衆議院

メインへスキップ



第4号 平成26年6月17日(火曜日)

会議録本文へ
平成二十六年六月十七日(火曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 山本  拓君

   理事 薗浦健太郎君 理事 中山 泰秀君

   理事 山口 泰明君 理事 義家 弘介君

   理事 鷲尾英一郎君 理事 田沼 隆志君

   理事 上田  勇君

      青山 周平君    穴見 陽一君

      池田 佳隆君    石崎  徹君

      大串 正樹君    鬼木  誠君

      菅野さちこ君    小島 敏文君

      斎藤 洋明君    新開 裕司君

      末吉 光徳君    高木 宏壽君

      中川 郁子君    中山 展宏君

      福山  守君    藤原  崇君

      細田 健一君    八木 哲也君

      原口 一博君    笠  浩史君

      丸山 穂高君    三宅  博君

      竹内  譲君    中島 克仁君

      青柳陽一郎君    笠井  亮君

    …………………………………

   国務大臣

   (国家公安委員会委員長)

   (拉致問題担当)     古屋 圭司君

   内閣府副大臣       岡田  広君

   外務副大臣        岸  信夫君

   文部科学大臣政務官    上野 通子君

   政府参考人

   (警察庁警備局長)    高橋 清孝君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局参事官)            小野  尚君

   政府参考人

   (外務省アジア大洋州局長)            伊原 純一君

   衆議院調査局北朝鮮による拉致問題等に関する特別調査室長          関根  弘君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十七日

 辞任         補欠選任

  池田 佳隆君     藤原  崇君

  石崎  徹君     福山  守君

  金子 恵美君     末吉 光徳君

  新開 裕司君     小島 敏文君

  中川 郁子君     菅野さちこ君

  細田 健一君     穴見 陽一君

同日

 辞任         補欠選任

  穴見 陽一君     細田 健一君

  菅野さちこ君     中川 郁子君

  小島 敏文君     鬼木  誠君

  末吉 光徳君     八木 哲也君

  福山  守君     石崎  徹君

  藤原  崇君     中山 展宏君

同日

 辞任         補欠選任

  鬼木  誠君     新開 裕司君

  中山 展宏君     青山 周平君

  八木 哲也君     金子 恵美君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     大串 正樹君

同日

 辞任         補欠選任

  大串 正樹君     池田 佳隆君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 北朝鮮による拉致問題等に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

山本委員長 これより会議を開きます。

 北朝鮮による拉致問題等に関する件について調査を進めます。

 この際、去る六月二日、北朝鮮による拉致問題等に関する実情調査のため、大阪府及び兵庫県に視察を行いましたので、参加委員を代表して、その概要を私から報告申し上げます。

 参加委員は、中山泰秀理事、鷲尾英一郎理事、上田勇理事、原口一博委員、丸山穂高委員、三宅博委員、竹内譲委員、中島克仁委員、笠井亮委員、そして私、山本拓の十名であります。

 まず、大阪府大阪市内のホテルプリムローズ大阪において、大阪府警察及び警視庁から説明を聴取し、意見交換を行いました。

 大阪府警察からは、大阪府に関係する北朝鮮による拉致の可能性を排除できない事案の捜査、調査状況及び啓発活動について、警視庁からは、原敕晁さんの拉致に係る辛光洙事件について、それぞれから説明を聴取し、意見交換を行いました。

 この中で、委員から、辛光洙事件の具体的な捜査状況、拉致の可能性を排除できない事案に係る方々を特定するためのDNA型鑑定資料の具体的な活用方法及びデータ化の有無、拉致に関与した容疑があるよど号ハイジャック犯等の不法入国の事実の確認及び帰国逮捕の早期実現の必要性等についての発言がありました。

 その後、大阪市内の辛光洙事件関連現場等を視察いたしました。

 次に、兵庫県神戸市の兵庫県公館において、兵庫県、兵庫県警察及び警視庁から説明を聴取し、意見交換を行いました。

 まず、金澤和夫兵庫県副知事及び加田裕之兵庫県議会副議長から挨拶がありました。

 続いて、兵庫県からは、県における拉致問題への取り組みについて、兵庫県警察からは、田中実さん拉致容疑事案及び北朝鮮による拉致の可能性を排除できない事案の捜査、調査状況及び啓発活動等について、警視庁からは、有本恵子さん拉致容疑事案について、それぞれ説明を聴取し、意見交換を行いました。

 この中で、委員から、兵庫県警察における拉致の可能性を排除できない事案に係る方々を特定するためのDNA型鑑定資料の採取状況、同事案の情報収集のため、公開情報を工夫する必要性等についての発言がありました。

 その後、拉致被害者有本恵子さんの御両親、有本明弘さん、有本嘉代子さんと懇談を行いました。

 有本さんの御両親からは、恵子さんが存在していることを国内からもっと発信してほしい、全ての拉致被害者を早期に取り戻してほしい旨の発言がありました。

 以上が、今回の委員会視察についての概要であります。

 当委員会は、政府認定の有無にかかわらず、全ての拉致被害者の安全確保と即時帰還など一日も早い拉致問題の解決に向けて努力するとともに、今回の視察で寄せられた要望等を委員会の審査に反映させ、一層議論を深めてまいりたいと思います。

 最後に、今回の視察に当たりまして御協力をいただきました関係各位に対し深く御礼を申し上げ、視察の報告とさせていただきます。

 お諮りいたします。

 ただいま御報告いたしました内容の詳細につきましては、これを視察報告書として本日の会議録に参照掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

山本委員長 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として警察庁警備局長高橋清孝君、金融庁総務企画局参事官小野尚君及び外務省アジア大洋州局長伊原純一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

山本委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

山本委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中山泰秀君。

中山(泰)委員 北朝鮮は、日本政府が認定した被害者十七人のうち、残り十二人について、死亡あるいは入境せずということを小泉政権の時代に回答してきております。

 冒頭、委員長から、大阪、神戸の視察の御報告がございました。そのとき、神戸で私たち委員会のメンバーが有本さんの御両親とお会いをさせていただく中で有本さんがはっきりと申されたことを、有本さん御本人にかわって申し上げたい。

 それは何か。死亡、死んだと北朝鮮がしている人たちを生き返らせてもらわないと困るというところ、そこを一言、有本さんの御両親にかわって御報告申し上げたいというふうに思います。

 それでは、質問に入ります。

 まずは、北朝鮮の特別調査委員会についてお伺いします。

 今回は、この委員会、伊原さんが御帰国なさって一番最初ということもございますので、ひとつよろしくお願いします。

 北朝鮮が再調査のために設置する特別調査委員会につきまして、さきの日朝合意文書では、特別な権限、全ての機関を対象とする権限が必要であるということですけれども、どういう機関のどういう立場の人が入ることが必要と考えているのか、御答弁願います。

伊原政府参考人 北朝鮮がこれまで行ってきました過去の調査というのは真相究明のためには不十分であった、そのように考えておりますが、そういう経緯も踏まえまして、今回は、北朝鮮側が、全ての機関を対象とした調査を行う権限が付与された特別調査委員会を立ち上げる、そういうことが重要だということで折衝し、そういった文言が今回の日朝合意の中には含まれております。

 したがって、今後、調査の開始までに、北朝鮮側から、委員会の組織、構成、責任者等について日本側に通報することになっておりますので、これがまさに特別の権限が与えられたと言うのにふさわしい委員会であるかどうか、北朝鮮側の通報をよく精査して日本としても判断していきたいというふうに思っております。

中山(泰)委員 続きまして、拉致被害者の安否情報についてお伺いします。

 菅官房長官は、五月二十九日の拉致問題の再調査に関する記者会見で、日朝局長級協議におきまして拉致被害者の新たな安否情報があったかどうかを問われ、そうしたことも交渉の中で行われていると思うと述べておられます。また、日朝交渉で北朝鮮側が生存者情報を示唆したとの報道もありますが、伊原局長は具体的な安否情報をストックホルムの日朝交渉で聞いていたのかどうか、お答えください。

伊原政府参考人 今般のストックホルムでの協議におきましては、これまでの過去の日朝協議の議論も踏まえまして、拉致問題に関する日本政府の基本的立場に基づき議論を行いました。ただ、こういう外交交渉、協議でございますので、協議の具体的な内容についてお答えすることは適当ではないと考えております。

 今委員の御指摘の点につきましては、いずれにしましても、今後、調査の中で明らかにされるべきことであるというふうに考えております。

中山(泰)委員 再調査を行った、しかし以前と同じ結果が出てきたということでは、単に日本が制裁解除してしまうだけになってしまうんじゃないか。これまでの日朝交渉で拉致被害者の帰国の手応えはつかんでおられるのか、それとも、そうした手応えなしに、再調査することだけを合意なさったのかどうか、お答えください。

伊原政府参考人 今委員の御質問の、拉致被害者の消息について北朝鮮側から情報の提示とか示唆があったという事実はございませんけれども、先ほど申し上げましたように、北朝鮮側は、調査開始までに委員会の組織、構成、責任者等を通報するということを言っておりますし、また、今回の合意の中では、随時協議とか、あるいは、北朝鮮の行った調査について検証できるような、北朝鮮に滞在し必要な人と面会したり、あるいは必要な場所に行ったり、資料の提供を受けたり、そういうことをしながら日本としても結果を検証していく、そういった仕組みが合意の中に盛り込まれておりますので、そういった点を今後日本としても活用して、実質的な調査となるように、十分に政府としても取り組んでいきたいというふうに思います。

中山(泰)委員 今局長から御答弁のあったいわゆる検証チームでありますけれども、この検証チーム自体が、対外、対北朝鮮に漏れないような形で保秘がしっかりと、現地における調査というものが全て確保できるということを心から強く要望したいというふうに思います。それがもしできない場合、逆に言うと、検証チームというものを改めて北朝鮮としっかりと協議して再調整していただくというぐらい、お願いを申し上げたいと思っています。

 続きまして、再調査の随時報告のタイミングについてお伺いしたいと思います。

 今回の再調査に関する日朝合意文書では、北朝鮮側が日本側に随時報告すると書いてございます。随時とはどういうタイミングのことを指すのか、生存が確認された場合、あるいは、起こってほしくはないですけれども、死亡ということが確認された場合に通報してくるということなのか、また、日本人妻の問題や遺骨の問題もあるわけですけれども、それらについてもどういうタイミングで通報してくるのか、お答えください。

伊原政府参考人 先ほど申し上げたとおり、今回の日朝の合意では、北朝鮮がしっかりと調査をしていく、あるいは調査の結果についても日本としても確認ができるような仕組みを盛り込んでおりますけれども、こうした仕組みを今後日本側としてどのように活用していくか、どのように生かしていくか、これは、今後、北朝鮮との協議をしながら、あるいは調査の進展を見ながら、最も適切に判断をしていく必要があるというふうに思っております。

 したがって、今の時点で、随時協議というのが具体的にいつどのように行われるかということは明らかではございませんけれども、これは、今後の調査の進展も見て、最も適切なやり方で行われるように北朝鮮と折衝していきたいというふうに思います。

中山(泰)委員 きょうはあえてお配りはしていませんけれども、私の手元に、「帰国事業二十年」という、これは新潟県で、一九五九年から七九年までの二十年間、新潟県在日朝鮮人帰国協力会会長村田三郎さんという方たちが、当時、万景峰号で帰国事業というのを行っていました。当時は、黄色いリボンを胸につけて、「帰国協力会はこの帰国事業を新潟市民をはじめ多くの人びとにアピールするため黄色いリボン(写真)をつくり幹部が卒先して胸につけて活動しました。」と。要するに、「朝鮮の人を暖かく送りましょう」というリボンを胸に掲げながら、いわゆる万景峰号で朝鮮の方を文字どおり北朝鮮に送って、逆にそれについていった日本人妻というのが、今、私が質問の中で日本人妻の問題という形で指摘をさせていただいたところであります。

 この日本人妻というのも、先日テレビの報道等を見ていましたら、平壌市内でのいわゆる自由な活動というものが、一人の市民として非常に制約されているようなコメントをその報道インタビューで見ました。こういったことを考えますと、自由意思に基づいて北朝鮮に渡った人たちすら、ある意味、拉致被害者と言っても構わないのではないかというぐらい、非常にこの日本人妻の問題も重要だと思います。

 この交渉の中で、当然、逆に、我々政府が認定している拉致被害者に加えて、日本人妻の情報というのも、その都度彼らは交渉の一つのネタとして出してくるかもしれませんけれども、できるだけピントをずらさずに、政府認定の拉致被害者を中心にして、交渉というものをしっかりと相手に訴求していっていただきたいというふうに強く思う次第であります。

 それでは、核実験と再調査についてお伺いします。

 北朝鮮は核戦略を重視しております。東アジアの脅威となっているのも事実です。北朝鮮は、核兵器を保有する立場を崩しておりません。今後、北朝鮮が核実験を行った場合、交渉を続けるお考えなのか、それとも交渉は打ち切るというのでしょうか。

伊原政府参考人 北朝鮮による核開発あるいは新たな核実験を含む挑発行為は、東アジアそして国際社会全体の平和と安全に対する脅威であります。したがって、北朝鮮が核実験あるいは弾道ミサイルの発射といったようなことを行えば、当然、日朝関係にも深刻な影響を与えるだろうというふうに考えておりますし、そのことは、これまでの協議の場でも日本側からはっきりと北朝鮮側に伝えてきております。

中山(泰)委員 わかりました。

 続きまして、制裁解除、人道支援の時期に関して御質問申し上げます。

 今後、北朝鮮は、再調査の結果を小出しにして制裁解除を求めてくる可能性はないのでしょうか。特別調査委員会を設置し、再調査を開始した時点で制裁解除することは先般の日朝合意文書にも書かれておりますが、その後も、行動対行動の原則で、生存者が確認される、帰国させるとして、その都度制裁解除を求められると際限がなくなると思うが、政府の考えはいかがでしょうか。

 再調査が全て終了した時点で結果を見きわめて制裁解除するのか、それとも、再調査が全て終了する前にも解除することはあり得るのか、この点についてお聞かせください。

伊原政府参考人 これは従来からの政府の基本的な立場でございますけれども、対北朝鮮措置につきましては、北朝鮮側から、諸懸案の解決に向けた前向きな、具体的な行動を引き出す上で何が最も効果的か、そういう観点から不断に検討を行っているということでございます。したがって、基本的にこういう考え方に基づいて、今後の調査の進展等も見ながら適切な判断をしていくということだと思っております。

中山(泰)委員 日朝合意文書には人道支援を行うとありますけれども、人道支援というのは具体的にどういうものなのか、またどういうタイミングで行うのでしょうか。

伊原政府参考人 委員御指摘のとおり、今回の日朝の合意文書においては、「適切な時期に、北朝鮮に対する人道支援を実施することを検討する」という文言がございます。ただ、今の時点で人道支援を実施する具体的な見通しは持っておりません。

中山(泰)委員 人道支援というのは具体的にどういうものなのかということに対して、もう一度お聞かせください。

伊原政府参考人 基本的に人道支援というのは、やはり人道支援を行う必要性というのがあり、それを評価した上でその内容を決めるということであろうと思っておりますので、今申し上げたように、今は人道支援について具体的な見通しを持っておりませんので、これ以上の具体的な中身は考えておりません。

中山(泰)委員 わかりました。

 続きまして、今度は海外との連携に関して御質問したいと思います。

 今回の北朝鮮側の対応は、日米韓の連携を崩そうとする意図はないのでしょうか。先般、局長が訪米されて、米側に今回の日朝合意について説明したが、報道によると、局長は、アメリカは日本の考え方に理解を深めてきていると述べるにとどまっておられました。

 アメリカ側は日本の立場を完全には理解していないのではないか、北朝鮮と日本が交渉することをどう捉えているのか。日本として拉致問題の解決は何よりも大切な問題でありますが、日米韓の連携をどう図るのか。また、今後、米国同様、韓国にも今回の日朝合意について説明に行かれる御予定があるのかどうか、お聞かせください。

伊原政府参考人 先週、十日でしたか、ワシントンに出張いたしまして、米国のデービース北朝鮮政策担当特別代表と北朝鮮の問題について幅広く意見交換を行いました。その際、北朝鮮問題の解決に向けては、日米さらには日米韓が引き続き緊密に連携していくということが重要であることを改めてお互いに確認した次第でございます。そして、今の拉致問題につきましては、引き続き、米側の支持に感謝しつつ、今後も連携して取り組んでいく必要があるということで、米側の協力を要請し、米側もそれに前向きな姿勢を示していたということでございます。

 先生御指摘のとおり、特に核、ミサイルの問題については、日米、日米韓の連携というのは極めて重要でございますし、拉致問題についても、引き続き米側の理解を得ていくためには、よく連携をとっていく必要があるというふうに思っておりますので、今後ともよく意思疎通をしていきたい。それから、韓国との間でも、近い将来、機会をつくって、韓国側ともよく連携し、意見交換をしていきたいというふうに考えております。

