衆議院

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第4号 平成23年4月22日(金曜日)

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平成二十三年四月二十二日(金曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 奥村 展三君

   理事 北神 圭朗君 理事 松宮  勲君

   理事 向山 好一君 理事 村上 史好君

   理事 鷲尾英一郎君 理事 江藤  拓君

   理事 古屋 圭司君 理事 竹内  譲君

      石田 三示君    小原  舞君

      金子 健一君    小林 正枝君

      長尾  敬君    萩原  仁君

      橋本 博明君    福島 伸享君

      藤田 大助君    室井 秀子君

      本村賢太郎君    谷田川 元君

      小里 泰弘君    坂本 哲志君

      高木  毅君    竹本 直一君

      永岡 桂子君    笠井  亮君

      中島 隆利君

    …………………………………

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (拉致問題担当)     中野 寛成君

   内閣府大臣政務官     園田 康博君

   外務大臣政務官      菊田真紀子君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  加賀美正人君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 石兼 公博君

   衆議院調査局北朝鮮による拉致問題等に関する特別調査室長          綱井 幸裕君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十二日

 辞任         補欠選任

  大谷  啓君     小林 正枝君

  櫛渕 万里君     小原  舞君

  熊田 篤嗣君     金子 健一君

  花咲 宏基君     橋本 博明君

  小里 泰弘君     竹本 直一君

同日

 辞任         補欠選任

  小原  舞君     櫛渕 万里君

  金子 健一君     石田 三示君

  小林 正枝君     大谷  啓君

  橋本 博明君     藤田 大助君

  竹本 直一君     小里 泰弘君

同日

 辞任         補欠選任

  石田 三示君     熊田 篤嗣君

  藤田 大助君     花咲 宏基君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 北朝鮮による拉致問題等に関する件


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     ――――◇―――――

奥村委員長 これより会議を開きます。

 北朝鮮による拉致問題等に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣参事官加賀美正人君及び外務省大臣官房参事官石兼公博君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

奥村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

奥村委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。竹内譲君。

竹内委員 おはようございます。公明党の竹内譲でございます。

 本日は、財務金融委員会での質疑、採決があるものですから、私が最初に質問させていただくことになりました。同僚の皆様に、まず感謝を申し上げておきたいと思います。

 その上で、きょうは、限られた時間でございますので早速質問させていただきますが、北朝鮮情勢につきまして、何点かまず質問をさせていただきたいと思います。

 最近、キリスト教が北朝鮮で一気に広がっているという情報があるわけでございますが、政府はどのように確認をしておられますか。

菊田大臣政務官 竹内委員にお答えをさせていただきます。

 各種の報道等によりますと、北朝鮮には相当数のキリスト教信者が存在すると推定をされておりまして、一部にはその数が数十万人に上るとする情報もございます。

 政府としましては、北朝鮮の内部情勢につきまして、平素より情報の収集、分析に努めておりますが、さまざまな情報に接しながら、今後とも、意を用いまして情報の収集、分析に努めてまいりたいと思っております。

竹内委員 次に、最近、北朝鮮軍部のマニュアルが流出したという情報がありますが、これについては政府はどのように承知していますか。

菊田大臣政務官 北朝鮮の軍事情報がさまざまな形で海外に流出をし、北朝鮮当局が容疑者の逮捕や監視体制の強化といった措置をとっているといった、さまざまな報道があることを承知いたしております。

 政府としまして、北朝鮮の内部情勢については、先ほどから申し上げておりますとおり、平素より情報の収集、分析に努めておりまして、個々の具体的な情報については、今申し上げたような報道の真偽といった点を含めまして、大変恐縮ですが、事柄の性質上、コメントすることは差し控えたいと存じます。

竹内委員 平壌の北朝鮮政府の内輪といいますか、インナーサークルに食い込むことは大変重要だというふうに思っております。北朝鮮内部に浸透した人的情報、ヒューミントというんですか、活動は、どのように今現在行われているのか。もちろん非常に至難のわざとは思いますけれども、前の中井大臣のときに情報収集活動に対して予算も拡充されたと聞いております。

 まず、その予算の程度と活動内容について、御報告をいただきたいと思います。

中野国務大臣 一昨年十月に、新たに機動的な拉致問題対策本部を設置しようということで、一昨年十月二十七日に開催した第一回本部会合で、情報関係を強化することを確認した。それを受けて、平成二十二年度予算は前年度から倍増の十二億四千万円といたしまして、特に情報関係予算につきましては、一億九千五百万円から八億六千四百万円と四倍以上に増額をした、こういうことであります。

 それにあわせまして、事務局体制についても、情報関係を中心におおむね十名程度を強化いたしまして、拉致被害者等に係る安否情報等の収集、分析などに取り組んでおりますが、平成二十三年度予算においても、基本的に同じスタンスで臨んでいるところでございます。

竹内委員 情報収集活動というのは非常にいろいろな面があると思うんです。言えることと言えないことといろいろあると思いますけれども、この辺は非常に重要だと思いますので、さらなる進化を遂げていただきたいというふうに思っております。

 そこで、今回は、中野大臣はよく存じ上げておる大臣でいらっしゃいますけれども、拉致担当大臣としては四人目になるんですかね、民主党政権になってから。

 そのようなことで、北朝鮮が日本と交渉しなければならない状況をつくり出していくことが大事だというふうに思っておりますけれども、改めて、四人目の拉致担当大臣として、拉致問題の全面解決に向けて、どのような戦略で、どのように行動していくのか、そこの根本的なところを開陳していただければありがたいと思います。

中野国務大臣 今おっしゃいました四人目の担当大臣ということで、このことにつきましては、就任早々に、まず最初に御家族の皆さんとお会いしたいということのお申し入れをいたしましたが、お会いする前に既に新聞報道等で、こう担当大臣がしょっちゅうかわるということはいかがなものかと御家族の皆さんも憂慮されているということをお聞きいたしましたので、最初の記者会見等のときに、まず、政府の一員としておわびを申し上げました。またその後、御家族にお会いをいたしたときにも、冒頭そのことのおわびを申し上げたところであります。

 ただ、任命された私といたしましては、大臣がかわろうと政権がかわろうと、いかなる事態があっても、これは、超党派で、日本政府が中心となって全力を挙げて取り組むべきテーマだというふうに考えておりますのと、もう一つは、独裁国家ではありません、いわゆる民主国家でありますので、その担当がかわることはあり得ること。しかし、独裁国家でない日本のような民主国家の強みは、国民の皆さんの自発的な理解と協力が得られ、そしてそのもとに国際社会の協力を、また賛同を得られる、それを力にして独裁国家と対応していく、そういう特色があると思います。

 よって、私は、今日までの過去の歴代政権担当者、各大臣が積み重ねてこられたこの問題に対する対応を継承し、より一層充実発展をさせていくというプロセスの中で取り組んでいきたい、このことについて御家族の皆さんにもぜひ御理解を賜りたい。

 そういう中で、この情報収集のための予算をふやしたことや、また、担当事務局を強化したこと、そして御家族の皆さんとのより一層緊密な定期的な会合というようなことなどをも含めまして、充実させる方向で努力をしているところでございます。

竹内委員 私は、昨年十一月二十三日に延坪島への砲撃があった後、二日後に衆議院の予算委員会の集中審議がございまして、そこで当時の担当大臣であった仙谷官房長官に質問しているんですね。どうやってこれを進めていくんだという質問をさせていただきました。

 そのときに、私は、まずはやはり、こういう砲撃事件があったわけですから、さらなる制裁強化をやるべきだということを申し上げました。

 当時の仙谷官房長官は、日韓、日米、米韓の緊密な連携のもとに、追加の制裁としてどういうものが効果的にあり得るのか、総合的に勘案して検討していきたいというふうに明快に答弁されたんですね、真剣にやるというふうにおっしゃっていました。

 政府はその後、どのように制裁強化を検討し、どのような判断に至ったのか、お答えください。

中野国務大臣 まず、輸出入の規制等制裁措置につきましては、一たん、この四月十三日で期限が切れるところでございましたが、これをなお一年延長するということをいたしました。これは、自動的に延長ではなくて、わざわざその意思を政府として明確にして延長していく、そのことは、言うならば、風化させない、そして、常に新しい認識で措置を講じていくという意識を明確にするという意味でも、私は効果的だと思います。

 また、いろいろな国へも働きかけておりますけれども、例えば先般、あめとむちと言ってもいいのかもしれませんが、アメリカが北朝鮮との輸出入の禁止措置など新たな措置も講じてこられたことは、ある意味、日本の働きかけ、またその他の意味もあるのかもしれません。

 また、きょう本会議にかけていただきますことになっておりますが、マネーロンダリングに関する法律、略して犯収法、犯罪収益移転防止法を改正いたしますが、これなども北朝鮮等への送金に対してしっかりと監視をするという効果もあると思いますので、ありとあらゆる方途を講じながら、より効果的な対策を講じていけますように、また本委員会におきましても、いろいろ先生方から御示唆をいただければありがたいというふうに思います。

竹内委員 昨年の集中審議のときに、私の方は、渡航の全面禁止であるとか送金停止にまで思い切って踏み切ったらどうかということも申し上げた次第であります。いろいろな考え方がありますけれども、特にアメリカとはよく連携をしていただいて、制裁強化という点も非常に重要な点だと思いますので、さらなる検討をお願いしたいというふうに思っております。

 次に、最近、平壌は行政区域を変更した、それまで三百万人の人口が五十万人減少して、面積はほぼ半分に縮小された、このように聞いておりまして、これについてはどのように分析をされていますか。

菊田大臣政務官 お答えいたします。

 今先生御指摘のとおり、北朝鮮の報道などによりますと、これまで平壌市に属していた一部の郡などが、隣接する黄海北道に編入されているということが明らかになったと承知をいたしております。委員おっしゃったとおり、これまでの面積が半分に、また、平壌市の人口三百万人のうち五十万人が隣接する黄海北道に編入されたという報道でございます。

 一部のメディアや有識者の間にはさまざまな論評がございますけれども、今般の措置の目的としましては、まず、食糧不足による平壌市民への食糧供給が非常に困難になっているため、このようなことを行ったのではないかということ、あるいはまた、平壌市を効率的に管理するためなどではないかといった見方が存在をしているのが事実でございます。

