衆議院

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第4号 平成24年6月1日(金曜日)

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平成二十四年六月一日(金曜日)

    午前九時三十二分開議

 出席委員

   委員長 中津川博郷君

   理事 黒岩 宇洋君 理事 後藤 祐一君

   理事 柴橋 正直君 理事 谷田川 元君

   理事 山花 郁夫君 理事 江藤  拓君

   理事 古屋 圭司君 理事 竹内  譲君

      小野塚勝俊君    小原  舞君

      大谷  啓君    櫛渕 万里君

      楠田 大蔵君    高野  守君

      長尾  敬君    野木  実君

      向山 好一君    森山 浩行君

      小里 泰弘君    北村 誠吾君

      坂本 哲志君    高木  毅君

      吉野 正芳君    笠井  亮君

      渡辺 義彦君    中島 隆利君

    …………………………………

   政府参考人

   (内閣官房拉致問題対策本部事務局内閣審議官)   木村 茂樹君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    西村 泰彦君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  高宅  茂君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 新美  潤君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 高岡 正人君

   政府参考人

   (財務省関税局長)    柴生田敦夫君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           尾崎 春樹君

   参考人

   (北朝鮮による拉致被害者家族連絡会代表)     飯塚 繁雄君

   参考人

   (北朝鮮による拉致被害者家族連絡会事務局長)   増元 照明君

   参考人

   (北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会会長)        西岡  力君

   参考人

   (特定失踪者問題調査会代表)           荒木 和博君

   参考人

   (福井県立大学教授(北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会副会長))         島田 洋一君

   参考人

   (特定失踪者拉致認定訴訟原告代表)        竹下 珠路君

   衆議院調査局北朝鮮による拉致問題等に関する特別調査室長          綱井 幸裕君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月一日

 辞任         補欠選任

  中野 寛成君     森山 浩行君

  村上 史好君     大谷  啓君

  高木  毅君     吉野 正芳君

同日

 辞任         補欠選任

  大谷  啓君     村上 史好君

  森山 浩行君     小原  舞君

  吉野 正芳君     高木  毅君

同日

 辞任         補欠選任

  小原  舞君     中野 寛成君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 北朝鮮による拉致問題等に関する件


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     ――――◇―――――

中津川委員長 これより会議を開きます。

 北朝鮮による拉致問題等に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房拉致問題対策本部事務局内閣審議官木村茂樹君、警察庁警備局長西村泰彦君、法務省入国管理局長高宅茂君、外務省大臣官房参事官新美潤君、財務省大臣官房審議官高岡正人君、財務省関税局長柴生田敦夫君及び文部科学省大臣官房審議官尾崎春樹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中津川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

中津川委員長 本日は、参考人として、北朝鮮による拉致被害者家族連絡会代表飯塚繁雄君、北朝鮮による拉致被害者家族連絡会事務局長増元照明君、北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会会長西岡力君、特定失踪者問題調査会代表荒木和博君、福井県立大学教授・北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会副会長島田洋一君及び特定失踪者拉致認定訴訟原告代表竹下珠路君、以上六名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、飯塚参考人、増元参考人、西岡参考人、荒木参考人、島田参考人、竹下参考人の順に、お一人五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 御発言は着席のままで結構でございます。

 念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることはできないこととなっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。

 それでは、まず、飯塚参考人、お願いいたします。

飯塚参考人 この日本人拉致問題につきましては、相当長い間、課題となっておりまして、解決のためにあらゆる手段を講じてまいりました。

 私たちは、一九九七年三月二十五日に家族会を立ち上げ、もう十五年も家族の救出活動を行ってまいりました。そういう中では、あらゆる活動をしながら世論を盛り上げ、また政府の後押しをしながら、結果を待っている状態でございます。しかしながら、いまだに解決の糸口が見つからないというのが実態でございます。

 この間、政府におかれましては、拉致対策本部が設置され、また、その中にそれぞれの分科会も発足したようでございます。そしてまた、こうした委員会、あるいは国会でもかなりの論議を重ねてまいりましたけれども、それの結果がどうしても見えない、こういう実態の中で、私たちとしては、どうしても、これを直接担当する政府批判にならざるを得ないという状況下にあります。それぞれ活動はなさっていただいていると思いますけれども、なかなか結果が出ないというのが、我々としては非常に苦しい状況下に置かれております。

 そういうことでは、それぞれの組織あるいは役割、その辺につきましても、この問題のいわゆる時間との闘いということに本当になっているのかどうか、そういう疑問も実は持っているわけでございます。今この時間も、北朝鮮にいる被害者たちは、今か今かと救出を待っているんですね。私たちは、一つの活動を済ませればほっとする、また何かをやる、こういう繰り返しをしておりますけれども、彼らは本当に毎日毎日、救出を待っているというのは明らかでございます。

 そういった状態の中で、どういう手を尽くせば本当に解決に進んでいけるのか。北朝鮮を取り巻く状況というのは非常に難しいものがあるようですけれども、私たちは、あくまでも、いとしい家族を早く取り返してほしいというのが、まず最低限度の願いでございます。

 そういったことでは、これは国としても重要課題、最優先課題という位置づけのもとに組織的に活動なさっておると思いますけれども、本当に、何かをやった後のフォローですとか、次にどうつなげるかとか、そういった、いわゆる我々で言う行程表みたいな感じのものがどうも見えないというのが、我々素人から見ても非常に感じておるわけでございます。

 今後、あす以降、またこういった委員会の結果を踏まえて、経過を踏まえて、この活動について、それこそ時間との闘い、これは総理も言っております。時間との闘いをどうしてやっていくのかということがそれぞれのお立場で考えていただけないと、いわゆる一体として、国として、あるいは政府、議会、全てのこの問題に関する協力的な組織も含めて、一体化をしながら突き進んでいくことが必要であるというふうに感じております。

 我々は、とにかく家族を取り戻したいという一念だけなんです。我々素人については、細かいいろいろな問題、状況、その判断が難しいわけでございますから、それぞれの専門家の方々を含め、何とかことしじゅうにという意気込みで闘っております。ことしは勝負の年だというふうな位置づけをしまして、あらゆる人たちの活動、御支援、そして国の姿勢、これらも含めて確たるものにしていただきたい。そして、ことしにはある結果が出るように、皆様の御協力というか、お働きを期待するところでございます。

 以上でございます。

中津川委員長 ありがとうございました。

 次に、増元参考人、お願いいたします。

増元参考人 おはようございます。ありがとうございます。家族会の増元です。

 今代表がおっしゃったように、ことしは勝負の年という位置づけなんですけれども、これは、十年前に金正日が拉致を認めて一応謝罪をし、そしてこの問題が公になった。それから十年という月日の中で解決したのは、結局は、北朝鮮の言う五人生存の被害者とその家族だけ取り戻したにすぎずに、そのほかは全く進展がしていない。十年の間で全く進展のしていないというこの状況が、私たち家族にとっては非常にいらいらを、焦りも含めて発せられることなんですけれども、私たちがなぜこのような状況に追い込まれているのか、本当に残念なんです。

 私たちは、十五年前に家族会を結成して、北朝鮮に私たちの家族が連れ去られておりますというふうに申して、国民の皆さんに御理解をいただこうと思いましたけれども、なかなかそれが浸透しなかった。本当に北朝鮮は拉致をしているのというような話、そして、政党の中には、拉致などあり得ないという政党までありまして、私たちの活動を妨害というか、障害になっていたのは確かです。

 それが、ようやく二〇〇二年に金正日が拉致を認めて、しかし、五人生存、八人死亡。今度は、私たちは、北朝鮮のそれまでの発表、ずっとうそを続けてきた北朝鮮が途端に二〇〇二年に拉致を認めるような状況になった、それが公になって、今度は、八人死亡という報告をほとんどの方が何となく受け入れてしまったような状況を覆さなきゃならない。八人の死亡は、全く北朝鮮の報告だけで、何の根拠もないものであり、そして、私たちは、家族が生きているということを国民の皆さんに説明しても、今なお、それさえ信じていただけない方たちもいらっしゃるということ。それが、この十年間、被害者を救出しようという緊急性を持たなかったことではないかと私は思っているんです。

 ぜひ、ここにいらっしゃる方だけでも、生存、日本政府は生存を前提にということをおっしゃっていますけれども、本当にその生存を前提にやっているんだったら、もっと早い、スピード感のある解決方法を国会の中でも審議いただき、そして政府に対して意見具申をしていただくことが必要なんではないかと思っています。

 私たちの家族は生きています。それを私たちは、世の中にも、そして先生方にも訴えていきたいと思っています。生きているんです。その人たちを、なぜこの十年、もっとそれ以前から、三十年も放置しておかなければならない国家であるのか。そのことを本当に、我々は一般の人間ですからそこまでは言えませんけれども、国会にいらっしゃって審議されている方たちは、国家というものは何なんだということをもう少し考えていただきたい。

 私たちは家族を取り戻したいだけ、それは確かです。でも、その家族の意味というか、彼らがなぜこの三十数年間もこのような立場に追い込まれてしまったのか、その意味が私は問われているものだと思っています。彼らのその意味は、この国がまともな国になるための犠牲であった、彼らは身をもって、この国がおかしい国であるということを示したのだと私は考えています。その彼らを本当に救出するために、私たちはこの一年、いろいろなことをやっていきたいと思いますし、私たち個人の力ではどうしようもない部分、ぜひ先生方にも助けていただきたいんです。

 この生きている人たちが、この十年の間に病気になったり、そして事故に遭ったりして、もし死んだ場合、では誰が、どなたが責任をとっていただけるんでしょうか。そして、私たちは、日本でまず家族がもう高齢化していて、もう本当に命が短い状況になっている方たちもいらっしゃいます。その方たちが亡くなった場合、どなたが責任をとっていただけるんでしょうか。

 大臣がおっしゃっているように、もう時間がないし、このどちらかが亡くなっても最終的な解決ではないというその思いを共通して、一緒にというか皆さん方にやっていただきたいと思っています。我々もやります。よろしくお願いします。

中津川委員長 ありがとうございました。

 次に、西岡参考人、お願いいたします。

西岡参考人 中津川委員長、ありがとうございます。また、諸先生方におかれては、このような機会をつくっていただいたことを感謝申し上げます。

 私はメモを準備してまいりましたので、そのメモに従って三つのことを申し上げたいと思います。

 第一に、拉致問題の現況であります。

 二〇〇二年以前は、拉致があるかないかという闘いをしておりました。そして、二〇〇二年に拉致はあるということを金正日が認めた。一つの勝利だったと思っています。しかし、そのとき彼らはまた新たな二つのうそをついた。一つ目のうそが、拉致したのは十三人だけだといううそです。そしてもう一つが、八人は死んだといううそです。

 彼らは、十三から五人帰して、八人死んだから、二〇〇二年の段階で拉致問題は解決したと今でも言っています。しかし、我が国政府は十七人を認定しています。ここでも四人の違いがあります。久米さん、曽我ミヨシさん、田中実さん、松本京子さんについて、彼らは拉致を認めていません。十七人以外にも被害者は必ず存在します。そのことについては、荒木代表などがお話しされると思います。

 そしてもう一つ、今、増元さんも強調されましたが、八人死亡という彼らの主張には全く根拠がありません。証拠がないんです。遺骨、死亡診断書が全てにせものでした。それは彼らも、死亡診断書については慌ててつくって間違えたと認めています。そして、最近ですが、ここ数年、確実な生存情報が多数、北朝鮮内部から出てきています。

 この彼らの二つのうそをどう打ち破るかというのが我々の課題だと思います。その中で、松原仁大臣が就任されて、先ほど増元さんも言いましたけれども、解決の定義について、家族が亡くなってから被害者が戻ってきても解決じゃないというふうに言っています。そして一方で、死亡していると言っている人が生きているということになっても責任は問わないということを、繰り返しいろいろな場所で言っています。

 時間はないけれども、時間がないのは北朝鮮なんだ、家族が生きている間に帰さなければ解決にならなくて、日本から支援はとれないよというメッセージをされているということは、この上の二つのうそを、金正恩の代になって父親のついたうそを覆してもいいじゃないかというメッセージで、的確なメッセージだと私は評価します。

 一方で、民主党政権は、今回、北朝鮮がミサイルの発射実験をしたわけですが、それに対して追加制裁をしていません。自民党、公明党政権時代は、ミサイル発射、核実験のたびに、少しずつですけれども、制裁を上げてきました。それは、日本の安全保障にとってもミサイル発射も核実験も到底容認できないし、国連の安保理事会の決議違反だからです。しかし、今回は追加制裁がなかったことは残念であります。

 特に、いまだに朝鮮総連の幹部たちが北朝鮮にお金を運んでいます。日本の財務省の調べによりますと、昨年の十二月からことしの二月までで約一億三千万円が北朝鮮に持ち出されています。朝鮮総連の副議長、五人いるんですが、その人たちがほぼ月に一回訪朝してお金を持っていっています。どこに持っていっているのか。労働党の三十九号室という機関に持っていっているんです。その資金が核・ミサイル開発に使われたりテロに使われたりしているんです。

 今現在、お金の持ち出しは、十万円以上が届け出が必要です。しかし、届け出さえすれば無制限で持っていける。改正外為法によってそれを制限することができるわけです。その議論をぜひ先生方の中でしていただきたい。

