衆議院

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第2号 平成17年3月31日(木曜日)

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平成十七年三月三十一日(木曜日)

    午前九時三十六分開議

 出席委員

   委員長 玉沢徳一郎君

   理事 石破  茂君 理事 自見庄三郎君

   理事 西田  猛君 理事 宮腰 光寛君

   理事 加藤 公一君 理事 前原 誠司君

   理事 松本 剛明君 理事 河合 正智君

      岩屋  毅君    大前 繁雄君

      大村 秀章君    金子 一義君

      城内  実君    佐藤  錬君

      柴山 昌彦君    菅  義偉君

      菅原 一秀君    谷  公一君

      津島 恭一君    仲村 正治君

      根本  匠君    萩山 教嚴君

      鳩山 邦夫君    浜田 靖一君

      松宮  勲君    茂木 敏充君

      渡辺 博道君    泉  健太君

      大畠 章宏君    城井  崇君

      楠田 大蔵君    近藤 洋介君

      田嶋  要君    土肥 隆一君

      中塚 一宏君    中野  譲君

      長島 昭久君    平岡 秀夫君

      細野 豪志君    松本 大輔君

      室井 邦彦君    横路 孝弘君

      若井 康彦君    江田 康幸君

      谷口 隆義君    赤嶺 政賢君

      山本喜代宏君

    …………………………………

   国務大臣

   (内閣官房長官)     細田 博之君

   国務大臣

   (有事法制担当)     村田 吉隆君

   国務大臣

   (防衛庁長官)      大野 功統君

   防衛庁副長官       今津  寛君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   防衛庁長官政務官     北村 誠吾君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    阪田 雅裕君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  増田 好平君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  大石 利雄君

   政府参考人

   (防衛庁長官官房長)   北原 巖男君

   政府参考人

   (防衛庁運用局長)    大古 和雄君

   政府参考人

   (防衛庁人事教育局長)  西川 徹矢君

   政府参考人

   (消防庁次長)      東尾  正君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    河相 周夫君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房技術総括審議官)       松谷有希雄君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           岡島 敦子君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局長)           小島比登志君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      安達 健祐君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁原子力安全・保安院次長)    三代 真彰君

   衆議院調査局武力攻撃事態等への対処に関する特別調査室長          前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

一月二十八日

 辞任         補欠選任

  下条 みつ君     長島 昭久君

二月十日

 辞任         補欠選任

  吉野 正芳君     西田  猛君

三月三十一日

 辞任         補欠選任

  菅原 一秀君     大前 繁雄君

  近藤 洋介君     松本 大輔君

同日

 辞任         補欠選任

  大前 繁雄君     菅原 一秀君

  松本 大輔君     近藤 洋介君

同日

 理事吉野正芳君二月十日委員辞任につき、その補欠として西田猛君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 武力攻撃事態等への対処に関する件


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     ――――◇―――――

玉沢委員長 これより会議を開きます。

 理事の補欠選任についてお諮りいたします。

 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

玉沢委員長 御異議なしと認めます。

 それでは、理事に西田猛君を指名いたします。

     ――――◇―――――

玉沢委員長 武力攻撃事態等への対処に関する件について調査を進めます。

 この際、国民の保護に関する基本指針について、政府から説明を聴取いたします。村田国務大臣。

村田国務大臣 去る三月二十五日に閣議決定しました国民の保護に関する基本指針について御説明いたします。

 平成十五年六月に事態対処法が、また昨年六月に国民保護法が成立したところであります。この基本指針は、国民保護法に基づき政府が策定したものであり、以下、その主な内容について御説明いたします。

 国民保護措置の実施に当たって留意すべき事項を明らかにするため、武力攻撃事態の想定を、

 1着上陸侵攻

 2ゲリラや特殊部隊による攻撃

 3弾道ミサイル攻撃

 4航空攻撃

の四つの類型に整理し、住民の避難、避難住民等の救援、武力攻撃災害への対処などを実施する際の留意事項を定めています。

 また、特にNBC攻撃(核兵器、生物兵器、化学兵器による攻撃)に対する対応についても、その特徴や留意事項を定めています。

 国及び地方公共団体等は、国民保護措置を実施するに当たり、基本的人権の尊重、国民の権利利益の迅速な救済などに留意して、これを行うこととしています。

 住民の避難については、まず国の対策本部長が警報を発令するとともに、住民の避難が必要な場合は、都道府県知事に対して避難措置の指示をし、これを受けた都道府県知事が市町村長を通じて住民に対して避難の指示をし、市町村長が避難住民の誘導に当たることとしています。

 避難住民等の救援については、国の対策本部長から指示を受けた都道府県知事が、収容施設の供与や食品の給与等の救援を実施することとしています。

 武力攻撃災害への対処については、国及び地方公共団体が、それぞれの役割分担に応じて、武力攻撃災害の発生や拡大の防止に必要な措置を実施することとしています。

 こうした国民保護措置の実施に関し、その方法や役割分担など、具体的な運用事項を定めています。

 地域の特性に応じた避難に当たっての留意事項としては、

 1大都市においては、直ちに近傍の屋内施設に避難するよう指示し、その後の事態の推移に応じて適切に避難措置を指示すること

 2沖縄県や離島においては、避難に当たっての交通手段が限られるため、国が必要な支援を行うこと

 3原子力事業所周辺においては、原則として屋内避難を指示し、他の地域への避難が必要な場合は、当該避難を指示すること

 4自衛隊施設・米軍施設等の周辺地域においては、避難経路の確保が円滑に行われるよう、国が必要な調整を実施すること

などを定めています。

 また、平素からの実施体制の整備としまして、地方公共団体においては当直等の強化を図り二十四時間即応可能な態勢の確保に努めること、また、国及び地方公共団体は、国民保護措置の実施に当たって国民の協力を得られるよう、平素から国民保護措置の重要性等について啓発を実施するほか、国民保護訓練を実施するよう努めることなどを定めています。

 さらに、武力攻撃に準ずるテロ等の事態、すなわち緊急対処事態においても、武力攻撃事態等における国民保護措置に準じた措置を実施することを定めています。

 今後、この基本指針に基づいて、指定行政機関及び都道府県が国民保護計画を、指定公共機関が国民保護業務計画を作成することとなっておりますので、何とぞ御理解、御協力をお願いします。

玉沢委員長 以上で説明は終わりました。

    ―――――――――――――

玉沢委員長 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官増田好平君、内閣官房内閣審議官大石利雄君、防衛庁運用局長大古和雄君、防衛庁人事教育局長西川徹矢君、消防庁次長東尾正君、外務省北米局長河相周夫君、厚生労働省大臣官房技術総括審議官松谷有希雄君、厚生労働省大臣官房審議官岡島敦子君、厚生労働省社会・援護局長小島比登志君、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長安達健祐君及び資源エネルギー庁原子力安全・保安院次長三代真彰君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

玉沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

玉沢委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石破茂君。

石破委員 自由民主党の石破であります。

 今、村田大臣から、国民の保護に関する基本指針の御説明がありました。私としましては、これを大変高く評価させていただきたいと存じます。

 昨年、有事法制の委員会を閉じますときに、国民保護法制、多くの賛成をもって可決いたしました。その際に、どなたでしたか、こういうことをおっしゃいました。これで法律はできた、しかしながら、実際にこれがきちんと動くかどうかはこれから先のお話で、仏つくって魂入れずにならないようにという指摘をいただいて、私は政府側の一員として大変にそれを重く受けとめた次第でございます。どんなに立派な仕組みをつくっても、動かなければどうしようもないということでありまして、その旨、政府はよく留意して努力をいただきたいと思っております。

 この委員会におきましては、昨年の五月二十日、緊急事態基本法について、自民、公明、民主三党で合意をいたしました。「緊急事態基本法(仮称)についての覚書」というものを交わしております。すなわち、そこに書かれておりますのは、三党は「緊急事態基本法(仮称)の制定の必要性に鑑み、ここにその骨子について了解し、次期通常国会で成立を図ることを合意する。」

 次期通常国会というのはこの国会のことでございます。この国会におきまして緊急事態基本法をつくるということで三党が合意をいたしております。これは非常に重いものでありまして、有事法制を通しますときに、これはやらねばならないということで三党が合意をいたしております。このことにつきまして、我が自民党の中におきましても今議論を詰めております。民主党さんにおいてもそのような作業が進んでおると承知をいたしておりますし、公明党さんにおかれましても同様でございます。

 このことにつきまして、それぞれの骨子について、政府のお考えをまずお尋ねいたしたいと思っております。

 この骨子というのは六項目から成っております。まず最初は、緊急事態の定義をどうするかということでございます。これは、ほかの法制とよく整合をとりながら、安全保障会議設置法等々の規定とよく整合をとりながら、射程距離がどこまでなのかということを定める作業が必要であると考えております。

 二番目の、緊急事態における基本的人権の尊重、これは常に議論されることでありますが、当然のことでございます。ただ、憲法と重なる規定をどのように書くのかという議論は必要であると私は考えております。

 三番目、国民の役割をどうするかということでございます。国民、そして国、地方公共団体の役割をどうするかでありますが、特に問題となりますのは、国民の責務というものをどう考えるかということでございます。

 昨年の委員会において、さて、民間防衛的な組織をつくることが必要であるかどうかという議論がございました。政府としては、そのような民間防衛組織というものを、きちんとしたものというのは考えてはいるけれども、基本となるのはボランティアである、みんなの自発的な意思によってそういうものをつくるのであるということであって、民間防衛組織というのはかくなるもの、かくなるものをこのようにしてつくるのだということを提示することはいたしませんでした。民間防衛というのは、別に国民が竹やりを持って戦うわけでも何でもなくて、避難等々においてどういう役割を果たすかということでございますが、このことについてどう考えるか、政府からお考えを承れればありがたいことであると思っております。

 問題はどれかといいますと、五番と六番です。

 緊急事態における国会の関与というのは、これはある意味、それぞれの法律に規定がございますから、理念的な訓示規定になるだろうと私は思っております。

 問題は五番の、緊急事態における内閣総理大臣の権限、具体的にどのように書いてあるかといいますと、「緊急事態における迅速かつ的確な内閣総理大臣の意思決定を確保するため、閣議との関係を検討する。」これが合意事項でございます。さて、これを政府としてどのようにお考えになるかということであります。

 昨年、中国の潜水艦が入ってくるという事態がございました。潜没潜水艦に対します対応につきましては、これは海上警備行動を下令するわけでございますけれども、迅速な閣議決定の仕組みというものをあらかじめ担保してございましたので、閣議を開いてそこにおける合意を得てということを外しまして、防衛庁長官から内閣総理大臣という形で行われたわけでございますが、事は潜没潜水艦だけではございません。

 例えて言えば、九・一一におけるニューヨークに民間の旅客機が突っ込んだということがございました。そのときにどうするのということで、きちんとした方針は今政府で、私は、確たるものがあるとは承知をいたしておりません。

 しかしながら、そのときに考えるんだということで対応ができるものかといえば、私は決してそうだとは思っていないのです。そのときにどうするのということはあらかじめ決めておかなければいけないし、そのときに、では一々閣議を開くのかねといえば、それはそうでもないでしょう。しかしながら、憲法並びに内閣法において定められた閣議の位置づけというものを考えた場合に、では、内閣総理大臣はこれはこうするというふうにすべてすっ飛ばしてやっていいかといえば、それは決してそうでもないのだ。

 では、あらかじめどうするのだという手順等々を閣議において決めておく、潜没潜水艦の例のようなもの、ありとあらゆる想定される事態について定めておくことは、私はこれは必要なのだと思っておるのです。

 今の法律において、例えば九・一一同時多発テロ、飛行機が突っ込むというようなことがこの国で起こったとしたならば、私は、今考えられるのは、航空自衛隊に対して治安出動を下令する、どう考えてもそれぐらいしか残らないだろうと思うのですね。領空侵犯措置で常に対応できるかといえば、そうではない。もし撃墜まで含むのだということを考えるならば、それはそういうことになるのではないか、これもまだぎりぎり詰めたわけではありませんけれども。

 では、どのような場合にどう対応するかということをあらかじめ定めておくことは極めて肝要なことではないかと思いますが、大臣の御見解を承りたい。

村田国務大臣 今、石破委員が御指摘なさいましたように、昨年の国民保護法の審議の過程でもって与党と野党との間で覚書が交わされまして、それに基づきまして緊急事態基本法につきまして骨子を含めて協議が調ったということで、今、与党と野党の間でも、特に与党の中でもそうした基本法につきましてどうするかということについて協議が行われているということを政府といたしても承っておりますし、政府といたしまして、そうした与野党の覚書についての重要性は深く認識しているわけであります。

 今、石破委員が御質問をいただきました点につきましては、国あるいは国民の安全に対しまして重大な影響を及ぼすようなさまざまな緊急事態、これについて的確に対応していくということは国の責務であると私ども認識をしております。突発的に生ずる緊急事態についていろいろな想定をして、緊急に対応できるようにあらかじめできる限りの準備をしておくべきではないか、そういう御意見についても、私どもそのとおりであろうかというふうに思います。

 ただ、その手順、閣議決定等の手順を含めてどうするのか、あるいは手順を定めるに当たっての形式等、こういう問題につきましては、今、まず、そうしたあらかじめ想定していく事態とはいかなるものか、あるいはそういうものをどういう形で定めるかということにつきましても、不断の政府の努力として内閣官房で検討しているものと私どもは考えております。

石破委員 これは大臣、あらかじめ、ありとあらゆるものについてどうするんだという対応を決めておかなければならないものだと思いますよ。そのときになっていきなり六法を持ってきて、一体ではどれで対応するんだと言っているうちに事態はどんどん深刻化するわけですね。

 これは私個人の考えで、まだ党として決めたわけではありませんが、私は、こういう基本法を書きますときに、政府はあらかじめ閣議においてその方針を定めておかねばならない、あるいは、大臣が後段おっしゃったように、不断の見直しを行わねばならない、そのような規定は基本法の中において必要であると思っております。そのことをまず申し上げておきたいと思います。

 二番目に、政府の仕組みでございます。

 御存じのとおり、例えば安全保障会議というのがあります。これは設置法を読むとすぐわかるんですが、安全保障会議というのは、防衛計画の大綱とか中期防とか防衛予算であるとか、そういうものを政策面で審議をするという機能を持っています。もう一つは、現実の緊急事態への対処に関与するという機能。つまり、じっくりやるものと緊急に対応しなきゃいけないものと、二つの仕事を安保会議というのは持っているわけです。本当にそれで対応できるのだろうかということでございます。

 ある意味で、安保会議の機能を分けまして、そういうじっくり審議をすればいいものと緊急に対応しなきゃいけないもの、これは分ける必要が私はあるのではないかというふうに考えております。そういたしますと、機能を分けまして、安保会議のほかに国家緊急事態対処会議的な組織というのは必要ではないのだろうかと考えておりますが、お考えを承りたい。

村田国務大臣 基本法の制定に当たりまして、石破先生がそうした体制についての御意見をお持ちであるということは私も存じております。

 政府といたしましても、そうした緊急事態に対処する体制のあり方について完全なものにしていくということは必要であると認識しておりますが、具体的にどういう方法がいいかということにつきまして、私どもは、与野党の協議の結果を待ちたいというふうに思っております。

 ただ、問題といたしましては、今申しましたように安全保障会議もございますし、既存の組織との関係とか法令との絡み合い、あるいは組織として効率的であるか、そういうこともあわせて考えていかなければいけない事項であると私どもは考えているわけでございます。

石破委員 大臣おっしゃいますように、本当に今のままでベストかどうかというのは、与野党でよく議論をしていきたいと思っています。

 確かに、仕組みは整っているんです。実際にそれが本当に動くんですかということが問題であって、いろいろな災害に対していろいろな対策本部ができる、いろいろな法律があります。だけれども、何かが起こったときに、じゃ、これをこう動かせというのが常に有効に動いているかどうかというのはこれはまた別の問題でございますので、この検証並びに議論というものは与野党でもしていきますし、そしてまた政府も真摯に対応いただきたいと思っております。

 時間も参りましたので、最後に一つ承りたいと思います。情報についてどう考えるのかということです。

 早い情報というのは間違いが多いんですね。正確な情報というのは遅いんですね。これをどうするんだという話ですし、情報というのは外務省からも警察からも防衛庁からも公安調査庁からも、いろいろなところから入ってきて、大臣もそうかもしれませんが、一体何が本当なんだということを叫びたくなることがあるわけですね。しかしながら、これにどう対応するか、内閣の情報に対する対応の組織づくりというものが今のままで万全かどうかということでございます。

 今、内閣情報会議というのがございます。この内閣情報会議というのは、法律によってつくられたものではございません。この内閣情報会議というものをきちんと法律上位置づけ、そして権限を与えるということは、私は重要なことじゃないかと思っています。内閣官房及び内閣総理大臣にそのような権限はございますから、今さら法律上そんな権限を与えなくてもいいじゃないかということは議論としてあるのかもしれませんけれども、やはり法律上ちゃんと位置づけること。そして、例えば情報請求権のような権利を、つまり、いろいろな役所というのは情報を出し惜しんだり、ここへ出すとほかの役所にばれちゃうからやめておこうとか、秘書官の耳打ちにとどめようとか、不思議なことが時々起こるわけでございます。

