衆議院

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第3号 平成22年11月4日(木曜日)

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平成二十二年十一月四日(木曜日)

    午後三時三十二分開議

 出席委員

   委員長 奥村 展三君

   理事 北神 圭朗君 理事 長尾  敬君

   理事 向山 好一君 理事 谷田川 元君

   理事 鷲尾英一郎君 理事 江藤  拓君

   理事 古屋 圭司君 理事 竹内  譲君

      勝又恒一郎君    熊谷 貞俊君

      中島 政希君    野木  実君

      萩原  仁君    平山 泰朗君

      松宮  勲君    村上 史好君

      吉田 公一君    渡辺 義彦君

      坂本 哲志君    高木  毅君

      永岡 桂子君    笠井  亮君

      中島 隆利君

    …………………………………

   参考人

   (北朝鮮による拉致被害者家族連絡会代表)     飯塚 繁雄君

   参考人

   (北朝鮮による拉致被害者家族連絡会前代表)    横田  滋君

   参考人

   (北朝鮮による拉致被害者家族連絡会事務局長)   増元 照明君

   参考人

   (北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会会長)        西岡  力君

   参考人

   (特定失踪者問題調査会代表)           荒木 和博君

   衆議院調査局北朝鮮による拉致問題等に関する特別調査室長          綱井 幸裕君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月四日

 辞任         補欠選任

  中津川博郷君     平山 泰朗君

同日

 辞任         補欠選任

  平山 泰朗君     中津川博郷君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 北朝鮮による拉致問題等に関する件


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     ――――◇―――――

奥村委員長 これより会議を開きます。

 北朝鮮による拉致問題等に関する件について調査を進めます。

 本日は、参考人として、北朝鮮による拉致被害者家族連絡会代表飯塚繁雄君、北朝鮮による拉致被害者家族連絡会前代表横田滋君、北朝鮮による拉致被害者家族連絡会事務局長増元照明君、北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会会長西岡力君及び特定失踪者問題調査会代表荒木和博君、以上五名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。

 本日は、御多用中こうして御出席をいただきまして、本当にありがとうございます。参考人の皆さんにおかれましては、日々、拉致問題等に本当に親身にわたる行動をしていただいておりますこと、厚く御礼を申し上げる次第でございます。

 当委員会におきましても、過去にはいろいろなことで調査してまいったわけでございますが、今回、このように皆さん方においでをいただいて、そして、時間的な問題もあります、特に、私は風化させてはならないという思いで、この委員会を、各委員の皆様方に御理解をいただき、一日も早く委員会を開催したいということで、きょうの運びになったところでございます。

 それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜りますようにお願いを申し上げる次第でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、飯塚参考人、横田参考人、増元参考人、西岡参考人、荒木参考人の順に、お一人五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。

 御発言は着席のままで結構でございます。

 念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることはできないこととなっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。

 それでは、まず、飯塚参考人、お願いいたします。

飯塚参考人 私たちは、被害者家族会としていろいろな活動を続けておりますけれども、それぞれ被害者を抱えながら、いろいろな全国的な活動に奔走しております。

 安倍総理のときに対策本部ができまして、そしてまた、きょうのような、国会の中に特別委員会が設置され、数ある論議をされてまいりましたけれども、政権がかわる、あるいは総理大臣が交代が激しい、そういった中で、実際には、救出のためのはっきりとした具体的な動きが見えないというのが私たちの率直な感想でございます。

 若干不安を感じる点、二、三申し上げますと、今まで北朝鮮とどういう交渉をしてきたのか。また、福田内閣のときの相手が、調査委員会を設けて調査し、その報告をするというようなことが今多分継続になっていると思いますけれども、この辺もどうなっているのか。また、これらを含めて、既にボールは投げてある、ボールが返ってくるまで待っているんだというようなことがいつも言われますけれども、これはあくまで受動的であって、戦略的ではないと思います。しからば、いつまで待てばいいのかということが疑問視されるところでございます。

 また、被害者の情報収集はどの程度まで行って結果が出ているのか、その辺についても、我々家族としては、一人一人に詳しい情報は伝えられておりません。この辺については、逐一、家族だけでもその経過を知らせてくれればありがたいというふうに感じておるところでございます。この辺については、毎日、日常不安を抱えながら、どうなっているんだろうという思いで過ごしておるところでございます。

 したがって、この辺を含めた戦略的な手段は何なのかということを我々もはっきりと心に刻みながら、活動を並行して進めたいというふうにも考えております。

 この問題は、いわゆる人権そのものの問題であって、日本国民が拉致をされているという実態からすれば、当然、日本の最重要課題というふうに位置づけてしかるべきだと思いますけれども、実際にはそういった最優先の動きが見えないので、本当に被害者を取り戻す気があるのかという率直な疑問も持っているところでございます。

 お願いとしては、先日ちょっと韓国へも参ってまいりましたけれども、いわゆる対策本部の中の組織の一つとして、被害者の情報収集を徹底的にやるということを約束されておりますけれども、その辺についても、さらなる情報収集を有効的に進めるためには、やはり韓国の政府と十分な連携をとってほしい。韓国には、被害者もたくさんおりますし、脱北者もいます。そういった点も含めて、政府と政府がこの辺を能動的に動いていただいて、ぜひ情報をきちっととらまえて次の動きに役立ててほしいというふうに考えております。

 今こういう状況の中でも、被害者の人たちは帰国を今か今かと待っているところでございますし、また冬が来て厳寒な生活状況を乗り越えられるかどうかというときに、我々あるいは日本国全体がそのことを思って、一刻も早く国を挙げて救出をしていただきたいというのが強い願いでございます。

 以上です。

奥村委員長 ありがとうございました。

 次に、横田参考人、お願いいたします。

横田参考人 私の長女めぐみは、昭和五十二年の十一月十五日、新潟市で失踪いたしまして、それから二十年後の平成九年二月に、北朝鮮による拉致と判明いたしました。当時十三歳になったばかりだったんですが、先月の十月五日で四十六歳になり、それから、今月の十五日では北朝鮮に拉致されてから三十三年になります。ですから、実に人生の七割以上を北朝鮮に拘束されていたことになります。

 拉致は、人権問題ではありますが、同時に我が国の主権侵害の問題で、最近ですと、尖閣列島付近で海上保安庁の船に衝突してきた漁船船長の処遇とか、それから高圧的な中国の対応に、日本はそれに対して、弱腰とは言われますけれども、抗議をしております。また、ロシアの大統領が国後訪問をして実効支配を強化するような動きも見えますけれども、駐ロ大使を召還する等、それに対して対応しておりますが、拉致問題については特に動きが見えません。

 先ほどの飯塚さんの話とちょっとダブりますが、福田内閣のときに、生存者を見つけて帰国させるための調査をするということになったんですが、辞意を表明されたことから先延ばしになりまして、麻生内閣の時代から菅内閣に至るまで、日朝交渉というのは全く行われておりません。そして、やはりこれは外交交渉なしに解決するということは難しいと思います。

 北朝鮮は、拉致問題は、生きている人はすべて帰した、残りの人は死亡または未入国だから、解決済みというふうに主張しておりますが、北のこの死亡説というのは全く根拠がありません。

 例えば、平成十六年の十一月十五日、日朝会談がありましたときに、めぐみの遺骨が提供されました。しかし、DNA鑑定の結果、十二月八日にその結果が出ましたが、五つの検体のうち四つから同一人のDNAが、もう一片から別のDNAが検出されましたのですが、いずれもめぐみのものではありませんでした。

 それから、他の拉致被害者につきましても、死亡と言われている人は、ほとんどが不自然な事故死で、かつ、若いときに亡くなっていますので、とても信頼できるものではありません。

 それから最後に、めぐみの子供のヘギョンさんの扱いということになりますが、よくいろいろな人から、北朝鮮に行った方がいい、北朝鮮が死亡と言っているんだから、もう死亡なんだから、行ってお孫さんに会ったらいいなんと言う人がいますけれども、やはり死亡は確認されておりませんし、それから、今行くことによって、ヘギョンさんが出てきて、お母さんは死にました、詳しいことは四歳か五歳だからわかりませんと言って、それをまたこっちがわかりましたと言えば死んだことを了承することになりますし、また、あなたはうそつきだと言ってしまうと彼女の立場が悪くなりますので、我々は、訪朝ということは当面考えておりません。

 以上でございます。

奥村委員長 ありがとうございました。

 次に、増元参考人、お願いいたします。

増元参考人 このような場で発言をさせていただくことを感謝申し上げます。

 私は、一九七八年、五十三年に、市川修一さんとともに北朝鮮に拉致された増元るみ子の弟です。

 一連の、七月、蓮池さん御夫妻、それから地村さん御夫妻、そして八月に私の姉と修一さん、カップルで連続して失踪した中の一件の被害者です。二組の被害者は帰ってきておりますけれども、私の姉と修一さんは帰ってきていない現状です。

 私たちは、二〇〇二年九月以前に情報を入手しておりました。これは余り確証のないものですけれども、二つのその以前にいただいていた情報では、姉には子供がいるということです。これは、張龍雲という元北朝鮮工作員が兵本達吉さんにそのように話をされております。男の子二人という具体的な人数を承知しています。

 さらに、これは未確認の情報で、拉致被害者の名前が羅列された中に、姉と修一さんの間には子供ありという羅列がありました。そこには、蓮池さんの御夫妻、それから地村さんの御夫妻、田中実さんのことも書いてありまして、これも未確認ですけれども、これに関しては荒木代表の方が詳しいと思います。

 さらに、二〇〇二年九月以降、祐木子さんが帰国されて、祐木子さんが北朝鮮にいる当時、彼女の世話をしてきたオモニから、あなたを知る日本女性に子供が生まれたということを聞いた、私を知る日本女性というのは、るみ子さんしかいないので、必ずるみ子さんには子供がいると。

 つまり、三方から同じ、姉には子供がいるという情報が流れています。しかるに、北朝鮮は二〇〇二年の九月に、私の姉は一九八一年八月十七日に死亡、その以前、一九七九年九月四日に市川さんは死亡、したがって、子供はいないという情報というか、いないという報告をしてきました。

 しかし、私たち家族には、そのことは、死亡日付も全く知らされないまま、二日ほどたって朝日新聞のリークによって北朝鮮からもたらされたその死亡情報、それが私たちが事前に聞いていた市川修一さんの安否情報と大きく食い違うことによって、この北朝鮮の発表はおかしい、必ずこれには何かの策略がある。そして私たちは、すべての拉致被害者は生きているという前提で政府に交渉をしていただきたいし、生きている家族を早く取り戻していただきたいという要請をしております。

 あれから八年、その間、八人に関する情報を、恐らく明確な情報をとっていないというのは、これは一つの国家としてありなのかと私は個人的に思っています。国民の命を守るのが国家であれば、その国民の命に関する情報をすべて、どのような手段をとってもとるべきであろうと思っておりますが、いまだに確かな情報も来ていないということです。

 この十一月一日、私の姉が五十七歳の誕生日を迎えました。二十四歳で拉致されて、三十三年に近い長い人生を北朝鮮で送らざるを得ない状況です。姉の人生が何のためにあったのか、それはやはり、二〇〇二年九月、姉たちの被害が公になって、北朝鮮人民の苦労とそして日本の国家のおかしさを、日本の国民の中に、世界に広げる役割があったのだろうと私は思っています。

 その点でも、この拉致問題を通して、この国が本当にまともな国なのかということを国民の皆さんに考えていただきたい。そして、それを糧に、この国をまともな国にしてもらうために彼らの犠牲があったのだ、そう強く私は思っています。

 その点で、今回、朝鮮高校の無償化に関して、なぜ私たちの国が、この朝鮮高校というか、朝鮮総連の下部組織、関連組織である高校に無償化を実施し、国民の税金を支払わなければならないのか。

 ましてや、その朝鮮高校の「現代朝鮮歴史」には、お手元に配付されている資料にあるように、「二〇〇二年九月、朝日平壌宣言発表以後、日本当局は「拉致問題」を極大化し、反共和国・反総連・反朝鮮人騒動を大々的にくり広げることによって、日本社会には極端な民族排他主義的な雰囲気が作り出されていった。」

 すなわち、我が国で制定された北朝鮮人権法も、そして十二月に開催される北朝鮮人権週間、これをもすべて否定している高校に、我が国が決めたことをすべて否定している高校に、なぜ国民の税金が使われなければならないのか、これが本当に姉たちの犠牲によってなされている国のあり方なのか、それを私は非常に疑問に思っております。

 ぜひ、今回の高校無償化の件も含めて、この国はどのようになすべきなのか、姉たちの犠牲は何だったのかということを皆さんに真剣に考え、そして議論をしていただき、正しい方向に持っていっていただきたいと思っております。

 ありがとうございました。

奥村委員長 ありがとうございました。

 次に、西岡参考人、お願いいたします。

西岡参考人 西岡でございます。

 五分ですので、ちょっとあいさつは省略して中身に入ります。

 私たちは、救出の戦略を考えております。救出の戦略は、制裁と国際連携の圧力で北朝鮮を拉致問題での対話に引き出す、制裁と国際連携の圧力で北朝鮮を拉致問題の対話に引き出すということです。

 このことについて、なぜそれが必要なのか、そのための方法論二点を申し上げます。

 そして、もう一つの救出の戦略があります。これと並行して、金正日政権崩壊時の混乱事態にも備えなきゃならない。混乱事態への備えをしなくちゃいけないということで、五点申し上げます。

