衆議院

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第2号 平成18年1月27日(金曜日)

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平成十八年一月二十七日(金曜日)

    午後二時開議

 出席委員

   委員長 平沢 勝栄君

   理事 赤城 徳彦君 理事 大前 繁雄君

   理事 近藤 基彦君 理事 宮路 和明君

   理事 松原  仁君 理事 池坊 保子君

      小野寺五典君    鍵田忠兵衛君

      河井 克行君    薗浦健太郎君

      土屋 正忠君    西銘恒三郎君

      根本  匠君    福井  照君

      松浪 健太君    若宮 健嗣君

      渡部  篤君    荒井  聰君

      北橋 健治君    中井  洽君

      西村智奈美君    漆原 良夫君

      笠井  亮君    重野 安正君

    …………………………………

   外務大臣         麻生 太郎君

   国務大臣        

   (内閣官房長官)     安倍 晋三君

   国務大臣        

   (国家公安委員会委員長) 沓掛 哲男君

   内閣官房副長官      鈴木 政二君

   外務副大臣        塩崎 恭久君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  坂井 孝行君

   政府参考人

   (内閣官房拉致問題連絡・調整室長)

   (内閣府大臣官房拉致被害者等支援担当室長)    江村 興治君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    小林 武仁君

   政府参考人

   (外務省大臣官房長)   塩尻孝二郎君

   政府参考人

   (外務省大臣官房国際社会協力部長)        神余 隆博君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局長)           佐々江賢一郎君

   衆議院調査局北朝鮮による拉致問題等に関する特別調査室長          佐藤 宏尚君

    ―――――――――――――

委員の異動

一月二十七日

 辞任         補欠選任

  鍵田忠兵衛君     土屋 正忠君

  渡辺 博道君     西銘恒三郎君

  渡部  篤君     若宮 健嗣君

同日

 辞任         補欠選任

  土屋 正忠君     鍵田忠兵衛君

  西銘恒三郎君     渡辺 博道君

  若宮 健嗣君     渡部  篤君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 北朝鮮による拉致問題等に関する件


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     ――――◇―――――

平沢委員長 これより会議を開きます。

 この際、麻生外務大臣、安倍内閣官房長官及び沓掛国家公安委員会委員長から、それぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。麻生外務大臣。

麻生国務大臣 衆議院北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会の開催に当たり、外務大臣として、平沢委員長初め委員の皆様方に一言ごあいさつを申し上げます。

 北朝鮮をめぐっては、拉致問題を初め核、ミサイル問題等の諸懸案が存在し、その早期解決は日本外交の最優先課題の一つであります。

 政府としては、引き続き、日朝平壌宣言にのっとり、これら諸懸案を包括的に解決し、北東アジア地域の平和と安定に資する形で日朝国交正常化の実現を目指す考えであります。

 そうした外交努力の一環として、昨年十一月及び十二月に北京において日朝政府間協議を行いました。十二月二十四日、二十五日に行った協議においては、日朝政府は、拉致問題等懸案事項に関する協議、核問題、ミサイル問題等の安全保障に関する協議、国交正常化交渉の三つの協議を並行して実施していくことに合意しました。また、双方は、拉致問題など双方が関心を有する懸案問題の解決のため、誠意を持って努力し具体的措置を講ずることを確認しました。

 政府としては、来月二月四日から行われることとなりました日朝包括並行協議において、日朝関係の全般的な進展を図る中で、特に最優先課題である拉致問題に関し、生存者の帰国と真相の究明、容疑者の引き渡しを北朝鮮側に強く求め、問題解決に向けた具体的前進を得るべく最大限努力をしてまいります。この協議に臨むに当たっても、拉致問題の解決なくして日朝国交正常化はないとの政府の方針に一切変わりがないという点は改めて申し上げたいと存じます。

 委員の皆様方の御指導、御協力を引き続き賜りますよう、よろしくお願いを申し上げます。

平沢委員長 次に、安倍内閣官房長官。

安倍国務大臣 内閣官房長官の安倍晋三でございます。

 拉致問題に関し、平沢委員長初め各委員の方々の御指導、御鞭撻を賜りながら、官房長官として全力で拉致問題に取り組んでまいりたいと考えております。

 来月四日に開催される予定の日朝包括並行協議では、拉致問題等懸案事項に関する協議、核問題、ミサイル問題等の安全保障に関する協議及び国交正常化交渉の三つの協議の包括的な枠組みを設置の上、並行して速やかに実施していくこととしております。

 拉致問題については、昨年十二月の日朝政府間協議で、拉致問題の解決のために誠意を持って努力し具体的措置を講ずることが合意されております。

 政府としては、次回協議で、今なお安否のわからない方々がすべて生存していることを信じ、そうした前提に立って、生存者の帰国、真相の究明及び容疑者の引き渡しを強く求めていく所存です。さらに、いわゆる特定失踪者の問題についても改めて情報提供を求めてまいります。

 また、帰国された拉致被害者とその御家族については、今後とも、関係省庁、関係自治体等が緊密に連携協力して支援に努めてまいります。

 皆様方におかれましては、今国会におきましても、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

平沢委員長 次に、沓掛国家公安委員会委員長。

沓掛国務大臣 国家公安委員長の沓掛でございます。

 委員長、理事初め各委員の御指導をいただきつつ、拉致問題解決に全力を尽くしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会の開催に当たり、一言ごあいさつ申し上げます。

 北朝鮮による日本人拉致容疑事案は、国民の生命身体に危険を及ぼすもので、治安上極めて重大な問題であると認識しており、警察においては最大限の努力をもって捜査を推進しております。

 本年一月六日には、昭和五十三年七月に相次いで発生した福井県、新潟県におけるアベック拉致容疑事案に対処するための体制に関し、警察法の規定に基づき、警察庁長官から、福井県警察、新潟県警察及び警視庁に対し、それぞれ、所要の体制のもと、共同して捜査を行うよう指示をしたところであります。

 また、この指示を受け、関係警察が一層緊密に連携し共同して捜査を行うため、一月十二日に警察庁において、福井県警察、新潟県警察及び警視庁のほか、関係警察の担当課長等を招集して共同捜査会議を開催したところであります。関係警察にあっては、現在、所要の捜査と関係情報の収集を進めているところであります。

 今後とも、警察におきましては、その総合力を発揮し、拉致容疑事案の全容解明のため捜査を推進していくこととしております。国家公安委員会といたしましても、警察庁を一層督励してまいります。

 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

平沢委員長 北朝鮮による拉致問題等に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣参事官坂井孝行君、内閣官房拉致問題連絡・調整室長兼内閣府拉致被害者等支援担当室長江村興治君、警察庁警備局長小林武仁君、外務省大臣官房長塩尻孝二郎君、外務省大臣官房国際社会協力部長神余隆博君、外務省アジア大洋州局長佐々江賢一郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

平沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

平沢委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。北橋健治君。

北橋委員 民主党の北橋健治でございます。

 私は、平成十二年四月の外務委員会で、当時河野洋平外務大臣に対して、拉致問題の解決を質問した一人でございます。

 あの横田めぐみさんが拉致されてから実に二十八年と二カ月、御家族にとりましてはまことに残酷な長い日々がたっております。また、私の選挙区、北九州八幡東区大蔵の電停前で、八月八日、出勤途中の二十二歳の女性が一九七〇年に拉致されたと言われております。北朝鮮元工作員の安明進氏が、平壌の大学の講堂におきまして、横田めぐみさんの隣でその方を何度も見かけたという証言がございまして、特定失踪者の一人になっておりますけれども、拉致されたのではないかと疑いが強まっております。

 そういったことで、私は、拉致事件の解決に本来党派はないと思っておりますが、この一年間、事実上の空白があったことは、まことに政治責任は大きいと思っております。

 そこで、今回、ようやく日朝の間で包括的協議が再開をされるということでございますが、これに向けまして、まず、麻生外務大臣のこの協議にかける意気込み、方針、まずそこからお伺いをしたいと思います。

麻生国務大臣 御指摘のありましたように、この日朝政府間協議というのは実に一年ぶりということになります。長い間の中断を経て、昨年の十二月に日朝政府間協議において立ち上げに合意し、第一回協議の開催というものにつきまして、二月の四日ということを本日発表することに至りました。

 政府としても、二〇〇二年九月になります日朝平壌宣言にのっとりまして、核、拉致、ミサイル等々、御存じのように、諸懸案というものが解決をいたしました上で、北東アジアというものの平和と安定に資する形で日朝国交正常化の実現を目指してまいりたいと思っております。

 この方針のもとで、今回の協議では、一つ、拉致問題等の懸案事項に関する協議、二、核問題、ミサイル問題等の安全保障に関する協議、三、国交正常化交渉の三つの協議を、包括的な枠組みを通じまして、日朝関係の全般的な進展を図る考えであります。

 具体的には、拉致問題の懸案事項に関する協議の場におきましては、最重要課題になっております拉致問題に関しまして、生存者の帰国、真相の究明そして容疑者の引き渡しというものが北朝鮮側に強く求めなければならぬ大事なところであって、具体的前進を得るために最大限の努力をしていく考えであります。

 二つ目の、国交正常化交渉の場においては、北朝鮮側の関心事項である過去の清算の問題につきまして、日朝平壌宣言に従って誠実に対応し交渉を進めていくことによりまして、拉致問題を含む諸懸案の解決に向け、前向きで誠実な対応を北朝鮮側よりも引き出したいと思っております。

 そして、安全保障に関する協議におきましては、主に核問題やミサイル問題を取り上げる考えですが、特に核問題につきましては、これは六者会合を補完するものとしては、まずは北朝鮮に対して六者会合への早期、無条件の復帰を働きかけたいと思っております。

 日本政府といたしましては、もとより、この拉致問題を含む諸懸案の解決なくして国交の正常化はあり得ないという方針は一貫しておりまして、今後の協議の場においても、この方針にのっとって諸懸案の包括的解決を目指すというのは私どもの基本的な考え方であります。

北橋委員 外務大臣は、報道によりますと、ことしになりまして、この拉致問題には断固として対応するという私ども超党派の議連のメンバーの一人としても心強い発言をされているわけでございます。

 昨年の十二月の日朝の政府間協議の紙を見ますと、その席上、北朝鮮側は拉致問題は解決済みだという立場を繰り返しております。それだけに、これは大変な困難な交渉になると思いますが、断固として対応するというのは、何か言外に、もし日本側にとって承服できないような事態になれば何らかの対応をするという毅然たるお考えが含まれているんでしょうか。

麻生国務大臣 基本的には、私どもの考え方は対話と圧力でありまして、対話だけでは事が進まないということになった場合は、いろいろこれまでも圧力というものは、国連等々において私どもは、拉致、アブダクションという言葉が正式に国連の総会において取り上げるというところまで至った等々は明らかに圧力の一環だろうと思いますが、国際世論をして、そのような拉致という言葉を正式に国連の総会に取り上げさせるところまでやってきておりますし、今いろいろな形で圧力というものを向こう側に対してかけつつあるという事態で、対話と圧力、今間違いなく向こうは対話に乗ってきておりますから、少なくともその対話を見ながら、さらに必要というのであればいろいろなことを考える、当然のことだと存じます。

北橋委員 圧力というオプションにつきましては、後ほど詳しく安倍官房長官にも外務大臣にもお伺いしようと思っております。

 そこで、安倍官房長官にも同じように、この交渉に臨む決意の一端をお伺いするわけでございますが、既に一月八日のテレビの討論会におきまして、官房長官は、辛光洙容疑者の引き渡しを求める、それに応じなければ圧力を強めざるを得ないと積極的な御発言をされました。まことに私どもも同感であります。その場合、圧力というのは経済制裁の発動を意味するものと率直に受けとめてよろしいでしょうか。

安倍国務大臣 四日に行われる日朝交渉においては、また基本的な態度においては、麻生外務大臣から基本方針について述べたとおりでございます。

 ただいま委員が御指摘になられました辛光洙容疑者の引き渡しでありますが、先ほど麻生大臣がおっしゃったとおり、容疑者の引き渡しについても、これは当然北朝鮮に強く働きかけていくわけであります。さらに、今御指摘の辛光洙については、他の二名の容疑者と同じように警察が拉致実行犯と断定をしているわけでありまして、しっかりと私たちはその引き渡しを要求していきたい、こう考えているわけでございます。

 そして、この要求、真相の究明、そして拉致被害者、生存者のすべての帰国、全員の帰国、こうしたことを北朝鮮が誠意を持って対応していただかなければ、我々は圧力を強めていかざるを得ない、これはもう当然のことなんだろう、こう思います。

 その中で、経済制裁についてどう考えるかということについては、またこれは交渉が行われるわけでありまして、要は、結果を出すためにはどうすればいいかということで、タイミング等々については我々で当然そのときにはいろいろと考えていくということでございますが、要は、しっかりと結果を出すべく我々も全力でこの交渉を行っていく、そして北朝鮮側には、北朝鮮は今のままではますます北朝鮮の状況は悪くなっていくということをしっかりと認識させなければならない、このように思っています。

北橋委員 官房長官にもう一言お伺いしたいと思いますが、圧力を強めざるを得ない、厳しい対応をとらざるを得ない、そういうスローガンは政府要人からいっぱい出るわけでございますが、あの十二月の衝撃的な、捏造とも言われる死亡診断書あるいは遺骨という問題が出てきてから、事実上一年間空白を招いた。

 その一昨年十二月に捏造されたものを、許しがたいものを北朝鮮が示したときに、日本政府の内閣官房長官細田さんは、速やかに誠意ある対応をしなければ厳しい対応をとらざるを得ないと発言をしたわけです。そのときのいろいろなやりとりを通じて、それは当然経済制裁の発動を予告したものと内外ともに受けとめられたと思います。そして、この一年間の間に、安倍官房長官就任以前に、安倍さんはいろいろな機会に、厳しい対応の一環として経済制裁の発動をかなり積極的に発言をされてきたと思います。

 ところが、それがないままに今日に至った。時期は、これから話し合いに入るわけですから、いろいろな政治的な判断があるのかもしれませんが、私どもは、その一年前の細田官房長官の発言が北朝鮮に対して間違って、イメージとして、メッセージとして受けとめられたのではないか。日本はいろいろなことを政府高官が言うけれども、結局やることをやらない、足元を見られることになってはいないか。そういった意味で、これから、あの頑迷固陋なる相手国を相手に拉致問題の解決を迫るときに、相当に覚悟を決めて乗り込まなければ難しいと思うんです。

 そういった意味では、安倍官房長官、細田長官の発言があって、一年間空白を招きました。その意味で、厳しい対応、あるいは圧力を強めざるを得ないというのは、当然経済制裁の発動が入っている、それはそのように率直に受けとめた方がいいんではないでしょうか、相手国に誤ったメッセージにならないためにも。いかがでしょうか。

安倍国務大臣 先ほど麻生大臣が話をしたとおり、私どもといたしましては、対話と圧力の姿勢でこの交渉に臨み結果を出していきたい、解決を図っていきたい、こう考えております。

 その圧力においては、最終的な圧力としては、特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法や、外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律による経済制裁であるというふうに認識をしています。

 その上で、現在は段階的な圧力が必要と考えているところでありまして、例えば、先般は人権担当大使を設置いたしました。そして、国連における人権決議など、国際社会が一致して北朝鮮に対して諸懸案の解決に向けた誠実かつ前向きな対応を求めていくことも、これは国際的な圧力を高めていくことになる、このように思っています。

 また、違法行為の厳格な取り締まりを通じ、北朝鮮に対し国際社会の一員としての責任ある行動を促すことも、これは当然その中に入っているというふうに思うわけでありまして、この一年間の中においてもかなり厳しく我々は対応してきている、こう思っているわけであります。

 北朝鮮が拉致問題を解決せずに、あるいはまた核の問題を解決せずに、北朝鮮が抱えている、例えば国民が飢えている問題とかエネルギーが不足をしている問題、経済がなかなかうまくいかない、また国際社会から受け入れてもらえないといった問題は決して解決できないということを彼らに私たちはしっかりとわからせていきたい、こう考えています。

北橋委員 これから包括的な協議が始まる前の段階でございますので、いろいろとお考えがあるんだろうと思いますが、圧力という幾つかのオプションについての御説明があったわけであります。特に、麻生大臣からは、国際的世論の圧力、国連におけるいろいろな決議のお話もございまして、私は、それは非常に重要な圧力の一つのオプションだと考えております。

 ただ、国会において議員立法で議決をされております。そして、総選挙のアンケート、あるいは総選挙後のアンケートにおきましても、国会議員の三分の二は早期発動に積極的な回答をされておられます。

 この問題について一言詰めておきたいと思いますが、送金停止、貿易停止という措置がありますけれども、これは、仮に内閣が決定した場合に、速やかに実効ある措置として対応がされると考えてよろしいんでしょうか。といいますのは、有識者の間では、いろいろと抜け道があるのではないか、そういう指摘もあるわけでございまして、本当の意味で圧力のオプションの一つ、カードになっているんだろうかという感じがいたします。