 そのためにも、実際に、では昨年幾ら持ち出されたのか。この四月、金日成生誕百周年ということで彼らは大々的な行事をやったんですが、そこに朝鮮総連は三つの訪朝団を出しています。幾ら持っていったのか。産経新聞の報道によると、十一億円、日本国内で募金をしていたという報道もあります。

 そのようなことをぜひ国政調査権を使って統計を明らかにしていただき、北朝鮮の核・ミサイルやテロ行為を支える資金がいまだに日本から持ち出されている状況を何とかしていただきたいというふうに思っています。

 以上です。

中津川委員長 ありがとうございました。

 次に、荒木参考人、お願いいたします。

荒木参考人 特定失踪者問題調査会の荒木でございます。

 特定失踪者の問題は、そのかなりの部分が日本国内における問題でございます。現在、特定失踪者の御家族が置かれている状況がどういう状況かということについては、後ほど竹下参考人の方から具体的にお話があると思います。

 私は、この問題の中の一点を取り上げましてお話をさせていただきたいと思います。それは、お配りいただいている資料の中にございます、山本美保さんにかかわるDNAデータ偽造事件に関してでございます。

 この事件は、特定失踪者、現在私どものリストに約四百七十人いるうちのお一人である、昭和五十九年六月四日に山梨県甲府市から失踪した山本美保さん、当時二十の女性でございますが、この人に関する問題であります。失踪後四日して柏崎市の海岸に御本人のセカンドバッグが一つ落ちておりまして、それ以後の情報はない。私ども、御家族からの届け出をいただいて、この件について調べ、他の失踪との類似点とかそういうことから考えて、拉致の可能性が高いという判断をいたしておる案件であります。

 これに対して、八年前の三月五日に山梨県警の警備一課長は記者会見を行いまして、失踪から十七日後、昭和五十九年六月二十一日に山形県遊佐町の海岸に漂着していた身元不明遺体が、DNAの鑑定の結果、山本美保さんの双子の妹さんの血液のDNAのデータと一致した、したがって、この遺体は山本美保であるというふうに発表をいたしました。

 しかし、その後、私どもが調べてみますと、どう考えてもこれが同一人物には思えない。それについては、資料の中に漫画になったものがあります。これを見ていただくと非常によくおわかりになると思うんですが、ともかく、つけていた遺留品等々が全く本人のものと、家族も見たことがないし、サイズも全く合わない。

 これに対して、山梨県警にただしたところ、これはつけることは可能であるというような、かなりとんちんかんな答えが返ってきて、何度聞いても我々の疑問には答えてくださらなかったということで、今、この資料の中にございます、日本弁護士連合会に人権救済申し立てということを行っております。

 それから、きょう御出席であります渡辺義彦委員の方から質問主意書を提出されております。これは、全体の問題の中の、遺体と山本美保さんのデータの違いについてに限定した質問でございますが、質問して最初の答弁は、山梨県警がこういうふうに言っているという答弁で、これは可能であるということでございました。それに対して、では警察庁も同じなのか、これはおかしいんじゃないかというふうな質問主意書を再質問主意書として出していただいたところ、捜査に支障があるので答えられないという答弁が返ってまいりました。最初に半ば答弁をしているのに、二回目では答弁できないという質問主意書で、三回目の質問主意書が今出ておりまして、本日、回答が送付されるというふうに聞いております。

 いずれにいたしても、このことは、かかわっているところが山梨県警だけではなく、警察庁の科学警察研究所それから名古屋大という非常に広範囲なところになっておりまして、もちろん山梨県警だけでできることではないというふうに理解をしております。つまり、これはもっと大がかりな構造の中で動いたことであり、そして、これは拉致問題を、ある意味でいうと、とめるために行われたということが推測がなされるわけでございまして、まさに拉致問題を解決する上において絶対にこの問題の真相究明ということは欠かせないことだというふうに思っております。国会の中で各委員の先生方にも、ぜひ積極的にお取り上げをいただきたいと思う次第でございます。

 以上でございます。

中津川委員長 ありがとうございました。

 次に、島田参考人、お願いいたします。

島田参考人 私は、まず、昨年の夏以降浮上してきたアメリカ人拉致疑惑について触れたいと思います。

 失踪したのはデービッド・スネドンさんという二十四歳の男性、二〇〇四年、中国雲南省で行方不明になっております。

 もちろん国籍にかかわりなく、全ての拉致被害者は救出しないといけないんですけれども、アメリカ人が拉致されていたとなって、アメリカが当事者意識を持ってこの拉致問題に取り組んでくれば、これは戦略的に大変大きいと思います。そういう意識で、五月六日から約一週間、拉致議連、救う会、家族会で訪米もしてまいりました。

 この件は、チャック・ダウンズというアメリカ有数の北朝鮮問題専門家で、拉致問題に最も詳しい、日本人拉致問題に関してもアメリカで一番最初に助けになってくれた人物から情報がもたらされたもので、彼は既にアメリカの議会でも証言しておりますけれども、このデービッド・スネドンさんの家族からも、日本からぜひアメリカ世論を喚起してほしいという協力依頼も来て、家族の方々が四月の末に来日もしております。

 先ほど申し上げた訪米の際に、いろいろな議員、有識者、政府高官等と会いましたけれども、例えばそのうちの一人、スネドンさんの地元であるユタ州選出のマイク・リー議員、若手の大変有望株の方だと聞いていますけれども、近々家族と面談し、話を聞きたいということが議員の事務所から家族に連絡があって、数日以内に面談ということになると思うんですが、こういった流れをよりしっかりしたものにしていくために、ぜひこの委員会としての訪米等も考えていただければと思います。

 このスネドンさんの件が拉致ではないかと思われる根拠をごく簡単に言いますと、二〇〇四年、雲南省、雲南省というのは中国の一番南のタイ、ミャンマー、ラオス、ベトナム等と境界を接する地点ですけれども、いわゆる脱北者が助けを得て東南アジアに逃げる脱北ルートの最終地点に当たっております。そこで、北朝鮮の特務機関が、脱北を手助けしたと思われる人々、それからもちろん脱北者自身を捕まえるために当時網を張っていたと言われておるところです。

 このスネドンさんは、中国にいる朝鮮族等の研究をしていて中国当局から目をつけられ、国外退去を命じられたアメリカ人の友人と数日間北京で過ごした後に、雲南省に来ているんですが、その友人と間違えられた、あるいはデービッドさん自身も脱北支援者と疑われた可能性が十分ある。

 それから、デービッドさん失踪の一カ月前の七月、アメリカの下院が、脱北者の保護、受け入れ規定を含む北朝鮮人権法というのを可決しております。北朝鮮は、直ちに報復を示唆するような反発の声明を出している。あるいは、同じく一カ月前にベトナム政府が、ベトナムにいた北朝鮮の難民四百六十八人を韓国に移送を決定して、北朝鮮側が、脱北を支援する人間には報復するということをこの機会にも宣言しておりました。

 アメリカ人で中国で行方不明のままになっているというのは、このデービッド・スネドンさんだけであります。登山中に死亡とかいう例はあるんですけれども、遺体が回収されたり、死亡状況がいずれも確認されています。全く行方不明というのはこのケースだけ。以上のような理由から、拉致の可能性が高いとアメリカの専門家が見ておるケースです。

 重要なポイントとしては、この失踪事件、二〇〇四年八月、つまり小泉訪朝以後なんですが、小泉訪朝以後であっても、特に脱北者支援に関係したと北朝鮮側が見たようなケースでは拉致は十分起こり得るし、現に、二〇〇〇年以降も拉致されている韓国系の人たちとかが少なからずおります。

 要望の一つとして、ミャンマーに連れ出されて、それから北に運ばれたんじゃないかとアメリカの専門家等は見ているんですけれども、当時、ミャンマーは北朝鮮と大変親しい関係にありましたが、近年、自由化、民主化が急速に進んでいますので、ミャンマー政府から何らかの情報がとれる可能性が十分あると思いますので、これは我々が訪米したときも、アメリカの情報関係者の人間が、アメリカ情報部もミャンマー政府に、特に失踪してから一週間以内にミャンマーの港に北朝鮮の船の妙な出入りはなかったか、そういうことをチェックしたいと言っておりましたけれども、日本側としても、ぜひそういう調査をミャンマーに対して依頼いただきたいと思います。

 とりあえず、以上です。

中津川委員長 ありがとうございました。

 次に、竹下参考人、お願いいたします。

竹下参考人 本日は、特定失踪者家族のためにこのような発言の機会をいただきまして、まことにありがとうございます。

 妹、古川了子の件につきましては、お手元に、妹古川了子の失踪という資料をお届けしましたので、それをごらんいただければありがたいと存じます。そして、その後の動きについてきょうは申し上げます。

 平成十四年十二月には千葉県警察本部に対して古川了子の北朝鮮による拉致事案として捜査要請を行い、平成十六年一月には同警察本部に対して国外移送目的略取誘拐の告発をしました。

 さらに、行政訴訟目的とその経緯という資料にございますように、平成十七年四月十三日、東京地方裁判所に対して、古川了子さんの拉致認定を求める行政訴訟を提訴しました。

 この資料は、特定失踪者問題調査会が裁判のたびに報道関係者に報告した資料やメールニュースに載せた文章を、日付を追ってまとめたものでございます。

 この訴訟は、北朝鮮当局による拉致事件について、被害者家族が日本政府に対して拉致認定を求めた初めての訴訟であり、拉致被害者の救出を実現するために裁判所が的確な判断を行うことを求めた唯一のものです。また、この訴訟は、古川了子の母と、姉である私とが告発人になって提訴しましたが、本訴訟の背景には政府認定されていない数多くの被害者の存在があり、実質的には被害者家族の代表訴訟というべきものでした。

 この訴訟は、平成十九年四月、法廷において当時の内閣府拉致被害者等支援担当室長が表明書というものを読み上げまして、私と弁護団は提訴を取り下げ、和解しました。その状況は、口頭弁論調書と、和解に当たってというお手元の資料も、後ほどお読みいただければありがたいと存じます。

 この訴訟の後に変わったこととしましては、内閣府が家族から特定失踪者の情報を文書で直接集めたことと、時々ではありますが、外国首脳との会談で拉致問題を取り上げたりした情報が直接家族に届くようになったことです。

 ここで特にお願いしたいことは二つあります。

 一つ目は、訴訟の目的とその経緯の最後に四角い枠の中で示しましたように、平成十四年の第一次小泉訪朝で曽我ひとみさん、ミヨシさん、石岡亨さんが拉致認定された後に拉致認定されたのは、平成十七年四月二十七日、田中実さん、平成十八年十一月二十日、松本京子さん、そして平成十九年四月十二日に高敬美さん、剛きょうだいだけであり、全て訴訟の期間中であります。和解成立の後は一人も認定には至っておりません。

 二つ目は、表明書六、七、八でうたっていますように、政府は、認定被害者以外にも北朝鮮当局による拉致の可能性を排除できない人が存在するとの認識のもと、国連の場や政府の広報において、全ての拉致被害者の速やかな帰国を実現すべく全力で取り組んでいることが対外的に認知されるよう努めるとおっしゃっていますけれども、政府のホームページでは、北朝鮮に対して約三十名の安否確認をしているという文言はありましたが、これも裁判中の平成十八年のことでした。という文言はありますが、特定失踪者四百七十人ということも、それから、昨年の十二月の政府主催拉致フォーラムで、三谷事務局長代理が壇上で、九百人にも及ぶ対象者がいるとおっしゃっていながら、これらの数字はどこにも出てきません。これは、日本政府が、国の内外はもとより、北朝鮮に対して、拉致の可能性を排除できない人々は三十人ほどである、そう認識しているという大変間違ったメッセージを発していることになると思います。

 私どもの家族は既に高齢に達し、次々に他界している現実です。そしてこれは、四百七十人を上回る特定失踪者の家族たちは、拉致認定もされず、北朝鮮にも氏名すら公開、交渉されず、このまま日本政府から日本の中で拉致被害者の切り捨てをされるのではないかと大変心配していますことを、どうぞ御理解いただきたいと思います。

 ありがとうございます。

中津川委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

中津川委員長 これより参考人及び政府参考人に対する質疑を行います。

 参考人及び政府参考人に対する質疑は、理事会の協議に基づきまして、各委員が自由に質疑を行うことといたします。

 この際、委員各位に申し上げます。

 質疑を希望される委員は、お手元にあるネームプレートをお立ていただき、委員長の指名を受けた後、御発言ください。発言が終わりましたら、ネームプレートは戻していただくようお願いいたします。

 また、発言の際は、着席のまま、所属会派及び氏名を述べた上、お答えいただく参考人を御指名いただくようお願いいたします。

 なお、理事会の協議によりまして、一回の発言時間は、答弁を含めおおむね五分以内を目安とすることとなっておりますので、委員各位の御協力をお願い申し上げます。

 それでは、質疑を希望される委員は、ネームプレートをお立てください。

柴橋委員 民主党・無所属クラブの衆議院議員柴橋正直でございます。

 委員長、御指名いただきまして、ありがとうございます。また、参考人の皆さんも、大変お忙しい中御出席いただきまして、ありがとうございます。

 いきなり政府参考人に聞いて恐縮でありますけれども、先ほど飯塚代表から、時間との闘いだ、こういう御発言がございました。私も同じ認識を持っているところであります。

 そこで、政府参考人に御質問したいんですが、昨年のこの拉致問題特別委員会でも、私、質問をさせていただきまして、まさにこういった時間との闘いであるにもかかわらず、せっかく予算が増額をされているのに執行率が上がってこない、こういう御懸念は参考人の皆さんも持っておられるのではないかというふうに思っています。