 まず第一の、制裁と国際連携の圧力で引き出すということですが、北朝鮮は、圧力があって初めて譲歩します。二〇〇二年から二〇一〇年、今まで八年間膠着状態です。しかし、これを分析しますと、二〇〇六年までは圧力をかけていません。制裁を、拉致を理由にしてはかけていませんでした。そして、二〇〇六年に、拉致も明示してかけました。

 そうしたらば、二〇〇八年に、制裁の一部を解除してくれと言って、拉致問題などの交渉が起きました。そのとき、アメリカも実は金融制裁をかけていた。それで、国際連携と日本の制裁がきいて、福田政権の末期に話が整ったんです。しかし、アメリカが、金融制裁等テロ国家指定を解除してしまった。金正日が倒れたなどのことがあって、制裁が緩んだらまた、国際制裁が緩んだら交渉がストップしてしまった。

 この八年間を分析すると、四年間はなくて、制裁をかけて二年たったら少し動きが出たけれども、アメリカの制裁が緩んだらまた膠着したという、まず経験則があります。

 もう一つ、北朝鮮は、拉致したのは十三人だけで、五人帰して残り八人は死んだというふうに言っています。日本政府は十七人拉致したと言っていますから、四人違いがあります。八人死亡も根拠がないわけです。

 しかし、なぜ彼らが八人死亡と言わなくちゃいけなかったのか。端的に言って、金正日の責任を認められないからです。独裁国家は、独裁者の責任を認めることは本人の了承なしにはできない。今でも、田口さんの拉致を認めておきながら、大韓機爆破事件はでっち上げだと言っておるんです。朝鮮総連の教科書にも、お配りしたとおり、そう書いてあります。

 なぜそうせざるを得ないか。金賢姫は、大韓機事件は金正日の命令だったと言っているんです。田口さんと金賢姫が会ったら、金賢姫がテロリストだということが証明されてしまうと彼らは恐れているから、生きている人を死んだと言った。その生きている人を死んだと言ったうそを認めさせるためには、強い圧力をかける以外ないということで、圧力が必要だということであります。

 そして、彼らが、全員帰さなくても日本から支援の来る可能性がある、制裁は解除する可能性があると考えている間は、膠着状態は続きます。これが三点目です。

 実は、ことしの三月三十日に、村山富市元首相は、ある席で、拉致問題に対する北朝鮮の姿勢は理解できる、日本の一方的な要求によって交渉が決裂したが、交渉というのは相手の言い分をよく聞くことが重要だ、確かに主権侵害だが、現状において拉致の解決は困難であり、双方が納得のいく決着をつけることが最良の解決策である、日本にとって北朝鮮は隣国であり、国交がないのは不自然であるとおっしゃっています。

 また、和田春樹東大名誉教授は、日本は、北朝鮮の説明、五人生存、八人死亡に涙を流して妥協し、双方が平和的問題を築き上げていかなきゃならないと言っています。

 こういう人が国内にいる限り、彼らは、今のうそが維持できると思ってしまうわけです。国内がちゃんとまとまっていないと、昔のように日本が拉致問題への関心が下がると彼らが誤解している間は、解決しないと思います。

 もう一つ、急変事態等のことについては、御質問で申し上げたいと思います。

 以上です。

奥村委員長 ありがとうございました。

 次に、荒木参考人、お願いいたします。

荒木参考人 ありがとうございます。

 特定失踪者問題調査会と申します、日本政府が認定をしていない拉致の可能性のある失踪者について調査をし、そしてその救出を目指すという団体の代表でございます。

 お手元にお配りいただきましたこのポスターは、私どもの会でつくったものでございまして、この中に、特定失踪者、可能性のある失踪者約四百七十人のうちの公開されている二百七十人余り、それから政府認定の拉致被害者等々が入っているポスターでございます。

 この中には拉致でない方もおられて、その方はポスターをつくり直すたびに抜けていきますが、また新しく拉致の可能性があるということで入ってこられる方がおられます。

 現在、政府の認定している拉致被害者は十七人ですが、私どもは、それをはるかに超えた人数の日本人が拉致をされているというふうに認識しております。

 一体どこに問題があるのかということで、お手元にお配りいたしました「国内問題としての拉致問題」ということで、時間の限りがございますので、ポイントだけ申し上げておきます。

 まず、この拉致問題は、基本的には国内の問題が解決されれば大幅に進展をするということでございます。

 その証拠を幾つか申し上げます。

 一つは、辛光洙、原敕晁さんを拉致した工作員ですが、この釈放署名。この件については皆様御存じだと思いますが、残念ながら、菅直人現総理、そして今名前が出ました村山元総理などを初めといたしまして、百三十三人の国会議員が、当時、工作員であったことが事実上わかっていたにもかかわらず、その釈放の署名をしている。そして、これに限らず、北に近い人たちがさまざまな形で、この国会の中も含めて、拉致問題の解決を妨害してきたという事実がございます。

 そして、二番の、参議院内閣委員会で、これは細田博之官房長官の答弁でございます。どうやって拉致被害者を取り返すのかという質問に対しまして、結局、要は、この領土の中においては北朝鮮がその権利を持っているということで、かいつまんで言えば、北朝鮮に連れていかれたら、煮て食おうと焼いて食おうと北朝鮮の好きなようにするしかないという答弁を官房長官がされたということでございまして、これは本来であれば、この答弁一つで内閣が吹っ飛んでもおかしくない答弁であったと私は理解しております。

 三番の飯倉公館事件。これは、先ほど増元さんの話なんかにもちょっと出ておりましたが、要は、九・一七の小泉訪朝の折、家族会の方々に対して伝えられた情報の中に、死亡というふうに北朝鮮が言ってきた情報が入っていなかったということでございます。

 資料の五ページ目、六ページ目に、これは北朝鮮側から出てきた資料そのままのもののコピーでございますが、あります。丸印で囲んであるところが死亡という日付です。

 一目見ればこれは明らかに、北朝鮮が言ってきたもので、うそだということがわかるんですが、これを隠して家族会の方々に伝えられました。なぜかというと、これが明らかになれば、北朝鮮が言っていることがうそだということがわかり、日朝国交正常化にブレーキがかかるということでございます。

 四番目、田原総一朗さんの裁判における陳述書。これは有本恵子さんの御両親が田原さんを訴えているものですが、この中に、外務省の幹部が田原さんに対して、死亡と言われている八人以外に複数の日本人が北朝鮮にいるということを北朝鮮の宋日昊日朝国交担当大使が話した、これは外務省も聞いているけれども、それが帰ってきても世論が好転することはないと判断したので、その話はなかったことにしたというふうに言っていると。これは裁判の陳述書でございますので、恐らく間違いはないであろうというふうに思います。

 それから、山本美保さんにかかわるDNAデータ偽造疑惑事件。これは、特定失踪者で、私ども拉致の可能性が高いと思っております山本美保さんに関しまして、山梨県警が突然発表して、DNAデータの鑑定の結果、双子の妹さんと、失踪十七日後に山形で見つかった身元不明遺体が一緒である、つまり、この遺体が山本美保さんであるということで、事実上拉致を打ち消す発表をいたしました。

 しかし、後で調べていったところ、資料の七ページ目にちょっと簡単なポスター、プリントしたものがございますが、どう考えても全く同一人物とは思えないということで、逆に言えば、DNAのデータの書類を日本政府の力によって偽造したというふうに思わざるを得ない事件でございます。

 これらのようなことが実際に行われている。この問題が解決されれば、私はこれだけでも拉致問題は進展するのではないだろうかというふうに思っております。

 時間の関係がございますので、あと、最後の五のところはまた御質問があれば御説明いたしますが、ともかく、現在のやり方をとっていてもそれだけでは問題は解決しない、新しいやり方をぜひとも進めていただきたいと思っております。

 以上でございます。

奥村委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

奥村委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 参考人に対する質疑は、理事会の協議に基づき、まず、各会派を代表する委員が順次質疑を行い、その後、各委員が自由に質疑を行うことといたします。

 なお、御発言は着席のままで結構でございます。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鷲尾英一郎君。

鷲尾委員 参考人の皆様におかれましては、きょうは御足労をいただきましてありがとうございました。衆議院の鷲尾でございます。

 きょう皆様に御質問申し上げたいのは、一点、みずからの反省の意味も込めまして、皆様から意見を述べていただきたいという思いがございますので、これから質問させていただきたいと思います。

 それは何かと申しますと、実は、民主党が政権交代後に、政府と党の一元化というお題目の中で、野党時代にはありました拉致対策本部というのが、政権交代後、なくなってしまいました。その後、拉致対策本部がいまだ設置されていない状況にあります。

 党内でこの拉致対策本部をつくろうという動きは、当然有志の議員でしているわけですけれども、その過程において、先ほど増元さんから御意見がございましたけれども、民主党のマニフェストにございました高校の無償化に係りまして、外国人学校にも支援金を支給するという問題がございました。その件につきまして、なかなか皆様の御意見を伺う機会がなかったというのが、私の反省の意味も込めて、皆様に率直に申し上げさせていただきたいと思います。

 その中において、ぜひきょうおられます参考人の皆様方から、実は、まだ支給すると決まったわけではございません、外国人学校に支援金を支給する基準を、政府がつくってきた基準を党として了とするというところまでが今の現段階でございます。

 まだ、政府としてこれからどの学校を指定するかという段階が残っておりますので、ぜひ、この機会を皆様からの意見陳述の場としていただいて、それがこういった国会の場で話されたということをもって、政府に私もまた継続して申し入れをさせていただきたいというふうに思っている次第です。

 そういう観点から、参考人の皆様におかれまして、民主党の高校の無償化について、外国人学校の指定の問題について御意見をお聞かせいただきたいと思います。

飯塚参考人 当然、無償化の問題については、我々は専門家ではないんですけれども、明らかに言えるのは、今、国が北朝鮮に対して、拉致問題を大きく打ち出している中で、制裁をかけ、北朝鮮の不誠実な対応を直すべく要求しているその中で、やはりそれに反する、矛盾する行為だというふうに私は感じております。

 これは、当然、生徒が憎いわけではなくて、今、日本国が日本国のためにいろいろ頑張っている中で、日本国のためにならない、そういった教育関係組織、考え方、これについては当然ながら我々としては非常に憂慮するべき事態であって、やはりこれが、もし無償化が通れば、北朝鮮に対して間違ったメッセージを送ることになる、日本は、制裁、制裁といいながらも、こうやってちゃんと支援してくれるじゃないかと。

 北朝鮮については、当局は、この事態を踏まえ、実態を見て、また勝ったというメッセージあるいは向こうの誤解につながるということがありますので、これはもう絶対にその辺まで含めた判断をお願いします。

横田参考人 私は、この朝鮮学校というのは各種学校であって、学校教育法で決めた学校でないので、対象外だと思います。

 それで、先日、都道府県に県会議員のレベルでの拉致議連がありますので、その集まりがありましたときにも、家族会、救う会連名で、こういったところに支援するのは不適当であるということでお願いをいたしまして、各県でもそれを抑える方向でやるというふうに了承をいただきました。

増元参考人 代表、前代表が言われたことが家族の気持ちです。

 さらに、私も、在日の方それから北朝鮮の人権問題を扱っているNGOの方々、皆さんにお聞きしました。その方々は皆さん反対です。なぜならば、朝鮮学校で教えている事実、お手元にもありますようにKAL機事件に関しては南朝鮮のでっち上げだと教えている。これは正しい歴史を学ぶ権利を奪っている状況です。

 多くの方たちが生徒の学ぶ権利とおっしゃいますが、間違った教育を施される、これを是正する、正しい教育を学ぶ権利を奪う必要はない。その点で、今回の無償化問題を契機に、朝鮮総連のあり方、そして朝鮮学校の教育のあり方、そこで学ぶ子供たちの正しい方向性をこの国として責任を持ってやっていくべきだと思っておりますので、ただ単にお金を渡せばいいという問題ではない。この問題を契機に、本当に真摯な議論をしていただきたいと思っております。

西岡参考人 私も反対です。

 教育基本法の第二条に、「他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。」というのが教育の目的と書いてあるんですね。ここでお配りしたこの記述は、これに明確に違反していると私は思います。

 そして、北朝鮮人権法の第二条で、国は、北朝鮮当局の国家的犯罪行為である日本国民の拉致の問題を解決するために最大限の努力をするものとする、政府は、拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題に関し、国民世論の啓発を図るものとすると書いてあるんですね。そういうことをすると、この記述で、民族排他主義的な雰囲気をつくったと言われているんです。

 この法律を否定する内容の教育をされているときに、国庫のお金を入れる。学校をつぶせと言っているんじゃないんです。国庫のお金を入れるということは、法律の趣旨を政府みずからが否定することにならないのか。

 そういう点で、鷲尾先生おっしゃいましたけれども、文教部会じゃなくて、拉致対策本部があって、この教育基本法と北朝鮮人権法も含めて検討していただきたかったなと思いますし、今後もぜひそういう方向で検討していただきたいと強く思います。

荒木参考人 私も同様、反対でございます。

 朝鮮学校を舞台にしまして、さまざまな犯罪行為あるいは工作活動が行われております。これに対して、朝鮮学校あるいは朝鮮総連側では一切弁明もしていないし、謝罪もしていない。この状態で金を出すということは、そこで学ぶ子供たちにとっての人権侵害以外の何物でもないというふうに思っております。

