衆議院

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第3号 平成19年6月19日(火曜日)

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平成十九年六月十九日(火曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 小島 敏男君

   理事 江渡 聡徳君 理事 高木  毅君

   理事 大島  敦君 理事 渡辺  周君

   理事 谷口 隆義君

      鍵田忠兵衛君    河井 克行君

      木原 誠二君    岸田 文雄君

      薗浦健太郎君    冨岡  勉君

      古屋 圭司君    御法川信英君

      山本ともひろ君    渡部  篤君

      松木 謙公君    松原  仁君

      笠  浩史君    鷲尾英一郎君

      丸谷 佳織君    笠井  亮君

    …………………………………

   外務副大臣        岩屋  毅君

   内閣府大臣政務官     岡下 信子君

   政府参考人

   (内閣官房拉致問題対策本部事務局総合調整室長)

   (内閣府大臣官房拉致被害者等支援担当室長)    河内  隆君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    米村 敏朗君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 後藤  博君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 三浦  守君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 齊藤 雄彦君

   政府参考人

   (公安調査庁次長)    北田 幹直君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局長)           佐々江賢一郎君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    谷崎 泰明君

   政府参考人

   (海上保安庁警備救難部長)            石橋 幹夫君

   衆議院調査局北朝鮮による拉致問題等に関する特別調査室長          杉山 博之君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十三日

 辞任         補欠選任

  笠井  亮君     赤嶺 政賢君

同月十四日

 辞任         補欠選任

  松木 謙公君     川内 博史君

  赤嶺 政賢君     笠井  亮君

同日

 辞任         補欠選任

  川内 博史君     松木 謙公君

六月一日

 辞任         補欠選任

  赤城 徳彦君     江渡 聡徳君

同月十九日

 辞任         補欠選任

  今津  寛君     御法川信英君

  原田 義昭君     冨岡  勉君

  漆原 良夫君     丸谷 佳織君

同日

 辞任         補欠選任

  冨岡  勉君     原田 義昭君

  御法川信英君     今津  寛君

  丸谷 佳織君     漆原 良夫君

同日

 理事赤城徳彦君同月一日委員辞任につき、その補欠として江渡聡徳君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の補欠選任

 政府参考人出頭要求に関する件

 北朝鮮による拉致問題等に関する件

 拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する法律の一部を改正する法律案起草の件


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     ――――◇―――――

小島委員長 これより会議を開きます。

 理事の補欠選任についてお諮りいたします。

 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小島委員長 御異議なしと認めます。

 それでは、理事に江渡聡徳君を指名いたします。

     ――――◇―――――

小島委員長 北朝鮮による拉致問題等に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房拉致問題対策本部事務局総合調整室長兼内閣府大臣官房拉致被害者等支援担当室長河内隆君、警察庁警備局長米村敏朗君、法務省大臣官房審議官後藤博君、法務省大臣官房審議官三浦守君、法務省大臣官房審議官齊藤雄彦君、公安調査庁次長北田幹直君、外務省アジア大洋州局長佐々江賢一郎君、外務省領事局長谷崎泰明君及び海上保安庁警備救難部長石橋幹夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

小島委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。薗浦健太郎君。

薗浦委員 おはようございます。自由民主党の薗浦健太郎でございます。

 本日、質問の貴重な場をいただきましたことに、まず理事の皆様にお礼を申し上げます。ありがとうございます。

 それでは、二十分しかございませんので、早速質問に入らせていただきます。

 いわゆる拉致問題でございますけれども、北朝鮮という国が、さまざまな問題それからさまざまな口実をつくってずるずるずるといろいろな問題の解決を引き延ばしているわけでございまして、我が国にとって一番大切な拉致問題というものの進展が私どもの目から見て最近なかなか進展をしていないなというのも、これまた事実でございます。

 もちろん、相手のあることでございますから、何を考えているかわからない国家を相手にするのも大変でしょうけれども、独裁国家でございますので、最後の決断というのは金正日がやるわけでございます。

 昨今、この金正日さんの健康状態それからさまざまな体の問題について報道がなされておりますけれども、この交渉の相手となる金正日の健康問題等々、外務省の方でどの程度まで把握をされているのか。いわゆる交渉に出てこられるような状態なのかということをどの程度把握していらっしゃるのか、まずお伺いをしたいと思います。

岩屋副大臣 おはようございます。

 政府としては、先生おっしゃるように、金正日国防委員長の健康状態等、北朝鮮情勢については強い関心を持って、関連する各情報の収集、分析を行っておりまして、今お尋ねの金正日氏の健康状態については、さまざまな報道があることは承知をしておりますし、一定の独自の情報も持っておりますけれども、その詳細について具体的に述べることは、事柄の性質上、差し控えさせていただきたいというふうに思っております。

 いずれにしても、政府として、北朝鮮の現体制の安定性に影響を与え得る諸般の情勢を注視していきたいと思っておりますし、関係各国との情報、意見交換を行っていきたい、こう思っております。

薗浦委員 ありがとうございました。

 確かに、こういう公の場でなかなか言いにくいというのはわかるんですけれども、北朝鮮のいろいろなものに対して影響を与え得るという言葉をいただいたので、その中身でちょっと理解をしたいというふうに思います。

 それで、ここ数日、いわゆる初期段階の措置ということが動き始めてきたわけでございますけれども、これは、BDAの問題と核施設停止それから重油の提供というそもそもの、BDAが何でとまる要因になるのかということすら私ども理解できないんですが、このバンコ・デルタ・アジアのいわゆる送金問題というのは、今、片づいた、送金が終わったというふうな情報を得ていらっしゃるのかどうかというものを次にお伺いしたいと思います。

岩屋副大臣 先生おっしゃるとおりで、本当はBDA問題というのは六者協議とは全く関係ない、だけれども北朝鮮がそれを盾にとって六者協議での合意の履行をおくらせてきたということでございまして、甚だ私どもとしては遺憾に思っているところでございます。

 そのBDAの送金問題でございますけれども、ロシアまで行ったというのは私どもとしても確認をしておりますが、その先どうなったかということについては実はどの国も明確にはまだ発表していないというところでございますので、ただ、送金問題の解決が最終段階に来ているというふうには認識をしております。

薗浦委員 ありがとうございました。

 とするならば、外務省としては、早急にというか近日中にこの問題が片づいて、いわゆる初期段階の措置に移行できるという見込みをお持ちなんでございましょうか。

岩屋副大臣 十六日、朝鮮中央通信の報道によりますと、北朝鮮の原子力総局長が寧辺の核施設の稼働停止に関するIAEAの検証、監視手続の問題の討議に関し、IAEA事務局長に書簡を送ったと。それから、同総局長はこの書簡の中で、BDAに凍結されていた北朝鮮の資金の解除プロセスが最終段階にあることが確認されたため、IAEAの実務代表団を招請するとしてきたというふうに報じていると承知をしております。

