衆議院

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第14号 平成16年5月12日(水曜日)

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平成十六年五月十二日(水曜日)

    午後一時一分開議

 出席委員

   委員長 自見庄三郎君

   理事 石崎  岳君 理事 北村 誠吾君

   理事 久間 章生君 理事 増原 義剛君

   理事 首藤 信彦君 理事 平岡 秀夫君

   理事 前原 誠司君 理事 遠藤 乙彦君

      赤城 徳彦君    岩屋  毅君

      植竹 繁雄君    江崎洋一郎君

      遠藤 利明君    大村 秀章君

      佐藤  錬君    塩谷  立君

      柴山 昌彦君    菅原 一秀君

      田中 英夫君    谷  公一君

      中西 一善君    中山 成彬君

      仲村 正治君    鳩山 邦夫君

      林田  彪君    宮澤 洋一君

      森岡 正宏君    山口 泰明君

      大畠 章宏君    奥村 展三君

      鎌田さゆり君    川端 達夫君

      末松 義規君    武正 公一君

      中川 正春君    中塚 一宏君

      仲野 博子君    長島 昭久君

      楢崎 欣弥君    細野 豪志君

      松崎 公昭君    松本 剛明君

      渡辺  周君    上田  勇君

      大口 善徳君    桝屋 敬悟君

      赤嶺 政賢君    阿部 知子君

    …………………………………

   総務大臣         麻生 太郎君

   外務大臣         川口 順子君

   財務大臣         谷垣 禎一君

   厚生労働大臣       坂口  力君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     細田 博之君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長) 小野 清子君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      石破  茂君

   国務大臣

   (金融担当)

   (経済財政政策担当)   竹中 平蔵君

   国務大臣

   (事態対処法制担当)   井上 喜一君

   防衛庁副長官       浜田 靖一君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   財務副大臣        山本 有二君

   防衛庁長官政務官     嘉数 知賢君

   国土交通大臣政務官    鶴保 庸介君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  大石 利雄君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   中城 吉郎君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    瀬川 勝久君

   政府参考人

   (防衛庁防衛参事官)   大井  篤君

   政府参考人

   (防衛庁防衛局長)    飯原 一樹君

   政府参考人

   (防衛施設庁施設部長)  戸田 量弘君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局審議官)            大久保良夫君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    海老原 紳君

   政府参考人

   (外務省条約局長)    林  景一君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   佐々木豊成君

   政府参考人

   (財務省国際局長)    渡辺 博史君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房技術総括審議官)       上田  茂君

   政府参考人

   (厚生労働省健康局長)  田中 慶司君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           小島比登志君

   政府参考人

   (国土交通省航空局長)  石川 裕己君

   政府参考人

   (海上保安庁長官)    深谷 憲一君

   参考人

   (日本銀行総裁)     福井 俊彦君

   参考人

   (日本銀行経営企画室審議役)           谷村龍太郎君

   衆議院調査局武力攻撃事態等への対処に関する特別調査室長          前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十二日

 辞任         補欠選任

  岩國 哲人君     仲野 博子君

  東門美津子君     阿部 知子君

同日

 辞任         補欠選任

  仲野 博子君     岩國 哲人君

  阿部 知子君     東門美津子君

    ―――――――――――――

五月十二日

 有事関連法案反対に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二一六五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案(内閣提出第九八号)

 武力攻撃事態等におけるアメリカ合衆国の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律案(内閣提出第九九号)

 武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律案(内閣提出第一〇〇号)

 国際人道法の重大な違反行為の処罰に関する法律案(内閣提出第一〇一号)

 武力攻撃事態における外国軍用品等の海上輸送の規制に関する法律案(内閣提出第一〇二号)

 武力攻撃事態における捕虜等の取扱いに関する法律案(内閣提出第一〇三号)

 自衛隊法の一部を改正する法律案(内閣提出第一〇四号)

 日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定の締結について承認を求めるの件(条約第一〇号)

 千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書1)の締結について承認を求めるの件(条約第一一号)

 千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約の非国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書2)の締結について承認を求めるの件(条約第一二号)


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     ――――◇―――――

自見委員長 これより会議を開きます。

 本委員会に付託されております、内閣提出、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案等武力攻撃事態等への対処に関連する七法律案及び日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定の締結について承認を求めるの件等条約三件を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案件審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官大石利雄君、内閣府政策統括官中城吉郎君、警察庁警備局長瀬川勝久君、防衛庁防衛参事官大井篤君、防衛庁防衛局長飯原一樹君、防衛施設庁施設部長戸田量弘君、金融庁総務企画局審議官大久保良夫君、外務省北米局長海老原紳君、外務省条約局長林景一君、財務省主計局次長佐々木豊成君、財務省国際局長渡辺博史君、厚生労働省大臣官房技術総括審議官上田茂君、厚生労働省健康局長田中慶司君、厚生労働省社会・援護局長小島比登志君、国土交通省航空局長石川裕己君及び海上保安庁長官深谷憲一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

自見委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 引き続き、お諮りいたします。

 各案件審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁福井俊彦君及び日本銀行経営企画室審議役谷村龍太郎君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

自見委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

自見委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。前原誠司君。

前原委員 民主党の前原でございます。よろしくお願いいたします。

 きょうは、私は、一つのテーマを持って質問をさせていただきたいと思います。それは、新たな脅威というものでございます。

 日米同盟関係の再定義というものが、一九九六年、当時の橋本首相、クリントン米大統領との間で取り交わされました。ソ連の脅威からアジア太平洋地域の安定のための公共財ということで、日米安保も変質を確認して、今それに向けて動いているわけでありますが、そもそも日本の安全保障というものも、ソ連の脅威、着上陸侵攻型の脅威から新たな脅威に変わってきているという認識があると思います。

 その中で、国民保護法制なり、この諮られている条約、法律についての質問につなげていきたいと思いますが、その前提として、新たに官房長官になられた細田官房長官にも来ていただいておりますので、このたび総理の諮問機関として設置をされました安全保障と防衛力に関する懇談会について、官房長官に質問をさせていただきたいと思うんです。

 まず、この懇談会の目的、それから、なぜ防衛庁長官の諮問機関ではなくて総理直属の諮問機関とされたのか、その二点について御答弁をいただきたいと思います。

細田国務大臣 前原議員にお答え申し上げます。

 我が国の安全保障をめぐる課題に対しましてより適切に対応していくためには、我が国の安全保障と防衛力のあり方につきまして幅広い観点から総合的な検討を行うことが必要であります。このため、内閣総理大臣が安全保障、経済等の分野の有識者の参集を求め、懇談会を開催するということにしたわけであります。

 なお、調べてみますと、現行の防衛計画大綱を策定する際にも、内閣総理大臣の懇談会といたしまして、当時、細川内閣でありましたけれども、防衛問題懇談会を開催することといたしまして、アサヒビールの樋口会長が座長として報告書をまとめられた、そのような例もございますので、経済界の方とか外交官経験者とか、広く防衛関係の、次官経験者、あるいは制服の方も入っておりますけれども、民間の方、大学教授、幅広い観点から検討しようということで、前例にも倣いつつ設置したものでございます。

前原委員 済みません、今御答弁の中にも入っていたのかもしれませんが、目的、何を目指しているのか。先ほどアサヒビールの当時の樋口会長さんの話がありました。細川政権のときですね。現大綱の基礎になっているということは、もう一度目的を伺いたいんですが、大綱を前提としてどういった内容を取りまとめるのを目的にしているのか、その点についても御答弁いただけますか。

細田国務大臣 我が国の安全保障をめぐりましては、大量破壊兵器等の拡散の進展とか国際テロなどの新たな脅威への対応というものも最近の大きな課題となっておるわけでございますし、また、本来の我が国の安全保障と防衛力のあり方につきまして幅広い観点から総合的な検討を行うことが必要ではないかということを判断いたしましてこの懇談会を開くわけでございます。

 特定の目的ということではなくて、第一回、この間開いたわけでございますが、その中の荒木経団連元副会長が座長に選任されまして、皆さん方が考えられるすべてのことを提起してください、そういったことを議論いたしましょうということで第一回が始まりましたので、これからさらに委員の先生方の自由なお気持ちで討議が始められる、そういうやや幅の広いアプローチでございます。

前原委員 さらにお伺いしたいんですが、政府側から、このことについては少なくともある程度の結論を出してもらいたい、こういう要望をされたことがおありになるのか。

 例えば、新たな国際平和貢献あるいは武器輸出三原則の見直し、こういった個別の問題については、自由に意見を言ってもらって出てこなかったら別にいいということでは多分ないんだろうと私は思うんです、今の流れからすると。やはり政府としては、少なくともこの点は、当然ながら専門家の方々、防衛庁も外務省も、今までの流れがあって、そして今の世界環境の変化というのは当然わかっているわけですから、この点についてはしかしある程度ちゃんと議論してもらわなきゃいけませんねという柱があってしかるべきだと私は思うんですね。それが当たり前だと私は思うわけです。

 その点、どういうところを政府としてその懇談会に投げられたのか、その点について御答弁いただきたいと思います。

細田国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたが、必ずしも、この点だけは議論してほしいというような申し上げ方はしておりません。

 ただ、専門家も入っておられますし、学者の中でも防衛問題の権威も入っておられますので、最近のいろいろ多岐にわたる事項について、この点はどうするか議論しようということで、当然問題提起が行われるものと考えております。

前原委員 石破防衛庁長官に伺いたいんですが、今まで長らく防衛庁長官、あるいはその前にも議員として安全保障の問題、防衛の問題に取り組んでこられて、一番、流れというか今後の課題、この防衛大綱の見直しを前提として議論していくわけですから、当然ながら押さえておかなければいけないポイントというのは幾つかあると思うんですね。

 もちろん、今、細田長官がお答えになったように、いろいろ意見を言ってもらう、専門家がおられるんだから当然出てくるだろうということはありますけれども、今まで責任者としてやってこられた流れの中で、こういった点はやはり議論してもらわなきゃ困る、次の大綱に入れるものとしては、こういったものが中身として取り上げられなくては困るということは私はあると思うんですね。その点について御答弁いただきたいと思います。

石破国務大臣 これは先ほど来官房長官から答弁がございますように、政府全体で決すべきものでございます。

 この防衛計画の大綱は、安全保障の大綱ではございません。防衛計画の大綱と位置づけを持っているわけでございますが、先生が一番よく御存じのとおり、本文があって別表という構成になっておるわけでございます。この本文は、やはり安全保障環境をどう認識するのかということについて記したものでございまして、その論理的な帰結として別表というものがあるんだということだと思っています。

 そういたしますと、委員がいみじくも冒頭おっしゃいましたように、新たな「脅威」に対して、つまり、それは主体においてもそうですし、手段においてもそうですし、平成七年に現大綱ができておりますが、それ以降に起こった事象というのは、基本的には、冷戦後の姿というものがはっきり見えてきたということと、ポスト九・一一というものをどうとらえるか、その情勢認識は必要なのだろうと思っております。それが一つ。

 もう一つは、前大綱及び現大綱は、基盤的防衛力ということがキーワードになっております。このことの考え方は、当時としてまことに適切なものであったというふうに考えております。このことについて、私は今防衛庁長官の立場で云々すべきものとは全く思っておりません。評価を交えて申し上げるわけではございませんが、この変わった環境の中にあって、そのような考え方がこれから先も憲法の範囲内において踏襲されるべきものなのかどうなのかという議論はあるのだろうと思っています。

 もう一つは、この厳しい財政事情をどう考えるかということ。

 そして、キャッチフレーズ的に申し上げれば、存在する自衛隊から機能する自衛隊というキャッチフレーズのような言葉があります。そこは多分統合ということがキーワードになるのだろうと思っていますが、陸海空の統合運用というものが本当に機能する自衛隊としてどうなるのか。

 さらに加えて申し上げれば、これは委員ともよく議論させていただくことですが、私は副長官のときから防衛力の本質とは抑止力だ、こういうふうに申し上げてまいりました。では、この新しい安全保障環境における抑止力とは一体何なのかということについて、防衛庁の中だけの検討では、これはおさまり切らないものがたくさんあるのだろうと思っています。あるいは他省庁との関係においても、海上保安庁あるいは警察との関係においても、防衛庁の中にとどまらず広く内閣全体として、そして朝野の識者の方々を集めて、日本国政府としてどうなんだということを下していただく、判断をしていただく、その議論の糧になるのがこの懇談会ではないかというふうに認識をしております。

 あれこれ羅列的に申し上げましたが、そういうことについて一種の方向性というものをお示しいただくということが、今度の新たな大綱策定においては一つ必要な作業ではないのかというふうに私は考えております。

前原委員 私は、次の防衛大綱というのは二つのアプローチが必要だというふうに思っていまして、一つは演繹法的なアプローチ。つまりは、今、石破長官が基盤的防衛力ということを言われましたけれども、今の状況にあって、そもそもどういう防衛力が日本において必要なのかといった、そもそもの考え方というものがまず一つ私は重要なんだろうと思います。

 そして、その演繹法的な考え方の中で、今防衛庁長官がおっしゃったところで私も非常に重要だと思いますのは統幕機能の強化。これは言葉ではなくて、やはり予算編成も含めて、あるいは装備形態、兵力の配分、まあ資源の配分と言った方がいいのかもしれませんが、そういったところも含めてどのように演繹法的な、つまりはそもそも論として組み立てていくのかといったところが私は極めて重要なんだろうと思います。

 それとあわせて、帰納法的なアプローチも必要だ。帰納法的なアプローチというのは、今防衛庁長官、これもおっしゃいましたけれども、厳しい財政事情の中で、しかし、新たな脅威に対応していかなきゃいけないということになれば、あるものは捨てて、あるものは取り入れていくという考え方も必要になってきますし、あるいは、例えば今の調達のあり方というものを根本的に見直して、むだはないのか、あるいは余分にお金がかかっていないのかとか、その流れで、武器輸出三原則の見直しというのは当然必要になると私は思っております。

 やはりお任せして、いろいろな専門家の方がおられるので当然出てくるだろう、そしてまた、当然事務方の方もそういった論点整理はされていると思いますけれども、私は、国の意思として、せっかく総理直轄でやられるのであれば、もう少し、総理並びに官邸がどういう方向性を持って臨んでもらいたいと思っているのかと。

 揚げ足をとるつもりはありません。よく丸投げ総理というふうに言われますけれども、実際はそうでなくても、そういうふうに見えるというのはいけない。やはり意思を持ってこの安全保障と防衛力に関する懇談会というものが、総理の意向あるいは内閣の意向としてこういうものも議論しなきゃいけないということが私は必要だと思いますが、その点について、今後の取り組みも含めて、官房長官、ぜひ前向きの御答弁をいただきたいと思います。

細田国務大臣 今、前原議員からも非常に建設的な御意見もいただいたわけでございます。当然いろいろな議論が出てまいると思いますが、きょうの前原議員の御議論も議事録などでも皆様に御紹介をしたりしながら、こういった議論が国会でも行われておる、こういった点はやはり必要なものを大いに詰めていこうではないかというようなことをこの会議の中で、あくまでも民間の方々の会議ではございますが、紹介をしながら進めてまいりたいと思っております。

前原委員 私の意見も紹介するのはありがたいんですけれども、私が申し上げているのは、やはり、内閣としてどういう意思を持つのか、また、どういう認識に基づいて新たな防衛力整備、あるいは防衛大綱の見直しをやろうとしているのかといったところの基本的な骨格がなければいけないでしょう、そのことについてやはり懇談会の方々にも伝えて、それをベースに議論してもらうということが望ましいということを申し上げているわけです。石破長官。

石破国務大臣 これは福田前長官ともまさしく委員と同じような認識を共有いたしまして、やはり懇談会というのは、いろいろ単に懇談をしていても仕方がないので、国家の意思としてどうなのだということを決めねばならぬのだろう、そういうことを御審議いただかねばならないだろうということは前長官とお話をし、そういう認識を今、細田新長官とも共有しつつあるところでございます。

 やはり国の意思としてどうなのか。そして、統合といった場合に、では、今まではどうであったのかという評価もきちんとしていかなければいけないだろう。では、今度統合するというのは何のために統合するのか、それはどういう事態に対して統合していくのか、それがどのように有効に機能するのか。ある意味で、政治の意思決定に資するという意味において、委員がおっしゃったような幾つかのことについて御議論をいただくということは必要なんだろうと思っています。

 先ほど申し上げましたが、形式がどうなるかは全く私が関知するところではございません。今、予断を持って申し上げることではありませんけれども、やはり本文と別表というものが、仮に別表というスタイルをとるといたしますと、論理的にきちっと結びついて、そして納税者に対して説明ができる。そして安全保障であるからには、アクターのいかんを問わず、我が国に対してそのようなことをしかけようとする勢力に対してきちんとしたメッセージが発せられるものでなければ、それは国民に対してきちんとした説明にもならないのであろう。それが政治的にどういうものになるかを御議論いただく。それをまた細田新長官ともお話をさせていただき、よく有識者の先生方とも意思疎通を図っていくことが必要ではないかと考えております。

前原委員 この議論はこれで終わりにいたしますが、細田官房長官に最後にお願いでありますけれども、今までの防衛予算において陸海空の配分というのはほとんど変わっていないんですよ、積み上げ方式で。これは私はおかしいと思うんですね。だから、こういう議論をしている前提として、まさに政治が、あるいは内閣が、まさに外交戦略、防衛戦略、安全保障戦略というものを持つ中で、今までの既得権益として積み上げたものを一遍リセットして、そしてそれをいかにうまく組み立てていくのかというやはりリーダーシップを発揮しないと意味がないというふうに私は思いますので、そういった観点で御努力をいただきたいというふうに思います。

 官房長官はもうこれで結構でございますので。

 さて、その新たな脅威を前提としてこの国民保護法制の議論をさせていただきたいというふうに思います。

 今話がありましたように、先ほどは大量破壊兵器の話、あるいはテロ、ゲリラの話というものがございましたけれども、私も新たに考えられるのは、ミサイルが飛んでくるとか、あるいはNBC兵器を使ったテロ、ゲリラ、つまり大量破壊兵器が使われた形でのテロ、ゲリラが行われる可能性がある、こういうことなんですね。

 しかし、そういうものは先取りしているよということなのかもしれませんが、まず井上国務大臣にお伺いしたいのは、この政府が出されている国民保護法制初め法案については、新たな脅威に対応できるものになっているんですか。それとも、着上陸侵攻型の今までの考え方に基づいたものになっているんですか。その点についてはどうですか。後で詳しく伺いますけれども、総論として、新たな脅威に対応するものに本当になっているのかどうなのか、その点について御答弁いただきたいと思います。

井上国務大臣 今御指摘がありましたけれども、着上陸対応というものももちろんありますけれども、しかし、ミサイル攻撃でありますとか、あるいは航空機による攻撃、あるいはその攻撃の方法なんかにつきましても、新しい脅威というんですか、これまでに使用されなかったような手段でもって攻撃を受ける、こういうことを想定いたしましてこの国民保護法案を出させていただいた次第でございます。

 委員御指摘のように、この国民保護法案といいますのは、武力攻撃事態等を想定いたしましての法律になっているわけですね。もちろん、テロ等につきましても所要の規定を置いておりますので、武力攻撃事態等と大規模テロというんですか、そういうものを前提にいたしました対応、国家としてできるだけの対応をする、こういうことで所要の規定を置いたということでございます。

前原委員 総論で議論していても私は余り意味がないと思っておりますので、ちょっと各論で議論させていただきたいと思います。

 まず、NBC兵器によってテロが行われる、あるいはそのテロが有事のきっかけかもしれませんが、そういうことに対応するような法律、そしてまた現体制になっているのかどうなのかといったところを、少し細かに話をしていきたいなというふうに思っております。

 きょう、厚生労働大臣にもお越しをいただいておりますし、また、国家公安委員長にもお越しをいただいております。また、麻生総務大臣にも来ていただいております。つまりは警察官、消防、それから、きょうは海上保安庁長官にも来ていただいておりますけれども、海上保安庁、それから自衛隊、こういったさまざまな方々が動かれる中で、果たしてNBC兵器によるテロ対応というものはしっかりできるのかどうなのか、また、それが避難・誘導などについてうまくいくのかどうなのか、その点について少し質問をさせていただきたいというふうに思います。

 坂口大臣にお伺いしたいんですが、まずBC兵器、つまりは生物化学兵器についてお伺いをしたいというふうに思いますけれども、どういったものがBC兵器、生物化学兵器というふうに厚生労働省としてお考えになっているのか。まず、その点についてお話を伺いたいと思います。

坂口国務大臣 生物テロに使われますようなものということになりますと、感染性が非常に強い、そしてまた重篤性が非常に強いといったようなものがやはり条件になるというふうに思っております。

 そうしたものを考えますと、一般的な病原菌等で申しますと、天然痘が一番可能性としては高いというふうに思っております。それから、炭疽、ペスト、ボツリヌス病、ウイルス性出血熱といったようなものが挙げられているわけでございますが、特に可能性としましては、天然痘、それから、炭疽、ペスト、ボツリヌス、この辺のところが一番可能性としては高いということを警戒しなければいけないと思っております。

 そのほかの、化学兵器といたしましては、神経的なもの、いわゆるサリンのようなものでありますとか、マスタードガスみたいなようなものでございますとか、そうしたものが非常に可能性としては高いというふうに思っております。

