衆議院

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第5号 平成25年7月26日(金曜日)

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平成二十五年七月二十六日(金曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 山本  拓君

   理事 木原  稔君 理事 竹本 直一君

   理事 中山 泰秀君 理事 山口 泰明君

   理事 鷲尾英一郎君 理事 田沼 隆志君

   理事 上田  勇君

      池田 佳隆君    石崎  徹君

      金子 恵美君    斎藤 洋明君

      高木  毅君    高木 宏壽君

      東郷 哲也君    中川 郁子君

      細田 健一君    寺島 義幸君

      笠  浩史君    鈴木  望君

      三宅  博君    濱村  進君

      青柳陽一郎君    笠井  亮君

    …………………………………

   国務大臣

   (拉致問題担当)     古屋 圭司君

   参考人

   (北朝鮮による拉致被害者家族連絡会前代表)    横田  滋君

   参考人          横田早紀江君

   参考人

   (北朝鮮に拉致された日本人を救出する福井の会会長)            池田 欣一君

   参考人

   (特定失踪者家族)    大澤 昭一君

   参考人

   (福井県特定失踪者家族会代表)          澤  香苗君

   参考人

   (特定失踪者家族)    藤田 隆司君

   参考人

   (北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会会長)        西岡  力君

   参考人

   (特定失踪者問題調査会代表)           荒木 和博君

   衆議院調査局北朝鮮による拉致問題等に関する特別調査室長          関根  弘君

    ―――――――――――――

委員の異動

七月二十六日

 辞任         補欠選任

  桜内 文城君     三宅  博君

同日

 辞任         補欠選任

  三宅  博君     桜内 文城君

    ―――――――――――――

六月二十六日

 一、北朝鮮による拉致問題等に関する件の閉会中審査を本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 北朝鮮による拉致問題等に関する件

 全ての拉致被害者の安全確保及び即時帰国のための具体的な施策の拡充を求める件


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     ――――◇―――――

山本委員長 これより会議を開きます。

 北朝鮮による拉致問題等に関する件について調査を進めます。

 本日は、参考人として、北朝鮮による拉致被害者家族連絡会前代表横田滋君、横田早紀江さん、北朝鮮に拉致された日本人を救出する福井の会会長池田欣一君、特定失踪者家族大澤昭一君、福井県特定失踪者家族会代表澤香苗君、特定失踪者家族藤田隆司君、北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会会長西岡力君及び特定失踪者問題調査会代表荒木和博君、以上八名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、横田滋参考人、横田早紀江参考人、池田参考人、大澤参考人、澤参考人、藤田参考人、西岡参考人、荒木参考人の順に、お一人五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言いただきますようお願いいたします。また、参考人は委員に対して質疑をすることはできないこととなっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。

 それでは、まず、横田滋参考人、お願いいたします。

横田(滋)参考人 一九七七年の十一月に新潟市で北朝鮮の工作員に拉致された横田めぐみの父でございます。

 めぐみのことは、当初は、国内の身の代金目的の誘拐だろうと言われまして、新潟県警始まって以来という大規模な捜索をやってくださいましたのですが、めぐみの姿はもちろんのこと、遺留品も全く見つかっておりません。

 それで、二十年間は国内の事件と言われておりましたのですが、一九九七年に参議院議員の橋本敦議員の事務所から連絡がありまして、北朝鮮の工作員に拉致されて平壌にいるらしいという情報をいただきました。

 それから、国会で間もなく西村眞悟代議士が橋本総理大臣に質問してくださいまして、ただ、そのときには、ちょっと回答書がおくれていましたので、総理は、人権問題でもあるからということで、余り明確なお答えはありませんでした。しかし、五月になってからは正式に認定されましたけれども、そのときには調査中ということでした。

 しかし、このときは、テレビの生中継もありましたし、日本じゅうの方が、その当日の産経新聞、それから翌日以降の読売新聞、朝日新聞、毎日新聞等も全部が報じましたので、日本人が拉致されているということがわかりました。

 それから、家族会の結成等も三月の二十五日に行われまして、しかし、このときは、全員が参加したわけではなくて、八人の方、そのうち一人の方は御病気のために、実際、出席した七人の家族でつくりました。

 そして、小泉総理大臣の訪朝によって北朝鮮は拉致を認めましたが、さらに、そのときに、めぐみは死亡ということになっております。

 しかし、その後、北朝鮮から提出されました遺骨は別人のものということがDNA鑑定で出てきておりますので、北朝鮮の言うことはとても信用できません。

 ですから、まだ生きていると我々は思っておりますので、ぜひ一日も早く解決していただきたいと思います。

 それから、めぐみの場合は十三歳ですから、児童の権利条約、これは北朝鮮も加盟していますが、これには、子供を親から引き離してはだめだということ、それから、子供が家に帰りたがったら帰さなきゃならないというようなことがありますが、北は全く無視しておりまして、今さらそんなことを追及してもしようがないかもしれませんが、一日も早く、そのほかの人も含めて、日本に帰宅できるように御尽力をくださいますよう、よろしくお願い申し上げます。

山本委員長 ありがとうございました。

 次に、横田早紀江さん、お願いいたします。

横田(早)参考人 皆様、おはようございます。

 私たちのめぐみが行方不明になってから、もう三十六年目に入りました。二十年間という、全く行方がわからない期間というものが私たちに与えられました。

 本当に長い苦しみの中で、皆さんに助けられて何とか生き抜いてまいりましたけれども、まさか、北朝鮮による拉致、そのようなことがあるなんて考えたこともありませんでした。そのことが二十年後に発覚し、そして、北朝鮮の指導者の指令によってたくさんの工作員がいろいろな国々に放たれて、その国の善良な人たちを次から次からと煙のように消えていくような形でさらっていって、そして、親も子供も本当に人間としてもう最悪の悲しみの中で、この三十五年、四十年の方もありますでしょうし、たくさんの方がいらっしゃることがわかりました。

 私たちが立ち上がりましたころは、家族会をつくって、救うために、救う会の皆さんと、また国民の方に訴えて、本当に一生懸命に頑張ってきましたけれども、北朝鮮という国がいかに大変な国であるのかということを私たちはまだ知りませんでした、最初のころ。だから、拉致なんてものはいいかげんなことでしょう、でっち上げではありませんかと、署名さえしてくれる方がいないような状況が長い間続いておりました。

 今は、小泉さん訪朝の後、一緒に助けを求めていた蓮池さんや地村さん、そして思いがけなく曽我ひとみさんという方も、五人の方と御家族、あんなに立派に子供たちが育っているんだなと不思議な思いもしながら見ておりましたけれども、そういう方が帰られて、本当にこれが現実であったんだということを私たちは悟りました。

 そして、この国とどうやって対峙していけば本当に我が子が何とか元気で命をいただいて帰ってくることができるのかということだけを、私たち家族も、みんなが年を老いながら待っているんです。それでも、なかなかそれが進んでいかない。

 せっかく育ててきた子供がこのような形で人生を本当に台なしにされ、家族もどれだけの苦しみの中で暮らさなければならなかったかという、この拉致問題ということを、本当に、皆様のお子様や御兄弟が同じような状況になっておられたら、皆様はどうなさるんでしょうか。そんなことは私たちはもう諦めます、仕方がありませんよ、一つの人生のことでしょうというふうにもう無視をされるのでしょうか。命がけで、自分が死ぬまで闘い抜いてこちらの国に戻してあげると思われるのが、本当のお父様、お母様の姿だと私は思っています。

 何にも要りません。子供たちを帰してください。帰すためにどうか全力を使って、そして、北朝鮮と対話をしてくださるなり、制裁をしてくださるなり、とにかくよい方法を見出してこのことを実現してくださることを、ことしこそお願いいたします。よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

山本委員長 ありがとうございました。

 次に、池田参考人、お願いいたします。

池田参考人 全国の署名活動と集会活動、それにおいて、小泉総理の決断によって、地村夫妻以下五名がまず帰国してきました。ありがとうございました。

 日本語を知らない子供たちが学齢期で、中学校、高等学校、大学とお世話になったわけでございますが、福井県では、朝鮮語の免許状を持っている人が一人、それが幸いおりましたので、急遽若狭高校へ配属していただきました。それが池田誠司先生でございますが、本当に涙が出るほどの献身的な努力をしていただいた。感謝しております。

 それで、彼らは、高等学校も卒業し、大学も卒業し、そして就職をして、立派に今社会人となっております。本当に全国の皆さんたちに厚く御礼を申し上げます。

 さて、時間の都合上、結論を述べさせていただきます。

 一つは、北朝鮮の許しがたき人さらい事件は、安倍政権で絶対にこれを取り返していただきたい。それには、ここにお集まりの力いっぱいやっていらっしゃる国会議員の皆さんたちが中心になって、あすから行動を開始していただきたい。これが一つ。

 二つ目は、警察庁は、拉致された疑いのある者を各県別に掲示しました。これはよかったと思います。すばらしい。だから、各県別に掲示した、これをひとつよろしく行動に訴えていただきたい。これが願いでございます。小浜警察署では、もうすぐに、早速、署長を初め署員が拉致の現場へ駆けつけて調査を開始しております。だから、これを行動に訴えていただきたい。これが一つ。

 最後に、私の県の出身の山下春夫さんは、もう時間の都合上で、ないと思ったから、資料に書いてあります。国会議員の皆さんたち、よく読んで、そして、そうか、それでは現場へ行ってみようかな、そういう意欲をいただきたい。

 この山下春夫さんは船大工である、そしてプラスチックの修理の技師である、この二点において北朝鮮は拉致したと私は思う。

 そういうことで、これを本当に皆さんたちのおかげで政府認定へ持っていって、全員を取り返していただきたいことを希望いたしまして、私の陳述を終わります。

 よろしくお願いを申し上げます。

山本委員長 ありがとうございました。

 次に、大澤参考人、お願いいたします。

大澤参考人 四十年前に佐渡で拉致された大澤孝司の兄の大澤昭一です。

 今回、拉致被害者家族会以外のいわゆる特定失踪者の家族である私たちに対しても国会で発言の機会を与えてくださいまして、感謝申し上げます。

 多くの拉致された可能性が排除できない人たちに成りかわって発言させてもらいます。私を含め、他の特定失踪者が、家族の皆さんも、政府や国会が私たちのことを忘れずに関心を持ってくれたと安堵し、私たち家族との再会を期待しております。

 大澤孝司についてちょっと話をさせていただきます。

 弟の拉致は昭和四十九年でした。蓮池さん、地村さんの一連の事件の数年前で、当時はまだ拉致という言葉もなく、あり得ないことだと思っていました。現場で、県警ほかたくさんの人たちの大捜査にもかかわらず、何の成果もなく、最後は神隠しと諦めるほかありませんでした。

 平成八年に拉致の存在がわかり、十二年に、新潟の救う会の小島さんや馬場先生が弟の行方不明に関心を持って、各方面に連絡をとってくださいました。県庁、県警が再捜査と、動きがありました。

 平成十四年九月十六日に曽我さんの拉致を知り、県知事も、当時、新穂で県庁職員行方不明との発表があり、それで弟も拉致と確認し、以後、救出運動に参加しました。

 平成十六年には、県警が拉致の疑い濃厚と発表されたのを受け、政府の拉致認定も間近かと思いましたが、それ以来、全く進展しません。

 認定条件は重く、認定しないための認定ではないかと悔しく、悲しい気持ちになります。拉致被害者を認定するのが国家の義務であります。認定が進まないのは、事なかれ主義に陥っていないかとさえ思ってしまいます。

 最近は、特定失踪者八百六十八人を警察庁が発表するなどしています。認定こそ、失踪者家族を勇気づけ、政府を信頼する鍵です。積極的な認定をお願いします。

 幸い、総理は、認定、未認定にかかわらず、拉致被害者全員救出が拉致問題の解決だと言っております。選挙も済み、新しい局面の第一弾として拉致問題を進めていただき、十年間、何の進展もない拉致問題を、安倍総理の手で北朝鮮交渉の窓口をこじあけ、対話と圧力ほかいろいろなカードと手段で全ての拉致被害者を救出し、家族との再会を実現してください。救出こそ解決です。

 外交問題の一個として、国家の課題として、党派を超えて与野党で対応してくださるようお願いします。現在も北朝鮮で毎日日本からの迎えを待ち続けている弟ほか同胞、皆、四十年ぶりの再会を実現してください。今なら私も間に合います。

 今後、ぜひ御協力のほどお願いします。

山本委員長 ありがとうございました。

 次に、澤参考人、お願いいたします。

澤参考人 私は、福井県特定失踪者家族会の代表を務めています澤と申します。並びに、特定失踪者宮内和也の義兄でもあります。

 福井県特定失踪者家族会は、二〇〇九年六月七日に結成いたしました。このような家族会は全国でも見られるのが現状で、福井県として現在五年目に入っています。

 福井県の特定失踪者四名の失踪状況と若狭湾での事件につきましても、資料として配付させていただきました。

 若狭湾では密入国事件が多発し、どれだけ解決されたでしょうか。宮内和也さんの捜索には海上保安庁第八管区敦賀海上保安部が出役されました。しかし、その後、家族には何の連絡もありませんでしたので、私は、捜索が一旦終了した同年五月九日の一カ月後に敦賀海上保安部を訪問しました。そこで敦賀海上保安部から言われたのが、海上での拉致ではないとの回答があり、陸での拉致だから警察に行ってくださいと冷たく言われ、門前払いを受けました。