中山(泰)委員 このポイントというのは非常に大事だと思います。特に、北朝鮮問題というのは何かといいましたら、アメリカと中国の、北朝鮮というところの地政学的な取り合い合戦だというふうに私は考えます。朝鮮半島が、三十八度線以北をソビエトに武装解除され、以南を米軍に武装解除されたあのヤルタ会談、チャーチル、ルーズベルト、スターリンという人たちが逆にあの分断を決めていたという歴史が後から我々にもわかってくる今の時代に、三十八度線を、それこそ北朝鮮の北側の中朝間の国境まで持ってくるのか、それとも逆に、中国側に三十八度線まで押し込まれて、冷戦構造でいう西側諸国の我々が、どちらにあの朝鮮半島で政治的優位をとるか、軍事的にもこれは大きな影響が出てくると思います。特にやはり日米の連携というのは日米安保を含めて非常に重要だと思いますので、ぜひ頑張っていただきたいというふうに思います。

 それから、この間の視察に関してもお伺いしていきたいと思います。

 まず、視察のときに、委員長からも、私ども視察に参加した委員の意見を集約していただく形で、拉致の可能性を排除できない事案に係る方々の家族から採取したDNA型鑑定資料は現物保存にとどまるのか、それとも、データ化までなされているのかという質問がたしかあったと思います。いかがでしょうか。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 現在、御家族から同意を得てDNA型鑑定資料を採取しておりますけれども、それらにつきましては、将来、北朝鮮から行方不明者のものとされる資料を入手した時点で最新の技術により鑑定を実施することとしておりまして、現在は、各都道府県警察による適正な管理のもと、現物を保管している状態であります。

 なお、警察庁におきましては、大臣からの指導を受けまして、特別指導班を通じて、都道府県警察に対して、採取の同意を得られていない御家族もまだいらっしゃいますので、改めて御意向を十分に確認した上で、希望される場合には積極的な資料採取に取り組むよう指導しているところでございます。

中山(泰)委員 この件に関しましては、私どもも、ここはオールチーム日本で頑張って支援しなきゃいけないと思います。

 特に、そういった現物の保存というものをするに当たって、冷却するような倉庫というんでしょうか、冷蔵庫、冷凍庫というのが非常に必要だと思いますし、人数がふえればふえるほど、残念なことでありますけれども、スペースが非常に乏しくなってくる。と同時に、予算もしっかりと確保しなければこの問題のベースが覆されてしまうと思いますので、警察庁のこの関連の予算を、我々拉致特のメンバーそれぞれが一丸となって取得を目指すということも大事だというふうに思います。古屋国家公安委員長に対して、大臣と一緒に我々も頑張りたいというふうに思いますので、ひとつよろしくお願い申し上げたいと思います。

 もう一つ、みずからも帰国を望んでいるよど号犯の逮捕帰国が進まない理由及びその取り調べ、手続の進捗状況を確認したいと思います。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 よど号グループは、自身の帰国問題に関して、これまでも、無罪合意帰国あるいは日本政府との事前協議などを主張してきたものと承知しております。

 警察におきましては、よど号グループについては、ハイジャック事件及び欧州におけます日本人拉致容疑事案などに関して、ICPOを通じて国際手配するとともに、外務省を通じて北朝鮮に対してその身柄引き渡しを要求してきたところでありまして、よど号グループとの間で帰国のための条件等について協議することはあり得ないというふうに考えているところでございます。

 警察としましては、外務省を通じて、引き続き北朝鮮によど号グループの身柄引き渡しを求めますとともに、よど号グループが帰国した場合には、我が国の法令に従い、被疑者の逮捕を含め厳正な捜査を進める方針でございます。

中山(泰)委員 大臣、予算に関して先ほど言及したことに対して、一言だけ御答弁いただければと思います。通告はないですけれども、冷凍冷蔵倉庫、一生懸命予算をとりたいと思うんですが。

古屋国務大臣 今の質問は、拉致の疑いを排除できない事案だけではなくて、DNA鑑定の充実を含めた予算の確保、そういう趣旨だと思います。

 二十六年度予算においても、また来年度予算においても、やはりDNA鑑定の予算の確保は極めて重要でございますので、そういった考え方にのっとって私も既に警察を督励しておりますし、今後ともそういう姿勢で取り組んでいきたいと思います。

中山(泰)委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

山本委員長 次に、竹内譲君。

竹内委員 公明党の竹内です。

 この拉致問題につきましては、私も、野党時代から、大臣とともに、野党時代は本当に苦しかったという思いがありまして、一生懸命その中で取り組んでまいりましたけれども、古屋先生が大臣になられて、本当に希望が見えてきたな、展開をするんじゃないかなというふうに、大きく動き始めたことを、大臣初め当局の皆さんの御努力を大いに評価したい、多としたいというふうにまず思います。

 その上で、今回の日朝合意文は、これもまた私どもは評価をしているわけでございます。

 この中で幾つか注目すべき点があるんですが、第一は、北朝鮮が拉致問題についての従来の立場を転換したのではないか。従来の立場とは拉致問題は解決済みとの立場でありましたけれども、これを転換する口実として、日本側が北朝鮮の努力を認めたことを挙げているわけでございます。この方針転換は一つ大きいのではないかなというふうに思っております。

 二つ目は、安倍政権が日朝平壌宣言を継承して、過去の清算と国交正常化の方向性を一応明記しているということだと思うんですね。

 それから三つ目は、北朝鮮が調査の対象を、拉致被害者から残留日本人、日本人配偶者、さらに、一九四五年、終戦前後の日本人の遺骨やお墓の問題にまで広げたことでございます。もちろんこれには二面性がありまして、必ずしも拉致問題を最優先に調査するわけでもないとも読めるわけでございますので、非常に注意が必要だろうというふうに思っております。

 まず、第一の質問でございます。

 先ほども御質問がありましたけれども、今回の特別調査委員会の構成等はこれからだということでございましたけれども、スケジュールにつきまして、一説には六月の十九日というような情報も飛び交っているものもありますし、それから六月の末だとかいう情報もございます。その辺はどのようになっているのか、ちょっとまずスケジュールの点を確認したいと思うんです。

古屋国務大臣 委員とは拉致議連等々でお互いに拉致問題解決のために取り組んできた仲間でございまして、委員の長年の御努力に敬意を表したいというふうに思います。

 その上で、今回、こういう形で文書で合意がなされた、初めてのことですよね。今後、スケジュールはどうなるのかということですが、スケジュールについては、いついつまでにこうする、ああする、そういうスケジュールを決めたわけではありませんけれども、官房長官も、当初、発表直後の会見でも、だらだらやることではないと。要するに、だらだらやることではないということの意味は、速やかにやるということでありまして、一年以内ということがずっとひとり歩きしているようですが、それは一つの例で申し上げている、最高で一年を超えるなどということはないでしょうと。だから、だらだらやることがないというのが主語でございまして、私どもも外務省も同じ認識でおります。

 今後どういう形になっていくかは、どういう報告書が、組織であるとか人員であるとか体制がどういうふうになるかということによってやはり対応の仕方も変わってきますので、今ここでスケジュールのことを詳細に申し上げるというのは控えるべきだろうというふうに思います。

 我々もいろいろな情報を今まで入手してきておりますので、やはりそういうものをお互いに照合しながら、いろいろな手段で調査結果を確認したり、場合によっては北朝鮮側に問題提起をしていく、そういうような仕組みを確保して取り組んでいくというふうになると考えています。

竹内委員 そこで、次にこの調査ですが、非常に大勢の対象があると思うんです。まず九十人程度の優先調査を要求するという情報もあるんですが、そういう優先順位をつけた対応の仕方についてはいかがでしょうか。

古屋国務大臣 私もメディアを通じて初めて見たんです。でも、あれをよく読んでみますと、かつて、実際に、二〇〇六年だったか二〇〇八年のときに、そういうデータを出しているんですよね、三十数名前後だったと思いますけれども。事前通知になかったので、人数単位までは今ちょっと正確に把握していませんけれども、やはりそういったこととやや混同して報道されているのかなと、あの文章を読んで思いました。

 今、正直申し上げて、そういうメンバー、リスト、あるいは人員を向こうに提供しているということは一切ありません。

竹内委員 この調査の件についてさらにもう少しお聞きします。

 今後、外務省や警察庁などの職員の方々を北朝鮮に派遣するというようなこともあり得るんだろうと思いますし、それから、できれば連絡事務所というか事務所のようなものも立ち上げられるのかどうか、やはり腰の据わった、当然、迫力のある調査体制になると思うんですが、その辺につきましてはいかがでしょうか。

古屋国務大臣 今度の合意の文書の中にこういう一文があるんですね。「日本側関係者による北朝鮮滞在、関係者との面談、関係場所の訪問を実現させ、関連資料を日本側と共有し、適切な措置を取ること」で合意したと書いてありますので、そういうことからすると、実際に向こうに人員を派遣したりとか、そういうことがあるんだろうということで、そういう記事をたくさん私も見受けています。ただ、現実にまだ報告書も日本に来ておりませんので、そういった具体的な案は一切持っておりません。

 ただし、やはり今後、胸突き八丁の交渉が始まるわけでありますから、あらゆるケースを想定して、あらゆる頭の体操をやっているというのは事実でございます。

竹内委員 わかりました。

 先ほど伊原局長が、体制等についてはこれからだ、それを精査していくんだという答弁があったんですが、それがこちら側から見てやはり不十分なときは、当然、不十分だ、こういうふうにぜひ強く言って、改めさせていっていただきたいというふうに思うものでございます。

 それから、今後、調査が開始されて人的往来が解除されれば、北朝鮮の当局者から直接説明を求めるために、日本にそういう関係者を召喚することも検討されているのかどうか、この辺はいかがでしょうか。

古屋国務大臣 今回の措置、いわゆる制裁の措置の一つに、人的往来の規制措置というのがありますけれども、これは、御承知のように、朝鮮総連の役員で向こうの代議員をやっている五人とその補助、サブ四人、これについて再入国を禁止しているんですね。具体的に言うと、この九人を解除するということでございます。

 仮にそうなったとしても二〇〇六年以前の状況と同じでございますから、北朝鮮から来る人間については厳格な審査をするということになっておりますので、無原則に誰でも入ってこられるということでは一切ないということで、あくまでもこの九人を対象にして制裁を解除するというのが今回の合意の一つの条件であるということであります。

竹内委員 これはしっかりやっていただきたいというふうに思っております。

 今回解除する規制、禁止措置が一応列記されているわけでございますけれども、解除により得られる北朝鮮側の取引額を初めメリットというのは相当なものがあるというふうに考えていいのか、その辺はいかがでしょうか。

古屋国務大臣 今回、この協定書で出したのは、人の往来の一部の緩和、送金及び携帯金額の措置の緩和、それから人道目的の貨物を積むための船舶の入港の禁止解除、これは万景峰号はもちろん含まれておりませんが、この三つでございますので、これは考え方次第だと思いますけれども、あくまでも制裁を一部緩和することでありまして、経済支援をすることでは一切ありません。

 だから、これをどういうふうに捉えるかというのは人それぞれによって捉え方は違うと思いますけれども、我々は、行動対行動によって、対話と圧力、すなわち圧力をかけることによって対話を少しずつでも確実に引き出していくというのが政府の基本方針でありますから、その考え方にのっとってこういった一部の制裁の緩和を協定したということであります。

    〔委員長退席、山口(泰)委員長代理着席〕

竹内委員 今後の交渉過程で北朝鮮側に不誠実な点が見られた場合は規制や禁止措置を再度復活させる、そういう理解でよいでしょうか。

古屋国務大臣 現段階で、北朝鮮からどういう反応が来るか、まだ全く来ておりませんので、仮定の質問でございますので、ここで私の方からお答えするのは控えさせていただきたいと思いますけれども、やはり今は二〇〇八年とは全く環境が違いますから、北朝鮮にとってもある意味で最後のチャンスでもありますから、過去の不誠実な態度を繰り返すということならば、このラストチャンスを彼ら自身も逸してしまうということになるわけでありまして、そのことは北朝鮮側も十二分に認識しているはずですから、私たちはそういった視点に立ってしっかり取り組んでいきたいというふうに思っています。

竹内委員 しっかりお願いしたいと思います。

 人道支援につきましては、先ほど、今のところは予定していない、これからだという御答弁が局長の方からありましたので、それはそういうことだろうと思っております。

 今回、北朝鮮側は、全ての分野について同時並行的に行うというような表現もしておりまして、全体として、私も、かつての雰囲気とか、それから、今回の文書の行間からにじみ出てくるものとか、全体の交渉のいろいろなトータル的な総合情報からすると、今回は、日本へ帰国させる日本人をある程度捜し出しているんじゃないかという、感じですよ、感じだけれども、そういう直観があるわけでございます。

 そういう意味で、何人かを帰す可能性があるという、その辺につきまして大臣の手応えをちょっとお聞かせ願いたいと思うんです。

古屋国務大臣 今、北朝鮮側がどういう対応をするかということについて私の方から言及するのはふさわしくないと思いますので、控えさせていただきたいと思いますが、しかし、私どもは、安倍政権になって、政府認定の有無にかかわらず全ての拉致被害者を取り戻す、これが政府の大方針であります。

 全ての拉致被害者というのは、最大限で、拉致の疑いを排除できない事案八百六十件、プラス十七名ということでありまして、すなわち、そのボールが既にもう北朝鮮にあるわけでございまして、北朝鮮がその投げられたボールに対してどういう対応をしてくるかということをしっかり我々は見きわめていきたいと思います。

竹内委員 これもお答えになりにくい質問をまたするんですが、北朝鮮側は従来の立場を転換すると明言したわけでございますので、論理的には、既に死亡したとされる方も実は生きていたとする可能性も当然あるだろうというふうに思っております。

 ここは非常に大事なところで、これは質問としては非常にお答えになりにくいかもわかりませんが、大臣として、その辺の、既に死亡した方が生きている可能性、そしてまた、何としても取り戻すという、その辺の感覚や決意を含めてお答えをいただければありがたいと思うんです。

古屋国務大臣 この協定書の中にこういう一文もあるんですね。「従来の立場はあるものの、」としているんですね。「ものの、」しかし全部調査しますよと言ってきた。これは明らかに向こうの態度の変化ですよね。もし、今までのように、五人以外は未入境あるいは死亡ということでしたら、こんなことは絶対文章で書けないはずでありますので、やはり北朝鮮側の変化ということは読み取ることができるというふうに思います。

 その上で、我々は、やはり全ての拉致被害者は生きているということが大前提なんです。なぜか。かつて再調査を約束して、遺骨と言われるものを送ってきたときも、全てにせものだということが判明しましたよね。死亡報告書も全部インチキでしたよね。そういうことからすると、これは全て拉致被害者が生きているという推測、前提が成り立っていくのは当然のことというふうに考えておりまして、繰り返し申し上げますが、我々は、全ての拉致被害者が生存しているという前提でこの問題の解決に取り組んでいきたいと思います。

竹内委員 我々も一体となって応援したいと思っておりますので、ぜひとも頑張っていただきたいと思います。

 それで、あと一つ、二つですが、朝鮮総連本部の競売問題がございまして、これは、何か北朝鮮側は、在日朝鮮人の地位に関する問題の中に含まれるというふうなことも言っておるわけです。しかし、日本側としては、司法の競売手続に従っている以上、行政府は手を出せないということで、合意の枠外、こういうふうにしているわけであります。

 全くそのとおりでございまして、それ以上のものでもそれ以下でもない、このように思うわけでございますけれども、そういうことも頭の片隅に置きながら、今後の展開次第では、こういうこともまたカードの一枚になるんだろうなというふうに思いますし、また、万景峰号の問題につきましても、人道援助の話ではありませんし、これこそ合意の枠外ですけれども、向こうからしたら、何か言っておるわけでありますから、カードの一枚なんだろうなと。

 その辺、また大局的に考えていただきまして、何としても、先ほどの全ての被害者を取り戻すということにぜひともうまく使っていただきたいということを要望いたしまして、質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

山口(泰)委員長代理 次に、原口一博君。

原口委員 民主党の原口一博でございます。

 一刻も早い拉致被害者の皆さんの御帰国を願って、きょうは主に大臣と質疑をさせていただきたいと思います。拉致議連でも大変お世話になりました。ありがとうございます。

 政府では言えない、あるいは、国会だからただしておかなきゃいけない、その点に絞って数点質疑をさせていただきます。

 ちょっと通告の順番を変えまして、まず、警察庁に辛光洙事件について伺いたいと思います。辛光洙は原敕晁さんの拉致にかかわった。死刑判決を受けて、その後、北朝鮮へ出国をしているわけでございますが、まず、数点伺います。

