衆議院

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第9号 平成17年6月7日(火曜日)

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平成十七年六月七日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 二階 俊博君

   理事 石破  茂君 理事 松岡 利勝君

   理事 柳澤 伯夫君 理事 山崎  拓君

   理事 中井  洽君 理事 原口 一博君

   理事 松野 頼久君 理事 桝屋 敬悟君

      井上 信治君    今村 雅弘君

      江藤  拓君    大野 松茂君

      大前 繁雄君    城内  実君

      北川 知克君    小泉 龍司君

      小杉  隆君    小西  理君

      左藤  章君    佐藤  勉君

      桜井 郁三君    柴山 昌彦君

      園田 博之君    馳   浩君

      早川 忠孝君    松本  純君

      宮路 和明君    宮下 一郎君

      山口 泰明君    五十嵐文彦君

      伊藤 忠治君    一川 保夫君

      岩國 哲人君    小沢 鋭仁君

      大出  彰君    川内 博史君

      古賀 一成君    高山 智司君

      中塚 一宏君    中根 康浩君

      中村 哲治君    西村智奈美君

      古本伸一郎君    馬淵 澄夫君

      山花 郁夫君    石井 啓一君

      谷口 隆義君    塩川 鉄也君

      横光 克彦君

    …………………………………

   総務大臣         麻生 太郎君

   法務大臣         南野知惠子君

   財務大臣         谷垣 禎一君

   国土交通大臣       北側 一雄君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     細田 博之君

   国務大臣

   (金融担当)       伊藤 達也君

   国務大臣

   (郵政民営化担当)    竹中 平蔵君

   内閣府副大臣       七条  明君

   内閣府副大臣       西川 公也君

   内閣府大臣政務官     木村  勉君

   総務大臣政務官      松本  純君

   政府参考人

   (内閣官房郵政民営化準備室長)          渡辺 好明君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  中城 吉郎君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  細見  真君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  伊東 敏朗君

   政府参考人

   (総務省郵政行政局長)  鈴木 康雄君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           舟木  隆君

   参考人

   (千葉商科大学学長)   加藤  寛君

   参考人

   (早稲田大学社会科学部教授)           田村 正勝君

   参考人

   (日本総合研究所主席研究員)           翁  百合君

   参考人

   (シンクタンク山崎養世事務所代表)

   (前ゴールドマン・サックス投信株式会社社長)   山崎 養世君

   参考人

   (日本郵政公社理事)   山下  泉君

   参考人

   (日本郵政公社総裁)   生田 正治君

   衆議院調査局郵政民営化に関する特別調査室長    石田 俊彦君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月七日

 辞任         補欠選任

  大野 松茂君     早川 忠孝君

  園田 博之君     佐藤  勉君

  馳   浩君     宮路 和明君

  小沢 鋭仁君     高山 智司君

同日

 辞任         補欠選任

  佐藤  勉君     園田 博之君

  早川 忠孝君     大野 松茂君

  宮路 和明君     馳   浩君

  高山 智司君     中根 康浩君

同日

 辞任         補欠選任

  中根 康浩君     小沢 鋭仁君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 郵政民営化法案(内閣提出第八四号)

 日本郵政株式会社法案(内閣提出第八五号)

 郵便事業株式会社法案(内閣提出第八六号)

 郵便局株式会社法案(内閣提出第八七号)

 独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案(内閣提出第八八号)

 郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第八九号)


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     ――――◇―――――

二階委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、郵政民営化法案、日本郵政株式会社法案、郵便事業株式会社法案、郵便局株式会社法案、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案及び郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の各案を一括して議題といたします。

 本日は、各案審査のため、参考人として、千葉商科大学学長加藤寛君、早稲田大学社会科学部教授田村正勝君、日本総合研究所主席研究員翁百合君、シンクタンク山崎養世事務所代表・前ゴールドマン・サックス投信株式会社社長山崎養世君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、各案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、加藤参考人、田村参考人、翁参考人、山崎参考人の順で、それぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため参考人の方々に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 それでは、まず加藤参考人にお願いいたします。

加藤参考人 加藤でございます。

 十五分で申し上げなければなりませんので、私の言うことが十分にお伝えできないと申しわけございませんので、お手元に一枚の紙を用意してございます。その順序に従って申し上げたいと思っております。

 まず、私が民営化ということをなぜ考えるかと申しますと、それは、Aというところでまず書いてございますが、民営というのは自由主義経済の基本であると考えております。したがって、できる限り、なるべく民間でできることは民間で行うということが基本でございます。したがって、このごろ世界では軍隊までも外国人に頼るということが起こっておりますけれども、そういう意味では、この民営というものの範囲をできる限り広めていこうという方向が強く流れとしてあるかと思います。

 そこで、さらにその民間というものが強くなってまいりますと、今度は、一体政府は何をするか、あるいは公は何をするかということを考えなきゃなりません。その場合、公というものは常に民によって支えられております。したがって、民間から、こういうような考え方が必要である、このことについては公の力が要るというような場合には、そこで公というものの存在が出てくるのでございまして、公があって民が成り立つわけではございません。

 その次に、官というものが、官僚というものが出てまいりますと、どうしてもだんだんと官に権力の集中が行われます。そのような中央集権的な方向が普通の国では起こってくるわけでございまして、この中央集権で官の権力集中が起こりますと、レントシーキングが発生いたします。レントシーキングというのは、簡単に申しますと、入札などに見られますように、いろいろと政治的な手段を使って、そこで自分の利益を達成するという民間の動きが起こってまいります。こういう意味でレントシーキングというものが出てまいりますので、これを打破いたしませんと、社会全体の福祉を増大することができないということでございます。

 このような基本的な立場に立っておりますので、この立場からまいりまして、なるべく民に任すことが望ましいということで、官から民へ、中央から地方へという転換をしていかなければなりません。

 このような方向をやっていくために、現在、郵政の民営化ということが行われておりますが、その民営化ということが行われるに当たりまして、やはり現在の郵政公社がどういうような限界を持っているかということを明確にしておかなければなりません。公社のままで続けることが可能であるという考え方がないわけではございませんけれども、私の考えるところ、それは無理であろうと思っています。

 その理由について若干申し上げておきますが、公社というものがそこでなかなか限界を持って難しいということを申し上げたのは、それは、公社の代表的な姿が御承知のようにイギリスのパブリックコーポレーションでございまして、これがイギリスでは公社という形で行われてまいりました。しかし、この公社は次第次第に限界を発揮させてまいります。

 その理由の第一は、当事者能力の問題でございます。

 民営になるということは、当事者が能力を発揮して、その当事者のいろいろな判断がそこで行われなければいけないのでございますが、そういうことを行ってまいりますためには、当事者能力が、だれかに指図される、あるいは支配されるということがあってはならないわけでありまして、ここを、なかなか公社は限界を突破することができません。こういうことをやろうと思ってもなかなかできないということが起こるわけでございます。現在、郵政公社もやっと国際貨物便に参入することを考えたわけでございますけれども、しかし、本来ならばそれは、私どもからすれば、当事者能力として公社が早く考えていくべきことであったという気がいたします。

 さらにまた、財政自立の問題でございます。

 財政が本当の意味で自立できるかということがまた難しいのでございまして、現実には、その財政自立というものがいろいろな形で補われる、あるいは補足される、あるいは補助されるということが起こるわけでございまして、その財政自立をきちんとしないとどうにもなりません。御承知のように、国鉄を含めた三公社ができましたときには財政自立ということを前提にしたのでございますけれども、実際にはそれはほとんど不可能でありました。そこで、財政自立ができないという問題にぶつかってまいります。

 三番目に、非営利性の問題でございます。

 当然、公社は営利的なこととは違って非営利性を考えなきゃなりませんが、そこにどうすれば効率を図ることができるか、そういう効率化の問題を考えていかなければなりません。そこで、非営利性と効率との両立をどうしていくかということが一つの条件として必要になってまいります。

 四番目には、非公務員化でございます。

 その働いている方々が公務員であるということを存在させている限りは、結果的にその公社はいろいろな意味で身分保障の上で要求をすることになりますので、これが結果的には、国鉄も同じでございましたけれども、御承知のように、公務員であるということの前提に立ってスト権を要求するということが行われる。それは経営形態を変えなければ不可能であるということを私たちは考えていたのでございますけれども、それがなされないままに、公務員というものの存在をそのまま強調して、これは身分保障と同じでございまして、身分保障が行われておりますと、要求だけは強くなって、その身分保障の中でどういうふうに効率化を図るかということがなかなかできないということにぶつかってまいります。

 Cに申し上げたいのは、構造改革の本丸は郵政でございます。

 よく、重要な問題がほかにたくさんあるじゃないかということを言うのでございますけれども、現在の日本がこのような状況に入ってきておりますのは、それは明治以来、伝統的に間接金融が基本になっております。つまり、間接金融によって金融機関を通じてお金が回るという形になるものですから、したがって、その金融機関が十分な能力を発揮しない場合には、当然そこに一つの金融の限界が起こってまいります。

 この間接金融を直接金融に変えなければいけないということが一つの言葉として言われているのでございますけれども、直接金融、つまり株式を通じて資金を調達する、こういう方向がなかなか生まれてまいりません。結果的には、そこで最も安全な方法として、土地の価格が上昇していくならば、その土地の価格を前提にした上でお金の融資が行われるということになってまいりまして、それは、基本的には、日本の経済がすべてどこかに頼ればいいという形を生んでまいります。

 このような間接金融がお互いにもたれ合いの状況を続けていくということは大変好ましくないことでございまして、あらゆるところにこれがあらわれてまいります。

 私の言葉で言うのではまことに申しわけないので、あえて福沢諭吉の言葉を使わせていただきますが、間接金融というやり方をすることによって、結局、国民は官に頼る、官に頼る者は官を恐れる、官を恐れる者は官にへつらうということが起こってまいりまして、そこに独立の心をつくることができないという一つの大きな欠陥が生じてまいります。こういう意味で、間接金融から直接金融へ変わっていくということで日本でも四〇一kなどが導入されたのでございますけれども、現実にはなかなかその四〇一kで国民が自立する方向には進んでいないという状況にございます。

 第二番目によく言われますのは、重要なのは財投であって、その財投のお金が特殊法人に回っている。その特殊法人に回っているところを抑えることが基本なのであるから、したがって、特殊法人と財投、財政との関係を断ち切ればこれでいいということで、御承知のように二〇〇一年から財投改革が行われ、七年後にはこれが断ち切られることになっております。

 しかし実際には、一つの特殊法人を手がけて改革をしていこうといたしますと、これは大変に難しいことでございまして、私自身が土光臨調でそういう改革をしようとして幾つか取り上げたことがございますけれども、やはり出城でございますから、一つの大きな本丸から出城で行われておりますものを改革するということは大変難しいのでございます。それを何とか改革しようとしてやろうといたしますと、今度は本丸から応援軍が参りまして、その応援団のために、結局は背後に挟まれ、両面から攻められて、敗退することが多いのでございます。

 したがって、私は、特殊法人の改革ができるなどということを考えるのは、現実にやらなかった場合の、現実にそれを実行してみなかった場合の一つの限界でございまして、これはなかなか難しいことだと言わなければなりません。出城の完全改革ということは限界があるということを私は思っております。

 したがって、道路公団の改革にいたしましても、あるいはそのほか最近のいろいろな年金改革にいたしましても、新聞の批評を見る限り、非常にそれは中途半端であるとか、あるいはこれでいいのかというようなことが盛んに出ますけれども、私は、改革というものは、やろうとすれば必ずそこに大きな障害が起こりまして、そこにまた戦略の違いも出てまいりますので、そのためにその出城を陥落させることは非常に難しいという状況だと思っています。

 やはり出城については、これを例えば徳川家康が攻めるときに、御承知のように、伊達藩の侵入を防ごうという中立的な立場に置いておいて、そして大阪城を攻めます。これと同じように、私たちは、本丸を攻めるということをやるときには、やはりその敵に回るところを中立化していかなければなりません。こういうことが出城の改革の限界でございまして、私は、それを少しずつやりながらやっていくしかないだろうというふうに思っております。

 第三番目には、これはよく言われることでございますけれども、国民の金融資産というものをせきとめてはいけない。今、日本の国民金融資産は約四分の一が政府の手に集中して、これが中央集権的に使われていくのでございますが、これを直していくためには、国民の金融をどこかでせきとめてはいけません。国民がそのお金を、つまり私が今四分の一と申し上げましたが、四分の三のお金でしか国民は経済活動をすることができません。これでは本当の意味の金融活性化をすることはできないということになります。

 最後でございますけれども、なぜ今やらなきゃいけないかということについて、私が申し上げたいことは、第一は、現在の個々の郵便局は単式簿記でございまして、複式簿記をやっておりません。複式簿記をやっていないということは、国際化には対応できません。国際的に今、国際会計基準というものがやがてできる。ある時期を目標としているとすれば二〇〇七年からでございますけれども、別にそこに限ってそれが行われているのではございませんけれども、全体として、世界は国際会計基準をつくる方向へ向かって進んでおります。これに対して、複式簿記でない個々の郵便局は対応することができません。結果的には、それはロビンソン・クルーソーのように孤島で郵便局を開いているというだけにすぎないのでございまして、現実に国際金融市場でそれが力を発揮することはできないということになってしまっております。

 さらに、二番目でございますが、構造改革の流れがございます。これについては、もちろん構造改革よりも景気回復が先だという意見がないわけではございません。しかし、現在、私が見ている限りにおいては、やはり構造改革をやることによって、例えば、御承知のように、金融機関の不良債権を大幅に減らすことによって、それが初めて構造改革の流れをつくったわけでございますね。こういうような変化をやっているときに、私たちは、そこに全然構造改革とは関係ないような形での存在を認めるわけにはいかないわけでございます。

 そしてさらに、その民営化が行われてまいりますと、地方活性化へ向かってそのお金が本当に流れるかという批判がもちろんございます。しかしそれは、実は、今の状況の中でやろうといたしますと、やはり地方へお金がすぐ流れるわけではございません。しかし、大切なことは、地方金融がございますので、その地方金融とジョイントベンチャーをやるとか、あるいはジョイントで行うとか、あるいはシンジケートローンなどをつくることによってそれを活性化することは可能でございまして、中央に集まったお金は間違っておりまして、地方で集めたお金は地方で使え、これが私は原則であろうと思っています。その地方のお金を地方で使えという原則に立つ限り、地方活性化をすることができるだろう、こういうふうに私は考えているわけでございます。

 今、大体時間になりましたので、終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)

二階委員長 ありがとうございました。

 次に、田村参考人にお願いいたします。

田村参考人 おはようございます。よろしくお願いいたします。

 小泉経済政策は、基本的に、安全弁なしの市場主義の色彩が非常に強いために、弱肉強食、所得格差が開きまして、生活困窮者が続出しておりますね。

 例えば、この四年間で一世帯平均二百万円の預貯金を取り崩して、一銭も預貯金がない、そういう世帯が既に二〇%を超えました。これは昭和三十年代の後半の水準まで落ち込んでいるわけですね。あるいは、労働の流動化政策によりまして非正社員がどんどんふえまして、全雇用者の三五%が既に非正社員、こういう状況になっておりますね。片や、世界のミリオネアの一七%、百三十万人が日本人だ、こういう状況です。

 こういったことが背景にありまして、本当に残念なことですが、年間三万人を超える自殺者、これがどんどん悪化しております。ついに〇三年には最悪の三万四千四百二十七名、もちろん昨年も三万人を超えております。GDPを初め、あるいは株価にしても、賃金指数にしましても、小売指数にしましても、小泉内閣になって急激に下落しましたね。そして現在、まだ小泉内閣の成立以前の水準に戻っておりません。

 このような経済の低迷は一体どこに原因があるか。最大の原因は、このような弱肉強食、大衆の困窮化にあるわけですが、実は、この民営化はその方向をさらにプッシュするだろう、私はこんなふうに思います。

 まず第一に、民営化しなくちゃいけない根拠に挙げられたものが、これから四つお話ししますが、いずれも根拠がないことをお話しします。

 まず第一に、特殊法人の改革のために、そこに郵貯、簡保の金が流れないようにする、こういうことを小泉首相はおっしゃいましたが、そのいわゆる預託金制度は既に、二〇〇一年の三月、小泉内閣ができる前に終わっているわけですね。だから、根拠がございません。

 二番目に、業績が悪い、将来不安だ、こう言います。しかし、どうでしょうか。一銭も税金をつぎ込むことなく職員の給与からすべてを賄い、しかも、この五年間で一兆円の国庫納付金を納めております。これに対して、全金融機関が十年間で納めた法人税が約一兆円ですね。やはりこれも根拠がないと言わざるを得ないと思います。

 さらに、三事業を切り離してリスクを遮断する、こういうことを言うんですが、これは逆ですね。三事業をばらばらにしたら、相乗効果がなくなってリスクは大きくなります。つまり、現在は相乗効果があるために、例えば、銀行の経費率は一%を超えていますが、郵貯は〇・四三%で二倍もいいわけですね。しかも、これはどんぶり勘定じゃありません。それぞれみんな独立会計をしているわけですから、リスク遮断、そういうことも根拠がない、こんなふうに思われます。

 四番目に、民業圧迫ということを言っておりましたが、実は今、御案内のように、金融機関は金が集まっても貸付先がなくて困っているわけですね。例えば、大手四グループは二百五十兆円の預金がございます。しかし、民間貸し付けは二百兆円ですね。そのように、この間、八年間続けて民間貸し付けが減っているわけです。したがって、大手グループは、御案内のように、消費者金融にお金を出して一緒に経営している。その他、もちろん全体では百二十兆円も国債も買っているわけです。だから、民業圧迫というのも余り根拠のあることでは、余りというよりは、ほとんどないと思います。

 したがって、これがもし民営化されたらどういう問題が起きてくるかについてお話ししたいと思います。

 まず、金融弱者が生まれるという点と、それから、やはり生活が非常に不安になる。この点、三つの場合を考えてお話ししたいと思います。

 まず、郵貯と郵便局を切り離した場合には、郵便局数が減ります、どんなにしても減ります。そこで、一つも金融機関がないような離島や田舎が出てきまして、そこでは生活が非常に苦しくなって、過疎地になる。こういう意味で、第一の金融弱者ですね。

 それから第二番目の金融弱者というのは、たとえ郵便局、金融機関があっても、これから民営化された場合には非常に過当競争になりますから、当然に小口預金者には今まで以上に不利な条件でしかこれが利用できないということになります。既にイギリスでは全世帯の二〇%が預金口座さえ開かせてもらえていない、あるいはアメリカでは低所得者の三八%が口座さえ開かせてもらえていない、こういう調査もございます。

 こういう二点において金融弱者が生まれるということですが、それに対してこの法案は、いや、地域・社会貢献基金によって過疎地に関しては郵便局を維持するんだ、こうおっしゃっていますが、ドイツの例は明らかですね。二万九千あったけれども、事業をばらばらにしたために一万二千まで減りました。今、またこれを一緒にして、ようやく何とか一万二千は維持しよう、こうなっているわけですね。ニュージーランドの例でも同じですね。同じ失敗をする必要は私はないだろうと思います。

 具体的に言いますと、法案では、一兆円でも二兆円でもいいんですが、その二兆円の運用利益は三百六十億円ですね。これでネット網を維持するなんてとてもできません。例えばイギリスは八千五百の郵便局を維持するために八百五十五億円つぎ込んでいるんですね。それに対して日本は、離島とかその他半島とか山村地域、あるいは都心でも過疎地がございますが、そういうものを全部合わせると、大体一万の郵便局、一万以上あるんですね。本来それは維持すべきものなんです。そうすると、三百六十億ではとてもじゃないがという話なんですね。これは維持できません。

 さらに、たとえ郵便局窓口に一兆円、二兆円入れたとしても、民営化された郵貯、簡保は窓口に業務を委託するかどうかは自由なんですね。当然、経費のかげんから委託しない地域がたくさん出てまいります。そこで、郵便局があっても、郵貯、簡保の仕事はしないという郵便局が当然出てきますし、最終的には郵便局がなくなる、これは明らかじゃないだろうかと思いますね。そんな点で、ここでも金融弱者が生まれる、こういうことです。

 それから第二に、シナジー効果によってせっかく効率よくしているのに、これをばらばらにしたら効率が失われる。そこで、法案は何と言っているかというと、いや、では持ち株会社が一たん郵貯、簡保を、全部株を売って民営化して、その後もう一度買い戻して一体化する経営もできるんですよ、こういうことを言っているんですね。だけれども、何でそんなことをするんでしょうか。手間暇、金がかかる。大体、だったら売らなければいいんですよね、おかしいです。

 問題は、一たん売った以上は、では幾らまで買い戻せるかというと、二五%まで、独禁法関係を調べると二五%までしか買い戻せない。そうすると、七五%は市場にあるんですね。これは当然、敵対的買収に遭う可能性は十分あります。外資もやるでしょう。もちろん外資じゃない場合もあります。もし外資が乗っ取った場合には、先ほど申しました、イギリスとアメリカと全く同じことが日本でも起きますし、もし外資が乗っ取らなくても、郵貯、簡保が完全に民営化されたら、過当競争で、当然に小口預金者は構っていられない、こういう事態になるわけですね。そこをきちんと考えなければならないだろう、こんなふうに思います。

 さらにもう一つ、今度は地域の問題ですね。

 郵便局はいろいろと地域の安定機能、安心機能を果たしているわけです。ひまわりサービスを初め、さらには高齢者の状況報告、あるいは防犯、あるいは産廃の不法投棄等々、こういうものがなくなってしまいますね。基金を入れてそれをやらせるといっても、それは、お金を払ってその範囲内でということで、自治体がお金をどのくらい払うかによって決まるわけですね。今の安心機能とは全然質の違ったものになるわけです。そういう意味で、郵便局が今日果たしている地域の安心機能がなくなる、これも非常に大きな問題だろうと思います。

 さてそこで、さらに幾つか、民営化された場合にどういう問題が起きるか。今度は、まず民業圧迫という問題が起きます。次には、低所得者層ほど苦しくなるということです。それからもう一つは、財政基盤ががたがたになる。このことについてお話ししようと思います。

