衆議院

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第1号 平成16年2月18日(水曜日)

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本小委員会は平成十六年二月十三日(金曜日)委員会において、設置することに決した。

二月十三日

 本小委員は委員長の指名で、次のとおり選任された。

      岩永 峯一君    遠藤 武彦君

      木村  勉君    中谷  元君

      西銘恒三郎君    宮下 一郎君

      渡辺 博道君    加藤 尚彦君

      武正 公一君    中野  譲君

      増子 輝彦君    松原  仁君

      漆原 良夫君    赤嶺 政賢君

二月十三日

 遠藤武彦君が委員長の指名で、小委員長に選任された。

平成十六年二月十八日(水曜日)

    午前九時開議

 出席小委員

   小委員長 遠藤 武彦君

      岩永 峯一君    大前 繁雄君

      木村  勉君    中谷  元君

      西銘恒三郎君    宮下 一郎君

      渡辺 博道君    加藤 尚彦君

      武正 公一君    中野  譲君

      増子 輝彦君    松原  仁君

      渡辺  周君    漆原 良夫君

      赤嶺 政賢君

    …………………………………

   外務委員長        米澤  隆君

   内閣官房副長官      細田 博之君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  鈴木 基久君

   政府参考人

   (内閣官房拉致被害者・家族支援室長)       小熊  博君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局長)            薮中三十二君

   外務委員会専門員     原   聰君

    ―――――――――――――

二月十八日

 小委員木村勉君及び加藤尚彦君同日委員辞任につき、その補欠として大前繁雄君及び渡辺周君が委員長の指名で小委員に選任された。

同日

 小委員大前繁雄君及び渡辺周君同日委員辞任につき、その補欠として木村勉君及び加藤尚彦君が委員長の指名で小委員に選任された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 北朝鮮による拉致及び核開発問題等に関する件


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     ――――◇―――――

遠藤小委員長 これより北朝鮮による拉致及び核開発問題等に関する小委員会を開会いたします。

 この際、一言ごあいさつ申し上げます。

 このたび、小委員長に就任いたしました遠藤武彦でございます。

 皆様方の御協力を賜りまして、中身の濃い、濃密な審議、そして公正円滑な運営を行ってまいりたいと存じますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。

 北朝鮮による拉致及び核開発問題等に関する件について調査を進めます。

 本件調査のため、本日、政府参考人として外務省アジア大洋州局長薮中三十二君、内閣官房内閣参事官鈴木基久君、内閣官房拉致被害者・家族支援室長小熊博君が出席いたしております。

 この際、政府から順次説明を聴取いたします。

 まず、内閣官房副長官細田博之君。どうぞ、着席のままで結構です。

細田内閣官房副長官 北朝鮮による拉致及び核開発問題等に関する小委員会の開催に当たりまして、拉致問題に関する政府における取り組みについて御報告申し上げます。

 平成十四年九月、政府では、拉致問題が緊急かつ重要な課題であることにかんがみ、拉致問題に関する基本方針を策定し、実際に必要となる種々の事務を調整することにより、拉致問題に関する政府の取り組みが円滑かつ効率的に実施されることを確保することを目的として、日朝国交正常化交渉に関する関係閣僚会議のもとに、当時の安倍官房副長官を議長として、関係省庁の局長等を構成員として、拉致問題に関する専門幹事会を設置いたしました。

 その後、本専門幹事会では、拉致被害者、御家族への総合的な支援策の取りまとめ等に取り組んでまいりました。昨年七月には、当面、五人の拉致被害者の御家族の速やかな帰国の実現を図ることを最優先の課題として取り組むこととし、これは国交正常化交渉再開までに実現するべきであり、その実現の上で、北朝鮮側からあり得べき代償要求、例えば、拉致問題の幕引き等には一切応じないことを基本とするべきであること、また、安否未確認の十人を含む方々に関する情報提供の要求についても、引き続き求めていくべきであると考えることを基本方針として確認いたしました。

 この基本方針に基づき、これまで拉致問題の早期解決のための取り組みを進めており、北朝鮮に対しては、あらゆる機会をとらえ、拉致問題の早期解決に向け、強く働きかけることとしております。

 今般の外務省田中外務審議官及び薮中アジア大洋州局長が訪朝して行った政府間協議においても、この基本方針に基づき協議を行ったところであります。残念ながら具体的な成果を見るに至りませんでしたが、政府間協議を継続することを申し合わせたところであります。その詳細については、後ほど外務省から報告をいただきます。

 また、二十五日から開催される六者会合に際しましても、拉致問題への対応については、この方針を踏まえて臨んでいただくこととしております。

 帰国された五人の拉致被害者の近況については、現在、地元の県、市、町で嘱託職員として勤務を行いながら、北朝鮮に残された御家族の帰国を待ち続けておられます。また、被害者とその御家族の方々は、先般行われました日朝政府間協議の結果について、具体的な進展がなかったことは残念だが、今後とも政府間協議により一日も早い拉致問題の解決に向けて努力してほしいとの政府に対する強い期待を述べられております。

 拉致被害者、御家族に対する支援については、中山内閣官房参与に御家族との連絡をお願いするとともに、内閣官房に拉致被害者・家族支援室を設置し、具体的な支援策を推進しております。本専門幹事会においては、拉致被害者に対する総合的な支援策を決定し、議員立法により成立した、北朝鮮当局によって拉致された被害者等の支援に関する法律と相まって、関係省庁、関係機関が連携協力して総合的な支援をさらに進めてまいる所存であります。

遠藤小委員長 次に、外務省アジア大洋州局長薮中三十二君。

薮中政府参考人 北朝鮮による拉致及び核開発問題等に関する小委員会の開催に当たり、先般開催されました日朝ハイレベル協議について御報告申し上げます。

 田中外務審議官と私は、今月十一日より十四日まで、北朝鮮、ピョンヤンに赴き、日朝ハイレベル協議を実施いたしました。北朝鮮側の主な協議相手は、金永日外務省副相及び姜錫柱同第一副相でありました。

 今次協議におきましては、日朝間の最重要懸案である拉致問題及び核問題をめぐり、北朝鮮との間で話し合いを行いました。また、姜錫柱第一副相との協議に先立ちましては、小泉総理から金正日国防委員長への口頭のメッセージとして、日朝平壌宣言に基づき、拉致問題を初めとする日朝間の諸問題、核、ミサイル等の安全保障上の諸問題を包括的に解決し、その上で日朝国交正常化を実現するという日本政府の基本方針は不変であるとのメッセージを伝達いたしました。姜錫柱第一副相は、本件メッセージを金正日国防委員長に伝達する旨述べた次第でございます。

 拉致問題につきましては、まず、我が方より、被害者御家族八名の帰国、これを無条件で実現すること、そして安否不明の方々につき徹底した真相究明を行うべきこと、これらなくして拉致問題の解決はなく、また、拉致問題の解決なくして国交正常化はないということを明確に述べ、北朝鮮側に対し、問題解決に向けて、速やかな、そして誠実な対応を求めました。

 これに対し、北朝鮮側は、まず一時帰国の形で日本に帰国した五名の拉致被害者を北朝鮮に戻すことが先決である、そして、帰国に関する御家族の意思確認というのは、五名の方が北朝鮮に来て、そして話し合って確認すべきである、さらに、安否不明の拉致被害者に関しましては、真相究明の問題は解決済みであるという、北朝鮮側の基本的な、これまでの原則的な主張を繰り返しました。

 また、北朝鮮側は、これらの諸点に言及しつつ、去る二月九日、ちょうど今回の訪朝の直前に我が国国会において外為法の改正が成立したこと、これに言及し、これは北朝鮮を力で押さえつけようとするものであるとして強い反発を示しました。

 これに対し、我が方からは、こうした北朝鮮側の説明は全く納得がいかない、受け入れられない、拉致被害者を必ず北朝鮮に戻すという約束は存在せず、拉致被害者をみずから拉致した北朝鮮に戻さないとした日本政府の判断、これは当然正当である、また、被害者御家族の日本への定住については、日本にまず無条件で来て、日本に住んでみた上で自由意思に従って決すべきであること、真相究明の問題については、これを解決済みとする北朝鮮側の主張は到底受け入れられるものではない、我が方の要求にきちんと応じるよう、こういうふうにして、厳しく我が方の主張を先方に突きつけたわけでございます。

 こうした中で、日朝双方の意見は平行線をたどった次第でございます。

 また、我が方から、外為法改正等についての先方の発言については、これはまさに圧倒的な国民世論を背景としたものであり、いかに拉致問題、これの重要性が大きいかということをるる説明いたしました。

 核問題につきましては、我が方より、北朝鮮が、完全、検証可能かつ不可逆的な形で核廃棄を行うべきことを強調し、二月二十五日から北京での開催が予定されている六者会合において、問題解決に向けた前向きな姿勢で臨むよう、強く求めた次第であります。

 これに対し北朝鮮側は、北朝鮮として、朝鮮半島の非核化を最終的目標としていること、他方、米国の対北朝鮮圧殺政策により核抑止力の保有を余儀なくされていることを説明いたしました。そして、次回六者会合において、まず北朝鮮側として、朝鮮半島の非核化、そして米国等が北朝鮮に対する圧殺政策をやめること、こうしたコミットメントを行った上で、北朝鮮のいわゆる核活動の凍結提案、これに対して米国等がしかるべき補償を行うべき、こうした形で六者会合に臨むという考えを説明いたしました。

 また、六者会合に関連いたしまして、北朝鮮側は、六者会合の場で日本が拉致問題を提起するのであれば、同会合への日本の参加に反対するという主張も行いました。我が方よりは、北朝鮮に対する諸問題の包括的な解決、これが必要であるとの観点から、当然六者会合の場においても拉致問題の解決の必要性、重要性を指摘する考えをきちんと指摘した次第でございます。

 以上のように、今次協議におきましては、日朝双方が互いの立場を詳細に述べ合う、それにとどまり、具体的な結果を見るには至りませんでした。しかしながら、北朝鮮側は、今般、我が方が従来より求めてきた政府当局間協議に応じたわけでございまして、また日朝双方とも、日朝平壌宣言に基づき諸懸案を解決する必要は認め、政府当局間協議を継続するということを申し合わせた次第でございます。

 外務省といたしましては、このような今次協議の結果を踏まえ、被害者御家族の早期帰国の実現、そして拉致問題の真相究明を初めとした拉致問題の早期解決のため、引き続きあらゆる機会をとらえて全力を尽くしてまいるとともに、六者会合のプロセスを通じた核問題等の平和的解決のため、関係国とも緊密に協力しつつ、外交努力を傾注してまいる考えでございます。委員各位の引き続きの御指導、御鞭撻を賜れれば幸甚でございます。

    ―――――――――――――

遠藤小委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中谷元君。

中谷小委員 自由民主党の中谷元です。

 一年四カ月ぶりに、ピョンヤンで公の政府間協議においては、ただいま報告を受けましたけれども、あらゆる面で大変であったと拝察をいたします。特に、姜錫柱氏に我が国の拉致問題の原則をしっかりと伝えたことは成果でありまして、日本の姿勢がかたいということを示してこられたと思います。

 さて、外交といいますと硬軟両様といいますけれども、北朝鮮による拉致、核問題は、いわば独裁国家との交渉でありまして、私は、問題を解決するには、北朝鮮に対してプレッシャーを与える必要があると考えます。

 外為法、船舶入港禁止法など、我が国のとり得る措置を有効に機能させなければ北朝鮮の譲歩は得られないので、今後とも国会で超党派でいろいろな対応をしていきたいと考えておりますが、この点、交渉をされた薮中局長に伺いますけれども、国会で成立しました外為法は、今回の交渉にどのような効果と影響があったのでしょうか。

 私は、今までこのようなものがなかった方がおかしくて、これでしっかりと交渉ができる体制ができてよかったと考えておりますが、先方は外為法の成立にかなり反発していると報道されております。外交でもあるし、外交交渉をされる外交官といたしまして、局長はこの外為法の存在、どう感じたのか、このことをどう考えているのか、お聞かせいただきたいと思います。

薮中政府参考人 今次協議におきまして、北朝鮮側から、我々の訪朝の直前に外為法の改正が成立したということで、これにつきましては、先方から、北朝鮮を力で押さえつけようとするということでの強い反発がございました。これは、逆に言いますと、まさに我々が進めてまいりました対話と圧力ということ、そして国会の方で御審議いただいたこういう外為法の改正というのが強いメッセージとして先方に伝わっているということの証左であろうというふうに感じた次第でございます。

 もちろん、我が方からは、拉致問題の解決なくして日朝国交正常化はあり得ない、そして、外為法改正を含めた日本国内のこの動きというのは、この背景には圧倒的な国民の支持があるということをるる説明したわけでございまして、まさに、事態を改善するには、きちんと、一刻も早く拉致問題の解決が必要だということを先方に伝えた次第でございます。

中谷小委員 続いて、私は、特定船舶入港禁止法案を国会で成立させることは今後有効なカードになり得るのではないかと考えます。

 拉致問題を進展させるために、国内においても、圧力をかけた方がいいという意見も多いんですけれども、圧力のかけ過ぎもどうかという意見もあります。私は、さらにプレッシャーをかけていく必要があると考えますが、この船舶入港禁止法についてのカードは有効かどうか、外交交渉上、厳しい交渉をされます局長はどう思われるんでしょうか。

薮中政府参考人 委員御指摘の特定船舶入港禁止法案につきましては、現在与党において御議論をいただいているところであるというふうに承知しております。

 私どもとしましては、北朝鮮との関係について、まさに対話と圧力という基本的考え方は一貫しておりまして、その目的はまさに諸問題の解決でございます。今次協議におきましても、政府当局間の協議を継続するということでは日朝間で一致した次第でございますけれども、今後とも、北朝鮮側の出方も踏まえつつ、問題の解決に最も効果的な方策をもって我々としては対処してまいりたいというふうに考えております。

中谷小委員 そして、今回の訪朝において関心が持たれたのは家族の帰国であります。一部の報道では、交渉の前に非公式に、ピョンヤン空港まで来れば帰すといったような話も出たようですけれども、今回の交渉において、このいわゆる出迎え方式案、これが先方から出たんでしょうか。

 私は、出迎え方式というのは、帰国をするということを前提とした話でありまして、家族と面会して意思を確認してからどうこうする話ではないと思います。あくまでも家族がこちらに帰ってくるというのが前提で、帰す腹がなければ出迎えと呼ぶものではなくて、軽々に乗れる話ではないと思うんですね。

 今回の交渉において、家族の帰国に対して具体的な話が出たのか、北朝鮮の反応はどうだったんでしょうか。

薮中政府参考人 今回の日朝協議におきまして、北朝鮮側はかなり原則的な立場といいますか、五名の方々がまず北朝鮮に戻るべきこと、そして、その方々が家族とよく話をして、そして家族の意思確認を北朝鮮で行うべきである、その自由意思に従って家族が日本に帰りたいのであれば、それはそれで認める用意がある、こういう話でありました。

 いわゆる出迎え方式というのが必ずしもどういう意味かということは明らかではございませんけれども、そういう形での言及というのは先方からございませんでした。

 いずれにいたしましても、日本側としては、御家族の方の無条件での日本への帰国を認めるべきことということ、そのことを強く求めた次第でございます。

中谷小委員 なかなかこれは双方まだ隔たりがある問題ですけれども、今後、そういう家族の意思を確認する機会というのは事前に必要なわけであって、何らかの手段を考えなきゃいけません。電話であり、手紙であり、往来であり、伝言であり、政府間交渉でありますが、その一つに、第三国で会うとか迎えるとかいう話もあります。

 今後、交渉の中でこのような話が出ることは考えられるんでしょうか。現在、家族の帰国を実現するためにどうしたらいいと考えておられますでしょうか。

薮中政府参考人 これは私ども、当然、五名の方々というのは日本人の方であって、まさに日本でそのまま定住されるのは当然のことである、そして何よりも大事なことは、その御家族の方、八名の方が無条件で日本に戻るということ、そのことについて、一番大事なことは、国が一つの声となって、その基本的な路線をきちんと守って、先方に粘り強く働きかけていくことであるというふうに考えております。

中谷小委員 その基本をしっかり持っていただきたいと思います。

 加えまして、家族の帰国に加えて、現在、行方不明者の方もいます。このような安否未確認者の拉致被害者との情報提供と合同調査ということを強く要求をされましたけれども、この日朝合同調査委員会を設置するという日本側の提案、これについて、いつまでという期限を切るとか、人数はどの程度とか、どういう構成でするとか、そういう担保をした上の交渉、話し合いも必要でありますけれども、どういうイメージを描いておられるのか。また、今回、そのことも内容的に言及をされたんでしょうか。

薮中政府参考人 今次協議におきましては、まさに、被害者御家族の無条件での帰国に加えまして、安否不明の方々の真相の究明、これが拉致問題の解決にとって絶対に不可欠であるということを強く主張いたしました。そして、そのためには、例えばということで、合同委員会というような形で日朝間でそうした委員会を設けて、そこで真相究明を行うということはどうかと。

 これのイメージといたしましては、今委員御指摘のとおり、さまざまなことを今後考えていく必要があると思いますけれども、今回は、そこについて具体的に踏み込んだ話まではしておりません。そしてまた、北朝鮮側はそれについての具体的な対応は行いませんでしたけれども、このイメージするところは、やはり日本も一緒になって調査を行う、そうした形が今後必要ではなかろうかというふうに考えている次第でございます。