 辛光洙の身柄の引き渡しを、日本政府として、韓国政府に対して行った事実はあるのか。先日、本委員会で、六月二日ですか、大阪の実情調査を行った際に伺いましたけれども、外務省から入手した資料によれば、辛光洙の身柄引き渡しについては、韓国政府ではなくて、北朝鮮に対して行っているということですが、この点を伺いたいと思います。

高橋政府参考人 お答え申し上げます。

 結論から申し上げますと、韓国政府に対して辛光洙の身柄引き渡し要求は行っておりません。

 その経緯がちょっと複雑ですので、御説明させていただきたいと思います。

 昭和六十年に、韓国当局が国家保安法違反で北朝鮮工作員である辛光洙らを検挙し、いわゆる辛光洙事件が発覚しております。

 辛光洙らは韓国の裁判手続に付され、辛光洙については死刑判決が確定し、その後、無期懲役に減刑されて、収監されました。

 我が国警察としましては、辛光洙らの収監中においては、韓国当局に対して事情聴取の要請はしているものの、逮捕状の発付に必要な証拠を得るには至らなかったことから、身柄の引き渡し要求は行っていません。

 警察では、その後、国内において、原敕晁さんに対する背乗り部分、成りかわりの部分について捜査を継続しまして、平成十四年八月、つまり、辛光洙が北朝鮮に送還された約二年後に、辛光洙に対する旅券法違反、入管法違反等による逮捕状を取得して、国際手配等の手続を実施しております。

 その後、韓国の裁判手続において作成された公判調書の証拠化が可能となり得る旨の最高裁の決定がなされたこと、それから、平成十四年九月の日朝首脳会談において北朝鮮が拉致行為を自認したこと、それから、関係者の供述等により、拉致被害者が北朝鮮に連れていかれた後の状況が明らかになったことなど、状況の変化が生じたことから、平成十八年四月二十四日に、辛光洙らに対する国外移送目的誘拐等による逮捕状の発付を受けて、国際手配の手続を行ったところでございます。

 この逮捕状の発付を受けて、外務省を通じて、北朝鮮側に、十八年の四月二十六日、身柄の引き渡し要求を行っているところでございます。

原口委員 極めて残念な対応だと思います。当時の政府が政府としての体をなしていれば……。

 この辛光洙は、一九二九年六月二十七日、出生地は静岡県とされています。横田めぐみさん、地村さん、田口八重子さん、浜本さん、それから曽我ひとみさん、この拉致事件にも関与したという情報もあります。

 日本政府は、当時、供述調書の提供は韓国政府から受けたものの、辛光洙に対しての事情聴取は果たしていないというふうに思料していますが、事実でしょうか。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 辛光洙に対する事情聴取につきましては、昭和六十年六月、韓国当局が辛光洙を国家保安法違反で検挙した旨発表した直後、韓国に捜査員を派遣し、間接的ではありますけれども、これを実施しているところでございます。

原口委員 私は当時の政権を責める意味で言っているんじゃないんです。今でも、この辛光洙の供述が得られていれば、私たちの大事な拉致被害者の皆さんの奪還、帰国に大きな資料が来るという観点で……(発言する者あり)まさに今、中山先生がおっしゃいました、生き証人なんですね。

 そこで、幾つかまた伺いますが、実際に拉致の現場、これは、原敕晁さんが働いていたところの経営者、もしくは宮崎の青島海岸に連れ出して北朝鮮に拉致したということがわかっているんですが、辛光洙一人でできるものではない。

 拉致実行犯の辛光洙一人も拘束できなかったのでありますけれども、これを手伝った者が同定されていてしかるべきだと思いますが、その者に対してどのような捜査を行ったのか。言える範囲で結構ですから、教えてください。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 本件事案の全容解明には、韓国に所在します辛光洙の共犯被疑者がおりますが、これを逮捕して、直接取り調べを行う必要があるというふうに考えております。

 しかしながら、これまでのところ、北朝鮮が本件犯行の主犯であります辛光洙の引き渡しを行う見通しが立っておらず、共犯者のみの逮捕では事案の全容を解明することは困難であると考えられることから、現時点においては、同人の引き渡しの要求を行う段階にはないというふうに考えております。

原口委員 岸外務副大臣、今お聞きになって、本当にこれでいいのかなと思います。共犯者が韓国にいるわけですね。ぜひ、日本政府としても、さらなる事情聴取。

 それから、辛光洙は日本名を持っていたんじゃないですか。何というんですか。御存じだったら教えてください。わかりませんか。

 時間が限られていますので。こういう工作員は、幾つも名前を持って、そして、日本の主権と人権を侵している。決して許されざる者だということを申し上げておきたいと思います。

 さらに、先ほど中山先生もお触れになりましたけれども、DNA型鑑定資料の採取に対して、大阪府警管内で六十人おられるということで、約五十名の行方不明者、拉致の疑いのある御家族からは採取の御協力を得られたということでございますが、残りの方についてはどうされているのか。

 DNAのデータがなければ、国家主権を侵したと言われるようなまさに重大犯罪に対して、仮にマッチングのときに不都合が起きるのではないか。その辺をどう考えているのか、警察庁の見解を伺っておきたいと思います。

高橋政府参考人 DNA型鑑定資料の採取につきましては、現時点、六月十六日時点で、全国で六百十五名の拉致の可能性を排除できない方について、御家族の同意を得て、採取を行っているところであります。

 ただ、残り、同意の得られていない御家族もいらっしゃいますので、改めて御意向を十分に確認して、御家族が希望される場合には積極的にDNA型鑑定資料を採取することとしております。

原口委員 大臣、私は、先ほど御答弁いただいたように、最低でも八百七十七名、北朝鮮側に今すぐにでも知っていることを述べてもらいたいと思っているわけです。

 その中で、御希望であればということですけれども、これは御本人たちのプライバシーやいろいろなものもあるでしょう。しかし、私たち国家として考えてみると、主権を侵害された重大な事案ですから、これは議論の末、人権に配慮しながらですけれども、もしDNAが全て必要であるということになれば、国会での議論を待って、あるいは立法も必要なのかなというふうに考えます。

 次に、朝銀と朝鮮総連との関係について伺いたいと思います。

 私は、朝銀に対して、かつて国会でも何回も追及をしてきました。きょうは金融庁にもお越しいただいていますが、岡田副大臣、朝銀について、これまで数次にわたって破綻処理を行ってきました。そして、膨大な公的資金、約一兆四千億というふうに私は考えていますけれども、国民の税金を朝銀に入れました。

 破綻処理全体のスキームが金融再生法やその他の法律で約十兆円ぐらいだったとすると、この一兆四千億というお金はかなり大きなお金だというふうに思いますが、どのような破綻処理を行ってきたのか、そして、朝銀について、これまでの公的資金の投入実績、回収の状況はどうなっているのか、概略で結構ですから、お答えください。

岡田副大臣 お答えいたします。

 まず、朝銀についてどのように破綻処理を行ってきたかということにつきましては、北朝鮮系信用組合十六組合につきましては、大幅な債務超過で事業継続が困難と判断をされました。このため、預金者の保護や信用秩序の維持といった預金保険法の趣旨、目的に沿いまして、日本のほかの破綻金融機関と同様、受け皿金融機関に対する資金援助を行うことによって破綻処理を行ってきました。

 具体的には、平成十年から十四年までの間、受け皿金融機関に対し預金者保護のための金銭贈与を行うとともに、整理回収機構、RCCが不良債権等を買い取り、預金保険機構と密接に連携しながら厳格な債権回収を図ってきているところであります。

 預金保険機構は、預金保険法の趣旨、目的に沿って、破綻した北朝鮮系信用組合の預金者を保護するため、日本のほかの破綻金融機関と同様、受け皿金融機関に対して一兆一千四百四十四億円の金銭贈与を実施しているところであります。

 この金銭贈与につきましては、預金保険法に従い、破綻金融機関の預金者保護のため、その債務超過を解消すべく受け皿金融機関に対し実施されるものであり、その後、回収を図っていくという性格のものでないということは御承知のとおりであります。

 破綻した北朝鮮系信用組合の不良債権を二千九億円で買い取っております。この買い取った不良債権につきましては、整理回収機構、RCCが預金保険機構と密接に連携して厳格な回収を進めており、平成二十五年九月末現在で二千四百七十九億円の回収を行っております。

 以上です。

原口委員 ありがとうございます。

 今お答えいただきましたように、二十五年九月末現在で、資金援助額合計は一兆三千四百五十三億円なんですね。しかも、今、回収で二千四百七十九億円と言われましたけれども、実際にもう預金者保護と称して金銭贈与した額は一兆一千四百四十四億円。これは返ってきますか、こないでしょう。

岡田副大臣 お答えいたします。

 一兆四千億のうち、金銭贈与につきましては一兆三千億、これにつきましては、先ほども答弁をさせていただいたように、これは債務超過を解消すべく受け皿金融機関に対して実施されるものでありまして、その後、回収を図っていくという性格のものではないということも御認識をいただきたいと思います。

原口委員 つまり、この一兆一千四百四十四億円については、国民の税金が朝銀に入って、もう返ってこないということなわけです。

 受け皿のお話をされましたけれども、その受け皿もまた何度か破綻をし、そのたびに税金を入れるといったことをやってきて、旧経営陣の責任追及がどうなっているか、実に、刑事告訴、告発は五件十三名にとどまっているわけです。

 私は、このことについても過去追及をしてまいりました。朝銀が他の日本の金融機関と同様だと本当に見ていいんだろうか、これは朝鮮総連、つまり北朝鮮の組織の一形態なのではないのかという議論もありました。

 そこで、古屋国家公安委員会委員長に伺います。

 朝銀と朝鮮総連との関係をどのようにお考えなのか、まず伺いたいと思います。

古屋国務大臣 朝銀の各信用組合は、平成十四年三月三十一日に解散した在日本朝鮮信用組合協会、いわゆる朝信協に加盟しておりまして、これはもう朝鮮総連の傘下団体であるというふうに認識をいたしております。

原口委員 まさに拉致の実行犯が、朝鮮総連を舞台にさまざまな指示が行われたということも言われています。今御答弁のように、朝鮮総連の中の一つの組織だということであれば、本当にこのような一兆を超える公的資金を投入してよかったのか、これは検証が行われるべきだというふうに考えています。

 そして、ここは厳しく、日本の国民の税金、この税金が北朝鮮に送金をされて、そして、その後どういう工作をしたか、今も行っているのか、つまびらかでありませんけれども、核開発に使われるということは断じて許されないことであると私は考えます。

 そこで、警察庁に改めて伺いますが、朝鮮総連の大阪本部は競売されておりますが、その後、誰が買ったのか、警察庁、把握をしておりますでしょうか。

高橋政府参考人 御指摘の、朝鮮総連大阪府本部が入る大阪朝鮮会館の土地建物につきましては、競売で東京都内の不動産会社がこれを落札したというふうに承知しております。

原口委員 大臣、視察のときは知らないということだったんですよ。

 私はこれは要望をしておきますが、今大臣がお答えになったように、朝鮮総連と密接なかかわり合いを持つ、あるいはそういう組織については、やはり警察庁としても特段の関心を持ってフォローをしてもらいたいというふうに思います。

 そもそも論をここでまず確認しておきたいと思うんですが、北朝鮮による拉致問題は、北朝鮮がいわば国家として行ったものである、国家としての犯罪だ、私はそのような認識を持っておりますが、古屋大臣の御認識を伺いたいというふうに思います。

    〔山口(泰)委員長代理退席、委員長着席〕

古屋国務大臣 北朝鮮による拉致は、北朝鮮という、国家と言って適切なのかどうかはさておきまして、北朝鮮の意思によって我が国の国民を強制的に奪い取った行為である、こういうふうに認識をいたしております。

 私は、よくいろいろな場で、これはテロにも等しい行為だ、こういうふうに申し上げています。

原口委員 大事なところなので、ここは、国家としての意思を持って行われたテロ行為、私はそう考えるのが正しいと思います。

 それで、私たちは拉致議連を組織して、一刻も早い拉致被害者の救済を、そして奪還をということでやってきたわけです。当時は、拉致そのものを認めない政府に対して、それを超党派で突破するということをやってきました。

 そこで、私は、今回の調査についても、政府の立場では言えないかもわからないけれども、過去、安倍総理がおっしゃったことをあえてここで引いておきたいと思います。

 これは、日本政府が提案した安否不明十人に関する日朝合同の調査委員会の構想について、総理が当時自民党さんの幹事長のときにこうおっしゃったというのが、日経新聞のインタビューに残っています。きのう、質問レクのときに、確認をしておいてくださいということでしたけれども、きょうに至るまで、政府からは発言についての確認がありませんでしたので、日経新聞に「安倍幹事長インタビュー」ということで述べられているとされていますので、このとおりのことを総理がおっしゃったかどうかというのは後で教えてください。ただ、こう書いてあります。これは大事なので、ちょっと読み上げます。

 この日朝合同の調査委員会、「誰が考えても茶番で、直ちに取り下げるべきだ。拉致をしたのは彼らで、行方を知っている。知らないふりをして一緒に調査するというのは、時間延ばし以外の何物でもない。拉致問題は金総書記がすべてを話せば一秒で解決する話だ」。

 私は、この指摘は極めて正しいし、大事だと思います。国家として行った拉致、意思を持って行った拉致、それを、今さら何を調査するというのか。その調査に着手した段階で制裁を一部解除するというわけでしょう。本当にそれでいいんですか。私たちはそういうスタンスでこの拉致の問題をやってきたのか。そこは、違う立場もあり、違う意見もあるということを、この拉致問題特別委員会ではしっかりと言っておかなきゃいけないと私は思います。

 いや、交渉事ですから、私は今回の、ここまでこぎつけられたというのを多としていますよ。しかし、この調査で何でもかんでも出てくるなんという話にはならないだろうし、着手したから制裁を解除するなどというのは、私は断固反対です。

 この調査について少し伺いますが、今般の調査に対して、期限を決めたのか、北朝鮮側の提出資料の内容やその期限についての約束があるのかどうか、これは事務方からでも結構ですから、教えてください。

伊原政府参考人 今委員御指摘のこの調査の期限についてでございますが、日朝のこれまでの協議の中で、明確に期限についていまだ合意をしたことはございません。ただ、調査については速やかに行っていくということにしておりますので、だらだらといつまでも続けていっていい話ではないという認識は持っております。

 したがいまして、今後、この調査をどのように進めていくかということを北朝鮮と折衝、協議する中で、時期的なめどについても相談していきたいし、日本の立場を明らかにしていきたいというふうに思っております。

原口委員 金正日総書記が存命のころは、金総書記の指導のもとで行われた拉致だというふうに考えると、彼が一言言えばそれで解決するという、当時の安倍幹事長の、確認できませんでしたから括弧つきです、これを総理が本当におっしゃっているかというのは、まあ、大きな政党のインタビュー記事ですから、日経新聞の一面に載るということは、違ったことはおっしゃっていないと思う。しかし、確認はしていません。

 でも、今でもそうじゃないですか。独裁体制の中で、今のリーダーが一言こうだと言えばできる話で。

 ちょっとさらにただしておきたいと思いますが、今回の合意では、拉致調査を開始した時点で、さっき質疑がありましたように、拉致被害者だけとは言わない、多くの日本人妻やいろいろな方々の調査も含めてですが、その時点で、日本側が科している制裁を一部解除するとありますが、これは事実ですか。

伊原政府参考人 今回の日朝の合意の中で明らかにしておりますとおり、北朝鮮が調査委員会を立ち上げ、調査を開始する時点で、日本側としては三つの措置について解除をするということにしております。

 ただ、捜査を開始するに先立って、北朝鮮として、特別委員会の具体的な組織、構成、その責任者等について日本側に通報することになっておりますので、北朝鮮のこういった体制をしっかり確認した上で日本側としても措置をとるということになろうかと思います。

原口委員 一秒でわかることを、何かいろいろな時間を費やし、いろいろな仕組みをつくり、では、どんな仕組みをつくるんですか。国家として行った拉致の犯罪は、国家として知っているはずじゃないですか。私はそのことを強く言っておきたいと思います。

 今までも、いろいろな交渉に党派を超えて努力をしていただきました。私自身も、ここでは述べられませんが、かかわってまいりました。もし、横田めぐみさんが亡くなっている、彼らの主張どおりであれば、その証拠を出せ、拉致実行犯の裁判記録を出せ、そして拉致被害者の皆さんが管理をされてお住まいのところの住所と現況を示せということで、議連も挙げて、古屋大臣も頑張っていただきましたが、それで答えが出てきました。その答えが、先ほど御答弁になった、あのむちゃくちゃな、遺骨はにせもの、報告書はうそだらけということでした。

