衆議院

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第4号 平成17年6月6日(月曜日)

会議録本文へ
平成十七年六月六日(月曜日)

    午後一時開議

 出席合同会議員

   会長 与謝野 馨君

   会長代理 仙谷 由人君

   幹事 長勢 甚遠君 幹事 武見 敬三君

   幹事 枝野 幸男君 幹事 城島 正光君

   幹事 小川 敏夫君 幹事 坂口  力君

      伊吹 文明君    石崎  岳君

      鴨下 一郎君    後藤田正純君

      鈴木 俊一君    田村 憲久君

      武部  勤君    岩城 光英君

      田浦  直君    中島 眞人君

      五島 正規君    中塚 一宏君

      永田 寿康君    水島 広子君

      横路 孝弘君    朝日 俊弘君

      峰崎 直樹君    若林 秀樹君

      石田 祝稔君    古屋 範子君

      遠山 清彦君    山口那津男君

      山本 香苗君    佐々木憲昭君

      小池  晃君    阿部 知子君

      近藤 正道君

    …………………………………

   衆議院厚生労働委員会専門員            榊原 志俊君

   参議院常任委員会専門員  川邊  新君

    ―――――――――――――

合同会議員の異動

六月六日

 辞任         補欠選任

  津島 雄二君     後藤田正純君

  丹羽 雄哉君     田村 憲久君

  柳澤 伯夫君     石崎  岳君

  片山虎之助君     岩城 光英君

  小宮山洋子君     水島 広子君

  古川 元久君     永田 寿康君

  山本 孝史君     若林 秀樹君

  井上 義久君     古屋 範子君

  福島  豊君     石田 祝稔君

  冬柴 鐵三君     山本 香苗君

同日

 辞任         補欠選任

  石崎  岳君     柳澤 伯夫君

  後藤田正純君     津島 雄二君

  田村 憲久君     丹羽 雄哉君

  岩城 光英君     片山虎之助君

  永田 寿康君     古川 元久君

  水島 広子君     小宮山洋子君

  若林 秀樹君     山本 孝史君

  石田 祝稔君     福島  豊君

  古屋 範子君     井上 義久君

  山本 香苗君     冬柴 鐵三君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 年金制度をはじめとする社会保障制度改革(年金制度の現状認識及び将来の見通し)について


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     ――――◇―――――

与謝野会長 これより会議を開きます。

 年金制度をはじめとする社会保障制度改革について議論を進めます。

 本日は、年金制度の現状認識及び将来の見通しについて、各党からそれぞれ十分以内で発言していただいた後、議員間の自由討議を行います。

 それでは、初めに各党から発言していただきます。

 まず、田村憲久君。

田村議員 田村憲久でございます。

 それでは、十分という短い時間でございますので、意見発表を早々にさせていただきたいと思います。

 まず、年金、破綻しているとかいろいろな議論がございますが、現状、主な論点は二つあるというふうに思っております。

 一つは、雇用の流動化等々で未納、未加入者がふえてきておりまして、国民皆年金というものが既に崩壊しておるんじゃないかという議論、それからもう一点は、それと絡みますけれども、やはり財政的に破綻していっているんじゃないか、この二点が大きな不安点、問題点であると思うわけであります。

 まず初めの点、これはよく言われます納付率の問題、六三・四%という中で、四割近く、つまり千人いれば四百人が無年金者になるんじゃないか、こういう誤解が若干あるのであろうと思います。

 これは御承知のとおりでありますが、一年間に納めるべき保険料のうち実際納められた保険料、この率であります。でありますから、未加入者という概念とは若干違う、二年間丸々納めていない方々を要するに未納者というような概念で考えております。

 これですと、大体三百九十万人が二年間納めていない。これを七千万人の基礎年金の母数でいきますと五・五%。これは余りにもひどい数字じゃないかと言われますので、あえて言いますと、国民年金加入者二千二百万人、これでいきますと一七・二%ぐらいになってまいります。この方々が実は一番の問題点、つまり継続しまして無年金者になる可能性のある方々でありますから、これをどうするかという問題が現状あります。

 百二十万人は五百万円以上の収入がある方々と言われておりまして、これに対しまして、社保庁の改革が今いろいろと議論されておりますけれども、ここで所得情報を把握して強制徴収を行ってこれに対応していこう、こういうような対応を今からしていこうと思っております。

 一方で、所得の低い方々、この方々はもともと払えない方々もおられます。でありますから、前回の改正のときに多段階免除制度を導入いたしまして、ここで、四分の一から四分の三まで払える範囲でいただきまして加入いただこう、こういうような手当てをいたしております。

 あわせて、若年者のための納付猶予制度というものを導入して、これは二十九歳まで、ここの間に加入していただいた方々は二十五年にこれを空カウントするということになっておりますから、無年金者問題に対応しよう、こういうような対応をとっております。

 あわせて、実は、この年金の未加入者問題がいろいろと出たときに、保険料の特例的な事後納付法案というものを提出いたしておりますので、これは早急に国会で御議論いただきたいと思いますが、こういう対応をして、この一七・二%、四百人という話は大き過ぎますけれども、一千人中百七十人はおりますから、この方々をどうするか。こう考えた場合に、やはり国民皆年金というものがすべて破綻しているという議論はちょっと早急過ぎるんじゃないか。

 しかも、言いますと、この問題を考えたときに、過年度納付の方々がおられますから、実は、納付率でいっても七割近くに上がるんです。ここら辺のところを総合的に考えると、破綻とはまだ言えないんじゃないか、このように思われます。

 一方で、財政的な問題でありますが、これは言わずもがなで、もう先生方は御承知だと思いますけれども、財政的には、未納期間というものは給付の方からは当然のごとく削られるわけでありまして、あえて言うならば、積立金を取り崩す分、その運用益の問題はありますけれども、基本的には、財政的にはそれほど影響が長期的には出てまいりません。ですから、財政的にも、国民年金がこれだけ未加入者がふえているから破綻するという議論はちょっと言い過ぎではないのかな、このように我々は考えております。

 民主党案ですと、未納、未加入、無年金問題を解決するとおっしゃられますが、納番を導入しても、多分、所得の捕捉というのは完全にできないと思います。自営業の方々、フリーター、ニートの方々、どうやって完全に所得を捕捉するのか、これは後々また御意見を伺いたいと思いますけれども、さらに申し上げますと、最終的に所得が捕捉できましても、保険料を納めるのは自己申告でありますから、そういう場合にはやはり本人が納めなければ問題が起こる。国民年金の課題は大して変わらないわけでありまして、やはり民主党案でもこの問題はそう簡単に解決しないんだろうと思います。

 厚生労働委員会で、所得があるのに報酬比例年金の保険料を納めなかった方々が最低保障年金を受けられるかどうか、こういう議論があったようでありますが、これは、民主党案でも、所得があるのに保険料を納めなければ最低保障年金はもらえないという話であろうと思いますから、やはり無年金者問題、これは民主党案でも解決できない。

 消費税を基礎年金と連動すれば全員もらえるよという議論もありますけれども、こういう話になりますと多分これは公的扶助になるわけでありまして、生活保護との兼ね合い上どうなのかな。社会保険方式とは若干違うので、これはまた議論があるところであると思いますけれども、民主党案はそうではないと思いますので、やはり同じ課題を抱えると思います。

 こういうことを考えてまいりますと、現状破綻しておるというのはちょっと言い過ぎであろうなというのが我々の認識でありまして、これに対して、将来の見通しというものをどう考えるかということであるわけでありますけれども、公的年金というのは、国と国民とが長期的に継続的に信頼関係があって成り立つものだと思います。そう考えたときに、早急に制度が変わってしまうということに対して国民がどう考えるか、ここは押さえておかなければならない点だと思います。

 例えば、今、年金制度をすべてやめてしまえば、既に権利が発生している方々、この方々に幾ら払わなければならないか。よく六百兆円だとかいろいろな数字が言われておりますが、これはリセットできません。ですから、この問題をどう解決するか。

 さらには、給付がどれだけで負担がどれだけか、これを具体的にお示しをいただきませんと、現行制度との対比ができず、国民の皆様方にとってみればどちらの案がいいのかということは、これは選べないんだろうと思います。民主党には、ぜひともそこの点、データをしっかりとお出しをいただきますようにお願いをいたしたいというふうに思います。

 あえて岡田代表が一五%保険料ですよというお話をされておられますが、普通に考えれば、これは給付が下がっちゃうわけでありまして、その分消費税で何とか補おうということでありますけれども、まだ消費税の方も具体的な数字は正式な場ではお聞きいたしていないというふうに私は認識しております。

 あわせて、贈与税や相続税ということも法案に書かれておりますが、これも国民負担であることは変わらない。これは御指摘をさせていただきたいと思います。

 現行の案は、具体的な数字を示した上で制度を成り立たせておるわけでありますが、合計特殊出生率がまた下がった、下げどまった、いろいろな御意見がありますけれども、これで年金がもたないという議論は、多分超長期で計算をしていく今の制度においては余り意味を持たない。もちろん、ゆゆしき問題でありますから、この問題にどう対応していくかというのは大きな問題であろうと思いますけれども、この少子化問題というものをもってして現行年金制度がだめだとおっしゃるのであるならば、民主党の案も、報酬比例部分、まさにこれは賦課方式でありますから、同じ問題を抱えるわけでありまして、多分この問題は解決できないんであろうと思います。

 スウェーデン方式をよくおっしゃられるんですけれども、スウェーデン方式は、やはり少子化のときに給付を抑制するというような自動抑制装置が入っております。実は、現行の制度も、もともと我々はスウェーデン方式と呼んでおりました。この部分をもってして、我々はスウェーデン方式と呼んだのであります。

 でありますから、この点は、少子化という問題をとらえて考えれば、賦課方式をとる限りは、絶対これは解決できない。あえて言えば、積立方式であればこの問題は解消できますが、積立方式を導入すれば、当然のごとく、過去債務と言っていいのかどうかわかりませんが、その六百兆円をどう解消するのか、これが解決しない限りは移行できませんので、やはりそう簡単に解決できる問題じゃない。

 つまり、年金制度は親を背負って走っている制度でありますから、リセット論というのはそう簡単には通用しないというのが我々の現状の認識であります。

 解決策というのは、少子化にどう対応するかという問題でありまして、はっきり言いまして、今のような数字が続けば、年金どころか社会の活力が失われるわけでありまして、年金をもたせるためにというよりは、社会の活力を保つために少子化問題にどう取り組むか。これを年金だけでとらえれば、木を見て森を見ずという議論になろうと思いますので、与野党ともに垣根を越えて少子化対応というものはしていかなければならないものであろうと思います。

 以上のように、いろいろとお話をさせていただきましたけれども、未納、未加入の増加、これをもってして年金が破綻しているとは言えないということは、今言ったとおりであります。

 あわせて、そうはいっても、現行の我が方の案も完全だとは思っておりません。非常に問題点、幾つかあります。それをこれからどう解消するか、これは改善策を講じていかなければならないと思っておるところでありまして、例えば未納、未加入問題の対策、これは重要な問題であります。