 まず第一に、民営化によって、流通業もコンビニも金融もすべてが大変な過当競争になりますね。本来の自由競争というのは、オーダリーコンペティションであります。秩序ある競争、これが本来の自由競争ですね。ところが、アメリカと日本は超過当競争でこれがさらに進みますね。

 そこで、どうなるかというと、まず金融機関で申しますと、この過当競争の中で中小の金融機関は経営ができなくなります。かなりつぶれるでしょうね。それから逆に、大手の金融機関はどうなるかというと、郵貯、簡保の資金がそちらへ流れたとします。そうすると、今でさえ貸付先がなくて困っている大手金融機関はどうするかというと、結局、それはもちろん、株式を初め、投資信託、さらには消費者金融といったハイリスク・ハイリターンのところへ金を流して運用する、これ以外にないわけです。当然、郵貯、簡保もそうなります。

 しかし、国民はそのようなことを望んでいるでしょうか。国民はやはり安定した金融機関をまず望んでいます。郵貯が大きくなったというのは、そこがみそですね、だから大きくなったんです。

 それから、先ほど申しましたように、非正社員の三五%がハイリスク・ハイリターンどころじゃないんですよ。だから、正しくは、ハイリスク・ハイリターンを求める国民と、そうではない安定の金融を求める国民と、はっきり国民に選択させるべきです。それならば、安定金融である郵貯を残すのは当然だろう、こんなふうに思います。

 それから最後に、財政問題なんですが、今でも借換債も含めると百三十八兆円、国債償還が難しいですよね。それが、二〇〇八年になると百七十五兆円の国債償還ということになりますが、これは、郵貯、簡保がなくて一体できるんでしょうか。非常に大きな問題ですね。

 それから、仮に民営化された場合に、現在郵貯、簡保が持っている国債を売った場合には、当然国債価格が下落します。金利が一%はね上がる国債価格の下落だけで、予算の国債費は毎年毎年一・二兆円増加します。それから、大手もたくさん国債を買っていますから、大手行は二・二兆円の損失が出ます。これは全業務利益の半分に匹敵します。地方銀行は一・六兆円の損失で、これは全業務利益に匹敵するわけですね。そのようにして、がたがたになる。

 そこで、今度の法案では、いや株は売らせないんだと、いろいろな規制をしますね。旧契約部分は国債で運用しなさいよ、こういうことを言っている。これは一体民営化でしょうか。これはおかしなことですね。継ぎはぎだらけな、非常におかしな、パッチワーク的な企業、グロテスクなものができるわけで、ただできるだけじゃなくて、そのしわが国民に寄せられるわけです。だから、地方のすべての都道府県議会はこれに反対決議を出しておりますし、それから、市町村レベルでは九〇%以上がこれには反対をしているわけでございますね。私はそのように思います。

 最後に、一体どうしたらいいか。公社のまま改革するのがベスト。ポイントは二つだと思います。

 まず第一に、その資金が地域社会の充実など本当に公共のために使われるような方向に持っていくこと。そのためにはどうしたらいいかというと、経営者協議会、預金者とそれから住民代表も入れたガラス張りの経営者協議会を公社全体に置くと同時に、もう一つ、十三の支店にそういうようなものを置いて、そして資金の運用についてガラス張りに話し合って使っていく、こういうことが第一点。

 第二点は、やはりリスクの分散を図るということは重要です。では、どうしたらいいか。これは、例えば地方債と国債は一体、運用資産のうちの何%までそこに使ったらいいかという上限のパーセントを決めること、これをルール規制すること。そして、あと自主運用の部分は、例えば、世界に五十社ぐらいあるでしょう、五十社ぐらい選んで、この運用機関に運用してもらう。そして、例えば三年に一回見直しして、上位三分の一を残して三分の二はシャッフルする、こういう形で十分にリスクの分散は図れる。

 このことによって、公共目的に使用するということと、それからリスクの分散、双方は十分に可能になります。民営化する必要は全くないだろうと思います。

 以上です。(拍手)

二階委員長 ありがとうございました。

 次に、翁参考人にお願いいたします。

翁参考人 日本総合研究所の翁でございます。

 今回、国会におきまして、日本の財政、金融、経済のさまざまな制度と密接に関連を持ちます郵政制度の将来像について、ぜひ建設的な御議論がなされることを期待しております。

 私は、今回、法案をつくる前の段階から、郵政民営化準備室などでさまざまな意見を申し上げる機会がありまして、それらの多くは現在の法案に反映されておりますけれども、中には反映されていないものもかなりございます。しかし、長く国民に親しまれてきた郵便局を市場経済の中にゆがみを与えない存在として生かしていくためには、郵政の改革、民営化は極めて重要な課題であると思います。

 したがって、今回は、これを前に進め、今後起こり得るさまざまな問題点については、さまざまな段階で議論を尽くしながら、運用面などで工夫することにより改革を成功させることが必要であると考えております。そうした立場から、本日は意見を述べさせていただきます。

 第一に、何のために郵政民営化が必要と考えているかという点について申し上げたいと思います。第二に、その中で、なぜ郵政は公社の枠内でなくて民営化が必要と考えるか。第三に、郵政民営化について今後御議論を深めていただく際、ぜひ御検討、御留意いただきたい点、この三点について順に述べさせていただきます。

 まず第一に、何のための郵政民営化なのかという点でございます。

 これは、私は、単に郵政公社の経営のあり方、または行政改革という視点だけでなく、日本経済制度全体の見直しの中で、より広く国民経済的な観点から考える必要があると思います。

 二〇〇五年の現在、我が国は急激な少子高齢化を迎え、二〇〇六年度以降、人口減少社会に突入するという、まさに今大きな変化の時期にあると思っております。日本の経済社会は、もはや高度成長期のような青年期ではなくて、今後の何十年かは、今までとは全く様相の異なる超高齢化社会を乗り切っていかなければならないと思っております。

 そうした中で重要なことは、まださまざまな点において二十世紀の高度成長期に適した枠組みであった日本の仕組みを、人口が減少し超高齢化社会を迎える新しい社会経済環境にふさわしいものに手直しすべく、全体として総点検することだと思っております。かつては非常にうまくいった制度につきましても、来るべき時代に合わせて見直していくということも必要です。そして、経済全体として活力を維持し、成長を続けながら、若年世代や将来世代に希望の持てる社会を手渡していくことが我々の世代の責任ではないかと思っております。

 こうした制度の見直しは日本の社会経済全般に幅広く及ぶと思いますが、経済の観点から特に大事なものは三つあると思っております。

 第一は、財政を健全化して、将来世代に負担を先送りしないということです。

 現在、国債の対名目GDP比率は戦前にも経験したことのないような非常に高い水準になっていますけれども、これが発散しないように持続可能な水準にとどめるということが今後不可欠だと思っております。そのためには、単に財政収支を黒字化するということだけでなく、経済成長を持続するということも大事ですし、また同時に、国債や財投債、郵政公社や特殊法人などが抱えている政府保証債務など、政府債務全体の大きさの拡大を極力抑えて、国民のコストが大きくならないように、統合的にリスクを把握し、厳格な管理体制をつくり上げることが必要だと思っております。

 第二は、国の全体の生産性を上げていくということです。

 これからは労働人口が大きく減少します。生産要素は人、物、金といいますけれども、人はこれから減少していくというわけでございますから、一人当たりの労働生産性を向上させると同時に、新しいイノベーション、技術革新を起こしていくことが重要だと思っております。民間でも必死の努力が続けられています。二十八万人の従業員の方を抱える郵政公社も今まで御努力されているわけですが、今後、電子メールの普及などによって経営環境は厳しさを増すことが見込まれています。

 そうした中で、一方で、公社形態のままで経営努力をすれば民間企業を圧迫してしまうリスクがある、他方で、公社として厳格な経営上の制約を維持すればじり貧になる可能性も高いという非常に難しい状況にあると思っております。

 その意味では、徐々に市場や国民生活から退場するのではなくて、前向きな事業展開を展望するという限りにおいて、長期的には公社から民間となるということによって、経営資源を有効に活用し、そして生産性を上げ、国民一人一人のニーズにこたえていくことが国民経済に貢献していく道ではないかというように思います。

 第三は、金融の活性化でございます。

 ようやく十年以上かけまして日本の不良債権問題は収束をしてきておりますけれども、日本の金融機関の収益力の強化という大きな課題には、まだ多くの金融機関は答えを出し切れていません。また、資本市場にもさまざまな課題があると思います。これから成長していこうという企業が欲しいと考えるいわゆるエクイティー性の資金、リスクの大きい資金の調達に家計の資金が必ずしも振り向けられていないのが現実でございます。

 経済の持続的な成長には、これを補完する健全な金融が不可欠だと思います。このため、民間金融機関自身が努力して、また同時に市場の改革を進めていくということも必要であると思いますが、同時に、千四百兆円の家計金融資産のうち三百兆円余もの資金を政府保証を付して吸収するという郵政の、世界最大の機関投資家として国が運用する仕組み、これは世界でも例を見ない巨大なものでございますけれども、これをやはり見直すということによって、金融を活性化し、資金の流れをゆがめない環境をつくることが重要だと思っております。

 このように、財政を健全化し、金融を活性化し、経済全体を活性化するということは、日本の将来のために必要不可欠だというように思いますが、大切なことは、これらを整合的に進めていくということだと思っております。

 そう考えますと、それらに非常に密接な関連を持つ郵政の制度改革というのも不可欠なわけでございまして、私がなぜ郵政改革を今やらなくてはならないかと考えるかといえば、公社の経営問題という次元を超えて、やはり日本の将来世代に負の遺産を残さないために必要だからということになるかと思っております。

 次に、郵政の制度改革の際、なぜ公社形態のままでは限界があり、民営化が望ましいと考えているかということを申し上げます。この点については先ほど少し触れましたが、もう少し敷衍して申し上げます。

 私は、二つの大きなポイントがあると思っております。

 第一は、先ほども触れましたが、政府保証の存在でございます。政府保証が付与され続けるのであれば、国が最終的に保証してくれると国民はだれでも思うと思います。仮に、明示的な政府保証はつけないと決めたとしても、公社であり続ければ、負債に暗黙の政府保証があるのではないかと国民は当然に判断すると思います。これは、現にアメリカの公的住宅金融機関で大きな問題になっている点でございます。負債に暗黙の政府保証があると受けとめられるような存在である限り、どうしても市場の競争条件をゆがめてしまうのではないかと思います。

 第二は、郵政事業の事業性の高さでございます。

 一九九七年の橋本内閣で閣議決定されている、行政改革委員会官民活動分担小委員会での行政関与に関する基準というのがございまして、ここで、公的事業を民営化する必要がある基準というのを二つ掲げております。

 一つは、事業性があること。つまり、サービスの受益者が特定できて、当該受益者に負担を求めることが可能。二つ目は、可測性。これは、行政が関与する際の目標が事前に定義できて、その成果の有効な評価が可能で、政府と企業が契約を結べるというものがございます。これらがともに満たされる場合は、事業形態は民営として、行政関与は規制措置で行う必要があるというふうにされています。

 郵政は、民営化の基本的な条件を満たしていると思います。郵便事業も金融業も事業性が高く、公社が民間になることにより、さまざまな制約がとれ、新しい事業展開が可能になり、生産性を上げることが期待できます。もちろん、郵便事業の場合は、過疎地での郵便サービスアクセスの確保といった行政が関与しなければならない課題もありますが、そうした政策目標は事前に定義し、事後的にも評価することが可能です。したがって、民間事業体が事業をし、事後的に行政当局がその課題をクリアしているか監督するということができると思います。

 ドイツ・ポストなどの動きと対比してみましても、特に国際的な展開などは郵便事業は完全に世界の動きと比べて出おくれている感じが否めません。そういった観点で、事業を再生していくためにも民営化が急がれるのではないかと思っております。

 三番目の論点として、今後の本委員会での御議論の際にぜひ御検討、御留意いただきたい点を三つほど申し上げたいと思います。

 第一は、リスク遮断という点でございます。

 どのような国においても商業と金融というのは分離されておりますが、これは、商業ビジネスのリスクが金融分野に波及することによって金融システム自体が危機に陥らないようにすること、あるいは金融システムを守るために、セーフティーネットといいますけれども、それが余り広がり過ぎて大きな国民経済的コストにつながらないようにすること、こういった重要性が認識されているからではないかと思います。

 どのような国にも、主要株主規制や、銀行による株式保有に関しては一定の制限がございます。そうした意味でも、顧客にとって金融サービスと郵便が窓口でクロスセルされるメリットというのはずっと確保していく必要があると思いますが、それぞれの事業リスクはきちんと遮断されて、むしろそれぞれの事業が、互いに依存し合うのではなくて、自立を目指すことによって収益性の確保と健全性の確保の両立を目指す方向で御議論をお願いしたいと思っております。

 第二は、特に移行期における民間企業との競争条件の公平性の担保でございます。

 長期的には、民営化会社は公的な存在というくびきを離れて、同業他社と同じ土俵で競争する存在になるべきだと思います。しかし、移行期は、政府の優遇があり、さらに政府出資による暗黙の政府保証の状況が続いているなど、民間企業と比較すると完全なイコールフッティングが確保されません。

 他方、過疎地への対応ということでさまざまな配慮が必要と思いますが、こうした公共性への配慮というのは、郵便局だけでなく、過疎地に荷物を運ぶ宅配業者も、また、過疎地で営業する信用金庫や農協などほかの金融機関も同じ課題を抱えていると思います。

 法案では、民営化委員会が新規業務に関して意見を述べるなどの工夫がされているわけですが、民営化会社が民業を圧迫せず、しかも事業として自立していくというのは簡単ではないかもしれません。しかし、公共性を郵便局だけに担わせるということでなく、幅広い視野からどういった政策で対応していけばよいかということを考えることによって、競争条件の公平性と事業の自立というナローパスを実現可能にしていただきたいというように思っております。

 最後に、第三ですが、これは市場規律の働くようなマーケットの整備ということでございます。

 現在、金融サービス業というのは、情報技術革新によって大きくさま変わりしていると思います。一般論として、預金量が大きければその分必ずもうかるという時代は既に過去のものになっていますし、それよりも、金融サービス業は、顧客の代理人として情報技術を駆使してどのような運用をするか、顧客ニーズに合ったどのようなサービスを提供するかということで、その収益力が決まってくると思います。

 また、今回の改革は、金融商品のデリバリー、つまり販売と金融商品の製造という、もともと異なるが一緒に提供されていた二つの機能を分けて提供するというものでございまして、ほかの民間金融機関やさまざまな業種との思いがけない提携などもあり得ると思います。むしろ、今回の郵政民営化を今後の民間金融システム全体の活性化に役立てていけるよう、議論をお願いしたいと思います。

 そうした新会社の戦略やリスク管理のあり方、財務状況などが市場からモニターでき、郵政の新しい会社の経営ガバナンスがきちんと行き届くような市場環境の整備を一層行っていただき、新しい企業が競争的に、健全な形で市場の一プレーヤーとして自立するようにしていただきたいと思っております。

 以上で私の意見陳述を終わらせていただきます。(拍手)

二階委員長 ありがとうございました。

 次に、山崎参考人にお願いいたします。

山崎参考人 おはようございます。どうもありがとうございます。

 本日は郵政民営化につきましてお話をさせていただくんですが、ちょっとこちらをごらんいただきたいんです。一九九九年に当時の小泉議員が松沢議員と書かれました「郵政民営化論」。郵政民営化というものについての国民の負託ということについて、こういった本で書かれていること、それをまず検証するということが私は非常に重要なことなのではないか。

 この本の序文でございますが、私はきょう、二種類資料を準備しております。こちらの資料と、それからこちらも参考資料でございますので、こちらの、横書きのA4の方の資料、こちらには後の方にさらに二ページほどつけておりまして、こちらの括弧書きの中を読ませていただきます。

 「郵政三事業の民営化は、」「各特殊法人に投融資を行う国営金融機関・財政投融資制度の抜本的改革にもつながるのだ。」こう書いております。国営金融機関、財投制度の抜本改革が目的なり。次のページをお繰りいただきますと、「この改革は、郵政省のみならず、大蔵省をはじめ全省庁がいやがる改革であろう。」

 果たして、今回の民営化案がこの一番のマニフェストに沿ったものであるのかということが、国民の負託にこたえているのかという点につきまして非常に重要な問題かと思います。

 それでは、まず、ここで大命題として振られました財政投融資の問題、これにつきまして、去年九月十日発表されました基本方針そのほか、財政投融資あるいは財務省という言葉自体、全く私は発見ができておりません。

 この財政投融資の問題というのは何かということを簡単に申し上げさせていただきませば、財務省理財局が貸し手となり、特殊法人等を借り手といたします世界最大の国営金融機関、つまり、この日本の公的金融における不良債権問題でございます。

 よく、この不良債権問題では、貸し手と借り手ということが言われます。貸し手は銀行であり、借り手は企業でございます。それでは、この公的な不良債権問題についてはどういう用語が用いられるか。巧妙に違う用語が使われております。入り口、出口、あるいは本丸という言葉が使われております。どうも、入り口というのが郵貯、簡保。そして、実は公的年金も入り口でございます。この入り口に責任があるのでしょうか。

 お金を貸す主体は何か。これは財務省理財局でございます。担当部署、財政投融資総括課等、定員百八名の部隊が幾らのお金を貸しておるのか。メガバンク四行、今、全部で二百兆円しか日本で貸し付けをしておりません、どんどんお金を減らして。この理財局による貸付残高は、三百六十兆円、およそその二倍に及ぶわけです。

 財政投融資というのは、財政的目的を金融的手段によって達成する。金融とは何か。与信の審査をし、きちっと貸し付けをし、業務をモニターし、そして何よりも、貸し金と利息を回収するというのが金融の基本機能であります。果たして、この理財局という部署はこの義務を今まで果たしてきたのでしょうか。

 道路四公団の負債は全部で四十兆円。NTT、日本最大の負債を持つ企業の三倍でございます。そのうち三十兆円は理財局が貸し付けをしております。本四架橋公団、四兆五千億ほどの負債がございます。利払いが一千百億、料金収入は何と八百億円です。利払いすらできないから、そのほか費用そして利息が加わって、元本が雪だるま式に膨らむ。これは民間の不良債権基準でいえば、完全なる破綻企業でございます。

 企業が破綻した場合に、民間の銀行、あるいは信金、信組がどのような目に遭ってきておるのかということは、大変な検査、そして、ある場合には逮捕、そういうこともされておりますよね。例えば、UFJ銀行がダイエーに貸し付けて損が出た、返ってこない、この責任は預金者にあるという議論は全くないわけでございます。ところが、この財投問題に限って言えば、お金を郵貯が出すから悪いんだ、預金者が悪いという議論にすりかわっているのでございます。預金者である郵貯が悪いのであれば、公的年金も民営化なさってはいかがでしょうか。

 そういうふうに考えますれば、こちらの方、今簡単に申し上げたのはこの一番、「問題の本質」のところでございます。すなわち、本丸は理財局なり、本丸を攻めずしてこの問題は終わらないということでございます。

 そして、この不良債権が生まれた問題、確かに、私は、これはいろいろと言いわけはあると思います。いろいろ、政官財、自分たちでできなかった。しかし、金貸しをやる限りはどのような圧力があってもきちっとした回収をする、これは民間銀行に対して厳しい金融行政の中でやってきたことではございませんか。それと同じことが身内の財務省には全くできていないということが今の行政の最大の問題。そして、借り手である特殊法人等々にも、返済の意思すらない、ガバナンスは全くない、税金で埋めてもらえばいい、こういうことがありますから、大変な財政赤字が膨らむ。これを放置しておいてほかのところの、例えば義務教育を削る、こういうことはあってはならないことというふうに私は思っております。

 そして、官から官への資金の流れ、これは後で詳しく申し上げますが、実は全く変わっておりません。財投債というものがございます。これは国債の一種、何と四十五兆円。三十兆円枠、四十兆円枠と言っていたいわゆる新規財源国債をはるかに上回る金額を今でも理財局は発行し、九割を年金、簡保、郵貯に強制的に買わせ、そのお金は同様に特殊法人に流れておるわけでございますから、官から民への資金の流れがある、財投改革があった、真っ赤なうそでございます。これは、同じように、財投債という名の国債をこれから一般に、さらに市場からも求めてどんどん特殊法人に貸していくという構造は変化はございません。

 そういった意味では、重複をいたしますが、郵政民営化の国民へのメリットとして言われていること一つ一つを検証していきますと、まず一番目、三百五十兆円の郵政資金が官から民にこれから流れるのか、これはあり得ません。国債、財投債でのファイナンスは従前どおり続く。

 二番目、極めて重要な部分でございますが、郵便局は便利になる、コンビニになり便利になる、果たして本当かということでございます。全国津々浦々に、農協すらない地域に二万六千もの郵便局があり、これが日本の近代生活、さらには明治以来の発展を支えてきた、まさに国土の均衡ある発展の重要な担い手はこの郵便局であったというのは、これは言うまでもないことであろうと思います。

 既に、前島密等々、十九世紀、明治時代に勘考したときに、郵便事業だけでは全国ネットワークをもう維持することはできない、そのときに何を兼業させるのか。トラックか、何なのか。スイスのようにトラックをやるのか。そうではなくて、金融事業をやったことによって、国民にとっては、郵便だけではない、不可欠なお金を預けること、保険に入ることということをやったわけでございます。それによって日本国は非常に大きな発展をしてきた。これは、今の中国の苦しみと比べればわかるわけでございます。農村には金がないだけではない、年金もない、保険もない、給食も満足にない。でも、それ以上に、郵貯はない、郵便局はない、貯金も保険もないわけでございます。果たして、これから郵貯と簡保を完全に切り離して一〇〇%本当に政府と全く関係のないものにして、郵便事業だけで成り立つのでしょうか。もちろん成り立たないわけでございます。

