衆議院

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第4号 平成17年5月30日(月曜日)

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平成十七年五月三十日(月曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 二階 俊博君

   理事 石破  茂君 理事 松岡 利勝君

   理事 柳澤 伯夫君 理事 山崎  拓君

   理事 桝屋 敬悟君

      井上 信治君    今村 雅弘君

      江藤  拓君    大野 松茂君

      大前 繁雄君    城内  実君

      北川 知克君    小泉 龍司君

      小杉  隆君    小西  理君

      左藤  章君    桜井 郁三君

      柴山 昌彦君    園田 博之君

      萩生田光一君    馳   浩君

      早川 忠孝君    松本  純君

      三ッ林隆志君    宮下 一郎君

      山際大志郎君    石井 啓一君

      長沢 広明君    塩川 鉄也君

    …………………………………

   総務大臣         麻生 太郎君

   国務大臣

   (金融担当)       伊藤 達也君

   国務大臣

   (郵政民営化担当)    竹中 平蔵君

   内閣府副大臣       七条  明君

   内閣府副大臣       西川 公也君

   内閣府大臣政務官     木村  勉君

   総務大臣政務官      松本  純君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  中城 吉郎君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  磯部 文雄君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  竹内  洋君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  細見  真君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  伊東 敏朗君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  篠田 政利君

   政府参考人

   (総務省郵政行政局長)  鈴木 康雄君

   参考人

   (日本郵政公社理事)   岡田 克行君

   参考人

   (日本郵政公社総裁)   生田 正治君

   衆議院調査局郵政民営化に関する特別調査室長    石田 俊彦君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月三十日

 辞任         補欠選任

  江藤  拓君     山際大志郎君

  大野 松茂君     萩生田光一君

  山口 泰明君     早川 忠孝君

  谷口 隆義君     長沢 広明君

同日

 辞任         補欠選任

  萩生田光一君     三ッ林隆志君

  早川 忠孝君     山口 泰明君

  山際大志郎君     江藤  拓君

  長沢 広明君     谷口 隆義君

同日

 辞任         補欠選任

  三ッ林隆志君     大野 松茂君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 郵政民営化法案(内閣提出第八四号)

 日本郵政株式会社法案(内閣提出第八五号)

 郵便事業株式会社法案(内閣提出第八六号)

 郵便局株式会社法案(内閣提出第八七号)

 独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案(内閣提出第八八号)

 郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第八九号)


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     ――――◇―――――

二階委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、郵政民営化法案、日本郵政株式会社法案、郵便事業株式会社法案、郵便局株式会社法案、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案及び郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の各案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、参考人として日本郵政公社総裁生田正治君及び日本郵政公社理事岡田克行君の出席を求め、意見を聴取し、政府参考人として内閣官房内閣審議官磯部文雄君、内閣官房内閣審議官中城吉郎君、内閣官房内閣審議官竹内洋君、内閣官房内閣審議官細見真君、内閣官房内閣審議官伊東敏朗君、内閣官房内閣審議官篠田政利君及び総務省郵政行政局長鈴木康雄君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

二階委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

二階委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大前繁雄君。

大前委員 おはようございます。自由民主党の大前繁雄でございます。

 質問に入る前に、民主党の岡田代表に一言苦言を呈しておきたいと思います。

 去る五月二十一日の新聞報道によりますと、岡田代表は、この特別委員会の自民党メンバーが明らかにされた二十日夕刻の街頭演説で、茶坊主を集めて云々と発言されたそうでございますが、もしそれが事実とすれば、国民から公正な選挙で選ばれた私たち国会議員に対する重大な侮辱であり、強く抗議をしたいと思います。

 そして何より、ここに集まっておられる委員の皆さん方は、賛成、反対はともかくといたしまして、郵政問題を真剣に考え、悩んで、真摯に取り組んでこられた方々ばかりであることを申し添えておきたいと思います。

 自由民主党では、一年以上前から百回近い、郵政の特命委員会や合同部会など、関連部会を開催いたしまして、激しい議論を展開してまいりましたが、そのときに強く反対の論陣を張られた方々も多数このメンバーに入っておられまして、そういった皆さんは、茶坊主どころか武蔵坊弁慶のような方ばかりでございます。

 岡田代表も、つまらぬ街頭演説をやめて、一刻も早く審議拒否を解かれまして、この委員会の議論に民主党のメンバーを参加させられますよう強く要請したいと思います。

 それでは、質問に入りたいと思いますが、最初に、官営、民営の是非論、いわゆるそもそも論から入ってまいりたいと思います。

 このそもそも論につきましては、初日の審議で民営化に対する批判的な側からのいろいろな質問が出されたところでございますけれども、私は逆に、完全民営化を求める側からの政府批判についての幾つかについてお尋ねをしたいと思います。

 私が住んでおります西宮市は、兵庫県で人口が第三番目の都市になったのでございますけれども、アメリカのワシントン州のスポーケン市、これもワシントン州の第三番目の都市でございますけれども、姉妹都市提携をいたしております。スポーケンは人口で大体四十六万の西宮市の半分ぐらい、それから、面積でいきますと逆に、百平方キロメートルの西宮市の倍ぐらいがスポーケンでございますけれども、大体、それほど差のない都市でございます。

 私はこのスポーケンに何度か行きましたけれども、いつも感じますのは、日本は官の国であるということ、そしてアメリカは民の国であるということなんですね。

 一例を挙げますと、例えば市役所、西宮市は八階建てのすごい本庁舎がありまして、それから四階建てぐらいの支所が四カ所、今度五カ所になるんですかね、ございます。スポーケンへ行きましたら、市役所はどこですかと言って尋ねましたら、西宮の五つある支所の一つの支所よりまだ小さい、ビルのフロア三つ分ぐらいなんですね。人口も面積も比べてそれほど変わらないアメリカと日本の町が、官のすごさ、アメリカの場合には、逆に言えば官の貧しさというんですかね、それをいつも感じてきたんです。

 この両都市は親善使節団というのを毎年交互に交換しますけれども、そのときにも、やり方を見ておりますと日本は官の国だなと思いますね。すべてのスケジュールは、日本は西宮の市役所が決めます。飛行機の到着から、そしてパーティーの段取りから、何日にどこそこのお祭りを見に行くことから、全部市役所が決めます。だから、まあ安心なんですけれどもね。

 我々が逆にスポーケンへ行きますと、ウエルカムと手で書いたような歓迎の垂れ幕を持った民間の人が何十人か来ておられまして、予定も、あしたは何をするのかもう一つはっきりしないですし、ぼやっとしたまま一週間ぐらい過ごすというのが通例なんでございますけれども。こちらの方はほとんど市役所は関与していないんですね。

 これはどちらがいいかとなりますと、一概には言えませんけれども、日本の方がはるかに、非常に組織立って、秩序立って、いいなと思いますけれども、やはり金がかかっておるわけなんですね。アメリカの方は、頼りないようですけれども、すべて民間、ボランティアでやっているということで、評価すべき点もあるんじゃないかと思っております。

 そういった観点から今回の法案をいろいろ眺めてみますと、このたびの郵政民営化法案は、郵便事業については官営的要素を強く維持する郵便事業会社と郵便局会社に、それから、貯金・保険事業については、郵便貯金銀行と郵便保険会社という大変民営的色彩の強い、合計四つの会社に分割をしておるわけでございます。官のよさと民のよさをうまくバランスさせたよい案だと私は思うのでございますけれども、完全民営化を主張される一部のマスコミなどでは、政府が自民党に妥協し過ぎて民営化本来の目的が損なわれている、骨抜きになっているという声がたくさんございます。こういった批判に対してどのようにお考えか、まずお聞きしたいと思います。

竹中国務大臣 大前委員から、西宮のお話も含めて問題の提起がございました。私自身、若いころ二年間、大前委員の選挙区で生活をさせていただいたことがございまして、実感を持って聞かせていただきました。

 御指摘のように、民営化本来の目的が損なわれているのではないかというような批判がマスコミの一部にあるというのは承知をしております。残念なことであると思っております。

 私どもは、郵政事業というのは、郵便、貯金、保険、このいずれの分野も民間企業が同様のやはりサービスを市場の中でやっているではないか、どうしても公務員でなければできない事業ではないのではないかという点を踏まえまして、今回の法案を提出させていただいております。

 民間にできることは民間でというのが、やはりこれはどう考えましても市場経済社会の、私たちの社会を支える根本的な原則であり、これはやはり小泉内閣の推進します構造改革の大原則でもあると思います。こうした方針のもとで、郵政の民営化は、郵政事業の四つの機能を市場原理のもとでそれぞれが新たな四つの会社として自立した存在となることによって、新しい会社が民間企業と同一の競争条件のもとで自由な経営を行う、そして結果的に質の高い多様なサービスを提供できるようにするということを目指しております。

 もちろん、他方で郵政の事業は、郵便のユニバーサルサービスを初めとしまして、従来から公共的な大変重要な役割を果たしております。こうした点はもちろん言うまでもなく重要でありまして、民営化実施後におきましても、このような公共的な役割は引き続き果たされることが極めて重要であるというふうに思っております。

 政府が提出しておりますこの郵政民営化の関連六法案は、郵政事業が有しますこうした公共性にも十分配慮して、民営化後の新会社が市場原理に基づく公正な競争を通じまして質の高い多様なサービスを提供可能とする案となっているということをぜひ申し上げておきたいと思います。

 一部のマスコミにそういう批判があるのは承知しておりますが、ぜひ、このような趣旨をしっかりと引き続き説明をしていきたいと思っております。

大前委員 この問題についてもう少し細かく幾つかお聞きしたいと思うんですけれども、こういった批判の最も大きなものは、三事業一体を求める強い要望にこたえようとして株式の持ち合いを認めたことに対するものでございます。

 つまり、移行期が終了した後も株式の事実上の連続的保有を認めるということが批判を招いているのでございますけれども、この点どのように考えておられるのか、お尋ねしたいと思います。

竹中国務大臣 大前委員御指摘のように、株式の保有についていろいろな御意見があるということも承知をしております。民間にできることは民間でというのは何度も申し上げましたけれども、そうした観点から自由な経営を行う、そして質の高いサービスを実現していく。

 実は、今回の法案の中でぜひ御理解いただきたい一番重要なポイントの一つになると思うんですが、郵便貯金銀行と郵便保険会社につきましては、民営化当初から一般の商法会社として設立している。これは、ユニバーサルサービス義務を有する郵便事業等々が特殊会社として設立するというのとは根本的に違うところでございます。移行期間中に、したがって持ち株会社がこの郵便貯金銀行と郵便保険会社の株式を一たん完全に処分する義務を課す、そして国の関与を断ち切るということが大変重要なポイントになるわけでございます。そして、その後、この民有民営化によって、郵便貯金銀行、郵便保険会社はまさに普通の銀行、普通の保険会社になるわけであります。

 したがって、移行期間終了後に持ち株会社や郵便局会社がこれらの金融機関の株式を取得することについては、これは、他の民間金融機関の株式を取得する場合と同様に、一般的なルールのもとでやってくださいというのが今回の基本的な考え方でございます。一般的なルールというのは、当然、独占禁止法がございます、銀行法の規制、保険業法の規制というような一般の法規制がございます。そして何より、これは、持ち株会社や郵便局会社というのは特殊会社でございますから、特殊会社のそもそもの設立の目的とかその規制の範囲内においてやっていただかなければいけない、しかし、それ以上の規制を課すものではありませんという決め方をしているわけでございます。

 したがって、移行期間終了後速やかに、持ち株会社や郵便局会社等が経営判断によって郵便貯金銀行、郵便保険会社の株式を市場から取得するということは、これは当然可能なわけでありますし、それが結果的に株式の連続的保有を可能にするということにもつながるわけでございます。

 このように、株式の連続的保有が可能であるとしましても、それは、今申し上げたように、一般的な法規制のもとで経営判断により行われるものであるということでありますから、民間金融機関と同一の条件で自由な経営を可能とするという民営化の趣旨を決して損なうものではない、まさにこれが民営化の趣旨である。したがって、一部のマスコミ等々にある御批判は私は当たらないというふうに思っております。

大前委員 今大臣が説明されたことはもっともだと私も思っておりまして、そこらあたりをもっとPRしていただきたい、そのように思います。

 次に、郵便事業会社と窓口ネットワーク会社は、国が三分の一を超える株式を保有することとされる持ち株会社の一〇〇%子会社となるわけでございますけれども、このように、国の資本が入った企業と他の民間企業との間に対等な競争が本当に確保できるのかという疑念がよく言われるわけでございますけれども、この点についてはどのようにお考えか、お聞きしたいと思います。

竹中国務大臣 国がみずから三分の一超出資する持ち株会社というのが日本郵政株式会社としてつくられる、そして、そのもとに郵便事業会社、郵便局会社、これは、この持ち株会社が全株式を恒久的に保有するという形になります。委員御指摘のとおりでございます。どうしてこういう形にするのかといいますと、それは、郵便のユニバーサルサービスを確保するための郵便業務または郵便窓口業務の提供など、この両社の、まさに今、先ほど御答弁申し上げました、特殊会社としての政策目的の実現を担保するためにそのような国の関与が残る形にしているということでございます。

 郵便事業会社でありますとか郵便局会社が新規事業に進出をする場合には、これは他の民間の事業会社と同様でありまして、納税義務を負うということもその一つでありますし、各事業法や独占禁止法の適用を受けて、同じ条件、同一の競争条件のもとで事業の活動を展開するということに当然なります。

 したがいまして、郵便事業会社等が、国が三分の一超出資する持ち株会社に全額保有されている、そういう特殊会社であるからといって、他の民間事業会社より有利になるとは言えないというふうに考えております。

 ちなみに、国が一定割合の株式を恒久的に保有する民営化の実例としては、これはもう御承知の、NTT持ち株会社がそうでございますし、高速道路株式会社等々も同様の枠組みの中にあるというふうに考えております。

大前委員 次に、政府案では、郵便事業会社の実施する社会貢献事業、郵便局会社の実施する地域貢献事業に要する資金に充てるために社会・地域貢献基金を設けるということになっておるわけでございますけれども、こうした基金を設けることは民営化の趣旨に反するのではないか、特に、民営化後の会社に継続して基金を設けていくということはモラルハザードを生むことになるのではないかという批判もございます。この点についてどのようにお考えか、お聞きしたいと思います。

竹中国務大臣 今回の民営化の枠組みの中で、日本郵政株式会社、要するに、持ち株会社の中に社会・地域貢献基金を設けるということが規定されているわけでございますが、それに関していろいろな御議論があるということも承知をしております。

 今の大前委員の御質問は、基本的には二点、つまり、この基金と民営化の趣旨というものが矛盾しないのかということ、第二点として、そういう基金を設けることによってモラルハザードが生じないのか、その二点から今御質問があったというふうに思います。

 日本郵政公社は、これまでも実は第三種・第四種郵便でありますとか、これは大変重要な社会貢献だと思います、同時に、過疎地の金融サービスを提供するというような、これも地域貢献、社会・地域貢献を行ってきたところでございます。郵便事業会社及び郵便局株式会社、民営化された後の会社は、それぞれ法の趣旨に沿いまして、このような、地域や社会に貢献して、結果的に利用者利便に資するという業務を引き続きやはりこれはしっかりと提供する必要があるというふうに考えております。

 基金を設置するというのは、これらの会社が行う、社会、地域にとってその実施が真に必要なサービスというものを確実かつ安定的に提供することを可能にしようというもの、そういう趣旨でありまして、これは民営化の趣旨に決して反するものではございません。公社がこれまでも行ってきた社会的な機能を引き続きしっかりと果たしていただこう、それを民営化の枠組みの中で当然しっかりやっていただこう、そのためのものでございます。

 モラルハザードの問題も今提起されておりますが、基金からは、郵便事業株式会社、郵便局株式会社がそれぞれ行います社会貢献業務、地域貢献業務等々につきまして、これは、その経営体として効率的に実施したとしても、それでも必要となる、その資金を交付するということにしているわけでございます。

 したがって、会社の赤字に対して経営支援として赤字補てんをする、何か困ったことがあれば赤字補てんしてあげます、しかも無条件でしてあげます、そういう性格のものでは全くございませんので、モラルハザードを生むことにはならないというふうに考えております。

大前委員 この項について、最後に、郵便貯金銀行や郵便保険会社の株式の売却益等を原資として基金を設けるということであれば、国に入るべき利益の一部を充てるものであり、実質的な補助金となるのではないかという批判もあるわけでございます。この点についていかがお考えか、お聞きしたいと思います。

西川副大臣 今大臣から、基金の役割それから性格等について申し上げました。

 その基金の原資でありますけれども、持ち株会社が保有しております郵便貯金銀行、郵便保険会社の株式の売却益あるいは配当収入等の自己資金を活用する、こういうことにしておりますので、直接国費を支出する補助金ではありません。

 さらに、基金の積み立てでありますけれども、企業一般の配当の動向も考慮して、株主の利益も念頭に置きながらこの基金を積んでいくように、こういうことを法律で定めております。国に入るべき利益も確保されるものと考えておりまして、実質的な国からの補助金である、こういう批判は当たらないものと考えております。

大前委員 私自身は、官業の民営化の根本的な目的というのは、税と官業の連関を断つという点にあると考えております。そういう観点からいたしまして、さきの道路公団の民営化についても、このたびの郵政公社の民営化案でも、基本的にはこの目的が達成されているので合格と考えておるわけでございます。現実に、既に民営化されておりますJRとかNTT、JTともすべて順調に推移しておりまして、国にとっても国民にとってもプラスであったということは立証されております。自信を持って民営化に臨んでいっていただきたい、そのように思います。

 次に、第二の項目といたしまして、国際物流業務についてお尋ねをしたいと思います。

 ユニバーサルサービスを維持していく上で不可欠なのは、利益の上がる新事業の展開でございます。この点で最も期待の寄せられているのが国際物流業務と言われておりますが、この点について一、二お聞きしたいんです。

 私たちと同じ一期生の同僚議員の奥野信亮代議士は、御自身、物流会社の経営者でございますけれども、奥野先生によりますと、国際物流業務というのは大変利益の出る業務で、将来、郵便事業会社のドル箱になる可能性があるとおっしゃっておられます。ほかの貯金、保険の両者よりも、こちらの方が将来利益が出て大きな事業体に成長していくのではないかということを言っておられるわけでございます。

 そこで、まずお聞きしたいことは、そんなに高収益の出る分野に、どうしてこれまで郵政省も、そしてその後の公社も手をつけてこなかったのか、この点についてお聞きしたいと思います。

麻生国務大臣 今、御質問のあった国際物流というのは、これはもう大前先生、当たればもうかります。はい、間違いありません。ただ、これは同時に、国内をやるのと違って危険も伴うというところもありますので、商売という感覚から見れば、当然この分野に出てしかるべきだと存じますが、公社という立場で仕事をする立場になりますと、まずは何といってもかたいところをやらないかぬというところでありまして、郵便配達と郵便貯金と簡易保険というこの三事業というものを一体的に遂行していくという立場に立ちますと、これは国が全額出資でやりました特殊法人ということでもありますので、まずかたいところでやらないかぬというところで、ちょっと特殊な背景があるのがまず第一点。

 ただ、EMSというのは、エクスプレス・メール・サービスと言うんだと思いますが、国際スピード郵便と日本語に訳していると思いますが、通称EMSというものでありまして、これに限っては、これまでもいろいろ今までやってきております。

 それで、今御質問がありましたように、これからこの分野がいわゆる大きな事業収益を上げ得る部分として、民営化されました後に新たにこういった分野というものに対して出ていくというのは、私はこれは当然のことであって、郵便配達会社としては、少なくとも利益を上げ得る部分として、いろいろな、国内の過疎になっております部分とか離島等々のいわゆる赤字配達を余儀なくされる部分を埋めるためにも、ここの収益を上げて、ここの部分で埋めるというような経営努力をされようとするのは、これは経営者としては当然だと思いますので、それに関していろいろ準備作業をやっていかれる。

 そのためには、ある程度そういう経験を既にやっております、今、フェデックスとかDHLとかいろいろ、そういった部分でやっておられる国際会社がありますが、そういったところを含めてやっていく、いわゆる業務提携をするとか、いろいろな形でやっていかれるというような準備をされていかれるのも、これまた当然のことだと思いますので、経営の自由度という意味で、こういった点に関して、いわゆる公正な競争というものに支障を生じないという点は十分に配慮をせないかぬところだと思います。

 いわゆる出資または出資子会社等々に業務の委託をするとか、いろいろなやり方はあろうかと思いますが、こういった部分に今後出ていって、そこで利益を上げようという努力をしていく必要はあろう、私どももそう思って、民営化になりました後、そういった部分についてはぜひ頑張ってもらいたいと思っておる次第です。

大前委員 今お話がございましたとおり、この国際物流業務というのは当たり外れがあるということでございます。

 国際物流の子会社を持つ、あるいはまた、奥野先生なんか主張しておられるんですが、大きな既存のそういう物流会社を買収するとか、いろいろな方法があると思うんですけれども、そういったことをこの十年間の準備期間の間にいろいろ試していかれると思うんですが、どういうような見通しを持っておられるのか、わかる範囲で結構でございますから、お答え願いたいと思います。

西川副大臣 国際物流事業でありますけれども、欧米の市場はもう既に四大事業者による寡占状況にある、こう言われています。しかし一方で、このアジアでありますけれども、経済成長が著しい、こういうことでありまして、見通しとしては、市場規模は今後十年間で約三倍になる、こういう民間の予測もあります。でありますので、アジアはこれから拡大していくな、こう受けとめております。

 民営化後の郵便事業会社の国際物流事業部門の収益でありますけれども、この部門への具体的な進出形態あるいは規模等がどうなるか、こういうことによって収益は左右されるわけでありますけれども、それらはすぐれてこれからの会社の経営判断だ、こういうふうに受けとめておりまして、確たることはなかなか申し上げにくい、こういう状況にあるかと思います。

 ただ、本年三月に行った採算性に関する試算、これは申し上げておきたいと思いますが、各種の前提条件を置きましたけれども、民営化後の郵便事業会社による国際展開によって、年間四千億円の売上高、そして五%に相当します年間二百億円の利益を確保する可能性がある、こういうことを示したところでございます。

大前委員 この国際物流の部門は、新生民営化会社の大変期待される部分でございますので、しっかりと見通しを立ててやっていっていただきたいと思います。

 次の項目といたしまして、特定局の問題について幾つかお尋ねをしたいと思います。

 明治の事業開始以来、郵政事業に対して特定局が果たしてきた役割は大変大きいということは言うまでもないと思います。したがいまして、民営化に当たってその経営安定並びに身分保障に格別の措置が図られるべきと考えるのでございますけれども、この点について今回の法案ではどのような配慮がなされているのか、お聞きしたいと思います。

竹中国務大臣 これまでの郵政公社の活動の中でも、特定局、特定局長さん、そこの局員の皆さん方、これはやはり大変重要な役割を果たしてこられ、そして国民の生活に根差した、地域に根差した信頼を確保してきたというふうに思います。その特定局がどのようになっていくのか、そこで働く方々がどうなっていくかというのは、郵政民営化の制度設計においても最も重要なポイントの一つでございました。

 委員からは、経営の安定、そして身分保障、この二点についてというお話でございましたけれども、特定局の民営化後どうなるかといいますと、いわゆる郵便局会社を構成する、主としてそういう役割になります。そして、この郵便局会社は、郵便事業会社、郵便貯金銀行、そして郵便保険会社、それぞれの各事業会社から窓口業務を受託する、そして適切な受託料を得る。一方で、地域のニーズに応じたさまざまな業務を展開していくという新しい分野にも進出をしていただいて、これは十分安定した経営が成り立つものというふうに考えております。そうした姿は、これまでの準備室の試算の中でも示させていただいているところでございます。

 また、身分保障、雇用等々でありますけれども、これは、特定郵便局を含む公社のすべての職員の雇用について、法律によりまして、新会社において確実に確保するということを民営化法の第百六十五条で定めております。

 また加えて、職員の待遇でありますけれども、これは当然、それによって不利益にならないように、第一に、新会社の職員の労働条件を定めていかなければいけないわけですが、その労働条件を定めるに当たりましては、公社の職員の勤務条件に対する配慮を義務づけるということを法律で行っておりますし、第二に、新会社における退職手当の支給に当たりましては、公社時代の在職期間をきちっと通算して退職手当を計算する、通算するということをこれまた法律で措置をしております。

 なお、民営化によって職員が公務員でなくなるということをこの法律では想定しているわけでございますが、郵便の業務のうち、内容証明郵便、特別送達など、これは信用性を維持する必要がございます。そうした問題に対しましては、総務大臣の任命、監督のもとに職務を行う郵便認証司の制度を設けることとしておりまして、雇用、そして仕事の中身等々につきましても引き続き重要な役割を果たしていただけるような、そういう制度設計にしております。

大前委員 今お話しのございました郵便認証司制度について幾つかお尋ねをしたいんです。

 今かなり説明もいただいたんですが、郵便認証司というのは公証人のような資格と聞いておるわけでございますけれども、具体的にどのような資格なのか、簡単に説明していただきたいと思います。

西川副大臣 郵便認証司について申し上げます。

 現在、公社が提供している郵便サービスでありますけれども、ここに関係するのが二つあります。一つは、債権譲渡手続等において利用される内容証明の問題であります。もう一つが民事訴訟法上の送達手続において利用される特別送達でありますけれども、これらのサービスへの社会的なニーズを踏まえまして、民営化後も引き続き郵便事業株式会社にその提供を義務づけることといたしております。

 これらのサービスにつきましては、民営化後においても、公務員である公社職員による取り扱いと同等の信用性を維持させろ、こういう御意見があったわけでありまして、ここは、先ほど大前委員がお話しくださいましたように、与党との協議を踏まえて、私どもは、客観的に取り扱いの公正、中立性を確保する仕組みとして、総務大臣が任命し、その監督のもとで内容証明及び特別送達に係る認証事務を行うことを職務とする郵便認証司の制度を設けることにいたしました。

大前委員 主務大臣が任命するということになっているんですが、ほとんどが特定郵便局長さんだと思いますが、特定郵便局長さん以外にこの資格を付与されるのはどういった人たちなのか。また、資格取得のための条件とか、あるいは試験をされるのであればその制度についてお教えをいただければと思います。

伊東政府参考人 お答えいたします。

 改正後の郵便法におきまして、郵便認証司は、郵便事業会社及び郵便局会社の使用人の中から、管理または監督の地位にある者であって、内容証明及び特別送達に係る認証事務に関し必要な知識及び能力を有する者の中から、それぞれの会社の推薦に基づきまして総務大臣が任命することとしております。

 お尋ねの、特定郵便局長以外にどういった人に資格が付与されるのかでございますが、特定郵便局長となっている方々につきましては、民営化後も郵便局などにおいて管理または監督の地位につくと想定されることになりますので、郵便認証司になることが想定されますが、そのほか、例えば現在の普通郵便局の局長、課長といった役職者の方々も郵便認証司になり得るものと考えております。

 それから、もう一点のお尋ねの、資格取得のための条件、あるいは試験をするのであればその制度はどうなるのかということでございますが、資格要件の一つでございます認証事務に関し必要な知識及び能力を有する者であるかどうかにつきましては、制度的には総務大臣の判断によることになりますが、例えば、総務大臣が、推薦を行う郵便事業会社などに対しまして、これまでの業務経歴や、一定の研修、講習などの受講歴などの必要な資料の提出を求めるなどにより判断することになるものと考えております。

大前委員 郵便認証司制度については大体わかりました。

 この問題を離れまして、もう一度特定局の問題、大きな問題をお聞きしたいんですが、特定局の関連会社化の可能性というもの、これは私の単なる想像なんですけれども、特定局の場合には、局舎が局長さんなどの個人所有のケースが多数あるとお聞きしておりますけれども、現在、公社と賃貸借契約を結んでいる局の数はどの程度あるのか、ちょっとお教え願いたいと思います。

岡田参考人 日本郵政公社の方からお答えいたします。

 現在、平成十五年度末現在で、公社が局舎の賃貸借契約を結んでいる局数は一万七千四百七十三局でございまして、そのうち、局長、本人からの借入局数は五千九百二十五局、全体の三三・九%でございます。

 以上でございます。

大前委員 局長さん御本人で五千九百で、それほど多くないんですけれども、その他局長さんのOBとかたくさん家主さんになっておられると思うんです。この郵便局会社の民営化に伴いまして、こういった個人事業主的要素をもあわせ持っております特定局が独立して関連会社になるといった可能性も考えられるのではないかと思うんですが、そういったことについては検討されたことがあるのかどうか、ちょっとお聞きしたいと思います。

竹中国務大臣 実は現在でも、いわゆる簡易郵便局に対しまして郵政公社は郵便局の事務を一部委託しているわけでございます。そして、委託できる業務範囲は特例法に基づいて定められている、特例法に基づくそれなりの制限はあるということだと承知をしております。

 そこで、今回の法案におきましてこの特例法を改正しておりますが、第一に、郵便窓口業務等については引き続きこの特例法において第三者に委託することが可能であるというふうにしております。そして第二に、郵便窓口業務以外の業務については、これは一般法に基づき自由に委託できるというふうに措置をしているところでございます。

 郵便局株式会社は、その業務を外部に委託することは、したがって、可能であるわけでございます。御指摘の特定郵便局の関連会社化も、こうした外部委託の一形態のことを委員御指摘だろうというふうに理解をしておるところでございます。特定郵便局の局舎所有者でありますとか郵便局会社などの契約関係者の間で合意が得られるのであるならば、こうした外部委託も活用して、よりよい事業経営が実現する可能性、これはそれぞれの経営の判断のもとでやっていただくことはあり得るというふうに思っております。

大前委員 私は、この民営化で賛成をずっと最初から一貫して唱えておりまして、特定郵便局長さんから随分批判も浴びるのでございますけれども、特に、私の住んでいる町内の町内会長さんが特定郵便局長のOBさんで、いろいろ議論するんです。今はあなたの郵便局、立派な郵便局で、切手を売る、はがきを売る、あるいは郵貯、簡保、それしかできないけれども、民営化したらもっと夢が広がりますよ、いろいろなことができますよと言ったら、最近は余りその方は反対は言われなくなった、私に対する抗議はされなくなったんですけれども、そういったPRも、夢があるということをどんどんPRしていっていただければと思っております。

 それでは、項目をかえまして、四番目、社会・地域貢献業務についてお聞きをしたいと思います。

 この社会・地域貢献業務については、先ほどもちょっと触れました。また、二十七日の質疑で宮下委員も取り上げられたところでございますので、ちょっと角度を変えてお尋ねをしたいと思います。

 持ち株会社である日本郵政株式会社が、社会・地域貢献基金を設けて郵便事業会社、郵便局会社がそれぞれ策定、実施する社会貢献業務、地域貢献業務に必要な資金を交付することになっております。これは、実際には過疎地などで経営困難が見込まれる郵便局への支援が主目的と考えられるのでございますけれども、当初一兆円とされていたものが、自民党との合意で二兆円まで積み増ししてもよいとされたわけでございます。