 四名とも第三者がかかわった可能性が十分考えられ、失踪に多くの不審な点が生じています。その点を、私自身、若狭湾のあらゆる地域で情報収集を行ってきました。すると、若狭湾地域には、まだまだ多くの隠された情報が潜んでいます。

 多くの密入国事件が解決されないことは、この事件に特定失踪者が巻き込まれた可能性も考えられます。警察庁と海上保安庁との捜査及び調査が、情報交換の実施とともに、捜査にかかわった地元の方々を含め、一度原点に返り、あらゆる角度から情報収集されることを求めます。

 私は、宮内和也さんの両親とよく会っていますが、宮内和也の遺留品、ジャンパーを見るのがつらくなっています。これが現物の遺留品です。

 家族は、日に日に体力が衰え、加速されているのを肌で感じるようになりました。それは、政府において救出への行動が見えず、その道筋すら家族に伝わらない日々、そして、我が子との再会への焦りによる苦痛との闘い、それが家族の心痛と、体力を激減させています。

 特定失踪者山下貢さんのお母さん、山下きよ子さんから、以前、このようなことを言われました。

 私はもう先が短く、時間がないです。貢の情報もなく、これからどうしたらよいのですか。今ではもう体力がすっかり落ち、歩くのが困難になってきました。警察当局のDNA採取も昨年の十二月に行われ、貢にしてあげられるのはこれぐらいのことしかありません。でも、命のある限り、我が子を助けるため、日本国を信じ、ただ懸命に生きていくしかないのですね。果たして我が子に会えるのでしょうか。一瞬でもよいので、我が子をこの手で抱きしめたい。私が先にあの世に行って、貢が帰国したとき、安心できる社会になっていてほしい。でも、貢も年がいっているから心配です。

 私たち特定失踪者の家族の声は、悲痛を超えて苦しみに変わっています。

 最後に、先生方におかれましては、特定失踪者の真相究明、早期帰国に向けて、格別の御尽力を賜りますよう、家族会を代表いたしましてお願い申し上げます。

 ありがとうございました。

山本委員長 ありがとうございました。

 次に、藤田参考人、お願いいたします。

藤田参考人 皆さん、おはようございます。

 私は、昭和五十一年に埼玉県川口市から失踪した藤田進の弟です。当時、兄は東京の大学に通っておりました。そしてさらに、昭和三十五年ごろに東京に住んでいた私のおじ、藤田慎のおいでもあります。きょうはよろしくお願いします。

 きょう私が皆様にお持ちしたのは、この「必ず日本に戻る 特定失踪者にも光を」という冊子があります。これは、これまでさまざまな方々にお渡ししているものですが、私の兄に関することを中心にこれまで出てきた情報を全て網羅しておりますので、ぜひお時間があるときに読んでいただきたいと思います。

 それで、このレジュメに従ってですが、私は、三年ほど前から、拉致問題に熱心な有志の方々と一緒に、東京都内にある大使館を約五十カ国以上回りました。そして、そこでわかったことがあるんです。実は、各国の大使館は、拉致問題に対しては非常によく理解しておりまして、協力的です。しかしながら、拉致問題の中身を伺うと、特定失踪者のことは全く知らないんです。要するに、北朝鮮による拉致問題はいわゆる政府が認定している十数人の問題だという認識なんです。初めて私の兄に関する情報とかを話しますと驚かれますし、こんなにいるのかということで、事の重大さというのを改めて再認識していただいております。

 そこで、大使館に行きますと、大使とか一等書記官とかの方々がお話しくださいまして、やはり日本の本気度を見ているんだなというのが言葉の端々からよくわかります。とにかく、日本がどれほど本気になってこの問題で海外に協力を求めているのか、そして特定失踪者を含めた対外的なアピールというのが非常に重要だなということをこの大使館訪問を通じて感じました。

 さらに、ある大使は、やはりこの問題は、北朝鮮と日本だけでやる問題ではなくて、国際化というのをどんどんやった方がいいのではないかということを申しておりました。

 さらに、私は運よく、去年、ジュネーブの国連人権理事会強制的失踪作業部会に参加することができました。ちょうど一年前の七月に行きまして、わずか一カ月後の八月十五日に国連で受理されているんですね。いわゆる国連の受理というのは日本で言う拉致認定に当たるもので、ほんの一カ月の間で、国連は正式に私の兄の失踪案件を受理して、北朝鮮に対して書簡を送った。早く藤田進の安否、所在を明らかにしなさいということを国連がやってくれたわけですね。しかしながら、それに対して北朝鮮はだんまりを決め込んでいるという状態が今も続いております。

 さらに、この問題は、日本と北朝鮮だけではなくて、関係各国の被害者もいるわけですから、国連とか、それから今度できました事実調査委員会、COI、こうした国際的な連携協力のもとに、日本が主導して、この問題を率先して積極的に解決に向かって導いていただきたいというふうに思っております。

 さらに、去年の暮れに、八百六十八人という拉致の疑いがある人がいるということが初めて明らかになりましたが、ぜひその真相を、一刻も早く進めていただきたいということです。

 そして、国内にいる関係する人物、共犯者、そうした方々の摘発なり逮捕なりを、日本でできることはまだまだたくさんあると思いますので、一刻も早く、北朝鮮による拉致というのは、北朝鮮に無理やり連れていく、そのまま工作員が連れていくというよりも、日本にそういう受け皿があったわけですから、その受け皿となっているそれを、実態の解明というものをぜひやっていただきたいなというふうに思います。

 時間が来ましたのではしょりますが、とにかく、必ず取り戻すということを本気になってやっていただきたいなというふうに家族からお願いしたいと思います。

 本日はありがとうございました。

山本委員長 ありがとうございました。

 次に、西岡参考人、お願いいたします。

西岡参考人 西岡でございます。

 私もメモを一枚準備させていただきましたので、それに従ってお話をさせていただきます。

 政府は、ことし一月に、「拉致被害者としての認定の有無にかかわらず、全ての拉致被害者の安全確保及び即時帰国のために全力を尽くす。」とする方針を決めまして、未認定被害者も救出の対象だと明言いたしました。歴代政府で初めてのことであります。この方針を内外に繰り返し強調すべきだと思っております。

 また、未認定の人を助けると言ったからには、そのための戦略を具体的に検討していただきたいというふうに思っておりますし、この委員会でも党派を超えた議論をしていただきたいとお願い申し上げます。

 同じ方針の中で、拉致に関する真相究明を引き続き追求していくと記されました。民主党政権時代の政府方針は、「安否不明の拉致被害者に関する真相究明」と表記されておりまして、認定被害者に関する真相究明だけが真相究明の対象かのように誤解される素地があったわけでありますが、改善されたと思っております。

 古屋大臣は、六三年五月に石川県で漁業操業中に失踪しました三人の漁民のケースですが、寺越事件はこの真相究明の対象に含まれるというふうに明言されました。そして、現場に行ってくださいました。また、殺人などの被害者である疑いがある渡辺秀子さん、この二人の子供さんは警察が拉致だと認定しているわけですが、身分を盗用された小住健蔵さんなどはもちろん、特定失踪者を含む多くの拉致可能性がある被害者の事案も、ここで言う真相究明の対象だということを明言していただきたいというふうに思います。言いかえるならば、特定失踪者を含む、疑いのある事案の真相究明は拉致解決の一環であるということを言っていただきたいということであります。

 政府に被害者帰国実現のための努力を義務づけています北朝鮮人権法の二条二項に次のような文案を追加することも検討していただきたいと思います。二条二項では、「その帰国の実現に最大限の努力をするものとする。」となっておりますが、「その帰国と真相究明の実現に最大限の努力をするものとする。」として、政府は真相究明にも努力をすべきだということを法律に明記していただくということも一つの方法ではないかと思っております。ここも先生方にぜひ議論していただきたいところでございます。

 三つ目ですが、では具体的に未認定の人をどう取り戻すかという枠組みですが、私の一つの提案がございます。

 北朝鮮側に対して、彼らが全被害者のリストを申告して、それを日本が検証する、そして不十分であれば再申告を求めるという枠組みをつくるべきだということであります。時間稼ぎに利用されるだけであります日朝合同調査委員会は、絶対に受け入れてはならないと思っております。

 北朝鮮の核問題に関する六者協議で、北朝鮮以外の五カ国は、全ての核物質の国外搬出を北朝鮮に義務づけていますが、その全量が幾らになるのか把握しておりません。全量が不明であることを前提に、北朝鮮に核物質の量を申告させ、それを五カ国が検証するという枠組みをつくりました。同じ要求を拉致被害者に関しても我が国はなすべきだと思っております。これは国際社会の常識に合致する要求でございます。

 以上であります。ありがとうございました。

山本委員長 ありがとうございました。

 次に、荒木参考人、お願いいたします。

荒木参考人 特定失踪者問題調査会の荒木でございます。

 お手元に、資料といたしまして、ポスターと、それから、一番上に「ポスターの訂正」と書いた二枚紙の資料がございます。時間の関係もございますので、できるだけ簡潔にお話をさせていただきたいと思います。

 要望事項といたしまして、まず第一件、最近、報道等もあり話題になっております、昭和四十二年に北海道雄武町沖で船が失踪した圭運丸事件の件でございます。

 これにつきまして、現在拉致の疑いが非常に高くなっておりまして、私どもも、拉致濃厚ということで先般判断をいたしました。これに関して海上保安庁に対し要請等をいたしているんですが、残念ながら、海上保安庁の方からは、当時の状況、そして現在の調査状況について、御家族にも一切報告がなされておりません。我々引き続き調査をしてまいりますけれども、これは、海の中に船が今あるということだけはわかっている事件でございまして、やはり海上保安庁の積極的な情報開示が必要でございますので、改めましてお願いをいたしたいと思います。

 それから、これとも関連するんですが、現在、警察、自衛隊、公安調査庁、それから海上保安庁、そして入管などの各組織の連携というのは、事実上ほとんどとられていないと言っても過言ではないと思っております。担当の、地元の各地域の個人の信頼関係でやっている部分が関の山でございまして、現実には連携はできていない。これも、連携してやりますというようなことではなくて、具体的にどういうふうに今の状況を変えていくのかということをやっていただきたいと思います。

 また、もし政府の方でそれができないのであれば、逆に、私どもの方に各省庁の担当者を派遣していただく等のこともしていただいて情報の収集を行っていく必要があるのではないか。どういう形であれ、やらなければいけないことですので、方法をお考えいただきたいというふうに思います。

 それから、救出が実現しない場合の問題ということでございますが、今回、国会の中がねじれの解消ということになりました。これはつまり、もうブレーキのかかるものは何もなくなったということでございまして、これでできなければ、それはもう明らかに政府の責任問題であるというふうに私は思っております。

 相手は、あの奄美沖の工作船でもわかるように、自分たちが自決することを覚悟して、日本に入ってきて工作員が拉致しております。こちら側も犠牲を出す覚悟がなければ、拉致被害者を取り返すことは絶対にできないというふうに思っております。実際に犠牲者が出るかどうかは別として、その覚悟は最低限必要であり、あくまでこれをしっかりと現政権で解決するというふうに言われている安倍政権において実現をしていただきたい、明確にしていただきたいというふうに思います。

 それから、私どもが重視しております山本美保さんにかかわるDNAデータの偽造事件。これは内容について詳しくお話ししている時間はございませんけれども、現在、DNAのデータについて、各特定失踪者の御家族などに各県警等からデータの採取を行っておりますが、私どものところには、本当に応じていいんでしょうかという声があちこちから寄せられております。自分のところのものも、どこか関係ない遺体と結びつけられて、自殺しましたというようなことになってしまったらかなわないということが御家族の懸念としてございます。

 我々は、そういうことはないでしょうからやってくださいというふうに言っているんですが、やはりその根本となるこの問題を、政府みずからメスを入れて、解明をしていただきたいと思います。

 それから、警察の情報開示に関しまして先ほど来もお話が出ておりますが、各県警のホームページにそれぞれの県にかかわる失踪者の情報を出しております。これ自体は大変な進展でございまして、私どもとして評価をしているんですけれども、ごらんいただければわかるように、どの県警のホームページも非常にわかりにくい内容になっております。その県に関係のない、御家族が今そこに住んでいるということだけで載っかっている方もおられて、実際に失踪したと思われる県のホームページには載っかっていない等々のことがございます。ですから、一括して警察庁ないし拉致問題対策本部のホームページにこれを載っけていただきたいというふうに思います。

 あと、最後に、私ども、北朝鮮に向けて短波放送を行っております。二〇〇五年から行っておりますが、当時から拉致被害者が聞いていたという話がございまして、これをさらに充実させるために、ぜひ中波放送の実現をしたいと思っております。国会としても御協力をいただければと思います。

 ありがとうございました。

山本委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

山本委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 参考人に対する質疑は、理事会の協議に基づき、まず、各会派を代表する委員が順次質疑を行い、その後、各委員が自由に質疑を行うことといたします。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。竹本直一君。

竹本委員 自民党の、拉致特の理事をやっております衆議院議員の竹本直一でございます。参考人の皆様、特に被害者の家族の皆様方、本当にきょうはありがとうございます。

 先ほどからいろいろお話をお伺いしておりますと、本当に心の痛みがじくじくと伝わってくるようでございます。特に、横田早紀江様の、自分の子供であればどうするかという言葉は、まさにこの拉致被害者救出に対する、我々日本人が持つべき心の態度だと私は考えております。

