衆議院

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第2号 平成21年11月26日(木曜日)

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平成二十一年十一月二十六日(木曜日)

    午後三時一分開議

 出席委員

   委員長 城島 光力君

   理事 稲見 哲男君 理事 大谷  啓君

   理事 熊田 篤嗣君 理事 黒岩 宇洋君

   理事 長尾  敬君 理事 江藤  拓君

   理事 古屋 圭司君 理事 竹内  譲君

      内山  晃君    下条 みつ君

      中津川博郷君    松岡 広隆君

      松原  仁君    本村賢太郎君

      矢崎 公二君    吉田おさむ君

      笠  浩史君    鷲尾英一郎君

      小里 泰弘君    坂本 哲志君

      高木  毅君    永岡 桂子君

      笠井  亮君    中島 隆利君

    …………………………………

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (拉致問題担当)     中井  洽君

   内閣官房副長官      松野 頼久君

   外務副大臣        武正 公一君

   内閣府大臣政務官     田村 謙治君

   外務大臣政務官      西村智奈美君

   衆議院調査局北朝鮮による拉致問題等に関する特別調査室長          綱井 幸裕君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二十六日

 辞任         補欠選任

  北神 圭朗君     松岡 広隆君

同日

 辞任         補欠選任

  松岡 広隆君     北神 圭朗君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 北朝鮮による拉致問題等に関する件


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     ――――◇―――――

城島委員長 これより会議を開きます。

 北朝鮮による拉致問題等に関する件について調査を進めます。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲見哲男君。

稲見委員 民主党の稲見哲男でございます。

 二〇〇四年の十一月に設置をされましたこの拉致特別委員会、私、初めての質問でございますので、少し自己紹介をさせていただきたいと思います。

 私にとって初めて朝鮮半島の問題に遭遇をしましたのは、一九七一年、いわゆる日韓地位協定による国籍書きかえで、一月十六日を期限にして永住権申請をするために在日コリアンの方が区役所や市役所に参られました。区役所窓口で、これを日本の同化政策だと言って阻止しようとする総連の人々、そして国籍書きかえに来た在日コリアンを守ろうとする民団の人々の騒然とした状況がございまして、日本人の行政関係者は傍観をせざるを得ない、こういう状況もございました。

 こんな経験もありまして、朝鮮半島の問題に強い興味を持って、七三年の金大中氏の東京からの拉致に対する抗議行動や、あるいは光州民衆蜂起を理由にした八〇年九月の金大中氏への死刑判決、それを阻止しようとして八二年に大阪でもハンガーストライキが行われましたけれども、これにも参加をいたしました。そして、二十五年間韓国で軍事政権が続いて、その後、八八年に盧泰愚政権が誕生して以降、九三年の金泳三政権、九八年の金大中政権、そういう韓国の民主化と向き合ってまいりました。

 とりわけ、私が初当選をした後、〇四年だと思いますが、訪韓をしたときに、当時はウリ党の盧武鉉政権でございまして、金大中政権から引き継いだ太陽政策、対話と交流というものに私自身は深く共感をしたことがございます。

 前回の在任中には、当時設置をされたときに私自身はテロ・イラク特に所属をしておりまして、審議に加わることができませんでした。したがって、政権交代が実現をして鳩山政権が誕生した今日、新たな視点と発想、こういうものを持って拉致被害者全員の早期の安否確認、救出と帰国を実現していかなければならない、こんなふうに考えております。中井担当大臣、外務省の武正副大臣、きょうはどうぞよろしくお願いいたします。

 まず、拉致問題の現状認識についてでございますが、小泉第一次訪朝からいいますと七年、家族の方八人が帰国をしてから五年、膠着状況がその後続いておりますけれども、自公連立政権においてこの問題の節々の取り扱いについて何が間違っていたのか、こういうふうに総括をしておられるのか、これは中井大臣にお聞きをしたいと思います。

中井国務大臣 いろいろなお話を承りまして、私も若いときのことを思い浮かべながら聞かせていただいておりました。

 私は昭和五十一年初当選で、民社党でしたが、当時、民社党の国会議員は全員日韓議連へ入る。自民党と民社党だけでございました。いろいろな思いもございましたが、韓国との友好親善に努めて、今日まで約三十年近く日韓議連やってまいりました。韓国歴代大統領に青瓦台でお目にかかっているのは僕ぐらいじゃないかなと思います。

 そういう中でこの拉致の問題が出てきて、日本が北あるいは韓国と対話をする、非常に時々難しい問題でございます。今日なお拉致問題の解決が一番優先されるべきことだと私は感じて、鳩山さんの任命を受けて任についているわけでございます。また一層の委員の御協力のほどをお願い申し上げます。

 同時に、民主党の拉致対策本部長として、古屋先生と一緒に超党派の拉致議連の会長代理を続けてまいりました。超党派でやっている部分、与党・政府でおやりになった部分、いろいろですが、私なんかから申し上げますと、この五年間、なかなか政府・与党の対応は難しかった。やはり北との話し合いの中で、一たん全部解決したんだと言われたものをひっくり返して、いや、違うんだ、生存者がいるんだという形を主張してもなかなか受け付けられない状況の中で、国民世論を背景に苦労をされてきたんだろう、こう考えております。

 今回、私ども、新しい組織形態で拉致対策本部を新たにスタートいたしましたが、自民党さんあるいは公明党さんの与党時代の拉致対策本部におかれては、帰国された御家族の方々の御面倒、あるいはまた家族の会の方々のお世話、こういったことについては本当にきめ細かくやってこられた。ただ、生存者がまだいるじゃないかという情報収集、先生お話のありました安否確認、救出、こういったことについては思っていたほど進んでいなかったなと実感をいたしております。私どもは、これらの点を踏まえて、新しい観点や方法をもって少しでも突破口を開いていきたいと考えております。

稲見委員 この間の自公政権の取り扱いについて私もいろいろ思うところはあるんですが、後の質問のところでまた言及をしてみたいと思います。

 二番目に、拉致問題の現状認識。実際の問題として、北朝鮮は十三人、五人帰国、八人死亡としておるわけですが、特定失踪者の問題を含めて、現在政府の認識がどうなっているのか、これも中井大臣にお聞きをしたいと思います。

中井国務大臣 お帰りになった五人を含めて十九人を認定しているわけでございますが、私どもは、これらの方々が全員生きている可能性が極めて高い、こういうことを前提として行動、発言を続けております。

 同時に、特定失踪者と言われる人たちも、御承知のように数多く登録をされているわけでございます。この中にも、捜査そのものが遅かったために、あるいは当初にそんな拉致をされるなんということはだれも考えていなかったために、十分な証拠を集められなくて、今日、ほぼ拉致に間違いないけれども認定に踏み切れない、こういった者もおると承知をいたしております。

 今回、新しい拉致対策室の中で、これらの問題が一歩でも二歩でも解決、前進ができるようにしていくことも一つの役割だと考えています。

稲見委員 では次に、鳩山政権としての拉致問題解決のためのメカニズムということでお聞きをしてまいりたいと思います。

 国家の主権を侵した点からも人道上からも許されない犯罪だ、こういうふうに当然考えているわけですが、先ほど申し上げましたように、拉致被害者の安否と早期の救出を考えた場合、自公政権から新政権になって、いわば政権交代は大きな外交交渉上の変化だと私は考えております。このような観点から、武正副大臣にお聞きをいたしますけれども、鳩山政権が考える拉致問題解決のためのメカニズムはどのように考えているのか。

 十一月十三日の日米首脳会談において、オバマ大統領が、北朝鮮問題については日米で引き続き緊密に協議を行いたい、アメリカのボズワース特別代表が近く訪朝する、それは六者会合の枠内だ、こういうふうに発言しておられますが、解決までの具体的な道筋についてどうお考えか、お聞きをしたいと思います。

 さらに、鳩山政権になって九月に、日朝国交正常化の北朝鮮の側の交渉担当大使が、新政権と日朝間の対話の再開の用意がある、こういうふうに示唆をいたしております。また、十月の五日に金正日国防委員長と会談をした温家宝中国首相は、北朝鮮が六者会合の再開については柔軟性を示し、多国間を通じた問題解決に意欲を示している、米日韓との関係改善を望んでいるとの印象を持った、こういうふうにもおっしゃっております。

 そういう意味で、次に、鳩山首相は九月二十四日の国連総会で、包括的な解決という方針に加えて、不幸な過去を誠意を持って清算して国交正常化を図っていきます、こういうふうに演説されていますが、この意味するところは何か。

 また翻って、九月の十日に北朝鮮の金永南最高人民会議常任委員長が、民主党政権に対して、二〇〇二年の平壌宣言を尊重し実りある関係づくりを進める、こういうふうに呼びかけておりますけれども、これに対する政府の対応はどういうふうになるのか。

 また重ねて、包括的な問題の一つである拉致問題ですけれども、今は北朝鮮側にボールがあるという認識だというふうに思いますけれども、そのボールが早期に返ってくるためにはどういうことが有効か。

 この四点ほど、武正副大臣にお聞きをしたいと思います。

武正副大臣 稲見委員にお答えをいたします。

 拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して国交正常化を図る方針である。諸懸案の一日も早い解決に向け、具体的行動を北朝鮮から引き出すべく、引き続き関係国と連携して最大限の努力を払っていくこと。また、先ほども大臣からお話がありましたように、鳩山総理を本部長とする拉致問題対策本部を設置し、すべての拉致被害者の生還を実現すべく、考え得るあらゆる方策を使いまして一日も早い解決を目指すということでございます。

 今幾つか御質問がございましたが、ちょっと前後はいたしますけれども、北朝鮮の金永南最高人民会議常任委員長の、二〇〇二年の平壌宣言を尊重し実りある関係づくりを進めるという民主党政権への呼びかけに対する政府の対応いかんということにつきましては、御指摘の報道は承知をしておりますけれども、報道の一つ一つについてコメントは控えたいと思います。

 我が国は、日朝平壌宣言にのっとり、北朝鮮側の具体的な行動を引き続き求めてまいります。

 それから、温家宝総理の訪朝ということでありますが、過日の日中の首脳会談で、鳩山総理からは、北朝鮮による核開発、弾道ミサイル開発は我が国にとり重大な脅威であり容認できないとの立場を伝えまして、また、国連安保理決議を国際社会とも協力しつつ履行していく必要がある旨述べるとともに、日朝関係については、拉致問題について我が国には非常に厳しい民意がある旨を紹介いたしました。胡錦濤主席からは、朝鮮半島の非核化、特に六者会合への復帰について中国側としても努力していることを紹介するとともに、拉致問題を含めた日朝関係の進展についても働きかけている旨述べられたところでございます。

 また、さきの日米首脳会談の御紹介がありましたが、特にサントリーホールでのオバマ大統領の演説で、この拉致問題の解決なくして北朝鮮に対する問題解決はあり得ないというメッセージがオバマ大統領からしっかりと、私もその場におりましたが、発せられたというところでございます。

