団の果たす役割は大きい、だから、実態に近い訓練をやってもらいたいというようなことも言っておりましたけれども、問題は、有事災害に対応できる体力が今あるかどうかなんですよ。

 そこで、これは本会議でも委員会でも我が党の長島委員が指摘しておりましたけれども、消防庁長官にお伺いしますけれども、まず、消防力って何ですか。

林(省)政府参考人 お答えを申し上げます。

 消防力と一般的に申し上げる場合、私ども、地域で消火活動等人命の救助等にどれだけの力を地域が持っているかという場合も使うわけでありますけれども、私ども、普通、消防力と言いますときに、消防力の基準というのを持っております。

 これは、先ほど副大臣からお答えもございましたように、市町村消防が原則でありますが、それぞれの市町村が当該団体の人口とかその地方団体の実情に応じまして備えるべき基準、一応の基準ということで、消防組織法第二十条に定める市町村に対する助言、勧告、指導という形で告示をいたしているものがございます。これによりまして、市町村が火災の予防、警戒、鎮圧、あるいは救急並びに救助等を確実に遂行するために必要な施設であるとか、あるいは車両の台数であるとか、あるいは人員等につきまして一応の標準的な基準を定めて、市町村にお示しをいたしているものがございますが、これをもって私ども、消防力の基準と称しております。

楢崎委員 その基準を満たさない自治体が多いんではないですか。

林(省)政府参考人 消防力の基準は、先ほども申し上げましたように、私ども、地方団体の人口の規模等に基づきまして一応の標準的な基準という形でお示しをいたしているものでございまして、市町村におきましては、それをもとに、当該市町村の例えば地勢であるとか、道路事情であるとか、あるいは建築物の構造等の諸般の事情を考慮しながら、地域の実態を踏まえて、それぞれ市町村の消防計画という形で定めるようになっているものでございます。

 したがいまして、各団体ごとに、この基準に基づいて整備内容が自動的に定まるというものではなく、それぞれの市町村が地域の実情を踏まえて決めることになりますので、それに対する充足率というものを一律に算定してどうなっているかという点につきまして、お答えしかねる、困難である点があることを御理解いただきたいと思います。

 ただ、このような地域的な事情への配慮を考慮外に置きまして、私どもがお示しをいたしております全国一律的な基準で、全国的なものを算定してみた場合の数字がございますが、例えば、消防ポンプ自動車の場合でありますと、私どもの基準に基づきますと、全国的には二万三千三百四十七台程度が必要ということになるわけでありますが、実際の整備数は二万二千三百二台となっておりまして、充足率は九五%程度ということになっております。

 また、この中で、大変重要な内容になっております消防の職員数につきましても、人口規模等をもとに一応の基準をお示しいたしているところでありますけれども、この基準から直ちに必要な人員が導かれるというものではないわけでございますので、その点御理解をいただきたいと思うわけであります。一つの試算といたしまして、例えば、現実に配置されております車両一台について何人という基準がありますが、それを機械的に当てはめました場合は、全国ベースで約二十万人程度必要ではないかというふうに私ども考えておりますが、実員数は約十五万五千人となっているところでございます。

 計画の数値が実際よりも大体大きくなって、大変厳しい状況下ではございますけれども、市町村において、体制の整備のために御努力をいただいているものと私ども考えているところでございます。

楢崎委員 今言われましたように、消防力には三要素があるんですね。人、施設、水ですね。その施設の中でも、車両は今のところ大体九十何%と言っておりましたけれども、心配ないような状況になっていますけれども、現実問題として、現状で責任ある有事災害対応ができるとお考えですか。

山口副大臣 今、長官の方からもるる答弁をさせていただきましたけれども、お話しのとおり、実は、消防団員も減少傾向にございまして、あるいは平均年齢も、平成五年度で三十五・六歳が十五年度で三十七・二歳というふうな状況とか、あるいはサラリーマン化等々のさまざまな問題点を確かに抱えておるわけでありますが、しかし、九十三万人の消防団員それぞれ、日ごろさまざまな活動あるいは訓練をしていただいておりまして、しっかり頑張っていただいておるわけであります。

 同時に、御質問の国民保護に関しては、やはり常設消防の職員とかあるいは地方公共団体の職員、さらには警察官とか海上保安官、自衛官といった関係機関がお互いに連携協力をして実施するものでございまして、また、自主防災組織の協力も得ながら、総合的に対処するというふうなことになっております。

 前段の消防団につきましても、ぜひともこれは、入団促進とか財政的支援もしっかり図っていきたいというふうに考えております。

楢崎委員 平時のときこそ、体制の確立を図っておいていただきたいと思います。

 保護法で言う罰則についてお伺いしますけれども、私が感じるのは、いわゆる命令に従わなかった者に対する罰則で、これは私は軍の論理だというふうに思うわけですね。では、その法執行に伴う行き過ぎ、それから過剰な取り締まり、人権侵害があった場合はどうするんでしょうか。

大石政府参考人 国民保護法制で設けております罰則は、国民保護措置の実施に万全を期していくための規定でございまして、救援活動を担保していく、あるいは立ち入り制限区域に入って危険が生じることを防ぐための罰則、こういった内容になっているわけでございます。

 では、公務員の側はどうなんだということでございますけれども、公務員がその職権を濫用しまして人に義務のないことを行わせる、あるいは権利の行使を妨害しましたときには、刑法の公務員職権濫用罪が適用されるわけでございまして、行政側に対する罰則というのはこの国民保護法制の中では特段設けていないわけでございます。

楢崎委員 私は、人権尊重が担保されるためにも、要するに、この国民保護法の中において、取り締まる側といいますか、命令する側にも罰則が設けられるべきだ、そのことを申し述べておきます。

 次に、外国軍用品等の海上輸送規制法案についてお伺いしますが、いわゆる臨検についてお伺いします。

 この臨検というのは、戦時国際法でも交戦権の一環として認められていることは私も承知していますけれども、我が国の憲法は交戦権を認めていない。何を根拠にこの法案では臨検を認めようとしているんですか。

石破国務大臣 先生今、いわゆる臨検というふうにおっしゃいましたが、私どもは臨検という言葉は用いておらないところでございます。

 そこで、何を根拠としてこのようなことを行うのかということでございますが、これは当然のことでございますけれども、国が固有の権利として持っております自衛権に基づいておるわけでございます。

楢崎委員 要するに、憲法解釈のエスカレートではないですか。その歯どめがきかなくなるおそれというものを私は感じます。

 それで、この実施海域についてですけれども、たしか石破長官は、我が党委員の質問に対して、地理的にここまでと明示できないけれども、しかし無定限に広がることはあり得ないと言われたと覚えていますけれども、よくわからぬですね。これは、相手国の領海外なら実施可能ということを言っておられるんですか。

石破国務大臣 そういうことでございます。

 ただ、先生、自衛権というものは広範に使えるものではないということは、これまた先生御案内のとおりでございまして、行使の三要件を今さらくだくだ申し上げるつもりはございませんが、それが必要最小限にとどまるべきこと、こういうふうに書かれております。

 したがいまして、我が国を守るということについて自衛権を行使する、その自衛権に基づいて輸送規制を行うということでございます。それは、交戦権とは異なる概念というふうに理解をいたしておりまして、その最小限ということにかんがみましても、これが無制限に広がるというわけではございません。

 そしてまた範囲も、自衛隊法施行令の百七条でございますか、これによりまして、内閣総理大臣が行動の地域を告示するわけでございますが、この範囲内に限られるという結果になるわけでございます。無限定に広がるということはございませんし、先生のお言葉をおかりすれば、自衛権の無制限のといいますか、エスカレーションということには私どもならないというふうに考えております。あくまで、自衛権、そしてそれは必要最小限にとどまるべきことということであります。

楢崎委員 この実施海域の設定というのは、戦況によっても変わるんですかね。

石破国務大臣 先生がおっしゃいます戦況というのがどういうことを指しておられるのか、ちょっとにわかには判じかねるところでございますが、その区域の設定というものがそのときそのときの状況によって異なる、それは、自衛権の行使の態様がその場その場によってといいますか、状況に応じて異なるということと符合するものだと思っております。

楢崎委員 それでは、その都度その都度、世界といいますか、関係機関に告知されるわけですか。

石破国務大臣 それは、もし変えることがありますれば、それを告知しないということはあり得ないことでございます。

 仮に、それが本当に一日に三回も四回も変わるとか一週間に二回も三回も変わるとか、そういうことになりますと、これまた大変なことでございます。それは手続が非常に煩瑣にもなりますし、かといっていいかげんに定めるというものではございません。その辺はおのずから合理的に定まるものでございますが、変わった場合には、それは告知の手続をとるということは当然のことであります。

楢崎委員 では、疑惑船舶とそうでない船舶とは、どのようにして見分けるんですか。

石破国務大臣 これは、その態様を総合的に判断するという以外に申し上げようがございません。

 それは、事前にいろいろな情報を入手するわけでございます。もう何でもかんでも、こら、とまれみたいなことをやるわけではございませんで、その船がどういうような態様をしているか、外観でございますね、あるいはどのような航路をたどっておるか、あるいはその船に乗っておる船員がどのような挙動をしておるか、そのようなことから総合的に判断をするということでございまして、これは、かくかくしかじか、こういうものに当てはまったらすなわちというようなことが一概に申し上げられるものだとは考えておりません。

楢崎委員 情報をもとに臨検を実施して、その臨検に応じなければ危害射撃も認められるわけですね。ですから、その情報の精度というものが求められると思いますけれども、間違った情報で関係のない船を、私は臨検という言葉を使わせてもらいますけれども、臨検する可能性も否定はできないわけですね。

石破国務大臣 間違った情報といいますか、もちろん、その情報の精度というものは、そのときそのときに本当に慎重に判断をして、間違った情報に基づいてそのような措置をとってはならないというふうに考えておりますが、一〇〇%そのようなことがないということは申し上げません。

 ただ、そうなった場合にも、所定の手続を経まして検査等々を行うことになるわけでございますし、そこにおきまして適正な手続は当然担保されておるということでございます。

 しかしながら、例えば、先ほども申し上げましたけれども、ここの海域においてということで区域の設定はもう告知をしておるわけでございます。ですから、そのようなことが仮にも行われることがないように十分と配慮をしていかねばなりませんし、そしてまた、相手方船舶というものもそういうことは知っておるはずでございます。

 繰り返して申し上げますが、きちんとした情報に基づき、なおかつ、その情報のみならず、船舶の態様、そしてまたたどっておる航跡、その他乗組員の方々の挙動等々総合的に判断をするわけでございますが、その上で仮に間違っておったということはあるのかもしれません。しかし、そのときもきちんとした適正な手続をとるということになっております。

楢崎委員 規制の対象となる軍用品ですけれども、これは、場合によっては食糧もその規制の中に入るんですか。

石破国務大臣 この外国軍用品につきましては、直接の殺傷、破壊に用いられる武器またはその運搬手段等に用いられる物品であって、我が国に対し武力攻撃を加えている国を初め、外国軍隊等が所在する地域を仕向け地とするもの、これがまず第一の分類でございます。

 第二に、防御等のために用いられる軍用の装備品または外国軍隊等の活動に必要な燃料や食糧等であって、外国軍隊等が所在する我が国の領域または公海上の地域を仕向け地とするもの、これを対象といたしまして、この御審議をお願いしております法案の第二条第二号で明確に規定をしておるものでございます。

 ですから、今先生御指摘の、食糧も入るのかということでございますが、これも食糧は何でもかんでも入るというわけではございませんで、繰り返して申しますが、防御等のために用いられる軍用の装備品または外国軍隊の活動に必要な燃料や食糧等であり、外国軍隊等が所在をいたします我が国の領域または公海上の地域を仕向け地とするものに限っておるということは明確に示しておるところであります。

楢崎委員 一般的に言えば、食糧は生活物資ですよね、経済物資ですよね。

 ちょっと具体的にお聞きしますけれども、一般商船の乗客に紛れて複数の不審者が密輸的に武器とか弾薬とか、そういう運んでいるのが発覚した場合はどのように対応されるんですか。

石破国務大臣 それも、一般商船というのが、これがまたどういう意味なのかわかりませんが……(楢崎委員「一般船舶」と呼ぶ)一般船舶、はい。要するに公船ではない、こういう意味だと理解してよろしゅうございますか。

 そうなりました場合でも、この法案に示されたような要件を充足するということがあるとするならば、それは対象になり得る場合があるというふうに考えております。そういうものを全く排除するということには相なりません。

楢崎委員 いや、ですから、もしそういう場合はどのように対応されるのか。例えば日本に回航させるのかどうかですね。

石破国務大臣 それは、回航をしなければならないというような状況が仮に生じた場合には、それは回航ということに相なります。

 それは、いわゆる検査を行っておる、規制を行っておる、そこの海上におきましてそういうことがきちんと認められ、それを回航するまでもないということになれば別でございますが、そこで回航をしなければならないようなそういう状況が生じましたときに、回航というものは、仮に成立をいたしましたとするならば、この法律にはそういうことを可能にする場合もあるということでございます。

楢崎委員 では、その不審者が武器を持って抵抗した場合、一般人が乗られておっても射撃を加えますか。

石破国務大臣 それは、その不審者ということもこれまた難しい定義でございますが、それは態様によると思います。

 しかし、それが法律に書かれております要件というものを満たします限り、これは警察官職務執行法ということになりますけれども、これの許します範囲におきましてそれを行う場合はあり得ることでございます。そこの場合に、一般の方がいらっしゃる、いらっしゃらないということは、別に、本質的にこの法の対象とするところではございません。

 その場合に、警察官職務執行法というものにのっとりましてやります場合に、一般の方々に危害を加えないように武器の使用を行うということは、これは当然のことであります。

楢崎委員 では、武器使用の合理的で必要な限度というのは、どの程度のことを言うわけですか。

石破国務大臣 それは、合理的に必要な限度としか申し上げようがないことでございます。

 それは、必要最小限度にとどまるということでございますし、この法を執行いたしますために、これは警察官職務執行法の規定にのっとりまして行うという通則的なものでございます。

楢崎委員 この法律が成立した場合、その法律にのっとって、そういう、私は不審船という言葉を使いますけれども、対象となる船が有事対象国でなかった場合は、新たな緊張が生まれる可能性がありますよね。

石破国務大臣 これは、我が国が自衛権に基づいて行っておるものでございます。それが対象国でないといたしましても、それが我が国の自衛権の行使の対象として必要なものであれば、それは、もう先ほど来、最小限ということを申し上げておりますが、必要なものとして行わなければ我が国の自衛権がきちんと行使をされないということの裏返しになってしまいます。

 先ほど来申し上げておりますように、これは、自衛隊法施行令百七条の規定に基づきまして、ここの地域は我が国がそういう行動の対象としますよということもきちんと申し上げておるわけでございます。そこにおきまして、何ら不審な情報もなく、かつまたその国の旗国の旗をきちんと掲げ、決められた航路をきちんと通り、そしてまた整々と航行が行われておるような場合に、私どもがこのような措置をとることはあり得ないわけでございまして、無用の混乱、無用のそういうような懸念、あるいは緊張、そのようなものを惹起することはございません。これは、国際法上も認められたことでございまして、我が国のみが過度に自制的なそういうような行動をとるということは、本来の自衛権に依拠するものであります以上、そのようなことは、私は無用の御懸念かと考えております。

楢崎委員 次に、米軍関連について質問いたしますけれども、川口大臣お見えになっていますので、一つだけお聞かせください。

 追加議定書を含むジュネーブ条約の加入に基づく国内法の整備は当然ですけれども、連係するICCへの加入も一つの課題だと思うんですけれども、今後どういう対応をされますか。

林(景)政府参考人 一言で申し上げますれば、我が国といたしましては、現在、国際刑事裁判所、ICCの規程の締結につきまして必要な検討を鋭意進めているというところでございます。

 ただ、このICCと申しますのは、いわゆる有事の事態ということだけではございませんで、人道に対する罪、ジェノサイド等いわゆる平時における罪についても対象にしておるということでございます。

楢崎委員 もう終わりまして、きょう、半分も質問していませんので、今後もたっぷり審議時間をとっていただきたいと思います。ありがとうございました。

自見委員長 次に、生方幸夫君。

生方委員 民主党の生方でございます。

 まず、きょう入ったニュースによると、サマワのオランダ軍宿営地に迫撃砲と見られる砲弾が撃ち込まれた、一時自衛隊の派遣部隊の隊員もコンテナに避難したというようなニュースが入っているんですけれども、防衛庁長官、この事実関係は把握をしておられますか。

石破国務大臣 そのような報道があったということは承知をいたしております。詳細につきましては、これはオランダの宿営地に撃ち込まれたという情報でございますので、オランダ等々にも、できる限りの情報しか入りませんが、可能な限り、私どものサマワにおける行動にも関連をいたしますことでございますので、情報を収集したいと考えておるところであります。

生方委員 きょうの八時、日本時間の八時ぐらいだということなんですけれども、大分時間はたっているので、けが人等は出たんですか、どうなんですか。

石破国務大臣 そのようには聞いておりません。

生方委員 私も、このニュースを見ているだけで、具体的に何発砲弾が撃ち込まれたのかとか、どういう状況でどういうふうになったのかということがわからないんですけれども、今、防衛庁長官がおっしゃった以上の情報は入っていないということなんですか。