 ということは、後でも述べますが、さらにこの郵貯銀行というものが破綻をすれば、さらに国民負担はふえますから、当然のことながら、縮小、廃止。

 民の本質は、もうからないところはやらないことです。もうかるところだけを高い金をチャージするのが民であり、それが一部株主にだけ帰属するのが民というものの本質でございます。公はそうではありません。国民すべてに同じ機能を提供し、同じ郵便料金を提供するというのが、これが公の役割でございます。

 残念ながら、このままこの郵政民営化というのが通れば、やはり日本の戦後のすばらしい発展の原動力であった国土の均衡ある発展というものは崩壊をしていく。そして、これからの少子高齢化、一言で言えば東京が一番財政が苦しくなります。そのときに、みんなに喜んで地方に住んでもらわなきゃいけない時代にこの国民の大事なインフラをなくしていいのか、私は非常に疑問に思います。

 次のページ。小さな政府になるのか。これは先ほど田村先生からもう答えがありました。税金を納めているのは郵貯であって、民間銀行ではないわけです。もうこれで自明のことです。公務員数にも入っておりません。

 そして、潜在的な国民負担は減るのか。これは幾つかのルートですべてノーと申し上げてよろしいと思います。

 一つは、この財政投融資の特殊法人への財務省理財局による放漫融資が続くということですから、そこからの財政赤字が恐らく一番大きな項目になると思います。そして、新たにできる国営の郵便貯金銀行、民営化と称しながら国が一〇〇%保有する国営銀行を新たにつくるというのが、今回の民営化案が今までのNTTあるいはJRと全く違うところです。新しい機関をつくるわけでございます。

 これは、試算によりますと五十兆円の資産を持つメガバンクであって、一%の利ざやで五千億円を稼ぐそうです。すごいメガバンクですね。しかも、今人はだれもいない、これから雇ってくる。何か聞いたような話でございます。楽天イーグルスがことし絶対優勝するというようなものでございまして、本当にそんなことあるんですかと。

 百年の伝統を持つメガバンクがすべて失敗をしたこの旧来の二十世紀型のメガバンクビジネスモデルを、二十一世紀、これからつくって、うまくいったらどうなるか。地域金融機関はほとんど崩壊し、倒産をする、破綻をする。そこからの財政負担。そして、そこで支えられている地域の中小企業が共倒れをしていく。地域経済は一層疲弊をするということは明らかであります。

 当然のように、失敗をしてしまった、破綻をした。そうしたときには、上場益どころではありません。この五十兆円が新たな不良債権、財政負担、国民負担を生むということでございますから、国民負担は今回の民営化によって増大をしていくということでございます。

 それでは、なぜこのようなことをやらなくてはいけないのか。あるいは、公社のままでいいのか。私は、それはそうではないと思います。それを四番目に説明をさせていただきます。

 かつて、財政投融資が極めて有効な時期がございました。高速道路でも、名神、東名まではよろしゅうございました。新幹線まではよろしゅうございました。そのときは、財務省が貸しても、各種特殊法人は国債プラスアルファ一%を超えるリターンをちゃんと郵貯、簡保に返してきた。財政投融資は国家の制度として七〇年代まではうまくいったと申し上げられましょう。ところが、八〇年代以降、資金需要は減る、実は資産の内容はどんどん劣化をしていくわけです。

 このときに、財務省理財局がきちんとした銀行であったら何をするか。資産の時価評価、洗い直し、損失の早い処理。ということは、損失が出るわけですから、高い利回りを郵貯、簡保、年金に提示してはいけないわけです。理財局がやったことは、資産の中身はぼろぼろ、二、三割金は返ってこないのに、利回りをどんどん高くして金を集めてつぶれた信組と同じようなことをやっていたということであって、これは預金者の責任というよりもやはり銀行である理財局の責任である。

 しかし、この現実を考えますと、実際に財投改革で国債の利回りしか回らなくなった郵貯、どうやってプラスアルファを稼いでいくんですかというのが今の公社に課された最大の課題でございます。それに対する政府のお答えは、メガバンクをつくること。それは、先ほど申し上げましたように、うまくいかないモデル。

 二番目、私、提案をいたしておりますのは、中小企業、個人にお金が回る共生型、ともに生きるシステムとしての証券化システムを日本でも本格的に導入をしてはいかがかということでございます。これは後で次のページで申し上げますが、官から民へということではなくて、公と私のパートナーシップでございます。具体的にどういうものであるのかについて若干次のページで御説明をさせていただきます。

 メガバンクモデルの問題というのは、大きいところが小さいところを全部食べてしまう、なくなってしまう。そうなるとどうなるか。まさにアメリカの大恐慌がそうでございました。民しかなかった経済で銀行が全部つぶれてしまった、そのときにアメリカはどうしたか。公的金融機関を政府部門として一九三八年につくりました。それがファニーメイ、これが証券化のための、そして住宅ローンに資金を供給するためのまさに政府機関。それが大きくなり、ファニーメイが民営化し、そのかわりに政府機関としてジニーメイができ、さらにフレディマックができた。今これが幾らか。四百兆円のサイズでございます。

 日本は、メガバンクが破綻した後にわざわざ全部を民間銀行にしてしまうということは、複線化すべき金融システムを単線に変えてしまおうということでございます。

 なぜ、この証券化が共生型かと申しますと、実はそこにはいろいろな参加者が来る。一番今経済の中でお金が必要なのは民間企業、しかも中小企業、そして個人でございます。商工ローンしか借りられない中小企業をいかに救うのか。そして、そこにお金を貸すべき信金、信組がペイオフで苦しむ、いかにここに資金を供給すべきか、これが大きな課題です。

 そのためには、商工中金、中小企業金融公庫あるいは住宅金融公庫、既に一部証券化をやっております。つまり、そこが、個人向けの小さなローンを信金、信組、地域金融機関が買ってきて、十億円のポートフォリオを例えば千買ってくれば一兆円になります。大きくしてリスクを小さくして、それを機関投資家である、そしてこのときに三百五十兆円の郵政が、二割でもお金を向ければ七十兆円です。中小企業融資、この国は百八十兆しかないのが、七十兆、三割ふえるわけです。それでいかに地域が潤うか、そしていかに信金、信組、地銀が救われるのか、そういうことでございます。

 こういう仕組みは、アメリカは、大恐慌の民オンリーの金融システムの非常に手痛い反省から生んだ。つまり、公が提供する金融インフラ、公正、ディスクロージャー、取引所というシステムと同時にこの証券化というシステムをつくった。日本もその考え方はありますが、まだ五兆円しかない。そこに郵政資金を投入すれば、これは形としては格付の高い債券を買うだけですから、十人人をふやせば組織改革は終わりでございます。

 ですから、それが私は郵政民営化の答えである。民営化をするよりも公社を、しかも郵貯・簡保事業を財務省から独立をさせ国債を買ってもいいんです。ただ、自己の意思として、リスク許容度に合わせて、年金は少なく、簡保はより多く、郵貯は恐らく七、八割ぐらいは国債にする、これはアセットマネジメント上当たり前。その残りの二、三割の金でどれだけの金を稼ぐか。そこを、この証券化を中心としたスキームをやる。実際に農林中金がやっている、これは日本の金融機関最高格付の農林中金、一切自分でほとんど貸し付けしていない、ほとんど国債とこういう証券化運用で現実にその成果を上げているわけですから、既に成功したビジネスモデルがそこにあるわけですから、それを使えばよろしいのではないかと思っております。

 最後になります。

 結局、郵政民営化というのは、私も非常に期待をした。郵政民営化、ここから国が変わる。どういうことなんだろうか、こういう取りまとめをせざるを得ないのかな。財務省を中心とした財政投融資を抜本的に改革するどころか、過去の財政金融政策の過ちを郵政に押しつける、これは私はスケープゴートの政策であると言わざるを得ないと思います。

 そして、問題を起こした財務省あるいはその親戚の金融庁の権限は現実には大幅に強化いたします。まあ、卑俗な言い方をすれば、マッチポンプで焼け太りができる。失敗して破綻した銀行が預金をしてくれている優良企業を乗っ取るのと同じようなことが今行われようとしているということ、そしてこれが日本の本当の強さを殺してしまう。これから中国とも経済競争していかなきゃいけない、強くならなきゃいけない日本の強みをなくしてしまうのではないか。

 そういうことで、私は、この郵政民営化、今回の案には反対でございます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

二階委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

二階委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮路和明君。

宮路委員 自民党の宮路和明でございます。

 四人の参考人の先生方にはどうも御苦労さまでございました。それでは早速、質問をさせていただきたいと思います。

 まず最初、私は、翁先生にお尋ねしたいと思うんです。

 第一点は、金融改革上、この郵政民営化、私は、大きな意義がある、いろいろな意義がある中で、まずは金融改革をやっていく上での意義が最大の意義ではないかな、こう思っておるわけであります。

 先ほど来、三百四十兆の郵政公社が持っている金融資産、それが国債に現在百六十四兆流れ、財投預託七十九兆、そのほかに公団や公庫への貸し付けあるいは公団が発行する債券の取得、合わせて二十六兆、計八割のお金が、三百四十兆のうち八割が官に滞留している、こういう状況でありまして、財投改革をやっても、まだ一方では国債の方へその金がどっと流れておりますから、全体として、官で集めたお金が官に滞留しているという構造にはほとんど変化がないというようなことが今日言えるんじゃないかと思うんです。

 一方で、我が国の金融市場でどういうことが起こっているかといいますと、びっくりすることに、先ほどサラ金の話がありましたが、サラ金の市場は十六年三月現在で四十七兆に達する、こう言われております。四十七兆が何と三〇%近い金利で庶民に貸し出され、そしてサラ金地獄も起こっている。私の地元なんか、店舗が次々と店を畳んでシャッター銀座と言われているところに、今度はサラ金が進出してまいりまして、サラ金銀座が実は起こっているというのが地域の現状であります。一方で、金融の市場でそういうような問題が起こっている。

 そして、銀行は、きのうのこの新聞、これは産経新聞でありますが、一面トップで「銀行 問われる真価」というのが出ておりますけれども、これは、銀行がバブル経済崩壊後の長いトンネルからはい出して、大型再編をほぼ終えて攻めの経営にかじを切った、店舗改革、中小企業向け融資拡大、住宅ローンの金利引き下げなど、銀行は新しく生まれ変わった姿を銀行サイドは強調している、しかし、本当にそうだろうか、今度こそ顧客に顔を向けたサービスを展開できるのか、真価が問われている、こういうような産経の記事であります。疑問を呈しておるわけであります。

 今もって、銀行の、金融機関の貸し渋り、貸しはがし、これは専売特許であるわけでありまして、依然として銀行は、天気のときは傘を借りてくれと言ってきて、雨が降ってくると傘を返せと言うのが銀行だ、こういう批判はもう絶えないわけであります。

 一方でまた、政策金融機関の改革も進めていかなければなりません。政策金融機関、既に改革が進んでおりまして、十八年度末にはもう住宅金融公庫は廃止になる、こういうことでありますが、だんだんと政策金融機関の果たす役割といいましょうか、その貸付残高もどんどんと減ってきておるわけであります。したがって、そこを一方では民間が埋めていくということをやっていかないと、金融の活性化、経済の活性化は保証できないわけであります。

 そういう意味で、私は、郵政民営化が行われて、そして郵便局が本当に庶民の味方、庶民のために金融をやるという姿をぜひつくっていくべきではないかな。そうすることによって、先ほど御指摘申し上げたようなサラ金の問題、あるいはまた政府金融機関による貸し付けの撤退といいましょうか、縮小といいましょうか、それに対応する金融の円滑な融資というものも道を開かれていく、こういうふうに思うわけであります。

 一方で、国債残高の増加傾向が緩やかになったとしても、今後なお国債の発行そのものは続くわけでありますから、そういう意味で、郵政公社の国債引き受けの役割というものは変わらないのではないかというような御指摘、さらにまた、貸付審査能力が一体郵政公社にあるかという御指摘、そういうものがあるわけでありますけれども、今後そういうものを克服しながらこれはやっていくべきだと思うんです。

 そのことについて、翁先生、どのような意義づけといいましょうか評価をしていらっしゃるか、そこをまずお聞きしたいと思います。

翁参考人 お答えいたします。

 日本の金融システムは、やはり一九九〇年代、不良債権問題を経験しまして、その間非常に危機にあったわけですけれども、かなりここへ来て、各金融機関それぞれ戦略を打ち立てて、少しずつ攻めの姿勢に入っていることは確かだと思います。

 また、市場型間接金融といいまして、今まで直接金融、間接金融と二つに明確に分けられていたところの真ん中に、いわば証券化とかシンジケートローンという形で、いろいろな、間接金融でありながら透明性の高いシンジケートローンのような手法が入ってきて、いわば機関投資家と銀行のポートフォリオがだんだんミックスしてくる、そういうような時代になってきていると思います。そういう意味で、二十一世紀型というのは、やはり間接金融一辺倒から市場型間接金融、直接金融への大きな流れの中で、各金融機関がこれからも努力をしていかなければならないというように思っております。

 そういった中で、今までのメガバンクも、そのような延長線上で、新しい、顧客のニーズに合った商品開発とか、または顧客のニーズに合ったサービスの提供ということで、今後も努力が必要であるというように思っております。

 一方で、政府系金融機関につきましては、財投改革、二〇〇一年の預託廃止で、今、経過期間中でございますけれども、少しずつでございますけれども財投の規模自体は小さくなってきていて、また政府系金融機関も、金融機能の分化という方向で、より一層その手法を見直していくということが必要だと思います。ですから、全部融資をする、全部のリスクを負うということでなく、補完的な役割に徹していく、いわば民間の補完として、政府系金融機関も役割を縮小し機能していくということが今後も展望されるということだと思っています。

 郵政に関しましても、そういった大きな流れの中で新しいビジネスモデルを模索していくという必要があると思います。おっしゃるとおり郵政事業には大きなネットワークがございまして、これが窓口会社としてこれからも機能しますので、そのネットワークを生かして、またいろいろな金融機関と提携をすることによって、地域の顧客のニーズに合った商品を今後も提供していくということが望まれると思います。

 また、最大の機関投資家ということで、今までは国債を中心に投資をしていたわけでございますけれども、民営化すれば、いわば国債を保有する、国債の引受機関というような位置づけからは撤退するわけでございますので、いわば国債管理政策を一元化し、より強固な政府債務管理政策を打ち立てていくということが必要だと思っています。そのためには、例えば今、個人国債とか発行されていますけれども、そういったものをより拡大していくとか、海外向けの国債の保有を促すとか、そういった国債管理政策も長期的な視野に立ってやっていく必要が出てきていると思います。

 いずれにしましても、郵政公社は、今までのネットワークを生かした形でそれぞれの顧客のニーズに合った商品を提供していくという形のビジネスモデルが望ましいと思いますし、一方で、運用能力をつけて、今までの国債一辺倒ではなく、さまざまなそういった市場型間接金融の商品を運用していくという形で運用能力をさらにつけて、一つのビジネスモデルとして確立していく必要があると思っております。

宮路委員 私、ここにパネルを持ってきているのでありますが、これは、文科省のある虎ノ門の交差点から新橋の駅のガードのところまで、あの通り、外堀通りというらしいのでありますが、あそこを通ると、物すごい数の銀行といいますか金融機関の支店があるものですから、ちょっと調べてみたところ、何とその短い距離の間に十五、六店舗あるんですね。そして、みずほ銀行が三店舗、東京三菱二店舗、りそな二店舗、三井住友二店舗というふうになっておりまして、それからUFJも新橋のガードを越したところに一つ、これに載っていませんが、あります。

 そういうことで、大手銀行、統合はしたけれども、さっぱりと改革はやっていないという姿がこういうところにもよく出てきているわけであります。したがって、先ほどのような、日本の大手銀行などに刺激を与えて、そして金融が本当に活性化して、庶民のために金融がなされるというためにも、私は、ぜひ郵政民営化が実現して郵便局の皆さんに頑張っていってもらいたい、こういうふうに実は思って、先ほどの質問をさせていただいた次第であります。

 次に、見えない国民負担の解消の意義につきまして、これは税調会長も以前しておられました加藤参考人にお聞きしたいと思います。

 今、財政構造改革は我が国にとって喫緊中の喫緊の課題であるわけでありますので、したがって、歳出の削減、合理化を積極的に進めていかなければいけませんが、それと同時に、それもやはり一定の限度があるわけでありますから、歳入の確保という面でも努力をしていかなきゃならない。したがって、不合理な優遇措置、税制上の優遇措置なんというのは見直して、そして歳入の確保も図っていくということが私は求められているというふうに思うんです。

 そういう意味で、消費税の引き上げも、これは将来の課題としては当然我々取り組んでいかなきゃならぬというふうに思っていますが、当面、やはり合理性の乏しい優遇措置なんというのは撤廃していく、あるいは縮減していくということを積極的にやっていくべきだ。政府税調でも現在、検討をこれからするということになっておりますが、例えば、収益事業の抜本的な範囲の見直しを初めとする公益法人制度のあり方の問題、あるいはまた、租税特別措置法による優遇課税といいましょうか優遇措置、これもやはり年々見直してはきておりますけれども、もっともっと踏み込んで見直していくべきではないかなというふうに思っております。

 そういう意味で、官の方も、やはり痛みを民よりも自分がまず受けるということから考えていくならば、郵政も民営化して、普通の金融機関と変わらない部分については当然税金を負担してやっていくべきだというのが私の考え方であります。

 例えば、先ほど農林中金の話が出ましたけれども、農林中金をトップとする農協の系統金融、あるいは全共連をトップとする農協の生命共済あるいは損保見合いの共済、そういったものトータルとして、資金規模は郵政公社の郵便の三分の一です、ちょうど三分の一です。貯金も三分の一、保険も三分の一なのでありますが、税金は、二千五百億の税金を農協系統組織として払っておるわけであります。

 そうすると、これは、郵政公社だって当然そういうものを払っていいんじゃないかという議論になってくる、私はこういうふうに思うのでありますが、預金保険料も含めまして、官であることによる優遇措置の見直し問題、そしてそれに与える効果といいましょうか、そういう面でどのように加藤先生はお考えか、そこをちょっと教えていただきたいと思います。

加藤参考人 今、郵政の持っております優遇的な立場というのがあるということを御指摘いただきましたが、私はかなり古くから考えておりまして、第一に、預託金利が今まで高く維持されておりましたので、これが非常に郵政のお金を回すときに有利に働いていたということは否定することができないというふうに思っております。

 それからさらに、財投の問題について、既に論者の中には、解決した、財投問題はこれでもう出口のところは整理できたんだというような御意見がございます。私はこれは信じられないのは、二つの意見がございまして、この問題については、なお官から官へという状況は変わっていないというふうにお考えになる方と、いや、もう終わったんだからこっちは手を入れなくてもいいという御意見とございますが、二つが対立しております。

 実際にどうなのかというと、私どもから見れば、例えば財投の問題については、随分お金の集め方が国債に頼らなくて済んでいるということで説明する方が多いのでありますが、官庁からの説明でもそういうのが多いのでありますが、しかし、そのとき私が常に言いますのは、あなた方がおっしゃるそういう財投の利益というのは、これは実はファミリー企業に流れているところを計算してありますかと聞きますと、大体の方は、いや、そこまでは調べられないということをおっしゃるんです。

 ところが、御承知と思いますけれども、道路公団にいたしましても、財投というものがどういうふうに使われているかというと、ファミリー企業にとってこれは有利な形で使われているわけで、こういった恩典があるために国民は非常に不愉快になる。と同時に、それがいろいろなところで明らかになってまいりますと、おかしいじゃないかということが言われるようになったわけでございますね。そういう意味で、私は、ファミリー企業も含めた財投の利益を考えなきゃいけないんだというふうに申し上げているわけでございます。

 それから三番目は、これは、先生がまさに御指摘いただきましたが、政府保証でございますね。私は、税制調査会をやっておりましたときに、税制調査会の中で、絶対にマル優の限度額をふやしちゃいけないんだというふうに私などは言っておったのでありますが、これが上がってしまったんですね。こういうふうにふやしていくということが大体問題なのでございまして、こういうことを避けないと有利さというものが減らない。つまり、それは、郵便局が郵便貯金に対する高齢者に対する優遇措置をとっている、だからお金が集まってくることになるわけです。そういうところに手を入れなければいけないんじゃないかということを言っているのであります。

 それと同時に、もう一つつけ加えて言わなきゃならないのは、それは、先ほど申し上げましたが、公務員であるということによりまして、その公務員であることが、二十八万人、非常勤も入れますと全体で三十八万人でありますが、この方々が公労協の中に入るわけです。したがって、この方々が身分保障を要求することになりますと、これに対して、どうやってこれを減らすかということがむしろ問題になってしまう。そして、どうやって人数を減らすかということが問題になりますが、これから、御承知のとおり、郵政の二十八万人は、約十万人ぐらいは自然退職で入れかわってまいりますから、そういう意味で私はこの問題に対しては答えることはできるだろうと思っていますけれども、今のところは、それはやはり大きな身分保障になってあらわれているというふうにならざるを得ません。

 それから、さらに四番目でございますけれども、これは郵政が、例えばクロネコヤマトがございますと、そのクロネコヤマトに対して技術革新ができていなかったために非常におくれたわけでございますね。つまり、郵政が自分の職場を守ろうとして今までのやり方を続けてイノベーションを考えていないというところに今度は負担がかかっているわけです。つまり、それだけ料金を上げざるを得ないという状況に入りますね。現在、郵政のいろいろな赤字になってきている要因の中では、やはり設備投資が非常にふえているということが問題になっているわけです。

 こういうことで、私どもとしましては、あのころ随分新聞でも言われていたんですけれども、全体として郵便番号というのがどんどんふえまして、最初は三けたぐらいだったのがやがてふえて七けたになるというふうになりますと、これは確かに便利になってきたのかもしらぬけれども、それで本当にコスト削減ができたのかというふうになると、非常に疑問でございますね。こういう意味で、競争がないということはイノベーションの発達をおくらせてしまうことになります。