 どうしてこんなうそをさらにつくのかというのが私はわかりません。これは大臣に伺っても、相手に聞いてくださいと言われるだけで、わからないと思うんですよ。それだけ難しい国ですから、交渉をするのには大変な困難がつきまといます。

 ただ、大臣、私自身が思いますのは、金総書記が拉致を認めてから、彼は大きな決断だったと思います。それは、小泉総理初め当時の皆さんの大きな努力があった。しかし、その後、どうも考えてみると、この拉致の問題に触れれば触れるほど、日本との間の距離が開いていく、ますます自分たちは窮地に追い込まれるのではないか。恐らく、あの日朝平壌宣言を締結したときには、大変思い切ったこともしたけれども、これでもって先に進めるんじゃないかという意図もあったんじゃないかと思うんですね。ですから、対話と圧力で、できるだけグッドパスの方を北朝鮮が選択するようにしむけるしかないんだ、私はそのように感じています。

 この拉致問題の解決は非常に難しいけれども、やはりもう時間がありません。横田さんのお父様、お母様に、私もかつて五客のコーヒーカップを贈らせていただいたことがありました。五人の御家族で、めぐみさんの分まで、どうぞ一刻も早く一緒に食事をし、暮らしていけるようにという願いを込めました。あのときからもう十五年が経過をしています。全国を飛び回られる御夫妻のお姿を見て、本当に申しわけないと思います。私は、北朝鮮をグッドパスに向かわすために、大臣の政治家としての御決意をまず伺っておきたいと思います。

 今回の調査は、今、私が野党の立場で少し厳し目に言いましたけれども、日本の中にもこういう意見があるんだということも一つのカードにして、北朝鮮という国と当たっていただきたいと思います。御所見を伺いたいと思います。

古屋国務大臣 今委員の質問の冒頭で、当時の安倍幹事長の記事を引用されました。御本人が本当に言ったか言っていないかは私も本人に確認していませんのであれですけれども、新聞記事にはそういうインタビューが出た。相手がまともな相手、国ならそうかもしれませんけれども、現実に相手はまともな相手ではないということは、今まで何度も不誠実な態度をとってきたということで、はっきりしているわけですよ。だからこそ、我々はそういった経験則、教訓を持って取り組んでいるというのも事実です。

 当時と比べて、例えば二〇〇八年の再調査を約束するといったときと比べて、大きく環境が変わっていることがあるんですね。これは客観的に、一つ、政権が安定したということ、これはファクトベースですから申し上げます。なおかつ、安倍総理という、一番、拉致問題、北朝鮮問題で、自分の政治信念として極めて厳しい態度をとる議員が内閣総理大臣であるということが一つ。それから、やはりCOIのあの決議を見ても、我が国が国際社会に対して積極的にこの問題を、国際社会を味方につけるために、この一年余りにわたって取り組んできた成果が出てきているということ。それから三つ目は、拉致をしたのはあくまでも金正日であって、息子の金正恩は直接加担をしていない。

 こういった環境の変化があるということでありますから、ある意味で、私らは、こういう文書で協定できたというのは一歩前進だと思っておりますが、ここからが本当の意味での胸突き八丁の交渉が始まるんです。

 ですから、今委員も御指摘のように、いや、この調査委員会が立ち上がって、我々は行動対行動と言っていますが、実際、行動が始まってそういう解除をしていいのか、余りにも甘いんじゃないかという声をたくさん聞きます。私はその声は非常に健全だと思っています。むしろ、そういう声を出していただくことこそが、北朝鮮に対して、今度また不誠実な態度をとったらもうラストチャンスを逸することになるんですよ、日本はそういうことにはもう絶対だまされないし、日本国民が絶対許しませんよという強いメッセージであります。

 だからこそ、そういったことは十分に承知の上で、我が政府として、そして安倍総理大臣御自身がドアをこじあけて、まず前進させようということを決定したわけでございまして、原口委員におかれましても、拉致議連、超党派で、もう十何年、私どもとずっと一緒に取り組んできた仲ですから、ぜひ、同じ認識、要するに、もう絶対全ての拉致被害者を取り戻すんだ、この揺るぎない決意で御協力をいただきたいということを最後にお願いを申し上げたいと思います。

原口委員 ありがとうございます。

 今の大臣の御決意のもとで、あと残す時間で、少し具体的に詰めておきたいと思います。

 今大臣がお話しになりました、二〇〇八年に合意された再調査、これはなぜ行われなかったと認識されていますか。これは別に民主党政権に移ったわけではなくて、自民党さんの中の政権交代でございました。福田内閣で約束をしたことが、別の内閣になったからといって、それをほごにする理由はどこにもないというふうに思うんです。

 事務方で結構ですから、二〇〇八年に合意された再調査がなぜ行われなかったと考えているのか伺いたい。

伊原政府参考人 当時の北朝鮮がどういう判断のもとに二〇〇八年八月の合意を結局実施しなかったのかについて、私ども、日本として答える立場にはございませんけれども、一つの背景としては、委員御指摘のとおり、日本における政府、首相の交代ということがあったものと推測されますが、私どもとしてそこのところを正確に承知しているわけではございません。

原口委員 いや、それはちょっとどうかなと思いますね、答えとして。今大臣がお答えになったじゃないですか。環境が変化してきた、政権が安定して、そして、ラストチャンスを北朝鮮が生かすという強い意思を日本国のリーダーが示していると。

 では、過去の総括もなしに皆さんは今回の協議をされたわけですか。過去、なぜ、あの横田めぐみさんと称されるにせ遺骨を堂々と出してきたのか、そのことについては議論されていないんですか。私は今の答弁はなかなか納得できないですね。

 というのも、相手は宋日昊大使、この方はずっと担当しているでしょう。中身は言えませんけれども、さっき、三つのものを出してくれと言ったときの相手もこの方ですよ。同じ人が交渉して、また別のことをやるという担保がどこにありますか。私は、そういったところについても外交ルートを通して当然抗議なり、あるいはただしているんだというふうに思いました。

 先ほどの、原敕晁さんが拉致をされたこのときの日本政府の姿勢というのは、今の私たちが反省しなきゃいけないものがたくさんあると思います。しかし、今局長がお答えになったことは、今できることじゃないですか。

 なぜこういうことをやるのかというのは最低でも聞かないといけないんじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。

伊原政府参考人 私ども、今回の日朝の合意に当たっては、二〇〇八年の教訓も踏まえて、当時、二〇〇八年はいろいろなことを議論はしておりましたけれども、具体的に合意文書の中で調査の進め方等について明確にしたというわけではございませんでした。

 したがって、今回は、先ほども御説明しております随時協議という仕組み、あるいは、日本の関係者が滞在して、面会あるいは場所を訪問したり、資料を共有する、そういった仕組みを明確に文書の中に書くということで、二〇〇八年当時と比べ、よりしっかりした調査ができるような合意を目指したということでございますので、この二〇〇八年の経験、教訓も踏まえてしっかりとこれから北朝鮮と協議、交渉していきたいというふうに思っております。

原口委員 ということは、具体的に伺いますが、辛光洙初め拉致の実行に当たった人間の聞き取り調査、一九二九年六月二十七日といえば、もうかなりの高齢です、こういった人にも会って聞き取りをするんですか。お答えください。

伊原政府参考人 今後の北朝鮮の調査に対応して我が方としてどういう対応をとっていくかについては、関係する省庁ともよく相談して、政府として考え方を整理した上で取り組んでいきたいというふうに思っております。

原口委員 ラストチャンスという割には、今から相談して考え方を整理する。実行犯に直接当たるというのは当たり前じゃないですか。実行犯が何をやり、そしてどうやって拉致をしたかといったことをわからずして、どうやって実態がわかりますか。

 これは、日本の国内にも、手引きをし、そして、当時事情聴取さえされずに逃がしてしまった者がいるんじゃないですか。実際に、委員長初め皆さんと一緒に、その現場になったところも伺いました。小さなところですよ。そこで行われたことを私たちはもう一回つまびらかにして、一刻も早く同胞日本人の帰国につなげなければいけない、そのことを強く申し上げておきます。

 ぜひ、実行犯、工作員、あるいはそれを主導した人、金総書記は亡くなっていますが、そういう人たちの聞き取りもやるように強く求めます。

 そして、もう時間がなくなってきましたけれども、宋日昊氏は朝鮮総連の本部の売却問題の解決が今般の調査の前提となるとの考えを示したということでございますが、今回の再調査に当たり、そういう条件は付されていないし、そんなことを法治国家である日本の政府は、司法の手続に介入したり何かできる、内閣の参与でしたか、先日この委員会でも御質問がありましたけれども、参与も似たようなことを言っているとすると、この条件を、日本政府がまさかこの調査の中の条件としてのんだということは決してないというふうに考えますが、確認の御答弁をお願いします。

伊原政府参考人 そういう条件をのんだといったことは一切ございません。

原口委員 もうこれで時間が参りましたから、最後に委員長に御提案を申し上げます。

 これは超党派でやらなければいけない。ですから、党派でいうと、自民党さんから日本維新の会さん、共産党さんまで、全ての政党、国民が拉致被害者の奪還のために力を合わせる。

 大臣、私は、議連も少し幅広に、多くの人たちを抱え込んで活動できるように、そういう間口の広さというものも大事だなと思うとともに、国交がございませんから、当委員会でも北朝鮮に対して何らかのアクションを起こすことも、委員長を中心に、理事を中心にお考えくださいますように、もちろん二元外交になってはいけませんから、政府と密接な関係を持ちながら、政府ではできないことをこの委員会でやるということを、ぜひ委員長に御検討いただきますようにお願い申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

山本委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 維新の会の丸山穂高でございます。私からも、引き続きまして北朝鮮による拉致問題に関して御質問させていただきます。

 先日、我が委員会で大阪と兵庫の方に視察に行かせていただきまして、最後、特に有本恵子さんの御両親と懇談をさせていただく中で、今回の交渉に関しては、非常に期待もしているけれども、不安な思いも半ばあるというお話を伺いました。

 全面解決に向けて、その全面解決の内容についてお話がありまして、そこで、なるほど、ごもっともだということがございました。というのは、大事なことは、一部の方々のみが戻ってきて、それでお茶を濁されて、制裁解除でおしまいということは絶対あってはならないという御両親のお訴えでございまして、特に、特定失踪者の方々も含めて拉致された方々全員を取り戻すためのキーポイントとしましては、以前の北朝鮮との交渉で、北朝鮮が死亡と回答されている、具体的には、有本さんだとか、また横田めぐみさんも死亡というふうに向こうから回答が来ていると思いますけれども、そういった方々の死亡情報を今回の再調査で覆すかどうかというのは、一つ、御家族の方々にとって非常に大事な点であるというお話を委員みんなで伺ってきたところでございます。

 どこをもって今回の交渉そして調査が成功だと言うのか、そしてなおかつ、全面解決は何かというのは非常に難しいところでございますが、御遺族だと言われてしまっているこの今回の被害者の方々は、生きているんだと皆さん思っていらっしゃるので、ここも踏まえた上で、大臣、今回の交渉における全面解決そして交渉の成功とはどこにあるのか、調査の成功、調査がしっかりできているというところはどこにあるのか、今お話しさせていただいた御両親の御意見を踏まえた上で大臣としてどのようにお答えになるか、お伺いしたいと思います。

古屋国務大臣 私自身も、担当大臣として、あるいはそれ以前から拉致議員連盟に長く私も所属して活動しておりますので、拉致被害者家族の皆さんとは常に心を共有しながらこの問題に取り組んでいます。

 やはり、自分の子供や身内がそういう立場になったらどうなんだ、私は常にそれを心に刻んで活動しています。ですから、過日、委員が大阪で会った有本明弘さん御夫妻の気持ち、私も本当に痛いほどよくわかりますよ。悲痛な叫びですね。

 現に、かつてはみんな亡くなっていたなどという報告をしたわけですよ。だけれども、全てがうそだったじゃないですか。ということは、皆さん生きておられるということなんですよ。

 だから、私たちは、全ての拉致被害者、政府認定の有無にかかわらず全員を取り戻す、原因の究明、実行犯の引き渡し、これができたときがこの拉致問題の解決であります。それに向けて胸突き八丁の交渉がいよいよ今次の協議の合意によってスタートしたということでありまして、私どもとしては、そこに向けて全力を挙げて取り組んでいきたいというふうに思っております。

 もちろん、そのプロセスにおいて、具体的に今度の合意がなされておりますので、そういったことを一つ一つ検証しながら、なおかつ、私どももあらゆるチャネルを通じていろいろな情報を入手しています。個別の情報はここで申し上げるわけにはいきません。しかし、そういう情報もしっかり入手いたしておりますので、そういったものもしっかり照合しながら、もちろん、日本だけではなくて同盟諸国とも連携をしながら、この問題の解決に向け、そして北朝鮮と厳しく交渉に臨むことによって拉致被害者の帰国に結びつけさせる、これが我々政府に対する責任であり、使命だというふうに思っています。

丸山委員 大臣、もう少し詳しくお伺いしたいんですけれども、今私がお話し申し上げた、北朝鮮側が死亡だと言っている方々に対する情報が出てくるかどうか、特に再調査で覆すかどうかというのが非常に大事な点なんですけれども、ここはどういうふうにお考えなのか、その対応についてお伺いします。

古屋国務大臣 今回の協定の中に、「従来の立場はあるものの、」というふうに書いていますよね。ここがポイントなんですよ。従来は解決済みだということでしたね。「あるものの、」全ての日本人の再調査をするということ。だから、そこで、彼らとしても一歩譲歩しているというふうに受け取ることができますよね。だから、やはりそこを徹底的に追及していくことによって、全ての拉致被害者が生存ということを認めさせて、帰国につなげていくということ。

 では具体的にどういう作業をしていくのかということは、これは我々の手のうちを明かすことにもなりますし、それから、現実にそういう情報も、調査がスタートしたという報告もまだ来ていないので、ここで具体的な話を申し上げるというのはふさわしくないと思いますので、控えさせていただきたいと思います。

丸山委員 いずれにしましても、今回、向こう側から何が出てくるかという点が非常に大事な点だということは大臣も十分共有していただけるということでございますので、しっかりここは政府一丸となって、また、我々日本全体一丸となってやっていかなければいけないところだと強く思うところでございます。

 先ほど原口委員から御質問がありましたが、少し詳しくお伺いしたいので、重ねての質問になってしまうんですが、今回の日朝合意において、在日朝鮮人の地位に関する問題について、誠実に協議するという文言が合意文書の方に書かれております。ここについて、北朝鮮の宋日昊交渉担当大使の方が報道陣に対して、ここにいわゆる朝鮮総連の中央本部の競売の問題が含まれるという認識を示したという記事が出ております。

 先ほど、交渉において条件をのんだということは一切ないというお答えを政府の担当者の方からいただきましたけれども、この条件も含めまして、本来、これは司法で今話をされている問題でございますけれども、ここに関して政府として、北朝鮮に対して、ここで交渉に上がっているのかどうかという点がまず一つ。

 そして、これに対して政府として条件をのんだということはないということですけれども、今後のむ可能性があるのかどうか。一部報道では、政府関係機関が買ってそれを流すんじゃないかというお話が出たりもしておりますが、ここは国民の皆様が非常に気になっているところでございますので、政府の御見解をもう少し詳し目にお伺いできますでしょうか。

伊原政府参考人 今委員御指摘の、まず最初の質問について私の方からお答えさせていただきます。

 先般のストックホルムにおきます日朝政府間協議の場においては、宋日昊大使の方から、この朝鮮総連本部不動産の競売の問題に対しては、北朝鮮側としての懸念の表明はございました。ただ、それに対して私どもの方からは、これは今、裁判所により進められている手続なんだということを説明して、この競売の問題は政府として介入することはできない、この点については明確に北朝鮮側に説明をしてきているところでございます。

 したがいまして、現在裁判所のもとで手続が進められているこの朝鮮総連本部不動産の競売問題は、今回の合意には含まれていないというふうに考えております。

丸山委員 今の御回答だと、含まれていない、つまり、交渉の余地もないし、交渉されていないということでよろしいですね。今、大臣が大きくうなずいていただきました。ありがとうございます。

 もう一つ、今回の同意において非常に気になるところを少し詳し目にお伺いしていきたいんです。

 この同意において、人道目的の北朝鮮籍の船舶の入港禁止解除という文言がございます。これに万景峰号が含まれるのかどうかというところも国民の皆様にとっては非常に気になるところでございまして、先日、安倍総理が記者団との懇談で、入港を認める予定はない、北朝鮮側も承知しているはずだとお答えになったという報道がございますが、まず、ここが事実かどうかも含めまして、政府として、これは含まれるという認識なのか、解除するという認識なのか、このあたり、政府としての御見解をお伺いしたいと思います。