石破国務大臣 仰せのとおりでございます。

 いずれにいたしましても、これはオランダの宿営地内のことでございますので、オランダがかくかくしかじかであるというような事実を公表するということがない限りは、これはもう本当に私どもとしても、情報の収集には努めるものでございますけれども、オランダの宿営地に撃ち込まれたということでございますから、本当に確たることということが申し上げられるかどうかという状況だと思っております。

 現在のところ申し上げられますのは、今のような状況であります。

生方委員 そうしますと、一時的にコンテナ内に自衛隊員が避難したというのは、どういう判断に基づいて、コンテナというのがどういうものだかよくわかりませんけれども、コンテナだって迫撃砲を撃ち込まれれば多分貫通しちゃうんじゃないかと思うんですが、コンテナ内に避難をさせたという判断は、どういう根拠に基づいて判断したんですか。

石破国務大臣 避難等々につきましては、当然現場指揮官の判断によるものでございます。現場指揮官がその場におきまして、これはコンテナに避難をさせることが至当であるというふうに判断を行ったと承知をいたしておりまして、そのことにつきましてどういう状況であったか、それはもうその場において現場指揮官が適宜適切に判断をするものであります。

生方委員 私も宿営地に行ったわけじゃないのでコンテナというものがどういうものかわかりませんけれども、コンテナというのは、迫撃砲が撃ち込まれたときコンテナ内に入っていれば隊員は無事であるような、そういうものですか。

石破国務大臣 どのような施設がどのような耐弾性、防御性を持っておるかということについて詳細に申し上げるということは、隊員の安全確保の面から、何も私どもは何でもかんでも隠そうとしているつもりはございませんけれども、このようなものに対してはこのような威力がというようなことを詳細に申し上げることでもございませんし、なおかつ、迫撃砲というものの性質につきましては委員よく御案内のとおりでございますけれども、それが行使されます態様によってそれぞれ違うものだと思っております。被害というものを減殺させる、そういうような効果は当然持っております。

生方委員 私どもは、もともとイラクへの自衛隊の派遣というものに反対をしておりました。またそれから、非戦闘地域と戦闘地域という分け方自体が本当にできるのかできないのかというようなことも、何回もこの委員会あるいはイラク特などで質問をさせていただきました。

 サマワ地区は、比較的これまでは安全というんですか、大きな戦いもなかったというのは事実でございますが、ここ二、三週間に限って言えば、自衛隊の宿営地の周辺に迫撃砲が撃ち込まれたり、あるいはCPAにロケット弾が撃ち込まれたりというような状況がございまして、我々は、非戦闘地域という、政府がずっと言ってきたことがもう既に通用しなくなっているのではないかというような感じを強くしているわけですね。

 これは、非戦闘地域、戦闘地域というふうにもちろんわざわざ分けておられるわけですから、実態が戦闘地域というふうになれば、自衛隊を速やかに撤退させなければいけないというふうに思うんですが、今、この二、三週間の状況を見る限りにおいては、もう限りなく戦闘地域に近づいているんじゃないかというふうに私は思うんですが、いかがですか。

石破国務大臣 私どもはそのような判断をいたしておりません。先生がそのように御主張になるとするならば、戦闘地域かどうかという定義が、政府が申し上げております定義、そしてまた国会において御党は賛成をいただきませんでしたが、少なくともこの国会におきましてお認めをいただきました法律に言うがところの概念と同じ概念であると仮にするならば、これは国際的な武力紛争の一環として行われる戦闘行為が行われているのだという御判断に基づきまして御主張なのだろうと思っております。

 私どもは、今サマワにおいて、あるいは私どもが実施区域といたしております地域におきまして、国際的な武力紛争の一環としての武力の行使というものが行われているという判断はいたしておらないわけでございます。

生方委員 久間筆頭がいなくなっちゃいましたが、久間筆頭が日曜日の討論会で――お戻りになりましたけれども、サマワにいる自衛隊に銃弾が撃ち込まれたら直ちに撤退するべきだというふうに筆頭はおっしゃっているんですけれども、そういう趣旨のことをおっしゃったというふうに私は理解をいたしておりますが、今、オランダ軍の宿営地に迫撃砲が撃ち込まれたというのがあって、これが仮に自衛隊本隊の宿営地に迫撃砲が撃ち込まれるというような事態になった場合でも、石破長官は、そのまま自衛隊の皆さんをそこへ駐留させる、先ほどの、今の定義で言う非戦闘地域であるんだから撤退させるわけにはいかないという判断は変わらないということですか。

石破国務大臣 これは、私が申し上げるべきことでもございませんが、久間筆頭がそのようにおっしゃったとは私ども理解をしておらないところでございます。その後また、久間筆頭は新聞のインタビューにもお答えであったように私、拝読をいたしておりますが、その中でもそのような御見解を披瀝されたとは承知をいたしておりません。

 先生お尋ねの、では仮にサマワの私どもの宿営地に迫撃砲が撃ち込まれたということでございますが、仮定のことにお答えをすることは、恐縮でございますが、それはその状況によるのだと思っております。

 それは、法の要件を満たさないようになれば、当然、法に基づいて派遣をしております以上、要件を満たさないとすれば、引くということはあり得る、あるいは実施区域を変更するということはあり得ることでございます。それが、私どもが定義をしておりますところの戦闘行為に当たる場合、あるいは法九条に規定をしております防衛庁長官の安全確保に関する義務というものが履行できないというような状況。

 すなわち、私ども、総理もお答えになっておられますように、安全な地域だから出すということを申し上げておるわけではございません。自衛隊の権限、能力、装備をもちまして、一般の方であればそれは避け得ない危険であるとしても、自衛隊であればそれは避け得る、あるいは被害というものを局限し得る、そして、日本のいろいろな目的のために行動できる組織は自衛隊しかないということで出しておるわけでございます。

 ですから、それは、戦闘地域かどうかということ、あるいは防衛庁長官が持っております安全確保義務というもの、そしてまた実施区域というものを変更するかどうか、いろいろなものが絡んでくる問題だろうと思っております。

 いずれにいたしましても、そのときの状況に応じまして、法治国家におきまして法律に基づいて出しております以上、法律の要件を満たしておればそのままですし、満たさないということになれば、それは法に基づいて行動するということになろうかと思っております。

生方委員 自衛隊はもちろん、サマワ地区の治安を維持するために行っているのではなくて、人道支援のために行っているわけですね。この間以来のそういういろいろな騒動の中で、自衛隊の皆さんは宿営地の中にこもっていて表では活動できない状況が続いていた。その後、一部表へ出ているというようなことも聞いております。

 その後どういうような行動を今しているのか、私も認識をしているわけではございませんが、仮に、サマワ地区で迫撃砲が常時撃たれるような状況になって、自衛隊の中にも撃ち込まれて負傷者が出たというような状況の場合でも――具体的には、それはもう人道支援ができないわけですね、宿営地から出られないということになれば。そういう場合でも、なおかつその地にとどまるという判断をなさるおつもりですか。

石破国務大臣 それは状況によります。その場合には即座に撤退とか、その場合は絶対残るとか、そのようなことを断定的に申し上げること自体が、私はかえって適切を欠くのかなというふうに考えております。そのときの状況によるわけでございます。

 では、こもって何もしないのかいというお話でございますけれども、先生今まさしくおっしゃっていただきましたように、今、活動を外におきましても再開すべく、いろいろな準備をしておるところでございます。

 今後、早急にまた外へ出て、イラクのサマワの人々が喜んでくださるようなそういう活動ができ、人道支援というものと、そしてまた治安の回復というものは、それはコインの表裏、つまり、人道支援が行われ民生が安定をすることが治安の回復になることである、治安が回復をすることがさらに人道支援が進み民生が安定することである。それは二者択一のものだとは考えておりません。治安を回復していくためにも、人道支援というものをきちんと進めなければいけない。

 これは、きのう、イラクに行っております佐藤一佐が帰ってまいりまして、一時帰ってまいりまして報告をいたしましたけれども、そういう状況に全く変わりはございません。

生方委員 例えばスペインは、政権がかわったということもあって、それが問われた選挙が行われて、野党が勝ったことによって、スペイン軍はもう実際に撤退を始めましたね。スペイン軍以外でも、ホンジュラス、ドミニカも撤退を表明していますし、ブルガリアやタイ、フィリピンなどでも撤退するかどうかを検討しているということが報じられているわけですよ。

 このそもそもの大もとにあるのは、今度の戦争の大義そのものがやはり非常に不信に思われているからですね。これはもう何度も何度も論議をしていますのでここであえて繰り返しませんが、一つだけ言えば、本当に大量破壊兵器があるからということでアメリカ軍と英軍は攻めていったのに、その一番肝心の大量破壊兵器がない。その大量破壊兵器の情報についてもいろいろ捏造が行われたのではないかというような、そういう国際的な不信が、スペイン軍が撤退したり、ほかの国がそれに追随するというような事態になっているんだと思うんですね。

 私は、派遣された自衛隊の家族の方たちも非常に今心配をしていると思うんですよ。だんだん南の地域も治安が不安定になってきた。もう占領から一年たって、本来であれば、正義の戦いであれば、占領から一年たてば、普通は治安はどんどんよくなるはずなんですよ。これは大義なき戦争だから治安がどんどん悪化しているのであって、私は、やはり占領軍たる米英軍が一定程度引く、それにかわって国連軍が出ていくということがイラクの治安を回復するには最もすぐれた手段だというふうに思っております。

 私は、そこで聞きたいんですけれども、やはり自衛隊員の家族の皆さんにも、これこれこういう状況になったら自衛隊は撤退しますというのをある程度はっきりしておかないと、結局、死傷者が出ない限りは撤退しないのかというようなことを自衛隊の皆さんの家族の方が非常に心配しているわけですよ。だけれども、長官が、あるいはこういう状況になれば我々はもう撤退するんだと。戦闘地域には出さないんだというふうに言っているんですから、こういう状態になればこれはもう明らかに戦闘地域だというふうに認めて撤退するという基準ぐらい示しておかないと、自衛隊員の家族の皆さんは本当に――ただただそこにいて、標的にされてしまえばもうおしまいなわけですから、実際どこへも逃げようもないわけですからね。

 だから、その基準だけでも少なくとも、もうこういう切迫した状況になっているわけですから、示すべきではないかというふうに思うんですが、いかがですか。

石破国務大臣 定型的に、これこれしかじかこういうことになりますと撤退しますということを公にしますと、ああそうか、これこれしかじかこういうことをすれば撤退するのかということに、それは、不法にも無法にも我が国に対して攻撃をしかける人たちに、そうなのか、そうなのかということを了知せしむることになるであろう。それは決していいことだと私は思っておりません。

 ついでに申し上げれば、きのう帰ってまいりました佐藤一佐が報告しておったことでございますが、サマワの本当に多くの市民たちは、このような攻撃というものは、人質事件も含めてでございますが、イラク国民に対する挑戦でもあるということを言っておる。これは実際に聞いてきた者が言っておることですから、私はそういうことなのだろうというふうに思っております。

 それで、撤退ということもございますが、先生、法律よく御案内のとおりでございますけれども、一時中断し避難するなどして前項の措置を待つ、すなわち実施区域の変更ということになりますが、そういうこともあり得ることでございます。何かあったらばすぐに、こういうことがあったらばすぐに撤退だということではなくて、例えば実施区域を変更するということも法律には書かれておることでございます。

 いずれにいたしましても、これは法の要件を満たさなくなる、それは、現場がこれはもう大変だと言いながら、東京でぜひ頑張れと言うようなことも、これまた妙なことでございます。もちろん実施区域の変更というものは防衛庁長官が命ずることになるわけでございますけれども、自衛隊員の安全というものの確保に最大限の努力を払うことであり、あわせまして、先生御指摘のように、家族の方々のお気持ちというものも私どもよく考えていかなければいけません。したがいまして、現地と家族の方々が、電話あるいは画像によって常に連絡がとれるということも、私ども、あわせて配意をしておるところでございます。

生方委員 サマワの方たちが圧倒的に自衛隊の皆さんの派遣を支持しているというのなら私はいいと思いますけれども、きょうの読売新聞の世論調査ですね、現地の新聞が世論調査したところによれば、「自衛隊の派遣は有益か」という質問、これはサマワ市民に対してですよ、「有益か」という質問に対して、そう思うという人は四三%で、思わないという人が五一%なんですね。サマワの人自体が思わないと言っているんですよ。

 本当に圧倒的に感謝されているというのなら、自衛隊の皆さんが命をかけてそこで活動するのも、私たちは基本的に反対の立場ですけれども、価値はあるかもしれませんが、当のサマワの人たちが思わないと言っているようなところで、迫撃砲が実際に今周りに撃ち込まれているようなところへ自衛隊の皆さんを駐留させておくというのは、もし万が一のことがあった場合は、防衛庁長官、総理の責任は極めて大きいと私は思うんですけれども、その責任ということについて、いかがですか。

石破国務大臣 先生御指摘の世論調査は私も拝見しました。四七、四六みたいな拮抗した数字ではなかったかなと思っております。(生方委員「ここにあるんだ」と呼ぶ)そうですか。それは別の数字かもしれません。読売ではございませんか。読売だと思います。いずれにいたしましても、その数字はかなり拮抗したものであったかというふうに私は記憶をいたしております。

 それで、事前に、つまり自衛隊が来たときには非常に高い支持率であった。私は前から答弁をしておろうかと思いますけれども、期待値と実現値の乖離というものはある。アラジンの魔法のランプのごとく、自衛隊が来たらば、本当にあっという間に日本のような高層ビルが建ち、みんなに仕事ができ、そのようなことが自衛隊はできるわけではない。むしろ、自衛隊でなければできない、自己完結の自衛隊でなければできないことをしに行くのである。それは、外務省ともよく協力をしながら、サマワの復興というものをやっていかなければいけない。ですから、期待値と実現値というものの乖離がないようにしていかなければいけないということは、私は、法案ができたときから申し上げておることでございます。

 他方、今、迫撃砲の事案等々ありまして、外に十分出られない、また場所も多く展開できないということがございます。これはどっちが先でどっちが後かということもございますけれども、そういう状況なので、サマワの市民全員に対してといいますか、多くの市民に対して、何だか風の便りで、自衛隊というものが来るらしい、自衛隊というものが来たらサマワは日本みたいになるらしいと、もともと期待値は高いわけです。それを徐々に実現していこうとしているわけですが、それを何とか埋めるように努力をしていかなければいけないということであります。

 最後に、責任論についてお尋ねでございますが、私は、責任がないなどということを申し上げているつもりは全くございません。常に、第九条の義務というものをきちんと自分は果たしているかどうか、そのことは日々常に検証していかねばならないし、そうであらばこそ、現地との連絡を頻繁にとり、そして、発生している状況に応じて、どのようにして、権限というものが変わることはございませんけれども、特に装備あるいは現場の防護の態勢、それについて、万全に近づけるべく努力をするのは当然のことだと考えております。

生方委員 私は、そもそも、サマワになぜ自衛隊が行くのかということがわからないんですよね。復興支援ということであれば、やはり戦争で破壊をされた地域に行って復興支援をするのが筋だと思うんです。サマワは、イラク戦争では、戦争で破壊されていないんですね。だから、選ばれた唯一の理由は、そこが治安が比較的安定をしているということだけがサマワが選ばれた唯一の理由だと思うんですよ。その唯一の理由である治安が比較的安定しているという条件が崩れるのであれば、サマワにいる理由というのは本当にないと私は思うんですよ。

 人道復興支援というのであれば、一番人道復興支援を必要としているのはファルージャかもしれないしバグダッドかもしれない。でも、そっちは危険だからと言うんでしょう。だけれども、福田長官、福田官房長官が言ったのは、もうあらゆる地域は戦闘地域なんだというような言い方をしている人もいたりして、そうであるとすれば、本当に必要とされている復興はファルージャで、本当に住民の方が六百人も七百人も殺されているというのであれば、あそこに行って支援をするというのが私は筋だと思うけれども、それは、戦闘地域に限りなく近いというような判断なんでしょうからね。

 だから、私が今申し上げたいのは、これだけ状況が変わってきたわけですよ。自衛隊が派遣されたときから現在に至って、イラクの治安情勢全般は非常に悪化をしている。それで、一部の国の軍隊は実際にもう撤退を開始しているという中で、何かあった場合は速やかに自衛隊を撤退させるという準備もしておかなければいけない。何があっても、何が何でもそこへ駐留をさせるというのではなく、これは撤退にも、スペイン軍なんて六カ月から八カ月といいましたか、よく私も数値を覚えていないですけれども、撤退するにはそれなりの期間が当然必要なわけですよ。

 だから、石破長官、撤退をするということも頭に置いた上できちんと対処してもらわないと、いざとなって撤退するといっても、それまでの準備でいっぱいかかったので被害がいっぱい拡大してしまったということがないように、それだけは柔軟に対応してもらいたいということを申し上げておきます。

 それから、川口外務大臣にお伺いしたいんですが、この間、ブレア首相がブッシュ大統領と会って、イラクの復興支援にもうちょっと国連を前面に出すべきであるというようなことを申し上げたと。小泉総理も、米国の旗の下より国連の旗の下にすべての国が力をかす方がいいというようなことを述べておりますが、日本の外務大臣としてそのためにどんなことをするのかということをお伺いしたいと思います。