稲見委員 全体として答えていただいたということかもしれませんが、四点目に申し上げました、日朝両国が合意をして調査委員会を立ち上げて調査をするならば、では日本の側も人道支援の問題、あるいはチャーター機の発着について緩和をするということがあって、それが今、行き来のボールのところになっていると思うんですが、そのボールを戻してくる、そのことについて特段の御認識があればお教えいただきたいと思います。

武正副大臣 北朝鮮側にボールがあるという認識は御指摘のとおりでありまして、昨年八月の日朝協議の合意に従い、北朝鮮による調査の早急なやり直しが重要である。我が国としても、北朝鮮による調査のやり直しが早急に開始され生存者の帰国につながるよう、成果が早期に得られるよう、引き続き北朝鮮側に強く求めていく考えであります。

 また同時に、拉致問題を含む北朝鮮をめぐる諸懸案の一日も早い解決に向け、具体的行動を北朝鮮から引き出すべく、引き続き関係国と連携して最大限努力をしてまいります。

 すべての拉致被害者の生還を実現すべく、考え得るあらゆる方策を使いまして一日も早い解決を目指してまいります。

中井国務大臣 武正さんからお答えがありましたから、あえて異論を言うつもりはありませんが、岡田さんとは就任以来、対北朝鮮情報、これらについて何回か打ち合わせをいたしております。今後とも機会をとらえて、十分連携をとって御不安のないようにしていきたいと考えています。

 六者協議等は、これはもちろん外務省の担当でございます。私のとやかく言うことではありません。しかし、拉致ということに関しては私の担当でありますがゆえに、お話がありました調査委員会がつくられたぐらいでこちらが制裁どうだこうだというようなところ、私自身は何も考えておりません。

 また、民主党が政権をとったということを機に、民主党の周辺に対していろいろな働きかけがあることも承知をいたしております。私どもは、どんな話し合いもいとうものではありません。どんなときでも、機会があればだれでも話し合いをさせていただく。しかし、それは拉致に対して解決につながる話し合いじゃなきゃだめだ。拉致は終わったとかないんだとかいうようなことを前提に日朝間の話し合いをするということについては、これは応じられない、こういうことを決めて今対応をいたしております。

 情報収集ということに関してまだ十分体制ができているわけではございませんが、それでも、幾つもの筋、幾つものルートから、いろいろな情報があるよというお話をいただいております。これらを慎重に選択したり、あるいは調べたりしながら、生存者の安否の確認、こういったものにつなげていきたいと考えております。

稲見委員 もう少し武正外務副大臣の方にお聞きをしたいと思います。

 拉致問題の間にミサイルがあったり核実験があったり、そういうふうな行ったり来たりというのがこの間確かに続いているわけですが、ここ数年とられてきたミサイル発射実験、核実験に対する北朝鮮への経済制裁の強化、これが拉致問題の解決を進めるためにどのような影響があったのかということ。

 それから、一方でアメリカでは、日本の反対にもかかわらず、テロ支援国家の指定解除を行ったという事実がございます。拉致問題を解決するために優先をする政策を打ち出しておく必要があるのではないか、こういうふうに私は感じております。

 そういう中で、冒頭にも少し申し上げましたけれども、鳩山総理の東アジア共同体構想、北東アジアの非核地帯化、これが今、北朝鮮に対するどのようなメッセージとして映っているとお考えか、この三点、お聞きをしたいと思います。

武正副大臣 この数年とられてきたミサイル発射実験に対する北朝鮮への経済制裁の強化、拉致問題解決を進めるためにどのような影響があったのかというのがまず一点ということであります。

 我が国の北朝鮮に対する措置は、諸懸案の解決に向け、北朝鮮から具体的な行動を引き出すために実施をしております。北朝鮮は、拉致問題解決済みとの従来の立場を変更して、昨年八月、日朝実務者協議において、拉致問題に関する調査の目的や具体的態様等に合意をしております。ただし、いまだに調査を開始しておりません。

 すべての拉致被害者の生還を実現すべく、考え得るあらゆる政策、方策を用いて一日も早い解決を目指すということでありますが、経済制裁の強化ということで、それをこれまでも実施もしているわけでありまして、拉致問題の解決に向けて、ボールは北朝鮮側にあるという中で、引き続き経済制裁を続けていくというのがまず一点でございます。

 それから二点目は、米国がテロ支援国家の指定を解除した件であります。

 先ほど触れましたように、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決して、不幸な過去を清算して国交正常化を図る方針の中で、米国は拉致問題に関する日本の立場を支持しております。先ほども、オバマ大統領あるいは日米首脳会談の御紹介もありました。首脳レベルでも、連携を一層強化することは一致をしております。拉致問題に関しては、昨年八月の日朝協議の合意に従ってやり直しを行わせるということであります。

 この指定解除についてなんですけれども、米国は、指定解除に先立って、北朝鮮が検証措置に関し十分な協力を示した場合には指定解除を行う旨明らかにしてまいりました。我が国としては、朝鮮半島の非核化のために実効的な検証の具体的枠組みの構築が極めて重要と認識しておりまして、米国が一連の検証措置を北朝鮮に受け入れさせるための手段としてこの指定解除を効果的に利用することが肝要と認識をしております。

 このような問題意識から、日米間で相当緊密に協議をしてまいりました。米国は、日米間の協議も踏まえながら北朝鮮側と協議をし、六者会合プロセスを再度動かすことが重要との判断から指定解除を行ったものと政府としては理解をしております。

 もう一点、鳩山総理の東アジア共同体構想についてなんですけれども、あくまで東アジア共同体構想は長期的なビジョンであるということでございます。長期的なビジョンで地域協力を推進することが地域の平和と繁栄に貢献をする。東アジア地域に係るこれらの構想に関する北朝鮮の受けとめ方というのは、やはり予断はできません。

 いずれにせよ、北朝鮮が拉致、核、ミサイル等の諸懸案を包括的に解決し、地域、国際社会に受け入れられる存在となることが必要でありまして、かかるメッセージを北朝鮮が真摯に受けとめ、諸懸案の解決に向け具体的かつ前向きな行動をとるよう、我が国として、引き続き関係国と連携して最大限努力をしていくということでございます。

中井国務大臣 広範な御質問でしたから、武正さんのお答えで大体おまとめをいただけるとは思いますが、お話を聞いていまして、私なりに幾つか申し上げたいと思います。

 鳩山総理の東アジア共同体構想というのはこれからでございますが、この間から、中国と韓国と日本で食の安全に関する閣僚会議が行われました。私自身は国家公安委員会委員長を兼務しておりますので、ヨーロッパの警察、共同体のような、何かそういう中国と日本と韓国の共同体というのが将来スタートしてもいいんじゃないかなと、ぼんやりと頭の中にあります。

 同時に、韓国や中国では鳩山総理の歴史認識ということについて非常に高い評価をいただいておりまして、このことが日中韓共同体構想ということに対する大きな原動力になるんじゃないかと考えております。

 それからもう一つは、韓国とアメリカの大統領がそれぞれ新しくなりまして、任期はまだ四年、五年とあるわけでございます。鳩山内閣もスタートをいたしまして、珍しく解散のことが一向出てまいりませんから、四年続かせていただけるんじゃないかと思っていますが、そういう意味では、ブッシュ政権の末期みたいに、どうしても政権が終わる間際だから、何か無理やり実績を上げなきゃならないという中での対北との交渉状況だったと、僕らは非常に残念に思った時期がございます。

 今回、日本も韓国もアメリカも、焦ることはないと考えているのは事実ではないかと思っています。もちろん、拉致被害者の家族の方々の御高齢ということは、私にとりまして本当に心配なことであり、一日も早く解決をしてあげたいという思いは募るばかりでございます。しかし、政治的にはそういう状況にありますから、私ども十分対応を考えていきたいと思っています。

 それから、前政権でありました万景峰号の入港禁止というのは、かなり経済的に効果のあった制裁だと僕は思っております。しかし、その他は余り効果のない経済制裁であり、まだ少し日本独自で経済制裁等、あるいは人的措置等をとる余地は十分ある。北朝鮮にボールがあるというお話がありましたが、どういう対応をされるか見きわめながら、私どもは、日本独自で何をするのか、これも十分分析し考えてまいりたいと思っています。

稲見委員 もう少し質問があったんですが、終局に近づきました。

 冒頭にも質問させていただいたように、政権交代というのは、この拉致問題をぐっと前に前進させていくための絶好のチャンスだというふうに思っております。中井大臣からもありました理不尽であったとしても、北朝鮮の側が日本を相手にせずという姿勢を強固に持っているとするならば、理不尽だというのを前提にして、日本側から新たな信頼関係の醸成について何らかのアクションをとる必要があるのではないかというふうにも思っております。

 たまたま昨日、日仏議員連盟の総会で、駐日フランス大使館のフォール大使にお話をお聞きしました。サルコジ大統領の指示を受けて、前の文化大臣とお聞きしましたが、ジャック・ラング氏という方が同盟諸国を歴訪して、北朝鮮の人権の問題、核不拡散の問題、それに政治体制の問題、これについて各国がどういう認識を持っているのかという調査を行っている。それは何かというと、EUの中でフランスだけが北朝鮮との国交がないという状況でどう判断をしていくのかというふうなことであります。そういう中で、その報告書を受けて政治的に決断をしていくというふうなきのうの大使のお話でございました。

 アジアの平和を確かなものにしていくという新政権の強いメッセージ、先ほどお聞きをした東アジア共同体構想を含めて、日朝国交回復に向けた全体の枠組みの中で拉致問題の前進を期すことができないのか、こういう思いもしております。また機会があれば、いろいろな御意見をお聞かせ願いたいと思います。

中井国務大臣 御提言、十分受けとめてやってまいります。

 お話のジャック・ラング氏につきましては、私もフランス大使とともにお目にかかって、日本にとって拉致はどのように重要な問題であるかというようなことを十分伝えたと思っております。

 このジャック・ラング氏も、日本からアメリカ、韓国、中国と回って北朝鮮へ入って、一気呵成にという話もあったんですが、結局、平壌で金正日氏に会えずに帰った。こういうこともありまして、なかなか相手はいろいろな手を使い、言辞を弄するところでございます。

 私どもも、一方的にこちらから話しかけるということではなしに、本当に向こうが真摯な対応をしてくれる、こういうチャンスあるいは機会を逃さないように考えていきたいと思っております。

稲見委員 終わります。

城島委員長 次に、中島隆利君。

中島(隆)委員 社会民主党の中島でございます。初めての質問でございますので、どうかよろしくお願いをいたします。

 さて、蓮池薫さん御夫妻ら五名の拉致被害者が帰国を果たされて既に七年が経過をいたします。この間、その他の被害者の方々の帰国、さらには拉致問題の真相究明が進んでいないこと、ひとえに北朝鮮の責任に帰する部分が大きいわけでありますが、まことに遺憾であり、残念なことと思っております。この政権下で拉致問題を解決したい、そしてまた解決すべきだとの思いから、何点か質問をさせていただきたいと思います。