 それから五番目でございますけれども、これは御承知のとおり、既に社会保険庁のことで問題になっておりますけれども、システムの取りかえということが当然必要になっておりますが、これには三千五百億円の年間の維持料がかかっております。社会保険庁が三千五百億円というのは随分多いな、こう私は思って公社の方にお聞きしましたら、公社は、いや、私どもも同じくらいです、それくらいかかるものです、こう言われる。

 だけれども、私ども、ベンダーのいろいろな状況を調べてみますと、そんな三千五百億円もかかるようなことではないんです。一方的な技術のために、ほかの人はわからぬだろう、素人はわからぬだろうということで勝手に決められている。こういう状況はやはり負担を国民に与えているということを言わざるを得ない、こんなふうに私は理解しております。

宮路委員 どうもありがとうございました。

 それでは、最後になるかと思いますが、私は、郵政公社が持っております多くの不動産の有効活用と、それによる窓口ネットワーク会社、郵便の、郵政のネットワークの活用ということについて、翁先生にちょっとお聞きをしたいと思います。

 いつも私、不思議に思うのでありますけれども、主要な駅ことごとくそうでありますが、駅前の一等地、玄関口に郵便局がいずれもあります。丸の内しかり、大阪駅しかり、博多の駅しかり、私の地元鹿児島の中央駅の前しかり、すべてそうであります。

 これは、昔、郵便局の旧称は駅逓という言葉であったそうでありますけれども、そのことにも象徴されますし、また、日露戦争の終わったしばらく後までは逓信省のもとに郵便と鉄道は一体として行政も展開されておったということのようでありますから、鉄道を敷いて、そしてそこから郵便を運んでおった、こういうことの名残だろうというふうに思います。

 一方で、今や郵便の輸送は、昭和五十年代に入って主流は鉄道から自動車となり、そして昭和六十年代に入ると今度は航空輸送が主流になってきた。そういうふうなことになりまして、今や自動車と鉄道の比率は、自動車を一〇〇にすると、鉄道に依存する分は五しか運んでいない、飛行機は一二五でありますけれども、そういうような状況であります。

 したがって、集配業務を中心として展開されている駅前の郵便局、こういうものは非常に周囲の状況から見てもふつり合いでありまして、がらんとした古い建物が駅前に寒々と建っているというようなことでありますから、これをもっともっと有効利用して、そして地域の活性化のためにも、またそこで得た利益を、今度は全国のネットワークを維持するために、先ほどお話のあったような過疎地だとか離島だとか、そういうところの郵便局にもその利益を回してやって、全体として郵便局のネットワークが活性化するというようなことに持っていったらどうかなというふうに思うわけであります。

 財産の帰属はどうなるのかと調べてみましたところ、まだ決まっていないそうでありますが、これは多分、郵便局会社の所属になるだろうというのが政府の今の見解であります。そういうことも含めまして、この問題についてはどのようにお考えか、翁先生にちょっと教えていただきたいと思います。

翁参考人 私、ドイツのボンで駅前にありました郵便局を見てまいりましたけれども、今は大きなスーパーマーケットになっていまして、その一部が郵便局として営業されていました。そのほかにも旅行代理店が入っていましたり、いろいろ有効活用されて、非常に民営化によって駅前の立地がうまく有効活用されているなというような印象を受けてまいりました。

 このように、私は、今回分社化をするということで、集配のネットワークとどういうところにお客さんが来るかのネットワークというのは必ずしも一緒ではないというように思います。今まさにおっしゃったように、日本では駅前に鉄道の名残で大きな建物がたくさん残っておりますけれども、これをうまく有効活用し、一方で、道路とか航空の拠点に近いところに効率的な集配センターをつくることによって相当効率化ができるのではないか、そして一方で、都市部の土地の、不動産の有効利用によって収益は上がるのではないかというように思っております。

 コストを比較いたしましても、いわゆる過疎地の運営のオペレーションコストというのは非常に低いわけですけれども、都市部のオペレーションコストというのは高い。やはり賃料が高いですので、その分が非常に大きな負担となっております。その意味で、都市部のネットワークの見直しや、または有効利用ということを通じて、民営化ということによってかなりの果実が得られるというように思っております。

宮路委員 あと四分ほど時間がありますので、これを最後にさせていただきたいと思いますが、最後、加藤先生に、簡易郵便局の機能の評価と今後の活用ということについてお聞きしたいと思います。

 ちょっと早口で恐縮なんですが、簡易郵便局は、実は昭和二十四年に簡易郵便局法ができて設置されたのでありますが、これがスタートでありますけれども、調べてみますと、戦後の改革の中で、郵政事業は戦災の郵便局の復旧を主として念頭に置いて図られたけれども、そういう中で、GHQが調査いたしましたところ、過疎地、離島あるいは山間地、そういうところに郵便局が設置されていないということで、これを体して、そういう人たちの、地域住民の利便を図る観点から、欧米式の民営郵便局を設置すべしということをGHQが打ち出しまして、それを受けて二十四年に法律ができて簡易郵便局が設置された、こういうことのようであります。

 そして、私は今、自民党の離島の関係の委員長をやっているのでありますが、何と我が鹿児島は、離島が多い関係で、郵便局の四〇%は簡易局なんです。それから宮崎県、お隣が三七%。そして、秋田、島根三二%、長崎、熊本三一%、岩手三〇%。その設置の経緯にかんがみて、こういう離島あるいは山間地あるいは僻地というところに簡易郵便局が多いんでありますが、これが非常に安いコストで今もって非常に大きな働きをしているわけですね。一局平均、何と基準額として与えられるお金が十三万幾らかのお金であります。それに加えて、あとは出来高払いで委託料が払われているのでありますが、それが田舎の郵便局ですと平均十四、五万でありますから、年間三百万ぐらいで簡易郵便局が運営されている。そして、これが津々浦々の、本当に山間僻地あるいは離島を守っているということなんであります。

 これは、大変な大きなお金を使って特定局が運営されているのと比べますと、非常に簡素にして大変な機能を果たしている、まさに民営化の先兵というか先導的な役割を果たしてきた、こういうことだと思うんですが、こういうものに着目して、これらをしっかりと活用していくということが大切だと思うんですが、その点、加藤先生、どういうふうなお考えか、お聞きしたいと思います。

加藤参考人 大変重要な問題を御指摘いただきました。普通は特定郵便局ばかり焦点が当たるんですけれども、実は、簡易郵便局こそが今の日本の郵便のネットワークを維持する大きな役割を果たしているんです。

 この点につきまして、簡易郵便局の方から今度の改革で心配がいろいろ出てきているのでありますけれども、特に、簡易郵便局は日常業務の八割以上が貯金と保険でございます。したがって、これが果たして郵便業務だけをやったことで存続できるのか、こういう心配があるわけですね。

 これに対しましては、御承知のとおり移行期間中という一つの条件がございますけれども、移行期間中につきましては、郵便貯金銀行それから郵便保険会社が安定的な代理店契約をいたします。したがって、この条件が許されておりますので、免許の条件として、貯金、保険のサービスが簡易郵便局を含めた郵便局ネットワークで提供されることになります。

 それから、移行期間が終わりました後でも、もしこれが必要であるということになりますと、これは十分なコストも考えなきゃなりませんから、そのコストの点も考えまして、引き続きこれをやっていくための代理店契約の契約更改が行われるようになるだろう、こういうふうに私は考えています。

 同時に、それについては、もちろん社会・地域貢献基金の活用も可能でございますので、そうしたことを通じて、簡易保険は非常に重要なものであるということについて意識が非常に強くございますので、この点については御心配はないのではないだろうかというふうに理解をしております。

宮路委員 ありがとうございました。これで終わります。

二階委員長 次に、桝屋敬悟君。

桝屋委員 公明党の桝屋敬悟でございます。

 四人の参考人の皆さん、本日は、本当に貴重な御意見を賜りまして、心から感謝申し上げたいと思います。

 きょうは、意見陳述の順番をいろいろ理事でも検討したんですけれども、実にいい順番ではなかったかなと、聞いておりまして私自身も非常に勉強になりました。私は二十分しかありませんから、順次お一人お一人にお伺いをしたいと思います。

 最初に、加藤参考人にお伺いしたいと思うんです。

 この国会で、本当に苦労をしながら、大変な紆余曲折を経てやっと法案ができまして、国会に提出をされて、既に三十五時間ぐらいこの委員会で議論をしているわけで……(発言する者あり)そうですか、まだまだだという声もありますけれども。

 そこで、そうした思いを抱きながら加藤参考人のお言葉を聞いておりましたけれども、お話の筋は大体わかったわけでありますが、大変興味を持ちましたのは、まさに構造改革の本丸は郵政だ、総理がいつもおっしゃっていることでありまして、ああ、同じ言葉を使われているなと思ったわけでありますが、その前に、本丸の前に、出城の改革は非常に難しいという、正直にそういう感想も吐露されました。我々も今、与党の一員として行政改革に取り組んでいるわけでありますが、決して出城の改革が、困難ではありますけれどもできないわけでもないし、理想を捨ててはいかぬ。我々は、この出城の改革ももちろん同時にやっていかなきゃならぬ、こう思うのであります。

 その中で、大阪攻めの例えを言われました。本丸ということで、徳川政権ができ上がるときに大阪を攻めたときに、伊達の方を意識して中立地帯をつくったという、これは戦略的には、戦術といいましょうか、非常に大事なことなんですが、小泉総理の立場に立って、改革が本丸だとするならば、まさに対伊達に対するその中立地帯というのは一体どこなのか、何をしなきゃいかぬのか、もし御意見があればお聞かせいただきたいと思います。

加藤参考人 私が申し上げた比喩的な言い方に興味を持っていただければ大変ありがたいんですが、同時にまた、大変誤解も生ずるかなと思って私は気にしているのでありますけれども。

 私はよく言うんですけれども、土光臨調のときもそうだったんですけれども、一つの戦術を立てて、例えば、瀬島さんがおられたものですからよく言われたんですけれども、二〇三高地を攻めるためにはどうすればいいか、真っ正面から攻めたのではどうしても勝てないんだ、何が必要だったかというと、乃木将軍とは違って、児玉さんが出てきて、これを裏から攻めたことによって二〇三高地は陥落したという話が何度も出ました。私はそれを聞きながらいつも思っていたことは、それは戦国時代にやっていた城攻めとよく似ている。

 城攻めというのは、御承知のとおり、本丸は大阪城でございますが、先ほど山崎参考人が本丸というのは財務省だとおっしゃったんですけれども、財務省も実は、この戦術の全体の中でも、戦略の中に乗っかっているんですね。したがって、財務省というのがやっておりますことを見ておりますと、やはり自分のところの権益を一番守っているんですね。これをなくすためには、財務省だけ幾ら本丸といって攻めてもだめなんです。

 どうすればいいのかということになりますと、比喩的な言い方で、またこれも誤解を招いてはいけないのでありますけれども、一つは、大阪城を攻めるときに、徳川家康は御承知のように、城攻めをやるためでございますから、まず外堀を埋めることから始めたわけです。

 外堀を埋めるというのはどういうことかと申しますと、今の郵政のことで申し上げますと、郵政を本丸と考えて申し上げますと、外堀というのは、これは財政投融資や何かのお金の流れを抑えること。つまり、籠城することをやめさせるためには、そこに食料やあるいは水が入ってまいりますから、これをどうやって抑えるかということをやらなきゃならない。そこで、外堀をまず抑えることになります。この場合、先ほど申し上げたように、出城の方は、これは応援に行くと困りますから、ふさがなきゃならないということをやっておきます。

 そして、次にやらなきゃいけないのは内堀でございます。内堀は何かと申しますと、これは特定郵便局でございます。この特定郵便局をどうやって味方にするかということを考えていかなきゃなりません。

 その次に城門をあけさせて、そこで野戦が始まります。その野戦が始まったときに、今度は一人一人の問題が起こってまいりますので、例えば内通する者が出てくるということがあり得るわけでございますから、そういう者に対して、それをどうやって抑えるか。国鉄の場合も、御承知のように、国鉄総裁とそれから周りの人たち、副総裁や何かで反対運動をやろうということで結束をしているわけですね。これをやはり崩さないと絶対に本丸は落ちません。

 そういうことを考えて私はいろいろ比喩的な言い方をしたわけでございますが、比喩的な言い方をしたものですから、そのことを通じて、それはだれのことを言っているのか、どこのことか、こういう話になると非常に困るんですけれども、私が申し上げたいのは、現在のこの郵政の問題を解決するためには、まず、出城を幾ら攻めても攻め切れるものじゃない、これはどうしても応援団が参りますから。そこで、これに対して、本丸を攻めるためには、本丸に対して集中的にできるように、援軍にならぬように、ほかのところから援軍が来ないように抑えておくことが必要だ、こういうふうに申し上げたわけでございます。

 こういうことを通じましてだんだんと戦略を詰めていきませんと解決をしない。同時に、財投の問題に入っていくためにも、これはやっていかなきゃならぬ方法でございます。よく言う方がいらっしゃいまして、財投問題をやればこれで問題は解決なんだ、我々の目的というか、郵政改革の目的は財投問題だったんだ、こういうふうにおっしゃるんですけれども、財投改革を二〇〇一年にやったんですけれども、それでも、御承知のように、今、官から官へというお金の流れは少しも変わっていないということはやはり否定できないのでありますから、そういう意味で、私たちはそれを抑えるための政策をとらざるを得ないだろうということで、本丸がやはり大きな問題になってくるというふうに私は考えています。

 同時にもう一つ、先生がおっしゃったことの中でつけ加えなきゃなりませんのは、その本丸というものをやります、なぜ本丸かというと、それは、それを通じて、各省のそれぞれセクショナリズムに乗っかった財源がそこに残っているからです。例えば、特殊法人というものが幾つもございますと、その特殊法人が一つの権力の母体になります。これがあるために、ほかの省が何を言おうとも、自分の省だけは絶対ほかの言うことは聞かないという官僚のセクショナリズムが大きく登場いたします。これではなかなか改革は前へ進むことができないということで私は申し上げてきたわけでございます。

 以上でございます。

桝屋委員 思いを随分お話しいただいて、ありがとうございます。本当に聞きたかったことはあるのでありますが、重ねての質問はいたしません。

 続きまして、田村参考人にお伺いしたいと思います。

 随分厳しい御指摘をいただきました。民営化されたらまさに金融弱者が生まれるという御指摘をいただいたわけであります。

 それで、ずっと田村参考人のお話を聞いておりまして、慎重な姿勢、反対の論というものは理解をさせていただきましたけれども、最後の方でおっしゃった、では、これからどうするのか、どうあるべきかという観点の中で、恐らく、誤解があったら申しわけないんですが、郵貯、簡保の資金については、これはやはり肥大化し過ぎた、ここはやはり整理をしなきゃいかぬというお気持ちなのかなと。

 そうすると、この委員会でも随分議論しましたけれども、我々は、やはり改革する上で一番心配しているのは郵政の雇用の問題でありまして、その辺はこれから、反対をされるお気持ちはわかりますが、今の郵貯、簡保の状況、恐らくこれから資金的にも収れんをしていくだろうと私は思っておりますが、そうした中で雇用の問題をどうお考えになるのか、ひとつお聞かせいただきたいと思います。

田村参考人 お答えしたいと思います。

 まず、郵貯、簡保の資金が肥大化したと。これは僕は、額の問題ではなくて使い道の問題だ、こういうふうに思うんですね。

 例えば、ちょっと迂遠になりますが、ドイツでは、銀行に三つあります。ゲノッセンシャフツバンク、これは組合銀行です。それから、ランツバンク、これは州立銀行です。それから、完全なプライベート銀行と三つありまして、州立銀行は、シュパールカッセといって、津々浦々に、ちょうど日本の郵貯と同じように貯蓄銀行を持っているわけですね。これはかなり大きなものです。それが、どんなふうにお金が、集められたものが使われるかということが問題なので、私は、現在のお金が大きいか小さいかというよりも、このお金がどういうふうに流れるんだろうか、民営化した場合にどういうふうに流れるんだろうか、それはハイリスク・ハイリターンへ行くんでしょう、こういうことを言ったわけですね。だから、肥大化するかしないかというより、その使い道のことを申し上げているんです。

 そこで問題になるのは、先ほど、公社はこういうふうに立て直すことができるんじゃないか、こう言いました。だから、雇用は必ずしも減るというふうに私は思いません。問題は、公務員の数を減らすといいますが、先ほど申しましたように、一銭も郵便職員には税金が入っていないわけです。そこで、この郵政事業の関係者の雇用を減らすことによって財政が改善されるということも全くないわけですね。むしろ負担はふえます、はっきり申しますと。

 そんなわけで、この民営化についての雇用は僕はこのままでいいとは思いますが、しかし、問題は、非正社員をいっぱい使っています。そこで何が問題になるかというと、非正社員であろうと正社員であろうと、なるべく同一労働同一賃金、同一時間同一賃金という、オランダ型のそういうワークシェアリングの方に国全体が持っていかなくちゃいけない、こんなふうに思います。

桝屋委員 重ねてお伺いしたいと思いますが、確かに使い道の話は我々もしっかり議論しなきゃいかぬ一番大事な点だと思いますが、今の郵貯、簡保の資金のこれからの動向について、参考人はどうお考えになっているのか。それはどうでもいいということではなくて、その見解だけお伺いしたい。簡単で結構です。

田村参考人 現在は、やはり先ほど申しましたように財投に行っておりますね。これは〇八年までの経過措置として財投を買っております。だから、かなり財投が肥大化しているんですが、これは財政投融資の改革によって、〇八年を過ぎるとかなり減ってくるだろうと思います。

 そして、運用先はやはり国債、地方債も一定にしなくちゃいけませんが、あとは、自主運用は、先ほど申しましたように、世界にいろいろな機関がございますから、その五十社ぐらいを選んで、それで分散を図りながら運用することは十分可能だろうと思います。

 以上です。

桝屋委員 ありがとうございました。

 私は、もう時間が余りありませんから議論いたしませんが、郵貯、簡保の資金については一定の収れんをしていくんだろう、こういうふうに理解しております。

 そこで、続いて、翁参考人に伺いたいんですが、先ほどの田村参考人の意見、まさに今回の改革は金融弱者を発生させるんだという御指摘でありましたけれども、これは我々も国民に対してメッセージを発するときに一番気になるところでありまして、翁参考人はこうした御意見に対してどのように考えておられるのか、御意見を伺いたいと思います。

翁参考人 お答えいたします。

 金融弱者といっても二種類ありまして、一つは過疎地の問題、それからもう一つは、よくアメリカなどで言われているライフラインというか所得の低い方の問題、両方あると思うんです。

 過疎地の問題に関しましては、今回、過疎地に関して一定の配慮をするということで幾つかのことがなされておりますので、それによって対応が可能でございますし、それから、今後、銀行の代理店が規制緩和されていきますと、恐らくいろいろなところで銀行が代理店を、例えばスーパーマーケットとかそういったところに出すということも可能になっていく。そういう意味で、キャッシュ・アクセス・ポイントへのアクセスというのはより規制緩和によっても可能になっていく方向だと思いますので、まずそこについては大きな心配はしておりません。

 それからもう一つ、社会的な、所得の低い方に関してでございますが、これに関しましては、今日本におきましては、例えば当座預金を開いたりするときには、特に企業なんかの場合は、小切手を振り出すために一定の審査が必要ということはございますけれども、日本の場合は多く、決済性預金とかそういったものは普通預金でございますが、これに関しては、よほどのことがない限り今の時点で拒否をされるというようなことはございませんので、銀行取引に関して、所得が低いからといって大きなデメリットを今受けているというような状況にはないというふうに思っております。

 もちろん今後、これから金融機関が例えば手数料ビジネスとかどういうふうに展開していくか、そういったところはよく見ていく必要がございますが、少なくとも、過疎地の問題に関しましても、社会的な問題についても、とりあえず心配は我が国では大きくならないというふうに思っております。

桝屋委員 それでは最後に、山崎参考人にお伺いしたいと思います。

 非常に興味あるお話をいただきました。そこで、時間もないので一問だけでありますが、山崎参考人の基本的スタンスは、やはり改革を期待された、本を提示されましたけれども、それが期待どおりの改革になっていない、こういう御指摘かというふうに理解をいたしましたが、現在の公社のままでいいということでもない、やはり改革をしなきゃいかぬというお考えというふうに理解をいたしました。その上で、最後、対案として、公社形態のままで証券化への投資というようなことで、共生型の金融システムという御提言をいただいたわけであります。

 私も金融の専門家では全くありません。ずぶの素人でありますが、ここはどうなんでしょうか。民営化されると、こういう提案というのは実現しないということで理解をしてよろしいんでしょうか。

山崎参考人 お答えいたします。

 私も企業経営をやっておりましたので、金融機関を経営しておりました。どうやって従業員を食わすか、当然のことながら、経営者には一番大きな問題でございます。

 郵貯、簡保三百五十兆円の資金を運用するのに必要な人員数は百人ぐらいでございます。そのほかのほとんどの郵政組織の人員は郵便事業のネットワーク維持のために必要なわけでございます。百人はなぜか。ほとんどこれは国債に投入するか、一部社債、地方債その他を買っており、一部を信託銀行に委託等々しているからでございます。つまり、こちらが稼いだ金で全国の郵便ネットワークを維持する、これがかつて四十万人、今二十数万人ですか。

 それで、こちらの郵便事業、これはいろいろな資金移転等々も中であるんでしょう。しかし、それが二百億、三百億しかもうかっていない。つまり、一人頭でいって十万円もうかるかもうからないか、きつきつのところでやっているのが今の姿。しかも、それは資金のいろいろなやりくりをしているわけですから、この郵貯、簡保というものを完全に切り離せば、膨大な赤字が発生をしてくる。

 今は、この郵貯、簡保の収益は、先ほど、税金を払っている、払っていない、名前は税金ではありません。しかし、国庫納付金、数年間で一兆円、財政に貢献をしておる部分が、平たく言えば、外人投資家かもしれない、個人、企業、私の特定の人たちの収益に入り、国庫に入らなくなるということは、そちらの収益で均てんして、郵便ネットワーク二十万人、三十万人を維持することは当然ながらできないということは、数字を見れば自明の理であるということだと思います。

