衆議院

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第2号 平成17年2月24日(木曜日)

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平成十七年二月二十四日(木曜日)

    午後零時五十一分開議

 出席委員

   委員長 赤城 徳彦君

   理事 佐藤 剛男君 理事 宮路 和明君

   理事 渡辺 博道君 理事 長島 昭久君

   理事 松原  仁君 理事 渡辺  周君

   理事 池坊 保子君

      井上 信治君    宇野  治君

      上川 陽子君    笹川  堯君

      菅  義偉君    西村 明宏君

      西村 康稔君    西銘恒三郎君

      根本  匠君    平沢 勝栄君

      中井  洽君    中川 正春君

      西村 真悟君    計屋 圭宏君

      橋本 清仁君    古本伸一郎君

      吉田  治君    笠  浩史君

      漆原 良夫君    赤嶺 政賢君

      穀田 恵二君

    …………………………………

   外務大臣         町村 信孝君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     細田 博之君

   内閣官房副長官      杉浦 正健君

   外務副大臣        逢沢 一郎君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  鈴木 基久君

   政府参考人

   (内閣官房拉致被害者・家族支援室長)

   (内閣府拉致被害者等支援担当室長)        小熊  博君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    瀬川 勝久君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局長)           佐々江賢一郎君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長)            吉川 元偉君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    鹿取 克章君

   政府参考人

   (財務省国際局長)    井戸 清人君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        素川 富司君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           高橋 直人君

   政府参考人

   (水産庁漁政部長)    武本 俊彦君

   政府参考人

   (経済産業省貿易経済協力局長)          中嶋  誠君

   政府参考人

   (国土交通省海事局長)  矢部  哲君

   衆議院調査局北朝鮮による拉致問題等に関する特別調査室長          前田 光政君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十四日

 辞任         補欠選任

  小野寺五典君     西村 明宏君

  水野 賢一君     菅  義偉君

  宮下 一郎君     西村 康稔君

  菊田まきこ君     橋本 清仁君

  田中 慶秋君     計屋 圭宏君

  赤嶺 政賢君     穀田 恵二君

同日

 辞任         補欠選任

  菅  義偉君     水野 賢一君

  西村 明宏君     小野寺五典君

  西村 康稔君     宇野  治君

  計屋 圭宏君     古本伸一郎君

  橋本 清仁君     菊田まきこ君

  穀田 恵二君     赤嶺 政賢君

同日

 辞任         補欠選任

  宇野  治君     井上 信治君

  古本伸一郎君     吉田  治君

同日

 辞任         補欠選任

  井上 信治君     宮下 一郎君

  吉田  治君     田中 慶秋君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 北朝鮮による拉致問題等に関する件


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     ――――◇―――――

赤城委員長 これより会議を開きます。

 この際、御報告いたします。

 去る十二月二日の本委員会における西村真悟委員の発言の中に不穏当な言辞があるとの指摘を受け、西村委員から当該部分の発言を取り消したい旨の弁明と反省がありました。

 本件につきまして、理事会等で協議いたしました結果、会議録から削除いたしましたので御報告いたします。

     ――――◇―――――

赤城委員長 北朝鮮による拉致問題等に関する件について調査を進めます。

 この際、政府から説明を聴取いたします。町村外務大臣。

町村国務大臣 衆議院北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会の開催に当たり、赤城委員長を初め委員各位に謹んでごあいさつを申し上げ、拉致問題を初めとする最近の北朝鮮情勢について御報告いたします。

 拉致問題については、昨年十二月二十五日、我が国は、北朝鮮側に対し、同年十一月の第三回日朝実務者協議において得た情報及び物的証拠について、これらが安否不明の拉致被害者十名のうち八名は死亡、二名は入境を確認せずという北朝鮮側の結論を何ら裏づけるものではないという我が方精査結果を伝達しました。

 また、これとともに、横田めぐみさんの遺骨とされたものについて、専門家により慎重に選定された骨片から横田めぐみさんのものとは異なるDNAが検出されたという鑑定結果の概要もあわせて伝達しました。

 その上で、我が国は、日朝平壌宣言にのっとり、真相究明を一刻も早く行うとともに、生存する安否不明の拉致被害者を直ちに帰国させるよう強く要求し、北朝鮮側より迅速かつ納得のいく対応のない場合、我が国として厳しい対応をとる方針である旨伝えました。

 これに対し、北朝鮮側は、本年一月二十六日、横田めぐみさんの遺骨とされた骨片に対する日本側鑑定結果について、これを捏造などとする備忘録を伝達してきました。我が国は、今月十日、この備忘録に反論する文書を北朝鮮側に伝達し、生存する拉致被害者を即時に帰国させ、また、すべての安否不明の拉致被害者に関して真実を早急に明らかにするよう改めて要求した次第です。

 拉致問題の解決に向けては、同問題に関する国際社会の理解と協力を得ることも極めて重要です。このような観点から、我が国は、累次の二国間、多国間の機会においてこの問題を取り上げてきました。特に、去る十九日に行った日米外相会談を通じ発出した北朝鮮に関する日米外相共同声明においては、米国が拉致問題に関する我が国の立場を完全に支持することが改めて確認されています。

 次に、核問題、六者会合をめぐる状況について申し上げます。

 今月十日、北朝鮮は、外務省声明を発表し、六者会合への参加を無期限中断するとの立場を示すとともに、既に核兵器を製造した旨宣言しました。この声明は、まさに北朝鮮による核保有宣言であり、極めて遺憾です。北朝鮮による核開発、保有は、我が国を含む北東アジア地域の平和と安定に対する直接の脅威であるのみならず、国際的な不拡散の努力に対する深刻な挑戦であり、絶対に容認できないことは言うまでもありません。

 六者会合プロセスを通じた核問題の平和的解決は、北朝鮮自身の利益でもあります。我が国として、北朝鮮に対し、六者会合の早期再開に無条件で応じ、信頼の置ける国際的な検証のもと、すべての核計画を完全に廃棄するよう求めるための外交努力を引き続き傾注していく考えです。

 そうした外交努力の一環として、私自身、今月十六日には李肇星中国外交部長と、同十七日には潘基文韓国外交通商部長官とそれぞれ電話会談を行いました。また、十九日には、ワシントンにおいて日米安全保障協議委員会、2プラス2及び日米外相会談を行い、北朝鮮に対し早期に無条件で六者会合に復帰することを引き続き強く求めていくことで米側と一致しました。特に、ライス国務長官との間では、さきに述べた共同声明を発出したところです。二十六日には、ソウルにおいて六者会合首席代表による日米韓の協議を開催し、今後の対応等につき話し合う予定です。また、今月末のIAEA理事会に向けても、関係国と対応ぶりを議論する考えです。

 拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、北東アジア地域の平和と安定に資する形で日朝国交正常化を実現するという、政府の基本方針は一貫しています。我が国として、対話と圧力の考えのもと、関係国と緊密に連携、協力しつつ、これらの諸懸案の解決に向けた外交努力を倍加していく考えです。赤城委員長を初め本委員会の皆様の御指導と御協力を賜りますようお願いを申し上げます。

 どうもありがとうございました。

赤城委員長 以上で説明は終わりました。

    ―――――――――――――

赤城委員長 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣参事官鈴木基久君、内閣官房拉致被害者・家族支援室長、内閣府拉致被害者等支援担当室長小熊博君、警察庁警備局長瀬川勝久君、外務省アジア大洋州局長佐々江賢一郎君、外務省中東アフリカ局長吉川元偉君、外務省領事局長鹿取克章君、財務省国際局長井戸清人君、文部科学省スポーツ・青少年局長素川富司君、農林水産省大臣官房審議官高橋直人君、水産庁漁政部長武本俊彦君、経済産業省貿易経済協力局長中嶋誠君及び国土交通省海事局長矢部哲君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

赤城委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。菅義偉君。

菅(義)委員 自由民主党の菅でございます。

 早速質問をいたします。

 ただいま外務大臣から御報告をいただきました日米安保協議会、そして外相会談についてであります。

 この会合にさかのぼる二月十日の日に、北朝鮮は突如として、六カ国協議を無期限中断をする、そしてまた核保有を宣言いたしました。相も変わらず恫喝外交だなという実は思いでありますけれども。そうしたことを受けて、先ほど大臣の話の中で、拉致問題についてはアメリカが我が国を完全に支持する、そういう御報告をいただきました。また、さまざまな角度からこの拉致問題についても話し合いがあったと思いますが、この会談後の共同声明の中で、北朝鮮の六者会合へ速やかに無条件で復帰をすべきである、このような表明もされておられます。

 まず最初に、この拉致問題、具体的にどんなことを協議されたか、お尋ねしたいと思います。

町村国務大臣 先ほど御報告をしたとおりでございますけれども、十九日のワシントンでの会議、2プラス2に先立ちまして、ライス長官と一対一の形で話し合いを持ったところでございます。その中で、拉致問題に関する日本側の立場、先ほど御報告をした立場を詳細に説明をいたしました。先方もかなり知識を事前に得ていたようでございまして、十二分に理解をするということでありました。

 私の記憶がもし正しければ、拉致された御家族の方々が米国を訪れて、当時のライス大統領補佐官と多分会ったことがあるのではないかなと、もしかしたらちょっと記憶違いかもしれません。いろいろ自分も知っているというニュアンスで先方からも応答があり、結果としては、ライス長官からは、北朝鮮に対する、拉致問題を迅速かつ完全に解決するよう強く求める日本の立場を完全に支持する、こういう話があったところであります。

 また、核の問題、弾道ミサイルにかかわる問題等についても話が当然行われ、さらには不法活動、これは麻薬問題等々も含まれるわけでありますが、こうした問題についても今度は2プラス2の場において議論が行われまして、日本とアメリカの考え方はこれまた一致をするということで、日本の立場に対するアメリカ側の明確な支持を改めて確認できたもの、かように考えております。

菅(義)委員 その会談の中で、北朝鮮がこのような態度をとるならば、これは安保理に付託をして、核問題と同時に拉致問題も人権問題としてここで取り上げてもらうべきじゃないか、あるいはまた北朝鮮抜きの五カ国協議会を開催し北に圧力をかけるべきじゃないか、こういう考え方もアメリカの政府の中あるいはアメリカの議員の中の一部にもある、こうも言われておるわけでありますけれども、こういうことについては話題になったのかどうか、お尋ねをします。

町村国務大臣 現在の六者協議のプロセス、形というのは、現状、アメリカが、最も適切である、こう考えている姿でございます。したがいまして、一部には米朝間の二国間でやればいいじゃないかという話があります。例えば、さきの大統領選挙の折には、民主党の候補からはそういう話が出ておりましたが、それに対してブッシュ大統領は、そうではない、六者協議というプロセスでしっかりやっていくことが大切であるということをずっと言われておりましたので、その考え方は第二期ブッシュ政権成立後も変わっていないということでありました。

 仮にという話をいたしました。この六者協議が再開をされない、あるいは仮に再開されたとしても一向に事態が進展をしないということも実は考え得る。その際には、一つの考え方として、安全保障理事会のプロセスに戻るというか、六者ではなくて安保理といういわば正規の、いわば正規と言うと六者が正規でないように思われるのでちょっとうまくありませんが、要するに安保理という決められた形の方に行くということも選択肢としては先々あり得るのではないかという発言を私がいたしまして、ライス長官からも同感であるという旨の発言があったところでございます。

 なお、五者協議という話は特段議論はなされませんでしたけれども、今後、必要に応じ関係国と緊密に連携をとりながらこの問題に対処していこうということについては意見の一致があり、ちなみに、今週の土曜日には、アメリカ、韓国それと日本、いわゆる六者協議の、今度新しくいずれも代表がかわったものですからその三者で会おうということで、その準備がもう既に始まっているところでございまして、土曜日の会合は今持たれることで決定を見たところでございます。

菅(義)委員 私は、ぜひこうしたことも視野に入れながら、対北朝鮮問題、交渉してほしいというふうに思います。

 さらに、多くの国民が不安に思っていることは、あの国は何をしでかすかわからない国である、もし暴発した場合に本当に日米安全保障条約の発動をしてくれるのかどうか、そういう不安も国民の中にはあるわけであります。

 この安全保障も含めて、私どもは日米関係は盤石である、こう信じておりますけれども、これについてお伺いしたいと思います。

町村国務大臣 この点につきましても、北朝鮮に関する日米外相の共同声明の一番最後のパラグラフで、閣僚はまた日米安全保障体制が引き続き力強さ及び活力を有することを再確認し、同体制が地域の平和と安定に対する挑戦を阻止し、対処する能力を有することへの信頼を表明した、この点がまさに今委員が言われた部分でございまして、直接的に書いてはございませんが、まさにそういう今委員が言われたことを意味することで、この文章が最後に載っているということであります。

菅(義)委員 次に、経済制裁についてお尋ねをしてまいりますけれども、二月八日の日、拉致家族、さらに救う会の代表の方、拉致家族の会長は横田さんのお父さんでありますけれども、官房長官にお会いをし、早期の拉致被害者の救出と経済制裁の早期発動、これを求めて五百万の署名をお渡ししたのでありますけれども、この五百万の署名の重み、これについて官房長官はどのようにお考えでしょうか。

細田国務大臣 菅議員がおっしゃいましたように、二月八日の日に、家族会そして救う会、そして超党派の拉致議連の代表の方、そろっておいでになりまして、これまで街頭その他日本じゅうの津々浦々で署名を集められ、そしてその累計が、数次にわたっておられますけれども、累計が五百万人を超えたということで、ぜひとも制裁に踏み切ってほしい、そしてあわせて拉致問題の解決を求める、こういうことを承ったわけでございます。

 私もこれを重く受けとめておりまして、かつ、早速小泉総理にも報告をいたしたわけでございます。

菅(義)委員 五百万の署名、そのほかに、これは新聞等の世論調査でありますけれども、各紙それは差がありますけれども、七割から八割の国民が経済制裁を早く発動するべきである、これがやはり私は国民の声でもあると思いますので、ぜひ官房長官また外務大臣等におかれまして、この重みというものを十分に御認識いただきたいと思います。

 先ほど、外務大臣の報告の中で、二月十日の日に北朝鮮の備忘録に対して反論書を日本から伝達した。その中で、誠意ある対応がなければ厳しい対応をとらざるを得ない、こういうことを伝達しておるわけであります。こうした公式の反論を伝達するについては、期限は明示しなかったわけでありますけれども、政府内ではそれなりの期限というものも当然頭の中に入れておられると思いますし、厳しい対応というのは私ども経済制裁だろう、こう理解をするわけでありますけれども、これについてはいかがでしょうか。

町村国務大臣 具体の回答、先方からの回答期限を、先方に渡した文書の中に明示しておりません。また、頭の中に何もないのかと言われれば、黙って何年も待つなんというばかなことはあり得ないわけでありまして、それは気持ちの中で一定のものは置いておりますけれども、それは交渉上言わない方が多分いいんだろう、こう思っております。

 厳しい対応というのは、当然、経済制裁を含んだ対応ということであることは明らかでございまして、今、どういう対応が今後とり得るかどうかということにつきまして、これは外務省だけで措置をとれるものでもございませんので、関係省庁でさまざまな形で御検討をいただいているということでございます。

菅(義)委員 大臣は、ある演説の中で、どこかできちんと対応したいという発言もされておられるようでありますので、私は、ぜひ、そのことについてはあえて聞きませんけれども、大臣を信頼申し上げたいというふうに思います。

 さらに、経済制裁が私はだんだんと現実視されてきているというふうに思います。日本にとってこれは初めてのことでありますから、政府内で当然組織の対応というのも協議をしておられると思いますし、またその手順というのもあると思います。こういう問題についてはどのようにお考えでしょうか。

細田国務大臣 政府としては、当然、生存者を直ちに帰国させるよう、そしてすべてについて実態を明らかにするように、引き続き強い交渉をしてまいる所存であります。そして、今日のように引き続き誠意のない対応に先方が終始する場合には、厳しい対応をとらなければならないという覚悟で交渉をしておるわけでございます。

 衆参両院におきまして、さまざまな対応の立法もしていただきました。その立法に基づきまして、法令によっては、あるいは政省令、あるいは通達等によって、どのような措置がどのようにとれるのかということは十分検討を法令別にもいたしておるところでございますけれども、まずは対話と圧力の中の圧力を持ちつつ対話をするという基本方針で、現在、先ほど申しましたような厳しい考え方で対応しておるわけでございます。

町村国務大臣 今委員の方から、組織的に政府の方でどういう対応を考えているかというお問い合わせでございました。

 内閣官房を中心として、関係する省庁は多岐にわたるわけであります。経済産業省あるいは財務省あるいは国土交通省あるいは法務省、そういうそれぞれのところと別に組織を新しくつくったわけではございませんけれども、有機的なチームプレーをできるようなことで、既にいろいろな検討が始まっているところでございます。

菅(義)委員 ぜひ、抜かりのないように、手続等も含めて措置をしてほしいというふうに思います。

 私ども、自民党の拉致対策本部、その中で経済制裁のシミュレーションチームというのがありまして、私はその責任者をいたしておるわけでありますけれども、私どもは、実は段階的なイメージというものをつくらせていただきました。経済制裁をする場合に、一つは、段階的にハードルを強めていくという一つのパターン、もう一つは、最初から厳しい経済制裁をし、相手の出方によって徐々に下げてくるという経済制裁の仕方。この経済制裁については、いろいろ実はあろうかと思います。

 今大臣のお話にもありましたけれども、例えば、送金の報告義務の厳格化。今は三千万以上の送金でなければ、これは届け出をしなくていいことになっています。しかし、十五年の三月までは五百万であったんです。これを、例えば例外なく引き下げをする。あるいは、携帯の現金の持ち込み。今は百万以上でなければ届けなくていいわけでありますから、これを例えば一円から届けさせるとか。

 こういうことについては、これは何も閣議でなくて、政府の意思決定、大臣の告示でできるわけでありますから、こうした私どものつくったこのシミュレーションというものをぜひ参考にしていただいて、効果があるものを考えて交渉してほしいというふうに思います。