川口国務大臣 イラクにおいて、この間、米英の首脳会談のときに、国連がより大きな役割を果たしていく、中心的なとかバイタルなとか、そういう言葉がありますけれども、ということに向けて合意があった、同じ意見の一致があったということでございます。

 日本としても、国連の決議について前々から努力もいたしております。例えば、決議があるとしたらばどのような要素がそれに入っていることが望ましいかというようなことについても知恵を出したというところもございますし、それから、私は、昨夜、アナン事務総長と、それからストロー外務大臣とお話をいたしまして、国連の役割について、とても同じ方向で日本としてもそういうふうに考えている、できることをしたいというお話もさせていただきました。

 国際社会がそういう方向に向かって今、一致団結する、団結を見せるということが、六月三十日に向けてイラクが進んでいく、政治プロセスが進んでいる中で非常に重要であると思いますし、国連がここで果たしている役割というものには大きいものがあると思います。

生方委員 ブラヒミ案というのが出されているわけですね。これは、まず首相を選んで、それから大統領を選んで、国民大会議を開催するというふうになっておって、一応、このブラヒミ案をブッシュ大統領も評価しているということなんですけれども。

 私も案全部を読んでいるわけではないんですが、この首相を選んで大統領を選ぶというのを具体的にどうするのかというのが私はよく見えないんですけれども、これは、具体的にどういうふうにしようとしているのが案であって、それを川口大臣はどのように評価しているのかということをお伺いしたいと思います。

堂道政府参考人 お答え申し上げます。

 このブラヒミ案でございますけれども、これはまだとりあえずの中間案ということでございまして、ブラヒミ氏は、この案を発表した後またニューヨークに戻っておりますけれども、さらにもう一度イラクに入り、イラクの人々と、どのような形で暫定政府をつくっていくかということについての協議を行うものと承知しております。

 現在のところ、委員御指摘のとおり、首相を選び、さらに元首としての大統領、それから二人の副大統領という構成を示しております。さらに、国民会議をつくりまして、幅広いイラク人の意見を吸収し、その国民会議の中から諮問会議を選定いたしまして、この諮問会議のメンバーが政府を支える仕組みとなっております。

 さらに協議を続けると承知しておりますので、我が方としては、このような仕組みが実効的に機能するように、国連とも協議をしながら支援をしていきたい、こういうふうに考えている次第であります。

生方委員 私も新聞でしかその内容を見ていないので、これが正しいのかどうかよくわからないんですけれども、実質的には、今あるイラク統治評議会を事実上解体するんだ、それがブラヒミ案だというふうに言われておるんです。

 多分、今あるこのイラク統治評議会を解体するということになればアメリカが抵抗するんじゃないかというふうに私は思うんですが、そうなった場合、アメリカの方を支持するのか、それとも、ブラヒミ案を支持して、イラク統治評議会を解体するべきだというふうにアメリカに提案をするのか。川口大臣、いかがですか。

堂道政府参考人 お答え申し上げます。

 この統治評議会の解体でございますけれども、これにつきましては、六月三十日にCPAとともに解体するという形で決まっておりまして、この点についてもアメリカは異論はないというふうに承知をしております。したがって、意見の一致があるというふうに承知をしております。

生方委員 そうすると、アメリカがイラク統治評議会を解体してもいいという判断になっているということで、そう理解していいんですか。

堂道政府参考人 お答え申し上げます。

 統治評議会を解体する、CPAを解体するということでございまして、多国籍軍のあり方については別途決められるということでございますが、基本法において制定されておりますのは、多国籍軍がそのまま存続するという形を想定しております。この具体的なアレンジメントについては、これから協議をされ、決定されていくというふうになるものと承知をしております。

生方委員 今のイラクの現状でも、またファルージャでも戦闘が再開をされたというようなことがきょうも報道されておりまして、たくさんのイラク人の方が亡くなっているということですから、私はとても六月三十日までに全面的にイラクへ主権が、まあ全面的に移譲はもちろんされるわけじゃないですけれども、六月三十日という期限を切って主権移譲するというふうにはとても思えないんですよね。

 やはり、もっと国連が前面に出ていくように、日本ももっときちんと発言をするべきだと思うんですよ。アメリカ軍はもちろん当事者で、自分たちも死んでいるし自分たちも殺しているという状況の中で、彼らが、ではもう我々は出ていくから国連に任せますというようなことは、なかなか今言えない状況。国内世論的にも言えないでしょうから、私は、もっと日本が積極的に、国連が前面に出ていった方がいいということを小泉さんもおっしゃっているのであれば、もっと具体的な提案をして、いついつまでに国連がこういう形でこういうふうに関与していって、その分アメリカ軍はこれだけ引けばいいとかいうような具体的な案をやはり出さないと、当事者はなかなか、もう突っ込んじゃっている当事者ですから、自分たちから引くということはできないと思うんですよ。

 そういうことをするのが私は日本の役割だというふうに思いますが、いかがでございますか。――川口大臣はぐあいがお悪いんですか。では、まあしようがない。

逢沢副大臣 去る十四日、ブラヒミ国連事務総長特別顧問がバグダッドで記者会見をされまして、今後の政治プロセス、いわばブラヒミ案の最初の提案をされたわけでございます。

 私ども、イラクのこれからを考えますときに、やはり政治プロセスを強力に推し進める、そして、率直に申し上げれば、その主役はやはり国連が担うべきであって、もちろんその立場にございますし、また十六日、ブッシュ大統領、ブレア首相、英米首脳会談が行われ、英米の首脳の間でも、ブラヒミ特別顧問の提案、また国連の役割を強化することは当然のことだ、歓迎をする、そういうことを述べているわけであります。

 委員が、日本がより明示的に、積極的に、この政治プロセスが前進するための動き、提案、そのことが必要だ、そういったことをおっしゃられたわけでありますが、もちろんそのことを大切に思うわけでありますが、まずは私ども一致協力をしてこのブラヒミ案を前進させる、そういう状況といいますか環境を幅広く国際社会でつくり上げていく、そういう立場に立つのが非常に正しい選択ではないかというふうに思われます。

 そういう状況の中で、先ほど川口大臣も答弁されましたように、外相間の電話での会談で、やはりブラヒミを支えていこう、国連をしっかり支えていこう、そういう立場で能動的に、積極的に外交を展開しているわけでありまして、ぜひ、委員におかれましても、御理解の上、御支持を賜りますようにお願いを申し上げたいと存じます。

生方委員 そもそも、やはり安保理の決議を経ていないで攻撃をしたということが、みんな最初のボタンのかけ違えがこういう事態を招いている。アメリカの方も今月に入っただけで百人ももう死んでいるというようなことになっていますし、きょうもファルージャで六十人の方が亡くなったという、本当に悲惨なことが繰り返されている。まず、やはり戦闘をやめさせるということが第一番目にやらなければいけないことで、これは兵士だけじゃなくて、一般の市民や、もちろん子供や女性の方もたくさん亡くなっているわけですね。こういう事態をやはり一日も早くやめさせなきゃいかぬと。

 もう本当に、私だって新聞を見るたびに、やはり本当に人間が死んでいるわけですからね、そこで。日本国では事故で三人死んだってこれは大騒ぎなのに、一日何十人、何百人という単位で死んでいるような事態が起こっているわけですから、これをまずやめさせるということに日本も最大の努力をしていかないかぬ。これはアメリカの兵隊だって、若い兵隊が死ぬのは本当に気の毒な話で、何のために死んでいるのかわからないようなところで人が死んではいけないはずですからね。まず停戦をするべく、きちんと努力をしていかなきゃいかぬ。

 それで、国連が前面に出ていかないかぬというのは、それは当然の話であって、もともと国連が最初から出ていかなきゃいけない話だったんですよ。そこへアメリカが軍事的な介入をするということがそもそもの原因なんですから、まず軍事的な措置というのをやめさせるということから私は始めなければいけないというふうに思います。

 それで、次の質問に移りたいと思いますが、人質の方が、五人の方が解放されたということは、私も大変よかったなというふうに思っております。私もそのために若干の努力をいたしましたので、無事帰ってきたということは本当によかったというふうに思いますが、私は、人質の方が帰ってきて、本来であれば、帰ってきてよかったねという温かい拍手で迎えられて当然のはずなのに、この間の、それぞれの方が北海道と宮崎に帰るときの報道を私見ていましたけれども、あれじゃ、本当に犯罪者がみんなの目から隠れてどこかの車から車へ移されるような、本当にそういうような、処遇というんですか、そういうような扱いを受けている。本当に私は残念でなりませんね。

 これは、人質になったときから、自作自演だとか、あの方たちはある特定の政党に属しているんだから構わないとか、何でこんなひどい誹謗中傷が命の危険にさらされている人たちに向けてなされなきゃいけないのか。私は本当に、日本の方もちょっと、あくまでもそういうことを言っているのは一部でしょうけれども、若干感覚がおかしくなってしまったのではないかなというふうに思ったことがございます。

 それも、そうしたことがなぜ出てくるのかといえば、そもそもやはり自己責任論というのが政府側から出されてきたということが私は非常に大きな原因だと思っております。

 川口大臣、では、余り多くを聞きませんので、一点だけ聞きます。

 これは、高遠さんを初め、高遠さんはボランティアとして、今度もイラクのストリートチルドレンに対して、その家をつくるための資金を持っていくというのが主たる目的であったというふうに聞いております。あとの二人の方は、少なくとも、今バグダッドやファルージャで何が起こっているのかを知ることによって、それを伝えることによってその悲劇が大きくなるのを何とか防ごうという意図で行った。

 私は、その判断が、よしあしは別ですよ、そういう状況の中で行く行かないという判断が正しかったか正しくなかったかというのは別として、その意図そのものを、川口大臣は悪いというふうに思うんですか、いいというふうに思うんですか。

自見委員長 簡潔に御答弁お願いします。

川口国務大臣 これは私は、三人の方の解放がわかった後で、三人の御家族の方にお会いをしたときに申し上げましたけれども、三人の方が、イラクの子供たちを助けようとか、あるいはイラクの生活を日本に知らせようとか、そういう意図を持っているということ自体は大事なことであると。

 ただ、そういう意図を持っていつでもイラクに行けるということではないわけでございます。現に政府としては、きちんと調査をした上で退避勧告を出し、注意情報を三十回近く出しているわけで、そういう状況で行くことができるかどうかということについての個人としての判断はきちんとなされなければいけないわけであります。

 それが重要なことであって、それがまさに、自分の安全は自分で守ることができるかどうか、個人としてそれがどこまで可能か、それが難しければそこでどういう判断をすべきか、そういうことである。それが今回のことについて提起をされている問題だというふうに思います。それだけが、意図だけが独立して議論されるべきではないと思います。

生方委員 これはまさに、そういう状況であるからこそ彼らは行ったんですよね。何も、平時でだれでもが行けるというような状況であれば自分が行かなくたっていいわけで、やはり高遠さんなんかだって、ストリートチルドレンの方が待っている、そのために家をつくろうというお金を持っていこうということで行っているわけで、そこを非難するべきではないというふうに私は思っております。

 それで、あと、福田官房長官がいらっしゃらないですから、福田官房長官にかわってだれが答えてくれればいいのかわかりませんが、石破長官が答えたそうですから、では答えてください。

 福田官房長官が、どれだけの人に迷惑がかかったのかを考えてほしいというふうに言っておりますが、具体的に、政府にはどんな迷惑がかかったんですか。

逢沢副大臣 私は、事件が発覚をいたしました翌日に、現地緊急対策本部で指揮をとれという命を受けまして、ヨルダンの首都アンマンに設けられました現地緊急対策本部に赴いたわけであります。

 記者会見の場でこういうふうに申し上げました。イラクの人たちあるいはイラクの子供たちに対して、高遠さん、今井さんが熱い思いを寄せておられる、あるいは郡山さんがイラクの現状を素直な目で日本や世界の人たちに伝えたい、そういうイラクに対する熱い思いをお持ちであるということは非常にとうといことであると思う、そして、しかし問題は、その熱い思いをいつ、どういう形で表現をするか、どう行動に移すか、これが問題なんだという趣旨のことを申し上げたわけであります。今でもそのように承知をいたしております。

 その熱い思いはとうといものである。しかし、退避勧告がたび重ねて出されているあのイラクに入国をされたということは、やはり間違った行動である、遺憾である、そのことを率直に私は申し上げたいというふうに思います。

生方委員 海外にいる邦人を日本政府が救出するというのは、これは本来の仕事ですね。本来の仕事だから、迷惑ということじゃないでしょう。本来の仕事なんですから。通常業務を迷惑だというふうに言って、それを言うのはおかしいんですよ。

 それと、これは日本の国の新聞が言うんじゃなくて、ル・モンドとか、これは午前中の質問でもあったようでございますからあえて繰り返しませんけれども、やはり危険な地域であっても日本の若者がそこへ行って人道支援をするようになったということは誇るべきであるというふうに、ル・モンドも言っているし、パウエル国務長官だって言っているわけですよ。もちろん、日本の、きょうの午前中、多分大出さんがおっしゃったと思いますが、高橋源一郎さんもそのような形で言っているわけですよ。

 それを、帰ってきたらもう批判一色というのは、幾ら何でもこれはやり過ぎだと私は思いますよ。これはこの人たちが言ったわけじゃないんでしょうけれども、マスコミも含めてやり過ぎたという状況について、私は、それは、本来は日本の若者をきちんとたたえるべきであるというふうに思っております。そのことだけを申し上げておきます。

 それから、川口大臣、もう一問ぐらいいいですか。

自見委員長 副大臣でよかったら。

生方委員 いや、川口大臣に、その問題じゃなくて聞きたいんですけれども。パレスチナ情勢について……(発言する者あり)では、パレスチナ政策について一点だけお伺いをしておきたいというふうに思います。

 これは、イラク情勢の陰に隠れてパレスチナの情勢の方も非常に悪化をしておる。これはヤシン師が、あれは爆殺というふうに言ったらいいんでしょうか、ミサイルによって殺されたということとか、今度はランティシ氏もミサイルによって爆殺をされるというような事態が起こっております。

 やはり本来であれば、当然これは国連で非難決議等がなされて、イスラエルに対して何かしらの制裁が行われて当然だというふうに思うんですけれども、残念ながら、米国が暗黙のうちに支持をしているというかげんからか、大きな非難、国連の場における非難というのがまだ行われていないわけですね。

 これは川口外務大臣ももちろん非難はしておるんですけれども、こういうことが繰り返されれば、パレスチナの情勢がまたイラクと連動するような形になって、中東全体に混乱が出てきてしまうおそれがあるというふうに私は思うんですけれども、この点についても、やはり日本はもっと具体的に国連に対して働きかけて、イスラエルにこのようなことをやめさせるようにきちんと言うべきだと思うんですが、いかがでございましょうか。

逢沢副大臣 パレスチナ情勢について御質問がございました。

 三月にパレスチナ過激派ハマスの精神的指導者ヤシン師がイスラエル軍によって暗殺をされる、そして四月に同じくガザ地区の指導者ランティシ氏も殺害をされるという大変痛ましい事件が起こりました。

 この両事件に対し、政府としては、これは問題であるということで、明らかに非難されるべきことだという声明を発表いたしました。小泉総理も明示的にそのことを発言なさっておられるわけでありまして、我が国政府としてイスラエルに対して最大限の自制を厳に求めてまいりました。今でもその立場でございます。イスラエル、パレスチナ間で暴力が継続をしているという現実、また例のロードマップというのがやはり唯一の和平への道であるということを考えたときに、今の現状を大変憂慮すると言わざるを得ない、そのように思います。

 引き続き、イスラエルに対しては最大限の自制を求める、また同時に、パレスチナ側については過激派の取り締まりにやはり最大限の力を尽くしてもらわなくてはならない、そのことを私どもとしては主張をいたしているわけでありまして、一刻も早く対話のイニシアチブが再開をされる、このロードマップに立ち戻ることができる、そういう環境条件をぜひつくり上げていかなくてはなりませんし、たまたま私も中東に、ヨルダンに参っておりまして、関係国とそういったことについても対話を交わしてきたわけであります。

 また、あえて申し上げれば、パレスチナの難民問題等々に日本は今までも積極的に関与をし、財政的な支援もしてまいりましたが、引き続き日本は日本の立場でそのことを行ってまいるということについても申し上げさせていただいたところであります。

生方委員 私も、パレスチナに二年ぐらい前に参りましたけれども、今度の、ウエストバンクにイスラエルの入植者がまだいて、そこを撤退させないで壁で覆うということに対してアメリカが支持をしているというようなことがあるので、これはやはりやめさせなければいけないし、パレスチナ問題を解決するには、やはりパレスチナの方たちがあそこで経済的に自立をする必要があるんですね。結局、イスラエルに出てこないと仕事がないということで、イスラエルに入ってこれないから失業率が四〇%にも五〇%にもなってしまうということがあるので、経済的自立のために日本はもう少し努力をするべきだということを申し上げておきます。

 それで、今度は国民保護法制について……(発言する者あり)いやいや、それはいろんな機会があって、いろいろやはり聞かなければいけないので、それは久間先生もよく御存じでしょうけれども。

 それで、井上大臣にお伺いしたいと思いますが、有事の際に最も保護――外務大臣、もしあれならばお引き取りいただいて結構です。とりあえず十五分ぐらいでも休んでいただければ。私はもう質問しませんから。

