衆議院

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第17号 平成16年5月19日(水曜日)

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平成十六年五月十九日(水曜日)

    午前十一時開議

 出席委員

   委員長 自見庄三郎君

   理事 石崎  岳君 理事 北村 誠吾君

   理事 久間 章生君 理事 増原 義剛君

   理事 首藤 信彦君 理事 平岡 秀夫君

   理事 前原 誠司君 理事 遠藤 乙彦君

      赤城 徳彦君    岩屋  毅君

      植竹 繁雄君    江崎洋一郎君

      遠藤 利明君    大村 秀章君

      加藤 勝信君    佐藤  勉君

      佐藤  錬君    塩谷  立君

      柴山 昌彦君    菅原 一秀君

      田中 英夫君    谷  公一君

      中西 一善君    中山 成彬君

      仲村 正治君    鳩山 邦夫君

      林田  彪君    宮澤 洋一君

      森岡 正宏君    吉野 正芳君

      大畠 章宏君    奥村 展三君

      鎌田さゆり君    川端 達夫君

      近藤 洋介君    篠原  孝君

      末松 義規君    武正 公一君

      筒井 信隆君    中塚 一宏君

      長島 昭久君    楢崎 欣弥君

      細野 豪志君    松崎 公昭君

      松本 剛明君    渡辺  周君

      上田  勇君    大口 善徳君

      桝屋 敬悟君    赤嶺 政賢君

      東門美津子君

    …………………………………

   内閣総理大臣       小泉純一郎君

   外務大臣         川口 順子君

   国務大臣        

   (防衛庁長官)      石破  茂君

   国務大臣        

   (事態対処法制担当)   井上 喜一君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   防衛庁長官政務官     嘉数 知賢君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    秋山  收君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  大石 利雄君

   衆議院調査局武力攻撃事態等への対処に関する特別調査室長          前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十九日

 辞任         補欠選任

  森岡 正宏君     吉野 正芳君

  山口 泰明君     佐藤  勉君

  岩國 哲人君     篠原  孝君

  大畠 章宏君     近藤 洋介君

同日

 辞任         補欠選任

  佐藤  勉君     加藤 勝信君

  吉野 正芳君     森岡 正宏君

  近藤 洋介君     大畠 章宏君

  篠原  孝君     岩國 哲人君

同日

 辞任         補欠選任

  加藤 勝信君     山口 泰明君

    ―――――――――――――

五月十七日

 危険な国民保護法・米軍支援法等の廃案に関する請願(東門美津子君紹介)(第二三五〇号)

 有事関連法案反対に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二三八一号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二三八二号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二三八三号)

 同(山口富男君紹介)(第二三八四号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二三八五号)

 同(志位和夫君紹介)(第二四四七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案(内閣提出第九八号)

 武力攻撃事態等におけるアメリカ合衆国の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律案(内閣提出第九九号)

 武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律案(内閣提出第一〇〇号)

 国際人道法の重大な違反行為の処罰に関する法律案(内閣提出第一〇一号)

 武力攻撃事態における外国軍用品等の海上輸送の規制に関する法律案(内閣提出第一〇二号)

 武力攻撃事態における捕虜等の取扱いに関する法律案(内閣提出第一〇三号)

 自衛隊法の一部を改正する法律案(内閣提出第一〇四号)

 日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定の締結について承認を求めるの件(条約第一〇号)

 千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書1)の締結について承認を求めるの件(条約第一一号)

 千九百四十九年八月十二日のジュネーヴ諸条約の非国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書2)の締結について承認を求めるの件(条約第一二号)


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     ――――◇―――――

自見委員長 これより会議を開きます。

 本委員会に付託されております、内閣提出、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案等武力攻撃事態等への対処に関連する七法律案及び日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定の締結について承認を求めるの件等条約三件並びに前原誠司君外三名提出、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案及び武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律案に対する両修正案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案件審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官大石利雄君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

自見委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

自見委員長 これより各案件及び両修正案を一括して質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 きょうは、民主党の提案されました修正案について伺っていきたいと思います。

 今回の民主党修正案は、いわゆる緊急対処事態、これを武力攻撃事態等と同等に位置づけて、基本法である武力攻撃事態法に盛り込むということになっています。そして、その対処措置、基本理念、地方自治体、指定公共機関の責務、国民の協力なども、ほとんど武力攻撃事態等と同じように、対処方針や対策本部をつくり、国全体として対処していく枠組みを設けています。

 そこでまず、ここで規定されております緊急対処事態というのはいかなる事態なのかということが当然問題になっていくわけですが、政府の原案では、「武力攻撃の手段に準ずる手段を用いて多数の人を殺傷する行為が発生した事態又は当該行為が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態」としております。

 提案者に伺いますが、修正案にある緊急対処事態の定義は、政府原案の緊急対処事態の定義と何か違うところはありますか。

平岡委員 お答えいたします。

 政府案では、先ほど赤嶺委員が読み上げられたくだりの後に、「国民の生命、身体及び財産を保護することが必要なものとして」認定したという形のものになっておりますけれども、この点について言うと、私たちは保護の観点に概念を矮小化した形になっているのではないかというふうに考えまして、我々の案の中では、この定義については、保護という点だけに限らず、いわゆる侵害を排除するということを含めたということであります。

 結果的に申し上げますれば、緊急対処事態においても、国民を保護するための措置のみならず、自衛隊等による侵害排除のための措置が行われることも十分に想定されることから、このような概念を設けたということでございます。

赤嶺委員 侵害排除ということについては、また後で聞いていきたいと思います。

 その前段の、いわゆる「武力攻撃の手段に準ずる手段」、これがどのような手段かということであります。「多数の人を殺傷する」とありますが、それはどのくらいの人々を殺傷するということになっていくのか。この緊急対処事態の定義というのはそういう意味で非常にあいまいだと思いますけれども、提案者はそのように思いませんか。

平岡委員 今御質問の点については、我々、修正案の中では特に手を加えているわけではございません。そういう意味で、政府がその点についてどのような見解を持っているのかということをしっかりと我々としても確認をしていかなければいけないというふうに思っておりますけれども、我々の現在の立場としては、政府案の状況に従って我々としても修正案を提出させていただいたということであります。

赤嶺委員 あいまいじゃないかという点については、いかがですか、規模その他含めて。

平岡委員 抽象的な概念になっていますから、そのあいまいさというのは当然あるだろうと思います。その点については、しっかり国会の審議の場あるいはいろいろな形で明確にしていくという努力は、私たちとしても続けていきたいというふうに思っています。

赤嶺委員 審議の場で詰めていくと言っても、定義そのもののあいまいさを持ったままの法案という感は非常に免れません。

 それで、民主党さんの方としては、この間、理事会で政府が示しました「想定される緊急対処事態の類型」、あれで明確になっていると。あの政府の示された類型はどのように評価しておりますか。

平岡委員 その点については、政府の方でもかなり御努力をいただいて、それなりに明確にしていただいているというふうには思っています。

 しかし、それが最終的なものとして、それで私たちがいいのかという点については、さらにより深く検討を続けていきたいというふうに思っています。

赤嶺委員 検討を続けていくというのは、今国会中に何か、政府が示した類型をさらに補足したというか、そういうものが出るというお話なんですか、詰めていくということですが。

平岡委員 そこは、ちょっとこれからの審議の状況等も見ながら考えなければいけないところだと思いますけれども、本当に細部にわたって全部網羅的にということの実務的な難しさというのはあろうかと思いますから、あるところである程度この法案に対して、これなら運用できるという、そのあたりまでのことについては、どこまでができるかということについては、しっかりと考えていきたいというふうに思います。

赤嶺委員 やっぱり類型というのは、幾つ並べても、なかなかそれは定義ということにはなりにくいと思うんですね。

 それで、政府の類型によりますと、原子力発電所施設等の破壊、新幹線の爆破、炭疽菌等生物剤の航空機による散布、水源地に対する毒素等の混入、航空機等による多数の死傷者を伴う自爆テロ、いろんな事件、事故が挙げられています。

 こうした爆破事件などが発生をした場合には、即緊急対処事態ということになる、緊急対処事態という認定になっていくのでしょうか。

首藤委員 お答えいたします。

 そこに政府の統一見解に盛られたいろいろな要素があるわけですが、そのいずれもが個別具体的な攻撃という形でいろいろな変化を遂げます。また、御存じのように、九・一一テロの前には、まさか民間航空機をハイジャックしてそれを爆弾として突入させるようなことは想定されておらなかったはずなんです。

 現在、科学技術が非常に進歩しておりまして、さらに新たな、我々の想像を絶する攻撃が行われることも考えられます。したがって、その規模、攻撃の内容、その他において、一々それを検証しながらこの法案の対象を考えていくものと考えております。

赤嶺委員 私たちの立場からすれば、「武力攻撃の手段に準ずる手段を用いて多数の人を殺傷する行為が発生した事態」、これは本当にあいまいな定義に終わっているわけですが、それが今度は、「発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態」、これまで含むものとなっているわけですね。

 「切迫していると認められるに至った事態」というのをどのように判断するのか。例えば、新幹線等の爆破ということを考えた場合に、それが切迫していると認められる事態というのはどんな事態なんでしょうか。

首藤委員 お答えいたします。

 そうしたテロの攻撃に対する予知ということでございますが、それは、現時点でもさまざまなことが考えられております。

 例えば、何らかの攻撃が行われるということは、今世界じゅうで飛び回っているEメール、それが急激にふえてきて、特定の言葉を使っている、その言葉が一体何を意味するのかわからないということがございますけれども、それがさまざまな傍証によって新幹線であるというようなことがあれば、当然それにおいて対処する必要があるということでございます。

 テロの恐ろしいところは、非常に小規模な組織あるいは小規模な資金によっても、現代社会のさまざまな問題点をつきまして非常に大きな損害を引き起こすことができるということでございます。したがって、現在の科学的な知見においてテロの可能性が予知されるというときには、やはりそれに対しても対応していかなければいけないということでございます。

 今までの武力攻撃事態のように、例えば、以前に考えられたような大規模な着上陸あるいは戦車が移動してくるというようなものだけではなく、ある意味では、攻撃のもとは、九・一一テロに見られるように、我々が日常生活の中で使っているものがテロの攻撃手段となることもあるわけです。ですから、そうしたものに関しては、これから、我々が考えておりますように、また民主党が主張しておりますように、緊急事態庁のようなそうした専門機関において、将来の危険に対する予知、予防に対しても研究を深めていかなければいけないというふうに考えております。

赤嶺委員 緊急事態というのは、私たちの生活をしている社会の中でいろいろ起こり得るというのは、そのとおりであります。ただ、今回の修正案というのは、それを武力攻撃事態対処法の基本法の枠組みの中で位置づけていこうとするわけですから、当然、その枠組みの中に位置づけられるとした場合には、いろいろな疑問が浮かび上がってくるわけです。

 事件一般についてお伺いしているということではなくて、例えば、先ほど申し上げました、この法律で「切迫している」というのをどのように判断をしていくのか、その基準というのはどういうことなのかというのは、概念的にお持ちなんでしょうか。

首藤委員 委員の質問にお答えいたします。

 委員の御質問は、まさに的を射たものであると解しております。

 しかし、現実に現在起こっているテロリズム、そしてその具体例を見ますと、その都度その都度進化してきて、その都度、今まで警察あるいは軍隊において防備を考えていた以上のことが必ず行われる、簡単に言えば、俗に言えば、裏をかかれるということがございます。そうした状況において、起こり得る危機というものを定義することは非常に難しいし、さらにまた、その定義を明文化して提示するということは、さらに新たなテロを生むということにつながっていくことが考えられます。

 したがって、この定義に関しては、この水準において十分であると考えております。

赤嶺委員 やはり、そうなった場合に、一たん法律となってそれが動き出すときには、その時々の政府の恣意的な判断、ここにゆだねられていくという危険を非常に多く含んだ、定義の面においてもあいまいだということを、一つ私たちの意見として指摘しておきたいと思います。

平岡委員 まさに赤嶺委員が御指摘の点を私たちも心配をしているわけでありまして、そういう意味で、今回の緊急対処事態については、政府案が閣議決定で認定をする、対処方針を決めるという形になっているものに対して、私たちは、国会による関与ということをしっかりとしていこうということで、国会による承認を義務づけるということを通して政府の一方的な行動を防いでいこう、こういう視点に立って今回の法案を提出させていただいているということでございます。

赤嶺委員 それでは、次の質問に移っていきます。このような事態が発生をした、それに対処をしていく、その対処をしていく場合の問題であります。

 政府に最初に伺いたいと思います。

 政府案によりますと、緊急対処事態を起こした主体や意図はどうであれ、何らかの緊急対処事態が発生した場合に、国民の生命、身体、財産の保護が必要ということで、住民の避難・誘導、これらの措置が武力攻撃事態対処の枠組みで行うことができるようにしていると思いますけれども、それで間違いないですか。

大石政府参考人 お答えいたします。

 赤嶺委員御指摘のとおりでございまして、緊急対処事態におきましても、武力攻撃事態等と同様に住民の避難措置が講じられるわけでございまして、この場合には、対策本部長が都道府県知事に対しまして避難措置の指示を行い、知事がそれを受けて住民に避難の指示を行う、そして市町村長が住民の避難・誘導を行う、こういう仕組みになっております。

赤嶺委員 そこでまた民主党の修正案の方に戻るわけですが、先ほどの説明とのかかわりです。

 民主党案の提案理由説明によりますと、政府案は保護の観点に矮小化されているという緊急対処事態を、今回は、先ほども説明がありましたように、侵害排除も含めたものとする、このようにしています。

 主体や意図がわからない事態の段階で、いわば侵害排除ということで軍事的な対応まで行うという場合に、先ほどの類型もいろいろあり得る、膨らんでいく、定義もあいまいという中で、そういう軍事的な対応で侵害排除まで行うというわけですが、これは具体的には何を行うのでしょうか。

平岡委員 ちょっと赤嶺委員の質問の趣旨をしっかりと理解できているかどうかわかりませんけれども、今、緊急対処事態における軍事的対応というお言葉がありましたけれども、軍事的対応ということを我々としては位置づけているわけではございません。

 例えばの話として言えば、警察法に基づく緊急事態の布告であるとか、あるいは自衛隊がかかわるような話としては治安出動であるとか、そんなようなことは、事態の中身によっては当然あり得るだろうというふうには思っていますけれども、緊急対処事態そのものが即軍事行動につながるといったような仕組みで我々は考えてはおりません。

赤嶺委員 自衛隊の場合は、いわば治安出動であるから軍事的対応にはならないんだ、そういう理解でよろしいんですか。

平岡委員 先ほども申し上げましたように、赤嶺委員が言っておられる軍事的対応ということの定義といいますか、中身の問題だろうと思います。

 自衛隊が行動することが軍事的対応であるというふうに言われるのであれば、まさにその軍事的対応も含まれたものであろうと思いますし、治安維持、治安出動、そういう行動そのものが、それが軍事的対応というふうに定義されるべきものかどうかということについては、私も正確にお答えすることはできない立場に立っているというふうに思います。

赤嶺委員 それでは、自衛隊がどういう行動がとれるのかという角度からちょっと質問をしたいんですけれども、自衛隊法上は、治安出動あるいは治安出動下令前の情報収集、こういうものがあるわけですね。この発動要件というのが現行法で決められている。それらは、今回の修正を踏まえて変更することもあり得るんですか。

平岡委員 今回の緊急対処事態をこの法律の中で位置づけているということについては、ほかの自衛隊法とか警察法とかを修正するといったような、あるいはその位置づけを変えるということになっておりませんので、あくまでも、先ほど赤嶺委員が御指摘になったようなことは、それぞれその法律の中で定められている要件に基づいて行われるというふうに私たちとしては理解しております。