 そして、私の最後の質問になるわけでありますけれども、今までの政府の姿勢というのは、対話と圧力、その中で、対話、話し合いが中心になって対北朝鮮外交というのは進んできたと私は思います。しかし、今日、この北朝鮮外交の中で拉致問題を解決するには、金正日というこの独裁者、そしてその独裁者を取り巻く特権階級と言われる軍の幹部や党の幹部、こうした階級の人たちに実害を与える経済制裁を科さなければ、私は、この拉致問題というのは進まないのじゃないかなというふうに実は思っています。

 かつて、万景峰の入港禁止のための特定船舶入港禁止法案、あるいは日本からの送金、流通、輸入を日本の国の意思でとめることができるように外為法改正の議員立法を私ども取り組んだ者の一人でありますけれども、こうした法改正をしたときに、彼らは何と言ったかといえば、これは宣戦布告だと言ったんです。

 結果として、この法律が衆参で成立する見通しが立った時点で、北朝鮮が初めて日本に対して歩み寄ってきたんです。彼らは、やはりこうした経済制裁を科さなければ歩み寄りをしない国であるというふうに私は思っていますので、政府も、ぜひ今までの対話中心から圧力へと方向転換を図る時期に来ている、私はこう思いますけれども、これについて見解を伺いたいと思います。

町村国務大臣 対話と圧力、これが今、基本的な考え方であるということにおいては変わりはございません。ただ、そういったもろもろの準備をしているということだけでも、ある種の圧力に実はなっているという面もありましょう。また、各政党においていろいろなシミュレーションをされる、それを公表される、そのこと自体の御努力に私どもは大変敬意を払いますし、そのこと自体もまた一つの圧力にはなっているんだろう、こう思っております。

 いずれにしても、その圧力、どういう形で今後発動していくのかというようなことを慎重に考え、タイミング、方法、今言われた、一部特権階級というお言葉を使われましたが、先方のそういう指導的立場にある人たちに影響を与えるような方法というのが有効なのではないかという御指摘も受けとめさせていただきたいと思います。

 今、この状態、先ほど申し上げました六者協議が再開されるかどうかというまことに微妙な時期に今あるところでありまして、そういったことも私どもとしては考え合わせながら、きちんとした正しい解決ができるような手段というものを選択していきたいと考えております。

菅(義)委員 私は、もう期限を区切って経済制裁を勧告する時期に差しかかっている、このことを最後に申し上げまして、質問を終わります。

赤城委員長 次に、西村康稔君。

西村(康)委員 自由民主党の西村康稔でございます。菅議員に引き続きまして、できるだけ重複を避けながら、経済制裁の具体的な中身あるいは効果などにつきまして、ちょっと議論をさせていただければと思います。

 先ほど大臣おっしゃられましたけれども、いつでも経済制裁をできるというその準備をしていくことが、このこと自体、準備を進めていること自体、北朝鮮に対しては相当なプレッシャー、圧力になるものと思いますし、先ほど来、対話と圧力という言葉で御説明しておられますけれども、もはや対話が先に来るんじゃなくて、対話を引き出すためにも圧力を先に、圧力と対話と、言葉の遊びをするわけじゃありませんけれども、しっかりとプレッシャーもかけていくということが大事かと思います。

 それで、その具体的な経済制裁の前に、これは制裁ではありませんけれども、事実上制裁と近いような効果を、これは予期せぬ効果と言ってもいいのかもしれませんけれども、持つもの等につきまして、ちょっと御議論をしたいと思うんです。

 一つは、三月一日から、油濁損害賠償保障法、これが施行されます。これによりまして、保険に入っていない船は日本の港に入港できないということになるわけでありますけれども、事前にデータを見てみますと、北朝鮮の船は二・五%しかこの保険に入っていないということでありまして、これはその後どういう状況になっているのか。

 もうあと一週間ほどの話でありますので、事前にこれは国土交通省に保障の契約の内容を届け出て、その審査を受けて、大丈夫だという証明書をもらって初めて港に入れるというこの新しい法律が三月一日から施行されるわけでありますけれども、今の段階で北朝鮮船がどのような対応をしているのか、これは国土交通省にお伺いをしたいと思います。

矢部政府参考人 ただいま、北朝鮮籍船舶の対応の現状についてお尋ねがございました。

 先生の御指摘のとおり、油濁損害賠償保障法の改正によりまして、来る三月一日から、我が国の港に入港する外航船舶につきましては、船舶の座礁等により発生する損害をてん補する保険への加入が義務づけられることになります。

 具体的には、あらかじめ適切な保険に加入している旨の国土交通省の証明書を取得していただいた上で、我が国の港に入港する際には、この証明書を船舶に備え置いておくということが必要になります。それで、現時点では、北朝鮮籍の船舶につきまして、十六件の証明書交付の申請が出ております。国土交通省といたしましては、この法令に基づきまして、現在、適切な保険かどうかについて調査を行っているところでございます。

西村(康)委員 十六件の届け出が今あって審査をしているということでありますけれども、いろいろ聞いていますと、保険会社の実体のないような会社と契約を結んでいるような話も伝わってきておりますので、ぜひしっかりと審査をしていただいて、中身を十分審査をしていただいて判断をしていただければと思います。

 それからもう一つ、北朝鮮産のアサリ、日本に入ってきているアサリの表示の問題でありますけれども、これは以前から徹底した調査、これはJAS法に基づいて生育期間の長い方を表示するということになっておりますので、北朝鮮で一年間ぐらい育ったアサリを日本に持ってきて一週間ぐらい日本の海にまいても、これは北朝鮮産だという表示をしなきゃいけないということだと思いますが、その表示がおかしいんじゃないかということで調査をお願いしておりましたし、その調査結果が出ておるというように伺っておりますけれども、まずその調査の結果についてお伺いをしたいと思います。これは農林水産省。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども農林水産省では、一月の十五日から三十一日にかけまして、地方農政局などにおきましてアサリの原産地表示の根拠の確認調査を行ったところでございまして、先日、十六日には、一月末までの調査状況を中間的に公表したところでございます。

 一月末までの調査状況といたしましては、小売段階におきまして、これは全体が六百五十小売店舗、それから七十四事業所、これは事業所の中間流通業者でございますが、小売段階におきまして原産地表示の欠落などの不適正表示があった事例が十九件確認されまして、これは厳正に指導などを行っているところでございます。それからさらに、原産地表示をしておりましたがその根拠がなかった事例も十六件確認をされております。

 これらの事例につきましては、その発生の原因も含めまして確認調査を行うとともに、その仕入れ先などにさかのぼって事実関係の確認調査を実施いたしているところでございます。さらに、不適正表示などが確認されなかったケースにつきましても、小売店の仕入れ先であります卸売業者にさかのぼりまして、必要な調査を行っているところでございます。

 この調査につきましては、二月に入ってからもなお継続中でございますが、調査の結果、産地の偽装などが確認をされた場合には、改善の指示及びその事実の公表などの措置を講じてまいりたいと考えております。

西村(康)委員 今、十九件、十九店舗で不適正な表示、それから確認できなかったものが十六件ということで、三十五件ほどでありますけれども、これは非常に少ない感じを持っております。

 北朝鮮からのアサリの輸入は、国内生産と同じぐらい、三万トンぐらい輸入をしておるということで、非常に少ないんじゃないかと思いますので、もちろんこれはおかしなところはしっかりと指導をしていただきまして、改善をしていただくということ。それから、さらにさかのぼって調査を続けられるということでありますので、ぜひ川上まで上っていただいてしっかりと調査をしていただいて、おかしなところはしっかり指導、公表を含めてやっていただきたいと思います。

 今、アサリの話が出ましたけれども、幾つかの経済制裁の手法があると思いますが、まず貿易規制、貿易制限をやるという場合であります。これはもちろん輸出入の業者が我が国の中にもいるわけでありますし、個別品目ごとに、我々日本側の産業あるいは地域経済に与える影響もしっかり分析をした上で判断をしなければいけないと思いますし、また北朝鮮側に与える影響についてもしっかりと分析して、効果を見ながらやっていく必要もあるかと思います。

 日本と北朝鮮の間、日朝間での貿易額で金額の大きいものを見ますと、北朝鮮から日本に輸出をしているもの、これは水産物が一番でありまして、中でも今のアサリ、ベニズワイガニが大きいわけでありますが、それから衣料品です。これは日本から材料を送って、向こうで製品加工して、スーツなりになって日本に輸出をしているということだと思いますけれども、こういったものがある。それから、日本から北朝鮮に輸出をしているものは、中古車が多くて、それから衣料品の材料、こういったものが多い。今申し上げたような輸出入それぞれ上位二品目ぐらいで六割、七割、過去数年間の経緯でいいますとそのぐらいを占めているのかと思います。

 そのそれぞれについて、なかなか具体的な効果は言いにくいと思うんですけれども、例えば、ベニズワイガニあたりは、仮に輸入を規制しても、結局韓国とかほかの国で缶詰にして日本に持ってくる。となりますと、単に日本の国内の水産加工業者の仕事を奪って、海外にその仕事を与えてしまうだけの効果になりかねないということもありますので、そのあたり、ぜひ効果を生まなきゃいけないと思うんです。

 この点、アサリはむき身にして製品加工して持ってくるというニーズは少ないんじゃないか、むしろ今の、同じように殻つきで日本の国内に生鮮品として流通する方がニーズは高いんじゃないかと思います。あるいは、衣料品についても、これは材料をとめれば向こうで製品加工ができなくなりますから、相当数の雇用を失わせる効果もありますし、混乱を引き起こす一つの大きな要因になるんじゃないかと思います。

 このあたりにつきまして、どのような考え、分析をしておられるか、まずアサリ、ベニズワイ、水産物について、水産庁からお伺いしたいと思います。

武本政府参考人 お答え申し上げます。

 アサリ及びベニズワイガニの関係でございます。

 我が国への輸入金額でございますけれども、アサリが大体四十億円、三万トン強でございまして、それからベニズワイガニが十四億円、大体千七百トンぐらい入ってきております。これらにつきましては、全体の我が国の水産加工業で使っている魚の量が六百万トンぐらいありますので、積み上げても大体五万トンぐらいにしかならないという意味では、オールジャパンベースで見るとそれほど大きな影響があるという数字ではもちろんないのでございます。

 ただ、日本海側の一部の地域に集中して水揚げをされているという商品でございます。アサリについては、下関市に大体八〇%が水揚げをされている。それから、ベニズワイガニはもう一〇〇%境港市に水揚げをされています。そういった意味で、そういった特定の地域だけに限れば、相当な関連産業への影響ということが生じる可能性があるのではないかなと考えておりますので、この点につきましては、私ども農林水産省としては、影響が生じる場合について、関係の都道府県あるいは地元の団体の方々とも十分意見交換をしながら適切な対応をしていきたい、このように考えているところでございます。

西村(康)委員 ぜひ、国内への影響もしっかり見きわめていただいて、あるいは第三国経由なり、国内のニーズがどういうふうに変化をしていくかというところも見きわめて、よく分析をしておいていただければと思います。

 衣料品について、経産省、来ておられますか。

中嶋政府参考人 衣料品についてのお答えでございますけれども、まず昨年一年間、いわゆるメンズスーツなどの衣類あるいはその附属品の北朝鮮からの輸入額が約二十八億円でございます。これは、北朝鮮からの輸入総額が百七十六億円でございますので、それの約一六%を占めている、かなり大きなものでございます。

 それから、片や一方で、日本の方から北朝鮮に繊維の関係で輸出もございます。それは約十六億円でございますけれども、そのうちのある一定部分はおっしゃるように委託加工をして日本にまた戻ってくるというものもあるかと存じますけれども、詳細は必ずしもよくわかっておりません。

 なお、日本からの輸出品につきましては、一番多いのは中古自動車、これは過半がトラックでございますけれども約三十億円でございまして、これが北朝鮮への輸出総額の九十六億円のうちの約三一%でございます。

西村(康)委員 ぜひ、個別品目ごとに、国内産業への影響なりもしっかり見きわめていただいて、いつでも制裁が発動できる準備をしていただければと思います。

 仮にすべての貿易をとめた場合にどれだけ北朝鮮経済に影響があるかということを、これは北朝鮮の経済はなかなかデータがないものですから、韓国銀行なりあるいは国連に北朝鮮が届け出たデータ、GDPのデータがありますけれども、これもやや低目に北朝鮮側は、援助を求めることもあり、あるいは国連への負担金を少なくするという意図でやや低目に出しているんじゃないかと思います。

 これのデータ、正確なデータがないわけでありまして、あるいは国内の消費の動向とか産業の構造につきましてもデータがないものですからなかなか試算もしにくいわけでありますけれども、ざっくり、ほかの途上国の例も見ながら試算をいたしますと、一・二%から七%ぐらいGDPに対してマイナスの効果があるんじゃないかという試算を自民党内のシミュレーションチームでまとめたところでありますけれども、この数字についてどういうふうに見られるか。

 数字自体については、今申し上げたようになかなかはっきりしたデータもないわけでありますけれども、ただ政権中枢あるいは政権の周辺、かなり近いところに貿易の利権なりがあって、そこに貿易に伴う収益、お金が政権の中枢に行っているんじゃないか、こういうふうに分析をしておりまして、貿易をとめればそれなりに政権に与えるダメージは大きいんじゃないかと思いますけれども、このあたりどういう見方をしておるか、町村大臣にぜひお伺いをしたいと思います。

町村国務大臣 西村議員御自身が自民党の拉致問題対策本部でこのシミュレーション等を初めとして各種の制裁問題について積極的に活動しておられること、私もよく承知をいたしております。

 今先生の言われた一%台から数%の影響、なかなか政府の方でこういう試算をするちょっとツールもないものですから、率直に言ってこれ自体のことについてコメントをすることは難しいわけではございますが、いずれにしても相当のマイナス効果を与えるということであろうな、私どももそう思って皆様方の作業の結果を受けとめさせていただきました。

 こうしたことを念頭に置き、参考にさせていただきながら、今後の対策、誤りなきを期してまいりたいと考えております。

西村(康)委員 貿易をとめただけでもこれだけの効果があるわけであります。貿易をとめること自体も大変なことでありますけれども、それ以外の手法として、先ほど菅議員の方からも指摘がありましたけれども、銀行からの送金あるいはお金を持って入る携帯輸出、これをとめることも一つの経済制裁の手法だと思います。現状、銀行送金あるいは携帯輸出、日本から北朝鮮にどの程度のお金が渡っているか、お聞きをしたいと思います。

井戸政府参考人 貿易代金を除く外国向けの支払いにつきましては、現行外為法上、三千万円相当額を超えるものが財務大臣への報告義務の対象となっております。ここ二年度分について申し上げますと、報告のあった平成十五年度中の北朝鮮向け送金は一億百万円、平成十六年度は、十二月末までの報告でございますが、九千二百万円となっております。

 また、現金等を国外に携帯して持ち出す場合は、現行外為法上、百万円相当額を超えるものが財務大臣への届け出義務の対象となっておりますが、ここ二年度分について申し上げますと、平成十五年度に届け出のあった北朝鮮への現金等の持ち出しは二十五億七千六百万円、平成十六年度は、十二月末までの届け出で、二十一億七百万円となっております。

西村(康)委員 今数字を御指摘いただきましたけれども、過去送金の方は数億円ぐらい。これは足切りの金額が五百万から三千万円に上がっていますので捕捉するのが少なくなっていますから、九千二百万という数字を御指摘いただきましたけれども、三千万以下のものは届けなくてもいいわけでありますから、報告する義務はありませんから、実際にはもっと金額としては膨らむんだと思いますし、携帯輸出も同じであります。百万円の足切りがありますので、二十一億円強。

 かつては数十億円の携帯輸出があったわけでありまして、このあたりからこの足切りの撤廃、あるいは送金あるいは携帯を許可制の対象とすること、これも閣議決定の後、告示でできるということでありますので、ぜひこれも準備を、いつでも発動できる準備を、内部での検討を進めていただければと思います。

 最後に二つ、時間があればお聞きしたいと思うんですが、経済制裁を行う場合、貿易規制にしても送金の規制にしても、結局日本だけやっても第三国経由で貿易が行われたり、送金が行われたりする可能性があるわけで、特に韓国、中国との連携をしっかりしていかなければいけないということであります。

 先ほど、大臣の報告の中にも、話をしておられるという御報告をいただきましたけれども、ぜひ今後とも、経済制裁を行う段になればさらにこのことの理解、協力を求めていかなきゃいけないわけでありまして、この点につきましての大臣の所見をお伺いしたいと思います。

町村国務大臣 今、制裁を前提としてのそういう協議を韓国、中国と行っているわけではございませんが、その手前のところで、私どものこの拉致問題に関する考え方、取り組み、先方の対応というものについてはいろいろな機会に説明をし、また理解を得る努力をしております。

 一例を挙げますと、昨年の十二月の指宿における日韓首脳会談、その場でまた外相会談もやりましたが、その折にも、小泉総理からもまた私からも、この北朝鮮のさまざまな行動について説明をし、特に先方、韓国の外務大臣は、最終的に日本がいかなる措置をとっても、それは日本の主権にかかわる話でもあるからそれは支持するというかなり明確な意図表明も受けているところでございます。ただ、願わくば、今、六者協議という話もあるから、慎重にお考えをいただきたいし、またよく連絡もとってくださいという要望があったことも事実でありますし、中国もまた同様であろうかと思っております。

 いずれにしても、具体の政策をとる際には、よく関係国と緊密な連携をとり、進めていくことが必要であるという委員の御指摘はまことにごもっともだと思っております。

西村(康)委員 時間となりましたのでこれで終わりますけれども、ぜひ、物事はタイミングもありますし、早過ぎても遅過ぎてもいけないんだと思います。しかるべきタイミングでいつでも経済制裁できるということをしっかりと準備していただいて、また国内産業への影響、あるいは関係国との連携もしっかり図っていただきたいと要望申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