 有事の際に最も保護されなければいけないのは、社会的弱者であると。しかし、今度の法律には社会的弱者を保護するための具体的な方法というのが書いていない。留意事項として、高齢者、障害者その他、保護に留意しなければならないというふうに言っているだけなんですね。

 これは実は、〇二年十月に基本法が発表されたときには、社会的弱者の保護、外国人の不当差別の禁止、国際人道法の的確な実施等という項目が入っていたはずなんですけれども、何でこれが今回外れてしまったんでしょうか。

井上国務大臣 この社会的弱者につきましては、若干これは詳しく法律で規定をしております。高齢者でありますとか障害者とか、幼児でありますとか、規定がございます。

 それから、外国人につきましては、もう当然、規定するまでもなく、こういう人たちの基本的人権といいますか、そういうものは守るんだという前提で書いておりますので、特別に外国人のことについては記述をしておりません。

 それからあと、国際人道法につきましては、これは国際人道法を実施するための処罰の法律なんかを別途提案いたしておりますので、そういう中で御審議をいただきたいと。

 こういう趣旨でやっておるわけでありまして、おおむね、武力攻撃事態ですか、対処法なり、あるいはそれを受けた要旨とか何かに記述をしておりますことは生きているものと考えております。

 なお、この記述自身は非情に簡単でありますけれども、具体的には基本指針の方でもう少し詳しくそれは書きたい、こんなふうに考えています。

生方委員 これは関東大震災の例を持ち出すまでもなく、かつて外国人の方がそういう災害に遭ったときに不当に巻き込まれて亡くなっちゃったということもあるわけで、私はあえて外す必要はないと思うので、きちんと外国人の不当差別の禁止という項目は入れてしかるべきだと思うんですけれども、修正するのは難しいのかもしれませんが、入れるというお気持ちはないんでしょうか。

井上国務大臣 これは、武力攻撃事態対処法を引き継いでおりますので、その系列の中で書いておりますので「国民」ということを使っておりますけれども、今申し上げましたように、基本指針、これは非常に詳しく書かないといけないものと考えておりまして、これを参考にして都道府県なり市町村が計画をつくってくるわけですから、そういう中できっちりと書き込んでいきたい、こんなふうに考えておりまして、余り御心配の点はないようにしたい、こんなふうに考えております。

生方委員 もともと〇二年十月の基本法にあったのをわざわざ削る必要はないと私は思うんですね。もともとないものを入れろと言っているんじゃなくて、あったんですから、そのまま残しておいてしかるべきで、抜けば何で抜いたんだろうというふうに思いますよね。これは私は、別に抜く必要がない、外国人の保護は当然するべきだというふうに思っているのであれば、不当差別の禁止という言葉はぜひ残しておいていただきますようにお願いを申し上げます。

 それから、次の質問なんですけれども、国の基本指針がつくられた後に、各都道府県や市町村が国民保護協議会というのをつくるということになっておりますけれども、この協議会のメンバーというのはどんな方がメンバーになるんですか。それはまた、だれが指示をするんでしょうか。

井上国務大臣 これは、基本指針の中にも、この国民保護協議会、都道府県なり市町村レベルのものにつきまして記述はいたしたいと考えておりますけれども、具体的に設置をしていく、これは設置をするのはやはり条例で設置をするんだと思います。それからまた、どういうメンバーにするかという委員の任命、これはそれぞれの自治体の長がやるということでございます。

 ちなみに、この協議会といいますのは附属機関になるわけですね、附属機関です。各自治体の附属機関に相なるわけでありまして、まさに国民保護に関係する各界の代表者のような人を委員にしてやっていきたい、こんなふうに考えております。

 具体的には、指定地方行政機関、これは国の出先でありますが、自衛隊とか、都道府県とか市町村とか、あるいは指定公共機関または指定地方公共機関の代表者とか職員、あるいは国民の保護のための措置をとるにつきましての知識とか経験を持っている人ということでありまして、こういう人の中から適当な数の委員を任命するということにいたしております。

 この場合、知識経験を有する者としては、いわゆる学識経験者もありますけれども、自主防災組織でありますとか、あるいはボランティアの代表なんかも入るのではないかと思いますけれども、その選択は各自治体の長でございます。これは、規模は何人になるかよくわかりませんが、恐らく数十人規模になるんじゃないか、こんなふうに思います。

生方委員 これは、国がどういう人をしろということじゃなくて、都道府県の知事と、それから各市町村の長が自分の判断で決めるということですね。国が示すのは、例えば、自衛隊を必ず入れなければいけないとか、警察を必ず入れなければいけないとか、教育長を必ず指名しなければいけないというんじゃなくて、あくまでも国はアバウトなこういう指針だけを示して、指名は知事さんやら市長さんやらが決めるということで理解してよろしいんですね。

井上国務大臣 まさにそうでありまして、委員の任命する範囲の人としてはしかじかのこの人ということを想定いたしますけれども、具体的な任命は、これはまさに各地方公共団体の長がするということであります。

生方委員 これは、広く住民の意見を求めるというのが入っておりますので、住民の代表の方も入るというふうに理解してよろしいんですか。

井上国務大臣 これは、住民の代表はもちろん入りますけれども、住民の代表、議会なんかも恐らく住民の代表になろうと思いますし、また、自治会なんかの方も入るかもわかりません。もちろん、住民の代表ということでありまして、各自治体の長が国民保護の制度を、保護の計画ですね、一番大事なのはその計画だと思うんですけれども、策定するに際して意見を言ってもらうのに一番適当な人といいますか、そういった人を選ぶということでありまして、そういう方で住民の代表である方もたくさんおられるんじゃないかと思います。

生方委員 次の質問なんですけれども、指定公共機関というのが指定をされて、例えば避難をするときなんかに、JRとかバスとかいうのを利用するというようなことが今度盛り込まれておりますね。

 警察との役割分担というのがどういうような、警察はそういうのは多分なれているでしょうから、ぱっぱっぱっとできると思うんですけれども、警察とどういうような役割分担で住民の避難をさせるのか。それは、何か今度の法案の中では決められておるんでしょうか。

井上国務大臣 それはまさに運用の問題でありまして、したがいまして、各国民保護協議会の中にそういった関係者が集まられると思うんですね、警察あるいは消防だとかJRだとかあるいはバスの会社とか。そういう中でやはり十分に検討をしていただく。これは、やはり細かく、自治体、都道府県なり市町村の中でよく検討していただいて、そういった調整あるいは協力にそごのないようにしていただくということだと思います。計画の中で、あるいは実際の訓練の中でそういったことをしていく必要があるんじゃないかと思います。

生方委員 指定公共機関になるところは、何かやりたくないこともやらされるんじゃないかとか、戦闘状態になっているときにその真ん中に入っていって、それから避難をする方たちを、戦闘状態になる前でしょうけれども、前に行くには危険が伴うわけで、第一義的には、警察の方たちはそういうことにもちろんなれているわけですし、訓練を受けているわけですから、やって、その補完的な措置として指定公共機関というのがあるんだというふうに私は理解をするんですけれども、そういう理解でよろしいんですか。それとも、最初に指定公共機関があって、むしろその補完として警察があるというような位置づけなのか。どちらだというふうに理解すればいいんですか。

井上国務大臣 警察は、これは秩序の維持だとかあるいは整理というようなことが任務でありまして、運送業務自身は、これはやはり運送を担当する人がやられるということであります。運送を安全にやっていく上で、安全にそれが実行できるような協力を警察もするだろうし、あるいは場合によっては消防もするということでございます。

 ただ、指定公共機関は、業務計画をつくります場合に、これは業務計画で決めるんですね、決めます場合に、安全への配慮ということは当然すると思うし、安全に配慮しないといけないという法律の規定になっておりますから、その上で運送業務をするということになると思います。何でもかんでも犠牲を覚悟してやれというようなことにはならないと思います。

生方委員 業務計画をつくる場合は、やはり組合の方たちの意見なんかもきちんと聞いて実施できるようにした方がいいと思うんですが、そういうことは考えておられますでしょうか。政府がそういう指示をするかどうかということですね。

井上国務大臣 指定公共機関が業務計画をつくります場合、それぞれの社内で十分な検討をすると思うんですね。だから、その検討の過程で、恐らく労働組合なんかとの話もあるんじゃないか、こんなふうに私は思います。

 地方公共団体が直に組合とというようなことはないと思うのでありますけれども、指定公共機関内部でその点については十分な検討が行われる、事安全に関する問題でありますから、そういうものと理解をいたしております。

生方委員 指定公共機関の業者は正当な理由なく協力を拒否できないというふうになっておりますね。この「正当な理由」というのがなかなか、読んでもよくわからないんですけれども、どういう理由、幾つか項目、うちの質問主意書に対して、こういう項目、四項目ぐらいですか、答えておられているのは見ているんですけれども、例えば思想、信条上の理由で私はこれには参加することができないといったような場合のは、これは正当な理由というふうになるんでしょうか。

井上国務大臣 要請なりあるいは求めの場合に、正当な理由がある場合には拒否できる、こういうことになっておりますけれども、委員が言われておりますようなそういう思想とか信条等は理由になりませんで、やはり客観的に難しい事情があるという場合に限られると考えております。

 具体的に申し上げますと、例えば、運送の場合につきましては、車両の故障がありまして運送を行うことができないような場合でありますとか、あるいは、医療の場合につきましては、お医者さん自身が負傷しておりまして医療に従事することができないような場合だとか、あるいは……(生方委員「それは知っておりますので、見ましたので」と呼ぶ)そういうようなことでございます。

 したがいまして、思想、信条等は、直に正当な理由に該当するとして拒否するというようなことはないものと考えます。

生方委員 憲法にも、やりたくないことはやらなくていいというふうに、やりたくないことを無理やりやらされないということにはなっておりますので、その辺のことは十分配慮していただきたいと思います。

 以上で終わります。どうもありがとうございました。

自見委員長 次に、中川正春君。

中川(正)委員 民主党の中川正春です。

 質問に入る前に、委員長に一つ、こんなことでどうでしょうかという提案を申し上げたいんですが、さっきから外務大臣、体の調子が悪いんだというメモをいただいていまして、もし後の皆さんの御了解をいただければ、これでお引き取りをいただく方がいいんじゃないかというふうに思うんですが、どうでしょうか。

自見委員長 わかりました。中川委員の御発議でございまして、きょう、午前中の各党出席の理事会でも、もしということで、これは人道的な配慮でございますが、前原理事も御了解いただきましたので、そういったことでさせていただきたいと思います。ありがとうございます。

中川(正)委員 その上で、一つ苦言を呈したいんですが、こういう中途半端な仕切りをしないようにしてください。もしだめであるのであれば、最初からそのような前提で、理事会でちゃんと了解をとって、大臣なしでやるかあるいはこの委員会をやめるか、そういうことは理事会でしっかり議論していただいた上で結論を出していただくべきだと思います。最初からこれはわかっていた話ですから、それをこんなふうに中途半端に采配をされるということは、今後慎んでいただきたいというふうに思います。

自見委員長 中川委員に申し上げますが、きょう、与党の筆頭理事から、場合によってはそういうことがあるかもしれない、しかし、しっかり、局長初め大丈夫ということだったのでございますが、私もちょっとこういう状態を見まして、本当に皆さん方に御理解いただいて、中川委員の御発言でございますから、そういうような取り扱いにさせていただきたいと思っております。

 やはり、人間の体というのは、かなり状態が動きますので。どうも済みません。

中川(正)委員 そういうことだけ申し上げておきたいというふうに思います。

自見委員長 はい、わかりました。

中川(正)委員 まず最初に、今の、これまでの質問の中にも繰り返し出ていましたが、現在のイラク情勢と人質問題というのは一つの危機管理であったんだと思うので、その辺を少し、改めて総括をしていきたいというふうに思っています。

 最初に、スペイン軍、これはスペインだけじゃなくて、ポーランド、ノルウェー、あるいはホンジュラス、ドミニカ含めて、こうした形でぽろぽろと撤退をしていくというふうな形になってきております。それぞれ、総理大臣あるいは防衛庁長官のコメントでは、スペインはスペインとしての考え方がある、日本は日本だ、こういうことしか言っていないんですが、もう一つ、スペインなりあるいはその周辺の国々が撤退をしていった要因、それを決めていった要因、これは客観的に見てどういうことがネックになってそういう決断に至ったかということですね。

 これは一遍、日本の政府サイドとして見解を聞かせていただきたいというふうに思います。

逢沢副大臣 最初に、大臣のことについて特別な御配慮と御判断をいただきました。お礼を申し上げておきたいと思います。

 スペインでは、総選挙があり、政権交代となりました。そして、新政権がイラクに展開をしている軍の撤退を決定され、既にその動きに入っているという事実関係については、承知をいたしているところでございます。

 しかし、新しい政権がどのような具体的な事由、またイラク情勢の分析によってそういった意思決定をなさったのか。そもそもは総選挙のときの公約にそういったことを載せておられたということは承知をいたしておりますけれども、他国のいわば政党の意思決定のことであり、その詳細については十二分に承知をしていないところでございます。

 しかし、イラクをめぐる情勢、さまざまな情報を収集しなくてはならない、その立場であることは違いがございません。引き続き努力をしてまいりたい、そのように存じます。

中川(正)委員 そんな返事はないでしょう。

 防衛庁長官、どう考えておりますか。

石破国務大臣 今の外務副大臣からお話があったとおりかと思いますが、それぞれの国が、これは私どもも、どこが出したから出すとかやめるとか、これは主体的な判断でなきゃだめだという御指摘、もちろんお立場は違いますが、野党の方からも言われておることでございます。それぞれの国が主体的に判断をすることでございまして、どの国がどうしたからということではございません。

 ただ、私どもが、それぞれの国のそれぞれの場所に行って同じような状況で同じようなことを、つまり我々の自衛隊が、例えばスペインと同じような状況で同じようなことが判断できるわけはございません。あるいはそれは、ドミニカにおきましてもホンジュラスにおいてもそうでございます。

 ですから、そこで、それぞれの国が言っておりますのは、例えて言えば、ニュージーランドが言っておりますことは、我々の任務が、つまりニュージーランドです、我々の任務が継続できないような状況が続くのであればそれは考えざるを得ないというようなことを例えばニュージーランドの国防大臣は言っておるわけでございます。

 それぞれの国が、例えば、私どもがどういうときに撤退をするのかと問われまして、それは法に定められた要件、あるいは法によって果たそうとしたこと、それができないような状況が生じたとするならば、それは法に従って撤退ということはあり得るということを私は申してまいりました。逆に言えば、そうでない限りはそれはあり得ないということ。それは、それぞれの国が法治国家であり、そして民主主義にのっとってやっているということだと思います。

中川(正)委員 私は、そんな中途半端な、抽象的な話をしているんじゃないんです。スペインや、その他ポーランドも含めて周辺国が撤退をするということは、日本の情勢がどうなのかということを国民は当然心配するということですね。それに対して日本政府としては、スペインの状況、こういう状況の中で撤退したということを我々認識しているから、だから、例えば、自衛隊は状況が違うのでそのまま置いておきますよ、そういう説明がしかるべく出てこなきゃいけないわけでしょう。

 それが、状況がわかりません、あるいは知る立場にありません、そんな無責任な話はないと思うんですよ。外務省の方、もう一回話してください。

石破国務大臣 委員長の御指名をいただきました。お許しをいただきたいと思います。

 日本は日本の法律に基づいて、日本の法律に適合しているかどうか、ニーズがあり、そしてまた安全が確認され、当然のことでございますが、非戦闘地域かどうか、そのことを、日本は日本の知見に基づいて判断をしているものでございます。日本の法律に基づいて日本の自衛隊が派遣されている、そこに書かれてある状況、そしてまた要件、それを満たしておるということを申し上げておるだけのことでございます。

中川(正)委員 では、具体的にいきましょう。

 一つは、列車に対するテロがあったと思うんですね、国内の。これはスペインの国民を大きく動揺させましたし、もう一方でいえば、それだけのリスクを負いながら、それこそ大義のないイラクへの軍事派遣というもののリスクを負わないという決断をスペインの国民が一つはしたということだと思うんですね。ところが、スペインではそれが起こってしまいましたけれども、日本も、そうした意味でのリスクというのは、これは負っているわけです。これに対してさまざまに準備はしていますよという形で政府は答えていますけれども、国民にとっては、リスクとしては同じなんですよ。

 スペインの場合、起こってしまったから、それは撤退ということに一つは結びついた。しかし、日本の場合、起こっていないから、だから大丈夫なんだという理屈なんですか。それとも、このリスクに対してはどのような大義をもって自衛隊を派遣し続けているということを今考えているんですか。そこのところを答えてください。

石破国務大臣 先ほどもお答えをいたしましたが、イラク特措法に基づいて派遣をしておるわけでございます。それは、先生のような理屈もあるのかもしれません。しかし、それは政府全体としての判断でございます。それは法律に基づいて派遣をしているということと、そしてまた、では、あのようなテロが起こったら大変だから、それでは下げろというのが先生の理屈だとするならば、私どもは、そうすると、おどかせば何でもできるのかと。そうしますと、本当にテロリストが思いのままにあちらこちらで、ここで人を殺し、ここで人を誘拐し、ここで何かに危害を加え、そうすると、彼らの思いがすべて実現をする。そういうような世の中になることを、私は好ましいことだと決して思っておりません。