 新政権が発足をして、従来の拉致問題対策本部が廃止をされまして、総理以下関係四大臣による新たな対策本部のもとで決定された、六点から成る拉致問題における今後の対応方針だったと承知いたしますが、鳩山政権における拉致問題への対応で、従来からの方針を継承するもの、そして新たに充実強化させていく施策が検討されていると思いますが、大臣にまた今後の方針についてお尋ねをいたします。

中井国務大臣 御指摘をいただきましたように、新しい体制でスタートをいたしました。総理を本部長といたしまして、私が副本部長、官房長官と外務大臣、この四名で本部を構成する。そして、従来、拉致対策本部の職員は大半が兼務でございまして、どこにいるかもわからぬ兼務なものですから、本当に官僚機構の巣窟の中で私も迷いそうになるぐらいでございましたので、これの改廃を強く主張いたしまして、現在、三つの部屋を持って、特に情報収集を主とする部屋をつくりまして、再スタートを切らせていただいたところでございます。

 従来の政府の方針を変えるとかペケにするとか、そんな気持ちは何もありません。ただ、私どもは、この拉致対策室の目的を、とにかく情報収集、生存者の確認、そして全員帰国、ここへ絞って、このためにありとあらゆることをする、こういう極めてシンプルに、機動的にして対応したいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。

中島(隆)委員 今決意を述べられましたが、新体制が、首相、中井大臣を初め四大臣で担当される、機動性を持って対応されるということでございますが、これまでも、前政権から対話と圧力、こういう二つの対応でなされましたが、やはり対話の努力をもっと追求していただいて、対話の中で解決の道を選ぶ、こういう方向もひとつ力を入れていただきたいと思います。

 次に、鳩山総理は所信表明演説において、北朝鮮をめぐる問題に関しては、拉致、核、ミサイルといった諸懸案について包括的に解決すること、この上で、拉致問題は、考え得るあらゆる方策を使い一日も早い解決を目指すと述べられております。また、十月九日の日韓首脳会談や十月十日の日中韓首脳会談においても、問題を包括的にとらえて解決をしていく、こういう方向性を繰り返し主張されております。

 そこでお尋ねいたしますが、この包括的な解決とは、拉致問題、そして核開発、ミサイル開発という懸案事項をできる限り一体のものとして同時に決着することを目指していると受けとめているわけでありますが、これについて御説明をお願いいたします。

武正副大臣 拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決する、この諸懸案の一日も早い解決に向けまして、具体的な行動を北朝鮮から引き出すべく、引き続き関係国と連携して最大限努力をしていくということでございます。

 拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決するということでありますが、今も委員からも御指摘があったように、鳩山総理を本部長とする拉致問題対策本部を設置して、すべての拉致被害者の生還を実現すべく、考え得るあらゆる方策を使いまして一日も早い解決を目指すのがまず一つ。核・ミサイル開発も断じて容認できないわけでありますので、北朝鮮に対し、諸問題の解決に向け具体的な行動をとることがみずからの利益になることを理解させるということでございます。

 国連安保理決議一八七四号などに基づく措置や我が国独自の措置を着実に実施し、六者会合の早期再開に向け、引き続き米韓中などと緊密に連携を図るということでございます。

中井国務大臣 従来から、対話と圧力ということはずっと言われ続けてまいりました。ただ、僕は一回もそういう言葉を使ったことはありません。僕自身は、圧力、圧力、圧力と、こればかり言っております。

 そういう意味で、いろいろなやり方がある。包括的な部分の核やミサイルは僕の担当ではありません。しかし、これは北東アジアや日本にとって極めて大事なことだということも十分理解をいたしております。

 そういう中で、交渉は外務省でしょうし、話し合いも外務省ですから、先生のお話は十分受けとめてやってくれると思いますが、私は一生懸命、拉致の解決に尽くしていきたい。せっかく連立を組んでおりますので、先生もひとつ青いバッジなんぞつけていただいて、ぜひ御協力のほどをお願い申し上げます。

中島(隆)委員 時間がございませんので、あと二つ残っておりますが、二つ一緒にお尋ねしたいと思います。

 一つは、北朝鮮をめぐる最近の国際の動き。先ほど来質問もあっておりますが、中国の温家宝首相あるいは北朝鮮の金正日書記の会談。それから、アメリカのボズワース北朝鮮担当特別代表の訪朝が予定されています。韓国の李明博大統領も一括妥結交渉。こういうことで、今取り組みが各国で始まっております。そういう中で、拉致問題の一連の動きがどう評価されているのか。

 それと、最後に、日本政府がイニシアチブを持って対応すると言っておられますので、そのイニシアチブの積極的な取り組み、これについての決意も含めて、あわせてお尋ねしたいと思います。

中井国務大臣 外務省がお答えになるべきことかもしれませんが、私なりに最近の北朝鮮をめぐる動きを見ていますと、ミサイルや、あるいは韓国との海上の境界を脅かしたりという挑発的行為と同時に、したたかに、今お話のあったような、話し合いは放棄せずに続けさせていくという外交を展開されているな、こういうふうに見ているわけでございます。日本やアメリカや韓国がこういう北の姿勢をどうつかまえて六者協議の中へ引き入れて話し合いをしていくかというところを、私も関心深く見ております。

 しかし一方、去年の八月ぐらいから、前政権下で御努力いただいて、調査委員会をつくるという約束がそのままになっていることも事実でございます。私どもは、去年の夏ごろ、超党派の議員連盟で、それではまた新たな制裁を考えようじゃないかという話し合いもいたしましたが、調査委員会ができるということを前提に様子見をしてきたわけでございます。私ども民主党だけでもかなりきつい制裁案をつくり上げて、今懐に温めていることも事実でございます。

 こういったことを含めて、総合的にいろいろなことを見て、また、申し上げたように、どんな話し合いの糸口も私どもは拒否するものではありません。それも見ながら、とにかく、日本が何をして、日本ならどうやってこの拉致問題の解決に向かうんだという姿勢のもとで国際協力をお願いしていきたい、こういうことを基本に頑張っていきたいと考えています。

武正副大臣 お答えをいたします。

 温家宝首相の訪朝、また米ボズワース特別代表、十二月八日という報道がありますが、訪朝はそれぞれ六者会合の再開のための努力として評価をいたします。また、李明博大統領のグランドバーゲン、これは、すべての諸懸案を包括的に解決することが必要であるとの考えを示したものとして支持をいたします。

 我が国としては、諸懸案の一日も早い解決に向けまして、具体的行動を北朝鮮から引き出すべく、引き続き関係国と連携して最大限努力をしてまいります。

 国連安保理決議一八七四号等に基づく措置や我が国独自の措置を着実に実施し、六者会合の早期解決に向けまして、引き続き米韓中などと緊密に連携を図ってまいります。

中島(隆)委員 質問を終わりますが、私どもも、核開発、ミサイル、この問題については、断じて許すことのできない課題でございます。しかし、この解決のためには、各国と緊密に連携していただいて、一日も早い解決に向けて努力をしていただきたいと思います。

 以上で終わります。

城島委員長 次に、古屋圭司君。

古屋(圭)委員 自民党の古屋圭司でございます。

 拉致担当大臣に中井大臣が就任をされたということは、私も、中井大臣とは拉致議連で一緒に行動した同志でもございますので、エールを送りたいというふうに思います。

 ただ、新政権になりまして、鳩山総理、この新しい内閣が拉致問題についてどういう基本方針で臨んでいるのか、このことがはっきりしません。ある意味では非常に懸念もいたしております。

 例えば、安倍政権のときから、あるいは福田政権、そして麻生政権、この政権のときには、基本方針というのをはっきり決めて、これを表明しておりますよね。具体的には、すべての被害者の安全確保と即時の帰国、二つ目が真相の究明の実現、三つ目が拉致実行犯、被疑者と言っていますけれども、拉致実行犯の引き渡しの要求、この三点が基本方針でありますけれども、どういうわけか、政府の新しい方針を見ますと、最初の二つは出ておりますけれども、三つ目が見事に消えているんですね。これはもう外交の交渉カードとして、無条件でこういったものを消してしまうというのは、マイナスこそあれ、決してプラスはないというふうに思います。

 この点について、どういうふうにお考えで、なぜこの三点目を消してしまったのか、これをまずお伺いしたいと思います。

中井国務大臣 おっしゃるように、基本的な方針として二つを掲げて対応をしようといたしております。しかし、内閣全体として実行犯追及または身元引き渡しを抜かしているわけではありません。

 現実に、私は国家公安委員会委員長として、警察庁に対して繰り返し、従来の事件の徹底的な再調査、また、特定失踪者の方々の証拠を集める、こういったことを強く要求いたしまして、警察庁長官も全国本部長会議等でこのことを言い、現実に各地区で再調査が始まっているわけでございます。

 今まで、実行犯が特定されたのもありますが、特に国内での協力者等、大半がどういうかげんか見逃されている、こういうことも事実でございます。これは、もう三十年たったということもあれば、いろいろな政治的要因も当時あったのかなと僕は拝察しています。ここらに対してももう一度徹底的に調査をすべきだ、こう考えています。

 したがって、抜かしたからといって、後退をしたとか外交のカードをなくしたということではありません。ただ、私どもはとにかく、生存者を無事帰国させる、真相を究明する、この二つに絞って、新しくできた拉致対策本部をフル稼働させていきたい、この思い一つでございます。

 私自身は、この削りました裏には、よど号実行犯の帰国ということが少し頭にあったということも間違いないことでございます。よど号の犯人たちが拉致実行犯として帰されるということで線引きされてはならない、このことも実は心配をいたしたというのが率直なところでございます。

 長年御一緒にやってきた古屋先生の御質問だからお答えを申し上げて、かえって踏み込み過ぎのお答えかもしれませんが、そういう判断でありました。

古屋(圭)委員 ほかの委員会で、たしか法務委員会だったと思いますけれども、拉致実行犯の辛光洙のことについて法務大臣が全く承知していなかったですね。それで、ペーパーをもらって読んだら、だれを拉致したんでしょうと。原敕晁さんですよ。この原敕晁さんという字も読めないんですね。

 やはり、拉致実行犯の引き渡し、こういうものに対してこの政権は極めて弱腰ではないか、こういうふうに思うのは当然でございまして、これはしっかり、今の説明ではとても納得できる話ではありません。

 その上で、実は大臣、これは御存じですよね。これは内閣府のホームページにも載っておりますし、また総理官邸のホームページからも抜き出すことができます。これはまだ、パンフレットは使っておられますか、有効ですか。

中井国務大臣 予算の見直しあるいはチェック、いろいろなことをやってここまで参りました。ようやく、十二月に北朝鮮の人権週間、これはやっていく、こういうところまでこぎつけてございます。

 現在、拉致を見捨てないというポスターを含めて何枚かのポスターは使っております。それから、余りにも膨大な経費を使ったはがきであったり、一体どうしてこんなにお金がかかるんだというようなところもございまして、これは、拉致対策本部といえども、税金の無駄遣い、対費用効果、こういったことを私どもはチェックして、一つ一つ、使うか使わないか、あるいはまた、そういう行事をやっていくかどうかというのを見直していきたい、こういう最中にございます。