 以上でございます。

鷲尾委員 私の持ち時間が以上でございまして、これで終わらせていただきますが、党の方でも対策本部を含めまして今整備中でございますので、その暁には、また皆様から御意見等をしっかりと承りたいというふうに思っております。

 きょうはどうもありがとうございました。

奥村委員長 次に、向山好一君。

向山委員 民主党の向山好一でございます。

 時間がございませんので、早速質問をさせていただきます。

 私の地元は神戸です。神戸は、御存じのとおり、有本恵子さん、あるいは田中実さん、そして寺越外雄さんという拉致被害者がいらっしゃいます。加えて、特定失踪者もたくさんいらっしゃるところでございますけれども、特に、私、神戸市長田区は選挙区で、有本恵子さんのおうちがあるところです。

 そして、彼女は昭和三十五年生まれの現在五十歳、私とほとんど同年代でして、恵子さんの友人というのを私はよく知っています。ですから、以前から、私は、有本さんの御両親の明弘さんと嘉代子さんとはコンタクトをし、いろいろ話し合いもし、あるいは署名活動を一緒にやってきました。ですから、有本さんの御両親から、政府のいいかげんな対応ということを、本当に生々しいお話をいろいろ私は聞いてきています。

 そのことをきょう議論するつもりはございませんけれども、長年有本さんと一緒に活動をさせていただくと、つくづく感じるのは、だんだんお年をとられて、これは時間との闘いだなということを本当に痛切に感じます。

 しかし、一方、この七、八年、全く拉致問題というのは進展がないということも事実でございまして、その原因を、今荒木さんの方から、これは国内問題にもあると、「国内問題としての拉致問題」という資料をいただきました。

 そこの四番にも、今申しました有本さんのことが書いてございまして、この有名なジャーナリストを相手に今訴訟を起こしておりまして、そこの陳述書に、八人以外の複数の日本人が帰国しても、北朝鮮に対する世論が好転することはないと判断したため、その話はなかったことにしたと話したということが書いてあります。

 これは、真実は別にして、この発言自体は事実でございまして、有本さんがよくおっしゃるのが、本当に日本の政府というのは救出するつもりはあるのか、なかったことにしようとしているんではないのかということをよくおっしゃるんですけれども、この発言自体も本当にそういうふうに感じます。

 五番の方に山本美保さんのことが書いています。このDNA鑑定というのは、足利事件でも同じように、今、信憑性はなくなっているにもかかわらず、これを盾に、警察までもこれを隠ぺいしようとしているとしか言いようがないような矛盾を私も感じています。

 そこで、荒木さんに、この山本さんのDNA鑑定のことと、プラス、今最後におっしゃった、拉致問題を解決するためには新しいやり方が何か必要ではないかというお話がありましたけれども、その新しいやり方について何か示唆になるようなお話が聞けたらと思いますので、御質問をさせていただきます。

 以上です。

荒木参考人 この五番の山本美保さんに関する事件に関しては、DNAの鑑定自体に私どもは特に疑義を挟むものではなくて、双子だということで全く同じものが出たということで、これをすべて処理してしまったことが問題であろうと思います。ですから、もう明らかに別人だとわかるということはさまざまな証拠で明らかなわけで、だれか、どこかで書類をつくった人物がこれをやったんだというふうに考えざるを得ない。

 もう現在の山梨県警の担当者はすべてかわっておりまして、今聞いても、昔の書類を、しかも偽造されたと思われる書類を使って回答してくるので、そうではなくて、当時発表いたしました責任者であります山梨県警の警備一課長丸山潤という人がいるんですが、現在、バンコクの大使館に一等書記官として勤務しているというふうに聞いております。この人を東京に召還して事情を聞いていただくということが私は極めて必要な問題ではないかというふうに思っております。

 それから、どのようにやるかということの問題で、要は、その五番のところにありますA、B、C、Dというこの流れが、結局、これで今までやってきたことがうまくいっていない。これをやめろというふうには申しませんが、ともかく外国にいる人たちを助け出すわけですから、すべてのことをやる必要があるという意味で、今までは、基本的に警察と外務省ということが中心となっておりましたけれども、これまで全く使っていない自衛隊、それから機能とか人材がまだ十分に使われていないと思われる海上保安庁とか公安調査庁など、そういう情報機関をもっと活用することによって、そして、政府自体が、帰ってくるようにしむけるではなくて、救出をするということを明確にすることによって、事態を前に進めることが可能であるというふうに理解しています。

 以上です。

向山委員 時間が参りましたので質問はいたしませんけれども、丸山潤さんという今お話もございましたし、せっかく政権が交代して、新しい政権になったわけですから、本当にこの拉致救出の戦術というものも変えられるように、党側からもいろいろ提言もさせていただきたいな、このように思っていますので、またいろいろと御指導いただけたらと思います。

 きょうはありがとうございました。以上で終わります。

奥村委員長 次に、古屋圭司君。

古屋(圭)委員 家族会、救う会、特定失踪者の代表者、いつも私も一緒に活動しておりますが、本当に御苦労さまです。ありがとうございます。

 先日、韓国に一緒に行ってまいりました。私は、過去の金大中あるいは盧武鉉政権のときには、この拉致の問題はもう全く向こうに行ってもナシのつぶてでしたけれども、李明博になって、朝鮮戦争の拉致被害者に対する人権の回復のための法案を発効したりとか、チャンスが出てきた。そこで、我々はしっかり連携しようと。

 今、飯塚さんからもお話がありましたように、韓国との連携というのはすごい大切だと思います。

 特に、北朝鮮と中国が今異常接近していますよね。中国の義勇軍の朝鮮戦争参加六十周年に金正日親子が行って献花したりとか、あるいは自由貿易特区を広げようだとか、それから、韓国にはあえて習近平が刺激的な朝鮮戦争に対する歴史観を押しつけたりとか、こういうことをしていますね。

 だからこそ、やはりこれは、今、日本と韓国が本当に連携することが極めて大切だと思います。あのヒル国務次官補は、北朝鮮にあめをなめさせたのは大失敗と今ごろになって言っているんですね。

 だから、ぜひ、きょうは参考人の皆さんから御要望をちょうだいして、そして、次の政府質疑のときにしっかり生かしていきたいと思いますので、実際、韓国との連携の強化のために何をすべきかといったことを、西岡さんあるいは増元さんからお話をいただければというふうに思います。

西岡参考人 ここにいらっしゃる与野党両方の先生方に一緒に行っていただきまして、感謝申し上げます。

 韓国との連携のために何をすべきかということですが、一つは、やはり制裁で足並みをそろえるということだと思います。

 韓国は、哨戒艦撃沈事件で今制裁をしています。そして、その直後に、韓国の外務大臣が、日本の制裁も効果がある、北朝鮮は原爆をつくったりあるいはぜいたくな暮らしをするためには輸入をしなくちゃいけない、そのためには外貨が必要だ、それを閉ざすことは意味がある、日本と韓国が連携して制裁することが意味があるというふうに、初めて韓国側からそういう発言が出たのが李明博政権であります。

 先ほど言いましたように、八年間の中で四年間は制裁はなかった。しかし、二年制裁をしたら、少し動きが見えた。しかし、アメリカが緩んだのでとまってしまったというときに、今度は韓国がこちらに来た。そして、アメリカがまた今金融制裁を始めました。制裁と国際連携の圧力で金正日政権を対話に引き出すという状況が今整いつつある。

 そういう点では、韓国と足並みをそろえて、韓国にも被害者がいるわけですから、助けてくださいじゃなくて、一緒に助けましょうという姿勢で制裁をともに行っていくことが大切だと思います。

 もう一つ、先ほど余り申し述べられなかったんですけれども、金正日が急死した場合に大混乱が起きる可能性もありまして、そのときに、米軍と韓国軍がどう動くのか、被害者救出のために韓国と協力することも必要だと思います。

増元参考人 私たちは、二〇〇二年九月からずっと、アメリカに対しても、韓国に対しても、日本政府に対しても、情報収集をお願いしたいということを申し上げておりました。

 皆さん御存じかと思いますけれども、横田めぐみさんの事案が浮き上がったのも、韓国にいる脱北者の話です。これは、安明進が前面に出ていますけれども、実は、一九九七年以前に、安明進と別の人、西岡先生はよく御存じだと思いますけれども、そういう方が横田めぐみさんの拉致事案を話し、そして日本の方に伝わってきたという事実があります。これから考えると、韓国に亡命している北朝鮮の工作の中枢にいた方がもっと何らかの情報を得ている可能性が高い。

 ただ、日韓が今このような状況で、国情院がまだ目覚めていない状況では、日本に対してその情報を開示するかというと、それはなかなか難しいのではないかというふうに私たちは聞かされております。

 しかし、李明博大統領は、日本人拉致問題に関しては、全面的に協力するというふうにおっしゃっておられますので、この点でも、国情院が抱えている工作員からの情報収集、これがなければ、幾ら北朝鮮と交渉をやっても前に進まない、常に北朝鮮の言い分だけを聞いて、そこでとどまってしまう状況にあると思っています。

 交渉は、私たちも必要だと思っています。それには、やはり圧力のある交渉をしていかなければならないし、こちらも多くの情報を得た上での交渉をしなければ解決につながらないと思いますので、その点で日韓の御協力をお願いしたいと思っております。

古屋(圭)委員 ありがとうございます。

 私どもは、同じ考えですけれども、これはやはり政府に対してしっかりこの意思を強く伝えて、そういう方向に持っていくという努力をしなくてはいけないと思います。

 現地に行ったときに、ある有力な韓国の国会議員から、やはり、たとえそれが中断しても、うまく進展しなくても、原理原則を貫くことが結果として成功に結びつくんだということを言っていました。まさしく韓国もそういう状況になってきたということだと思いますので、ぜひ、私たちも皆さんの意を受けて、この委員会で今後政府にしっかり要請をしていきたいというふうに思います。

 それと、救う会、家族会の皆さんは、毎年運動方針を決めています。今度、十月三日に決めましたね。この中で、基本的にやはり、先ほど西岡さんからも指摘があったように、圧力があって初めて譲歩する、だからもう徹底的に圧力をかけろということであります。

 そこで、私も何度もこの委員会でも指摘しておりますけれども、やはりこの皆様方の要望、改めて圧力に対して簡潔にお聞きしたいと思います。ぜひ、ここでしっかり皆さんの要望を訴えていただきたいと思います。

 では、家族会の増元さんから。

増元参考人 救う会、家族会では、去年の秋でしたか、全面制裁をお願いしたいと。

 すなわち、二〇〇八年の八月に日朝合意がありました。このときに、北朝鮮は調査委員会を立ち上げる、その交換条件として、我が国は特定船舶の入港禁止と、それからもう一つ、チャーター便の開放を約束したといいます。

 それでは私たちが本当に求めてきた北朝鮮との交渉における重要な圧力をどんどん失ってしまう。もし、今後、北朝鮮からの譲歩を引き出すためには、こちらが多少緩める必要はあるのかもしれない、でも、そのときに、カードを全部なくしてしまっては交渉にも何もなりはしないんだ、その後の交渉がない。ですから、カードを多く持って、それから交渉をし、北朝鮮にカードを何枚かずつ切っていって、有利に、日本のペースで交渉をしていく方法をとっていただきたいという思いで、今回の全面制裁をお願いしている状況です。

古屋(圭)委員 ありがとうございます。

 参議院の十月二十日の特別委員会でも、柳田大臣が、私たちが主張していた、例えば三基本方針、六対応方針、これについては復活させるというような趣旨の答弁がありました。

 今、正式に政府は拉致問題に取り組むということで、六月の十八日に決まったのが正式な方針です。これはもう、いわゆる実行犯の引き渡しとか、対話と圧力とか、制裁実施と追加制裁、朝鮮総連に対するさらなる制裁、あるいは厳格な法適用、特定失踪者を含む対策というのがみんな抜け落ちているんですよ。

 だから、これはやはり皆さんとしても、今のお話は、しっかりこういうものを政府としての基本方針の中に入れるべし、こういうふうに解釈をさせていただきましたけれども、そういうことでよろしいんですね。

西岡参考人 家族会、救う会で十月に実施しました会議の中の運動方針に、そのことを入れてくださいということを要請するということを決めました。ぜひ、そのためにも、民主党で対策本部をつくっていただきたいなと強く願っております。

古屋(圭)委員 ありがとうございます。

 それでは、この中で一つ、今、西岡さんからも御指摘がありましたように、金正日体制が今後崩壊をしていく可能性があるという中にあって、やはり救出のための具体的なアクションプランをつくるべきだということで、私たちは実際に、今の現行の憲法の範囲内でやれる、許される範囲内での自衛隊法の改正というものを提案しています。残念ながら、今は衆議院でつるされたまま、ほとんど審議もされていません。

 ぜひ、この点についての御意見を伺いたいことと、それからもう一点、皆さんが要望の中で、いわゆる日本版のテロ国家指定制度の拡充強化を求めるということが書いてありますけれども、具体的にはどういったことを要望しているんでしょうか。

