衆議院

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第3号 平成17年5月27日(金曜日)

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平成十七年五月二十七日(金曜日)

    午前九時二分開議

 出席委員

   委員長 二階 俊博君

   理事 石破  茂君 理事 松岡 利勝君

   理事 柳澤 伯夫君 理事 山崎  拓君

   理事 桝屋 敬悟君

      井上 信治君    今村 雅弘君

      江藤  拓君    大野 松茂君

      大前 繁雄君    城内  実君

      北川 知克君    小泉 龍司君

      小杉  隆君    小西  理君

      左藤  章君    佐藤  勉君

      桜井 郁三君    柴山 昌彦君

      馳   浩君    松本  純君

      宮下 一郎君    山口 泰明君

      石井 啓一君    谷口 隆義君

      塩川 鉄也君

    …………………………………

   総務大臣         麻生 太郎君

   国務大臣

   (金融担当)       伊藤 達也君

   国務大臣

   (郵政民営化担当)    竹中 平蔵君

   内閣府副大臣       七条  明君

   内閣府副大臣       西川 公也君

   財務副大臣       田野瀬良太郎君

   内閣府大臣政務官     木村  勉君

   総務大臣政務官      松本  純君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  細見  真君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    牧野 治郎君

   参考人

   (日本郵政公社総裁)   生田 正治君

   衆議院調査局郵政民営化に関する特別調査室長    石田 俊彦君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十七日

 辞任         補欠選任

  園田 博之君     佐藤  勉君

同日

 辞任         補欠選任

  佐藤  勉君     園田 博之君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 郵政民営化法案(内閣提出第八四号)

 日本郵政株式会社法案(内閣提出第八五号)

 郵便事業株式会社法案(内閣提出第八六号)

 郵便局株式会社法案(内閣提出第八七号)

 独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案(内閣提出第八八号)

 郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第八九号)


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     ――――◇―――――

二階委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、郵政民営化法案、日本郵政株式会社法案、郵便事業株式会社法案、郵便局株式会社法案、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案及び郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の各案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、参考人として日本郵政公社総裁生田正治君の出席を求め、意見を聴取し、政府参考人として内閣官房内閣審議官細見真君及び財務省理財局長牧野治郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

二階委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

二階委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大野松茂君。

大野(松)委員 おはようございます。自由民主党の大野松茂でございます。

 本日から郵政民営化関連六法案の委員会審議がようやく始まります。しかし、本会議を初め本委員会においても、民主党、社民党の皆さんがいまだ欠席でございます。全く残念に思います。一刻も早く議論に加わることを強く期待するところであります。

 さて、郵政民営化は、一貫して構造改革を積極的に推進してこられた小泉内閣にありまして、小泉総理御自身が改革の本丸と位置づけ、官から民へ、民でできることは民でという方針のもとに、並々ならぬ熱意と情熱を持って取り組んでこられました。まさに小泉内閣の最重要課題ともいうべき政策課題でございます。

 総理は、折に触れて、郵政民営化は自分が総理でなければできない改革である、このような御発言もされておられますが、だれしも実現は極めて困難あるいはまた不可能と思っていた郵政民営化について、政府・与党合意を経て関連法案がこの国会に提出され、こうして委員会審議が始まりましたことは、大きな一歩を踏み出すものであると思っております。

 強力なリーダーシップと決断力によってここまで内閣を牽引してこられた小泉総理、さらには、法案の取りまとめや与党との調整などに精力的に取り組まれた竹中大臣を初めとする関係閣僚の皆様方に、敬意を表したいと思います。

 私自身も、自由民主党の中にありまして、このことに深くかかわってまいりましたが、きょう、こうして最初に質問に立たせていただきますことは、格別感慨深いものがございます。

 しかしながら、一方で、郵政民営化関連法案については、さまざまな疑問、不安、懸念をお持ちの方がおられます。自由民主党においても、郵政改革に関する関係合同部会を三十三回にわたって開催をいたしまして、時には深夜にまで及ぶ激しい議論を重ねてまいりました。本委員会において真剣な議論を闘わし、政府側が国民の疑問に真摯に答えていくことによって、郵政民営化に対する国民の御理解は自然と得られるものではないかと考えております。私も、こうした国民の疑問等を少しでも解消すべく、本日の質問を行ってまいりたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 まず、そもそも論についてでございます。なぜ民営化しなければならないのか、なぜ今急いで民営化に取り組む必要があるのか、郵政事業を民営化することによってどのようなメリットがあるのか、このような論点であります。こういった論点については、自由民主党における検討過程においても非常に激しい議論が交わされたところでありまして、今後、本委員会において、法案の内容を審議していく前提として、これらの諸点について明らかにしていくことが不可欠なことであろうと思っております。

 それでは、最初でありますが、中央省庁等改革基本法第三十三条一項六号の規定についてでございます。同法においては、民営化等の見直しは行わないこととすると規定されております。この規定をもって、郵政事業については将来にわたって民営化等の見直しは行わないという立法府の意思であるとして、政府が郵政民営化法案を国会に提出するのは法律違反ではないかという意見さえございます。

 政府提出の郵政民営化関連法案が真に国民の利便に資する改革案であるか否か、その内容を慎重に吟味していくことが本委員会の責務である、こう考えておりますが、そういった実質的な議論に入ります前に、まず、中央省庁等改革基本法第三十三条一項六号に関する政府側の見解について、竹中郵政民営化担当大臣から明確にしていただきたいと思います。

竹中国務大臣 答弁に当たりまして、まず、大野委員には、これまでの政府・与党の協議の中でさまざまな御指導を賜りましたこと、改めて感謝している次第でございます。

 大野委員から、郵政改革に当たっての入り口、最も基本の点についてのお尋ねがございました。

 中央省庁等改革基本法第三十三条第一項第六号の規定でございますけれども、これについて、これは我々の解釈としましては、この規定は、国営の新たな公社を設立するために必要な措置を講ずる際の方針として定められたものである、したがって、民営化問題も含めまして、公社化がなされた後のあり方を何ら拘束するものではない、これが実は政府としてのこの条文に関する見解でございます。

 もうこの点は従来から、本会議、関係委員会での答弁でございますとか、質問主意書にもこれに関してございました。それへの答弁書におきまして、政府として繰り返し表明させていただいているところでございます。

 郵政民営化関連法案を国会に提出することが、この基本法違反に当たるのではないかという考えをおっしゃる方がおられるわけですけれども、政府としては全くそのように考えてはいないということでございます。

 一例としまして、これは平成十四年六月の総務委員会であったと思いますが、当時の津野内閣法制局長官がこの条文について詳しく内閣法制局としての見解を示しておられます。

 その部分を少し読ませていただきますが、この三十三条一項六号でございますけれども、これは先ほど条文を読ませていただきましたけれども、この第一項で、「政府は、次に掲げる方針に従い、」と、まず方針を言っているわけでございます。その方針に従って「総務省に置かれる郵政事業庁の所掌に係る事務を一体的に遂行する国営の新たな公社を設立するために必要な措置を講ずるものとする。」こういうふうにしている。

 まさに、次に掲げる方針に従って必要な措置を講ずるというふうになっているわけでありまして、これは、郵政三事業において国営の新たな公社を設立するために必要な措置を講ずる際の方針の一つとして、民営化等の見直しを行わない旨を定めているものでございまして、公社化以降のことまでも規定したものではないというふうに解されるわけであります。

 これは、当時津野法制局長官の答弁でございます。政府の見解は、まさにこういうものでございます。

大野(松)委員 ただいま、中央省庁等改革基本法三十三条に関する政府側の見解を明らかにしていただきました。

 続いて、そもそも論の中身に入っていきたいと思っておりますが、第一には、なぜ郵政事業を民営化しなければならないのかの必要性、目的の問題でございます。

 現在の日本郵政公社は、経営状況にも特に問題はなく、提供するサービスの質についても国民はおおむね満足している状況にあります。旧国鉄改革のときのような改革に対する差し迫った必要性といったものは、多くの国民は感じておりません。なぜ郵政民営化が必要なのか、あるいは郵政民営化の目的は何なのかについて、国民の理解は必ずしも十分に深まっているとは言えないのではないでしょうか。郵政民営化という大改革をなし遂げようとするのであれば、まずこうした入り口論から国民の理解を得ることが重要でございます。

 郵政民営化の必要性と目的について、竹中大臣から御答弁をお願いいたします。

竹中国務大臣 なぜ民営化なのか、その必要性と目的について明確に述べよという御指摘でございます。

 これも、いろいろなところで、私自身そういう声に接しまして、そういう説明を求められるわけでございますが、やはり基本的な考え方というのは、民間にできることは民間でやっていただく、それがまさに郵政民営化の目指すところであるということであろうかと思います。

 そういう方針のもとで、郵政の事業というのは四つの機能を有しているわけでございますけれども、このそれぞれの機能を、我々の社会を支える市場原理のもとで、それぞれ新たな四つの会社として自立した存在にすることによってまさに国民にメリットをもたらす。どういうようなメリットがもたらされるのかということに関しては、これは、総理も国会の答弁等々で何回か話しておられますが、大きく三つ。

 郵便局を通じて、国民から集めた約三百四十兆円もの膨大な資金を官から民に流すその道を開く、これが第一のやはりメリット。第二は、約四十万人の郵政公社の職員が民間人になるとともに、従来免除されていた税金が支払われること等により財政再建にも貢献するなど、小さな政府の実現に資する、これが第二の点。そして第三の点としては、国の関与をできるだけ控えて、民間企業と同一の条件で自由な経営を可能にすることによりまして、まさに質の高い多様なサービスが提供されるようになる、利用者の利便に資する。このようなメリットを引き出して、それによって構造改革を一層前進させて、国民に大きな利益をもたらす、そういうことを念頭に置いているわけでございます。

 もう言うまでもありませんけれども、民間にできることは民間にというのは、経済の活性化を図る上でこれは極めて重要な、私たちの社会を支える市場経済社会の基本的な原理であると思います。そして、小泉内閣が推進します構造改革の大原則だと言ってもよろしいかと思います。

 この郵政の事業につきましては、郵便の事業、郵貯の事業、簡保の事業、これはいずれの分野も民間企業が自由な経営のもとで同様のサービスを提供しております。公務員でなければできない事業ではない、民間による運営が十分可能であるというふうに考えるわけでございます。

 また一方で、この郵政という一つの経営主体をとってみましても、御承知のように、郵便事業に関しましては、Eメールの普及等々で、その他の通信手段の発達によりまして、郵便物数が毎年二%なり二・五%なり減少して、今後さらにその減少が加速するという懸念もあるところでございます。また、郵貯の事業でありますとか、簡保、保険の事業につきましても、残高等の減少傾向が顕著になっているというところもございます。

 このような状況に対応しまして、まさに健全な事業経営を維持していくというためにも、まさに郵政という一つの事業体のためにも、市場経済の中で民間活力による自由な経営を実現していくことが非常に重要であるというふうに考えているところでございます。

大野(松)委員 国民の皆さんにお尋ねしてもそうなんですが、今のままこの郵便局のネットワークを維持してほしい、そして、郵政三事業を中心としたこの事業を今のまま継続してほしい、こう大方の皆さんが口にされます。ですから、今の郵便局の体制について、言うなれば不満を持っておらないということをあちこちで感じるわけなんですが、しかし、将来にわたってこれを維持していくということにはいろいろ問題がありますことも私どもも推定できるところがございます。

 そうした中で、ただいまの御答弁に関連してでございますが、民営化によりまして、自由な経営のもとで多様なサービスが提供可能になるということをしばしば御説明なされます。民営化しなくても、公社のままで経営の自由度を高め、新たなサービスの提供を可能にすればよいのではないか、こういう御意見もあります。公社のまま必要な改革をすればよいのではないか、こういう御指摘であります。

 この点について、政府の見解をお伺いいたします。

竹中国務大臣 郵政公社は、生田総裁のリーダーシップのもとで大変その経営の成果も上げられて、そして、国民、消費者の側から評価を得ている、私も全くそのとおりであるというふうに思います。

 そうした中で、では、公社のままで経営の自由度を高めて新たなサービスを提供すればいいじゃないか、公社のままで改革を進めていったらどうなのだ、そのような意見があることは私も十分に承知をしております。

 しかしながら、公社というのは、そもそも、公共の目的があって、それを担保するために国の全額出資で設立されている特別の法人でございます。したがいまして、その業務範囲でありますとか、他の法人への出資等々につきましては、その設立目的を踏まえておのずと一定の制限がある、これはもう当然のことであろうかと思います。

 また、公社が取り扱う商品、サービスというのは、そうした性格を反映して個別具体的に法律上限定されている、限定列挙して、これはやってもいいというような形に公的な性格から当然ならざるを得ないわけでございます。したがいまして、仮に商品、サービスを追加しようとする場合には、これは法律改正が必要になります。こういう形で、公社の体制では、やはり柔軟かつ機動的な事業運営を困難とするさまざまな制約があるというふうに考えねばならないと思います。

 我々の考え、政府としての考え方を申し上げれば、民間企業が自由な経営のもとで実施しているような業務を公社という公的な性格の強い組織で実施するということに関しては、やはり抑制的に考えざるを得ないところでございます。

 その意味では、やはり、民間でできることは民間でという小泉内閣の推進する構造改革の大原則に照らして考えますと、民営化した新会社が、市場原理に基づいて民間企業と同一の競争条件のもとで自由な競争を行っていただいて、そして、いろいろな知恵を出して新たな業務を実施することによって国民によりよいサービスを提供するようにする、それがやはり望ましい方向、解決の方向であるというふうに考えているところでございます。

大野(松)委員 次に、郵政の民営化によりまして、三百五十兆円、最近の資料ですと三百四十兆円に及ぶそうでございますが、膨大なこの資金を官から民に流す道を開くということも民営化の中にはございます。

 今現在、郵貯、簡保の資金は大量の国債に運用されているのが実態でありまして、民営化したからといって本当に資金の流れが官から民に流れるのかという疑問の声が聞かれます。なぜ郵政民営化により資金の流れが官から民に変わるのか、この点について、より詳しい御説明をお願いします。

竹中国務大臣 郵政の改革というのは非常に多面的な性格を持っておりますが、その中でも最も重視しなければいけない側面の一つが、やはり今大野委員御指摘の金融面での改革、金融面でその効果をいかにしっかりとしたものにしていくかということであろうかと思います。

 郵貯、簡保、現在約三百四十兆円の資産を預かっている、これは家計が持っている金融資産の四分の一に当たるという大変膨大な資金を集めているわけでございます。しかし、これは政府が集めているお金で政府保証もついている。したがって、郵政公社の資金、三百四十兆円の資金というのは、いわば官の資金でございます。そして、これは官の資金である以上、国民負担を回避するという観点から、安全資産に運用せざるを得ないという宿命を持ってまいります。したがって、結果的にその大部分を公債、国債等の公的な部分に還流させている。つまり、官が集めて官で使う、そのお金がストックベースで家計の金融資産の四分の一にも達しているというのが、今の郵政の金融からとらえた側面であろうかと思います。

 これが、民営化によりまして、郵貯・簡保資金が定義上民間の資金となる。現在法律で厳しい制限が課されている資産運用についても、これはもちろん民間の企業の責任において、みずからの資産負債管理の責任においてということでありますけれども、規制が緩和されて、民間の経済活動を支えていく道が開かれるということになるわけでございます。