 十三歳のときにめぐみさんがさらわれて、行方がわからなくなった。そして、全く手づるがなかった。この間、どのような気持ちで二十年近くを過ごされたのか、まず、差し支えない範囲でもう一度その心の苦しみを聞かせていただければありがたいと思います。

横田(早)参考人 これはもう筆舌に尽くしがたい苦しみであります。

 本当に、今まで、その日の朝まで、いつもと同じように、元気で明るい、歌を歌ったり、子供たちとにぎやかに遊んだり、お友達とたくさん遊んだり、一生懸命に勉強もしたし、本も読んだし、普通に育っていた子供が、突然煙のように消えてしまって帰ってこない。何が起きたのかがわからない。

 親はみんな一〇〇%の親ではありませんから、私たちももちろんそうですから、何か私たちの育て方が悪くて、知らないでどこかに行ってしまったのかしら、それとも、誰かに連れていかれてどこかに埋められているのかしら、もういろいろなことを考えました。

 あの時期というのは、新潟の海とか、防風林の風の音とか、空気の感触まで、今でも忘れることができない。いつも浜辺を捜し回って、めぐみの小さな消しゴムとか、小さなペンダントとか、何でもいいからどこかに落ちていないか、もう本当に毎日のように捜し回って、海を見て泣いていました。

 そして、そういうときにいろいろな人たちが、宗教の人たちが私たちのうちに来て、たくさんのお金を積めばめぐみさんのことはすぐにわかりますよ、先祖をちゃんとお祭りしていないから、あなた方のうちにはこういうことが起きたんですよ、本当にいろいろなことを言いながら、苦しい中にまだ輪をかけて、私たちは、おこたに入りながらそれを黙って聞きながら、苦しい思いをしておりました。

 そういう苦しいときに、私はたまたま、いつもお話をさせていただきますが、聖書にめぐり会うことができました。その聖書の中に、非常に苦しみを負ったヨブという人がいて、そしてその人が苦しんでいるさまざまな様子を吐露している言葉がたくさん入っています。

 どこに助けを求めても、私はこの苦しみから逃れることができませんでした。どうしてあの子がいないのか、どこにいるのか、どこへ行ったのかと絶叫しながら、泣いても叫んでも何にもない二十年という苦しみは、もう気が狂うようなものでした。もう二度と人間になんて生まれてきたくないと思うほどの、このわからないことの苦しさは大変なものでしたけれども、そのヨブという人の苦しみを読んだときに初めて、本当にこの人と同じような思いなんだということがわかって、そしてそこから、聖書をいただいて、全部読むことができて、私たちは全ていいも悪いも大きな力に守られているんだという、そこに基点を置くことができて、きょうまで何とか皆さんに助けられて生き抜いてくることができたことを感謝しております。

 ありがとうございます。

竹本委員 ありがとうございます。

 心の痛みは今お聞きしたようなことでございますが、全国のお母様方、この心境を想像していただきますと、拉致被害者の方々の現在置かれている状況がよく御理解いただけると思います。

 そこで、署名活動を開始されまして、ことしの四月に百万人分の署名が集まりました。当初、横田様は、御主人様の方は、署名活動をやるけれども十万人ぐらいしか集まらないんじゃないかというふうなことを言っておられたと聞いておりますが、百倍に相当する署名が集まったということについては今現在どのように思っておられるか、御心境を聞きたいと思います。

横田(滋)参考人 今委員は百万人とおっしゃいましたのですが、十六年間かかって一千万人集まったわけです。

 この運動は、初め、新潟だけで始まったというのが実情です。そして、県議会の方は意見書を出してくださったり、それから、初めは自民党の方だけで拉致議連をつくってくださったりというような形からスタートしております。

 それで、小島さんという方が、やはり十万人集めるのは難しいことだろうけれども、運動だから少し高いところに目標を置いてやろうということで、第一番目には新潟県知事にお願いいたしました。この方は日本銀行に以前おられたので、ちょっと知り合いの関係もありまして。それで、二番目には県会議長にお願いいたしました。

 しかし、そのことが新聞に載りますと、小島さんの方にはたくさんの方から電話がかかってきて、そして、それは小口の人ですけれども、非常に数が多かったので、やはり半年ぐらいの間には三十万くらい集まりました。それで、私の方は、比較的大口の方から寄附がありましたので、やはり同じぐらいで始まりました。

 そして、東京なんかで救う会ができたのが十月ぐらいです。それまではもうほとんど新潟だけでやっていたというような状況ですけれども、そのころは、拉致なんて本当にあるんですかとか、こんなものに署名しても危なくないんですかとかというような時代がありました。しかし、小泉総理の日朝首脳会談のときに北朝鮮が拉致を認めたことで、それまでは北朝鮮は拉致はないと言っておりましたのですが、認めてからは、国民の間でやはり同胞を救おうという気持ちが非常に強くて、どこへ講演に行っても満席になるような状態です。

 やはり、初めは本当にあるのかどうかということが不思議だったと思いますけれども、今では国民の方はどこへ行っても支援してくださいますし、それがやはり我々の心の支えになっているわけです。それから、政治家の方も、やはり国民に余り関心がなければどうしても熱が入らないかと思います。しかし、そういう点では、国民の方が、もう全ての方が救出のために御協力いただけるようになりましたのは、心から感謝しております。それはもう、そういった方と、それからやはりそれを受け取る政治家の方との、両方の力だったと思います。

 これをぜひ、実際にそれを解決という形で実現していただきますよう、これからもどうぞ御尽力をお願いいたします。

竹本委員 本当に御苦労さまでございました。一千万人の署名ということが北朝鮮に対して大きい圧力となることを祈るばかりでございます。

 さて、この問題の解決には、我が国単独では十分いかないことが当然ございまして、やはり外国の力をかりなきゃいけない。そういう中で、アメリカに対しても、例えば、御夫妻は、ブッシュ大統領にお会いをし、その訴えをされました。全面協力するということは言ってくれておりましたけれども、なかなか、本当に諸外国が、あるいは国内が、真剣に、やることはすべてやるというところまでの決心をしているかどうかわからないような御心境のところもあるのではないかと思います。

 そういうさなか、私、二年ほど前に、拉致議連のメンバーで、平沼先生も御一緒だったんですが、亡くなられましたダニエル・イノウエさん、アメリカの上院議員ですね、この方にお会いしてこの話をしましたら、実は、その拉致されたという事実はアメリカ政府は早くつかんだ、そして、その当時、日本政府にそのことを申し上げたんですけれども、非常に微妙な問題なので余り騒がないでくれと言われた、こういうような話を御披露されました。

 そして、ダニエル・イノウエさんは、あなたたちは本当に被害者を救おうと思っているのかと。当たり前のことを聞かれるわけで、一体どうしたのかと思ったら、いや、そのように言われたことを記憶しているから、どう動いていいか慎重にしているんだというような趣旨だったと思います。

 だから、我々は、その当時の政府、民主党政権ですけれども、政府も、自民党も民主党も全部、何としても救いたい、そういうつもりでアメリカを訪問してきたんだ、こう言いました。

 事ほどさように、この拉致問題については、先ほど参考人の方の御発言にもありましたように、もっと真剣に、本当に救出を願っているんだ、あらゆることをするんだという雰囲気をつくらなければだめだというふうに私は思っております。

 幸い安倍首相は、自分の任期中にこれは必ず解決するという趣旨のことを言っていただいて、本当にうれしく思うんですけれども、このように、国内及び海外、この二つについて、やはりもっと盛り上げる必要があると思います。今までやってきておりますけれども、これ以上、例えばどういうことをやってほしいという御希望があれば、こういうことをやったらどうかという御希望があれば、ちょっと述べていただければありがたいと思っております。

横田(滋)参考人 やはりこの問題は、個人で解決するということは不可能だと思います。それは、アメリカなんかの場合で、記者の人が越境したような場合は個人の責任ですけれども、これは北朝鮮の国の責任になりますから、政府がやっていただくしか解決の方法はありません。

 それで、ここのところちょっと我々が気になりますのは、昨年の赤十字会談、これは遺骨の収集なんかを考えるわけですけれども、赤十字会談が開かれて、それをきっかけに、外務省の北東アジア課長が北朝鮮側と交渉して、さらに、アジア大洋州局長の方がモンゴルのウランバートルで交渉したとか、それで、そのときに北朝鮮側は、従来のように拉致は解決済みだと言い続けたのが、拉致のことについても交渉しようというような話になって、さらに、十二月の五日、六日のときには北京で局長級の交渉をしようというのが、北朝鮮側がミサイルを発射するということを予告したりしたものですから、日本側がそれを、今はその時期じゃないということで延期を申し入れて、そして、北朝鮮はその後ミサイルを撃ったりしたわけですけれども。

 そして、年末になって、北朝鮮側からは、交渉しようというようなことを言ってきたということが新聞に載っておりました。しかし、それから今までずっと中断されたままになっております。

 やはり交渉しなければ解決というのはありませんので、できるだけ早く交渉を再開していただければと思います。安倍総理なんかもいろいろな作戦を練っておられるんだと思いますけれども、ちょっと動きがないのは、家族の立場からすれば、もう少し交渉を早く開始していただければと思っております。

竹本委員 ありがとうございました。

 要は、圧力のみならず、交渉なりなんなり全部、使えるあらゆる手段を使って拉致被害者救済のために努力してほしい、こういう御要望だと思います。

 北朝鮮は、中国との関係が非常に濃密であります。貿易総額の七、八割が中国とやっております。ですから、中国を押さえることがこの解決の一つの大きい糸口になることは事実であります。政府として、ぜひ、その辺のところも、使える手段は全て使うという決心でこれからも我々与党としても臨んでいきたい、このように思っている次第でございます。

 本当に御苦労さまでございました。

山本委員長 次に、鷲尾英一郎君。

鷲尾委員 民主党の鷲尾英一郎でございます。

 私も新潟出身でございまして、小さいころから、それこそ、めぐみさんが拉致された寄居中学校近辺にもよく行っておりました。きょうはまた、いろいろな皆様方の思いを聞かせていただきまして、非常に胸に迫るものがありました。貴重な意見を本当にありがとうございます。

 さて、冒頭申し上げたいのは、本来であるならば、閉中ではなくて国会の会期中に委員会を開催して、皆さんにもお越しいただいて、何度も何度もこういった委員会を催しながら、皆さんと意識を共有し、国民の皆さんにもそれを発信して、拉致問題解決に向け全国民一丸となる体制をつくる、委員会にはそういう役割があるというふうに思っております。そういう意味では、この会期中になかなか委員会が開けなかったことを遺憾に思っておると同時に、閉中ではありますが、こういった形で開いたこと、委員長の尽力にも感謝申し上げたいというふうに思います。

 また、重ねて申し上げますが、今回は、拉致被害者の家族の皆様のみならず、私の記憶が確かならば、特定失踪者の家族の方がこうして国会においでになるというのは初めてのことだと記憶しております。そういう意味でも、特定失踪者の皆様方にも非常に勇気づけることができるんじゃないか、そんな意味のある委員会になったというふうに考えております。

 それでは、質問をさせていただきたいというふうに思います。

 きょうは、今ほど申し上げた特定失踪者の家族の方においでいただいておりますので、特定失踪者の皆様方が、ふだん、それこそ、認定という意味では異なりますけれども、拉致認定されていない中で、我々はどうして拉致被害者と異なる取り扱いなんだろうなということを強く感じる点、どういった点をお感じになっているかということを、特定失踪者の家族の方からコメントをいただきたいと思います。大澤さんと藤田さん、お願いいたします。

大澤参考人 今回、幸い総理は、認定、未認定にかかわらず、全員救出が最後の目的だと言ってくれています。

 数年前を振り返ってみますと、ともかく私たち未認定は、北朝鮮との交渉が始まった段階で、私たちの名前が北朝鮮との提出の名簿の中に入るのか入らないのか、これが私たち家族の一番心配の種でした。本当に最後まで、私たちのは入ってくれるんだろうか、また、四百人以上の特定失踪者の中でどこまでが入るんだろうか、そういう気持ちでいっぱいでした。

 そういう関係から、今後の交渉については、ともかく警察庁の発表なされた八百六十八人についてよく精査してもらいまして、それについて十分に発表、折衝の名簿に載せてもらいたいと思います。

藤田参考人 ありがとうございます。

 とにかく、私の兄に関しては、本人の写真が出てきているわけですね。それから、北朝鮮で目撃情報もある。さらに、国内で誰の指示のもとに私の兄が拉致されて、どこに一旦連れ込まれたかという具体的な情報も出ているんですね。それは、先ほどお渡しした冊子の中にもあります。これだけ情報があるにもかかわらず認定されないというのが本当にわからないんですよね。あと何があれば認定してくれるんですかと。

 もちろん、認定が目的ではないですよね。要するに、北朝鮮にいる拉致被害者を日本に取り戻すということが目的なんですが、ただ、その前段階として、これはもう明らかに拉致以外考えられないんですよ。にもかかわらず、何だかんだいろいろな理由をつけて、認定しない理由をどういうふうに考えるのかよくわかりませんが、認定が進まないということが、家族としては、どうしていいのか、非常に悩んでいる状況です。

 とにかく、北朝鮮による拉致の大半が、証拠を残さない、要するに、完全犯罪に近いものですよね。そうすると、証拠をもとにしてそれを認定していくということ、当然それは大事なことなんですが、では、証拠がない人たちは永遠に認定されないという話になっちゃうんですね。