 それから、これを受けましてIAEAの方も、二十五日の週から実務代表団が訪朝する予定である旨発表したと承知をしております。

 したがいまして、我が国といたしましては、今回の動きがIAEAの監視、検証の早期開始、ひいては寧辺の核施設の活動停止、封印を含む、先生がおっしゃる初期段階の措置の完全な実施につながることを強く期待しているところでございます。

 ただ、この初期段階の措置はあくまでも第一歩にすぎないわけでございまして、最終的な目標は、北朝鮮による核保有をすべて、すべての核計画の完全な申告の提出及びすべての既存の核施設の無能力化といった措置まで至らなければいけない。まさに共同声明に従って、すべての核兵器及び既存の核計画を放棄する、そこまでいかなければいけない、こういうふうに思っておりまして、関係国と連携してしっかりと努力をしていきたい、こう思っております。

薗浦委員 ありがとうございました。

 確かに、初期段階の措置というのはあくまで第一歩、一歩目でございますから、その先が重要なわけでございますけれども、僕ら日本国民としてみれば、また北朝鮮が何か難癖をつけてずるずるずるずるやるんじゃないかという危惧もありますし、昨今の例えばアメリカの金融制裁の話にしろ韓国の経済支援の話にしろ、周りで全員で圧力をかけないとうまくいかないにもかかわらず、何となく、五カ国の足並みが本当にうまくいっているのかというような懸念をされるような報道も散見されます。

 そこで、五カ国間の話、いわゆる北朝鮮に一致して圧力をかけるという部分での五カ国間の調整というものについて、今どういう状況にあって、それで五カ国の足並みは本当にきちっとそろっているのかという部分についてお答えをいただければと思います。

岩屋副大臣 先生おっしゃるように、北朝鮮がさらに新たな口実を持ち出すことがないように、関係各国と連携してしっかりと圧力をかけていかなくちゃいけないと思っております。我が方の立場は、アメリカもそうでございますが、忍耐にも限度があるという認識で両首脳は一致しているわけでございまして、このBDAの問題が解決すれば直ちに初期段階の措置の履行を北朝鮮に求めていかなければいけないと思っております。

 関係各国が今どういう話をしているかということは、きょうは佐々江局長も来ておりますので、また事務方からちょっと報告をさせていただきます。

佐々江政府参考人 六者の間で今後どういうふうに初期の措置を実施していくかということにつきましては、いろいろな形で、既に非公式に二国間等の間で議論が行われておりますし、特にアメリカを中心として、ヒル国務次官補が、中国、韓国、そしてきょうは日本に来るということで、その辺もあわせて協議を進めたいというふうに思っております。

 とりわけ、先ほど副大臣の方から申されましたとおり、これはあくまでも第一歩にすぎない、そして、その第一歩も着実に実施されるのかどうかというところが当面の焦点でありまして、それを実施していくために、六者、特に他の五者が共通の立場に立って北朝鮮に強く働きかけていく必要がある、この点については、五者、六者で一致があるというふうに思っております。

薗浦委員 ありがとうございました。

 とにかく国際社会が一致して圧力をかけるというものが大変大事だと思いますし、万が一、またBDAの次の話、また何かほかの問題を持ち出してきて、ずるずるとまた引き延ばすようなことがあれば、忍耐にも限度があるという副大臣のお言葉がありましたけれども、さらなる制裁も含めた断固たる措置というのも我が方としても考えなきゃならないと思うんですが、それについての副大臣の御見解をちょっとお聞かせ願えればと思います。

岩屋副大臣 麻生大臣もたびたび答弁をさせていただいておりますが、次なる制裁がどうあるべきかということについては、政府内部ではもちろん検討しておりますけれども、この段階で何をどうすると申し上げるということは、ある意味では手のうちをさらすということにもなりますので、中身については控えさせていただきたいと思いますが、しっかりと検討しているというふうに御理解をいただきたいと思います。

薗浦委員 ありがとうございました。

 それでは、話題をかえて、青森に漂着した脱北者の話をちょっと聞きたいと思うんですが、脱北者そのものじゃなくて、あの舷の低い木造船、それから、あのエンジンでよくここまで来たなという思いもあるわけなんですけれども、あの最初が一一〇番通報だったということに対して、私自身は非常に危機感を持っていまして、逆に言えば、舷の低い船でぽんぽんと来れば、だれにも発見されることなく日本に着くことができるということを証明してしまったようなものでございます。

 海上保安庁にお伺いしますけれども、あの小型の木造船というものは、今の技術では発見できないでしょうか。大変難しいものなのか、それとも何か抜かりがあったのかというところをちょっとまずお伺いしたいと思います。

石橋政府参考人 我が国周辺海域、極めて広大であり、今回のようなレーダーに映りにくい小型の木造船を発見することは、非常に困難なことであります。

 いずれにしましても、海上保安庁では、洋上で小型船を発見できなかったことを真摯に受けとめ、今回の事案を踏まえ、日本海における巡視船艇、航空機による監視警戒をより一層強化するなどしております。

薗浦委員 具体的に、技術的な問題なのか、人、いわゆる物、船が足りないのか、それとも何かほかの問題があるのかというのを聞きたいんです。

 要は、今はないでしょうけれども、こういう船が厳然として日本に何のいわゆる防波堤もなく着けるということは、下手をすると新たな拉致にもつながりかねないというぐらいの危機感を持って当たっていただきたいんですが、具体的に、何をどうすればああいう船を発見できて、いわゆる不審船を含めてああいう船の日本への直接の侵入を排除できるのかというところについて、何か検討されていることがあれば、お聞かせを願いたいと思います。

石橋政府参考人 海上保安庁では、先ほど申しましたように、今回の事案を踏まえ、日本海における巡視船艇、航空機による監視警戒をより一層強化しているほか、警察等の関係機関とのより一層緊密な連携を図り、一般市民からの協力も得て、沿岸警備に取り組んでまいります。

 また、現在海上保安庁では老朽、旧式化した巡視船艇、航空機の代替整備を緊急かつ計画的に進めているところでありますが、これについても、今後、今回の事案を踏まえながら進めるなど、日本海側における監視警戒体制の強化に努めてまいりたいと考えており、また、人員面についても、海上における秩序維持を担う海上保安庁として果たすべき責務を全うできるよう、巡視船艇乗組員を初め、必要な人員の整備に引き続き努めることとしております。さらに、同種事案の発生に備え、船艇、航空機に搭載する探知装備の精度の向上方策などについての検討を進めてまいります。