 もちろん、しかしこれは郵政の、郵貯の改革だけでこれが実現するというものではございません。郵政はいわばその入り口の部分に当たります。この大きな官の資金の流れを変えるためには、入り口と出口とそしてその経路、それぞれについてしっかりとした改革を進めなければいけない、これが成就して初めて、実はまさに官のお金が民で使えるというルートが開かれてまいります。

 この出口に関しましては、既に御承知のように特殊法人改革が進んでおりますけれども、さらに政策金融につきましても、中期的にその残高をしっかりと減らしていくという方向で検討を進めつつあるところでございます。

 その中間の財政投融資のところにつきましては、御承知のように十七年度までを特例としてまだ運用の道が開かれておりますが、いずれにしても、財投債、財投機関債等々で市場を通してしっかりとした資金の配分、アロケーションが進むような仕組みも進みつつある。

 この入り口、出口、そしてその流れの中途、これをすべて合わせることによって、今申し上げましたような官の資金を民にする、民に流すという道が完成していきます。

 したがいまして、いずれにしましても、その入り口であるまず郵政については、官の制約を取り払って、みずからの責任においてリスクをとれるような資金に性格を変えていく、これが全体の流れを完成させるための実は大変重要な必要条件になってまいるというふうに考えております。そうした観点からの実は改革、非常に大きな改革の大変重要な部分をこの郵政の民営化が担っているというふうに理解をしております。

大野(松)委員 そもそも論の第二といいましょうか、郵政民営化の緊急性の問題であります。

 関係者の大変な御苦労と国会における激論を経て発足いたしました日本郵政公社でありますが、平成十五年四月一日の発足からまだ二年余りしか時間が経過しておりません。また、日本郵政公社は四年を一期とする中期経営目標とそれを達成するための中期経営計画を策定して、総務大臣は中期経営目標期間の終了ごとにその達成状況を評価することとされております。公社化して最初の中期経営目標の結果もわからない段階にございます。なぜそれほど急いで民営化に取り組まなければならないのか、このことについてお聞きをいたします。

竹中国務大臣 御答弁の前に、先ほどの私の答弁で、財投の特例として平成十七年度までと申し上げましたが、これは二〇〇七年度までの間違いでございます。平成十九年度まででございます。訂正をさせていただきます。

 今、大野委員から、公社は発足からまだ二年余りしかたっていないではないか、四年を一期とする最初の中期経営計画の結果を見てからでもよいのではないか、なぜそんなに急ぐのかという御質問がございました。やはり改革は急がねばならないのではないかという点に関して、ぜひ二点申し上げたいと思います。

 第一の点は、やはり現在の郵政事業を取り巻く環境が著しく非常に速いスピードで変化しているという点でございます。まず、郵便に関して見ますと、IT革命によってEメールが私たちの身の回りでも物すごい勢いで普及をしている、これは世界的な傾向でございます。その結果として、世界の郵政も同じように郵便物の減少に悩んでいるわけでありますが、日本の郵便物も毎年二ないし二・五%減少しているという厳しい状況がある。

 第二に、金融に関しましても、金融の技術革新などによりまして、民間が提供する金融サービスが非常に広範かつ多様な展開を示している、そのような中で郵貯の残高等々も低下をしているわけでございます。要するに、技術革新が金融面でも非常に激しいということ。

 そして、第三として、物流サービスを見ますと、これまたすさまじい勢いで変貌している。これは特に国際物流の面で、今アジアでは、中国、韓国等々、すさまじい勢いで国際物流のマーケットが拡大をしております。中国など十数%、場合によっては二割に達するような成長マーケットがあって、結果として、オランダやドイツでは民営化された郵便会社による国際展開が劇的に進んでいる、やはりそのような大きな環境変化があるということだと思います。

 公社の中期経営計画を見ましても、今後の経営見通しはやはり楽観が許されないということが示されているところでございまして、こうした環境変化に適切に対応するためには、速やかに郵政事業を民営化することが必要である、環境変化がやはりそれだけ早いというのが第一の点でございます。

 民営化を急ぐ第二の点として申し上げたいのは、実は、やはりこの民営化には大変時間がかかるということでございます。民営化が最終的な姿に至るまで、これは各国の例を見ても相当の年数がかかっています。準備の期間が要る、そして移行期間が必要である。

 今回の法案におきましても、二〇〇七年までを準備期間、それから約十年間を移行期間というふうに想定しているわけでございますけれども、そうしますと、あと十年たっても我々はまだ郵政民営化が完成していないということで、私は、国民的に十年たっても郵政民営化の議論をしているのだと思います。

 そういった長期の移行期間、準備期間を要するということを考えますと、これはやはり直ちに民営化に取り組むべきではないか、郵政公社が非常に頑張って力のあるうちにこそ改革を進めるべきではないか、そのように考えまして、今回の法案を提出させていただいているところでございます。

大野(松)委員 そもそも論についてはこの程度にとどめさせていただいて、法案の中身について何点かお伺いをいたしたいと思っております。

 郵政民営化をした場合、国民にとって本当にデメリットがないのかという不安感をお持ちの方が少なからずおられるものと考えます。ここからは、郵政民営化に伴う国民のさまざまな不安を解消すべく、政府から明確な御答弁を求めたいと思っております。

 申すまでもなく、郵政民営化は手段であって目的ではありません。民営化の結果、サービスが低下するようなことがあってはならないのは当然のことであります。ここでは、国民が不安を感じているのではないかと思われる点について質問させていただきます。

 まず、郵便局は、全国二万四千七百のネットワークによりまして、国民にとって非常に身近な存在であります。かつ、郵便サービスや金融サービスといった日常生活に欠くことのできない基本的なサービスを提供しております。現在国民が享受しているこうした利便性が民営化によって失われることはないのかという不安、郵政民営化に対して国民が抱く第一の懸念ではないでしょうか。

 具体的には、経営の合理化の観点から、最寄りの郵便局が廃局になるのではないか、金融の窓口サービスが維持されないのではないかという不安感が特に過疎地域においては強いのではないか、こう思います。郵政民営化が地方の切り捨てになるようなことでは、民営化法案は支持を得られないものと思います。

 ごく身近に郵便局があり、そこでは郵便サービスと金融サービスが受けられるという、現在、国民にとって当たり前のことですが、この当たり前のことが民営化後も維持されることが重要であります。利潤の追求を基本とする民間企業になってもこの点がどのように担保されるのか、一番大きな関心事だと思いますが、この点についてお尋ねをいたします。

西川副大臣 自民党との協議の中でも、ここは大きな論点になったかと思います。そういう中で、この郵便局の設置の問題でありますけれども、民営化後におきましても利用者の利便性を確保する、これはもう重要な課題である、こう受けとめております。

 この点をしっかりと担保するため、郵便局株式会社法第五条におきまして、あまねく全国において利用されることを旨として郵便局を設置することを法律上義務づけることとしております。具体的な設置基準は省令で定めることになりますが、与党との合意を踏まえ、特に過疎地については、法施行の際、現に存する郵便局ネットワークの水準を維持することを旨とすることを規定する考えでありまして、地域住民の利便性には十分配慮することとしております。

 また、郵便局における貯金、保険のサービスの提供も利用者の利便性の確保の観点から非常に重要であり、この点については、与党との合意を踏まえて対応してまいる考え方でございます。郵便貯金銀行、郵便保険会社に対し銀行免許、生命保険業免許を法律によりみなし付与するに当たり、移行期間をカバーする安定的な代理店契約、保険募集委託契約があることを免許の条件として付することとしております。これによりまして、移行期間中の郵便貯金銀行、郵便保険会社の郵便局会社への業務委託が担保されることとなると考えております。

 また、移行期間終了後の問題でありますけれども、郵便貯金銀行、郵便保険会社にとっての郵便局ネットワークの重要性、これを新たに自前の店舗網や保険募集体制を整備する、こういうことになりますと膨大なコストがかかるわけでありまして、これらを踏まえますと、全国一括の代理店契約が引き続き維持されるものと考えております。

 この点については、さらに、承継計画に対する主務大臣の認可の枠組みの中で、代理店契約等が十年以上の長期にわたり安定的、継続的であることを担保することができることとしております。仮に、過疎地などの一部の郵便局で貯金、保険のサービスの提供が困難となる場合には、社会・地域貢献基金を活用して、地域にとって必要性の高いサービスの確保を図ることとしております。これらによりまして、郵便局における貯金、保険のサービスの提供が確保されるもの、こう考えております。

 以上によりまして、民営化後においても利用者の利便性が確保される、こう考えております。

大野(松)委員 今の御説明がそのまま国民の皆さん方の理解につながることでありますから、引き続き丁寧な説明を政府側にお願いしておきたいと思います。

 国民、利用者の立場から今質問をさせていただいておりますが、次に、民営化後の各社と競合する同業他社との関係、いわゆる民業圧迫の問題について質問させていただきます。

 第一に、現在の郵貯、簡保の資金量は合わせて三百四十兆円という膨大なものであります。このような巨大な国営の金融機関を民営化すれば、既存の銀行や生命保険会社の経営に多大な影響を与え、民業圧迫になるのではないかという懸念があります。この点についてどのようにお考えか。郵貯、簡保の規模を縮小してから民営化すべきだ、このような意見もあるわけでありますが、御所見をあわせてお尋ねいたします。

竹中国務大臣 郵貯、簡保の資金量は合わせて三百四十兆円、大変膨大な、巨大なものでございます。それとの関連で、委員御指摘のように民業圧迫との懸念、また、そうしたことも踏まえまして、規模を当初から縮小させてはどうなのか、そのような意見があることも承知をしております。

 まず、規模を縮小するという御意見でございますけれども、郵政事業の改革は、我々としては、郵政公社に課せられております官業であるがゆえの制約を取り払いまして、それで、経営の自由度拡大によって郵貯、簡保の資金、機能を市場経済の中で効果的、効率的に活用する、そして、郵便局ネットワークという貴重な国民の資源を最大限有効に活用して国民や地域の利便性を向上させる、やはりそういう方向で考えるべきものであるというふうに思います。

 規模の縮小によって郵貯、簡保の役割を縮小させる、これはどの程度の縮小を議論されるのか、いろいろな方がいらっしゃるのかもしれませんが、やはり、一気に無理やりにそういうことをするということになる場合に、雇用を一体どのように確保するのか、当然そういう問題も生じると思っております。

 したがいまして、この郵政事業の改革というのは、何か上から官の力で強制的に規模の縮小を図るというようなものではなくて、民営化によって、民間企業として、みずからの責任と経営判断に基づいて資金の調達、運用を行う、そして、そういうことを通じて、市場経済の中でしかるべき規模に収れんさせていくという方向を目指すべきであるというふうに考えているわけでございます。

 ただ、今委員の御指摘にありましたように、やはり三百四十兆円という巨大な規模であるということで、いろいろな懸念があるということは十分に承知をしております。この郵貯銀行、郵便保険会社については、巨大であるということ以外にも、全額処分するまでは、つまり持ち株会社が持っている間は、やはり政府出資の形で国の信用や関与が残ることになる、さらには、一般事業会社を子会社に持つ持ち株会社と同じ屋根の下に置かれるということが、これはほかの会社、銀行ではそういうことが認められないわけですが、ここでは特例的に認められている等々の、やはり一般の金融機関には見られない競争上の優位性を持っているという点も事実であろうかと思います。

 こうした点も踏まえまして、この法案では、持ち株会社のもとに四分社化をした上で、郵便貯金銀行そして郵便保険会社の株式については、民営化の最終的な姿におきましては株式を完全処分するということを基本にして、この完全処分の義務を持ち株会社に課すというふうにしているわけでございます。

 また、移行期の当初は、やはり公社と同様の業務範囲からスタートをして、これは民営化ですから経営の自由度は持っていただきたい、同時に、民間とのイコールフッティングのバランスをとって、一方で民業圧迫にならないよう、他方で経営が順調にいくように、民営化委員会の意見を聞いた上で、透明、公平なプロセスを経て段階的に業務の拡大を図っていくというふうにしているところでございます。

 そのほかにも、政府保証つきの旧契約があるわけでございますけれども、これは独立行政法人である郵便貯金・簡易生命保険管理機構に分離して、安全資産を中心に運用していくというようなこともその制度設計の中に入れております。

 このように、今回の法案では、市場でありますとか金融システムへのショックを吸収しながら、郵貯と簡保を円滑に民間経済の中に吸収、統合するということを配慮しているつもりでございます。民営化後の郵便貯金銀行、郵便保険会社も含めまして、市場において適切な競争が行われるように、そして、結果的に金融システム全体がより効率的で利便性の高いものになって、国民に大きなメリットがもたらされるように制度設計をしているつもりでございます。

大野(松)委員 ただいまの答弁の中で、民営化委員会についてお触れになっております。この政府・与党の合意の中におきまして、民営化委員会における三年ごとの検証の対象には必ず設置基準に基づく郵便局の設置状況及び基金の活用等による金融・保険サービスの提供状況等が含まれることとする、このようにされております。ところが、その旨、政府案には実は明文の規定がございません。この点はどのような担保をされるのか、お答え願います。

西川副大臣 ここの部分、与党との協議の中で修正した大きな箇所であります。私どもが郵政関係合同部会に提出をした部分でありますけれども、修正前は、郵政民営化の達成のためという文章になっておりましたが、協議の中で、総合的な検証を行うという形に変わった、こういう部分であるわけであります。

 そこで、明文の規定がなくてどうなんだ、こういうことになりますけれども、与党との協議においてさまざまな論点があったわけでありまして、今申し上げたように、ここを、条文を変えた、こういうことであります。

 特に、郵便局ネットワークの維持や金融、保険のサービスの確保について議論を重ねる中で、これらを担保する措置はどうすればいいのか、こういう話になったと思います。そこで、今申し上げましたように、民営化委員会による三年ごとの検証の中で、実際にこれらが担保されているかどうか、こういうことを検証しながら、国会に報告をする、こういうことになったわけであります。

 この点、明文の規定がありませんけれども、担保するのには、今回の法案における民営化委員会の仕事になるわけでありますけれども、郵便局の設置基準に関する省令の制定、改廃の際、主務大臣に対し意見を述べる、これが一つあります。それから二つ目に、郵便局の設置状況について適切に把握することができること、こういうことを検証してもらうこと。そして、郵便貯金銀行及び郵便保険会社による営業所等の設置、廃止について、届け出を受けた主務大臣から通知を受け、必要な意見を述べること。こうされておりまして、三年ごとに郵政民営化の進捗状況について総合的な検証を行う際には、民営化委員会の関与が予定されている、こういうことになるわけであります。

 これらを総合的に判断していただいて、なお、検証する主体である民営化委員会でありますけれども、これは全閣僚で構成される推進本部のもとに置かれるものでありますから、政府としては、政府・与党合意の一当事者として、民営化委員会における検証が合意に基づくものになるように適切に対応してまいる、こういうことで明文の規定を補っていきたい、こう考えております。