 ですから、認定のあるなしにかかわらず、実際に拉致された方々を、できるだけ、日本の総合力、捜査、そういう情報網を、総力を挙げて一刻も早く集約して、北朝鮮に対して突きつけてほしいというふうに私は思っております。

 ありがとうございました。

鷲尾委員 せっかくですので、池田さんと澤さんにも同じ質問にお答えいただけたらというふうに思います。

澤参考人 私たち特定失踪者は、本当に、あの家族会ができる前も、全て政府から見れば蚊帳の外でした。意見を言っても通らず、県へ言っても通らず、全てが、私たちの声がどこまで政府に届いているのかという疑問さえ起きて、家族は路頭の日々でした。訴える場所がない、訴えても訴えても先へ進まない。署名活動にしても、特定失踪者そのものが、特定失踪者って何ですか、これだけの言葉が返ってきて、署名すること自体が逆に怖くなっている状態が感じられるのが今の現状でございます。

 もっとオープンに、私たち特定失踪者ということを見捨てないでいただきたいのが、本当に、先ほど申しました山下きよ子さんももう九十歳ですので、もう先がないのも、本人は諦めています。けれども、どうにかしてあげたいというのが私たち家族。私も代表をしていますけれども、一々一々家族が亡くなっていくことすらが本当に怖いのが、今の家族にとってみれば、現状と、今の家族の心痛、苦しみでございます。

 以上でございます。

鷲尾委員 その上で、認定の問題につきましては、これからも当委員会でも政府に対してさまざまな議論をしていきたいというふうに思いますけれども、認定以外で、何か現時点で政府に求めていく、あるいは我々に求めていく点、特定失踪者の皆様方、御家族並びに会の皆様方に、認定以外でどういうことを求められているかということをもう少し具体的にお聞かせいただきたいというふうに思います。

池田参考人 地村夫妻以下五人が、生き証人が帰ってきた。帰っているんです。そうしたら、各自治体、各行政がもっと真剣にならなくちゃならない。いまだに、いろいろな行事をしても、民間の我々が主催して、集まれとか、来てくださいとか、そういう声をかけなかったら応じてくれない。まだ我々に頼っている。我々運動者に頼っている。特に荒木さんらのそういう調査団に頼り切っている。行政が、もう生き証人が帰っているんだから、もう少し……。

 そういう意味においては、福井県においては、行政を立ち上がらそうという発想のもとに、小浜市、敦賀市、若狭町、この三つは行政で立ち上げた。その真ん中が若狭町である。だから、若狭町の町長が会長である。

 だから、我々はそういう発想をしたけれども、広がりがまだない。これは、やはり予算化も、行政において、拉致問題の予算はこうだときちっと柱を立てる、そういうことも私はぜひともやってほしい。お願いします。

荒木参考人 認定の件について申し上げます。

 私ども調査会は、今は、認定を求めないというふうに変わっております。これはどうしてかというと、今お話がありましたように、きょうの参考人に出ている方々が認定をされないということ自体が、もう認定は極めて難しい、不可能に近いということなんだろうというふうに思います。

 それは、警察が中心になっている限りほとんど不可能だと私は思っておりまして、これを変えていく方法というのは、もう既に、今回、各県警のホームページに、拉致の可能性があるということで御家族からお届けがあった方々を各県警が載っけているわけですから、その方々を、あるいはそれにプラスして、警察がこれは拉致じゃないかというふうに独自に思っているケースなどを、これを拉致の疑いということで発表していただければ、もう既に名前は県警に載っかっているわけですから、それを集約していただいて、これを出すということで、国として、この人たちを拉致の可能性があるとして調べているんですということが表に出せれば、そちらの方が早いのではないか。

 ここはもう警察に預けるのではなくて、政治として決断をしていただければ、それだけで大きく国民の認識も変わってくるのではないだろうかというふうに思っております。

鷲尾委員 ちょっと時間がないので、申しわけない、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 先ほど荒木代表からも、認定を求めていないという話がありました。荒木代表の要望の中で、山本さんの件でありますとか、あるいは対北放送の充実についてという要望もございました。これについても、引き続き我々、ちゃんと関係機関を呼びながら、ぜひ当委員会としてもやっていきたいというふうに思います。

 最後の質問でありますけれども、正直申し上げて、きょうも、横田さん御夫妻からもお話がありました、また大澤さんからもお話がありましたけれども、非常に残された時間が少ないというのを強く感じます。残された時間が少ないという中で、それこそ今の大澤さんのコメントにもありましたけれども、この十年間、ほとんど何ら進展がないという現状ですね。この現状に対して、皆さん方、政府に対して何とかしてという思いがあるのは我々もわかっているところでありますけれども、より具体的に、どういう方法をしていってもらいたいか、あらゆる手段ということでありますが、そのあらゆる手段、対話と圧力という形で今政府はいっておりますけれども、残された時間がないんだというところの中で、どんなことを考えておられるかというところをお聞かせいただきたいと思います。

 これは、時間がないですけれども、横田さん御夫婦と、それからまた特定失踪者の皆さんにもお聞かせいただきたいと思います。

横田(滋)参考人 北朝鮮は、拉致被害者を、認定している方についても、生きている人はもう全て返したんだと。それで、家族も含めて返した、あとの人は死亡しているから、もうそれを生き返らすことはできないんだから、これでもう解決済みだというようなことをずっと言い続けているわけです。

 しかし、昨年の十一月に開いたウランバートルでの話は、北政府も姿勢がかなり変わってきて、拉致の問題をできるだけ早く解決したいというようなことを言っていたそうです。

 ですから、向こうも経済的にも非常に困っているわけですから、日本から支援金をもらうということは、やはり拉致問題を解決しなければならないということがあるでしょうけれども、しかし、今の正恩の周りの人というのは、お父さん時代の人で、まだそういった権力がある人がいるのでなかなか自分の思うとおりにはならないかもしれません。日本との拉致問題を解決しなければならないということをやはり日本からもきちんと説明して、そして、そうすることが北朝鮮にとっても幸せなことになるんだ、相手にもそういったことにメリットがあるということを伝えて、そして、できるだけ早くやはり解決していかなければ。

 救う会なんかでも、生きているとわかっているのになぜ取り返せないのかというようなスローガンなんかをよく言っていますけれども、やはり、向こう側も今、死亡と言っていますけれども、証拠がないわけです。みんな、お墓があったけれども洪水で流れてしまったとかと言ったり、非常に不自然な事故死が多いわけですから、恐らく、もう少し説明させれば……。返すことによって向こうもメリットが出るということをやはり教える必要があるのでないかと思います。

大澤参考人 私たち家族は、救出こそこの問題の解決です。救出するにはどうすればいいか、それをもっと真剣に考えてもらいまして、外国、国連、米国、中国を頼るのも結構ですが、それよりも、日本の国でどうしたらいいかというのをもっと真剣に考えてもらって、この問題の一刻も早い解決をひとつお願いいたします。

鷲尾委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

山本委員長 次に、三宅博君。

三宅委員 皆さん、きょうはどうも本当に御苦労さまでございます。

 御家族を北朝鮮に拉致されて何十年間、本当にお苦しみになったと思います。それに対して、帰ってきた五人を除いて、政治の方がその責任を全く果たし得ていない。その一員としまして、心からおわび申し上げたいと思います。

 これは、過去、歴代の内閣が、拉致問題が発覚いたしてから、多く、自分の内閣でこの問題の全面的な解決をしたい、あるいはまた、拉致担当大臣が、自分が最後の拉致担当大臣になりたい、あるいは国政の最重要課題としてこれに取り組んでいきたいというふうに異口同音におっしゃるんですけれども、ほとんどといいますか、あの五人以降進展が見られない。このことに対しまして、率直な思いを横田早紀江さんにお聞きしたいと思います。何かお話しになりたいことがございましたら、言っていただきたいと思います。

横田(早)参考人 これまでの活動をしてきまして、拉致問題ということが本当に大変な問題で、日本国家にとっては、本当に何という情けないことをされ続けていたのか、たくさんの人が犠牲になっているのか。そういうことが、ここまで来ていても、また、外国に行っていろいろな方にお願いをし、そしてブッシュさんにもお会いできて、そして、北朝鮮の一国の指導者が指令を出して、拉致をしてこいといって工作員をそれぞれの国に派遣して、解き放って、たくさんの人たちを誰でも連れていくという、そんな国があるなんて信じられないとおっしゃっておりました。

 そのようなことが本当に起きているんだ、日本の国が本当にこんな目に遭わされているんだ、これだけ時間をかけてもまだそれを取り返せないんだという思いを持っていただくこと、そして、小泉さんのときのようにもっとトップ同士が話し合いをしなければ、ああいうふうな形で何かをやらなければ、どんな形ででも、ちょっとでも動くことがないのではないのかなと私は思っております。

 安倍さんには本当に今度は御苦労もかけますが、皆さんが応援しながら、日本国じゅうが応援しながら、そのような動きが出てくるといいと思っております。

三宅委員 次に、特定失踪者問題調査会の荒木代表にお伺いしたいんです。

 今お話ししましたように、平成十四年以降、この拉致問題が全くと言っていいほど進展しない。これにはやはり、拉致問題に対しましての政府の基本的な姿勢といいますか、この部分に何か大きな問題、瑕疵があるんじゃないか。そうでない限り、本当にこれを解決しようという覚悟というものがあれば、もう少し前進したであろうし、結果にも出てきたであろうと。全く結果につながっていないということは、政府の基本的な姿勢、あるいは取り組みの覚悟といいますか、こういった部分に何か大きな問題があるんじゃないかなと思うんですね。

 そういった部分で、過去、言ってみれば細田官房長官なんかも、政府の基本的な北朝鮮に対する交渉の姿勢といいますか、これをちょっと説明されたこともあるんですけれども、そのあたりをちょっとお聞かせいただきたいと思います。

荒木参考人 委員御指摘の細田官房長官の答弁でございますが、記憶している限りでは、平成十七年六月の参議院の予算委員会であったというふうに、決算委員会ですかね、であったと思います。このとき、どのように具体的に拉致被害者を救出するのかという質問を受けまして、官房長官の答弁は、北朝鮮は国家であって、相手の国の中にいる限りは相手の権限が全て及ぶ、ですから、政府としては、話し合いをして、向こう側が、わかりました、いましたと言ったらば返ってくるんですという答弁でございました。

 この答弁は、ある意味、政府として拉致被害者の救出を放棄したというふうに言われても全くおかしくない答弁でございますけれども、当時、国会の中でも、野党も含めて一切問題にもならず、マスコミも問題にせずということでございました。

 現在、安倍政権のもとでこの方針は変わっているというふうに私は信じますけれども、やはり、このようなこと、相手側にとられてしまったらばそれまでで、見捨てるしかないというようなことでやってきたということは、まさにこれが戦後レジームということかもしれませんが、国家全体の問題点であろう、ここにメスを入れなければ最終的な問題の解決に至らないのではないかというふうに思っております。

三宅委員 今、荒木代表のお話では、相手が犯罪者であるにもかかわらず、お願いをしているというふうな形でしょうね、日本政府が。北朝鮮に、拉致した日本人をどうかお返しいただけないでしょうかと。犯罪者に対するのに全くふさわしい姿勢じゃないというふうなことを私自身も感じました。

 次に、先ほど荒木参考人がちょっと言及されたんですけれども、DNAのことですね。特に特定失踪者の山本美保さんのDNAデータについては、これは警察が偽造したというふうに荒木代表は、断定されていらっしゃるといいますか、それをずっとおっしゃっていらっしゃる。

 今回、警察の方が、御家族と特定失踪者のDNAの鑑定作業をずっと進めていきたいと。ところが、先ほどのお話では、果たして警察のDNA鑑定の依頼に応じていいのかどうか、ひょっとして全く違う赤の他人の遺体のDNAと結びつけられて、あなたの御家族は死んでいますよというふうなことになったら、本当に絶望的な立場に追いやられる、だから、これはどうしたらいいんですかと荒木さんにお尋ねになっていらっしゃる御家族が相当数いらっしゃるということなんですけれども、そのあたりのことをちょっと詳しくお聞かせいただきたいと思います。

荒木参考人 御指摘のDNAデータ偽造事件に関しましては、昭和五十九年六月四日に山梨県甲府市から失踪いたしました特定失踪者、拉致濃厚の山本美保さんにつきまして、平成十六年の三月に山梨県警の警備一課長が突然記者会見をして、山形県遊佐町の海岸に失踪十七日後に漂着していた身元不明遺体とDNA鑑定の結果が一致したということを発表した。これによって、自殺ではないかという声が上がりまして、当時非常に進んでおりました救出の運動も低下をしたということがございました。

 これは、後ほど、我々や地元の方々の調査で、明らかに警察によるDNAデータの偽造であるという確信を私どもは持っておりまして、これをたびたび訴えているわけですが、今のところ、警察としてそれをみずから取り上げて真相を明らかにしようという姿勢は全く見られておりません。

 そういうことがございますので、特定失踪者の御家族の中でも、DNAの採取に対して、本当に応じていいんでしょうかという声がいろいろございます。私どもは、これから先同じことをやるとは考えられないので、ぜひ今後のためにもやっておいてくださいということは申しておりますが、ただ、あくまで、警察の誰が来てどういう話をしていったということについてはちゃんと記録を残しておいてくださいということを御家族に申し上げている次第でございます。

