衆議院

メインへスキップ



第6号 平成24年8月3日(金曜日)

会議録本文へ
平成二十四年八月三日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 吉良 州司君

   理事 黒岩 宇洋君 理事 柴橋 正直君

   理事 谷田川 元君 理事 山花 郁夫君

   理事 古屋 圭司君 理事 大山 昌宏君

   理事 竹内  譲君

      石井登志郎君    小野塚勝俊君

      櫛渕 万里君    楠田 大蔵君

      高野  守君    中野 寛成君

      長尾  敬君    野木  実君

      向山 好一君    森本 和義君

      北村 誠吾君    坂本 哲志君

      高木  毅君    川島智太郎君

      渡辺 義彦君    笠井  亮君

      中島 隆利君

    …………………………………

   外務大臣         玄葉光一郎君

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (拉致問題担当)     松原  仁君

   内閣府副大臣       後藤  斎君

   外務大臣政務官      中野  譲君

   政府参考人

   (内閣官房拉致問題対策本部事務局内閣審議官)   三谷 秀史君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 沖田 芳樹君

   衆議院調査局北朝鮮による拉致問題等に関する特別調査室長          綱井 幸裕君

    ―――――――――――――

委員の異動

八月三日

 辞任         補欠選任

  高野  守君     森本 和義君

  向山 好一君     石井登志郎君

同日

 辞任         補欠選任

  石井登志郎君     向山 好一君

  森本 和義君     高野  守君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 北朝鮮による拉致問題等に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

吉良委員長 これより会議を開きます。

 北朝鮮による拉致問題等に関する件について調査を進めます。

 この際、北朝鮮をめぐる最近の状況について政府から報告を聴取いたします。玄葉外務大臣。

玄葉国務大臣 おはようございます。

 衆議院北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会の開催に当たり、北朝鮮をめぐる最近の状況に関して御報告いたします。

 北朝鮮は、昨年十二月に金正日国防委員長の死去を発表して以来、新たな指導部の体制固めを続けており、金正恩氏が、四月に党第一書記及び国防委員会第一委員長の役職につき、先月には共和国元帥の称号を得たことが伝えられています。従来から、北朝鮮の動向は我が国を含む地域全体にとって深刻な不安定要因であり、朝鮮半島情勢については依然として予断を許しません。現下の新しい事態に対しても、適切に対応していく必要があります。

 国際社会における北朝鮮との対話に向けた動きについては、昨年は南北対話及び米朝対話がそれぞれ二回ずつ実施され、本年二月二十三日及び二十四日には三回目の米朝対話が実施されました。その後、同月二十九日には米国及び北朝鮮が、それぞれ米朝対話における合意の内容を発表しました。

 しかしながら、我が国を含む関係各国が自制を強く求めたにもかかわらず、四月十三日、北朝鮮はミサイル発射を強行しました。これは、我が国を含む地域の平和と安定を損なう安全保障上の重大な挑発行為であり、また、累次の国連安保理決議に明白に違反するものであります。我が国は、北朝鮮に対して厳重に抗議し、遺憾の意を表明したほか、G8諸国による独立の非難声明発出を主導しました。また、四月十六日には、ミサイル発射を非難し、さらなる挑発行為に対しては安保理が行動をとる決意を明確にした国連安保理議長声明が発出されました。

 六者会合につきましては、北朝鮮側は、無条件での六者会合再開を主張してきていますが、その再開のためには、まず北朝鮮が、非核化を初めとする二〇〇五年九月の六者会合共同声明におけるみずからの約束を完全に実施する意思があることを、具体的な行動によって示さなければなりません。他方で、四月のミサイル発射に見られるように、日米韓が北朝鮮に求めている具体的行動は見られておらず、六者会合を直ちに再開できる状況にはありません。

 日米韓三カ国の緊密な連携を維持し、北朝鮮の具体的行動を求めていくことの重要性は現在も変わりありません。かかる方針は、先般のカンボジア、プノンペンにおける日米韓外相会合でも確認されました。引き続き、核実験を含む北朝鮮によるさらなる挑発行為の防止や国連安保理決議等に基づく措置の着実な実施を含め、米国及び韓国と密接に連携し、さらには中国、ロシアといった関係国とも意思疎通を密にしていく考えです。

 日朝関係については、日朝平壌宣言にのっとって、拉致、核、ミサイルといった諸懸案の包括的な解決を図り、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化を追求していきます。

 特に、拉致問題は我が国の国家主権と国民の生命、安全にかかわる重大な問題であり、全ての拉致被害者の方々の帰国を一刻も早く実現しなければなりません。とりわけ、全面的な調査のやり直しが早期に開始されるよう、引き続き北朝鮮側に強く求め、拉致被害者の方々の帰国につながるような成果を早期に得るべく、全力を尽くします。また、拉致問題は国際社会全体にとっても重要な関心事項です。関係国とのさまざまな外相会談や先般のASEAN関連外相会議等の国際会議の機会を捉え、私からも、拉致問題の解決等に向けた協力を改めて要請してきているところです。

 なお、我が国としては、拉致、核、ミサイルといった諸懸案の解決のためには、適切な時期及びやり方で北朝鮮との対話を行う必要があると考えています。北朝鮮がこういった諸懸案の解決に向け具体的な行動をとるよう、日米韓で緊密に連携しつつ、引き続き強く求めていく考えです。

 吉良委員長を初め委員各位の御支援と御協力を心からお願い申し上げます。

 以上です。

吉良委員長 以上で報告は終わりました。

    ―――――――――――――

吉良委員長 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房拉致問題対策本部事務局内閣審議官三谷秀史君及び警察庁長官官房審議官沖田芳樹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

吉良委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

吉良委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。竹内譲君。

竹内委員 おはようございます。公明党の竹内譲でございます。

 本日は、この後、私が財務金融委員会でもまた質問をしないといけないものですから、最初に質問をさせていただくことに感謝を申し上げたいと思います。

 そこで、最近、北朝鮮にいろいろ変化があるんじゃないかな、兆しがあるんじゃないかな、このように見受けられるわけでございますが、きょうは、短時間ではございますが、細かく、外務大臣並びに拉致担当大臣の御見解を承りたいと思います。

 最初に、第一問目ですが、金正恩第一書記への共和国元帥の称号授与がなされたと。この持つ意味について、まずどのように分析されておられますでしょうか。

玄葉国務大臣 情報収集、分析、当然ながらしているわけであります。私自身また日本国政府の分析そのものについては申し上げることは差し控えますけれども、一般的に申し上げるという形で言えば、それは今の金正恩国防第一委員長がみずからの権力基盤を強化する過程にあるというふうにされているというふうに申し上げたいと思いますけれども、その意味で、いわば金正恩氏が故金正日国防委員長の生前の称号でもある共和国元帥というふうになったということは注目されるというふうに申し上げたいと思います。

竹内委員 その上で、七月十五日に、これまで軍総参謀長であった李英浩政治局常務委員が党の全役職を解任されました。この背景につきましてはどのように分析されておられますでしょうか。

玄葉国務大臣 これも、私及び日本国政府の分析ということで申し上げることは差し控えたいと思いますけれども、今おっしゃったように李英浩軍総参謀長が病気の関係で朝鮮労働党の全ての役職から解任されたと発表したということは承知をしています。

 この人事の背景について、まさにさまざまな見方がある。それは、例えば権力基盤と関連づける見方であるとか、あるいは内部の権力闘争と関連づける見方であるとか、そういった見方があるというふうに承知をしていますけれども、それと、私及び日本国政府がどう分析しているかということについて直接申し上げるということは差し控えつつ、一般論でそういうふうに言われているというふうに思います。

竹内委員 既に報道等でもかなり詳細な情報が流れております。報道等によれば、これまで金正日氏が権力維持に利用した党の外貨獲得機関三十九号室の廃止を命令したところ、李英浩軍総参謀長がこの金正恩氏の指示に抵抗したため失脚した、こういうことがかなり事細かに既に流れているわけでありまして、当然その辺の事実もさまざまな情報筋から確認はされている、そういう関係の情報を入手されていると思いますが、そういうことで間違いないでしょうか。

玄葉国務大臣 今おっしゃった李英浩氏、例えば、野戦軍の司令官の経験があって、強硬派であるとか、いろいろな言われ方がされているということであります。

 ただ、それ以上どう分析していくか、あるいは分析しているかということについての答えは差し控えた方がいいんだろうなというふうに思っています。

竹内委員 さまざまな情報によれば、三十九号室の廃止などによって、政治、経済への関与が過剰になった軍の権限を弱める狙いがあるのではないか、こういう情報もあるわけであります。

 そこで、七月十七日には、人民軍の玄永哲氏に対して、上から三番目の階級である次帥の称号授与がなされた、そして総参謀長に就任したというふうに伺っておりますが、この事実は間違いないかどうか、そしてこの玄永哲氏は対外強硬派なのかどうか。この辺についてはどのように認識されていますか。

玄葉国務大臣 おっしゃるように、七月十七日に、玄永哲軍大将に次帥の称号を十六日付で付与したというふうに承知をしています。

 玄永哲氏は、軍参謀総長とともに朝鮮労働党中央軍事委員会副委員長も務めて、二〇一〇年九月には金正恩氏とともに大将に昇格をした人物であるというふうに承知をしています。いわば金正恩第一委員長の軍における側近であるとの見方があるというふうに承知をしているところでございますけれども、私の分析という形で申し上げるのは差し控えたいというふうに思います。

竹内委員 今後、こういう動きから、軍の力が弱まって、政策の主導権を党の方が、あるいは党の出身者が握ることになると考えてよいのかどうか。この点につきましてはいかがでしょうか。

玄葉国務大臣 今、竹内委員からるる一連の人事の流れについての御質問があったわけでありますけれども、そういったことを捉えて、今御指摘があったような見方というものがあるということについては承知をしていると申し上げたいと思います。

竹内委員 そこで、今後、北朝鮮が、長距離ミサイルの発射など、これまでの軍主導の強硬路線をこれから修正して、改革・開放などの経済に軸足を置く方向へ転換した、あるいは転換する兆しがあると見ることができるのかどうか。この辺の分析についてはいかがでしょうか。

玄葉国務大臣 これも、私の分析ということじゃなくて、見方とかということで申し上げれば、今おっしゃったような人事だとかあるいは経済政策などの状況を踏まえて、まさにそういった見方もあるんですけれども、他方、核抑止力の強化ということも言っているのも厳然とした事実なんですね。例えば韓国の李明博政権に対するいわば強い態度だとかを見ていくと、私は、その強硬な立場というのは必ずしも変わったとまでは言い切れないということではないかというふうに思っています。

 大事なことは、先ほど、冒頭御報告いたしましたけれども、やはり非核化等に向けた具体的行動を北朝鮮みずからがとる、そのために、我々が、日米韓、中国、ロシア、あるいは国際社会全体でさらに働きかけを強めていく、そのことではないか。そして、やはり北朝鮮自身が前向きな対応をとるように働きかけをしていきたいというふうに思っています。

竹内委員 経済情勢と絡むんですが、ことし、北朝鮮の干ばつがひどいというふうにも伺っております。その干ばつの状況はどうなのか。また、食料事情については今どうなっているのか。この点はいかがでしょうか。

玄葉国務大臣 これは、内部の事情を正確に把握することは困難です。率直に申し上げると、いろいろな情報が入ってくるんです。

 ただ、やはり基本は慢性的な食料不足、基本はそうだと私は考えています。なぜなら、やはり体制自身がまだまだ極めて閉鎖的であるということではないかというふうに考えておりますけれども、引き続き、食料の事情を含めた北朝鮮の情勢について注視をしたいというふうに思います。

竹内委員 一連の動きを、硬軟いろいろな分析があるんだろうと思うんですが、しかし、軍からそういう経済的な根拠といいますか、そういうものを奪い取るというのは大変なことだと思うんですね。

 先ほど申し上げた狙いのほかに、対米関係の修復を狙っているんじゃないかという見方もありますよね。そういう意味では、この拉致問題の解決に向けても一つの非常に重要なところに差しかかっているんじゃないかなという気がするんですよね。

 そのような意味で、これらの最近の北朝鮮の動きがこの拉致問題解決に与える影響について、これについてはどのようにお考えでしょうか。双方お願いします。

松原国務大臣 ことしは北朝鮮が拉致を認めて十年でありまして、九・一七というのが一つの節目の日になるわけであります。

 昨年十二月に金正恩新体制への権力移譲がなされました。また、多くの被害者御家族が高齢化する中、私としても、ことしを勝負の年と位置づけ、野田総理から御指示のあった北朝鮮との実効性ある対話の実現のため、全力で取り組んでおります。現時点では金正恩新体制を評価することは時期尚早でありますが、今後、金正恩体制が負の遺産を乗り越え、一定の新たな方向性を出すことを期待いたしております。

 そのため、これまでも、さまざまな機会を通じ、北朝鮮側に対してメッセージを発出してまいりました。今は時間がありませんから具体的に細かく申し上げませんが、私は大体三点のメッセージを繰り返し発出してまいりました。そのことに対して、北朝鮮側の反応ということからいきますと、いわゆる北朝鮮の中央通信が三回にわたり、私に対して極めて批判的な報道をしたところでありまして、これは、考えようによっては、メッセージについてはきちっと聞いているという意思表示だろうと思っております。その上で、私は、そうした中であるにもかかわらず、複数の接触が私の方に対してもたらされているということ自体が、これから九・一七に向かう我々の行動の一つのものになるだろうというふうに思っております。

 いずれにしても、拉致被害者御家族、こういった方々の高齢化を迎える中で、とにかく、十年である九月十七日までにこのまま何ら進展がない場合には追加制裁を含めた措置もとるべきであるという声があることも承知しながら、全力で取り組んでいきたいと思っております。