 ちなみに、私が、平成二十二年の執行率が二七・五%だ、その後、きちっと改善をしてほしいという質問をさせていただいたときに、きちっとやりますということでありましたが、どうも聞いていると、平成二十三年度も執行率は余り変わらないぐらいだということを聞いておりますけれども、なぜ、この予算、せっかく情報分析、調査についての予算が計上され、そして、それをきちっと執行して、ありとあらゆる情報収集をしながら拉致問題の解決に向かっていかなきゃいけない、こういう状況がある中で執行率が上がってこないのかについて、政府参考人の答弁を求めたいと思います。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、拉致問題対策本部、特に民主党政権になりましてから非常に大きな予算の増額をいただいております。そうした中で、執行率という意味において、二十二年、御指摘のとおり約三割でございます。二十三年、まだ集計中でございますが、やはり同程度にとどまるという見込みでございます。せっかく予算をこれだけいただいておりながら、それを全き使用をできないというのは、大変私どももじくじたるものがあります。

 さらに努力しなければいけないと思っておりますが、一言申し上げさせていただければ、私どものいただいております、特に情報関係の予算でございますが、これは使い切り、必ずその額をその年に使い切るという性格のものでは必ずしもないのではないかと思っております。つまり、情報というものの性格上、必要なタイミングで必要なものを的確に執行する、そのための予算であると思っております。

 予算の計上額につきましては、例えば北朝鮮情勢の変化などに応じて非常に重要な情報が次から次へと出てくる、こういう状況に機動的に対応できるために一定の予算をお願いし、お認めいただいているところでございます。

 予算の執行に当たりましては、その必要性、有効性を確認しながら効率的に実施をしております。執行率については、結果的に三割ということになっておりますが、今後、より強力に各方面からの情報収集に努めてまいりたいと思っております。この点につきましては、大臣からも特に強い指示をいただいているところでございます。

 今後とも御指導をよろしくお願いいたします。

古屋(圭)委員 委員長、ありがとうございます。

 参考人の皆様、本当にきょうはありがとうございます。

 何問も質問したいんですけれども、まず最初に、五月六日から十二日まで私も同行させていただきました。飯塚さんあるいは増元さんからもお話があるように、ことしは勝負の年、時間との闘い。そういう意味では新しい要素というのが必要である。そこで、島田先生から御指摘のあったスネドン氏の問題というのは、私はこれは大きな拉致問題解決に向けてのチャンスだというふうに認識しています。

 やはり、アメリカ人自身が拉致をされれば、自国民が拉致をされた、要するにテロ、主権の侵害でありますから、アメリカ人は黙っていない。アメリカも日本の拉致問題には大変協力をするとは言っているものの、やはり本音を言えば、アジアのよその国の話。しかし、現実に起これば、同じ土俵に乗って対応ができる。私は、そういう意味でチャンスだと思います。

 そこで、島田先生から今報告ありましたけれども、まず一点目は、スネドン氏がトレッキング中に死んだ、こういうふうな報告が恐らく中国から国務省の方にあったんでしょう。これに対して違う反論が恐らくあるというふうに、客観的な情況証拠も含めてあると思いますし、また、遺体というのは実際に見つかっているんでしょうか。そのことをお伺いしたい。

 それから、五分以内ですから、もう一問いいですか。

中津川委員長 はい、どうぞ。

古屋(圭)委員 政府にお伺いします。

 今、ミャンマーとのアプローチが大切だということがありました。それも含め、この問題、我々訪米後、具体的にアメリカの政府に対してどのような形でアプローチをして、アメリカのスネドン氏の対応の背中を押しているんでしょうか。この具体的な状況についてお伺いしたい。

 以上、二点です。

島田参考人 私の方から事実関係に関して簡潔にお答えいたします。

 まず、遺体は全く見つかっておりません。また、本人のクレジットカードが使われた形跡もない、パスポートが売り買いされたというような記録も全くありません。したがって、犯罪に巻き込まれたというのも考えにくい、一般の犯罪に巻き込まれた可能性ですね。

 トレッキングの話ですけれども、雲南省のシャングリラ県というところの虎跳峡、英語で言うとタイガーリーピングゴージ、ここはトレッキングの名所になっているんですけれども、スネドンさんはそこを踏破していた。

 中国の当局は、そのトレッキング中に谷に落ちたんじゃないかというような調査結果を当初出していたようです。ところが、家族はその一カ月後に現地に行って、実際にその虎跳峡というところをトレッキングで渡って、渡り切ったところでいろいろな人に情報収集をした結果、その渡り切ったところにある韓国レストランにスネドンさんが来ていて、彼は韓国で二年ほど過ごしたことがありますので韓国語が大変堪能で、中国語もできるんですけれども、写真を見ても、間違いなくこの人だと。しかも、スネドンさんは、その渡り切ったところで散髪もしております。したがって、彼がトレッキングの途中で落ちた可能性はないということが、そういった証言によって証明されております。

 最後に目撃されたのはその韓国レストラン。韓国レストランですから、北朝鮮の特務機関の人々なども利用していた可能性は十分あると思われます。

 事実関係はそういうことです。遺体等は全く見つかっておりません。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 スネドン氏の件につきまして、今回、議連、家族会、救う会の訪米団から御提起があったこと、私ども、非常に重要な提起として重く受けとめております。

 本件につきましては、既に、あるいは今後、各国、特に米国が中心になると思いますが、各国の当局と、あるいは関係者と緊密に連絡をしてまいりたいと思っております。

 例えばですが、先日、アメリカの国務省のデービース特別代表が来日されて、松原大臣と会談を持ちましたが、その席で松原大臣から、この件についてはアメリカ側としてどうするのかということについては、きっちりと提起をさせていただいております。また、こういう情報のことでございますので、私どもとしても、重要な情報として、例えば近日中に職員を米国に派遣いたしまして、米国の関係者とこの件についての情報交換等々をさせていただきたいと思っております。

竹内委員 公明党の竹内譲でございます。きょうは本当にありがとうございました。

 まず、共感する部分として、西岡先生がおっしゃったように、金融制裁の必要性というのは常々私どもも言っているところでありますし、強化する必要がある。コーエンさんも、これは必要性を認めているということを強く感じました。それから、島田先生がおっしゃったように、ミャンマー政府への働きかけをやらないといけないというふうに思ったところでございます。

 五分しかありませんので、増元さんにちょっとお伺いしたいんですが、今回の訪米を通じまして、特に米国の要人の皆さんと会われて、アメリカの姿勢につきましてどういう印象を持たれたか。特に、子の連れ去り問題とかと絡めたりとか、それから、テロ支援国家再指定についての姿勢とか、まずその辺の印象につきまして、そして、御要望があればおっしゃっていただきたいと思うんです。

増元参考人 ありがとうございます。

 私たちは、二〇〇一年からずっと訪米し、そして米議会、それから政府関係者にお会いして、この拉致問題への協力を求めてまいりました。その間、アメリカも表面上は協力するということはおっしゃっていましたけれども、CIAが実際に情報収集に関して動いたという話は全く聞いておりません。

 つまり、言葉だけのものではないかというふうに感じていますし、クリストファー・ヒル次官補の際、私たちは本当に、議連の先生方と一緒に、救う会、三者で行って、絶対にテロ支援国指定は解除してはならないというか、しないでほしいという要請までしました。シーファー大使に対しても、直接、テロ支援国指定解除は間違った政策であるというふうに訴えてきましたけれども、最終的にはアメリカはテロ支援国指定を解除し、核の問題を解決させようとしましたけれども、これも失敗しております。

 今回、カート・キャンベル国務次官補にお会いして、彼は彼なりの事情があったんでしょうけれども、私たち拉致被害者家族そして拉致問題の解決に協力を求めているデリゲーションに対して、親権の問題を持ち出して、これは関係ないこととはいえという注釈はつけましたけれども、アメリカ国内で、ルース大使が拉致現場を視察に行ったことに対して、あいつをやめさせろという声まであるんだ、私たちにそう言ったんですね。つまり、親権の問題とこの拉致問題を全く同一視しているとしか思えない発言を我々に対してやられました。

 これは、拉致被害者を救出するというか、拉致問題の本質と親権の問題の本質を全く履き違えているというか、国家犯罪と夫婦間の問題を全く同一視するようなことで、とても許されないし、容認できないというふうには申し上げました。

 これまでの経緯も含めて、今回で私は本当に思ったんですが、アメリカは、アメリカの国民の国益、アメリカ国の国益で政策を決定します。我々が一応協力要請はしますけれども、他国の国民の命にかかわる問題、特に同盟国ですから、それは考えましょう、でも最終的にはアメリカの国益で判断をしますということを明確に私は感じた次第です。

 ですから、記者会見でも申し上げましたけれども、きょうも申し上げたいと思うんですが、日本人を救出するのは日本の国家であり、日本国が主体的に拉致被害者の救出に動くべきだと思っています。そこにアメリカとヨーロッパを巻き込んでいくことが重要だと思っています。まあ、巻き込めるだけの力があるのかどうかはわかりませんけれども、でも、主体的に日本が動くことによってアメリカを動かすような状況をつくっていただければというふうに考えております。

 ありがとうございます。

竹内委員 では、時間がありませんので、これで終わります。ありがとうございました。

笠井委員 委員長、ありがとうございます。

 日本共産党の笠井亮です。参考人の皆さん、きょうはありがとうございました。

 飯塚参考人から、時間との闘いになっているのかと強く言われたことは、そのとおりだと思います。政治が重く受けとめなきゃいけないということを改めて痛感いたしております。

 そこで、例えば二〇〇八年の八月の日朝実務者協議で、拉致問題の再調査ということで合意したわけですが、それ以来、四年近くもこれが履行されていないという問題が重大だと思っておりまして、我が党なりにもこれまで、安否不明の拉致被害者の方々について、北朝鮮から提示された情報、物証の信憑性について、公開された情報をもとにして我々なりに議論してきた経過もございます。

 そこで、増元参考人に、増元るみ子さんの夫の市川修一さんに関連して伺いたいんですけれども、北朝鮮が、市川修一さんについて、一九七九年の九月四日の日に、元山の松涛園の海水浴場で、水深が深くないところで海水浴中に心臓麻痺で死亡したというふうに説明しております。しかし、日本におられたころに泳げなかったと伺っていますが、市川さんが海岸から一体どれぐらいの地点で心臓麻痺を起こしたのか。それから、松涛園というのは遠浅の海水浴場と指摘される場所で、韓国の報道によれば、約四キロにわたる白浜で、海岸から百メートル先に行っても、水深が一・五メートルから、深くても二メートルにしかならない。本当に市川さんが海水浴中に心臓麻痺を起こしたというならば、その地点が一体どれぐらいのところだったのかが問題になると思うんです。

 また、市川さんが死亡されたとされる当日の水温なんですけれども、北朝鮮は、当日の水は冷たくなかったとだけ説明して、具体的な温度は明らかにしていないわけですが、一体何度だったのかというのも重大な疑問で、私どもも日本の気象庁から資料をもらいまして、元山海域の海面水温を示した資料を見ますと、当日の平均水温というのは二十二・五度だった。他方で、北朝鮮は、当日、最高気温が二十二・四度で平均十八・八度だったというふうに説明しているので、十八・八度と。そうだとすると、やはり水中の方が陸上よりも温かかったことになるわけですよね。このような状況で果たして心臓麻痺というのが起こるのかということだと思うんです。

 全く筋が通らない、到底いかない北朝鮮の説明だと思うんですけれども、これらの点について、実務者協議をやっているわけで、これまで日本政府からはどんな説明を受けておられるかということを、もしありましたら、増元さんに伺いたいんです。

増元参考人 日本政府から詳しい、今先生がおっしゃったように、水深何メートルのところで水温がどのぐらいのところだったという話は、私は市川家ではないので聞いておりません。市川家に対して話しているかというのも、私はまだ聞いておりません。

 ただ、おっしゃったように、非常に不自然な点は、市川さんは、鹿児島とはいえ、山の方に住んでいらっしゃって、ほとんど泳ぎに対して余り興味がなかった。その方が、九月四日という、皆さんも御存じのように、北海道と同じようなレベル、もっとそれ以下かもしれませんけれども、九月というと本当に寒くて、冷たくて、入る気にならないですよね。私も北海道に住んでいましたから、八月の後半以降はもう水泳しようと思っていませんでしたけれども。そういった中で、水泳を好きでない市川さんがあえて水泳をしたいということを言うかというと、全くあり得ない、そういう報告をしてきていました。

 市川さんは心臓麻痺で亡くなったといいますが、私の姉も、実は一九八一年の八月十七日に突然の心臓麻痺。夫婦で、非常に簡単に考えたんだと思いますけれども、一人が心臓麻痺で死んだから、もう一人も心臓麻痺で死んだことにしてしまえというだけのことだと思います。