 いずれにいたしましても、政府としまして、北朝鮮内部の関連の情報の収集にこれまで以上に努めてまいり、慎重に分析を行ってまいりたいと存じます。

竹内委員 食糧不足というのは大きいと思うんですね。最近、百九万トンの食糧が不足すると分析していて、WFPも北朝鮮へ四十三万トンの食糧支援を加盟国に要請したというようなことがあります。

 しかしながら、今まで、国連、赤十字などの米も、実際は、何か向こうへ渡しても、途中で積みかえたり、軍部に回っているだけで、全然国民に届いていないというふうにも言われていますし、しかも、北朝鮮軍の軍備蓄米というのは百万トン以上だとも言われておるわけでありまして、我が国として、WFPとかが言ったとおり人道支援だということで、このまま安易に食糧支援をされるおつもりでしょうか。

菊田大臣政務官 現時点では、WFPより我が国を含め加盟国に対しまして支援要請はございません。したがって、現段階で仮定の質問にお答えすることは差し控えたいと存じます。

 その上で、我が国は、国際機関による北朝鮮における支援は、人々に本当に直接届く人道的な性格の支援に限られるべきという立場をとってまいりました。また、我が国が資金等を拠出するか否かにかかわらず、事業の適切な実施を確保するため、厳格なモニタリングを徹底することが大変重要であると考えておりますので、WFPに対しまして、透明性のある形で適切に監督、実施するよう求めてまいります。

竹内委員 私は、拉致問題、核、ミサイル問題が解決されない中で、安易に支援に応じることはちょっとよくないというふうに思っております。

 次に、金正日の次男の正哲がいろいろ、マカオやシンガポールで遊んでいるとか、国民が貧困にあえぐ中で遊興しているというような報道がなされているわけであります。こういう情報が北朝鮮の指導部を初め国民に提供されるということは、非常に重要なことだというふうに思っております。

 三月二十六日に、我々とも一緒に一生懸命活動をしていただいている救う会の西岡力会長などが、韓国の軍事境界線付近で大規模なビラ飛ばしをやろうということで、されたわけです。ところが、北朝鮮からの報復攻撃のおどかしがかなり強くて、住民が逆に実力妨害に入って、実現しなかった。こういうことで、非常に残念であり、申しわけなく思っている次第であります。

 政府としては、やはりこういう金一族の行動や、生活難を初めとしたさまざまな北朝鮮批判とか、エジプト、リビア、中東情勢など、さまざまな情報を北朝鮮へ伝えるということが大事だと思うんですが、このあたりにさまざまな工夫を凝らして支援をしていくべきではないかというふうに思うんですが、その点はどのようにお考えでしょうか。

菊田大臣政務官 先生御指摘のとおりでございまして、金一族の行動、あるいは、世界の中で、中東やエジプトでさまざまな世襲後継体制が崩壊するという動きがあるわけでありますけれども、そういったことが果たしてどれだけ北朝鮮の国民に届いているかということにつきましては、現実として、北朝鮮という国は非常に厳しい閉鎖体制をしいておりますので、北朝鮮内部の放送局でありますとか通信社、新聞社等は、すべて当局の事前の検閲を受けているというふうに見られているところでございます。内外の実情、真の情報を北朝鮮内部の人々にお伝えをしていくことは極めて困難という事情があることは、事実として考えられております。

 そう考えますと、現時点で北朝鮮の人々に真実、あるいはさまざまな情報、世界の動きをお伝えすることがどれだけできるかということが課題としてありますけれども、先生の御指摘も踏まえまして、考え得るあらゆる方策を使いまして、拉致問題を含む諸問題の一日も早い解決に取り組んでまいりたいと存じます。

竹内委員 時間が迫ってまいりましたので、最後の質問にさせていただきますが、北朝鮮と交渉して拉致問題を進展させるには、北朝鮮の政府高官といっても、権限のない者と話をしてもらちが明かないというふうに思うんですね。やはり、金正日に直接話のできる人物と交渉するしかない。

 以前、田中均元外務審議官が交渉相手としていたミスターXというのは北朝鮮軍のエリートだったと言われているわけでありますけれども、現民主党政権としては、どのようなルートによって北朝鮮と交渉しているのか。ここをしっかりやってもらいたいと思うんですが、担当大臣の見解を賜りたいと思います。

中野国務大臣 最も重要で、かつ、機微にわたる御質問でございます、明確にお答えは大変しにくいところでありますが。

 我々としては、菅総理大臣を本部長として、外務大臣、官房長官、そして私が副本部長、そしてまた、私はその事務局長を兼ねておりますが、そこでしっかりと連携をとりながら、先ほど冒頭申し上げましたが、人がかわろうとも、こちらの体制は常に変わらないということを明確にしつつ、言うならば、相手に足元をすくわれないようにということもちゃんと考えなければいけませんが、同時に、一方では、相手が今微妙な段階にあるというふうにも思いますので、その辺のことは、しっかりと情報収集をしながら、キーポイントをつかまえていくように努力をしたいというふうに思っております。

竹内委員 これで終わりますが、しっかり体制を整えていただいて、交渉して、拉致問題解決に取り組んでいただきたい。我々もバックアップをしていきたいと思います。

 ありがとうございました。

奥村委員長 次に、村上史好君。

村上(史)委員 おはようございます。民主党の村上史好でございます。

 きょう、初めての質問でございますけれども、また、全く私ごとではございますけれども、以前、三十年ほど前でございますけれども、中野大臣の秘書をさせていただいておりました。特別な感慨を持って今立たせていただいております。

 こういう機会をいただきましたことに心から感謝を申し上げたいと思います。きょうはどうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、中野大臣に早速質問をさせていただきたいと思います。

 平成二十年八月、日朝協議が行われまして、また合意がなされました。残念ながら、北朝鮮がそれに対応できていないということで、この間、拉致問題の解決へ向けての動きというものが全くないという状況でございます。時間だけが経過をしている。このことは、拉致被害者、また拉致被害者の御家族の皆様方にとって、本当に厳しい時間であったと思います。

 そういう現状の中で、まず、中野大臣はこの状況をどのようにお考えなのか。そして同時に、事態が進展しない原因、理由はどこにあるのか。その認識をまずお伺いしたいと思います。

中野国務大臣 私も特別な感慨を持ってお答えしなければいけないかもしれませんが、現状への思いについて、まずお答えをいたします。

 平成十四年十月、五人の拉致被害者の皆さんの御帰国、及び平成十六年五月、七月にその御家族の御帰国や来日がございましたが、それ以降、目に見える具体的な成果、進展がない状態が続いていることは御指摘のとおりであります。

 この間、増元るみ子さんのお父さん、そして市川修一さんのお母さん、そして、昨年十二月には原敕晃さんのお兄さんの耕一さんなどがお亡くなりになられました。まことに残念でなりません。

 有本恵子さんの御両親や横田めぐみさんの御両親も、全国の集会等で積極的に活躍をされておりますが、既にかなりのお年でもあり、先般お会いしたときにも、なかなか大変だということをおっしゃっておられました。担当大臣としては、まことに申しわけなく思っております。

 いっときも早く、まずは、現在安全で御健在であること、このことを信じておりますし、いわゆる否定的な情報は一切ないわけでありますから、すべての皆さんが御健在である、このことを信じ、そして日常のお暮らしの中でも安全であることを、やはり我々としては常に確保する注意を払っていかなければなりません。

 そして、すべての方が御無事でお帰りをいただく、そのために我々は全力を尽くさなければなりませんが、私も皆さんと同じように、担当大臣が言ってはいけない言葉かもしれませんが、個人的心情としては、隔靴掻痒の感を今日までも持ってきたところであります。

 さて、解決への糸口の問題ですが、今一番直近の経緯からいたしますと、平成二十年八月に、一たん日朝間で全面的な調査のやり直しに合意をした。これは、全面的な調査のやり直しでありますから、当然のことながら、今までの形式的な調査ではなくて、本当に御健在である、そのことを確認し、そしてどうすべきかという目に見える調査を誠意を持って北朝鮮がやってくれる、そういう意味での合意であったと私は思っておりますし、またそうでなければならぬと思っておりますが、その後、北朝鮮は、当時の福田総理の辞任表明を受けて、調査開始を見合わせる旨、一方的に、独断的に通知をしてきた。それ以来、残念ながら日朝協議が行われていないということであります。

 言うなら、北朝鮮の特殊性、私は独裁国家と就任早々に言いまして、もう翌日か翌々日か、北朝鮮系の報道では極悪人扱いをされておりますけれども、いわゆる日本のような民主国家ではない、そういう特殊性、そして国際環境や日本及び北朝鮮の事情など、さまざまな要因が考えられますけれども、いっときも早く、政府の立場から、この合意が今も生きておって、そしてそれを一日も早く相手が実行に移す、そのための働きかけを今日までも折に触れてやってきておりますけれども、それを実効あらしめるための努力を今しないといけないことだというふうに思います。

 いろいろな戦略、戦術をということで検討もし、また先生方からのサジェスチョンもいただいておりますが、いつも思うことでありますけれども、国会でやっているこの会合でも、ある意味公開でやっていることですから、翌日か翌々日にはというよりも、リアルタイムで北朝鮮当局というのはそれを把握している。我々がどこかでしゃべったことについての反発やコメントがもうその翌日には北朝鮮の国営のマスコミに載っているというような状況の中でありますから、一言で言うと、相手に対してプレッシャーをかけることは大いに発信しなければいけませんが、手のうちを示すということは、これはまた厳に避けなければいけないという微妙なところにあると思います。

 ありとあらゆる手法を講じて頑張ってまいりたいと思います。

村上(史)委員 ありがとうございます。

 発言には気をつけないといけないということで、大臣からは具体的なお話はなかったと思うんですけれども、我が国の対北朝鮮の基本方針でもございます圧力と対話という基本的なスタンスがございますけれども、きょうは、あえて対話について質問をさせていただきたいと思います。

 今、北朝鮮をめぐります外交というものが活発化していると言われています。米朝、南北、そして中朝、それぞれが今動こうとしています。

 その一つのあらわれとして、四月の十一日に、中国の武大偉特別代表が金桂冠第一次官と協議をされて、六カ国協議に向けての段階計画というものが出されました。ステップワン、ステップツー、ステップスリー、第一段は南北の対話、第二段は米朝の対話、そして、最終的に六カ国協議という手順を示したということがございました。

