衆議院

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第3号 平成19年12月5日(水曜日)

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平成十九年十二月五日(水曜日)

    午後一時一分開議

 出席委員

   委員長 山本  拓君

   理事 小杉  隆君 理事 近藤 基彦君

   理事 高木  毅君 理事 葉梨 康弘君

   理事 古屋 圭司君 理事 内山  晃君

   理事 末松 義規君 理事 江田 康幸君

      赤城 徳彦君    伊藤 忠彦君

      今津  寛君    遠藤 武彦君

      岡下 信子君    鍵田忠兵衛君

      木原 誠二君    薗浦健太郎君

      萩原 誠司君    馬渡 龍治君

      山本ともひろ君    北神 圭朗君

      園田 康博君    高山 智司君

      松原  仁君    鷲尾英一郎君

      漆原 良夫君    笠井  亮君

    …………………………………

   外務大臣         高村 正彦君

   国務大臣

   (内閣官房長官)

   (拉致問題担当)     町村 信孝君

   外務大臣政務官      宇野  治君

   政府参考人

   (内閣官房拉致問題対策本部事務局総合調整室長)

   (内閣府大臣官房拉致被害者等支援担当室長)    河内  隆君

   政府参考人

   (法務省大臣官房審議官) 三浦  守君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 新保 雅俊君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 伊原 純一君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    西宮 伸一君

   政府参考人

   (外務省領事局長)    谷崎 泰明君

   衆議院調査局北朝鮮による拉致問題等に関する特別調査室長          堤  貞雄君

    ―――――――――――――

委員の異動

十二月五日

 辞任         補欠選任

  木原 誠二君     伊藤 忠彦君

  渡部  篤君     馬渡 龍治君

  園田 康博君     松原  仁君

同日

 辞任         補欠選任

  伊藤 忠彦君     木原 誠二君

  馬渡 龍治君     渡部  篤君

  松原  仁君     園田 康博君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 北朝鮮による拉致問題等に関する件

 米国の「北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除」の動きに反対する決議の件


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     ――――◇―――――

山本委員長 これより会議を開きます。

 北朝鮮による拉致問題等に関する件について調査を進めます。

 この際、高木毅君外二名から、自由民主党・無所属会、民主党・無所属クラブ及び公明党の三派共同提案による米国の「北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除」の動きに反対する決議を行うべしとの動議が提出されております。

 提出者より趣旨の説明を求めます。末松義規君。

末松委員 末松義規でございます。

 私は、自由民主党・無所属会、民主党・無所属クラブ及び公明党を代表して、ただいま議題となりました決議案について、その趣旨を御説明申し上げます。

 その趣旨は案文に尽きておりますので、案文の朗読をもって趣旨の説明にかえさせていただきます。

    米国の「北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除」の動きに反対する決議(案)

  北朝鮮は、わが国の国民をはじめとする複数の国から無辜の民を拉致し抑留し続けている。

  拉致は、国家主権及び国民の生命と安全に係わる重大な問題であり、わが国は、全ての被害者の安全確保及び即時帰国、真相究明並びに拉致実行犯の引き渡しを強く要求している。

  一方、北朝鮮は二〇〇二年、長年否定していた日本人の拉致をはじめて認め、その後五人の被害者が帰国を果たしたが、残る多くの被害者に関しては誠意ある説明をせず「拉致問題は解決済み」を主張するばかりである。

  米国は、一九八八年に北朝鮮をテロ支援国家として指定し、二〇〇四年にはその指定理由の一つとして新たに国務省国際テロ報告書に外国人拉致問題を書き込んだ。

  それは、拉致解決を北朝鮮に迫る強い圧力となり、わが国国民を勇気づけ、拉致問題に毅然たる態度で臨むわが国外交を後押しするものとなっているが、米国は一部の核施設の「無能力化」などの見返りとして指定解除を行うのではないかと伝えられている。

  拉致はテロであり、拉致被害者が抑留され続けている以上、テロは今も続いている。本年四月の国務省国際テロ報告書も引き続き拉致問題を明記した。

  抑留されている被害者が帰ってきていないのに指定解除がなされることは、多くの日本国民を落胆させ、日米同盟に重大な影響を及ぼすことを懸念するものである。

  米国内でも安易なテロ支援国家指定解除への危惧が高まり、下院で拉致被害者の帰国などを条件とする法案がすでに提出されており、上院でも同様の動きが出ているところである。

  拉致被害者全員を一刻も早く救出するために、特に、日米関係の重大さに鑑み、日本政府は米国が「北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除」をしないよう、最大限の外交努力を尽くすべきである。

  また、米国におかれても、かかる観点から「北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除」をしない方針を堅持されるべきである。

  右決議する。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛成を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)

山本委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 この際、本動議について発言を求められておりますので、これを許します。笠井亮君。

笠井委員 私は、日本共産党を代表して、米国の「北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除」の動きに反対する決議案について発言いたします。

 米国による北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除の問題は、六カ国協議の合意に基づいて北朝鮮が進める非核化のための一連の措置への対応措置として検討されているものであり、それに日本の国会がブレーキをかけることは適切ではないと考えます。

 核問題で道理ある解決が図られれば、拉致問題の解決に向けた進展の道も開かれてくるのであります。拉致問題の解決のためにも、核問題の解決のために他国が行っている交渉の手足を縛ることをすべきではありません。

 日朝平壌宣言、六カ国協議の合意に基づいて、核、拉致、過去の清算の問題などを包括的に解決するために、日本政府としての主体的な外交戦略を打ち立てることが強く求められています。拉致問題の解決も、他国任せではなく、解決のための主体的な戦略が必要だということを強調したいと思います。

 以上の理由から、本決議案に反対であることを表明して、発言とします。

山本委員長 これにて発言は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

山本委員長 起立多数。よって、本動議のとおり決議することといたしました。

 この際、ただいまの決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。高村外務大臣。

高村国務大臣 ただいまの御決議に対し、所信を申し述べます。

 政府としては、ただいま採択された御決議の趣旨を踏まえつつ、すべての拉致被害者の一刻も早い帰国を実現し、不幸な過去を清算して北朝鮮との国交正常化を図るべく、引き続き米国と緊密に連絡していく考えであります。

山本委員長 お諮りいたします。

 本決議の議長に対する報告及び関係当局への参考送付の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

山本委員長 引き続き、北朝鮮による拉致問題等に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房拉致問題対策本部事務局総合調整室長兼内閣府大臣官房拉致被害者等支援担当室長河内隆君、法務省大臣官房審議官三浦守君、外務省大臣官房審議官新保雅俊君、外務省大臣官房参事官伊原純一君、外務省北米局長西宮伸一君、外務省領事局長谷崎泰明君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。古屋圭司君。

古屋(圭)委員 自由民主党の古屋圭司でございます。

 官房長官、外務大臣におかれましては、お忙しいところありがとうございます。

 質疑に入ります前に、ただいま米国の「北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除」の動きに反対する決議を委員長初め関係者の皆様の御努力により成立をさせていただきました。私は、大変時宜を得た決議だと思いまして、大変高く評価をさせていただきたいというふうに思います。この上は、この決議にもありますように、政府に対する申し入れ、あるいは米国に対する要請というものも含まれておりますので、ぜひ立法府の主体的決意として、米国側、すなわち大使館に対しても、しっかりこの意思を伝達していただきたい、これについては、ぜひ委員長にお取り計らいをお願いしたいと思いますが、よろしくお願いを申し上げます。

 それでは、早速質疑に入らせていただきたいと思います。

 去る十一月の十四日から十七日まで、超党派の拉致議連でワシントンに出張をいたしました。出張の目的は、米国側のテロ支援国家指定解除を現在はすべきでないという立法府の意思を伝えるとともに、関係者に再確認をしてもらうためでございます。

 訪問の結果、米上下両院の議員を初め大統領府並びに副大統領府、ヒル国務次官補を初めとする国務省関係者と精力的な面会ができました。押しなべて米議会関係者は我々の意見に賛意を示していただきましたし、既に下院では、三十名を超える議員が賛同をして法案、すなわち、テロ支援国家指定解除は、日本人の拉致問題が解決しない限り解除すべきでない、こういう趣旨の法案を提出をいただいております。また、面会したブラウンバック上院議員も、近々、同様な法案を提出するというふうに我々に確約をしていただきました。議会関係者は押しなべて、ライス・ヒル・ラインがやや前のめりになっているのではないか、こういう考え方を持っているということは間違いなかったようでございます。

 現在、テロ支援国家指定解除を行うということは、まず第一点、日米同盟関係に大きな影響を及ぼす懸念があるということ。二番目は、日本人拉致被害者がまだ全員帰国していない以上、テロは現在も進行中でありまして、過去六カ月間の間にテロに加担していないことという解除の条件には当てはまらないということが二点目。三点目は、シリア、北朝鮮の核協力疑惑が全く払拭をされていない現在、イラン、シリア、北朝鮮、この三国のテロ支援国家のうち、北朝鮮だけ先行的に指定を解除するというのは理屈が通らない。また、四番目としては、決議にもありますように、二〇〇四年に米国の国務省国際テロ報告書にテロ支援国家理由として新たに拉致問題というものを書き込んでいる。こういったことを理由に、我々もワシントンで強くこのことを訴えてきて、一定の成果があったというふうに考えております。

 十六日には福田総理・ブッシュ会談が行われましたけれども、テロ支援国家指定解除をすべきでないということについて言及をされたというふうに我々は聞いています。

 そこで、政府は、指定解除反対のためにいかに努力を今後ともされていくのか、この点につきまして官房長官からお伺いをしたいと思います。

町村国務大臣 古屋委員におかれましては、先般訪米をされ、今お話があったような、政府、議会関係者等とも多数お会いになられまして、我が国国民の声、そして議会の声を直接お伝えいただいたということでございまして、大変有意義な活動をしていただいた、かように受けとめているところでございます。

 政府といたしましても、これまでいろいろなレベルで、日本政府の考え方、そして国民の考え方、なかんずくテロ支援国家指定解除の問題を含めて、北朝鮮問題についていろいろな議論を交わし、また、お互いの理解を深めてきたところでございます。一番最近の時点でいいますと、十一月十六日、日米首脳会談が開かれたわけでございます。

 福田総理は、この指定解除の問題をブッシュ大統領との間でしっかりと話し合ったというふうに私は聞いているところでございます。

 ブッシュ大統領からは、拉致問題の日本における重要性というものあるいは日本国民の考え方、気持ちというものはよく理解をしている、また、日本政府と日本国民の中にはアメリカが拉致問題を置き去りにして北朝鮮との関係をどんどん進めるのではないかという心配があるという状況も理解をしているけれども、拉致問題を決して忘れることはありませんと。また、北朝鮮は、完全かつ正確な申告、これを今第二段階の中で行われようとしているわけでございますけれども、この正確かつ完全な申告を含めて、非核化措置というものをきちんと実施しなければならないこと、また、日朝関係の改善も核問題と並行して進めていく必要がある。

 こうした幾つかの発言をブッシュ大統領もされたというふうに聞いておりまして、引き続き日米間で今後は閣僚レベルあるいは事務レベル、いろいろなレベルでしっかりとした緊密な連携をしていこうということで、首脳会談でも一致をしたところでございます。

 したがいまして、政府としても、拉致問題を初めとした諸懸案を解決し、また日朝関係を進めるために真剣な努力を行っておりますが、アメリカはこうした我々の努力を最大限支援するということであるというふうに理解をしているところでございます。

古屋(圭)委員 引き続き、核問題の進展とともに、やはり拉致問題というのは、絶対、我々国民としては必ず解決をしていただかなきゃいけない問題でございますので、しっかり政府におかれましては取り組まれることを期待いたします。

 それでは、次の質問でございます。

 日米関係というのは最も重要な二国関係であるということは論をまたないわけでありますけれども、したがって、駐米の日本大使館も最大のスタッフを投入しているわけであります。

 しかし、その内訳を見てみますと、経済関係には数十人規模でスタッフが投入をされていますが、事議会対策に対しては、私どもも現地でも確認いたしました、四、五名で対応をしているというふうに聞きました。これは余りにも少な過ぎるのではないかという印象でございます。現に、私ども、今回の訪米の際もそういった印象を持ったことは否めないわけでございます。我々立法府も、日米関係に安住をして、ややもすると議員外交というものがおろそかになっていたのではないかな、そういう反省の上に立って、やはり米議会対策の重要性を再認識いたしました。

 議会対策の要員というものを充実すべきではないか、こう考えますけれども、この点についてどう思っているかということが一点。

 それから、もう一点につきまして、各国の大使館は、米国議会に強力なコネクションを持つ地元ロビー会社であるとか個人と戦略的に契約をして雇っているという現実があるわけでございまして、ケース・バイ・ケースで、それぞれの専門分野を持つスペシャリストを活用しない手はないと思いますね。特に、今回の拉致問題などはその典型だというふうに思いますし、また、米国議会の人脈の広さ、あるいは拉致問題解決の熱意であるとか北朝鮮に対する専門知識を持っている専門家あるいは企業というのが実際に存在しているということを我々は承知いたしております。

 ぜひ、具体的問題に特化して、こういった個別の有能なロビー会社や個人と契約をして、機動的かつ戦略的な活動をしていくべきではないか、こういうふうに思います。

 特に、我々としては、非常に残念だったことがありましたね。本年五月に、米議会でいわゆる従軍慰安婦問題が残念ながら決議をされてしまいました。やはりこういった決議も、今言ったような議会対策あるいは戦略的な活動というのがあれば場合によっては避けられたんじゃないかな、こんな印象を持っているわけでございますけれども、ぜひ、今の二点につきまして、すなわち外務省の要員の強化と戦略的なロビー活動の取り組みについて、外務大臣の見解をお伺いしたいと思います。

高村国務大臣 今、アメリカ大使館においては議会対策専属の人が四名いるわけでありますが、重要な問題については、議会対策、大使以下、全館員がやるということをやっております。専属が四名しかいないということで、常に議会だけをやっている人が四名、必要な場合には総動員でやるという体制をとっているということを申し上げておきたいと思います。

 それから、事柄の性質上、詳細は差し控えさせていただきますけれども、在米日本国大使館においては、ロビイストの活用を含めて、さまざまな手段を通じて、さまざまな案件に関して、機能的かつ積極的な情報収集や働きかけを行っているところでございます。

古屋(圭)委員 確かに、専属は四名、機動的にやっておられるということですけれども、現実的に、我々が訪米をして関係者とお話をさせていただいたときにも、具体例として、やはり議会対策がまだ十分できていないんじゃないかな、こう思われるところが多々ございました。

 ぜひ、そういったところを大臣におかれましても再検証していただいて、実際にそういう強化が必要があるということなれば、これは積極果敢にそういう対応をしていただきたいと思いますし、実際に、ロビイスト、例えば某ローファームもアメリカの大使館で契約をしているということは私どもも承知をいたしておりますけれども、やはりケース・バイ・ケースによってそれぞれの専門分野というのは大きく異なりますので、ぜひそういった機動的な戦略に積極的に取り組んでいただきたいということを改めてここでお願いいたしておきたいと思います。

高村国務大臣 委員の御指摘も含めて、積極的に検証していきたい、こういうふうに思います。

古屋(圭)委員 六者協議で本年二月の十三日の合意がまとまった際に、政府は、拉致問題の進展がなければ核問題での進展があっても見返りとしてのエネルギー支援に日本は参加をしない、こういう方針を決定して、議事録にもそういうような記録を載せた上で、ほかの五カ国の了解をとったわけでございます。実際、安倍内閣から福田内閣にかわりましてもこの基本方針に私は変化がないものというふうにとらえておりますが、この点について官房長官から御答弁をいただきたいと思います。