 さらにもう一つ言わせていただきますと、一九七九年の九月に亡くなったと言っていますけれども、祐木子さんは私の姉と一九七九年の十月まで一緒に招待所で暮らしていた。その後、るみ子さんは結婚のために私とは別れたということは、その十月以降に結婚したことになりますので、その前に市川修一さんが死んでいるというこの情報も、非常に怪しいというか、信頼に足らないものだと私は思っております。

渡辺(義)委員 新党きづなの渡辺義彦でございます。本日はありがとうございます。

 私は、先ほど特定失踪者問題調査会の荒木代表が御説明をされました、いわゆる山本美保さんのDNAデータ事件、そのことには大変興味を持って、三度ほど質問主意書も出させていただいて、きょう三回目の答えもいただきました。今の荒木参考人からのお話を聞く中で、私は、政府の拉致問題に対する本質というのはこの問題にも見えてくると思っております。

 そういう中で、先ほどの荒木参考人のお話の中で、ある構造の中で云々ということでおっしゃっておられましたが、荒木参考人がお考えになっている構造とは、どのような構造で行われたということをお考えになっておられますでしょうか。

荒木参考人 この事件は、逆算をしていけばわかることなんですけれども、まず、データから考えて、山形の漂着遺体が山本美保さんでないことは明らかである。それを、DNAの鑑定書が出たということで、しかも公開をしていないわけですが、その鑑定書をもって本人であるというふうに強弁をしてきたわけです。

 先ほど申しましたように、このDNA鑑定は警察庁の科学警察研究所及び名古屋大学でやったことになっている。警備警察の構造からいたしまして、こういうことを山梨県警だけでやるということは全くあり得ない。

 私が推定しております構造は、最初の時点でやろうとしたのは、当時の官邸の一部ではないか。当時の官邸の一部が山梨県警にいたキャリアの課長を使って、その部下数人とはかって行わせたことではないだろうかと思います。その後、この発表の後に、このデータの問題がおかしいではないかというふうに言われてから、これを打ち消す立場をとって、それをしてきたのは警察庁、特に、同年の四月一日にスタートいたしました外事情報部であろうと思っております。その構造の中で、今までは、この八年間の間は、基本的には山梨県警に答弁をさせて、そして時間を稼ぐということをやり続けてきたものであるというふうに理解をしております。

中島(隆)委員 社会民主党の中島でございます。本日は、参考人の皆さん、大変御苦労さまでございます。

 私からは、先ほど特定失踪者の問題で御報告がありました竹下さんに御質問させていただきたいと思うんですが、竹下さんの妹さん、平成十四年から問題を告発されて、訴訟までされた。失踪者が四百七十名以上、先ほどの話では九百名ぐらいいるんじゃないかと。そういう代表者のお立場で、この訴訟をして国に対して求めた、こういうお話でございました。

 そこで、この訴訟を取り下げられた経緯、ちょっとお聞きいたしておりますが、特にその中で政府が、古川さんの安否確認に最大限の今後努力をする、それからさらに、拉致と確認されれば拉致被害者と認定する、認定者以外にも朝鮮当局やあるいは拉致の可能性を排除できない人の存在を念頭に真相究明をやる、それから、特定失踪者の家族からの相談には誠意を持って応じる、こういう回答があったということで訴訟を取り下げられたという経緯が報告されております。

 そこで、先ほどお話がありましたが、それ以降、内閣からは文書によって調査がされた、そして、その後は定期的な情報が届けられる程度だ、こういうふうなお話で、こういう訴訟までやって、これだけ多くの特定失踪者がおられる。そういう家族の皆さん方に、政府なりいろいろな関係機関から、それくらいの取り組みだったのか。あるいはもっと、竹下さん以外の失踪者の皆さん方に、まあ、組織をつくっておられますので、会員の失踪者の皆さん方の把握もされておると思いますが、特定失踪者のそういう皆さん方に、政府がどういうふうに、この訴訟を取り下げた、確認されたことがなされているかどうか、そこの点を少し御説明いただければと思います。

竹下参考人 一人一人の家族に関しましては、中間として特定失踪者問題調査会、荒木さんたちがかかわってくださっているとは思っておりますが、詳しいこと、一人一人については、私には正直わかりません。

 私に関しましては、先ほど申し上げたように、文書で、全部の特定失踪者の家族に行ったんだろうと推察しておりますが、改めて調査をしたいということで、特に身体的な調査が主でしたが、それを提出したという経緯があります。

 そして、今御質問いただいた、家族に対してその後どう変わっていったか。正直申し上げて、ほとんど変わったことはないであろうと、それしか申し上げられないのが残念なのですが。

江藤委員 自由民主党の江藤拓でございます。

 参考人の皆様方におかれましては、きょうは本当にありがとうございます。政治が結果を出せないということに対しては、この拉致特にずっと籍を置いている者として、非常に申しわけなく、恥ずかしい気持ちを持っております。

 増元参考人様の方から、日本が主体でなければならぬのだと。アメリカを巻き込む、ほかの国を巻き込むのだと。島田様の方からは、ミャンマーも、こういう案件がありますので、ぜひ巻き込んでやっていきたいと。韓国も当然だと思います。

 ということであれば、先ほど御質疑ありましたけれども、執行率の問題も、新しい情報がこれだけ出ているのであるから、新たな取り組みがあってしかるべきなんですよ。執行率は当然上げなきゃいけないと思います。

 そして、アメリカはテロ指定ということを解除したわけでありますけれども、私は非常に憤慨をしておりまして、しかし、日米同盟があるからといって、いつも足並みをそろえなければならないのだということでは私はないと思います。

 ですから、日本が主体でこの問題を解決するという意思を示すということであれば、この日本国が日本国として北朝鮮をテロ支援国家であるということを指定することが、非常に国際社会に対して、メッセージ的にも、意思を発信する意味でも、私は強い力があるのではないかというふうに思っております。

 政府参考人の方も、私、たくさん呼んでおりますけれども、五分という制約がありますので、時間があれば政府参考人の方にはお聞きをしますけれども、まずは、きょうお越しをいただいた参考人の皆様方から御意見を賜れればありがたいと思います。

西岡参考人 実は、アメリカのテロ支援国指定も、アメリカを巻き込もうと思って我々が戦略目標にした経緯があります。

 二〇〇一年に最初に訪米したときは、当時から指定はされていましたが、理由に日本人拉致は入っていませんでした。その理由に入れてもらおうということを目標にして何回も訪米したところ、二〇〇三年にアーミテージ副長官が口頭で理由に入っていると言いました。しかし、二〇〇三年の国務省が出したレポートには文章に入っていませんでした。二〇〇四年にやっと入ったんです。

 つまり、アメリカを巻き込むためにもアメリカの制度を勉強して、拉致はテロだというスローガンを出したからそこに入れることができたんですが、残念ながら、当時の日本の外務大臣が、日本の法律でテロの定義はないというのを御答弁されたりするようなことで、後ろから弾が撃たれたような思いをした記憶もあります。

 さまざまなことについてこちらで主体的にしなければいけないという先生の意見は、全く賛成であります。そして、既に北朝鮮人権法をつくっていただいておりまして、そこに北朝鮮が国家犯罪として拉致をしたというふうに明記していただいていますし、また、その改正案をつくっていただきまして、国際金融機関にも適切な働きかけをしなきゃならないということで、事実上の日本版のテロ指定がされているというふうにも思いますが、メッセージ性という点では先生の意見に私も賛成であります。

増元参考人 アメリカのテロ支援国指定解除の動きを受けて、家族の中でも、日本版のテロ支援国指定というか、そういったものはできないのかという話で、御相談をしたら、今、西岡さんがおっしゃったように、北朝鮮人権法の改正で少々意思表示はできたんですけれども、よくよく伺うと、やはり法改正が必要だ、テロ支援国指定をするためには法の改正が必要だということがわかりまして、その点では、やはり国会の先生方に、議員立法でも、とにかくテロ支援国として指定をできる、実効性のあるものをつくっていただくことが必要なのかなというふうには感じております。

長尾委員 民主党の長尾敬でございます。きょうは、参考人の皆様、ありがとうございます。

 皆様の御主張を受けとめるという発言が各委員からもありました。ならば、それを踏まえた上で、私、あえてこの場で申し上げたいんですが、やはり、先ほど西岡先生から御指摘があった、十万以上、届け出はオーケーで、現実には持ち出しは無制限。御提案があったならば、この委員会で積極的に追加制裁を行うべきであるというような何らかの形をつくるべきではないかということを、委員長並びに理事の皆さんに御提案をさせていただきたいと思います。どうぞ、きょうこの場で御提案をいただいたことでございますので、あえて私からも御提案をさせていただきたいと思っております。

 西岡先生にお尋ねします。

 拉致問題を解決しなければもう北朝鮮自身がもたないというような追い込み方をしていかなきゃいけないときに、正恩体制のいわば神格化をどこまでやっていくべきかということ。我々日本も時間がなかった、北朝鮮も多分、今時間がないという、米国やロシアの後ろ盾もないというような状況で、また加えて金融制裁も出てくればというところで、なかなか日成、正日のように神格化がなされていない状況の中で、今、正恩体制というのは、そういった部分でどのような統治体制であるのか、そこに何かすき間はないのかというようなことを教えていただければと思います。当然、物流のこととか、闇市や、そこに乗っかってくる情報のことや何かで、相当今しんどい部分に多分あると私は推測しております。

 あともう一つは、よく政府高官と、我が国が向こうの高官と会うというような話があるんですが、果たして高官と会って情報をちゃんととれるのかどうか。そこがやはりピンポイントで交渉相手として正しいところにあるのかどうか、先生の御所見をいただければと思います。

 以上です。

西岡参考人 短い時間で金正恩体制の権力構造について述べるのは大変難しいのでありますが、金正恩体制がもつためには二つの道があると思います。一つは、中国に全面的に降伏して、中国の衛星国家になるという道です。そして、改革・開放を導入して経済を再建するということですが、金正日はそれをさせないために、中国に一番抵抗力があると思って、長男ではなくて三男を選び、そしてまた自分の妹を後見人としてつけている。

 中国からは、やはり生かさず殺さずレベルの現物しか入っていない。現金は入っていません。しかし、一定程度の現金がないと、核・ミサイル開発はできないし、一族のぜいたくな暮らしは維持できないし、政治警察や軍隊が維持できないわけです。その現金、それを先ほど申し上げた党の三十九号室が扱っているんですが、その現金、彼らが呼ぶところの統治資金を枯渇させるということを戦略目標にすべきで、アメリカの金融制裁はそれをやったからきいたんです。海外にある三十九号室の口座を使えなくする。

 一方で、日本も、安倍政権以降、厳格な法執行制裁をして、日本から不法にお金が持ち出せないようにするということをやったわけですね。しかし、まだ足りない。朝鮮総連の人たちが金を持ち出しているというところもとめて、今、金正日が金正恩に果たしているような、中国の軍門に下らないで、今の先軍体制を続けよということができなくする鍵を日本は持っているというふうに思っております。

 あとは何でしたっけ。(長尾委員「高官」と呼ぶ)

 報道されている交渉相手は宋日昊さんという方ですが、宋日昊さんは、私も一度、北京で、拉致被害者が生きているという情報を出すと言ったので会いに行ったことがありますけれども、行ってみたら、死んでいるという話だったんです。

 彼との会談は、結局、表に出る会談で、我々がやっているときに別の秘密交渉が同じ時期になされていたということは事実であります。表に出る会談で本当の話が出るということは考えにくい。向こうは日本の世論対策のために何らかの仕掛けをしようとしていると考えた方が、私の経験上、いいのではないかと思っております。

向山委員 委員長、ありがとうございます。

 民主党の向山好一です。参考人の皆さん、きょうは本当にありがとうございます。

 私は、家族会の飯塚さんあるいは増元さんに二点ほどお聞きしたいんですけれども、まず一点目は、今、増元さんから、生存を前提にという御発言がありました。これは当然のことです。

 それに関連することなんですけれども、私の選挙区、地元には、有本恵子さんという政府認定被害者がいらっしゃいまして、その御両親、もう高齢です。明弘さんと嘉代子さん、私は一緒にずっと署名活動なりをさせていただいておりまして、こういうふうに国会議員になって以降、有本さんのお父さん、特に明弘さんから何回もお手紙をいただきます。こういうお手紙を私は何度もいただきまして、その内容というのは、ちょうどこの二年間というのは、有本さんの活動というのは、田原さんとの訴訟というのに大きく力を注いでこられました。

 御存じのとおり、朝までテレビ、平成二十一年四月の放映で田原総一朗さんが、拉致被害者は生存しているわけない、外務省も生きていないことはわかっているという発言がありました。そのことについての慰謝料の請求の裁判があり、昨年の十一月に神戸地裁で一審の判決がありまして、慰謝料の支払いを命じるという、一応、勝訴という形で今迎えております。

 しかし、それには慰謝料という対償でございますので、本当に生存者、生きているとは思っていないということに対する真実というのが必ずしも明らかにはなっていないわけであります。そういう思いを持たれた明弘さんというのが、今、本当に苦難の活動をされておられるわけです。

 今、増元さんがおっしゃった生存を前提にということと、今、家族会副代表の有本さんのこういう訴訟での闘いということについて、そういう家族会を代表する立場から、どういう思いを持っていらっしゃるのか、あるいは、外務省に対して今どういう思いを持っていらっしゃるのかということを、ひとつお聞きできたらというふうに思います。