 特定船舶の入港禁止につきましては、これはイメージとしてもよくわかりますが、送金や貿易というのは第三国を経由する場合に非常に取り締まりが難しくなるとも聞いております。当然それは、実務担当部局においてすべて実務的には完了していると考えてよろしいでしょうか。

安倍国務大臣 当然政府としては種々の検討を行っているわけでありまして、しかし、これはまさに、中身の問題については、今この場で公表することは、交渉を前にしておりますので差し控えさせていただきたいというふうに思いますが、我々はしっかりと検討しているということは申し上げておきたい、このように思います。

北橋委員 アメリカ政府がマカオの銀行で行っている措置というのは相当強烈に北朝鮮側にインパクトがあると内外で言われておりますが、金融につきまして日本からいろいろと制裁をする場合に、これは識者にもいろいろなお考えがありますし、立場上、非公式にしか発言できないものもあります。したがって、私ども、確証を得ているわけではないんですが、相当にこれは困難をきわめると言われているわけです。

 また、私はこれまで、岡田代表のときに訪中団のメンバーとして行きまして、ひたすらこの拉致問題について北朝鮮に対して建設的な圧力をかけるように強く要請をしたことがございます。そのときに、中国政府高官は非公式ながら、もし日本が経済制裁に及ぶ場合には、過去の歴史的経緯からして、人道上非常に同情する問題ではあるけれども、経済制裁には我々は賛成できない、北朝鮮側を助ける立場になるだろうということも、発言を聞いたことがあります。

 したがいまして、送金にしても貿易の停止にしても具体的には大変難しいと思うんですけれども、私が聞いているのは、中身についてここで明らかにしてほしいとは言いません。内閣が決断すれば直ちに、アメリカがマカオでやっているような具体的な実効ある措置に踏み切れる、それだけの準備は完了したと、少なくともそのメッセージは相手国に伝える必要があると思いますが、いかがですか。

安倍国務大臣 政府としては、制裁を行うべきであるという判断をした際にはしっかりと実効ある制裁が行われるように、事務的にはすべて基本的には整っているというふうに承知をしております。

北橋委員 外務大臣にこの点について関連してお伺いいたします。

 それは、過去、歴史的に経済制裁というのは何度か行われてきておりますが、その効果については、学者の間でもあるいは評論家の間でもいろいろな評価があるようでございます。この経済制裁というオプションを有効たらしめるためには、何といっても関係諸国の理解と協力、賛同を得るということが何よりも効果あらしめることではないかと思います。

 今、安倍官房長官のお話では、国会の議員立法の議決を受けて、今後の成り行きいかんによってはそれをいつでも行使できる準備はあるように私は受けとめさせていただきましたけれども、では外国との話し合いにおいて、例えばアメリカ政府との間において、中国、韓国とは最近はなかなか不仲のようでございますが、関係諸国との間で、場合によっては日本単独でも、そういうオプションも含めて、経済制裁の行使に踏み切ることについて合意はできているんでしょうか。この合意がなければ、これはまた、この経済制裁というカードは、カードとしてはあるけれども余り効かないような、こういうことになってしまいます。大臣、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 基本的には、北橋先生も御存じなんだと存じますけれども、今、この北朝鮮との間の貿易もしくは金の流れというのを、この数年間の流れを見てみますと、かつて輸出、四年前百六十六億、今六十二億、約百億以上もう既に減っております。同じく輸入も、二百八十七が百三十四、合計で四百五十三が百九十六と、かなりな額、既にもう減っておるという事実があります。また、金の流れを見ましても、これは送金が、かつての三億から、今〇・二億という形で、金の流れもかなり減ってきておるというのが実態であります。したがって、経済的効果というのだけを言われた場合に、四年前よりは今の方が少ない、額が減っておりますから、当然だと存じます。

 そういったところも頭に入れておかないと、私どもとしては、なかなか直ちに効果が上がらないではないかということになりかねぬというところが、私どもとしてはいろいろ腐心をするところであって、実際に確実に減ってきておりますから、そういった意味では、私ども、これ以上ということになりますときには、今おっしゃいましたように、隣国、もちろんアメリカを含めまして、今の六者の中でいろいろやらねばならぬということで、私ども、昨年十一月、韓国の潘基文やら、十二月のアメリカ・ライス国務長官等々とも意見交換は行っております。また、塩崎副大臣が、過日、中国出張の際にも、同じように武大偉外交副部長とこの関係について意見の交換をいたしております。

 いずれにせよ、圧力をかけていきます上では、これは日朝間の協議や、もちろん六者協議等々でいろいろなプロセスを踏まなきゃいかぬところでしょうけれども、いかなる措置をどのタイミングでやるのかということにつきましては、これは効果を上げなければ意味がありませんので、そういった点におきましては、とにかく経済制裁ありきではなく、少なくとも今は対話に乗ってきておりますから、そういった意味では、この検討に当たっては、隣国との関係をちゃんとしておかなきゃだめだという御意見は大変大事なところだ、私どももそう思っております。

北橋委員 対話と圧力というのをいつも政府は言われるわけなんですが、その圧力のオプションの一つとして、国会は既に議員立法で議決をしているわけであります。政府としても当然、それを受けて、いつでもそれを実効あらしめるための実務的な準備と外交的な理解を求める活動は終えている必要があると思うんです。そうでなければ、相手国に対して圧力、カードとは受け取られないでしょう。

 そういった意味では、これから交渉が始まりますので、始まった段階で、この問題について改めて、チャンスがあれば政府の対応を詳しく聞かせていただきたいと思っております。

 そこで、きょうは特定失踪者という問題について触れさせていただきます。

 先ほど申し上げたように、私の選挙区で、三十六年前の長き前でございますが、二十二歳の女性がいなくなり、安明進氏が平壌で見かけたと言われている人物がおります。そのほかにも、特定失踪者問題調査会の方々は、本来はこれは政府の仕事じゃないかと思うんですけれども、民間で苦労しながら活動されておられます。四百五十名になるだろう。そのうち氏名が公開されて調査されているのは二百五十二名、その中で極めて拉致の疑いが、可能性が高いと言われるのは三十四人だと言われています。

 さて、ここで外務省に聞いておきたいと思います。

 これまで日本政府は、北朝鮮との安否、消息の確認、そういった問題につきましては、十一件十六人の方については言っていると思います。それに加えて、藤田さんと加瀬さんを含めて数名、特定失踪者の中で、認定はされていないけれどもその安否についても聞いたというふうに聞いております。何人要求されているんでしょうか、安否情報の確認を北朝鮮側に。少なくとも三十四人は可能性濃厚と言われている。なぜ数名に限っているのか、その説明をいただきたい。明確にお答えいただきたい。

佐々江政府参考人 お答え申し上げます。

 これまでの協議におきまして、既に当局の方で認定をしております拉致被害者のほかに、今先生がおっしゃられました特定失踪者につきまして、拉致された疑いが濃厚であるというような領域の方々について、我々から北朝鮮側に対して、こういう方々がそちらに行っていないかということ、もし行っていれば帰してほしいということで問題を提起しておりますし、今後も提起してまいるつもりでございます。

北橋委員 二百五十二人のリストを渡していますか。三十四人のリストを渡していますか。私が聞いているところでは、お二人を含めて数名の方について安否情報の確認をしていると聞いているんです。なぜ数名に限っているんですか。

佐々江政府参考人 数名に限っておりません。いわゆる千番台のリストと呼ばれる方々について先方に提示をしております。

北橋委員 つまり、二百五十二人のリストを向こうに渡して調査を要請しているんですね。そうだとしたら、外務省の事前説明では決してそういうことは言われなかったんですよ。お二人の実名を挙げて、含めて数名これまで要求したことがある、これからの話は別として。局長言われているのは、これからの話と違いますか。既に今までやっているんですか。

佐々江政府参考人 これまでに北朝鮮側に対して要求しているものは、先生のおっしゃられた二百数十名という数字ではございません。その中で、いわゆる千番台と呼ばれる方々で、三十数名の方がおられますが、その人たちについて要求をしておるということでございます。

北橋委員 しっかりと特定失踪者についても話をしてほしいと思います。

 それにしましても、官邸のホームページに拉致問題に関するレポートが出ているんですけれども、これは、普通の日本の方が読まれたら、十一件十六人のことについて、政府が認定したことについて安否を求めているとしか読めないんです。もっとしっかりと、特定失踪者については、民間の方が苦労してやっているけれども、本来政府の仕事だと思いますよ、これはきっちりと相手国に対して伝えるべきだとこの際申し上げておきたいと思います。

 もう一つ、今、残念ながら、政府の認定を求めて裁判が係争中でございます。何しろ、横田めぐみさんで二十八年前、私の選挙区の加藤久美子さんで三十六年前の話であります。そのときにさかのぼって捜査をして、そして確たる証拠を集めるというのは至難のことだと思うんです。通常の捜査の感覚でもって確固たる拉致されたという疑いを証明するとなれば、これは相当に難し過ぎる。

 私は、その意味で、率直な国民感情からして、なぜ政府の認定はこんなに絞り込むんだろうか。古川さんのお話にしましても、いろいろな家族会の情報を聞く限り、私はどう見てもこれは拉致されたのではないか、疑い濃厚だと思うんですけれども、この辺の政府の対応は、国民感情から見て大分乖離があるんではないかと思いますが、官房長官、いかがでしょうか。

 政府認定、残念ながら、一件、初めて裁判になってしまっておりますけれども、このあたりについて、やはり政府としても弾力に対応を考えてはどうでしょうか。

安倍国務大臣 政府としては、これまでに拉致被害者として認定している十一件十六人以外にも、北朝鮮当局による拉致の可能性を排除できない事案があることから、関係省庁、関係機関が緊密に連携を図りつつ、国内外から情報収集や関連する捜査、調査を強力に推進し、事実の解明に向け全力で取り組んでいるところであります。

 事実、二〇〇二年九月十七日に訪朝した際にも、我々は曽我ひとみさん親子については全く承知をしていなかったわけでありますが、これはまさに先方から出してきたわけでございます。そういう意味においては、認定している人がすべてではないという認識はしっかりと持っているわけであります。これら捜査、調査の結果、北朝鮮当局による拉致行為の情報が確認される場合には、速やかに当該者を拉致被害者として認定することとしております。

 政府としては、新たな拉致被害者の追加認定の問題も含め、事実の解明に向け全力で取り組んでまいります。また警察も、これはもう数年前とは比べ物にならない体制で、いわゆる特定失踪者についての、いわば実際に拉致被害者であるかどうかの捜査を精力的に進めていただいているものというふうに思います。

北橋委員 もう時間が参りましたので、最後に外務大臣に、これから国際世論で包囲をして圧力をかけていくという最初お話しになったことにつきまして、今後の方針をお伺いして終わるわけでございますが、先般、西村智奈美議員の方からも、アメリカにもしっかりとした人権担当大使を置いておられるわけで、日本にもそれを設置して万全の体制を持ってやるべきだという主張をいたしまして、陣容はまだまだこれでは足りないんではないかと思いますけれども、政府がとにかく人権担当大使を置く方向で活動をスタートされたことについては評価をしたいと思います。

 問題は、今少なくとも十一カ国に拉致被害者が及んでいるわけでございます。そして、アメリカを初めとして、国連加盟国の間で相当の理解が進んできた。そういった意味では、先般もアメリカ駐日大使を囲む懇談会の席上、平沢委員長の方から拉致問題についてアメリカ側の理解を求める御発言がございまして、改めてアメリカ政府が日本の拉致問題について、本当に同情と、何とか助けてあげよう、そういう温かい気持ちでもって接していただいていることに大変意を強くした一人でございます。

 そういった意味で、知米派の麻生大臣でございますが、これから、アメリカ政府首脳はもとよりでございますが、十一カ国で拉致された被害者がふえてきております。それから、イタリアを初めとして、既に北朝鮮と国交を結んでいる国々もあります。これから外交的圧力、包囲網を築く仕事というのは相当に大きいし、何といってもアメリカ政府と緊密な一体感を強くしていく、これが国際的包囲網の重要なところだと思いますが、そういった活動に対する大臣の意気込み、決意をお伺いして、私の質問を終わります。

麻生国務大臣 今御指摘にありましたように、昨年の十二月の六日、齋賀富美子という外交官を人権担当の大使に任命をしたところであります。

 既に韓国に訪問したり、いろいろいたしておりますけれども、今言われましたように、レフコウィッツというアメリカの人権大使等々と、短時間ながらいろいろこの問題を意見を交換させるなど、いろいろなことができるようになっております。

 私ども、この問題につきまして、三月から四月にジュネーブで行われる予定になっております国連人権委員会に出席等々させる予定にいたしておりますけれども、細目、塩崎副大臣詰めておりますので、塩崎の方から一部補足をさせていただきます。

塩崎副大臣 大臣に対しての御質問でございますけれども、これまで御案内のように、小泉総理あるいは麻生大臣、そしてまた私等々のレベルで、先生おっしゃるように、国際的に包囲網を築くということについてはやってまいりました。

 特に総理は、タクシン・タイの首相やブッシュ大統領、ロシアのプーチンとも、拉致問題についてはしっかりと議論をしてまいりましたし、今お話があったとおり、麻生外務大臣もいろいろやってまいりましたし、私もこの間タイに行きましたときに、タイも、拉致とは彼らは言っておりませんが、カンタティー外務大臣からは、連携をしていこうじゃないか、こういうことがありました。

 そういうことで、拉致問題についても、国際的に圧力を一緒にかけていくということが一層大事だろうと思いますし、また先ほど来出ております人権決議も、総会で行われたときはASEANの中で今まで賛成をした国はありませんでした。今回は、フィリピンが初めてASEANの中で唯一賛成をしたのは、やはり麻生大臣を初め、私どもとしても、いろいろ水面下等々で連携をするべく努力してきた結果ではないかと思いますので、私ども日本政府としての対話と圧力に加えて、国際的な圧力と対話のフレームワークというものもしっかりと進めていかなければいけない、このように思っております。

北橋委員 終わります。

平沢委員長 次に、松原仁君。

松原委員 いよいよ日朝の協議が来月スタートする、こういう中でありまして、これに向かって、我々はどのような対話と圧力、特に圧力を持って臨むかということがメッセージとして極めて重要だというふうに私は思っております。

 先立ってお伺いしたいわけでありますが、こうした中で、警察庁長官が、ことしの年頭において、ことしは拉致問題を大いに前進させる、こういった御発言をしたわけでありますが、この真意について、どういうことかということをぜひお伺いいたしたいと思います。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 その前提といたしまして、福井及び新潟の両県警察におきまして、昨年の暮れでございますが、昭和五十三年に相次いで両県下で発生したアベック拉致事件の捜査を推進していたところ、当該拉致の実行犯特定に資する新しい証拠の入手や関連事案の見直しを図るということから、去る一月の六日に、警察庁長官より、福井、新潟及び警視庁に対して共同捜査の指示がなされております。そして、去る一月十二日に関係警察を招致いたしまして捜査会議を開催するとともに、共同捜査本部の設置による捜査体制の確立、情報の共有化等を指示したところであります。

 御指摘の警察庁長官の発言は、関係者のこのような事情聴取等を通じての拉致の実行犯の特定に資する有力な証拠が発見されたことから、この際、これまで警察が蓄積してきた拉致に関する情報や捜査結果を全般的に見直して、拉致の実行グループの特定とその全容解明に向けて強力に捜査すべきものという考えを開陳したものと理解しております。

 この意思を我々は体しまして、今後とも全力を挙げて捜査を継続してまいる所存でございます。

松原委員 ことしは勝負の年というふうなこの長官発言は、私は極めて重いものがあるだろうというふうに思っております。

 報道によれば、警察庁の中に拉致問題対策室が設置される、こういうふうに聞いておりますが、この拉致問題対策室、本当は内閣の直属でこういった対策本部が必要であるという議論は従来からあったわけでありますが、拉致問題対策室が警察庁の中に設置される、この組織の概要をお伺いいたします。

小林政府参考人 お尋ねの拉致問題対策室、仮称でございますが、これまで判明した十一件十六名の北朝鮮による日本人拉致容疑事案及びこれら以外の拉致の可能性を排除できない事案等の捜査におきまして、各都道府県に対し専従的に指導を行うとともに、かかる事案について内閣官房、外務省、その他国内外の関係機関あるいは民間団体等との調整を行うことを目的に、当庁が平成十八年度に設置することとしたものでございます。

 なお、具体的な体制等については現在も検討中でございまして、新組織の設置の効果を最大限に発揮できるように、その充実に向けて努力する所存でございます。

松原委員 それと、報道によると、松木薫さんの御家族の方々が、よど号犯人の妻である二人、これは一日か何かNHKの報道で帰国するというふうな報道もなされましたが、こういった者に対しての告訴をするということを訴えているわけでありますが、警察はこれについてどのような対応をし、どのような捜査をするのか、お伺いします。