町村国務大臣 委員御指摘の、拉致問題に進展が見られない状況でエネルギー供与に参加しない、この方針は何ら変更はございません。

 同時に、政府といたしましては、拉致問題を含む日朝関係で進展が得られれば、六者会合において、経済、エネルギー分野を含め、より大きな役割を果たす用意があるということはこれまでも表明をしてきておりますので、その点についてもまた変更なしという考え方でございます。

 いずれにしても、この六者会合共同声明を全体としてバランスよく実施していくということが大切だと考えておりまして、非核化、それから拉致問題を含む日朝関係の双方がともに前進をするように、今後とも最大限努力をしていく考えでございます。

古屋(圭)委員 では、基本的な考え方に変更はないということで了解をさせていただきます。

 そうしますと、次の問題になってくるわけでございますけれども、我々が訪米する前にも、米国の大使館の関係者であるとかあるいは国務省の関係者が盛んに、拉致問題で進展とはどういうことなのか、あなたたちはどう考えているのか、どういうふうに定義しているのかということをよく聞かれました。

 政府の正式な国会の答弁は、これも去る三月の二十六日、参議院の予算委員会におきまして、安倍前総理がこういうふうに答えていますね。拉致問題の進展とは、被害者全員を帰国させるという日朝双方の共通認識ができて、かつ北朝鮮が具体的行動をとること、日朝双方の共通認識ができ、かつ北朝鮮が具体的行動をとること、こういうふうに明確に答弁をされておるわけでございまして、拉致問題に関する政府の組織が安倍内閣から福田内閣に継承されましたけれども、実際にその組織そのものは全く同じような形で継承されている事実もありますので、実際この認識にも私は変化がないというふうに考えますけれども、この点につきましても官房長官から御答弁をお願いしたいと思います。

町村国務大臣 具体的に何をもって進展と言うか、これは実際に北朝鮮側の実際の対応を見た上で個別具体的に判断をするということだろうと思います。

 今委員がお引きになられました安倍総理の三月二十六日予算委員会の答弁ですか、この点について、私どもも全く同じ考えを引き続き有しているところでございまして、拉致問題を解決するという日朝双方の共通認識があって、それに向けて北朝鮮が具体的な行動をとり、解決に向けて途中段階に進めば、それをもって進展と言えると考えるわけでございまして、そういう意味で、安倍総理の考え、当時と私どもの福田内閣でも全く同じ考え方で臨んでいるところでございます。

古屋(圭)委員 同じ考えで取り組んでいるということでございますが、ここの安倍前総理の答弁でも、被害者全員を帰国させるという日朝双方の共通認識、要するに被害者全員というふうに言っているわけでございますけれども、では実際、ここで言う全員という場合、どこまでを指すのかというのが議論になってくると思います。

 今回訪米した際も、米議会関係者から一体何人拉致されているんだということを盛んに聞かれました。実際には、政府認定は十七人いて、そのほかに警察認定の日本人の母の子供が二人いて、それ以外、外交交渉で四十人の可能性のある事案について北朝鮮に情報を求めているだとか、あるいは民間の特定失踪者調査会が四百七十人という人たちを認定しているということは説明をさせていただきましたけれども、要するに、北朝鮮に現在何人拉致したのかがはっきりしていないというのが私は実情だというふうに思います。

 しかし、今回の核問題でも、北朝鮮が一体何発の核を持っているのかというのは現在全く不明でありますし、六者協議はすべての核の廃棄を掲げているわけでありまして、そして、そのプロセスとして、今回は一部施設の無能力化とすべての核の計画、核物質の申告を求めているわけでありまして、実際それがプロセスに乗っかるかどうかということが今進んでいるわけでございます。

 この考えからすると、例えば、まず北朝鮮に、全員ですよ、全員を帰すということを約束させた上でその名簿を日本に提出させる、もし日本がその名簿に納得ができないということであるならば、再提出を何度でも求めていきながら、北朝鮮が認めた被害者の帰国を順次実現させていく、このような具体的なプロセスが始まって初めて全員帰国のための進展と考えられるのではないか、私はそういうふうに思いますけれども、この考え方に対する官房長官の考え方というものをお示しいただきたいと思います。

町村国務大臣 この全員というのはなかなか難しい問題でございます。

 政府が認定している拉致被害者十二件十七名以外にも、実際に拉致の可能性を排除できない方々がいらっしゃると私どもも思っているわけであります。したがって、全員というのを抽象的に言えば、この十七名以外にも北朝鮮が実際に拉致した被害者全員のことを指す、ちょっとトートロジー的ではございますが、そうとしか言いようがございません。

 私どもも、今、政府としてはとりあえず十二件十七名ということにしておりますが、さらにほかにもいらっしゃるであろうということを考えながら、国内外の、日本内外の調査、捜査を進めております。

 また、北朝鮮に対しましては、認定被害者に限らず、すべての拉致被害者の全員の安全確保と速やかな帰国を強く求めていく、こういうことでございまして、この認定被害者以外の可能性というものも十分に認識しながら北朝鮮と交渉を進めていこう、現実にいっているということでございます。

古屋(圭)委員 もう質問時間が終わりましたので、ちょっとこのことでまだ質問をさせていただきたかったんですが、ではまた次回のこととして。

 要するに、米国との連携というのはこの拉致問題解決のためには不可欠だというふうに私は思います。今後ともしっかり歩調をそろえて、テロ支援国家指定解除についても安易に認めることのないように、政府としても最大限の努力をしていただきたいと思いますし、そのことを強く要請させていただきまして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

山本委員長 次に、江田康幸君。

江田(康)委員 公明党の江田康幸でございます。

 先ほど大変重要な、テロ支援国家指定解除の動きに反対する決議をこの委員会でさせていただいたわけでございます。拉致は国家主権及び国民の生命と安全にかかわる重大な問題であり、我が国はすべての被害者の安全確保及び即時帰国、真相究明並びに拉致実行犯の引き渡しを強く要求するという趣旨でもございます。

 両大臣におかれては、また政府においては力強く拉致問題の解決に全力で取り組んでいただくことを踏まえまして、私の質問をさせていただきたいと思っております。

 まず、町村官房長官にお伺いをさせていただきます。

 拉致問題の発生から三十年、家族会の結成から十年という長い時間が過ぎたにもかかわらず、いまだに全面的な解決の見通しは立っておりません。その結果、拉致被害者家族の皆様の高齢化は進んでしまって、時間は余り残されていないのが現状でございます。このたび、横田滋さんにかわって家族会の新代表となられた飯塚さんも、私たちにはもう時間がないとの思いで突き進み、一、二年で被害者全員が帰ってくるようにしたいとの決意を口にされております。

 拉致問題は、重大な人権侵害であり、国家主権の侵害であり、また今も続くテロ行為でございます。離れ離れになってしまわれた家族が再会を果たせるように、一刻も早くこの問題の解決をしなければならないと強く思うわけでございます。

 改めて官房長官の拉致問題に対する基本認識と問題解決のための決意についてお伺いをいたします。

町村国務大臣 北朝鮮による拉致、これは今委員お話のあったとおりでございまして、我が国の国家主権、そして国民の生命と安全にかかわる大変重大な問題であります。未曾有の国家的犯罪行為とも言えるわけでありまして、重大な人権侵害であります拉致問題の解決なくして北朝鮮との国交の正常化はない、こういう考え方で、これは一貫して政府が持ち続け、その基本的な考え方に基づいて、拉致被害者の方々の一刻も早い帰国を実現するために、拉致問題対策本部を中心にして、政府が一体となって最大限の努力をしていこうと考えているところでございます。

 ちょうど二年半前ですか、私が外務大臣をやっておりましたときも、めぐみさんの遺骨なるものが返されるという状況に、私、外務大臣でいたわけでございますが、それがにせものであったというとんでもない事件まで経験をいたしました。そのとき御家族の皆さん方ともお目にかかり、また、それから二年半ほどたって、去る十月五日に私は安否不明被害者の御家族の皆さん方とも懇談をいたしました。本当に、確かにお年を召しているなというふうにも思いましたし、また、御家族の皆さん方から表明をされました大変に強いいら立ち、また悲痛な叫び、これをしっかり私も受けとめて、できるだけ早い、一刻も早い解決に向けて全力を挙げて努力をしてまいらなければならないという思いを新たにしたところでございます。

江田(康)委員 今大臣の方から、被害者の御家族とも何度もお会いになり、またそのお気持ちを十分に察せられた、そういうお気持ちと基本認識、また決意を伺ったわけでございますけれども、対話と圧力の基本姿勢で、具体的にはどのように対応していくのかということが大変重要になっているわけでございます。

 六者協議という国際的なフレームに加えて、日朝という独自の対応も大変重要であると思います。拉致問題解決に向けての具体的な方策について、改めて外務大臣にお伺いをしたいと思います。

高村国務大臣 政府といたしましては、日朝平壌宣言にのっとり、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して国交正常化を実現する、そういう方針に変更はないわけであります。

 対話と圧力については、双方が必要でありますけれども、それらの間のバランスを考えることも重要と考えております。対話にしても圧力にしても、関係国、さらに広く国際社会の理解と協力を得ることにより効果的、実効的なものとなることがある点にも留意する必要があると考えております。

 十月三日の六者会合成果文書では、早期に日朝国交正常化を実現するために日朝双方が誠実に努力すること、また、そのために精力的な協議を通じ具体的な行動を実施していくことが確認されたわけであります。今後、六者合意も含め、北朝鮮が拉致問題の解決を含め日朝関係の改善に向けた具体的な行動をとることを期待しているわけであります。

江田(康)委員 それでは、町村官房長官にまたお伺いをさせていただきます。

 米国では国務省の主導で、北朝鮮の核無能力化と引きかえに北朝鮮へのテロ支援国家指定を解除するという動きが進んでおるわけでございます。先ほど古屋先生も御指摘になられたところです。

 もし解除となったら、北朝鮮にとって、これは世界銀行やアジア開発銀行からの援助を米国の反対なく獲得できることや、さらには、凍結されてきた北朝鮮の在米資産約三千万ドルが得られるわけで、さらに、日本人拉致は解決済みとして扱われるという利点を生んでしまうわけでございます。一方、日本にとっては、北朝鮮の拉致問題への責任免除に等しい上に、北朝鮮への経済制裁が骨抜きになる、こういうような問題になるわけでございます。被害者家族の方々も、指定解除がされた場合、拉致問題が置き去りにされてしまう、そういう危機感を持たれて、今回もまた訪米され、ヒル国務次官補を初めとして関係者に強く訴えておられることだと思います。

 十一月の十六日の日米首脳会談は、日本から米国に、拉致問題の解決まで北朝鮮のテロ支援国家指定解除をしないように働きかける最重要の機会であったし、絶好の機会であったと思われます。しかし、福田総理は、ブッシュ米大統領が拉致問題について忘れないとの強い思いを示されたことから、テロ支援国家指定を解除しないよう直接的に求めることまではしなかったと伝えられておるわけでございます。

 これはあくまで報道ベースの話ということでありましょうから、首脳会談の中でこの拉致問題についてどのようなことが具体的に話されたのか、アメリカとの信頼関係の範囲内でよろしいですので、教えていただきたいと思います。

町村国務大臣 先般の首脳会談の内容、一言一句のやりとりにわたる部分は差し控えさせていただきたいと思いますけれども、福田総理からは、テロ支援国家指定解除問題をブッシュ大統領との間でしっかり話し合ったというふうに私は報告を聞いております。

 福田総理からは、我が国が北朝鮮に対して拉致問題での進展を求めており、特に被害者の帰国を重視していることなどを具体的に説明したということでございます。これに対してブッシュ大統領からは、拉致問題は日本における大変重要な問題であるということをよく理解しているし、また、日本政府と日本国民の中には、アメリカが拉致問題を置き去りにして北朝鮮と関係改善を進めるのではないかという心配があるということもよく知っている、アメリカは決して拉致問題を忘れることはない、北朝鮮は完全かつ正確な申告を含めて非核化措置をしっかり実施しなければいけないし、また、日朝関係の改善も核問題と並行して進めていく必要がある、こうした発言があったというふうに聞いております。

 そういう意味で、政府は、日朝関係の改善、拉致問題を解決していく等々、真剣な努力を行っているわけでございますが、アメリカもこうした我々の努力というものを最大限支援する、そういう趣旨に立ってブッシュ大統領の発言があったというふうに理解をしているところでございます。

江田(康)委員 先ほど、この点については古屋議員からも確認をされたところではございますけれども、やはり日本にとって日米首脳会談は、テロ支援国家指定の解除をさせないためにも大変重要な会談であったと思いますし、今御答弁をいただいたような内容でお話をされた、それはすべて公開できるところではないかと思いますが、かなり総理の方からも申されているものと認識しております。

 であるからこそであろうかと思いますけれども、最近の報道でも、北朝鮮のテロ支援国家指定の解除をするための条件の一部として、これまでの核施設の無能力化完了に加えて、核計画の申告時にプルトニウムの抽出量、ウラン濃縮計画の実態、またシリアなど外国への核移転の状況、この三点の明示を北朝鮮に求める方針を固めたというようなことも、これは報道でございますけれども、さらなる追加条件をしっかりと確認していっているというようなことを私はそれから想起するわけでございます。

 さらにこの問題を進展させるがためにも、引き続き官房長官にお伺いいたしますけれども、六者会合の場では、拉致問題の進展と朝鮮半島の非核化が同時並行的に協議されることになっているわけでございますが、そこで、拉致問題の進展をテロ支援国家指定解除の条件とするために政府として何か具体的な方策を持っているのか、それについてお答えしていただきたい。

町村国務大臣 アメリカによるテロ支援国家指定解除の要件というのは、これはアメリカの国内法令でございますから、この解釈問題について政府がこうである、ああであるというような有権的な解釈をするという立場にはないわけでございますけれども、アメリカは従来から、テロ支援国家指定解除をするか否かにつきましていまだ決定していないし、また指定解除が実際に行われるか否かは北朝鮮による非核化措置次第である、その際には拉致問題を含む日朝関係の進展も考慮されるという立場を明らかにしております。

 こうした立場というものは、日米間のいろいろなレベルでの話し合いの結果、そういう方針、考え方を米政府は持っているということでございますので、引き続き日米間、緊密に連携をしながら、拉致問題がしっかりと前進をするように、進展するように、政府としても全力を挙げていきたいと思っております。

江田(康)委員 今、御回答にもあったかと思うんですけれども、改めて高村外務大臣にお伺いをさせていただきます。

 アメリカのテロ支援国家の指定解除に対する基本姿勢について、どのように政府としてはとらえているのか。

 また、あわせて、拉致問題の進展が見られない限りテロ支援国家指定解除を行わないようにアメリカに引き続き強く求めることは、これは第一に重要なことであるかと思いますが、場合によってはさまざまな事態を想起しなければならない状況もあり得るのではないかと思います。テロ支援国家指定解除とは別に、政府は拉致問題解決に向けた方針を描いておられるのか、大臣にお伺いをさせていただきます。

高村国務大臣 今、町村官房長官が答えられたように、アメリカの基本的立場というのは一貫しているわけであります。テロ支援国家指定解除をするかしないかは、まず北朝鮮の非核化次第である、ただ、その際に拉致問題を含む日朝関係の進展も考慮に入れる、これはずっと前からそう言っていますし、今も変わっていない、こういうふうに思います。

 十月三日の六者会合成果文書においては、日朝関係についても明記され、日朝双方が、平壌宣言に従って、不幸な過去を清算し懸案事項を解決することを基礎として早期に国交を正常化するため誠実に努力すること、また、そのために日朝双方が精力的な協議を通じて具体的な行動を実施していくことが約束されたわけであります。

