衆議院

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第9号 平成16年4月26日(月曜日)

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平成十六年四月二十六日(月曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 自見庄三郎君

   理事 石崎  岳君 理事 北村 誠吾君

   理事 久間 章生君 理事 増原 義剛君

   理事 首藤 信彦君 理事 平岡 秀夫君

   理事 前原 誠司君 理事 遠藤 乙彦君

      赤城 徳彦君    岩屋  毅君

      植竹 繁雄君    江崎洋一郎君

      大村 秀章君    佐藤  錬君

      塩谷  立君    菅原 一秀君

      鈴木 恒夫君    谷  公一君

      中西 一善君    中山 成彬君

      仲村 正治君    蓮実  進君

      鳩山 邦夫君    林田  彪君

      原田 令嗣君    宮澤 洋一君

      森岡 正宏君    山口 泰明君

      渡辺 博道君    岩國 哲人君

      大畠 章宏君    奥村 展三君

      鎌田さゆり君    川端 達夫君

      末松 義規君    武正 公一君

      筒井 信隆君    中川 正春君

      中塚 一宏君    長島 昭久君

      楢崎 欣弥君    細野 豪志君

      松崎 公昭君    松本 剛明君

      渡辺  周君    上田  勇君

      大口 善徳君    桝屋 敬悟君

      赤嶺 政賢君    吉井 英勝君

      東門美津子君

    …………………………………

   内閣総理大臣       小泉純一郎君

   総務大臣         麻生 太郎君

   外務大臣         川口 順子君

   国務大臣        

   (防衛庁長官)      石破  茂君

   国務大臣

   (事態対処法制担当)   井上 喜一君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   防衛庁長官政務官     嘉数 知賢君

   衆議院調査局武力攻撃事態等への対処に関する特別調査室長  前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十六日

 辞任         補欠選任

  遠藤 利明君     鈴木 恒夫君

  田中 英夫君     原田 令嗣君

  林田  彪君     渡辺 博道君

  赤嶺 政賢君     吉井 英勝君

同日

 辞任         補欠選任

  鈴木 恒夫君     遠藤 利明君

  原田 令嗣君     田中 英夫君

  渡辺 博道君     林田  彪君

  吉井 英勝君     赤嶺 政賢君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案(内閣提出第九八号)

 武力攻撃事態等におけるアメリカ合衆国の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律案(内閣提出第九九号)

 武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律案(内閣提出第一〇〇号)

 国際人道法の重大な違反行為の処罰に関する法律案(内閣提出第一〇一号)

 武力攻撃事態における外国軍用品等の海上輸送の規制に関する法律案(内閣提出第一〇二号)

 武力攻撃事態における捕虜等の取扱いに関する法律案(内閣提出第一〇三号)

 自衛隊法の一部を改正する法律案(内閣提出第一〇四号)

 日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定の締結について承認を求めるの件(条約第一〇号)

 千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書1)の締結について承認を求めるの件(条約第一一号)

 千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約の非国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書2)の締結について承認を求めるの件(条約第一二号)


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     ――――◇―――――

自見委員長 これより会議を開きます。

 本委員会に付託されております、内閣提出、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案等武力攻撃事態等への対処に関連する七法律案及び日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定の締結について承認を求めるの件等条約三件を一括して議題といたします。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石崎岳君。

石崎委員 自由民主党の石崎岳でございます。

 本日、四月二十六日は、小泉政権の誕生日でございます。国民の強い期待を受けて誕生してはや三年、早いものだなというふうに思いますが、時代の大きな転換点の中にあって次々といろいろな課題が山積する中での政権運営は大変御苦労の多い、重圧のかかる日々ではなかったかというふうに思います。

 最近の世論調査におきましても、小泉政権、小泉内閣への支持は大変高い状況にあります。これは、総理の改革にかける熱意あるいはそのぶれない姿勢、そういったものに対する国民の信頼が非常に高いのではないかというふうに思っております。

 一方で、ここ数年、日本の社会を覆う非常に難しい問題、例えば、強者と弱者、勝ち組と負け組、あるいは中央と地方の格差、地方の衰退、こういった問題を私は大変憂慮しております。

 改革はまだまだ道半ばだというふうに私は思っておりますけれども、政権三年のきょうの感想、そして、これからの改革の決意を総理にお伺いしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 政権を担当して三年が経過いたしましたが、毎日毎日、全力投球でやってまいりましたので、気がついてみたら三年たったかという気持ちです。

 これからも、構造改革なくして成長なしという路線には変わりません。その間、成長なくして改革なしという、いろいろ御批判をいただきましたけれども、やはり、ここに来て、改革路線、正しかったなと。

 特に、財政をそれほど出動させないで民間企業がやる気を持ってきた。企業にしても、個人にしても、みずから助ける精神なくして発展はないと思っています。国家もそうです。そのような環境をどうやって政治が整えていくか。民間の意欲を引き出すか。個人のやる気をどのように伸ばしていくか。国の発展は自国民がまず頑張らなければあり得ないという点がよくわかってきてくれたのではないかなと。

 そこで、そういう企業なり個人なりのやる気を引き出すための改革は何かというと、当初、就任以来、不良債権処理を早く進めるべきだ、いわゆる金融改革。同時に、財政状況がこういう厳しい中で、一年度で増減税を考えるんじゃなくて多年度度で考えたらどうかということで税制改革、減税を先行させた。そして、規制、いろいろ規制がある、この規制を緩和するなり改革するなりすることによって新たな産業が生まれてくるのではないか。

 さらに、歳出面において、財政は限られている、総花的な予算、お金をばらまくんじゃなくて、厳しいめり張りをつけるべきだと。一方でふやす部分もつくらなきゃならない、一方で減らす部分もつくらなきゃならない。こういう中で、不景気のときには、国債を増発して公共事業をどんどんふやせというのが今までのやり方でありましたけれども、私の政権担当以来、公共事業関係費はマイナスになっています。そういう中にあって、伸ばすべき科学技術等の予算、これはふやしている。こういった歳出の見直し。

 こういう改革がだんだんきいてきて、現在ようやく明るい兆しが見えてきたな、この明るい兆しを、これからも改革路線をさらに促進して、各地域に、各中小企業に広がっていくような対策を政府としても十分考えていかなきゃならないなと思っております。

 改革、これからで、長い道のりではございますが、今までいただいた多くの国民の支持、与党の皆さんの御協力、また野党の皆さんの御協力もいただきながら、この改革路線を確固たるものにしていきたいと思っております。

石崎委員 そういう意味で、小泉政権に対する国民の期待、信頼、支持というものが昨日の衆議院の補欠選挙においても与党全勝という形であらわれたんだというふうに思っております。

 さて、当委員会、有事法制関連の国民保護法制の議論でありますが、今、連日のようにこの委員会で議論を重ねてきております。

 それで、総理出席でございますので、いろいろ議論になっております緊急事態基本法の問題について総理の見解をお尋ねしたいというふうに思っておりますが、与党と民主党との間で、来年の通常国会においてこの緊急事態基本法というのをつくろうという基本的な認識で一致をしております。

 私、素人考えでも、やはり今、外敵の侵入という有事よりも、地方の首長さんたちは、大規模なテロ、大規模な災害、こういったものが心配なんだという声が非常に強いわけでございます。

 しかし、総理が三年、総理大臣として官邸におられて、有事即応態勢というか、緊急事態に対する対応、態勢というものができているのかどうか。法律を幾らしっかりつくったとしても、それに対処する人間の問題、体制の問題、これがしっかりしていない限りは物事がスムーズに処理できない、これはもう当たり前のことでございます。日本の官僚システム、横並び、縦割り、ボトムアップ、そういうのが常であります。そういった意味で、緊急の、スピードを要するものに対応できる体制があるかどうか、これは非常に心配であります。

 そういった意味で、今、危機管理庁というようなものをつくるという議論もございますが、この人の問題、体制の問題、これを総理はどのように考えておられるか、御質問します。

小泉内閣総理大臣 緊急事態に対応するための危機管理庁ということを考えてはどうかという御質問だと思います。

 緊急事態に対して、各省庁それぞれ考えがあると思います。これにいかに連携をとって、国として総合的に対応していくかということが重要でありまして、私、就任以来、いろいろな緊急事態がありました。その間、各省の考え方、違う場合もありましたけれども、同じ場合もあります。その都度、どういう事態が発生するかによって、各省としてはこうやらなきゃいかぬ、いろいろ情報が上がってまいります。そういう際に総合的に考えてはどうかということでのいわゆる危機管理庁の考え方だと思うのでありますが、今後、この今までの対応というものを見直して、それぞれの各省がうまく連携協力できるような体制を今政府としてもとっております。

 将来の問題として、本当に一つの危機管理庁みたいな新たな役所をつくるかどうかということについては、私は、今後の検討課題だと思う。現在におきましては、各省うまく連絡をとって危機の場合に対応しようということに努めておりますので、私は、その管理庁体制というのは将来の検討課題にしてもいいのではないかなと思っております。

石崎委員 終わります。

自見委員長 次に、上田勇君。

上田委員 公明党の上田勇でございます。

 きょうは、先ほどもお話がありましたが、小泉内閣が発足して丸三年ということでございまして、本来であれば、この三年間の成果、実績などについても総理に御見解を伺いたいところでありますけれども、私に与えられている時間は十分間でございますので、外交あるいは安全保障にかかわります重要な課題について、総理の御見解を何点かお伺いしたいというふうに考えております。

 まず最初に、先般、北朝鮮北部、ちょうど中国との国境付近で列車の爆発事故が発生をいたしまして、多数の、小学生を含みます千数百人の死傷者が出ているということが報じられているところであります。

 国連機関からの要請にこたえまして、政府としても十万ドル相当の医療関係などの人道物資の支援を行う方針を決定したというふうに伺っておりますけれども、私は、その判断を支持するものでございます。被害が非常に深刻であるというのはテレビの映像等を見ればもう明らかでありますし、今後、国際機関などを通じてさらなる支援の要請があるということも予想されるというふうに思います。

 我が国と北朝鮮との間には、申し上げるまでもなく、拉致問題を初めとするさまざまな難しい課題がございます。しかし、こうした甚大な災害に当たっては、人道的な支援についてできる限りの協力を実施するべきではないのかというふうに考えているところでございますが、我が国としての今後の対応方針について、総理の御所見をお伺いしたいというふうに思います。

川口国務大臣 おっしゃったように、十万ドルの支援の決定をいたしました。これは、国連のOCHAを経由いたしまして援助をするということでございます。

 それで、今後についてでございますけれども、ただいま、二十四日から現地調査に国連機関等による合同調査団が入っております。そして、今後、報告を踏まえながら、この詳細な報告が出てくるということでございますので、必要に応じまして、必要であれば追加的な支援も検討するということで考えております。

上田委員 ありがとうございます。

 我が国と北朝鮮との間に、さまざまな問題がございます。経済制裁を発動すべきじゃないかというような状況下にあるわけでありますけれども、今回の事件の惨事を見るときに、やはり人道的な立場での対応というのもこれからの外交交渉の上でも重要ではないかというふうに考えておりますので、そういった点も踏まえて対応していただきたいというふうにお願いをいたします。

 次に、イラク復興支援におきます国連の役割につきまして、お伺いをいたします。

 総理は、先日、イラクの復興支援について、国連がより関与を強め、国際社会が協力しやすい形となるよう米国に働きかけているんだということを述べられたというふうに報じられております。

 このイラク復興支援というのは国際社会の一致した取り組みが必要でありますし、そのためには国連にもっと中心的な役割を担ってもらう、これは私もその考えに賛同するものでございます。総理の考え、そういう意味では望ましい方向のものであるというふうに考えますし、また、これまで総理とアメリカのブッシュ大統領との間で大変強い信頼関係を築いてこられたからこそ、やはり総理が、こうしたことについても助言をし、また、リードしていくに最もふさわしい立場ではないかというふうに思っております。

 まず、そういう意味で、総理として、これまで、この件についてブッシュ大統領にどのような働きかけを行われてきたのか。また、これからイラク人によります民主的な政権を樹立していくということになるわけでありますが、国際社会が協力して復興支援していく今後のビジョンあるいはその中における国連の役割についてのお考えがあればお伺いをしたいというふうに思います。

小泉内閣総理大臣 イラクを復興させよう、また、イラクを再建し、安定した民主的な政権をイラクにつくるということは、イラク国民にとっても望ましいことでありますが、同時に、中東のみならず、世界全体にとって、日本にとっても望ましいことであります。そういうことから、日本としては、このイラクの復興支援、人道支援にできるだけの協力をしようということで今までやってまいりました。

 これからも、国際社会が一日も早くイラク人の手による政府をつくらなきゃならないということで今努力をしている最中であります。私は、基本的には、イラクを復興させるのはイラク人自身しかないと思っております。国連でもない。アメリカでもない。ましてや日本でもない。イラク人自身が、自分たちの国を再建させる、復興させる、この意欲を持たない限りは、どの国が手を差し伸べたって、それは国家として発展し得ない。そういう点を、これからイラク人自身にもよく考えてもらいたい。反米だ、親米だ、宗派が違うということで対立していないで、お互いが――国際社会が今イラクの復興に手を差し伸べている。チャンスなんです。これを生かすのはイラク国民自身であります。

 そういう意味において、我々は、イラク自身が意欲を持って、希望を持ってみずからの国を復興させよう、再建させようという、そのお手伝いなり協力をしなければならない。そのためにも、やはり国連という国際的な機関がより強く関与することが望ましい。ということは、世界の多くの国がこのイラクの復興に参加できるような環境をぜひとも考えるべきだ。アメリカにおきましてもアメリカの考え方があると思いますが、アメリカの考え方を理解してもらうためにも、国連なり国際社会ができるだけ参加した形でイラクの復興をさせるということを考えると、国連の役割というのは大変大きいと思います。

 そういう点において、私は、今後とも、国連の関与を発揮させて、これが支持されるような形で、早く国際社会の場で支援を受けられるような、また、多くの国が国連のもとでのイラク復興に参加できるような体制をとるべく、日本としても各方面に働きかけていきたいと思っております。