玄葉国務大臣 これまでのやりとりの中であったような北朝鮮内部における変化が政策の変更につながるかということになると、今予断を持ってお答えしない方がよいというふうに、現時点ですね、そう思っています。

 ただ、今、松原大臣からもありましたけれども、やはり拉致問題というのは時間との闘いでもございます。一刻も早い全ての拉致被害者の帰国のために全力を尽くしたいというふうに思っています。

 メッセージを出していたと松原大臣おっしゃいました。それは、私に対しても何回かにわたって強い非難の言葉が北朝鮮からは寄せられています。ただ、やはり北朝鮮が前向きな行動をとるように最も効果的な方法というものを考えたいというふうに思っています。

竹内委員 先ほどの玄葉大臣の報告の中で、最後のところが大事だと思うんですよね。適切な時期及びやり方で北朝鮮との対話を行う必要がある、ここを明言されているのが非常に重要だと思っていまして、今の松原大臣のお話もありました。

 この点について、もう少し踏み込んだお話をいただけませんか。

玄葉国務大臣 拉致の問題は、最終的には、もう言うまでもないことでありますけれども、対話をしないと解決しない、最終的にはですよ。さまざまな制裁を行ったり、いろいろなことをこれまでも行ってきたし、それは今後だって、圧力と対話ということですから、どうバランスさせていくかということなんですけれども、最終的に、やはり対話というものを行わないと解決しない。

 私は、この拉致の問題、時間との闘いだという思いも常にあって、やはり適当な時期、適当な方法、適当なやり方というものを考えていきたいというふうに思っています。

竹内委員 もう時間もないんですが、その意味は、六カ国協議が再開されなくても踏み込む可能性はあるという理解でいいんでしょうか。

玄葉国務大臣 六者は六者で、直ちに再開できる状況にないと先ほど報告をしたとおりでございます。それとリンケージするのかしないのか、こういう話でありますけれども、それは全てイコールということではもちろんこれまでもなかったということだと思います。一〇〇%イコールかと言われれば、そうではないということだと思います。

竹内委員 もうこれで最後にいたしますけれども、やはり指導者がかわるというのは大変な分岐点だと思うんですね。既にこれだけのことをやっている、北朝鮮側の方が動きを見せている。権力闘争もやっているようですし、依然として食料事情や経済状況は悪い。そしてまた、松原大臣にも接触もあるということでありますから、ここは非常に重要な局面であるというふうに我々も思っておりまして、ぜひとも、この拉致問題解決に向けたしっかりとした対応をお願いしたい。我々も超党派で努力を、全力を尽くしたいというふうに思います。

 ありがとうございました。

吉良委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 北朝鮮の核問題に関連して質問いたしたいと思います。

 玄葉外務大臣は、去る七月のプノンペンで開かれたARF、ASEAN地域フォーラム閣僚会議に出席をされておられます。この会議では議長声明というのが採択をされていると承知しておりますけれども、北朝鮮問題に関連してどのような内容がこの議長声明に盛り込まれたんでしょうか。伺いたいと思います。

玄葉国務大臣 議長国カンボジアが取りまとめたARF閣僚会合等の議長声明の朝鮮半島情勢部分には、一つは、朝鮮半島の平和、安全及び安定の重要性を強調し、関係者に対し、さらなる挑発行為をとらず、関連する安保理決議のもとでのそれぞれの義務及び〇五年の六者会合共同声明のもとでの約束を遵守すること、二つ目は、全ての当事者に対し、当事者間の信用と信頼の環境の醸成につながる平和的な対話に取り組むためのあらゆる可能性を追求することなどの内容が含まれています。

 それで、質問される前にあえて申し上げますけれども、私からは、拉致問題は国民の生命や安全にかかわる重大な問題であり、国際社会全体の問題であるというふうに述べておりまして、特に、北朝鮮の外相もいたんですけれども、北朝鮮に対して前向きな対応を求めたところであります。他国の発言を具体的に紹介することは避けたいと思いますけれども、他国からも同じ趣旨の発言があったんですね。

 でも、実はこの拉致の問題だけじゃないんですが、今回、議長国カンボジアというのは、南シナ海の問題にしてもそうだったんですが、率直に申し上げて、十分、それぞれ各国の意見をまとめていく、そういう立場での議長ではなかったとあえて申し上げたいというふうに思います。

 そういう状況だったものですから、実は各国の意見、拉致問題も含めて具体的に書いて、それが的確に反映されていないではないかということで、実は文書も含めて、カンボジアに対して、日本側からその後何度か働きかけをしている、そういう状況でございます。

笠井委員 今、議長声明をめぐる問題についても経過を含めてお話があったんですが、いずれにしても、その中で、今若干大臣も言われましたが、日本国として、玄葉大臣は、北朝鮮問題について、このARF閣僚会議、どのような姿勢で臨まれたのか、改めてお伺いしたいと思います。

玄葉国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、これは国際社会全体の問題であるということで、北朝鮮に対し、その場で前向きな対応を求めたということなんですね。

 これはかなり強い調子で実は述べたところなんですが、だけれども、先ほども申し上げた、繰り返しになって恐縮ですけれども、南シナ海も含めて議長声明に反映されない。つまりは、議長としての、何か一人でも、あるいは一カ国でも違う反論があれば議長声明には入れない、そういうまとめ方。というか、まとめたというよりも、議長としての声明である、カンボジアはどうもこういう位置づけなんですね。だから、いわゆる本当の最大公約数、一カ国だけでも反対したら入れないんだ、こういう立場だったんです。ですから、それは違うだろうということで、実は申し入れを今でもしている、こういう状況です。

笠井委員 大臣御自身が、その議長声明をめぐっていろいろ議論があったので、こだわっていらっしゃると思うので、私、それをよりどころに何か聞こうと思っているわけではないので、それはもうわかりました。

 前向きな対応を求めたということでありますが、この会議には北朝鮮も出席していたわけです。そうした北朝鮮問題に対する玄葉大臣の発言に対して北朝鮮側はどのような反応を示したのか、伺いたいと思います。

玄葉国務大臣 改めて申し上げますけれども、私からは、まずミサイル発射について、国連安保理決議違反である、そして国際社会が一致して確固たる姿勢を示すことが必要だ、そして、六者は有効な枠組みなんだけれども、北朝鮮がまず具体的な行動をとる必要がある、そして、拉致の問題について先ほど申し上げたようなことを述べたわけです。そこには、先ほど申し上げたように、北朝鮮の外相もいた。

 実は、終盤、最後の方で北朝鮮の外相が発言しまして、私、日米韓の外相会合があったんです。ARFの時間がずっと延びまして、予定どおりの時間までいたんですけれども、日米韓の外相会合も大事ですから、私の発言が終わって、その時刻になって、クリントン国務長官と金星煥長官と一緒に実は出ました。それで日米韓の外相会合があったということなんです。それが事実です。

 北朝鮮がどう述べたかというのは、北朝鮮の主張を私が言うのもどうかというのがありますが、いわゆる従来の主張を基本的には述べていると考えていただいてよろしいかと思います。

笠井委員 拉致問題については解決済みというような主張を述べたということですか。

玄葉国務大臣 あの場で、特に今おっしゃったようなところと、そして、いわゆる米国の敵視政策がいけないんだ、こういう趣旨のことを言っていたということです。

笠井委員 ことし四月の北朝鮮によるいわゆるロケット発射は重大な挑発行為であって、深刻な国連安保理決議違反であることは明らかだと思います。北朝鮮によるさらなる挑発行為を防ぐためにも、大臣も強調されましたが、国際社会が一致して足並みそろえた対応をすることが大事だと思います。

 そこで、外務省に伺いたいんですが、さらなる挑発行為に関連してということなんですけれども、去る五月二十二日に北朝鮮の外務省報道官が、これは朝鮮中央通信社の記者の質問に答えるという形だと承知していますけれども、みずから行う核実験の問題について、軍事的措置という言い方で表現しているようなんですけれども、その点はどうでしょうか。

中野大臣政務官 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、五月二十二日のスポークスマンによる記者会見では、核実験のような軍事的措置という表現を用いたというふうに承知をしております。

 ただ、例えば二〇〇六年、御指摘の二〇〇六年には、自衛的戦争抑止を強化する新たな措置をとることになる、あるいは二〇〇九年には、追加的な自衛的措置を講じざるを得ない、これは核実験と大陸間弾道ミサイル発射実験が含まれることになるであろうというふうに、スポークスマンの方で記者会見で述べております。

 北朝鮮はいろいろな表現をしているわけでございまして、みずからの核兵器開発につきましては、軍事優先政治に基づく自衛的核抑止力の強化などといった表現も用いておりまして、いずれの表現にいたしましても、一般的に核実験とは核兵器の起爆実験であるということから、軍事的な行動であることに変わりはないと考えておりまして、実質的な位置づけは何ら変わりがないというふうに理解しております。

笠井委員 実質的位置づけは変わりないという解説があったわけですが、私、言葉にこだわるわけじゃないですけれども、言葉の言い方というのは、相手が何と言った、こう言った、あるいは、先ほどありましたが、大臣の発言に対して向こうが激しく言うことによって注目しているというようなこともありますので、一応確認したいんですが、今回のように、みずから核実験を軍事的措置という形で言葉をストレートに表現したことはあったのかということについて、端的に、あるかないかだけ。

中野大臣政務官 ごめんなさい、一点ちょっと訂正をさせていただきますけれども、先ほど申し上げた中で、一般的に核実験とは核兵器の起爆実験であり、網羅的に確認すること自体は非常に難しいと思うんですね。その中で、外務省スポークスマンによる記者への回答においてそういうふうな表現がなされたということです。済みません。

笠井委員 つまり、今回のように軍事的措置ということでストレートに言ったのは、確認される限りは今回初めてですよねということでよろしいですか。

中野大臣政務官 答弁繰り返しになりますけれども、網羅的には全てのことがちょっと確認できないものですから、どちらとも、申しわけないですけれども、回答ができないという状況でございます。

笠井委員 確認した限りは今回だということではいいんでしょうかね。そこは、そんなにこだわるわけじゃないんですが、そこの経過のところだけ。

中野大臣政務官 今のところ確認している中では、委員御指摘のとおりだというふうに理解しております。

笠井委員 玄葉大臣、つまり、言葉というのがどういう意味を持つかというのはいろいろあると思うんですが、北朝鮮自身が、みずからも軍事的措置と認める核実験を強行するというのは、まさに紛れもなく、累次の国連安保理決議はもとより、日朝平壌宣言にも、二〇〇五年九月の六カ国協議の共同声明にも、明確に違反する行為だと思うんです。

 我が党は北朝鮮に対して、情勢を悪化させるいかなる行為も厳重に慎むこと、国際社会の一員として責任ある行動をとることを改めて強く求めたいと思うんですけれども、現時点で玄葉大臣の所見を伺いたいんですが、いかがでしょうか。

玄葉国務大臣 やはり、まだ予断を持って申し上げるわけにはいかないと思うんです。

 ただ、この間、人工衛星と称するミサイル発射があって、あのときに、私も今も鮮明に覚えておりますけれども、G8の外相会合がございました。G8の外相会合で、当然ながら日本が主導して北朝鮮の問題は議論したわけであります、ミサイル発射の予告がありましたからね。何度も議論して、G8の外相だけ、事務方を入れない夕食会もあったんですけれども、そのときにも、私は最後に、この問題、恐らく人工衛星と称するミサイルを発射するから、そのときは一致した対応を頼むと、ロシアのラブロフ外相もいましたけれども、言いました。念を押しました。

 実は、私が飛行機に乗っているときに発射されたんです。私はロスでおりて対応しましたけれども、結果として、その後も、日中の外相電話会談も行って、その前の、やはりロシアも入った形でG8の外相会合で一致した声明を出せたというのはとても大きくて、今度、中国の外相会談でも、さらなる挑発行為をとったとき、核実験をとったときには国連安保理としても動くよというような強い議長声明なんです。あれは〇九年のときより強いですからね、あの議長声明は。私は、非常に迅速な形であの議長声明を出せたという意味はあるというふうに思っています。

 ただ、ではどうなのかと言われたときに、予断を持って申し上げることはできないということだと思っています。

笠井委員 大事なところなので、やはりしっかりと国際社会が一致して臨んでいくことが大事だと考えております。

 最後に、松原大臣に伺いたいんですが、北朝鮮による拉致被害者の横田めぐみさんの写真展が八月一日から日本橋の百貨店で始まりました。横田滋さんは、いろいろなパイプをつくり、それを利用して拉致問題を一刻も早く交渉を再開してほしいというふうに訴えられましたけれども、事態打開に向けて、そういう拉致被害者の家族の皆さんの思いをどう受けとめて、そして進めていこうと思われているか、伺いたいと思います。

松原国務大臣 今、委員からお話がありましたように、八月一日から写真展が開催されておりまして、私も一日の日にお伺いいたしましたが、まさに平和な家庭をむごく切り裂いたということに対して、改めて怒りを持ったところであります。

 御質問の点でありますが、拉致問題に関しては、まさに生存者全員帰国、全容の真相を解明、究明していかなければいけないと同時に、この問題の解決なくして日朝国交正常化はあり得ないという基本認識を持って行動しているところであります。

 我々は、粘り強い交渉もしますが、拉致問題は決して風化することはない、関係者が生きていらっしゃる元気なうちが解決の可能性がある時期であって、万が一、関係者の多くが亡くなるようなことがあれば、この問題は未来永劫に解決しないということになるので、その意味においては時間との闘いであると繰り返し申し上げてきたところであります。