古屋(圭)委員 いや、今私がお伺いしたのは、このパンフレットはまだ実際に使われていますかどうかと。使われているということだと思います。なぜか。ホームページに載っているんですから。

 この裏をごらんになると、ここに、日本政府は北朝鮮に対して次のことを要求している、三点、基本方針なんですね。すべての被害者の安全確保と速やかな帰国、真相究明、拉致被疑者の引き渡し、三つ書いてあるんですよ。にもかかわらず、今の政府方針からこの三つ目が外れているということはおかしいわけでありまして、もしそうならば、このパンフレットを書き直すなりしないとおかしいじゃないですか。

中井国務大臣 承りました。そのように対応します。

古屋(圭)委員 ということは、これは、せっかくのカードを一つ減らしてしまうということなので、明らかに対外的なメッセージとしては弱腰という批判をされても、そのそしりは免れないと私は思います。もう時間がございませんので、これは私はそういうふうに考えております。

 それから、もう一点、これも歴代の三内閣で決めました、対応方針というのがありますね。これは、全被害者の安全と帰国要求、制裁実行と追加制裁の検討、厳格な法適用、情報収集と世論の啓蒙、特定失踪者を含む可能性ある事案の調査、国際連携。これをはっきり歴代政権で対応方針と記されておりましたけれども、残念ながら、新政権になりまして、対策本部のところでもこれは言明はありませんでしたし、ホームページからも見事にこれは外れています。

 今の武正副大臣等々の答弁を聞いておりましても、これは皆入っているじゃないですか。なぜこれを対応方針として入れないんですか。これも不思議ですね。

中井国務大臣 経験豊かな古屋先生のおしかりですから、十分心にとめて対応をさせていただきますが、私どもは、対策本部を新たにつくって、私が拉致担当大臣として任命された、これほど強い意思表示はないと考えております。

 それから、過去五年間こういう方針でやってきたじゃないかとおっしゃるが、それじゃ、その方針のもとに、どういう成果でどういう実績が出たのか、私のところにまだ何一つ報告が、官僚機構も含めて、上がっておりません。

 そういった意味で、書くだけ書いて、後はまあまあお茶を濁しておけばいいということであるならば、私はそれも一つの政治手法かと思いますが、私どもは、とにかく実行して、何か突破口を開いて、解決に導いていく、こういう思いでこの問題に取り組むんだ。したがって、目標を立てて、こうでこうで、ああでああでと書くことが大事という御意見は十分承知をいたしますけれども、その中身を私どもは十分踏まえて実行していく、こういうことで御理解を賜りたいと思います。

 最後にお読み上げをいただいた、例えば国際協調ということにつきましても、私も就任以来、シンガポールへ飛んだり、韓国へ飛んだり、あさってはタイへ参ります。また、五カ国の大使にもお目にかかるなど、いろいろなことをいたしておりますし、総理みずからも、首脳会談等が行われるたびに大体拉致の問題を訴えている、こういうことを着実に実行している、この点もぜひ御理解をください。

古屋(圭)委員 今の答弁を聞いておりますと、書くだけでは意味がないということですけれども、でも、実際、政府が取り組む基本方針なり対応方針というのは、当然ペーパーに書いて当たり前のことであります。それを厳格に実行していくということが何よりも大切なので、その大原則が抜けてしまっているというのは、どう考えてもおかしいと私は思いますよ。

 これは、今までのやり方が間違っていたということなら大胆に転換すればいいんですよ。しかし、そうではなくて、一定の成果は出てこないまでも、十分にそれは解決に向けての道筋に沿っているということならば、しっかりそれを書いていけばいいわけでありまして、ぜひ、それはひとつよろしくお願いしたいと思います。

 なぜこういうことを申し上げるかというと、鳩山総理が、所信表明の質問でも、対話と圧力という言葉が消えましたね。今大臣の方から、いや、私は対話という言葉は一回も使ったことがない、圧力なんだということなら、その圧力ということを堂々と記せばいい話でありまして、一方では、あらゆる方策を使ってという表現で総理は言っておられますけれども、あらゆる方策というのは融和策も実は入るわけですよ。

 融和策をとって、今まで、アメリカでもクリントン時代にKEDOの支援をして何の成果があったか、あるいは、日本も米の支援をしたことがある。何の成果もない。やはり、歴史的な教訓として、圧力をかけることによって小出しにはしてくる、しかし、なかなかそれが進んでいかないというのは我々は経験則からわかっていることでありますので、ぜひそういう対応をしていただきたいということをお願い申し上げたいと思います。

 余り時間がございませんので、次に進ませていただきたいと思います。

 拉致問題の解決なくして北朝鮮との国交正常化はない、これも我々がずっと言い続けていることでありますし、歴代内閣、今、中井大臣の答弁でもそういうことがございました。それは一つ評価をさせていただきたいというふうに思います。それから、被害者全員が生存しているという前提に立って、被害者の即時帰国と納得いく説明を行うように求めるということについても、その趣旨の説明。

 そこで、ちょっと外務副大臣にお伺いしたいんですけれども、解決というのは、どういうことを解決というんですか。副大臣にお伺いしたいと思います。

武正副大臣 先ほど来、拉致、核、ミサイル、この包括的な解決ということを……(古屋(圭)委員「拉致問題の解決」と呼ぶ)

 拉致問題の解決については、先ほど来お話がありますように、生存者の即時帰国、それから安否不明の拉致被害者に関する真相究明、この二点を本部としては掲げておりますが、犯人の引き渡し、実行犯、当然これは求めないというわけではないということも、今大臣からも答弁がありました。この二点がまずは解決ということだと考えております。

古屋(圭)委員 今副大臣からも答弁がありましたように、拉致被害者の安全確保と速やかな帰国、それから真相の究明、被疑者の引き渡し、これは三点セットなんですよ。ですから、やはり、こういう形でパンフレットから外れる、それからあと、実際、政府の表明でも外れてしまうということは、どう見てもおかしいというふうに私は思います。

 それから、もう一つ、ついでにお伺いしますけれども、これは、解決の前に進展ということがありますよね。よく、進展とはどういう定義かというのはいろいろな委員会でもやりました。この委員会でもやりました。では、おさらいの意味で、進展ということはどういうことでしょうか。

武正副大臣 昨年八月、日朝でもその調査を行うということを含めて合意しているわけでありますので、今言った二点、本部とすれば二点であります。犯人の引き渡しというのは当然のことということで申し上げたわけでありますが、この進展ということについては、そうした調査を確実に実行して、その真相究明に向けて進めていくということと考えます。

古屋(圭)委員 これは歴代内閣でも、総理大臣も答弁は実はしているんですけれども、拉致問題の進展というのは、被害者全員を帰国させるという日朝双方の共通認識ができて、かつ北朝鮮が具体的に行動をとることということで、これは何度も答弁しているんですよね。だから、これが進展なんです。解決の前段階にこれがあるわけです。

 それで、その進展があったとしても、もう一つ、前政権では、こういった進展がない限りエネルギー支援にも一切参画をしない、こういうふうに表明をしておりますけれども、これに変わりはないでしょうか、副大臣。副大臣にお答えください。

中井国務大臣 前政権の言葉遣いが微妙に、デリケートに五年間変わってきたことを、私は逆に野党時代に心配をいたしておりました。途中からにわかに進展という言葉が使われて、調査委員会なるものの約束がされて、それをもとに万景峰号の再入港ということが許されるという話が流れて、これは流れただけですからわかりませんが、私は非常に憤慨したのを今思い出しております。

 私どもの内閣におきまして、いまだ進展という言葉は使っていないと考えておりますが、外務大臣が外務委員会でそういう言葉をお使いになっているかどうかは、副大臣からお聞きをいただけたらありがたいと考えています。

 私どもは、とにかく全員帰国を図っていく、これに向かって最大限行動する、これのみで頑張る決意でございます。

古屋(圭)委員 ということは、やはりエネルギー支援にも一切加わらないという大原則は堅持をするということでよろしいですね。はい、ありがとうございました。

 先ほど、オバマ大統領と首脳会談があったときに、私も議事録でしか承知はしておりませんが、北朝鮮の問題全般についてオバマ大統領から言及があって、それに対して鳩山さんがお答えをした、しかし、拉致という具体的な言及はなかったというふうに聞いております。それから、大統領が十四日の日にサントリーホールで演説をしたときには、みずからこの拉致の問題についても、拉致された人々について被害者の日本人家族が完全な説明を受けない限り正常化はない。アメリカの大統領にここまで言われていながら、今ずっと私もこの国会で質問をしてきたとおり、鳩山政権の基本スタンスというのは極めて弱腰であるという印象は否めない。

 私、中井大臣が就任をして、極めて厳しい態度で臨もうと言っていることはよくわかります。しかし、政府全体の方針としてはいささか心もとないというか、極めて心配であるというのは、多くの人たちが、特に家族会、関係者も含めてそういう疑念を持っているということは否定はできないと私は思いますので、ぜひひとつ中井大臣、しっかり頑張っていただきたいというふうに思います。

中井国務大臣 御激励ありがとうございます。

 オバマさんからお話が先に出たんだよという形で私は鳩山総理から直接聞いておりまして、彼は非常にその点感激をいたしておりました。このことは少し事実と違うんだろうと思っています。

 また、オバマ大統領がお越しになられて演説をなさいまして、私も興味深く聞かせていただきました。横田さんあるいは家族の会の会長さん等も招かれておりまして、大統領から直接話があったということで感激されておったのを承知いたしております。

 私ども内閣も、まだまだ古屋先生や野党の皆さんから見ればふなれ的に見えるかもしれませんが、役所を使わずに政治家が精いっぱい自分たちで動く、もちろん仕事は役所の人にしてもらうわけでありますが、政治主導でやるというところが頼りなく見えたりするのかもしれませんが、従来よりかスピード感を持って、責任感を持って、日本自身が主体的に動いて解決に向かって頑張りますので、また超党派で叱咤御激励をいただきますようお願いいたします。

古屋(圭)委員 歴代の自民党の総理は、この拉致問題について首脳会議のときに必ず言及していたんです。どんな小さな国、どんな主要国でも必ず言及をしていたということがあります。ぜひ新総理におかれましてもこれは徹底していただきたいということを、外務大臣にも中井担当大臣にもしっかり要請したいと思います。

 それから一つ、これは中井大臣が非常に意欲を持って取り組んでおられる、金賢姫の日本への招聘。先日、NHKでも金賢姫の放映をしていましたね、多分、大臣もごらんになったというふうに思いますけれども。やはりいよいよ、ああいう形で金賢姫自身が関与していたということがテレビでもはっきり明らかになった以上は、ぜひ日本に招聘をして、当委員会でもしっかり生の声を金賢姫自身から聞くべきだというふうに思いますので、ぜひその辺については、中井大臣にもひとつ汗をかいていただきたいということを要請したい。

