衆議院

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第2号 平成16年12月2日(木曜日)

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平成十六年十二月二日(木曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 赤城 徳彦君

   理事 近藤 基彦君 理事 佐藤 剛男君

   理事 宮路 和明君 理事 渡辺 博道君

   理事 長島 昭久君 理事 松原  仁君

   理事 渡辺  周君 理事 池坊 保子君

      安倍 晋三君    小野寺五典君

      上川 陽子君    笹川  堯君

      西銘恒三郎君    根本  匠君

      平沢 勝栄君    水野 賢一君

      宮下 一郎君    菊田まきこ君

      田中 慶秋君    中井  洽君

      中川 正春君    西村 真悟君

      笠  浩史君    漆原 良夫君

      赤嶺 政賢君

    …………………………………

   内閣官房副長官      杉浦 正健君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   外務大臣政務官      小野寺五典君

   政府参考人

   (内閣官房拉致被害者・家族支援室長)       小熊  博君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    瀬川 勝久君

   政府参考人

   (警察庁警備局外事情報部外事課長)        北村  滋君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  三浦 正晴君

   政府参考人

   (公安調査庁次長)    柳  俊夫君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局長)            薮中三十二君

   政府参考人

   (海上保安庁長官)    石川 裕己君

   衆議院調査局北朝鮮による拉致問題等に関する特別調査室長          前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

十二月二日

 辞任         補欠選任

  宮下 一郎君     安倍 晋三君

同日

 辞任         補欠選任

  安倍 晋三君     宮下 一郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 閉会中審査に関する件

 北朝鮮による拉致問題等に関する件


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     ――――◇―――――

赤城委員長 これより会議を開きます。

 北朝鮮による拉致問題等に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房拉致被害者・家族支援室長小熊博君、警察庁警備局長瀬川勝久君、警察庁警備局外事情報部外事課長北村滋君、法務省入国管理局長三浦正晴君、公安調査庁次長柳俊夫君、外務省アジア大洋州局長薮中三十二君及び海上保安庁長官石川裕己君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤城委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

赤城委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平沢勝栄君。

平沢委員 おはようございます。

 参議院に拉致特ができたのがことしの六月でございまして、衆議院にもおくればせながらこのたび拉致特ができたということは、本当におくればせながらですけれども、喜ばしいなと思っております。

 いつも不思議に思うんですけれども、家族が拉致問題の解決の先頭に立って運動している、これは非常におかしいんじゃないかと。やはりこれは家族がやることじゃなくて政府がやることであり、そして外務省がやることでございまして、その意味で言えば、この拉致特ができたわけですから、これからは国会でしっかりこの問題の解決に取り組んでいかなければならないし、今、杉浦副長官お見えですけれども、政府にもしっかり取り組んでもらいたいと思います。

 この前、委員長が発言された中に、「北朝鮮による拉致は、人間の尊厳、人権及び基本的自由の重大かつ明白な侵害であり、我が国民の生命と安全にかかわる重大な問題であります。」とありますけれども、これは全くそのとおりですけれども、一つだけ抜けていまして、これは国家主権の侵害でもあるんです。

 ですから、国家主権の侵害でもありますから、一寸の領土を奪われて黙っている国民は全部の領土を奪われても黙っている、こう言われているんですけれども、一人の国民を奪われて黙っている国民は国民全員が奪われても黙っているんですよ。ですから、その意味でいえば、これは人数とか何かの問題じゃない。一人であろうと何であろうと、私たちは毅然たる態度をこれからとっていかなければならないんじゃないかなと思っております。

 いずれにしましても、拉致というのは、おととしの九月十七日に起こったわけじゃなくて、昔から私たちは起こっていることはわかっていたんです。救出する機会もあったんです。にもかかわらず何もしてこなかったわけでございまして、一九八八年に、当時の国家公安委員長、梶山静六さんですけれども、国会で答弁しているんです。

 何と答弁しているかというと、一連のアベック行方不明事犯は北朝鮮による拉致の疑いが十分濃厚である、こう答弁しているんです。一九八八年なんです。それからでも十数年たっているんです。拉致問題は依然としてまだ解決していないんです。なぜこんなにおくれてしまったんだろう、私たちはこれをきちんと反省、総括しなければならないんじゃないかなと。

 私たちは、この間に救う機会は幾らでもあったんです。例えば、北朝鮮の工作船、不審船は日本海を徘回していたんです。そして、海上保安庁、自衛隊が見つけたことは幾らでもあったんです。

 一番最初に見つけたのは一九六三年なんです、海上保安庁の白書によれば。それから、二〇〇一年の十二月に向こうが撃ってきたということで銃撃戦になりましたけれども、それ以前に二十回、海上保安庁の白書によれば、この北朝鮮の工作船、不審船を見つけた。この中の船倉を調べれば、当然、恐らく拉致された被害者が入っていたでしょう、泳いでいったわけじゃないですから。ですから、入っていたわけですよ。

 何でこれを実力でとめなかったんだと、私はこれが不思議で仕方がないわけでございまして、警察官が、犯人が逃げる、悪いことをしているんだから逃げるのは当たり前で、それで自宅まで逃げ込んだらそのまま引き返してくるばかな警察官はどこにもいませんよ。こんなことをやったら犯罪は防げませんよ。

 同じことでございまして、なぜ、北朝鮮の工作船を見つけて追っかけて、北朝鮮の領海に入ったらそのまま引き返してきたのか。この辺のことも含めて、この拉致問題が私たちに突きつけているのは、極めていろいろな問題が、大きな問題があるんじゃないかなという感じがしています。

 憲法には「諸国民の公正と信義に信頼して」ということが書いてありますけれども、諸国民の公正と信義に信頼したって、我々の安全とか生存を守れないことだってあるんです。この辺のことも含めて、この拉致問題は、憲法だ、安全保障だ、外交のあり方だ、政治のあり方だと、いろいろな問題を私たちに突きつけていると思います。

 いずれにしましても、拉致問題はまだ解決したわけじゃないんです。五人の方が帰ってこられました。八人の御家族の方が帰ってこられました。しかし、まだまだこれからが正念場でございまして、私たちはしっかり取り組んでいかなければならないと思うんですけれども、一緒に取り組むこととあわせて、同時に、今までなぜ拉致問題の解決が今日までできなかったのか、この辺の反省、総括もしっかりあわせてやらなければならないと思いますけれども、これについて、杉浦官房副長官、御所見をお伺いしたいと思います。

杉浦内閣官房副長官 先生は長い間、拉致問題にお取り組みいただいてまいっておりますが、敬意を表する次第でございます。

 先生のおっしゃるとおりでございまして、拉致問題は、国家主権の侵害であり、国内法に基づく犯罪行為でもあります。国際不法行為のカテゴリーに属するものでございまして、北朝鮮側が国家も関与して行った犯罪行為でありますので、その点を踏まえて、我が国としては、我が国の国民の生命、財産にかかわることであり、主権にかかわることでありますから、きちっと対応していかなければならない問題だと思っております。

平沢委員 いや、私は、もちろん被害者の救出は当然のことながら、あわせて、なぜ我々は今まで救出できなかったんだろう。今なおなぜ救出できないんだろう。この辺の国家としての反省、総括もきちんとやるべきではないかということを申し上げているわけでございまして、副長官、ぜひこの辺もあわせて並行して、ぜひ国家として、政府として取り組んでいただきたいなと思います。

杉浦内閣官房副長官 おっしゃるとおりだと思います。こういうこの問題を許してきた国のあり方、体制の問題を含めて、反省すべき点が多々あると思います。先生御指摘のとおりだと思います。そういう点も含めて、政府としては対応していかなきゃならぬ、こう思っております。

平沢委員 きょうは薮中局長お見えだろうと思いますのでお聞きしたいと思うんですけれども、第三回の実務者協議、本当に、十九名の皆さん方、薮中さんを代表として行かれた皆さん方にはお疲れさまでございました。何しろ相手が、ならず者国家、悪の枢軸と言われている国家ですから、大変な御苦労をされたと思いますけれども、そういう中で、五十時間にわたるちょうちょうはっしのやりとりをされてこられたんだろうと思います。まずは、心からその間の御労苦に敬意を表したいと思います。

 ところで、薮中さんは、疑問点それから不自然な点がいっぱいあるということを言われていました。疑問点、不自然な点があるというのは、薮中さんだけじゃなくて、全国民が感じておられることなんです。最初から、おととしの九月十七日に起こった以降、北朝鮮側から説明したいろいろな問題については、疑問点、不自然な点だらけなんです。

 そもそも、向こうは、交通事故で亡くなっただの、ガス中毒で亡くなっただの、あるいは海水浴で亡くなっただの、いろいろなことを言っていますよ。あるいは、八人中七人のお墓が洪水だとかダム崩壊で流れたとか言っていますよ。こんなのだれが考えたって不自然だし、こんなことあり得ない。これはうそだろうとだれだって思っていますよ。

 ですから、一言で言えば、北朝鮮は最初うそをついて、うそで塗り固めた。もっと言えば、ガス中毒だ、交通事故だ。車の走っていないところで何で交通事故が起こるんだと。もっと言えば、よど号の事件の犯人九人が北朝鮮に渡ったのは一九七〇年なんですよ。拉致事件、今私たちが言っている、そのほかにもいっぱいいますけれども、横田めぐみさんが一九七七年なんですよ。

 それ以前に渡った同じ年代の人たち、じゃ、よど号の犯人で交通事故で死んだのがいますか、ガス中毒で死んだのがいますか。いないじゃないですか。よど号の犯人は、九人中、今警察が確認しているだけで最低六人は生存しているんですよ。だから、どう考えたってこれは不自然だし、おかしい。

 だから、そもそも、北朝鮮が言っている最初のスタート点、ガス中毒だ、交通事故だ、何だかんだ、これが全部でたらめで、そのでたらめを一生懸命向こうは取り繕おうとして、うそにうそを塗り固めているから不自然な点がいっぱい出てくるわけで、その疑問点をお互いに幾らぶつけ合っていても、これは時間ばかりたってしまう可能性があるんです。

 ですから、薮中さん、こういろいろと向こうとやりとりして、そもそも疑問点が出てくるのは当たり前のことで、最初の出だしが向こうはうそをついた、こういうふうに思われませんか。どうですか。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 我々、今回、第三回目の実務者協議をやってまいりましたが、それは基本として、本年五月に日朝首脳会談がございました。そこで、金正日国防委員長の方から小泉総理に対して、白紙に戻して徹底した調査をするという発言があったわけでございます。それに基づいて、北朝鮮側は、我々に対する説明としては、調査委員会をつくって、そしてやってきたということなものでございますから、我々はその結果を聞き、そして我々が持ついろいろな疑問点をただす、こういう作業を鋭意やってきたというのが現状でございます。

平沢委員 それは、薮中さんのお立場ではそういうふうに言わざるを得ないだろうと思うんですけれども、要するに、その調査委員会の陳日宝なる人物も含めて、それから横田めぐみさんの御主人のキム・チョルジュンという人も含めて、それから北朝鮮は今回死亡診断書が捏造だということは認めたわけですけれども、そういったことも含めて、次から次におかしな点がいっぱいある。

 そして、薮中さん自身も、繰り返しませんけれども、もう既に外務委員会等で、北朝鮮の説明の中には矛盾点がいっぱいあるということは言われていますよね。市川修一さんの問題、有本恵子さんたちが静かなところに行ったところの問題等々、不自然なところだらけだと。なぜ不自然なところがこんなに出てくるかといえば、そもそも出だしがうそだからこういうことになったのじゃないですか。だけれども、まあ薮中さんの立場では言えないのでしょう。

 では、ここにきょうは警察庁が来ているでしょう。警察庁は取り調べ官だからね。それは、供述がくるくる変われば、これはやはりおかしい、うそをついている、普通だれだって心証として思いますよ。私も取り調べをやったことがある。北村さんもやったことがあるでしょう。北村さんは、今回、北朝鮮に行かれて大変に御苦労されたと思いますよ。北村さん、心証でいいですよ、北朝鮮側が今回ああだこうだといろいろ説明してきたでしょう。

 大変なうそにつき合わされたわけだから御苦労が多かったと思いますけれども、捜査官の心証として、長年のプロとしての感覚として、北朝鮮側が言っていることは、最近の労働新聞では北朝鮮は誠意ある対応をしたと言っていますけれども、誠意ある対応をしたと思うのか。そして、向こうが言っているのはそもそも最初からすべてでたらめだと思うのか。その辺の心証について教えていただけますか。

北村政府参考人 お答えいたします。

 警察庁は、代表団の一員といたしまして、拉致容疑事案の捜査等を通じて、さまざまな情報といったものを蓄積したわけでございますけれども、こういった情報に基づく協議内容に対します助言でございますとか、それからまた鑑識の技術を有することもございますので、こういった技術を活用した各種資料の保全、それからまた現場の実地踏査における見分等を通じまして、日本側参加者の主として支援といった活動を行ってきたところでございます。

 交渉の過程におきましては、これまで我が国政府が北朝鮮側に引き渡しを求めてまいりました拉致に関与した北朝鮮工作員やよど号犯人ら三名、辛光洙、金世鎬、魚本公博につきまして、改めて引き渡しを求めたところでございます。

 代表団の一員として活動したところでございまして、所感とか心証といったものを申し述べる立場にはないと存じておりますけれども、先ほど御指摘がありましたとおり、北朝鮮側から示されたさまざまな説明結果というものにつきましては、警察といたしましても、疑問点や不明な点が依然として多く、我が方が保有いたします情報でございますとか北朝鮮側から提出を受けた資料等を突き合わせまして、さらに精査することなどを通じて真相の究明を図ってまいりたい、かように考えているところでございます。

平沢委員 北村さんは、立場上そういうふうに言わざるを得ないと思いますけれども、恐らく心証としては、向こうは全くでたらめなことを言っているという心証を抱いて帰ってこられたのだろうと思います。

 要するに、この問題はこれからが正念場なんですけれども、北の、個人犯罪じゃないのですよ、国家犯罪なんですよ。ですから、北朝鮮からすれば、正直にすべてを言う、これが個人犯罪なら正直にすべてを言えるでしょう。ところが、国家としてやった犯罪ですから、正直にすべてを言うということは、今まで自分たちが言ってきたことがすべてうそだったということだけにとどまらないのですよ。

 正直にすべてを言えば、場合によっては体制の問題になってしまうかもしれない、金正日ファミリーの問題になってしまうかもしれない。そういったいろいろな問題をはらんでいるから、北朝鮮としては、もう言うに言えない、そんな状況にあるんだろうと私は思いますよ。だから、北朝鮮は正直に言えないのじゃないかと思いますよ。

 だから、正直に言えない、そして最初からうそをついている、そのうそで矛盾点が出てくるのは当たり前、その矛盾点をまたこちらから、こういうところがおかしいじゃないかというふうなことをキャッチボールみたいに繰り返すような実務者協議をやることに意味があるのかどうか。

 それから、薮中さんにお聞きしたいのですけれども、今回、行かれたときに、向こうの人民保安省の局長なる者が出てきたと思いますけれども、これはいわば急ごしらえにつくった局長でしょうけれども、こんな連中と会っていてもしようがないので、最低限、姜錫柱ぐらいに会わなければ意味がないと思うんですけれども、この人物に会わせろと言ったのかどうか。そして、こういう実務者協議を第四回、第五回と続けることに意味があると思われるかどうか。それについて、薮中さん、教えてくれますか。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 我々といたしましては、先般の日朝実務者協議、いやしくもこれが日朝の首脳会談の結果として、先ほど申し上げましたように、金正日国防委員長の方から日本国の総理に約束をした再調査ということでございますから、したがって、先方の説明で言えば、そのために調査委員会を設けたということでございます。

 この調査委員会というのが、今委員御指摘のとおり、全体として果たしてこの人がどれだけの権限を持っているのかということについては、当然、我々、今回の結果を見合わせてよく判断をする必要があると思いますけれども、先方の説明は、これが調査委員会として特別に設けられた、そして権限として、この調査委員会に国内全般、政府機関を含めて調査をする権限を与えられたという説明ですから、今回、我々としては、この調査委員会と向き合って、そして結果的には五十時間近くになりましたけれども、徹底した我々からの疑問をぶつける、そして先方の説明をさらに求める、あるいは関係者からの、実際、目撃者であるとか、あるいは若干の間接的な立場にいた人も多くございましたけれども、そういう人間からの直接の聴取もするということで矛盾点を問いただす、こういう作業をしたわけでございます。

 少なくとも今は、その五十時間の作業、そしてまた持ち帰りましたさまざまの物証も含めて精査をするということを、今、鋭意政府を挙げて徹底してやりたいというふうに考えております。

平沢委員 そういう答弁にならざるを得ないと思うんですけれども、逢沢副大臣がおられますからお聞きします。

 これは最初からうそでスタートしているわけで、要するに、矛盾点があるのは当たり前で、その矛盾点を突きつける、また向こうは取り繕って答えてくる。この拉致問題というのは時間がないのです。要するに、三十年後に解決したって意味がないのです。関係者がお元気なうちに解決しなきゃならないのです。そうだとすれば、北朝鮮も焦っているでしょうけれども、日本だって時間がないわけです。

 今言われたことはよくわかりますけれども、相手が普通の国家じゃないからなかなか難しいこともよくわかります。しかし、今のようなやり方で解決すると思われるかどうか、経済制裁も含めて、もっと抜本的に、もうちょっと思い切った解決策を考えていかなきゃならないと思われるかどうか、ちょっと逢沢副大臣、お答えいただけますか。

逢沢副大臣 五月の日朝首脳会談を踏まえて、先般を含めて三回の実務者レベルの日朝協議を行いました。まさに、拉致問題の解決のための協議であったというふうに考えます。御承知のように、一回目、二回目は北京で行われ、非常に不十分な、また成果がほとんどない結果に終わった。そういう一回目、二回目を受けて、第三回目を平壌で開き、十九名のチームを送り込む、そういう状況でございました。

 平沢先生おっしゃるとおりでありまして、一回目、二回目と三回目は、いろいろな意味でレベル、またもたらされた情報量が違うわけでございます。物証そして日朝間のやりとり、延べ五十時間にもなんなんとする非常に長い時間をかけてやりとりをいたしました。

 今、局長の方から答弁をさせていただいたとおり、今回得られたいろいろな物証あるいはまた会話を精査し、引き続き不明確な点、また不自然な点、矛盾に満ちた点、我々もいろいろ情報を持っているわけでありまして、それらを突き合わせたとき、恐らく新たにいろいろな問題も出てくる、そういうものを精査する、えぐり出す、そしてそれを今後どのような形で生かしていくか。

 率直に申し上げて、同じようなことをこれからもだらだら続けていたのでは、これは委員おっしゃられたとおり、時間がない、非常に長い時間を今日まで要している、そのことも当然考えなくてはならないと思います。精査をし、今後どのような対応をしていくのが最も拉致問題の真相究明、解明に効果があるかということについては考え直していかなくてはならない、そのように承知をいたしております。

平沢委員 しかし、北朝鮮側が自分の体制の、個人ではないんですから、体制の不利になることをそう簡単に言うとは思えませんから、私たちは相当思い切った対策を講じないと、この問題の早期解決はなかなか難しいんじゃないかなという感じがいたします。

 そこで、経済制裁についてお聞きしますけれども、経済制裁についてはいろいろな御意見があります。一国単独では効果がないんじゃないかとか、あるいはこれは北朝鮮を硬化させるんじゃないかというようないろいろな意見があることも事実ですけれども、もちろん私は、それなりに日本の毅然としたメッセージを北朝鮮に突きつけるという意味ではそれなりの大きな意味があるんじゃないかなと思っているんです。

 杉浦副長官でも逢沢副大臣でもいいんですけれども、食糧支援十二万五千トン、残りの分、これは送る予定なんですか。どうですか。では、逢沢副大臣。

逢沢副大臣 五月の日朝首脳会談で、二十五万トンの食糧支援そして一千万ドル相当の医薬品の支援、このことを両首脳間で確認いたしました。既に事実関係として、食糧につきましては十二万五千トン、これが今現在、いわゆる北朝鮮の必要とされるさまざまな地域あるいはまた箇所にデリバリーがされている、そして当然のことでありますがWFPが厳重にモニタリングを行っている、そういう状況でございます。また、医薬品等につきましても、国際機関を通じて順次要請が来ている、それに対応しているわけでございます。

 では、残りの十二万五千トンの扱いあるいは残りの三百万ドル相当になりますか、これをどうするかということについて、私の承知をしている限りにおきましては、まだ国際機関から正式な形での要請が来ていない、あるいはまた、どのような形でそれを北朝鮮に提供していくかという事務的な詰めといいますか、そういう段階に至っていないというふうに承知をいたしております。(平沢委員「要請が来たらどうしますか、要請が来たら」と呼ぶ)また、そういうものが来た段階では、今日の日朝間の状況、さまざまな世論等々を総合的に勘案していく必要があろうかというふうに、私としては申し上げておきたいと思います。

平沢委員 問題がまだ未解決なんですから、そこはぜひ慎重に御検討をお願いしたいと思います。

 きょうは法務省も来てもらっていますから法務省に一言聞きたいんですけれども、いろいろな制裁の中で、一つは、在日の方が自由に往来できる、しかし日本人妻は千八百人行って、帰ってこれない、四十三人だけが一時帰国しただけだ、この問題だって大きな問題で、いずれにしましても人権問題がいっぱい残っているんです。

 そして、とりわけ在日の中には、北朝鮮の国会議員が今日本に六人もいるわけですよ。この人たちが自由に往来できるわけですけれども、入管特例法で「日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者」であっても、自由に往来できる、これはおかしくないかな。例えば、北朝鮮に在日の人が行って、拉致の指令を受けて帰ってきた、これは自由に往来を認めるんですか。そういうことになるんですか、今の法令では。ちょっと、法務省。