 出生率の向上。これは、言いましたとおり、これからどう対応していくか、国を挙げての問題であると思います。

 積立金の運用。これも、国民の皆様方に安心いただきながらどうやって積立金を運用していくか、いろいろな議論をしていかなければならないと思います。

 あわせて被用者年金の一元化。難しい問題でありますが、これには我々も取り組んでまいりたい、このように思っております。

 支給資格、受給権者の加入期間二十五年という議論がありますが、これをどうするかという議論。もうちょっと短くしてもいいんじゃないか、これはいろいろな御議論がありますので、ここも、これからいろいろな議論も踏まえて考えていかなければならない点であろうと思います。

 最後に、パート労働者の厚年の適用拡大。これは、これだけ就業構造が変わってきますと、問題になっておりますので、この点にもこれから十分な対応をしていく必要があろうと思います。

 我々といたしましては、抜本的改革、もとを抜くことはできませんが、しかしながら、適切な改革を行う中で、国民の皆様方に年金制度の信頼性、これを確保するためにいろいろな制度改革を行ってまいりたいと思っております。

 以上でございます。

与謝野会長 次に、仙谷由人君。

仙谷会長代理 発言をさせていただきます。

 この二カ月間の年金合同会議の審議を振り返ってみますと、ただいまの田村議員の御発言もそうでありますが、基本的には、甚だ現状維持的、現状肯定的な前提にお立ちになっているわけであります。田村議員は、若干の自己批判的なといいましょうか、現行制度に対する批判的なこともおっしゃったわけでありますが、この間出てまいりました議論は、昨年の年金改正は画期的であり、すぐれた抜本改革である、こういう前提に立った御議論でございます。あと残された課題は、国民負担率の引き上げ、三分の一を二分の一にすれば、財源調達をこの点に関してうまくすれば、あとは、昨年の年金改正で百年安心できる制度になったんだと言わんばかりのお話が依然として前提としてなされているわけであります。

 私は、もう一度与党の皆さん方に、本年の四月一日の衆議院、参議院本会議の決議を読み返していただきたいとお願いする次第であります。つまり、皆様方のような議論の前提に立つならば、何ゆえに本会議の決議がなされて、このような年金をはじめとする社会保障制度改革に関する衆参合同会議が開かれなければならないのか、全く我々にもわからないし、国民にもわからないことになってしまうはずであります。

 改めて読みますと、「本格的な少子高齢社会の進展の中で社会保障制度は深刻な状況にあり、」深刻な状況にあるという認識であります。「年金をはじめとする社会保障制度に対する国民の不安・不信は根強いものがある。」「この改革は一刻の猶予も許されないものである。出生率、経済財政情勢、産業構造、雇用構造など時代の大きな変化に適確に対応すべく、過去の経緯などにとらわれず、議論に必要な論点を国民に提示し、あらゆる観点からの議論を尽くし、社会保障制度改革なかんずく年金制度改革について、その実現のため全力を傾注しなければならない。」ということが書かれているわけであります。

 この深刻な状況にあるという認識、政治の責任として、現在我々の前に提起されている諸課題に真摯に取り組むことがこの年金合同会議に課された使命だと私は思っておりますが、どうも今の田村議員のお話を聞きましても、対策や手直しでこの事態が改善できるというふうにお考えのようであります。そうだとするならば、この年金合同会議は、この審議、議論を続けることは全くもって時間のむだだというふうに私自身は最近考えております。

 さらに加えて、この年金合同会議の会長をある種非難することになるかもわかりませんが、自由民主党は、政務調査会会長与謝野馨さんのお名前で、「年金の誤解」と称する本を大々的に配布いたしました。つまり、この「年金の誤解」という堀勝洋さんの著作は「無責任な年金批判を斬る」という副題のついている本でございまして、この本によって、昨年の年金改革、そして年金法の改正によってつくられた制度は、いわば盤石のいいものである、昨年の年金改正法案を批判する論点はすべて間違いだということをおっしゃっておるようであります。これを四月二十日付の文書で配布したのが自由民主党そのものであります。

 そしてまた、四月の上旬には、丹羽社会保障制度調査会長の文書で、現行の社会保険方式を変える必要はないんだと、全体の理念、哲学等々、改めて文書で発表をされているようであります。その文書の中身を精査いたしますと、この席上で丹羽幹事が発言された中身とほとんど同じでございますけれども、いずれにしましても、昨年の年金改正法案について肯定的な評価でございます。

 ところが、私はことしの初めから気がついておりましたが、ここに「日本の生き方」という本がございます。この中で、丹羽雄哉先生は率直に本音を語っていらっしゃいます。つまり、昨年の年金改正は、百年間の予測、経済成長率二%、物価上昇率一%、そういう前提で成り立っているんであるけれども、これはばかなことである。現在の出生率は下位推計を下回っている。問題は国民年金なんだ。未納率は四割ある、定額制度はいずれは変えなければならない、報酬比例にすべきである。現に国民保険制度は八割から九割は国民保険税なんです、国民年金も同じようにすればいいんです。負担を変えて給付も報酬比例になる、その場合はアメリカのような納税者番号制度にすればきちんとした制度になります。このように、「日本の生き方」の中で堂々と丹羽社会保障制度調査会会長は述べていらっしゃるわけであります。私は、まことに率直な、まことに当を得た基本認識ではないか、こう思うわけであります。

 この年金合同会議の第一回目に、柳澤先生がくしくも全く同じ基本認識に基づいてそのようなお話をされました。柳澤先生のお話にもございましたように、事は、年金制度そのものが持続可能な制度設計になっているかどうか、あわせて、この制度に対する国民の信頼がどのように変わってきているかということが最大の問題だというふうに理解をしなければなりません。

 国民の信頼感を取り戻さなければならないとすれば、年金制度の基盤をなす社会状況の変化や、あるいは各種の働き方の変化というふうなものに的確に対応する政策を打ち出さなければならないことも確かでありますが、年金制度自体も制度設計を根本から変える、そのことによって国民の信頼感を少しでもふやしてもらう。そういう基本的な発想がなければ、現在の制度の部分部分の手直しで事足れりとすることでは、日本の年金制度は、ますます国民的なレベルでは破綻の、つまり見捨てられる方向に行ってしまうのではないかと思います。

 最近の調査で、「年金改革の政治経済学」という本が出されました。多分これは政府関係の補助か助成をいただいて調査をしたものだと私は思います。この中で、二〇〇一年十月から二〇〇四年の六月にかけて、戦前派世代以外、団塊世代、戦中派世代、団塊ジュニア世代、そして新人類世代と分析しておりますが、この人々の国民年金制度への信頼感が極端に低下をしているという事実を皆様方にも知っていただきたい。とりわけ、団塊ジュニア世代や新人類世代は、現在の年金制度に対する信頼感が一二%とか一三%のレベルに落ち込んでいるということをぜひ知っていただきたい。それは、彼らがそういう考え方をしているのがいいとか悪いの問題ではありません。

 私は、改めて、この年金合同会議が本気で国民の信頼感を、我々が少しでも信頼感の欠如をなくして信頼される制度に設計しなければならない、そのために何をすべきか深刻に考えるべきときが来ていると思います。現状肯定だけならば、この合同会議は続ける必要は全くない、そう考えておることを申し上げます。

 以上であります。

与謝野会長 次に、坂口力君。

坂口議員 公明党の坂口でございます。

 今、仙谷先生からもいろいろお話がございましたが、私たちは、公的年金制度の基本的な骨格といたしましては、現在の制度が望ましいというふうに考えております。働き方の変化でございますとか経済社会の動向も考えながら、もう一度あらゆる角度から比較検討いたしましたが、いずれも一長一短ございます。現実的、総合的に考えましたときに、現在の制度に取り入れられております骨格にまさるものを見つけることはなかなかできません。

 しかし、現在の制度には一切手をつけないというようなことでは決してなくて、骨格を大切にしながら、今後あらゆる角度から検討を加えていくことは必要だというふうに思っているわけでございます。

 日本におきます公的年金制度と比較をしまして、最も新しい考え方と申しますか新しい制度を導入しておりますのは、よく話題になりますとおり、スウェーデンの方式だと思います。日本の制度と相違する点は多く存在いたしますが、日本の制度の中でも検討に値する点はどこなのか、議論の対象にすべきであると考えております。

 まず、順序として、年金制度の一元化が適切かどうかということでございます。この問題は、年金制度を一律にすることが公平であるというふうに考えるか、それとも、それぞれの生き方、働き方に従って制度を確立するのが公平であると考えるか、見る立場によって考え方は違ってまいります。

 人々の生活の側から比較をいたしますと、みずから業を営みます自営業者と企業で働く従業者とでは、所得が常に変化する人と所得がほとんど安定している人との違い、健康であれば定年がなくいつまでも働き続けることができる人と必ず定年の訪れる人との違いでありまして、これらの点に着目をして考える必要がございます。

 確かに、年金制度のみに着目いたしますと、どの人にも等しい年金にする方が単純明快でありまして、わかりやすいという点ではすぐれているというふうに思います。しかし、人々の生活の仕方、働き方には違いがあり、働き方に合わせて制度を共存させる方が公平であるという考え方が存在するのも事実でございます。どちらから見るか、そこが問われているのだと思います。

 日本がもしスウェーデン方式同様の制度を採用するといたしますと、国が拠出する負担は少なくなる可能性はありますが、平均的な勤労者の保険料には国庫負担はなくなります。年金額は日本の制度よりも下がると思います。日本の制度には所得再配分機能が導入されておりまして、世帯所得が例えば二十万円ぐらいの場合でありますと七三%、世帯所得が六十万円ぐらいでありますと三八・九%と高低がつくられております。平均サラリーマンにはプラスに作用しますが、スウェーデン方式では、所得比例年金で所得再配分機能がないために給付額には反映されておりません。したがって、中堅サラリーマンから見ますと、現状よりもかなり厳しい制度になると思われます。

 スウェーデンがなぜこのような制度を採用したのかを調べますと、以前の制度は中堅サラリーマンにとってもっと厳しい制度であったということでございます。

 スウェーデン方式の六十五歳における平均的な年金水準は、その時々の為替レートによって異なりますが、日本円に換算いたしますと、手取り額は、男子で月額十三・九万円、女子で十・五万円ぐらいになります。最低保障年金を含めて年金は課税対象になっておりますので、税引き後の額でありますから、課税前の年金額はもう少しこれよりも高くなると思われます。

 さて、日本において国民が何を望んでいるかについて謙虚に耳を傾ける必要がございます。国民は、負担と給付の関係について、いかに公平であるかを最も強く求めているのだと思います。それは、公務員や国会議員の年金に批判が集まっている点からも理解できるところであります。