 御家族の皆様のそういった気持ちを共有しながら、今、さまざまな形での、打開といいますか、この問題の解決のための活動を続けているところであります。

笠井委員 終わります。

吉良委員長 次に、中島隆利君。

中島(隆)委員 社会民主党の中島隆利でございます。

 外務大臣に、最初に質問させていただきたいと思います。

 四月十三日に、北朝鮮は、国際社会が強く懸念する中でミサイル発射を強行しました。国連安保理は、この事態を受けまして、四月十六日に、ミサイル発射が国連安保理決議違反であるとした議長声明を発しました。

 その後、北朝鮮が核実験を強行するのではないか、このように懸念をされていましたが、現時点までは核実験が行われておりません。この過程で、北朝鮮は、一旦、核実験は計画すらしていないと述べたかと思うと、最近になって、核問題を全面的に再検討しなくてはならないと、核実験を示唆するような発言をいたしています。

 これまで核実験が強行されていないことについては、ミサイル発射前から中国が北朝鮮に自制を求め、北朝鮮を非難する議長声明に賛成したことは少なからず影響しているのかと思いますが、北朝鮮による核実験の動きをどのように捉え、実験の強行をどのようにして抑える努力をされているのか、お尋ねしたいと思います。

玄葉国務大臣 先ほど、安保理の議長声明が出されたときの過程の一部を御紹介いたしました。ただ、やはり予断は許さないんですね。それはなぜかといえば、米国の敵視政策について何度も言及をし、かつ、冒頭も申し上げましたけれども、核抑止力の強化という言葉を使っています。ですから、そうである以上、予断は許さないというふうに我々は考えなければならない。

 したがって、日米韓の外相会合でも当然この問題は話し合いました。また、ARF、ASEAN関連の外相会合でも話し合っています。常にこの問題について国際社会が一致した対応をとるのである、さらなる挑発行為、核実験があった場合は、あの議長声明にあるように、国連安保理として行動をとる決意があるという議長声明をつくったわけでありますので、やはり、常にそのことを国際社会で確認していく必要があると思っていまして、それを当然日本は主導していかなければならない、そう考えております。

中島(隆)委員 今の状況と対応については、大臣のお考えについて了解をいたしますが、先ほど、報告と質問の答弁の中にも、外務大臣、最終的には対話をしなければ解決はしない、しかし時間との闘いであるということで、時期、やり方については考える必要がある、こういう御答弁でございました。

 圧力と対話ということでありますが、やはり、最終的には二国間の対話以外に解決しない、そういうように思いますので、そういう努力をぜひお願いしておきたいと思います。

 それでは次に、二〇〇二年の九月十七日の日朝首脳会談で、北朝鮮が日本人の拉致を認め、謝罪してから十年を迎えようとしています。この間、二〇〇二年の十月に五名の拉致被害者の方々が帰国をし、二〇〇四年五月にはその家族の方々の帰国がありました。しかし、その後は、拉致被害者の帰国や安否の確認もままならず、拉致問題の解決に向けた具体的な進展は残念ながら見られませんでした。

 二〇〇八年六月の日朝実務者協議で確認された拉致問題の再調査についても全く動きがなく、ひとえに北朝鮮側の姿勢に問題があることは明らかでありますが、拉致問題の解決に向けた端緒がなかなか見えない、見えにくくなっているのは事実だと思います。

 そこで、大変難しい問題でありますが、なかなか具体的な進展が見られないこの十年間について、どのように評価し、その原因をどのように分析していらっしゃるのか、担当大臣にお尋ねいたします。

松原国務大臣 拉致問題については、平成十四年における五人の拉致被害者の帰国、平成十六年における被害者御家族の帰国、来日以降、具体的な成果、進展がない状態が続いております。平成二十年九月、北朝鮮は、日朝間で合意した全面的な調査のやり直しを見合わせるとした以降、具体的な対応をとっておりません。

 このような北朝鮮の行動の背景については、さまざまな見方があり得、政府としてこれにコメントすることは適切ではないと考えますが、私としては、北朝鮮の新体制が国際社会に認められるような新たな方針を打ち出すことを期待したいと思っております。

 いずれにしても、北朝鮮に対しては、拉致問題の解決に向けた具体的な行動を求めてまいりたい、このように考えております。

中島(隆)委員 大臣は、この十年の節目を捉えて、あらゆる手段を使って解決に向かわせるという並々ならぬ決意を示されているわけでありますが、この点については敬意をあらわしたいと思います。

 そこでお伺いしたいのは、この十年目の節目、どのような機会を通じて、どのような方法で拉致問題の解決に向かわせようとお考えなのか、ぜひその点のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

松原国務大臣 平成十四年九月の日朝首脳会談から十年が経過することになりますが、この間、一部の被害者及びその御家族が帰国を果たしたほか、具体的な成果が得られておりません。

 ことし一月に大臣を拝命した私としては、ことしを勝負の年と位置づけ、私がその任にある間に必ず具体的な成果を出そうという強い決意を持って取り組んでまいりました。そのために、私自身、北朝鮮側と必要な対話を行う用意があり、その方策も模索をいたしております。

 一方で、この対話は実効性のあるものでなければならないわけでありまして、北朝鮮側から真摯な対応を引き出すべく、関係国ともさまざまな連携を図っておりますし、また、場合によっては、さらなる圧力の行使も真剣に検討しているところであります。

 しかし、また同様に、実効性ある対話が実現し、それが拉致問題の解決に結びつくならば、我々は近隣国として大きな人道支援を行うことが可能であると考えております。すなわち、対話のための対話ではなく、また圧力のための圧力でもない、拉致被害者の帰国という一点に向けて、必要なあらゆる手段を講じていくということであります。

中島(隆)委員 確かに、拉致問題が進展しない責任は北朝鮮の姿勢にあるわけでありますが、この間、対話と圧力が強調され、確かに圧力は強化されてきましたが、十年たって前進が見られないならばさらに制裁を強化せよという意見があることは十分承知をしていますが、しかし、制裁を強化しても、逆に対話の糸口が遠ざかり、事態が進展しなかったということもまた事実であります。

 そこで、対話による進展、日本がイニシアチブをとって、日朝交渉あるいはそれにつながる六カ国という多国の間の協議の枠組みを使いながら対話につなげていくようなことが必要ではないかというふうに思いますが、大臣のお考えをお尋ねします。

松原国務大臣 あらゆる手段を使ってこの拉致問題の解決をするということは、当然、対話と圧力、圧力と対話ということも含めての議論になるわけでありますし、私、申し上げておきたいことは、やはり、新しい金正恩体制の中で、私は、この拉致問題に対してもさまざまな切り口というものが起こり得るだろうというふうなことで、現在活動を続けているところであります。

中島(隆)委員 先ほど、大臣なり、それから松原大臣もおっしゃいました。あらゆるメッセージを送りながら対話の糸口を探る、こういう努力をされているわけですが、ぜひ、その努力を含めて、一日も早く問題解決に取り組んでいただきたいと思います。

 以上で終わります。

吉良委員長 次に、高野守君。

高野委員 民主党の高野守でございます。

 これまで私は、正直申し上げまして、この拉致問題は非常に重要な問題であるというふうな認識を持ちつつも、私自身が真正面から取り組んできたかといえば必ずしもそうとは言えず、当委員会に所属したのをきっかけに、これはもう本当にしっかり取り組んでいかなければいけないという思いでございます。

 非常に難しい問題の中で、対話と圧力の継続というのは極めて重要であると考えます。また、この問題は、党派を超えて国会議員が積極的に関与すべきものであり、拉致という許されてはならないこの不条理に対して、具体的な解決に向けての取り組みはもちろんでありますけれども、日本国として立ち向かい続けるという強い意思を内外に示し続けることが当委員会の使命であるとも考えております。

 松原大臣におかれては、もともと大変熱心にこの問題に取り組んでこられた、超党派議連の事務局長も長く務められてこられました。これまでの、就任以来のこの問題に対する真摯な姿勢に心から敬意を表したいと存じます。

 二〇〇二年の日朝首脳会談において、北朝鮮が長年否定してきた日本人の拉致を初めて認めてから、来月十七日をもって十年になります。五人の拉致被害者が帰ってきてから、拉致問題の解決は、残念ながら目に見える形での進展があったとは言えません。被害者の御家族も御高齢になり、多大な心労を抱えていることは、皆さん共通に思いをいたすところであります。

 こうした状況から、しっかりとした被害御家族へのサポート等がさらに重要ではないかと思いますけれども、今日までの松原大臣の取り組みについて、御答弁をお願いしたいと存じます。

松原国務大臣 拉致問題対策本部事務局を中心に、拉致被害者及びいわゆる特定失踪者の御家族へのきめ細かな対応として、意見交換や懇談、政府の取り組みについての情報提供等を行っているところであります。大臣就任以降、飯塚家族会代表、横田御夫妻等と折に触れ、意見交換を行うことはもちろん、拉致問題を考える地方の集い等の機会を捉えて、地方の特定失踪者御家族の皆様ともお会いをいたしております。

 また、特定失踪者の御家族の方々への配慮として、先般、特定失踪者である藤田進さんの御家族、藤田隆司さんが、国連強制的失踪作業部会委員との面会のため、ジュネーブを訪問されるに当たっても、さまざまなできる支援を行ったところであります。

 今後も、被害者御家族へのきめ細やかな対応に努めるとともに、拉致問題の解決に向け、全力で取り組んでまいりたいと思っております。

高野委員 次に、基本姿勢についてちょっとお尋ねをします。

 十年の節目を迎えて、しかし、日本政府の北朝鮮政策、日本人の拉致問題の解決の突破口をつくることができていないということも事実だというふうに思います。大臣は所信で、ことしはまさに勝負の年である、果敢に、あらゆる手段を排除せず取り組むという決意を述べられております。

 北朝鮮による日本人拉致問題の早期解決のために、この問題の解決に向けて、そのアプローチ、そして方策をどういった形でお持ちか。松原大臣らしい、そうした施策というものもあろうかと思いますけれども、御答弁を頂戴したいというふうに思います。

松原国務大臣 拉致問題は、深刻な人権問題であるとともに、国家主権に対する重大な侵害であり、我が国は、その解決を一貫して最重要の外交課題とみなし、あらゆる努力を続けてまいりました。

 しかし、極めて遺憾ながら、二〇〇二年に当時の小泉総理が訪朝して、ことし九月で十年が経過することになりますが、この間、具体的な成果を得られていないわけでありまして、本年一月に大臣を拝命した私としては、既に多くの被害者御家族が御高齢になられていること、北朝鮮において新たな指導体制ができたこと、さらには、この地域をめぐる国際環境等を踏まえ、ことしを勝負の年と位置づけ、私がその任にある間に必ず具体的な成果を出すという強い決意を持って取り組んでいるところであります。そのため、私自身、北朝鮮と必要な対話を行う用意があり、その方策も模索しております。

 一方、この対話は実効性のあるものでなければならず、北朝鮮側から真摯な対応を引き出すべく、関係国とさまざまな連携を図るとともに、場合によっては、さらなる圧力の行使も真剣に検討しているところであります。

 しかし、また同様に、実効性ある対話が実現し、それが拉致問題の解決に結びつくならば、我々は近隣国として大きな人道支援を行うことが可能であると考えております。すなわち、対話のための対話ではなく、また圧力のための圧力でもない、拉致被害者の帰国という一点に向け、必要なあらゆる手段を講じていくということであります。

 以上のような私の考えは、さまざまな機会を捉え、北朝鮮へのメッセージとして発出をしてきたところであります。

 先ほど申し上げましたように、北朝鮮側からは厳しい批判が三回にわたって行われているわけでありますが、そうした中にも北朝鮮側からの複数の接触はあるわけでありまして、こういったものを有効に活用し、当然、この問題は簡単に進む問題ではないかもしれませんが、妥協することなく、日本の国益を考えながら、そして拉致被害者の人権問題、そして御家族とのきずなを考えながら、できる限り早期に解決するために頑張っていきたいと思っております。

 なお、私が大臣に就任して七カ月を経過しておりますが、九月十七日は十年という節目を迎えるわけでありまして、この九月十七日というものに向かって我々はどういうふうに戦略を構築していくのか、そして、北朝鮮がこの日に対してどのような取り組みをするのか、どういったことが行われるのか、こういったことを真剣に、注意深く見定めながらさらに行動していきたい、このように思っております。

高野委員 大臣の強い思いというものを今本当に私も受けとめさせていただきました。

 また、拉致問題の解決は、これは日米韓の連携が非常に重要であります。国際社会との連携が非常に重要なわけでありますが、大臣は去る四月に訪韓をし、北朝鮮自由週間の開会式でスピーチをされ、その際に、北朝鮮向けのラジオ放送、これは短波放送で、自由北朝鮮放送で、北朝鮮及び拉致被害者や北朝鮮の指導者に向けてメッセージを送られたというふうに伺っておりますし、私もテレビで松原大臣の様子を拝見させていただき、松原さん頑張っているなというふうな思いをいたしました。

 大臣は、こうした取り組みを通じて、拉致問題の対話の可能性など、今もおっしゃいましたけれども、さまざまな努力をされているというふうに思いますが、新政権にどのような変化の兆候と可能性ということがあるというふうにお考えでしょうか。

松原国務大臣 私はこれまで、就任以来、公式、非公式、さまざまな場面で、数十回にわたり、繰り返し北朝鮮に対してメッセージを発出してまいりました。これに対し、最近になり、朝鮮中央通信が批判的な論評を出したところでありますが、これも、北朝鮮が、私が発出したメッセージを受けとめているというあらわれだと認識をしているところであります。

 今後の対話の可能性や変化の兆候については、現時点において確定的に判断を申し上げることは時期尚早でありますが、私としては、さまざまな観点から判断するに、新体制は従来と異なる方向性を模索しているのではないかと認識をいたしております。新体制が、拉致問題の解決を初めとして、国際社会に認められるような新たな方針を打ち出すことを期待したいと思います。