古屋国務大臣 結論から申し上げますと、万景峰号は入っておりません。協議の中で話は出ておりますけれども、結論は、万景峰号は入っておりません。

丸山委員 北朝鮮との交渉で具体的に万景峰号の解除を要求されたけれども、こちらでそれはないというふうにおっしゃったということでよろしいんですか。

古屋国務大臣 詳しくは、伊原局長が現場にいましたから、必要なら報告をさせますが、私どもはそういう認識です。話題にはのったけれども、万景峰号は一切その範囲には入れない、こういうことで、それ以上向こうから追求がなかった、こういうふうに承知をいたしております。

伊原政府参考人 今の古屋大臣の御答弁に特につけ加えることはございません。万景峰号の入港については、現在北朝鮮側から申請されていないので入港を認める予定はないし、もし申請されたとしても、今は認める予定はございません。

丸山委員 非常に明確にお答えいただきまして、ありがとうございます。

 次に、どんどんと少し細かくなっていきますが、お伺いしていきたいと思います。制裁解除のタイミングと、そして再度の制裁復活の可能性も含めまして少しお伺いしたいんです。

 制裁復活の可能性は、官房長官が記者会見で、もちろんあり得るという形の御回答をされているというふうに伺っているんですけれども、北朝鮮側が調査を開始する時点でいわゆる三項目の制裁解除をするということでございます。

 そして、きのう事務方の皆さんにお伺いすると、先ほどもお話がありましたけれども、三週間という期限は明確にはないということですけれども、恐らく三週間前後でということで、つまり十九日の前後でということでございますが、このときに、向こうが出してくる、どういったメンバーなのか、どういった調査方法なのか、先ほど少しお話があった期限の話もあると思いますけれども、非常にその条件といったものが重要でありまして、そこにおいて、恐らく政府としても、真剣に調査を開始したというふうに言えるかどうかの御判断をされるんだと思います。

 報道ベースですけれども、いわゆる保衛部と申しますか、金第一書記の直轄のいろいろな組織が入ってくることが条件だとかいうような報道もございますが、もしそこが事実であれば、そのあたりのお話を政府筋の方がお話しされたという記事が幾つか出ているんですけれども、まず、それが入るのかどうか、事実なのかどうか、そしてまた、ほかに重要視される条件等を政府の方でどのようにお考えなのか、御見解をお伺いいたしたいと思います。

岸副大臣 ただいまの御質問でございますけれども、まず、この部分的制裁解除でございますけれども、確かに調査を開始する時点なんですが、これにはやはり、北朝鮮が全ての日本人に関する包括的、全面的調査を実施するための特別調査委員会を立ち上げるということが明確にされております。そして、その調査委員会には、全ての機関を対象とした調査ができるという特別の権限が与えられるということでございます。北朝鮮側は、調査開始までに、委員会の組織、構成、責任者を日本側に通報することとなっております。政府としては、まず、こうした情報をしっかり把握いたしまして、具体的な結果が得られるように取り組んでいくことが重要と考えております。

 いずれにいたしましても、北朝鮮が特別調査委員会を立ち上げて調査をしっかり開始するということを見きわめることなくして、制裁解除というものを行うことはないわけでございます。

丸山委員 しっかり開始したという条件の部分を、交渉事ですので全てを出せというふうに申し上げるつもりももちろんありませんし、そういうのは難しいのはわかっておりますが、一方で、国民の皆さんも非常に気になる部分でございますし、大事な部分だと思いますので、お話しできる範囲で構わないのですが、一部報道で、第一書記が直轄するような組織なり、いわゆる保衛部、秘密警察とか、そういった方々が入ることが条件の一つだという一部報道が既にあるんですけれども、これに関して政府としてどのようにお答えになるのかということをもう一度お伺いします。

古屋国務大臣 私どもも報道はつぶさに見ておりますが、いろいろ報道は出ていますね。向こうは、保衛部であるとか、組織指導部とか統一戦線部とか、いろいろありますよ。我々も北朝鮮の情報はあらゆるチャネルを通じてできるだけ入手していますから、インテリジェンスですからそれを具体的に申し上げるわけにはいきませんけれども、しかし、そういった情報をしっかり見きわめながら、どういう回答が向こうから来るか、それをしっかり照合して、総合的に判断して次の対応を決めていくというのが政府の基本スタンスであります。

 これは、過去のいろいろな経験則からしっかり私どもも教訓として学ばせていただいておりますので、そういったものも十二分に踏まえて、総合的に、そしてなおかつ、政府全体で連携をしながら判断をしていくということになります。

丸山委員 いずれにしましても、もう数日、近々にどういった内容かが出てくるでしょうし、これも、恐らく政府側としても、こういったことであるから制裁の解除をするということはもちろんお示しになることだと思いますので、これはまた出てきてからお話しすることになると思います。そういった意味で、今の段階では、しっかりとお願いしますとしか申し上げられないんですけれども、我々野党としても、できる限り足を引っ張らないというのは大事なことでございます。オール日本でやるためにしっかりとやっていただきますようにお願いします。

 そして、この制裁の解除の条件についてもう少し詳しくお伺いしたいんですけれども、十三日に参院の方の拉致特で伊原局長が人的往来の件で御発言された内容で、人的往来は今回の規制解除によって十八年七月以前の方針に戻るという御発言をされております。

 事実上、北朝鮮と日本の人的往来が、自由に行き来できるようになるんじゃないかという危惧の声もありますけれども、一方で、適切な入国の審査をされていくものだというふうに信じておりますけれども、一体これは、どのような審査基準、十八年七月以前のものといったらどういったものになるのか、また、例えばスパイみたいな諜報機関の関係者が多分に入ってくるんじゃないかという国民の皆さんの危惧もあると思うんですけれども、こういった不適切な人物が排除できるのかどうかも含めまして、御回答いただければと思います。

伊原政府参考人 まさに今委員御指摘のとおり、二〇〇六年七月五日以前の方針に戻るということは、北朝鮮から自由に人が入ってくるということでは決してございません。それ以前からやっていたような個別具体的な適切な審査をするということでございますし、また、当然、日本としては、国連の安保理決議に基づいて日本として実施している対北朝鮮措置に影響はございませんので、これに基づく人の規制についてはまたございます。したがいまして、そういったことはきちんとやっていくという前提の話でございます。

丸山委員 ありがとうございます。

 また少し細かいところになるんですが、時間がないので次の話にさせていただきたいんですけれども、今回の協議以降において、日本側から、いわゆる特定失踪者とされる方々の名簿も含めて、北朝鮮側にこちら側から名簿を提出したという一部報道を聞いておるんですが、このあたりは事実かどうかを、事務方で構いませんので、お答えいただければと思います。

岸副大臣 今次の協議につきましては、双方が関心を有する幅広い諸懸案について集中的に真剣かつ真摯な議論を行う、そして、北朝鮮は拉致被害者や拉致の可能性が排除できない人を含む全ての日本人に関する包括的かつ全面的な調査を実施することに合意した、こういうことでございます。

 この具体的な内容、細かい部分につきましては、外交上のやりとりでございますので、お答えすることは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、今述べたとおりでございます。(丸山委員「出したかどうか」と呼ぶ)

 リストは出しておりません。

伊原政府参考人 過去の日朝の協議において、日本側として、拉致された可能性を排除できない人にかかわる関連情報を提供して調査を求めてきたことはございますが、今副大臣が申し上げたとおり、今回の日朝のストックホルムでの合意に基づいてそういったリストを提供したということはまだございません。

丸山委員 もう時間がないので次にかわりますけれども、実は、菅官房長官が八日のフジテレビの番組で、日本側から特定失踪者の名簿を含め外交ルートを通じて北朝鮮に提出したとおっしゃっているんですけれども、これは違うんでしょうか。

伊原政府参考人 官房長官がおっしゃっているのは、まさに今私が申し上げた、過去、日本がそういった情報を提供し、調査を求めてきているということを意味されているんだろうと思います。

丸山委員 わかりました。今回はないということでございますね。了解いたしました。

 時間が来ましたので、以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。

山本委員長 次に、田沼隆志君。

田沼委員 日本維新の会の田沼隆志でございます。引き続き、拉致問題特別委員会での質問をさせていただきます。

 ちょっと角度は変わりまして、朝鮮学校への補助のあり方についてお尋ねしたいと思います。

 上野政務官、ありがとうございます。よろしくお願いします。

 皆さんのお手元にも今資料が行っていると思うんですけれども、私、千葉市議会議員出身で、千葉市のことをずっとやっていたんですが、皆さんのお手元の資料でも、四月に、産経新聞の報道で、「千葉市、朝鮮学校に補助金 五十万円 「学芸会は地域行事」」ということで、一度これは決まったんですよ、補助金を出すということが。

 記事を見ていただければわかりますけれども、ほとんどほかはやっていないんですね。千葉県内で朝鮮学校は千葉市だけです。ほかの十九自治体はみんなやめたんですけれども、千葉市だけがやるということになって、非常にクローズアップされた。

 五月九日の当拉致問題特別委員会で、青柳委員が、私のことも引用していただいて、こういうことが起きているということを御報告しましたけれども、その後、裏なんですけれども、五月二十日に、やはり千葉市はやめたんです。

 これは、真ん中あたりにあるんですけれども、「市が学校関係者から話を聴くなどして行事の内容を精査したところ、補助金の支給要件である「地域住民への行事の周知」が不十分だったと結論づけた。」とあるんですね。それでやめたんですけれども、実態は、私の同じ党の議員に聞いたら、三百人ぐらい来るホールで七、八割、二百人以上いたんだけれども、そのうち五人しか日本人がいなかった、あとはみんな、父兄とか、朝鮮人、朝鮮関係の方だった。だから、当然これは地域住民に全然周知できていなかったし、実際、全然いなかったわけですね。これが危なく通るところだったんですよ。

 やはり、国交正常化していない国で、完全に民族教育をしていますし、我々はそこに対して教育的な内容に介入できない。そこに公的な補助金を出すというのが、今、自治体任せなんですね。千葉市はしようとしてしまったわけですけれども、これは余りにお任せ過ぎじゃないか。今、各自治体で基準がないわけですよ、お任せですから。というのは、余りに無責任というか、やはり基準が必要じゃないかと非常に思うんです。

 五月九日の青柳委員の古屋大臣に対しての質問のときは、自治体のことはコメントできませんということでしたが、ただ一方で、同時に大臣が言われたのは、国の方では、高等学校等就学支援金制度では朝鮮学校は外している、文科省が既に不指定を決定しているという御答弁をいただいていました。だから、国はちゃんとやっていますと聞こえるんですね。国はちゃんとやっているけれども、地方は御自由にというふうになっているように聞こえるんです。これはやはりちょっとおかしいんじゃないかとどうしても思うんです。

 やはり国として、これは半分は外交の問題もあるわけですから、文科省としてきちんと基準をつくる、そこまで具体的じゃなくてもいいですが、今の自治体任せで基準がないということに対してどのようにお考えになられているか、お尋ねします。

上野大臣政務官 先生の御質問にお答えします。

 質問の中にもございましたように、朝鮮学校等の外国人学校に対する助成については、各地方自治体の判断と責任において現在実施しているものであって、財政上の支援を行うかどうかについては、各地方自治体が判断すべき事柄であると考えます。

 しかしながら、なお、国としては、先生の御質問等にもございましたが、高校の授業料無償化に係る朝鮮学校の取り扱いについては、朝鮮総連と密接な関係にあり、教育内容、人事、財政にその影響が及んでいることなどから、法令に基づく学校の適正な運営という指定基準、規程第十三条に適合すると認めるに至らなかったことと、省令改正により指定の根拠となる規定を削除したことの理由から、平成二十五年二月二十日付で不指定処分を行っております。

 よって、現在、国の支援は一切ございませんが、地方においては、今までの朝鮮学校のある地域との交流等によっては、その後も支援を続けるという自治体が出てきているのではないかと判断しているところでございます。

田沼委員 いや、内容はわかりますけれども、それが妥当でしょうかという質問ですよ。

 地域との交流をしている自治体はあると言うけれども、私の古巣なのであれですけれども、千葉市はちゃんとチェックしていなかったわけです。だから、そういうおそれがあるかもしれない。全国的にもまた基準がないわけですよ。

 それに対して、今はやはり、国はちゃんとやっていますという御答弁ですよ。だけれども、自治体は自由にというのは、国民的に納得がいきますかね。私は、どうも納得がいかないと思います。やはりオール・ジャパンというのは、それこそ青柳委員も言われていましたけれども、与野党だけじゃなくて、国と地方自治体合わせてオール・ジャパンなんじゃないか。絶対そうだと思うんですよ。

 と思うと、やはり文科省さんは、地方自治体の教育委員会も独立だとか、通知できないとかいろいろよく言われるんですけれども、でも、一方で文科省の影響力というのは物すごくあるんですから。私も文科畑が長いから、御存じだと思いますけれども。

 何かしらの方針を出すべきと思いますけれども、御答弁いただけますか。

上野大臣政務官 大変苦しいところでございますが、文科省といたしましては、現状、これ以上お答えすることはできないので、申しわけございません。

田沼委員 せめて、余りふさわしくないとか、一言言っていただければいいんですけれども。

 例えば、これは古屋大臣ですけれども、それこそこの間の五月九日に、大臣は、各地の朝鮮学校で拉致問題も正しく伝えられることが極めて大切というふうに言われていたと思うんです。これはやっていますか。そこまでちゃんと文科省さんは管理しているんでしょうか。拉致問題を朝鮮学校で教えるように、そういう方向で進めていただきたいということで、文部大臣とも連携していきたいというふうに古屋大臣も言われていたんですけれども、文科省さん、何かしましたか、その後。

 質問は二つね。だから、今、各地の朝鮮学校で拉致問題を教えているのか、それから、それを目指して何かをしているのか。お答えください。

上野大臣政務官 済みません、そこまで通告を受けていなかったんですが、朝鮮学校の場合は外国人学校でありまして、今の状態では文科省がそこまで立ち入ることはできないというお答えしかできません。

田沼委員 そういう建前論はわかりますけれども、でも、連携して何か目指したいというふうに古屋大臣も言われているわけですから、ぜひ文科省さんとしても何か動きを考えていただきたい。では、これは要請でいいですけれども、ぜひ注目させていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 余り納得できませんが、時間もかかるので、ちょっと次の方に行かせていただきたいと思います。

 きょうは、みんなの党の中島委員もちょっと私にお時間をいただけるというふうに聞いていますので、委員長、二十分を少しオーバーするかもしれませんが、よろしくお願いします。

 順番をもう一つ変えて、曽我ひとみさんとの面談で、いい意味じゃないんですけれども、私が非常に感動したことがございまして、質問したいと思います。

 前々回のこの拉致問題の委員会の視察で新潟の佐渡に行きましたときに、曽我さんとも佐渡でお会いしました。やはり非常に感激というか、いい意味じゃないんですけれども、感銘を受けたのは、あちらにおられるときの言葉で、我慢していればいつかは帰れるだろう、諦めなければいつかはいいことがある、まずは生きないとと、とにかく静かにしていたと。本当に命の危険と隣り合わせのまま長い間おられたわけですね。だから、まだたくさんおられるであろう拉致被害者の皆さんに希望を届けることが物すごく大事だなと、私は曽我さんとのやりとりの中で感じたんです。

 そうしたときに、短波放送、これは古屋大臣の管轄かもしれませんが、政府として「ふるさとの風」をやっている、それから特定失踪者問題調査会でこの「しおかぜ」ですね、多くの皆さんはもう御存じと思いますけれども、「しおかぜ」もやられているということで、これで、調査会の方が言われていたり、あと政府の方でも、「ふるさとの風」もそうなんですけれども、これは妨害電波が今まで出ていたんですよね。なんですけれども、去年の十二月ころからおさまってきているんですよ。

 いろいろな情報をつかまえては北朝鮮の中の動向を分析しなければいけないわけですけれども、この「ふるさとの風」それから「しおかぜ」に対する妨害電波がとまっているということは、何かしらのサインであるのじゃないかなという気もするわけでありますけれども、政府として、言える範囲で結構ですが、これについてどういうふうに捉えているか、あるいは、なぜこの妨害電波がとまったのかの原因を確認する方法はあるのかどうか、お答えいただければと思います。

古屋国務大臣 委員御指摘のように、短波放送「しおかぜ」、あるいは「ふるさとの風」を含めて、これは非常に効果があるというふうに私も認識をいたしております。

 実は、きのうの朝八時に、私、ボイス・オブ・アメリカに出て、これは朝鮮半島向けですから、北朝鮮にいる拉致被害者の皆さんのことを想定しながらインタビューに答えましたから、もしかしたら聞いているかもしれないですよね。そういう意味では、効果があると思っています。だからこそ、いろいろ妨害電波を出していたんでしょうね。