中谷小委員 この点、人権とか人命を尊重する国家としてはもう当たり前のことでありますので、北朝鮮政府はこの当たり前のことをやっていただきたいと思います。

 官房副長官にお伺いしますけれども、福田官房長官は、家族の帰国が実現すれば国交正常化交渉の再開に応じると発言をされました。これは政府の立場でございまして、帰国が実現しない限り話は動かないことを言ったということでありますが、しかしながら、行方不明者の捜索とか真相の解明というのは大変重要なわけでありまして、この点、政府は、この問題についてどういう考えで進められるのか、官房副長官に伺います。

細田内閣官房副長官 今おっしゃいましたように、五名の被害者の方々の御家族の速やかな帰国の実現について、国交正常化交渉再開までに実現すべき最優先の課題として取り組んでいるということはもちろんでございますけれども、今御指摘のありました安否未確認の十名を含む方々に関する真相究明が当然必要であり、この点は、先般の日朝協議でも明確に伝えたところであります。

中谷小委員 今後ともしっかり対応していただきたいと思います。

 あわせまして、核問題も我が国にとって大変重要な問題なんですね。平壌宣言で核開発はしないと元首である総書記が約束して文書で確認をしたことであります。しかし、その一カ月後、アメリカのケリー氏が訪朝した際に、核の存在を認め、北朝鮮はその後、核抑止を国家の政策として推進をして、まさに核を外交に使っているような気がするわけでありますが、この点、官房副長官はどう考えるのか。

 また、エネルギーを支援しろという要望、安全確保を要求するということでございましたが、現実にKEDOは一年間凍結ということで、日本としましても日米韓で協力してやっていきますが、いわゆる米国が主張しております、完全で検証可能かつ逆行不可能な核の廃棄、これが重要でありまして、北朝鮮の核の脅威下にある我が国として、米国の立場を徹底的に支持すべきであると考えます。

 この米国主導の、PSIといいますけれども、大量破壊兵器拡散防止構想、これについても、我が国のスタンスを明らかにして、ミサイル防衛とかゲリラの侵入等に備えていくべきでございますが、この問題について政府のスタンスを伺います。

細田内閣官房副長官 我が国といたしましては、北朝鮮による核兵器の開発は絶対に容認できません。

 北朝鮮はすべての核開発計画を完全に検証可能かつ不可逆的な形で速やかに廃棄する必要があると考えておりまして、この点は、全く、米国政府が主張している点と軌を一にしておるわけでございます。そして同時に、核問題は、六者会合のプロセスを通じて平和的、外交的手段により包括的に解決するということが我が国の方針でありますので、今月二十五日から北京で開かれます六者会合におきまして、米韓両国、さらには中国、ロシアとも緊密に協力しながら、役割を果たしてまいる考えでございます。

 かつ、おっしゃいましたPSI、大量破壊兵器拡散防止構想についても、我が国としては、当然、これは大量破壊兵器、ミサイル等の拡散を国際社会全体への脅威であると認識し、国際的な不拡散体制の強化のための取り組みとして必要であると認識し、積極的に参加しているわけでございまして、今後とも、関係国にも働きかけながら、この問題を推進してまいりたいと思っております。

中谷小委員 この点、北朝鮮は、軽水炉に転換した発電が滞っているということで、エネルギー事情から、黒鉛の原子力発電を再開するというような主張をいたしておるわけでございますけれども、そうすれば、このKEDOとかエネルギーの支援ということも問題になろうかと思います。この点については、外務省としてどう対応されるんでしょうか。

薮中政府参考人 まさに、何よりも大事なのが、北朝鮮による完全な、そして今御指摘のありました、我々が言っております、検証可能かつ不可逆的な核廃棄が行われるかどうかということであろうと思います。

 そのことをきっちりと形をつくった上で行う、そのことがはっきりとしてきた段階で、当然、北朝鮮側におけるエネルギーの問題ということも、我々の国際的な取り組みの中では一つの大きな課題になってくると思いますけれども、まずは、そこは北朝鮮がきちんと、完全かつ不可逆的、検証可能な形での核廃棄をやるかどうか、そのコミットメントが本当に真剣なものであるかどうか、そしてそれがまたきちんとした検証の形で行われるような、そういうことを取り組みながら、一方において、今後、北朝鮮の抱えているいわゆるエネルギー事情についても、その上で検討を進めていくということになろうかというふうに思います。

中谷小委員 KEDOがとまってしまったきっかけは、北朝鮮の寧辺等の核疑惑に対して、北朝鮮がみずから明らかにしなかった、いわゆる検証、査察体制が確立しなかったという点でありますけれども、しかしながら、今回の核をなくすということは、結論的に言うと、いかに検証可能な体制を北朝鮮が受け入れるかということでありますけれども、この問題について、日本として、検証を確実にさせるという方法についてはどういうことが考えられるんでしょうか。

薮中政府参考人 委員御指摘のとおり、核廃棄ということの中では、非常に重要なのが、いかに効果的な検証体制をつくるかということであろうと思います。

 当然、その具体的な話というのが、これから、第二回の六者会合、それ以降の引き続く会合においての非常に大きな課題になるというふうに考えております。そして、その中で、具体的な、そして効果的な検証体制をつくる上で、日本としても、持っています知見を含めて、積極的な貢献をしていきたいと思っておりますけれども、その際、具体的なことはこれからのことにゆだねますけれども、基本的にIAEAの知見も当然活用しながら、国際的なすべてのあらゆる知見、こういうのを用いながら効果的な検証体制をつくっていくことが非常に重要な課題であるというふうに考えております。

中谷小委員 この辺はしっかりしたルールをつくるということだと思いますけれども、この大量破壊兵器の拡散防止構想というのは、まさにアジアにおいて必要なことであり、そのため六カ国協議が開催されますけれども、ヨーロッパはNATOとかEUとかOSCEとか、安全保障体制、機構が二重にも三重にもあるんですね。ところが、アジアは日米とか米韓とか、そういう二国間の軸の安保機構しかない。

 この点をかんがみますと、今回の六者協議が今後のアジアの安全保障機構の基盤に発展していくものになるんじゃないかと思いますが、こういう観点でこのルールづくりをしっかりとしていただきたいということと、とりわけ拉致については中国がポイントになると思います。

 中国も拉致問題は二国間で決着してほしいという期待を言明しましたけれども、日本はこの協議の場で拉致問題を提起するという意向だと伺っております。この開催まで残り期間がわずかになってまいりましたが、中国やほかの国々にこの拉致問題についての理解を得るためにどのような取り組みをされるのか、伺いたいと思います。

薮中政府参考人 今までからも関係国との間で非常に緊密な連絡、そして説明を行ってきております。今回、また第二回の会合を控えましても、この新しい日朝間の話し合いも踏まえながら、引き続き関係各国の日本の立場に対する理解を求めていきたいというふうに考えております。

 昨日も実は韓国から次官補が来られまして、そこでもきちんとした説明を行い、我が方の立場に対する理解を求めたわけでございますし、また、アメリカとは当然のことながら従来どおりの、そして一層の協力を求めるつもりでございます。さらには、中国、ロシアについても事前に働きかけを行っていきたいというふうに考えております。

中谷小委員 今後とも、国家としてその原則を貫く力を持つということ、そして国際社会から支持を得ること、そして外交の対話と圧力の多角的な手段によって成功させるということが肝要だと思いますので、これからも政府にしっかり頑張っていただきたいと思います。

 以上で終わります。

遠藤小委員長 次に、岩永峯一君。

岩永小委員 岩永峯一です。

 日朝間の中にはさまざまな懸案事項があるわけでございますが、とりわけ日朝平壌宣言に基づいて包括的に解決した上で国交正常化を実現するというのが我が国の基本的な姿勢だろう、このように思うわけでございます。

 とりわけ急を要するのは、我が国の主権と国民の人権が不当に侵害されている拉致問題の解決だ、これが早急な大きな課題だろう、このように思っているわけでございます。一昨年十月に拉致被害者の五人の方々が二十数年ぶりに帰国され、一年半近くになろうとしておりますが、その御家族の帰国がいまだ実現されていない。これは人道上極めて重要な問題であり、このような異常な状況を一日も早く解決して、そして被害者の方と家族との再会を早急に実現する必要があろう、このように思うわけでございます。

 十人の認定拉致被害者の方々についても、北朝鮮の不十分な対応によりいまだ安否が確認されておらないというような状況が続いており、これの真相究明も早急にいたさなきゃならぬ、こういうように思うわけでございます。

 この件について、薮中局長、田中審議官がピョンヤンに行かれて、日朝政府間協議が実現したわけでございまして、極めて厳しい雰囲気の中で双方が原則論を述べ合ったということをお聞きしておるわけでございますが、政府間の協議を継続するということで合意がされたということもお聞きをしているところでございます。

 平壌における協議についての評価がどうであったかということが大変大事でございまして、これまで日本側からのたび重なる要求に対しましてかたくなに政府間協議を拒んできた北朝鮮が、今般、政府間協議に応じたのは、六者会合に向けたアリバイづくりや時間稼ぎといった声も上がっているわけでございますが、北朝鮮が今般の協議に応じた背景というものをどのように見ておられるのか。

 さらに、同協議において北朝鮮に、拉致問題解決、とりわけ五人の家族の帰国実現について、真剣な姿勢というのは見受けられたのか。

 また、薮中局長に感触をお聞きいたしたいと思うんですが、総理が行かれたときには水と弁当を持参したということで、会談にも大変緊張感があるものでございました。局長は、会食懇談会、それから交渉会議、これらをどういう雰囲気の中でやられたのか、そのことをお聞きしたいと思います。

薮中政府参考人 今般、政府間での協議が実現したわけでございますけれども、これに対する北朝鮮側の意図がどういうものであったのかという委員の御指摘あるいは御質問でございますけれども、我々といたしましては、かねてからこの問題、すなわち日朝間における拉致問題というのが最重要課題である、そしてそれとともに核、ミサイルの問題、これの包括的解決というのが必要であるということは、過去一年半ずっと先方に伝えてきたところでございます。

 いずれにせよ、北朝鮮がもし引き続き平壌宣言にのっとって日朝の国交正常化を希望するのであれば、それはまさにこの三つの問題、これを包括的に解決するしかないんだということでございます。

 今般、先方が政府ベースの協議に応じてきたというのは、まさにそうした働きかけ、それは、国が一丸となって、国民が一丸となって政府間での話し合いでなければならない、そういうメッセージが先方に伝わった、そういう結果であろうというふうに考えております。もちろん、六者協議というのも関係はしていることは当然だとは考えますけれども、それもやはり核問題はそこで解決する、そして、それとあわせて日朝間の問題は日朝の政府間の話し合いで解決するということが必要であろう、そういうふうにとらえてのことであろうと。これは、我々としては基本的には前向きに受けとめているわけでございます。

 もちろん、もともとを申し上げますと、今回の協議におきましても、拉致の問題、そして核の問題ということで、従来、先方は拉致の問題は解決済みである、あるいは核の問題は米朝で話し合う問題であると言ってまいりましたが、今回は、その二つの問題についてきちんと政府間で話はする、もちろん、原則的な立場に終始したことは御報告したとおりでございますけれども、しかし、正面からこれらの問題についても話し合うという姿勢を見せたことは、そのこと自身は従来からのことを考えますと一つの新しい展開であろうというふうに考えます。

 そして、雰囲気でございますけれども、もちろん夕食会というのもございました。しかし、それを含めてすべて、これもワーキングディナーということで、その間におきましても非常に厳しいやりとりが本会議と同様に行われたということで、全体を通して見ますと、非常に双方ともに真剣というか、非常に厳しい中でのやりとりという雰囲気でございました。

岩永小委員 もう一つ大変大事なのは、安否が確認されていない十人の方々の拉致被害者に対する真相究明ですね。これは、日本側も百五十項目に対して質問しているわけでございますが、返事が返ってこない。そしてなおかつ、うちの調査団に対して全く信憑性のないずさんな回答を行うというようなことで、今回も、真相究明の問題については解決済み、こういうような不誠実な態度を依然としてとり続けているわけでございます。我が国としては、このような北朝鮮の不当な主張というのを決して受け入れてはならぬ、私はこのように思っておるわけでございます。

 安否を心配している家族の方々の心中をお察しするときに、ともかく早く、確実な、そして我々の信頼する情報をというのをやはり粘り強く働きかけてもらっていきたい、こういうことを思うわけでございますが、今回、合同委員会を提案してきているわけでございます。これらの安否未確認の方々については、どういう雰囲気であったんですか。

薮中政府参考人 まさに委員御指摘のとおり、十名の方々の安否の確認というのは、この拉致問題の解決のために絶対不可欠な問題でございます。政府としても、そういう意味で、この真相究明というのも非常に大きな課題である、我々として究明すべき、実現すべき問題であるというふうに考えております。

 今までのやりとり、そして今回の政府間協議におきましても、北朝鮮側からそれに対して前向きの対応はございませんでした。これは極めて残念で遺憾なことでございますけれども、何とかこれについての真相究明を図れないのか、図るべきであって、その具体的な方途として、今回、例えば合同委員会、これは、日本も一緒になってその真相の究明を図っていこうということでの提案をしたことでございますし、引き続き我々としては、断固とした姿勢で、この問題の真相究明の重要性を先方に粘り強く訴えていきたいというふうに考えております。

岩永小委員 そこで、二十五日から予定されている六者会合の関連でお伺いしたいと思うわけでございますが、昨年の八月に第一回会合が開催されてから約半年ぶりに開催されるということで、核問題の平和的解決に向けて関係国間の対話が図られる点については、とりあえず私は歓迎したい、このように思うわけでございます。

 六者会合などで、我が国としても、北朝鮮の核開発計画の完全、検証可能、また不可逆的な廃棄をとの基本原則に立って、核問題の平和的解決に向け、他の参加国と協力して建設的な役割を果たしていくべきだ、このように考えているわけでございますが、六者会合における他の参加国の関心は核問題にあるわけでございますが、我が国としては、まずは北朝鮮との間で建設的な関係を構築するというものでなくてはならず、そうであれば、むしろ拉致の問題について、このことを大きく取り上げてほしい、私はこのように思っているわけでございます。

 それで、十四日付の朝鮮通信によると、日本側が次回の六者会合で拉致問題を再び持ち出す場合には、日本の会談参加自体を断固拒否するであろうし、すべてが壊れるであろう、こういうようなおどしを言っていることについては甚だ遺憾でございます。六者会合においてこの拉致問題を取り上げることについて、日朝以外の各国は今どういうような態度でいるか、このことについてお伺いしたいと思います。

薮中政府参考人 まさに、六者協議は、世界、国際社会全体が直面する非常に大きな問題である北朝鮮の核開発問題、これを解決するための国際的な取り組みであることはそのとおりでございます。そしてまた、この核問題、北朝鮮の核開発問題について、北朝鮮による核開発、これを絶対にやめさせる、核の完全な、また検証可能、不可逆的な廃棄というのが絶対に日本の安全保障にとっても重要なことであります。そういう意味で、日本として、みずからの問題としてこの核の問題にも取り組んでいくということで、引き続き積極的な役割をそこで果たしてまいりたいというふうに考えております。

 今委員御指摘の、北朝鮮が、その六者会合において核以外の問題、日本でいえば拉致問題を取り上げればそれには反対である、そして、そういうことをすれば日本の会合参加自体も拒否するであろうという態度を示しております。

 しかし、これに対しましては、我々としては確固とした基本的な姿勢がございます。それは、核の問題につきましても、全体として言えば、その解決のためには核、ミサイル、そして拉致の問題というのを包括的に解決するということが必要である、それが不可欠であるということが日本の基本的な姿勢でございますので、その点はきっちりと、第一回会合でも指摘いたしましたけれども、次回、二十五日からの会合でも、その点は、その基本的な立場は堅持してまいりたいというふうに考えております。そして、各国ともにそうした立場についての理解は得られるだろうというふうに確信しております。

    〔小委員長退席、中谷小委員長代理着席〕

岩永小委員 六者会合で拉致の問題はひとつ強く要請し、そしてきちっと、この問題がなければ前へ進まないというぐらいの強い姿勢でお願いしたいと思います。

 ただ、この解決については、北朝鮮に影響力を持つ有力国、特に中国に対する働きかけというのが大変重要だ、このように思うわけでございます。我が国として、このように膠着状況が続いているわけでございますが、次の北朝鮮との会合はいつ開かれるのか、そして、特に中国にはどういう具体的なアタックをしているのか、ここらあたりをお聞きしたいと思います。

薮中政府参考人 中国との関係というのは、委員御指摘のとおり、大変重要であろうと思います。まさに、中国は六者協議のホスト国としても大変重要な役割を果たしておりますし、この地域の平和と安定にとっても非常に重要な国でございます。

 したがって、日本といたしましては、中国とも緊密に、非常に緊密に連携をとっておりまして、そして、核問題の解決、そしてこの拉致問題につきましても、日本から繰り返し繰り返し、その解決の重要性を伝えております。中国は、そうした日本の姿勢、特に、この拉致問題の解決が重要であるということについては十二分に理解していると。これは、首脳レベルから、そしてさまざまなレベルに至るまで、あらゆる機会をとらえて中国に働きかけをしてございます。

 そういう意味では、中国としても、もちろん日朝間での解決というのを彼らは期待しておりますけれども、引き続き日本がこの問題を重視していくということについては当然の理解をしているというふうに考えております。

 今後、日朝間でのハイレベルの協議、あるいは日朝間での協議がどういう形で行われるのかということにつきましては、我々としまして、日朝間において、今回、この協議を継続していこうということを申し合わせたわけでございまして、あらゆる機会をとらえてその実現を図り、そして問題の解決に当たっていきたいというふうに考えております。