薗浦委員 ありがとうございます。

 要は、幾ら船をふやしても、人をふやしても、あれだけ広い海岸線ですから、限界があると思うんですよ。最後の方におっしゃった、いわゆるレーダーの精度向上というものをやっていかなきゃならないと思うんですけれども、今の技術ではあの船は発見できなかった。では、将来的に今回来たような船を発見できるようになる可能性があるのかとか、どのぐらいでそこまでの技術水準に引き上げられるのかという見通しは今具体的にお持ちでしょうか。

石橋政府参考人 現在当庁の巡視船に搭載しているレーダーについて、その探知距離、性能限界などの能力については、警備上の観点からお答えを差し控えさせていただきますが、先ほど申しましたように、現在、探知装備の精度の向上方策、これは、いろいろと検討会を設けまして検討を進めております。

薗浦委員 ぜひ早い段階で、我々が安心できるように、ああいう船も見つけられますよという精度のものを開発をいただいて、きちっと国土を守るという観点で対処していただきたいなというふうに思います。

 それから次に、警察庁にちょっとお伺いをしたいと思うんですけれども、森それから若林両容疑者の逮捕状をとったと思いますが、辛光洙なんかを引き渡せと言うよりは、もともとの日本人であるこの二名を引き渡しをさせて、拉致についての具体的な話を聞く方がより私自身は現実味があると思うんです。今、手配の現状、いわゆる青切符だと思うんですけれども、手続はどうなっているんでしょうか。

米村政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のよど号の妻、森順子及び若林佐喜子につきましては、昭和五十五年当時、ヨーロッパ旅行中の石岡亨さん、松木薫さんを被害者とする拉致容疑事案、罪名的には結婚目的誘拐容疑ということで、六月十三日に逮捕状を取得いたしました。直ちにこの両名につきましては、現在ICPOに対しまして国際手配の追加手配、彼女らは既に旅券法違反で手配をしておりますが、この手続を行っております。多分手配はできるだろう、こう思っております。他方、外務省を通じまして、北朝鮮当局に対しましてその引き渡しを要求しているというところであります。

薗浦委員 もともと、北朝鮮の人と違って、日本人ですから、一説には北側はもうあの人たちをもてあましているというような話もありますし、なかなか引き渡しのできるできないというのを言うのは難しいと思いますけれども、やはり全容解明にはそれにかかわった人間に直接話を聞くというのが非常に大切なことだと思いますので、ぜひこれはやっていただいて、中身の話を聞いて、そして僕らがわかるような形で公表していただきたいというふうに思います。

 ちょっともう時間がないので最後に、内閣官房に、せっかくお越しいただいたので、一問お伺いをしたいんです。

 関係省庁対策会議というのをやっていらっしゃって、もう三回ほどやっていらっしゃると思うんですが、官邸のホームページを見ても、あそこのところは非常に箇条書きで、一体何を具体的にやっていらっしゃって、どこを目指しているのかというのがあのホームページ上だけからは見えてこないんですね。せっかくああいう会議をつくって、いろいろな省庁の人たちが入ってやっているわけですから、もっと情報を開示すべきだと思うんですけれども、あの会議で今具体的に何をやっていて、短期的に目標とするところがどこにあるのかというものをちょっと政務官にお教えいただければと思います。

岡下大臣政務官 先生のおっしゃるように、なかなか内容がわからないと。

 昨年の十一月から三回会議を開いておりますが、これはほとんど各省庁の局長クラス以上の方のメンバーでございまして、会議の内容はそれぞれにございますけれども、各省庁の取り組みの報告といいますか、対北朝鮮措置の実施状況、あるいは国内における捜査や調査の状況、それから広報活動等の拉致問題に関する取り組み等についての報告を行っております。

 それから、今後の政府の方針といたしましては、すなわち、対北朝鮮対話の窓口を開きつつも、対北朝鮮措置の執行、それから捜査努力の継続、そして情報の収集や分析、あるいは広報活動を一層強化していくこと、そういうことが検討それから確認されております。

 今後とも、相手が相手でございますので、関係省庁の連携を密にしまして、一層粘り強い取り組みを継続していく、そういうことをこの会議では決定しております。

薗浦委員 ありがとうございました。

 時間が来たので終わりますが、あのホームページを見て、恐らく何をやっているかわかる方はなかなかいらっしゃらないと思うので、ぜひとも、それはきちんと発信をしていただくようにお願いを申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。

小島委員長 次に、谷口隆義君。

谷口(隆)委員 おはようございます。公明党の谷口隆義でございます。

 私は十分しかございませんので、答弁もできるだけ簡潔にポイントを得た答弁をお願いいたしたいと思います。

 先ほどバンコ・デルタ・アジアの問題がありましたので、あえて重ねて申し上げませんが、やはり核カードというのは北朝鮮からなかなか離さないだろうということでございますので、核リストの提出、また核の無能力化、このようなことに持っていくには大変な努力が要るんだろうと思います。きょうの午後にでもヒル国務次官補と佐々江さんが話をされるというようなことを聞いておりますが、ぜひ粘り強い御努力をお願いいたしたいと思います。

 それで、次に、私の方からは、定住脱北者、我が国にいらっしゃる定住脱北者が、お聞きしますと、大体百三十人以上になられる。それで、脱北者はいろいろな方がいらっしゃって、例えば日本人妻の方だとか、また北朝鮮で生まれたお子さん、お孫さん、こういう方がいらっしゃるわけでありますが、日本人妻は、帰国後、国籍の再取得は一般的に行われている。ところが、お子さんまたお孫さんは、大半の方が無国籍になっているというような状況があるようでございます。

 法務省入管当局は、過去の通達をもとにして、本来は朝鮮籍だと主張いたしておるようでございますが、この通達そのものが四十年前に行われた通達で、現在のような脱北者を想定したような通達ではないと思われるわけでございます。また、北朝鮮の人権法におきましても、拉致被害者のみならず脱北者への支援も盛り込まれておるわけでありますが、このような状況について、無国籍のままに置いておくということがどういうことなのか、これは想像できるわけでありまして、どのような対応を法務省は考えていらっしゃるのか、御答弁をお願いいたしたいと思います。

齊藤政府参考人 お答えいたします。

 外国人登録の申請を行う場合には、外国人登録法三条一項の規定に基づき、旅券を所持する場合には旅券を提出させるなどして国籍を確認し、これを国籍として登録することを原則としております。また、仮に国籍を証する文書の提出、提示がない場合でも、国籍が確認できた場合には無国籍と表示しない取り扱いとしておりますが、国籍を確認できない場合は無国籍として登録する場合もあります。