赤城委員長 次に、池坊保子君。

池坊委員 公明党の池坊保子でございます。

 質問に先立ち、二月七日にお亡くなりになりました曽我ひとみさんのお父様、茂さんに心より哀悼の意を表したいと思います。一九七八年に御家族二人が突然行方不明になられた。それからの人生はお二人を捜すことに明け暮れた心痛の日々ではなかったかと思います。二十四年ぶりにひとみさんと会われても、愛する奥様と再会することなくこの世を去られましたことはさぞかし無念だったことだろうと思います。

 私どもは、再会を期しながら再会することができなくてお亡くなりになった方々、そして今病床にある方々に思いをはせ、一日も早く家族の再会が果たせますことを政治家としてそのことに全力を期していきたい、その使命と責任を強く感じながらここに立っております。

 質問に入らせていただきます。

 官房長官にお尋ねしたいと思います。私は一回目の質問で、省庁を超えた横断的な、拉致問題をさまざまな英知を集めながら問題を提起し解決していく、そのような部局が必要ではないか、ぜひそのような部局を創設していただきたいとお願いいたしました。そのことについてどのようにお考えかを伺いたいと思います。

 あわせて、それは最善の道だというふうに私は思っておりますが、もしそれがかないませんでしたら、家族支援室にぜひ私は中山参与のような経験豊かな、そして相手の痛みや苦しみがわかる女性の方を置いていただきたいというふうに思うのです。家族会の子供たちも帰国して、これからさまざまな問題に遭遇していくだろうと思います。

 そのときに、もちろん支援室もきちんと機能しているとは思いますが、やはり男性だけでは、相談、打ち明けられないということがあると思います。もし相談し、そして的確なアドバイスがもらえたならば、心も安らかに、そして希望も見出すことができる、そう思っている家族会の方々もたくさんいらっしゃると思います。あわせて、これに対してどのようにお考えかをお聞かせいただきとうございます。

細田国務大臣 拉致問題につきましては、かねてから、池坊先生初め皆様方からも、内閣官房の体制についてもっとしっかりした体制をとれというおしかりをいただいているわけでございます。

 これまでは、拉致問題に関する専門幹事会、これは関係閣僚会議のもとにおきまして、関係の省庁、これは公安関係の省庁もありますし、あるいは警察庁、そして外務省を初め各関係省庁、そして内閣官房一体となりまして、官房副長官が議長としてさまざまな指揮命令をしておるわけでございますが、これは、内閣として各省にまたがる問題であるからこの問題に対応するということで、専門幹事会を随時開いておるわけでございます。

 今も、十三人の方々はお戻りになりまして、ようやく平和な生活は取り戻されましたけれども、家族支援の問題も当然ございます。そのほかに、まさに安否不明の方々、これは、はっきりと拉致被害者であると認定された方も、それから、そうははっきりとした証拠がなかなかないけれども、必ずやその中に被害者の方がおられるという多数の方がおられるわけでございます。

 そういった方々についても、この幹事会では公安情報担当の役所にも強い指示を行いまして、こういう情報があるがこれについて調べてはどうかということをやり、そして、数百名に及ぶわけでございますが、関係団体からも、こういう方々が拉致された疑いが非常に強いということを受けて、私が副長官のころからも、一人一人をシラミつぶしに調べて、どういう状況であったのかということを再度調査するようにということを言い、そういった活動は繰り返しております。

 そういった中で、行方がわかったのではないかという方も若干おられますけれども、まだまだ十分な進展を見ておらないことは事実でございます。その点、さらにしっかりと取り組んでまいりたいと思います。

 それから、拉致・家族支援室でございますが、池坊議員から、かねてからこれを家族支援を中心とする室から、拉致対策本部とか拉致対策室とかそういうようなしっかりとした組織に変えるべきではないかという御提言もいただいております。今、いろいろな情勢も大きく変化を始めておりますので、そういったことにつきましては、今後さらに検討してまいりたいと思っております。

池坊委員 情が深いと伺っております細田官房長官でございますので、拉致家族者の痛みに立って、これからもきめ細やかな対策、ぜひ女性を、女性だからいいというわけではございませんが、人生経験、喜びや悲しみを経験した人を入れていただきたいと切に希望しておりますので、これはぜひ考慮していただきたいと思っております。

 次に、町村外務大臣にお伺いしたいと思います。

 我が国の対北朝鮮戦略について私はお伺いしたいと思っております。

 外交というのは国家戦略だと思います。我が国がどれだけ緻密に戦略を持っているか、それによって外交的に相手国に対して優位に立てるのではないかと思うのです。北朝鮮を見ておりますと、発言のタイミングですとか内容の出し方が非常に巧妙、こうかつでございます。頭がいいな、外交にたけているなと私は思っているのです。でも、私どもはそれに打ちかたなければなりません。

 二月十日、北朝鮮外務省は、昨年六月以降中断されております六カ国協議について、アメリカのブッシュ政権が北朝鮮への敵視政策を変えていないとして、参加を無期限中断するとの声明を発表いたしました。さらに、我々は自衛のために核兵器を製造した、さらにその上に、核兵器庫をふやすための対策を講じると発言しております。

 公明党の井上政調会長も、核をカードに譲歩を引き出そうという北朝鮮の常套手段だろうと発言していられますが、私も全くそうなのではないかというふうに考えております。

 王家瑞対外連絡部長と会談した金正日総書記は、今後、六カ国協議の条件が成熟したならばいつでも会談のテーブルに着くだろう、アメリカが誠意を示して行動をとることを期待しているなどと、大変強硬な姿勢をとっております。

 私は、協議の条件が成熟した、これは一連ずうっと言い続けていることでございますね。見ておりますと、二歩後退する、そして一歩前進する、そうすると譲歩したのかなと見える、でも、よく考えれば、一歩後退はそのままであるわけでございます。

 それらのことを考えてまいりますときに、外交戦略として、いかなる戦略のもとにこれから対北朝鮮外交の、対話と圧力と言っていらっしゃいますけれども、それを進めていらっしゃるのかを伺いたいと存じます。

町村国務大臣 日朝間には日朝平壌宣言というものがございます。もうこれは無効だとか意味がないとかいろいろ御批判も出ているところでございますが、私どもとしては、やはり一つの大きな外交上の足がかりということで、拉致、核、ミサイル、これを包括的に解決し、もって北東アジアの平和と安定を実現したい、こういう大きな目標を持ってやっているわけであります。そのいずれもがなかなか、北朝鮮のさまざまな反応によって妨げられているというのが今の現状かな、こう思います。

 確かに、先方は、ある意味では情報を独占しております。したがって、彼らの最もいいと思う時期に、彼らの持っているメディアを使っていかようにでも彼らの意図を表明できる。その点、なかなか、ああいう国でないと、我が国には大変優秀なメディアの方々もいらっしゃるものですから、いろいろな情報が流れ出るというようなこともあって、そこのところの彼我の、ある意味ではハンディキャップと言ってもいいのかもしれませんが、そういうものが存在するのは事実であります。

 しかし、さはさりながら、私どもとしても、先方がいろいろな声明を出してきたり、二月十日の声明を初めとしていろいろなアクションをとってくることに対して、一つ一つ対応しながらやっております。

 それと同時に、今北朝鮮が客観的に置かれた情勢を彼らがどう認識しているのかといいますと、もうこれは物の見事に北朝鮮以外のすべての国が、中国はもとより、日本はもとより、アメリカはもとより、同じ方向を向いて一斉に発言をし、そういう意味では完全に、意図せざると言ってもいいかもしれませんが、世界じゅうの包囲網ができ上がってしまっているような現状に北朝鮮は立たされてしまっている。

 そういう意味では、決して彼らは外交的に勝利をしているわけでも何でもない。むしろ、完全に孤立した状態の中で、いわば身動きできない状態になっている。そういう状態をより強めていくことで、彼らが無条件で速やかに六者協議に復帰せざるを得ない、そういうことになってくるんだろうと私は思います。

 今週土曜日の日に、先ほどちょっと申し上げましたが、六者会合の代表者である日本の代表、佐々江アジア大洋州局長でございますが、及び韓国、そしてアメリカの代表がソウルで会う予定にしております。また、今委員がお触れになりました王家瑞中国共産党対外連絡部長さんが行って、帰ってこられました。昨日、夕方でしょうか、我が方大使に、王家瑞氏そのものではございませんが、それにかわって、一緒に同行した方から概要の報告がありました。

 話の中身は既に今委員がお触れになったようなこととそう違いはなかったようでございますけれども、いずれにしても条件が整えばということを言っている。しかし、我々は無条件で直ちに復帰しなさいということを言っているわけでございますから、まだ条件闘争をこの期に及んでやろうとしているのかな、まことに不可解な思いでございます。

 いずれにしても、私どもとしては、関係国と外交努力を重ねながら彼らを六者協議の場に再び参加させ、そして核のない朝鮮半島というものをつくるという目標に向かってしっかりと外交努力を重ねていきたいと考えております。

池坊委員 今の御答弁と多少重複するかもしれませんが、私の先ほどの質問と連動いたしますので、北朝鮮と交渉する際の基本姿勢についてお伺いしたいと思います。

 話は違いますけれども、私は、お花をいたしておりまして、いい花を生けるには、その花が持っております特性を冷静な洞察力と観察力で見きわめなければなりません。外交も私は一緒なのではないかと思っております。相手のその国が属している文化圏、あるいは民族性といったものは、交渉するときに不可欠な要素なのではないかと思っております。

 時々北朝鮮を見ながら、北朝鮮というのはどういう民族性なのだろうか、どういう国民性なのだろうかと私は考えるんですけれども、一連のこの交渉を見ておりますと、本当にタフネゴシエーターだなというふうに思っておりますし、強硬姿勢である。それとともに、時には瀬戸際外交、それから破れかぶれ、これで大丈夫なのだろうか、本当に危険をはらんでいる。私たちは、はらはらしながら交渉しているのではないかと思うのですが、相手の立場に立ちますと決してそうではなくて、むしろ、今の体制を維持するために、その存続をかけて非常に冷静な計算の中で私はやっている行動ではないかというふうに思っているわけです。

 それらのことを考えますときに、これから、どのような北朝鮮の文化的な素地あるいは民族性というものをお考えになって、そして外交を進めていらっしゃるのか、ちょっと伺いたいと存じます。

町村国務大臣 私も余り勉強が行き届いておりませんので、北朝鮮の民族性、民族的特色というのがどういうあたりにあるのかということを十分熟知しているわけでもございません。したがって、池坊委員がお花をすばらしい透徹した目でごらんになるような、そういう分析ができないことはまことに申しわけなく思っております。

 ただ、彼らのいわば外交目標といいましょうか、今いろいろな形でやっておることは、もうある意味ではたった一つ、国家の存続という一点なんだろうと思います。どうやって今の金正日体制というものを維持するのか、存続させるのか。そのために一般の庶民は塗炭の苦しみにあったとしても、核というものを外交カードに使ってそれで何とか体制を維持していこうということで、無謀な核開発というものを進めているということなんだろうと思います。

 したがって、私どもから見るとそれはある意味では大変こっけいな姿に映るわけでございますが、彼らの立場からすれば、それはある意味では当然の政策選択ということになるのかもしれません。

 したがいまして、私どもとしては、やはり彼らがどう考えているのかということは、そこはいろいろな角度から、いろいろな見方もあろうかと思います。いろいろな角度から分析をし、そして関係国で情報を持ち寄って、そして最善の対応策というものをタイムリーに打っていくということが必要なんであろう、こう考えておりまして、一生懸命そういう意味で日本としてできる最大限の努力をし、拉致の問題そして核あるいはミサイルの問題の解決に努力をしていこうと考えているところであります。

池坊委員 日本が今脅威にさらされております。弾道ミサイルと自国の防衛について大臣の御見解を伺いたいと思っております。

 この間、大臣がお出ましになりました2プラス2の北朝鮮に関する日米外相共同声明においても、北朝鮮のミサイル計画に懸念を表明され、どのような状況においても引き続き情報を共有していくことが決定されましたことは、大変に心強く思っております。ただ、ノドンというのは既に百基以上あって、それは日本を射程距離に置いているということでございます。それからまた、弾道ミサイルの拡散は、日本のみならず世界の平和と安定を脅かす大変に恐ろしい側面もあると思います。

 私は、北朝鮮の瀬戸際外交の有力な武器として弾道ミサイルを使っているわけですけれども、この脅威を低減できれば、我が国を守るだけでなく、外交上も交渉上も私は有利に働くのではないかというふうに考えております。平成十六年度からは、弾道ミサイル防衛、BMDとか、あるいは予算もとられておりますし、防衛庁の設置法等の一部改正案も国会に提出されております。

 今までを考えてみますと、この外交というのはODAを中心とした平和外交というのが、もとよりそれは大切でございますけれども、主としてそういうことに重点が置かれていたのではないかと思います。でも、これからはハードルを高くして、自国を守るためにはこの防衛力ということも大切な要素になっていくと思います。外交と防衛力を結びつける、この点について大臣の御見解をお伺いしたいと存じます。

町村国務大臣 外交はもとより総合力でございます。一つの政策手段だけで目的を達成するというのは大変難しゅうございます。そういう意味で、今委員が言われたように、外交、その中でやはり安全保障的手段の持つ意味というのは小さくない、こう認識をいたしております。

 今、BMD計画というものが先般の新しい防衛大綱の中でも位置づけられ、それについての法律あるいは予算というものも今この国会でお願いをするわけでございますけれども、このことはやはり、北朝鮮が今精力的に開発し、あるいはもう配備しているノドンあるいはテポドン一号、一型、二型というんでしょうか、これらの有効性を減殺させるという意味で、別に今それを特定の目標にしているわけではございませんが、そういった体制を整備することが日本の交渉力を強めるということに役立つことは間違いがないだろう、私はこう思っております。

 いずれにいたしましても、先般の日米の北朝鮮に関する共同声明の中でも、一番最後のパラグラフに、閣僚は日米安全保障体制が引き続き力強さ及び活力を有することを再確認し、同体制が地域の平和と安定に対する挑戦を阻止し、対処する能力を有することへの信頼を表明したと。これはまさに日米で共同して、この北朝鮮の核あるいはミサイルというものへ連帯して当たっていくんだという政治的意図表明でございまして、やはり日米安保体制というものがまずあるということ自体が非常に北朝鮮との交渉上強力なベースになっているということを意味しているという意味で、この最後の一パラグラフが入っているわけでございます。

池坊委員 大臣にお伺いしたいことはたくさんございました。時間が来てしまいました。

 先ほどちょっと、反論書で時間を提示する必要が私はあったのではないかと思いますけれども、大臣は、交渉上言わない方がいいと思ってそうしたというようなお答えをなさいました。これは、あるいは北朝鮮に時間稼ぎをさせてしまったのではないか、そして日本の緊迫感が伝わらなかったのではないかと私は危惧いたしております。これから総合的な戦略だと先ほどおっしゃいました。日本は本来英知のある国民でございますので、英知を傾け、そして北朝鮮と交渉していっていただきたいし、私どももそれに力をかしていきたいと思っております。

 ありがとうございました。

赤城委員長 次に、長島昭久君。

長島委員 民主党の長島昭久です。外務大臣、ぜひよろしくお願いをいたします。

 先週末にワシントンでいわゆる2プラス2会合が開かれまして、世界とそして地域における日米間の共通の戦略目標というものが定められた、そしてグローバルな日米同盟関係をこれから発展させていこう、こういうイニシアチブが表明をされたということは、大変意義深いことだというふうに評価をさせていただいているところであります。

 また、北朝鮮に対しても、六カ国協議に速やかにかつ無条件に復帰するように、それからすべての核計画、これは完全な廃棄に応じるよう強く要求する、極めて強い働きかけというか文言を使って共同ステートメントが発表されたということは、大変すばらしいことだというふうに思っています。

 また、ミサイル防衛についても合意がされ、あるいは大量破壊兵器の拡散阻止を目的としたPSIの活動についても言及がなされたということは、これは対北朝鮮政策全般から見て非常に評価できることだというふうに思っています。

 それから、地域における共通の戦略目標の中では、朝鮮半島の平和的な統一を支持する、それから核計画、弾道ミサイルに係る活動、不法活動そして拉致問題、こういったすべての懸案を平和的に解決する、こういう方向性が打ち出された。大変結構なことだというふうに思っています。

 ただ、一点残念だったのは、この日米共同ステートメントの中で、仮に北朝鮮がこのまま六者協議に復帰しなかった場合、あるいは北朝鮮がさらなる核開発を続けていった場合、こういう場合に両国がどんな手段でこの北朝鮮に対して対抗していくのか。

 つまりは、先ほど外務大臣の冒頭の御報告の中にも、核保有宣言は極めて遺憾だ、それから核の保有は国際的な不拡散の努力に対する深刻な挑戦だから絶対に容認できない、こういうお言葉はよくわかるんですけれども、もしそれを北朝鮮が拒み続けた場合にどのような対策を講ずる用意があるのかという、この辺のところを、ぜひ、外相会談をなさったお立場から、先ほど一点外務大臣がおっしゃった、安保理に付託するというお話を町村外務大臣の方から会議の場で提起をされたということを聞いて非常に心強く感じたんですけれども、そのほか、もし北朝鮮がこのまま時間稼ぎをしていった場合にどういう対抗手段を日米がとっていこうとされているのか。この辺のところ、詳しいお話が伺えれば大変ありがたいと思っています。

町村国務大臣 先般の会議で、日米間で、仮にこの六者協議再開に至らず、あるいは再開されたとしても何ら成果を生まない場合のいろいろなシミュレーションをやったかというと、それはそこまで議論が行っておりません。

 それは、何といっても、まず六者協議再開ということで懸命の外交努力をしようではないかということが当面の最大の課題であるものですから、余りそこから、うまくいかなかった場合という話をしてしまうと、一体どこが重点だか焦点がぼけてしまうということもあろうかと思ったものですから、余りそこは率直に議論はしておりません。

 ただ、私がなぜ安保理の話をしたかというと、要するに、ある意味ではこれも外交的、北朝鮮に対するプレッシャーといいましょうか、いつまでもそうやっていたらば、次どういうことが来るということがあるんだよということを指し示すこと、このこと自体に私は意味があると思ったので一つだけ例示を挙げたわけでございまして、そのほかにもいろいろな確かにオプションはあろうかと思いますが、それをまた全部今次々に言ってしまうことが我が方にとってそれが有利か不利かといえば、そこはまだいろいろ言わない方がきっといいんだろうなと思って、恐縮ですが、あえてこの場でも申し上げることは差し控えさせていただきたいと思いますので、どうぞ御理解を賜りたい。