赤嶺委員 自衛隊の対応の要件は変わらないということでありましたが、それを軍事的対応と言うかどうかの議論はきょうはもうおいておきたいというぐあいに思います。

 それで、民主党案の基本理念の第二十六条の二項に、「武力攻撃の手段に準ずる手段を用いて多数の人を殺傷する行為の発生に備える」とありますけれども、これはどういう行動を指すのでしょうか。例えば、テロの危険がある重要施設、これを自衛隊が警備できるようにする、こういうことも含まれるのですか。

首藤委員 お答えします。

 今の現状において、その質問の意味は必ずしも明快ではございませんが、将来的には、そういうような脅威に対して、やはり自衛隊がそれなりの行動をとるということは十分考えられるところであります。ただし、今回の我々の修正案の中においては、そこまでは想定していないということでございます。

赤嶺委員 今、首藤委員の方からは、将来においてはというお話がありました。アフガニスタンの、九・一一同時テロのことを思い出すわけですが、当時の国会の議論で、次は政府の方にお伺いしますけれども、いわば警護出動規定を設ける場合にいろいろ議論になりました。原発などの重要施設、それから自衛隊基地や米軍基地、これは区別してかかるという措置になったと思います。

 政府も、将来において、このような自衛隊の行動要件、これが変更というか、そういうことも視野に入れた措置をとるという立場なんですか。

井上国務大臣 私どもが提案している法律案の中では、現行のさまざまな、防衛出動なりあるいは治安出動等々ございますけれども、これらについては修正をするということを考えておりませんので、既存の与えられた権限あるいは措置によりまして、例えば自衛隊なら自衛隊が行動する、こういうことになるわけでありますし、警察の場合も同様でございます。

赤嶺委員 あと一点、これに関連して政府にお伺いをしたいと思います。

 これまでのテロや不審船への対応、これは警察機関と自衛隊の連携についてマニュアルが作成されていたり、訓練を行うなどということをしてきていると思いますが、仮に、今回の修正によって、緊急対処事態に関する規定、これが武力攻撃事態法に設けられた場合に、その事態対処に変化が生まれ得るものですか。政府としてはどうですか。民主党さんはさっき要件の変更は考えていないというお話がありましたが、政府としてはどうですか。

井上国務大臣 武力攻撃事態等と、それから緊急対処事態と、これはやはり明らかに違うわけでありますから、それらの違いに応じて措置を考える、こういうことでありまして、それ以外の特別なことは考えておりません。

赤嶺委員 やはり、そういう武力攻撃事態への対処と緊急事態への対処はおのずから違ってこなければいけないというぐあいに思います。

 しかし、今回の修正案によりますと、やはり「発生に備える」ということが入ってきますと、いわばどんな事態であっても、自衛隊もそれに応じて自衛隊法の枠内で治安出動なりできていくということになるわけですよね、今の民主党案でしたら。それはいかがですか。

平岡委員 先ほど来から赤嶺委員御指摘の部分というのは、「緊急対処事態への対処に関する基本理念」ということでありまして、この規定そのものが何か発動の要件を定めているというようなことではございません。

 ということで、この「発生に備えるとともに、」「発生した場合には、」「その速やかな終結を図らなければならない。」というのは、あくまでも理念として言っているわけで、「発生に備える」ということ自体は、いろいろなことをするに当たって、精神的訓話といいますか、そういう心構えといいますか、そういう常に注意しておくべきこと、そういうような意味であって、これによって具体的な発動の要件が定められているといった性格のものではないというふうに理解しています。

赤嶺委員 心構えの問題ということでしたけれども、やはり私は、イラク等で起きた刑務所での虐待事件、軍人も民間人もみんな一緒にして共通の対応をするという、ああいうのを見ていても、区別すべきは区別していかなければいけないというぐあいに思います。

 今回の緊急対処事態について、日弁連の方から意見書が出ております。

 これは「テロ等の緊急事態を対象としたものと考えられるが、それらは本来警察・海上保安庁等が治安問題として対処すべき事態」であるということで、「全く性格や規模の異なる緊急対処事態」で「「武力攻撃事態等」に対する対処措置」を「準用する」ことは、「立法のあり方としても、また人権保障という観点からみても大きな問題が存在する。」「そもそも曖昧であった武力攻撃事態の定義や範囲をさらに曖昧にし、政府の恣意的判断を許す危険性を有するものである。」

 このような指摘がありまして、やはり緊急対処事態というのが、武力攻撃事態対処に横並びで構えをつくるということは、国民にそういう不安を広げていくことになるということを一言申し上げておきたいと思います。

 次に、骨子の問題です。

 これは、自民党と公明党と民主党の三党が緊急事態基本法の六項目の骨子で合意したというぐあいに伝えられておりますが、報道によりますと、武力攻撃事態、大規模テロ、大規模な自然災害、これが一緒になって、緊急事態として対処するというわけですが、武力攻撃による被害、そして法案に言う武力攻撃災害、それから自然災害、これはどういうところが共通点で、どこが違うか、この点について説明していただけますか。

首藤委員 委員の御質問にお答えいたします。

 武力攻撃、それからテロ、それから大規模災害あるいは大規模事故、こうしたものが大規模な被害を国民にもたらすという点においては同じようなものがあるということはおわかりだと思います。

 また、現実に起こった事例を考えれば、例えば九・一一テロにおいても、その被害というものは、外国からの攻撃に等しいだけの大きな被害をもたらしました。もしあれだけの被害を、例えば一国の軍隊が、他国が攻めてくるとすると、本当に五百兆円ぐらいの費用がかかるんではないかと言われているわけですが、それが現実には、実質的な費用が恐らく数百万円で済んだと言われるテロ攻撃によってあれだけの損害が出てきたということでございます。

 それが、例えば、委員が御質問のような条件において複合的に起こる。例えば、小規模なテロが行われても、それによって、例えば生物化学兵器を使用したテロにおいては、都市においては、特に混雑化した都市においては大規模な被害をもたらす可能性があるということでございます。また、自然災害時等においてテロ攻撃が行われたり、あるいは武力攻撃が行われたり、また、武力攻撃が行われたことによって大規模な自然災害が発生するということもまた十分に考えられるところでございます。

 したがって、今後の、二十一世紀の社会に住む我々としては、現在の都市化を考え、現在の社会情勢を考え、何がきっかけであれ、それが大規模な被害をもたらすということに対処することが非常に重要となってくるところであります。

 そしてまた、なぜこの骨子、基本法というのが必要となるかということでございますが、私たちの生活を守っている法体系の多く、そしてまた、何よりも憲法においては、緊急事態というものを必ずしも想定しているわけではございません。したがって、緊急事態を想定していない憲法と、そして現実に起こるさまざまな危機、それらに対処する個別法、その間をつなぐものとして、やはり基本法というものが非常に必要であり、それを欠くことはできない、そういう趣旨でこの問題に関して論議を進めてまいったところでございます。

赤嶺委員 ちょっと今の御説明、なかなか理解しにくかったんですが、武力攻撃災害と自然災害、自然災害でいえば、私などは沖縄で、毎年のように台風がやってきて、いろいろな災害が起きて、そのたびに被害対策もとれるけれども、おのずから対処の仕方というのは違うんじゃないか。武力攻撃というものと、いわば本当に安全保障上の、平和外交による努力によって回避される側面と、自然災害とは違うんじゃないかという思いがして、なかなか、先ほどの説明、理解できませんでした。

 そこで、民主党が二〇〇〇年に、緊急事態法制プロジェクトチームが公表した中に、「緊急事態における法制のあり方について」という冊子があります。これによりますと、緊急事態の定義として、一、日本有事に至るまでの事態、二、日本有事、三、大規模な自然災害等発生時というように区分しています。一の日本有事に至るまでの事態としては、現行法制では、自衛隊法の治安出動、海上警備行動発令時などが、また、周辺事態法の適用時がこれに当てはまるということにしています。周辺事態も緊急事態ということなんでしょうか。

自見委員長 恐縮でございますが、質疑時間が終了いたしておりますので、簡潔にお願いをいたします。

首藤委員 委員にお答えいたします。

 民主党がそれを作成した時点と現在の時点とは、かなりまた政治情勢が変わっていると思いますけれども、そうした状態においても、私たちもきっちりと対応していかなければいけないというふうに考えています。

 周辺事態に関しては、周辺事態がより大規模な脅威につながる可能性があるということから、そうした事態も含めて考えていかなければいけない、そのように考えております。

赤嶺委員 これで終わりますが、修正案についても、極めてあいまいな定義で基本法の中に位置づけられる、また、基本法の三党合意による策定についても、自然災害と武力攻撃災害が一緒くたにされるなど、多々問題点があるということを指摘しまして、質問を終わらせていただきます。

自見委員長 次に、東門美津子君。

東門委員 社会民主党の東門美津子です。

 本日は、民主党提出の修正案、それから政府案について質問をさせていただきますが、まず最初に、川口外務大臣に一点お伺いしたいと思います。

 G8の外相会議に出席された際、パウエル国務長官と会談なさったようですが、その中で、在沖米軍基地についてどのようなやりとりが交わされたのか、お聞かせください。

川口国務大臣 パウエル国務長官と短時間でございましたけれどもお話を、今回、G8の外相会談の折にさせていただきました。幾つかのことをお話ししましたが、その中で、御質問の沖縄の関連ですけれども、SACOの最終報告の普天間飛行場、この移設、返還につきましては、日本政府として従来の方針を堅持していくということを先方にお伝えしたということでございます。それとともに、その代替施設の十五年使用期限問題、これについて引き続き取り上げていきましょうというお話をさせていただきました。

東門委員 そのSACOの最終報告ですね、その着実な実施というのはこれまで政府がずっとおっしゃっていることなんですが、それに関しては大臣の方から国務長官の方へ、政府としてはこうしますという表明をなさったのか、あるいはパウエル国務長官から何かその件について、トランスフォーメーションとか、いろいろなことについてのお話があって、その中で出てきたことなのか、ちょっとお聞かせください。

川口国務大臣 私の方から申し上げたということです。

東門委員 大臣、米軍の駐留のあり方を全然変えずに沖縄県民の負担の軽減ということは、あり得ると思われますか。

川口国務大臣 沖縄県民の負担の軽減ということは、もう政府としてもずっと言ってきているわけでございます。SACOの最終報告を着実に実施していきましょうということは、そういったコンテクストでお話をすることもありますし、また、トランスフォーメーションについても、そのコンテクストで申し上げれば、一つの、そこにおいて重要な柱というのは、県民、これは沖縄だけではございませんで、日本の他の地域の施設・区域があるところにもかかわりますけれども、そういった地域の負担の軽減ということもそのコンテクストで申し上げているわけです。

東門委員 先ほど大臣は、大臣の方からパウエル国務長官にそのように申し上げましたという御答弁でしたけれども、沖縄県民の意思というのが、あるいは願いというのがどういうものであるかということは大臣はおわかりだと思うんですが、そういう中で、大臣の方から、政府としてはこのようにしていきますということをおっしゃったというのがとても解せないんですね。

 沖縄県民の思い、やはり基地はどうにかしてほしい、減らしてほしい、整理縮小してほしいという思いをずっと政府に伝え、訴え、政府も、その方向で努めていきますとおっしゃっている。でも、それはSACOの最終報告の実施ではだめなんだということもよく御存じのはずなんですが、大臣の方からパウエル国務長官に、政府としてはこれでいきますよと。

 それで、パウエル長官はどのようにお答えになったんでしょうか。

川口国務大臣 まず、ぜひ御理解をいただきたいのは、一時間会談の時間があってじっくりお話をするという状況ではないということでございます。これは、G8の外相会談を非常に短い時間でというか一日以内でやって、そのほかに、ブッシュ大統領への表敬もございましたし、パウエル長官も私以外にもほかのバイがありました。私もほかの大臣とのバイの会談をやっています。

 そういう中で、非常に短い時間に、沖縄のお話ももちろんしましたけれども、イラクの話もあれば、北朝鮮の話もあれば、中東和平の話もあれば、いろいろある、そういった話をする中でこのお話をした、そういう時間的な制約をまずぜひ御理解いただきたいというのが一点申し上げたいことです。

 それで、お尋ねのパウエル長官の御反応ですけれども、それについては、にこにこ笑ってうなずいていらした、そういうことでございます。

東門委員 すごく限られた時間、その時間の制約の中で在沖米軍基地についてこのように発言されたということに、私はむしろ信じられないという思いが強かったので申し上げたんですね。全然大臣には沖縄県民の思いは伝わっていないのかなと。

 それを短い時間の中で、沖縄県民はこのように言っているんですよ、SACOの最終報告はあるけれども、これを少し見直してみるということはいかがでしょうかということが言えないのかということがすごく残念だと思います。期待する方が無理かなと思いながら、やはり私どもとしては、石破長官うなずいておられますが、何にうなずいておられるかわからないんですけれども、ずっと言い続けていかなきゃ、訴え続けていかなきゃいけないことだと思っております。

 パウエル長官はただ、にこやかに笑ってうなずかれたというんですが、それを大臣は、了承されたというふうにとられたのか、どの意味でとられたのか、またそれも後日、ぜひお聞かせください。

 では、民主党提出の修正案について二、三質問させていただきます。

 民主党の修正案についてですが、国民保護法案に対する修正案の中で最も注目すべき点の一つは、武力攻撃事態対処法で規定する事態の範囲に、先ほど赤嶺議員からもありましたが、緊急対処事態を加えるものであるということです。

 政府は、先日、緊急対処事態の類型を示しました。具体例として、原子力発電施設等の破壊、新幹線等の爆破、炭疽菌等生物剤の航空機等による大量散布及び航空機等による多数の死傷者を伴う自爆テロなどが挙げられており、その範囲はかなり広く、また、最近の国際状況にかんがみても、武力攻撃事態よりも明らかに我が国で起こりそうなものだとも言えます。

 しかし、大規模テロなどの緊急対処事態は、原則として警察や海上保安庁等が治安問題として対処すべき事態であり、自衛隊の活動をほぼ無制限に拡大し、国民の不安を高めることになりはしないでしょうか。テロ対策を重視するということであれば、このように武力攻撃事態対処法等に緊急対処事態を組み込むのではなくて、警察や海上保安庁等が主体となり対処するような法律を別途整備すべきではないかと思いますが、修正案提出者の見解をお伺いしたいと思います。

首藤委員 お答えいたします。

 委員の御質問、まことにごもっともなところもあると思うんですね。このような状態において、果たして、自衛隊の活動ばかりが大きくなってくるのではないかという御質問でございますが、それにはもちろん、当然のことながら自衛隊法の法的な縛りがある、それから、御存じのとおり、自衛隊の持っている人員的な、組織的な限界もある、あるいはまた財政的な限界もあるということでございます。そして、民主党案においては、シビリアンコントロールの原則、国会において自衛隊の活動をきちっと規定していくということが何よりも主張されているわけであります。

 ですから、無原則に自衛隊の活動が広がっていくという御見解には賛同しかねるところがございます。

 ただ、国民にやはり不安が広がっていくのではないかと言われる点でございますけれども、この点に関して幾つか意見を述べさせていただきたいと思います。

 一つは、今回の政府の提案した七法案三条約の中に、ジュネーブ条約、特に第一追加議定書、第二追加議定書がございます。ここに込められているのは、いかに国民みずからがきちっと市民社会を守っていくかということを伝える義務といいますか、周知義務、そして、国民側の対応ということを求めている点でございます。その意味において、この追加議定書において民間防衛のあり方ということが述べられていることも委員御存じのとおりだと思います。

 こうした問題に関して、我が国は、ジュネーブ条約追加議定書を批准するだけではなく、そこに込められた精神を理解し、それを国民の一人一人に理解していただくということがやはり求められていると思います。

 ですから、この点に関しては、今後の政府の周知活動に非常に重きが、重視されなければいけないわけでありまして、民主党として、また国会としても、厳しく政府の行動を監視していきたい、そういうふうに考えております。