 なお、朝鮮半島出身者であることが確認できた場合には、無国籍とは表示せず、朝鮮と記載する取り扱いとしております。

 法務省といたしましては、外国人登録上の事務取り扱いにつきましては、お尋ねの国籍の記載も含めて、市区町村において適切に対応していただいているものと考えておりますが、法務省といたしましても、引き続き、市区町村に対して適切に助言等を行ってまいりたいと考えております。

 以上でございます。

谷口(隆)委員 ですから、現実の問題として、脱北者のお子さん、お孫さんが無国籍でおられるということは大変なことなんですね。就職もなかなか思うようにいきませんし、学校の問題もあるでしょうし。こういうような実態を踏まえて、先ほど、この根拠になる通達が四十年以上前の通達だということでございますので、脱北者を支援するという観点からもぜひ検討をお願い申し上げたいと思います。

 その次に、ワシントン・ポストで先日明らかにされた事実、国連開発計画、UNDPから支援を受けていた三百万ドル、日本円で約三億六千五百万、これで北朝鮮は海外の不動産を購入し、在外公館や公邸の維持費に使用していたことが明らかになったと、これはワシントン・ポストが報じたわけであります。

 この内容を見ますと、北朝鮮は、UNDPが北朝鮮の住民生活向上のために支援した資金を、フランス、イギリス、カナダで建物の購入費用や、ヨーロッパやニューヨークの公館及び公邸の維持費に使用していたと言われておる、また、北朝鮮の弾道ミサイルや兵器部品の購入を仲介したと二〇〇五年に米国が指摘した北朝鮮の機関に対して、UNDPが物品及び装備の購入のために二百七十万ドルを支払っていたということも明らかになっている、こういうような報道がございます。

 なお、UNDPは、二〇〇一年から二〇〇五年までの間に北朝鮮側に七百万ドル、日本円で八億五千万円を上回る資金を送金しておった、こういう状況があるわけでありますが、この状況を踏まえて、我が国が国連の中でどのような対応を行われようといたしておるのか、今準備をしておられるようなことがあれば、おっしゃっていただきたいと思います。

岩屋副大臣 今の先生御指摘の問題につきましては、六月の十一日にUNDP側がこういうことを発表しております。

 二〇〇一年及び二〇〇五年にUNDPから北朝鮮の調整委員会に七百万ドルが支払われ、二百八十万ドルが欧州及びニューヨークでの不動産購入に使用されたとの指摘を米国から受けたけれども、同機関にUNDPが、北朝鮮のNCCというのは調整委員会ですね、調整委員会に支払ったのは合計約十七万五千ドルであって、その大部分は農業関係のワークショップに使用されたとして、米側の指摘はUNDP側の記録と一致しないと説明する発表を行っております。

 しかし、我が国としては、先生がおっしゃるように、UNDPによる内部調査、それから国連本部の監査委員会の北朝鮮での現地調査を通じて真相が徹底的に明らかにされる必要があるというふうに考えているところでございます。

谷口(隆)委員 徹底的にこれはやっていただきたいと思います。

 それで、もうほとんど時間がないので、この大きな問題に若干言及したいと思いますが、例の朝銀信用組合に一兆四千億国が公的資金を投入いたしまして、その一部、六百二十七億円が朝鮮総連の本部に流れたということで、この破綻債権を買い取った整理回収機構が総連に対して返還を求めた訴えが、昨日判決が出て、全面的に総連に支払いを命じられたわけで、また仮執行の宣言も付された、こういう状況でございます。

 この事件が、元公安調査庁長官の緒方氏が代表取締役の会社が出てきたり、朝鮮総連の代理人として日弁連の会長をやられていた土屋公献氏が出てきたり、非常に不可解な事件になっておるようでございます。この取引も、敗訴を見越した形で資金決済なく売買取引を行ったわけで、どうも、お聞きしますと、昨日にはこれをまた白紙に戻すと土屋弁護士は言っていらっしゃるようでありますが、この一連の取引に対して、今どういうことを我が国として、政府として対応しようと考えていらっしゃるのか、お聞きをいたしたいと思います。

北田政府参考人 お答え申し上げます。

 今回、元公安調査庁長官が朝鮮総連中央本部の土地建物の売買に関与したという件につきましては、当庁に対します信用、信頼を損ないかねない事態と重く受けとめているところでございます。これによりまして疑念が生じたとすれば、遺憾なことと考えているところでございまして、当庁といたしましては、さらに朝鮮総連関係の動向調査を徹底して行ってまいりたい、このように考えております。

谷口(隆)委員 時間が参りましたのでこれで終わりますが、いずれにいたしましても、公安調査庁の長官というのは朝鮮総連との間で利害が当然ながら相反するわけでありまして、その方が代取の会社に朝鮮総連の本部を売却する、こんなばかなことは私たちはちょっと理解できないので、よくその状況を解明していただいて、国民の前に明らかにしていただきたいということを申し上げまして、これで終わらせていただきます。

小島委員長 次に、松原仁君。

松原委員 民主党の松原仁でございます。

 六者協議、現在北朝鮮側がIAEAの招聘をしたという報道もなされておりますが、この事実関係、お答えいただきたいと思います。

岩屋副大臣 先ほどもお答え申し上げましたけれども、北朝鮮は十六日にIAEAに対して書簡を出しております。それによると、バンコ・デルタ・アジアに凍結されていた資金の解除プロセスが最終段階にあることが確認された。二月十三日の合意に基づいて寧辺の核施設の活動停止に対する検証、監視の取り決めに関する手続的な問題について議論するための条件がつくられた。三月のIAEA事務局長訪問の際に協議されたIAEAの実務レベル代表団による北朝鮮訪問の提案に同意するという書簡をIAEAに送っておりまして、これを受けて、IAEAは二十五日の週から実務代表団が訪朝する予定である旨発表したというふうに承知をしております。

松原委員 事実確認でありますが、BDAの送金はロシアの金融機関を通るというふうなことも報道がなされておりましたが、この事実関係の確認はできていますでしょうか。

岩屋副大臣 これも先ほどお答え申し上げましたが、我が国はBDA問題の当事者ではございませんので、なかなか確たることを申し上げる立場にないわけですけれども、ロシアまでは行ったのではないかというふうには認識をしているところでございますが、BDAにおいて凍結されていた北朝鮮の資金の送金が終了したという旨の発表がなされたとはまだ承知をしておりません。