 逆に、北朝鮮がこれまでどおりの行動を続ける限り、我が国も、また国際社会もこれを受け入れることはなく、その体制に未来はないということは明らかであります。この点を金正恩氏が正確に理解し、金正日体制の遺訓政治を新しい時代に向けて塗りかえていくことを重ねて期待したいと思います。

 なお、放送は、先般も、これと別でありますが、VOAというところで北朝鮮に向けての放送もさせていただくところであります。

高野委員 ありがとうございます。

 諸外国に行ったときに放送をする、閣内でもいろいろあるかと思いますけれども、さらに大臣の指導力を発揮していただいて、こうした取り組みにも続けて努力をいただきたいというふうに思います。

 ちょっと別な委員会で質問していたものですから、重なる部分があればお許しをいただきたいわけでありますけれども、次に、特定失踪者問題についてお尋ねをさせていただきます。

 政府認定に係る北朝鮮による拉致被害者以外にも、拉致された疑いが濃厚な失踪事件が多数存在しているわけであります。このように、北朝鮮による拉致の可能性を排除できない人たちを特定失踪者と称して、特定失踪者問題の調査会も調査を行っているというふうに聞いております。

 政府も、拉致問題の解決に向けて、二〇一〇年の十一月二十九日に、拉致問題対策本部の第四回会合、これは本部長指示という中で、「拉致の可能性を排除できない事案に係る捜査・調査の徹底」に取り組むこととしておりますけれども、特定失踪者問題について、政府として新たな取り組みを考えていらっしゃるのでしょうか。お尋ねをします。

後藤副大臣 先生御指摘の、拉致の可能性を排除できない事案につきましては、現在、関係機関が緊密に連携をとりつつ、捜査、調査を進めているところでございます。今後とも事案の真相解明のため、捜査、調査を進めてまいる考えでありますけれども、その具体的内容については、この場ではなかなか答えにくいということで御理解いただければと思います。

 なお、改めて、関係する御家族と面談の機会を設けながら、お話をきちっとお伺いするという機会も設けるように事務局の方には指示してあるところでございます。

高野委員 大変難しい面もあろうかと思いますけれども、引き続きの地道な努力といいますか、お願いをしたいというふうに思います。

 次に、外務省にお尋ねをさせていただきます。

 最近の北朝鮮情勢を見ていますと、金正恩第一書記は目新しい統治スタイルを随所で示しているように思われるわけであります。北朝鮮メディアが、金正恩第一書記に随行していた若い女性を夫人と正式に紹介したり、結婚していた事実を明らかにいたしました。また、ミニスカートの女性楽団の公演を放映させたり、ミッキーマウスに似たキャラクターが登場したり、父親の総書記の訪問、視察先は特に軍、軍施設の関係が報道されたベースでは多かったわけでありますけれども、金正恩の訪問先は遊園地とか保育園とか、そうした親しみやすさを演出しているようにも思えるわけであります。

 また、四月十九日付の北朝鮮の労働新聞は、金正恩第一書記が朝鮮労働党幹部らに対して初めて語った談話を掲載しておりますし、その中で、我々は人民の食の問題、食料問題を円満に解決しなければならないと強調し、さらに、六月の二十八日には新経済政策を打ち出したという報道もございます。

 韓国の情報機関の国家情報院は、七月二十六日の国会情報委員会で、金正恩が特別チームを編成し、経済改革を進めているとの分析を明らかにもしております。その柱は、一つに党と軍が運営している経済事業の内閣への移管、一つが協同農場の作業単位の縮小、一つが企業経営の裁量の拡大、さらにもう一つが労働者の賃金を引き上げる、そうした、市場経済の一部導入とも受け取れる経済改革を推進しているというふうな説明もございました。また、大胆な農業改革を行うとの報道もあったわけでございます。

 これは、金正恩体制に移行し、北朝鮮が今までと違った方向に少し変わってきたのではないかというふうに捉えることはできるんだろうと思います。報道ベースではありますけれども、この一連の動きは、北朝鮮が今までと違った拉致解決への方向へ向かう一つの政策転換の機会というふうにも捉えていいのか。

 これをチャンスと言えるかどうかというのは非常に難しいと思うのでありますけれども、しかし、さまざまな報道、日本で報道されて、例えば週刊誌が、誰か女性と一緒にいたとか、そういったことじゃなくて、北朝鮮の場合には、これは大きなメッセージの一つであるというふうに捉えるべきだろうと思いますし、こうしたチャンスを逃さずに、チャネルを開拓して、拉致問題解決に向けてこれまで以上の努力をすべきであるということは、これは共通だと思いますが、外務省の御見解をお伺いしたいというふうに思います。

中野大臣政務官 今委員から、るる、いろいろな北朝鮮の動きですとか報道について所見をいただきました。

 基本的には、そのような動きについては、当然のことながら、外務省としても平素から不断に情報収集や分析を行っているところでございますけれども、今、現時点で見方がいろいろあるということも理解をしておりますけれども、外務省としての分析を申し上げるということは差し控えたいと思っております。

 最近の北朝鮮内部でのそのような動きが、それでは拉致とか核、ミサイルといった諸問題に関するものを含めた北朝鮮の政策面での変更につながるかどうかということも、先ほど来、玄葉大臣そして松原大臣からも答弁がありますけれども、これは予断を許すことができないということだと思っております。この点につきましても、当然のことながら、引き続き関連の情報をしっかりと収集しながら分析をしていきたいというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、この拉致問題は、我が国の国家主権及び国民の生命と安全に関する重大な問題でありまして、北朝鮮において見られるこのようなさまざまな動きいかんにかかわらず、全ての拉致被害者の一刻も早い帰国を実現するために、当然のことながら、外務省もしっかりとこれからも取り組んでいきたいというふうに考えておりまして、先ほど委員からの御決意がありましたけれども、ぜひ与党議員として御協力いただければと思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。

高野委員 これももしかしたら質問があったのかとは思いますけれども、李英浩総参謀長の解任についてちょっとお聞きをしたいというふうに思います。

 北朝鮮の金正恩第一書記の側近であった李英浩総参謀長が、最近、朝鮮労働党を含む全役職から解任された。一部では、解任をめぐって銃撃戦も展開されたのではないかということも伝えられております。

 李英浩は、金正日が三男の金正恩を後継者に決めた直後の二〇〇九年二月に、平壌の防衛司令官から抜てきされたという経歴を持っていると聞いております。金正恩の後見人と見られてきた人物でありますし、李は、金正恩第一書記が権力を継承する上で、軍を押さえる役割を担っていた中核メンバーと考えられます。昨年十二月の金正日総書記の葬儀では、序列四位であったということであります。

 今回の参謀長の解任の背景に、北朝鮮内部における、核とミサイルを基本に据えた強硬方針を主張するグループと、党主導で外交部門に人材を集中させる、対外交渉で破綻経済の打開を図ろうというふうなグループの対立もあるという見方があるのではないかというふうに思いますけれども、今回の事態は、軍から党に主導権が移る一つのきっかけと考えることができるのか。なかなかそれを公表するというのは難しいかもしれませんけれども、外務省の分析、どんな見方をされているか。そして、その動きが拉致問題を含む日朝関係に与える影響というものを、先ほどとちょっと絡みますけれども、お考えをお聞かせいただきたいというふうに思います。

中野大臣政務官 今委員御指摘のとおり、北朝鮮は七月の十六日に、李英浩軍総参謀長が、北朝鮮の発表では病気の関係でということですが、朝鮮労働党の全ての役職から解任をされたということを発表いたしました。そして、十八日には、李英浩氏が務めていた軍参謀総長に玄永哲氏が就任をしたということも発表されたというふうに承知をしております。

 本年四月には、最高人民会議で、朝鮮労働党の要職を歴任した崔竜海氏が軍総政治局長に任命され、当時ですが、李英浩軍参謀総長よりも序列が上位になり、その後でこの李英浩氏が解任されたという点を捉えて、このような経緯を見て、御指摘のような分析をする向きがあるということも外務省としても承知をしているところでございますが、これらの動きについて、金正恩氏の権力基盤と関連づける見方ですとか、先ほど委員から御指摘ありました、内部の権力闘争の結果であるといったさまざまな見方があるということを、外務省、そして私も含めて承知をしておりますけれども、外務省ないし私の分析については、先ほどの繰り返しになりますけれども、ここで申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思っております。

 ただ、いずれにいたしましても、先ほどから申し上げていますとおり、このようないろいろな動きをしっかりと分析していく、情報をしっかりと収集していく中で、関係国と連携をして、今後もその分析、収集をさらに行っていきたいというふうに考えております。

高野委員 公安関係もそうでありますし、やはりこうした外交といいますか、相手がいる中で、しかもこうした非条理なものに対して国家としてどうしていくかということについて、なかなかに委員会等々で全てを明らかにしていくということが解決の道になるかどうかという点については、私も、これは慎重にきちっとやらなきゃいけないというふうにいつも思っておりまして、質問もどこまでしたらいいかなというふうにもきょうも思っていたわけでありますけれども、少なくとも、総理、松原大臣、まあ玄葉大臣もそうでありますけれども、この問題に対する思いというのは、本当にこれは与野党を超えて共通の思いに至っていると思いますし、粘り強くきちっと外務省としても取り組んでいただきたいし、連携をきちっとしていただきたいと思います。

 そしてまた、用意した質問がもう余りないものですから、ちょっとお話しいたしますと、松原大臣が、この間、また出ますよという話ですけれども、やはり今、これは世界共通だと思うんですが、ネットもございますし、いろいろな発信というのは大事だと思います。もちろん、国内からでも発信というのはできるわけでありますけれども、行った先々でいろいろな現状についていろいろな形で発信をしていくということは本当に効果があるんだろうというふうにも、私は個人的にそう思いました。

 こういったことを、例えば外務大臣が行かれたときにも努力されていると思いますけれども、引き続きそうした連携をとっていただきたいということについて、大臣、御答弁を。そして後藤副大臣からも、この点についてちょっとお話をいただければというふうに思います。

中野大臣政務官 先ほど来、外務省の玄葉大臣から答弁させていただいておりますけれども、今、委員御理解いただいておりますけれども、具体的にどのようなメッセージを外務省から、ないし大臣から発させていただいているかということは、恐縮でございますけれども、この場で申し上げることはできないんですが、先ほど来、玄葉大臣から申し上げているとおり、外務省としてもしっかりと、いろいろな形で、いろいろなチャンネルを使って、北朝鮮に対してメッセージを送らせていただいているということでございます。

 この点につきましては、外務省一丸となって、内閣一丸となって、これからも全力を尽くして取り組んでいく所存でございます。

 ありがとうございます。

後藤副大臣 先生御指摘のとおり、国内はもとより、海外のいろいろな世論形成を諸外国とも連携をしながらやっていくことが一番大切だというふうに思います。

 特に、私の地元も、拉致ということを認定されておりませんが、特定失踪者と認定されている方もいらっしゃいます。そういう意味での、やはりその地域にいるということが非常に密接な関係を、国内でも当然意識的に醸成をすることもあるでしょうし、また、海外のいろいろな方々に、ぜひ、この拉致問題の大切さ、また人権問題で、その重要性ということを、あらゆる機会を通じて対応していくことが私自身は肝要だというふうに考えております。

高野委員 ぜひ引き続きお願いをしたいというふうに思います。

 玄葉大臣が戻っていただきましたので、ちょっと質問させていただきます。

 核問題の進展は拉致問題の解決に不可欠であるというふうに思います。北朝鮮の核問題について話し合う六者会合は、二〇〇八年八月に金正日総書記が脳卒中で倒れてから滞っておりますし、二〇〇九年四月には北朝鮮は六者会合からの離脱を宣言し、現在に至っております。

 先ほども質問があったかもしれませんけれども、こうした中、二〇一〇年三月、北朝鮮製の魚雷による韓国哨戒艦爆破、二〇一〇年十一月の北朝鮮による韓国延坪島の砲撃、さらに、ウラン濃縮施設の公開によって六者会合の再開は不透明になっておりましたけれども、一一年七月に南北協議が開催されて、十月の米朝協議の実施、一二年二月の食料支援の暫定合意もされて、六者会合は間もなく再開されるのではないかという期待も持たれていました。

 しかし、四月の北朝鮮によるミサイル発射によって、二月の米朝合意は破棄され、そして国連安保理決議にも違反することになり、そのため、朝鮮半島の核問題について話し合う六者会合の再開にめどが立たなくなってしまっているというのが今の現状であるというふうに思います。

 そうした中、このミサイル発射は、解任された李英浩らの軍部の強硬派が主導して行ったとの見方も一部にあり、そういう意味では、先日、李英浩総参謀長が解任されたことは、六者会合に向けて、よいといいますか、前進する環境が整ってきたのではないかというふうにも思えるわけであります。

 六者会合再開に向けて日本はどのような努力を行っていらっしゃるのか、また、李英浩総参謀長の解任によって六者会合再開の可能性が高まったとお考えになるか、大臣の御所見をお伺いしたいと存じます。

玄葉国務大臣 もう高野委員も全て御存じだと思いますけれども、確かに、李英浩氏が強硬派である、そういうふうに見られているという見方があるということは承知をしているところであります。その李英浩氏が解任をされたから、では六者はやりやすくなるか、こういう話でありますけれども、そうストレートに結びつくものではないと思っています。

 結論から申し上げれば、六者を直ちに再開できる状況にはないと思っています。その上で、先般もプノンペンで日米韓の外相会合を行いました。また、中国とも話し合っています。先般の日ロの外相会合でも、拉致問題を含めて、北朝鮮の問題を一定の時間を費やしながら話をしました。