 もう一点。今、長尾議員の方からも、制裁強化の話がありました。これは、四月十三日、北朝鮮のミサイルの発射実験を受けて、衆参両院で国会決議をいたしました。その決議の内容は、独自制裁も強化すべきだという内容も入っています。

 それは当然そういう方向も正しいというふうには思いますが、一方、家族会の方々の中にも、それだけでいいのか、やはりこの制裁だけで物事が今進んでいない状況を我々はもうちょっと冷静に考えなければいけないんじゃないかというような御意見も、マスコミを通じて私たちは触れております。

 ですから、もう一度、この制裁強化という方向にプラスして、どういうこともやはり必要なのかということを家族会の方々というのは総意としてお持ちなのかということを確認させていただけたらと思っています。

 以上です。

飯塚参考人 前段の有本さんの件については、私は余り深く理解はしておりません。しかしながら、我々が生存者、要するに家族を取り返すためには、生きていなきゃならないわけです。それに反するいろいろな情報とか、マスコミが一部言う、あるいはデマ的な話、これについては私たちとしては非常に遺憾を示すわけです。

 皆さんが生きているんだから助けるんだということについて進んでいる以上、こういったこの問題が、いわゆる消滅するような動きの件については、我々も断固として拒否していくという感じです。有本さんについても、当然、我が娘を助けたいという前提からこういった訴訟なりをしたというふうに私は感じております。

 それからもう一つは、制裁ばかりしてもという話。これはもう最近になって、実際にはあちらこちらから出ています。しかし、制裁というその意味を十分理解していない方が多いのではないか。

 私たちは長い間かかって、この問題について、北朝鮮からいろいろ報告しておりますけれども、全て北朝鮮のデマによる、いわゆるだまされ続けてきたという現実があります。これを反省すれば、当然、今までのような融和的な政策では北朝鮮にまた同じようなだまされ方をして、結果的には被害者は帰ってこないということにつながってしまいますので、いずれ交渉する段階において、この制裁が一つのカードになるというふうに私は考えています。北朝鮮が、あらゆる制裁、あらゆる締めつけによって孤立化し、白旗を上げるしかないという状態まで追い込むというのも、協議に引き出すという一つの大きなやり方ではないかというふうに考えております。

 もちろん、制裁していれば自然に解決するということはないわけです。それをきっかけとして北朝鮮との協議を引き出す、しかも、引き出したあげくは有利な交渉なり要求なりができるということを信念として持っております。

増元参考人 有本さんの裁判、あのとき私も後で見ましたけれども、とにかく結果としては、慰謝料で、支払いを命じることで終わりました。しかし、田原総一朗さんが生存を言葉にされたわけではないですし、結局生存が明らかになったわけではないので、あの発言がそのまま日本の電波を使って国民の中に流れてしまった、この罪は非常に大きいと思います。

 田原氏が恐らく死亡というふうに感じているのは、彼は宋日昊と、十二時間と言いましたか、膝を交えて話した中で、死亡をある程度肌で感じたということなんでしょうが、宋日昊は拉致問題で、八人死亡を日本に植えつけなければならない。私は、心の中でもう詐欺師というか、本当に国家の詐欺師ですから、彼はそれをやらない限りは彼の身分が危ないわけで、殺されてというか粛清されてしまうので、必死になって説き伏せています。その相手を見きわめ切れないで、その言葉を結局は信じてしまってああいう発言になったんでしょうけれども、何の根拠もなくて、そして宋日昊の言うだけのことで、死亡を国民に植えつけてしまうような発言をされた田原さんというのはやはり問題があると思っております。

 この裁判の結果も、一応勝利になっていますけれども、それを払拭できるものではないので残念ですけれども、外務省との関係からすると、私は、恐らく外務省の中にも同じような考え方の人が大勢というか、ある程度いるんだと思っております。その方たちが北朝鮮との交渉の中で阻害されているのがわかる、とにかく、交渉を積極的にやるのになかなかうまくいかない部分があるのではないかというふうには感じています。

 だから最終的に、前面に立っている方たちも、一生懸命やっている方たちもいるけれども、大方、外務省はこの生存を余り緊張感を持って考えていない部分があるのではないか、それだからこそ交渉も北朝鮮の返答待ち、日本から積極的にアプローチするような姿勢がなかなか見えないという思いをしています。

 あと、制裁に関して、家族の中からもいろいろ、交渉を優先すべきだとか、制裁を緩めて交渉をすべきだという話もありますけれども、日本政府が拉致を問題に制裁をかけたことはこれまで一回もないんですね。強硬姿勢で今まで十年間何も進まないとおっしゃいますけれども、核とミサイルの問題では制裁をかけました。しかし、拉致の問題で制裁をかけたのは一回もないんですよ。二〇〇四年に小泉政権のときに、細田官房長官が、遺骨のにせものを受けて非常に怒りの声を上げられましたけれども、あれでさえ制裁しなかったんです。これまでもそう、拉致の問題で制裁したことはありません。

 これだと北朝鮮に対して確かなメッセージが行っていない。拉致問題を解決しない限り制裁解除しないよというメッセージが行っていない。核とミサイルだったら解除しますよと。日本が拉致問題を重要視しているんだというメッセージが行っていない。こんな中で北朝鮮が拉致の問題を解決しようとする姿勢を見せるかというと、私はないと思っているんです。

 ですから、はっきりと拉致を理由に、先ほどおっしゃった、三年、四年、実務調査委員会を立ち上げていない、やっていないということを理由に、合意は破棄ということで、やるべきだと私は思っています。

谷田川委員 民主党の谷田川元です。きょうはありがとうございます。

 私は、昨年、ワシントンに皆さんと御一緒させていただきまして、ことし行けなくて本当に申しわけなかったんですけれども、昨年と比べて、かなり多くの政府要人、議会関係者とお会いになったというのを後で報告書で拝見いたしました。

 それで、共和党のロスレーティネン議員とお会いになられたということでございますが、彼女は、拉致問題が解決しない限り北朝鮮との国交は回復しちゃいかぬという法律案を提出しておりますが、まだ審議されていないと思うんですね。

 私がかねがね申し上げているのは、やはりアメリカ議会等には積極的にもっと日本の立場を常日ごろからロビー活動しないとだめではないかということを去年から言っておるんですけれども、一年間たって、この間訪問されて、アメリカ議会が今回の拉致問題に対する関心というものをさらに広げたという確かな手応えを感じているかどうか。ロスレーティネンに会ったときの印象も含めて、ちょっとその辺を、行かれた方、印象を言っていただければありがたいと思います。

島田参考人 ロスレーティネン下院外交委員長は、我々訪米のたびに毎回会ってくれるんですけれども、やはりアメリカ人拉致疑惑が出てきたということを委員長自身も明確に認識していて、特にロスレーティネンさんの補佐官のデニス・ハルピンさんという方、この方は奥さんも韓国人で拉致問題にも大変詳しいし、北朝鮮に対するハードライナーなんですけれども、彼がはっきり、アメリカ人拉致問題を、議会で公聴会を開いたり、さまざまな形で取り上げていきたいということを言っています。

 彼、ハルピンさんというのはロスレーティネンさんの懐刀に当たる人なんですけれども、ということで、下院の側でははっきりと、昨年に比べて、やはりアメリカ人の問題が出てきたというのが一つのきっかけになって、拉致に関する動きが強まっていると思うんです。残念ながら上院の方は、外交委員長ジョン・ケリーさんですが、ケリーさんは、オバマ政権第二期がもし発足すれば国務長官を狙っていると言われますけれども、オバマ政権にとって足かせになるようなことは何もしたくないというスタンスみたいで、最近、上院の外交委員会関係のスタッフに私の方からいろいろ聞いている話でも、やはりケリー委員長が北朝鮮問題に関する公聴会等を開きたがらないということで、上院では残念ながら動きがとまっているということですけれども、下院だけでも公聴会等を開いていくということは世論喚起の意味で非常に大きいですから、今後も訪米等を通じてアメリカ側に働きかけていくのが大変有意義だという感触を得ました。

後藤(祐)委員 参考人の皆様、きょうは本当にありがとうございます。

 西岡参考人にお伺いしたいんですけれども、事前に、平成二十三年十二月十九日の「今週の直言」というんでしょうか、これを拝見させていただきました。

 その中で、北朝鮮の中で急変事態が起きた場合、体制崩壊が起きた場合、いろいろなことがあり得ると思うんですが、その場合に備えて拉致被害者の皆様の安全をどう確保していくか、このためにアメリカ、韓国と事前によく対話しておく必要があるのではないかというようなお話を書かれておられますけれども、これは大変私は関心を持って拝見しております。

 もちろん外交努力で取り戻すというのが基本ではあるんですけれども、何が起きるかわからないというときに、体制崩壊が起きる、あるいは何らかの事態が発生したときに、韓国は一体何を予想し、どういう行動をとるのか、そして我々日本としては、これに対して事前にどういう準備ができるのか。もちろん、アメリカと一緒にという面もあると思います。米韓軍で何らか、北朝鮮に進攻するというようなこともあり得るでしょうし、西岡教授のペーパーによりますと、北進する米韓軍に日本政府の連絡官を同行させるとか、必要に応じて自衛隊輸送機を出すとか、いろいろなアイデアが書かれておるんですけれども、物によっては法律上の問題があったりもすると思うんですね。

 そういう意味で、事前に我々が、いざというときに備えて準備しておかなきゃいけないこともあると思うので、このあたりについての御見解をお聞かせいただければと思います。

西岡参考人 ありがとうございます。

 まず、急変事態になった場合の被害者救出については、水面下で静かに準備をしておくべきことだと思っております。

 我々は、民間のNGOとして、毎年十二月に国際シンポジウムをしておるんですが、二年前に韓国の国防研究院の、国防省、政府系のシンクタンクですが、の室長に来ていただきまして、そのことについて議論いたしました。

 韓国とアメリカは同盟関係があり、北朝鮮の事態に即してさまざまな作戦計画を準備しています。その中の一つが、五〇二九という番号がついている作戦計画がありまして、これは北朝鮮急変事態に際して韓国軍と米軍が北進して、急変事態をおさめる、混乱をおさめるという作戦計画であります。既に演習もされているという報道がされています。訪米したときに国防総省の担当者にその話をしましたら、わかっているという顔をして、しかし、作戦のことについては言えませんということでありました。

 先ほどの話に戻りますが、そのセミナーのとき、韓国の政府系のシンクタンク、国防省系のシンクタンクの研究者の方は、緊急事態になって韓国軍が北朝鮮の治安を維持する場合に、不法に抑留されている外国人を解放することは、当然、韓国軍の任務の中に入っていますというお話をされました。

 しかし、その場合に、では誰がどこにいるのか、そもそも一体何人なのかということがわかっていないと助けることができないわけです。まさに情報が勝負になるわけで、その情報は、日本人の被害者について一番持っているのは、あるいは被害者候補者に関する情報を持っているのは日本政府ですから、日本政府の情報が、混乱事態の中で米韓軍が作戦を遂行するときに生かされるような知恵を絞っていただきたいということは、実はもう自公政権時代からずっと申し上げていることであり、拉致議連にも提案をさせていただいたりして、自民党の中では一部、自衛隊法の改正案について議論があり、それが拉致議連レベルでも話されていると聞いておりますけれども、私どもとしては、一番関心があるのはやはり情報のことです。

 政府が持っている情報が米韓軍にきちんと共有されて、ここを武装解除するときはここにはいる可能性があるんだということを頭に入れて米韓軍に行ってもらえる、誰か、例えばソウルに駐在している駐在武官が一緒に行けるなりというような方法を含めて考えていただきたいと思いますが、手のうちをさらすことにもなりますので、いわゆる公開の席では余り言わない方がいいとも思います。

 以上です。

古屋(圭)委員 委員長、ありがとうございます。

 先ほど来、圧力一辺倒でどうなのかという話がありますけれども、私はもう一貫して対話と圧力。それは、対話を引き出すための圧力。この圧力を弱めて融和にしたら、対話もできずに全部だまされてしまう、だからこそ圧力が大切であるということを一貫して言い続けています。

 そこで、それぞれの参考人からも意見がありましたけれども、四月十三日のミサイル発射後、我々は、自由民主党の拉致特別委員会として、正式に、当日午後に、官邸に、官房長官に制裁強化の申し入れをいたしました。官房長官本人は、前向きに検討するということでございましたけれども、その後、何の返事もありません。

 そこで、まず、この中で大きな柱は二つです。

 まず一つは、在日朝鮮人の再入国の禁止ということ。これは、既に先ほど西岡参考人の方からもありましたけれども、新たに五人の人間を再指定すべきだ。なぜか。実は、この五人が頻繁に北朝鮮に行ってお金を持っていっているんですね。それで、携帯金額、輸出金額は、十万円の限定がありますが、上限がありません。したがって、幾ら持っていったかよくわからない。当初では、今、西岡さんから一億三千万円という話がありましたけれども。

 そこで、まず財務省に、四月に金日成の生誕百年がありまして、大々的なイベントがありましたけれども、このときまでに一体幾ら携行していったのか、その届け出が全部で幾らだったのかということをまず一点、お伺いしたいというふうに思います。

 それと、政府には、この制裁強化について、我々が申し入れしたにもかかわらず、何らアクションがまだありません。その辺についてどういう動きになっているのかということをお伺いしたいということであります。