西岡参考人 まず、急変事態の対応ですけれども、先ほどちょっと時間がなくて私が言えなかった二点目の戦略です。

 つまり、交渉相手がいるときは圧力をかけて交渉に引き出すんですけれども、大混乱になった場合は交渉相手がいなくなってしまうということですので、その場合に、米韓軍は既に、大混乱になったときに北進するという作戦計画、五〇二九作戦計画というのを準備しています。

 ことしの十月にワシントンで開かれた韓米安保協議では、米韓軍は、北朝鮮の侵略に対応するだけじゃなくて、混乱事態にも対応するということを共同声明にはっきり書きました。準備をしているわけです。そして、中国もさまざまな準備をしているという情報があります。

 日本はどうなんでしょうか。大混乱になったときに、今生きている人がそこで不幸な目に遭ったとしたら、悔やんでも悔やみ切れない。

 安全保障というのは備えですから、使うかどうかはそのときの政府の判断だと思いますが、できるように法的な整備をしていただきたいということは、民主党の先生方にぜひお願いしたいことでありますし、議論をしていただきたいということを強くお願いします。自民党は、自衛隊法の改正案、案を出しています。民主党の方でもぜひ議論してください。それが一点です。

 それから、二点目は何でしたっけ……(古屋(圭)委員「日本版テロ」と呼ぶ)はい、わかりました。

 テロ国家指定は、北朝鮮人権法が既にあって、国家犯罪と書き込まれてありますけれども、しかし、アメリカのテロ国家指定の場合は、テロ国家指定されていると、アメリカは、制裁するだけじゃなくて、国際機関が援助するのに反対しなくちゃいけないと書いてあるんですね。指定されたら、世界銀行やアジア開発銀行が北朝鮮に融資するときに、アメリカが自動的に反対するんです。

 実は、ここで議論していただいて、人権法が改正になって、国際金融機関にも適切な対応をしなければならないとは書き込まれたんですが、もう少し明確に、拉致問題が解決しない限り、制裁は解除しないだけではなくて、国際金融機関の融資にも反対しなければならないというような義務規定を、アメリカのテロ国家指定を参考にしながら、もう少し強い表現にしていただくということをぜひしていただきたいと思います。

 もう一つは、やはり先ほど古屋先生がおっしゃった政府方針です。明確にやはり紙で、対話と圧力をするんだとか制裁をするんだとか、御答弁ではやっていますとおっしゃるんですが、紙でなくなっているというのは心配です。

古屋(圭)委員 ありがとうございます。

 やはり答弁だけではなくて、大臣がかわったらまた違う答弁になるかもしれないので、しっかりそれは文書としてはっきり、高らかにうたうというのは当然のことだと思います。私たちも強くそれは求めていきたいというふうに思います。

 もう時間がありませんので、一つ、荒木さんにお伺いします。

 例の「しおかぜ」について、きょうの資料でもいただいております。その効果と、参議院の方でも、国会の答弁で、年間三百万円の支援について増額も政府として検討してもいいという趣旨の答弁があったというふうに記憶していますけれども、これについての、「しおかぜ」の運営、そして支援についてのお考えをお知らせください。

荒木参考人 資料の一番最後に大体概要については書いてございますが、二〇〇五年から北朝鮮向けの短波放送を行っております。

 これはモニタリングをしておりまして、北朝鮮の中に届いていることは間違いなく、なおかつ、妨害電波を北朝鮮側から、現在、こちらの周波数を変えるのに合わせて出しているということで、それは、逆に言えば、それなりの効果が上がっているということの証拠であろうというふうに理解をいたしております。

 先日、参議院の拉致特の方で、大臣の方から、これに対する援助の増額等々について御答弁をいただきまして、大変感謝しておりますが、現状で、私どもとしては、もし増額をしていただけるのであれば、これを何とかして放送時間の延長に使わせていただきたい。

 ただ、公共事業方式で、こっちも出して政府も出すというやり方というのは、我々全く余裕がございませんので、出していただいた分を何とかして少しでも時間を延ばして、聞こえる可能性を高めてまいりたいというふうに思っております。

 また、先ほど西岡さんが言われたような、いざ緊急事態となった場合には、この放送は緊急放送で使うための放送でもございますので、そういうときに有効に活用するということも考えて、運営をいたしているところでございます。

古屋(圭)委員 ありがとうございます。

 朝鮮高校への支援については、私たち自由民主党、拉致特別委員会あるいは文部科学委員会でも、もう既に三月に、絶対反対、これは全く筋が通らない話でございますので、結論を出させていただいておりますが、きょうは同僚議員からも多分この話が、質問が出ると思いますので、その同僚議員の質問に譲りたいと思います。

 以上で終わります。

奥村委員長 次に、竹内譲君。

竹内委員 公明党の竹内でございます。

 参考人の皆様、本当にきょうはありがとうございます。

 先ほど飯塚代表の方から、二〇〇八年八月以来、この再調査が、ボールが投げられたままで返ってこない、それを待っているだけではだめだ、こういう率直な御意見をいただきまして、私どもも全く同感だというふうに思っております。

 もう一つ、きょう、飯塚代表にお聞きしたいのは、亡くなられましたファン・ジャンヨプさんや、金賢姫さんの招聘がこの間ございましたけれども、これに対しましてどういう評価をされているかという点をまずお聞きしたいと思うんですが、いかがでしょうか。

飯塚参考人 この金賢姫の訪日に対しては、政府並びに関係者の非常な御尽力によって実現できたわけですけれども、いろいろ賛否両論ある中で、私たちは、先ほど西岡会長が言ったように、北朝鮮がうそをついている、大韓航空機の事件は捏造だという話に対して、はっきりと内外ともに、これは真実だということを広く訴え、それを確認ができたという大きな結果が出ております。

 そしてまた、今後、彼女との連携ができれば、直接情報交換、情報収集のためにつなげていけるきっかけをつくったというふうに評価しています。

竹内委員 今回もたらされた情報等につきましては、どのような感想をお持ちでいらっしゃいますか。

飯塚参考人 特に、田口八重子に関する情報の中では、前からも言っておったんですが、はっきりと、田口八重子は生きているというふうに何回もおっしゃっていました。これは多分、いろいろな情報がある中で、彼女自身もそれに関する確信を持てる情報を持っているのではないかというふうに判断しました。

 したがって、これのフォローですか、例えばDNA鑑定ができるような状態にしていただくとか、そういった具体的なお願いもこれからしていくところでございます。

竹内委員 ありがとうございます。

 次に、西岡先生にお伺いしたいんですが、「正論」ことしの十一月号、「金正日政権の崩壊が始まった」という論文も読ませていただきまして、大変参考になりました。

 この中で、北朝鮮内部の変化と、これを拉致被害者救出にどのように活用していくのかということについて、大変鋭い御指摘をいただいておるわけでございますけれども、せっかくの機会でございますので、その要点をちょっとこの場で御教示願えればありがたいと思います。

西岡参考人 北朝鮮は、簡単に言いますと、金正日本人が自分の寿命が短いという自覚を始めた、これが以前と大きな違いです。そして、彼が今考えているのは、死んだ後の自分の名誉を守ることです。スターリンも毛沢東も、死んだ後、墓を暴かれるようなことをされたわけですね。金日成は、それが嫌だから金正日に、息子にしたわけです。

 では、正恩で安定するのかどうかということですが、二十代の若者が突然大将になる。妹も大将になる。軍歴がないわけです。そして、崔竜海という彼の幼なじみも突然大将になりましたが、軍歴がないんです。そういう人を突然大将にせざるを得ないぐらい焦っているんですね。という点では、何が起きるかわからない。

 金正日は、自分の路線を否定されたくない。しかし、労働党の大部分の人たちは中国式改革・開放がいいと思っている。中国式改革・開放をやろうとすると、彼がやってきた先軍政治が一部否定される。それは嫌だから、息子にしようと思っている、息子と妹に頼んでいる。

 そして、大多数の住民は、十年前から配給がなくなりまして、商売をして自分で食べているんです。やみで食べているんです。やみで食べる中で、南の情報がどんどん入ってきている。中国のように人民公社を解体してほしい、商売を自由化してほしいと思っているわけです。

 そういう中で、何が起きるかわからない状況を、先ほど申し上げたように、既にワシントンで米韓は公式に言ったということであります。

竹内委員 ありがとうございます。

 それと、先ほどもお話が少し出ましたが、韓国との連携というのは非常に重要だと私どもも考えております。

 圧力と対話ということですが、まず圧力だ、この点につきましても、私どもも同感でございます。

 最近、北朝鮮の朝鮮赤十字会が、先月の二十七日まで開城で開かれた韓国赤十字社との会談で、米五十万トンと肥料三十万トンの支援を要請しているわけでございまして、李明博政権に対しまして公式にこのような支援を求めたのは初めてだというふうに思っております。

 北朝鮮では、百三十万トン前後の食糧が不足しておりまして、軍糧米も放出されたと聞いておるわけでございます。そういう意味では、こういう角度での連携というのはやはり非常に重要だと思うんですけれども、この点につきましても、西岡先生の御見解をいただきたいと思います。

西岡参考人 まさに、先ほど古屋先生の御質問にお答えしたとおり、日韓の連携で第一のポイントは、日米韓が制裁で足並みをそろえることであります。

 つまり、二〇〇八年のとき、そうなりかけたのに、ヒルさんがちょっと引いちゃった。そして、韓国はそのときは参加をしていなかったんです。今度は、哨戒艦事件があったので、韓国が来ているんです。

 日本は拉致で頑張っている、アメリカも金融制裁をした、中国以外、助けるところはないけれども、彼は中国の改革・開放は拒否しているという四面楚歌に置かれながら、自分の寿命の限界を感じているというところですから、それぞれの国益があるでしょうけれども、日本にとっては、拉致と核とミサイルは絶対に譲れないわけですから、韓国にとっては哨戒艦を認めさせることも絶対に譲れないわけですよね。

 そういうことについてきちんと連携して、今の制裁の穴をつくらないようにする。彼らは絶対、日米韓の足並みを乱そう、乱そうとしてきますから、それをしないように、やはり国会議員のレベルでももっと交流をどんどんしていただき、政府でもやっていただいて、与野党でもやっていただいて、国益が一致するんですから、韓国の拉致被害者もいるんですから、ぜひ交流をもっとして戦略的対話をしていただきたいというふうに思っております。

竹内委員 それから、次に進みますが、これは増元事務局長さんにお尋ねしたいと思うんです。

 三男の金正恩への後継体制が進んでいる中で、長男の金正男氏が、最近、父が病気なのになぜ平壌に戻らないのかというふうに聞かれて、それに対して、バトンタッチは嫌だ、滅びるのに、長くもつだろうかというふうに答えたという情報がございます。

 こういう権力継承への混乱がさまざまな統治システムの混乱を招いて、これがひょっとすれば拉致被害者救出の糸口になるのではないかなというふうに思っておるわけでございますけれども、この三代の世襲に違和感を持って、北朝鮮内外の人々に、世襲体制が続いて、このままでは制裁解除も支援も受けられないということを強く印象づける広報活動はさらに必要だと思います。

 先ほど「しおかぜ」のお話もございましたけれども、いろいろ調査してみますと、北朝鮮としては、一つは、空からいろいろなビラが降ってくるのは非常に困るというふうに言っておりますし、それから、拡声機放送もやめてくれということをかなり言っていますよね。

 結構、この風船散布とか、こういう活動も私は有効ではないかなと思うんですけれども、こういうことにつきましても、もちろん我々が先頭に立ってやらなければならないんですが、この辺の、ラジオ放送以外のこういう活動も必要だと思うんですが、御意見をいただきたいと思います。

増元参考人 ことし春の天安艦の事件を機に、韓国国内で風船ビラを大々的にやろうという話がありまして、我々、救う会、家族会にもその話が来ました。そして、その中で、私たちもその企画に参加しようということで、協力をさせていただいております。あと、調査会の方では既にそれを一昨年から始めておりました。

 我々も、いろいろな日本の情報を北に直接やるのが一番有効だろうと思って、先日も韓国に行った際、自由北韓放送で家族の声を述べました。

 その中で、私が一番強調したかったのは、あの放送を聞いている軍幹部それから労働党の幹部に、拉致被害者を傷つけるな、もし傷つけるようなことがあれば、私たち日本人は決して北朝鮮に支援をすることはない、必ず彼らの安全を確保し、そして日本に帰すよう努力しろということをメッセージとして送りました。

 しかし、日本の「ふるさとの風」、この中では、北朝鮮に対するメッセージとして、我々日本政府は関心があるというふうにしか言っていない。この厳しい私たちの日本の国の怒りを直接北朝鮮に放送として流すのであれば、もっと明確にしていただきたかったし、先ほど、北朝鮮ビラのことでもそうなんですけれども、「ふるさとの風」では日本国政府は情報の収集のために情報収集場所を公表しているにもかかわらず、民間がやる北朝鮮ビラに日本政府の情報収集場所を明記することに対して非常に苦情が来たんですね。

 では、何のために我が国政府は情報収集をしたいという放送をしているのか。民間であれどういう場所であれ、日本政府が情報収集しようとするのであれば、やはり、どういうところにも明記して、来る情報をいっぱい間口を広げた方がいいのではないかと思うんですけれども、この辺が私は不思議なんです。だから、「ふるさとの風」という政府がやっている放送はアリバイ的にやっているのではないかという非常に不満を持っております。

 とにかく、あらゆる方法を講じて、私たちは、北にいる私たちの家族に生の声を、そして日本の情勢を伝えていきたいというふうに思っておりますので、ぜひ御協力をいただければと思っております。