 情報会議というものをきちんと法律上位置づけ、もう一つ肝要なことは、専門の職員、専従の職員を養成する。そして、何年かたったらもとのお役所に帰るということではなくて、専従の職員をきちんと必要なだけの人数を配置するということが情報面においては肝要なことだと思いますが、いかがですか。

村田国務大臣 内閣情報会議をどうするか、それでは不十分ではないか。私も、防災担当をやってきました大変短い経験でも、正しい情報が伝わることがその後の態勢をとるにつきましても死命を制するほど重要だということは、少ない経験で存じております。

 この情報の収集・分析体制を万全なものにするということは、今、内閣情報会議というものがあって、その下に合同会議というものがあって、一応整っているわけでございますが、私ども、そうした緊急事態に対処するために、この情報収集・分析体制をどうするかということは、不断に改善していかなければいけないと考えております。

 先生御指摘のように、今は閣議決定に基づいている会議でございますが、これを法律根拠に基づくかどうかということについては、いろいろな議論があろうかと思いますが、これも含めまして検討を要するべきことではないかというふうには私は認識をしております。

 それから、知見を有する専門的な要員が常にいることが必要ではないかということでございますが、これも安全保障と防衛力に関する懇談会でも指摘されたところでありまして、私どもも、先生の御指摘なさいますように、専門家の養成それから確保というのは不可欠であるというふうに考えております。

石破委員 終わります。

玉沢委員長 自見庄三郎君。

自見委員 自由民主党の自見庄三郎でございます。

 武力攻撃事態対処に関する特別委員会、きょうは基本指針が発表されたわけでございます。今石破前長官の質問にあったのは、民間防衛という概念ですね。昨年、たまたま私、ゆえあって委員長をさせていただいて、久間筆頭、前原筆頭から大変お助けいただいたわけでございますが、やはりこの民間防衛という概念、私は、それが少しこの前抜け落ちていたのかなというような気もいたします。

 特に、防災だとかあるいはけがをした人を救うとか、そういう自主的な民間の創意といいますか、それがやはり基本的には非常に大事になってきます。百里の道も一歩からということがあります。私は、戦後五十九年、こういう有事法案、有事関連法案ができなかったわけですから、これは一歩一歩、あるいは半歩半歩、本当に国の安全保障ということは大事なことですから、そしてそれは国民全体を結局は守ることですから、そのことを踏まえて、民間の防衛ということが、そういった概念あるいはシステムを次の段階としてやはり充実していく必要があるというふうに思っております。

 きょうは、実は私の質問は、マラッカ海峡における船舶襲撃拉致事件、これが三月、今月起きたわけでございまして、国民の非常に大きな関心を呼んだわけでございます。

 私は、昨年の八月、九月、おかげさまで、当委員会の委員長として、久間筆頭、前原筆頭ともども、この委員会の御許可をいただきまして、スウェーデン、英国あるいはカナダ、アメリカにも行かせていただきました。そのとき、本当に私が感じたのは、九・一一以来、世界の国家の安全保障に対する概念というのは非常に大きく変わってきた。まさにそれまでは国家対国家だった。しかし、九・一一以来、国家と言うなればアルカイダのような非国家が、巨大なニューヨークのワールドトレードセンター、私も何回か上ったことがありますけれども、あれを瞬間にジェット旅客機で爆破する、そういったことが今の危機の原因だと私は思っております。

 私、実は竹下さんと一緒にトロント・サミットに行かせていただきまして、ちょうど帰りにシカゴで、竹下さんを迎えての、イリノイ州初め、たしかたくさんの州知事さんのシッティングのパーティーがございまして、たまたま私の横が今のアメリカの国防大臣でした。そのとき彼はこう言いました。米ソの冷戦構造が終わるにしても、大きな大蛇は世界でいなくなる。しかし自見さん、小さな毒蛇、毒ガがいっぱいうようよし出すよ。それは言うなれば国境紛争であり、民族間の対立であり、宗教的な対立だ。そういったことが非常にこの世界を覆うようになるというふうに、確かにあれは炯眼でしたね。そう言ったのをよく覚えております。今、テレビで見ても、まあいろいろございますが、まさにそういった時代になったのかな、こう思うわけでございます。

 今、私が何を言いたいかといいますと、安全保障という概念が広くなってきた、広義になってきた。前は、国家と国家だ。海賊というのは物取りだ、強盗だ、その程度に考えられていたのが、今はその海賊行為、これはいろいろ国際的定義がありますよ。いわゆる武力によって、暴力によって公海上の船舶を占拠するんだ、いや、それはしかし、公海上でもないんだというふうな定義もあるようでございますが。

 そういった中で、言うまでもなく、我が国石油の八〇%、エネルギーの八〇%近くマラッカ海峡を通ってくる船舶によってこの日本国の経済は成り立っているわけでございますし、また、御存じのようにマラッカ海峡を通る二〇%の船は日本国の船でございまして、まさにマラッカ海峡こそは日本国経済、社会、国家の動脈線でございます。

 そこで今回、御存じのように三月十四日、北九州市の、恐縮でございますが、私は北九州の出身でございまして、近藤海事に所属するタグボート韋駄天がマラッカ海峡のペナン島沖で海賊の襲撃を受けた。犯人はまだわかっておりませんが、一説によると、事件は、インドネシア・アチェ州の独立武装組織、自由アチェ組織のメンバーによる犯行の可能性が高いとの指摘もある。これはたしか、私も船長さんの記者会見を聞きましたが、非常に訓練された五人の兵士のような感じがしたというようなことを聞きまして、そういったこともあるのかなと。

 それから、ロケット砲と銃で武装した海賊が突然あらわれて乱射をし始めた。何か、専門家によりますと、ロケット砲を持っているかどうかが非常にポイントで、普通の物取りとか泥棒だとせめて刀とか鉄砲だというんですね。ロケット砲を持っているというのは、やはりかなり組織的なものじゃないかという専門家の御意見もあります。タンカーがロケット砲でねらわれると一発らしいんですね。十万トン、二十万トンのタンカーが、ロケット砲でやられますと燃えますからね。

 それは余談でございますが、そういった、まさに乱射をし始めて、Tシャツに長ズボン、はだしのままの船員がなすすべもなくただ凍りつくばかりであって、銃を突きつけられて三人拉致された。御存じのように、三人はジャングルの中を転々と移動されて、結果は本当に、日本国政府、また地元の北九州市も対策本部をつくっていただきましたが、無事に結果的には解放されたことを率直に喜びたい、こう思っております。

 その過程におきまして、政府の方も対策本部をつくっていただきました。海上保安庁あるいは国土交通省あるいは外務省あるいは警察庁、そして内閣官房危機管理監ですね。次の日、北九州市に対策本部をつくって、末吉興一市長さんが御上京されましたので、私も、大変僣越でございますが、海上保安庁長官あるいは外務省の領事局長あるいは危機管理監に直接お願いをいたしまして、その夜、玉沢委員長の招宴がございましたので、官房長官初め、当然村田大臣にも、それから外務大臣にもお願いをさせていただいたわけでございます。

 海賊事件としては比較的短い時間で無事解放されたということを、私、政府の対策本部のそれぞれに、徹夜で頑張っていただいた方もおられるという話でございますが、大変敬意を表するわけでございます。

 私があらかた言ったわけでございますが、ぜひ大臣から、こういったことも実はあったのだと、言えることと言えないことがあると思いますが、そのことについて、政府が事件解決に向けてどのような措置を講じたのかということについて何かコメントがあれば、村田大臣、よろしくお願いします。失礼いたしました。外務副大臣、どうぞ。

逢沢副大臣 先般のマラッカ海峡におきます日本船舶襲撃事件、船員初め、船長、機関長三名が誘拐、人質にとられるという大変な事件が起こりましたけれども、関係者の方々の大変な努力によりまして無事に事件が解決できたことを評価いたしたいと思います。

 外務省におきましては、事件発生直後に、領事局長を長といたします対策本部を設置し、早速関係省庁と密接な連携をとる作業を立ち上げたわけであります。また、現地におきましては、マレーシア、インドネシア及びシンガポールの日本国大使館、総領事館におきまして直ちに情報収集に全力を尽くす作業を開始いたしまして、同時に、関係国政府に対し、被害者の安全確保について最大限の協力を要請いたしたところであります。そういった活動を踏まえ、マレーシア、インドネシア各国、関係当局により、被害者の安全確保に向けた捜索が行われる等、各国からの協力を得ることができたわけでございます。

 近藤海事、関係企業との連絡、また自見先生おっしゃいましたように、北九州市の市長さんも早速上京されました。北九州市当局とも密接な連携をとりながら、政府として、また外務省として最大限の努力をさせていただいたところでございます。

自見委員 特にマラッカ海峡におけるいわゆる海賊、これは一九九九年のレインボー号事件というのが大きなきっかけになったと私は思います。当時の小渕総理大臣がASEANプラス1で、また、森総理そして小泉総理はアジアの海賊対策協定の提案をASEANプラス3でされました。

 実は、昨年でございますか、東京でASEANプラス6ということで、ASEANの十カ国プラス中国、韓国、日本、そしてインド、バングラデシュ、スリランカというのが当事国だと思いますが、そこで、いわゆるアジア海賊対策地域協力協定ということを提唱されて、まだ締結には至っておりませんが、海賊取り締まりのために相互に協力する義務を有するということでございます。海賊というのは、あっちの領海、こっちの領海、領海にはほかの国は基本的に入れませんから、そういったことを逆に悪用して非常にはびこっているというのも現状だと思います。

 また、経済のバーツ危機あるいはインドネシアの政情不安のときに非常にふえたというような話もありますし、また、米ソの冷戦構造のころは世界の海というのは海賊が余り出なかった。一九九一年に米ソの冷戦構造が崩壊して、特にインドネシア、あるいはマレーシア、シンガポール、こういった国の景気が疲弊して、海軍の予算といいますか、当然コーストガードだとか、あるいは海上警察だとか、あるいは取り締まり、各国によりましていろいろありますけれども、そこで能力が落ちたので非常に海賊がふえたという話もございます。

 その辺を、やはり国際的な連絡機能をきちっとつくっていくことが大事だと私は思います。アジア海賊対策地域協定につきまして、ぜひ前向きにやっていただきたいと思うわけでございますが、その点について、外務省、いかがお考えでございましょうか。

逢沢副大臣 先生御指摘のように、マラッカ海峡を初めとする南東アジアの海、大変海賊が横行する、また、ジェマー・イスラミアを初め、イスラム過激派テロ集団も割拠する、横行する、そういった治安上大変問題のある地域であるという基本認識を私ども持っております。

 我が国にとりましては重要なシーレーンでもございます。国民生活あるいはまた経済にも大変大きな影響があるわけでありまして、そういう立場からも、マラッカ海峡初め南東アジアの海の安全の確保、積極的に取り組んでいかなくてはならないと考えます。

 御指摘のアジア海賊対策地域協力協定でありますが、当然のことながら、これは我が国として、早期に発効させるということが大変重要であると考えております。この協定は、二〇〇一年十一月のASEANプラス3におきまして小泉総理が、アジアの海賊問題に有効に対処すべく、地域協力促進のための法的枠組み作成を提案したことがスタートでございますから、当然のことながら日本がいろいろな意味でイニシアチブをとっていくということが必要であると考えるわけでございます。

 まだこの協定について締約をした国は残念ながらないわけでありますが、我が国の気持ちといたしましては、まず日本がその先鞭をつける。そして、さまざまな国にテロ防止関連条約の締結を含めた技術支援、協力、訓練等々の場を提供する、既にそういったことを鋭意行わせていただいているわけでございますが、今後も積極的に対応してまいりたいと存じます。

自見委員 今の逢沢副大臣の大変確信を得た御答弁だと思いますが、特に、インドネシアから、海上保安船舶の供与について大変向こうの大統領からも強い要請があるという話でございました。武器輸出三原則の問題もございますが、ある一定の小さな船は武器に入らないというような基準もあるというように聞くわけでございますから、もう答弁は要りませんけれども、ぜひこれは積極的に、五月には調査団を出すというような話も聞いておりますけれども、しっかりやっていただきたい、こういうふうに思っております。

 それから、やはり何でも人でございまして、最後の質問にさせていただきますが、昨年、さっき言いました議員団、スウェーデンに行きまして、スウェーデン国際センター、SWEDINTというのを我々訪問させていただいたんです。国連PKOでございますけれども、各国の軍人、警察官、文民を包括的に迅速に訓練をするセンターを見てまいりまして、日本の防衛庁もそれに何百人か行って訓練を受けたという話を聞いたわけでございますけれども、そのときに説明した武官が、同じかまの飯を食うことが大事だという話を聞いたんですよ。こんな言葉は東西ともに変わらないんだなと思いまして、私よく覚えているわけでございます。

 やはり気心が知れているということがお互いに大事でございます。私は、日本国が今そういった協定も主導的役割を果たしているということでございますから、アジア各国から軍人あるいは警察官、文民などを集めて研修を行い、国際センターのようなものを設置することをぜひ提案したい、こういうふうに思うわけでございます。

 国際センターでの訓練を地上のみならずマラッカ海峡などで行えれば、艦船や警備の船がいることで海賊は大変活動しにくくなるというようなことも、防ぐ効果が得られるではないかと思いまして、ぜひ日本国に、まさに国益の本当に根幹でございますから、こういった国際センターを設置すべきだと私は思うわけでございますが、外務副大臣、いかがお考えでございましょうか。最後の質問でございます。

逢沢副大臣 大変重要な点について御指摘をいただき、また積極的、前向きな御提案をいただいたものと承知をいたしております。

 実は、私自身も、かつてスウェーデン・ストックホルムに参りましたときに、先生御指摘のそのセンターを視察させていただいた経験がございます。大変有効にそのセンターは機能し、人材の輩出という意味では大変な効果、貢献を上げておられるというふうに私も承知をいたしております。

 実は、南東アジア地域におけますさまざまなテロ対策関連センター、いろいろと議論をされ、既に設置されてきたものもございます。例えば、南東アジアテロ対策地域センターはマレーシアに設置されておりますし、タイ国際法執行アカデミー、これはタイに、また、ジャカルタ法執行センターがインドネシアに設置されております。

 また、私が参加させていただきましたバリにおきますテロ対策閣僚会議、これは昨年の二月に行われたわけでございますが、ここでも幾つかの取り決めが合意されました。

 そういう既存の組織、センター、それとの兼ね合いも考えながら、先ほども申し上げました海賊対策、また、テロに対して脆弱なこの地域をいかにテロに強い地域に変えていくか、有効なセンターのあり方というものはどういうものであるか、関係当局とも積極的に議論を重ねて、有効な手だてをとってまいりたいと存じます。よろしくお願いいたします。

村田国務大臣 国家公安委員長として答弁を申し上げますが、そうした外国の警察官の国内におきます研修、犯罪捜査のためのいろいろな鑑識等の技術指導というものをやりながら、アジア周辺諸国を中心として人間関係をつくるということは、私も大変、これからやるべき施策の一つだと考えております。今、警察大学校で既にインドネシアを中心にやっているわけでありますが、もうちょっと積極的にやりたいと考えております。

 この前、パプアニューギニアのソマレ計画大臣がお越しになりまして、パプアニューギニアはオーストラリアから警察官そのものを受け入れて治安の維持に当たっているみたいなんですが、警察官の指導をお願いしたい、そういう要望がありまして、私ども、積極的にJICA等を通じまして受け入れたいというふうに考えて、そういうことを御披露させていただきたいと思っております。

自見委員 どうもありがとうございました。

玉沢委員長 次に、江田康幸君。

江田委員 公明党の江田康幸でございます。

 本日は、今般閣議決定をされました国民保護基本指針を中心に質問させていただきたいと思います。

 国民保護基本指針は、我が国が武力攻撃や大規模テロを受けた際の国民の避難・救援などの対応を規定するものでございます。昨年成立しました武力攻撃事態対処法、また国民保護法の運用基準となるものでございまして、有事への対応がいよいよ実施段階に入ることになると思います。

 公明党は、国民保護法など有事法制につきまして、国民の生命財産と憲法に保障された基本的人権を守る観点から、有事法制の整備を推進してまいりました。もし有事法制がなければ、万一のときに超法規的な措置をとることになります。政府の都合で勝手に人権が制限されるおそれがあるからでございます。

 今回の国民保護基本指針には、基本的人権の尊重や、やむを得ず権利が制限された場合も必要最小限に限ることが列記されまして、損害や損失の補償規定も盛り込まれたものと評価しております。

 質問でございますけれども、改めて、今回の国民保護措置の実施に当たりましては基本的人権の尊重が重要と考えておりますが、国民の権利利益はきちんと保護されるのでしょうか。また、国民保護措置の実施に当たりましては、高齢者や障害者への配慮が特に重要かと考えますけれども、基本方針では要保護者に対してどのように配慮することになっているか、大臣にお伺いいたします。