 そういう動きの中で、早速それに呼応する形でいろいろな動きが出てきた。これは報道ベースの話で恐縮ではございますけれども、十五日の韓国の文化日報で報道がございまして、当時アメリカを訪問しております韓国政府高官の話として、非核化のための南北対話が条件なしで行われるであろうという見通しを示した上で、哨戒艦沈没事件や延坪島砲撃事件の謝罪を前提条件にしない、また、これは中国が提起をした六カ国協議再開と通じるものであるということは報道されております。

 それと、南北対話と米朝対話の関係について、南北対話で成果がなければ米朝接触がないということではなく、これは弾力性のある交渉であり、南北対話での北の態度を見ながら、対話に相乗効果をもたらすべきと判断すれば、米朝対話も行われるであろうというコメントを載せておりました。

 今、米韓では軍事演習もしております。四月三十日まででございますけれども、この間にアメリカのカーター元大統領が北朝鮮を訪問する、あるいはまた、二〇〇九年以来中断をされておりました食糧支援も間もなく再開されるのではないかというような状況もございます。

 そういう中にあって、アメリカにしろ韓国にしろ、さまざまなパイプを持って、そしてチャンネルを持って、圧力と対話を使い分けている。いわゆる蛇口を持ちながら、圧力をかけるときは蛇口を閉める、また対話をするときには蛇口をあける、そういう使い分けをしながら外交交渉をしているのが実態だと思います。

 こういう状況の中で、お尋ねをしたいんですけれども、本年一月四日、前原前外務大臣が会見の中で、拉致、核、ミサイル問題をじかにしっかりと二国間で話ができる状況をつくり出すことが大事と発言しています。また、松本外務大臣も、三月二十五日の大臣所信の中で、日米韓で緊密に連携をしつつ、我が方としても同様に対応する用意があると述べられております。

 現実に、南北そして米朝の二国間対話が始まれば、日本として北朝鮮との対話を進める用意があるのか、またそのパイプはお持ちなのか、そのことをお尋ねしたいと思います。

菊田大臣政務官 北朝鮮との対話につきましては、我が国自身、これを拒むものではございません。しかし、北朝鮮が、拉致、核、ミサイルといった諸問題の解決に向けた前向きかつ誠意ある対応を見せていただかなければ前に進むものではございませんし、とにかく、これまでの基本どおりでありますけれども、日米韓で緊密に連携をしつつ、我が方としても同様に対応をする用意があるというのが従来からの立場でございます。

 いずれにいたしましても、拉致問題は我が国の国家主権及び国民の生命、安全にかかわる重大な問題でありますので、政府としても、考え得るあらゆる方策を使って、一日も早い解決に臨んでまいりたいというふうに考えております。

村上(史)委員 私も立場は全く同じなんです。もちろん、制裁をすることについてもちゅうちょする必要はありませんし、堂々と我が国の主張、そして拉致被害者を取り戻すためのスタンスというものは明確に示す必要があると思います。しかしながら、事態が進展していないというのも、一方、事実がございます。

 そういう中で、ことしの二月の五日に、中野大臣も御出席になったと思いますが、神奈川で開催されました拉致問題を考える国民集会の席上で、横田滋さんが、北朝鮮への制裁だけで解決は難しい、ぜひチャンスをとらえて、もっと交渉を実施してほしい、そういう訴えをされたと聞いております。まさに、この声は切実な声であると同時に、率直な思いだと思います。時間だけが無為に費やされることへの焦燥感、不安というものは大変大きいものがあると思いますし、決して、対話が弱腰であったり、また北朝鮮を利するものではないと私は思います。

 そういう面では、やはり、虎穴に入らずんば虎子を得ずということもあります。北朝鮮が外交交渉をしてこないという現実の中で、呼び込む政策も必要ではないか。アメリカや韓国が行っているように、圧力と対話を繰り返す中で、それを一歩前に進めることが拉致家族の皆様方にこたえる政治の責任だと私は思っています。

 そういう面で、ひとつ、あらゆる外交ルート、そして、正規の外務省による外交ルートとともに、やはり民間のルートも必要でしょう、そしてまた議員外交も必要だと思います。その点について、外務省のお考えをぜひお伺いしたいと思います。

菊田大臣政務官 先生御指摘のとおり、この拉致問題については、政府、国民、そしてまた議員がそれぞれ力を発揮しながら、みんなの力で解決をしていかなければならないというふうに思っております。

 御指摘がございました議員外交についてでございますけれども、国民の代表である国会議員が外国政府などに我が国の事情や国民の声を直接説明して、訴えかけ、行動されていくことには非常に意味があるというふうに考えているところでございます。

 ただし、気をつけなければならないことは、万が一にも政府の立場と異なる考え方やメッセージが相手に伝わってしまうということ、これは非常に危険なことでありまして、十分な注意が必要であるというふうに考えております。

 とりわけ、日朝の交渉、これは相手は北朝鮮という国でありますから、非常に敏感な問題も抱えております。その重要性にかんがみまして、やはり外交を統括する外務大臣が、総理とよく意思の疎通をしながら、しっかりとグリップを握って進めていくべきであるというふうに基本的には考えております。

村上(史)委員 今の御見解と私も全く同感です。決して、正規の外交ルートを邪魔するというような形、あるいは食い違うということであってはならないと思います。そのことは肝に銘じながらも、しかし、何らかのアクションを起こすという意味において、一つの考え方として、今、質問させていただきました。

 この問題、全国民また我々全国会議員が必死になって取り組み、解決に向けて頑張っていく、そういう姿勢を示すことが拉致家族の皆様方の安心にもつながりますし、そして解決への第一歩にもなると思います。

 そういう意味において、最後に、中野大臣の今後の取り組みについて、また力強い決意をこの場でお示しいただいて、質問を終わりたいと思います。

中野国務大臣 議員外交、民間外交、いろいろな外交がありますが、この問題については、国論を一にして、我々の気持ちを一つにして、最終的な決着の交渉係は外務省でありますから、我々拉致担当、また一方で、私自身は国家公安委員長も兼ねておりますが、いずれにせよ、いろいろな情報収集をし、体制を整え、最終的に相手を引っ張り出し、そして明確に所期の目的を達成する最後の詰め交渉は外務省に一元化する、そういう体制、ルールは忘れてはならないというふうに思っております。

 そういう意味で、議員外交も結構でありますし、というよりも、むしろ、どうぞよろしくお願いをしたいと思いますし、そして本委員会でこうして議論をしていただくこと、そのことがまた相手へのプレッシャーにもなるというふうに思いますし、また、少なくとも国民の皆さんのこの問題に対する意識を風化させては断じてならぬという気持ちで、日ごろの日常の活動も、先生方と御一緒に、また御家族の皆さんや救う会の皆さんとも御一緒に、ありとあらゆる手段を講じてこれらの努力を重ねてまいりたいというふうに思います。

村上(史)委員 ありがとうございました。

奥村委員長 次に、萩原仁君。

萩原委員 おはようございます。民主党の萩原仁でございます。

 村上さんほどの感慨はあれなんですけれども、早速質問に入らせていただきます。

 先日、私は、被災した東日本大震災の現場に行ってまいりまして、現場を見てまいったのでありますが、つぶれた家の下に、小さい子供の靴とか、やりかけの問題集とかがありまして、子を持つ親として、どうか生きていてほしいなというような強い思い、本当に祈るような気持ちでございました。

 今、報道を見ましても、世間の話も、この震災のことばかりになっておりますけれども、拉致されておられる御家族にとりましたら、子供さんがいない、御家族がいないというのは同じ思いだと思うのであります。

 そんな中で、日本国として、この間ずっと見ておりましたら、手詰まり感というんでしょうか、御家族の方に対して胸を張って、本当に前に進んでいるのかどうかというのを私自身も思うわけでありますけれども、その辺、大臣は胸を張って、内容はいろいろとあると思うんですが、どのようにお考えか、まずお聞かせください。

中野国務大臣 多分、気持ちは同じだと思います。先ほどもちょっと、私的には隔靴掻痒の感をぬぐい切れませんと申し上げました。

 担当大臣としては、まさにそれを打破するために闘わなければいけないわけでありますので、ありとあらゆる手段を講じて情報収集、そしてまた、韓国、米国、国連、あるいは六者会合の参加国でもあります中国やロシアも含めて、場合によっては、東南アジアやヨーロッパでも、北朝鮮と国交のある国はもう全部とか、いろいろな形で、ありとあらゆる手段を講じて、この特異な北朝鮮の門を開くということのためにやはり全力を尽くしていかなければいけないというふうに思っているところであります。

萩原委員 ありがとうございます。

 そして、民間団体の特定失踪者問題調査会で四百七十名ということでございますけれども、日本政府としては十七名の拉致被害者認定ということでありますが、御家族としては四百七十名から五百名の方がいらっしゃらないというふうに思っておられるわけで、日本政府の十七名と余りにも開きがあるように思うのであります。

 日本政府として、失踪、北朝鮮に拉致されている被害者と違うという大きな基準点というのか、ラインはどこら辺に持たれているんでしょうか。

園田大臣政務官 萩原委員にお答えを申し上げたいと存じます。

 萩原委員御案内のとおり、特定失踪者問題調査会、こちらにおいては四百七十名という形になっているところでございまして、そのうち七十三名は拉致された可能性が高いというふうにされているところでございます。

 一方、日本政府として認定をしているのは十七名という形でございますけれども、この認定の基準といいますか判断基準は、いわば関係省庁等の機関による捜査であるとかあるいは調査、そういったところの結果をもとに、私どもとしてはしっかりと勘案をさせていただいて、そして、北朝鮮当局によって実行された拉致行為の有無、これが一つの判断基準という形にさせていただいているところでございます。

 そしてまた、十七名の方々の事案につきましても、先ほど大臣からもお答えをさせていただいておりますけれども、警察当局などの地道な長年の調査、あらゆるチャンネルを使ってこの調査を進めてきた、情報を収集してきた、その結果に基づいて、拉致容疑事案であるというふうに判断をしたということでございます。

萩原委員 そんな中ですけれども、平成二十二年の十一月に、日本政府として、対策本部長指示の八項目の中の一項目めに「拉致被害者家族等へのきめ細やかな対応」というのがあります。先ほど言いました最初の話でもそうですが、御家族に対してでありますけれども、きめ細やかというのは、具体的にどのような対応をされておられるんでしょうか。

中野国務大臣 まず、お帰りいただいた皆さんへのいろいろな補償の問題ももちろんあります。

 それから、先ほど申し上げましたけれども、これは柳田大臣時代から特に定期化されたと思いますが、御家族の皆さんとは定期的にお会いをし、そして我々が知り得た情報の中で確度の高いもの、そして同時に、御家族の皆さんそれぞれにお伝えしなければいけないこと、そういうことも、平場でということではなくて、むしろ個別にお知らせをする。