前原委員 まず、そういった兵器が使われた場合にどのような対応策がとれるのか、こういうことであります。

 坂口厚生労働大臣に伺いたいんですけれども、余りたくさんやっても時間もありませんので、では、天然痘と炭疽菌に限って、まず生物兵器について御質問したいんです。

 厚生労働省から事前に資料をいただいております。その上で、天然痘については、平成十三年からワクチンの備蓄を開始している、その後も追加備蓄を進めているということであります。そして、炭疽菌については抗生物質の投与が有効である、こういうことであります。

 ただ、私が質問したかったことについてお答えをいただけなかったのは、どのぐらいの備蓄があるのか、つまりは、そういった生物兵器が使われたときに、ちゃんとそれに対応できるような備蓄があるのかどうなのか。それについては危機管理上の問題から公表していないということなんですけれども、私は、それは全くナンセンスだというふうに思うんですね。

 ですから、危機管理上の問題から公表していないということじゃなくて、天然痘、炭疽菌についてはどの程度の対応能力があるのか、それについては、厚生労働大臣、はっきりお答えをいただきたいと思います。それからがスタートだと僕は思っていますから。

坂口国務大臣 天然痘につきましては、確かにそのワクチンをつくるのに、どれだけあるのかということを、なかなかここは明らかにできないということに今なっているわけでございますが、現在、このワクチンを受けていない人というのは二十八歳以下の方、それ以上の方は天然痘のワクチンを受けておみえになる。そうしますと、大体三千万人ぐらいだと思うのですね、日本の中の人口といたしまして。

 したがいまして、日本国じゅうにその人たちはいるわけでありますから、一カ所でその三千万人が被害を受けるということはないというふうに思います。少なくとも、その三分の一はカバーできる量を確保しなきゃいけないというので、今鋭意進めているところでございます。

 それから、もう一つの炭疽菌の方でございますが、炭疽菌の方は、これは抗生物質が効きますので、その抗生物質が全国各都道府県どこででも手に入るように今手を打っておりまして、調査もいたしておりますが、大体、この炭疽菌に対します抗生物質は、現在、日本国じゅう、どの地域におきましても手に入るものでございます。

 したがいまして、問題はやはり天然痘だというふうに思っておりまして、これはそのかかった人だけではなくて、一次感染、二次感染と次へだんだんと拡大をしていくものですから、そこが一番やはり問題だというふうに思っておりまして、その対策を急いでいるところでございます。

前原委員 天然痘の予防接種を受けていない二十八歳以下三千万人、その三分の一はカバーするようにということでありますが、今、備蓄がないから非難するということじゃありません。私はそういう観点で質問するわけじゃなくて、大体どれだけのタームで、つまりは期間的な目標を持ってその整備をされていこうとしているのか、やはり目標が私は必要だと思うんですね。どれぐらいでもう天然痘については基本的にテロが起きても大丈夫だ、それがまた抑止効果を生むわけですね。だから、そういう意味でのやはり目標年限というのは持つべきだと思います。

 それから、後でちょっとまとめて質問しようと思ったんですけれども、炭疽菌について、各都道府県にあるということをおっしゃったんですが、そういうもののいわゆる調達のあり方、調整、それは厚生労働省がちゃんと本当にいろいろな通達というものをされているのかどうなのか、つまりは融通がつくような話になっているのか。何かが起きたときに、抗生物質が必要だから融通してくれ、いや、それは渡せないというようなことがないように、やはり厚生労働省がそういう指導をあらかじめされているかどうかが私は重要だと思うんですが、その二点について答弁をいただきたいと思います。

坂口国務大臣 ワクチンの方につきましては、ことしも予算の中に入れていただいてございまして、少なくとも一両年の間には大体達成できるというふうに思っております。

 それから、炭疽菌の問題でございますが、炭疽菌に対します抗生物質は、いわゆる一般の、民間の卸問屋等にかなり確保されております。したがいまして、ここは心配は要らないというふうに思っておりますが、一部は国の方でも押さえておいて、そして、いざというときにはそこにそれを回すことができるような体制が必要だというので、そうしたことも考えているところでございます。

前原委員 次に、厚生労働大臣、化学兵器の方について話をさせていただきたいと思うんです。

 私が厚生労働省にお尋ねしたのはサリン、VXガス、マスタードガス、それからリシン、この四つについてお伺いをしていたわけでございますけれども、それぞれについて回答をいただいております。

 サリン、VXガスについては、メーカー及び卸における在庫量を定期的に確認している、こういうことでありまして、それから、マスタードガスについては、除染、洗浄をその付着した部位に行う、また、リシンについては、経口摂取の場合は嘔吐させるか胃洗浄が有効である、こういうことであります。

 後でマスタード、リシンについても伺いますが、サリン、VXガス、これについての備蓄、いわゆる解毒剤、アトロピン、PAMということを伺っておりますけれども、いわゆる解毒剤として対応できるような状況にあるのかどうなのか、その点について御答弁いただきたいと思います。

坂口国務大臣 サリンなどに対しますアトロピンは古くからある薬剤でございまして、これはどこにもあり得るものでございます。量的にこれが確保されなければならないということがございますから、これもやはり在庫量を定期的に点検しておかなければいけないというふうに思っておりまして、点検をいたしているところでございます。

 それから、リシンなどの呼吸困難を伴いますようなものに対しましては、これは比較的、対症療法的なことしかできないこともございまして、これで阻止できるというものもないわけでございますが、しかし、ここはいわゆる二次感染みたいなものはございませんので、何とか対応できるというふうに思っている次第でございます。

 主な病院を決めておりまして、全国で約五百三十カ所でございますけれども、何かが起こりましたときには、そこで対応するということにいたしているところでございます。

前原委員 化学兵器についても対応できるような解毒剤あるいはそういう治療薬というものは確保されている、また、それについて厚生労働省としてしっかりと定期的にチェックをしていただいているということであります。

 さらに厚生労働大臣に伺いたいんですけれども、地下鉄サリン事件というのがございましたね。この間、松本智津夫被告の最終弁論がありましたので、かなりニュースで、いろいろドキュメンタリーでもやっておりましたけれども、あのとき一番初めに運ばれた病院において、どういう症状なのかわからない、一体何が起きたのかわからないということで、その初めに運ばれた病院のお医者さんが診断してもわからなかったけれども、消防から初めに寄せられた情報は、リシンである、サリンじゃなくてリシンだ、こういうことだったわけですね。

 それで、私は、サリンについては化学兵器でありましたけれども、生物化学兵器テロというものが起きた場合に、病院に運ばれた場合の初期対応というのが極めて重要で、やはり、先ほどおっしゃったようないろいろな生物化学兵器というものの症状を、今おっしゃった五百の病院において、こういう症状の人が大量に運ばれてきたらこういういわゆるBC兵器が使われたんだというようなマニュアルと、あるいは指導というものが事前にちゃんとされていることが早期の対処につながって、人命の救助にもつながるんじゃないかというふうに思いますが、その点について、今どういう取り組みをされているのか。

 口幅ったい言い方ですけれども、地下鉄サリン事件があって、各国からかなりのそれに対する視察と調査団が来た。しかし、私が見たドキュメンタリーでお医者さんがおっしゃるのは、日本の政府が一番それについて、日本で起きたことなのにしっかりとその教訓をうまくカバーできていないんじゃないか、こういう指摘がありました。

 しかし、それはそのお医者さんがおっしゃっていたことでありますけれども、実際にそういう教訓をベースにして、各種BC兵器が使われたときにどういった症状がこれが使われた可能性が高いとか、そういうものについての厚生労働省なりのマニュアル化と指導はされているのかどうなのか、その点について答弁をいただきたいと思います。

坂口国務大臣 今御指摘いただいたところは一番大事なところだと私も実は思っております。

 今言っておりますサリンだとかリシンだとかというものが必ずしも使われるわけではなくて、全く予測しなかったものが使われる可能性もあるわけでありまして、そのときに一体何による症状なのかがわからないといけないということは確かにあるわけです。

 だから、そういう面では、非常にここは難しい面があるというふうに思いますけれども、現在想像され得るものにつきましてはマニュアルをつくりまして、日本医師会にも協力をいただいておりますけれども、先ほど申しました五百三十幾つかの重立った病院につきましてはそうしたことを示して、そして一たん、それに近い症状がある、どうもこれはといったときにはすぐその態勢をとっていただき、そして御連絡もいただくというふうに今言っているところでございまして、そうした重立った病院に対しましてはそうしている。

 しかし、問題は、そうした病院だけではなくて、一般の開業医の先生のところへ一番最初の人が行くかもしれないわけでありますので、そうした意味で、その重立った病院だけではなくて、全国の医師の皆さん方に、ふだんはお目にかからないけれども、しかしこういうときにはこういうことが考え得るということをやはり周知徹底しなきゃいけないと思います。高齢の皆さん方でありますと、戦争中のことがいろいろあったりしまして御存じの方もございますが、若い先生方でございますと、全くそういう経験もございませんので、周知徹底をやはり図らなければいけない。そうしたことは常時続けて、繰り返し繰り返しやっていないといけないことだというふうに思いますので、繰り返しそうしたことを病院の先生方にお願いをするといったことをいたしているところでございます。

 起こりましたときの、入院するときにはこういうところの病院ということは一応決めておりますけれども、その前に、その症状を見たときに早く判断をしていただくということが非常に大事でございますので、それぞれの都道府県の研究所等とも連携をとりまして、そして、早くそれに対して、そのとおりだということが確実に診断をしていただけるような体制をとっているところでございます。

前原委員 最後の、とっているところでございますというのは、もうとっておられるのか。つまりは、重立ったBC兵器、先ほど大臣が列挙されましたそういうものについては、どういう症状で、どういう対処法が必要なのか、どういう薬を使うのかということは、ちゃんとマニュアル化されているのかどうなのか。つまり、五百のみならず全国の開業医ということをおっしゃいますけれども、それも僕は大事なことだと思うんですね。

 だから、そういうものは私は二つのポイントが必要で、坂口大臣はドクターでいらっしゃるので釈迦に説法ですけれども、とにかくそういうマニュアルというものを厚生労働省がつくって、指針をつくって、そして、それについてのいわゆる周知徹底というものが定期的に行われていくというこの二つの柱が私は必要だと思うんですが、それはもうやっておられるということなんですか。

坂口国務大臣 少なくとも、重立った病院に対しましては既にやっております。(前原委員「マニュアルもあるんですか」と呼ぶ)はい。

 それで、繰り返し行うというのはこれから行わなければならないことでございますので、繰り返しやっていきたいというふうに思っておりますが、一般の開業医の先生のところまで周知徹底しているかといえば、そこまでまだ至っておりませんので、これからやはり医師会の協力を得ましてやっていかなければいけないというふうに思っているところでございます。

前原委員 本当の国民保護というのは、法律の議論をしていますけれども、そういった起きたときのやはり対処の仕方というものが整っていないと、法律をつくっても私は意味がないというふうに思いますので、やっぱり車の両輪で、こういったことについては井上国務大臣も目配りをしてもらうということがやっぱり必要なんだと思いますので、ぜひそこは防災担当の大臣として、まさに各省庁間すべてを見ながらやっていただく。もともと官房長官がこの所掌であったということは、まさにすべてを見ていただくのが井上大臣の仕事だと思いますので、今、厚生労働大臣が答弁されたこともしっかりフォローアップを井上大臣していただきたいと、要望だけしておきます。

 そこで、麻生大臣、おられなくなりましたね。では、小野国家公安委員長、おられますのでお聞きをしたいと思います。

 警察官の方の数は今二十四万人ぐらいということでございますが、そのNBCテロ対策というものがどれだけ対応できるようなものになっているのか。

 例えば、今の治療ということでなくて、防毒マスクとか、あるいはいろんな服がありますね、防護服。つまり、先ほど坂口厚生労働大臣もおっしゃったように、いわゆる感染症のものについては、逆に、警察官がそういった現場に踏み込んで、そして自分も感染して、そして潜伏期間があるわけですから、そしてまたそれをまき散らす、こういうことになったときには、ああいう地下鉄サリン事件のような出来事が起きれば、ある程度の防護をしてそういった対処を行うということが極めて重要だと思いますけれども、今どれだけの体制が整備できているのか。

 この二十四万人の警察官が、そういったNBC、今、BCしか伺いませんでしたけれども、放射能も含めて、放射能テロも含めてそれにどう対応できるようなものになっているのか、その点について御答弁いただきたいと思います。

小野国務大臣 前原委員にお答えをさせていただきます。

 具体的な装備資機材の整備状況につきましてということでございますけれども、全国四十七都道府県に機動隊がございますけれども、その機動隊の中に設置しておりますNBCテロ対策班に、生化学防護服、防護マスク、それから除染機等、NBCテロの発生時に初動の対応可能な装備資機材というものを整備しておりまして、また、主要な八都道府県、ここの中に置きますNBCテロ対応専門部隊というものがございます。ここは二百名ほどでございますけれども、そこにいわゆるNBCテロ対策車と検知資機材というものを配備しているところでございますけれども、具体的な数字ということでございます。

 防護マスクは約四千八百個、それから、化学防護服というのは六百着、生化学防護服というのは四千八百着、それから、放射性粉じん用防護服は約五万六千着を整備しているところでございまして、このほか、各都道府県の予算におきましても、それぞれ必要数を整備しているものと承知をいたしております。

前原委員 小野国家公安委員長に質問させていただきたいんですけれども、後でちょっと具体的な事例で申し上げたいと思いますけれども、想定され得るテロにおいて、今おっしゃったような整備状況で対応可能だと思っておられるのかということがまず一つ。もちろん、事態の規模によるとは思いますけれども、想定しておられるものでそれで本当に十分と思っておられるのかどうかということが一つ。

 あとは、警察というのは都道府県レベルになっていますね。そうしたときに、ちゃんと警察庁が主導的な役割を持たれて、それのいわゆる貸し借りというか、あるいはその調整、また、人の派遣も含めて、そういった総合調整においてはもう既に話ができているのかどうなのか。

 その二つの点について御答弁いただきたいと思います。

小野国務大臣 お尋ねの整備状況に関しましては、先ほどお話をさせていただきました。私から先ほど申し上げたのは国費の方の整備でございますので、県費の方でさらに対応がなされているものと思います。

 それから、部署的にもっと大量のものが必要であるということであれば、その融通というものは、長官を通しましてすべてに連携がとれるようになっているところでございます。

前原委員 消防についても、麻生大臣、お尋ねをしたいわけですが、同じように、やっぱり何かあったときには消防署員の方がその現場に行かれるというケースが多いわけでありますけれども、同じようにNBC対応についてしっかりとそういう対応ができているのかどうなのか、御答弁ください。

麻生国務大臣 お答えいたします。

 しっかりとと言われるその定義がなかなか難しいところで、どの程度やるとしっかりになるかどうかはなかなか難しいところだとは存じますが、現状を申し上げさせていただければ、バイオとケミカルに対する、BC災害に対応するための資機材といたしましては、陽圧式という、中から圧力をかけてやります防護服というものが三千八百着、それから、陽圧式以外のもののいわゆる化学防護服というものが一万六百着、それから、先ほど言われましたびらん性のものについては使えず、マスタードなんかには使えないんですが、いわゆる神経系のサリン等々に使えます防毒マスク等々につきましては、約二万一千四百という数字が出されております。そのほかにも、ニュークリア、N災害に対しましては、その程度の放射線の防護服が二千五百三着、いわゆる消防庁の管轄下にあるということで、それが、各都道府県の代表的な、百三十八あります消防機関に無償で貸与されておりまして、防毒マスクを全国の救急隊及び航空隊の方に無償貸与をいたしております。

 そのほかにも、各市町村で対応するということをいろいろ考えなならぬところだと思いますので、先ほど言われましたように、上陸してくるという話よりは、何となくテロ的な話の方が予想されるところでもありますので、そういったところを考えまして、いわゆる一連の防護服等々につきましては、補助金により整備を推進しているところでありますので、間違いなく、昔に比べれば随分となったとは思いますけれども、これで十分かと言われれば、とても十分と言えるような状況までには至っていないと存じます。

前原委員 先ほども申し上げたんですけれども、今整備できていないからけしからぬということだけではなくて、この国民保護法制が議論される、これをきっかけに、法律の整備のみならず、いかに態勢の整備をしていくのかということが私は大切だというふうに思います。警察にしても、消防にしても、きょうは国土交通大臣は来られませんので海上保安庁長官に来ていただいておりますが、海上保安庁の職員の方にしても、まだまだそういった対応ができていない、十分ではないと私は思うんですね。そうしないと、やはりそういったものに対応ができなくて、ひいては国民保護ができない、こういうことになろうかというふうに私は思います。

 それで、一番大切なのは、やはりお金なんですね。そのお金についてしっかりと手当てをするということが、やはりこの国民保護法制を一つの契機として、訓練や計画の策定なんかにも国費が必要だと思いますが、そういった今申し上げたようなNBC対策あるいは新たな脅威に対応するための、特に初動対処をしていただくような公務員の方々に対するしっかりとした防護服あるいはいろいろな薬等の手当てというものはしっかりやらなきゃいけない、そのためにはある程度集中的にお金がかかっても仕方がないというふうに私は思います。

 財務副大臣、きょう来ていただいておりますけれども、財務省としては、今までの役所の枠とかそういうことではなくて、やはりこの国民保護法制の議論を一つの契機として、このことについてはできるだけ早い時期にしっかりとした十分な態勢がとれるように財政的な措置をすべきだというふうに私は思いますけれども、御答弁いただきたいと思います。

山本副大臣 委員御指摘の新たな脅威につきましては、実際にさまざまな事態が想定されることは、先ほどのお話から理解させていただいたところでございます。

 その内容、規模等があらかじめ明らかでないというようなことのほか、その対応のための事前準備や費用についても、具体的に何がどこまで必要であり、幾らかかるか等についてはまだまだ研究や検討の必要があろうと思っております。

 したがいまして、一般論といたしましては、必要なものは必要に応じて対応するという以外にないわけでございますけれども、他方、国民の保護のための措置を円滑に実施していくために平素からの準備も必要と考えているところでございます。

 今後、ミサイル攻撃、NBC兵器によるテロへの対応等に関し、例えば備蓄や資機材の整備、訓練など事前準備に必要となる経費につきましては、防災担当大臣を初めとする関係御当局において、具体的にどのようなものが必要となるか整理をいただきまして、その上で財政措置について検討を図ってまいりたい、そういうように考えておるところでございます。

前原委員 今、財務副大臣が答弁されたように、逆に言えば、麻生大臣や坂口厚生労働大臣、また小野国家公安委員長におかれましては、また国土、きょうは鶴保政務官が来られておりますけれども、やはりどのような規模がある程度十分と考えられるのかと。先ほど坂口厚生労働大臣は、天然痘のワクチンのことについては三千万人のうちの三分の一ぐらい、こういう話を具体的にされました。そうすると目鼻が立つんですよね。

 したがって、防護服とかあるいは薬につきましても、ぜひ、この国民保護法制というものの整備を一つの契機として、政府として目標の数値を設定して、さまざまな薬、防護服、さまざまな資機材、こういうものを設定して、そして、法律の整備だけじゃなくて、態勢の整備もある時期集中的にやっていくということが必要だと私は思います。

 これは防災担当大臣の責務だと私は思いますよ、法律をまとめるだけじゃなくて。それぞれの大臣からそういう要望を聞かれて、そして井上大臣がしっかりと財政当局に予算を要望されるということが必要だと私は思いますが、その取りまとめをする決意を答弁いただきたいと思います。

井上国務大臣 私の所管の範囲に予算要求の取りまとめが入るかどうかはよくわかりませんけれども、ただしかし、やはり必要な資機材につきましては、きちっとした計画ができなくても、おおむねのめどを持って整備をしていくということが大事だと思います。

 特に、最近のような財政状況になりますと、短期間のうちに整備をするというのはなかなか難しいものですから、若干の時間がかかりましても、一つのめどのようなものを持って整備をしていかないといけない、こんなふうに考えておりまして、現に平成十六年度におきましても、できるものについては所要の予算計上をやっているところでございます。

 私がそういう予算の取りまとめについて責任を持つということになりますれば、今お話しのようなことをまとめて、もちろん関係各省が要求するわけでありますけれども、また、まとめる立場から、それぞれのところから状況を聞きまして財務大臣の方に申し上げていきたい、こんなふうに考えております。

 なお、防災の方につきましては、一応私のところが窓口になりまして、大体どういうことに重点を置いて予算要求をするかということをやっておりますので、それはできているのでありますけれども、今の有事につきましては、ただいま私が答弁いたしましたような状況でございます。

前原委員 いや、これは取りまとめしてもらわなきゃ困るんですよ、井上大臣に。

 つまりは、もともと武力攻撃事態の法案、前の通常国会で議論したときは官房長官がそこに座っておられたわけです。だけれども、今度は、この七法案については、井上国務大臣が法案提出者になられているわけですよ。防衛庁長官が出されてもおられますけれども、しかし、トータルとしては、特に核になっている国民保護法制については井上国務大臣が提案されているわけです。そして、その法律の中には財政措置も入っているわけです。