村田国務大臣 基本的人権の尊重につきましては、既に国民保護法の中で、国民保護措置の実施に当たりまして、国民の自由と権利に制限が加えられるときであっても、その制限は必要最小限、かつまた、公正かつ適正な手続のもとに行われるべきものというふうにされておりまして、そうした国民保護法の規定を踏まえまして、基本指針におきましても、基本的人権を尊重することとしております。

 このため、例えば土地の使用等、国民の自由と権利に制限を加える場合におきましては、今申した法律の趣旨にのっとりたいというふうに考えておりますし、かつまた、それは公用令書等の交付をいたしまして、公正かつ適正な手続のもとに行わなければいけないということを指針の中に書き込んであるわけでございます。

 それから、二つ目の御質問でございますが、高齢者や障害者への配慮ということでございます。

 基本指針の中でも、そういう高齢者、障害者等保護が必要な方々について、まずは情報を的確に、確実に伝達しなければいけないことが第一点。それから第二番目としましては、病院とか老人福祉施設、障害者福祉施設など、みずから避難することが困難な者が滞在している施設においては、その管理者による避難誘導がなされなければいけないこと。それから第三番目に、援護を要する者に対する適切な救援の実施等について記載してあるところでございます。

江田委員 しっかりと、高齢者、障害者等の要保護者に対しましても基本的人権が貫かれますように、よろしくお願いしたいと思います。

 次の質問でございますけれども、今回の閣議決定を踏まえまして、都道府県の国民保護計画は平成十七年度中に作成をすることに、また市町村は平成十八年度中にこれを策定することになっております。国はひな形としてモデル計画を提示する予定と聞きますけれども、地域特性に応じて、自治体ごとに中身は大きく変わるものだと思います。

 例えば、着上陸侵攻への備えは内陸部と沿岸部とでは全く異なりますし、また、食料の備蓄やNBC兵器に対する防護整備でも自治体の格差は大きいものがございます。都道府県の中には、食料備蓄は全国一律の数値基準を設けてもらいたいとか、また、化学防護服などNBC対応の機材があるのは大都市だけであるというような具体的な指摘、また現状での課題がございます。

 政府はこの不足を補うために自治体間の広域連携を進めるとも聞いておりますが、このように、都道府県国民保護計画を作成するに当たりましては、国としても十分に支援すべき課題が多いと思いますけれども、どのように具体的に支援をなされていくか、それを明確にしてもらいたいと思います。

東尾政府参考人 モデル計画とその後の国民保護計画について御答弁申し上げます。

 まず、モデル計画でございますけれども、地方団体が計画作成の参考として作成するものでございまして、国民保護法と基本指針に基づく必要的な記載事項についてはすべて盛り込むこととしておりますけれども、ただいま御指摘のように、大都市部、離島、原子力発電所立地地域など、地域特性にかかわる部分がございます。これについても、方針としては、基本的には、可能な範囲で留意事項として極力取り上げることとしておるところでございます。

 その中で、備蓄についてでございますけれども、備蓄については、既に防災のための備蓄というものがございますので、これを相互に兼ねることとするというふうな記述をしております。

 さらに、化学防護服等の、国民保護措置の実施のために特に必要となる資機材でございますけれども、これは国がその整備に努めるというふうに記述しております。

 また、広域連携につきましても、相互応援協定がただいま防災のために結ばれておりますけれども、これをさらに有事においても活用する旨、必要な見直しを行うこととしておるところでございます。

 しかしながら、すべてのことにつきまして、四十七都道府県また各市町村の地域特性を明らかにすることは、モデル計画の上では困難であります。これは先生御指摘のとおりであります。したがいまして、今後、各地方団体が国民保護計画を作成するに当たりまして明らかとなってまいります具体的な問題については、消防庁といたしましては、きめ細かく個別に相談に応じまして、遺漏のないように図ってまいる所存でございます。

 いずれにいたしましても、有事のみならず自然災害等に対応する意味からも、地方公共団体における備蓄の推進、また、消防機関における陽圧式防護服を初めとするNBC対応資機材等の整備は進めてまいりたい、このように考えております。

江田委員 ぜひとも、今、計画を来年度から策定するということで、県、市町村ともにさまざまな地域特性に応じた課題が多く存在するわけでございまして、これに対して具体的に、本当に消防庁また政府としても支援をしていくということをこの場でよろしくお願いしたいと思います。

 次に、訓練、啓発についてお伺いをしたいと思っております。

 まず、国民に対しましては、国民保護措置に対する協力が求められてくるところとなります。一九九一年の湾岸戦争の際に、イスラエルでは、ミサイルの攻撃時の避難手順などを示したパンフレットに沿って住民が避難した結果、その犠牲者を最小限に食いとどめたという事例がございます。

 国民への訓練、そして意識啓発というのが今後の重要な課題となると思います。そのためには平素からの訓練や啓発が重要と考えますが、具体的にどのような形で訓練、啓発を行うこととなるか、これは大臣にお伺いいたします。

村田国務大臣 国民保護措置を的確かつ迅速に実施していくためには国民の協力が前提となるわけでありまして、そうした国民の協力を得られるようにするためには国民の理解が必要でありますので、そうした意味で、政府といたしましては国民の啓発努力が必要になってくると思いますし、また、不断の訓練というものも必要になってくると思います。

 そうした活動につきましては、国は、地方公共団体と協力いたしまして、国民への啓発あるいは訓練活動をやっていきたいと思っておりますが、その際、関連する公共機関等の参加も必要でありましょうし、それから、何よりも国民のそうした訓練への参加というものも必要になってくると思います。

 そうしたことにつきましては、基本方針の中で「国民の協力」という項がございまして、まずは、国民への啓発につきまして、「地方公共団体の協力を得つつ、パンフレット等防災に関する啓発の手段等も活用しながら、国民保護措置の重要性について平素から教育や学習の場も含め様々な機会を通じて広く啓発に努める」、こういうふうに書いてあることが一つ。それから、「国民保護措置についての訓練を行う場合は、住民に対して、訓練への参加を要請する」、こういう記載がございます。

 なお、内閣官房の平成十七年度予算におきまして訓練等の予算をちょうだいいたしておりまして、その中で、図上訓練とかあるいは実動訓練等をしたいというふうに考えておりまして、今後、そうした準備を内閣官房を中心に進めてまいりたいと考えております。

江田委員 この国会では、昨年、国民保護法等も成立して、十分に審議は行われているところでございますけれども、国民にとっては、有事への対応というのは初めてのことでございますので、十分に国民への意識啓発、また自治体を中心とする訓練、これを行っていっていただきたい、そのように強く申し上げておきたいと思います。

 もう一つ、生物化学兵器について御質問をさせていただきます。

 私もバイオテクノロジーやライフサイエンスの分野で長年研究を進めてきた者の一人として、非常に関心も深いし、また対応は慎重に着実に行わなければならないと思っておりますが、生物兵器というのは核爆弾に匹敵する殺傷能力を持っているとも言われております。

 この生物兵器というのは、核兵器に比べて製造が簡単なわけです。私もそれは幾つかはできると思いますが、原料も比較的入手しやすいわけでございます。米陸軍のテロ対策の専門家が言っておることですが、核兵器を使って相手側の人間一人を殺すのに二千ドルかかるけれども、サリンなどの化学兵器を使えば二百ドル、さらに生物兵器を使えば一ドルで済むんだと説明しております。まさに、この生物兵器が貧者の核兵器と称されるゆえんでございます。

 武力攻撃に使用される生物兵器としましては、天然痘や炭疽菌、ボツリヌス毒素などが想定されております。また、化学兵器としては、サリンやVXガスなどがあるわけでございます。

 炭疽菌は、サリンのような神経ガスの一千倍危険であるとされまして、わかりやすく言えば、スプーン一杯で約二百万人の殺傷能力を持っている。アメリカ・ワシントンの上空で百キロぐらいの炭疽菌がばらまかれれば、これで十三万人から最悪で三百万人の人命が奪われるというようなシミュレーションもございます。

 ボツリヌス毒素というのは、青酸カリの百万倍という、地上最強の毒素と言われておりまして、人に対する致死量は〇・〇五マイクログラムでございまして、一グラムの毒素、わずかな毒素があれば、一千万人を殺せるというようなことも言われておるわけでございます。

 また、マスタードガスは塩素系の化合物で、目や皮膚、肺をただれさせてまいります。

 VXガスは、神経伝達のために働く酵素の作用を阻害し、筋肉けいれんや呼吸障害から死に至らしめるというものです。その致死量は、わずか〇・二滴でございます。

 このような生物兵器による攻撃に対処するためには、ワクチンとか血清の備蓄が非常に重要でございますが、例えば、天然痘ワクチンやボツリヌス菌毒素に対する血清につきまして、アメリカを初めとする諸外国の備蓄状況はまずどうなっておりますでしょうか。加えて、我が国における天然痘ワクチン、ボツリヌス菌毒素に対する血清、炭疽菌に対する抗生物質の備蓄状況、これについてもお答えいただきたいと思います。

 今後、この備蓄を私はもっと拡充していく必要があると思って今回質問させていただいております。さらに、これらの薬剤の病院への配備、供給体制も平時からルールをつくっておかなくてはならないと思いますが、その点についてお伺いいたします。

松谷政府参考人 まず、諸外国の備蓄の状況でございますが、天然痘ワクチンにつきましては、危機管理上の問題もございまして、我が国もそうでございますけれども、公式に現時点での備蓄量を公表している国は少のうございます。各国政府のホームページなどで確認できる範囲で調べましたところ、例えばアメリカにつきましては、二〇〇二年末までにおおむね全国民分を備蓄。イギリスにつきましては、報道によりますると、二〇〇三年に約二千万人分を購入しておる。ドイツにつきましては、二〇〇二年時点で約三千五百万人分を備蓄していると見られております。

 ボツリヌス抗毒素の備蓄量につきましては、各国政府のホームページ等においても確認できませんで、専門家の方々にもお聞きしましたけれども、その範囲では確認ができておらない状況でございます。

 我が国の状況がどうかということでございますが、天然痘につきましては、先生御指摘のとおり、ワクチンが有効でございますので、平成十三年度から天然痘ワクチンの備蓄を我が国としても行ってございまして、逐年、追加備蓄を進めているところでございます。ボツリヌス抗毒素につきましても備蓄を行っているところでございます。炭疽につきましては、これも先生御指摘のとおり、抗生物質が有効でございまして、我が国の医薬品メーカー及び医薬品の卸における流通量につきまして定期的に報告を求めることによって、相当の在庫の保有を確認しているところでございます。

 また、病院などへの供給体制でございますが、都道府県などの地方自治体及び関係機関とも密接に連携しつつ、こうした生物剤による疾病の治療上有効とされる医薬品等の供給が迅速かつ適切に行われるよう、最善を尽くしてまいる所存でございます。

 以上でございます。

江田委員 今お答えしていただきましたけれども、私は、まず炭疽菌毒素に対する抗生物質、これは十分に進捗していると思いますが、天然痘ワクチンに対しては、生産体制としては十分にそれは可能なレベルに達しておりますが、ただ、量はまだまだ少ないものと思われます。やはり、諸外国がやっているように、アメリカでは全国民二億人を対象としているし、イギリスも二千万、ドイツも三千五百万人対象でございます。我が国ももっと拡充をしていくべきだという意見を申し上げておきたいところでございます。

 時間が参りましたのでもう終わらなければなりませんけれども、このようなNBC兵器を用いた武力攻撃とかまたは大規模テロ、こういう有事への対応がいよいよ、国民保護基本指針が策定されたことによりまして大きく進むことになりますが、その中におきまして、政府の全面的な支援で着実に、自治体においても、また国民の意識啓発、啓蒙においても、理解していただけるように、進むように、よろしくお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

玉沢委員長 加藤公一君。

加藤(公)委員 民主党の加藤公一でございます。

 当委員会では、委員長から理事を拝命いたしまして、初の質問でございますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 先ほど村田大臣から国民保護の基本指針の御説明をいただきまして、今後、自治体でそれぞれ国民保護計画を作成していくということになりますが、それぞれの地域によって抱える施設や地域特性が違っておりますので、その幾つかのポイントについて私なりの疑問を解消したいという思いで御質問をさせていただきたいと思います。

 まず最初に、米軍基地周辺自治体に関連をしてお話を伺いたいと思います。

 基本的なことを確認させていただきますけれども、武力攻撃事態あるいは武力攻撃予測事態、場合によっては緊急対処事態も含めてでありますが、米軍が基地の外に、外部に展開をするということは、これはあり得る話でしょうか。

村田国務大臣 武力攻撃事態と予測事態とを分けて考えなければいけないと思いますが、武力攻撃予測事態ということで考えていきますと、米軍の行動は、実際のこれから起こり得る武力攻撃に備えましての訓練とか備蓄、そういうような行動になると想定されるわけでありまして、こういう活動につきましては既存の施設とかあるいは区域内で行われることが想定される、こういうふうに思います。

 ただ、武力攻撃事態の場合には、米軍の方もあらゆる活動をとるということが予想されるわけでございますから、そういう意味では、米軍の活動が施設とか区域内に限定されないということは当然予想されることであるというふうに考えております。

加藤(公)委員 武力攻撃事態では米軍が基地の外に展開をすることはあり得るというのは当然だと思うんですが、その場合に、周辺の地域住民の皆さんの避難の妨げになってしまうという可能性は、これは考えられることですか。

村田国務大臣 そういう場合は、米軍が武力攻撃という事態を排除するために活動している、こういうことでございまして、政府としては住民の避難との調整が必要になってくることになろうか、こういうふうに思います。

 こうしたケースでは、日米間の調整メカニズムがございますので、それによりまして必要な調整がなされるということでございますが、米軍行動関連措置法の第八条に基づきまして、政府は、米軍の行動が地方公共団体の実施する国民保護措置に影響を及ぼすおそれがあるときは、関係する地方公共団体との連絡調整を的確に、密接に行うこととしております。まずは、米軍との関係で政府は調整メカニズムの発動をする、それから、それに基づいて、米軍行動関連措置法第八条に基づいて政府が地方公共団体との調整を行う、こういうことであります。

 それから、基本指針の第四章の第一節2で避難措置の指示について記述してございますが、対策本部長、総理でございますが、武力攻撃を排除するための米軍の行動と国民保護措置の的確かつ迅速な実施を図るため、道路等の利用の調整を行う必要があると認めるとき、すなわち特定公共施設に関しての問題でございますが、特定公共施設利用法の規定に基づきまして、関係する地方公共団体の長等及び指定公共機関の意見を聞いた上で、これらの利用に関する指針を定める、こういうことになります。

 こうした今申し上げたような枠組みを通じまして調整を行って、米軍の行動が基地周辺の住民の避難の妨げにならないように政府としては努力しなければならないと考えております。

加藤(公)委員 おっしゃるとおり、ごもっともなことだと思います。

 もう一つ伺いますが、武力攻撃事態において、避難先地域というのを指定してそこに避難を誘導するということになっておるかと思いますが、米軍が基地外に展開をしたときに、その避難先地域、これには道路、経路も含まれるというふうに理解をしておりますけれども、そこを米軍が占拠してしまう、占有してしまうというケースも考えられるわけでしょうか。

村田国務大臣 国民保護法に基づきまして住民の避難先が指示されるわけでございますけれども、避難先地域は、日米間の調整メカニズム、今申し上げましたが、これと、あるいは米軍行動関連措置法第八条、これも今申し上げましたが、それで調整をするということになりますので、そうしたことが起こらないように政府としては努力をしなければいけないと考えておるわけであります。

加藤(公)委員 冒頭申し上げましたとおり、今後、都道府県で国民保護計画をつくって、最終的には市町村でも同様に計画を立てられるということだと思うんですが、米軍基地周辺自治体においては、今の大臣の御答弁も踏まえて、計画を立てる段階で特段何か配慮をする必要があるのではないかというふうに思っておるわけでありますが、米軍基地の周辺自治体が国民保護計画を策定する上で、具体的にどのような配慮をしてその計画を立てるべきだ、どんな必要があるとお考えか、お話を伺いたいと思います。

東尾政府参考人 今後の米軍施設・区域に関連する国民保護計画のつくり方でございますけれども、ただいま大臣から御答弁がございましたとおり、これらは防衛にかかわる諸活動の拠点となりますので、これと、避難住民の誘導の際の問題点、それから避難経路、運送手段の確保、こういうことが課題でございまして、関係市町村、これは都道府県も含めてでございますけれども、この点に配慮して国民保護計画の作成を行わなければならないというのは、先生御指摘のとおりでございます。

 しかしながら、米軍施設・区域にかかわる問題というのは、地方でなかなか調整ができない面もございまして、国レベルにおける調整が必要でございますので、基本指針においても、「武力攻撃事態等において地方公共団体が住民の避難に関する措置を円滑に講ずることができるよう、国は必要な調整を行うもの」とされているところでございます。

 私どもは、これから国民保護計画を各地方団体でつくるということをお願いする立場でございますが、この前提として、内閣官房を中心といたしまして関係省庁において対応を協議しておりまして、これらを踏まえまして、今後一定の整理がついた段階で関係地方公共団体に対しその内容を示してまいりたい、このように考えております。