 したがいまして、自営業者もサラリーマンも同じ年金にすることは、負担と給付に格差が生まれないことを前提にしなければなりません。しかし、スウェーデン方式では、自営業者はサラリーマンの倍額を負担して同じ年金額になるわけでありますから、話を詰めていけば理解を得ることができるかどうか、大きな問題であると思います。自営業者の皆さんがどう考えられるか、ひざを詰めて話し合う必要があると思う次第です。

 今回、改めて民主党の法案を熟読させていただきましたが、まさしく、所得比例年金と最低保障年金の組み合わせでできております。スウェーデン方式に近い制度ではないかというふうに思われます。

 基本理念のところに、「公的年金制度は、国民から納付された保険料を主たる原資として給付を行う仕組みを原則とすること。」と書かれておりまして、私もこの条文につきましては賛成でございますが、先日、岡田代表からお伺いしましたところでは、一階部分については全額税方式として、年金目的消費税を活用する、こういう御趣旨の発言であったというふうに思います。

 この一階部分とおっしゃいますのは、法案の中にあります所得のない人あるいは低所得者に対する最低保障年金のことを言われていると解釈してよろしいのでしょうか。少なくとも、法案には基礎年金という概念は示されておりません。

 昨年の年金審議のときに、きょうは御出席でございませんけれども、山本孝史議員が提案をされた案がございました。それは、国民年金の保険料を所得に応じて負担をし、年金額は一律にするという案であったというふうに記憶をいたしております。多分、基礎年金も含めてというふうに私は理解をいたしておりますが、最低保障年金にかわる案として検討に値する案であると私は思っている次第でございます。

 そこで、提案でありますが、我が党は現在の年金制度の骨格を堅持すべきであると考えておりますが、いろいろの制度を議論し検討することは大変重要なことだというふうに思います。その意味で、スウェーデン方式の是非について、日本が採用し得る制度であるかどうかについて、さまざまな角度から検討することは、年金に対する国民の理解を深める意味からもよいことではないかというふうに思っております。皆さんの御了解を得られればと思います。

 持ち時間がもう終わりになったようでございますが、もう一分だけちょうだいしたいと思います。

 年金改革の次の一手を考えますときに一番大きい課題は、年金を個人単位にするか、それとも世帯単位にするかの問題だというふうに思います。

 御承知のとおり、国民年金は個人単位、厚生・共済年金は世帯単位になっておりまして、ここをどうするかということは、これは一元化をするためには避けて通れないところの議論でございますので、また、これは三号被保険者の皆さん方に対してどうするかということとも重なってくる問題でございますので、この点につきましては、ひとつ優先的に議論をさせていただくことができればというふうに思います。

 まだ申し述べたいことはたくさんございますけれども、時間が参ったようでございますので、以上にさせていただきたいと思います。

与謝野会長 次に、小池晃君。

小池議員 日本共産党の小池晃です。

 少子化や年金の空洞化に対する与党の危機感は余りに乏しいというふうに思います。出生率については、昨年の年金改革の前提は、〇四年まで一・三二、〇七年が一・三一で下げどまり、二〇五〇年には一・三九というものでした。ところが、先日発表された〇四年の出生率は一・二八八、昨年の一・二九〇五より低下をしております。これは決して将来の問題ではありません。年金財政上影響が出てくるのは先のことであっても、少子化は今現実に起こりつつある問題であります。

 同時に、少子化の背景には、若い人たちの間で、パート、アルバイト、フリーター、いわゆる非正規雇用が激増している、この問題があり、これは現実の年金財政にも深刻な影響を与えております。

 若者のフリーター化によって、今、厚生年金の加入者が激減しています。厚生年金に加入する二十代の若者は、九六年には九百七万人、それが二〇〇三年には七百十一万人で、二百万人減りました。若者自体の数も減っておりますが、加入率そのものも四七・四%から四一・九%へ激減しております。

 その人たちが国民年金へ行っています。しかし、若年フリーターの平均収入は月七万四千円で、一万三千三百円の国民年金保険料など払えるわけがありません。その結果、国民年金保険料納付率も、先日発表されましたが、昨年度六三・六%、目標に二・一%及ばないのが実態であります。再来年にはこれを八〇%にするというのが年金改革の前提でしたが、これも遠く及ばないものであります。

 つまり、深刻な少子化と、少子化を進めている今の背景にある雇用の問題というのは、将来の年金制度の支え手を減らすだけではなくて、現実の年金の支え手も減らしているのであります。年金制度の足元がどんどん崩れている、これが今の実態でありまして、これを将来の課題などとしてのんびりしていられる状況では到底ありません。

 少子化の克服というのは、先ほどもお話がありましたが、年金制度だけの問題ではありません。これはまさに、将来の日本社会全体にとっての重大な課題であり、政治の中心課題として取り組むべき課題であります。同時に、このまま負担増と給付カットのレールを走り続けたら、ますます年金への信頼が揺らぎ、制度の土台が一層崩れることは明白であります。この出生率の数字、あるいは年金加入率等の数字は、さきの年金改革の土台であります。この土台が崩れた以上、これを白紙に戻してやり直すことが当然のことであるということを私どもはまず主張したいというふうに思っております。

 続けて、民主党の年金改革案について若干お尋ねしたいことがございます。

 与党は、最低保障年金制度というのを否定されました。一方で、民主党は、最低保障年金の提案をされています。最低保障年金制度が必要だという点では私たちも同じ意見であります。ただ、民主党の提案では、年金目的消費税の創設、それを最低保障年金に充てるということであり、そもそも消費税を財源とするということには私たちは反対であります。しかし、そのこと以外にもお聞きをしたい点がございます。

 四月十四日の当会議で民主党の岡田代表は、最低保障年金の財源は全額税にする、その財源は、現行制度における基礎年金国庫負担相当分に加えて、年金目的消費税を創設し、その税収を活用する、税率は当面三%と発言されました。さらに、四月二十二日の当会議で枝野議員が、移行期というのは恐らく四十年、六十年かかる話だと発言されました。最低保障年金制度も、四十年以上かけて完成するものだとすると、当面の給付額はわずかでありながら、年金目的消費税だけがしっかり徴収されて、莫大に積み立てられていくということになるのではないかという点であります。

 具体的に計算をしますと、民主党の最低保障年金の額は不明でありますが、仮に七万円、二〇一〇年に制度を発足して、四十年後、二〇五〇年に完成とする。そして、年金目的消費税を三%として計算をいたします。そうすると、最低保障年金の給付額は、新制度のもとでの加入期間に応じて支給されますので、一年目の二〇一一年に六十五歳になって新規裁定される人の最低保障年金額は、七万円の四十分の一、千七百五十円です。受給開始する人は百四十万人ですから、仮に一律に支給したとしても、受給総額は二百九十四億円になります。うち半分は既存の税財源が充当されるので、残り半分の百四十七億円が年金目的消費税分となるわけであります。同様に、二〇一二年は四百四十一億円、二〇一三年は八百八十二億円。以下、これらの年金受給者が最大限で仮に十年全員存命とした場合でも、二〇二〇年までの十年間で最低保障年金に充当される年金目的消費税は三兆二千三百四十億円となります。

 一方で、年金目的消費税の徴収額はどうなるか。

 仮に二〇〇七年に三%の消費税増税を年金目的消費税として行うとすると、二〇〇七年から二〇二〇年の十四年間で、年金目的消費税の徴収額は百五兆円となります。すなわち、二〇二〇年までに給付される最低保障年金に充当される消費税は約三兆円に対して、徴収される年金目的消費税は百五兆円、差し引き百二兆円が、給付に回らずにどんどん積み立てられるという計算になってまいります。

 なお、最低保障年金制度が満額化するのが二〇五〇年だとすると、そのときまでの計算では、最低保障年金受給者がその後全員存命という最大限の場合で計算をしたとしても、四十年間の消費税充当額は百六十九兆円。一方、四十四年間の消費税収は三百三十兆円で、実に百六十兆円の年金目的消費税が積み立てられる計算になってまいります。

 こうした問題について、民主党としてはどのようにお考えなのか。日本経済にどのような影響を与えるものなのか。現在既に年金を受給されている方や、あるいは近い将来の受給者にとっては、年金目的消費税だけを取られ続けて、実際の年金給付にはほとんど反映されない、こういう点をどのように考えるのかという点について、ぜひお伺いしたいというふうに思っております。

 以上で発言を終わります。

与謝野会長 次に、阿部知子君。

阿部議員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。

 国会が、小泉首相が御執心の郵政改革問題で論議が十分とは言えませず進められておりますその裏で、国民の最も関心事である、国民にとっての一丁目一番地であるところの社会保障制度については、さきの経済財政諮問会議並びに尾辻厚生労働大臣の、医療をめぐるどのような形での二十一世紀の保障を行っていくかということの論戦も含めて、実は、国民には十分見えないところでのやりとりが交わされているように思います。

 私は、冒頭、一回目のこの年金論議の中でも申し上げましたが、今、我が国の国民を広く覆う不安感、例えば、小さいお子さんをお持ちのお母さんたちから、あるいは年金の給付額がどんどん減っていくことに対しての御高齢者の不安まで、ありとあらゆる生活上の不安は、社会保障制度に対してのきっちりとした国の骨格が示されないところにあると思っております。その意味でも、この年金の論議と申しますのは、きょうが回を重ねて三回目でございますから、せめて基本認識くらいは一にしたいなと思いながら、私は冒頭の田村議員あるいは仙谷議員、坂口前厚生労働大臣の御発表を聞いておりました。

 一番の認識のずれは、やはり仙谷議員も御指摘になりましたように、現在の年金の、とりわけ国民の基礎年金となるべき国民年金一号の問題、これを空洞化と言うか、あるいは田村議員が何度も何度も繰り返されました、破綻していない、破綻していないという言葉、この一つをとっても、そもそも最初の論議の土台が崩れていると思います。その意味でも、まず事実をしっかりと認識する共有のデータが必要のように思います。

 ちょうど、六月三日、社会保険庁が、この間の国民年金の納付率状況をお出しになりました。国民年金加入者、そして厚生年金加入者ともやや減ってございますが、実は、納付率は、ことし六三・六%と十六年度で出ておりますが、本来であれば、ことしの納付率は六五・七%が計画値でございました。現状六三・六、そして計画値は六五・七、ああ、たった二%低いだけかと思われるのであれば、やはり病が膏肓に入ってからしか手当てができないやぶ医者になると思います。

 私は、この数値、そして、実はどなたもお触れになりませんが、この中には全額免除者が十四万人もふえて、学生免除者が五万人もふえて、分母が低くなってなお納付率は、昨年、一昨年とほとんど改善していないのです。全額免除者をふやす、学生免除者をふやすという、本当に小手先だけの策でやってまいりましても、なお改善しないというところにしっかりと目を向けていただきたい。

 そもそも納付月数も減っておりますし、そして納付金額そのものが減ってございます。納付月数は、予定では一億三千七百十六万月、これが一億三千百十一万月と四・四%減。そして、このことに対しまして、当然ながら、納付される金額も減ってくるということでございます。失礼しました。今のは実績値と計画値のずれでございます。そして、金額についても同じように減少をいたしております。であるならば、何がこの背景として隠れているのかということをまずきっちりデータを整理する必要があると思います。