 ありがとうございます。

竹内委員 ありがとうございます。

 時間がだんだん迫ってまいりましたが、最後に一つだけ荒木先生にお伺いしたいんですが、これも「正論」十月号、荒木先生の論文を読ませていただきまして、大変勉強にといいますか、非常に教えられるところがたくさんございました。

 この表題は刺激的な表題で、「拉致被害者救出は政府には任せられない」というふうに書かれてあるわけでございますけれども、時間もございませんので、先生の方から、この論文を踏まえて、特定失踪者問題からのメッセージをぜひいただきたいと思います。

荒木参考人 ありがとうございます。

 ここに書いたことは、基本的には、先ほど申し上げましたこと、この資料の内容と沿うものでございまして、現在政府が認定している十七人、それと我々が推定する人数、これはもうはっきりわかりませんが、少なくとも百人以上は何らかの形で連れていかれているであろう。この差がどうしてできているのかということがやはり最大の問題でございまして、政府が認定するかどうかということと、向こうに拉致されているかということは、全然別の問題でございます。

 我々は、このままほっておけば、向こうにいる方々はみんな死んでしまうし、御家族はもう、我々がかかわっておりますこのポスターの中にある方々の御両親世代というのは、本当に一年に何人も亡くなっておりますので、やはり、今までの対処方針を変えていただかなければ絶対前へ進まない。

 政府認定者は、九・一七の後、曽我ミヨシさんたちが認定されて以降、この八年間で二人しか認定されておりませんので、認定しても帰ってきているわけではないということから考えますと、やはりこれまでの道筋を見直していただく必要があるのではないかと思っております。

竹内委員 ありがとうございました。終わります。

奥村委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 きょうは、飯塚参考人、横田参考人、増元参考人、西岡参考人、そして荒木参考人、本当にありがとうございました。

 先ほど来の意見を伺いながら、三十年以上も一日千秋のお気持ちで頑張ってこられた拉致被害者、そして特定失踪者の家族の皆さんの思いを改めてしっかりと受けとめたいと思ったところでございます。

 そこで、まず横田参考人に伺いたいんですけれども、私、昨日、横浜市で始まった横田さんの写真展、「めぐみちゃんと家族のメッセージ」、それから「記事でたどる拉致問題」ということで、我が党の穀田議員と一緒に伺って拝見してまいりました。

 写真を見ながら、二〇〇六年の十一月なんですけれども、当委員会から福井と新潟に現地調査に行ったときのことを思い起こしまして、新潟では、横田めぐみさんの拉致現場を視察して、めぐみさんの足取りをたどりながら、県警からもいろいろ説明を受けてきたわけでありますが、私の父は新潟で、そして祖父母が佐渡で生まれているものですから、こんなに身近なところで拉致されたということで、本当に怒りが沸き起こったことを思い起こしました。

 その調査からももう四年たちますし、それから、私自身も、この五年来、当委員会で、数えてみますと十七回だったんですけれども、発言もする機会があって、そして昨日も改めて写真展、記事を拝見しながら、やはりこの間の拉致被害者家族の皆さん御自身の、そして関係者の皆さんの訴える行動が、拉致は許せない、全被害者をすぐ帰しなさいということで、全世界に強いメッセージを発信する大きな力になったという確信を持つことができました。

 今まさに、拉致被害者の早期救出を願って、私たちは何をすべきかという問いかけを正面から受けとめて、やはり一刻も早い解決のために政治がやらなきゃいけない役割は本当に重いということを痛感するんですけれども、そこで、横田参考人、写真展をことしもああいう形で開催されて、どういう反響だったか、あるいは、御感想、思いについてお話しいただければと思うんですが、いかがでしょうか。

横田参考人 あの写真展は、講演会なんかのときにロビーで小規模にやるのはもう何回か数え切れませんけれども、大きいのは三十四回目ぐらいで、その間には、ジュネーブとか、それからワシントンでもやったことがあるそうです。あれは、あさがおの会といって、私たちの居住しておりますマンションの方が拉致問題を解決するためにつくったグループです。

 それで、初めのころは、行列があって入場制限したこともありましたが、最近は、同じものをやっているせいもありまして、少し少なくなっていますけれども、しかし、きのうでも、三日から始めたわけなんですけれども、開場前からたくさんの方が並んでくださいました。

 それで、年配の方ですと、自分の娘がこのぐらいで、孫がこのぐらいだというような形で、それぞれ自分の立場に置きかえてくださって、本なんかで読んだのではよくわからなかったけれども、非常によく理解ができて、一日も早く帰ってほしいというようなことをおっしゃる方が大勢いらっしゃいました。

 ですから、このところ、拉致問題に動きがないものですから、新聞等に報道されることが少なくなりましたけれども、やはり一般の方の関心というのは非常に高いと思います。

 そして、いろいろな地域に参りますけれども、中には、官邸あてのはがき、それと、裏には一つの例文みたいなものを書いて、文章はそれぞれの人で違うわけですけれども、これと同じようなものを送ってほしいなんという運動もしておりますが、この問題は政府に解決していただくしかありませんので、政府の方には、この間のときは、例えば福島の場合ですと、菅総理大臣に金賢姫さんを招聘してくださいましてありがとうございましたというような感謝の手紙もたくさん行ったようですけれども、やはり一日も早い救出をという意見が圧倒的でございます。

笠井委員 ありがとうございました。

 拉致問題では、安否不明者の再調査などの問題で、やはり日本にとって納得できる解決が図られなきゃいけないと思います。先ほど来お話があったと思うので、若干敷衍しながら伺っていきたいと思うんですけれども、飯塚参考人と横田参考人と増元参考人に一言ずつお願いしたいのです。

 お話がありました二〇〇八年八月の日朝の実務者協議というところで、あそこでは合意事項が三点あったと思うんですね。一つは、拉致問題の解決に向けた具体的行動をとるために、すなわち生存者を発見し帰国させるための、拉致被害者に関する全面的な調査となること。二つ目に、調査の対象には、政府が認定した被害者やその他に提起された行方不明者等が含まれ、すなわち、すべての拉致被害者が対象となること。そして第三に、その調査は、権限が与えられた北朝鮮の調査委員会によって迅速に行われ、可能な限りということで、秋にはと。二〇〇八年だったわけですが、秋には終了するということについて合意したということがあるわけです。

 そこで、お三方に伺いたいんですけれども、北朝鮮に対して、何だかんだ言ってもこの合意事項があるわけですから、この合意事項を早期に履行するように迫っていくというためにも日本政府には主体的な外交戦略が要るということで、それに基づく努力が強く必要だと思うんですけれども、あれからもう二年たちますので、現状を打開する、そういう上で、日本政府に対して、もっとこの点はとか、これがないんじゃないかとかという点について、どういう御要望、御意見があるかということで、家族連絡会のお三方に伺いたいと思うんですが、いかがでしょうか。

飯塚参考人 当初は、北朝鮮当局の調査委員会というのは、我々は否定したんですね。要するに、北朝鮮当局はすべてわかっている、調査しなくてもわかっているということをまず私たちは考え、でも、しからば、調査するのならば、はっきりと名前と、もちろん生存情報、場合によっては死亡情報もあるかもしれませんけれども、その報告を聞けば、またその次へ進むきっかけになったはずなんですが、北朝鮮いわく、日本の責任者がだれだかわからないというような感じで、いわゆる総理が交代したという場面が何回かありましたので、それについては、その後、一応ほごになったような形になっています。

 私たちは、その件については、まだ生きているということで、調査を要求してほしいという気持ちですね。

横田参考人 調査を秋までにというのは、秋になったらやめるという意味でなくて、秋までに早くするという意味でついたわけです。

 それで、あれが例えばだれかの個人的な合意でしたら、人がかわってしまえばそれはほごになるのかもしれませんけれども、国と国との約束ですから、当然あれは有効だと私は思います。

 しかし、北朝鮮側からすれば、そのときの総理によってというか政府によって対北朝鮮政策をどういうふうにとるかということは変わってくるだろうから、やはりだれかを見きわめてしたいということで、初めはちょっと先送りにすると言ったんですけれども、麻生内閣が誕生したときに、大抵の方は解散・総選挙をするだろうというようなうわさが世間ではありましたので、それで北朝鮮側とすれば、その次の、解散・総選挙の後の方がどんな北朝鮮政策をとるかということで、結局、事実上、調査をやめてしまったわけです。

 それで、民主党の内閣が誕生したときに、これは非常に大きなきっかけで、鳩山総理はアジア外交を重視しておりましたので期待したわけなんですが、やはり政治資金等の話が出て、北朝鮮側は日朝交渉というのを鳩山内閣のときも一度も行われなかったわけなんです。

 ですから、これはもう政府間の合意ですから、早く実行するようにということを強く要望していただきたいと思っております。

増元参考人 先ほども少し申しましたけれども、二〇〇八年の日朝合意というか、先生がおっしゃったこの基本方針三つは、あの当時の中山首相補佐官が、この調査委員会は生存している拉致被害者の帰国に必ずつながるものでなければならないということを強く私たちに説明されて、やっていただきました。

 ただ、今、横田前代表がおっしゃったように、日本の政権が安定していたからではなくて、あの年の八月十四日に金正日が倒れてしまって、決定する権利を有する人が倒れて何の決定もない状況では、調査委員会が立ち上がらない。だから、こちらの政治状況を盾に北朝鮮が調査委員会を立ち上げなかったということだと私は思っております。ただ、合意違反をしているのが確実なわけですから、それに対して我が国政府は何らかのメッセージをしなければならないと思うのです。

 二〇〇四年、横田めぐみさんの骨と称するものが我が国にもたらされました。それがにせものと判明して、当時の細田官房長官がこの事態に非常に怒り、そして北朝鮮の不誠実な対応に我が国は何らかの制裁を科す必要もあるやのような発言もされました。すなわち、我が国は北朝鮮の姿勢を崩すためには何らかのメッセージを常に発信しなきゃいけないと思っていますし、北朝鮮にボールを投げてあるのではなくて、北朝鮮がボールを返すようにしなければならない。そういうことを続けていかなければならないというのが私の思いです。

 我が国は拉致問題を最優先課題というふうに常に政府は私たちに説明していただきましたけれども、本当に最優先課題なのか。それでは、なぜボールが返ってくるように次から次にいろいろな政策を施していかないのか、なぜ北朝鮮に対して圧力をかけてでも北朝鮮を動かすような政策をとっていただけないのか、何で最優先課題と言いながら北朝鮮のボールを待っているのか、非常に不満を持っております。

 中国が犯罪者を取り戻すのにあれだけ圧力をかけて国民に納得をしてもらう、あれが最優先課題としての見せ方じゃないでしょうか。

 私は、日本がスマートにこの問題を解決したいのだという思いはあるでしょうけれども、なりふり構わず国民の命を守るのだという姿勢を国内外に示してこそ、日本国民の政府に対する信頼を得ることができるのではないでしょうか。それがないから、今このような状況になっているのだと私は思っております。

 ありがとうございます。

笠井委員 ありがとうございます。

 では、あと一問だけ、飯塚参考人に伺いたいんですが、この間、ハノイでも東アジア・サミットがありまして、その議長声明の中でも、朝鮮半島の完全で検証可能な非核化を支持して、関係国が適切な道筋で六カ国協議に復帰するよう促すとともに、国際社会の人道上の懸念に対処する重要性を強調するということで、拉致問題に間接的に言及していると受けとめているんですけれども、皆さんの粘り強い努力が国際的な理解と支援を広げる大きな力になってきていると思うんです。

 そこで、飯塚参考人に端的に伺いたいのは、先日、十一月一日のソウルでの国際大会での御発言も伺ったんですけれども、拉致問題への国際的理解と支援をさらに広げる上で、日本政府に端的に求めたいことは何でしょうか。

飯塚参考人 もちろん、この問題については主体的には日本政府がやるべきことでありますけれども、取り巻く問題としては非常に複雑で、内外に広がっている問題がたくさんあります。そういうことでは、やはりアメリカと韓国が中心になると思いますけれども、北朝鮮に対しての圧力というか、非道さを人権という考え方で訂正させるためには、やはり国際世論、国際社会に訴えていかなきゃいけないというふうに思います。

 そして、国連の安保理を含めて北朝鮮に対して圧力をかける、さらに周辺各国が共同してそれに乗るということが大切であると思っております。

笠井委員 ありがとうございました。終わります。

奥村委員長 次に、中島隆利君。

中島(隆)委員 社会民主党の中島隆利でございます。

 本日は、大変お忙しい中、参考人の五名の皆さん方、貴重な御意見をいただきまして、まず感謝を申し上げたいと思います。

 これまでの質問で若干重複する部分があるかと思いますが、三点についてそれぞれお尋ねしたいと思います。

 先ほど、家族会の飯塚さん、横田さん、増元さんからそれぞれお訴えがございました。飯塚さんは田口八重子さん、そしてめぐみさん、それからるみ子さん、三十二年から三十三年という長きにわたって今の経過を踏まれている。その苦しさ、悩みについて、本当に察するに余りあるものがあると思います。

 私も、今政府が行っております、毎週放送されている北朝鮮へのラジオ放送を聞かせていただきました。家族の皆さん方の悩みを訴えて、北朝鮮の皆さん、あるいは北朝鮮に拉致されている家族の皆さん方に切々に訴えられていること、本当に心が痛む思いであります。