加藤(公)委員 今のお話ですと、今官房を中心に調整をしている最中だというふうに聞こえたわけでありますが、そうだとすると、今後、都道府県あるいは市町村で国民保護計画をつくる前には一定の方向が見えておりませんと、その計画自体が実効性あるものにならないのではないかと思うんです。

 大臣、いつぐらいまでにこれは、消防庁に伺った方がいいんでしょうか、内閣官房で調整をしていらっしゃるということですから、大臣の御意思として、いつまでにこの調整を完了されるというおつもりでしょうか。

村田国務大臣 基本指針ができて、それから国民保護計画、それから業務計画という、国の機関等から地方公共団体まで手続が続いていくわけでありますが、基本指針ができましたので、できるだけ早いうちにやらなければいけないと考えております。

加藤(公)委員 本来仕事には締め切りがつきものだというのが私の価値観なのでございますけれども、きょうのきょうの話でありますから、きょうはそれ以上は伺いません。私の地元にも実は横田基地が一部かかっておりまして、自治体の計画を立てる、あるいは東京都もそうでありますが、国民保護計画を立てる際には、今の議論の内容というのは大変大きな影響があるかと思いますので、一日も早くぜひその調整を完了させていただいて、それを自治体にお知らせをいただきたい、我々にもお知らせをいただきたいと思っております。

 では、米軍基地についてもう一つの角度からお話を伺いたいと思うんですが、当然、基地内には、日本人従業員の方とか、あるいは米軍の軍人軍属の方及びその御家族の方というのが常時いらっしゃるわけでありまして、そうした米軍基地内の、まずは軍人軍属の御家族の皆さんについても、いざというときには当然その安全を図らなければならないと思いますが、その皆さんの保護については一体だれが責任を持って行うことになりますでしょうか。外務省に伺います。

河相政府参考人 お答え申し上げます。

 御承知のとおり、米軍の施設・区域、いわゆる米軍基地につきましては、日米地位協定三条のもとで、米軍がいわゆる管理権等を有しておるわけでございます。そのもとにおいて米軍が必要な基地内における措置をとることが可能でございまして、米軍軍人軍属、その家族の方の保護についても、米国が必要な措置をとることはできる状況にございます。

 これまで国民保護法につきましては米側に随時説明を行ってきているところでございまして、国、地方公共団体が実施する国民保護措置等に関しても、また御指摘の点につきましても、米側との関係でどういう協力が可能なのかというのを今引き続き検討している状況でございまして、できるだけ早く結果を出していきたい、こういうふうに考えております。

加藤(公)委員 局長、済みません、もう少しだけお残りをいただいて、議論を聞いておいていただきたいと思います。

 そうすると、今の段階だと明確にはなっていないということかと思うんですが、では、仮に米軍基地内にいらっしゃる御家族の皆さんがいざというときに基地外に避難をするということ、これが想定されることなのか。されないというのはちょっと難しいと思うんですが、基地外に避難をされるということは当然あり得るという私の判断で伺いますけれども、それで間違いないですか。大臣、いかがでしょう。

大石政府参考人 ただいま外務省から御答弁ございましたように、現在、内閣官房を中心にしまして、米軍側と、米軍基地周辺における避難のあり方を含めまして、国民保護措置をどうするかということについてお互いに検討しているところでございます。

 実際、米軍基地内で働いている方々、それから軍人軍属の家族の方も、基地内では逃げ場がないというような場合には、基地の外に出てこられるということは当然あり得るものと考えております。そういう場合の避難の仕方等についても、この検討の場でさらに詰めていきたいと思っております。

加藤(公)委員 そういたしますと、例えば米軍基地内で働いていらっしゃる日本人従業員の方の場合には、おおむねその周辺にお住まいの方が多いかと思いますから、恐らく、その御自宅のある自治体の計画にのっとって、日ごろから訓練を受けていたり、あるいは情報を持っていらっしゃったりということになるんだろうと思いますし、一義的には、御自宅に戻られてそこから避難ということになるのかとは思いますが、米軍基地内にお住まいの方、つまり軍人軍属の御家族の皆さんの場合には、基地外に逃げるといっても、それが一つの自治体とは限りません。

 例えば私の地元の横田のような場合ですと、複数の自治体にまたがって基地が存在をしておりますので、どちらに逃げろと先に決めておくというわけにもいかないんだろうと思いますが、逃げた方向によって対応する自治体も変わってくるということもあり得るのではないかと思っておりまして、仮に基地外に避難をされた場合には、では一体、今度はだれがその避難誘導を責任を持って行うのかということについてお聞かせいただけますでしょうか。

大石政府参考人 避難措置の指示は、対策本部長たる内閣総理大臣から都道府県知事に対してまずなされることになるわけであります。その避難措置の指示を受けまして、都道府県知事が具体的な避難の指示をする。この避難の指示の中身として、どの地域にどのように、どういう手段で逃げるかということも含めて指示をするわけでございまして、広域的な観点から、都道府県知事が市町村等の意向を踏まえながら指示することになります。実際の避難誘導に当たるのは市町村の責任、そういう法律の仕組みにしているわけでございます。

加藤(公)委員 先ほどの御答弁ですと、まだ検討中ということでありましたから、きょうここで確定的なことをお答えいただこうとは思いませんが、複数の自治体にまたがって基地がある場合には、その基地の中から避難をされた皆さん、少なからず、ある一つの自治体に集中するということはあり得る話であります。それを最初からその自治体が想定しておきませんと、いざというときに、まずそこの自治体にお住まいの皆さんを避難させようと言っているときに、予想できない、数百人とか、場合によってはそれ以上の米軍の御家族の皆さんが逃げてきた、その方々も助けなきゃいけないということになりますと、それこそ、幾ら計画を立てても運用がそのとおりなされないというリスクがあると思っております。

 それで伺いましたので、先ほど大臣に御答弁いただいた件と同じでありますけれども、なるべく早くその調整協議を終わらせていただいて、地元自治体、あるいは都道府県にも、そして我々にもお知らせいただきたいと思っております。

 あわせて、これはもう一つお願いのレベルでありますが、お住まいでないとしても、日本人従業員の方もそこで常時働いていらっしゃるわけであります。おおむね基地の御近隣にお住まいの方が多いとは思いますけれども、本当に、例えばテロなどの緊急対処事態の場合には、一々御自宅に戻って、さあ、逃げましょうというわけにもいかないわけでありますから、米軍基地内の日本人従業員の方の安全、これを、では一体どうやって確保するのかということについても、ぜひ明確に御検討をいただいて、本当に早い段階で、せっかく基本指針ができて、これから自治体で保護計画を立てるという段階でそういうことが漏れていたら意味がないと思いますので、なるべく早い段階でこれは結論を得ていただきたいと思います。お願いだけ申し上げておきます。外務省の方、ありがとうございました。

 では、もう一つ、これもちょっと地域特性のある話でありますが、今お話しした緊急対処事態、テロの方について、一件、不安がありますので、御質問をしたい件があります。

 先ほど江田委員もおっしゃっていましたが、化学兵器あるいは生物兵器のリスクというのは非常に高いということでありましたが、それを用いたテロの場合に、水源を汚染されるというリスク、あのオウムの事件のときには随分話題になっておりましたが、それは今もリスクとしては変わっていないと思います。本来であれば水源全部を守れればいいんでしょうが、そんなことは現実に不可能でございまして、万が一水源に化学物質あるいは毒性の強い生物など、ウイルスとか細菌ですが、これが混入をされた場合に、水道の供給体制のもとでどうやって発見をして、どう対処をする体制になっているのか、この点について伺いたいと思います。

岡島政府参考人 厚生労働省におきましては、米国における同時多発テロの発生以降、関係都道府県及び水道事業者等に対しまして、数次にわたって、国内におけるテロ事件発生に係る対応につきまして通知をして、水道に関する危機管理体制の徹底を指示してきたところでございます。具体的には、水源監視の強化、浄水場等の水道施設の警備の強化、水質管理の徹底、魚類等の生物センサーを用いた水の安全性の確認などの措置を指示しているところでございます。

 さらに、今般策定されました国民の保護に関する基本指針に基づきまして、万一生活の用に供する水が毒物等に汚染された場合には、水道事業者等は、消毒その他衛生上の措置、被害状況に応じた送水や給水の停止等の措置を講じることとされておりまして、これらの措置の実施により、水の安全を確保することとしております。

加藤(公)委員 実は、水の問題だけやり始めても大変時間がかかるほどいろいろなケースが想定されるわけですけれども、今の御答弁の中ですと、監視、警備の強化ということがありましたが、監視、警備を強化していただくのはいいんですが、先ほど冒頭申し上げたとおり、水源を全部監視しようといったって、それはどだい無理な話であります。

 私の地元にも村山貯水池というところがありますが、確かにフェンスで囲ってはありますけれども、心ない人が入ろうと思えば簡単に入れてしまいますし、大体、貯水池のど真ん中を道が通っているわけでありますから、そこからテロリストが生物兵器あるいは毒素をばらまこうと思えば、実は簡単にできてしまうわけであります。それを三百六十五日二十四時間監視しようといっても、それは経済的にも無理な話でありますから、万が一そういったものが混入されてしまったときに、被害が出る前に水道の供給をとめるということを一義的に考えなければならないと思うんです。

 それが、今のお話ですと、水質の検査あるいは魚類等の生物センサーという話でしたけれども、確かに、魚がすぐ異変を起こすあるいは死んでしまうような毒物であれば、それはそのとおりわかると思いますけれども、細菌やウイルスのように、体内に入ってから後で被害が出るというものについては、魚を飼っているからそれで大丈夫という話ではないと思うんです。ここについては対策はとられていないんでしょうか。

岡島政府参考人 まず、水源監視の強化につきましては、おっしゃられた面もございますが、情報の収集、さらに監視の強化を図っているところでございます。さらに、水源から浄水場に取り込まれた段階でございますが、その段階で塩素殺菌等の殺菌、それからろ過等の措置をしておるところでございますが、それらにつきましても、さらに生物処理あるいはオゾン処理といったような高度浄水施設を整備するということを進めているところでございます。さらに、その後に生物センサーを用いて安全性の確認をし、いろいろな状況あるいは情報等も踏まえつつ、必要に応じまして直ちに給水の制限、送水の制限ということをすることとしておるところでございます。

加藤(公)委員 かなり技術的な話になりますから、また今後もこれはいろいろ教えていただきたいと思いますし、私も議論させていただきたいと思いますが、きょうは問題提起と概略だけということで、厚労省の方は御退出いただいて結構でございます。ありがとうございました。

 では次に、緊急時の初動態勢の整備について伺いたいんですが、例えば国レベルでありますと、総理御自身は、おおむね官邸でお仕事をされて、公邸にいらっしゃるというのが一般的なリズムかと思いますから、いざというときにすぐに態勢を整えられるということになっていると思いますが、例えば村田大臣やあるいは官房長官、さらには内閣危機管理監を初めとした担当の幹部職員の皆さんというのは、万が一事が発生をしたときに初動態勢がすぐ整えられるようなことになっているんでしょうか。

村田国務大臣 官邸には、二十四時間体制で緊急事態に関する情報を集約して即応する内閣情報集約センターというものを設置しておりますし、それから、官邸危機管理センターにも二十四時間体制で危機管理担当要員を常駐させている、こういう状況にございます。そういうことで、総理から官房長官等の幹部への緊急連絡や事態対応を迅速に行える体制を整えているわけでございまして、このことにつきましては、平成十五年十一月、緊急事態発生時における閣僚の参集等の対応についてということで、閣僚レベルについては閣議了解が定められているわけでございます。

 私個人について言えば、私は防災担当といたしまして、地元には極力帰らないということで、例えば甚大な被害が予想される地震等が起こった場合には三十分以内に官邸の危機管理センターに駆けつける態勢を心がけているわけでございます。

加藤(公)委員 国がそういう体制をとっているとすれば、今後、この基本指針にのっとって都道府県で国民保護計画を立てる際に、都道府県でも実は同様の体制というものを整える必要があるのではないかと思います。二十四時間の当直を置くということはこれに書いてあるんですけれども、それ以外、例えば、都道府県であれば、知事ですとか担当の幹部職員の方の参集体制ということについて、どういう姿が望ましいというふうに消防庁はお考えですか。

東尾政府参考人 地方側の体制整備についてお答え申し上げます。

 ただいまの基本指針の記述については、先生御指摘のとおりでございます。我々といたしましては、既に、自然災害、地震などが多発する現状にかんがみまして、平成十六年四月一日現在の調査結果でございますけれども、職員の宿日直や防災専門の嘱託職員の活用などによりまして、現行では、すべての都道府県において二十四時間の災害情報の受信体制は整備されてはいます。

 しかし、ただいま御指摘のトップの問題とかがございますので、これにつきましては、緊急時における不測の事態に対応するためには、幹部職員に対する連絡手段の確保が何よりも重要でございますので、この場合の措置、それから参集が困難な場合に、その代替職員の指定について具体的に定めるよう都道府県モデル計画においてその旨を明示する一方、今後具体的に、各県の計画には固有名詞も含めその指定を考えている、こういうことでございます。

加藤(公)委員 きょうはちょっと時間が迫ってきましたのでこれぐらいにしますが、知事とか幹部職員の方がいざというときにすっと役所に集まれる体制というのはやはり整えるべきだと思いますし、本来は知事公舎なんというのはそのために設けられているんじゃないかなというふうにも思っておりますので、これはまた引き続き議論をさせていただきたいと思います。

 残り時間で、原発の問題について何点か伺いたいと思うんですが、国民の皆さんの非常に率直な不安といたしまして、仮に弾道ミサイルを日本に撃ち込まれてしまった場合、それが原発に当たったら大変な災害が起きるのではないかという不安を多くの方が抱えていらっしゃるわけであります。今の構造で果たして原子炉がミサイルに対して対応できるのかどうか、ミサイルが着弾したとしても原子炉が守られるのかどうか、この点、いかがお考えですか。保安院に伺います。

三代政府参考人 今御質問の原子炉の構造についてでございますけれども、我が国の原子力発電所は、原子炉等規制法に基づいて、災害の防止の観点からさまざまな安全確保対策が施されております。特に、放射性物質の閉じ込めのために、原子炉格納容器のほかに、建屋の外の壁やあるいは遮へい用の壁があるなど、多重防護の考え方に基づきまして設計上の配慮がなされております。また、これに加えまして、その設計に当たりましては地震などの通常想定すべき外的な事象、これらが考慮されております。一般的には、相当程度の堅固さを有する施設であるというふうに認識しております。

 しかしながら、先生御質問の弾道ミサイルなどに関して、設計面で完全な対策を講じることは不可能でございます。日本のみならず海外諸外国におきましても、原子力発電所への弾道ミサイルの攻撃等を想定した設計は行われていないというふうに考えております。

 以上でございます。

加藤(公)委員 もちろん、別の委員会で今ミサイルディフェンスの議論がなされておりますから、それはここではお話はいたしませんが、原子炉にミサイルが着弾するような事態になれば守れないというのは、普通に考えればそうだろうと思います。ただ、昨日御説明をいただいたときには、万が一のときのシミュレーションということもされていないということでありましたので、それは大いに不安があるところでありまして、また別の機会にこれも議論させていただきたいと思います。

 時間が迫っておりますので、最後に一点だけ伺います。

 武力攻撃事態あるいはその予測事態に際して、当然、今のお話ですから、原子炉の安全を確保する観点から被害を最小にするために原発はとめる方向で総理もしくは経済産業大臣が御判断をされることになろうかと思いますが、一方で、原発をとめるということになりますと日本の電力供給が激減をするかと思います。平時でいうと大体三分の一ぐらいの電力が落ちることになるかと思うんですが、そのときにはどう対応されるおつもりか、そこを伺っておきたいと思います。

安達政府参考人 お答え申し上げます。

 電気事業者は、電源の計画外の停止、猛暑による需要増大、気候変動等の予期しない事態が発生した場合であっても、電力が安定的に供給されるよう一定の供給予備力を確保しているところでございます。ちなみに、平成十六年度の夏季の実績では、一三%の供給予備力は確保されていたところでございます。

 このように、一定の供給予備力が確保されているところでございますけれども、今御指摘の武力攻撃事態等によって我が国の電源設備、設備能力では約二〇%を占めているのでございますけれども、この二〇%を占める原子力発電所が仮にすべて停止を余儀なくされた場合には、天候、気温といった電力需要を取り巻く情勢にも大きく左右されるため一概には言えませんが、一般的には電力需給は厳しくなるものと考えてございます。

 このような場合には、電気事業者においては、必要に応じ電力融通の実施、代替電源としての休停止中の火力発電所の立ち上げ、需給調整契約の発動による需要の抑制等の措置を講ずることとしてございます。国におきましては、電気の需給状況を把握した上で、必要に応じて電気事業法の規定に基づく電気の供給命令等を発動し、電気事業者に対し追加的な供給力の確保等のさらなる対応を促す措置を講ずることとなります。

 こうした供給力確保の措置にもかかわらず、電力の需給状況が逼迫した場合には、国民生活の安定に必要な電力の確保を最優先に行うことを原則といたしまして、国民に対して不要不急の電気の使用停止の要請、電気の使用制限等の措置を段階的に実施することなどによりまして、電力供給の確保に最大限努力してまいりたいと考えてございます。