上田委員 ありがとうございます。

 続いて、今度、この委員会で、今、武力攻撃事態に至った場合、そういった事態を想定して、さまざまな措置について論議をさせていただいております。

 武力事態が万が一発生した、あるいは予想されるというような事態になったときというのは、当然、国際情勢も、大変緊迫した状況というのはその以前から続いてくるんだというふうに想定されます。そうした状況のもとでは、特に我が国は、石油あるいは食糧、そうしたものを海外に依存しているわけでありますけれども、そうした緊迫した国際情勢の中で、本当に国民生活あるいは日本の経済活動にとって基礎的となるような物資の安定確保ということも、これは安全保障の観点から非常に重要な課題ではないかというふうに考えているところでございます。

 したがいまして、石油や食糧といった基礎的な物資の安定供給、そうしたことも安全保障の重要なテーマではないかというふうに考えておりますけれども、こうした課題についての御所見をお伺いしたいというふうに思います。

小泉内閣総理大臣 三十年ほど前、日本は石油危機を経験したわけであります。中東の戦争がこれほど日本に直接かかわっているのかということを知らしめたあの中東戦争、一バレル二ドル前後の石油の値段が十ドル前後にはね上がった。私、初めてあのとき当選してきたものですから、よく覚えています。トイレットペーパーがない、洗剤がない、そういう中で、インフレの状況でしたから狂乱物価も経験いたしました。

 そこで、あのとき、不時のときに、有事のときに、こういう危機が起こった場合にこのようなパニック状況を起こさないように、石油の備蓄体制やらあるいは省エネルギー対策やら、代替エネルギー対策やら、いろいろな策を講じてまいりました。現在も、備蓄体制もはるかに今は進んでおります。さらには、石油は確かに外国に依然として多くを依存しておりますが、全体のエネルギーの中での石油に対する依存率は減ってきております。こういうような不断の対策が必要だと思います。

 食糧についてもそうだと思います。いつもお金を出せば食糧が買えるという状況でも、将来を展望すると、そうではないと思います。

 そういう点については、やはり不断の、単なる武力攻撃に対する有事じゃなくて、そのようなエネルギーにしても食糧にしても、有事の場合にどういう態勢、対応をとるかということも極めて重要な、有事に対する備えだと思っております。

上田委員 以上で終わります。

自見委員長 次に、平岡秀夫君。

平岡委員 民主党の平岡秀夫でございます。

 きょうは、有事法制の関連七法案そして三条約承認案の審査ということでございます。極めて膨大な法律案あるいは条約承認案ということになっております。せっかくテレビが入っておりますので、国民の皆さんにできる限り全体像をつかんでいただけるような質問もしていきたいと思いますけれども、その前提として、若干のこれまでの経緯と、今回の法案あるいは条約案がどのような位置づけになっているのかについて、国民の皆さんにちょっと御説明をしておきたいというふうに思います。

 ことしは、自衛隊創設五十周年ということでございます。ハードはできたけれども、その後のいろいろな、どのように動かしていくのかといったような点についての検討がこれまでも進められてきていたわけでございます。

 皆さんも御存じのように、昭和三十八年に、三矢研究という形で、防衛庁によってさまざまな有事法制の勉強も進められました。そして、昭和五十二年七月には、福田内閣によって有事法制についての研究あるいは勉強を進めるという指示が出されているということでございました。そして、その状況を踏まえて、一昨年、政府によって有事関係三法案が提案され、そして昨年の六月に、この有事関係三法案については成立をしたということでございました。

 そして、今回審議をすることになっておりますのは、この色で見ると、黄色いところ、あるいはだいだい色のところになるわけであります。ピンク色のところが既にもうできている法律ということです。

 ちょっと解説しますと、一番上のところにあるのが有事関係、二番目のところが俗に言う大規模テロとかといったような緊急事態、そして、一番最後が大規模災害に対応するような法律の整備ということになります。昨年の通常国会で成立したのは、上の三つ、武力攻撃事態対処法、安全保障会議設置法改正、自衛隊法改正というのが成立しております。

 ただ、今までに既に、個別法として、大規模テロ等に対応するような警察法とか海上保安庁法、自衛隊法というものもあります。災害についても、災害対策基本法というものがあって、そしてさらに災害救助法、大規模地震対策特別措置法といったようなものが既にあるということで、既にあるものはピンクで書いてあります。

 そして、私たちが緊急事態基本法というものが必要であるということを昨年の国会でもお訴え申し上げましたけれども、これは一番左側にある青色で書いたところでございますけれども、これはまだ法案の審議の対象になっていない。一応、今のところ、来年の通常国会で審議を進めるべきではないか、こういう議論になっている、こういうことでございます。

 そして、今、私たちが審議しているのは、一番右側にある黄色、そして、だいだい色の七法案と三条約承認案ということでございます。ですから、非常に個別的な法律について審議を進めているというのが現状であるということをまず国民の皆さんに理解していただきたいというふうに思うわけであります。

 そこで、まず最初に、この有事法制の整備について国民の皆さんが一体どのように見ておられるか、どのように考えておられるかということについて、ちょっと私なりに申し上げたいと思いますけれども、国民の皆さん、有事法制を整備することに積極的な皆さんもいれば、非常に消極的な皆さんもおられる、そういう人たちが一体どういう不安とか疑問を持っているかということを私なりに整理してみました。

 まず第一に、こういう有事法制を整備すると、戦争が行いやすくなり日本が戦争に巻き込まれる危険性が高まるのではないか。また、逆に、我が国が平和への努力を怠ることにもつながっていくのではないか。こういう不安を持っている方がおられます。

 第二に、戦争の危険をいたずらに強調し、我が国を戦時体制に、そして、国民の皆さんを戦争に臨む意識、臨戦意識に駆り立てていくのではないか。

 第三に、有事体制がとられることになった場合、国民の基本的人権、これは思想、信条の自由あるいは表現の自由、財産権の保障などがあるわけでありますけれども、こうした国民の基本的人権が侵されることになるのではないかという不安を持っておられる方もおられます。

 第四に、これはむしろ逆に積極派の方かもしれませんけれども、外部からの武力攻撃により生ずる人的、物的被害から今のような有事法制の整備で本当に国民を守ることができるのか。こういった不安を持っておられる方もおられます。

 そして五番目に、自衛隊、在日米軍が有事において円滑に行動できるのか。また、逆に、自衛隊とか在日米軍が行き過ぎた行動をとることになるのではないか、そうした行き過ぎた行動を防ぐことができるのかというのが五番目の不安、疑問であります。

 そして六番目に、民主的統制、シビリアンコントロールの前提となる、国民の知る権利、そして報道、取材の自由というものが確保できるのか。

 こういったようなことを国民の皆さんは不安に思ったり疑問に思ったりしているというふうに私は認識しているんですけれども、総理はこの点についてどのようなといいますか、私の認識について賛同していただけるでしょうか。

小泉内閣総理大臣 いろいろな国民の心配される点をよく整理されて今述べられたと思っております。

 有事法制賛成論、反対論、民主主義の世界ですからいろいろな意見があっていいと思っております。そういう不安なり心配にどう対応するかというのがこれまた国会の責任であると思っております。

平岡委員 そこで、第一番目に話をした点でありますけれども、戦争が行いやすくなって日本が戦争に巻き込まれやすくなるんじゃないか、逆に、そういう事態になれば日本が平和に対する努力を怠ってくるのではないかという点があったわけです。

 この点について言うと、実は、西ドイツのキージンガー内閣で、一九六七年、昭和四十二年に有事基本法というものを提案いたしておりますけれども、その提案理由の中の一つに、有事に備える態勢を整備することは平和を追求する政策と矛盾しない、こういうふうにキージンガー内閣では言っておったわけであります。この点について、小泉首相のお考えはどんなものでしょうか。

小泉内閣総理大臣 私は、そのとおりだと思っていますし、平和を研究する平和研究ということと戦争研究ということと矛盾するものではないと思っています。

 戦争を研究して、過ちはどこにあったのか、過去の戦争を研究して、これを防ぐためには何が当時必要だったのかということは、とりもなおさず、二度と戦争を起こさせない、平和に関する研究とも言えます。

 しかし、平和研究ならいいけれども、戦争を研究するというのは逆に戦争を起こすんだという考えを持つ方もおられますが、私は、そうは思っていないんです。平和と戦争、これはどちらとも研究しなきゃならない、そして、戦争を研究する場合にも、二度と戦争を起こさないためにという教訓が過去の戦争にはあると思うのであります。

 今言ったように、有事に備えて研究すると有事が起こってくる、こういう考えを持つ方もなきにしもあらずなんですね。備えあれば憂いなしというのは、日本に昔からあることわざなんです。ところが、備えあると憂いあるという考え方をする方もおられるわけですね。

 その点は、私は、備えあれば憂いなしという考え方に基づいて、常に最悪の事態を考えて、この最悪の事態に備えてどう我々は生命なり財産なり、国民全体、国家の安全、独立を図っていくかということを考える必要がある。いわば、最悪の事態を常に考えながら研究してその備えをしていこうというのが、有事の法整備が必要だということを考える方々の大方の意見じゃないかなと私は思っております。

平岡委員 今総理が言われたことについて、私も否定するものではありませんけれども、逆に、今言われたようなことだけで物事を進めていこうとすると、先ほど私が申し上げたようなさまざまな不安とか疑問を国民の皆さんにも与えることになるということでございますので、その点については、この後、個別的に、今回の法案あるいは条約承認案に関連してお話を申し上げたいというふうに思います。

 その前に、ちょっと総論的に首相にもお聞かせ願いたいと思うんです。

 昨年の有事法制三法案の成立、そして今回、七法案三条約案を審議しているということで、有事法制がかなりこれで整備されてくるような状況にはなっているんですが、総理自身が考えておられるこの国のあるべき姿、つまり、有事法制を今一生懸命やっているわけですけれども、これはあくまでも憲法の枠の中でいろいろやっているわけでありますけれども、我々はそうでなければいけないというふうに思って進めているわけでありますが、総理自身が考えておられるこの国のあるべき姿というのは一体どんなものなんでしょうか。

小泉内閣総理大臣 これを時間をいただければ一時間でもお話しできるんですが、限りがありますから簡単にお話ししなきゃいけないと思うのであります。

 日本としては、日本の独立と安全、いわゆる平和を守るためにどういう態勢をとっていたらいいかというと、日ごろから、いざ外部の侵略があった場合にどのように国民の生命と安全を守るか、どのような防衛対策をとっておいたらいいか、自国の努力。この自国の努力で足らざるところは、それでは、どの国と協力して外部の侵略に対して防ぐかという点。さらに、こういう外部の勢力に、日本を侵略しよう、侵害しようという気を起こさせないためには不断にどのような努力をしておけばいいか。

 そして、平和のうちに安定できているならば、日本の平和と発展は日本だけでできるものではない、世界各国との協力によって日本の平和と発展はあるんだ、国際社会の平和と安定に日本がどのような形で協力できるか、そして、ひいては、日ごろの日本の国際社会における行動が多くの世界各国から信頼を得ること、そういうことによって、日本は世界の中で、国際社会の中で責任ある国である、どうしても必要な国であるという理解を、認識を持ってもらうために、不断の日本としての外交努力、国際協力体制、そういう点をふだんから考えていかなきゃならない。

 今日まで、日本の活躍というのは、日本政府のみならず、日本国民自身の世界における活動、日本企業のその製品をもって、日本企業のつくった品物はすばらしい、あるいは日本人自身が、個人個人がそれぞれの持てる力を、日本国だけのためだけじゃない、発展途上国にも、世界のためにも、多くの青年男女がみずからの力を、発展途上国に行って持てる力を発揮して、その人たちの国のために協力している個人の努力。ああ日本人はすばらしい、日本人なら信用できる、日本企業はいい活動をしている、そういう全体の活動が、日本というのは信用できる、日本という国民は信頼できる、そういう国になることによって、日本は国際社会の中で責任を果たすと同時に、日本という国が必要だという評価が出てくることによって、日本の平和と発展を国際社会の中で維持していくためには、どう各国と協力していくか、これが極めて大事だと思っております。

平岡委員 今のお話も、率直に言って、私も特に異論を挟むところではないんですけれども、一つ、自民党のマニフェストの中に、新しい憲法草案をつくるということで、立党五十年を迎える二〇〇五年に憲法草案をまとめるというのがあるわけですね。今総理が言われたような日本のあるべき姿を考えたときに、これは憲法改正の内容に何か影響を与えますか。どうでしょう。

小泉内閣総理大臣 これは、二〇〇五年の秋ごろまでに自由民主党は党としての憲法改正案というものをまとめるように、今、協議を進めているところでございます。

 その中で、日本としては、国際社会の中で「名誉ある地位を占めたい」という、今、憲法の前文にうたっております。やはり、国際社会から信頼される、信用される国は、日本かくあるべしという精神というか理念というか、それが新しいこれからの憲法が改正される場合には当然必要だと私は思っております。

平岡委員 先ほどのあるべき姿論からすると、必ずしも、憲法の具体的な規定をどういうふうに変えなければいけないのかということは明確ではなかったように思います。今の憲法でも十分に対応できるようなあるべき姿だったような気がしますけれども、これはまた後日、いろいろ議論する場があろうかと思いますので、そちらの方にしたいと思います。

 そこで、今回の有事法制について、ほかの側面から見てみたいと思うんです。

 人間の安全保障委員会というのが国連にあります。これ自身は、二〇〇〇年九月の国連ミレニアムサミットで我が国が呼びかけてつくられた委員会で、人間の安全保障に関する報告書を昨年の五月に出しておりまして、昨年の二月に、共同議長である緒方貞子さん、アマルティア・セン共同議長から小泉総理にも、こういうものをつくりましたというような報告があったというふうに思うんですけれども、この人間の安全保障というのは、考え方としてこんな考え方に立っています。ちょっと読み上げます。

 国家はいまでも人々に安全を提供する主要な立場にある。しかし今日、国家は往々にしてその責任を果たせないばかりか、自国民の安全を脅かす根源となっている場合さえある。だからこそ国家の安全から人々の安全、すなわち「人間の安全保障」に視点を移す必要がある。「人間の安全保障」は、国家の安全保障の考え方を補い、人権の幅を広げるとともに人間開発を促進するものである。そして多様な脅威

これは、戦争の脅威もあれば、飢餓の脅威といったようなものもありますけれども、

 多様な脅威から個人や社会を守るだけでなく、人々が自らのために立ち上がれるよう、その能力を強化することをめざす。

というのが、この人間の安全保障についての考え方でありますけれども、この考え方、今回の一連の有事法制の整備に当たってどのように反映されているかということについて、総理のお考えをお聞かせいただきたいというふうに思います。