三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま委員御指摘の点につきましては、入管法、入管特例法で規定が設けられてございますけれども、特に入管特例法の再入国の規定を見ますと、もともと日韓の法的地位協定に基づく協議がございまして、その性質上、当初、在日韓国人のみが対象となっていたわけでございますけれども、この協議の結果を実施するに際しまして、同様の歴史的な経緯及び定住性を有する在日朝鮮人及び台湾人の方等につきましても同じような扱いをするということになったわけでございまして、その結果、現在の特例法ができたものでございますので、同じような扱いをすることにならざるを得ないと思っております。

平沢委員 杉浦官房副長官にお聞きしたいんですけれども、それは、特例法が過去の歴史的ないきさつ等があって、わかるんですけれども、日本国の公安とか利益を害する人が堂々と自由に再入国を認められる、これはおかしくありませんか。はっきりわかっていた場合ですよ。

 それで、北朝鮮の国会議員も自由に往来できる、これはおかしいと思いませんか。これはやはり、我々の問題でもありますけれども、政府としても、個人的な御所見で結構ですけれども、ちょっとこれはおかしいと思いませんか、自由に往来できるというのは。

杉浦内閣官房副長官 公安を害する行為を行うとか、犯罪行為を行うとか、はっきりしたその実情が認定できる場合、ケースによると思うんですけれども、それはそれなりに、入管法上の一般法等で検討できる余地があるんじゃないかと個人的には思います。

 ただ、この入管特例法を改正するとか、そういうことになりますと、政治としては長いといいますか、背景があって、日韓の覚書に基づいて国会でも修正されているというようなことがありますから、改正して対応するということは困難だと考えております。国際約束でございますので。

平沢委員 いや、私はこれはぜひ見直しが必要だろうと思いますので、私たちも考えますけれども、ぜひ政府の方でも考えていただきたいと思います。

 時間がありませんから、警察庁、最後に一、二、お聞きしたいと思うんですけれども。

 今回、北村さんが北朝鮮に行かれたとき、北朝鮮は、今国際手配している、拉致に間違いなく関与しているということで三人を手配しているわけでしょう、金世鎬それから魚本公博、辛光洙、この三人について関与していないと。警察が血のにじむような努力で特定して今国際手配しているものを、一切拉致に関与していないと、警察の血のにじむような努力を否定されたわけですよ。警察は怒らなきゃだめですよ。こんなにばかにされて、何だ、ふざけるんじゃないと怒ったんですか。これはどう考えているんですか。

北村政府参考人 先ほど御答弁申し上げましたとおり、現場の警察官が長年にわたりまして地道な活動を通じて証拠を収集し、また膨大な資料といったものを精査した結果、裁判所の逮捕状を得て御指摘の三名を国際手配し、これについての引き渡しを要求したわけでございます。

 北朝鮮側がこの三名の国際手配被疑者に関しまして引き渡しを拒否するのみならず、拉致事実そのものにつきましても否定している点につきましては、警察として承服しかねるものがある、かように存じているところでございます。

平沢委員 警察はもっとしっかり怒らなきゃだめですよ。もっと頑張ってくれないと。言いにくいんでしょうけれども。

 もう一つ聞きますよ。

 今、日本の警察が拉致と認定しているのは十五人でしょう。十五人というのは余りにも少な過ぎるんです。要するに、それは法と証拠に基づいて間違いないと。だから、間違った人を認定したらとんでもないことになる、これはわかりますよ。しかし、例えば今回、五人突きつけたでしょう。その中でも、例えば小住健蔵だとかあるいは田中実なんというのは、北朝鮮の工作員がかかわっていることは明らかなんですよ。それでいなくなっちゃったんですよ。

 それで、例えば小住健蔵なんというのは、運転免許証を北朝鮮の工作員がかわりに使っていたんでしょう。こういう人間については、確かに本人が北朝鮮に行ったか、あるいは自由な意思で行ったかどうかわからないけれども、北朝鮮の工作員が明らかにかかわっていて行方不明になった人間がいるにもかかわらず、しかし本人が自分の意思で行ったかどうかわからないとかなんとか、こんなことを言っていて認定しないということがありますか。

 これはもう、要するに疑いが極めて濃いわけですよ。今、認定している十五人というのは、もう北朝鮮がやったことが間違いない、九九・九九%間違いないというのを認定しているわけだから一〇〇%か。そのぐらい間違いないというのを認定しているわけだから、それ以外にもいっぱいいるわけですよ。その中から順次、これはもう明らかだと思う人をどんどん認定していったらどうですか。余りにもストリクト過ぎるんじゃないですか。北朝鮮の工作員がかかわったことが明らかだとわかっているものについては認定すべきじゃないですか、どうですか。

瀬川政府参考人 お答えいたします。

 北朝鮮による拉致容疑事案につきましては、御指摘のとおり、現在まで警察といたしましては、十件十五名につきまして、認定といいますか、北朝鮮による日本人拉致容疑事案であるというふうに判断をしているところでございます。なおまた、これらの事案以外にも北朝鮮による拉致の可能性を排除できない事案があるというふうにこれは考えております。

 今、いろいろ名前を挙げられまして委員御指摘になられました。そういった事案につきましても、私どもも鋭意、事案、事実解明のための調査、捜査を尽くしているところでございますが、現時点で私どもが北朝鮮による拉致容疑事案というふうに判断をしておりますのは、北朝鮮によるまず国家的意思が推認される形というものがその事案についてあるということ、それから本人の意思に反して行われたものである、そして北朝鮮に連れていかれた、こういった要素があるだろうと思いますので、ケースによりましてこれはいろいろなものが、ここはわかるけれども、ここはわからないというような状況のものが多々あろうかと思います。

 そういった考え方に基づきまして、今後とも、御指摘の事案も含めまして、しっかり調査、捜査を尽くしてまいりたいというふうに考えておりますし、そのように判断されれば、そのように判断したということで、また十件十五名に加わっていくという形もこれは当然あろうかというふうに思っております。

平沢委員 ちょっと生ぬる過ぎるんですよ。もうちょっと日本政府として毅然とした姿勢でないとだめですよ。もうちょっとしっかり認定しなければだめですよ。私は、警察庁、しっかりしてくれなきゃだめだと思いますよ。

 時間が来て、私は前座ですから、安倍先生が待っておられますから終わりますけれども、最後に一つだけ。

 杉浦副長官、今の幹事会とか何かの取り組み、ちょっと生ぬる過ぎるという感じがしますから、国家としてもっときちんとした、毅然とした取り組み、体制をつくってこの問題に取り組むという姿勢だけ、ちょっと一言述べてください。

杉浦内閣官房副長官 拉致問題の解決に向けてきちっと取り組むという姿勢で、拉致幹事会を中心にしてやらせていただきたいと思います。

平沢委員 しっかり頑張ってください。これはやはり政府の中に取り組みの組織も含めて、しっかり取り組んでいただきたいと思います。

 ありがとうございました。

赤城委員長 次に、安倍晋三君。

安倍委員 今回の第三回目の実務者協議、日本側の代表団の皆様、大変な交渉をしてこられたというふうに思います。

 今回持ち帰られた資料の中に、横田めぐみさんの三枚の写真がございました。そのうち二枚については修整がなされ、そして捏造の部分がある、こういうふうに言われておりますが、幾つかの真実も含んでいるわけであります。

 それは、横田めぐみさんが十三歳のときに拉致された後、余り時間を経ずに撮られたのではないかという写真であります。その不安げな姿は、まさにそのときのめぐみさんの気持ちをあらわしているんではないか、こう思います。めぐみさんの目は不安におびえ、そして、何とか助け出してください、こう私たちに訴えかけている、こう思います。しっかりと政府側にも、その横田めぐみさんの気持ちを受けとめて、この問題に全力を傾けてもらいたい、このように思います。

 二〇〇二年の調査は、国防委員会のもとにつくられた調査委員会によって調査が行われたものを持ち帰ってきたわけでございます。その資料等に対しまして、日本側は百五十余りの疑問点を示して幾つかの矛盾をついたわけであります。北朝鮮側は、これに耐えられずに、そのときに示した死亡診断書や死亡台帳を、あれは事実上捏造であったと認めたというふうに私は思います。

 先方の主張は、捏造という表現は使わずに、誤記だったというふうに言っています。もし、新たにいろいろな資料を集めて、そして新たに作成したものであるというふうに向こう側がそのときに説明していたのであれば、それは誤記という言いわけが成り立つわけでありますが、そのときに彼らは、その時々の死亡時につくられた死亡診断書あるいは死亡台帳の原本をそのままコピーしたと言って渡した。しかし、それは全く実はそうではなかったということであれば、それは捏造をしていたというふうに判断せざるを得ない、こう思うわけでありますが、政府側の御見解を伺いたいと思います。

逢沢副大臣 今、安倍先生御指摘の、二〇〇二年の調査時に北朝鮮側から提示のありました、いわゆる死亡証明書に関してでございますが、先般の平壌におきます三回目の日朝実務者協議におきまして、北朝鮮側は、当時、記録としてなかったので急いでつくった、そういう趣旨の説明をいたしました。したがって、その記述が虚偽であったことを認めたということであります。

 なぜ、では二〇〇二年当時、北朝鮮側はそのような対応をしたのか。それは明らかではないわけでありますけれども、その時点で作成をした死亡証明書がそのようなものであったと北朝鮮側が認めた以上、その北朝鮮側の対応は捏造と批判されても仕方がないものであるというふうに明確に政府としては認識をいたしております。

安倍委員 二〇〇二年にそうした死亡診断書を捏造した医師、もし日本においてそうした死亡診断書を医師が捏造したとすれば、医師法及びいろいろな法令に反するわけでありまして、医師免状をこれは取り上げられるわけであります。

 今回もその同一人物の医師が出てきていろいろと説明し、記録を出したということであります。一度このように捏造した、極めていかがわしい人物と言わざるを得ない人物によって再び提出された資料等を、今回、そうした資料、情報を精査することにどれほどの意味があるのか、こう思わざるを得ないわけでありますが、政府の御見解を伺いたいと思います。

杉浦内閣官房副長官 先生の御指摘はごもっともでございますが、私どもは、目下、そういう得た資料を精査しておるところであります。

 そういうものもありますが、交通事故の現場を見ましたり、関係者から事情聴取も行っております。さまざまな物証を持って帰っておりますので、それをきちっと精査した上でこれからのことを考えていきたいと思っております。

安倍委員 北朝鮮という国は、国ぐるみで覚せい剤をつくり、そして、日本にそれを事実上輸出している。また、にせ札もつくる。そういう国ぐるみでそうした犯罪行為を行う国を相手に交渉せざるを得ない政府側もそれは大変だというふうに思うわけでありますが、そういう認識で彼らの証言を聞き、彼らが出した資料を見なければいけない。幾ら政府がそれはしっかりとしたものであると言っても、それには何の信頼性も実は置けないのであるということではないだろうか、こう思うわけであります。

 今回、横田めぐみさんのカルテのコピーが日本側に渡されたわけでございます。先般、委員会におきまして、薮中局長が、このカルテは本物であると、ある種の信憑性があるというふうに発言されたというふうに私は報道で見たわけでありますが、その中に挟まっている、例えばレントゲン写真、あるいは歯の歯列の資料等がもし本物であったとしても、北朝鮮が主張している、いわゆる死に至るまでのこのカルテの中身すべてが、これが本物であるかどうかというのは、これはなかなか私はわからない。幾らその見た目が古くても、見た感じが古くても、これはもしかしたら、三十年前の全く別人のものであったかもしれない、こう思うわけであります。

 彼らが本当に、これは絶対に本物であるという自信のもとに出すのであれば、これは、まさに正常化がかかっている、そして金正日委員長が白紙から調査をしろというふうに言った、まさに金正日委員長の命令であるわけでありますから、当然その本物を出さなければいけないにもかかわらず、なぜ彼らはコピーしか渡さないのかということでございます。

 保管義務がある、こう言っているわけでありますが、遺骨を渡すことができて、なぜ本物のカルテを渡すことができないのか。そのカルテの紙の質あるいは古さ、またインク等から、その記載の年月日を日本側に推測されるのを恐れたのではないか、こう思わざるを得ないわけでありますが、先方の説明について伺いたいと思います。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま委員御指摘のカルテというのは、横田めぐみさんの、先方の説明でございますけれども、北朝鮮に拉致されて以来の相当長い期間における、いわゆる六九五病院におけるいろいろの診察のカルテでございました。これは、二〇〇三年の九月まででございまして、今回先方から説明があった内容としての二〇〇四年の三月から四月ということではございませんで、それ以前の二〇〇三年の九月までの六九五病院における診察のカルテでございました。

 そして、これにつきましても、もちろん我々としては、今委員御指摘のとおり、その中にもさまざまの資料もございます。そして、我々は、それについては二日間にわたって、現物を手にして、そしてまた我々の専門家の目でも見て、コピーもきちんと我々の方でとったわけでございますけれども、先方はそれについては、亡くなられた方についてのカルテというのは保管義務があるんだということを一応説明しておりました。

 我々としては、先般も申し上げましたとおり、これをきちんと我々の持っているさまざまの情報と突き合わせて、当然検証していく必要があるというふうに考えております。

安倍委員 しかし、実際そのカルテを検証しても、これは医学的にいわゆる間違いがなければ我々はそれ以上の追及のしようもないわけであります。また、先ほど申し上げましたように、レントゲンの写真が横田めぐみさんのものと突き合わせてそれは本物であろうと推測されれば、それはそうであるというにすぎないわけでありまして、それは、北朝鮮において彼女が精神に障害を来し、そしてみずから死を選んだということの証明には全くつながらない資料でしかないわけですね。つまり、我々にむだな時間を割かせるためにそういうものを出してきたというふうにしか基本的には考えられない、私はこう言わざるを得ない、こう思うところであります。

 先ほど平沢委員が質問いたしましたことに関連いたしまして、辛光洙、金世鎬、魚本公博の三名の拉致実行犯を警察庁は国際手配しているわけであります。国際手配をするということは、当然、入念な捜査の結果、これは恐らく、まず犯人に間違いない、そう確信してこの三名を国際手配したんだろう、こう思うわけであります。

 この三名については、共犯はすべて事実上自供をしている。辛光洙も、韓国の裁判で事実上自供をし、捜査において自供をして、そしてクロの判決を受けたわけであります。警察庁として、この三名は間違いがない、こう考えるに至った理由等を今ここで述べていただきたいというふうに思います。

薮中政府参考人 失礼いたします。

 先ほどの答弁の中で二〇〇三年と申し上げましたけれども、一九九三年の九月、そしてまた一九九四年の四月でございますので、訂正させていただきます。

瀬川政府参考人 お答えいたします。

 北朝鮮による日本人拉致容疑事案の捜査というのは、実は大変証拠等が乏しいという状況の中で捜査が行われる大変難しい捜査でございますが、今御指摘の三名の手配の関係につきましては、警察といたしましては、関係者からの事情聴取、あるいは裏づけ捜査、あるいは国内外の関係機関との情報交換等々を尽くしまして、長期間にわたる地道な捜査の結果、法と証拠に基づきまして、原敕晁さん拉致の実行犯である辛光洙につきましては免状等不実記載、旅券法違反、出入国管理法違反、それから有本恵子さん拉致の実行犯である魚本公博、これはよど号犯人であります旧姓安部公博でありますが、結婚目的誘拐、それから宇出津事件の主犯格であります北朝鮮工作員の金世鎬につきましては国外移送目的拐取ということで、令状の発付を得まして国際手配を行っているところでありまして、法と証拠に基づきまして、警察はこれら三人につきまして確信を持って手配をしているところでございます。

安倍委員 今まさに、確信を持っている、我が国の捜査当局としてこの三名は実行犯であるという確信を持っているという答弁がございました。当然、共犯の自供もありますし、数々の証拠もあるんだろうと思います。

 それに対して、北朝鮮側は今回の交渉において、我々は引き渡しを要求したわけでありますが、そのときの北朝鮮側、先ほど平沢さんの質問に対しても若干それに触れる答えがありましたが、どういうふうに彼らは返答したのかということをお伺いしたいと思います。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 我が方からのこの三名についての引き渡し要求に対しての先方の回答でございますが、辛光洙については、原敕晁さんが辛光洙との利害関係の一致により北朝鮮に来たものであり、辛光洙の処遇は北朝鮮側内部の問題であるという説明がまずございました。

 そして、金世鎬及び魚本公博については、これらの者がそれぞれ久米裕さん及び有本恵子さんの拉致に関与したとの調査結果は得られなかった旨の北朝鮮側からの応答があり、我々としては、当然これは納得いかない、承服いかないということはもちろん指摘した次第でございます。

安倍委員 つまり、我々はこの三名が実行犯であるというふうに確信をしている、しかし彼らはこの三名は全然関係ないというふうに答えたわけであります。この一点をもってしても、彼らはこの問題を解決しようと考えてはいない、誠実に対応しようと考えていないと私は断ぜざるを得ない、こう思うんですね。

 そしてまた、北朝鮮にいる拉致実行犯、この三名以外については、残念ながら我々は把握をしていないんですね。だれがやったのか、どこのだれがやったのかわからない。この中で、向こう側がこの人を処罰したと言っても、その人物が果たして本当にいるかどうかもわからないんですね。

 その他の人たち、彼らが実行犯としてこういうふうに対処した、こういうふうに言っても、我々は検証のしようがないのではないだろうか。今回、向こう側から、何人かの実行犯は死亡している、あるいはこういうふうに対処したというふうに言ってまいりましたが、この検証のしようがないんじゃないですか。

薮中政府参考人 まさに委員御指摘のとおりでございまして、そのときの一番我々のもどかしい点は、実際何があったのかということについての実行犯、そしてそれについての直接の証拠がどういうふうにあるのか。先方の説明による交通事故云々というのはございますけれども、それについては特殊機関が当時の書類を焼却してしまったという説明がございまして、したがって、我々としては間接的に、そのときの状況についての、あるいは現場にいた人たちからの話を聞くということで間接的にしか真相に迫れないということは極めてもどかしい思いをしておりますけれども、そういう意味では、今の委員の御指摘の点というのは我々も非常に痛感している点でございます。

安倍委員 そこで、今回、日朝交渉の結果、彼らがこの問題をまじめに解決しようとしているかどうか。つまり、日朝間の問題を前進させようとしているかどうか。もし全くそういう誠意が見られないのであれば、平壌宣言に彼らは反している、こう断定せざるを得ないと思うんですね。その判断基準をどこに置くか。

 私は、他の実行犯をどう処罰しようと我々は検証のしようがない。だから、これを除外しなきゃいけない。そして、先ほど申し上げましたように、カルテがどうかということを幾ら検証しても、これは彼らがまじめにこの問題に取り組もうとしたかどうかいう証拠には全くならないと思うんですね。ただ唯一、めぐみさんの遺骨と言われるものを提出しました。たとえそれが本物であったとしても、彼らが言っているとおりなのかどうかはもちろんわかりません。もしこれが全く別人のものであるということがはっきりすれば、これはもう全く彼らと交渉してもむだだと断じざるを得ないと思います。

 しかし、それと同じように、今私が申し上げました判断材料としては、この三人の実行犯についてどう対応するかにむしろ我々は注目するべきであったんですね。今度の交渉において、この三名について、彼らがもし引き渡しをする、あるいは我々に事情聴取させるということであれば、まじめにもしかしたら対応しようとしている、こう評価できるかもしれませんが、全く関係ないというふうに言い放つのであれば、もう交渉するという意味がなくなってきているのではないか、経済制裁を我々はかける段階に至っているのではないかと断じざるを得ないのではないか、私はこう思うわけであります。

 その点を、副大臣また副長官、どちらでも結構でありますが、どう考えておられるかということをお伺いしたいと思います。

杉浦内閣官房副長官 三人の問題については、これは法務大臣に答弁していただくのが一番適当かもしれませんが、我が国の法律を犯しているわけでありますし、逮捕状も出ている、国際手配もしている。したがって、当然取り調べる権利はあるわけでございます。

 それに対して、ああいう今御説明のあった態度をとったということについては、これはまさに真正面から衝突していると言わざるを得ないと思うんですね。犯罪人引き渡し条約があれば、引き渡しを求める、こっちへ渡してもらって調べるということでしょうし、そこまでいかなくとも、きちっと警察官等を派遣して、取り調べに応じるということが必要だろうと思います。衝突している点だと思います。

 この点についてどう対応するかという点は、私ども政府としてとるべき対応の大きな一部であるというふうに理解しております。

安倍委員 残念ながら、北朝鮮の善意を我々期待していても、物事が全く動かない。これは、一九九三年以降、彼らが核の問題で危機を引き起こして以降の彼らの態度を見てきて、我々はそれを学び取っているはずであります。彼らを動かすことができるのは、残念ながら圧力のみではないだろうか、こう思います。

 ことしの国会におきまして、議員立法で、我が国のみで経済制裁を可能にする法律が通りました。この法律を通したら大変なことになる、日本にまるでノドンが飛んでくるようなことを言っている評論家、いいかげんな学者、たくさんいました。

 しかし、その結果どうなったでしょうか。いよいよこの法律が通るということになったら、五月の二十二日に小泉総理を平壌に招いたわけであります。そして、子供たちが帰ってきた、またジェンキンスさん一家も帰ってくることができたわけであります。まさに、この法案によって圧力をかけることによって初めて彼らは態度を変えた、そういうことであります。

 また、この経済制裁法によって日本独自で経済制裁を行っても、余り意味がないのではないかということを言う人がいます。そういう人たちのほとんどは、こんな法律を通したら北朝鮮が怒って大変なことになると言っていた同一人物が多いわけでありますが。

 今、日朝間の貿易が今でも活発に行われているわけでありますが、北朝鮮と日本の貿易総額、そしてまた北朝鮮から日本への輸出額、それは北朝鮮の総輸出額において大体何%を占めているか、それを日本の世界への輸出額のパーセンテージを、掛け合わせたものにすれば一体幾らになるのかということについて教えていただきたいと思います。

杉浦内閣官房副長官 日朝間の貿易総額でございますが、我が国からの輸出額及び我が国が輸出額全体に占める割合についてということでございますが、平成十五年における日朝貿易については、我が国からの輸出額は百六億円、輸出額全体に占める割合は〇・〇二%。平成十五年の我が国への輸入額は二百二億円、輸入額全体に占める割合は〇・〇五%となっております。