 そのような不信感を持たれないためにも、この事件について、一刻も早くみずからの手で問題を明らかにしていただきたいというふうに思っております。

三宅委員 政府の最大の使命、責任は、国民の生命財産を守る。警察も、行政の一員として、当然そのような大きな使命を有している。ところが、その警察が、まさか、DNAデータを偽造して、赤の他人のDNAと特定失踪者のDNAを、これが一致したというふうなうそをついて御家族に説明した。

 これは、普通の一般の方からは、国民の多くの方々もそうでしょうし、私らとしても、ほんまかいなと、にわかに信じがたい部分があるんですけれども、その背景にはどういったものがあるんでしょうか。それをちょっとお聞かせいただけるでしょうか。

荒木参考人 本件に関しましては、平成十六年三月の発表でございますけれども、その前から、この山本美保さんに関しましては、当時、大澤さんと並んで、救出のための、同級生とか御家族とか、そういう方々の運動が全国でも最も進んでいたところでございました。ですから、その一件について拉致ではないというふうにしてしまえば、ほかの運動もブレーキをかけることができた。つまり、拉致問題をこれ以上拡散させたくない、拡大させたくないということが明らかに政府の意向としてあったものというふうに私は思っております。それがまさに、先ほどの、特定失踪者の御家族の皆さんから認定を求める声があり、そしてそれが実現をしないということともやはり共通するものではないだろうかというふうに思っております。

三宅委員 特定失踪者の周囲の方々が被害者の救出に全力を挙げて、そういう高まりつつある運動に対して、これを冷や水をかけて鎮静化させる、その目的のためにやったんじゃないかなというふうに今おっしゃったように私は理解しております。

 次に、ちょっと話を移しまして、日本政府は、拉致事件の実行犯、北朝鮮に逃亡した辛光洙工作員とか、こういった人には国際手配等をやっているんですね。

 ところが、多くの過去の拉致事件、昭和五十二年九月の久米裕さんの拉致事件、これの拉致した犯人も石川県警が取り調べてわかっている。あるいは、同じく昭和五十三年六月の政府認定被害者の田中実さん、これは、工作員の一員が、誰と誰と誰が拉致したというふうに書籍等で発表もしている。あるいは、昭和五十五年六月の原敕晁さん、拉致された大阪の中華料理店のコック、これは、韓国の軍事法廷で、辛光洙が主犯であって、あるいは、国内の実行犯、協力犯は誰と誰だというふうに名前も挙げてやっている。日本にいる多くの実行犯に対して、ただの一人もこれを逮捕したり、取り調べをしていない。参考人として話を聞く程度、お茶を濁す程度なんですね。

 この姿勢といいますか、これは非常に大きな問題があるんじゃないかなと思うんですけれども、荒木代表はどのように考えていらっしゃるでしょうか。

荒木参考人 御指摘の各件、原敕晁さんに関しては委員も直接対応されておられましたけれども、これはやはり、日本国内にある工作組織、現在も相当数の工作員あるいは協力者が残っているということが明らかでございますが、これに手をつけないということは、それ自体がやはり、先ほどから申し上げておりますような国家の意思というものがあるのではないか。明らかになることによって、それが一体どこまで広がるかわからない、これをどうやってブレーキをかけていくかということになってしまい、結果的に、外国にいる人間の国際指名手配だけで終わってしまうということだと思います。

 これはもう、実際、警察が、恐らくこれが犯人だということがわかっている人間は山ほどいるんでしょうから、ともかく少しでも、今わかっている人間だけでもまず手をつけていくということが絶対に必要であろう。そうしなければ、ほかの人間もみずから情報を提供したいとかいうふうになっていかないのだというふうに思っております。

三宅委員 日本国内にいる拉致の実行犯、明白な実行犯に対して何一つこれを追及しない、それで問題の全面的解決を図る、非常に大きな矛盾を感じるんですね。

 この北朝鮮による拉致事案というのは昭和二十年代からどうもあったようでありまして、特に日本の警察、あるいはその他の公安の捜査能力の高さからいいまして、このことに全く気がついていなかったということはほぼあり得ないんじゃないのかなと。恐らくは、日本政府は、かなり早い時点から、多くの日本人が北朝鮮の手によって次から次へと拉致されていくということを認識していた。

 しかしながら、どうも、これに対して見て見ないふりをしようというふうな政府決定をしたんじゃないかなということがうかがえるんですね。その結果、数百名にも及ぶ被害者が次から次へと北朝鮮に拉致をされてきた。言ってみれば、戦後の日本の根本的な政治姿勢に大きな欠点があったんじゃないか、それが、こういうふうな拉致事件として、非常に大きな、痛ましい事件につながったんじゃないのかなというふうに思います。

 最後に、もう一つだけちょっと質問をさせていただきたいと思います。横田早紀江さんにお願いしたいんです。

 めぐみちゃんは、昭和五十二年の十一月十五日に拉致をされました。明くる年の昭和五十三年の三月に、横田さんの御近所で、反物の販売を装って、二人組の男が車の中から出てきて、横田さんに、いい反物があるんですがということで近寄ってきた。ひょっとしたら、めぐみちゃんに続いて横田早紀江さんを拉致しようとした可能性も排除できないと思うんですけれども、そのときにどのような感じで受けとめられたか、あるいは思いをされたか、そういった対応も含めてお答えいただきたいと思います。

横田(早)参考人 今の反物の問題は、いろいろなことがあった中での一つの出来事であります。

 それは、私のうちの前でなくて、めぐみが一番最後にお友達と別れた交差点のところの、ちょうど、サボイホテルとかという寂しいものが建っている、その前の辺に車がとまっておりました。私は、PTAか何かの弟の用事で学校に向かって行きますね。そのときに、道を行くときに、交差点を渡る手前の辺に車がとまっていたんです。それを私は、何であんなところに車がいるのかなと何げなく思っていた。

 そうしたら、二人の若い青年、三十歳前後の人が、きちんと普通のグレーっぽい背広を着たような人がいて、そして一人が二本の反物を持っていまして、奥様、ちょっとちょっとと言われて、はっと私はびっくりして、何だろうと思ったら、今、反物の展示会をやっているのでとても安く入りますからどうでしょうかと言われた。

 私も、そのころは恐怖でいっぱいの時期でしたから、どんなことでも、車のナンバーとか、それから助手席に乗せられているかもしれないとか、いろいろなことで、いつもその辺のことを気をつけながら歩き回っているようなときでしたので、怖くなりまして、そんなものには何の興味も持っておりませんと言ってさっとすぐ通り過ぎて、怖いので飛んで交差点を渡って、学校に行く用事がありましたので、そのときは、学校に行ってからか先だったかはちょっと今覚えておりませんが、すぐに警察にも連絡をいたしまして、こういうような変な人がいましたから調べてくださいとすぐにお知らせをしております。そして、すぐ調べますという返事をいただいた。

 その後は何もありません。

三宅委員 これで質問を終わります。どうもありがとうございました。

山本委員長 次に、上田勇君。

上田委員 公明党の上田勇でございます。

 本日は、参考人の皆様方に、非常に限られた時間ではございましたけれども、痛切なお訴え、また貴重な御意見も賜ることができまして、御礼を申し上げたいというふうに思います。

 きょうこうやってこの委員会が開かれることが、この拉致問題、もう本当に国家にとって重大な問題であります、そのことの世論喚起、また啓蒙に少しでも役立てればというふうに願ってやまないところでございます。

 きょうは、まず最初に横田さん御夫妻にも御意見を伺いました。これまで、拉致問題の解決に向けて、御夫妻で大変な御努力をいただいてまいりました。これまでさまざまな機会に直接お話を伺うこともございましたけれども、そのたびに、胸の痛む、締めつけられる思いでございます。最愛のめぐみさんが拉致されてから三十六年、その間の苦しみ、悲しみというのはいかばかりか、もう言葉にならないものだというふうに思っております。なかなか解決できないもどかしさ、申しわけなさ、本当に、私たちとしても申しわけないとしか言いようがないところでございます。

 また、池田欣一様には、これまで署名活動等で多大な御尽力をいただいてまいりました。直接お話を伺うのはきょうが初めてでございますけれども、大変な御努力をいただいてきたこと、心から感謝を申し上げたいというふうに思っております。

 本当に、大変貴重なお話を伺って、もう何としても早期に解決をする、そして、全員が帰国をし、御家族の方々ともう一度再会することができるようにしなければならない、これは党派を超えた当委員会の思いであるというふうに思っているところでございます。きょうは大変にありがとうございました。

 また、きょうは、初めてというふうに伺いましたが、特定失踪者の御家族の大澤さん、澤さん、藤田さん、三名の方々に御意見を伺うことができました。事前にもいろいろと資料も拝見をさせていただき、また、きょうお話も伺う機会がございました。そういう限りにおいて、北朝鮮によって拉致をされた、これはもう確実だというふうに私は確信をいたしたところでございます。

 拉致被害者の認定については求めていかないというような方針もあるというふうにも伺いましたけれども、もちろんそれは、当然のことながら、特定失踪者の認定の有無にかかわらず、被害者全員の救出、それが最大の目的であるという、そこの点は共通の思いなんだろうというふうに思っております。内閣の方針もまた全く同じでありますし、当委員会においても共通の思いではないかというふうに考えているところでございます。

 認定条件が厳し過ぎるというような御意見もございました。それらも踏まえた上で、これから、政府と協力しながら、また政府に対しても適切な対応を私たちからも求めていきたいというふうに考えているところでございます。

 そして、きょう、あと西岡参考人と荒木参考人に御質問させていただきたいというふうに思うんです。

 まず、西岡参考人から、きょう、具体的な御提案も頂戴をいたしました。重く受けとめさせていただきたいというふうに思っております。

 これまで西岡先生は、いろいろなところでこの拉致問題の解決に向けての御発言や、また、いろいろな論文等も執筆をされているわけでありますけれども、その中で、もちろん、この北朝鮮問題に対する対応というのが、対話と圧力というのが基本方針、これは両方必要だというのは間違いないというふうに思うんですけれども、西岡先生、これまでいろいろなそういう御意見の中で、やはり圧力が十分ではないんじゃないかという御趣旨なんじゃないかというふうに考えております。

 今の金正恩の政治体制が崩壊しなければ、拉致問題の解決もなければ、核やミサイルの問題もなかなか難しいんだというような御趣旨のいろいろなものも読んだところでございますけれども、今、国連決議に伴う制裁措置の発動で、経済制裁というのはかなり強化されてまいりました。効果についての評価はいろいろあります。西岡先生は、その効果についてどのように御評価をされているのか、また、これからさらにそういう圧力をかけていくとすれば、次の有効な手だてというのはどの辺にあるというふうにお考えなのか、ぜひ御意見を伺いたいというふうに思います。

西岡参考人 私は、被害者救出に三条件があるというふうにいつも申し上げております。第一条件が、世論を背景に、政府に全員救出の体制をつくることであります。二番目が、北朝鮮が困って、日本に接近せざるを得なくなる。その二つの状況が合わさって、初めて物事が動く。

 過去に二・五回ありました。

 一回目は金丸訪朝のときです、金丸、田辺訪朝のとき。世界じゅうの社会主義国が韓国を承認した。彼らは困っていたんです。しかし、日本側で体制がなくて、拉致を脱しませんでした、動きませんでした。

 二度目が小泉訪朝です。ブッシュ政権が強い圧力をかけた。悪の枢軸と言って、軍事制裁のことさえ議論されていた。そして、日本に接近してきた。しかし、そのときも、八人死亡と言われて、確認しないでその紙を持って帰ってきてしまった。そのために中途半端に終わった。

 〇・五回というのは、ブッシュ政権末期の金融制裁のときであります。あのときも困っていたんです。しかし、ブッシュ政権が最終的にだまされてしまって、核問題を優先して金融制裁を解いてしまったら、核問題も解決しませんでした。

 そして、第三条件がありまして、私は、追い込まれれば、過去二回彼らは接近してきたんですから、政権の崩壊以前に何人かを取り戻すことも十分できると思っています。その方が安全だと思っています。しかし、政権が先に倒れるかもしれない。我々の意思だけではありません。金正恩政権は大変今不安定です。倒れたときに安全に救出する作戦も準備しておく。そして、日本で独自の圧力、国際的な圧力をかけて、話し合いで全員帰せと言う。そのときに、その両方を準備しておくことが必要だ。

 その場合に、今一番求められているのが生存情報です。彼らが見てぐうの音も出ないほどの具体的な情報を持っておくこと。ここにいるだろう、あそこにいるだろうと。

 西ドイツは東ドイツに対して、自由買いという政策をやっておりました。人道的な囚人を、人権活動家とかそういう人たちをお金で買うということをやっていたんです。そのときに何をしたかというと、ここの刑務所の何号室にこういう人がいますよねということを言った上で交渉していました。

 めぐみさんや八重子さんやるみ子さん、あるいは大澤さんや、特定失踪者の人がどこにいますよねということをわかった上で、もちろんそれを公開しない方がいいと思いますが、最終的な段階で、私たちは知っているんだぞという交渉をしていただきたい。

 圧力をかけること、そして彼らを困らせること、そしてもう一つ、ポケットに情報を持っておくことが必要だと思っております。

 以上です。

上田委員 ありがとうございます。まさにそのとおりなんだというふうに思います。

 それと、今、北朝鮮の体制が、非常に困っている状況にあるという御指摘がございました。そして、先生は以前から、北の核開発についても、これは単なるおどしではなくてどんどんエスカレートしていくんじゃないかというような警鐘をずっと鳴らされてまいりました。残念ながら、それと同じような方向に今進みつつあるのかなということが危惧をされるわけであります。