 ですから、私が申し上げるのは、三事業一体でなければ、その三事業一体は、これは公社という形なのか独立行政法人なのか、このいわゆるマネジメントのやり方、プラクティスはいろいろあります。社長に民間人を持ってくるのか、実力主義の人事をやるのか、情報公開をきちっとするのか、政治活動を変に行わないのか、そこら辺はすべてきちっとやる必要はある。

 しかし、最大の問題は、かつて大蔵省が、国債、最低の金利ですが一番安定したもの、それにプラスアルファ一%ぐらいくれていた。それを大蔵省はもう払えない。なぜか。銀行である大蔵省は不良債権問題を抱えていて、プラスアルファを払うどころか、元本すら本当は返せない。

 ということは、この郵政三事業の最大の課題は、財務省から独立をする。国債を買ってもいいけれども、自主運用をしていく。そして、その範囲が大体五十兆円ほどの自主運用がきちっとできれば回るわけでございます。今、郵貯は二百五十兆あります。大体二百兆ぐらいが多分安定状態になる。そうすると、四分の一のお金をきちっと国債以上で、ここら辺が二%、三%ぐらいで回れば、全体の郵便ネットワークが維持できる。そして、このサイズが農林中金のサイズと同じなんです。

 ですから、平たく言えば、農林中金式のマネジメントをそこにぼんと持ってくれば、公社の形態のままでできるではないですかと。しかも、預金限度一千万、貸し付けは直接しない。信金、信組をつぶすわけじゃないんですね、協力できるんです。そして、信金、信組が一生懸命貸してきた、中小企業に対する、あるいは個人に対する、学生に対するローン、これを買い取る。そして、買い取ったものを証券化したものに郵政がお金を出せば、まさに民にお金が流れるわけでございます。

 それを申し上げております。

桝屋委員 反論をしたいところもあるんですが、時間が来てしまいましたので、以上で終わりたいと思います。ありがとうございました。

二階委員長 次に、岩國哲人君。

岩國委員 民主党の岩國哲人でございます。

 四人の参考人の皆さんには、大変お忙しい御日程の中を、こうして私たちのために貴重な御意見を御陳述いただきまして、心から感謝いたしております。

 四人の参考人の皆さんに一つずつお伺いしたいことがありますけれども、まず最初に、私は世界のいろいろな国で郵便局を使ってまいりました、ニューヨークでもロンドンでもパリでも。ニューヨークは、たまたま近くに郵便局がありました。ロンドンは、郊外の小さな、テムズディットンという村のようなところで近くに郵便局があって、これもまた大変便利でした。パリは、十六区といういわゆる高級住宅街の中でしたけれども、シャンゼリゼの地下の大駐車場に車をとめて、そして、クレディ・リヨネとかソシエテ・ゼネラル、銀行へ行くというよりは、私の家内はやはり近くの郵便局へ行っておりました。東京へ帰って世田谷でも、近くの千歳郵便局。今、横浜の青葉区で、近くのあざみ野郵便局。

 どういうわけか、私も家内も、出雲で育ったせいか、近くの郵便局が大好きでございました。どこへ行っても郵便局を使わせていただいて、日常のお金は郵便局、お金を借りるときだけ銀行へと。なかなか頭のいい家内でございまして、そういう使い分けも知っております。残高はせいぜい十万から五十万しかありませんけれども、一日置きに郵便局と銀行の間の残高を調整してやりくりして、それでお金のベテランになったつもりでいるわけでございます。

 そういうことで、郵便局とは切っても切れない、そういう思いをしてまいりましたけれども、出雲市長として、この郵便局の存在というものを私はつぶさに見てきました。郵便局の皆さんが、いざ災害というときには、出雲も何回も災害に襲われたことがあります、消防団と同じように率先してボランティアに駆けつける。だから山村の人も、郵便局の人があれだけ頑張っているんだ。そういう普通はボランティアをしない人までがボランティアに駆けつけたくなるのは、そういう郵便局員の背中を見ているからなんです。

 そうした意味で、田村参考人にお伺いしたいと思いますけれども、安心機能ということもおっしゃいました。金融弱者がふえていくとも。これは残念ながら、自由主義経済、市場の原理でどんどんどんどん世界の先進国の中でもそういう人はふえております。この郵便局というネットワークは、これからもっともっとそういう機能を強化すべきなのか、今現在でいいのか、少しは軽くして市場原理にゆだねた方がいいと思われるのか、三つのうちのどちらでしょう。

田村参考人 お答えいたします。

 このネットワークを十分に生かすように、安心機能を強化した方がいいと思います。

 例えば、今、郵便局にはボランティア貯金というのがありますが、あれは要するに我々の利子の一部、二〇%がボランティアに回るだけですが、実際には介護ボランティア貯金というようなことをする。私が時間があるときに東京で御老人のお世話をする、そうすると、私の田舎で、私が二時間するとどなたかが二時間私の母を介護してくれる、こういういろいろなグループがございます、現在。しかし、これは全国のネットワークになっておりません。これを全国でやるとなると、これは郵便局しかないと思うんですね。そんなふうにして、郵便局が介護ボランティア貯金をやれば、随分安心がいく。

 そのように、安心機能はもっともっと工夫によってふやすことができるだろうと思います。

岩國委員 島根県だけではなくて大都市も最近そうですけれども、日本は非常に災害の多い国なんですね。アメリカがどうやった、イギリスがどうやった、ドイツがどうやった、ニュージーランドがどうやった、オランダがどうやった、そういう議論がここでは非常に多いんですけれども、大体民営化をどんどんどんどんやってきたところは災害の少ないところ、災害の多い日本にはまた別の価値観というのが私はあると思うんです。

 それで、山崎参考人にお伺いしたいと思いますけれども、あなたはそういうお金の世界で、私もそうでしたけれども、そういう市場原理の中に身を置いてずっと見てこられました。私は、こういう郵便局という二万五千のネットワークというものは、言ってみれば日本の大きな財産である。これを時々、見えざる負担というふうな言い方をする人がありますけれども、見えざる負担どころか、見えざる貢献の方をしっかりと評価すべきじゃないかと思うんですね、これを企業価値として見るならば。

 私は、この二万五千の郵便局の拠点を、単にお金や貯金や保険の出し入れの拠点というそんな小さな次元の話ではなくて、国民が小さなこの日本列島の中でどこでも安心して住める、おじいちゃんもおばあちゃんもきょうも安心だと思う息子だからこそ、息子も元気を出して仕事ができる、何も山間地に住んでいる人だけではなくて、山間地におじいさん、おばあさんを持っている息子や娘さんが大都市で一生懸命働くから、日本の生産性が私は上がっていると思うんですね。

 そういう二万五千の拠点に、もっともっと私は、介護の拠点あるいは防災の拠点、行政的な公的なサービス、パブリックサービスを、ポストサービスだけではなくて、ポストサービスの上にパブリックサービスというものを今こそ担ってもらう、そういう一つの哲学なりビジョンというのを日本は持つべきではないかと思うんです。

 今、金融危機や、あるいはメガバンクでさえも危ない、どんどんどんどん昔の名前が消えてしまって、一体あの銀行は昔、どの銀行だったかよくわからなくなってきた、そういう金融不安のときに、この郵便局というネットワークに一つの企業体というかセーフティーネットとしてそういう負担をしてもらうということについて、山崎さんはどういうお考えですか。

山崎参考人 若干、先ほどからの歴史の話をもう一度ひもときますと、まず、官から民へということがスローガンに唱えられるのは、民の方が官より明らかにすぐれている場合かと思います。例えば、国鉄の場合はそういったことが言えたかと思います。民営化は必然であった。

 過去十五年間、起きたことは何でしょうか。民間銀行がほとんど、しかも都銀最大手を含めて実質的にゼロ金利を維持し、公的資金を四十六兆円も、国民の資金を入れないと全部破産していた、その民間銀行にしてしまったということだと思います。

 そのときに、でも日本の金融が崩壊しなかったのは、郵貯、簡保があったから、この安心があったから。そして、三事業一体だから、郵便のときに、今岩國先生がおっしゃられた、そういう安心をお年寄りにお届けする余裕が出てくる。

 郵便事業だけでは、そもそも二万六千の局ははっきり言って全く維持できないと思います。どのような数字のトリックを使われるのかわかりません。ただ、今の収支を見られれば、郵便事業に明らかに補てんをしていてもかつかつ状態ということは、どう考えていただいても、何十万人の組織、二万六千の局が維持できるわけはないわけでございまして、ということは、なくなる。そうすると、そういう国の安心がなくなれば、中国のような、田舎は本当に何もない、そして都会に何億人が流れてきて、そこでバブルが崩壊する、戦前の大恐慌あるいは日本の戦前に非常に似た、そういう社会に逆戻りするのかなと不安になります。

岩國委員 今までのポストサービスの中の金融機能というのは、いわゆるお金のセーフティーネットの役割を果たしておった。お金のセーフティーネットの時代から、これからは暮らしのセーフティーネットへ、私は、もっとそれを広げていくべきじゃないかと。そういう発想でこの二万四千七百の拠点というものを見れば、日本はすばらしい財産を持っていると私は思うんです。その価値を減ずることなく、もっともっと有効に活用していく。市町村合併でどんどん役所が遠くなった、しかし、近くにある郵便局は輝いて見える。今まで以上に安心感を提供するのは、今こそ私は、百年間、足腰を鍛えてきた郵便局がこれから国民に大きくお役に立つ時代がやってきたんじゃないかと思うんです。

 加藤先生の官から民へ、これは、我々民主党もそういうことを言っておりました。小泉さんも同じことを言っていらっしゃいます。そして、けさお伺いした中で、民営は自由主義の基本ということを加藤先生はおっしゃいましたけれども、私はこれは間違いだと思うんです。民営は決して自由主義の基本ではなくて、自由主義の基本は健全な公だと思うんです。公的なものが、公的なインフラがあるから、その舞台の上で企業が自由に力を発揮できる。

 私は、アメリカで十年、ヨーロッパで十年、日本で十年、三十年間、世界じゅうの会社を見ている、世界じゅうのいろんな政府や自治体のお金の集め方を見てきました。強い国というのは、しっかりとしたパブリック、公的な基盤がしっかりしているところほど、そこにある企業が自由に活躍できるんです。民がしっかりしているからその上に立派な公ができるのではなくて、公の精神というのは、立派な政治があって、立派な行政があって、そして、民間にはできない、公的機関がきちっとパブリックサービスを果たしている、だから民間企業は伸び伸びと生き生きと自由な発想で仕事ができる。

 私は、自由主義の基本は民ではなくて公だと思うんです。私は、これがわかるために四十何年かかりました。私も四十年前は、加藤先生と同じように、民こそ自由主義の基本だ、そんなことを学校で教わって、そう思ってきたんです。そういう目で見て、十年間ヨーロッパで、十年間アメリカで、十年間日本で、私はようやくわかってきました。自由主義の基本は立派な強い公があること、だからこそそこに強い企業が生まれると私は思うんです。私の考えは間違っているでしょうか。加藤先生、お願いします。

加藤参考人 今の立派な公があるから民が成り立つんだという考え方、間違っているかどうか。私は間違っていると思います。

 そのような考え方が今日本にやはりあるということは、公というものがいかに浸透しているかということの証拠でもあります。これをいかに福沢諭吉以来打破しようとして努力したかということは、皆さん御承知のとおりでございますが、いまだに私はそれができているとは思っておりません。それは、公というものがその基盤を持っている、財政的基盤を持っている限り、絶対に崩れないからです。それを少しでもいいから崩していかなければ、私たちは何もできないということになります。

 レッセフェアを御承知だと思いますけれども、国の力というものをいかに弱めていくかということに大きな流れがあったわけです。そのような流れが、実は、それを残したい残したいという人たちが余りにも日本には多過ぎました。

 ちょっと時間がないところで恐縮でございますけれども、明治改革が行われたときに、明治維新のときに、明治維新のときのその日、発令したその日に、江戸川のかわら業界が、私たちを助けてください、そうすれば私たちが毎年百両ずつ政府に差し上げますと言っているんです。このような考え方でどうして自由な活動ができるだろうか。私は、これは明らかに間違った発想ではないかと思っております。

岩國委員 私は、不幸にして慶応大学で学ぶ機会がなかったものですから、少し間違った学問をしてきたかもしれません。違った大学で勉強し、違った場所で、私は現場というのを見てきました。社会主義の国も共産主義の国も、そして典型的な資本主義のアメリカも、いろいろな国を私は見て、そこでいろいろな取引もし、仕事もしてまいりました。

 今度の郵政民営化について、加藤先生も法案等についてもよく知っていらっしゃると思いますけれども、組織を分社化して、そしてそれぞれ一つ一つを個別の企業として上場もし、そして民営化していく。この民営化していく会社の名前は先生御存じですか。一つは郵便貯金銀行、一つは郵便局株式会社、一つは郵政株式会社、これはみんな官の名前をつけているんです。民営化しようというときに、全部一つずつ昔の名前で出ています、官の名前で出ています。

 この間、そこに座っていらっしゃった五人の大臣、総理も含めて、私は伺いました。抜本的な、本格的なこれが本丸、本丸と言うんだったら、民営化にふさわしい名前をおつけになったらどうですか、ほかに何かいい名前浮かびませんでしたか。いや、この字が一番感じがいい。私は、その漢字の漢という字は漢じゃなくて官じゃないかと、官庁の。昔の官の意識そのものを持って今民営化を考えている。これは小泉さんも、加藤先生から見たらできの悪い生徒なんでしょうか。

 本当に自由主義の、そして民が基本であれば、それにふさわしい、名は体をあらわす、立派な、ああ、なるほど変わったな、これは民間の会社だなと思う名前をつけるべきではないでしょうか。我が国では、私だけが、先生は、間違っている、あなた勉強足りないとおっしゃいましたけれども、一番勉強が足りないのは、いつもそこに座っている小泉さんじゃないかと思うんです。一番大事な、民営化ということを言いながら、民営化の看板を堂々とかけるときに、今までの昔の名前そのままです。

 官名詐称。官庁の権限が後ろにある、政府の保証がここにある、そういう名前でなければ民営化できない、民営化やっていけないというのが、私は、今回の法案の欠点じゃないかと思うんです。

 同じ民間会社で、官の名前が全然つかない。私のところへファクスが来ました。建設局道路株式会社というのをつくって、これは認めていただけるだろうか。ぜひともあの優しい南野法務大臣に聞いてみていただきたい、あの法務大臣は何でも認めていただけそうだから。郵政株式会社も認める、郵便貯金銀行も認める。

 翁さんにお伺いします。貯金と預金の違いはどこにありますか。

翁参考人 郵政公社が扱ってきたものは貯金として、それから銀行などが扱っているものは預金、そういう理解でおります。

岩國委員 そうすると、今度できる郵便貯金銀行というのは、私の家内が行ったら、貯金通帳をもらうんでしょうか、預金通帳をもらうんでしょうか、どちらでしょう。

 その辺も、翁参考人は今度の民営化の設計に深くかかわってこられたということですけれども、郵便貯金銀行と書いてある以上は貯金通帳をいただけるんでしょうね。その銀行は預金ではなくて貯金を扱うところですか。お答えください。

翁参考人 私は、確実なことはよくわかりませんが、預金ではないかというように思います。

岩國委員 翁参考人が設計に参画されたこの郵便貯金、これを民営化して銀行になって、そしてその郵便貯金銀行は銀行法の規定を受けるんです。銀行法の中には貯金という言葉は出てこないでしょう。この銀行は一体、銀行法でできないことを堂々と看板で掲げようという。このごろは、牛肉でも、産地を間違えただけでも大変な問題です。産地を間違えるどころか、売りもしない商品を堂々と看板で掲げて、これが本当に本丸の民営化かどうか。加藤先生のおっしゃった民の精神はどこにあるのか。

 福沢諭吉は有名な言葉を言いました。天は会社の上に会社をつくらず、会社の下に会社をつくらず。会社は平等であるべきでしょう。これは福沢諭吉の言った言葉ですよ。それを、民間会社の上に官の名前をつくった、特別な会社に。そして、それよりも下にあると一般には思われる民間銀行と競争させる。スタートの時点から、これは福沢諭吉の精神に反しておるんです。教えた加藤先生も先生、教わった小泉さんも小泉さん。こういう根本が間違っているから、日本では、民だか公だかさっぱりわからない。

 例えば、一般に、官より民ができがいい、民に任せれば効率がよくなる、こういう間違った考え方があります。私もそう思っていたんです。

 平成元年、私は出雲市長に就任して、私の考えはいかに間違っていたかということを痛感いたしました。はるかに官庁の職員は責任感が旺盛。土曜日でも日曜日でも、出雲市役所は、土曜日、日曜日、一遍も閉めたことはありません。ショッピングセンターであけています。職員、減りました。土曜日、日曜日、サービスをふやしてなぜ減ったか。交代で休暇をとって、そして、月曜から金曜日のお客さんが少なくなったから、十人の職員が七人で済む。出雲市役所は七割体制でずっと来ているんです。こんなことをやれる民間企業は私はどこにもないと思います。

 私が言っているんじゃなくて、日本能率協会が、日本で一番すぐれたサービス、優秀な会社はどこか、出雲市役所、トヨタ、ソニー、資生堂です。

 やればできるんです。決して官は劣等生の集まるところではありません。やれば、ちゃんとそういうパブリックの意識さえ持たせれば、民よりももっと立派な仕事をやる、それが役所、だから、役に立つ所とずっと書いてきているんですよ。

 私は、そういう公の価値をもう一度見直す、そういう観点から見ますと、加藤先生のおっしゃった地域分割についても、国鉄のこと、道路公団のこと、これは地域性がありますから、西日本だ、東日本だ、やれ北日本だ、これは分けやすいんです。しかし、今度の場合は、会社を分割する、例えば貯金銀行についても、地域を分割して、お金の地産地消をお勧めになりました。これも、加藤先生、失礼ですけれども、間違いだと思うんです。お金の世界に地産地消という考え方はないんです。これは農林省の考え方。

 それも、地産地消といっても、出雲市でつくったキュウリやナスビが、給食センターに使わせようと思いまして努力しました、負けました、広島のナスビに、福岡のキュウリに。私は、野菜というのはいつもどこから来たかをチェックしています。負けてしまったんです。なぜ負けたか。地産地消を言い過ぎたために、結局は、もっと高値で売れる、もっと大量につくれるものを、出雲の農家は手を引いてしまった。手を引いたために収入が少なくなって、若い息子たちが農家をやめてしまって、結局出雲の農家は、福岡のキュウリ、広島のナスビに負けるような事態。ですから、地産地消は私は撤廃しました。

 よそへ売れるようなものをつくる、農業でさえも今はグローバルの時代なんです。まして、いわんやお金の世界、お金の世界の地産地消、西日本郵便貯金銀行、分けて小さくしてどうなるか。結局、そういう地方の銀行が、地方に貸せと言われると、いい貸し付けがないから、無理なハイリスクをとってローリターン、五年たったら経営ハターン、中央の銀行の傘下に入っていく、次々と地方の銀行。地方の銀行を消そうと思えば、上品に消そうと思えば、これが一番きく手なんです、このお金の地産地消というのが。

 加藤先生、間違っているでしょうか。地産地消というのは、農業の世界ならともかく、お金の世界を支配しているルールは地産地消ではなくて、弱肉強食というルールなんです。強い者が全部勝ってしまう。地産地消でいくか、弱肉強食の世界で地産地消を本当にやれるものなんでしょうか。御意見を聞かせていただけませんか。

加藤参考人 お答えいたします。

 最初、ちょっと恐縮でありますが、お聞きしておりましたらば、郵便局がどういうことをやるかということで、介護の問題がどうとお話しになりました。私は、そういうことこそが郵便局のこれからやるべき仕事なんだと思っております。

 これは、現在の民営化されていないところではできないんです。私はそれを言ったことがあります、ぜひそれをやりたいんだけれどもと。それを言ったらば、それは今の法律ではできないと。だから、民営化しなきゃならぬのです。

 例えば、国際便でございますけれども、国際貨物便だってやらせればいいというものではないと私は思っています。それは、やる条件をつくらなきゃだめです。

 それから、官が効率が悪くないとおっしゃいましたが、もちろん、そういうこともあり得ると思います。しかしながら、官の効率というものは仕組みがございません。つまり、効率を高めていくためにどうするかという組織ができていない。これができていない以上は、全体的にこれを推しはかることはできないと私は思っています。

 したがって、そのようなことは、私の今考えております中でいけば地域がやるべきことでございます。地域がやるべき仕事は需要がないとよくいいますけれども、うそでございまして、今地域は、教育問題、介護、福祉の問題、あるいは環境、ごみ処理の問題、すべて金がかかることなんです。中央ではなかなかできないんです。これを地域がやるのは当たり前なんです。だから、地域にお金を回してやるということが必要になってまいります。そういうことをやるためには、地域の状況がよくわかっている地方金融機関がそれをやるということは非常に意味のあることだと私は思っています。

岩國委員 私の理解が少し足りなくて、大変失礼を申し上げました。

 しかし、私は、そういった地域での介護、福祉をやるだけの体力をつくるためには、やはりそれだけの適正な利潤を上げなければならない。金融機関が適正な利潤を上げるためには、地域だけに限定されたのでは利益性が悪くなるんじゃないか、その点を私は心配して、そうしたお金のネットワークを地域で分断するということは、お金の世界ではちょっと今まで常識になかったということを申し上げたわけでございます。

 次に、加藤先生はこういった郵政民営化について、日本は郵政公社に切りかえて、公社としてどういう結果が出るか、それを見てから考えようということで公社が始まりました。そして、二年たちました。昨日、我々は生田総裁から二年間の御努力、その成果というものをこの部屋で聞かせていただきましたけれども、加藤先生は、この中期計画、そして郵政公社の二年間の努力というのはどういうふうに評価していらっしゃいますか。