 北朝鮮の中における我が国との輸出入の資料は我が国にはございませんで、韓国が、大韓貿易投資振興公社、KOTRAというところが統計をとっておりますが、それを見ますと、この三年間ずっと減ってきております。

 二〇〇三年ですが、日本は三位でございまして、一位が中国、二位が韓国、三位が日本で、パーセントにいたしますと輸出総額の八・五%となっております。これは減ってきておりまして、ちなみに二〇〇二年は、日本が三位でありますが一二・七%。一二・七から八・五に減っております。その一年前、二〇〇一年は日本が二位でございまして、韓国より上でございました。一位はずっと中国ですが、一七・八%。だから、一七・八から一二・七、八・五と減ってまいっております。減った分は大体中国と韓国がふえたというような数字上の統計になっております。

安倍委員 今の御答弁ですと、韓国側の資料によると北朝鮮の総輸出量の八・五%、二百二億円ということであります。日本の世界への輸出量にこれを割り返しますと数兆円分に相当するというふうに思うんですね。

 ですから、北朝鮮の輸出で日本向けが二百二億円もし落ちるとすると、これは相当大きな打撃となるわけであります。例えばその分を中国に振りかえるということは、経済原則上、これは中国にもっと輸出できるのであれば、中国にもっと輸出していて日本にも輸出するということになりますから、日本が落ちた分はパーセンテージで中国がふえるということになりますが、絶対額ではそれは総輸出量の中から減っていくということになる、これは当然のことだと思います。

 そしてまた、ズワイガニの日本向けの輸出あるいはシジミ等の輸出には特定のある人物がその利権を握っていて、その人物はその上がりを北朝鮮に、これは献金という形で金正日政権に献金をしている。そして、金常任委員長がそれを軍人その他側近にばらまくことによって権力を維持している、こう言われています。それを断つことは極めて大きな効果がある、私はこう思うわけでございます。

 また、こうした貿易に対しては、朝鮮総連がいろいろな形でかかわってもいるわけであります。辛光洙事件においても、かつて朝鮮総連の下部機関である商工会の人物が関与した、これは非常に濃厚である、こう証言もあるわけであります。

 公安調査庁にお伺いをしたいわけでありますが、この朝鮮総連を破防法の調査対象に今でもしているのか、そしてその他の調査対象にはどういう団体があるのかということをお伺いしたいというふうに思います。

柳政府参考人 朝鮮総連につきましては、かねてより、破壊活動防止法に基づく調査の対象として、その組織、活動実態などにつきまして調査を実施しているところでございます。

 また、朝鮮総連以外に調査対象としておりますのは、オウム真理教、過激派であります革共同中核派、革労協解放派などでございます。

安倍委員 今の御答弁によると、朝鮮総連は破防法による調査対象になっているということであります。

 各自治体が朝鮮総連の関連施設に対していろいろな免税措置をとっているということでありますが、これは例えばオウム真理教とか中核派の建物を免税措置にするというのとほぼ同じではないかというふうに、私は今そう印象を受けたわけでございます。

 今後、十五名の拉致事件、また特定失踪者を含めて、真相究明において国内においてしっかりと捜査をしていただきたい、こう思うわけでありますが、まさに聖域を設けずにしっかりと捜査を進めていただきたいと思います。

 警察庁の決意のほどをお伺いしたいと思います。

瀬川政府参考人 現在、拉致事案に関しまして、数多くの失踪者を対象に警察としては捜査を鋭意進めております。そしてまた、最近のこういった状況の中で、北朝鮮による拉致ではないかという届け出、相談等が非常に多く今寄せられてきております。したがいまして、先ほど来御答弁申し上げておりますように、十件十五名以外にも、これは多くの拉致事案があるのではないかという前提に立ちまして、鋭意捜査を今後とも進めてまいりたいと考えております。

 十月には、全国の拉致問題の捜査担当課長を集めまして会議も開催いたしました。よって、こういった問題に対して全国警察の総力を挙げて、また総合力を発揮して取り組むという所存でございます。

安倍委員 ことしに入りましてから、横田さん初め、死亡あるいは行方不明と北朝鮮側から通告された方々がすべて死んでいるという情報が、かなり日本側に対して北朝鮮から謀略的に流されているというふうに思います。

 我が国としては、あくまでもこの十名の皆さんが生きているということを前提に交渉を進めていっていただきたい、こう思いますが、政府側のお考えを最後にお伺いしたいと思います。

杉浦内閣官房副長官 もちろん生存されているという前提で進めております。実務者協議にも臨みましたし、今精査を行っておりますが、きちっと精査をして、そういう前提で今後とも取り組んでまいる所存でございます。

安倍委員 ありがとうございました。

赤城委員長 次に、池坊保子君。

池坊委員 公明党の池坊保子でございます。

 私は、平成九年、横田めぐみさんの御両親と国会でお目にかかったごく少数の政治家ではないかと思います。そのとき、お一人の政治家が横田さんの御両親をお連れになっていらっしゃいました。それぐらいまだみんなに認知されていなかったのでございます。

 私は、横田めぐみさんのお母様早紀江さんに、私も二人の娘を持つ母です、きっと全力で力になってまいりますと申し上げましたが、この長い年月、何もしなかったことへのじくじたる思いと反省を込め、そして私にとってはあっという間に過ぎた年月でしたが、御家族にとっては一日が本当に重く苦しい日々であったのではないかと思いますときに、改めて政治家の責任を痛感しながらここに立っております。

 この衆議院に本委員会が設置されましたことは、御家族にとっては一歩前進の思いがおありになるのではないかと思います。

 副官房長官にお伺いしたいと思います。

 本委員会の設立の意義についてでございます。本委員会の設立をどのように受けとめられておりますか。そしてまた、どのような姿勢で本委員会の質疑に対処されようとしているかをお伺いしたいと思います。

 申しわけございません、私の持ち時間は少ないので、勝手ながら、簡潔にお願いしたいと思います。

杉浦内閣官房副長官 政府は、拉致問題を日朝間の諸懸案の最優先課題と位置づけて取り組んでおるところでございます。

 本委員会を設置されたのは、国会の御意思のあらわれであると理解しておりますが、私どもは、立法府のこうした動きと相まって、拉致問題の解決に向けて全力を傾注してまいりたい、こう思っております。

池坊委員 今、杉浦副官房長官から最優先課題と言っていただきましたこと、大変うれしく思っております。

 私は、家族支援室ができましたときに、大変よかったなと家族の方々の立場に立って安堵をいたしました。それまで、家族会の中には、情報も入ってこない不安といら立ちがあり、また外務省とのきずなもなかったように思います。今、外務省との信頼を得ることができたのは、薮中局長の御努力だと私は敬意を表しております。一生懸命支援室は頑張っていられますし、また政府と家族会とのクッションにもなっていると思います。ただ、これは家族会の支援であって、北朝鮮との対応に対しては、何にもできていないのではないかと思っております。

 私は、今、最優先課題とおっしゃるからには、それぞれの機関で、外務省も頑張っていられます、警察庁も頑張っていらっしゃいます。でも、これは官房の中に、情報を集約して調査、捜査をし、戦略的に北朝鮮との対応を考えるような機関を、横断的に一つの総合的な機関を設けるべきではないかというふうに考えております。

 中国の理解も必要です。アメリカとの協調も必要なのです。外務省の北東アジア課だけに、北東アジア課はほかにしなければならない問題がたくさんあるんだと思います。これだけに任せておくのではなくて、みんなが、日本人の生命、生存、生活を守るんだ、そういう気持ちを持って一つの機関を持ったならば、私は、この二年二カ月、必ずしも北朝鮮との対応が、ちっとも主導権を握っているとは言えないと思うんですね。受け身だったと思います。常に主導権を握られているのは、私は、日本に戦略がないからだというふうに考えております。

 ぜひ、私は、近々の課題として、この総合的な対策機関をつくっていただきたいと思います。杉浦副官房長官、お答えいただきとうございます。

杉浦内閣官房副長官 先生のような御意見が、先生だけでなくてほかの方々の中にもあることは承知いたしております。ただ、私は、副長官に就任して、拉致担当ということになって、幹事会を議長として主宰してやってまいっておる経験から申しまして、確かにそういう室をつくることも一つのお考えではありましょうが、ただ、この問題に関する限り、北朝鮮関係閣僚会議があって、拉致問題については幹事会をつくった、局長級が集まっております。

 省庁も多岐にわたっておりまして、例えば捜査にしたら警察庁が全力を挙げて取り組むということで、それぞれ公安庁もあるし外務省も、いろいろございまして、関係省庁の局長級が出て、協議をして対応を決めていくという体制になっておりまして、組織論として見ますと、官房の中にそういう室を設けなくてもいいんじゃないか、このままの体制できちっと対応できるというふうに私は考えております。

池坊委員 少なくとも今までの経過の中で、私は、日本が北朝鮮に対してきちんと対応してきたかどうか、してこられなかったのではないかと思います。それは、私がこの経過を申し上げる時間がございませんから、もう皆様方の方がよくおわかりだと思います。できていなかったからこそ、そういう機関が必要ではないかということを私は力説しているのでございます。これは、ずっと私、これからも言い続けて、でき上がるまで言い続けてまいりたいと思います。

 なぜならば、全国民が注視しております。国民の命を守ることなくして、救われることなくして、日本に安心して住めないではありませんか。これは家族会だけの問題ではありません。若い人たちだって、子供を産もうと思わなくなります。国を信頼するということの私は一歩だと思いますので、絶対にこれをつくっていただきたいと強く強く希望いたします。

 対話と圧力について、私は御意見を伺いたいと思います。

 対話と申し上げるならば、私は、文部科学大臣政務官の二年九カ月の間に、外国人学校、高校の卒業生に国立大学の受験資格を与えました。これには強い反発も批判もございました。でも、私は、拉致と教育は別の問題と考えております。環境を選ぶことができず生まれ育った人々に環境整備をしてあげるのは大人の責任だと思っておりました。

 この外国人学校の中には、当然朝鮮人学校も含まれております。私は、政府として初めて朝鮮学校を視察いたしました。この保護者やオモニたちと深い信頼のきずなを結ぶことができましたし、また深い情愛もかけられました。若い生徒たちに、あなた方がこれから両国のかけ橋になってほしい、拉致問題に対しても自分たちが力を注ぐようであってほしい、そのように申し上げました。

 私は、逢沢副大臣にお願いがございます。外務省レベルだけでなくて、さまざまな分野で私どもは対話をしております。対話というのは、誠意を持って、相手の立場に立って考え、行動することだと思います。そういうことをしているということを毅然と北朝鮮にメッセージとして送っていただきたいのです。

逢沢副大臣 池坊先生から、大変重要な点について御指摘をいただいたわけでございます。

 言うまでもないことでありますが、対北朝鮮外交の基本方針、基本姿勢、対話と圧力、この両方を適切に使っていく。圧力と対話と言いかえる必要があるというふうにも思うわけでございます。北朝鮮は特殊な国であり、直接の国交がない国でございます。いろいろな制約条件があるわけでありますが、誠意を持って日朝協議では対話をする、そして必要な圧力をしっかりかけていく、そのことを通じて目的をできるだけ早く達成する。引き続き努力をしてまいります。

池坊委員 私どもがこれだけ誠意を持って対話しておりましても、その誠意が通じるとは思えません。同胞である日本人の命と、彼らたちの人生がかかっている重要な問題でございます。対話中心で対応しても、必ずしも納得のいく成果が上がるとは私は思いません。

 私どもの党の神崎代表、大変温厚な方でございますけれども、日朝実務者協議で北朝鮮側から提供された資料の分析結果から、北朝鮮に誠意ある対応が見られないことが明確になれば、直ちに経済制裁を発動すべきとの見解を明らかにされております。

 また、言うまでもなく、アメリカでは、拉致問題の解決がない限り経済支援を行わないという北朝鮮人権法を成立させました。当事国でないアメリカがこのような法律をつくったということを、私は大変頼もしく思っております。国連人権委員会も、北朝鮮の人権問題に関する特別報告に拉致問題を盛り込む方針と伝えております。

 にもかかわらず、日本は当事国でございます。二年二カ月、日朝首脳会談を見ておりましても、ちっとも誠意ある回答が得られたとは思っておりません。私どもが主導権を握って、きちんとした首脳会談を行っていくためには、そして拉致家族を救出する唯一の道として、私はこの圧力ということも必要なのではないかと思っております。政府の御見解を伺いたいと思います。杉浦副官房長官、お願いいたします。

杉浦内閣官房副長官 対話と圧力ということでございますが、私ども日本政府としては、北朝鮮政策の実施に向け、基本的な考え方として、対話と圧力という方針で臨んでおるところでございます。要するに、北朝鮮に国際社会の責任ある一員として良識ある行動をとってもらうということに尽きると思うんですが、そのために双方できちっとするということでございます。

 経済的制裁というのも一つの方法でございまして、私ども、それを排除しているわけではございません、視野に入れております。しかし、まず経済制裁ありきという考え方はとっていないことは何度も申し上げたとおりでございます。

 圧力としては、例えば、六者協議の当事国、アメリカ、中国、ロシアに対して、拉致問題について圧力をかけてほしいということを頼んで、彼らは協力するというふうに言ってくれております。そういう圧力もございます。それから、国連人権委員会にも申し立てをして、あちらからも北朝鮮に対して圧力を加えてもらう、これも圧力の一つだと思います。

 経済制裁の方も、国会の方で二つの法案を通していただいて、いわば伝家の宝刀としての武器を政府にお与えいただいたわけでありますから、これをいつ抜くかというのも一つの圧力、あるというだけで圧力になっていると思います。

 私どもとしては、北朝鮮が事態を悪化させ、日朝平壌宣言に反するような状況が生じたと判断される場合には、状況をよく見きわめながら、経済制裁の発動を含めて、事態の改善、問題の解決のため、適切な措置は何かを検討してこれを実施していく考えでございます。

池坊委員 私は、日本に戦略がないことが北朝鮮から甘く見られるのだと思います。そして、家族会の方々も、それが一層の不安をかき立てるのではないかというふうに思っております。

 今お話を伺うと、圧力をどういうときにかけるかというようなお話は伺えませんでしたけれども、私は、今すぐかけるかは別として、これから起こり得るだろうさまざまな北朝鮮の姿勢に対処するためには、日本側も制裁的措置の具体的な手順について検討していくことが大切なことなのではないかというふうに思っております。例えば、外為法や特定船舶入港禁止法令のスキームによって制裁的措置をとることが考えられますけれども、では政府はどのようなスキームで制裁的措置をとろうと思っていらっしゃるのか、全然そういうことはお考えになっていらっしゃらないのか。

 私は、圧力、圧力と口先だけで言ったって何の効力もないのだと思います。政府は今まで、制裁的措置を具体的にこういうふうにとるよというふうなことをお聞かせいただいたことはありません。それについてはどうお考えかを伺いたいと思います。

逢沢副大臣 日朝間に幾つかの大切な課題が横たわっております。その中で最も大切な、そして国民の大変強い関心があるのは、何といっても拉致問題であります。この拉致問題の全面的な解決に向けて、政府は責任ある対北朝鮮外交を展開していく必要がございます。

 先ほど杉浦副長官の方からも答弁をさせていただいたとおり、対話と圧力あるいは圧力と対話、適切にこれを行使していくということに尽きるわけでございますが、もちろん、対話を促す、対話を促進するためには、適切な圧力のいわば準備、そういうものが必要であるということを、私も政府の一員として強く認識をいたしているところでございます。

 議会の御努力によって、改正外為法あるいはまた特定船舶入港禁止法、既にいつでも施行ができる、そういう状況を政府はツールとして持たせていただいているわけでございます。そして同時に、国会の中にも、北朝鮮の誠実な対応を促すという強い世論、圧力がある。そして、何よりも、この拉致問題がいいかげんなことでは決して許さない、そういう強い国民の世論があるということが恐らく北朝鮮に対しては最大の圧力ではないかというふうに私どもは承知をいたしているわけでございます。

 与党自由民主党では、いわゆる北朝鮮に対する経済制裁の段階的イメージということについて、シミュレーションチームの皆様が御努力をいただいて、一つの提案をいただいたというふうなことも承知をいたしておりますが、そういったものを適切に政府としても受けとめさせていただいて、対話と圧力、圧力と対話、この基本方針のもとにこれからも強力な対北朝鮮外交を展開してまいる、そのように申し上げておきたいと存じます。

池坊委員 拉致問題の解決についてお伺いしたいと思います。

 十一月二十九日の朝鮮労働党機関紙労働新聞は、日朝実務者協議に関して、我々は死亡者問題について最大限の努力を傾けたし日本に与えられるものはすべて与えたとの論評を掲載いたしました。つまり、もう北朝鮮はここで幕引きをしたいのだというふうに思っております。これには、私どもは、幕引きはできないのだよという毅然としたメッセージを送らなければならないと思います。

 日本は、さらなる毅然とした姿勢を貫き通すためには、死亡とされている被害者は全員生存しているんだ、全員救出されるまで拉致問題に終結はないという毅然としたメッセージ、これがぜひぜひ必要だと私は思っております。

 政府は、何をもって拉致問題の解決とお考えですか。そして、政府として北朝鮮に提示すべき拉致問題解決の条件とは何なのか。これをはっきりと、どのような状態でどのようなときにお示しになるのか、あるいはお示しになっているのか。今後の方針について、逢沢副大臣、お伺いしたいと思います。

逢沢副大臣 累次答弁をさせていただいていますとおり、拉致事案、いわゆる政府が正式に認定をいたしておりますのは十件十五人であります。既に五人の方は帰国を果たされたわけであります。私どもが今力を入れて北朝鮮との間でやりとりをいたしておりますのは、残りの十名の方の安否の確認、そしてもちろん救出をする、無事に日本に迎え入れる、その目的のために全力を尽くさせていただいております。

 そして同時に、いわゆる特定失踪者、この問題についても、累次の協議の場におきまして、北朝鮮側に情報の提供を求めている。個別具体名を挙げるケースもあるわけでございますけれども、この特定失踪者の問題、これについても当然、全体として拉致事案、拉致事件の中に私どもは取り込んで考えているわけでございます。

 国民の皆様の理解をいただきながら、対話と圧力、圧力と対話、この方針のもと、問題の解明、解決に引き続き力を尽くしてまいります。

池坊委員 日本人は英知がございます。政府、そして与野党を超えて政治家が一丸となったならば、この問題、北朝鮮と対等につき合って、必ず解決できると思いますから、そのことのためには積極的なさまざまな施策が必要です。その施策の最大の要因として、私は、やはり総合的な機関をつくっていただきたいと切に希望して、まだまだ申し上げたいことはございますが、来年あるいは次回に持ち越すことにして、ありがとうございました。

赤城委員長 次に、田中慶秋君。

田中(慶)委員 私は、民主党の立場でこの拉致問題について質問をさせていただきたいと思います。

 まず、拉致問題でありますけれども、政府に対しこの問題が国会で議論されたのは、昭和六十三年が最初であります。この問題が当時竹下内閣のときに質問をされ、そのときの政府の考え方は、我が国と韓国政府協力して、真相究明、今後努力をする、こういうことで茶を濁したわけであります。結果として、今日のような人的な問題、そして多くの拉致あるいはまた失踪者を含めて、現在国民の生命が危うくされている、これが実態だと思います。

 政府に質問させていただきたいのは、政治は国民の生命財産を守る、このことが前提ではないかと思います。しかし、六十三年からこのことが指摘をされていたにもかかわらず、内閣を初め外務すべて、あるいはまたこの問題に携わる関係のところが、その活動が今日までおくれてきた理由。問題の解決は早期発見、早期対策だが、この問題、ある面ではこのような大きな問題になっていなかった、私はそう思っておりますが、この辺について、まず杉浦さんから考え方をお伺いします。

杉浦内閣官房副長官 先ほど先生の御指摘の点については、平沢議員からもお話があったところでございますが、今日の状況に至ったことについての責任の所在はというふうにストレートにお答えするとなると、非常にさまざまな要因があると思います。

 警察庁から先ほどお話がありましたが、全国担当課長会議を開催して本腰を入れて捜査する。私は、幹事会議長を命ぜられてから、警察に対しては、会合のたびごとに、徹底捜査を行うべし、家族会等から得られる情報をちょうだいして取り組むようにずっと指示をしてまいっておるところでございますが、警察のお話を聞きますと、なかなか証拠が集まらない。だから、最初、拉致被害者に認定したのは九四年でしたか、おくれたわけでありますけれども、その後もさまざまな情報をちょうだいしますが、立件するまでに至らないということもございます。

 ただ、この問題については、根本問題は、小泉総理の最初の訪朝のときに、北朝鮮が、金正日主席が存在を認めて謝罪した北朝鮮の犯罪行為、国際的不法行為があって、それがなかなか、証拠その他の関係でこちらの捜査当局でキャッチできなかったというところに、そもそもやられた行為そのものは隠密に行われたということから困難があったんだと思っております。

 しかし、現在は、政府としては、拉致問題は日朝間の最優先課題と位置づけまして、関係省庁、関係機関の緊密な連携のもと、その解決に取り組んでおるところでございます。

田中(慶)委員 政府の考え方は、人の命というのをそんな雑に扱っていいかどうかという問題。六十三年ですよ、この問題。今日まで何年たっているんですか。人を拉致するということは、日本の領海を侵犯していたでしょうし、あるいは具体的にどのような方法でされたかわかりませんけれども、しかし例えば潜水艦にしても外国船籍にしても、侵犯をすればすぐわかるわけでしょう、今。当時でもわかっていたと思います。当時はもう既に、昭和六十三年、宇宙衛星がちゃんとしっかりと発達していた時代ですから、やる気があったかどうかの問題なんですよ、これは。

 今ごろ、最優先課題、こういうことを言っておりますが、竹下内閣の当時は、このことを含めて、真剣にやりますと言っていたわけですけれども、今日までのおくれ、少なくとも拉致関係者を初めとする失踪者の皆さん方に政府はわびなきゃいかぬでしょう。一つもわびていませんよね。日本の一番悪いのは、政治が責任をとらないということ、自分たちの非を認めてわびないこと。役所みんなそうじゃないですか。あなたたちはその責任を今どう感じているんですか。明確にしてください。