 その上で、もう一つ、どうも鳩山総理が融和策に走っているのではないか、今までの方針を大転換するのではないかという懸念は、例えば小沢幹事長が韓国での記者会見でも、拉致問題ばっかりにとらわれずに、進めるべきことは早く進めた方がいいのではないかという趣旨の記者会見をされたというふうに聞いております。実力者の小沢幹事長がそう言っているということは、本当に大きくそういうふうにシフトしているのではないかという懸念を受けるわけでありまして、ぜひひとつ中井担当大臣におかれましては、長年私は中井大臣とともにこの拉致議連でしっかり取り組んできましたので、しっかり心してかかっていただきたいということをお願い申し上げたいと思います。

 最後に、ちょっと時間がありませんので、拉致被害者の家族の支援法、これは既に来年で任期が切れます。五年間が切れます。しかし、副大臣等にもお話を伺いますと、まだなかなかそこまで準備ができていないということでありますので、我々は今、議員立法としてこれを延長するというようなことで提案させていただくという準備をしておりますけれども、ぜひ家族に対する支援については、引き続き継続するように強く要請をしておきたいというふうに思います。

 以上です。

中井国務大臣 支援法案につきましては、今のままでいきますと、次の通常国会冒頭という感じで僕らは思い描いています。しかし、これは政府提案というよりも、前も超党派でございましたから、ぜひこの委員会でおまとめをいただいて、お願いをしたい。大塚副大臣も、被害者の皆さんの御意見等も聞いた中で、また御相談に上がると思いますので、よろしくお願いいたします。

 なお、たびたび、鳩山内閣は融和策だ、こう言われておりますが、融和策をとるも何も、何にもどことも接触しておりません。いろいろなことをマスコミは書きますが、一切ありません。ここのところは御理解をいただき、徹底的に僕のところを中心に対応するということで今諸活動をいたしておる、このことも御理解をいただきたいと思います。

 なお、過般、小沢さんの発言があったということが報じられました。私、同席をいたしておりまして、これは韓国民主党の代表がお越しになりまして、紹介者は私、中井洽でございます。小沢さん、極めて珍しく愛想がよろしゅうございまして、韓国民主党の方にリップサービスしたなと僕はびっくりしたところでございます。ニュアンスは必ずしもそうではなかったと僕は聞き取りましたし、何の心配もいたしておりません。

 小沢さん周辺に対していろいろな行動や報道がなされておるということも私ども十分承知していますが、私ども内閣の方針とそごを来さないように、私自身がきちっと連絡をとってまいります。御心配いただきまして、ありがとうございます。

古屋(圭)委員 リップサービスでこういう発言が出るということ自身が極めて国益を損ねるということで問題だとは思いますけれども、今、中井大臣が最後の御答弁でございましたので、時間が参りましたので、これで終わります。ありがとうございました。

城島委員長 次に、江藤拓君。

江藤委員 自由民主党の江藤拓でございます。

 きょうの委員会が開かれたことをまず私は非常に喜んでおります。昨週国会が混乱しまして、今週はすべて流れるのではないかという憶測が流れまして、もし、政権交代をして初めての国会でこの拉致の問題の委員会が開かれないということになりますと、北朝鮮の側から見ても国際社会から見ても、先ほど古屋筆頭からお話ありましたけれども、今度の政権は拉致の問題に対しては若干前政権よりも後ろ向きではないか、そういうような憶測を招く、そういうふうに誤解をされる、そういうおそれを招くのではないか、そういう御指摘は委員長からもありましたし、各党からの筆頭の皆様方、理事の皆様方から御意見をいただいて、大変な御努力をいただき、そして御英断をいただいて国会が正常化されて、きょう私もこうやって質問する機会が得られたということを非常に私はまず喜んでおります。委員長の御努力にまず感謝を申し上げます。

 そしてまた、自由民主党は非常に多くの議席を失いました。これまでは拉致議連は自民党がリードをしてきたわけであります、先生はその対極でリードをしてこられた方でいらっしゃいますけれども。しかしながら、今度、二百八人いたこの議連に民主党の新人の先生方がたくさん御入会をいただいて、この議連のメンバーの数が二百二十六人にまでふえたということは非常にありがたい。これは民主党の先生方にも私はお礼を申し上げたい。数は力でありますから、これだけの国会議員がこの問題について真摯に対応しようとしているという姿勢を示したことは、私は極めていいことだというふうに思っております。

 しかしながら、ここからちょっと嫌なことを言います。来週の国会運営は大変不透明な状況であることは皆様方御存じのとおりであります。実は来週、私はまた二回目の農水委員会で質問をいたすことになっております。というのは、農水大臣はWTOへ行かれますので、これは大事な問題ですから、WTOの報告を受けてその質疑をしたいということを、理事会でもこれは合意をいただいております。ですから、これからどうしても国会は正常化であっていただきたいんです。九日まで国会も延長していただきたい。

 しかし、それにはやはり、ここは鳩山総理が、いろいろテレビで言われています、お母さんからお金もらったとかなんとかかんとか、詳しいことは私はよう知りませんけれども、こういった問題についてやはり総理みずから、どういう場面であるか、党首討論であるか集中審議であるかわかりませんけれども、私は、堂々と御発言されることが国民の負託にこたえることにもつながりますし、国会の正常化にもつながり、議論も深まるというふうに思いますが、大臣、お考えはいかがでございましょうか。

中井国務大臣 江藤さんのお話しぶりを聞いていまして、お父さんのことをいろいろと思い出しておりました。よく似ていらしたな、似てこられたなという感じを抱いております。御活躍のほどを。また、農林議員としても独特の見識をお持ちでございます。お父さんを超えて頑張っていただきますよう、お祈りを申し上げます。

 国会のことは本当に各党各会派のお話し合いで、私どもはただただスムーズに国会審議が行われるように、私どもも、ありとあらゆる機会に御発言の機会をいただいて質疑をさせていただくことは大変うれしいことだと考えております。今回、短い期間であったけれども、拉致対策特別委員会が大変タイトな日程の中で御配慮いただいてこのように開いていただきますこと、担当大臣といたしましても心から感謝を申し上げる次第でございます。

 鳩山さんの問題につきましては、私も長くやってまいりましたし、いろいろなことを聞いておりますので、びっくりしたり、ほおっと思ったりしております。しかし、あくまでもマスコミ報道、しかも今検察の手で調べられておる、こういうことでありますから、私ども閣僚が鳩山さんの問題について口をどうこう差し挟むことは、国会といえども慎むべきだと考えております。

江藤委員 もうこのことはこれ以上申し上げません。本来の拉致の話をさせていただきたいと思います。

 我が宮崎県も、拉致は決して他人のことではないのでございます。これは宮崎県がつくっているビラでございます。この原敕晁さんという方は政府が認定している拉致被害者でございます。もちろん帰ってきておられません。そのほかに女性を含めて四名の方がいわゆる特定失踪者というリストに載っております。ですから、宮崎県としても、県議会もそうですが、宮崎大学の先生の中にも、この拉致の問題、一生懸命取り組んでいらっしゃる先生がおられて、私もこの拉致議連の中では副幹という立場をいただきまして、先生の御指導をいただきながら、これからも一緒に努力をさせていただきたいと思っております。

 それでは質問に入らせていただきますが、まだ大臣所信をお聞きしておりませんので、なかなか聞きづらい点もありますし、お答えづらい点もおありになると思いますが、どうぞよろしくお願いをいたします。

 総理も所信表明演説で言われました、拉致問題を解決する上で、関係国と緊密に連携することが重要であると。今までの先生方の質問の中でもこういう話はありました。私もそのとおりだと思います。そして、私は特にアメリカとの関係が重要だと考えています。韓国、中国、その他の国がどうでもいいと言っているんじゃ決してありません。その他の国とも緊密な連携は必要であります。

 ただ、私がどうしてこのことを申し上げるかと申しますと、二〇〇二年に五名の方が北朝鮮から帰国をされました。小泉総理も電撃訪朝ということで努力をされました。外務省も水面下では随分努力をされた。そして、いろいろな要因があったと思いますけれども、私は大きな要因の一つに、このときブッシュ大統領が悪の枢軸発言を米国議会でなさった。北朝鮮を含む悪の枢軸について非常に強い態度で臨むということを議会証言でなさった。これがやはり北朝鮮には非常にきいたんだというふうに思います。このことによって、国際社会においては北朝鮮包囲網というようなものが自然とでき上がって、北朝鮮は追い詰められて、そして、総理の努力、外務省の努力、先生方の議連の努力、いろいろな努力がパッケージ一つとなって、五名の方が二〇〇二年には帰国を果たされたという成果があったんだろうというふうに理解をしております。決して小泉さん一人の成果ではないということであります。

 鳩山総理は所信表明演説で、北朝鮮に対しての問題は、先ほども話がありましたけれども、「拉致、核、ミサイルといった諸懸案について包括的に解決し、その上で国交正常化を図るべく、関係国とも緊密に連携しつつ対処してまいります。」と、そういうふうにおっしゃいました。全く私もこの御意見には賛同するものでございます。そうでなければならないと思っています。

 しかし、現実を考えますと、この三点セットを一遍に解決しなければ先に進めないのかという話になると、これは非常にハードルが高いというふうに私は考えております。国交正常化までなし遂げるということになれば、これは大変な努力と時間と英知が必要になってくるということは、各委員の方々も私と共通の認識を持っておるというふうに考えております。

 先ほどまでの議論を聞かせていただいて、大臣が並々ならぬ御覚悟でこの職責を受けられた、そして、これから大臣として、熱い思い、情熱を持ってこの問題に取り組んでいこうと思っていらっしゃることを聞いて、非常に私は元気づけられたものではありますが、大臣にここから一つ目の質問をさせていただきます。

 自公政権でやってきたこの議連でありますけれども、対話と圧力と言いながら、拉致被害者の御家族も、やはりどちらかといえば圧力を強めてくれという要望が強かったです。先ほど大臣からも、圧力、圧力、圧力と三回言っていただきました。三回言っていただいて、もう私が聞く必要はないかなとも思ったんです。自公政権のときには、対話と圧力と言いながら、圧力にやはり軸足を置いて外交交渉を進めてきたと思うのでございます。

 改めてお聞きをしますけれども、この基本的な姿勢は変わっていないのか、それとも、新政権になって、新たな懐刀をここにしまっているんだというお話も先ほど伺いましたけれども、もしその一端でもお聞かせいただくようなことができれば、御披瀝をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

中井国務大臣 総理との何回かの拉致問題についての話し合いの中で、きちっと相手が対応してくるまでは圧力は必要だろう、こういうことを確認して、私自身はそういう方向にいつ踏み切ってもいいように考えながら行動をいたしているつもりであります。

 ただ、古屋先生の御質問にもお答え申し上げましたけれども、昨年八月ぐらいから、交渉の中で調査委員会という話が出てまいりました。これがどうなるのか、また、今回中断しています六者協議はどうなるだろうか、こういったことも見ることも要るんだろうと今考慮中でございます。