東門委員 では、次の質問に移ります。

 報道の自由の重要性については、今回の国民保護法案等有事関連十案件の審議入りの際の本会議の質疑において、民主党を代表する議員が、「さきの大戦下における大本営発表のような苦い経験にかんがみれば、政府案で指定公共機関の一つとされた放送事業者の報道の自由、取材の自由に対する具体的な保障規定は不可欠であります。」と述べておられます。表現の自由を規定した憲法の保障のもとにある報道の自由を確保することの重要性については、私も意見を全く同じくするものです。

 しかし、先日、本委員会に提出された民主党修正案を見ましたところ、指定公共機関たる放送事業者の活動について、「放送の自律を保障する」等の文言を政府案に追加しただけにとどまっています。

 放送事業者による業務計画作成の際の総理や都道府県知事による助言規定、政府が発した警報等の内容の放送義務規定には触れることなく、あくまで理念的な文言を追加したのみのこれらの修正では、本質的に政府案の意味するところと変わらないと考えるわけですが、修正案提出者は、この修正によって報道の自由が担保されるとお考えでしょうか。

平岡委員 お答えいたします。

 報道の自由については、先ほど読み上げられました本会議の質問以降も、この委員会でも何度となく取り上げられてきております。また、私たち民主党では、質問主意書等を通じて政府の考え方を追及してきたということでございます。

 先ほど挙げられた内閣総理大臣の助言の問題についても、この委員会で、この助言の内容というのは情報の提供等を想定したものであって、その助言に従う法律上の義務を生じさせるものではないといったような答弁であるとか、あるいは警報の内容をそのままに放送するという点についても、その放送の仕方等については、みずから作成した国民の保護に関する業務計画で定めるところによって、自主的に定めた方法で行うのであるというようなことが答弁として出てきているわけであります。

 私たちとしては、この答弁を踏まえて、それぞれの指定公共機関である放送事業者が、例えばですけれども、これはあくまでも政府が出した警報である、自分たちが出した警報ではないというようなことを明示するとか、そのような形をとることも私はできるのではないかというふうに思っているわけであります。

 そういう点を今までの経緯を踏まえて考えていけば、我々の修正案の中で「放送の自律を保障する」ということを明示することによって、これまでの答弁とあわせ考え、我々としては放送、報道の自由というものが確保できるというふうにも考えていますし、この委員会の答弁の中でも、報道の自由を確保するのは、仕組みというよりは、むしろそういう気持ちを持って施政者が事に当たるということだということを小泉首相も何か答弁されておられたようにも記憶しておりますけれども、そうした施政者、為政者の姿勢というものも、私たちは非常に重要な要素であるというふうに思っています。

東門委員 これで担保できるということの御答弁でした。わかりました。

 次に移りますが、国民保護法案上、指定公共機関及び指定地方公共機関は、武力攻撃事態等において、政府があらかじめ定める国民の保護に関する基本指針に基づき作成をした国民の保護に関する業務計画に従って、国民の保護のための措置を実施する義務を負っています。指定公共機関等が業務計画に沿って措置を実施する際、業務に従事する労働者がその業務を拒否することにより雇用上の不利益をこうむるおそれが否定できない以上、業務計画の内容は労働者にとって事実上の強制となり得る重大な意味を持つものと言えます。

 民主党の修正案では、業務計画の策定に当たって、そこで働く人たちが実際に業務の一翼を担うこととなるとの理由から、労働者の理解と協力を得るよう努める旨の規定を政府案に追加しているわけですが、指定公共機関等による努力規定の追加のみでは、その実効性の確保は難しく、実体的にはほとんど意味を持たないものと言わざるを得ません。

 修正案の提出者は、労働者保護の観点から、労使間の協議を義務づける等の修正はお考えにならなかったのでしょうか、伺います。

平岡委員 まさに委員が御指摘のように、業務計画に基づいて指定公共機関等が業務を実施するに当たっては、そこで業務に従事している労働者の人たちがまさにその仕事に携わることになるわけでありますから、それらの方々の意見というものが十分に反映されたものでなければいけないという視点に立っておりまして、私たちとしても、できる限り労働者の方々の意見が反映されるような法的な枠組みをつくっていきたい、こういうふうに考えてきたところでございます。

 ただ、法律上どこまで義務づけるかというのは非常に難しいのではないかなというふうに思っています。例えば、いろいろな項目がたくさんある中で、その項目についてすべて合意しなければ業務計画が策定できないというような事態までいくということが、この緊急事態というものを考えたときにそれでいいのかといったようなこともあろうかと思います。

 そういう意味においては、非常に細かい項目にわたって具体的にどうしていくのかということについて、なかなか我々としても整理がつけられなかったということもございまして、こういった形での修正案、すなわち、その雇用する労働者の理解と協力を得るよう努めなければならないという形の中で、あらゆる分野にわたって労働者の方々としっかりと協議をするということを努力義務として課せるということで、今回、提案をさせていただいたということでございます。

東門委員 政府の案についても御質問をさせていただきます。

 国民の協力の条項ですけれども、「要請されたときは、必要な協力をするよう努めるものとする。」と、国民の協力を規定したこの国民保護法案には、国民の保護のために地方公共団体等からの要請によることなく自発的に協力した者が死亡等した場合に、その損害を補償する規定はありません。法案の第四条において自主防災組織やボランティアによる活動を期待しておきながら、彼らが活動の中で死亡等した場合、何ら損害を補償する規定がないのはなぜでしょうか。あくまで自発的な協力であるから、それによって生じた被害は自己責任として受忍しなければならないということになるのでしょうか。

 国民の善意を半ば強制しながら、もしものときの補償もしないような無責任な制度を設けるのであれば、最初から協力を求めるべきではないと考えますが、御見解を伺います。

井上国務大臣 有事の場合には、国とか都道府県、市町村、あるいは指定公共機関一体になりまして対処しないといけないと思うのでありますけれども、しかし、その背景には国民的な支持が必要だと思いますし、また、できます限り、国民の協力、これがなければ有効な対処ができないと思うのであります。

 そういうことで、今委員御指摘のように、国または地方公共団体は、要請をいたしましたときにそれに協力をした人が死亡、負傷などしたときには、その損害を賠償しなきゃならない、こういうぐあいになっているわけでありまして、これは百六十条に明確に規定しているところでございます。

 したがいまして、要請がない場合に、一般の被災者との区別というのは大変難しい場合があるわけでありまして、そういうことで、一般の被災者の場合には補償の対象とはしないということで区別をしているわけでございます。

東門委員 やはり、自主防災組織だとかあるいはボランティア、その活動には支援をするという条項はあるんですけれども、その人たちが被害に遭う、犠牲者になるとか、そういう中では補償という規定がないということはすごく解せないんですけれども、それでいいのでしょうかね。

 時間的な制限がありますので進みますけれども、国民保護法案第六十六条において、避難等に伴う混雑等において、危険防止のため、警察官または海上保安官は、特に必要があると認めるときは、危険な場所への立ち入りを禁止し、もしくはその場所から退去させ、または当該危険を生ずるおそれのある道路上の車両その他の物件の除去その他必要な措置を実施することができるとされています。また、その場に警察官または海上保安官がいない場合には、消防吏員または自衛官もこれを行えるとされています。

 これら警察官等による措置に従わない者に対する罰則は本法案には規定されていませんが、従わない者または抵抗する者は、刑法第九十五条の公務執行妨害として逮捕される可能性があるのではないでしょうか。もし公務執行妨害で逮捕されることがあるとするなら、緊急事態に名をかりた公権力の濫用を招き、まさにさきの大戦における警察国家の再来につながりかねません。

 このような場合において、警察官等の指示に従わない者は公務執行妨害で逮捕されることがあるのでしょうか、御見解を賜りたいと思います。

井上国務大臣 これは大変な誤解がありますので、明確に私がお答えしたいと思うんです。

 まず前者、損害賠償のことでございますけれども、国民保護法案第百六十条です。「国及び地方公共団体は、」あとずっと条文がありますが、「要請を受けて国民の保護のための措置の実施に必要な援助について協力をした者が、そのため死亡し、負傷し、若しくは疾病にかかり、又は障害の状態となったときは、政令で定めるところにより、その者又はその者の遺族若しくは被扶養者がこれらの原因によって受ける損害を補償しなければならない。」とありますから、協力の依頼を受けましてこのような損害を受けた場合には、国とか地方公共団体は補償をする、こういうことにしているわけでございます。これはもう非常に明確でございまして、あいまいじゃございません。

 二番目の、公務執行妨害の関係ですが、これは刑法の九十五条の一項と二項があるわけでありますけれども、公務執行妨害といいますのは、そこに書いてありますように、「公務員が職務を執行するに当たり、これに対して暴行又は脅迫を加えた者は、三年以下の懲役又は禁錮に処する。」です。ですから、公務員の公務執行について「暴行又は脅迫を加えた者」でなければ公務執行妨害に該当しないわけですね。構成要件を満たさないということでありますから、今委員のおっしゃるような場合は公務執行妨害の構成要件を満たさない、こういうことに相なるわけでございます。

東門委員 時間がかなり迫っているようですが、やはりあと一、二点お伺いいたします。

 住民の避難についてですが、私はこれまで、沖縄県における広大な米軍基地の存在が島内避難の障害になる可能性を再三指摘してまいりましたが、残念ながら納得のいく答えは得られませんでした。そこで再度、県外避難、島外避難をする必要性が生じた場合について、具体的にお伺いいたします。

 沖縄県民の県外避難、島外避難には、輸送手段として航空機や船舶を確保する必要がありますが、例えば沖縄本島全島避難となれば、沖縄県のみで輸送手段を確保することは極めて困難だと思われます。避難のための航空機、船舶を確保するため、国はどのように県を支援するのでしょうか。もし県が考えるというのであれば無責任と言わざるを得ませんが、お伺いいたします。

自見委員長 質疑時間が終了いたしておりますので、簡潔に御答弁をお願いいたします。

井上国務大臣 避難でありますけれども、具体的に武力攻撃事態がどういう状況でどういうぐあいに進行していくのかとか、あるいはその場所、地理的な状況がどうなるのかとか、もろもろの条件を勘案いたしまして、一番熟知をしております都道府県知事が避難をさせるということでありますけれども、避難につきましては、国の方で指示するわけでございます。

 特に、沖縄県の場合は離島でありますから、中で避難をする場合はもちろん沖縄県知事が責任を持って検討されると思いますけれども、外へ避難をする場合には、これは当然、国の方でやはり指示をしないといけませんし、所要の支援はしなくてはいけないと思います。そういう中で沖縄県知事が適切に判断をしていただくということであります。

 例えば航空機とか船が必要だということであれば、当然そういったことについて国の方で配慮しないといけないと思いますし、また、県の方につきましても、それを有効に活用する、利用するようなことをお考えいただかなくてはいけない、こんなふうに思います。

自見委員長 簡潔にお願いします。

東門委員 もう時間ですから終わりますけれども、特に海上で、船舶での避難という場合、もう前回から何度もありますが、対馬丸が撃沈された事件においては、軍の護衛がついていたにもかかわらず撃沈をされたということなんですね。そういう状況があった。

 長官はきっと、大臣はきっと、いや、もうあのようなことは二度とないとおっしゃるかもしれないんですが、やはり経験してきた沖縄県民にとっては、今回のこういう法案が出てくるということは物すごく不安に陥れられる、そういう不安が、本当にまたあのようなことになるのではないかというような思いが強くなる。(発言する者あり)いや、そんなことはないと思います。済みません、こちらに答えてしまいましたけれども。

 終わります。

自見委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時四分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

自見委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、お諮りいたします。

 ただいま審査中の前原誠司君外三名提出、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案及び武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律案に対する両修正案について、それぞれ提出者全員から撤回の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

自見委員長 御異議なしと認めます。よって、撤回を許可するに決しました。

    ―――――――――――――

自見委員長 この際、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案及び武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律案に対し、久間章生君外八名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の三派共同提案による修正案がそれぞれ提出されております。

 両修正案について、提出者から趣旨の説明を聴取いたします。久間章生君。

    ―――――――――――――

 武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案に対する修正案

 武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

久間委員 ただいま議題となりました武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案及び武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律案に対する修正案につきまして、その提案理由及び内容の概要を御説明いたします。

 修正の第一点は、緊急対処事態に関する事項についてであります。

 現在の法律案では、緊急対処事態への対処については、緊急対処保護措置に着目して国民保護法案に位置づけていますが、国民保護措置だけに限定することなく、事態対処法において緊急対処事態への対処に関する規定を設けるべきであるとの意見が出されたところであります。

 このような意見を踏まえ、修正案では、緊急対処事態への対処については、緊急対処保護措置のみならず、緊急対処事態における攻撃の鎮圧等の事態を終結させる措置についても対処方針に定めるとともに、緊急対処事態への対処については、事態対処法の中に位置づけることとし、事態対処法について所要の改正を行うこととしております。

 具体的には、緊急対処事態の認定については、政府案では、対処方針の策定とは別に行うこととしていますが、修正案では、対処方針において緊急対処事態であることの認定及び当該認定の前提となった事実についても定めるものとしており、この修正により、対処方針の策定と緊急対処事態の認定が同時に行われることになります。

 また、緊急対処事態の認定についての国会の承認については、政府案では規定はありませんが、修正案では国会の事後承認に係る規定を設けることとしており、この修正により、国会の適切な関与が担保されることになります。

 さらに、国会が緊急対処事態への対処措置を終了すべきことを議決した場合には、政府の実施する当該措置が終了されるよう、所要の規定を追加することとしています。

 以上の修正については、すべて事態対処法に規定されることになります。

 修正の第二点は、国の現地対策本部の設置に関するものであります。

 現在の法律案では国の現地対策本部について規定を置いていないことから、災害対策基本法に規定が置かれている現地対策本部について、武力攻撃事態等においても設置できるようにすべきであるという意見が出されたところであります。

 このような意見を踏まえ、武力攻撃事態等において国民の保護のための措置を行う組織として現地対策本部を、また、緊急対処事態においても同様に現地対策本部を設置することができるよう、所要の規定を追加することとしています。

 修正の第三点は、訓練に関するものであります。

 訓練については、災害も含めた幅広い事態に対応できるような趣旨を盛り込むべきではないかという意見があったことを踏まえ、修正案では、国民の保護のための措置の訓練については、災害対策基本法に基づく防災訓練との有機的連携に配慮するものとし、所要の規定を追加することとしています。

 また、そうした訓練の経費については国が財政措置をすべきであるという意見があったことを踏まえ、国が地方公共団体と共同して行う訓練に係る費用で地方公共団体が支弁したものについては、原則として国の負担とし、所要の規定を追加することとしています。

 最後に、特定公共施設利用法案について、今まで述べた国民保護法案の修正に伴う所要の規定の整理を行うこととしております。

 以上が、これら修正案の提案理由及びその内容の概要でございます。

 何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。

自見委員長 これにて両修正案についての趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

自見委員長 これより各案件及び両修正案を一括して質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。久間章生君。

久間委員 御承知のとおり、この国民保護法制は、前回の武力事態対処法の成立と一体となって全体が構成されるものでございますが、前回、法律をつくりますときに、災害対策基本法、もちろん基本法というのはありますけれども、緊急事態については、やはりもっと基本的な法律があって、その中で、こういう場合には、内閣総理大臣は、あるいは政府はどう対処するのか、そういうことについてきちんとした体系をつくっておくことがいいんじゃないかという議論がございまして、今国会までかけていろいろ議論してきたところでございます。

 今度のこの法案の審議に入りますときに、民主党さんの方からも、検討してきた結果はどうなっているのか、まだ法案としては話がないじゃないかという話がございまして、やはりこれもできるだけ早くやろうと。そのためには、骨子をつくって、この法律が衆議院を通過するまでに合意しておこうじゃないかということがございまして、三党で真摯に検討してまいりました。