 しかし、二兆円でも、現在の低金利の状態を考えますと、その利息で支援業務を行っていくのは困難ではないかという不安がちまたにあるわけでございますけれども、この点、基金の取り崩しも含めてどのような見通しと対策を持っておられるのか、改めてお尋ねしたいと思います。

竹中国務大臣 郵政が担っております社会・地域貢献を引き続きしっかりとした枠組みで行うために基金を設ける、その際に、その規模はこれで十分かどうかという点につきまして、御指摘のように、与党の中でも大変熱心な御議論をいただいたところでございます。

 この基金の規模ですけれども、法律上は、これは一兆円の積み立てを義務づけております。そして、基金から資金の交付を受ける地域貢献の業務、社会貢献の業務を実施するために必要な額、我々は実はこの必要な額を合計百八十億円程度というふうに想定しておりますけれども、その上で、この額を運用益によって確保する、運用益でその額を満たすということからこの一兆円という数字が出てくるわけでございますが、その場合の金利水準をどう想定するかということが一つのポイントにはなります。

 具体的には、過去十年間の十年国債の平均金利が、これは一・八%程度でありましたので、それを想定して、それで資金交付に充てる運用益が不足することはない、この一兆円で不足することはないと基本的には考えているところでございます。これは、過去低金利時代の十年間の平均を想定しているということでございますので、我々としてはかた目に見積もっているというふうに考えております。

 さらに、今申し上げましたように、政府・与党のお話し合い、そして合意におきまして、基金は、地域、社会のニーズへの対応に万全を期すために、一兆円を積み立てるけれども、それが完了した後においても、それまでと同様の規律ある配当のもとで利益の留保と運用益の確保に努め、それらを基金に組み入れることによりまして、総額二兆円に達するまで積み立てを継続できるものとするというふうにされているところでございます。これは、運用利回りが過去最低水準になった場合でもこれによって対応はできる、そういう状況になったというふうに考えているところでございます。

 なお、基金の取り崩しについても御指摘がございました。繰り返し申し上げますが、私どもの想定ではこの一兆円の基金で足りるだろうというふうに考えているところでございまして、基金はこの社会や地域にとって必要性が高い業務を可能とする、それで設けたものでありますので、原則として取り崩すことはできないという性格のものでございます。

 しかしながら、これは基金の運用益のみでは財源を確保できない、さらに、郵便局会社、郵便事業会社の経営努力によって貢献業務の実施が困難となるような場合、さらにそれが地域社会の安定に重要な影響を及ぼすおそれがあると認められる、そういう要件を満たす例外的な場合には、これは取り崩しができるというような枠組みにしております。

大前委員 この社会・地域貢献事業といいますのは、今お話がございましたように、過疎地の経営困難郵便局支援及び社会福祉用の郵便事業費用の補てんに活用するといったことが明らかにされているのでございますけれども、社会・地域貢献事業という名前がついておるわけでございますので、そのほかにも支援事業を想定されているのか。あれば具体的に例示していただきたいと思います。

西川副大臣 社会・地域貢献基金という形で制度化しよう、こう考えています。

 一つは、地域貢献の業務でありますけれども、こちらの方は郵便局株式会社の方で対応しよう、こういうことになっておりまして、郵便局株式会社法案第六条第三項において、郵便局会社が郵便局を活用して地域住民の利便の増進に資する業務として営む業務のうち、地域住民の生活の安定の確保のために必要であること等の要件を満たすものと規定しています。

 すなわち、具体的には、法令上は何に使うということを限定はしておりませんが、現時点では、過疎地等の郵便局で提供される、大変御心配をいただいた貯金、保険のサービスが対象になることを想定しております。

 もう一つの社会貢献業務の対象でありますけれども、こちらは郵便事業株式会社法案第四条第二項において、郵便法に基づく郵便サービスとして考えております。

 大前委員から御指摘がありましたけれども、片方は地域貢献、片方は社会貢献、社会貢献の方は郵便事業だ、こういうことでありまして、どんなものが想定されるかと申し上げますと、心身障害者団体が発行する定期刊行物、あるいは盲人用の点字、録音物といった社会福祉の増進に寄与する第三種・第四種郵便物、これらを想定しています。加えて、被災者が差し出す郵便物あるいは救助用郵便物の料金免除など、被災者の救援または社会福祉の増進に寄与するための郵便料金の免除等が対象になる、こういうことを規定しております。

 このほか、「天災その他非常の災害の被災者の救援又は社会福祉の増進に寄与するものであって、会社以外の者による実施が困難なもの」等の要件を満たすものも対象となると想定しております。具体的に何かと申し上げますと、現時点では、ひまわりサービス、これらが対象になる、こう想定をしております。

大前委員 この社会・地域貢献業務について、最後に、直接今回審議しております法案とは関係ないのでございますけれども、日ごろ市民から要望されていることを一つお聞きしたいんですね。

 それは、最近、携帯電話の普及とともに公衆電話の撤去が急ピッチで進んでおりまして、どうしても携帯電話になじめないというおじいちゃんやおばあちゃん、いや、おじいちゃんやおばあちゃんだけじゃなしに、おじさんやおばちゃんもなんですけれども、そういった人たちから公衆電話がもうどこにもないという不満が強く上がっておるわけなんですね。これはNTTにも文句を言わないかぬのですけれども。

 そこで、本来、地域のセンター的な役割を担っているはずの郵便局でも、最近、公衆電話を設置していないところがふえてきているということを皆さんおっしゃるんですね。これは本当なのかどうか、実態はどうなっているのか、お聞きしたいと思います。

麻生国務大臣 間違いありません。減っております。

 今、昔と違ってテレホンカードというのを先生もほとんど持っておられませんでしょう。昔はえらいくれたものですけれども、今、ほとんど携帯になっておられますものですから。テレホンカードを使うのは、新幹線の中であっちの方がかかりがいいぐらいのときで、余り使われへんようになっておられるのが実態なんだと思いますが。

 基本的には、ユニバーサル確保の観点から、いわゆる第一種の公衆電話と言われるものにつきましては設置を義務づけておりますので、市街地、いわゆる人口集中地域と言われるところにおきましては、おおむね五百メートル四方に一台というのに決められておりまして、それ以外の地域でも、その倍の約一キロメートル四方に一台という設置基準を省令で規定をいたしております。

 他方、NTTの東西におきましては、この一種の公衆電話のほかにも、利用が多く見込まれる場所には二種のあれを幾つか置いていることも確かなんですが、御指摘のように、携帯電話の利用がえらく普及をいたしておりますので、公衆電話の収支というものは急激に悪化しております。

 そういう意味で、よくいろいろなところから言われておりますが、この四年間ぐらいを見ましても、平成十二年度末で今言われた郵便局に設置されております公衆電話の数は五千百三十五台、平成十六年度末には一千六百七十八台まで減ってきております。これは郵便局の敷地の外、周辺、局舎の外という意味ですけれども、あの公衆電話を含めますと約四千台ぐらいになろうかと思います。

 いろいろ御要望はあるんですが、そこそこの利益を考えますと、月に四千円ぐらいは利用していただきたいところなんですが、ほとんどのところがそれをはるかに下回る、千円だ二千円だということになりますと、これは維持費等々でとても利益がということになっておりますので、そういった意味では、今削減がどんどんどんどん進んでおります背景はそういった利用頻度の激減によるものだと理解をいたしておりますが、最低限のところの維持というのは必要であろう、私どももそう思います。

大前委員 せっかくの民営化の機会に、そして、社会・地域貢献基金というものもあるわけでございますから、結構、お年寄りで携帯電話になじめないという人にとっては、公衆電話がないというのは切実な問題のようでございますので、ぜひとも、郵便局に行けば電話はあるだろうと思ってみんな飛び込むわけでございますので、すべての局に公衆電話を最低一台は設置していただくように強く要望しておきたいと思います。

 時間がなくなってまいりましたけれども、第五番目に三事業一体の可否について、これは総理が出席される場合の質問も一つ一番目に想定をしておりましたが、総理がおられませんので、二番目の方を質問させていただきます。

 三事業一体ということは、ぱっと聞いたら一般の人はなかなかわかりにくいんですけれども、これを端的に表現をいたしますと、現在の郵政公社をそのままそっくり株式会社化するということでございますね。二年前に郵政民営化論者の小泉総理のもとで郵政の公社化が実現をしましたとき、多くの国民は、公社はそのまま株式会社になるのであり、そのステップが公社化だというふうに受け取った人が多くて、やがてそのまま株式会社化されるものと考えていたと思うんですね。それが、公社即一つの会社ではなくて、四つの会社に分社化されるということになって、国民の間に戸惑いがあるのではないかと思っております。

 私たちはわかっておりますけれども、なぜ公社の即株式会社化ということが無理なのか、改めてわかりやすく国民に説明していただきたい、そのように思います。

竹中国務大臣 大前委員御指摘のとおり、なぜ四分社化なのかということは、これは本当にしっかりと国民の皆様方に御説明をしなければいけないと思います。郵便の事業、そして窓口ネットワークの事業、そして貯金の事業、銀行の事業、そして保険の事業、これは特性がやはり異なる仕事、機能をそれぞれ有しているわけでございますけれども、なぜ分社化か。

 分社化することによって、四つのそれぞれの事業の損益状況が他の事業に影響を及ぼすということを未然に防ぐ必要がある。そして、それぞれの機能が、やはり異なる業種でありますから専門性を持ってもらって、その専門性を高めていただいて、それによって機能ごとに効率的な経営が行われることが必要だ、それによって良質で多様なサービスが安い料金で提供されるようになって国民の利便が高まるはずだ、そのように考えているわけでございます。

 もう少し具体的に申し上げますと、まず第一に、金融上の要因以外の要因で金融システムの安定に影響が及んではならないという、市場の非常に一般的な銀行法が定めたルールがございます。つまり、金融とそれ以外の事業、商業とはしっかりと分離しなければいけない、それでないと他の商業の状況が金融に及んで金融システムに影響を与える場合があるではないか、それが銀行法の定める市場の一般ルールでございます。このため、民営化に当たっては、他の民間金融機関と同様に、このルールをやはり適用しなければいけないということで、金融をしっかり分けなければいけないという大変重要なポイントが出てまいります。

 第二に、四つの機能、先ほど申し上げましたように、それぞれ異なる特性を持っております。やはり分社化して、各専門に特化をしていただいて、各会社が独自の事業展開を行う、そして潜在力を発揮していただく。金融が発達する中で、金融の専門知識と郵便等物流の専門知識はやはり違う、そこをしっかり専門化していただきたいということ。

 第三は、それに関連しますけれども、経営が個別に評価されることによって、その評価をしっかりと個別にして、それぞれの経営に責任を持っていただくということで良質で多様なサービスが安い料金で提供される、そして国民の利便性を高めたい、これがまさに四分社化を行う三つの重要な理由でございます。

大前委員 時間が参りましたので、最後に予定しておりました出口の問題については質問を割愛したいと思います。

 先ほども申しましたけれども、やはり、小さい政府の実現、そして国民の納める税金と官業との連関はできるだけ少なくしていった方がいい、そういう思いから私は民営化を進めるべきだと考えておりまして、その場合どういうような民営化を進めるのがよいのかということを今議論しているわけでございますけれども、おおむね私は納得しておるところでございますので、今後ともしっかりと進めていっていただきたい、そういうことを要望しておきまして、私の質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

二階委員長 次に、馳浩君。

馳委員 おはようございます。自由民主党の馳浩と申します。一時間よろしくお願いします。

 民主党の全面審議拒否はきょうで既に一週間を迎えております。国会運営にどのぐらいの経費が毎日かかっているか、竹中大臣、御存じですか。

竹中国務大臣 私はすぐに数字が出てこないんでありますが、麻生大先輩が数億円ではないかというふうな耳打ちをしてくださいました。

馳委員 竹中大臣も参議院議員になられましたから、こういう数字は覚えておかれるといいと思いますが、大体、衆議院、参議院一億円ずつですね。一日二億円、我々の国会審議にたくさんの職員の皆さん、議員の皆さんが参加されて、それだけの経費が使われていると。今、民主党、社民党の方々の議席の割合を考慮いたしますと大体三割強なんですね。二億円の三割強ですから、一日六千万円ほどがむだ遣いをされているという私は指摘をしておきたいと存じます。もう一週間たちましたから、六千万円掛ける七日間といたしますれば、四億円を超えるむだ遣いがされている。

 もとより、共産党の方も出席をいただいて、本会議そして特別委員会の審議は丁寧に、瑕疵なく進められてきておりますから、これは、審議拒否をされる理由はいろいろございますでしょうが、一日も早く復帰されることを望むものでありますが、竹中大臣、民主、社民の皆さんが参加されない中での審議になっておりますが、御感想はいかがですか。

竹中国務大臣 郵政民営化というのは、まさに明治以来の大改革、国民の生活、二十一世紀の日本の経済、社会の形をつくる改革、国民の生活に直結した改革、それに対しまして、国民の代表する立場でぜひオープンな、正々堂々たる議論をさせていただいて、そして、議論を尽くした上で私としてはこの法案を成立させたい、そのためにも、積極的なぜひ御議論をいただきたいというふうに思っているところでございます。

馳委員 きのう、おととい、週末、私は地元に戻りまして、いろいろ国政報告会また式典等に参加してまいりました。国会審議には参加されませんが、地元の式典には民主党の先生方は参加しておられました。そのことをどうこう言うわけではございません。そのときに、どうでしょう、いよいよ来週あたり審議に復帰される時期ではありませんかと誘い水を申し上げましたら、困ったなと。要は、審議に参加すべきであろうが、党としての方針でしょうから困ったなというふうに私理解いたしまして、それで、どういう条件が整えば審議に復帰されますかとまた誘い水をかけましたら、これはやはり二階委員長が何とかすべきだろうと。

 そんな問題かなと私は疑問に思いましたが、二階委員長、そういうやはり民主党の方もつらい立場にあるのかなとしんしゃくいたしますが、委員長は、民主、社民の皆さんが審議復帰されることに対してのお考えなり見識なり方法なり、お持ちでしょうか。

二階委員長 ただいまの御意見を理事会協議の参考にさせていただきたいと思います。

馳委員 それで、きょうは、私は二人羽織のような質疑をさせていただきます。

 といいますのも、先週、元気いっぱいの民主党、社民党の諸君は、院内でありながら、第一委員会室ではなく、どうもほかの部屋で集会を開いておられたようでございまして、そのときに、「これで郵政「民営化」!? 誰のためですか?」という政策パンフレットをおつくりになりまして、国民向けだと私は存じます。ですから、私も中身をチェックいたしましたが、そんなにぎちぎちと詰めた文言ではないように思っておりますが、民主党さんのホームページを開けばこのパンフレットについてより詳しく主張をされている。これは恐らく、小泉総理に言いたい、あるいは担当の竹中大臣にも言いたい、あるいは公社として責任を持つ麻生大臣にも言いたい、こんな思いを民主党として政策パンフレットにまとめられたのであろうと思います。私、聞いていませんから、つくった本人には。しかし、これは公になったパンフレットでございますので、きょうは私がこれをもとに質問をいたしますが、羽織をかぶって裏で私の手足を動かしているのは民主党の方でございますので、審議復帰されたときに、また民主党の能力のある先生方がしっかりと質疑をされればよいと思います。

 さて、いよいよ、前振りが長くて済みませんが、質問させていただきます。

 わかりやすくといいましょうか、「民営化よりも正常化!!」というサブタイトルでこのパンフレットは訴えかけているようでございます。この、正常化という民主党の皆さんが主張される意味というものを、このパンフレットを開いて私は今からつまびらかにしていきたいなと思っております。

 まず、「一 そもそも、郵政事業とは?」こう書いてあります。読みます。

 「郵政三事業のうち、郵便は基本的な公共サービス、金融(郵貯・簡保)は民業を補完するもの。もともと性格が異なります。郵貯・簡保は国民の金融資産の四分の一を占めるほど肥大化しており、民業補完という当初の目的をはるかに超えた大きさになっています。」これは現状認識であろうと思います、民主党にとっての。

 私もこの民業補完という言葉にはいささか違和感を感じますが、この文言、認識に対して、準備室を担当しておられる西川先生にちょっと御理解を聞きたいと思います。

西川副大臣 大変、説明のいい機会を与えてもらって、ありがとうございます。今の、民業の補完の部分についてお答えをさせていただきます。

 確かに、民主党のパンフレットを私も拝見いたしましたが、郵貯、簡保は規模を縮小し、民業の補完としての公社形態にとどまることを想定している、こういうふうに見受けられます。政府としましては、郵政事業は、郵便、貯金、簡保いずれの分野も、民間企業が自由な経営のもとで同様のサービスを今提供しております。でありますので、公務員でなければできない、こういう事業ではありませんで、民間による運営が十分可能だと、私どもはまず前提条件として考えております。

 特に、郵貯、簡保につきましては、約三百四十兆円の資金を有しております。家計の金融資産の約四分の一を占める規模に達しておるわけでありますが、これらを、郵政民営化を実現することによりまして、郵便局を通じて国民から集めたこの膨大な資金を官から民に流す道を開き、構造改革を一層前進させ、国民の利便性の向上が図られるようにしていくことが重要だと、こう考えております。

 そしてこの改革は、日本郵政公社に課せられております、官業であるがゆえの制約、これを取り払って、経営の自由度拡大によって郵貯、簡保の資金、機能を市場経済の中で効果的、効率的に活用するとともに、郵便局ネットワークという貴重な国民の資源を最大限有効活用して、国民や地域の利便性を向上させるという方向で考えるべきと私どもは思っております。

 官の力で強制的に規模を縮小する、こういうわけにはいきませんで、民営化により、民間企業としてのみずからの責任と経営判断に基づき、資金の調達、運用を行うことを通じて、市場経済の中でしかるべき規模に収れんをさせていく、こういう方向を目指すべきであろうと考えております。

馳委員 今の説明をいただいて、ありがとうございました。

 恐らく民主党の担当者の方は、民業補完、むしろこの言葉を浮き彫りにさせることによって、民主党なりの政策の方向性を位置づけようとしておられるのかなということが私今わかりました。

 また続いて、パンフレットに従って質問を続けさせていただきます。二番目、「どうして郵政改革が必要なの?」。読みます。

 「三百五十兆円の郵貯・簡保資金(=国民の皆さんのお金)が、特殊法人などにつぎ込まれてムダ遣いされています。郵便局に集まるお金を減らすとともに、ムダ遣いをやめさせることが必要です。」と言って、郵政改革の必要性を訴えておられるのでしょう。

 それで、細かく区切りながら質問に行きます。

 まず、三百五十兆円の郵貯・簡保資金、おかしいんですよね。先週、本会議でよく聞いておりましたら、総理は三百四十兆円とおっしゃいました。民主党のパンフレットにも三百五十兆円と書いてございます。これはどういうことなんでしょう。先週の二十五日に平成十六年度の公社の決算報告がなされていると思いますが、三百五十なのでしょうか三百四十なのでしょうか。これは、正確な決算に基づく数字をいただければ結構です。

麻生国務大臣 平成十六年末の郵貯、簡易保険の資金は、速報値でありますけれども、郵貯で二百十四兆円、簡易保険で百十九兆円、合計三百三十三・九兆円ということになります。これに郵便振替の五兆二千億を足しますとアバウト三百四十兆というのでありますので、十とはいえ、けたが大分違うと思いますね。十円と十兆では大分違うと思いますが。

馳委員 これはやはり公党の政策パンフレットでございますから、十円と十兆円では違うんですよね。おっしゃるとおりでありまして、三百五十と書いてあるパンフレットは三百四十に訂正すべきであると私は思います。

 次に行きます。

 それで、三百四十の郵貯、簡保、私、郵貯の方にちょっとこだわってみたいと思いますが、私も自分の口座を幾つか持っております。それで、口座と一口に申しましても、郵便貯金の口座は、何種類、そして、全部合わせたら口座の数は幾つあるのでしょうか。これは事務方で結構でございます。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 現在、六種類でございます。

馳委員 何か意地悪をしたみたいで済みませんが、六種類と申されておりますが、要は、普通の通常の貯金、それから定期貯金、それから定額、これがほとんどなんですよね。全部合わせて口座の数は五億六千万。五、六年前は六億四千万ほどの数の口座があったそうでありますから、今は整理されてきたのでしょうか、五億六千万の口座がございます。

 当然、我が国の人口が一億と三千万ほどでございますから、国民一人当たり四つか五つかぐらいの口座を持っておることにこれは数字上なりますが、いいんですね、別にこれは。いいんですね。答えてください。

竹内政府参考人 御指摘のとおりでございます。

馳委員 つまり、定額といいましても、定期といいましても、通常貯金といいましても、合計で限度額の一千万円にならなければ幾つあってもいいんですよということを今おっしゃりたかったんですね。うなずいてください。それはいいからいいから。そういうことなんですよ。

 そこで、口座の管理のあり方についての質問をしたいと思います。というのは、公社ですけれども、民営化、民間の金融機関に脱皮しようというときにありまして、口座のそれぞれの管理のあり方といったものを我々に教えていただきたいという趣旨からの質問でございます。

 私は実は養子でございまして、生まれたときから小学生まで川辺浩という名前だった。小学校三年生のときに、家庭の事情で馳浩となりました。川辺という時代に、親も私の将来を案じて郵便貯金をしてくれました。川辺の親がしてくれたんです。馳になってから、馳の方の親が私の将来を案じて貯金をしてくれました。合計して一千万円を超えているかもしれません。いないかもしれませんが、これは、結婚前、結婚後ということを考えても同じだと思います。意図的にではなくて、それは、女性も、あるいは男性でも、結婚後名前が変わる人もいます。さらに言えば通称の方、これは私の女房を例に挙げるとわかりやすいですね。タレントです。高見恭子を知っていますか。本名は馳恭子です。窓口に行って、高見恭子で口座をつくってください、あるいは、窓口に行って馳恭子でつくってくださいと言っても、窓口の方はそんなに違和感なく両方の名前でつくってくださるのかなと私は思います。そこでちょっと何となく首をかしげる方もいらっしゃいます、いいのかな、そんなことをして。おっしゃるとおり、そういうことなんですね。

 まさしくこれは、先般の臨時国会で、振り込め詐欺、おれおれ詐欺対策で、やはり口座をしっかり本人と特定できるかどうかという問題、あるいは偽名口座、これのやりとりの問題、これをしっかり規制してくださいよ、ちゃんとやってくださいよということを法律で決めて、振り込め詐欺などがなされないように、その悪の根源を絶ちましょうということを法律でやったはずです。

 ちょっと話が飛躍してきてしまいましたが、今、郵便局、現場では、口座の管理、これは全国オンラインでしっかりとチェックしていれば、一人が幾つもの口座を持っていたって、一千万円まで来れば、それが上限を超える場合には、だめですよ、解約してくださいよ、ないしは引き落としてくださいよとされていると私は信じていますが、こういう名前の違い、住所の違い、意図的な場合、こういったことに対する管理体制、チェック体制というのはまず今なされているんですかということをお聞きしたいんですよ。事務方の方で結構ですよ。これは事務的なことです。どうぞ事務方の方、手を挙げていますから、ちょっと答えてください。

鈴木政府参考人 郵便貯金の限度額管理の方法でございますが、従来は、郵便局で預入を処理いたしました後、後方の事務処理機関でございます郵便貯金事務センターで全国一本の名寄せを行っておりました。しかし、昨年の二月から、これまでの郵便貯金事務センターでの名寄せに加えまして、受け付けるとき、郵便局での預入処理時に、原則として限度額超過となる預入排除が可能になるようなシステムを整備いたしまして、より的確な限度額管理を行えるようになっております。

 以上でございます。(馳委員「だめだめ、それじゃ答弁の半分ですよ。偽名対策は、複数管理の」と呼ぶ)

 預入時に本人確認をいたしておりますので、何らかの形の証明書での本人確認をいたしましてチェックをし、それで、全国一本のシステムとあわせてチェックをしていくということでございます。

馳委員 今わかりました。何らかの本人確認が、ここがポイントなわけですよね、何らかの本人確認が。具体的に何らかとは何ですか。

 これは、今後郵便貯金の会社となった場合に、民間として、先ほど申し上げましたように、これは預金保険機構に入るんでしょう、新勘定の方は。旧勘定ではなくて、新勘定の方は預金保険機構に入りますよね。ということは、ちょっと、私が今説明している間に調べておいてくださいね。新勘定の方が預金保険機構に入るということは、ペイオフの対象になりますね。なりますよね。ということは、これは郵便貯金であろうともペイオフの対象に新勘定がなっていくということは、口座の管理のあり方というものはしっかりしなさいよと、国民だれもが信頼して当たり前だと思うんですよ。それをちゃんとやっていますかということを今聞いているんですよ。

 いいですか、それじゃまた話を戻しまして、今、何らかの本人確認をちゃんとやっておりますという極めてあいまいな答弁をされましたが、はっきりと具体的にどのようにそれを徹底して窓口でやっているのかどうか、できているのかどうか、これを聞きたいと思います。

鈴木政府参考人 郵便貯金の本人確認につきましては、金融機関等による顧客等の本人確認等に関する法律というのがございますが、それに基づきまして……(馳委員「済みません、ちょっと、マイクに向いて、大きい声でゆっくりとしゃべってください」と呼ぶ)はい、わかりました。失礼しました。

 金融機関等による顧客等の本人確認等に関する法律という法律がございます。これは、郵便局だけではなくて金融機関すべてで行っている法律でございますが、住所、氏名及び生年月日が記載されているものでありまして、運転免許証、各種の保険証、国民年金手帳、児童扶養手当証書、特別児童扶養手当証書、身体障害者手帳、その他幾つかの同様のものがございますが、あわせてほかに、例えば外国人登録証明書、パスポート、住民基本台帳カードのようなもので確認をいたしております。

 以上でございます。

馳委員 よくわかりました。これでもう私の妻は、高見恭子として口座をつくれないということになるわけですね。ですよね、当たり前ですよね。つまり、通称であろうとも使ってはいけないわけですね。

 では、さっき私がその前に話をしました旧姓でつくった場合、例えば、私が馳の前の川辺浩のときに、親が私のためにと八百万円ぐらい貯金を積み立てておいてくれた、養子に行きました、馳浩になって、窓口で手続すれば当然馳浩で、例えば五百万としましょう、八百足す五百、千三百万円になりました、これはそのまま継続することになるんですか。これは、私は意図的に私の親がそういうことをするとは思っていませんが、結果としてそうなる場合があるんじゃないのかなということで今聞いているんです。

 そして、意図的ではないと私は今言いましたが、意図的にという場合には、今度、偽造書面によって、先ほどあなたがおっしゃった本人確認といいながらも、その書面を偽造した場合に、できる可能性は残されているわけですね。しかし、これは間違いなく犯罪ですから。でも、そういったものを見抜いて、だめですよとぴしゃっと受け付けのときにシャットアウトできるような社員教育、今は社員教育と言っていいのかな、局員への教育というのはなされているんですか。これは、口座管理のあり方を私は本当に細かく聞いておきたいんですよ。ちょっとこれを教えてください。

鈴木政府参考人 本来的には、お名前が変更になった場合には名義変更手続をとっていただくことになっております。それがとられていない場合には残念ながらわからない場合もございますが、通常、その地域に住んでいる場合であれば大体のことはわかるというのが今までのやり方でございまして、そういう意味で完全ではございません。

馳委員 つまり、何といいましょうか、郵便局のお仕事は性善説に立っているような印象を受けました。

 つまり、結婚された方とか私のように養子に行った人とか、自己申告でないとなかなか窓口ではチェックできない。いや、これはもしかしたら民間の金融機関でも同じかもしれませんが、あなたは今いみじくも、地域の方であればわかるかもしれませんというのは、まさしくこれは郵便局のいいところですよね。郵便局の局員さんというのは、地域の方の顔というのは大体わかっているんですよ。数年前までは、私の地元でも、郵便局の局長が主催のゲートボール大会なんというのもよくありましたからね。

 今後、民営化されるに当たって、口座の管理のあり方、とりわけ、新勘定が預金保険機構に入りペイオフの対象になる、この場合に、口座管理のあり方についてもっと厳密に、現在の金融機関の経営者が民間においてきちっとチェックさせているのと同様に、そのぐらいの対応が求められる、それでこそ初めて、郵貯、簡保の三百四十兆円の資金に対する国民の安心感といったものが私はまず生まれるというふうに思うのですが、このやりとりを聞いていて、西川先生、御感想はいかがですか。

西川副大臣 この郵便局の現在の状況のお話は総務省の所管でありますが、これから民営化されるということになると、また総務省になるのかわかりませんが、当然、馳委員が言われたように、厳格な口座管理は必要だと思います。

 それで、名寄せ等もやっているとは聞いておりますが、なかなか口座数が多くて掌握し切れない、こういう面があろうかと思いますが、最大限、私どもはやっていただくように働きかけをやっていきたい、こう思っております。

馳委員 金曜日の質疑を聞いておりまして、宮下先生だったかな、あなたが質問されたとき、限度額の撤廃の話になりましたね。大野先生だったかな。これは、今の話と関連して、限度額を、今後、段階に応じてなのか一気になのか、撤廃の方向という答弁をされましたよね。だれがしたのかな。それで、今後の民営化に向けての期間のうちに法案が成立して、今後の期間のうちに、ということは二〇一七年までということかな、今後の議論の過程でそういうことですね。はい、確認しました。ここで口座管理がしっかりしていなければ、限度額を撤廃すると、これ幸いとばかりに偽名口座を、こういう言い方は悪いかもしれないですね、口座を幾つもつくって、一千万円を超えるのを幾つも、いわゆる一千万円以内でもいいですよ、幾つもつくっていくと、まさしく、限度額は現実でも撤廃しているんじゃないかと疑わざるを得なくなってしまいました、私は。

 こういう口座管理のあり方を踏まえて、限度額の撤廃についての考え方、どうあるべきかということ、ただ、これはまだ最終的に決まったわけじゃありませんからね。大臣、どう思われますか。

竹中国務大臣 金曜日にも御答弁申し上げましたように、二〇一七年までには完全な民有民営が実現しているはずである。その民有民営が実現された郵貯銀行、保険会社というのは、これは民間と同じで、限度額があるということは想定されないわけでございますから、委員御指摘のように、それまでには撤廃されている。

 それで問題は、そうした管理そのものは、今いろいろ御議論ございましたように、本人確認法をどのような形でしっかりと運用されているのか、そういった意味での預金の管理、さらには、信用リスクの管理等々含めてどのような管理が行われているかということは、これはもう既に始まっておりますが、金融庁のきちっとした金融の専門家としての検査が今もう入っておりますけれども、それがしっかりと展開されていく、それを受けて金融の監督がなされていく、そういうことになります。

 一方で、限度額を撤廃するかどうか、限度額を引き上げるか、変更させるかどうかというのは、その意味で主務大臣の認可になるわけでございますから、そうした検査監督の状況、そして総務大臣の一般的監督、そして、今申し上げたようなさまざまな要因を総合して判断する中で、これはきちっと、預金者に迷惑がかからないよう、民間とのイコールフッティングが確保されるよう、そこは各主務大臣が判断をする形で担保されていくというふうになると考えております。