長島委員 手のうちを明かさないという、そのお話はよく理解はできます。

 ただ、一連のこれまでの、町村外相にかわられてから大分外務大臣のイニシアチブが発揮されておられるんじゃないかというふうに拝見はしておりますけれども、対話と圧力とこういうふうに言ってきております、このコンビネーションで向かうんだと。さっき対話が先か圧力が先かという話も少し出ておりましたけれども、これはあくまでもこのコンビネーションでいくんだということだと思うんですね。

 日米間でそれはかなりの程度コンセンサスが形成されているということで、私たちは、昨年の横田めぐみさんの遺骨偽装ということが明らかになった段階で、この北朝鮮の暴挙に対しては、彼らを誠意ある対話の立場に、もう一回誠意ある姿勢に転換させるために、日本単独でもいいから制裁をすべきだ、こういうことを求めてきたわけですけれども、既に二カ月近くがたちました。

 政府の慎重な姿勢もよくわかるわけでありますけれども、しかし去る二月十日、今池坊先生も御指摘いただきましたけれども、北朝鮮の外務省から極めて挑発的な外務省声明というものが発表されました。多少慎重な言い回しも含んでいるとはいえ、六者会談への参加を無期限に中断する、それからNPTからは断固として脱退したんだ、そして自衛のための核兵器をつくった、それから核兵器庫をどんどんふやしていくんだ、こういうような言及があったわけですね。

 この二月十日の外務省声明を受けて、日本の外務省として、あるいは町村外務大臣として、日本政府がどのようにこの声明を受けて対応されようとしておられるのか。対話と圧力という観点から少しお話をいただければと思います。

町村国務大臣 まず、外交的な努力ということについて申し上げるならば、その声明を受けた二月十日以降、先ほどのワシントンでの会合もございました。また、中国の外務大臣あるいは韓国の外務大臣とも電話で意見の調整をやり、ともに努力をしようという話もいたしました。さらに、今週土曜日には、佐々江アジア大洋州局長が今度日本政府の六者会合の代表になるわけでございますが、韓国も代表者がかわり、またアメリカもかわるということなものですから、その三者が今度の土曜日にソウルで会合を持つという予定も今しているところでございます。

 さらに、アメリカはアメリカで中国等々とも当然連絡をとっているようでございますし、いろいろなそういう外交努力が今展開をされ、二月十日の北朝鮮外務省声明というものがいかに意味がないものであるか、無条件に即刻に復帰せよ、こういうメッセージをさまざま伝えているということでございます。そして、そういうこと自体が、私は、対話を再開させるための国際的な世論の圧力というものは間違いなく彼らに大きく伝わっているということだろうと思います。

 中国の共産党の中連部長が金正日国防委員長とも会ったという話がございます。これについても、これは考えようというか理解の仕方によりましては、早く自分たちが戻る条件をつくってくださいとお願いをしているようにも受け取れないこともない。大変強い言葉で書き連ねてありますけれども、その裏にはそういう実は願望も隠されているという解釈もあるわけでありまして、その辺を冷静に見きわめる、そして的確な、最も適切な対応をするようなこれからも外交努力をしていきたいと考えております。

長島委員 おっしゃる意味はよくわかります。

 ただ、私どもからすると、これは我々野党からすると特に感じるのかもしれませんけれども、何となく物事の核心を避けているんじゃないか。非常にソフトタッチな印象がするんですね。

 この外務省声明というのは、もちろん昨年の九月に、北朝鮮の外務次官が国連で、実は自分たちはもう核保有しているんだよというようなことは非公式にコメントはしておりますけれども、今回の核保有宣言というのは、まさに北朝鮮政府の公式宣言でありますから、これは軽視するわけにはいかないと思うんですね。

 ところが、十日の北朝鮮声明に対する小泉総理の最初のコメントというのは、こういう感じでしたね。今までどおり各国と連携して働きかけていく、北朝鮮にとっても六者協議を活用した方が有利になる。非常に冷静なんですね。また、細田官房長官はこうおっしゃっています。北朝鮮はこのような意図表明をした後、本当の意図を伝達することもたびたびあると。

 右往左往するのは外交では最悪な行動だというふうに思いますけれども、しかし私は物わかりがよ過ぎるのもいかがなものかというふうに思うんですね。それは、もしかすると私たちも含めてですけれども、日本政府が、あるいは日本が、北朝鮮の核の脅威というものに対して実は緊張感が足りないんじゃないだろうか、こういうふうに思っております。

 そこで、外務大臣に、北朝鮮の核開発について、その現状についてどういう認識を今持っておられるのか伺いたいというふうに思うんです。

 二〇〇二年の十月に、北朝鮮が、アメリカのケリー国務次官補に対して、ウラン濃縮技術を開発している、こういうふうに言ったことから今次の北朝鮮核危機というのが始まっているわけですけれども、一九九四年の米朝の間の枠組み合意、そしてそこでつくられたKEDOの体制が、この第二次ともいうべき北朝鮮の核危機によってまさに崩壊をしました、事実上。

 そして、それからもう既に二年半たった。この二年半の間、北朝鮮の核開発を規制するような国際的な枠組みは、これまで一つもつくられてこなかった。つまりは、言い過ぎかもしれませんけれども、北朝鮮の核開発は野放し状態が二年半続いてきたわけですね。その間に八千本ともいうべき使用済みの核燃料棒を抜き取って、そして再処理を始めた。これは専門家に言わせると、数発分の兵器級のプルトニウムを抽出することができるんだ、こう言っている。そして、クリントン政権の国防長官だったペリーさんは、もう既にデッドラインを超えてしまったんだ、こういう言い方をされている。つまり、もはや放置し得ないところまで北朝鮮の核開発は進んでいるんだということを言っています。

 では、政府は、その辺のところをどのくらい切迫感を持って、北朝鮮の核開発について現状を認識しておられるのか、お伺いしたいと思います。

町村国務大臣 今長島委員お触れになられました、その道の権威ともいうべき、あるいは情報を持っておられる方々がいろいろな意見を言っておられること、私も承知をいたしております。

 いろいろな情報を総合的に勘案してみますと、日本政府としても、北朝鮮が兵器化し得るプルトニウムというものを相当量保有している、そして核兵器を保有している可能性は当然あるだろう、こう思っております。ただ、核開発の正確な現状について何か確定的な結論を私どもは今持っているかというと、そこには至っていないということであります。

 ただ、それならば大したことはないのかというと、そういうことではございません。やはり、核保有宣言というものは、先般の声明にも述べられておりますとおり、これはもう北東アジアの安全というものに対して大きな脅威であるのみならず、不拡散という国際的な命題からしても許すべからざるものである、こういうふうに認識をしているところであります。

 したがって、時間という要素を考えたときに、時間が長引けば長引くほど、それはある意味では北朝鮮にとって有利な状況になる。それは、今委員がお触れになったように、みずからの核兵器能力を高める、あるいはそこからやみのルートとでもいうんでしょうか、拡散をしていくという懸念があるわけでございますので、そういう意味で、いたずらに時間を浪費してはいけない、こう思っております。

 そういう意味からも、現状はとにかく六者会合というものをまず早く再開させるための最大限の外交努力をするということが必要であろうと思います。また、国民にも私どもは大変にこれは安全保障上の脅威だということをやはり機会あるごとに言っていかなければなりませんし、こういう場の御議論を通じて国民の多くの方々に知っていただくということも大切なことだと思います。

 もう何年前になりましたでしょうか、かつて日本の上空を飛んで、盛岡の沖に九八年でしたかミサイルが飛んだ。あのときは皆さん大変な大騒ぎをされましたが、もうすっかりそれも忘れられてしまっているという状態というのは、これは政府の努力も足りないことは反省をいたしますけれども、やはりそういう危険があるんだということを我々は常に認識しながら行動しなければいけない、かように考えております。

長島委員 私、思い起こすのはキューバ危機なんですね。キューバ危機は、御存じのとおり13デイズという映画にもなりました。一九六二年の出来事で、私が生まれた年でありますので、そういう意味では非常に興味深い故事だと思うんです。

 あのときは、十月の十四日にアメリカがミサイルを運んでいる船があることを確認しました。そして、そこでケネディ大統領は、いろいろなオプションがある中で、十月二十二日に海上封鎖ということを宣言した。これはデッドラインを超えたんだということを宣言して、そして最終的には二十八日にソ連のフルシチョフ首相がこのミサイルを撤去する、解体するということに合意して、十三日間の緊張が解けたということであったわけですね。

 そのときの一番のポイントは、ケネディ大統領がしっかりと、このラインを超えたら自分たちは絶対に許さないんだということをはっきりと国の内外に鮮明にしたことだと思うんです。あいまいにしようと思えばできる材料というのはたくさんあったと思うんですね。あのときはトルコにアメリカの核が配備されていましたから、まあキューバに配備されてもトルコにもあるし相殺されていいかというような、そういう議論も成り立ったんですけれども、しかしケネディは明確にデッドラインを引いた。

 さっき外務大臣がおっしゃったテポドンの話、あのテポドンのときに大騒ぎしたんですけれども、実は九三年の五月にノドンの実験が行われていたんですね。そのことは日本の政府は、当時余り国民に知らせなかった。ほとんど隠したと言っても過言ではないと思います。そこで北朝鮮の持っている弾道ミサイルの能力とかあるいは緊迫性というものが国民の皆さんに浸透することがなかったので、いきなり上空を飛ばれたものだから大騒ぎした。しかし、あのときは一生懸命北朝鮮の核を何とか静めようとしている最中だったので、逆に日本の外交が右の方に、あるいは強硬的な方向に振れてしまった、そういうこともあるわけなんですけれども。

 私は、そういういろいろな今までのいきさつを考えたときに、このところで、日本のデッドラインというのはここなんだ、これを踏み越えたら私たちは承服できないんだというラインを明確にする必要があるんだと思うんですね。それはプルトニウムの量産を許さないとか、あるいはウランの技術開発に手を染めてはいけないとか、あるいは第三国に輸出してはいけないとか、いろいろなベンチマークがあると私は思うんですけれども、そういうことをあいまいにしたまま、幾ら国民に納得してもらおうとか、あるいは幾ら日本の意思を国際的に認知してもらおうとしても、なかなか伝わらないと思うんです。

 ですから、最近は拉致については、大分国際的な認識が高まってきました、広まってきました、浸透してきました。それは、我々がもうこれは絶対許せないんだということを、国民の世論を背景にして、政府がしっかりこの間国際社会で言い切ってきたから私はそういう状況になってきたんだ、こういうふうに思います。

 ですから、ここではっきりおっしゃられるかどうかわかりませんけれども、日本の外務省として、外務大臣として、日本は非核の国の、世界の代表国として、このラインは超えてはならないんだ、日本のデッドラインはこういうところにあるんだということをぜひお示しをいただきたい。その方が国民の皆さんにとってはわかりやすい。そのために日本の外交は努力しているんだということがよくわかるのだろうと思うので、ぜひはっきりと御答弁をいただきたいというふうに思います。

町村国務大臣 一つのわかりやすい話として申し上げるならば、これは日米という形をとりましたけれども、共同声明の中では、信頼の置ける国際的な検証のもと、ウラン濃縮計画を含むすべての核計画の完全な廃棄を行う旨コミットするべしということを言っているわけであります。

 もとより保有しているかもしれない核兵器というもの、これについてはまことにゆゆしきことであるということで、これらを廃棄するということは当然のことということでありまして、デッドラインという表現がいいかどうかわかりませんけれども、そこのところはやはり私どもとしては、核のない朝鮮半島の実現ということからしまして、そのことは今後達成すべき最大のポイントであろう、こう思っているところであります。

長島委員 今おっしゃるように、そのように日米間で声明を発表していることはよくわかるんです。わかるんですが、それがある意味でいうと実体を伴っていないというか、文句が聞こえてくる。強く要求するという言葉は聞こえてくるけれども、しかしそれを踏み外した場合、踏み越えた場合に何のペナルティーもないじゃないかということで、デッドラインといいますか、今まで到達していなかったラインをどんどんどんどん踏み越えてくるということは、今までの北朝鮮の外交姿勢を見れば明らかだと私は思うんですね。

 何が言いたいかというと、政府のそういうある意味で実質的な担保というものがはっきりしない中での北朝鮮に対する非難、あるいは北朝鮮の核の脅威に対する非難というものが、リアルなものではなくて、国民から見ると極めてバーチャルな感じがあるんですよね。つまり、私なんかも有権者と話をしていて、どうせ飛んできやしないよ、あるいは北朝鮮のどうせおどしだろうと。

 今回の、二月十日の北朝鮮の声明に対する政府の要人の皆さんの反応一つ見ても、ああ、まあ、そんなばたばたすることないじゃないか。大変な声明だと私は思うんですけれども、そういう政府の姿勢というものが逆に国民の間に根拠のない安心感というものを醸成してしまっているような、私はそういう気がしてなりません。

 ぜひ、政府の国民への働きかけの努力、あるいは北朝鮮の核に対する極めてリアリスティックな認識を喚起させていただきたいというふうに思います。

 そこで、一つ私なりに、多少悲観的過ぎるかもしれませんけれども、問題提起をさせていただきたいと思います。もし、このまま北朝鮮の核の脅威というものがバーチャルなまま終わったときにどうなるかという、一つの私なりのシミュレーションを披露して、外務大臣の所見を伺いたいと思うんです。

 今回、2プラス2で、日米間の非常に緊密な連携といいますか、共通の戦略目標を定めた連携が行われることになる、これは大変すばらしいことだ、こういうふうに申し上げましたけれども、アメリカの北朝鮮の核開発に対するデッドラインというのは、もしかすると我が国のデッドラインとは多少異なっているのかもしれないと思うんですね。

 それは具体的に言うと、アメリカのどうしてもこれだけは容認しがたいというデッドラインというのは、一つは核の技術の第三国移転。これは今回、NSCのマイケル・グリーン・アジア上級部長が、日本、韓国、中国、中国では何と国家主席と面談をして大統領の親書を渡したと言われていますけれども、その中にリビアへの濃縮ウランの技術供与が入っていた、こういうふうに言われていますね。

 これはアメリカは大変深刻な受けとめ方をして、そして韓国や中国という、ちょっとアメリカから見ると北朝鮮にこれまで融和的な姿勢をしていた二国に対してこの証拠を突きつけて、彼らのプレッシャーを促したということがありますね。それからもう一つは、テポドンのような、米本土に届くかもしれないないようなミサイル、あるいは核爆弾が小型化されてそのミサイルの弾頭となって搭載されるような、そういう技術に達したとき。この二つぐらいが、アメリカにとっては譲りがたい、容認しがたいデッドラインになるんだろうと私は思うんです。

 もし、仮に日本のデッドラインがもう少し手前で、アメリカのデッドラインと違った場合。具体的に申し上げます。例えば兵器級のプルトニウムを北朝鮮が蓄積して、そしていきなり核実験をした。そのときにはもう、もしかしたらノドンに搭載をして、先ほど池坊委員がおっしゃったように、日本に向かって、その射程におさめている、百七十五基から二百基と言われている、そのノドンが日本列島全体を射程におさめることになるわけですね。

 その脅威を背景にして、もしかしたら北朝鮮が日本に対してとんでもない圧力をかけてくるかもしれない。そのときに、日本が何かあったときに報復してもらいたいと思ってアメリカを振り返ったら、アメリカは、いや、それはそんなに我々にとっては、自分たちのところに飛んでくるわけでもないし、それはでは自分たちでやってくれよと仮に言ったときには、これはもう日米同盟関係の危機です。

 まさに、日本の国民は今まで、恐らく何かあったときにはアメリカが助けてくれるだろうと思っていた。そして、核の脅威については、これほどまで差し迫ったものだという、そういう認識を持っていなかった。そこへいきなりそういう危機を突きつけられたときに、日米同盟関係に及ぼす深刻な影響というものを私は非常に憂えているんですね。

 したがって、私は、日本として、このプルトニウムの量産など絶対許さないという、まずみずからの脅威としての認識、そしてそれが本当に差し迫っているんだということを今内外に明らかにしておく必要が非常にあるんじゃないだろうか。そういう意味で、今私が申し上げたような、まさに最悪のシナリオともいうべきものだと思うんですけれども、町村外務大臣の御所見をぜひ伺いたいというふうに思います。

町村国務大臣 核の計画の廃棄という面につきまして、日米間に今違いはない、私はこう思っております。それは、国際的な検証のもとで、プルトニウム型、ウラン濃縮型核兵器を含むすべての核計画の完全廃棄という一線で日米あるいは韓国もそろっております。そういう意味では、多少の表現の差はあるかもしれませんが、中国もロシアも同様であろう、こう思っております。

 ただ、例えば原子力の平和的利用というジャンルに入ってくると、これはアメリカと例えば中国では大分違ってくるという面があろうかと思います。したがいまして、五カ国が常に全部同じポジションに立っているかというと、必ずしもそれはそうではないのかもしれません。ただ、核の問題についてはそろっている、こう思います。

 そして、私は、今委員が例えば想定をされたような核のおどしがあった場合どうするのかということでありますが、どういう場合であれ、先般の外相共同声明で、日米安全保障体制が引き続き力強さ及び活力を有することを再確認し、同体制が地域の平和と安定に対する挑戦を阻止し、対処する能力を有することへの信頼を表明したということで、私は、日米安保体制というものがいろいろな事態にきっちり対処できるんだよということを今回再確認したということは、別に今委員の言われた事態を想定して書いたわけではございませんが、いろいろな事態にこの日米安保体制というものを有効に機能させるというお互いの意思があるし、そういう体制整備も今着々と進んでいるんだということを再確認したという意味で意義があったのではないか、私はかように考えているところでございます。

長島委員 アメリカとの関係は、今外務大臣がおっしゃったことは一つあると思いますが、日本はやはり、同時に中国や韓国とも協調していかなければならない、そういう立場にあって、強硬策一辺倒では、これは国際協調というのは成り立たないというのは私もよく理解をしているところですが。