 国民をテロの危険から守るために、今、政府を挙げて、警察もそうでございましょう。入管当局もそうでしょう。海上保安庁もそうでしょう。私ども自衛隊もそうです。どうやって国民をそのような危難から守るかということもあわせてやって、政府としての責任を果たしておるつもりでございます。

中川(正)委員 それは大義があっての話なんですよ。それだけのリスクを負って行くという、その価値のある大義があって初めて我々はリスクを負って行くんですよ。今、その大義が崩れているということ、このことを強く政府は意識しなきゃいけないというふうに思います。これが一つ。

 それから、もう一つは、客観情勢から見て、どうもスペインが紛争に巻き込まれるということ、これがせっぱ詰まっているということがあると思うんですね。

 ファルージャでの戦闘というのがよく言われますが、もう一つ、ナジャフ、これはスペインが駐在をしているところですが、サドル逮捕あるいはシーア派の急進派に向けて、今、アメリカ軍がナジャフの町を包囲しながら中に入っていって、サドル師を逮捕しようとしている。その逮捕の大義名分というのは、これは殺人罪ですね。この殺人罪とサドル師逮捕ということについて、これをやれば確実に、南部のシーア派全体がそれこそ、これまでシスターニ師のような穏健派も含めて大混乱になるであろう、そういう推測が成り立つんだというふうに思うんです。

 そういう意味からいけば、さまざまな人々が今のアメリカの強引なサドル逮捕ということに対しては異論を今唱えています。一つは、イギリスの大佐だったと思うんですが、これをやれば確実にイギリスも撤退しなければならないような客観情勢が生まれてくるということを警告しています。

 そういう流れの中で、恐らく私は、スペインも、六カ月と言っていましたけれども、もっとその撤退の時期を早めて、ここ一カ月か二カ月の間に、この地域については私たちはコミットしないんだという意思表示をしていこう、そんなことであったんだろうと思うんです。

 そのことについて、日本政府はアメリカに具体的にどのような意思表示をしているかということと、それから、このスペインの撤退というものに対して、そうした意味も含めて、それこそアメリカの強引な今の政策に対してコミットしていかない、私たちはこれは間違っていると思うというこの意思表示に対してどういう評価をするのか、それに改めて答えていただきたいと思います。

逢沢副大臣 イラクにおける治安の確保ということは、先ほどから議論をさせていただいております、いわゆる政治プロセスを強力に推し進めていく、その重要な要件であるというふうに承知をいたしております。

 今現在、最も注目すべきは、委員御指摘のように、ファルージャそしてナジャフ、この二つの地域であるというふうに私どもも認識をいたしておりますが、ファルージャにつきましては、累次、いわゆる停戦のための話し合いが行われてまいりました。それがより本格的なものになり、停戦というものが確保される、そのことを強く期待いたしているところであります。

 また、委員御指摘のように、シーア派が多くを占める南部におきましては、ナジャフの動向について注目が集まっているところでありますけれども、これについても、双方の努力により停戦が実現できるということに強い期待を寄せております。

 いずれにいたしましても、政治プロセスを進めていく、これに成果を上げていくためにはやはり一定の治安を確保しなくてはならない、そういう認識から、CPAから権限を与えられた多国籍軍がその任を果たすという意味で努力をしているものというふうに理解いたしておりますが、停戦に向けての環境をしっかりつくっていく、そのことのために日本としても努力をしていくということは当然必要なことでございます。

中川(正)委員 私はもっと具体的に聞いたんです。サドル師の逮捕あるいはナジャフの町の中への進攻については、日本政府はアメリカ、いわゆるCPAに対してどういう意思表示をしているんですか、それとも、意思表示は全くしていないんですか、勝手にやってくれと言っているんですか。どっちなんですか。

逢沢副大臣 先ほど申し上げましたように、ファルージャ同様、ナジャフの動向について、私どもは大変注視をいたしているところであります。

 スンニ派またシーア派双方がそれぞれ反米的な感情をより募らす、あるいは、一部報道によれば、スンニとシーアがそのことに関してはひとつ一致協力をしてということも懸念される、そんな報道がある中、私どもは、この両地域が話し合いによって停戦が実現される、また、停戦のための具体的なプロセスが前に進むということについて、大変期待をいたしているところであります。

 日米間では、さまざまなやりとりが通常行われているわけであります。先般、チェイニー副大統領が日本に来られまして、小泉総理との間で会談がなされたわけでございますが、このイラクの平静を保っていく、イラクの治安を維持しながら、武力闘争あるいは武力と武力がぶつかり合う、こういう状況を回避していく、そのことのために、チェイニー副大統領との間で真摯な議論が行われたわけでありますが、そういった努力等を含めて今後ともイラクの治安の維持に日本の立場でなすべき努力を続けてまいりたい、そのように承知をいたしております。

中川(正)委員 私がこれを何回も聞くのは、ここは非常に大事なポイントだと思うんですよ。ナジャフの扱い方一つに、日本の自衛隊が今いる南部地域全体がかかわってきているわけですよ。これは恐らく、ナジャフで武力行使が始まったら、自衛隊がそこにそのままいられるだろうという状況ではなくなってくる、そういう前提も含めた問いかけを今しているんですよ。

 それに対して、副大臣、どう答えられているかといったら、様子を見ているだけだと。さっきの返事はそうでしょう。様子を見ているだけだということですよ。

 だから、ここは、一番大事なのは、アメリカに対してここでこそ物を言っていくということだと思うんですよ。何かにつけてそうなんですが、それがないままに、様子を見ている、それで終わっている今の日本政府の姿勢というのは一体何なんだということだと思うんですよ。

 もう一回聞きます。サドル師を逮捕するためにナジャフの町に軍事的に進攻していくという意思が今アメリカにある。それに対して、日本政府はどう言っていくんですか。このことについて、アメリカ政府に対してどのように物を言っていくんですか。その姿勢を聞かせてください。

逢沢副大臣 ナジャフはムサンナ県、また自衛隊が展開をするサマワにほど近い場所であるということは、当然、私どもも承知をいたしております。

 もちろん、イラクにおいて政治プロセスを進めていく上では、ナジャフあるいはファルージャ、それにとどまらず、あらゆる地域の治安が回復される、また維持される、そのことは非常に大切なことでございます。日米間あるいは日英間、さまざまな外交チャンネルで、常に、安全や平和についての対話が交わされているわけであります。

 多国籍軍の中心を担うのは明らかにアメリカでございます。アメリカがどのように考えるか、これはイラクの治安を具体的に考えるときにまことに重要なことでございます。双方の積極的な話し合いによって停戦が実現される、そのことのために日本は日本の立場で適切な発言をし、また、アメリカにも発言をしているということについて申し上げておきたいと存じます。(発言する者あり)

中川(正)委員 答えさせてください。私の質問に答えてないです。

自見委員長 もう一度してください。

中川(正)委員 もう一回言います。

 ナジャフで、今、アメリカ軍が包囲している、サドル師を捕まえようという状況になっている、それに対して、日本は、ナジャフに対する軍事進攻はだめだ、そのことをアメリカあるいはCPAにはっきりと表明すべきだと思うんですが、どうですか。

逢沢副大臣 ファルージャと同様な状況がナジャフで起こるということは、これはあってはならないことであろうかと思います。しかし一方、大変緊張感がその地域に高まっているという実態については承知をいたしております。

 やはりそこは、双方の話し合い、ファルージャの一時停戦、これは累次継続をされて、繰り返しされてまいりました。その経験に基づきながらいろいろな話し合いがナジャフにおいてなされるということは、これは大変重要なことでございます。日本は日本の立場で、話し合いが鋭意積極的に前進する、そのことをもちろんサポートする立場でございますし、また、日米間の対話にあってそのことについては申し上げているということを答弁させていただいております。

中川(正)委員 答弁は、意思表示をしていないということだと思います。どうして意思表示ができないのか、それを答えてください。どうしてだめだと言えないのか、答えてください。

逢沢副大臣 今ほど申し上げましたように、ナジャフにおいて大変な緊張が高まっているという事実については承知をいたしております。

 決してファルージャのような悲惨な事態が招かれるということがあってはならないという立場に私どもあるわけでありまして、これは、双方の話し合いによって、停戦あるいは場合によっては一時的な停戦、時間を区切った停戦、さまざまな形、オプションもあろうかと思うわけでありますが、それを実現することに向かって双方が努力する、そのことを日本として後押しする、そういう立場にあることを重ねて申し上げておきたいと思います。

中川(正)委員 もし仮に、そのことをそのままCPAに伝える、あるいはナジャフの司令官へ向けて伝えたら、何を言っているのかわからないと言いますよ、日本は何を考えているんだと。恥ずかしい話ですよ。

 だから、そういう国家の意思を決めなきゃいけないときに中途半端に流していくということ自体が、これは、我々に、大義というかな、さっき申し上げた、リスクを負ってでも自衛隊をイラクにとどめさせるという意味での大義が崩れるという一番もとなんですよ。それが一番もとなんですよ。そのことを指摘しておきたいと思います。

 何回も何回もこれは聞きますから、ちゃんと意思を固めておいてください。大臣がきょうは出席でないので、恐らく大臣が出ていても同じような話なんだろうと思うんですが、そのことを指摘しておきます。こればかりやっていると、もうこれで一時間たってしまいますので、次に進んでいきます。

 イラクの人質の問題ですが、さっき申し上げたように、これは一つの危機管理だったんだろうというふうに思うんですね。

 そこで、一番気になったのは、情報をいかに整理していくことができたか、あるいは、その情報に基づいて政府がどのような対応措置がしっかりとれたのか、そして、この再発を防ぐために、どういうグループがどういう背景の中で今動いていて、このことがどんな形で起こったかという総括といいますか、どう政府が今回の事件の認識をし、その対応をし、将来に向けてのこれに対する教訓を得たかということ、これが大事なところだと思うんですが、その点について全く説明がないですね。全く説明がない。どうしてなんですか。

逢沢副大臣 日本時間の四月八日木曜日の夕刻十八時二十分ごろ、イラクにおいて三人の邦人が誘拐された、人質になった、そういった報道が最初にもたらされたわけであります。直後に緊急対策本部をつくり、事実関係の確認また救出、それに全力で取り組んでまいりました。結果的には約一週間の時間を要したわけでありますが、十五日木曜日に、無事保護、解放された。この経緯については委員も御承知のとおりであります。

 私ども、今回のオペレーションに当たりまして、目的は何か。それは、とにかく、人質になっている、拘束をされている三人の日本人の方々を無事保護する、そして、安全、確実、迅速に日本に帰国をいただく、その目的一点に絞って活動をさせていただいたわけであります。

 私自身は、現地の緊急対策本部の責任者として現地に参りました。アンマンで活動をいたしたわけでありますが、政府挙げて、この目的達成のために努力をいたしました。関係国、関係機関、もちろんこれはイラクの宗教関係者また部族の関係者の方々、イラクの政府あるいは周辺国の方々にも大変な支援と協力をいただきました。チェイニー副大統領・小泉会談もあったわけでありまして、アメリカの協力ももちろんいただいたわけでありまして、大勢の方々の協力、支援をいただいて目的を実現することができたわけであります。

 では、政府がどういう情報を得ていたのか、また、その情報をどのように分析して、どういった具体的な働きかけをだれに、あるいはどんな機関にしていたのか、どうも情報が十分開示をされていないではないか、そういう御指摘は確かにいただいているわけであります。

 私ども、この三人の解放を実現することができたわけでありますが、これに対して複数の方々の協力をもちろんいただいているわけでありますが、こういった協力をいただいた複数の方々の安全、今の、また将来にわたっての安全を確保するということは非常に大事なことと考えております。

 また、将来、同様な事件が起こらないとも限らない、そのこともやはり念頭に置いておかざるを得ない、あるいは、複数の国の複数の方々がいまだに人質という立場に置かれている、そういう問題解決にいささかもマイナスがあってはならない、そういうことについても配慮する必要があろうかと思うわけでありまして、そういった意味で、この事件の解決、解明に対して具体的に政府がどういう行動をしたか、だれが、いつ、どんな行動をとってくれたか、あるいはどういう情報をもたらしてくれたかということについては、必ずしも情報開示ができない性格のものであるということについてぜひ御理解をいただきたい、そのように存じます。

中川(正)委員 もっと具体的に聞いていきたいと思うんです。

 たまたまといいますか、民間人あるいはNGOあるいはジャーナリストの皆さんが、三人そして二人という形で誘拐された、拉致されたということなんですが、周辺の状況を見ていると、日本だけじゃなくて、各国それぞれの形で連鎖的に起きていますね。連鎖的に起きていて、それがそれなりの組織背景を持って、恐らくだれかがそうしたことを一斉にやろうというような系統的な流れの中でこのことが行われたんだろうというふうにまず推測するんですが、そういう見方の中で、だれが、どういう背景の中でそれが行われたと外務省は分析しているんですか。

逢沢副大臣 まず、当初三名の日本人が人質に遭ったわけでありますが、寄せられました犯行声明によれば、その犯行グループは、サラヤ・ムジャヒディンと名乗るグループということでございました。

 そのことも含め、犯人はだれなのか、犯人像はどうなのか、あるいは全体の真相はどうなのか、そして、今先生が御指摘のように、幾つか起こった同様な事件との関連ということでどうなのか、そういったことについて、私ども外務省また日本の警察当局も、この事件の全貌について、あるいはまた同様な事件と仮に関連があるとすればどういうことなのか、あるのかないのかも含めて、今、その真相あるいは全貌について解明のための努力をさせていただいているところであります。

中川(正)委員 これは、あの三人やあの二人でなくてもよかったんですね。恐らく、例えば日本人の外交官が直接拉致されるという可能性もあった、あるいは自衛官そのものが拉致されるという可能性もある、そういうことですね。

 私の言いたいのは、そういう意味での組織的あるいは意図的なシンジケートの中で犯行が行われましたねと。これについては、そのように認識をされているんですか。

逢沢副大臣 事件の全貌については、先ほど申し上げましたように、真相究明に全力を尽くしているところであります。三名の方々の人質事件、そして後の安田さん、渡邉さんの事案、それぞれやはり真相究明しなくてはならないわけでございます。

 バグダッドの西方地域で自動車で移動中に拉致された、誘拐された、あるいはまた、安田さん、渡邉さんのケースはいわゆる取材活動に出かけていったところを拉致、誘拐された、そういったことが少しずつ明らかになりつつあるわけでございますが、その二つの事案に関係があるのか、あるいはまた組織的なものがあるのかないのかについては、今現在、明示的に申し上げる状況ではないというふうに申し上げざるを得ないわけでございます。

 一連の報道等によれば、あの地域を通りかかる外国人をそれぞれ誘拐、拘束する、無差別にそういうことが行われていたのではないかという報道等には接しておりますが、その真偽を含めて、あの地域の状況がどういうことであったのか、慎重に、しかも真剣にこの地域で起こった状況については真相を突きとめていかなくてはならない、そのように承知をいたしております。

中川(正)委員 もう一つ確かめておきたいのは、今回の事件の特徴というのはテレビなんですね。アルジャジーラの映像を通じてそれぞれ意思表示があった。それが日本の国内世論あるいはそれぞれの関係筋を動かしながら、また、こちらもテレビを使ってそれなりのアピールをした。間接的な動きが連続して私たちには見えていたということなんですね。

 もう一つ、その状況の中で確かめておきたいのは、政府はこの犯人グループと直接的に交渉がなかった、あるいはどのグループが実際動いているのかということもつかむことができなかった、CPAやあるいは宗教評議会ですか協議会を通じてさまざまに間接的な対応はしたけれども直接的には何ら接点がなかったということ、そのように我々は客観的に見ていて理解をしているんですが、そういうことであったんですか。

逢沢副大臣 直接、間接にどのような解放のための努力がなされたのか、これはもう繰り返しませんけれども、先ほど申し上げさせていただいた理由で、個別具体的にこの場で申し上げることは、恐縮でございますが、差し控えさせていただきたいと思います。

 確かに、冒頭、中川先生おっしゃられましたように、事件の第一報が寄せられたのは、中東のテレビ局アルジャジーラ関係者から外務省にその連絡があった。あるいはまた、三人の人たちあるいは二人の人たちが解放されるその場に、外務省の省員がそれぞれのモスクに出向いたわけでございますけれども、その場にも確かにメディアの存在があった。個人的には、いささか奇異な感じもしないでもないという思いを持っているわけでございますが、確かに、イメージ的に申し上げれば、委員御指摘のように、そういった節目節目にメディアの存在といいますか、そういうものがあったということは事実であろうと思います。

 しかし、そのことと、解放のために我が国政府が政府挙げて直接あるいはまた間接にやってきたことは、報道のあり方とは特に関連性はないという理解に立っていることを理解いただきたいと思います。

中川(正)委員 今、私たちは有事法制を議論しているわけですが、恐らく、こういうパターンの国内テロ、これは海外ですが、国内テロあるいは周辺地域からのさまざまな事件というのは、これから先、可能性としてはあると思うんですね。こういうパターンというのは、こうしたメディアを通じて、あるいはテレビというもので、国民大衆を動かしながらさまざまないわゆる事態をつくり出すということ、そういうことはあろうかと思うんですよ。

 それだけに、私たちも、法制上の議論も大事なんですが、それ以上に、具体的に実効ある組織形態とそれに対する準備をどのようにしていくかという議論、これはもう本当に必要だというふうに思うんです。それだけに、今回のイラクの人質事件というのは非常に大きな教訓になったんだろうと思うんです。