杉浦内閣官房副長官 政府、国は国民の生命財産を守るというのが一義的な政治の目的であることはもう先生のおっしゃられるとおりでありまして、その点について、今までの政治、政府はおろそかに考えていたわけではないと思いますが、ただ、この問題の性質上、非常に真相究明に困難が伴ったという点は言えるのではないかと思っているわけであります。

 そういう行為を許した、そういうことについては、なぜそうなったのかという点は、我々は、日本のこれからの国のあり方の一部として考えていかなきゃならないし、結果として多くの方々に御迷惑をかけた点については、国としておわびしなきゃならないと思っております。

田中(慶)委員 警察当局、おりますね。今日までどういう捜査をし、これらについてどういうふうな形で今日まで来たのか、答弁ください。

瀬川政府参考人 お答えいたします。

 この拉致容疑事案というものにつきましては、今副長官からもお話がございましたとおり、大変捜査上の困難がございます。被害者の所在が不明でありますし、証拠もなかなか残されていない、あるいは事案発生時点で目撃者もいないというような状況でございます。そういった中で、大変困難な捜査を推進し、結果として、今警察といたしましては、拉致容疑事案は十件十五名である、こういうふうに判断するに至ったものでございまして、なお、これ以外にも拉致事案はあるだろうという前提で、鋭意所要の捜査を進めております。

 昭和六十三年以来のことについて御指摘がございました。警察といたしましては、御指摘の昭和六十三年の段階で、六件九名の失踪事案につきまして、これは北朝鮮による日本人拉致容疑事案であるというふうに判断をいたしまして、国会の場におきましても、北朝鮮が我が国に対しこうした主権侵害行為を敢行している疑いがあるということを明らかにしてきたところでございます。

 その後、逐次捜査を進めまして、平成十四年までに拉致容疑事案は八件十一名と判断したところ、平成十四年の日朝首脳会談等々を踏まえまして九件十三名、さらに、平成十四年十月に至りまして十件十五名という判断に至ったところでございます。

 こういった捜査を通じまして、先ほども当委員会で御答弁をさせていただきましたが、拉致に関与した北朝鮮工作員あるいはよど号の犯人ら三名につきまして、逮捕状の発付を得て国際手配を行っている、北朝鮮に対して身柄の引き渡しを要求している、こういう状況でございます。

田中(慶)委員 海上保安庁、来ていると思いますが、少なくともこれらについて、海上保安庁としての警備や、これは空から少なくとも拉致をされたものではないと思いますから、こういうことを含めて、拉致をされる、あるいはされた、あるいは今日までこのような問題が起きた原因というのはどこにあるのか、あなたたちの警備の中でどういう形で把握していたのか。

石川政府参考人 海上保安庁では、日本海の周辺地域において出没した、日本漁船に偽装してあるいは夜陰に乗じて不審な行動をとる国籍不明の不審船、こういうものを発見した場合には、船艇とか航空機により追跡等を行ってまいりました。さらには、その可能性の高い海域において警戒を強化してきたところでございます。そういう隻数というのは今までで約二十一隻ということで、追跡等の取り締まりをやってまいりました。

 そういう中で、私どもとしては、やはり私どもの船艇の能力を強化するということも必要だろう、あるいは情報をとるということも必要だということで、航空機の増強あるいは船艇の増強、さらにはそれぞれの能力の強化ということに努めてまいったところでございます。

 それで、先生御承知だと思いますけれども、平成十三年の十二月に発生いたしました九州南西沖海域における工作船事案がございまして、これに対しましては、逃走する工作船に対しまして停船措置として武器を使用するなどにより対処してきたところでございまして、この船につきましては、御承知のとおり、最終的には自爆、沈没という結果になりましたけれども、その後、船体を引き揚げてその実態を解明したところでございます。

田中(慶)委員 杉浦さん、もう既に警察庁は、六十三年のこの時点から、拉致問題があり、調査に入っていたんですよ。あなたは、さっきからこのことについて、まだそんな認識が乏しかったようなことを言っているでしょう。

 あなたたちの先輩は、人の命は地球よりも重しと言っていたんですよ。あなたたちが今やっていることは、人の命を粗末にしていることだけですよ。

 横田めぐみさんの問題だって、前から随分言われていた。政府は、拉致はなかった、当時こういう判断でこの問題に対処していたから、弱腰姿勢がこうなってきているんですよ、きょうまで。これだけ拡大しているんですよ。

 まず、杉浦さんのこれについての考え方、述べてください。

杉浦内閣官房副長官 当時の政府はどういう判断であったか、今ちょっと答弁、その資料を持ち合わせておりませんが、しかし、今警察庁の方から話があったように、真相解明についてはさまざま困難を伴ったという点は事実だろう。犯罪であるのに、被害者が遠く北朝鮮にいて、直接取り調べができない等々、今おっしゃったように資料が非常に乏しかった。だから、拉致被害者として認定をする、犯人については逮捕状をとって国際手配するというところまではおくれておったということであると思います。

田中(慶)委員 それは最近じゃないですか。当時からこの姿勢が、六十三年から国会で、本院で審議をされた、議論されたときからこの問題に関心を持ち、この問題にしっかりと対応していれば、こんなことなかったんでしょう。拉致特だって、見てください。民主党がさんざんこの拉致特をつくれつくれ、衆議院でやったでしょう。やっとできたのが今回じゃないですか。

 先ほど自民党はどうのこうのと言っていましたけれども、自民党が拉致特をつくらなかったんですよ、きょうまで。その反省、どうですか。外務副大臣、さっきあなたは自民党がどうのこうのと言ったけれども、つくらなかった理由あるいはその責任というものを、あなたは自民党の一員としてどう感じていますか。

逢沢副大臣 私自身、もちろん自由民主党所属の衆議院議員でございますが、現在、昨年から引き続き政府の立場で外交に当たらせていただいております。

 国会のいろいろな政党間のやりとり、その結果の御判断であるというふうに承知をいたしております。

田中(慶)委員 拉致問題は政党間の問題じゃありません。日本国民として、このことについて、これだけ大きな社会問題になっているものを、政党間のやりとりでどうのこうのじゃないんですよ。やる気があったかないか。

 杉浦さん、あなたは、内閣としてこの問題、できたことはいいですよ、おくれたことについてどう反省していますか、さっきからこの拉致問題に対する反省の気持ちを述べられておりますけれども。

杉浦内閣官房副長官 御質問の趣旨は、拉致特委の発足がおくれたという意味でございますか。(田中(慶)委員「はい。それは衆議院だけの問題じゃないですよ」と呼ぶ)そのことについては、政府の立場としては、これは国会でお決めになられたことですから、特にコメントする立場にはございません。

田中(慶)委員 あなたも政治家の一人なんですから、あなた個人の政治家としての考え方を述べてください。

杉浦内閣官房副長官 拉致特委は国会でお決めになったことなんですが、政府としては、安倍副長官時代から、北朝鮮関係閣僚会議のもとに拉致問題に関する専門幹事会を設けまして、政府として挙げて取り組んでまいったところでございまして、国会の方でこういうお立場をおつくりになったこととあわせて、日朝間の最優先課題として取り組んでまいることに変わりはございません。

田中(慶)委員 いずれにしても、拉致問題についての対応というのは、せっかく委員会ができたわけですから、今後本当に十分な対応をしていくためにも、お互い認識をともにしていかなければいけないと思います。

 そこで、例えば曽我さん、御家族を含めて、一応今、先般の御主人の問題の解決もされておられる。これから新潟で、佐渡でゆっくりと生活をしていただきたいと願ってはおりますけれども、曽我さんの場合も初めは拉致という認定じゃなかったんですよ。いいですか。そのことを含めて、先ほど来、特定失踪者の問題が話題になっておりますけれども、あの人は当初拉致の調べた人数の中に入っていなかった。北朝鮮からこの問題が具体的に、曽我さんという一つの名前が出てきたわけであります。

 このことを考えてまいりますと、曽我さんの拉致等の問題、この二十四年間、新潟県警、あるいは看護婦さんが拉致されたのではないか、こういうことがあったわけでありますけれども、現実問題として曽我さんが拉致をされたという、気がつかなかった理由というのはどこかにあったんでしょうか、警察。

瀬川政府参考人 お答えいたします。

 曽我ひとみさんの事案でございますが、昭和五十三年の八月十二日でございます。曽我ひとみさんと曽我ミヨシさんの親子が行方不明になったということで、当時の状況をちょっと御説明させていただきますと、翌十三日に警察署員が地元の方と一緒に付近の捜索を一生懸命行いました。しかし、発見に至らない。また、フェリーの乗船名簿等の調査もかなり一生懸命やりました。これでも確認ができないということでございました。それで、十七日に至りまして家出人捜索願が出され、所要の手配を行ったということでございます。

 その後も何度か、警察といたしましては、あらゆる事態を想定いたしましていろいろな調査を行ってまいりましたが、平成十四年十月の拉致問題に関する事実調査チームによる現地調査結果を入手いたし、その裏づけ捜査を行うまでは、大変これは残念なことではございますけれども、北朝鮮に拉致された事案であるということを判断するだけの証拠を集めるには至らなかった、こういう状況でございました。

田中(慶)委員 曽我さんの場合も、二十数年余り、拉致という形じゃなくして、行方不明という形で処理されてきたんですよ。このような形で、日本の海域には、先ほど特定の十五人の方のお話がされておりますけれども、この特定失踪者の調査の関係では五十数名という人たちの名前が挙がっていると思います。あるいは、いろいろな形で行方不明や拉致されたんじゃないかなという人たちを含めると、三百名とも四百名とも言われているわけです。

 この曽我さんと同じようなケースを考えていきますと、今それぞれの家族や皆さんから、四百名近い人たちが拉致されているんじゃないかと言われていること自体は、私はある面ではまともな数字じゃないかと思います。

 ですから、十五人なんというようなこと、あるいは五十数人なんということの限定ではなくして、三百名、四百名が拉致されているという前提で私たちはこの問題の取り組みをしていくことによって、問題の解決がより明確に、あるいは国も、十五名、大変恐縮ですが、人の命は大きいわけでありますけれども、十五名というよりは四百名の人たちが拉致されている、こんな前提ならば、もっともっと強力な取り組み方をするのではないか、私はこのように考えますけれども、まず、警察庁及びこの担当であります杉浦さん、この件についての考え方を示してほしいと思います。

瀬川政府参考人 お答えいたします。

 先ほど来御答弁申し上げておりますように、私どもとして北朝鮮による拉致容疑事案と判断しておりますのは十件十五名でございますが、それ以外にも北朝鮮に拉致されたという事案があるであろうというふうに思います。ただ、それが御指摘のような数字なのかどうなのかということについては、ちょっと私どもとしては現時点で数字としてお答えするような状況にはないということを御理解いただきたいと思います。ただ、いずれにいたしましても、例えば家出人捜索というのは、年間大体十万人ぐらい警察に寄せられております。

 問題は、先ほど曽我さんの事案についての警察の取り組みといいますか、当時の状況を御説明いたしましたけれども、一つ一つについてこれはしっかりと真摯に調査をするということが最も重要なことではないだろうかというふうに考えておるところでございます。

 そしてまた、最近のこういった情勢を反映してといいますか、情勢から、警察に対して、告訴、告発という形でのかなりの訴えが寄せられている、こういう状況にございます。

 そこで、この十月でございますが、全国の拉致問題の捜査を担当する課長を集めまして全国の担当課長会議も開催いたしまして、警察の単にその担当部門だけではなくて、捜査部門、鑑識部門あるいは地域交番部門、相当警察の総合力を発揮した形でこういった事案について真摯に取り組んでいこうということで、意思統一もしたところでございます。

 この問題につきましては、先ほど申し上げましたとおり、昭和六十三年、当時の梶山国家公安委員長が国会で明らかにして以来、警察としてもこれは鋭意取り組んでまいった問題でございまして、今後とも真剣に、真摯にこの問題に取り組んでまいりたい、こう考えております。

杉浦内閣官房副長官 私どもも、認定した十件十五名以外に北朝鮮による拉致の可能性を排除できない事案があると見ております。そして、私が議長になってからも、会議のたびごとに警察庁に対しまして、警察庁もメンバーでございますから、徹底した捜査を行うように促してまいっておるところでございます。

 もちろん、その結果、これは警察調査が主体でございますが、新たに拉致と認定される事案が出てまいりますれば、当然北朝鮮側に対しても、被害者の安否確認、生きておられれば原状回復等を求めていく考えでございまして、このような私どもの考え方は、過去の日朝の首脳会談におきましても、あるいは過去三回の実務者協議を含めまして、さまざまな機会に北朝鮮側に伝えております。そして、認定した十件十五名以外の拉致被害者の情報も提供するように求めておるところでございます。

田中(慶)委員 重ねて警察庁にお伺いしますが、二百名、三百名とも言われる失踪者がいると言われているわけでありますが、先ほど、行方不明者何十万、こういうお話がありますけれども、拉致の今までの経過や、あるいは北朝鮮の船が接岸できるだろうというような認定をされているところも含めて、いろいろな捜査の仕方があろうと思います。

 そういう点では、特定失踪者、二百名、三百名いるだろうと言われている失踪者の捜査状況というか、あなたの方は全国集めてこのことを通達して現在取り組んでおりますと。今回初めてやったんですか、これは。あるいは、今まで何回か重ねてきたのかどうかということとあわせて、今の捜査状況をわかる範囲内でお示しいただきたいと思います。

 それから、私は一番問題なのは、この曽我さんの話が出て、ずっと調べてみて、新潟県警の皆さん方にもお聞きをして、しかしもう二十数年このことに全然触れていなかったんですね。それで、今度の問題が、曽我さんが出てきたということも考えますと、やはり日本の拉致されている人たちというのはもっともっといるんじゃないか。

 ですから、いろんな団体が調べている数の中には三百とも四百とも言われる数字が出てくるわけでありますから、そしてその人たちが、家族の皆さん方がその調査会のメンバーのところに、心配で、拉致されているんじゃないか、こういう通報や相談がされているわけですから、やはりそれを真摯に受けとめながらしっかりと対応することが問題の解決になるんだろうと思いますので、その辺、捜査状況をお聞かせください。

瀬川政府参考人 まず一点目でございますが、先ほど、十月に行いました全国の担当課長会議の以前はどうだったのか、それまでは何もしていなかったのかという御趣旨の御質問かと思いますけれども、全国会議という形で集めるようにいたしましたのは、全国的に告訴、告発が相当広範囲な県にまたがって行われているような状況も踏まえまして行ったものでございまして、それまでの間も、当然、必要な関係府県警察とは鋭意警察庁におきまして協議、連絡をとりながら進めてまいりました。六十三年の六件九名以降、そういうことで、その結果、少しずつではありますけれども数字を積み重ねてきた、こういう調査の経緯でございます。

 それと、いわゆる特定失踪者に対する取り組みということでございますが、そういった特定失踪者ということで、二百名とも三百名ともということで、北朝鮮による拉致の可能性が非常に高いというふうに言われておる状況があるということは十分私どもも承知をしております。先ほど来申し上げておりますとおり、私ども、十件十五名以外に相当これはあるではないだろうかというふうに思っておりますので、こういったいわゆる特定失踪者という御指摘も十分これは参考にさせていただいて、捜査を、調査をしているところでございます。

 その状況ということでございますが、個別具体的なことについてはちょっと控えさせていただきたいと思いますけれども、いろんな捜査を展開しております。当時の状況までさかのぼって当時の担当者に話を聞くとか、目撃者を、大変古い事案でございますが鋭意探すでございますとか、あるいは国内外の関係の機関等と緊密に情報交換を行うというようなこともございます。また、幅広く国民の皆様方に御協力を呼びかけたり、特に海外の治安機関との協力が非常に重要だろうと思いますし、こういったことについても鋭意進めているところでございます。

 大変事案が、時間が経過して困難な状況でございますが、なお一層努力してまいりたいと思いますし、先ほど来申し上げておりますように、こういったものの積み重ねによりまして、三名につきましてはこの拉致事案で逮捕状を得て国際手配も行っているということでございます。引き続き真剣な努力を重ねてまいりたいと思っております。

田中(慶)委員 あらゆる方法があろうと思いますし、また曽我さんを初めとして帰国されている皆さん方、一定の時間を置けばいろんなことも話していただけると思いますから、そういうことを積み重ねておく必要があると思います。

 特に、政府は、この拉致認定されていない人たち、私は、極端なことを言えば、北朝鮮、曽我さんと同じような形の中でとめ置かれている人たちが今のような形でたくさんいらっしゃるだろう、このように思いますから、そのことを含めて、より一層の真相解明を初めとして、その対策をぜひしておいていただきたい。これは要望しておきます。

 そこで、杉浦さんにお聞きしますが、総理が二回も訪朝されておりますね。そして、まあ家族の方が現在帰ってこられている方もおりますが、この拉致について、あるいは人道支援ということでお米を十二万トン、現在十二万五千トンですか、支援をされておりますね。こういう問題を含めて、私は日本の人たちが拉致をされている、この人の家族やいろんなことを考えたら、この人道支援をどう考えておられるのか。

 対話と圧力ということをよく言われております。むしろ圧力をかけてこのことを、我々拉致議連は少なくとも経済封鎖の問題やらこういうことを明確に主張しているわけですから、これについて、今みたいに中途半端ではなくして、しっかりとした、あなたたちはこれから真剣にいろんなことをやるというんですから、あの北朝鮮の、極端なことを言えば、いいかげんなやり方に振り回されるのではなくして、しっかりとやらないと私は問題の解決にならぬと思います。そのことについて、まず考え方を聞かせてください。

逢沢副大臣 人道支援の状況、また考え方について御質問をいただきました。

 日朝首脳会談におきまして、二十五万トンの食糧支援、また一千万ドル相当の医薬品の提供、これを両首脳間で合意、日本側からいたしますと人道支援という枠組みで北朝鮮側に提供するということを約束いたしたわけでございます。

 状況は、既に先生御承知のとおり、食糧につきましては十二万五千トンが今まさに配給をされつつある、モニタリングもかけているわけでありまして、七百万ドル相当の医薬品も同様な国際機関を通じての手続になっているわけでございます。

 この人道支援は、まさに釈迦に説法でございますが、国連が国際社会に対して北朝鮮の窮状に対してまさに人道的観点から支援を広く呼びかける、それに対して、日本、アメリカ、あるいは韓国、その他EU諸国がその国際機関の呼びかけに応じて北朝鮮に対して人道的な観点から支援を行うという枠組みで現在行われているものでございます。したがいまして、これは手続といたしましてはまさに別枠、別の手続というふうに私どもとしては理解をいただきたい、そのように申し上げておきたいと存じます。

田中(慶)委員 そんなこと聞いているんじゃないんですよ。

 少なくとも拉致議連を含めて国会の総意、そのことを含めて、経済封鎖なりこういうことをちゃんとしなさいと言っているわけだから、政府はやはりそのことを重く受けとめてアクションをしなければいけない。だから圧力を先にかけなさいということを、問題解決、今まで対話、対話といって何のことも見えてこないんですから、だから圧力かけなさいと言っているわけですよ。いいですか。

 この前、第三回の訪朝をされたでしょう、薮中さん。あのとき、あなた、大変御苦労さんだったんですが、皆さん大変期待していましたよね。飛行機から少なくともチャーター便、たくさんの荷物、コンテナ七個とか十個とか言われておりましたよね。あそこに相当の資料が入っていたんじゃないか、こんなことを言われましたよ。ところが、資料は一個とか二個だけで、あとはみんな空箱だったという話も聞いておりますよね。

 その辺の真実と、やはりあれに対しては相当みんな、マスコミだけじゃなく、国民全部が注視していたと思いますよ。その真実を聞かせてください。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 今まさに委員御指摘のとおり、我々、非常に重い責任を持って平壌に参りまして、これは政府を挙げてということで参ったわけでございます。そして、これはまさに真相究明である。私は、先方に対して我々の強い気持ちということで、日本人、我々すべてを含めて、十人の方々がみんな生きているんだということで、そのもとでの真相究明を求めたわけでございます。

 物証でございますけれども、もちろんいろいろのやりとりございました。五十時間にわたるやりとりという中で、そしてまた、そこでいろんな実際の情報をこちらからぶつけて、疑問点をぶつけてということで、これの精査が必要でございますし、今お話ございました物証につきましても、これは我々もっとたくさん期待いたしました。実際には限られたものでございました。そういう意味でも、必ずしも十分とはもちろん言えません。

 いずれにせよ、今は、そうして持ち帰った内容について政府を挙げて精査をして、さらに疑問点をただしていきたいというふうに考えております。

田中(慶)委員 要は、コンテナが七個とか八個とか言われて、しかし、そのうちの物証たる書類というのが、話によるとせいぜい一個であった、こういうことで、あとは物証ではない、飛行機のバランスをとるための云々とか、いろいろなことをおもしろおかしく言われているわけであります。

 私は、七つのコンテナが飛行機からおろされる、そうすると相当物証が北朝鮮から来たのかな、ましてこれからの、十五人のいろいろな人たちや、あるいはまた今後、本当に北朝鮮が日本に協力するということであるならば、やはり外交なんて対等でやらなきゃいけないわけですから、問題の解決をするということになれば、そういうものが十分提示されたのかな、こんなふうに期待していたのです。

 恐らく多くの皆さん方は、家族会の皆さんもそうだったでしょうし、いろいろな人たちがみんな期待していたと思いますが、中身が一つなんと聞くと、むしろ期待よりも、日本の外交どうなっているんだ、失望の方が私は多くなってくると思います。その辺を聞かせてください、内容を。

薮中政府参考人 これは先方の説明でございまして、我々として納得しているわけではございませんけれども、先方の説明の中には、関連の書類等々については、当時、関係した特殊機関が焼却してしまったというようなことをるる説明していた経緯がございます。そこで、我々が先方に要求をし、そして結果的に持ち帰った物的証拠というのは、一つではございません。しかし、今委員御指摘のとおり、さほどに大量のものではございません。