岩永小委員 北朝鮮との問題解決に、相手が誠実な対応をとるように促すためには、俗に言う対話と圧力が大変正しい、私はこのように考えるわけでして、先般外為法が改正されて、そして大変有効な効果を発揮した、私はこのように思います。

 しかし、十四日付の朝鮮中央通信によりますと、北朝鮮側はこの外為法改正に対して、対北朝鮮圧殺の試みとか、強硬には超強硬策で対処などと強く反発している記事が出ているわけでございますが、問題解決に向けた誠意ある態度というのがなかなか見えてこないわけでございます。

 このような中で、日本としてさらなる圧力の手段を講ずるべき時期にあるということでございますが、経済制裁の発動について政府はどのようにお考えになっておられるのか、細田副長官、よろしくお願いします。

細田内閣官房副長官 外国為替・外国貿易法につきましては、議員立法で、かつ多数の政党の合意によりまして、圧倒的多数で、しかも速やかに成立をされたわけでございます。政府は、それを受けて既に官報に告示をし、そして法律は今月の二十六日から施行されるということになっております。

 ただ、その施行された改正法を実行に移すためには、それぞれ、告示ですとか政令ですとか、物によって違いますけれども、送金あるいは現金の持ち出し、資本取引、役務取引、貨物の輸出、貨物の輸入その他、また政府としての行動をとらなければ発動されないわけでございますけれども、そういうことができるようになるのが今月の二十六日なわけでございます。

 したがって、北朝鮮側も大変強い危機感を持って今回の交渉に当たって、また、そのような発言があったと聞いておるわけでございますけれども、対話と圧力という基本的な考え方は、小泉総理も述べておられますように、あくまでも日朝平壌宣言に従って両方の関係を正常化することを最終的な目的としたいと。しかし、そのためにはさまざまな障害があるので、その障害を取り除けということで現在交渉が行われていると理解しておるわけでございます。

 したがいまして、北朝鮮側がさらに事態を悪化させる場合には、事態の改善、問題の解決のために、状況を見きわめながら最も効果的な措置を講じていくことになるのではないかと思うわけでございますが、目下は交渉を継続しており、かつ継続することについて相手が合意しておりますので、より具体的な話し合いを今後進めていくべきではないかと思っております。

岩永小委員 圧力に対していろいろな日本側の選択肢というものをやはりそろえておく、そして、それをこちらの武器としながら解決の促進を図るということが大変大事だろう、私はこのように思います。

 それで、外為法によっては、資金、物品、資本などの流れに対する規制が可能となったわけでございますが、我が国の平和と安全を脅かすと判断される場合は、やはり、当該国の国籍を持つ船舶等についても入港禁止等何らかの措置が必要であろう、私はそのように考えるわけでございます。

 しかし、北朝鮮との関係では、万景峰号が新潟港との間で定期的に就航しております。我が国捜査当局によると、同船舶内で総連関係者に対し秘密裏に工作指示がなされているというような話も聞いているわけでございます。

 細田副長官は、現在、特定外国船舶の入港禁止に関する法律を議員立法すべく検討が行われていますが、この問題に対して政府としてどのようにお考えをいただいているか、お聞きしたいと思います。

    〔中谷小委員長代理退席、小委員長着席〕

細田内閣官房副長官 本件のこの法案は与党内で今議論をしておられるというふうに伺っておりまして、その構想の内容について最終的な方針のようなものが決まっているとはまだ伺っておりません。したがいまして、これについての直接のコメントは避けたいと思いますけれども、北朝鮮との関係における対話と圧力という基本的な考え方は一貫しており、これは諸問題の平和的解決を促すことを目的としておると考えております。

 したがいまして、政府間協議の継続につきましては日朝間で一致しておる以上、相手の出方も踏まえつつ最も効果的な方策をもって対処していく、この点では外為法の発動と同様の基本的な姿勢を持っております。

岩永小委員 紆余曲折はありましたものの、ようやく政府間での交渉の糸口がついたということは前進だ、私はこのように考えるわけでございます。

 しかし、拉致という許しがたい事件の発生からもう二十数年が既に経過をしておるわけでございまして、被害者やその御家族の方をこれ以上待たせることはできない、私はこのように思うわけでございます。安易な妥協は決してしてはならない、政府はこの問題の一日も早い解決のためにあらゆる手段を尽くしていただきたいということを要望申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

遠藤小委員長 次に、漆原良夫君。

漆原小委員 公明党の漆原でございます。

 薮中局長が今回大変な日程の中御苦労されたことは、大変感謝をしたいと思っております。今までなかなか政府間交渉に応じてこなかった北朝鮮でございましたけれども、今回、日朝の政府間交渉が開催された、また将来も継続されるということについては、私は大変大きく評価をしていいんだろうなというふうに思っております。

 その上でお伺いしたいんですが、これは岩永委員からも御指摘がありましたが、北朝鮮の今回のねらいは一体何なのかなと。今回、政府間交渉については、議員外交もありまして、新聞等では大分北朝鮮が拉致問題を解決したがっているぞ、何かしてきたぞというふうな報道もなされたり、あるいは、六者協議の前だということもあって、国民、私も含めて大きく期待をしたわけなんでありますが、先ほど御報告があったとおり、結果的には北朝鮮は何も今までと態度を変えず原則論で終始をした、こういう結果になったわけであります。

 そこで、二つの問題をお聞きしたい。

 一つは、そもそも今回どういう経緯で日朝の政府間交渉が持たれるに至ったのか、そして北朝鮮がこれに応ずると言った時期は一体いつなのか、まず、この点をお尋ねしたいと思います。

薮中政府参考人 今回の政府間協議に至った経緯でございますけれども、これは、かねてから日本政府として、問題の包括的解決のため、そして特に日朝間のこの拉致問題の解決のため、政府間協議というか、政府間での話し合いの必要性ということを北朝鮮側に何度も何度も繰り返し主張してまいりました。

 そして、今委員御指摘のとおり、昨年暮れあたりからいろいろの北朝鮮側からの動きがあったわけでございますけれども、そうした中で、やはり国民が一丸となって、国が一丸となって、政府だけではなくて国全体として、まさに政府間での協議がこの問題の解決には必要であるというメッセージがきっちりと北朝鮮側に伝わったんだろうと思います。

 我々の政府間での話し合いという要請に対して、ようやく先方から、我々二人を受け入れる用意があるということを言ってきたということでございまして、具体的に、二月の十一日から十四日に受け入れるということを比較的最近になって言ってきたというのが経緯でございました。

漆原小委員 それにしては、具体的に何も進まない、今までと同じ、北朝鮮の態度は今までと全く変わらない。こう考えてみますと、一体どういう意図で、今回、日朝間、政府間交渉に応じてきたのかなと。北朝鮮の目的は一体どこにあったのかなと。前進させるということであれば少しは具体的な話に進んでもいいと思いますが、全く具体的な話は出ないという結果を踏まえて考えますと、北朝鮮が今の時期に政府間交渉に応じてきた意図は一体何だろうなと。どのような分析をされておりますか。

薮中政府参考人 まさに我々としても、この問題の解決のため、政府間協議を行うということを期待して、要請しているわけでございますから、先方からの積極的なそれに対する対応を引き続き求めていきたいというふうに考えております。

 今回、それについて、何ら具体的な先方からは解決のための提案がなかった。それでは、何のための協議、あるいは何を目的として北朝鮮も今回応じてきたのかということでございますけれども、今の委員のまさに御指摘のとおり、さまざまの先方の考え方というのはあったんだろうと思います。

 それを一々せんさくするのはなかなか難しゅうございますけれども、北朝鮮側からしても、全体に核問題、これは六者協議で解決するという必要性、それは国際社会が一体となって先方にも働きかけて、ようやくまた、数カ月ぶりに第二回の会合が開かれるに至った。そうした中で、全体として、日朝間の問題も進めなければいけないという認識は生じてきているんだろうと思います。したがって、そういうのが一つの背景にあったということであることは間違いないと思います。

 ただ、その中で、また日本国内のさまざまな動きということ、つまり各種の制裁法案等々の動きというのも北朝鮮側も非常に詳しくフォローしているということは、今回参りまして感じられました。その中で、まさに外為法の改正が通った、それを持って我々が北朝鮮へ来たということで、それに対する相当の強い反発があったことは事実でございます。

 そうしたことが、果たして今までの具体的な北朝鮮の作戦の中で影響があったのかどうか、これは我々の知るところではございませんけれども、さまざまの要因からこの政府間協議が必要である、しかし、今回、それについてまずは原則論でということで対応してきたということでございまして、なかなか問題が難しい問題であるということ、そして、一回ではなかなかその糸口が見出せないということは私ども感じましたけれども、他方において、最終的に先方が政府間協議を継続しようということについては合意したということでございますから、そこに我々としては、彼らとしてもこの問題の解決の必要性を感じているんだろうというふうに考えた次第でございます。

漆原小委員 私もそういうことかなと思っているんですが、日本はずっと、今回、六者協議を前にして、六者協議の議題にのっけるというふうな意見もたくさん発信しておりますね。したがって、悪く考えれば、六者協議の議題にのせないための、先ほど岩永委員もおっしゃっていたアリバイづくり、今、日朝間で別途やっていますよ、したがって六者協議の議題にのせる必要はありませんよ、さらに今後とも日朝間で継続した協議をすることになっていますよという、六者協議の議題にのせないための一つの方策だったのではないのかなという心配が一つあります。これに対する御見解。

 もう一つ、今局長がおっしゃった、将来に向けて継続して政府間交渉を続けていくんだというふうに約束された、こうなっていますね。ただ、この約束を履行する手段、例えば、では、日本がやりましょうと言ったらすぐ応じてくるのかどうか、場所をどうするのかどうか、時期をどうするのかどうか、この辺は何も決まっていない。下手をすれば、結局、日本がやりましょうと言っても、従来のようにまた返事もなしにずっとほうりっ放しにされる危険性が十分あるというふうにも思うんですね。だから、その点は、約束をしたから北朝鮮が誠実に応じるだろうというふうに思うのは少しいかがかなというふうに危惧をするんですが、今の二つの点について御見解はどうでしょうか。

薮中政府参考人 まさに委員御指摘のとおり、一つは、六者協議ということで、そこで彼らもはっきり言っております。これは核の問題を議論する場所である、したがって拉致の問題を取り上げるべきではないというのが先方の主張でございます。

 しかし、これにつきまして、いかなる彼らの意図があったにせよ、はっきりしておりますことは、日本の立場は全く変わらないということでございまして、まさに六者協議において、当然核の問題が中心ではございますけれども、その全体の包括的解決のためには拉致問題の解決も必要である、不可欠である、このことは第一回の協議からも我々指摘してまいりましたし、第二回においても何ら変わりがないわけでございます。そういう意味では、先方の意図はどうであれ、結果として日本の姿勢が全く変わることはないということでございます。

 そして、第二回以降といいますか、日朝のハイレベルの協議、日朝間の、政府間の協議に先方が引き続きやっていこうということは申し合わせた、しかし、それに何らの保証もないということもそのとおりでございます。

 しかし、これは結局のところ、北朝鮮としても日本との国交正常化をしたいのかどうか、そして平壌宣言を守って国交正常化をする、その先には、もちろん、平壌宣言にもありますように、国交正常化がなされれば経済協力も行うということははっきりしておるわけでございまして、当然、北朝鮮として、核の問題を解決し、そしてまた国交正常化を経て経済も立て直したいということであれば、北朝鮮としても日本との協議に応じてこざるを得ないんだろうと思います。

 我々として大事なことは、国が一体となって、きっちりとした基本姿勢、つまり、包括的解決、そのためには拉致問題の解決が絶対に不可欠だということを強く働きかけるということが大事だろうというふうに考えます。

漆原小委員 ありがとうございました。

 先ほど来、各国、特に中国の協力が拉致問題については不可欠だというふうな話がなされております。私も、そうだなというふうに思っております。

 先回、二月の十一日、神崎代表が胡錦濤国家主席にお会いをしまして、この拉致問題を提案した際に、胡錦濤国家主席はこう答えておられます。拉致問題に関しては、日本の国民が関心を寄せていることを理解している、朝鮮、日本の双方が対話を通じて適切に解決することを希望し、支持をするというふうに明確に支持の表明をされておるわけなんですが、日本政府として中国に対してどんな働きかけをしているのか、その内容と、特にこれは総理にも頑張ってもらわなきゃいかぬなというふうに思うんですが、その辺の感触を聞かせていただければありがたいと思います。

薮中政府参考人 委員御指摘のとおり、中国というのは非常に大事だと思います。この問題の、拉致問題の解決にとっても、中国の果たすべき役割、果たし得る役割というのは少なからぬものがあるというふうに考えておりまして、我々としては、日本政府として、中国への働きかけということはかねてからやってきておるわけでございます。

 今御指摘の首脳レベルということ、政府レベルでございますと、昨年の十月のバンコクにおきますAPEC首脳会談の際に、日中の首脳会談がございました。そこで小泉総理の方から胡錦濤国家主席に対して、この拉致問題の解決の重要性ということを強く訴え、先方の理解を求めたわけでございます。その際、胡錦濤国家主席より、日本の拉致被害者と御家族の思いを十分に理解している、日朝双方が話し合いを通じて早期に本件を解決されることを希望するという発言があったわけでございます。

 今御指摘のとおり、さまざまの形で日本から中国への働きかけがなされておりますし、私どもとしても、毎日のように中国との連絡の中でこの問題の重要性について指摘していることは事実でございます。引き続き、今後ともその努力を増加して、倍加していきたいと思っておりますし、特に第二回の六者会合を控えて、中国とのさらなる理解を求めるための努力をしてまいりたいというふうに考えております。

漆原小委員 外為法が改正になりました。これはもう国会の圧倒的多数で改正になった。経済制裁をしてもよろしいという国家の意思を示したわけでありますけれども、我々は抜かずの宝刀を政府に与えたわけではない。私は、現在の結果を見ると、北朝鮮は誠意がないと思っております。したがって、この伝家の宝刀を与えた以上は使うべきだというふうに考えておりますが、今の状況で使うのかどうか、どんな状況になったら使うのか、この辺のお考えを聞きたいと思います。

薮中政府参考人 まさに、北朝鮮との間で大事なことといたしまして、日本政府としても、対話と圧力という基本的な考えで臨んできているわけでございます。何よりも大事なことは、問題を効果的に解決すること、問題の解決のために何が効果的であるかということをその時々に適切に判断する必要があるというふうに考えております。

 もちろん、政府全体といたしまして、現時点で北朝鮮に対していわゆる経済制裁ということを行う考えはございませんけれども、当然のことながら、第二回の六者会合でも、国際社会がこの問題、特にそこにおきましては核問題の解決に努力する、そして日朝間におきましては、先般始まりました政府間のハイレベル協議、そうした政府間協議を通じて拉致問題の解決に努力するということでございますし、まさにその状況を見きわめながら、何が効果的な対応であるかということを、政府は、全体として判断しながら、適切な対応をしていく必要があるというふうに考えております。

漆原小委員 特定失踪者の問題が残っております。今回、政府間交渉ではこの問題が取り上げられておらないんですが、取り上げなかった理由は何でしょうか。

薮中政府参考人 今次協議におきましては、まさに拉致問題の解決の重要性ということは繰り返し主張したわけでございまして、その中で特に、被害者家族八名の方々の全員の無条件での帰国、そしてまた、十名の方の安否不明の徹底した真相究明ということ、これが最重要課題であるというふうに主張し、そしてそれに対する速やかなる対応を北朝鮮側に求めたわけでございます。

 これは、まさにこの二つのことが、我々から見まして現在最重要課題、拉致問題についての最重要課題であるという判断でございますが、今後、日本政府が拉致と認定した事案がございましたら、それが出てきたときには、当然のことながら、それを北朝鮮に対して取り上げていく、そうした考え方は先方にも伝えてございます。

漆原小委員 この問題はともすると置き去りにされつつある、可能性があると思うんですね。交渉をする場合に、こういう問題もあるんだということを今のうちから言っておかないと、後になって、ほぼ妥結しそうになってから実はこれがあるんだということを言っても遅いんであって、最重要課題かどうかは別としても、今日本としてはこういう問題を持っていますよという意思を、明確に意思表示をしていく。拉致と認定された人だけを次々に挙げていくというのではなくて、場合によっては百人以上いるかもしれませんよ、この問題の調査をどうするんですか、こういう観点で広く言っておかないと、後で追加できないという結果になる可能性があるんですね。

 したがって、私は、今この特定失踪者の問題、日本でも拉致に関連して大きな問題になっているんだということを、これを今のうちに明確に北朝鮮側に言っておく必要があると思いますが、いかがでしょう。また、それに対する、どういうふうに政府はこの問題を解決しようとしているのか、その辺をお聞きしたいと思います。

薮中政府参考人 まさに今委員御指摘のとおり、非常に大きな問題として日本国内であるということ、それは先方も承知していると思います。我々は、今回は、先方に言いましたのは、先ほど申し上げましたとおり、最重要課題としての御家族八名の方の無条件での帰国、そして、十名の方の安否不明、これの徹底した真相究明ということを言いましたし、その際に、あわせて、日本政府が今後拉致と認定した事案があれば、これを北朝鮮に対して取り上げていくということは先方に主張した次第でございます。

 そしてまた、国内での対応でございますけれども、警察庁と我々としても連携をとりながら、そして政府全体として海外関係機関との情報交換、そうした強化は行ってまいっておりますし、脱北者からの情報収集ということも行ってございます。そして、その際に、北朝鮮当局によって拉致された被害者等の支援に関する法律に基づき、被害者と認定された十五名の方々、これに限定することなく、広く北朝鮮による日本人拉致という観点から、情報交換、そして収集を行っている、そうした努力は今後とも続けてまいりたいというふうに思っております。