 その結果、約六項目ほど項目が絞られてまいりまして、大体、実務的には協議が調ったところでございます。

 総理におかれましても、このような内容についてお聞きになっていると思いますけれども、このような基本的な、緊急事態の定義とか、あるいはそのときに内閣総理大臣がどういう形で国民に対処していくのか、そういうことについて、これから先、基本法をつくっていくべきだという我々のそういった主張に対してどのようにお考えになっているのか、基本的にお聞きしておきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 緊急事態、いわゆる有事にどのように政府として、国として対応するかという問題については、昨年来から、有事関連法案等の審議を踏まえまして、与野党間で議論をしていたということも承知しております。

 もとより、緊急事態等に対しては、それぞれの党派を超えて、どう対応すべきか、余り、本来、与党、野党として対立する問題ではないのではないかという考えを私自身持っておりました。

 そういうことから、率直に与野党間で協議が進められ、今回、自民党、民主党、公明党の間で修正案が提出され、緊急事態に対する対応を、より国民の理解を得られるような対応をすべきだという点で合意を見ることができたということにつきましては、私も高く評価したいと思っております。

 今後、今までの審議の経過を踏まえ、そしてその合意に見られました内容を踏まえて、政府としても適切に対応していきたいと思っております。

久間委員 ただ、いろいろな議論をしておりますときに、まだ細かい点ではなかなか一致できない点もございました。特に、民主党さんからは危機管理庁をつくれという提案がございましたけれども、今、行政改革が進んで省庁のいろいろな再編成が行われたときに、危機管理庁という一つの組織をつくるまでに至るのかどうか、その辺はやはり慎重を期すべきじゃないかと。

 ただ、私たちも、今のままの体制でいいのかとなりますと、これまでの危機管理監を経験された方、あるいはまた安全保障室長を経験された方、いろいろな方々の御意見等も参考にしましたけれども、やはり心もとない点も、正直言って、ないわけじゃございませんでした。

 そういうようなことから、やはり政府においても、これから先、我々と一緒になって、どういうような体制づくりがいいのか、そういう組織を整えていく方法について研究していただきたいと思うわけでございますけれども、総理のこの点についてのお考えがございましたら、お聞かせ願いたいと思います。

小泉内閣総理大臣 新しい時代に対応できるような政府の機構を持つべきだという考えについては、私も理解しているつもりでございます。また、どのような組織、機構をつくるかという点につきましては、行政の簡素化といいますか整理統合、この視点も欠かせないわけであります。現在の各府省、省庁、この縦割りからくる連携、緊密の悪さが時に指摘されます。

 そういう点から、総合的に、いわゆる有事に対して、危機に対して政府全体として対処する機構が必要だという点も踏まえまして、今までの縄張りといいますか縦割りの弊害をなくすような努力は不断にしていかなきゃならないと思っています。

 特に、危機に際しては一刻の猶予もならないときがございます。そういう場合に各関係機関との連携協力を密にしながら素早い対応をしていかなきゃならないという観点から、危機管理庁という組織まで今置くということは考えておりませんが、そういう考え方を前提にして、現在の組織をいかに有効に機能させるかという点につきましては、御趣旨を踏まえて、今までの経緯も踏まえまして、現在の体制でより緊密な連携がとれるような対応を図っていきたいと考えております。

久間委員 終わります。

自見委員長 次に、遠藤乙彦君。

遠藤(乙)委員 公明党の遠藤乙彦でございます。

 有事法制に入る前に、一点だけお聞きしたいと思っております。総理の再訪朝に関してでございます。

 来る二十二日、総理の再度の北朝鮮訪問が決まったわけでございますけれども、これには国民並びに国際社会から大きな期待もかかっているわけでございます。今回につきましては、拉致の問題と核の問題、この二点が特に重要なポイントでありますけれども、どこまで進展が見られるのか。

 拉致については、既に帰られた五人の方々の御家族の帰国、さらには北側から死亡と言われている八名を含む十名の行方不明の方々、さらには新たな拉致の疑惑のかかる百人に及ぶ方々、これらの方々の安否についてどこまで真相の解明ができるか、また、その道筋がつけられるかということが大きな焦点であると承知をしております。

 また、核については、いわゆる完全な、そして検証可能な、後戻りのできない核の放棄という、非常に難しいテーマであるかもしれませんけれども、どこまでその軌道に対して、北朝鮮を対話の中に引き込んで進展を見るかということが大きなテーマであります。

 この二点につきまして、今回の総理の訪朝でどこまで進展が見られるかという見通し並びに総理の御決意について承りたいと思います。

小泉内閣総理大臣 今週の土曜日、二十二日に北朝鮮を訪問して、金正日氏と会談する予定になっておりますが、その中身につきましては、今いろいろ報道機関等で言われておりますが、私自身の考えとしては、一昨年の九月十七日に行われました会談によって日朝平壌宣言が発出されました、その日朝平壌宣言は現在でも極めて重要な文書である、この日朝平壌宣言に盛られたことを誠実に履行することが両国にとって最も大事なことなんだということを再確認し、お互い誠実にこの日朝平壌宣言を履行していこうという会談を行ってきたいと思っております。

 御指摘の拉致の問題、核の問題、特に核の問題につきましては、六者協議で作業も行われ、会合も行われ、日本のみならず各国が大きな関心を寄せ、また朝鮮半島、アジア地域全体の安全に深くかかわる問題であります。

 同時に、拉致の問題につきましては、これは日朝間の問題であります。既に帰国された方々、一日も早く残された御家族の方と一緒に過ごしたいという強い希望を持っておられます。そういう点を踏まえまして、私は、拉致の問題、核の問題、日朝平壌宣言を誠実に履行するという総合的、大局的な見地に立って、一日も早く日朝間の正常化に向けた道筋をつけたいということで、今回、再度訪朝することを決意したわけでございます。

 もとより、御指摘の点も踏まえて交渉に臨みますが、どういう進展があるか、どういう内容であるかという点については、今の時点においては、私の口からこうだああだと言うことは差し控えたいと思っております。

遠藤(乙)委員 ぜひ国民の期待、そして国際社会の期待を踏まえ最大限の御尽力をしていただくことを心より期待を申し上げる次第であります。

 続いて、有事法制の関連でございますが、現在、国民保護法制等の十案件を審議いたしておりますけれども、前国会で通った武力攻撃事態法、これを含め、やっと我が国としても有事法制の体系が完成しつつあるということになるかと思います。

 本来、有事法制というのは、法治国家である以上、有事の際に超法規的な措置をとることなく、基本的人権を守りながら国民の生命財産をしっかり守るために民主的手続を経て決める、当然のことでありまして、また、それをやることによって抑止力を高める、ある意味では自明のことではないかと思います。

 それで、なぜ今この有事法制なのかということが世上言われておりますけれども、私の場合には、むしろなぜ今までおくれたのかということが逆に検証すべきことではないかと思っております。第二次大戦後、来年で六十年になるわけでありまして、このような長い間有事法制が十分議論されることなく、やっと今日に至ってこれが日の目を見るに至った。非常に喜ばしいことでありますが、なぜ小泉政権を待たなければならなかったのかということを、改めて総理の御所見を含めお聞きしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 物事を判断する場合において、やはり時代認識というものがあると思います。ある時点では必要ないと思っていたことでも、時代が変わりますと、おのずから違う考えも出てくると思います。

 そういうことを考えますと、特に日本は、第二次世界大戦で過酷な戦争という悲惨な経験を持っている、もう二度と戦争を起こしてはいけないという強い気持ちを持っておりまして、これは今でも変わらないと思いますが、同時に、日本自身が善意で悪いことをしなければ他国もそれを理解してくれるだろうという極めてナイーブな感覚が一部で根強くあったと思います。

 しかし、昨今、テロ事件を見ても、自分たちの目的を達成するためには、全く関係のない市民を巻き込んで犠牲にしても何ら恥じることがないという事態が世界各地で起こっております。同時に、日本国内におきましても、必ずしも一般市民の善意を理解してくれる人ばかりではない、話せばわかるという人だけではない、話してもわからない人がたくさんいるということについては、大方の国民が気づいている、口に出さなくても感じていると思います。

 そういうことを考えますと、やはり日本国におきましても、常に、日本国内を混乱させてやろう、あるいは日本国民に不安を与えてやろうという勢力がいるということは、今までの各事件を見れば大方の国民は理解しているのではないか。やはり、そういう一般市民の善意を理解しないグループ、そして一般市民を犠牲にしても平然として恥じることのないそういう勢力に対して不断の対応をしておかなきゃならない、こういう観念が最近とみに強まってきたと思います。

 そういうことから、今回の緊急事態、有事に対しても、これは政党で対立する問題じゃない、政党に属していようが属していまいが、一朝事があった場合に、お互い国民として、自分の安全のみならず同胞の安全を確保するためにはどういう対応をすればいいかということが共通の認識として、過去に比べれば高まってきたのが現在だと思います。

 そういうことから、今回、党派を超えて、この緊急事態に対して、やはり、意見の違いは違いであったとしても、有事に対応する措置というものは平時に考えておくのが政治ではないか。一朝事があったときにどうしようかと考えるのじゃなくて、やはり治にいて乱を忘れずという、昔から古今東西の鉄則、政治の要諦と言われていた、乱が起こってから考えるのではない、治にいて、平和のときに乱を忘れない、混乱が起こったときを考えるという極めて自然な感情が政党間でも定着してきたと私は思うのであります。

 そういう点から、まだ乱が起こる前に、平時のときから乱に備えていこうという古今の鉄則がようやく日本においても理解されてきたなということが、今回のいわゆる与野党合意、やはりいろいろな法整備を整えておかなきゃならないという認識になってきたからこそ、このような議論が盛り上がってきたんだと思います。

 そういう点については、お互い協力すべきところは協力する、党派を超えて、国民の安全保障、国民の保護をどうすべきかという点については、胸襟を開いて今後ともしっかりとした議論をし、しっかりとした体制を整えていかなきゃならないと思っております。

遠藤(乙)委員 質疑時間が終了いたしましたので、以上で質問を終わります。ありがとうございました。

自見委員長 次に、前原誠司君。

前原委員 民主党の前原でございます。

 私も、有事法制の議論に入る前に、北朝鮮問題について、総理の所見、お考えを聞かせていただきたいと思います。

 先ほど、同僚委員の質問に訪朝の目的はお話をされましたので、各論に入らせていただきたいと思います。

 二回目の訪朝ということで、今まで数次にわたって日朝間での協議あるいは六者協議の場での議論というのが行われました。それが、総理が行かれるということでありますから、当然、既報のように、何らかの進展があるということは間違いないと思いますし、またそれが前提でないと総理みずからが行かれるはずがないと思いますが、今回の訪朝で具体的にどういう進展があると期待をされているのか、その点について御答弁をいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 私が一昨年の九月十七日に訪朝して、国交正常化に向けた交渉を進めるべきだといういわゆる日朝平壌宣言を発出いたしました。その後、五人の方々が帰国されましたが、期待したような進展が見られないまま、交渉が現在のところ停滞していると言ってもいいと思うのであります。

 その間、日本のみならず韓国、アメリカ、中国、ロシア等の、北朝鮮を交えた六者協議が開かれましたが、この会議の場におきましても、核の問題をめぐってはなかなか対立が解けず、これまた打開の道筋が見えていないというのが現状でございます。

 また、日本国民の大きな関心事であります拉致された御家族のことにつきましても、同様であります。特に、日本に帰国されました五人の御家族、いまだに自分たちの家族が一緒になれないという、不安といいますか焦燥感もかなり強いと思っております。これは当然のことだと思います。一日も早く家族と再会したい、できれば一緒に過ごしたいという気持ちを、私は今までも何回も、直接御家族に会わなくても、担当の方からお話を伺い、また要望をいただきながら、御家族の気持ちいかばかりか、何とか打開したいという気持ちを持っております。

 そういうことを踏まえて、なおかつ、あの日朝平壌宣言が死文化されたとかもう空文化されたという批判も一部にはございますが、私は、この日朝平壌宣言というのは今も生きている、しかも、お互い守っていかなきゃならない重要な文書だと理解しております。

 そういう点につきまして、今後、日朝国交正常化に向けて最も大事な文書が日朝間においてはあの日朝平壌宣言である、この点について先方の金正日国防委員長はどう思っているのか、これを誠実に履行することが今後日朝間にとって必要ではないかという点について、率直な意見交換をしたいと思っております。

 なおかつ、拉致の御家族、でき得れば家族全員が再会し一緒に暮らすことができる道筋をつけられればなと。同時に、まだ行方不明の方々もおられます。そういう問題について、総合的に、進展が見られるような話し合いをしていきたい。

 賛否両論、いろいろありますけれども、私が訪朝しない限りはなかなか率直な意見交換ができない、進展も見られないという状況では、やはり、私が行って何らかの進展が見られるという可能性があるならば、私自身、行った方がいいのではないかと思いまして、訪朝を決意したわけでございます。

 まだまだ確定しない面もありますが、現在も水面下で交渉中でありますので、どういう形になるかという点については、今の時点で詳しく中身を申し上げるのは差し控えなければならないのかなと思っておりますが、その点、御理解いただければありがたいと思っております。

前原委員 国会というのは、国民の代表、代弁者が集まっている。私は、立法府というのは国権の最高機関だというふうに思っております。マスコミでは報道されて、もう八名帰ってこられるのは既成の事実であるということを言われて、しかし、国会ではそれがまだ明確に、政府、特に総理の口からはお話がされていないというのは、私は少し異常な状況だと思います。

 さりとて、これから行かれることの中で、これは与野党ではなくてまさに国の外交として北朝鮮と向き合っていただくわけですから、総理のお気持ちも私は一定の配慮はしなければいけないと思いますが、その前提で再度お伺いしますけれども、今回の交渉において、八人を連れて帰る、その決意である、その結果とかいうことじゃなくて決意であるということで間違いないですね。

小泉内閣総理大臣 私は、今いろいろ新聞で報道されておりますが、この点については、報道機関というのは少しでも早く報道したいという気持ちがあると思いますが、日本政府並びに拉致家族の皆さんの要望を踏まえて私は話し合いに行くわけであります。

 ということから考えれば、私は、現在、一日も早く家族全員の帰国を果たすべく努力しなきゃならないと思っておりますので、そういう私の決意をそんたくしながら報道しているというか、少しでも早く報道したいという気持ちがあるのか、両方だと思いますが、私としては、そういう決意を持って話し合いに臨まなきゃいかぬなと思っております。

前原委員 報道機関のみならず、例えば御党の幹事長、安倍幹事長が、もうジェンキンスさんが帰ってこられる前提で、いわゆる訴追免除についても話し合いをしなきゃいけないということを方々で話されているわけでありまして、それが既成事実になっている。それであれば、国会でしっかりとやはり総理の口からしゃべっていただきたい、こういう思いで我々は申し上げているわけです。

 つまりは、報道だけが勝手に憶測して、そんたくしてということではなくて、与党の方も含めてそういう動きが起きているということを前提に、だったら国会でなぜしゃべられないのかということを私は申し上げているわけです。

 八人の方ということになると、ジェンキンスさんも含めてということになろうかと思います。ジェンキンスさんも含めてという認識でよろしいんですね。

小泉内閣総理大臣 一般的に言いますと、報道機関の方々も国会議員も、何か、自分の思っていることを早く伝えたいという気持ちがあるんでしょうね。当事者が言えないことでも、先に言っておいた方がいいと。政治家の通例ですね。これは、あることないこと何か言っていれば、そのうち一つぐらいは当たるだろうという気持ちがあるんだと思います。