 ちなみに、ロシアは、北朝鮮との間で債務の問題を片づけたりして、以前よりも影響力を増しているというふうに思います。中国は御存じのような関係がございますから、そういう意味で、中ロとも連携をしながら、やはり、日米韓が求めていることに対して北朝鮮が具体的な行動をとる、前向きな対応をとる、そのことをしっかり働きかけていきたいというふうに考えています。

高野委員 今、大臣の方から、ロシアは影響力を増しているというふうな分析をされているということでございました。

 中国が影響力を持っているということは、もちろんこれは言うまでもないことだと思うんですけれども、中国は、金正恩体制に移行する前に、それを支援するような、支えていくぞというようなメッセージを出してきたかと思います。

 しかし、最近の報道によりますと、北朝鮮と中国の代表的な経済協力プロジェクトとして、鴨緑江の地帯で進める予定だったんでしょうか、黄金坪島経済特区開発事業というのが工事を開始することさえできないまま頓挫しているというような話も伺っておりまして、そういう点では、中国の北朝鮮への影響というのがかつてと同じように今あるのかどうか。

 ロシアは前よりも出てきたというような話も今ございましたけれども、中国の北朝鮮に対する影響力というのを活用するのは拉致問題解決に不可欠だと思いますけれども、一方で、こういう最近の中朝関係を考えますと、重要であることに変わりはないと思いつつも、どのような分析といいますか、ちょっとした変化や報道も、さっきミニスカートの報道とかそういうこともちょっと言いましたけれども、日本の週刊誌を我々が読むのとは違って、ちょっとした情報でも、こういう全く国交のない国でありますし、やはりきちっと捉まえて対応するということが大事だと思うのであります。

 玄葉大臣は十分におわかりの方でありますので、大変僣越でありますけれども、中朝関係について、ちょっと御見解をお伺いできればありがたいと思います。

玄葉国務大臣 今、高野委員から、黄金坪島というんでしょうか、これは確かに、中朝の共同で開発することに合意をして、昨年六月に共同開発着工式を実施した、けれども、一年以上経過した現在も工事が開始されていない、頓挫する可能性が高いという報道があるということは承知をしているということです。

 中朝間の経済協力関係というのは、全貌は実は明らかではありません。ただ、これまでの北朝鮮措置などで我が国はもう貿易を全くしていないんですけれども、中朝間の貿易というのはかなりあるんですね。そうなると、措置の実効性、こういう議論もあるんですけれども、それは今はおいておいて、中朝友好協力条約というのが一九六〇年代にもともとありますので、やはり中国については、北朝鮮に対する一定の影響力というのはあるというふうに見ていた方がよいし、私自身も、この一年くらい、この問題で中国側と話をしていて、そう感じます。

高野委員 ありがとうございました。

 しっかりとした対応をとっていただいているというふうに思いますし、これからもよろしくお願いをしたいというふうに思います。

 冒頭申し上げましたように、私は、この問題について、正直、熱心ではなかったというふうに思っております。この委員会に入って、いろいろとわかってはいても、具体的に取り組みを自分がしたかといえば、そうではなかったというふうな思いでございまして、今しっかりと、この委員会の存在意義、やはりメッセージをきっちりと発信し続けるという強い決意というものを示すことが当委員会にとっても重要だと思いますし、関係各省と連携をしながらしっかりと取り組んでいくことをお誓い申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

吉良委員長 次に、大山昌宏君。

大山委員 国民の生活が第一・きづなの大山昌宏でございます。本日は、質問の機会を与えていただきましたことに、まずは感謝を申し上げます。

 北朝鮮による拉致問題では、政府によって認定された拉致被害者のほかにも、北朝鮮による拉致の可能性を排除できない人、いわゆる特定失踪者の問題がございます。

 平成十五年に発足した民間の独立調査機関である特定失踪者問題調査会によると、特定失踪者約四百七十名のうち、拉致の確率が高いとされるいわゆる千番台リストには、七十三名の方が掲載されております。政府も、二〇一〇年十一月二十九日に行われた拉致問題対策第四回会合での本部長の指示により作成された「拉致問題の解決に向けて」の中で、「拉致の可能性を排除できない事案に係る捜査・調査の徹底」に取り組むとしているところでございます。

 そこで、最近の特定失踪者問題への取り組みについて、幾つか質問させていただきたいと思います。

 特定失踪者藤田進さんの御家族である藤田隆司さんが、ことし四月に、国連人権理事会強制的失踪作業部会に、進さんの失踪を議題として取り上げ、北朝鮮に生存を確認するように申し立て、七月十二日に同部会に出席、事情聴取に応じました。

 先ほど、政府としてもバックアップされたということでお話がございましたが、政府は、特定失踪者藤田進さんの事案に対してどのような認識を持っていらっしゃるのか、それについてまずお伺いしたいと思います。

後藤副大臣 先生御指摘のとおり、これまで拉致被害者と認定している十二件十七名以外にも、今先生御指摘、お触れいただいた藤田進さんの事案も含めて、拉致の可能性を排除できない事案が存在するという認識のもとに、政府としても、関係機関が緊密に連携を図りつつ、捜査、調査を進めているところであります。これらの捜査、調査の結果、北朝鮮当局による拉致行為があったと確認された場合には、速やかに拉致被害者として認定する考えでございます。

 そして、先ほども先生に触れていただいたように、特定失踪者藤田進さんの御家族であります藤田隆司さんが七月に、国連強制的失踪作業部会委員との面会のため、ジュネーブを訪問されたところであります。この訪問の際にも、さまざまな角度から、政府としても支援をしているところでございます。

大山委員 ありがとうございます。

 若干重なる御答弁をいただくことになるかもしれませんが、政府は、特定失踪者問題について、どのような取り組みをこれからさらに行っていくというふうにお考えでしょうか。

後藤副大臣 一般的に言えば、今も御答弁をしましたように、拉致の可能性を排除できない事案が存在するという認識を持ちながら、関係機関が緊密に連携を図りつつ、捜査、調査を進めているところでございます。

 今後とも、この関係機関の連携を図りながら捜査、調査を進める中で、関係御家族との面談の機会を設けながら、政府の取り組みの状況の説明等も行っていく考えであります。

 さらに、拉致の可能性を排除できない事案を含めた拉致問題について、先ほどもちょっと触れさせていただきましたように、国内の地方公共団体とのさらなる連携の強化、国内外における広報啓発活動の充実に努めながら、この事案に関する一層の理解の促進、そして世論の喚起を図ってまいる考えであります。

大山委員 ありがとうございます。

 さまざまな取り組みをされているということでございますが、外務省は、アメリカや韓国など近いところ、それからまた、それ以外の諸外国を含めて、特定失踪者に関する情報収集を何か行っていらっしゃるのでしょうか。また、国レベル以外にも、民間のレベルでの活動を通して特定失踪者に関する情報収集を何か行っていること、なかなか答えにくい部分はあるかもしれませんが、あれば御答弁いただきたいと思います。

中野大臣政務官 お答え申し上げます。

 端的に申し上げると、当然のことながら行わせていただいているということでございます。

 先ほどの内閣府の後藤副大臣の答弁と多少重なりますけれども、政府といたしましては、認定被害者以外にも拉致の可能性を排除できない人が存在するとの認識に基づいて、いわゆる特定失踪者の事案も含めて、その調査、捜査に全力を挙げていることでございまして、その点は、外務省としても情報収集に努めているところでございます。

 それで、外務省としましては、例えば、二〇〇八年の日朝の実務者協議におきましても、いわゆる特定失踪者を含む拉致の可能性を排除できない人に関しての情報の提供を北朝鮮に対して求めているところでございまして、また、国際社会での拉致問題に関する理解を啓発するに当たっても、いわゆる特定失踪者の方々の事案について留意するように努めているところでございます。

 外務省といたしましても、今後とも、認定被害者はもとより、北朝鮮が現実に拉致した全ての拉致被害者について、関連する情報の収集に努めるとともに、その安全確保と速やかな帰国につきましては、北朝鮮にこれからもしっかりと強く働きかけをしていきたいというふうに考えております。

大山委員 先ほど、ほかの質問者の方のお話の中にもありましたが、国会の委員会においても、少し開かれないと、いろいろと、人間の思いというか記憶というか、そういうものが少しずつ薄れていく、これはもう人間のさがかもしれませんが、やはりそういった現実がある以上、世論調査でもそういった結果が出ているということでございますので、何とぞ、広報、そういった面も通して、この問題に関しての、少なくとも意識は国民全体が持ち続ける、そういった施策を何か打ち出して、どんどん継続してやっていくことが大切だと思っております。

 次の質問になりますが、家族会代表の飯塚繁雄さんらが七月二十日に埼玉県警を訪れて、拉致された可能性を排除できない全ての失踪者の再調査を求める要望書を提出したとのことでございますが、警察として、この要望に対し、今後どのように対応されるおつもりでございましょうか。

沖田政府参考人 お答えいたします。

 警察には、埼玉県警察に対するものも含めまして、北朝鮮に拉致されたのではないかとして九百件以上の御相談、届け出がなされておりまして、現在、拉致被害者と認定されている方以外にも北朝鮮による拉致の可能性を排除できない方が存在しているとの認識のもと、鋭意、捜査、調査を進めているところでございます。

 このたびの御要望書の提出も踏まえまして、警察におきましては、今後とも、北朝鮮による拉致の可能性が排除できない事案につきまして、拉致問題対策本部事務局等との関係機関と緊密に連携を図りつつ、事案の真相解明のため、全力で捜査、調査を進めてまいります。また、関係の御家族に対しましても、捜査、調査状況についての御説明を誠実に行ってまいりたいと存じます。

大山委員 ありがとうございます。

 もちろん、特定失踪者の全てが拉致被害者であるというふうに単純に結びつけられるわけではないことは十分承知しておりますし、たとえ拉致が濃厚であったとしても、それが北朝鮮による拉致であったと認定するに当たっては幾つかの条件が付されているということも承知しております。大変難しい問題だということは承知しております。

 しかしながら、拉致が濃厚である、そういった状況である以上、その一方で、しっかりとした形で政府の支援がなかなか受けられない、そういったことになると、たとえいろいろ民間なりさまざまな会や団体の御支援があるにしても、御家族の方が個人で全てそういったものを受けとめるということになると、想像を絶する以上に精神的な負担、実質的な負担というものが大きいものになると思いますので、拉致被害者として認定を受けていない方々に対する御配慮を十分にされているということではございますが、さらに、そういう方々がより希望を持って引き続き活動していくという、それについて、何か政府として、思いというか御答弁、思いを酌んだ上での御答弁をひとついただければと思います。

後藤副大臣 この拉致問題に関しては、今、七つの分科会でいろいろな議論を進めています。ある意味では認定分科会というところに関係すると思いますけれども、この認定のあり方ということで、先ほども、繰り返しになりますけれども、現在、拉致被害者支援法に基づいて認定した方が十七人、その可能性を排除できない失踪者の方も多数いるという意識のもとで、どういう形で捜査、調査をするという大前提はありますけれども、より積極的に認定がどうできるのかということも含めて、先生御指摘のように、全てがということでは当然対象になりませんが、どういう基準であれば少しでも前に前進できるのかということを今検討し、今まで二回、支援分科会自体を開催し、せんだっても、関係自治体の柏崎市長や佐渡市長、新潟県、福井県、小浜市からも、首長さん、副市長さんに来ていただいて、お話を聞きながら、現在認定されている方、そうではない特定失踪者の方をどうしていくのかということも、今鋭意、今までと違った形で少し絞り込んで議論をしているということは、少なくとも進めているということについては御理解をいただければというふうに思います。

大山委員 関係者の皆様の思いはただ一つ、離れ離れになっている家族に一刻も早く会いたい、再会したいということであると思います。そういった関係者の皆様の思いを酌んで、政府、国が一丸となってさらに支援をしていくということが必要であるというふうに思っております。

 次に入ります。

 北朝鮮が日本人拉致を認めて謝罪した二〇〇二年九月十七日から、先ほど皆様がおっしゃっているとおりでありますけれども、十年目を迎えようとしています。しかし、政府が日本人拉致被害者と認定している十二件十七名のうち、帰国した拉致被害者は五名のみで、依然として安否不明のままになっている被害者が十二名存在しております。

 平成二十三年十二月二十七日の拉致問題対策本部第六回会合におきまして、体制強化を図るため、拉致問題関係府省連絡会議のもとに、平成二十二年十一月二十九日の本部長指示に沿って設置が決定された、戦略、支援、法執行、情報、認定、広報及び国際連携の七分科会の協議の内容及び今後の進め方について、具体的にどのような状況になっているのか教えていただきたいと思います。先ほど、分科会、支援分科会が二度開かれたということでありますが、ほかを含めて、お願いしたいと思います。

後藤副大臣 先生御指摘のとおり、昨年の十二月二十七日の拉致問題対策本部第六回会合において、体制強化をしながらということで、現在、七つの分科会が設置され、協議を進めているところでございます。

 先生御案内のとおり、従来は関係府省の連絡会議というのが、本部会合の下というとおかしいんですが、実質的な部分であって、それをより機動的に運用するという目的の中で、この七つの分科会は、関係府省の副大臣等の中からメンバーを絞り込んで、特定の政策課題を継続して検討する体制を確保するということで設置されました。

 この分科会は、それぞれ回数は違いますけれども、少ないところは一回、本体の分科会ですね、ないしは二回ということで、私が二つの分科会の座長を務めております。

 一つは支援分科会ということで、帰国をされた被害家族の方々、またその御家族に対する支援のあり方について、先ほど申しましたが、関係自治体の意見も聞きながら、支援法が切れた以降を含めてどうするかということも含めて検討しております。

 そして、この分科会の持ち方ですが、基本的には関係副大臣が中心になってということなんですが、なかなかそれだけでは細かな課題や整理というのができませんから、ある程度会をしながら、課題になったものを事務局に落として、それをまた報告をしながら議論するという整理にしております。