松原委員 さて、ここで原点を確認する必要があろうかと思いますが、拉致問題の解決というのは何が解決なのか、お答えいただきたい。

岩屋副大臣 これはたびたび申し上げておりますように、拉致の被害者の帰還等のことが完全に終了するということをもって拉致の解決というふうに考えております。

松原委員 拉致被害者の完全なる帰国というのはどこの段階をもって認識をなさるか、お伺いしたい。

岩屋副大臣 これまで被害者として認定をされている方々、また新たに追加されてきておりますが、そういう方々全員の帰国が完了するということをもって解決ということだと思います。

松原委員 先回、曽我さんが出てきたときは、日本の方はそれは想定していなかったわけでありまして、つまり、今日本の国内において把握をしている以外の、いわゆる特定失踪者のことについてはどうお考えか、お伺いしたい。

佐々江政府参考人 特定失踪者の件につきましても、拉致されたということが我が国当局によってはっきりすればそれも対象になるというふうに考えております。

松原委員 それで一〇〇%の拉致被害者が全員判明するとお考えかどうか、お伺いしたい。

佐々江政府参考人 もちろん、どれくらいの方が実際上、最終的に拉致されたかどうかという点については、これはもう、わからない領域というのは常にあると思います。ですから、この特定失踪者という形で、可能性がある人々ということで我々も北朝鮮に問題提起をしておりますし、この問題については引き続き問題提起をするということだろうと思いますけれども、拉致問題の解決ということを今おっしゃっておるので、この拉致ということについては、拉致被害者と認定された者を対象としているということを申し述べたわけです。

松原委員 今の局長の答弁ではいけないと私は思っております。冒頭、岩屋副大臣がおっしゃったように、これは拉致被害者全員の帰還でありまして、認定している人間だけ戻れば解決というのでは話にならないということをまず申し上げておきたい。

 そもそも、この案件は、国家テロによる誘拐でありますから、二つの観点から考えなければいけない。

 第一は、その被害者全員の帰還であります。私は、率直に申し上げるならば、被害者全員の帰還というのは金正日体制が崩壊しない限りわからない、これが真の正解だと思います。佐々江さんのお立場では言えないのかもしれません。

 二つ目の問題は、この拉致を引き起こした当事者の逮捕であります。犯罪においては、その当事者が捕まらなければいけないわけであります。したがって、その犯罪の当事者はだれか、金正日その人が当事者である可能性があるとするならば、この人間も捕まらなければいけない。これが本来の拉致問題の解決であるということを、きょう改めてこの場で申し上げたいわけでありますが、岩屋副大臣、御所見をお伺いしたい。

岩屋副大臣 先ほど被害者の帰還等ということを申し上げましたが、もちろんその中には、先生がおっしゃったように、真相の解明、それから実行犯といいますかの引き渡しということも全部含まれて解決というふうに考えているということでございます。

松原委員 真相の解明というのは、何分、うそを平気でつく、横田めぐみさんの骨で違うものを出してきて何とも思わない国家でありますから、そういった意味では、これはそこまでいかないといけないんだというのを腹の底にきちっとおさめてもらわないと議論は進まないと思っております。

 さて、そうした中において、今日のこの状況、六者協議がこういう状況で、北朝鮮がBDAの送金を認め、IAEAの招聘をする、こういう流れであります。当初のスケジュールからどれぐらいおくれたという認識か、佐々江さんにお伺いしたい。

佐々江政府参考人 先生御承知のように、二月の合意におきまして、初期の措置を六十日以内にやるということになっていたわけでございます。我々としては、この二月から六十日以内でございますから、四月あたりにはできるんだろう、できることが望ましい、ねばならぬというふうに考えておったわけですが、それ以降、今、六月でございますから、数カ月おくれていると認識しております。

松原委員 これは、見ようによっては、六カ国のこの議論が北朝鮮のペースで動いているのではないかと。私も、救う会の関係の方、その他さまざまな関係者と話をすると、北朝鮮ペースで動く六者協議になっているのではないかと大変に危惧をしているわけであります。

 現状、この段階で、IAEAというのがまず来ていいよと北朝鮮が言った。拉致の部分に関しては、日朝作業部会は今行われていない。この状況は、佐々江アジア大洋州局長が二月の段階でイメージした日本と北朝鮮、特に拉致問題をめぐる動きとしてはどういう御感想か、上々とお考えか、かなり遺憾であるか、お伺いしたい。

佐々江政府参考人 北朝鮮が六者の会合で約束したことを実行しなかったという点において、これは極めて遺憾な事態であると思いますし、北朝鮮がBDAの問題を理由にそもそも実行をしてこなかったということ自身が、まず極めて遺憾であるというふうに思っております。

 それから第二に、BDAの問題につきましても、アメリカがいろいろな形で北朝鮮との間で努力してきた。その点につきまして、先生御承知のようにいろいろな形でやってきたわけでございますが、かくも長く時間がかかっている。このことについても極めて残念に思っております。

 そういう意味では、予定どおりいかなかったということについて、北朝鮮を非難する立場に我々としてはあると思いますが、同時に、ややおくれましたけれども、ここに来てこのBDA問題が一定の決着の方に向かいつつある、そして、そのことを受けて初期の措置の実施に向けた具体的な動きが始まる兆しが見えている。そのこと自身は将来に向かっての一つのステップであろうというふうに思っております。

松原委員 私、金正日の心境というのはわかりません。しかし、彼は恐らく引き延ばしをしようと思っている、引き延ばしをしようとしている。なぜならば、アメリカの中間選挙で民主党が勝ち、ブッシュという北朝鮮を悪の枢軸呼ばわりした世界最高の権力者がアメリカの大統領でなくなれば、北朝鮮をめぐる環境は俄然変わる、したがって次の大統領選挙までとにかく時間を引き延ばす、そこまでが金正日の戦略だろうと思っております。その戦略に沿ってこの六カ国の協議がうまく使われているのではないかというふうに多くの関係者は心配をしているわけであります。

 私が外務省から聞いていたというか、私が聞いていたニュアンスは、圧力があって対話があって、圧力があって対話だと。国連で圧力についての決議が上げられた、北朝鮮がこれに対して恐れおののき、一番直接は米国の金融制裁でしょう。次は対話。対話は二月にやった。対話を切らさないことによって圧力をさらに引き延ばす、そしてアメリカの大統領選挙まで持っていけば、これで首の皮はつながるという極めて明快な戦略のもとに彼らは行動している。