漆原小委員 最後にこの問題、一点だけお聞きしたいんですが、今のところ政府は、警察だとか公安だとか外務省とか、ばらばらにこの問題に対処していると思うんですね。私は、そういうことではなくて、政府として、特定失踪者対策委員会みたいなものをつくり上げて、横断的な組織をきちっとつくって、調査から始まってすべてのことを、あるいは資金的な問題も政府できちっと面倒を見ていく、そういう横断的な組織をつくってこの特定失踪者の問題に全力を挙げて取り組むべきだというふうに考えておりますが、いかがでございましょうか。

薮中政府参考人 委員御承知のとおり、政府といたしまして、現在は日朝国交正常化交渉に関する関係閣僚会議というのがございまして、そのもとに、細田官房副長官が議長を務める拉致問題に関する専門幹事会を置いて、内閣官房及び関係省庁間の緊密な連携を図ることとしておりまして、拉致問題の解決に全力を挙げているところでございます。

 今御指摘の特定失踪者の問題につきましても、当該失踪者が拉致被害者として認定される場合など、必要に応じてこのような政府全体の取り組みの中で考えていきたいというふうに考えております。

漆原小委員 以上で終わります。ありがとうございました。

遠藤小委員長 次に、松原仁君。

松原小委員 民主党の松原仁であります。

 今回、ピョンヤンで会議が行われたわけであります。御承知のように、拉致問題は日本の主権が侵された案件でありまして、日本の主権が侵されたという点において、国のまさにプライドを傷つける大きな問題であります。また同時に、ここで拉致された人たちの人権を考えたとき、その個人の尊厳を考えたとき、許すことのできない案件であるということは言うまでもありません。この拉致問題に関しては、何としても早期に解決を図っていかなければいけない、これは日本国民だれもが思っていることであります。

 しかし、その間、なかなか北朝鮮側のこの問題に対する取り組みは日本に対して非常に冷淡でありまして、我々は怒りを持ってこの問題を扱ってきたわけであります。今回の会議についても、そういった意味では、久しぶりに行われる政府間交渉であるということで、大きな期待があったわけであります。

 冒頭に申し上げたいことは、今回、北朝鮮、ピョンヤンに行かれたのは、薮中さん、また田中均さん、こういうことであります。田中均さんに関しては、一昨年の小泉訪朝を含め、それまでの北朝鮮とのさまざまな交渉をしてきたということが一つの大きな理由であったというふうに聞いているわけであって、逆に言うならば、この田中均さんがやはり今回この委員会に出席をして、それまでの経緯も含め、やはり流れがあってのこの会議であり今後の展望になるわけでありますから、田中均さんがここに来ていないのは極めて私は遺憾であるというふうに申し上げたいわけでありますが、なぜきょう田中均さんは来れなかったのか、薮中さんに聞くのもあれでありますが、お答えをいただきたい。

薮中政府参考人 この北朝鮮問題、そして拉致問題、外務省におきましては、実務の責任者は私アジア大洋州局長、局が主管し、そして、その長たる局長が主管しているということが、基本的に、私がここで御説明することで外務省としての実務的な説明には十分になっているというふうに考えております。

松原小委員 この田中均さんは、ぜひいずれの機会かこの小委員会で、やはり今までの経緯を知らないと議論も深まらないと思っておりますので、こういった答弁に立っていただきたいというふうに申し上げておきます。委員長によろしくお取り計らいをいただきたいと思います。

 次に、今回の会議であります。

 この会議の意義をどうとらえるかということが極めて重要になってくるわけでありまして、その全貌について、ある程度細かく薮中さんに聞いていきたいと思っております。

 このいわゆる会議の申し出が、北朝鮮側から北京の日本大使館にあったのかどうかわかりませんが、薮中さん、薮中局長はいつこの連絡を受けたのかをお伺いいたしたいと思います。

薮中政府参考人 かねてから日本政府として、政府間での話し合いというのがこの拉致問題の解決にとって絶対に必要であるということは伝えて、何度も我々の考え方は先方に伝えてございました。

 それを踏まえて、ようやく北朝鮮側から、最近になって、北京にあります我が方の大使館を通じて受け入れの意思表示があったわけでございます。それは、具体的な日時はコメントすることは差し控えたいと思いますけれども、極めて、二月十一日から十四日について受け入れの用意があるということがごく最近になって伝わってきたということでございます。

松原小委員 そのときに、伝わってきたときに、薮中局長の御認識でありますが、そのメンバーは、北朝鮮によって、北朝鮮側から指名されたのか、もしくは日本側のイニシアチブの中でメンバー策定は行われたのかということについてのお考えをお伺いいたします。

薮中政府参考人 先方からは、田中外務審議官と薮中アジア大洋州局長の二名を受け入れる用意があるという話がございまして、日本政府としても、それが極めて適切な、我々としての判断での、今回の協議に向けての対応であろうという判断をして、この二人、それに補助の者が三名ございました、合計五名が訪朝したというのが実情でございます。

松原小委員 一言で言えば、従来からの経緯を知っている田中均審議官も含めて協議をしたいということだったのではないかと思いますが、今回の交渉のいわゆる性格がどういう性格かということが、当初から随分と議論をされていたわけであります。本来は正式な政府間交渉ではなく、むしろそのための、まあ秘密交渉と言うと語弊がありますが、そういったものではなかったかというふうな議論がなされているわけでありますが、今回は事前に公式の発表というのはなくて、むしろマスコミを通して電撃的に我々はその情報を知ったというふうになるわけであります。

 これは、この交渉が正式だったのか、本来そうではなくて事前のすり合わせを含めたものだったのか、どういう趣旨のものだったのかということをまずお伺いしたいと思います。

薮中政府参考人 これは、日朝間の正式の政府間の協議であるという位置づけでございます。

松原小委員 ということは、事前に、通常こういったものは公式に発表をしたりするわけでありますが、今回はそれをあえてしなかった理由というのは、何かあるわけでしょうか。

薮中政府参考人 まさに、さまざま、いろいろな国の外交交渉がございます。そのときに、事前にその日程を公表することもあれば、一定の期間を置いて、交渉の中で日程についてもあるいはその事実についても発表する場合がある。それは、その時々、何が適切だという外交判断で行っていることでございます。

松原小委員 何が適切かという外交判断で行ったという御答弁でありますが、今回はあえて電撃的にやる意味があった、こういうふうに我々は理解してよろしいわけでしょうか。

薮中政府参考人 今委員御指摘の電撃的という表現が、我々にとっては相手側との申し合わせもあり、事前に公表はしないで協議は行う、その協議の結果を含めてこれを明らかにすることは、当然当初から考えておりました。

松原小委員 事前に公式に発表しないということは相手側との交渉もありということは、北朝鮮側の方のそういった強い要請があった、こういうふうなことでよろしゅうございますか。

薮中政府参考人 相手側とのやりとりについては、これはまさに外交交渉の中でございますので、特にコメントは差し控えたいというふうに思います。

松原小委員 この交渉に先立って、中国の外務次官王毅さん、そういった方々から、北朝鮮が極めてこの拉致問題に対しては前向きで、期待できる表明をするのではないかというようなニュアンスの話が伝えられていたかの報道がありますが、このことについてお伺いいたします。

薮中政府参考人 中国側からは、かねて我々がまさにこの拉致問題の解決の重要性ということを先方に繰り返し理解を求めるため説明する中で、中国側の感触として、これは中国も日本のそうした働きかけを受けて、北朝鮮と話をする際に、いろいろと感触は探っていたということはあると思います。

 そうした中で、中国側としてもこの日朝間の大きな問題である拉致問題の解決を非常に強く期待するという話は、中国側からも伝わってきていたわけでございますが、委員御指摘の王毅外務次官、これは二月のたしかあれは十日に来日されましたけれども、これは、たまたまそのときに日中間での安保対話というのがかねてから予定されていたわけでございまして、そのために訪日されたということでございます。

 全体的には、特に中国側から、事前に、今回の日朝の協議についてどういう見通しであるという具体的な話はございません。

松原小委員 先ほど漆原委員からの発言もあったわけでありますが、今回のこの会議をどうとらえるか、期待感というのは極めて高かったわけであります。

 冒頭、田中均さんの話を申し上げましたが、田中さんが行かれるということは、これまた一つの、多くの国民、また関係者にとっては驚きというか、そういった側面があったわけでありまして、彼が行くことによって、これは何か具体的な果実が得られるのではないかという期待感もあり、また逆に、何かあるのではないかという反発もあったのは事実であります。

 そういったこの会合でありまして、まさに正式な政府間交渉であると。結果としては、そういった大きな期待感も含めて、先ほどの漆原さんの話ではありませんが、そういった具体的な成果というものはなかなか見当たらないというふうに思っております。

 これは、結果として、事前の協議がなかったから具体的な成果が上がってこなかったんではないか、こういうふうな声があるわけでありますが、これについていかがお考えでしょうか。

薮中政府参考人 今回の日朝間のハイレベル政府協議ということにつきましての評価ということでございますけれども、私どもとしましては、もちろん、具体的な結果が出なかったということは非常に残念に思っております。

 他方、日朝の非常にハイレベルの政府間における協議としてそれが実現し、そして、双方が非常に率直に意見を述べ合ったと。従来から、拉致問題は解決済みであって話す問題ではないとか、あるいは核の問題についてもこれは米朝で話す問題であるというようなことも、北朝鮮から主張としてあったときもございますけれども、今回はこの二つの問題、拉致の問題、そして核の問題について、きちんとした意見の闘わせができたということは、従来とはまた違った展開になっているという評価をしておりますし、そうした中で、引き続きこの協議をやっていこうという申し合わせができたということ、そのことは一つの結果ではなかったかというふうに考えております。

 もちろん、問題が非常に簡単な問題ではないということで、これは粘り強く話をしていく必要があるというのが我々の考え方でございます。

松原小委員 今回、外交交渉でありますからどこまで話せるかということになりますが、北朝鮮側のメンバーというものは事前にわかっていたわけでしょうか。

薮中政府参考人 事前にはわかっておりませんでしたが、先方からはしかるべき者が北朝鮮側からは出席するという、事前の話としてはそれだけでございました。

松原小委員 外交交渉でありますから、それは本当はわかっていたのかもしれませんが、もし額面どおりわかっていないとするならば、こちらは田中均さん、薮中さんと極めて明快にわかった人間が行き、向こうはわからないというのは、いささか外交交渉として、お互い同じ立場というにしては向こうの方が優位に運んでいるような印象を持つわけでありますが、この点についてはいかがでしょうか。

薮中政府参考人 我々としては、判断として、当然我々を受け入れるというところで判断いたしますと、適切な相手方が出てくるであろうということは我々の当然の認識の中にはございました。

松原小委員 この北朝鮮側のメンバーでありますが、主たるメンバーは既に御報告をいただいたとおりでありますが、そこに、例えば鄭泰和大使であるとか宋日昊氏であるとか、こういった人間が同席をしたことはありますでしょうか。

薮中政府参考人 今回の日朝ハイレベル協議におきましての先方の出席者というのは冒頭に御報告したとおりでございますけれども、金永日外務省の副相、これはアジア大洋州を担当する一番の責任者としての金永日外務省副相、そして、姜錫柱外務省第一副相、これは北朝鮮の外務省の中で全体を見る立場にある第一副相、この二人が今回の協議に当たったということでございまして、これはまさに北朝鮮の外務省としては一番責任のある人たちが出てきたということであるというふうに考えています。

 そして、今御指摘の点でございますけれども、あと、もちろん先方も事務方が何人も出席しておりました。具体的には、例えば、外務省のアジア大洋州局長であるとか、あるいは、今お話しの宋日昊副局長であるとか、そういう方々も会合に一部あるいは全部出席しておりました。

松原小委員 その会合でありますが、宋日昊さんが同席をしておられたというふうなお話でございますが、宋日昊さんに関しては、実は、昨年の十二月に非公式の会合を、議員外交というふうに言っていいかどうかわかりませんが、北朝鮮の政府高官ということで北京で接触をした経緯がありました。そのときに彼らが語っていた内容としては、例えば、五人の家族が迎えに来れば、八人を本人の意思を確認して帰す用意がある、こういうふうな発言があったわけでありますが、宋日昊さんがそこにいたとするならば、その部分が今回の議論で後退をしているというふうに考えるわけでありますが、いかがでしょうか。

薮中政府参考人 今申し上げましたとおり、責任者というのは次官でございます。宋日昊さんというのは副局長、がそこに同席をしていましたけれども、もちろん全体としては次官が取り仕切っておられるということでございます。

 そうした中で、私が御報告いたしましたとおり、先方の発言というのは、一つには、一時帰国とした五人の方がもう一度北朝鮮に戻ってくるのが筋ではないか。そして、御家族については、そこで、ピョンヤンにおいて話し合って、帰国の意思を確認し、そして、帰国を希望するのであれば日本へ帰国するという段取りではないかという話がありました。

 私どもといたしましては、何よりも大事なのは、無条件での帰国であります。ピョンヤンにおいてあるいは北朝鮮においての意思の確認ということではなくて、無条件での帰国というのが何より大事であるということでございまして、そういう話をしたわけでございます。

松原小委員 我々も当然その会談において無条件一括帰国ということを主張してきたわけでありますが、向こうの方でそういった案が出てきたということでありまして、今回の会合において、宋日昊氏は何らかの発言はしておりますでしょうか。

薮中政府参考人 先方あるいは会談の中でだれがどう発言したかというのは、やはり外交の話として控えたいと思いますが、私申し上げましたように、全体として、向こうは次官が出てきていて、それが責任者であるということで御理解いただければというふうに考えます。

松原小委員 今回が正式な外交交渉、政府間交渉、こういうことになるわけでありますから、昨年の十二月においての宋日昊氏が例えば語ったような、今言った出迎え方式であるとか、もしくは八人プラス二名、この安否に関して場合によったら再調査というふうな議論は今回の会議には出なかった、こういうことでよろしいわけですね。

薮中政府参考人 私ども、十二月、今委員御指摘の中でどういう話があったかというのは直接承知していないわけでございますけれども、今回の協議においてあった内容というのは、今までに御報告したとおりでございます。

松原小委員 十二月のときにも実はこれが大きな議論になって、今回も同じ議論がなされておりますので確認をしたいわけでありますが、北朝鮮側の主張の中で、この拉致問題解決に対して刺さったとげというんですか、それを解決を極めて難しくしている案件がある。それは、いわゆる一たん日本に帰国した五人を帰すべきだった、そういう約束があったではないか、これは、彼ら、今名前が出ました宋日昊さんもこれを何度も言ってきたわけであります。

 今回も、仄聞するところによりますと、この部分で同じような議論が行われている。約束違反ということでありますが、これは具体的にどういうふうなことだったのか、もう一回ここでおっしゃっていただければと思います。

薮中政府参考人 北朝鮮側からは、その五人の方について、これは一時帰国という形で、そういう約束で帰ったのだから、信義どおりもう一度北朝鮮に戻るのがまず問題の解決の筋ではないかという発言がございました。

 これに対しましては、私どもとしては、もちろん段取りとしての、調整としての一時帰国ということはあっても、実際に再び北朝鮮に帰すという約束があったわけではないということは明言いたしましたし、また、何よりも大事なことは、この人たちは日本人である、そしてこの人たちは拉致された人たちである、その人たちがどうしてもう一度北朝鮮に帰らなければいけないのか。二十数年間に及んで待ちわびた御家族の方と再会されて、そして日本にそのまま定住したいというのは当然のことであって、人の情であって、当たり前のことであって、それを日本政府としても当然のこととして決めたわけであるという説明をいたしました。

松原小委員 今薮中局長がおっしゃった部分で、当然、彼らは日本で生まれ育った、これは今言ったように、帰す、北朝鮮に戻るというのは、これは筋が違うだろうと思っておりますが、問題は、この約束があったなかったの議論がやはり大きな問題点になっている、今回もそのように思っている。

 この約束違反というのは、これはなかったというふうに言い切れるのかどうかということもさることながら、北朝鮮側が、約束違反をしているのは日本の政府に対して言っているのか、細かい話でありますが、外務省に対して言っているのか、だれか個人に対して言っているのか、薮中局長の個人的見解をお伺いしたいと思います。

薮中政府参考人 私は、最初に申し上げましたように、実務の責任者でございます。そういう意味では個人的な見解というのは特にございませんが、責任者として言えば、先方が言っているままを申し上げましたら、そういう約束があったではないか、それに対してははっきりと今申し上げましたように、そうした約束はなかったと。

 今委員御指摘のとおり、そこが一つのポイントになっているということでございますけれども、我々から見ればそうではなくて、問題を解決したいのかどうか、そのために何が必要かということでいえば、今まさに必要なことは、八名の方々を一日も早く日本に無条件で帰国させること、そのことを、日本が一丸となってそのことが大事だということを先方に訴えかけることであろうというふうに考えております。

松原小委員 つまり、この約束はなかった、これは会議で明言をしていらっしゃった、これはもう田中均さんも薮中さんも二人ともこのことは否定した、こういう認識でよろしゅうございますか。

薮中政府参考人 日本側として、そういう国としての約束はなかったということをはっきりと会議で言っております。

松原小委員 ということは、当然、今言ったように、薮中局長また田中均さん、二人ともこれを否定した、こういう認識にしていきたいと思っております。それは、逆に言えば、北朝鮮側はこのことについてはある種言いがかりを言っている、こういうふうな認識でよろしいわけですか。