小泉内閣総理大臣 人間の安全保障、これについては、今、国境を越えて一人一人の安全に対する確保をどうやって対応していくか、あるいは人間の安全を保障していくかという問題は、今お話しのように、日本の緒方さん、そしてケンブリッジのセン教授、先日、日本を訪問されまして、私もお話を伺いました。

 国境を越えて、病気の問題等、一国では対処できない、難民等、国を追われた方々もおられます。そういう人間の一人一人の安全ということに対して各国政府がどのような配慮をしていくかという観点は今までにない観念だったと思いますが、現在の新しい国際社会においては、国を失った方々もたくさんおられるわけであります。そういう中にあって、一人一人の人間に目を配ろうという考え方は私は極めて大事であると思いまして、当然、有事の際には、日本国内の中でで起こった有事に対しても日本国民だけを守ればいいかといえば、いいものじゃない。やはり、一人一人の人間に対してどのような安全確保策をとっていくかという視点は重要だと思っております。

平岡委員 人間の安全保障の考え方は非常に重要であるという総理の御認識を示していただいたわけでありますけれども、果たして今回の有事法制がそういう視点でうまく組み立てられているのかどうか、私たちは十分にチェックしていかなければいけない。いろいろなところでまだまだ足りないんじゃないかという感じもいたしているところでございます。

 そこで、今度、総論的な話は終わりまして、各論的な話に入っていきたいというふうに思うわけであります。

 先ほど私が、今回の有事法制の整備は、戦争の危険をいたずらに強調し、我が国を戦時体制に、あるいは国民に臨戦意識を駆り立てていくようなものではないんだろうか、こういう不安を持っておるということをちょっと申し上げましたけれども、例えば、今回の国民保護法案と言われるものの中に、国民保護協議会というのをすべての都道府県あるいは市町村に設置するということが義務づけられているわけでございます。

 しかし、本当にどんな武力攻撃事態があるのかというふうに議論がありますけれども、その中では必ずしも、今本当に危険があるなというような状況というのはなかなか皆さんもないのではないかという指摘もあるところでございまして、こんなものを各市町村全部につくっていくというようなことは、何か、本当に大変危険が迫ってきているかのような印象も与えるような気がするんです。

 例えば、逆に、災害対策基本法の中に市町村防災会議というものが、これは市町村の場合は設ける場合と設けない場合もあるというふうな位置づけになっているようでありますけれども、つまり、私が言いたいのは、ただ単に武力攻撃に対応するための組織をつくるというのじゃなくて、やはり全体的に、国民のいろいろな被害というものを防いでいくために総合的な組織として一体化させたようなものとしてつくるべきではないかというふうに思うんですけれども、この点についていかがでしょうか。

井上国務大臣 今、武力攻撃がありましたときの対応する組織といいますか、そういうものと防災関係の組織というものとの一体化というんですか、共通化というのか、そういうことが考えられないかということだと思うんです。

 私どもがこの協議会をつくりますのは、武力攻撃事態におきましては、国から地方まで一体として同じ方向を向いた対応をとる必要があるわけでございまして、もう私が御説明するまでもなく、国の基本指針を中心にしまして、各都道府県、市町村がそれぞれの状況に応じた国民保護の計画をつくることになっているわけでございます。

 そうした場合に、地方の方におきましては、いろいろな状況があると思います。それぞれの市町村ごとに状況も違います。例えば避難をいたします場合も違うわけでありますから、広くそういう市町村の意見を集約してくるとか、あるいは、そういう計画に直に関係なくても、国民保護のために検討すべきこと、あるいは市町村として備えることがあれば御意見を伺う、そういう場としてこの協議会をつくっているわけでございます。

 そういうことで、何か一つの体制に持っていくために全国一律にこういう協議会をつくって特定の方向に誘導していくということじゃございません。あくまで、その地域の実態に即した計画であるように、その地域の皆さん方の御意見を広く伺って、そういうものを計画なりそのほかの対策に活用していきたい、こういうことでございます。

 地域防災会議につきましては、確かに、共通するところも多いんですね。避難でありますとか救難につきましては大変共通していると思うんです。ただ、地域防災会議といいますのは、これは実施主体でございます。これが防災を実施するということでございまして、そういう点で、協議会の場合は諮問機関でありますので、基本的に性格が違います。やはり有事の場合は、都道府県知事とか市町村長というのを中心にして対応していくということに相なるわけであります。

 どういうところが違うかといいますと、共通するところが多い半面、例えば生物化学兵器で攻撃されたような場合に、果たしてこの地域防災会議のそういうメンバーで、体制で対応できるのかというようなこともありましょうし、あるいは、大規模に避難をするときには、広域的に、例えば一つの県から他の県へ避難をしますような場合は、これはなかなか地域の防災会議では対応できないということがございまして、この二つを一つにするということは難しいんじゃないかと思います。ただ、委員がお互いにダブるといいますか、それは大いにあり得ることだと思います。

 要は、それぞれの目的に従いまして有効に組織が動くようなことを考えていくということでございまして、屋上屋を重ねるようなことは毛頭思っておりません。その目的によりまして、多少メンバーも違う、あるいは審議事項も違うということでありまして、そういうことは明確にしていくということでありまして、ダブるところにつきましては、お互いにダブるような形で運用していったらいいと思うんです。例えば訓練なんかはそういうことじゃないかと思っております。

平岡委員 今、最後に訓練の話にちょっと触れられました。訓練についても、この法案の中では、必ずしも国民の義務という形ではないんですけれども、「国民の保護のための措置についての訓練を行うよう努めなければいけない。」そして、国民、住民の皆さんに対しては、その「訓練への参加について協力を要請することができる。」こんなような仕組みになっているわけでありますけれども、訓練というのは、これは政府の防災訓練大綱なんかを見てみても、どういう状況の中で行われるかという状況設定とかあるいは被害想定というものをして行わなければいけない、そういうのが重要なんだというふうにありますね。

 そうすると、例えばこの有事の関係の避難訓練というのは一体どうなるのかというと、どこかの国からこういうふうに攻められてきた、どこかの国からこういう攻撃を受けた、これに対応してこういう訓練をするんだというのは、私は、物すごくあり得ないケースの中で国民の、あるいは子供たちの危険意識をあおっていくという、そんなことになってしまうんじゃないかというふうに思うんですね。

 だから、そういう意味でいくと、訓練自体も、やはり国民の皆さんがいろいろなリスクを抱えている中、自然災害もあれば、大規模な人的な災害もあれば、いろいろな被害をこうむるという状況の中で必要最低限の訓練として行っていくというような姿勢が大切ではないかというふうに思っているんですね。

 そういう意味で、この有事法制の中で行われている訓練だけを取り出して、訓練をするんだ、さあ、こんな状況だからこうやるんだというのは、私は、ちょっと国民の意識をあおり過ぎではないかというふうに思うんですが、この点は、総理、お聞かせいただけると思いますけれども。

井上国務大臣 避難とか救援というようなこと、あるいは災害が拡大することを防いでいくというような点につきましては、これは共通するところが大変多いと私どもも思っております。そういうものにつきましては、特別に有事だからといって訓練をする必要はないので、これは防災の訓練と一緒にしまして有事のときの訓練もすべきだと思います。

 ただ、有事の場合というのは想定されるケースというのは幾つかありますから、それに応じまして特別に訓練をしておいた方がいいというようなものについてはやはり訓練をしておいた方がいいと思います。それこそ最低必要限度のところは実施をする必要があるんじゃないか、こんなふうに考えます。

平岡委員 今の井上大臣との質疑応答を踏まえて、総理としてはどのようにこの問題についてはお考えになりますか。

小泉内閣総理大臣 それは、防災の点においても、常に訓練しているという状況ではありません。しかしながら、九月一日になれば、毎年、防災に対する訓練が各地域において行われております。将来、有事の場合において、しょっちゅうやるというのじゃなくて、ある時点において、必要最小限度の訓練というのはいつかの時点においてはやってもおかしくないのではないか。

 また、どういうような訓練が必要かという点についてはそれぞれ専門家の意見を聞きながら、また、各地方自治体、住民の参加、どの程度にするのかというのはやはり個別の対応はあると思いますから、その点については十分理解の得られるような訓練が必要じゃないかなと思っております。

平岡委員 組織的には、先ほど危機管理庁の話も質問があってお答えになっておられましたけれども、そういう問題も含めて、この組織のあり方あるいは訓練のあり方というのはやはり慎重に考えていかなければいけないというふうに私自身は思っていますので、この点についてはもっと詰めていきたいというふうに思っています。

 次の話題に移りたいと思うんですけれども、先ほど言いました不安の中の一つに、有事体制がとられることになった場合、国民の基本的人権が侵されることになるのではないか、こういうような不安があるということで申し上げました。

 私があるところで読んだ本で、司馬遼太郎の「歴史と視点」という本の中にちょっと出てきたくだりだったんですけれども、司馬遼太郎さんは戦争直前には北関東の戦車部隊に所属しておったということのようでございまして、そのときに、大本営の将校がやってきて、敵が上陸してきたときにこの戦車部隊はどう行動するかというようなことについてのいろいろな指示といいますか、協議があった、こういうことのようでございます。

 そのときに、当然、敵は上陸したら北関東に向かっていくということになって、それで今度は迎え撃つのが北から南へおりてくるという形になる。そのときに、当然、上陸したところの周辺にいる住民の皆さんは北の方へ逃げていく。そうすると、逃げていく人たちと、戦車が迎撃に行くのがぶつかってしまう。

 このときに交通整理を一体どうするのかということを司馬遼太郎さんが聞かれたんだそうです。そうしたら、その大本営の将校がしばらく私をにらみ据えていたが、やがて昂然と、ひっ殺していけというふうに言ったと。つまり、戦車部隊はもう住民をほったらかしてどんどん行け、こういうことを言ったということのようなんですね。

 それで、今回、私がこの法案を見てみますと、ちょっといろいろ不安になる点があるんです。例えば、港湾、空港、道路の利用に関して、武力攻撃事態対処法で武力行使を排除するために軍事行動が行われる、それと、国民保護法の中に、国民の皆さんが避難をするときにいろいろな道路を使ったりしなければいけないというようなことで国民保護措置がとられる、これが競合する場合にどっちが優先するのだということを実は質問主意書で問い合わせたんですね。そうしたら、対策本部長の総合的な勘案の中でその時々によって決められるんだという答弁しか返ってきていない。

 私は、こういう事態、何のためにこの有事法制を整備するのかと考えてみたら、やはり国民を守るためということなんだろうと思うんですね。だから、そういう意味では、国民保護措置と迎撃するための対処措置が競合するような場合、先ほどの例でも言ったように、まず国民を守っていくということが優先するんだという基本原則をこの法律の中できちっと位置づける必要があるんだというふうに思うんですけれども、総理、どうでしょう。

小泉内閣総理大臣 要するに、有事法制というのは国民を保護するための法制ですから、その点については、いろいろな具体的事案について、危機の対応というのはさまざまだと思います。要するに、国民を保護するために最悪の事態に備えよう、こういう視点はこの有事法制において欠かせない点だと思っております。

平岡委員 それから、今回の法律の整備を見てみますと、いろいろと国民の皆さんが有事態勢の中で、例えば、何とか命令を出されたりとか、いろいろな収用をされたりとか、いろいろな形で権利を制限されたり義務を課されたりするというようなことがあり得るわけですね。

 そこで、この法案の中でどういうふうにしてあるかというふうに見ますと、第六条に「国民の権利利益の迅速な救済」ということが書いてありまして、例えば、国民が受ける損失補償あるいは不服申し立て、訴訟その他の「救済に係る手続について、できる限り迅速に処理するよう努めなければならない。」という努力義務規定が置いてあるだけで、具体的には何らの整備もされていないということになっているわけですね。

 例えば、武力攻撃事態になったときに、さまざまな命令が出たり処分が行われるということに対しては、これは迅速な救済を図っていかなければいけないであろうし、そして、事態が終了した後には膨大な数の救済事案がある可能性もある、そういうものに対してきちっとした迅速な対応をしていくという必要がある。それぞれに応じて、一般の仕組みではなくて、しっかりとした国民の権利救済をする仕組みというものをこの法制の中で整備しておかなければいけないんじゃないかというふうに私は思うんですけれども、この点についてはどのようにお考えになるんでしょうか。

井上国務大臣 一応、この法律的な救済の制度につきましては、それぞれの法律によりまして、行政不服審査法なり国家賠償法なり等々で措置されるのでありますけれども、今のお話は、そうではなしに、いろいろな苦情が出た場合にどう対応していくのかということだと思うのでありますが、この法律の方では、一般的に、迅速に対応しなさいということでありますが、私どもは、基本指針の中でもう少しそれをはっきりさせたいと思っております。すべての案件に優先をしてこれを扱うとか、あるいはどうしても扱い切れないほど申請があるような場合には人員を増加するとか、そういうような適切な対応によりまして事務を処理していく、そういうふうなことまで規定をしたい、そんなふうに考えています。

平岡委員 法律で努力規定としてしか書いていないので、今大臣が言われたこと、具体的に何なのかというのが私にもはっきりとわかりませんでした。できたら、どういう形での権利救済手段の迅速化を図っていくのかということについて、具体的な方策についてぜひまたお示しいただきたいというふうに思います。

 そこで、次の問題に移ります。

 実は、今回の有事法制の整備の中では、先ほど言いましたように、七法案の審議とともに三条約の承認案件があるわけですね。その中に、ジュネーブ条約の第一議定書、第二議定書というものについての批准の問題がございます。

 このジュネーブ条約については、これまで長い間、批准できない状態で来たということで、今回批准するということについてはそれなりに大きな意味もあることだろうと思うんですけれども、ただ、これを批准したからといって、では、どう違ってくるんだ。いろいろな法案の中身が出てきていますけれども、必ずしもジュネーブ条約をそっくりそのままうまく受けとめていないんじゃないか、そんな懸念もあるわけですね。

 例えば一つが、無防備地区宣言というのがあるわけですね。

 これは、第二次世界大戦の中でもパリとかローマが大きな被害から救われたのは、そこを守っていた防衛守備隊長が、司令官が無防備地区を宣言するというような形で救われた。だから、東京なんかの大都市の場合、これだけの大規模なものは避難するといったってとても避難できないような状況にある、ということになると、もっと別のことを考えなきゃいけないということで、この無防備地区の宣言というのもあり得るのではないかという感じがします。