 我が国は、これまでも日朝協議に真剣に取り組んできておりますが、残念ながらいまだ具体的な進展は得られておりません。政府としては、引き続き、日朝平壌宣言にのっとり、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して日朝国交正常化を早期に実現するとの方針のもとに、最大限努力を行っていく考えであります。北朝鮮側に対して、十月三日の成果文書にあるとおり、拉致問題を含む諸懸案の解決に向けて具体的な行動を求めたいと思います。政府としては、テロ支援国家指定解除問題を含め、北朝鮮問題に関し日米間でしっかり連携していくことを確認しているわけであります。

 このテロ支援国家指定解除というのは、我が国にとって拉致問題を解決するためのてこになり得ることでありますから、これを何ら進展させないでそのてこを失ってしまうということは我が国にとって耐えられないことである、そういう観点から、これをてこに使って進展させるべく最大限の努力をし、アメリカとも緊密な協議をしていく、こういうことでございます。

江田(康)委員 よくわかりました。

 この解除の条件、一貫してアメリカの姿勢は、非核化が第一であり、また日朝の進展をも考慮に入れると。さらには、今後の日朝においても、やはりアメリカのこの国家指定という措置は大変重要なてこになるということで、これを強力にてことしてとらえて進めていくという、その大臣の方針については理解できます。

 先ほど古屋議員からも御指摘がちょっとありましたけれども、もう一つ確認をさせていただきたいことがございます。これはまた高村大臣にお伺いをさせていただきますが、拉致問題に対する認識の日米の誤差がないかということでございます。

 現在、アメリカ政府による北朝鮮のテロ支援国家指定解除の動きに対して、今までありましたように、我が国政府は、この拉致問題に進展があるまで指定解除をしないように強く働きかけているわけでございますが、この件に関してアメリカは、拉致問題の進展として、横田めぐみさんら北朝鮮が死亡したと主張する八人に焦点を絞って、日本への追加説明など北朝鮮の協力姿勢の有無を重視しているとの報道がございます。

 一方、米国議会においては、テロ支援国家指定解除について拉致被害者の帰国等を条件とする法案が九月に下院に提出されたわけでございますが、上院においても同様の法案の提出の動きがあることは大変心強いことでございますが、ただし、この法案では、日本人拉致被害者は十五人というふうにされているわけでございます。

 これらの一連の報道を見ると、拉致問題に対する米国政府や議会のとらえ方は、極めて限定的であって、この問題の解決や進展に対する我が国の認識とはかなり隔たりがあるように思えてならないわけでございます。したがって、テロ支援国家の指定解除をしないよう働きかけることが第一に重要なことではありますけれども、同盟国として拉致問題解決に協力してもらうべきアメリカに政府がしっかり日本側の考え方を伝えて、認識を共有してもらう必要があるのではないかと考えるわけでございます。

 そこで、お伺いをいたしますけれども、拉致問題に関する情報について、日本側は米国に対してどのような内容を、どのような方法で、どのような立場の人にこれまで伝えてこられたのでしょうか。

 さらに、米国は拉致問題について段階を追って解決していくべきものとの考えを持っているとも言われておりますけれども、拉致問題に対する日米両国の認識にそごを来さないように、米国政府との共通認識を形成することが交渉上重要なポイントだと考えるわけでございますけれども、今後どのように取り組む方針かをお伺いをさせていただきます。

宇野大臣政務官 米国との間では、拉致問題に関するものを含めまして、平素からさまざまなレベルでの情報交換をしているところでございます。

 しかしながら、今回のこの拉致問題につきましては、米国政府との関係もあり、また事柄の性質上もあり、その詳細を明らかにすることについては、差し控えさせていただきたいと思っております。

江田(康)委員 大変簡単な答弁でございましたけれども、やはり、この点、大変重要だと思うんですね。今提出されている下院への法案も、それだけ多くの方々が米国議会で理解を示してくださることを大変期待するわけでございますけれども、もしアメリカ側に、一定の北朝鮮の協力姿勢が見えたら、これを進展として国家指定解除へ向けて突き進む、こういうようなことがあってはならぬわけで、ですからこそ、政府が、日米双方に認識の差があってはならないと思うからこそ今の点を確認させていただいたわけでございます。言えないところもありましょうし、外交でございます。そういう点において特に強く要望をしておきます。よろしくお願いします。

高村国務大臣 認識の差がない、あるいはできるだけ少なくする、そのために最大の努力をするのは当然のことだと思っておりまして、これからも努力をしていきたい、こういうふうに思います。

 それと同時に、アメリカは必ずしも、段階的にやる、こういうことを言っているわけではないんだろうと思います。ただ、先ほど官房長官もおっしゃったように、日本にしても実は何人拉致されたかというのはわからないわけで、これで完全に全部帰ってきたかどうかということがわからないような状況の中で、段階的ということもあるかもしれない、そういうことを言っているんだろう、言っているとしたらそういうふうに思いますし、何も、アメリカだって全部一遍に解決した方がいいと思っているに決まっている、こういうふうに私は思います。

江田(康)委員 さっき私申し上げましたように、大臣も今、これに向けては努力をするということでございました。ぜひとも双方の意識の差がないようにしていかなければならないと強く思うわけでございます。大臣のおっしゃるのもわかります。

 時間がいよいよ参っておりますけれども、もう一点どうしてもお聞きしたいのは、日米間、また日朝間だけでなくて、国際社会のフレームでの拉致問題に対する追い風というものが、その解決に向けての追い風というものが今こそ大変重要かと思っております。

 そういう意味で、福田総理は、日米首脳会談終了後に東アジア・サミットに出席されたわけでございますけれども、その成果として公表された議長声明では、本年一月に行われた第二回東アジア・サミット議長声明にはあった拉致の文言が盛り込まれておらず、人権問題への懸念という表現にとどまっているわけでございます。

 安倍政権下の政府の拉致問題対策本部で決定された拉致問題における今後の対応方針によれば、「国連をはじめとする多国間の場、また、関係各国との緊密な連携を通じて、拉致問題の解決に向けた国際的な協調を更に強化していく。」とされておりますけれども、第三回東アジア・サミット議長声明で拉致との文言が盛り込まれなかった理由は何なのか、これについて外務大臣にお伺いをしたい。

 それとともに、もう一つあわせて御質問をさせていただくのは、十一月の二十日には、国連総会の第三委員会において三年連続で北朝鮮非難決議が採択されております。こうした努力は拉致問題に対する国際的な理解を得るために役立ってきていると思いますけれども、残念ながらこの決議には強制力はない。その意味では、これを生かすためのいま一度の努力が我が国政府としても必要と考えますけれども、これら二点について、外務大臣としての見解をお伺いしたいと思います。

高村国務大臣 十一月二十一日に開催された第三回東アジア首脳会議におきましては、福田総理より、拉致問題の解決と不幸な過去の清算の双方を実現すべく努力する考えである旨述べました。これに対して一部の国から、拉致問題に対し我が国の懸念を共有する旨の発言がありました。会議後に発出された議長声明には、国際社会の人道上の懸念に関する問題に対処することの重要性を強調という記述が盛り込まれました。人道上の懸念に拉致問題が含まれることは当然であり、第三回EASにおいても、我が国の懸念に対するEAS各国の理解と協力を再確認することができたと考えております。

 一般論といたしまして、議長声明というのは議長が発出するので、みんなで文言を詰めるということをやらないわけでありますので、この理由が何だということはちょっと我が国として説明できないことは御理解をいただきたいと思います。

 それから、北朝鮮非難決議でありますが、北朝鮮人権状況決議が全国連加盟国から成る国連総会第三委員会において採択されたことは、拉致問題の早期解決を含む北朝鮮の人権状況の改善に向け、国際社会が連携を強化し明確なメッセージを発出するものであり、北朝鮮の人権状況改善を促すものになると考えられます。この決議は、今月中旬に国連総会本会議の場で採決に付される予定でありますが、より多くの国々とともに北朝鮮に対し拉致問題を含む人権状況の改善を促すため、その採択に向けて引き続き各国への働きかけを行っていきたいと思います。

 また、国連総会の場のみならず、各国要人との会談や国際会議の場等においても、拉致問題を初めとする北朝鮮の人権問題に対する国際社会の理解を深めるべく、引き続き努力をしてまいる所存でございます。

江田(康)委員 もう時間でございますが、今大臣からお答えいただきました。とにかく、こういう東アジアのサミットでの議長声明、また国連総会第三委員会における国際社会の決議、これを本当に生かして、北朝鮮に対して、今も続くテロ行為である、また国家の主権を侵害されたこういう拉致問題に対して、怒りを持って本当にその解決に向けて政府はあらゆることを総動員して取り組んでいっていただきたい、その決意を要望いたしたい。そのような意味でのきょうの決議でもあるということを認識していただいて、よろしくお願いをしたいと思います。

 以上をもって質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

山本委員長 次に、末松義規君。

末松委員 本日のこの委員会での決議、非常に貴重な決議だと思っております。先ほど高村外務大臣が、北朝鮮に対するテロ支援国家指定ということ、これがてことして使えるんだと。そういう意味で私たちは、そのてこを失ってはいけない、そういった思いでこの委員会の決議をやったわけでございます。

 では、なぜそんなことをやる必要があるかというと、そもそも問題はというと、アメリカのヒル次官補が非常に明確に述べたように、十月の初旬ぐらいですか、米議会の上下両院の民主、共和両党の指導部や関係主要議員に対してこう説明したというんですね。北朝鮮との合意文書に従い、十二月までに北朝鮮が三つの核施設の無能力化とすべての核施設の申告を完了するなら、ブッシュ政権は、その時点で北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除と対敵国通商法の適用停止方針を既に決めている、ブッシュ大統領の内諾も得ている。この言葉に震撼したわけでございます。

 そういう中で、決議という話にもなったわけでございますけれども、政府として、先ほど町村官房長官の方から、今までこの指定解除をしないように外交努力を、福田総理とブッシュ大統領との会談があって、いろいろとおっしゃったという話がございました。今後とも、そういった努力というものはどういう形になるのか、改めてお伺いしたいと思います。

町村国務大臣 高村外務大臣もお話をされましたが、アメリカはアメリカのやはり独自の考えがあるということは否定すべくもございません。しかし同時に、アメリカも再三再四、例えば日米関係を犠牲にしてまで米朝関係を進めるということはしないということも何度も言っております。

 そうした基本的な日米間の信頼関係に基づき、実際、私は、仮に日朝単独でやっている場合と、六者協議という形で中国やあるいはアメリカも北朝鮮に対して圧力をかける状況というのは、やはり明らかに、他国のそうした力あるいは説得というものがあるだけ拉致問題も解決しやすいし、そして、究極的には日朝関係の国交正常化もやりやすい関係になるのではないか。そういう意味で、この六者協議というのは有効なフレームワークだ、こう思っているわけでございまして、そうした関係国の力もかりながら、拉致問題の解決に全力を挙げていきたいと思っております。

末松委員 今官房長官から、日米関係を犠牲にしない、そこはブッシュ大統領が言った、日本を置き去りにしない、決してこの拉致問題を忘れない、よくこれは理解しているんだ、日米関係が悪化する可能性もある、そこを懸念しながら、高村外務大臣が言われたように、アメリカも指定解除に関しては一定の考慮を行うということ、それが先ほどの回答でございました。そこで、江田議員が、両国の間でできるだけ意識の差がないようにという、非常に有効なというか意味のある質問をされてきたわけでございます。

 そこでどうしても出てくるのが、ちょっとこれは今の議論に刺激されての質問なんですけれども、先ほど高村外務大臣が言われたように、何人拉致されているのかわからない、これが一番大きな問題であると。それがために、例えば今、日本で認めている十二件十七人プラスその可能性のある方々、こういうことでしか、この方々がまずは帰ってくることとしか言えないわけでございますけれども、そうすると、進展という言葉を使って、徐々に、例えば数人帰ってくれば、これまた北朝鮮との間で進展があったということで、それがゆえにアメリカは例えば指定解除をする、こういうふうなことも考えられるわけですね。

 そういうことについて、外務大臣として、今のような考え方、ステップ・バイ・ステップというか、そういう形で、北朝鮮との関係、あるいはアメリカのテロ国家指定解除ということに対してどういう立場で臨むおつもりなのかをお伺いしたいと思います。

高村国務大臣 だれが見ても完全な解決だね、全部帰したねと思われることがあれば一番いいに決まっているわけであります。ただ、はっきり言って、何人拉致されたかわからない状況の中で、これが全部ですよといって何人かの方が帰ってきたとした場合に、我々は全部だと確認できないけれども、ではそういうのは進展と認めないのか、解決とまだ認めないにしても進展とも認めないのかというと、なかなか外交交渉も難しくなるということはあり得ると思うんですね。

 そういう中で、今、具体的にどれだけ帰ってきたら進展と認めて何をやるんだとか、そういうことを当てはめをやる必要は必ずしもないので、北朝鮮の側が具体的にどういう行動をとるか、それについて我々はどう考えるかということでありまして、それについて、進展といったって度合いがあると思うんですよ。行動対行動といったって度合いがあると思うんですね。だから、その度合いは、我々からすれば大きければ大きいほどいいし、解決であれば解決が一番いいわけですが、そういう中で、アメリカに対して、ではどのくらいだ、どうだ、そういう話をするんじゃなくて、今緊密に話をしながら、少しでもそのてことして指定解除の問題を使わせていただこう、そういう緊密な協議を行っている、こういうことです。

 だから、どれだけどうだか今ここで言えというのはちょっと無理な話だ、こう思います。

末松委員 無理な話をしているわけではありません。つまり、考え方のフレームワークとしてどういうことなんだと言っているわけですよ。

 だから、確かに先ほど町村官房長官が、エネルギー協議、それは今進展がなければやらないと言った。ということは、逆に言えばそれは、例えば何名か帰してきた、あるいは明らかにしてきた。そうしたら、それの度合いですよね。度合いに応じた形で、日本政府も北朝鮮に対して、さらに言えば、国交正常化のための形の話し合いを進めていくのかどうかとか、あるいはもしアメリカのテロ指定解除ということがあるとすれば、これに対して、日本国家としてそこは、できるだけそれはてことして使うんだから、最後まで使うというのは当然なんですけれども、その前提の上で、一歩一歩こちらも、何か歩み寄りみたいな形をやっていくという形で日本の政策が動いていくんですよねということを確認したかったということなんですね。

 だから、一方で、一応いろいろな経済制裁をやっています。それも、その度合いに応じて少しずつ緩めていくとか、この考え方のフレームワークがどうなんだというのが私の質問です。

高村国務大臣 六カ国協議全体を貫く原則、その中に、日朝関係も含めて行動対行動の原則というのがあるわけです。行動対行動の原則。

 ですから、北朝鮮が行動をして、そして、例えば拉致の問題について前進があったら、その前進の進展の度合いに応じてこちらも行動をとる。そうでなければ外交交渉は成立いたしませんから、行動対行動の原則というのは日朝関係にも当てはまる、こういうことだと思います。

末松委員 そういった中で、では六者協議に触れられましたから申し上げたいんですけれども、その行動対行動の中で、六者協議で今日本は蚊帳の外に置かれていますけれども、今北に、核爆弾というのかな、爆発装置が幾つあって、あるいはウラン濃縮がどの程度進んでいるのか、ちょっと私ども報道で見る限り、そこについてはわからないんですよ。そこを、例えば行動対行動ということで、一部だけを見せたから、だからこっちも行動だね、そういう性質でないものもありますね。このことについて、明らかにできることをぜひ言っていただきたいと思います、この核の問題について。

高村国務大臣 核の問題については、十二月末日という期限を切って、三つの施設について無能力化を行う、それと同時に完全かつ正確な申告を行う、こういうことを約束しているわけですね。北朝鮮は約束をしているわけです。ですから、現実にその期限までにやれるように、我々は約束を果たすように迫っていくわけであります。