薮中政府参考人 何が適切な言葉かということはございますけれども、我々として言ったことは、そういう調整していたという経緯はあったとして、しかし北朝鮮に再び帰すという約束はなかった、そのことをきっちりと言っているということでございます。

松原小委員 つまり、調整をした経緯はあるが明言をしたことはなかった、調整をした経緯はあったが明言したことはなかった、こういうことでよろしゅうございますか。

薮中政府参考人 申し上げましたとおり、約束はないということでございます。

松原小委員 そうすると、北朝鮮側は調整した経緯を指して約束と、こういう認識をしている可能性はあるということですか。

薮中政府参考人 北朝鮮側がいろいろと言っていることについて一々これ以上に私はせんさくする立場にはございませんけれども、大事なことは、日本の立場をはっきりとして、それを先方にしっかりと伝えることであろうというふうに思っております。

松原小委員 ぜひその原理原則で頑張っていただきたいと思います。

 この会談の中で、会談のイメージを私たちもやはりできるだけ知っておきたい、語れない部分は別として。この会談の中で田中審議官と薮中局長が別々の会議に出るということはなかった、こういうことでよろしゅうございますか。

薮中政府参考人 全くありません。

松原小委員 全くない。

 今回、これはお考えの中での話かもしれませんが、今回の会談が、いわゆる従来田中さんがやってきた北朝鮮外交を薮中局長、アジア大洋州局長ということで、前任者が田中均さんであった、こういう経緯の中で、薮中さんがこの田中さんからの経緯、さまざまな今までのデータや情報、さらには北朝鮮における人的資源をバトンタッチされるというふうな趣旨があったのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

薮中政府参考人 いずれにしましても、これは日本の役所のシステムでございますけれども、主管というのは局にあり、その責任というのは局長にあるということでございまして、私は局長になった日からそういうつもりで仕事をやってきておりますし、今後ともベストの体制で問題の解決には臨んでいくということでございます。

松原小委員 そういうことであれば、当然、田中均氏が持っていたさまざまな、名前も言えない交渉相手も含め、恐らく薮中局長がそのバトンを受け継いで、これから日本の原理原則をきちっと主張してこの拉致問題の解決に取り組んでいかれるのではないかというふうに期待をいたしておりますから、ぜひとも頑張っていただきたいと思います。

 既に何回も質問で、きょう議論されておりますが、今回の会談、具体的な成果というと、確かに従来政府間交渉がなされていなかった部分に関して、政府間交渉は行われた。どうも拝見をするに、主導的にそのイニシアチブを握っていたのが北朝鮮かなという気もしないではないのでありますが、率直に言って。

 いわゆるこの会議でありますが、北朝鮮側は、主導的に北朝鮮がやってくるとしたら、それはねらいは何だったのか、もう一回お伺いいたしたいと思います。

薮中政府参考人 いずれの会談におきましても、日本側からまず発言をし、そして拉致問題の解決の重要性を訴え、そしてまた核問題についても、この問題も日本の安全保障に直接かかわり合いのある、日本の重大利害を持つ問題であるということで、基本的な考えを主張するということで、日本側から主張いたしました。これは、恐らく通常の、ある意味で外交の一つの礼儀として、訪問した側がまず発言するということがあるのかわかりませんけれども、いずれの会談においても、日本側から主張したということがまずございます。そういう意味で、何が主導的であったかということはコメントを差し控えたいと思います。

 そういう中で、先方の、今回、北朝鮮側の日朝政府間協議に合意した背景が、あるいは意図が何であったのかということ、これにつきましては、先ほど来お話し申し上げていますように、私どもとしていろいろと一々せんさくするつもりはございませんが、向こうとしても、北朝鮮側としても、核問題、これの六者会議に向けての動きが一つ出てきた、そうした中で、あわせて日朝間の懸案についても解決に努めなければいけないのではないか、そうして、全体として、北朝鮮側から見ても問題の包括的な解決を図りたい、善意に解釈し過ぎているかもしれませんが、全体としてはそういうふうに積極的あるいは前向きに私どもとしては受けとめているところでございます。

松原小委員 善意で考えるということも、それは一つの考え方かもしれませんが、こういった外交においては、これはそれぞれの外交当事者のお考えの中の議論でありますが、やはり最悪を想定し、悪意を想定して行動するというのが私は基本原則ではないかというふうに思っております。

 今回、結果として、このいわゆる政府間交渉、大変に期待感が事前にあったけれども、具体的な成果は政府間交渉そのものが行われたという事実だけだったのではないかというふうな評価もあるわけであります。私は、今回、六者協議の前にこれが行われたことの意義というのは、もう既に先ほど来議論がありますけれども、北朝鮮側が、いわゆる六者協議に対しての、日本とバイで、二国間で拉致問題を議論しているというアリバイづくりとしてやったのではないか、こういうふうな声がたくさんあるわけでありますが、そういった議論に対してはどのようにお考えでしょうか。

薮中政府参考人 まさに六者協議というのは一つの日程として、スケジュールとしてあって、そして日朝間での政府間の協議もあるということは、その関連づけがあることは間違いないことだと思います。

 ただ、我々、私申し上げましたように、その関連づけというのは、まさに北朝鮮から見ても、核問題を解決し、その中で安全の保障であるとか国際社会からの支援を得るというのはございますけれども、御承知のとおり、昨年、まず第一回のこうした国際的な会合としての三者協議が四月に北京であり、そして八月に第一回、ようやく六者としての協議が行われたわけでございますけれども、そうした中で、北朝鮮としても包括的な解決ということを求めている。それは単に安全の保障だけではなくて、米朝間の外交の関係樹立であるとか、日朝間の国交正常化ということを先方がその中で指摘しているわけでございますから、そういう中での関係があるという意味でございます。

 アリバイづくりというお話がございましたけれども、これは先方にいかなる意図があれ、我々の考え方は一切変わらないわけでございますから、全くそのことというのは意味のないことである、結果的に日本の立場がそれで一切変わるわけではございませんので、そういう意味で余り意味がないことではないかというふうに考えます。

松原小委員 この件については、当然、日本側は、今薮中局長が言った立場を堅持するしか外交上ないわけであるけれども、相手にそれを言わせる理由をつくったというのは、私は一つ命題としてあるだろうと思っております。これがなければ、相手はそれすら言えなかったのではないかというふうな気がしているわけであります。

 それともう一つは、次回協議の日程が決まらなかった。これは、どういう議論で決まらなかったのか。決めようという話をどちらも持ち出さなかったのか、決めようと言ったけれども、決めないと言われたのか、お伺いしたいと思います。

薮中政府参考人 今の御指摘の、六者協議において拉致の問題を取り上げるべきではないというのは、昨年八月の第一回の会合の前からも言っておりまして、今回何も新たに始まったわけではございません。そしてまた、日本として一貫して言っていることは、そしてとり続けている態度というのは、核、ミサイル、そして拉致の問題、これを包括的に解決することが、まさに全体の核問題、北朝鮮の抱える核問題のためにも不可欠であろうと。そういう意味で、拉致問題の解決を六者協議の場で提起するのは当然のことであるということでございます。

 次回の日朝間での政府間の協議をどうするか、日程でございますけれども、それが具体的に定まっているのかということでございますが、これについては、今回合意しましたのは、今後ともこの協議を続けていこうと。当然、今回相当厳しいやりとりを双方がしたわけでございますから、それを十分に我々としては北朝鮮の中でも理解してもらって、それには少しの、いろいろの向こうの中での検討も必要でしょう。また、その間に六者協議がある。六者協議というのは、当然、核の問題の進展というのがこの日朝間の懸案の解決にも影響すること、相互関連していることは否めないところでございますので、そうしたことを踏まえながら、引き続き具体的に早期に日朝間での協議をやっていきたいというふうに考えております。

松原小委員 外交でありますから、どういうふうな流れか現場が一番わかっているわけでありますが、特に北朝鮮のように、交渉が一回途絶えるといつ再開されるかわからないという今までの経験則を持つ国に対して、当然、今回薮中局長は次回日程の固定化をおっしゃったと思うのですが、今私が言った質問の趣旨は、次の日程を決めようということを言ったけれども相手が乗ってこなかったのか、決めようと言わなかったのか、この点を確認したいと思います。

薮中政府参考人 次回、具体的な外交交渉の中身でございますけれども、具体的には、双方ともにこの協議を続けていこうということを申し合わせたということでございます。

松原小委員 ということは、おそらく、次回会合を申し入れてもなかなかまとまらなかった、こういうことではないかと私は感ずるわけでありますが、問題は、日程を決めない継続というのは非常に難しい、特に北朝鮮のような国を相手にした場合。これはいわゆる引き延ばしにつながるのではないかというふうに思うわけでありますが、これについてのお考えをお伺いします。

薮中政府参考人 我々としては、問題を一日も早く、この拉致問題というのは一日も早く解決しなければいけないというふうに考えております。そういう意味で、早期の解決を目指したいと考えておりますが、当然、北朝鮮としても、問題解決をしたいのかどうかということで、それは国交正常化、そしてさらに連なる、当然のことながら経済協力といったことで、北朝鮮側としても、この問題をきちんと解決するということを基本に置いているというふうに考えておりますし、いたずらにこれを引き延ばすことは北朝鮮にとっても何ら利益にならないということを先方に引き続き働きかけますし、先方もそういう認識を深めているということは、私どもとしても考えております。

松原小委員 今回、北朝鮮との政府間交渉が始まったことは、これは一定の前進ということはだれもが思っているわけでありますが、次回日程が明らかになっていないで、やりましょうということで終わったということは、極めて今回の交渉の意義をなくさせるもののような気がしてならない、私は個人的にそう思っています。

 そもそも、北朝鮮側が今できることは、日本の方で、経済制裁法案と言われる外為法の改正法案等が成立をした、この発動をとにかく食いとめなければいけない、先ほどの議論にもあった特定船舶入港制限新法の議論も起こってくる、その成立を何とか引き延ばしをしたい。つまり、対話をしている姿勢を日本に対してアピールをする、六者協議に対しては、そういった、いわゆる日本とバイでこういった議論もしているという、言葉は悪いですがアリバイづくりもする。これは、北朝鮮のねらいとして非常に成功しているのではないかというふうな印象も持つわけでありますが、私は、そういった意味において、この交渉を次にさらに進めるにおいて、非常に今言った部分がきちっとしていないところは大変残念だなと思うわけでありますが、この辺の評価をお伺いしたい。

薮中政府参考人 先ほど御説明いたしましたとおり、北朝鮮側も、外為法の改正、これが通ったことについて大変な大きな衝撃を受けていたわけでございまして、今委員御指摘のとおり、対話姿勢をとればそうした国内の動きがとまるかということでいえば、当然そういうことではない、ちゃんと結果を出していかないと国内の世論は変わらないんだ、このことは先方にも非常に強く説明し、働きかけもしたし、当然向こうもその辺のところは十分に理解しているものというふうに私は考えております。

松原小委員 もう時間が参りましたので、最後に申し上げれば、私は、外為法制裁法案は、拉致あり、核あり、ミサイルあり、不審船ありというこの現状の中において、つくったものは即座発動するべき時期に来ているというのが私の見解であります。むしろ、発動をためらわせる要素があるとすれば、今回の例えばピョンヤンの会議で具体的な拉致の問題の進展があった、提案があった、こういうことがない限り、むしろ発動するべきだというのが私の見解であるということを申し述べて、きょうの質問を終わりにいたします。

遠藤小委員長 次に、渡辺周君。

渡辺(周)小委員 民主党の渡辺周でございます。

 ただいまの松原委員の質問を受けまして、重複を避けて質問をしたいと思いますが、まず冒頭、先ほど松原委員がおっしゃられた田中均氏の参考人という形での出席につきましては、これは小委員長、ぜひ諮っていただきたい、そのことをまず冒頭に申し上げたいと思います。いかがでございますか。

遠藤小委員長 幹事会にて話をします。

渡辺(周)小委員 先ほど来、この人選についてもイニシアチブがあったのかというような質問がされておりますけれども、先ほど来から質問が繰り返されておりますので、時間があれば私なりの質問を申し上げたいと思います。

 今委員から、六者協議のお話、それで、二回目、次回以降のこのハイレベル交渉が決まっていないというようなお話があります。この六者協議、六カ国協議の合間に、日朝が、例えば二日目の夕刻でありますとか、あるいは三日目の午前中に二国で会う、そういうスケジュールが組まれているというような一部報道がありますが、そのとおりと考えてよろしいですか。

薮中政府参考人 六者協議の日程につきましては、まだ全体としてどういう形で六者協議自身が行われるのか、これは中国が一応ホスト役でございますけれども、関係国とも相談をしながら現在調整をしている段階でございまして、具体的にまだ、どういう形で何時から行うということについての決定がなされていないというのが状況でございます。

渡辺(周)小委員 となりますと、一部報道では、二日目の夕刻に時間があるので、日本と北朝鮮側が協議をする時間があるではないか、あるいは三日目の午前中にあるのではないかとありましたけれども、それは今の段階では否定をされるというふうに、まだそこまで決まっていないということでよろしいんですか。

薮中政府参考人 私申し上げたとおりでございます。全く、具体的な六者協議そのものの日程、二十五日から開催するということは決まっておりますけれども、それが具体的にどういう形で行われるかということについては、一切この時点では決まっておりません。

渡辺(周)小委員 としますと、例えば、その間に両国が、つまり、二国間ハイレベル協議がその間に行われるという可能性がある、時間的にはあるかもしれない。つまり、後に質問しますけれども、その間で、日本と北朝鮮が六カ国協議の合間、六者協議の合間を縫って、急遽第二回目のハイレベル協議が組まれる可能性もある、それは否定できない、つまりあり得ると考えてもいいでしょうか。

薮中政府参考人 当然、六者協議全体の会合、その日程設定にもよると思いますけれども、我々としては、あらゆる機会をとらえて、日朝間でも日朝バイの問題についての話し合いを継続したいというふうに思っております。もちろん、この時点におきまして、だれが北朝鮮側の代表になるのかということについても、まだ正式の情報に我々は接しておりませんので、その辺のところも関係はしてくると思います。

渡辺(周)小委員 もちろん、対日担当者が出るのか対米担当者が出るのか、いろいろ相手の出方次第でありますけれども、ただ、その間に例えば第二回目のハイレベル協議が組まれる可能性も否定はできない、ないことではないというふうに判断をするわけですが。

 今回の二国間協議、ハイレベル交渉が、こういう、ざっくばらんな言い方をすれば、六カ国協議で、六者会談で拉致の問題を日本が取り出してくる。そうすると、これについてはもう激しく北朝鮮としては、これは拒否したい、排除したい、だから、さまざまな周辺国も協力をして、何とか別室で、言葉をかえれば、この拉致の問題、日朝間の懸案についてはその前に別室でやって、協議の話のとにかく入り口をつくろうと。六者協議では、悪いけれどもこの話は日本さん、出さないでくれよ、そうしないと、まとまるものも、まとまりそうなものもまとまらなくなるじゃないかということで、実は、中国も含めて、言葉を選ばず言えば、おぜん立てをされて実はやることになったんだというような観測もあるわけです。

 この点についてはお答えはいただきませんけれども、そうだとするならば、今回のこの六者協議の中で拉致問題を取り上げる、これは再三にわたっておっしゃられていますけれども、六カ国がそろっているところでそれを取り上げるのか、それとも、合間を見て二国間の中で引き続きやるんだ、だから六者会談をやっている席では取り上げないけれども、二国間でやるときはこの問題を集中的に取り上げる、そういうことなんでしょうか。それとも、六カ国がいる中で、日本としては核問題と同等に私はこの拉致問題を取り上げるべきだと思いますけれども、その点については、拉致という問題を六カ国が同席のもとで日本としては取り上げるおつもりですか、主張されるおつもりですか。

薮中政府参考人 まさに、六カ国協議の際に取り上げるというのはそういう趣旨でございまして、全体会合において、各国がいる中で、なぜこれが、この解決が大事であるかということについての指摘ということをする考えでございます。

渡辺(周)小委員 その中で、これはこの場でなくても、昨日も実はお尋ねをしましたけれども、拉致という問題を、拉致という言葉を使ってその場で取り上げられるのかどうか。それは、包括的、つまり、日朝平壌宣言の中にも、実は懸案事項という中で、その中に拉致が読めるんだというような文章の書き方をされていますね。

 ですから、この中で、日本が、いわゆる日朝間の懸案であるとか包括的なというような言葉ではなくて、拉致という言葉を使って主張されるのかどうか、その点についてはどうですか。もう一度お尋ねをします。

薮中政府参考人 本来、まさに六者協議に向かうに当たっての対処方針といいますか、基本的な考え方、これを今整理しているところでございます。そういう意味では、まだ具体的な発言のポイントということを作業中でございますが、今御指摘の点は非常に大事な点でございますので、はっきり申し上げますが、私は、当然拉致という言葉をその中できっちりと明言することが大事であるというふうに考えております。

渡辺(周)小委員 ぜひこの六者協議の中で日本の立場を強く主張していただきたいと思いますし、また、他の参加国にも同じ問題意識を何とか持っていただけるように、ぜひその点については御努力をしていただきたいというふうに思うんです。

 先ほど来、対話と圧力の話が繰り返し出てきます。この圧力の部分については、いわゆる外為法の改正、並びに今各党で検討をされておりますいわゆる特定船籍の入港の規制をする法律、これが圧力だとすれば、例えば今度対話という部分で出てきますのが、一体この対話というものをいつまで続ける気なのかということが一番の問題なんですよ。