 私が当初聞いていた話は、圧力の次が対話、対話の次が圧力だ、したがって、ここで第二のさらなる、前回よりももうちょっと厳しくなった国連安保理決議等がなされる、それを米国も同意をしているというふうに私は外務省の方から仄聞したような記憶がありますが、このことに関して、本来であれば、この段階まで北朝鮮が延ばしたならば、次の国連制裁決議に行くべきだと私は思うんですが、このことについて佐々江さんの御所見をお伺いしたい。

佐々江政府参考人 今の御質問に対するお答えをする前に、先ほど私が行いました答弁につきまして、やや言葉遣いの用法が正しくなかったので修正させていただきます。私は先ほど、すべての拉致被害者の認定というふうに申し上げましたが、すべての拉致被害者ということでございますので、失礼いたしました、それは訂正させていただきます。

 それから、この段階でさらなる圧力をかけるべきかどうか、あるいはかけることが適切ではないかといったようなお話でございますが、対話と圧力というこの政策をどのタイミングでどういうふうにかけるのかということは、まさに相手の出方も見ながら、あるいは全体的な戦略状況を見ながら考える話であろうというふうに思っております。

 そして、理論的には、今の初期段階の措置、あるいは六者会合で約束した措置を北朝鮮が全くとっていかないというような状況のもとでは、先生がおっしゃられるように、やはりこれは問題であるということで、ほかの五者も含めて、そういうことがより現実的な課題として浮上してくることはあり得ると思いますが、現時点において、我々としては非常に甚だ不満足ではありますけれども、ようやくにしてここに来てこの六者の合意の第一歩がとられようとしている、そういう状況にある、そういう状況を、まずは実施することが重要ではないかと思っているわけでございます。もちろん、その過程で圧力を減ずるということではなくて、圧力は引き続きかけていくべきだというふうに思っております。

松原委員 私は、この六カ国で期限を切ったということが大事なんですよ。あの国は、期限を切らなければどんどん引き延ばすわけですよ。いまだに、北朝鮮がこれからIAEAを招聘しますよ、ああ、よかったよかったということでは、期限を切った意味は一体どこにあるんだ、期限を切った意味が全くないんですよ。私は、なぜ期限が来た段階において、では、この二カ月の期限が来た段階で日本政府はどういう行動をとったのか、教えていただきたい。何にもしなかったのか、何かしたのか、教えていただきたい。

佐々江政府参考人 先生御承知のとおり、六者の二月の合意を六十日以内に実施するということについては、現実の問題として、米朝間においてBDA問題が三十日以内に決着するということと組み合わせになっていたわけでございます。それは先生も御承知のとおりだと思います。

 これは、別に北朝鮮の肩を持つ必要もありませんし、そうすることは正しくないと思いますけれども、現実の問題として、BDA問題の処理と初期の措置の実施というものが政治外交上の現実としてリンクされているという状況にあったことは事実でありますし、BDAの問題がなかなか決着がつかない段階において、一方の措置が実施されていないことに対して制裁を行うということが果たして正しいのかということはあったというふうに思います。我々としては、その段階で引き続き圧力をかけていくべきだというふうな考えでおりましたし、その点について関係国とも協議してきたということでございます。

松原委員 こういう問題というのは確かにおっしゃるような要素があるかもしれないけれども、我々は北朝鮮の立場に立って物を主張する必要はないのであります。我々の側からいえば、米国と北朝鮮の間はどうあろうと、二カ月を過ぎた段階でメッセージを出すということは、私は日本としては当然必要な行動だったと思います。今の議論でいったらば、例えば次の何かの協議で、では半年と、半年なんて意味がないじゃないですか。半年の前提条件で、これが前提です、あれが前提ですといったら、半年は全く意味がない。期限を切る意味なんか全くなくなってしまう。

 私は、二カ月たった段階で、日本は日本独自の立場において、米国に対して促すということも含め、促す必要があったかどうかも私はわかりません。BDAのあれが必要だったかどうかもわからない。これは力関係の議論であるかもしれないけれども、我々は我々の主張を二カ月たったらするべきだったというふうに思います。

 そして、そういう中において、北朝鮮は金が欲しいわけであります。金が欲しいということで彼らがやろうとしていることで、恐らく、アジア開発銀行、これもターゲットにあるだろう。日本が六カ国で北朝鮮の拉致が解決しなければ金は出しませんと言ったら、では、アジア開銀から出そうとするおそれがある。アジア開発銀行のナンバーワン、ナンバーツーの株主というか出資者は日本とアメリカであります。したがって、日本とアメリカが手を組むことによって、アジア開発銀行が北朝鮮に対しての融資をしないということは決定できるわけであります。

 このことについて私は別の委員会でも質問いたしましたが、アメリカが、いいよ、アジア開発銀行からの金が北朝鮮に行っていいよと、よもや言わないと思いますが、少なくとも我々のメッセージとして、米国と協調してアジア開銀から北朝鮮に対してのお金は行かせないということを協議する用意がありますか、お伺いしたい。

佐々江政府参考人 先生御承知のとおり、米国においては北朝鮮をテロ国家指定にしておりまして、その関係で、国際金融機関を通じての支援というのは米国はやらないということになっております。他方、我が国としても、現状のような拉致問題の情勢では、そういうことをする情勢にもないわけでございます。

 したがって、将来大きな進展がある、あるいは我々として納得し得るような状況がない限り、アジア開銀の問題について、我々として積極的な立場をとるということはないだろうと思いますけれども、仮に将来の問題として、日米間でアジア開銀をめぐる問題についてどうするのかということが現実的な課題として浮上してくれば、それは、そのときの日朝関係あるいは六者協議の状況を踏まえて、米国と相談しながらやっていく話だろうと思いますけれども、現時点においては、アジア開銀を通じて援助をするということはどの国も考えておらないというふうに思います。

松原委員 テロ支援国家指定という問題が外れる可能性があるということを我々は大変危惧しているわけでありますので、少なくとも、アジア開銀において日本だけが北朝鮮に金を出すべきじゃないと言っても、米国が、いやいいよと言えば終わってしまう話でありますので、アジア開銀の金が行かないように。米国のテロ支援国家指定が外れるかもしれない。北朝鮮は、最終的に、次はそれを、IAEAの査察を半分だけ半食いさせて、半分だけ見せませんよと言って、ああ、これはやはりテロ支援国家指定を解除してもらわなきゃ次に行けませんねと言われたらどうするんだという話になる。今、それこそヒルさんだったら、わかりましたと言うかもしれない。問題ですよ、それは。

 だから、私は、米国のテロ支援国家指定自体が外れる可能性があってはいけないけれども、もし外れたって金は行かないよというふうにすることによって、北朝鮮に対して精神的制裁をさらに加えていくということは必要だろうと思っておりますので、岩屋副大臣、いかがですか。