 それは、逆に言えば、それらの情報というのは、私どもが間違った発信の仕方をしますと、被害者の皆さんの日常の安全にまたかかわる問題が起こってくるということがあってもいけませんので、これらのことは大変極めて慎重にやらせてはいただいておりますけれども、そういう情報の提供でありますとか、また、いろいろなお気持ちがございますから、これはむしろ定期的に、ソフトな場、また時には公式の場、いろいろな形を通じて交流を図らせていただく、また御意見も聞かせていただく、また最近の心境、近況もお聞かせをいただく、我々がこういうことをやっているということもまたできる限り御報告させていただく、そういうことなど。

 それから、当然のことながら、各地においていろいろな皆さんが、御家族を激励するためにもいろいろな催しをしてくださったり、また我々政府主催のものもあります。そういうことを、まさに一番いけないのは、私はこの運動を風化させることが一番いけないと思いますので、それらのことにも気を用いながら努力をさせていただいているというところでございます。

萩原委員 今のお話と関連するんですが、御家族から月一度大臣とお話し合いをされているというのは今の話のことかと思うのでありますけれども、目に見える形の進展が起こっていないというような状況の中で、いわゆるきめ細やかな対応という形で御家族の方は御納得をされておられるというふうに認識はされておられるでしょうか。

中野国務大臣 これは、私どもがいかに気を用いても、被害者の皆さんが無事にお帰りになるまでは納得されることはないと思います。そのことを我々は踏まえて、せめてものこと、そういう気持ちで、御家族の皆さんと交流を図り、また意見交換をさせていただき、情報交換をさせていただいている。そういう意味で、私は決して納得をされているというふうには思いません。しかし、それを少しでも和らげていただける努力をするのは我々の務めだと思っております。

萩原委員 大臣のお気持ちはよくわかりました。

 これはいろいろな情報をとっていって御家族の方に提供していくということになると思うのでありますが、先ほどもお話が出ておりましたけれども、平成二十二年度から、予算において、倍増して十二億四千万になったと聞いてはおります。

 政府が被害者として認定された方は十七名ですけれども、いらっしゃらないというのが約五百名を超えている。そういうことになってまいりますと、仮に、単純にですが、五百名で十二億円となりますと一人二百四十万とか五十万とか、そんなお金になると思うんですけれども、情報収集を兼ねてさまざまなことをやっていくのに、この予算で果たして足りているんでしょうか。

園田大臣政務官 大変厳しい状況の中でこの予算というものをお認めいただいたということでございましたけれども、それで足りているのかということでございます。

 私どもとしては、必要な予算というものをしっかりとお願いをさせていただく、そして、一刻も早い拉致被害者の方々の御帰国をしっかりと行っていくんだ、そういう強い意思をまずあらわさせていただいたというところでございます。そういった意味では、十分かと言われますと、もっともっとという思いはございますけれども、しかしながら、現行で私どもができ得る限りのことをやることに必要な予算という形で、このような予算組みをさせていただいたところでございます。

 とりわけ、特に情報関係の予算については一億九千五百万円から八億六千四百万円、四倍増という形をさせていただいて、そういった意味においては事務局体制もさらに十名程度増加をさせていただいたというところでございまして、こういった安否情報のことも踏まえて、しっかりと情報収集そして分析という形をとらせていただきたいというふうに思っておるところでございます。

中野国務大臣 あわせまして、特定失踪者の調査につきましては、拉致の担当事務局というだけではなくて、むしろ警察の方で真剣にその捜索に当たってもおりますし、また、数名の方は現実に、この場合は国内で見つかったりということがほとんどでありますけれども、警察の方としても全力で努力をさせていただいていることをつけ加えさせていただきます。

萩原委員 この問題は、本当に日本の国家主権を脅かされているわけでございますし、また重大な誘拐事件であるというふうに思っております。

 二〇〇八年の六月ですか、先ほどもお話がありましたが、北朝鮮が拉致問題の再調査の実施を約束したにもかかわらず、同年の九月に当時の福田総理が辞任を表明した後は、調査の見合わせを一方的に通知してきて、そのまま停止した状態であるということでございます。

 さまざまな圧力を政府としてもかけていっているとは思いますが、この話し合いをすると言って、していないという状況、これはいつまで待つんでしょうか。相手が相手でありますので、ある程度の期間を切って、そこからまた違うアクションを起こしていくべきではないかと思うのでありますけれども、いかがでしょうか。

中野国務大臣 これは外務省と相談しなければならないことでございますが、おっしゃる気持ちは本当によくわかります。よく、この委員会でも、対話と圧力、対話か圧力か、私は昔、予算委員会かどこかで、圧力アンド圧力と発言した記憶がありますけれども。

 今申し上げていることは、私は相手の真剣な対話を引き出すための圧力だと思っておりまして、そういう意味で、現在、制裁措置も講じておりますし、諸外国にも呼びかけております。そしてまた、相手が、どのルートがどういう力関係を持っているのかも含めて、相手もまた選ばないといけないというふうにも思いますので、いろいろな調査、捜査をいたしておりますけれども、今おっしゃられたお気持ちを共有しております。そういう気持ちでこれからも一層その対策を努力していきたいと思います。

萩原委員 ありがとうございます。

 一日でも早く皆さんの帰国がかないますように具体的に措置をとっていただきますことをお願い申し上げまして、質問を終了させていただきます。ありがとうございます。

奥村委員長 次に、古屋圭司君。

古屋(圭)委員 自民党の古屋でございます。

 まず冒頭に、東日本大震災でお亡くなりになられた方に御冥福をお祈り申し上げて、被災された方にお見舞いを申し上げた上で、質問をさせていただきます。

 大臣、四人目ということで、先ほど竹内委員からありましたけれども、一人、官房長官は、仙谷さんはピンチヒッターですから、三人は全部旧民社党ですね。そういう意味で、エースが登場したということで、私はエールをまず送らせていただきたいと思います。

 その上で、質問に入りますが、まず平成二十三年四月一日付で、人権教育・啓発に関する基本計画、これはもう平成十四年にできているんです。もう御存じだと思います。ここで一部変更がございましたね。その変更というのは、十二番という項目をつけて、北朝鮮による拉致問題等ということで、拉致問題の経緯であるとか、国連の動き、そして北朝鮮人権法、平成十八年にできた議員立法ですけれども、こういったところにまで言及をして、なおかつ、拉致問題の解決には、幅広い国民各界各層、国際社会の理解と支持が不可欠である、その関心と認識を深めることが求められる、こういう記述をされたんですね。それを踏まえて、五項目の具体的な項目が並べられた。

 私は、これは率直に言って評価したいと思いますよ。ただ、こうやって記述をするだけであれするのではだめであって、例えば今度の東日本大震災のときに、私が組織対策図を調べると、まだ稼働していない組織が全部で三十六あるんですね。これだけあって、本当に大丈夫かなと。だから、つくるだけでは全く意味がないわけであって、いかにしてこれを実効的に稼働させるかということだというふうに私たちはとらえています。

 そこで、一項目から五項目までのうち、今まで取り組んでいるのもありますけれども、私は、幾つか具体的に指摘をさせていただきながら、大臣の見解を聞きたいと思います。

 これは四月一日に変えたところですので、すぐスタートしているというわけじゃないとは思いますけれども、例えば三番目の、地方公共団体、民間団体と協力しつつ啓発行事を実施する、これは北朝鮮人権法でも、地方公共団体の責務ということで、しっかり国と連携をしながらやると書いています。

 今までやっている以上のことをこれから何か具体的に担当大臣として考えて進めようということなのか、例えば、既に総務大臣とこのことについて相談をされているのか等々についてお伺いしたいと思います。

中野国務大臣 今日までも、都道府県を基本にして、国との共催といいますか主催をして、そのための集会を開いたりしてまいりましたが、これからは大きな都市などもそういう対象として考えていいのではないかと内々相談をしたりしておりました。地方自治体等の御協力をいただき、または共催等で国民の皆さんの理解を深めるための啓発行事、そのようなことについては、でき得る限り取り組んでまいりたいと思います。

 事務方同士やっているかもしれませんが、私がこの段階で総務大臣と直接大臣同士で話をしたということはまだありませんけれども、十分連携をとってやってまいりたいと思います。

古屋(圭)委員 これは四月一日に変えたところで、震災の対策もあったと思いますけれども、しっかり総務大臣と担当大臣がリーダーシップをとって、ぜひ具体的な取り組みをしていただきたいというふうに思います。

 今、地方公共団体でも、厳格な法適用という一環で、例えば朝鮮総連に対して優遇をしているところは相当減ってきましたけれども、では、現実に全部なくなっているかといったら、まだ必ずしもそうではない。やはり、そういうところもきちっと対応していく必要があろうというふうに思います。このことは、拉致問題の本質を地域の住民、要するに、市民、村民、県民に正確に伝えるということにもつながるんですね。だから、ぜひその辺はしっかり対応していただきたいというふうに思います。

 それから二つ目ですけれども、4で「学校教育においては、児童生徒の発達段階等に応じて、拉致問題等に対する理解を深めるための取組を推進する。(文部科学省)」と書いてあるんですね。これが四月一日の閣議決定をされた追加文書の中で入っています。

 そこで、ちょっときょう私が理事会で御了解をいただいて、こういう資料を皆さんにお届けさせていただきました。大臣、これはごらんになっていただけましたか。

 これは、ことしの四月に、今回の夏に採択が行われる中学校の教科書の検定に合格をした本のコピーでございます。代表例として二つ持ってきました。一つは東京書籍、もう一つは育鵬社。全部で七社、検定に合格をいたしました。この東京書籍は、実は採択率、公民は六〇%を前回超えています。だから、これは圧倒的な多数なんですね。

 では、まずここを見てみましょう。右ページの下。拉致問題については、本文では下の方に、日本との関係では拉致問題が残り、北朝鮮との関係はまだ好転していません、この一行だけです。まずこれをごらんになって、それで次のページを見てください。

 育鵬社、これは同じく公民の教科書ですけれども、一枚めくっていただいた表紙のところに横田めぐみさんと横田滋さん御夫妻の写真が載っておりまして、もう一枚めくっていただきますと、具体的に拉致問題のことを書いています。