 わけても年齢別の納付状況は、これは何度も繰り返し私も述べさせていただきましたが、しっかりと把握していただきたい。例えば、二十歳から二十四歳の納付状況が四八・六%、これは、学生免除者を除いた後に、なお半分しか納めておられない。二十五から二十九も同じように五〇・二%。

 年金制度と申しますのは、将来の設計がどのようなものとして支え得るかということが最も肝要である中で、高齢化のピークに差しかかりますこの二十歳から二十九歳の世代が、二〇四〇年、まさに受給者にならんとするとき、半分が未納、未加入、あるいはそれに近い、二十五年ないような状況になるということを深刻に受けとめていかなければならないと思います。

 そして、そういうことをさらに踏み込んで分析いたしますと、もちろんこの方たちの年収の問題がございます。これはただいま小池議員がお触れになりましたので繰り返しませんが、あわせて私の方で、例えば失業率や生活保護率の高い都道府県が国民年金の納付率が低いこと、これは明らかな正の相関関係がございます。当然ながら、地域産業の落ち込みが失業率を高くし、生活保護が高くなるということでもありますが、こうした相関関係をきっちりひもとかないと、今の、徴収をやみくもに進めていく、数値だけ上げるという愚策がそこに登場いたします。

 あわせて、実は、これも幾人かから御指摘があると思いますが、都市部ほど国民年金の納付率が低い状態になっております。もちろん都市部ほど若者が多いということもございますが、全国十四の政令指定都市はすべて全国平均より納付率が低うございます。

 こうしたことをきっちりと解決していくための改善策が何であるのか。

 この場合に、先ほど来、例えば今後の年金一元化問題にあって、いろいろな議員が御意見をお述べになりましたが、私自身は、年金が働き方に中立的であるという一線を今逸脱してしまっている。企業にとっての年金の保険料負担がさらに非正規の職員をふやす、非正規の職員と正規の職員の賃金格差が開き、ますます払えない状況が強まっている。そうしたことをしっかりと見たときに、これから二十一世紀の働き方が、例えばパート、アルバイトのような短時間の働き方も選べて、なおかつ社会保障があるという仕組みのための一元化を私ども社民党は提唱しております。

 こうしたことの事実分析のために、やはりこの合同会議のテーマを絞っていただき、特に六月三日に出された社会保険庁の報告をきっちりとひもとくような場にしていただきたいと思います。

 あわせてもう一点、少子化についても、一・二八八というデータが出されました。これを恣意的に一・二九と切り上げることは可能ですが、実は、一・二九以下に固定してしまっているということが、そもそも、その世代が年金を受給するときまでは安心などと言っておられるのであれば、さきの年金改革で、マクロ経済スライドという方式を用いて、子供の出生率と経済の成長率ということに年金給付の照準を合わせていったことの意味が何であったのか、足元から崩れていってしまうと思います。

 こうしたことをひもとく中でも、特に現在の少子化においては、これは、一九八九年の一・五七ショックのときとさらに一歩加わった状況が今の少子化を加速させていると私は思います。一九九〇年代後半、特に雇用の流動化、働き方の流動化といううたいはよかったかもしれません。しかし、その実、進められたことは労働の二極分化、労働時間も正規の方を含めて長時間化する方もあり、また、賃金格差も開いておるというような実態です。

 今、非正規の若者は、女性であれ男性であれ、三十五歳まで非婚率が五〇%という数値になっております。若者たちが子供を生み育てていくことを選べる社会の働き方にも、社会保障制度にもなっておらないということを政治が深く受けとめて、きっちりとした論議がなされることを希望して、私の発表とさせていただきます。

    〔会長退席、仙谷会長代理着席〕

仙谷会長代理 これにて各党からの発言は終わりました。

    ―――――――――――――

仙谷会長代理 引き続き、議員間の自由討議を行います。

 一回の発言は三分程度で、会長の指名に基づいて、所属会派と氏名を名乗ってから行ってください。

 なお、発言時間の経過については、三分経過時と、その後は一分経過ごとにブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 それでは、御発言のある方は、お手元のネームプレートをお立てください。

枝野議員 民主党・無所属クラブの枝野でございます。

 私は、数字の上ではなくて理念的に、現行年金制度は崩壊しているということをまず申し上げたいと思います。二点あります。

 一点は、国民年金の部分です。

 数字でも出てきている話でありますが、そもそも国民年金制度とは何であったのか。本来は雇用者年金制度でスタートしました。それは、自営業者は資産を持っているし定年がないから大丈夫だけれども、しかし被用者は、雇われ人は定年もあるし資産も持っていない、だから、その人たちの老後のためにどうしようかということで、厚生年金や共済年金でスタートしました。

 しかし、そうはいっても、自営業者にも年金があった方がいいよねといって国民年金が始まったわけですが、今や国民年金の対象は、資産を持って定年のない自営業者というのはほんの一部になってきてしまっていて、むしろ厚生年金にも入れない低所得者の方がその中心になっている。それを資産を持って定年がない人たちを前提にした国民年金という制度の中で囲っていること自体、もう論理的に国民年金制度は成り立っていないということを申し上げたいと思います。

 もう一点は、まさに先ほど来話が出ている少子化です。

 現行の年金制度の仕組みでいえば、現在の高齢者世代を現在の現役世代みんなで支えますという仕組みの中で年金の支給額と負担額が決められるという枠組みです。そして、そのことを将来にわたって継続しようとしています。

 しかし、もはや日本の人口が増加に転じる時期というのは、少なくとも我々到底想定できない未来です。来年で人口がピークを迎えるようでありますけれども、これから、考えられる将来にわたって、常に上の世代よりも下の世代の方が人口が少ないという時代が続いていくわけです。そして、今の現行制度を続けているならば、常に次世代は前の世代よりも負担が大きく給付は少ないということを代々代々ずっと続けていくということであって、それは、もちろん私も四十を過ぎましたので、そうはいったって老後のことは大事だなと思うようになりつつありますけれども、しかし、おれたちの世代は上の世代より損だねという仕組みで、永続性を持って国民の信頼や負託にこたえられるはずがない。

 したがって、今のような年金制度は、人口がふえている、あるいは人口が減らない社会であれば成り立ち得る制度かもしれませんが、人口が減っていく制度において、保険料を特に若い世代が信頼して納めるという仕組みをつくろうと思ったら、今の制度では根本的に成り立ち得ないと思います。どうやったら成り立ち得るのか。自分で納めたお金を老後自分たちで受け取る、こういう仕組みにする以外にはないんですよ。

 だとすれば、今一生懸命、民主党の数字がない、数字がないと大騒ぎをしておられますが、数字は簡単なんです。現役世代の平均納付額に対して、平均納付期間と納付期間終了後受給を始めてから平均寿命までの間の期間で割り算をすれば、一カ月当たりの平均納付額の大体二・五倍から二・六倍ぐらいが受給額になるというのはすぐに計算が出てくるということで、そこに、物価変動率とかそういうものに応じて変わってくる。我々は、こういうこと、つまりみなし掛金建て方式というのは法律にちゃんと書いてあります。

 ただ問題は、現行、今賦課方式でやっていて、既に保険料を納めている皆さんをどうするのかという問題の解決と、新しい制度は今のようなみなし掛金建てでやることが信頼を得られるという話、これを抱き合わせしなきゃいけないという話です。

 小池先生は法律を読んでいらっしゃるからわかっていらっしゃるのをわざと言ったんだろうと思いますが、御指摘のとおり、我々は、新制度はみなし掛金建てで、自分が納めた額に対して、プラスアルファの部分は物価上昇率で変更はあるかもしれませんが、基本的には自分の納めた額を受け取る。だけれども、過去債務をどうするかということを考えたときに、新制度は、成熟するまで新制度による収入は新制度による支出には回りません。だから、新制度による収入のうち新制度による給付に回らない部分は、現行制度による既に納めている保険料に対応する給付に回していく。それは消費税の部分もそうです。

 そして、計算をしていくと、消費税三%ぐらいでやれば、過去債務についてちゃんとお支払いをしつつ、六十年ぐらいたったところで、成熟した段階で、過去債務部分がなくなった状況のときには収支バランスがとれるようになる。こういうことを我が党の案として昨年来何度も何度も申し上げているんですが、そうだったんだという顔でびっくりされているようでは、民主党案をちゃんと理解してから批判をしていただきたい。

 そして、こういう案でありますから、まさに現行の過去債務の部分についてちゃんと整理をしつつ、新制度については、世代間の不公平を感じないで、自分が納めた分を自分で将来受け取るんだという、計算上、計算上ですよ、積み立てておいても意味はないわけですから。計算上そういう形で将来の年金受給額が計算できる。こういう仕組みにするということを申し上げているのであって、これが一番の解決策であると思っております。

中島議員 前回の合同会議で、冒頭発言のうち、消費税は節度ある形で投入すべきという私の発言について、佐々木議員から、節度ある形とは一体どういうものか、こういう御質問がありましたけれども、時間の関係上、答えることができませんでしたので、御説明をしながら、それに付随して与党の考え方、特に自民党の考え方について御説明をさせていただきたいと思います。

 私どもは、この論議をしていく過程の中で、少子化になっていく、そして高齢化が進んでいく、そういうものの中で、その分岐点が、民主党が言っているような、枝野さんのような意見になっていく、あるいは、我々の方としては現行制度を補完しながらこれを進めていく、そういう問題のレールが敷かれているわけであります。

 しかし、私どもが政権政党の与党として考えるときに、突如として消費税が先歩きの形で歩いていくことによって、国民の反応はどういう形を持つだろうか。ましてや三ないし五%の消費税負担をという形は、国民の側では、昨年来の民主党の案について一つも理解をされていない。

 ただ基礎年金を税負担で賄いますよということですから、国民の皆さん方は、ああ、これはいい、少なくとも、税、いわゆる負担をしなくても給付だけは来るんだという安直な考え方で進んではいないかという点を考えながら、私どもとしては、消費税という問題がまさに、それが本当であるかどうかはともかくとして、五月十六日、財政審で行われた、プライマリーバランスを維持していくためには一九%かかる、必要なんだと。これが本当かどうか、たたいていかなければわかりませんけれども、それにさらに消費税の問題を加えるとしていけば三ないし五%。国民の皆さん方は、二十数%の消費税というものがかかってくるんだということは全く知りません。

 そういう問題をやはり国民の皆さん方に、消費税という問題が当然ついて回るんですよということを真剣に国民の皆さん方と意見を交わしながら、国民の意向というものを見ながら消費税というものを投入していく、そういう一つの過程が必要ではないのかということを申し上げながら、いわゆる節度ある消費税の導入を考えたい。

 同時に、年金の問題だけで消費税を考えるのではなくて、少なくとも年金、医療、介護という問題、社会保障全体という問題の中で消費税を国民の皆さん方に理解していただきたい。