加藤(公)委員 この電力の問題はまた別の機会に議論させていただきたいと思いますが、日本は効率よく発電をするために大規模集中発電で長距離伝送という仕組みになっていますけれども、本来であればもう少し分散型の発電システムという考え方も取り入れた方がいいのではないかという意見を私が持っているということだけ申し上げて、時間になりましたので終わりたいと思います。

 ありがとうございます。

玉沢委員長 次に、細野豪志君。

細野委員 先日、基本指針が出てまいりまして、私もその指針を拝見いたしました。思い起こせば、一年前は、私ども民主党もこの国民保護法制についてはさまざまな議論を政府とも与党ともさせていただいて、最終的には我々が要求をした修正を相当程度受け入れていただいて法律が成立をした。そして、それを受けての基本指針だというふうに私どもは承知をしております。その意味では、この基本指針に対しても当然一定の責任が我々はあるわけでございまして、こういう指針が出てきて、そしてそれに対応してこれからしっかりとやらなければならないということをまずお約束したいと思います。

 その上で、この指針を拝見していまして、いろいろ、ここはどうかなとか思うところがあるんですが、私がこの指針で、ある意味一番評価をしたいと思いますのが、具体的に武力攻撃事態の類型を示して、その類型に基づいて警報の発令の仕方であるとか避難の仕方を提示した、ここは私は一定の評価をできるのかなというふうに思うんですね。

 ただ、その中で、私が一つどうしても気になっておりますのが、この四類型のうちの一つである弾道ミサイルの攻撃について、この基本指針の中では、武力攻撃事態という、まさに防衛出動を前提とした有事の中に組み入れているんだけれども、片や一方で、今出てきている自衛隊法の改正の方では、これは大臣も答弁をされていますが、警察権の範疇でということでミサイル防衛についての対応策を出されているんですね。

 あらかじめ言っておきますが、防衛出動が下令された中でのミサイル防衛のことは結構ですから、ミサイル防衛出動が下令されていない、武力攻撃事態にならない前のミサイル防衛を自衛隊法で出しながら、こちらでは武力攻撃事態の方だけに整理をされている、この矛盾についてどう整理をされているのか、お伺いします。

大野国務大臣 細野先生からの、国民保護基本指針とミサイル防衛との関係でございます。

 ミサイル防衛という観点からしますと、その局面において防衛出動が下令されている場合、されていない場合。されている場合は、当然武力攻撃事態でございますから、武力攻撃事態の中でこの基本指針は整理されている、こういうことであります。それでは、下令されていない場合については、八十二条の二で整理しよう、こういうことで法案を提出させていただいている。

 なぜそういうことにしたか。自衛権の発動というのは、十分御存じのとおり、三要件がある。一つは、急迫不正な侵害がある、他に代替する手段がない、そして必要最小限。他に代替する手段がないということ、それから必要最小限、これはミサイル防衛、下令前のミサイル防衛に当てはまります。しかしながら、急迫不正というところに果たして該当するのかどうか、こういう点がやはり議論になるわけであります。

 相手方からミサイルを撃ってくる、そのミサイルが急迫であることは事実であります。例えば某国から撃ってきたら、わずか十分ぐらいで到着するというわけですから、急迫であることは事実でありますけれども、それが不正であるのかないのか、これが非常に疑問であるところでありまして、そこで、例えば間違って撃ってしまったという場合があるかもしれません。事故ということがあるかもしれません。それから、本当に事故で撃ってしまって後から謝ってくるというようなケースがあるかもしれません。できる限りそういう防衛出動とか自衛権の発動ということにしない、戦争にしないという考え方が一つあると思います。つまり、自衛権の発動の三要件の第一項めの急迫不正の、不正に当たらないケースがあるのではないか。

 しからば、どうすればいいんだろう。しかしながら、やはり武力を使うわけでありますから、これはきちっと、自衛隊がやるわけですから、シビリアンコントロールは確保しなければいけない。そういうことで、防衛出動下令前の急迫不正な事態に対して、まず国民の生命、安全を確保するために撃ち落とすことが大事である、と同時にシビリアンコントロールをきちっと確保していこう、こういう趣旨で、防衛出動下令前のミサイル防衛を八十二条の二で提案させていただいているところでございます。

 自衛権の行使でなく、自衛隊法上の任務としては公共秩序の維持ということに該当し、分類をするとすれば警察権の行使、こういうことになろうかと思います。

細野委員 後ほど武力攻撃事態の国民保護の話はするとして、今、防衛庁長官の中で、私、気になるところが一点あるんですね。

 武力の行使であるというふうにおっしゃいました。ミサイル防衛は武力の行使であると。武力の行使でありながら警察権で分類をする、こんなことはあり得るんですか。

大野国務大臣 私、武力の行使と常識的な用語で言ってしまって、失礼しました。

 これは、自衛隊がやる行動ですから、シビリアンコントロールが必要だ、こういう意味で申し上げました。

細野委員 実は、武力の行使という言葉は、先日の安保委員会の中で法制局の長官もおっしゃっているんですね。ミサイルディフェンスをするときに、それが日本に飛んでくるならまだそれをやらなきゃならないけれども、他国に飛んでいく場合に、それを撃ち落とすことになると武力の行使になるので、日本はやらないんですと。逆に言えば、ミサイルディフェンス自身は武力の行使だと法制局の長官ははっきり答弁されているんですね。

 武力の行使でありながら警察権の範疇に入れるということが法理論的にあり得るのかどうか、法制局の長官にお伺いします。

阪田政府特別補佐人 今御指摘の、先日の安保委員会における私の答弁というのは、今回の八十二条の二の措置ではなくて、日本ではない第三国、例えばアメリカ等に向けて飛来するミサイルを撃ち落とすということがどういうことであるかということに対して、それは武力の行使になることが多いということで述べているというふうに理解しております。今、八十二条の二であることが、弾道ミサイルを破壊する措置が、狭い意味で武力の行使、いわゆる憲法九条のもとで許されないとされているような武力の行使に当たるということでは全然ありません。

 それから、防衛庁長官が、それは警察権と観念していいのではないかとおっしゃっているのも、警察権であるから一種の軍隊の行動として行わないということではないのであって、自衛隊が行う活動であっても、現に、治安出動であるとか海上警備行動であるとか、警察的な活動というのは多々あるということであろうかと思います。

細野委員 自衛隊が行う行動の中に警察権もあるし災害出動もある、そんなことはよくわかっています。

 これは一点だけちょっと確認しておきたいんですが、では、ミサイルディフェンスの迎撃をすることは、これは武力の行使なのか武力の行使ではないのか、これだけ、法制局の長官、はっきり答弁してください。

大野国務大臣 法制局長官のお答えの前に。

 私の発言の中で武力の行使と言いました。しかし、直ちに改めて、自衛隊が行うことであるからと申し上げました。武力の行使という言葉は撤回させていただきますので、よろしくお願いします。

阪田政府特別補佐人 武力の行使という言葉の定義いかんにもよると思いますけれども、我が国に対する急迫不正の侵害を排除する、それから他に手段がない、必要最小限の範囲であるといわれる、いわゆる自衛権の発動として行われる武力の行使であるのかどうかということになると、そのミサイルディフェンス、今回の法制で設けておりますミサイルディフェンスについては、二様、二つの種類のものがある。一つはまさに自衛権の発動としての武力の行使であり、もう一つは、自衛権の発動に至らない、自衛権の発動を認定されていない状況での、何と言えばいいんでしょうか、一種の実力の行使であるというようなことになろうかと思います。

細野委員 実力の行使というのは初めて聞いたんですが、実力の行使というのはいろいろありますよね。武力の行使というのには、要するに今回のミサイルディフェンスは当たらないと。

 武力の行使というのは、これはさんざん国会の答弁でも今まで積み上げられてきているわけですよ。法制局の長官も、歴代、代々ずっとこれは答弁をされてきて、海外の武力行使、どうするんだということを議論しているわけですね。当事者である防衛庁の長官が武力の行使とおっしゃって、類似の答弁を法制局の長官もされているわけですね。これは、はっきりさせないと、大変法律的な混乱を来します。武力の行使に当たるのか当たらないのか、当たらないなら、はっきり言ってください。

阪田政府特別補佐人 先ほども申し上げましたように、私が前の安保委員会で申し上げた武力の行使というのは、あくまでも我が国に対して飛来する弾道ミサイルに対処するという場合のことではない、そこは議事録をよくごらんいただければおわかりいただけると思うんです。武力の行使というのは、我が国が国家として、組織として、軍の組織を挙げて実力を行使するというようなことであろう、今まで理解されてきたところはそうであるというふうに思います。

 そういう意味での武力の行使かと言われると、今回は、武力の行使というのは我が国の場合には、自衛権発動の三要件を満たす場合の自衛行動として必要最小限の範囲内でしか憲法九条のもとでは許されないというふうに政府は考えてきておりますので、そういう意味で、八十二条の二によって対処することは、自衛権発動の要件を満たしていないわけですから、それは当然に武力の行使ではあり得ないということでございます。

細野委員 それはやはりおかしいんですよね。

 自衛権の発動か警察権の発動かというのは、これは政府の意思としてどういうふうに法的に整理するかという話ですね。武力の行使かどうかというのは、まさにその行為自身にこれを着目してどう定義するかという話じゃないですか。ミサイルを撃つというのは、迎撃をするというのは、戦争中撃とうが警察権で撃とうが、これは同じ行為なわけだから、それが武力の行使に、自衛権だと当たって、警察権だと当たらないという理屈は通用しないですよ。しっかりもう一回答弁してください。

阪田政府特別補佐人 武力の行使というのは、ごく常識的な言葉で用いる場合と法的に用いる場合というのが、よく整理をされていないのかな、それは私がということでありますけれども。武力の行使については基本的には、先ほど言いましたように、国家の物的、人的な組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為ということなのでありますね。

 したがって、今防衛庁長官がおっしゃっているように、八十二条の二の段階では、それは国際的な武力紛争の一環として攻撃の意図を持って日本に対して、我が国に対してミサイル発射されたものだということが、これは手続としては、閣議決定をし、内閣としてそうである、他に手段がない、これはもう我が国の軍事的実力をもって侵害を排除する以外にないというような判断をした上で防衛出動を下令する、武力攻撃事態認定をするというような仕組みになっておるわけでありますけれども、ミサイルはそういう手続をとっていて、間に合うことはもちろんありますけれども、間に合わない場合もあれば、必ずしも、その発射があった、飛来があったという事実だけで直ちに急迫不正の侵害があった、武力攻撃があった、かつ他に手段がないんだというふうに断ずるに至らないという場合にも、これは事柄の性格上対応せざるを得ない。

 そのときの対応の仕方として八十二条の二という枠組みをつくり、それは今言ったような意味で、国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為ということではなくて、これを撃ち落とす、物理的に撃ち落とすという意味ではやはりある程度の力は使わざるを得ないわけで、そういう意味で力をもって撃ち落とすということをやっている。それは力を使うから、軍が力を使うから、すべてが武力の行使だということにはならないということを申し上げておる次第であります。

細野委員 今の説明を聞いて、ああ、そうかと納得をする人は恐らくだれもいないと思いますね。

 私はこういうふうに整理しているんですね。さっき防衛庁長官が三要件をおっしゃいましたが、下の二つは、これは必要最低限であり排除できないという意味においては、まさにミサイルディフェンスに該当するわけですね。一点目も、それこそ急迫の事態であるというのはこれは間違いない。恐らく、ミサイルを撃ってきたんだから、そういう意味では、これは不正な意図があるだろうと類推するのは、国民の側から見たら当然の見解になるわけですね。

 その上で、極めて自衛権の三要件を満たす直前の状況にいっていて、かつ、行為としても武力の行使、へ理屈をおっしゃいましたけれども、それに該当することをやる。ここまで法的に微妙なケースを、今度は警察権に入れる。どう考えても、そこは無理があるんですよ。

 この議論を、もう少しほかの事態も含めて議論をしていきたいので、ちょっと議論を移していきたいと思うんですが、先ほど前防衛庁長官が御質問されて、それにちょっとかかわることなんですが、同じような整理をされているものとして、自衛隊法八十四条の対領空侵犯措置というのがありますね。これは、自衛隊法の六章に書いてありまして、自衛隊の行動として対領空侵犯措置というのがあるんですね。入ってきたものに対して、スクランブル発進するなどして着陸をさせるという権限ですね、飛行機が。

 これは、不思議なのが、自衛隊の権限である武器使用の基準について、七章にはなぜかこの対領空侵犯措置だけ入っていないんですね。ほかの治安出動も、防衛出動も、そして新しくできた警護出動も、海上警備行動も入っている。なぜかこれは自衛隊の権限が七章に書いていない。

 これは、私は、シビリアンコントロールの面からも、一体これが何を意味しているのかわからないという意味において、相当微妙な問題があると思うんですが、なぜここに書いていないのか、防衛庁長官にまずお答えいただきたいと思います。

大野国務大臣 自衛隊法の構成といたしまして、自衛隊の行動、そして自衛隊の権限ということで、行動の中には領空侵犯事案については書いてあるけれども、権限の方には書いてございません。おっしゃるとおりであります。

 それはなぜかということでありますけれども、これは、例えば領空侵犯をした場合には、御存じのとおり退去命令をするその他でございますけれども、もし武器を使用することができるとなりますと撃墜ということになります。そうすると、それでいいんだろうかという反省があるんじゃないでしょうか。例えば威嚇射撃をするとか、いろいろなやり方が考えられると思います。しかしながら、船の場合と違いまして、飛行機の場合には落ちてしまう。落ちてしまったら人命にかかわる、そういう問題が一つ考えなきゃいけない問題ではないでしょうか。

 そういう意味で、領空侵犯というのはもちろん国の領空主権という法益を侵害するわけでありますから、武器の使用を含めて、国際法規それから国際的な慣例を踏まえて対処すべきことは当然でございます。今、その背景として申し上げたのが、いろいろなケースがあって、結果としてほとんどが撃墜ということになる、そういうことでいいんだろうか、武器の使用については本当に慎重に考えていかなきゃいけない、こういう背景があると思います。そこで、武器の使用やその要件を明確に規定することなく、着陸させる、あるいは我が国の領空の上空から退去させる、こういうような必要な措置を規定するにとどめておる次第でございます。

 必要な措置として、今申し上げましたように、領空外への誘導、退去命令あるいは飛行場への着陸等の措置があるわけでございますが、加えて必要な措置としてどういうものがあるのか。武器使用については、正当防衛とか緊急避難、当然のことです。これは国際法的にも法律上認められているわけでありますけれども、いわばその中には信号射撃なんかが当然含まれていると思っております。

 ただし、慎重にその辺は考えておかないと、今申し上げましたような背景がある、そしてそれは、全体としては国際法上の問題あるいは国際的な慣例に従ってやる、こういうことでやっております。

細野委員 我々も、何でもかんでも撃っていいなどとは決して思っていません。ただ、我が国を守るために、ではこの対領侵という規定で本当に、それこそ民間機が、旅客機が突っ込んでくる時代ですよね。先日、ちょっといろいろ防衛庁の方と話をしていたら、それは想定外だという話があったんですが、想定外の民間機が突っ込んでくる時代ですから、戦闘機が攻撃してくる可能性は十分あり得る。

 戦闘機が日本に来る場合は、本当に、もう領空に入ってきたら、すぐ、それは日本の国土が危ないわけですから、それにどう対応するかという話になるんですよね。そういう意味で、緊急性も高い。先ほど長官は治安出動でとおっしゃいましたが、多分わかっておっしゃっているんだと思いますが、これは時間的にも絶対に間に合いません。

 それを、飛行機の、戦闘機の操縦士である個人に、これは正当防衛か緊急避難かという判断を、正当防衛、緊急避難なんというのはもともと個人が自分の身を守るために与えられたまさに自然権的なものですから、そこに依存する体制で本当にいいのかどうかということに関して、私は非常に疑問に思っています。

 それで、防衛庁長官にはっきりお答えをいただきたいんですが、それこそ、警告をし、着陸を促し、それでも相手が撃ってきた場合は、この領空侵犯措置、対領侵によって撃墜することはできるんですか、できないんですか。お願いします。

大野国務大臣 具体的にいろいろなケースがある、それに対してどうするんだと。これは、基本原則は先ほど申し上げました。繰り返しません。国際法上の問題、国際慣例に従う。そして、それは慎重に考えていかないと、本当に敵機というか領空侵犯をした飛行機を撃墜してしまうということになります。したがいまして、やはりこの辺は非常に慎重に考えておかなきゃいけない。

 しかしながら、現場でそれが判断できるか、これがお尋ねでございます。一人一人のパイロットが実際にそういう判断ができるのかどうか、これは、細野先生がおっしゃることは非常にポイントでございます。そこはそれで、私どもはきちっとした訓令をつくっております。訓令に従って、いわばマニュアルに従って、こういう場合はこうだというようなやり方をやっておるわけでありますけれども、その辺は、一つ一つどういう場合にどういうふうにするんだということは、どうかひとついろいろな意味でお答えを差し控えさせていただきたいと思います。いわば手のうちを明らかにしてしまって、抑止力とかいろいろな意味で問題が起こってくるわけでありますから、そこはきちっと、そういう一人一人の問題はきちっと訓令をもって対処いたしております、これをもってお答えにかえさせていただきたいと思います。