大野(松)委員 次に、四分社化についてお尋ねをいたします。

 政府案では、持ち株会社のもとに、窓口、郵便、貯金、保険の四機能ごとに四分社化するとされております。これまで郵政事業は三事業一体で経営されてまいりました。民営化に伴い四分社化されるとしても、これら四事業の一体的な経営の確保への配慮、このことについては自民党においても議論となりました。この点について、政府案においてはどのように担保されているのか、竹中大臣にお伺いします。

竹中国務大臣 三事業一体の経営、これも、委員御承知のように、与党との協議の中で大変重要なポイントになったところでございます。

 民営化後の一体的経営の確保については、与党との合意の中でも確認されていますとおり、移行期間中につきましては、これは代理店契約の法律上の義務づけを行う、移行期間を十分にカバーするような義務づけ、それと持ち株会社による銀行と保険の保有というのは完全処分まではずっと続くわけでございますから、これによって移行期間についてはこれは確保されているというふうに当然申し上げてよいと思います。

 この代理店契約の義務づけにつきましては、御承知のように、みなし免許を付与するに当たりまして、こうした契約、銀行に関しては安定的な代理店契約、保険については保険募集委託契約があることを免許の条件とするということにしておりまして、これによりまして、郵便貯金銀行、郵便保険会社の郵便局会社への業務委託が担保されるということになります。この代理店契約が、移行期間を超える安定的、継続的なものになることについては、これは承継計画に対する主務大臣の認可の枠組みの中で担保するということになるわけでございます。

 もう一つ議論がございましたのは、では、移行期間終了後はどうなるのかというところだと思います。

 この移行期間終了後については、郵便貯金銀行、郵便保険会社は、これはいわば普通の銀行、普通の保険会社になるわけでございます。これら金融機関の株式を持ち株会社でありますとか郵便局会社等が取得するというようなことにつきましては、これは普通の会社でありますから、当然、独占禁止法、銀行法、保険業法など、一般的な規制の範囲内において、経営判断によって可能であるということに相なります。

 移行期間終了後、速やかに持ち株会社や郵便局会社が郵便貯金銀行、郵便保険会社の株式を市場から取得すれば、これは結果的に、与党合意にありますような株式の連続的保有も可能になるということになるわけでございます。

 なお、移行期間後、持ち株会社や郵便局会社等が資金運用の一環としまして銀行等の株式を取得することについては、今申し上げましたような一般的規制の範囲内において特段問題ないわけでございますが、同時にこれは、当然のことながら、特殊会社でございますから、特殊会社がその業務として銀行等に資本参加をすることにつきましては、その特殊会社の設立の目的に合わせて、またその規制に合わせて、特殊会社のそれぞれの法律に基づき、主務大臣の認可または届け出が必要になるという場合があるわけでございます。

 いずれにしましても、以上申し上げましたような、移行期間中、移行期間後、それぞれにつきまして、移行期間後は経営の判断を主軸として、しかし、それを補うさまざまな制度によって一体的な経営が実体的には担保されていくというふうに考えているところでございます。

大野(松)委員 引き続き、この四分社化についての質問なんですが、民営化後の各社は、より質の高い多様なサービスを提供することが当然のこととして求められます。そのためには、各社の健全経営の確保が前提となります。現在三事業一体で事業経営をしている公社を分社化して、それぞれの会社の経営は大丈夫なのかという懸念もあります。さまざまな論点があろうかと思いますが、特に窓口ネットワーク会社についてお尋ねをしたいと思っております。

 自民党内の議論においても、窓口ネットワーク会社というこれまでに例のない形態の会社が本当にやっていけるのかという意見が多数ございました。この点については、政府の見解をお伺いしたいと思います。

 また、従来の郵便、貯金、保険の三機能に加えて窓口ネットワーク機能という第四の機能を切り出して、そしてこれをもって一つの独立した会社とすることの積極的な意義について御答弁をお願いいたします。

竹中国務大臣 今回の分社化の一つの特徴としまして、委員御指摘のように、窓口ネットワーク会社、これは、人によれば非常に耳新しいといいますか、耳なれない言葉、そういうことかもしれません。それに関しまして、これが本当にやっていけるのかというさまざまな議論があるということも承知をしているところでございます。

 この郵便局会社につきましては、どういうことをやるかといいますと、郵便、郵便貯金、郵便保険等の各事業会社から窓口業務を受託する、そして適切な受託料を得る、同時に、これまで公社のもとではできなかった新規のサービスもいろいろな創意工夫でやっていただきまして収益力を確保するというふうにしておりまして、これらにより経営が成り立っていくものというふうに我々は考えているわけでございます。

 郵政民営化準備室が昨年十一月に骨格経営試算というのを発表しておりますけれども、この試算によりますと、新規事業に着手しなかった場合でも、郵便局会社は、試算の対象となっております移行期間中、毎年一千億以上の税引き前利益を計上するものと試算をされておりまして、先行き、利益水準は低下傾向にはありますけれども、黒字基調を維持することが十分に可能であるということが示されております。

 加えまして、この準備室が本年の三月に作成した採算性に関する試算という新たな試算がございますが、それにおいては、試算の対象としましたさまざまな新規の業務を実施することによりましてさらに二千億円以上の利益を上積みする可能性がある、これは一つの可能性として示しているわけですが、可能性があるということを示しております。

 これらの試算は、当事者である公社の十分な協力も得まして作成したものでございまして、経済状況等の外的条件に関する一定の前提条件のもとでは、これはやはり十分に信頼に足る試算であるというふうに私どもは認識をしております。

 また、この点につきましては、民営化する以上、公社もこれを目標とすべき利益水準であるというふうな認識をお示しだというふうに承知をしております。

 この窓口ネットワークは、言うまでもありませんけれども、これは二万四千を上回る郵便局のネットワークでありますから、国民にとっての貴重な財産であるというふうに思います。郵政三事業だけにとどまらず、これは地域と密着した幅広いサービスを提供できる拠点でありますので、より多くの国民や企業が活用できるようにすることが民営化に当たって私は大変重要であると思います。

 もし窓口ネットワークを他の事業と同一の会社に帰属させた場合には、窓口ネットワークの機能が他の事業の経営戦略等々に、事業展開に従属するということにかえってなってしまうだろう、それでその潜在力が十分に発揮されないまま市場で自立できるような形にはならないのではないか、そういうふうに考えるわけでございます。

 こうした点も踏まえまして、窓口ネットワークの機能を独立させて、いわば地域に密着した販売者としての専門性を高めて、同時に、創意工夫で最大限自由に事業展開をしていただけるものとしたい、そして他の事業との間で相互の経営に影響が及ばないようにする、そうするためにも、郵便局会社を積極的に一つの独立した会社とする必要があるというふうに判断をしたものでございます。

大野(松)委員 窓口ネットワーク会社そのものが新しい形なわけですから、そこでまた新しい分野への参入ができるという可能性をたくさん持っているんだろうと私は思います。それがまた、新たな地域との連帯、信頼につながっていくと思います。

 ところで、郵便局が現在果たしている公的な役割についてでございますが、現在、一部の郵便局では、住民票の写しの交付など、地方自治体からの受託業務が行われております。市町村合併の進展によりまして自治体の規模が大きくなる中で、身近な郵便局における自治体からの受託業務の提供は、今後ますますその重要性、必要性が増してくるものと考えております。

 そこで、こうした自治体からの受託業務は民営化後も郵便局において引き続き提供することができるのかどうか、その点についてお尋ねいたします。

西川副大臣 御指摘をいただきました地方公共団体からの業務の受託でありますけれども、昨年の十二月の自由民主党の「郵政改革についての申入れ」におきましても、引き続き、郵便局が地域住民の利便に資するよう、ワンストップサービス、あるいは行政サービスの提供拠点としても機能を果たさなければならない、こういう御要請を私どもはいただきました。

 これらを踏まえまして、地方公共団体の特定の事務の郵便局における取扱いに関する法律につきまして所要の改正を行い、改正後も引き続き郵便局会社が郵便局において住民票の写し等の交付などの地方公共団体からの受託業務を取り扱うことができるよう制度設計をしたところであります。

大野(松)委員 そこで、現在の日本郵政公社の職員は国家公務員でございます。今、郵便局は地方自治体からの受託業務をとり行っておりますが、民営化により公務員身分から離れた郵便局職員にこうした業務を扱わせて大丈夫なのかという問題がございます。特に、住民票など個人情報を取り扱うには守秘義務の課された公務員であることが必要ではないかという御意見も多数に上っております。

 この点、政府案においてはどのように手当てされているのか、明らかにしていただきます。

西川副大臣 このたび、郵政民営化によりまして、郵便局会社の職員は公務員の身分を離れる、こういうことになるわけでありまして、特殊会社の職員になる、こういうことになるわけであります。

 住民票の写し等の交付などの事務を取り扱う職員でありますけれども、請求者の個人情報を保護する必要性は従来と変わらないと認識しております。このため、住民票の写し等の交付などの事務に従事する職員に法律上の守秘義務を課すこととしており、これにより個人情報の保護は適切に担保されるものと考えております。つまり、守秘義務を課す、こういうことで対応してまいりたいと考えております。

大野(松)委員 とにかく、最先端である郵便局に対する信頼、また、それに対するところの、今後とも継続的に今の仕事をやっていただけるかどうかということが国民の皆さん方の最大の不安になっているわけでありますから、こうしたことが継続してできるんだということをさらに強調していただきたい、こう思っております。

 次に、情報システムについてお尋ねをいたします。

 情報システムの開発が、平成十九年四月一日の民営化実施に本当に間に合うのかという点について心配の向きが多数あります。政府案では、郵政民営化のための情報システム開発が大幅に遅延するおそれがあり、かつ、そのために郵政民営化の円滑な実施に著しい支障を生ずるおそれがあると認めるときは、法律の施行を六カ月延期できるとしております。

 そこでお尋ねなんですが、なぜ会計の面でも区切りのよい一年や二年ではなくて六カ月なのか、また、そもそも六カ月で足りるのか、大事なことでありますので、お尋ねします。

西川副大臣 このシステムの問題でありますけれども、郵政民営化情報システム検討会議におきまして専門家の検討をいただきました。その中の結論でありますけれども、暫定対応なら可能、こういう結論をいただいております。仮にシステム開発において問題が生じた場合であっても、それが想定される範囲内であれば二〇〇七年四月の民営化に特段の支障はない、まずこう考えております。

 そこで、一方で、想定を超えるようなシステムリスクへの対応は大丈夫なのか、こういう御心配をいただいたと思います。

 新しい経営陣となる経営委員会が、システム対応の上で問題がある、こういう判断をした場合には、民営化の約半年前であります二〇〇六年九月一日までに推進本部にその旨を申し出る、こういうことにしておりまして、その際に、必要があれば六カ月間民営化の時期を延期するものとしたものであります。

 この期間につきましてでありますけれども、二〇〇七年四月の民営化を六カ月延期すること、こういうことになるわけでありますが、申し出から一年以上の猶予ができる。つまり、六カ月前にやって六カ月延ばしますから一年間対応の期間はいわば猶予できる、こういうことになりますので、テスト期間やシステム改修にかかる期間は十分確保される、こう考えております。

 民営化の時期をいたずらに延ばすことはできない、こういうことでございまして、そういう観点から六カ月としたものでありまして、適切な期間であると考えております。

大野(松)委員 実は、きょうは麻生大臣、伊藤大臣にも御出席いただいているんですが、質問の機会がございませんで、大変恐縮でございますが、次の機会に譲りたいと思っております。

 最後になりますが、今般の郵政民営化関連法案、このことに対しまして、日本郵政公社の考え方について、生田総裁に御出席いただいておりますが、お尋ねをさせていただきます。

 郵政公社の考える三つの経営ビジョン、このことに照らしまして、この法案をどう評価されているのか、あるいはどのように考えておられるのか、率直にお答えをいただきたいと思います。

生田参考人 日本郵政公社の生田でございます。

 郵政事業の将来のあり方につきまして、先生方に、大変御熱心な審議を重ねられまして今日までこうやってお取りまとめになられたことに、まず敬意を表したいと思います。

 お答えさせていただきます。

 私どもといたしましては、民営化の御議論に際しましては、政府がお決めになった経済活性化の原則等、五原則がございますね、その五原則は非常に貴重ないい五原則だというふうに思っておりますので、これがきちんと反映されることを願ってまいりました。

 それに加えまして、私自身も、経済財政諮問会議に三度御招請を受けまして出席させていただいたわけでありますが、そういった場とかその他の席にお招きを受けましたときにいつも申し述べてきたことがあります。いつも同じことを申し上げてきました。

 それは、五原則をしっかり生かしつつ、生きたお金の流れをつくるとか、先ほど竹中大臣がおっしゃったように小さな政府をつくるとか、国家的な見地の重要な目的が幾つもあると思うのでありますが、そういった国家的な見地からの五目的と整合しつつ、公社の現在掲げております三つの経営ビジョン、これが、公社のままでずうっといくよりも、民営化するのであればよりよく、より早く達成できるように、三つの経営ビジョンがよりよく達成できるような制度設計にしていただきたい、こういうことを常にお願い申し上げてまいりました。

 私どもは、公社スタートの日に三つの経営ビジョンを掲げまして努力しているわけであります。その一つは、簡単に申してみますと、全国のお客様、私どもは国民という言葉は使いませんので同義語と思っていただいたらいいんですが、全国のお客様によりよいサービスを提供していく、真っ向サービスであります。それから二番目に、赤字構造の郵便も何とか黒字構造にして、郵政事業挙げて健全化していく、これは国家の財政にも資するであろう、健全な財政基盤の整備ということであります。それから三つ目のビジョンは、働く職員に将来展望と働きがいを持ってもらえるような職場をつくっていこう。この三つのビジョンを掲げておりますが、これが公社のままでいるよりもよりよく達成できる制度をということでありました。

 その視点から今般閣議決定されました法律案を拝見いたしますと、国民の必要な生活インフラとしての郵便局の役割を改めてきちんと御認識いただきまして、郵便局ネットワークの一層の有効活用を図り得る内容になっているだろうというふうにまず一点思います。

 たくさんありますけれども、三つだけ申し上げます。

 それから二つ目は、初期段階も含めまして、段階的とはいえ、新会社の経営の自由度が改善されていく、向上することが内容を拝見しますと期待されます。

 私は、あらゆる会議で過去にコインの両面論というのを申し上げまして、税金を払うとかいろいろな費用を払うとか、そういった面で民間と一緒にする、これはもう当然でしょう、費用を払う面の民営化ですね。であれば、それをコインの一面とすれば、コインのもう片面である、きちんと事業が推進できる、ビジネスモデルの方も民間と同じようにいわば民営化していただかなきゃいけない、その両面が公正に扱われて初めていい民営化に通ずるということをお願いしてきたわけでありますが、そういった趣旨が今回の法案には込められているというふうに私は理解しております。

 三番目は、三番目が最後ですが、私、ずっと申してきましたのは、過疎地も含めまして各地域社会での金融サービスも重要なので、これが引き続き提供できるような仕組みでないとうまくいかないということを申し上げてきたわけでありますが、今回の法案を拝見しますと、移行期においては、各郵便局の金融、郵貯、簡保ですが、その機能が維持されるということがはっきりしております。

 というふうなこと、今申し上げた三つの点、そういったことも含めまして、基本的な点で、私ども公社がお願いしてきた、あるいは主張してきたということに御理解をいただき、反映していただいているというふうに理解させていただいております。