 我々が持ち帰りましたのは、従来からも御説明しておりますけれども、例えば交通事故ということにつきまして、交通事故の当時の関連の資料であるとか、あるいは今回の事案について、先方の言う責任者についての裁判記録、これについての写しであるとか、あるいは横田めぐみさんの生徒証、自筆のメモ、写真、そして今、先方が言う遺骨等々でございますけれども、そういうのを持ち帰ったということでございます。

田中(慶)委員 いずれにしても、コンテナに資料というとたくさん詰まるわけでありますから、そのコンテナが大体、テレビで見ていたときには、私が見た中では七つや八つはあったような気がしているわけですけれども、今のように、一つじゃない、複数といったってせいぜい二つでしょう、そんなことを含めて、あとはみんな中身が空っぽだったということが明らかになったわけです。これからもこの情報収集にもっと力を入れていただきたいということが一つ。

 もう一つは、最後になりますが、ある面では、北朝鮮に現在拉致されている人たち、あるいはまた明確になっていない、しかし北朝鮮に拉致されている日本の人たちや、あるいは日本人妻が、北朝鮮に行かれておられる人たちもいるわけであります。その人たちが、日本に帰りたいという形の中で、脱北者と同じような形の中で日本大使館に駆け込んだ場合、いろいろな、今までも脱北者の大使館としての取り扱いがまちまちだったと思います。

 そういう点では、脱北者と同じような考え方でやられてしまうと、拉致の人たちが御苦労されて日本に、大使館に、中国の大使館に駆け込んできたときに、これらについて政府として何らかの、せっかくこれだけ皆さん大がかりで、今後ちゃんと拉致問題を解決しようというときに、せめても北朝鮮から逃げて、脱北をして中国に、大使館に入った、そのときに、その辺の指示、命令がちゃんとしておかないと。

 また、顔だけ見ていたってわかりませんからね、はっきり言って。それで北朝鮮の方に帰されたのでは、とんでもない、今度は銃殺されるようなものですから。そういうことを含めて、その辺の対応はどうなっているのか、明確にしてください。

逢沢副大臣 脱北したケースのことを具体的に挙げて言及をいただいたわけでございますが、当然のことながら、海外における日本人、邦人の安全の確保、保護、これはいついかなる場合におきましても政府の責任において保護する、安全を確保する、当然のことでございます。

 今御指摘をいただいたケースを含めまして、仮に、日本国籍を有する拉致被害者が中国に、あるいはまた第三国に所在をしている、あるいはまたそういった公館に物理的に逃げ込む、駆け込むといったような場合につきましては、当然のことでございますけれども、当該国に対しまして、その保護について協力を要請するということでございます。

 これは、平時からそのような体制、連絡、また要請というものは、これは日本に限ったことではございませんけれども、日本国といたしましても、特にこの北朝鮮の事案を、率直に申し上げれば念頭に置きつつ、適切な対応をとらせていただいておる、そのように申し上げておきたいと思います。

田中(慶)委員 終わります。

赤城委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二分開議

赤城委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。赤嶺政賢君。

赤嶺委員 日本共産党の赤嶺政賢でございます。

 薮中局長は、前の、さきの外務委員会で私の質問に答えまして、日朝実務者協議を受けた後の問題として、さまざまな聞き取り、物証の精査を踏まえて今後対応する、このように答弁なさいましたけれども、精査の作業、これは今どういう状況でしょうか。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 先般の実務者協議、従来御説明していますとおり、五十時間に及ぶやりとりがございました。そしてまた、そこで得た物証も含めて、現在、政府挙げてその精査の作業を行っている状況でございまして、現在なおその精査を一生懸命やっている、そういう過程でございます。

赤嶺委員 出された物証について精査するということは必要なことだし、大事なことだろうと思うんです。私たちの党も、いろいろ出されている疑問点について、私たちの党なりにいろいろ議論もしております。

 その中のきょうは一つだけ具体的にお聞きしたいんですが、市川修一さんの問題です。

 心臓麻痺で水の中に沈んで死亡したという一九七九年九月四日当日の松涛園海水浴場の波の高さというのを調べてみました。調べ方は、韓国の新聞、東亜日報の当日の気象報であります。それによりますと、松涛園海水浴場がある東海方面は波の高さが二・五メートルとありました。

 波の高さのはかり方というのは、一定時間で観測された波を高い方から全体の三分の一を選んで、それらを平均して出していく有義波高を使用しているということはもう皆さん御承知のとおりだと思いますが、こうしてはかられた波の高さというのは、実際の有義波高よりも高くなる場合があるということを説明しているわけですね。

 特に、北朝鮮のような地形の沿岸部では、二・五メートルよりもはるかに高くなった可能性がある。場合によっては、最高の波の高さは一・五、六倍になるんじゃないかと言われますが、その場合だと四メートル規模の波というぐあいになるわけですね。果たして、そういう大きな波が起こっている時期にそういう場所で海水浴というのをやった、そういう説明というのは余りにも不可解だと思うんですが、この点いかがでしょうか。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに二年前からこの問題がございまして、九月の時期で、北朝鮮の中で果たして海水浴場ということで人が泳ぐのだろうかということがございますし、その他もいろいろとこれに関係いたしましては疑問の点がございます。

 今委員御指摘の当日の状況でございますけれども、先方からは、今般、気温が何度であった、最高気温が午後は二十二・五度まで上がったということを言っておりましたけれども、我々の持ちますいろいろの情報も含めて、それもまた精査の対象にしているところでございます。

 先方の説明だけを具体的に我々が聴取した限りにおきましては、まさにそこにいた係員の話として言えば、九月の二十日ごろまで毎年相当数の人が海水浴に来るんだということは言っておりました。この辺もまさに我々としてはきちんと精査できる内容でございますので、そういうことを含めて今精査しているところでございます。

赤嶺委員 当日の波の高さという角度から疑問を呈してみたわけですが、やはり精査すべきことはたくさん本当にあるだろうというぐあいに思います。

 同時に、精査を尽くして問題点をまとめてさらなる真実の究明を図る、そういう道筋を考えるということになるわけですが、それはそのために実務者協議を積み上げていくという理解でよろしいでしょうか。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 我々といたしましては、まず現在行っておりますのは、政府を挙げて先般の協議に臨んだわけでございます。その結果について、まさにこれも政府を挙げてということで、警察庁それから支援室、我々が持っておりますいろいろな情報もございます。今の段階におきましては、まずこの徹底した精査を行う、そしてこの検証を我々で行う、その上で次の必要な手だてというのを考えていきたいというふうに思っております。

赤嶺委員 十一月十七日に党首討論が行われました。その中で小泉総理は、相手の出方がけしからぬといって交渉を打ち切れば拉致問題は解決しない、国交正常化もますます離れる、それでいいのか、このように述べております。協議継続の必要性を強調しているわけですが、協議を積み上げて、そして真実をきわめていくことが本当に大事になっているというぐあいに思います。

 それは、六カ国協議の第一回の会議の合意の立場でもあると思うんです。去年の八月の第一回六カ国協議では、平和的解決のプロセスの中で、状況を悪化させる行動をとらないということで六カ国が同意をしております。

 しかしながら、一部には制裁論が繰り返し主張されております。これは実際には、拉致問題を初め日朝間に横たわる諸問題の解決に扉を閉ざすだけでなく、現在六カ国協議で道筋をつけようと国際的に努力している核問題の解決にも重大な逆流を持ち込むものでしかないと思いますけれども、これは、逢沢副大臣はどのように考えますか。

逢沢副大臣 累次答弁をさせていただいておりますが、何といっても拉致問題そして核の問題、ミサイルの問題、これらを包括的に解決をして正常な関係を築く、そういった基本方針で対北朝鮮外交を進めております。そして、核の問題を扱いますテーブルは、委員御指摘の六カ国協議の場でございます。過去三度、六カ国協議を開いたわけでございますが、アメリカの大統領選挙も終わり、さまざまな状況の中で、できるだけ早いタイミングで第四回目を開くべきだ。そういった状況といいますか環境が整いつつあるというふうに理解をいたしております。

 さきのAPECの会合でも、バイの会談を通じて、この六カ国協議、六者のテーブルを非常に大事にしていくべきだ、あらゆる会合の場を通じてそのことが確認をされたわけであります。さきのASEANプラス3におきましては、日中韓の首脳レベルの会合あるいは外相レベルの会合も開かれました。

 同様な意思の確認がされているわけでございまして、このことは大切にしてまいらなくてはなりませんし、またあらゆる手だて、手段を通じて、北朝鮮側に無条件でこの六カ国協議に対応するように、出てくるようにといったような要請あるいは働きかけ、それを今までもやってまいりましたし、これからもやっていく必要があろうかというふうに考えております。

赤嶺委員 六カ国協議の協議の場、扉を閉ざすようなことがあってはならないし、それで六カ国協議の第一回の会合で参加国が合意をした、平和的解決のプロセスの中で状況を悪化させる行動をとらない、この同意をきちんと踏まえた対応が求められるということを強調しておきたいというぐあいに思います。

 それで、経済制裁論ということについてさらに伺いたいんですが、制裁論の一つに北朝鮮への食糧支援を直ちに中止せよという主張があります。北朝鮮への食糧人道支援は国連の機関が世界に呼びかけ国際的な合意のもとで取り組まれている活動だと承知をしておりますが、食糧人道支援について、国連の呼びかけとはどういうものか、そして各国は今どの程度支援しているのか、これについて説明していただきたいというぐあいに思います。

逢沢副大臣 国際機関が毎年北朝鮮の状況を調査をし、精査をし、国際社会に対してその支援について呼びかけを行っております。WFP、世界食糧計画は、本年でございますが、ことし一年間の対北朝鮮食糧支援に関し全体で約四十八万トンの穀物等の食糧支援を国際社会に要請している、そういった状況にございます。

 WFPによりますと、これまでに我が国から、例の二十五万トンのちょうど半分でございますが、十二万五千トンが既に対応されております。加えて米国からの五万トン、EU及びEU諸国からの三万一千トン、そして韓国からは十万トン、合計三十五万六千トンの支援がなされておりまして、WFPが要請をしている四十八万トンに対し充足率は七四%、そういう状況にあると承知をしております。

赤嶺委員 この人道支援が対象にしているのは、どういうところでしょうか。

逢沢副大臣 まさにWFPを初め責任ある国際機関が、北朝鮮の地域あるいはまたさまざまな機関、施設、そういった状況について支援の必要の度合い等々について毎年調査を行っております。そして、それに基づいて国際社会に支援方を要請する、アピールを出す、そういった手順であるというふうに承知をいたしております。

 また、モニタリングにつきましては、WFPのいわゆる職員が約五十名北朝鮮に滞在をし、厳格なモニタリングを行っている。我が国の外務省の職員もそこに派遣をし、WFPの職員と同行する形で実際にモニタリングに参加をした、そういった経緯もあるわけでありますが、全体として責任ある中立的な国際機関がその人道食糧支援については責任を負いながら現実を動かしておる、そのような理解をいたしております。

赤嶺委員 私たちは小泉内閣の立場に正面から対決をしているという姿勢を堅持している党ではありますが、この国際人道支援、これについては、小泉首相も述べておりますが、食糧支援と拉致問題は全く別の筋の問題であるという立場を私たちもとっております。食糧の支援を中止することは、全く理由が立たないと思います。子供や妊婦やあるいは高齢者六百五十一万人、これに対する人道支援でありますから。そこで、国際的にもそういうことが、中止したら日本政府の立場を失わせる性質の問題であると考えています。そういう立場を求めるものであります。

 最後に、先ほどちょっと答弁ありましたが、今後、六カ国協議の年内開催が焦点になっていくわけですが、具体的に日本政府はこれから六カ国協議の開催に向けてどんな働きかけをしていくお立場なのか、それを説明していただけますか。

逢沢副大臣 先ほどにも答弁をさせていただきましたが、韓半島、朝鮮半島の非核化を実現するためのテーブル、六カ国協議、非常に大切なものであると理解をいたしております。

 最初の六カ国協議が開かれましたのは二〇〇三年の八月、第二回目はことしの二月、そして第三回目はことしの六月に開かれ、それ以降途絶えたままの状況になってございます。先ほどにも申し上げましたが、できるだけ早いタイミングに第四回目の六カ国協議を開く必要性が非常に強いものがあるというふうに改めて申し上げておきたいと思います。

 さきのAPECの会合あるいはASEAN3の場を通じまして、この六カ国協議の早期開催の必要性、これを確認いたしたところでありますし、またそういった私どもの認識をあらゆる機会を通じて北朝鮮当局に強く伝える、働きかけをいたしております。また、何といいましても、いわゆる調整役を務めている中国のリーダーシップ、北朝鮮に対する働きかけ、それについても強い期待を私どもは持っておるということについても、率直なところ申し上げておきたいと思います。

 核を手放すことによって得られる大きな利益、率直に金正日その人が、また北朝鮮当局がそのことをしっかり受けとめる、そういった状況をあらゆる努力を傾注して確保していく、引き続き頑張ってまいりたいと存じます。

赤嶺委員 終わります。

赤城委員長 次に、西村真悟君。

西村(真)委員 まず冒頭、先日、奈良で幼い女の子が殺害されて、その写真が犯人から母親のもとに届くという極めて残酷な事件がありました。政府の御努力はわかりますが、次から次と向こうが提供するものを、お骨であれ写真であれ持ち帰ってきて、これが現在、家族に残酷な心理的影響を、負担を、また圧迫を与えているという事実は何を意味しておるのかということについて、これから質問させていただきます。

 冒頭、本質的な部分についてお聞きいたしますが、北朝鮮に対する政府の姿勢の原則は、小泉総理大臣が拉致問題の解決なくして国交正常化なし、国交の樹立はないというドクトリンを発表されておりますが、政府の姿勢はこのとおり現在も変わりなき姿勢でありますかどうか、確認させていただきたい。

杉浦内閣官房副長官 おっしゃられたとおりでございます。

西村(真)委員 では、拉致問題の解決とは、政府は何人が帰ってくれば解決するんだと判断しておられるのか、お聞きしたい。

逢沢副大臣 政府が、間違いなくこれは北朝鮮によって引き起こされた拉致の事案であると正式に認定、断定をいたしておりますのは、御案内のとおり十件十五名でございます。五人の方は既に帰国を、来日を果たされまして、残る十名の方の無事救出、これにまずは全力を尽くしているところでございます。

 また同時に、いわゆる特定失踪者と呼ばれる方々、二百人ともあるいはまた四百人とも言われている、その特定失踪者の方々、私どもとしても、既に日朝協議の場において、非常にこれは蓋然性として北によって引き起こされた拉致の可能性が強い、そういった事案につきましては、特に個別具体的に固有名詞も挙げ、情報の提供を求めているわけでございます。

 十名の方々の無事救出、また真相を明らかにする、同時に特定失踪者の方々について我々日本側が、日本国民が納得がいく、そういった状況を確保しなければ、いわゆる拉致問題の解決というわけにはいかない、そのように承知をいたしております。

西村(真)委員 金正日は十三名を拉致したんだと認めた、五名生きている、八名死亡だと。日本側は、それにプラス二名も拉致されておるんだ、こういうことであります。今、具体的数字として挙がっているのは、向こうは十三名、こっちは十五名。

 今の答弁では、この十五名が帰ってきても拉致問題の解決にはならないんだとおっしゃったと確認してよろしいか。

逢沢副大臣 政府が公式に、正式に、これは北による拉致であるということを確認、断定をさせていただいているのは十件十五名でございます。

 そして、いわゆる特定失踪者と呼ばれている方々がいらっしゃる。鋭意、警察当局において捜査を進めているわけでございますが、これはもちろん、北による拉致であるということが確認をされれば、拉致事案の中にそれは追加をする、組み込む、こういったことになります。

 いずれにいたしましても、特定失踪者の方々の案件を含め、真相究明をしていかなくてはならない、そのように申し上げておきます。

西村(真)委員 政府は、十五名が解決されたという表現で、解決されたときに拉致問題は解決だという前提ではないというふうにお聞きして、では、寺越武志が平壌にいたいので平壌にいる、母親は日本に帰ってくれと言っておる、このことで経緯して、拉致問題は解決しているんですか。寺越武志の件があるから解決しないんですか。どちらですか。

 先ほど四百名を超える特定失踪者があるというふうにコメントされましたが、この特定失踪者の中に寺越さんもまた入っておるわけですが、同じような寺越、名が知られない寺越、まだたくさんおるという状況だと私は思いますが、具体的に、寺越武志が向こうにおって、拉致問題は解決したことになるのか、ならぬのか、政府の立場ではどうですか。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御承知のとおり、寺越武志さんにつきましては、我々が言う十件十五名の拉致被害者の中に認定されているわけではございません。

 今後の問題でございますけれども、これも委員重々御承知のとおりでございますけれども、寺越武志さん自身は、北朝鮮に残って、御自分の御意思で、現時点においても生活をしたいんだということを我々伺っておりますけれども、当然のことながら、将来的に自由な往来が本当にできるのかどうか、この辺のところは、よく我々としても確認していく必要があるというふうに考えております。

西村(真)委員 答えていないので、それ以上聞いてもまた答えないんだから言いませんが。

 寺越武志が平壌もしくは北朝鮮で、ここにおって生活するという意思を尊重するのならば、今帰ってきている五名、平壌でテレビ画面に映って何と言ったか。おじいさん、おばあさん、孫に会いに来てくださいと言ったじゃないか。こういうことなんだ、拉致問題の本質というのは。

 政府の今の立場では、平壌ですべての日本人が、日本人妻でもいいですが、首領様のおかげで元気に生活しております、どうか御心配なさらないようにと言ったら、拉致問題は終わるのかね。どうですか、政治家として。違うでしょう。言ってください。

杉浦内閣官房副長官 最終的な本人の真意の確認が必要だというふうに私は思います。

西村(真)委員 何たる答えをするんだよ。最終的に本人のどこでの意思表明、自由な意思表明だと伺っておるの。そうですというふうに言っていると僕は今発言しておきますが。

 これは、今政府がやっている三回の実務者協議の相手の本質にかかわる認識を表明されておるので、もう一遍確認いたしますが、今、官房副長官は自由な意思表明だと。平壌で自由な意思が表明できるのかどうか。どうですか。

杉浦内閣官房副長官 今までのケースを拝見していると、自由な意思表明はできないように認識しております。

西村(真)委員 だったら、寺越武志のことを質問したことに際して、向こうでどういう意思を表明しているからということ、それを重大な要素にするかのような発言は、以後、一切この委員会でしてもらったら困る。この今の認識は、後の質問のときにも関係しますから、よく把握して覚えておいていただきたいと思います。

 では、政府は、一体十五名のほかに何人の被害者がおるか、実数をどうも先ほどからの答弁では把握していないようだが、把握する努力をしておるのかということについてお尋ねします。

 先ほど特定失踪者という固有名詞が出たが、この特定失踪者を調べ上げ、この四百名になんなんとする人たち、特定失踪者という名称をつけて独自に調査しているのは、政府の機関ではなくて民間の機関だ。一体、政府は、政府の立場としては、各警察に行方不明者のリストを挙げさせ、徹底的にその行方不明のいきさつを調査して、特定失踪者調査会がやっているような、これは北朝鮮に拉致された可能性がある、これは大いにある、そういう作業を今やっておるのか、今までやってきたのか。やってきた上で、拉致問題の解決なくして国交正常化なしという大ドクトリンをぶち上げたのかということについて、お伺いいたします。

瀬川政府参考人 お答えいたします。

 その十件十五名の事案以外にも、北朝鮮による拉致の可能性は排除できない事案があるというふうに私どもは考えているということは、先ほど来御答弁をさせていただいているとおりでございます。

 その関係につきましては、従来から、いろいろな情勢にかんがみながら関係府県警察とも連携をとりながら、警察庁において調整を図りつつ真相究明に努めてきたところでございまして、そういった中で、今委員御指摘のいわゆる特定失踪者とされる方々の状況につきましても、私ども、情報提供をいただいたり連絡をとり合ったりしながら大いに参考にさせていただいて、こういった調査、捜査を進めているところでございます。

 また、そういったもの以外にも、年間多くの方の行方不明の届け出等も警察にもなされておりますし、また本年に入りまして、一斉告発という形で、警察に対する北朝鮮による拉致ではないかという訴え出も多数寄せられているところでございます。

 そういった状況にかんがみまして、従来から真相究明、全容解明のための努力をしているところでございますけれども、さらに警察の総合力を挙げて徹底を図るべく、先般、全国の拉致問題の担当課長を招集した会議を開催いたしまして、情報を共有し、総合力を挙げた捜査が実施できるように体制を整えてきているところでございます。

 今後とも、全容解明に向けて努力をしてまいりたいというふうに考えております。

西村(真)委員 今、警察の方の答弁があった。私がお聞きしたのは、政府は、内閣は、小泉総理がそういうふうな拉致問題解決なくしてと言う以上、拉致問題とはそもそも、被害者は何人であるかということを、今警察が述べた、そういう努力の末に何名だと報告を受けておるのか。

 特定失踪者は、独自に自腹を切って調査して、四百を超えておるという結論を公表しておる。政府は、拉致の疑いのある失踪者は何名だというふうに把握しておるのか。今、警察が努力の跡を語った。それで何名と報告を受けておるのか。

杉浦内閣官房副長官 私が五月に就任して以来、拉致幹事会、北朝鮮関係閣僚会議の下にある拉致問題についての幹事会でありますが、四回ほどやっておりますが、会合のたびごとに、警察当局に対しまして、捜査を徹底するようにという指示を行ってまいっております。

 その上でございますが、今まで認定されていた方以外にも疑いの濃い人がいるということは聞いておりますが、具体的に何人という数字まで挙げて伺ってはおりません。捜査の結果、ともかく被害者が日本におられないものですから直接聞き取りはできないし、古い話でありますからなかなか情況証拠はそろわないけれども、それでもいろいろな方から受けた情報とかそういうものを総合して、拉致された可能性の強い者がいるということは聞いております。