 それから、これは一九八一年ぐらいに報道された話ではありますけれども、沖縄の前島というところで、そこにいた校長先生が、上海にいた経験を生かして、前島は軍隊を全然入れないでここは無防備地区という形でいくんだ、そういう位置づけの中で沖縄戦の中で全く被害を受けなかった、そういう経験があるわけですね。

 私は、こういう経験をよく日本としても勉強しておかなきゃいけないんじゃないかというふうに思うんですけれども、この前、同僚議員の首藤議員がこの点についてちょっと質問したら、いや、この条約で宣言できる主体となっているのは地方公共団体なんかありませんと。

 多分、政府の考え方では、政府あるいはその地区を管理している司令官ぐらいしかないのかもしれませんけれども、私としては、国民の保護、住民の保護、守っていく責任を一義的に負っている地方公共団体の首長というのがやはり大きな役割を果たすんだろう、そうなると、たとえ政府のような立場に立ってみても、地方公共団体の首長が無防備宣言を出せないという立場に立ってみても、むしろ、地方の首長が政府に対して、あるいは権限ある者に対して、無防備地区宣言をぜひ出してくれというような要請をする権限というものをこの法整備の中でやっていったらいいんじゃないかというふうに思うんですけれども、この点、井上大臣、どうでしょうか。

井上国務大臣 武力紛争の当事者というのはあくまで国でありますから、国がどうするか、そういうことと大きく絡むことだと思います。いろいろな御意見があろうかと思うのでありますけれども、自治体が自治体だけの判断でやるというのは適当ではない、やはり国としてどうするか、無防備地区にするのかどうかというようなことを判断すべきだ、こんなふうに考えます。

平岡委員 ジュネーブ条約第一議定書をせっかく批准するのに、こういう制度に対して全く国として用意をしていないというのは、私は、政府の検討が足りないんじゃないかというふうに思うんですね。

 ちょっと時間がなくなってしまいましたので、最後の質問に移りたいと思うんです。

 実は、日本国内で有事法制の整備をするということについては、アジア諸国、特に近隣の諸国においては非常に関心を強く持っているというふうに思います。昨年、有事法制ができた際にも、たまたま成立した日と韓国の大統領がこちらに来られた日が一緒になるというような非常に変なめぐり合わせになったものですから、韓国の方からも大変批判が強かったわけでありますけれども、有事法制を整備する中で、日本が再び軍事大国化するんじゃないか、あるいは日本が再び何かアジア諸国に対して変な影響を与えてくるんじゃないか、こういう危惧を持っておられるわけですね。

 そういう意味でいくと、やはり小泉首相御自身が首脳外交としてしっかりとした日本のスタンスを諸外国に対して伝えていく、説明していく、理解を求める、こういうことが必要だろうと私は思うんですね。今見ていますと、いろいろな問題を抱えておられて、必ずしも小泉首相がそういう役割を果たしているとは私はちょっと思えないんですけれども、この点について小泉首相はどのようにお考えになっているか、ここで明言していただきたいというふうに思います。

小泉内閣総理大臣 日本は平和愛好国家であり、民主的な政権である。そして、国際社会の中でいかに協力が必要か、日本の持てる力を国際社会にこれからも発揮して世界の平和と安定の中に日本の発展もあるんだという考え方、これについては、常日ごろ、いろいろな会議の場においても、会談の場においても表明しているところであります。これからも、各国にそうした日本の姿勢といいますか、日本の考え方を理解していただくような努力は必要だと思っております。

平岡委員 いろいろ質問したいことはまだまだたくさんあるんですけれども、時間が参りましたので、これでおしまいにします。

自見委員長 この際、細野豪志君から関連質疑の申し出があります。平岡君の持ち時間の範囲内でこれを許します。細野豪志君。

細野委員 民主党の細野でございます。

 今回、この七法案三条約が出てきたわけでございますけれども、その中でも、特に国民保護法案につきましては、昨年成立をした三法の際に、政府の側は二年以内にというふうに書いておったんですが、私ども、もっと早くこれは整備すべきであるということを主張して、政府の方で出されたものというふうに承知をしております。そういう意味では、私どもも、特にこの国民保護法制の部分については、建設的に、できる限り前向きな議論を行ってまいりたいというふうに思います。

 まず初めに総理にお伺いをしたいんですが、総理がどういう有事のイメージを持っておられるかということなんですけれども、二年ほど前からこの有事法制の議論がずっとされてきたわけですが、その間、小泉総理は、何度か、いろいろな有事が考えられる、ただ、その中で、テロに対してきちっと対策を立てなければならないということをおっしゃってこられました。

 昨年、事態法が成立をしたわけですが、それは、大規模な侵略行為を前提として、テロが入っていなかった。この部分に関しても私どもも主張いたしまして、去年成立した法案の中に、テロについてきちっと対応するようにと、補則の二十五条の二項でございますが、それが書かれたということでございます。

 まず初めに総理にお伺いをしたいのは、今回出てきた国民保護法案の中にある、これは緊急対処事態ということになるんですが、テロ対策は法整備としてこれで十分なのかどうか、どういう評価をされているか、そのことをお伺いしたいと思います。

井上国務大臣 委員からお話がありましたように、武力攻撃事態対処法の中でいろいろな審議がございまして、御案内のようなテロに関連した規定について修正が行われたわけでございます。

 私どもとしては、そういう二十五条の規定、それからさらに、その法案自身の審議の中でいろいろな議論が出ました、あるいは都道府県知事さんとの懇談の席でもテロについての意見が出まして、それらを総合的に考えましてこのたびのテロに関する規定をまとめたというものでございまして、この法律で規定すべきこととしてはおおむねその中に盛ったというふうに考えております。

 もっとも、これはいろいろな立法論がありまして、御意見があることは十分承知をしておりますけれども、現行法の体系の中ではおおむね最大限の配慮をして規定した、こういうことが言えるかと思います。

細野委員 井上大臣には個別のことでお伺いをしますので、きょうはせっかく総理に来ていただいているので、私が総理をお願いしたときは、できるだけ総理に御答弁をいただきたいと思います。

 総理、いかがですか。

小泉内閣総理大臣 有事ですから、武力攻撃だけでなくて、国民の生命と安全を脅かすさまざまな事態は、起こってくる可能性はあるわけです。そういう点については、やはり我々、想定し得ないことを想定するという、極めて難しいことでありますけれども、できるだけ人事を尽くしてそのような備えをしていく必要があると思っております。

細野委員 緊急対処事態というのが、今回、対応の中に入ったんですね。それ自体は、私どももこれは評価をしております。むしろ、去年の法案の中にもきちっと入れておくべきであったという主張をしてまいりました。それ自体は評価をしているんです。

 ただ、私、これからちょっと詰めて話をしていきたいと思っているんですが、その法案の中身ですね。実際にそれが起こったときにどう対応するのか、そのあたりについては今回の法案は非常に問題が多い、そう考えておりまして、その部分について、きょうはちょっと詰めて議論をしていきたいと思いますので、ちょっとパネルをごらんいただけますでしょうか。大臣の方にも配ってありますので、ぜひごらんください。

 先ほど申し上げましたとおり、もともと去年の法案から出てきていたのが武力攻撃事態ですね。それに対して、今回、もう少し危機レベルの低いものとして緊急対処事態というのが国民保護法制の中に出てきました。

 具体的にもう政府の方で類型化も一部なされておりまして、武力攻撃事態の方に関しては、四つ挙がっておりますが、着上陸侵攻のようなもの、ゲリラや特殊部隊による攻撃、さらには、弾道ミサイルの攻撃、航空機による爆撃、こういうものが類型化をされている。この部分に関しては、私もいろいろな専門家から話を聞きましたけれども、ある程度、類型化として蓋然性の高い形になっているのかなというふうに思っております。

 片や、緊急対処事態の方、政府のは三つ例示をしてこられているんですね。原子力発電施設の破壊、炭疽菌等を用いたテロ、航空機による自爆テロ。これは、先日、委員会の中でも前原委員の方から指摘をさせていただきましたけれども、類型というよりは例示ですね。こういうものが考えられますということであって、これは十分類型化はされていないと私どもは考えております。これは井上大臣に、ぜひきちっとしたものを出していただきたいということをまた重ねて申し上げておきたいと思います。

 その前提で、前原委員への答弁の中でも、いろいろやりとりがあったわけですが、井上大臣は、先日、この部分に関しては、類型化はされていないけれども、概して言うと、国民の保護措置が必要となる事態、避難であるとか警報であるとか、そういうことが必要になるものについてはこの緊急対処事態に入るんだというような、そんな答弁をされました。

 これが両事態であります。

 私、今回、実は、この法案、非常に入り組んでおりまして、見にくいんですが、それぞれの共通点と相違点を整理してまいりました。

 まず、共通点ですが、この事態のそれぞれの例を見ても明らかなように、国民の生命、身体、財産が危機にさらされる可能性がある。これがまず基本認識ですね。

 そして二つ目に、私権の制限がなされる。これは、緊急対処事態もしくは武力攻撃事態ですから、具体的に申し上げますと、土地家屋が使用されたり、また、物資の保管が命令されたり、医療の提供を義務づけられたり、これが課される。これが二つ目です。

 そして三つ目が、後ほどこれも議論したいと思いますが、指定公共機関が指定されて、例えば放送局なんかが指定されて、そこで警報の発令が義務づけられる。これも共通点であります。

 そして最後に、自衛隊が恐らく出動するであろう。武力攻撃事態の場合には、恐らくは防衛出動が下令されます。そして、緊急対処事態の場合は、治安出動になるのか、もしくは警護出動になるのか、それは十分まだ、一対一の対応ではないということでありますけれども、自衛隊の行動が規定されるであろう。

 こういう共通点が実はあるんですね。

 その前提で、私、相違点を見て、これは明らかにおかしいなということを感じた部分がございますが、そのことをまず指摘させていただきたいと思います。

 事態が認定をされた後に対処基本方針というのが出されるんですね。基本方針が出される。その中身が、実は武力攻撃事態と緊急対処事態で大きく違います。

 まず、武力攻撃事態の場合は、そもそも事態の認定の前提となった事実、これが書かれています。そして、それに対しての政府としての全般的な方針、これも書かれているんですね。そして三つ目に、自衛隊の行動、ここで恐らくは防衛出動が下令されますよということがここに書かれる。そして四つ目、今回、米軍の円滑化法案も出てきましたから、この基本方針の中に、米軍にどういう協力をするかというのも書かれるんですね。そして最後に、国民保護措置が書かれている。それに対して、緊急対処事態の方は、上の四つは書かれないんですね。住民の保護に対する措置のみが書かれるんですね。

 そこで、井上大臣にお伺いをしたいのは、国民の側から見ると、生命の危機がある、そして私権も制限される、メディアに対するある程度の国の管理もなされる、自衛隊も出動していく、事態は同じなんですね。ということになれば、当然、事態認定の前提となった事実は何なのか、政府の基本的な方針は何なのかというのは、私は説明すべきだと思います。この緊急対処事態の方の基本方針にそういう基本的な認識が書かれないのは、これは何でですか。

井上国務大臣 これは、こういうような整理になりますけれども、若干、事実と違っているように私は思います。

 緊急対処事態というのは、閣議で認定するわけですね。したがいまして、その認定はしかじかの理由で認定をするということでありますから、事態の状況、なぜそうなのかということは記述するわけです。あとは、どういうような方針で対処するのかということ、これも書かないとはっきりしませんね。そういうことがはっきりしないと、どういう保護の措置、国民に対してどういう保護をしたらいいのかというようなことが明らかにならないわけであります。つまり、逆に言えば、しかじかの保護をするのはこういう事態だから、あるいは政府としてこういう対処をするから国民の保護の措置が必要ですよ、こういう仕組みなんですよ。

 ですから、この表をもとにして言いますと、事態の認定及び認定の前提となった事実も書きます。それから、全般的な方針も書きます。ただ、自衛隊につきましては、私どもは、これは防衛出動ではありませんから、これについては、治安出動まではあり得ると私は思いますが、そこまでです。それから、あるいは警察の一定の命令によります措置はあります。そういうことであります。米軍の行動は今のところ予定をいたしておりません。

 そういうような状況でありまして、確かに、武力攻撃事態の場合は、日本の有事でありますからきっちりしたことを書きますが、多少、緊急対処事態は、レベルは違いますけれども、事項としましては、今委員がおっしゃるような事項を記述いたしまして、どうして国民の保護措置が必要なのかということは明確にしたい、こんなふうに考えます。

細野委員 閣議の中で明確にされるとおっしゃいますが、武力攻撃事態の基本方針も、これも閣議決定されるんですよね。当然そこで説明されるのはこれは当たり前の話で、私が申し上げているのは、閣議というのはオープンじゃないでしょう。国民の側から見たら、この基本方針を見て、どういう事態が起こっているのかというのを一番明確に知り得るわけですよ。

 法律の中に基本的な認識を書かなくてもいい理由、基本方針に書くべきじゃないかということに対して全然明確な答弁になってないですよ。なぜ、基本方針に書かなくていいのか、法律に書かなくていいのか。この部分ですね、基本方針の中に。もう少し明確に答弁してください。

井上国務大臣 これは法律の中にも書いておりまして、何条でありますか、ちょっと条文……(細野委員「書いてないですよ」と呼ぶ)いやいや、記憶しませんが、この対処方針の記述、それは書いてございます。

細野委員 いや、大臣、通告してあるんですよ。それはないですからね。対処基本方針の中に、事態の基本認識そして全般的な方針について書くというのは書いてあるんですか。では、きちっと答えてください。

井上国務大臣 第百八十一条、「内閣総理大臣は、緊急対処事態に至ったと認めるときは、その認定について、閣議の決定を求めなければならない。この場合において、内閣総理大臣が、併せて緊急対処事態に関する対処方針の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。」そして、その後ずっと、この中身について記述をされているわけであります。

細野委員 何を言っているんですか。百八十一条の二項を見てください。二項に、具体的に、基本的な認定となった事実を書くと書いていますか。書いてあるのは、「住民の避難に関する措置、避難住民等の救援に関する措置、緊急対処事態における災害への対処に関する措置」としか書いてないじゃないですか。