小林政府参考人 お尋ねのよど号犯人たちの妻であります黒田佐喜子、森順子につきましては、帰国に関する情報もございますし、また、拉致への関与に関する情報も既に存在しているところでございまして、仮に同人らが帰国した場合におきましては、警察としては、告訴の有無にかかわらず、同人らを含むよど号グループの関連する活動の全容解明に向け、最大限努力してまいる所存でございます。

松原委員 また、アメリカは北朝鮮のマネーロンダリング疑惑に関して金融の制裁の発動を示唆したわけでありますが、我が国に流通している覚せい剤、にせ札についての北朝鮮当局の関与に対して、警察はどの程度、どのように把握しているのか、お伺いいたします。

小林政府参考人 警察は、北朝鮮にかかわる我が国に流入する覚せい剤、にせ札の動向に重大な関心を有しております。それを取り締まるためには、海上保安庁、税関を初めとする関係機関等との連絡を密にしているところでございます。

 覚せい剤についてでございますが、平成九年から十四年にかけての大量押収事案のうち、総押収量の約三分の一が北朝鮮を仕出し地とするものでございます。その特徴は、一回の押収量が大量でございまして、また二つ目には、極めて純度が高いものでございます。それから三番目に、比較的整った規格の包装等の特徴も有しておりまして、高度の技術水準及び相当の資金を有する組織が関与しているのではないかと疑っているところでございます。

 にせ札でございますが、にせ札については、平成九年十二月に、舞鶴西港に停泊中の北朝鮮貨物船の船長が偽造一万円札を行使した事案がございますし、平成十五年四月には、小樽港に入港中の北朝鮮船舶の船員が偽造百ドル札を行使した事案を検挙しているところでございます。また最近では、昨年の三月でございますが、鳥取県境港に入港いたしました北朝鮮船舶の船長がにせ百ドル札を行使した事案がございます。

 いずれにせよ、警察は、北朝鮮にかかわる我が国に流入する覚せい剤及びにせ札の動向に重大な関心を持ちまして、具体的な違法行為が確認されれば、今後とも厳正に対処してまいる所存でございます。

松原委員 今お話がありましたが、極めて純度が高い覚せい剤、また、極めて精巧なにせ札が出回っている。これは、恐らく北朝鮮から来ているわけでありますが、北朝鮮政府のものとは断定を今警察はしておりませんが、ほかに北朝鮮国内でこれだけ精度の高い麻薬、覚せい剤、にせ札をつくる組織というのは、どこか具体的に想定されるものがあるかどうか、お伺いいたします。

小林政府参考人 ただいま申し上げましたように、極めて北朝鮮の関与といいますか、そういった極めて有力な組織が存在するのではないか、可能性が高いものと承知しておりますが、それを特定するというようなことには残念ながら至っておりません。

松原委員 要するに、北朝鮮政府以外にそれだけの強固な組織が北朝鮮にはあるかどうか極めて微妙であるというか、ないだろうと、私はもう北朝鮮がやっていると断定していいと思うんですよ。

 このことについて、安倍官房長官、この北朝鮮の覚せい剤、そしてにせ札というのは北朝鮮がつくっている可能性が高いと思うんですが、安倍長官の所見をお伺いいたします。

安倍国務大臣 政府としては、ただいま警察庁の方から述べたとおりでございますが、にせドルについては極めて精巧なものである、こう言われているわけでございますので、北朝鮮の経済状況にかんがみれば、そういう精巧なものをつくる組織がどこにあるんだろうということは、当然そういう疑問がわいてくるわけでございまして、そういう意味においては、委員が指摘をしておられるような可能性というのは排除できないんだろう、このように思っております。

松原委員 つまり、北朝鮮政府がこのにせ札、麻薬の案件に関与している可能性は排除できない、極めて高いというふうなニュアンスで私は受けとめさせていただいたわけでありますが、これはちょうどアメリカが北朝鮮のにせ札問題に関して、先ほど北橋委員の発言にもありましたが、マカオの金融機関に対して金融制裁の提案をした、このことによって北朝鮮が大変に激震したということがありますが、我々はこの事案をどういうふうに認定するかによって、こういったアメリカにおける行動に倣うことも十分可能であるというふうに思っておりますが、大ざっぱにこのことについての官房長官の所見もお伺いいたします。

安倍国務大臣 もちろん、北朝鮮が日本国内においてマネーロンダリング等の不法な行為を行っていれば当然取り締まるべきものである、このように考えておりますし、金融当局としてもしっかりとそれは目を光らせている、このように思います。

松原委員 警察の長官が、ことしは勝負の年だ、こういうふうに言ったわけでありますが、警察庁長官が勝負の年だと言ったことに対しての安倍官房長官の、これに対して自分はどう呼応するんだ、安倍官房長官はこの問題の最高責任者の一人として、ことし一年、拉致問題、どういうふうな年と位置づけるのか、お伺いいたします。

安倍国務大臣 先ほど申し上げましたように、四日から日朝協議が始まるわけでございます。それに先立ちまして、警察庁長官もその決意を表明された。このメッセージについてはしっかりと北朝鮮側も受け取ってもらいたい、このように思うわけでありまして、拉致問題については落としどころはないわけであります。

 どこまで行けば拉致問題は解決をするかということをよく言う人がいるわけでありますが、それはすべての問題を北朝鮮が解決して初めて解決されるわけでありまして、私たちは、一人の日本人の命といえどもおろそかにしない、決して北朝鮮に残された拉致被害者が出ることのないように全力を挙げて取り組んでいきたい、このように考えているわけであります。その中で、対話と圧力の姿勢をこれからもとりながら問題の解決に当たっていきたい、このように思っています。

松原委員 拉致の問題を解決するための専門幹事会、近いうちに行うという話でありましたが、きょう、この専門幹事会が行われたというふうに仄聞しております。その議長である官房副長官にきょうお出ましいただいておりまして、きょうの専門幹事会でどのような方向性が決まったのかということ、そして同時に、特定失踪者に対する取り組みについても、例えばテーマに挙がっているならばお伺いいたしたいと思います。

鈴木内閣官房副長官 松原委員にお答えを申し上げます。

 今お話しのとおり、本日十二時十五分から一時間ちょっとにわたりまして、第十九回目の拉致問題の専門幹事会を開催したところでございます。

 今回、今、私どもの安倍長官からお話しいただきましたように、この二カ月、安倍長官から任命されて以来、いろいろな分野からもう一度、幹事会の立て直しというよりも、充実した、拉致問題を解決するためにどうしたらいいかということで、長官から御指名いただきまして、指示をいただきまして、今まで随時省庁を呼んでおりましたところ、今度は政府一体という意味もありまして、全省庁を呼んでレギュラーにし、一人ずつ各省ごと、今の現状また対応策を報告するような形で、きょう、させていただきました。

 具体的に言いますと、金融庁、防衛庁、財務省、農林水産省、経済産業省、環境省を踏まえさせてレギュラーにさせていただきました。なお、いろいろな問題がありまして、宮内庁だけはメンバーには入れませんでした。

 なお、きょうも麻生外務大臣いらっしゃいますけれども、麻生外務大臣の御配慮をいただき、人権問題を担当されております山中あき子外務大臣政務官も今回から入っていただき、いろいろな面で、国際的な問題、国内の問題、そういう問題を踏まえて、両面でこれからも審議をし、解決の方法をさせていただくところでございます。

 なお、きょう各省から省ごとにお話をいただき、拉致問題の支援の問題も踏まえて、今後の取り組み方、そのような問題をさせていただきました。なお、私から強く各省のメンバーに言いましたところ、まさに国の威信とそれから省を代表する一人ずつでありますので、家族会と同じ、拉致された家族と同じような気持ちでこの問題に取り組めと指示をさせていただきました。

 なお、特定失踪の問題につきましては、先ほど小林局長からもお話ししましたように、きょうも御報告をいただき、私ども、政府一体となって支援をしていく、そして連携をとっていく所存でございます。

 以上であります。

松原委員 官房副長官は、これは家族会との懇談の席でおっしゃったのかどうか、北に時間稼ぎをさせない、こういった発言もなさっておられるわけでありますが、北に時間稼ぎをさせないということで具体的な措置等は考えておられるのかどうか、お伺いします。

鈴木内閣官房副長官 私どもの安倍官房長官が常に言っていますように、長引かせてもそれはお互いの困難になるという発言を常に長官は言っております。得にはならない、私どももその気持ちを持って、各省も対話と圧力の姿勢を常にとっているつもりでございます。

松原委員 時間稼ぎをさせないというのは、双方得にならないんじゃなくて、北朝鮮側は得になる可能性があるんですよ。そこを勘違いしていただかないようにしたいんですが、つまり、時間が経過することによって、この問題は人の命にかかわる問題ですから、これは百年このまま放置しておけばこれで終わってしまうわけであって、逃げ切りになってしまうんですね、北朝鮮側からすると。

 私は、今回の日朝の二月四日からの協議も極めて重要でありますが、例えば向こう側の宋日昊が昇進をした、彼が昇進をした理由の一つというのは、日朝の拉致に関して時間稼ぎをしながらも日朝正常化交渉というこちらの、逆に向こうにとってはメリットのあるカードを切らせるということを含めての二月四日からの話が始まるから彼らの中で宋日昊は昇進したのではないか、こういうふうにすら私は思うわけであって、これはやはり時間稼ぎをさせない、一体どういうふうに時間稼ぎをさせないのか、この決意、今副長官にお伺いしましたが、官房長官、この辺、もう一回官房長官の口からお伺いいたします。

鈴木内閣官房副長官 松原委員、大変、私、今双方と言ったのは、もちろん、当然、北朝鮮が延ばすことは全く意味のないということを言っております。

安倍国務大臣 つまり、常々私が言っておりますのは、先ほど申し上げましたように、北朝鮮が時間稼ぎをすることによってますます北朝鮮の状況が悪くなっていくということを北朝鮮に認識をさせなければいけない、つまり北朝鮮は、拉致の問題を解決せずに、また核の問題も解決をせずに、例えば米国から北朝鮮の安全を保障してもらったり、あるいはまた経済の支援を受けたり、日本との国交が回復をしたり、あるいは経済の改革がうまくいったり、そういうことは決して起こらない、むしろ状況はどんどん悪化をしていくということを認識させなければいけない、こういうことでございます。

 既にこの一年間、貿易量は相当減ってきているわけでございますし、覚せい剤の問題あるいはマネーロンダリング等々の不法行為に対しては、さらに我々、捜査の陣容も強化し、徹底的に取り締まりを行っているわけでありまして、彼らの置かれている状況は日本との関係においてはどんどん厳しくなってきている、このように承知をしております。そしてさらに、四日から始まる日朝交渉において誠意ある対応を北朝鮮がとらないのであれば、これはもうさらにいろいろと考えていくということになるかもしれない、こういうことでございます。

松原委員 四日からの交渉で、先ほどの北橋委員の議論もあったんですが、辛光洙という名前も出てきて、朴何がしも出てきて、こういった具体的なことを、まさに警察庁長官がことしは勝負の年だと言って、長官が意図して流れているわけじゃないと思いますが、こういう議論が出てきて、私は、この中において、今回の二月四日からの議論の中で全くもって成果がないということになれば、これは日本の世論としてもどうなんだと。警察庁長官は勝負の年だと言った、辛光洙のことも出てきている、安倍長官も辛光洙の引き渡しということも言っている、こういうふうな状況で、向こうは、従来は、少し前は拉致はもう終わった、一件落着と言っていたけれども、今は誠心誠意真相究明する、こう言っているわけですよね。にもかかわらず、全くそこで何もなかった場合、これはどういうふうなことをするのか、麻生大臣にお伺いいたします。

麻生国務大臣 まだ二月の四日にスタートする前からほとんどできないかのごとき前提で話をする立場に我々ありませんので、できなかったらどうするという話でなかなかお答えはしにくいんです、正直なところ。何だ、おまえら、最初からやる気がないのかと向こうから変なことを言われてはかないませんので、そこのところは松原先生、御理解をしておいていただかぬと、私らの方としては、最初からおまえはやる気なかったと答弁しているじゃないかと、こんな話は全部公開されておりますので、我が方は。

 そういった意味では、なかなか答えのしにくいところなんですが、いずれにいたしましても、私どもとしては、今いろいろな形で、少なくともこれまでの圧力があったから確実にいろいろな形のものが、今までは全く話にならなかったものがここまで話になり、そして我々だけじゃなくて国際的にも、アメリカもやはりいろいろな形をしてきたから、一年間向こうを向いていたのがこっちを向かざるを得なくなり、そして、少なくとも、問題は解決したという問題を含めて三つの協議を立ち上げて、その一つにそれをまぜて、しかも、これは真摯に対応しない限りはできないということを重ねて言っているにもかかわらずこれに乗ってきたというのは、間違いなくいろいろな形での圧力によって対話が再開しつつあるという今の段階だと思いますので、それがどういう形になるかというのは、まだ出る前からその場合はどうするというのは、ちょっと外交としてはなかなかお答えはいたしかねるということだと存じます。

松原委員 外務大臣がおっしゃるのも、そういう議論があろうかと思いますが、やはりある程度の、外交ですから、駆け引きですから、何も言わないというのも駆け引きかもしれません。しかし、この問題で一定の前進、具体的な前進がない限りにおいて、これに対しては厳しい対応をするということをやはり明確にしておくのも外交交渉だと思いますので、これは水面下でそういったことを向こうに伝えるということでも結構でありますが、この二月四日からの交渉が終わって、なおさらに同じような議論がこの拉致特で行われないように、くれぐれもお願いをしたいというふうに申し上げる次第であります。

 そして、アメリカが、マカオのバンコ・デルタ・アジア、資金洗浄の主要な懸念を認定し、そして、この金融機関が北朝鮮政府がマカオを通じて不正な金融活動を行うのを率先して手助けしてきたと。アメリカの財務省のホームページの中でこれを九月の十五日に明らかにしたわけであります。九月十五日にこのことを明らかにして、これによって九月十六日に取りつけ騒ぎが発生した。これを受けて、マカオ当局がこのバンコ・デルタ・アジアの経営権を掌握した。そして、現状でも、聞くところによると、北朝鮮関係の口座に関しては凍結がされている、こういったことであります。北朝鮮に対しては、事実上、アメリカは提案をしただけでありますが、アメリカのこの制裁は極めて深刻に影響を与えたわけであります。

 我々は、経済制裁に関してはすると言ってみたりしておりますが、具体的なこういう提案という形で北朝鮮の体質を脅かすところまでいっていないわけであります。今回の、アメリカの財務省がホームページにおいてこういったことをし、結果として北朝鮮に対して極めて強いインパクトを与えた、このことに関しては、我々のこの拉致の問題を解決する上で一つの学ぶべき事例になるだろうというふうに思っておりますが、安倍長官の御所見をお伺いいたします。

安倍国務大臣 アメリカが行った措置は、特定の政治目的を達成するために経済制裁を発動したということではなくて、そもそも米国の愛国法に反することを北朝鮮が行っていたことに基づいて、いわゆる金融の分野において措置をとった、こういうことでありますが、これは極めて北朝鮮にとってはダメージが大きかった、こう言われているところであります。

 当然、国内においても、先ほど申し上げましたように、彼らがマネーロンダリング等々を行っていれば、金融当局として厳しく取り締まっていくということになる、こう思うわけであります。

 それとまた、我が国国内におきましても、一々事例は挙げることは差し控えさせていただきますが、北朝鮮の、またあるいは北朝鮮にかかわる団体等々に関しましては、我々はしっかりとした姿勢で対処をしているということも申し添えておきたい、このように思います。

松原委員 そうした中で、まだまだ、我が国の北朝鮮に対する、小泉総理の決断がなくてもできる部分の決断はすべてやって圧力を強めていこうというのが恐らく安倍長官の意思だろうと私はそんたくをしているわけでありますが、北朝鮮最高人民会議代議員を務める総連幹部六名が、我が国と北朝鮮との間を自由に現在往来している。このことに関しては、従来から、それはどうだろう、やはりやめるべきではないかという議論もあったわけでありますが、このことについて、この段階において安倍長官のお考えはどうか、お伺いいたします。

安倍国務大臣 確かに、北朝鮮最高人民会議代議員を務める総連の幹部六人が、日本と北朝鮮の間を自由に行き来しております。昨年も、たしか議員会館において、日本の人権侵害ということで私が名指しでこの最高会議の幹部から、代議員から非難を浴びたことがあるわけでありまして、何で私があなたにそんなことを言われなければならないのかと強く思ったわけでございます。