 特に韓国は、盧武鉉大統領が昨年訪米した際に、北が核を持ちたくなるような、そういう思いも理解できないことはないんだというような、そんな発言をして国際社会のひんしゅくを買ったことがありました。その辺について、外務大臣、具体的に、今申し上げた、デッドラインというかどうかは別にして、日本の深刻な核に対する認識、それからアメリカの認識そして韓国の認識を合わせていく、こういう努力をされているんだと思いますけれども、二十六日にもう一回、TCOGといいますか、日米韓三国の局長級でしたか、会議をされることになると思いますので、ぜひその辺のところは足並みを韓国がそろえていけるような、ある意味でリードを日本はぜひしていただきたい、こういうふうに思います。

 私は、そういう中で、やはり北朝鮮の核開発は絶対許さない、そして日本列島を射程におさめているノドンは直ちに撤廃すべきだ、全廃すべきだということは、日本の外交手段として、外交当局として粘り強くこれからも訴えていただきたい、こう思います。

 そして、最初の、私の冒頭の疑問にまた戻ってくるんですけれども、そういう日本の意思はわかった、そして日本はそういうことを国際社会に向かっても、あるいは北朝鮮に向かっても、あるいは国内の世論に向かっても働きかけを強く続けていくんだ。しかし、それはやはり、何か圧力、まさに対話と圧力という外交の基本指針に戻ってくるわけですけれども、つまり、逆に言うとあめとむちといいますか、こういう部分も十分にきかせながらやっていかないと、これまで二年半、ある意味では北朝鮮の核開発というのはまさに放置されてきてしまった、そのことを繰り返すことになりかねないと私は思うんです。

 あめについてはかなりはっきりしていると思うんです。アメリカ側は、CVID、つまり北朝鮮が核開発を完全にやめれば体制の保証はしようと言っている。それから、恐らく日韓を中心としてでしょうけれども、本格的な経済支援もやると言っている。これは日朝平壌宣言にも詳細に書かれているとおりだと思うんです。しかし、それを北朝鮮が、言ってみれば選択しやすい状況をつくるといいますか、あるいは選択せざるを得ないような状況をつくっていくというときに、やはり私は経済制裁、つまり目に見える圧力のカードというものが外交交渉の中では非常に重要だというふうに思っているんですね。

 日本単独の経済制裁については、先ほど自民党の委員の方も詳細に自民党のシミュレーションチームの報告書に基づいてお述べになりましたから、私の方からは重複を避けようとは思っておりますけれども、結論的に言えば、日本単独でも効果がないことはない。もちろん、これはアメリカ側の高官も言っていますけれども、経済制裁というのは国際協調がないと、どこか抜け穴があるときかないんだよというのは全くそのとおりかもしれませんけれども、しかしこれは効果がないわけじゃないんだ。

 私は、経済制裁は、どうやってやるかということも重要だと思いますけれども、経済制裁は何を目的にやるか、どういうことを目的に経済制裁をやるかということの方がさらに重要なんだろうと思うんですね。

 拉致問題で、私たちは経済制裁を直ちにしろという立場であることは揺るぎのない事実ではありますけれども、なかなかこれが国際社会で、そのために経済制裁を単独で発動する、だからみんなも協力してくれと言われても、なかなか国際社会の支持が得られにくいのは私も承知しております。また、特に中国や韓国の理解が得られにくいことも承知しております。それから、六者協議という枠組みが曲がりなりにもある中で、日本がその枠組みをぶち壊すわけにはいかないという政府のお立場も私は理解しているつもりだと思います。

 それからもう一つは、これは極めて外交戦略上の理由ですけれども、仮に安保理に行ったときに、経済制裁となったときに、日本はもうやっちゃったから、そのときになって経済制裁のカードが使えない。これもまた間抜けな話だろう、私はこう思いますので、そういう意味では経済制裁のカードを温存しておきたいという政府の立場も理解した上で伺いたいと思っています。

 ですから、制裁カードというのは、極めて有効なタイミングで、しっかりした目的に基づいて切らなきゃならない、こういうふうに思っています。それは何を根拠にやるのか、そして何を目的にやるのか、これを私は今日ここではっきりさせておきたいと思うんですね。

 私は、根拠は、日朝平壌宣言の不履行、これで十分だと思っているんです。制裁の目的は、拉致、核、ミサイルの包括的な解決。この二つをパッケージにする必要があるんですけれども、どうもこの間、先ほど外務大臣も御答弁されておられましたけれども、日朝平壌宣言の使い方が今の日本政府は少し甘いのじゃないかな、こう思うんですね。

 先ほど、まさに外交上の足がかりなんだと。つまり、別の委員会で小泉総理は、この日朝平壌宣言、特に今回二月十日の北朝鮮の外務省声明によって、特に第四項、「朝鮮半島の核問題の包括的な解決のため、関連するすべての国際的合意を遵守することを確認した。」というこの第四項に明白に違反をしていると私は思うんですね。それは違反している部分もあるということは、総理初めお認めになっておられる。しかし、破棄すればいいというものじゃないんだ、ベンチマークとして一応とっておいて、その平壌宣言に立ち戻ってくるようにしむけるんだと。

 こういうことは外交のあり方としては私は確かに理解できるんですが、もう少し平壌宣言、せっかく小泉総理が直談判でとってきた金正日総書記の署名入りの公式宣言ですから、今回の二月十日の北朝鮮の核保有公式宣言を受けて、六者のチャンネルというものは北朝鮮に残された国際社会とのかかわりを持てる、対話をできる唯一のチャンネルなんだということをはっきり認識させた上で、もしこれが失敗に終わったら安保理に付託されることになるんだということを明確にして、そしてもしちゃんと我々の準備したレールに乗ってきて、乗ってきたとすれば話し合いを受け入れたとして、そして核開発をやめれば先ほど言ったあめ、あめはしっかりと保証するということで、そういうことを北朝鮮が選択せざるを得ないような経済制裁のやり方というものは、外務大臣として考えておられないんでしょうか。お伺いしたいと思います。

町村国務大臣 今、委員の方からは、日朝平壌宣言を日本の方から破棄したらどうかということをおっしゃった……(長島委員「いや、違います」と呼ぶ)済みません。

長島委員 日朝平壌宣言を破棄しろという意見もあるが、しかし小泉総理を初め、あれは破棄してはいけないんだ、破棄しないであそこに戻ってくるように誘導するんだと。そういうお気持ちはよくわかるんです。先ほど来何度も外務大臣も、強い要求をしたい、あるいは遺憾だ、そこに戻ってくるようにしむけたいと。だけれども、どうやってしむけるんですかというのが国民の皆さんに見えてこないんだと私は思うんですね。私も理解できない。だからこそ、経済制裁というツールを使って、そういう方向に北朝鮮を押し出していくのが現実的ではないか。

 そのことを現実的な政策手段として外務大臣はお考えになっているのか、これがまず一点。それから、もしお考えになる、そういうことを視野に入れられるとするならば、核の問題、ミサイルの問題も含めて、どういうふうに経済制裁を使っていこうとされているのか。具体的にお伺いしたいと思います。

町村国務大臣 失礼をいたしました。

 これは私どもも、昨年の十二月、先方のまことに遺憾なる反応に対して、厳しい対応に出ますよと。それは、厳しいというのは経済制裁を含むということは、もう言わずもがなのことであります。

 したがって、その経済制裁というものにどういう手段があり、これは議員立法でいろいろ手段を追加していただきましたが、それを含めて、関係省庁で、どういう形でそれを発動し得るかどうかということについて具体の検討を今それぞれやっているということは、先ほど細田官房長官も御答弁をしたとおりであります。

 したがって、あとは、どういう状況になれば、どういうタイミングで、いろいろ手段は確かにあるわけですから、何を発動するかということの比較考量とでもいいましょうか、それは今私ども政府部内でさまざまな検討をやっているということでございます。こうなったらこうなりますということをこれをまた今言ってしまうと、それは相手に全部教えてしまうことになりますから、それは申し上げられないわけでありますけれども、現状ではそういう政府部内でのさまざまな検討を行っている。そして、それは抜かずの伝家の宝刀ではなくて、当然抜くこともあり得る伝家の宝刀である、そういう前提で私どもは準備をしているということだけを申し上げさせていただきます。

長島委員 今、外務大臣が抜くこともあり得るというふうにおっしゃったんですけれども、相手が抜きそうだなと思うようなやはりぜひステートメントを出していただきたい、こういうふうに思います。今、相手に教えてしまうのはよくない、こういうお話がありましたけれども、先ほどのキューバ危機の事例にもあったように、相手に認識させるという点もあわせて重要であるということをぜひお考えいただきたいと思います。

 自民党の皆さんが努力されてつくられたのは五段階だったので、私も、その五段階に応じて五つの点で、日本がもし経済制裁を発動するきっかけ、基準があるとしたら五つぐらいあるだろうなと思って考えてまいりましたので、ちょっと披露させていただきたいと思います。

 一つはプルトニウムをこれ以上増産した場合、それからもう一つがウランの濃縮技術を開発した場合、それからもう一つはミサイル実験をまた行った場合、そしてもう一つは核実験を行った場合、そしてさらに最後は核関連物質の移転を行った場合、この五つぐらいが、やはり非核の大国日本としては、そして国連安全保障常任理事国入りを目指している日本としては、世界に対してアピールする非常に重要な要素じゃないだろうか、こう思っています。

 もう時間が参りましたので終わりにしますけれども、やはり国際社会というのはセルフヘルプだと思うんですね。自助努力を怠った国は滅びていくことが歴史の常だと思うんです。もちろん同盟関係も重要です、日韓関係も重要です、ことしは六十年。そして、六者協議も重要、国際協調も重要ですけれども、しかしその前に、日本が日本の国益に照らして一体何を求めているのかということを明らかにするということが私は国際的な政策調整の大前提だというふうに思いますので、対話を促す圧力の重要性というものも、ぜひ政府の関係者の皆さん、外務大臣に御認識をいただいて、これからもしっかりと外交のかじ取りをしていただくことをお願いして、質疑を終了させていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

赤城委員長 次に、渡辺周君。

渡辺(周)委員 民主党の渡辺でございます。それでは引き続き質問をさせていただきます。

 外務大臣、予算委員会の御都合ということで、予算委員会が四十分ほどおくれて始まったようでございますので、しばらくいていただけるんじゃないかと思いますが、まず冒頭お尋ねしたいんです。

 これは通告もいたしましたけれども、日本と北朝鮮のワールドカップサッカーのアジア最終予選、このアウエー戦、先般、ホーム、埼玉スタジアムで、厳重な警戒と、そしてまた紳士的なサポーターの態度もございました。そして何よりも、私は、やはり拉致被害者の御家族の方々、周辺の取り巻く方々が、非常にコメントの中にも冷静さを本当に醸し出されました。あるいは、憎いのは金正日であって、サッカーの選手とは関係のない話だといって応援をされておりました。こうしたことも間接的に大変今回トラブルもなく終えられた一つの要因ではなかったかと思います。

 さてそこで、今度は大変難解なといいますか、大変厄介な問題がこの六月八日に平壌で開かれるアウエー戦でございます。

 外務大臣にお尋ねをしたいんですけれども、私も調べましたら、実は、サッカー協会によりますと、この平壌でサッカーの日朝戦というのは過去三回あった。七九年八月と八五年の四月、八九年の六月、後の二回がワールドカップの予選でございます。

 当時は、サポーターという人たちは行かなかったんですね。サッカー人気もそんなに今のように大変定着してきたわけではありませんでした。三十名程度の選手団が渡航したのみで、八九年に関しては記者の方が同行して七、八名行かれたということなんですが、先般日本サッカー協会の副会長、一昨日だったでしょうか、会見をされました。二千人から五千人のサポーターを北朝鮮は受け入れるというようなことを言っているようでございます。

 我が日本の国民が、二千人になるのか五千人になるのかわかりませんけれども、これだけ大勢の我が国の同胞が国交のない国に行くということの現実について、今現状、もう日がそんなにございません。この組み合わせが決まって以来今日まで、そしてこれからどう対応するのか、個別具体的な問題につきましては参考人にまた後ほどお尋ねをしたいと思いますが、外務大臣、まず、どうお考えか、お答えをいただきたいと思います。

町村国務大臣 このサッカーの問題でございます。今まで国交のない国に何千人という単位で行ったという、それこそ前例というのは多分ないと思われますので、それだけにどう対応したらいいかということについてはいろいろなことをこれは考えなければいけない、こう思います。

 先日別の委員会で、ある委員からは、サッカーの試合に行かなければいい、これはある種の制裁である、モスクワ・オリンピックという前例もあるではないかという大変はっと驚くような御提案を受けて、私もしばらくちょっとこれには考え込んでしまったわけでございますが、やはりそこは、スポーツはスポーツ、こういう外交は外交といって分けて考えた方がいいのかな、サッカーファンが非常に多いから別にそれに対してこびへつらうという気持ちもございませんけれども、私どもとしては、多くのサポーターの方々が行けるような方向で準備をしていく必要があるのではないだろうか、こう考えております。

 では、どういう準備が必要か、今後少し、今この後御議論いただきたいけれども、まだどういう受け入れ態勢が先方にする用意があるかということも必ずしもはっきりしない面もありますので、その辺を見きわめながら、いずれにしても、不測の事態というものが起きないように、しっかりとした準備を行いつつ、大勢の方々が北朝鮮に応援に行けるように外務省としても万全を期してまいりたいと考えております。

渡辺(周)委員 まさに皮肉な組み合わせの結果になったと思うんですね、正直言って我々もそう思います。

 といいますのは、今までもこの委員会でも議論してきましたけれども、私もそうでございますが、経済制裁をもう時期を区切ってやるべきだ、こういう議論をしてきた。そしてまた、大勢の国民もこれには賛同しておりまして、先ほど質問がありました、どなたか自民党の委員さんからもお尋ねがありましたけれども、大勢の署名を集めて経済制裁をやる。そしてまた、さまざまなアサリの問題、油の問題も先ほど来出ています。

 やはり、北朝鮮に対して我が国は強硬な態度を見せるべきじゃないか、示すべきじゃないかと言っているときに、これは私は行くなとは言いませんけれども、スポーツはスポーツ、政治は政治と分けて考えられればいいんですけれども、果たしてあの国はそんなに大人の国であるかどうかですね。私たちも北朝鮮のサッカー協会という人たちがどういう人かわかりませんし、どういう組織になっているのかもわかりません。とにかくそんな割り切れるものなのかなという懸念を持っているわけです。

 そうしますと、今この時期に、例えば三泊四日、この間の話を聞いたら、これもちょっといろいろなところで調べましたら、在日の旅行代理店から例えば応募をする。そうすると、大体三泊四日ぐらいで行かれると、試合の前々日ぐらいに着いて翌日帰る。恐らく一日は観光旅行か何かに行かざるを得ないんでしょうけれども、そうなってきますと、二十五万円ぐらいの金額だというんですね。これは大変な額です。

 もし上限五千人だとすれば、そんなに行かないとは思いますけれども、もし行けば、片方で経済制裁の議論をしているけれども、片方で外貨獲得の大チャンスが実は北朝鮮にとっては来ちゃった、もう本当にこんな幸運はない。当然向こうへ行けば外貨ショップでいろいろなものを買わせるでしょう。円でもユーロでもドルでもいいからどんどん使ってくれということを当然やってきます。

 これは非常に難しい問題で、行かせるなというのは、これは一つの経済制裁かもしれませんけれども、ただ一つ、国際的に見てやはり、当然ホームで試合はやっていますから、今度はアウエーでやらないわけにいかない。政治を理由にしてこれは行かないというのは、もう本当に極めて最終的な、これはよっぽどのっぴきならないことになったときなんだろうなとしか想像できないわけですけれども、この点につきまして、外務大臣にもう一回だけ伺いたいんですが、今いろいろな準備をしてきた、これからもするということですが、例えば、邦人の保護についてはどうされるおつもりですか。

 つまり、日本の旅行代理店の方にも聞きました。何で日本の旅行代理店ができないかというと、過去にも痛い失敗をしたのは、まず切符が手に入らない。呼びかけたはいいけれども、ぎりぎりまで切符が予定数入らなかったということが一つ、それが懸念される。

 もう一つは、例えば、主催で呼んでも、人を集めた、ところが邦人保護が、外務省、大使館ももちろん領事館もありませんから、何かあったときにどうするかということを一筆、これはお客さんからもらっておかなきゃならない、そういう条件のもとで行きますよと。

 そしてもう一つは、やはり保険の問題なんですね。この国で何が起きているかどうかわからないというときに、保険会社は果たして、傷害保険、旅行保険というものに対してどういうふうに判断をするかということがまだ実はわからないんです。

 この三つがクリアされないことには、非常にこれは日本の旅行会社は、正直言って二の足を踏んでいる、全く今わからない。

 この点について、これから御検討するんでしょうけれども、外務省として、今度のこの直面する問題に対してどうするかということと、あるいは関係機関、文部科学省も含めまして、どうこれから情報収集をし、いろいろな想定され得る問題について解決をしていくのか、もう一度外務大臣の御所見を伺いたいと思います。

町村国務大臣 今委員が言われた外貨ショップの話などを含めて、本当に悩ましいテーマではあろうかと思いますが、やはり、貴重な一勝をここでむざむざと失うのかということになりますと、それもまた日本人としてはまことに忍びないものがあるので、行って勝ってきてもらいたいという思いがどうしてもちょっと優先してしまうのは、余りにも冷静さを失った外務大臣の発言になってしまうのかもしれないのであります。

 さはさりながら、一応先方が受け入れるという前提でこれは物事を考えなければならないと思います。どういう受け入れ態勢を先方がつくるのかということがまだ現状必ずしもはっきりいたしませんので、私どもとしても、頭の体操を今の時点ではするしかないのだろう、こう思っております。