 無論、細部について言えば、きょうは多くは申しませんが、基金の構想の関連で、本来、基金をつくるという趣旨に照らして考えれば、積み立てるのにも税金が要るのかな、はてなというふうな感じがいたしますし、例えば、一つの会社を上下二つに割ってしまう、郵貯カンパニーと窓口会社の二つに割ってしまう、そのゆえに民間では起こり得ない消費税が七百億も出てしまう、そういう取り扱いは逆にイコールフッティングということでどうなのかなというふうな、税制面等で引き続き御検討いただきたい点もあるわけでありますけれども、概して見せていただきますと、今回の法案は、初期からの経営の自由度改善の具体的な取り進め方、これが非常に重要だと思います。これを具体的にどうしていただくか。そういう具体的な取り進め方と、あとは経営力だと思います。強い経営力を入れるという経営力次第で、民営化により、三つの経営ビジョン、そのおのおのがさらに公社のままでいるよりもよりよくなる可能性があるものというふうに考えさせていただいております。

 終わらせていただきます。

大野(松)委員 率直にお答えいただきまして、まことにありがとうございました。

 郵政公社発足以来、公社の皆さん方が頑張っておられて、昨日でしたか一昨日でしたか、その成果についても発表があったところでございますが、また新しい時代に向けて取り組んでいただくということの過程の中から、我々も、さらにこの委員会の中での議論も深めていく必要がありますことを感じたところでございます。これから、本委員会における真剣な討議を通じまして、さらに郵政民営化法案についての国民の理解が深まり、そして、国民の信頼と期待にこたえられる郵政民営化法案が、この国会の中で十分議論の上で可決成立することを願っている一人でもございます。

 以上をもちまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

二階委員長 次に、宮下一郎君。

宮下委員 自由民主党の宮下一郎でございます。

 本日は、御質問の機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。心から感謝を申し上げます。

 私は、大野先生に引き続きまして、さまざまな懸念もございますので、そうした点について御質問させていただきたいと考えております。

 まず、基本的な考え方といたしまして、私は一昨年十一月の選挙で初当選をさせていただきました一期生でございますけれども、そのときの選挙の公約は、地域を元気にすることにより日本を再生させたい、そういうことでございました。

 現在、地域、特に中山間地や過疎地では、農協も合併が進んで支所が少なくなるなどさまざまな変化が起きておりまして、そうした中で、郵便局が地域の唯一の金融サービス拠点となっているというようなところも多くございます。まさに郵便局の果たしている役割は非常に大きいと考えております。

 また今、生田総裁のお話もございましたけれども、郵政公社がスタートして二年以上ですが、総裁のもとでさまざまな改革に取り組まれまして、すばらしい成果を上げておられる郵政公社でございます。私自身、この中期経営計画四年間が終了する二年後までの成果をしっかり見届けてから、その上で、さらにどうした改革が必要なのか、抜本改革に進むべきなのかどうなのか、そうした議論をするのが望ましいのではないか、そういうことを考えてまいりました。

 ただ、昨年からの議論の中で、さらに新規業務への拡大等々を図った方がいいのではないかというような議論も多々あり、民営化するデメリット、メリットいろいろ考えて、民営化するとしても、三事業一体の株式会社化、民営化の方がよいのではないかなというような立場で、これまで党内では議論をさせていただいたところでございます。こうした党内の議論も随分続けてまいりましたけれども、いまだ懸念される点がございますので、そうした点を中心にお伺いしたいと存じます。

 まず、利便性の低下があるのではないかということでございますけれども、平成十五年十月三日に出されましたいわゆる民営化五原則の中には、「国民にとっての利便性に配慮した形で改革を行う」という利便性原則が掲げられております。民営化することによりまして、郵便貯金法、簡易生命保険法といった法律が廃止されるわけでございまして、実質的に、郵便貯金や簡易保険という、ある意味特殊な商品というのがなくなるということを逆に意味するということになりまして、これによって利便性が低下する可能性があるのではないか、そうした懸念がございます。

 郵便貯金は、郵便貯金法第一条の「この法律は、郵便貯金を簡易で確実な貯蓄の手段としてあまねく公平に利用させることによつて、国民の経済生活の安定を図り、その福祉を増進することを目的とする。」こういった規定に基づきまして、どんな少額でも口座維持手数料を取っておりません。

 ところが、今、一般の都市銀行や外資系の銀行などでは、月末の残高が十万円とか五十万円とか一定の限度を切りまして、その限度以上がなければ、口座維持手数料を月々三百十五円とか、高いところでは月々二千百円取るというところもあるんですが、こういったことが始まっております。こうなると、預金利息以上の手数料でどんどん預金が目減りすることになりますので、実質、少額の口座しか持てない方は口座が持てないということになります。

 また、簡易保険は、簡易生命保険法の精神から、職業による加入制限がございません。また、加入に当たって医師の診査が不要であるとか、非常災害時における非常即時払いを受けることが可能であるとか、また保険金等受取権の差し押さえの禁止、また地震などによる保険金支払い免責がないなど、いわば国民生活のセーフティーネットとしての特別な商品、特別なサービスを提供しているものと考えております。一方、民間の生保では、危険度の高い職業だと生命保険契約ができない場合もございますし、さまざまな制約がございます。

 こういうことを考えますと、これらの郵便貯金とか簡易保険という商品は、ある意味公的サービスであって、先ほど民営化の趣旨の第一、民間にできることは民間にという御答弁がございましたけれども、これは民間では提供できない商品なのではないかという懸念がございます。最低でも、こうした生活インフラとも言えるようなサービスを提供し続けていただくことがぜひ求められると思いますが、こうしたことが可能なのかどうなのか、どういった仕組みで担保されているのか、そこら辺についてぜひお聞かせをいただきたいと思います。

竹中国務大臣 宮下委員の郵政に対する大変整合的な考え方というのは、私なりに理解をさせていただいているところでございます。その上で、政府の立場をぜひ申し述べさせていただきたいと思います。

 今委員がおっしゃった中で、セーフティーネットという言葉がございました。やはり国民の生活、特に小口の預金者、さらには地域等々でなかなか金融機会に恵まれない預金者、また保険の加入者、そうした方々への配慮というのは、これは社会的な観点から、当然のことながら私も極めて重要であるというふうに思います。

 手数料でありますとか危険な職業の方々の保険への加入等々に関しましては、これは、きょうは金融担当大臣もおられますが、実は民間の金融機関の中でもさまざまであるということだと思います。手数料等々に関しても、口座維持、ATM、いろいろな手数料がありますが、そういうところを取らない民間の銀行もございますし、また保険についても、その保険に加入するときに特別の要件を課さないような、そういう保険を提供している民間の生命保険会社もかなりあるというふうに承知をしております。そうした観点からいいますと、やはり国民のセーフティーネットということになりますと、何としても、その金融に接する機会があるかどうかという点が最大の問題になるんだろうなというふうに思います。

 そうした観点からは、実はやはり郵便局というのが、郵便の窓口業務、印紙の売りさばき等だけではなくてより幅広い業務を行う、その中に金融というのが現実問題として入って、今重要な役割を果たしているわけでありますが、やはりまず、拠点をしっかりと配置するように確保をいたします。それが設置基準の考え方、全国あまねく利用できることを旨として配置することを義務づける、そういう郵便局の配置に、一つ我々としてもその考えを示したところでございます。

 同時に、そこで、その確保された拠点局で金融サービスが提供されるようにする、それが次の段階として当然重要になろうかと思います。先ほどからも御答弁をさせていただきましたように、移行期間中については、免許付与の条件として、移行期間を十分カバーする長期の委託契約を義務づけておりますので、そういった意味での金融のサービスというのは、これは移行期間中はカバーされている。移行期間を上回るような長期の契約もこれは妨げるものではない。また、移行期間が終わった後につきましても、これは当然のことながら契約は続くもの、経営の判断としても続くものと思われますが、それでもそうしたことが難しくなった場合には、基金を活用してそれが維持できるようにすること。

 その意味で、宮下委員がおっしゃいますセーフティーネットの最も基本的な金融サービスの確保ということに関して、今回の法律でも十分な担保がなされているというふうに考えているところでございます。ぜひ、これをしっかりと運用できるようなものにしていきたいと思っております。

宮下委員 商品提供の条件については、提供する会社の経営判断ということだと思いますので、少なくともこうした商品をぜひ提供し続けていただきたいなと私は思っております。

 それから、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、将来的に、金利動向などによっては経営が厳しくなるので民営化して新規業務に進出した方がいいんだ、また、公社のままでは法律の制約が厳し過ぎてタイムリーな新規業務展開もできないので民営化が望ましいんだという点については、私もある程度理解ができるわけでございます。

 ただ、たとえ民営化するとしましても、三事業のユニバーサルサービスを維持していくためには、郵便、貯金、保険の三事業一体で株式会社化をしていただいて、そしてその上で、民間と同様の税負担、預金保険機構等々への保険料支払いなどのコスト負担をして、逆に民業圧迫にならないように、また赤字にならないようにしながら、民間の金融商品の取り扱いをしていくとか、株式投資信託、窓販等も始まりますが、こうしたことによって、窓口の業務で直接民間にお金が流れる、そういった商品の取り扱いをふやすとか、こうしたさまざまな業務を拡大していく、また、地域の市町村と連携した行政サービスの窓口機能の強化をしていく、こうした業務を拡大して、民間企業や地域のサポートを中心とした会社とするのが望ましいのではないかというイメージ、思いを私は抱いております。

 そうした立場から今回の四分社化による民営化法案を見ますと、最も大きな懸念は、やはり完全民営化後に貯金、保険の金融サービスが提供されるかどうかということでございます。同時に、郵便事業会社とか窓口会社の経営がきちんと成り立っていくのかというのも懸念ではありますけれども、とりあえず、まず金融サービスの点に絞ってお伺いしたいと思います。

 まず、代理店契約についての担保の有無ということでございますけれども、四分社化によってリスク遮断ができるということなんですが、逆に言いますと、窓口会社、郵便局会社の最も大きな収益の柱は、貯金会社、保険会社からの委託手数料であるということは事実だと思います。つまり、健全な経営が可能かどうかというのは、貯金銀行とか保険会社との代理店契約がきちんとなされるかどうかにかかっていると私は考えております。

 完全民営化が貯金銀行や保険会社に完全な自由度を与えるということでありますと、代理店契約が結ばれるかどうかはそのときにならなければわからないという意味で、そういう意味ではむしろ窓口会社の経営リスクは高まるのではないかという懸念がございます。

 こういうことに配慮するという形で、先月の郵政民営化法案に関する政府と与党間の合意という文書におきましては、「郵便銀行と郵便保険のユニバーサル・サービスの確保」という項目で「郵便貯金銀行(保険会社)に対してみなし銀行免許が付与される場合に必要とされる「安定的な代理店契約」について、その期間は、移行期間を超えて長期とすることも妨げないものとする。」となっておりまして、これによって契約が担保されるのだというふうな御説明がございます。

 私自身もこのとおり、ぜひ二十年とか三十年とか相当長期にわたる契約を結んでほしいなと個人的には思っているわけですけれども、ただ、経営判断として普通に考えますと、完全民営化した時点で、経営の自由度を確保したいと金融会社側の経営者が思えば、そのときのことを考えれば、郵貯会社、保険会社側は、契約期間は移行期間のみに限定してほしい、完全民営化後には、また契約するかどうか、その条件等々についてはまた考えましょうというような格好でフリーハンドを確保して、その上で、そのときにはできるだけ安い委託手数料を条件として提示して交渉に当たろうと考えるのが普通なのではないかなというふうに考えます。

 ただ、そういったことで交渉がうまく折り合わないとかいうことになると困るので、まさに、「長期とすることも妨げない」ということではなくて、むしろ、移行期間を超えて長期とする契約でなければみなし銀行免許は付与しないというような義務づけを法律上行っていただく必要があるのではないかと思っております。

 逆に、もしそういった、法律上明記する必要はないんだ、現行のままでも移行期間を超えて長期の契約が結ばれるはずだというふうにおっしゃるとすれば、どういう仕組みでそれが担保されるのか、ぜひ根拠を示していただきたいと思います。

竹中国務大臣 先ほどの答弁と少し重複するところが出てしまうかもしれませんが、委員の御懸念は、何といっても、地域で金融のサービスが本当に確保されるのか、それが地域の住民の視点からも重要だし、そして窓口会社の経営の視点からも重要であろう、そのような御指摘は、その意味では大変ごもっともな御指摘、御懸念だと思います。

 先ほども申し上げたんですけれども、この金融のサービスを確保する仕組みとして、今回、これは大変重要だという認識のもとで四段階で我々は考えているというふうにぜひ御理解をいただきたいと思うんです。

 四段階といいますのは、まず、やはりそのサービスを提供する拠点をしっかりとつくらなければいけない。この拠点というのはまさしく郵便局をしっかりと設置させるというところ、これが第一の出発点でございます。この設置の基準等々については、先ほど副大臣からも御答弁をさせていただきました。

 第二として、その拠点を活用して、郵便貯金会社等々とこの拠点、窓口会社の間で移行期間を十分カバーするような長期の契約を結んでいただく、それを現行免許の条件とするということでございます。したがって、その移行期間はカバーされます。これが第二段階。

 第三段階として、これは今委員も特に御質問がございましたが、移行期間を上回る長期ですることをこれは妨げないということでございます。したがって、十年に限らず、それを上回るものもあり得るということが第三弾でございます。

 そして第四弾としては、後ほど御質問が出るかもしれませんが、それでもカバーされない、金融サービスが提供されない、それが地域的に困るという場合には、地域貢献として基金を活用できる。

 そのような四つのある意味でネットでしっかりとサービスが確保されるようにしたいと考えているわけでございます。

 窓口会社というのは、これは麻生大臣の持論でもございますけれども、実は非常に大きな可能性を持っていて、経営的に非常にフロンティアが大きいところ、したがって、その中でいろいろな可能性をやはりお考えいただくというのが民営化の大変重要な趣旨なのであろうかと思います。

 今回、こういう長期の契約をあえて義務づける理由は、郵便貯金銀行というのは窓口を持たない非常に特殊な銀行だ、この特殊な銀行がしっかりと安定して経営をしていけるようにするために、金融行政の観点からみなし免許の条件として長期契約を課す、あくまで金融行政の視点からそういうことを行うということでございます。したがって、委員、できるだけ長期にという御指摘でございましたが、その長期がどのくらいが適切かというのは、やはり金融行政の観点から適切に判断をされるということになるんだと思います。

 例えば、窓口会社の経営方針としても、移行期間をカバーする長期の契約がございます。そして、その後は、例えば銀行の定期預金の販売を郵便貯金会社だけではなくて東京三菱銀行や三井住友銀行の預金も売るようにしたい、これは民営化の中では当然あり得ることでございます。そういう可能性を考えて余り長くしない方が、つまり、ほかの可能性もあるからいろいろ余り長くしない方がいいな、そういう経営のビジネスモデルを考えるのか、いや、ほかの可能性は余り考えなくていいから、郵便貯金銀行と少し長目にということを考えるのか。