 ただ、最近、とまったりとか、妨害電波が不規則になったりしているというふうに聞いております。それは、何でそうなのかということは、はっきりとした原因はここで確定することはできません。政府が予断を持ってこうだということを言うことは控えさせていただきたいと思いますけれども、政府は、あらゆる情報をしっかり適切に、的確に入手するよう、今も全力で取り組んでおりますし、また、短波放送というのは非常に効果がありますので、その充実のあり方についても、政府としてもしっかり検討していきたいというふうに思っています。

田沼委員 この時期が張成沢さんの処刑の時期と重なっているということで、やはり体制の中の何かしらの示唆を示しているんじゃないかという気もしますので、これ以上はちょっと難しい話かとは思いますが、大臣も重要なものだというふうにお答えいただきましたので、ぜひ分析を続けていただければと思います。

 次に、本題といいますか、先ほど来多くの委員さんからも質問のある日朝合意についてなんですが、私の知り合いの方で、日本人ですけれども、北朝鮮に非常に詳しい、何度か行かれている方がおられまして、その方にお話を聞きました。その方の解釈でしかないですけれども、北がこの日朝合意をどう見ているかということで言われていたのが、やはり全面解決の定義なんですね。

 先ほど、丸山委員だったか誰かが質問して、大臣も、全面解決の定義とは何だと言ったら、これは全員の引き渡しだとお答えいただきましたが、その全員とは誰だと。これは、政府認定の拉致被害者以外も当然含むんだと思うんですが、では、この範囲がどこまで大きいのかというのを北は非常に気にしている。要は、どこまでやればいいんだというのが見えないと、基準がない中で日本側に粘られるんじゃないかという懸念も持っているんだと思います、わかりませんけれども。

 ですので、この全面解決の定義というのをもう少し詳しく、これはどちらかというと古屋大臣よりは外務省さん、岸副大臣にお聞きした方がいいのかもしれませんけれども、この全面解決の定義についてもう少し踏み込んでお答えいただければと思います。

岸副大臣 全面解決については、先ほど大臣からもお話がございましたように、全員の帰国、事件の全容の解明、そして実行犯の引き渡し、こういうことでございますけれども、この全員の帰国についての全員がどこまでの範囲だ、こういうことだと思います。

 政府の認定した被害者あるいは特定失踪者、いろいろな捉え方があるとは思いますけれども、これについてはいろいろな考えもあるとは思います。ただ、我々も、北朝鮮が拉致していない人まで返せと言っているわけでは当然ないわけです。今後の協議を通じてその辺のところについても議論しながら、北朝鮮が実際に拉致した人間全員の帰国を果たす、こういうことが最終的な目標でございます。

田沼委員 わかったようなわからないような答弁とも感じるんですが、大臣、もしお答えいただけるならお願いします。

古屋国務大臣 基本的に、岸副大臣が答弁した内容が政府のスタンス、すなわち、政府の認定云々にかかわらず全ての拉致被害者ということなので。

 では、全ての被害者は何人かと言われますと、政府認定の十七人と、警察庁が拉致の疑いを排除できない事案が八百六十人いるんですよ。これですね、最大限八百六十人。

 現に今、DNAの資料を御家族から提供されている方が六百十五人でありまして、これはやはり我々にとっても重要な情報、データベースでありますので、御家族の皆さんに警察からも改めてお願いをして、八百六十人全員のDNAの資料が入手できるよう、今再度アプローチしています。もちろん、家族の御心情とかプライバシーの問題はいろいろありますけれども。

 一方では、ホームページに掲載しているのが四百十数人ですから、DNAは出すけれどもホームページの掲載は勘弁してくださいという御家族もいらっしゃるんですね。それは家族の状況をちゃんと配慮して対応していますよ。

 実は、私が警察庁に指示をして特別指導班をつくったのが昨年の二月か三月だったと思いますけれども、それまでDNAの資料を提供していた家族というのはたった六十なんですよ。だから、この一年余りの間に十倍になったということなんですね。

 これは、やはり我々としては、そういうデータベースをしっかり集めているということですから、ある意味でボールは北朝鮮にあるんですね。だから、何人かと今委員から質問されれば、最大限で八百六十プラス十七、こういうことになります。

田沼委員 明快な答弁をありがとうございます。

 ただ、今度は外務省さんなんですけれども、もちろん、この特定失踪者八百六十人、拉致被害者はもちろん、全員帰還の引き渡しを迫るべきなんですが、北朝鮮もそうなんでしょうか。北朝鮮の方では、特定失踪者、完全に八百六十人全員が含まれるという認識でいるんでしょうか。その辺、交渉の中での感触というか、何か発言もあったならそれも含めて、この合意文書だと特定失踪者八百六十人を完全に含んでいるというのはちょっとはっきりしません。なので、事務方の方かあるいは副大臣、どちらでも結構ですが、お答えいただければ。

伊原政府参考人 これまでも日朝の協議の中で、私ども、政府認定の拉致被害者を最優先にしながら、それ以外の行方不明者についても問題を提起してきております。

 今回の合意文書にございます「拉致被害者及び行方不明者」というときの行方不明者の中に、これまで日本側が協議の中で提起してきておりますような特定失踪者等の拉致の疑いのある方々が含まれているということは、当然、北朝鮮も認識をしているというふうに思っております。

田沼委員 規模が八百六十という巨大な規模であるかどうかというのが重要と思っていまして、というのは、この特別調査委員会を、もうすぐですか、今週かとか言われていますけれども、立ち上げるというときに、その陣容が、やはり対象が多いならふやさないといけない。解釈によっては、先ほど、原口委員かな、一秒で帰せるという意見もあったりするわけですけれども、一方で、本当に調査が大変ならば、特に特定失踪者を考えると、相当の規模を求めていかないといけないことになると思います。その辺でだんだん北朝鮮側の認識が見えてくるのかなと。あるいは、こちらから求めていかないといけないんじゃないかというふうにも思うわけですが、含んでいるという局長の御答弁でよろしいですね。わかりました。では、質問しません。

 あと、先ほど丸山委員が聞いていましたけれども、菅官房長官が言っていた、特定失踪者リストを北朝鮮に提示したという六月八日のフジテレビの番組の件は、これは昔のことということですね。わかりました。

 では、この八百六十人全員も対象にしてくまなく調査をしてもらわなければ日本としては困るということをぜひしっかりと要求してもらいたいと思います。

 もう時間なんですけれども、もうちょっともらえるということで、もうちょっとだけ。

 この特別調査委員会のことで、合意文書だと、北朝鮮側の第三項目、「特別の権限が付与された特別調査委員会を立ち上げることとした。」とあるんですが、まず確認したいのは、日本側の調査団を送るのかどうかです。例えば、それこそDNA鑑定技術を持った人とか外務省さんとかですね。まずそれをお答えいただければ。

伊原政府参考人 今回、これは北朝鮮が調査をするということが重要ですから、まず北朝鮮が調査をし、その調査がある程度進捗した時点で、日本側としてそういう適切な時期を判断して、北朝鮮がとるべき措置の第六に書いておりますように、「調査の進捗に合わせ、日本側の提起に対し、それを確認できるよう、日本側関係者による北朝鮮滞在、関係者との面談、関係場所の訪問を実現させ、関連資料を日本側と共有し、適切な措置を取る」、こういうことを北朝鮮に求めていきたいというふうに思っております。

田沼委員 これは最低限必要な合意だったと思いますが、ただ、今までのことを考えると、たとえ日本側の調査団、名前は何でもいいですが、調査団がいたとしても、本当に自由に調査できるのかなという懸念もあるわけです。もう完全に管理下に置かれているというふうな見解もあろうと思います。

 なので、これは、ここに合意していることを実行していくにおいて、自由に調査できるようなさらなる要求というかさらなる担保というのが今後どうしても必要になってくると思うんですけれども、それについての御見解。

伊原政府参考人 まさに、今委員御指摘の諸点というのは今後の課題であるというふうに考えております。

田沼委員 もう一つ、我が党でもこの合意文書の内容についていろいろな見解をまとめたんですけれども、この特別調査委員会、これは責任者が誰なのかというのがまだわからないんですね。それが誰なのか、かつ、その人が金正恩第一書記の直系であるかというか、パイプラインがどこまで強いかということ、それから、もし発見したときに帰国の方向でということですけれども、実際に帰国の判断をする権限があるのかどうか、そういったことが、さらに詰めなければいけない非常に重要な項目と思うんですけれども、二点だけ、責任者が誰なのか、それはまだわからないかな。まだわからないかもしれませんが……(古屋国務大臣「それはわからないよ」と呼ぶ)そうですね。まだわからないか。では、ぜひ求めてください。

 では、これは質問じゃなくて要望にしますけれども、そのときに、解決につながる責任者じゃないと認めないということを、交渉の場の前でもいいと思いますけれども、きちんと伝えていただきたいです。そうでなければいけないと思いますので、よろしくお願いします。

 なぜそこまで言うかというと、この文言の中で、今回の合意の中の前文のところに「全ての日本人に関する調査を包括的かつ全面的に実施し、最終的に、」とあるんですけれども、私、この「最終的に、」が非常に気になるところでありまして、これは、やっておしまいよという空気を感じるんですね、文面だけ見ると。だから、これだけ調査はちゃんとやって、あとはもうやりませんというふうに北は考えているんじゃないかと感じてなりません。

 ですので、大臣も言われるように、総理も言われていますけれども、これからが本当に勝負、継続が前提になってくるかと思います。例えば、再調査の結果、生存者は三人でしたと出てきて、だけれども、どこまできちんとやったんだ、もっと調べる必要があると我々が言う、それで、さらに調べましたらまた何人か生存していましたとか、そういう行ったり来たりの可能性もあると思っています。そうしないといけないとも思っています。ですので、継続を非常に重視していかなければいけないと思っておりまして、そういったことについての外務省側の見解あるいは手だてというのは何かあるのかをお聞きしたいんです。

岸副大臣 先ほど責任者は誰なのかというお話がありましたけれども、まず、この特別調査委員会がきちんと実効性のあるものかどうか、これはどういう組織で、今あった、人事がどうなるか、権限がどうなるか、そういったことが向こうから提示をされ、それについてきっちり我が方でも検証し、それが果たして実効性のあるものかどうかというものは確かめないといけない、全ての始まりだというふうに思っておりますから、そこを確かめていかなければいけないと思います。その上でこの調査が始まってくるんだ、こういうふうに思っております。

 まずはこうした情報をしっかり把握することが重要でございますから、具体的な結果が得られるように取り組んでまいりたいというふうに思っておるところでございます。

田沼委員 とにかく不退転の決意ということで理解してよろしいでしょうかね。外交担当の皆さんも、先ほど古屋大臣も言われていましたけれども、非常に強硬な意見があるということを前提にしていただきたいというふうに思いますので、中途半端なことで最終的な解決というのは絶対ないよということをお願いしたいと思うんです。

 あと一点だけ。

 先ほど朝鮮総連の件で、これも丸山さんだったかな、質問がありましたけれども、合意の文書で言うと日本側の第五のところですね。「在日朝鮮人の地位に関する問題については、日朝平壌宣言に則って、誠実に協議する」。これは、そもそもこの「在日朝鮮人の地位に関する問題」というのが何を意味するかがよくわからないです。まさか朝鮮総連は含まないと、ここからでは読み取れませんけれども、はっきり言って、北朝鮮がもし求めても、朝鮮総連に対する日本側からの支援はないということを明確にすべきじゃないでしょうか。どうも、いろいろ巷間耳にするに、宋日昊さんも、当然含むような意見もあるようですから、いや、ないんだとはっきり言うべきじゃないでしょうかね。これはどなたか御答弁を。

古屋国務大臣 朝鮮総連のビルの問題は、ストックホルムでも話題に上りましたけれども、我が国のスタンス、三権分立の中で、今司法の立場にあるものを我々がいろいろ言うことはできません、司法は裁判所の判断に任せるんです、これが日本のルールだということを懇々と説明していますから、それに尽きるというふうに思います。

 それからもう一つ、いわゆる北朝鮮の地位の問題に関して、実は私、五月二十二日に、日朝首脳会談十周年に際しての古屋圭司拉致問題担当大臣談話というのを出しているんです。これは韓国語と英語と日本語で出していますけれども、ここの一番最後に、私は、いま一度、日朝平壌宣言の精神に立ち返り、拉致被害者全員の帰還を実現するという正しい判断を下して、問題解決に向けた真剣かつ具体的な話し合いに応じるよう強く求める、そのようにすることで、北朝鮮が尊厳を持って我が国を含めた世界各国との融和を達成する端緒とすることができるのです、こういうことを言っている。これがまさしくその部分にも含まれる、そういう我々の北朝鮮に対するメッセージであるというふうに認識しております。

田沼委員 わかりました。朝鮮総連に関しても不退転の決意でぜひ。

 時間ですので、そろそろ終わりにします。

 うちの党は、とにかく強硬な意見が多いです。私は今度、石原新党になりますけれども、みんなそうです。それで、この問題は一秒で決断できるんだから、まず被害者の状況を報告してから交渉を始めろという意見もあるぐらいなんです。なので、少なくとも国会内に強硬な意見があるということをぜひカードに使っていただいて、これからも金正恩第一書記の決断を促すような交渉をぜひしていっていただければなというふうに思います。

 以上で終わります。ありがとうございました。

山本委員長 次に、中島克仁君。

中島委員 みんなの党の中島克仁です。私もお時間をいただきまして、ありがとうございます。

 言うまでもなく、拉致問題は、党派を超えて、超党派で取り組まなければいけない。私は、実はきのうも視察があって、先週やっておりましたので、重複するところがたくさんありまして、田沼委員の方がかぶっていないところがあったので、私の分もやっていただいた、そのように御理解をしていただければと。そういう意味でも、党派を超えて全党で取り組まなければいけない、そのしるしと言ってもいいんじゃないかと。まあ、そんなことはどうでもいいんですが。

 私も、六月の二日、大阪と兵庫に視察に行かせていただきました。拉致の可能性が排除できない事案について、それぞれの、府警、県警の取り組み、警察庁の取り組み等を御説明いただき、また有本恵子さんの御両親、御夫妻のお話を聞いて、短い時間ではあったんですが、大変参考になりました。改めて拉致問題の早期全面解決の必要性を強く感じたところであります。

 先ほどから重複するところもあるんですが、ちょっと確認として再度質問させていただきたいと思うんです。

 政府が認定している拉致被害者十七人、一方で、警察庁が拉致の可能性を排除できないとして調べている方々は八百六十人とされております。DNA鑑定のための資料採取、警察庁が各都道府県に指示をして各県警が資料採取を行っている状況だということでございまして、先ほども答弁がございました、DNA鑑定のための資料採取は今、六百十五人、全体の七割ちょっとということになっておると思います。一方で、家族が同意されない場合も一定程度ある、三割近くということになります。

 同意されていない理由については多々あるということで先ほども御説明いただいたんですが、私としては、同意されない理由には山本美保さんのDNA鑑定偽装疑惑が多少なりとも影響しているのではないか、そのように思うわけですが、その辺についての御見解をまずお尋ねしたいと思います。

高橋政府参考人 お答えいたします。

 資料の採取を拒否される理由としましては、例えば、行方不明となった家族のことを思い出してしまうのであえて触れないでほしいというような御意見とか、時間がたっているのでそっとしておいてほしいというふうにおっしゃられる御家族もありまして、さまざまな理由、事情があるというふうに理解しております。

 それから、御指摘の山本美保さんに係るDNA型鑑定についてでありますけれども、これは、刑事訴訟法等の法令に従いまして、対照資料としての血液採取の必要性を提出者に説明するなどした上で行われたものであり、鑑定方法や関連データ、またそれに対する評価も含めて、信頼性の極めて高いものというふうに受けとめております。

中島委員 今御説明もあったように、思い出してしまう、そういうところもないとは言えないとは思うんですが、やはり、提出した資料が知らないところでどう利用されるのかわからない、そのように疑念を抱いておられる方は、実は、声には上がらないかもしれないけれども、いるのではないか、そのように私は思うわけです。

 もちろん、DNA鑑定、私も医者でございます、よくわかります。古屋大臣、やはり政府の拉致認定に役立つかもしれない、採取の事実を公表することで、拉致問題に最重要課題として取り組んでいるというメッセージを国内外や北朝鮮に発信できる、そういう意味合いが強いということであれば、そのためにも、山本美保さんのDNA鑑定の公開、再捜査の必要性はやはりあると思うわけですが、御見解をいただきたいと思います。