 なぜ各省の大臣じゃなくて、そういった、昔は官房長官、今は防災担当の国務大臣がやっているかということは、それは予算の取りまとめもしなきゃいけないんですよ。省庁横断的なところだから特命大臣を置いてやっているわけですから、そこは、私が予算の取りまとめをするのであればじゃなくて、自分がするという前提に立っていかないといけないので、その点だけ、一言で結構ですから、しっかりと取りまとめをする、そして早期に整備をする、やはりそういう断定をしていただきたいと思います。

井上国務大臣 私の当面の職責というのは、有事法制につきまして責任を持って国会の方に説明をしていく、こういうことだと思うのであります。したがいまして、だれが予算の要求をまとめていくかというのは、これはこれとしてやらないといけないことだと思うのでありまして、もし私がなるようになりましたら私がやりますし、もしだれか他の人がそれに当たられるようでありましたら、今委員の御指摘のような趣旨は十分に伝えまして、できるだけそごのないようにしていきたい、こんなふうに考えております。

前原委員 謙虚な御答弁でございまして、しっかりおれがやるということでやっていただきたいというふうに思います。

 先般、私、質問させていただいたときに、緊急対処事態の類型化ということを質問いたしました。質問というか政府の統一見解を求めました。つまりは、緊急対処事態というのはどういうものなのか、類型化、そしてまた、想定される事態例というのはどういうものかということで、理事会では提出をいただきましたけれども、まだ委員会あるいは議事録に残るような形で国会ではお話をいただいておりませんので、かいつまんでその理事会に出されたものについて井上大臣から御答弁をいただきたいと思います。

井上国務大臣 かいつまんで御答弁するよりも、そのものをきちっと申し上げた方が正確を期すと思いますので、朗読をさせていただきます。

    国民保護法案にいう「緊急対処事態」について

 1 緊急対処事態の定義

   「緊急対処事態」とは、「武力攻撃の手段に準ずる手段を用いて多数の人を殺傷する行為が発生した事態又は当該行為が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態(後日対処基本方針において武力攻撃事態であることの認定が行われることとなる事態を含む。)で、国家として緊急に対処することにより国民の生命、身体及び財産を保護することが必要なものとして内閣総理大臣が第百八十一条第一項の規定により認定したもの」を指すものである(武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案第百七十二条第一項)。

 2 緊急対処事態の考え方

  (1) 緊急対処事態は、武力攻撃の手段に準ずる手段を用いて多数の人を殺傷する行為が発生した事態又は当該行為が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態で、国民の生命、身体及び財産を保護するため、国家として緊急に対処することが必要な事態である。

  (2) 内閣総理大臣による緊急対処事態の認定に当たっては、発生初期の段階では武力攻撃の手段に準ずる手段を用いた攻撃の主体、意図等が不分明な場合も想定されることから、当該攻撃の主体や意図を認定の要件とはせず、被害等の態様、国民の生命、身体及び財産の保護の必要性等に着目して迅速にこれを行うこととし、国全体として適切な対応を図ることとしている。

  (3) なお、「後日対処基本方針において武力攻撃事態であることの認定が行われることとなる事態」とは、発生初期の段階では武力攻撃事態であるとの判断が困難な事態であって、後日武力攻撃事態であることが判明し、対処基本方針において「武力攻撃事態」として認定が行われることとなる事態をいう。

 3 想定される緊急対処事態の類型

   具体的にどのような事態が緊急対処事態に該当するかについては、当該事態の状況等に即して個別具体的に判断されるべきものである。

   ここで、「武力攻撃の手段に準ずる手段」としては、著しい破壊力を有する爆弾の使用等の武力攻撃において通常用いられる攻撃の手段又は生物剤、化学剤の散布等の武力攻撃において通常用いられる攻撃の手段に準ずる攻撃の手段を考えているところ、現時点において想定される緊急対処事態の類型及び具体的な事態例としては、例えば、次のようなものがある。

  (1) 想定される緊急対処事態の類型

   〔1〕 危険性を内在する物質を有する施設等に対する攻撃が行われる事態

   〔2〕 多数の人が集合する施設及び大量輸送機関等に対する攻撃が行われる事態

   〔3〕 多数の人を殺傷する特性を有する物質等による攻撃が行われる事態

   〔4〕 破壊の手段として交通機関を用いた攻撃が行われる事態

  (2) 想定される事態例

   〔1〕に該当する事態例

    ○ 原子力発電施設等の破壊

    ○ 石油コンビナート、都市ガス貯蔵施設等の爆破

   〔2〕に該当する事態例

    ○ 大規模集客施設、ターミナル駅等の爆破

    ○ 新幹線等の爆破

   〔3〕に該当する事態例

    ○ 放射性物質を混入させた爆弾(ダーティボム)等の爆発による放射能の拡散

    ○ 炭疽菌等生物剤の航空機等による大量散布

    ○ 市街地等におけるサリン等化学剤の大量散布

    ○ 水源地に対する毒素等の混入

   〔4〕に該当する事態例

    ○ 航空機等による多数の死傷者を伴う自爆テロ

 以上でございます。

前原委員 今お読みをいただいたものは、「国民の生命、身体及び財産を保護することが必要なものとして」という限定条件つきでありますが、緊急対処事態というのは国民保護法制の中に入っているのでそういう前提がつくのはわかるんですけれども、例えば、そういう限定を取った場合の緊急対処事態というのはあり得ると思うんですね。それについてはどういうものが考えられるのか、その点についても御答弁をいただきたいと思います。

井上国務大臣 いずれもやはり国民の生命とか財産に関係がないということはないと思いますし、あるいは、広く国際的な事件でありますとか何かまで範囲を広げて考えれば別でありますけれども、通常私どもが考えますのは、やはり国民の生命なり財産に影響があるというものを想定して、それに対する対策をとればよろしいんじゃないか、これはまず第一次的に必要なことだろうと思います。

前原委員 例えば、直接は国民の生命財産の保護を必要としない場合は、領海侵犯とか領空侵犯とかそういうものとか、あるいは不審船、サイバーテロ、こういったものも考えられると思うんです。

 ですから、これは委員長、理事会でも話をされていることでありますが、いわゆる国民の保護等に限定されない緊急事態の類型化について、政府としての統一見解を求めたいと思いますので、お取り扱いの方をお願いしたいと思います。

自見委員長 引き続き理事会で協議をさせていただきます。

前原委員 それでは、最後に外務大臣に質問をさせていただきたいというふうに思います。

 これも、前回、私も質問をいたしましたし、また、さまざまな議員が質問をしているところでございますが、どうしてもやはり納得できない、あるいは、どうしたら納得できるのかということについてのことなんです。

 いわゆる五条事態において、米軍とともに行動する、そして米軍が日本の国内で日本有事に対して行動する、これが日米安保条約の柱になっているわけでありますが、地位協定の第十六条には、日本の法令のいわゆる尊重義務ということで、遵守ではない、接受国の法令を遵守する義務はないということの議論は何度もやらせていただきました。

 それで、米軍が日本の法令を尊重してくれると思いますという答弁は何度もいただきましたが、私は、もっと具体的に、それをどう担保するのかということはやはり政府において検討していただかなきゃいけないことだと思うんですね。では、どのようにそれをもっと具体的に担保していくのか。それは、地位協定から何か運用におろして日米で取り決めを決めるとか、事務的な取り決めでもいいと思うんですよ。

 きのう、我が党の同僚の首藤議員がジュネーブ条約のことについて聞かれました、捕虜の扱い方について。予備役の人たちはなかなか、ジュネーブ条約の中身についても知っていないわけですよね。ですから、一般的にジュネーブ条約のことについては教則本にも載っているんだから理解していると思いますといっても、現実に理解していない人間がああいう問題を起こしている現実を目の当たりにすれば、いわゆる法令尊重義務というものをどう担保するのか、あるいは政府としてそれをどう担保するように努力をしてもらうのかということが、私は極めて重要なことだというふうに思います。

 したがって、今までの答弁よりもさらに踏み込んで、どう担保するのかということについて御答弁をいただきたいと思います。

川口国務大臣 どのように担保するかということですけれども、一般国際法、国際法というのは遵守をする義務があるわけですね、それぞれの国は義務がある。すべて、そういった国際法を遵守するという義務、これに担保が必ず必要かという、必要だというふうにおっしゃっていらっしゃるのかもしれませんけれども、政府の考え方としては、これは、先ほど委員もおっしゃいましたように、米国というのは国際法に基づいて、ほかのどの国もそうですけれども、我が国もそうですが、行動をするということであるというふうに考えているわけです。

 それで、尊重義務があるということを遵守するということは、これは一般国際法でございますから、当然、地位協定十六条に書かれていることということは、その一般国際法の精神でまさにそれが地位協定に書かれているわけでして、一般国際法を遵守するということは当然のことであるというふうに考えております。

 したがって、特にそのために担保をする、何かを考えるということではないというふうに考えるわけです。

前原委員 いや、それは外務大臣、違うんですよ。

 では、質問時間も終わりましたので、逆に提案をさせていただきますけれども、何のために日米間で調整メカニズムがあるのかということなんですね。

 つまりは、ガイドラインの議論というのをやってきました。平素からの協力、日米有事の協力、周辺事態の協力という三つの協力において、大事なポイントが日米の調整メカニズムだったわけです。この調整メカニズムというのは、別に軍事オペレーションだけの調整メカニズムである必要は全くないわけですね。

 したがって、そういう法令尊重なんかの徹底、あるいはジュネーブ条約なんかのそういった捕虜の取り扱い等あるいは文化財の保護等の徹底、そういったものはきっちりと調整メカニズムの中で、まずは2プラス2、あるいはその下のレベル、あるいは事務的な、実務的なレベルという、いろいろな段階で調整メカニズムがあると思うんですよ。そういったところで日本側の主張をして、そして周知徹底してもらうということ、私は、それをおっしゃることが十分な担保の一つになり得るというふうに思います。

 したがって、私が外務大臣に御答弁を期待したのは、単なる法律の文言ではなくて、では、どのようにそれを担保していくのかというような、その意思をお伺いしたかったわけです。

 2プラス2に出られる石破長官、今のお話を聞いておられて、どう思われましたか。

自見委員長 質疑時間が終了いたしておりますので、簡潔に答弁をお願いいたします。

石破国務大臣 それは、委員おっしゃるとおり、調メカというのは指揮命令系統だけではございません、統制の問題だけではございません。調整メカニズムというものを使いまして、さらなるそういうことの担保を図るということ、もちろん外務省とよく御相談をしながら行うことでございますが、実際にいろいろな捕虜の取り扱い等々行います場合に、これは私どもが捕虜収容の任を負っているわけでございます。調メカの活用の仕方につきましても、委員の御提案を踏まえて、努力をしてまいりたいと存じます。

前原委員 努力をお願いいたしまして、質問を終わります。

自見委員長 次に、中塚一宏君。

中塚委員 民主党の中塚一宏でございます。

 本日は、冒頭にまずパレスチナ問題をお伺いした後、国民保護法制の中でも、特に経済とか金融とか財政に関連をする部分についてお伺いをしたいというふうに思います。

 まず、川口外務大臣にお伺いをいたしますけれども、パレスチナ問題についてであります。

 ことしの三月の二十二日に、イスラエル軍がヘリコプターでイスラム原理主義組織のハマス創始者のヤシン師をミサイル攻撃をして殺害いたしました。ハマスはイスラエルの存在を認めないという立場をとって敵対をしてきたわけであります。

 続いて、四月十七日には、今度はパレスチナ自治区ガザで、同じくハマスのランティシ氏をミサイルで攻撃して殺害した。イスラエルが計画しているガザ入植地からの撤退を前にハマスの影響力を低下させるねらいがあると見られているというふうに言われておりますが、イスラエル治安当局は声明で、ランティシ氏はテロに直接責任を負っているというふうに指摘をしているところです。

 ここで、まずお伺いをしたいんですけれども、我が国として、このハマスという組織をテロ組織というふうに考えていらっしゃるのかどうか、お答えをいただけますでしょうか。

川口国務大臣 テロについて、これも再三再四申し上げていますように、一般国際法上、確立をした定義は存在をしないということでございますし、また、我が国においては、テロ行為ないしはテロの組織を法的に認定するという法制度はないわけでございます。

 ですけれども、昨年の九月の三十日に、閣議をもちまして、我が国はハマスに対してテロ資産凍結を実施するということを決定したということでございます。

中塚委員 続いて、イスラエル軍のランティシ氏の殺害に対して、国連のアナン事務総長は、殺害は国際法違反であるというふうに述べたと伝えられておりますし、加えて、昨年合意した中東和平交渉のロードマップに基づく交渉努力を求めたというふうに言われているわけです。

 アメリカ政府も、イスラエルによるハマスのヤシン師殺害について、バウチャー報道官などが非常に困惑しているというふうに深い懸念を示す一方、イスラエルに自衛の権利があることも認めている。そして報道では、直接的な非難は避けたというふうに言われております。

 そういう中で、米国の立場というのは結構微妙なわけですけれども、川口外務大臣自身は、四月の十八日、ランティシ氏の殺害について、行為がもたらす結果に対する考慮を欠いた無謀な行為で、正当化できるものではなく、極めて遺憾だというふうに述べていらっしゃいます。イスラエルを強く非難する談話を発表されているわけなんです。

 ここで、次にお伺いをしたいんですけれども、イスラエルがそういうことでハマスの指導者をミサイルによって攻撃するということですが、これはテロとの闘いというふうに呼べるのか、そういうふうに我が国として考えるのか、いかがでしょうか。

川口国務大臣 一連のイスラエルによるハマスのリーダーを殺す殺害行為、これにつきましては、先ほど委員がおっしゃられたような遺憾の意の表明を我が国としていたしております。

 それで、この行為について、イスラエルは、一連のパレスチナ人要人への攻撃について、自爆テロ活動に対する自衛権の行使だということを言っているわけでございます。

 自衛権の行使かどうかということについて、これは、イスラエルについてもあるいは他の国においても、当然に自衛権というのは固有の権利としてあるわけでございまして、一般論として申し上げれば、これは一定の要件というものが満たされなければいけないということであるわけでございます。したがって、一定の要件を満たせばテロに対して自衛権行使が認められるということがあり得るということは、従来よりも御説明を申し上げてきているとおりでございます。

 それで、このハマスの指導者に対しての殺害行為ですけれども、我が国の考え方としては、我が国が承知をしていない特段の事情があれば別でございますけれども、これは自衛権を含めて国際法上の問題があり得るというふうに考えております。ただ、イスラエルについては、個別の具体的な事情について我が国は必ずしも全部知っているというわけではございませんので、確認をすることもまたできないということでございますから、確定的に法的な評価をするということはできないということです。

 ただ、イスラエルの行為について言いますと、これは、みずからテロとの闘いということについて主張をしているわけですから、その主張の根拠である法の支配、これを覆しかねない行為であるというふうに考えております。

中塚委員 何がテロかということについてお尋ねをしているわけなんですが、パレスチナ問題というよりも。総理なんかもよくこの部屋でテロとの闘いだというふうなことを連発されていくわけなんですが、私は、そういう意味では、日本政府の言うところのテロとの闘いというのは一体どこまでを指すんだろうということを思うわけです。

 おのおの各国には各国の事情があって、敵対する勢力というものがあって、その敵対する勢力が暴力に訴えて、そして人を殺すということになるわけで、そのこと自体は認められないにしても、何でもかんでも、ではテロということで、こんな簡単に片づけてしまっていいのか。これだけ価値観も多様化している時代にあって、特にそれが政治的に利用されるということについては大変大きな問題があるというふうに考えております。

 その上で、中東和平のロードマップについて、我が国としてどういうふうな見解を持ち、また、どういうふうに対応をされていくおつもりがあるのか、御答弁をいただきたいと思います。

川口国務大臣 ロードマップでございますけれども、イスラエルとパレスチナの二国家の平和的な共存ということにつながっていく唯一の道、これがロードマップであるというふうに思っておりまして、このロードマップを通じた解決しかパレスチナ問題についてはない、それを我が国としては支持しているということでございます。したがって、今このような形でイスラエルとパレスチナの間に暴力の連鎖があって、ロードマップに戻って議論をしていくということになっていないことについては懸念を覚えております。

 ごく最近ですけれども、四日にカルテットの会合が開かれたわけでございまして、イスラエルとパレスチナ、二国家の平和的な共存についてのコミットを再確認したということであります。それから、両当事者に、ロードマップに戻っていく、そのロードマップ上の義務履行のための措置を求めたということについて、我が国として歓迎をいたしております。

 今後ともロードマップを進展させていく必要があるということでございまして、それのためには、イスラエル側が入植活動を凍結するということが大事ですし、それから、パレスチナ側の人道また経済状況を改善することが大事ですし、そして、パレスチナ側は過激派の取り締まりについて最大限の努力をする、そして成果を上げるということが重要であるというふうに考えております。

 我が国はこの信頼醸成等についての支援を行っておりまして、パレスチナ、イスラエル双方に、ロードマップに戻って対話を再開するように働きかけているということをずっとやってきているわけでございます。

中塚委員 重ねて申し上げますが、我が国は、テロとの闘いということを標榜し、自衛隊をインド洋に派遣し、またイラクにも派遣をしているということなんですけれども、今おっしゃったとおり、中東和平のロードマップについて唯一の道であるというふうにお考えであるならば、私は逆に、テロとは何かということもいま一度考え直す、法律上の問題だけではなくて、テロとの闘いということでいろいろなものをばっさり切り捨てるというふうなやり方が果たしていいのかどうかということについて考え直すべきだというふうに思いますので、そのことを申し上げておきます。

 それでは次に、国民保護法制についてお伺いをいたします。

 国民保護法制、今回提出された法案の中でもやはり大変に、一番重要な部分だと思っております。特に、第五章以下、国民生活の安定に関する措置についてですね。何のためにこういう有事法制と言われるものをつくるかというと、やはりそれは国民のためにやるわけでありますから、有事の際においても、その国民生活というものができる限り平穏に保たれるような、そういうふうな施策というものが必要になってくるわけです。

 特にきょうは、経済とか金融の問題についてお伺いをしようと思いまして、日本銀行の福井総裁にもお越しをいただいております。というのも、日本銀行は指定公共機関として指定をされているということであります。そして、第百三十三条ですが、「日本銀行は、武力攻撃事態等において、その国民の保護に関する業務計画で定めるところにより、銀行券の発行並びに通貨及び金融の調節を行うとともに、銀行その他の金融機関の間で行われる資金決済の円滑の確保を通じ、信用秩序の維持に資するため必要な措置を講じなければならない。」ということが定義をされているわけです。

 まず井上担当大臣にお伺いをいたしますけれども、日本銀行を指定公共機関としているわけですけれども、日本銀行には指定公共機関としてどういうふうな役割を期待されているのか、御答弁をいただけますか。

井上国務大臣 今の質問の中にもありましたけれども、その中で引用されました、これに尽きているわけですね。

 国民保護法案の第百三十三条、これを繰り返して読みますが、「日本銀行は、武力攻撃事態等において、その国民の保護に関する業務計画で定めるところにより、銀行券の発行並びに通貨及び金融の調節を行うとともに、銀行その他の金融機関の間で行われる資金決済の円滑の確保を通じ、信用秩序の維持に資するため必要な措置を講じなければならない。」ということでありまして、まさに、金融秩序の維持のために必要な措置を講ずる、こういうことのために指定公共機関として指定をしている、こういうことであります。

中塚委員 私は、この国民保護法制というものをつくるからには、やはり、どんな事態でもとはなかなか言い切れないとは思いますが、しかし、有事が起こった場合に、できるだけ国民の生活というものが安定をしていかなければいけないということの目的のために、立法の趣旨というのはそういうことだと思うんですね。

 ところが、この第百三十三条に書いてあることというのは、特段目新しいことではありませんね。日本銀行として、日本銀行法にはそもそも書いてあって、これは日本銀行の本来業務なわけですね。だから、これは別に、この国民保護法制があろうがなかろうが、日本銀行としては当然に行わなければいけない業務であるということだと思うわけです。私がこの百三十三条を読み上げたのをそのとおりお返しになるということは、結局これは、この法律ができることによって何か新しいことができていくということではないと思うんですね。

 それで、福井総裁に同じことをお伺いしたいんですが、日本銀行は指定公共機関として指定をされております。指定公共機関として日本銀行はどういう役割を期待されているのか、御答弁をいただけますか。

井上国務大臣 確かに、日本銀行の本来の業務として規定してありますことをこの国民保護法案の中にも規定しているわけでありますけれども、この意味は、日本銀行を指定公共機関として指定するということでありまして、その効果は、業務計画をつくりまして、今申し上げました業務を実施することを義務化されているわけですね。ここが非常に違うということであります。

 結果においては、あるいは同じかもわかりませんけれども、義務として今申し上げました第百三十三条の業務を行わないといけない、こういうことであります。

中塚委員 それは御答弁のとおりだと思うんですが、それは法律の形式論の問題であって、では実際に、例えば他国から侵略を受けて日本が大変な混乱状況に陥ったときに、日本銀行として、非常事態だから、武力攻撃事態だから、あるいは緊急事態だから何か新しいことが日本銀行としてできるようになっているということではありませんねということなんですけれども、福井総裁に、日本銀行が指定公共機関として指定をされている意義と、そして、日本銀行はどういった役割を期待されているとお考えになっているのかを御答弁いただけますか。