 在日朝鮮人等の特別永住者に対する再入国許可の付与に当たっては、その歴史的経緯及び我が国における定住性等にかんがみ、いわゆる入国特例法により、それらの者が我が国における生活の安定に資するよう配慮した上で行うこととされているので、朝鮮総連の幹部であることを理由として一律に再入国許可を認めないこととすることは困難である、このように考えているわけでございます。しかし、日本での活動ぶりがどうであるかということも考えなければならないわけであります。

 問題意識につきましては、議員と私は認識を一つにしているのではないか、このように思っております。

松原委員 安倍官房長官には、ここの部分はぜひ、認識は共有しているという話でありますが、まさにああいった国でありますから、やはり彼らは一体であるわけであって、彼らは拉致問題に関して無関係であったとも思えないし、また、彼らの自由往来ということ自体が、この拉致問題を日本は本気で解決するためにさまざまな圧力を加えることに対して本気ではないという誤ったメッセージを送る可能性になるだろうと私は思っております。

 私は、できればこの六人の総連幹部、北朝鮮最高人民会議代議員に関しては日本との往来をやめるということをぜひ政府部内でも検討していただきたいというふうに思う次第でありますが、同じという答弁であれば同じ答弁になってしまうんですが、何かもう一声あれば、安倍官房長官。

安倍国務大臣 現行の法令においては先ほど申し上げたとおりでありまして、今委員がおっしゃったような対応をするためには新たな法律が必要であるということでございます。

 現段階においては、政府としてはそのことは考えていないわけでありますが、しかし、そのことによって我が国にとって大きな問題が生じるようであれば、それは当然考えていかなければならない、また検討していく問題でもある、こう考えています。

松原委員 なかなかすぱっといかないわけでありますが、そうした中で、あと日本がやはり毅然たる外交姿勢を持つということがこの拉致問題の解決のためにどうしても必要だろうというふうに思っております。

 私は、実は、日本がこの拉致問題で、こわもてという言葉が日本語にありますが、こわもての部分がなければ、こういった北朝鮮のような国を相手にして、あめとむちと言いながら、むちを本当は使わないだろうと思われてしまったら、これは全然効果がないわけであります。先ほどの話があったように、細田官房長官が、一昨年の十二月に、横田めぐみさんのにせ遺骨の問題で、可及的速やかに誠意ある対応をしなければ制裁発動はあり得るというようなニュアンスの発言をして、一年間、まさにこの幹事会もほとんど昨年末まで、安倍さんが官房長官になるまで行われなかったということも、北朝鮮に対しては誤ったメッセージ、つまり、日本が強硬なことを言ってもそれを実際にやる意思はない、こういうメッセージが昨年一年間伝わってきたのではないか、このように私は危惧をしているわけであります。

 我々は、そういった意味において、こわもてというか、こわもての必要はないですが、やはり毅然として言うんだ、やるときはやるぞ、こういう姿勢が必要ではないかというふうに私は思っております。

 そういう中で、やはり日本の外務省が、どうも海外に対して毅然たる姿勢が不十分ではないのかというふうなことが従来から言われておりますので、ここで麻生外務大臣にお伺いしたいと思いますが、麻生外務大臣、外務省の上海領事館館員の死亡についてでありますが、麻生大臣は、このことを聞いたときにどういう印象を持たれたか、まずお伺いいたします。

麻生国務大臣 引き継ぎの中にもありませんでしたし、初めて聞いた話だったので、ちょっと正直、面食らいました。

松原委員 一般論で聞いているわけでありますので、ぜひともお答えをいただきたいと思うわけでありますが、このいわゆる上海領事館館員の死亡について、私はこれは通告しているのでありますが、日本の弱腰外交を示すもののように見える。ウィーン条約に抵触するということで、この問題に対しては強く抗議をしているということでありますが、現在どのような抗議をしているのか、お伺いいたします。

佐々江政府参考人 中国に対する抗議の事実関係についてのお尋ねでございますので、私の方からお答えさせていただきたいと思います。

 この件につきましては、事件の発生直後から中国政府に対しましてさまざまなレベルで抗議を行っております。そして、事実の究明も求めておるわけでございますが、具体的には、平成十六年の五月中旬に、我が方から、在中国公使あるいは上海総領事から、それぞれ現地の関係者あるいは外交当局の方に申し入れをしておりますし、また、平成十七年の十二月の後半にも、合計三回、外務省あるいは在中国大使館から、それぞれ外交部、中国大使館に対して申し入れをいたしておりますし、また、私のレベルでございますが、先般の日中非公式協議におきましても、アジア局長に対しまして申し入れを行っている次第であります。

 そういう中で、先方としては我々とは違った事実認識ということでございますが、我々としては、この問題は非常に重要な問題である、この問題について、やはりしかるべく中国の釈明が必要である、この点について真相究明が必要であるということで、強く申し入れを行ってきているところであります。

松原委員 外務省の、これは事件が起こったときは、川口大臣はこのことについてもちろん知っていたというふうに聞いておりますが、その後の町村前大臣に対しての引き継ぎはあったんでしょうか。

塩尻政府参考人 ただいま引き継ぎがあったかという御質問でございますけれども、引き継ぎがあったということは承知しておりません。

松原委員 つまり外務省の、大臣は大臣でいるわけでありますが、その下の官房長のレベルからは、大臣に対しては報告する必要がない、大臣がこのことを知悉している必要はない、こういう認識が当時の外務省の中にあったんですか。

塩尻政府参考人 お答え申し上げます。

 事件が発生いたしまして、外務省として、川口外務大臣に対する報告それから相談をしつつ、できる限りの調査を行いました。それから、先ほどアジア局長の方から話がありましたように、中国側に対してさまざまなレベルで厳重な抗議をし、対応してまいりました。事実究明を求めてまいりました。それから、機密漏えいがなかったことを確認した上で、再発防止策を講ずる等、必要な対応をとってきたということでございます。

松原委員 私は、少なくとも外務省の官房長以下が町村大臣にこのことを、こういった事件があったということを伝えなかったこと自体が、外務省は、現在このことに関しては、領事関係に関するウィーン条約第四十条、接受国は相応の敬意をもって領事官を待遇するとともに、領事官の、領事官というのは人ですね、身体、自由または尊厳に対するいかなる侵害も防止するための適当な措置をとるというこの四十条に違反しているということを言っているわけでありますが、これは国と国とのことでありますから、やはりこれを、ささいなことという認識ではなくて、きちっと大臣に報告をするべきだったと思いますが、いかがですか。

塩尻政府参考人 我々としては、先ほどお話ししましたように、しかるべく対応しているということでございます。

松原委員 私は、これはしかるべき対応には極めて不十分だと思うのですね。

 今回のこの今の質疑も一応通告はしていたわけでありますが、これに関して、安倍官房長官はどういうふうに今までの外務省のこれに対する対応を認識しているのか。今後のことはいろいろなマスメディアにも載っておりますが、どのようにこれから対処するのか、安倍官房長官の決意をお伺いいたします。

安倍国務大臣 当時、総理または官房長官には報告が上がっていなかったわけでございます。そのことについて、そういう対応でよかったのかどうかということも含めて検討したわけであります。また、外務省に対して検討を指示したわけでありますが、おととい私に報告があったわけでありまして、もう既に発表しているわけでありますが、こうしたインテリジェンスについて、このレベルの問題についてはしっかりと官邸に上げるというルールにしていきたい、こう考えております。

松原委員 時間が来たから終わりますけれども、要するに、このことに関して、まあ、のど元過ぎればではなくて、やはり、町村さんに対して、大臣に対してこのことを報告しなかった、こういったことに対して、私はそれを全く何もなしで事なかれで終わってはいかぬと思うのです。きちっとこのあたりのいわゆる責任問題を明らかにする、それぐらいの国内において毅然たる対応をとらない限りにおいて、中国はこれに対して謝罪してこないと思うのですよ。

 日本国内においてこういった中途半端な対応をし、大臣に報告をしなかったり報告をしたり、そういったことに対して国内においても、日本のこれはまさに国家の主権にかかわる、プライドにかかわる問題だから、きちっと責任を明らかにする。そういったことをすることによって初めて中国も、それじゃ謝罪しようか、こう言ってくるわけであるので、その辺はきちっと官房長官に、やはりこういうこと一つ一つが拉致問題の解決をおくらせるんだということを申し上げたいと思います。

 最後にもう一回決意をお伺いしたいと思います、安倍さんに。

安倍国務大臣 拉致問題に対する決意ということだと思いますが、いよいよ二月四日からスタートするわけでございます。先ほど来お話をしていますように、まず、この拉致被害者のすべての日本への帰国、そして、真相の究明と容疑者の引き渡しをしっかりと強く要求していかなければいけない。そして、被害者の御家族の皆様がだんだん高齢化をしてきているのも事実でございます。しっかりと私たちは、彼らに時間稼ぎをさせない、一日も早い解決を目指して全力で取り組んでまいります。

松原委員 終わります。

平沢委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 拉致問題については、私、参議院議員のときにも国会においてさまざまな議論がありました。とりわけ被害者家族の皆さんは、一日千秋の思いで一刻も早い解決を求めておられる。日本政府の役割が重要だと認識しております。

 当委員会では初めての機会ですので、日朝政府間協議の見通し、それから日本政府が臨む立場について、きょうは基本点を伺いたいと思っております。

 先ほど来ありましたが、二月四日からの日朝政府間協議では、昨年末に日本側の提案を北朝鮮が受け入れて、三つの協議会が並行して行われることになったということであります。

 そこで、まず外務大臣に伺いたいのですが、今度の協議に臨む政府としての基本的スタンス、それぞれについて何を提起するかについては先ほど御説明がありました。拉致問題等の懸案事項、核・ミサイル等の安全保障問題それから国交正常化交渉ということで、この三つの協議があるということですけれども、大体これは何日ぐらいを予定して、そしてこの協議というのは全体として、パッケージといいますか、そういうものとして考えていったらいいのかどうか、どういう位置づけでこの三つをやるのかということについて伺えればと思いますが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 なかなか答弁がしにくいのは、相手が相手だからですよ。

 私は、渡辺美智雄訪朝団というのに随行したことがあるんですが、日朝共同宣言というのを、共同声明を出すということになって、時間をかけて全部つくり上げて、発表三十分前に待ってくれ、そのまま翌日六時まで徹夜ですから。

 そういうところだと思っていますので、私どもは、二月の四日というのは結構早い時期に知っていましたけれども、きょうの記者会見まで二月の四日と言わなかったのは、四日と言った途端にまた変えてくる、それも駆け引きだというようなこともなり得るというのは明らかに我々としては不利をこうむりますので、いよいよ、相手の人も、交渉担当者も決まっていない段階から名前を言ったり時間を言ったりするのはいかがなものか、私どもはそう思っておりましたので、きょうまで発表は差し控えさせていただきました。

 時間はどれぐらいかかるかというお話ですけれども、全体会議と三つの協議というのになりますので、正直申し上げて、そんな簡単に終わるはずはありませんので、一週間ぐらいかかるかな、その程度に考えて、覚悟はいたしております。

笠井委員 その協議なんですが、今御質問申し上げたんですが、全体として三つありますよね。これが一つのパッケージみたいな形で、位置づけというのはどういう関係になっていくのか。そして、相手のあることで、まさにそのとおりなんであれですが、大臣としてはどういう見通しといいますか、ここまではまずはというふうなところで考えていらっしゃるか。これもなかなか言いにくい点はあると思いますが、もしお答えいただければと思います。

麻生国務大臣 私どもは、基本的に、まず全体会議で最初、お互いに顔を初めて見るところもありますので、向こうも代表が一応決まっております。私どもの方も、三つの協議にそれぞれ担当する責任大使というのを決めておりますので、それと全体との会議で、まずは全体会議。その後、個別に協議が始まりますので、その個別の協議を数日間。その上で、もう一回全体会議になるんだろうと思います。

 私どもは、重ねて申し上げておかにゃいかぬのは、向こうがやりたいのは正常化交渉、こちらがやりたいのは拉致ですから、目的は双方ともかなり優先順位のつけ方が違っておると思いますけれども、私どもは、拉致というものが解決しない限りは、この交渉は、ほかの二つがまとまって拉致だけまとまらないから二つだけまとめてスタートすることはしませんと、それだけは何回も始まる前に言っておりますので、そういったことは私どもはやりませんよということをこの前のときにも申し上げてあります。

笠井委員 相手のあることでありますし、もちろんいろいろなことがあると思うんですが、私は、いずれにしても、どんなに無法な行為を行った政府が相手でも、それを相手にしなければ結局のところ問題は解決しないという点で、そのためには対話の場に引き出さなきゃいけないという関係にあると思うので、そういう点で、粘り強い、そして力強い努力が繰り返し必要だというふうに思っております。

 そこで、関連するんですが、この日朝の三つの協議会と六者会合との関連なんですけれども、昨年九月の第四回の六者会合での共同声明では、核兵器の問題を初めとして、日朝の国交正常化についても明記をされております。日朝協議と六者会合には共通テーマがあると。

 六者会合については、今のところ、なかなか見通しが立っていないという状況があるみたいですけれども、いずれの協議も、もちろん今後の見通しは相手のあることで難しいとは思うんですが、これまで約束を何度も破ったり、国際的な無法を繰り返してきた相手だけに、日本側としては、きっちりとした対応を堅持して進めることが非常に重要だと思います。

 その意味では、日朝間の三つの協議の進展と六者協議の進捗状況、それぞれいろいろ強弱があるし、もちろんメーンテーマがあるわけですが、相互に関連もしてくるというふうに思います。

 外務大臣、今、拉致を含む諸懸案の解決なくして国交正常化はないと、繰り返しそれが大事だと言われたわけですが、要するに、この最終ゴールとしては、いわゆる同時決着という形にそれらの問題がいずれとしてもなっていくのかということで、その辺のスタンスを伺いたいんですが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 基本的に、六者協議と日朝協議、車の両輪みたいなものだということになろうと存じます。俗な例えを使わせていただければ、車の両輪ということになるんだと存じます。

 ただ、問題なのは、核問題というものは、私どもにとりましては既に問題であります。少なくとも射程距離のところに地理的条件が我々はありますので、そういうところとそうじゃないところとは感覚も大分違われようとは思いますけれども、少なくとも、この核、ミサイルという話はアメリカにとっては多分優先順位が一番高いだろうと想像にかたくないところであります、向こうは拉致された人がおりませんから。

 そういった意味では、私どもと緊急度合いは少し違うとは思いますが、我々はこの問題に対して、アメリカの国務省、代表はヒルという人なんですが、私どもの局長やら私どもとも何回となく会って、これはもうきっちり歩調を合わせて、この問題だけ先に進んで拉致だけ後に取り残されるのはだめよ、うちはそれはのめないんだからという話はきちんとしてありますので、少なくとも、日朝交渉の進展と六者協議の進展とがうまく合うようにさせにゃいかぬというところが一番難しいところだろうと思っております。

 いずれにしても、日本側としては、拉致の問題というのが感情的にも一番大きなところでもありますので、そういった意味では、この問題につきましては、いわゆる車の両輪として、二つの協議というものが両方で足を引っ張るような形じゃなくて、逆に相互に補完し合う形にいかに持っていくかというのが交渉の一番かなめだろうと思っております。

笠井委員 その際、やはり第四回の六者会合の共同声明と日朝平壌宣言、この立場を貫くことが引き続き解決の大きな基礎になると思うんですけれども、端的にそういうことだということで、大臣、よろしいですね。それは改めて、今、現時点。

麻生国務大臣 基本的にはそういうことだと存じます。

笠井委員 では、最後になりますが、安倍官房長官に伺いたいと思います。

 拉致問題では、先ほどもありましたが、生存しているすべての拉致被害者の早期帰国、真相の究明、それから容疑者の引き渡しを初めとして、遺骨の問題など、日本側が納得いく説明や資料を北朝鮮側が示すことが重要であるということは言うまでもありません。

 昨年十一月の二十四日の参議院の特別委員会で、長官は、我が党の緒方靖夫議員の質問に対して、二〇〇二年、小泉総理の訪朝の際に金正日委員長も認めたように、特殊機関等々がかかわっていたわけで、この問題を解決するには金正日委員長の決断が不可欠だと答弁されました。

 私、これは極めて重要な認識だと思うんです。我が党としても、一昨年、第三回実務者協議の内容を受けて政府に申し入れも行ってまいりましたが、この北朝鮮の特殊機関の存在が暗い影を落としているもとで、より権限ある代表、つまり、特殊機関の存在に左右されずに事の真相を追求する力を持った代表が交渉に当たるということを北朝鮮の方に求めていくということが必要だというふうに思っています。

 そこで、次回の二月四日からの日朝政府間協議の場で、日本政府としてはこうした問題についてどういう形で提起されていくおつもりか、所見、見解を伺いたいと思います。

安倍国務大臣 平成十六年五月の日朝首脳会談において、金正日国防委員長は、安否不明の拉致被害者の消息確認について、改めて白紙に戻して徹底した再調査を行う旨、約束をいたしました。これを受けまして、同年十一月に行われた第三回日朝実務者協議では、平壌において、北朝鮮側調査委員会の責任者との協議を行いました。