 これは、北朝鮮が、対話と圧力という、圧力の部分はある程度、これから各政党が議員立法という形で用意をしつつある、国内世論も高まってきている。問題は、この対話を、終わりなき対話がいつまでも続く、つまり進展がないまま、確かに今回の二国間協議でも大変厳しい意見の応酬があった、日本側の立場を厳しく言ったと。しかし、このことを繰り返していても終わりなき対話が続くわけでありまして、私は、ある程度、時期を区切って、いついつまでにもう回答がない、例えばですが、後にお尋ねしたいと思いますが、例えば向こうが解決済みと言っている、いわゆる亡くなったというふうに発表された方々、この安否については、例えば合同の調査をする、究明をする委員会を設けようじゃないか。例えばこういう問題が、設置されるということで一つ区切りをつけるということを一つ最低条件にして、いついつまでに回答がない場合は、日本としては、今度は圧力の部分でもうあなた方と対応せざるを得ないんだということなんで、そこを出さないといけないと思いますが、対話と圧力というその対話の部分は、やはり私は、期限を区切って、何らかの条件を出して、それに回答がない場合はそこで対話を一たん打ち切るという姿勢が必要だと思うんですけれども、外務省はどう考えますか。あわせて副長官にもお尋ねをしたいと思います。

薮中政府参考人 当然、我々としても、対話と圧力、そして対話についていつまでも時間がかかって結果が出ないということであってはならないというふうに考えております。そういう意味で、できるだけ早い結果を出すように努力をしなければいけないということで、そのために一生懸命努力をしていくということであろうと思います。

 したがって、できるだけ早い結果を出す。しかし、やはり外交交渉でございます。相手との関係でも、やはり我々としては基本的に非常に粘り強く、しかしできるだけ早い結果を出すという非常に難しい課題を抱えながら、しかし、これがまさに外交としての仕事であろうというふうに我々は考えております。

細田内閣官房副長官 私は、外為法がいよいよ実施されることになった、そして北朝鮮側が恐らく予想しておったよりもはるかに早いタイミングで、今週の月曜日に官報において掲載され、そして二月二十六日をもって法律が施行される、いよいよいつでも政府の意思によって規制ができる。しかも、その内容は、送金、現金の持ち出し、資本取引、役務取引、貨物の輸出輸入に関する全般的なものである。これは衆参両院の各党、各議員の皆様方の議員立法によるものであり、その点、大変お世話になったわけでございますけれども、そのことが、いよいよこれは大変な時期を迎えたということで、政府高官ベースによる初めてというべき対話の開始につながったというふうには理解しておるわけでございます。

 ただ、これはもうまさに一回、先週行われたばかりであり、これからの北朝鮮側の動向もあるいは意向も見守っていかなければならないことでございますので、ようやく動き始めた段階でございますので、はっきりとしたことは今の段階で申し上げることはむしろ適当ではないのではないか。今後、二十五日からの六者協議、あるいはその場における向こうの発言、あるいはその後のさらに具体的な話し合いがどのように持たれるのか、あるいは持つつもりがあるのかということを見守りながら考えてまいりたいと思います。

 これに加えまして、先ほど御質問の中にもございました船舶の方につきましては、これは国会の方で、各党で今御審議になっておられて、また議員立法として御検討されておられるということですから、コメントは避けたいと思いますけれども、それらも同様の考え方で、やはり対話を引き出すための圧力と、それでまた皆様方の立法によって対話が始まった、こういうふうに考えておるわけでございます。

渡辺(周)小委員 これはやはり、発動できるという態勢をいつも、我々はカードを持っているし、また、もう一枚のカード、何枚かのカードをこれから用意しようという動きが進展をしていく中で、先ほど来、早急に、早急にと言うんですが、どの時点でやはり進展があったかということを私は明確にしなきゃいけないと思うんです。

 つまり、同じことで、原則論だけぶつけ合って何も話は進まない。それで、またやりましょうと。とにかくテーブルについて、一回目があったから二回目が見えてきただけよかったじゃないか、二回目やったら三回目が、約束されないまでも、あるからいいじゃないか、それだけでも進展だというんであれば、これはますます相手の思うつぼでして、交渉はどんどん長引く。しかし、何も実りがない。

 私は、どこかで、ここまでが一つの山だよ、これがやはり通らない限りは日本としていつまでも対話を続けられないよということを、私はやはり提示するべきだと思うんですけれども、そのお考えはいかがですか、外務省。

    〔小委員長退席、中谷小委員長代理着席〕

薮中政府参考人 まさに北朝鮮側からしても、これを単に引き延ばせば彼らの利益なのかどうかというところだと思います。

 基本は、やはり解決というのは、双方がそれが必要だと考えることであろうと思いますし、それがまさに日朝平壌宣言でうたい合った基本原則であって、そして、今回の日朝の政府レベルの協議におきましても先方は繰り返し言っていたのが、平壌宣言を履行する意思があるということでございました。それは当然、彼らから見れば、北朝鮮の利益にもなることがあるわけですから、当然、単に引き延ばすということであれば、その彼らの利益が全然実現されないということでございますので、北朝鮮側としても、単に引き延ばしをすることが彼らの利益になるということではないと思います。

 いずれにせよ、日本政府としては、そうした意味でも北朝鮮に働きかけをさらに行い、早期の解決に向けて努力をしていきたいというふうに考えております。

渡辺(周)小委員 つまり、平壌宣言を見ると、拉致の問題については、遺憾であって、二度とこのようなことは起こらないとすると向こうは言っているわけですね。つまり、謝ったんだからもう終わりじゃないかと。つまり、真相を究明するというのは日本側の言い方であって、日朝平壌宣言に署名をした段階で、いわゆる両国間の、日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題については云々と、まあ言うまでもありませんが。つまり、この問題は解決済みだ、謝った時点で終わったんだというような、北朝鮮の金正日国防委員長の主張の中にあれば、我々はかなり、彼らの言う原則論をひっくり返していかなきゃいけないというか、強く攻めていかなければいけないわけです。

 時間がありませんから、その点については今後も強く言っていただくことを、確かに期待をしてしまった我々も一緒になってやっていくわけですが、先ほどちょっと、解決という言葉をおっしゃいました。確認なんですけれども、拉致問題の解決というのは、どの時点を解決と日本政府はいうのか、改めて確認の意味でお尋ねをしたいと思います。

薮中政府参考人 今回も私ども非常に強調したことでございますけれども、拉致問題の解決なくして国交正常化はない。そのときの拉致問題の解決でございますけれども、まさに家族全員、八名の方の無条件での帰国、そして十名の方の一日も早い安否、その真相の徹底究明、この二つなくして拉致問題の解決はないということを言ったわけでございます。

渡辺(周)小委員 そうしますと、いわゆる政府が認定していない被害者で極めて拉致の疑いが濃い、失踪する理由が見当たらない、けれども、行方不明者、拉致された可能性を捨て切れない、この方々については、日本政府は現状をどうお考えですか。

 つまり、今のお話ですと、今もう既に生存が確認されている五人の御家族プラス、ジェンキンスさんとキム・ヘギョンさん、それから、死亡したと向こうは発表した、しかし生存説が非常に我々は強いと思っておる十名の、横田さんを初めとする安否の確認、これが解決なのか。それとも、いわゆる北朝鮮の国内にいる日本国籍を持つ人間について、その存在、安否、すべての日本国籍を持っている人間の生存を確認するあるいは存在を確認するまでは、私は拉致問題の解決とは思えませんけれども、政府の見解は、いわゆる特定失踪者と言われる方々についてはどうお考えですか。また、そこまでは、正常化交渉を始めるに当たっては、その後でいいというふうにお考えなんでしょうか。いかがですか。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 今御指摘の点につきましては、当然日本政府として、関係省庁の連携をとりながら、さまざまの努力をしてきているわけでございます。そういう中で、情報を収集し、そしていろいろの分析を行ってきているわけでございまして、そこで政府によって拉致と認定される事案になりましたら、当然のことながら、それは日朝間においてその解決を求める、真相究明を求めるということは言うまでもございません。

渡辺(周)小委員 それはいかなる形でやるのか。例えば、合同委員会、究明合同委員会のようなものを当初提唱されるという話、実際これを今回のハイレベル協議の中で持ちかけるところまでいったのか、あるいは結局言い出せなかったのか。その点についてはいかがですか。

薮中政府参考人 今回、真相究明の必要性、これの重要性を指摘し、その際に、一つの考え方として、例えば合同調査委員会のようなものをつくって、それで日本もそれに入って一緒に調査をするということ、このアイデアについては先方に指摘いたしました。

渡辺(周)小委員 北朝鮮側の答えは、その問題は解決済みと言って、全く取りつく島もなかったのか。その点はまだ、これを例えば設置することが私はまずは一つの進展だと思うんですけれども、その点については、北朝鮮側の反応はいかがだったんですか。

    〔中谷小委員長代理退席、小委員長着席〕

薮中政府参考人 北朝鮮側は、真相究明の問題につきましては解決済みであるという態度を最初からとったわけでございますけれども、それに対して、私どもが、そういうことは絶対に受け入れられないんだ、そして、それの徹底した真相究明ということの必要性を繰り返し指摘する中で、この委員会の設置ということも一つのアイデアとして提起したわけでございます。先方から、これに対しての具体的な反応はございませんでした。

渡辺(周)小委員 つまり、それは言いっ放しという形で終わって、いや、それについてはにべもなく、終わったと。

 しかし、これは合同調査委員会なのかあるいはその他の手段があるのかわかりませんが、とにかく、これから交渉を進めていく上で、私は何らかのやはり進展がなければ、対話はもう延々と、それは解決済みである、堂々めぐりでは、いつまでたっても何ら結論が出ないわけでございますので、その点については、これはぜひまたあらゆる機会を通じてチャンネルを、協議の合同調査委員会をつくっていただきたいと思いますが、その点について再度、そしてまた副長官にもお尋ねをしたいと思います。

薮中政府参考人 我々は、この安否不明の方々の真相究明というのは絶対に必要だと思っておりまして、そして、今回こういう提案もいたしましたし、そしてまた、かねてから百五十項目の調査項目を出しての要求についても、引き続き求めていきたいというふうに考えております。

 いずれにせよ、徹底した真相究明が必要であるということでございます。

細田内閣官房副長官 このたびの交渉を仄聞しても、日本側が日朝平壌宣言に基づいて両国間の正常化、発展のために努力するということに対して、逆のことを言っているんじゃないかということを相当強く言ってきたわけですね。つまり、際限ない要求を繰り返して、一向に妥協するつもりが全然ないというのではないか、核についても拉致についてもそうではないかということを感じて、かつ、片や制裁措置があって、いわば際限のない攻撃をしてくる。経済社会面におけるそういう感じを、あるいは被害者意識のようなものを持っておったような感じもするわけでございますが、我が方は、やはり今は、拉致の問題について言えば、氏名がはっきりしている者を、すっきりと国民の皆様方が、もちろん国会も含めてですが、なるほどこれで解決したなということがはっきりするということがまず第一でございますから、そういう意味で、八人プラス十人の氏名のわかった方でございます。

 もちろん、政府としては、実はそのほかに、関係者の御努力によりまして、海岸を歩いておったら突然いなくなった方もおられて、その後どうなったか杳として知れないという方がたくさんおられて、百八十六名の方がおられるとか、その方の顔写真をポスターにするとかいろいろな努力をしておられます。しかしながら、それはもちろん、まだ立証しておりませんので、いろいろな意味での情報を探っておるという段階でございます。

 アメリカにも私は直接申しましたし、韓国の統一部の人にも申しましたし、何らかの情報がないかどうかということは今後努力をしていかなきゃなりませんが、直接の交渉として、今直ちに拉致問題について具体的にこの人たちをどうしろということは、この八人プラス十人の問題に限定しながら、そこでまず誠意を示せ、こういうことを言っておるということを申し上げたいと思います。

渡辺(周)小委員 そこですね、八名プラス十名。まず北朝鮮政府が、まさに、の中に生存をしている人、また安否はわからないけれども北朝鮮に行ったというふうな方、あるいは入国の事実はないといった方も含めて、ここで打ち切るのではなくて、やはり日本の中で非常に、曽我ひとみさんもそうでした。この方も、この方が拉致をされたということは、実は帰ってきて初めて、発表されて初めてわかったわけですよ。同じような例がたくさんあるだろうということで、この点については、ここだと区切らずに、ぜひともさらなる交渉を続けていただきたいというふうに思います。

 それからもう一つは、やはり今はモラトリアムなのであって、彼らに対して対話を続けてきたけれども、もう対話も限界に来たときには、我々としても、国の意思として、国家意思として強い意思を発動するぞという、これは経済制裁も含めた形でのものを、片方でこぶしを用意していないで、ただ延々と対話だけが続く、終わりなき対話が続くということにならないように、また相手にそうとられないように、ぜひともその二つを持って交渉に臨んでいただきたいと思うんです。

 数分ございますが、先般、二月の四日、五日、六日と私ども民主党の拉致対策本部で鳩山由紀夫氏を団長にして韓国へ行きました。この中で、私どもは、北朝鮮に拉致をされて、中国を経由して、拉北者というんですが、北に拉致をされた方々で戻ってきた方とお会いをしました。

 そのときに、この方々は、金正日の所有する保養地で日本人を見かけたという方が自分の息子だ、次の機会については、こういう点について、ぜひ自分も情報を集めてくるので証言をしたい、そのときは日本に行きたいというふうに言っております。この方々は当然韓国のパスポートを今は持っておりますので、この方々には来て日本で証言をしていただきたいと思います。

 といいますのは、安明進という元工作員が横田めぐみさんは生きているというようなことで本を書いているときに、朝鮮労働党の創立大会か何かが、創立記念日があったときに、横田めぐみさんを見かけた同じ会場で、そこには韓国から拉致された人たちも来ていたんだと安明進は言っております。つまり、韓国で拉致をされた、その辺の話はちょっと割愛をしますが、漁船の漁師が操業中にいきなり拉致をされて工作員教育施設に連れていかれた。その生々しい工作員教育を受けていたという方々が今韓国にいるんですね。

 この方々の本人並びにそうした方々の周辺の方々が、日本人を目撃したという人もいます。それは、大同江というところにある国際ホテルで、年末になると工作員養成所から集められてきた拉致された人たちが年始だけはそこで過ごさせられたらしいんですが、そこで日本人がいた、こういう証言がありますので、ぜひこういう方々を我々は呼びたいというふうに思います。また、そのときには、外務省や内閣にもぜひ御協力といいましょうか、ぜひ関心を持っていただきたいと思いますし、また、ぜひ小委員長、そういう形で参考人として要求をしたいと思います。そのときには国会の場で証言をしていただけるように、生々しい工作員教育の実態と、そして日本人を目撃したという重要な証言を持つこうした方々が日本で参考人として発言する用意がございますので、ぜひその点については御配慮を要求したいと思いますが、いかがですか、委員長。

遠藤小委員長 御党幹事を通して幹事会の協議事項にしてください。

渡辺(周)小委員 でございます。

 そしてまた、ファン・ジャンヨプ元北朝鮮労働党幹部、この方ともお会いをしました。アメリカでは昨年の晩秋に証言をされましたけれども、ぜひ日本にも来たいという意思を持っておりますので、その点についてもぜひ日本国政府の御判断をいただきたいと思いますが、終わりに、外務省並びに内閣としてはいかがですか。

 この問題、私は何度か国会の本会議や委員会でも取り上げましたけれども、御本人のまだ正式な表明意思がないので、何度も、お答えできないと福田長官や小泉総理はおっしゃっていましたけれども、御本人はもういろんなところで、日本に行って証言をしてもいいと言っているんですね。韓国政府が当然、パスポートを発給するかどうかというところもありますが、その点についてはいかがですか。薮中局長また副長官、いかがですか。

薮中政府参考人 これまでのところ、今委員御指摘のファン・ジャンヨプさんにつきまして、日本政府に対して正式な訪日希望は表明されていないわけでございますけれども、現時点でそういう意味では政府として具体的に検討しているわけではございませんが、今後、御本人の意向を踏まえながら、我が国としても判断していくことになるというふうに考えております。

細田内閣官房副長官 先方の意向もあると思いますし、また国会の御意思の問題もございますので、方針としては今薮中局長がお答えしたとおりでございます。

渡辺(周)小委員 では最後に一つ。どういうふうな形で意思表明をしたら日本としては用意ができるのか、そこだけ伺って質問を終わりたいと思いますけれども。本人からの意思表明というのは、どういう形でならということ。

薮中政府参考人 これは、一般論として申し上げますけれども、大使館なりを通じてという形での我が方に対して正式の意思表示があるということが通常は必要になるというふうに考えております。

渡辺(周)小委員 終わります。

遠藤小委員長 次に、中野譲君。

中野(譲)小委員 民主党の中野譲でございます。本日は、北朝鮮の問題を集中して審議する初めての会合ということで、この委員会に新人議員としまして質問させていただく機会をいただきまして、まずもって感謝を申し上げたいと思います。そして、昨日、外務省の方々を中心に夜遅くまで資料の収集等に大変な御尽力をいただきましたことを重ねてお礼を申し上げまして、質問を始めさせていただきたいと思います。

 民主党は特別委員会の開催を強く主張してきているわけですが、その過程の中で、今回ようやく、まずその第一歩と言っていいのかわかりませんが、小委員会の開催が決定をいたしました。この小委員会と、非常に基本的な質問で恐縮でございますが、特別委員会とでどこがどのように違うのかということをまず内閣官房副長官にお尋ねをしたいと思います。