細野委員 私、ちょっと驚いたんですが、これはお答えをいただけると思ったんですよ。正当防衛、緊急避難というのは、それなりの行為をしてきた者に対しては、それに対しては行動できるという、私、法律家じゃありませんから正確な言葉では言えませんが、それこそ日常生活においても、正当防衛というのは、相手が殴ってきた場合はそれに受け身をして、それで相手を制圧するというのは、これはやらないと、それはもう逃げられない場合はどうしようもないわけです。

 それと同じように、対戦闘機で撃ってこられたら、当然撃てるというのは当たり前のことじゃないですか。正当防衛で読めないんですか。それを読めないとしたら、対領侵なんて一体何なんだということになっちゃいますよ。その先の議論はいろいろあると思いますが、ここは撃てるというふうに答弁をしていただくのは当然だと思いますが、どうなんですか。正当防衛でできないんですか。

大野国務大臣 正当防衛、緊急避難、いろいろなケースがあろうかと思います。向こうが威嚇射撃だけやってくるのか、本当に飛行機に対して撃ってくるのか、それは相手を撃ち返さなきゃどうにもならない、こういう場合もあろうし、いろいろなケースがあると思います。正当防衛、緊急避難、国際的に認められている、それから法概念上きちっと認められている考え方ですから、それは正当防衛、緊急避難は当然のことであります。

細野委員 今、戦闘機は、適当に撃って当たるか当たらないかという時代じゃなくて、照準を合わせてねらわれているのもわかるわけですよね、ロックオンされたら。もう「トップガン」の世界ですよ。その世界で、今みたいな悠長な話は通用しないんですよね。照準を合わされて、撃たれる、まさにそこの正当防衛の行為において、それは当然、そこに乗っているパイロットの命も当然かかっているわけだし、場合によっては国家の安全保障もかかっているわけだから、撃てるということに正当防衛上ならないんですか。そこははっきり御答弁いただきたいと思います。

大野国務大臣 そういう場合は正当防衛、緊急避難に該当するわけですから、当然のこと、撃てるわけですよ。そのことも含めて私はお答えしているわけであります。

細野委員 撃てるという御答弁がありました。

 もう一つ私が確認をしておきたいのが、戦闘機対戦闘機ならそれで結構です。空対地で撃った場合、本土を既にミサイル攻撃した場合ですね、戦闘機から。その場合は撃墜できますか。これは緊急避難の要件に当たるかどうか、緊急避難でいうのは私は物すごく違和感がありますが、あえて言うと緊急避難の要件に当たるかどうかということになると思うんですが、長官のお答えをいただきたいと思います。

大野国務大臣 この問題もやはり国民の生命財産に対する重大な急迫する侵害ですから、正当防衛あるいは緊急避難という概念で対応するのは当然のことであります。これは、空対地というのは日本側が地で相手が空という意味ですね。空から地に撃ってきたら、これは本当に国民の生命財産に重大な侵害になります。当然撃ち返せる、当たり前のことであると思っています。

細野委員 今二つの御答弁をいただいて、こういう答弁というのは今までは余りやられてこなかったという経緯もあるので、最低限御答弁をいただいたなというふうに思うんです。ただ、どう考えても、それこそミサイルディフェンス以上に場合によっては大きな被害が出るかもしれない、第二発、第三発も容易に戦闘機からだったらあり得るわけですから、その事態に対して緊急避難、正当防衛ですという法理論はおかしいし、それはパイロットに酷ですよね。

 この部分について、先ほどの前長官の問題意識も全く私と同じだと思うんですが、緊急避難、正当防衛ではなくて、まさにマイナー自衛権の問題として自衛隊の中できちっと整理をするということの必要性は、長官、どうですか、まじめにお感じになりませんか、今のミサイル防衛の議論と対領侵の議論を、やりとりをして。長官の率直な御答弁をいただきたいと思います。

大野国務大臣 マイナー自衛権ということを今委員おっしゃいました。マイナー自衛権というのは、そういう議論があることは私も承知いたしております。しかし、マイナー自衛権というのは一体どういう、確立された法理論というものが果たして、いまだ確立されていないんじゃなかろうかなという感じもしますし、もう少しその辺はきちっと議論をしないといけないのではないか。

 恐らく細野委員は、警察権というよりもマイナー自衛権とか、公共の秩序というよりもそういうような新しい概念をつくっていくべきじゃないかという御議論だと思います。その御議論は私わかりますけれども、やはり確立されたマイナー自衛権というものがいまだないのではないかというような感じで、少し勉強してみなければいけないと思っています。

細野委員 私が言いたいことは、日本の場合、自衛権というのは非常にハードルを上げているわけです。そこの下に警察権というのがあって、そこに、対領侵もそうだし海上警備行動もそうだし、今回のミサイルディフェンスも全部並べているわけですよね。警察権の範疇に並べている権限と非常にハードルの高い防衛出動の間に法の空白があるんじゃないですか、そこをマイナー自衛権といっていて、そこを整理しないとこの問題は解決しないんじゃないですかということを申し上げています。

 そういうことの必要性を、長官、お感じになりませんか。本当に、対領侵が警察権の範疇に所属をするものとして、国家の安全にかかわるわけですね、それを警察権という治安の問題ととらえ、そしてパイロットの正当防衛、緊急避難の範疇で判断をさせるということがいいというふうにお考えになるんですかということを聞いています。

大野国務大臣 私は法律家じゃございませんので、わかりません。わかりませんけれども、今の自衛権あるいは防衛についての法律論というのは、極めて狭い土俵の中で行わざるを得ない。つまり、それは後方地域支援とか、あるいは武力行使と一体となるとか、あるいは武器使用の問題とか、こういうことは非常に精密に議論せざるを得ない、こういう狭い土俵にあることは事実であります。

 それをもうちょっと、防衛の本質は何だ、これは国を守ることであります、国民の生命を守ることであります。国民の皆様に国の安全と安心をお届けすることが我々防衛に携わる者の最大の責務であります。そういう観点から考えていく。そういう観点から考えていった場合にそれがどうなるか、私も反省しながら検討したいと思います。

細野委員 反省をしていただくというのは一体何を反省していただくのかちょっとよくわからなかったですが、要するに、反省というのは、善意に解釈すると、今まではそういう意味では法律的な整理が非常に狭く行われていて、警察権というところに押し込め、防衛出動、これはそういう意味では非常に日本はある種戦時中のトラウマというのがあるわけですから、そこは余りやらないという議論に押し込めてきた、そういう反省をしているということでよろしいですか。それを乗り越えてこの議論をしていこう、そういう御答弁だと理解してよろしいですね。

大野国務大臣 土俵を広くするためにはいろいろな問題がございます。この問題はまた別の問題として議論していく必要があると思っています。

細野委員 概念的な話ばかり幾らしてもなかなか前に進まないところがあるので、最後にその絡みで一つだけ確認をしておきたいと思います。

 もう一つ大きな脅威として、日本の場合は、空からだけではなくてやはり海からの脅威というのがあるわけですね。記憶に新しいところだと、去年の十一月に中国からの潜水艦が沖縄のまさに近海を通って、島と島の間を通って抜けていったという事案がございました。

 海上警備行動というのも、これはもともと海上保安庁の権限としてあって、海上警備行動で海上保安庁が対応し切れない部分は海上自衛隊がやります、そういう法律構成になっているんですね。去年の十一月の事案というのは、そういう意味では最大の矛盾点、すなわち海の中に潜っているものは、海上保安庁は捕捉をする、何らかの対応をすることができないわけですね。まさに海上自衛隊じゃないと対応できないことが起こり、この海上警備行動を発令したという意味においては、極めてわかりやすい事例だというふうに思うんです。

 海上警備行動でうまく出ていってくれたからよかったですが、いろいろと言われておりますが、例えば、その潜水艦が領海内にとどまって、これからの海の脅威ということを考えると、機雷を敷設するであるとか、さらには武装工作員が潜水艦の中から出てきて我が国に上陸をしつつあるとか、そういうことに対して、ではここで武力の行使ができるのか、武力の行使とは言わないのですか、では、そこの潜水艦に対して日本がどういう行動をとれるのか、これは私はできるだけ早く検討していただいた方がいいと思います。

 今の時点ではどういうふうに考えられているか、これも長官にお伺いします。

大野国務大臣 もう細野委員御存じのとおりでございますけれども、潜没潜水艦に限ってお答えをしたいと思いますが、現状、自衛隊は、当該潜水艦に対して、領海侵犯をした潜水艦に対して、浮上要求、退去要求を実施する、この一言に尽きるわけであります。具体的には、御存じのとおり、護衛艦あるいは対潜哨戒機等により外国潜水艦を追尾する、あるいは航行状況を把握していく、そしてアクティブソナー、水中電話によって潜水艦に対して浮上要求、退去命令を出す、これが現状のやり方であります。

 現状のやり方は以上でございますが、それをいかに早くやっていくか、これをことしに入りまして、関係各省間で事前に情報を共有していこう、そして侵入があったら直ちに海上警備行動を発動していこう、こういうふうに早くやろうという点に重点を置いてやることにいたしております。

細野委員 私が伺ったのは、素直に浮上してそのまま出ていってくれる場合はいいんですが、浮上してくれない場合、とどまった場合、そこで機雷の敷設であるとか工作員を出すとか、そういう準戦闘行為に近いようなことをした場合に日本は何ができますかということを聞いております。

大野国務大臣 そういう場合、出ていかないという場合についてでありますが、いわば当該潜水艦というのは、国際法上でいいますと、我が国領海内においても我が国の管轄権から免除されている、このことは御存じのとおりでございます。

 したがいまして、強制的な措置、立ち入り権等を含めまして強制的な措置をとることは認められていないということも御存じのとおりであると思いますが、こういう場合に、浮上命令、退去命令に応じない場合にいかなる措置をとることができるか、これは非常に難しい、現状では難しい問題であります。個別の状況に応じて判断していくということでありましょうし、一概に論ずることはできないのではないか、このように思っております。

細野委員 いや、一概にということじゃなくて、具体的に聞いているんですね。海上警備行動を発令している、潜水艦がそこにとどまって、では一つの事態に特定をしましょう、機雷を敷設した場合、それに対しては我が国としてはその潜水艦に対する攻撃をすることができますか。爆雷の投下、撃墜まではいかないにしても、それをやることはこの海上警備行動でできるんですかということをお答えいただきたいと思います。

大古政府参考人 お答えいたします。

 潜没潜水艦が我が国領海を侵犯している場合におきましては、基本的には浮上要求なり退去要求ということで、自衛隊が海上警備行動をする場合には措置することになります。その場合におきまして、基本的に、対処行動として武器の使用が想定されるということでは必ずしもないわけですけれども、仮に当該潜水艦が我が国に対して攻撃を加えるというようなことがあれば、当該潜水艦に対して必要に応じ武器を使用することは可能だ、こう思っております。

細野委員 武器の使用をしたときに攻撃できるのはわかりました。では、機雷の敷設や工作員を出す場合は、これは相手が武力攻撃をしてきたことに該当して、反撃をできるんですか。お答えいただきたいと思います。

大古政府参考人 その点につきましては、基本的に、当該潜水艦が我が国の商船とかに魚雷を撃つだとかそういうことにつきましては、攻撃が加えられれば、当該潜水艦に対して武器を使用することは可能だと思っておりますけれども、なかなか、潜水艦が機雷をまくとか、そこら辺は想定しがたいところですけれども、いずれにしても、海上警備行動に伴います海上自衛隊の活動につきましては、浮上要求なり退去要求をするということが基本でございます。

細野委員 機雷の敷設は想定外だという話でございましたが、私も専門家じゃありませんが、いろいろ専門の方にお話を伺ったところ、イラン・イラク戦争のときなんかも、それこそ漁民が機雷をまいていたなんという話は幾らでもあるんですね。

 今、海賊が出る時代ですし、武装工作船もたくさん日本に来ていると言われている時代に、こういうことというのは簡単に考え得るんですよ。想定外だというのはやはり通用しなくて、そういうことについてきちっと対応しておく。それにおいて海上警備行動が法的に問題があるというのであれば、マイナー自衛権の議論をきちっとして、変えるべきところは変えるという発想に立っていただかないと、今の答弁じゃとてもじゃないけれども安心をして日本を守れるという状況にはないということをはっきり申し上げておきたいというふうに思います。

 その上で、これは長官に再度私の方から申し上げておきたいんですが、今私が話をしているのは、公海上の話をしているわけでもないし、排他的経済水域の話をしているわけでもないし、まさに領海と領空という我が国の領域内の話をしているんですね。まさに排他的な占有権を我が国が持っているところにおいて何ができるかということは、国際法にもちろん書いていますが、国際法に書いてある中で読めるところまで各国はやっているんですよ。

 具体的に言うと、領空侵犯がなされたときに、ロックオンされたら撃つという規定をアメリカは持っています。スウェーデンや韓国は、領海侵犯をして停止命令をしてとまらない場合は爆雷の投下をやっています。国際法に書いていないからやらないんじゃなくて、我が国の安全を守るためであれば国際法で読める範囲でやるというのが、これが国際的な一つのルールなんですね、線なんですよ。

 そこを発想を変えていただいて、何でもかんでもやれというんじゃないですよ、やれるというオプションをきちっと持っておくことがいかに大事かということは、去年の潜水艦の事例をもっても明らかだし、また、毎年百件以上スクランブル発進しなければならないような、そういう領空侵犯をそれこそされているような現状も含めてあるということをはっきり認識していただいて、ぜひ日本なりの解釈をして、やれることをやっていただきたいというふうに思います。

 最後、海上警備行動の話も申し上げたので、再度、この部分について防衛庁長官から御答弁いただきたいと思います。

大野国務大臣 ただいま、日本としてできること、もちろん国際法上できること、国際慣例上できることをきちっと見きわめて、そして日本としてもそれを国際法に違反しない限りきちっとやりなさい、こういうことだと思います。先生のおっしゃるとおりだと私は思っております。

 そういう意味で、なおその点は真摯に検討していきたい、このように思います。

細野委員 領海侵犯に対しては民主党も今法律をつくっておりまして、これは与党の皆さんにも御協力をいただいて、国際法の範囲で我が国が何ができるのかということについての法整備、議員立法ということに必ずしもこだわりませんが、できるだけ早くやりたいと思いますので、ぜひ御協力をいただきますようにお願いを申し上げます。

 こればかりやっていると時間が終わってしまいますので、論点を移していきたいというふうに思います。

 この指針を拝見していて、私がなるほどなと思ったことが幾つかありまして、警報の発令ですとか避難の手順なんかが一つずつそれぞれの事態に即して書いてある。これは非常に、私、今までなかったなというふうに思いまして拝見をいたしました。

 いろいろな事態が考えられるんですが、私は、まずどういうふうに警報を発するのかというのが国民の安全を確保する上では極めて重要だというふうに思っているんですね。どういうふうに警報を発すると書いてくるかなと思って、そこの部分を注目しておったら、この報告書によると、警報の発令は無線でやるんですというふうにあちこちに書いていますね。まずは防災無線であるとか行政無線を使うんですということが書いてある。そして、それを補足するものとして指定公共機関みたいなところを指定しておいて、テレビやラジオで流してもらうんですと書いてあるというふうに読めるんですが、これはそういうことでよろしいんですか。村田大臣にお伺いします。

村田国務大臣 委員のおっしゃるとおりでございます。

細野委員 ぜひここで前向きに御答弁いただきたいんですが、十九ページを見ますと、その警報の発令の仕方として、武力攻撃事態などにおけるサイレンのパターンや音色をあらかじめ定めておくんです、それを「国が定めるものとする。」と書いてあるんですね。これは私、非常に重要なことだと思うんですよ。

 具体的に私が地元なんかでいろいろ話をしていて感じるのは、私、静岡県なものですから、東海地震が来るかもしれない。今、予知をできるかどうかさんざん予知連を中心に国でやっているわけですよね。最近の脅威でいうと、津波が大変懸念をされている。さらには、今回、こういう形で武力攻撃事態、緊急対処事態というのが具体的に想定をされている。その四パターンぐらい、もしくは、武力攻撃事態の中で、ミサイルディフェンスなのかテロなのか、そこを変えるということも一つのアイデアだと思うんですが、これをどういうふうに変えて、どういうふうにそれを国民に知らせようと今の時点でお考えになっているのか、村田大臣にお伺いしたいと思います。

村田国務大臣 基本指針に書いてあるのは、「武力攻撃事態等におけるサイレンのパターン及び音色については、武力攻撃が迫り、又は現に武力攻撃が発生したことを明確に認識できる明瞭なものを国が定める」と書いてあるわけですね。したがいまして、認識の容易性ということが一つの条件、それから二つ目は、国民はあらゆるところに移動しますので、全国統一的なものでなくてはいけないということだと思いますね。