 ついでにいいですか。

中津川委員長 どうぞ、続けてください。

古屋(圭)委員 お許しいただいたので、ちょっとテーマが違うんですけれども、特定失踪者問題関連についてお伺いをいたします。

 今、荒木さんあるいは竹下さんの方からもお話がありましたが、山本美保さんの件です。

 DNA鑑定について公にしてはいけない、これは、いわば刑事訴訟法の四十七条で、「訴訟に関する書類は、公判の開廷前には、これを公にしてはならない。」というのが根拠だと思いますが、しかし、ただし書きがあって、公益上の必要その他事由があって相当と認められる場合にはその限りではない、こういうふうにうたわれております。

 拉致が濃厚になれば、これは、国、政府としても最重要課題の一つとしてこの拉致問題は取り組んでいます。そういう意味からすると、相当と認められる、公にする相当と認められるという事由には十分入ると思いますが、この点についての見解をお伺いしたいというふうに思います。これは警察の方で結構です。

 以上です。

柴生田政府参考人 お答え申し上げます。

 北朝鮮を仕向け地として十万円相当額を超える現金等を携帯する場合には税関への申告が必要となっており、北朝鮮を仕向け地として本年四月に税関に対してなされた申告件数は、正確には百九十四件、金額は二億一千四百七十万円でございます。(古屋(圭)委員「四月分だけね」と呼ぶ)はい、本年四月分だけです。(古屋(圭)委員「では、例えばことしになってからはどうですか」と呼ぶ)ことしになってから、ちょっと微細に申し上げますと、ことし一月は十七件で三千二十万でございます。二月は五十九件で六千三百四十万円でございます。それから三月は四十二件で三千百六十万円でございます。

 以上でございます。

木村政府参考人 制裁につきましての古屋先生の御質問にお答え申し上げます。

 制裁措置につきましては、御承知のように、政府全体で姿勢を決める性格のものでございますので、私どもの拉致問題対策本部事務局から適切にお答えできるかどうかわかりませんが、その上でお答えをさせていただきます。

 御承知のように、北朝鮮に対する措置というのは、核、ミサイル、それに加えて、北朝鮮が拉致問題に誠実な対応をとっていないということもその理由として、実施をしてきております。拉致被害者御家族の中に、拉致問題での非常に不誠実な北朝鮮の態度を理由とする追加制裁を求める声があるということについては、その御家族のお気持ちについては重く受けとめさせていただいております。また、先日のミサイル発射を受けまして、自民党からお申し入れをいただいたこと、これについても、もちろん政府として重く受けとめさせていただいております。

 今後の対応についてでございますが、結局、拉致問題解決のためにいかなる手段が効果的かということについて、拉致、核、ミサイルといった諸懸案に対する北朝鮮の対応あるいは国際社会の動き等を踏まえつつ対応させていただくことになるというふうにお答えをさせていただかざるを得ませんが、一言、付言させていただければ、松原大臣でございますが、四月の十六日の参議院の拉致特におきまして、質疑の中において、自分としては、ミサイル発射を受けて、家族の気持ちを重く受けとめて、これは追加制裁をするべきだということを、四月十三日の閣僚懇において松原大臣から発言したという答弁をさせていただいているところでございます。

西村政府参考人 DNA型鑑定書の件についてお答え申し上げます。

 まず、大前提といたしまして、本件DNA型鑑定は、刑事訴訟法等の法令の手続に従いまして、対照試料としての血液採取の必要性を提出者に説明するなどした上で行われたものでありまして、鑑定方法や関連データ、また、それに対する評価も含めて、信頼性の極めて高いものと私自身は受けとめております。

 その上で、山梨県警察におきましては、刑事訴訟法四十七条の趣旨が、捜査、裁判に対する不当な影響を引き起こすことを防止することにあるとされていることなどに鑑みまして、DNA型鑑定書の公開をこれまで行ってこなかったところであります。

 他方で、山本美保さんの事案は、私ども、北朝鮮による拉致の可能性を排除できない事案と考えておりまして、今後とも捜査に全力を尽くす観点から、DNA型鑑定書の内容について、引き続き強い御関心をお持ちの御家族等の御理解を得るため、そして、捜査に御協力をいただくために、DNA型鑑定書の取り扱いも含めまして、どのようなことが御家族等との間で可能か、引き続き検討してまいりたいと考えております。

古屋(圭)委員 今私が質問を申し上げたのは、ただし書きのところですね。必要があって相当と認められる場合、私はそういうふうに判断しますが、そこについてはどういう御見解なんですかということです。

西村政府参考人 公開の判断に当たりましては、仮に公開した場合に、今後、鑑定人の御協力を得られることがどうかなど、同鑑定書の公開が及ぼす影響等を十分考慮する必要があると考えております。

櫛渕委員 民主党の櫛渕万里でございます。

 きょうは、参考人の皆様、ありがとうございます。

 先ほど前半の方で、増元参考人の方から、日本が解決に向けて主体的に動くべきだ、アメリカや諸外国を巻き込むぐらいでなければいけないんだというお話がございました。私も全く同感でございます。そのためには、やはりアメリカだけでなく、国際社会との連携ということも、私は一つ大変重要なことであると思うんですね。

 我が党には、御存じのとおり、拉致対策本部や議連にあわせて、北朝鮮難民と人権問題に関する議員連盟もございます。この議員連盟は、二〇〇六年に制定されました北朝鮮人権法を、野党時代、主導させていただいた議員連盟でありますが、私は今、事務局長をさせていただいておりますけれども、昨年の十一月にワシントンでも、この国際議員連盟というのがございまして、来月、六月にもソウルで会合が行われる予定になっております。

 その中で話されておりますのは、例えば、去年の十一月でありますと、ポーランドのアウシュビッツの強制収容所の実態や、あるいはチャウシェスク政権下のルーマニアの人権侵害の様子ということもあわせて、やはり拉致問題とあわせて北朝鮮の軍事的な独裁下にある人権侵害そのものに対する国際行動というものも共通の議題として話しているところなんです。

 その中で、この間、特に人権問題をやっているNGOから御提案ありますのは、北朝鮮における人道に対する罪を調査、査察する国連の事実調査会、これの設置ということを国際連携で取り組むという話がございます。既に、EUや欧州議会では、これの設置を支援表明する決議採択を行っているわけでありますけれども、我が国ではまだまだ一部その対応に慎重な声もある中で、増元参考人と飯塚参考人の方に、家族会、救う会ではこのことにどのような御意見をお持ちか、お聞かせいただけますでしょうか。

増元参考人 ありがとうございます。

 ICCに提訴する実務調査委員会、我々も、最初聞いたときに、救う会とも相談し、この事実調査委員会が目的とするのは、金正日をハーグで国際刑事裁判所に提訴するための実務調査委員会なんですね。それが大前提で調査委員会を設置してくれという要望なんですけれども、そうすると、私たちが交渉をしなければならない北朝鮮政府のトップである金正日を告訴するぞという姿勢を見せながら、帰してくれという交渉をしなければならない、ちょっと矛盾する部分が出てくるだろうと。

 という点で、家族会、救う会では、この運動に関して積極的に活動をするというのは少し控えよう。ただ、活動されている皆さんには、それは、我々としても心情的にはわかりますので、やっていただくことは必要でしょうけれども、一つ、拉致という問題を抱えて、被害者が向こうにいる限りは、これをまず本当に救い出すということが先決なのであって、生存のまま救い出すということが先決であって、金正日を提訴するための実務調査委員会をつくるというのは家族会と救う会の活動としては少し違うのではないかという点で、一歩だけ引かせていただいている状況です。

飯塚参考人 まさに今、増元さんが言ったとおりでございまして、この日本人拉致というのは、いわゆる国家犯罪という大前提があって、そこからスタートする問題であるわけですね。したがって、それが明確ではっきりしている以上、我々はそれに向けて進んでいかなきゃならない。

 人権というのは、大きく、幅が広く、深いものであります。我々が言っているのは、この人権問題の最たるものは国家犯罪による拉致だというふうに私たちは位置づけて、それを解決するということがまず先決だということを常に思っていまして、今活動なさっている方については、私たちはあえて反論したり反対する立場ではございませんし、言ってみれば、一緒に闘っていこうという気持ちはあります。

小野塚委員 ありがとうございます。民主党の小野塚勝俊と申します。

 先ほど西岡先生からお話のありました金融制裁というのは、これは本当に効果があると思います。

 特に今、正恩体制になって、体制を整える意味で、今までもやっていたことだと思いますが、党を支える、またはその幹部の人たちにお金を配る、プレゼントしなければいけないという意味においては、金家にお金が集まらなければ彼らは体制を維持できないわけであります。その意味において、党の三十九号室ということを先ほど御指摘いただきましたが、これは本当に重要なものだと思います。

 私、ちょっとだけ申し上げますと、以前、日本銀行に勤めていたときに、北朝鮮の信用組合の破綻処理というのを担当者でやりました。二〇〇〇年です。それ以降、二〇〇二年と続いていったわけでもありますので、ここはぜひ、金融に関しては、真綿で絞めるようにがんがんやっていかなければいけないと思っています。

 その意味において、先ほど増元さんがおっしゃられたように、もちろん、日本が主体的にやっていかなければいけないのは当然です。また、アメリカの話は、もう先生方からもお話がありました。

 ただ、私が思いますのは、ヨーロッパが弱いというのがすごく認識としてあります。例えば、ヨーロッパの企業が北朝鮮に、企業で融資したり立地したりとか、または金家の口座がヨーロッパ、例えば、国名を挙げるとちょっとあれかもしれませんが、ベルギーであったり、そういうところにあるとか、そういう話を聞きます。

 そういうところにおいて、今、櫛渕先生がおっしゃったように、国際社会を巻き込む。その中でも、ヨーロッパの国々の認識というのが弱い上に、そこが筒抜けになってしまっているのではないかという危機が私にはあります。

 その意味において、西岡先生、ぜひ、その点の、三十九号の話であったり、またヨーロッパに対する御認識、また、増元さん、先日ヨーロッパの人権の、欧州議会に行かれていると思いますので、ヨーロッパに対して皆様方が思われるところをぜひお教えいただければと思います。

西岡参考人 鋭い御指摘だと思います。私も全く、先生の今おっしゃったことは同感であります。

 ただ、金融制裁の面については、アメリカが愛国者法を発動したときには、愛国者法で、北朝鮮の銀行をターゲットにしているのではなくて、北朝鮮と取引している世界じゅうの銀行がターゲットになりましたので、おっしゃったヨーロッパにある口座についても、それを持っている銀行がかなり緊張をした。北朝鮮も、いろいろな秘密口座があるわけですが、かなり移しているという情報は持っておりますし、アメリカの情報機関は継続してその口座を追いかけているとも聞いております。

 例えば、日本からお金が幾ら行っていたのか。バブルが最盛期の一九九〇年には、日本銀行なども調査されたと私は聞いておりますが、内閣調査室の調査によると、千八百億円から二千億円ぐらい北に流れていた。香港からマカオの銀行に行って、それからヨーロッパの銀行に行く。マカオの銀行は電算化されていないんです。手書きなんです、帳簿が。そこで追跡をかわすことができる。入り口、出口に使っていたんですね。そういうことをやるためにも、ヨーロッパにより一層協力を求める必要があると思います。

 我々としては、ちょっと働きかけが弱かったのは認めざるを得ないところですが、今回増元さんがヨーロッパに行かれましたので、その点については増元さんからお話があると思います。

増元参考人 ありがとうございます。

 政府の働きかけにより、欧州議会の人権小委員会で証言をさせていただくことができました。

 EUに関する私たちの感触なんですけれども、ずっと、ヨーロッパの国々が北朝鮮との国交を回復している中で、EUの方に北朝鮮の今の惨状を訴えるのは必要だろうと思って、何年もやってはいるんですが、ジュネーブでも、「めぐみ」という映画、あれを上映していただいたり、そして拉致の問題の協力を要請したりはしているんですが、なかなかうまく広がっていかない。

 これは今回もそうでしたけれども、やはりヨーロッパにとっては極東の問題、本当に小さな国の問題であるということ、そして、中東の方とかアフリカの方の人権問題の方がやはり直接関係をする、そういう点で多分余り関心がないのではないかという思いだったのです。

 今回、この小委員会で発言させていただいて、私たちは、ヨーロッパから拉致されている人も一緒に助けるつもりというか、そうしなければならないということを申し上げたにもかかわらず、そして私は資料も提出しました。でも、私に対する、ヨーロッパの拉致被害者に関する質問はなかったですし、人権小委員会で大きく取り上げているのは、脱北者の問題と、それから北朝鮮国内の強制収容所の問題、北朝鮮政府が北朝鮮人民に行っている非常な人権抑圧の問題、これを重要視して、拉致の問題という観点が少し抜けている部分があると思っています。

 ですから、今後、EUの協力、特に、先ほど申し上げましたように国交を結んでいる国が多々ありますので、そういった国にも協力を求めていくためには、ヨーロッパの各国々から北朝鮮に対する拉致の問題の解決を促すような、あるいは本当に強制的なものが必要なのではないかというふうに思っておりますので、ぜひ御協力というか、国会の中でも審議していただきたいと思っております。