 大臣、こんな基本的な認識で答弁を間違うようじゃどうしようもないですよ。

井上国務大臣 二項にはずっと書いてありまして、最後に、「その他」「全般的な方針を定めるものとする。」こう書いてあるわけであります。

細野委員 いいですか。武力攻撃事態の方には、これはきちっと列挙されているんですよね。緊急対処事態には、国民保護のための措置が書かれると書いてあって、最後に「その他」「方針」と、事実は書かれない、基本的な事実も書かれないし、方針も「その他」と、最後につけ足しにすぎないんですよね。これは明らかに国民に対する説明責任を欠いています。ここをきちっと書くべきだと、井上大臣、思われませんか。再答弁をお願いします。

井上国務大臣 これは確かに、有事の場合と緊急対処事態の場合は違うわけでありますから、その差はございますけれども、実質的な中身につきましては、対処をするのに遺憾のないような全体の、何といいますか、対処方針を書く、こういうことであります。

細野委員 総理にも後ほど聞きますので聞いておいていただきたいんですが、国民保護法案の中に、突然、緊急対処事態と入ったんですね。私ども、何度もやりとりをする中で政府から説明を受けましたが、当初は、どういう規定になるのか明らかにならないような漠然とした書き方で資料が出てきた。ことしに入ってから徐々に詰められてきて、こういう形になったんですね。大臣の答弁というのは、要するに、国民保護法案の方に入っているものだから、それだけとりあえず書いたんです、大急ぎでつくったからそうなっているんですということを実は意味しているんですよ。

 後ほど総理にこれは聞きますが、もう一つこの背景にある、このことによる重大な懸念を、私、表明しておきたいと思うんです。

 緊急対処事態が武力攻撃事態に至る可能性というのは大いにあるわけですね。例えば、炭疽菌を用いたテロが行われて国内が騒然とした形になったときに、緊急対処事態ですよ、それに乗じてミサイル攻撃をなされるようなことは十分想定をし得る。つまり、このエスカレーションにどう対応するかというのは極めて重要なんですよ。

 これは、私もどういうことがあり得るかといろいろ考えてみたんですけれども、例えば、緊急対処事態対策本部、そこで、じゃ、これはさらにレベルが上がった、武力攻撃事態に発展をさせようというときは、そこではなくて、別に閣議を開いて、安全保障会議に諮問して、そして武力攻撃事態へのこれはエスカレーションということになってくるわけですよね。

 この法案の枠組みが全然違うことによって、まず私が指摘しておきたいのは、このエスカレーションにきちっと対応できる形になっていない、このことを指摘しておきたいと思います。

 そしてもう一つ、石破長官にも来ていただいているのでお伺いをしたいんですが、武力攻撃事態の場合、これは自衛隊の行動に関する措置が書かれているんですね。これは、具体的には恐らく防衛出動ということになるんでしょう。つまり、この武力攻撃事態の方は、自衛隊の行動に関する措置が書いてあるものだから、そのまま閣議決定をすれば防衛出動が下令できるんですね、自衛隊が出動できる。そして、そのままこれが国会承認もかけられて、自衛隊は行動できる。国会承認もかけられます。

 それと比較をすると、緊急対処事態の方は、これは自衛隊の行動を書いていませんよね。すなわち、この基本方針が閣議決定された一方で、別に治安出動の閣議決定をして、そして事態全体が、これは国会承認なされないんだけれども、治安出動だけこれは国会承認されるという、ちぐはぐな対応になるんですね。

 防衛庁長官にこれは真摯にお答えをいただきたいんですが、私は、自衛隊というのは国民のために役立ってもらいたいと思います。そして、いざというときには行動できるようになってもらいたいと思いますが、それは、事態全体の中で、こういう必要性があって、こういう方針なんですということが明らかになって、全体の中で自衛隊は行動すべきだというふうに思いますので、ここにぜひ入れていただきたいと思うんですよね、緊急対処事態の中にも、自衛隊の行動について。そうじゃないと整合性のある対応ができないと私は思いますが、長官の御意見をお伺いします。

石破国務大臣 先生のおっしゃることをあながち私は否定するつもりはございません。そういうお考えもあるし、緊急事態対処法みたいな形でやりますときにはそこのところの整合をみんなとっていくということも、問題意識としては持っておるところでございます。ですから、先生がおっしゃることは、ここは間違い、あそこは間違いというような、そういうような反論をするつもりは全くございません。

 ただ、今のところで、おっしゃるところを聞いておりますと、確かに、治安出動を下令することになりますでしょう。ただ、治安出動の場合には、武力攻撃事態と異なりますのは、武力攻撃事態は自衛隊が出ないとどうにもならない、こういう事態でございます。ところが、治安出動あるいは海上警備行動の場合には、警察あるいは海上保安庁が対処できない場合あるいは特別な事態、そういうようなまた別なエスカレーションの態勢もあるわけでございます。そこが武力攻撃事態と質的に違うところということを私としては考えております。そこをどう書くのか、書くとすればどのように書いていくかという、これはえらい技術的な問題になろうかと思います。

 先ほどから井上大臣が答弁しておられますように、武力攻撃事態というものと緊急対処事態、これが、一種の対外的説明と対内的説明と二つの面を持つんだと私は思っているんですね。そこをどのように考えていくべきなのかということ。それからもう一つは、委員が御指摘になりました、エスカレーションしていく場合にどうやってうまくそれが推移していけるようになるか、そこはまた議論をさせていただきたいと思いますが、法案の中に、警察権というものと自衛権というものをどのようにして考えて、これから先議論をしていくかという問題なんだろうと思っています。

 実質的に、国民の皆様方の保護、あるいは自衛隊の活動、それに今の法案で支障があるとは私ども政府としては一切考えておりません。

細野委員 石破長官、この間、松本委員の質問に対しまして、ドイツの例が参考になるんじゃないかというふうにおっしゃいましたね。ドイツの例というのは事態を三つの段階に分けているんですね。それぞれの三つの段階において軍隊の行動についても規定をしているし、私権の制限についても書いてあるんですよ。そして、一番大事なことですが、それに国会がどう関与するかも書いてあるんですね。

 日本の場合、二類型つくったんですが、全くレベルの違うものをつくってしまい、やり方も違うものをつくってしまって、段階的に全然なってないんですね。私権の制限は全部一緒ですから。緊急対処事態であろうが武力攻撃事態であろうが、全部やりますと書いてある。差がないんですね。

 そして、国会の関与ということになると、国会承認についてもこれは書かれていないんですよ。

 総理にお伺いしますが、これは、必要なことは出したんですね。いい法案にして、もう少し整合性のある形で、自衛隊の行動も、先日、外務大臣は、緊急対処事態においても米軍も行動する可能性があるということをおっしゃったんですね。それも時として必要だと思います。その部分も含めて、きちっと緊急対処事態にトータルに方針を出して、その中に自衛隊の行動と米軍に対する協力も入れて、そして法律をつくるべきではないか、私は強くそう思いますが、総理、今の議論を聞いてどうお感じになるでしょうか。

小泉内閣総理大臣 緊急対処事態から武力攻撃事態等につながっていく可能性はあり得ると私も思っておりますし、これからの対応について、より総合的に判断できるためには、さまざまな想定をしながらどういう対処が必要かという議論は私は必要だと思いますし、今後、与党と民主党との中におきましても協議が進められるということでありますので、十分協議していく価値のある問題でもあると思っております。

細野委員 国会の中で議論が詰まれば、協議の可能性がある、修正の可能性があるという趣旨の御答弁だと受けとめました。

 そして、もう一つ総理にお伺いをしたいんですが、総理、よろしいですか。

 この両事態の国会承認の違い、ここは物すごく大きな格差があるんですね。武力攻撃事態の場合には、対処基本方針の決定にも変更にも終了にも閣議決定が必要になります。そして、国会承認もこれは課されるんですね。さらに重要なことは、これは民主党の修正で入ったんですが、仮に、政府が暴走をして、事態の認定まではよかったけれども、取り消しをしないというようなことがあってはならぬということで、終了については国会の意思があればこれは規定をできる、武力攻撃事態が終わったということを、国会の意思を示せる、国民の側が判断できるという規定も入れられているんです。それと比較をすると、緊急対処事態の方は、閣議決定については書いていますが、国会の関与は一切書いていないんです。

 繰り返し言いますが、私権が制限されるのも一緒なんですよ。指定公共機関がある程度の統制を受けるのも同じなんです。自衛隊が行動するという意味でも同じなんです、違う行動ということになりますけれども。国民から見て、これだけ大きな制約を課す、ある部分で政府に生命財産をそれこそ託すわけですよね。これだけの事態を国会承認にかけないというのは、どう考えても私は説明できないと思います。

 これは総理に聞きます。国会承認、必要だと思われませんか。お願いします。

小泉内閣総理大臣 現時点において、これは住民の保護に関することでありますので、国会承認、必要ないという態度を政府としてはとっております。武力攻撃事態については国会の承認を要することとされておりますが、こういう点につきまして、私は、国会の承認が必要かどうかなという点については、必要ないのではないかと思いますが、今後の議論であると思っております。

細野委員 総理、わかっていらしてあえて答弁されているんだと思うんですが、確かに対処方針には国民の保護しか書かないですよ。ただ、私権の制限は同じようになされるんですよ。国民は時として家屋をそれこそ国家に貸さなきゃならなかったり、それこそ医療の従事に強制をされたり、そういうことがあるんですよ。国民保護だけじゃないんです。強制的な面があるわけですね。当然これは国会承認を課すべきだと思いますよ。

 最後、井上大臣にお伺いしますが、この部分もきちっと整理をして、そして当然国会承認を入れる、そして、そもそも事態のこの基本方針の部分をきちっと整合性のあるものにする、この部分について修正を検討していただけるのかどうか、明確に御答弁をお願いします。

井上国務大臣 政府としましては、現行法の中で、中でといいますのは、武力攻撃事態法二十五条を踏まえまして、あるいは国民保護の規定を踏まえてのこれは法律でございます。緊急対処事態についてはその二十五条に関連いたしますけれども、そういう規定の中では、今提出しておりますこの法律案、これが限度だろうというふうに思います。そういう中で、最大限そういう大規模テロ等に対処をする規定を整備したということであります。

 ただ、いろいろな立場からの立法論はございます。それは私も否定するわけじゃございませんで、それはそれとして、大いに議論を深めていただきたい、そんなふうに考えます。

細野委員 最後に立法論という話がございましたので、ここで、きちっと国会での議論を踏まえてということで、私もこの問題に関しては引き下がりたいというふうに思います。

 時間もあと十分になってまいりましたので、少し、メディアと有事の関係について、総理と議論をしていきたいというふうに思っています。

 井上大臣、何度かこのメディア規制の問題についてはいろいろと国会で答弁をされていまして、その中で私が気になりますのは、メディアに関して一切規制をかけることは考えていませんということを再三答弁をされるんですね。ただ、私はそれはあり得ないと思うんですよ。

 今、イラクで戦争及びそれに類する事態が生じているわけですけれども、例えば米軍であるとか英軍に対する取材、それは当然、例えば作戦を漏らすような報道はなされないような配慮がなされています。報道の自由、この部分についてのある程度の制約がかかるのは、私はやむを得ないところがあると思っています。そして、さらには、例えば戦争で被害に遭った方の映像が余り無残な形で流されるようなことは、これは余り好ましくない。要するに、この戦時報道というのは、そのバランスの上に成り立つものだというふうに思うんですね。

 まず、小泉総理に、短目で結構ですので、戦時報道に対する考え方、それをお伺いできますでしょうか。

小泉内閣総理大臣 戦時においてもやっぱり報道の自由というのはありますから、これについて、制限というよりも、自粛してもらいたいということはあり得ると思いますよ。残酷な場面等、メディア、興味があれば何でも放映するかというと、そうでもない。あるいは、人質の事件の場合においても、生命にかかわる場合は、ぜひとも自粛してくれという場合があると思います。

 しかし、メディアですから、なかなかそういうことを全部聞いてくれるとも限りません。報道の自由を重視して、報道する機関も出てくると思います。ここはなかなか難しいところで、政府として、報道の自由を制限するということについてはなかなか難しいのではないか。私は、報道機関もそういう点については良識を発揮していただきたいし、この点については、いかに有事であっても最大限報道の自由は尊重するという前提で対応を考えていきたいと思っております。

細野委員 総理の方から、報道の自由をできるだけ守ってという話がございました。私もそれについては同じ意見です。

 有事の際に、先ほども少し例として挙げましたが、私権がいろんな形で、特に財産権がある程度国家から制約を受けるのは、これはむしろあり得べしだと思います。ある部分で、今回の法案は、災害対策よりも有事の方が私権の制限も緩やかになっている。これは、個人的な意見で言えば、若干違和感があります。むしろ私権の制限をきちっとした部分があってもいいと思います。

 ただ、事報道の自由に関しては、これは最大限の配慮をして、国家としてもむしろそういう状況をつくり出す努力をしないと、有事の際にはこの価値観が揺らいでしまうのではないかという懸念を私は持っているんですね。

 それで、残された時間で井上大臣にお伺いして、そして後ほど総理にお伺いしたいと思っていますのは、指定公共機関、この指定の問題でございます。

 指定公共機関というのは、有事の際に、例えば警報の発令であるとか避難の誘導であるとか、そういうものを発するような放送事業者も対象になる。放送事業者が指定をされれば、基本計画をつくって、その計画に基づいて、いざというときには、避難してくださいよというような政府が出す情報を流さなきゃならなくなるんですね。

 昨年の委員会でもこれは何度も議論がありましたが、委員会の中で配られた資料の中では、指定公共機関の指定、放送事業者の部分ですが、民放の事業者が指定される可能性はあるが、現時点では、日本放送協会、NHKを主として考えている、こういうペーパーが委員会の中に出てきています。

 この間、委員会で聞いていまして、はっと思ったんですが、井上大臣、この指定公共機関の指定について、答弁の雰囲気、雰囲気というかニュアンスを変えられているんですね。民放につきましてもNHKと同じように指定公共機関としたいというふうに答弁をされています。これは、私は、明らかにニュアンスが変わったと思うんですが、民放を、NHKだけではなくて民放も指定公共機関に指定をして、そして、ある程度の国家からのこういう調整に服さなければならない、その理由をお答えいただけますでしょうか。

井上国務大臣 一昨年、政府の見解として、指定公共機関としての放送事業者の考え方を発表したことがございます。そのときには、今のお話のように、NHKを一応考えるけれども、ほかの放送事業者につきましても必ずしも検討の外ではない、こういうようなペーパーを出したと思うのであります。昨年、官房長官答弁でそれが多少幅が広がってまいりまして、NHKだけではなしに民放の事業者につきましても考えていきたい、そういう御答弁を言ったわけであります。