 そういう中で、要するに、これから具体的にそのパターンについては定められていくというふうに思いますが、とりあえずは、今の防災行政無線で同報系の装置が市町村にございますけれども、当面はそれを使ってやっていくということになろうかと思います。なお、消防庁を含めまして、そういうパターンをどうするかということについては今後検討していかなければならないことだというふうに思っているわけです。

細野委員 いや、定められていくとかいう話じゃなくて、「国が定める」と書いているんですから、きちっとこれはやっていただきたいと思います。

 これはいつごろまでにできるか、めどを、さっき加藤さんもおっしゃいましたが、やはり仕事はちゃんと目標を設けて、期限を設けてやらなければいけませんから、御答弁いただきたいと思います。

村田国務大臣 これもお答えとしてはできるだけ速やかにというお答えしかないのでございますけれども、やはり災害の方、防災の関係の方のパターンもありましょうし、消防庁を含めまして、どういう具体的なパターンや音色がいいのかということにつきましてはできるだけ速やかに政府として決めていきたい、こういうふうに考えているわけであります。

細野委員 また改めていつの時期かというのは聞きたいと思いますが、もう一つ確認をしておきたいことがあるんですね。それは、無線で行かなかった場合に、これはテレビなんかを使うということなんですね。

 去年、実は、指定公共機関の問題については私は非常にこだわっていまして、NHKに一元化をして民放は指定すべきでないとさんざんこの委員会で頑張りました。ただそこは、民主党の中にもいろいろ意見があり、与党の皆さんの意見もあり、すべてのテレビ局、キー局と言われるところを、国は東京と大阪と名古屋で全部指定公共機関として指定をしましたね。そのとき私がもう一つ申し上げたのは、仮にキー局を指定しても、キー局というのは全国で全部流しているわけではなくて、静岡なら静岡、北海道なら北海道でそれぞれ系列局というのがあって、そこを通じて流さないと情報は流れませんよということを申し上げました。

 今の時点で見ていると、指定している都道府県というのが十都道府県で、ほとんどの都道府県は地方の指定公共機関には指定していなくて、国がどんなに流しても地方には流れない仕組みになっているんですね、今の時点では。これは今後どういうふうにしていくおつもりなのか。私はやるべきではないと考えましたが、やるならきちっと流れる仕組みはつくらなければいかぬと思います。その観点からお伺いしていますが、いかがでしょうか。

村田国務大臣 防災行政無線のほかに、こうした放送事業者によるさまざまな国民保護措置に係ります警報ないし指示の伝達というのは大変重要なことでございまして、できるだけ多くの放送事業者等が加わっていただいてそうした情報を流していただくということが、国民の保護を万全にするためには必要なんだろうというふうに思います。

 現時点では、今委員のおっしゃるような形になっておるわけでございますが、基本指針も出たわけでございまして、今後、国あるいは都道府県を通じまして放送事業者に対して十分な説明をして、そうした指定を受けていただくように私どもは協力を求めていきたいというふうに考えているわけでございます。

細野委員 基本的には、これは流すためには全部指定しないと流れないわけですから、地方の裁量に任せるということでは方針としては一貫性がないですよね。

 もう一つ申し上げたいのは、基本的に指定をするときにもう一つ大事なことが、各放送事業者なりラジオ局が本当に協力をしようという姿勢になるのかどうか。都道府県の国民保護計画というものがどういうものかということにもこれは大きくかかわってくるんですね。さらに言うと、業務計画というのを各放送機関がつくるんですが、それがどういうものになるのかということにも大いにかかわっています。

 一つ私が懸念をしているのは、地方の放送機関の中で、これは埼玉県で問題になった事例ですが、具体的に、放送事業者が持っている映像を県に出すようにという指針が出て、それに対して放送事業者が反発をしたというようなことが出ています。これも含めて、地方の行政機関と放送局の関係をどう考えていくのか。

 警報を発令するのは、これはもう決めたことでしょうからいいです。そこをやるのであれば、そこに限定をして、中身には関与しない、こういう報道をしなさいというところまでは関与しない。ましてや、それこそ放送局との中でまた違った形での公権力の関与は認めていかない。これは国民の知る権利ともかかわるので、そこまで責任を持たないとやったことにならないと私は思うんですよ。

 既にそういう懸念が出ていますので、これは防災担当大臣としてスタンスをぜひ確認しておきたいと思います。

村田国務大臣 委員のおっしゃるように、一方におきまして国民に対する情報伝達を完全にするという意味では、指定公共機関の指定につきましてある程度強制力を持って、すべての放送事業者とするのがやはり徹底することなんだろうというふうに思います。

 しかし、法律の建前からして、そうした機関に対しての自主性を尊重するという建前になっている関係上、我々は、改めて申し上げますけれども、要するに、放送事業者である指定公共機関がそういう指定を受けるかどうかということから始めまして、どういうことを業務計画に定めるかということについても、我々が指示することになってはいないわけですね。だから、そういう意味では、業務について、警報等の放送と避難の指示等の放送、緊急通報の放送、これをやってくださいよ、こういうことでございます。

 そういうことを書いてございまして、その上で、その実施方法とか実施体制等を国民保護計画に定めているわけでございまして、この作成は指定地方公共機関が自主的に行うということは基本指針に定めているわけでございますので、我々は、そういう意味で、中身についてまで踏み込んでこうしてくださいということには体制としてはなっていないということでございます。

細野委員 いや、私から言わせるとそういうことにはならないのであって、法律をつくるときに、国として放送の中身までは介入をしないということは答弁があったわけでしょう。今の大臣の答弁だと、それこそ都道府県とそれぞれの放送機関の関係において好きにつくってください、そういう話ですか。それはおかしいでしょう、法律をつくったときにそこは中身に介入しないとおっしゃったんだから。地方の自治体とそれぞれの放送局の関係においても、今大臣がおっしゃった三点、警報の発令等の三点に限定をして計画をつくるべきだ、そういうふうに答弁をしていただかないと、これは、つくったはいいけれども、矛盾するんですよ。

 その三点に限定するということでよろしいですか。再度御答弁ください。

村田国務大臣 私はそういう趣旨で申し上げたわけでございます。

細野委員 もう既に懸念する事例が出ていますので、これは大臣、ぜひチェックしてください。強制力はないにしても、今の答弁は非常に重いと思います。各都道府県でいろいろな、これから基本指針なり、また業務計画が恐らく事業者から出てくると思いますから、その中身について、責任を持って大臣は見ていただきたい。このことは私から強く申し上げておきたいというふうに思います。

 残り時間が五分ちょっとになってまいりましたので、最後に、体制の問題について質問をさせていただきたいと思います。

 この基本指針が出てきたのが二十五日の午前なんですが、その後、村田大臣が閣議後の記者会見でこういうふうに発言をされているんですね。長年の国の懸念だった国民の生命財産を守るという体制ができた、実は記者会見でそうおっしゃっている。私は、これは実は大変取り違っていられると思っているんですね。確かに枠組みはできました。でも、政府がそれに対応する体制は本当にできていますかということを私は確認しておきたいというふうに思います。

 お配りをした資料をごらんいただきたいんですが、横長の「内閣官房の組織編成」という紙をごらんいただきたいんです。これはホームページからとっていますが、政府から正式にもらった図も全く同じ、縦を横にしたような図でございますので、そのまま持ってきました。これは、内閣官房の下にそれぞれこういう組織があるということで書いてあるんですが、この図を見た限り、ではどこで国民保護をやっていくのか、危機管理をやっていくのか、このことが全然わからないんですね。

 確かに、内閣官房副長官補の下にいろいろ、個人情報担当室ですとか情報セキュリティ対策推進室とかいっぱい並んでいるんですが、この中に危機管理に関するものというのはない。これはどこでやるんですか。

村田国務大臣 初動態勢から言いましょうか。初動態勢から言いますと、武力攻撃事態と判断される以前から、内閣危機管理監が、危機管理参集チーム、そういう事態が生じた場合には参集チームを招集して、情報の収集、分析をする、そういうことからスタートするわけでございまして、中心としては、内閣危機管理監が中心となって行う体制であるというふうに答えていいと思います。

細野委員 内閣官房副長官の横に出ている内閣危機管理監がやるんですと。

 では、ちなみにお伺いしますが、内閣危機管理監には何人部下がいますか。

村田国務大臣 約百名ということでございます。

細野委員 いや、それは違うでしょう。内閣官房副長官補の下に百人いるわけでしょう。危機管理監の下じゃないじゃないですか。危機管理監の直属の部下は何人ですか。

村田国務大臣 私がそうやって百人と申しましたのは、内閣官房副長官補は内閣危機管理監を補佐する、そういう形になっているからそういうふうに御答弁申し上げたわけでございます。

細野委員 今、内閣官房副長官補が補佐するというお話をされました。

 そこで、ちょっと内閣法をごらんいただきたいんです。同じく配らせていただいています。内閣法の十五条の二項を見ますと、危機管理監に関する規定があります。そのまま読みます。「内閣危機管理監は、内閣官房長官及び内閣官房副長官を助け、命を受けて内閣官房の事務のうち危機管理に関するものを統理する。」とあるんですね。ただ、括弧書きとして、「国の防衛に関するものを除く。」とあるんですね。

 危機管理を担当し、そのチームを所掌する危機管理監が国防に関するものを除くというのは、これは一体どういうことですか。

村田国務大臣 これはかねてから何回も議論があった点でございますが、武力事態に関しましては、例えば村岡官房長官の御答弁で、この体制ができたときの答弁でございますが、国の防衛に関すること、すなわち外部からの武力攻撃という事態への直接の対応につきましては、一層高度なレベルでの総合的政治的判断により決定されるべきであるものから、内閣危機管理監の統理の対象から除かれております、そういうふうに答弁をしております。

細野委員 大変難しい問題なので危機管理監を外して、その補佐である内閣官房副長官補が防衛庁から来ているのでそっちでやる、要するに、危機管理監は警察庁が来ているので、防衛についてはやりませんよと。日ごろは補佐するはずの内閣官房副長官補がそのときにはにょろっと上に上がってきて、危機管理監を除いてこれを統理するんですか、今度は。そういう理屈にこれはなっているんですよね。本当にそれでいいのか。では、官房長官にお伺いしたいと思います。

細田国務大臣 お答えいたします。

 決してそのようなことではございませんので、当然、内閣危機管理監も、このような事態に関して責任を持って対応するわけでございます。

細野委員 今の答弁は、そういう危機管理の中において、この二人が仲よくやりますと。

 だれがトップで実務を仕切るのか、調整をするのか。この国民保護法制の枠組みでいうと、総合調整という強い権限を与えられるわけですよね。それを実務で仕切ってやるのは、それこそ役所というのはいろいろな組織があるわけですから、それを束ねていくのがだれなのかという指揮官が、実質的な指揮官が、要するに、有事になればかわるというのは、明らかにこれは不備なんですよ。

 最後に申し上げますが、私は、国民保護をするための体制というのがまだ整っていないというふうに考えています。考えた上で、去年の緊急事態基本法の覚書については、もともと一番初めの原稿は私が書きました。そこに体制の整備について一番強調して書いたつもりでございます。そのときに、増田審議官、来られていますが、きょうはもう答弁求めませんが、増田審議官も入っておられて、体制の整備は政府の責任なのでやるようにというのを前原委員の方から強く申し入れがあって、それについては、はい、わかりましたという趣旨の意思表示がありました。それも含めて、政府の中でぜひこれはやっていただきたい。

 細田官房長官には、政府としての体制の整備をやるというその意思と、あともう一つは与党サイドの責任者として、では、その覚書に基づいてこれはやるんだ、基本法はこの国会で成立させるんだということについて、政府だからだめだと逃げるんじゃなくて、与党の幹部でもいらっしゃるわけだから、国会としてこれはやるべきだ、与党としては取り組むべきだということ、この二点を御答弁いただきたいと思います。

細田国務大臣 私は今政府側に入っておりまして、総理大臣は総裁を兼ねておりますけれども、私は必ずしも党の幹部という位置づけではございませんが、三党合意については、大変重い合意をいただきました。しかも、本当に真剣な担当の皆様方の御議論をいただいていると承知しております。その議論の内容については、政府としては重く受けとめさせていただきたいと思っております。

細野委員 与党の皆さんに申し上げたいんですが、私ども民主党の岡田代表は、年金の問題で、おまえら三党合意を守っていないじゃないか、守っていないじゃないかとさんざんぼろくそに皆さんに言われたんですね。こっちの三党合意は期限を切ってありますからね。より重いんです。幹事長がサインをしているんです。この国会できちっとやっていただく。約束をほごにするということは、これは大変重大な信義則違反である。作業を進めていただくことを、政府の側と与党の側、両方に申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

玉沢委員長 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として防衛庁長官官房長北原巖男君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

玉沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

玉沢委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢です。

 国民保護の基本方針について聞いていきます。

 国民保護法の審議の際でしたが、鳥取県で行われた住民避難のシミュレーションなども挙げて、過疎地域でさえも、住民避難時、十一日間も要する、ましてや大都市の住民避難などできるのかという疑問がさまざま出されました。

 今回の指針策定に当たって、こうした問題を具体的に検討した上で指針策定に至ったということですか。

大石政府参考人 お答えいたします。

 基本指針の策定に当たりましては、まず基本指針の要旨の段階から、地方団体、それから関係の民間指定公共機関の方々からさまざまな御意見をいただいて策定してきたわけでございます。その際、大都市における避難、その他、地域特性に応じた避難等をどうするのかということにつきましても、さまざまな御意見を地方団体からいただきました。

 大都市や離島においてどういう攻撃を想定してどのような避難をさせるかという、具体的な数字をもってのシミュレーションというものはしていないわけでございますが、基本的な考え方といたしまして、大都市部で大規模な着上陸侵攻というのは相当蓋然性は今日低くなっているのではないか。とすれば、NBC等のテロ的な攻撃とかミサイル攻撃に対応して、大都市の方々をどのように避難させるか、そこを基本に考えるべきだということにいたしまして、基本指針ではそれを基本といたしております。

 それから、離島等の避難につきましても、全島避難というものも念頭に置きながら想定をすべきだと考えているわけですが、数をもって、どれぐらいの船舶とか飛行機を用意しなければいけないのかとかいうようなことを具体的にシミュレーションしたわけではございません。しかし、明らかに沖縄とかその他の離島におきましては交通手段に限界があるわけでございますから、国が責任を持って航空機、船舶等の確保をするということで支援をしていくという考え方を基本指針ではうたったわけでございます。

赤嶺委員 結局、大都市における避難について、法案の審議のときにもいろいろ疑問が出されたけれども、そのときに出された問題は未解決のまま、ただ着上陸侵攻は蓋然性が低いというところに寄りかかって今度の指針案をつくった。

 指針を見ていますと、大都市における住民の避難に当たっては、その人口規模に見合った避難のための交通手段、受け入れ施設の観点から、多数の住民を遠方に短期間で避難させることは極めて困難であることから、都道府県知事に十分な避難施設の把握及び指定に努めるものとするという、国において困難だから、シミュレーションもできないから、都道府県知事、しっかりやりなさい、こういうような表現になっているわけですね。問題が全く検討されている様子がこの中からは見えてきません。

 今出された沖縄の住民の避難について伺います。

 運送手段、全島避難を考えてみた場合に、「国が特段の配慮をすることが必要である。」ということをおっしゃっておりますが、一体、沖縄に有人離島が幾つあるのか、そういうことも念頭に置いておっしゃっておられるのかわかりませんが、何よりも、米軍が集中する沖縄で、武力攻撃事態における軍隊の行動というのは地域住民の避難に大きな影響を与えます。軍事行動が激化する中で、そうなれば那覇空港も港湾も軍事的に重要な拠点となります。そういう中で、住民の県外への避難など可能なのかということを考えますが、大臣、いかがですか。

大石政府参考人 お答えいたします。

 先ほども申し上げましたように、大規模な着上陸侵攻の可能性、蓋然性というのは今日かなり低くなっているという考え方の前提の中で避難のあり方を検討しているわけでございますが、いわゆる沿岸部、離島等における着上陸侵攻というのは想定されるものですから、そういった場合に、やはりその県なり離島の中で交通手段を確保するというのは到底できることではございませんので、国が必要な支援をするということ、これは沖縄だけではなくて離島全体について国が必要な支援をする。それは、防衛庁、海上保安庁が保有しているところの船舶、航空機を使用して住民の運送に当たるということを今回基本指針に明記させていただいたわけでございます。

赤嶺委員 そこは別にいいんです。米軍や自衛隊の行動と住民避難との整合性、これはきちんととった上でつくられたんですかということを聞いているんです。大臣、お答えください。

大石政府参考人 お答えいたします。

 米軍との関係の問題もございます。先ほど民主党の加藤先生からの御質問の際にも、外務省並びに私の方からもお答えをさせていただきましたが、米軍基地周辺の方々の避難をどうするかということ、それから米軍基地内の方々の避難も含めまして、現在、米国側とその避難のあり方について検討しているところでございます。

 そういうすり合わせは現在しているところでございますので、そのこともこの基本指針の中におきましては、国が必要な調整を行うということを明記したわけでございます。

赤嶺委員 国が必要な調整を行うというだけでは解決しない問題をたくさん抱えているわけです。沖縄や離島は着上陸侵攻の蓋然性が高いということをおっしゃっておられましたが、過去の戦争では、日本軍の行動によって住民の多くが巻き込まれて、大変な戦死者を出すということがありました。