 それで、出てきた段階で、本当に完全かつ正確な申告であるかどうか当然検証しなければなりません。出してきたから全部それは正しいね、こういうわけにはいかないわけでありますから、それは他の五カ国で検証をしていく、こういうことであります。

 それから、今、完全かつ正確な申告という中には、核兵器開発の問題も含まれるし、ウラン濃縮の問題も含まれるし、プルトニウムの問題も含まれる。そして、そういう中でどうなのかということを、検証能力が一番あるのは残念ながら日本じゃなくてアメリカだと思いますが、日本もそれなりの知見を総動員して五カ国で検証をしていく、こういうことでございます。

末松委員 それを妥協なく日本政府としてもやっていただきたいと思います。

 先ほどの指定解除問題について戻りますけれども、ブッシュ大統領は、日米関係を犠牲にしない、こういう形を言いました。ただ、ブッシュ大統領もいつまでも大統領ではありません。例えば、来年の十一月アメリカの大統領選挙があって、今度は別の大統領になる。そういった場合は指定解除ということもあり得ないわけではない。要するに、核の問題がかなり進展して、これについて北朝鮮が先ほど言われた完全な形で報告をやったという話であれば、一要素を構成するこの日朝間の拉致問題、これの比重が下がって、そして、これは考慮したけれどももうこれ以上いいということで、見切り発車をアメリカがする場合だって当然可能性としては考えられるわけであります。

 その場合、今すぐに指定解除されるというのは、先ほどもありましたけれども、いろいろな報道を見ると、なかなかそこはアメリカもするような状況にないんだろうなというふうな想像は私もできるんです。ただ、これがタイムスパン的に一年ぐらいの間で起こることは可能性としては当然あり得るわけですけれども、その場合、政府としての対応はどういうふうな対応になられるのか、もしそのビジョンがあったらお聞かせいただきたい。

高村国務大臣 テロ支援国家指定解除を思いとどまってほしいというのは、それが拉致問題解決あるいは進展に向けたてこになり得るからそれをそのまま置いておいてほしいというのが我々の気持ちでありまして、これは手段なんですよ。目的は、拉致問題を解決に向けて進展させる、そういうことでありますから、ですから、仮に解除されるとしたら、その段階で何らかの進展があるように、我々はアメリカと緊密な連絡をとりながらやっているということを申し上げているわけであります。

 そして、これはアメリカが決めることでありますから、我々の願望どおり一〇〇%いくということはできないわけですけれども、我々は目的を、アメリカがどうしようと、拉致問題を進展させ解決するということを追求するということは、アメリカがどうするということとは別の問題として、我々はあくまでする。ただし、アメリカの力もかりたいわけですから、アメリカとはいつも緊密な連絡をとっていく、アメリカだけじゃなくて国際社会と緊密な連絡をとっていくということを申し上げているわけであります。

末松委員 そうなると、万一もし指定解除が行われれば、てこの一つがなくなったね、そういう中で新たな道をまたやっていく、そういう手段のワン・オブ・ゼムなんだから、こういうふうなお考えに今うかがえたんですね。

 だから、米朝の間でもし国交回復という話が出てきた場合であっても、これは当然の話なんですけれども、私どもとしては拉致問題の解決、これを貫き通していって、米朝がどうあろうと、我々としてはそれが一番大きなターゲットなんだということに変わりありませんね。

高村国務大臣 拉致問題解決というのは我々の目的ですから、それに向けて、一遍に解決すればそれが一番よくて、あるいはそれが無理であれば進展させていく、こういう話です。

 そして、ワン・オブ・ゼムとおっしゃったけれども、かなり重要な手段ですよね、テロ支援国家……(末松委員「手段の一つとしてと言われたから」と呼ぶ)手段と言ったんです。手段の一つなんて言いませんよ、私。後でちょっと見てもらえると……(末松委員「わかりました」と呼ぶ)手段の一つなんて言いません、手段と言ったんです。ワン・オブ・ゼムなんて言っていませんよ。それはほかにも手段はあるでしょうが、重要な手段であることは間違いないので、これには我々はだからこそこれだけこだわっているということであります。

 ただし、だけれども、そのこだわりがなくなったらもう目的をあきらめちゃうんですかと言われれば、あきらめるはずがないので、我々はこれを追求しなければいけない、そういう当然のことを申し上げているだけであります。

末松委員 僕はあえてそこで聞いたのは、先ほど町村官房長官が、日米関係を犠牲にするかどうか、そういうふうな配慮もアメリカがあって、そういうところで、そこまで日本として本当に思い入れがあるんだ、そこをアメリカが日本を置き去りにするような、そうすると日米関係に重要な影響があるんだということを強調されたからそのことは重いと思ったので、だったらアメリカに対して何か強烈な抗議をするのか、何かやるんだろうなというふうに思わせたわけですよ。それが高村外務大臣の話を聞くと、ちょっとてこがそこでなくなるというのは困りますねというような意外とあっさりした感じを受けたので、そこのところがちょっと、私が今そういう質問の仕方をしたわけです。もし何か言いたいことがあったら言ってください。

高村国務大臣 そういう差はないと思います。

 そして、シーファー大使は、伝えられるところによれば、日米関係に影響しますよと本国に言っている。本国にシーファー大使が言っているのは、それは拉致家族の方たちが直接シーファー大使に言ったこともありましょうし、あるいは日本政府として働きかけたこともありましょうし、いろいろある中でそういうことが起こっている。

 私たちが政府同士で、これをやらなければ日米関係に影響しますよと声高に言うというのは余りスマートじゃありませんので、私たちはそれはそれで相当の決意を持って水面下でいろいろやっている、こういうことを申し上げているんです。

末松委員 しかし、外交も交渉事ですからね。いろいろな形でやっていく。スマートだけが外交じゃありませんからね。(高村国務大臣「声高だけも外交じゃない」と呼ぶ)そう、それを硬軟織りまぜながらの話でしょうから、そこはぜひやっていただきたい。

 ちょっと私の方で、時間もなくなってきましたので、あと聞きたいことを聞きますけれども、政府の方で今具体的成果がないというのは、これは何回も政府側でも言っているわけですね。こういう状況を見ていて、私ども、この委員会、議員外交というのもここは一つの突破口じゃないかと私も思うわけであります。

 先般、当委員会の理事会で、例えば両院の拉致特委員会の理事等を中心に北朝鮮を訪問して、そして議員外交をやっていくのもこれは一つの有効な方法じゃないかというお話がございました。私もそこは賛成したわけでございますが、ぜひ継続的に、引き続き、委員長におかれましても、議員がこういった意味で外交を行っていく、北朝鮮に対して訪問していってパイプをつくっていく、それは有効と思いますが、引き続き理事会でも検討をいただきたいと思いますが、委員長、いかがですか。

山本委員長 北朝鮮への訪問の件につきましては、理事会で検討させていただきたいと思います。

末松委員 今のアイデアについて、政府の方で何かコメントございますか。

町村国務大臣 一般論として言えば、議員外交、政府だけが対外関係を独占する時代ではございません。議員が議員として国民の声をいろいろな形で先方に伝えるということは私は常に有効なものである、こう考えております。

 ただ、現下の北朝鮮に対して果たしてそれがどれだけ意味があるかということは、よくよく考えなければいけない部分もあるなという気はいたします。何しろ相手は、ポーカーに例えてはあれかもしれませんが、こちらの手のうちは日々の日本の報道等々を見ているとあらかた、相当程度わかる。こちらは、相手側が一方的にテレビ等々で言っている以外の情報というのはほとんどない。まことに均等でない条件でポーカーをやっているものですから、そういう意味で、今、北朝鮮との特に交渉事については、政府で一元化してやはりやっていく必要があるんだろうと思います。

 理事会での協議の結果は、理事会というので、これは国会がお決めになることですから、政府があれこれということは申し上げるつもりはございません。あくまでも一般論として申し上げさせていただきました。

末松委員 今、ポーカーをやって、向こうは手のうちを見せない、こっちは見られていると。そういった意味で、我々議員としても、今いる議員の何人が北朝鮮の実態を本当に知っているかというと、第三者的な情報が非常に多くて、直接情報というものが、自分の目で見て、感じて、触れてというものがなかなかございません。そういった意味で、別に交渉そのものを我々が政府にかわってやっていくという話ではありません。だけれども、実際にいろいろな形のルートはあった方がいい、その思いで今申し上げたわけです。

 もう一つ、ちょっと御提案といいますか、私が考えている中で、この前、国連総会の第三委員会で北朝鮮の問題が審議されましたし、また、国連の人権の理事会で今、日本とEUが共同提案で北朝鮮の人権状況の決議案なるものをいろいろとやってきておりますけれども、この問題を国連の方に一つ変化球として投げてみるのもおもしろいかなと思うんですね。例えば、国連の人権の理事会で、この拉致問題に特化して、そこで調査団みたいなものをつくってやっていけばいい、そういうアイデアも私は温めているところでございます。

 今、国連の報告者を北朝鮮が受け入れていない、そういう状況があることは十分承知の上でありますけれども、そこを何とかいろいろと、人選及び北朝鮮にも受け入れられるような形の外交努力等、そういったやり方、一つの手段ですけれども、それができないかと思うんですが、いかが思いますか。

高村国務大臣 あらゆる手段を追求するというのは基本的にいいことだと思うんですね。あらゆることを考えるというのは基本的にいいことだと思います。

 それで、今、国連により任命された北朝鮮人権特別報告者の北朝鮮入域すら拒否しているのは十分承知だとおっしゃいました。そういう状況の中で、今、北朝鮮は、拉致問題は全部解決した、そういうことを言う日本をともかく非難している状況で、それは人選をどうしても、国連がそういうものをしてすぐ受け入れる状況にあるかというと、ほとんどないのではないかと思います。

 思いますが、あらゆることを委員のように考えていただくということは大変ありがたいことで、いろいろ日本政府としても考えながら、少ない数で一番効率的なものをやろうとすれば、一番実現可能な効果のある、できたら効果があるけれども実現不可能だねというのは効果があるものとは言えませんので、そういうものに絞ってやっていこうと。

 委員がいろいろ考えていただくのは大変ありがたいことでありますが、今の具体的なアイデアについて言えば、余り実現性がないかな、こういう感じがしております。

末松委員 今すぐに、こういういろいろな前提なしに考えれば、そういうのが今の流れの中での回答だとは思いますけれども、いろいろな合わせわざがありますので、ぜひこういったところも、一つのことだけにぐっとやっていくとどうしてもそこのつぼから抜け出せなくなるので、いろいろな変化球のあれを考えながら、そういった中で、日米、日中、さまざまなてこ、さらにてこをふやしていくという中での、ただ、目的は一つですよね、確かに拉致問題の解決ということなんですが、あらゆるいろいろな変化わざを使って、ぜひまた進展をさせていただきたい。その思いを申し上げまして、時間となりましたので終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

山本委員長 次に、鷲尾英一郎君。

鷲尾委員 民主党の鷲尾英一郎でございます。早速でございますが、質疑を始めさせていただきたいと思います。

 本日は、当委員会におきまして、米国の「北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除」の動きに反対する決議が可決されまして、これは大変喜ばしいことであると思います。ただ、国務省が出しているテロリズムに関する国別年次報告書の〇六年バージョンには、北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除のプロセスをスタートするということで報告書にも記載があるわけでありまして、それを考えますと、これは二月の時点でございますので、いささか遅いのではないかなという気もいたしますが、何にせよ、可決されたことは喜ばしいことであると思っております。

 私、先月中旬に、福田総理の訪米の少し前に、拉致議連の一員といたしまして訪米をしてまいりました。その中で幾つか気づいた点を含めまして、政府に対して問いただしたいと思います。

 まず一つは、我々は、テロ支援国家指定解除という一点でもって米国の政府要人あるいは議会人と話し合いをさせていただいたわけですけれども、その中で、ブラウンバックさんという上院議員さんがおられて、我々の懸念をとても熱心にといいましょうか本当に親身になって共有していただいたわけでありまして、上院でも、テロ支援国家指定解除というのは拉致問題の解決なくしてはできないんだという法案作成の準備をしているということまでおっしゃっていただいた議員さんがおられました。

 その議員さんとお話をしている最中に、当然、福田総理は訪米されてこのテロ支援国家指定解除の問題を強くブッシュさんに訴えてくれるんですよねといった発言がありました。そのとき、我々議連は、残念ながら直ちに即答することができなかった。福田総理がどこまでテロ支援国家指定解除について強く主張されるのかどうか、正直申し上げて議連として共有できなかったという点がありました。

 これに関しまして、日米首脳会談の結果を見てみますと、やはり巷間言われていますように、テロ支援国家指定解除についての言及というのは本当にあったのかどうか、不安を禁じ得ないわけでありまして、この点を特に官房長官にお聞きしたいと思います。

 日米首脳会談の内容について、先ほど江田先生の方も質問されておりましたけれども、テロ支援国家指定解除についてコメントされていたのかどうか、お答え願いたいと思います。

    〔委員長退席、近藤(基)委員長代理着席〕

町村国務大臣 先ほども申し上げましたが、一言一句の詳細なやりとりについてここで御報告申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思います。

 ただ、私が聞いておりますところは、両国首脳が、このテロ支援国家指定解除問題を含めて、拉致問題、そして北朝鮮との関係、それら幅広い問題について、一対一の場で、あるいは同席者が多数いる場で、それぞれ話し合いが行われたというふうに聞いているわけでございます。

 会談での福田総理の発言あるいはブッシュ大統領の発言につきましては、答弁が重複いたしますので、先ほど御報告を申し上げたとおりでございまして、お互い共通認識のもとで、核の問題それから拉致の問題、ともどもバランスよく前進し解決できるように連携を深めていこうという共通認識に到達したもの、あるいは既に共通認識があったものを再確認したもの、このように考えているところでございます。

鷲尾委員 一言一句言えないということもあるんでしょうけれども、当委員会でも決議されましたとおり、テロ支援国家指定解除の問題は本当に重要な問題なわけでありまして、それは先ほどから官房長官、外務大臣含めて言及があったとおりであります。当然それを福田総理も認識しておられるんでしょうけれども、ただ、実際に我々が拉致議連として訪米した段階で、上院議員さんから、これはしっかり強く主張してくれるんですよね、そういったことがあれば当然我々も動きやすい、暗にそういう話ではあったと思うんですけれども、そういったやりとりがあったということもぜひ認識していただけたらなというふうに思います。

 と申しますのは、我々拉致議連として訪米する前の段階での各紙の報道を見ておりますと、何だかテロ支援国家指定解除の方向性がまるである程度決まっているかのような報道等が見られたわけでありまして、では実際アメリカの方に行ったらどうかというと、全然そんなことはなくて、政府要人そして議会人含めて、国務省の今のライスさん、ヒルさんの路線に対しては大分批判的な物の見方をされておったということを肌で感じることができました。

 そう考えますと、政府がしっかりと取り組んでいただけたらテロ支援国家指定解除の問題ももっともっと日本に有利な形で進展できるのではないかと思ったわけでありますので、ぜひとも我々訪米団でのやりとりでこういうことがあったということも改めて認識していただけたらと思います。

 それに関連して少し話をさせていただきたいんですけれども、訪米された当時、テロ支援国家指定解除は拉致問題が解決するまではすべきでないという法案を下院議会にロスレーティネンという議員さんが提出されておったわけですけれども、これに関連して、当初、共同提案者が十二名だったところ、訪米時点で二十八名までふえていたという事実がありました。

 現在米国下院議会でどのような動きになっているかということを日本政府はどういうふうに今つかんでおるかというところについて、お聞かせ願いたいと思います。

伊原政府参考人 お答えいたします。

 ロスレーティネン下院議員ほかが今決議案を提出しておりますけれども、これにつきましては、今委員御指摘のとおり、当初十三人の共同提案により提出されましたが、四日現在、その共同提案者については二十七名となっていると承知をしております。