細田内閣官房副長官 ちょっとこれは、国会の問題として、院がお決めになりましたので、院内でちょっと御協議願いたいと思います。私どもとしては、もちろん、特別委員会、小委員会等いろんな組織が歴史的にはあるわけでございますが、その中でどの審議形態をお選びになるかというのは、国権の最高機関である国会の御意思であると思っております。

中野(譲)小委員 私の質問は、私も新人議員でございまして、細田先生も長年国会にいらっしゃると思いますので、特別委員会と小委員会でどのように質疑が変わってくるのか、その大きな違いをぜひとも教えていただきたいということでございます。

細田内閣官房副長官 私はちょっと政府を代表して出ておりますので、きょうは。余りお答えすることは適当ではないと思いますので、ひとつ、また小委員長のおさばきをお願い申し上げたいと思います。

遠藤小委員長 中野譲委員に申し上げますが、どうぞ、御党の経験豊富な、識見高い増子委員や武正委員がおりますから、その辺、いろいろこれまでの経過もありましょうから、御事情を御聴取願いたいと思います。

中野(譲)小委員 そうしますと、この小委員会がきょうから立ち上がったということで、この小委員会の位置づけとしましてどのような所見を持っていらっしゃるか、内閣官房副長官及び外務省の大洋州局長にお尋ねをしたいと思います。

細田内閣官房副長官 政府といたしましては、まず、衆議院においてこのような小委員会を設けていただき、かつ核開発及び拉致問題についてこのような集中的な審議をいただくことは大変有意義なことであると思っておりまして、特別委員会か小委員会かという名称にかかわらず、できる限り私ども政府は、外交交渉の問題あるいは今後の対処方針の問題等について、御質問にお答えしながら、また行政に直結させてまいりたいと考えております。

薮中政府参考人 今の副長官の御発言のとおりでございます。

中野(譲)小委員 そうしますと、細田官房副長官のお言葉をいただきますと、特別委員会、小委員会にかかわらず、この拉致問題を含めます北朝鮮の問題は、今、国を揺るがす大きな問題として、非常に重要な問題であるというふうに認識をされているということでよろしいのでしょうか。

細田内閣官房副長官 それは全くおっしゃるとおりでございまして、また、テレビ、新聞等々を拝見しましても、この拉致の問題、核の問題あるいは不審船その他、北朝鮮という存在が非常に今我が国の安全保障あるいは人道の問題にも大きな影を投げかけている。これを何とかしなければならないという国民の皆様の大きな強い意思が働いているということを感じており、また、この拉致被害者の問題等を初めとする、我が国としても非常に重大な安全保障上の問題を一刻も早く安定的な状態にしていかなければならないと思っておりまして、また、そういう意味からも、二〇〇二年九月の小泉総理の訪朝もあったと思うわけでございますけれども、その後、必ずしも順調にこの問題が進展しておらないことは、非常に残念であるわけでございます。

中野(譲)小委員 薮中局長にお尋ねをしますが、外務省内でこの拉致問題、北朝鮮の問題というのは、そうすると、やはりプライオリティーとしては非常に高い、重要案件だというふうに認識をされているということで理解をしてよろしいのでしょうか。

薮中政府参考人 当然、外務省におきましても、この北朝鮮による拉致問題、そして核開発問題というのは大変大きな、重要な外交課題であるという位置づけをして臨んでいるところでございます。

中野(譲)小委員 それを受けますと、先ほど我が党の松原議員、そして渡辺議員からも発言がありましたけれども、きょうのこの委員会が非常に重要性を持っているということであれば、二大看板と言っても過言ではないかとは思いますけれども、薮中局長と、そして田中外務審議官の二人の方々が、この委員会の、ましてやこれは初回の委員会でございますから、この初会合にまず顔を出さないということはどうなのかなというふうに私は思っております。

 それで、きょう田中審議官が欠席をされるという理由は、官房副長官、御存じでいらっしゃいますでしょうか。

遠藤小委員長 呼んでいないよ。

中野(譲)小委員 済みません。失礼しました。

細田内閣官房副長官 それは幹事会等でお決めになったことと伺っております。

中野(譲)小委員 そうしますと、きょう田中審議官がどこで何をされているかということは御存じでいらっしゃいますでしょうか。

遠藤小委員長 どちら、どちら。

中野(譲)小委員 外務省の方にお尋ねします。

薮中政府参考人 もちろん承知しております。

中野(譲)小委員 具体的に、きょうはどちらで何をされていらっしゃるんでしょうか。

薮中政府参考人 現在は、日・マレーシア次官級政務協議、そしてまた、日・ASEANのSOM会合、これは、SOMというのは、シニア・オフィシャルズ・ミーティングということで、おのおのの国にSOMというのが決められておりまして、日本の場合は田中外務審議官がこの日本とASEANとの会合の代表でございます。その一連の会合に出席のため、現在、外交案件ということで出張をしております。

中野(譲)小委員 たまたま時期が悪いことに重なってしまったということで、恐らくきょうはこちらの方に来られないということかと思うんですけれども、そもそも、例えばこの日・マレーシア次官級政務協議ですか、こちらに例えば田中審議官以外の方が代理で出るということはできるんでしょうか。外務省にお尋ねをします。

薮中政府参考人 今申し上げましたように、SOM会合といいますのは、シニア・オフィシャルズ・ミーティングということで、そのシニア・オフィシャルズ、日本とASEANの場合には、おのおのの国がSOMはだれであるかということを決めて、それで毎回会合をしている。

 今回のものは、日・ASEANの特別首脳会合というのが去年の十二月にございました。それのフォローアップということでの、非常に大事な位置づけをしている日・ASEANのSOM会合ということでございまして、当然日本とASEAN、あれだけの特別首脳会合をした会合で、日本が主宰をして東京で東京宣言を発出した。その第一回の実務会合を、SOMレベルで会合をしてフォローアップしていくということでございますので、日本としてはそのSOMである田中外務審議官が出席するのは外交上非常に重要で、また不可欠なことであるというふうに考えております。

中野(譲)小委員 これは外務省の中のことで、お答えいただけるかどうかわからないのですが、例えば緊急性のものだとか、例えば病気等で突然外交日程、海外出張が中止なり延期になるということはあるんでしょうか、こういう会議におきましては。

薮中政府参考人 今申し上げましたように、日・ASEANのSOM会合ということで、十二月に日・ASEANの特別首脳会合を開いたわけでございます。これは日本とASEAN十カ国との間で、全首脳が集まって、そこで東京宣言を発出する、日本がいかにASEAN外交を重要視しているかということ、またASEANからの大きな期待もあって、二百項目に及ぶ具体的な行動計画をそこでつくり、そしてそれをまとめたのが東京宣言でございます。

 その第一回のフォローアップ、具体的にそうして決めた行動計画をどうやって実現していくのか、これは御承知とは思いますけれども、あえて申し上げれば、日・ASEANの特別首脳会合において、各国、ASEAN十カ国の首脳から、こうしていい東京宣言ができ上がった、しかし、大事なことはそれを実施することである、実現に移すことである、そして、できるだけ早くそのための具体的な実務会合を開いてほしいという要望が、その十二月の段階で各国の首脳からあったわけでございます。

 御承知のとおり、日本にとってASEANというのは非常に大事な国々であります。このASEAN十カ国のSOMが会合をするということで、日程的にはなかなかこの調整ということも難しゅうございます。それを、相当前から事前に打ち合わせをして、そして日程が決まったのが今回のことでございまして、通常の外交のやり方としては、そしてまた日本が日・ASEAN特別首脳会合を東京で開催して、その第一回の実務会合を行うということでございますから、日本として、よほどのことがない限りきちんとした対応をするというのが、ASEANとの関係においても、我々の外交を行う上で極めて重要であるというのが一般的な外交上の問題であろうかというふうに思います。

中野(譲)小委員 そうしますと、確かにASEAN外交も大切だと思いますが、こういう時期に北朝鮮に急遽訪朝する、その中の中心人物である田中審議官が、プライオリティーとしてはやはりこちらの方が高いということで選んでいらっしゃるのかなというふうに私はお見受けをさせていただいています。

 続きまして質問をさせていただきますが、二〇〇二年の九月十七日の小泉訪朝以降、政府ないし政府を代表する立場の方々が北朝鮮に行かれたのは今までで何回でしょうか。その時期と回数を教えていただきたいのですが。

薮中政府参考人 どうも失礼いたしました。今の御質問の趣旨が、確認をさせていただきたいのでございますが、二〇〇二年の九月十七日の日朝首脳会談、小泉総理の訪朝の後でございますか。後、日本からピョンヤンに行ったのが何名であるか、いつであるか、こういう御質問でよろしゅうございますでしょうか。

中野(譲)小委員 はい。

薮中政府参考人 お答えを申し上げます。

 ピョンヤンに行ったということでございますと、ごく最近でございますが、一つございますのは、外務省の職員が訪朝をいたしました。これは、日本政府の関係者四名ということになってございますけれども、ことしの一月の十三日から十七日。目的は、日本政府の関係者が、麻薬犯罪容疑で拘束されているという邦人の男性、及び亡命申請をしたとされる邦人女性との面会のためということで、これが、ごく最近では一月の十三日から十七日まで行ったということが一つございます。

 それからもう一つは、御承知のとおり、九月十七日以降ということでございましたら、当然のことながら、十月に五名の方々の日本への帰国に当たって、それを迎えに行かれたということももちろんございました。

中野(譲)小委員 そうしますと、平成十四年の九月の二十八日から十月の一日かと思いますが、これは、今お答えいただきました事実調査のチームを派遣したと。そして、ことしになりまして、一月の十三日から十七日、これは領事面談もあわせてということで、そして、先般の二月の十一日から十四日のハイレベル協議、この三回が、いわゆる政府なり政府を代表する立場でピョンヤンないし北朝鮮に行かれたということで、すべてでよろしいんでしょうか。

薮中政府参考人 今委員御指摘のとおりの、まさに事実調査のために行ったミッションを加えて、そのとおりでございます。

中野(譲)小委員 同じ質問を細田官房副長官にお尋ねしますが、この三回でよろしいのでしょうか。

細田内閣官房副長官 薮中局長が御答弁したとおりだと思っております。

中野(譲)小委員 二月に入ってからいろいろな新聞等で報道がされておりまして、そして先般の、これはきのうだと思うんですね、二月の十七日の、これは読売新聞ですが、読売新聞でも内閣官房の職員が北朝鮮を一月に訪問したというふうに書かれているんですが、そうすると、こういう事実はないということで理解をしてよろしいのでしょうか。細田官房副長官にお尋ねをいたします。

細田内閣官房副長官 そのような事実は承知しておりません。内閣官房としてそのような派遣をした覚えもございません。

中野(譲)小委員 そうしますと、同じ質問を外務省の局長にお尋ねしたいと思いますが、こういう事実は承知はしておりますでしょうか。

薮中政府参考人 承知しておりません。

中野(譲)小委員 そうしますと、例えばこの読売新聞を読みますと、「北朝鮮は今年一月十三―十七日に日本人拘束者との「領事面会」のため外務省北東アジア課首席事務官、同月十七―二十日には内閣官房の拉致被害者・家族支援室職員の訪朝をそれぞれ受け入れた。」と書いてあるんですが、これは、そうすると誤報になるわけですよね。官房副長官にお尋ねをいたします。

細田内閣官房副長官 先ほど申しましたように、私ども政府としてそれは承知しておりません。

中野(譲)小委員 そうしますと、こういう報道が朝日なんかでも二月の四日ぐらいにあったりとか、報道機関でいろいろあったんですけれども、では、これはすべて誤報ということで理解をしていいのかなというふうに思うんですが、これは誤報であるというようなことを、政府側からマスコミに対しまして、誤報だよということを言ったという経緯はあるんでしょうか。

細田内閣官房副長官 官房長官が定例で記者会見をしておりますが、その席で明確に申しております。承知していないということを発言しております。

中野(譲)小委員 承知していないということと、では、これは誤報であるというふうに申し入れをするということは、これはちょっと違うのかなと。まして、先ほどからお話を伺いますと、この二〇〇二年の九月以降に三回しか、いわゆる政府側ないし政府を代表する日本側から北朝鮮に行っていないと。この九月からの一年半の間に三回しか行っていないと。その中で、このもう一つ、四回目に入るのか、またはどういう動きなのかわかりませんけれども、こういうことがあったのかないのかということで、承知をしていないということであれば、マスコミに対しましては、では、これは私は誤報ですねというふうにとらえてもよろしいということでしょうか。官房副長官にお尋ねをいたします。

細田内閣官房副長官 それはそういうふうにおとりになって結構ではないでしょうか。政府の意思として派遣したことはございません。

中野(譲)小委員 そうしますと、この新聞報道で、このAさんといいましょうか、拉致被害者・家族支援室の仕事もしている、そして自民党の安倍幹事長の官房副長官時代の秘書官であるという方が北朝鮮に行ったという事実はないということでよろしいのでしょうか。官房副長官にお尋ねをいたします。

細田内閣官房副長官 そのような事実を承知しておりませんので、そういうことはないものと考えております。

中野(譲)小委員 ないものと考えるというか、では、これは確認はしていただけるのでしょうか、官房副長官。

細田内閣官房副長官 政府というのは、どこの役所もそうでございますが、しっかりとした予算に基づいて出張命令を出して、そこで任務を明定して出すわけでございますから、そのようなことをしていない以上、そのようなことは政府としてはあり得ないわけでございます。

中野(譲)小委員 そうしましたら、これはまた私、この後いろいろと、こちらで名前もわかっておりますので調べさせていただきたいと思いますが、官房副長官の答弁としては、こういう事実はないということで把握をしております。

 仮にこういうことが、仮にですね、ないとおっしゃっていますが、仮もないのかもしれませんが、仮にあったとした場合には、そうしたら、こういう方が日本から北朝鮮に行ったという事実が仮にあって、向こうで何らかの折衝をしているということがあれば、これは当然のことながら、内閣官房としても承知をしていないし、政府としても承知をしていないということでございましょうから、これは個人的にその方が行かれたという判断になるということでよろしいんでしょうか。仮にの話ですが。

細田内閣官房副長官 それは大変、仮定をもとにした御議論ですので、お答えしかねるわけでございます。

中野(譲)小委員 そうしますと、仮にこういう事実があった場合には、今までの答弁からしますと、政府側としてはそういうような人を派遣した覚えはないということでございますから、この方が、もしもそういう事実があれば、どういう理由でそちらに行かれたのかということを、またこちらの方で調べないといけないのかなというふうに考えております。

 ただ、一つ言いたいことは、仮にそういう事実があったならば、政府として派遣をしていなくて、そういう方が北朝鮮に行っているという事実があるならば、これは、もともと安倍幹事長の官房副長官時代の秘書官であるというときに、この方がどういう意思を持って行かれたかということは、例えば公務員でなくて行ったというのであれば、北朝鮮に公務員でなくてこういう方が行けるのかどうかというのは私もちょっとこれは調べないとわからない話でございますが、そういうことがあった場合には、これは二重外交になる可能性もあるのかなということを申し上げて、この質問は、とりあえずのところはきょうは終わらせていただきたいと思います。

 平沢勝栄議員、そして我が党の松原議員が非公式ということで北朝鮮と接触をした際には、二元外交はとにかくだめだ、政府に一本化をしてこの北朝鮮との拉致の問題を解決していくというふうな方針でございますから、こういう方は恐らく、いないというふうにおっしゃっていますからいないのかもしれませんが、いた場合の答弁はまたそのときにお伺いをしたいと思います。

 続きまして、一時帰国という言葉について、ちょっと私よくわからないものですからお伺いをしたいんですが、先ほど我が党の松原議員からも質問がありましたけれども、そもそもこの一時帰国という言葉が、ちょうど二〇〇二年の九月の訪朝後、短期間の間にマスコミなんかで随分と使われましたけれども、これはマスコミが勝手に一時帰国というふうに使っていたというふうに認識をしてよろしいのでしょうか。局長にお尋ねをいたします。

薮中政府参考人 拉致被害者五名の方々の帰国ということを一日も早く実現したいという中で、政府として可能な限り早期の帰国を実現させるための北朝鮮側への働きかけを当時やったわけでございます。その中で、先方との間で、滞在期間を一、二週間とするということでの調整をしたという経緯があったわけでございますが、しかし、それにつきまして、五名を必ず北朝鮮に帰すというような約束はあったわけではないということでございます。

 そして、御承知のとおり、五名の方々が日本に戻ってこられて、まさに長年待ちわびた家族の方と再会されて、そして、日本でそのまま定住したいというのは当然のことでございます。どうしてそれがまた拉致された国に戻らなければいけないのかということで、そういうことはあり得ないということで、そういうお気持ちを尊重して、引き続き永久の定住をされるということになったのは、委員御承知のとおりでございます。

中野(譲)小委員 そうしますと、一時帰国という認識は勝手に北朝鮮が持っていまして、日本政府としてはそういう認識は持っていないということでよろしいのでしょうか。官房副長官にお尋ねをいたします。

細田内閣官房副長官 薮中局長がお答えしたとおり、そのような認識は持っておりません。

中野(譲)小委員 一時帰国という認識がないということであれば、一時帰国という表現は、政府ないし外務省の側では使ってはいないということで理解をしてよろしいのでしょうか。

薮中政府参考人 先ほど申し上げたとおりでございまして、これは引き続き、当然のことながら、日本人、拉致された方々ということで、それが日本に帰国されて、永住、お住まいになるのは当然のことというふうに考えております。

中野(譲)小委員 今の答えだと、要は、一時帰国という表現は、日本政府としても外務省としても使ったことはないし、そういう認識はないということで、イエス、ノーで言うとイエスということでよろしいのでしょうか。