 何しろ、外交、領事関係を有していないところで何らかの領事事務を行うということが、まず法律的にどこまで可能なのかどうか。

 やはり、それは国交関係がない国とはいえ、外交ルートで話し合って、ここから先は私の瞬間的な思いつきですが、どこか北朝鮮の大きなホテルの一室を借りて、そこに我が方外務省の省員が行って、それで、正規の領事業務ではないけれども、それに類するようなことをやる必要も出てくるのかもしれない。しかし、それについては、もちろん事前に北朝鮮側と今度は調整をしなければいけない。

 しかし、その相手と今こちらでは制裁か、こういう話が盛り上がっているときに、果たしてそういう冷静な話し合いにまでに立ち至るかどうか、非常に不確定な面が多々あるわけでございますが、そういったさまざまな障害は乗り越えながら、大勢の方々が行けるように努力していくのが外務省の役割ではないのかな、こう思っているところであります。

渡辺(周)委員 移動の自由が憲法にもうたわれておりまして、どうしても行きたいという人間に対して、あの国には行っちゃならぬということは、これはなかなか難しい。行くときは、当然のことながらいろいろなことを想定して行ってもらう、それは判断していただくしかないわけでございます。

 文部科学省にもきょうは来ていただいているんですけれども、先般、小倉さんというサッカー協会の副会長さんが記者会見をされました。現地へ行っていろいろ、すり合わせといいましょうか、現地へ行ってきたという記者会見の模様が先般流れておりましたけれども、それがどのようなレベルまで達して話し合いは進んでいるのか、あるいは友好的な雰囲気で進められたのかどうかなんですね。

 例えば、向こうが果たして我々が想定するような、交渉できるような近代的なシステムといいましょうか、ある程度判断を柔軟にできるような相手なのかどうか、その辺についてはどういうふうな状況だったんでしょうか。それから、二千人から五千人という非常に幅の広い受け入れの数字が出ていましたけれども、この辺についてなぜこういう幅広いことになっているのか。その辺ちょっと詳しくお答えいただけますでしょうか。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 二月十六日から十九日にかけまして、日本サッカー協会の職員二名が北朝鮮を訪問して、先方と協議をしてきたところでございます。

 サッカー協会によりますと、日本側から日本人のサポーターとメディアの受け入れ、それからこれは日本の選手団のことでございますけれども、日本から帯同するコックが台所に入れるようなホテルの確保などにつきまして、要請、要望を行ったということでございます。

 これに対しまして北朝鮮側からは、サポーターは受け入れ可能であるということ、それから報道にもございましたけれども、報道陣については、記者百名、カメラマン五十名の受け入れを確認したというようなこと、それから先ほど申しました選手団のホテルにつきましては、コック帯同が可能な二カ所のホテルを提示したということなどの意向が示されたということでございます。この話し合いは友好的に行われたということを聞いております。

 それで、サッカー協会によりますと、日本人サポーターの受け入れの具体的な人数については、その場で具体的な人数が出たということではございませんで、一般的にサッカーの試合では、御案内のようにホーム・アンド・アウエーという形でやりますので、互いに同規模の数を確保し合うというような、これは国際的な慣例になっているということでございますので、先日の埼玉では日本側が北朝鮮側に五千席を用意したということから、六月の試合においても五千席までは受け入れ可能ではないかというのが一般的に理解されているところでございます。

 そういうことでそのような報道があったということではないかと思っておりますが、記者会見した小倉副会長は、その記者の質問に答えて、フライトの関係などもあり、二千名程度にはなるのではないかというような考えを示したということで、記事では二千から五千というような記事になっているのではないかと承知いたしております。

渡辺(周)委員 それは、五千枚のチケットを日本がホーム戦のときに用意をした、北朝鮮から見たらアウエー戦ですけれども。二千名という数を推定されたのは、恐らくサポーター、NPO法人のサポーター協会なんてありますから、そういう方々の意向を聞いて、大体これぐらいかなというふうに言われているんでしょう。

 そこで外務省にお尋ねしたいんですが、領事局長になるんでしょうか、さっき外務大臣が発言をされました、例えば平壌のどこかのホテルのワンフロアか何かにミニ領事館のようなものをつくる。邦人保護をするということになれば、例えばこれは二千名程度ということになれば、大体どれぐらいの方が行って準備をするのか。

 それと、ちょっと前後しちゃいましたけれども、実際、北朝鮮に入るにはビザが要るわけなんですが、このビザを取得する便宜というのは、一体これはだれがどう図るのか、その点についてお答えをいただけますでしょうか。

鹿取政府参考人 まず、二千名程度のサポーターが北朝鮮に行った場合どのぐらいの態勢が必要かという御質問でございました。

 今、どういう形態でサポーターの方々が平壌に行かれるかというのは、まだよくわかりません。例えば、どういうルートでどういう形の飛行機で、あるいは向こうに着いてからどういう行動をするのか、そういうこともいろいろありますので、我々としては、今サッカー協会で話を進めているいろいろな詳細について、これを踏まえてまたどういう体制を組むかということは考えてまいりたいと思っております。

 また、ビザについての御質問がございました。

 ビザの取得については、基本的には旅行会社が代理で申請するということになると思います。これもまたいろいろな協議の過程を見守っていきたいと思います。

渡辺(周)委員 聞くところによれば、これは当然日本にはないわけでございますから、そうなると、中国・北京であるとかあるいは瀋陽であるとか、大使館、領事館に行って、例えばそこで何らかの入国手続、ビザを受け取らなきゃならないんじゃないかなというようなことも言われております。非常にこれも煩雑な手続を経なければいけないということになります。

 それで、重ねての質問なんですけれども、実際、ではいつごろまでに、例えば北朝鮮の姿勢がはっきりすれば、日本としてのある程度次なるステップを考えられるのかどうなのか。それをお尋ねしたいと思います。

 あわせて、懸念するのは、余り日本も、とにかく入国させてくれることがありがたい、入れてもらえればありがたいなんというと、やはり懸念するのは、その交換条件として、いろいろな問題について、つまり、日本の外交政策、北朝鮮政策についていろいろなくちばしを挟んでくる。ここまでやってやるんだから、そっちはこれぐらいのことを少しやれとか、あるいはやるな、そういう交換条件を当然出してくるんじゃないかと思うんですね。私は、そんなにかの国が、あの国がスポーツと政治は別問題だからといって、果たして本当に割り切ってくるのかどうなのか……(発言する者あり)ですよね。つまり、それぐらいこちら側もこれは悩ましい問題ではあるんです。

 ですから、スポーツの勝敗のみならず、これは国益の問題として考えた場合に、やはり余り日本側が、いろいろな条件を今から考えておくことは大事だと思いますけれども、ただ、もうとにかく入れてもらえればありがたい、入国許可してくれればありがたい、連れていってもらえることがありがたいみたいになってくると、正直言って、弱みにつけ込むようなと言ったら変な言い方ですけれども、どんどんどんどんと向こうの要求がエスカレートしてくるんじゃないか。その交換条件で、何をするな、あるいは何をしろということにならないよう、ぜひその懸念は払拭をしていただきたいなと思います。

 ちょっと前段の質問については、国として、外務省のみならずあらゆる省庁とこれは話をしなきゃいけないというふうに思っていますが、ぎりぎり、もし行くということとなれば、どの時点までに回答をもらわないとこちら側の態勢ができないのかということは、外務省にお尋ねをしたいと思いますし、私が後段申し上げました、この問題を一つの何か交渉材料にされて、何かこちら側の判断によどみが出ることのないように、その点についての、大臣でしょうか副大臣でしょうか、ぜひ決意を聞かせていただきたいなというふうに思います。

鹿取政府参考人 前段の先生の御質問についてです。

 もちろん、我々としては、できる限り早く結果がわかって準備を進められれば、それは時間があればあるほどいいと思いますけれども、今サッカー協会の話も、かなり詳細について議論を進めておりますし、私どもとしては、その結果を踏まえて、その方針が出た段階で一生懸命やる、こういうことで今考えております。

逢沢副大臣 大変重要な点について御指摘をいただいたと思います。

 小泉総理もまた町村大臣も累次発言、答弁をされておりますとおり、基本的な私たちの考え方、姿勢としては、委員からも御理解をいただいておりますとおり、政治は政治、そしてスポーツはスポーツだという仕切りといいますか考え方で臨むべきというふうに思います。

 特に、今回の日本と北朝鮮のサッカーのゲームは、いわゆる来年のドイツで開かれますワールドカップの予選、私の理解では、恐らくFIFAの主催である。そのゲームがホーム・アンド・アウエーで行われるということを、正しく冷静にお互いが理解をする必要があろうかというふうに思います。

 ただ、委員御指摘のとおり、日朝間の政治状況は御案内のとおりでございます。北朝鮮のことでございますので、今回のこのことをきっかけにさまざまな発言をしてくる、あるいは場合によっては要求を突きつけてくる、そういう危険性といいますか可能性はもちろん排除ができないわけでありまして、そのあたりのことについては、十二分に緊張感を持って、また適切に、受け入れられることと受け入れられないこと、スポーツはスポーツ、政治は政治、そのことの仕切りをしっかりこれからもつけていくという態度を強めて臨んでまいりたい、そのように存じます。

渡辺(周)委員 もう少し時間がありますから、ちょっと聞きそびれた細部についてもお尋ねしたいと思うんですが、最初まず申し上げたいことは、本当に、今このタイミングでどうしてまたこういうことになってしまったんだ、皮肉な運命を、この組み合わせ結果を見ながら、こういう日が、いずれこういうことを議論しなきゃいけないときが来るなということは、私どもも認識をしておりました。

 外務省にお尋ねをしたいんですけれども、では、実際行くとなった場合、あの国のことですから、先ほど、どうなるかわからないと。しかも、朝令暮改のような国でございまして、きのう言ったことがあさって言ったことと違う、きょう言ったことも変わっているとかということもあり得るわけですね。

 今回のいろいろな六カ国協議の、もう北朝鮮は出ないと言ってみたり、しばらくしたら、状況次第で出てもいいみたいなことを言ったり、それを発言している、例えば在ニューヨークの北朝鮮の大使の言っていることと、中国の要人と会った北朝鮮本国で言っていることがもう全然違ったりして、とにかくあそこは何でもありの国でございます。ですから、本当にどういうことが起きるかどうかわからないわけであります。

 そこで、せっかくですからここで外務省にお尋ねしておきたいのは、もしサポーターが行くということになったときに、まず宿泊施設も向こう側が指定してくるところ、自由に北朝鮮市内で観光できませんよね。これは、必ず案内人という名の監視員がついて、そっちは行っちゃだめだ、この金日成主席の銅像をまず拝みなさい、どこそこへ行って、まずこの偉大なる何とかを見なさい、自分たちの都合のいいところだけを見せられて、ちょっと離れていったところのスラム街みたいなところへ行くと、そっちは勝手に行っちゃだめだ、写真も撮っちゃだめだとなるわけです。

 そうすると、当然これはいろいろなトラブルが起きるんですね、間違いなく。大体、サポーターで行かれる人たちは好奇心旺盛な若い人たちが行きますから、当然そこで、現場で衝突をする。ジャーナリストが行く場合は、取材をするということが目標ですから、できるだけ感情を損ねないようにして、何とかうまいこと得られるもの全部得られてこようと思うでしょうけれども、いろいろな不特定多数の若者が行くことになるから、予測せぬことも当然起こり得るわけでございます。

 当然行くとなれば、では、きょうも新聞かワイドショーか何か出ていましたけれども、「冬のソナタ」のビデオか何かが、中国と北朝鮮の国境の周辺で海賊版があって、その中国国境のところから北朝鮮に入ってくる。そうしたら、こんな退廃的な西側の、南朝鮮、韓国のこんなメロドラマみたいなものはだめだ、これは北朝鮮の国民をだめにしてしまうからといって、非常に厳しい取り締まりをしていると出ていました。

 例えば、西側の日本の若者たちが行くということになったときに、DVDなんか持ち込んじゃだめだ、パソコンなんか持ち込んじゃだめだ。あるいは携帯電話、今、北朝鮮国内では取り上げられているというふうに聞いています。あるいは、いわゆる音の出るものはだめだ、西側の音楽はだめだ、西側の映像はだめだ。パソコンもDVDも携帯もデジカメも全部だめだみたいな話になったときに、そこまで言われて、もし言われた場合ですよ、やはり日本もある程度覚悟を決めておかなきゃいけないと思うんですよ。

 つまり、行くに当たっての条件をさんざんつけられる、そして、行ったらもう、つまり、彼らの都合のいいようなことに従わなきゃ入れさせないなんということになった場合、やはり日本として毅然とした態度で、それとこれとは話が違うということを言わなきゃいけないと思うんですけれども、こういうことが必ず出てくると思います。

 その点につきまして、外務省として、私は、そういうことですよということは、サポーターに注意喚起といいましょうか、やはり、今ある日本のサポーターの組織なんかに、北朝鮮のことについて言っておくべきこと、あるいは知らせておくべきことがあると思うんです。この点については、今後考えていますか、サポーターが行くということを前提に考えて。

逢沢副大臣 これまた大変重要な指摘をいただいたと思います。

 結論から申し上げますと、六月八日、平壌で開かれます日朝のサッカーの試合、これに数千人の日本人サポーターが参りました場合に、そのことが北朝鮮側に結果的に政治利用される、そのことがないという、条件整備といいますか、状況をきちっと確保するということ、これは非常に大事なことであります。

 冒頭から何度も繰り返しておりますが、政治は政治、スポーツはスポーツ、そういうしっかりとした考え方で臨んでいかなくてはなりません。

 今現在わかっておりますことは、日本サッカー協会の国際試合運営部長が、先般平壌に行かれて最初の協議を行ったということでございます。いずれ外務省としても、また他の関係省庁も、直接行かれた部長から十分お話を聞かせていただくことになろうかと思いますし、また、場合によっては私自身もその部長にお目にかかりたいというふうに思うわけであります。

 恐らく、何度か両国のサッカー協会間でいろいろなやりとりが行われようかと思います。また、適当な段階で、それをサポートする、やはり日本と北朝鮮の政府の支援というものが必要な段階になってこようかというふうに思いますが、冒頭申し上げましたように、結果的に北朝鮮に政治利用されることがない、そういう条件をきちんと整備して、よりよい形で六月八日を迎えてまいりたい、そのように存じます。

渡辺(周)委員 大変、副大臣の政治利用されることのないようにという御決意を伺いました。

 とにかく、例えば、日本の若者が行く、日本の若者を見てみろ、頭の毛をあんな茶色や金髪にしてと。実際やるわけですね、今までやってきた。ああいうのが、西側の退廃した姿がああいう姿である。ところが、これは持ち物を見てみたら、非常にみんないいものを持っている、何だこれはと。それは、さっきの話じゃないですが、DVDだとかパソコンだとかみんな持ち込んできたときに、何だ、おれたちが教えられていた退廃した西側というのは、実は非常に文明が進んでいるじゃないか。実際、そういうことになるわけですね。

 これはもう多く申す時間はありませんけれども、そういう教育を受けてきて、だから、向こうにしてみると非常に、北朝鮮の人間にとって、国民にとって刺激的な日本人はできれば来てほしくない、できるだけ持ち物も制限して持ってこさせないなんということはやってくるんじゃないかというふうに思うわけです。

 ですから、本当に、これから私は、サッカー協会だけがここで当事者同士で交渉するのではなくて、当然、外務省を含めたあらゆる機関がいる中で、情報も、サッカー協会が持っている情報と外務省が持っている情報、あるいは内閣全体で持っている情報というのは違うわけですからね。ボリュームからして、質からしてもう違うわけですから、ぜひこのことについては、本当に国として、政治利用されない、本当にちゃんと遮断をして、あらゆる北朝鮮側から何か要求があった、ハードルを上げたり下げたりしてきたときには毅然とした対応をしていただけるように、これはぜひともお願いをするというのは、これは覚悟を決めて事に当たっていただきたいと思います。

 もう時間が来ましたので終わりますけれども、最後に御決意を聞かせていただきまして、終わらせていただきます。

逢沢副大臣 今委員御指摘のことを十分踏まえて、よりよい準備をして六月を迎えてまいりたいと思います。御支援と御協力をどうぞよろしくお願いいたします。

渡辺(周)委員 終わります。

赤城委員長 次に、笠浩史君。

笠委員 民主党の笠浩史でございます。

 大臣におかれましては、この後予算委員会がまたあるということで、冒頭、せっかくの機会なので、二、三御質問をさせていただきたいと思います。

 私、この特別委員会で質問させていただくのは初めてなのでございますけれども、これまで超党派の拉致議連等で活動していまして、まさにこの拉致事件というものは、当たり前のことですけれども、国家の主権を侵害された問題であり、テロ行為です。

 こうした中で、改めて外務大臣の認識というものを最初にお伺いしたいんですけれども、これは単なる特殊機関ではなくて、国家ぐるみの北朝鮮という国の犯罪である、テロ行為であるという御認識は持たれておるでしょうか。

町村国務大臣 今委員お触れになりましたように、二〇〇二年の九月の日朝首脳会談におきまして、金正日国防委員長がその拉致を認めて謝罪した上で、これは特殊機関の一部の妄動主義者らが英雄主義に走ってかかる行為を行ってきたと考えているとしまして、本件に関連した責任者は処罰を受けた、こう述べた。

 特殊機関というのは、まさにこれは政府か党か、あるいは独立の存在かよくわかりませんが、どう考えても、それは広い意味の国の機関の一部であるということは間違いがないと思います。したがいまして、それらのやった行為というのは、まさに先方の国を挙げてやった犯罪である、これは厳密な定義を除いて考えても、そういう性格のものであったというふうに私どもも認識をしているところであります。

笠委員 当然のことなんですね。まともな国であれば、党か政府なのか、いろいろあるんでしょうけれども、まさに独裁国家でございますから、これは首謀者は当然ながら金正日であり、そしてその意思で、その一言ですべてが決まっていく。

 私は、本当に北朝鮮の国民を解放すべき、これに国際社会がどうやって臨んでいくのか、この独裁国家を、今の独裁体制というものをいかに壊していくのか、これがまさに日本としても、拉致問題を抱えるがゆえに、まさにリーダーシップを小泉総理にも発揮していただかなければいけないわけでございます。