 私は、有事というのはできるだけ早く国民に知らせるということでありますから、即時に知らせる機関といいますのはラジオとかテレビでありますから、ぜひともそういうところに御協力をいただきまして、指定公共機関にさせていただきたい、こんなふうに思っております。

 今、指定公共機関と私も話をしましたけれども、ずっと話をしてまいっておりまして、これからもずっとまた話をして御理解を得てやっていきたいと思います。大きな放送事業者もおられますので、ぜひ我々の考えも理解をしていただきたい、こんなふうに考えています。

細野委員 意欲を持っていらっしゃるということですが、民放の場合、NHKと違いまして、全国津々浦々、同じ放送局が流しているわけではないんですね。キー局があり、大阪なんかには準キー局があり、そして私の地元の静岡のようなところは、それに系列の局が存在をして、それを通じないと情報が流れない仕組みになっているんですね。

 では、井上大臣の答弁だとすると、指定公共機関にローカル局も含めてすべて指定をする、そういう考えじゃないと情報が行き渡らないんですよ。そういう話になるんですか。

井上国務大臣 いや、全部指定するということではありませんで、やはり必要な放送事業者につきましては指定の対象にしていきたいということであります。同じように、都道府県におきましても、地方でそれぞれ有力な放送機関がありますから、そういったものを恐らく対象にしていくんだろう、こんなふうに思います。

細野委員 何でこの問題に私がこれだけこだわるかと申し上げますと、実はこれ、指定公共機関に指定をされると、総理大臣である対策本部長の総合調整の対象になるんですね。指定公共機関が業務をする際には、総理大臣が、こういうことをしてくださいねと調整をできるようになるんですよ。

 総合調整という言葉が非常にあいまいで読みにくいんですが、総理、総合調整の対象には、そういう指定公共機関だけではなくて、行政機関全部入るんですよね。すなわち、対策本部から見ると、例えば警察庁、防衛庁、総務省、すべてその機関なんですよ。そこに対する総合調整ということになると、当然それは、有事の際ですから、強い権限になる可能性が極めて高いわけですね。それに対して民放に対する総合調整ということになると、これは、いざというときですから、どういう総合調整がなされるのかというのが極めてわかりにくい。

 総理、総理大臣自身が対策本部長としてそれを決定されるので、この部分、どうですか。民放を指定するということになると、ローカル局も含めて二百数社全部指定しなきゃならなくなりますよ。NHKにきちっと限定をしてやるべきだと思いますが、総理の御見解をお伺いします。

小泉内閣総理大臣 私は、NHKのみならず、民放を指定したとしても、報道、表現の自由は守られて、保障されているわけですから、そんなに弊害はないと思っています。

 現に、今の世の中、言論の自由の中にあって、政府の言うことを聞く報道機関なんかないですよ、現実に。そして、早く事実の報道をしてくれ、事態の進展はどうなのか、言わなくたってどんどんどんどん報道しますよ。たとえ、では調整に応じるといったって、一部が応じてほかで流しますから、別のことを。私はそういう心配はないと。むしろ国民は、より競って報道機関は、有事になった状況は、今事実はどうなのか、事態の進展はどうなのかと、競って報道すると思いますね。だから、別にそれほど言論統制的な動きが広がるとは思っておりません。

 それは、何よりも、政府としては、報道の自由、言論の自由は確保しなければならないと思っておりますし、もしそれを阻止しようと思っていたら、それは逆に国民が認めないでしょう、国会も認めないでしょう。私はそんなに心配しておりません。

細野委員 私も今は心配していないんですよ。ただ、有事になった際にどうなるかということを心配しているんです。有事になり、指定公共機関に指定をされる、そしてこれは総合調整の対象だということで、放送の流され方についても指導できる体制ができます。少なくともこの日本の社会において、平時において多元的な価値観を守って、そして報道がきちっとなされるという体制を整える、そして有事に対してもそれが機能するという意味においては、私は、民放の問題についてはきちっと整理された方がいいと思います。

 またこれは改めてやりたいと思いますので、機会をつくっていただきたいと思いますが、済みません、時間が来ましたので終わります。ありがとうございました。

自見委員長 この際、大畠章宏君から関連質疑の申し出があります。平岡君の持ち時間の範囲内でこれを許します。大畠章宏君。

大畠委員 民主党の大畠章宏でございます。

 この問題は非常に国民も注目をしておりまして、私は、どちらかといいますと地域の方の視点からこの法律案について質疑をさせていただきます。

 幾つか質問の準備をしてきたんですが、冒頭に、先ほどのやりとりを聞いておりまして、小泉総理の基本的な考え方を一つお伺いしなければいけないと思います。

 それは、先ほど平岡委員からもお話がありましたが、今回の一連の法律案、昨年から始めての武力攻撃事態対処法もそうですが、何のための法律なんだ、それは国民の保護のための法律なんだというお話をされましたが、もしもそれが本当であれば、昨年からこの国民保護法制というものを含めて政府として出してくるのが筋だと思うんですね。ところが、昨年は自衛隊の国内行動というものを中心とした法律案を出した。与野党間で議論を重ねて、やっと国民保護法制というものも、では次回やりましょうということで話が折り合いがついた。

 そういう意味では、総理は国民の保護というものが一連のこの法律案の目的だとおっしゃっていますが、大きな流れは総理はつかまえるのが得意ですが、国民の命あるいは国民の保護という、そういうきめ細かなところはどうも当初抜け落ちていたんじゃないか、そんな感じがするところでありますが、冒頭に、小泉総理から改めてこの点についてお伺いします。

小泉内閣総理大臣 政府がきめ細かいんですよ。私は、国民保護をまず大事に考えなさいと。具体的になると、自衛隊の行動はどうなるかと。できたものからどんどん広げていきましょうという考えで、できればこれは、少なくとも野党第一党と合意できる法案じゃないのか、どんな政権がかわっても、国民を保護するという気持ちには変わりないだろうと。有事、どういう有事が起こるかわからない、そういう点に対して対決法案になり得ない、本来、安全保障に対して。だから、できるところからやっていこうと。

 そこで、国民保護法制について、民主党から、もっと視点を強くしたらどうかと。政府は極めて具体的に、自衛隊の活動はどうかと。そんな狭いものじゃないだろう、全体のことを考えろということで、民主党も、これについてはやはり党派を超えて、有事、安全保障、国民の保護を考えようということで今協議が進んでいるということは、私は望ましい事態だと思っております。

 こういう点につきましては、政府はかなり具体的ですから、足らざるところはよく協議の上で補って、よりよい有事態勢をつくっていくべきだと。そのためには、国民を保護する、これが一番ですから。いかなる事態に対しても、国民の生命、安全をどう確保するか、国民を保護するか、そういう点について、今まで政府の案だけでは足りないと言っていた視点は政府としても真剣に受けとめなきゃいかぬという意味で私は言っているわけであります。

大畠委員 総理は常に無の境地といいますか、そういうもので、自然体で対応されていますが、やはり総理としてもしもそういう御意見があるのであれば、政府案を出すときからそういうものを踏まえて出すと、もっと昨年も非常にスムーズな委員会の運営があったんじゃないかと私は思いますよ。

 さて、そういう中で、実は私の地元にも、近くに勝田駐屯地、陸上自衛隊がございます。非常に熱心に活動されていまして、地域の信頼も大変厚い中で行動しているわけでありまして、同僚議員からは特にこの法律問題、自衛隊問題を中心として質疑が交わされましたから、私は逆に、地域の現実に起こった事例等を踏まえて、この国民保護法制がどうあるべきかということを質問させていただきます。

 まず、総理、平成十一年の九月三十日、どんなことが起こったか、心に思いつくことをちょっと話していただければと思うんですが。

小泉内閣総理大臣 ちょっと浮かばないんです。平成十一年九月三十日、今から五年前、まだ総理になっていないな。今ちょっと、突然で、思い浮かばないんです。申しわけございません。

大畠委員 これは茨城県でジェー・シー・オー事故があった日なんです。

 実は、緊急事態というものに対してどういうふうな対応をとらなきゃならないというのは、阪神・淡路大震災もそうでありますし、突然、政府の方と全く関係ないところから起きてくるんですね。

 このジェー・シー・オー事故で、その後どういう形で進展していったかということをちょっと総理に概要を御報告申し上げて、これからの質問をさせていただきますが、この事故で、大変残念ながら、大内久さん三十五歳、篠原理人さん四十歳、若い作業員が二人、命を落としました。私自身、この葬儀にも行きましたが、二度とこういう事故が起こらないように私自身も全力を尽くしますからということを霊前に誓ったんです。

 この事故が起こってからどういう形で進展したかということでありますけれども、十時三十五分にジェー・シー・オーの事故が発生したんですね、臨界事故が。それから五分後に、社員が退避をいたしました。それから、事故から八分後に消防に対して会社が出動要請をしました。十一分後、いわゆる通報から三分後にはもう救急車が現地に到着したんですね。そして、この事故について、当該の会社が、ジェー・シー・オーの会社がファクスを発信したのが四十分後。そして、役場にその連絡が入ったのが約一時間後ですね。それから、役場の災害対策連絡会議というのが一時間二十分後に招集されました。そして、一時間四十五分後には、東海村の災害対策本部というのが設置されたんです。それから、一時間三十五分後に県警が交通規制を始めました。その次に、事故発生から四時間後に科学技術庁の災害対策本部というのが設置されたんです。そして、三時に三百五十メーター以内の住民避難を決定して、住民避難を開始。それから、事故が起こってから四時間半後に政府事故対策本部というのが設置されました。そして、五時間半経過したところで、茨城県の災害対策本部というのが設置されたんです。それから、小渕総理を本部長とする政府対策本部というのは、事故発生から十時間半後の夜九時に第一回会合を開きました。これが、突然起こったものに対する対応の経過なんです。

 今回の法律案は、政府の方に対策本部をつくって、そして理路整然と対応しようという、実にきめ細かな計画でありますが、実際は地域から始まるんです。

 私が何を申し上げさせていただきたいかというと、その視点を入れないとこの法律案は実効あるものにならない。いわゆる地方自治体というものに、最初は地方自治体というものに権限をゆだねておいて、そしてそれが立ち上がるたびに、県ができれば県の方に、国ができれば国の方に、そういう形で推移しないと、どんなに立派な法律をつくっても対応できないということを、ひとつこの教訓をぜひ御理解いただきたいということを申し上げたんです。

 そのときに、まず最初にこの事件のときにどこが突入したかというと、消防署なんですね。自衛隊でも警察でもなく消防署なんです。そして、それに続いて警察がいろいろ行動を開始しました。それもぜひ頭の中に、総理、入れておいていただきたいと思うんです。

 そこで、最初に、私も今、民主党のネクストの国家公安委員長をさせていただいていますので、警察対応についてまずお伺いをさせていただきます。

 今、地域の方では、治安の対策をやってほしいということで、政府の方も三千人規模の警察官を強化するという話が出ておりますけれども、さて、この今回の国民保護法制というものを考えた上で、警察体制の強化というものはどういうふうに総理は念頭に置いておられるのか、お伺いしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 極めて総論的な話になりますが、警察であれ消防であれ自衛隊であれ、どのような緊急事態が発生するかわかりませんから、よく連携をとって、対応できるような措置をしなきゃならない。そのための危機管理体制、常に政府としても気をつけているところであります。

 今お話しのように、最初に消防が出動したと、極めて早い段階で。その時点で恐らく警察にも連絡が行くでしょうし、自衛隊にも連絡が行くでしょう。そういう連携は常に必要だと思っております。

大畠委員 今総理がおっしゃったことは大変重要なことで、情報を共有しないとばらばらになってしまうんですね。この情報の共有化という初動のときの態勢というのは非常に難しいんです。というのは、警察は警察の機構、あるいは消防は消防の機構、あるいは自衛隊は自衛隊の機構、そういうものがありまして、そこの連携は非常にスムーズなんですね。ところが、横の連携がなかなかとりづらいというのが実態なんです。そこでいろいろ混乱が生ずるわけなんです。

 そこで、特にジェー・シー・オーの事故のときにはいわゆる放射線が中核になっていたわけですが、今回の法律案でも、原子力、NBC対策といいますか、原子力と生物兵器と化学兵器の対策ということで、専門部隊の増強を計画していると伺っておりますが、この問題について、どういう形でこれを増強しようとしているのか。非常に専門的な知識も大事なんですね。このことについて、総理、どういう概念を持っておられるか、お伺いしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 今、NBCの問題、これは非常に難しい問題でありますが、極めて専門的な問題であります。

 こういうことに対しまして、現在、八都道府県警察の機動隊などにNBCテロ対応部隊を設置して、現場対処能力の向上を図っております。また、本年度、東京及び大阪に同部隊を増設することとしておりまして、こういう問題に対して、いまだ経験しておりませんが、やはりこういう問題もあり得るということを考えながら対応していかなきゃならないと思っております。

大畠委員 放射線の知識というのはなかなかわかりづらいところがあります。例えば、アルファ線、ベータ線、ガンマ線、そしてまた中性子線とありますね。アルファ線は紙一枚でとめることもできるんですね。ベータ線は鉄板で遮へいできます。それからガンマ線、ガンマ線は少し厚い鉄板になりますが、ただ、中性子線というのがなかなか防ぐのが難しくて、総理、中性子線はどうやってとめたらいいかわかりますか。

小泉内閣総理大臣 いや、本当に浅はかなもので、浅学非才で、わからないんですよ。アルファ線もベータ線もガンマ線も中性子線も、どういうものかわからないので、できたら教えていただければありがたいと思います。

大畠委員 中性子線というのは水でとめることができるんですね。ジェー・シー・オーのときも非常に、そういうことで、水が中性子線をとめることができるんです。

 そこで、この国民保護法制も大変重要なんですが、教育の分野で、学校教育の中でこういう原子力に関する教育、あるいは生物化学兵器、いろいろありますが、基礎的なものはやはり学校教育の中に組み込んでおいて、そして国民が動揺しない形でいわゆる安全に避難するということが私は大事だと思うんです。

 この教育問題について、この国民保護法制と絡んで、小泉総理はどういうふうに御認識していただいているのか。特に原子力に関しての教育というのがまだまだ不足していると思いますが、そこら辺も含めて、総理の御所見をお伺いします。