 そして、私がもう一つ持っている分科会で、先ほどちょっと触れさせていただいた認定分科会も、今までに二度やっております。拉致の可能性を排除できない失踪者の方々が、先生御指摘のように多数存在するという意識を持ちながら、その認定のあり方をどうするかということで協議を行っているところであります。

 いずれにしても、この分科会、それぞれ七つありますが、やはり関係府省が連携をしないと、今先生お尋ねのように、警察の捜査ということもありますし、外務省の広報戦略ということもそれぞれ絡んでやるということでありますから、それぞれの課題をきちっと整理しながら、引き続きの検討を進めていきたいというふうに思っております。それがまとまった段階で、関係府省連絡会議の議論を経た中で、先ほどの、親であります拉致問題対策本部に報告をしていきたいというふうに考えております。

大山委員 これらは拉致問題の解決に向けて、体制を強化するために設置されたものであると思っております。実質的な活動がなかなか難しいという中で、名だけで実がないといったことにならないような、継続的な運用をしていくことが大切だと思っておりますので、やはり高い意識を政府としてもお持ちいただき、取り組んでいただきたいと思っております。

 次に、太平洋戦争末期の混乱で、北朝鮮で亡くなり埋葬された日本人の遺骨返還問題について、ちょっと時間が押してきましたが、お伺いしたいと思います。

 厚生労働省によると、亡くなった方は三万四千六百人、推定約二万人の遺骨が残されたままになっているとのことであります。その他、フィリピンなどでもいろいろそういった遺骨収集のお話がございますが、北朝鮮での遺骨収集はいまだ手つかずのままになっていると思っております。埋葬された人の名簿や記録は保存されていて、身元捜しが行われたということでありますが、やはり半世紀以上経過したということで、亡くなった方の名前しかわからなかったりとか、いろいろ行き詰まっているのが現状であると思います。

 昨年、中井元拉致問題担当大臣と北朝鮮の宋日昊朝日国交正常化交渉担当大使が中国で秘密裏に接触をされたということで、その際、やはり道路建設などで日本人の遺骨が、骨が見つかっている、また、肉親が墓参りのために訪朝を希望するなら受け入れるとの、日本政府だけでなく個人の申請でもオーケーだということで表明されております。また、ことし四月には、訪朝した清水澄子元参議院議員らが、やはり宋日昊朝日国交正常化交渉担当大使から、遺族の墓参りを無条件で受け入れると伝えられております。

 そういった状況の中、北朝鮮側は人道問題として遺骨の返還や参拝を受け付けるとしているのですが、政府としてはこういった動きをどのように捉えているのか、御答弁お願いいたします。

玄葉国務大臣 この遺骨の問題というのは、第二次世界大戦末期に旧ソ連が参戦をしたということで日本兵が亡くなったわけですね。また、結局、満州から朝鮮半島北部を通って帰るときにやはり亡くなっているということで、数はいろいろ言われているところがあるんです。

 この遺骨の問題というのは、やはり人道上の未解決の問題であるというふうに私は思っております。ですから、実は、現地での慰霊の実現について陳情があります。そういう実態でございますので、今、北朝鮮がこの問題についていろいろな動きを見せています。その意図等について、私はこの場で申し上げませんけれども、どう対応するかということについては、総合的に検討していきたいというふうに考えております。

大山委員 引き続き、よろしくお願いいたします。

 時間が参りましたので、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

吉良委員長 次に、古屋圭司君。

古屋(圭)委員 自民党の古屋でございます。

 両大臣、御苦労さまです。一月から通常国会が始まりましたけれども、残念ながら、きょうが両大臣との初めての委員会なんですよね。山花筆頭も一生懸命、開催に努力はいただいておりますけれども、やはり七カ月間開かれなかったということが、本当にこの拉致問題に対して政府がまなじりを決して取り組んでいるのかどうか、そこの姿勢もある意味で問われると思いますので、きょうこうやって開かれたことでございますので、ぜひしっかり誠実な答弁をお願い申し上げたいというふうに思います。

 今、それぞれの方から、正恩体制になって、張成沢と並んで大幹部の李英浩が事実上解任されただとか、七十七番目の序列の永哲氏がいきなり参謀総長になったとかいろいろあって、どう変わるかというような議論がありましたけれども、それは、ああいう国ですからよくわからないというのが現実だと思いますよ。そういうことではなくて、こういう体制に変わって、拉致問題解決に向けてどういうふうに変わる可能性があるのか、その基本認識。

 金正恩も、拉致問題はもはや存在もせず、そのにおいもしないということを言い放っているんですよね。だから、そういう意味からすると、この問題で、向こうが解決に向けて具体的に動き出すという可能性は極めて低いと思います。だから、むしろ、我々が今取り組んでいる政策をもっと強化する必要があるというふうに思いますけれども、この基本認識について、両大臣から簡単にお伺いしたいと思います。

玄葉国務大臣 まず、古屋先生には、とにかく拉致の問題に非常に熱心に取り組んでいただいていることに改めて、今国会初めての委員会ということでありますので、敬意を表したいというふうに思います。

 その上で、さまざまな変化が拉致問題にどういう影響を与えるのかということです。

 これは、今、古屋先生の認識を御自分で御披露されたわけでありますけれども、まさに政府の中でもさまざまな分析評価をしているところであります。

 したがって、このことについて、もちろん慎重に考えなければならない部分と、時間との闘いだという問題が一方であるわけであります。最後は対話で解決しなきゃいけないという部分がありますから、そこは総合判断をしていかなければならない。別に、総合判断で逃げているわけじゃないんです。さまざまな情報等々ございますから、そのあたりは総合判断をさせてもらいたいというふうに思っています。

松原国務大臣 私はこれまで、就任以来、公式、非公式、さまざまな場面で、数十回にわたり、繰り返し北朝鮮に対してメッセージを発出してまいりました。これに対して朝鮮中央通信社が批判的な論評を出してきたわけでありますが、これも、我々が出しているメッセージが受けとめられているというあらわれであると認識をしております。

 今後の対話の可能性や変化の兆候については、現時点において確定的な判断を申し上げることは時期尚早でありますが、私としては、さまざまな点から判断するに、新体制は従来と異なる方向性を模索しているのではないかと認識しております。新体制が、拉致問題の解決を初めとして、国際社会に認められるような新たな方針を打ち出すことを期待したいと思います。

 今先生おっしゃった、金正恩氏が拉致に関して発言をしたというのは、私は、この段階では把握をしておりませんということであります。

古屋(圭)委員 松原大臣、就任後、何度もこういうことを言っておられますよね。家族が亡くなってから被害者が戻ってきても拉致の解決にはならない。ある意味で、時間との闘いというものを逆手にとった発言だというふうに思います。その考え方は今でも変わっていないでしょうか。その確認をさせてください。

松原国務大臣 全く変わっておりませんで、やはりこの問題は早期に解決をし、我々は、例えば横田めぐみさんが滋さん、早紀江さんと抱き合う姿を見て拉致問題の解決を体で感ずるわけでありますから、そういった意味では、委員の御指摘のとおりの認識を今も持っております。

古屋(圭)委員 それは非常に正しい認識だと思いますよ。本当に、家族が亡くなってから帰ってきても解決には、解決にならなければ、我々は、拉致、核、ミサイルを総括的に解決する、その上で国交正常化を進めるということですから、国交正常化は未来永劫ないという考えなんですね。そういうことになるんですよ、理屈としては。

 そこで、外務大臣にもお伺いしたいんですが、松原大臣が拉致担当大臣としてそういう考えを持っておられる、その考え方は共有していますか。

玄葉国務大臣 御家族の方々が結局、年々高齢化されるわけでありますから、私も危機感を持っているんです。ですから、時間との闘いだというふうに私も思って、この問題に取り組みをしています。だからこそ、さまざまな情報を収集した上でのしっかりとした判断が必要だというふうに思っています。

古屋(圭)委員 いや、私の質問は、松原大臣が、家族の方が亡くなった後に被害者が仮に戻ってきたとしても解決ではない、こうはっきり明言しているわけですね。その考え方を共有していますかという質問です。

玄葉国務大臣 それはもう共有しなければならないと思います。実際に、先ほど申し上げたように、時間との闘いなので、一刻も早く全ての拉致被害者を帰国させなければなりませんので、そういう意味で申し上げれば、共有しています。

古屋(圭)委員 しなければならないということと、しているということとは違うと思います。それは共有をしているんでしょうか。なおかつ、そういうことを対外的に外務大臣から発信されたことはありますか。

玄葉国務大臣 今と同じ言葉を対外的に発信したということは記憶していませんけれども、常に時間との闘いだということを言っています。この委員会が対外的な発信だとすれば、だとすればですよ、それは共有しているというふうに申し上げて間違いありません。

古屋(圭)委員 そういうパズルのような答弁じゃだめなんですよ。松原大臣の、被害者の家族の方が亡くなってから帰ってきても解決じゃないということは極めて戦略的な発言だし、なおかつ、先ほど私が申し上げたように、時間がないということを逆手にとった、非常に戦略的な発言なんですね。だったら、外務大臣も同じことを言うべきなんです。

 というのは、お二人とも拉致対策本部の副本部長じゃないですか。総理大臣のもとでそういう組織をしている。その二人が、幹部が、言っていることが違うということじゃないですか。それは問題ですよ。だから、この発言はしっかり、今、外務大臣から、同じ意思であり、なおかつ、そういったことを発信するということをここで約束してください。

玄葉国務大臣 ですから、もうそこは松原大臣と全く共有しているというふうに申し上げたいと思います。

古屋(圭)委員 ぜひメディアの、ごらんになっている方は、そういう趣旨の質問を外務大臣の記者会見のときにもしていただきたいというふうに思います。

 これに関連して、北朝鮮は、今度のこういう体制を変えたり、あるいはミッキーマウスのイミテーションを出したり、あるいは奥さんを紹介したりして、ある意味でカムフラージュしているんですよね、猫だましと言った方がいいかもしれませんけれども。姿勢は変わっていないと思いますよ。

 そういうときに、向こう側から、いわゆる日本人の遺骨の問題、今、大山議員も質問されていましたけれども、遺骨の返還を向こうから提案してきているんですね。これは明らかに意図を感じますよ。こうやって日本人の遺骨問題を表に出すことによって、国内世論を拉致の問題からそらしていく、そういう意図がありありだと私は思います。

 確かに、人道的見地から日本人の遺骨問題は解決すべきですけれども、それと拉致問題とは全く次元の違う話なんですね。これによって、そういう問題がすりかえられるというようなことがあっては絶対にならないと思いますけれども、この点について、松原大臣はどういうふうにお考えですか。

松原国務大臣 北朝鮮に残された邦人遺骨の問題は、戦後未解決の問題と認識をいたしております。

 他方で、拉致問題は時間との闘いであると、これまでも繰り返し申し上げてきたところであります。北朝鮮で救出を待ちわびている拉致被害者を御家族が元気でいらっしゃる間に何としても取り戻すという、一刻を争う我が国の最重要かつ最優先課題であります。

 北朝鮮は、拉致問題は解決済みと繰り返し、極めて不誠実な態度をとり続けており、邦人遺骨問題を提起し、拉致問題の棚上げを図るのではないかと懸念する意見が多くあります。

 いずれにしても、遺骨問題は拉致問題とは別の問題として適切に判断されるものであり、私としては、今後とも拉致問題の解決のため、全力で取り組んでまいる所存であります。

古屋(圭)委員 外務大臣も、あわせて答弁をお願いしたいと思います。

玄葉国務大臣 これは、先ほども私、申し上げましたけれども、人道上の未解決の問題である、いわゆる墓参についての陳情があるという状況にございます。そのことについてどう対応するかというのは、まさに先ほど申し上げたような総合的な判断が必要なんですけれども、今、松原大臣も、そのことはそのことで適切に対応する、そして、拉致は拉致でしっかりと対応する。

 いずれにしても、拉致の問題を解決する上で、さらに最も有効な手段は何なのかということを考えながら判断をしていくということだと私は考えております。

古屋(圭)委員 極めて慎重な答弁ですけれども、やはり拉致問題とは全く次元の違う話なんですよ。国家主権の侵害、事実上のテロですからね。こういう問題と混同するようなことを北朝鮮が言ってくるということ自身が、それに乗っかってしまうということ自身も極めて問題だと思います。これは全く別次元の話なんです、人道的見地から。それはしっかり峻別をして、外務大臣としても、松原大臣が今答弁されたと同じ姿勢で取り組んでいただきたいということをここにお願いをしておきます。

 それと、四月十三日に、北朝鮮が、世界各国からのいわゆる強い自制要求を無視して、強引にミサイルを発射しました。きょうの外務大臣の報告書の中でも、これは明らかに国連決議に違反をしているということで、実は我々、その発射があった四月十三日、自由民主党の政務調査会の中に拉致問題特別委員会等々があり、そこの合同決議として、官房長官に、我々は制裁強化の提案を、その申し入れをしました。

 しかし、残念ながら、そのときに官房長官御自身も真摯に検討していきたいという答弁があったんですが、もう既に四カ月もたっています。にもかかわらず、全くこの問題については何の言及もされていないという現実、これをどういうふうにまず受けとめているか、両大臣から一言ずつ答弁をお願いしたいと思います。

玄葉国務大臣 これは、もう全て御存じのとおり、今の話は恐らく二国間の問題でおっしゃっているんだと思います。現実に、日本の北朝鮮措置は、全てこれも御存じでしょう、かなりのところまで行っているわけですね。現実に、貿易はもうない。

 こういう中で、私は、本当に北朝鮮に圧力を加えていくということになると、いわゆる国連の制裁、国際社会全体の制裁の実効性というものをしっかり確保するということが大事なんだろうというふうに思っています。