 あのときの政府、思い出してみると、さっきのサラヤ・ムジャヒディン犯行グループというのが、これがアルジャジーラで放送したわけですね。それに対して、途中で、イスラム法学者・ウラマー評議会が、十一日の二時五十四分に、解放することができるという報道があって、みんながほっとしながら、そのような表情で対応していた。しかし、時間がたっても、ない。その途中で、ドレイミというイラク人権擁護連盟会長と自称する男がまたテレビに出てきて、前回の解放するという報道を否定したのが十一日の夜ですね。その後、またモハマッド・バシャール・アルファイディというのが十二日に出てきて、法学者協会というのが解放していく努力をしていく。

 その都度、表情が変わりながら、私たちの認識もどんどん変わっていきながら、翻弄された。翻弄されたということが真実ではなかったのか。残念ですけれども、そういうことなんだろうと思うんです。

 その間、外務大臣もテレビを通じてアピールをした。特に家族がアピールしたということ、これが非常に大きな効果を得た。それぞれ宗教団体を通じての交渉を、間接的だったんだろうと思うんですが、やったとか、それが多層に交錯しながらどうだったんだということだと思うんです。

 これに対して、どういう情報の制御と、それから逆に、私たちがテレビを通じて相手方を翻弄していくというか、相手方をコントロールしていくというような、そういう手法も含めて、なかったのかどうか。

 小泉さんや福田官房長官は、国民に対してはきれいなスピンをかけていますよ。自己責任というのを出して、自分たちの責任逃れのために本人たちを責めている。これはもう完全にスピンですよ。国民を自分たちの責任逃れの方便に使っているということだと思うんです。そういうことはしっかりやっているんだけれども、逆に、向こうに対しての攻めていく形というのが我々には見えなかった。そういうことがあろうかと思うんです。

 それだけに、この問題が、どこがいけなかったのか、あるいは、ここをどのように我々は態勢としてつくっていったらその問題を克服していけるのかというようなことは、やはり情報開示があって初めてできる。我々はそれがあって具体的な議論ができると思うんです。

 そういう意味で、一度総括をしていただきたい。しっかりと外務省からの説明責任、何が起こっていたのかという説明責任を求めていきたいというふうに思っております。

 外務省は、このことだけじゃなくて、我々の外交官の殺人事件についても口を閉ざしたままなんですよ。さっき、ここで答弁が出ていましたけれども、警察に任せていく、あるいは関係当局に任せていくということ、さっきいみじくもこの人質問題についてもそんな答弁が出てきましたけれども、この大事な問題をそんな他人任せでどうするんですか。調査委員会をしっかりつくって、総括して、こうした問題点があった、あるいは、こうしたことに対してこれから対応していくべきだということも含めて、やはり発表すべきだというふうに思います。どうですか。

逢沢副大臣 今回の事件を通じて、物事の総括が必要である、外務省に対しても御指導とまた御指摘をいただいたものというふうに思います。

 いついかなる場合でも、邦人の安全の確保、保護は、政府とりわけ外務省の大きな責任でございます。外務省は外務省の立場で、今回の二つの事件の事実関係は何であったのか、真相について突きとめる、そういった立場にございます。既にお二人の方々あるいはお三人の方々から、許せる範囲で状況についてはお伺いをしておるわけでありますけれども、これからも必要に応じてそのことについて協力をいただかなくてはならないというふうに承知をいたしております。

 また、そのことを通じて、例えば、渡航情報、危険情報の出し方あるいは周知徹底の仕方、国民の皆様にいつ、どのような手段を通じればより的確にお伝えできるか、そういったことにもぜひ資してまいりたい、そのように承知をいたしております。

 また、メディアとの関係も、適切に委員の方が時系列的に御整理をいただいたところであります。川口大臣のメッセージは、広く中東や世界に流していただきました。また、御家族の方々のインタビューも、中東にもイラクにも多く放映された。そういったことが事件の解決の一端に資しているという理解をいたしているところであります。

中川(正)委員 総括する、それを発表するということを言っていただきましたが、この事態特との関連で非常に大事だというふうに私は思いますので、この法案の中でそのことをぜひ生かしていきたい。いつまでにそれができますか。

逢沢副大臣 この二つの事件については、真相を究明し、事実関係を明らかにしていかなくてはなりません。外務省が中心となり、政府が積極的にそのことに取り組んでまいります。

 非常に重い事件でございました。また、事件が起こった場所がイラクということもございます。また、事件の解明のために、多くの方々、関係国、関係機関の御協力もいただきました。そういったことを考えますと、この全貌について、国会議員の先生方、国民の皆様に正確を期して明らかにするのはいささかお時間をいただくことになろうかと思います。ぜひ御理解をいただきたいと存じます。

中川(正)委員 井上大臣、さっきの議論を聞いていただいて、今、この法制の中で、いわゆる国民の知る権利あるいは基本的人権をどのようにコントロールしていくか、そういう枠組みの中で議論しているんですね。それと同時に、例えばああいうことが国内で起こって、テロのメッセージがテレビ局に届いて、そのテレビ局から放映されたもので翻弄されるというような局面、これはありますね。

 そういうような意味合いでの情報というのをどう制御していくか、それに対してどう向かっていくのか、そんな意味での対応というのは、私は、なかなか、この法律の中で、ずっと組織をつくっていって、協議会なりなんなりつくっていって、皆が右往左往してああだこうだというところが見えてくるだけで、情報をいかに正確なものを整理しながらその情報を使って逆に事件をコントロールしていくかというマインドがないように思うんですよ。

 恐らく、これからの事件とかあるいは事態対処というのは、そういうところをしっかりと押さえていかないと今回のようなていたらくになるんだろうというふうに思うので、そこのところは問題意識として、大臣、どうとらえられていますか。

井上国務大臣 今回提出いたしております法案というのは、あくまで国民保護の枠組みといいますか、そういうものだと思います。あるいは、いろいろな対処いたします場合の物の考え方あるいは基準というようなものを出しているわけであります。

 結局、こういう法律を生かしていくといいますか運用していく場合に、本当にどういうことが大事かというようなことになりますと、私は、今のお話を聞いていまして、やはり、できる限りの情報を収集していく、そして、単に収集するだけではなしに整理をする、あるいはよく分析をする、それで評価をする、評価というのは日本はまだ歴史的にそんなに深いものだと私は思いませんけれども、そういうことをやりまして、そういうものに基づきましてきちんとした対応をしていくということだと思うんですね。そういうことによって制度の運用が生きてくるんだろうというふうに思います。

 私、今の議論を聞いておりまして、何せこれはイラクで起こったことでありまして、日本の国内で起こったこととまたちょっと違うわけですね。だから、実態の把握だとか情報の収集というのは非常に難しいと思うんですね。ですから、これは、外務省、相当努力をしておられると思うけれども、なかなか日本国内で起こったと同じようなわけにはいかない。また、機密を守らないといけないようなこともありまして、そういう中で精いっぱいの努力をしておられると思うのでありますけれども、ああいう事件が起こりまして、私ども、この国民保護法制の運用につきましても、やはり基礎となるデータのようなものを本当にきっちりと整理して、その正確な評価の上に法律を運用していかないといけないな、そういう感想を持ちました。

中川(正)委員 私はさっき、国内で起こったときの例を出しましたが、恐らく、武力対処でいろいろな可能性を秘めながら世界情勢が動いていく、その武力対処のきっかけになる、あるいはそのおそれのきっかけになることというのは、海外で、海外というのは周辺地域も含めた海外で、かつアメリカが積極的に関与しているところから起きてくる可能性が一番高いんだろうというふうに思うんですね。

 だから、そういう意味では同じ構造なんですよ。CPAというアメリカの軍事組織が占領状況にあって、そこから派生してきた事件が今回の話だったというふうに思うんですが、そういう意味で、こうした問題をやはり専門性を持ってふだんから情報収集をしながら体系的にまとめていけるような、そうした体系が今の日本に存在するというふうに考えておられますか、どうですか。

井上国務大臣 今の日本には、今のこの状況といいますか、日本のレベルに応じたそういう情報の収集力なり分析力はあると思うのでありますが、果たしてこれで十分なのかというような質問になりますと、もっともっとやはり高めていかないといけない、それはもうそのとおりだと思います。

中川(正)委員 十分でなかったんだと思うんですよ。イラクで起こった人質事件の結果、我々が理解できたことは、それが十分でなかったということだと思うんですね。そう思われませんか。

井上国務大臣 私は、イラクの状況を責任を持って答える立場にないし、また、それだけ事情に精通しているわけじゃないと思うのでありますが、しかし、外務省としては、持てる力をそれこそ十二分に発揮して、集められる情報を集め、分析して、対応できる限りを尽くして対応されたと思うのであります。

 だから、それをもって今の外務省のそういった情報収集力なり分析力なり対応力で十分なのかと言われますと、それはもっともっと、これは政府の他の部分もそうでありますけれども、こういう情報の収集なりあるいはその収集に基づいた対応については、さらにこの能力を高めていくといいますか、対応がさらに的確になるような努力はしていかないといけないと思います。

中川(正)委員 そういう意味で日本版FEMAの提案を私たちはしているわけですが、その中の一つの大きな軸として、情報対応、情報に対して対応していく。それぞれ法案の中にある情報の整理という意味じゃなくて、いわゆる情報戦略というものを具体的に現場でつくって、専門家をしっかり育てて、それがいざというときに整理できるような、そういう体制をつくるということが一つ大きな目玉になるんだろうと思うので、そこのところも、我々の意図がそこにもあるんだということを理解いただきたいというふうに思っております。

 最後に、石破長官、よろしいですか。

 今、自衛隊、何もできずにというか、十分な外へ出向いての活動というのがされないままに引きこもっているという状況だと思うんですが、さっき我々にその報告があったときに、水についての民間の専門家の力が要るんだ、こういう話が出ていました。

 そうした意味では、どうなんですか、今、政府が求める民間の人材というのは、あの地域へ入っていってもいいという前提でそういう議論がされているんですか。NGOだとかあるいは政府が直接的に求めていない、そういう国を背景にしていない民間の人たちというのは邪魔だ、こういうことなんですか。そこはどういう整理をしているんですか。

自見委員長 質疑時間が終了いたしておりますので、簡潔にお願いいたします。

石破国務大臣 邪魔だなどということを考えたことはございません。しかしながら、今は、自衛隊の持っておる自己完結能力あるいはその権限、能力、装備というものが、危険を回避する上で、そしてまた現地の復興に資する上で重要なことだと考えております。

 ただ、自衛隊がいつまでもいるという状況が現地のためにいいわけではない。それはやはり、民間の方が行けるような、そういう状況が一日も早く来るということが望ましいことは言うまでもございません。ただ、現在においてそのことが可能な状況かといえば、私は、必ずしもそうだとは判断をいたしておりません。

中川(正)委員 終わります。

自見委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 きょうも、米軍支援法について、全体の認識を深める質問をしていきたいと思います。

 米軍が円滑かつ効果的に動くということは、これはとても大変なことなんです。米軍基地が集中している沖縄にいると、よくわかります。ですから、そういう円滑かつ効果的に米軍が動く権利を与える、それに対して国民にいろいろな被害やいろいろな迷惑をかける、その場合に政府がその米軍の立場に立ってこれをおさめる、これが今の沖縄の状況なんですよ。ですから、米軍の支援法という場合に、一つ一つの法律上の文言がどういう規定になっているのか、そのことについてやはり理解していかないとこの法律の審議ということにならないと思うんです。

 きょうもそういう立場から聞いていきますけれども、まず、これまで聞いてきた行動関連措置です。

 いよいよそれの実施ということになるわけですが、自衛隊だけでなくて指定行政機関も実施し、そして、「地方公共団体及び事業者は、指定行政機関から行動関連措置に関し協力を要請されたときは、その要請に応じるよう努める」、今回の法律はこのように表現しているわけですね。

 そうなりますと、自衛隊だけでなくて指定行政機関も、地方公共団体や事業者に何をしてもらうのか、こういうことについて行動関連措置の中に計画をあらかじめ作成して明記しておくことになるのかどうか、これはいかがですか。細かい質問になっているのであれば、政府参考人でも結構であります。

増田政府参考人 お答えいたします。

 御質問は、合衆国軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律案の、「地方公共団体及び事業者は、指定行政機関から行動関連措置に関し協力を要請されたときは、その要請に応じるよう努めるものとする。」という第五条の規定に関するものと理解いたしますが、この規定は、地方公共団体及び事業者に対しまして、責務として、訓示的にと申しますか、努力規定として置いておるものでございます。実体的な意味で義務が生じておるとかいうものではございませんので、この規定に絡んで計画を地方公共団体なり事業者につくっていただくということは念頭に置いているわけではございません。

赤嶺委員 あらかじめ行動関連措置の中に指定行政機関の方が定めておく、そういうことはありませんか。

増田政府参考人 指定行政機関が行います行動関連措置についてあらかじめその計画をつくっておくというふうなことも、この法律のもとでは、今、念頭に置いているわけではございません。

赤嶺委員 では、今度は、その五条の問題で、周辺事態法の表現との違いであります。

 先ほども申し上げましたように、「地方公共団体及び事業者は、指定行政機関から行動関連措置に関し協力を要請されたときは、その要請に応じるよう努めるものとする。」こういうことですね。周辺事態法のときは、「関係行政機関の長は、」「国以外の者に」「協力を依頼することができる。」国の側が「依頼することができる。」という表現になっていたんですね。ところが、今回の場合は、指定行政機関から協力を要請された地方公共団体や事業者は「要請に応じるよう努めるものとする。」このように規定されているわけですね。

 周辺事態の方は国の側が、今回の場合は受ける側が「努めるものとする。」こういう対応の問題により力点を置かれてこの法案が構成されているように考えるんですが、その点はどのように説明いたしますか。

増田政府参考人 周辺事態法におきます今御指摘の規定の規定ぶりと今回の米軍関連の法案の五条の規定ぶり、確かに表現ぶりにおいてそのような差があるというところは御指摘のとおりでございます。

 ただ、例えば、周辺事態法において、「依頼することができる。」という趣旨は、まさにこの周辺事態法の九条二項の場合には、国と事業者と申しますか地方公共団体等が対等の関係でお願いするという形なので、「依頼することができる。」という形でございます。ただ、今回も、例えば事業者との関係でいえば、基本的には対等の関係でお願いするという意味で、法的性格は同じだろうと思っております。

 ただ、周辺事態といわゆる武力攻撃事態等が違いますのは、まさに、武力攻撃事態等と申しますのは、我が国が他国から武力攻撃を受ける、もしくは可能性のある、そういう事態でございます。そういう事態におきまして、国も地方公共団体も、また、国民の一人であります事業者においても、我が国を防衛するために協力していただくということを法律の趣旨としてお願いするというのが自然なことではないかと考えて、このような規定ぶりにしておる次第でございます。

赤嶺委員 周辺事態と武力攻撃予測事態はおのずから事態が違うのだから地方公共団体、事業者もその辺はよく考えるべきだぞ、これが周辺事態法との表現の違いになっているんだな、こういう理解で、大臣、よろしいですか。

井上国務大臣 まさに周辺事態といいますのは、我が国の平和と安全に重大な影響があるということであります。影響があることはあるのでありますけれども、今度の武力攻撃事態対処法で言います武力攻撃等というのは、まさに武力攻撃がある、あるいはもう急迫しているとか、あるいはもうその予測ができるという状況でありまして、国の安全自身が危機にあるということでありますから、おのずと地方公共団体とか事業者に対する依頼もその表現として違ってくるというのは、これはまた極めて自然のことじゃないかと思うのであります。それで罰則なんかを規定しているわけじゃないのでありますけれども、しかし、やはりその事態の差といいますのは、それぞれ自治体なり事業者の受けとめ方、これについてもその差があるということを受けとめていただきたいというような趣旨も込めまして、こういうような規定になったわけであります。

赤嶺委員 そうすると、表現ぶりを変えることによってどういう効果を期待しているんですか。

井上国務大臣 まさに地方公共団体なり事業者に対して要請をいたしましたときには、その要請に沿うようにひとつお願いをしたいということでございます。そういう意図をより強くあらわしたということでありまして、だからといって、それが実現しない場合に罰則でもって担保するなんというようなことは、それはやっていないわけでございます。

赤嶺委員 それでは、次の第七条の方に移ります。

 情報の提供についてですが、「政府は、武力攻撃事態等においては、国民に対し、合衆国軍隊の行動に係る地域その他の合衆国軍隊の行動に関する状況及び行動関連措置の実施状況について、必要な情報の提供を適切に行うものとする。」このように規定しているわけですが、この「合衆国軍隊の行動に係る地域その他の合衆国軍隊の行動に関する状況」についての「必要な情報の提供」、これは具体的にどういうことを想定しているんですか。どういう情報をどのように提供すると想定しているんですか。

増田政府参考人 お答えいたします。

 米軍行動関連措置法案の第七条におきまして情報提供の対象になっております、まず、「合衆国軍隊の行動に係る地域」というものにつきましては、まさに対処するべき武力攻撃事態等の状況により異なり得るものであり、一概に申し上げることは困難でございますけれども、例えば、合衆国軍隊の行動のために施設及び区域として提供される地域等につきまして、情報の重要度や緊急度を総合的に判断して適切な内容、形式で公表することを想定しております。