加藤参考人 郵政公社が、生田さんになられましてから非常に努力をしていることはよくわかります。私もよくお話を伺うのでありますけれども、現在、既に御承知のように、利益は上がっている、二年間は黒字になった、しかし、それは減ってきているわけです。しかも、これが将来を考えたときには、外国企業と比べてとても勝てないことは明らかでございます。

 例えば、御承知のように、貨物郵便がどんどん普及してまいりますと、フェデックスやあるいはDHLが日本にもどんどん入ってまいります。これに対して、日本は出おくれました。やっと今度オランダと提携してやろうということになっていますけれども、これは第四位でございますからなかなかやれない。

 それから、私は、佐川急便の人たちが今中国に向かって出ているということをよく聞くのでありますが、実際に私も中国へ向かっていろいろなものを送ったり、あるいはそれを手に入れたりすることがあるんですけれども、そういうことをやりますときに、佐川急便がやれることは、上海の港まで持っていくことはできる、ところが、それから後、中国にそれを配るのにはもうとてもできない、DHLに頼むしかないということでございまして、我々としては非常に安定した状況ではございません。こういったことをもっと郵政公社が積極的にやってくれればよかった、それをやらないという状況でございました。そこが問題だと思っています。

岩國委員 中期計画、その達成度については、非常に努力し、いい方向へ行っていると評価をしておられるようでありますけれども、我々の中で議論になりましたのは、この中期計画、少なくとも最初の四年間きちっとやってみて、努力半ばでだめとか、あるいは中途半端にいい評価をするのではなくて、四年間やってから、もっと客観的でもっと信頼できる判断ができるんじゃないか、そういうのが議論の争点でございました。

 加藤先生、もう一つ、これは小さな質問ですけれども、システム設計について、先生、座長としていろいろ問題があるんじゃないかと取り組まれ、最終的な結論は、システム設計にはもっと時間がかかるという懸念を表明されたんでしょうか。あるいは、あと二年ぐらいでできる、〇七年には民営化ができるというふうに御判断されていますか。短くお答えいただけますか。

加藤参考人 今、公社が二年間にわたっては黒字を出したけれども、それは減少しつつあるということを申し上げましたが、このまま進んでまいりましたらば、物流とそれから金融と分けなきゃなりませんが、物流の方は、今申し上げたとおり、何とか頑張るような方策を立てればいい。例えば、先ほどお話がありましたように、郵便局がもっとほかの仕事ができるようにしてあげるというふうにすれば、これはかなり様相が変わってまいります。

 しかし、金融の方はそうはまいりません。金融の方は、これは御承知のとおり、先ほども申し上げましたが、国際会計基準が変わってまいります。その変わっていく中で、今、日本は減損会計などの検討もしておりますけれども、とてもとても、今は貸借対照表を使っていない、御承知のとおり、個々の郵便局は全部複式簿記じゃございませんから、これはやれないわけでございますね。

 そこで、システムの問題とかかわるのでございますけれども、個々の郵便局が個人会計でそれができない、複式簿記になっていない。ということは、お金が狂った場合、一体どういうふうになるのかというと、半年たたなければその実態はわからないという状況になっている。今の世界の金融の動きの中で、半年たってからわかるというような状況でしたら、これはもうとても国際会計には対応することができないわけでございますね。

 そこで、私どもといたしましては、これは二〇〇七年が一つのめどでございますから、何とか二〇〇七年までにこのような計算ができるようにしてほしい、システムを変えてほしいということを提案いたしました。

 このシステムを改定するに当たりまして、ベンダーに聞きますといろいろなやり方があるんですが、一つはウオーターフォール方式、つまり前倒し方式でございますね。前倒しでこれをやっちゃうという方式がある。それから二番目にはスパイラル方式、これは同時に並行的にやっていくやり方でございますね。こういうやり方がある。しかし、いずれも、郵政公社は、それはとてもできない、今の郵政公社の中にはそれをやるだけの力がない、こう言うんです。

 それでは、今の力でできるものといったらどうやったらいいのかというと、それは、たまたま窓口会社ができますから、新しく入ってくるお金については、新しい簿記会計をつくって、そして日計表で分類しながらやっていけば、これは後ですぐまとめればいいわけですから比較的早くできる、こういうやり方をすべきであると私どもは考えました。

 これならば、恐らく、郵政が今非常に重要な仕事と考えているもののほとんどはできるでしょうということを申し上げましたところ、郵政公社がそれを検討いたしました結果、大体六割はそれで解決できるという話になりました。

 そこで、それじゃ、それをやってくださいということと同時に、あとの残った四割はどうしますかというから、全部完璧にやることは、最後は必要になるけれども、今のところ、それは余り必要なものじゃないんだから、当然この部分は残しておいていいんだ、そして、やれるところをまずやっていくというのが普通のコンピューターのシステムを変えるときのやり方でございますから、そういうやり方をとった方がよろしい。しかし、それでもなお不安があるならば、若干の時間的おくれがあるでしょうから、それについては、例えば半年とかあるいは一年とかいうような余裕は考えることができるかもしれない。しかし、民間企業ではそれを約束しているなんということはないわけですから、これをどうして郵政公社が約束しちゃうところまでいっちゃうのか、そこはよくはわかりませんけれども、しかし、その辺のところについては、私は十分に対応できる、こう思っております。

岩國委員 ありがとうございました。

 それから、先ほど加藤先生のお話を伺っています中に一つ気になりましたことは、公務員共済、こういった二十七万人あるいは四十万人という負担の問題ですね。公務員という肩書であるがゆえに、年金の負担が大きくのしかかっている。

 これは我々も予算委員会あるいはこの委員会でも議論してまいったところでありますけれども、確かに年金の問題は年金の問題で改革しなきゃならないと思います。しかし、年金の問題があるからといって、公務員の数が多過ぎる、年金の問題があるから公務員を減らそうという発想は、我々としてはとりたくないわけです。

 つまり、悪いのは年金のシステムにあって、公務員が悪いから年金が悪いのではないんです。年金を憎んで人を憎まずという言葉がありますけれども、私は、年金を憎む余り人減らしをするという発想は、国会として、政治家として、とるべき対応ではないと思います。

 次に、翁参考人に二つ質問させていただきます。一つはお金の問題、一つは切手の問題です。

 お金の問題についてですけれども、郵便貯金の金額が大き過ぎる、大き過ぎることがいろいろなひずみをもたらすんだと。大きなことが問題であれば、小さくするということを考えられる。小さく、自主運用できるようにすれば、ある程度のプロ集団の助けをかりて、十分地域のネットワークとしての最低限の、一千万が二百万という限度に段階的に縮小することによって、私は、金融市場における対応、摩擦、混乱という問題は、それで一つの解決策になり得るんじゃないかと思うんですけれども、翁参考人はどういうふうにお考えになりますか。

翁参考人 お答えいたします。

 公社形態のまま、この形態を、より市場から、または国民生活、徐々に退場していくということでなく、前向きの事業展開を展望するということであれば、やはり長期的には、公社から民間になるということでその解決を図っていくことが重要ではないかというふうに思っております。

 規模の問題は、もちろん、規模を縮小する、ナローバンクのまま公的なものとして小さくなるという選択肢もあろうかと思いますが、やはり今のネットワークを活用し、今の人的資源を活用し、より国民生活のニーズに合った形で展開していくためには、民営化するということがふさわしいと思います。

 また、市場規律がしっかり働けば、規模の問題も、おのずと小さくなっていくというふうに考えております。

岩國委員 ありがとうございました。

 もう一つ、切手の問題。切手というものは、今度、郵便事業株式会社、民間会社が発行することになります。民間会社が切手を五千億、一兆円と、これは限度がありませんから、お客さんが買いに来れば売らざるを得ない。もうことしの切手の販売額は、これで売りませんということは言えませんから。

 買っていただいた切手が使われていない。つまり、言ってみれば、それは、ある日突然、切手を持った人が全国の郵便局にあらわれて、お金を返してくださいと。この金額は今幾らあると思われますか。その金額も頭に入れて、この会社が持っている、不良債権とは言いません、不良債務でもないでしょう、偶発債務と言えるような、どこにも計上されていないこの債務、この債務を引き継いで、この会社は民間会社としてやっていけるんでしょうか。この件についても十分検討されて設計に参画されたのか。

 大体どれぐらいのものがたんすの中に、あるいは、いろいろな企業が、これはバブルで好景気のときには、私も聞いております、切手を買うということによって経費で落とすことができたんですね。つまり、節税のために使われたこの膨大な切手、これは日銀券なら幾ら残高があるかわかります、国債なら残高がわかります、切手だけは、これはわからない、なぞの大きな国家的債務がある。これをこの新しい会社は継承しなければならない。

 この金額は、幾らぐらいあると頭の中に持っていらっしゃいますか。

翁参考人 正確な数字は承知しておりません。

岩國委員 そういうことは議論さえもされなかったんでしょうか。私は驚かざるを得ないんです。この債務を継承しなければ、だれが窓口でお金を払い戻しするんですか。

 こういう会社が上場できますか。山崎参考人、あなたはそういう世界にいらっしゃったから、こういうわからない債務をたくさん抱えた会社が上場を許されるかどうか。

山崎参考人 非常に難しいと思います。特に、それが巨額と推計される場合には、非常に大きないわば損失を抱えた状態になると思います。

岩國委員 こういう会社が上場できるという前提で考えているこの法案、私は道路公団のときにも申し上げました、資産を持たない会社がなぜ上場を許されるのか。

 結局、国鉄の場合には、上下分離が上下一体になって初めて、そのときに上場要件が認められて、上場されています。道路公団は、その問題を抱えたまま、いまだに解決しておりません。郵政の問題は、最初から、上下一体、分離どころか、大きな、だれもわからないような債務を抱えている。これを民営化する、そして取引所に上場を要求する、取引所がそれでも判を押してくれる。こんな大甘な設計というのはどこにもあり得ないんじゃないかと思うんです。そういう点についてもこの民営化法案については非常に大きな問題があるように思います。

 このような民営化法案については私どもはもちろん反対しておりますし、このようなわからない債務というものを引き継いでいく以上は、やはり公的な保証、公的な責任、それは国家なり公社なりが、皆さんの持っている切手は、いつたんすの中から持ってきても換金してあげますよという保証、信頼感を国としてしっかりと私は責任をとるべき問題だと思います。

 私は垂れ流しとは言いません。皆さん、趣味で買った人もある、あるいは節税対策で買った企業もある。そういうところがたくさん持っている切手が、この会社が破綻したために、窓口でもうお金を払えません、もうあしたから切手を持ってきても使えません、あるいは換金できません。これは国家的無責任の最たるものだと私は思うんです。

 設計に携わってこられた翁参考人、何か御意見はありますか。安心して、この私たちの設計した民営化法案、取引所上場も大丈夫です、株主さんもそんな心配する人はおりませんと言い切れますか、あなたは。

翁参考人 移行期間につきまして、郵便貯金や簡易保険が承継されるのと同様に、私は公的な機関においてつくられている債務については承継されていくということが必要であるというふうに思います。

 また、このデューデリジェンスということに関しましては、私はいずれの企業にいたしましても大変重要なことだと思っております。私自身は、そのデューデリジェンスの必要性を従来も主張してきておりますし、民営化に当たっては、きちんとしたデューデリジェンスをすることによってしっかりとしたバランスシートのもとでやっていかないと、投資家の信頼を得られないというふうに思っております。

岩國委員 私の時間が参りましたので質問を終わりますけれども、私は、こういう普通の会社の、あるいは普通の公団の場合には、道路公団でも国鉄でも、それから電電公社でも、だれも計算できない債務というものを民営化した例は全くないんです。それが切手という、株式でもない、債券でもない、第三の資本ともいうべき切手。この第三の資本は、資本勘定は、計算できない。これは初めてのケースなんですね。換金性があり、流通性があり、そして有価証券として通用しているものが、その有価証券残高の金額がわからない。私は、これは民営化できないし、民営化すべきではない、そのように思います。

 御意見を聞かせていただきまして、ありがとうございました。

二階委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 きょうは、参考人各位の貴重な御意見、本当にありがとうございます。

 最初に、加藤参考人から何点かお伺いをさせていただきます。

 昨年九月に基本方針が出て以降で、参考人の御意見、新聞記事で拝見したものの一つに、企業分割は民営化の必要条件だと述べておられました。分割された企業同士で競い合うし、規模が小さくなることでほかの民営企業との競争上も公正になる、巨大企業では社内外の反対勢力を抑えることが難しい、分割で反対派の勢いや矛先を分散し経営者が組織をコントロールしやすい規模にすれば、企業にとって最善の策をとることができる、このようなことを述べておられました。

 そこで、お伺いしますが、この加藤参考人のお立場から見まして、今回の法案の制度設計というのはどういうものなのか。株式持ち合いも可能ですとか、銀行代理店契約義務づけ、その延長も妨げない、一体経営となることも指摘をされております。こういった今回の法案の制度設計は、分割は民営化の必要条件だとおっしゃっておられる参考人のお立場から見てどのようなものか、この点をお答えください。

加藤参考人 お答えいたします。

 企業分割というふうに私が申し上げましたのは地域分割も含めておるのでございますけれども、そういう分割をやはりしなければ本当の企業の活動というのはできないと私は思っています。

 その点、今回の場合、例えば地域分割については、これは経営者の後の判断にゆだねることになっております。私は、当然、運営上、やっていくうちに、そういう方向に行かざるを得ないだろう、そうしないと地方へお金が回るということの意味が薄れてしまうと思っておりますので、ここのところは、百点を上げるわけにいかないという意味で、五十点だということを申し上げたことがあります。これが一つであります。

 それからもう一つは、どんぶり勘定というのがあります限り、それは結果的に国際対応ができません。そういう意味では、どんぶり勘定を避けるために、早く個々の郵便局が複式簿記を採用する必要があるということを私は主張いたしましたが、そのような複式簿記を採用するということに対して、現在の特定郵便局長の間でちょっと聞いてみますと、やはり一割合格すればいいかどうかという状況だというわけでございますので、ここではまだとても近代経営ができている状況ではないというふうに私は判断をしております。

 こういったことを含めて私は企業分割と考えておりましたので、今回の場合、まだこれから大いに議論してほしいことが残っているというふうに私は思っております。

塩川委員 株式持ち合いや代理店業務の延長のような一体経営が可能だと言われているわけですけれども、それそのものについてはどのようにお考えでしょうか。

加藤参考人 一体経営ということにつきましては、これは後ほど民間の金融がどういう制度改革を行うかによってもいろいろ出てまいります。例えば、民間の生保会社が果たして民間銀行と同じような窓口販売ができるかどうかといったような問題についてもこれから議論する必要がございます。

 こういうようなことが残っておりますので、それをやっていくことが今同時に進められておりますので、私は、当然そちらの方向へ行くというふうに考えております。

塩川委員 続けて、翁参考人に伺います。

 参考人は、この郵政民営化にかかわりまして、金融部門について第一に重要なことは政府保証の廃止ということを述べておられます。先ほどのお話の中でもございました。そのお立場から見て、今回のように株式持ち合いが可能、国の関与する特殊会社が金融機関の株式を保有するという形も生まれ得ると言われている、こういった制度設計というのは、暗黙の政府保証が残っているというふうに見ておられるんでしょうか。

翁参考人 お答えいたします。

 代理店契約が非常に長過ぎますと、かなり一体経営というふうに見られるのではないかと思っています。私といたしましては、なるべく多くの自由な形で代理店契約が、窓口会社もそうでございますし、金融本体や保険会社もいろいろなところと提携することによって相互に自立を図っていくという方が望ましいというふうに思っております。

塩川委員 株式保有の問題はどうでしょうか。つまり、持ち株会社や郵便局会社あるいは郵便事業会社など国が関与する特殊会社、国が株式を保有しています。そういう会社が郵便貯金銀行の株式を保有することもあり得るという点では事実上の政府保証になるんじゃないかという声もあるわけですけれども、その点はどのようにお考えですか。

翁参考人 私は、株式所有につきましては、できるだけ本来は持たないという方向が望ましいというように思っております。

塩川委員 そういう点では、事実上の政府保証が残るような形というのが今の制度設計だということかと思います。

 では、重ねて翁参考人に、銀行代理店業の規制緩和に関連してお伺いいたします。

 参考人の書かれたものをお読みした中で、銀行代理店業の規制緩和に関連して郵便局会社の例も挙げておられました。今回提案されている窓口ネットワーク会社は他業務を営みながら銀行代理店となる可能性がある。他方で、銀行代理店の規制緩和に当たっては、同時にさまざまな環境整備も必要と金融監督上の問題点も指摘をされておられます。

 ですから、当然規制緩和が行われる、他方では何らかの監督強化策が必要ではないか。どのようなものが必要だとお考えなのか、そういった中に、いわば銀行法の改正も必要とするようなことも求められているんではないかと思うんですけれども、その点の御見解をお伺いいたします。

翁参考人 銀行代理店業務の規制緩和そのものが銀行法の改正を必要とするものだと思いますので、まずそこで必要だということと同時に、やはり、監督上の対応として、今まで銀行以外のところで営業ができる仕組みというのは日本にはございませんでしたので、新たな拠点で銀行業務を営むに当たっては、さまざまな配慮、規制が必要になってくると思います。ただ、その規制も大きな負担にならないような、顧客をきちんと守れるような最小限の規制が必要になってくるというように思っております。

塩川委員 私が竹中大臣あるいは伊藤金融担当大臣のお話を聞いたところでは、郵便局会社と郵便貯金銀行の代理店契約につきましては内閣府令の改正だけで結構なんだ、銀行法の改正は必要ないんだということでしたけれども、それはやはり問題があるということになりますか。

翁参考人 私は、今回民営化するに当たっては、ほかの民間金融機関も同様にこういった銀行代理店業務が営めるということがまず先に議論としてあったように承知しております。そして、そういった銀行代理店業務の規制緩和ということは、かねてから、顧客の利便性の向上のためにも必要だという主張があったというように承知しております。そういった議論が土台にあって、こういった窓口会社というようなものが出てきたというように私自身は承知しております。

塩川委員 銀行法改正が出ていない段階で民営化の今回の銀行代理店業務だけが進んでいるものですから、それはちょっと不整合ではないかというのが今問われているんではないかなと思っております。ありがとうございました。

 続きまして、田村参考人に伺います。

 お話の中で、金融弱者のことについてお述べになりました。そこで、基金があるから大丈夫なのか、そんなことはない、イギリスの事例があるではないかというお話がございました。イギリスの、八千五百の局の維持のために八百五十五億円かける、そういうお話もありました。

 そういう点で、イギリスで問題となっているそういうことについて、少し具体的な背景も含めてお話しいただければと思っております。

田村参考人 お答えいたします。

 イギリスの場合は、郡部の八千五百の郵便局を維持しようということで、それ以上全体にはあるんですが、郡部の八千五百、それだけでも八百五十五億円日本円にしてかかっているということです。

 私が申しましたのは、日本は大体一万ぐらいあるので、今のネットワーク、全部では二万五千なんですが、郡部に近いもの、あるいはその他離島等々、それらを合わせましたときに、どうしても一万ぐらいないと本当は非常に不便になりますよ、それはこの三百六十億円ではとても維持できません、こういうことです。

 もう一つ大事なことは、幾らその基金を入れても、基本的には業務を委託するかしないかは民営化された郵貯、簡保の自由なんです。したがって、地域によっては、絶対ペイしないところには委託するはずがありません。そこで郵便局があったとしても、郵貯、簡保の事業はそこではないということになる。ひいては郵便局がなくなりますよ、こういうことでございます。

 以上です。

塩川委員 重ねて田村参考人に伺います。

 やはり金融排除の問題として、イギリス、アメリカの例も紹介をされました。私自身もやはりその点は大変心配なところで、そういう点で、海外ではどういう問題が起こっているのかということについてもお話しいただければと思っております。

 日本の場合には、やはり郵便貯金が例えば口座維持手数料は無料、それが民間金融機関も有料になかなかできないという大きな力にもなっているのではないか。そういう点でも、海外の事例、金融排除の問題点について、具体的な内容について御紹介もいただければと思っております。

田村参考人 お答えいたします。

 基本的には、一番大きな問題はやはり口座維持費用ですね。これは、口座が小さくなればなるほど高くなる。日本に入ってきている外資でもそうですね。それによって実質的に口座が開けなくなっている、こういうことですね。だから、口座を開いちゃいけないとは言っていません。しかし、小口預金になればなるほど維持費用を要求されます、そこで実質的にもう開けない、こういう状態で、これが日本も同じようになりますよ、こういうことでございます。

塩川委員 ありがとうございます。

 山崎参考人にお伺いいたします。

 貸し手の財務省と借り手の特殊法人の改革に手をつけないで預金者の郵貯や簡保を改革するのは、順序が違うということを述べておられました。そういう点で、なるほどと思っておるところであります。

 必要な改革という点で、参考人がことしの初め毎日新聞で述べられたインタビュー記事でしたか、拝見しまして、そこでも「財務省理財局と特殊法人の検査に入り、不良債権の実態を明らかにして損失を確定し、処理をすることが急務」だ、やるべき改革はまずここなんだという点について、参考人が具体的に事態の状況について把握している中身、どういう取り組みが今必要なのか、その点、少しお話しいただければと思っております。

山崎参考人 御承知のように、財政投融資については、本予算、一般会計と違いまして、ほとんど審議がなされていない。そして、財務省理財局に実際の審査機能、まして、モニター、回収、特に子会社に対する資金、人の流れそのほか、全く通常の金融機関としての貸し付け責任を果たしておらないわけでございます。

 これにもちろん非常に類似をしておりましたのが民間銀行における不良債権問題、それにおける手法を準用するのが適当であろうということですから、やはり機関として、全く財務省、金融庁から独立をした公的金融検査庁というのを、極めて独立性の強い、特に専門家を外部、民間からも集め、特に最初にやるべきことは、資産、債務の時価評価でございます。つまり、現状がどのようになっているのか。

 そして次に、恐らく産業再生機構に似たような、あるいは産業再生機構を改組してもできるかと思うんですけれども、公的金融再生委員会というのを別途設け、そこで仕分けをしていく。清算、廃止をするもの、存続をするもの、あるいは十分に民営化にたえ得るものを民営化する、この仕分けの作業をしなきゃいけない。