 だからこそ、今回、議長声明を強いメッセージにするべく日本として主導したということでございますので、そういう意味では、対北朝鮮措置のさらなる実効性の向上にやはり日本として取り組んでいくということが最も効果的であるというふうに私は思っています。

松原国務大臣 北朝鮮に対する措置は、核、ミサイルのほか、北朝鮮が拉致問題へ誠実な対応をとっていないこともその理由として実施してきているところであります。

 先般のミサイル発射に際し、拉致問題担当大臣の私としては、発射が行われた四月十三日の閣僚懇の場で追加制裁を行うべきであると問題提起をしたところであります。また、拉致被害者の中には、拉致問題への不誠実な態度を理由とする追加制裁を求める声もあり、御家族のその気持ちを重く受けとめているところであります。

 今後の対応については、拉致問題の解決のため、いかなる手段が効果的かについて、拉致、核、ミサイルといった諸懸案に対する北朝鮮の対応や国際社会の動き等を踏まえつつ、内閣全体として総合的に判断することとなります。

古屋(圭)委員 私たちの出した申し入れ書は、幾つかの項目はありますけれども、ポイントは二つなんですね。やはり実効性のあるものでなければ意味がないんですよ。

 その一つ目が、いわゆる北朝鮮に行った人の携行金額、この上限の設定をするということと、もう一つは、いわゆる在日北朝鮮人の、一旦北朝鮮に行った場合の再入国の禁止、この二つは極めて効果があるんですね。これはもう、松原大臣もそれはお認めになっていることじゃないですか。実際、この二つについても全くその実行をしようとしていないということであります。

 例えば、六月一日に参考人質疑をしました。このときは両大臣が出られなかったので、事務方を政府参考人として呼んであれしたときに、ことしのだけでも、報告ベースですよ、報告していないアングラのは山ほどあると思いますけれども、報告ベースでも、一月が三千二十万、二月が六千三百万、三月が三千百六十万、四月になるといきなり二億一千万。なぜそうか。これは、四月は御承知のとおり金日成の生誕百年ですよね。大きな行事があった。だから、そこに対して、人が運んでお金を献上しに行ったということは容易に予測ができると思うんですね。

 一方では、大臣御承知のとおり、朝鮮総連の本部の土地と建物はRCCが差し押さえ可能とする最高裁の判決が出ましたね。あれは、公的資金が投入されて、六百億円を朝銀から借りて、それを全く返済していない。要するに焦げついているんですね。一方では公的資金を六百億円ももらって、そのままほかっておいて、なおかつ、携行するお金を堂々と持っていかせる。なおかつ、持っていっている人間が、朝鮮総連の副議長をやっている五人も持っていっているわけですよ。やはりこれは極めて問題ですよ。

 ですから、そういった点からしても絶対にこの二点は速やかに措置をすべきだ、こういうふうに思いますが、まず松原大臣の考え方をお伺いします。

松原国務大臣 さまざまな場面で、現在、現段階における制裁に対して、さらにプラスしてどのような制裁があるかという検討は、議員の有志の中でも行ってきたところでありますし、私もどういう追加制裁というものがメニューとしてあるかというのは研究をしてきているところであります。

 そういった意味において、委員の御指摘については理解をするところでありまして、ただ、最終的には、こういったものについては内閣全体で判断することになるというふうに申し上げたいわけであります。

古屋(圭)委員 大臣が今理解するところだということ、それは、すなわち携行金額を、やはり上限を抑えるということと、もう一つは、やはり大切なのは、人の再入国の禁止措置なんですよ。現実に、朝鮮総連の副議長五人、これは向こうの国会議員も兼ねているんですね。この人たちが堂々と出入りしているんですよ。これは非常に問題ですよ。五人、朝鮮総連の副議長は五人ですよ。五人、出入りしている。これを、やはり再入国禁止の措置を速やかにとるべきじゃないですか。

 それで、やはり、今理解するところであると言ったならば、拉致担当大臣として、また今まで拉致に極めて熱心に取り組んできた、六人も大臣がかわった中で、そういう意味では一番熱心に取り組んでいる大臣だということは、多分、私もそれは認めますし、大臣自身も認めていると思います。自他ともに認めている、そういう人材が大臣になられたんだから、ぜひそれは、政府全体の中でそういうことをすべきだということを言うべきじゃないですか。

松原国務大臣 古屋先生御案内だと思いますが、いわゆる、日本にいて、北朝鮮の国会議員に関しては再入国は現在禁止になっているところでありまして……(古屋(圭)委員「そうじゃなくて、朝鮮総連の副議長」と呼ぶ)副議長に関しては、そういった意味では国会議員でないということで、現在はそうなっていないところであります。

 繰り返しになりますが、こういったことも私も研究をしてまいりましたし、この状況の中で総合的に政府で判断することになろうと思っております。

古屋(圭)委員 松原大臣らしくないな、総合的に判断するとかね。それはやはり大臣として、我々拉致議員連盟でやっているとき、まさしくそうすべきだと声を大にして言っていたじゃないですか、ついこの間まで。それが、そちら側の席に座った瞬間にいきなり腰が引けてしまうというのは、大臣らしくないな。

 これ以上お願いしてもあれだけれども、ぜひこれはしっかりそういう方向で取り組んでほしいということを私の方から改めて強く要請しますし、また、松原大臣の言動をしっかり私たちもウオッチさせていただきたいというふうに思います。

 それでは次に、アメリカ人の拉致濃厚の問題について御質問させていただきたいと思います。

 私ども拉致議員連盟、家族会、救う会合同で、五月の連休、そして連休後に一週間ほど訪米をさせていただきました。この一番大きな目的は、二〇〇四年八月に米国人スネドン氏が北朝鮮と中国との国境で拉致をされた可能性が極めて高いという案件について、政府関係者そして上下両院の関係者に説明し、そして訴えるために行ってまいりました。松原大臣もそのときはぜひ同行したいということで調整しましたけれども、どうも国対の方の状況でそれがかなわなかったようで、それは私も非常に残念だとは思います。

 そこで、まず外務大臣にお伺いしたいんですけれども、これは我々、向こうでも、政府関係者、デービース氏やあるいはキャンベル氏初め、多くの向こうの政府関係者、向こうの国務省の副長官等々とも会ってまいりました。その問題については理解はするけれども、その後になると、具体論になるといきなり、個人情報だから言えないとかわけのわからない理屈を言って、非常に腰が引けていましたね。

 我々は、拉致議員連盟も含めて政府にも強く要求をして、そして六月の二十六日から二十九日だったですか、三谷さん、そうですね、対策本部の政府職員が向こうに行って関係者と会ってきたということであります。その報告は受けています。

 それで、実は、行けと言ったのは、大臣が直接指示されたからですか。

松原国務大臣 これまでも日本以外の国の方で北朝鮮によって拉致された被害者がいることが明らかになっており、従来から、米国を含む関係各国との間で綿密な連携を図っているところであります。

 スネドン氏のケースについては、本年の四月二十八日に行われた日比谷公会堂における国民大集会において、私自身、スネドン氏の御家族と面談をしたところでありまして、そのとき古屋先生も御一緒だったというふうに記憶をしております。また、その後、アメリカのキング特使が来日された際には、我が国の拉致問題関係者において、スネドン氏の件について、拉致の可能性が排除できないという意見が強いということを伝えたところであります。

 こうした会談を受けて、六月末に三谷拉致問題対策本部事務局長代理を米国に出張させ、関係者と意見交換を行うなど、引き続き米国との間で綿密な連携を図っております。

 今後も、米国政府による判断を踏まえ、事実関係が明らかになれば、一層の連携を図っていく所存であります。

古屋(圭)委員 今の答弁によると、外務大臣は直接このことについて言及をされていない、指示も出していない、そういう理解でよろしいんでしょうか。

玄葉国務大臣 直接私が大臣指示という形でしたという記憶は確かにございません。

古屋(圭)委員 そういうところは、やはり政府全体として拉致問題を最優先課題の一つとして取り組むという視点からすると、片落ちですよ。拉致対策本部とアメリカの国務省の関係者が会うわけですから。会っているんだ、実際。では、後で聞きますよ、誰と会ったかということを。

 大臣がしっかりそういう認識をして、そして連携をして、その指示のもとに行くということでなくては、例えば、外務省からも事務方が行っていますよね。そういうときに、外務大臣からきちっとじきじきの指示があるかないかによって、やはり役人のスタンスというか気合いの入り方というのは、全然変わってくるんですよ。

 そういう意味で、ちょっとここは、今、当然指示をしていると思ったんだけれども、指示していないということがわかった。びっくりした。

玄葉国務大臣 今私が申し上げた意味は、私の発意ではないということで、連携してそうしようという意味での指示ならしていますよ。行ってくれ、それならそれがいいということで。

古屋(圭)委員 ということは、いつ、誰に、外務大臣みずからその指示を出されたんですか。

松原国務大臣 委員御指摘でありますが、この問題を含め、都度、玄葉大臣とは拉致関係は協議をしながら進めておりますから、このスネドンさんの件も当然、具体的な日時は今この場では申し上げられませんが、外務大臣と連携をして行動しているところであります。

三谷政府参考人 訪米させていただきまして、その結果については別途御質問があろうと存じます。

 今、外務大臣からの指示があったかどうかの点でございますが、私は、ワシントンにおきまして、在米大使館から多大な支援を受けました。これは間違いなく外務大臣名で私に対する便宜供与電が出ていた、そういうふうに理解しております。

古屋(圭)委員 それならば、最初から、私もちゃんと指示をしています、そう言えばいいんですよ。いや、自分からは指示していないという趣旨のことを言うから、これはおかしいんじゃないですかと質問者としては言わざるを得ないじゃないですか。もしかしたら、こんなことは疑いたくないけれども、うそをついているんじゃないか、こう思いたくなるのは仕方がないでしょう。

 やはりこういうこと一つ一つが、本当に拉致問題に対して松原大臣も外務大臣もまなじりを決して取り組んでいるかどうかと、一つのリトマス試験紙なんですよ。ですから、ちょっとこれは、きょう答弁を聞いてびっくりしました。そういうところを認識していない、いつ指示したかも覚えていない、ということはやっていないのかもしれないというところを聞いて、ちょっと私はびっくりしました。ぱっと即座に答えられるかなと思っていました。

 やはりアメリカにしても日本にしても、役所というのは洋の東西を問わず、新しい問題を出してくるということに対して極めて消極的ですよ。かつて、この拉致問題が日本でも話題になったときに、外務省にしても非常に消極的だったじゃないですか。それを、我々が議員連盟をつくって、あるいは家族会ができて、そしてみんなが総力戦でやった結果、認めてきたという姿があるじゃないですか。

 これは、ある意味で、アメリカの国務省も同じなんですよ。だって、新たな問題ですよ。もし自国民が拉致をされたということを正式に発表して、なってきたら、それは、アメリカのスタンス、アメリカ人の国民感情からして、自国民が拉致をされたら軍隊を出してでも取り戻さなきゃけしからぬ、許さないぞという姿勢になるのは当然ですよ。ですから、国務省としてもそういう、やや腰の引けた態度になっている。

 そこで、三谷さん、行かれましたね。関係者と会ったけれども、やはり報告を受けていても、ぜひそれは私どもとしても全面的に取り組みたいということは一言も言っていないですね。その辺の実情、詳しい経緯は必要ありませんから、要するに、向こうのスタンスだけを言ってください。

三谷政府参考人 それでは、できるだけ簡単にお答え申し上げます。

 まず大前提として国務省から発言があったのは、本事件の存在の有無にかかわらず、日本の拉致問題に対する思いと協力姿勢は何ら変更はない、これがまず大前提でございます。第二番目に、国務省としてはやるべきことはやっておる。三番目に、しかし、残念ながら新たな情報はない。

 以上が国務省からの反応でございました。

古屋(圭)委員 大臣、政治主導というならば、国務省の関係者に働きかけることももちろんなんですけれども、例えば、具体的に名前を言えば、下院のロスレーティネン外交委員長であるとか、あるいはユタ州の上下両院議員、これに相当強烈にプッシュをして、議会の中でこの問題を取り上げて、そして国務省に圧力をかけていく、これは我々がやったことじゃないですか。そういったことをしていかなきゃいけない。

 だから、我々はそのためにワシントンに行って、大変ハード日程だったけれども全部そういうアポイントをとって、このときは向こうの大使館の方が非常に協力していただきましたよ。藤崎大使初め大変御協力いただきましたので、それは感謝申し上げたいと思いますが、やはりユタ州出身の議会にいる皆さんにしっかり働きかけるという必要があるんですよ。やはり、大臣であると同時に、大臣は国会議員であります、政治家でありますから、そういう取り組みを、我々議員連盟ではなくて、大臣みずからのイニシアチブにおいて取り組むべきだと思いますよ。

 場合によっては、もし本当にアメリカにそのために出張するということなら、我々は国対にも話して、大いにそれは行かせましょうよというぐらいのことは私も交渉してもいいぐらいだと思っているんですけれども、その辺について、実際みずからがそういう行動をとっていかないと、やはりこれは、議会の皆さんの真剣度というのが変わっていかないんですね。

 特に、ユタ州というのは、御承知のように、今度大統領選挙があるときのロムニー氏の州、地元なんですよ。実は我々、ロムニー氏の関係者にも会いました。そして、この問題についてもしっかり説明をしたら、大変高い関心を示していたんですね。やはりこういう問題について取り組むことができるのは、役所側の人間じゃなくて、胸にバッジをつけた政治家なんですよ。