西村(真)委員 なお漠然とした話。民間でも四百名以上の数字を発表しておるのに、政府としてはいまだ漠然とした数字も挙がっていない。

 では、今あなた方が特定失踪者という名称を挙げた特定失踪者調査会が、また救う会という民間組織が拉致被害者と認定を求めている八名。また、このごろ向こうからの脱北者が持ってきた写真によると、藤田進、加瀬テル子、このそっくりな写真が出てきておる。この人たちについては、警察はいろいろ努力をやっているというその努力の成果をあなた方はもって認定しつつあるのか、できないのか、能力がないのか、どっちなんですか。

逢沢副大臣 北朝鮮による拉致であるかどうかの最終的な判断、これは警察の捜査の結果ということによろうかというふうに思います。

 しかし、いわゆる特定失踪者と呼ばれている方々の中に、もちろん警察も、あるいはまた私ども外務省を含めた政府全体として情報を集め、全体としての捜査を前進させておるわけでございますけれども、非常にこれは北朝鮮の拉致の可能性が高い。

 それらの方々については、例えば二〇〇二年の秋のクアラルンプールにおきますいわゆる日朝会議におきまして、三名の方々のことについて特に言及をした。そして、今先生がおっしゃられました加瀬テル子さん、藤田進さん、このお二人の方々については、日朝実務者協議の場におきまして、二人の方々の固有名詞を挙げ、強く情報提供を迫った、そういう経緯がございます。

 今後も、捜査を鋭意、積極的に進めながら、そういった取り組みを強化していく、適切に判断をしてまいりたい、そのように存じます。

西村(真)委員 失踪者というのは、文字どおり失踪して、いてないから失踪者なので、いてない人があるので調査は難しいと言われれば、犯罪捜査はできないですね。それから、泥棒に何を盗んだかと聞いて答えが返ってくるということを期待するのはばかげたことである。したがって、相手方に言ったからといって、何も努力したことにはならない。相手方に言う前に、動かぬ証拠をこっちでどう判断しているかということであります。

 この問題については、時間のみ経過いたしますので、具体的に調査していないからわからないよと。質問もできない。

 次に、この本質は何かということについて聞きますよ。これは、我が国内体制が招き入れた大惨害ではないかと思うので聞きますよ。

 一九七四年八月十五日、昭和四十九年、文世光という在日朝鮮人は、日本で北朝鮮の工作訓練を受けて、工作員に成り済まして、日本の警察からピストルを奪い、韓国に真正の日本人パスポートを持って入国して、朴大統領を狙撃した。この事件、文世光は生き残って、すべてを供述したので実態が知られた。北朝鮮が日本経由で、日本を道具としてテロを始めているという重大な、それで日韓の国交がどうなるかという国家間の重大問題にも発展した事件であります。

 この事件で、警察及び我が内閣は、北朝鮮の活動に対する極めて重大な警戒心を持ってしかるべきであったと私は考えておって、次の事件に進みます。

 昭和五十二年の九月、石川県警は久米裕拉致犯人を現行犯逮捕した。この者は詳細な供述をした。この者の所有する乱数表を同時に押収して、この乱数表の暗号の解読に成功した。これによって、石川県警は警察庁長官賞を受賞した。この以上の事実については間違いございませんか。

瀬川政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の事件でございますが、これは、北朝鮮工作員に取り込まれた在日朝鮮人が、四十五歳から五十歳ぐらいの日本人独身男性を北朝鮮に送り込めという指示を受けまして、昭和五十二年の九月、かねて知り合いであった東京都在住の日本人男性を石川県の宇出津海岸に連れ出して、北朝鮮工作船で迎えに来た別の北朝鮮工作員に同人を引き渡した事件でございます。昭和五十二年九月に石川県警察が検挙したものであります。

 お尋ねでございます乱数表は、証拠として押収をしております。また、暗号の解読をしたのかどうかということでございますが、暗号解読ができたかどうかということにつきましては、事柄の性格上、これは答弁を差し控えさせていただきたいということを御理解いただきたいと思います。

 それから、警察庁長官賞を受賞したか否かでございますけれども、これにつきましては、関係書類が現在残っておりませんので、お答えすることはできません。

西村(真)委員 先ほどの文世光事件、それから三年後のこの事件で、日本政府はこの時点、つまり昭和五十二年の九月末の時点で、北朝鮮が日本を工作基地として組織的に日本人を拉致等々する行動に出ていると認識しておったか、もしくは認識し得べきであった、この時点についてこう思うんですが、今、政治家のお二人はどう思われますか。

杉浦内閣官房副長官 通告を受けておりませんので、御答弁申し上げる資料を持ち合わせておりません。

西村(真)委員 通告をしていますよ。政府に通告していますよ。

 あなたは弁護士でありますから聞きますが、交通事故のときに、前方に歩行者がおって、この時点で、ハンドルを右に振るとかブレーキを踏むとかいう注意義務を果たし、実行し、もって前方の歩行者に車をぶち当てないという注意義務があるわけです。まして、政府には国民を守る注意義務がある。

 そして、先ほど言った文世光事件、それから昭和五十二年の九月に、これは拉致現行犯を逮捕している。そして、乱数表を解読したかどうかは、答えられませんと言ったけれども、これは警察庁長官賞を受賞した事例なんです。こういう事例がそろえば、国民を守る注意義務を持つ政府としては、この時点で、北朝鮮が日本人を組織的に拉致しつつあることを知り、もしくは知り得べきであった時期ではないか。少なくとも石川県警は知っていた、警察庁も知っておったわけですから、私はそう思うが、いかがかなと。通告をしておりますから、お答えください。

杉浦内閣官房副長官 先生がおっしゃった交通事故のケースとか、あるいは国が注意義務を持つべきだという点はそのとおりでありますが、当時の政府がどのようにそういう事件を認識してどういうふうに対応したかについて、今ここで答弁する資料は持ち合わせておりません。

西村(真)委員 知り得べきであった時期を我々は今確定して、そしてその教訓を生かしていかなければならないという意味で質問している。政府をどんどん攻撃して何かするという気は全くないです。

 答えられないでしょう。乱数、機密保護上、答えられない。だから、同じこの問題を再発させたらならぬでしょう。再発させたらならぬ。再発させたらならぬものだから、この時点でそれに気づけば防げたという時点があるはずなんだ。これで防げなかったから、四十五日後に横田めぐみさんは拉致されておるわけだ、同じ日本海側から。

 一般国民は、刑事司法において、こういうことの責任はいつも迫られておるわけでしょう、うっかりしてぼんと注意義務違反で交通事故を起こしてしまった国民は。ましてや我々は、政府、国会全体として、いつの時点で不作為があったのか、不作為が生じてきたのかと確定せないかぬ。薬害エイズとある意味では同じかもわからぬ。厚生省の課長が逮捕されて責任をとらされるだけではだめなんだ。こういう国民の安全にかかわることで、現在進行中のことですよ、過去の問題じゃないですよ。だからお聞きしておるわけです。

 要求するのは後日でよろしいけれども、今答えられるならお答えいただきたい。

杉浦内閣官房副長官 後日、御質問の具体的な点については御答弁させていただきます。

 一般論として言えば、私ども、横田めぐみさんの拉致された現場へお伺いをし、当時の実情を聞き、そのお宅まで行ってまいりましたが、あの当時、何でこんな事件が起こったのか、それを警察とか海上保安庁とかは防げなかったのか、そういう思いを強くいたしました。

 一言で言うと緩んでおったとしか言えないんですけれども、不審船の問題にしても、追跡したら振り切られた、海保の船が追いつけなかった、そういう装備の弱点ももちろんあったわけでありまして、将来に向かって、この事件から学んで我が国の備えをしっかりと考えなきゃいけないという意味では、先生の御指摘は真摯に受けとめなきゃいかぬと思っております。

西村(真)委員 この時点なんですよ、ポイントは。それで、この時点を何でうっかりしたんだということを言われたけれども、その通り過ごしたたために、四十五日後には横田めぐみさん、十一月十五日、年越して田口八重子さん、それから今帰ってこられている五名は、ほとんどその明くる年の八月十五日までほぼやられておるということでございます。

 ついでに申し上げますが、昭和五十二年の九月の二十九日、ダッカ・ハイジャック事件で、時の内閣は人の命は地球より重いといってテロリストに屈服しておる。知られるテロに屈服した。それと、もう一つあった。知られざるテロに屈服した、不作為によってね。

 それで、国民にわからないまま打ち過ぎて二十数年だ。その間、家族は孤独な闘いをしてきた。日本国内では、拉致はでっち上げだという勢力はつい最近まで大勢力であったということであります。これが拉致問題の出発点であり、出発点に既に本質的問題が含まれておりますなと私は申し上げておるわけです。

 次に行きますが、北朝鮮の本質、先ほど私は、今帰ってきた五名の被害者も平壌で映像を映されれば、おじいちゃん、おばあちゃん、逆に平壌に来てくださいと言っておったんだ。したがって、向こうでは自由な意思は表明できないと申し上げて、政府側の皆さんもそれに同意されたと思う。

 それで、北朝鮮においては、北朝鮮政府の役人は金正日の言っていることと違うことを公的に表明することができるのか否かということについてお聞きしますが、どういう認識を持っておりますか。北朝鮮の金正日体制の本質、表現の自由に関して、お答えください。

逢沢副大臣 北朝鮮の国内体制がどのような状況になっているか、あるいはまた、もっと本質的に申し上げれば、北朝鮮はどういう国家であるのかということにもなろうかと思いますが、極めて閉鎖的な国であることは全くそのとおりであろうかと思います。したがいまして、北朝鮮から得られる情報にさまざまな意味で限界があるという率直な実感を持っております。

 一般的には、金正日国防委員長、労働党の総書記でありますけれども、国防委員長がいわゆる主体思想のイデオロギーのもと、軍を含めた国家全体を掌握している、統制をしている、そうされていると理解をいたしております。

 したがいまして、そういう状況の中、さまざまな制約はあるわけでございますけれども、北朝鮮内の現実あるいはまた状況、どういった体制になっているかということについて、情報収集については必要な限りの、また可能な限りの努力を行っていることを申し上げておきます。

 その上で、先生の御質問でございますけれども、いわゆる公的な立場なる方の表現の問題でありますけれども、常識的に理解をすれば、表現の自由、発言の自由についてはかなりの制約があるというふうに解さざるを得ないということを率直に申し上げておきたいと存じます。

西村(真)委員 答弁して、お待ちしていたらあっという間に時間が来ますので、端的にお聞きしますが、二年前に金正日が八名は死んだと公式に告げた国で、八名は生きているとその政府の役人が表明できるのかどうか。これは表明できると思って三回も調査しておるのかどうかということです。どうですか。

逢沢副大臣 第三回目の日朝実務者協議がさきに平壌で行われたわけでございます。薮中氏を団長とする十九名の調査団を派遣いたしたわけでございますが、北朝鮮側からの発言は、いわゆる十名の方々について、八名の方は亡くなっておられる、二名の方は北朝鮮共和国に入国した事実関係はない、そのような発言があったと理解をいたしております。

西村(真)委員 与野党対立の委員会じゃないんだ。国民を救出するための委員会でしょう。だから聞いておるんだ。

 向こうの、北朝鮮の金正日が死んでいると言った八名に関して、何遍交渉しても生きているという答えは向こうは出せない体制なんだということを私が主張し、そうですかと聞いておるわけです。出せる体制だというのなら、百回でも実務者協議やって成果が上がるでしょうと私は言っておるわけですよ。いかがですか。いつ打ち切るのかということも含めて聞いておるんです。どうぞ。

逢沢副大臣 したがいまして、今回、三回目の協議を行い、延べ五十時間にわたるやりとりを行いまして、こちらが期待したほどではなかった、率直に言えばそうでございますけれども、幾つかの物証も持ち帰ったわけでございます。

 そういったものを精査し、今までも幾つもの疑問や不自然な点、不可解な点があったわけでありますが、その疑問あるいはまたつじつまが合わない点、こちら側が持っておる情報との精査、そういうものを通じてさらに真相に迫っていく。もし矛盾や不可解な点、あるいはまた、ここは明らかにうそをついている、そういうことがあれば、それを徹底的にえぐり出していく、それを何らかの形で北に突きつけていく、そういう作業が必要であるという立場に立っております。

西村(真)委員 そこで、その資料のことについて、私が冒頭触れたことを申し上げる。

 北朝鮮はその資料をどういう目的で出しておるのかといえば、被害者を痛めつけるためですよ。あきらめさせるためですよ。焼いてばらばらになった骨。あどけない顔の、もしあの拉致がなければ自分の胸の下で見られたであろうあのひとみ、その写真を送りつけてくる。これは、やっていることの説明はわかる。説明はわかるけれども、総体としては、死んだとあきらめさせるための北朝鮮の資料を後生大事にチャーター機まで用意して持ってきて、精査しているのではないか。

 これは例えは悪いですよ。エスピオナージの映画で出てくるでしょう。犯人が犬に追いかけられたときに何をするのか。犬の前で肉を投げていくんでしょう。これは、その肉に犬が飛びついてしばらくは追ってこない、つまり時間稼ぎなんだ。日本政府に資料と称して与えて、日本政府はまじめだから精査する、万景峰号がその精査の段階で堂々と公然と入ってくる。いつものパターンをまじめな日本政府はやっておるんだ。みんな優等生だ。優等生だから相手の戦略がわからないんだ。

 金正日の戦略は明らかに日本政府をだますことだ。あなた方はだまされていると私は言いたい。だまされていると認めるわけにはないから、次に質問せざるを得ない。またこの委員会ありますから、やりますよ。やりますけれども、実に情けない。もっと立ち向かってくれ。

 では、日本国内の北朝鮮支援組織について、これをいかに把握しておるのか。

 官房副長官、真野町に行きましたか、佐渡の。真野町へ行きましたな。佐渡の真野町で、例えばその町の人間ではない者がうろうろしておったらすぐわかる、少ない人数の町ですわな。

 そこで、曽我ひとみさんの母親の曽我ミヨシさんに関して、北朝鮮は、日本人あっせん業者から受け取っていない、こう言っておるわけです。この日本人あっせん業者とは何かということをお聞きしたい。調べておりますか。

瀬川政府参考人 平成十四年十月の拉致問題に関する現地事実調査結果、それから先般の第三回日朝実務者協議、こういったところにおきまして、北朝鮮側から、委員が今御指摘のような点が指摘されているということを私どもとしても承知しておりまして、こういった点も含めまして、捜査活動を通じて真相の究明を現在図っているところでございます。

西村(真)委員 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 そして、最後に一つだけ、平壌共同宣言とは何かということについてお聞きします。

 抽象的に聞くのではありません。金正日は、この平壌共同宣言と称する文書に署名するとき、核開発をしておった、継続していたというふうに私は認識しておりますが、政府はいかに認識しておりますか。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御承知のとおり、北朝鮮による核開発というのは相当古い歴史のあることでございますが、一つの大きな状況というのは一九九三年、四年にございました。その活動というのは、あの時点においては停止された状況にあったというのが一つの……(西村(真)委員「二年前の時点で」と呼ぶ)二年前でございますね。二年前、二〇〇二年九月の状況において、一九九四年から凍結されていたのが一つの核開発活動でございます。

 これは、委員御承知のとおり、プルトニウム型の核開発活動というのをやっていた。それは一九九四年の段階で凍結されて、IAEAの査察官がそこにおった状況ですから……(西村(真)委員「二年前、署名のとき」と呼ぶ)二年前、申し上げておりますけれども、二〇〇二年九月の段階では凍結されていた。

 その他の核開発活動がその状況であったのかどうかということが、まさに濃縮ウランの開発の疑惑の問題でございます。これについては、現状、我々、六者協議において、国際社会全体としてこの問題について相手に突きつけている、そういう状況でございます。

西村(真)委員 要するに、開発し続けておったんですよ。

 それから、平壌共同宣言は国家を拘束するものではない、かつてのヤルタ密約と同様、首脳個人の意思の表明にすぎないということだけは発言させていただいて、質問を終えます。

赤城委員長 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 民主党の渡辺でございます。引き続き質問いたします。

 二時まで副大臣、副長官がいられる。ということは、あと二分で出られるということでございますので、早速御質問をいたします。

 きょう、この議論をずっとしてきた中で、拉致問題の解決の糸口というのは一体見出せているんだろうかということでございます。その中で一体いつまで実務者協議を続けるのか。私は、やはりどこかで一つのデッドラインというか、線を引くべきだろうと思うんです。

 結局、先ほど西村委員の話にもございました。とにかく時間稼ぎをして、そのたびそのたびに小出しに小出しにしてきては交渉を長引かせる。もうかれこれ、小泉訪朝から二年以上がたっているわけでございまして、今日になってもいまだ進展がない。

 確かに、曽我ひとみさん初め拉致被害者が帰ってきた、そしてその御家族が帰ってきた。そして、その後、我々が突きつけてきた幾つもの疑問点については、何ら誠意ある回答が出てこない。

 その点につきまして、いつまでこの実務者協議を続けるべきだと考えていらっしゃるのか、その点についてお答えいただけますか。

逢沢副大臣 大変重要な点について御質問、指摘をいただいたというふうに思います。

 三回目の実務者協議を終え、今、累次答弁をいたしておりますけれども、五十時間に及ぶやりとり、また、限られていたとあえて申し上げますけれども、手にすることができた物証、これを今鋭意精査いたしているところでございます。したがいまして、今日までも幾つもの不自然な点、不可解な点、疑問点があるわけでありますが、今回の三回目で得られたものからの精査をそれに加えて全体の評価をしていかなくてはならない、そのように思います。

 したがいまして、今後のことでございますけれども、やはり、真相究明のためには、北朝鮮との間で何らかのやりとりは引き続き必要なんだろうというふうに考えます。しかし、今までのような形の実務者協議というものが果たして本当に有効であるかどうか。もちろんこれは、精査の結果、全体を評価してみなければ確たることは申し上げられないわけでございますけれども、精査の上、今後どういう形のやりとりが最も適切であるのか。

 あるいは、その他の手段ということが、より拉致問題の解明、真相の究明ということにもし積極的なことを見出せるという結論があれば、そういった方向を考えなくてはならない。精査の結果、慎重に、また政府として責任ある今後の対応について見出していきたい、そのように考えております。

渡辺(周)委員 それでは、今気になるお言葉を使われましたけれども、その他の有効な手段があるかもと。それは何かシミュレーションしていらっしゃいますか。具体的にどういうことをイメージしていらっしゃいますか。

逢沢副大臣 個別具体的に、例えばA案あるいはB案ということを今この場所で申し上げるわけにはいかないというふうに思います。

 しかし、一回、二回、三回と、いわゆる実務者協議を積み重ねてまいりました。一回目、二回目と三回目は、やりとりの時間あるいはまた交わした会話の総トータル、得られた物証、やはり一回目、二回目と三回目はレベルが違うわけでございます。四回目以降があるとすれば、それは一回目、二回目、三回目を踏まえた生きた形でなくてはならない、そのような意味で申し上げたわけであります。

渡辺(周)委員 では、言い返せば、四回目はないということもあり得るというふうに理解してよろしいでしょうか。

逢沢副大臣 先ほど申し上げましたように、真相究明のためには、北朝鮮と引き続き何らかの形のやりとりは当然必要になってこようかと思いますが、その形式あるいは様態、それについてはあらゆる可能性があるというふうに申し上げておきたいと思います。

杉浦内閣官房副長官 現時点においては、向こうから来た資料を精査して、こちらの得ている情報と突き合わせて徹底的に調べるということがなすべき第一のことであります。それから先の問題については、実務者協議もあり得るかもしれないし、その結果次第。六カ国協議もまだめどがついておりませんが、いずれ開かれることになるでしょう。

 六カ国関係各国にも拉致問題に対する協力を求めて、アメリカ、ロシア、中国等も協力を約束しております。そういう圧力をかける、国連にも引き続き持ち出すということで、対話と圧力ということで、この拉致問題が、御家族の皆様方の納得のいく解決はもとよりのこと、政府としても満足すべき納得のできる解決を得ることを目指して努力してまいる所存でございます。

渡辺(周)委員 先ほど来からずっと、今の御答弁でもそうですけれども、結局、いつ、今回の、遺骨と北が主張しているこの骨のDNA鑑定が行われるのか。

 何か、この委員会の答弁よりも重要な御用件があるということでございますので、それは理事会でそういうふうに申し合わせましたので、どうぞ、この拉致特よりも重要な御用件の方に行っていただいて結構でございます。お二方、そういうことでございますので、どうぞ。

 それで、今申し上げました、一体この鑑定というのはいつ出てくるのか。訪朝されて第三回目の実務者協議をやってから、もうかれこれ二週間以上の日がたっているわけでございます。

 それから、いろいろ指摘されている、例えば写真、成人されためぐみさんらしき人物が立っている写真が影の位置が違うと、早速に指摘をされました。まさにこれは合成もしくは捏造されたものである。

 例えば、こういうものの鑑定をするのに一体どれぐらいの時間がかかるのか。あるいは、持ち帰ったというものの真贋を見きわめるのにどれぐらい時間がかかるのか。そろそろ中間報告的なものも出てしかるべきだと思いますけれども、現状はどうなっていますか。

瀬川政府参考人 お答えいたします。

 今、横田さんの遺骨とされるものを初め各種資料につきまして、押収等の手続をとった上で鑑定をそれぞれ嘱託し実施していただいているところでございますので、お尋ねでございますけれども、現時点において、いつごろこの鑑定ができますとか、鑑定の見通しはどうだとか、今どんな状況だとかいうことについてお答えをするのはちょっと差し控えさせていただきたいということで御理解をいただきたいと思います。

渡辺(周)委員 それでは、ちょっと言い方を変えますけれども、我が国の警察の鑑識能力といいましょうか、鑑定の能力が世界でも類を見ないぐらい大変高いというのは私どもも理解をしているつもりでございますし、通常のさまざまな事件がございます、あるいは事故がございます。その中で、日本の警察が、捜査当局が全力を挙げてこうしたものの鑑定をする。