 そこは、実際の交渉者とそうでない人の立場が違います。交渉する私の立場をもおもんぱかって発言しているとは限らないんですね。中には、何とか失敗させたいという人もいるでしょう。そういう点を踏まえて私は交渉しなきゃならないんですから、できれば、報道機関も政治家の方も、少しは私の立場を考えていただければなと思うんですが、それはなかなか、私が言っても、言うことを聞いてくれない。それは仕方ないんです。

 しかし、私はそういう諸般の情勢を踏まえて交渉しなきゃならない立場ですから、私から、これから交渉することを、こうだああだということは言わない方がいいと私は思っております。

前原委員 先ほど申し上げましたように、我々は、外交というのは、与党、野党の違いはあれ、日本としてやる場合においては、これは失敗は許されない、こういうふうに思っております。したがって、そういう意味での足を引っ張るつもりなんて、我々は毛頭ありません。

 今おっしゃった部分で言えば、それは、国会議員というのは与党の議員でしょう。特に、それは御党の役職にある方ですよ。だから、それは国会で言わずに、ちゃんと党内でしっかり言っておいてくださいよ。それは、総裁と幹事長の関係なんですから、ここで私の質疑時間をとらずに、おれの気持ちをおもんぱかって余りしゃべるなということをちゃんとお伝えになったらいかがですか。――そのことは身内でやってください、そこは。

 話をもとに戻しますが、ぜひ、これは逆に国会の議論として要望をさせていただきたいと思います。そして、それについての総理のお気持ちをお聞かせいただきたいと思います。

 言わずもがなでございますが、拉致の全体の解決というのは、五人の方の御家族の帰国だけではありません。政府が認定をしている十五人にしても、五名は帰ってこられた、あと十名については、いや、北朝鮮に入ってきていないとか、もう亡くなられたとか、そういう話でありましたけれども、その後、かなりいいかげんなものであるのではないかということが言われております。それは総理も御承知のとおりだと思います。この十名の方々の安否情報というものを改めてしっかりと聞かれるのかどうなのかということが一点。

 もう一つは、政府は認めていませんけれども、特定失踪者と言われている、北朝鮮に拉致された疑いの強い方々、これは数十名か、あるいは数百名いるか、わかりません。今、特定失踪者問題調査会というのがありまして、そこでは、拉致濃厚十八名おられるという話があります。それ以上の方がおられるかもしれません。

 たまたま、この十八名の中に、私の選挙区にお住まいの方の息子さんが、前上昌輝さんという方が旭川で失踪されているんです。今、お母さんお一人だけなんですが、ずっと息子の帰りを待たれている。去年、官邸に七万人以上の請願書、早く前上昌輝さんを助けてあげてください、こういう請願書を官邸にもお持ちして、官邸も受理をしていただいております。そういう方もおられます。今、お母さんは、がんにかかられて、何とか息子が帰ってくるまでは頑張らなきゃいけないということで、京大病院で一生懸命に治療を受けておられます。

 そういう特定失踪者の方々も含めて、この機会に総理が行かれて、そして、平壌宣言というものが生きているのであれば、それをもう一度確認して打開したいということであれば、ぜひ、この残りの十名の方、そして特定失踪者の方々、家族の方々は本当に待たれているわけですよ。そういう方々の意向を酌んで、しっかりと総理には金正日さんと交渉していただきたい、そのことについてもお話しをいただきたいということを私は心から願っておりますが、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 今もお話し申し上げましたように、ここで、それぞれの質問について、これは言います、これは言えませんということにお答えしていますと、このことについては言いますと言いながらほかの点については言葉を濁したというと、またどういう憶測を呼ぶかわかりません。

 私は、現在の時点におきましては、どのような各論の御指摘があろうとしても、それは私自身承知しております。何を言うか、何を言わないか、今の時点では、どのような質問についてもこれ以上のことは言えないんです。それは、憶測するのは自由です。当事者の立場に立てば、これからあれを言います、あれは今の時点では何とも言えませんと、それぞれの質問について私が答える立場ではないし、また、そういうことを言うべき立場ではないと思っております。その点はぜひとも御理解いただきたい。

前原委員 では、総理、別の観点から質問しましょう。

 拉致の完全な解決というのは、何を解決したら拉致の完全解決なんですか。

小泉内閣総理大臣 この点につきましても、今までの疑問点について双方が納得できる解決を見るということ、これがやはり完全解明だと思っております。

前原委員 それは今までの御答弁と違うでしょう。双方が納得する拉致問題の解決が完全解決であれば、向こう側の意図で外される問題が出てくるでしょう。それは今までの御答弁と違うじゃないですか。

 今までの政府の答弁は、五人の家族それから残り十名の安否の確認、そしてあとは、政府が確認はしていないけれども、何人かわからないけれども、拉致された可能性のある人の問題の確認というのが拉致の全体像の解明だと、総理も外務大臣も何度もお答えされているでしょう。

 今のは違いますよ。お互いが納得して、そして、それで合意したものが拉致の完全解決だったら、今までの政府の見解を変えたことになりますよ。総理、御答弁ください。

小泉内閣総理大臣 そうじゃないんです。やはり双方が納得した合意を見て日朝国交正常化に結びつけるんですから。

 拉致の問題についても、先方は、いろいろ言っています。五人の家族がまず北に帰ってくるべきだと言っております。日本は、そういうことを承知しておりません。それは、いろいろ経緯はあります。しかし、最終的にはお互い納得するような、北朝鮮が言っても日本が納得しなきゃしようがないんですから、日本が要求しても北朝鮮も納得しなきゃこの問題は解決しないんですから。そういう点を言っているわけです。

前原委員 いや、それは今までの答弁と違いますよ。今までは、拉致の完全解決は何かという質問に対しては、外務大臣だってお答えされているでしょう。五人が帰ってこられた後ですよ。五人が帰ってこられた後は、五人の御家族それから残り十名の安否を再確認、それから、拉致されているかどうかわからないけれども、特定失踪者の方々の全体像の解明、これが拉致の全体像の解明だったじゃないですか。向こうと話が合うものだけが拉致の全体像の解明だったら、非常に矮小化されてしまうんじゃないですか。

川口国務大臣 総理がおっしゃったことにまさに尽きると思いますけれども、念のために、今先生がおっしゃったことについて、私が今まで申し上げてきたことというのは、そのまさに五人の家族の方の無条件の帰国ということと、それから、安否がわからない方の真相究明、それから三番目が、今先生がおっしゃったこととちょっと違うことを申し上げてきておりますけれども、それは、特定失踪者、わからない方、この方々について、今、警察が拉致であるかどうかということの調査、認定をやるということで仕事をしているわけでございますけれども、そういった方でもし今後その認定をされるということであれば当然に真相究明をしていくということを申し上げておりまして、このことは北朝鮮に今までの日朝間の会談の中で既に伝えてきているわけでございます。

 今まさに総理がおっしゃったように、双方が納得する、まさに我が国として納得しなければ双方納得したことにならないという意味で、委員がおっしゃっていることと総理がおっしゃっていることと何ら違いはないと私は考えております。

前原委員 いや、私は違うと思いますよ。それは、日本政府が確認をするということも大事でしょう。しかし、これは子供が聞いてもわかることなんですけれども、北朝鮮に拉致されたわけですよ。ということは、日本の警察が幾ら、外国、例えば同盟国であるアメリカに協力を得たとしても知り得ないんですよ。向こうだけが知っていて、そして、日本の警察が認定しないものについては、それは政府としては公式な人とは認めないということを言い出すと、北朝鮮の情報を待つしかないという話になるわけですよ。しかし、北朝鮮は十名の方々の情報でもいいかげんな情報を出してきているということは明らかになっているじゃないですか。ということになれば、北朝鮮の情報だけをうのみにして警察が後追いをしたのでは、まさに本当の拉致の全体解明にはならないじゃないですか。

 そんなもの、だれだってわかる話じゃないですか。それをお互いが合意することしか、それが全体像の解明じゃないというのは、総理、だれが聞いてもおかしいんじゃないですか。もう一度答弁下さい。

小泉内閣総理大臣 そんなことはないんです。幾ら日本が主張しても先方は合意しなかったら、拉致の解明につながらないんです。だから、双方が納得した形で。

 日本がああ言うこう言うというのは当然あります。しかし、日本が言うことに対しても、先方が協力しない限りは進まないんです。そういうことから、私は、双方が合意した上でこの解明は進んでいくと。要求すべきは日本としても要求しなきゃならないし、日本が言っていることを向こうがどういう形で返答するかということについて日本が了承するかしないかというのはまた別問題でありますが、いずれにしても、これはお互いが誠実に対応していかなきゃならないということが大事だと思っております。

前原委員 総理、日本あるいは日本国民は被害者なんですよ。北朝鮮から拉致されて、そして向こうに連れていかれた、あるいは亡くなられた、殺されたかもしれない、そういう人たちの全体像を解明するのは、被害者の日本としては、原状復帰、その問題点を解明するというのは当たり前の話じゃないですか。それを、向こうが言ってくるもので折り合いがつくものだけが全体像の解明なんて、そんなばかな話はないと私は思います。まさに日朝国交正常化ありきでお茶を濁そうということにつながってくると私は思いますよ。その点について、私は、厳しく批判をして、指摘をしておきたいと思います。今の答弁は、これは絶対、国民の納得を得られるものじゃないですよ。

 次の質問に行きましょう。

 四月に、竜川という駅で列車が爆発した事故がありましたね。それで、日本は十万ドル相当の緊急医療援助をWHOを通じて行われたということですが、この事故について追加の支援をされるおつもりはありますか、総理。

小泉内閣総理大臣 あの事故については、人道上、あるいは国際機関の状況を見ながら、日本としても人道上の支援はすべきだと思っております。

前原委員 ですから、そう思って十万ドル相当の支援をWHOを通じてやられたわけですね。私は、この事故に関して追加の支援をされるおつもりはありますかという質問をしているわけです。簡単で結構です。

自見委員長 簡潔に答弁をお願いします。

川口国務大臣 これは、今まだ国際機関によって調査が続行中でございます。その状況を見てこれは検討をしていこうというふうに考えております。

前原委員 はい、わかりました。それについては、そこはそれでいいでしょう。

 川口大臣にお尋ねしますが、私が以前質問したこと、考え方は変わっていないかどうか、それだけちょっと確認をさせてもらいたいと思います。

 平成十四年十二月五日の安全保障委員会での私と川口大臣のやりとりでありますが、どういう質問をさせていただいたかというと、五人の家族の方々の帰国のために食糧支援は行いますか、こういう話を私は質問いたしました。そのときに、川口大臣がおっしゃったのは、「そういう食糧と五人の家族の方の日本への帰国の取引ということは考えておりません。」違うところでもう一つおっしゃっているのが、「私が申し上げたかったことは、五人の帰国とそれから食糧支援をバーターにする、取引にするということは考えていない、そういうことでございます。」こういう答弁をされていますね。この考え方は変わっていませんか。

川口国務大臣 今の御質問で、バーターにするということは考えているか、私が、考えていないということを申し上げたということですけれども、帰国を例えば食料品の供給とバーターにするということは考えていないということは変わりございません。

前原委員 では、一部の報道機関で、首脳会談で北朝鮮に米の支援を行う、二十五万トンという何か数字が出ていますね。それで、日本テレビを同行させない、どうのこうのということでごたごたされていたようでございますが、この首脳会談で米の支援をするということは、もし仮にするということになれば、それは今の外務大臣の答弁とは食い違いますよね。そういうことがあるのかないのか、考えておられるのかどうなのか、総理、お答えください。

小泉内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、これはどうか、あれはこうだということについて、私は中身を申し上げることはいたしませんと申し上げました。そのとおりでございます。

前原委員 そうしたら、先ほどの外務大臣の答弁は政府の答弁としてそれでよろしいんですね。つまり、平成十四年十二月五日に私が安全保障委員会で質問をしたことに対しての外務大臣の答弁の考え方は政府としては変わっていない、そういうことでよろしいですね。

小泉内閣総理大臣 変わっておりません。

前原委員 きょうは、本当は有事のテーマの締め総ですので、それを少しはやらなきゃいけないので、この質問ばかりしているわけにいかないんですが、一つだけ、総理、最後にこの北朝鮮の問題について御質問したいと思います。

 連休中にアメリカに行ってまいりまして、いろいろな政府高官の方とお話をしてまいりました。六者協議が進展しないのであれば、国連の安保理でこの北朝鮮問題を取り扱ったらどうか、こういう意見が国務省の中でもある、また、ホワイトハウスの中でもある、こういうことでございますが、六者協議がうまくいかなかったときには国連でやはり議論をするということのその中身について、そういった話を聞いてきたわけでありますが、それについてどう思われますか。いや、総理に。お答えください。

小泉内閣総理大臣 それぞれの国にはいろいろな意見がございます。日本としては、今、六者協議をやっているわけですから、六者協議で進展が図られるように努力をすべきだと思っております。

前原委員 はい、わかりました。その点については、きょうはこれぐらいにしておきましょう。

 さて、きょうは締めくくり総括質疑ということで、幾つか総理に確認をさせていただきたいことがあります。

 先ほど、基本法の必要性については、久間理事から質問をされたことについてはお答えをされましたので、割愛させていただきたいと思います。

 総理大臣を今まで長らくやってこられて、危機管理においてどういったところが問題なのかということを、私は官邸のトップにおられる方としての率直な印象を伺いたいなというのが、きょう、私が総理に一番質問したいところでございます。

 内閣官房に副長官補室というのがございますね。これには、今、この法案を担当されている方が、大森審議官初め四十名ぐらいおられます。また、危機管理に対応する人として四十名ぐらいいるわけであります。合計八十名、しかし、実際は、保安担当が四十名ですので、その半分ということになるわけでありますけれども、何かが起こったときに、そのメンバーで果たして対応可能なのかどうなのか。

 しかも、その人たちはすべて出向組ですね。いろいろなところから来られているわけですよ。警察や防衛庁や、防衛庁でも自衛隊各幕から来られているわけですね。そういうことを考えると、私は、なかなか今現在の内閣官房の副長官補室で、大きな緊急対処事態とか、ましてや有事が起こったときには、これだけでは対応できないのではないか、こういうふうに思っております。

 そこで、総理にお伺いしたいんですが、先ほど久間理事の質問に答えて、縦割りを見直していかなきゃいけない、不断に見直していかなくてはいけないということをおっしゃいましたけれども、では、具体的にどういう組織というものが内閣官房に置かれるべきなのか、あるいは違う役所として置かれるべきなのか、その点について、総理大臣をやってこられた中での実経験の中からお答えをいただければと思います。

小泉内閣総理大臣 私は、緊急事態にしても、いわゆる有事に対しては、どういう事態かというのはその都度違ってくると思います。また、その事態に対応する機関もさまざまだと思っております。

 そういう観点から、今、内閣官房を中心にしまして、いろいろな事態に対して、情報収集、あるいは事態が起こった場合にどういう対応をとるかということについては、常に、こうあるべきだという対応はしておりますが、武力事態等に対応する際には、当然、外交、防衛、治安等、いろいろな機関が参加してきますが、私は、現在でも各省庁の機能はとれると思っております、現にやってきたわけでありますので。

 その際に、中には、対応のまずさを指摘される場合もございます。各省、これは自分たちの範囲だ、自分の範囲を超えると対応ができないという場合もございます。そういうことのないように、私は、各機関が連携を緊密にして全体的に協力できるような体制をとっていかなきゃならないなと常に思っておりますが、今後、今までのいわゆる縦割りと言われた点において、まずさを指摘された点も踏まえまして、要は緊密な連携協力が大事だと思っておりますので、そういう点を踏まえて今後も密接な連携協力体制をとっていきたい。

 現時点におきまして、いろいろ意見が言われており、新しい機構が必要だという意見もございますが、私は、現在の状況におきましては、できるだけ各機関が連携と協力を密接にとれるような点について常に配慮していきたいと思っております。