鷲尾委員 今、これは下院で審議は始まっているんですか。

伊原政府参考人 米国下院の外交委員会等においては、この法案についていまだ実質的な審議には入っていないと承知しております。

鷲尾委員 審議されていないというのは、どういう状況で審議されていないかというのはどこまでつかんでいますか。

伊原政府参考人 この法案の動向につきましては私ども非常に大きな関心を持ってフォローしておりまして、ワシントンにある私どもの大使館が今フォローしております。その結果が、今申し上げたとおり、いまだ実質的な審議には入っていないということでございます。

 いずれにしましても、他国の議会にかかわることでありますので、私どもとしてできる範囲での情報収集はしている、その結果が今申し上げたとおりでございます。

鷲尾委員 それでは、質問を少しかえまして、先ほどもちょっと言及させていただきましたブラウンバックさんという上院議員さんが、下院議会で提出されている法案と同趣旨の法案を提出予定である、考えているという話を我々が訪米したときにおっしゃっていただいたわけです。上院で、たしかジョン・カイルさんという方と共同提案になるという話までおっしゃっていただいていましたが、その法案の、作成されているかどうかというところまで、今の上院の状況を含めて、政府、どうですか。

伊原政府参考人 今委員御指摘の、ブラウンバック上院議員がほかの議員とともに北朝鮮のテロ支援国家指定解除に関する法案の提出を検討しているということは私どもも承知しておりまして、非常に高い関心を持って今フォローしておるところでございますけれども、最新の情報によりますと、四日現在、いまだ議会に法案は提出されていないと承知しております。

鷲尾委員 ありがとうございます。提出されていないということで、どんな状況か、我々も個々で少しフォローしていきたいなというふうに思います。

 少し瑣末な話をさせていただいておるのは、我々が訪米をしたときに、下院での共同提案者が当初の十三名から二十八人にふえているということを、訪米時点では残念ながら外務省さんは把握していなかったというところがありました。この件につきまして、先ほど古屋委員の方からも、大使館の議会対策はどうなっているのかということで質問のやりとりをさせていただいたところではありますけれども、高村大臣の方から、今、議会担当として駐米大使館で四名が対策に当たっている、問題があったときは機動的に人数をやりくりしながら当たっているというお話をされてはおったんですけれども、四名というのはやはり少ないなというのが私の個人的な感想でもありますし、議会対策というのは、やはり議員さんとのある程度の人間的な関係を構築しなければうまく機能しないというのは、当然人情としてそうだと思うんです。

 そう考えますと、この四人が、どういった方が担当されているのかということも少し私は聞きたいなと思っておりまして、例えば、国会担当の今のその四名の方というのは、その担当についてからどれぐらい業務に当たっている、パーマネントでやられている四名の方というのは、どれぐらいやられている方なんでしょうかね。

伊原政府参考人 現在、四名は、公使をヘッドにチームになって活動しております。一カ所の在外公館に勤務いたします年数は、通常でございますが二年から三年でございますので、それぞれの者がいつ赴任したかということを私正確には承知しておりませんけれども、二年から三年の任期の間、議会班で仕事をするというのが通例であるかと思います。

 なお、トップであります公使につきましては、比較的最近着任したと聞いております。

鷲尾委員 そうしますと、大臣に少しお伺いしたいんですけれども、二、三年でくるくる人が入れかわるよと。幾ら日米関係、信頼関係がほかの国と比べてある程度しっかりしたものである、そういう雰囲気はあったとしても、個々の議会の対策としては、やはりちょっと入れかわりが激しいんじゃないかなと個人的には思います。

 そうしますと、四名の方が二、三年でくるくる入れかわって、四人担当して、たまにプロジェクトチームを組んで国会対策が必要だというときにやるということが本当に日本の国益を守る国会対策となり得るのかどうか、私は少し疑問があると思うんですけれども、大臣の御意見をお聞かせください。

高村国務大臣 在外公館、大体二、三年で回る、その中で議会対策も同じようにしている、こういうことでありますが、議会対策だけでなくて、もっと長くやった方がいいのではないかというポジションもあり得るとは思います。ただ、それと同時にまた、同じところに長くいさせることが問題だというケースもほかの省の次官の問題であったわけで、まあ、それとは違いますけれども、委員の御指摘も踏まえてこれからちょっと検討してみたいと思います。

鷲尾委員 先ほどの古屋委員の繰り返しになっちゃいますけれども、各国大使館がやられているようなやり方もまた参考にしながら、実効性のある国会対策。今回は我々、下院議会でロスレーティネンさんが提案した法案をできたら審議してほしいということを、下院の外交委員長のラントスさんという方に何とか会いたいということで我々行ったわけですけれども、結局会えなかった。ところが、訪米したときに面会したローラバッカーという下院議員さんが直接ラントスさんの事務所に電話をかけて、そこでラントス事務所とつながって、その政策スタッフともうぎりぎりのところで何とか面談することができたというような経緯もありますので、本当に人脈づくりというのは大事なんだなと認識しました。議員外交の重要性も当然そうですけれども、大使館の国会対策のあり方というのもぜひとも考えていただきたいと思います。

 それでは、次の質問に移りたいと思います。

 テロ支援国家指定解除をさせまいとして我々は訪米したわけですけれども、それとは別に敵国通商法の適用除外という問題もあるわけでありまして、この敵国通商法の適用除外というのが今米政府内でどういった動きになっているのか、適用除外になった場合の影響というのも教えていただきたいと思います。

高村国務大臣 対敵通商法は、敵、すなわち米国と戦争状態にある国家の政府、個人、法人等に対して適用されることになっておりますが、北朝鮮に関しては、この法に基づいて、一九五〇年十二月に米国財務省が発出した外国資産管理令により規制が実施されているもの、こういうふうに承知をしております。

 米国が北朝鮮に対する対敵通商法の適用を終了するか否かはいまだ決定されていないと承知しておりますが、仮にこの法の適用が終了した場合には、例えば二〇〇〇年の六月以前に行われた北朝鮮関連資産の凍結が解除されるものと承知をしております。

 一方、当然のことながら、対敵通商法の適用が終了した場合であっても、大量破壊兵器の不拡散に関連するものを含め、他の法令に基づく規制は残ることになります。

 いずれにしても、北朝鮮は、実質的な経済面の効果よりも、その政治的な意義を重視している面もあると我が方では考えているところでございます。

鷲尾委員 わかりました。

 ちょっと質問をかえますけれども、〇四年に国務省の年次報告の中に、テロ支援国家指定の理由に拉致が加わったというところでありますが、国務省の報道官によりますと、拉致問題とテロ支援国家指定解除の問題は必ずしも具体的には関連づけられないというお話が報道官からされているわけであります。もっと具体的に言うと、核無能力化によって解除されるということが報道官によってコメントされているわけですけれども、これは政府としてどういうふうにとらえているのか。核無能力化によって解除されると報道官が言っちゃっているわけですから、このことについてどう思われているかということをお聞きしたい。

高村国務大臣 私もいろいろ聞かれて、全体を答えないである部分を一部だけ答えて、こっちはどうなんだと後で聞かれることがありますけれども、報道官はある一面を述べられたのかなと思っているわけであります。

 確かに、アメリカは一貫してテロ支援国家指定の解除は北朝鮮の非核化が進むかどうかだと言っておりますが、一方で、ずっと前から今日に至るまで、解除の際には拉致問題を含む日朝関係の進展も考慮する、これは、ほとんどというか、ぶれていない、ずっと言っているわけです。だから、そういう場合に第一義的な部分だけに報道官が触れたこともあるかもしれませんが、その両方をずっと言っているということは変わりない、こう思っております。

鷲尾委員 それで、核無能力化によって解除されるというコメントで、ちょっと部分に入るようで恐縮ですけれども、核無能力化ということの意味がこれまたかなり問題があるんではないかと私自身は思っております。

 一九九四年の米朝枠組み合意のときも、結局、無能力化といいましょうか、開発できないようにすると言いながら再開発してしまったという事実があるわけでありまして、完全に核施設を解体してもう二度と核を持てないような状況をつくり出すということがまず非核化という意味であると思っておりますし、これができなければ、日本は安全保障上深刻な事態になりかねない。それだけが問題だとは思いませんが、核という問題に限って言えば、核施設解体、そして二度と開発できない状況にするということが当然だと思っております。

 今回のテロ支援国家指定解除の問題に関して言えば、アメリカは、この無能力化は解体ではなくて、不可逆的ということを意味しないという話をヒルさん自身が言っておるわけであります。不可逆的を意味しないというのは、これは大問題である、日本としてはとても看過できないと思うわけでありまして、これは安易に妥協してはいけないんじゃないか、日本政府、しっかり主張してもらわなきゃ困るなというふうに思っておるわけですけれども、外務大臣の意見を聞きたいと思います。

高村国務大臣 本年二月の六者会合成果文書において、二〇〇五年九月の六者会合共同声明の実施に向けた初期段階の措置として、北朝鮮による寧辺の核施設の活動停止、封印等について合意され、この措置は既に初期段階において実施されているわけであります。

 本年十月の六者会合成果文書においては、第二段階の措置として、北朝鮮がすべての核施設を無能力化することを再確認した上で、そのうち本年末までの具体的な行動として、寧辺の三施設を無能力化することになっております。

 核施設の無能力化とは、核施設を再稼働が困難な状況に置くことを指しており、北朝鮮が第二段階の具体的な非核化措置をとることを約束し、このための作業が開始されていることは、それなりの意義があると考えております。

 いずれにしても、核施設の無能力化とは、これらの施設の放棄に向けたステップの一つと位置づけられているものであります。日米ともに、核施設の無能力化にとどまることなく、共同声明に掲げられたすべての核兵器及び既存の核施設の放棄を早期に達成することが必要と考えており、引き続き他の関係国とも努力していきます。

 すべての核施設の放棄、放棄ということはもう不可逆的であります。だから、不可逆的に至るまでの第二段階。第一段階は既に行われている。もとに戻すのが不可逆的ではないけれども困難だよというところまでを第二段階、三施設については十二月末までにやろう、こういうことで、外交交渉でありますから、行動対行動で、片方が進めば片方が進む、こういうことをやっているわけで、その途中のステップにはそれなりの意味がある、こういうことだと思います。もちろん、委員がおっしゃるように、最後は不可逆的な廃棄に至る、こういうことを目指して今やっているわけであります。

鷲尾委員 おっしゃるとおり、プロセスとしてのものである。それは、米国も当然、核拡散という、いつテロリストに核兵器が渡るかわからないような状況であっては困るわけですから、廃棄というところでは日米は当然国益が一致するんでしょうけれども、私が問題視したいのは、当然プロセスである、そのプロセスによって、先ほど大臣おっしゃった行動対行動で、行動で見せなきゃいけないというところに、向こうが行動したからこっちもちょっと行動しなきゃなというときに、そのこっちのちょっとした行動がテロ支援国家指定解除というのは、余りにも代償が大き過ぎるんじゃないのと思うんですね。

 だって、やはりテロ支援国家指定解除というのも、当然、拉致というテロがずっと続いているわけですから、その途中で、先ほどほかの委員の先生方からも言及されましたけれども、それは米国政府内のいろいろな動向はあるんでしょうけれども、ただ、テロ支援国家指定を解除するというのは、テロ支援国家じゃないよということを意味するわけですからね。

 ですから、核拡散の、ちょっと時間がないのでもう言及しませんけれども、シリアの問題とか、これは北朝鮮が大分核を拡散しているんじゃないかと米国議会でもかなり問題になっている。それがまだ懸念が残る中で、さらに拉致問題で全然誠実な対応をしてくれない、こっちの言い分もほとんど聞かないような状況で、日朝平壌宣言で交渉するんだという話をされていますけれども、実際、ミサイルを何発も持って、ミサイル発射実験もしているし核実験もしているしというような国家に対して、どれほど我々が信を置けるのか。

 そういうことを考えますと、幾らプロセスで、不可逆的であることが最終的な結末であるということはわかっていても、その段階的な部分でテロ支援国家指定を解除してしまうというのは、日本にとっては余りにもダメージが大きいのではないかと懸念するところでありますので、大臣、よくよく認識していただいて、今後も交渉を続けていただきたいと思います。

高村国務大臣 私の認識と委員の認識がそう離れているとは思っておりません。アメリカはそういうふうに認識しているということを申し上げた。

鷲尾委員 でも、これは、アメリカの認識も何とか変えていかなきゃいけない。アメリカの認識を変えるために私が必要だなと思ったのが、きょう冒頭申し上げた駐米大使館の国会対策、あわせまして我々の議員外交ではないかなというふうに思っておりますので、大臣、早急にこの問題は、慰安婦の決議の問題もありました。私、米国議会に行ったときに、慰安婦の決議の問題はもしかしたら避けられたんじゃないかなという印象も持ち得ました。それぐらい大使館の体制というのは、いや、精いっぱい対応してくれたというのは当然わかっています。福田総理が訪米する間近で、我々拉致議連として行ったときに精いっぱいの対応をしていただいたことも言及させていただきますけれども、それでもなお構造的に弱い。その弱さを何とか、大臣、音頭をとって強化していただきたいと思います。

 これで質問を終わります。ありがとうございました。

近藤(基)委員長代理 次に、松原仁君。

松原委員 この拉致の問題に関して何回もこの場でも質問をさせていただいておりますが、きょうは、去る十一月の十四日から、拉致議連というものが御案内のとおりあるわけでして、そこの有志が、平沼赳夫会長を中心として、超党派で米国を訪問いたしました。その結果も踏まえながら質疑をしていきたいと思います。

 まず冒頭、先ほど米国の「北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除」の動きに反対する決議というものが採択をされたわけであります。案文の最後には、「拉致被害者全員を一刻も早く救出するために、特に、日米関係の重大さに鑑み、日本政府は米国が「北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除」をしないよう、最大限の外交努力を尽くすべきである。」と書いてあるわけでありまして、その後は、こういった決議としては極めて異例かもしれませんが、「米国におかれても、かかる観点から「北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除」をしない方針を堅持され」たいという要望がなされたわけであります。

 この決議を受けて、何か具体的な、こういったことをしようとか、決議を受けての思いがあれば、これは町村官房長官にお伺いしたいわけであります。

    〔近藤(基)委員長代理退席、委員長着席〕

町村国務大臣 大変重要な決議を委員会の意思として表明していただいたわけでございます。これに対して先ほど外務大臣の方から、しっかりとして、これをいただきながら、政府として全力を挙げて取り組む、こういう考え方を示したわけでございます。

 今後、いろいろな形での北朝鮮との接触、また同時にアメリカとの接触もあるわけでございまして、そういう機会を活用いたしまして、この決議の趣旨に沿うべく全力を挙げてまいりたい、こう思っております。

松原委員 すぐに始まる協議がもうそこまで来ているわけでありまして、この決議をきちっとその協議の中にも、どういう形であろうかアピールをしていただきたいと思いますが、高村外務大臣、直接御本人が云々ということではないかもしれませんが、所管大臣として、六カ国協議に対して、この決議、どんなふうに扱いたいか、もし何か思うところがあれば御発言をいただきたいと思います。

高村国務大臣 六カ国協議だけでなくて、あらゆる機会をとらえて国際的にも働きかけていき、もちろん北朝鮮に対しては強く申し上げる。それから、この決議そのものはアメリカとの関係が深いわけでありますから、アメリカに対しても言うべきことはこれからも言っていきたい、こういうふうに思っております。

松原委員 この決議を米語、アメリカ語に翻訳して速やかに届けるというのは、これは議会サイドの動きだろうと思っております。その点に関しては、委員長が恐らく理事会でも御一任を受けているというふうに思っておりますが、今の委員長の御決意をお伺いしたいと思います。