 また、それを含めまして全体としての「合衆国軍隊の行動に関する状況」というものとしては、例えば、合衆国軍隊が武力攻撃を排除するために行った行動の状況等の情報提供を想定しております。

 これらの情報につきましては、政府の関係機関により、まさにマスメディアそれからインターネット等も含めたさまざまな媒体を活用して国民に周知することが重要と考えておりまして、情報の重要度、緊急度等を総合的に判断して適切な方法によって情報の提供が行われるようにしてまいりたいと考えております。

赤嶺委員 地域というのは、例えばどの範囲――今の答弁だと、施設及び区域の提供を求める地域になるわけですね。そうすると、包括的に九州・沖縄方面という地域の指定になるのか、南西諸島ということになるのか、あるいは鹿児島県という県名になるのか。その辺はかなり広く指定する場合もあるし、かなり特定して指定する場合もある、事態に応じてということになるんでしょうけれども、どういうことなんでしょうか。ちょっと具体的にお願いします。

増田政府参考人 具体的にどのようになるかということは、今まさに先生も御指摘になりましたが、情報の重要度であるとか緊急度というものに左右されるものであって、一概に申し述べることは困難だと思っております。

 また、武力攻撃を排除するための具体的な行動の中には公にすることによって我が国の安全が害されるものもあると承知しておりますので、そういうものについては公表することは考えていないということも、私どもとしては当然のことかと思っております。

赤嶺委員 排除するための行動も、どういう内容が情報として出されるのか、それはまたオペレーションの問題になるから全部は出せないということになってくると、これは一体、国民の暮らしとのかかわりではどうなっていくのか、不鮮明であります。もっとよく研究してみたいと私たちの方も考えますが。

 それで、今度は、物品、役務の提供の問題です。

 物品、役務の提供というのは、まさに米軍の行動が円滑かつ効果的に行われる、地位協定上も円滑かつ効果的にということで、今でさえ民間の空港、港湾を米軍が地方自治体の長の制止も無視して使っている現状があるんですが、今度の物品、役務の提供となると、規模も行動もかなり広範囲になっていくだろうと思うんです。

 そこで、きょう聞いておきたいのは弾薬の問題です。これは周辺事態法のときと今回と明らかに違うわけですが、弾薬の範囲です。例えば、自衛隊が保有する誘導ミサイルだとかクラスター爆弾、こういうものも提供の範囲に含まれるのでしょうか。何か範囲に限度があるんですか、あるいは、何でもできるようになっているんでしょうか。

石破国務大臣 弾薬の範囲についてお尋ねがございました。

 網羅的にすべてこれこれというふうに申し上げることはできませんが、例えて申し上げれば、誘導ミサイル、機雷、魚雷、このようなものを提供するということは想定をいたしておりません。

赤嶺委員 私、弾薬庫の近くに住んではいるんですが、弾薬の中身について余り詳しくないので、何で想定していないのか、その辺もちょっと教えてくれませんか。

石破国務大臣 合衆国側といろいろとお話をし、いろいろと協議をし、円滑にいくかどうかということもよく調整をし、そういうことが想定されないというふうに私ども今考えておるところでございます。

赤嶺委員 それでは、どんな弾薬を米軍に提供するようになっているんですか。

石破国務大臣 網羅的にこれこれということを申し上げられないのは恐縮でございますが、例えて言いますと、銃弾、砲弾、ロケット弾、爆弾、爆薬、そのようなものは提供し得るものとして、これも想定をいたしておるところでございます。

 これは相互に提供いたしますことによって行動が円滑になるということを想定しておるわけでございまして、これはもうとても想定されないというものもございますれば、これは想定されるということもあるわけでございます。そのような結果、想定されないというふうにお答えをさせていただいておるということでございます。

赤嶺委員 周辺事態法の審議のときに、今まさに長官がおっしゃったように、当時は弾薬の提供は除外されていたわけですね。そのときの理由の一つに、米軍のニーズがないということを挙げていたわけですね。

 素人ながら不思議に思うんですよ。他の軍隊から弾薬の提供を受けるというのはなかなか考えにくいことなんですね。しかし、法律には弾薬の提供まで可能になっている。武力攻撃事態だとか予測事態において、米軍は日本の側が持っている弾薬を必要としている、こういうことなんですか。ちょっと詳しく、聞いて国民がわかるように説明していただけませんでしょうか。

海老原政府参考人 これは、先ほど防衛庁長官もおっしゃいましたように、今回の武力攻撃事態ということは我が国に対する武力攻撃の発生ということを考えておりますので、当然、非常に重要な事態でございまして、これを効果的に排除するために米軍に対してあらゆる協力をするということが必要であるということもございます。また、米側との話し合いの中でも、ニーズもあるという話があったことから、武力攻撃事態におきましては弾薬の提供も含めるということにした次第でございます。

赤嶺委員 北米局長、説明になってないですよ。周辺事態のときには、ニーズがありませんと言いました、今回、ニーズがありますと言いました、だから入れていますと。これで、法律の中に弾薬の提供を入れたという根拠や裏づけというのを理解できますか。できないんじゃないですか。与党席もうなずいておられますよ。できないと言っている。もうちょっと理解できるように説明してくれませんか。

海老原政府参考人 先ほど申し上げましたように、事態が周辺事態と武力攻撃事態、提供ということであれば予測事態からも提供はできますけれども、実際の使用はもちろん武力攻撃が発生した場合に限られるわけでございますけれども、事態の違いということから我が方としても最大限の協力を行う、また、そういう考え方があるということを申し上げたわけでございます。

 それに加えまして、ニーズも、当然これは大事なことでございまして、ニーズがないのにこちらから提供する必要はないわけでございまして、そこは日米の間で平素から密接な協議を行っている中で、このような、現に日本に対して武力攻撃が発生するような重要な事態、こういう事態においては米側もニーズがあるということが確認できましたので、この中に含めたということでございます。

赤嶺委員 まだわからないです。まだわからないですが、ちょっと先に進みます。わかっていないということを、外務省、よく理解していただきたいと思います。

 弾薬の提供を行うという場合の話ですが、例えば、那覇空港は軍民共用になっています。あれは、国道のすぐそばに弾薬庫が置かれているんですね。自衛隊の弾薬庫があるんです。その那覇空港が、武力攻撃予測事態や武力攻撃事態になり、自衛隊の弾薬庫の中に入っている弾薬を向こうがニーズがあるものについて提供する、こういうことも当然実態として考えられるのでしょうか。

海老原政府参考人 これは、実際に武力攻撃事態あるいは予測事態というものがどういうものであるのか、当然、事態の態様、規模によって違うわけでございますので、今委員がおっしゃいましたような、限られた仮説の予見のみをもって私から予断をして申し上げるのは適当ではないというふうに申し上げたいと思います。

赤嶺委員 そういう提供することもこの法律の上では別に排除されていない、そういう理解でいいんですね。

海老原政府参考人 これは、法律を読んでいただきますと、これはACSAも同じでございますけれども、提供することができるということが書いてあるわけでございまして、仮に武力攻撃事態あるいは予測事態におきまして要請があったという場合であっても、当然、こちらの日本政府の方で提供するかどうかを主体的に判断するということでございます。

赤嶺委員 その提供するかどうかを主体的に判断する基準というのは、武力攻撃を排除するため、ないしはその準備のための米軍の円滑かつ効果的行動に寄与するかどうか、これが基準になるんですね。

海老原政府参考人 これは、ACSAと申しますのは、主に現場で、そのような必要が生じたときに現場で相互提供を行って相互の活動を円滑にするということでございますので、そのような要請があった場合には、一義的には現場において、これは例えば提供してほしいというふうに言われましても、その提供するものがこちらとしてない、自分たちで使うものだけで手いっぱいであるというようなこともあると思います。したがいまして、その辺を含めまして総合的に判断するということだろうと思います。

赤嶺委員 それは、具体的な場面というのはいろいろな場合があるわけですが、この法律の趣旨が円滑かつ効果的というぐあいになっているから、当然、いろいろな疑問がわいてきます。

 いろいろなことを、法律ができてから、そして米軍が行動を開始してから、これはまずかったなというわけにいかないんですよ。やはり事前にいろいろなチェックが必要なんです。ですから、でき得る限り答えていただきたいと思うんですが、米軍は、例えば嘉手納基地の中には大きな弾薬庫を持っています。劣化ウラン弾もその中に入っていて、久米島の鳥島で誤射爆訓練がありました。

 例えば、提供するという場合に、米軍の弾薬庫に持っていくのですか、あるいは実際に米軍が出動する飛行場や港湾に持っていくのですか。

海老原政府参考人 これは、今のようなお話を聞いておりますと、例えば自衛隊の方が米側の方へ持っていくとおっしゃいましたけれども、持っていくというようなことであれば、これは役務の提供としての輸送というようなことになる場合もあるかもしれません。ですから、例えば手渡しで渡すとかそういう場合もあるかもしれませんし、あるいは、今のような役務としての輸送というようなことを伴う場合もあるかもしれませんし、ないかもしれないということで、それは個別具体例に即して判断されるということだろうと思います。

赤嶺委員 役務の提供としては、弾薬庫の中に運んだり、あるいは出撃する港湾のところまで持っていったり、空港のところまで持っていったりすることはあり得る、こういうことですね。

飯原政府参考人 法案の中に、十条の第四項ですか、自衛隊が役務の提供として行う業務は補給という概念がございまして、これは「(武器の提供を行う補給を除く。)」とありますので、これで、弾薬の補給という概念で、輸送も伴った供給という概念が入るということでございます。

赤嶺委員 入るという、あり得るということでした。

 それで、今度は、ちょっと事態を想定して尋ねたいと思います。

 米軍が海外で武力行使をしている場合があります。その場合に、この事態が発展し、波及し、あるいは武力攻撃予測事態と併存、こういう事態になったときに、米軍は、弾薬庫に運んだ、日本が補給したその弾薬を積んで武力攻撃予測事態の出撃という、その事態の範囲内での出撃ということ、これも起こり得るのではないかと思いますが、いかがですか。

海老原政府参考人 これは、先ほどもちょっと御答弁申し上げましたけれども、ACSAに基づいて弾薬を米軍が受領する、これを使用するのは、改正のACSAの新五条に明記をしてございますけれども、我が国に対する武力攻撃を排除するために必要な活動を行っている場合というのに限られるわけでございます。

 したがいまして、先ほど委員がおっしゃいましたような、周辺事態のような事態が起きて、それがさらに発展をしているというようなことであっても、我が国に対する武力攻撃が現に起きてそれを排除するために必要な活動を米軍が行っている、そのときでなければ米軍は我が方が提供した弾薬を使用できないわけでございますので、今おっしゃったような事態であれば、米軍は我が方が提供した弾薬を使用することはないということでございます。

赤嶺委員 使用することがあるかないかではなくて、そういう事態のときは、日本から補給された弾薬を積んでその事態に対応している戦闘機が出撃することはあるんですね。攻撃じゃなくて出撃ですよ。

海老原政府参考人 先ほどの繰り返しになると思いますけれども、このACSAによって我が方が提供します弾薬は、あくまで我が国に対する武力攻撃を排除するというために使われるわけでございまして、それ以外のものには使用されないわけでございますから、その使用され得ない弾薬を飛行機がほかの事態のために運んでいくというようなことはそもそも想定されないと思います。

赤嶺委員 弾薬も、もっと聞きたいことがたくさんあるわけですが、特に、いろいろ事態が波及したり併存したり重なったり、いろいろな切り分けが本当にできるかどうかという疑問が残ります。

 同時に、もっと大きな疑問として残るのは、弾薬の提供というのは、周辺事態のときは、憲法上の適否について慎重な検討を要する問題であるとしてきたことです。武力攻撃予測事態も周辺事態も、日本に武力攻撃が起きていない事態については共通の事態であります。それがなぜ憲法上クリアされるかどうか、これも聞きたいんですが、聞くとほかの法文を聞く時間がなくなりますので、これは次回にやっていきたいと思います。

 それで、今度は、この武力攻撃事態対処法が出てきたときに、米軍支援法というのは、その法律の制定というのは一貫したテーマだったと思うんです。

 二〇〇二年三月に、外務省は、米軍の行動の自由を確保する上で、米軍に適用される法令を適用除外する方向で検討を行ったと聞いています。米軍に日本の法令が適用されて、それを適用除外するための検討、どういうことかという疑問が起こってきますけれども、これは、どういう検討を行い、そしてその結果、どういう措置をとることになったのですか。

海老原政府参考人 日米地位協定でございますけれども、国内法令との関係で申せば、基本的にはいわゆる尊重義務でございます。

 ただ、一部の法令につきましては、遵守義務が地位協定上もございます。それは地位協定の五条の合意議事録の四項に書いてあることでございますけれども、これは、例えば船舶、航空機などのいわゆる通行主体でございますけれども、これの通行行為そのものを通行秩序という観点から規制する法律ということで、わかりやすく言えば、道路を通行しますときに例えば赤信号を守るとか、そのようなことでございますけれども、そのような規定につきましては米軍にも適用があるということになっておりますので、それを武力攻撃事態においてどのように処理をするのかということを検討した結果、これについては、国内法の改正をして処理をしなくても所要の手当てをすることによって十分であるという判断をしたということでございます。

自見委員長 赤嶺君、質疑時間が終了いたしました。簡潔にお願いいたします。

赤嶺委員 最後の一問です。

 そうすると、つまり、米軍には遵守義務を持つ法律、これはもうないということでいいですね。地位協定で言う尊重義務だということでいいですね。

自見委員長 質疑時間が終了いたしましたので、簡潔にお願いいたします。

海老原政府参考人 地位協定上の遵守義務がある規定は、いわゆる有事の場合、武力攻撃事態の場合についてもあるわけでございますけれども、所要の手当てが必要であるということでございます。

赤嶺委員 終わります。

自見委員長 次に、東門美津子君。

東門委員 長い一日の最後の三十分ですので、よろしくお願いいたします。

 一九九五年、沖縄県では、米海兵隊員三名が当時小学生であった少女を暴行するという痛ましい事件が起きました。これは皆様御存じのことだと思います。私たち沖縄県民は、一人の少女の人権すら守れないのかと大変悔しい思いをしました。

 そもそも、なぜ沖縄に約二万五千人もの米軍人が駐留しているかといえば、我が国が無謀な戦争への道を突き進み、二十七年間、米軍の統治を受けた、その結果です。私たち沖縄県民は、平和憲法を有する本土への復帰を願い、一九七二年に、ようやく本土復帰を果たしました。沖縄県民は、平和憲法を守り、二度と戦争の悲劇を繰り返さないということを願っています。

 現在、名ばかりの国民保護法案が審議されていますが、戦争を起こさないことこそ最大の国民の保護であり、また、過重な米軍基地の存在によりいわば準有事の生活を余儀なくされている沖縄県民の負担を軽減することが沖縄県における最大の国民の保護ではないでしょうか。川口外務大臣にお伺いしたかったのですが、きょうは副大臣にお願いいたします。

逢沢副大臣 日本にございます米軍の施設・区域の約七五%が先生の御地元、沖縄県に集中している、その事実は私ども政治家はもとより日本国民全員が深く認識をしなくてはならない、そのように承知をいたしております。

 その沖縄において、先ほど先生が一九九五年の事例を申されましたけれども、不幸な、また、あってはならない事件が過去に起こってまいりました。また、今現在もそういった状況にあるということについても、私どもは深く思いをいたさなくてはなりません。

 日本の安全を確保するために適切に抑止力を維持する、そして同時に、米軍の施設・区域を抱える都道府県、とりわけその多くが集中する沖縄県民の方々の負担を軽減していく、その大きな政治目標をお互いが力を合わせて追求していく、実現していく、具体的にはSACOの最終報告に基づく適切な実施、運用ということになろうかと思うわけでございますけれども、地元の先生方の御理解と御指導もいただきながら適切に運営をしてまいりたい、そのように存じます。

東門委員 逢沢副大臣からは少し異なった御答弁をいただけるのかと思っていましたが、そういうことは期待するのが無理かもしれないなと今しっかりと思いました。

 次の質問も前回の質問と関連ですが、一応通告してありますので、これも副大臣にお願いしたいと思います。

 二十日の私の質疑の際に、ジュネーブ条約第一追加議定書第五十八条の目的を達成するためには住宅密集地に存在する米軍基地の整理縮小が必要ではないかと私はお尋ねしましたが、平時において密集地に米軍基地があるということが条約上問題になることはないというのがそのときの川口大臣の御答弁でした。川口外務大臣の理屈によれば、有事の際、急遽、米軍基地を整理縮小しなければならないこととなりますが、現実には、有事においては、基地が強化されることはあっても整理縮小されることはあり得ません。そこで、平時に米軍基地の整理縮小を進めるべきであるという観点から質問したものでした。

 改めて、ジュネーブ条約第一追加議定書第五十八条の目的を達成するための米軍基地の整理縮小に対する見解をお伺いいたします。

逢沢副大臣 お答えを申し上げさせていただきたいと思います。

 御質問の、ジュネーブ諸条約第一追加議定書第五十八条(b)について御指摘でございますが、この追加議定書第五十八条(b)は、平時において締約国に対して義務を課すものではない、平時において締約国に対して義務が課されていないということであります。武力紛争中においても、あくまで紛争当事者に対して実行可能な最大限度までの攻撃の影響に対する予防措置をとることを義務づけたのがこの五十八条(b)でございます。