 右側のちょっと下の方で、このような中で、二〇〇二年九月に北朝鮮の平壌で日朝首脳会議が行われ、拉致を認めた、日本は、拉致の問題が解決しなければ、北朝鮮との国交正常化はあり得ないという立場をとっていると。まさしく政府が言っていることそのものを書いているわけで、脚色しているわけでも何でもありません。もちろん、検定に合格しているわけでありますが、その後にも、北朝鮮は核実験等を実行しているということが書いてあります。

 三ページ目。これは、主権が侵害されることというのはどういうことなのかということを説明しているわけです。この主権侵害ということは、実は平成二十二年十一月二十九日、これは、対策本部長である菅総理が「拉致問題の解決に向けて」ということで指示を出したペーパーですけれども、冒頭に、「我が国に対する主権侵害かつ重大な人権侵害であり、許し難い行為である。」と、「許し難い行為」というところまで入れているんですね。前は、この言葉がなかったんですよ。そこまで入れている。ということは、当然、こういうことを子供たちの中で勉強させるというのは当たり前のことだと思います。

 なおかつ、今私が指摘した、四月一日に閣議決定をして、四番に、学校教育については、児童生徒の発達段階に応じて、拉致問題に対する理解を深めるための取り組みを推進する、こういうことです。もちろん、拉致担当大臣は教科書の問題の担当大臣じゃないということはよく承知をいたしておりますが、政府を挙げて拉致問題に取り組んでいる、なおかつ、教育でしっかりそれを啓蒙させるということを指摘しているわけでありますから、そういうことを考えた場合に、果たしてこの両方を見た場合に、まず、どういう印象を持たれますか。

 これは、政治主導と主張されている民主党さんのことですから、担当が違うからわからないとか、そういう答弁を私は一切聞きたくありませんので、ぜひ率直な気持ちを聞かせていただきたいと思います。

中野国務大臣 予防線を張られてというか、たがをはめられて答弁を求められましたので、少々困りますが、まあ困るわけではないんですが。

 それぞれの教科書について、おっしゃるように、公的に私がコメントするということは多分できないんだろうと思います。ただ、一つ言えますことは、育鵬社、よくここまできちっと書いていただいたなという意味では、拉致担当大臣としては敬意を表したいというふうに思います。

 それから、あわせて、我々としては、政府としてつくりましたアニメ「めぐみ」、それから映画「めぐみ」というのがございまして、アニメ「めぐみ」は二十分ほどのアニメですけれども、横田めぐみさんのことについて描かれたアニメでありますが、これは、都道府県、市町村教育委員会を通じて、全国で、小学校、中学、高校等々の教育現場で、千四百校を超えるところで視聴していただいております。

 また、九十分ほどになります映画「めぐみ」につきましても、約四百校の小中学校、高校などにおいて上映されておりますし、そのほか、学校の先生方の会でも、二千八百校で見ていただいて、教育の参考にしていただいている。

 こういう努力もあわせていたしております。

古屋(圭)委員 今冒頭に、この教科書の記述について、個人的な見解というようなことでしたけれども、やはり拉致担当大臣としては、育鵬社、よく書いてくれた、よく書いてくれたというより、政府が主張していることを当然のように記述をしている。もちろん、こういう教科書が中学校の生徒の皆さんに読まれることによって、国の考え方が正直言って理解できるわけでありまして、何の問題もないと私は思いますし、多分そういう趣旨でおっしゃったんだと私は解釈している。首を縦に振っていただいたので、それで結構でございます。

 特に、この東京書籍の公民の一番下の「日本との関係では拉致問題が残り、北朝鮮との関係は好転していません。」という、こんなしょぼい記述で終わっているだけじゃなくて、上から読んでいくと、線を引きましたけれども、日本が過去に植民地支配を行い、戦争で大きな被害を与え、東アジア等に与えた苦しい痛みを忘れてはいけません、むしろこっちが主題になっていて、後半がもう付録でついているということでありまして、実はこれが六〇%の採択率であったということ自身も極めて問題だと思いますけれども、その辺について改めて、印象で結構ですから、一言大臣の方から。

中野国務大臣 印象と言われましたので、個人的私情になるかもしれませんけれども、先生と共通した心境を持っていることは事実でございます。

古屋(圭)委員 ありがとうございます。なかなか言いづらい中でそこまでおっしゃっていただいたので、ありがたいと思います。

 大臣は、高校の無償化に際して、朝鮮高校に資金を入れるということも、ことしになっても会見等々で、これは反対である、特に採用している朝鮮高校の教科書の記述に問題があるんだということを非常に強調されていました。これも、まさしく同じ視点だと思うんですね。そういったことはしっかりこれからも主張していっていただきたいというふうに私は思いますし、なおかつ、四月一日の閣議決定で文書も変更して、教育を、しっかり拉致問題を理解させようということでありますから、なおさらその取り組みをしていくべきだというふうに思います。

 そこで、実は、我々が拉致対策本部を自民党時代につくったときに、全閣僚を入れていましたね。なぜかというと、今回の例えば四月一日に決定した五項目でも、全省庁関係することで取り組みましょうとか、内閣官房だとか、法務省、総務省、文部科学省、外務省というふうに具体的に全部書いてあるんですね。ということは、これは全閣僚が関係しているということなんです。だから、我々は、どんなことにも対応できるように全閣僚を実は入れたわけでありまして、それが、今度は、本部長が総理で、副本部長が官房長官、担当大臣、それから、四人になっちゃったんですね。

 ただ、確かに、その下に事務局のような形でぶら下がって副大臣等々が入っているという組織になっていることは承知をいたしておりますけれども、これは閣議決定をしてやったんですから、本来なら全大臣が入るべきです。それがかなわないなら、少なくとも、ここで具体的に書いてある、例えば教育問題、これは、教育は実際に国民運動をして、ここにも出ているように、幅広い国民各界各層の理解が必要だというときに重要な要素なんですね。

 だから、例えば文部科学大臣とか、それから、地方公共団体に対する啓蒙ということもはっきりここでも書かれたわけですから、総務大臣とか、これぐらいは対策本部の副本部長に入れるべきだと思います。それは中野大臣のリーダーシップでやるべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

中野国務大臣 近々、ちょっと大震災対策で延びた部分もありますが、まず、全省庁の各副大臣クラスを網羅しました会をやりまして、いろいろな今日までの新しい動きに対応する御相談を申し上げる機会を予定いたしております。これは主催者は私であります。そして、それの延長線上に、去年十一月に第四回をやりましたが、第五回目の対策本部、これは総理が本部長でありますが、そこへつないでいきたい。そして、これも全大臣が入っていることでございます。

 そして、今言われました副本部長に総務大臣を入れるかどうか。これは総理が決めることではありますが、副本部長どころか本部長ぐらいの気持ちで総務大臣にも各大臣にも取り組んでいただけるように、むしろ、どこかの名簿に入っているというよりも心構えの問題だというふうに受けとめさせていただいて、全力を挙げて取り組んでいきたいと思います。

古屋(圭)委員 十一月二十九日の本部長指示の中でも、引き続き本部長、副本部長を中心に連携を密にしてくれと書いてあるんですよ。こういう指示が出ているんだから、だったら、連携を本当に密にしようと思うなら、副大臣で事務方の方によそにぽんといるのではなくて、本当に動く組織、さっき私がちょっと嫌みを込めて、皮肉を込めて言いましたけれども、三十五も組織があって本当に稼働するのかと、そうではなくて、現実に動かそうと思ったら、そうやって実効ある組織をつくって、副本部長の中に、例えばそういう人間を入れていくということが本当の意味での政治主導だというふうに私は思いますし、旧民社党出身のエースが拉致担当大臣になっていただいたので、ぜひそれは取り組んでいただきたいということを私の方から強く要請させていただきたい。

 なお、これについては、まだまだきょうは導入部分だけでございますので、今後、委員会の中でまた質問をさせていただきたいと思います。

 それと、先ほど私は質疑を聞いておりまして、ふっと思ったことがありまして、対話と圧力という言葉が、残念ながら新しい政権の中ではこの言葉が文書の中から外れていますね。

 ただ、今までの経験からして、先ほども大臣の答弁、私、過去のも見ました、確かに、圧力、圧力、徹底した圧力が必要なんだ、それで初めて北朝鮮というのは少し動くんだというような趣旨で答弁されていた。私は質問の議事録を見ましたので、全く同感であります。歴史的にも、圧力を強くかける、少しずつ小出しにするということであります。

 アメリカのブッシュ政権の末期、一番最後に、テロ支援国家指定を強引に解除しましたね。あのときの担当の事務方というか、責任者はヒル国務次官補でした。このヒル国務次官補は、今デンバー大学の教授をやっていますけれども、デンバー大学で講演をしたとき、何とこう言い放ったんですね。あのときテロ支援国家指定解除したのは失敗だったと、はっきり言っているんですよ。

 ということは、やはり圧力を加えることによって初めて少しずつでも動き出す、つらいけれども、この確かな決断というのは間違っていないというふうに思いますけれども、ぜひ、そのことについて大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

中野国務大臣 これは、まさに我々日本国政府、国会の決意をいかにあらわすかという問題だと思いますし、また、そのことによって国民の皆さんの意識も大変高められる、また、国民の皆さんの叱咤激励によって我々自身もより緊張感と積極性を持って努力をしていくという関係だと思います。

 圧力の問題は、まさにこういう情報操作と駆け引きとが入り乱れるような極めて困難な折衝事であります。よって、これは基本的に、私は先ほど、真剣な前向きの姿勢を持った対話を引き出すための方法論の一つが圧力だと申しましたけれども、一方、具体的にいろいろな対策を考えていくときに、今日までも、こういうことをやればこういう規制の緩和をする、こういうことをやればという段階を追って交渉するみたいなことも、過去、これは自民党さんの政権のときですけれども、そういうこともいろいろテクニックとしてあったと思います。そういうテクニックも否定はいたしません。ただ、慎重に、相手はより一層したたかだという前提で、警戒感を持って我々はそれらの対応をしていくということは大事だろうというふうに思います。

 ヒル教授がおっしゃったことについては、当時、あの指定解除のときに大変悔しい思いをしたときのことを思い出しております。

古屋(圭)委員 大臣、今、そういう大臣の立場ということがあってちょっと歯切れが悪い答弁ですけれども、我々は、やみくもに圧力をかけることで解決するとは一切言っていないんですよ。その手段としては、やはり圧力をかけることによって初めて対話の糸口が見つけられるということなんです。この基本方針は絶対譲るべきではないんですよ。