 具体的に最も簡単なのが、最大の出城であります道路四公団。これにつきましては、まさに二〇〇七年から道路特定財源が余るということがいみじくももう発表されており、本四架橋公団に現実に税金を投入するわけですから、高速道路で取っている三兆円近い税金を高速道路に使えば無料化ができますし、さらに、その債務を今国債で低金利で借りかえをすれば、人一人の首を切らなくても高速道路は無料になりますし、道路公団は廃止できますし、四十兆の債務は国のバランスシートに移行しまして、道路四公団の債務という非常に高金利のものは消える、そして高速道路は無料になる。ですから、出城の中で最も有効かつ国民にとって目に見えるメリットがあるのがこちらでございます。

 そして、システム的には、公的金融に対して、理財局に対して検査に入る、そして処理をする、処分をする官庁、国家権力による官庁を大至急設立することが必要だと思います。

塩川委員 終わります。ありがとうございました。

二階委員長 次に、横光克彦君。

横光委員 社民党の横光克彦でございます。

 きょうは、四人の参考人の皆様方、本当に貴重な御意見をありがとうございました。

 お尋ねをいたします。

 加藤参考人、そしてまた翁参考人に、同じ趣旨の質問をまずさせていただきたいと思います。

 加藤参考人、非常にこの民営化の必要性を強く訴えておられました、それぞれの理由を述べながら。しかし、恐らく加藤参考人が、まあ翁参考人もそうでしょうが、本来描いておられたいわゆる民営化の姿と、現在出てきている法案の姿と大きく違っているという思いをお持ちだと思うんですが、この現在出てきている法案につきましてどのようなお考えをお持ちなのか、まずお聞かせください。

加藤参考人 簡単に申し上げますが、私は、先ほど申し上げましたように、やはり将来は地域分割をしなきゃならない。その地域分割が今度の場合は経営者の判断に任されているということで十分かどうかという点についてはまだ問題が残されている、こういうふうに私は思っております。

翁参考人 お答えいたします。

 私は、もう少し金融部門が、例えば新旧分離などにつきましても、もっと信託方式などによって明確に分けられていい。また、金融新会社の残高を小さくすると同時に、移行期間をより短くするということでできないかというようなことも考えておりましたし、また、代理店契約などについては、より自由度の広い方向で考えるべきではないかというようなことも考えておりました。

横光委員 最初の制度設計に参加されたときには、安定的な代理店契約という言葉はあったんでしょうか、翁参考人。

翁参考人 基本方針の段階でどういうふうな書きぶりだったかということはよく覚えておりませんが、もう議事録も公開されておりますけれども、代理店契約のあり方についてはいろいろな議論をしてまいりました。それぞれの事業の独立と、それから自立のためにどこまで代理店契約が必要かということについて、かなりいろいろな議論が行われてきておりました。

横光委員 基本方針と随分違った法案になっているというそれぞれの御意見ですが、それでもやはりこの法案は成立させるべきだというお考えでしょうか。お二人に。

加藤参考人 今回の法律につきましては、二つ守るべき原則がある。一つは、どんぶり勘定をやめること。これをやめない限りは、私は金融と物流の分離ができないというふうに考えています。それから、二番目のやらなければならないこと、基本的方針は、これは公務員であることをやめること。この二つが基本的であって、この二つが守られている限り、現在の法律は基本的に守られる、こういうふうに私は思っております。

翁参考人 お答えいたします。

 財政の健全化、経済、金融の活性化ということを考えた場合に、郵政の制度を今このまま残しておいては、その見直しというのが中途半端に終わる、むしろ弊害も起こしかねないというように思いますので、やはりこれらの見直し、検討、改革を整合的に行っていく必要があるというふうに考えます。

横光委員 その法案が国会で審議中ですが、さらに修正という動きもございます。もうこれ以上修正すべきか修正すべきでないか、お二人、ちょっと御意見をお聞かせください。

加藤参考人 修正すべき点があるとすれば、それは地域分割に踏み切ることであります。それだけやってくれればいいと私は思っています。

翁参考人 私は、先ほど申し上げましたが、リスク遮断、それから公平な競争条件の担保、それから市場、マーケット規律といった点について御検討いただいて、そちらの方向の修正であればいいのですけれども、それ以外の修正につきましては、私自身は余りいいと思っておりません。

横光委員 今のお話では、どうも逆の方向の修正案の方に動いているような気がします。

 田村、山崎参考人にお聞きいたしたいと思います。

 お二人は、民営化されたらどういうことになるかということを詳しく説明されました。田村参考人は、局が減る、過疎地の弱者が不利益をこうむる、局があったとしても、競争の結果、小口利用者が不利となり、口座が持てなくなるような状況さえ起きる、こういうことでございます。また、山崎参考人も、民営化されてしまったら、効率化により地方の郵便局が閉鎖され、地方が発展せず、地域の格差が拡大する、最後には国土の均衡ある発展が崩壊するとまでおっしゃったわけでございます。

 現在大変な、それでなくても二極化が進んでいるわけですね。そういった中で、今お二人が述べられたような意見はさらに激しい二極化を招くことになるわけで、大変心配いたしております。この理由として、郵便事業だけでは郵便局の全国ネットワークの維持は不可能だということがその理由でございます。つまり、郵便事業だけではということは、結局、郵貯、簡保、金融サービスは、もう今の法案では地方ではやっていけないというお考えなんでしょうか。

 田村参考人、山崎参考人、それぞれにお聞きしたいと思うんです。

田村参考人 地方でも一体でやっているわけですね。それを切り離した場合に、郵便事業だけではできないから郵便局が減る、こういうことでございます。

 だから、現在は一体でやっているから郵便局が維持できている、こういうことでございます。

山崎参考人 幾つかの観点がございます。

 先ほど銀行法の議論であった点は、本当にイコールフッティングでやるのであれば、例えばだれかが預金と保険と宅急便を一緒にやる会社をやりたい、これを銀行法、保険法そのほかを改正せずにできるはずがないわけです。それなのに、それを改正せずにやろうということは、明らかにこれは民営化と言いつつ官の実態を残しておる。

 それは、突き詰めて言えば、本当に民営化というのをやるのは、もう一つのかぎになるのは、貯金銀行、保険会社、これの持ち株は一〇〇%国のものではなくなって、資本関係は、基本的に最終的にゼロになるということになっていますから、収益は分けられない。そうすると、圧倒的に多くの人は郵便事業に従事をしている、そこで付随的に吸い上げられたお金をまた再分配することで郵便ネットワークを維持している、これが維持できなくなるということになるかと思います。

横光委員 審議の中で、政府の方は、いわゆる移行期間あるいは移行後も、完全に売却した後も、安定的代理店契約があるからとかあるいは基金を設けるからとか、いろいろな理由で金融サービスは、全国のネットワークは維持できるんだ、撤退するようなことはないんだという答弁をずっと続けておられるんですが、そのことについて山崎参考人はどのようにお考えですか。

山崎参考人 これは、貯金銀行あるいは保険会社を上場するということと根本的に矛盾します。

 というのは、本当に上場するということは、ホリエモン騒ぎではありませんが、株主利益を最優先することが正しい行動でございます。そうしますと、貯金銀行、保険会社の株主は何を要求するか、毎年利益を上昇させることでございます。ということは、非効率な郵便局とのおつき合いをやめていくという当然の株主からのプレッシャーがかかる。それでないと民営化というものをやった意味はないわけでございます。

 ということは、民営化し、株式を全面的に民間に売却するということは、非効率な過疎地域における郵便局に対するサービスを停止するということとほとんど同意義になるということでございます。

横光委員 田村参考人、山崎参考人、それぞれ、仮に、民営化されたら、また郵貯銀行が成功したらというような場合、中小金融機関に大変な影響を与えるということをおっしゃったんですが、加藤参考人も、地方の活性化、地域金融とのジョイントが大事である、地方の金は地方で使えというお考えを示されました。まさに、民営化されたら、お二方は、完全にこの地域金融機関は大変なことになるだろう、そのことによって、まさに中小企業の、地方の皆様方の生命線ともいえる信金あるいは信組、こういったところには大変な打撃を与えるだろうというお考えを示されましたが、加藤参考人は、民営化されたら、地域の金融機関にどのような影響を与えるとお考えでしょうか。

加藤参考人 地域の金融機関がどういうところに金を貸せばやっていけるかということを、それぞれその担当者は知っております。それを知っているということは、これは、今まで郵便局はそういう貸し出しをやっておりませんからできない。そこで、むしろ提携することによって、そのお金をあるいは融資することによってできるというふうに考えています。ですから、地方はむしろそれによってやるべき仕事がふえるというふうに私は考えています。

横光委員 今の、これが民営化された場合に、地方金融機関は大変な打撃を受けるだろうという考え、そのことについてのお考えと、もう一方は、都市銀行、大銀行に与える影響、それぞれお述べいただけますか。

翁参考人 お答えいたします。

 地域における郵便局ネットワークというのは、地域金融機関の代理店としても活用されるとよりいいのではないかというように私は思っています。つまり、復々代理というか、いろいろな形で地域金融機関と郵便局がネットワークをつないでいくことによって、より活性化していくことができるのではないかと思います。

 それから、規模の問題がございますが、この規模の問題はやはり一つ大きな論点ではございますが、特にコミュニティーバンクを目指そうという場合には、大手銀行とは直接的な大きな競争にはならない。ただ、地域金融機関に対してはいろいろな打撃がある可能性がありますので、やはりその点は、金融監督上、よく配慮して、移行期間などもよく見ていく必要があるというふうに思っております。

横光委員 移行期間は注意すべきだが、地域郵便局が金融サービスを続けられれば、民間となっても地域は活性化するというお考えを今述べられたと思うんです。

 田村参考人は、これは全然逆に、縮小するということを言われましたが、この点はいかがですか、今の翁参考人の御意見に対して。

田村参考人 現在、中小の金融機関は非常に苦労していまして、無担保ローンというのを出しまして、それで、その保証を消費者金融につけてもらっている、こういう状況ですね。そういう現実を見たときに、そう簡単に、シンジケートローンが郵貯とつながっていく、私はそういう認識は少し甘いな、こんなふうに思います。

横光委員 山崎参考人にお尋ねしたいんですが、三事業一体で、郵政公社の経営形態でもやれるじゃないか、農林中金を参考にすべきじゃないか、成功例があるじゃないかというお話でございました。

 やはり、この問題の一番大きな課題の一つは、三百五十兆というのをどのように運用して活用するかということでございます。ここが民営化するかしないかによって大きく違うんですが、この活用、運用の仕方をもう一回、山崎さん、お聞かせください。

山崎参考人 郵貯が大体二百五十兆円、それから簡保が百二、三十兆円ということですから、合計三百六十兆内外のお金。これの、通常の銀行業、保険業における資産配分、大体、簡保だと五割から六割が国債、これは保守的運用ですが、そして郵貯においても八割は国債。ということは、七割のお金は国債に入るわけですから、この部分についてはそれほどのマネジメントを現状から変える必要はない。つまり、人員でいって、はっきり言えば人っ子一人かえる必要すらなくて、その能力審査だけをすればよい。

 問題は、残る三割でございます。三割ということになってくると、郵貯でいえばおよそ五十兆円。ですから、この五十兆円の運用をきちっとできれば、ここを、メガバンクをつくって一%稼げますよというのが今回の民営化の試算でして、そんなことができるのであれば、今のメガバンクはつぶれておりません。

 自分で貸し付けに行って委託とか提携とおっしゃいますが、では、委託手数料というのは幾らもらえるんですか。五銭とか十銭、つまり〇・○五%、〇・一%でございまして、一%を稼ぐためには、先ほどのだと三%ぐらいのリスクをとらなきゃいけない。三%をとった中で〇・一%、つまり三十分の一だけもらって、それで業が成り立ちますか。答えは、成り立たないわけでございます。

 ですから、そうじゃなくて、高い金利を、商工ローンよりははるかに低いけれども、五から七%という金利が欲しいわけです。それでお金を借りたい中小企業が何十兆とあるわけだから、そこにお金を出す。それは、信金と信組がまず出す。それを例えば商工中金が集める。全国に散らばすから、分散してリスクが下がる。安全にして格付を高くした部分でも、なおかつ国債よりかなり利回りの高いのを郵貯が買えば、郵貯のお金は商工中金に、商工中金から信金、信組に、そして個人に、中小企業に回って、みんなが生きていけるじゃないですかというのが先ほど申し上げた共生型の証券化のシステム。

 民間の金融機関がすべてつぶれたアメリカの大恐慌のときに、アメリカ政府は、政府機関としての金融機関をそこでつくって、初めて金融再生をしたんです。日本のように、政府が助けなければ民間金融機関が全部つぶれるときに、とりでになる公的金融をつぶすという全く逆行することをやるのが今回の民営化であると申し上げております。

横光委員 終わります。ありがとうございました。

二階委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三十二分開議

二階委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、内閣提出、郵政民営化法案、日本郵政株式会社法案、郵便事業株式会社法案、郵便局株式会社法案、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案及び郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の各案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、参考人として日本郵政公社総裁生田正治君及び日本郵政公社理事山下泉君の出席を求め、意見を聴取し、政府参考人として内閣官房郵政民営化準備室長渡辺好明君、内閣官房内閣審議官中城吉郎君、内閣官房内閣審議官細見真君、内閣官房内閣審議官伊東敏朗君、総務省郵政行政局長鈴木康雄君及び経済産業省大臣官房審議官舟木隆君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

二階委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

二階委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。城内実君。

城内委員 自由民主党の城内実でございます。

 私は、昨年九月の基本方針策定以来、党の郵政関係合同部会、三十数回ございましたけれども、ほぼ大体九割以上、一〇〇%近く出席したわけでございますが、その中で、私自身もいろいろな意見、疑問点をぶつけました。一番申し上げたかったのは、やはり二点でございます。

 一つは、国民すなわち利用者にとってサービスがよくなるか、それとも悪くなってしまうのか、ユニバーサルサービスは維持できるのか、こういった点。そして二つ目には、二十七万人、そしてパートの方も入れると四十万人の方が、これは生身の人間ですが、携わっているこの郵政、これに引き続き誇りを持って仕事を続けていくことができるかどうかということであります。国家公務員として、公共のために仕事をしたいという思いから郵便局に勤めている方々がほとんどであるわけであります。この二点が非常に私は重要であるというふうに思っております。

 そしてまた、もう一つ、私は、関係合同部会、竹中大臣に対しまして、外資規制という問題についてどうなのかということを質問させていただきました。きょうは、この外資規制、そして時間があればアメリカ政府の対日要求について質問させていただきたいと思いますが、本題に入る前に、私の地元の話をさせていただきたいと思います。

 私の地元は浜松市とその周辺の十二市町村でございますが、その大部分がことし七月一日、合併になります。そして二年後に政令指定都市になるわけですけれども、合併したその浜松の約六割、六二%が山村であります。テレビでも話題になった水窪町、水窪に小和田駅というところがありまして、そこに郵便局の方が、飯田線に乗って小和田駅でおりて、そこからさらに歩いて運んでいる、そういう実情がテレビで話題になった。まさにその水窪町を含む十三市町村が私の選挙区であるんですが、先週土曜日に地元に帰りまして、龍山村というところで国政報告会を行いました。

 龍山村というのは、人口約千二百人弱、四百二十八世帯の過疎地であります。昨年三月末をもって小学校が一校なくなり、統廃合が進んでおりますし、同様に、昨年三月末をもって農協の龍山村瀬尻支店が閉ざされることとなりました。今この龍山村にある金融機関は竜山郵便局だけになりかねない状況です。

 その方々のいろいろな意見を聞いた結果、やはり何とかこの郵政民営化を阻止してくれないか、阻止できないにしても、三事業一体で金融機関だけ残してほしい。そしてさらに、こういう発言もありました。コンビニエンスストアにするなんというような話があるけれども、これはそこで商店をやっている方ですが、自分の店のすぐ先の郵便局でみそとかしょうゆとかお酒とか売られたら大変困る、そういうような切実な話もございました。

 私は、そういう山村の方々、本当に大変苦労して厳しい環境の中で生活している方々のこういった訴えを聞いて、やはり日本というのは、都市部に住んでいる人だけじゃなくて、こういった人たちの声も聞かなきゃいけないと意を強くして、東京に戻ってきたわけでございます。

 そこで、本題に入りますけれども、この郵政特別委員会に私、委員として参加しまして、いろいろ話を聞きましたら、どうも大臣を初め、総理も含めて、経営判断、経営者の自由な判断、そういう言葉が非常に耳につく、耳に入るんですね。

 私は、例えば郵便局の設置基準にしても、また安定的な代理店契約、そしてこの代理店契約の延長、そして基金、この四つの問題についてちょっと過去の答弁を見てみましたら、例えば六月三日、松野頼久議員に対する小泉総理の答弁はどうなっているかというと、私は、ふえるところもあるし、減るところもある、それは否定しない、中略ですが、リストラする、統合再編する、減らす点、これはやはり経営者の判断を尊重しなきゃいけないと思う、そういう答弁もございました。

 また、五月二十七日、宮下一郎議員に対する竹中大臣の答弁、これは安定的な代理店契約の問題についてですけれども、今までの二万四千という、通常の大手のコンビニの三倍ぐらいのネットワークを全国に持っている、それが強みであるから、それを手放すというようなことは経営者のインセンティブとしてなかなか想定しがたい、そのようにおっしゃっておるわけであります。

 そしてまた、代理店契約の延長について、五月三十一日、石井啓一議員に対する伊藤大臣の答弁では、かかる契約を締結するかどうかは、民営化後の会社の企業価値の最大化を追求する経営陣の経営判断によるところとなります、そういう答弁であります。

 私は、関係合同部会でも何度も発言したんですが、経営者といってもいろいろいるわけでございます。例えば、カリスマ性のある、大変経営能力のある方として、ダイエーの中内さんあるいは西武の堤さん、そういった方もいらっしゃるわけでありますし、ヤオハンの大社長もおりました。いろいろな経営者がいると私は思うんですが、本当にこういう大きな会社、これから公共性のある会社については、皮肉を込めて言いますけれども、西武の堤さんとかダイエーの中内さんのような大変企業力のあってすばらしい方にやっていただかないとなかなかうまく黒字にならないんじゃないかなと。そういう方ですら会社を傾けるというふうに私は何度も関係合同部会で申し上げた次第でございます。

 株式会社というのは、市場原理でございますから、やはり何といっても、経営者が株主から拠出された資本を管理運用して、その利益を株主に配当という形で還元すること、これがまさに株式会社の仕組みではないかと思うんです。ですから、私は、もし私が株主でありましたら、やはり配当をふやしてほしい、そして経営陣でありましたら、できるだけ取締役の給料やボーナスに利益のふえた分を回してほしい、そういうふうに判断するはずであります。ですから、株主がだれかということが一番大きな問題ではないかというふうに思うわけであります。

 十数年後に郵貯会社、生命保険会社が完全民営化されるというわけでありますけれども、そこで大臣にお尋ねしたいのは、郵政民営化法案では、今申しましたように全株を処分するという義務が課せられておりますけれども、郵貯銀行等の体力が弱って株価が下がってくれば、例えば長銀の例があるように、株を買い占めして支配するということがあるのではないかというふうに私は考えております。

 現に郵貯を民営化したニュージーランドの例がございますけれども、結局、オーストラリアの資本に買い取られて、そして国営の金融企業がなくなって、わざわざニュージーランド・ポストが一〇〇%子会社のキウイバンクを設立したというような例があるかと思います。

 このような外国の失敗例に学べば、郵貯銀行等の株式等については一定の外資規制を設けることが必要ではないかと私は思います。私の理解では、公社であれば外資規制はできますけれども、WTO協定上、サービス貿易一般協定上、外資規制はできないというふうに理解しておりますが、その点についてお答えいただきたいと思います。

    〔委員長退席、石破委員長代理着席〕

竹中国務大臣 城内委員、冒頭で龍山村の例を御紹介くださいました。私も和歌山の田舎の出身でありますので、そのような城内委員の事例、私なりにお伺いしまして、しっかり胸にとめ置いて改革を進めなければいけないと思っております。

 それで、経営判断が重視されるということで、株主の関係が重要だという御指摘がございました。

 もちろん経営判断は重視されるわけですけれども、それでも、社会的な機能が果たせるような枠組みは枠組みとしてしっかりとつくっているつもりでございます。例えば、ユニバーサルサービスを郵便について義務づける、義務づける見返りとして、しっかりと利益を稼げるそのリザーブエリアは今のまま残す、また金融についても基金を活用できるような仕組みをつくる等々、そういう意味では、経営の判断を重視しながら社会的な機能を同時に残すんだというのが全体の設計になっているところでございます。

 そこで、お尋ねの株主の外資等々の規制の問題でございますけれども、この郵便貯金銀行、郵便保険会社におきましては、商法の一般的な規定を活用しまして、それで敵対的買収に対する防衛策を講じることとしているところでございます。郵便貯金銀行、郵便保険会社に関する直接の外資規制は、御指摘のように設けておりません。

 これは、国際的な協定の問題もありますが、さらに、民営化の趣旨にかんがみまして、今般の法案において特別の措置を講ずるのではなくて、一般の民間企業と同様に、商法の規定を適用した防衛策を講ずるべきであるという考え方に基づくものでございます。

 敵対的買収に対する防衛策、これは今、大変各方面で関心を呼んでおりますし、それにつきましては、五月の二十七日に経済産業省、法務省がガイドラインを発表したというふうに承知をしています。このガイドライン等に基づきまして、例えば東京証券取引所が今後、上場の基準、開示基準のルールをつくっていくというふうに予定していると思いますが、そのルールづくりが進められている今途上でございます。

 このため、郵政民営化後の新会社における買収への防衛策につきましても、今後、さまざまなルールの整備状況や投資家の反応等も勘案しました上で、最終的には、新会社の設立の際に、まさに経営者にも適切に判断をしていただいて、最も有効かつ適切と考えられる方法を講ずることになるというふうに思います。