 そういう意味を持って、私は、節度ある、あるいは国民に理解を深めていく形の中で消費税導入というものを考えていくべきだという意味を込めた節度ある論議、こういうことでございますので、佐々木議員からの質問だったと思いますけれども、そのようにお答えをさせていただきたいと思います。

古屋議員 公明党の古屋範子でございます。

 女性と年金という観点で意見を述べさせていただきます。

 女性と年金の問題を考える上で、大きく二つの視点があると考えております。一つは、女性の社会進出、またライフスタイルの多様化にいかに中立であるかということ、もう一つは、女性の年金保障をいかに充実させていくかという点でございます。

 女性にとってよりよい年金制度の姿を考えれば、やはり女性の社会進出、またライフスタイルの多様化に中立な制度が望ましいと言うことができると思います。

 昨年の年金改正では、育児のために会社を休む場合、保険料免除の期間を、それまで一歳までであったものを、子供が三歳になるまで拡大が図られました。さらに、育児をしながら働いている人に対し、短時間勤務で給料が減ってしまったような場合、将来の年金が減らないように、減る前の給料に応じた水準の年金を出すという配慮も導入をされました。

 民主党は、女性と年金の問題について、いわゆる二分二乗方式で対応するとおっしゃっています。すなわち、夫婦でそれぞれに所得に応じて納めた保険料を足して、機械的に半分に分けて、それぞれ半分納めたことにするというものである。しかし、育児への対応など、単にこの二分二乗方式だけで解決できるかどうか。私としても、二分二乗方式そのものを否定するものではございません。もう一つの観点、女性の年金をいかに充実させていくかということを考える上で、この二分二乗方式、一つの考え方であるというふうに認識をしております。

 民主党案では、夫婦が独身時代から引き続きそれぞれに働き続けている場合も含めて、共働きであれ、そうでなくても、夫婦それぞれが所得に応じて納付した保険料を常に足して二で割る、老後の年金について、自分名義が半分、残りの半分は相手名義に書きかえておくという機械的な二分二乗方式としていますが、果たしてこれが国民の理解を得られるかどうか。もっときめ細やかな論議が必要であろうと考えます。

 与党におきましては、女性の年金保障をどう拡充していくかという論議を重ねてまいりました。その結果、昨年の年金改正法では、被扶養配偶者を持つサラリーマンが支払った保険料は夫婦が共同で負担をしたという基本的な認識を明確にして、夫婦が離婚する場合など本当に必要になった場合、実際に年金の分割ができる仕組みを創設いたしました。一つ、老後の女性のセーフティーネットを確保したという点で大きな前進であると思っております。

 最後に、未解決の問題としてパート労働者の問題が挙げられます。

 現在、パート労働者のうち七割が女性であります。パート労働者が被用者として年金保障を受けられるよう、厚生年金の適用拡大の実現を図る必要があると考えております。しかし、被用者年金が適用されたとしても、賃金が低い、時給七百円、八百円というままでは年金も低水準になってしまう。男女の賃金格差、雇用格差、パート労働の待遇改善、また景気の動向、経済状況などもさまざま考え合わせていかなければいけない大きな課題が横たわっていると認識をしております。

 民主党は、全国民に所得比例年金を設けるとおっしゃっていますが、パート労働者については、事業主負担を求めていくかどうか、求めるとすればどのように合意形成を図っていくおつもりか、お答えをいただきたいと存じます。

 今後、この女性と年金をめぐる残された数々の課題に対し、ともどもに地に足のついた建設的な議論を進めていきたいと考えております。

若林議員 民主党の若林でございます。初めて発言させていただきたいと思います。

 やはり議論のスタートは、問題点の認識をここにいらっしゃる議員全員が与野党の立場を超えて共有化することからスタートすることが必要だというふうに思っております。

 先ほど田村議員の年金の空洞化の問題を聞いていても、本当にそうなのかなという疑問がわいてきました。破綻していないということに対しまして、決定的に欠けている視点が二つあるのではないかなと思います。

 一つは、年金の空洞化に対しまして、免除者が入っていないということでございます。

 昨年、参議院の厚生労働委員会で、坂口厚生労働大臣のときに、そのときに発表されている数字が六二%、それに対して、免除者を入れると、実際の納付月数に対する納付月数は五二%だった、平均して大体一〇%は実態として納付率が低いんだということが厚生労働省から発表になりました。

 つまり、六月三日の発表の六三%というのは、この間の対象者の範囲を広げておりますので、現実的にはそれより低い。つまり、納付対象者の月数に対して五〇%の人しか現実的には、これは納付していない人という概念ではないですけれども、納付月数に対して五〇%しか払っていないことに対して、本当にこれが破綻していないんでしょうか。私は、そこまで含めて、この六月三日の事実を徹底的に分析することがやはり必要ではないかなというふうに思います。対象者の月数を全部入れると実態はそうなんだということを厚生労働省が言っているわけでございます。

 そして、もう一つ欠落している点は、厚生年金に関する空洞化の問題であります。これは絶対、現実はどうなのかということについてはなかなか調査は不明でありますが、そこも含めて、実態として踏まえる必要があるのではないかなというふうに思いますので、ぜひとも、この六月三日の発表に対しまして徹底的に、現実を目をそらさないで分析するということを実現していただければありがたいと思います。

 それからもう一つ、サラリーマンの厚生年金に対する不平不満が高まっているということでございます。

 御案内のとおり、サラリーマンは通常、一〇〇%ガラス張りでありますので、まじめに保険料を払っている。一方、この五〇%という未納率、その保険料の未納をなおざりにしながら、現実的には、国庫負担を上げるために定率減税を上げたという事実でありますので、まじめに払っているサラリーマンからさらにこの定率減税で国庫負担の財源を求めるということ、これは二重に私はおかしいと思うんですね。そういう意味で、私は、やはりここも含めて徹底的に直さないと、そのうちサラリーマンの、一向一揆じゃないですけれども、不平不満は爆発して、大変なところに来ているのではないかなと。

 それは、不公平税制のトーゴーサンの問題もまだそのままになっております。そして社会保険料も、十がサラリーマンとしたら国民年金は五ですから、まさにトーゴー、そして払っていないのがゼロでありますので、社会保険料の方に関しても不公平の税制、そして不公平な社会保障というものを置いておいて、このままずっとサラリーマンのこういう形での社会への参画が成り立つということは私は思わないので、その辺も含めまして、ぜひとも御議論をいただきたいというふうに思います。

 以上です。

伊吹議員 家族や専業主婦の評価とか、あるいは納付という義務を果たした者が給付という権利を受けられるとか、これはいろいろ政党の理念によって考えは違うと思いますが、きょうお見えになってはおりませんが、古川さんが、そういう政党の理念を超えて、働き方が変わってきているという現実を直視しようとおっしゃったことは、私も同じ考えで、大変それは評価したいと思います。

 それで、民主党の案も大変傾聴に値するところが多々あると思いますが、やはりもう少し具体的に実質的な数字を入れて議論をしたいと思うのは、先ほど枝野さんがおっしゃったように、実質賦課方式で先食いをしてきたものの保障を、最低保障年金の財源という名目で取った消費税とその運用、それからまだ残っている既往の制度の積立金の運用で、これは経済成長率とか金利とかその他もろもろの条件によってすべて変わってくると思いますが、これで賄えるかどうかという、その具体的な数値をまず詰めないといけないと思います。その場合に、先ほど小池さんがおっしゃったように、それは新制度のための年金消費税ではなくて、旧制度のしりぬぐいのための消費税であるということをやはり明確にしておかなければならない。

 それから、雇用主を持たない自営業者とか専業主婦とか学生が負担にたえ得るかどうかという問題があります。つまり、二分の一の負担で済むサラリーマンと、全額の負担をしなければならない人たちの問題。それから、自営業者の所得の把握が現実にどうなるか。これは納税番号を入れても、勤労所得と金融所得は把握できますが、事業所得はやはり納税番号を入れているところでも申告制なんですね。

 一番の問題は、二階建ての報酬比例部分は強制加入だとおっしゃっているわけだけれども、最低保障年金は、ここに入った者だけに支払われるのか、入らなくても支払われるのか、ここのところも少し詰めなければいけないところだと思います。

 私の個人的な考えは、横路先生や五島先生がおっしゃっていたように、現に基礎年金という形では既にすべての国民は一元化されておりますから、ここをもう少し大きくとって、ここへ税を入れて、ここを強くしていく。そして、そこに税の部分については少なくとも所得制限をかけていく。これであれば、現実の制度とそう大きく変えなくても民主党案と非常に近い提案になっているんじゃないかと私は思うんですね。そういうことをやはりこれからお互いに歩み寄って議論していく。

 今お伺いしていまして、私は、「フランス革命についての省察」という書を著したエドマンド・バークが、議会制民主主義によって漸進的な制度変更を行って、七つの海に日の没することのない大英帝国の国民としての立場から、今までのものを一時に大変更することによって混乱をしたフランスの現状を憂慮して英国に書き送った手紙を思い出しながら、先生方の御意見を伺っておりました。

 以上です。

阿部議員 今の伊吹先生のお話も前向きに伺いながら、私のコメントも少しさせていただこうと思います。

 私は、きょう、国民年金一号の被保険者像をもっとクリアにすべきだということからお話し申し上げましたが、実は、この国民年金一号被保険者、いまだに繰り返し自営業者等のという言葉が使われますが、最近になってようやっと自営業者やフリーター等のという二つの頭がつくようになりました。

 この年齢を見てみますと、皆さんもお気づきかもしれませんが、実は四十歳以下の方が過半数になっております。二十歳代と三十歳代が過半を超えております。ここは、先ほどの御指摘にありました厚生年金の空洞化、あるいは企業主の負担を避ける姿勢から来ておりますので、私は、やはり企業の社会的責任というのは、雇用した人に対してきっちりとした社会保障をつける、と同時に、社会全体にも責任があると思いますので、伊吹先生のおっしゃったように、基礎年金部分に入っております企業負担というのはきっちりと維持していただく必要があろうかと思います。

 その意味で、消費税のみに財源を求めるという立場には立っておりませんし、過渡的に今先生が御指摘のようなことも検討されるのかなと思いながら伺っておりました。

 そして同時に、この間社会保険庁が、五百万円以上の方について、かつ未納の方が百二十万人おられるので強制徴収をなさるということをおっしゃっておられますが、その背景には、実は、この国民年金一号の加入者の所得状況が、逆に言えば、ある程度把握されているんだと思います。把握されているのであれば、そのデータをお出しいただきたい。

 私がこの間要求しましたデータの中で、年収五百万円以下の方が、いろいろな、世で言う自営業、その御家族、常用雇用で厚生年金ではないという方もおられます。それから、パート、無職など、全体を合わせて、五百万円以下が六割以上、七割近くでございます。

 私は、先ほどから失業率や生活保護率の高さときっちりと連動しておるんだと申しました背景には、今の収入に対して保険料が高過ぎるということと、それを、先ほど坂口先生がおっしゃったような、所得比例に限りなく近づかせていくような方向での改善はどうかという御指摘もあろうかと思いますが、そうではなくて、働き方が、逆に言えば、現状は苦しいパートという選択ですが、もっと言えば、その先はいろいろな働き方を選べるという意味で、年金と働き方がお互いにきっちりと組み合わされていくような一元化を求めるという見解を持っております。