岩屋副大臣 テロ支援国家指定の問題については、数次にわたって日米の首脳間でも話し合いが持たれておりますし、したがいまして、私どもとしては米国を信頼しておりますし、ブッシュ大統領も、十分に日本の立場を考えてこの問題については対処するということを何度もおっしゃっておりますから、その前提で、テロの支援国家指定の解除は、先生は今、何かすぐにでも解除されるかのようなお話でございましたが、そのようには私どもは考えておらないところでございます。

松原委員 それは違うので、すぐにそれが外れると思っていません。当然時間をかけて外す。外すのを条件にして、北朝鮮はアメリカの大統領選挙まで時間を稼ぐ。そして、外れたときには、アジア開銀から出すというのが既に根回しが行われている可能性があるということを言っておるわけであります。

 時間がないので、次の質問に参ります。

 よど号妻の子供十九人が日本に自由に往来している。この間の質問で、笠議員も質問しましたが、どうも子供十九人が自由に北朝鮮と日本の間を往来しているということであります。

 警察の方で把握しておられますでしょうか。

米村政府参考人 一定程度把握しております。

松原委員 結局、アメリカは北朝鮮をテロ支援国家とした、我々もテロ支援国家に認定しようと、今回、北朝鮮人権法はきょう議員立法がなされるが、この中で入れたいぐらいの話があった。

 私が申し上げたいのは、テロ支援国家であるならばというよりも、中国の国境を越えて自由に行く、そういうことが許されていいのか。中国の国境を越えて自由に北朝鮮に行く日本人に関して、これは警察になるのか公安調査庁か、どこになるのかわからないけれども、これについて把握するすべというのはあるんでしょうか、お伺いしたい。

米村政府参考人 御質問の趣旨は、よど号の子供たちが中国に渡って、そこから行く分について把握をしているかどうか……(松原委員「他の日本人もあり得るんじゃないかと思うんですね」と呼ぶ)確かにあり得るだろうと思いますが、必ずしも十分に把握し切れるとは私は思いません。

松原委員 質問の時間が来たのでもうやめますが、つまり、北朝鮮に日本から中国経由で行く人間についてチェックできないということなんですね。そして、この十九人の子供たちは自由に往来し、北朝鮮によって洗脳された状況の中で、いろいろなメッセンジャーをしている可能性があるというふうに我々は見ているわけであります。

 これについて、救う会や家族会は、彼らに対してパスポートを、よど号事犯のメッセンジャーという呪縛から解放されるまで北朝鮮に行けなくしてあげる方が子供たちにとって望ましい、子供たちに対して旅券返還命令を出すべきだ、こう言っているわけでありますが、もともと日本の旅券には北朝鮮を除くと書いてあった。今それが書いてない。これは何で書かれなくなったのか、本来これを書かなければいけないんじゃないかという質問と、そして、こういったものに対して警察としてどのような対応をするのか。それをお伺いして、時間ですので終わりたいと思います。お願いいたします。

岩屋副大臣 何で北朝鮮が外れたのかということですけれども、これは、たしか金丸訪朝のとき以降、北朝鮮にも行けるようにしたということでございますが、現在は、御承知のように、制裁等で渡航制限をある程度しているわけでございます。

 先生がおっしゃる懸念は私どもよくわかりますけれども、旅券法の規定に基づいて適切に対処しなければいけないと思っておりまして、旅券法の十三条第一項、「著しく、かつ、直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある」というふうに関係機関から情報がある場合には、旅券法において外務省としても適切に対処したい、こう思っております。

松原委員 終わりますが、大事なことは、これをきちっとやらないと、全然、制裁といいながら、どんどん行ったり来たりしているのではしようがないわけでありまして、これはきちっとやってもらわなきゃいかぬ。(発言する者あり)今のは、では、質問は取り消しますけれども。

 とにかく、こんな緩い経済制裁というか、出入り自由なような状況の中で、これはどういうふうにして制裁が行えるのか。まじめにやっているというメッセージが伝わらないということでありまして、私は、少なくとも、このよど号事犯の子供たちに関しては旅券返還命令を出すべきだというふうに思いますし、北朝鮮に中国の国境を越えて行くようなケースはきちっと把握をし、そういった人間は日本から出入りできないような、私はそういった措置をとるべきだということを申し上げまして質問を終わります。

 時間です。ありがとうございました。

小島委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 先ほど来質疑がありますが、北朝鮮が、去る六月十六日、国際原子力機関、IAEA代表団を招請したことで、二月十三日の六者会合で合意した初期段階の措置の履行に踏み出す、先ほど兆しという言葉もありましたが、可能性が出てきたとされています。

 米首席代表のヒル国務次官補は、次回の六者会合を七月初めには再開されるよう期待しているとも述べている。二月の合意によれば、北朝鮮は、寧辺にある再処理施設を含む核施設を最終的に放棄することを目的として、活動の停止、封印をするということとともに、早期にIAEA査察官の復帰を受け入れなければならないということであります。

 初期段階の措置の一刻も早い履行が求められていることは言うまでもありません。その履行を終えれば、北東アジア地域における安全保障面での協力を促進するための方法と手段を探求することを目的に、速やかに閣僚会談を開催するということになっていくんだろうと思います。

 そこで、佐々江局長に改めて伺いますけれども、IAEAの代表団招請の動きをどう評価されているか、また、それを六者会合再開、日朝作業部会開催、拉致問題の進展に向けてどうつなげなければいけないというふうにお考えか、いかがでしょうか。

佐々江政府参考人 現地にIAEAの実務代表団が来週から入ってくるということにつきましては、先ほど来、副大臣の方から申し上げているとおりでございます。

 我々としては、これはあくまでも初期段階の措置に至るその前の最初であるということでございまして、そもそも、これを通じて実際上の監視、検証、あるいは寧辺の核施設の活動停止、封印にまず至らなければ物事が始まらないわけでございまして、まずはそれらをちゃんと実施できるのかどうか、あるいは実施させるようにやはりしていくことが一義的に重要であって、何かこのことによってすべて問題がうまくいって決着がつくというふうには考えておらないわけでございます。

 それから二番目に、この件によって日朝関係あるいは拉致問題についてどういうふうになるのかということでございますが、今回の動きは直接的には非核化に向けた動きということでありまして、その意味では、これが直接日朝関係あるいは拉致問題に影響を及ぼすというふうには考えておりません。