 対話と圧力という路線、よくわかります。両方大事でしょう。しかし、この二年半近くの間に、果たして対話というのが本当にこの拉致事件に関して成り立ってきたんでしょうか。

 私は、今、圧力もかけていないけれども、この日本と北朝鮮という二国間の問題において対話も成立していないんじゃないか、成り立ってきていないんじゃないかという思いを強く持っているわけでございますけれども、外務大臣、その点についての認識はいかがでしょうか。

町村国務大臣 もろもろの準備を経て、二〇〇二年の九月に第一回目の日朝首脳会談が行われました。そして、さらに昨年の五月の第二回目の首脳会談が行われました。結果として、五名の拉致をされた方々が帰国され、さらにその家族も帰国したということは、やはりそれは日朝両首脳間に対話が存在し、特に第一回目のときにはそれぞれ意見を言い合った形で日朝平壌宣言というものもでき上がったわけでありまして、もし対話が全くなくて突然ああいうものができ上がるはずがないわけであります。

 そういう意味で、それは、普通我々が思っている日本で行われている対話とは性格は多少異なるのかもしれませんが、対話というものがあったからこそこうしたものができ上がってきたということで、小泉首相のリーダーシップでここまで、そもそもそれ以前はそういう問題は存在しないと言ってきた、その存在を認めた上で謝罪をしたということは、やはり私は、成果として率直に認めていいのではなかろうかと思います。

 さらに、その後の安否不明の方々の対応に関しては、過去三回の実務者協議を経て、その後の対応、まことに不誠実なものであって、ここにおいて正常な対話が今、日朝間に存在をしているのかというと、もちろんいろいろな公式、非公式のルートでの意見交換はありますが、いわゆるこれが対話というものであるかどうかというと、現状甚だ疑問ではあります。

 ただ、だからといってそういう情報の流れのチャンネルを切ることはなく、そこはやはりきちんとお互いの意思が通ずるようにつないでいかなければならないということは、我々、外交としてはそれは必要な行動ではないだろうかと思っております。

 しかし、そのことと、仮に将来厳しい行動に出たとき、その瞬間にすべての対話チャンネルが途絶えるかというと、やはりそれはそういうものではないんだろう、こう思っております。

笠委員 私も、小泉総理がこの拉致を正式に北朝鮮に認めさせた、この点については評価をしておるわけでございます。

 ただ、今大臣おっしゃったように、その後、今対話も圧力も、まさに今ですね、常識的には今対話というものが、今の現在ではここすらも途絶えているという中で、確かに、圧力が先か、対話がどうか、あくまでも対話重視なのか、いろいろな議論がありますけれども、そもそも私は、この対話と圧力というものは決して相反するものではない。仮に、圧力をかけたからそこで対話が終わってしまう、対話がなくなってしまう、そういうことは決してないと思うんです。

 まさに対話の場に、きちんと北朝鮮側の態度を改めさせるためにも圧力が必要であるし、恐らく私、町村大臣も、外務大臣になられる前はかなりそうした強い御意思を個人的には持たれていたと思うんですけれども、やはり大臣になってだんだん、お立場があるのはよくわかるんですよ。

 ただ、むしろ、今小泉総理が、そういう意味では我々も、多くの国会議員の、ほとんどすべての国会議員の意思として、もう既に経済制裁を行うための準備はやっているわけです。あとはどうやって発動するのか。これはいろいろなケース、いろいろなことを想定してメニューは考えていかなければいけないと思います。

 そうした意味で、大臣も恐らく、国会の答弁、あるいはきょうもございましたけれども、厳しい対応をとっていく、とっていくと、非常にじくじたる思いが心の中ではあられるのではないかと思いますけれども、せめてやはり期限を切って、そしてこういうこと、今まさに対話が途切れ、三回の実務者協議を経て、うそで塗り固められたでたらめな国家であるということが改めてはっきりとしたわけですから、この拉致問題、拉致事件について誠意ある誠実な対応がいついつまでになければ、しかるべき措置をやるということをやはりメッセージとしてきちんと総理に出していただきたい。そのことをまた、外務大臣から小泉総理に対しても強く働きかけをしていただきたいと思いますけれども、その点についての決意をよろしくお願いいたします。

町村国務大臣 小泉総理とは、この拉致の問題についていろいろな意見交換を行っております。今委員が言われたようなことも含めていろいろな議論をやっております。

 委員まさに言われたように、制裁あるいは圧力をかけたから対話が直ちにその瞬間に途切れるというものでもない、私どももそう思っております。そういう意味で、しかるべきタイミングに必要な行動をとっていくということは、それはもう当たり前のことであろう、こう思っておりますが、一つやはり今の状況の中でお考えをいただければと思いますのは、まさに六者協議を今どうするのかというぎりぎりのところに来ている状況の中で、今ここで直ちに制裁という判断をするのはなかなか難しいのかな、こう思っているところでございます。

 ただ、いずれにしても、六者協議と拉致の問題というのは全く別の存在ではございません。相手は同じ北朝鮮、しかも国家がやっているそういう行動でございますから、そういった関連をも念頭に置きながら、最も適切なタイミングできちんとした行動をとっていきたい、かように考えているところであります。

笠委員 もちろん、六者協議、そしてこの拉致事件の解決へ向けた国際社会の協力、これをどうしていくのか、これは大事なことだと思いますけれども、やはり、拉致事件に対する日本としての意思、そして国民全体の意思をしっかりと国際社会に向けても示すことは、私は、これは何も六者協議を壊すことにもならないし、また、逆に言うと、それは日本としてこのタイミングで近くきちんとメッセージを放っていくことということも大事なことだと思うので、そこはぜひよろしくお願いをいたしたいと思います。

 そして、大臣、一つだけ、最後、確認させていただきたいんですけれども、ちょっと前回の委員会から二カ月ほどたっていますけれども、十二・五万トンの食糧支援、これは要請というのはWFPの方から来ているんでしょうか。

町村国務大臣 来ていないと私は認識をいたしております。来ておりません。

笠委員 これが仮に近く来たとしても、今はまだ支援をする状況にないという方針で変わらないということでよろしいですか。

町村国務大臣 さようでございます。

笠委員 それでは、ちょっと今前後いたしましたけれども、引き続き質問させていただきたいんですけれども、きょうは、主に特定失踪者の方々、この問題についての政府の取り組みについて、ちょっと質問をさせていただきたいんです。

 私、先ほど池坊委員の方からも御指摘があったように、今の政府の拉致問題についての取り組む体制というものがやはり縦割りの形、各省庁入っているわけですけれども、感を否めないんですね。拉致問題について力を入れて全力で解決を図っていくというようなこと、これは非常に難しい問題があると思いますし、今現場現場の方は大変な御苦労をされていると思いますけれども、例えば先ほどの幹事会、これは防衛庁が入っていない。これはどういうことなんでしょうか。

杉浦内閣官房副長官 結論から申しまして、必要があれば防衛庁にも参加していただいてやるという仕組みに相なっております。

 正規の構成員は、私を議長といたしまして、内閣官房副長官補、警察庁警備局長、法務省大臣官房長、公安調査庁次長、外務省アジア大洋州局長、厚生労働省大臣官房長が一応正規のメンバーでございますが、それ以外にも議長の指名する他の幹事その他関係者と相なっております。

 例えば、中山参与はずっと在任中は御参加いただきましたし、それから家族が帰ってこられるようになってからは、例えば、地方自治体と国との連携を図る必要があるということで総務省には局長に出てもらうようになりましたし、住宅関係の支援もあるということで国土交通省にも出ていただいております。教育関係、子供さんの問題があるというときには文科省からも局長に来てもらって、随時、必要に応じて参加してもらって議論をいたしております。

 今までのところ、防衛庁に参加してもらう議題がないということで参加してもらっておりませんが、将来出てまいりましたら、防衛庁からもしかるべき者に出てもらうということは当然あり得ると思います。

笠委員 私、今防衛庁と申し上げましたのは、やはり防衛庁には、当然ながら、言わずもがなですけれども、アメリカ軍の情報でありますとか、あるいはいろいろな電波情報含めて、我が国の安全保障を担当している、預かっている役所でございますから、入っていると思うんですね。

 そうした中のさまざまな情報というものも共有をしていく中で、以前、今支援室ということで、あるいはあと幹事会ということで対応されているんですけれども、対策室的なものをしっかりとつくって拉致問題に当たっていくというようなことを官房長官なりも述べられていると思うんですけれども、ここのあたりの体制を強化していくというようなお考えというものは、今現在、政府としてはないのかどうか。

 そして、これはやはり今の体制で、官房副長官はたしかこれを主宰されているわけですよね。これで機能しているというふうに思われますか。

杉浦内閣官房副長官 先生のようなお考えの方はたくさんおられると承知しております。自民党内にもございます。中山参与も一時期そういうお考えでございました。

 拉致問題が日朝関係の最重要の課題だと位置づけろ、政府の中にも推進する本部をつくれという趣旨のお考えだと思いますが、最重要課題だと認識して取り組むという点では政府も同様の考えをしておるわけです。ただ、そういう対策本部、専門的な組織というのをつくるのがいいかどうかということについては、私の場合、今のままで十分に対応はとれている、むしろ、どういう組織をつくるかですが、屋上屋を架するようなことになるんじゃないか。

 例えば、家族の支援については支援室というのができました。家族が戻ることになってから、今十七名体制でやっておりますが、これは各省庁、連携をとりながら、家族支援については非常によくやってくれておると思うんですね。だから、これは拉致対策本部の事務局じゃございませんが、非常に重要な拉致問題の柱の一つである家族の支援ということについては、これは内閣官房に設けられた組織で、副長官補のもとで有効に機能していると思うんです。

 拉致幹事会は私が就任して、昨年の五月ですが、五回やっております。過去、十七回開催しております。ですから、二月に一回くらい開催していることになりましょうか。先ほど申し上げたメンバーに、去年の五月からはほとんど、先ほど申しました総務省とか国土交通省、文科省の局長にも家族支援がありますので入ってもらって、やってまいっておりますが、それぞれの省庁が実際仕事をする場合には分担してやるわけなんです。それを全体として統一して、協議して、そして方針を決めてやるということでやっております。

 例えば、残りの二分の一の人道食糧支援はやらないということを昨年十二月二十八日の幹事会で決定いたしました。これは、外務省が窓口なんですが、政府として決めるべきだということで、拉致幹事会の決定として、人道支援は当面行わないということを決めたわけですが、そういう各省庁が対応すべきこと全体を協議して、方針を決めて、各省庁がそれぞれのつかさつかさで取り組むという体制ができておると私は思います。

 十二分なのかどうかは別にして、私が議長としてやり始めてからは、屋上屋を架するような組織をつくらなくても対応できるんじゃないかという考えで私はおります。

笠委員 そもそも、私は、ちょっと違うと思うんですよね。審議会じゃないんですから、二カ月に一回ぐらい集まって、そこでそれぞれやっていた情報を持ち寄って判断すべきは判断しましょう、そういうことじゃなくて、要するに認識なんですよね。拉致問題を絶対に解決するんだという、本当に政府としての認識があれば、そこにやはり各省庁から常駐するメンバーを出して、日々いろいろな情報が入ってきているはずなんです。

 私は、その一つの例が、では、なぜ政府認定の拉致被害者、十件十五名から以降、全く一件のケースもないですよね。そういったことにもこれが出ているんじゃないか。

 つまりは、これはやはり、この問題について、何か帰国した方々をサポートしておけばいい、何かあったときにはちょっと集まって、そして話し合ってどうしましょう、そういうことじゃなくて、まさに、本当にこれは今最大の問題であるわけですから、副長官は、いや、十分機能していると言うけれども、恐らくは、国民の皆様から見て、あるいは今なお生きておられることを信じて待って、そして政府に必ず救出をしてもらえると思っておられる家族の方々の思いを小泉総理が受けとめておれば、そうしたら、これは当たり前じゃないですか、対策室なりをつくって、しっかりとした組織をつくっていくことは。

 私は、そういうそもそもの認識が少なくとも副長官とは違うのかなと思っておるんですけれども、いかがでしょうか。

杉浦内閣官房副長官 先生のおっしゃられた認識とか、この問題に取り組む決意、内閣の最重要課題として取り組むという点においては、総理も外務大臣も私どもも同じ、共通の認識を持っておると思っております。

 先生がおっしゃられた、いわゆる特定失踪者の問題ですけれども、拉致認定された方以外にいらっしゃるということは私どもも認識しております。そのうち何名かについては認定してもいいじゃないかという考えが政府部内にもあるぐらいでございまして、ただ、事案の解明は警察庁を中心にしてやっております。これはもう会議のたびに事案の解明を急げということで督励をしておるわけです。

 警察庁も、昨年の秋初めて、担当課長を集めまして、全国課長会議をやったんですね。そして、情報を共有して捜査に全力を挙げる。それまではポイント、ポイントでやっておったんですが、全国で課長会議をやって、警察庁を挙げて取り組むという体制になってやっております。

 事案の解明について、例えば曽我さん親子の場合には、総理が向こうに行かれて、向こうが謝って、実はいるよと言ったんです。それまでは、佐渡ではもう行方不明者ということで葬式まで済まされて、認定もされていなければ、特定失踪者にも入っておられなかった方なんですね。向こうが謝って、ああ、いらっしゃったのかということになったケースです。

 お母さんのミヨシさんの場合は認定いたしましたが、向こうが認めて、謝って、曽我さんの場合は事情を聞いたらお母さんと一緒に拉致されて向こうへ行った。北朝鮮側はお母さんは入国していないと言っていますが、船に乗せられたのは間違いないわけですから、同じような経緯で、犯罪行為で拉致されたということは明らかでございますので、お母さんも拉致被害者に認定いたしたわけなんですが、今のところは、向こうは国に入っていないと言い張っておりまして、それ以上の解明は進んでおりません。

 ほかの特定失踪者と言われる方も、個々それぞれいろいろな事情がありまして、警察が解明を進めております。公安庁からも、あるいは先ほどのアメリカの情報というお話もありましたが、外務省も、アメリカ、韓国等から情報があれば集めまして、警察の方に連絡をとるということもいたしておりまして、そういう機能的な面でいえば、現状では必要、十二分とは言えないかもしれませんが、政府全体として機能しているというふうに私は思っておる次第でございます。

笠委員 昨年ですか、秋、初めて警察庁の方で全国の会議を開いた。ちょっとそれもまた、二年以上たってそういうことでは本当に困るな、そもそもがね。

杉浦内閣官房副長官 ちょっと言葉が足りませんで、全国の課長会議を開いたのは初めてでございまして、個々の地域で、特定失踪者、拉致された可能性のある県警では、もちろんそれぞれ対応をいたしておったわけでございます。

笠委員 いや、もちろんそれはわかっているんですよ。私が言っているのは、まさにおっしゃるとおり、全国で集まってというのが初めてだ。そんなものは、この時点に及んで、昨年になって全国で集まるのが初めてで、あとはそれぞれこういう情報があるから頼むよという程度で、要するにつかさつかさ、それは御苦労されているでしょう、現場は。

 けれども、やはり政府としてこの問題についても、総理もおっしゃっていますよね、特定失踪者の方々の問題まで含めて解決しなければ、拉致事件、拉致問題の解決はないということを。それにしては全く取り組みが甘いのではないかということを私は感じているわけだし、そこについてきちっと、もう今の、去年からのでたらめな、本当に許せない対応ですね。だから、こういうことがあるわけですから、しっかりと、むしろこれは本当に官房長官も副長官も含めまして、政府を挙げてやはり取り組んでいただきたい、そのことを強く申し入れたいと思います。

 それで、副長官、これまで政府が認定されたケースもほとんどはジャーナリストであるとかいろいろな、ほとんど政府が直接的に認定したケースというのは少ないんですよね、政府が本当に事実解明して、そして、それがきちんと政府として拉致被害者として認定したというケースは。

 これは、その後、先ほど言いましたように、繰り返しになりますけれども、十件十五人の以降も全く新たにそういう認定というものが行われていない。これはなぜなんですかね。体制はしっかりしている、やっている。けれども、現実に結果が出ていないじゃないですか。それについて手短に。

杉浦内閣官房副長官 一言で言いますと、情報不足だと思います。マスコミにもたらされる情報も不確実な情報が多いんですね。ですから、そういうあらゆる情報を警察庁が収集しまして、事案の全体から見て認定できる、最終的には警察庁の判断を中心にして各種情報を総合して認定するというふうにしておりますので、一言で言うと、情報が足りないというのが認定できない事情でございます。

笠委員 これは本当に問題で、情報不足なんということを、まさに副長官がこの幹事会の責任者でしょう、だったら、なぜ、その情報不足を補うために何をやるかというのが、まさに政府がやることじゃないですか。

 私、一つ、それで、ちょっと待ってください、この特定失踪者の件について、特にこれまでにもっとやはりさまざまな情報が、確かに情報の中にはいろいろあるでしょう、それは当たり前ですよ。

 しかし、その中からどれが正しい情報で、その後、そういうことをきちっと政府としても峻別して、そしてこれを政府として拉致被害者として認定していくということ。これをやるのが当たり前の話で、ただ、私が思うのは、小泉総理自身が、もうこれ以上、政府認定の拉致被害者をふやしたくないんじゃないか、この問題はもうここで終わらせたいんだというような意識がどこかにあるんじゃないかとすら思いたくなるような対応だと私は思っているんですよ。ですから、そこあたりに対して同じような思いを持っている人はたくさんいるはずですよ、国民の中にも、別に家族の方以外でも。

 ですから、今みたいな、もう本当に二年半ですよ、拉致を認めて。情報不足ですなんということを聞かれている国民の方は、大変私は不愉快であり、政府に対して信頼できないと思いますよ。いかがですか。

杉浦内閣官房副長官 総理初め私どもは、先生のおっしゃったように、ここで幕を引こうとか、そんなこと絶対にございません。そういうお言葉を取り消していただきたいぐらいでございます。