 その辺について、ぜひ意気込みをお聞かせください。

松原国務大臣 今、三谷代理から今回の御報告を申し上げたところでありますが、そういった、とにかく拉致問題は日本だけではなくて広範に広がっているということを我々は訴えるということも、我々が拉致を解決する大きな戦略的な指標であると思っておりまして、委員の視点も尊重して、また行動していきたいと思います。

古屋(圭)委員 アメリカが本当に真の連携をしようと思ったら、やはり、アメリカ人自身が拉致をされたということを、向こうの政府も議会もしっかりそれを認めて対応するということなんだ。そのことによって、日本と米国が本当に真の意味でのイコールパートナーになって、この拉致問題の解決に向けて動き出す、そのことが北朝鮮そして中国に対しての解決への圧力ということになっていくんですね。ですから、ぜひそれは私は取り組んでいただきたい。

 大臣に改めてそういう姿勢をもう一回、やはりみずからが乗り込んででもやるぐらいの決意をぜひお聞かせください。

松原国務大臣 拉致問題解決のためにはあらゆる方策を模索してやるという決意のもと、頑張ってまいります。

古屋(圭)委員 ありがとうございました。

 それでは、今何人かの方からもお話がございましたが、特定失踪者問題についてお伺いをいたします。

 国連人権理事会の強制的失踪者作業部会に藤田進さんの弟さんが呼ばれて、初めて参考人として、約四十分ですけれども、意見ヒアリングをしたということで、私どもも、ついおとといですかね、党の拉致対策本部でも、藤田隆司さんを呼びましてお話を聞きました。

 藤田隆司さんの話では、この作業部会のメンバーですら、ほとんど、特定失踪者の問題は全く認識していなかった、こう言っています。政府認定の十七人がいるということは知っていたけれども、全く認識不足だと。要するに、これは、世界に対する、国連に対する、日本の働きかけ不足ではないでしょうか。

 外務大臣、まず、改めてお聞きしますけれども、特定失踪者問題については、政府としてどういうスタンスで取り組むというふうになっていますか。

玄葉国務大臣 もちろん、政府としては、いわゆる認定拉致被害者以外にも、拉致の可能性を排除できない方々がいらっしゃる、存在する、そういう認識に基づいて、特定失踪者についても調査、捜査に今全力を挙げるということでありますし、北朝鮮に対しても、またさまざまな会合の場でも、あらゆる拉致被害者、全ての拉致被害者の即時帰国を求めているということでございます。

古屋(圭)委員 明文規定はどこに書いてありますか。

 私はびっくりしました。私が前、委員会で何度も、これは基本方針も対応方針も決まらなかったんです、それで、おかしいと何度も言って、平成二十二年の十一月の二十九日かな、本部長指示ということではっきり明文化されたんですよ。今いろいろな方が言った、そのことをぱっと答えられないということ自身が、ちょっと余りにも、私はびっくりしましたね。

 要するに、拉致の可能性を排除できない事案に係る捜査、調査の徹底及び国際調査を含む調査の継続ということをはっきり明文で示しているんですよ。ですから、それからすると、やはり国連に対しても、そういう関係者に対しても、この特定失踪者の問題があるんだということをみんなに説明をしていなかった、事務方がそういうところに啓蒙活動をしていなかったというあかしじゃないですか。

 だから、これからは、しっかりとこの特定失踪者問題についても、そういった関係者には広く訴えていただきたいし、また、明文規定がある以上はそれをする責務があるんですよ。いかがですか。

玄葉国務大臣 平成二十二年十一月二十九日の本部長指示で、「拉致の可能性を排除できない事案に係る捜査・調査の徹底、及び拉致実行犯に係る国際捜査を含む捜査等の継続」、これをすぐ立って答えられなかったというふうに指摘をされましたけれども、私は、簡単に日付まで出てくるものじゃないと正直思いますが、反省はしなければならないと思います。

 ただ、今言われた、藤田さんが出席された作業部会の会合とは別に、政府としても、在ジュネーブ日本政府代表部関係者が作業部会メンバーと会談し、これは全員のメンバーでありますけれども、会談をして、拉致の可能性を排除できない事案を含めた拉致問題全般について説明を行ったところであります。

 ですから、今のお話によれば、作業部会の方々がその時点で認識していなかった。それを踏まえて、今申し上げたような働きかけを行ってきている、そういうことでありますので、今後、こういった認定被害者以外にも拉致の可能性を排除できない方々がいるのであるということを、機会を捉えて、しっかりと留意するように努めてまいりたいというふうに思います。

古屋(圭)委員 ぜひそれをお願いしたいと思うんです。

 外務大臣は、よく海外の首脳と首脳会談をされますよね。私も、これはもう自由民主党の時代から、必ず拉致問題に言及するようにということで、それは取り組んでいただいていると思います。

 しかし、政府認定以外にも、こういう特定失踪者というのが、もう間違いない、いわゆる千番台リストの人が七十三人もいるんですね。だから、相当に広範な問題であるということも、やはり関係者の方々にしっかりそれは認識してもらうべきですよ。

 ですから、これからそういう首脳会談があったときは、この特定失踪者についてもぜひ言及をしていただきたいというふうに思いますけれども、いかがですか。

玄葉国務大臣 率直に言うと、毎回、外相会談でこの話をしています。北朝鮮の人権状況決議も含めて、する機会が多いんですね。ほとんどの外相にそういう意味では、そういう意味ではですよ、北朝鮮の人権状況決議もあるものですから、本格的な外相会談をやれば、ほとんどこの問題になるんですね。

 ですから、今のことについては留意しますが、つまり、認定被害者という言い方はしていないんですね。拉致問題、こういう言い方をしているんです。この間のロシアとの外相会談でも行いました。先般の日米の外相会談でもそうでした。しかも、おっしゃるように、貴国にもあるのではないか、そういう国もあるんですね。そういう国との外相会談では、そういったことも含めてしっかりと話をしているという状況です。

古屋(圭)委員 ぜひそれは、政府認定と、拉致の疑いが極めて濃い、特にそういう七十三人については、それだけ現実にあるということを海外の首脳にしっかり認識させる努力をしていただく、今の答弁でそういう趣旨のことだったと思いますので、ぜひよろしくお願いを申し上げたいというふうに思います。

 あと、この認定について、松原大臣、やはり十七人の政府認定以外にも、明らかにこれは拉致という可能性の高い人がいるわけですよ。だから、やはり新たな政府認定ということも含めて、今認定の分科会をやっておられるということを後藤副大臣からさっき答弁もありまして、二回ほどやっているということでしたけれども、やはりこれは松原大臣、国家公安委員長としての指導力のもと、ぜひそういった新たな認定についても前向きに取り組むように、ぜひお願いを申し上げたいというふうに思います。

松原国務大臣 この問題で藤田隆司さんが国連強制的失踪作業部会の委員と面会するためにジュネーブを訪問されるに当たっては、今回初めてですが、旅費支弁や職員の同行など、さまざまな支援を行ったところであります。

 これを行うに当たっては、北朝鮮人権法の中にやはりこういったものを支援することが読める箇条がありましたので、それをベースに、私はこういったことをするべきだというふうな判断をしたわけであります。

 この作業部会における議論とは別に、今後、古屋委員おっしゃるように、拉致の可能性を極めて排除できない方々に関して、やはり国として、拉致対策本部としてもどういった支援ができるかということで考えております。そういった意味では、今回は、藤田さんは、作業部会委員との面会日程に合わせ、いわゆる特定失踪者問題を含めた拉致問題の国際社会への理解促進のための事前調査をお願いしたわけでありますが、事務局において、調査の結果等も参考にしながら、今回は事前調査の一つの事例でありますが、今後は、国連強制的失踪作業部会の開始時期等に合わせ、いわゆる特定失踪者問題を含めた拉致問題について、国際社会への理解促進を図るためのさまざまなイベントを計画していきたい。

 なお、こういったものの企画実施に際しては、公募等により、いわゆる特定失踪者問題を含めた拉致問題に知見の深い団体からも協力を得たいというふうに考えておりまして、そういったことを通じ、システマチックに特定失踪者問題に関しても一定の支援をしていきたい、このように考えております。

古屋(圭)委員 やはり同じように拉致をされて家族が塗炭の苦しみを味わっているということについては、特定失踪者であっても政府認定の皆さんの家族であっても変わりはありません。ぜひその取り組みをしていただきたいということを強く要請させていただきます。

 それと、さっき、ことし九月十七日で十周年になる、こういう議論が前の委員の質問でもありましたけれども、玄葉大臣にお伺いしたいんですが、ことし九月二日はどんな日か、御存じでしょうか。

玄葉国務大臣 十周年というのは、いわゆる最初の日朝首脳会談があって十年ということだと思います。

 今の二日の話は、拉致の集会があるというふうに承知しています。

古屋(圭)委員 そうですね。家族会、救う会等々が、十年で、ことしが勝負の年というのを、松原大臣も常に言っておられますよね。本当に勝負の年なんですね。そういうことで大規模な集会が行われます。

 それで、ここには総理も出席をされるのではないかというようなことを仄聞いたしておりますが、私は出席すべきだと思いますよ。やはり、今の政府のスタンスと、それから総理の思いを伝えるために。

 そこについて、総理が出席されるのかどうか、そういう取り組みをされているのかどうかについて外務大臣にお伺いしたい。

松原国務大臣 まだ確たることは申し上げられませんが、私の立場からは御出席をいただければいいというふうに認識をいたしております。

古屋(圭)委員 やはり対策本部長ですから、十年という節目ですから、これはぜひ出席すべきですよ。ちょっと歯切れが悪いので、ぜひ出席するように、そういう気持ちだと思いますので。

 そこで、私は、この十周年に、やはり新たな政府としてのメッセージというものをはっきり出すべきだと思いますよ。やはり、通り一遍の挨拶ではなくて、具体論に踏み込んだ、例えば、先ほど私は、我々が四月の十三日に制裁強化のための、これは制裁強化というのは圧力をかけるということが目的ではありませんからね。先ほど松原大臣が言ったように、対話は実効性のあることが大切で、そのためには圧力が必要なんだと。対話を引き出し、拉致解決のための圧力なんですよ。だから、それは我々も同じなんだ。共通認識なんです。

 ですから、そのために、先ほど私が、四月の十三日に我々が申し入れをした二点、特に、副議長の再往来の禁止であるとか一回の携行金額をぐっと下げる、年間も制限をするということによって、やはり相当これは実質的な効果があるんですよ。だから、そういったものも含めたメッセージをぜひ出してほしいと思いますけれども、両大臣に伺います。

玄葉国務大臣 十年の節目でありますから、時間との闘いだという中で、先ほど古屋先生からは、制裁とか圧力というのは対話を引き出すための手段なのであるというお話がございました。

 ですから、まさに、この拉致の問題あるいは諸懸案を解決するために最も効果的な手段は何なのかということを私も常に考えていますので、そのことの中で判断をしたいというふうに思っています。

松原国務大臣 ことし十年になるわけでありますが、何よりも、昨年末に北朝鮮における指導者がかわったということは、これは大きな変化になっているという認識を持っております。現時点で金正恩新体制を評価することは時期尚早でありますが、今後、金正恩政権が従来の金正日体制の継承を乗り越え、新しい一定の方向性を見出すことを期待しております。

 そのため、これまでもさまざまな機会を通じ、北朝鮮側に幾つかのメッセージを発出してまいりました。拉致問題は決して風化をしない、関係者がいなくなったときに、日本と北朝鮮との間に永劫に解決しない問題として残るということは、これは北朝鮮側にとって時間がないということを私は示唆したところであります。

 新しい北朝鮮の体制が、既に死亡していたとしていた方々が実は生存していたと従来の主張を変えても、あえて批判することなく、それは前進と考えたい。また、こうした進展が得られれば、関係者とも十分に意思疎通をした上で、しかるべき人道支援も可能になるだろうということ。

 こういったことを私は繰り返し述べておりまして、先ほどから議論があるように、さまざまな反応がある中で、私は、さまざまなまた接触も多様に行われているということを申し上げたいわけであります。

古屋(圭)委員 ありがとうございました。

 もう時間も参りましたけれども、今、家族会の皆さんが一千万人の署名を一生懸命やっているんですよね。それで今、九百万人を超えているんですね。この姿勢は、私は本当に心から頭が下がる思いですよ。横田さんを初め、本当に高齢の皆さんが、暑い中で一生懸命頑張っておられるんですね。やはり、そういうことに対して政府は真摯にしっかり応えていく必要があるというふうに思います。

 最後に、これは私がちょっと指摘だけして、また改めてさせていただきたいと思います。

 アメリカで、いわゆる慰安婦の銅像が、韓国のロビーあるいはいろいろな関係者が喧伝をしている二十二カ所で建つというようなこと。私、ワシントンに行ったときもその議論をしてまいりましたけれども、これは、決してこの拉致問題、北問題と無関係ではないんですね。例えば、こういった運動を喧伝しているのは、挺対協、挺身隊問題連絡協議会、これは韓国のNGOですけれども、この人たちは極めて北と近い人ですね。北の労働党とは本当に深い関係がありまして、金正日が死んだときも丁重な弔文が奉呈をされて、それが披露されているということからしても。

 そういったいわゆる慰安婦問題でも、政府がしっかりとこの問題を、やはり事実と違うわけですから。二十万人の女性を強制的に連行してセックススレーブとして働かせたという銅像、これはやはり日本の先人に対する極めて侮辱ですよ。

 だから、こういったこととこの北朝鮮の問題というのは、ある意味で深くリンク、そういう意味では、敵と言ったら失礼ですけれども、非常に戦略が上手なんですよね。やはり、こういったことは総合的に考えて、ぜひ外務省としても、またアメリカ大使館とも連携をして取り組んでほしいということを最後に強く要請をして、私の質問を終わらせていただきます。

吉良委員長 以上で本日の質疑は終了しました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時三十二分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.