 したがいまして、在沖米軍施設・区域の現状が直ちにこの五十八条(b)との関係で問題になるというふうには承知をいたしておりません。

東門委員 国民保護法案第百二条について伺います。

 生活関連等施設に関する規定が百二条に設けられています。生活関連等施設は、場合によって、都道府県公安委員会により、その敷地及び周辺の区域が立入制限区域として指定され、警察官等は特に生活関連等施設の管理者の許可を得た者以外の者に対し当該立入制限区域への立ち入りの制限等を命ずることができるとされています。

 しかしながら、生活関連等施設は、まず、「国民生活に関連を有する施設で、その安全を確保しなければ国民生活に著しい支障を及ぼすおそれがあると認められるもの」もしくは「その安全を確保しなければ周辺の地域に著しい被害を生じさせるおそれがあると認められる施設」に該当する「政令で定めるもの」とされているのみで、具体的にどのような施設が該当するのか、明らかではありません。

 本法律案に罰則が設けられている以上、どのような施設が該当するのかを政令に委任することは不適切ではないでしょうか。どのような施設が生活関連等施設とされるのでしょうか。具体的に御説明をお願いしたいと思います。

大石政府参考人 お答えいたします。

 国民保護法案百二条におきまして、国民生活に関連を有する施設で、その安全を確保しなければ国民生活に著しい支障を及ぼすおそれがある施設、それから、その安全を確保しなければ周辺地域に著しい被害を生じさせるおそれがある施設、これを生活関連等施設として政令で定めることにしているわけでございます。

 前段の具体例でございますが、発電施設とか浄水施設など、国民の日常生活に必要不可欠なものでございます。それから、後段の具体例でございますが、危険物質等を大量に貯蔵しているような施設、コンビナート施設等を想定しているわけでございます。

 これらにつきましては、具体的には政令で定めるわけでございまして、これからその内容を詰めていくわけでございますが、この施設の安全を確保しなければ周辺に著しい影響を与える、あるいは国民生活に影響を与える、こういう施設でございますから、その安全を確保するために立入制限を課すことができることにしまして、それに違反して立ち入った場合、その場合等について罰則を設けた、その履行を担保するために罰則を設けた、こういうことでございます。

東門委員 国民保護法案附則によって自衛隊法が改正され、国民保護のための措置等を実施するための国民保護等派遣が新たに自衛隊の任務に加わることになりますが、これまで実績のある災害派遣とは異なり、警察官がその場にいない限りとの条件はあるものの、場合により武器の使用が可能になってきます。

 国民の保護のために派遣される自衛隊員が何ゆえ武器を使用する必要性があるのでしょうか。武器使用の権限が与えられていない災害派遣とどのような点が違うのか、御説明をお願いします。

石破国務大臣 先生がいみじくも御指摘になりましたとおり、その場に警察官がいない場合に限りということでございます。

 これは、災害と異なりまして、武力攻撃事態というものでございます。その場にどのような者がいるかはわかりません。その混乱に乗じまして、避難をしようとしている人たちに対して危害を加える者がいるということは、災害派遣と異なった局面だと私は考えております。

 したがいまして、警察官がその場にいない場合に限りまして、そのような混乱に乗じまして避難民の方に危害を加えるような、そういう者を制止するために、現場におります自衛官が避難住民を保護する等のため武器を使用することが必要となる場合があり得る、当然もう自制自制ということではございますけれども、そういう場合が否定をされませんので、このような権限をつくったものでございます。

東門委員 国民の保護、住民の保護という立場で、避難をする住民のところに武器を持って自衛官がいるということのむしろ不安感の方が大きくなるのかなと私は思ったものですから質問をしたわけですが、今の御答弁を伺いましたけれども、本当に必要なのかなという思いはまだまだやはりぬぐい去れませんね。(発言する者あり)いや、そうでもないと思いますよ。

 次に移りますけれども、自衛隊の国民保護等派遣については、武力攻撃事態等において、都道府県知事は、国民の保護のための措置を円滑に実施するため必要があると認めるときは、自衛隊の派遣を防衛庁長官に要請できるとされています。この場合、防衛庁長官は、「事態やむを得ないと認めるとき、」内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊を派遣できるとされていますが、自衛隊派遣の判断基準について伺いたいと思います。

 「事態やむを得ないと認めるとき、」とは、どのような状況を想定しておられるのでしょうか。

石破国務大臣 それは、都道府県知事さんからの御要請をいただくわけでございますが、その要請の内容、そしてまた私どもで収集いたしました情報等々にかんがみまして、恐らく三つなんだろうと思います。

 一つは、やはりこれが緊急であるということが事態やむを得ないかどうかの判断の一つの要素、それから、やはり公益性、自衛隊が出ることによって本当に大勢の人々が助かるねという公益性の問題、そして、自衛隊が出なければほかに出る者がいませんねという非代替性の問題、この三つが判断の要素になるであろうと思っております。

 そして、それを行うことによりまして、自衛隊が敵の侵害を排除するという、ほかになし得ない、そういうような任務も負っておりますので、そのことも勘案をする必要がございますが、事態やむを得ないという場合にはその三要素ということになろうかと私は考えております。

東門委員 では、その場合ですが、複数の都道府県知事から派遣の要請があってそのすべてに対応できない場合、防衛庁長官はどのような判断基準でその派遣先を決定なさるのでしょうか。

石破国務大臣 それは、先ほど申し上げました三つの要素を勘案いたしまして、しかしながら、どっちも同じような感じだよね、その力が足りないねということに相なってきますと、これは、総合調整の権能を持っておりますのは内閣総理大臣ということになりますので、その内閣総理大臣の調整ということになろうかと思います。

 それは、私どもといたしまして、全くフィフティー・フィフティー、全く同じということはないというふうに考えておりますし、ほかに出ていただけるところというものがある場合には、それは総合調整ということにお願いをしなくても、もちろん私どもの方できちんとした判断をすべきものと考えております。

 しかし、総理大臣の御調整、つまり、総理大臣の方がそれぞれの地域のことをよく御存じで調整をされるようなお立場におられるということもございます。私どもの方で判断しかねるというような場合には総理大臣の総合調整ということになりまして、いずれにしても、国民の方々がきちんと避難をしていただけるということで政府として全力を挙げるということだと考えております。

東門委員 そうしますと、まず、ある都道府県知事から派遣の要請がある、一方では、対策本部長から別の都道府県への派遣の求めがある、その場合に、その双方に対応できない場合、内閣総理大臣である対策本部長の求めが優先されることになるのでしょうか。いかがでしょうか。

石破国務大臣 それは、総合調整を対策本部長たる内閣総理大臣が行っておられるわけですから、そこにおいて、本当に国民のすべての方が避難がきちんとできるというような総合調整の上にそういうことがなされておるわけでございますから、それに従うことになるというふうに考えております。

東門委員 いざ何かあった場合にすべての人が本当にきちんと避難できると今何度もおっしゃったんですが、そういう状況になるかというと、それはないとは思います。しかし、質問を続けます。

 米軍行動関連措置法案について伺います。

 武力攻撃事態において米軍が行う応急措置としての道路工事、通行に支障がある場所を迂回するために行う緊急通行や、通行の妨害となっている車両等の撤去、土地の使用等について、米軍にかわって我が国が行う手続の緩和や損失補償等の規定が設けられています。

 これらの規定が武力攻撃事態の場合に限定していることは、武力攻撃予測事態において米軍が応急措置としての道路工事や緊急通行、土地の使用等を行うことは想定されていないと理解してよろしいのでしょうか。井上大臣に伺います。

増田政府参考人 今、御質問にありました三つの分野につきましては、「武力攻撃事態において、」という限定がかかっております。したがいまして、武力攻撃予測事態というのは念頭に置いていないわけでございます。

 それは、武力攻撃事態におきまして、合衆国軍隊が例えば国内を移動する場合に自衛隊と同様の行動をとることが想定されます。自衛隊に関しまして、防衛出動を命ぜられた自衛隊は、自衛隊法等に基づきまして、まさに応急措置としての道路工事、緊急通行、また、通行の妨害となっている車両等の除去を行うことができるとされておりますことから、同様の事態におきまして合衆国軍隊もこれらの行動をとることが想定されるということでございます。

東門委員 今の御答弁、予測事態ではなくて、武力攻撃事態だけだということでしたね。間違いありませんね。――はい。

 では、次の質問ですが、武力攻撃予測事態において、米軍に応急措置としての道路工事や緊急通行、土地の使用等を行う必要性が生じた場合、どのように対応なさいますか。

井上国務大臣 道路の補修を含めた維持管理というのは、これは道路管理者が決まっておりまして、その道路管理者、ある場合は国であったり都道府県であったりあるいは市町村であったりするわけで、それがするということであります。

 防衛出動命令が出ておりますときは、もう本当に緊急なことでありますので、そのような措置をとった。それは自衛隊の場合も同じであります。自衛隊の方も、緊急の場合は自衛隊が直しまして、それで通報するということになっておりまして、まさに緊急の場合にはこれしか対応はないだろうということであります。

東門委員 予測事態ももちろんあり得るということですね。そういうふうに対応するということですね、今のは。(発言する者あり)いや、予測事態において必要性が生じた場合はどういうふうに対応なさいますかという質問を私はしたんです。それに対しては通常の方法でやるということですか。

井上国務大臣 そういうことであります。道路管理者がきちっと工事をして直すということであります。

東門委員 はい、わかりました。

 我が国がとる行動関連措置の前提となる米軍の行動に関して、武力攻撃事態において何ができ何ができないのか、武力攻撃予測事態においては何ができ何ができないのか、これを具体的に国民に示していただいて、これらを担保するため、武力攻撃事態等における米軍の行動原則を地位協定に盛り込む必要があるのではないかと思いますが、これは外務副大臣の見解をお伺いしたいと思います。

海老原政府参考人 まず、米軍の行動でございますけれども、基本的には、もちろん、武力攻撃が実際に発生をいたしますれば、これはもう共同対処行動をとるわけでございますから、武力の行使を含めましてあらゆる行動をとるということだろうと思います。

 それ以前の事態におきましては、そのための準備行動はするということかもしれませんけれども、その準備行動は基本的には施設・区域の中において行われるということで、あとは、あるとすれば、これはもう既に地位協定の五条に規定しておりますけれども、移動でございますね。例えば施設・区域間の移動というようなことが行われるということしか想定をされないわけでございます。

 したがいまして、地位協定の範囲で十分に対応は可能であるということだろうと思います。

東門委員 米軍行動関連措置法案においては、米軍による土地の使用等の処分権者を内閣総理大臣としていますが、自衛隊法においては、防衛出動時における自衛隊の土地等の使用の処分権者は、地元事情に通じているという理由により、原則として都道府県知事とされています。自衛隊の場合の処分権者と米軍の場合の処分権者が異なる理由は何ですか。大臣、お願いします。

増田政府参考人 お答えいたします。

 米軍行動関連措置法案の第十五条におきまして、土地の使用等につきまして処分権者を内閣総理大臣としておりますが、これは、合衆国軍隊に対する土地等の提供というものは国が国際的に負っております安全保障上の義務の履行に直接かかわるものである、こういう観点から、国が直接執行すべきであると考えたためでございます。

東門委員 米軍による土地の使用等の処分権者を内閣総理大臣としていることは国が地方自治体の関与を排除して直接米軍の土地の使用等について便宜を図ろうとする意図のあらわれかなと私は見ているんですが、いかがですか。

井上国務大臣 今、政府参考人が申し上げましたとおり、国がそういう土地、施設等を提供する義務を負うわけですから、国が責任を持って処分をするということであります。

東門委員 米軍のためだ、アメリカのためなら何でもやっていく、それは安保条約というふうに出てくるんですけれども、そういう姿勢がずっと見えているので、そういうことも聞いてみたかったんですけれども……(発言する者あり)いや、ありますよ。

 日米地位協定は、有事、平時を問わず米軍に適用されるとされていますが、第十七条第十一項は有事を対象とした規定となっており、

  相互協力及び安全保障条約第五条の規定が適用される敵対行為が生じた場合には、日本国政府及び合衆国政府のいずれの一方も、他方の政府に対し六十日前に予告を与えることによつて、この条のいずれの規定の適用も停止させる権利を有する。この権利が行使されたときは、日本国政府及び合衆国政府は、適用を停止される規定に代わるべき適当な規定を合意する目的をもつて直ちに協議しなければならない。

とされています。

 日米地位協定第十七条第十一項の趣旨を外務副大臣に御説明をお願いしたいと思います。

林(景)政府参考人 条約の趣旨でございますので、私の方から御説明させていただきます。

 今御指摘の十七条十一項でございますけれども、この規定は、我が国に対する武力攻撃が発生いたしましたという状況下、非常に特別の状況でございますけれども、そういう状況下におきましては、何らかの理由によりまして、十七条の規定をそのまま適用するということが必ずしも適当ではないといった事態が起こり得るという考え方に基づいて置かれているものだろうというふうに考えております。

 ただ、日米地位協定十七条十一項、ここに言う「敵対行為が生じた場合」、つまりいわゆる五条事態でございますけれども、その場合に、我が国あるいは米国政府が同項の定めるところによりまして十七条のいずれかの規定の適用を停止させる権利を実際に行使するかどうか、また、その権利を仮に行使する場合にいずれの規定の適用を停止するかということにつきましては、実際にその敵対行為が起こりましたときにその具体的状況に応じて個別的に判断されるものであろうというふうに考えておりますので、あらかじめ、こうだろうということを申し上げることはできなかろうかと思います。

東門委員 十七条の十一項は、これは、安保条約第五条が発動される事態に至ったときは軍事裁判権、軍事警察権の拡大が必要となることが考えられるため、このような規定が置かれたというふうに言われていますが、いかがですか。

林(景)政府参考人 繰り返しになりますけれども、そこは、実際にどういう形で、どういう理由で適用を停止するのか、また、それにかわってどういうことをするのかということについては、状況いかんということだろうと思いますので、今おっしゃったようなことであろうということをあらかじめ断定することはちょっとできなかろうかと思います。

東門委員 いや、これが置かれた理由なんですよ。なぜこれがここに十七条十一項としてあるかということなんですね。

 それはやはり、私が今言いましたように、第五条が発動される事態に至ったときは軍事裁判権、軍事警察権の拡大が必要となる、そういうことが考えられるためにこのような規定が置かれた。これは多分、外務省のちゃんとした地位協定のあのマル秘のものに書かれていると思うんですよ。外務省は、ないと言っていますけれども、マル秘の中に、これはちゃんとその中で、外務省の見解の中で出ているものなんですよ。ですから、私はそれをお尋ねしたわけです。

 これからしますと、平時だって地位協定第十七条改正の要望に対してアメリカ側と満足な交渉もできない外務省が、有事において米側の申し出により、急遽、同条にかわるべき規定を協議するということは、米側に有利な条件を一方的に我が国が受け入れざるを得ない状況になるのではないかと私は危惧しています。なぜなら、今までずっとそうだからなんですね。

 政府の言うところの、備えあれば憂いなしという今回の法整備の趣旨からも、あらかじめ米国との間で協議を行い、地位協定を改定して、有事の際の刑事裁判手続についての基準を盛り込むべきだと考えますが、いかがでしょうか。

林(景)政府参考人 念のために申し上げますけれども、今の十七条十一項は、この十七条の規定を廃止するということを言っているわけではございませんで、停止するということを言っているわけでございまして、したがって、改正云々ということには必ずしもならないわけでございます。停止した場合に何がしかのアレンジメントをするということはあるでしょうということでございまして、これは日米地位協定だけに特殊な規定ではございませんで、NATO協定なんかにも、同じではございませんが、類似のような考え方というものがあるところでございます。

 そういう意味で、この状況と申しますのは、とにかく、まさに日米安保条約が何であるのか、その存在理由がまさに問われるような状況において、米国が我が国を防衛するために活動しておる、そのときにどうしてもやむを得ず必要な状況とかいうものがいろいろ生じるかもしれない、そういうことのために留保されておる規定、そういう趣旨でございます。

東門委員 まさにそうなんです。何がしかのアレンジメントが必要だと今おっしゃったんですが、そのときのためにやはり地位協定を改定してちゃんと入れておくべきだということを言っているんです。私はそれを申し上げているんです。

 こういうことが起こったとき、停止する。廃止でないことはよくわかっています。停止したときに何がしかのアレンジメントが必要である、そういうことを今おっしゃっているわけですから、そのときのためにも、やはりこれはアメリカとの間で協議を行っておいて、そして地位協定を改定して、有事の際の刑事裁判手続についてもしっかりと基準を盛り込むべきだと言っているわけですが、もう一度お願いします。

林(景)政府参考人 お答えいたします。

 先ほど申し上げましたとおり、これはまさに武力攻撃が発生した状況でございますので、一体どういう必要性が生じるかというところは、あらかじめ決めて、こういうふうにするのだ、こういうことが必要なのだということを確定して取り決めておくということは必ずしも適当ではないのではないか。実際に具体的な状況、敵対行為の状況というものを見まして、そこで具体的な必要性が生じたときにまさに同盟国間で協議をする、こういう仕組みになっておるということでございます。

東門委員 時間ですから、終わります。

自見委員長 次回は、明二十三日金曜日午前九時四十五分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後六時三分散会


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