江藤委員 ありがとうございます。

 鳩山総理はよく友愛というお言葉をお使いになるわけでありますが、これは北朝鮮に通用するとお考えになっていらっしゃいますか。

中井国務大臣 いい御質問をいただいたと思っています。

 さる国の大使から、中井さん、北朝鮮には友愛精神が通用しないのか、北朝鮮には友愛精神でいかないのか、こういう御注意があったことは事実でございます。

 私はそのときに、過去数十年間にわたって日本が国交のない北朝鮮、しかし、日本国に永住者として今も八万数千人、かつては三十万人を超える方々がお住まいであって、この間日本はどういう対応をしてきたか、あるいはどんな援助をしてきたか。これはすべて、太陽、温かい国民の好意を分け与えてきた。現在も、朝鮮総連の建物に対する固定資産税あるいは教育のありようについて、随分僕らは不満があります。学校に対する出せない補助金を各地方自治体が出しておるなど、これだけ制裁という中でも、まだ太陽政策、友愛政治を行っておるんだ。にもかかわらず、国民を拉致してテロリストに育てるというような考えられないことをやる。それに対して、これ以上どうやって友愛精神を発揮するんだと思わず申し上げておきました。

 したがって、この問題さえ解決すれば、日本人の総意としての友愛、北朝鮮に対する本当にお手伝い、いかようにでもできるのではないかと僕個人は考えております。

江藤委員 私が求めていた以上の御答弁をいただきまして、ありがとうございます。この後、太陽と北風を言おうかなと思っておったのでございますが、もう全く言う必要がなくなりました。

 政権がかわれば、先ほどほかの委員からもお話がありましたけれども、北朝鮮を含む国際社会はどんなふうに変わるのかということをやはり大変注視しております。先ほど筆頭からも、文章が抜けているじゃないか、おかしいじゃないか、後退したんじゃないかというような指摘もありました。ですから、中井大臣が担当大臣として御就任をされたのでありますから、北朝鮮に対してはとにかく強い姿勢で臨むんだという国際社会に対するアピールをなるべく早い機会にぜひやっていただきたい。これは私からの要望であります。御答弁は求めません。

 今後、拉致問題の解決を目指す上で、私は、悔しいですけれども、やはりアメリカのプレゼンスというものを無視するわけにはいかないんだというふうに思います。それは前回の帰国の例を引き合いに出してもわかる話であります。十一月十三日のオバマ大統領との共同記者会見で、鳩山首相は日本の外交にとって日米同盟がすべての礎と。すべての礎、これはすごい言葉ですよ。日米同盟こそがすべてなんだと。リップサービスかもしれませんけれども、そこまでおっしゃいました。それは先ほどのお話で、やはりアメリカが大事だなということを総理も御認識されているんだということのあらわれであると思いますけれども、しかし、私は、鳩山内閣はアメリカに対して少々性急な姿勢で臨んでいるのではないかということを若干危惧をし心配しているものでございます。

 私も、日米同盟が対等な関係であることを目指す者の一人であります。戦後六十年たって、いつまでも何か親分面されるのは非常におもしろくない。全く同感であります。しかしながら、この場は、拉致問題をいかにして早期に解決するかということを議論するための委員会でありますから、あえて申し上げているのであります、アメリカが大事だということを。具体的には、普天間の問題であるとか思いやり予算、これは人件費の問題だけですけれども、それから事業仕分け、密約の問題、こういった問題等があると思います。

 外務副大臣にお尋ねをさせていただきたいと思いますが、政権発足以来数カ月、鳩山総理も御夫婦で訪米をされ、オバマ大統領も訪日をされました。自公政権以上に日米の関係というものは緊密なものになったというものを副大臣のお立場として感じていらっしゃるかどうか、率直な御感想をお聞かせください。

武正副大臣 民主党が野党時代から、外交、安全保障の基軸が日米同盟であるということを掲げ、臨んでまいりました。そして政権交代、当然マニフェストにも、それを外交、安全保障の基軸として位置づけております。このことはいささかも揺らぎはないわけであります。

 政権交代で日米同盟はどうなったかというお尋ねでありますが、日本の民主主義において、私どもは、二大政党というんでしょうか、二大政党を中心とした政権交代ということがそれこそアメリカ発の民主主義を体現するという意味では、今回それが実現したということは、米国との関係においてもより緊密になっていく一つになったのではないのかなというふうに思っております。

 もちろん、政権交代、戦後六十年で第一党がかわるということでは初めてでありますので、よく我々も、政権交代に向けてどういう準備が必要なのか、あるいは政権交代に向けた移行期間とか、いろいろなことは他の国の例を引いておりますが、御案内のように、選挙が終わって二週間で内閣が発足、そして七十日弱が過ぎたという中で、諸懸案が一挙に、大臣を先頭に、政治主導、政務三役、それぞれの官庁の皆さんと一緒に取り組んでいる、こういう中でありますので、まずは政権交代、これは日米同盟にとって日米両国を緊密にする一つにはなっているというふうに思っております。

 もちろん、いろいろな課題については、野党と与党と違いますので、やはり日米間のパイプをより太くして、いろいろなチャネルから相互のコミュニケーションを図っていく、これを同時並行で進めながらということだと思います。

江藤委員 武正外務副大臣におかれましては、ぜひ御努力を続けていただきたいと思います。

 水を差すようで大変申しわけないんですが、参考までに二、三、外電をここで御紹介させていただきたいと思います。

 オバマ米大統領が訪日されたときに合わせた十二日付の米国のニューヨーク・タイムズ、多分、副大臣もこれはお読みになりましたね。この表題が、日本は米国に対して冷淡と。そして、一九九〇年代の貿易摩擦以来最も対立的と。海上自衛隊によるインド洋での給油活動中止などにも触れ、日本政府は突然、米当局と公然と争うことをちゅうちょしなくなったというようなことを論じております、この文章の中で。まあ、マスコミの言うことだといえば、それまでですけれども。

 そしてまた、その日の電子版には、保守派の日本の専門家であられるマイケル・オースリン研究員、この方はきしむ同盟というふうに題した原稿を出しています。

 先ほど、二大政党制を具現化されたことが一つアメリカとの関係を近づけるものになったというふうに副大臣は御答弁をされましたけれども、この研究員さんによれば、日米関係は過去数年で最低の位置にある、日米の民主党には共通の基盤がほとんどない、共通基盤を見つけられなければ両国は協力の意欲を失い、中国など他のアジア諸国により関心を持つことになるだろうという警告を発したと。

 これをすべて真に受ける必要はないと思いますが、しかし、アメリカのメディアというものは大きな力を日本でも持っておりますので、客観的に外から見ると、やはりぎくしゃくしているというイメージを持たれていると私は思うんですよ。それで喜ぶのはだれか、北朝鮮です。日米の関係がぎくしゃくすれば喜ぶのは北朝鮮、しめしめと。そして、北朝鮮は最近、ちょっと口が悪い私から言わせれば、非常にいい気になっておるというふうに私は思っておるわけであります。

 大分時間がなくなってしまいましたので、ちょっとたどり着きそうもありませんけれども、途中をはしょりまして、例えば十月一日には、中国は建国六十周年を記念して大規模な軍事パレードを行いました。その三日後の四日には、温家宝首相は北朝鮮を訪問されて、そして中国と北朝鮮との緊密さを世界にアピールいたしました。

 そして、十一月三日には、使用済み核燃料棒八千本の再処理を八月末に終わらせ、抽出したプルトニウムの核兵器化で注目に値する成果があったということをいけしゃあしゃあと北朝鮮は世界に向けて、これはテレビですけれども、発信をする。

 そしてまた、十一月十九日の国連総会第三委員会では、日本、EU等が提出した北朝鮮の人権問題への対応を非難する決議案を採択いたしました。この採択後、よく御存じだと思いますけれども、北朝鮮の朴国連次席大使は、このような決議は断固として拒絶する、提案国の日米欧に対して、自国の人権侵害は棚に上げて他国の状況を取りざたするのは偽善と傲慢のきわみである、何を言っているんだと腹が立ってたまりませんが。我が国は永遠に無敵である、ジャイアンツは永遠に何とかというのがありましたけれども、北朝鮮は永遠に無敵なんだそうですよ。

 その間、この四月にはミサイルも発射し、五月には核実験、六月には国連安保理決議一八七四が出たことはよく御存じのとおり。このことで、今国交委員会でも、いわゆる貨物検査特別措置法について、多分今週中には議決がなされるんだろうと思います。

 しかし、このことについても、自民党についてはやはり海自がやるべきだということでやってまいりました。御存じのとおりですね。これを海上保安庁と税関職員にその任に当たらせるということで、私のおやじも国土交通大臣をやっていたことがありまして、私も政務官をやっていましたから海保の船には随分乗ったんですけれども、非常に装甲もぺらぺらで、高速化しなきゃいけないこともありまして、非常に脆弱な装備なんですよ。海上保安庁の船というのは基本的にそういった船であります。そういうことを見ますと、北朝鮮も、何だ、来るのは海上保安庁の船かということであれば、これも余り圧力という意味では効果がないのではないかという危惧も持っております。

 いろいろなことをだあっと申し上げまして、どれが質問かと言われると困るかもしれませんけれども、御感想を、もう時間だというペーパーも来ましたので、御所見をお聞かせいただきたいと思います。

武正副大臣 委員の御指摘は、とにかく日米同盟が外交、安全保障の基軸で大変大事であって、しかも北朝鮮、この拉致問題、とりわけ委員は、御指摘の拉致問題の解決にとって日米同盟が大変大事なんだ、そこをしっかりやりなさいということでありまして、そうした御指摘もしっかり踏まえて、政権交代の中でとにかくパイプを太くして、日米両国間でこの外交、安全保障を基軸として臨んでいくということでございます。

江藤委員 私は、民主党を責めているわけではありません。力を合わせてこの問題を解決したいという意気に燃えているものであります。北朝鮮の拉致は、我が国の国家主権を侵害しているものであります。もう言うまでもありません。そして、国家の責任は国民の生命財産を守るというのは基本でありますから、そのことを侵しているということであれば、もうこれは独立国家としての存在意義を否定されているのに等しい。ですから、この問題については自民党も民主党も社民党も共産党もないわけでありまして、力を合わせてこれはやっていきたいと思います。

 大臣の御活躍を心からお祈りし、副大臣もお立場でぜひ御活躍を、政務官も頑張っていただきますように最後にエールを送らせていただいて、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

中井国務大臣 エールをもらって、ありがとうございます。頑張ってやります。

 先ほど、古屋議員の御質問、ぼおっとしていまして抜かしておりまして、金賢姫の招致のことは、幾つかの筋からも招いたらどうだというお話をいただいていますし、御当人も意欲はあると聞かせていただいております。

 ただ、私どもは、ファン・ジャンヨプさんを前から国会へ、北朝鮮の状況というものについて国民に広く知っていただく意味でもお越しをいただく、これを一番に考えておりまして、韓国政府筋、そして御当人の了解は既にとってございます。ただ、期日的なことがまだ詰まり切っておりません。これが詰まって、お越しいただいて、お許しをいただいて、当委員会等で御発言をいただけた後、金賢姫さんをお招きするのかな、こんな思いで頭の中に入っておりますことだけを申し上げておきます。