 これはやはり、一義的には、経営者がどのようなビジネスモデルといいますか、ビジネス展開をしたいかということをまず考えていただいて、それを、金融行政の観点から適切かどうかという金融上の判断をしていただく。その中で現実の契約の期間というのは決まってくるということになるのだと思っております。

 その意味では、とにかく移行期間は最低限カバーをしていただきます。その上で、それが長期になることは妨げません。それが実際どのぐらいの長期になるかというのは、経営者のビジネスモデルの考え方、そして金融行政上の、適切な、健全な経営を営めるようにできるかどうかという監督上の判断、そういうところから決まってくるものになるというふうに思っております。

宮下委員 御答弁はいただいたんですけれども、移行期間後にわたる契約が行われるかどうかというのは経営判断だ、他行との代理店契約を結ぶかもしれないので、それを考えればむしろ結ばないかもしれないというお話でございました。

 私は、他行の、ほかの商品を新規に契約して扱うようにするというのはいいと思うんですけれども、基本的に、少なくとも郵貯銀行との代理店契約は長目にあった上で考えるのが穏当なのではないか。そのためにも、ぜひ、妨げないのではなくて、ベースとしてはそれを認めるべきだと思いますし、移行期間後に突然、郵貯銀行、簡保会社が支店網とかそういうのをばんと持てるという見通しがあれば別ですけれども、基本的にそういう窓口を持たないわけですから、そこの貯金銀行、保険会社の長期的な経営の安定性を確保するためにも、これは長期の契約が担保されてしかるべきなのではないかなと思っております。

 では、基金についてもお伺いをしたいと思っております。

 今、四段階でユニバーサルサービスを維持するという、四つ目の段階になるわけでございますけれども、この合意文書によりますと、「基金は、地域・社会のニーズへの対応に万全を期するため、一兆円の積立てを行うが、それが完了したのちにおいても、それまでと同様の規律ある配当のもとで利益の留保と運用益の確保に努め、それらを基金に組み入れることにより、総額二兆円に達するまで積立てを継続」するとあります。

 ただ、これは、法案には明記をされておりませんで、事務局の方の御説明によりますと、持ち株会社法の定款に記載するというようなことでございますけれども、こうした新たな合意が行われたわけで、こうした内容はそもそも法案に明記すべきなのではないかと思うんですけれども、御見解をお伺いしたいと思います。

竹中国務大臣 委員お尋ねの基金の規模の問題に関しましては、社会・地域貢献基金の一兆円という規模に関しては、基本的な考え方は、過疎地域等における金融サービス等の提供のために必要な額、これは今まで御議論をさせていただいた問題、それをカバーする額と、それと社会福祉の増進に寄与する第三種・第四種郵便物の提供のために必要な額、これを基金の運用益によって賄えるようにというふうに考えまして、一兆円であればこの資金交付に充てる運用益が不足することは基本的にはないというふうに我々考えているところでございます。したがいまして、この額、一兆円を法律上積み立てなければならない額というふうに日本郵政株式会社法の十三条に記載をさせていただいております。

 他方で、これはいろいろ与党の中にも御議論があったところでございますが、基金の積み立ての上限を設定する必要はないというふうに考えられるわけでございます。そこで、持ち株会社は、社会貢献・地域貢献業務をよりしっかり行うため、必要に応じて基金を積み増すことが経営判断により可能であるということを明らかにするために、政府・与党の合意で、「二兆円に達するまで積立てを継続できるものとする。」というふうにされたところでございます。

 この合意事項の総額二兆円に達するまでの積み立てについては、この趣旨、義務づけるのは一兆円である、これについては法律に明記をしておりますが、それについて上限を設定する必要はないわけでありますので、このようなことを明記する、そうした部分につきましては、その趣旨を持ち株会社の定款に記載させるということにしているところでございます。

 そうすることによりまして、この合意事項の趣旨を確実に担保していきたいというふうに考えているところでございます。

宮下委員 一兆円で本当に大丈夫なのかどうなのかというのも、党内では大変大きな議論になったところでございます。

 今、上限をあえて設定する必要はないということで法文上は明記されていないんだということでございますので、逆に言えば、二兆円で済むかどうかも将来のことでわからないわけでございまして、私自身は、必要に応じて、二兆円を超えても、まあ必要がなければそんなに要らないかもしれないし、その積み立てというのは少なくとも認めていくべきなのではないかなという思いがいたしました。

 それからまた、この基金の仕組みがどうもまだはっきり、どういうふうにワークしていくのかが見えてこないわけでございまして、そこについて少しお伺いをしたいと思います。

 いろんな方のお話を総合的に考えますと、窓口会社の採算が、過疎地等を中心にして、その地域でのサービスができない、そこのところで、その地域での収支が悪化して、地域において金融サービスをやめた方が経営的には望ましいなというふうに判断を下して、地域において、もうここではちょっと金融サービスはやめさせてもらいたいんだけれどもという提案をすると、それに対して地域の有識者の皆さんが会議を開いて、それは困る、サービスを継続してほしいということで、それを尊重するということでサービスの提供義務が発生する。ただ、そこで新たなコストが生じておってサービス提供の継続ができないので、そのサービス提供のために必要となる追加費用については、主務大臣認可のもとに基金から拠出をして補てんするんです、これによって採算の悪化した地域における金融サービスも担保されるんです、こういうことなのかなと思っておりますが、そもそも、もうこういうサービスはやめたいと思うんですがどうですかと言われて、よろしゅうございますと言う方がいるのかどうなのか、サービスが低下するのを承知で、それを了承する地域の有識者の会議というのがそもそもあるのかなという思いがございます。

 政府の試算では、一兆円の試算で二千の郵便局のサービス維持を図ると。それぞれ六百万円ぐらいの基金を充てて、それで合計百二十億円ぐらいの、一兆円の運用益で大体そういった問題は解決できるんですというお話でございます。

 そもそも、最大で二千カ所ですね。ここでもやめたい、あそこでもやめたいということになって、これは大変だとあちこちで会議を開いて、それはやめないでくれという結論を出して、それで基金がおりるというような極めて非効率なことをやらないでも、そもそも金融サービスは地域貢献業務なんですというふうに明記していただいて、そのために新たなコスト負担が必要ならば基金で補てんするというような、本来業務に近い格好で金融業務を位置づけていただいて、その上で基金を活用していただいた方がよっぽど効率よくワークするんではないかと思うんですが、それについてはいかがでしょうか。

竹中国務大臣 地域における金融サービスが継続されるかどうかということを大変懸念される宮下委員のお気持ちというのは、大変これは重要なポイントであろうかと思います。

 ただ、現実問題としていろいろ考えてみますに、地域貢献というのはまさに地域によって違うというのが、当然のことであるけれどもやはり重要なポイントなのだと思います。

 金融をすべて地域貢献にするのはどうかという御指摘ではございますが、例えば東京の地域、大阪の地域の中心地で金融というのが本当に地域貢献なのか。銀行がたくさんあって、コンビニの窓口でもいろいろな受け渡しができて、ここはやはり、そうである地域とそうでない地域があるというのが実態なのではないかと思います。

 そうした観点からいいますと、委員の御指摘は、今申し上げた点ともう一つ、実際、地域の意思がどのように反映されていくんだという点にもあったかと思いますけれども、したがって、郵便局会社が地域のニーズをきめ細かく吸収して、しっかりと地域貢献業務計画を策定する仕組みがやはり重要なのだということだと思います。

 こうした郵便局単位の地域のニーズを的確に把握して適切な地域貢献業務計画を策定するには、当然のことながら、やはり地元のことに詳しい、実情に識見を有する方の意見を把握するというのが第一段階としては大変重要であろうかと思います。この点、与党との合意にも記述がされているところでございます。これを受けまして、今回の郵便局株式会社法案の第六条第二項におきまして、そうした方の意見を尊重して計画を策定しなければならないということを規定しているところでございます。

 意見聴取の具体的な方法をどうするかということは、これまた重要な関心事だと思いますが、これは地域貢献業務と各地域におけるその必要性を最も熟知しておられる郵便局会社の判断にまずゆだねられるということになると思いますが、しかし、それだけではなくて、主務大臣が地域貢献業務計画を認可する際に、所要の書類を提出させまして、地域の有識者等からの意見聴取が適切に行われて、またこれが尊重されているかどうかを審査する、そのような形でしっかりと担保をされていくというふうに私は思います。

 もう一度申し上げますけれども、民営化後も利用者の利便を確保するためには、郵便局において金融、保険のサービスを提供するということは非常に重要であると我々も考えております。したがって、法律上のユニバーサルサービスの義務は課さないけれども、与党との合意を踏まえてしっかりとした枠組みをつくっている。

 その方策としては、銀行免許、生命保険業免許、これは法律によりみなし免許を付与するに当たりまして、移行期間をカバーする安定的な代理店契約等々が免許の条件になる。したがって、移行期間をしっかりとカバーする。移行期間後においても、まず基本的な考え方としては、銀行と保険会社にとっての郵便局ネットワークの重要性というのは非常に高い。これはぜひ、移行期間が終わった時点での郵便貯金銀行や郵便保険会社の経営者のお立場で少し頭の体操をすると、こういうふうになるのではないかと私は思うのです。

 新たに自前の店舗網をつくるとか、新たに募集体制を整備するというのは、これは膨大なコストがかかるわけですから、やはり全国一括の代理店契約を締結してそのようなビジネスを続けていくというのが、当然の経営の選択としてごく自然に出てくるというふうに私は考えます。しかし、それでも、仮に過疎地などの一部の郵便局で貯金、保険のサービスの提供が困難になる場合には、今申し上げたような基金の仕組みがある。

 非常に多層的に、先生御懸念の地域における金融サービスの確保に配意しているつもりでございますので、その点、何とぞ御理解を賜りたいと思います。

宮下委員 金融サービスの確保ということで議論させていただいておりますが、そのほかにも、ちょっと通告ではないんですけれども、頭の体操を私なりにさせていただいて、移行期間後、完全民有民営化した後に、窓口ネットワークの機能を使う必要があって、必ずそこに嫌でも契約に来るんですということが本当に担保されるのかどうなのか。

 そこの面では、例えば経営判断として、地域の津々浦々までの窓口ネットワーク機能を維持できるだけの高い委託手数料を払い続けてやるよりも、もういいやと都市銀行と合併をして、都市銀行のネットワークの中で預金を受け入れよう、ないしはその中で運用も考えようということもあるのではないか、そういう気もしております。

 移行期間においては合併はしちゃいかぬというようなことがあるんですが、完全民有民営化すれば、経営判断として、もう窓口ネットワークは使わない、ほかと一緒になってやるということもあり得るのではないかなと思っておりますが、もしそこら辺も大丈夫ですということであれば、ちょっと一言、通告にはないんですが、お聞かせいただけるとありがたいんですけれども。

竹中国務大臣 民営化されて、経営者がそれぞれの立場でしっかりと御判断をされていくわけでございますが、しかし、今我々が想定しているこの郵政の民営化の中で、それぞれ、郵便局会社と郵便貯金銀行の立場というのは、非常に補完的にその強みを発揮できるという立場にある、私はそういうことになるのではないかと思います。

 郵便局会社から見ますと、特に地域の一つの無集配特定局等々を見ますと、その仕事のうちの多分七割とかそういうものは郵便以外の仕事、具体的には預金を売ったり保険を売ったりする仕事になる。これをなくするというのは、経営判断としてやはりちょっと考えがたいわけです。そういう金融の今までの販売の実績があり、販売力があり、当然のことながらそれによって経営を支えているわけですから、何らかの金融の販売をしよう、そういう強いインセンティブを経営者が当然この窓口会社については持つであろうというふうに考えられます。

 では一方、郵便貯金会社の方から見ますと、郵便貯金会社の強みというのは何かというふうに考えますと、今までの二万四千という、通常の大手のコンビニの三倍ぐらいのネットワークを全国に持って、その中で金融のサービス、これは預金を集めるだけではなくて、要するに、決済、振替、そういうことができる、それのサービスを持っているということが強みでありますから、それを手放すというようなことは、経営者のインセンティブとしてなかなか想定しがたいのではないのか。

 特に重要なのは、では過疎地を切り捨てるのではないかという議論にどうしてもなるわけですが、この強みというのは、ここがもうかる、ここがもうからないということではなくて、二万四千がネットワーク化されているという、まさにネットワーク価値にあるのだと思います。

 ネットワーク価値の一つの事例としてよく申し上げますのは、例えばクロネコヤマトも全国にいろいろな支店、拠点を持っているわけですが、これはネットワーク価値があるから維持しているわけで、一つ一つについて見ると、やはり三割ぐらいの支店はクロネコヤマトでも赤字なんだそうでございます。しかし、では赤字のところを切り捨てるかというと、いやいや、これは全国ネットワークしているから全体の価値があるんだから、そういうことを切り捨てるということはない。その意味では、これは非常に一般論的な議論に聞こえるかもしれませんが、双方のメリットとして、それが経営者の判断として、インセンティブとしてやはり続くというのが私は基本的な考え方だろう。

 しかし、それでも、確かに一部についてはもうネットワーク価値がないというようなことがあり得るわけですから、それに対してはちゃんと基金を用意しておきましょう、そういう観点でこの制度設計をしております。

宮下委員 あと二点ほどぜひ伺いたいと思いますが、株式の持ち合いを通じた一体的経営の確保についてでございます。

 金融会社との代理店契約が安定的であることを担保するために、もう一つは、株式持ち合いを通じた一体的経営の確保、これも党内ではぜひ必要だという議論がございます。先ほどのユニバーサル確保の四つの条件の中にはなかったということなので、多分、政府としては、この株式持ち合いを通じての確保というのは考えておられないということなのかなと思うわけですけれども、私も、これはもっと重視されてしかるべきなのではないかなと考えております。

 政府・与党間の合意では、「民営化後の各会社間の株式持合いについては、持株会社の下でのグループ経営を可能とするため、移行期が終了した後は、特殊会社としての性格を考慮しつつ経営判断により他の民間金融機関と同様な株式持合いを可能とする。その結果、株式の連続的保有が生じることを妨げない。」こういう文章になっているわけでございますけれども、そもそも、なぜ一度、貯金会社、保険会社の株式を完全処分しなければいけないのか、びた一文持たないという状況をつくることがなぜその絶対条件として必要なのかが、ちょっと私はよくわからないということでございます。

 例えば、NTTは現在四〇・八%、JTは五〇%、JR東海は三九・六%の株式を政府が保有し続けておりますけれども、これらの企業について、国民から、あの企業は政府が株を持っている、したがって、暗黙の政府保証があるから民間会社としては認められない、公正な競争を確保するために全株をすぐに売却せよ、こういうことを言う人はいないわけでございまして、金融商品における政府保証を外して、法人税の納税や預金保険機構の保険料など、民間と同じ条件に立って業務を行うというような条件があれば、たとえ政府が株を持っていてもいいのではないか。例えば、独占禁止法に抵触しない二五%程度、郵貯銀行、簡保会社の株を保有し続けても問題はないのではないかと思うわけですが、大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

竹中国務大臣 今の宮下委員の御指摘、ポイントは、まさに今回の郵政民営化法案の非常にコアの重要な部分であるというふうに思います。私自身、実はそういう思いでこの制度設計をさせていただきました。