前原委員 その大きなポイントとしては情報だと思うんですね。この間、イラクで日本人の人質事件が起きまして、総理は、情報が錯綜していてどれが本当の情報かわからない、こういう発言をされました。私は、総理としてはやはりおっしゃるべき発言ではなかったと思います。

 そういう体制になっていることが問題なんですね。つまりは、いろいろなところから情報が上がってくる、しかし、その情報、データというものをいかに分析して精緻なものだけをより分けるか、そういった情報を加工、分析する仕組みというものが日本では欠けているのではないか。私は、今の内閣情報調査室ではとてもじゃないけれども弱いんじゃないかと思いますが、そういった危機を一通り体験されて、今の情報収集体制、情報分析体制、加工体制において、間違いがないのか、あるいは手抜かりはないのか、どう思っておられるのか、総理、簡単にお答えをいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 間違いのないように、手抜かりのないように対応していかなきゃならないと思っております。

前原委員 では、今の組織で情報収集、情報分析については十分だ、あとは手抜かりのないようにやってもらったらそれでいいんだ、そういう御答弁ですか。

小泉内閣総理大臣 どういう事態が起こるかによっても違ってまいります。想像を超える事態が起こってきますから、そういう場合には情報をとれない場合もあります。情報をとれないと十分とは言えないと思います。そういう点も含めて、手抜かりのないような、間違いのないような対応を、日本国内の協力のみならず、各国の政府とも協力しながらやっていかなきゃならないと思っております。

前原委員 私は、今の体制では全く不十分だと思いますので、ぜひ、その点については指摘をし、そして、今の政権の中でやれることについてはしっかりやっておいていただきたいというふうに思います。

 あと、総理にお伺いをしたいのは、この法案の確認になるわけでございますが、新たな脅威というものにこれからどう対応していこうかということが一つの大きな議論のポイントになったと私は思います。

 つまりは、ソ連が存在していたときの着上陸侵攻型の脅威というものを阻止するのではなくて、ミサイルが飛んできたり、あるいはだれがどのような形でNBC兵器を使ってテロを行うかわからないといった新たな脅威というものが存在してきている。そういったことも含めて、国民保護法制を初め、体制の整備、法案の整備というものを議論してきたわけであります。

 ちょうど軌を同じくして、これは防衛大綱の見直しを前提にということでございますが、総理の諮問機関として、安全保障と防衛力に関する懇談会というものがつくられました。これも、この間、細田官房長官には質問させていただきましたけれども、石破防衛庁長官にも質問いたしましたけれども、私は、自由濶達な議論をその懇談会でやってもらうだけではだめだ、つまりは、新たな脅威に対応するために政府がどのような観点からこの懇談会に答申を求めるかという、サジェスチョンというか指針みたいなものがやはり必要だということを申し上げました。

 総理としては、この懇談会に、どういった柱、中身についての、専門家の皆さん方の英知を絞っての答申を求めておられるのか、その点について御答弁をいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 防衛に関する問題となりますと防衛庁ということがすぐ頭に浮かぶんですが、防衛という言葉につきましては、安全保障という問題ですから、防衛庁だけで対応し切れない点も出てくると思います。と同時に、最近の安全保障、防衛の問題も考えますと、かつてのいわゆる軍事問題だけでは判断できない事態が起こってまいります。

 今後の防衛のあり方ということを考えますと、侵略戦争というだけではない。武装グループあるいは国ではない組織が社会の混乱をはかるというような意図を持って、なおかつ、装備を備え、能力のある集団があるということを考えますと、国対国というかつての防衛戦略とは違った視点も考えておかなきゃならないなという点から、私は、防衛庁関係者だけじゃない、防衛庁内だけの議論でこれからの安全保障を考えるというのはどうかなと。

 むしろ、経営者の中には世界的な国際観の視野を持った経営者もおられますし、同時に、防衛庁以外の学識を持っている関係者もおられるわけであります。防衛庁の意見というものも大事でありますが、同時に、外交全体、安全保障全体、また一般の国民の常識というもの、そういう点をお互い議論しながら、新しい時代に対応できるような防衛体制というものを見直していく必要があるということから、私は、防衛懇談会という中で、それぞれの議論を進めて、中身のある意見が出されればなと。

 それについて、政府としても、各界の識者の意見を聞き、また、防衛庁の考え方も聞き、政府全体として今後の防衛どうあるべきかということを考えてみたいということで、今回、防衛に関する懇談会を設けたわけであります。

 こういう点につきましては、国会内の議論というものも十分反映しなきゃいけませんし、これから、どういう結論が出るかまだ明らかでありませんが、各般の広い見地から防衛の問題についてじっくりとした議論を深めていって、意味のある結論に導かれることを期待しております。

前原委員 私は、その御説明よりも、どういうものを政府として議論してもらいたいかということを聞いたわけであります。まあ結構であります、もう時間になりましたので。

 最後に一つだけ。

 今の話にかかわりますが、大平内閣のときに、もう既に総合安全保障に対する議論というのがなされていて、我が恩師、亡くなられた高坂先生も中核となってそれをやられて、今読み返しても非常にためになる、参考になる文書というのはもう大平内閣時でまとめられていて、しかし、それはできていない部分もあります。例えば食糧安保とかエネルギー安全保障というのは、まさにそういう観点であります。だから、今おっしゃった、経済の部分もまさに安全保障だというところは、そのとおりだというふうに思います。

 きょう、私が申し上げたのは、国民保護というものは必要だ、有事法制というものは、有事がないために努力しなきゃいけないけれども、あったときには法治国家として必要だ、しかし、ないためにどういう外交を戦略的にやっていくかという意味では、まさにこういう懇談会の議論、そしてまた、出てきた答申をどのように実行するかという政治の意思が何よりも必要だというふうに私は思いますので、そういったすばらしい方々から出てきたものを実行に移していくという意思を政治として持たなければいけないし、小泉総理の任期の間はそれを一生懸命やっていただきたいということを最後にお願いして、私の質問を終わります。

自見委員長 次に、松本剛明君。

松本(剛)委員 民主党の松本剛明でございます。

 有事法制に関連して質問をするに当たって、まず冒頭に、総理に、けさの新聞では、各紙報道されておりましたけれども、ドイツで逮捕されたアルカイダのメンバーが日本に潜伏していたという話が報道されております。

 テロの未然防止という意味では、水際対策であったり、拠点をつくらせない、また、テロ対象施設の周辺の警備を強化するなどがポイントだろうというふうに思いますが、だれもが考える、一番目に挙がる水際対策。

 この容疑者、ドイツで逮捕されているから容疑者と呼ぶべきなんでしょうが、容疑者については、いわゆるテロに関係をする資産の凍結の対象ということで、外務省、財務省所管の、関係する人物ということでリストにも入っておったようでありますが、その人間が残念ながら日本国に入ってきた。偽造旅券であるからわかりにくいということでありますが、恐らくそういった人物がまともな旅券で入ってくる可能性はほとんど、むしろないだろうというふうに思います。

 ですから、そういったことを含めて、今まで水際対策が重要だと言ってこられたこともあるわけでありますから、事実の内容の確認と、これに対する総理の御姿勢をお伺いしたいと思います。

井上国務大臣 テロ対策につきましては、特に情報の収集というのは極めて大事なものだと思います。国内あるいは海外の情報を十分に収集いたしまして、それを分析して評価していく、それに対して対策をとっていくということでありますが、けさの報道は、残念ながら、その当人の在日中にその情報が把握できなかったような感じを私は受けたのでありますけれども、テロ対策につきましてはやはり情報ということが一番基本であるというその認識を新たにしまして、さらに体制を強化して万全の態勢を整えないといけない、そういう感を深くした次第でございます。

小泉内閣総理大臣 アルカーイダのメンバーが日本に滞在していたということの情報は承知しておりますが、現在捜査中でありますので、いろいろ微妙なことについては差し控えますが、今後もこのようなテロリストが侵入しないような体制をしっかりと整えておかなきゃなりませんし、これについての警戒という問題については、より情報収集等を含めた対応が必要だと痛感しておりますので、関係機関にきちんとした対応をとるよう督促しております。

松本(剛)委員 本件についてはこの程度にとどめますが、今、総理は、対応が必要だとおっしゃいました。井上大臣からは、情報収集等の体制の強化も視野に入れるといったニュアンスのお答えをいただきました。私ども、今回、危機管理庁のことも含めて御提案を申し上げてきたのは、非常に速いスピードで私たちを取り巻くいろいろな状況が変わってきている中で、ぜひ、これは政治の決断で、それに対応する体制、組織等をお組みいただくことを御決断いただきたい、こんな趣旨で今回の御提案も申し上げているところであります。

 この点についてはまとめて何点かお伺いをしますが、もう一点、イラクの問題について確認をさせていただきたいと思います。

 申し上げてきた順序と少し前後いたしますけれども、まず、法制局にお伺いをいたしたいと思います。

 報道では、いわゆるサドル派との戦闘がイラク特措法に言うところの戦闘に当たるのではないかという解釈を福田前官房長官に上げたという報道がなされておりますが、まず、その点の事実確認をさせていただきたいと思います。

秋山政府特別補佐人 報道にあるような事実はございません。

 本件は具体的な事態に対する法の当てはめの問題でありまして、法制局はこの法律の運用に当たるものでもありませんし、また、イラクにおける状況を直接承知している立場にはございませんので、このような特定の事項について、御指摘のような報告を取りまとめて行うということはないことでございます。

松本(剛)委員 全くの虚偽報道だという理解でよろしいということなんだろうというふうに思いますが。

 それでは、総理はよく、先ほども、治にあって乱を忘れず、備えあれば憂いなしとおっしゃいますが、今、イラクが治なのか乱なのかというのはいろいろ議論のあるところだろうというふうに思いますが、今の状況から事態が変わったときにどうなるかということを考えておくということは、まさに有事に対する心構えとしても大変大事なことだろうというふうに思うわけであります。

 その意味で、サマワにはサドル派の事務所があることも事実でありますし、サドル派との戦闘というのが大変身近な問題になってきたときに、これが戦闘に当たるのか当たらないのかというのは、これは、今、法制局長官のお話だと法制局の仕事ではないとすれば、一義的な解釈は政府としてはどちらがされるということでよろしいんでしょうか。

石破国務大臣 これは戦闘行為かどうかという一義的な解釈というような御質問だと理解してよろしゅうございますか。――それは、状況をいろいろ把握しながら、政府全体として判断をするものでございます。

松本(剛)委員 十七日に、守屋防衛事務次官が、サドル師支持派が国に準じる者かどうかは、「いろいろな情報を総合的に収集、分析してみなければ、今の段階では確定的に申し上げられない」と、判断を留保する会見を行ったというふうに私も承知しておりますが、私が理解をするところでは、イラク特措法では、戦闘地域でないことを求めている。戦闘地域であるかどうかわからないということであれば、ないということにはならないおそれも含んでいるわけだと思います。

 戦闘地域でないということを確認しながら派遣をしてこそ、初めて九条の問題――先に申し上げておきたいと思いますが、私どもは、そもそも、戦闘地域、非戦闘地域という仕分け、この仕分けの中に入り込むのを好むものではありません。しかし、政府がおつくりになった法律でその仕分けをされて、そこで縛りをかけられた以上は、そこできちっと解釈をされていただかなければいけないというふうに思います。

 この事務次官の御答弁、長官も御承知だろうというふうに思いますけれども、判断できないということであれば戦闘地域でないとは言えないということになってしまうのではないかと思いますが。

石破国務大臣 先生御指摘のとおり、これは戦闘地域ではないということです。ないというふうに判断をしなければ、それはこの法律として成り立たないということでございまして、では、そのサドル師がやっていることがどうなのだというようなことを、私も記者会見を詳細に存じておるわけではございませんが、この法律の趣旨というのは、当然、サマワで行われていること、あるいは私どもが実施区域としておりますところでは、それは非戦闘地域であるということを断定してやっておるわけでございます。

松本(剛)委員 私、幾つかの記録から事務次官の御答弁を確認申し上げておるんですけれども、私が知る限りでは、確定的に申し上げられない、判断を留保する、このようにおっしゃっておられます。長官として、そうではないという御答弁をいただいたという理解でよろしいですか。

石破国務大臣 行動は非戦闘地域で行うものでございます。したがいまして、今、ムサンナ県あるいは私どもが活動しておりますサマワで戦闘というものは行われておらず、その地域は非戦闘地域であります。それはもう先生が十分御案内のとおりと思いますが、戦闘地域、非戦闘地域というのは、危ないとか危なくないとか、そういうような判断とは別個のものでございます。

松本(剛)委員 先ほど法制局は、そういったこと、個別の適用に関して議論したことはないし、当然、前官房長官に報告を上げたこともない、こういうお話でありましたが、法律として具体的に見ていかなければいけないわけでありまして、今の状況とか、こういった報道がなされることそのものを踏まえても、恐らく事務次官の御答弁というのが非常に素直な答弁であろうというふうに我々は感じるわけであります。つまり、わからないと。

 しかし、わからないでは今のイラク特措法の要件には合致しないわけでありますから、長官は出される以上はそうおっしゃるというのは、ある意味では、長官というか政府の整合性としてはそういう結論になるんだろうというふうに思います。

 しかし、もう一度、本件は、これ以上申しませんけれども、戦闘地域、非戦闘地域というのは憲法の制約とのかかわりから出てきた用語である、そして、これは改憲論、憲法論議にまで入っていくことにもなりかねない部分がありますが、九条といったものは、できたときには、テロとかこういった形態の武力行使というのは想定をしていない時代のものでもあったことも事実であります。

 ですから、そういったことを考え合わせると、我が国の国民、国の平和にとってということで九条は設けられた。これについて、また改憲を含めて政治家として我々もいろいろな意見を持っているわけでありますけれども、そういった精神を考えたときに、この戦闘地域、非戦闘地域の論理的な議論も極めて重要でありますが、根本的な精神に立ち返っての議論ということも踏まえて御検討をいただきたい。

 もう一点、今、危ない、危なくないというお話がありました。イラク特措法に安全に配慮する義務がおありなのは当然でありますし、同時に、できましたら総理にお伺いをしたいと思いますが、長官はもとより、総理は自衛隊の最高指揮官として、危ないから行かせないということはできないというふうにおっしゃってきたのは、自衛隊の職務柄、ある程度やむを得ないと思いますが、その程度を今ここで言葉で議論してもしようがないと思いますが、自衛隊は人道支援に行かれているはずだろうというふうに思います。人道支援を行うことが著しく困難な状況が続くような状況になれば、むしろ、一回帰っていただくというのが本来の形ではないか。

 私どもから見ると、いろいろな政治的な絡みで、自衛隊がイラクに存在をすることが意義があるというふうに受け取られかねないような対応はしていただきたくないわけでありまして、今のイラクの状況を見きわめながら、そして、特にサマワの陸上部隊は、撤退をするとすればその手順も大変いろいろなものがかかるというふうに私どもも感じておるところでありますので、ぜひ、今の状況の認識、そして撤退について、今ここで撤退するということをおっしゃってくれとは申しませんが、総理の取り組みの姿勢、決意をおっしゃっていただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 戦闘地域には自衛隊は派遣しないということでありますし、自衛隊が派遣されたのは、これはイラクの復興支援、人道支援のために行っているわけであります。

 そういうことから考えますと、自衛隊が活動されている地域については、どういう状況かということについてはしっかりと状況を見きわめる必要があると思いますし、また、自衛隊の諸君が活動するためには、安全面にも十分配慮しながら人道支援が行われるような機能を備えていかなきゃならないし、また、住民に対する配慮という点についても考えていかなきゃならない。総合的に考えて、自衛隊の活動がその法の趣旨に沿ってできるように、今後も万全の対応をしていきたいと思っております。