 北朝鮮側調査委員会からは、同年六月、政府から必要な権限を与えられた調査委員会が設置され、同委員会が特殊機関を含む関係機関も調査対象にしつつ、鋭意調査を行った旨の説明がございました。

 しかしながら、結論としては、平成十四年に日本に対して通報があった、八名は死亡、二名は入境を確認せずという従前と同じ内容の調査結果の通報がございました。この際に北朝鮮から得た物証、情報からは、北朝鮮側説明を裏づけるものは皆無でございました。

 また、特殊機関が関与した事案であるため、調査委員会としての調査に限界があった等の弁明を繰り返し、納得のいく説明は得られなかったわけでございます。つまり、特殊機関に対してしっかりと調査を行うことのできる調査委員会をつくらなければ意味がないということでもあるわけであります。

 昨年十二月の日朝政府間協議では、日朝双方は、拉致問題を含む双方が関心を有する懸案問題の解決のため、誠意を持って努力し、具体的措置を講ずることを確認しています。

 政府としては、北朝鮮側の言う再調査が十分なものとは全く考えていません。また、特殊機関の壁を理由にこのまま真相究明が進展しないということは、決して受け入れられるわけではない。今後立ち上がる拉致問題に関する協議を通じ、北朝鮮側に拉致問題の解決に向けた具体的な措置を強く求めていく考えであります。

 先ほど委員御指摘のとおり、北朝鮮側が平壌宣言をしっかりと守っていくことが大切であります。我々は、その精神にのっとって、今、交渉を進めているわけであります。

笠井委員 終わります。

平沢委員長 次に、池坊保子君。

池坊委員 公明党の池坊保子でございます。

 この拉致特別委員会が設置され、何度も質問に立ちましたけれども、思うように進展しないことに無気力感と焦燥感を感じております。

 でも、考えてみれば、私どもは北朝鮮のことは全然わかっていない。でも、北朝鮮はすべての、あらゆる情報を把握していると思います。そういう意味では、この委員会でだれがどのように質問し、政府がどのように答弁したかということもしっかりと把握しているのではないか。そういう意味では、この委員会の存在は極めて大きいのではないかと思っております。

 安倍官房長官は大変国民的支持が高くていらっしゃいます。それはお人柄とかルックスとかにかかわるかもしれませんが、最大の要因は、この拉致に関する毅然とした態度、姿勢にかかっていらっしゃるのではないかと私は思うのです。つまり、国民は、いつ拉致に遭うかわからない、つまり国の最大、最低にすべきことは、生命生存を守ってくれるということなんだと思います。

 私どもは、一点、改めて言うまでもないことですけれども、拉致は大きな犯罪である、その当たり前の認識を共通認識と再確認して、その基礎に立ってさまざまな対策を立てなければいけないと思っております。

 それから二つ目は、国会は国民の意思の反映でございます。私どもは、十六年に、改正外為法、特定船舶入港禁止法を成立させました。これを行使してくださるのが政府です。ですから、ぜひ政府はそれを行使していただきたい、それが国民の意思の反映ではないかと私は期待しております。

 それらのことを踏まえながら、安倍官房長官に質問したいと思っております。

 今月八日のテレビ番組で、安倍官房長官は、北朝鮮との協議について、警察が拉致実行犯と断定している三人の容疑者、辛光洙、金世鎬、魚本公博の引き渡しを強く要求するとともに、断れば圧力を強めなければいけない、彼らが置かれている状況はもっと厳しくなると述べていらっしゃいます。私は、それを経済制裁を視野に入れた御発言ではないかというふうに受けとめました。

 米国防長官の側近でございます米国防科学委員会のウィリアム・シュナイダー委員長は、米国が北朝鮮の紙幣偽造やマネーロンダリングの摘発を始めたことなどによる実質的な経済封じ込め策は功を奏し、北朝鮮の金正日体制の弱体化が着実に進み、北朝鮮の軍事的脅威は低下しつつあると分析しております。アメリカは、今後も金融制裁や密輸阻止などによる実質的な封じ込め策を進めていく方針をとると思います。

 昨年十二月初旬、ネグロポンテ米国家情報長官が我が国と韓国を訪れ、北朝鮮の不法行為と米国の政策について説明し、北朝鮮の不法資金経路の遮断をねらった金融措置をとるように求めたと思います。それに対して、韓国は余りいい返事はしなかった、ちょっと消極的ではあったと思いますけれども、日本においても、齋木駐米公使が緊密に連携をとりながらということで、意見が一致したのではないかというふうに思っております。

 我が国としては、どのような方策をこれからおとりになるかを伺いたいと思っております。日本の場合には、経済制裁、制裁という大変厳しい言葉を使いながら、中身は何にもやっていない。アメリカは、そういう言葉は使わないけれども、実質的にいろいろな手を打っているというふうに私には思えますので、その点をお伺いしたいと存じます。

安倍国務大臣 ただいまの池坊委員の質問も恐らく北朝鮮側は注視をしているんだろうというふうに思うわけであります。つまり、日本国民の声を北朝鮮はしっかりと受けとめ、誠意ある行動をとってもらいたい、このように思います。

 北朝鮮との諸懸案の解決に向けた政府の基本方針は、先ほど来申し上げておりますように、対話と圧力であります。これはもちろん、対話が目的でも圧力が目的でもないわけでありまして、結果を出さなければならない、こう考えております。そして、最終的な圧力としては、特定船舶の入港の禁止に関する特別措置法や外国為替及び外国貿易法の一部を改正する法律による経済制裁であるというふうに認識をしております。

 その上で、現在は段階的な圧力が必要と考えております。例えば、人権担当大使の設置、国連における人権決議など、国際社会が一致して、北朝鮮に対して諸懸案の解決に向けた誠実かつ前向きな対応を求めることである、このように思います。

 また、違法行為の厳格な取り締まりを通じ、北朝鮮に対し、国際社会の一員としての責任ある行動を促していくことも重要であります。また、北朝鮮が事態を悪化させるなど、今後の北朝鮮の対応によっては一層厳しく対応していくことを伝えていくことも重要である、このように思っております。

池坊委員 先ほどの質問とちょっと関連いたしますけれども、昨年九月、アメリカは、マカオにおけるバンコ・デルタ・アジアをマネーロンダリングの関係企業に指定し、米銀行と同行の取引を禁止するなどの措置を講じております。同銀行は、北朝鮮によるにせ札の製造、流通などの違法行為に加担してきたと言われておりますし、また、中国当局も北朝鮮関連の口座を凍結いたしました。

 私は、金融庁に照会いたしまして、日本にこれがあるのかどうか聞きましたところ、駐在事務所はあるけれども、銀行としての機能はしていないということでございました。ただ、朝鮮総連との関係があるのではないかと申しましたら、まあ、それは聞いたけれども、それはないという返事であったということですが、私は、これはわからないなというふうに思っているんです。

 今度、拉致問題に関する専門幹事会が全省庁にまたがって拡大されたと伺っております。私は、これを大変心強く思っておりまして、財務省の情報とか経済産業省の情報という、私ども日本が何が今一番足りないかといったら、そういう情報の把握だと思うんですね。その情報の把握をしていただきたいと思いますことと、それから、これは、もし何にもしていないんだったら、駐在事務所を置くはずがないんですね。何かしているから駐在事務所を置いておりますので、それについても何らかの調査を続けていっていただきたいというふうに私は思っております。

 それと絡めて、先ほども六人の国会議員が出入りが自由ではないかというお話がございました。私は、優遇措置をやめるべきだと思うんですね。つまり、ほかの国と同じようなこと、適正にいろいろなことを対処していただきたいというふうに思います。それは国民の願いでもあると思うんです。朝鮮総連のいろいろな施設は、固定資産税が減免されております。そのようなことを普通の国と同じようにするということは、当たり前のことなんですね。ですから、それをしていただきたいというふうに思いますので、そのことについてちょっとお伺いしたいと思います。

安倍国務大臣 ただいま委員が御指摘になった点は、まさに私は重要な点だというふうに思っております。北朝鮮に対して、しっかりと厳格に、法律を適正に適用していく、つまり、適正化を図っていくということが重要ではないだろうか。

 万景峰号の入港について特別に優遇していたのではないかという批判もございました。しっかりと法令を適用していくということは当然のことではないか、このように思っています。

池坊委員 北朝鮮の方にもわかっていただきたいのは、私たちは意地悪をしているのではなくて、適正にいろいろなことを処理しようとしているということはぜひわかって、もっともっと前向きに協力すべきであるというふうに私は思っております。

 先ほど安倍官房長官がおっしゃった違法な行為の一つに、昨年十一月二十二日、整理回収機構は、破綻した朝銀東京信用組合など在日朝鮮人系金融機関から引き継いだ不良債権のうち、約六百二十億円が実質的に朝鮮総連向けの貸付金だったとして、朝鮮総連に対して同額の返還を求める訴訟を起こしております。

 これについて安倍官房長官は、公的資金を投入した以上、厳格な対応をするのは当然との認識を示していらっしゃいます。これは当然だと思うんですね。それを補てんするとしたら、私どもの税金で補てんしなければならないわけでございます。

 ただ、これは、今、進展は見られない状況ではないかと思いますけれども、今後もそれについて対策をとっていらっしゃるのかどうかをお伺いしたいと思います。

安倍国務大臣 いわゆる在日朝鮮人系信組については、いわゆる公的資金、金銭贈与については一兆一千億円、そしてまた、不良債権の買い取りについては二千億円を出しているわけでございます。この二千億円のうちの回収に絡むものでございますが、破綻した北朝鮮系信用組合から買い取った不良債権については、整理回収機構が預金保険機構と密接に連携し、厳格な債権回収作業、責任追及作業を行っているところでございます。例えば、昨年十一月の朝鮮総連に対する貸し金返還請求訴訟も、その一環として行われたものであります。

 本件訴訟は、北朝鮮系信用組合の破綻処理に多額の公的資金が投入された経緯等にかんがみ、朝鮮総連に対し返済計画の真摯な検討を求めるとともに、透明性の高い厳格な債権回収を行う観点から提訴されたものであると承知をしております。

 いずれにいたしましても、整理回収機構及び預金保険機構においては、引き続き厳正に対処していくものと承知をしております。

池坊委員 私どもは、さまざまな事柄に対して、当たり前、当然のことをいつも求めているんだと思いますので、それを果たしてくれない場合には、やはり強硬に、果たすことを積極的に働きかけていく必要があるかと思います。

 きょうは警察庁の方に来ていただいたので、ちょっと伺いたいと思います。

 昨年十月には、朝鮮総連傘下団体の幹部が違法医薬品を売ったとして、幹部二人が起訴されたと思います。これも私は当然のことで、この朝鮮総連傘下団体の薬事法違反事件では、事件に関与したとして在日朝鮮人科学技術協会、通称科協と言われておりますところの家宅捜査をなさったときに、防衛庁が一九九四年ごろに研究を進めていた次世代中距離ミサイルに関するデータが記載された資料が発見されたと思います。

 国家防衛に関するこのような資料は、国家機密事項であり、高い秘匿性が求められるものです。それが一般に流出し、しかも北朝鮮関連団体が入手したことは、ゆゆしき事態として私は重く受けとめるべきではないかと思っております。

 本事件によって、日本で暗躍する北朝鮮工作員の任務の一つは、日本の防衛力に関する情報収集が含まれているということが明確になったわけですが、警察庁にお伺いしたいのは、北朝鮮工作員による我が国の防衛力に関する情報収集活動の実態を伺いたい。それから二つ目は、工作活動における朝鮮総連及びその傘下団体の役割についてどのように把握していらっしゃるかを伺いたいと思います。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の流出した資料でございますが、我が国の安全保障にかかわる資料ということでございます。昨年の十月に警視庁公安部が、朝鮮総連の傘下団体の一つでございます在日本朝鮮人科学技術協会、科協ですね、この幹部らによる薬事法違反の捜査の過程におきまして、当該幹部の経営するソフトウエア会社を捜索した際に、当該事務所内から発見された、こういうものであります。

 そもそも朝鮮総連についてでございますが、北朝鮮を支持する在日朝鮮人等で構成された外国人団体、御承知のとおりでございます。その綱領等から見まして、北朝鮮とは極めて密接な関係を有しますほか、これまでにも、北朝鮮工作員の密出入国や、委員御指摘の北朝鮮への安全保障関連不正輸出に朝鮮総連の構成員やその関係者が関与している幾つもの事例があるわけであります。

 また、昭和五十三年には田中実さん、昭和五十五年六月には原敕晁さんがそれぞれ北朝鮮に拉致された事件におきまして、総連関係者の関与も確認されているところでございます。

 また、御指摘の朝鮮総連が北朝鮮への安全保障関連物資不正輸出にかかわった事例といたしましては、在日本朝鮮人商工連合会の幹部がココム規制品を北朝鮮に不正輸出しようとした事件、これは平成元年の事件でございますが、これで明らかになっております。

 また、北朝鮮に向けてミサイルの研究開発に使用されるおそれのあるジェットミル及び関連機器が平成六年三月に不正輸出された事案におきましては、在日本朝鮮人科学技術協会、科協が関与をしてきたことが平成十五年に検挙した事案によって判明しているところでございまして、こういった、科協等を通じて我が国の防衛関連情報等に大変関心を向こうが持っているということが証明されておる、こう思います。

 警察におきましては、公共の安全と秩序を維持するという責務を果たす観点から、科協を含めまして朝鮮総連の動向に重大な関心を払っておりまして、今後とも、具体的な刑罰法令に違反する行為があれば、これに対し厳正に対処してまいる所存でございます。

池坊委員 今度、警察の対策室が拡大されるということで、大変私は喜んでおりますけれども、今、違法行為はきちんと厳正に処罰いたしますとおっしゃいましたが、それだけじゃないんですね。

 この違法行為に関連して、これは拉致の被害者とも関係しているわけですから、その点ももちろんやっていらっしゃると思いますけれども、そのことも大切で、そのことの方がむしろ大切かもしれませんので、その辺を一つ一つの事柄として処理するのではなくて、連携をとりながら、これは絶対拉致問題と関係しているということは御存じですね。ですから、それに対しても注目していって、もっと捜査を厳しくしていっていただきたいと思います。

 最後に、麻生外務大臣にお伺いしたいと思います。

 私は、この拉致の問題あるいは北朝鮮の問題は、多くの国々の協力が必要である、重要である、日本一国ではできないというふうに思っております。そういう意味では、昨年十二月十六日の国連総会において、外国人拉致問題を含む北朝鮮の人権状況を非難する決議が賛成八十八、反対二十一、棄権六十で採択されましたことを大変に喜ばしく思っております。

 これまで、北朝鮮を非難する決議案は、言うまでもなく、ジュネーブの国連人権委員会において三年連続で採択されてまいりましたけれども、国連総会で採択されたのは初めてでございます。北朝鮮に対して、国際社会が人権状況への懸念を示したということで、大変大きな意義があるのではないかと思います。

 そういう状況の中で、外務省は人権担当大使のポストを新設なさって、齋賀駐ノルウェー兼アイスランド大使が初代大使に就任されました。齋賀大使は、女子差別撤廃委員会の委員を務めるなど、人権問題に対して深くかかわっていらっしゃいました。

 この外国人拉致は、日本人だけでなく、レバノン、タイ、マカオ、ルーマニアなどの人々に対しても行われておりますので、こういう国との連携も必要ではないかと思っております。硬直した拉致問題の打開に向けて、これは一つの風穴があけられるのではないかという期待がございますけれども、この人権担当大使の役割をどのように考えていらっしゃるのか、どんなことを今後していったらいいとお考えかを伺いたいと存じます。

麻生国務大臣 御指摘のありましたように、国連のいわゆる全体会議、総会において、八十八の国が賛意を表して、アブダクション、いわゆる拉致という言葉が正式にああいう場で使われたのは最初であります。そういう意味では、今回の採決というか、八十八カ国の賛成を得てあのようなことができたのは非常に大きかったと思っております。

 また、今、齋賀富美子の話をいただきましたけれども、昨年の十二月の六日付で任命をいたしております。そのときに、私の方から申し渡した点は四点。拉致被害者の家族及び関係国との情報の意見交換、他国の北朝鮮人権特使等との意見交換、三つ、国際機関との連携強化、そして国際社会に対する北朝鮮の人権状況に関する啓発活動等をやるようにということを申しております。

 いろいろな形で、私どもの置かれている状況というのは、多分、韓国と日本というのは一番激しいことになっているんだと想像しておりますけれども、ほかの国でもちらほら出てきているというのは最近はっきりしてきておりますので、そういったものが私ども日本と限られた国だけの話ではなくて、ほかの国でもあすは我が身ということになり得るという点を警告する、啓発するというのは非常に大きな意味があると思います。こういった意味で、新任大使の活躍を大いに期待いたしたいし、私どもも支援をしてまいりたいと思っております。