 今回、六つの法案を御審議いただいておりますが、一つは基本法がありまして、そして整備法がありまして、四つの組織法がございます。持ち株会社、郵便事業会社、郵便局会社、窓口会社、そして、旧勘定を管理する独立行政法人。

 お気づきのように、郵貯銀行と保険会社は法律がございません。これは何を意味しているかといいますと、持ち株会社等々は、これは民営化するけれども国の関与がある程度残る公的な性格の強い特殊会社である。しかし、銀行業と保険業というのはとりわけ信用が背景にある大変特殊な業種でありますので、その信用が背景にある特殊な業種に国が関与するということは、これはやめなければいけない。したがって、特殊会社ではなくて、当初から商法の一般法人として実は設立をするというところでございます。

 であるからこそ、実は、株式については一たんは完全処分をしていただく、そしてその時点で国の関与が名実ともになくなって、普通の銀行、普通の保険会社として、国の信用力がなくてもやっていけるような形にしなければいけない、そのように考えているところでございます。

 確かに、NTT等々、これも特殊会社でございます。それによって、国の株が入っていることによって云々、これはいろいろな議論があるかもしれませんが、そこは、信用商売である金融、銀行、保険というのは極めて特殊なものであって、それが市場の中できちっとやっていけるようにするためには、やはりここは完全処分を一たんしていただかなければいけない。

 しかし、その上で、経営の一体の関連であえて私は株のことは申し上げませんでしたが、政府はそれ以降は何も規制しないということを申し上げているわけでございます。特殊会社としてのおのずとしての制約はありますけれども、あとは、独占禁止法でありますとか銀行法、保険業法の枠組みの中で、経営判断で業務の安定化をするために株を常識の範囲で持つということは、これは妨げるものではない、そのことを踏まえて与党との確認の事項もつくらせていただいているというふうに思っております。

宮下委員 私は、逆に、窓口会社という特殊会社の立場から考えますと、ここにも「特殊会社としての性格を考慮しつつ経営判断により」というふうにあるわけですが、窓口会社が行います地域住民の利便の増進に資する業務というのには当然金融サービスも入るべきだと考えておりまして、その中では、特殊会社が金融業務もきっちり提供する、その義務を負うんだ、その業務を円滑に行うためには、経営判断に基づいて郵便貯金銀行、郵便保険会社の株式を保有し続けるという判断をするのが望ましい姿なのではないかと思っております。

 また、なぜ連続保有ではだめで連続的保有ならいいのかというところもよくわからないところでございまして、今御説明はあったんですけれども、例えば一たん完全に株式を売却した後にまた買い戻すというようなことでは、売って買うだけ、コストがかかって損をしちゃうわけですし、株式の完全処分義務というのは外して、連続的保有じゃなくて、連続保有することを妨げないとすべきではないか、これは私の意見として申し上げたいと思います。

 それから、もう時間でございますので、最後に国債管理政策の点からお伺いをしたいと思っております。

 先ほど来お話ございますように、郵貯、簡保の規模が大き過ぎる、これは公正な市場競争の中で適正規模にしていく、早く言えば縮小していくべきだというようなお話もありましたけれども、一方で、今回の四分社化による民営化の目的の一つは、郵貯、簡保によります国債の保有残高を減らして、郵貯、簡保により集めた資金が国債の形で国に流れる量を絞り込んでいきたい、それによって民間へ資金を流していきたい、そういうことだと理解しているわけです。

 一方で、二〇一〇年代初頭、金融庁の試算によれば、内閣府の試算によれば、二〇一三年ごろにプライマリーバランスの赤字が解消されるという試算も出されているわけですけれども、こういった理想的な経済運営がなされたとしても、当面、赤字国債の発行残高はふえ続けるわけでございます。

 具体的数字を挙げますと、本年一月に財務省が作成しました国債整理基金の資金繰り状況についての仮定試算という資料によりますと、本年度末の公債残高が五百三十八兆円なのに対しまして、完全民営化が行われる直前の、例えば二〇一六年末の残高は八百六十五兆円というふうになっております。つまり、完全民営化の時期までに、今後三百二十七兆円もの国債の追加発行が予想されるということでございます。

 その中で、国債の安定保有主体であります郵貯、簡保の全体の規模を縮小し、また、国債の保有残高もどんどん減らしていく。逆に、完全民営化後は、全額売却しても、それは経営判断で御勝手にどうぞというような状況をつくることは、国債市場における不安定要素を増加させて、需給動向に大きな影響を与えるのではないかという懸念がございます。

 今後、プライマリーバランスを黒字化していくためには、産業の生産性を上昇させて、名目GDPもある程度高い、安定的に伸びていくというようなことで、一方で金利も高騰しないというような極めて難しいかじ取りをしていかなければ達成できないというふうに考えているわけですけれども、もしそれが本当にうまくいって、景気が安定的に上昇するとして、民間の資金需要も増加していきます。そうすると、現在は、適当な融資先がなくて、しようがなくて国債を購入しているという金融機関も民間に多いわけですけれども、そういった機関が、国債を持っているよりも融資に振り向けようということで、国債を市場で売却するというようなことも十分考えられるわけで、構造的にも、今後、国債の売り圧力というのは高まるのではないかと思っております。

 昨日の国会での財務大臣の御答弁では、財政構造改革によって国債に対する信頼を高めて、また個人向け国債の発行など、保有層の拡大を通じて安定消化していく、そのために適切に対処するという御趣旨だったわけです。

 確かに、これから本当に、個人だけでなくて、一般事業会社や海外資本にも持ってもらわなければならないんじゃないかと思っておりますが、実際にこうした目標を立てて、これが本当に郵貯、簡保の保有を補って、これだけの追加を安定的に消化できるとお考えなのか、そういう目標を立てて対策をとっていらっしゃるのか、これは財務省の方からお伺いをしたいと思います。

田野瀬副大臣 郵政公社が完全民営化される時点での経済情勢や市場の状況について現時点で見通すことは困難でございますけれども、いずれにいたしましても、先生がおっしゃるように、多額の国債残高を抱えて、今後とも国債の大量発行が見込まれるところでございます。

 また一方で、郵政民営化が進展していくことを踏まえれば、適切に国債管理政策を運営していくことは本当に重要な政策課題と我々も認識いたしております。

 その際、まず重要なことは、財政構造改革、すなわち財政の健全化の推進によりまして、国債に対する信認を確保していくことであると思います。財政運営の指針として、きのうも大臣申し上げましたように、まずは二〇一〇年代初頭の基礎的財政収支の黒字化を目指して、歳出歳入両面からバランスのとれた財政構造改革を進めていきたいと考えております。その上で、国債の安定消化を図る観点から、今後とも、市場のニーズ、動向等を十分踏まえた国債の発行、新商品の導入といった商品性の多様化等を通じた保有者層の拡大など、国債管理政策の適切な運営に努めてまいりたいと考えております。

 いずれにいたしましても、かなりの時間、相応の時間、これからの時間をかけて完全民営化に至ることを踏まえれば、こうした国債管理政策により、民営化による国債消化への影響に対して我々は十分対応可能、このように考えておる次第でございます。

宮下委員 いずれにしましても、国債は増加するわけでございまして、たとえ郵貯、簡保が国債保有残高を減らしても他の主体に持ってもらわなければいけない、そういうことで、つまり、これから、市場から国へ流れる資金は大きくならざるを得ないという構造があるということは御指摘をさせていただきたいと思っております。

 時間が参りましたので、以上で質問を終わらせていただきますが、今後、この委員会における議論を通じまして、よりよい郵政事業改革のあり方が明確になることを期待いたしまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

二階委員長 次に、谷口隆義君。

谷口委員 おはようございます。公明党の谷口隆義でございます。

 昨日は、衆議院本会議におきまして、郵政民営化法案の趣旨説明また質疑が行われたわけで、本日、委員会のスタートの日でございます。民主党また社民党の方々がこのように重要法案の審議に欠席をされている、極めて残念なことだというように思っておる次第でございます。

 私の方は、この委員会、十分に審議するということを聞いておりますので、本日は総論的なこと、後日また詳細なところに入っていきたいと思いますが、総論的なことをお聞きいたしたいと思っております。

 まず初めに、我が公明党が今回のこの郵政民営化法案につきましてどのような対応をとってきたかということを申し上げたいと思います。

 我々は、この郵政民営化法案、二〇〇三年に衆議院議員選挙がございましたが、マニフェストの中で、官から民へ、また民間にできることは民間にということを基本といたしております郵政民営化に対するこの法案、原則賛成をする立場で表明させていただいたわけであります。国民また利用者のサービスが減殺されないことを前提に、民営化の政府方針を支持する考え方を示させていただいたわけであります。

 中でも、今までの審議の中でもありましたが、我が国の個人金融資産、約一千四百兆円ありまして、先ほど竹中大臣のお話のように、郵貯、簡保で約三百四十兆円ある、約四分の一が公的セクターの中で回っておるわけで、これを民間セクターに移すということが経済の活性化に資するだろうということで、この法案を支持した一つの大きな理由であります。

 このような民営化議論も、また国民、利用者の視点に重点を置きまして、これを大切にして、社会的に弱い人々が改革のしわ寄せを受けるということがないように、利便性の原則を初めといたしまして、五原則の確保を図らなければならない、このように申し上げてまいったわけであります。このような立場でこの法案の策定作業に我が党としても参画をさせていただいたわけであります。

 党内におきましても、郵政事業民営化に関する委員会、これは草川参議院議員でございますけれども、委員長で、これを設置いたしまして、この四月四日に法案骨子が示されてから以降、五原則また七つの確認事項など、ぎりぎりの議論を今までさせていただいたわけであります。

 この中で、我々が懸念事項とすることが二点ございます。一つは、郵便局の設置基準の問題であります。またもう一つは、地域・社会貢献基金のあり方の問題でございます。これは後ほど私、お聞きをいたしたいと思います。

 設置基準におきましては、先ほどもございましたように、過疎地の問題は当然でありますけれども、都市部における扱いが一体どのようになるのかというような問題、また地域・社会貢献基金の中におきましては本当に郵便局単位の地域のニーズが反映されるのかどうか、このような問題であります。これは後ほどお聞きをいたしたいと思いますが、このような中で、この四月二十日に、論点を整理いたしまして、四点にわたって政府に申し入れをいたしたわけであります。

 まず第一点は、国民の利便性への配慮であります。第二点目は、公共的サービスの確保でございます。第三点目は、資本の充実等々でございます。第四点目として五原則の確保ということでありまして、このような申し入れをいたしまして、その後、四月二十七日に政府・与党間合意がとり行われたわけでございますが、このようなことを念頭に入れさせていただいて質問をさせていただきたいと思っております。

 それで、まず初めに、郵便局の設置基準でございます。

 先ほども過疎地の議論が出ておりました。きょうのNHKのニュースを見ますと、約七千局については現状どおりやるというようなことを総務省の省令で入れるというようなお話でありましたが、私先ほども申し上げましたように、都市部における設置基準の問題であります。

 私は、この議論の中で、地域のいろいろな方と意見交換をし、意見をお聞きいたしました。普通局の局長さん、特定郵便局の局長さん、また労働組合の方、また国民一般の方、いろいろな方の声をお聞きいたしたわけでありますけれども、今、郵便局、特に特定郵便局が行っておられる仕事、郵便また郵貯、簡保ということが本来業務でありますけれども、それ以外にお聞きしますと、例えば、郵便局の前にバス停がありますとバスの回数券を売っていらっしゃるとか、また年金の相談に来られる方も多いようです。年金の相談を受けられる。これは、帰ってくださいと言うわけにいきませんから、これを受けられる。このような行政の窓口みたいなお仕事をされておられるわけで、これは極めて地域の存在感がありまして、大きな仕事になっておるわけです。これは本来的な業務ではありません。

 そういう状況の中で今回この民営化の議論が行われておるわけでございますが、今、現状を見ますと、郵便局の設置は、これは過疎地も含めて大体一・一キロに一局というような状況になっておるようでありますけれども、私は大阪市内でありますけれども、私どもの大阪を見ますと、本当に三百メーターとか五百メーターとか、そういう近接している郵便局もたくさんあるわけであります。これは利便性の観点からこのように設置をされたんだろうと思うわけでありますけれども、御存じのとおり、今、我が国はどんどん高齢化が進んでおります。なかなか歩くのが苦手だというお年寄りもたくさんいらっしゃるわけでございます。そういう中でこの特定郵便局が存在感を示しておるわけでありますけれども、今回のこの民営化の議論の中で、都市部の郵便局は一体どうなるのかということが、利用者、国民の側からも、また特定郵便局の局長さん初め職員の皆さんも心配をされておるところであります。

 竹中大臣にまず初めにお伺いをいたしたいわけでありますけれども、具体的に設置基準上どのようにお考えなのか、お答えをお願いいたします。

竹中国務大臣 谷口委員のお話にありましたように、公明党から四点申し入れをいただきまして、しっかりそれを受けとめさせていただきまして、今回の法案提出をしているつもりでございます。特に、四点目におっしゃいました、五原則を実現しろ、これはもうどこに実現したということはなかなか言えないのでございますが、すべてにおきまして、公明党の五原則を重視せよという主張をしっかりと反映させていただかなきゃいけない、そういう思いで法案を提出させていただきました。

 また、委員御指摘のように、郵便局というのは、確かに、地域にしっかりと根差して、それで地域の信頼を得て、郵便局だから安心して出入りする、郵便局だから安心していろいろなことが相談できる、そのような役割を果たしていると思います。また、具体的な御指摘もありましたように、これは地方公共団体からの受託事務ということで、バスの回数券の例を挙げられましたけれども、局でいうと三百五十局ぐらいのところでそういうことが行われている。また、ごみ袋の販売なども三百二十局ぐらい行われている。やはりそういう意味での郵便局の地域に根差した役割というのは本当に重要であろうかと思います。そうしたことを踏まえまして、与党との間でも真摯にこの郵便局の設置につきまして協議を重ねさせていただいたところでございます。

 民営化後におきましても、利用者の利便性を確保する必要があるという観点に立ちまして、これは郵便局会社法の第五条でございますが、あまねく全国において利用されることを旨として設置することを法律上義務づける、これはもう総論の総論として大変重要な規定を置いたつもりでございます。

 また、具体的な設置基準はどうかというお尋ねでございますが、この基準は省令で定めることにしておりますけれども、その際には、現在の設置基準を十分参考にしながら、具体的に、過疎地について、法施行の際、現に存する郵便局ネットワークの水準を維持するということに加えまして、当然のことながら、都市部についても、公明党が主張されておりますように、国民の利便性に支障の生じることがないように配慮する考えでございます。この点は、昨日の本会議で小泉総理の答弁としても申し上げたところでございます。

 具体的な設置基準におきましては、これは、住民の利便性の観点から、今も三点定められております。具体的には、地域住民の需要に適切に対応することができるよう設置されていること、第一点。第二点は、いずれの市町村においても一以上の郵便局が設置されていること。そして第三点として、交通、地理その他の事情を勘案して地域住民が容易に利用することができる位置に設置されている。こういう基準が現に公社の設置基準としてもあるわけでございますが、これらも十分参考としながら省令の具体的内容を検討していくという考えでございます。