遠山議員 公明党の遠山清彦でございます。

 私、きょう、二点意見を申し上げて、また、民主党案について、先ほど枝野議員からもお話があったんですが、お聞きをしたいことがございます。

 一つは、民主党の御提案では、全国民に所得比例の保険料が適用されるということでございますので、当然、パート労働者とかフリーターなどからも所得比例の保険料を徴収するということになると思うんですが、きょうの議論でも出てまいりましたけれども、パートやフリーターが支払う所得比例の保険料というのは、労使折半になるのか、それとも全額本人負担になるのか。これは民主党案には、枝野議員笑っておられますけれども、書いてありませんよね。書いてありますか。

 それで、労使折半であれば、事業主負担は大幅に増加をするということで確認をさせていただきたいと思いますが、また、もし全額本人負担ということであれば、これは、事業主負担を逃れるために今非正規雇用がふえているということに何ら対応していないということになるわけでございます。その点について、与党案も同じように批判をされておられますけれども、我々も、昨年の改革では附則に書いただけで、パート労働者の適用は見送っているわけでございますが、全国民対象の所得比例になったときに、これは同じような批判にたえ得る改革になるのかどうか、私はまだ釈然といたしておりません。

 二点目は、第二回のこの会議で枝野議員がおっしゃったことで気になることがあるんですが、負担の上限と給付の下限の両方を定めるのはおかしいということをおっしゃっておりました。だから現行の年金制度はおかしいということなんですけれども、そうしますと、民主党としては、負担の上限を決めて、給付はどこまで下がってもいいというお考えになるのか、逆に、給付の下限を決めて、負担は青天井で上がっていいということになるのかということなんですね。岡田代表は第二回の会議で、所得比例年金の保険料は一五%を超えない範囲で制度設計するというふうにおっしゃっておりますので、これは、保険料の上限を民主党として一五%に決めているかのような御発言でございます。

 ただ、ここで疑問になるのは、所得比例部分の給付が減ったら税方式部分の給付額を引き上げる、トータルで給付水準を維持するということになってしまうと、今度は消費税率が青天井で上がってしまうという問題が生じるわけでございます。

 それから、もう一点御指摘申し上げたいのは、昨年の四月九日の衆議院本会議で、民主党の五十嵐議員が趣旨説明質疑において、民主党は給付の下限はつけないんですかと聞かれて、給付水準は最低限五〇%を確保したいとおっしゃっておるわけであります。そうしますと、民主党としては、実際には、国会の答弁で給付の下限を事実上一緒に御提案されているということなんですね。

 私、これは、年金の一元化をして仮に今の制度を変えていったとしても、負担の上限と給付の下限という問題は民主党案でも残るわけでございまして、私の議事録等を読んだ理解では、民主党も負担の上限と給付の下限を示して与党案に臨んだのではないか。そうしますと、先般、今の制度はだめなんだ、その最大の理由は負担の上限と給付の下限を決めたことだというふうにおっしゃったことが論理的に自己破綻されているのではないかというふうに御指摘をさせていただいて、もしこの二点目についても御意見があればお伺いをしたいと思います。

枝野議員 昨年の議事録をちゃんと読んでいただければ、なぜパートを含めて一元化するかといったら、それは、今も御指摘があったとおり、事業主負担から逃れるためにパートやアルバイトに切りかえている、これを阻止する方法はたった一つしかないんです。事業主負担をなくするか、どういう雇い方をしても同じように事業主負担にするか。だから全員一律の一元化されたことにすると、ちゃんと答えています。全部ちゃんと雇用に応じて払ってもらう、当たり前のことじゃないですかと。それは議事録を読んでもらえば、それにちゃんと答えているはずです。

 それから給付の下限の問題。先ほどのここでの議論を聞いていただければ、ちゃんとはっきり、きょうの答えの方が出ています。

 なぜかといったら、みなし掛金建てをすると言っています。みなし掛金建てをするんですから、その掛けている年数などをいろいろ考えていくと、掛ける年数が大体四十年ぐらい、受け取る年数が、そこから先、平均余命まで。現行の平均余命を考えると、現役世代時代に納めていた月額平均の保険料に対して、所得比例年金では大体その二・五、六倍の給付を受けるということになりますと。

 ただ、所得の低い人たちには最低保障年金がくっつきますから、そういう部分のところで、なおかつ消費税は三%ぐらいが今納得される水準だから、そういうところを合わせると五〇%を維持したいと申し上げているので、維持できますなんてことは一切言ってきていません。そこのところは、維持したいと言うのと、維持しますと言って百年安心とうそをつくのとは明確に違うということは区別させていただきたいと思います。

 それから、先ほど来の話で民主党案の揚げ足取りを一生懸命やっておられますが、そもそもの前提条件の話をさせていただきたい。

 きょうは、年金制度の現状認識及び将来の見通しという話をしています。そもそも、先ほど若干伊吹先生が違うようなニュアンスのこともあったかもしれませんが、基本的には自由民主党は、党を代表して田村先生の御指摘は、現行制度のままで大丈夫なんだというお話をしています。

 私たちは、小選挙区制度を導入して、二大政治勢力による政権交代可能な政治構造をつくりました。そして、マニフェストというイギリスの制度にそれぞれ倣って、選挙の前に、何をやるかということをそれぞれの政治勢力の側が国民の前に示して、そして選挙で決めていただく、選挙によってコンセンサスをつくる、こういう制度をとっています。だから、それぞれの政党あるいは自公という政治勢力の間で選挙の前に具体的なことを示して選挙で決めていただくというのが、重要な問題ほどそうしなきゃならない。

 したがって、本来であるならば、こういった場をつくること自体が、二大政治勢力制やマニフェストという趣旨からすれば違います。

 違うけれども、なぜやっているのか。そうはいっても、選挙で結論を出すのではなくて、二大政治勢力の間で合意形成をして進めるべきテーマが二つだけあります。

 一つは憲法です。これは、そもそも制度として三分の二条項があります。ですから、政権選択の選挙によって三分の二条項をクリアすることができませんから、これは政権選択とは別の次元のところでやらなければなりません。

 しかし、それ以外のところは、基本的には、重要な問題ほど選挙できちっと選択してもらう。それぞれに案をつくって、それぞれ選挙で決めてもらう。我々は民主党の案を政権交代で実現する。皆さんも、皆さんの案がいいんだったら、民主党なんかの意見を聞かないで、皆さんの意見を選挙で進めていけばいい。

 ただ、年金について一つだけ違うこと。皆さんがおっしゃっているような、三分の一を二分の一にするとか、その程度のびほう策だったらば、それは選挙で皆さん決めて、多数でとっている方で決めてください。だけれども、我々が言っているように、今までの制度に一たんリセットボタンを押して全く新しい制度に切りかえるということは、一たん切りかえたら、次の選挙でまた政権がかわったからといって戻すことはできません。ですから、年金について大きな枠組みをどうするかということについてだけは、これは、例えば五年ごとに政権がかわるからといって五年ごとに全部見直すことはできませんから、例外的に一緒にやらなきゃいけません。

 だから、そういう抜本的に、今の制度そのものを前提とする話でなくて、今の制度自体を白紙に戻してどうするのかという議論であれば、超党派でやる意味があります。でも、そうじゃなくて、今の制度は抜本改革でした、いい制度です、びほう策についてどうしましょうか、こんなことは、皆さん与党の中で決めて選挙で示して、選挙で勝ったら実行してください。そんな話に我々はつき合う必要がない。そのことをはっきりさせておきたいと思います。

小池議員 先ほど枝野議員から御説明がありまして、旧制度分の給付財源の不足分に消費税を充当するということも含まれているということでありました。その上で、二点指摘ができるかと思います。

 そうだとしても、消費税が積み立てられていくということについては変わりがないということであります。民主党案では、旧制度の給付には既存の積立金を充当して、その後、不足分に消費税をずっと充当していく。したがって、既存の積立金を取り崩して、かわりに、不足分に充当した分を除いた消費税が積み立てられていくということになるわけですから、現象としては、保険料の積立金というのが消費税の積立金に置きかわっていく形になっていくというふうに思います。

 その上で、年金目的消費税が、当面の数十年間は、そのほとんどが、最低保障年金のためではなくて旧制度の給付に充てられるということがこの仕組みであるというふうに思います。その場合、旧制度の財源にするということは、これまで保険料を財源としていた旧制度の給付を消費税財源に置きかえるということになるわけですから、そもそも、保険料は事業主負担があり、消費税は大企業が負担をしていないという問題がございます。

 具体的に言えば、現在の無年金者あるいは低年金者からも消費税というのは同じように取られる、多額の消費税が徴収されていく。その結果、そういった人たちの年金を拡充するためではなくて、それが、大企業が支払っている分も含む保険料負担の軽減のために、当面、数十年間はほとんどが充当されていくということになってしまうのではないか。

 このことが果たして国民の理解を得られるのかどうかということについても、ぜひ、どうお考えか、お聞かせ願いたいというふうに思っております。

田村議員 幾つか御質問いただいて、ちょっと覚えていないもので申しわけないんですが、若林先生でしたか、免除者の数字が入っていないというお話がありました。そこは大きな部分だと思います。どう考えるか。

 つまり、免除者は保険料を全額納めていない。全額といいますか、全く納めていない方々を例にとりますと、しかしながら、三分の一給付は受けられるわけですね、二分の一になれば二分の一給付になるわけでありますけれども。それをもってして年金制度というものが維持できているかできていないか、これは私らも考える必要があると思います。つまり、生活をするために基礎的な出費というものを基礎年金で補うとするならば、そういう方々は、所得がない、それゆえに全額納付できませんから、入ってくるお金が少ない、そこをどう考えるか。これは我々も一考しなければならないというのは、それは認めます。

 しかしながら、その方々をもってして破綻しているというのは若干違う。それは、払えない、払える能力がないわけでありますから、その方々に対して公的国民年金保険というもので、基礎年金ですね、どう対応するかという議論でありますから、それをもってして破綻とおっしゃられるのは、ちょっと我々としては認識が違うなというふうに思います。

 それから、枝野先生のさっきおっしゃられた、ちょっと私、まだ頭が整理できないんです、法律の法文を今読ませていただいているんですが。

 最低保障年金に対応する年金目的税の消費税部分、これが多分過去債務に回っていくというのは理解できますが、一方で報酬比例年金の保険料の方です、これがいつからスタートするのかよくわからないんですけれども、この保険料も実は、すぐに給付はスタートしませんから、これもそちらに回っていく可能性がある。すると、勘定では、今言われたように、積立方式のような年金勘定になるわけですね、人のポイント制では。だから、幾ら掛ければ幾らもらえるかというのは将来わかる。