 そのときの問題も残っておりますが、なお、今日、沖縄では、日米地位協定などに基づいて米軍優先、これは全国そうですが、ずっと平時から米軍優先という事態が起こっているわけですね。ですから、この米軍優先の問題と、住民の保護と安全を確実にするという問題と、これらについて問題点を挙げて検討したことはあるのかどうか、そういうことを伺っているわけです。

大石政府参考人 お答えいたします。

 さきの有事関連法案の審議の際に、国民保護法とあわせて特定公共施設利用法の法律も御審議いただいたわけでございますが、有事になりました場合に、国民の避難のための例えば道路、それから米軍、自衛隊の部隊展開があるわけでございますが、その利用の調整というものが必要になります。その利用の調整につきましては、対策本部長たる内閣総理大臣が責任を持って指針を示す、必要があれば指針を示すということになっております。

 先生お尋ねの、米軍基地周辺においてどのような国民保護のための避難路を確保するのかという点につきましても、この特定公共施設利用法に基づくところの利用指針を対策本部長たる内閣総理大臣が定めまして、それに従って避難を行うということになるわけでございます。

赤嶺委員 米軍優先の枠組みをそのままにして、平時から軍事優先が余りにも目立ち、住民への被害が拡大している、そういう基地が集中する沖縄島において、そこの枠組みはそのままにして国民保護の枠組みをどんなにつくっても、それが住民の保護や国民の保護に現実性を持ち得るのか、こういう疑問を感じざるを得ません。

 指針のもう一つの問題について、「核兵器を用いた攻撃」こういうことまで想定をしているわけですね。核攻撃が起こった場合の対応として、「避難に当たっては、風下を避け、手袋、帽子、雨ガッパ等によって放射性降下物による外部被ばくを抑制する」「口及び鼻を汚染されていないタオル等で保護する」。こういうことで、被曝から身を守るということが果たしてできるんでしょうか。どうですか。

大石政府参考人 お答えをいたします。

 先生が御指摘になりました避難の際の留意事項として、核攻撃の場合の避難について、例えば内部被曝を防止するためには、やはり口や鼻はマスク等で覆うということが必要であろう。これは、放射性物質吸引による被曝というものを軽減させる効果を持つものとして効果があるとされております。

 それから、手袋、雨がっぱ、帽子等を着用するのは、いわゆる外部被曝と言っておりますけれども、放射性降下物による汚染を低減させる、そのことの効果は十分あるというふうにされております。

赤嶺委員 この指針を見た方が、三月二十二日の毎日新聞に投書をしておりました。「政府の「国民保護基本指針」案を読んで仰天しました。」「政府は悲惨な広島・長崎の被爆の実情をまじめに検討したのでしょうか。六十年前、広島原爆の直後に政府は「新型爆弾(原爆)への心得」を発表しています。「防空壕に逃げろ」「毛布をかぶれ」「長袖、防空ずきん、手袋をしていればやけどは防げる」といったもの。原爆なんて、この程度で大丈夫といった宣伝です。」恐らく、この方、被爆者じゃないかということも感じましたけれども、「今度の「基本指針」と、どこか似ていませんか。」こういう疑問を出しているんですね。

 一体、今回、これで被曝から身を防げるという科学的な根拠というのは、皆さん、ちゃんと説明できるんですか。

大石政府参考人 お答えいたします。

 核攻撃を受けるという事態に万一なった場合、もちろん、直接被害を受ける地域、これは甚大な惨禍をこうむるわけでございます。私どもは、この影響をいかに最小限に抑えるかという観点で基本指針をつくらせていただいているわけでございますが、周辺の方々の避難のさせ方ということが非常に大事になるわけでございまして、その際には、やはり被曝をいかに抑えるか、内部被曝、外部被曝、それぞれあるわけでございますが、いかに抑えるかということが大事でございます。もちろん、安定沃素剤を服用するということも基本指針の中に盛り込ませていただいております。

 要すれば、核攻撃を受けるなんということがあってはならないわけでございますが、その影響を最小限に抑えるものとしての措置を今回基本指針に定めさせていただいたわけでございます。

赤嶺委員 皆さんの言う最小限というのは、本当に気休めにしかすぎないと思うんですよ。これで核攻撃から身を防げると思っている人はおよそいないんじゃないかというぐあいに思うんです。

 次に、報道の自由と情報、これらの問題について伺います。

 報道の自由について本当に地方公共機関、放送局から懸念の声が上がっているということが言われておりました。同時に、政府が作戦をしていく上で情報を重視しているということもいろいろ言われましたけれども、一月二十九日のNHKの番組に「陸上自衛隊 イラク派遣の一年」というのがありまして、そこに陸上自衛隊研究本部の研究員が登場いたしまして、イラク派兵を前にした陸自第四次隊に対する講義の中で、日本国民の支持獲得としては、まさに情報戦であり、まさに実施中のオペレーションであるということだ、世論、民意については、作戦行動の基礎となるとともに、作戦の評価そのものを左右、決定する重要な要因となり、世論、民意の獲得とその誘導が必要となる、このように発言をしております。

 作戦のために世論を誘導するというのが防衛庁・自衛隊の方針なんですか。

大野国務大臣 まず、イラク人道復興支援活動の教訓に関する研究の一環として、陸自の研究本部が情報戦に関する研究を行ったことは事実であります。この研究というのは、今後の参考にすべく、陸上幕僚監部や派遣予定の部隊にその成果を参考資料として提供した。

 その内容でありますけれども、もちろん日本国内向けには、あのイラクでこういうことをやっているんですよ、この御理解を求めるためであり、また、地元住民に対しましては、やはりお互いに理解し協力してもらいたい、こういう意味でございます。したがいまして、そういう問題点を研究機関としての立場から提供したものであります。

 ただ、言葉として情報戦という言葉を使ったということは、私はいかがなものかなという気はいたします。情報戦という言葉の持つ意味、正確に言いますと、これは英語で言いますとインフォメーションオペレーションですから余りそういう感じはしないんでありますけれども、情報を操作するとかこういうふうに誘導するとか、こういう意味では絶対ありません。

 いわば、広報活動として、今後の問題を国民にも広く知ってもらいたい、それから、イラクのサマワの人たちにも、どうか日本の自衛隊というものは人道復興支援活動、こういう意味でやっているんですよ、お互いに理解し協力し合ってイラクの復興のために頑張りましょう、こういう意味での、作戦と言うとおかしいですね、やはり。作戦でいいのかな。

 要するに、情報作戦という持つ意味を、いわば陰の部分で理解するとおかしくなる。本当に申し上げます。決して、誘導するとか、それからいい方向へ持っていくとか、そんなことではありません。

赤嶺委員 情報は作戦だ、そして決定的な意味を持つという中で、その情報の中でも、報道機関に対する位置づけを、この番組の中で紹介された「イラク人道復興支援活動の教訓」、番組で紹介されたその教訓のもっと詳しいのを皆さんの方から提供していただきました。

 ここに持っているわけですが、もう長官御存じだと思いますが、それによると、情報戦の対象、「ターゲティングリスト」というぐあいにここに書いておりますが、その中で、報道機関も挙げられているわけですね。その報道機関に対してどういう対策をとるか。情報戦の作戦の遂行のために、「手段」として、「広報 昼食会(自衛隊食を囲んで、一体感醸成)」このようにあるんですね。これはどういうことですか。

大野国務大臣 赤嶺先生御指摘なさるのは、一体感醸成というのはどういうことなんだろうと。これはやはり、マスメディアを通じて日本の国民の皆様に、一体自衛隊というのはどういうことをやっていて、どういう生活の中でその使命を達成しているんだろうか、こういうことをやってもらいたい。我々は、どんなことがあろうとも、正しいことを正しく報道してもらえばいいわけでございます。したがいまして、情報を通じてこういうことを特にこうしてもらいたいとか、そんなことはありません。ただ、マスメディアの皆さんに、自衛隊がこういう生活の中でやっているんだ、この御理解をいただきたい。

 先ほどの情報戦と同じように、一体感醸成というのも言葉の問題として不適切なのかな、私はこういう気がしますので、早速、情報戦等につきまして、こういうことは今後、無用の誤解を招くのでやめるようにという指示はいたしておきます。

赤嶺委員 もう時間がありませんが、イラク戦争でも、情報をゆがめ、誇張し、間違った戦争に突入いたしました。そういう中で、情報というものをこのように扱っている。これはやはり、こういう指針そのものが具体化されていったときに、報道の自由も侵していくことになりかねないということを指摘いたしまして、質問を終わります。

玉沢委員長 次に、山本喜代宏君。

山本(喜)委員 社民党・市民連合の山本であります。

 先般閣議決定されました国民の保護に関する基本方針について質問いたします。

 基本方針は、国民保護を口実に、平時から有事を想定した準備を行い、各省庁、自治体、指定公共機関がとるべき措置を具体化しています。戦争協力のために国民の動員を定めているものであり、社民党としては到底容認できないという立場であります。

 基本指針の第二章において、「武力攻撃事態の想定は、武力攻撃の手段、その規模の大小、攻撃パターンなどにより異なることから、武力攻撃事態の想定がどのようなものとなるかについて一概に言えない」としています。事態の想定があいまいなまま、どうして具体的な対応策が明らかにできるのか、その点についてお伺いします。

村田国務大臣 武力攻撃事態の想定でございますが、国民保護措置の実施に当たりまして留意すべきことを明らかにする、そのために、武力攻撃の性質に応じまして、四つのパターン、四つの類型に分けたわけでございます。四章におきまして、その特徴に応じました具体的な国民保護措置について記述しているわけでございます。

 今先生も御指摘なさいましたように、武力攻撃事態の想定が一概に言えないとしているのは、実際に起こり得る攻撃は、攻撃主体の規模、攻撃の手段、パターン、攻撃目標などがさまざまでございまして、例えば、ゲリラや特殊部隊による攻撃に連携して弾道ミサイルが発射される等、そういうケースもございまして、複数の攻撃が複合的あるいは連携して行われるということも考えられるので、そうしたことを記述しているわけでございます。

山本(喜)委員 さまざまな攻撃のパターンということで想定されているということでございますが、それに対応するためということでの報道の自律性の問題でございます。武力攻撃を受けるなど有事の際、放送局は指定公共機関、指定地方公共機関として、警報とか避難指示、こうした放送が義務づけられることになるわけであります。

 現在、都道府県によって指定地方公共機関の指定が進んでいるわけでございますが、地方放送局では指定に慎重な対応をとる動きが広がっているわけでございます。社民党とすれば、有事であっても放送の自律性は担保されるべきであり、平時においても、放送事業者の置かれた事情に応じて自主的な裁量による対応とすべきだというふうに思います。

 既に災害報道で実績が重ねられており、指定がなくても、報道を通じた情報提供に問題は生じておりません。事業者の規模によっては経済的負担も無視できないということでありますから、報道に限らず、今後、地方公共機関としての指定を辞退したいという事業者が出た場合の対応について、政府の考えをお尋ねします。

村田国務大臣 今後、都道府県が放送事業者等の地方指定公共機関を指定する際には、今先生が御懸念でございましたような報道の自由とか報道機関の自主性については十分配慮したいというふうに考えているわけで、そうしたことを放送事業者等に十分説明して指定を行いたいというふうに、指導してまいりたいと考えております。

山本(喜)委員 北海道では、地元の民放七社が、二月七日、連名で報道の自律性確保などを求める見解を知事に出した。そこで、道とすれば今年度中に一斉指定を目指していたけれども、その見解を受けて、話し合うために、この指定を来年度に持ち越したというふうな経過とか、あるいは、放送の自由が制約されると判断したときは撤回もあり得るという条件つきで指定を承諾することを検討している地方局もあるというふうに言われております。

 そうした意味で、報道の自由が侵害されることがないような対応をぜひよろしくお願いしたいというふうに思います。

 次に、平素からの備えに対する負担であります。

 指定公共団体、指定地方公共団体にはさまざまな平素からの備えが求められています。規模の小さな事業者にとっては、このような平素の備えが無視できない負担となることが考えられます。こうした負担への何らかの配慮が必要と思います。

 それから、平素からの連携体制の整備を名目に、指定公共団体、指定地方公共団体に対して退職自衛官等の関係者が天下っていくということにもなりかねないのではないか、このようなことがあってはならないと考えますが、この点について、いかがでしょうか。

大石政府参考人 指定公共機関、指定地方公共機関の平素からの負担についての支援ができないかというお尋ねについてお答えをいたします。

 指定公共機関、指定地方公共機関につきましては、それぞれの業務の範囲の中で、この国民保護法に定められた責任を果たしていただくということになっておりまして、業務の範囲の中でやっていただくわけでございますので、平素かかる経費について財政的な支援をするということは、法案の審議段階から想定をしていなかったわけでございます。

西川政府参考人 防衛庁のOBの再就職のことについて、今お話がございました。

 防衛庁につきまして、基本的には、自衛隊員が在職中に培いました専門的知識、あるいは能力、経験を生かして企業等へ再就職するということについては、隊員の士気を高めるということもございますし、隊員が誇りを持って職務に精励し得る、こういうふうなことを勘案しまして、大変重要なことと考えております。

 そしてまた、働く方も、相手方の企業等にとりましても、隊員個々人が在職中に培ったそういう能力等、あるいは専門的知識等を活用できるという意味で意義があるんじゃないか、こういうふうに考えておりまして、基本的方針としては、指定公共機関等が専門的知識等を有する退職自衛官の再就職を求められる場合にあっては、適正な再就職手続にのっとりまして、可能な限り指定公共機関等の御要望にこたえてまいりたい、こういうふうな考え方をしております。

 以上でございます。

山本(喜)委員 平素からの備えということでは、大変膨大な作業が必要となっていくわけでございます。そうした意味での何らかの配慮というものもあってしかるべきではないかというふうに考えているわけでございます。

 次に、ボランティアへの支援についてであります。

 国及び地方公共団体は、武力攻撃事態に備えるために、平素から、日赤あるいは社会福祉協議会その他のボランティア関係団体との連携を図るとされています。そのためのボランティアの登録、派遣調整等の受け入れ体制確保に努めるというふうにされていますが、その他のボランティア関係団体というのはどのようなものを想定しているのか。また、受け入れ体制というのはどのようなものか。自発的な市民活動に対する政府、自衛隊の過度な介入ということがあってはならないと思うんですが、この点についてお伺いします。

大石政府参考人 お答えいたします。

 その他のボランティア団体として私どもが念頭に置いておりますのは、いわゆるNPO、災害関係で災害ボランティアとして活動されている団体を想定しているわけでございます。

 それから、ボランティアの登録、派遣調整等の受け入れ体制の確保、この意味でございますけれども、これは、その活動の場所に集まっていただいたボランティアの方々の受付や登録の窓口を開設いたしたりすることや、役割分担の調整をしたりすることを指しているわけでございます。

 それから、ボランティア活動に対する干渉等がないようにというお話でございますが、これは当然のことでございまして、ボランティアの方々はまさに自発的に活動していただくわけでございますから、その自主性を政府、地方公共団体も尊重して支援をしていくという考え方でございます。

山本(喜)委員 最後になりますが、基本指針の冒頭において、「我が国を取り巻く安全保障環境については、冷戦終結後十年以上が経過し、我が国に対する本格的な侵略事態生起の可能性は低下している」というふうに記されております。

 可能性が低下してきた世界情勢の中で、戦争状態を想定した体制整備を進めることは果たしていかがなものか。憲法や国連憲章に基づく平和政策を追求し、アジアにおける軍事的緊張緩和に向けた外交努力こそが求められていると思いますが、見解をお願いします。

逢沢副大臣 かつて我が国にとりまして最大の脅威はソ連の存在であり、その軍事力、また核兵器、そんな認識を持たざるを得ない時代もあったわけでありますが、先生御承知のように、冷戦が終わり、世界は新たな状況になりました。

 ただ、我が国周辺には、依然として不確定な要素が数多く存在いたしております。朝鮮半島の核の問題、また中台間におきましてもいわゆる軍事的な緊張関係が現に存在いたしておりますし、また、テロ、核を初めとする大量破壊兵器の拡散にどう対峙していくか、対応していくか、そんな課題にも直面いたしております。

 したがいまして、我が国といたしましては、中国や韓国、ASEAN等、近隣諸国との友好な関係をより一層確保していく、そして、言うまでもないことでありますが、やはり日米安全保障体制をより確固たるものにして、我が国及びその周辺の安定と安全をよりしっかりとしたものにしていかなくてはならない、そういった大きな認識のもと、外交も積極的に進める必要があるわけであります。

 同時に、経済の関係を強化しながら安定を確保していく、大変重要なことでございます。FTA、EPAの促進、また、ことしの暮れには東アジア・サミットも計画をいたしているわけでありますが、こういった政治対話を通じて安定やまた平和をしっかり確保していく、そういった外交にもより一層積極的に取り組んでまいりたいと存じます。

 どうぞよろしくお願いをいたします。

山本(喜)委員 ありがとうございました。以上で終わります。

玉沢委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時四十六分散会


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