山本委員長 かたい決意を持って取り組ませていただきます。

松原委員 真剣にかたい決意を持って取り組んでいただかなければいけないと思っているわけであります。

 さて、これは我々議連が中心となって訪米をしたわけであります。ちょうど時あたかも福田さんが総理大臣としてワシントンを訪問するときとたまたま時期が一緒になったわけでありますが、我々は議連として行ったわけでありまして、その中で、アメリカの上院、下院、また大統領府の関係各位ともいろいろなことを議論してまいりました。

 冒頭、我々がこういった活動をしたことに対して、特に政府はどんな御感想をお持ちなのか、町村官房長官にお伺いをしたい。

町村国務大臣 日本国を代表される国会議員の皆様方が、これまでも拉致議連等々いろいろな形でこの問題の解決に御努力をされてきた、そうした経験を踏まえながら、また拉致の被害を受けた方々、御家族の方々のお気持ちも体しながら、また全国民の輿望を担って、先方の政府あるいはアメリカの議会筋の方々、有力な方々にその思いを十分お伝えいただくということは、私は大変意義あることだ、こう思っております。

 またそうした皆さん方の御努力が十分な成果を上げられるように、政府も相まって力を尽くしていかなければいけない、このように受けとめ、大変皆様方の御努力に対して高く評価をさせていただきたいと思っております。

松原委員 今回の決議を上げる引き金の一つは、私は、今回の米側の北朝鮮テロ支援国家指定解除をする前夜のような報道が日本のマスコミをずっとにぎわせていた。我々はこれに大変な危機感を覚えて行動を起こした。そして、我々はこの決議を上げることによって、今回の米側の、特に下院では、女性下院議員であるロスレーティネンさんが決議を、法案をつくっている、それに対して日本の方が何も呼応しないのでは、それは当該国日本でありますから、我が国の拉致特として決議を上げる。また、ブラウンバックさんが上院で、まだ上がっていないようでありますが、決議をまた上げてもらいたい、法案を出してもらいたい、そういったことを促す意味も含めて、私はこういった決議を我々もまず帰国して上げようではないかという思いがあったわけであります。

 私は、そういった意味で、これから質疑に入っていくわけでありますが、今回のこの訪米の中で、いろいろなことを我々は認識し、また考えることができたわけであります。アメリカ全体の中でこの問題に対しての認識がどうあるかというよりは、今のライス・ヒル・ラインと言われるこの交渉担当者の立ち位置というものに関して私たちは勉強してきたわけであります。

 ブラウンバックさん、上院議員でありますが、彼が言っていたのは、どうも現場の交渉担当者が、日本語で言うと、前のめりになっているのではないか、こういうふうなことをおっしゃったわけであります。前のめりになっているというのは、平たく言えば、現場における一つの実績をつくるということに対して非常に熱心である、それは、しかしながら、時として大局を逸する、見逃す場合もあるわけであります。

 実は、訪米した二日目に、クリストファー・ヒルさんと我々議連は会って議論をしたわけであります。私は、そのとき、クリストファー・ヒルさんとの議論で、我々は常に、先ほど古屋議員からも御指摘があった三つの点を言ってきた。

 一つは、アメリカのテロ支援国家指定がされているのは三つある、なぜその中で北朝鮮だけが、シリアとの関連等も言われる中で解除をされるのか。

 二つ目は、御案内のとおり、報告書の中においては拉致がテロ支援国家指定の要件の一つに書かれているが、拉致の問題を置き去りにしてテロ支援国家指定解除をするというのは、これはいかがなものなのか、どういうお考えか。

 そして三つ目が、極めて技術的な話になるわけでありますが、米国の国内法において、半年間テロ行為をしていない国はテロ支援国家指定解除の要件が満たされる、こういう議論になっているわけであります。

 私は、クリストファー・ヒルさんに対して、私の考えが間違っているんだったら間違っていると指摘してほしいと言って議論をいたしました。我々は、北朝鮮はこの半年間の間にテロをしていると考えている、拉致被害者が日本に戻ってこない限りにおいて日々テロをされているという認識を持っている、日本に来られたアーミテージさんもそのようなことを言っていると認識をしている、拉致をテロであると。まあ、日本の国内では、当時、川口外務大臣が、拉致はテロではありませんみたいな話をしていたような記憶もあります。はっきり覚えておりません。しかし、拉致はテロだとアーミテージさんは言った。現在進行形のテロである、今私が言っているような意味において、現在進行形のテロであると言った。

 このことに関して、私たちはそう思っているけれども、したがって北朝鮮はこの半年の間もテロをし続けていると我々は認識をしているけれども、この認識は間違っていますかとクリストファー・ヒルに対して私は聞きました。彼は、間違っているとも間違っていないとも答えなかった。彼はこう言ったんです、それを判断するのはブッシュ大統領だと。

 私は極めて遺憾でありました。判断するのがブッシュ大統領であろうと、現場の責任者が、この問題に対して自分の意見はどうなんだと、いや、北朝鮮はテロを半年間やっているんだという認識を持っているのか持っていないのかはっきり言わないでどうやってそんな交渉をするんだと、私は歯ぎしりをした思いがあるわけであります。

 私はここでお伺いしたいわけでありますが、日本の政府は、北朝鮮はこの半年間拉致被害者を日本に帰さないという意味でテロをし続けているという御認識をお持ちかどうか、お伺いしたい。

高村国務大臣 拉致被害者が帰ってこない以上、テロは継続していると私は思っております。

 私個人は、拉致は国家テロだ、しかも、現在進行形という言葉は使わなかったけれども、それは継続中のテロであるというのは、多分アーミテージさんより先に言っていると思います。

松原委員 極めて、外務大臣の発言として私は尊重したいし、重いと思っております。

 日本政府は、北朝鮮はこの半年間拉致というテロを継続している、北朝鮮はテロをしているということを今外務大臣はおっしゃったわけであります。であるならば、北朝鮮のテロ支援国家指定解除のアメリカの国内法の要件は半年間テロをしていないということでありますから、この要件は、他の国の法律でありますからどこまでコメントできるかは非常に微妙かもしれませんが、少なくとも我々の認識では北朝鮮はテロをしているから、この国内法のテロ支援国家指定解除の要件は満たされていない、外務大臣、こういうふうにおっしゃっていただきたい。

高村国務大臣 アメリカの法令について日本国外務大臣がこうだああだと言うのは、これは僣越だと思います。我が国憲法九条の解釈はこうだとアメリカの政府から言われたら、私は非常に不愉快であります。それは、我々政府の人間として、アメリカの法律自体の解釈をどうだということは申しません。

 ただ、私個人が一般的な感覚として、拉致は国家テロですね、そして今も解決していない以上はその状態は続いていますね、こういう意識を持っているということを申し上げたんです。

松原委員 極めて、それはそういう答弁だろうと思いますが。

 官房長官、官房長官は、北朝鮮がこの半年間テロをし続けている、テロを継続しているという認識を外務大臣と同じように共有しているかどうか、お伺いいたしたい。

町村国務大臣 共有しております。

松原委員 これで米国が北朝鮮のテロ支援国家指定を解除することになれば、解除するまでの段階でこれは要件に当てはまっているとか当てはまっていないとかというのは、これは海外のそういった事例に対する内政の問題かもしれないけれども、それを解除したということになれば、少なくとも日本人拉致被害のことを称してアーミテージさんも言っている以上、それは我々としては看過できない、こういうことでよろしいですか、外務大臣。

高村国務大臣 この問題については、私たちは私たちの認識を持ってアメリカ側と緊密に協議をしております。

松原委員 ということは、アメリカに対して、日本側は北朝鮮はこの半年間もテロをし続けていると思うと、これは外交交渉の中で。国内法で、あなたの国内法に書いてあるこれには該当するじゃないか、しないじゃないかというのは言えないかもしれない。しかし、外交交渉においては、我が国の認識は、北朝鮮はテロを今もし続けているということはきちっと米側には伝えてあるわけですか。お伺いしたい。

高村国務大臣 個々のやりとりを申し上げるというつもりはありませんが、私はそういう、私が申し上げたような意識を持ってアメリカ側といろいろ話をしているところでございます。

松原委員 どうも、意識を持ってとか水面下でとかそういうことを言われても、やはり水面の上でやってもらわなきゃしようがないんじゃないかと私は思うんですよ。

 申し上げたいことは、私はクリストファー・ヒルさんとの話で、我々は、拉致は継続するテロである、私たちは議員外交だから、ずばり歯にきぬ着せずクリストファー・ヒルさんに言わせてもらいましたよ。北朝鮮がこの半年間テロをしていないとすれば、米国の国内法において半年間テロをしていないということで国家指定解除の要件があるかもしれないけれども、我々はしていると思っているんだ、どう思っているんだと。

 僕はしかし、少なくとも日本がそういうふうな、けんか腰かどうかは別にして、そういう議論をしろとはそこは言いませんよ。高村さんと私では若干野蛮な部分が違うかもしれない。しかし、私が申し上げたいことは、少なくとも政府の認識としてそうだということは、意識で持っているんじゃなくて、言ってもらわなければわからないと思うんですよ。それは明言はしてはいないということですね。

高村国務大臣 私は八年前に外務大臣として、八年か九年前かどちらかちょっとわかりませんが、アメリカの政府高官に対して拉致はテロであるとはっきり言ったことはございます。最近の一々のやりとりは申し上げません。

松原委員 はっきりと言ってもらった方が日本国民も納得しますよ。きょうは傍聴席にも家族会の方も来ているけれども、納得しますよ。政府がそこまで毅然として言うことを言う。やはり米側は、日本は拉致のことも世論の中で昔のような扱いにはなっていない、こういう報告がもしかしたら上がっているかもしれないじゃないですか。そうした中で、我々議連が行って議論したことは非常に意味があったと思うんですが、どちらにしても、やはり明快に言葉に出して米側にそれは伝える必要があると私は思うんですが、それはお約束いただけませんか。

高村国務大臣 アメリカは、日本が拉致をテロだと思っているということは十分認識をしております。十分認識をしている。これがテロでないと思っていたら、よその国に対してこれを解除するななんということを言える立場にないんですよ、はっきり言って。これがテロだと思っているから言うんじゃないですか。そんなことはアメリカは十分わかっているんです。

松原委員 私が聞いていることは違うんですよ。我々の認識では、北朝鮮は半年間テロをし続けているという認識を率直に伝える思いはありますかと聞いているんですよ。拉致がテロであるということは今共通認識になっているから、それはアメリカの報告書の中にも条件の一つになっているわけですよ。今外務大臣はこの半年間もテロをやっているんだと、私はよくぞ言っていただいたと思っている。北朝鮮は今も拉致をし続けている、この今の委員会のやりとりをアメリカの上院や下院やブッシュさんが見れば、なるほど日本はそういう意識かと思うでしょうが、それはそこまで見るかどうかわかりませんから。

 外務大臣が、半年間北朝鮮はテロをしていると思うということを、それをどう判断するかはあとはあなた方ですよ、日本側はそういうふうに思っていますよということを率直に、こういうふうな議論が米国でも起こっている段階において、クリストファー・ヒルさんがそういう方向に進めようとしているように見える段階において、私はそれを率直に伝えるべきだと思っているんですよ。御答弁いただきたい。

高村国務大臣 私の性格からいって、公のところで言う以上のことは水面下で言っていますよ。それを公でこう言うああ言うということを言うことは、余り好ましいことではない。御理解いただけないでしょうが、私はそういう外交スタンスでございますから、御理解ください。

松原委員 言っているんでしょう、そうしたら。そういうふうに理解したい。

 しかし、外務大臣、表立って言わなかったら私はだめだろうと思う。それを表立って言うがゆえに物事ははっきりするし、水面下でやってきて今までどれほどの成功をしたんだということを私は言いたい。はっきりと表立って言う。

 それは、外交というのは、私、日本人一人一人のいわゆる誇りにもかかわることですから、そこまできちっと日本の外務省は言っているんだと。アメリカだって、今言ったようにアーミテージが言った話でありますから、それは表立って言ってほしい。それは、大臣に無理やりアメリカに行って言えと、そんなことはできませんよ、個人の自由意思の中での話だから。しかし、それを表立って言ってもらいたいということを申し上げる次第であります。

 次の質問に移ります。

 今回の議論で、北朝鮮の今のスタンスというものは単に拉致の問題だけではない……。

 これをちょっと一つ聞いておこう。

 北朝鮮は拉致は解決済みだと言っているけれども、アメリカは拉致は解決済みじゃないという認識を持っているということは、これは当然確信を持っていると思うんですね。その中において、この拉致問題の解決というのは、拉致を指示した実行犯というのは、何回も聞いた話でありますが、だれが拉致を実行させたか。さっき外務大臣は国家テロだと言った。国家テロを実行できるのは国家の最高権力者しかないんですよ。国家テロだと言った拉致を北朝鮮のだれが指示したか、おっしゃっていただきたい。

高村国務大臣 今一番大切なのは、拉致された人を全部日本に帰すことが一番大切なんですよ。それに対して、私は、どういうふうに行動しどういうふうなことを言ったら一番いいか、判断しながら申し上げます。

 だれが指示したか、私にはわかりません。

松原委員 この問題は、北朝鮮というのは、今までうその死亡診断書は出してきたし、さっきの鷲尾議員の議論じゃないけれども、枠組み合意もうそを言った。私は、極端なことを言えば、だまされるのがわかっていて交渉している人たちも中にはいるかもしれぬと思う。

 これから、ちょっと時間がなくなってきたけれども、不可逆的が無能力化になった、ハードルをそこまで下げている。もちろん、その後があるんですよと言うけれども、その後はこんなものはどうなるかわからない。ハードルを下げるということを平然と米側も、クリストファー・ヒルはやってきた。さすがに、さっきのブラウンバックさんの話じゃないけれども、本人たちがとにかく一つの成果を得ようという前のめりの姿勢が、それは議会から見たって、ちょっとあれじゃないか、こんなのでまただまされるのか、こういう話ですよ。だから、この問題に対してはハードルをもう一回上げた方がいい、こういうふうな話になっているわけであります。

 ちょっと時間がなくなってきたので、いろいろと話を進めてまいりますが、北朝鮮がこういうふうな核を持っていますと当初申告をするわけでありますね。この申告の信憑性をどのようにして証明するのか、どのようにして証明された申告を日本国民は了解するのか、お伺いしたい。

高村国務大臣 これはそう簡単な話ではないと私も認識しておりますが、アメリカが一番そういう知見を持っていると思いますが日本も全然持っていないわけではない、そういう中で五カ国が検証して、そしてこれが完全か完全でないか判断していく。

 御質問がどういうふうに検証するんだと言っているのに、答えていないじゃないかと言うかもしれませんが、それはなかなか、私が今ここで、こういうふうに検証すると言えるような話じゃないでしょう。

松原委員 それをお笑いになりながら答弁するということが間違っていますよ。

 では、一つ質問したい。

 北朝鮮は核爆弾を持っているということを表明しているかどうか、現状。事務方でいいですよ。

高村国務大臣 北朝鮮は、二〇〇五年二月に北朝鮮外務省声明を発出し、核兵器を製造した旨の宣言を行い、また二〇〇六年十月には核実験実施の発表を行う等、北朝鮮は核兵器を保有していることを示す行動をとってきております。

 政府としては、北朝鮮が極めて閉鎖的な体制をとっていることもあり、北朝鮮の核開発能力に関し断定的なことは申し上げられませんが、既に核兵器計画が相当に進んでいる可能性を排除することはできないものと認識をしているわけであります。

松原委員 北朝鮮が、申告で、こういうものを持っています、これをなくしますとか無能力化しますとかと。その中に核兵器が入っていないということが仮にあったとしたら、それはうそである、こういうふうに普通は認識するわけでありますが、大臣はいかがですか。