 この状況というのは、まさにそういう今の北朝鮮の政治体制が困窮をしているということのあらわれなのか、それとも、ますますこれからそういう軍事的な側面を強化することによって体制が強化されていくのだろうか、その辺の見通しについて、もしお考えがあれば伺いたいというふうに思います。

西岡参考人 短く述べるのは難しいのでありますけれども、私の見方は、北朝鮮は戦略的には成功している。韓国を赤化併呑するということに向けて、核ミサイルの小型化と韓国国内の政治工作を続けていまして、それはかなり成功している。しかし、戦術的な失敗を繰り返している。戦略的な成功と戦術的な失敗が並行して起きているという点で、不安定だというふうに申し上げています。

 二〇一五年に韓米連合司令部が解体するということが予定されています。今、韓国側が延期を求めていますが、その解体が成ると、韓国側の抑止力が下がります。そのときに、核ミサイルの小型化ができていて、大規模な反米デモが韓国で起きる。起こす力を北は今持ちつつあります。一回だけ危ないときが来るかもしれません。

 しかし、その前に、北朝鮮の内部も大変不安定です。中朝関係もよくありません。

 ですから、いろいろな変数があるので、彼らの戦略的な成功と戦術的な失敗がどう絡み合ってくるのか、その中で日本にどう手を出してくるのか。

 昨年からさまざまな水面下の交渉が日本に対してありましたが、私の聞いているところでは、それはまだ、全員帰すという決断を彼らがしない状況での交渉だったと思います。全員帰すという決断をしなければ日本は納得しないんだということを伝えなきゃならない。

 ですから、そこで、合同委員会はだめなんです。彼らに申告させる、我々が検証するという枠組みで、おりちゃいけない。そうすれば、いろいろな状況があるので、すぐどうだと簡単には言えませんけれども、三度目のチャンスは必ず来る。

 めぐみさんが拉致されて三十六年です。そのうち三十年間は対策本部はありませんでした。この委員会もなかったです。本来なら最初からなくちゃいけないんですよ。しかし、今はあるんです。今あって、交渉が始まるのは初めてです。小泉訪朝のときにもなかったんです。金丸訪朝のときにもなかったんです。先生たちの責任だというふうに強く思っております。我々民間でもできる限りのことはしなきゃならないと思っています。

上田委員 ありがとうございました。

 続いて、荒木参考人にお伺いをしたいというふうに思います。

 先ほどの御発言の中で、警察の最近の取り組み、情報開示、あるいはDNAの試料収集等について、全体としては前向きな評価をいただいているものだというふうに考えておりますけれども、ただ、問題点も御指摘をいただいたところでございます。

 私も全く同感でございまして、先ほどそうした問題点について何点か御指摘をいただきましたけれども、時間の制約もあってのことだというふうに思いますが、もう一度、こういった点を具体的にまず最初に改善しなければいけない、あるいはこういった点は大きな問題だといった点があれば、補足をいただければというふうに思います。

荒木参考人 ありがとうございます。

 改善するべき点というのは、やはり各省庁の間の、情報機関の間の情報の連携という問題、先ほど申し上げましたけれども。警察がやる限りは、やはり基本的には犯人を捕まえるということが前提になり、そのために、証拠とかそういう問題が壁になってしまって、結局前に進まないということだろうと思います。これはさまざまな機関がさまざまな機関の特色を生かしてやることが必要でございますので、警察だけが中心になっている今のシステム自体が変わるということがやはり必要ではないだろうかと思っております。

 私たちは、認定は我々調査会として求めないということであって、御家族とか支援団体の方々がやられるのを別にとめるわけではありませんが、やはりそれは一つの通過点であって、最終的に拉致被害者を救出するという前提で考えたときに、先ほど西岡会長も言われていましたけれども、やはり、どういう情報が必要かということを、最後救出するという目的に合わせて各機関を使っていくということに全て集約されると思っております。

上田委員 ありがとうございました。では、時間なので終わります。

山本委員長 次に、青柳陽一郎君。

青柳委員 みんなの党の青柳陽一郎です。

 本日は、参考人の皆様には、大変お忙しいところ貴重なお話をいただきまして、まことにありがとうございました。

 特に、拉致被害者、特定失踪者の御家族の皆様のお話、私もこれまで何度も直接伺っておりますが、この胸に突き刺さるものがあり、国会議員として、そして何よりも日本国民として、この重大な事件を必ず解決しなくてはならないという思い、そして北朝鮮に対してメッセージを出し続けなければならないという思いを、改めて強くした次第であります。

 国会でも、本日は、この後、決議文を採択するという予定ではありますが、国会でも常に強いメッセージを出し続けなければならないと思います。そういう意味では、残念ながら、先ほど民主党の鷲尾理事からもありましたとおり、さきの通常国会では、大臣所信の聴取以外、残念ながら、一度も本委員会は開催されることがありませんでした。国会としてもこれまで以上にしっかり対応すべく、委員長初め各理事の先生方にお願いする次第であります。

 そして、先ほども話にありましたとおり、参考人の全ての皆様の熱心な活動と強い思いによって拉致被害者の救出を政府に求める署名が一千万人を超えたということは、本当に皆さんの御努力のたまものであり、我々も改めてこの御努力に対して報いていかなければならないという強い思いを新たにしたところであります。

 本日、参考人の皆様にまずお伺いしたいことは、横田滋参考人、西岡参考人、荒木参考人に伺いたいと思いますが、この拉致事件の真相の究明に近づく方法として、そもそもこの拉致の目的は何なのかという、拉致の目的の解明が当然必要であります。

 これまで、専門家と言われる方々、いろいろな説があります。工作員を養成する、技術者を獲得するなど諸説あるんですけれども、北朝鮮という国家が行った犯罪として、この目的というのが余りにも何かフィクションのような話であり、どれも現実的に思えない話じゃないかなと感じるんですね。むしろ、逆に、北朝鮮のシンパのような人たちが言っている、拉致を国家が行ったとして、北朝鮮に何の得があるんだという理由の方が説得力を持ってしまっているんじゃないか、こういう危惧を持っております。

 拉致が完全に明らかになった現在でもこの目的については諸説ありますが、まさにきょうお越しの参考人の皆様が一番の専門家であり、当事者であります。参考人の皆様に、いま一度、拉致の目的についてどう考えておられるのか、お話をまず伺いたいと思います。よろしくお願いします。

山本委員長 お一人お一人ですか。指名してください。

青柳委員 横田滋参考人、西岡参考人、荒木参考人からお話を伺いたいと思います。

横田(滋)参考人 我々は、なぜ連れていったかということは本当に見当がつきません。特に、めぐみのような者を連れていったって何の役にも立たないと思うんです。

 向こうでは、これまで脱北してきた人の話なんかによりますと、例えば、任務を終えてきた工作員が、脱出しようとするところを学校の帰り道に目撃されたので、警察に通報されたら困るということで連れて帰ったというようなことを述べています。

 しかし、それはもう、めぐみは、途中までは二人で、計三人で来たんですが、ちょうど半分ぐらいのところから一人になったわけですけれども、大体、そんな者を連れて帰ってきたって、もし語学を教えるというのだったら、語学の専門家なんてたくさんいるわけですから、そういうところを見張っていて連れていけばいいのに、めぐみなんかは連れていったところで何の役にも立たない。

 それから、中には、原さんのような形で、旅券を取るためにその人を連れていって、中華料理のつくり方から習って、本人の原という名前で別の工作員が出てきたら、そうすると年配の人でなければ意味がありませんし、そして、それはもう旅券の偽造ということではなくて本物の旅券ですから、見つかる可能性は少ないというのもあると思いますけれども、特にめぐみなんかの場合は、なぜ連れていったかというのは全く意味がないと思います。そんな者を連れていって役に立てるぐらいだったら、在日の方なんかを連れていった方がよっぽど役に立つんじゃないかと思います。

 帰ってきても、説明は受けていないと思いますから、なぜ連れていかれたのかというのは、本人が帰ってきてもわからないんじゃないかと思います。

西岡参考人 まず金正日自身が、二〇〇二年九月に、小泉総理に対して、先ほど先生がおっしゃいました、工作員教育の教官として使うということと、身分を盗用するためだと認めています。

 そして、我々の調べによると、一九七六年、金正日が七四年に後継者になるんですが、七六年に対南工作の新たな方針に関する演説をしていまして、その中で、工作員の現地化を徹底的にしなさいという指示を出しています。この現地化ということがキー概念で、身分を盗用するのも現地化です。そして、盗用する人間が、戦前生まれの辛光洙のような人たちは日本語がしゃべれるんですが、若い現地化された工作員をつくるためには教官が必要だということで、教官拉致が行われた。

 今、日本政府認定の十七人のうち、ヨーロッパで拉致された三人を除くと十四人です。そのうち十三人は、金正日の命令の一年後の七七年と七八年に集中的に拉致されています。また、我々の調べでは、日本、韓国以外に十一カ国ぐらいが拉致されているというふうに思っておりますが、そのうち、アメリカの疑惑を除き、日本と韓国を除く八カ国については全て七八年です。その現地化指令で世界じゅうで拉致が行われたということはほぼ間違いないと思っております。

 しかし、それ以外に、寺越事件のように、秘密が暴露されることを防ぐための拉致ということがあった。あるいは、韓国のケースですが、映画監督や映画俳優を、自分が好きだから、拉致して映画をつくらせる。実際に映画をつくらせた。その人がまた逃げてきましたから明らかになっているわけです。特殊技能を持っている人たちについても、その映画俳優では証明されています。

 また、二〇〇〇年代になってからは、中国で脱北者を世話している人たちが多数拉致されています。中国国籍の朝鮮族の人たちがかなり拉致されています。それだけではなくて、私たちは、アメリカ人の留学生、スネドンさんという方もそのケースで拉致された疑いがあるんではないかと思っております。

 以上です。

荒木参考人 非常に抽象的なお答えになるかもしれませんが、私どものこのポスターの中にいる方々、非公開の方も含めて、これをいろいろ見てまいりまして感じることというのは、結局、拉致することが北朝鮮という国にとっては当たり前だったんではないか。もちろん、そのときそのときにいろいろな指示があって拉致をしているんだと思いますけれども、それ以上に、ともかく、足りなければどこからでも持ってくればいいという発想が、あの国の長年の拉致につながったんではないだろうかというふうに思っております。

 先ほど西岡会長が言われたような形の工作員教育とか、あるいは成りかわりとか、さまざまなことがあるんですが、ケースによっては、拉致をした人間に結婚させるために女性を連れていくとか、あるいは、場合によったら、子供を拉致していくとか、そういうようなケースもあったのではないかと考えられます。

 北朝鮮という国家は、国ができたときに、権力はスターリンからもらい、それから、インフラは日本の時代のものがそのまま残り、軍人のかなりの数は中国からもらっているということで、国ができるときの一番重要な要件のほとんどを人からもらってできてしまった国で、それ以降、自分たちで技術をつくろうとか、そういうことの感覚がほとんどなかった。それはもう、どこかから持ってくればいい、人が足りなければ人を連れてくればいいということであったんだろうというふうに思います。

 ですから、ということは、つまり、これから先も行われる可能性があるということだろうと思っております。

青柳委員 ありがとうございました。改めまして新しい認識もいただいたところであります。

 次に、特定失踪者の御家族の藤田参考人にお伺いしたいと思います。

 先ほどもお話がありましたけれども、藤田様初め関係者の皆様の御努力によって、国連人権理事会の強制的失踪作業部会に受理されたということでございますが、この拉致問題、さらには特定失踪者の問題を国際的にさらに認知してもらう必要が当然あると思います。

 先ほどもお話ありましたが、その意味で、駐日の各国大使館への働きかけについては、私も大変意味ある活動だと思いまして、私も、北朝鮮と国交があり、なおかつ私自身が日ごろちょっと仕事でコンタクトがありましたベトナム大使館へ、皆さんとともに先日訪問してまいりました。拉致問題、そして特定失踪者の問題をベトナム政府に知っていただくきっかけになったのではないかと思っております。

 ただ、こうした活動をもっと加速していくべきだと思いますが、私もベトナム大使館に行く前に外務省に確認しましたけれども、どうぞやってくださいというような対応でした。つまり、政府がやろうと思えばできるわけですね。

 こうした政府の支援も含めて、藤田参考人のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

藤田参考人 ありがとうございます。

 私たちが行っているのは、本当に自分の手弁当で全てやっているんですね。東京都内ですから、身近なところからでしか行けませんので、埼玉と神奈川の関係者が一緒に行っています。これも全て自分のお金で行っているんですね。

 それと、当然、行くためには時間が必要ですよね。そうすると昼間にならざるを得ないということで、どうしても自分の仕事をさておいてそちらに時間を割かなければならないということが続いております。

 本当に純粋にこの問題の解決を目指している、個人でも団体でも、そうした方々への経済的な支援というものをぜひ考えていただければなというふうに思っております。

青柳委員 ありがとうございます。

 時間の関係もありますので、次に移りたいと思います。

 荒木参考人に伺いたいと思います。

 民主党政権から安倍政権に交代して七カ月が経過しました。拉致問題の進展に大きな期待が集まりましたが、結果として、現在まで具体的な進展はありません。この安倍政権の取り組みについてどのように評価していらっしゃるか、あるいはどのような見通しを持っていらっしゃるか。