馳委員 金融監督の問題というふうになってまいりまして、この四月一日からペイオフがいよいよ開始されました。現状ですら民間は、口座の管理のあり方、また、法律に基づいて偽名口座の管理のあり方、厳しく民間の金融機関に求めておられ、それに応じて各金融機関はやっておられます。今でも、公社のもとに郵便局はそういった問題について取り組んでおかなければいけないんじゃないんですかという私は問題点があると思うんですよ。

 この四月一日からペイオフが始まりました。一千万円という一つの基準がもうできています。各金融機関はちゃんと口座も管理しなきゃいけない。郵便局は今どうなんですか。これはだれに聞いたらいいのかな。ペイオフが四月一日から始まりましたが、今はイコールフッティングというおっしゃり方を竹中大臣されましたが、では、今、郵便局はちゃんとやっているんですか。

鈴木政府参考人 郵政公社は、昨年の四月一日から、二年以内に限度額オーバーをゼロにするという計画を立てて進めていると聞いております。今も御指摘のとおり、限度額管理、極めて重要なものでございますので、きちんとやっていただけるよう私どもも指導してまいりたいと考えております。

馳委員 二年以内にというふうにはっきりおっしゃいましたけれども、まさしく、民営化に向けてこういった事務的な詰めといったものは、きっちりやっていただくことが、今郵便局にお金を預けている国民の皆さんにとっての信頼と安心を、これは、民営化された後でも、未来永劫につなぐ一つの大事な管理のあり方ということにつながっていくと私は思いますから、よろしくお願いしたいと思います。

 話がちょっとそれてしまって済みません。もとに戻ります。

 さて、先ほど数字は変えましたね。この三百四十兆円の郵貯・簡保資金が、「特殊法人などにつぎ込まれてムダ遣いされています。」とありますが、この民主党のパンフレット、周知のごとく、郵貯・簡保資金は、特殊法人への融資のほかに、特別会計、政府系金融機関、自治体の地方債引き受けに充てられております。これらへの使い道にむだ遣いがあると民主党に言われているわけですが、これをどう評価いたしますか。

西川副大臣 今の問題ですけれども、小泉改革全般の話もあわせてお話をさせていただきたいと思うんです。

 それで、小泉内閣でありますけれども、資金の流れ、官から民へ構造改革する、こういう一貫した考えのもとで、入口の郵貯、簡保、そして出口の特殊法人、この間をつないでいる、資金を配分している財政投融資制度、これらを全体として改革しようということで小泉内閣は進めておるわけであります。

 それで、資金の流れの出口についてでありますけれども、既に、財投改革あるいは特殊法人等の改革が進められていることは委員御承知のとおりであります。特殊法人等整理合理化計画の改革対象百六十三法人のうち百三十五法人について、廃止、民営化、独立行政法人化等の見直し等を行って成果を上げている、こういうふうに私ども受けとめております。

 また、平成十七年度財政投融資でありますけれども、特殊法人等が行うすべての財投事業の財務の健全性について、民間準拠の財務諸表も参考にしながら総点検を行おう、こうしてやってきたわけであります。特殊法人等向けの投融資額でありますけれども、ピーク時、平成七年でありますが、三十一兆七千億。現在はどうだ。十一兆二千億と、実に三分の一程度に減ってきたということを報告申し上げたいと思います。

 それで、政府系金融機関の問題でありますけれども、十四年十二月に経済財政諮問会議の中で、民間金融機能が正常化することを前提に、落ちついてきたらと、こういうことでありますが、現行の政策金融機関は民業補完に徹しよう、その方針のもとに、貸出残高について将来的に、対GDP比率でありますが、半減させよう、これを目指そうということを十四年十二月の諮問会議で方針を決めた、こういう状況にあります。

 今後も、あるべき姿、これを求めていくために、組織の統合、集約化などの改革を速やかにやろう、こういうことでございます。もう既に、経済財政諮問会議で取りまとめに対して動き出そうということを方針として決定して、今議論が進み、始まるところでございます。

 一方、資金の流れの入り口でありますけれども、郵貯、簡保は、現在、先生何度も御指摘の約三百四十兆円という額は、家計の全金融資産の四分の一に当たる膨大な資金であるわけでありまして、これらが、政府保証がついている日本郵政公社の資金、いわば官の資金でありますから、これは当然として国民の負担回避のために安全運用せざるを得ない、今までそうですね、安全運用せざるを得ない、こういうことで大部分が国債の公的部門でやってきた、こういう状況であります。

 それで、今申し上げましたように、出口の改革だけで入り口が公社のままだ、こういうことで幾ら政府系金融機関を直そうとか法人を整理しようとかこうやっても、入り口で政府の信用を背景にお金がどんどん入ってくる、こういう構図ではなかなか改革が進まないだろうと、こう私どもは考えているわけであります。

 したがって、政府としましては、郵貯、簡保を民営化することによりまして、郵貯・簡保資金を民間資金に転化しよう、そして、法律で厳しい制限が課されている資産運用について規制緩和をしよう、それで民間部門に資金が流れるようにやっていきたい、こう考えています。

 そこで結論でありますけれども、大変御支援をいただいている話と同じ形でありますが、民主党のパンフレットでありますけれども、出口の改革について具体的にどうするのか、こういうことが読み取れません。私も読んでみましたけれども、読み取れない、こういうパンフレットかと思います。それから、入り口に当たる貯金、簡保については、質の改革、こういうことはもう避けて通っちゃって、単に量を減らすんだ、こういう話だけを目指しているのではないかというパンフレットと受けとめました。そして、資金の流れを構造改革する一貫した哲学は見受けられない、こういう私どもは受けとめ方でございまして、このパンフレットに「本物の改革」、こう記されておりますけれども、それには到底値しない、こういう私どもの評価でございます。

 以上です。

馳委員 西川副大臣の今の答弁は、議事録に残りますから、民主党さんが審議に復帰されたときにさらにつまびらかに多分指摘があると思いますから、今、私が論評するのはこれは控えておきたいと存じます。やはり、むだ遣いというのは確かに刺激的な言葉でありますが、現時点においての特別会計にしても、政府系金融機関においても、地方債の引き受けにしても、その必要性をもっていわゆる運用というか使い道を決めてきた、国債の引き受けがあった、この理屈は通るとは思うのですが、そのあり方がどうなのかということに対するこれは政策評価の文言ですから、この辺はやはり、本当の民主党さんが登場されたときにこれは議論を詰めていただければありがたいと私はむしろ思います。

 さらに、先ほどちょっと西川副大臣が触れられましたこの問題を聞きたいと思います。パンフレット、具体的にやります。

 「郵便局に集まるお金を減らすとともに、」とこう書いてありますが、具体的にどう減らすのか、この政策パンフレットには具体的な方法について提案されていません。しかし、民主党のホームページに書かれてある平成十七年三月二十九日付の民主党郵政改革調査会の資料によると、「預入限度額の上限を引き下げ、」と書いてあります。つまり、限度額一千万円を引き下げて郵便貯金事業を縮小させるべきだという議論になりますね、これは当然。これをどう考えるかというこれは問題だと思うのですよ。

 例えば、いわゆる公権力が強制的に法律でもってしてなのか。限度額を引き下げたりすれば、今運営している公社の経営といいますか、運営も縮小に持っていくのがこれは当然の結論になりますよね。まさしく、ここから派生してくる雇用の問題については何も書かれてありません。今現在、郵政公社の事業の縮小の問題についても触れられておりません。極めて説明が足りない文言だなと私も指摘せざるを得ませんが、私はホームページから引っ張ってきましたが、このいわゆる預け入れ限度額の上限引き下げの問題について考え方をお聞きしたいと思います。

 これは西川副大臣でも竹中大臣でも、これは一つの哲学的な話かもしれませんから、ちょっと御説明いただきたいと思います。では、西川さん、先に。

西川副大臣 一千万の話でありますけれども、私どもも郵政民営化準備室の皆さんと議論をしました。それで、規模を小さくというか、結果的に集まる金が少なくなってくるのにはどういう方法があるかな、こういう議論もしたんです。そこで、一千万円を単純に減らしたから金が本当に集まりぐあいが少なくなるのか、こういう議論もしましたが、なかなかそのときの経済状況あるいは金融機関の置かれている立場、それによって相当変化はするな、こういう議論を私どもしてきたところであります。

 ただ、規模縮小を国の力でやって、二十六万も二十七万もいる今の公社の社員が本当に就業機会を失わないか、こういうことも議論をしてきましたし、委員御指摘のように、ただ単に縮小すればいいというものじゃなくて、私どもは、強制的にやるよりも、むしろ、民営化によりまして、民間企業としてみずからの責任と経営判断に基づいて資金の調達、運用を行ってもらおう、こういうことでございまして、それらを通じて市場経済の中でしかるべき規模に収れんをさせていく、収れんしてもらう、こういう考え方が私どもの考え方でございます。

竹中国務大臣 御答弁の前に、限度額で一点だけ、ちょっと先ほどの技術的な問題に言及させていただきたいんですが、私は、限度額の引き下げや変更の場合に、先ほど、主務大臣が認可を通して関与するというふうに申し上げましたが、正確には、政令がございます、政令の変更によって主務大臣が関与するということでございますので、その点は訂正をさせていただきたいと思います。

 その上で、金融の規模に関しては、当初から、これは経済財政諮問会議の中でもいろいろな議論がございました。非常に極端な民間の金融関係者は、これはもう国がやるな、廃止しろという議論をなさる方も、これは今でもいらっしゃるわけでございます。現実に一九六六年のアメリカの改革では、アメリカにも郵貯はあったわけですが、それを廃止したという経緯はたしかございます。

 しかし、そうした問題を考えた上で我々は、そのために、実は例の改革の五原則というのを出しました。五原則の中、いろいろありますけれども、一つの重要なポイントとして、やはり雇用に対する配慮の原則というのがございます。そして、今二万四千を超えるネットワークがあるわけですから、この貴重な国民のネットワークをやはり活用すべきではないかという、その資源活用の原則というのもございます。

 そうした観点からいいますと、やはりその五原則、ほかに経済活性化等々ありますけれども、まさに、雇用を含む五原則をすべて満たすような改革としては、やはりこれは政府案がベストであり、政府案のような考え方しかないと私は考えているところでございます。ぜひ、民主党の皆様方にもそのような点を御理解いただきたいと思っております。

馳委員 預け入れ限度額を政府の責任で縮小すべきであるというこの考え方はあるのかもしれませんが、これはまさしく、ネットワークの維持という考え方と、また、雇用の確保という政府の方としての五方針がありました。私は、これは重大な問題を横に置いての主張ではないかなと民主党のこの政策を指摘せざるを得ないんですよ。民主党を応援しておられる郵政関係の組合もあると思いますが、もしこの文言をチェックして、私は、組合の方々がどういうふうに思っておられるのかをむしろ聞きたいぐらいですが、答弁される方がいませんので、済みません、次に移りたいと思います。

 さて、パンフレットの三で、「民主党の考え方は?」というところ、ここを読みます。

 「郵便は、国際条約で基本的な公共サービスと定められています。民間企業と競争しながら、国が一定の役割を果たすべき分野です。金融については、民業補完という原点に立ち返り、適正な規模まで縮小します。地方や中山間地の実情にも配慮しなければなりません。つまり、本来の姿に正常化するということです。民主党は、民営化よりも正常化が必要だと考えています。」恐らくこれが、民主党さんがおっしゃりたい本音のところなのであろうと思います。

 これは、文言を細かくつっつくというよりも、ここが民主党の考え方、民営化よりも正常化という主張、そして、私が今までちょっとつっついてきましたけれども、この限度額の縮小の問題もこうやって踏まえまして、また、従来から議論があります、郵政民営化法案でも中山間地や一定のネットワークを維持するという考え方、雇用の確保という考え方、総合的に踏まえまして民主党の考え方が出ていますけれども、随分生ぬるいなと私は文言としては思います。むしろ、我が党の論客の方が、より詰めた反対論を展開されるんじゃないかと私は感じておりますが、西川副大臣、あるいは竹中大臣でも結構ですが、この民主党の考え方に対してのコメント、認識をいただきたいと存じます。

西川副大臣 「民営化よりも正常化」、どこの部分を指しているか、まだ私も確たる理解をしていないところでございまして、その正常化の部分についてはコメントを避けさせていただきたいと思います。

 ただ、私どものこの法案でありますけれども、郵便事業、民営化後も引き続きユニバーサルサービスを提供するということで、いろいろなことを考えてきました。基金の問題とか、過疎地でもしっかり守っていけとか、こういうことを考えてきましたし、また、今までやってきた第三種郵便、第四種郵便、特別送達等の公共的なサービスも引き続き今までと変わりません、こういうことをやってきましたので、私どもの今の法案の中で、民営化という目的の中で、官から民へ、この動きを確実なものにしていきたい、こう思っております。

 先ほどの正常化についての論評は避けさせていただきたいと考えております。

馳委員 気になる文言のところでちょっとつっつきたいと思いますが、「適正な規模まで縮小します。」適正な額とは具体的に幾らになるのか、パンフレットは示されておりません。そもそも、適正な規模を市場原理を無視して政府や国会がそれこそ適正に決めることが可能なのか、また、決めることが妥当なのかお聞きしたいと存じます。

 関連して、政府案では民営化される郵貯銀行の残高はどのようになるのか、これについての考え方をお示しいただきたいと存じます。

西川副大臣 今御指摘いただきました官のままの規模縮小、こういう話でありますけれども、官のまま規模縮小するということは、私ども、構造改革には結びつかない、こう理解をしています。

 郵政事業の改革は、民営化をして、今の公社に課せられております官業であるがゆえの制約を取り払っていこう、こういう考え方で、私どもの考え方は、取り払おう、こういう考え方でございます。経営の自由度も拡大をして、資金は、先ほどから何度も申し上げましているように、民間で使いやすくしていきたい、こういう考え方でありまして、郵便局のネットワークも最大限生かしていく、こういう考え方であるわけであります。

 そして、先ほどの適正な額、こういうことでありますが、なかなか非常に難しい状況でありますが、私どもは、さきに骨格経営試算、こういう中では一応条件をそろえてやっておりますけれども、なかなかここの部分は難しい問題だ、こういう認識をしております。

馳委員 パンフレットの四番目に進みます。「小泉さんの郵政「民営化」ってどんな内容ですか?」ちょっと挑発的な文言になっておりますので、これは、担当大臣、読んで反論というか、ちょっとお答えいただきたいと思います。読みます。

 「「民間にできることは民間に」という考え方については、民主党も同じです。しかし、小泉さんの郵政「民営化」は、国が大株主の国有株式会社をつくることです。規模はもっと大きくなり、ムダ遣いの是正も行われません。国民の皆さんがイメージしている民営化とは、ずいぶんかけ離れた内容です。また、今の郵政公社の運営には税金は使われていません。したがって、郵政「民営化」によって「小さな政府」になるという説明も正しくありません。」すべて断定して決めつけて、パンフレットとして国民に広めているんですよ、これ。

 これは、ぜひ政府としては、まさしく真っ向サービスじゃありませんけれども、真っ向からこれには答える立場にあると思いますが、これはやはり大臣に、どうでしょう、これ、それぞれ。

竹中国務大臣 正直申しまして、これを読むだけでは、その論理、ロジックというのはよくわからない気がいたします。その意味でもぜひ御説明をいただきたいなというふうに思うわけでございますが、国が大株主の国有会社をつくるということに関して申し上げますと、重要なのは、その経営主体が民間と同じ法律を適用されて、同じルールの中で競争していただくということ、しかし一方で、国が、公的な役割がありますから、それに関しては何らかの公的な役割を果たすような仕組みをつくらなければいけない。まさにNTTがそうなわけです。NTTは、三分の一以上だったか超だったかちょっと記憶はしませんが、やはり国が株式を持って公的な関与をしながら、しかしこれは、民間の会社として競争をしてくださいということになっている。こういう会社は、例の道路公団の民営化した会社においてもそうでございますし、これは、私は、極めて一般的な民営化のときの普通の形であるというふうに思っております。

 市場の中で民間と同じルールで競争していただく、同時に、公的な役割を果たすための仕組みは残しておく、そこがまさに工夫のしどころ、知恵の出しどころでございまして、今回は、そういう意味では、郵便局会社、郵便事業会社等々については、そのような、持ち株会社もそうですけれども、民間と競争していただきながら、しかし公的な関与が残る、公的にしっかりとした仕組みが果たせるような特殊会社にする、しかし、信用を背景とした、信用がある意味ではすべてであると言っても過言でないような銀行と保険については、これは当初から商法の一般会社にする、非常に筋の通ったそのような改革の枠組みを示しているつもりでございますので、まさに、それによって小さな政府、効率的な市場経済が間違いなく確立していくものというふうに思っております。

馳委員 これは西川副大臣に聞いた方がいいと思うんですが、「税金は使われていません。」と断言しておりますが、ここも一つのいろいろな争点で、税金は使われていませんが、本来ならば事業、経営の段階で払うべき税金を払っていないというこの指摘もあるわけであります。

 ですから、これをちょっと詳しく、本来、今の郵政三事業を行うに当たって払うべき税金は払っていないものがありますよね。これをもってすれば、「税金は使われていません。」という文言は、厳密に言えばちょっとふさわしくないと私は思いますが、これに関して西川副大臣、お願いします。

西川副大臣 直接税金を払っているかいないかの議論のときに、見えない負担という話も出てきまして、それは税金と同じような考え方でいいんじゃないか、こういう話がございました。

 そこで、郵政公社でありますけれども、確かに直接税金は入っておりませんけれども、他方、法人税等の税金、あるいは、先ほどから何度かお話ありましたけれども、預金保険料等の負担、こういうものを負担していないわけでありますから、これは、もう民間にはないそういう優遇措置が講じられている、こういうことになるわけでありまして、これが民営化されれば納税義務が出てきますし、当然、小さな政府の議論の中で、今まで税金は使われていませんという表現がありましたけれども、それは、見えない負担、こういうことから考えますと、私は適当でない、こう思っております。

馳委員 長々とおつき合いいただいてありがとうございました。

 パンフレットの五番目にはこういう文言で締められております。

 「小泉さんの郵政「民営化」が実現したらどうなりますか?」「世界一巨大な銀行と保険会社が誕生します。株式会社ですが、株主は国です(これで民営化?)。民間の銀行や保険会社は困ります。しかも、住宅や物品販売などの分野にも参入しますので、他の産業分野の皆さんも迷惑します。新会社が成功すれば多くの民間企業が迷惑し、失敗すれば国が損失を穴埋めして国民の皆さんに新たな負担が発生します。」というパンフレットを民主党の皆さんは国民の皆さんにお示しいただいております。

 ちょっと腕組みをしておられますが、こういうふうな指摘に対して、総務大臣、今郵政公社を担当する方として、こういう指摘を、野党第一党が審議拒否をしながらこんなものをつくるんだったら、出てきて私にかわって質問をしてほしいぐらいですよ。麻生大臣の見解をいただいて、私の質問を終わります。

麻生国務大臣 お尋ねのこの民主党のパンフレットにつきましては、質問の通告がございましたので、拝見をさせていただきました。他党、しかも御出席をしておられる風がありませんので、その党の政策に関して見解を申し上げるのはいかがかと思わぬわけではありませんけれども、こういった公党のパンフレットですので、自分なりに拝見をさせていただいた上で、御質問でもありますので、答えさせていただきます。

 パンフレットによると、政府案だと、民業圧迫も郵貯、簡易保険の資金のむだ遣いもなくならぬ、実質国有の巨大コンツェルンをつくることになるのではないかということになろうと思いますが、あの法律をよく読んでおられぬのじゃないかなと。あれは厚かったですから、なかなか読むのも大変だったろうかなと御同情は申し上げますけれども、あれを読んでいただかぬと、十年間の移行期間の間に少なくとも郵便貯金銀行及び郵便保険会社の株式は全部処分するということが書いてありますので、国有ということは基本的には成り立たないんだと思うんです。株がまだ三〇%ぐらい残っていると思いますNTTでも、あれを国有と思っておられる方はまずいらっしゃらぬと思いますので、そういった意味では、これは違うのではないかと。

 それから、移行期の当初におきまして、公社同様の業務範囲ということでスタートするんですが、これは当然のこととして、先ほどの大前さんの質問だったかに海外業務等々の話があっておりましたが、新規業務を行うというのは、民間ですから当然なんですが、それを行うに当たりましては、少なくとも、民営化委員会の意見聴取等々を得て主務大臣の認可を得ることになっておりますので、そういった意味では、段階的に規模を拡大していくということであります。

 さらに、郵便貯金銀行、郵便保険会社が、一般の銀行とか生命保険会社として段階的に自由度を持って活動がされていきますようにその資金が市場経済の中に移っていくわけですが、約三百四十兆円というものが、今の状況ですと、少なくとも、先ほど御指摘のありましたように、いわゆる財投とか特殊法人とかいうところにしか行けない、もしくは、いわゆる大きな地方公共団体の地方債としか使えないと言われておりますものが、こういったような形をつくり上げることによって、時間はある程度かかるとは思いますけれども、官から民というものに資金が流れる道が開かれるということであって、今はこういった資金需要のときで、今は、御存じのように銀行に対する資金需要というのは従来とは随分違った形になっておりますから、直ちにということにはならぬとは思いますけれども、間違いなく官から民に道が開けることになりますし、事実、先ほど何度となく御指摘があっておりましたように、平成十九年度からはこの財投に対する国債のいろいろな部分の法律が変わりますので、郵便局といたしましても、強烈に言われなくても、貸し付ける対象がなければうかつにはその資金というものはなかなか扱える話ではありませんので、そういった意味では、時間をかけてそこらのところは市場原理の中から自然とある程度規模が定まっていくんであって、いかにも強制的に規模を決めるかのごとき話は、甚だ中央統制色の強い政党の御意見なのかなという感じを受けますので、そういった時代ではないのではないかというのが率直な感想です。

馳委員 終わります。

二階委員長 次に、桝屋敬悟君。

桝屋委員 公明党の桝屋敬悟でございます。連日、質疑に立たせていただきたいと思います。

 今、同僚の馳議員の議論、私もこのパンフレットを見させていただきましたが、非常に興味深く聞かせていただきました。本当に、先ほど馳議員が引用されました、世界一巨大な銀行と保険会社が誕生する、「株主は国です(これで民営化?)。」というような乱暴なパンフレットを、まあ、お出しする気持ちはわからぬでもないんでありますけれども、やはりこの場でしっかり議論をしていただきたい。国民をミスリードするようなことがあってはならぬな、こう思いながら興味深く聞かせていただきました。

 さて、先日、生田総裁にこの場に来ていただいて随分議論をさせていただきましたが、私が思った以上に熱っぽく、時間をかけて語られまして、本当は発言をもうやめていただこうかとも思ったんですけれども、生田総裁のここ一年、二年の思いといいましょうか、取り組んでこられる姿勢に私は敬意を表しているわけでありまして、ここはやはりお聞きしなきゃならぬなと思って聞かせていただきました。

 その話の中で、総裁が、本当に限られたビジネスモデルの中で事業を展開するという、しなきゃならぬというお立場、もっともっと収益率の高い事業に取り組みたいんだ、そういう真情も吐露していただきました。大変に心に残りました。さらにはまた、イコールフッティングという、何度も今までこの法案策定の中で議論されてきた言葉ではありますが、コインの両面というお話もされて、非常に総裁のお気持ちも理解できたところであります。思わず私も、ここまで頑張っておられる公社をなぜ民営化しなきゃいかぬのか、こう言ってしまいましたが、そんな思いも聞く人が聞けば感ずるわけであります。

 先日の生田総裁のお話から引き続き、それを受けて竹中担当大臣と議論をしたいと思っているんです。

 一つは、生田総裁の話の中で、十六年度決算、ストックの話では、資産が公社全体で六兆一千三百六十一億円、これは当然、公社が発足したときは一兆三千億ぐらいであったと思いますが、六兆一千三百六十一億円になっている。もちろん、郵便業務についてはまだ五千億以上の債務超過になっている、郵貯五兆二千七百二十一億円、簡保が一兆三千九百六億円というような数字をお示しいただいたわけであります。これが先日の決算の姿であります。

 今回、二〇〇七年に民営化されるこの姿も、骨格経営試算やあるいはシミュレーションで随分議論を我々与党の一員としてさせていただきました。二〇〇七年のスタート時は、資産としては四社全体として七兆六千億、こういう数字もずっと聞いてきたわけでありますが、十六年度の決算が六兆一千三百六十一億円、この資産が七兆六千億になるのかどうか、素朴な疑問でありますが、まずお答えをいただきたいと思います。

竹中国務大臣 桝屋委員お尋ねの、資産とおっしゃいましたが、純資産ないしは自己資本の意味だと存じます。

 この公社の自己資本、純資産でありますけれども、発足時は一・三兆、十五年度末四・六兆円であったものが、十六年度の当期純利益がここに約一・二兆計上されたことによって、十六年度末、直近期は、その分約一・五兆円増加して六・一兆円になっているということでございます。

 それを受けて、公社から民営化されるときの自己資本はどうなっているのかというお尋ねでございますけれども、これは言うまでもありませんが、今後の公社の利益でありますとか金利等の経済環境に大きく依存いたします。しかしながら、公社化して以降平均しますと、十五年度は二・三兆円、十六年度は一・二兆円の当期純利益が計上されているということを考慮いたしますと、決算がまだあと二回あるわけでございますから、民営化時点で公社が各民営化会社の経営に必要な自己資本を確保することは、可能な射程内にあるというふうに考えております。

 民営化に、収支見通しと、作成しました経営試算についてのお尋ねはまたあるかと存じます。

桝屋委員 十六年度のこの状況からすると、二〇〇七年七兆六千億という数字、随分聞いてまいりましたけれども、ここは可能ではないかという話でありますが。

 いずれにしても、骨格経営試算そしてシミュレーション、ずっと何度も見させていただきました。これを四社に切り分けるわけでありますけれども、この切り分けは、何度も骨格経営試算聞かせていただきましたが、これはあくまでも、事業用資産は別として、十五年度末の現預金を機械的に四等分をして計算してあるというふうに私も何度も聞いておりますし、それから、四会社の将来をこれで保証するものでもないし拘束するものでもない、あくまでも機械的な計算だ、こう言われているわけであります。

 そうはいいながら、十六年度決算が六兆一千億、これが七・六兆円になる、なるだろう、なる見込みだと。その上で、この七・六兆円を四つに切り分けるわけでありますが、ここは具体的には承継計画の中で策定をされることになりますけれども、やはり心配なのは、自己資本として十分な数字なのかどうかということであります。ここも法案化の中で随分議論になりましたけれども、四会社が、今は機械的な配分でありますけれども、これがたとえ機械的な配分であるにせよ過少資本になるというようなことはないのかどうか。

 先ほどから何度も竹中大臣はおっしゃっていますが、やはり信用ということが一番大事でありまして、まさに市場での信認を得る、そうした数字になるのかどうか。まず、資産の切り分けのところについて、大臣のお考えをいま一度御説明いただきたいと思います。

竹中国務大臣 委員は、この資産の状況について、資本の状況が大変重要であるという強い認識をお持ちだということをよく承知しております。まさにこれは、どういう形で、資産負債状況でスタートアップするかということはその後の運営に決定的な影響を与えますので、大変重要な問題であるということはもう私たちも承知をしております。その上で、今委員御指摘のように、この資産の切り分け、きちっとした手続を踏んで行うんだということがまず重要なポイントでございます。

 それはどういう手続かといいますと、主務大臣が作成する基本計画にまず従って、それで新会社の経営陣となる経営委員会が公社の協力を得ながらより詳細な承継の実施計画を策定して、そして主務大臣の認可を受ける、その中で切り分けの仕方が決まってくるということでございます。

 さらに、この切り分けといいますか、この財務内容が健全かどうかということを見るという観点から、主務大臣は、民営化委員会の資本の配分を含む意見を十分聞いた上でこの計画の認可を行わなければいけない。主務大臣が責任を持って認可するわけですが、その際、民営化委員会の意見を聞くということもこのプロセスの中に入ってまいります。そうした観点から、経営方針に即したきっちりとした配分が行われていくものと考えております。

 それで、骨格経営試算の性格でございますが、これまた委員御指摘のように、事業資産はちゃんと分けています。しかし、その他の資産については、これは御承知いただけると思いますが、あえて先見的な経営判断を政府が入れるのはいかがなものかということで、機械的な切り分けをそこはさせていただいているということなんでございます。

 その上で、それで十分かというお尋ねなわけでございますが、そうした形で行った我々の試算によりますれば、民営化時の四会社の自己資本合計が七兆円を上回る、そして各種会社への適切な切り分けを行うことによって、四会社がそれぞれ資本の不足にはならない状況であろうというふうに考えております。

 しかし、繰り返し言いますが、今後、その民営化委員会の意見も聞いて、しっかりとした手続を踏んでこの承継計画をつくっていくということに相なります。

桝屋委員 確かに、大臣おっしゃるように、これから手続をきちっと踏んでいくんだというのはよくわかっているのでありますが、いよいよ民営化の法案を今から審議するこの段階において、国民の皆さんが、スタート時において、今までだって三つの事業を一緒になってやってきて何とかもっていたのが、今度四つに切り分けるわけでありますから。確かに、承継計画をきちっと手続を踏んでつくるというのはわかるんですよ。わかるんですが、我々から聞くと、危惧を、懸念を持つ国民からすると、それは承継計画に全部結論をゆだねているだけで、本当に今の段階でそれは大丈夫と言えるのかと。今だって不安がありますよ、どう考えても心配だ、こういう声も逆にあるわけであります。

 それで、例えば郵便事業について、やはり五千億以上の超過債務があるわけでありまして、ここをどうするかという問題で、先ほど、骨格経営試算は決して将来を拘束するものではないけれども、目安の一つではあるわけでありまして、ここを国民は見ているわけである、我々もこれを見て議論をしている。

 その中で、郵便事業、窓口と郵便はやはり今までの状況が、経緯がありますから、ここはしっかり切り分けの中で資産をそちらに厚みをつけなきゃいかぬということもあるでしょうが、その結果、特に郵便銀行あたりは資本が二兆五千億ぐらい、これはあくまでも四つに機械的に切り分けたわけでありますが、例えばこの二兆五千億の数字、これは自己資本比率として実際、あくまでも今の仮の骨格の経営試算でありますが、その姿からして大丈夫なのかどうかということは、やはり説明をきちっとしなきゃならぬと思うんですね。

 将来、数字が変わるにしても、ここのスタート時で、今のプランを立てるときに、この数字はどうなのかということを御説明いただきたいと思います。

竹中国務大臣 これは本当に委員が何度も御指摘してくださっているように、我々、やはり目安を持っていかなければいけません。その重要な目安として、我々は骨格経営試算を提議させていただいております。つまり、経営判断の細部にわたるところまでは立ち入らないけれども、それでも通常想定される範囲内でやっていけるのかどうかに関して、この骨格経営試算は姿を示しております。それによって、四会社とも自己資本の不足なくしっかりと成り立ち得るということを、これで私たちはお示ししているつもりでございます。