谷口委員 ぜひまたそのようにお進めいただきたいと思います。

 二点目でありますけれども、地域・社会貢献基金のあり方ということで、先ほど申し上げましたが、有識者会議の意見尊重義務を実効ならしめるといった観点で、郵便局単位の細かい地域のニーズに応じて判断をするということが必要なんだろうと思うわけであります。

 これは政府・与党間合意の中にも記載をされておるわけでありますけれども、このようなことにつきまして一体どのようにお考えなのか、竹中大臣、お願いをいたしたいと思います。

竹中国務大臣 今回の法案全体をうまく機能させるためにも、地域貢献業務計画の策定に当たっては、まさにきめ細かい配慮をどのように実現できるかというのが問われていると思います。そうした点、公明党からの申し入れといいますか御指摘、大変重要だと思って、それを反映させることが何とも重要であると考えております。

 それで、具体的にどのようにきめ細かく地域のニーズを把握して計画を策定するかということでありますけれども、やはりまずは、地域の実情などに識見を有する方の御意見を把握していくことが大変重要である。この点については、公明党からの御主張を受けまして、また与党との合意を踏まえまして、郵便局株式会社法案の第六条の二項におきまして、こうした方の意見を尊重して計画を策定しなければいけない、尊重義務、それを法案の中に明確に規定しております。

 そして、意見聴取の個別具体的な方法につきましては、まずは、地域貢献業務と各地域におけるその必要性を最も熟知しているのは郵便局会社でございますから、その郵便局会社の判断にゆだねられるわけでございますが、同時に、こうした与党合意を踏まえた法案の趣旨にかんがみれば、やはり郵便局単位のきめ細かい地域のニーズが把握できるものであることが必要であるというふうに考えております。

 この点を担保するためにも、これは主務大臣が地域貢献業務計画を認可するわけでありますが、その際に、必要な書類を提出させて、郵便局単位のきめの細かい地域のニーズが判断できるような形で有識者等からの意見聴取が適切に行われているか、またこれが尊重されているか、そうした点を審査することによってこれを担保していくということが必要であると思っております。

谷口委員 今大臣がおっしゃったように、有識者の意見尊重義務があって、郵便局単位の地域ニーズをしっかりと反映するということがこの合意にあるわけで、今、大臣、十分そのようなこともお考えだというようにお聞きしたわけでありますけれども、今後、実態的に進めるときに、より一層私が申し上げていること等も勘案いたしていただいて、お願いをいたしたいと思います。

 あと、これは先ほどの委員の質問にもあったわけでありますけれども、郵貯、簡保が三百四十兆円というような巨額なものになっております。これが今、公的セクターで保有をされ運用されておるわけであります。これを、先ほど冒頭お話をしましたように、民間セクターでこの資金を流していくことが経済の活性化に資するんだというようなことがあるわけでありますけれども、一方で、民間金融機関がどのようなことになるのか。

 この法案といいますか、この民営化の議論の中で、郵貯銀行が将来は三十五兆円程度の融資も行うというようなことをお聞きいたしておるわけでございます。今は預金を受け入れるだけということでありますけれども、そういう融資も始めるということになりますと、全く市中の金融機関と変わらないということになってまいります。

 そのときに、やはりどの程度の規模なのか、いろいろ判断の分かれるところがあるわけでありますけれども、例えば協同組織金融機関、信用金庫だとか信用組合だとか、そのクラスの規模の金融機関が一体どうなるのかというようなことだとか、また大手の金融機関も、従来は民営化すべし民営化すべしと言っておったんですが、最近は余り声も上げない。一体どのような方向になるのかわからないというようなところもあるんだろうと思うわけでございます。

 いずれにいたしましても、民業に対してどの程度の影響が出るのかということがどうも透明性に欠けるというようなところがございます。竹中大臣にこの観点でお伺いをいたしたい。あと、きょうは伊藤大臣も来ていただいておりますので、伊藤大臣にもお聞きをいたしたいと思います。

竹中国務大臣 金融全体のお話、金融担当大臣きょうお見えでございますが、昨日、金融庁の方から、御承知のように、不良債権がこの三月期で政府の目標を上回って大幅に低下をして、不良債権の比率が二・九%になった、金融がある意味で正常化したんだという宣言を伊藤大臣もされました。そうした意味で、日本の金融システムがその本来の役割でありますリスクテークと資金仲介の機能を果たしていける状況になった、そういうふうな状況だと思っております。

 そうした観点から、小泉内閣は、したがいまして郵政民営化を含めてでありますけれども、金融システム改革、規制改革等各種の改革を同時に一体的に進めることによりまして、こうした資金の流れを活性化して、もって経済を活性化していくというような、そういう大変重要な役割を担っているというふうに思っております。

 郵政の民営化は、官が集めて官で使うという非常に膨大な官の資金の流れを変える、その入り口に当たる郵政の民営化として、大変その意味では重要でございます。先ほども申し上げましたように、これは、入り口の改革も出口の改革もその中途の改革も全部一体でやって初めて成果が上がるわけでございますけれども、全部やっていく、その入り口の郵政の民営化。

 しかし、これまた谷口委員御指摘のように、こうしたことはやらなければいけないけれども、同時に、金融業務においてはやはり信用が競争上決定的に重要でありますので、これまで国の関与があった郵貯銀行や郵便保険会社については、民業圧迫のおそれがあるのではないかという声も承知をしております。

 そうしたことにならないように、現実問題としては、株を持っている間は国の信用力がやはり背景にあると見られるかもしれない、規模が巨大である、さらには、一般事業会社を子会社に持つ持ち株会社の傘下に置かれているという非常に特殊な状況にある、そういうことが一般の金融機関には見られない優位性を持っているということも確かでございますので、したがって、この法案におきましては、まずは政府の株を全部売って完全処分をしてもらうということ、同時に、民営化委員会の意見を聞きながら順次その業務範囲を拡大していく、つまり、経営の自由度と民間とのイコールフッティングというのをしっかりとバランスをとるというような形で制度設計をしているところでございます。

 また、政府保証つきの旧契約については、しっかりと安全資産を中心に運用するという形で、政府の保証で集めたお金が、それがそのまま貸し付けに回るというようなことがないような仕組みにしているところでございます。

 委員のもう一つのお尋ねは、全体のマクロ的な資金循環がどのようになっていくかということでございますけれども、これも今申し上げましたように、出口、まずは国債の発行をできるだけ抑制していく、そして政府系金融機関の規模も縮小していく、そういうようなことと相まって、混乱が生じないようにぜひしっかりと運用をしていきたいと思っております。

伊藤国務大臣 お答えをさせていただきます。

 今、委員からも御指摘がございましたように、やはり、三百四十兆にも上る郵貯、簡保の資金、これを民間に流していくことによって経済の活性化というものをさらに実現していく、これは非常に重要なことだというふうに思っております。

 その際に、委員が今御質問がありましたように、民業への影響をどう考えるか、これは金融行政上も大変重要なことでありまして、特に、巨大な規模を有する郵貯、簡保が国の信用を背景に集めた資金によって貸付業務に急激に参入をしていくことになりますと、これは民間金融機関との競争条件やあるいは金融・資本市場への影響等が考えられますので、民業圧迫といった状況が起きないように適切に対応していくことが極めて重要だと考えております。

 このような考え方に基づきまして、今般の法律におきましては、今、竹中大臣からも御説明がございましたように、郵便貯金銀行の業務範囲につきましては、移行期当初は公社と同じ業務範囲とした上で、民営化委員会の意見を聴取した上、主務大臣の認可により段階的に拡大をしていく、このことによって民業圧迫といった状況が起きないような制度設計をさせていただいているところでございます。

 さらに、新事業の拡大に当たりましては、一定のノウハウ、スキルを身につけていくことが必要でございます。それを徐々に習得することによって郵便貯金銀行は自立していくものと考えておりますが、いずれにいたしましても、私どもといたしましては、金融・資本市場に混乱を生じないように適切に対処をしてまいりたいと考えております。

谷口委員 ぜひまた混乱の生じないようにお願いをいたしたいと思います。

 次にお伺いいたしたいのは、この四月から普通預金もペイオフが始まっております。それで、今、郵貯の現状を見ますと、一千万の預入制限がございますから、一千万の預入制限で仮に民営化された場合には、これは政府保証の一千万の範囲内でありますから、もうペイオフの影響は出ないということになるわけでございますが、いずれ現行の一千万円の預入制限が撤廃されるということになるんだろうと思います。既にそのことについて言及をされておられるわけでありますけれども、そうなりますと、またペイオフの凍結解除の問題が預金者の皆さん、貯金者の皆さんに緊張感を与えるというようなことになるんだろうと思います。

 大体、この預入制限を撤廃するというような時期の問題でございますが、どのようにお考えなのか、竹中大臣にお伺いいたしたいと思います。

竹中国務大臣 この預入限度額、保険は加入限度額、いつ撤廃されるのか、これは今の時点で時期を明示するのは当然のことながら大変困難なわけでございますが、基本的な仕組み、考え方をぜひ御説明させていただきたいと思います。

 まず、この法案は、先ほど委員御指摘がありましたように、経営の自由度と民間とのイコールフッティングをバランスさせるという観点から、当初は現行水準一千万円に定めることを考えておりますけれども、基本的に、預入限度額や保険の加入限度額を政令で定めるということとしております。そして、当初は一千万としまして、株式売却等、国の信用とか関与がだんだん減っていきますから、それが減っていくのに応じて、郵政民営化委員会の意見を聞きながら、透明、公正なプロセスのもとで政令を改正して段階的に引き上げるという制度設計をしているところでございます。

 ただ、限度額の撤廃につきましては、限度額規制そのものが解除される必要がありますが、この点につきましては、そもそも平成二十九年三月三十一日には遅くても移行期が終了するわけでありますから、限度額の規制を課している郵政民営化法の特例規定がその時点で失効します。そうすれば、これは当然、その時点では限度額も撤廃されることになるわけでございます。

 ただ、それ以前であっても、例えば、日本郵政株式会社による全部の株式の処分、銀行の処分です、株の処分が行われたとき、ないしは、株式の処分が相当進んで国の信用、関与が低減する中で、内閣総理大臣及び総務大臣が、限度額等の特例規定を適用しなくてもイコールフッティングが確保されるというふうに判断し認められる場合において、そして内閣総理大臣及び総務大臣がその旨を決定したときにおいても、これは特例規定の規制が解除されまして、限度額の規制についても撤廃される、そのような制度設計をしているところでございます。

 それがいつかということは、これは今後の進捗、そして最終的には総理大臣、総務大臣の御判断でございますけれども、今申し上げたような枠組みの中でしっかりと制度設計をしているつもりでございます。

谷口委員 やはり、かなりの貯金者もいらっしゃいますし、金融全体の問題でもありますので、そこはよく考えていただいて実施をしていただきたいと思います。

 それで、最後の質問でございますが、これは伊藤大臣にお伺いをいたしたいんです。

 今、金融再生プログラムが功を奏して、不良債権が半減したという目標を達して、金融改革プログラムがこの四月からスタートいたしております。大体二年を目途にされているということでございますけれども、これは金融全体の改革プログラムを想定されてやっておられるわけでございますが、この郵貯、簡保の問題、ここらが欠落しておるわけでございます。もっと言うと、この二年の範囲内だけではなくて、今後、我が国の金融全体の中で郵貯、簡保がどのような立場を占めるのかというようなことも想定をした金融行政全般のあり方が求められておると思うわけでございます。

 今回のこの金融改革プログラムの中でも、投資サービス法を二年の目途でつくり上げたいと、これは仮称でございますけれども。その後は、イギリスで行われて、もう既にスタートいたしておりますが、金融サービス法といいますか、今までの金融の業法に全部横口を差すというようなことも想定をした法制度の整備も考えていらっしゃるのではないかと思うわけでございます。

 そういう金融行政全体の大きな流れの中で、今後、郵貯、簡保はどのような位置づけになるとお考えなのか、お伺いをいたしたいと思います。

伊藤国務大臣 お答えをさせていただきます。

 利用者保護に重点を置きながら、活力ある日本の金融システムをつくり上げていく、その中でこの郵政の民営化という問題をどう考えるのか、極めて重要な御指摘をいただいたというふうに思っております。

 郵政の民営化は、今まで政府がお示しをさせていただいた基本方針にもありますように、郵政が持つ四機能、この潜在的な能力というものを十分に発揮する、市場における経営の自由度の拡大を通じて良質で多様なサービスが提供可能になり、そのことによって国民の利便性というものが向上していくこと、また、先ほど委員から御指摘がございましたように、公的部門に流れていた資金というものを民間部門に流し、国民の貯蓄を経済の活性化につなげることが可能になること、こうしたことを通じて国民に大きな利益をもたらすものと認識をいたしているところでございます。

 他方、金融改革の方向性につきましては、委員からも貴重な御意見をいただき、御指導いただきながら、昨年の十二月に金融改革プログラムを策定させていただき、公表させていただきましたが、このプログラムにおきましても、利用者の満足度が高く、国際的にも高い評価が得られて、地域経済に貢献できるような金融システムを、官の主導ではなくて、民の力によって実現していくことを目指しているわけであります。

 このように、郵政の改革と金融改革はともに、官から民への資金の流れの改革という小泉内閣の全体的な取り組みの中に位置づけられているものであり、整合的な取り組みがなされていると認識をいたしているところでございます。

 金融庁といたしましては、郵政民営化後の郵便貯金銀行がノウハウ、スキルを徐々に取得することで自立をして、そして無理なく民間金融システムに溶け込んでいくよう注視をするとともに、郵政民営化後の我が国金融システムがより効率的で、そして利便性の高いものになるよう、適切に金融行政として対応していきたいというふうに考えております。

谷口委員 ぜひそういう観点で進めていただきたいと思います。

 時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。

二階委員長 次に、桝屋敬悟君。

桝屋委員 公明党の桝屋敬悟でございます。

 昨日の本会議に続きまして、いよいよ特別委員会での質疑が始まったわけであります。冒頭に、私どもは財政金融の担当谷口議員に最初はやっていただいたわけであります。

 きょうは、生田総裁も、当初お呼びしていいかどうか悩んだのでありますが、お姿があったものですから、これはお話をしなきゃならぬ、こう思っている次第であります。

 きのう、私は本会議で、率直に、正直に、静かな中にも大変な緊張感があると。何人か寝ておられる方があったものですから、大変なとは言えずに、地をはうような緊張感、こう言いましたけれども、きょうはやはり野党の皆さんの御出席がないわけでありまして……(発言する者あり)共産党の皆さんがいらっしゃるわけであります。やはり大会派の民主党の皆さんがいないと、社民党の皆さんがいないと、まさに地に沈んでしまうような緊張感になるんじゃないかと心配しております。

 週が明ければまた新しい流れが起きるのではないかと期待をしながら、私どもも、与党の一員として、正常化に向けて全力で取り組んでいきたいというようなことを最初に申し上げておきたいと思います。

 きのうは、総理、竹中担当大臣には思いを聞かせていただきまして、通告はしておりませんが、せっかくですから総務大臣のお話を聞こうかと思ったら、いらっしゃらなくなりましたので、まことにすばらしい勘をしておられるな、こう思うわけであります。