竹内委員 公明党の竹内です。

 アメリカとの関係で、政府参考人にお聞きしたいんですが、結局、先ほどの増元さんのお話にあったように、ハーグ条約との関係で、そういうことで足を引っ張られるのはまことに日本としては残念だというふうに思うんですね。やはり議会、我々国会としても、ハーグ条約の批准を早急に、万難を排してやるべきだと私は思っていますし、その意味で、アメリカの上院等の雰囲気、これがなければ拉致を支持しにくいというふうな雰囲気が向こうにあるのかどうか、その辺のアメリカの議会の様子、政府の様子、雰囲気をちょっと教えていただけますか。

新美政府参考人 お答え申し上げます。

 アメリカの議会の雰囲気、動きでございますけれども、まず、拉致問題につきましては、今回、議員団、そして家族会の皆様が五月に訪米されまして、いろいろ議会の関係者の方々とも接触をされたわけですけれども、私ども政府としましても、ワシントンの日本大使館等を中心として、その事前にも事後にも、この問題について我が国の考え方を浸透させる努力を行っております。

 そういう中で、全体として申し上げれば、アメリカの議会関係者を中心に、北朝鮮による重大な人権侵害である拉致問題について、我が国の立場に対する理解と協力の姿勢が示されるようになっていると思います。

 他方、先生御指摘がありました子の親権問題につきましては、これは確かに前々から、特に数年前から、いわゆる子の親権問題について、被害者であるというアメリカ人の方、要するに、アメリカ人の国籍を持っている人が、主として日本人、特に日本人の女性と結婚して、そして結果として、その日本人の女性が子供を連れて日本に帰ってしまったというのがアメリカの議会の中で日本との関係において大きな問題になっていることは事実でございます。そして、今回の皆さんの訪米のときにも、特にキャンベルの発言もありましたけれども、その一部を並列したりつなげたりして述べる人がいないわけではございません。

 ただ、そのような意見につきましては、言うまでもなく、我が国の国家主権の問題であります拉致と、要するに、子の親権というのは私人間の問題でございますので、それは、同一の文脈で論じるということは論理の飛躍ですし、全く受け入れられないということは、今までも申し上げておりますし、これからも申し上げていきたいと思っております。

江藤委員 委員長、ありがとうございます。

 二回目になりますが、今度は政府参考人の方にお伺いをさせていただきたいと思います。

 お話がありましたように、ことしは勝負の年だということを新しい大臣が、非常に信頼の厚い大臣が宣言をされて、そして参議院の方でも追加の制裁措置が必要だということを言われたということでありますので、当委員会としても、それに基づいて一致協力してやらなければならないというふうに思うわけであります。

 まず、外務省には、この連携の強化について、執行率の話をさっきしましたけれども、きちっとちゃんとできているのかどうか、このことについて確認をしたいことと、それからアメリカと連携した金融制裁強化、これについても、お答えできる部分があればお聞きをしたいと思います。

 それから、外務省に対しましては、国連と連携した圧力、国連とどういう連携をとって圧力をかけていくのか。例えばアメリカにおいても、国際機関が援助することも反対しているというふうな事例も過去にあるわけですから、あらゆる機関を使って圧力をかけていかなければならない。対話はもちろん大事ですけれども、このことをお聞きしたいと思います。

 それから、追加の制裁が必要だということでありますので、そうなってくると、具体的にはやはりお金の問題、先ほどから何度も御指摘がありました。四月に急激に送金がなされたということは、かなりお金に窮しているということの証左でありますので、ここはきっちりやらなければならない。筆頭からありましたように、再入国の禁止ということはもとより、それから送金も、上限を切ってはおりますけれども、もうちょっとこれも数字的に、いわゆる口座間のお金の融通がどれぐらいあるのかということもぜひ私は公開をしていただきたい。そして、総額は幾らなのかということを明確にしてほしいというふうに思います。

 それから、法務省に対しましては、人の往来ですね、再入国。このことについてどのようなハードルがあるのか、我々が政治家として政治判断をすればそれはできることなのか、それとも法制上非常にハードルが高いものなのか。

 政府参考人の方から御答弁を、今回はお願いします。

木村政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、連携の強化、二点あったと思います。

 一つはアメリカと連携しての金融制裁の強化、その前が、これは政府の全体、政府の中でとにかくあらゆる力を動員して政府一体として連携して取り組むべきという御質問と承りました。

 まず、政府全体としての連携ということにつきましては、これまでも総理を本部長とする拉致問題対策本部をつくりまして政府全体で最優先課題として当たってきたところでございますが、最近、特に関係府省連絡会議というところのもとに七つの分科会を設けております。そこで本当に政府全体、横断的なさまざまな省庁に政務レベルも含めて御参加いただきまして、政府として、各省として、それぞれつかさつかさでどのようなことが拉致問題解決のためにできるのかという観点から検討を、今まさに進めているところでございます。

 こうしたことについて効果が早急に出ればというふうに思っておりますし、事務局を務めます私どもとしても、最大限努力させていただきたいと思っております。

 それから、アメリカと連携しての金融制裁ということでございますが、制裁について私から的確にお答えできるかどうかはわかりませんが、少なくとも、アメリカの当局との間でいろいろな形で、金融について例えばどういう措置がある、そういうことについて、どのような効果があるのではないかというような連携について、情報交換については私どもでも不断にさせていただいております。

 例えば、昨年の十一月ですけれども、私がワシントンに参りまして、財務省の担当者とまさにそういう金融制裁、アメリカのとった金融制裁の効果といったことについても情報交換させていただきました。そのほかにも、ちょっと名前は出せませんが、さまざまなところと非公式に情報交換はしているところでございます。

 いずれにせよ、我が国の措置と相まって、北朝鮮との間で実効性ある対話をするためにはどのような措置が適切なのかという観点から、さまざまな努力をしてまいりたいと思っております。

新美政府参考人 今先生から御質問がありました各国との連携について、若干補足説明をさせていただきたいと思います。

 アメリカにつきましては、本年四月の日米首脳会談におきまして、野田総理の方から拉致問題に関する支持、協力をアメリカに求め、それに対して、オバマ大統領の方から今後とも協力していきたいという御返事をいただいております。

 そして、先々週末でございますが、G8首脳会談、この場においても各国首脳の前で総理の方から、この拉致の問題についての協力と支援をお願いしているところでございます。

 国連についてもお話がございましたが、先ほども少しお話に出ましたが、国連におきましては、我が国は毎年EUと共同で、国連総会そして人権理事会に、それぞれ北朝鮮人権状況決議を出しております。昨年の国連の総会本会議におきましては、過去最高の百二十三票の各国からの賛成を得て採決されたところでございます。

高宅政府参考人 再入国の問題でございますが、現在行っておりますのは、在日の北朝鮮当局の職員による北朝鮮を渡航先とした再入国は原則として認めないという措置でございます。

 これにつきましては、いわゆる北朝鮮当局ということに対するものとして、北朝鮮の意思決定に関与し得る立場にある、こういう方の再入国を認めないという立場をとっているところでございます。これを超えまして、それ以外の方に広げるということにつきましては、一段のハードルがあるんだろうとは思います。

 ただ、いずれにしましても、先ほどの御答弁にもありましたように、国際社会の動きや関連の情勢などを注視しながら、これは政府全体として決定していくべきことだろうと認識しております。その上で、そういうことであれば適切に対処をしていきたいと考えております。

高岡政府参考人 北朝鮮への送金の状況についてお答えさせていただきたいと思います。

 日本から北朝鮮への送金等の支払い、それから現金等の携帯輸出については御案内のとおりでございますけれども、報告や届け出の基準額を過去二回にわたって引き下げておりまして、厳しく対応しているところでございます。

 その届け出ないし報告があった金額につきましては、携帯輸出の届け出の方は先ほど関税局長より御答弁申し上げたとおりでございますが、北朝鮮向けの送金でございますが、それにつきましては、報告があった支払いの実績は、平成二十二年度で申しますと五件、二千三百万円、二十三年度は十二件、七千七百万円でございます。

 北朝鮮向けの支払いと申しますのは、銀行間の支払いということで今御質問があったかと思いますけれども、日本にございます銀行につきましては、北朝鮮の銀行との、いわゆるコルレス関係と申しますけれども、銀行間の決済の取り決めというものがございません。そういうことでございまして、報告にございます支払いというものは、基本的には、第三国にある銀行に開設されました北朝鮮関係者の口座への送金という形で行われているのが基本であるというふうに承知しております。

 以上です。

高野委員 民主党の高野守でございます。

 正直に申し上げまして、私はこの拉致問題、もちろん重要な、対応していかなくちゃいかぬというふうに思って、重い認識を持っておりましたけれども、今まで真正面からこの問題に取り組んできたとは言えない一人でありまして、反省もいたしております。正直、今国会で初めてこの委員会に所属をさせていただきまして、多少なりとも勉強もさせていただいてきました。

 非常に難しい問題であるということは、古屋先輩や皆々様も努力されてきておりますし、結局、対話と圧力ということ以外に私はないのかなというふうに思っておりますけれども、その中で、さきの大戦でさまざまな犠牲者、亡くなった方々だけでなく、子供を失った方々を含め、そういった戦争での犠牲者と同じように、本当に深い悲しみと苦しみの中に皆様方はいらっしゃるんだろうというふうに思います。

 ただ、ちょっと西岡先生にお聞きしたいんですけれども、先ほど救出の話が出まして、私もそういう事態も想定しなくちゃいかぬというふうに思っている一人でありますし、それからまた、この先のさまざまな政府補償のことも、将来的に、こんなことを言っては失礼なんですけれども、考えなきゃいかぬというふうに思っております。ある意味、戦争のいろいろな処理といいますか、そうしたことよりも難しい問題もはらんでいる。多くを公の場で言えない部分もあって、私は拉致特の委員になって、どこまでどういうふうな質問をして政府答弁させたらいいのかということも正直、ありました。今もあります。

 そこで、ただ、何もしないわけじゃなくて、松原大臣も発言をされて、あれは一つのいい発言だったというふうに思っているんですが、当委員会も含めて、この国会、あるいは委員会の機能、どうしたらいいか。

 それから、私は、きょうは時間が五分ということですから絞ってお聞きしますけれども、国内的な最低限の法整備というのはやはり必要だと思うんですね。

 国際間で協力し合っている、国連との連携とかありますけれども、それは二つ、私は思っておりまして、一つは国際的な枠組み。交渉でやっておりますけれども、何らかの国際間での共通の、国際法までいくかどうかは別に、何か工夫ができないかということが一つと、国内の中での、表でこうやって委員会で出せる部分、出せない部分の、官邸もやってはいると思いますけれども、前政権も含めてやっていると思うんですけれども、何か知恵を、最低限の法整備も含めて、ここまでは当委員会等でもやっておくべきだとか、そうした、もう既におっしゃっていること、もう既に皆さんの質問で答えている部分もあるわけですが、ちょっとそこだけお聞きをしておきたいというふうに思います。よろしくお願いします。

西岡参考人 まず、この委員会でどのようなことができるかということ、さまざまなことを今までしてくださっていることは承知の上でですが、この委員会をつくってくださいと先生方にお願いしたときに、実はお願いしていたことがあります。

 先ほども言いましたように、何人いるかさえまだわかっていないんですね。では、一体何人なのか。荒木さんのところも国内でいろいろ調査をしているわけですが、そのことについて、二〇〇二年の十二月に、読売新聞で、当時の警察の幹部の人が、自分が、昭和五十三年、政府の中で一番最初に日本人が拉致されているという報告をしましたという衝撃的なインタビューが出ているんですね。匿名ですが、読売新聞に話ができるんなら、こういうところに来て話をしていただくことはできないかと私は内々にその人に当たったんですが、今のところ、オーケーされていないんですが、そういう当時のこと。

 その人はなぜわかったかというと、実は、北朝鮮の工作船と日本にいるスパイの間でやりとりしている電波を傍受していたという話を読売新聞でインタビューされています。そういうような、もちろん過去の責任を問う段階で、今ではなくて、まだ人質を取り返さなくちゃいけないということはありますけれども、しかし、実態として、では、過去の電波がどれくらいの頻度でどれくらいあったのか等について、秘密会などのやり方もあり得ると思うんです。それは、公安警察の方とよく話をしながらだと思いますけれども、実態が何なのかというのをわからないで助けることはできないという点では、国政調査権の中で、一体何人ぐらいされていたのかということについて議論を、それなりの政府の中にある資料についてしていただけるというのが一つだと思います。

 それから、国際連携については、やはり国際社会の中で一番強制力を持つのは安保理事会の決議です。核やミサイルを北朝鮮がやったときに、日本の外交当局は努力して、北朝鮮に対する非難決議の中で拉致問題も書き込むように努力をしているんですね。それに反対しているのがいつも中国政府です。したがって、拉致問題を含む人道問題にも考慮するという文章を入れようとしたんですが、拉致問題というのを取れということになって、人道問題ということになってしまっているのが今の現状です。

 やはり強制力がある国際連携は安保理事会の決議ですから、そこで国際社会が北朝鮮に対して制裁を決めるときに、拉致も理由に入っていると言わせるような、より一層の努力、あるいは中国に対する談判も必要じゃないかなと思っています。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 先ほど増元さんに調査、再調査の問題について質問したことに関連して、飯塚参考人に伺いたいんですけれども、冒頭、お話の中で、やはりいまだに糸口が見つからない、そういう意味では政府批判にもならざるを得ないという、あえてそこまで言及されたということで、思いを受けとめたんです。