 先ほど来、ラジオ放送の予算あるいは事業についてもっと拡大してほしい、こういうお声もありましたし、それから、今までの質問の中で、もう少しこの拉致問題を、国民の世論として支援を広げるのか、これをもっと国民に広げてほしい、こういう御意見もございました。特に横田さん御夫婦は、もう千回以上にわたって全国を駆け回って講演で訴えておられる、こういう活動をされているわけでありますが、改めて家族会の三名の方に、この拉致支援に対する具体的な政府に対する要望、これが一つ。

 もう一つは、先ほど来、対話と圧力という形で、基本は一日も早く拉致家族を帰国させるというのが目的でありますが、先ほど横田さんからもございました、あるいは飯塚さんからもございました、情報収集をもっと徹底的にやってほしい、あるいは、韓国と十分な情報連携をしながら北朝鮮との交渉をやるべきだと。特に横田さんからは、外交交渉なくして前進しない、こういうお言葉もありました。そして、増元さんからは、やはり圧力の上に交渉をしながらどう引き出すか、こういういろいろな交渉のあり方も御提言がありました。

 そこで改めて、この拉致問題に対する、国民に対する支援、世論のつくり方、あるいはこれに対する要望と、それから対話と圧力のあり方、政府と政治に対する、どういうふうにお考えか、家族会の三名の方にそれぞれ率直にまたお考えをお聞かせいただきたいと思います。

飯塚参考人 国民世論に対しては、我々、長い間をかけてかなりの高揚を図ってきたわけです。それが啓発として今維持しているわけですけれども、やはり国民世論が高まるということは、北朝鮮に対して国民が怒っているぞというメッセージ、それともう一つは、言葉は悪いですけれども、政府に対する圧力、これなくして政府が一〇〇%動いてくれないのではないかという判断から、かなり国民世論を高めてまいりましたが、これは言ってみれば、我々の家族会あるいはボランティアの組織、たくさんありますけれども、そういったところからの効果が出てきているのではないか。

 もちろん、政府もこういった世論の啓発をやってくださいますけれども、私としては、政府、国会あるいは議員の方々は、しからばどうやって解決していこうというところの方に力を注いでいただきたい。

 一般の国民に対しては、確かに我々のことを気の毒な、かわいそうだという意識の中から、頑張ってください、応援しますという話が出ていましたけれども、最近に至っては、政府は何をしようとしているのか、どうやったら助け出せるのか、ちっともやってくれないという怒りに変わってきているんですね。

 もちろん、我々もそういう気持ちは当然ありますが、今いわゆるセンチメンタル的なことを語っていても前へ進まない。具体的にどうやって解決するんだという、そっちの方向へベクトルを合わせた動きが必要ではないかというふうに感じます。

横田参考人 以前に政府の方から、やはり国内世論が高まらないとだめだということで、そういった世論を背景にして交渉するために、国民の方が同胞を救わなければという気持ちを持っていただかないと、政府としては強く動けないというようなことをおっしゃってくださいましたので、そういった点では、家族会としてできることは、講演等を行って、そこで実態を聞いていただくと、テレビとか何かですと、どうしても短いところ、さわりのところだけしか聞きませんけれども、全体の話を聞くと、皆さん非常によく理解してくださいます。

 それから、北朝鮮というのは、日本のものをどういったところから得るのか、朝鮮総連からかもしれませんけれども、ニュースをよく知っていまして、初めのころなんかですと、例えば小浜で集会をしましたときに、天気も悪かったので、そんなに人は多く来てくださらなかったんですけれども、それでも、ありもしない拉致のことで小浜で集会をしてけしからぬというようなことも聞いたことがあります。

 それから、もう数年前になりますけれども、交渉のときに、日本の世論というのを非常に気にしていて、例えば、新潟の百貨店でめぐみの写真展をやったときに、新潟なんかは地域的に非常に関心が高いんですけれども、そこでは何か二千人ぐらいしか来なかったそうですねとかというようなことを向こうが言ったそうです。

 それで、こちらの行った団長の方が、いや、私もその展示会に行ったけれども、満員だったですよ、だれがそんなでたらめの報告をするのか知らないけれども、実際は二万五千人来たんですよというふうに言ったそうです。

 ですから、それは二万五千人とわかっても、次に上に報告するときは、我々の力で世論を鎮静化させたというふうにどんどん少なくなって、最終的にはもう一割程度の数字しか報告していなかったということもわかりますけれども、やはり日本の世論を非常に気にしていると思います。

 新聞なんかにも、どこかで集会をすると、どのぐらいの人が集まったなどと報道されますので、家族会としてできることは、そういったところで世論を高めることしかできませんし、これからもやっていこうと思っております。

増元参考人 政府に対する要望ということですけれども、今、拉致問題対策本部の予算の中でやっていることを先ほど言いましたけれども、「ふるさとの風」、これに関しては、もっと、拉致被害者の安全を確保するために、正しく北朝鮮の政府高官に厳しく言っていただきたいというのは一つあります。

 そして、私たちもブルーリボンの推進をやっていますけれども、これは、二〇〇六年の二月に日朝交渉をやった際に、北朝鮮の実務者と話し合った中で、北朝鮮が何を一番気にしているか。これは、一つが日本の国内世論です、拉致問題に関する関心度。二つ目は、拉致問題が国際社会に広がること。この二つを、北朝鮮が非常に関心を持って、嫌がっているということを伺いました。

 ですから、私たちは、家族会として、この拉致問題を、国内世論を絶対に鎮静化させないためにあらゆることをやっておりますけれども、ことしの金賢姫さんの件でもわかるように、何か事あれば、我が国国民は、拉致問題の解決に関して大きな関心を持っていること自体は確かです。ですから、この関心を持続させるために、政府の対策本部の予算の中でやっていただきたいと思います。

 国際社会の連携のためには、自民党政権下で一回提唱されたんですけれども、在外公館の外交官全員にブルーリボンバッジをつけていただく。そして、つけていただくことによって、日本政府が拉致問題を重要視しているということを全世界の国々に発信していただく。ブルーリボンバッジを皆さんがつけていくことによって、これは何だという関心を生むことにもなりますし、その中で拉致の問題を他国の外交官同士で話すこともできるというようなこともあります。

 ですから、北朝鮮の嫌がっている日本の国内世論の関心、そして国際世論への広がり、これを政府として推進していっていただきたいと思っております。

中島(隆)委員 ありがとうございます。

 やはり、世論づくり、それから北朝鮮との交渉の前進、今御指摘がありましたように、政府なり我々政治家の努力、もっともっと力を入れるべきだというふうに感じました。

 そういう面で、あと、北朝鮮をめぐる最近の情勢について西岡参考人にお尋ねをいたします。

 最近の動きで、特に韓国の哨戒艦沈没事件、あるいは北朝鮮の核の開発の問題で六カ国協議も途絶えております。しかも、先ほど指摘がありましたように、調査の約束もほごにされているという状況がございます。

 しかし、最近の動きで、金正恩氏を後継者に任じているという段階にもございますし、最近は金正日氏が訪中して六カ国協議の開催に強い姿勢を示している、こういう動きもあるわけでありますが、こういう状況の中で、今後の動きをどういうふうにお考えか、ちょっとお尋ねしたいと思います。

西岡参考人 先ほども申し上げましたが、金正日氏個人が大変困っている、追い込まれて、追い込まれつつあるというふうに思っています。一つは健康ですけれども、もう一つはやはり制裁がきいてきたということであります。

 特に、アメリカが最近行いました金融制裁は大変な効果があります。この金融制裁でアメリカが対象にしたのは、党の三十九号室とそれから人民軍の偵察局、つまり、労働党の正式な機関です。それから、軍の機関がテロに関係しているといって、そことつき合っている世界じゅうの銀行に対して、そことつき合ったらテロに加担したことになるから、バンコ・デルタ・アジアのようにアメリカが取引をやめることもあり得ますよということを言ったんですね。

 これは、労働党という政党にテロ機関がある、犯罪機関がある、人民軍にテロ機関があると公開的にアメリカが言っていることでありますし、特に三十九号室というのは、実は金正日の個人資金を扱っているところで、過去には朝鮮総連からの秘密送金がそこに入っていましたし、金大中氏が訪朝したときの裏金四億五千万ドルもそこに入りましたし、犯罪資金もそこに入っているわけですから、それが使えなくなるということは独裁政権の維持のために大変苦しくなってきている。頼るところは中国しかない。しかし、中国の言うように改革・開放はしたくない。核開発を優先する、軍隊を優先するという先軍政治と改革・開放は合わないわけです。

 追い込まれているということで、アメリカが一度下がってきたのが、もう一度戻ってきたということです。日本は、拉致と核、ミサイルできちんと制裁をしています。アメリカは戻ってきた。韓国も天安艦事件で足並みがそろっている。中国共産党がどう出るかというのが変数ではありますけれども、困ってきているということの中で、いろいろな、まずは彼らはごまかしをしようとすると思います。天安艦事件を認めないで六者協議に戻る、八人が死んだということのまま日朝をしようとすると思いますが、こちらが毅然たる対応を保っていれば、向こうがもっと困ってくれば、小泉訪朝のときのようなことさえも起こり得るし、あるいは金正日が死んだときの後継政権で、安定的に移譲があれば次のステップが起こり得ると十分思っていますが、しかし、混乱になる可能性もあり得るので、その準備もしておかなくてはいけないと思います。

中島(隆)委員 質問の時間も来たようですので、最後に荒木参考人にお尋ねしたいと思います。

 特定失踪者の調査活動についてですけれども、これについて大変な御苦労もされていると思います。四百七十名という数の多い方々からの依頼もあると思うんですが、政府と関係機関にどのように今後協力のお願いを希望されているのか、その点だけ最後に一点、お尋ねしたいと思います。

荒木参考人 私ども、政府との立場は、基本的には建設的緊張関係ということを前提といたしております。それは、迎合するわけでもなく、あるいは、いたずらに対立するわけでもないということですが、問題として、先ほどお話ししてまいりましたように、国内の問題が非常に多いわけでございまして、この面については、やはり厳しく対処して、真相を究明して、そして事実関係を明らかにして、改善していただくように求めていくということを続けながら、あるいは、情報収集等々で、一緒にできるところは可能な限り一緒にやるようにというふうにしておりますので、その両面で政府の方に御理解をいただければというふうに思っております。

中島(隆)委員 時間が来ましたので、質問を終わらせていただきます。

 今まで家族会の厳しい、苦しいお訴えを受けまして、今後とも我々も頑張ってまいりたいというふうに思います。ありがとうございました。

奥村委員長 以上で各会派を代表する委員の質疑は終了いたしました。

 これより自由質疑を行います。

 この際、委員各位に申し上げます。

 質疑のある委員は、挙手の上、委員長の許可を得て発言されるようお願いいたします。また、発言の際は、着席のまま、所属会派及び氏名を述べた上、お答えいただく参考人を御指名いただくようお願いいたします。

 なお、理事会の協議によりまして、一回の発言時間は二分以内となっておりますので、委員各位の御協力をお願い申し上げます。

 それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。

長尾委員 民主党の長尾敬でございます。

 ソウルの大会で御一緒させていただきまして、ありがとうございました。

 先ほど、朝鮮学校の問題が出てまいりましたから、これをさらに掘り下げてまいりたいと思っております。

 民主党の文科並びに拉致特の三回目の合同部門会議の中で、この基準に関しては、発言者の八割近くが慎重論であったというような部分の中で、おおむね了とする、ただ付記という部分でとどまっておることに私も非常にこれではよろしくないと思っている一人でございます。

 公安調査庁の次長の委員会発言の中に、朝鮮学校は財務的にも人事的にも朝鮮総連の影響を受けているという旨の発言がございました。

 西岡先生にお尋ねしたいのですが、この関係について、どのように人事的、財政的関係があるのかということをぜひ教えていただければと思っております。

 と申しますのは、先ほど来、圧力という言葉があるにもかかわらず、ここで朝鮮学校に対する支援をすれば、ともすれば朝鮮総連に対する資金援助というふうにもとられかねない、当然間違ったメッセージにもなりかねないというふうに思っておりますので、ぜひそのところ、先生の知り得る限り教えていただければと思います。

 以上です。

西岡参考人 公安調査庁の見解と私も専門家として全く同じ見解を持っております。

 何点か申し上げます。そして、朝鮮総連を指導しているのは、実は拉致を行った北朝鮮の工作機関の一つである統一戦線部であります。私は、最近、元統一戦線部の幹部と韓国でインタビューをいたしました。その幹部によると、朝鮮学校のこの教科書は、小平の朝鮮学校が原稿を書くけれども、統一戦線部に持っていってチェックを受けて、統一戦線部が検閲をしてオーケーになって、北で印刷して持ってくる。そして、統一戦線部の玄関にはこの教科書が飾ってあるということを元統一戦線部の幹部に聞きました。そういう関係であるということであります。

 そしてもう一つ、校長の人事も朝鮮総連がやっております。ですから、別途ではありません。

 それから、生徒さんたちも、実は学校の生徒さんたちでありながら政治運動に動員されるんです。在日朝鮮青年同盟というのがあります。これは、共産党で言うと民青のような組織なんですが、済みません、ちょっと言い方を間違えまして、つまり、労働党の青年組織という意味です。別に、自民党にも青年組織があると思いますけれども、そういう意味で政治活動をしているということです。学校と党は別ですね。そういう党の青年同盟に小学校四年生から入るんです。強制的に入ります。