福井参考人 お答えを申し上げます。

 ただいま御審議中の国民保護法案、日本銀行につきまして、御指摘のとおり、特別の条文、百三十三条というのが設けられておりまして、私どもがそういう危機に臨んでやらなければいけないこと、これは、おっしゃるとおり、日本銀行法第一条の「目的」に書かれていることと全く同じことが書かれているということでございます。しかし、私どもは、この新しい法案の意味合いを非常に強く受けとめております。

 見方によりますと、私ども日本銀行がやっております仕事は、ふだんから、日本の経済とか日本の金融市場に及んでくるさまざまなショックを吸収しながら物価の安定という最終目標を実現する、つまりショックアブソーバーの機能というのはふだんからやっているわけで、それと同じではないかとおっしゃれば、そうでないと言い切れない面は確かにあるのでございます。

 しかし、例えば災害の場合でも、業務をきちんと継続し、そして臨機応変に、応用動作も出しながら対処してきている。テロを含めたいわゆるこの法律に予定されておるような武力攻撃事態というふうな状況になりますと、それがより厳しい形でショックが及んでくる。予期せざるタイミングで予期せざる性格のショックが及んでくるということでございますので、私どもは、この条文の読み方としては、万難を排して通常の業務を継続せよ、必要に応じて臨機応変の措置もやれ、そして、日本銀行だけでは当然できないことが起こってくるので、政府及びその他の諸機関、他の指定公共機関と十分連携、調整をとりながらやれ、こういう趣旨だと思っておりまして、その点、しっかりとやらせていただきたいというふうに思っています。

中塚委員 ふだんからそういうショックアブソーバーの役割を担っているということで、ここ数年、やはりなかなか金融システムは安定しませんし、そういう意味では、現時点でも臨時異例の業務を行っていらっしゃる部分も私はあると思うし、総裁もうんうんとうなずかれておりますけれども。

 ただ、今、ちょっと答弁の中で臨機応変の措置というお言葉がありました。こういう国民保護法制とかいわゆる有事法制というのは、そういう非常事態において超法規的にならないようにするために整備をしておかなければいけないわけで、臨機応変の措置というふうにおっしゃったことの意味について、臨機応変の措置といっても、例えば日本銀行法が定めている日本銀行の業務の外のことができるという意味ではありませんよね。そこはいかがですか。

福井参考人 お答えを申し上げます。

 こういった武力行使等の場合と例えば地震等の災害の場合とを単純に比較することは適当でないと思いますけれども、私ども、ふだんから、通常の業務をやっておりますときに、時としてやはり大災害に見舞われております。こういったとき、例えば阪神・淡路大震災の場合等を思い起こしていただければ御理解いただけるかと思いますけれども、私どもの基本は、ああいう場合でも通常業務をそのまま継続する、これに全力を注いでおります。

 しかし、それでは足りない、応用動作。いきなり超法規的というところには決していかないわけでございます。阪神・淡路大震災のときも、つまり、周辺の民間の金融機関の店舗が破壊された、したがって、日本銀行の支店がたまたま破壊されなかったので、店舗を提供してまで業務を全体として続けた。これなどは超法規的とは多分おっしゃらないと思います。応用動作の範囲内でやらせていただいたわけで、こういうことはいっぱいあるんじゃないかということでございます。

中塚委員 ですから、私が申し上げたとおり、臨機応変の措置といっても日本銀行法の定める範囲内の業務であるということになるわけです。

 私は、実は、それが本当にそんなのでいいのかという思いがあります。そういう、日本が他国なりあるいは組織なりから攻撃を受けた場合に、やはり国としては全力を挙げて国民生活というものを守っていかなければいけないわけであって、そういう意味で、ふだんからの日本銀行ができることを、それをより一生懸命やりますということで果たしていいのかという思いがあるわけなんです。

 せっかく国民保護法制という法律をつくるんであるならば、やはりそれはそのときにどういうことをするというふうなことをちゃんと決めておかなきゃいけないと思うんですね。だから、業務計画というものが必要になるわけなんでしょう。

 ただ、その業務計画にいたしましても、日本銀行法の枠の範囲の中であるというふうに思いますけれども、日本銀行として業務計画は一体どういったものを作成するおつもりなのか、御答弁をいただけますか。

福井参考人 通常の災害の場合にも、国の防災基本計画、それに沿って日本銀行でも業務計画というのをつくっております。それを最低ベースとして、事が起こったときに臨機応変な措置をとらせていただいている、こういうことでございまして、構図としては、今回も同じように、これから国の方で作成されます基本指針、その指針に十分沿う形で日本銀行もこういう武力対応というふうな業務計画をきちんとつくりたい。

 日本銀行の盛り込みます内容は、恐らく、通常の防災対策よりは少しレベルの高いものになると思いますけれども、しかし、これはやはり事が起こったときの最低限の備えでございます。ふだんからその最低限の備えのところを十分トレーニングしておけば臨機応変な判断と行動が迅速にとれる、ここにみそがあるわけでございまして、すべて事前に網羅するということは必ずしもできないことではないかというふうに思っております。

中塚委員 井上担当大臣に、ここまでお聞きになっておられてどう思われるかということなんですが、日本銀行が有事の際に国民を保護するためにいろいろな活動を行うということであるならば、私は、やはりこれでは余りにも中途半端に過ぎるのではないかという思いを禁じ得ないわけですね。

 せっかく新しい法律をつくるということであるならば、日本銀行ができること、ちょっとこの後具体的に総裁ともお話ししようと思っていますけれども、せっかくつくるんであるならば、もっとできることというのをふやしていくべきではないのかというふうに思います。これが通った後にもちろんいろいろな御検討はされていくんでしょうが、法治国家で法の支配というものがある中で、果たしてこの百三十三条ということだけで十分だというふうにお考えになるのかどうか、御答弁をいただけますか。

井上国務大臣 法律の条文といいますのは、行為能力なり権利能力を与えるために規定があるわけでありまして、したがいまして、今、総裁が御答弁になりましたように、こういう規定がありますと、日銀としては目いっぱいいろいろな状況に応じて業務を行うということでありますので、私はそれで十分じゃないかと思うのであります。

 要は、日本銀行の目的を変えるわけにいきませんので、目的の範囲内でやるということです。これを別の組織にしてしまうということは到底考えられないことでありまして、そういう目的の範囲内であれば、この規定を置くことによって、しかも、業務計画をつくって、その業務計画に基づいて業務を実施していくということが義務になるわけでありまして、あとどういうことが考えられるかよくわかりませんけれども、私どもとしては、これで十分ではないか、こんなふうに考える次第であります。

中塚委員 例えばですが、他国からの武力攻撃があったり、また、テロ組織が日本で騒乱を起こしたりするときに、銀行に対する取りつけ騒ぎというふうなことが起こることも考えられますし、また、金融システムというものが大変に混乱をする場合というものも十分に想定をされ得るというふうに思うんですね。

 昭和金融恐慌のときなんかの事例も改めて読み返してみましたけれども、そういったときに、日本銀行のでき得る役割というものが果たして平時と同じであっていいのか。つまり、旧帝国憲法下においては勅令というものが出せていろいろなことができたわけですけれども、今、新憲法下において非常事態条項というふうなものがない中で、平時と同じことで果たしていいのかということだと思います。

 例えば取りつけ騒ぎに遭っている金融機関に対して流動性を供給する必要があるという事態が発生する、十分考えられると思いますが、また、日本銀行としては、いわゆる日銀特融、特別融資というものが行えるということになっております。

 ただ、日本銀行は、この特融について四つルールを平時からお定めになっているわけですね。まず原則の一は、システミックリスクが顕現化するおそれがあることということ、そして、原則の二は、日本銀行の資金供与が必要不可欠であるということ、原則の三は、モラルハザードの防止の観点から関係者の責任の明確化が図られるなど適切な対応が講じられることということですし、四つ目の原則は、日本銀行自身の財務の健全性維持に配慮をすることということになっているわけです。

 原則三は、これは非常事態、緊急事態、戦争であるならば経営者の責任というのを問うわけにはいかないというふうに思いますけれども、ただ、原則の四の部分ですね、日本銀行自身の財務の健全性維持に配慮をすることということについては、これは平時からそうでありますし、有事においても変わらないというふうな理解でいいと思うんですが、日本銀行総裁はいかがお考えでしょう。御答弁をいただけますでしょうか。

福井参考人 お答え申し上げます。

 御承知のとおり、日本銀行は金融の現場を預からせていただいております。現場の仕事をスムーズに、民間の金融機関それから市場と一緒にやっていこうという場合に、非常時に対していかに対応するかということはふだんから考えていることでございます。

 私は、職員の皆さんに、非常時が起こったときに慌てるな、そのときも冷静に、普通の仕事が継続されるということが国民の皆様に一番大事なことだということを繰り返しお願いしておりまして、かつ、実地の訓練もふだんからこれを繰り返していることでございます。

 今、御審議いただいております武力攻撃の事態等は、そのまた一番極端なケースでございますけれども、ここに初めから飛躍があるという頭では職員もみんな慌てます。慌てると、やはりきちんとしたことはできないのでありまして、やはり基本を崩さないで冷静にというのが私どもの大原則でございます。

 今、御指摘のございましたような、緊急的に日本銀行から融資が必要だというケース、当然起こり得ると思います。しかし、この場合も、今御質問がありました、いわゆる特融というところに一足飛びに行くかどうかということも問題がありまして、私ども、非常に大きなキャパシティーを持っております。

 ふだんから通常の業務ということで十分貸し出しができる。それで賄えない場合に、実は今も日本銀行法で規定されております、通常業務は三十三条ですが、三十七条という、特融に行かない、まだもう一歩前の条文もございます。これは、偶発的な事由によって予見しがたい支払い資金の一時的な不足が生じた場合には、日本銀行の判断でお金が貸せる。まだこれは一度も使ったことがない大きなキャパシティーでございます。

 災害あるいは武力行使等の場合に、我々は、冷静な頭さえ持っておれば、いきなり特融とかいって頭に血が上るのではなくて、この条文を冷静に適用できる、それでも間に合わなければ特融、そして今おっしゃった四原則、ステップがたくさんございまして、我々はやはりこのステップをきちんと踏ませていただきたい、こういうふうに考えております。

中塚委員 いや、ステップを飛ばしていきなり特融しろなんてだれも言っていないんですよ。しかも、ふだんからのそういうトレーニングといいますか、業務計画をつくるということも決して否定はいたしておりません。

 そうではなくて、ただ、有事ですから、やはり限界事例というものを考えておかなければいけないということを申し上げているわけで、いろいろなツールがあることも十分承知をいたしておりますし、それを全部総動員をしておやりをいただかなければいけないということだと思います。それは、あえて申し上げれば、指定公共機関に指定をされていなくても日本銀行としてはやはりやってもらわなきゃいけない仕事なわけですね。

 そのことを悪いだのいいだのと私は言っているわけではなくて、有事の際に日本銀行としてでき得ることというのは、日本銀行でふだんからやっていらっしゃること以上、日本銀行法に定めてあること以上のことではありませんねと。だから、特融においても原則が四つあるわけでありますが、特に日本銀行自身の財務の健全性維持に配慮をすることという、この原則の四についても動かないんですねということをお伺いしているんです。いかがでしょうか。

福井参考人 特融というふうな事態に仮に至りました場合にも、今おっしゃいました四つの原則というのはやはり基本でございますので、この基本から出発して物事を判断させていただきたい。

 具体的なケースがどういう形で起こってくるか、どういう性格のもので、どういうマグニチュードのものが起こってくるか、最終的にはその判断にかかることはおっしゃるとおりでございます。しかし、初めから一足飛びに例外ありきということで私どもの仕事は確実にはできないということだけを申し上げているわけでございます。

中塚委員 といいますのは、昭和金融恐慌のときに、若槻内閣そして片岡大蔵大臣、この際に、日本銀行は、要は特融、寛大な救済申し出というものを受けて、日本銀行としては法律の明文による政府の保証がなくては貸し出しに応じないこととしたというふうに言われているわけですね。政府は、やむなく緊急勅令で日銀に非常貸し出しを行わせ、これによる損失は二億円を限度として政府が保証する緊急勅令案というものを枢密院に提出をしたということであります。ところが、枢密院では、この緊急勅令案というものが認められなかった。その後、大変なことになるわけですね。高橋是清さんが大蔵大臣になって、この勅令というものが改めて認められて、特別融資を行うということになります。

 私が申し上げているのはまさにそういうことであって、何も一足飛びに、非常事態になったら、緊急事態になったら日銀特融をばんばんやれということを言っているわけではないんです。でも、やはり過去にこういう事例があるとおりでありまして、確かに時代は違います、確かに時代は違いますが、でも過去にもこういう事例があって、一度緊急勅令を提出して、それが枢密院に否決をされて、そのことによってまた事態は一層悪化をしてしまっているわけなんですね。

 だから、まさしく非常事態においてできることが平時と全く同じでいいのかということになるわけで、これは日本銀行にお伺いをするというよりも、その場合、政府として、例えばこの後財務大臣にもお伺いをしなけりゃいかぬと思いますけれども、そういった場合に日本銀行の財務の健全性の維持というものにちゃんと配慮をしなければいけないということになるわけでありますけれども、いずれにしろ、新しい法律をつくるということであるならば、そういう限界事例までちゃんと考えておくべきではないのかということを申し上げたいわけです。

 ふだんからできることとこういう事態でも法律の中の枠組みとしては実は同じなんだということで、果たして指定公共機関として役割が果たせるのか。その場合に、脱法行為になってはいけません、法治国家ですから。だから、そのときの手当てというものをちゃんと考えておかなければいけないのではないのかということを申し上げているわけです。

 井上担当大臣、今の私と福井総裁のやりとりをお聞きになって、どういう感想をお持ちになりますでしょうか。

井上国務大臣 日本銀行法に基づきましていろいろな権限があり、またいろいろな対応がある、それを目いっぱい使って全力を挙げて対応するということでありますから、私は大変心強く感じました。

中塚委員 これをお心強いと思っていらっしゃるようでは大変に心もとないということを申し上げておきたいというふうに思いますし、やはりもっといろいろと考える、いろいろな事例を考えて対応をするということでこの委員会も設置をされているということでありますから、ぜひともきょうの議論について政府側でも深めていただきたいというふうに思います。

 そして次に、さらに日本銀行の総裁にお伺いをいたしますけれども、国民保護法制には物価統制に関する規定というものがあるわけですね。物価ということでありますと、日本銀行の目的にも入っているわけなんですが、こういう緊急事態、非常事態において、日本銀行として、物価ということに関連をして何かおできになることが、おやりになることがあるのかどうかということについて御答弁をいただきたいと思います。

福井参考人 私どもができますことは、災害あるいはこうした武力行使等の異常事態が起こりました場合にも、万難を排して通常どおり金融調節の業務をやらせていただく、一般的な物価安定の仕事を続けさせていただくということが基本でございます。

 しかし、マーケット、経済の状況を見ておりまして、個別の物資あるいはサービスの円滑な流通ということが欠けていて、日本銀行の力がそこまで及ばないという部分については、正確な情報を政府にお届けする、こういうことではないかと思っております。

 政府の方では、国民保護法案の百二十九条でも、そうした武力攻撃の事態等のもとで、国民生活との関連性が高い物資あるいは役務等について問題が起こったときには、政府が個別に適切な措置をとられるという規定がございます。そこにうまくつながるような連絡を我々はする義務がある、こういうふうに思っています。

中塚委員 実は、この後モラトリアムの話をお伺いしようと思っていて、できれば日本銀行総裁にはお残りをいただきたいと思っておりましたが、何か御予定があるということでお伺いしておりますので、日本銀行総裁はもうここで御退席いただいて結構です。どうもありがとうございました。

 それで、引き続き、日本銀行の福井総裁にお話をお伺いした後で、今度は民間の金融機関について伺いたいと思います。

 民間の金融機関については、これは指定公共機関たり得るのかどうか、井上担当大臣にお伺いをしたいと思います。

大石政府参考人 指定公共機関につきましては、事態対処法におきまして、独立行政法人、日本銀行、日本赤十字社、日本放送協会その他の公共的機関及び電気、ガス、輸送その他の公益的事業を営む法人で、政令で定めるもの、このように規定をされているわけでございます。

 民間の金融機関につきましては、国民の保護のための措置として実施すべき業務を予定しておりませんで、国民保護法案では指定公共機関として想定はいたしておりません。

中塚委員 想定をしていないという答弁でありますが、では、これは指定公共機関として指定をしない、想定をしない理由というのは何なのでしょうか。いかがですか。

大石政府参考人 お答えいたします。

 もとより、民間金融機関におきましても重要な役割を果たしておられるわけでございますけれども、国民保護のための措置として実施していただく業務を予定していないということでございまして、国民保護の業務を実施していただく場合には業務計画をおつくりいただいてそれに従って業務を行っていただくわけでございますが、民間金融機関におきましては、公益性の度合い等を考えた場合に、そこまでしていただく必要はなかろうという判断でございます。

中塚委員 そこまでしていただく必要はなかろうと、何か大変に優しい御答弁があったわけでありますけれども。

 きょうは担当大臣の竹中大臣にもお越しをいただいておりますけれども、でも、竹中大臣、今の答弁なんですが、果たしてこんなことでいいんでしょうか。

 例えば、先ほど日本銀行総裁にお伺いをしましたときに、銀行に対する取りつけ騒ぎというのは発生するおそれというのはあるわけですね。その場合に、じゃ、銀行を閉めようか、閉めてもらおうかということを政府として決めなければいけないときというのはあるんだろうと思います。現に、関東大震災のときには、九月の三日、主要銀行代表は焼失を免れた銀行集会所で震災善後策を協議し、まず一つは、九月一日から一カ月間全国にモラトリアム、債務の支払い猶予の施行、そして、銀行営業所、焼失金庫に軍隊の警備をということを求めているわけですね。

 要は、やはりそういうテロとか戦争とか、震災でも同じことだと思いますけれども、軍隊の配備まで求めているわけです、この関東大震災のときは。やはりそういう世情が大変に不安になりますと、人心というものはどういうふうに向かうかわからないわけですね。であるならば、やはり私は、民間の金融機関というものも、その際に協力を求める規定というものは必要なのではないのか。

 例えば、現行の銀行法によって政府として、国として銀行に休業を命じられるかどうかということになりますと、確かに銀行の業務停止命令なんというのはありますが、ただ、この業務停止命令というのは、災害であるとかあるいはそういう有事の際に銀行にきょうは休みなさいということを命令する、そういうふうな条文にはなっておりません。臨時休業というのは銀行法の十六条にありますけれども、これは銀行が臨時に休業するときは政府に届けなさいよ、届け出をしなさいよということを決めているにすぎないわけですね。

 ということであるならば、やはり私は、そういう不測の事態というものも十分に想定をした上で、民間の金融機関というものは指定公共機関になり得る、もちろん、なり得ることはなり得るのでしょうが、するべきだというふうに思いますし、加えて、では、取りつけ騒ぎが起こったようなときに銀行に休んでほしい、民間金融機関にきょうは閉めてほしいというふうに考えた場合に、どういうふうに対応をするべきなのか。

 現在の法律の中で対応できることは限られているわけなんですけれども、どういうふうにお考えか。竹中大臣、いかがでしょうか。

竹中国務大臣 法律の考え方そのものにつきましては、今御担当から答弁があったとおりであるというふうに思っております。

 私の方は、銀行を監督する立場からどのように見ているかという、あくまでそういう御答弁になりますけれども、これはもう今委員が御指摘くださいましたように、基本的には銀行法二十六条の第一項という規定がございます。内閣総理大臣は、銀行の業務の状況に照らして、当該銀行の業務の健全かつ適切な運営を確保するために必要であると認められるときは、当該銀行に対して、その必要の限度において、期限を付して当該銀行の業務の全部または一部の停止を命じ、もしくは監督上必要な措置を命ずることができる。いろいろなケースが想定されるのだと思いますが、総じて、今委員が御指摘のようなケースが発生したような場合には、この規定の趣旨に照らして判断をしていくものというふうに思っております。

 また、これも委員がもう既に御指摘くださいましたけれども、これは銀行自身の判断もあり得るということでございます。銀行法第十六条の第一項でございますけれども、天災その他やむを得ない理由により必要と判断した場合には、内閣総理大臣への届け出等所定の手続によって、その営業所またはその代理店の営業所において臨時にその業務の全部または一部を休止することができるというふうにされている。これまた、この規定の趣旨に照らして判断をしていくというふうに思っております。

中塚委員 この規定の趣旨に照らして判断をするという御答弁でありましたけれども、じゃ、二十六条の趣旨というのは、「銀行の業務若しくは財産又は銀行及びその子会社等の財産の状況に照らして、当該銀行の業務の健全かつ適切な運営を確保するため必要があると認めるときは、」ということであって、やはりこれは有事で大変に混乱をしたというふうなことを想定しているわけではないと私は思います。

 そういった意味で、実は、これは先ほど日本銀行のときにも触れましたけれども、やはりこの民間の金融機関の問題についても、今できることと緊急事態、非常事態、有事の際にできることというのはそんなに変わらないというか、別に新しいツールがふえていくということではないということだと思うんですね。