高村国務大臣 今の時点で私がどうということは申し上げられませんが、まさに専門家が、アメリカ含め、日本の専門家も含めて、五カ国の専門家がそういうことをきっちり検証する、こういうことでございます。

松原委員 専門家が自分の意思で自由に北朝鮮を歩けるわけじゃない。北朝鮮が、ここに核があります、核関連施設がありますと言うところしか行けないわけであります。

 こういうものを、常にうそをつき続けてきた国家のそういう挙動を信ずるということは、それはできないですよね。初めから、だまされていいよ、今回はひとつまたもう一回北朝鮮に担がれてみようか、そう思っているんだったらそれはやればいい。しかし、日本の場合は直接我が国の安全保障に極めて甚大な影響があるわけですから、それはそうはいかないわけですよ。申告が正しいという証明をどのようにするか、このことについてアメリカとは議論していますか。

新保政府参考人 この問題につきましては、先ほど大臣から申し上げましたように、まず北朝鮮からの申告を待つということになりますが、それについてどのように検証していくかということについてはさまざまな場面で議論はしております。ただ、その内容についてはここで申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。

松原委員 大体、死亡診断書だって全部うそだったんだから、この申告を信じろという方が難しい、どういう申告がなされるかわからないから。そのうそと極めて思われる申告を信じて議論すること自体、土台が腐っているんだから話はうまくいくはずがない、率直に私はそう思うわけであります。

 そういう議論をする中において、どのようにして拉致問題を解決するんだ。北朝鮮は一貫して拉致はもう決着済みだと今言っている。今回、北朝鮮テロ支援国家指定解除が、それはきょうの決議もあるでしょう、我々議連も訪米をしていろいろと活動したこともある、そういうことを通して踏みとどまればいいですよ。しかし、これが逆に解除されてしまったら、米側も日本に対して、テロの問題に、拉致というものはもう半分解決をされたんだよというような国際的なメッセージの発信になってしまう。それはやはり阻止しなければいけないと思ったわけであります。

 時間も大分なくなってきたわけでありますけれども、私は、この中において、やはり不可逆的という言葉はずっとボルトンさんの時代から使われていた、無能力化になった瞬間に、事前に米側から日本に相談があったのかどうか、ちょっとこれをお伺いしたい。もう時間がないから簡潔にお願いします。

高村国務大臣 不可逆的が無能力化に変わったんじゃないんですよ。我々は、北朝鮮を除く五カ国とも、最終的には廃棄を求めているんですよ。その途中の段階で、第二段階において無能力化をやるということなんですよ。

 先ほどから委員が言っていることは、北朝鮮と交渉するなんて全く無意味なことだということをおっしゃっているのに等しいことを先ほどから言っていますけれども、そういう立場なんですか。立場をちょっとはっきりさせて聞いていただきたいと思います。

松原委員 私は、交渉することが無意味だなんて言っていないですよ。いいですか、問題は、どのようにして申告を正しいと認識するかという検証のあり方はアメリカがやっていることだ、そんな他人任せはないということを言っているんですよ。我が国として、少なくとも、どういうふうにやるなら、日本としてはその申告をある程度認めようとするのかという議論すら今行われていないでしょう。そういう議論が行われているんですか。私は、交渉が無意味なんて言っていないですよ。今まで北朝鮮は、死亡診断書だって何だってインチキを上げてきたじゃないか。だから、申告を素直に待っていてという議論じゃないということを言っているんですよ。

 それから、今、無能力化と不可逆的ということは、第一義的に不可逆的という文字が従来は出ていたんですよ。最終的には完全な廃棄かもしれないけれども、第一段階においてそこまで緩めてしまうということは外交上よろしくないと私は思っている。少なくとも、アメリカ側から不可逆的を無能力化でいいですかと言われたときに、ちょっと待てよと。まあ、説明があったかどうかというのを私はまず聞きたいですけれども。従来はそういうふうに不可逆的と言っていたんだから。

 ちょっと時間がなくなってしまったから、これ以上言うと委員長に申しわけないから言わないけれども、私はもうちょっと日本側の国益をめり張りつけていってほしいということを申し上げて、私の質問を終わります。

 以上です。

山本委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 ことし十月の六カ国協議では、北朝鮮が年末までに核施設の無能力化と核計画の完全申告を柱とする次の段階の措置を行うということが合意をされて、最近でも日本代表を含めた核施設調査が進められるなど、朝鮮半島の非核化に向けた新しい動きが進んでいると私は見ております。もちろん紆余曲折はありますけれども、このことは極めて重要だと考えます。

 そこで、外務省に伺いたいんですが、六カ国協議の首席代表の佐々江局長は、去る十一月二十八日、ヒル米国務次官補と会談を行いました。その際に、米朝、日朝の二国間協議について、バランスよく進めていくことが重要だとして、非核化と拉致問題、この取り組みを同時並行で進めるべきとの認識で一致したということであります。

 ヒル次官補との間で具体的にどのような意見が交わされて、またどのような認識の一致を見たのか、これは交渉事にもかかわりますけれども、可能な範囲で説明していただきたいと思いますが、いかがですか。

伊原政府参考人 先月二十八日に、佐々江アジア大洋州局長は、来日しましたヒル米国務次官補との間で、今御指摘のような朝鮮半島の非核化の現状、それから六者会合の今後の取り進め方等について協議をいたしました。

 その際、非核化や米朝関係とともに、日朝関係についても前進させることが重要だということで認識の一致がございました。そして、六者会合共同声明、これは二〇〇五年の九月の共同声明でございますけれども、これを全体としてバランスよく実施していくべく、引き続き日米間で緊密に連携していこうということを確認したわけであります。

 その際、佐々江局長からは、拉致問題を含む諸懸案、それから不幸な過去の清算に関する日朝協議の現状についてヒル次官補に対して説明をいたしまして、ヒル次官補の方からは、日朝関係が進展するように引き続き米国としても北朝鮮側に働きかけていきたいという御発言があると同時に、今後日朝関係が進展していくことについての米国としての期待感の表明がございました。

 また、テロ支援国家指定解除の問題につきましても、先般の福田総理の訪米時の日米首脳会談の議論を踏まえまして、今後とも引き続き日米間で連携をしていくということを確認しております。

笠井委員 ヒル次官補は佐々江局長との会談の後で、核計画の完全申告について、完全ではなかったからといって北朝鮮側と非難合戦をするのは好ましくない、そこからさらに協議に取り組んでいくことになるんだというふうに述べている。これは、北朝鮮側が近く示す申告草案に問題があったとしても、その不備を指摘して完全な申告につなげていく、そういう意思を明らかにしたものと思うんですけれども、外務省ではこのヒル次官補の発言をどう見ているでしょうか。

伊原政府参考人 北朝鮮による申告の具体的な内容につきましては、実は私どもまだ全く承知しておりません。これについては北朝鮮による申告の提出をまず待つ必要があるというふうに考えております。

 十月の六者会合の成果文書におきましては、委員も御案内のとおり、北朝鮮は本年末までにすべての核計画の完全かつ正確な申告を行うということに合意をしておりまして、私どもとしてはこの合意が着実に実施されることが重要であるというふうに考えております。

 北朝鮮からまず申告の第一案のようなものが出てくるんだろうと思いますけれども、その申告の取り扱いの詳細につきましては今後六者の間で調整されていくということになろうかと思いますけれども、重要なことは、この申告によって北朝鮮の核計画の全容が明らかになって、すべての核兵器及び既存の核計画の放棄という二〇〇五年の共同声明の目的を実現することにつながっていくということであると思っております。

 したがって、その申告においては、核兵器の計画、それからプルトニウムの計画、それから疑惑のありますウラン濃縮の問題、こういった分野が包括的に取り扱われる必要があるというふうに考えております。

笠井委員 そうした米側、ヒル次官補の姿勢にも示されるように、米国は単に米朝関係を進めるというだけじゃなくて、六カ国協議での合意を踏まえて、対話による解決を一歩一歩前進をさせて成果を上げることを追求される立場を堅持していると思います。テロ支援国家指定解除の問題も、六カ国協議の二月、十月の合意に基づいて、北朝鮮の非核化のための一連の措置への対応措置として検討されているものであります。

 そこで、高村大臣、私、大事なことは、今、日朝平壌宣言、それから六カ国協議の合意に基づいて、核問題、拉致問題、過去の清算問題なども包括的に解決するべく、日本政府として主体的な外交戦略を打ち立てて解決に当たるというところが一番のポイントだというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

高村国務大臣 日本政府は主体的に外交戦略を打ち立てて今やっております。まさに福田総理がおっしゃっているように、拉致問題、そして過去の清算の問題、そういったことを包括的に解決して、そして国交正常化を図りたい、そして、その道と、核、ミサイルの問題、これも包括的に解決していく、こういうことでありますから、まさに主体的にやっていますよ。

笠井委員 一刻も早く解決が求められる拉致問題の解決も、政府として、やはり他人任せじゃなくて、まさに今主体的にと言われましたけれども、解決のための主体的戦略、私はもっと明確なものが必要だというふうに思うんです。六カ国協議の合意に即して現実に進んでいる核問題で積極的な役割を発揮するということ自体も大きな意味を持ってくると思うんです。

 その点で、高村大臣、もう一点なんですが、主体的に持っていらっしゃるというふうにおっしゃったんだけれども、例えば核問題での道理ある解決が、これが図られるならば、それは拉致問題の解決に向けての進展の道も開いていく、そういう状況が開いていく、そしてそっちへつながっていくということにもなると思うんですけれども、そういう展望を持って今当たられているのかどうか、その辺についてはいかがでしょうか。

高村国務大臣 拉致の問題、核の問題、ミサイルの問題、こういうものがバランスよく進んでいくことがいいことだ、こういうふうに思っております。

 日本としては、核の問題が進むことは、それは結構な話だ、こう思いますし、ミサイルの問題が進むことも結構なことだと思いますが、拉致の問題とバランスよく進めていく、日朝関係もおくれないようにしていきたい、こういうふうに思っております。

笠井委員 福田総理は、十月四日、本会議での答弁の中で、日朝平壌宣言にのっとって、不幸な過去を清算して、そして核問題、拉致、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決をし国交正常化を実現する、そして今後とも朝鮮半島の非核化と拉致問題を含む日朝関係の双方がともに前進するように最大限の努力を行っていくというふうに態度を表明されました。

 そこで、官房長官に伺いたいんですが、先ほど来の議論もあります、そして、私も核問題での今の六者会合、六カ国協議の議論についての到達点その他も伺ってきたわけですけれども、現時点で、総理が十月四日に本会議でも表明されたようなそういう立場を日本政府が貫いて、諸課題の解決に努力するというのは、これはますますいよいよ大事になっていると思うんですけれども、その辺で、主体的外交の姿という問題も含めて、官房長官としてはどういう点が特に今大事になっているというふうにお考えか、考えを伺いたいと思うんですが、いかがでしょうか。

町村国務大臣 今委員お話しのとおり、十月四日の衆議院予算委員会で、志位議員に対するお答え……(笠井委員「本会議です」と呼ぶ)本会議ですか、どうも失礼しました、総理が答弁をしたその考えが日本政府の考えそのものでございますし、その方針にのっとっていろいろな分野で今取り組みをしているところでございます。

 日朝間の交渉、今は六者協議のフレームの中で行われているわけでございまして、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、やはり日朝単独でほかの一切のフレームワークなしでやる場合と、この六者の中でやる場合のプラスの面が明らかにあるんだろうと私は思っております。それはアメリカ側の力、あるいは最もある意味では影響力のある中国の力、そうした国々の北朝鮮に対する圧力あるいは説得というようなものが拉致問題の解決にとってプラスの要因として働いてくることは間違いがない、私はこう思っております。

 だからこそ私どもは、この六者協議のフレームの中で、その中の五つの作業部会の一つとしてこの日朝の作業部会というものがあるわけでございまして、その中で、先ほどの福田総理が申し上げました基本方針にのっとってしっかりと取り組んでいかなければいけない、こう思っているところであります。

笠井委員 今官房長官が言われました六者会合の枠組みというのは、私も極めて大事なものだと思うんです。そういう中で各国がそれぞれ役割を果たす、とりわけ日本という国の役割というのは非常に大きなものが求められているし、全体の中でも本当に役割の発揮が大事だということだと思います。先ほど主体的にされているというふうにお話ありましたけれども、やはり主体的戦略を持って、そういうことでより役割を発揮するという点で、ぜひ日本が包括的解決という点でこの問題もきちっと我が国自身の問題として取り組んでいくことが大事だということを痛感しておりますので、このことを強調して質問を終わりたいと思います。

山本委員長 次に、葉梨康弘君。

葉梨委員 自民党の葉梨康弘です。

 官房長官、質問を最初用意していたんですが、記者会見ということで、どうぞ御退席されて結構でございます。時間があと一分しかございませんから、先に前ぶれを申し上げていますと二、三分たってしまいますので、どうぞ。

 先ほど、米国の「北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除」の動きに反対する決議、これが決議されたわけですけれども、この決議がされたということにとどまることなく、やはり拉致問題に関しては国際的な理解と協力を醸成するためにあらゆる活動を行っていかなければならないというふうに考えています。

 そこで、きょうは二つの点から議論をしていきたいと思うんです。

 まず、北朝鮮当局による拉致問題は、この決議にもありますけれども、明らかに日本人を標的とした国際テロ行為である、このことの認識は皆さん共有していると思います。そして、諸外国の理解と協力を求めながら拉致問題の解決を図っていくためには、我が国が国際テロの問題、とりわけ日本人が標的となったほかの国際テロの問題についても毅然とした態度を示すことが私は極めて重要であると思います。本日は、このような観点から議論を進めさせていただきたいと思います。

 平成十三年九月十一日、ニューヨークにおいてワールド・トレード・センターに対するテロ行為が行われました。テロの標的となった世界貿易センタービル、ここには幾つの日本企業が所在して、何人の日本人が働いていたのか。概数でも結構ですけれども、お答えを願いたいと思います。

谷崎政府参考人 御質問がございました二〇〇一年九月十一日の米国同時多発テロ事件の発生当時、世界貿易センタービルでございますが、ここには約二十社の日系企業がございました。同センタービルに当時勤務しておりました日本人の総数でございますけれども、約三百五十名でございます。

葉梨委員 今お話ございましたように、九・一一テロというのは、明らかに日本企業が所在していることがわかっており、さらにはそこに日本人が働いていることが明らかである建物に対しての殺りく行為が行われたということです。

 そこで、法律関係、一般論で結構ですが、お伺いをしたいと思います。

 ある建物をねらって飛行機を衝突させることにより建物内の人間を殺害する行為は我が国の刑法では殺人罪を構成すると考えますけれども、いかがでございましょう。

三浦政府参考人 犯罪の成否に関するお尋ねでございますが、犯罪の成否は個別の事案に関して収集された証拠に基づいて判断されるということでございますので、あくまでも一般論でお答えをするということでありますけれども、一般に殺人罪は殺人の故意を持って人を殺したという場合に成立するというものでございますので、御指摘のような場合につきましても、殺人の故意を持ってそのような形で人を殺害したということでありますれば、殺人罪が成立することになろうかと考えております。

葉梨委員 次に、法律関係です。

 外国人による国外犯の問題についてお尋ねを申し上げたいと思います。

 九・一一テロが敢行されました平成十三年当時、実は我が国の刑法においては外国人による国外犯という規定は設けられていなかったと承知しています。ただ、その後、平成十五年の刑法改正によってこの規定が設けられました。

 仮に今、九・一一テロのように行為者が外国人でかつ犯行地が外国であっても日本人をねらった殺人罪については、我が国の刑法により処罰することができると考えますけれども、いかがでしょうか。