 二〇〇四年の十一月の第三回の日朝の実務者協議の当時に、先ほど私が伺った市川修一さんに関する疑問点について、我が党の同僚議員に対する国会答弁で、外務省は、先方、つまり北朝鮮との間でいろいろとやりとりをしたというふうに答えていたんですけれども、その後、外務省が提出したこの記録というのを見てみますと、当時、日本調査団がそうしたことを具体的に北朝鮮にどこまでただしたのか、ただしたという記述が見当たらないわけなんですね。

 それで、時間の関係で割愛しますけれども、それぞれ安否不明の拉致被害者の方々についても、北朝鮮側の説明というのは、私が読んでも到底納得できるものじゃないというのは明らかだと思うんですが、日本政府についても、そういう場で北朝鮮にただすべきことをきちんとただしてきたのかということも、やりとりを見ていると思うんです。

 そこで、改めて日本政府に対して、飯塚参考人が、今の時点でそういう調査とか再調査にかかわっての要望ということがあれば伺いたいと思うんですが、いかがでしょうか。

飯塚参考人 私たちは、この件については、あらゆる問題、あらゆる角度から日本政府に要請をしてきました。

 そういう中で、やはり情報が欲しいという内容もありまして、実は、それに関する予算化が昨年度からなされまして、情報をとるためのお金、逆に言えば、その予算を全部情報に費やしてくれというお話もしました。だがしかし、情報というのは非常に難しいらしくて、情報をとったとしても、それを公表すべきなのかどうかという問題が必ず出てくるという。

 政府の方、あるいは外務省の方との約束では、各家族単位の個人的な情報はその家族にお知らせします、しかしながら、情報の信憑性の確率が八割ないとなかなか発表できない、そういった何か制限もあるようなんですが、確かに、情報については、非常に、外務省を含めて、拉致対策本部も含めて、今結構とっているようです。しかしながら、先ほど言ったように、それが全体にオーソライズされないものですから、各家族の方は何らかの話があるというふうに認識しておりますし、私自身も、田口八重子に関する情報は直接聞いています。

 そういう面では、日本政府に対しては、具体的にこうやれ、ああやれという話は私ちょっとできませんが、当初お話ししましたように、あらゆる手段、あらゆる戦略を持って、いわゆる水面下、水面上、あるいは取り巻き含めて、全てのこれにかかわるいい情報があれば、それについてあらゆる方向から検討してくださいと言うしかないんですが、それは今実際にお願いしているところでございます。

渡辺(義)委員 ありがとうございます。

 二度目も引き続き山本さんの件で、今度は政府参考人にお尋ねをさせていただきます。

 先ほども古屋理事に対する答弁についてでも、この事件に関しては北朝鮮による拉致の疑いが強いんじゃないか、引き続き捜査を強化していきますよというような御答弁でございました。それでは、現在、捜査はどのぐらいの体制で行われていて、この捜査の指揮はどこがというか、誰がというか、とっておられるのか。

 それと、今まで答弁書を三回いただいております。枕言葉のように、山梨県警察においてはという言葉が必ずついてくるんですけれども、これは確認でございますが、これは警察庁についても山梨県警察と同様の見解、判断だと認識してよろしいですか。イエス、ノーでお答えください。

西村政府参考人 まず、捜査の体制についてのお尋ねにお答え申し上げます。

 山梨県警察におきましては、本件が北朝鮮による拉致の可能性を排除できない事案であるということに鑑みまして、警察本部長が直接指揮をとる本部長指揮事件として鋭意捜査を進めているところでございます。

 なお、具体的な捜査の人員につきましては、その時々の捜査の内容に応じて増減するところでありまして、一概にお答えすることは困難であるとの報告を受けております。

 それから、答弁書に関してのお尋ねでございますが、警察庁としましては、山梨県警察において検視及び司法解剖の結果得られた血液型、性別、推定年齢、推定身長等に関する事項、DNA型鑑定等の結果等を踏まえ、御指摘の身元不明死体が山本美保氏の御遺体であると判断したものと承知しております。

 これは、いずれも山梨県警は鑑定人あるいは専門家について確認を行っておりまして、警察庁といたしましても、いずれも信頼できる方であるというふうに認識をしております。

中津川委員長 古屋圭司君、最後にひとつ総括的な質疑をしてください。

古屋(圭)委員 今、渡辺委員からの質問で、DNA鑑定は極めて正確であり、なおかつ信頼に足りるものであるということなら、何で刑事訴訟法四十七条のただし書き、やはり拉致の可能性が極めて高いということなら、まさしく日本の一番最優先の課題の一つであるという拉致問題の話なんだから、これはなおさら公表できない理由にならないと思うんですけれども、この辺について、参考人さんあるいは警察の方で意見があったら教えてください。

 それからもう一つ、増元さんがアメリカに行かれたとき、例のキャンベル国務次官補とのときに、キャンベル氏が親権問題と拉致問題を同一視してお話しされた。これに対して我々はかなりクレームをつけたわけですけれども、同じアブダクトという言葉があるからそういうふうになったんだなんて言いわけも聞きましたけれども、ちょっとそれはおかしな話です。

 そこで政府にお伺いしたいんですが、キャンベル氏あるいは国務省関係者が来ていると思いますので、この問題について、日本の政府として正式に抗議なり話をして、相手側からそれに対する弁明というのはあったんでしょうか。これをちょっとお伺いしたい。

 それから、ロスレーティネン議員は、非常に拉致問題に関心を持っている極めて少ない議員の一人ですね。この前、韓国に来ました。島田先生のメルマガによりますと、台湾には来るけれども、どこに行くかよくわからないというような、かなり冷たい答えだったということを聞きましたけれども、そんなことが書いてありました。

 実際に、政府側から、例えば松原大臣、やはりこれは国会議員でありますから、ぜひ来てほしいとか話をしたいとか、何かそういうアプローチをされたんですか。完全に日本を素通りしていますので、私はちょっと首をかしげたいんですが、本当に日米連携をしていこうと思えば、アメリカにおける議会のキーマンですから、やはりそういうアプローチがあってしかるべきだったと思うけれども、この辺についてどういう対応をされたのか。

 以上三点、お伺いしたいと思います。

荒木参考人 ありがとうございます。

 今、古屋先生がお話しいただいたとおりだと思うんですが、先ほど西村警備局長の答弁を聞かれておわかりになった方も多いかと思うんですけれども、警察は、この件に関して、最初からこの遺体が山本美保さんであるということを断定した上で、しかし、これは拉致問題としてやっているということを言っております。私どもは、それが断定できないということに対して言っているわけですが、あえてそれを拉致問題の可能性があるとしてやっているという答弁をすること自体が、これに対して警察が反論が一切できない理由であろうというふうに思っております。

 私がこういうことを言うのは、国の治安を預かっている警察に対して、そのやっていることの根本が間違っているという言い方をしているわけですから、もし私の言っていることが間違いであれば、とんでもない冒涜をしているわけですから、それを明らかにするということは警察として当然のことであると思います。しかし、この八年間、ただの一度も、我々にとって納得のできる回答はございませんでした。

 さらに、それだけでなくて、非常に許しがたいと思われるのは、特に八年ぐらい前に、この問題が明らかになり始めて、おかしいという話になったときに、警察の一部の人間が、場合によっては議員の方も回って、これは家族のトラブルによって自殺をしたんだということを言って回ったりしているということでございます。ひょっとしたら、今後、委員のところにもそういうことを言って回る人がいるかもしれません。

 山本美保さんのお父さんは警察官でございまして、その警察の仕事の中でやって、そして身元不明遺体等も全部調べた上で、そうではないということはもうわかっていたことです。しかし、お父さんが危篤になって、もう亡くなる直前になってからこの問題が始まっているということも、まさにこの本質を明らかにしていることであろうと思います。

 済みません、あともう一件だけ言わせていただきたいんですが、先ほど木村審議官のお答えの中で、予算の執行の問題、委員からも御質問がございました。使うことがあれば一気に使うという話でございましたが、特定失踪者に関して、まともな調査にお金を使っているということは、私は、正直言って、とても思えません。

 きょう、傍聴人の中で、特定失踪者の生島孝子さんのお姉さんがお見えでございますけれども、生島孝子さんは平壌の駅のすぐ近く、高麗ホテルのすぐ近くで目撃をされたという証言がございます。その方について聞いているか、あるいは、その方でなくても、この場所というのは非常に日本人もたくさんいる場所ですから、日本人とか在日の帰国者とか、そういう方々でひょっとしたらまた別に見ている人がいるかもしれない。それを調べるということは十分にできるはずです。古川了子さんについても、当然、安明進の目撃証言等があるわけで、ほかにも見ている人がいるかもしれない。

 しかし、ほかの特定失踪者の方々も含めて、それについて政府が、これだけ余っている予算があるのにもかかわらず、調べているということは、私は寡聞にして聞いておりません。改めてこの点は今後ともこの委員会で追及していただきたいというふうに思う次第でございます。

西村政府参考人 山梨県警察におきましては、過去、平成十六年以降でありますが、二度にわたりまして御家族等に対して、DNA型鑑定書を提示して説明を行っております。また、DNA型鑑定を行った鑑定人におきましても、平成十六年にこの鑑定書を提示して直接御説明をしております。

 他方で、先ほど古屋先生から御指摘のありますように、公開の問題につきましては、繰り返しで恐縮でございますが、公開した場合に今後の鑑定人の御協力等、鑑定書の公開が捜査に及ぼす影響を勘案し、慎重な判断が必要だと考えております。

 いずれにいたしましても、御家族等の御理解を得て捜査に御協力いただくために、DNA型鑑定書の取り扱いも含めまして、どのようなことが御家族等との間で可能か、検討してまいりたいと考えております。

新美政府参考人 今御質問がございましたキャンベル次官補の発言でございますけれども、もとより、今先生からも御説明があったとおりでございますけれども、拉致問題と彼らの親権問題を同一の文脈で捉えることは論理の飛躍でございますし、私ども、国際社会における拉致被害者救済に向けての努力を損ないかねないおそれもあるということで、適切なものではなかったと考えております。

 こういう立場は、キャンベルも含め、アメリカ側にも伝わっていると理解しております。そして、実際その場においても、キャンベルが退席した後、ズムワルト次官補代理等から弁明があったと聞いておりますが、その翌日、八日の国務省の正式の記者会見の場におきまして副報道官の方から、その点について、キャンベル次官補の発言に関連して、米国は北朝鮮による日本人の拉致問題と親による子の奪取問題を決して結びつけていないということを述べさせていただきたいというふうに、はっきり説明がされております。

木村政府参考人 古屋先生のお尋ねにありましたロスレーティネン委員長の来日招請に関してでございますが、この件につきましては、昨年来、日本でのシンポジウム等に来日いただきたいということで、国会から、あるいは政府から、招請をしているところでございます。

 実は、大したことではないかもしれませんが、昨年の十一月、先ほど申し上げましたように、私、ワシントンに出張させていただきましたときにも、幸運にもロスレーティネン委員長とのアポがとれまして、委員長御自身に、今回、そのときは北朝鮮人権週間の行事での御参加ということだったんですが、そこは非常にお忙しいということですけれども、この日本側からのインビテーションというのは生きています、御都合のいいときにぜひロスレーティネン委員長に来ていただきたいというのが日本側の総意でございますということは私から申し上げて、委員長からも、そのインビテーションは大変ありがたいという御返事はいただいております。

 ですから、そういった意味で、まだそれは生きているとは思いますが、まさに先生の御指摘にもございましたので、さらに大臣とも相談いたしまして、どのような形でさらなるプッシュが可能か、考えてまいりたいと思います。

古屋(圭)委員 今度の五月のときに松原大臣が具体的にそういう招聘をしたのか、五月のことを聞いているんです。韓国に行って、そのまま日本に寄らないで帰りましたよね。そこの対応。

木村政府参考人 五月のその特定の時点についての招請を申し上げたかといえば、それは、そういう特定した招請ではございません。

中津川委員長 そろそろ時間ですので、最後の質問で、柴橋正直君、要領よくお願いします。

柴橋委員 委員長、ありがとうございます。

 先ほど、特定失踪者問題調査会代表の荒木参考人から、この情報収集費について、特定失踪者問題について十分使われていないという御発言がございました。この点について、私もかねてから、いろいろな方からお話を伺う中で、この執行率の問題を着目しているのはまさにそういう問題意識があるからでございます。

 そこで、最後にもう一度政府参考人に、ただいまの荒木参考人の発言に対して、特定失踪者問題について、この予算が情報収集費に使われていないということについてのコメントといいますか、発言をお願いしたいというふうに思います。

木村政府参考人 情報収集関係活動につきましては、その性格上、どのような案件について収集させていただいておりますということは答弁は控えさせていただきたいと思いますが、ただ一点、この場で申し上げたいのは、まず、そういう御指摘については私どもも重たく受けとめてまいります。

 そして、これは申し上げさせていただきたいんですが、私どもの行っております情報収集活動というのは、政府認定のあるなしに全くかかわりなく、全ての日本人の拉致被害者の帰国のためにでき得る情報収集活動を全力で行っているということでございます。

中津川委員長 以上をもちまして参考人及び政府参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、一言御挨拶を申し上げます。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、本当にありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼申し上げます。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時五十七分散会


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