 しかしながら、先生御承知のとおり、六者会合の全体の目標の中には、非核化の問題と並んで、拉致問題のような懸案を含めて解決して日朝関係が正常化するということも目標としてうたっているわけでございますので、核問題の進展があれば、その結果として、米朝関係さらには日朝関係に間接的な影響を及ぼすことも事実でありますし、その機会をとらえて、我々としては、まさにこの拉致問題を正面から解決しなければならぬのだ、そういう時期が、さらにその切迫性が増大しているというふうに北朝鮮に訴え得る、そういうきっかけが出てくるのではないかと思っているわけです。

笠井委員 岩屋副大臣に伺いますが、二月の六者会合の合意における経済、エネルギー及び人道支援の問題について、この間政府は、日本については、拉致問題を含む日朝関係に進展が得られるまで不参加だというふうなことを言われて、拉致問題に進展がなければ支援は行わないという立場を表明されてきました。

 そういう中で、麻生大臣は、去る六月四日の参議院の特別委員会の中で、六者協議が速やかに動いていくためにはという文脈の中で、我々は拉致問題に進展が見られれば協力する用意はあるという答弁をされております。

 ここには、これまでの進展が得られるまで不参加とか進展がなければ支援しないという表明と比べて、何か事態の推移に対応した何らかの新たなメッセージが込められているのか、あるいは現時点でこの意味するところはどういうことにあるのかということについて、お答えいただきたいと思います。

岩屋副大臣 先生、それは、大臣がおっしゃったのは全く同じ意味だと思います。

 私どもは、拉致問題の進展が見られない限りはエネルギー支援等は行わないということを言っておりますし、その姿勢は変わっておりません。だから、大臣がおっしゃったのは同じ意味だと思います。

 ただし、拉致問題に明らかな進展が見られた場合は、参加する用意があるということを言っているわけでございます。

笠井委員 最後に、佐々江局長に一言伺っておきます。

 去る二月二十一日の当委員会で、私が、日朝平壌宣言に基づいて、拉致、過去の清算を含む二国間の懸案の解決と国交正常化への努力と、六者会合における朝鮮半島非核化のための課題を結びつけていくことの重要性について質問したのに対して、塩崎官房長官は、日本の問題と全体の問題との有機的結合の中で全体を解決していくと述べました。六月四日の参議院の特別委員会でも、両者の「両輪というか好循環が生まれていくことが大事なんではないか」というふうに答弁をされております。

 現段階で、この有機的結合あるいは好循環を生み出すために、日本政府の首席代表としてどう対応していこうとされているか、お答えをいただきたいと思います。

佐々江政府参考人 日本の問題と全体の問題との有機的な結合の中で全体を解決していくということを官房長官は述べられたわけですが、これは、先ほども申し上げましたとおり、日朝関係は北東アジアの全体戦略の中でやはりとらえていく必要がある、すなわち、日朝関係と米朝関係、あるいは南北関係もありますし、さらには六者全体のこともありますけれども、それが全体として問題解決に向かう中で日朝も問題を解決していく、そういうお互いに前向きのベクトルで物事を処理していくということだと思います。

 ですから、そういう意味では、核の問題の解決と拉致問題等の日朝問題の解決を何かあたかも二律背反的な矛盾するような形でとらえるのは、私は正しくないというふうに思っております。

 非核化が進むことは我が国の安全保障にとって極めて重要なことでありますし、その点について日本としても全力を尽くすべきだと思いますし、そのことによって安全保障状況が好転する中で、やはり日朝関係というのもそれを前提にして前に進めていくということが重要であると思います。その進めていくに際しては、避けて通れない拉致問題の解決を引き続き重視して北朝鮮と交渉していくということであろうと思います。

 私はこの二兎を追うべきであると考えておりまして、それは、六者協議の中でも、あるいはその中で日朝協議を行う中でも、あるいはその他の機会に日朝で話を行う際にも、この両者のいい意味での連関、お互いにいい影響を与えるという形での話し合いが重要ではないかというふうに思っております。

笠井委員 終わります。

     ――――◇―――――

小島委員長 この際、拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する法律の一部を改正する法律案起草の件について議事を進めます。

 本件につきましては、先般来理事会等で御協議を願いました結果、お手元に配付いたしましたとおりの起草案を得ましたので、本起草案の趣旨及び概要について、委員長から御説明いたします。

 本案は、拉致問題の解決その他北朝鮮当局による人権侵害状況の改善に資するため、施策における留意等について定めるものであります。

 その主な内容は次のとおりであります。

 政府は、その施策を行うに当たっては、拉致問題の解決その他北朝鮮当局による人権侵害状況の改善に資するものとなるよう、十分に留意するとともに、外国政府及び国際連合、国際開発金融機関等の国際機関に対する適切な働きかけを行わなければならないものとしております。

 以上が、本案の提案の趣旨及び主な内容であります。

    ―――――――――――――

 拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する法律の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

小島委員長 本件について発言を求められておりますので、これを許します。笠井亮君。

笠井委員 私は、日本共産党を代表して、北朝鮮人権侵害問題対処法改正案について発言を行います。

 昨年の通常国会で成立した本法律の最大の特徴は、我が国の主権を侵害した国際的犯罪行為である拉致問題と、「脱北者」問題など基本的には北朝鮮の内政にかかわる人権侵害問題を同列に扱い、この性格の全く異なる問題を「北朝鮮当局による人権侵害問題」として、政府による施策の実施を定めていることであります。

 我が党は、この法案審議に当たり、相手がどのような国であれ、その国の内政にかかわる問題を日本の国内法で明記し、国としての対処を定めることは、内政干渉となるばかりか、拉致問題の解決にとっても有害であることを指摘し、反対の立場を表明しました。

 今回の改正案は、政府が北朝鮮への施策を行う前提条件について、拉致問題の進展だけではなく、「脱北者」問題など北朝鮮の内政にかかわる人権侵害問題の進展までも含む規定となっています。したがって、これは、本法律の本質を何ら変えないばかりか、外交交渉による拉致問題の解決に一層重大な障害を持ち込むものであると言わざるを得ません。

 以上の理由から、反対であることを表明して発言とします。

小島委員長 これにて発言は終了いたしました。

 お諮りいたします。

 本起草案を委員会の成案と決定し、これを委員会提出法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

小島委員長 起立多数。よって、本案は委員会提出法律案とするに決しました。

 なお、本法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

小島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

小島委員長 この際、御報告いたします。

 北朝鮮による拉致問題等に関する実情調査のため、去る三月十四日、鹿児島県に視察を行いました。

 その内容につきましては、視察報告書として本日の会議録に参照掲載いたしたいと存じますので、御了承願います。

    ―――――――――――――

    〔報告書は本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

小島委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時十二分散会


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