池坊委員 日朝政府間協議において拉致問題が最優先事項でございますねということの確認をいただこうと思いましたが、最初のごあいさつで最優先事項だよとおっしゃっていただけましたので、大変力強くそれに期待し、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

平沢委員長 次に、薗浦健太郎君。

薗浦委員 自由民主党の薗浦健太郎でございます。よろしくお願いをいたします。

 包括協議と国連の関係の話を伺う前に、警察庁の方に来ていただいておりますので、そちらの話を先にちょっとお伺いをしたいと思います。

 これは、拉致は国際的な国家による犯罪と言うことができるかと思うんですけれども、犯罪には当然被害者と加害者がいるわけで、犯人の逮捕と被害者の支援という二点が非常に大事になってくるわけです。

 最近、朴何がしという人物についていろいろと報道をされておりますけれども、この朴某について、警察庁の方で、人定を含めてどのぐらいを把握していらっしゃるのかということをお教えいただければと思います。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の人物は、昭和四十五年夏ごろ我が国に密入国後、約十五年の長期にわたりまして、小住健蔵さんら二名の日本人に成りかわりまして、両人名義の日本旅券等を不正に取得の上、対韓国工作のための工作員の獲得、育成及び韓国への送り込み等を行っていたほか、数回にわたりまして海外渡航し、海外拠点との連絡、運営等の活動を行っていた北朝鮮の工作員でございます。

 こうした朴某の活動は、昭和六十年三月に警視庁が検挙いたしましたいわゆる西新井事件により明らかになったものでございまして、現在、御指摘の、帰国した拉致被害者、蓮池夫妻の拉致に朴某が関与したという情報がございます。警察は、当該情報も視野に置きつつ、現在、被疑者の特定に向け全力を挙げて所要の捜査を行っているところでございます。

薗浦委員 今、蓮池さんの拉致に関与していたのではないかというお話をいただきましたけれども、拉致についてこの人物が、今は捜査中であるというお話がございましたけれども、実際にどういう立場でどのような肩書で、まあ工作員でしょうけれども、どのような立場でどういう関与をしてあったのかというところはどの程度まで把握できるのか、お答えできる範囲で結構ですので、お答えをいただきたいと思います。

小林政府参考人 朴某の特定についてでございますが、先ほど申しましたような事案を惹起したということでございまして、一度、これについては昭和六十年ごろ朴某の指名手配をしているところでありますが、一年ほどで指名手配を解除してございます。そんなことから、その人物の特定については、詳細については差し控えさせていただきたいと思います。

薗浦委員 拉致への関与が明らかになれば、当然、手配をするということでよろしいんでしょうか。その確認をさせていただきたいと思います。

小林政府参考人 一たん手配を解除したのは、やはり再入国の可能性、蓋然性といいますか、そういうものを考慮して解除した、こう承知しております。

 委員御指摘のように、今回の拉致の実行犯として特定されるということになれば、当然、前の事件も含めて、これについては指名手配ということを考えてまいりたい、こう思っております。

薗浦委員 次に、被害者の支援の方ですが、もちろん被害者についても特定をしなければならないということで、特定失踪者の捜査に関して、専門幹事会の対応方針の中に、特定失踪者等に関する捜査、調査等を推進するための所要の体制の整備を行うというふうな明記がございます。

 先ほど警察の方で室を立ち上げるというお話もございましたけれども、幹事会としてこれにどういうふうな体制で対応をされて、またその整備をしていくのかということをお伺いしたいと思います。

江村政府参考人 お答えいたします。

 政府としましては、これまでに拉致被害者として認定しております十一件十六名以外にも拉致の可能性を排除できない事案があることから、関係省庁が緊密に連携を図りつつ、国内外から情報収集や、関係する捜査、調査を強力に推進いたしまして、事案の解明に向け全力で取り組んできておるところでございます。

 委員御指摘のとおり、昨年十二月六日に開催されました専門幹事会におきまして、そういう事実の解明を促進するという観点から、今後の対応方針に、新たに、特定失踪者等に関する捜査、調査等を引き続き推進し、そのための所要の体制を整備することという一項目、ほかのものと合わせて二項目でございますけれども、追加をいたしたところでございます。

 これを踏まえまして、専門幹事会に出席しております関係省庁を含めまして適切に対応するため、体制の整備が検討されているというふうに承知いたしておりまして、具体的には、先ほど警察庁の方からも御答弁がありましたけれども、平成十八年度から拉致問題対策室(仮称)が設置されることというふうに承知いたしております。

 その他の関係省庁においては、引き続き、所要の検討がされておるというふうに承知いたしております。

薗浦委員 その警察庁の中の室なんですけれども、どういう方が責任者になられて、どのぐらいの体制でやっていかれるのか。また、当然、各都道府県警との連絡というのが必要になってくると思うんですけれども、その辺の体制も含めてお教えをいただきたいと思います。

小林政府参考人 先ほども申し上げましたけれども、これまでに警察庁が判断した十一件十六名の北朝鮮による日本人拉致容疑事案及びこれ以外の拉致の可能性を排除できない事案等の捜査におきまして、やはり各都道府県警察を専従的に指導を行う、そして、かかる事案について、内閣官房、外務省、あるいは国内外の関係機関、あるいは民間団体等の調整を行う、これが目的で、本年度に拉致問題対策室、仮称ではございますが、設置することといたしました。

 これについては、現在、体制等についてはなお検討中でございますが、拉致問題対策室の室長そのものは府令職でございまして、課長との並びでございます。

薗浦委員 ありがとうございました。

 次に、国連のお話をちょっとお伺いしたいと思うんです。

 米国との協調が拉致の解決には非常に重要であるという認識とともに、やはり国連の協力、いわゆる国際社会の協調も必要であると思います。

 十月に、当時の町村外務大臣に質問をさせていただいたときに、国連改革の中で人権理事会なるものが設置される方向というか、成果文書の中に盛り込まれたというふうな話を伺ったんですけれども、その後、人権理事会というものの動きはどうなっているのかということをお伺いしたいと思います。

神余政府参考人 人権理事会についてお答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、昨年九月の国連総会首脳会議の成果文書におきまして、人権理事会の創設が合意をされております。そして、総会の議長に対して、この任務あるいはその構成等について、現在開かれております国連総会の会期中の可能な限り早急に協議を完了するよう要請がされております。

 これを踏まえまして、現在、エリアソン総会議長のもとで、この人権理事会の構成、任務、あるいはその他の基本的な枠組みについての協議が鋭意開催されております。そしてまた、各国の合意を目指して、できるだけ早く結論を得ようということで議論が行われております。

 我が国としても、人権理事会の創設によって、国連が世界の人権問題により効果的に対処する能力が実質的に強化されるということでございますので、積極的に議論に参加しているところでございます。

薗浦委員 ぜひとも、国連が人権に関する問題を強化されるということですので、積極的にやっていただきたいと思います。

 その協議の中で、今、構成とか任務について協議をされているというお話でしたけれども、我が国として、任務の中にいわゆる拉致問題という言葉、文言を入れ込んで、任務にそれを加えていただくということを交渉していただいているということでよろしいんでしょうか。

神余政府参考人 人権理事会の任務につきましては、基本的には、今ジュネーブに人権委員会というのがございますけれども、それをベースにしながら、なおかつ、さらにつけ加えるものがあるのかないのか、そういったことも踏まえて、さまざまな観点から議論をしているところでございます。

 そこに拉致という言葉が入るかどうかにつきましては、現在まだそういうところまでの議論に至っておりませんが、国連の人権委員会で採択されまして、かつまた、昨年総会でも採択されました人権問題の中に拉致という言葉が入っておりますので、そういったことも踏まえながら検討はしてまいりたいというふうに思っております。

薗浦委員 ぜひとも、拉致問題がその任務に加えられるように頑張っていただきたいというふうに思います。

 さて、来月の包括協議でございますけれども、まず、頑張っていただきたいというのが思いですけれども、我が国がどういう体制で臨むのか、また先方がどういう体制で来るのかというところを、もし答えられなければ結構ですけれども、答えられる範囲でお答えをいただければと思います。

佐々江政府参考人 我が方及び先方の各協議、三つの協議がございます。そして、全体的な会合もあるわけでございますが、各協議の首席代表は以下のとおりでございます。

 まず、国交正常化交渉及び全体会合につきましては、我が方は原口日朝国交正常化交渉担当大使、先方は宋日昊外務省大使でございます。それから、拉致問題等の懸案事項に関する協議につきましては、我が方は梅田アジア大洋州局参事官が大使でございますが、先方は金哲虎外務省アジア局副局長でございます。それから、核問題、ミサイル問題等の安全保障に関する協議につきましては、我が方が山本北朝鮮核問題担当大使で、先方は鄭泰洋外務省米国副局長でございます。

薗浦委員 先ほど、拉致の解決なくして正常化なしの原則は変わらないというお話をいただいたんですけれども、全体会議をやった後に三つの協議を同時並行でスタートさせると思うんです。そうすると、交渉は三つともやっているんだけれども、向こうは当然国交正常化というのを先にやりたいんでしょう。その辺がいまいちはっきり見えてこないというか、三つの協議を並行して進めるんだけれども、当然、一番目に拉致の話があって、二番目に核の話があって、三番目に正常化の話をするんですよというのが我が国の立場でよろしいかということを確認させてください。

麻生国務大臣 基本的には、三つの委員会が立ちますので、その三つの委員会は担当の大使がそれぞれ違いますので、開かれる場所、時間等々に差が出るということはあり得ます、わかりますよね、三つ全然違いますので。したがいまして、その中で進行の速いところもありましょうし、遅いところも出てくるだろうと思います。

 それに対しましては、幾らそこで仮に一つの方だけが先に両者で決着したとしても、三つ決着しない限りは、一つだけ先に決着しましたのでこれだけ前に進めますということはない。例えば、正常化だけが先に進むことはないということを、始まる前、私ども、この案を提案するときからずっと申し上げてきておりますので、一つだけどこか落ちるとか先に進むということは、行き着くところは同じということだと御理解いただければと存じます。

薗浦委員 ありがとうございました。

 交渉を始めるに当たって、なかなか手のうちの話なので難しいでしょうけれども、今回の交渉に臨むに当たって、余り具体的な話はできないでしょうが、どのような成果を我が国としては、もちろん拉致の解決というのが大きくはあるんでしょうけれども、どういうスタンスで、どういう方針で、どういう発言をして、そして、どこまで行けば、これは成果が成功だったと言えるのかなというところを、もし、お話しできる範囲でお話をいただければと思います。

麻生国務大臣 我が方の成果は、これは拉致された方々の全面奪還、こちらに帰国、そして真相究明、そして、いわゆる拉致をしたと私どもが疑いを強く持っておりますそういった犯人たちの引き渡しができると、私どもとしては非常によかったということになるんだと存じます。

 他方、向こう側にしてみれば、多分、日朝政府の間に正式国交というものがまだ樹立しているわけではありませんので、そういった意味では、日朝間に正式な交渉事がまとまるというのが向こう側のよしとするところだと思います。

 ミサイルにつきましてはもう当然のことですが、そういう意味で、どのぐらいに行けば今回は成功と思えるかと言われると、ちょっとここはなかなかお答えがしにくいところなんですが、その種の話で、今まで一年間全く没交渉で、もうこの話は決着がついているんだと言ってあさっての方向を向いたのがこっちを向いて、少なくとも交渉に、日朝間の政府協議も一緒にしますということで向こうも乗ってきて、三つの委員会というか協議会でそれぞれ話ができるところまでは来ました。

 まだ二月四日からどれくらいかかるかわかりませんけれども、時間をかけて協議をしていくということで、最低限、これは一発で片がつくとはとても思えませんから、そういった意味では、次回、なるべく近い時期に、向こうからさらにもう一回やろうという答えが出、そして、少なくとも拉致に関して何らかの進展があるというような言葉が出てくれば、それはそれなりの成果が上がったと言えるんだと存じますけれども、そこまで行くという自信が、おまえ、あるのかと薗浦先生に聞かれたら、ちょっとそこまで、相手が相手ですので、とても、選挙の予想とはわけが違いますので、なかなか難しいと存じます。

薗浦委員 ありがとうございました。

 時間が参りましたので、最後に、ちょっとこれは答弁は結構ですけれども、昨年、たしか専門幹事会の開催がかなり間があいたというふうに記憶をしております。今回、動き始めましたので、比較的頻繁に幹事会を開いていただいて、我々は決してこれを忘れてはいないんだという態度を示す意味でも、専門幹事会を頻繁に開いていただいて協議をしていただけたらということをお願い申し上げまして、終わります。

 ありがとうございました。

平沢委員長 次に、鍵田忠兵衛君。

鍵田委員 自民党の鍵田忠兵衛でございます。

 さて、昨年九月に当選をさせていただいて、まず最初に十月六日に拉致特別委員会で質問をさせていただきました。それ以来二回目の質問になるわけでございます。

 まず最初に、外務大臣に質問をさせていただきたいと思います。

 さきの質問者の方からも、外務大臣の取り組みについて、姿勢についていろいろとお話もあったわけでございますが、麻生大臣におかれましては、我が党のいわゆる九月の総裁選にも、候補者としてのお名前も挙がっております。できますれば、外務大臣という立場じゃなしに、一政治家として、ぜひ、この拉致の問題についてどう対応していくべきなのかという、その辺のことをお答えいただければありがたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

麻生国務大臣 基本的には、この話は、政府が一貫して申し上げておりますように、拉致されておると思われる人数、正確な数字ではありませんけれども、そういった方々が早期に帰国、そして真相が究明されなければいかぬ。

 何となく話が、私どもとしては、どの話がどう本当なのかさっぱりわかりませんから、本当に工作員という人たちがいて、持っていっているのが、どのような手口で持っていっていたか。これは警察の話なのかもしれませんけれども、我々としても、非常に真相の究明というのと、実際、持っていったまま、早い話がこれは人さらいです。難しく聞こえますけれども、人様の子供を一方的に、しかも他国に入ってきて、しかも明らかにこれは国家犯罪ですから、そういったことをやっていた犯人の引き渡し、こういったようなことが、この問題の解決に当たって、私どもとしては求めなければいかぬ一番大事なところなんだと思っております。

 したがって、この拉致問題というものが解決しないと、いわゆる日朝間の正常化が過去六十年間全くないとか、いろいろ話はいっぱいありますけれども、私ども、ミサイルももちろん、ノドンなどというものはテポドンに比べて、既にノドンというのは実戦配備という可能性の極めて高いものがそこにあるという状況もありますけれども、この拉致の問題の方が大きいんだという点が国民の感情としては一番大きいんだ、そう理解しておりますし、特に、これは太平洋側よりは日本海側におられる方々の方が何となく意識としてはより高いというような感じがしますので、そういった点、まあこっちも日本海にいるせいもあるのかもしれませんが、この種の話はかなり敏感なところなんだと思いますので、私どもとしては、拉致問題の解決なくして日朝問題というものは解決しないという意識で事に当たらねばならぬものだと理解をしております。

鍵田委員 ありがとうございます。

 続きまして、我が国の外交交渉について質問をさせていただきたいと思うんです。

 マスコミ等、そしてまた国民の皆さんも、我が国の外交姿勢というもの、これはとかく弱腰外交であるとやゆするところがあるわけであります。私自身も実はそう思っている一人なんですね。弱腰外交であるということがある。

 日本の文化の中で、また、日本人の精神の中で、協調するということ、これを非常に大事にしてきた民族であることも確かであります。そしてまた、控え目なところ、そして正々堂々と、いわゆるこれは日本人の持っている武士道精神であるのではないのかなと思うんですが、ただ、外交というものはやはり強い姿勢を示していかなければならない、こういったことが大いに言えるのではないでしょうか。特にこの拉致の問題に関しましては、強い姿勢で臨んでいかなければならない。

 私がまだ衆議院議員になる以前のことではございますが、あれは平成十三年だったと思いますが、金正日の息子とされる人物が日本国内に偽造パスポートで入国しようとして身柄を拘束された事件がありました。

 この時期は既に拉致問題が大々的になっていたわけでありますが、このときの我が国のいわゆる対応として、この人物を最終的には国外退去としてしまったわけでありますが、その決定のプロセス、そしてまた、だれが最終判断を下されたのか、まず、この御説明をお願いしたいと思います。

麻生国務大臣 鍵田先生、やはり基本的には島国というので、余り外から、外敵からいわゆる襲撃を受けたことは元寇の役にさかのぼって、ないという国と、隣の国は全く道路を隔てたすぐ隣は外国人という国とでは、やはり基本的に物の考え方がまず違う、当然、何百年それをやってきておるんですから。それが一つ。