 しかも、指定公共機関にならなければ業務計画というものさえつくる必要がないということであって、私は、やはりこれでは大変に不十分だろう、本当にこれで国民保護法制というふうに言うことができるのかどうかと疑念を抱かざるを得ないわけです。

 関連して、竹中金融担当大臣にお伺いをいたしますけれども、今度は証券取引所であります。

 戦争が起こったときに、東京の株式市場が大変に混乱をするというふうな場合に、もちろんそれは自発的に閉めることはあるでしょうし、そのこと自体は否定はいたしません。ただ、じゃ、政府として、これはもう閉めた方がいいというふうなことになった場合に、例えば、あす朝確実にテロが起こるというふうな情報が入った場合に、取引所は次の日は朝からはもう前場は始めないようにするべきだというふうに考えたときに、取引所に対して翌日の取引をするなというふうなことが今現時点の、現行法の法律の中でできるのかどうかということがまた本当に問題になると私思うわけなんです。

 そういった意味で、やはり証券取引所についてもこれは指定公共機関ということで考えるべきではないのかと思いますが、そこについては御答弁はいかがでしょうか。

竹中国務大臣 これまた、この法律の基本的な考え方そのものは別途御担当から御答弁をいただく方がよろしいかと存じますが、この証券取引所も指定公共機関ではないというふうな枠組みになっております。

 しからば、これまた証券取引を見る立場にある我々としてどのようにこれを考えているかということでございますけれども、これは、証取法の第百五十二条第一項第二号の規定がございます。「内閣総理大臣は、」「証券取引所の行為又はその開設する取引所有価証券市場における有価証券の売買等の状況が公益又は投資者保護のため有害であると認めるとき。」に一定の措置をとることができる。どういう措置かといいますと、「十日以内の期間を定めて取引所有価証券市場における有価証券の売買等の全部若しくは一部の停止を命じ、又は閣議の決定を経て、三月以内の期間を定めてその業務の全部若しくは一部の停止を命ずること。」ができるというふうにされております。

 もう一点、今の仕組みとして重要なのは、証券取引所自身がその業務規程におきまして、「取引所は、必要があると認めるときは、売買立会の全部若しくは一部を臨時に停止し又は臨時に挙行することができる。」こういう規定がございます。これもまた規程の趣旨に照らして判断されるものと考えております。

 ちなみに、過去の売買の立ち会いの停止の事例として、最近のものといたしましては、阪神・淡路大震災のとき、平成七年一月、大証において実施された事例がございます。

中塚委員 実は、この証券取引所の立ち会いの停止ということについては、今大臣御答弁になったとおりで、公共という言葉がありますから、そこを使おうと思えば使えるのかもしれません。

 ただ、いずれにしても、戦争になったときにこれを閉めろということは恐らく法の想定外のことなんだろうというふうに思います。だから、せっかく国民保護法制をつくるんだったら、そのあたりのことまでぜひお考えをいただきたいというふうに重ねて申し上げたいというふうに思います。

 あとは、だんだん時間がなくなってきたんですが、物価統制の問題ですね。

 物価統制ということも国民保護法制の中に書いてあります。ただ、百二十九条ですか、物価統制にいたしましても、現行の法律またはこの物価統制令というものを引っ張ってきて、「適切な措置を講じなければならない。」というふうにしてあるだけですね。そういう意味で、やはりこれも大変に不十分なんだというふうに思います。

 過去の事例はもう時間がないので紹介はしませんけれども、過去つくられた法律によって、物価安定のための試みというものは何度かなされております。戦争中につくられた法律もあるし、オイルショックのときにつくられた法律もあるし、法律に基づいて何度か試みられたことはありますが、なかなかこれも、はかばかしい効果というものは上げていないわけなんですね。価格を統制すればやみ市ができるというふうなこともありましょうし。

 そういった意味で、過去の経緯というものは行政の中にもデータはいっぱい残っているんでしょうから、またここでも改めてちゃんとした対応をしなけりゃいかぬ。国民保護法制と言う以上は、ちゃんと対応ができるようなものにしていかなければいけないというふうに思いますが、竹中大臣、この物価統制ということについてはいかがでしょうか。

竹中国務大臣 中塚委員御指摘の点は、まさにこの法律の百二十九条の中で、例えば、生活関連物資等の買占め及び売惜しみに対する緊急措置に関する法律、これは昭和四十八年のもの、物価統制令、これは昭和二十一年のもの等々、その他の規定に基づく措置、それを適切に講じなければいけない、そういう取り決め方になっております。

 一般論としては、まさに中塚委員御指摘のように、どこの国においてもどの時代においても物価統制というのはなかなか難しい、そういう性格を持っているなかなかの難題であるというふうに思っております。

 しかしながら、我が国においては、こうした枠組みは法律の枠組みとしては存在しておりまして、こういうものを活用しながら、この法律の目的に沿って、生活物資等々の割り当て、配給、さらには物価の統制等、その実現に努めていくのが我々の務めであるというふうに認識をしております。

中塚委員 今までの質問の中で、結局、今まで何も変わらないじゃないか、何ができるんだいということばかりを申し上げてまいりましたが、その中にあって、百三十条「金銭債務の支払猶予等」というものがあって、これはしかし本当にオールマイティーなんだなというふうに思います。

 そういった意味では、国民保護のために使われるわけなんでしょうが、また、そうあらねばならないと思いますけれども、この金銭債務の支払い猶予というのがぽこっと出てきた、いきなり唐突に出てくるということで、ちょっと違和感すら覚えるわけなんです。

 まず、井上担当大臣にお伺いいたしますが、この百三十条を必要とする事態というのはどういった場合なのか、どういったことを想定されているのか、御答弁いただけますでしょうか。

大石政府参考人 お答えいたします。

 国民保護法案の百三十条でいわゆる緊急政令について定めているわけでございますけれども、これは、「著しく大規模な武力攻撃災害が発生し、国の経済の秩序を維持し及び公共の福祉を確保するため緊急の必要がある場合」にあって、国会の措置を待ついとまがない場合に限るとしているわけでございます。

 この「著しく大規模な武力攻撃災害」、どのようなものかということでございますが、関東大震災のときに緊急勅令を出してこの金銭債務の支払い延期をやったわけでございますが、このような大規模な災害が生じた場合にはこの事態に該当すると考えております。

    〔委員長退席、増原委員長代理着席〕

中塚委員 関東大震災のときだけではなくて、田中義一内閣のとき、先ほども申し上げましたが高橋是清大蔵大臣、この人が、全国の銀行が二日間休業する間に三週間のモラトリアム、支払い猶予令を発したということも記録に残っておりますから、災害だけじゃなくて金融システムの不安、何が引き金になるかというのはいろいろあるというふうに思いますけれども、そういった事例もあるようです。

 そこで、この支払い猶予は当然のごとく民間同士の債権債務関係にも及ぶということでよろしいんでしょうか。

大石政府参考人 お答えいたします。

 このいわゆる緊急政令の対象でございますが、賃金その他の労働関係に基づくものなどを除いた金銭債務、これが対象になるわけでございまして、お尋ねの民間同士の債権債務関係につきましても、この対象となるものでございます。

中塚委員 財務大臣にお伺いをしたいと思いますけれども、この支払い猶予ということについて、民間の債権債務関係に及ぶということでありますから、幾つかのものは除くということなんですが、国の債務ということについても、これは支払い猶予が及ぶというふうに理解をしてよろしいんでしょうか。

大石政府参考人 どの債務を具体的に対象とするか、それはまさに緊急政令の内容にかかわってくるわけでございますが、対象としてはそのようなものを否定しているわけではございません。

中塚委員 続いて、有価証券についてです。

 この有価証券の売却そしてまた配当というものが債権債務関係と言えるかどうかということにもなると思いますが、支払い猶予というのはこの有価証券にも及ぶのか否か、御答弁をいただけますでしょうか。

    〔増原委員長代理退席、委員長着席〕

大石政府参考人 先ほど申し上げましたように、この対象になりますのは金銭債務でございます。有価証券のうち手形や小切手などの金銭債務に基づくものにつきましては、対象になると考えております。

中塚委員 というわけで、このモラトリアムについては、過去も、そういう金融システム不安のときなんかには実行されております。そして、モラトリアムを実施したとしても、その支払いの猶予ということについてはいつか期限が来るわけであって、先ほど総裁も、お帰りになられましたけれども、私は、そういう非常事態においては、モラトリアムはあるにせよ、最終的には、そういった損失というものが出るような場合に、日本銀行の場合ですけれども、やはり国として損失補償をするということはあらかじめ考えておく必要があるのではないのかというふうに思うわけなんです。

 谷垣財務大臣、いかがなんでしょうか。日本銀行として、モラトリアムがあったにせよ、その間、日本銀行がお金を出してつないでいく、そして支払い猶予にはいつしか期限があるわけでありますから、期限が来た場合に焦げて返ってこなくなるということは十分に想定される。あの山一の破綻のときなんかもそうでしたね。まだ返ってきていないお金というものがあるということになるわけなんですが、そういった場合に、私は、損失補償、政府としてちゃんと補償するという規定というものが必要なのではないのかというふうに考えますけれども、いかがでしょうか。

谷垣国務大臣 この今の現段階では、今おっしゃったようなことまで想定はしておりませんが、それはいろいろ、現実にそういう事態が必要になったときにきちっと考えるということではないかと思います。

井上国務大臣 いわゆる補償ですね、これは事前には対象にならないと思うのでありますが、要は、そういう武力攻撃によりましていろいろな人が損害を受ける、損失を受けるというような場合にそれについてどうするか、そういうことに関連をいたしますので、これは武力攻撃事態が終わりまして、国全体としてどうするか、そういう中で決めていくべき問題だろう、こんなふうに思います。

中塚委員 いや、決めていくべき問題であることは間違いないんですけれども、国として日本銀行に対して特別融資なりなんなりを要請して、財務の健全性というものが確保されない限りは、有事の際に急激に通貨膨張が起こったりしてインフレになるということは、世界じゅうでよくある例ですね。やはりそのときは、もう全力を挙げてやっていかなきゃいかぬだろうというふうに私は思います。それは指定公共機関であるかないかにはかかわらず、そしてまた認可法人だろうが民間であろうが、そういうことには関係なく、やはり生じた損失ということについては補償するというのが当然だろうというふうに思うわけですので、そこのところをぜひ御検討いただきたいというふうに思います。

 では、これで終わります。

自見委員長 次に、末松義規君。

末松委員 民主党の末松でございます。

 まず、本題に入る前に、私、連休中、アメリカに行ってまいりまして、日米安全保障協議会という中で、メンバーに加えさせていただいて、この委員会でも久間理事また前原理事、遠藤理事、そして、この委員会の先生ではございませんけれども、額賀先生、今津先生、西銘先生等と米軍の防衛についていろいろと話をさせていただいて、私は、新たな認識も得て非常に喜んでいるわけであります。

 特に私の方で感銘を受けましたのは、ABLといいますか、エアボーンレーザーというレーザー兵器でありまして、ロサンゼルスのエドワーズ空軍基地まで行きまして、外国人には初めて見せるという、エアボーンレーザーという兵器といいますか、そのレーザー兵器を見せてもらったわけです。

 これは、実際にジャンボ機の中に化学装置が積まれていて、そして、レーザー砲でジャンボという飛行機の中から空中で照射をする。ターゲットとしては、今考えられているのが、弾道ミサイルがブースト段階といいますか、打ち上げ段階のところの燃料施設のところをねらってレーザーを照射して、それを撃ってこのミサイルを破壊するというような兵器であります。これに対してアメリカ政府は約九千億円近い金を使ってきたという話でありました。

 このレーザー兵器がすごいと思うのは、ミサイルに対する対応だけではなくて、将来的な技術開発として、例えば飛行機に対して地上からレーザーを撃っていく。007の映画がありましたけれども、ああいった感じで、高濃縮したレーザーを一挙に照射して、それで相手の兵器を撃ち落としていく。久間先生もよくごらんになられましたから、おわかりになると思います。さらに、これは対戦車、戦車についても、いずれ、このレーザーの種類を変えることによって兵器として使えるし、また、当然、人に対しても、それは殺人兵器ともなるわけであります。

 私自身がなぜこの兵器に対して感嘆をしたか、感激をしたかといいますと、私自身、日本の防衛というのは、兵器を無力化するような装置、そういったものを開発できないかと、ずっと数年間ほど考えていたんですね。

 特に日本の場合、議論すると、必ず最後は、核兵器を持たなきゃいけないんじゃないかとか、そのためにアメリカの核の傘に入らなきゃいけないとかいうような堂々めぐりの議論になっていくわけですが、このレーザー兵器がさらに進化した形になっていけば、日本に対してやってくるミサイルやさまざまな飛行機あるいは兵器がそのレーザーによって無力化していくということが明らかになって、それがあれば日本も核兵器を持つ必要もない、全くなくなって、極めてこのレーザーというのはディフェンシブといいますか防御的な装置として活躍できるという意味で、非常にここは画期的なものだろうというふうに思ったわけです。

 もちろん、このレーザー兵器に対して対抗措置がとられる。私も、あるアメリカの巨大兵器産業の会社に行って説明を聞きました。レーザーに対抗するにはどうするんだと。そうしたら、ミサイル側にとってコーティングを変えていくというような対抗措置も考えられると。それに対して、では、レーザー兵器はどうするんだと言ったら、そのコーティングをまた打ち破るようなエネルギーの集中をやればいいんだというような、これは確かにいろいろとイタチごっこという面はあるわけですけれども、ただ、その大きなエネルギーが当たればこれは何らかの損害を当然与えるわけですから、非常に重要なものだと思います。

 ですから、このレーザーの兵器に対して、日本としても将来的に大きくかかわって、アメリカとの協力を進めていくなり、そして、日本もそういった協力の中で独自のレーザーの技術を開発していく。これは極めて防御的な兵器というか装置でありますし、それと同時に、ターゲティングといいますか、相手の対象物に照準をきちんと合わせられるようなネットワークシステム、これを開発していくということが重要になるんだと思いますけれども、防衛庁長官におかれて、こういうABL、エアボーンレーザーあるいは将来のレーザー兵器に対してどういうふうな御認識を持っておられるか、まずそこからお伺いしたいと思います。

石破国務大臣 その昔はサイエンスフィクションの世界でしか見られなかったものがもうあっという間に現実になるわけでありまして、委員と私は同い年でございますが、その昔、ウルトラマンというのがありまして、スペシウム光線なんというのを覚えているような気もいたしますが、そういうのが本当に現実化してくるわけですね。ABLは、私も、五、六年前から、こういうものがあるということは聞いておりましたが、これが本当に現実化しつつあるということを、今委員のお話を聞いて、そうだなと思ったわけでございます。

 弾道ミサイルがブースト段階、つまり地球の重力に逆らって上がっておりますときは、まず遅い、それから、分離されていないから大きい、赤外線を出すので探知がしやすい、まだ分離されていないのでマーブ化もされていませんから見つけやすいということがありますので、その時点をたたくのが一番いいということだと思います。それはエアボーンレーザーが一番有効であろうと思います。

 ただ、この難点は、どことは申しませんが、内陸部のかなり深いところから撃たれました場合に、エアボーンレーザーの射程距離にもよりますが、余りこれが長くございませんもので、それを撃とうとしますと内陸部まで飛行機が入っていかなければならないということになった場合に、我が国の場合には極めて憲法上も難しい話が出てくるのかなというふうに考えております。あるいは、その場合に、入っていくということは、仮にそれは憲法論を除外して考えましても、迎撃戦闘機も上がってくれば対空ミサイルも撃たれるわけでありまして、それをどうやって無力化するのかい、こういうお話が出てくるのだろうと思います。ましてや、ブースト段階ですから、どこに落ちるかわからないという状況でございますので、それを落とすということが憲法との関係でどう整合するのだという議論もあるだろうと思います。

 ただ、私が思っていますのは、十六年度予算でお認めをいただきましたミサイルディフェンスというのは、我々の場合にイージス艦とPAC3でやるわけですが、その前段階としてエアボーンレーザーを仮に合衆国が持った場合に、我々のミサイルディフェンスの信頼度はどうなるかということが一点。

 それからもう一点は、委員御指摘のように、何も弾道ミサイルだけではなくて、地上配備あるいは水上艦に配備するというようなことを行いました場合に、私どもとしては核を絶対に持たないわけでございますから、これが抑止力としてどれだけの意味を持ち得るか、私はそれも大いに価値のあることなのだというふうに現状においては考えております。

 あるいは、それは、エアボーンレーザーで考えておりますのは、今、多分、推進システムもしくは燃料タンクの最も脆弱なところに当てるという発想だと思っておりますので、これが非常に高い硬度、そういうものを持ったものに本当にどれだけ有効なのかという研究もこれから先していかねばならないのだろうと思います。

 これはまだ私どもの中で具体的な構想があるわけではございません。しかしながら、私は、これは、本当に私どもとして研究をしてみる、あるいは合衆国と一緒に共同研究をしてみるということについて、これは政府全体の意思決定でございますからここで軽々なことは申し上げられませんけれども、我が国のいろいろな専守防衛の発想からいきましても、そして、決して侵略国にならないという形からいきましても、抑止力の観点からいいましても、議論する価値があるのではないかというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、私は現物を見ておりませんので、いらっしゃいました委員初め多くの方々のお教えをいただきながら、これから先考えてまいりたいと思っております。まだ断定的なことを申し上げる段階ではございませんが、今後ともお教えをいただければ幸いに存じます。

末松委員 ぜひ見に行っていただきたいと思いますし、アメリカ側も石破防衛庁長官であれば非常にまた歓迎されるんじゃないかと思うんですね。

 今、エアボーンレーザーがどのくらい飛ぶかという問題、当然だと思って私も質問したんです。それはひそひそと質問したんですけれども、そうしたら、今の段階で数百マイルから数千マイルまで飛ぶんだという話をしていました。これがさらに研究段階を経ていけばもっと伸ばせると。ただ、幾ら飛ぶのかは、本当にこれは極秘の話ですから、そこは勘弁してよという話だったんですが、これがかなり飛ぶという話であれば、別に、内陸部であろうが、あるいはもうちょっと、ミサイルがブーストを超えてミッドコースに入ってターミナル段階でも、これはミサイルを撃ち落とせるというふうなことが考えられるわけなんです。

 だから、今、アメリカは巨大な予算を使ってやっていますけれども、日本としてそれだけのまた予算を使えというのを私は主張しているわけではありませんけれども、ただ、これは、さらに研究を重ねていった場合に、非常に精度の高い、そして専守防衛の理念にもかなうような、そういう防衛システムになり得るということを改めて私は強調させていただいて、政府としても、今、石破長官が、検討に値する、あるいは研究に値するという形で言われましたけれども、そこは強力に、私は、核を持たない、専守防衛の日本にとって、このレーザーが開発されれば、理想的なレーザーが開発されれば、兵器のシステムそのものが根本から変わってきますから、ぜひそこの研究をやっていただきたいと思います。まず、それは本題に入る前にお話をさせていただきました。

 では、本題に入ります。

 私の方は、今、修正協議の方も話が進んでいるという話でございますけれども、これは井上大臣に、前回も申し上げたんですが、政令とか行政規則、これを緊急時の場合に保存する義務ということをきちんとやった方がいいというお話をしたんですね。大臣の方から、この法律、法体系には特別に保存義務あるいは国会への報告というのはないよというお話でありましたけれども、アメリカの国家緊急事態法にはそれはきちんと書いてあるわけですよ。大統領の方できちんと、緊急事態が始まってから発せられた大統領令とか細則あるいは行政規則、これは全部保存せよ、そして議会に報告せよということが書いてあるわけです。

 それは、なぜそんなことが書いてあるかといいますと、とにかく、本当に戦争とか戦争状態になったら、各行政機関、さまざまな行政命令あるいは通達なんかも出さなきゃいけなくなって、混乱を回避するためとか、こっちの道路を使うなとかあっちの道路を使えとか、そして、ちょっと本部ができるから、悪いけれどもこの家を全部使わせてもらうとか、あるいは破壊するんだと、いろいろなことが考えられてくる。そういったときに、もし行政命令が確認されていないならば、例えば、後で、戦後で、戦後の補償を、家が壊されたから、これは政府の命令によって壊されたんだから補償してほしいというときに、実はそんな命令を出していないよと言われたり、いや、それが実はなくなったんだ、そういうことはわからないと言われたら、補償そのものが請求できなくなってしまうわけですよ。

 だから、一般の行政の、例えば官報に行政規則とか政令とか書かれている、あるいはそれの目録とか索引は書かれているかもしれませんけれども、それをさらに、この緊急事態にあわせて、特に通達とか、そういった官報に載せられないようなものも各行政機関がきちんと、何を命令し、何を指示して、そしてどうなったかということをはっきりさせるためにも、これは、保存義務と、それから、シビリアンコントロールの立場から国会に報告をすべきじゃないか、こういうことをやはり入れるべきじゃないかと思うんですが、改めてそれに対しての答弁をお願いします。

井上国務大臣 この前も御答弁したかもわかりませんけれども、文書の保存期間につきましては、各法律によりまして保存期間を決めるということをしておりませんで、日本の場合は行政機関の保有する情報の公開に関する法律という法律がありまして、これで統一的に文書の取り扱い、保存を含めて書いているわけです。