 情報不足と申しましたが、言葉をかえれば証拠不足と言ってもよろしいかと思います。例えば、北朝鮮との関係で、政府が拉致被害者と認定する以上、骨の問題もありましたが、後でそうでなかったということはあってはならないわけであります。ですから、認定する以上は慎重の上にも慎重に認定して、認定した以上、謝罪、原状回復、きちっとやれるだけのものでないと、あやふやなままでしては後に対してよくないんじゃないかというふうに思います。

 例えば、ある特定失踪者の中に入っておられた方が、被害者の会には載っておったんですが、ある犯罪捜査で床下から遺体で発見されたというようなケースもあるわけですね。その方は、被害者の会議の方ではもう間違いなく特定失踪者だと言われておった方なんですが、そういうケースもないわけじゃないんですね。

 ですから、認定する以上、北朝鮮に対して、おたくの犯罪行為で拉致されたんだから帰せということがきちっと言えて、後になって問題がないような状態じゃないといけないというのが私どもの立場でございます。

逢沢副大臣 お許しをいただいて、外務省の立場からいわゆる特定失踪者の問題についての対応のことについて発言をさせていただきたいと思います。

 当然のことでございますが、私どもとしても外交をつかさどる立場から、特定失踪者問題についても懸命の努力をさせていただいております。

 今副長官の方から累次御答弁がありましたが、まず何といってもあらゆる情報を収集する、そのことが大切であります。韓国に対して、また中国に対して、とりわけ北の情報に接する機会が多い、また数多くの情報を持っている両国については、特別な情報提供を求める対応をいたしております。

 また、英国を初め北朝鮮と外交関係を持っている国がございます。外交関係を持っている国の中で、とりわけ公館を平壌とそれぞれの国の首都に置いている、そういう国を中心に、これはまた、この拉致問題、政府としては断定はできないけれども、非常に疑わしいケース、いわゆる特定失踪者と呼ばれている人たちが非常にたくさんいるということも照会いたしておるということを委員に御報告申し上げておきたいと思います。

 そして、その結果、これはまだ名前は出せないわけでございますけれども、クアラルンプールの日朝正常化協議において、実は三人の方、これは政府がいわゆる拉致被害者と断定、認定をしていない方でございますが、特に固有名、具体名詞を挙げまして、北朝鮮に情報提供を求めました。またその後、一回目のフォローアップの協議、二回目の協議の場におきましては、加瀬テル子さん、藤田進さん、こういった具体的な名前を出しまして情報を求める、何かわかっていることがないかといったようなことについて強く迫ったということは既に御報告を申し上げておりますが、そういった努力も含めて、これからも政府一丸となって、いわゆる残された十名の方の早期の帰国、また真相の解明はもとよりでありますけれども、いわゆる特定失踪者の問題にも懸命に引き続き当たっていくことを申し上げておきたいと思います。

笠委員 いや、もちろん何でもかんでも認定をして間違っちゃいけない、その責任は重大だということはそれはわかっていますよ。その上で私も質問をしております。

 では、でも確かに、今逢沢副大臣がおっしゃったように、実務者協議の場で、大体私も名前はわかっておりますけれども、ちゃんと特定失踪者の中からこれはという、恐らくもうほとんど拉致被害者と認定していい状況なんでしょう。だからこそ、特定の名前を挙げられて、きちっと名前を挙げて、どうだということをやられていますよね。

 今おっしゃった藤田さんにしても加瀬さんにしても、もう写真が出てきた、脱北者を通じて、ジャーナリストを通じて。この二人のケースはなぜ認定されないんですか。これは、きちっと写真鑑定も、鑑定された方ももちろん日朝交渉についていかれた方ですよね。これはもう認定するに足り得るんじゃないですか。いかがですか。

逢沢副大臣 最終的には内閣が、つまりその責任者は内閣総理大臣でございますけれども、主に警察庁が捜査を行い、その十分な証拠固めを行って、先ほど副長官からも申し上げましたように、政府として責任ある判断を行わなくてはならないという立場で行わさせていただいているわけであります。ただ、御家族の御理解、種々のさまざまな状況の中で、いわゆる名前を出して、まだ断定はできないけれども、疑いが非常に濃厚であるという形で北と折衝するケースと、またさまざまな理由の中でそうはいかないケースとあるということはぜひ御理解をいただきたいと思います。

笠委員 私は、ちょっと理解できないんですよね。それは例えば、曽我さんのケースを先ほどおっしゃいましたよね、杉浦副長官。北朝鮮側が曽我さんも拉致していたと出してきた。

 では、曽我ひとみさんのケースで、これまで政府は全くこのことについては関与してこなかったわけですよね、取り上げてこなかったわけです。その責任は、では、だれがとるのですか。そうしたことも逆にあるわけですよ。そして、お母さんに関しても、これは私は認定されたことはいいと思っていますよ。けれども、北朝鮮は入国していないと言う。そして連れ去られたという証拠もないですよね。だから、非常にあいまいなんですね、この認定する基準というものは。

 そういう中で、私は、例えば先ほどの藤田さんとか加瀬さんのケースなんというものは、むしろ、それ以上に、これはもうほとんど拉致されたに、まさに拉致されたと言い切れるぐらいの証拠がそろっている状況にあるんじゃないですか。いかがですか。

逢沢副大臣 証拠がそろって、政府として責任を持って拉致被害者であると認定できるか、断定できるか、それはまさに政府の責任で行わさせていただいております。

 したがいまして、私どもも心証としては大変、その可能性といいますか、疑いが強いというふうに思っているのも事実でございますけれども、しかし、責任ある政府の判断は断定にはまだ至らない、断定するにはいささかの情報、情報と申し上げますよりは証拠がまだそろい切っていないという判断をさせていただいているということであります。

笠委員 先ほど、いろいろな情報を今いろいろなチャネルでとっている。本当に今脱北者の方々を含めて、特に韓国を舞台にしているんでしょうけれども、いろいろとジャーナリストの人たちとも接触をしたり、確かにその中にはさまざまありますよね。正しいものからそうでないもの、あるいはお金目当てという人もまた間に入ったりと、それはあるでしょう。

 けれども、数々、私は、当然外務省の大使館の人たち含めて、こういう方々との接触も日常茶飯事だとは思っているんですけれども、やはりそういう人たちとの人間関係も築いて、しっかりと政府が、まさに写真でも何でもいいですよ、重要な手がかりになるものを入手したというような形で、本当に一件たりとも表に出てこないじゃないですか。ですから、私は何をやっているんですか、全く見えないと。

 そして、体制に不備があるんだったら体制を整えればいいじゃないですか。その点を、私は、だからそういうことをきちっとやらないから、見えてこないから、政府はどうも腰が引けているんじゃないか、いや、政府と言ったら差しさわりがあるかもしれない、今の官邸はこの拉致事件について腰が引けているんじゃないか。

 まさに認定をする最終責任者は小泉総理です。だから、私はそこをしっかりと、きょうは外務大臣、官房長官、今おられませんけれども、総理にもきちっと認識をしてもらわないといけない。そういう点で、例えば本当に、先ほど言いましたような、では、例えば外務省として、どれぐらいの海外で情報をとる努力をされていますか。

逢沢副大臣 例えば、脱北者の方々との接触を許される範囲で努力をいたしております。拉致問題が日朝間に横たわる最重要の政治案件だということを正しく理解をいただき、北朝鮮国内におられたころお持ちである情報、その中に貴重なものが含まれていないかということについて、とりわけ御当人のお立場を考慮しながら、また率直に申し上げて、韓国政府当局の了解も必要でございますが、そういった環境条件を整備しながら、できるだけの努力をさせていただいております。

 また、脱北をされました元北朝鮮の高官、黄元書記にも、実は政府の責任ある者が接触をし、高い立場からこの拉致問題のことについて協力を要請している、情報の提供を要請してきた経緯があるということについても申し上げておきたいと思います。

杉浦内閣官房副長官 事案の解明については、幹事会のたびごとに警察庁に対して全力を挙げて取り組むように指示をいたしております。彼らは彼らなりにやってくれていると思います。

笠委員 ちょっと時間もなくなってきたので、一つ、今、この特定失踪者の三十三名の方の家族が刑事告発あるいは告訴されているわけですね。早くにされた方は、もうこれは一年ぐらいになるわけですけれども、ほとんど捜査の状況というものが知らされていない。

 もちろんこれは、今まさに捜査、真相解明中だというようなこともあるんでしょうけれども、どんな小さなことでも御家族の方々からすればやはり情報が欲しいという気持ちというのはあると思うんですね。その辺について、ぜひともきめの細かい対応、また、けさのこの産経新聞で、今度、特定失踪者の拉致濃厚として古川さんが国を相手取って拉致被害者認定を求める提訴まで来月するという、こんなことが出ています。

 やはり家族の方々のことを思えば、ぜひそこらあたりのひとつ、今も一生懸命やってもらっていると私は思いますよ、警察の方々、現場の方々は。けれども、やはり政府としてのもう一つ踏み込んだ対応というものをお願い申し上げ、それに向けたちょっと決意をそれぞれにいただいて、私の質問を終わりたいと思います。

瀬川政府参考人 お答えいたします。

 まさに今、委員の御指摘のとおりだと思います。捜査上の秘密の保持あるいはプライバシーの保護という問題はございますけれども、犯罪捜査規範上も、私ども、被害者の方に対して、捜査の経過その他被害者の救済あるいは不安の解消ということに資すると認められる事項は通知をすることになってございますし、先ほど来御議論ございました、昨年十月に開催をいたしました全国の拉致容疑事案捜査の担当課長を招集した会議、ここにおきましても、全国的にこういった告訴、告発が非常にたくさんなされているという状況を背景に、しっかり情報を共有しようというのが趣旨でございますが、そこにおきましても、捜査機関として御家族の方あるいは関係者の方に対する説明責任を果たす、あるいは、これらの方の心情に十分配意した捜査を進めるようにという指示も行ったところでございます。

 今後とも、こういった点について十分配意した捜査をしっかり進めてまいりたいというふうに考えております。

逢沢副大臣 特定失踪者問題の解明につきましても、今まで以上に緊張感と、また誠意を持って取り組んでまいりたいと存じます。

杉浦内閣官房副長官 逢沢副大臣が申されたとおり、全力を挙げて取り組んでまいります。

笠委員 よろしくお願いします。

赤城委員長 次に、穀田恵二君。

穀田委員 日本共産党の穀田恵二です。

 北朝鮮から持って帰った遺骨をめぐるDNA鑑定問題と、日本と北朝鮮の双方のやりとりについての到達点について、まず質問したいと思うんです。

 横田めぐみさんの遺骨だと北朝鮮側が説明したものがにせものというDNA鑑定結果が出ました。年明けに、日本側の鑑定結果に対して、北朝鮮側が、公式回答と言い、問題点を挙げた備忘録が出ました。これに対して、政府が反論文書を伝達したこと、その後、細田官房長官が記者会見で、北朝鮮は科学的知見、分析を早く受け入れてほしい、質問があれば説明することやぶさかでない、こういう発言をしたことについて、私は、非常に重要な態度表明として聞きました。

 話し合い、協議を持たなければ、この問題についての解決はなかなかできません。私は、粘り強く努力し、事実と道理に基づいて議論をしていくことが今一番大事だと考えています。

 そこで、この問題についての対話の糸口をどうつくるのか、そして、展望、見通しについて報告されたい。

逢沢副大臣 穀田先生御指摘のように、第三回目の協議を経て、持ち帰った数々の物証を精査した結果、横田めぐみさんのものとされる骨は横田めぐみさんのものではなかった、そのことが確認をされ、また、その他の物証を精査した結果、北朝鮮が主張しているものを裏づけるものは何もない、大変残念な、また憤りを表明しなくてはならない、そのような結果でありました。

 そのことを北朝鮮側に伝え、また、北朝鮮はそのことについて反論をいたしてまいりました。我が方は直ちにそのことについて再反論をし、今御指摘のように、必要ならば直接説明することはやぶさかでない、そのような意思表示をいたしているところであります。それに対して北朝鮮側は、基本的な説明を求める、そういう態度を今の段階では示していないわけでございます。

 委員御指摘のように、この問題については、対話と圧力、そのことを基本方針に今日まで臨んでまいりました。これからもその基本方針を貫いていかなくてはならないと考えるわけでございますが、適切な圧力は北朝鮮に対しては必要でございます。つまり、それは対話のテーブルに彼らを引き戻す、対話のテーブルに着かせるという意味で適切な圧力が必要ではないかというふうに考えております。これは、周辺諸国の協力、支援、そういうことも必要であろうかと思います。

 また、日本国民が毅然とした強い憤りの姿勢を持っている、この問題が解決、解明をされない限り、北朝鮮とよい関係を結ぶことは不可能であるという強いメッセージを引き続き送り続けるということも、当然のことでございますが、必要なことというふうに存じております。

穀田委員 もう少し短く言っていただきたい、私、時間がないものですから。

 次に、北朝鮮の核問題と六者協議について、質問したいと思います。

 十日の北朝鮮外務省声明で、核兵器の製造の旨を表明しました。今回の核兵器を保有したという北朝鮮の声明は、力には力で対応するという例の先軍思想、そういう立場に立ったもので、私どもも、この立場というのは絶対に容認できないものだと考えています。

 そこで、北朝鮮の軍事優先、そして核武装がみずからの安全保障の決め手であるような考え方を改めさせることが大事だと思うんですね。やはり、私どもは、安全保障の第一の条件というのは、当然、隣国との信頼できる平和友好の関係を確立することにある、そういう道理を尽くした外交を行うことが日本側の立場だ、それが必要だと思っています。

 私は、北朝鮮外務省声明に対して、関係諸国、とりわけこの六カ国協議をやっている国々が非常に冷静な対応をしていることは重要だと思います。私は、六カ国協議を再開して、粘り強い努力が必要だと考えています。

 そこで、北朝鮮に関する日米外相共同声明が出されました。この声明では、六者会合を通じ、核問題の平和的かつ外交的解決を引き続き目指す、このことを改めて表明しています。

 平和的な解決に向けて、関係国とどのような連携をとろうとしているのか、そして、六カ国協議再開に向けてどのような努力をしているのか、その点について明らかにしていただきたいと思います。

逢沢副大臣 朝鮮半島の非核化が実現をする唯一最大の手だて、それは六カ国協議、六者協議のプロセスを生かすということを改めて確認しなくてはならないと思います。

 北朝鮮が核の保有宣言をいたしました。また、六カ国協議には応じられない、そういうステートメントを発表したわけでありますが、韓国、中国、ロシアを含めた国際社会が一致をして、六カ国協議に彼らは無条件で立ち戻るべきだ、基本的にそういった意思表示をしたのは大変適切な行動であったというふうに思います。

 核を持っている、また、持っていると示唆することで受けるデメリットがいかに大きいか、そのことを手放すことによって、核を手放すことによって得られるメリットがいかに大きなものであるか、このことをあらゆる機会、あらゆる手段を通じて、金正日、北朝鮮当局に理解させる、そして、その実際のことを六者協議の場で具現化していく、そのことにこれからも引き続き全力を尽くしてまいりたいと存じます。

穀田委員 具体的に言うとなかなか大変なことでして、今、一般論はそうなんですけれども、もちろん関係六カ国だけじゃなくて、国連の事務総長も非常に冷静な話をして、例えば、当事国に対して、きちんと北朝鮮に働きかけて協議を可能な限り早く再開されることをお願いしたい、こういうメッセージも出していまして、私は当然だと思うのですね。

 そこで、最後に、中国の王家瑞共産党対外連絡部長が二月二十一日、北朝鮮の金正日総書記と会談をして、その中で金正日総書記は、朝鮮半島非核化と核問題を対話を通じて平和的に解決するという原則は維持している、こう言った上で、一流の言い方だというような意見がありますけれども、いずれにしても、協議の枠組みから離脱する必要はないと述べたということが報道されています。

 私は、この立場は北朝鮮の外務省声明の後ろの方で述べてはいるんですけれども、中国の代表との会談で金正日総書記が表明したことは、これは大きな意味があると思うのですね。日本政府としてこの問題についてどう評価しているのか、聞きたい。

 それと、報道によれば、王家瑞対外連絡部長と阿南大使との話し合いも行われた模様です。そういう意味で、今後とも中国との連携をとっていくのでしょうけれども、日本政府としてどういうスタンスで中国と協議していくのか。この二つ、最後、ちょっと時間の範囲内でお答えいただきたいと思います。

逢沢副大臣 六カ国協議を立ち上げることを考えます場合に、中国の適切なリーダーシップ、まことに大きなポイントであるというふうに思います。

 委員御指摘のとおり、中連部部長、王家瑞部長が平壌を訪問し、金正日総書記とも会談をされたわけでございます。その会談を通じて、六者プロセスに、一定の条件が熟せば、あるいは整えば、立ち戻る用意がある、そういった趣旨の発言があったというふうに承知をいたしております。

 もとより、私どもは、早期に無条件に六者協議の場に戻ってくる、それに臨むということを北朝鮮に求めているわけでありまして、その考え方、立場に依然として違いがあるということが明らかになったことは、率直に言えば残念なことでありますが、その事実を冷静に受けとめ、あらゆる外交努力を通じて、それは中国の説得も必要でしょう、また、アメリカ、韓国、日本、ロシア、当事者の、あるいはそれ以外の国際社会の北朝鮮に対する適切な圧力、六者に戻るべきだ、そういった発言、あらゆる国際的な力をかりなくてはならないわけでありますが、それを傾注していかなくてはならないというふうに考えております。

 また、阿南我が方の駐中国大使が、王家瑞部長に同行されました寧賦魁朝鮮半島問題担当大使と直接会談をし、どのような会談であったかということについて直接話をし、また、機微な問題も含めて情報を入手いたしているところであります。

 そういった会談の中身をつぶさにこういった場で申し上げかねるわけでございますけれども、そういった直近の情報をしっかり受けとめながら、引き続き関係国と協議の上、今週の土曜日には日米韓のいわゆる実務者の責任者がソウルで会談をいたしますけれども、そういった場を通じ、一刻も早く六カ国協議が再開ができる、そういった道筋をつけてまいりたい、そのように努力をいたしてまいりたいと存じます。

穀田委員 終わります。

赤城委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時三分散会


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