 そのためにも、きょうは教育問題等々あるいは地方公共団体の責務等についても言及しましたけれども、あくまでも、国民のそういった考え、拉致問題に対する理解、支持、こういったものが結果として大きなマグマになっていくことによってあの金正日にプレッシャーをかけることになるわけですから、これもある意味での圧力なんですよ。

 ぜひ、そういう姿勢に立って、エースが登場されたわけですから、担当大臣頑張っていただきたいということで、今回はこの程度にさせていただきたいというふうに思います。

 以上です。

奥村委員長 次に、竹本直一君。

竹本委員 皆さん、おはようございます。自民党シャドーキャビネットで拉致問題を担当いたしております衆議院議員の竹本直一でございます。

 このたび、同僚の古屋先生の御配慮によりまして、所属委員会ではございませんけれども、質問の場を設けさせていただきました。ありがとうございます。

 さて、お話にも出ておりましたけれども、民主党に政権がかわりまして一年半が過ぎようとしております。しかしながら、拉致問題担当の大臣の人数がこれで四人目になっているわけであります。鳩山内閣、菅内閣の中井大臣、菅第一次改造内閣の柳田大臣、同じく仙谷大臣、そして菅第二次改造内閣の中野現大臣と、どんどんかわっておられます。私が昨年の秋に、自民党のシャドーキャビネットというのをつくっているんですが、そこの拉致問題担当大臣の職を拝命してからでも、中野大臣で三人目、こういうことであります。私が危惧いたしますのは、これほどころころと拉致問題担当大臣が交代することは、拉致問題解決のために、マイナスにはなってもプラスにはならないんじゃないか、そういう思いをいたします。

 拉致被害者家族の皆様の高齢化はどんどん進んでおりまして、先日もお会いをさせていただきましたけれども、しばらくお会いしないうちに、やはり随分お年を召されたなと思う次第であります。一刻も早い拉致問題の解決が必要であります。

 先ほど大臣所信を拝聴させていただきましたところですけれども、いま一度、中野大臣のこの拉致問題にかける決意をお聞かせいただきたいと思います。

中野国務大臣 先ほども申し上げましたが、担当大臣がころころかわるというのは決して好ましいことではないのは、これはもう当然だと思います。そのことを、私も指名されましたときに、まず意識いたしましたので、当初の記者会見、また家族会の皆さんとお会いをいたしましたときにも、私は任命権者ではないけれども、政府の一員として、そのことについてはまずおわびを申し上げたいというふうに申し上げました。

 そして、あわせまして、ただこれは、日本が国家として、国として、そして政府が率先して責任を持ってやらなければいけないテーマでありますから、政権は何党の政権であろうと、だれが総理であろうと、だれが担当大臣であろうと、終始一貫変わらない姿勢で北朝鮮に対して臨んでいき、まずは御家族の皆さんとのきずなを深めていく、これはもう当然のことだと思いますので、私自身もしっかりとそのことを腹を据えて頑張っていきたいというふうに申し上げ、御理解をいただいたことでございまして、全力を挙げて取り組んでまいりたいと思います。

竹本委員 どうもありがとうございます。

 拉致問題は、おっしゃるように、安全保障のような、国家の主権にかかわる問題ですよね。ですから、これは政権が交代しようが、方針をころころ変更したのでは、相手が軽く見てきます。ですから、絶対そういうことをやってはならないわけであります。

 そういう観点から、一つ提案をさせていただきたいんですけれども、大臣、今後、連立とかではなく、定期的に拉致問題に関する意見交換の場を別途設けていただけないか、こんな感じをいたしております。

 民主党には、松原さんや長島さんのような拉致問題に非常に詳しい方がおられますし、我が方も、古屋先生や山谷先生、いろいろおられます。そして、今おっしゃったように、ともに目指すターゲットは同じでございます。しかも、対外的に一つの方針を狂わずに出し続けなきゃいけない、こういう責務を負っているわけでございます。

 ですから、ぜひ意見交換の場をつくって、そして一体となって、相手に対して、先ほどの大臣のお言葉じゃないけれども、プレッシャー、プレッシャー、そのプレッシャーは対話を引き出すようなプレッシャー、まさにそうであります。その一つの手段といいますか、場を設けるのも一つのいい方法じゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

中野国務大臣 まず、私のカウンターパートということで、敬意を表したいと思います。

 各政党にも、そして超党派でもこの議連が存在をするわけでありまして、各党それぞれ熱心にお取り組みいただいているというふうに思います。また、それぞれの御担当の方にお会いいたしたときも、私からも、ぜひともにということで、よろしくというごあいさつもしてきたところでございます。

 どのような形がいいのかわかりませんが、また、先ほど来申し上げておりますように、大変微妙な、機微に触れる問題等もありますから、公式に速記録をとって議論をするときと、また非公式のときの会話とはそれぞれレベルも違うということもあろうかと思います。むしろ、与野党で議論をする場としてこの委員会もあるわけでありますから、竹本先生の御提案は、奥村委員長を中心にして、また理事会等で御相談をしていただいて、どういう会話の場がいいか、それは公式、非公式、いろいろ工夫をする余地はあると思いますし、私は、そういうお申し入れがあれば、できるだけまたお話をさせていただきたいというふうに思っております。

竹本委員 ぜひひとつよろしくお願いします。

 さて、四月十九日ですが、アメリカのオバマ大統領は、対北朝鮮制裁に関する新たな大統領令を発効いたしました。これは、二〇〇八年と二〇一〇年に発効されました大統領令一三四六六と一三五五一の完全履行に向けた追加的措置をとるということでありますが、国連安全保障理事会の対北朝鮮決議一七一八及び一八七四を確認すると同時に、武器輸出管理法に規定した輸入禁止措置を補完するものだと考えられております。

 この大統領令によりまして、北朝鮮の商品、サービス、技術などは、直接、間接を問わず、アメリカへの輸入が禁止されると同時に、アメリカ国内で、アメリカ国民がこの大統領令に違反したり、違反しようと試みることさえ禁止されておりまして、これに反するときには制裁が与えられることになりました。非常に厳しい対応をとっております。

 今回の制裁の背景には、昨年の韓国・延坪島砲撃やウラン濃縮活動の公表など、いろいろ挑発的な行為がありましたけれども、こういった繰り返しの行為に対して厳しく対応しなきゃならないというアメリカ側の姿勢だというふうに思っております。

 一方、我が国はどうかといいますと、二〇〇六年のミサイル発射や核実験を受けて発動され、二〇〇九年に輸出禁止まで追加いたしました対北朝鮮経済制裁をことしの四月五日に一年間延長いたしました。しかし、昨年の北朝鮮のさらなるいろいろな挑発行為を考えますと、単純な一年延長ではなく、もう少し厳しいものにするのがいいのではないか、こう思います。

 例えば、北朝鮮への送金時に届け出が必要な金額をさらに引き下げる、それから、企業や個人に対する新たな資産凍結をやる、さらに、第三国を経由し、日本と北朝鮮の間で行われる金融取引への厳しい監視、こういった制裁措置を追加して実行するべきではなかったか、やるべきではなかったか、このように思うんですが、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。

中野国務大臣 私は、今回アメリカがとられた措置は歓迎したいというふうに思っております。日本だけが制裁措置を講じましてもなかなか実効が及ばない、むしろいろいろな国々が御協力をいただく、また共同で行動するということは大変必要なことでありまして、そういう意味では歓迎をしたいというふうに思います。

 と同時に、あわせて、私は、ここの五十数年間といいますか、戦後のいろいろな過程の中で、対北朝鮮対策について、日米韓三国は、本来は常に歩調を合わせなければいけない国だと思いますが、しかし、それぞれのお国柄の違いや、またそれぞれの国益の問題等を考え合わせて、実は割とその三カ国の足並みがぴたっとそろった期間というのはそう多くないんですね、ちょっと私的感覚で恐縮ですが。むしろ、今はぴったり三カ国の歩調が一番合っているときだと思います。

 こういうときをチャンスとして、また北朝鮮のいろいろな国内の動きもチャンスとして、何らかの進展が図られるようにというふうに私どもとしては考えるところでありますので、先生からいろいろおっしゃられた御指摘の件は、検討をしたいと思います。

 一つだけ、きょう、この後の本会議で採決をしていただきます、御賛同いただけると思いますが、私も警察の担当で、犯罪収益移転防止法、これがかかります。これもマネーロンダリングに関する法律でございまして、北朝鮮への送金等監視についても幾らかの効果があるのではないかというふうに思います。

 いろいろなことを総合的に考えていきたいと思います。

竹本委員 いろいろなルートで聞くところによりますと、北朝鮮もこういった経済制裁で相当困っているという。そういう意味では、プレッシャーはよくきいているのではないかと思いますが、さらなるプレッシャーをかける必要があるんだと思いますから、ひとつよろしくお願いします。

 拉致問題の解決には、日米同盟を基軸といたしました日米韓の、今大臣がおっしゃった連携強化が非常に重要であります。

 しかし一方で、政権交代以後の鳩山前総理の外交ストラテジーの問題、これが、我々考えるに、極めてまずかったのではないかと思っておりますが、基地問題の混乱、それによって日米同盟の根底が揺らいだ時期がございました。

 昨年五月、アメリカの上院議員団との会談のため、実は、私は毎年ワシントンへ五月ごろ行って、そして上下両院議員団と数日間お話をするんですけれども、そのときに会いました議員が、ほとんど口をそろえて、日米同盟の脆弱化への心配や、民主党政権が信用できない、交渉窓口がわからないなどと言うほどでした。

 これは大変なことになるんじゃないかと非常に心配しておりましたけれども、案の定、尖閣諸島沖での漁船衝突事件が起こりました。この事件が、日米同盟の脆弱化によって起こった事件であることは容易に想像ができるわけであります。日米同盟の脆弱化は、北朝鮮から足元を見られ、拉致問題解決の長期化という結果をもたらす可能性があります。

 ぜひ中野大臣にお願いいたしたいのは、日米同盟を基軸とした日米韓の連携強化を怠らないでいただきたいということです。日米韓の連携強化に関しまして、中野大臣、今おっしゃいましたけれども、この三者一体の取り組みについて、もう一度お考えを聞かせていただきたいと思います。