 まず、保存につきましては、各行政機関の長は、この法律の適正かつ円滑な運用に資するため、行政文書を適正に管理しなくちゃいけないということがありまして、具体的には政令で書いております。政令では、行政文書の分類でありますとか作成とか保存とか廃棄についての基準、あるいはそのほかの管理のやり方につきまして書いておるんですね。それに基づきまして、各省庁、各行政機関の長が、省令におきまして、それぞれどの文書は何年保存するかということを決めているわけですね。そういうことです。

 したがいまして、今の御意見は、有事の関係の資料につきましては統一的な基準で保存したらどうなのか、こういう御趣旨かと思うのでありまして、一般的な法律の場合は三十年となっているわけですね。三十年です。政令が十年ぐらいだったですか、省令ですと五年ぐらい、こうなっているのでありますけれども、これは更新ができますので、法律は三十年で保存が切れるということじゃありません。ずっとそれは延長ができますから、それはできるのでありますけれども、有事の関係については、法律はどうだとか、あるいは政令はどうだとか省令はどうだとか、あるいは、この法律の実施に伴う例えば補償なんかの書類がありますけれども、それをどうするかというようなことを統一的に決めていったらどうだというような御意見のように私は伺いましたけれども、その辺のところをよく調整しまして、一応標準的な保存期間というものを定めていかないといけないんだな、そんなふうに考えます。

末松委員 だから、そういった基準をつくってやっていくということを今おっしゃったんですか。それをもう一回確認します。

井上国務大臣 これは当然、法律の場合は保存期間があるんです。決めるんです。法律を、さあ、成立したらそれで処分をする、廃棄をするということはあり得ないわけでありまして、通常の法律の場合は三十年と決めて、それを更新しているわけですね。

 だから、もちろんそういうことをするのでありますけれども、今のお話は、有事の関係の資料については統一的に、ある省は何年間もやるけれども、ある省についてはまた違う期間でやるというのじゃなしに、ある種の統一的な基準を決めてやったらどうだというような御意見と私は伺ったのでありまして、できるだけそれに沿うような保存期間を決めるようにしていきたい、こういうことを御答弁いたした次第であります。

末松委員 保存期間は、それは確かに補償の前提となる話ですから、そこはきちんとした一定の保存期間が必要だと思うんですね。

 ただ、それは、公開される場合には政令とか行政規則だけですよね。例えば、通達とかさらには何か指導みたいなものとか、あるいは、これは防衛庁になるんでしょうけれども、今言ったように、この道路を使うなとか、それがためにそこにあった店屋さんが全然商売ができなくなるといったこともいろいろと考えられるわけですね。それは、現地で例えば公文書か何か手渡すとか、そういうふうなこともあり得るようなことも聞いたんですけれども、そういうことについても、一つ一つ、そこはどんな命令を出したのかということも行政機関の方もチェックをしておかないと、後でそこでいろいろな補償とかいう話になった場合に、いや、そんなことをやった覚えはないという一言で片づけられたら、国民保護という名が泣くんですよ。そこら辺についてはいかがですか。

井上国務大臣 これは行政文書でありますから、行政に関するあらゆる文書ということでありまして、保存を必要とする文書、保存を必要とする行政文書と理解していいと思うのでありまして、後々問題になりますようなこと、例えば、だれにどれだけ補償したかというものは、これはやはり残していると思うのでありまして、それは残っていると思うのであります。

 だから、今のお話は、ある省に行きますと五年しか残っていないけれども、ある省へ行ったら十年残っている、それはおかしいじゃないか、だからそれは統一したらどうだというふうなお話じゃないかと思うのであります。

 私は、今は、今の制度というのは各省庁の長が決めるようになっているんですよ。だから、文書の保存の法律があり、政令があり、そして規則がある。規則は各省庁が決める規則でありまして、その中で保存期間を決めているわけです。だから、それを統一したらどうだということは、これはごもっともだと思うのでありまして、できるだけ統一されるような基準でやりたい、こういうことを申し上げたわけであります。

末松委員 ちょっと私の言っている意味がまだおわかりになっていないかもしれません。

 では、防衛庁長官に聞きましょう。

 今私が申し上げた、例えば、これは司令部として使うから、あんた、ここからちょっとのきなさいよといったところの命令というのは、別に行政規則で定めるわけじゃないですね。要するに、業務命令というのかな、そういったときに、どういう指令、指令書みたいな、あるいは、何か公文書は出すんですか、出さないんですか。

石破国務大臣 これは、口頭ということはございません。口頭だけでやるということではなくて、当然、御了解を得て、その所有者の方の御同意もないままそこを使うということは原則としてございません。御了解を得るわけでございますし、その御了解を得て私どもが使わせていただくとすれば、行政文書というものが発せられるということにはこれはなります。

 そのときに、委員がおっしゃいますように、そのことによって、それが経済的な活動を営むところの拠点となるような建物であった、それを使っている間に逸失利益のようなものが生じた、それをどのような形にするのかというときに、やはりそういうような文書というものがあるということは、私どもといたしましては、国家として、逸失利益があったときにはそれを補償するというのが当然のことだと思います。

 ただ、それが戦乱時の、仮に戦乱という言葉を使うとすれば、大変なごたごたの中で何がどこでどうなったかもよくわからぬというようなことがないように、何らかのエビデンスというものは、それは当然に必要になろうというふうには考えておりますが、これは今後どのような形にするのか、私だけでちょっとお答えできる範囲を超えておりますけれども、当然、そういうものは明確に残しておくということになろうかと考えております。

末松委員 井上大臣、わかりましたか、私の言っている意味が。そういうことなんですよ。ちょっときょとんとされているようですが。

 要は、そういった軍事的な意味で、そのような命令、それを公文書できちんと残す、そして相手にも渡す、それを保存する義務をここで、この緊急時の法体系のもとで、人権を一番侵害しやすいものだからそれをきちんと組み入れた方がいいと。民主党では修正協議の中で今出しているという話を私も聞いていますけれども、そこをやってくれというのが私の趣旨なんです。

 それはどうですか。それはもう防衛庁長官だけじゃお答えになれないでしょう。それは所管の大臣が答えてくださいよ。

井上国務大臣 いや、私はもう十分に答えていると思うのでありますけれども。

 普通、行政文書というのは、もろもろの文書を指すんです。それは、法律とか政令とか省令だけではなしに、もろもろの文書です。例えば補償なんかすれば、補償に関連した施設なんかも、これは行政文書なんですね。それを、どれを保存するかしないかというのは、今のところは各省庁の長が判断するようになっているわけですよ。(末松委員「それをやってくれと言っているんですよ」と呼ぶ)だから、それについては、今そういうような法律の体系になっているということを私は申し上げているわけですよ。(末松委員「既になっているの」と呼ぶ)それは、既になっているわけですよ。いや、私は、これから成立する法律は別ですよ、成立している法律等については既になっているということを言っているわけです。

末松委員 それは何条に書いていますか。それはこの緊急時法体系にはないでしょう。(井上国務大臣「それはまだ法律じゃないですから」と呼ぶ)でしょう。だから、その法体系をそこで埋め込んでくれというのが私の主張なんですよ。

 いいですか。それに、通達とかあらゆる行政文書を残せということは、それは省庁は義務じゃないわけですよ。それは省庁が判断した中でやっているだけの話なんですよ。いいですか。だから、この法体系の中で、人権を侵害しやすい状況が出てくるから、そこはきちんと残してくれ、残す義務を課せということなんです。もう一度答えてください。

井上国務大臣 答弁しましたように、行政機関の保有する情報の公開に関する法律では、文書を保存するというのは義務なんですよ。ただ、どういう文書についてどの期間残すかについては最終的には各省庁の判断に任されている。こういうことを私は申し上げているわけですよ。したがいまして、これは単に法律とか政令とか省令、規則だけではなしにいろいろな関連する行政文書が含まれる、こういうことを申し上げているわけであります。

 だから、ずっと同じことを言っているんじゃないかと私は思うのでありまして、特に問題のありますような買収なんかのことというのは残ると思います。そういうのは残すと思います。例えば、ある土地を買収したとか使用した、それに対しどれだけの補償をしたかというようなことは、これは残すと思います。

末松委員 では、権利義務に関する、人権に関する、あるいは財産権も含めて、それを制限するようなものは、つまり、アメリカの法律はどうなっているかというと、すべての命令等について残せと。残す義務があるんですよ。そういう形になっているんですね。(井上国務大臣「なっている」と呼ぶ)今の段階でですか。通達も含めてですか。行政文書、本当にそうなっていますか。それはなっていないと聞いているんですけれども。

井上国務大臣 もう既に成立した法律、あるいはそれに関連するものは義務になっていますよ。今の段階でいえば、法律案なんかは、仮に、法律案を出しただけに終わるような場合は、法律案としてこういうものを出したという、それは残ります。まさにそういうことを管理しろという法律なんです。この行政機関の保有する情報の公開に関する法律というのはそういう法律なんです。

末松委員 いや、それは私の受けた説明とちょっと違うな。

 それは緊急時法体系にないから、だって、大臣がその前に答えられたのも、そういう答え方をされていますよ。だから、保有とか保存についてはこれからいろいろ考えていかなければいけませんねというふうな答弁をされているんですよ、大臣自身が。

 ということは、今、全然もう問題ないのであれば、今の法体系がすべての、例えばさっき石破大臣に言ったように、ここをちょっと立ち退いてくれというようなその文書もすべて防衛庁が保存をして、それは各省が判断して、これは残すけれども、これは要るなんという判断しちゃだめなんですよ。これはすべての文書を残せということなんですよ、私が言っているのは。それがアメリカのこの国家緊急事態法における趣旨なんですよ。それが日本にもあるんですかと聞いているんですよ。

井上国務大臣 それはあくまで、日本の場合は、主要な法律とか政令とか、それはありますよ。だけれども、細かい文書については各省庁の判断に任されているんですよ、それは何年残すとか残さないとかという。

 だけれども、行政文書は管理するということになっていますから、私は、通達だとか、あるいは公費を支出する対象になるものの買収なんかは、これは当然のこととして残るものだと思います。

末松委員 保存期間だけが各省の判断になっているんですか。それとも、その行政文書は、どの行政文書を残すか残さないかも、これも各省庁の判断になっているんですか。それとも、それは統一的にすべて残さなきゃいけないようになっているんですか。どっちなんですか。

井上国務大臣 これは、主要な文書というのは当然対象になるんですよ。(末松委員「それをすべて残せと私は言っているんです」と呼ぶ)いや、すべてとは何だということでしょう。例えば、いろいろな会議をやった、会議の記録まで全部残すのかというようなことになりますと、そこは各省庁の判断でやっていいじゃないか、そういう法律の建前。もっと詳しく、その文書がどこまで義務づけられるかというものは、今ちょっと手元に持っていませんけれども、それはありますので、後でまた御答弁したいと思います。

末松委員 それでは、この議論をしていてもあれなので、そこは政府の統一見解をきちんと、現状はどうなのかということ、それで、この緊急時の方、私の言っていることをこれからどうするかというのを、ちょっと委員長、理事会でそこは統一見解をお願いします。

自見委員長 末松委員に申し上げます。

 後刻理事会で協議をさせていただきます。

末松委員 あともうちょっとだけ。

 これを保存して、あともう一つは、国会に報告せよというのがアメリカの法律なんですね。それは、行政機関だけが持っていてもいいけれども、もし行政機関が何かの形でそれを消失したとかそういうこともありますし、また、シビリアンコントロールという立場もありますから、これを国会に報告せよということは、私は、行政行為の透明性が増すということもあって望ましいと思いますし、また、何を戦時中に政府がやってきたかということの記録をきちんと残すことによって、後世の判断が客観的にできる。そういうふうに客観的に判断できるということから、今度は、行政が行き過ぎた行為をやったかやらなかったか、これが判断されるから余りむちゃなことはなかなかできない。後世のことも意識しながらやっていく。そこで、合理的な発想の行政が戦時中においても、あるいは緊急事態においてもできるんだろうと思うんですね。

 私が聞きたいのは、国会への報告、それについてはいかがですか。

井上国務大臣 今の法律は、行政文書、だから問題になりましたものにちょっとバックするようだけれども、要するに、行政文書というのは何なんだというそこのお尋ねだと思うんだけれども……(末松委員「最初はね」と呼ぶ)ええ、最初は。だから、それははっきりしましょう。それは今ちょっと手元に持っておりませんけれども。

 それから、第二点目の問題は、法律には確かにそういう規定は入れておりませんけれども、行政機関の保有する情報の公開に関する法律の中では、これを一般の閲覧に供しなければならない、こういう規定になっているわけですね。ということで、現在のところ、この公開法に基づいて公開している、したがって、国会議員の皆さん方もこれによって知り得る立場にある、こういうことになっていると思います。

末松委員 官報等、通達も含めて、あるいはそういった命令も含めて、国会の方で知り得る立場にある、そうなっているんだというのが今の大臣の答弁であるならば、そこはそれで是といたしましょう。それでいいんですね、私の理解で。

井上国務大臣 これは、行政文書の定義まで出てまいりましたので、それもあわせて読みますと、「「行政文書」とは、行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画及び電磁的記録であって、当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして、当該行政機関が保有しているものをいう。ただし、次に掲げるものを除く。」とありまして、「官報、白書、新聞、雑誌、書籍その他不特定多数の者に販売することを目的として発行されるもの」「政令で定める公文書館その他の機関において、政令で定めるところにより、歴史的若しくは文化的な資料又は学術研究用の資料として特別の管理がされているもの」、これは除かれるわけですね。

 ですから、御心配をされているようだけれども、おおよそ言われているようなことは保存しないといけない文書になっている、こういうことでありますが、問題は保存期間ですね。保存期間をどうするか、ここは確かに各省庁の判断するところでありますから、そこの点については、それは委員の立場からいえば問題があると言える部分じゃないかと思うんですが、あとは閲覧に供しますから。ただしかし、それを国会に報告しろというぐあいにしろというのは、それは一つの議論として私はあると思います。

末松委員 国会議員が知る立場にあるということが確保されるということが一番肝ですから。いずれにしても、政府の統一見解を求めるという形にいたします。

 それから派生した問題で、例えば強制使用、それで、ここのけといったときに、いろいろと使ってその家屋が損壊したとか、あるいはここに道路をつくるからといって家屋が一部破壊されたといったときに、後で補償を求めることになるわけですけれども、そのときに、挙証責任というのはどっちなんだ。

 つまり、昔の家はこんな形でしたよと。戦車が通ってどうもこれが半壊してしまった、そのときに、確かに命令文書はあったんだけれども、その原状回復を何とかしてくれよと。これは当然の権利ですね。そういったときに、いや、お宅はそんなに立派な家じゃなかったでしょうというふうに言われると、これまた請求する方は泣いちゃうんですね。というと、昔の家を写真で撮っておかなきゃいけないのか、今度はこうなるわけですよ。

 そういうときには、一般の国賠法みたいな形になれば、挙証責任はやる個人であると。あんたが写真を撮っていなかったから、もう原状はどうかわからぬじゃないか、もともとの家の設計図は燃えちゃって、ないじゃないか、だったら補償なんかできないよ、幾ら命令書は持っていてもと言われたら、泣き寝入りになるわけですよ。

 それはどうなんですか。個人のそういったことを、挙証責任があるんだったら、あらかじめ写真を撮っておけ、そういうふうなことを政府は国民に知らせるべきですよね、もしそういうことであれば。それはそういうことになるんですか。

井上国務大臣 これは一般の、何といいますか、民法なり行政法の中でのルールに従うと思うんですね。

 この補償の場合というのは、その権利者がしかじかの損害を受けたからということで補償を請求してくるわけですから、委員のおっしゃる挙証責任という点からいえば、自分でこれだけの損害があるからしかじかの金額を請求する、こういうことになろうと思うんです。

 それに対して、行政庁の方、処分庁の方は、いやいや、こうだからこのぐらいに査定をした、こういうことになるわけでありまして、その査定した部分についての挙証というのは、これはやはり処分庁がやるわけだというふうに思います。

 さらに、それに争いがある場合は、当然、訴訟になりますけれども、その場合は、やはり民法なんかの一般的な補償のルール、それに従って行われる、挙証責任はどちらかが持つということになると思います。

末松委員 そうなると、国民でちょっとぼんやりしている人が後で損をするという話になるでしょうから、そこのところは政府がきちんと広報して、そういうことだよという話をしていかなきゃいけませんね。そこのところはまさしくそういう形でやるべきだということを申し上げて、次のテーマに移ります。

 多分、戦闘区域という立場で、この辺が戦闘区域になるとしたら、みんな避難せよという話になると思うんですね、軍事的には。そうしたら、例えば床屋さんをやっている人は、その地域、危ないからのけと言われた、その次の日からおまんまの食い上げになるわけですよ。そういったときに、実際、配給のシステムというのはあることになりますね。それは自治体がケアするのかもしれません。そういう配給のシステムというのはきちんとアレンジをされることにこの法律で担保されているんですか。それを答えてください。

井上国務大臣 これは、法律上担保されているというよりも、事実の問題としてそういう問題が出てくるわけでありますから、それに対応するような相談の窓口をつくるとか、あるいはしかるべき機関がそれを担当するとかというようなことで……(末松委員「だれが担当するの」と呼ぶ)例えば市町村とか県とか、そういうようなところが中心になりまして、場合によっては国がなる場合もあろうかと思いますけれども、そういう人たちが事実の行為として事実上調整をしていくといいますか対応していく、こういうことになると思います。

末松委員 これは麻生大臣に聞けばいいのかもしれません。麻生大臣の方は、市町村がそういう形でやるということ、当然でしょうけれども、炊き出しから始まって、いろいろと配給したり食料を提供したり、それはそういう形、そういうことになるぞという話は各自治体にはしてあるんですか。

麻生国務大臣 末松先生、これは状況によって、自治体がと言われますが、その自治体ごと丸々戦闘地域かもしれませんからね。だから、その場合、その自治体じゃ責任は持てませんから、要避難地域から避難先地域ということになりますので、県外になるかもしれませんし、その避難先地域に指定されたところのあれで、突如降りかかってきた話ではあろうかと思いますが、そこのところの行政体が当面面倒見ることになりましょうし、その分は、後で何らかの形で政府が補償したり何かするということに現実問題としてはなろうと思います。

 ですから、前提を物すごくきちんとしないと、なかなか答弁の仕方が難しいとは存じますが。

末松委員 まさしくそれは、戦闘地域がどのくらいの範囲なのかと。でも、東京の大体半分ぐらいは戦闘地域とか、結構大きな地域というのはよく自衛隊の方からもお伺いをしているところでありますから、それは県外で。では、東京で、例えば二十三区で起こったらどこに避難するのというようなところというのは、机上の訓練がなされていないんだろうなと思うわけですけれども、そこら辺のところのアレンジというのはどうなっているんだろうということでありますけれども、そういう机上の訓練というのは、余りにも前提が漠としているからできませんよという形になるんですか。

 これは防衛庁長官にも関係してくるのかな。その前提が、どこが戦闘地域になるか全然わからない、だからその場ですべてやらなきゃいけないという話になるんですか。そういうときというのは、その場でさっとできるものなんですか。ちょっと難しい質問ですけれども、答えられる中で答えてください。

井上国務大臣 ちょっと質問の趣旨が十分に読み取れていないと思うのでありますけれども、例えば、避難をする、避難をしたときの生活、衣食住ありますけれども、これはだれが面倒見るのか、こういう趣旨の質問ですか。――それは、具体の状況の中で決まってくるわけですね。どこへ避難をするかという避難、避難については、これは都道府県知事が避難の指示をするわけでありまして、避難の誘導をしていくのが市町村長でありますから、あと、炊き出しとか衣食住についての面倒は、したがって、これは都道府県が見る、こういうことになるわけです。実施は、実際にはやはり市町村がやっていくということだと思います。

末松委員 言葉で言うのは簡単なんですけれども、例えば何万人かがばあっと避難して、さあ、あしたから食料をどうするかといったら、正直言って、これは大変なことですよ。だからこそ戦争なんかやっちゃいけないという思いが強いんですけれども。本当に十万人、あしたから食料といったら、もうとんでもない大変なことです。

 そもそも私が聞きたいのは、食料の確保義務とか、ドイツの緊急事態法なんか見たら書いてあるわけですよ。そういった食料とかエネルギー、そういう確保義務というのは、簡単に炊き出しとおっしゃるけれども、配給とおっしゃるけれども、ストックとかそういうものはどうするんですか。あるいは、こういうのは何か、ドイツみたいに備蓄というところまでいくのが妥当かどうか知りませんけれども、この法律はその辺は何か想定しているんですか、全くしていないんですか。

井上国務大臣 現在におきましても、都道府県が中心になりまして備蓄をしているわけですね。これは通常の災害なんかを想定してやっているのでありますけれども、有事の場合も当然備蓄をすべきでありまして、備蓄の意義というのはたしかこの規定を置いていると思うのでありまして、どの程度の備蓄をするかはこれからよく検討していく必要があろうと思いますけれども、やはり備蓄は必要であるというふうに思います。