 そして、そこに入っていた元生徒から聞いたんですが、課外授業、放課後に朝鮮総連本部から来て政治学習をする。例えば、大韓機事件がテレビに出たときは、あれはでっち上げだというふうに習う。そして、抗議しなさいと言われたら抗議電話をかけるということを学校の中でやっている、そういう一体性もあるわけです。朝鮮総連のホームページを見ますと、もともと朝鮮学校は自分たちの組織だとも言っています。

 もう一点。朝銀信用組合が破綻しまして一兆四千億円の公的資金が入りましたが、そのうち二千億円がRCC、整理回収機構に行って、回収しているんですね。回収をしようとしたら、朝鮮学校が担保に入っていた。それに対して、朝鮮総連に対して二千億円を返せというふうにRCCがやっているんですが、北九州にある朝鮮学校と愛知県の朝鮮学校が担保に入っているんですね。学校ですから差し押さえをしたらまずいというので、仮差し押さえをしている。

 RCCとそういう関係になっていて、では、この朝銀信用組合の不良債権が本当に金融的なことでできた善意の不良債権なのか、北に送金されたのか、強い疑惑があるわけですが、そのときの担保として朝鮮学校の土地が使われていて、仮差し押さえまでされているような一体の関係があるということをぜひ御理解いただきたいと思いますし、だから、真の学校になりなさいということを強く言いたいと思います。

 もう一点だけ。実は、昭和四十年十二月に文部省は通達を出していまして、「朝鮮人のみを収容する教育施設の取扱いについて」ということで、朝鮮人としての民族性または国民性を涵養することを目的とする朝鮮学校は、我が国の社会にとって、各種学校としての地位を与える積極的意義を有するものとは認められないので、これを各種学校として認めるべきではないというのが当時の文部省の見解だったんです。しかし、各種学校の認可の権限は知事が持っていまして、美濃部都知事などが文部省の見解に反して認可をしていたという経緯があります。そういうようなこともぜひ参考にしていただきたいと思います。

永岡委員 自民党の永岡桂子でございます。

 きょうは、参考人の皆様方、お忙しいところ、本当に貴重な御意見をいただきましてありがとうございます。

 ただいま西岡先生からもお話しいただきました高等学校の無償化についてなんですけれども、総連の下部組織である朝鮮学校という認識があるわけですね。省令で、文部科学省は支援金を出すことに、条件が整えば出すということはもう明らかになっているわけですね。その中で、その要件の中に、反日教育など教育の内容は要件に入れていないということなんですけれども、ただいまは五人の参考人の皆様方に御意見を伺いましたところ、すべての参考人の方が朝鮮学校の高等学校の無償化反対というお話をいただきまして、私も、これが日本人の意見の総意であるというふうに改めて受けとめさせていただきまして、うれしい感じがいたしました。皆様方の意見は、民主党の方また政府の方にしっかりと受けとめていただきますことを、どうぞよろしくお願いしたいと思います。これは質問ではございません。

 それから、自民党の前政権では拉致問題の対策本部というのがありました。これはもう御承知のとおり、官邸の、官房長官がトップとして担当していまして、拉致担当を兼任していました。ところが、民主党政権になりましてからは、今は担当大臣が法務大臣であります。その前は、これは国家公安委員長でした。大分形が変わっていまして、官邸の中に以前はありましたような拉致問題の補佐官という方もいらっしゃいません。これはもう閣議で変わってしまったわけなんです。

 私は、官邸、つまり総理大臣がやはりこの拉致問題に対しては一番のトップの責任者であらなければいけないわけですから、その仕組みが形的にもあらわれていなければいけないという気がいたしますが、このことにつきまして西岡先生また荒木先生にちょっとお話を伺いたいと思います。

西岡参考人 民主党政権になって、従来の拉致対策本部は解散になって、別の、全閣僚が入らない、首相と官房長官と外務大臣と担当大臣という形になりまして、しかし、首相が本部長だという形は変わっておりませんので、組織の点ではどちらがいいかを私は評価する立場にはありません。

 ただ、不安なのは、先ほども出ましたけれども、自民党時代は拉致問題についての方針というのがあって、かなり、紙一枚にじっくり書き込まれていて、いろいろなことが書いてありました。対話と圧力の方針、それから厳格な法執行の問題、特定失踪者という言葉もそこに入っていました。そして、追加制裁を考えるということも書いてありました。しかし、その方針というのが、鳩山政権は前の方針を廃止して新しい方針は出さないということで、なくなってしまいました。

 そして、菅政権になって、当面の対応についてという三項目のものが出ました。これは方針とは違うという御説明ですが、しかし、三項目しかなくなってしまって、制裁にかかわる部分や特定失踪者にかかわる部分が入っていないんですね。

 御説明では、優先事項を書いただけである、過去のこともやるとおっしゃっていましたけれども、その点について不安を覚えておりますし、もう一度、先ほど鷲尾先生も御自分でおっしゃいましたが、党の中の、野党時代はあった対策本部が今はなくなってしまっているということも含めて、民主党のあるいは政権の今の取り組みについて若干心配な部分もありますということを申し上げます。

荒木参考人 対策本部の体制に関しましては、十三年前に家族会がスタートし、救出運動が始まったときには、政府の中に対策本部が設けられるということは全く想像もできませんでした。それが安倍政権のときに対策本部になっていくということを考えると、本当にこれは大変な進歩であったと思います。そしてまた、中山大臣が担当大臣ということで決まるということも、これも大変大きな進歩であったというふうに思っています。

 ただ、中山大臣の当時であれば、大臣自身の権限がほとんど持たされていなかった。ですから、外務省に対しても警察に対しても指示をすることは全くできないという形で、御本人にどれだけやる気があっても、実際にできたことの範囲は非常に制限をされていたというふうに思っております。

 前の中井大臣になりまして、国家公安委員長との兼務ということで、少なくとも実行部隊をある程度指揮できる体制になったというのはこれまた前進でございまして、今回、法務大臣ということですが、もちろんこれも拉致に関係しておりますし、公安調査庁も傘下にございますので、そういう意味でいえば、これは政権のいかんを別にいたしまして、この十三年間にそれぞれの政権の御努力でやはり前進してきたということが言えるのではないだろうかというふうに私は理解しております。

熊谷委員 民主党の熊谷でございます。

 先ほど来、我が党の委員の方からも、拉致問題と教科書問題、これを絡めて皆さんの御意見を聴取したわけでございます。

 実は私、昨年来、文部科学委員でございまして、高校の教科書実質無償化ということで随分議論を重ねてまいりました。

 朝鮮学校の問題につきましては、これは非常に懸案であるということは事実でございますが、基本的には在日朝鮮人の十八歳、高校生に相当する年齢の子弟、彼らの学びを支援する、これは、日本人と全く同じ条件でもって日本で学び日本で働いていく、日本人と国籍が違ったとしても、そういうものとして支援をしていこう、原則的にはすべての各種学校も含め無償化する、こういう理念でやっております。議論もありましたが、拉致問題というものには絡めない、あるいは外交問題にも絡めないということを私は主張してまいりましたし、文部科学部会の方でも、大体そういう方針でいこうということで了承されたわけです。

 実は、これは非常に、すぐに判断しますと、皆さんのお気持ちもよくわかりますし、この拉致の問題のある中で、朝鮮総連との関係も非常に深い朝鮮学校にこういう支援をするということ、学校に支援するのではなくて子弟に支援をする、市民の子供に支援をするわけでございますが、これが北朝鮮に何らかのメッセージを、弱腰であるというようなメッセージを送る、こういう御意見だと思うんですが、これは私は、全く制裁、国家としてやるべきことをやらずして、こういう問題で極めてお手軽な嫌がらせをするということは、逆に拉致問題の本質的な解決、国の強い姿勢、これを阻害するような要因だと。

 堂々とやればいいわけですよ。国はもっと、制裁も含めて、拉致問題の本質的な解決に前向きに進むべき、私はそれを希望して実はこの委員会の委員になったわけでございます。新たにさせていただいたんです。

 その点につきまして、再度、西岡先生に御意見をお伺いしたい。

西岡参考人 拉致問題の観点から、家族の方、我々は申し上げておりまして、その条件の中に、教育内容を問わないということを問題視しているんです。差別をしろと言っているわけではありません。

 つまり、民主党政権でも、外国人学校には出すということを決められながら、しかし朝鮮学校は別にして、朝鮮学校だけに適用する基準を専門家委員会をつくってつくられたんですね。ほかの外国人学校にはもう既に出しているんです、四月の時点で。つまり、朝鮮学校は別に検討すべきだということについては、民主党政権も考えられたわけです。

 ところが、その専門家委員会の中に朝鮮総連の専門家が入っていなかったわけです。つまり、それ以外の、アメリカの学校とか中国の学校というのは国交があるところですから、教育内容についてもそれなりに国交があってわかっているから大丈夫だということだったわけですけれども、北朝鮮は国交がないから、専門家委員会で基準をつくりますと言って基準をつくられて、それが今民主党で了承という議論になっていると私は理解しております。

 そういう中で、少なくとも、先ほど言った教育基本法の二条に反するような教育が行われている、北朝鮮人権法に反するような記述があるということを問題にしない基準でいいんでしょうか。朝鮮学校をやめろと言っているんじゃないんですよ。各種学校の認可を取り消せと言っているのでもありません。最低限、教育内容をぜひ基準に入れていただきたい。日本の学習指導要領に従えと言っているのでもありません。

 しかし、これをちょっと見てください。これを見ますと、拉致問題について、「日本当局は」と言って、日本当局が主語になっているんです。今でいえば、民主党政権はということですよ。「「拉致問題」を極大化し、反共和国・反総連・反朝鮮人騒動を大々的にくり広げることによって、日本社会には極端な民族排他主義的な雰囲気が作り出されていった。」これしか書いていないんです。拉致も認めました、こういうこともありましたじゃないんです。拉致についての記述はこれだけなんです。

 ということは、日本当局が民族排他主義的な雰囲気をつくっているということで、こういう委員会を持っていること、拉致特別委員会を国会の中で持っていること、あるいは、民主党が対策本部をつくっていること、北朝鮮人権週間を持っていて、政府が啓発行事をしていることも民族排他主義的な雰囲気だというふうに子供たちに今も教えているんです。

 このことについて議論をしない基準でいいんでしょうか。議論をした上でこれでもいいというなら、それは一つの考え方だと思いますけれども、余りにもひどいじゃないか。政府のことをこんなことを言っているんですよというふうに思っているということで、大変意見の違いがあると思いました。

増元参考人 これは、嫌がらせというふうにおっしゃいましたけれども、国として、先ほどおっしゃいました朝鮮学校に通っている生徒が将来的に日本国で共生していくための人材をつくるために日本国がお金を出す。しかし、このような反日教育、今そこにもある、うその教育をもって果たして今後日本の中で日本国民と同じように拉致問題の解決を一緒に願っていける人材をつくっていけるのか、それが問題だというふうに私たちは思っております。

 一九七四年の文世光事件、彼が最後に残した言葉、もし自分が韓国で育っていたらこのようなことは起こしていなかった。それはすなわち、日本国内で行われた反日教育そして反韓国教育、さらに朝鮮総連、その上の上層部からきた教育によって、韓国はひどい国である、だからこそ朴正熙大統領を暗殺しなければならない、それをうのみにしてしまったということですよ。

 こういう教育をなされているところに我が国の税金を投入して、もしかしたらテロ工作員をつくる可能性もあるということを、皆さんはどうやって責任をとられるのかということですよね。そういう責任をとる覚悟でやはりこの問題も論議しなければいけないし、この文世光の言葉というのは非常に我が国に対して問題提起をした言葉ではないかと私は思っております。

坂本委員 自民党の坂本哲志でございます。

 五人の参考人の方々の前政権あるいは現政権に対するいろいろな不満、不信、本当によく理解できますし、私たちはそれを重く受けとめなければいけないと思います。そして、ともに行動していかなければいけないと思いますし、やはり世論をさらに喚起するためには、地方でのいろいろな報告会、シンポジウム、こういったものをさらに開催していくべきであると思っております。

 そういう中で、この前、九月四日、熊本で拉致被害者を救おう熊本報告会というのが行われました。増元事務局長に来ていただきまして、少し気になる発言がありましたので、そのとき時間があれば聞けばよかったんですけれども、その発言も含めて、増元さんにお伺いをいたしたいと思います。

 報告会は、私が国会の状況ということでまず報告をいたしまして、ちょうど金賢姫が来日した後でございましたので、私はそれに批判的な意見を述べさせていただきました。どれだけ税金がかかったかわからない中で、ああいう来日をなぜやらなければいけなかったのか、国賓並みとの報道もありましたけれども、遊覧飛行も含めて、なぜあそこまでしなければいけなかったのか、その中から果たして何が生まれたのか、どういう新しい情報が生まれたのか、結局生まれなかったのではないかというような、批判的な、私なりの報告をさせていただきました。

 それに対して、増元事務局長が私の報告に反論する形でいろいろなことをおっしゃいましたけれども、その中で、金賢姫は恩人であると。我々にとってだったのか、日本にとってだったのか、事件にとってだったのか、そこの主語はちょっと忘れましたけれども、恩人であるという言葉を言われまして、会場に少し戸惑いのざわめきが起きました。