 二つ目は、やはり農耕民族ですと、隣は、田んぼのものは死ぬまで隣にいますので、これはある程度、そこそこなあなあで話をつけなければ生きにくくてしようがないんだと思うんですね。傍ら、カウボーイとか狩猟民族という手合いは、翌日そこにはいません、獲物がとれたら終わりですから。したがって、それはどうしたってお話し合いは契約によるのであって、おまえ撃て、おれが追う、おまえ料理、それで三等分で分けるとか、大体そういう契約はきちっとしなきゃいかぬという国ですから、非常に交渉もドライに、ぴしっと契約でやってくるという国と、何となくずっと、今手伝っておいてやったら、また今度困ったときに手伝い返してくれるであろうという期待をして交渉しませんから、そういった意味では、生い立ち、環境、風習が全く違う。

 しかも、サミュエル・ハンチントンの話でいけば一文明一国家という珍しい国ですから、そういった意味では、外交というものはなかなか難しい。経験が余りない。しかも、鎖国は長いことしている。そういった意味では、経験が極めてないというところはかなり差し引いて考えておいていただかないと、もともと余り得意としている分野ではない。これは、我々外交をやるときに絶対に頭に入れておかなければいかぬところなんだと思っております。

 そして今、二〇〇一年の五月一日の金正男だったか何かという人だって、何かとぼけた日本語の名前かと思ったら、韓国名でしたか、何とか名で読むんだそうですけれども、ちょっと何と発音するんだか知りませんが。この話があって、たしかあれは、ドミニカ共和国だかどこかの中南米のパスポートで入ってきたんだと記憶しますが、そのパスポートが偽造ということになって、いわゆる成田空港でとめられた。キム・ジョンナムと発音するんだそうですが、これが金正日、キム・ジョンイルの息子であるという話になって、これの扱いが、当時、法務省、外務省、警察庁等々で、その場で、五月の一日、二日で協議を二回やっております。

 結果として、これは入国管理の話ですので基本的には法務省管轄の話になりますので、官房を入れたところで、たしか四者で協議をしたと思いますけれども、その結果、五月の二日だか三日だかに、国外強制退去ということで話をして、あとは淡々と五月の三日に退去をさせたというようなことになっていると思います。日にちが一日、二日ずれているかもしれませんが、まあ、大体五月の四日ぐらいに成田を立たせて北京に出したというのがある。

 その間、外務省は、北京とのいわゆる交渉やら何やらは外務省の方で責任を持ってやることになったというのが当時の経緯だったと思いますので、その意味では、総合的な判断というのは、多分そのとき全体で、四省で話をして、今これをやるとちょっともめるんじゃないかというような、いろいろな総合的な意見が当時あったであろうということは想像にかたくないところなんですが、ちょっとその現場にいて全部したわけではありませんので、おまえだったら別のことをしたんじゃないかというようなことを言われると困るから、あらかじめお答えしておきます。

鍵田委員 ありがとうございます。

 今お話を聞いていても、やはり弱腰なところがあったようですよね。

 さて、我が国の国益が最優先されるものであると私は考えておるんですが、この決定的な外交カード、当時としても決定的な外交カードであったんだと私は思っております。それを手放してしまった、この辺が私には理解ができないところなんですね。たしか当時の外務大臣は田中眞紀子先生であったかと思っておりますが、国外退去という手段が、法治国家の我が国の国内法に照らし合わせたときに、整合性がとれていたのかどうかというのはいかがでしょうか。

麻生国務大臣 これは主に法務省に聞いていただかぬと、そこのところは私どものあれではないので、入国管理は法務省の所管ということなんだと存じますが、少なくともその中で、まあ、パスポートというものを見て偽造パスポートということになったのであれば、それはそのまま強制退去ということになりますのは、これは法律的には全く、政治的にはまた全然別の意味があったであろうということは想像にかたくないと思いますし、いろいろなカードに使えたではないのかとおっしゃりたいんだとは存じますけれども、少なくとも法律的には、いわゆる強制退去という手法、決断というのは、純粋に法律論だけでいきますと、決して間違っているわけではございません。

鍵田委員 ありがとうございます。

 さて、この今回の拉致特別委員会、この委員会が急遽開催されることになった背景には、やはり、昨年末に報道された地村さんや蓮池さん御夫妻、拉致実行犯を特定したという新たな事実が明白になったからだと思っておりますが、この拉致犯の辛光洙と、また朴某ですか、朴と名乗る工作員について、ICPO、つまり国際刑事警察機構を通じた国際手配に向け捜査を急いでいると聞いております。

 現在、国内捜査中である実行犯の一人とされる辛光洙は、既に北朝鮮に戻り英雄扱いを受けているということでありますが、帰国をした五人の拉致被害者に対しての、つまり、北朝鮮への国家賠償、この国家賠償について我が国は申し入れをしているのでしょうか、していないのでしょうか。お答えをいただきたいと思います。

塩崎副大臣 鍵田委員のお気持ちはとてもよくわかるところでございますけれども、やはり、まだこの拉致問題は解決しているわけではないわけであって、我々としては、まず生存者の帰国ということを申し入れ、そしてまた、真相は一体どうなっているんだということを究明し、それから容疑者の引き渡しを強く求めていくというこのラインで今交渉しているところでございまして、今度の二月四日からの日朝交渉もこういうラインで、まずこの点を強く言っていくということだろうと思います。

 したがいまして、この三つの要求に関し具体的な進展が見られて、そして、拉致の問題というものがおおむね絵が見えたところでなければ、とてもまだそこまで、損害賠償の請求というようなことについて具体的にステップを踏むということはまだ早いのかなというふうに思っております。

鍵田委員 ありがとうございます。

 ということは、来月四日から始まる日朝協議の場で、ある程度進展したからといっても、まだ申し込むということはないわけですね。今のお答えだったら、もっと大きく拉致問題が進展し、国交正常化ということがもっと大幅に進んだ中での話でのというお答えと解釈してよろしいんでしょうか。

塩崎副大臣 これまでの交渉経緯はもう御案内のとおりでありまして、次の会合でほとんど拉致が解決するようなことはあり得ないわけでありまして、かたがた、拉致問題が解決しない限りは国交正常化はあり得ないということで、その正常化の中でできるようになるのは、まだまだステップを踏んでいかなきゃいけないことがたくさんあるだろうということだと思います。

鍵田委員 ありがとうございました。

 続いてですが、私は国土交通委員会にも委員として所属をしており、現在、皆様も御承知のとおり、姉歯事件が大問題となっておるわけであります。これに取り組んでおりますが、ここでもやはり、真相究明、それとまた責任追及、こういったこと、この点ばかりが先行している感があるんですね。

 国土交通大臣は、一生懸命その被害者のことをおっしゃっていただいているけれども、ただ、国会の場でのやりとりとなると、どうしても責任追及とかそういう話ばかりになってしまって、いわゆる被害者の救済論議が非常に置き去りにされているように思えてならないんです。

 そこで、この拉致被害者のための支援法、これについてお聞きをしたいのですが、平成十四年十二月にこの拉致被害者に対する支援法が成立し、そして平成十五年一月が施行となっております。これは、実は自民党の中川昭一先生、今の農林水産大臣でありますが、中川先生が中心となってまとめられたものであり、当時の厚労委員長提案という形式をとったわけであります。

 現在、その拉致被害者等給付金、滞在援助金という形で単身世帯月額が十七万円、二人世帯で二十四万、三人世帯で二十七万、四人世帯で三十万、そして五人世帯で三十三万となっておるわけであります。ただ、永住を決意してから五年間という期限つきなんですね。

 この金額のベースとなったのは、年金受給額を勘案したと聞いておるわけでありますが、よく考えてみると、拉致という運命のいたずらに翻弄され、第二の人生を日本で送っている被害者の皆様が日本の社会の中で自立する上で十分な額と思えるかどうか。年金を受けている方は、まじめに仕事をして、退職して、資産やまた貯蓄がある、その中で年金をいただいて生活しておられる。その方々とこの被害者の皆さんと同じにするという考え方は少し違和感を感じるわけでございます。

 何十年も北朝鮮に拉致され、あしたへの希望もなく、苦悩の連日を送ってこられた拉致被害者の皆様に対して、国が援助する額としては相応な金額なんでしょうか。

 官房長官、お戻りでございます。これは、官房長官、よろしくお願いいたします。

安倍国務大臣 この法案は、議員立法でなされたものでありますが、当時、私、官房副長官、拉致問題専門幹事会の議長として立法にもかかわった者でございます。

 先般も、地村さん御夫妻、蓮池さん御夫妻とお話をさせていただきましたが、四人の方々が北朝鮮で生活をしていたときのいろいろなお話を伺いました。日本にいてはとても想像できない、大変な御苦労をされたというふうに思うわけでございます。その一々等については申し上げることはできないわけでございますが、北朝鮮という国で、拉致をされて、あの国で生活をすることの過酷さ、いかに過酷であったかということを私も改めて伺って、そのように感じたような次第でございます。

 この額がどうかということでございますが、要は、本来我が国でしっかりと守らなければいけない方々が拉致をされてしまった、そして長い間取り戻すことができなかったということがございます。そういう意味において、今後、延長していくかどうか、額についてどうかということについては、また御議論をいただきたい、このように思っております。

鍵田委員 ありがとうございました。

 この支援法なんですが、実は三年をめどに改正させる予定になっており、ことし、つまり平成十八年が見直しの年に当たっておるわけでございます。

 我が党として再度議員立法として提出するのがいいのか、ないしは、また本来ならば、この支援法の改正は閣法で出すべき話ではないでしょうか。その辺のことについてお聞かせをいただきたいと思います。

安倍国務大臣 当時も閣法で出すべきか議員立法で出すべきかという議論があったわけでありますが、できれば速やかに成立をさせたい。これは立法上のいろいろな問題がございまして、議員立法の方が速いだろうということもございまして、議員立法でお願いした経緯があるわけであります。今後の対応についてはまたしっかりと議論していきたい、このように思うわけであります。

 こういう問題が発生した際は、鍵田委員がおっしゃったように、しっかりと、被害者の救済をどうするべきかというまじめな論点がとても大切なんだろうな、このように思うわけであります。

鍵田委員 時間が来ましたので終わらせていただきますが、ぜひ、ことし三年目、その見直す時期ということでございます。その辺も政府の方も一応お考えいただいてやっていただければありがたいと思っております。

 外務大臣そしてまた官房長官、ありがとうございました。拉致問題、しっかりと我々も取り組ませていただきます。皆様方もぜひよろしくお願いいたします。

 終わらせていただきます。ありがとうございました。

平沢委員長 次に、大前繁雄君。

大前委員 自由民主党の大前繁雄でございます。

 時間も押しているようでございますので、はしょりながら進めさせていただきたいと思います。

 私は、北朝鮮の問題にかかわるようになりましたのは、兵庫県議会議員をしておりました昭和五十年代の終わりからでございますので、もうかれこれ二十年以上が経過するわけでございます。恐らくこの中におられる皆さん方の中でも一番北朝鮮とのかかわりということではキャリアが古いのではないかと思っております。

 当時、北朝鮮帰還事業で向こうに渡りました日本人妻の支援活動というものが行われておりまして、私も、兵庫県にお住まいの、お母さんが再婚されて連れ子で行った女の人、お母さんは御主人について北朝鮮へ帰った、そういう方から陳情を受けまして、いろいろ支援活動をしていたわけでございます。

 ここにおられる方は、ほとんどが御年配の方が多いので、北朝鮮の帰還事業といったら、ほとんどの方がよく御存じと思いますけれども、若い人たちもおられますので簡単に説明をいたしますと、昭和三十四年に日本赤十字社と北朝鮮赤十字社との間で締結されました帰還協定によりまして、約九万三千人の在日韓国・朝鮮人等が北朝鮮に渡った、いわゆる帰国運動のことでございます。

 この中に日本国籍を有する人たちが六千六百九十七名、そのうち日本人妻が千八百三十一名おられたわけでございますけれども、彼女たちは、北朝鮮を地上の楽園と美化する朝鮮総連の虚偽宣伝と、それを無批判に報道しました日本のマスコミや一部政党の賛美の声にだまされまして、在日朝鮮人、韓国人の夫について北朝鮮に渡って、地上の楽園とは全く正反対の地獄のような生活を強いられた大変気の毒な方々でございます。

 これらの日本人妻の皆さん方は、かなりの方々がもう高齢でお亡くなりになったということでございますけれども、今なお数百人が生存していると推測されております。ただ、この人たちは皆高齢化をしておりまして、安否調査も行われずに、事実上、棄民、捨てられた民、棄民されているというのが実態でございます。

 しかし、こういった人たちもれっきとした日本国籍を有する自国民でございます。我々はこれら自国民に対してもっと関心を寄せるべきではないかと考えるのでございますけれども、政府はこの問題に対してこれまでどのように対処してこられたのか、その経緯をお尋ねしたいと思います。

佐々江政府参考人 お答え申し上げます。

 事実関係につきましては、今先生がおっしゃられましたとおり、昭和三十四年から開始されました帰還事業によりまして帰還した在日朝鮮人等が約九万三千名強でございますが、そのうち朝鮮半島出身者である夫や父等に随伴して渡航した妻や子など、先生も今おっしゃられましたけれども、約六千名が含まれていた。このうちいわゆる日本人妻と推定される者も、今先生がおっしゃられましたとおり、千八百名強でございますが、残念ながら、このうちどれくらいの方が存命されているのかという確定的なことは私どももわからないわけでございます。

 しかしながら、その中でやはり日本人妻の方々の安否の確認、そして里帰りの問題は、人道的観点から取り組むべきだということで、これまでも国交がない中ではありますけれども、また限界はあるわけでございますが、種々の努力を行ってきております。

 最初は昭和五十二年から、政府としては日本人妻の御家族に対するアンケート調査を実施したり、あるいは御親族の要望に応じて赤十字ルートを通じた安否調査等の要請を行ってきておるわけでございます。そして、若干名の方々については連絡や手紙の伝達もあったわけでございます。

 その後、平成九年になりまして、日朝国交正常化交渉再開のための予備会談におきまして、この北朝鮮在住の配偶者の方の故郷訪問というものがやはり本人の意向を尊重して実現されるということが必要であるということにつきまして一致を見ました。

 その結果として、閣議了解をいたしまして、日本政府としては赤十字社と協力いたしまして、以後、平成九年、十年、十二年の三回にわたって日本人配偶者の故郷訪問事業を行ってきているわけでございます。私どもの把握している範囲では、この間、計四十三名の日本人配偶者の方が故郷訪問されたということでございます。

 この問題につきまして、我々としても人道的な観点から重要であるというふうに思っておりまして、この四日から行われる日朝協議におきましても本件を取り上げる方針でございます。そして、特にこの安否の調査につきましては、積極的に応じるよう北朝鮮に要請をしていく方針でございます。

大前委員 ぜひとも次の交渉で取り上げていただきたいと思います。

 これらの北朝鮮帰還事業で向こうへ渡った日本人妻たちに対して、彼らは自分の意思で行ったのだからといって拉致被害者と同列に取り扱うべきでないということがよく指摘されるのでございますけれども、私は、それは必ずしも正しい考え方だとは思っておりません。日本人妻など九万三千人の北朝鮮帰国者の皆さん方、ヨーロッパ・ルートで拉致された有本恵子さんなんかと同じように、ある意味では私は金日成による壮大な拉致の犠牲者ではないかと思っております。

 朝鮮動乱の後、男の労働力が非常に不足したということで、金日成がその埋め合わせに在日朝鮮人に目をつけて、できたら余り女性は来てほしくなくて、男を北朝鮮に労働力として拉致したというのが実態。それともう一つは、日本に残っている親族から金を送らせるための一つの手段に拉致をしたのではないかと伝えられているわけでございます。

 今申しましたとおり、有本恵子さんも、お聞きをいたしますと、すばらしい社会主義の国に一度行ってみませんかとよど号犯の妻たちに誘われて、北朝鮮へ連れ込まれたわけなんですね。これと、すばらしい地上の楽園がありますよとだまされて連れていかれた日本人妻たちにそれほど差があるとは、私は思わないわけでございます。

 先ほども少し答弁がございましたけれども、今後、国交正常化交渉がどうなるかわかりませんけれども、あらゆる交渉の機会をとらえて、これらの日本人妻たちを拉致被害者に準ずる者として取り扱い、安否調査の要求はもちろんのこと、自由往来、さらには、特に脱北して日本に戻ってきた日本人妻に対する支援を手厚く行うべきだと考えるのでございますけれども、この点、どのようにお考えか、外務省にお尋ねをしたいと思います。

安倍国務大臣 日本人妻の一時帰国また帰国については、かつて北朝鮮側が応じてきたことがあるわけであります。私も当時、自由民主党の外交部会でこのことを議論していたのですが、当時、拉致問題について我が方が北朝鮮側にいろいろと要求をしている中にあって、また、北朝鮮への米の支援も議論されていました、当時私はそれに反対をする立場にいたわけでありますが。そのときに先方から、北朝鮮側から、日本人妻の一時帰国という案を出してきたわけであります。これは、いわば一つの変化球でもあったのだろう、こう思うわけであります。