小泉内閣総理大臣 教育は重要ですが、子供に対して余り詳しくこうだと言うよりも、危険な状況になったらどういう形で避難するか、あるいは、どういう指示に従うかという点も大事だと思います。特に、アルファ線、ベータ線というのは私、知らなかったんですが、放射能の危険というのはわかりますよね。こういうものに対して、危険ですよと。あるいは、最近は、公園の遊具でもあるいは回転ドアでもけがをする。

 そういう点を考えると、ふだんから安全と危険に対する教育というのは必要だと思います。

大畠委員 ぜひ総理も、国民に対するこういう危機管理といいますか基本的な知識といいますか、そういう教育は文部省の中でもやっていくことが、要するに、一億二千万の国民がある程度の基本的な知識を持っていくことは大変重要なんですね。そこら辺も含めて、ぜひ御努力をお願いしたいと思います。

 さて、総理、警察問題のお話をさせていただきましたが、実は今、警察の不正経理疑惑問題が非常にあちこちで起こっておりまして、国家公安委員長小野さんにもいろいろお話をさせていただきましたが、どうもここら辺が、もうこの辺でふたをしてしまいたいというような状況も出てきています。

 総理、例えば宮城県の方では、知事が、どうなっているのかというので、本部長の報告を受けたんですね。そして、昼休みになって、後からまた見ようと思ったら、本部長が、いや、やはりあれはだめだといって、本部長が知事の了解もなしに持って帰っちゃったんですね、捜査費だとか報償費に関する情報を。

 私は、どうもそこら辺、警察内部の、何といいますか、閉鎖性というのが、国民からのいま一つ信頼というものを回復するということに至っていないんじゃないか。もちろん二十四万の警察官が本当に前線でまじめにやっているんですが、どうも中間層のところが、それから警察庁等々も含めて、どうもいま一つこの疑惑に対する方針というものが、姿勢が見えないんですが、総理として、この警察不正経理疑惑問題についてはどういうふうに感じておられるか、関連してお伺いします。

小泉内閣総理大臣 警察の不祥事というのは極めて遺憾であります。やはり、一番信頼されなきゃならない警察に対する信頼をいかに回復するか。これは、都道府県の公安委員会、そして国家公安委員会、さらに警察庁、現場の警察等、反省すべき点、大いに反省すべきものでありまして、より一層、国民の信頼を回復するための努力が必要だと思っております。

大畠委員 今の件でもう一問お伺いしますが、今、北海道、それから福岡、静岡、宮城、さまざまなところでこの問題、それぞれの地域で問題になり始めているんですが、総理としては、これは一部の問題だと思いますか、全国的な問題だと思いますか、どっちだと思いますか。

小泉内閣総理大臣 一部地域に起きている問題、これは一部だけととらえないで、全国的に、このような不祥事というものを起こしてはいけないという観点から、不祥事を起こしていない警察におきましても、ふだんからの反省、点検が必要だと思っております。

大畠委員 さて、消防署の問題に移らせていただきます。

 実は私、ここに来る前に消防署に寄ってきたんです、地元の消防署に。いろいろお話を伺いますと、今回の国民保護法制については大変関心を持っています。しかし、残念ながら、きょう総務大臣もおいででありますが、財政的に非常に厳しくて、この国民保護法制に基づいて対応するというのが非常に、正直なところなかなか難しいんです。建物も老朽化しているし装備もまだまだ不十分だし、これからどうするか。そして、救急車の出動回数は大変ふえている。警察に対する関心というのは非常に今、国民で高まっているんですが、消防行政に対する関心がいま一つどうもはっきりしない。

 総理、総理は出初め式なんかには行ったことございますか。

小泉内閣総理大臣 それは、総理大臣になる前はしょっちゅう出ていましたよ。正月、朝、寒風の中、多くの消防団員が活躍している姿、これは、地域におきまして消防団員というのは、本当にボランティアですから、いろいろな災害時においては献身的に活躍してくれる方であります。

 消防行政のみならず、一般国民が消防に対する関心を持つ意味においても、単なる行政だけでやるんじゃない、地域の方々の御協力をいただくという観点が消防行政においても大事だと私は思っております。

大畠委員 地域消防のバックアップは、もちろん消防署もありますが、消防団というボランティア組織が非常にネットワークを組んでいるんですね。ところが、今、昭和四十七年には百十六万六千六百二十五人という消防団員がいたんですが、平成十五年には九十二万八千四百三十二人、非常に減ってしまったんですね。それは、老齢化と、地域の消防団になるボランティアといいますか、そういう心が少しずつ薄らいできているんでしょうかね。地域の要するに防火体制といいますか、そういう災害あるいは非常時に対する対応というのがだんだん、何となく難しくなってきているような感じもするんです。

 そこで、きょう、総務大臣おいででございますが、この国民保護法制に基づく消防の役割あるいは消防団、そういうものを、この国民保護法制の中でどのような位置づけ、あるいはどのような形でこれを展開しようと考えておられるのか、お伺いします。

麻生国務大臣 有事と違って非常時ということになりますと、いよいよそういう状況に追い込まれたときの訓練というのが、ふだん全くない方と訓練のある方とは非常に大きな差が出るというのは大畠議員もう御承知のとおりでして、そういった意味では、仮に、消防団ということの例を引かれましたが、いわゆる国外からの武力攻撃ということになりますと、それに対応するのが自衛隊の主たる任務になろうかと思いますが、裏におります非戦闘員を保護するというのは、主に警察、消防の主たる業務になろうと存じます。

 例えば、退避させるに当たって、内陸から沿海部にずっと出てくる陸上自衛隊と退避する人との交通整理というのをよほどうまくやらねばなりませんし、また、緊急車両を優先的に通行させる等々、それもきちんとやらないと不必要な死者を出すことになって、そういった意味では、きちんとしたものが要る。

 そういった意味では、人手が足りませんから、消防団が活躍するという部分は非常に多いのであって、しかも、工作員と思われる日本語の上手な同じような顔をしたのが、見たこともないのが誘導するのと、ふだん見なれた消防団員に避難・誘導、案内させるのと、どっちが安心して逃げられるか、退避できるかというのははっきりしておりますので、そういった意味では、消防団というものの持っている任務は極めて大きいと私どもは思っております。

 今おっしゃいましたように、九十三万人という形で、少子化、いろいろ理由はございますけれども、減っておりますので、そういったところは、郵便局の職員とかまた農協とか、いろいろな方々に御案内をして、ぜひ入団をということで、私ども総務省もできる限りいろいろなところに幅広く声をかけたりさせていただいて、何となく、従来と違って、消防団という感じは最近なくなって、非常に理解が前に比べて得やすくなっている部分もあるというのも確かなような感じはしますので、引き続き努力をしてまいりたいと存じます。

大畠委員 消防というのは非常に地道な仕事なんです。なかなか派手な仕事ではありません。しかし、市民からは非常に信頼を得ている職業の一つでありまして、私は、この国民保護法制、先ほども冒頭に申し上げましたけれども、何かがあったときには、真っ先に飛び込んでいくのは消防の方々なんですね。したがって、総理におかれましても、ぜひこの消防体制の強化について目配り、心配りをしていただきたいと思います。

 そこで大事なのは、訓練といいますか、平時のときの訓練なんです。このことも、私もきょう、日立警察署や日立の消防署に行っていろいろ話を聞いてきましたが、共通して訓練するというのはなかなか難しいんですね。しかし、この国民保護法制を実効あらしめるためには、やはりそういうことが必要なんです。

 そこで、総合訓練といいますか、自衛隊も入って、警察や消防と一緒に、平時の訓練が非常に大事だと思うんですが、ここら辺のいわゆる予算的措置はこの国民保護法制を施行する中でどう考えておられるのか、総理の御見解をちょっとお伺いしたいと思うんです。

麻生国務大臣 御指摘のように、平時におきます非常時に当たっての訓練、これは大畠先生、絶対と申し上げていいぐらい一番大事なところであります。

 今、各消防団の訓練というのは個別にやっておられますが、いわゆる出初めに限らず、合同訓練というのが年に数回、場所によって違いますけれども、行われておりますが、従来、やはり阪神・淡路大震災が起きるまで、自衛隊と県とで共同でいろいろそういった非常事態に当たっての対策、共同でやっておられた県は四県しかなかったと記憶しますが、今はほとんどの県でされるようになった。

 私は、今回、この法律ができるのを境に、改めて、消防、警察、自衛隊、いろいろ含めまして、有事に当たってどうするか、非常時に当たってどうするかという問題に対応するためには、やはり合同の訓練は避けて通れない大事なことだと思っております。

 したがいまして、これに当たりましては、人件費はともかくとして、それにかかりますいろいろな経費につきましては、これは国において債務が負担されるべき行為だと思っておりますので、この点につきましては、総務省を預かる私どもの立場としては、財務省等々と積極的に、この点だけは譲れないところだと思っておりますので、総理の御理解をいただきました上、大畠先生の御支援もいただいて、きっちりまとめたいと思っております。

大畠委員 今、総務大臣から国の予算で行うという話がありましたが、総理、ここら辺、地域の方はもうお金がないんです、正直言って。いわゆる必要経費は十割、その他の経費は八割を出すからと言うんですが、実際問題、そういう実態にないんですね。各所で非常に、平成十六年度予算を組むのにも自治体は大変苦労してきたんです。

 しかし、何とかこの国民保護法制といいますか、非常事態のときには対応しようということで、こういうこともやらなきゃならないという意識はあるんですが、やはり国の方がそういうふうな財政的な措置をしなければ実効ある心構えというのはできないと思うんですが、再度、総理大臣のいわゆる財政措置についてのお考えをお伺いします。

小泉内閣総理大臣 有事に備えてどういう日ごろからの対応が必要か、訓練が必要か、まさに備えあれば憂いなしでありますので、行政でやるべきこと、また住民からの御協力をいただかないとできないこと、各関係機関がよく連携して、必要な訓練なり、ふだんの、平時からの対応を考えなきゃいけないと思っております。

 そういう点につきまして、有事というのは国家全体の問題であります。国として必要な費用というものはきちんとなされるような対応が必要だ。よく検討してみたいと思います。

大畠委員 残り時間あと五分になりましたが、総理、実は私、ここで総理に質問するというので、地域の人に、総理大臣に聞いてみたいことはないかといろいろ話をしました。

 ぜひこれは聞いてほしいと言うんですが、一つは、総理は、国民との約束は守らないけれども、なぜアメリカとの約束は非常に守ろうとしているのか、ここら辺がよくわからないと。これについて、総理の国民の疑問に対するお答えをお伺いします。

小泉内閣総理大臣 私は、約束を守っているんですよ。国民の安全を守るためにはどういう対応が必要か。アメリカとの関係で大事なことは、日本の国益をいかに図っていくか、日本の安全をいかに確保していくか。アメリカが言うからやるというんじゃない、外国がやるからということでやるんじゃない。日本国民にとって必要だから各国との外交を進めておるし、その国の間で必要なものは日本として約束を守っていく、それは国民全体のためになる。アメリカと協力するとアメリカ追随というのは野党の言うことで、我々は考えていません。

 それは、いろいろ御批判は自由であります。しかし、賛否両論あるんです。同じ見方でも賛否両論あるんですから、御批判は自由でありますけれども、批判する立場と私がやっていることは全く違います。私は、批判に耐えて、やるべきことをやっていると思っております。

大畠委員 ちょうど総理からも御答弁がありましたが、もう一つ聞いてほしいと言うんですね。総理はよく国益国益というお話をされましたが、今もされましたけれども、総理にとっての国益とは何ですか。

小泉内閣総理大臣 日本の平和と安全を守って、国民生活をいかに発展させていくか、豊かにしていくか、そして平和のうちに多くの国民がみずからの生活を守っていくか、これを確保していく、これがやはり国益だと思います。

大畠委員 実は、私の近くに水戸市というところがありますが、十三歳の少女、中学一年生が三日前に自殺しました。これは、何で自殺したんだろう、いろいろ動機を探っていったときに、パソコン画面に、大人になりたくないという言葉が入っていたんですね。

 私は、このメッセージ、最近の総理の、この三年間の流れの中で、国民に対していろいろなメッセージを出しておられます。国民との約束を守らないことは大したことじゃない、もっと大きいことをやっているんだから、うそをついたっていいんだ、もっと大きいことをやればいいんだから、そういう話とか、あるいはさまざまな国内の、国益という話がございましたが、どうもいわゆる損か得かという、それを追うような社会にどんどん入ってきて、大人社会、いわゆる日本人の大人が手本として示すような姿勢というのがだんだん見えなくなってきている。大人になりたくないというのは、一つのそのメッセージじゃないかと思うんです。

 私は、最近、若者が元気がない、そして治安が悪くなったというのが地域の声なんですが、その若者に対して小泉総理はこれからどんなメッセージを出そうとしているのか、このことについてお伺いします。

小泉内閣総理大臣 私は、国民との約束を守らなくていいとか、国民にうそを言っていいなんて一言も言っていませんよ。それは批判する野党の皆さんが言っていることであって、私が言っていることじゃありません。私が言っていないことまで、ああ言っている、こう言っていると言われるのは、大変迷惑であります。

 私は、十三歳の一少女が自殺されたということは大変悲劇だと思います。どういう理由かわかりませんが、まず、大人になりたくないということについては、大変不幸なことであるといいますか、最近、子供に対する虐待が多いというのも憂うべき状態であります。やはり一番身近に接している家族、親、兄弟、一番愛されるべき存在から虐待を受けるということほどかわいそうなことはないと思います。

 そういう点から、子供の問題、青少年の教育を考えると、子供が悪いというよりも、大人が反省すべき点が多いんじゃないか。まず、一番愛されているということをわかってもらわなきゃならないのは、親の責任だと思うんですね。それから、社会なり学校なり地域がどういう対応をとっていくか。まず、お子さんに対しまして、世の中の親御さん、十分な愛情を持って接していただきたい、これを切に願っております。

 政府としても、教育のみならず、地域の皆さんの御協力を得て、やはり子供は世の中の宝である、家族の宝だけじゃない、世の中の宝であるという認識を持って、大人が子供に愛情を持って接するということについて、やはり真剣に考えていただきたいと思います。