 増元さんが言われるのは、あのとき、蜂谷真由美、金賢姫が服毒自殺を図って、そしてそのまま死んでいたら、あれは南朝鮮のでっち上げであるという北朝鮮のプロパガンダがそのまま通用していたであろう、そこで生き残って、そして真実あるいは事実を報告してくれたので、そういう意味で恩人であるというようなことでございましたので、ある面、聴衆の方も納得されたような気もいたしましたけれども、やはり言葉の使い方、いろいろな発言、言い回し、これは非常にデリケートな問題でありますので注意をした方がいい。

 少なくとも、恩人であるとか、金賢姫に対して非常に好意を寄せる、好感を抱くような発言とか、こういったものに対してはやはり反感もありますし、私は、家族会と国民の間の微妙な感情のずれを生じさせるものではなかろうかなというふうに心配をいたしましたので、その点について増元さんにもう一度お伺いいたしたいと思います。

 それから、今回の金賢姫の来日がこれからどういうふうに役に立つのか、どういう位置づけで方向性を決めていくのか。先ほど、飯塚さん、情報交換をこれからさらに密に連携してやっていったらいいというふうなことも言われましたけれども、果たしてこれ以上の情報が金賢姫から得られるのかどうかということを思うと、この前の来日が何だったのかなというふうに思いますので、よろしくお願いします。

増元参考人 その節はお世話になりました。ありがとうございます。

 あの当時、自民党の総裁が、金賢姫の来日をもって、日本の国内法に反してテロ実行犯を入れていいのか、それが果たして法治国家としていいのかという発言がありまして、私たち家族としては、この金賢姫のことを政争の具にしてほしくないという思いから、そのように申し上げたんです。

 あの当時、金賢姫が死んでいた場合、日本のパスポートだけが残って、もしかしたら日本人が大韓航空機爆破事件に関与していたのではないかという、韓国の中での大きな反日運動が起こったと思われます。

 これは文世光事件のときもそうですけれども、在日の人が朴正熙をねらって朴正熙の奥さんを殺害してしまった。これに対する日本の報道もあったんでしょうけれども、それに対して、韓国国内で大きな反日運動が、反日騒動が起こったわけです。

 このことからも、もしあのまま金賢姫さんが死んでいたらば、何の証拠もない状況で日本のパスポートだけが残ってしまう。韓国国内でそうした日本に対する反日運動、そして、その翌年に起こるソウル・オリンピックへの参加ももしかしたらできなかった可能性もあることを考えると、私は、ある程度、金賢姫の存在というのは日本にとって大きな存在なのであろうと思っております。

 それからもう一つ。金賢姫自身、彼女が百十五人の韓国の労働者を大韓航空機とともに葬ったのは事実ですが、先日お会いしました、普通の女性です。あの方がそういうむごい実行犯にならざるを得なかった北朝鮮の体制をこそ我々は問題視すべきであって、金賢姫の罪をとがめて、その背景にあるものを全く考えないというのであれば、これはよくないと思っております。

 ですからこそ、私は、金賢姫の正しい姿を国民に示していくべきであるし、その後ろにいる金正日体制というものを私たちは打破しなければならない、考えていかなければならないという問題提起をする上で、今回の金賢姫の来日は非常に大きな意味があったと思います。

 副産物として、北朝鮮の外交官が、大韓航空機爆破事件、金賢姫の存在を公の場でカメラを通して認めてしまった、これは大きなことです。

 なぜ北朝鮮が田口八重子さんを死亡としたか。それは大韓航空機爆破事件を認めたくなかったから。これを認めたということは、今後、北朝鮮の政策を転換しなければならないし、そこで、隠される意味のない田口八重子さんを帰す可能性が出てくる。

 もう一つ。金賢姫さんを我が国が超法規的な措置で受け入れたということを、韓国社会にいる脱北者に対して大きなインパクトを与えることによって、いろいろな情報が出てくる可能性がある。日本はいかなることがあってもこの拉致問題は重要なんだ、日本国は絶対にこの拉致問題を解決するまで引かないという姿勢を見せることによって、金賢姫さえ受け入れた、そして金賢姫さえ許している、そういう日本の姿勢が脱北者に伝わることによって、自分も情報を出してもいいのではないかという環境をつくっていけるのではないか。

 私は、その点で、今回の金賢姫さんの来日、それを許可した日本政府のやり方というのを非常に評価している点です。

 ありがとうございました。

坂本委員 よくわかります。

 私が言っているのは、恩人という言葉の使い方とかそういうものについては、非常にデリケートな問題を含んでいるので、撤回するなり、やはり使わない方がいいというようなことです。

増元参考人 わかりました。御忠告に沿うように、その恩人という言葉はなるべく、極力控えます。

谷田川委員 民主党の谷田川元でございます。

 きょうはありがとうございます。

 きょうは、皆さんからお聞きして、やはり韓国や国際社会と連携して制裁を強めるということが北朝鮮を動かす唯一の方法だということはよくわかりました。

 あと、これは荒木参考人にお伺いしたいんですが、「正論」の十月号に中井大臣のことに関しての記述がありまして、我々民主党政権になりまして対策本部の情報関係予算を大幅に増額した。それに対して、何のために情報を集めるかという基本がない。それで、やはり目的を救出にしない限り、結果的には何も変わらないんだという記述がございますけれども、では、具体的に情報収集のあり方、もっとこうすれば救出につながるんだという具体的な提言を言っていただければありがたいと思います。

荒木参考人 情報の収集は、まずともかく、北朝鮮のどこに何があるのかということについての情報は、今、北朝鮮から逃げてきて日本に入っている脱北者、元在日朝鮮人とか、あるいは日本人妻とかその家族、それだけでも二百人おります。その人たちから、例えば事情聴取するだけでも、北朝鮮のいろいろな場所も、どこに何があるかというのはかなりわかります。

 それから、今はもうグーグルアースで見ただけでも、北朝鮮のどこに何があるかというのはかなりわかる状況ですので、そういうものを集積していって、入ってくるいろいろな情報と突き合わせていけば、かなり精密な北朝鮮の地図といいますか、その状況がわかるものができてくるんですね。

 そこで、一体どうやって取り返せるか、そこにアクセスするにはどうすればいいか。例えば、そこに入っていく在日朝鮮人などを使うとか、いろいろな形のことは考えられると思うんです。そういう形の、救出を前提とした情報収集をやらないと、個別の情報を集めてきてとっておくだけでは、それを生かすことができないということで、そこをやっていただきたい。

 我々も、実際に北朝鮮の人権関係の各NGOと連携しながら、さまざまな情報をとっております。そういうものを何とか集積する場所、自分たちでもやらなければいけないんですが、なかなか民間ではそれが十分にならない。やはりそこを国としてやっていけば、恐らく、今の時点のある情報だけでも相当なものが見えてくると思います。

 なおかつ、今現在、警察、公安調査庁、海上保安庁、自衛隊等々、情報がばらばらになっておりますので、それを可能な限り集めてクロスチェックができれば、今、日本にある情報機関の能力だけでも相当のことがわかると私は思っております。

江藤委員 自由民主党の江藤拓と申します。

 きょうは、参考人の皆様方、本当にありがとうございます。自分の不勉強であることを非常に自覚いたしました。

 初当選以来、安倍先生のもとで、古屋先生の御指導をいただいて、この拉致の問題は取り組んできたつもりでありましたけれども、きょうの委員会で参考人の方々からいただいた率直な御意見、私は正直言って、かなり我慢をして、抑えて物事をおっしゃっているんじゃないか。特に、前代表の横田さんにおかれましては、お孫さんの顔も本当はごらんになりたいと思います。私も三人の息子がおりますけれども、まだ孫はおりませんが、その心情を思えば、もうそれは、思いやるにはかり知れないものがあります。

 そしてまた、寿命を自覚しているのだ、ある意味で北朝鮮では何が起こるかわからないんだということであれば、今が新たな、八年間停滞していたこの状況を打開する一つのチャンスであるというふうに我々は考えて、自覚してよろしいのかどうか、これが質問でありますが、そのためにはこの委員会のメンバーは、高校無償化でもいろいろ御意見はあるかと思いますけれども、しかし、やれることはすべてやるのだということで我々はやるべきだということを私は非常に確信を持ちました。

 私は、ぜひ横田さんにもう一度、今回の長い闘いの中での思いを私たち委員に御披瀝いただきたいのと、あと西岡先生に、北朝鮮がこういう状況にあれば今こそチャンスであるというようなことを、もし補足するようなことがあれば教えていただければと思います。

横田参考人 例えば、我々が北朝鮮に行けば事態が進展するというようなことを言われる方もあります。ですから、やはり大局的に見てそうした方がいいという専門家の方の判断があれば、それに従いますけれども、今までの状況では、やはり行くことによってのマイナスの方が大きいんじゃないかということを考えて、それはこれまでも、前の中山参与とか、いろいろな方にお話を伺っています。でも、今のところ、ちょっと決めかねておりますが、やはり行くことによって何か全体の動きが出てくるというのであれば、また家内とも相談してみて、行くという方向で検討することも考えてみなければと思います。

西岡参考人 一つだけつけ加えるとすると、北朝鮮も苦しいんです、拉致問題だけでも。彼らの工作機関の対日パートは、二〇〇二年に、五人だけ帰せば日朝国交正常化になってお金が取れますよと言って、金正日の決裁をもらったんです。そして、にせの遺骨も準備してあります、死亡診断書も準備してあります、これでだませますよと言って決裁をもらったわけです。それなのに、人質を解放したのに、身の代金が取れない犯人なんです。向こうも苦しいんです。

 もちろん、こちらも、家族の方たちがどんどん年をとられている。苦しい思いが重なっている。向こうにいる人たちが一番苦しいんですが、しかし、向こうが弱気になって、こちらに交渉しようと言ってこない限り、向こうがついたうそを変えなくちゃいけないんですから、死んだと一度言っちゃったんですから、こちらが毅然として、向こうも苦しい、こちらも苦しい中で、日本国民全体が一致して、北朝鮮の言っていることはうそだ、死亡の証拠はない、十三人よりもっといるんだということを、きょうはすべての会派の方々がそのことについてそう言ってくださいましたから、オール・ジャパンでこのことは取り組むんだという姿勢を崩さなくて、先ほど言った国際情勢も、金正日の健康も、向こうが困っているということも含めて、今の、苦しいけれども胸突き八丁を頑張るしかないと私は思っております。

村上(史)委員 民主党の村上史好と申します。

 きょうは、長時間にわたりまして、本当にありがとうございます。時間もございませんので、簡単に御質問させていただきたいと思います。

 先ほど来、対話と圧力という言葉が再三出ております。残念ながら、現状はまだ進展していない。こういう状況の中で、新たな制裁というものを何かお考えなのか。それと、対話の方で、例えば、いわゆる超党派の議員外交というものも組織していいのではないかなと個人的には考えているんですけれども、その辺の御見解を西岡先生にお伺いします。

西岡参考人 民主党は、野党時代に対策本部がありまして、党として全面制裁案をまとめてくださっています。その案の中で、まだ実施されていない部分ですね。

 まず、送金の全面停止が残っています。今、送金の限度額が、チェックの限度額が下がっているだけで、停止はされていませんが、改正外為法によって停止することができる法的根拠はあります。

 もう一つ、民主党の案に入っているのは人です。今は、朝鮮総連の幹部六人についてだけ自由往来を停止しています。しかし、民主党の案では、日本人も在日朝鮮人も全部含めて停止するということも、案には入っています。日本人も、昔は日本のパスポートで、ノースコリアを除くとなっていたんです。それも今の憲法下でできたんです。北に行くときは、外務省に別途申請をするという体制をつくることはできるんです。

 六人について再入国許可を出さないということを今やっているわけですから、今の法律の中でできることはできるわけです。日本は、出国の自由は認めますが、再入国を認めないということができるカードはあるし、民主党は案をお持ちだということで、私は、彼らが二〇〇八年に約束を守らなかったんですから、守らなかったことに対して何らかの制裁をすべきだと。彼らがサラミ戦術でくるなら、こちらも向こうが一つひどいことをしたら一つ積み上げておく。今度、もう一回二〇〇八年の約束に戻ってきたら、その分だけ削ってあげればいいわけで、そうするとイーブンになるわけで、今彼らが戻ってきたら、昔のところからこちらを削らなくちゃいけない交渉になってしまう。外務省のポケットをふやすべきだ。そのためにも制裁を、案をつくってくださっているんですから、実行していただきたいということです。

奥村委員長 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 参考人の各位におかれましては、貴重な御意見をきょうはお述べいただきました。忌憚のない委員からのまた御質問もありましたが、的確にお答えをいただいたものだ、このように思い、厚く御礼を申し上げたいというように思います。

 きょう、この委員会を開かせていただきまして、いろいろまた理事会等、委員会等で検討いたしまして、今後またこういう機会をできるだけつくっていきたいというように思っておりますので、またどうぞ御協力のほど、よろしくお願いをいたしたいと思います。

 きょうを、またある意味ではスタートとして、我々もしっかりこの八年間のブランクを何とかこの委員会で取り戻して、そして、一日も早く解決ができますように努力をしていくことをお約束申し上げて、ごあいさつとさせていただきます。

 ありがとうございました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時五十六分散会


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