中野国務大臣 外交というのは、それぞれ国益を考えながら交渉をいたします。友好国でも、時に国益、利害が交錯いたしますと、ぶつかり合うこともあります。

 ただ、基本的に、日本の国益そして日本の国権をしっかり守っていく、安全を守っていく、そのための最大の、また最強の同盟国はアメリカであることは間違いがないと思いますし、また、いろいろな価値観を共有しながら、長い歴史を踏まえて、友好国であり、また兄弟とも言えるほどの連携を保ってきた韓国、これは、当然ながら、我々にとっては必要不可欠の関係であると思います。

 貿易問題にしても、日本で部品をつくって、その部品を輸入して組み立てて韓国が輸出するという、この基本的な貿易の形というのはまだほとんど壊れていないと言ってもいいと思います。

 そのくらいに経済的な利害も一致する、そういう国柄でもありますから、それらも含めて、日米韓の連携というのはより一層緊密にこれからも図ってまいりたいというふうに思います。

菊田大臣政務官 竹本議員から大変重要な御指摘をいただきました。日米韓の連携強化についてでございますが、これは、言うまでもなく、今後もしっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

 今週の十七日、日曜日でありますけれども、先生も御案内のとおり、クリントン国務長官が訪日をしていただきました。その際にも、近いうちに松本大臣が訪米されたときに、ぜひ時間をいただいて、拉致問題についてしっかりと協議をさせていただきたいということを申し伝えたところでございますし、クリントン長官の方からは、日本の拉致問題における立場を強く支持するというお話をいただいているところでございます。

 また、韓国についてでございますが、三月にも日韓外相会談を行わせていただきましたけれども、北朝鮮の問題について、日韓米の緊密な連携が極めて重要であるという認識を両外相ともに共有をさせていただいたところでございます。

 大臣だけでなく、副大臣そして私たち政務官も、さまざまな会合で、アメリカあるいは韓国の政府要人とお会いをいたします。この際には、北朝鮮の問題について、これまで以上に情報を交換しながら、お互いに腹合わせをしていこうということを常々申し上げさせていただいているところでございまして、今のところ、日米そしてまた日韓の間にはいろいろな問題がありますけれども、北朝鮮の問題については、非常に率直な意見交換、情報交換ができているというふうに思っております。

竹本委員 松本大臣が訪米される場合に、当然、北朝鮮の問題について我々がどれほど苦しんでいるかということをお訴えしていただくと同時に、今回、東北災害であれだけの援助、アメリカは心からの援助をやってくれました。当然、深くお礼を申し上げていただきたいと思います。

 さて、北朝鮮は、現在、金正日体制から金正恩体制へと権力の移行が行われております。金正日体制からの移行は、拉致問題解決のための大きなターニングポイント、チャンスだと考えることもできると思います。指導者がかわるわけですから、新しい考え方のもとでいろいろと体制の整備が行われると思うからであります。ぜひ、この機会を逃さないでいただきたいと思います。

 拉致問題担当大臣の中野先生は、指導者の移行が拉致問題に与える影響についてどのように感じておられますか。個人的な感覚でも結構でございますが、お話しいただければと思います。

中野国務大臣 私は、民主国家は、人がかわってもお互いの議論の上で一つの方針を決めていきますし、リーダーシップという表現をとられます。ただ、独裁国家というのは、そのトップの意向、または、もしそのトップが特定の人の影響を受けているとすればその人の意向みたいな、極めて限られた人の意向によってその国家の意思が決められてしまうというところがあると思います。

 北朝鮮の権力移行がどのように行われるのか、それはまだまだ分析し、これからも見守っていかないといけないと思いますし、それは外務省を中心にやっていただくわけでありますが、私としては、いかなる変化であろうと拉致問題に少しでもプラスになることがあれば、それを活用したいという気持ちで常に注目をしているということであります。

菊田大臣政務官 御指摘のとおり、北朝鮮では、金正日国防委員長の三男とされる金正恩氏への権力の継承が進められているとされておりますが、そのような動向も含めまして、北朝鮮内部でどのようなことが起こり得るのか、情勢を引き続き注視してまいりたいというふうに思っております。

 これらの動きが内外の政策に果たしてどんな影響を及ぼすのかを含めて、現在、関連の情報の収集に努めているところでございますし、また、情報はいろいろあるんですけれども、それが果たして真実なのかどうなのかということもありますので、極めて慎重に分析、検討いたしているところでございます。

 さらに、来年は、亡き金日成国家主席の生誕百周年、そして金正日国防委員長は七十歳になるということでありますから、北朝鮮にとっては極めて重要な節目の年になるであろうというふうに思います。何らかの動きが出てくることも十分に予想ができるわけでございます。

 他方で、拉致問題に関しましては、北朝鮮内部の状況にかかわらず、我が国としての基本的な姿勢、基本的な立場はころころ変えてはならないというふうに思っておりますので、これまで積み上げてきました日本、韓国、米国との合意、そしてまた日朝間の交渉の経緯や合意というものに基づいて、一刻も早く解決するために努力をしてまいりたいと存じます。

竹本委員 最後になりますけれども、私は現在野党でございますので、拉致問題解決のためにできることで一番重要と考えているのが、拉致被害者全員の帰国のための国民運動です。これを何とか盛り上げていきたいなというふうに思っております。もちろん、政府におかれましてもそういうおつもりは当然おありだと思いますので、ぜひいろいろな知恵を絞ってこれをやっていきたい、このように思っております。

 北朝鮮は常に日本の動静をじっと見ております。ですから、我々が声を上げれば、何人集まったか、どういうことを言ったか、全部向こうに伝わっているわけであります。日本が怒り狂っているということが向こうに伝われば、しかるべき対応を考え直すのではないか。特に、先ほど申し上げましたように、アメリカ及び日本の経済制裁で相当困っているという話も聞きます。ならば、生きるためにはどうすればいいかということで、今までやってきたことを変えることも十分あり得るのではないか。

 大々的な国民運動、現在は東日本大災害で大変ですけれども、その報道ばかりでありますけれども、やはり忘れてならないのはこの拉致問題であります。この国民運動にしっかりと力を注いでいきたいと思っておりますので、その決意を述べまして、私の質問をこれで終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

奥村委員長 次に、中島隆利君。

中島(隆)委員 社会民主党の中島隆利でございます。

 昨年十一月に北朝鮮が韓国の延坪島を砲撃しました。武力行使をもって主権国家を脅かし、なおかつ民間人にも攻撃を加えたことは許しがたい暴挙だと言わなければなりません。しかし、このことをもって、朝鮮学校への高校無償化適用の審査手続を中断させ、あるいは支援金の支給がないまま新年度を迎えたことは大変大きな問題だと思います。

 文科省は、朝鮮学校への支援金支給の審査基準として、教育には外交上の配慮はしないとしていたはずです。また、手続中断の理由として、枝野官房長官が、不測の事態に備える、我が国の国民の生命財産を守ると国会で答弁していたようでありますが、不測の事態の備えがいつまで続くのかさえはっきりいたしません。

 この際、延坪島への砲撃を厳しく批判しつつ、国内の朝鮮学校への高校無償化手続については、外交上の配慮はしないという当初方針に沿って、速やかに再開すべきではないかというふうに考えておりますが、この点について拉致担当大臣の御意見を聞かせていただきたいと思います。

中野国務大臣 朝鮮学校の無償化に関する問題につきましては、昨年十一月の、今おっしゃられました韓国・延坪島に対する砲撃事件を受け、現在、文部科学省における適用審査が停止されていると承知をいたしております。最終的には、文部科学大臣が、総理を初め関係閣僚と相談しつつ、諸般の情勢を総合的に勘案して、適切に判断するものと考えております。ここまでは一つのシステムの話であります。

 私はこれについては所管外ということになるわけでありますが、私の感想を求められましたので、お答えを申し上げます。

 拉致問題を担当する私といたしましては、重大な主権侵害であり、かつ、人権侵害である拉致問題も理由として、我が国が北朝鮮に制裁を行っていることや、拉致被害者御家族の心情や国民世論についても十分な配慮が必要であると考え、折に触れてそういう発言をしてまいりました。

 また、今御質問の中にございました、枝野官房長官が不測の事態に備えてと言われた発言につきましても、きょうは増元事務局長がお見えでありますが、私は家族会の皆さんとお話をいたしましたときにも、既にこの拉致問題自体が不測の事態なんだ、不測の事態が既に起こっているのだということを御指摘になり、私も全く共鳴をいたしました。そういう視点で、やはりこれからより一層強い姿勢で日本政府としては臨んでいかなければならないということも指摘をしたところであります。

 また一方で、朝鮮学校の教材に、日本当局が拉致問題を極大化しているといった記述や、大韓航空機爆破事件について韓国当局のでっち上げであるといった日本政府の見解と異なる記述が含まれている点についても問題視いたしております。むしろ、これは外交上の問題ではないと思います。

 また、就学支援金が制度の趣旨に反して用いられることがないかを確認する方法についても十分な措置を講じる必要があるというふうに考えておりまして、これらのことを踏まえて今日までいろいろな意見を申し上げてまいったところであります。

中島(隆)委員 拉致問題については、今大臣が申されましたように、人権侵害であり、絶対許せない行為でありますし、この問題については追及をしていかなければならないと我々も思っております。

 しかし、朝鮮学校につきましては、韓国籍を得た生徒さんが五三%以上おられますし、教育差別があってはならないというふうに思っております。文科省も教育の機会均等あるいは教育の国際化が教育の方針でありまして、特に、国連人種差別撤廃委員会でも、朝鮮学校の排除については再三にわたって人種差別との懸念が表明されています。やはりこういう発言についても我々は関心を寄せながら、早期の問題解決に努力をすべきではないかというふうに思っております。

 そういう意見を申し上げて、この項は終わりたいと思います。

 昨年十一月に、拉致問題の解決に向け、八項目の対処方針が決定をされました。八項目の対処方針の中には、平成二十年八月の日朝合意、すなわち拉致問題の解決に向けた全面的な調査のやり直しについて、北朝鮮が具体的な行動をとるよう強く要求しているという項目であります。

 この点につきまして、現状どのような状態になっているのか、そして、今後この要求をどのように実現しようと考えておられるのか、答弁をお願いいたします。

菊田大臣政務官 御指摘のとおり、二〇〇八年八月の日朝協議におきまして、北朝鮮側が権限が与えられた調査委員会を設置して、拉致問題の調査のやり直しを開始するということが合意されたわけでありますけれども、北朝鮮側はこの合意をいまだに実施しておりません。