 よくあるのは、白骨の死体が出てきた。今回の場合は遺骨ですから、焼かれているというような状況をもちろん承知の上で言っているんですが、例えばそういうものを鑑定するのに、それでは通常はどれぐらいかかるんですか。一般論で結構でございます。

 つまり、類推すれば、我々としてもどれぐらいかかるということがわかるわけですね。それはもちろん、政治的な何らかの配慮があって、この鑑定の時期をいつ発表するかというようなことは何らかの政治的判断が働くのかということも推測はしますけれども、その辺はどうなんですか、日本の警察の能力として。できる日数、期間ですね、それもお答えできませんか。

瀬川政府参考人 お答えいたします。

 鑑定にどのぐらいの時間がかかるかということを重ねてのお尋ねでございますが、まさに鑑定実施上のこれは技術的な状況といいますか、理由によりその時期が左右されるものでございまして、それ以上のものはございません。検体がどういう状況であり、どういう状況下において鑑定をしているのかということでございます。

 一般論でということでございますけれども、私どもとしては、そういう形ででも鑑定の見通しなりなんなりをここで私どもが申し上げるということは、実際に鑑定に当たっている方たちに対して、またそのことも影響を与えるということになる心配もあるわけでございます。

 特に、通常の事件全般におきましてもまことにそうでございますが、今回、このような事案というのは慎重な上にも慎重にといいますか、間違いのない形でのやはり鑑定を実施する必要があるだろう、重要な事案だろう、こう考えておりますので、そういった意味で、現時点でその見通し等を申し上げるということは差し控えさせていただきたいということを御理解願いたいということでございます。

渡辺(周)委員 同じ質問をしていても同じ答えでしょうし、時間をロスするわけにはいきませんので、また改めて、時期が来たら、この問題につきましてさらに掘り下げて伺いたいと思います。

 それでは、薮中局長にお尋ねしますけれども、今回、帰られて、一部週刊誌、一部じゃないですね、もう大方の週刊誌やらあらゆるところで、さまざまな手段を使って、キム・チョルジュンという、めぐみさんの夫とされる人物と会ったと。毛髪の提供を申し出たけれども、それはできない、自分は工作機関の人間であるからというようなことを理由に拒否されたということでございます。

 しかし、それ以外にも、何らかの形で実はその人間を特定できることをしたのではないかというようなことが出ています。もう言ってしまえば、握手をして、実は手についた汗を採取したとか、あるいは、めぐみさんの写真を、何か写真を見せるときに受け取ったときの指紋を採取できたとかできなかったとか、それを今鑑定しているとか、いろいろ出ております。

 実際、細部にわたる御答弁は要りませんが、いろいろな形で、つまり、北朝鮮が用意した、向こうのおぜん立てに乗った、いわゆる、こういう人間に会いたい、あるいはこういうところに行きたい、招待所に連れていけ、病院に連れていけ、予防院に連れていけと言って、向こうの用意したところへシナリオどおりに連れていかれて、シナリオどおりの答えを向こうがして、それで満足したのか。こちら側から考えられるあらゆる手段を使って日本側として知りたいことを知ろうとしたのか、またそれができたのかということについては、薮中局長、いかがですか。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 先方がどこまで、今回の調査委員会で我々の説明、そしてそれについてのその後のやりとりということで用意していたのかはわかりませんけれども、我々としてかなり一生懸命というか、全力を私どもとしては尽くしたつもりでございます。

 その間のやりとりにおいて、先方の発言がある、それに対して我々が持っている情報を突きつけてその矛盾を問いただすということ、そういう結果として、調査委員会との間でも二十数時間やりましたし、その間に、先方からこういう人間から話を聞いたということがあったときに、それに直接会いたいということで、これも今委員御指摘の、どこまでが初めから用意されていたのかどうかはわかりません。

 しかし、仮に初めから用意されていたとしても、その者たちに直接我々が問いかける、そしてこちらが持っている情報で相手の疑問点をただすということを行いました。多分これは、それで結果的には五十時間になったわけでございますけれども、先方も予定していなかったことだろうと思います。

 そうした中で、今御指摘のような、さまざま、例えばキム・チョルジュン氏が本人であるのかどうかという本人確認、余り個別具体的にどういうことでというのは差し控えさせていただきますけれども、我々なりに努力もしているということもございました。

 全体として、そういうのを持ち帰ってこれから精査をしていく、そういう中では、恐らく先方が予定していたこと以上のことが我々の疑問から当然出てくるということだというふうに思っております。

渡辺(周)委員 それは、先方が予想していた以上と今おっしゃいましたけれども、つまり、彼らの証言を、あるいはなぞに包まれている部分をひっくり返すことができるというようなことをある程度得てきたという感触はつかんでいらっしゃる、そういうことでよろしいですか。

薮中政府参考人 まさにこれは今政府を挙げて精査しているところでございまして、我々の方にもいろいろの情報がございます。それで、すべてをもちろん先方に手のうちをさらけ出すということもしておりませんので、これからそういう中でいろいろと作業をまさにしているというところでございます。

渡辺(周)委員 もし報道されていることが事実であるならば、いかなる手段を使ってどういうことをしたかということは、内部からリークされて余りマスメディアなんかにどんどん出るというのはいかがなものかなというふうに思います。

 ですから、私も、そうした交渉の一つのツールを入手するということについてはいろいろ秘匿すべき部分があるだろうというのは理解をしております。ですから、ここでどうやってやったんだというようなことをあれもこれも聞こうとは思いません。国益にあくまでもかなう形で、それは配慮すべきところは配慮すべきだろうとは思います。

 その中で、そうしますと次の交渉に、先ほど外務副大臣は今回の結果を受けて次からの交渉は従来の実務者協議という形じゃないかもしれないというふうに言いましたけれども、そうしますと、これは局長として、最大のデリゲーションの責任者として、ある程度今後も交渉を続けていかれるだけの、あるいはこちらとしてももう一回会ってただすべき材料はやはり次に向かって用意できると、そこだけお答えいただけますか、どういう感触でいらっしゃいますか。

薮中政府参考人 この時点でも申し上げましたが、相当不自然なことがさまざまな疑問としてあったわけでございます。現在精査の状況でございますから、精査、徹底した検証を行っていく、そうした中で当然疑問点が浮き上がってくる、それをどういう形で先方との間でその疑問点を究明するのがいいのかどうか、これはよく考えていく必要があるというふうに考えております。

渡辺(周)委員 それでは、質問の内容をちょっと移します。

 今、北朝鮮の中でいろいろと異変が起きているのではないかなということが韓国経由で、あるいはさまざま内外メディアで言われておりまして、例えば金正日総書記の肖像画が撤去されている、あるいは朝鮮中央テレビの番組の中でいわゆるこれまでつけられていた敬称がなくなってきている、これについてはいろいろな憶測を呼んでいるわけであります。

 これは、国家体制の崩壊というよりも、どちらかといえば金正日そのものからの指示ではないかというようなことがいろいろ専門家から言われています、北朝鮮ウオッチャーの方々、あるいは専門に研究されている方々から。その点については、外務省はどのように今その状況を見ていられますか、あるいは分析していらっしゃいますか。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 北朝鮮の方から伝わってくる内容でも相当矛盾した情報がございます。

 例えば、十一月二十日付の朝鮮新報の電子版でございますけれども、これは平壌発の記事として、西側の報道は悪意に満ちているとしながらも、対外的な行事を行う場所では金日成主席の肖像だけを掲げるよう金正日総書記の指示があったと。

 要するに、この言っているところは、金日成主席の肖像だけにしろという指示があったんだということを十一月二十日付の朝鮮新報が伝えておりますが、他方、十一月二十七日、その一週間後でございますけれども、朝鮮中央通信の論評では、こうしたこと、すなわち金正日総書記の肖像画撤去ということは発生したこともない、今後もあり得ないのだということを言っております。そういう意味で、北朝鮮から伝わってくる内容としても混乱をしている、矛盾をしているというところはございます。

 我々は、もちろんこうした状況を非常に注意深く観察しておりますし、また関係諸国ともいろいろと意見交換をしているというところでございますけれども、現時点においては、何かそこで新しい、北朝鮮の中で異変が生じている、そういうことを確認するような状況ではございません。

渡辺(周)委員 そこで、ここへ来て急速に、ちょっと考えられないようなことがまさに起きている。その一つには、私は、先ほど来どなたかもおっしゃっていました北朝鮮人権法案、十月二十日にアメリカで成立をしました北朝鮮人権法案、この第三部、認定というところにある。

 日本語訳ですから正しいかどうかわかりませんが、ざっと言いますと、北朝鮮政府は、金日成と金正日への個人崇拝にしむけさせるべく、体系的、政治的、イデオロギー的に住民を洗脳し、その規模がほぼ国家全域に及ぶというようなことをこの北朝鮮人権法の中で実は書かれているわけでございます、第三部というところで。

 そうしますと、例えばこういうものの成立を受けて、北朝鮮がいわゆるイデオロギー的に住民を洗脳して体系的、政治的に個人崇拝にしむけているということに対して、先に、個人崇拝ととられないように、恐らく小心者のかの国の金正日総書記が肖像画を撤去したのではないかなというような観測もできるわけでございます。

 今申し上げたこの人権法について外務省としてどうお考えかということをお尋ねしたいんですが、その前に、私どもの民主党もこの北朝鮮人権法の日本版を今作成中でございまして、きょうこの同じ委員会の委員でもあります中川正春委員が、かねてから脱北者のことは大変に民主党として取り組んできました。

 中川委員中心に脱北者の問題を取り上げてきた中で、ここへ来てこの脱北者の問題というのが、実は、いわゆる飢えをしのぐために、自由を求め、民主主義を求めるために北朝鮮からとにかく出てきている人たち、この問題が中国あるいは韓国では大きな問題だったんですけれども、今回のこの法案によってアメリカが、これは世界的な規模で考えにゃいかぬということを法律の中に明記しました。

 その中で、ここにあるのは、認定というところの第二十四項に、このアメリカの法律には、人道上憂慮すべきこの問題を解決する国際的な枠組みを構築していかなければならないというふうにあるんですが、この法律を受けて日朝関係にどのような影響を与えるか。あるいは、日米の中でこうした国際的な枠組みを当然構築していく、その点について今外務省として用意があるのか、あるいはアメリカからの何らかのサゼスチョン、オファーがあるのか、その点については現状はいかがでしょうか。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに今委員御指摘の北朝鮮人権法というのは、アメリカが北朝鮮における人権問題、これを非常に重視している。かねてから、もちろん六者協議の場でも言っておりました、北朝鮮の人権問題について重視していると。そしてまた、日本との関係では、その中で日本人の拉致問題、これは六者協議の場でも例えばということで言ってくれていましたが、今回の北朝鮮の人権法につきましても、二カ所において日本の拉致問題の解決の必要性ということをうたっている、そういう意味では我々は高く評価しております。

 これがどういう影響を今後及ぼすのかでございますけれども、もちろん北朝鮮側は直ちにこれについて論評をしております。これがまさに、この北朝鮮の人権法というのは核対話の意味を失わせるという言い方をしておりまして、北朝鮮に対するアメリカの敵視政策のあらわれであるという言い方をしております。

 これは、私どもが北朝鮮側と話をしたときにもそういう言い方をしておりますけれども、当然のことながら、これは日本にとっていえば拉致問題の解決ということと大いに関係があるわけでございますから、我々としても北朝鮮の人権問題には関心を持っているんだということを先方に伝えております。

 今後、日朝間に与える影響がどういうものであるか、これはよくわかりません。実際に北朝鮮側が全体としてどう判断をしてくるのかということでございまして、彼らにとっていえば、当然のことながら、自分たちの政権の安定、これを果たして六者協議を通じて図れるのかどうか。そしてまた、経済改革というのをやろうとしているようでございますけれども、そのためには国際社会、とりわけ日本からの支援が必要でございます。

 そういう意味で、日本という国がまさに核、ミサイル、拉致、すべての問題が解決しない限り正常化はないんだ、それはすなわち経済協力がないんだということでございますから、そこを全体として先方がどういうふうに判断するかという問題でございます。

 国際的にどういう枠組みがあり得るのかという御質問でございますけれども、我々は、国連の人権委員会、ここにおいて北朝鮮の人権問題について決議を毎年出しております。そうした中で、日本も主導的役割を果たしておりますけれども、今後そうした努力というのは引き続き継続していきたいというふうに考えております。

渡辺(周)委員 局長、お尋ねしたいのは、当然この法律の中に、北朝鮮人権法二百二条の中に、北朝鮮政府によって拉致された日本人や韓国人に関する情報の全面開示、C項です。あるいはD項の中には、これらの拉致被害者はその家族とともに完全な自由を回復して北朝鮮を離れて祖国に帰還できるようにしなければならない、そこまでうたっているわけですね。

 本来なら、アメリカがここまで書かれるということであるならば、当然、日米で連携をして、当事国である我が国がアメリカと協力をしてこの拉致問題の解決に向かわなければいけないわけであります。それと脱北者の方々を保護する。といいますのは、先ほど来のお話の藤田進さんや、もう一人の方、加瀬テル子さんですか、この方々の情報というのも脱北者の方々からもたらされている。

 私も、実は先般、三週間ほど前に韓国に行ったときに、韓国で、脱北をされてきた方々を支援するNGOの方と会いました。本来なら、日本人の拉致されたという方々、この方々の幾つかの写真を持ってきている方とお会いする予定だった。残念ながら会えませんでした。後日手に入れたんですが、お見せするわけにはいきませんが、真贋がまだわかりません。

 ただ、こういう方々、一部、これが藤田進さんという方の写真でございまして、それ以外の方は、幾つかある中で、つまり、この方は例えば拉致された日本人の中で一番出世していると言われる何とかという人間である、あるいはこの女性は日本人の拉致されてきた人間がつけていた私物を、私財を管理しているセクションにいる人間である、これは招待所で撮られた写真である、何枚かの写真を入手いたしました。

 当然、こういうものは警察庁にも行っているでしょうし、外務省でもお聞き及びかと思いますけれども、こういう脱北者の方々が今非常に重要な情報を持って出てくる。国家体制の中で、恐らく脱北をしてきた人たちがそうした中枢の部分にいた人たちから入手をして、それを持って出てきている。言ってしまえば、そういうものを一つ材料にして、日本の関係者に手渡したり、時には自分たちが身を守る資金を得るために日本のマスメディアとも実は交渉をしている、あるいは手渡しているという話も聞くわけであります。

 聞くところによれば、北朝鮮の三号庁舎というところに、拉致された日本人の写真を保管しているところがあって、そのファイルごと持ってきている。そして、それを今小出しにしている。ただ、セキュリティー上、幾つかの手によって分散して渡しているのではないかということを脱北者のNGOは韓国で私どもに言っておりました。

 また、特定失踪者の調査会の方にも伺いましたら、そうした方も含めて五十名ぐらいの方が今幾つか問い合わせが来て、そして写真を幾つか照会があるという中で、これは我々は脱北者をやはりこれから守るということが一つ。それによって新たな拉致情報、特定失踪者の真相に近づけるということが目的として一つあります。

 それともう一つは、北朝鮮の弾圧から逃れて出てきている人たちが国際社会によって守られることによって、私は、国境警備兵からまず最初に出てくるんじゃないかと思うんですね。つまり、向こうの国へ行けば飢餓とは縁のない非常に豊かな社会があり、そして自由と民主主義が存在している国がある。そのためには、私は、最終的には北朝鮮という独裁国家の体制転換につながるのではないかということも含めて、アメリカの人権法、それから私ども日本の中でも協力をするべく歩調を合わせていかなければいけないというふうに思うわけでありますけれども。

 いろいろ申し上げましたが、せっかくですからお答えいただきたいのは、例えば、今そういう重要情報を持って脱北者がどんどん北から出てきている。こういう状況を、体制がどうなっているかというところをどういうふうに見ていらっしゃるのか、またそういう情報が、新たな人物の写真なり情報なりを警察庁は何らかの形で入手をし、分析をしているのかということが二点目。

 そしてもう一つは、とにかく今の中国は脱北者を不法入国者として見て、北朝鮮当局と連携をして捕まえたら直ちに送り返す。そうなると彼らには強制収容所、悪ければ極刑、銃殺、死刑、拷問死が待っている。まず人道的な支援もそうであります。中国は残念ながらそういう体制を崩していない。韓国も残念ながらウリ党とハンナラ党ではコンセンサスを得るにはかなり時間がございまして、そうした脱北者の積極的な保護に対しては現政権は積極的ではないということを考えますと、やはり当面はアメリカと日本が連携をして、まさにアメリカの力そして日本の情報を一つにして拉致問題を解決する。

 そのためには脱北者の保護もあるというふうに考えるわけでありますけれども、今後、三番目の質問として、どのようにこの法律を、アメリカの人権法を生かして交渉に当たっていくのか、またアメリカ側と連携をして協力をするシミュレーションをとっていらっしゃるのか、その点をお答えいただけますでしょうか。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 幾つか私の方からのお答えとさせていただきますけれども、今の関係で、まず脱北者の方が非常にいろいろの情報を持っている、これは我々も非常に重要な情報源の一つだというふうに思っております。これまでも直接に我々は脱北者から情報を得るということも心がけてまいりましたし、そしてまた、他方において、相当昔に脱北された方々というのもあります。

 そういう意味でいうと、ある程度関係の諸外国の機関との連携ということも必要だと思っております。諸外国において、事前に、あるいは従来その人たちから話を聞いていることもございます。そういう意味では、私どもが、直接脱北者の人と話をする、そしてまた関係の諸外国の機関からも話を聞く、そういったことで重層的に情報を収集しております。この努力というのは、引き続きしたいというふうに思っております。

 また、私どもの大使館の方におきましても、いろいろと脱北者が助けを求めてきたというケースは御承知のとおりございます。そうした中でも、いろいろの話が直接、我々としては当然のことながら聞いておるところでございまして、そうした中で、その信憑性というのをよく全体として判断しながらも、非常に重要な情報源であろうというふうに考えております。

 今後の脱北者の問題でございますけれども、もちろん中国というのが、一つの場所としては、自然に脱北してくる場所になってございます。我々との関係で状況ができますとき、すなわち先般の状況もございました。あれは日本人学校ではございましたけれども、我々としては、これは人道的な観点からの対応を中国側に求める、現在もなおまだ残っている方がおりますけれども、中国側には引き続き人道的な観点からの対応を強く求めていくという努力を行っておるところでございます。

 今委員御指摘のとおり、そうした中で、今後こうした問題についてやはりアメリカとよく連携しなきゃいけないのではないか、これはそのとおりだと思います。従来からも、まさに拉致問題についてはアメリカが一番明確に我々の立場を支持してくれておりましたし、今後とも、アメリカとそうした直接的な拉致問題についての連携、そしてまた、全体的な人権問題におきましても、先ほど少し申し上げましたが、いろいろと国際的な場において協力をしていきたいというふうに思っている次第でございます。

瀬川政府参考人 お答えいたします。

 北朝鮮による拉致事案に関しては、やはりさまざまな情報等があります。いろいろ情報がふくそうする中で私ども心がけておりますのは、あらゆる可能性を視野に入れるということと、それから一方であらゆる予断を排除する。警察といたしましては、やはり法と証拠という観点で、しっかりとした判定をしていくということが基本だろうと思います。

 そこで、お尋ねの、いわゆる脱北者の方からの情報ということでございますが、そういった観点で、脱北者からの情報というのはこれは十分に参考にすべきであるというふうに私どもも思っておりまして、警察といたしましても、その情報入手のため、従来から必要に応じまして海外の関係各機関との情報交換を初めとします各種の情報収集活動を行っておりますし、外務省等とも緊密に連携を図っているところでございます。

 しかし、この点でちょっと申し上げておきたいのは、例えば今写真の問題等々ございましたけれども、これは一つは、そういったものがどういう経緯、どういう入手経路であるのかということが私ども捜査機関としては証拠としての価値という点においては最もこれは重要なポイントでありまして、この辺の検証がぜひ必要であるということと、それから、いわゆる脱北者、亡命者の方々というのはいろいろな置かれている状況というのがそれぞれございます。こういった状況もしっかり見きわめた上で判断をしていく必要があるだろう、こういうふうに考えております。

 いずれにいたしましても、貴重な情報、資料が多く含まれているものだろうと思いますので、十分参考にさせていただきたい、こういうふうに考えております。

渡辺(周)委員 とにかく、我々も、民主党は脱北者の問題に随分長く取り組んでまいりました。その中で、今回、そうした積み重ねの上に、いわゆる拉致問題の情報をもたらしてくれる方々とも接点ができてきたわけでございます。本当に拉致問題の解決そしてまた特定失踪者の真相の究明、あるいは認定のためにも、ぜひともこれは特に中国と話をしていただいて、水際で取り押さえられてかの国に帰されることがないように、ぜひともこれはアメリカと連携をし、そしてまた情報を共有して、脱北者の保護の仕組みをつくっていただきたいなと強く要請をしたいと思います。

 その中で、あと時間が数分でございまして、その後ちょっとお尋ねしたいのは、先ほどもありました、十一月の頭にいわゆる食糧支援のモニタリングというのが行われましたけれども、事実この食糧支援というものが、我々が聞く限りでは、金正日総書記からの名前で、贈り物であるといって人民のところに送られている。それは、アメリカからのもの、韓国のもの、日本のものも含めて、これは日本から来た、韓国から来たではなくて、金正日の名前にみんな張りかえられて実は渡っている。それによって国の統治を強化している。

 そしてまた、実際は、ではモニタリングをしに行ったら、あるところへ行って、子供が並んでいて、そこでビスケットやら何やら渡していたけれども、その国際的な視察団がいなくなったら全部回収して回った、そんな話ももう何遍も聞くわけですね。こういう国でございまして、そこでお尋ねしたいのは、実際どういうふうなモニタリングをしてきたのか、実際に実態を把握してくることができたのかどうか。