 今特にお尋ねのありましたのは、貯金会社の自己資本二・五兆円ということでございますね。これは、ちょっと詳細な数字はここには持ってきておりませんが、要するに、BISの自己資本比率でいいますと、これは相当に高い比率になるということを、必要でございましたらまた数字はすぐ手に入ると思いますが、めどはお示しできます。一〇%台の半ばないしは後半ぐらいの高い数字だったと記憶しておりますが、要は、自己資本比率というのは、どのようなリスク資産を運用しているかいないかということに大きく依存をしてまいりますので、見かけ上の自己資本の割合ではなくて危険資産、リスク資産に対する自己資本の割合でございますので、実は郵貯銀行の自己資本の比率というのは相当に高いものであるということは、自信を持って申し上げてよろしいかと思います。

 数字、一三%から一八%、これはリスクの評価の仕方でいろいろ幅がふえるんですが、一三%から一八%ぐらいのかなり高い自己資本比率になるというふうに考えているところでございます。

桝屋委員 今お答えがありましたけれども、何度も言いますように、将来、承継計画で、それをつくる中で決めていくんですということではなくて、どう考えてみてもこの骨格経営試算は明らかにされているわけでありますから、その中で、例えば窓口にしても郵便にしても、この資産の状況であれば、当然ながら特殊会社であるということもあって、これだけあれば十分ですよ、それから今御説明のあった郵貯の銀行にしても、一〇%台以上の自己資本比率だ、これは民間と比べても遜色のないものである、こういう説明はきちっとある意味ではしておかなきゃならぬ、こう思っているんです。

 逆に、議論の中では、いやいや、そうはいっても、公社は民営化するときは金は幾らでもある、じゃぶじゃぶある、こういうことを言う人もいて、私もそこまで言われると抵抗したくなるのでありますけれども、やはりスタート時における資産の状況というのは極めて大事な要素だというふうに思っております。

 それからもう一つ、採算性のシミュレーション、先ほど、ことし三月ぐらいに発表されましたシミュレーションも見させていただきました。四分社化しても、今の骨格経営試算をベースに、二〇〇七年から十年間事業をやる、新規事業をどのぐらいやっていくのかということで、全体としては採算性が見込めると。ただし、そこは新規事業をしっかり取り組むということが前提であるわけでありまして、我々見ておりまして、マクロとしては、採算性について最大限の可能性が示されたものじゃないのかなと。とらぬタヌキの皮算用とまでは言いませんけれども、本当にそのとおりいくのかどうか。

 当然ながら、採算性については、各社ごとの個別の事業内容あるいは開始時期とか損益見通しなどが不可欠でありまして、そうしたものが承継計画にゆだねられるということでありまして、そこはしっかり手続を踏んでやっていただかなきゃなりませんけれども、私が申し上げたいのは、JRやNTTもそうやって承継計画を立ててやってきたということをよく御説明いただくわけでありますが、あのときは、JRにしてもそれからNTTにしても、既存の事業を続けるわけでありまして、今回の公社についてはまさに新規分野にどんどんと出ていこう、こういうことでありまして、私は状況は随分違うというふうに思っております。

 承継計画にゆだねるということは、それは手続上やむを得ないことでありますけれども、議論を開始する現段階において、四会社の採算性について確かな見通しというものはやはり担当大臣として国民に向けておっしゃっていただく必要があるんじゃないか、こう思っておりますが、竹中大臣、いかがでしょうか。

竹中国務大臣 民営化して、会社を活性化して、かつ住民サービスを高めて、それによるメリットがいかに期待できるかということを示すのは、やはり郵政民営化を実現する上でこれはもう確かに重要なポイントだと思います。そのためもありまして、我々もかなり早い段階からこの骨格経営試算を準備して、そしてお示しさせていただきました。

 御指摘のように、新規事業をどう見積もるかというのは、それ自体なかなか難しい問題でございますけれども、その過程におきましては、とにかく手数料の水準などは民間市場の動向に準拠する、とにかく民間準拠というのをしっかりと前提に置かせていただきました。そして、必要に応じて、これは非常にいろいろな事業の積み重ねでございますけれども、専門家の意見等も参考にしながら準備室において作成したものでありますので、その意味でぜひ御活用いただきたい、御評価いただきたいものであるというふうに思っているところでございます。

 こうした観点に関しては、生田総裁も、これは公社も目標とすべき利益水準である、やはり民営化するにはこのぐらいのことをやらなきゃいけないという認識をお示しくださっておられまして、我々としては、骨格経営試算でめどをつけているわけでありますけれども、これを手続の中で目途からより確度の高いものに順次しっかりと拡充していかなければいけないと思っております。

 そういう点も踏まえまして、実は、先般私の方から生田総裁の方に要請をさせていただきまして、郵政民営化関連法案で示された制度設計に基づきまして、これらの試算をベースにしながら、公社におかれても生田総裁をヘッドとするこういったものの検討の体制をとっていただきたいというふうに申し上げました。それを受けていただきまして、生田総裁の方では、経営問題検討会議のようなものをつくって、民営化後の具体的な経営戦略、それを裏づける詳細な経営シミュレーション、これは公社においても取り組まれるというふうな段階に今来ております。これは、引き続き準備室と公社が連携をとりまして、今の骨格経営試算で示されている一つの目途をより確度の高い、より説得力のあるものにしていきたいと思っております。

桝屋委員 採算性の問題については、この後、同僚の議員が改めて内容の確認をさせていただきたいと思います。

 きょうは、この前の総裁の話でもう一点気になっておりますのが、この前の総裁の話で、郵便事業、とりわけゆうパックが頑張っている、こういう御報告をいただきました。ゆうパックについては、郵便小包でありますけれども、対前年度比が一七・八%伸びたということで、二億一千四百六十八万個。まあ、頑張っておられるなと。ただ、それでも業界全体のシェアとしては六パーから一〇パー、その程度の数字だというふうに理解をしておりますが、ここを伸ばしていこう、こういうお取り組みを聞かせていただいたわけであります。今回の民営化では郵便小包はユニバーサルの義務化から外すということになるわけでありますが、ここは大丈夫かどうかという点であります。

 これほど民間市場が活発に動いているという中で、競争の中でということもわからぬではないのでありますが、ユニバーサルを外すことによって宅配の廃止とかあるいは価格の急騰というようなことが、特に地方、過疎地において生まれてくるんじゃないか。現時点、ゆうパックしか行かないというところも地域にはあるわけでありまして、公社が既に今義務化されて、ユニバーサル化されてやっている郵便小包であるがゆえに地方の競争というのは成立しているんじゃないか、これが引くとやはり価格が高くなるんじゃないの、こういう素朴な疑問があるわけでありますが、この点について竹中担当大臣にお答えをいただきたいと思います。

竹中国務大臣 小包のユニバーサルサービスを義務から除外するということに関して、重要なお尋ねであるかと思います。

 今御指摘ありましたように、公社自身はこのゆうパックに大変力を入れておられる。書状が減少しているわけでありますから、書状の減少が続く中で、企業体全体の経営の健全性を確保するためにもこの分野は戦略的に大変重要であるというような位置づけを生田総裁もされているということだと存じます。

 逆に言えば、こういうふうに力を入れている分野であるということ、そして同時に、民間業者が非常に激しい競争を繰り広げるという状況の中にありますので、郵便会社がこの全国サービスを廃止する、義務化が外されるということで価格が急騰するとかサービスが悪くなるということは、これはむしろないのではないかというふうに考えられるわけでございます。

 むしろ、小包郵便物をユニバーサルサービス義務の対象から外すことによりまして、これは民営化後の郵便事業株式会社が民間事業者と同一の競争条件で、自由に、思い切って競争をしていただくことになるわけでありますから、この公正な競争をさらに促進することによって、一層のサービス改善等国民の利便性が向上するということを我々は期待しているわけでございます。

 なお、現在、民間の宅配事業者、これは全国レベルでの物流ネットワークを形成するというビジネスモデル、要するに、全国にネットワークがないとビジネスが成り立たないということがこの業界の一つのスタンダードになっていると思います。したがって、民間の宅配業者も過疎地においてもサービスの提供をしっかりと行っているわけでございますので、このネットワークとサービスイメージが既に確立している今日の状況では、それを維持することがむしろ事業戦略上極めて重要である。一部の地域からのみ撤退する、一部の地域の料金のみを引き上げるというようなことは想定しにくいのではないかというふうに考えているところでございます。

桝屋委員 そういう御説明を伺うと、そうかなと思うのでありますが、公社化のときも随分議論しましたけれども、ユニバーサルサービス、これは義務化になっているわけですね、全国低廉な料金で、全国均一のサービスということで。これはやはり、クリームスキミングというのはいつも議論しましたけれども、義務化されているからやるわけで、これはもうどうぞ自由よとなると、いかに大臣がおっしゃろうとも、まあ、全国の集配ネットというのは当然維持される、書状とかはがきは当然義務化されているわけでありますから、この郵便局のネットワークというのはこれからも当然維持される、そこが大きな、それがある以上はサービスとして引くようなことはありませんよ、こういう御説明でしょうが、ただ、郵便局の配置と同じでありまして、やはり収益率ということを考えると、特に沖縄、沖縄は我が党の白保議員なんかが一番心配しているんです。

 沖縄はゆうパックがあるから何とかもっている。これが義務化にならなくなると、やはり収益率は低いんだから、民営化された会社だって引くんじゃないですか、やめるんじゃないですかと、こういうふうに思ってしまうんですが、そこは、さっきの竹中大臣の御説明で、はいわかりましたと、すぐ落ちないんでありますけれども、いかがでしょうか。

竹中国務大臣 ポイントは今桝屋委員が改めて御指摘くださったんでありますけれども、やはり全国レベルでの物流ネットワークを形成するというビジネスモデルがないと、民間業者としても競争できない、それがやはり業界のスタンダードなのではないか、もうその点にある意味で尽きているんだと思います。

 特に民営化後の小包についても、民間の宅配便と同様の、やはりしっかりとした競争の中での料金設定が行われるだろうと想定されますので、特に離島あての取り扱いを廃止したり、料金が高くなるということは、そういった競争条件とビジネスモデルの中では、やはりそれは想定しがたいのではないかと思うわけであります。

 なお、沖縄発着の問題については、これはいろいろなこれまでの経緯もございます。沖縄発着のゆうパックにつきましては、これは郵政省時代に、政策的配慮に基づいて、沖縄振興策の一環として値下げを行った結果としまして、民間の宅配便よりも安い料金になっているという経緯がございます。これについても、実は公社になってから現に見直しが行われておりまして、もともと官民との料金格差が大きかったサイズの大きいものの料金を除きまして、現在は、ゆうパックと民間宅配便の料金差は小さくなっているというふうに承知をしております。サイズの大きいものの料金はまだ格差があるんだそうでございますが、その格差は小さくなっているというふうに承知をしております。

 そして、大きいサイズの荷物に関しては、沖縄発着のゆうパック料金が民間の宅配料金よりも大幅に安いものとなっているんですけれども、今後においては、料金体系をコストに見合ったものにするということが必要である。一方、沖縄発着の料金を低いものとしてきたことが沖縄の振興に果たしてきた役割でありますとか、急激な料金の見直しが与える影響等々もありますので、これは、現に今、公社はそういうプロセスにあるわけでございますが、公社及び民営化後の郵便事業会社において適切に対応していくことになるというふうに承知をしております。

桝屋委員 今のその最後の適切に対応ということが、結果的に利用者のサービスが低下になるということがないことをぜひ祈りたいと思います。沖縄についてはそういう特殊状況があるということも踏まえて、我が党も引き続きこの取り扱いについてはしっかり見ていきたいと思っております。

 民間のビジネスモデルでも離島あたりの小包の料金を高くしているという状況はないようでありますから、私は、ここはそろそろ義務化を外して、むしろ自由な競争の中で、よりサービスが向上するという方向性を期待しているわけでありますが、今の大臣の御答弁で、小包がユニバーサルじゃなくなったとしても、サービスが低下することがないんだろうというふうに理解をさせていただきまして、とりあえずきょうの質問を終わりたいと思います。またあした引き続きやらせていただきたいと思います。

二階委員長 次に、石井啓一君。

石井(啓)委員 おはようございます。公明党の石井啓一でございます。

 本委員会では、私も何回か質問をさせていただくことになると思いますけれども、きょうはまず第一回目の質問ということで、どうぞよろしくお願い申し上げたいと思います。

 本日は、骨格経営試算と郵便局の配置、この大きく二つのテーマで質問させていただきたいと思いますが、ちょっと順番を変えまして、まず郵便局の配置の方から質問させていただきたいと思います。

 まず、過疎地における郵便局の配置でございますが、これにつきましては、法施行の際現に存する郵便局ネットワーク水準を維持することを旨とする、こういうふうにされているわけでございます。あらかじめ、じゃ過疎地にどれだけの郵便局があるかと、資料を入手しましたところ、平成十六年四月一日現在では、過疎地域、これは過疎地域自立促進特別措置法に定める過疎地域でございますが、普通局が約百、集配特定局が約千八百、無集配特定局が約千六百、簡易局が約千三百、合計四千八百の過疎地域に郵便局があるわけでございます。この法施行の際にこの四千八百という数が多少減るかもしれませんけれども、基本的には約四千八百という数が維持される、こういうことかと思います。

 ちょっと私、ここで確認をしておきたいことがございまして、この四千八百という数字は維持されるとしても、その数字の中身が大幅に変わることはないんだろうか。すなわち、特定局が簡易局に変わるという形でこの四千八百の数字が維持されるということはないのであろうか。多少、幾つか変わるということはあろうかと思いますけれども、かなりの数、数百というようなオーダーで特定局が簡易局に変わるといった形で水準が維持されるということはないのだろうか、このことを一つ確認しておきたいと思います。

 あわせて、現行水準、現に存する郵便局ネットワーク水準の維持ということでございますけれども、これを維持するというのはどういう意味なのか。民営化当初のみならず、将来においても維持されるのか。移行期間終了後完全民営化になっても、どれぐらいの将来までをにらんでこの水準というのが維持されるのか、この二点、まず確認をしておきたいと思います。

竹中国務大臣 郵便局の設置、今回の法案の中でも大変与党の皆様方に御議論いただいて、我々としては大変よい形で法案をつくらせていただいたというふうに思っております。

 その中で、きょうのお尋ね、簡易局でございますが、簡易局は、これまでも大変重要な役割を果たしてこられましたし、これからもその役割を果たしていくということになるんだと思います。今回の民営化に当たりまして、簡易局の局長さんの会等からもいろいろな御要望等々をいただいてきたところでございます。

 言うまでもありませんが、簡易局もこの法律上郵便局の中に位置づけられます。郵便局の設置については、民営化後においても利用者の利便を確保する必要があるという観点に立って、郵便局会社法の第五条において、あまねく全国において利用されることを旨として設置することを法律上義務づける、これはもう、まさに与党との協議の中でそのような条文に至ったわけでございます。

 その上で、具体的な設置基準は省令で定めるわけでございますが、特に過疎地については、法施行の際現に存する郵便局ネットワークの水準を維持することを旨とすることを規定する考えでございます。この場合の郵便局のネットワークには、先ほど言いましたように、簡易郵便局も含まれるわけでございます。

 その上で、特定郵便局を設置するのか簡易郵便局を設置するのか、これは、これまでも公社の中で、その地域住民の需要の動向等々を踏まえた上で判断をされてきたわけでございますが、その点では、今後とも、これまでと同様に地域住民の需要の動向等々を踏まえて、この郵便局会社によって従来と同様に適切に判断をなされていくというふうに思っているところでございます。

 二点目の、現に存する郵便局ネットワークの云々、民営化の時点だけなのか民営化後もなのかということでございますが、これは、当然のことながら、民営化後も維持するということを意味しております。まず設置して、この水準を維持することは、これは法律と省令で担保されているところでございますので、その省令等々の定めるところによってしっかりと維持されていくというふうにお考えいただきたいと思います。

石井(啓)委員 簡易局か特定局かというのは地域住民の意向等を踏まえて適切に判断をされるということであります。

 今、過疎地域では、先ほど申し上げましたように、特定局が約三千四百、簡易局が千三百あるわけですね。二〇〇七年の民営化開始時において、三千四百、千三百というこの数が大きく変わるということはあるんでしょうか。極端に言えば、特定局が千ぐらい減っちゃって二千四百になって、その分簡易局がふえて二千三百になる、こういう大幅な変化をしてこの四千八百というトータルの数字が維持される、こういうことはあるんでしょうか。確認しておきます。

竹中国務大臣 店舗政策という観点から、これは当然今までどおり、今までは公社、そして会社がお決めになるわけでございますが、我々の制度づくりの観点からそういうものが大きく変化するというようなことは想定をしておりません。

石井(啓)委員 想定していないということでありますけれども。

 それから、二つ目の水準の維持ということは、当然、民営化当初のみならず民営化後もというお話でありますから、これを維持するためにいろいろな工夫がこの中に盛り込まれているということかと思いますけれども、将来、人口の動向によって、過疎地域にお住まいになる方が少なくなってニーズが少なくなれば、それに応じて郵便局の数も減ってくるということはあるかと思いますけれども、今の過疎地域においても、国民、住民の皆さんの利便性は現行水準を維持するということはぜひ守っていただきたいというふうに思っております。

 それから二つ目でございますけれども、今度は都市部の郵便局の配置でございます。

 これは私ども公明党の方が強く意見を申し上げまして、都市部の郵便局の配置については国民の利便性に支障の生じることのないように配慮する、こういうふうにされているわけでありますけれども、具体的には省令で配置の基準は設けるということでありますが、この省令で予定されている具体的な中身はどういうことになるのか、確認をいたしたいと思います。

西川副大臣 今、過疎地の問題、大臣からお答えをいたしました。

 そして、都市部の郵便局の問題でありますけれども、公明党の皆さんが与党協議の中でも大変御熱心に主張いただきました。そういう中で、都市部に住むお年寄りの皆さん等が郵便局の改廃によって利用できなくなっては困る、こういうことであったわけでありますけれども、私どもも、それらは国民の利便性に支障の生じることがないように配慮をしていきたい、こう考えています。

 具体的な設置基準でありますけれども、三点、どうするかということを考えておりまして、一つは、「地域住民の需要に適切に対応することができるよう設置されていること。」今までと同じです。それから、二番目が、「いずれの市町村についても一以上の郵便局が設置されていること。」これも同じ考え方。そして、三番目でありますけれども、「交通、地理その他の事情を勘案して地域住民が容易に利用することができる位置に設置されていること。」ここで都市部についての配慮をしていきたい、こう考えております。

 これらを十分参考としながら省令の具体的内容を検討していく考えでございます。

石井(啓)委員 今、西川副大臣が御答弁いただいたのは、現行の公社法の郵便局の設置基準でございますね。これを参考に、特に三つ目の「交通、地理その他の事情を勘案して地域住民が容易に利用することができる位置に設置されていること。」ということでありますが、この基準としても、ちょっと抽象的でわかりにくい。もう少しイメージがわくようなことはございませんでしょうかね。

 例えば、何かメルクマールを考えているとか、あるいはもう少し何か、この「地域住民が容易に利用することができる位置」というのはどういうイメージで考えられておるのか、もう少し踏み込んだ御答弁をいただけないでしょうか。

西川副大臣 大変御熱心に主張された都市部の問題でありますから、お気持ちは十分理解しておりますけれども、現段階では、先ほど申し上げましたように、交通、地理その他の事情を勘案して住民の皆さんが不便にならない、こういうことを前提に基準を定めていく、省令の具体的内容につきまして、また省令等の策定段階等でも説明を申し上げながら、不便をかけないように配慮してまいりたい、こう考えております。

石井(啓)委員 これはぜひ具体的な基準を決める前に御相談をいただきたいと思います。

 特に、私どもも、都市部で現状の郵便局のネットワーク水準をそのまま維持しろというふうに主張するわけではありませんけれども、例えば、最近は銀行のリストラ等によって支店がどんどん閉店されるというようなこともございますので、過疎地域同様に都市部において国民の利便性というのも、これは十分に配慮していただきたい、こういうふうに思っておりますので、では、きょうは要望でとどめておきます。

 次に、今御説明いただいた現行の公社法の設置基準を参考に、新たな郵便局の設置基準を設けるということかと思いますが、今御紹介いただいた二項目めに、いずれの市町村についても一つ以上の郵便局が設置されていること、こういうふうにございます。

 この点について私ちょっと注文をつけたいのですが、今、この一、二年、市町村合併というのが相当進展をしております。御承知のとおり、約三千二百ございました市町村がこの一、二年の間に約千八百ぐらいになる、約四割ぐらい減るということでございますね。特に西日本の方は相当ドラスチックにこの市町村合併が行われる、こういうことであります。

 例えば、三つの町村が一つになって一つの市になるということになりますと、従来の基準であれば三つの町村ごとに一つずつ設置してあればよかったものが、今度、合併して新しい市になると、その市で一つでいいのかということになりますと、これは、市町村合併を進めたがゆえに郵便局の配置については不利益をこうむるということがあってはならないと思いますので、私は、この点については、ぜひこの市町村合併の進展を配慮していただきたい、こういうふうに思いますが、いかがでございましょうか。

竹中国務大臣 今、市町村合併が大変な速度で進んでいる、これはもう事実でございます。私自身も、地方に参りまして、いろいろな方と議論をさせていただくときに、必ずそのことが指摘されます。やはり地域の方はそういうことを心配しておられるんだなと改めて感じるわけでございますが、そのたびに、私はぜひ御理解いただきたいと申し上げるのは、この設置基準は、単に各市町村に一以上あればそれでよい、そういう基準ではないということでございます。最低一なんだということを示していますけれども、同時に、地域住民の需要に適切に対応することができるかどうか。ここはやはり、そういう設置基準があるわけですね。この設置基準を満たさなければいけないわけです。そして、交通、地理その他の事情を勘案して地域住民が容易に利用することができる位置に設置されているかどうか。当然それは満たさなきゃいけないわけでございますから、従来もそういう観点から、地域住民の利便という観点から今も公社は設置してきたというふうに考えておりますし、そういう観点から、我々としては、設置が適切になされていくものというふうに考えております。

 何よりも、これは御承知のように、過疎地においては現に存するネットワークを維持することを旨とするということ、そして、都市部も含めてでありますけれども、国民があまねく全国で利用できることを旨とするというのは、これはもう総論として背景にあるわけでございますので、合併したからその分何か機械的に郵便局の数が減ってしまう、そういう趣旨ではございませんし、間違ってもそのようにはならないというふうに思っているところでございます。

石井(啓)委員 今、大臣から確認をさせていただきましたので、これはよろしくお願いを申し上げたいと思います。

 それでは次に、テーマを変えまして、骨格経営試算、それから採算性に関する試算について質問をさせていただきます。

 骨格経営試算でございますけれども、これはあくまでも一定の前提条件のもとに機械的に試算したものである、したがって、四民営化会社の将来を保証し、拘束するものではない、こういう大前提のもとに行われているということは承知をしておりますが、その一方で、この試算が将来の四民営化会社の収支の骨格であって、これをもとにこれから経営のシミュレーションあるいは政策のシミュレーションを行っていく、こういう重要なものでございますので、私はこの試算の何か細かい数字をあげつらうというつもりはないのでありますけれども、試算の考え方、これがこの四民営化会社の将来どういう姿になっていくかということにつながっていくものですから、この試算の考え方ということを中心にきょうは質問をさせていただきたいと思います。

 まず、この試算を見ますと、ちょっと気になりましたのが、郵便事業会社それから窓口会社、これにつきましては人件費と物件費がかなり減るような試算になっています。

 具体的に言いますと、二〇〇七年から二〇一六年にかけて、郵便会社の方が、収益が一兆八千六百四十二億円から一兆六千三百五十七億円に下がる。それに応じて、人件費も一兆三百三十七億円から九千三百五十八億円、約一割減っております。物件費も四千二百五十一億円から三千八百四十八億円ということで、一割減っている。これは、事前の説明によりますと、郵便の取扱量が減っていく、大体毎年一・一%ぐらい減っていく、それに応じて人件費、物件費も減らしました、こういう御説明でありました。

 また、窓口会社の方も、二〇〇七年の収入が一兆八千六百五十七億円が、二〇一六年度には一兆四千九百六十二億円。人件費が二〇〇七年度一兆二千二十四億円が、一六年度一兆八百八十五億円。物件費が二〇〇七年度三千九十二億円が、二〇一六年度二千七百九十九億円。これも、郵便会社、貯金会社、保険会社からの窓口収入が少しずつ減ってきますから、それに応じて利益を出すためにこの人件費も減らさざるを得ない。これも、窓口会社の方も約十年間で一割減っているわけでございますね。

 これは、この四民営化会社が、二〇一六年度、移行期最終時点においても単年度黒字であるということにするためには、やはりこういう人件費、物件費も下げざるを得ないということであろうかと思いますけれども、この経費削減のために、では、これはどういう手法を想定してこの試算をおやりになっているのか、この点について確認をいたしたいと思います。

中城政府参考人 お答えを申し上げます。

 先生御指摘のように、骨格経営試算におきましては、郵便事業会社それから郵便局会社の人件費及び物件費につきまして、総引受郵便物数が年率一・一%で減少していくという、これは過去三年間の平均でございますが、この前提のもとで、これに応じて人件費、物件費が同様に年率一・一%で減少させていくというふうにしております。これは、いわば労働生産性が一定というふうに仮定したものであります。

 同様に、窓口会社につきましても、業務量の縮小に応じて人件費、物件費を年率一・一%で減少させていくということにしております。これらは、業務量の減少により郵便事業の収益の減少が見込まれていることから、経営判断として経費の削減が行われるということを想定したものでございます。

 経費削減をどのように行っていくかという具体的な方法につきましてはすぐれて経営判断事項でございますから、この試算で具体的な設定というものを詳細に行っているものではございません。しかし、人件費の削減につきましては、公社の年齢別の人員構成等を考慮いたしますと、一定の新規採用を継続したといたしましても、試算において想定したような人件費の削減は十分に可能であるというふうに考えております。また、物件費の削減につきましても、十年というような長期の期間で調整するということで、経営努力で十分に達成可能な範囲であるというふうに考えております。

石井(啓)委員 そこで、ちょっと確認したいのですが、郵便会社については取扱郵便量が減っていけばそれだけ、労働生産性が一定とすれば、人件費が少なくて済むということでありますけれども、窓口会社の場合は、郵便量が減る、あるいは貯金の残高が減る、保険の残高が減るということによって本当に人間がそれだけ減ることができるんだろうか、労働生産性が一定だとしても。窓口を設置している限りはやはり人を置かなきゃいけないわけですから、郵便局数を変えない、恐らく余り変わらないですね、そういった中で、一割も人を減らせるんでしょうか。ちょっとそこが気になっているんですけれども、どうでしょうか。

中城政府参考人 繰り返しでございますけれども、業務量の減少に伴って郵便事業の収益の減少が見込まれるということで経費の削減を行うわけでございますけれども、窓口会社におきましても、同じように郵便物の取り扱いを行っておりますので、そうした経営判断としての合理化というものができるということでございまして、先ほど申し上げましたように、全体の人員構成というものが、公社の人員構成を考えますと、新規採用を継続しても削減は可能であるということ。それから、合理化につきましても、これは、新会社になりまして、新規事業も行っていく中で、十年間という長期の中での合理化ということで、物件費の削減というものも達成可能というふうに考えております。

石井(啓)委員 試算ですから余り突っ込みませんけれども、私、本当に窓口は大丈夫なのかなという懸念が若干ありますが、大臣、いかがですか。

竹中国務大臣 石井委員は、非常に重要なポイントで基本的な考え方を聞きたいんだということでお尋ねでございますので。

 基本的な考え方は、要するに、これは大変、全体の事業がシュリンクするといいますか、低下する可能性がありますので、取扱郵便量は減るわけですから、その中で生産性を上げるというのはなかなか難しいかもしれない、しかし、生産性は維持してください、そういう努力はやはりしていただきたい、それが基本的な前提になっているわけでございます。

 売り上げが減るのにコストは一定で変わらない、まるで固定費のように変わらない、これはやはり組織としてはもたないわけでありますので、売り上げがもし減るのであるならば、その分はきちっとコストも下げる。そうすると、コスト一円当たりの生産性は変わらないという形になるわけでございますから、そういう努力はしていただきたい。

 それがどの程度、どういう形で具体的にできるのかなというのが、石井委員の二番目のお尋ねだったと思うんです。

 これは、業種によっていろいろあるでございましょうし、先ほど担当審議官が言いましたように、経営の御判断の中でいろいろいただくことになりますが、我々の考え方としては、そうしたことも含めて、実は、単にその売り上げが減るだけではなくて、新規のものをやる中でそういうものを吸収していっていただきたいということになるわけでございます。

 例えば、特定局の局員さんが今まで貯金の仕事を六割していた、したがって、そのことに賃金の六〇%分を使っていたということになります。それが、五〇%でやって、あとの一〇%を例えば新しいことに振り向けていただくということになりますと、今申し上げましたような生産性の維持を決して縮小均衡ではない形でやっていただけるということになりますので、そういう点を踏まえて、ぜひ新しい事業展開の中で全体としての利益の獲得を目指していただきたい、そのように考えているわけでございます。

石井(啓)委員 そこで、今大臣おっしゃいましたように、生産性は何とか維持をしてほしいというお話でありますが、人件費、物件費が一割減、事業に応じて一割減、これは生産性一定だという中で、一方で、そういう状況の中で新しい業務に着手できるんだろうかという基本的な疑問がございます。

 この試算では、業務量が減るのに応じて人件費も減ることができる、それは労働生産性一定だと。一方で、採算性に関する試算では新しい業務に挑戦するということになっているわけですね。そうすると、従来業務にかかわる人をふやすかあるいは生産性を上げないと、新しい業務が展開できないんじゃないか。郵便では国際展開をされるというわけですし、窓口の方では、生命保険や変額保険や損害保険や、いろいろございますね、株式も仲介するし投資信託もやると。

 こういうようなことができるのだろうか、どの程度可能なのかということについて、大臣、御見解はいかがですか。

竹中国務大臣 今申し上げましたように、新規の業務の展開を積極的に行っていただくというのは、経営としても、また消費者の観点からも大変重要なわけでございますが、それがどのような形で実現されるのか、そしてそれが試算にどのような形で反映されているのかというお尋ねであると思います。

 新規業務について申し上げますと、例えば、立地条件のよい局舎を移転して空きスペースをつくってその空きスペースを賃貸する、これは一つのわかりやすい例でありますけれども、それとか、預金残高の減少に伴います預金部門の人、物、金の経営資源の余裕を新たな株式仲介、投資信託等の新規分野に再配分していく、そういった事業戦略によって、いわば既往の経営資源を最大限活用して新規業務を軌道に乗せていくということは、これは可能であるというふうに思います。