江藤委員 終わります。ありがとうございました。

城島委員長 次に、竹内譲君。

    〔委員長退席、黒岩委員長代理着席〕

竹内委員 公明党の竹内譲でございます。

 この拉致特別委員会におきまして初めて質問をさせていただきますことを、私自身も大変感謝を申し上げる次第でございます。私も初めてでございますので、ちょっと自己紹介を兼ねて、私どものスタンスと決意を最初に申し上げさせていただきたいと思うわけでございます。

 私は、平成五年の初当選なんですけれども、実は平成十一年から十七年まで京都市会議員に転出をいたしておりまして、しかし、この間に拉致の問題と御縁ができたというわけでございます。

 それは、私は京都が地元でございますので、皆様よく御承知のように、平成十一年に京都におきまして、横田めぐみさん等拉致日本人を救出する京都の会が結成されまして、地道な活動をされてこられたわけでございます。横田早紀江さんが京都市立堀川高校の卒業生であることとか、それから前上昌輝さんの拉致疑惑、昭和五十二年に北海道で行方不明で、当時京都市左京区在住ということで、我々も存じ上げておるものですから、北朝鮮の拉致疑惑解決に向けて、京都においても北朝鮮に拉致された日本人を救うための活動を積極的に推進したいと考えまして、初めて京都市議会の中で拉致議連を立ち上げた、こういう経緯でございます。

 結局、京都市議会では平成十七年の二月十八日になったわけでございますが、そのときに横田さん御夫妻も来ていただきまして、盛り上げていこう、一生懸命応援しようということでやったわけでございます。そういうことで御縁ができた。

 最近、蓮池薫さんが書かれました、皆様もお読みになったと思いますけれども、「半島へ、ふたたび」というのを私ももう一度読ませていただきまして、ここにやはり原点があるというふうに思った次第でございます。

 特に私が感動したのは、九十七ページのところに、蓮池さんが、イムジン河という曲を平壌で聞いたことがある、思いも寄らないことだったと。金蓮子さんが北朝鮮のイベントに招待されて平壌で公演を行った。それでこの歌を歌った。その様子がテレビで北朝鮮全土に放映されて、私もその懐かしい歌を聞くことができたというふうに書かれていまして、

  感動せずにはいられない彼女の歌声に、僕も魅了された。特に「イムジン河」には強く胸を打たれ、目頭を熱くした。

  だけど、僕の涙腺を刺激したのは、北朝鮮の人たちがこの歌に抱くような、「祖国統一への切ない思い」ではなかった。

  北朝鮮に拉致されて二十年近く、「帰国」という二文字を心から消し去り、ひたすら子どものために生きてきたつもりだった。だけど、心のどこかでは、望郷の念、日本に帰りたいという気持ちを消しきれずにいたようだ。この歌は、僕に鳥の帰巣本能にも似た郷愁の思いを呼び起こさせたのだ。

  自分のギター伴奏に合わせて、よくこの「イムジン河」を歌った。傍の人が聞いたら、朝鮮民族統一への願いを込めて歌っているように聞こえたかもしれない。

 だけど、そのときは、表に出せない故郷への思い、帰りたい思いに浸って歌っていたのだ。

  今度は、自分ではなく、いまだ帰国を果たせずにいる拉致被害者の人たちへの思いとともに……。彼らも「イムジン河」の歌を聞いたなら、強い望郷の念にかられるに違いない。

  どうか早く彼らの背中に帰国への自由な翼をつけてあげてほしい。

  僕は日本政府に対し、こう願わずにはいられなかった。

 非常に感動いたしまして、この気持ちをやはり何とか実現をしていきたい、ここを原点として私どもも頑張ってまいりたいというふうに思っておるわけでございます。

 そういうことで、みずから私はこの特別委員会を志願いたしまして、理事も拝命させていただきまして、また今回、若輩ながら超党派の拉致議連の役員としても拝命をいたしまして、私どもも全力で取り組んで、全拉致被害者の方々の命の安全と救出、また真相究明と責任追及を何とか我々も努力していきたい、このように決意をまず申し上げておきたいというふうに思っております。

 そこで、まず最初に外務省の方にお聞きしたいんですが、まず情勢ということで、昨今の北朝鮮内での金正日の病気それから権力継承の動向というものが、拉致問題、それから核、ミサイルの問題にどういう影響を及ぼすと認識されておられるか。それとあわせて、近年の北朝鮮経済の状況等も含めてお答えをいただきたいと思います。

    〔黒岩委員長代理退席、委員長着席〕

武正副大臣 竹内委員にお答えをいたします。

 最近報道されました金正日総書記の病気あるいは後継者への権力移譲の動向、あるいは北朝鮮の経済状況という御質問でありますが、まずは、北朝鮮のそうした内部の状況がどうであるかということについて、経済についてですけれども、さまざまな情報には接しております。食料事情を含めまして、経済は依然厳しい状況であると承知をしております。

 また、政府として、先ほどの御指摘の点も含めまして、各国との情報交換、あるいはまた脱北者を含む関係者から話を聴取することなども含めまして、先ほど大臣から新しい対策本部、特に情報収集に力をというところも含めて取り組んでいく所存でございます。

 病気あるいは権力移譲の動向などについて、一概にその点についてお話しすることは控えさせていただきたいと思います。

竹内委員 ぜひここが聞きたかったんですが、またそれはおいおいということにさせていただきます。

 では、北朝鮮は、今回の日本の政権交代それから米国の政権交代をどのように見ているかという点につきましてお教え願えますか。

武正副大臣 これも、北朝鮮の見方を我が国が述べるということは適当でないというふうに考えております。

 あえて申し上げれば、北朝鮮の対外発表及び報道等では、日米の新政権に対する激しい非難などは特に見られないところでございます。

竹内委員 それでは、中国は北朝鮮の拉致、核、ミサイルを最新の状況としてはどのようにしたいと考えているかについてはどうでしょうか。

武正副大臣 過日、日中外相会談でも確認をしているんですけれども、六者会合の早期再開、それから朝鮮半島の非核化、北朝鮮と関係国の関係正常化などを通じた北東アジア地域の平和と安定という目標、これを共有、確認をしております。温家宝総理の訪朝を初め、六者会合再開に向け中国は外交努力を継続しておりまして、我が国としてもこれを評価する。

 拉致問題については、中国は、日本の立場を理解し、拉致問題を含めた日朝関係の進展につき、六者会合の議長国としても北朝鮮に働きかけをしているというふうに承知しております。

竹内委員 そこで、過去の分析なんですが、過去に北朝鮮が外交交渉で他国に譲歩したときの北朝鮮の国内外の状況、彼らが譲歩したケースについての何かの特徴といいますか、そういうものがあるかどうか、その辺の御認識をお伺いしたいと思います。

武正副大臣 これも、北朝鮮が外交交渉における譲歩をどのように考えているかということを申し上げる立場にないわけでございます。

 北朝鮮の外交交渉における立場に北朝鮮内部の状況がいかなる影響を及ぼすかということも、先ほど来の御質問はそうした点を踏まえての御質問だと思いますが、一概に言えないと考えております。

竹内委員 そこで、北朝鮮の核実験を受けて安保理は一八七四を出されまして、武器禁輸の強化、それから輸出入禁止品目の疑いがある貨物の検査の強化、これは一歩前進をしているわけでございますけれども、三番目に金融面の措置という制裁措置が発表されているわけですが、二〇〇六年に、北朝鮮の弾道ミサイル発射と核実験実施の発表を受けて、米国は、御存じのように、マカオにあるバンコ・デルタ・アジアの金正日総書記の口座をターゲットにした金融制裁を行いましたけれども、このときの効果についてはどのように御認識をされていますか。

武正副大臣 マカオ所在のバンコ・デルタ・アジアを主要な資金洗浄懸念のある金融機関と設定をして、米国による本件措置、通貨偽造や資金洗浄から米国の金融システムを防御するための正当な法執行の措置でございます。

 この米国による本件措置が北朝鮮にいかなる影響を与えたかについては、政府として直接承知する立場にはありませんが、本件認定を受けまして、マカオ当局が二千五百万ドルの北朝鮮関連の資金を凍結し、北朝鮮がこれに反発して六者会合への出席を拒否したことにかんがみても、本件措置は結果として北朝鮮に対する圧力となったものと考えております。

竹内委員 今後のことになるとは思うんですが、先ほど中井大臣も懐にいろいろアイデアを持っておるというようなことをおっしゃっていましたけれども、今後、このような金融制裁等もお考えになっているのか、その辺のことをお伺いしたいと思います。

中井国務大臣 現行の日本がとっております制裁措置は、人物の往来等も、朝鮮総連の四、五人の幹部だけが禁止で、原則禁止にはなっているけれども往来はできている。あるいは船も、万景峰号は完全に入港を認められていませんが、物資を積んだ船が行き来をしている現実にあるわけでございます。

 また、お話のございました預金等の封鎖につきましても、十四、五件の口座が封鎖されていますが、合わせまして二、三百万の現金しか残っていない口座を封鎖しているわけでございます。

 核やミサイルを北朝鮮がつくるにつきまして、世界じゅうから、いろいろなところで皮肉っぽく、一番被害を受ける日本人の手でつくられているんじゃないか、日本人の製品でやられているんじゃないかという冷やかしの声すら私どもは聞いているわけでございます。

 これらのことを、本当にきちっと日本人の意思としてとめていく方法はあるんだろう、こう考えておりまして、それらの問題を十分対策室内で練り上げて、いつでも発動できるようにしていきたいというのが私の思いであります。

 民主党自身の制裁はもっときついのでございまして、おととしの暮れに出しましたのはもっと強いものでございまして、そこにおられる松原仁さん等を中心につくり上げて、私は本部長でこれを了解したものでございます。

竹内委員 思いはよくわかりました。

 それで、少し角度が変わるんですが、これは十一月二日の朝日新聞なんですが、従来、二〇〇二年の小泉訪朝のときには、拉致は特殊機関の一部が妄動主義、英雄主義に走ってこういうことを行ってきたと述べて謝罪をしたわけでございますけれども、ところが、この十一月二日の朝日新聞の報道では、拉致機関、金総書記が指揮した、御存じだと思いますけれども、こう出ておりました。

 この記事によれば、自身の関与を否定する従来の主張の根拠が揺らげば、拉致、核、ミサイル問題を包括的に解決して日朝国交正常化を目指す方針を掲げる鳩山内閣の取り組みは困難なものになりかねないというような指摘がなされているんですが、この点についてはどのようにお考えですか。

中井国務大臣 日朝平壌会談において金正日さんがどういう発言をされたかは承知をいたしております。これを受けて、今日までいろいろな形の交渉が行われてまいりました。そういう中で、先ほど古屋先生におしかりをいただいた実行犯の引き渡し等が要求されてきたわけであります。

 私自身は、北朝鮮の国家としての形態からいえば、いろいろなことはすべて金正日氏から出ている、また、彼の承認でやられているんだろうと思っています。彼がすべてを握っているだけに、解決するにも彼に話をする、彼に通じるパイプでなければだめなんだろう、こういう思いもございます。