 安倍総理の発言には、日本が主導的に拉致問題を解決する、他の国がやってくれることがない。だとすれば、対北朝鮮対応というのは、これまでの延長線の対応では結局何も進展しないんじゃないか。つまり、これは刑事事件として対応していても全く進展しないんじゃないか、重大な主権の侵害である、こう認識を変えて、主権侵害に対する取り組みとして行っていかなければならないのではないかというふうに私も感じておりますが、荒木参考人の御意見を伺いたいと思います。

荒木参考人 委員のおっしゃるとおりだと私も思っております。

 この問題は重大なる主権の侵害でございまして、残念ながら、この国の政府の中に、これまで、その主権侵害という部分をあえて隠しながらこの問題に対処しようとしてきたという部分があるのではないかと思っておりまして、やはり、ありていに言えば、これはもう戦争である。相手側に、ともかく死ぬことを覚悟してやってきた人間に持っていかれているわけですから、それを覚悟を持って取り返さなければいけない。

 その意味で、先般の安倍総理の参議院での答弁で、結局最後は日本がやるしかないという趣旨の御答弁があったことは、私は非常に評価をしており、それを具体的にどうしていただくかという問題であろうと思っております。

 いわゆるねじれが解消したことによりまして、ある意味でいうとフリーハンドができた。拉致問題に関しては与野党ともに協力してやっていたとは思うんですけれども、これで完全にフリーハンドができたということで、逆に言えば、私は、これが安倍政権にとっての正念場であろう、それから、この機を逃したら拉致被害者の救出はもうできなくなるかもしれない、その意味では、民間におる私たちも含めて正念場だというふうに思っておりますので、何とかこの政権で総理の決意を具体的に進めていただきたいというふうに思っております。

青柳委員 ありがとうございました。

 党派を超えて取り組んでいくことをお誓い申し上げまして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。

山本委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 きょうは、八人の参考人の皆さん、お忙しい中、貴重な御意見をありがとうございました。

 まず、横田滋、早紀江両参考人に伺います。

 拉致問題の解決を一刻、一分、一秒でも早く、そんな思いで先ほどのお話も伺いましたし、私自身も、二〇〇六年以来、七年間、この委員会に所属しながら、横田御夫妻にはこの間も御意見を伺う機会があったし、それから新潟の現地、それから写真展にも伺ってまいりました。

 御夫妻がこれまでに全国を回られて講演された回数というのが、もう実に千四百回を超えるというふうに伺っております。

 そこで、直近の例であれなんですが、去る七月十九日だったと思うんですけれども、東京の港区の六本木中学校で全校生徒およそ百四十人を前に御講演されたということでありますけれども、そこでの生徒たちの受けとめというのはどんなふうだったか、そして、御講演を通じて感じておられること、思いをお二人から伺えればと思うんですが、いかがでしょうか。

横田(滋)参考人 六本木中学校にお伺いした原因というのは、その校長先生はそれより前に杉並高校の先生をやっておられました。そして、私たちは東京都の教育委員会の依頼で、先生は人権教育をやっておられるわけですけれども、その中の拉致ということ、これは、昔は東京都なんかの場合は学校教育の中では含めていなかったんですけれども、途中からそれを、一つは北朝鮮が拉致を認めたからということもありますけれども、やりました。

 そして、これは、大人の方なんかでしたらいろいろなことを話しますけれども、多少これと違うのは、先生方の要望もありましたけれども、学校ではそれこそいじめとかいろいろなことが起こっていたりするけれども、やはり親と一緒に暮らして、そして友達と一緒に部活動なんかができるということは本当に幸せなことなんだとか、そういうようなことも含めてやりました。

 ですから、それこそ人権教育の一環ということで、私は、もし自分たちがそんなことになったらどうするかということを考えて、そして、拉致被害者の方が今どんなような気持ちでいるのかということを自分たちなりに考えるということを主体にして話をいたしました。

 ですから、大人の人の話で言うのであれば、いつごろこういう問題が起きたというようなことが中心になりますけれども、最近は特に中学校からの依頼が多くなってきています。これから年内でも、あと瑞穂というところとか、それから川崎の市内からも依頼があります。

 それは、どっちかといいますと、今の子供というのは、案外、昔の子供に比べて、個人主義になっているせいか、そんなに人の気持ちがわからないということがあるので、先生方からすれば、拉致の問題というものは誰にでも起こる問題であって、そして、こういうことを理解してほしいというようなことですけれども、終わってから、代表の三年生の女の子が意見を書いた手紙をくれて、それを読んでいったんですけれども、一つは、その人がバドミントンの選手で、バレエをやっていたという、めぐみと経歴が似ているということがありました。

 その人は学校の中では一番よく勉強できる人だったといいますけれども、初めから挨拶文というのがつくってあったわけで、話を聞いてから書いたものではないと思いますが、しかし、拉致の問題はぜひ日本として解決しなければならないし、自分たちができることがあれば何でもやりますというふうなことは言っておられました。

横田(早)参考人 中学校は、かなり前からいろいろなところに伺っております。そして、生徒さんは、やはり全く知らないです。もう生まれていないころのことから始めなければならないので、あのときのころから私が話させていただきますと、最初はもう、何を言うのかなというような感じで、いろいろな生徒さんがおりまして、先生からも、ちょっと何人か騒ぐ子がいるかもしれないし、失礼をするかもしれませんので、それはお許しくださいと大体言われるんですけれども、そんなことは一度もありませんでした。

 最初は、こんなふうな感じで、ちょっとあれっというような感じの人も見えるんですけれども、必ず最後には、じっとこちらを見て真剣に聞いてくださっているのがわかって、目を合わせて私もお話ししますけれども、それほど、こんなことが本当にあるんだということが初めてわかったということで、そこを通して、今の自分の生活がどんなだったか、私は本当に何て偉そうなことを親に言っていたんだろうかとか、あしたからはもうそういうことはしないと本当に心に決めましたとか、そういうふうな形で、よい方向にそれを用いていっていただけるなら、私たちはうれしいことです。

 大学生の方も、ほとんど大学は回りました。一回だけ回ったところもありますけれども、ほとんど大きな大学は回らせていただきまして、東大だけは毎年一回、四月に伺っておりますが、余り、大学生さんが本当に関心がないというのが、私たちが今まで来た中で、年配の方々とかまだ中学生ぐらいの純真な子供たちとかは本当に真剣に聞いて、泣き出してくださるような子供たちもいて、お母さん、頑張ってくださいねといってわざわざ握手しに来てくれる子供たちもたくさんおられまして、私たちは本当に感激しますが、やはり、これから社会に出ていく一番かなめの大学生の方たちが、署名をしていても、ほとんど書かないで通り過ぎる方が多かったということもあって、ちょっとこれは大変なことになっているのではないのかなという思いをいたしております。

笠井委員 ありがとうございました。

 二〇〇二年の十月に拉致被害者の方々五名が日本に帰国してからもう十一年近くも歳月が流れたけれども、日朝交渉は膠着状態が続いて、それ以降、拉致被害者の帰国が実現していないということでありますけれども、そうした中で、去る五月二十四日の当委員会において、古屋拉致問題担当大臣から、「拉致問題はこの安倍内閣において解決させるという決意を持って政府一体となって取り組んでいく」という旨の表明がありました。

 そこで、改めて、この拉致問題の解決に向けた政府の取り組みについて、先ほどからもそれぞれお話しになっていると思うんですが、限られた時間ですが、参考人の皆さんお一人お一人から、一言ずつで結構なんですが、一番これだけは、あるいは言い残しているけれどもという点で、率直な御意見、あるいは感じておられる点、あるいは具体的な要望で結構なんですが、一言ずつでお願いできればありがたいんですが、よろしくお願いします。

池田参考人 拉致被害国が十六とか十八の国があるとお聞きしていますが、ぜひとも、私は、この機会に、十六なら十六カ国会議をやらなくてはならない、やってほしい。それは、もう皆さんたちにお世話になりたいと思う。十六カ国の代表者会議、そうしなかったらだめだと思う。

 私としては、安倍総理に十六カ国を含む会議をやってほしいというふうに熱望します。

大澤参考人 先般、警察庁で八百六十四人と名前を公表されました。この数字を日本国民が聞いたときに、ほとんどの方は単なる数字というふうにしか感じていなかったんでないでしょうか。

 八百六十四人という、日本が拉致されて、連れ去られている現実を、これを皆さんもっとひとつ深刻に考えて、この先、進んでもらいたいと思います。

澤参考人 今、若狭湾で密入国が非常に多いということで、お渡ししました資料に、第三ページ目をごらんいただけばわかると思うんですけれども、高姉弟を警察当局が認めてから、いかに北朝鮮の入国と被害者が多いということ。そして、なおかつ、それにまつわる都道府県の連携がまだできていないんではないかな。福井県に来られてからの失踪状況の、他府県の方もおられる中で、そういった警察当局の連携がない限りは、国内にはこれにまつわるまだ多くの実行犯がおるということがわかっています。

 九ページ目にも名前を一言書かせていただきましたけれども、この方も今健在でございます。この人たちからメスを入れなければ、本当の日本国としての、完全な日本国ということは保障できないと思いますので、早急にお願いいたします。

 以上です。

藤田参考人 ありがとうございます。

 先ほどちょっと言い残したことがありまして、去年の暮れ、埼玉県内の高校で講演会を開いたんです。そのときの事前調査で、特定失踪者を知っていますかという質問を出しました。すると、九三%の普通の一般の日本の高校生の方が、知らない、聞いたことがないということだったんですね。それが要するに去年の話なんですよ。特定失踪者問題が大きく報じられてからもう十年になりますよね。しかしながら、残念なことに、いまだに日本の特定失踪者に対する認識が、恐らく一般も同じぐらいの数字であろうというふうに思われます。

 そこで、一つお願いしたいんですが、政府でつくっているこのパンフレット、これを見て、ほとんどの方が拉致問題を認識するんですね。ところが、要するに認定されている被害者のことはたくさん書いてあるんですが、残念なことに、特定失踪者に関する記述というのは、政府が認定する十七名のほかにも、いわゆる特定失踪の方も含まれる拉致の可能性を排除できない人がいますということなんですね。これでは、ほんのあと二、三人、あるいは十数人のことだよというふうな印象を受けるわけですよね。

 ぜひとも、今回、八百六十四人ということで実際に数字が出てきているわけですから、その数字、そして、家族が公開してもいいよという顔写真を含めた、そういう一冊になるような冊子をぜひつくっていただきたい。それを、ぜひ、いろいろなところに配って、拉致問題の事の重大さ、そして、特定失踪者を含めた認識をもっともっと国民に伝えていただきたいなというふうに思っております。

 よろしくお願いします。

西岡参考人 きょうは特定失踪者の御家族が初めていらっしゃったので、先ほど私、メモで申し上げましたけれども、古屋大臣は、寺越事件の真相究明なくして拉致問題の解決なしというふうにおっしゃってくださったんですが、特定失踪者問題の真相究明なくして拉致問題の解決なしということを明言していただきたいと思っております。

荒木参考人 抽象的な言い方ですが、全ては覚悟に尽きると思います。これは、政府・与党そして野党の先生方もそうですし、私ども民間人もそうでございます。

 ここで取り返すことができなかったらば、もうおしまいかもしれないというふうに私どもは思っておりますし、我々、かかわっている御家族の数が多いので、本当にしょっちゅうお父さんが亡くなりましたとかお母さんが亡くなりましたという話を聞かざるを得ないという立場にございまして、放置しておくこと自身は、我々自身のもう重大な責任であろうというふうに思っております。

 もうともかく国民合わせてこれをやるんだという覚悟を何とか持つことが必要だろうと思っています。

横田(滋)参考人 この問題は、個人によって数年の違いはありますけれども、めぐみの場合ですと三十五年を過ぎていますから、一刻も早くということをやはり一番にお願いしたいと思います。

 ですから、例えば、今、遺骨の収集なんかの場合は、ずっと続いているわけです。昨年の八月に赤十字会談を開いて、それがきっかけで動いて、現実に何回も訪朝をしております。そして、アジア大洋州局長のお話ですと、アメリカは遺骨収集にお金を払っているけれども、今の段階ではそんな請求はしていないと言いますけれども。

 ですから、飯島さんが訪朝したときも、何も話はできませんということで、安倍総理もノーコメントとかということで何も発表されておりませんし、しかし、ああいうものはすぐにということもできないと思いますけれども、あれは五月にいらっしゃったわけですから、かなり期間もたっていますし、選挙のときも、ねじれ現象がなくなったわけですから、やはり交渉の再開ということをぜひ早くやっていただければと思います。

横田(早)参考人 先ほどからいろいろと難しい、やり方とか、どういうふうな交渉をしていいかとか、いろいろなことがあるんですが、やはり、北朝鮮のトップにいる人たちが信頼をして話せる日本人であればきちっと話がまとまっていくということが一つ大きな鍵だと私は思っています。

 それが誰であるのか。よほど上の人であるのかどんな人かわかりませんが、純粋な心を持ってこのことを解決するということに対しては、もう間違いのない人でなければなりませんけれども、例えば、アントニオ猪木さんなんかが今度、議員、すごい、トップ当選のような形で入られましたけれども、あのような方は、非常に漫画チックな、北朝鮮のトップからすれば、おもしろ半分と言ってはおかしいけれども、余りかた苦しいことじゃなくて、何となく親近感が持てる。そして、誰もが知っているような有名な人ですから、歓迎するという形で向こうに入っていったときに、本当に交流する意味での心からの話し合いをした中で、そういう人たちが案外道を開いてくださることはできないのかなと私は思っています。