 では、そういった点、試算についてですけれども、この既存業務については、先ほど言いましたように、事業会社、窓口会社とも、業務量の縮小に応じまして人件費、物件費を削減していくというような前提で試算しているところでございますけれども、新規業務については、業務展開に必要なコスト増というのをきちっと見込んだ上で計算をしております。したがって、新たなビジネスがこれだけ可能になります、これが全部利益になるのではなくて、ちゃんとそれに必要なコスト、これは費用率、コスト率、収益率というのを別途民間準拠でいろいろ積算しておりまして、その上でのことでございますので、その費用構成をどのようにするかというのは経営の判断になりますが、これは十分にそうした必要なコストも見込んだ上での試算であるという点をぜひ御理解いただきたいと思います。

 顧客との接点が多い郵便会社、窓口会社というのは、ネットワークを最大限に利用することが可能であります。さまざまな事業分野において大きな潜在力を有している。公社から引き継ぐ人的資産や物的資産を活用することによりまして、この試算でお示ししているような効果を実現していくことは私は十分に可能であろうというふうに思っております。

石井(啓)委員 では、きょうの質問はここまでにしておきまして、残りはあす以降またやらせていただきます。よろしくお願いいたします。

二階委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三分開議

二階委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 郵政民営化関連六法案の審議に入らせていただきます。

 そもそも、今回の法案の目的であります郵政事業を民営化することにつきまして、何で必要なのか、半年以上前に基本方針が示されながら、いまだに国民の中では、納得できない、この声がございます。私も本会議でこのそもそも論をお聞きしましたけれども、与党からもこのそもそも論を問いかけざるを得ないところに、今回の法案の問題点が浮き彫りになっているんじゃないでしょうか。徹底審議を通じて法案の問題点を明らかにしていくことが本委員会に求められており、国民に対する責務だと考えます。

 その立場で、この郵政民営化では、民間にできることは民間にという大方針のもと、制度設計を行っております。しかしながら、郵便局ネットワークについて見ますと、基本方針段階と法案の段階を比べると、基本点で大きく制度設計が変わってきている。そういう内容について、スキームに沿ってお聞きをしたいと思っております。

 最初に、郵便局の設置についてですけれども、御案内のとおり、基本方針では郵便局の配置について努力義務規定だったものが、郵便局会社法案では、「あまねく全国において利用されることを旨として郵便局を設置しなければならない。」と義務規定に変わっております。努力義務規定だったものが義務規定に変わっている。これはなぜなのか。この点をお聞きしたいと思います。

竹中国務大臣 まず、委員御指摘のとおり、この委員会での審議を通しまして、ぜひそうした幾つかの議論を明確にしてまいりたいというふうに私も考えております。

 まず、基本方針云々でございますが、基本方針では、これは全国民がアクセスできるということを確保するんだ、その上で、過疎地等々については十分な配慮を行った上で、人口の稠密地域については、しかしこれはやはり見直していかなければいけないでしょうということを書いております。そういう考え方、まさに基本方針は基本的な考え方でございますから、その基本方針の考え方にのっとって今回の制度設計がなされているというふうに私どもは考えております。

 具体的には、まず法律におきまして、全国民があまねく利用できるということ、全国民がアクセスできるということ、そういうふうな基本的な考えを書いているところでございます。その上で、今後、設置につきましては、省令等々で、省令で定めていくことになりますけれども、過疎地については、現に存するネットワークを維持することを旨とするということを明記するつもりでございまして、また、その他の設置基準、今現にある公社の設置基準と遜色のないものにしたいというふうに思っておりますので、まさしく基本方針で示された考え方、全国民がアクセスできるようにしながら、同時に、過疎地については十分な配慮を行い、人口稠密地域について必要なところはそうした見直しも行える、そのような考え方になっているところでございます。

塩川委員 いや、努力義務規定だったものが義務規定に変わったんだけれども、実際には中身は変わっていないということでよろしいんですか。

竹中国務大臣 今お答えしましたとおり、基本方針の考え、基本方針というのは方針を示しておりますので、そこに示されている考え方というのは、全国民がアクセスできるようにしなければならないということ、そして過疎地については、これは十分な特別な配慮をしなければならないということ、そして一方で、人口稠密地域については必要に応じて見直しが行えるようにしておかなければならないということ、今回のこの私たちの枠組み、つまり、法律において全国あまねく利用者の利便の立場からこれを設置しなければいけないということを総論として明記した上で、今後、設置基準は省令等々で定めることになりますが、過疎地については現に存するネットワークを維持するんだということ、加えて、現にある今の公社の設置基準と遜色ないものをつくりたいということ、そうした中で基本方針の考え方がしっかりと裏づけられているということでございます。

塩川委員 しっかりと裏づけられているということで、要するに、今は大臣もおっしゃいました、人口稠密地域については配置を見直すという規定というのは、最近は法案審議などに入ってもうとんと聞かなくなったわけですけれども、その点は貫かれているということであっては、そもそも義務規定などといっても、都市部はおいておいても、人口稠密地域という規定に沿って言えば、これはもう見直しをするという点では、郵便局がなくなるんじゃないかという疑問に、国民の批判の声に、言葉じりは変えたかもしれないけれども、結局は、中身は郵便局がなくなるような規定のままじゃないかということを示しているということを、今の答弁で改めて確認をさせていただきました。

 次に、この基本方針と法案の段階で変わったことの一つに、変わったといいますか、基本方針の段階ではなかったのに、この法案の段階では突如浮かび上がってきたような問題というのも何点もあるわけですね。そのうちの一つが、銀行代理店契約の問題があります。

 法案にあります、郵便貯金銀行また郵便保険会社と郵便局会社との間で移行期間に安定的な代理店契約を義務づけるという規定は、基本方針にはありませんでした。なぜ、こういう、安定的な代理店契約を移行期間に設ける、その点を義務づけるという規定を入れたんでしょうか。

竹中国務大臣 まず、先ほどの郵便局の設置に関しましては、都市部等々、なくなる、なくなるというふうな言い方を委員はされるわけでございますけれども、これは、利用者の利便は絶対に損ねないんだ、あまねく全国で利用されることを旨としてということでありますから、利便性は損なわれないんだということをぜひ申し上げておきたいと思います。

 その上で、代理店契約をどうして結ぶようにするのかということでございますが、これは、金融行政の観点から、やはり制度設計の段階でこうした仕組みづくりが必要であろうということで措置したものでございます。今回設立されます郵便貯金銀行、郵便保険会社というのは、これは、銀行として大変重要な役割を果たしていくことが期待されるわけでございますけれども、実は、直接の店舗を持たない金融機関ということになります。そうした、店舗を持たない、窓口を少なくともその時点では持たない金融機関が銀行として健全かつ安定的に業務を営むようにしなければならない。

 これは、金融監督行政の観点から、具体的には、これはみなし免許というのを付与しなければなりません。二〇〇七年の三月三十一日まで通常の公社としての郵便貯金の受け払い業務等々を行っている、それが四月一日に新たな民間の金融機関としてなるわけでございますけれども、普通のような形で銀行免許の申請をして審査をするというのではなくて、銀行法に基づくみなし免許を付与するということになるわけでございますが、そういった窓口を持たない特殊な銀行の健全性と安定性を確保するために、このみなし免許を付与する条件として、長期の代理店契約が存在しているということを義務づける必要があるというふうに判断をしたわけでございます。

 そうすることによりまして、窓口との委託関係を安定的に行って、それで銀行としてのしっかりとした安全性そして健全性を維持していくことができる。そのみなし免許付与の条件として、長期的な、安定的な代理店契約の存在というものを義務づけるということにした。

 これは、保険会社についても同じでございます。

塩川委員 繰り返し大臣がお話しされましたように、金融行政の観点から行うんだということですね。つまり、店舗がない、そういう特殊な銀行だという点では不安定かもしれないから、健全かつ安定した経営を行っていくためにはそういう代理店契約をすることが必要じゃないか、金融行政の観点から行ったというお話ですけれども、これは逆に言いますと、国民サービスの観点はないのかと。あるいは、窓口会社の経営の観点がないと言っているということですよね。

 金融行政の観点から、郵貯銀行や郵便保険会社の観点、健全経営の観点はあるかもしれないけれども、国民サービスをきちっと保証するという観点からこの代理店契約を義務づけたものでもないし、また、郵便局会社の経営が困難になるということに配慮をしてこの規定を設けたわけではないということでよろしいですか。

竹中国務大臣 私は今法案の御説明をしておりますので、法律的な義務づけとしては、免許を取得する条件として、金融上の観点から安定的な契約を求めているということを御説明させていただいたわけでございます。

 しかし同時に、もちろん、そうすることによってさまざまな効果が期待をされるわけでございます。

 具体的には、国民サービス、窓口会社の経営という視点を塩川委員は御指摘になられましたけれども、そういう長期的な契約が存在することによって、当然のことながら、窓口会社としましても、今の窓口の中の大変重要な業務として金融の業務がございます。こうした契約を結ぶということは、サービス水準の維持向上や、社会や地域に貢献するサービスの提供に資するという側面が当然のことながらあるわけでございます。

 具体的に、こうした点は、与党との議論の中で大変重要なポイントになりました。いわゆる自民党の申し入れの四項目の中に、サービス水準の維持向上、社会や地域に貢献するサービスの提供をしっかりと確保するようにというお申し入れがございました。我々は、もちろん言うまでもなく、そうした観点にこたえるべく、それへの対応として、今申し上げた銀行のみなし免許に係る条件の義務づけというのは、こういうサービス水準の維持向上や、社会や地域に貢献するサービスの提供に資するというふうに考えまして、与党とのしっかりとした協議を踏まえてこのような枠組みをつくっているわけでございます。

塩川委員 大臣がおっしゃったように、私も法案の説明としてお聞きしているわけで、法案で義務づけをしているその背景、理由は何ですかということで、金融行政の観点からというお話があるんです。

 法案を読む以上は、金融行政の観点からの義務づけでしかないということであって、大臣が、さまざまな効果が期待をされるという言い方をおっしゃいましたけれども、それは期待されるわけで、国民サービス、金融サービス、窓口サービスを義務づけるということでもないし、郵便局会社の経営をきちんと健全にするという立場での義務づけでもないというお話であるわけで、それでは、国民から見ても、我々としてはこのスキームそのものは反対ですけれども、分社化をするという中でのこういう経営のスキームにしてみても、これは支障が出てくるんじゃないんですかと、それに対して答えがないということを言わざるを得ません。どうですか。

竹中国務大臣 ぜひ御理解いただきたいのは、金融行政というのはそもそも何のために存在するかというと、これは、もちろん第一義的には、金融機関の健全な経営、安定的な運営ということでありますけれども、当然のことながら、究極的には、地域のサービス、国民の利便性の向上というのがあるわけでございます。金融行政の観点からやることは国民の利便性と何ら関係ない、全く別問題であるというような考え方は当然我々はとっていないわけであります。

 金融行政というのは、これは、金融機関の健全な経営確保を通して、まさしく、国民の金融サービスをしっかりと確保してその向上に期するわけでございますから、そこはきちっと御理解を賜りたいと思います。

塩川委員 この金融機関の経営安定の観点でいかに多くの支店がなくなっていったか、都市部もそうでありますし、過疎地でいきましたら協同組織金融機関が多数ですから、そういう農協などでもどんどんどんどん店舗が減っている。私は、そういう点でも、期待はされると言っても、現実の民間の金融機関はそうなっていないじゃないですかということを以前も質問させていただきました。現実がそれを証明していると思います。こういった今のやり方では国民の期待にはこたえられないと思います。

 そういう点にかかわって、ちょっとわきに行くような話ですけれども、郵便保険会社の代理店契約の義務づけの話なんですね。つまり、生命保険であれば、もちろん代理店契約をするという場合もあるでしょう。同時に、直で社員を抱えて保険外交員としてやるという選択も当然あったわけですよね。ですから、代理店契約を義務づけるというのは、そういう生命保険会社の健全かつ安定した経営の立場からいっても、かえって縛るものになるんじゃないのかな。私はその方向を求めるということじゃないですよ。今の政府のスキームからいってこれはおかしいんじゃないですか。かえって、経営の自由度、手を縛るようなことを金融行政の観点からやっていいんですか。

竹中国務大臣 委員のお尋ねは、具体的には、四社の分社化をするとして、その切り分けをどのようにしていくのが一番よいのかというお尋ねにつながっている問題だと思います。

 例えば、保険会社の立場から見まして、販売員を全部うちで持っていた方がよいのではないかと御主張される方もいらっしゃるかもしれません。同時に、この窓口会社、保険会社、銀行、そして郵便事業会社がすべて健全に成り立って、この四社がすべて健全に成り立つことが長期的にサービスを確保することにつながりますし、何といってもまた、そこの雇用を安定させることにもつながるわけでございますから、これはどういう切り分けが一番よいのかというのは、最終的には、この承継計画をつくる中で判断をされていくことになると思います。

 ただ、我々の現時点での一応の考え方を申し上げますと、窓口業務は窓口業務としてその独自の特性がありますから、そういう形で、窓口業務を行う方は窓口ネットワーク会社に入っていただく方がよいのではないのか、そういう形でその骨格の経営試算等々は考えているところでございますが、これは切り分けの問題ということで、けさほども御説明しましたように、切り分けに関しましては、しっかりとした手続を踏んで、主務大臣が最終的に民営化委員会の意見も聞きながら判断をしていくということになろうかと思います。

 いずれにしてもこれは、経営をしっかりと四社で成り立たせるということ、そして、それを通して国民の利便性を確保していくということでございますから、そういう枠組みの中で対応を十分にしていけると思っております。

塩川委員 これはそうすると、金融行政の観点からと言いますけれども、窓口会社についての経営にも当然配慮するというようなお話でしたから、金融行政の観点の中に窓口会社の経営もしっかり見るということも入っているという説明ということでよろしいんですか。

竹中国務大臣 金融行政の範囲等々については金融担当大臣からもお話があるかもしれませんが、まず、誤解のないように申し上げておきますと、代理店契約の義務づけというのは、これは窓口との関係で行うわけでございますけれども、同時に、直営の営業部門を持つなというふうに言っているわけではございません。これは、直営の営業部門、保険でいえば営業部門ですね、銀行でいえば預金を集めるような支店を持つというのは、これは経営判断の中でしっかりとやっていっていただければいいわけでございますので、我々は、先ほどから言いますように、安定的な経営という立場から当面の長期の義務づけを行っているわけでございますけれども、それ以外のものをこれは否定しているということでは必ずしもございません。

 あと、金融行政でございますけれども、これは、金融の免許を出す銀行、保険会社に対して、当然のことながら金融の検査監督が及ぶわけでございます。窓口等々に対しましても、その範囲において、必要に応じてはこれはたしか立入検査なんかもできるということであると承知をしておりますけれども、それは同時に、監督、検査の対象である銀行や保険を通じて適切な運営がなされていくというふうに考えております。

塩川委員 窓口会社に対して例えば業務改善命令ができるのかどうかという問題、これはまたちょっと日を改めてやろうと思いますけれども、そういう点でも、私、今のスキームというのは問題があると思っております。

 確認という点で、この基本方針の段階には、この窓口業務については委託をするとだけ書いてあった。窓口業務あるいは集金業務について委託をするというのが義務づけとなったということを見ても、今回、代理店契約を義務づけざるを得なかったのは、やはり民間任せでは、採算のとれないところから撤退する、そういう不安にこのままではこたえることができないということにあると。そういう点でも、この今回のスキームが、国民の立場から問題ありということをはしなくも示している点だと思っております。

 その上で、三つ目に、基本方針と法案の違いで、基本方針になかった基金が設けられることになりました。基本方針に出てこなかったこの基金を設けるその理由は何でしょうか。

竹中国務大臣 塩川委員の先ほどの、委託を義務づけるというのはなかったではないかということでございますが、我々は基本方針の中で、委託をする、そういう形で業務を運営するという基本的な考え方を明記したわけでございまして、それの具体的な委託のあり方について、より詳細な制度設計のもとで法案を提出しているわけでございますので、基本方針と法案が違っているということは全くないというふうに考えております。

 そこで、基金のお話でございます。

 公社はこれまでも、第三種・第四種郵便物の取り扱い等、非常に重要な社会貢献また地域に対する貢献を行ってまいりました。我々は、民間でできることは民間でやっていただこうということで民営化の法案を出しているわけですが、この郵政が担っている社会的な機能は、これはしっかりと果たしていただかなければならないというふうに強く考えているところでございます。

 今までも、そうした現の枠組みの中で公社はそういう社会、地域の貢献を行っているわけでございますけれども、今後もそれはやっていただく。その際に、そうした貢献をより確実なものにするために、その持ち株会社に基金を設けて、より透明な形でこの社会貢献、地域貢献を行っていただこうというのが今回の基金の考え方でございます。

 外から政府が補助金のような形でお金を出すようなものではございません。これまで公社の枠組みの中でやっていただきました。今後も、この持ち株会社の中で、そうした基金を設けて、確実にそうした社会的な機能が果たしていけるようにする、これが基金の趣旨でございます。

塩川委員 民間任せでは、採算のとれないところから撤退するから基金が必要になるんだというのははっきりしているわけで、竹中大臣もおっしゃいましたけれども、いや、基本方針からずれて違わない、基本方針の枠内だという話をされましたが、いや、私も、基本方針の枠内でないからけしからぬと言っているつもりはそもそもないわけで、基本方針そのものが問題ですから。ただ、基本方針で言っていたことと法案になっている段階に大きな違いがある、それを、義務づけをする方向だとか基金を出すという方向で変えているじゃないか、そこに、民間任せではうまくいかないという国民の声にこたえざるを得ない、そういう実態があるからじゃないのかということを私は述べているわけです。

 それで、二月の予算委員会で私は竹中大臣にお聞きしました。郵便局について、なぜ設置義務ではなくて努力義務なのかとお聞きしたときに、竹中大臣は、民営化をすることの最大のポイントは経営を自由に行ってもらうこと、経営を自由に行うということではできるだけ義務づけは軽くしたいと述べておられたわけですね。それにやはり逆行するんじゃないですか。いかがですか。

竹中国務大臣 基本方針と別に違うかどうかというのは委員の御関心ではないということでございますが、我々はそうした基本方針の考えを示し、しかし、与党から、本当に設置基準はこれでしっかりと設置されるのか、社会的な貢献は本当にこのままで地域貢献はしっかりされるのかと大変強い御関心をいただきました。その上で、基本方針の枠内でぎりぎりのところでの判断をして、そして、与党の意見を十分に取り入れさせていただいた上で今回のスキームをつくらせていただいています。

 民間ではうまくいかないことの証拠であるというふうにおっしゃいますけれども、この基金は民間の基金ですから、民間の会社の中につくられる基金でありますから、これは、民間でうまくいかない、いくという話では全くないというふうに思っております。

 努力義務云々でございますけれども、これは当然のことながら、経営の自由度をしっかりと持っていただかなきゃいけない。これは、これだけ郵便を取り巻く、通信を取り巻く、金融を取り巻く事業環境が変化する中で、柔軟に民間の経営のダイナミズムを取り入れていただく、それが民営化の非常に重要なポイントになります。その意味では、義務とか制約とかというようなものをできるだけ軽くして、けさほども生田総裁のお話がございましたが、生田総裁がおっしゃるように、より経営のダイナミズムを発揮していただくというのがやはり重要なポイントだと思います。

 しかし、同時に、先ほどから申し上げているように、実は、これは社会的な役割を果たさなければいけません。これは郵便のユニバーサルサービス義務がその典型でございます。大胆な経営をしていただきたいですけれども、ユニバーサルサービス義務というのは、国際条約に日本も加盟しておりますから、これの義務は課さなければなりません。それに関連して、郵便局の設置をどうするか等々の問題も出てきます。できるだけ経営の自由度は拡大させる、しかし、果たさなければいけない点についてはしっかりと果たしていただけるような枠組みをつくる、そのぎりぎりのところで知恵を出しているのが今回の郵政民営化の法案でございます。

 私どもとしては、必要な社会サービスはしっかりと提供する中で、同時に経営の自由度はしっかりと持っていただける、そのような枠組みをつくったつもりでございます。

塩川委員 郵便のユニバーサルサービスの義務については民間にも課すという話がありましたけれども、いや、問題は、もともと金融のユニバーサルサービスがあったのに、それを外しちゃったということなんですよ。私は、そういった民間任せというのでは国民の利便性を保証できないじゃないかということを繰り返して述べているわけです。

 基金の話もありましたけれども、もうけから回すんだ、会社の中の基金だというふうに言いますけれども、多くの人は、それはもう株式売却益が当たるだろうと思っているわけですよ。それは、本来は国庫に入る国民の財産ですから、それを回すという点では、やはり形を変えた補助金だということははっきりしているんじゃないでしょうか。

 この点、三点ほどお聞きしましたけれども、国民にとってユニバーサルサービスの価値は大変高いわけでありますが、民間経営にとっては、かえってそれが重荷となってネットワークが維持できないことをこの制度設計の変更が物語っていると思います。義務づけをしたり、あるいは、基金のような財政的なインセンティブがなければ民間任せでできないということをあらわしているわけで、民間にできることは民間にと言いながら、結局、民営化では郵便局のネットワークや金融のユニバーサルサービスを維持できない、国民の利便性を後退させかねないということを、この基本方針を変更せざるを得なかった今回の法案が示しているのではないかと思います。

 その上で、具体的な問題で、先ほど義務づけや基金という話をしましたけれども、郵便局の設置の義務づけと金融サービスの提供と基金の問題ですが、きょうは、まずはこの郵便局の設置の義務づけの問題について、本当にそれが義務づけなのかと先ほども疑問を呈しましたけれども、少し中身に沿ってお話をお聞きしたいと思います。

 お手元の、資料を配付したものが郵便局の設置基準に関する条文であります。上が、現行の日本郵政公社法の法律とそれに基づく省令であります。御案内のとおり、第二十条のところに、「総務省令で定めるところにより、郵便局をあまねく全国に設置しなければならない。」ここで言っている「掲げる業務」の中には、当然のことながら、郵便だけじゃなくて郵貯や簡保も入っているわけですね。省令の方に郵便局の設置基準がありまして、やはり一番のポイントは、一行目にあります、「公社は、法の施行の際現に存する郵便局ネットワークの水準を維持することを旨として、次に掲げる基準に適合するよう郵便局を設置しなければならない。」それで、一、二、三と述べているわけです。

 そこで、今回の法案では、郵便局株式会社法案の第五条に郵便局の設置のことが規定をされ、「会社は、総務省令で定めるところにより、あまねく全国において利用されることを旨として郵便局を設置しなければならない。」よくこれが、努力義務が設置の義務規定に変わったということで紹介をされるんですが、基本は、総務省令でどういうふうに定めるのかというところと大きくかかわってくるわけです。

 そこで、総務省令で定める郵便局の設置基準についての本会議での総理の答弁を御紹介しますが、具体的な設置基準は省令で定めるが、その際には、現在の設置基準を十分参考としつつ、特に過疎地については、法施行の際現に存する郵便局ネットワークの水準を維持する、都市部についても国民の利便性には支障の生じないように配慮する、過疎地の定義については過疎地域自立促進特別措置法の過疎地域を基本として検討すると述べておられます。

 この総理答弁に即してお尋ねをしたいと思うんですが、この具体的な設置基準について、現在の設置基準を十分参考にすると述べておられますが、現在の設置基準のどのような内容を参考にして新たな省令の具体的内容を検討されるんでしょうか。その点、お願いします。

竹中国務大臣 総理の御答弁を引用してくださいましたですけれども、今の設置基準、日本郵政公社法の施行規則においては、設置基準に関しまして三つの要件を主として挙げております。簡単に読ませていただきますと、「地域住民の需要に適切に対応することができるよう設置されていること。」二番目として、「いずれの市町村についても一以上の郵便局が設置されていること。」「交通、地理その他の事情を勘案して地域住民が容易に利用することができる位置に設置されていること。」そうしたことが現在の設置基準でございますけれども、そうした三つの点を十分に参考にしたい、同時に、特に過疎地については、法施行の際現に存する郵便局ネットワークの水準を維持するということを明確にしたい、そのような点でございます。

塩川委員 今の省令の一号、二号、三号ですけれども、それが大体そのまま入ると考えてよろしいんでしょうか。

竹中国務大臣 この点については、こうした点を十分に参考にしながら、今後、設置基準を省令で定める議論をしてまいりますので、その中で議論を深めてまいりたいと思います。

塩川委員 先ほども言いましたけれども、現行の省令については最初の二行の部分が重要で、「公社は、法の施行の際現に存する郵便局ネットワークの水準を維持する」、そのことを旨として、以下の基準に適合するように設置するということですけれども、この「法の施行の際現に存する郵便局ネットワークの水準を維持する」という現行の設置基準は参考にはされないんですか。入れないんですか。

竹中国務大臣 これは先ほどさんざん議論させていただきましたように、基本方針を考えるに当たりまして、全国民がアクセスできるような利便性を確保しよう、その前提の上で過疎地については配慮をしよう、具体的には、現に存するネットワークを維持しようということ、一方で、人口稠密地域については、郵政の立場としても、しっかりと効率を高める観点から必要なものは見直していこう、これが基本的な考え方でございます。

 そうした考え方そのものについて塩川委員は別のお考え方をお持ちかもしれませんが、基本方針はそのような考え方でございまして、法律、省令についてもそうした考え方に基づいてつくっているところでございます。

塩川委員 では確認ですけれども、法案では、ここにもありますように、「あまねく全国において利用されることを旨として郵便局を設置しなければならない。」とありますけれども、実際の省令案では、現行省令の一番肝心の「現に存する郵便局ネットワークの水準を維持する」という規定は入らないということですね。

竹中国務大臣 これはもう繰り返しになりますけれども、郵便局の設置というのは、我々にとっても極めて基本的な、重要な問題でございます。民営化後においても、利用者の利便性を確保する必要があるという観点に立って、この郵便局会社法の第五条において、あまねく全国において利用されることを旨として設置するということを法律上義務づけているところでございます。

 また、具体的な設置基準は、これは省令で定めますが、その際には、現在の設置基準を十分と参考にしながら、過疎地について、法施行の際現に存する郵便局ネットワークの水準を維持するとともに、都市部についても、国民の利便性に支障の生じることのないよう配慮する考え方であります。したがって、利用者の利便性を確保するために必要な郵便局というのは維持する考えでございます。

 この設置状況につきましては、さらには、これは与党との合意もございます、与党との合意も踏まえて、郵政民営化委員会による三年ごとの総合的な検証の対象にするということにしておりますので、検証の結果、必要があれば委員会は政府に意見を述べて、総務大臣において適切な措置を講じることが可能な仕組みになっている。

 繰り返しますが、結果として、利用者の利便性を確保するために必要な郵便局は維持されるということでございます。

塩川委員 でも、お話ししましたように、現行の郵便局ネットワークに大穴があく規定になってしまっているという点では変わりがないわけです。

 過疎地の話が出ましたけれども、大臣も紹介されましたし、総理の答弁でも、特に過疎地についてはという規定ぶりがありますよね。それというのは、要するに、現行の省令の冒頭の二行ですね。この「公社は」というのが「郵便局会社は」になるわけですけれども、その後に追加で「特に過疎地については」という言葉が入って、「法の施行の際現に存する郵便局ネットワークの水準を維持することを旨として」云々、そういうふうに、要は、現行の省令を参考にするんだけれども、変わるのは、この本文の「公社は、法の施行の」、その間に「特に過疎地については」という言葉が入る、そういうことですよね。

竹中国務大臣 繰り返し申し上げますけれども、消費者の利便性を確保するという観点から今回の法律の条文はつくられておりますし、また、その省令も、それに合わせて必要なものを作成するつもりで今検討をしているところでございます。

 そうした観点から、基本方針で示されておりますように、国民がアクセスできるようにする、そして過疎地には十分に配慮をする、一方で、人口稠密地帯について等々必要なその改善は行っていく、そういうことをしっかりと確保していくということでございます。

塩川委員 そういうことかなと思っておるわけですけれども、場合によっては、最初の一項の規定じゃなくて四号ぐらいに回して、四番目にその「特に過疎地については」という規定が入るのかな、そんなところだろうなというふうに思っているわけです。

 要するに、現行の設置基準では「現に存する郵便局ネットワークの水準を維持する」ということですから、二万四千余りのこの郵便局のネットワークを維持するとなっているわけですよね。それが義務づけられていたんだけれども、新たな設置基準では、いわば過疎地の郵便局の維持が義務づけられることになるんだと。私は、その点で極めて重大な後退だ、数量的な規定というのはそれしかないんですから。市町村に一以上というのはもちろんありますよ。しかし、基本となる現行のネットワークの二万四千を維持するという規定が落ちて、過疎地についてだけになるわけですから、これはもう重大な後退だと。この法文上、提案の趣旨を見ればそういうことが明らかであります。

 その上で、都市部についてもということで総理もおっしゃっておられました。この委員会でも、きのう、きょうお聞きしてもそのことを指摘されておられますけれども、都市部についても国民の利便性には支障の生じないように配慮するとおっしゃっております。

 そこでまず、ここでおっしゃっておられる都市部というのはどこなんでしょうか。過疎地以外が都市部なんでしょうか。過疎地があって、都市部があって、その間も何かあるんでしょうか。まずその点をお聞きしたいです。

竹中国務大臣 繰り返しになりますけれども、「郵便局があまねく全国で利用されることを旨として郵便局を配置することを法律上義務付ける。都市部についても国民の利便性に支障の生じることのないよう配慮する。」これは政府・与党の合意の文書でございます。我々は、この合意の文書をしっかりと法文にし、またそれを実行してまいります。

 その上で、過疎地、これは、法律としましては過疎地域自立促進特措法等々ございますけれども、その特措法を過疎地域の基本として検討していく考えでございますが、その中でさらに検討を深めていきたいというふうに思います。

 都市部についてでございますけれども、都市部についてその法律的な定義を行うというのは現時点では困難でございますけれども、これは、過疎地域の議論を深める中で、今御指摘の問題についても議論をさらに深めて検討していくつもりでございます。

塩川委員 いや、都市部というのは、おっしゃっておられるから、どこなのかと聞いているんですよ。与党との合意ということであれば、ぜひ与党とも相談していただいて、都市部というのをはっきり示してもらえますか。

 都市部というのはどういうところなんですか、もう一回答えてください。

竹中国務大臣 法律上重要になってくるのは、過疎地域がどうかということでございます。これについては、省令を特定する中でこの過疎地域について議論を深めてまいります。過疎地域自立促進特別措置法の過疎地域を基本として考えるつもりでございますけれども、これは今後検討してまいります。

 都市部というのは、都市部を含む全国について、「郵便局があまねく全国で利用されることを旨として郵便局を配置することを法律上義務付ける。」ということでございますので、これがどこまで入るかという議論は、これは法律論としては特に意味のないことだと私は思います。

塩川委員 では、法律上意味があるのは過疎地なんですね。それ以外、法律上は都市部は意味がないということですね。

竹中国務大臣 法律上重要になってくるのは、あまねく全国で利用できることを旨として郵便局は設置する、この中には都市も過疎地も含まれるわけでございます。その中で、全国で利用できるということで、法律上はこの概念の規定で尽きていると思います。