末松委員 それから、この法律、実際面でちょっと話をしていきますけれども、避難した人は職業もないわけですよ。何か救助活動、ボランティアでやるかどうか知りません。だけれども、そういう人たちに例えばある一定の額の所得保障みたいな、あるいは、もう着のみ着のままで避難した人が、例えば東京から北海道に、親戚がいるからそっち側の方に行って面倒見てもらうというようなときにお金もないといったときに、そういった一定額の所得保障みたいな制度的なものというのは、この法律上はないですよね。こういうことは全く想定しなくていいという判断のもとに立っているわけですか。

井上国務大臣 いわゆる小遣い銭のようなものということですか、あるいは生活費ということですか、そういうことを言っておられるんじゃないかと思うのでありますけれども、特にそこは想定をしておりません。それはやはり、必要なものは一応身につけて避難をしていく、こういうことになろうと思います。

末松委員 みんな自助努力でやっていけという話のように聞こえますが。多分、そういうときは、銀行の決済システムの機能なんというのはかなり損害が出ていることも十分予想されるんですよ。だから、そういったことも検討していくべきじゃないかということを申し上げておきます。

 次に移りますけれども、最近、アメリカで、捕虜の問題、虐待の問題が問題になっておりますけれども、捕虜についてはこの法律で定められております。

 そのとき、私がちょっと感じるのは、アメリカの軍の行為、これが、アビューズというんですか、要するに捕虜虐待とかそういったときの、例えば自衛官が仮に今の米軍と同じような状況に陥ったとしましょう。相手の捕虜を虐待した、あるいは誤った行為を行った、そういうときに、チェックする機能というのはどこが負っているんですか。

石破国務大臣 委員のおっしゃいますのは、日本有事において捕虜を私どもが捕獲をした、そこにおいて自衛官が虐待をしたらどうなるか、こういう御質問でよろしゅうございますか。――虐待はしません。しませんが、仮にそんなことがあったらどうするのだという御指摘だろうと思います。

 それは、結局、ジュネーブ第三条約に何が書いてあるか、委員御案内のとおりでございますが、まず、利益保護国及び赤十字国際委員会の代表者は捕虜がいるすべての場所を訪問することができる、そしてまた、本法律案においては、自衛隊の捕虜収容所長は、利益保護国代表者の任務を尊重し、その遂行に支障が生じないように特に配慮しなければいけない、そして、その利益代表保護国の代表者が捕虜に面会を求めたときは捕虜収容所の職員は立ち会ってはいかぬ、こういうことになっておるわけでございまして、チェック体制というものは、つまり、違法な行為が行われたかどうかというのを外部で最終的にどのようにチェックをするかということは、最終的にこういうのが担保です。(末松委員「内部では」と呼ぶ)

 内部ではどうかということになりますと、これは、捕虜収容所長の権限というものもジュネーブ条約には定められておりますし、同時に、特別国家公務員陵虐罪とか、いろいろな罪名はございます。あるいは、逮捕監禁罪みたいなものもございます。傷害罪もあるかもしれません。いずれにいたしましても、それは国内刑法において担保をされ、それは基本的に警務官が負うというふうに考えておる次第でございます。

末松委員 それじゃ、戦闘中に、いや、これは自衛隊にとってはあり得ないと思いますよ、あり得ないけれども、あり得ないと言っていた米軍がああいうことをやっていたという位置づけのもとで質問をするのであれば、自衛隊が軍事活動をやっているときにジュネーブ条約違反を起こした、あるいは違反を起こした者がいたといったときのチェックはだれが行うんですか。

石破国務大臣 これは、なかなかシチュエーションを想像するといろいろな例が浮かぶのだろうと思いますが、基本的には警務官ということになるわけですね。(末松委員「戦場で」と呼ぶ)戦場です。

 戦場で行った場合にはどうなるんだということになりますと、つまり、部隊の長に、部隊等において犯罪が発生をしたときには、速やかに最寄りの警務部隊または警務官に連絡をしなければならないという義務が課されておるわけでございます。これは何において課されているかというと、自衛隊犯罪捜査服務規則第二十七条第一項ということになっておりまして、部隊の長には、何かがあったというときには、とにかく警務部隊、警務官に連絡する義務というのを課しておるわけでございます。

 もう一つは、これは一般的な規定になりますが、委員御案内のとおり、刑訴法の二百三十九条というものがございます。刑訴法二百三十九条には、個々の隊員についてでございますけれども、これは「官吏又は公吏」という書き方をしてございますが、これは自衛官にも当てはめて考えることができるわけでございますが、個々の隊員については、その職務を行うことにより犯罪があると思料するときは告発を行う義務というものが課されておるわけでございます。これは義務規定でございます。

末松委員 そうしたら、敵側がジュネーブ国際条約にもとる行為を行ってきた、こういった場合には日本側はどう、告発するんですか、あるいは、これは宣伝合戦の一環としかならないんですか。

石破国務大臣 これは、例えば某国が日本に対して武力攻撃を加えてきた、それが日本人を捕虜にとり虐待をしたらどうなるか……(末松委員「あるいは民間人を」と呼ぶ)民間人を虐待したらどうなるかということでございますか。――それはやはり、それぞれの国において、これは例えば某国、某というふうにいたしますと、某国の中においてそういうような作用が働かなければいけないということになって、実際問題、そこにおいて日本人の自衛官もしくは民間人が虐待を受けて、そのときに日本が何をするべきか。

 つまり、その場合は有事なわけでございます。有事になっておって、我々としては防衛出動が下令をされているという状況でございますから、そういう場合にどうやってその虐待を救済するかというよりも、むしろ、そのような行為を行っておる相手に対して、八十八条によって権能が与えられておるわけですから、どのような武力の行使、武器の使用を含みますが、それを行うか、そして、民間人についてはどのように救出を行うかというような議論になるのだろうと思っております。

 捕虜を虐待したことにつきましては、それは、基本的にはおのおのの国の、ジュネーブ条約の遵守義務を負っているわけでございますから、それによって律せられるものと考えております。

末松委員 多分、武力攻撃をはねのける方が先だというお答えだろうと思うし、または、日本政府として、とんでもないことをやっているというふうな形のPRといいますか、そう言っていくんだろうというのが正解だろうと思いますけれども、その国がジュネーブ条約を締結していなかったら、それは我が方としてジュネーブ条約を――締結、うちもしていなかったんだね。今回するんだよね。それは守る義務はあるんですか。

林政府参考人 ジュネーブ四条約というのは非常に普遍的な条約でございますので、世界の大多数の国が締結しているというふうに申し上げることができると思いますが、同時に、ジュネーブ条約に定められております多くの人道的な規定と申しますのは、いわば国際慣習法化しておるということが申し上げられると思います。

 具体的にどういうところの規定を念頭に置いておっしゃっておられるのかにもよりますけれども、例えば、いわゆる被保護者、捕虜……(末松委員「民間人の虐殺とかね」と呼ぶ)民間人、いわゆる文民に対する攻撃あるいは虐待、あるいは捕虜もそうでございますけれども、そういう戦場において弱い立場にある、被保護者と申しますね、そういう人たちを虐待するといったようなことは認められないということは幅広い国際慣習法上の規定ということが申し上げられると思います。

 仮に、そういうことが当然のように行われるということがもしございますれば、それはまず、そういうことをやめろということを当然申し入れるということになろうと思いますし、そういうことをやめないということが続いた場合には、これはいわゆる国際法違反の行為ということでございますので、いずれ国家責任を追及するということが行われる。これはどの時点でどういう形で行われるかというのはまたその状況によろうかと思いますけれども、考え方としてはそういうことでございます。

末松委員 ということであれば、その場ではなかなかどうしようもないというのが現実問題として出てくるんだろうと思いますね。

 もうちょっと深刻な問題を提起しましょう。アメリカはジュネーブ条約に入っていませんね。米軍が、例えば、一緒に、友好国で、当然同盟国としてやっているときに、米軍が民間人を虐殺したとかそういった、イラクでちょっといろいろと問題になりかかったりなんかしていることがありますけれども、これはちょっと仮定の話ですが、その場合には、自衛隊員は告発の義務を負うんですか、あるいは、負わないので見過ごすということになるんですか。これはだれが答えてくれますか。

石破国務大臣 それは当然、見て見ぬふりということにはならないわけだと思っております。米軍がそういうことをするということを前提に置いて議論をするというわけではございませんが、それは、そういうような虐待行為というものがありました場合には、それはジュネーブ条約にたしか規定があったはずでございますけれども……(末松委員「米側が」と呼ぶ)いやいや、それは米側が言わなくても、ジュネーブ条約に入っておる国としてそれを見て見ぬふりをするということはないというふうに承知をいたしております。

井上国務大臣 ごく一般論で申し上げますと、一般論で申し上げるということは、恐らく国際法とかアメリカ軍との間の協定その他がありますから全体として判断しないといけないと思うのでありますけれども、アメリカはジュネーブ条約に入っているはずですね、四条約に入っていると思いますので、その違反はやはり日本の国内法違反にもなるわけでありまして、したがいまして、当然のこととして、日本の場合は刑事訴訟法に基づいて、国家公務員なんかの場合には告発の義務があるというふうに思います。

末松委員 時間がなくなってきましたので、次の質問を簡単に申し上げますけれども、遺体の処理についてなんです。

 一応、戦闘行為が始まった場合に、悲しむべきことですけれども、御遺体というのは出てきます。自衛隊員が亡くなった場合には、自衛隊法の例外ということで、墓地埋葬法ですか、それで、それは埋葬というか土葬でも、自衛隊の管理下の土地等に埋葬されるというんですけれども、一般の方が戦闘地域で亡くなった場合には、これは自衛隊もしくはそういった方々が埋葬するかどうか、これはどういうふうに考えられるんですか。あらかじめ質問通告しておきましたけれども。

田中政府参考人 お答え申し上げます。

 不幸にも戦闘地域で一般の方々が亡くなられるようなことが発生した場合には、これらの方々につきましては、今般の法律案の救援の対象として、戦闘が終了し安全が確保された時点において、死体の捜索、処理を実施し、その後、遺族等の立ち会いのもと、埋葬及び火葬が実施されることになるというふうに考えております。

 こうした武力攻撃事態、武力攻撃災害時におきましては、多数の死者が発生し、埋葬または火葬に係る通常の手続を実施することが困難な事態も想定されるために、今般の法律案におきましては、公衆衛生上の危害の発生防止のため、厚生労働大臣がその適用期間及び適用地域を定めた上で、死亡届を受理した市町村長でなくても戸籍法の体系による手続とは別に埋葬または火葬の許可を行うことができるようにすること、さらに、市町村長が埋葬または火葬の許可を行うことも困難な場合には、墓地または火葬場の管理者が埋葬または火葬の許可証の提出を受けなくても死体検案書等で死亡の事実が確認できれば埋葬または火葬を行うことができるようにするというような特例を設けることとしておりまして、これらによりまして埋葬、火葬等が円滑に行われるように措置することとしているところでございます。

末松委員 今の答弁のとおりということであれば、実際に一般の方が亡くなったとき、戦闘終了時までほっておかれるわけですね、それは危ないからという理由。自衛隊員は、これまた戦闘終了時までほっておかれるんですか。何か自衛隊員だけ特例で埋葬されるような、そういう区別があるんですか、全くないんですか。

 と同時に、もう一つ聞きたいのは、一般の方はどなたが、御親族ということが想定されますけれども、墓地とか、それ以外のところでも、公衆衛生等の観点から、埋葬等、土葬あるいは火葬にしていいということになるんですか。どなたがそういった御遺体を処理するといいますか、ちょっと失礼な言い方ですけれども、そういうことに、処理をされることになるんでしょうか。

小島政府参考人 まず、遺体の処理でございますが、これは、都道府県知事が行います救援の一つの種類ということで、先ほど申し上げましたように、戦闘が終了し安全が確保された時点において、都道府県ないしはその委託を受けました市町村が組織した捜索班、処理班というものにおきまして死体の捜索それから処理というものが行われ、その後、埋葬、火葬も救援の一つの種類として都道府県知事が実施する、こういう法律の整理になっているわけでございます。

石破国務大臣 ごめんなさい。先ほどの答弁で、ジュネーブ条約の条項をちょっと言い忘れました。第三条約十二条第三項でございます。また後から御確認をいただければと思います。

 今の自衛官のお話でございますが、自衛官が不幸にして落命をしたという場合に、遺体を本来であればきれいにして後送する、後ろの方にお送りするわけですが、もういとまがないという場合に、輸送する能力もないという場合には、その場で埋葬することに相なります。あるいは、生物兵器等々に罹患をした場合に、そのままではいかぬという場合には、埋葬ではなくて火葬を行うことになります。そういうようなことは、昨年お認めをいただきました自衛隊法の改正によりまして、墓埋法の適用除外ということになっておるわけでございます。

 戦闘行為が終了いたしました後に、いずれの形態にいたしましても、大変に残念なことではございますけれども、これは自衛官が御遺族にきちんとした形でお渡しをするというようなことになります。

自見委員長 末松君、質疑時間が終了いたしました。簡潔にお願いをいたします。

末松委員 FEMAのことをちょっとお聞きしようと思ったんですが、時間がなくなりました。また次の機会にさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

自見委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 昨日に引き続き、ACSAについて聞いていきます。

 昨日の審議の中で、新六条の「国際の平和及び安全に寄与するための国際社会の努力の促進、」この規定に基づく物品、役務の提供が国連安保理決議に基づく活動の場合に限られるかどうか、こういう質問をしましたら、海老原北米局長は、今後の国内法次第だ、このように答弁なさいました。これはどういうことなんでしょうか。

海老原政府参考人 昨日、私が御答弁申し上げましたのは、この新六条に基づいて物品、役務が提供される場合、これにつきましては、我が方の国内法に従って行われるということが明記をされておるわけでございます。

 それではどのような国内法があり得るのかということでございますけれども、これは、現在ありますものはいわゆるテロ特措法とイラク特措法ということを申し上げまして、また、今御審議をいただいております自衛隊法の一部を改正する法律案が成立すれば、これを付表2に掲載することによってこれが含まれるということでございます。

 安保理決議が必要かどうかということにつきましては、これらの法律、そして将来成立することのある法律、それがそもそも自衛隊の活動そのものを安保理の決議を条件としているかどうかということにかかわるということになるだろうという意味におきまして、国内法によるという旨を御答弁申し上げた次第でございます。

赤嶺委員 まだちょっと私は認識があいまいなんですが、つまり、今後整備される国内法において、国連安保理決議を前提としないような法律が仮に成立をした場合、それは今のACSAの対象になるという理解でいいんですね、今の答弁は。

林政府参考人 済みません。きのう来申し上げておりますとおり、ここは、要は、国際の平和及び安全への寄与というところがその考え方としてあるわけでございますけれども、そこに安保理の決議というものを前提にするとかしないとかいうことは何も書いていないということが形式的にはございます。

 それで、おっしゃっておられます安保理の決議というものがどういうものを指しておられるのか、必ずしもよくわからないところがあるのでございますけれども、七章下におきます、いわゆる平和の破壊等の認定をして強制力を伴った決議ということをおっしゃっておられるのか、例えばそういうことでございますれば、テロ特措法は必ずしもそういう形のものではなかったというふうに私は記憶しております。

 それから、拘束力のある決議というものであった場合におきましても、その内容はもちろん、これはイラク特措法の場合の人道復興支援なんかはそうでございますけれども、それは加盟各国に人道復興支援を義務づけるというような形になっているわけではございません。これは呼びかけるような形になっておるわけでございます。

 決議に基づいてと、前提とおっしゃっている意味が必ずしも明らかでないわけでございますけれども、もしそれが、義務づけるというものを前提にするというようなお話でございましたら、それは、そんなことではございませんし、それが、国連の決議というものが行われるような事態ということでございましたら、当然、国際社会の関心というものは非常に高いわけでございますから、それは、我が国におきましても、立法府において、こういうものには協力したらいいんじゃないかといった御判断が出てきやすくなるといったようなことはあろうかと思いますけれども、そのことは立法の前提ということではないのではないかというふうに考えております。

赤嶺委員 国連安保理決議、いわば武力行使に至る場合の状態、四十二条と五十一条があります。そのいずれも別に前提にしないということなんですか、それとも、どちらかを前提にしているという意味ですか。

林政府参考人 四十二条、五十一条、五十一条とおっしゃったのは自衛権の話でございましょうけれども、これは別に国連安保理の決議が必要なわけでは、もとより御案内のとおりでございましょう。四十二条と申しますのは、それはいわゆる七章、国連軍の話をしておられるんでしたら、今のところ、そういうのは実現が見込まれるものではないということは御案内のとおりでございます。

 したがって、国際の平和と安全を維持する一義的な責任を負う安保理の権能といたしまして、七章下の決議というものが従来なされてきておるわけでございますけれども、その決議につきましても、さまざまな内容がございます。先ほど申し上げておりますように、非常に拘束力のあるもの、あるいは拘束力のある決議の中でもいろいろな呼びかけをするもの、内容的にはさまざまでございますけれども、そういうものは、一つの動機づけということになろうかと思いますけれども、法律的な前提といったようなこととしては考える必要がないのではないか、それが今のこの仕組みでございます。

赤嶺委員 きのう私が理解した趣旨と同じような答弁が今行われたというぐあいに、改めて認識を深めたところです。

 それで、ちょっと具体的な話にいきますが、つまり、アメリカは、脅威と認めた国に対して単独で先制攻撃の行動も辞さない、こういうブッシュ・ドクトリンなるものをとってまいりました。こういう先制攻撃に基づく米軍の軍事行動、これも、この中で言う国際の平和、安全への寄与という目的に入ってくるんでしょうか。いかがですか。

川口国務大臣 アメリカのその先制的攻撃、先制的行動というふうにアメリカは言っていると思いますけれども、ということは、そもそも、そういう武力攻撃をするということの理由づけとして米国として使っているわけではない、我々はそのようには考えていないということは前から申し上げているわけでして、米国が武力を使って攻撃をすることがあるとすれば、それは国連の憲章に従って行っていくということであるかと思います。

 ですから、いずれにしても、その六条のもとで何が入ることになるかどうかというのは、まさに国会においてどのような議論をなさって、どのようなことに対して自衛隊と米軍との間で役務と物品の提供があるか、あるということが適切かということをお考えになられるかということによることであって、先制攻撃も、その意味では安保理の決議も、これとは独立をした話であるということであるというふうに思います。

赤嶺委員 私、国内法の整備の場合にそういうものをどう想定するか、こういう質問をしているわけです。

 それで、国連憲章下で米国は行動するということなんですが、現にイラクに対する戦争、これもそういう解釈で強行しているわけですが、この米英によるイラク戦争、こういうのも、結局、国内法という前提が成立しておれば支援していく、ACSAは発動する、こういうことなんでしょうか。

林政府参考人 済みません。ちょっと御趣旨を必ずしも理解したかどうか、あれなんでございますけれども、現に、イラク特措法……(赤嶺委員「あれとは違う、イラク戦争が始まるときの、開戦時の」と呼ぶ)開戦時には、我が国の自衛隊はそこにはおらないわけでございますけれども……(赤嶺委員「だから、前提が、それが成立していた場合」と呼ぶ)いや、それは余りに仮定の話でちょっと答えにくいですが、ただ、そこは、大臣がさっき明確におっしゃいましたように、どういう状況で、これはあくまで六条におきまして自衛隊が提供する根拠、方法ということを申し上げているわけでございますけれども、それはまさに国会が、どういうものならいい、こういうものならやるべきだといったことを御判断になって立法される、その立法があって初めてその提供権限が生じるということを繰り返し申し上げているわけでございます。

赤嶺委員 もう一つ、ちょっとくどいようですが、少し確認の意味で聞きたいと思います。

 九八年八月、このときに、米軍が、ケニアとタンザニアの米国大使館連続爆破テロに対する報復として、国連憲章五十一条を根拠に、スーダン、アフガニスタンへの空爆を行った、こういうことがありますけれども、このケースというのは、ここで言う国際の平和及び安全への寄与に当たるんですね。先ほどの説明からいくと、当たると理解してよろしいんですね。

林政府参考人 この国際の平和及び安全への寄与に当たるのかどうかというのは、具体的に立法がなされたときに、当てはめといいますか、これこれに当たるんだろうといったことが考え得るわけでございますけれども、今、そういうものがございませんので、それがこれに当たるのか、ないのかということを私どもが判断するという話ではないんだろうと思います。そういう趣旨の立法を国会の方がおやりになるのかどうかというところがポイントなんでございます。

赤嶺委員 政府は大枠で説明をされて、そういう趣旨の法律ができれば枠組みとしてはでき上がっている、こういう話になろうかと思います。

 ただ、私、このアフガン、スーダン爆撃でも、アナン国連事務総長は、当時、加盟国による個別の行動は解決にならないという発言をしていますが、政府の側は、当時の野中官房長官が、断固たる姿勢は理解できるということで、アメリカの単独行動主義はあり得ないということを外務大臣はおっしゃっておりましたけれども、アメリカが自衛権で行動して、国連総会では非難決議が上がる。国際の平和と安全という場合に、こういう実態とも絡めて今後検討していかなきゃいけないんじゃないかというぐあいに懸念を持っているところです。