松本(剛)委員 冒頭に申し上げたように、安全の面から考えても、人道支援のために行っている自衛隊であります。戦うために行っているのではないというお話をこれまでも伺ってまいった記憶があります。ですから、もちろん日本と諸外国、特に米国を中心とする諸外国との国際的な関係の中からの配慮というのもあるのかもしれませんけれども、ぜひ、自衛隊がイラクに存在をしていることが意義があるといったような無理な駐留にならないように、しっかりとした御判断をいただくようにお願いをいたしまして、有事法制の議論に移ってまいりたいと思います。

 先ほど、前原議員の方からも危機管理庁について御提案を申し上げ、私どもとしては、ぜひこの構想を実現する形で御検討いただきたいということを御提案申し上げておるところでございます。

 先ほどの総理の、これは久間先生の御質問に対する答えの部分だと思いますけれども、政府にこういった機構を持つということも考えなければいけないといったような言葉もありましたが、一方で、現在の組織を生かしつつという言葉もありました。

 私たちは、実務者レベルでの与野党の合意に達する段階で、「内閣総理大臣の判断を適切かつ機動的に補佐する仕組み」といった言葉、また、「対処措置の効果的な実施体制を担保する組織」という文言を採用いたしました。現在の組織を生かした連携を密にということであれば、対処措置を効果的に実施できるようにということでとどまると思いますが、「実施体制を担保する組織」ということまで踏み込んだ表現を私どもが求め、実務者レベルでありますが、与野党の合意にまで達したということは、現在のままではなく、一つ踏み込んだ形をぜひ御検討いただきたいというのが私どもの要望であります。

 これまでの議論の中でも、井上大臣との議論の中でも、縦割りの話もいろいろ出てまいりました。私もこの場所で御質問申し上げたことがありますが、防衛庁長官がおられたときだったと思いますが、今の内閣の官房も、危機管理監、副長官補、防衛と防衛以外、御出身も警察と防衛、言うなれば縦割りの部分がある。

 例えば、我々も余り考えたくないことでありますが、そのときにも申し上げたのは、列車が爆発したという事象が起こったとすれば、北朝鮮のように事故のこともあるかもしれない、スペインのようにテロのこともあるかもしれない、ひょっとすれば武力攻撃の第一波ということもあるかもしれない、場合によっては、ひょっとすると山際で、山が崩れた土砂崩れによって何らかの積載物が爆発をしたということもあり得るかもしれない。

 こういったことを考えたときに、今の状況だと、実際に動き出せるのは、これはだれの担当なんだということがわからないと、私は、動き出せないのではないかと。これはあくまで一例であります。

 今の中で連携を密にとおっしゃったわけでありますが、いわゆる普通の案件であれば、集まって連携を密にしていただくことが可能だと思いますが、我々がここで、緊急事態の法制を含み、わざわざ体制のことにまで踏み込んで御議論をお願いしているのは、時間がない状況での判断を求められる可能性が極めて高い。その意味では、今の既存の組織で、縦割りの問題については、具体的にもしくは抽象的に、それぞれかもしれませんが、各閣僚の皆さんにおかれても、全く感じていないという御答弁はいずれもなかったように思っております。

 そんな中で、具体的に、時間がない中でやるには、ぜひ、もちろん行政改革という視点を我々は放棄するわけではありませんが、必要な組織をつくることについては政治的な判断をいただきたいというふうに思うわけでありますが、改めて総理の御所見をお伺いしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 新しい体制といいますか機構についての松本議員の御意見は、私も理解できるのでありますが、現在、各省、関係機関、緊密な連携がとり得るような体制をとっております。そして、緊急事態なり有事というのはどういう省庁がかかわるかというのは、今の時点ではわからないわけです。その事態によって違ってくる。

 では、仮に御指摘の新しい機構をつくったとしましょう。どういう名前かわかりませんが、例えば、仮に危機管理庁というのをつくったといたしましょう。今想定し得る体制で危機管理庁をつくった。何か事態が起こった。恐らく危機管理庁だけでは対応できない事態が起こってくると思います。台風なりあるいは大地震なりということになると、各省庁、防衛庁だけ、あるいは治安関係だけじゃない。危機管理庁という新しい体制を仮につくったとしても、政府の各機関は連携しなきゃならないんです。だから、管理庁をつくったからすべての対応ができるかというと、そうでもないんです。

 それだからこそ、私は、各府省の連携は不断に考えておかなきゃならないし、有事というのはまさに想定外のことであります。想定できないときの対応を考えて、協力をしていかなきゃならない、連携をしていかなきゃならないということでありますので、そういう指摘も踏まえて、有事即応態勢ができるように、今、ふだんから、そういう対応ができるような体制を整備していきたいと思っております。御指摘の点は十分わかります。将来の検討課題だと私も認識しております。

松本(剛)委員 総理も、多岐にわたっての政策を御所管になっておられるからだろうと思いますが、私どもが申し上げているこういった危機管理庁について若干誤解があるのではないかと思いますので、あえて一言申し上げてまいりたいと思います。

 例えば、一つ、すべてそれに倣ったわけではありませんが、モデルとした米国のFEMA、これは今、別の形で、国土安全保障省という形に変わってきておるわけでありますが、いろいろな事態の積み重ねの結果、こういった機構をつくっておるわけであります。

 これは、例えば、既にいろいろな形で細かく研究されているFEMAで申し上げれば、まさにおっしゃったように、いろいろな省庁にかかわりがある。しかし、ある一定の類型化をしていく中で、このときはFEMAの下に入るとか、すべて連携の仕組みをあらかじめほぼ想定してつくってあるわけですね。その結果として、かなめ石となる部門がやはり必要だということから、こういった危機管理庁とか、そういったものが生まれてきている。現実に、例えばカナダでも、九・一一後に、名前は公安緊急対策省ということになっているようでありますが、いわゆる危機管理に近い省庁を新設いたしております。

 何もかも私どもが外国に倣えばいいというふうに申し上げる気はありませんが、いろいろなケース、そして各国の動き等を研究していくと、やはりそういうかなめになる部門が必要であり、そして、これはある意味では実施も行う部分というのが必要になってくるとすれば、今の、調整を行う内閣官房の機能とは少し異なるのではないかということで、私ども、御提案を申し上げているわけでございますので、来年、基本法の審議も行ってまいりたいと思いますが、私どもには、まさに、けさ、アルカイダが日本にいたということが報道されたように、いろいろなことがこれから、我々の想像もつかないことも起こってくるかもしれない。しかし、時間は限られておりますから、急ぐべき課題であるというふうに認識をしておりますので、ぜひ踏み込んで御検討をいただきますようにお願い申し上げます。

 もし何か御回答があれば、なければ先に行きますが。

井上国務大臣 国の安全でありますとか国民の生命財産を守るというこの体制につきまして、絶えず組織なり対応につきまして検討を深めていくというのは、これは当然のことだと思うのであります。

 今御指摘ありましたアメリカのFEMA、私ども、まだ十分ではありませんけれども、私どもなりに検討いたしたのでありますが、何せアメリカ合衆国の歴史の背景といいますのと日本の役所の組織の歴史と、非常に違うわけですね。御案内のとおり、アメリカは連邦と州が対等の地位にありますし、それから、郡だとか市が非常に大きな権限を持っておりまして、ですから、国民から見ますと、FEMAというのは、今は確かに連邦権限は一元化するけれども、やはり州とかその他はそれぞれと対峙するわけでありまして、日本の今の有事の組織というのは、日本なりの縦割りの組織を尊重しながら、なおかつ、全体、連絡をとって適時適切に対応していく、そういうことでありますから、ある意味では非常に哲学が違うと思うのであります。

 しかし、我々、ほかの国の制度でありましてもいいところはどんどん取り入れていった方がいいという考えでありまして、現行の制度なり組織等について、今御指摘のような点も踏まえましてさらに検討を深めていきたい、こんなふうに考えております。

松本(剛)委員 それぞれ、過去の制度とか抱えてきた歴史があるのはもちろん承知をしておりますが、この緊急事態は、いかに緊急事態に対処するかというこの出口の方からぜひ答えを導いていただきたい。もちろん、こちらの入り口の、過去の制度がどうであったかということを無視するわけにはいきませんが、そういうことをお願い申し上げたいと思っております。

 何点か、まだお伺いを申し上げたいことがあります。

 総理に憲法について一点だけお伺いをしたいと思っております。

 今回の国民保護法制、私、ここでも質問を申し上げましたが、いろいろ突き詰めていろいろなケースを考えていくと、これも外国の例でありますけれども、緊急事態が発生したときに、国民保護法制は、いかに避難をするかということの準備、そして具体的な避難の方法について記載されておりますが、国によっては、とりあえずそこにとどまるべきだ、待機命令であるとか滞在規制といったものを行う国も決して少なくありません。しかし、これは、当然、移動の自由を奪う部分があるわけでありますから、やはり憲法に緊急事態についての規定がないとなかなかそこまで踏み込んだ規制というのは難しいかもしれないというふうに感じております。

 今、憲法の改正が議論をされておりますが、必ずしも緊急事態について憲法にどのように書くかということについては、まだこれから議論の部分もあろうかというふうに思いますが、緊急事態を書き込むこと、また、それについて総理に、憲法改正の案の策定も御指示をされているようでありますので、御意見がありましたら伺っておきたいというふうに思います。

小泉内閣総理大臣 現在審議されておりますこの武力事態に対処する関連法案、いわゆる有事法案につきましては、現行の憲法の枠内での対応であります。憲法改正議論と今審議しております有事法制とはまた別次元の問題だと思っております。我々は現行憲法下で緊急事態にどう対応すべきかというのを今審議しているわけですから。その中で、現行憲法でもやはり公共の福祉という観念と個人の自由、権利なり、どういう調整をするかというのは、たとえ案文に書かれていなくても、それは両方尊重していかなきゃならない、個人の権利と自由と、そして全体の安全という。

 ですから、私は、将来、憲法改正の中でどういう文言が適切かというのは、緊急事態に対して、それぞれ議論があるところだと思います。文言については議論があるところだと思いますが、改正の場合におきましては、それぞれの、各党の案が、自民党は来年の秋ごろに一つの案を出します。民主党は再来年には出すと言っておりますので、そういう中で、お互い、緊急事態に対してどういう文言がふさわしいか、条文がふさわしいかという議論が出てくるのではないか。

 現時点において、私は、この法案を審議しているさなかで、憲法改正しないとこういう法案ができないという立場はとっておりませんし、現行憲法の中でどのように緊急事態に対処するかということを議論しているわけであって、これと憲法改正とは結びつけない方がいいのではないか、現行憲法の中での有事態勢をどう図るかということで議論をしていきたいと思っております。

松本(剛)委員 先ほど、組織のときも申し上げましたが、いかにして国民を守るかということからスタートして考えたときには、さまざまな、まだこの法案でも残された課題があるのではないかというふうに私どもは認識をしておるということでございます。そして、その帰結として、場合によっては憲法のことまで考えなければいけない。

 おっしゃった、国家緊急権は自然権で、書いていなくても存在をするという議論も、説もあります。しかし、憲法というのにずっと条文を書いてきた理由は、自然権であるものもきちっと書いて枠組みを決めることによって立憲国家としての体をなしていくということもあってそういう形になっているんだろうというふうに思いますので、緊急権についても、国が持っている権利である、書いてなくてもということもあると思いますが、具体的に書いていくということも含めて、そして、それが国民を守ることにつながるんだということから、私どもはあえてこの法制の議論の延長線としてこの話をお聞きしたわけであります。

 残りの時間が限られてまいりましたので、もう一点、国民保護法制に関連して、総理、申しわけありません、これはちょっと御通告を申し上げていないんですが、国民の保護法制については報道の規制の問題というのが出てまいります。

 今回の訪朝に当たって、東京のテレビのキー局を同行させないといったような報道も出ておったわけでありますけれども、その事実と真意を総理にお答えいただける範囲でお答えをいただきたいというふうに思います。

小泉内閣総理大臣 どのような問題であろうと報道機関は自由に報道をされますので、そういう点については、お互い正確な報道を期すように協力できるところは協力していかなきゃならないと思っております。

 先ほど官房長官からお話を伺いましたけれども、いろいろな報道に関しての問題があるようでありますが、お互い話し合いながら善処したいということでありますので、善処されることを期待しております。

松本(剛)委員 同行させないというところからスタートしてお互いに善処するという理解でいいわけですか、今の状況は。

小泉内閣総理大臣 いや、どういう事情か詳細は存じておりませんが、官房長官が善処するということでありますので、そうされると思います。

松本(剛)委員 報道の自由といったもの、私どももいろいろな形でメディア、ジャーナリズムに書かれます。必ずしも真意が伝わり切っていないときもあることは事実でありますけれども、報道の自由というものを持つことの重み、そして、今回の総理の訪朝という大変大きなことについての同行ということの重みというものをお考えいただいて、先ほど私は大変残念に思いましたけれども、拉致の問題についても、お気持ちがないはずはないと私は思っておりますが、国民を守るという姿勢が、双方が納得するというような言葉を使われると、拉致をされた日本国と日本の国民の感情としては、すとんと落ちないものがある。この報道の自由についてもそういった姿勢がかいま見えることが、報道の自由を政府がきちっと確保されるのかどうかということに関する信頼を一つ一つ失うことになりかねないということを申し上げてまいりたいと思います。

 最後に、総理か、これは川口大臣なんでしょうか、日米の関係、今回の有事の法制に関して、法律、条約等が提出をされました。ACSAの方についてもお聞きをしたいことがあるんですが、地位協定について、いろいろと内容を検討してまいりますと、現行の地位協定、これを改定するかしないかというのはそれぞれ意見があります。私も改定をすべきではないかということを党として申し上げてきているんですが、このことはちょっと別にいたしまして、有事のときの地位協定というのを新たに結んでおく必要があるのではないかというふうに考えられますけれども、これについての御意見を最後にお伺いをしたいと思います。

自見委員長 質疑時間が終了いたしておりますので、簡潔に御答弁をお願いいたします。

川口国務大臣 現在の日米地位協定でございますけれども、これは、武力攻撃事態のもとにおいても適用されるということになっております。有事のための別の日米地位協定は必要がないというのが政府の立場でございます。

自見委員長 松本君、簡潔にお願いします。

松本(剛)委員 地位協定の問題も含めて、日本国自身の政府が、また日本の国が、国民を守るといった姿勢を見せていただくためにも、主体性がきちっと発揮されるようなこと、これは米軍との関係もほかのことも含めて早くつくっていただきたい、それによってしっかりと国民を守る体制をつくっていただきたいということを申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

自見委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 総理に伺いますが、今、米英によるイラク占領、これはイラク国民に対する虐待の問題など極めて深刻な事態を迎えております。

 ファルージャの町を包囲していたその掃討作戦には沖縄の海兵隊が参加しているなど、在日米軍基地の駐留部隊がこうしたアメリカの戦争と占領に参加していることに対して、非常に不安と反対の声も広がっております。五月十六日に、沖縄で、一万六千人の方々が参加して、普天間基地を人間の輪で包囲する、そして、イラク戦争に反対し、普天間基地を撤去し、平和をという願いを込めた集会が開かれました。

 そこで、日本の基地からアメリカがイラク戦争などに出撃していっている、あるいは出動していっている、こういうことを総理はどのようにお考えですか。

小泉内閣総理大臣 それは、日本としては、日米安保条約、これは日米の関係にとって極めて重要な条約であるし、米軍が日本に存在しているのは日本の安全のためであるということから考えて、沖縄の米軍の移動については、それは米軍が判断されることもあるでしょうし、場合によっては日本と協議する場合もあるでしょう。しかし、沖縄の米軍というのは日本の安全確保のために存在している、そういう基本観念から判断すべき問題ではないかな。イラクの復興のために沖縄の米軍が駐留しているわけではないんです。それは日本の安全のために駐留しているんですから、そういう観点から私は判断すべきものではないかなと。沖縄の存在がすぐイラクの支援のためにあると考えるのはちょっと早計ではないかなと思うのであります。