 一方で、もう一つ、過疎地域については、省令で「現に存する郵便局ネットワークの水準を維持する」ということを定める方向で検討しておりますので、これについては法律上しっかりと検討しなければなりません。それについては、今申し上げましたように、省令の検討の中でさらに議論を深めて明確にしてまいります。

塩川委員 いや、この場で明確にしてくださいよ。過疎地は法令上きちっと位置づけるけれども、都市部は法令上位置づけないということなんですね。

竹中国務大臣 過疎地域、過疎地については法律上位置づけなければなりませんので、これは省令の中でしっかりと定義をしてまいります。

 都市部について法律上位置づける必要性を私どもは今感じておりませんが、過疎地域との対比で都市部というのをどのように認定するか、議論はしてまいりたいと思います。

塩川委員 議論と言いますけれども、今議論しているんですよ。

 では、後でちゃんと政府として文書でいただけますか。都市部というのはどこなんだと、過疎地との法令上の対応の違いについてきちっと示してもらえますか。

竹中国務大臣 これは何度も申し上げておりますように、省令の議論をこれからしていくんです。省令をお示ししていかなければいけないと思います。その中で明確に、どのような議論を行ったかということをお示ししてまいりたいと思います。

塩川委員 ですから、その省令をつくる際にどういう見地でつくるのかというのを文書で出してもらいたいということなんですよ。いかがですか。

竹中国務大臣 繰り返し言いますが、法律上重要に規定しなければいけないのは過疎地でございます。この過疎地については、今の段階で私どもは方針を示しております。「過疎地域自立促進特別措置法の過疎地域を基本として検討していく」ということを明確に申し上げております。しかし、今それを出せと言われましても、これはこれから検討していくわけでございますから、これから検討をするんです。省令ですから、当然これから検討していくわけでございます。

 都市部については、これは、都市部を含む全国あまねくという中で既に含まれておりますから、法律上それを特定しなければいけない必要性は感じていないということを申し上げているわけでございます。

塩川委員 つまり、省令をつくる際に、都市部に関する何らの規定上の位置づけはしなくてもいいということでいいんですよね、確認ですけれども。

竹中国務大臣 今申し上げたような意味で、省令をつくるに当たりましては、過疎地については現行水準を義務づけるということ、そのことを示す予定でございますので、その範囲で過疎地については示さなければいけないと思っております。

塩川委員 法令上、都市部については何ら示さないということであります。

 その上で、都市部についても国民の利便性には支障の生じないように配慮する、法令上は何もないんだけれども、配慮すると言っているわけですが、どういう配慮をするんでしょうか。

竹中国務大臣 過疎地以外の地域、全国につきまして消費者の利便が確保されるようにしっかりと設置基準をつくる、その設置基準をつくる中で都市部についても十分配慮されるということでございます。

 そのために、先ほど申し上げましたように、地域の住民の需要に適切に対応することができるように設置されるということ、そして、いずれの市町村についても一以上の郵便局が設置される、さらには、交通、地理その他の事情を勘案して地域住民が容易に利用することができる位置に設置される、これは今の施行規則でございますけれども、それと遜色のないようなものをつくって、それを通して、まずしっかりと都市部に対する十分な配慮を行うということが第一でございます。

 加えまして、こうした設置基準がしっかりと満たされているかどうかということは、これは、一般監督権限を有する総務大臣がしっかりと見定めていくことになりますので、そういうことを通じてこの施行を確保していくということに相なります。

塩川委員 現行の省令でもそうですけれども――せっかくですから、では総務大臣、今のをお聞きになっていかがでしょうか。都市部についても配慮すると言っているんですけれども、現状も踏まえてどのようにお考えか、お答えください。

麻生国務大臣 都市部を踏まえて、都市の定義を先に言っていただかぬとよくわからぬのですけれども、はっきり言って。都市近郊も都市部という多分前提なんだと思うんですね。言葉が不足していると思いますが、都市近郊というのでいけば、中央区なんか多分いっぱいあると思いますよ。行かれたら、会社一個で一個ぐらい郵便局が成り立つぐらいですから、だからあの辺はいっぱいあるんだと思いますね。隣のビルに行けばそこにもあるからというところが一つと、傍ら、古くからあります、昭和三十年代、四十年代にできたニュータウンと言われるようなところは、逆に高齢化が極度に進んでいてえらく空き地があるというようなところで、人が住んでいないというようなところが幾つも出てきているというのも都市近郊には見られるところだと思うんですね。

 そういったところはある程度整理されていくというときに、今言われたバランスを考えてということは、これは十分に考えないかぬところですから、ちょっと具体的にやっていかないといけないので、これは、民営化をされる会社の経営の立場に立たれる方々が判断をされていかざるを得なくなるのは当然のことだと思いませんか。私はそうだと思うんですね。

 そして、今あります、先ほどお示しいただいたその二、今の公社の中でも、一町村で一つなんということが書いてありますと思うんですが、省令の中では。あれは、御存じのように千三百減りますからね、今のままで。だから、今のままじゃだめなんですよ。千三百減っても文句は言えぬだろうがということになっちゃいますからね。

 だから、そこのところもよく考えてサービスというものをよく考えないかぬということなんだと思いますので、今の段階で、都市部はどこだ、都市周辺部はどこだというその特定を言えるほど知識が今の執行部にあるとはとても思えませんから、郵政公社を実際に経営される方々の、経営効率を考えてサービスが落ちないようにやっていかれるという以外に現実問題としては方法はないと思います。

塩川委員 麻生大臣もおっしゃいましたけれども、都市部で一カ所以上と言われても困ると。私の住んでおります埼玉県の所沢市にも二十五ぐらいの郵便局がありますけれども、それで一カ所以上と言われたら、かえって不安になるというのは当たり前のことであって、もちろん駅前にもあります。しかし、ニュータウンのようなところに一定規模の人口があったら、そこに郵便局が置かれているわけですよ。それぞれが都市部においても機能している、地域住民の利便性に資している、そういった郵便局がたくさんあるわけですよね。それなのに、今回の法案を見たら、何ら法令上の位置づけも都市部にはないという話じゃないですか。これで不安にどうしてこたえられるんですか。

 その上、基本方針で言っている、さっき竹中大臣もおっしゃいました。「人口稠密地域における配置を見直す。」これだけはそのまま残っているんでしょう。法令上には何ら義務づけ、位置づけはない、一方で基本方針はそのまま貫くとなれば、「人口稠密地域における配置を見直す。」という形で、これでは減らすと明言しているようなものじゃないですか。竹中大臣、いかがでしょうか。

竹中国務大臣 我々はあくまでも、郵便局があまねく全国で利用されることを旨として郵便局を配置することを法律上義務づけるというふうにしているわけです。これは何のために設置するんでしょうか。これは消費者の利便を確保するために設置するのではないですか。その消費者の利便を確保する、あまねく全国で利用されることを旨として郵便局を配置される、これは都市部においても地域においても変わりない、このことを私たちは法律の中で明記をしているわけでございます。

 同時にこれは、今後、厳しい環境が予想される中で、やはり効率化しなければいけないものはしなければいけない。社会主義計画経済で、もうずうっと何か一律にやっていくということならともかく、私たちは市場経済の中にいますから、市場経済の中では必要な合理化努力というのはやはりやっていただかなきゃいけない、これは私は自然のことであろうと思います。しかし、その場合も、郵便局があまねく全国で利用されることを旨として郵便局を設置することを法律上義務づけるとしているわけです。

 それで、市町村の合併等々も話題にはなりますが、いずれの市町村についても一以上の郵便局が設置される、これは今の基準でございますけれども、合併されたら、その部分、その数だけ数が減るというような議論が一部でありますが、そうではないわけです。なぜならば、設置基準の中には、地域住民の需要に適切に対応するということが条件にありますし、交通、地理その他の事情を勘案して地域住民が容易に利用することができる位置に設置されるというのが条件に、これは今でも入っております。この今のものと遜色のない基準をつくるということを考えておりますから、これは、消費者の利便という観点から、あまねく全国で利用されるそういう配置が実現するというふうに思っております。

塩川委員 郵政事業が社会主義経済だという竹中経済理論を聞かせてもらいましたが、都市部切り捨て方針を具体化したものというのは、法令上の位置づけがないわけですし、基本方針には「人口稠密地域における配置を見直す。」と書いてあるわけですから、その方針を具体化したものであって、今まであった担保さえなくしてどうしてネットワークを守れるのかということを改めて強調しておきます。

 この設置基準の関係で、若干確認でお聞きしたいのが過疎地の問題なんですけれども、過疎地については、過疎特措法で言うところを基本にとあるんですけれども、それ以外というのはさらに広げるというお考えはあるんでしょうか。新聞を見ておりましたら、二階委員長がおっしゃっておられまして、半島振興法ですとか、あるいは離島振興法、山村振興法、ここにあるような地域についても過疎地に入る、あるいは入らない、その点をお答えください。

竹中国務大臣 過疎地につきましては、先ほど言いましたように、過疎自立特措法を基本に考えてまいります。御指摘のように、半島、離島、山村等々さまざまな法律の枠組みがあることは承知をしております。今後、さらに省令の中での議論を深めて、さまざまな角度から検討をしてまいりたいと思います。

塩川委員 入らないということではないわけですね。

竹中国務大臣 省令の議論の中で検討を深めてまいりたいと思います。

塩川委員 これが幾つになるのかはわかりませんけれども、今の過疎自立促進特措法でいえば四千八百ですとか、全部足すと、新聞報道、山村、離島、半島を含めると七千とかという数字もいただきましたけれども、私は、二万四千七百のネットワークが、結果とすれば過疎地についての法令上の位置づけだけでそれが四千八百とか七千に、そこしか結局担保されていない。そういう点で、この郵便局の設置の仕方そのものが、国民の利便性に資するどころか、かえって後退をさせる、それがこの法案の中身だ、このことを指摘しておくものであります。

 先ほども言いました、都市部の定義についてはぜひ出していただきたいと思うんです。法令上では位置づけていないと言うんですが、少なくとも、本会議答弁で言っているわけですから、都市部とは何なのか、その点は後でしっかり文書でいただけますか。

竹中国務大臣 省令を議論する中で過疎地域、過疎地についての議論を深めてまいります。それとの関連で都市についても議論をしてまいりたいと思います。

塩川委員 この都市部の定義についてぜひ政府にきちんとした見解を示していただきたい、その点を求めたいと思います。

二階委員長 後に理事会で協議させていただきます。

塩川委員 時間になりましたので、以上で終わります。

二階委員長 次に、小西理君。

小西委員 自由民主党の小西理でございます。よろしくお願いいたします。

 まず冒頭、民主党並びに社民党の皆さんにおかれましては、一日も早くこの審議の場に復帰いただいて、ここで真摯な議論をし、そして改めてそのもとに賛否をはっきりと表明していただく、これが我々同じ国会議員としての国民に対する責務であり、義務であるというように了解いたします。改めてそのことを冒頭、切望をさせていただきたい、このように思います。

 それでは、質問に入らせていただきます。

 一問目に、まず総論から入りたいと思うんですけれども、小泉総理が書かれた「郵政民営化が小泉内閣の進める改革の”本丸”であるというのはなぜでしょうか。」こういう文章の中に、「郵政公社には四十万人の公務員がいます。郵政民営化が実現すれば、国家公務員全体の約三割をも占める郵政職員が民間人になります。」こういう表現があるわけであります。

 私は、今回、郵政民営化の大きな目的の一つとして公務員の削減が考えられているというように思うわけですけれども、本来の趣旨とは少し違うのではないかというように思うわけであります。本来、公務員というのは、我々が会社に入りましたころは、みんな、給料の安さの自慢をしておりまして、薄給で公のために一生懸命働く、高邁な趣旨を持って皆さん公務員になられたんだというように思うわけでありますが、昨今、どうもそうでないイメージが、特にバブルの崩壊以降ついてきた。これは大変不幸なことであるというように思います。私は、公務員そのものの数がふえるとか減るとかいう議論ではなくて、実際にやっている仕事の効率化、また、いかに価値を生み出すか、こういうことが、もっと根本的に、数の問題よりも重要ではないかというように思っております。

 したがって、冒頭、ちょっと本題から外れるかもしれませんけれども、このような数の議論をする前に、公務員制度改革、いち早く行い、民間に準じた人事制度の導入、またそういう処遇、そして柔軟な意思決定などができるように行っていくというのが私は急務であると思います。スト権等の問題で今公務員制度改革がとまっている、大変私自身としては遺憾に思っております。

 内容としては、民間ですれば五年、十年前にやっていた、当たり前のことが規定されているような内容というように了解をしております。この点について、竹中大臣に御意見を伺えたらと思います。

磯部政府参考人 公務員制度につきましては、行政に対する国民の信頼を確保し、公務員が持てる力を最大限に発揮できるよう改革を進めることが重要であると我々も考えております。

 政府は、昨年の十二月に、今後の行政改革の方針を閣議決定いたしまして、これに基づき、能力・実績主義の人事管理の徹底など、新しい人事制度の構築に向けて関係者間の調整をさらに進めていくということとともに、現行制度のもとにおきましても、評価の試行等に重点的に取り組むなど、改革の推進を図っていくということが必要と考えております。

小西委員 ぜひ鋭意な取り組みをお願いしたいと思います。

 あわせまして、いわゆる租税公課、今の公社がいわゆる租税を負担していない、いろいろな公課を負担していないという問題も同時に指摘をされているわけであります。これは今国庫納付金という形で行われているわけでありますけれども、一部、いわゆる保険機構への保険料等の部分をちょっと除くとして、租税という形で納めようが、国庫納付金という形で納めようが、とどのつまりは同じところに返ってくる。最も大事なのは、その価値を生み出す組織である今の公社、また民営化された暁にはそれぞれの会社自体が、本当に強固で、月並みの言葉かもしれませんけれども、筋肉質でスリムな体になる、これが本来の改革の一番大切な点だというように思うわけでありますけれども、この点についていかがお考えでしょうか。

竹中国務大臣 これは小西委員、納付金のお話をされましたが、納付金と税、税の場合、恐らく法人税ということになろうと思いますが、ここはいろいろな御議論があるところとは思います。

 ただ、そもそも納付金というのは、公的な目的を行うに必要な、ある程度の健全性を確保する、それを、必要なものを上回る余剰金が出た場合に国庫に納めるという性格のもの。法人税の場合は、公的なサービスをみんなで負担しよう、その場合に、利益があるかどうかという、応能負担、能力に応じて負担しようという性格のものでございますから、その性格はやはり違っているという面もあろうかと思います。

 ただ、いずれにしても、小西委員おっしゃいますように、それがいかに公社、民営化された後は会社ということになるかもしれませんが、その中で有効に活用され、財務を強化し、将来の収益力を高めていくか、収益だけではなくて、社会的なサービスを行う基盤を強くしていくか、そこがもちろん重要な基盤でありますので、そうした点を踏まえた議論が必要であるという点は全くそのとおりだと思います。

小西委員 これからいろいろ具体化される部分があろうかと思いますけれども、手段と目的というのは、はっきりやはり分けていただいて、目的が手段にならないように、国民の利便を上げ、国民の生活を向上し、我が国の経済を強くする、これがあくまで目的であって、今おっしゃったような部分というのは、例えば租税の部分であるとか公務員の人数というのは、そのためのいわゆる手段の部分であるということをちょっと申し添えさせていただきたいというように思います。よろしくお願いをいたしたいと思います。

 それから、総論として二番目に、官から民へ資金を流す、これが今回の民営化の非常に大きな意味合いであり役割である。これによって日本の経済が活性化し、ひいては国際競争力も強くなってくる、国そのものが強くなる、そういう意味で今回の民営化をとらえられているということは承知をするわけでございますけれども、では、具体的に、総務委員会でも質問を簡単にさせていただきましたけれども、どのようなシナリオでそのような形ができるのか、私自身はまだ、いま一つよく納得ができていないところであります。

 それで、まず一点目なんですけれども、よく竹中大臣が、官から民へ資金を供給するという中で、具体例で金融技術の進歩という言葉を何度か使われたと記憶しております。具体的にどういうようなことをイメージしてこういう言葉を使われたのか、どういう手法のことを言っておられるのか、教えていただければと思います。

竹中国務大臣 小西委員は、民間の保険、金融機関、サークルにいらっしゃったということで、大変お詳しいというふうに承知をしております。

 私が金融技術の進歩という言葉を使うのは、官から民へというよりはむしろ、今なぜ民営化なのか、そういう文脈で使っているのが多いかなというふうに思いますが、これは釈迦に説法かもしれませんが、例えば今の状況でいいますと、IT技術を活用したインターネットバンキングでありますとか電話のテレホンバンキング等、フェース・ツー・フェースだけではなくて、またさまざまな形での利便性の高いサービスを提供する。その場合、当然のことながら、手数料なんかも安い場合も出てくるわけでございます。

 さらには、これは非常に高度な保険数理を駆使した多様なニーズに対応するパッケージ型の保険商品の開発も進んでいるというふうに承知をしています。さらには、これは金融工学を駆使して、いろいろな手段を組み合わせてリスク管理を巧みに行っていくというような手法、そういう形で目まぐるしい勢いで技術革新が展開されていると思います。

 これからの金融機関は、IT技術の進歩、さらには金融サービスの高度化、それに基づく競争の激化という環境変化に迅速かつ的確に対応していくということが、これはもう世界じゅうの金融機関で求められているんだと思います。実は、そのために今の公社の形態のままでは限界があるのではないか。例えばNTTも、公社ではなくて民間化することによって、ドコモのような非常に新しい技術を柔軟に商品化することができたのではなかろうか。そうした形で民営化によって、機動的、弾力的な経営をぜひ可能にしていっていただきたいというふうに思っているわけでございます。

小西委員 御説明ありがとうございます。

 今大臣から説明していただいたのは、一応いわゆる入り口、顧客とのインターフェースの部分を中心にお話しいただけたと思うんですけれども、同時に、ではそれが、出口ですね、どういうふうに使われていくのかというところもあわせて非常に大きな関心があるところであります。十九世紀的には、神の見えざる手ということで、市場に流せば一番有利なところに自動的に流れていって最適化が行われるというようなことも考えるわけですけれども、それだけではどうも我々も納得しがたい部分というものがあるわけであります。

 ということで、実際に民営化されて資金が、徐々にではあると思いますが、民間の方に流れていく、こういう中で、民営化想定時の三年後、これはまだわかりませんけれども、完全になされるであろう十年後を含めて、今と比べてどのような資金の流れに変わるのか。今は多くがいわゆる国債を初め非常にかたいところに流れていると思いますけれども、これがどの程度変化していくというように、これは単なる想定になると思いますけれども、お知らせいただければありがたいなというように思っております。

 その辺のシナリオがないと、民営化ということも我々も強く一般の有権者の方にも説明できないわけでございまして、お教え賜れればありがたいと思います。

竹中国務大臣 委員御指摘のように、私は今、お金の流れのいわば入り口のところを御説明させていただいたわけでありますが、最終的な資金の取り手、資金の出し手がいて、資金の取り手がいて、そこをお金が流れるわけでございますから、その取り手の姿がどうなるのか。そしてそれをつなぐ経路、まさにこれが金融の仲介のプロセスということになります。それがどのようになるのか、これは大変重要ではありますが、そういうものを明確に予測したものというのは、これは現実には存在しない、どこの国にも存在しないわけでございます。

 一つのイメージとして申し上げるならば、これはやはり入り口が変わるということは一つ重要でございます。

 今、三百四十兆のお金が家計の金融資産として公社という公的な入り口に入ってくるわけでございますが、民営化することによってその三百四十兆、これはストックベースでありますが、次第にこれは民間のお金になっていくという面がございます。

 一方で、重要な点は、出口の部分で、今後十年間をもし予測するということでありますれば、これは、二〇一七年の段階では、日本の経済のサイズそのものが非常に大きくなっているということがまず重要でございます。したがって、今のイメージでは、なかなか民間の資金需要はないのではないかという議論も多いわけでありますが、十年で経済のサイズが実は非常に大きくなるということ、その間に、最終的な資金の取り手としての政府の部門、政府の赤字をどのぐらいコントロールしていけるのかという点が大変重要になります。

 我々は、二〇一二年にプライマリーバランスの、基礎的財政収支の回復を目指しておりますので、そのような財政の健全化がある程度進行していくということ、同時に、財投機関の改革も今進められておりますが、あわせて今、経済財政諮問会議では、今後必要な期間を経て、政府系金融機関の貸付残高、GDP比で約半分にする、そういう改革をするということを想定しております。

 そうした出口の改革が実現できたとすれば、これは実現しなければいけないわけでありますが、経済規模が拡大する中で、財政の赤字をコントロールして、そして、かつ、その政府系金融機関の割合を小さくしていくということになりますれば、官から民へのお金の流れというのは、かなりはっきりとした形で見えてくるということになるのだと思います。

 もちろん、そのプロセスも重要でございます。二〇〇七年度まで、平成十九年度までは財投の預託の特例がございますが、それ以降はマーケットを通して財投債、財投機関債が発行されるということになる。まさに入り口、出口、そして中間の、今申し上げたような改革を同時に実行することによりまして、官から民へのお金の流れの変化というのはかなりはっきりと見えてくるというふうに考えているところでございます。しかし、同時に、これは全部やはり実現しなければ、入り口だけ、出口だけというわけにはいかない改革だというふうに思っております。

小西委員 ありがとうございます。

 今の話をごくごくごく簡単に言うと、政府の財政改革のために、いわゆる出口のところを透明化する意味でも、この資金を民営化する必要があるというふうにとらせていただいてよろしいでしょうか。

竹中国務大臣 その中間のところで、二〇〇八年度以降はマーケットを通した調達になりますので、そのマーケットを通した調達になるということで、透明化ということだけであれば、ある程度それは役割を果たす面もあろうかと思います。しかし、いずれにしても、官で集めたお金は、当然資金運用に制約がありますから、どうしても安全性の高いところでしか運用ができない。そういう制約が残るからこそ、実は入り口の改革が重要なのであると私は思っております。

小西委員 ありがとうございます。

 では、ちょっと視点を変えまして、地元という視点からいいますと、今、日本の経済の発展のために、やはり地域またはベンチャーへのいわゆるリスクマネーというのが私は非常に必要だというように思っております。

 地域の中小企業においても、なかなかリスクマネーの調達が難しい。我が滋賀県でも、今度十億円ほどの地域投資ファンドを県と一部金融機関で組むという話をこの間聞いたんですけれども、米国のいわゆるベンチャーの強さの奥に、いわゆる厚い信託銀行が大小さまざまな種類のいわゆる投資信託、ファンドというものを組んで、これが非常に大きな役割を果たしているということを聞き及んでおるわけであります。今回の郵政の民営化によって、我々としては、地域、特にそういう中小企業やベンチャーを活性化するための資金が回る、こういうシナリオが描ければ非常に幸せな部分があるのかなと思ったりするわけでございますけれども、そのあたりについて、もしビジョンがあれば、お聞かせいただけたらと思います。

竹中国務大臣 小西委員のお尋ねは、具体的に資金の流れがある程度これで変わっていくとしても、その中で、ファンド、信託、そういうものがどのように育っていけるのだろうか、それが特に地域の再生にかかわってくる可能性というものをどのように見たらよいのかというお尋ねだと思います。

 これはまさに各論の各論になりますので、なかなか予測は難しいんでございますが、我々としては、先ほど申し上げましたように、民営化が実現することによって、郵政が今持っている膨大な資金の一部分でも次第にリスクをとれるお金に変わっていく可能性があるというふうに考えております。

 そこで、これは骨格経営試算での想定なんでございますけれども、二〇一六年度末に、いわゆる信用リスクビジネスに全体の資産の四分の一ぐらいが入っていく。その二〇一六年で全体の規模百四十兆円ぐらいを想定しておりますが、そのうちの四分の一の三十五兆円規模でそういったリスクをとった場合に、その採算性がどうなるかというような試算を行っております。

 この三十五兆円という数字を出したときに、そんなに貸し付けをふやせるわけないではないかという御批判をいただいたんでございますが、これはぜひ二点お考えいただきたいんです。信用リスクビジネスというのは決して貸し付けだけではございません、シンジケートローン、私募債、クレジットスワップ、ABSなどの証券化関連商品、そして債権買い取り、いわゆるファクタリング、保証業務。つまり、信用リスクをとることすべて合わせて三十五兆円というのは、もちろんこれはこれからいろいろ御議論いただきますが、決して大きな想定ではないと思っております。

 かつ、この間、経済成長でGDPサイズが十年後には相当ふえていることが想定されます。これは、先般の二十一世紀ビジョン等々でも数字が示されております。そうした中で、今申し上げたような規模の形で信用リスクに入っていく、その中にはやはり地元で活用できる資金も当然のことながら出てこようかというふうに思いますので、私はその意味からも、委員はリスクをとれるマネーが必要だとおっしゃいましたけれども、そういう道を今回の郵政民営化は開くことができるものというふうに思っているところでございます。

 また、この骨格経営の試算等々については、けさほども御紹介しましたが、公社におきましても、さらにこれを深めて議論していく体制を今とっていただいているところでございます。

小西委員 我々としましては、そうなればいいなと思っておりますけれども。我々、地域を回りますと、やはり投機に回るのではないか、市場に回ったものが有効に使われずに投機に回ってしまうというようなことを懸念される声も非常に多く聞くわけでありまして、また、今この時点でどうこうというのは非常に難しい問題だというふうには思いますけれども、心にとめておいていただければありがたいというように思います。

 それでは、ちょっと、責任の所在というのもあったんですが、これは最後に回させていただいて、各論についてお伺いをしていきたいというように思っております。

 まず、民営化法案について。

 まず第一点なんですけれども、私の理解では、「民間にゆだねることが可能なものはできる限りこれにゆだねることが、より自由で活力ある経済社会の実現に資する」というようにあるわけでありますけれども、私は、民間の活力というのは、競争原理が働くというのが一番根本の原理である、大前提になるんだというように考えております。間違っていればまた御指摘いただければと思うんですけれども。

 そう考える中で、郵便事業、これはゆうパックを除きますけれども通常の郵便事業、並びに郵便局の運営というのは、普通、通常考えると、競争原理というのは働かないのではないかなというように私は思っております。それが証拠に、今回、両会社とも日本郵政株式会社の一〇〇%子会社という立て方をされている。ここでは自由競争にかわる別の統治原則が必要ではないかというように思うわけでございます。そう考えた場合に、果たして本当に公社形態より民営化の方がすぐれているのか、株式会社の形態の方がすぐれているのかどうか、私としてはちょっと疑問に思うところがあるわけであります。

 ここのところ、なぜここが一〇〇%持ち株会社下の民営会社ということで法案をつくっておられるのか、お聞かせいただければと思います。

竹中国務大臣 郵便の事業は、御承知のように、いわゆるユニバーサルサービス義務がございます。民間の活力を活用して自由に競争をしていただきたい、しかし一方で公的な義務はしっかりと果たしていただきたい、これがまさに郵便の事業の特性であるというふうに思います。

 その場合に制度設計をどのようにするかということに関しては、これは当然、いろいろなお考えがあるんだと思います。極端に言えば、公的な性格を少しでも担っているんだから全部政府がやれという考え方もあるかもしれません。

 しかし、現実に、世の中、世界でいろいろな動向を見ますと、公的な性格は担っているけれども、民間でできる部分については、これはできるだけ民間でやってもらおうではないか。私は、特にヨーロッパ等々では、郵政事業に関してもそういう方向が流れとして生まれつつあるというふうに思っているところでございます。オランダ、ドイツ、イギリス、イタリア、そういうところが今まさに私が申し上げたような形で、ユニバーサルサービス義務を課しながら民営化を行っているという現実がございます。

 そういうふうに見ますと、実はNTTも同じような立場でございます。けさほどから、公衆電話のユニバーサルサービス、ユニバーサルの設置義務がございましたけれども、これも公的な機能を担っている。しかし、技術革新が激しい中でやはり競争をしていただいて、民間の自由度は持っていただく方がよいのではないか。今回、郵便局会社、そして郵便事業会社はまさにそういう形で、民営化するけれども特殊会社として、政府の関与がしっかりあるような形をつくっているわけでございます。

 そのときの株の持ち方でありますが、政府が直接株を部分的に持つのか、持ち株会社をつくって、その持ち株会社のもとに郵便事業会社、郵便局会社をつくるのか。これはまた幾つかの考え方があったわけでございますが、我々は、郵便局会社と郵便事業会社というのはそれなりにやはり連携をとって補完するような立場にある、つまり、郵便のユニバーサルサービス、そのためには切手も売らなければいけないし書留も受け付けなければいけない、それを郵便事業として担う郵便局会社というのは同じ持ち株会社のもとにつくるべきではないだろうかと考えたわけでございます。

 したがって、この持ち株会社について、民間に株を持っていただける部分は株を持っていただく、三分の一は政府が引き続きこれを保有して社会的な機能を担う一つの担保とするわけでございますが、三分の二についてはこの持ち株会社の株を民間に売る。したがって、持ち株会社が一〇〇%を持っているということは、間接的な投影としては、そこにはやはり民間の三分の二のガバナンスが働くということにもなろうかと思います。

 今申し上げたような考え方で今回の制度をつくっております。

小西委員 どうもありがとうございます。

 続いて、ちょっと単純な質問なんですけれども、同法の中に、郵政民営化の施策を責任持って国が実行する、このように書いてあるわけであります。国というのは一体何だろうかというのが、素朴な疑問としてふとわき起こったわけであります。そもそも民営化を継続的にやらなきゃいけないんですけれども、民営化するのに国がやらなきゃいけない、しかも継続的に。何か非常に腑に落ちないところがあるわけであります。ちょっと哲学論争みたいな話になって恐縮なんですけれども、この主体の国というのは政府ですかね、それともどこになるんでしょうか。ちょっと教えていただけたらと思います。

竹中国務大臣 小西委員御指摘のように、この郵政民営化法の第三条に次のような規定がございます。国は、前条の基本理念にのっとり、郵政民営化に関する施策を実施する責務を有する。国が有するということでございます。ここで言う国とは、行政府にとどまらず、立法府を含めたものであるという解釈でございます。

 すなわち、行政府が、この郵政民営化関連六法律の定めるところによりまして、郵政民営化に関する施策を実施する責務を有する。そして、郵政民営化の過程において、社会経済情勢の変化等により立法的措置を要する状況が生じた場合においては、立法府が必要な立法の措置を講ずべきとの理念、これは理念を定めたものでございます。

 なお、同様の規定は、これまでの改革の基本的法律においても見られるところであるというふうに承知をしております。

小西委員 ありがとうございます。

 今の中には、これは国民も入るという理解でよろしいんでしょうか。

竹中国務大臣 政府でございますから、行政府と立法府。それで、立法府、行政府、国民はそれを監視する、そういう機能を担っているわけでございますので、その意味では国民の役割は重要でございますが、ここで言う、法律で言う国というのは行政府及び立法府であるという理解でございます。