薮中政府参考人 先ほど申し上げましたとおり、早期の帰国を実現させる、そういう中で、北朝鮮側に働きかけて、先方との間で滞在期間を議論したことがあったということは申し上げたとおりでございますけれども、それが再び北朝鮮に帰すという約束をしたことではない、それがすべてでございます。

中野(譲)小委員 そうすると、一時帰国という表現自体を認識はしていないということでよろしいのでしょうか。

薮中政府参考人 先ほど申し上げたとおりでして、調整したのは、その当時、できるだけ早い、早期の帰国を実現させるということで、滞在期間として一、二週間ということでの調整をした経緯はございますけれども、再び北朝鮮に帰すという約束をしたわけではない。これをどういうふうに表現されるかというのはともかくでございますけれども、そういうのがすべてでございます。

中野(譲)小委員 そうしますと、平成十四年の十月十日の外務委員会で茂木副大臣が答弁をしている中で「今回五人の方が一時帰国をされるということでありまして、」という表現があるんですが、これは間違いでしょうか。一時帰国という概念がなければ、これは誤りなんでしょうか。

薮中政府参考人 まさに今申し上げましたとおり、五名の方々の帰国の早期の実現、そのことを北朝鮮側に働きかけている過程において、滞在期間を一、二週間とするということでそのとき調整をしていたという経緯があることは事実でございます。

 しかし、それが北朝鮮に再び帰すといういわゆる約束、それがあったのかなかったのかということであれば、ないということでございまして、その一、二週間の滞在期間ということを何と表現するかというのは先ほど申し上げたとおりで、それを一時帰国という表現というのが当時、認識としてあったというのは、実態としてはそういうことでございます。

中野(譲)小委員 そうしますと、当時、外務省なり政府側でも、いわゆる一時帰国という認識はあったということでよろしいのでしょうか。

薮中政府参考人 くどくなりますけれども、先方との間で、滞在期間を一、二週間とすると。これは、可能な限り早期にまず帰ってきてもらいたいということの中の働きかけでそういう調整をした、その表現として一時帰国ということがそのとき使われたということであろうというふうに思います。

中野(譲)小委員 これはどうも、私もちょっと理解力が非常に不足しているようでございまして、局長の話がよくわからないというのが私の率直な意見でございます。

 そうしますと、北朝鮮は約束をした、したとずっと言っておりまして、ここ一、二週間のそういう新聞報道でも、約束を守らないから、こちらもあなた方の言っていることには応じないという対応をずっと続けていると。その中で、北朝鮮から具体的に、だれがこういう約束をしたという固有名詞というのは出てきたことがあるのでしょうか。

薮中政府参考人 ございません。

 そして、大事なことを繰り返し申し上げますけれども、その五名の方が日本人であり、拉致された人であって、その人たちがどうして拉致された国に帰らなければいけないのか、行かなければいけないのかということで、その点は非常に強く北朝鮮側にも説明をし、当然、それを向こうもわかっていると思いますので、それが大きな問題であるということで委員の方から御指摘があるというのは、我々からすれば、むしろそうではなくて、日本の立場をきっちりと表明することが大事だろうというふうに思います。

中野(譲)小委員 そうしますと、先ほど松原委員からも話がありましたけれども、いわゆるぬれぎぬであると。そのときに、日本政府側ないし外務省側から、そういうことを私たちは言っていないし、もしも言っているのならだれが言っているんだということを向こうに質問した経緯もないというふうに理解をしてよろしいのでしょうか。

薮中政府参考人 会議の場できちんと申し上げましたけれども、そういう約束はないということで、そして大事なことは問題を解決するということをはっきりと申し上げたわけでございます。

中野(譲)小委員 時間になりましたので質問を終わらせていただきたいと思いますが、その前に一言言わせていただくとしますと、日本の立場を向こうに示すということと同時に、やはりこれは外交ですから、相手の主張はどこにあるのかということを理解して、まず相手の理解をするということが、どういう国であれ、外交問題に取り組む上では最低限のことではないかと思っております。日本の主張ばかりを言っていて、私たちは言っていないとか、そういう問題ではないということを言っていること自体が、外交の手法としては適切なのかどうかなという疑問を私は持っております。

遠藤小委員長 次に、赤嶺政賢君。

赤嶺小委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 私たちの党は、北朝鮮問題の解決に当たって、三つの大きな角度から取り組むべきだ、こう考えております。

 第一が、あくまでも平和的、外交的手段によってこの問題を解決するという点です。

 朝鮮半島での軍事的な衝突の危機、これは絶対に避けなければなりません。そうした事態になれば、これは日本と東アジアの平和と安全に直結していくからであります。

 去年の六者協議は、各国の主張に大きな隔たりはありましたが、対話を通じて平和的に問題を解決する努力を続けること、そしてお互いに平和的解決のプロセスの中で状況を悪化させる行動をとらない、こういうことで共通の認識に達するという重要な一歩を踏み出したと評価しております。

 長い中断はありましたが、今回、六カ国協議が再開されようとしていることを心から歓迎しているわけです。この外交交渉を継続、前進させるために日本政府が役割を果たすことが重要だと考えている、これが第一点です。

 二つ目に、拉致問題の解決です。

 拉致問題は、日本国民の人権と安全を脅かした国際的な犯罪行為として許すことのできないものです。私たちは、真相の全面的解明、そして拉致の責任者の厳重な処罰、被害者への謝罪と補償を要求し、帰国した五人の家族の帰国についても、その実現のために北朝鮮が誠意を持って対処するよう求めてきました。その解決は被害者家族の切実な願いであり、多くの国民が解決を願っているものだ、このように考えています。

 一方、この拉致問題、これは、北朝鮮が起こしてきた数々の国際的無法行為、ビルマのラングーンでの爆破事件あるいは大韓航空機事件などの国際的無法行為の一つでありますので、したがって、拉致問題の解決は、北朝鮮にこうした無法行為全体の清算を求めていく課題の一つとして位置づけて、国際社会全体の取り組みにしていくことが必要だ、このように考えております。

 三つ目の角度でありますが、三つ目は、日本と北朝鮮の国交の確立の問題です。

 一九一〇年から敗戦まで三十五年にわたる朝鮮半島への植民地支配の歴史を清算するということ、これは、アジア太平洋地域で侵略戦争を遂行し、第二次世界大戦を起こした問題とともに、戦後の日本が負った重大な歴史的責任に属する問題です。

 一九四五年に戦争が終結して五十九年たつわけですけれども、過去の遺産の清算が済んでいない唯一の相手国が北朝鮮です。北朝鮮との正常な国交を確立しないと日本の戦後は終わらない、そして北東アジアの平和と安定という点でも、日本と北朝鮮の国交の確立を抜きにしてこの地域の安定がないということは、これは明らかであります。

 私たちは、こういう三つの角度から北朝鮮の問題の解決に当たるべきだ、このように考えておりますが、外務省の担当局長であります薮中局長のお考えをお聞きしたいと思います。

薮中政府参考人 まさに委員御指摘のとおり、この地域の平和と安定というのは非常に大事な問題だと思います。そういう意味で、今回六者協議を開催するに至った、その間におきましては、この地域の平和と安定ということで、日本としても六者協議の実現に向けて外交的な努力をしてきたわけでございます。

 そして、委員御指摘のとおり、その地域の平和と安定という意味で、この地域で問題の平和的解決を図るということ、これは先般第一回の六者会合で申し合わせたわけでございますが、それとあわせて、まずこれに大事なのは、北朝鮮による核開発、それを絶対にやめさせることだと。核廃棄をする、核のない朝鮮半島にするということでの北朝鮮による核廃棄、これがまず第一に必要で、そして、問題を平和的に解決する。そして、そういうことを踏まえて、北朝鮮が国際社会の一員となって、この地域の平和と安定が維持される。そういう方向性を考えるというのが、一つ大きな課題であろうというふうに考えております。

 そしてまた、日朝間においては委員御指摘のとおり拉致問題がございます。この解決というのは、何としても、これは国民的な非常に大きな日本の中での問題でございます。この解決を一日も早く図らなければいけない。

 そして、委員が御指摘の国交の正常化というのも非常に大きな課題でございます。これを実現するためにこそ、まさに核の問題とそして拉致の問題、これを解決して、そして国交正常化を図りたい。

 まさに日朝平壌宣言というのもそうした思いをそこに宣言としてまとめたわけでございますので、今後とも、日本としては、核そしてミサイル、拉致というのを包括的に解決して、そして国交の正常化を図っていく、そして地域の平和と安定にも寄与する。そういう大きな図柄というのは非常に大事なことであろうというふうに認識しております。

赤嶺小委員 そこで、今回の日朝間のハイレベル協議の問題で、政府のスタンスについて、今度は細田官房副長官にお伺いしたいんです。

 今回のハイレベル協議というのは、拉致問題を含んで日朝間の諸懸案及び核問題について意見交換が行われ、かつ双方が日朝平壌宣言に基づいて諸懸案を解決する必要を認め、政府間協議を継続することを申し合わせております。

 小泉首相の訪朝から今日まで約一年五カ月の間、去年八月の六者協議の際の交渉を除いては公式協議が行われていなかったという膠着状態から抜け出して協議が行われ、そしてその継続が合意されたわけですが、細田官房副長官に聞きますけれども、今日の日朝間の政府間協議、政府が臨んだ基本的な姿勢、立場、また今回の協議、終わってここでも今議論しているわけですが、どのように評価されているのか、この点について政府のお考えを示してください。

細田内閣官房副長官 まず、一昨年の小泉総理大臣と金正日委員長との協議に基づく日朝平壌宣言をもう一度読み返してみますと、日朝双方の関係正常化の意思、過去についての問題も書いてございますし、いろいろな相互の協力も全部書いてありまして、非常に前向きな宣言なんでございます。そして、その意思は基本的には変わっておりません。

 しかし、そこに非常に大きな障害要因が両国間に存在して、それは拉致の問題である。

 そして、第二は核の問題でありまして、平壌宣言にも、核についても、「双方は、朝鮮半島の核問題の包括的な解決のため、関連するすべての国際的合意を遵守することを確認した。また、双方は、核問題及びミサイル問題を含む安全保障上の諸問題に関し、関係諸国間の対話を促進し、問題解決を図ることの必要性を確認した。」云々とミサイルの問題も含めて明確に書いてありまして、そのことがどうもそのとおりに進んでいない。

 それから、五人の拉致被害者は帰国させたものの、あと八人の家族の問題、十人のこちらから指摘している被害者の問題、これが今非常に大きな争点になり、かつ進んでいないということでございますので、そのことを繰り返して日本側は北朝鮮側に主張してきて、それらを乗り越えて本来の平壌宣言の精神に戻ろうじゃないかということを小泉総理初め申しておるわけでございます。

 私どもとしては、今回ようやく協議が動いてきた段階において、それらの懸案を解決して本来の精神に戻ろうということを強くこれからも主張してまいるわけでございます。

 ただ、日を追って、例えば核の問題などは、アメリカの調査団にプルトニウムの塊を見せてみたり、核開発はやっているぞと宣言したりするようなことがありまして、この宣言の中の核問題についても逆行しているような面があります。これは、国際的なルールに従ってきちっと対応する必要があり、リビアにおいてもイランにおいても最近は皆国際的に合意されておりますので、世界平和のためにそこはしっかりやってもらわなきゃいけない、これが基本でございますので、ちょっと長くなりましたが、お答え申し上げました。

赤嶺小委員 拉致と核ということですが、そこで具体的に、まず拉致問題について政府が示した対処方針というんでしょうか、これについてお伺いしたいんです。

 私、報道でしか知りませんし、またきょうの議論でのいろいろな答弁を聞いてわかったこともありますが、今回の交渉に臨むに当たって政府が持っていた対処方針というのは、三段階というんでしょうか、拉致被害者五人の家族八人の帰国を最優先で要求する、さらに八人の帰国が実現すれば国交正常化交渉を再開する、そして北朝鮮が死亡または入国の事実はないとした十人の安否確認を求め、正常化交渉の過程で日朝双方による調査機関の設置も検討するということがるる説明されておりましたが、そういう理解でよいのか、ちょっと具体的に説明していただきたいと思います。

薮中政府参考人 まさに委員御指摘のとおりでございまして、拉致問題の解決が何としても必要である。その最重要課題は、まずは八名の方の無条件の帰国であるということ、そして第二に、あわせて非常に重要なのが、安否不明とされておられる十名の方の徹底した真相の究明であるということでございます。

 そういう意味で、まずは八人の方の無条件での日本への帰国を実現したいということを強調いたしましたし、そしてまた真相の究明ということにつきましては、日朝の間での合同委員会のようなものをつくって、正常化交渉の中でもきちんとこれを取り上げていく、そういう形で臨んでいく、そしてこの問題を解決していくことが国交正常化の不可欠の前提である、こういう姿勢でございます。

赤嶺小委員 今回の政府間協議が実現する過程でさまざまなレベルの交渉があったということが報じられているわけですが、小泉総理は十二日の予算委員会で、拉致問題について、交渉は政府に窓口を一本化して行うと答弁しているわけですけれども、交渉の窓口の一本化について言及しているその意図というんでしょうか、考え、これはどういうことなんでしょうか。

薮中政府参考人 委員御承知のとおり、昨年の十二月以来、北朝鮮側からさまざまこの問題についての動きがあったということを受けてのことでございますけれども、まさに、家族会の方々も、すべてが一丸となってこれは政府と政府で話をしなければいけないということの声を非常に強く受けました。私どもとしても、もちろん、政府対政府ということで先方に働きかけてきた。

 今御指摘の総理の御発言というのは、まさに交渉というのは、政府に一本化して政府が向こうの政府とやる、これでなければ責任のある対応ができない、こういう趣旨であろうというふうに私は理解しております。

赤嶺小委員 拉致問題の最後に、これは日本国民にとって重大であると同時に、北朝鮮が国際社会で繰り返してきた国際的無法の一つとして国際社会にも問題を提起して、そして国際的な課題の一つとして取り組むべきであるし、また、それが北朝鮮を国際社会に復帰させる大きな突破口にもなっていく条件を持っていると思うんですね。

 その意味でも日本の責任は大きいと思うんですが、この拉致の問題を国際課題の一つとして取り上げていく、この点についてはいかがでしょうか。

薮中政府参考人 まさに我々は、この問題の解決ということ、これが絶対に必要であるということで、日朝バイでもちろん話をしておりますけれども、さまざまの国際的な流れの中で、例えば国連の人権委員会であるとかさまざまのところでこの問題の解決の重要性を訴えている。そして、そうしたことでこの問題を解決することで、北朝鮮が責任のある国際社会の一員として加わるということが、この地域の平和と安定にとっても重要であろう。

 そういうことで、国際的ないろいろな場でその主張もし、いろいろ国際的な理解も得るよう努力しているところでございます。

赤嶺小委員 そこで、今回の会議で取り上げられた核の問題なんですが、薮中さんの報告では、核問題についても双方で意見交換を行ったと。核問題は、北朝鮮問題の中でも日本にとって非常に切実な問題であると思います。その場合に、軍事的な対応の応酬ではなくて話し合いで解決していくということが日本と北東アジアの平和にとっても大変重要だと私たちは繰り返し指摘してまいりました。

 今回の協議についての外務省のペーパーも見せていただいたんですが、「日朝双方が互いの立場を詳細に述べ合うにとどまり、具体的な結果を見るに至らなかった」ということのわけですけれども、「双方共に、日朝平壌宣言に基づき諸懸案を解決する必要は認め、政府間協議を継続することを申し合わせた。」となっています。

 これは、核問題について言えば、つまり、日朝平壌宣言、「双方は、朝鮮半島の核問題の包括的な解決のため、関連するすべての国際的合意を遵守することを確認した。また、双方は、核問題及びミサイル問題を含む安全保障上の諸問題に関し、関係諸国間の対話を促進し、問題解決を図ることの必要性を確認した。」こういう立場で今後も政府間協議を継続する、先ほども日朝平壌宣言に立ち戻ってというお話がありましたが、そういう理解でよろしいんですね。

薮中政府参考人 まさに核問題は、核及びミサイル問題と言うべきかもわかりませんが、非常に重大な日本の安全保障にとっての問題でございます。

 平壌宣言でもそのことはきちんと提起されていて、今委員御指摘のとおり、関係諸国間の対話、これがまさに六者会議ということで具体的には実現しておるわけでございますので、この核問題の解決は一義的には六者協議で、日本もその重要な参加国として積極的な貢献をして、そしてこの問題の平和的解決に努力をしていきたいというふうに考えております。

赤嶺小委員 もう時間が来ましたけれども、その六者協議について、ちょっと私たちの立場もお話ししたいと思います。

 今後の協議において、何よりも、前回の六者協議での一致点が大変重要だと考えています。

 前回の六者協議のホスト総括で、「六者会合の参加者は、対話を通じて核問題を平和的に解決し、朝鮮半島の平和と安定を維持し、恒久的な平和を切り開くことに同意した。」というところから始まって、六項目の一致点が確認されています。その四項目めなんですが、「六者会合の参加者は、平和的解決のプロセスの中で、状況を悪化させる行動をとらないことに同意した。」として、五項目めには、「六者会合の参加者は、ともに対話を通じ相互信頼を確立し、意見の相違を減じ、共通認識を拡大することに同意する。」このようにしているわけです。

 再開される六者会合では、この前回の見地に立って粘り強く冷静に交渉し、前進を図っていくことが大切だと思います。もう時間がありませんので質問にはいたしませんが、そういう前回の六者協議の同意、これをしっかり堅持して、ぜひ成功するように私の方からも要求をいたしまして、質問を終わらせていただきます。

遠藤小委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十二分散会


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