 ところが、それはバーチャルな世界であって、実際そのときお金があるかないかというのは、これは別ですよね。すると、そのときに少子化が起こっていれば、当然、この制度というものは今の制度と同じ問題点が起こってくる。つまり、お金がないから、そのとき、どうにかしてお金を取らなきゃならない。取るか給付を下げるか、どっちかしかないんですね。

 だから、この点がどうしても我々が理解できない点で、申しわけないんですが、お教えいただければありがたいと思います。

水島議員 民主党の水島広子でございます。

 先ほど古屋議員の方から女性と年金について民主党への問題提起がございましたので、こちらからもお話をさせていただきたいと思うんです。

 まず、民主党案が育児に対応できるのかという御質問だったんですけれども、逆に私はそれを政府・与党側に問い返したいと思いまして、では、去年のようなあんな内容で本当に育児に対応できているのかということになるわけです。

 先ほど、確かに育児休業中の年金保険料の免除のことについてお話しになったわけですけれども、では、今、実際に子供を持つ女性の現状がどうなっているのかというのを見ますと、出産を機に仕事をやめる方が七割というふうに言われています。幾ら女性の育児休業取得率が六〇%といっても、結局、出産前に仕事をしていた人の七割がやめて、残った人の六〇%が育児休業を取得しているわけですから、全体から見ると、本当に二割ぐらいの人についての話ということになります。

 日本のM字型雇用ということは国際的にもすっかり有名になってしまっているわけですけれども、実際に今、まだまだ、育児をきっかけに働き続けることを断念しなければならない人が多い。そして、働いているとしても、パートなどの労働条件になっているということが多い。これは、望むと望まざるにかかわらずということだと思います。

 そんな中で、それは子供が小さいうちには自分で家にいたくているんじゃないかとおっしゃるかもしれませんけれども、実際には、小さな子供を抱えている女性で、就労意欲があるにもかかわらず無業というような方が多いということ、これは多分、古屋議員も御存じのことだと思います。

 そのような現状を踏まえますと、やはり先ほど来御提起があります、第一号被保険者の実態がどうなっているのかという話にもなってくるわけですけれども、実際には、昨年提案されました育児休業期間中の年金保険料免除、それだけをもって、女性と年金、育児という観点からちゃんとできています、民主党はできていないじゃないですかと言われても、余りにも狭い領域のことしか見ておられないのではないかなというふうに感じております。

 全体の、女性がどういう現場で今過ごしているかということを見渡しますと、やはりこれは年金を一元化していくということ。そして、民主党としては、それでも今まだ女性の方が育児や介護などの家庭的責任を多く担わされているという現状と、また、男女の賃金格差が非常に大きいという現状にかんがみて、当面の間の措置として二分二乗方式を提案しているということでございまして、将来的には、男性でも女性でも差別されることなく同じような賃金をいただく。そして、それぞれ男性も女性も、ワーク・ライフ・バランス、仕事と生活の調和がとれるような生活をしていくことによって、民主党は次世代育成支援もそのような観点から考えておりますけれども、そういうことによって社会をきちんとまた組み立てていこうというふうに考えての提案でございます。

 逆にこちらから伺いたいのは、そうやって女性が出産を機にそれだけ職場から離れなければいけないというような状況の中で、一元化以外にこれを乗り越えるような方法があるのかということは、逆に質問をこちらからお返しさせていただきたいというふうに考えております。

 また、今、次世代育成支援ということで少子化のことについて少々触れましたけれども、これは、きょうせっかく坂口前大臣がいらしているので、この場をおかりしてちょっと質問させていただきたいんです。

 昨年、私も厚生労働委員会で、当時の坂口大臣に年金についての質問をいろいろさせていただいたわけでございますけれども、昨年は一・二九ショックというのがございまして、そのときに、たしか坂口前大臣は、これは瞬間風速的なものでというふうにおっしゃって、それが名せりふとして残ったような記憶がございます。

 今、冷静に振り返ってごらんになって、一議員として振り返られて、あれは大臣だったからしようがなく言ったことなのか、それとも、一人の政治家として、いまだにそんなふうに思っていたらことしその期待が裏切られたということなのか。そのあたり、もしもコメントをいただければ、当時審議に加わっていた者としましてきちんと総括ができるのではないかと思いますので、よろしくお願いいたします。

坂口議員 出生率の話でございますが、確かに去年、一・二九という数字が出まして、そのときに瞬間風速という言葉を使ったことは事実でございますが、考えてみれば、それぞれの年のそれぞれ瞬間風速をいつも見ておるんですね。ことしはことしの瞬間風速を見ておるわけでありまして、決して間違いではなかった。それが、瞬間風速をずっと積み重ねていって、それじゃどうなるのかということなんだろうというふうに思っております。

枝野議員 田村先生、大分御理解をいただいているんだと思って伺っていましたが、我々は完全な積立方式ではありません。みなし掛金建て方式で、実際にそのお金を積み立てておいてどうこうするではありません。それだったら、国がやる意味は必ずしもないかなと。

 物価なら急速な物価変動などがあり得ますから、やはりマクロの財政的な運営としては、給付財源の大方の部分はその時点での現役世代が納めたお金を給付に回すとやりませんと、それこそ、最近はありませんけれども、五十倍、百倍だなんというインフレがあったときに、積んでおきましたお金を給付しますでは成り立たないだろうと思いますから、したがって、あくまでもみなし掛金建てです。

 その場合に、今のように給付水準を政治判断で適当に決めているというやり方ではどんどん苦しくなっていって、あいまいになって、信用できない。あくまでも、あなたがもらえるお金は、あなたの掛けたお金と物価上昇との兼ね合いでもう決まっているんですよという信頼感を与える。

 そして、それについて、当然、人口が減っていけば、積み立てがゼロであれば足りなくなるわけでありますが、その部分をどの程度積み立てておけばいいのかというのは、どんぶり勘定的に幾ら給付水準にしますという今の制度ではなくて、現役世代の二・六倍ぐらいもらえますよという話の中で、あとは、人口減少の程度、これは二十年先の保険料を納める人のところまでは読めるわけですから、その人口減少を見通した一定額を積み立てておけばいいということの中で順々に物事を進めていくことができて、今と同じようなことにはならないと思います。

 いや、今でもやればいいんですよ。同じことを言ってもいいんですよ。同じ今の制度の中で、要するに国庫負担部分というのを中途半端に入れているからわけがわからなくなる。所得比例年金で給付水準は四〇%ぐらいになるんですね、所得代替率でいうと。一五%の保険料率で、そして保険料納付期間に対する平均余命の受取期間というのは二・六ぐらいですから、一五掛ける二・六で大体四〇%です。そういう所得代替率で所得比例年金は渡すんですということを決めれば一緒なんです。そうすると、要するに積み立ての額がずっと減らせて、だけれども、一定程度は持っていないと、どんどん人口が減っていくんだからつらくなる。そこのところは今よりもずっと見通しが立つ。こういう話なんです。

 いずれにしろ、民主党案についていろいろと細かい御質問をされて揚げ足をとっていただくことは構いませんけれども、幾らでも答弁はたえられると思っておるんですが、きょうのテーマであるとおり、現状認識について共通認識を持っていなかったら意味がないわけですよ。

 今聞いていただいているということは、我々と同じように、今のままではもたないという現状認識に立っておられるということであるならば、こういうやりとりをすることが建設的だと思いますが、先ほど来、今の制度でいいんですと少なくとも与党の側の公式見解としてはなっているわけで、今のままでいいんですという前提で今みたいな議論をしても何も建設的でない。今のままでいいんですと思っていらっしゃる皆さんとこういう議論をしてもしようがないから、我々は、次の選挙で過半数をとってこれを実行しますとやるしかないわけです。

 このことをここで議論することに意味があるとすれば、現状認識としてはこのままではもたないかもしれない、もたないかもしれないといって白紙でいろいろ議論をした結果として今の形に戻ってくることはあり得るかもしれないけれども、少なくとも一度は、今の制度ではもたないね、だから白紙で議論しましょうというところに戻っていただかないと、こういうやりとりで議論を進めることは全く意味がないので、そこのところは党としての見解を一度整理していただかないと、これ以上この議論を進めても仕方がないじゃないですか、こういうことを申し上げているわけです。

阿部議員 私はそこまで申し上げませんで、実は田村議員が、先ほど、学生納付者の特例や申請免除者の問題が母数から省かれておるということをお認めいただきましたので、だんだん実態に近くなってきた、共通認識に立てるんじゃないかと期待を持っておるわけです。

 なぜこういうことを申しますかというと、例えば、国民年金一号の被保険者の平成十三年度の統計しか近々のものが手元にございませんが、総数のうち、未納者が一八・三%、そして申請免除、学生納付特例者で二〇・八%、三八・三%が未納かあるいは特例で免除という状態でございます。これを、平成十六年度はもうデータがきっと、三月末で締めてあると思いますので、出ると思います。そういう実態もあわせて、私は冒頭申しましたが、ここの論議の俎上、土台をまずつくっていただきたいと思います。

 国民年金一号の被保険者の年齢状況、職業状況、所得状況、そして、一体どれくらいの方が未納や免除という状態になり、納付率はかりそめです、先ほど民主党の方からもございましたように、実質納付率は、これは会計検査院でやったところでも五〇・何%という形に出ております。ここの認識がどうであるかということが一致しない限り、申しわけないけれども、空中戦になってしまうと思います。

 社会保険庁の方でも、この間、データを出してくれとこちらから要求すれば、例えば平成七年、十年、十三年と三年置きに加入者状況をきっちりとったデータ等もございますので、要は十六年度のものであろうかと思います。

 何度も申しますが、働き方が多様化しておる現実。そして、収入も、年収三百万円以下で暮らせるという本が売れたら、途端に今は、年収二百万円以下、百万円台という方が大変にふえておる。そして、厚生年金の保険料が上がれば上がるほど、逆にそういうフリーターやパートやアルバイト化に拍車がかかっておる。今とめなければとんでもない社会像になってしまうと思いますので、私は、むしろきょうは比較的国民年金というところにターゲットが絞られ、新たな論議も加わったと思っておりますので、ぜひ議長の方で、次のテーマを絞り、データを出させていただいて論議を続けていただければとお願い申し上げます。

田村議員 阿部先生のお話なんですけれども、国民年金、特に所得がそれほど多くない方々の問題、これは我々も認識を持っておりまして、お互いにいろいろな議論をこれから進めさせていただく必要があろうと思います。そういう方々を、この公的年金、皆年金という制度の中にどうこれから取り込んでいくのか、これは大きな課題であろうと思いますので、同じ認識を持たせていただきながら議論を進めさせていただければなと。若干哲学的に違う部分はあるかもわかりませんが、認識の部分ではいろいろな議論をさせていただきたいというふうに思います。

 それから、枝野先生なんですけれども、お聞きすればするほど我々の案と本当に変わらないんじゃないのかな。骨格ですよ、骨格は変わらないんじゃないのかなという認識を持たせていただくんです。