 日本側は好意的にとらえ、その結果というわけではないわけでありますが、これは何となく関連づける形で、日本側は米の支援を行った、かつてそういう経緯があるわけでございます。

 しかし、それで一時帰国した人たちは御承知のとおりであった。極めて一部の人であって、いわゆる主体思想を極めて強固に信奉する方々が帰ってきて、帰ってきたというか一時的に帰ってきて、それを国内でいわば宣伝するという役割を担わされていたのではないか、こう思うわけであります。

 今、私たちは、まさにこの拉致問題に絞って、まずこの問題を解決しなければいけないという中において、また、確かに大変お気の毒であるというふうには思っております。全く話が違ったということであったというのも事実でありましょう。そしてまた、当時の政党の中には、それを推し進めたところもあります。また、朝日新聞を初めとして、マスコミも地上の楽園と堂々と書いていたわけであります。

 ですから、それは、そういう意味においては、やはり被害者であったのだろう、私はこう思うわけでございますが、しかし、今交渉をする際には、我々はこの問題に絞っていかなければ、かえって外交において目的を達成できないのではないだろうか、このように思う次第であります。

麻生国務大臣 脱北者の話があっておりましたので。

 脱北者の方々に関してきちんとすべきではないかという点は、まことに御説ごもっともなんですが、結構、脱北者というものが公になるのは果たしてその人たちにとって安全かという問題は十分に配慮しておかねばならぬ点だと思っておりますので、私どもとしては、それなりにしているところとなかなか公にはできないところがあるというのは御理解いただきたいと存じます。

大前委員 お二人の大臣から御説明いただいて、いろいろ事情のあることはよくわかるのでございますけれども、やはり自国民の生命と人権を守るということは政府の最大の義務でございますので、できるだけの尽力を期待したい。

 また、我々議員の間でも、かつて、拉致議連ができるまでは、自由往来促進議連といいまして、非常に活発な議連だったわけなんですね。それが最近、ずっと停滞、店じまいしていたのでございますけれども、昨年から再発足して、活動を再開したわけでございます。

 その中で、脱北者の問題も取り扱おうということで、いろいろな脱北してきた日本人妻の話を聞く機会がございました。

 そこで私は大変うれしかったのは、議連の活動がそういう北朝鮮にいる日本人妻にいい作用を及ぼしていたということを知ったんですね。

 拉致議連でも自由往来の議連でも、そういうことをやると向こうにいる日本人妻とか拉致被害者に悪い作用があるのではないかと言われるのですけれども、少なくともこの自由往来の議連の場合は、ちょうど一九八九年、平成元年前後に最初の自由往来の会の議連はスタートしているのですけれども、それから後、一九九〇年代になって、北朝鮮の日本人妻に対する待遇がかなりよくなった。日本人妻を差別するな、いじめるな、ちょっと余分に配給も出してやれというようなことがございまして、そういうことが一九九〇年代からあって、日本人妻はちょっと一息つきましたという話をある脱北された日本人妻からお聞きして、私は、まあよかったなと思ったんです。

 今後とも、やはり私たちも、日本人の自国民の生命と人権を守る運動にもっと頑張っていかねばならないなと思っております。

 次に、拉致問題の方に移りたいのですけれども、私は、ずっと日本人妻の自由往来の問題をやっておりまして、それものれんに腕押しのような状態で、これは幾らやってもだめだなと思っていた平成八年ごろに、そういう運動の過程で、兵庫県出身の有本恵子さん、田中実さんというお二人の拉致事件の情報が入りまして、当時、地方議会で初めて、平成八年の十二月にこの拉致事件を取り上げたわけなんです。それからずっと、今度は拉致の方の運動にかかわってきたわけでございます。

 それで、小泉総理が平成十四年九月十七日の第一次訪朝で、まさかと言われた金正日総書記自身の口から拉致の事実の認定と謝罪を得て、五人の生存者の日本帰国を実現されたわけでございます。

 この拉致事件についても、幾ら我々が街頭で運動しても、もうどうしようもない、全く岩に爪を立てるような思いをしていたのでございますけれども、小泉総理が平成十四年に第一次訪朝していただいて、一気に状況が変わったんですね。

 さらに、平成十六年五月二十二日の第二次訪朝で、蓮池さん、地村さん、そして曽我ひとみさんのお子さんたち七名、そして曽我さんの御主人のジェンキンスさんを帰国させることに成功し、そして同氏の脱走罪についても、米軍からのほぼ無罪放免に近い形での解決に立ち至ったわけでございます。

 ここまでは、与野党を通じて非常に評価が高いのでございますけれども、それ以後、先ほどずっと議論されておりましたとおり、一年間交渉もなくて、一向に事態が進展しないということについて、特に経済制裁が発動されないことについて、国民一般、そしてまた運動団体の間で不満が募っておるわけでございます。こういった不満、批判について、政府はどのように考えておられるのか、官房長官にお聞きしたいと思います。

安倍国務大臣 北朝鮮の対応する形、パターンは、あるパターンがあるわけでありまして、それは、一九九三年のいわゆる核危機から大体一貫しているわけでございます。

 二〇〇二年、小泉総理が九月十七日に訪朝するわけでございますが、それに先立つ国際情勢を見てみますと、ブッシュ大統領が、北朝鮮を含め、悪の枢軸という演説をしたわけでございます。

 そしてまた、当時、日本も北朝鮮に対しては一切援助をストップするという厳しい対応をとっていましたし、大前委員を初め多くの国民世論は盛り上がっている中において、まさに何とか国をよくするためにそれを突破しなければならないと彼らが考えざるを得ないところに行ったと言ってもいいのだろうと思います。そして、うまくタイミングが合う形で総理の訪朝があり、そして五人の被害者の帰国があった、このように思います。

 その後、いわゆる経済制裁を可能にする法律等について、これは与党で勇気を持ってこの立法を行っていただいたわけでございますが、当時、こういう立法を行ったら残りの被害者の家族は日本に帰ってこられなくなってしまうのではないか、こういう議論があったわけでありますが、まさにこれを通していく中において、北朝鮮側は小泉総理の二度目の訪朝を受け入れ、そして八名の御家族の日本への帰国とつながったということでございまして、ここから私たちは今後北朝鮮とどう交渉していくかということを学び取っていかなければならない、こう考えているわけでございます。

 そこで、ではどうすればいいかということでございますが、我々が今進めている対話と圧力のこの姿勢は間違っていない、こう考えるわけであります。もちろん、対話をしなければ交渉できませんから、物事は解決をしないのは当たり前であります。しかし、北朝鮮は普通の国とは少し違う、まあ大分違うかもしれませんが。ですから、当然、彼らが誠意ある対応を示さなければ圧力をかける、今よりももっと状況が悪くなるということをしっかりと認識させなければ、残念ながら誠意ある対応は引き出すことができないわけでございます。

 そういう中で、私たちは結果を出すことを重視していきたい。対話も目的ではございませんし、もちろん圧力も目的ではない、経済制裁も目的ではなくて、要は、拉致被害者すべての日本への帰国を何としても実現したい、こういうことでございます。

 ですから、そういう意味において、もちろん経済制裁もテーブルの上にはのっておりますが、いつ、どういうタイミングでということについては、これはとにかく解決をするということを大前提に、それを目的に考えていきたい。二月四日から、とにかく何とか、この交渉が始まる、交渉が行われるわけでありまして、この場においてしっかりと解決を要求していきたい、こう考えております。

大前委員 私は、この一年間全く進展がなくてけしからぬというふうな意見ではございません。一般の不満、批判とは反対に、この一年間、政府はやはり粘り強くやっておりまして、事態はかなり前進しつつあって、新しい事実もだんだんわかってきつつあるというのが最近の状況ではないかと思っております。

 具体的に、時間もございません、簡単に申し上げますけれども、一つは横田めぐみさんのにせ遺骨事件ですね。これはみんな、一昨年日本の代表団が持ち帰ってきて、ばかにしていると、はしにも棒にもかからないような話のように思われるかもわかりませんけれども、これは非常に重要な事実を示しているんですね。

 これは何がわかったかといいますと、めぐみさんが生きているか、あるいはもし仮に、こんなことはあってはいかぬのですが、亡くなられている場合でも、病死とか自殺はない、そういうことがわかったわけですね。要するに、向こうが発表している病死とか自殺はうそだということがわかったんですね。

 なぜかといいますと、北朝鮮は基本的に土葬の国でございますから、もし病死とか自殺の場合は骨が出せるわけなんですよ。骨が出せないということは、生きているか、あるいは、さもなくば別の何かがあるんではないかということになるわけでございます。同様に、他の亡くなったとされる拉致被害者も、大体同じようなことでは、みんな向こうの発表はうそではないかと私は思っております。

 この件について一つだけお聞きしたいのは、めぐみさんの夫の可能性があると言われております韓国から拉致された男性のDNA検査を行うように日韓両政府に協議を要請したと伝えられておりますけれども、その点、その後どうなっておるか、ちょっとお聞きしたいと思います。

佐々江政府参考人 お尋ねの件でございますけれども、この横田めぐみさんの夫が韓国人の拉致被害者であるかどうかということを確かめる件につきましては、横田めぐみさんの御両親から具体的な要望を受けているということもありますし、また事態の解明に資する可能性があるということで、政府としても積極的に対応していく考えでございますが、現在どういう状況にあるのかということにつきましては、関係当事者あるいは関係国との関係もございまして、微妙な性格もございますので、詳細は差し控えさせていただきます。

大前委員 わかりました。

 それと、もう一つわかってきましたのは、ことしになって相次いで明らかにされた横田めぐみさん、蓮池さん御夫妻あるいは地村さん御夫妻の拉致実行主犯が辛光洙、あるいはそのサブとしての朴某であったという被害者自身の証言があったわけでございますね。

 このことについては先ほどからいろいろ議論になっておりますが、もしこれが事実であれば、拉致被害者の範囲は当初言われていたような大規模なものじゃないんではないかということなんですよ。だから、ひょっとしたらこれは何か裏があるんじゃないかと言う人もいるんですけれども、これまで、大規模な工作組織のもとで数百人も、多数特定失踪者が拉致されているのではないかと言われてきたんですが、実際はそれほど大規模な拉致はなかったのではないかというようなことがだんだんわかってきたような気がするんですね。

 こういうことについて警察庁はどのようにとらえておられるのか、お聞きしたいと思います。

小林政府参考人 お答え申し上げます。

 委員今御指摘のように、今般の関係者の事情聴取の結果や、これまで警察が蓄積してきた拉致の実行犯に関する情報を総合いたしますと、まず、北朝鮮による拉致は、我が国に対する知見が深い工作員が中心となって敢行されたということですね。それから、それぞれの拉致実行グループに共通する人物が浮上しているということが明らかになっております。また、時間的にも、委員御案内のように、昭和五十二年ごろから昭和五十五年にかけて集中しているわけでございます。さらに申し上げますと、そもそも拉致というこの行為自体が、北朝鮮当局にとっても高度の密行性あるいは秘密の保全、こういったものを要求される行為でございます。

 こんなことを勘案すれば、一連の拉致は、断定はできませんが、委員御指摘のとおり、比較的限られたメンバーを中心に繰り返し敢行された可能性が強いものと考えているところであります。

 いずれにせよ、北朝鮮による拉致容疑事案については、警察の総合力を発揮して、捜査、調査を推進することにより、今後とも事案の全容解明についてなお一層努力してまいる所存でございます。

大前委員 時間が来てしまいましたが、もう一つ最近明らかになった事実といいますのは、ジェンキンスさんが執筆された「告白」という本の出版でございます。

 私は、最初、ジェンキンスさんがアメリカへ行くための旅費を稼ぐために適当に脚色して書いているんじゃないかと思ったんですけれども、これを読んでみると、実に貴重な資料ですね。あの人は軍人だから恐らく覚悟を決めて書いているんですね。

 あの中で、タイ人も拉致されていたとか、それよりも何よりも、ジェンキンスさん自身が脱走米兵であって、その奥さんが拉致被害者であって、その生活がもう赤裸々に書かれているわけなんですよね。これほど貴重な資料はないと思っておりまして、これをずっと分析すると、今までわからなかった、向こうへ拉致されてからの拉致被害者の状況というのがよくわかると思うんですね。そういう意味で、ぜひとも関係者は読んでいただきたいと思います。

 最後に、一点だけ。

 これは質問通告していないんですが、先ほど鍵田議員が聞かれましたが、帰国された拉致被害者に対する支援法で、ジェンキンスさんはその対象になっているのかどうか、これだけお聞きして終わりたいと思います。わからなかったらいいです。

安倍国務大臣 ジェンキンス氏も家族の一員ということで積算の中に入っていただいております。

 私も「告白」を読んだわけでございますが、その前、曽我さんからもいろいろと聞き取り調査をしております。また、地村さん御夫妻また蓮池さん御夫妻からもいろいろとお話を伺ったわけでありますが、やはり、あの本に書いてある以上の厳しい状況の中で、人間関係においても大変な状況の中で恐らく生活をされていたんだろう、こう思うわけであります。

 これは、とにかく日本で生活をしている我々からは想像を絶する状況の中で生活をしていた。ですから、そういう意味において我々はしっかりと支援をしていかなければいけない、こう考えております。

大前委員 終わります。

平沢委員長 次に、重野安正君。

重野委員 質問に入ります前に、質問の順序を御配慮いただきまして、ありがとうございました。委員長の配慮に感謝いたします。

 五分という時間ですから、ごくごく簡潔に。

 一つは、日朝協議が二月四日から始まるという話です。六者協議はなかなかうまく転がっているとは言いがたい状況にありますが、いずれにいたしましても、この二つの重要な協議をうまく回転させていく上で、中国の動向というのは非常に重要なかぎを握っている、私なりにそういう認識を持つんですが、その点について、外務大臣、官房長官、それぞれ思いをお聞かせください。

麻生国務大臣 先ほど松原議員の御質問にお答えしたところに一部関係しますけれども、経済の面でいきますと、日本との経済関係はざっと落ちているのに対して、それを中国の方がふえてきておりますから、それは基本的に、経済面、また、国境を隣接している、豆満江を初めみんなつながっております国境面等々を考えて、また、エネルギー等々のパイプラインを握っている関係、そういったものを考えた場合は、基本的には、中国の方が北朝鮮に対する影響力が経済的にも人的にもエネルギーの面からも大きいというのは明らかだと存じます。

安倍国務大臣 ただいま外務大臣が答弁したとおりであります。

 中国は、その強い影響力をしっかりと使って、北朝鮮に対して核の放棄また拉致問題の解決を誘導していくことが国際社会において責任ある行動をとっているという評価につながっていく、このように思います。

重野委員 であるとするならば、今よく経熱政冷というふうな話を耳にするわけですけれども、政治的にどうも今、日中間の関係というのは冷えている、こういうふうな言い方がされる。韓国との関係もどうもぎくしゃくしているというふうな感じ。この拉致問題というものを通して考えるときに、やはり、ここは両国との関係をより改善していくという努力を我が国の方もやらなければならないんじゃないか、このように思います。

 そういう点について、外務大臣、どういうふうな展望というか、方向というかをお持ちなのか、お聞かせください。

麻生国務大臣 中国との関係を大事にしておかねばならぬのではないか、まことにごもっともでありまして、私どもも、基本的には、中国との関係というのは大事な二国間関係の一つだと考えております。

 今、政冷経熱というお話があっておりましたけれども、いわゆる統制経済をやっております国において政治と経済が分離するなんということは考えられませんけれども、基本的には、私どもから見まして、日本と中国の間を見た場合に、経済関係極めて友好、人物往来年間四百万を超えるほどになってきておりますので、そういった面において、私どもとしては、この数年間、まことに経済関係、人的関係、拡大してきております。したがいまして、一部の話だけで全体がおかしくなるというような話はちょっとあってはならぬ話だとも思っておりますので、私どもとしては、これは努めて、この種の話に関しては、個別の分野で意見の相違があろうとも、日中間というものは大事にしていく外交方針を続けていかねばならぬと思っております。

重野委員 では、最後に、この日朝の問題について、大臣、中国はどういうふうな役割というのか、どういうかかわりというのかを持っているというふうに認識されておりますか、その点だけ最後に。

麻生国務大臣 中国は、六カ国の中で最も真剣なように、少なくともこの六者協議を見る限りに関しては最も真剣と思っております。この会議の開催を北京でやる、少なくともそれの議長を務める、そういったものに関して、少なくともアメリカに働きかけ、ロシアに働きかけ、最も積極的にやっておられる、そういうように私どもは感じております。

重野委員 では、終わります。

平沢委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時五分散会


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