 それでは最初に、生田総裁、御出席をいただきました。

 私、公社法のときも総務委員会で担当しておりまして、悩みながらつくった法律ではありますが、その法律に基づいて、この二年間、総裁は本当にお取り組みをいただいた、御尽力をいただいたと思っているわけであります。なおこれから中期計画に基づいて作業もあろうかと思いますが、まさに改革が先に見えるわけで、その過程、一日一日、一年一年が大事なときだなというふうに私も思っているわけであります。

 そうした観点から、総裁と二つ、三つお話をしたいと思うんです。

 最初に、先日、同僚議員の話もありましたが、第二期分の決算が発表されました。まずは、この決算の状況、概要を、せっかくの機会でございますから、当委員会でお話しいただきたいと思います。

生田参考人 先生にはいつも御指導いただきまして、どうもありがとうございます。

 お答えさせていただきます。

 ちょうど、第二期といいますか、二年目の決算を発表したところでございます。

 概要につきましては、第一期、初年度に引き続きまして改革を取り進めてまいりました結果、職員が非常に本当に努力してくれました、職員の努力によりまして、三事業ともおおむね計画値を多少上回るという結果を得ております。

 表面、数字といたしましては、三事業とも、実は収益、収益というのは売り上げと理解していただいたらいいんですが、売り上げが前年度を下回りまして、新聞にその辺が全部大きく出ているわけでありますが、例えば、郵便ではEメールとの競合なんですね。これはちょっと競争するのも難しいわけで、先進国みんな減るわけでありますが、普通郵便が減少しておりますが、その減少の幅というものは五・三%、大体想定の範囲でございます。

 それで、生産性向上。JPSと言っておりますが、ジャパン・ポスト・システム、千局のモデル局をつくりまして、集配区分、そういったオペレーション関係の思い切った生産性向上運動をやっているわけでありますが、そういったものの展開、約一〇%の合理化の成果を上げました。

 それから、調達コストの削減。原則としてすべて一般公開競争入札ということでやっておりますが、これを事業庁最終年度に比べて二〇%削減しようというふうなかけ声でやってまいりましたのが、第二期は二二%削減できまして、約千七百億円合理化しております。

 そういったことで、三事業とも二期連続、おかげさまで黒字を確保させていただいたというのが総括でございます。

 部門別に多少見ますと、郵便事業におきましては、当期純利益が昨年の二百六十三億をちょっと下回って二百五十二億ということなんですが、我々のやっておりますアクションプラン、経営計画、目標の数字二百億よりは多少よくなったということです。何で伸びないのというのは、CSと言っておりますが、お客様の満足度を高めるためのいろいろな設備とか、それから研修、訓練なんかにどんどんお金を使っております。そういったものとか、システムに対する投資、システムが極めておくれております。それから、ことし初めて、元旦に続いて正月二日も年賀状の配達をやりました。そういったような、今までないコストをのみ込んでの数字で二百五十二億ということになったわけであります。

 通常郵便物は五・三%、先ほど申したように減ったわけでありますが、これは金額換算で九百億円の減収になるわけです。それで、ゆうパックとか冊子小包、ここで一生懸命今努力しております。国際関係も今多少力を入れて、実施の方向にあるわけでありますが、そういったものを足して、そういったところの伸びで五百億円挽回いたしまして、全般の落ち込みを三百六十七億、二・三%で食いとめたというところでございます。

 貯金の方は、当期純利益が一兆二千九十五億円ということで、昨年の二兆二千七百五十五億に比べますと一兆六百六十億円減りまして、一見半減したように見えるのでありますけれども、昨年は、公社開始時約八千円の日経平均が翌年三月末には一万二千円弱になったというところで、金銭の信託運用益が一兆一千億出ましたので、それを足しての数字だったものですから、ことしは、株価が去年とことしと余り変わらないということで、そっちの方を除いて考えますと、大体昨年並みの実績を上げ得たということでございます。

 それから簡保の方は、内部留保の積み増し額で大体利益を推しはかるわけでございますが、昨年四十一億円にすぎなかったのが、ことしは五千五百十七億円ということで、実は表面上大幅に改善したかに見えるんですけれども、これもよく見ていただく必要があるわけであります。

 これは、簡保が随分今縮小に向かっております。そういう全体規模の縮小に向かいまして、将来の支払いに備えるために責任準備金というのを内部留保で積んでいるわけでありますが、それを積むべき対象の額が減ってきているので、そこまで積まなくていい、必要額が減ってきたということで、約六千億円の繰り戻しがあったわけであります。これを相殺して考えますと、やはり簡保もほぼ昨年並みであったということで、この内部留保のところだけを見ますと、右のポケットから繰り戻してきて、左のポケットの危険準備金と価格変動準備金に積み増したというふうな見方をしていただいたら結構かと思います。

 公社全体で、前年度利益、金銭信託運用益一兆円強を含めまして二兆三千十八億円だったわけでありますが、今回は一兆六百七十億円の減でございまして、一兆二千三百四十七億円の当期純利益ということで、大勢観察としては、昨年とおよそ同じであったというふうにお考えいただきたいと思います。

 この当期利益金は、全額を利益剰余金といたしまして、公社法にのっとりまして、資本に積み立てることになっておりまして、評価差額金、これは証券の評価差額金ですね、一・三兆円と合わせると、公社の資本は、発足時は資本金といたしまして一兆二千六百八十八億円だったわけでありますが、ただいまのところ、資本といたしまして六兆一千三百六十一億円になったということであります。ちなみに、中計ではこれを約三兆円になるだろうというふうに計画していたわけでありますが、それは上回っておるということであります。

 要員は、開始時三年の四月一日、二十八万六千六百人だったんですが、この三月末で二十六万二千人に調整してきております。主要なる組合、全逓の後身のJPUと全郵政とは緊密に話し合いをしておりまして、事業改革協議会というのをつくって、緊密な話し合いで、きちんとした理解を得ながら取り進めているということを申し添えておきたいと思います。

 資金量は、公社開始BSでは三百五十七兆円ございました。この三月期は、郵貯は二百三十三兆から二百十四兆に減り、保険が百二十四兆から百十八兆に減りまして、合計三百三十二兆ということであります。

 システム関係やCSを中心に先行投資も積極的に進めておりまして、そのコストを一応のみ込んだ数字ということで、郵政事業だけを見ますと健全化に紛れもなく進んでいるわけでありますが、市場にある同業他社と相対比較いたしますと、ビジネスモデルが非常に限られておりますのでかなり厳しい内容でありまして、利益率は相対的には極めて低いということで、さらなる改革を進めたい、かように思っております。

桝屋委員 ありがとうございました。

 きょう、関連法案の審議を特別委員会で始めるに当たって、極めていい材料、適切な材料を与えていただいたと思っております。感謝申し上げたいと思います。

 やはりマスコミの報道等を見ますと、収益が減っているではないか、こう一斉に書かれるものですから、加えて、この議論の中で、我々国会議員が議論している中で、郵政は将来じり貧だと、あの言葉は嫌な言葉だったんでありますけれども、言われたりして、私は、国民の皆さんがどういうふうに今考えておられるのかということを思うわけであります。

 今の総裁のお話は、中期計画に基づいて、例えば、今の十五、十六年度の目標値については達成することができたんだ、ただし、一番最後に言われたように、限られたビジネスモデルの中で大変苦しい取り組みをされているという心情を吐露していただいた、私はこう思っているわけであります。

 せっかくの機会ですから、私も、地元でいろいろな話をする中で、特に郵便物が減っておるという話をすると、この前も大変おしかりを受けまして、何を言っているんだ、ゆうパックは相当ふえていると胸を張って言っていただいたんですが、先ほど、ゆうパックの話、相当頑張っているという話をいただきましたが、他の民間の事業者との競争というような状況もあるでしょう。もう少しその辺のところを、お取り組みの状況をお話しいただければと思います。

 それからもう一点、せっかくですから。先日、新聞に、証券外務員の資格の受験希望をとったら、それこそ四人に一人、六万人の方が応募された、希望されているという話を伺いまして、次の段階に向けて、公社の職員もそうした思いを固めておられるのかな、こう思ったりしているんですが、総裁のお気持ちを聞かせていただきたいと思います。

生田参考人 お答えさせていただきます。

 まず、ゆうパックの御質問なんですが、公社スタートと同時に、やはりできるだけ多くの場所で多くのお客様に選んでいただける場をつくった方がいい、こう思ったので、すべてのコンビニさんに、今売っていらっしゃるのと併売で売っていただけませんかというお話をいたしました。中には、やりましょうといって寸前まで行ったんですけれども、既に置いていらっしゃるところから独占契約があるからだめだと言われて、残念ながら見送りますというところもありました。

 ローソンさんは、やはりお選びになるのはお客様だから併売が当然、それがコンビニの理念というものだからぜひ置くようにしましょうと、いろいろ御苦労されたと思いますが、置いていただきました。それ以外のコンビニさんにも、やはりお客様に選択肢を与えた方がいいんじゃないかということで、いろいろ積極的にお話をいただいているものもあります。今、デイリーヤマザキさんとか、一部置かせていただいております。

 公社としては、これは市場における公正な取引だろうと思いますので、商売をしている以上、置いていただくお願いをするのは別に構わないことだと思いますし、先方様がぜひお客様のためにやってやろうという御判断になるのなら、それはそれでやらせていただきたいと思って、今もいろいろなお話をしております。

 それから、証券外務員のお話は、ことしの十月から、五百五十と言っていたんですが、五百七十五だったでしょうか、もう少し多目にやります。やらせてくれという局が随分ある。それで、職員も、ぜひ自分たちに資格を取らせろというのが随分多いわけで、先生がおっしゃったとおりの人数が応募してきております。五年後には千五百局ぐらいまで持っていこう、こういうふうに思っておりますので、これからもどんどんチャンスを与えまして、有資格の職員をふやしてまいります。

 現在、受けた中で、きょう現在の正確な数字は知りませんが、約四千人ぐらいはもう通っているはずであります。これは今回、十月に始める郵便局で必要とする人数のぎりぎりのところですけれども、もう既に定足は一応満たしているんですけれども、さらにこれから十月に向けましてかなりの人間が試験を通ってくるだろうと思いますし、郵便局の拡大以上のスピードで、職員が大変熱意を持っているので、有資格者がふえて、いわゆるファミリーバンクとしての機能に役立っていくだろうと思います。

 後半の御質問のところで、もう少し具体的なことを話したらどうかというお話があったので、まだ二、三分いいですか。(桝屋委員「どうぞ」と呼ぶ)

 郵便はEメールとの競争で、これは先進国共通なんですよ、五、六%減るのは。ぼけっとしていると本当に減っちゃう。だから、平成十四年まではどんどんどんどん減ってきた。結局、ゆうパックは五・七%までいっちゃったわけですから、もう商売として成り立たない。もし撤退したらダイレクトメールもだめになるでしょうし、そのコストは信書に来るということで、大変なコスト高になります。

 これはひいては、もし公社のままでずっといく前提に立てば国民負担に最後はなるので、何とか食いとめようというのが、今公社で取り組んでいる、市場にある競争分野で手をこまねいているのではなくて、応分の努力をして、シェアも応分にいただいて、それで全般の減少を食いとめて、そして適正なコストに持っていって事業として成り立つようにする、それが全国の皆様方に対する利便性の維持にもなるし経済的にもプラスになるだろう、こんな感じでやっているわけであります。

 それから、減ってきている減ってきていると言われているんですが、郵貯、簡保はなるほど、この前の御質問のときにお答えしたように、資金量は減ってきていますけれども、これはよく見ていただきたいのは、九一年のバブル崩壊後にふえたんですね。その後の金融不安、銀行、生保業界さんのいろいろな、お苦しみになったと思うんですが、そういったときに怒濤のごとく流れ込んできているわけで、一・五倍から、物によっては、保険なんかは二倍ぐらいになってきている。金融システムがきちっとして、それで生保も皆さんきっちり今は健全にやっていらっしゃるというところで、今それが戻っていっているわけですね。

 だから、私としては、減っていっているのを健全でないと見るのではなくて、市場に以前のように戻りつつあるプロセスであって、現在規模が徐々にスリム化していっているということは、むしろマクロ経済から見れば、そこにいる当事者の私が言うのはおかしいですけれども、健全化の一助ではなかろうか、そういうふうに考えております。

 それから、今後の課題といたしましては、三事業とも商品の品質改善はもっともっとやらなきゃならないと思います。ゆうパックもやっとファーストクラスになってきていますが、いろいろまだやらなきゃならない、品質の改善をします。

 それから、JPS、生産性向上運動ですね、これも進めなきゃならないし、適正な購買というのはもっと進めたいつもりです。今、二〇%まで下げました。平成十七年度はさらにそれを一〇%合理化する。これは単に値切るんじゃなくて、在庫調整を徹底して合理化する。

 それから、郵政というのは特殊仕様はやめるというふうな、頭を使いながら、値切るんじゃなくて、値切ることもやる、もちろん合理化しますけれども、頭を使うことによってどなたにも損をかけないで合理化していくというふうなことをやっているわけでありますが、公社法の枠内でできる目いっぱいの努力をやらせていただきたいと思っております。

 ただ、前段で触れましたように、非常に低い利益率というふうなものは今のビジネスモデルではちょっと無理な面がございますので、これから行われるんでしょうリレギュレーションを通じながら、市場に近いような、払うものも民営化されるなら仕事をする方も民営化していただくことで利益率を高めていくということが必要かと思います。

 それから、二年間のアクションプランを見ますと、達成いたしました。簡単に申しますと、郵便は、アクションプランで、平成十五、十六年で二百十四億の利益を目標にしたのが、五百十五億であります。それから貯金は、金銭信託運用益を除きまして、目標は一兆九千五百八十六億円でありましたが、二兆一千八百二十九億円でございます。保険の内部留保は、百六十一億の積み増しを目標にしたところ、五千五百五十八億だけれども、これは右のポケットから左のポケットなので、威張れた数字ではないということはさっき申し上げたとおりでございます。

桝屋委員 ありがとうございました。

 私の持ち時間がなくなってまいりまして、今の話を聞きながら、先ほど同僚議員の質疑も聞いて、ここまで頑張っている公社でありますから、何で今から民営化なのか、こう言いたくなるわけで、では竹中大臣と次の議論をしたいのでありますが、きょうは伺いません、もうお答えになることは大体想像できますので。

 私は、せっかく生田総裁のお姿がありましたので、どこまで頑張っておられるのか、そうした取り組みを踏まえて、これから我々はしっかり審議をしなきゃいかぬと思っております。

 それで、例えばゆうパックも、これから小包郵便がユニバーサルから外されるということがありまして、我が党内でも、特に沖縄の国会議員あたりから、本当に大丈夫なのか、民間市場等、本当にその中でやっていくことが一体どういうことなのか、この辺をしっかり審議の中で明らかにしてもらいたい、こうも言われております。

 今の総裁のお話を聞いて、資産が今六兆幾らになった、こういう話がありました。では、この資産をどう切り分けるのかというような議論を実はきょうしようと思ったのでありますが、十二時前になりましたから、次にまた、月曜日にこの続きをさせていただこうと思っておりまして、とりあえずこれで終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

二階委員長 この際、暫時休憩いたします。

    午前十一時五十七分休憩

     ――――◇―――――

    〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕


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