古屋国務大臣 山本美保さんの事案については、今、警備局長が具体的事案として答弁をさせていただきましたけれども、やはり御家族の皆さんが、森本さんがどうしても御納得いただいていないという実情があるんですね。

 私も警察に指示しまして、もし御家族側で了承いただけるなら、再度説明に行って、それで、例えば、我々は、DNA鑑定の専門家を警察側は連れていったんですけれども、その方は警察側だから信用できないというなら、どうか、専門家に御同席いただいて再度説明をするということでもいかがでしょうかということで、今、そういうアプローチはしていると思いますよ。だから、きちっと誠心誠意その現実を伝えるようにということを私も警察に指示、督励をさせていただいております。

 いずれにしても、DNAの資料は今、六百十五人ですから、これをできるだけ集めていくということが前提で、確かに、今、山本美保さんの問題の御指摘がありましたけれども、私への報告には、拒否をされている方の理由の大宗は、やはりプライバシーの問題とか、行方不明になった、失踪した事件を余り思い起こしたくないからというような理由が大宗であるというふうに聞いておりますので、その上で、今、拉致問題がこうやって動き出したときなので、資料をしっかり入手しておくことが拉致問題解決のためにも大きなファクターになるのですということを丁寧に御家族の皆さんに説明をした上で、DNA型鑑定資料の採取を進めていければなというふうに思っております。

中島委員 では、最後にちょっと確認なんですが、これは通告していないんですが、先週金曜日の参議院の拉致特別委員会で、高橋局長は、この山本美保さんの件に関して、失踪から死亡に至る経緯が不明であることから、山梨県警としては、拉致の可能性を含めて、事件、事故などあらゆる可能性を念頭に置いて現在も捜査を継続しているというふうに御答弁なさっておられますが、今の古屋大臣の御答弁、指示をしているということも含めて、そのようなことで間違いないか、確認をさせていただきたいと思います。

高橋政府参考人 繰り返しになりますけれども、山本美保さんの事案につきましては、やはり失踪から死亡に至る経緯が現在も不明でありますことから、拉致の可能性も含めて、事件、事故等あらゆる可能性を念頭に捜査を継続しております。

中島委員 時間もございませんので次の質問ですが、またこれも少しダブるところもございますので、ダブらないようにちょっと質問させていただきたいと思います。

 北朝鮮の拉致問題の再調査、再捜査を実施するための特別調査委員会の設置についてですけれども、先ほどから各委員から御質問があったと思います。

 その特別委員会の設置に関して、設置時期はいつごろとなる見込みとしているのか、また、日本として、どのような内容の調査委員会を設置するように、何か求めていることがあるのか、具体的に要求していることをまずお聞かせいただきたいことと、報告内容について、先ほどの委員からも御質問がございましたが、日本として、やはり具体的に、これ以上だったらオーケー、これ以下だったらだめだというようなポイントを決めていらっしゃるのかどうか。もしこの場では具体的に言えなければ、ある、ないだけでも構いません。

伊原政府参考人 まず時期的な問題でございますけれども、今回の合意文書では、具体的な措置は速やかに実施するということになっておりますが、その速やかにというのは、協議の場においては、大体三週間ぐらいをめどにやろうという話をしております。

 その場合に、具体的な措置というのは、北朝鮮において特別調査委員会を立ち上げて調査を開始すること、それから、日本において三つの措置について解除することでございますが、そういった行動を起こすのに先立って、北朝鮮側からは、この特別調査委員会について、その組織、構成、そして責任者等について日本側に通報するということになっております。

 私どもとして今回非常に重視しているのは、この特別調査委員会が特別の権限を付与されたものだ、すなわち、その意味としては、全ての機関を対象とした調査を行うことのできる機関であるということでございますので、こういった組織、構成、責任者等を見て、まさにそういった任務にたえるものであるかどうか、そこのところをしっかりと見ていきたいというふうに思っております。

中島委員 先ほど、派遣する要員についても今検討中ということもありますけれども、やはりその報告の内容が全て向こう側主導になってしまわないように、先日の有本さん御夫妻も、本来であれば、再調査ではなくて、拉致の実行犯の引き渡しから入るのが望ましいと強い口調でおっしゃっておりました。

 最後のラストチャンスかもしれないということの中で、少なくとも、先ほどから各委員の方もおっしゃっておりました有本さん、横田さん初め、死亡状況を覆す内容でなければその時点で突き返す、そのぐらいの強い取り組みが必要なのではないかということはおっしゃっておりましたので、私も、ぜひ何かしらの基準の中で交渉を進めていただきたいなというふうに思います。

 最後に一点だけ。

 先週の報道だったんですが、韓国の拉致被害者家族団体の代表が、北朝鮮が三月以降、韓国人拉致被害者を対象に、北朝鮮体制の優越性を理解させる集団思想教育、俗に講習というふうに呼ばれておるそうですが、それを復活させたと述べられました。この中に日本人も含まれていたとされております。

 日本政府が認定した未帰還の被害者らが含まれているかは不明ですが、何らかの形で北朝鮮に存在する日本人の管理を当局が強めている可能性があるのではないか、この講習の実施は拉致をめぐる対日姿勢の転換と関係している可能性もあるのではないかというふうに指摘もされておりますが、この事実関係を政府としてどのように捉えているのか、お聞かせ願いたいと思います。

伊原政府参考人 北朝鮮についての情報というのは、政府の諸機関が協力して、あらゆる観点からあらゆるやり方で情報収集に努めておりますけれども、個別具体的に、個々の情報についてその真偽も含めて評価をすることはなかなか難しい、また、こういう場で詳細について述べることが適当でないこともあるということを御理解いただきたいと思います。

中島委員 以上で質問を終わります。青柳委員にバトンタッチをします。

山本委員長 次に、青柳陽一郎君。

青柳委員 結いの党の青柳陽一郎でございます。

 本日は、委員会での質疑時間を二十分いただいたんですが、四十六分まで質疑をさせていただきたいと思います。

 通告させていただきました内容は、ほとんど本日の議論と重なってしまっておりますけれども、御了承の上、御答弁をお願いしたいと思います。よろしくお願いしたいと思います。

 安倍政権の方針について、対北朝鮮の方針について、拉致問題の方針について、改めてまずは確認させていただきたいと思います。

 拉致問題は大きく動き出そうとしております。大きな関心を持って注視しているところであります。拉致被害者家族の皆様、関係者、関係団体の皆様、多くの日本国民の皆様がこの問題に大きな関心を持って、同じ気持ちで見守ってくれていると思います。

 安倍政権はこれまで北朝鮮に対して、対話と圧力でいえば圧力に重きを置いて、北朝鮮に対して強いメッセージを発信し続けてきたわけであります。拉致問題に一番熱心な方が総理大臣になり、拉致問題に一番詳しい方が拉致担当大臣になる、そしてその政権が非常に安定している。さらに、オール・ジャパンの取り組みとして、政府・与野党拉致問題対策機関連絡協議会を設置し、これまでに四回開催している。私も、力不足ではありますが、古屋大臣の御配慮で第四回目からメンバーに入れていただきまして、オール・ジャパンでの取り組みというものをまさに実感させていただくことができました。

 本日のこの国会の質疑を含めて、こうした取り組みの一つ一つが、これこそが北朝鮮への強いメッセージになるんだ、拉致問題で絶対に妥協するなという声を出し続けることが北朝鮮への圧力になるんだというのは、古屋大臣が本日の委員会でも発言されておりましたが、私もまさに同じ気持ちだと思います。これこそがメッセージになっていくと思って質問もさせていただきたいと思います。

 北朝鮮の動向についても触れておきますが、北朝鮮の動向、内政では、張成沢国防副委員長を粛清し、李秀勇元スイス大使、これは金正恩の留学時代のお目付役だそうですが、これを外務大臣に起用するなど、体制固めが進んでいるようにも受け取れると思います。また、経済の再生、あるいは核武装を中心戦略にしているということで、スキー場やプール、乗馬クラブなどを建設しているということも確認されています。

 対外関係については、南北改善を呼びかけると思えば、挑発行動に出たり、あるいは、中朝関係でいえば、トップ会談もまだ実現しておらず、具体的な進展というのは見られておりません。ロシアに接近しているという情報もあります。日朝関係は現在のとおりでありますが、ただ、これまで北朝鮮にずっと振り回され続けてきているというのは否めないと思います。

 こうして見ると、北朝鮮というのは、言うまでもありませんが、外交、内政ともに全く一貫性がないということだと思います。場当たり的な国だということだと思います。

 ただ、唯一一貫しているのは、核武装国家になるんだという、これだけは強い意思を感じるわけでございまして、この核保有ということも今後の交渉に影響するんじゃないかと思いますので、これは一点指摘しておきたいと思います。

 こういう北朝鮮という何でもありの国と交渉していくというのは大変なリスクを伴うことだと思いますが、実際にこうして事態が動いてきたわけであります。この事態が動いてきたというのは、これはやはりこれまでの制裁が相当きいているんだと思います。これまで日本がしてきている制裁に加えて、安倍内閣が取り組んできた国際的な連携、これは実際に、北朝鮮人権状況決議、これも、大臣がこれまで答弁しておりますが、相当きいているんだと私も思います。つまり、圧力それから制裁、こうした効果が明確に出てきているという状況だと思うんです。

 ですが、今回、あらゆる機会を捉えて北朝鮮と協議を行うというのは必要なことだと思うんですが、拉致問題の進展の成果、これを少し急ぐ余りに、これまでの圧力をかけ続けるという方針から、対話へ方針転換したんじゃないかといった懸念も聞かれるわけであります。

 実際、北朝鮮は経済支援を求めてきているわけですし、宋日昊北朝鮮大使は、実際インタビューで、朝鮮総連ビルについても交渉に入っているというふうに明言しているわけであります。

 政府は、これまで同様、対話と圧力の方針をきちんと堅持すべきだと私は思いますが、古屋大臣に、対北朝鮮政策、そして拉致問題、この対話と圧力の方針は変わらないんだということを改めて明言していただきたいと思います。

    〔委員長退席、中山(泰)委員長代理着席〕

古屋国務大臣 今委員が御指摘の、圧力が中心だったのがちょっと変わったんじゃないかという、いや、ちょっとそれは事実誤認だと思います。

 我々は対話と圧力と言っていますが、要するに、対話を引き出すための圧力なんです。圧力は手段なんですね。目的は対話を引き出して拉致問題を解決していくということでありまして、これはもう我々は経験則からわかっていますね。それは、日本だけではなくて、米国でもそうですね、やはり、融和策をとって成功はしなかったという歴史的事実がありますから。ですから、我々もそうでしたね、日本国内も、一時、融和策に転じたけれども、結果的に成果はなかったということでありますから。

 だから、圧力をかけることによって少しずつ小出しにしてくるというのが北朝鮮の今までのスタンスです。なおかつ、今度は、政治が安定した、それから、国際的な圧力、連携というのがもう極めて大きな効果があったというふうに私は思いますね。

 例えば、北朝鮮と国交がある国はたくさんあるんですね。そういう国も、拉致という問題を知って、北朝鮮がここまで、それも何百人単位でやっているということがわかって、この人権侵害について怒りを覚えつつ、では、国交を断絶しようかということを言明する国も出てきているんですね。これは、きいていますよ。

 ということで、今はチャンスが来たということなんですね。環境が変わった。だから、しっかりこのチャンスを捉えて、総理の決断でドアをこじあけたということなんです。

 確かに、今委員御指摘の、ちょっと制裁解除するのが早いんじゃないかという意見はたくさんあります。そういったことはもう十分に、総理御自身が一番よく認識していますよ。その一番よく認識している総理大臣が、みずからドアをこじあけようという決断をしたということはどういうことか。結局、そのチャンスを捉えて交渉していかなければ、この拉致問題は解決をしないという現実もあるということですね。

 私たちは、これから胸突き八丁の交渉が始まりますので、しっかり全ての拉致被害者を取り戻すために、あらゆる手段を尽くしていきたいというふうに思います。

青柳委員 大臣、明快な答弁、ありがとうございます。

 古屋大臣は、まさにこの問題に一番取り組んできた方ですから、そういう方針だろうと思います。外務省にも同じ方針で臨んでいただきたいと私は思っております。成果を急ぐ余りに合意したのではないということを、今、古屋大臣は明快に答弁いただきました。ありがとうございます。そして、これまでの安倍政権の、拉致問題に対する、対話と圧力の圧力をもって対話を引き出すという方針は、これも堅持していくということですから、これも答弁いただきまして、ありがとうございます。

 今の答弁の中でも触れたんですが、本日もこれまで議論がありましたが、私からももう一度伺っておきたいのは、調査を開始した段階で制裁を一部解除するという点であります。

 今大臣が御答弁いただいたように、一番拉致に厳しい安倍内閣が合意したんだから、十分わかった上での合意だということも理解しますが、改めて伺うんですが、これまでの合意と今回の合意は何が違うのか。

 私は、一番大きいのは、本日の先ほどの議論でもあったように、こんな調査委員会を設立して調査を開始するなんというのは茶番だという話もありました。北朝鮮のトップが、つまり、今でいえば金正恩の意思が確認できればすぐ解決するんだ、これも私はそう思います。

 ですから、改めて伺いますが、今回の合意、これは、金正恩の意思が何らかの形で示されたということが確認できた上で合意されたのでしょうか。一応お伺いしたいと思います。

 そしてもう一点、あわせてお伺いさせてください。

 日本側は、名簿について今後交渉するんだと思いますが、日本側から出すのではなくて、名簿については北朝鮮側から出させるべきだと私は思いますが、拉致被害者あるいは特定失踪者、不明者の名簿を出すように北朝鮮側に求めているのか。

 この二点についてお伺いしたいと思います。

古屋国務大臣 まず、最初の質問ですけれども、今回は初めて文書で合意、それも、全ての機関を対象とした調査を行うことのできる、特別の権限を付与された委員会にするとか、従来にはない、かなり具体的な中身が盛り込まれていますね。これは、正直言って、かつてなかったこと、そういう意味では、少し前進をしつつあるという認識はできるというふうに思います。

 一方、では、金正恩第一書記の関与があったかどうか、これは、確たるところはわかりませんけれども、北朝鮮の内部の意思決定過程につながることでございますから。しかし、従来にない、具体的な中身ですよね、文書にしたということ、それから、日本が発表する時期とほぼ同時期に北朝鮮でも発表している、こういうことですよね。そこまでやるということは、やはり相当高いレベルの意思が働かなければあの国はそういうことをしませんので、私たちはそういう認識を持っています。

 ただ、こういう発表をしたからといって、いよいよこれが、まさしくスタートラインなんですよ、本当の解決のためのスタートライン。何度も言うように、胸突き八丁の協議、徹底して頑張ってまいりたいと思います。

青柳委員 ありがとうございます。

 あわせて、二点お伺いします。

 まず一点目は、時間の問題ですね。きょう何度も議論がありましたけれども、調査委員会立ち上げまでに三週間、報告書が出るまでに、官房長官によると、一年程度かかるという報道も出ています。

 北朝鮮の専門家の多くは、北朝鮮は拉致被害者の状況を全て把握している、どこに誰が住んでいるかわかっているはずだというのが定説でありまして、だとすれば、そもそも調査委員会立ち上げまでに三週間かかるのもかかり過ぎ、報告書が出てくるのも一年の猶予を見ているというのも、私はちょっととり過ぎているんじゃないかと思います。それが一点ですね。時間がなぜそれだけかかるのかということについての大臣の見解が一点。

 それからもう一つは、調査委員会自体ですね。間もなく立ち上がると思いますが、この調査委員会自体の評価を誰がどのように、これは本当に実効性のある調査委員会なのかどうかというのをどうやって判断されるのか、そして、調査委員会が出してきた報告書を北朝鮮に行って確認すると言っているんですが、誰がどうやってその報告書を確認するのかという点について、大臣、教えていただけますでしょうか。

古屋国務大臣 その前に、先ほどもう一問ありましたよね、人数の話。

 これはもう、我々は、政府認定十七人、拉致の疑いを排除できない事案八百六十ですから、ボールは北朝鮮にありますから、我々がこうですとリストを出すのではなくて、やはり北朝鮮がその八百六十、ボールが向こうにあるのに対してどういう対応をしていくかということを、まずしっかり動きを注視していくということだというふうに思います。

 その上で、今の質問は、三週間もかかって、かかり過ぎじゃないか。常識的に言うと、そうなんですよ、相手が普通の相手なら。やはり普通の相手ではないということは、もう青柳委員も、今度の政府・与野党拉致問題協議会に入っていただいて、よくわかっていると思いますね。だから、三週間という一定の期限を設けたわけです。

 今後、その調査委員会が立ち上がったときには、官房長官も言っているように、だらだらするということは許されません。一年という表現をしましたけれども、それは最高にかかっても一年以内でしょうという趣旨であって、だらだらは許されない、速やかにやるということが日本の政府の意思であります。