 次に、恒久法。恒久法もまた国会の話だ、政府の話ではないというような話にしないで答えていただきたいんですが、つまり、去年の日米首脳会談では、世界の中の日米同盟が確認されているわけです。政府自身が年末までに防衛大綱を見直して、海外での任務を今後の自衛隊の活動の柱に据えていこう、こういうことになって、ちまたでは、恒久法の制定、自衛隊海外派兵の恒久法ということがあるわけですね。

 今回の新六条も、恒久法ができて別表に加えられたら、これも対象になっていく、こういう理解でいいんですね。

川口国務大臣 冒頭で、そのように言わないでほしいというふうにおっしゃられたわけですけれども、まさにお答えはそれしかございませんで、恒久法についての議論、これはまさに国会でどのようにそれをなさるかということ、これはまだ全然見えていないわけでございます。

 その御議論の中で恐らくいろいろな御意見がおありになって、その結果として、それに基づいて、ACSAの新六条の手続の枠組みを使った物品、役務の提供ということがあるかどうか、これは全くその後のお話でございまして、今の時点で何とも申し上げることはできない、これはまさに国会の御判断の問題であると思います。

赤嶺委員 今の段階でというお話ですから、ちょっと次の質問に進んでいきたいと思います。

 新六条で、今度は「大規模災害への対処」というのが挙げられております。この「大規模災害への対処」というのは具体的にはどういうことを指しているんでしょうか。

海老原政府参考人 これは、地震などの大規模災害に際しましての活動ということでございまして、具体的に申し上げれば、自衛隊法第八十三条に基づく自衛隊のいわゆる災害派遣というふうなものが考え方としてはこれに当たるというふうに思います。

赤嶺委員 日本国内での災害に限定されるということでいいんでしょうか。

飯原政府参考人 基本的には国内ということだと思いますが、仮に公海上で災害等、船の衝突ですとか発生すれば、それは国内から若干公海に出ることもあるということでございます。

赤嶺委員 災害はそういうことだということですね。

 それで、今回のACSAの改正は一方で自衛隊法改正ともセットになっているわけですが、その中に、在外邦人輸送の場合にも提供権限を拡大する、こういうことになっています。在外邦人輸送の場合にも提供権限を拡大するということなんですが、それが入った理由は何ですか。

飯原政府参考人 御承知のとおり、自衛隊法上、外務大臣の要請によりまして自衛隊が在外邦人の救出をする権限があるわけでございますが、米軍も同様、在外の米人を救出するようなケースが想定される。そこで、同じ現場におきまして、米軍と自衛隊が同時に存在する場合に、お互いに現場において食料、燃料等の融通をするということがスムーズな在外邦人の救出に有効であるという観点から規定をいたしたものでございます。

赤嶺委員 この在外邦人の救出に当たって、日米間でこれまで共同訓練をしたとか、そういう共同訓練の中でいろいろなニーズが出てきたとか、こういうことはあるんでしょうか。

飯原政府参考人 手元に正確な資料がないんですが、基本的に、在外邦人の救出に関して、米軍とそれを目的に訓練をしたということはないというふうに考えております。

赤嶺委員 次に、自衛隊法の改正の中に、訓練、連絡調整その他の日常的な活動を行う米軍にも提供権限を拡大しております。これが入ったのはどういう理由ですか。

飯原政府参考人 共同訓練は従来から適用があったわけでございますが、そのほかに、米軍の単独の訓練であるとか、それから自衛隊と米軍、あるいは米軍と米軍の間の日常の連絡業務におきまして、自衛隊の基地に立ち寄ることがあった。ただ、御承知のとおり、その際に、基本的に燃料の補給が多いかと思いますが、これについてニーズがあったにもかかわらず、それは法律の根拠がなかったからできなかったということでございますので、今回、あわせて、自衛隊法上の規定とそれからACSAへの適用、両方、二つ一本にいたしまして現場レベルにおける日常の協力関係を強化していきたいという趣旨でございます。

赤嶺委員 広がったわけですね。私、これ、有事関連法案といいますから有事のACSAというような話かと思ったら、平時の、日常の訓練まで広がっている。それが有事関連法案と一緒に出されている。これはどういうことでしょうか。

飯原政府参考人 まさに有事のためというのは一番究極の場合だと思っておりますが、そのためにも、日常から訓練なり連絡調整の際に協力関係を持っているということは極めて重要であるというのが実務上の要請であるというふうに考えております。

赤嶺委員 さっき、燃料の話が出ましたが、それは航空機を想定していると思うんですが、ほかにもありますか。

飯原政府参考人 ほかにもという御趣旨が、航空機のほかに艦艇もあるかという御趣旨であれば、あると思います。

 それから、燃料のほかに水とか食料とか宿泊とかいうのがあるかといえば、もちろん入るということでございます。

赤嶺委員 私、一度、日出生台の訓練場を視察に行ったことがあります。そのときに、沖縄から訓練の移転がありました実弾砲撃訓練、米軍が日出生台で行うということで、米軍用の宿舎が新設され、それから洗車場があり、弾薬置き場があり、トイレまでつくられていたんですね。自衛隊の方に伺ったんですが、普通、自衛隊は訓練のときにトイレを使うかと言えば、いや、あれは米軍用だというお話だったんですけれども。米軍の司令官は、別に、自分たちは野戦用のテントがあれば十分で、宿舎は要らないというような発言も私は聞いたんですが。

 あれは何ですか。あの提供は何ですか。日出生台におけるいろいろな施設の提供は何ですか。

飯原政府参考人 それは、御承知のとおり、沖縄の基地問題を踏まえましたSACOの中の取り組みの中で、訓練地を沖縄からできるだけ分散するという観点から行っている訓練でございます。

赤嶺委員 いや、ですから、自衛隊基地の中に米軍用のいろいろな施設がつくられていたんですが、それはどういう根拠に基づいて米軍に提供されているものでしょうか。

海老原政府参考人 これは、地位協定の二条四項(b)によりまして、日本側のものであってもこれを期間を区切って一時的に米軍に使用させるということで、この訓練の期間を限ってということだったと記憶しておりますが、いずれにしろ、期間を限りまして施設・区域として使用をさせているということでございます。

赤嶺委員 いや、ですから、訓練場は自衛隊の実弾訓練場なんですね。それは期間を区切ってというのはそれでいいんですが、その中に米軍用にいろいろな施設が建設されているんですね。新しい宿舎、弾薬置き場それから洗車場、いろいろな施設があるものですから、それは何ですかと聞いているんです。

自見委員長 質疑時間が終了いたしましたので、簡潔に御答弁をお願いします。

飯原政府参考人 手元に資料はございませんが、基本的には、SACOの合意に基づいて予算措置をとって施設をつくる、それから、地位協定上の二4(b)に基づいて使用させているということでございます。

赤嶺委員 私たち、当初、このACSAが出るときに、去年の国会では有事ACSAというぐあいにとらえていたんですが、そこにとどまらない。平時まで広がり、そして国際の平和及び安全というところまで、どこまでも限りなく広がっていく日米間の協力関係、この危険性を指摘しまして、私の質問を終わります。

自見委員長 次に、阿部知子君。

阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 通常、当委員会には我が党の東門美津子が所属し、特に基地被害に悩む沖縄の現状という点から、果たして、国民保護という新たな法制をつくるに当たって、現実に、現状ですら国民は十分保護をされているだろうかということを御提起してきたかと思います。

 私は、沖縄に次ぐ第二の基地県の神奈川の選出でありまして、きょうは、時間をいただきまして、私の選挙区でもあります神奈川の現状と、そして、そのことがこの間の国民保護法制やあるいはジュネーブの追加議定書の調印と相まってどのように改善されていくだろうか、願わくば少しでも改善されればと思いますので、そうした観点から御質疑をさせていただきます。

 特に、今の赤嶺委員の御質疑の中にもありましたが、武力攻撃事態におけるアメリカ合衆国の軍隊の行動に伴う我が国の自衛隊や自治体との関連ということに専ら中心が置かれますが、その他の点についてもお尋ね申したいと思います。

 私どもの神奈川では、九・一一以降も、横須賀というところに米海軍の母港がございまして、そこにキティーホークが常時おり、また、厚木というところにある基地で訓練をいたしました艦載機がその空母キティーホークに載ってアフガンへ、イラクへと、攻撃する側にもあるわけでございます。

 この厚木基地で訓練されます米軍機並びに自衛隊機の艦載機が記録される件数というのは、一年間で、米軍機だけでも約三万回、そして自衛隊機も二万六千回ということで、非常に多い飛行機がそこで実際に訓練し、また、出撃のために空母に移動していくという地域でもございます。

 もともと、アメリカの本国であれば、人口密集地に基地を置くなどということは、当然、住民感情も許しませんし、なされないことでありますが、この厚木基地近辺には百万人の住民が住むという非常に人口密集地で、この点は、沖縄の東門議員が問題にされた普天間等々と似た状況があるかと思います。

 この厚木基地に、昨年十一月からF18スーパーホーネットという非常に大きなエンジンを搭載した戦闘機が配属されることになりまして、実はこの地域は従来からでも非常に基地騒音に悩んでおり、住民の訴訟も第三次まで起きているという中で、さらにその騒音の著しく増強されるようなF18スーパーホーネットの配属には住民も反対しておりましたが、これもアメリカの一片の通告で現実には配置されております。

 そこで、政府としても、恐らく二十年ぶりとなるような基地被害の騒音の見直しということに取りかかるというふうに、昨年十一月、私がこのF18の実際の配属に伴う折にお尋ね申し上げましたときに防衛施設庁の方からもお返事をいただきましたが、その進捗状況について、冒頭お伺いいたします。

戸田政府参考人 お答え申し上げます。

 厚木飛行場の航空機騒音問題でございますけれども、周辺住民の皆様方に多大の御迷惑をおかけしておりまして、同飛行場周辺の騒音軽減は当庁の重要な課題の一つであると認識しているところでございます。

 先生、今お尋ねの、厚木飛行場に係ります住宅防音工事の対象区域、第一種区域、七十五Wの区域でございますけれども、ここにつきましては、昭和六十一年九月の最終指定告示以降、既に十八年が経過しておりますが、その間、航空機の騒音状況に変化が見られるところでございます。

 また、私ども、一昨年七月に、飛行場周辺における環境整備の在り方に関する懇談会の報告をちょうだいしておりまして、ここでは、改めて計画的に全国の飛行場施設の騒音度を調査し、区域の見直しを図ることが適切な時期が到来している旨の提言をちょうだいしたところでございます。

 当庁といたしましては、このような状況を受けまして、厚木飛行場におきましては、平成十五年度に、同飛行場における騒音状況を把握するため、騒音度調査を実施したところでございます。その際、新たに配備されましたスーパーホーネットの騒音状況についてもあわせ調査したところでございます。

 先生、騒音コンター作成の進捗状況についてのお尋ねでございましたけれども、現在、終了しました調査のデータ整理を行っているところでございます。できるだけ早期にまとめたいと考えてございますけれども、この調査結果を踏まえまして所要の措置を講じてまいりたいと思っておるところでございます。

阿部委員 所要の措置が例えば防音の工事とかそういうことに限定されるのであれば、住民としてもこれは極めて不本意なのですね。

 そこで、川口大臣にお伺いいたしますが、同じようにF18スーパーホーネットの配属を百二十機行おうとしたアメリカのノースカロライナで、これは環境団体と自治体が余りにも環境破壊、騒音がひどくなるのでということで訴訟を起こしまして、実際に仮処分で工事が中断されるということが起きておりますが、大臣は御存じでしょうか。大臣が御存じか、お願いいたします。

海老原政府参考人 私から事実関係をお話し申し上げまして、その後、大臣に御答弁いただきたいと思います。

 これは、米海軍が十個飛行隊以上の部隊を米本土の東海岸に配備する計画の一環といたしまして、ノースカロライナ州プリマス郊外におきまして訓練場の飛行場を建設する計画というものを有しておりまして、これに対しまして、本年四月に、ノースカロライナ州の連邦地裁において暫定的な差しとめ判決が出たということでございます。この判決は、当面の計画の進行を差しとめるという暫定的なものでございまして、本件計画に関する最終的な法的結論を下すものではございません。

 また、我々の承知しておりますところでは、計画地の近くの野生動物保護区に水鳥が約十万羽越冬するということなどが特に自然環境に与える影響という観点から問題となっているというふうに承知をいたしております。

阿部委員 水鳥以上に人間は問題なのですね。もちろん水鳥も問題です、環境破壊ですから。沖縄のジュゴンでもそうですが。しかし、その下で現実に暮らす人間は、例えば電話機をとっても、上をホーネットが飛ぶと聞こえません。窓もビリビリビリビリという物すごい騒音です。ぜひ、外務省の現状認識が水鳥に及ぶのであれば、人間にも及んでいただきたいと思います。

 済みません。今度は川口大臣にお願いいたします。大臣は、このようなスーパーホーネットの配属が一方的な通告で行われているような日米の現状ということは御存じでしょうか。

川口国務大臣 スーパーホーネットの騒音ということが深刻なものであるということについては、私どもも十分に認識をいたしております。

 今回の、昨年のですけれども、配備の決定、これにつきましては、米国側に対しまして、周辺住民にできるだけの配慮をする、そして、厚木の飛行場においての騒音の規制の措置を遵守するように改めて申し入れております。

 これに関しまして、米国側からは、改めてできる限り周辺の住民に配慮をするということを言っていまして、住民に配慮をし、厚木飛行場の騒音規制措置については引き続きこれを守っていくという答えを得ております。

阿部委員 引き続き守られた現状が今のようであれば、申しわけないけれども、それはもう……。

 石破長官にお願いがあるのですが、ここは自衛隊と米軍が両方使用しているところなのですね。これまで防衛庁長官はどなたも現地に出向いてくださっていないわけです。沖縄の普天間の基地にはせんだってラムズフェルドがお訪ねになって、こういう人口密集地に基地があるのか、ひどいということもおっしゃったやに聞いておりますが、ぜひ石破長官に私どもの厚木にお越しいただきまして音を聞いていただきたい。たまたま長官が来られたら静かかもしれませんが、それでも、そうしたら毎回来ていただければいいのですから、ぜひ一度お運びいただきたいですが。住民挙げてお待ちしておりますが。

石破国務大臣 それは、御党の今川議員から平成十四年十月に同じような御質問をいただきました。そのときに、参るということを申しましたが、参れませんで、今こちらにもいらっしゃいますが、当時の副長官でありました赤城議員に行っていただいたという経緯がございます。

 これは、私、以前、大臣になる前ですが、嘉手納に行ったことがあります。国会議員が来ると飛行機が飛ばないとかいうような話でございまして、行ったって結局わからないということがございます。結局、私も何度かチャレンジはしてみたのですが、行く日とナイト・ランディング・プラクティスが重なりませんと、これはわからない。あるいは、スーパーホーネットが飛ぶということになりませんと、これはいかぬと思っております。

 いずれにしても、私も以前、今川議員にもお約束をしたことでもございますし、何とか国会の御審議のスケジュール等々を勘案しながら、これはやはり一度、体感と言うと言い方がおかしいのかもしれませんが、政府の責任者の一人として現地の住民の方々のそういうようなお気持ちにこたえる責務はあろうと思っております。

阿部委員 実は、この訴訟、第三次訴訟も国は控訴なさいまして、高裁で争われております。やはり国民保護ということをうたう限りは、現状で国民がどのような状況に置かれているかということをきっちり政府の側が体感していただきたい。

 そしてあわせて、川口外務大臣にお尋ねですが、実は、ここはさっき申しましたように自衛隊と米軍が両方使っておりまして、例えば今回のような有事が想定されました場合に、当然、逆に攻撃の対象ということにもなりかねない。もちろん想定でもありますが。

 そこで、先回、四月二十二日、私どもの東門美津子がお尋ねしたのですが、今般協定されるジュネーブの議定書1の五十八条の項目の中に、これは通告していませんでごめんなさい、ちょっと読みますが、「攻撃の影響に対する予防措置」という一項がございまして、予防措置ということからいえば、こんな百万人が住むところのど真ん中に基地を置いておくということはいかにも無防備というふうに考えられるわけです。

 逢沢副大臣は、この五十八条の(a)と(b)に該当しないからと、(a)と(b)を読むと長くなりますのでちょっと抜かせていただいて、という御答弁でしたが、例えば(c)の項目に、「個々の文民及び民用物を軍事行動から生ずる危険から保護するため、その他の必要な予防措置を」講ずるとございます。この際、ジュネーブの議定書1に加入して、その中にある、当然ながらそこに基地があり、百万人がいたら、とてもとても避難計画もままなりません。

 この議定書の締結とあわせて、こういう人口密集地に基地を置くということについて、川口大臣としてのお考えをお教えいただきたいし、できれば前向きに、基地はやはりないのが一番ですけれども、それでも暫定的にというのであれば、もう少し現実に密集地でないところに移していただくような、これは防衛庁長官にも関係するのですが、まず、ジュネーブの議定書との関係で川口大臣にお伺いします。

川口国務大臣 この五十八条について、前に東門議員とお話をさせていただいたことを覚えておりますけれども、この五十八条は、まさに、「紛争当事者は、」ということを書いておりまして、平時にということではなくて有事にということで、有事でなければ紛争当事者になりません。「紛争当事者は、」ということでございます。そして、その次に書いてございますのが、「実行可能な最大限度まで、」要するに、できる限り。

 紛争が武力攻撃事態になった後、できる限り次のことを行ってくださいということが書いてございまして、その一つが、おっしゃった(c)ですけれども、「軍事行動から生ずる危険から保護するため、その他の必要な予防措置をとること。」ということでございまして、これは、ジュネーブ議定書との関係から申しますと、今の時点で基地をできるだけどこかに移してくださいということではないということを申し上げさせていただきたいと思います。

阿部委員 まあ、そういう答弁もあり得るでしょうね。しかし、それではやはり国民は保護されないわけです。急に紛争になるわけです。そして、そのときに、そこに基地があって、百万人いるわけです。

 では、井上大臣にお伺いいたしますが、自治体の方と百万人の避難計画について緻密に話し合われたことがあるでしょうか。私は、百万人も瞬時に逃すのは無理だと思います。いかがでしょうか。ごめんなさい。これは予告していないので、何のことを聞かれたか……。

井上国務大臣 具体的に避難をする場合にどうするかという御質問だと思うのでありますけれども、それぞれの具体的な状況に応じまして、これは都道府県知事が判断をいたしまして避難を指示するわけでございますので、私、厚木の場合はよくわかりませんが、そういう状況の中で最善と思われる避難を指示するんだろう、こんなふうに思います。

阿部委員 これもまた全く国民は安心できないわけです。もう既にそこに基地があるのは既定の事実で、わかっていて、百万人、本当に住んでいます。辺野古も普天間もそうですが、人口密集地であれば、どのような態度をとるのか、日ごろからそれなりの計画があってしかるべきだと思います。

 川口大臣にもう一つお願いいたします。

 実は、厚木で基地があると同時に、横須賀にはアメリカの空母が寄港しております。現在、キティーホークがおりますが、これが二〇〇八年に退役する後、アメリカからの空母について原子力空母ではなくしてほしい、原子力空母の寄港は住民として望まないという要求が沢田市長から上がっていると思います。

 川口大臣として、この原子力空母、実はアメリカは今、十三隻、空母を持っておりますが、ほとんどが原子力空母でございまして、原子力以外のものは、キティーホークを入れて三隻しかございません。日本としてどういう態度をアメリカ側に申し入れるのか、この件についてもお願いいたします。

川口国務大臣 沢田市長からの御要望は承っております。

 キティーホークの退役後でございますけれども、これについて米国政府といたしまして何かの決定を行ったということはまだ承知をしていないわけでございます。

 いずれにいたしましても、今後の米艦船の我が国への展開、これに関する米国政府のいかなる決定につきましても、我が国政府との緊密な協力のもとで行われることになっているというふうに、米側との間でこれは確認をされております。

阿部委員 最後の質問になりますが、何でも後々では遅いのです。言われてからやるのでは遅いのです。日本側の姿勢もきっちり示すべきですし、例えば、現在、原子力空母の寄港については二十四時間前に地方自治体に通知がなされる。これは原子力潜水艦もそうですし、あるいは生じた事故についてもそうです。

 今回でき上がる有事法制の、国民保護法制の枠の中で、この二十四時間通知問題はどのように規定されておりますでしょうか。これが最後の質問です。

海老原政府参考人 このいわゆる二十四時間前の事前通報でございますけれども、これは、昭和三十九年八月二十四日、外国の港における合衆国原子力軍艦の運航に関する合衆国政府の声明におきまして、「合衆国海軍は、通常、受入国政府の当局に対し、少なくとも二十四時間前に、その原子力軍艦の到着予定時刻及びてい泊又は投錨の予定位置につき通報する。」とされております。

 したがいまして、米側は、米国原子力軍艦の本邦寄港に際しましては、武力攻撃事態等におきましてもこの声明に従って行動する政策をとっているというふうに理解をいたしております。

自見委員長 阿部君、申し合わせの質疑時間が終わりました。簡潔にお願いいたします。

阿部委員 今の御答弁、「通常」ということを使われましたけれども、有事というのは「通常」ということで判断できるのかどうかということも残ると思います。現実に、国民が真に保護される体系に向けてさらなる審議をお願いして、質問を終わらせていただきます。

自見委員長 次回は、明十三日木曜日午前十時十五分理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時六分散会


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