小西委員 ありがとうございます。

 では、次に基本方針ですけれども、基本方針の中に、同種の業務を営む事業者と対等な競争条件を確保するために必要な制限を設けるという記述があったかに思います。基本的に、民営化でございますので、一般の業法に従うとしてしまえば大体それでうまく話がいくはずと我々は理解するんですが、あえてそれに加えて、同種の業務を営む事業者と対等な競争条件を確保するために必要な制限というのは、どのようなものを想定されているのか、また、どういう意味合いでこの規定を入れられたのか、教えていただければと思います。

竹中国務大臣 まず、ちょっと郵便事業会社と郵便局会社についてお考えいただきたいんですが、これは、公社から引き継ぎました人的な資産、そして物的な資産を活用することによりまして、他の民間事業者にはない優位性を持って業務を営む、出発点においては少なくともそのようなことが想定されます。このために、他の民間事業者とのイコールフッティングを確保するという観点から、同種の業務を営む事業者の利益を不当に害することのないようにという観点から、これは配慮義務を課すこととしたものでございます。

 また一方で、郵便貯金銀行、郵便保険会社につきましては、金融業務においては信用というのが競争上決定的に重要でございます。したがって、資本関係を通じました国の信用と関与が残る移行期間中は民業圧迫とならないようにしなければならない。したがって、銀行法、保険業法等一般の金融法令に加えまして、業務制限等の特例規定を適用しているところでございます。また、株式処分等民有民営化の進展状況等を勘案した上でその制限を緩和することにしているところでございます。

 そのような背景があるということであります。

小西委員 ということは、両会社とも、他の民間業者に比べて優位にあるという認識に立っておられるということでよろしいですね。

竹中国務大臣 一概に言うとまた誤解を招くかもしれませんが、例えば一例として、わかりやすい例として郵便貯金銀行をお考えいただきたいんです。

 郵便貯金銀行、最初は、設立の時点では国が一〇〇%を持っております。これが順次減っていって、十年以内に完全処分というのを義務づけておりますけれども、一〇〇%持っているとき、八〇%持っているとき、五〇%持っているとき、これは資本関係を通じて国の信用や関与がやはり残るという形になる。銀行の場合は、その信用というのが非常に重要なファクターに相なります。そういう観点からいうと、実質的に、お金を預けているけれども、これは政府に預けているんだというような、そういう認識を持つ可能性があるわけでございます。

 そういう点も踏まえて、もちろんそれだけではございませんけれども、政府、公社から引き継いで設立されたこの会社組織には、いろいろ局面は違いますけれども、そういう側面があるということに配慮しなければならないというふうに考えております。

小西委員 ありがとうございます。

 では次に、郵政民営化推進本部、委員会について一問だけ。

 ちょっと私の、全然取り越し苦労なのかもしれませんし、これでいいのかもしれないのですけれども、総理が大体すべて決める権限をかなり詳細な部分まで持っているように思えるような規定ではないかなと私の方には読めるわけであります。

 最初、国というのは行政府、立法府を含めというふうにおっしゃっていただいたわけでございますけれども、国会については、読む限り、報告義務以外にはないように思っております。

 ちょっと普通の法律から見ると、これはかなり、何というか、珍しい、特例的な内容ではないかなと思うわけですけれども、このようにいわゆる内閣総理大臣の関与が非常に強く規定されている、その理由、また背景、必要性、御説明いただければと思います。

竹中国務大臣 小西委員が、総理の権限が非常に強いという御趣旨、ちょっと二通りの解釈があり得るかと思うんですが、一つは、行政と立法の関係の問題、そういうことがあるのか、それとも、行政の中における総理の行政権ということかと思います。

 行政と立法というのは、これは憲法の問題でございますから、議院内閣制のもとで国会を通じた民主的なコントロールが働くということになるわけでございます。

 この郵政民営化推進本部は、郵政民営化に関する具体的な施策を規定しているのが郵政民営化関連六法案の中にございますけれども、それに従って民営化を推進するという形になっております。この法案について御審議をいただく中で、この枠組みについてまず御審議をいただいている、そういう状況にあろうかと思います。

 そして、推進本部の中では、本部長は総理でございますが、副本部長も当然ございます。そして、全閣僚がその中で話し合いを行うわけでございますので、これは、何か今回の法律が特別に総理の権限云々がクローズアップされている、そういうつくりにはなっていないのではないかなというふうに認識をしております。

 ただ、総理を本部長とする郵政民営化推進本部というその組織は、これはやはり、この法律の中に規定されておりますように、大変重要な役割を担っていかなければいけない、そこはやはり運用においては、しっかりと内閣でよく話し合って運用をしていきたいと思います。

小西委員 ちょっと私の説明も不足だったかもしれないですけれども、いわゆる閣僚のメンバーと中の選定された委員から成っているというふうに理解しておるんですけれども、その委員の方が、いわゆる国会同意人事でもなくて、総理の任命権下にある規定になっていたかというように思います。

 したがって、なぜそういうことを申し上げているかというと、要は、意に沿わないことを言う人はみんな排除できる構造かなということでちょっと思ったわけでございまして、その中でどれだけ中立的なものが確保できるのかという点の多少の疑問を私は持たせていただいた、こういうことをちょっと申し上げたかったところであります。

竹中国務大臣 閣僚の会議で決めなければいけないことというのはたくさんありますし、特にこういう大改革になりますと、やはりそこは総理を中心に閣僚で決めなければいけないことというのはある程度は必然的に出てくるんだと思います。

 その上で、民営化委員会でございますけれども、この民営化委員会の役割は、これは意見を言う、意見を述べるというところに重要な役割がございます。どういう場合に意見を述べるかというのは、これは法律でまた細かく書いておりますけれども、その意味で、民営化委員に総理が任命した人がすべてを何か決めるとか、そういう構造ではございませんので、その点はひとつ御理解をいただきたいと思います。

小西委員 それでは、次の質問に行かせていただきたいと思います。

 準備期間特例の中に、国際貨物運送に関する事業会社への出資というのがあえて規定されているわけであります。

 午前中も、大臣の御答弁で、国際物流に非常に進出するメリットがあるんだということで、具体的にはフェデックス、DHLというのを、具体的な名前まで挙げて御説明いただいたわけでありますけれども、ほかにこういう具体的な規定を持たれている業務というのはないわけであります。

 この国際物流については、もう既に今の段階でも調査し、業務へのフィージビリティー等をしておられるのかどうか、また、私自身も物流はいささか前々の会社でやっておりましたのでイメージはある程度わくわけでありますけれども、どういう種類の、さっきクーリエサービスの話も出ておりましたけれども、どういう分野を中心に国際物流というのを考えておられるのか、教えていただければと思います。

伊東政府参考人 公社の現在の検討状況につきましては、私どもまだ正確には承知しておりませんが、私どもが提出しておりますこの法案が通りましたら、具体的に公社の現在の立場でどういう国際物流に進出してもらおうかというのが法案の中に書かれておりますので、具体的に申し上げれば、公社は国際物流を行う会社に出資をすることができる、また、その会社から受託をして業務を行うことができる、この二つが法案の中に書かれております。

 もちろん、まだ法案は国会で御審議いただいている最中でございますから、具体的にどこまでそういったものに対して現在公社が取り組んでおるかというのは、まだまだ私どもとしては十分把握しておりませんが、そういうことを念頭に置きながら今回の法案を提出させていただきまして、そのことは公社も十分承知しておりますので、そういう中で公社なりに検討をしていると考えているところでございます。

小西委員 ちょっと全然回答にはなっていないんですけれども、今いきなり言った部分もありますので。要は、フィージビリティーせずにこういう規定を入れるということは普通はちょっと考えられないわけでありまして、この場でなくても結構ですので、どういうようなビジョンを持っておられるのか、どこかの場でまた御開示いただければというように思います。

竹中国務大臣 この事業の推進者は郵政公社でございますので、公社ともまた必要に応じた相談はぜひさせていただきたいと思います。

 恐らく委員が今の点を御指摘になられたのは、国際物流業務というのがある意味で特記される形でこの準備期間に出てくるという点に特に注目をされているということであろうかと思います。

 これは、基本方針を議論する段階で、国際物流というのは、四社の寡占化が進む中で、実はある意味で最後の成長市場としてアジアがある、そのアジアにいろいろ各社が進出する前に、やはり公社としてもそこに進出できるようにしたい、これは生田総裁御自身の大変強い御意欲もあります。そういう中で、要するに、国際業務ですからやはり時間がかかるということもありますので、準備期間からはっきりとこれができるようにしようではないかということでこのような準備をさせていただいているところでございます。

 それにあわせて、公社の方ではいろいろな可能性を今考えているところであると承知をしておりますので、必要に応じまして、我々もまた事実を把握してまいりたいと思っております。

小西委員 というか、私自身も余りバラ色に見えないわけであります。

 だから、目指しておられるのが、国際物流といっても、トヨタ社なんかがやっていますように、いわゆるシーカーゴ、エアカーゴ、それからディスパッチサービス、さまざまなものが、ありとあらゆるサービスがあるわけでございまして、どの辺をターゲットにしておられるのか、その辺もお伺いしたいですし、どういうエリアでやろうとしておられるのか、その辺もお伺いしたいと思っています。失敗するわけにいきませんので、私も関心がありますので、それを教えていただけたらというように思います。

 ちょっと時間がなくなりましたので、たくさん聞きたいことが山ほどあるんですが、非常に心配なところを幾つか選んで質問をさせていただきたいというように思っております。

 まず一つ。これはちょっと、ビジネスという意味で非常に心配というかあれなんですが、いわゆる独立行政法人の郵便貯金・簡易保険管理機構、これが今までの預金と保険を管理していくわけであります。午前中も五億何千という契約が貯金としてあるというような話も出ておりましたけれども、全国民の八〇%がカバーされる顧客データが多分ここのコンピューターの中には入っておるんだというように思います。これが、今、自由に貯金銀行もしくは保険会社の間にやりとりができるというような規定になっております。

 とすることは、全国民の八割の顧客データを持った銀行と保険会社が成立する可能性があるということになります。通常ですと、大きなところでも大体一割か二割ぐらいしかそういう顧客データを持っていないかと思うんですけれども、これは物すごく大きな力を持ち得る可能性があるところだというように思っております。そういう面で、プラス面、マイナス面、両方含めて非常に大きな懸念を私は感じるところがあります。この辺についてどうお考えなのか、お伺いしたいというように思います。

竹中国務大臣 御指摘のように、この郵政の貯金・保険部門が持っている影響力というのは大変大きいものがございます。全国民、全家計の八〇%に及ぶような情報量を持つことになる。今、小西委員からいろいろ御懸念がありましたが、要は、個人情報保護法の個人情報取扱事業者として、その保有する個人情報を利用目的以外ではなくて利用目的に沿って適切に利用してください、この点に尽きるのであろうというふうに思っております。

 当然のことながら、この法律が適用されて、個人情報取扱事業者としてこれを適切に目的に沿ってだけ利用する責務がございますので、原則として、それ以外の目的に目的範囲を超えて使用するということは許されないわけでございますから、そういったことについてしっかりとこの運用をしていくということに尽きるのであろうと思っております。

 いろいろな情報のパターンがあると思いますので、必要がありましたらさらに御答弁をさせていただきます。

小西委員 貯金銀行で、政府が全部株を手放す前は多分大丈夫なんだろうと思います、いろいろな制限がつきますから。ただ、全部一〇〇%株を手放した後は、純粋な業法会社になっていくわけであります。

 そうなった場合には、合併、買収、基本的には一応自由ということになろうかと思います。ここを合併すると、これだけの巨大な資産、顧客情報という資産が手に入るわけであります。また同時に、その段階においては多分規模がかなり縮小されておりますから、一般の市中銀行と比べてそんなに大きくならないぐらいまでやはり小さくしないと、本来の自由競争な金融システムとして回るところまでいかないと思いますので、それくらいまでは絞っていくんだろうなというふうに思うわけであります。

 そうしたときに、この問題というのは非常に私は関心のある問題であります。今答えが出るものではないかと思いますけれども、いずれ御検討いただければというように思います。

 それともう一点、システム絡みでもう一つ。これは疑問というよりは、あり得ないのではないかなという質問なんですけれども、党の部会の中で、いわゆるシステム対応についての説明を受けた機会がありました。その中で、その説明を素直に聞くと、何とかかんとかできるけれども、期間内に十分なシステム対応というのは難しい、かなりの手作業とお客様に対するサービスの低下をある程度覚悟して、何とかかんとか間に合うだろうという説明を受けました。それで、半年間は猶予期間を認めるという話がありました。それから、その半年が一年に延びたというような話がありました。

 そういう中で、ある専門家などは、この期間でやるのは、クレージーという言葉を使いましたけれども、非常に難しい、よくこんなものを受けるところがありますね、そのようなことを言っておられたわけであります。システム業界ですと、この一年猶予があるということはもう期限が延びたに近いという、SEの連中は、そういう理解をおれたちはするというようなことも聞いております。

 少なくとも、システムを開発し、また会社をやるという中で、利便を低下させてまで、もしくはお客さんに不便を強いてまで、システムをそういう期間の中途半端な形でリリースするといいますか、そういうことは常識としてはやはりちょっと考えられないわけであります。正直なところ、本当にサービスの質を落とさずに、業務の複雑さを招かずにシステムが立ち上がるのに、本当にこのプラス一年の猶予で大丈夫なのかどうかというのを、引き続き私は疑問に思っております。

 また同時に、ここで大きな改革をするのでありますので、システムについてもよりよいものに、より安いものに、我々も、いわゆるシステムの政府調達の問題、レガシーシステムの問題、党の方でもe―Japan等取り上げさせていただいておりますけれども、ここは郵政公社ということで我々も十分に見てこれなかった部分なんですが、大変大きな懸念を持っております。年間に何千億円というシステム投資が今もされているはずでありまして、この点につきまして、はっきりとしたことをできたらお伺いしたいと思います。

竹中国務大臣 委員が御指摘の部会での説明というのは、恐らくこれは、公社が当初の段階でいろいろな問題点があるということを御指摘された、そのことを言っておられるんだと思います。

 この点については、公社の方にも、公社のCIOにもオブザーバーとして参加をしていただきまして、例の郵政民営化情報システム検討会議を、これは回を重ねて開催いたしました。

 その報告を引用させていただきますけれども、言うまでもないが、顧客との関係に影響を及ぼす事態はあってはならないものであり、優先的に避けるべきリスクであるとした上で、顧客との関係の観点から問題となり得るリスク、これを取り上げて検討して、公社や開発ベンダーが仕様凍結時期及び開発着手後の仕様変更の有無に大きく左右されていることを踏まえた上で、十分な期間をかけてのテストが求められているというふうにしているところでございます。

 したがって、開発後の変更の極小化等々について、報告書が、「管理すべき一定のリスクが存在するとしても、制度設計や実際の制度運用において、適切な配慮をすれば、情報システムの観点からは、暫定的に対応することが可能」だというふうにしているところでございます。我々としては、政府部内の関係部局において緊密な連携を図っているところでありまして、やはりリスクを極小化していくというのが一つ我々の重要な務めである。繰り返し言いますが、専門家の議論として、「適切な配慮をすれば、情報システムの観点からは、暫定的に対応することが可能である」というのがトータルの結論でございます。我々としては、リスクの最小化に努める。

 一方で、この報告の中にもありますように、十分なテスト期間を確保するということがもう一つの重要な課題であるというふうに思います。したがって、想定を超えるようなシステムリスクへ対応する危機対応措置を設けておく、そういった観点から、新しい経営陣から成ります経営委員会がシステム対応上で問題がもしあると本当に判断した場合には、民営化の約半年前である二〇〇六年の九月一日までに推進本部にその旨を申し出る。そして、必要があれば六カ月間民営化の時期を延長するというふうにしている。したがって、そういう申し出がもしあったとすれば、半年先をさらに半年延ばすので、一年以上のテストの猶予期間ができるということになるわけでございます。

 我々としては、この報告書に書かれていますように、リスクの極小化に努めて、そしてテスト期間の確保をにらみながら万全を期して、このシステム対応をぜひしっかりしたものとしていっていただきたいというふうに思っております。

小西委員 予断を許さずに、またしっかりと見ていっていただきたいというように思います。

 それから、ちょっと郵便局会社の金融サービスの提供についてお伺いをしたいというふうに思っています。

 郵便局株式会社、いわゆるネットワーク会社の行う金融業務、郵便局を利用して行う金融業務は、この法律の切り分けでは、地域住民の利便の増進に関する業務であるという切り分けになっているかと思います。したがって、どちらかというと、郵便貯金銀行の業務というのは、民間の金融というよりは、ここの地域住民の利便の増進に関する業務を担う一ファクターだというようにとらえることもできると思うんです。

 それ以外に、もう少しわかりやすい、といって自分もあれなんですけれども、郵便局以外のところでいわゆる預金の募集その他を行わないのであれば、その比率が低いのであれば、郵便局のネットワーク以外でですね、これは今やっている公社とほとんど仕事は違わないんじゃないか。これは、あくまで地域の利便増進のための業務であるわけでございますので、民間の業務という切り分けにはなかなかなっていかないのではないかというように思うわけであります。

 確かに、民は民で、業法会社にするというのはあり得る選択だとは思うんですが、要は、株を全部手放すまでは、実質のこの形は、公社のやっている一部門をただ切り離したというものに近い形ではないのかということになろうかというように思うんです。この辺、どういうふうに整理したらいいのか、ちょっと教えていただければと思います。

竹中国務大臣 今の委員のお尋ねは、窓口会社についてということでよろしいわけでしょうか。それとも、銀行と両方ということでしょうか。済みません。

小西委員 どちらかというと銀行についてお答えいただければいいと思うんですけれども、要は、窓口会社でやる金融サービスは地域貢献サービスだ、こういう切り分けだというように思います。ネットワーク会社のメーンビジネスではない、地域貢献計画の中に入れられる業務だ、こういう理解をしております。

 だとすれば、一方で、郵便貯金会社が提供するサービスの大半が、この郵便局ネットワークから入る預金で業務がなされるとすれば、実質これはネットワーク会社の一部門とほとんど変わりがないんではないか。少なくとも、株を全部売り払って完全な業法会社になるまでは、実質、今で言う公社の一部、郵便局会社の一部であるということと本質的に違うところはないんではないかと思うわけであります。この点についてどう整理したらいいのか、教えていただきたい。

竹中国務大臣 お尋ねが、例えば郵便貯金銀行が設立されて、それで窓口会社にいろいろ代理店の委託を行う、しかし、それ以外に別に委託を行うわけでももしなければ、実は、ほかのところに委託を行うこともできますし、そういう業務が次第に拡大していくということは一方で期待はしているわけでございますが、そうすると、今までと実態的に、会社の看板が変わったといいますか切り分けられただけではないのか、そういう御指摘があったかと思います。

 ただ、その場合でも一番違いますのは、先ほどまさに小西委員がお尋ねをいただいた、これはしかし、銀行そのものが、最終的には銀行法が適用される民有民営の会社になるわけでございますから、政府が集めているお金ではない。政府が政府保証をつけて集めているお金ではなくて、あくまでも、政府出資は残るものの、民間の銀行として預金保険料も払って集めるお金になります。

 したがって、その運用においては、リスクマネーとしてリスクをとりながら運用するという道が開けていくということになりますから、そこはやはり銀行の性格としては、これはもう公社とは根本的に違ってくるということなのではないかと思います。

 委員のお尋ねが、しかし、それにしてもお金の入り口の部分が余り変わったようには見えないという御指摘かもしれません。

 これに関しましては、郵便局株式会社としては、これは御指摘のとおり、地域貢献に資するビジネスとしてやる、しかし、銀行法に定める銀行業代理店としてこのビジネスを行う。そして、そこの代理店に委託をする郵便貯金銀行は、今度はリスクをとれるマネーの運用者として次第にその力をつけていく、そういう形で実際の民営化が進んでいくというふうに思っております。

小西委員 今説明を受けたわけですけれども、実質的には預け入れ限度額がありますし、郵便貯金銀行になったとしても、危ない銀行だというわけには当然いきませんので、それなりの信用というのはずっと続くんだと思うわけであります。したがって、そういう御説明を受けても、そんなに大きな違いはないのかなと思ったりもするわけですけれども、この点はさておきまして、最後に一点だけ。

 これは、一番私が気になって気になって仕方がない点なんですけれども、民営化の最終的な行く末をどうやって担保していくのかという部分であります。行政府それから立法府、力を合わせて国がずっと継続的に見ていくんだという当初の言葉もありましたけれども、我々やはり民間の人間からいうと、どういう手段でそれを担保していくんだという部分は非常に気になるわけであります。

 例えば潜水艦ですと、設計した人間は処女航海に乗っけていく、こういう話があるわけであります。我々、プラントをつくっていますときは、大体、失敗すると将来は大概なくなる。こういうようなぎりぎりのところでみんなやっている部分というのがあるわけであります。

 今回、我が国にとっては非常に大きな改革になろうかと思います。これは余り真剣にとっていただかなくても結構ですが、一つの笑い話として聞いていただけばいいんですけれども。例えば、竹中大臣なり総理がヘッドとしてこれをずっと仕切っていかれるとか、賛成した議員、反対した議員含めまして、うまくいかないときには全員政治家をやめるという念書を書いてみんなやるとか、準備室の皆さんは全部片道切符で行っていただいて、命かけてこれを民営化していただくとか、そういう形の、国民に目に見える形の何かそういうものがないと、我々はちょっと不安で不安で、私も国会議員です、通っちゃったらいいよ、そうはなかなかこれは言えない部分が非常に大きい問題だと思うんですよね。

 このあたりのところについて、どうやって、最終的にこれがよくて、十年ですからなかなか紆余曲折があって見きわめられない部分というのが多いとは僕も思いますけれども、力を合わせていこうというその根っこになる部分というのがちょっとなかなか見えづらいだろうと思いますけれども、この点についてお伺いできれば。本来は総理に聞かなきゃいけないかもしれませんけれども、きょうはこういう日ですので、竹中大臣、最後の質問としてよろしくお願いいたします。

    〔委員長退席、石破委員長代理着席〕

竹中国務大臣 大変難しい、しかし重要なお尋ねであると存じます。

 長期の国の形を議論する、これは郵政民営化だけではなくて、JR、国鉄の民営化のときもそうであったと思いますし、また、財政再建をどうするかという問題等々にもすべて通じる問題であり、我々それだけやはり真摯に問題の重要性を受けとめて国政に当たらなければいけないということであろうかと思います。

 まず、この民営化実現のためには、この法案が国会において可決成立することが前提でございます。我々としては、国会審議を通じて考え方を十分に説明させていただいて、また、国会においては慎重な御審議を得て、そしてそれを国民に御評価いただくということが何よりも重要なことだと思います。

 民営化が実施された後、これはやはり、何といっても一義的には経営者が責任を持って新会社の経営を行っていただくことになるわけでございます。したがって、経営者も大変重要な責任があるだろう。また同時に、政府は責任を持って最終的な民営化の実現に向けた措置を講ずるということに今回しておりますので、そのような必要な監督、必要な手当てを適切に行っていくという責任がこれは政府にも当然あるわけでございます。

 いずれにしましても、この民営化が所期の成果を上げるためには、民営化に関与している我々全員がそれぞれ全力を挙げて責任を全うしていくということに尽きるのであろうかと思っております。委員の意を受けて、我々も本当にしっかりと対応しなければいけないと思っているところでございます。

小西委員 どうもありがとうございます。

 国民の関心は、マスコミを通じて見ると、まだ十分には高まっていないみたいなんですが、これまでの民営化以上に数層倍、国の将来、金融システムを考えて重要なものだというように思っております。我々もしっかり責任を持って審議を続けていきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

石破委員長代理 次に、北川知克君。

北川委員 自由民主党の北川知克でございます。

 本日最後の質問ということで、各大臣にも大変お疲れのところであると思います。私は、ちょっと視点を変えて、今、小西委員の方から国の形にかかわる国民と政府の関係等々のお話もありましたので、そのような観点からこの郵政民営化法案というものをとらえた質問をしていきたいと思っております。

 その前に、我々自由民主党の方も、昨年来、それこそ村井委員長のもとでの会、そして園田座長との郵政三事業に関する合同部会、大変長い間この議論をしてまいりました。やっと国会の場で議論をするときになったのでありますけれども、肝心の民主党の方々そして社民党の方々が参加をされない。議会制民主主義にとって果たしていかがなものかという思いもいたしておりますし、その党首である方が、我が党のこの民営化に慎重な方と会われて、その信念を貫いていただきたい、支持をするというような発言をされておられました。本来なら、委員会へ出て、審議の中でこの法案の争点について議論をするべきところでありましょうけれども、果たして、そういう姿勢というものがいかがなものかなという思いもいたしております。

 私も、昨年来から、党の会合の中で賛否両論といいますか、それぞれの議員の先生方のお話を聞いて、もっともだな、そして小泉総理のおっしゃる点ももっともだなという、お互いの議論の中で納得をする点もありましたし、首をかしげるようなところもあったのも事実でありますが、この点においてやはりもう一度冷静に考えなければならないのは、我が国の政治、政府、これと国民との関係と申しますか、やはり、政治に対する信頼を取り戻すことが重要であろうと思っております。小泉総理はよく、信なくんば立たずということを言われます。これは、政治に対する国民の信頼がなければ国家は存立をしない、国はつぶれてしまう、私ども、おやじの方が師事をいたしておりました三木武夫先生もよく使われた言葉でありますけれども、そして、政治の一番大事な目標は、それは国民生活の充実向上であるということであります。

 今回のこの民営化法案というものは国民の生活の充実と向上にかなうものであるかどうか、まず、この点だけを竹中大臣に先にお答えをいただければと思います。

竹中国務大臣 ちょっとオーバーな言い方かもしれませんが、北川委員はよくこういう質問等々で、まさに次の時代のこの国の形を議論しなければいけないというような趣旨の御発言をしておられると思います。私も全く同感でございます。とりわけ、郵政民営化という非常に大きな、まさに明治以来の制度設計を今担当している。それは、間違いなく次の時代のこの国の形をやはり規定する、影響する非常に重要な問題だと思っているところでございます。

 そういう意味で、やはり原則を絶対踏み外してはいけないということで、まず五つの原則を立てて、その原則論から出発して今日の詳細な制度設計に至っております。その内容につきましては、これは国会でぜひ御議論いただいて、国民に御評価をいただかなければいけないと思っておりますが、そうした観点からするならば、次の時代の形を示し得るそういう法律案になっているというふうに自負しているところでございます。

北川委員 ありがとうございます。

 そこで、党内の議論を私なりに整理をしていこうと思いました。

 これはやはり、一つは政治的課題、小泉総理のおっしゃってこられた郵政民営化、すなわち政治家が信念を貫いていく、そして、その信念を貫いていく上において国民との約束を守る、我々自由民主党にもこの使命はあると思います。我々の自由民主党も、この点のことも十分考慮もしなければいけないと思います。

 そして、小泉内閣がとってこられておられます構造改革というものは、竹中大臣もお答えになっておられますけれども、官から民へ、小さな政府を目指す、効率のいい政府、小さな政府を目指すということであります。小さな政府を目指すということは、国民一人一人の皆さん方が、行政やそして政治等の制約を受けずに自由濶達に行動できる部分もあります。しかし片方においては、みずから責任を負わなければならない。自己責任社会というものもかいま見えるわけであります。

 こういう国家論といいますか、国家へ向かう意味合いがこの郵政民営化にも私は含まれておると思いますし、一連の司法制度改革にいたしましても、国民の皆さんが裁判に四人から六人参加をされて、裁判員としてその裁判の中へ国民が参加をしていく、国民がこれから日本の政治や司法に参加をしていく、一つはそういう流れになってきているのではないかなと思っております。

 よくマニフェスト選挙と言われますけれども、その政策を選んだ国民がその政府に意思を託して、みずから、そしてお互いにこの国の未来に責任を負っていく、これがそのマニフェスト選挙の真髄であるということもお聞きをしておりますけれども、今回のこの一連の流れというものは、そういう政府、国というものを目指している観点があるのではないかなと思っております。

 しかし、国民から見れば、やはりまだまだ日本の社会というものは、お上を頼るといいますか、政府を頼る、行政を頼る部分があるわけでありまして、この点の国民に対するメッセージをきちっと伝えていく、国民に対する理解とそして協力を求めていく上において政府も努力をしていただいて、タウンミーティング等も行われておりますけれども、まだまだその関心度合いを見ますと少ないんではないかなと思っておりまして、この委員会での議論がしっかりと国民の皆様方に通じていくことが大事であろうと思っております。こういう政治的な課題が一つはあると思います。

 そしてもう一つは、やはりこの郵政の民営化法案そのもの、郵政を民営化していくことが政策において我が国にどのような影響を及ぼしていくのか、この二つの論点の整理が必要ではないかなと思っておりまして、我々、我が党の議員の皆様方も与党として選挙で約束をしている点もあるわけでありまして、そして片方では、長年地域に貢献をしてきたこの郵政事業というものが果たしてこの民営化によってどのような形になっていくのか、こういう不安点の中におると思うんでありますけれども、この点について竹中大臣の所見をお伺いできればと思います。

竹中国務大臣 大変大きなお尋ねでございます。

 まず、政治的な視点、恐らくそれは、先ほど申し上げましたように、どういう国づくりをしていくのかということをこの郵政民営化の議論を通してやはり示していかなければいけないという点なんだと思います。

 実は先般、経済財政諮問会議の専門調査会で二十一世紀のビジョンというのを出させていただきまして、実はその中で、これは大変重要な政治的メッセージでもありキーワードだと思う言葉がございます。それは、「豊かな公・小さな官」という言葉でございます。小さくて効率的な政府を目指す、小さな官をやはりつくっていかなきゃいけないんだと思います。しかし同時に、豊かな公、公的な機能を損ねないようにやっていかなければいけない。具体的にはNPO、NGOのようなものが想定されるわけですが、実はこの郵政の民営化というのは、民間でできることは民間でやる、しかし、公的な、社会的な機能はしっかりとその中で確保していくようにするということでございますから、この「豊かな公・小さな官」を実践する大変重要な政治的メッセージを持っていると私は思っています。そのことを、ぜひこの審議を通じてメッセージとして御理解をいただきたいと思うところでございます。

 二番目の、郵政の民営化そのものについて、これはもうこれまでも何度か御説明をさせていただきましたですけれども、やはりマクロ経済的に見ると、この郵政の民営化を通して官から民へ資金の流れをつくる、公務員の削減等も含まれますが、小さな政府をつくるというマクロ経済的な意味合い、メカニズムも大きいと思います。また、ミクロ的、郵政という一つの経営体から見ましても、これは、環境が厳しくなる中で、そういう厳しい環境にしっかりと適応してダイナミックな経営をしていっていただく、それによってまさに国民に良質なサービスを提供し続ける、ミクロ的な視点があろうかと思います。

 第三には、これは利用者の視点として、利用者としては、さらに、民営化された郵政を通してよりよい多様なサービス、しかもそれを低料金で得られるというようなその効果がもたらされる。

 これはいずれも、もちろんその経営上大変難しい問題にこれから直面はしていくわけですが、マクロ経済的なメカニズムを活性化して郵政という経営主体をより強くして、そして住民の、国民の利便性を高める、これがまさに郵政民営化がもたらす政策としての意味合いであるというふうに思っております。