三浦政府参考人 御指摘のように平成十五年の刑法改正によりまして、刑法に三条の二という規定が設けられました。これは、日本国外において日本国民に対してこの条に掲げる罪を犯した日本国民以外の者に対しても刑法が適用できるということを規定したものでございまして、その条には殺人罪が掲げられているところでございます。

 したがいまして、一般論として申し上げますと、日本国民以外の者が日本国外において日本人に対して殺人の罪を犯した場合には、刑法百九十九条が適用されるものと考えております。

葉梨委員 現行の日本の刑法体系においては、このような九・一一テロのような行為については、日本国民が明らかな標的として殺されている以上、現在これが起これば、我が国の刑法でも処罰しなければならない行為であるということがわかりました。

 そして、我が国の刑法において実行行為者に殺人行為を命令した者についても当然殺人罪が成立すると考えますが、いかがでしょうか、法務省。

三浦政府参考人 このお尋ねも一般論でお答えするわけでございますが、刑法六十条という規定がございまして、「二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。」という規定がございます。そして、いわゆる共謀共同正犯というふうに認められる場合には、実行行為を行わなかった共謀者についてもこの刑法六十条の共同正犯として処罰されることになるというものでございます。

 したがいまして、御指摘のような場合、この共謀共同正犯に当たる場合には殺人罪が成立することになるというふうに考えております。

葉梨委員 それでは、外務省にお尋ねします。

 九・一一テロにおいて何人の日本人が殺害されましたでしょうか。

谷崎政府参考人 御質問の九・一一テロで犠牲になった日本人の数でございますけれども、直接御遺体が確認された方が十三名おられます。それから、米国の裁判所でいわゆる死亡宣告がなされた方が十一名でございまして、合計二十四名が犠牲になっておられます。

葉梨委員 ただ、我が国の憲法は罪刑法定主義をとっておりますので、なかなか刑事法の遡及適用というのはできないわけですけれども、今現在でも、二十四名以外の方でも非常なトラウマで苦しんでいる方がたくさんいらっしゃるわけです。平成十五年の刑法改正というのは、今仮に九・一一テロのような行為が発生すれば、我が国は我が国の国民を守るためにビンラディンを日本の裁判所に引っ張り出す、そういうことを宣言している法改正でもあるということを思います。そのビンラディン、今でも健在ということなんですけれども。

 次に、拉致問題に関する法的評価についてお伺いします。

 我が国の国内を犯行地とする拉致については、外国人が行為者であっても、当然、刑法による処罰の対象になります。また、日本人が外国で拉致を起こしたよど号犯のような場合も、国際手配の対象となっております。ただ、十七名と認定される拉致被害者の中には、どうも外国人が外国でやったと疑われる可能性のある方もいらっしゃいます。

 平成十五年の法改正以降は、国外を犯行地とする外国人を行為者とする日本人に対する誘拐犯等についても、我が国の刑法で処罰することができるようになったと考えますけれども、いかがでしょうか。

三浦政府参考人 御指摘のように、平成十五年の改正によります刑法三条の二につきましては、その中で、殺人罪のほかに誘拐罪等も掲げられているところでございます。

 したがいまして、一般論として申し上げますと、日本国民以外の者が日本国外において日本人に対して誘拐罪等を犯した場合には、刑法二百二十四条以下の誘拐罪等が適用されるというふうに考えております。

葉梨委員 拉致の被害者というのが確定していないという話はこの委員会でも最前来あったわけですけれども、たとえ外国におって外国人に拉致されたという方であったとしても、やはり我々は、そういうような拉致行為から決して目を背けることはできないというふうに考えます。

 そして、同様に、日本人を被害者とする他の国際テロ行為については、やはり我が国としても、憲法の範囲内ではありますけれども、毅然とした態度をとっていくのは当然のことであろうというふうに思います。

 北朝鮮当局による拉致問題の非人道性は、決して、三十六年に及ぶ日本による植民地支配や、あるいは北朝鮮の貧困を理由として許されるものではありません。これは明らかな犯罪行為だからです。同様に、アルカイダ及びこれを支援するタリバンによる日本人を含めた殺りく行為の非人道性は、植民地支配や貧困を理由として許されることではありません。これも明らかな犯罪行為だからです。

 そして、私は、我が国が同種の犯罪行為に対する態度に対しダブルスタンダードを持つこととなると、国際社会から、何か特定の国に対して特定の感情を持っているからそのようなことをやっているんじゃないかと見られかねない、このことを危惧します。

 誤解を恐れずに言いましょう。日本の国会では、平気で、テロは貧困が生み出した、敵対でなく民生支援を、そういった意見が出されています。なぜか北朝鮮に対してだけは、そういう意見を持つ方も極めて厳しい態度をとられる。これは、国際常識だけでなく、論理的にも明らかに変であると思います。

 私は、北朝鮮、アフガンの問題、両方ともに厳しくあるべきであると思います。そうしなければ、諸外国の方の中には、我が国は、イスラムだったら何をされてもいいけれども、北朝鮮に何か犯罪行為をされたら、特定の感情に基づいて厳しく出ているんじゃないか、そんな誤解を生みかねないぐらいの根本的な問題であるというふうに危惧をいたします。

 私たちは決して、拉致問題は日本帝国主義が生み出した、あるいは経済制裁よりも民生支援をといった考え方にくみすることがあってはなりません。

 きょうも来られております拉致被害者の心情を思うとき、しっかりと国際社会において北朝鮮当局を指弾していくためにも、私たち日本がテロ行為に対するダブルスタンダードのような基準を持つ、そういうような誤解を招くことは絶対に避けるべきです。

 今、アルカイダはなお健在です。そして、米国だけでなく、西側社会、日本船も含めて、襲撃予告、殺人予告を発し続けているにもかかわらず、我が国が知らぬ半兵衛を決め込むことは、国際社会の共感を失い、ひいては、拉致問題の解決を遠のかせるおそれのあることを我々は理解していかなければならないと思います。

 そこで、大臣にお尋ねいたします。

 私は、我が国が、拉致問題も含めて、国民が被害者となった犯罪行為について毅然として立ち向かい、国民の生命を命がけで守っていく国家であることを示す意味でも、インド洋における給油活動の再開を強く望む一人であります。給油新法の早期の成立は、我が国が国際社会に対し、日本人が被害者となった国際的なテロ行為に毅然たる態度で臨み、かつ国際的連携に熱心であるという前向きのメッセージを発することで、国際社会に対し拉致問題の解決に向けた理解と協力を求める大きな力になると確信をいたしますが、外務大臣から御所見を伺いたいと思います。

高村国務大臣 御指摘のとおり、二〇〇一年九月の米国同時多発テロは、犠牲者が、日本人二十四名を含む二千九百七十三名に及ぶ未曾有のテロ事件であり、まさに文明に対する挑戦というべきものであったと考えます。

 アフガニスタンにおけるテロとの闘いでは、七百名近くのとうとい犠牲を出しながら、約四十カ国もの国々が引き続いてテロとの闘いに忍耐強く従事しているということを我々は十分認識する必要があります。

 国際社会は、我が国に対し、普遍的価値を共有し多くの国際協力をなし得る国として、強い期待を有しております。もしこのまま補給活動が再開できなければ、各国の対日姿勢に影響し、国際社会における我が国の地位や発言力に影響を与えないでは済まされません。国際社会において国益を実現するためには、まず国際的な責任を果たすことが不可欠であり、海上自衛隊による補給活動を早期に再開することがぜひとも必要であります。

 また、拉致問題についても、我が国は、すべての拉致被害者の一刻も早い帰国を実現すべく、最大限の努力を行っていく考えであります。拉致問題の解決のためには国際連携が重要であり、そのために、引き続き、米国を初め国際社会に対して拉致問題の解決の重要性を訴え、理解と協力を求める努力を重ねてまいります。

 委員がおっしゃるように、拉致問題で我々は当然と思って主張していることを、ほかの国の人たちがほかのテロと比べてダブルスタンダードだと思われるようなことがあってはならない。我々が当然の主張をするためには、やるべきことをきっちりほかの面でもやって、ダブルスタンダードでないよ、我々は正しいことを主張しているんだよ、正しいことをやっているんだよということを国際社会にきっちり示していく必要があると思います。

葉梨委員 ありがとうございます。全く同感でございます。

 そこで、次の観点からの御質問に移りたいと思います。

 国際社会の理解と協力を拉致問題の解決について求めていくためには、ちょっと誤解を恐れずに言えば、拉致問題というのが極めて横への広がりを持つ問題である、そして縦への広がりを持つ問題であるということを国際社会に対して訴えていく必要があります。

 今回、この決議の冒頭でも、我が国だけでない幾つもの国の無辜の民を拉致した、こういう横への広がり、そして、拉致問題という人権問題が縦への広がりを持って大きな普遍的な人権問題になっていくんだということを主張していくことが必要かなというふうに実は思っております。

 これは、私自身も、議員外交の先頭に二回ほど立たせていただいたことがございます。大変ありがたい機会であったというふうに思いますが、昨年の十月、列国議会同盟において、核あるいは北朝鮮の人道問題について、日本が珍しくということなんですけれども、日本の代表団が緊急決議、これを提案いたしまして、そして、その起草委員会の中に入って起草の決議文をつくらせていただいた。そして、本年の一月ですけれども、APPF、アジア・太平洋議員フォーラムの会合がモスクワでございまして、やはり日本から提案の、核及び北朝鮮の人権問題、これを非難する決議ということで、起草委員会の中に入らせていただいたという経験を有しております。

 ただ、その中で、実は、帰りましてから外務省の佐々江局長にお話を申し上げたんですけれども、今、最近ではそんなことはないですよということがあったんですが、一つ非常に気になったことがございました。

 特にAPPFの方なんですけれども、アメリカがたまたま議会が始まってしまっていまして、アメリカの代表団が来ませんでした。私どもの決議については、日本、それから中国、韓国、ロシア、この四カ国が起草委員会のメンバーになったわけなんです。IPU、列国議会同盟の場合は十七カ国ほどございまして、御案内のように、アメリカはIPUにお金を払っていないので来ていないんですけれども、日本のシンパみたいな国も幾つかあったんですが、純粋にモスクワでの会合は日本と中国とロシアと韓国だけでございました。

 相手は、中国は元の国連大使をやっていた方が議員をされて、それから韓国も元のジュネーブの軍縮大使をやっていらっしゃった方、そしてロシアは元の中国大使をやっていらっしゃった方が議員で、私だけが前職はインドネシアの一等書記官ですから非常に低かったんですけれども、いろいろとちょうちょうはっしやらせていただきました。

 その中で、ロシアのロガチョフというのが言っていたのが非常に気になったのは、彼は、金日成の時代にも何回も金日成に会ったことがある、そして、特殊な二国間の問題というのをこういった国際社会の場で取り出すのは私は非常にアレルギーがあるということをはっきりとおっしゃっておりました。というのは、特殊な個別的二国間の問題を取り出すと、必ず日本は国際社会の場で北方領土の問題を出してくるでしょう、そういうことになってしまったら、その前例を認めたくないというようなことをおっしゃっておったのが非常に気になったところなんです。

 ところが、日本に帰りまして佐々江局長にその旨もちょっとお話もしたんですけれども、今は、六カ国協議の中でも、ロシアの担当者というのは日本の拉致問題についても非常に理解がありますよというようなことをおっしゃられておりました。ただ、そうはいったって、この決議にもありますように、できるだけ二国間の問題のみにこの拉致問題を特化させてはいけないというふうに思います。

 そこで、外務省に伺います。

 ほかの国の被害者にも呼びかけてやはりそのウイングを広げていくということが非常に大切であるというふうに考えますけれども、そのお取り組みについて伺いたいと思います。

伊原政府参考人 私どもとしましても、例えば、帰国されました拉致被害者の方々から日本人以外の拉致被害者についても情報提供を受けたり、あるいは、これまでも報道等で名前の挙がっております国からいろいろ情報収集を行うといった努力をしてきております。

 そして、昨年の十二月でございますけれども、韓国、それからタイとの間では、北朝鮮人権侵害問題啓発週間の機会をとらえまして、関連の会議に御出席いただくために、韓国とタイの拉致被害者の御家族を我が国に招聘いたしました。その際、韓国やタイの拉致被害者の御家族からは、日本政府が韓国やタイの拉致被害者のためにも努力しているということを国際社会は評価するであろうというふうなお言葉もいただいております。

 それからもう一つ、国民が拉致被害者になっておりますルーマニアとの間では、本年二月の日・ルーマニア首脳会談におきまして、拉致問題の解決に向けて日本からルーマニアに対して支持と理解を求めたのに対して、ルーマニア側からは、同様に北朝鮮による拉致問題を抱える国として、政治的、技術的にできるだけ協力をしようというふうなお言葉がありました。

 今月十日からことしも北朝鮮人権侵害問題啓発週間が行われますけれども、外務省といたしましては、ことしは韓国やルーマニアの拉致被害者の御家族をこの機会に招聘する予定でおります。

 委員御指摘のとおり、拉致問題の解決のためには、北朝鮮側に直接働きかけるだけではなくて、関係国、国際社会からの理解と支持を得ながら国際的な世論を喚起していくということが重要だと考えております。したがいまして、政府としましても、国連等における国際的連帯の強化を図るとともに、拉致被害者が存在する可能性があるほかの国々、関係国との間での情報交換、意見交換を引き続き行っていきたいというふうに考えております。

葉梨委員 もちろん、対米関係というのが非常に基軸的な重要な要素であるということは、私は先ほどのモスクワの会合でも痛感をいたしました。アメリカがいないとなかなかやりづらいところがございました。

 ただ、もう一つのお話、人権問題としてということでは、実は、私は昨年の六月に北朝鮮人権法をつくらせていただいたときの自民党側の作成の責任者をやらせていただいて、そして、ことしの通常国会でも、北朝鮮の人権法の改正というのを、特に拉致被害者の会の方からいろいろと要請がございまして、アメリカのテロ指定解除の動きがある中で、日本においてもやはり拉致の進展がない限り支援をするべきじゃないというようなことを国会の意思としても書いてくれないかというような要請を受けて、北朝鮮人権法の改正というのをやらせていただいた、それの自民党側の担当者で、民主党ともお話をし、公明党ともお話をし、つくらせていただいたわけなんです。

 この北朝鮮の拉致問題というのをより普遍的な問題にするという意味では、ただ、ここで気をつけなきゃいけないのは、そこからばっと広がって、では脱北者を一生懸命やりますとか、強制収容所を一生懸命やりますということじゃなくて、やはり拉致問題の解決ということが最重要の課題であるということは肝に銘じつつも、特に対アメリカ向け、対国際世論向けには、これは非常に普遍的な人権問題であるということをしっかりと訴えていくという必要があろうかと思います。

 最後に、大臣、きょうはちょっと議論があれですが、特に答弁はなくても結構でしょうけれども、この拉致特、今回の衆議院では、この国会では初めての拉致特でございます。時間もあと一分でございますので、最後に大臣の方から拉致問題の解決に向けた御決意を伺いまして、私の質問を終わりにしたいと思います。

高村国務大臣 拉致問題の解決というのはいろいろあるわけでありますが、拉致された人が全員無事に帰ってくるということが何よりも大切だ。それに向けて、私個人もそうですが、内閣全体として全力を傾けていきたい。そして、拉致問題と核の問題、ミサイルの問題、そして不幸な過去を清算して国交正常化に向かいたい、こういうふうに考えております。

 福田総理も、私の手で解決したい、こういうことを言っておられますので、全力でお手伝いをしていきたい、全力でそのためにやっていきたい、こう思っております。

葉梨委員 以上で終わります。どうもありがとうございました。

山本委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時七分散会


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