川口国務大臣 まさに総理が今言われましたように、沖縄にある在日米軍は、これは安全保障上の目的で沖縄にいるわけですけれども、そこから別なところに、米軍の運用上のことでどこかに移るということは、これはまさに米軍の運用の問題でございますから、私どもとして何かコメントをすべき事柄ではないというふうに考えております。

 米軍は、この点について日本にきちんと説明をしておりますし、また、抑止という観点からは、さまざまな手段をとって、特に問題はないような対応をしているという説明も聞いているわけでございます。

赤嶺委員 総理の答弁はちょっと何を言っているのかさっぱりわかりませんでしたけれども、私の質問は、在沖米軍基地から海兵隊がイラクに出動し、人道支援どころか、お年寄りや子供、女性まで本当に虐殺というようなことをやってのける、そういう中で、沖縄の基地が戦争の足場にされていることについて県民の中から本当に不安と批判の声が起こっている、そういうところについて問うたわけですが、これに対する御回答はありませんでした。

 ただ、もちろん、沖縄から米軍が出ていくことについて、それはコメントする立場にはないという今の、総理もその趣旨のことをおっしゃっておりますし、外務大臣もそういうお話でありましたが、今回の有事関連法案、その米軍に対する支援の枠組みというものをつくったわけですね。米軍行動円滑化法案あるいは特定公共施設等利用法案、これらの中で米軍の行動を支援する枠組みをつくろうとしているわけです。そのことによって、米軍に対する広範な物品、役務の提供、空港や港湾などの優先利用の確保が可能になっていくわけです。

 質問は、こうした支援の対象である米軍の行動についてであります。

 米軍は、先ほどの海兵隊のイラクでの掃討作戦への参加のように、みずからの判断に基づいてどのように行動するか、どのような作戦に参加するかを決めていく、これは御答弁のとおりであります。

 そこで、今回の法案によって米軍に対するさまざまな支援が可能となるわけですが、つくられた法案の中に、支援をした米軍の行動に何らかの制約を加えるとか、あるいは支援の対象となる米軍の行動を限定するような仕組み、これはありますか。

井上国務大臣 米軍の行動を円滑にする法律、いわゆる行動関連措置法案と言っておりますけれども、これは、御承知のとおり、武力攻撃事態等に限定しているわけですね。アメリカは日米安保条約に基づきまして有事の場合には日本を防衛する、守る義務があるわけでありまして、そのために武力行使を行うわけでありますけれども、それを支援する法律でありまして、あるいは、それを準備するための支援の法律なんですね。ですから、当然のこととして、その事態は限定されておりますし、しかも、その目的の範囲内において、必要な限度にとどめるということも、これは、委員御承知のとおり、法律の中できっちりと書いているわけでございます。

 しかも、たびたび御答弁を申し上げておりますとおり、その実施につきましては、日米の調整メカニズムによりまして、きちっと、そのとおり実行されているということをきちっと担保する措置がとられるわけでありますから、お尋ねのようなそういう御懸念はないものと考えている次第であります。

赤嶺委員 日本の側からの米軍への支援には日米安保条約の目的の範囲内という限定がある、支援を受けた米軍の行動を限定する、制約する、そういう法的な仕組みがあるか、こういう質問なんです。

 それで、もうちょっと具体的な問題で聞きますけれども、米軍が日本の周辺地域でイラク戦争のような武力行使を行っていて、翻って、日本では、日本に対する武力攻撃が予測されるという武力攻撃予測事態、このように認定をして、法律に基づいて米軍の艦船に対し港湾の優先利用を確保したという場合に、米軍が何のためにその港湾を利用するかということを確認し、その利用の目的によっては港湾の利用に制約を加えるということはできますか。

井上国務大臣 これは、行動関連措置の中に明確に規定をいたしておりますけれども、「武力攻撃事態等において、合衆国軍隊の行動が円滑かつ効果的に実施されるための措置その他の合衆国軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置であって、」しかじか、こう書いてあるわけでありまして、当然のこととして、事態はもう限定されるわけですね。

 したがいまして、それは港湾であれ、あるいは飛行場であれ何であれ、こういう範疇の中でありまして、こういう武力攻撃事態等の事態の限定の中で、先ほど申し上げましたように、その目的の範囲内で、しかも必要最小限度のことを支援する、こういうことでありますから、当然のこととして、そこの支援が他の目的のためにされるということはないわけであります。

赤嶺委員 日本の側が、いわば目的を限定して支援する。例えば、武力攻撃予測事態で港湾の優先利用を確保した、そのときに、周辺事態で武力行使をしている艦船が、その港湾を使いたい、このように申し出てきた、そのときに日本政府は、その目的を聞いて、それは日本の法の趣旨に合うものでないから使えませんというようなチェックを行いますか。

井上国務大臣 これは利用指針ではっきりするわけでありまして、ただいま申し上げましたように、日本の有事、その事態に限定されるわけでありまして、例えば周辺事態が発生している場所に行くためにその港湾を使わせるということはないわけであります。当然のこととして、日本有事のための行動を支援する目的に限定されるわけでありますから、御懸念のような点はないということであります。

赤嶺委員 そうすると、この間の私の質問に対する答弁には、これは港湾の利用について規定した法律であり、公共施設等利用法案についていいますとそうであり、米軍の行動を律するものではない、このように答弁されておりました。

 今回の大臣の答弁だと、港湾の優先利用を確保して米軍が使っているその港湾に周辺事態で行動している艦船が出港したり入港したりする、そういう使わせ方はしない、そのためにチェックもきちんとやる、そういうことですね。米軍の行動を律するということですね。

井上国務大臣 あれはいつの委員会でしたか、政府参考人が答弁したことでありますけれども、あの答弁は、例えばA港ならA港に遠くから物資を運んでくる、物品を米軍に供与するために運んでくるというような場合におきまして、運んできて陸揚げした後、その艦船がどこに行くか、そういうような規制はないということを申し上げたので、周辺事態のためにこの港を優先的に利用していくということはないわけであります。

赤嶺委員 武力攻撃予測事態のときに優先利用が確保されるというのはわかるんです。しかし、米軍というのは、周辺事態も武力攻撃予測事態も分けて行動していないですよ。一つの指揮のもとに一体的に軍事的な展開をしております。この艦船は周辺事態の艦船、この艦船は武力攻撃予測事態の艦船、これをアメリカの側から分けることはあり得ないんです。律することもできませんし、アメリカは自由に行動するわけですから。そのときに、日本政府は、艦船の出入港について、周辺事態の艦船であるかないか、そういうものをきちんとチェックするんですね。チェックしなければ、それは米軍の自由な行動を認めることになるじゃないですか。

自見委員長 質疑時間が終了しておりますので、簡潔にお願いいたします。

井上国務大臣 港湾等を優先利用します場合は、これは利用指針に基づいてするんです。しかも、その利用指針が適用される事態というのは武力攻撃事態等でありまして、周辺事態にそういったことを利用するということはないわけでありまして、それは、たびたび御答弁申し上げているように、調整のメカニズムを通してそれを担保していくということであります。

自見委員長 赤嶺君、簡潔にお願いします。

赤嶺委員 結局、利用指針というのも、日本政府が定めるものであって、しかし、一体的に軍事行動を展開している米軍の行動を律するものでない。日本政府の側が事態に応じて支援内容を決めるというだけであって、受け取った米軍はどこにでも使える。

 そういう意味では、今回の法案というのは、周辺事態で制限されていたことが、武力攻撃予測事態、日本に武力攻撃がないという共通の事態において、弾薬の提供もできるようになる、日本の港湾、空港、公共施設等も自由に使えるようになる仕組みを、そういう新たな仕組みをつくった憲法違反の法律だということを指摘して、私の質疑を終わりたいと思います。

自見委員長 次に、東門美津子君。

東門委員 社会民主党の東門美津子です。よろしくお願いします。

 総理は、北朝鮮を再訪問されて、金正日国防委員長と拉致問題等を協議されるということです。拉致問題は我が国にとって極めて重要な問題であり、総理の訪朝が、既に帰国しておられる五名の御家族の早期帰国につながることを切に願うものですが、その他の、死亡あるいは不明とされた十名の安否についても、正確に回答するよう、北朝鮮側に強く申し入れていただきたいと思います。

 北朝鮮による拉致問題は一日も早く解決すべき喫緊の課題でありますが、一方で、沖縄の普天間飛行場代替施設をめぐる問題も、まさに待ったなしの喫緊の命題です。

 米国がグローバルな軍事体制の見直しを進めているまさに今、米国を訪問されて、普天間飛行場の辺野古沖の移転に関するさまざまな問題点を指摘し、米国の軍事体制の見直し状況を確認した上で、同飛行場の代替施設なき返還をブッシュ大統領に強く申し入れるべきときだと思いますが、総理、いかがでしょうか。これは総理にお願いします。

小泉内閣総理大臣 普天間飛行場の返還問題については、市街地にあって、その付近の方々の声も十分聞いております。また、移設におきましてもいろいろ意見がありまして、地方公共団体と十分協議していかなきゃならない問題であり、なおかつ、日米安保条約の観点からも、ブッシュ大統領並びに米国政府に対しては、日本の立場ということを体しまして常々伝えているところでありますので、この問題の早期解決にこれからも努力していきたいと考えております。

東門委員 県民の立場に立って、ぜひよろしくお願いいたします。

 日本国憲法の役割についてお伺いいたします。

 三十二年前の五月十五日、沖縄は念願の本土復帰を果たしました。我が国で唯一の地上戦が行われた沖縄では、多くの民間人犠牲者を出すとともに、戦後は、米軍の統治のもと、土地が強制収用され、米軍基地建設が行われ、今なお広大な米軍施設が存在しています。こうした経験を持つ沖縄県民にとって、今回提案されている事態対処法制関連十法案は過去の悲惨な経験を想起させるものだと言えます。

 四月十九日、本委員会の質疑で、総理は、いわゆる国家緊急事態に対処する必要な法制を整えることが当然の責任であり、できるだけ早く整えていく必要がある旨、答弁されています。

 しかし、昨年成立した武力攻撃事態対処法等有事関連三法及び今回の一連の法案は、憲法の目指す戦争をしない国から戦争のできる国への転換を図るものであり、容認できるものではありません。

 平和憲法は、沖縄県民のあこがれであり、本土復帰運動の牽引力でした。憲法あるがゆえ、戦後、我が国は一切の武力紛争に巻き込まれなかったのであり、今後も、この憲法を守り、近隣諸国との信頼醸成措置を図ることこそが政府の当然の責務であると考えます。真に国民を保護するためには、憲法を遵守し、政府が戦争を起こさなければよいのです。

 そこで、総理にお尋ねしますが、総理はこれまで果たしてきた我が国の平和憲法の役割及び今後担うべき役割についてどのようにお考えか、お聞かせください。

小泉内閣総理大臣 憲法はその国の基本法ですから、あらゆる法律が憲法の精神を尊重してつくられているわけであります。日本国としても、戦後、二度と戦争を起こしてはならない、平和のうちに、個人の自由、基本的人権、これを尊重しながら国民生活を豊かにしていこうというその憲法の理念に沿って、今日まで日本の平和と安定を確保してきたわけであります。今後とも、その憲法の基本的人権、そして、二度と戦争を起こしてはいけないという国民の願い、これについて、どのような対応が有事に対してなされるかということと矛盾するものではない。

 有事にどう対応するかというのは、まさに国民の基本的人権をいかに守るかということなんです。この有事の対応は、国民の基本的人権をじゅうりんするものではないんです。むしろ、緊急事態、いわゆる有事というものは今想定できない、混乱が起きた事態に何の法的整備もない、どういう省が、どういう人たちがこの混乱状態、緊急事態に対応するか、起こってから考えるのでは国民を守れないでしょう、国民の安全を確保できないでしょうという観点から、今、有事ではないけれども、平時だけれども、そういう事態を想定して法整備をしていこうというのが、今審議されている関連七法案の問題であります。

 ですから、有事に対応すると有事が起こるという観念ではなくて、混乱が起きた場合に右往左往しないように、整然と国民の権利を保護できるように、国民の安全を確保できるように今から考えておこうというのが今の有事関連法案であります。

 だからこそ、自民党、公明党、民主党、与党、野党の立場がありますけれども、こういう問題については、国民全部が不安に思っている、関心を持っている、だから政党の立場を乗り越えて国民の安全をいかに混乱状態の中でも守ることができるかという対応でありますから、決して憲法をじゅうりんしているわけではない。憲法の理念に沿って今の法制の枠組みを考えているわけであります。

 この点をぜひとも御理解いただきたいと思っておりますし、今後、憲法改正につきましては、各政党が案を出してくるでしょう。自民党も来年の秋には一つの案をまとめますから、その際についても、今までの、基本的人権、そして、平和をいかに守っていくか、個人の自由を確保していくか、そういう基本理念は当然尊重されなければならないと私は思っております。

東門委員 これまでの総理の憲法観と同じかなという思いで聞いておりましたけれども、最後にもう一点だけ、やはり質問をしておきたいと思います。

 政府の説明によりますと、米軍は、武力攻撃事態に際しても、日米地位協定に基づいて我が国国内法を尊重する義務を負います。この点について、本委員会において、川口外務大臣は、米軍が武力攻撃事態等において国際法に従って行動するということについては確信しているなどと答弁されていますが、沖縄県など米軍基地が所在する地域において米軍による事件が後を絶たないことを見れば、武力攻撃事態においても米軍が国内法を尊重するとは到底思えません。さらに、先日の米兵によるイラク人虐待事件における米兵の残虐な行為は明らかにジュネーブ条約違反であり、国際人道法でさえ遵守しない米軍が我が国の国内法を尊重するはずがないという思いを新たに印象づけるものでした。

 外務大臣は、あくまでも地位協定の運用改善で問題を解決していく旨、答弁をされておりますが、それでは根本的な解決にならず、私どもとしては納得できるものではありません。政府は、地位協定の改定をしないというのであれば、武力攻撃事態等において活動する米軍に国内法を尊重させるため具体的にどのような措置をとるつもりなのでしょうか。総理の御見解をお伺いしたいと思います。

自見委員長 質疑時間が終了いたしますので、簡潔にお願いいたします。

川口国務大臣 考え方については繰り返しません。一般国際法、これに基づいて米軍は行動をするということでございます。

 具体的にということでございますが、もし何らかの形で米軍が何かの問題に遭遇する等々のことがございました場合には、これは、日米両政府は常にこういった状況において調整メカニズムということを運用しているわけでございますので、そこを通じまして日米間の協議、調整等を行っていくということによって、適時適切に対応するということになると思います。

自見委員長 東門君、簡潔にお願いします。

東門委員 はい。

 大臣、そうお答えになりますが、日常茶飯事的にその協議が何の役にも立っていない。車庫証明の件でも、六年間かかってもまだ整理できない。平時に、いろいろな問題があるわけですよ。それが、有事になったら国内法を尊重できるということ、協議をしますと。終わってから、ずっと後になって協議して、まだわかりませんというようなことが起こり得るということを私は申し上げているんです。

 具体的にお答えください。いつも具体的な御答弁がないということ、全然何も持っておられないのかなとさえ思わざるを得ません。

 これで終わります。

自見委員長 これにて各案件及び両修正案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

自見委員長 この際、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案に対する修正案について、国会法第五十七条の三の規定により、内閣の意見を聴取いたします。井上国務大臣。

井上国務大臣 武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案に対する修正案につきましては、政府といたしましては特に異存はございません。

 以上です。

自見委員長 この際、休憩いたします。

    午後三時八分休憩

     ――――◇―――――

    〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕


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