大畠委員 終わります。

自見委員長 次に、吉井英勝君。

吉井委員 日本共産党の吉井英勝です。

 今、イラク問題の解決をめぐって、国連中心にイラク国民の自主的な復興の後押しをするのか、それとも国連の看板だけ掲げてアメリカの占領統治を続けるのか、このことが国際的焦点になってきております。

 日本は、アメリカの占領統治をやめさせ、国連中心でイラク国民の自主独立の国づくりを応援すること、自衛隊を一日も早く撤退させること、この二つのことを行うべきであります。

 さて、昨年イラク戦争を戦った国はアメリカ、イギリス、スペインですが、三つの交戦国の中で、スペインが撤兵を決めました。なぜ撤退するのか。サパテロ首相は、スペインはテロに屈して撤退するのではないと明言した上で、十八日のテレビ演説を見てみますと、国連がイラクの政治的、軍事的コントロールを担わなければイラク駐留のスペイン軍を帰国させるとして、二十三日のインタビューでは、米国が占領軍の指揮権を手放そうとしない、国連が主権移譲の過程において全責任を負う可能性はないとの結論に達したからだと明らかにしています。国連が中心になることは、ファルージャのせん滅作戦のようなイラク国民の怒りを買っている米軍の行動にくみしない、それが撤兵だと表明をしているわけです。

 そこで、総理に伺いますが、国連の看板だけ掲げてこれまでの占領統治を続けるのではなく、真の、本当の国連中心の道に転換を図るべきではないかと思いますが、最初にこのことを総理に伺います。

小泉内閣総理大臣 スペインにはスペインの事情があると思います。

 私は、イラクの復興は国連中心であると思っておりません、イラク人中心だと思っています。イラク人が中心にならない限り、イラクの真の安定した民主的な政権はできないと思っております。このイラク人のイラク人のためのイラク人による政府をいかにつくり上げていくかというのが極めて重要だ、そして、そのためにも国連の役割というのは極めて重要だと思っております。

 そして、国連が出ていけるような、また国連の関与が大きくなっていくような状況をつくり、早くイラク人自身が希望と意欲を持って自分たちの国を復興させる、再建させるというような環境をつくっていくのがイラクのために極めて重要だ、そのために日本も国際社会の一員としての責任を果たしていきたいと思っております。

吉井委員 私は、国連中心にイラク国民の自主的な復興を後押しする、これが必要だということを言っているんです。

 さて、国連のブラヒミ事務総長イラク問題特別顧問ですが、フィガロ紙のインタビューに答えて、イラク駐留の米主導の連合軍を占領軍と呼んだ上で、はっきりしているのは、占領軍が撤退を検討すべきということであると答えています。国連のアナン事務総長やブラヒミ特別顧問は、イラクにおける国連の活動について、占領支配の米軍と一緒と見られる国連ではうまくいかない、このことを語っています。

 本当の国連中心の解決というものは、何よりも、占領軍がすべて撤退して、イラク国民の自主独立の国づくりを国連が後押しをすること、経験豊かなNGOの皆さんなどの人道復興支援活動や国連の仕事が安全に行えるように、ブラヒミ氏は、最小限の治安維持権限を持った国連の平和維持軍でそれを守るという考えを示しています。スペインも、撤退に当たって言っているのはそのことです。

 そこで、また総理に伺うんですが、この国連中心の解決を図るために占領軍の撤退をさせる、このことが必要だと考えませんか。

小泉内閣総理大臣 難しい点は、国連も米軍の撤退を望んでいません。ロシアもフランスもドイツも米軍の撤退を現在望んでいません。イラク国民の多数も望んでいないんです。一部の報道では、反米武装勢力は米軍撤退を望んでおります。しかし、イラク全体を見ると、今、米軍撤退してくれというのは多数意見じゃありません。国際社会の意見もそうなんです。国連も、米軍なしに出ていく気はないんです。そこをよく考えなきゃいけない。米軍の力を必要としないとはだれも言っていないんです。そこが大事なんですよ。国連が出ていく――米軍が出ていったら、国連は出ていきませんよ。それをどう考えるか。

 そういう点をよく考えて、私は、国連がより大きな力を持つために、今どうやって協力して、イラク国民も、国連を排除するんじゃなくて、やはり多くの国の力を必要とする、そのために自分たちがもう反米勢力とか親米勢力の対立を乗り越えて、自分たちでこのイラクを再建させるんだという意欲を見せてもらいたい。極めていいチャンスなんですよ、国際社会が進んで協力しようと言っているんですから。私は、そういう環境をつくるように、日本としても精いっぱいのことをしていきたいと思っております。

吉井委員 ブラヒミ顧問は、はっきりしているのは、占領軍が撤退を検討すべきだ、このことを言っているんです。

 この一年の現実を見てみますと、反米だ親米だという話じゃないんですね。武力による占領支配や抑圧が治安を悪化させているんです。

 ファルージャなどでアメリカの武力によるせん滅作戦が行われました。これはクラスター爆弾も使われ、ファルージャは短期間に千五百人の死傷者が出ている。女性や子供やお年寄りなど六百人以上が犠牲になっていますが、こういうふうなせん滅作戦、占領支配にイラク国民の反発が広がっているので、ナジャフでも激しい戦闘が起こっています。犠牲者家族の怒りや悲しみや恨みが占領支配への抵抗運動を広げています。

 アメリカの占領統治とイラク国民の独立民主の願いとの対立が今浮き彫りになってきているときです。だから、スペインは撤退をしたんです。欧州各国は、フランスにしてもドイツにしても、あるいはその他のロシア、中国などにしても、本当の意味で国連中心に戻すときだ、このことを主張しているんです。

 これは、アメリカの上院の公聴会でも明らかになっておりますように、その中でも、イラク国民の反米感情を抑え、各国協力を取りつけるために国連主導の暫定政権づくりを受け入れるが、アメリカが事実上の占領統治を続ける、治安維持の最終権限を保持するということが議会証言の中でもアメリカの高官の口から語られております。

 日本がアメリカの占領の応援団と見られてしまっては、これはイラクやイスラム世界の非難の的になってしまう危険があります。政治発言のなかったスンニ派のイスラム聖職者協会の幹部やあるいはシーア派の聖職者が、日本は、主権がイラクに戻るまで待って、その後イラク人と話し合って、占領と関係のない支援の内容を決めるべきだ、このことを言って、自衛隊の撤退を求める発言を初めて行いました。自衛隊がC130でイラクで武装した米兵を輸送することが、自衛隊もアメリカの占領軍の一部と見られるようになってきている。幾ら人道復興支援だと叫んでも、相手のイラク人に撤退を今求められているときです。

 ですから、政府の自衛隊派兵の理由づけというのはもう崩れてきているときですから、自衛隊の撤退は図るべきでありますし、そして今大事なことは、このイラク問題の解決は、国際的に、冒頭申しましたように国連中心の国民の自主的復興の後押しをするのか、国連の看板だけ掲げてアメリカの占領統治を続けるのかという、これが今根本的な焦点になってきておるときですから、日本は、占領支配をやめるべきだ、自主的な後押しを国連中心に進める、この立場に立つべきだということを申し上げまして、時間になりましたので終わりたいと思います。

自見委員長 次に、東門美津子君。

東門委員 社会民主党の東門美津子です。

 常時、準有事の状態にある沖縄、今かなり緊迫した状態になっていますので、沖縄について質問をさせていただきます。

 総理が厚生大臣当時、また、内閣総理大臣就任後も沖縄を訪問されたことは知っておりますが、ここ何年かSACOで焦点になっている辺野古へはおいでになられたでしょうか。

小泉内閣総理大臣 訪問しておりません。

東門委員 それでは、ぜひおいでになって、普天間基地の代替施設が辺野古の海のどのあたりに、どれくらいの大きさで建設される予定なのか、御自身の目でお確かめになっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 現在そういう計画はございませんが、将来考えてみます。

東門委員 いや、着工前にぜひ見ていただきたいということなんです。

 では総理、今、辺野古地域で何が起きているのか、把握しておられますよね。――いや、通告してあります。いや、総理にお伺いしています、総理に。――簡単にお願いします。

石破国務大臣 現在、地域におきまして住民の方々が着工に反対をなさっておられるということが連日報道され、私どももそのような認識は強く持っておるところでございます。

東門委員 はい、そのとおりです。

 総理、ぜひ聞いていただきたい。

 先週の月曜日、四月十九日から国が辺野古で普天間飛行場の代替施設建設のためのボーリング調査を始めるという情報に危機感を募らせた地域の住民や県民、それに応援の支援団体が、連日、工事着工反対の座り込みを行っています。

 ジュゴンのすむ豊かな海を守る、戦後の苦しい生活の中、生活を紡いできた海、そして、子供に教育を受けさせることができたのもこの海の幸のおかげだとおっしゃる八十代、九十代のおじい、おばあたち、その中には最高齢者百一歳のおばあも、命をはぐくむ海、ちゅら海を埋め立てて戦争につながる軍事基地の建設は、自分たちの目の黒いうちは絶対に受け入れられないという強い決意で、体調の悪い方も点滴を受けながら座り込みに参加しているというのが現状です。

 私も、先日行ってまいりました。本当にそのとおりなんですよ。

 総理、そのおばあ、おじいたちにどう答えられますか。いや、それは総理にお願いします。

小泉内閣総理大臣 基地があった方がいいか、ない方がいいか、それはやはりない方がいいと皆さん感ぜられると思います。しかし、基地があるからといって、戦争のための基地ではなくて、やはり安全保障を考えるという点について、これも重要であると思っております。

 基地の建設に当たっては、やはり、地元の公共団体、地方団体、さらには住民の理解を得られるような対応が必要だと思っています。特に沖縄というのは、自然な海の美しさ、こういう点については、貴重な自然環境を維持したいという気持ちも十分わかります。同時に、生活環境のことを考えますと、住民の中でも、飛行場なり基地なりの建設に対しまして強い反対運動が起こっているということも聞いております。ぜひとも、そのような住民の理解を得られるような円滑な対応が必要だと私も感じております。

東門委員 今の政府のやり方では、住民の理解が得られるようなことはあり得ません。はっきり申し上げておきたいと思います。

 県の文化環境部が、今回のボーリング調査のための工事が環境に及ぼす影響について九人の専門家に意見を聞き、まとめたものを那覇防衛施設局に提出しようとしましたら、施設局は受け取りを拒否したんです。防衛施設庁が独自に意見を聞き、サンゴやジュゴン、藻場への影響は大したことはないと結論づけた、氏名の公表もなされない専門家のそういう意見、それは、判断根拠等を疑問視する県側の専門家、氏名は公表されております、に答えることもなく、工事に着手しようとしているんですよ。

 総理、ボーリング調査をするにしても、しっかりと手順を踏んでやっていただきたいというのが地元住民の、県民の声であり、強い要望なのです。住民への説明会を持って、環境問題を県民にわかるように、県民の疑問点に答えて、県民に見える形で提示してから着工するべきだと思いますが、いかがですか。私、きょうは総理だけにお願いしています。

自見委員長 石破防衛庁長官、簡潔にお願いいたします。

石破国務大臣 いずれにしても、住民の方々の御理解を得るべく、私どもとしても全力を尽くしてまいりたい。聞く耳持たぬなどというつもりは毛頭ございません。

東門委員 ということは、しっかりと手順を踏んでなさるというふうに受け取ってよろしいですね。

石破国務大臣 これは環境省の御助言もいただきながらやっておることでございます。地元の方々、今先生が御指摘のように、そういうふうに本当に強い思いでいらっしゃる方々の御理解を得るべく、私どもとしても努力してまいりますが、いつ、どのような形でということは、また現地ともよく協議をしながらやっていきたい。いずれにしても、御理解を得るべく努力をいたします。

東門委員 地元から入ってくる情報は、反対派と、そして強行に入ろうとする防衛施設局がにらみ合いをしているということですので、そういうことは決してないように、ちゃんと地元の住民に説明をしていただきたい。そして、ちゃんと納得いくような形で着工するということをぜひやっていただきたいと思います。

 去る沖縄戦で最後まで指揮をとった高級参謀の八原博道氏は、戦後の反省として書かれた御本の中で、もう既に御存じかもしれませんが、おっしゃっておられることは、「中央は沖縄を見ずして、誰もそこへ行かず沖縄に決定を押し付ける」と書いております。御存じでしょうか。東京で、図面の上で、机の上で線を引き、ああ、ここかと。

 実際に辺野古の基地の建設予定地も、総理御自身がおいでになって、船に乗って、そこを回っていただきたい。私は土曜日に行きました。何度か行きましたけれども、再度行きました。本当にここを埋め立てていいんだろうかという思いが私には強くあります。総理が同じように感じるかどうかは、それはわかりません。でも、そうでなくても、ぜひ見ていただきたい。押しつけることをしないでいただきたいということです。

 私たちは、もう十分に押しつけられてきました。これ以上、新たな押しつけは絶対に認められないということを強く申し上げたいと思います。現場をごらんにならずに、ただアメリカとの関係で東京から押しつけていくようなことはやめていただきたい。県民の負担の軽減に努めるという言葉が本当ならば、ぜひ現地を見ていただきたいと思います。それでなければ、そういう工事の着工はしてほしくないと思います。

 県民の頭越しではなくて、沖縄県民の立場に立って、ぜひ一定の手順を踏んでやっていただきたいと私は強く要望しますが、総理、ぜひそれに対しての御決意のほどをお聞かせください。

小泉内閣総理大臣 普天間飛行場の問題、沖縄の方々の基地に対する負担の問題、これは沖縄の方だけの問題ではないと私も思っております。沖縄の基地の負担をどうやって全国民が分かち合うかという点も大事ですし、沖縄の県あるいは基地のある市の方々の考え方、そして住民の考え方、いろいろあると思いますが、そういう方々の気持ちもよく政府としては受けとめて、できるだけ円滑な形で必要な事業はしていかなきゃならない。

 私も基地を抱える選挙区を持っておりまして、基地の皆さんの反対運動、よく経験しております。沖縄と横須賀等の関係は同じとは言えませんが、そういう反対する方の気持ちも私は理解しているつもりでありますので、できるだけ住民の方々の気持ちをそんたくしながら事業は進めていかなきゃならないなと思っております。

自見委員長 東門君、質疑時間が終了いたしました。

東門委員 時間ですので、終わります。ぜひよろしくお願いいたします。

自見委員長 次回は、明二十七日火曜日午後二時三十分理事会、午後三時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時三十一分散会


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