北川委員 ありがとうございます。

 この二十一世紀ビジョンの件に関しましては後ほど聞く予定であったんでありますけれども、先にお答えをいただきました。その中で、「二〇三〇年の目指すべき将来像と経済の姿」、その一つの政策として「三つの戦略と具体的行動」、その「採るべき具体的行動」の中の豊かな公、小さな官の実現のためにリスクをチャンスにつなげる金融を実現する、この中での郵政の位置づけであろうと思いますが、しかし、この郵政の民営化というものは、金融だけの部門ではなく、先ほど申し上げましたように、全国一律のサービスとそして全国に張りめぐらせたこのネットワーク、明治以来、ずっとこの国が関与をして張りめぐらしてきた組織といいますかネットワークでありますけれども、これは、私は国の財産であると思いますし、国民の財産であります。郵便局長さんのものでもありませんし、旧郵政省のものでもありませんし、公社のものでもないと思っております。こういう国の大事な財産、国民の財産をやはりきちっとした形で残していくことが大事であろうと思っております。

 特に今、国のあるべき姿の中で地方分権が言われております。道州制の議論もされておりますけれども、やはり、日本の国自体が一つの国家として総合力で戦後勝ち上がってきた、明治以来ずうっと近代国家を目指してきて、その郵政事業というものは、中央集権国家をつくる上において重要な役割を果たしてきたと思っております。金融だけではなく、そのように張りめぐらされたネットワークというものを国家の財産として残すために、そして、国がずっと責任を持っていく必要性があると考えております。

 そういう点において、道州制の話、そして地方分権の話も出ております。二月の予算委員会でも麻生総務大臣にこの点もお聞きをいたしました。郵政の問題と、この中央集権国家から地方分権国家といいますか、移行する、しかし、中央集権としてのいい部分というものは残していかなければならないと思っておりますので、この郵政問題と国のあるべき姿の中で、今の中央集権国家、そして分権に及ぶ道州制等々についても、次の総理候補とも言われておりますので、麻生大臣の御所見を伺えればありがたいと思います。

麻生国務大臣 今、御指摘のありましたように、今年三月の三十一日をもちまして二万四千六百七十八の郵便局というのがあります。通称二万四千七百という数字の裏づけですが、ここでは今ほとんどの方々は、郵政の事業として郵便配達と簡易保険と郵便貯金の話しかされませんけれども、現実問題として、北川先生の場合、大阪等々大都会よりは地方に行きますと、恩給の支払いからいろいろな振り込み等々のすべての業務は、この郵便局を中心ということになっておる地域というのはかなりの数に上ります。

 加えて、先ほど御質問がありましたように、いわゆる町村合併によりまして町村の数は、この十七年度末、平成十八年三月三十一日をもちまして三千百から一千八百二十二まで下がる、約千三百少々、千四百近く少なくなりますので、そういった意味では、その地域におきましては行政サービスも多分著しく減るであろうと予想をされます。加えて、日本の場合は中期的には人口減ということになろうかと思いますので、そういう意味では、地方において取り残されるであろう高齢者等々の部分に対する行政としての最低のサービスというものは、郵便局というものに頼らないと、地方分権と言われたものを維持するということは極めて難しいと思います。

 そこで、いわゆる情報通信技術の進歩によって、いわゆるいろいろな手続等々、登記だ何だ、そういったようなことも郵便局が代行できるようなものになっていく、多分技術的には間違いなくできるようになりますので、そういったものをきちんとやっていくことによって、地域においてコミュニティーというものはつくり上げておく必要は絶対あると思っております。もちろんもうかりません、その部分は。

 極端な例をよく引きますけれども、東京都にあります青ケ島という島が多分日本で一番小さな行政体として、今二百二人の人口で一村だと思いますが、ここにも郵便局というものは存在しまして、ここに週六日船が通うことになるんですが、一通八十円ですから、もちろん赤。しかし、そこに住んでいただいている方がいるおかげで竹島みたいな話にはならぬわけですから、そういった意味では、これは国全体として見ては、そういったところに住んでいただいているということに対して何らかの形で負担はしても、これは認めていただけるのではないか。したがって、それでは、ほかのところの、今後国際郵便等々において稼ぎ出すであろう黒でそこを埋めるとか、いろいろなことをして国全体として維持をするという郵便局ネットワーク網の維持が一つ。

 もう一つ別に出てきておりますのは、今のお話で出てきます、資金というより金融の話ですが、三百四十兆、先ほど馳先生の御質問にお答えしましたように約三百三十九兆円になりますが、このお金というのは、これは明らかに官だけに偏っておるのは異常であろうと存じます。したがって、この官に偏っております金が少なくとも民に流れが行くような仕掛けを考えませんと、今すぐ仕掛けができたからといって、すぐできることはありません。

 なぜなら、今は資金需要というものの絶対量が民間にありませんので、民間は資金需要というものを、企業は、設備投資は銀行から金を借りないで、直接金融もしくは自前でしていらっしゃるというのが今の実態だと存じますので、その意味からいきますと直ちにできるわけではありませんが、官のままにしておけばその金は、いわゆる財政金融と言われます、例えば、よく御存じの地方債とか国債とか特殊法人とかそういったものにしか使えないということになっておりますので、政府保証がついております以上、ある程度そういったかたいものにやる以外はできませんから、そういったものにやる部分というのは、これから民営化されますと政府保証がなくなりますので、自然と減っていくであろう、今、貯金で二百二十兆とか言われておりますが、これがだんだんだんだん減っていくであろうと。これは、市場原理によって、政府保証がないならほかの銀行と同じということでありますので、減っていくであろうと思われます。

 その減っていった部分の中で、新たにそれでもそこに預金する方がいらっしゃいますから、そういった方々のお金を使って、その金がどのような形で民間に流れていくかというシステムをつくるということは、これは新たに経営をされる方々が考えられるべきところだと思いますが、少なくとも、地方における、北川家の財政事情から冷蔵庫の中身まで知っているぐらい郵便局長さんという方は、親子三代、四代にわたって郵便局を営々とやっておられる方が、二万四千七百のうち代々やっておられる方々が約一一%ぐらいだと思っていただければよろしいので、そういった方々の持っておられる情報網というのは、これは私どもとしては非常に大きなものなんであって、資金の面に関しましても、またコミュニティーに関しましても、この部分に関しましては、やはり日本がつくり上げた大きな文化の一つだと私はそう思っておりますので、明治四年この方続いてまいりました廃藩置県以来のものですけれども、私どもとしては、この制度はきちんとして維持される値打ちのあるものだと思っておりますので、少々のものをここに投下していろいろな意味で維持発展させる努力を惜しむべきではない、基本的にそう思っております。

北川委員 ありがとうございます。

 今回出されておる法案の中でも、こういう郵便局網等々、地方においても特殊会社として政府が責任を持っていく、そして、金融というものについては、今おっしゃられた中で、新しく官から民へという資金の流れを効率化の上でしていくんだという方向であろうと思っておりますけれども、しかし、その三百四十兆円、確かに国民の財産であると同時に、日本の国の国力であるとも思っております。その国力が、間接金融から直接金融、国民が直接みずからがこのお金を運用していかなければならないわけでありまして、十年の移行期間がありますけれども、その移行期間に移るまでも、やはり国民の皆様方へのきちっとしたメッセージが必要であろうと思っております。今まで国へ預けて国が運用してきたんではなく、自分のお金は自分で国債を買っていただく、日本の国に一緒に責任を持っていただく、こういうこともぜひ国民の皆様方へのアピールが必要ではないかなと思っております。

 そして、証券市場へ参入をしていただければ証券も活性化をするでありましょうし、そういうことがしっかりと国民の皆様方に伝わっていかなければ、この郵政の改革も、そして小泉内閣の構造改革も私は成功しないと思っておりますので、ぜひとも、この点を通じまして国民の皆様方へのアピールというものをしていただきたいと思っております。麻生大臣、もう一度お願いできれば。

麻生国務大臣 確かにおっしゃるとおり、政府保証がついていたということもありましたし、やはり勤倹貯蓄というのは、これは美徳だったんだと思っております。金のない戦前、敗戦直後ぐらいが特にそうだったと思いますが、今のように一千四百兆になんなんとする、超えるほどの個人金融資産を持って、そのうちの約半分以上が高齢者によって持たれておるという実態を考えますと、お金というのは、あれは置物じゃありませんので、やはりあれは回さぬと意味がないので、置いておいたって何のあれにも立ちませんので、回さないかぬということが経済を活性化させる大事なところだと思いますので、回すために、今は証券とか言われましたが、日本というのは、北川先生は御存じのように、株をやっているというと、何かばくちをやっているとほぼ同じようなニュアンスでとらえる。値上がり、値下がりという話ばかりで、キャピタルゲインの話が多いというのがこれまでの日本だと思いますけれども、配当率というのを見ていただきますと、仮に千万円を預けてありますと、日本の場合ですと、かたい株、いわゆる電力株とかそういったかたい株で配当率二%、そうすると二十万円。今、税法が一律一割になっておりますので、税金が二万円、残り十八万円は手取りですから、それと、千万円預けて金利が幾らつくかというと、〇・〇五とか六とかいうのでは、六百円とか五百円とかいうのと十八万円の差ですから、これはどう考えたって株の方に向くように税法自体も大きく変わった。

 それで、税制というものはその国のあり方を示す大きな指針の一つだと私もそう思っておりますので、いろいろな形でこの税制も、個人の金融というものを自己責任でやる方向でこの数年向けてきていることは間違いありませんので、そういった中にあって、今おっしゃったようなところを含めまして、日本全体としては、個人の自己責任によりますいろいろなものに変えていくというようになっていくのは、長い間お上に頼る習慣になっておりますこの国の国民意識を変えるというのはそう簡単な話じゃございませんので、今言われた、これは一つの例として申し上げましたけれども、そういったことをきちんと積み上げていく一つのものとして、この郵政の民営化というのもその一つとして利用されてしかるべきものではないかと、私自身はそう思っております。

北川委員 ありがとうございます。

 大臣がおっしゃるように、お金というものはずっと回っていかなきゃいけない部分がありまして、経済が好調なときは、生産をされて給料になったそのお金というものが、最後の日本銀行へまた回収されるまで十三ぐらいの銀行といいますか金融機関を経由していく、今というか、不景気な時代というのは八つぐらいのところしか経由をしないように聞いておりまして、やはり、たくさんのところを動くことによって金融というか経済の活性化というものが生まれてくると思いますので、こういう点についても、ぜひ政府として御努力をしていただきたいと思っております。

 さて、この郵政の民営化につきまして私は、昨年来からの議論を聞いておりましても、そして地元の皆様方と話をいたしましても、総理が指名をされたといいますか、郵政公社の総裁として就任をいただきました生田総裁、私は、この郵政の民営化に当たっては、生田総裁の意見というものを尊重すべきだということを常に申し上げてまいりました。その生田総裁、きょうも来ていただいております。先日の委員会でも御答弁をしていただいておりますが、今回、この形で郵政法案が出てまいりました。そして、やはり三事業一体でなくては、先ほど来のこの全国のネットワークというものは維持をできないのではないかという心配をされている方々もおられます。そして、園田座長を初め我々の自由民主党の中で御苦労をいただいて取りまとめをしていただいて、そして政府との中で一つの案というものが出てまいりました。読み方によればそういう点も見えるかなという思いはいたしますけれども、しかし、はっきりとこういう形で維持をできるんだということはまだ見えていないような気もいたします。

 こういう点につきまして、ぜひ生田総裁の、今まで、公社になって大変な努力をしていただいて経営もしてきていただいておりますけれども、今回出てまいりましたこの案につきまして、総裁のぜひ御意見をいただければありがたいと思います。

生田参考人 日本郵政公社の生田でございます。お答えさせていただきます。

 私どもといたしましては、民営化の御論議に際しまして政府がお決めになりました経済活性化の原則とか雇用重視の原則とか、五つの原則がありますけれども、この五つの原則というのは、大変公正かつ貴重な、適正な五原則だというふうに評価させていただいておりまして、これをきちんと反映するような制度設計にしていただきたいというのをまず真っ先に申し上げてまいりました。

 それから、経済財政諮問会議も三度招集を受けたわけでございますが、そういった席とか関係する委員会とか、いろいろな会合に呼ばれたときにお願いしていることがあります。それは、この大変重要な五原則を生かしつつ、生きたお金の流れをつくるとか小さな政府をつくるといった国家的見地の大きな目的があると理解しているわけでありますが、そういった国家的な大きな目的と整合しつつ、現在、公社自身が掲げております経営ビジョンというのがあるわけでありますが、この経営ビジョンというものが、公社のままで今後ずうっといくよりも、民営化になるのであれば、民営化に際してよりよく達成できる、そして、よりよく達成できるような制度設計にしていただきたいということを常に申し上げてまいりました。もちろん、最善の努力をすることが前提であります。

 その三つのビジョンでありますが、簡単に言いますと、国民という名前を使わずに、我々は、サービス業ということでリードしておりますので全国のお客様という表現をしておりますが、全国のお客様によりよきサービスをということで、真っ向サービスということになるわけであります。国民の利便性とお考えいただいたらいいと思います。

 それから、郵便、赤字構造なわけでありますが、郵便も黒字構造にして、郵政事業をまとめて健全化する、健全な財政基盤の整備ということで、これは国家の財政のお役にも立つと考えております。

 それから三つ目は、働く職員に将来展望と働きがいをということで、私は、職員が生き生きと働けるというふうな環境づくりということが極めて重要であると考えております。

 これが三つのビジョンでありますが、これが公社のままでいるよりもよりよく達成できるのかどうか、そこがキーだと思います。

 ということで、今般閣議決定されました法律案について簡単に触れさせていただきますと、国民の必要な生活インフラとしての郵便局の役割というものを、改めてきちんと御認識いただいたと思っております。経営の努力次第で郵便局ネットワークの一層のさらなる有効活用が図られる、ということは利便性はふえるだろうと。先ほどからお話がありましたように、いろいろな地方自治体との関連も出てくると思います。

 それから二番目に、初期段階を含めまして、段階的とはいいながら、各新会社の経営の自由度が向上することができる仕組みになっているというふうに理解させていただいております。民営化によりまして、税金とか預金保険機構の費用とか、支払いの面では当然民間並みになるわけでありますから、であるならば、ビジネスモデルなど事業活動の方も、同様に民間並み、いわば民営化していただかないと不公正になるわけでありますが、こういったコインの両面にも例えられる、支払う面と事業を展開する面と両面が公正な取り扱いをお願いしますと申し上げてきたのが、応分の御配慮をされてきているというふうに私は理解しております。経営の努力次第で事業の維持と成長につながるというふうに思います。

 それから三番目に、少なくとも移行期間においては、過疎地を含めまして、地域社会の郵便局で三事業のサービスが維持されるということもうたわれていると思います。

 こういった基本的な点で、公社の主張、お願いしてきたことに御理解をいただいて反映していただいているというふうに理解しておりますので、我々としましては、そういうふうに理解し、評価させていただいております。

 もちろん、細部について言えば、二、三例示すれば、例えば、民間では発生しない消費税約七百億、これは、郵便貯金会社と窓口会社が国家の政策によって分かれるということによって生じる消費税ですが、そういったものの取り扱いとか、地方貢献基金、これは、地方においてはコストの方が割高になっても、さっきの青ケ島ですか、お話じゃないですけれども、そういうものを維持するための基金という、多分そういう御趣旨だろうと思うんでありますが、そうであるならば、基金を積み立てる際の税金はいかがなものかな、無税で積んでいただくということで政府の方にもひとつお力添えをいただく。もともと、売却益が出ましたら、それは本来持ち株会社のお金のはずでありますから、その分経営の自由度がちょっと不自由になるわけですから、そういったことをお考えいただくことも大変将来のためになるんじゃないかなというふうな気がいたしますし、それからさらには、資本金に対する考え方等、引き続き御検討いただきたいことはもちろんございます。

 しかしながら、概して、総じて見ると、今回の法案は、コインの両面重視の観点から、初期の段階からの経営自由度改善の具体的な取り進め方がどうなるのか、これはこれから見なきゃならないわけですが、そういったことと、強い経営力が入るかどうか、これは物すごく重要だと思います。経営力次第で、民営化により三つの経営ビジョンがそれぞれさらによくなる可能性を十分持っている、こういうふうに考えさせていただいております。

北川委員 ありがとうございます。

 今、生田総裁の方から数々のお答えをいただきましたけれども、その中で、移行期間の中における強いリーダーシップ経営といいますか、その点をおっしゃっていただきました。

 今回、新たに民営化をされる中で、その経営形態というか、経営者の方々における融資の審査等々についてどのような形で行っていかれるのか。ちょうどバブルのとき、民間の銀行でもその融資審査というものがどういう状況であったか知りませんけれども、バブルの崩壊というものを招いて、大変国民の皆様方に損害といいますか、そういうものも出てきたのも事実であるわけでありまして、こういう点においても、今回、新たな経営者における審査等々について竹中大臣の方から御答弁をいただければ。事務方で結構です。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 今回の法案におきましては、まず、移行期間中、郵便貯金銀行の業務の拡大に当たりまして、イコールフッティングの状況とか業務遂行能力を、段階的に、郵政民営化委員会の意見を聴取の上、新規業務を認めるという形で拡大していくことになっておるわけでございます。

 融資業務につきましてでございますが、移行期当初は現在の預金者貸し付け等の一部の限定的な業務に限られておりまして、株式売却と民有民営化の進展に伴うイコールフッティングの状況に応じ、段階的に拡大していくことになると存じます。その際、今お話がございました融資審査体制やリスク管理体制につきましては、監督当局たる金融庁が審査を行うことになりますので、郵便貯金銀行において適切な融資審査体制が整備されていくものと考えられます。

 郵便貯金銀行がそれでは具体的にどのような融資審査体制を整備するかということでございますが、それは経営判断によるものでございますが、一般的な銀行における事例として申し上げますれば、融資業務につきましては、営業推進本部から審査管理部門が独立するなど、適切なチェック体制が整備されているというふうに聞いておりまして、個別案件に関する決裁権限の所在に係る付議規定が設けられるなど、適切な管理体制が整備されると承知しておりまして、この点につきましても、金融監督当局の検査、監督が行われるというふうに承知しておるところでございます。

北川委員 事務方の答弁でございますので、これも、いずれにしても、新しい経営形態になってみなければわからない点があると思います。

 そこで、もう各論の中に入ってきておるのでありますけれども、この民営化をしていく段階において、持ち株会社から郵便貯金銀行、そして、簡易保険の部分の株は十年で全株を売却するということでありますが、私は、金融不安を起こしてはならないということも思っております。その移行期間の中で国際金融情勢が激変をしたときに、政府としてこの株の売却を一時ストップして、その郵便貯金銀行、簡易保険等々に対しての責任を負っていかれるのか、それとも、そのような大変な世界金融恐慌といいますか、そういう激変が起きたときもずっと十年間は間違いなく株を放出されてしまうのか、この移行期間におけるリスクというものを政府がどのように考えておられるのか、この点について竹中大臣の御答弁をお願いします。

竹中国務大臣 郵便貯金銀行と郵便保険会社は、先ほども御答弁させていただきましたが、これは商法の一般法人、一般会社としてつくる、特殊会社ではない、ここが大変重要なポイントでございますと申し上げました。であるからこそ、実は、国の関与を断ち切るという意味で十年以内に株式の完全処分をするということを義務づけているわけでございます。一般商法会社にする、だからこそ、これはまさにコインの両面ですが、株式の完全処分を行う。そのときによく出る御指摘としては、そのときの株式の相場等々を一体どのように考えるんだ、いろいろこれまでも国の機関を民営化して株式の売却をするときにも、そういう問題に直面したという御指摘がございます。

 今回の目的は、まさに国の関与を断ち切るということが目的でございます。その意味で、決して完全売却ということを言っているわけではなくて、完全処分という言い方をしております。この完全処分とは、売却とは異なりまして、国の関与を断ち切るために、国の出資する日本郵政株式会社がその二つの銀行と保険の議決権を有しない状況とするということを意味しているわけでございます。

 方法としては、もちろん、売却するということは所有権が移転しますから、これはもうわかりやすい事例でございますけれども、さらには、例えば委託者が議決権行使について指図を行わない有価証券の処分信託等々、この処分信託ということで御理解いただければわかりやすいと思いますが、そういうやり方もあるでしょうし、また、幾つかの種類の転換可能な社債のようなものを出すというようなことも、コンバーティブルボンドを出すということもあり得るというふうに考えているところでございます。

 したがって、我々としては、国の関与を断ち切るというためには、これは株式の完全処分を行っていただかなければいけない、しかしそれは、決して完全な売却だけではなくて、もう少し幅広く金融の技術を使って、処分信託であるとか、そのようなものを含めた完全な処分というものを念頭に置いているというところでございます。

    〔石破委員長代理退席、委員長着席〕

北川委員 ありがとうございます。

 ただやはり、こういう国際情勢、金融情勢の中で不安な点も多々あると思います。

 きょうは伊藤金融担当大臣もお越しでありますので、やっと答弁をいただくわけでありますけれども、その金融の部門におきまして、今、日本の国で、一円玉から一万円札をすべて集めて流通をしているのが六十数兆円であると私は聞いておりますけれども、今、三百四十兆の話をしておりますが、実際に金融不安、パニックが起こったときに、こういうお金も含めまして大変な状況が起きるのではないかなと思っております。特に、世界の金融市場におきましては、今、公平な競争条件に基づきまして、我が国においても日本版金融ビッグバンで市場原理に沿った金融市場を構築しているところでありますけれども、このグローバルスタンダードにおける国際金融市場へ移行を今していっている最中であります。

 その一方で、この郵貯と簡保合わせて三百四十兆円という膨大な公的金融が市場原理の枠外に置かれているわけであります。なおかつ、我が国の金融の中心に腰をでんと据えている。この巨額な官の資金を民へ流す、こういう中で、今のでんと腰を据えているのが我が国の金融市場をゆがめ、金融システムの改革をおくらせているとの指摘があるわけでありまして、それを改めるために、今回の郵政の民営化、その郵貯、簡保の民営化というものがあるわけであります。

 この点におきまして、民営化後、郵便貯金銀行そして郵便保険会社の業務を段階的に拡大していくとのことでありますけれども、昨年の臨時国会の法改正でも、今、公社で投資信託も扱えるようになっております。公社のもとでも段階的な業務拡大が可能になってきているんでありますけれども、公社形態の場合と民営化した場合、この業務拡大のイメージはどのように異なってくるのか、国民にとってどのように利便性が向上していくのか、この点を伊藤担当大臣の方からお答えいただければと思います。

伊藤国務大臣 お答えをさせていただきます。

 委員の今までの議論の中でも、この郵政の民営化、郵政の改革というものを、日本経済の発展のために、そして、多くの国民にとっての利益になるように改革を進めていかなければいけない、金融面から見ますと、この改革が日本の金融システムの効率性あるいは利便性を向上させていく、そうした観点から進めていくことが非常に重要であるというふうに私どもとして考えているところでございます。

 特に、今までも議論がございましたように、この郵政の民営化によって、郵政はそもそも四機能を持っているというふうに言われていますが、その機能というものを強化する、そして、市場における経営の自由度というものを拡大することを通じて良質で多様なサービスというものが提供される、そのことによって国民の利便性というものが向上していく、また、委員も再三御指摘になられておりましたけれども、公的部門に流れているその資金を民間部門に流して、そして国民の貯蓄というものを経済の活性化につなげていく、こうしたことを通じて国民の大きな利益をもたらすことが期待をされていると認識をいたしているところでございます。

 一方で、巨大な規模を有する郵貯、簡保が民営化されるに当たって、民業圧迫とならないか、あるいは、郵便貯金銀行等が無理なく市場に溶け込んで自立していくことができるのかどうか、こうした指摘もなされているところでございますが、民業圧迫にならないか、この点につきましては、例えば、巨大な規模を有する郵貯、簡保が、国の信用を背景に集めた資金によって貸付業務に急激に参入していくことになりますと、これは、民間金融機関との競争条件や、あるいは金融・資本市場への影響等が考えられます。

 したがって、今般の法律におきましては、郵便貯金銀行の業務範囲について、移行期当初は公社と同じ業務範囲とした上で、民営化委員会の意見を聴取の上、主務大臣の認可により、透明、公正なプロセスのもとで段階的に拡大していくこととなると承知をいたしております。

 また、郵便貯金銀行等が無理なく市場に溶け込み自立できるかどうかという点につきまして、民営化後の郵便貯金銀行は、リスク管理体制そして審査体制の整備など、一定のノウハウ、スキルを身につけることが必要であると考えておりますが、それを徐々に習得することで自立していくことが期待をされているわけであります。

 いずれにいたしましても、金融庁といたしましては、民営化後の郵便貯金銀行そして郵便保険会社が無理なく民間金融システムに溶け込んでいくよう注視をして、そして、この改革が、先ほどお話をさせていただいたように、日本の金融システム全体の効率性そして利用者の利便性を向上させることによって国民経済の発展に寄与するような改革になるよう、私どもとして適切に対応していきたいと考えております。

北川委員 ありがとうございます。

 次に、現在の郵貯、簡保の資金量が三百四十兆円と言われております。郵貯が二百十四兆円、簡保が百十九兆円ということで先ほど御答弁をいただきましたけれども、今後、この十年後の完全民営化時点での郵貯銀行そして郵便保険会社の資金量をどの程度に試算をしておられるのか、この点をお聞きしたいと思います。

竹内政府参考人 お答えいたします。

 私ども郵政民営化準備室が昨年十一月に作成いたしました骨格経営試算によりますと、二〇一六年度末の郵便貯金残高は約百四十兆円、保険の責任準備金残高が約七十兆円でございますので、合わせて二百十兆円の資金量に減少すると試算しているところでございます。

北川委員 ありがとうございます。

 この試算につきましては、現在は、郵便貯金も簡易保険も、国がバックにあるといいますか、国が背景にあるものですから安心して預けておられると思います。将来、この十年後において、これから民営化をしていくんだということになれば国民の意識も変わってくるわけでありまして、先ほど来から、みずからがその資金を運用するというこういう観点に立てば、その試算というものは、今と同じ形の推移なのか、そこは国民感情もありますから非常にわかりづらいと思いますけれども、今のままで推移をするというこういう試算なのか、それは民営化をした前提での試算なのか、その点をもう一度お聞かせを願えればと思います。

竹内政府参考人 今の試算でございますが、骨格経営試算は、当事者である公社の十分な協力の下に、直近の金利状況など、現在の公社の経営状況とか経済情勢に関する足元の動向につきまして妥当な前提を行いまして、専門家の意見も踏まえ、おっしゃいましたように、民営化した上での試算としてやったものでございます。

 もちろん、経済の状況等外的条件に関する前提を置いておりますので、今後の状況にもかかると思いますが、私どもとしては、十分信頼に足る試算であると認識しているところでございます。

北川委員 ありがとうございます。

 国民の意識というものは、これはそのときにならなければわからない点もありますけれども、しかし、先ほど来から申し上げていますように、国民への周知徹底等々を図っていかなければ、こういう試算というものもきちっとした形で出てこないという危惧を抱いておる次第であります。

 そして、この民営化に当たりましても、欧米も民営化をされた国もあります。その中でやはり、この郵貯は、郵便局ネットワークを通じまして貯金や送金等で小口、個人のための金融サービスを提供しておられるわけでありますけれども、こういう小口の方々に対して、今は、口座維持手数料の点において、郵貯、銀行等民間金融機関においてもその差というものはないとは思うんですが、その民間金融機関の口座維持手数料に対して、今後、郵貯が民営化をされれば、零細の方々に対する金融排除が起きるのではないか。こういう点に対して欧米でも施策を講じておられますけれども、我が国においても、今回の民営化に当たって、この点についての施策というものをどのような形で講じられるのか、お聞かせを願えればと思います。

竹内政府参考人 御指摘の口座維持手数料でございますが、確かに、我が国の金融機関におきましても口座維持手数料を取っているところはございます。ただ、大多数の民間銀行におきましては、口座維持手数料が無料の預金口座を提供しているのが実情でございます。

 民営化後におきまして、郵便貯金銀行がどのような手数料を設定するかというのは経営判断によるものでございますが、民間銀行の例を見ますと、郵政公社の手数料より低いものも含め、サービスの内容に応じたさまざまな手数料が設定されているものと承知しております。

 民営化後の郵便貯金銀行におきましても、もちろん、経営判断により、商品、サービスの多様化に応じさまざまな手数料が設定されることになりますが、郵便貯金の性格からして、民営化後によっても、利用者利便の向上が図られる、引き続きそれにふさわしいような手数料設定が行われるものと期待しているところでございます。

北川委員 ありがとうございます。

 全国一律、あまねくサービスということをうたっておられますし、これは全金融にも通じることでありますので、この点に対する配慮というものをぜひ政府としても考えていっていただきたいと思います。

 そして、もうあと時間の方もしばらくでありますが、私は、二月十五日に、竹中大臣にこの郵政民営化に関しまして二、三の質問をさせていただきました。若干その中の文章を読ませていただきますけれども、先ほど来から申し上げております、政府の小泉構造改革がとっている制度と国民の皆様方の意識の中に乖離がある、この点における問題点を指摘させていただきました。そして、民営化をするに当たっての国民の皆様方の信頼、これが重要であるということもお訴えをさせていただきました。そして、金融の混乱、この四月からペイオフも始まったわけでありますから、金融の混乱をぜひ起こさないようにしていただく制度設計が必要である。そして、移行期間におけるセーフティーネットが必要である。先ほど来から申し上げております、その移行期間における激変する国際金融情勢等々にも対応して、国民の皆様方に安心感を与えていかなければならないと私は思っております。

 改革をするにしても、やはり国民の皆様方に信頼をしていただく。安心感を与えた中で改革をしていかなければ社会の不安というものは増大をするわけでありますから、先ほど来からも、金融の不安というものがどういう影響が出るのか。日本も、金融恐慌、戦前にもそういう状況の中で第二次大戦へ突入をしていった、こういう経緯もあるわけであります。我が国の今置かれている財政状況は大変厳しいものがありますけれども、国民の皆様方の理解と協力が重要であろうと思っております。

 この郵政民営化議論、我々自民党の中でずっと一年以上行ってまいりました。そして、政府からの法案というものも出てまいりました。自民党の中でも議論をいたしながら、まあ、まとまったようなまとまっていないような形で来ておるのも事実であります。しかし、ここで一たん立ちどまって議論をするのがこの特別委員会であろうと思っております。一たん立ちどまって議論をする中で、これはいいんだということになれば、それは一歩未来へ向けて踏み出すべきでありましょうし、しかし、この中でいろいろな問題点が出てくれば、私は、もっと議論を重ねて、そして前へ進むということも重要ではないかなと思っております。

 こういう点も含めまして、ぜひこの特別委員会のさらなる議論を深めていただきますことを委員長を初め皆様方にお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。本日はまことにありがとうございました。

二階委員長 ありがとうございました。

 次回は、明三十一日火曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五十九分散会


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