 それは、もちろん、政府も関与しながら、余りかた苦しいところは出さなくても、最終的にはそこが、何かが出てきたときにはそれが政府に伝わり、きちっとなっていくというような、何か取っかかりのものが必要なときに、何でも大事に、純粋なものであればそれを使っていただくということは非常に大事なことではないのかなと思っております。

笠井委員 時間が過ぎて申しわけありません。ありがとうございました。

 しっかり受けとめながら、党派を超えて、解決のために努力していきたいと思います。ありがとうございました。

山本委員長 以上で各会派を代表する委員の質疑は終了いたしました。

 これより自由質疑を行います。

 この際、委員各位に申し上げます。

 質疑のある委員は、挙手の上、委員長の許可を得て、御起立の上、御発言されるようお願いいたします。また、発言の際は、所属会派及び氏名を述べた上、お答えいただく参考人を御指名していただくようお願いいたします。

 なお、理事会の協議によりまして、一回の発言時間は二分以内となっておりますので、委員各位の御協力をお願いいたします。

 それでは、質疑のある方は挙手をお願いいたします。

高木(毅)委員 きょうはありがとうございました。自民党の高木でございます。

 特定失踪者の認定の話が先ほど来出ているわけでありますけれども、もちろん、荒木さんは一生懸命にこの特定失踪者の問題にかかわっていただいて、本当にありがたいと思います。

 ただ、もちろん、目的は、先ほどもございましたけれども、拉致問題の解決、特定失踪者問題の解決でありますから、必ずしもこの認定というものは組織としては求めていかないという話もございました。もちろんその考え方というのも評価できるわけでありますけれども、やはり認定というのは、一つのいわゆる、言葉はどうかわかりませんけれども、政府のお墨つきでございますので、拉致被害者、特定失踪者の御家族からすると、御自分が、御家族の方も高齢でございますので、万が一の後も、しっかりと政府が認定をしてくれれば、その後も解決に向けて頑張っていただける、そういう支えにもなっているかというふうに思います。

 ですから、できれば、もちろんそういった考え方は評価するものでありますけれども、必ずしも求めないということではなくて、それはそれとして求める、そしてまた、当然、必ずしもそれだけではなくて、ほかの方法等で解決をしていくというスタンスを持っていただくと私はありがたいのかなと思ったりもいたします。ぜひその辺の見解をお聞かせいただきたい。

 あわせて、特定失踪者の御家族であります福井県の、私も福井でございますけれども、澤さん、いらっしゃっておりますし、また、長年、池田先生にはこの問題について御努力いただいているわけでございますので、今の特定失踪者の認定ということについて思いがございましたら、時間は短いと思いますけれども、ぜひ三人の参考人から御意見を賜りたいと思います。よろしくお願いいたします。

荒木参考人 委員のお話は、まことにそのとおりだと思います。

 私どもは、今までやってまいりましたのは、この今の構造、認定をしなければ先に進まないという構造を変えなければいけないということと、それから、可能なものは認定を求めるということでやっていたんですが、この二つを両方やるということは逆に非常にわかりにくいということでございます。我々としては、整理して、この構造を変えていくということに絞る必要がある、これをやらなければ進まないというふうに思っております。

 ただし、今回も御家族の陳述等ございましたけれども、御家族の方でこれを認定を求める、あるいは各地の支援組織のもとで求めていく、これは別に全く否定するものではありませんで、それについて、もし我々が御協力できることがあればもちろんするということで、我々としては、もう方向性をそこで明確にさせていただいたということでございます。

 それぞれの御家族等のやられることについては、今後も可能な支援をしていきたいというふうに思っています。

澤参考人 認定の件なんですけれども、特定失踪者家族は随分高齢となっていまして、認定そのものが本当にできるのかどうかということすらあやふやな状態で高齢化を迎えてきています。

 我が子に会えるというのがもう数段上の方になってしまって、国内の範囲の認定ができるのかどうか、国内だけのことなのになぜそれができないのか、そこをまずケアしてあげなければ、家族が本当に高齢となっていますので、そこからまずメスを入れて、家族に訴えて、ちょっとでも元気を取り戻すために、国会議員の先生方にはもう一度、本当の、八百何人の位置、過去を全部洗っていただきまして調査していただけたら、家族にとって一つの救いとなると思いますので、よろしくお願いいたします。

池田参考人 認定の問題は、抽象的なあの認定の仕方では我々にもわからぬ。もう少し具体的に、現実に即して直すべきである。直してほしい。そうしなかったら、我々がやっていて、抽象的でわからない。残った被害者もわからない。恐らく国会議員もわからないと私は思います。

 もう少しあの三原則をわかりやすく、できるだけ誰でもわかりやすく考えるということが、これも大事な問題であると思うんです。

 よろしくお願いいたします。

田沼委員 日本維新の会の田沼隆志と申します。

 本日はありがとうございました。

 先ほど横田早紀江様からアントニオ猪木さんの話がありましたけれども、ぜひ伝えたいと思います。

 それで、西岡先生にお聞きしたいんですけれども、本当に謎なんですが、先ほど来お話も出ておる飯島内閣参与の訪朝、これがちょっと評価が難しい。どう評価すればいいのか、私自身もちょっと思案しています。

 そもそも、この拉致特別委員会、情報がないんですね。この委員会も、実質、会期中は開会がされなかったわけです。大臣の所信だけで終わってしまった。非常に残念でございます。

 きょうやっとということですが、五月の訪朝の情報が断片的で、評価が難しい。西岡先生の産経の「正論」だと、飯島氏を呼び寄せたのは統一戦線部、つまり北朝鮮側からだという話なんですが、また朝日新聞の七月八日の記事だと、訪朝は飯島氏が希望したとかであったり、どっちなんだというのがよくわからない。前進したのかどうかもよくわからなく感じております。

 安倍総理は非常に決意を持たれていると思いますし、私たちも応援したいと思うんですが、打ち手としての訪朝というのがよかったのかどうかが、またどういうふうに見ればいいのかというのが、非常に謎というか苦心しておるところでございまして、そういった部分に関して西岡先生の御意見をお聞きできればと思います。

西岡参考人 ぜひ、この委員会で政府に対して御質問していただいて、評価をしていただいた方がよろしいかと思うんですが、私は民間ですから、コラムは書かせていただきましたが、私のところにある情報をもとにして評価させていただいたということであります。

 私の現段階での評価では、日本政府の方針を北朝鮮にきちんと伝えることができた。認定の有無にかかわらず、全ての被害者が帰ってこなければだめなんだ、真相究明がされなければだめなんだ、そして実行犯の引き渡しまで要求している、ここについては、日本の中で、与野党を超えて、一千万の署名が集まって、全然揺るがないんだということをまず向こうに伝えなくちゃいけない。

 伝えるパイプとして使ったという点では評価できると私は思っておりますが、何が話されたのか、誰が呼んだのかについても間接的ないろいろな情報しかないので、これを私に聞かれても困るということでございます。

三宅委員 日本維新の会の三宅博でございます。

 お時間をいただきましたので、もう一度だけ荒木特定失踪者問題調査会代表にお伺いしたいと思います。

 きょうは参考資料として、調査会の方がつくられましたポスター、これを配付していただきまして、ここには約二百七十名の公開の方々の失踪者が写真をつけて載っていらっしゃるということなんですね。

 この中の、拉致疑惑、昭和四十二年の十一月、印刷では一九六八年となっています、一年間違っているんですけれども、圭運丸事件の紙谷さん御一家、一家の男性四人全員が一挙に失踪した。これは、もともとは、このポスターでは拉致疑惑であったというところなんですけれども、先月また新証言が出まして、ほぼ拉致に間違いがない、拉致濃厚というふうな仕分けにされるということをお聞きしたんです。

 してみると、北朝鮮に拉致された人たちが、もう幾らでも、今回の件は軍による拉致であろう。北朝鮮は、軍と党の工作機関がそれぞれの覇を競うように日本人を次から次へと拉致をしてきた。本当に全体の全容がつかめないほど相当数やられているということなんですけれども、その新証言とともに、荒木さん御自身は、北朝鮮にどれぐらい多くの日本人が拉致をされたであろうかという感触を、これをもしお持ちでしたらちょっとお聞かせいただきたいと思います。

荒木参考人 数字につきましては、いつも聞かれるところでございますけれども、正直言って本当にわかりません。私は、通常お話をするときは、少なくても百人以上、恐らくそれよりはるかに多くの数という言い方にいたしております。

 ただ、今回の御指摘の圭運丸の事件等々があって、海上の拉致や何かに関してさらに話が広がっているということを考えると、一体本当はどれぐらいやられたのか、残念ながら、拉致の途中に殺害された方々もおられると思いますので、そういう方々を入れたら一体どういう人数になるのかということになるとちょっと申し上げられませんが、底なし沼に足を突っ込んでいるような気分でございます。

 ちなみに、警察が今順次発表しております、公開している拉致の可能性のある失踪者で、私たちのリストと重ならない方が約百三十人ぐらいおられますので、この方々は、我々、一応、非公開ということでリストに入れる。そうなりますと、現在四百七十と百三十を足しまして、今後は特定失踪者の数は約六百人という言い方にとりあえずはなってくるのではないか、警察がまた追加すれば、それにさらにプラスということになってくるのではないだろうかと、一応、現時点ではそういうふうに思っております。

三宅委員 政府の認定被害者は十二件十七名、特定失踪者問題調査会は約四百七十名ですか、非常に大きな乖離があるんですけれども、それとともに、政府の認定被害者、この十二件十七名、これは、警察がいろいろな捜査に基づいてみずからこういった認定に至ったのか、それとも、そうじゃなくて、その他のいろいろな情況証拠から認定せざるを得なくなったというふうな部分があるんじゃないかなと思うんですけれども、荒木さんの御感触といいますかお考えはどうでしょうか。

荒木参考人 現在の十七人の認定被害者について、いわゆる三要件をもって認定をしているということはとても思えません。実際、国会の質問主意書に対する答弁などを見ましても、これは、三要件で認定したということは言っていない。

 つまり、認定自体が、ほかのさまざまな政治的な理由で認定をせざるを得なくなっているから認定をしているということで、先ほども池田先生のお話にありましたけれども、何かの客観的な基準があって出ているということではないだろうというふうに思っております。

山本委員長 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了させていただきたいと存じます。

 この際、一言御挨拶を申し上げます。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚くお礼を申し上げるところであります。

 それでは、参考人の皆様方には御退席をいただいて結構でございます。

     ――――◇―――――

山本委員長 この際、全ての拉致被害者の安全確保及び即時帰国のための具体的な施策の拡充を求める件について決議をいたしたいと存じます。

 本件につきましては、理事会等におきまして、各党間において御協議をいただきましたところ、お手元に配付をいたしておりますとおりの案文がまとまりました。

 便宜、委員長から案文を朗読し、その趣旨の説明にかえさせていただきます。

    全ての拉致被害者の安全確保及び即時帰国のための具体的な施策の拡充を求める件(案)

  北朝鮮による拉致は、我が国の主権及び国民の生命と安全に関わる国家的犯罪行為であり、拉致問題は国の責任において解決すべき喫緊の重要課題である。

  帰国を待ちわびる拉致被害者家族等の高齢化が進んでおり、拉致被害者としての認定の有無にかかわらず、全ての拉致被害者の帰国の実現は一刻の猶予も許されない。改めて、政府に対し、この際、次の諸点に留意し、全ての拉致被害者の安全確保及び即時帰国のための具体的な施策の拡充に一丸となって取り組むよう求める。

 一 本年三月に国連において、拉致問題を含む北朝鮮の人権状況全般に係る人権侵害を調査する調査委員会が設置された。今後、当該調査委員会の活動を通じて北朝鮮に対して拉致問題を解決するよう働きかけるなど、国際的な協調を一層強化すること。

 二 本年二月に政府の指示により各都道府県警察が行っている北朝鮮による拉致の可能性を排除できない者に係るDNA型鑑定の資料の採取について、可能な限り速やかに完了するとともに、当該DNA型鑑定の照合体制の整備を進めること。

 三 特定失踪者をはじめとする拉致の可能性を排除できない事案に係る捜査・調査の徹底と拉致実行犯に係る国際捜査を含む捜査等の継続・更なる拡充を図ること。

 四 拉致被害者家族等へのきめ細やかな対応、既帰国拉致被害者に対する支援の継続及び今後の拉致被害者帰国に向けた準備に万全を期すこと。

  右決議する。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。

 お諮りいたします。

 ただいま読み上げました案文を本委員会の決議とするに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

山本委員長 起立総員であります。よって、本件は本委員会の決議とすることに決しました。

 この際、ただいまの決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。古屋拉致問題担当大臣。

古屋国務大臣 ただいまの御決議に対し、一言述べさせていただきます。

 政府といたしましては、ただいまの御決議の趣旨も踏まえ、認定被害者のみならず、全ての拉致被害者の安全確保及び即時帰国のために引き続き全力を尽くしてまいる所存であります。

山本委員長 お諮りいたします。

 本決議の議長に対する報告及び関係当局への参考送付の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 本日は、これにて散会いたします。

    午後零時九分散会


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