 同時に、彼が健康な間に、きちっと権力を掌握している間にやっていくことも大事だろうと考えています。外務省はなかなか言いにくいのかもしれませんが、一時健康を害し、少し後遺症も残っていると聞いておりますが、しかし、健全な思考能力を有して、完全に権力を掌握している、うわさされた後継者問題も今少し鎮静化をしている、こういう状況下にありまして、私どもは、焦ることなく、彼が健康問題そして後継者問題を抱えて不安な状況の中で物事の解決に動く、こういうことも一面期待をしているわけでございます。

竹内委員 それでは、我が国における拉致被害者の認定要件というのは三つあって、一つは北の国家的意思が推認できる、二番目に行方不明者が北朝鮮に現に存在する、三番目に本人の意思に反して連れ去られた、こういうのが従来の三条件でございますが、常識的に考えても、北朝鮮の国家的意思が推認できるというのをどのようにして判断するのかとか、それから、行方不明者が本人の意思に反して北朝鮮に連れ去られれば、自動的に北朝鮮の国家的意思ではないかというふうにも思います。

 そういう意味では、このような厳しい要件によって実際の拉致被害者が認定から排除されないように、認定要件の見直しを行うべきだというのが私どもの考えでございますけれども、その点は、中井大臣、いかがでしょうか。

中井国務大臣 全く同じ認識を持っておりまして、いつ、どういう状況でその三つの条件をもとに認定するということになったのか調べさせておりますが、こういうことでこうなったというのが、なかなか拉致対策本部の諸君からも警察からも僕のところへ報告は上がってきていません。

 国家の意思が推認されるって、金正日氏に聞くのかいと僕は冷やかしまじりに言っておりますが、大変難しい要件でございます。必ずしも北朝鮮のいろいろな機関に聞いているわけじゃなしに、北朝鮮工作員と思われる者が拉致に関与していた証拠が状況的にしろ何にしろあるということを根拠に認定をしているようでございます。

 しかし、私は、特定失踪者の中には、もう少し条件を柔軟に判断すれば十分認定できる人たちもいらっしゃるのだろう、こう思っておりまして、新しくできました室、そこに置きます外部の嘱託の方々の任命を間もなくいたしますが、これらの人たちのお知恵をかりて、警察当局とも十分相談して、少し枠を広げられないか検討したいと考えています。

竹内委員 最後に、要望だけ申し上げて終わりたいと思います。

 本当にこの問題は超党派でやるべき問題だというふうに思っておりますので、政権がかわったとかかわらないとか、そういうことは関係なく取り組むべきではないか。国会対策上のいろいろな問題が前の政権のときもありましたけれども、そのために貨物検査法は犠牲になったりして、結局また同じような法案が出てきて、また一緒にやるみたいな話だといかぬのじゃないか。どんな政治状況であろうと、この問題だけは超党派でやるべきだと私は最後に申し上げて、終わりたいと思います。

城島委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 限られた時間ですので、まず外務副大臣に端的に伺いたいと思います。

 先ほど来出ておりましたけれども、アメリカのオバマ大統領は十一月の十九日に、北朝鮮に六カ国協議への復帰を促すということで、来月十二月八日、ボズワース特別代表を北朝鮮に派遣して直接対話を行うということを発表いたしました。

 その際にオバマ大統領は、北朝鮮が挑発的行動をとった後協議に復帰し、さらなる譲歩を求め再び協議を去るという過去のパターンを断ち切るということを述べるとともに、北朝鮮が具体的で後戻りのできない措置を通じて義務を遵守し、核開発計画を放棄するならば、米国は経済的支援を提供し、北朝鮮が国際社会と完全に統合できるように手助けするというふうに語っております。

 外務省は、こうした米側の外交姿勢について、この具体的な動きについてどのように評価されているでしょうか、伺います。

武正副大臣 今御指摘ありましたが、日米首脳会談で、北朝鮮に関しては連携を一層強化することで一致をしております。拉致、核、ミサイル問題の包括的な解決が重要であるということでございます。

 また、先ほども取り上げましたが、サントリーホールでの演説の最後のところで、北朝鮮と近隣諸国との完全な国交正常化は、日本人の被害者家族が拉致被害者に関する十分な説明を受けることが前提となると。これもしっかりと、オバマ大統領は日本国民に対するメッセージとして伝えているということであります。

 訪韓中のオバマ大統領が、米韓首脳会談後の共同記者会見で、今御指摘のボズワース特別代表が十二月八日に訪朝する旨を発表し、この特別代表の訪朝については六者会合再開に向けた努力として支持をするというのが政府の姿勢でございます。

 この訪朝が六者会合の早期再開につながり、北朝鮮の核放棄の実現を図ることが重要であり、引き続き日米そして日米韓で緊密に連携をしてまいります。

笠井委員 オバマ大統領は、今ありましたが、就任後初のアジア歴訪ということで、日本、中国、韓国を訪れて、それぞれ首脳会談を行って、北朝鮮問題も議論しているわけであります。

 日米首脳会談後の鳩山総理との共同記者会見で、オバマ大統領は、我々は今後平壌といかに前進を図るかということについて日米の首脳間で徹底的な議論を行ったというふうに述べたわけですけれども、どのような議論が交わされたのか。

 また、実際に米朝協議の動きがある中で、今後、鳩山内閣としては、北朝鮮との外交交渉にどういう基本的な立場で臨んでいかれるのか。外務副大臣、お願いします。

武正副大臣 先ほど触れましたように、日米の首脳会談で、米朝接触が近々行われることにも触れつつ、北朝鮮問題につき、日米で引き続き緊密に協議を行うことについて認識が一致をしたということでございます。

 我が国は、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算し国交正常化を図る方針に変わりありません。諸懸案の一日も早い解決に向け、具体的な行動を北朝鮮から引き出すべく、引き続き関係国と連携して最大限努力をするということでございます。

笠井委員 岡田外務大臣もこの問題では基本的に前政権と変わっていないということも述べておりますが、要するに、諸懸案の包括的解決、それから、具体的な行動を引き出していくというのは日朝平壌宣言にのっとってということで、それは変わらないということでよろしいわけですか。

武正副大臣 拉致、核、ミサイル、これを包括的に解決をして、そして、国交正常化に向けて、不幸な過去を清算して図っていくということでございます。

笠井委員 要は、先ほどもちょっとあったんですが、日朝平壌宣言にのっとって、そういう立場でやっていく、それをちょっと確認したいんです。

武正副大臣 そういうことでございます。

笠井委員 中井大臣に伺います。

 私も四年近く当委員会に所属させていただきまして、その間に、福井、それから新潟にも調査で行くということで参加させてもらって、拉致された現場、さらには被害者家族の皆さんともお会いし、委員会でも参考人質疑をさせていただきながら、この拉致問題の解決はまさに一日も早くということで必要だと。これは本当に党派を超えてみんなでやらなきゃいけないということを痛感いたしております。

 鳩山総理は、九月の国連演説で、日朝関係については、日朝平壌宣言にのっとって、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を誠意を持って清算して国交正常化を図るというふうに表明されて、今回の所信表明演説や答弁の中でも、累次、繰り返し内閣としての立場を強調されております。

 そこで、中井大臣に伺いたいんですが、そうした内閣の立場に基づいて、外務大臣とも連携してという報道もありましたが、この拉致問題を初めとして、諸懸案の包括的な解決のためにどのような努力をされていくか、その決意を伺いたいと思うんですが、いかがでしょうか。

中井国務大臣 小泉さんの平壌宣言に至る交渉を先生も十分御承知だと思います。宣言という形にはなっていますが、拉致の問題、それから核の問題、ミサイルの問題、大きく見解も異なっていらっしゃる。小泉さんも言うことは言っている。しかし、金正日さんも自国の利益を守って徹底的に言っている。核を持たない日本から言われる覚えはないみたいな言い方までしている。そして、拉致は解決している、全部済んだと言い続けている。私どもは、ここはその宣言で終わったとせずに、やはり生きていらっしゃる、全員取り戻す、そこからがスタートだ、この思いで拉致問題の解決に向かって全力を挙げます。

 一方、六者協議におきましては、六カ国の間で、日朝間は平壌宣言に基づいてという言葉もあることも事実でございます。それはそれで、また外交上、岡田さんが苦労していただきながら、他国と協調してやっていただけるものだと考えておりまして、私は、それらの動きも十分に見ながら、拉致は拉致でやれる部分、解決できる部分を徹底的に探っていく、こういう姿勢でおります。

笠井委員 まさに大臣言われたように、日朝平壌宣言の履行ということがまさに大事ですし、二〇〇五年九月の六カ国協議の枠組み、その中でも、合意している中に平壌宣言ということもあって、日朝両国が平壌宣言に従って懸案事項を解決するということを約束されているものでありますので、まさにそういう中での努力が大事だと私も思っております。

 そこで、外務副大臣に伺いますが、二〇〇五年九月のその六カ国協議の共同声明で、六者は、行動対行動の原則に従い、意見が一致した事項について段階的に実施していくことが合意をされています。すなわち、一方が前向きの行動をとれば、他方も前向きの行動でこたえる、すべての懸案事項の同時解決ということではなくて、むしろ一致した問題から段階的解決を図っていこうということで、ずっと話し合いがあったと思います。そして、包括的解決を図る過程で、ある問題の解決が先行する場合もあると思います。しかし、一つの問題で前向きの突破が図られれば、それはほかの問題の解決の妨げになるんじゃなくて、その問題を解決し、促進し得るものになる。その点でいえば、日本政府が朝鮮半島の非核化に向けて積極的な姿勢をとる、このこと自体は拉致問題に対する国際的理解と支援を高める上でも役立つというふうに思うわけであります。

 そういう点で、日本政府としても、そういうことも踏まえて、まさに主体的な外交戦略を持つことが今本当に大事だと思うんですけれども、外務副大臣、その点ではどういうふうにお考えでしょうか。

武正副大臣 拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して国交正常化を図る方針、これはもう何度も繰り返しているところでございます。また、一日も早い諸懸案の解決に向けて、六者会合の早期再開、六者会合共同声明の完全実施に向けた具体的行動を北朝鮮から引き出すべく、引き続き米、韓国、中国等の関係国と連携して最大限努力していくということでございます。

 鳩山総理が国連総会の一般討論演説で述べている中で、日朝関係についてのところで、「特に、拉致問題については、昨年に合意したとおり速やかに全面的な調査を開始する等の、北朝鮮による前向きな行動が日朝関係進展の糸口となるでありましょうし、そのような北朝鮮による前向きかつ誠意ある行動があれば、日本としても前向きに対応する用意があります。」こう述べております。

笠井委員 やはり北朝鮮問題の解決、拉致問題を初めとして解決するために、さまざまな困難はあっても、六カ国協議の枠組みを復活させて、それを通じて諸懸案の解決を図る、そして地域の平和と安定の枠組みを発展させるという立場でぜひ新政権が対応されることを求めながら、質問を終わりたいと思います。

城島委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十二分散会


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