 今の報酬比例の部分に関して申せば、要は設計の仕方がどちらが信頼性があるかというだけの話であって、こちらも将来推計。ただ、こちらは有限均衡方式で百年というような長い期間を見ておりますから、そこはそちらがどれぐらいの長さを見ておるかわかりませんので対比できませんけれども、基本的に、目標とする期間の中においてどう均衡させていくかということを考えれば、全く同じ内容なんであろうなというふうに思います。

 少子化になったときの対応はお互いに苦しい。いや、今以上に極端な少子化が進めば、やはりこれは、そのときの受給者の方々なのか、それとも保険料の負担者の方々になるのかわかりませんけれども、つらい思いをされる可能性というのはあるんであろうなというふうには思いますけれども、しかしながら、基本的な設計としてはそれほど変わらないんじゃないのかなという認識を持たせていただきました。

 違うのは多分、年金の一元化という中で、今の国民年金のグループの方々が報酬比例の中に取り込まれるという部分、それからもう一つは、個人単位の年金の積立制度と、こちらは、厚生年金、被用者年金の方は世帯単位になっておりますから、ここら辺は違うと思いますけれども、ここら辺を解決していきますと、私が以前思っておりました、一番初めに直観的に感じました民主党案というのは、この間、若干岡田党首がそのようなニュアンスを言われたんですけれども、基礎年金の消費税化、要するに、保険料を払わなくてもだれだってフリーライダーで年金がもらえるんだと。我々は、こういう発想は、生活保護との違いがよくわかりませんし、これは年金制度ではない、つまり公的扶助になってしまいますので、我々は明確に反対を言っております。

 ただ、今の枝野先生のお話を聞く限りでは、保険料を納めることが最低保障年金をもらえる条件になるんだという話でありますから、ここも、我々が言っておる定額制であるか、あとは定率制であるかという違いはありますけれども、骨格はそう違わないんではないのかな。

 ですから、そういう意味からいたしますと、今まで不幸なことにお互いにちょっと意見のぶつかり合いがあったのは事実でありますし、我々といたしましても十二分に民主党の案を勉強していなかったという部分もあると思います。これからぜひとも民主党の、ただ単に難癖をつけるわけじゃありませんから、民主党の詳細をいろいろとこれからも質問させていただいて、我々がわからない部分を教えていただきたいと思います。

 我々の案が我々もベストだと思っていないんです。ただ、我々は、過去を引きずりながら、どうやってこれから年金制度を維持していくかと考えた場合に、リセットして新しい案をつくるそのリスクというものを考えますと、やはり今の制度をマイナーチェンジしていった方が、国民にとって安心、安全という意味では御理解いただけるんであろうなという立場に立つんですが、もし民主党の案が、我々が理解する中において、これはいい案だという話になれば、それは全く民主党の案と我々はけんかし続けるという話じゃございませんので、そこはこれから詳細ないろいろな制度設計というものをお知らせいただければありがたいというふうに思います。

長勢議員 枝野さんからは検事さんの論告求刑のように厳しく、リセットするのかするのかと責められるので驚くんですが、どうもお話を聞いていても、議論の進め方について私とそんなに違わないんじゃないかなと思っておるんです。

 先ほど来、まず事実についてきちんとして、認識を共通にできるものはしていこうということを先にやろうというお話ですから、全くそのとおりで、先般民主党さんから資料要求がありましたから、今は両党でそれを具体的にどうするかを議論しているところでありますし、きょうの議論も踏まえて、みんな共通の数字を持って議論していくべきだろうと思っております。

 かつ、その数字が、仮に同じ前提に立っても評価はやはり違うわけで、評価は、当然それに対する現実的な対応策の可否というものとも関連してくると思うんです。そういう議論をきょうの議論のような形でやっていければ、できるものはできると私は確信をいたしますし、その結果としてリセットになれば、それはそれで、いい結論だということになるんだろうと思います。

 今回の合同会議を設置するについて、先ほど仙谷さんからお話がございましたが、社会保障制度は大変深刻な状況にある、かつ国民に不安が多い、このことを前提にして、政治としてお互いに党派を超えて議論するというのが今回の目的でございます。不安というのは、あるいは信頼がないというのは、一つは、負担がなければ給付がないということを我々は政治の責任として国民の皆さんにわかってもらわなきゃいけない、その大事な場だと私は思っております。

 となると、負担はこれからどれだけになっていくのかということについて、国民の皆さんは相当に不安を持っておられる。これが、例えば年金について言えば一八・三だ、一五%だと言っておりますが、しかし、実を言うと、国民の皆さんがわかっておられることは、年金だけでは済まないわけですね。この後、ほかのいろいろな社会保険の問題あるいは社会福祉の問題、さらに負担がふえるのではないか、この中でどういう生活設計をしていけばいいのかということについて、私は、政治としてはメッセージを送るのが、これは超党派でやるべきことだろうと思っておりますし、そのことと給付は当然連動するということも国民の皆さんにわかっていただかなければならない。

 そうなると、今、田村さんからもおっしゃいましたが、我々も知恵が出れば、また皆さん方に申し上げることもある。それから、現実に一元化について言えば、民主党さんの方でいろいろ御議論があるわけですから、それを前提にして議論してもいいんじゃないかと私は思っております。

 ぜひ、せっかくここまでいい議論ができたわけでございますから、余りリセットかどうかとばかり言わないで、ひとつ真剣に議論を進めさせていただきたいと思っています。

小川議員 一つの例として先にお話しさせていただきますけれども、例えば我が党の所得比例年金の採用に関して、所得の捕捉率が不完全である、不公平であるというような御批判的意見が自民党の方、与党の方から出ていますけれども、これ自体、年金を離れて、所得税のあり方として大変重要なことで、そもそも何十年間も、自営業者、あるいはサラリーマン以外の職業の方には甘くて、サラリーマンには過酷な所得税を取り続けてきたということを自民党は反省して、まず、国民、とりわけサラリーマンの方に十分反省と謝罪をしてからそういう意見を述べていただきたいと思っております。

 今のは導入部分でして、まず私が言いたいのは、先ほど阿部知子議員からも御指摘がありましたけれども、議論が空中戦に終わってはいけないので、やはり共通の事実関係、あるいはそうしたものを前提に議論しなくてはいけない。

 例えば所得の捕捉率に関しても、完全じゃない完全じゃないと与党の方がおっしゃられます。確かに完全でないとは思っておりますけれども、では、どの程度の状況なのか。昔のようにクロヨンイチなのかトーゴーサンなのか、それとも、もうかなり改善されているのか、やはりこういう事実関係をまず正しく把握してから議論することが肝要ではないか。

 そういう意味では、こうした面に関する資料の提出あるいは調査の実施、阿部さんが言われたように、一号被保険者の状況とかさまざまなことについて、具体的な資料を各省庁から徹底的に出していただく。それとともに、必要な調査、これはこの会議が主体となってどんどん行っていくということで基礎的な事実を固めて、それから実りある議論をいたしたい、そういうふうに思っております。

仙谷会長代理 今、伊吹文明先生だけが札を上げていらっしゃいますが、ほかにいらっしゃいますでしょうか。先生を締めくくりとして、もうきょうの議論を終えてよろしいでしょうか。

 では、伊吹先生と城島先生にいたします。

伊吹議員 会長、ありがとうございました。

 きょうは、私は、全体として見ると、非常に実りのある会というか、お互いの立場がかなりわかり合えたと思います。

 小川先生、今、自営業者の所得捕捉のことをおっしゃいました。これがやはり与党として非常につらいところなんですよ、ありていに言うと。所得捕捉率を上げようとすれば上げられますよ。しかし、税務職員をあとこれだけ大増員して、自営業者のところへ毎日毎日調査に行くということが現実に受け入れられるかというバランスを考えてやらなければならないのが与党なんですよ。

 だからといって責任を逃れるわけではありませんよ。マニフェストというのは私は一つの方式としていいと思うけれども、多数をとって政権をとると、マニフェストの実現可能性というのが問われます。確実に問われます。しかし、政権をとれなかった者の提案したマニフェストのフィージビリティーというのはどうなんだという検証はないんですよ。ですからこそ、こういう話し合いの場というのがあるというふうに私は考えるべきだと思います。

 きょうの話を、結局、国民負担というか、財源的に言えば、今までの実質賦課方式で先食いしてしまった不足分を、最低保障年金というものを担保というか見せ金にして、消費税を取るということで埋めていく形で財源的な手当てをしていくのか。少しずつ毎年の不足部分を、基礎年金の国庫負担率を三分の一から二分の一、あるいはもう少し全体を大きくして、そこへ例えば四分の三を入れていくという形で財源的な補てんをしていくのか。私は、さっき枝野さんがずっと田村さんと話をしていたのを聞いていて、お互いになるほどなと思って私は二人のやりとりを聞いておりましたが、詰められるところは私は随分あるんじゃないかというふうにきょうは思いました。

 以上です。

城島議員 私は伊吹先生がおっしゃったこととほとんど逆の印象を持ったので、次回以降のこの会の持ち方について、ぜひ会長や会長代理やお互いの筆頭にお願いしたいと思って実は上げたんです。

 今、伊吹先生おっしゃいましたけれども、揚げ足をとるようなことじゃないんですけれども、全体にちょっと違って、伊吹先生がおっしゃったのは、聞きようによっては、与党の大変さをわからせるような場にしたいというふうに聞こえる部分があるんですよ。マニフェストの検証のために大事な場だと言われると、そもそも違うなと思ったんです。

 それは今の言葉ですけれども、全体的に、きょうは、見ていただくとわかるように、大体、特に民主党側の答えはほとんど枝野筆頭が中心にならざるを得ないということは、きょうのテーマそのものは、各党の思っている年金制度の現状認識と将来見通しについてもう一回整理してやろうということだったと思いますけれども、それぞれから出ているかなりの大半の時間が民主党案についての質問というところで、しかもその多くは、例えば、もし本当にそれで論議を深めたいという観点の質問であれば、事前に御質問いただくとかいうことでこの論議を深めることができたはずの質問が大半であるということを含めて考えると、やはり民主党案に対しての質疑でお茶を濁しているというふうにしか思えない部分が大半ですよ、率直に言わせていただいて。だから多くのメンバーの意見というのは出てこない、我が党の場合は。阿部先生は非常に優しい先生ですから、先ほどそういう感想を持たれたんだと思いますが。

 ですから、本当にこの場を、最初、うちの方の仙谷会長代理が言ったように、最初の本会議における決議に基づいてやるとすれば、もう少しそういう観点に立って、問題意識を共有してというところに論議をぜひ持っていっていただかなければ、僕は不要だと思いますよ、本当に。

 時間のむだ遣いだというような印象が非常に強いということを申し上げて、ぜひ次回以降の運営、よほど真剣に考えていただかないと、枝野議員が言ったようにリセットというかそういう気持ちになりかねないということが、少なくとも我が党のメンバーは大半だと思います。

仙谷会長代理 それでは、時間も参りましたので、本日の自由討議は終了することにいたします。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五十六分散会


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