 もっと言えば、これから日本のだれか責任者を一人置いて定期的にモニタリングをする。それ以外で、例えば、栄養状況であるとか、あるいは健康診断だとかして、必要なカロリーが摂取されているのか、必要なものが行き渡っているのか。私は、客観的な実績を知る上でこれはやはりそこまでするべきじゃないかと思うんですけれども、実際どうだったんでしょうか、その点についてお答えいただけますか。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 十一月の二日から六日まで、日本政府の職員四名を派遣いたしまして、WFP、世界食糧計画の人々と一緒にモニタリングを行ってまいりました。これは十二・五万トンの食糧支援を中心としたものでございますけれども、そのうちのかなりの部分がもう既に北朝鮮に渡っている、そういう段階でのモニタリングでございました。

 今委員まさに御指摘のとおり、これが本当に必要とされる人々に渡っているのか、またそれが国際社会から来ているというふうにわかるのかどうかということでございますけれども、WFPも相当従来から人的な資源あるいは財政資源を費やしまして、このモニタリングには相当力を入れております。

 それが、今回、我々の実際のモニタリングにおいても、ある程度はわかった状況でございます。管理体制、実際の配給状況、管理帳簿ということで、港に入ってきて、そのときにWFPから相手に渡す、それがきちんと、実際の場所へ行ったときに、またそれについてのコストをWFPが賄うということで、実際に着いているところがわかるようなシステムというのを一生懸命つくっているようでございました。

 今回は、まさに日本から行きましたのが、朝鮮語を理解する人間、専門家を出しました。これは割と珍しいことで、今までWFPのモニタリングでもなかなかそれはできなかったと聞いておりますけれども、今回、日本から朝鮮語の専門の人間が行って、したがって、直接話ができるわけでございます。

 それから、日程の変更、追加を要求いたしました、こういうところに行きたいということで。それも一部かなえられたこともございます。完全にアトランダムな、こちらが言ったところを直ちに行えるというところまではまだ来ておりませんけれども、相当突っ込んだモニタリングができた。

 また実際に、日本から来ているものについては、WFPと書いて、日の丸がそこに全部張りつけられているということもあったということでございます。当然のことながら、それがすべてなのかどうかということになりますと一つのサンプルにすぎませんけれども、今後ともそういう努力というのは継続していきたいというふうに考えております。

渡辺(周)委員 時間がなくなりましたのでこれで終わりますけれども、とにかく、私どもとして、最初の副大臣、副長官がいなくなってしまったものですからちょっと非常に残念な質問になりましたけれども、とにかく北朝鮮という国、今、金正日体制が続く限りはこの国と幾ら交渉してもいたずらに時間が過ぎるだけであって、とにかく、体制転換をするということも同時進行であわせて、ぜひ国としてそこまでも考えながら現状の拉致問題の解決に取り組んでいくべきだろう。そのためについては与党も野党もないわけでございまして、日本の国益のために努力してまいりたいなと思います。

 終わります。

赤城委員長 次に、松原仁君。

松原委員 民主党の松原仁であります。

 もう薮中さん一人しか残っておりませんのでじっくりと議論をしていきたいと思います。

 ただ、この問題は、拉致対策特別委員会ができたということは、これは極めて重要な意味があるわけでありまして、大変に遅きに失したわけで、本来であれば政治家の、行政の、政治の舞台にいる人間がきちっと答弁をしなければいけないわけでありますが、これができたこと自体が非常に遅いタイミングでありました。

 そういったことで、きょうは異例ということですが薮中さんとさしで話をする、こういうことになるわけでありますが、言ってみれば、逢沢さんとか杉浦さんがいなくなったというわけで、薮中さんは政治家ではありませんが、思い切って政治的なところまで踏み込んだ発言もお願いしたい、このように思うわけであります。

 私は、まず最初に申し上げたいのは、この拉致の問題に関して、やはりそろそろ一つのタイミングが変わってきたのかな、こういう認識を持っております。先ほども議論の中で、質疑の中でありましたが、拉致問題について、一つは肉親を離れ離れにされた、この方々の原状復帰、これを目指すのは、当然、引き裂かれた人を戻すというのは、拉致の事案解決の大きな理由であります。

 しかし、もう一つは、明らかにこの拉致事件というのは日本の主権侵害であるということであります。やはり、この後者の部分を私たちはこの事件においてより強く感じていかなければいけないのではないかと思っております。

 この部分を考えたときに、一体どういうふうな手段をとれば、薮中さんが答えられればお答えをいただきたい、後者の部分の主権回復という観点では、どういうことが日本の行政としてとり得る手段か。通告はしておりませんけれども、薮中さんであれば、ずっと今までこの案件にかかわってきて、もちろん拉致被害者を取り返すということもありますが、それだけではなくて、日本の主権をいかにして解決するか。外務省のまさに局長として日本の主権意識というのは一番強く持っているはずでありますから、そのことについてお答えをいただきたい。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに、拉致という犯罪行為でございます。これに対する何よりもまず第一に必要なことというのは、拉致被害者の方々、これを無事救出するということでございます。これはまず最低限やらなければいけないことだというふうに考えております。

 その上で、それ以上に、いかなる、まさに主権を侵害されたということの中で、回復していくのかという問題はさまざまございます。これについては、まさに国交正常化の中できちんと取り上げていくべき問題、これであろうというふうに考えております。

松原委員 国交正常化の中で。国交正常化の中で主権回復という日本の誇りを取り戻すことが、どの部分でできるんでしょうか。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに、私が申し上げましたのは、国交正常化を実現する過程ということでございまして、国交正常化交渉の中で、その点についてきちんとした解決をしなければいけない。今までからも言っておりますように、実際の責任者がだれであったのかということの追及も行っておりますけれども、そうしたことを含めて、きちんとした対応というものが必要になるというふうに考えております。

松原委員 非常にこの部分というのは難しい議論になってまいりますが、拉致を主導したのは一体だれなのかという議論であります。この間もこのことは議論しましたが、拉致を主導した人間が、北朝鮮のトップの人間がこれを主導したのであれば、そういうことについて、日本が主権を侵害されたことに対して怒りて、そしてこの主権の、我々の誇りを回復するのであれば、この首謀者を捕まえなければいけない。

 少なくとも、今、仮に北朝鮮のトップだということを言いましたが、それはさておいて、この首謀者を捕まえるということは、日本の主権侵害を、もう一回日本の主権を、誇りを取り戻すための絶対条件であると思いますが、どうお考えでしょうか。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 まさに、国際的に幾つかのいろいろの例を見ましても、一つは謝罪行為というのがございます。その上で、責任者の処罰の問題がどういうふうになされたのかということは、当然のこととして考えられるわけでございます。

 今回、この拉致問題につきましては、既に我々の方から先方に対して、拉致事案の責任者というのはどういうふうになっているんだということの究明は努力をしてきておりますけれども、今回先方から説明がございましたのは、二年前の説明と同じでございますけれども、チャン・ボンリム及びキム・ソンチョル、この二名が責任者であった。そして、これが処罰されたということでございますけれども、我々としては、果たしてどういう人間であって、どういう権限があって、なぜ責任があったのか、そこのところが今までの説明では全くわからないわけでございます。

 今回、この二名について、当時の裁判記録の一部の写しがございました。こういうことを含めて現在精査しているところでございます。

松原委員 その二名が実際この拉致事案のすべてを統括したというふうには到底私は思えないわけでありまして、最初に謝罪という言葉をおっしゃったのは、それは金正日氏が小泉さんに対して謝罪をしたということでおっしゃったのかどうかわかりませんが、私は、この問題は、これはもう北朝鮮というのはああいう国ですから、先ほどの議論からもわかるように、金正日が指示しなければ拉致は起こらなかった、起きなかった。したがって、金正日が謝罪をするのか。

 それとも、金正日政権に対して我々がどういうふうな態度で臨むのか。いわゆる拉致被害者を取り戻すという議論と、今言った我々の名誉、誇りを取り返すという議論は、同じように議論されなければいけない段階に来ているということを考えるのであれば、これは薮中さんが答えられる範疇を超えているかもしれませんが、私は、経済制裁を発動する時期に来ているということを、きょうはもう、それは与党も含めて経済制裁発動せよという声がこれだけあったわけですから、このことはきちっと事務方としても受けとめて行動していただかなければいけないというふうに思うわけであります。

 そういう中で、今回、APEC首脳会議というのがビエンチャンで行われ、もちろんこの北朝鮮の拉致問題を解決するにおいては、六カ国、特に日本とアメリカは既に平仄をそろえながら、日本の気持ちを十分に知ってアメリカも北朝鮮に対しての対策を打っていただいている。問題は、中国と韓国の首脳に対してどれだけ小泉さんが熱心にこれを説得できたか、こういうことになろうかと思っております。

 日中韓首脳会談における現場で小泉首相が拉致問題についてどのような要請をしたのか、それに対して中韓の首脳がどのように答えたのか、お答えをいただきたいと思います。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 先般、二十九日でございますけれども、まずラオスにおいて行われた日中韓三カ国の首脳会談がございました。ここにおきましても、当然小泉総理の方から拉致問題について言及し、これまで中国及び韓国の協力を得てきたけれども、今後とも引き続き両国の理解と協力を得たいという発言をされ、双方ともにこれについては力強くうなずいておられたというのがそのときのやりとりでございます。

 全体といたしまして、非常に限られた時間の中で、日中韓三カ国の協力問題、そしてまた東アジアにおける全体の地域協力の問題等々さまざまの問題を議論いたしました。そういう意味では、非常に時間が限られておりましたけれども、きちんと小泉総理の方から直接この拉致問題について言及をし、先方の、両首脳の理解と協力を得たということでございます。

松原委員 実際に小泉さんがどこまでこの問題について両首脳に対して切実に訴えたのか。また、今、力強くわかったということを両首脳が言ったと。それはわかったんだろうけれども、そのことの具体的な実際の関係はこれからの交渉の中で明らかになっていくと思いますから、これはよろしくきちっと今おっしゃったとおりやっていただきたいと思います。

 小泉さんが、そうした中で、APECにおいて、北が核保有の廃棄の利益を考え始めているというふうに発言したと聞いておりますが、その発言の根拠について、また発言がどういうふうな流れの発言だったか、そのことについてお伺いいたします。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 APEC首脳会議の際、小泉総理は、この場には中国、韓国、ロシア、米国といった六者会合の関係国がそろっているが、北朝鮮問題については今後とも六者協議を活用していくべきである、核の保有は北朝鮮にとってプラスにはならない、北朝鮮は核を保有している利益、核を廃棄することで得られる利益、その差、それを真剣に考え始めている、小泉総理自身は金正日氏に対し、核を保有している利益はほとんどない、他方、廃棄する利益は莫大であると何度も言ってきた、このような働きかけを今後とも継続していきたい、こういう発言があったというふうに承知しております。

松原委員 すると、その発言というのは、北がそれを考え始めているというのは、小泉さんがそういったことを北に対して言ってきた経緯の中で、彼らはそれを理解しただろうという小泉さんの一つの憶測、こういうふうに理解してよろしいでしょうか。

薮中政府参考人 そういうことだというふうに私も理解しております。

松原委員 何かもっと具体的な根拠があるのかと思っておったわけでありますが、要するに憶測で、相手が非常にこちらの思惑に対して好意的に反応する、こういう理解であったということだと思います。

 次に、ブッシュ政権二期目が始まったわけでありますが、北に対する意気込みがどのように今感じられているのか、この辺をお伺いいたします。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 APECの際の日米首脳会談がございましたけれども、この場におきましても、ブッシュ大統領と小泉総理の間でまさにこの北朝鮮の問題というものが取り上げられて、これは極めて重要な問題である、そしてこれは六者協議を通じて平和的解決を図る必要があるということについての合意が改めて確認されたわけでございますけれども、その後、共同記者会見において、ブッシュ大統領は、北朝鮮は六者会合が核問題を議論する唯一の枠組みであり続けることを理解すべきであると言い、そしてまた平和的解決に言及されておられます。

 今後の問題でございますけれども、最近になりまして、アメリカ政府の高官からも、第二次政権の誕生を待つまでもなく、十二月からこの六者協議について再開すべきである、アメリカとしてはそういうことについての対応ができるという話がございましたし、私、先般北朝鮮に参りましたときも、アメリカとしても、六者協議を重要視している、ここの場で、再開された六者協議においてはおのおのの国が柔軟に対応すべきである、こういうメッセージをアメリカからも託されたわけでございまして、そうしたことを含めて北朝鮮への働きかけとしております。

松原委員 アメリカのブッシュ二期目というのは、私は一期目と違ってかなり大胆な外交政策を展開する可能性があるだろうというふうに思っております。アメリカの大統領は二期までということでありますから、三期目につなぐことではなく、二期目で一つの結果を出そうというふうな一つの決断がそこにあろうかと思っております。

 そうした中で、先ほど我が党の渡辺委員の議論にもありましたが、北朝鮮人権法案というものが成立をしたわけであります。これに対して来年度予算で三百万ドルが盛られたというふうに承っておりますが、この内容と効果というのは、一体何をねらっているのか、アメリカは一体何をねらってこれをつくってきたのか、これについてお伺いいたします。

薮中政府参考人 お答え申し上げます。

 今回のアメリカの、北朝鮮の人権法でございますけれども、この人権法においては、北朝鮮における人権、民主主義、法の支配、市場経済の促進のため活動する非営利団体に対して、二〇〇五年から二〇〇八年の期間、年間総額二百万ドルまでの資金を提供する権限を大統領に与えるというのが一つの大きなポイントでございます。

 予算面、さまざまの手当てをするようでございますけれども、実際に何をねらいとしているのか。もちろん、これはアメリカ政府の中で、議会での発案に基づく今回のアメリカにおける法律の制定過程がございます。御承知のとおり、アメリカの中の人権擁護団体の活動の支援ということでございまして、それが実際に一つは脱北者の問題についての言及もございます。そして、全体としての北朝鮮における人権状況の改善をねらうということもございます。

 それがさらにそれ以上に政治的なことを全体の枠組みの中で企図しているのかどうか、これは私どもとしては必ずしもよくわからないところでございますけれども、今後のこの法律の実施を見守っていく必要があるというふうに考えます。

松原委員 この北朝鮮人権法案というのがどういうものなのかというのは、さまざまなとらえ方があろうと思っております。

 しかし、私は、アメリカの戦略としては、既に体制転換というものを想定してのこういった北朝鮮人権法案ではないかというふうにも思っているわけであります。つまり、脱北者を支援して北朝鮮内部においてそういう独裁ではない流れをつくっていこうと。まさに、北朝鮮の問題を解決するには、現状の金正日政権が続く限りにおいてこの問題の解決はできないというブッシュ大統領の強い決意があるのではないかというふうに私は考えております。

 我々日本においても、そういった、先ほどもお話がありましたように、我が民主党もこういったスキームをつくってやっているわけであって、要するに、冒頭言ったように、どこまで日朝協議を継続するのか、どこで我々は何を目指すのか。

 我々は拉致被害者を取り戻すことを目指すということでやってきて、三回目、薮中さんも御苦労してまた行ってこられた。この間も私申し上げたように、丸腰で行かせて外交カードも持たずに交渉をやれといったって、それはできないですよ、なかなか。しかし、その中で耐えがたきを耐えてやってきたことを私は一面評価したいけれども、現実に出てきたのは、何も出てこなかった。

 ちょっとお伺いしたいんですが、横田めぐみさんの遺骨と称されるものが、DNA鑑定で横田さんのものであるということが証明されたときは別であります、されなかった場合は、これはどういう判断をするか、お伺いいたしたい。

薮中政府参考人 これは、いずれにしましても、今政府を挙げて精査している、検証している、その中での鑑定作業をまずはしっかりやっていただく必要があるというふうに考えております。

松原委員 では、とりあえず、その鑑定作業はいつごろできると聞いているか、お伺いいたします。

薮中政府参考人 これは、先ほど警察庁の方からもお話があったとおりでございまして、警察庁で今全力を挙げて徹底した鑑定作業をやっていただいている、この時期については今具体的に言うことは差し控えたいというのが警察庁からのお話でございました。

松原委員 それは専門の捜査機関がやっているということですから、それはそういうことにしておきましょう。

 問題は、この骨が、大体、土葬の国で二年半土葬していた横田めぐみさんを、二年半たって、手元に置きたいということで火葬にした。余りにも話としておかしな話だと私は思うんですよ。しかし、一応DNA鑑定を見ようではないかということになる。

 私は、もう結論から言うならば、DNA鑑定が横田めぐみさんの遺骨であったということを証明しない限りにおいて、北朝鮮は我々日本を、つまり、それが判定できなかったという場合もしくは違う人の遺骨だとわかった場合、これはもう交渉の余地はない。当たり前の話であります。

 北朝鮮側は、我々の国に対して、一回目に出してきた死亡確認書、うそっぱちであると認めた。この間も言ったとおり、こんないいかげんなことをやってきて、それが金正日さんの指示なのか。もともと一番の主犯格がそこにいるんだったら、それ以上の話は進まない。これはそういう話だ。そういう中で、しかし、我々は最後のチャンスを与えると。

 つまり、横田めぐみさんの遺骨と称されるものは明らかに不自然に火葬にされている。そのことに関して、DNAの鑑定が彼女のものであるということを証明しない限りにおいて、私は、交渉を続けるべきではない、交渉の余地はないと思いますが、お立場はお立場でありますが、実務関係者として、答弁できるところまで言ってください。

薮中政府参考人 今の御指摘は非常に重く受けとめております。いずれにせよ、我々としては、徹底した鑑定作業を行うということをまずやりたいというふうに考えております。

松原委員 これは、薮中さんの答弁がどうあろうと、恐らく、今のことで遺骨が横田さんのものであることが証明されない限り、もはや経済制裁をするというのは当然のことだ。

 私は冒頭に申し上げたのは、拉致被害者を取り返すというのは大事なことだ、しかし外務省の局長である薮中さんも一番大事にしている日本の主権と誇り、このことを保つためにどうしたらいいか、こういうことが議論になってくる。もう完全にそれがこけにされてきて、これは横田家にとっての悲劇であるだけではない、日本においてこんなばかげた、ばかにされたことを許すようなことがあったら、我々は我々の子孫に何をもっていい国をつくったと語れるのか。外務省の責任にもなるし、我々の責任にもなる。

 だから私は、この問題について言えば、もはや次の第四回目の実務者協議をやる必然性がない、いや、必然性があるかどうか、やるべきかどうかの判断は、まさにその遺骨が、遺骨と称されるものが、横田さんのDNAがそこから発見されない限りは、第四回目の日朝実務者協議は全くやるに値しないということを私はまず申し上げておきたいわけであります。

 そういった意味を含めて、先ほどもいろいろと議論がありましたけれども、本当に実務者だからもうそれ以上答えられないのはわかっておりますけれども、本当にこの問題は、結局国家意思の問題ということを先ほど瀬川警備局長がおっしゃっておりましたが、拉致というものの事案の理由に北朝鮮の国家意思があったかということを彼は言っていた。

 国家意思があるということは、すなわち、国家意思の頂点にいるのは、僕は先ほどの議事録を後でもう一回次のときに質問してもいいけれども、国家意思があるということを拉致の事案の根拠の一つにする、国家意思があるものを拉致として認めると瀬川さんはさっき言った。であるならば、国家意思があるということが拉致の事案であるとして、その二人の真犯人と言われる者が国家意思を体するということはあり得ない。あの発言はすなわち、警察当局は、国家意思があるものということは金正日を想定しての発言だというふうに私は思っているわけであります。

 そういったことも含めると、もはや、日本も、北朝鮮の人権法案、こういったものを今後ぜひ審議をしてもらいたいわけでありますが、これはやはり、こういったものを含め、いわゆる体制を変えていくということを今やらなければもうどうしようもない段階に来ているということを私は強く申し上げたいわけであります。

 今ので盛り上がって終わってもいいんですが、一つだけ。

 APECに先立って、さっき言った日中韓の連携ということが大事だということを申し上げましたが、この中で、ロサンゼルスで盧武鉉さんがおもしろいことを言っているわけであります。基本的に北朝鮮の核保有は容認できないとした上で、さまざまな状況から見て一理ある側面があると述べた。このことを日本の外務省はどう分析しているか、お伺いいたします。

薮中政府参考人 盧武鉉大統領の先般のスピーチでございますけれども、これは我々も注意深く拝見しております。

 基本的には、まさに北朝鮮による核廃棄が大事である、そしてまた日米韓三カ国の協調が大事である、その基本についてはいささかも変更がないというふうに承知しております。

松原委員 ちょっと分析不足だろうと思っておりまして、やはり、我々は韓国に対して、経済交流も含め、また今までさまざまな支援もしてきた中で、我々の、国のこの問題に対してもうちょっと真剣に取り扱ってもらうために、こういうふうな発言が、これに対して抗議をしたのかどうかも私はわかりませんけれども、それを無神経にそのまま見過ごすことは絶対してはいかぬということも申し上げておきたいわけであります。

 時間がないので、くどいようでありますが申し上げますが、私は経済制裁をするべきだと。経済制裁が、日本一国でやってどれだけ効果があるかという声もあるけれども、北朝鮮側から見れば日本は三番目の貿易国であります。大きな意味がある。しかし、私は、それにかかわらず、少しでもその効果があるならば、これは日本の国家主権をきちっと日本は守るんだ、主権が侵された場合、日本はそれに反撃をするんだということを国内、国外にきちっと、毅然と表明するためにも経済制裁するべきだということを申し上げて、質問を終わります。

 以上です。

赤城委員長 これにて質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

赤城委員長 この際、御報告いたします。

 今会期中、本委員会に参考送付されました地方自治法第九十九条に基づく意見書は、お手元に配付してありますとおり二十二件であります。

     ――――◇―――――

赤城委員長 次に、閉会中審査に関する件についてお諮りいたします。

 北朝鮮による拉致問題等に関する件について、議長に対し、閉会中審査の申し出をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤城委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次に、閉会中審査案件が付託になりました場合の諸件についてお諮りいたします。

 まず、閉会中審査におきまして、参考人より意見を聴取する必要が生じました場合には、参考人の出席を求めることとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤城委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次に、閉会中、委員派遣を行う必要が生じました場合には、議長に対し、委員派遣承認申請を行うこととし、派遣委員、派遣期間、派遣地等所要の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤城委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後三時六分散会


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