 我々は、北朝鮮側にボールがあるという認識でございます。我が国としては、北朝鮮によるこの調査のやり直しが一日も早く開始をされ、生存者の帰国につながるような成果が早期に得られるよう、引き続き北朝鮮側に強く求めてまいる考えでございます。

 また同時に、拉致問題を含む北朝鮮をめぐるさまざまな懸案の一日も早い解決に向けて、具体的行動を北朝鮮から引き出すべく、引き続き努力をしてまいる所存でございます。

中島(隆)委員 ことしの年頭、一月四日に前原前外務大臣が、六カ国協議や多国間協議の場だけでなく、日朝間で、拉致、核、ミサイル問題で話し合いができるような状況をつくり出すことが大事だと発言をされております。

 先ほど村上議員からも質問がこの点でありましたが、これに対して、北朝鮮側が前原大臣の発言を評価する論評をしております。六カ国協議という場は非常に大切であり、これと無関係ということではないでしょう。それから、日朝の二国間で協議が行われるような条件を整備することは非常に大切だと私も考えております。

 そこで、前原大臣はすべての大臣の職を退いておられますが、政府としては、この前原大臣の発言をどのように評価されているのか、あるいは前原発言を具体化していくためにどのような努力を今後されようとお考えか、お尋ねいたします。

菊田大臣政務官 北朝鮮との関係につきましては、繰り返しになりますけれども、日朝平壌宣言にのっとって、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決して、そして不幸な過去を清算した上で国交正常化を実現するという基本方針は変わっておりません。

 北朝鮮との対話につきましては、我が国としてこれを拒むつもりはございません。扉をいつでもあけていくというスタンスでございますが、しかし、北朝鮮が本当に前向きで、しかも誠意ある対応を見せることが大前提でございます。日本、米国、韓国、日米韓で緊密に連携をしつつ、我が方としてもしっかりと対応する用意があるというのが従来からの立場でございます。

 それから、これも繰り返しになりますが、二〇〇八年八月の日朝実務者協議の合意を北朝鮮が実施することが重要でありまして、これを拉致問題の足がかりとして考えていきたい。その上で、具体的にどのような形で議論を進めていくかについては、柔軟に考える姿勢でございます。

中島(隆)委員 時間が参りましたのでこれで質問を終わりますが、先ほど来、それぞれ委員からの質問の中で大臣も答弁されました。今ほど、日米韓三国の関係も非常に連携がよくなり、この機をとらえながら解決に努力をしたいという答弁がございました。

 特に拉致問題の解決では、この委員会では圧力、対話というのがよく議論をされますが、大臣も言われました、対話を引き出すために圧力ということで答弁をされています。最終的には、拉致問題の解決は、やはり二国間の対話の場をどうつくるかが非常に問われているわけでありまして、この対話の努力をどうつくるか、これも一つぜひ力を入れて取り組んでいただきたいということを要望して、私の質問を終わりたいと思います。

奥村委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 まず、北朝鮮に対する政府の基本認識にかかわって伺いたいんですけれども、外務省に伺います。

 最近の北朝鮮をめぐる動きとして、さきの参議院の拉致問題の特別委員会では、松本外務大臣が、本年に入ってからは韓国と北朝鮮の間で対話に向けた動きが見られたが、二月に行われた南北軍事実務会談は合意に至らず終了したというふうに述べております。

 そこで、外務省に伺いますが、この間の南北関係の動きについて政府としてどのように見ているか、改めて確認をしたいと思います。

石兼政府参考人 最近の南北対話の動きについて御答弁申し上げます。

 御案内のとおり、昨年は、三月の天安号事件、それから、十一月の延坪島砲撃事件等で南北間で非常に緊張が走った時期でございました。明けましてことしになりまして、北朝鮮の方から若干対話を求める姿勢を出してきたというのは事実でございます。

 先ほど先生から御指摘ございましたように、二月の南北の軍事実務会談というのは、特段の合意を見ることなく終了したわけですが、それに続いて、今度は、三月及び四月に、全然別件ではございますが、白頭山の火山に関する南北間の実務者協議が行われております。

 こういうことでございますので、対話に向けた姿勢というものはございます。ただ、具体的な進展というものはございませんし、この南北の対話にいたしましても、あるいは、その後に続くであろう六者にいたしましても、対話のための対話ということではなく、きちんと対話を通じて関係が改善し、かつ非核化に向けた具体的な行動がとられるということが重要でございますので、そういう視点を踏まえながら南北関係の推移を見守っていきたい、このように考えております。

笠井委員 この間の南北関係に加えて、今若干ありましたが、六カ国協議についても、松本大臣は当委員会のあいさつの中で、北朝鮮は対話を求めているが、六者会合は対話のための対話とすべきではなく、その再開のためには、まず北朝鮮が、非核化を初めとする六者会合共同声明におけるみずからの約束を完全に実施する意思があることを、具体的な行動によって示さなければならないというふうに表明をしておられます。

 六カ国協議をめぐる現在の状況について、外務省の認識を伺いたいんですが、どうですか。

石兼政府参考人 六カ国協議をめぐる現在の状況でございます。

 六者協議につきましては、二〇〇八年の十二月以降開催されておりません。今委員御指摘のとおり、対話のための対話であってはならず、その具体的行動によって北朝鮮がみずからの約束を実行する意思を示す必要がある、これは我々の基本的な考え方でございます。

 他方で、先ほども申し上げました、天安の事件、あるいは延坪島の事件等ございました。ですから、まず、そういう中で傷ついた、朝鮮半島における平和な情勢あるいは南北間の関係をかんがみますと、まずは南北間で対話が行われるべきであるというのが日米韓の一致した姿勢でございます。ただ、現時点では、北朝鮮は具体的な行動をとっておりませんので、六者会合を再開できる状況にはない、このように考えております。

 いずれにいたしましても、米韓と緊密に連携をいたしながら、中国を初めとする関係国とも意思疎通をして、北朝鮮に対して具体的な行動を求めていきたい、このように考えております。

笠井委員 六カ国協議で中国側首席代表を務める武大偉朝鮮半島問題特別代表は、十日前の四月十一日に、六カ国協議再開に向けた段階的な対話プランを提示いたしました。その内容は、第一段階として六カ国協議の南北首席代表による会合、二番目に米朝協議、これらを経て、三番目に六カ国協議を再開するというものでありますが、この対話プランについてはどのように見ているんでしょうか。

石兼政府参考人 対話プランについての御質問でございました。

 先ほど来申し上げておりますように、昨年の天安の事件あるいは延坪島の事件、こういうものを踏まえまして、日米韓としては、南北がまずはきちんと行われるべきである、これが一致した認識でございます。

 それで、今御指摘のありました武大偉さんの会見等々に係る報道につきましては、北朝鮮の対話が、まず南北間で行われるということを想定しているのであれば、そういう意味におきましては、段取りという観点からは、私ども、今申し上げた日米韓の立場と一致しているというふうに思います。

 ただ、重要なことは、段取り、プロセスも重要ですが、そういうものを通じて北朝鮮が具体的な行動をとるということでございますので、我が国といたしましては、引き続き米韓と連携して、また中国と意思疎通しながら、具体的行動を求めていきたい、このように考えております。

笠井委員 去る四月十六日にソウルで行われた韓国の金星煥外交通商相とクリントン米国務長官との米韓外相会談においては、両外相が、六カ国協議の再開には南北対話が優先されなければならず、北朝鮮が非核化の意思を行動で示す必要があるとの考えを再確認したということであります。このことは同時に、まず何よりも、北朝鮮が非核化に向けた具体的な行動を示してこそ六カ国協議の再開が可能だという立場を両国が明確に表明したものだというふうに思うんですが、先ほど来、政府の立場もそういうことで言われているんですが、この米韓の会談で確認された中身についての外務省の評価を伺いたいと思います。

石兼政府参考人 せんだって開催されました米韓外相会談についての御質問でございます。

 十六日に、韓国において米韓外相会談が開催されました。双方は、まず第一点目といたしまして、六者会合再開には非核化に関する南北対話が必要である、二点目に、北朝鮮が非核化に対する真正な意思を行動により示すことが必要である、三点目として、北朝鮮のウラン濃縮問題が安保理決議及び二〇〇五年九月十九日の六者会合共同声明に違反し、これに対し国際社会が断固として対応すべきとの点で合意したということでございます。さらに、四点目といたしまして、北朝鮮が行った挑発的行動に対して責任ある態度を示すことを求めたというふうに承知しております。

 いずれにいたしましても、こうした南北間での対話をまず行って、その上で北朝鮮のしっかりとした非核化に向けた行動を求めていくという観点からは、従来の日米韓の考え方、もちろん日本政府の考え方とも一致したものであるというのは先生御指摘のとおりでございます。

笠井委員 最後に、中野大臣に伺います。

 拉致問題をめぐって、北朝鮮は、二〇〇八年八月の日朝協議で合意した、拉致問題の解決に向けた全面的な調査のやり直しをいまだに実施していない状況にある。先ほども中島委員からその指摘があって、外務省の菊田政務官は、北にボールだ、一日も早く成果が出るように求めていく、それがさらに諸懸案解決にというお話がありましたが、この事態打開のために、担当大臣としてどのように取り組んでいかれるか、伺いたいと思います。

中野国務大臣 おっしゃるとおりに、二〇〇八年八月以降進展がないというのは、まことに憤りにたえませんし、いら立たしい思いをいたしております。一方的に向こうの方が、福田総理の辞任表明を受けて、打ち切りみたいなことを言っている。こんな言いがかりをつけてきているわけでありますから、これはまさに言いがかり以外の何物でもないわけであります。

 我々としては、いっときも早く北朝鮮がその合意、約束を守る具体的な行動を起こしてもらわなければいけません。そのために、我々は、制裁措置も講じ、いろいろな方途も講じ、国際会議での主張もし、そしてまた日米韓協力もしているわけでございますので、これらのことをより一層我々としては強めていく以外にない。

 そしてまた、国民の皆さんとともに、北朝鮮に対してより一層のプレッシャーをかけていくというこの決意を改めて示し、それを具体的行動であらわしていく以外にないと思っております。

笠井委員 日朝間の諸懸案を解決するには、日朝平壌宣言の履行と六カ国協議の枠組みを通じた諸懸案の解決を図ることであって、そのためにさまざまな努力をするということでありますが、そのためにも、政府が主体的な外交戦略をしっかり持って臨むことが大事だと思っております。そのことを強調して、質問を終わります。

奥村委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時一分散会


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