 どういったメンバーが来たら、どうやってそれを判定するのかということですけれども、我々は独自にいろいろなチャネルを通じて情報は入手しています。組織、人員、規模等々がどういったものかをよく見きわめた上で、次の交渉なり折衝が始まっていくということであります。

青柳委員 ありがとうございます。

 最後に一問お伺いさせてください。

 先日、外務委員会でも質問させていただいたんですが、北朝鮮で有事が発生し、北朝鮮の体制が崩壊しました、その状況の中で、日本人の拉致被害者あるいは特定失踪者が日本に対して救出を求めてきました、日本政府は自衛隊を派遣してこの拉致被害者を救出できるかという問いに対して、外務省は救出できないというのが答弁でした。

 今政府で集団的自衛権の議論が盛んに行われておりまして、具体的な十五事例というのが示されています。この十五事例の中に今私が申し上げた事例は入っておりません。しかし、政府で示されている十五事例、本当にこんなことが起こるのかという事例も含まれています。しかし、今私が申し上げた事例は、一年以内に起こる可能性も十分あり得るだろうという事例だと思います。

 この事例に対して、古屋大臣、ぜひ御検討いただく、あるいは、法律が間に合わないのであれば特措法でもつくって、まさに国家の犯罪によって拉致された日本人がその有事の際に救出できないということ自体、私は法の穴があるんじゃないかと思っておりますので、大臣、最後に本件についてのコメントがあれば、ぜひお聞かせいただきたいと思います。

古屋国務大臣 この件に関しては、総理も予算委員会でたしか三月だったか答弁していますよね。自衛隊法八十四条の三を引用していますね。やはり、そういったいろいろ混乱のときは、相手側の同意を得ることが前提になるので、もう現実には拉致被害者を自衛隊によって救出することはなかなか厳しい、こういうことですね。

 そこで、過日開催されました政府・与野党連絡協議会、このときにも、既に去年からこの委員会において、それぞれの政党で、そういった場合に何がやれるのかということを各政党で持ち寄って議論してほしいというのが総理の指示でしたよね。前回、六月十二日にやったときも、みんなの党から提案もございましたよね。私も、山谷委員、自民党を代表して出席をしている委員に、自民党にもそういった案があるというふうに仄聞をしておりますので、しっかりすり合わせをして、この政府・与野党協議会の中でまず議論していただけないかということを、あの場で直接皆さんに要請をさせていただきました。

 ぜひ、そういった場で、何が一体可能なのかどうかというような議論を進めていっていただければというふうに思います。

青柳委員 ありがとうございました。

 質問を終わります。

中山(泰)委員長代理 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 まず、外務省岸副大臣に伺います。

 先般の日朝政府間協議の結果、北朝鮮が日本人拉致被害者らに関して包括的で全面的な調査をし、生存者発見の場合は帰国させる方向で日本側と協議する、日本は調査開始が確認されれば北朝鮮への制裁措置を一部解除する等を柱とした合意がなされました。

 我が党は、これが拉致問題などを解決する上で重要な前進の一歩だと考えております。北朝鮮が合意を確実に実行するように強く求めるとともに、日朝双方の行動によって、拉致被害者の帰国実現を初め日朝平壌宣言で合意された諸懸案が前進することを願うものであります。

 そこで、副大臣に、今回の協議の結果について、改めて所見を端的に伺いたいと思います。

岸副大臣 お答えを申し上げます。

 今般の日朝政府間協議の結果、北朝鮮側は、拉致被害者及び拉致の疑いが排除されない行方不明者の方々を含む全ての日本人に関する包括的かつ全面的な調査を実施することに合意をいたしました。

 また、北朝鮮は、包括的調査を行うための、全ての機関を対象とした調査を行うことのできる、特別の権限を有する特別調査委員会を立ち上げることや、調査の過程において日本人の生存者が発見される場合には、その状況を日本側に伝え、帰国をさせる方向で去就の問題に関して協議をし、必要な措置をとる、こういうことで合意をしたわけでございます。

 今委員もおっしゃったように、これは大変重要なことでございます。日朝間の諸懸案の解決に向けた重要な一歩だ、このように考えておるわけでございます。

 北朝鮮側による迅速な包括的調査が行われ、拉致被害者の帰国を含めて、拉致問題を含む全ての日本人に関する問題の早期解決に向けて、具体的な結果が得られるべく、今後とも努力をしてまいりたいと思います。

笠井委員 伊原局長に伺いますが、今回の合意では、冒頭に、双方は、日朝平壌宣言にのっとって、不幸な過去を清算し、懸案事項を解決し、国交正常化を実現することが確認をされております。

 日朝双方が平壌宣言にのっとって諸懸案を解決することが再確認された意義は大きいと考えるんですが、いかがでしょうか。

伊原政府参考人 日本政府の北朝鮮に対する一貫した方針は、日朝平壌宣言にのっとって、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、国交正常化を図るべく努力をするということでございますので、今委員から御指摘があったとおり、今回、合意文書の冒頭でその点を日朝双方により確認できたことは意義があるというふうに考えております。

笠井委員 今局長からだったんですが、岸副大臣に伺いますが、北朝鮮側に今回の合意事項を確実に実行させていく、その上でも、拉致問題とあわせて、核、ミサイル、植民地支配の清算などを包括的に解決するという日朝平壌宣言の立場で進めることが鍵だと思うんですが、いかがでしょうか。

岸副大臣 今局長からも答弁があったとおりでございますけれども、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決する、そして不幸な過去を清算し、国交正常化を図る、これは、日朝平壌宣言で示されている我が方の政府の方針は一貫をしておるわけでございます。その基本的な方針にのっとって、全面的解決に向けて最大限努力をしてまいりたいと思います。

笠井委員 古屋大臣に伺います。

 北朝鮮は、二〇〇二年九月の日朝首脳会談で、日本人の拉致を認めて謝罪をし、再発の防止を約束いたしました。そして、同年十月には、日本政府が拉致被害者と認定する十七名のうち五名が帰国をするということになりました。しかし、他の被害者については、二〇〇八年八月の日朝実務者協議で全面的な調査のやり直しで合意していたんだけれども、再調査は履行されないままになっていた。

 こうした中で、今回の合意で、北朝鮮側が、従来の立場はあるものの、先ほどありました、全ての日本人に関する包括的かつ全面的な調査を約束したということについてどうごらんになっているか、改めて伺いたいと思います。

古屋国務大臣 かつて北朝鮮は、拉致問題は完全に解決済みで、においもしない、こう言っていたんですね。それが大きく変わりましたよね。従来の立場はあるものの、全ての日本人、行方不明者を含め再調査して、お互いに情報を交換して、そして、場合によっては調査団も受け入れてというような、かなり具体的な中身になったんですね。これは私は変化だというふうに認識をいたしております。

 しかし、始まったところですから、しっかり胸突き八丁の交渉に臨んでいく。政府全体でしっかり連携をとって、全ての拉致被害者を取り戻すために全力を尽くします。これに尽きます。

笠井委員 伊原局長に伺います。

 今回、それらの調査について、つまり、全ての日本人に関する包括的かつ全面的な調査ということについて、北朝鮮側に、調査は一部の調査のみを優先するのではなく、全ての分野について、同時並行的に行うということを約束させたわけですけれども、その意義についてどのように考えていらっしゃるか。

伊原政府参考人 拉致問題だけではなく、全ての日本人にかかわる問題について調査をするということは、一方で結構なことではありますが、他方で、拉致問題だけを後回しにするとか、ほかの分野で進展を見せて拉致問題をある意味で置き去りにするとか、そういったことがあってはならない、そういう姿勢で協議に臨んだ結果として、今委員御指摘のような、「調査は一部の調査のみを優先するのではなく、全ての分野について、同時並行的に行う」という文言に同意し、それを合意文書の中に入れたということでございます。

笠井委員 もう一点、続けてなんですが、そうした全ての対象に対する調査を具体的かつ真摯に進めるというために、北朝鮮側は特別の権限が付与された特別調査委員会を立ち上げるとしているわけでありますが、この特別の権限、全ての機関を対象とした調査を行うことのできる権限というのは、これまで北朝鮮が行ってきた拉致問題に関する調査の結果からも、どういったものでなければならないというふうに考えているんでしょうか。

伊原政府参考人 これまで北朝鮮が実施いたしました調査の結果については、私どもとして受け入れられない点が多々ございますが、調査が不十分である理由の一つとして、北朝鮮の言い分は、これは特殊な機関がかかわっていたものなので、なかなか調査が難しいんですといったような言いわけが過去にはなされたことがございました。

 したがって、今回、より実効性のある実質的な調査を実現するためには、ここにもございます特別な権限という意味が、全ての機関を対象とした調査を行うことができる、そういった特別な権限でなければならないということを考えて協議した結果、そういうことが明記されているということでございます。

 ただ、実際に調査委員会がこういった能力を持つものになるのかどうか、これについては、日本側の措置の解除あるいは調査の立ち上げに先立って、北朝鮮の方から、委員会の組織、構成、責任者等を日本側に通報することとなっておりますので、そういった通報の内容も日本政府としてよく吟味をしていきたいというふうに考えております。

笠井委員 伊原局長に確認なんですが、今お話がありました、要するに、北朝鮮は、十年前にも政府から必要な権限を与えられた調査機関を立ち上げて再調査をやった。その際に明らかになったのは、北朝鮮の特殊機関というものの存在が拉致問題の真相究明にとって大きな障害になっているということがはっきりしたということですね。確認です。

伊原政府参考人 今御指摘のとおりでございます。

笠井委員 実際、二〇〇四年八月の日朝実務者協議で、北朝鮮外務省の宋日昊副局長は、拉致事件に関係した特殊機関の実行部隊は厳然と存在する、特殊機関に情報開示を求めているがなかなか難しいというふうに語って、調査が難航している理由として、特殊機関の協力が得られないことを挙げておりました。

 同年十一月の実務者協議の際にも、北朝鮮の調査委員長だった陳日宝人民保安省の捜査担当局長も、特殊機関が関与した事案であるため、調査委員会としての調査に限界があったなどと弁明を繰り返していたということだと思います。

 そこで、伊原局長に伺いますが、北朝鮮には拉致という国際犯罪を犯した特殊機関が大きな権限を持って現在もなお存在している。そして、拉致問題をめぐる交渉にもこの特殊機関の存在が重い影を落としている。ここから生じる障害を取り除かない限り、拉致問題をめぐる協議は納得できる前進には向かわずに、日朝交渉の全体が前途を持ち得ないことになるんじゃないかというふうに思うんですけれども、今後の交渉に当たっては、この点をしっかり踏まえて臨むことが一層大事だと思うんですけれども、いかがでしょうか。

伊原政府参考人 今回の合意文書にもございますように、特別の権限が与えられた調査委員会というものが本当にそういうものであるのかどうか、これは、調査の開始に先立って北朝鮮から日本側にも通報があると思いますので、その内容をよく吟味していきたいというふうに思っております。

笠井委員 岸副大臣に、今後の日朝交渉に当たっては、この特別調査委員会がより権限のあるもの、すなわち、特殊機関の存在に左右されずに事の真相を追求するという力を持ったものになるように、やはり北朝鮮側に強く求めていくということが大事だと思うんですが、いかがでしょうか。

岸副大臣 今、伊原局長からもお話がございましたけれども、今の時点で、まず、我々は、特別調査機関の中身、責任者、組織、構成、これを提示させて、実効性のあるものかどうか、その中身をしっかり吟味する、そして、実際、今おっしゃった特殊機関にも調査の手が及ぶものかどうか、それを我々なりにきっちり確かめた上でスタートをする、こういうことでございますので、その旨しっかりやってまいりたいと思います。

笠井委員 伊原局長、先週、ワシントンでデービース北朝鮮政策特別代表や米国政府関係者との間で北朝鮮問題などについて意見交換を行ったということでありました。その結果についても、さっき若干あったんですが、改めて、その結果がどうだったかということと、米側がどういう対応だったか、どういうことをやっていくということで確認したのかということについて伺っておきたいと思います。

    〔中山(泰)委員長代理退席、委員長着席〕

伊原政府参考人 先週、米側との協議におきましては、北朝鮮問題について幅広く意見交換を行いました。

 その中で、特に北朝鮮問題、とりわけ、核、ミサイルの問題の解決に向けては、日米そして日米韓が引き続き緊密に連携していくということが重要であることを改めて確認いたしました。そして、北朝鮮が累次の国連安保理決議や六者協議の共同声明、そういったことを遵守して、非核化に向けた真剣な意思を示す具体的かつ意味のある行動をとることが必要であるということで、日米で意見の一致を見ております。

 また、私の方からは、先般の日朝合意に触れつつ、拉致問題に関する米国側のこれまでの支持に感謝し、また、今後とも連携していきたいということを述べて、引き続き日米で拉致問題についても協力していくことを確認したということでございます。

 米側に対しては、今回の日朝合意について、既に外交ルートを通じて十分に説明してまいりましたので、今回の米側との協議において米側の理解はさらに一層深まったというふうに考えております。

笠井委員 局長にもう一問伺いますが、日朝平壌宣言にのっとって、拉致、核、ミサイル、過去の清算などの諸懸案を包括的に解決していく上で、二〇〇五年九月の六者会合、六カ国協議の共同声明で確認された方法の、約束対約束、行動対行動の原則、すなわち、一方が前向きの行動をすれば他方も前向きの行動で応える、全ての懸案の同時解決を目指すんじゃなくて、一致した問題から段階的解決を図る、こういう立場で努力するというのは今本当に大事だと思うんですけれども、この点についてはどういう認識を持っていらっしゃるでしょうか。

伊原政府参考人 なかなか北朝鮮との交渉というのは難しい側面がございます。それは恐らく、交渉においては基本的に重要な信頼関係が十分ないということかと思います。そういった中で、六者会合の一つの知恵として、今委員御指摘の、約束対約束、行動対行動の原則というものがとられているんだろうと思います。

 したがいまして、日本としても、北朝鮮と今後物事を進めていく上で、基本的には、そういう慎重で着実なやり方でもって一つ一つ進めていくということが重要ではないかと思っております。

笠井委員 今とのかかわりで、岸副大臣と最後に古屋大臣に伺っておきたいんですが、今後の日朝交渉に当たっては、日朝平壌宣言にのっとりというふうに今回も合意の冒頭にある。

 これに基づいて日朝間の諸懸案の包括的解決を目指す努力を図るということと同時に、やはり日本政府の対応としては、今局長からもありました、約束対約束、行動対行動の原則に従って、意見が一致した事項について段階的に実施する、六者会合で確認された方法ですけれども、これに基づいて事態の前向きな打開に当たっていく、そういう中で拉致問題の解決を図る、核、ミサイル、諸懸案、過去の清算を含めてしっかりやる、こういう立場を堅持するということで臨むというのが一番大事だと思うんですけれども、岸副大臣そして古屋大臣、御答弁をお願いしたいと思います。

岸副大臣 今委員がおっしゃったこと、北朝鮮の問題を包括的に解決していく、すなわち、核、ミサイル、そして拉致とあるわけですけれども、今、日朝間でやっている拉致問題を含む日本人の問題、これをまず我々としてはやっておるわけですけれども、そのことに関して、先ほど局長からも話がありましたけれども、アメリカとも意見をすり合わせをしている。六者で進めていく、核、ミサイル、全体的な話、そことのそごが起こってはいけないわけですけれども、そうしたことを含めて、北朝鮮に真摯な対応を促していくということがまず大変重要だと思っています。

 そういう意味で、これから提示されるであろう特別調査委員会が実際に機能するものかどうか、まずそれを確かめる、そしてさらに、彼らが誠意ある行動をとるかどうか、これをしっかり確かめていく、あるいはこちらからもそういう行動を促していく、そのことを努力していきたいと考えております。

古屋国務大臣 北朝鮮に対する対応というのは、やはり行動対行動の原則が極めて重要ですね。

 ですから、今回の合意もその精神をしっかり生かそうということでありまして、現実に北朝鮮が今度の調査委員会、どういう組織なのか、本当に実効性のある組織なのか、彼らが言うように全てのセクションに当事者能力はあるのか、こういったことをしっかり見きわめた上で、そして、本当にその調査が具体的に始まっていくということなら、行動対行動の原則、我々はそれをしっかり誠実に守っていきたいと思っていますが、やはり相手も守ってもらわないと交渉は前に進みませんので、そういった観点に立って取り組んでいきたいというふうに思います。

笠井委員 今副大臣そして大臣がおっしゃったことは私も非常に大事な点だと思いますので、そういう立場を堅持して、本当に解決するために努力をお願いしたいと思います。

 終わります。

山本委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時八分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.