城内委員 私、四月七日の第二十二回郵政関係合同部会でも同じような質問をさせていただきまして、竹中大臣から、敵対的買収への防衛策として、今おっしゃったのは議決権制限株式への強制転換条項のことだと思いますが、そういうものがあるから大丈夫だよというようなニュアンスの御答弁をいただいたんです。

 ただ、今、竹中大臣が経済産業省と法務省でガイドラインをつくったというふうにおっしゃいましたけれども、この五月にできたガイドラインについて、この敵対的買収防衛策については、その中身は、これが過剰に認められてしまうと経営者の保身に利用されるということから、一般的に、無制限に認められるものではなくて、極めて限定的にしなさいよ、そういうような内容であったというふうに理解しております。そして、特に、企業価値が高まるか下がるかとか、あるいはどれだけ多くの株主がその買収を敵対的と見るのか、あるいは戦略的で株主にとってもプラスの買収と見るのか、そういう厳しい基準を置いた上で、何でもかんでも敵対的買収を防止するんだといって措置できないというふうに私は理解しておりますが、その点について、経済産業省の方から御答弁をいただければと思います。お願いいたします。

舟木政府参考人 お答え申し上げます。

 先月二十七日に、経済産業省と法務省が共同しまして指針を策定したところでございます。この指針は、企業買収に対します過剰防衛を防止するとともに、企業買収や企業社会の公正なルールの形成を促すことを目的としておりまして、適法性かつ合理性の高い買収防衛策のあり方について示したものでございます。

 この指針、三つの原則を示しておりまして、まず企業価値・株主共同の利益の確保・向上の原則、それから事前開示・株主意思の原則、それから必要性・相当性の原則、この三つの原則のもとでいろいろな具体例も示しておるところでございます。

 この指針の目的としますところは、適法性かつ合理性が高い平時導入型の買収防衛策を提示することでございまして、先生がおっしゃいましたように、過剰な防衛策にならないようにというのが一つのポイントでございます。

城内委員 今、適法性、合理性という話がございますが、ちょっと一点確認したいんですけれども、企業価値を高めるもの、そして株主の共同利益を向上させる、確保できるものであれば、これは敵対的買収とはみなされないという理解でよろしいでしょうか。

舟木政府参考人 お答え申し上げます。

 敵対的買収につきましては、この指針の前提といいますか、この指針をつくる際に参考にいたしました、企業価値研究会による検討というのがなされたわけでございますが、その際には、敵対的買収は、買収されようとする企業の経営者が同意をしない買収というふうに定義をしておるところでございます。

城内委員 ということは、やはり議決権制限株式への強制転換条項があるといっても、こういった形で合理性がなかったりする場合は結局は買収され得るということであって、それは外資であっても同じであるというふうによくわかりました。

 次に、伊藤金融大臣にお尋ねしたいんですけれども、同じように、四月に東京証券取引所が、敵対的買収防衛策の留意事項という、これも同じようなガイドラインだと思いますけれども、上場企業に対して発出した文書があるというふうに伺っています。

 この中身も同じように、原則として企業価値あるいは株主共同の利益を損なうかどうかという基準でやるべきであって、何でもかんでも敵対的買収だといって規制はできない、いずれにしても、最終的には株主が判断すべきであるというような内容だというふうに伺っておりますが、その中身について御説明をいただきたいと思います。

伊藤国務大臣 お答えをいたします。

 敵対的買収に対する防衛策については、さまざまな議論があるところでございますが、今委員から御指摘がございましたように、四月の二十一日、東証から上場会社に対しまして、防衛策を導入する場合における投資者保護の観点から留意事項を通知したものと承知いたしております。

 当該留意事項におきましては、敵対的買収防衛策の導入に際しまして、株主・投資者への十分な適時開示を行うこと、発動、解除及び維持条件が不透明でないこと、買収者以外の株主・投資者に不測の損害を与える要因を含むものでないこと、議決権行使による株主の意思表示が機能しないこととなるスキームでないこと、こうしたことが事項として示されているわけであります。

 さらに東証からは、先ほど竹中大臣からも御答弁がございましたが、経済産業省そして法務省によって取りまとめられたガイドラインの内容でありますとか、あるいは、関係各方面の議論を参考に、市場開設者として投資者保護の観点から、今後、上場規則及び開示制度の整備を行う予定と聞いておりますので、金融庁といたしましては、投資者保護の観点から、関係省庁とも連携をしつつ、証券市場の制度の構築に努めてまいりたいと考えております。

城内委員 御説明ありがとうございます。

 ただ、やはり結論として、郵貯銀行等の株主に、どれだけ企業価値を高めるものであっても、例えば外資であったら拒否できますよということはできない。株主が外資はあくまでも拒否しますよという総意があれば別ですけれども、企業価値を高める、あるいは共同利益につながるということであれば、外資企業による買収というのは当然できて、完全に防止することは困難であるということが非常によくわかったわけであります。

 郵貯は国民共有の財産であるというふうに私は考えるんですけれども、我が国の発展にまさに役立てるべきでありまして、こうした考えに立つと、利用者の利便性、ユニバーサルサービスなど、これは国が関与しているからこそ維持できるものであって、私は、外資がそのような点を配慮するとはとても考えられないんです。

 例えば、カルロス・ゴーンさんがもしそういった株主になったり会社の社長さんになって、さっき申しました龍山村の郵便局、赤字で、そのままユニバーサルサービスで生命保険そして貯金、これを、では赤字でもそこにそういうサービスを残しておくのかなというと、非常に私は疑問に思います。投資家として、郵貯銀行等の収益性の向上や財務の健全性といったものを重視して判断するのが当然だと私は思います。

 政府は、外資による買収がこのような防衛策によって防げるというようなニュアンスのことをおっしゃっているように感じるんですけれども、私は、これは事実に反するのではないかなというふうに思う次第でございます。

 それでは、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 最近のアメリカの例で、こういった戦略的買収あるいは敵対的買収といったものが幾つかあったと思います。オラクルとかクエストの例がありますけれども、経済産業省にお聞きしたいんですけれども、こういった買収はどれくらいの割合で失敗しているのか、あるいは成功しているのか。この点について、私の理解では、こういうものは恐らく八割、九割ぐらい成功していないと余り役に立たないんじゃないかなと思うんですけれども、ぜひその数字を示していただきたいと思います。

舟木政府参考人 お答え申し上げます。

 買収対象企業の経営者が反対をしている、いわゆる敵対的買収に関しまして、これは民間の調査でございますが、アメリカにおきましては、一九九九年から二〇〇四年までの間で、およそ四〇%がこの敵対的買収に失敗をしている、それからおよそ三五%が成功をしている、それから残りの二五%が、買収を仕掛けた者ではなくて、そういう人ではない第三者により買収をされているというような数字がございます。

城内委員 こういった買収防止策が進んでいると言われているアメリカですら、成功率が三五%、そして失敗率が四〇%という非常に愕然たる数字なんですが、我が国においてはまだまだこういった実例もございませんし、先般のライブドアとニッポン放送、フジテレビをめぐる争いでも、裁判をやると負けてしまう、こういう状況でございますので、私は本当に、外資がどっと入ってきて、さんざん買いたたいて、利益だけ吸い取って後去っていくというようなことが非常に心配なわけでございます。

 それでは、時間も余りありませんので、次の質問に移らせていただきたいというふうに思います。

 次の質問は、アメリカ政府の対日イニシアチブ、対日要求についてでありますけれども、私は、ここ数年、我が国の郵政民営化問題について、アメリカが相当高い関心を示しているんだなというふうに思っております。これは非常に日本の国民の関心が低いのに比べて、なぜかアメリカ政府、そしてまた在日米国商工会議所さらには米国生命保険協会が、累次にわたり、いろいろな形で郵政民営化についての要求をしているというふうに伺っております。

 例えば、アメリカ政府は、九四年の日米保険合意で簡易保険商品の拡大についての協議開催を取りつけ、また九五年には簡易保険を廃止してくれというようなことを要求したというふうに伺っております。そしてまた、昨年来、在日米国商工会議所や米国生命保険協会は、我が国の郵政民営化について、節目節目にいろいろな形で、民営化を早くやってくれというふうに言ってきていると承知しております。

 そこで、質問ですけれども、郵政民営化準備室が発足したのが昨年の四月ですから、この昨年の四月から約一年間、現在に至るまで、郵政民営化準備室に対する、米国の官民関係者との間で郵政民営化問題についての会談、協議ないし申し入れ等、こういったものが何回程度行われたのか、教えていただきたいと思います。

竹中国務大臣 昨年の四月二十六日から現在まで、郵政民営化準備室がアメリカの政府、民間関係者と十七回面談を行っているということでございます。

城内委員 十七回ということは、これはもう月に一回はこういう形で、アメリカの方で早く民営化してくれと言ってきているということであって、かなりの頻繁な数ではないかというふうに私は思っております。

 次の質問に移ります。

 それでは、米国生命保険協会がございますけれども、先ほど申しましたように、これまで累次にわたり郵政に関し要望を行っているということでありますけれども、この米国生命保険協会が、昨年から現在まで、郵政民営化に関してどのような内容の声明を出しているのか、そしてそれは大体何回ぐらい出しているのかについて、竹中大臣より御答弁いただきたいというふうに思います。

    〔石破委員長代理退席、委員長着席〕

竹中国務大臣 お尋ねの米国生命保険協会でございますが、昨年来、郵政民営化に関連をいたしまして、完全なイコールフッティングが確立するまでは郵便保険会社は新商品の発売を認められるべきではない等の主張をする声明等を出していると承知をしております。同協会のホームページによれば、昨年三月以降現在まで、九回の声明等を発出したものというふうに承知をしております。

 内容についてということですので、もう少しお話しさせていただきますと、米国生命保険協会は、郵政民営化法案に関し、五月十七日付で、この協会は引き続き日本の郵政民営化法案に懸念と期待を表明すると題する表明を発表したというふうに承知をしております。

 声明でありますけれども、郵便保険会社と民間事業者との公平な競争条件に関しまして、幾つか述べております。郵便保険会社の業務拡大の客観的基準が不透明である、業務拡大のプロセスにおいて利害関係者が意見を述べる機会が保証されるべきである、移行期において郵便保険会社の規制監督に総務省がかかわるべきではない、地域貢献基金がどのように使われるかが明確でない等の懸念を述べるとともに、小泉内閣の取り組みを支持しまして、日本政府とのさらなる対話を期待するというふうに述べていると承知をしております。

城内委員 それでは、大臣にお尋ねしたいんですが、こういったアメリカの要望について、大臣としてはどのように評価されているか、ちょっとお聞きしたいと思います。

竹中国務大臣 これはもう、内外問わずいろいろな御意見がございます。私たちは、民間でできることは民間でやるという基本的な考え方、それを徹底することがやはり国民の経済厚生を一番高めるんだという観点からこの改革に取り組んでおりますので、これは多方面に御議論はいただきたいというふうに思いますが、我々としては、だれがどうこう言ったからということではなくて、国民の経済厚生を高めるために改革を行うという点、一貫してそれに基づいて改革を進めているつもりでございます。

城内委員 今、竹中大臣、だれがどうこう言ったからということでなく改革を進めていくというふうにおっしゃったわけでありますけれども、今議論している郵政民営化関連法案の中身、内容で、アメリカの要求に全く沿えなかったものというのはあるのでしょうか。そこをもしおわかりでしたら答えていただきたいと思います。

竹中国務大臣 アメリカの要求というのを詳細に、ですから、だれがどう言ったからこうするということではないわけですから、アメリカの言っていることを詳細に、正直言って検討しておりません。

 ただ、一例としてすぐに思いつくのは、今ちょっと申し上げましたけれども、完全なイコールフッティングが確保されるまで郵便保険会社は新商品の発売を認められるべきではないという主張をしているわけですが、これは我々の今の制度設計とはやはり違っているわけですね。

 私たちは、経営の自由度をできるだけ持っていただこう、もちろんイコールフッティングは大事だけれども、透明性、公正性のあるプロセスを経て、段階的にやはり業務拡大をしていっていただこうというふうに考えているわけであります。そこに民営化委員会の公正なプロセスを経て、そのことをしっかりやっていこうというわけでございますから、先方がどういう趣旨で言っているのかはともかくとしまして、そこは、文面を解する限りはやはり違っているというふうに思っております。

城内委員 今、大臣、イコールフッティングの話をされましたが、私から見れば、例えばアメリカの要求には、特に、郵便保険と郵便貯金事業の政府保有株式の完全売却が完了するまでの間、新規の郵便保険と郵便貯金商品に暗黙の政府保証があるかのような認識が国民に生じないよう十分な方策をとるといった記述がありますが、閣議決定の郵政民営化の基本方針には、完全売却とか暗黙の政府保証といった記述がないんですが、なぜか不思議と今の法案には、これは六十二条とか百九条だと思いますが、こういう措置が盛り込まれてしまっているという不思議な現象が起きております。

 そしてまた、昨年から、冒頭申しましたように、郵政民営化準備室は米国関係者と累次にわたり話をしてきている。十七回とかおっしゃいましたけれども、ただお茶飲み話をしているわけじゃないと思うんですね。こういった米国の業界は日本の郵政民営化をかなり細かくチェックしているというふうに思われるんです。

 そしてまた、声明を発表しています。それを、いや、余りそういうのはこだわらずに、詳細は余り詰めていませんというようなニュアンスの御答弁がございましたけれども、私は、恐らく準備室の方々はそういったアメリカのいろいろな声明やら申し入れについては一応きちっと精査しているんじゃないか。したがって、さっき申しましたような完全売却とか暗黙の政府保証というような、こういう話になってきているんじゃないかなというふうに感じるわけです。

 そういうことで、日米の両国の正式な協議の場である日米規制改革イニシアチブを反映して、私は、どうしても米国に相当譲歩してしまった法案になっているのではないかというふうに疑いを強くしているわけであります。

 一方、では、国民に対して我が国政府が行った郵政民営化のタウンミーティングというのはたった三回。アメリカとは毎月一、二回、いろいろな形で協議している。何かちょっとどっちがどっちなのかなという感じがするわけでありまして、こういうことを言うのは大変申し上げにくいわけでありますけれども、やはり郵政民営化というのは、我が国の将来に、そして冒頭に申しましたように、日本の国民、利用者、そして郵政事業に携わってこられている方々二十七万人、パートも入れて四十万人の生身の人間がやっている話でございますので、特定の他国の意向に左右されては決してならないと私は思う次第でございます。

 したがいまして、自立的な議論が必要であるというふうに私は認識しておりますが、最後に、私のこの考えについて、竹中大臣から一言御見解をいただきたいと思います。

渡辺政府参考人 済みません、大臣が後ほどきちんとお答えを申し上げますが、十七回の対談をしましたうち、十回は私でございます。財務省、USTRそれから公使、随分いろいろな方がお見えになりました。そして、一貫しておっしゃっていたことは、英語流で言いますと、レベル・プレーイング・フィールドをくれ、これが完成するまでは新商品を出すべきではないというお話でございました。

 私は、相手方には一貫してこういうことを申し上げています。そういうことを決めるのはあなた方ではないし、私でもない。これは郵政民営化の委員会がそれを判断するのであって、法律上、民営化委員会の御判断に従う話であるので、そこまでに話をしておきましょうということに一貫しております。

竹中国務大臣 城内委員から二点、完全売却等々の内容がそれに近いではないかというような御指摘だったと思いますが、これは何度か御答弁申し上げましたように、きちっと国との関係を切ろうという我々独自の考えに基づいているものでありますので、その点、御理解いただきたいと思います。

 タウンミーティング三回ということですが、私たちは、私自身、地方懇に、二十一カ所でそういったテレビ出演を含めた会合を持たせていただいたりしておりまして、国民との対話というのはしっかりと重視をしてきたつもりでございます。

 そういった意味で、あくまでも国民のために郵政民営化を行うという観点からしっかりと対処をしておりますので、ぜひその点、御理解を賜りたいと思います。

城内委員 何度も言いますけれども、利用者である国民、そして郵政に携わっている方々が生身の人間であるということを繰り返し申し上げまして、アメリカとの同盟関係、安全保障は重要でありますけれども、この分野については、やはりきちっと国民の利益を第一に考えていただいて改革を進めていただきたいというふうに思う次第であります。

 以上で終わります。

二階委員長 次に、石井啓一君。

石井(啓)委員 公明党の石井啓一でございます。

 まず、先週の本委員会での総理答弁を踏まえて、郵便局の配置について御質問を申し上げたいと思います。

 六月の四日、先週土曜日の大手紙の朝刊に前日の本委員会での総理答弁が取り上げられまして、「都市部の郵便局 「無くなる可能性出る」」というふうに見出しが打たれておりまして、民営化後に都市部で郵便局が大幅になくなるかのような誤解を与える可能性があるんじゃないかというふうに思います。

 都市部で現状の郵便局数が全部維持されるということはないと思いますけれども、大幅になくなるということもないんじゃないかというふうに思いますので、その点、まず大臣に確認をいたしたいと思います。

竹中国務大臣 これはもう石井委員の今最後におっしゃったとおりでございます。

 都市部の郵便局については、都市部についても国民の利便性に支障の生じることがないよう配慮するという、この与党との合意を踏まえまして、しっかりと総務省令において、都市部を含む過疎地以外の地域についても今の基準と遜色ない基準をつくるわけでございます。これによって、都市部についても、国民の利便性を確保する観点から郵便局の適切な配置が確保されるというふうに思っております。

 例えば、交通、地理その他の事情を勘案して地域住民が容易に利用することができる位置に設置されていること等々の基準でございますので、これを踏まえれば、都市部においても必要な郵便局ネットワークはしっかりと維持されるものと考えておりまして、都市部において郵便局が大幅になくなるというようなことは想定はしておりません。

石井(啓)委員 今の大臣の答弁を聞いて安心をいたしました。

 続いて、社会・地域貢献基金について質問申し上げたいと思いますけれども、ちょっと順番を変えて、まず地域貢献基金の方から質問を申し上げます。

 地域貢献業務の額として百二十億円が想定をされているんですけれども、それが、対象の局数が二千局、一局当たりの支援額が六百万円ということで、合計百二十億円。毎年度の基金の額がこういうふうに算出をされているんですが、この対象局数二千あるいは支援額六百万円という想定の根拠はどうなっているのか。また、この毎年度の支出額が百二十億円で十分なのかどうか。この点について伺いたいと思います。

細見政府参考人 お答えいたします。

 地域貢献業務のスキームと申しますものは、個々の郵便局の赤字を補てんするということではなくて、郵便局会社が地域にとって必要性の高いサービスを継続していくことを可能にするために、郵便局会社に対してサービスの提供に必要となる資金を交付するというものでございます。

 その対象といたしましては、郵便局会社法案第六条三項におきまして、郵便局会社が郵便局を活用して地域住民の利便の増進に資する業務として営む業務のうち、地域住民の生活の安定の確保のために必要であることなどの要件を満たすものということで規定しておりまして、具体的には、法令上は限定していないものの、現時点では、過疎地等の郵便局で提供される貯金、保険のサービスといったものがこうした要件を満たすものではないかと想定しているところでございます。

 その積算についてでございますが、現在、日本郵政公社の貯金・保険事業はともに黒字ということでございまして、また、移行期におきましては、郵便貯金銀行、郵便保険会社に安定的な代理店契約を義務づけるということになっておりますので、郵便局での貯金・保険サービスの提供は引き続き確保されるというようなことでございますので、地域貢献業務そのものが相当の規模で行われるということになるのは相当将来のことというふうには考えられるわけでございます。

 このため、積算に当たりましては、将来、過疎化が相当進行するなどの事情によって、過疎地域等の相当数の郵便局で収益が相当に悪化して、ネットワークの一環としての価値が低下しているにもかかわらず地域のニーズに応じて金融業務などを継続することが必要となる、こういう場合に至った場合でも対応し得るということで、百二十億円、先ほど委員から御指摘のとおり、一局当たり六百万円、対象局数二千局ということで積算をさせていただいたところでございます。

 対象局数についてでございますが、これは、過疎の最前線にある小さな局、具体的には過疎地域の無集配特定郵便局というものを想定してございますが、これを中心に、収益が相当に悪化している場合に、業務の効率化を行った上でなお本スキームの対象となる、支えることが必要となる局数として、二千局程度というものを見積もったということでございます。

 一局当たりの交付額ということにつきましては、郵便局の金融業務の収支が相当に悪化した場合に、過疎の最前線にある小さな局で業務を効率的に実施してもなお生じる平均的な収支差額というものといたしまして、六百万円程度を必要額と想定いたしたところでございます。

 いずれにせよ、これは、将来過疎化が相当進行した場合に、過疎地域等における貯金、保険のサービスの提供を確保するために必要となる額として見積もったということでございまして、私どもといたしましては、これによって地域にとって必要性の高い貯金・保険サービスの提供を確保することが可能であるというふうに考えているところでございます。

石井(啓)委員 六百万円の根拠が平均的な収支差額ということでありますけれども、これは大体、従業員一人の年間人件費相当額ということなんでしょうか。

細見政府参考人 お答えいたします。

 六百万円の算定の根拠というものは、過疎地域の無集配特定局につきまして、公社が試算しております収支相償方式による金融業務に係る局別の損益データというものを利用させていただきまして、局ごとに費用と収益を算出いたしたところでございます。費用算出に当たっては、平成十五年度の決算をベースに、移行期終了後の一定の時期までに一定の経費削減が行われるということを見込んで算定をいたしました。

 この結果、各局別に損益状況を判定いたしまして、費用が収益を超しているとなった局につきまして、平均の費用及び平均の収益を算出するというやり方をいたしました。

 この平均の費用から平均の収益を引いたもの、これが地域貢献資金の交付を受けなければその業務の実施が困難であるものというふうに認定をいたしまして、六百万円程度という算定をいたしたわけでございます。具体的に人件費とかなんとかでやったということよりは、全体の収益、全体の経費ということで算定をさせていただきました。

石井(啓)委員 それからもう一つ、二千の方ですが、これは過疎地域の無集配特定局を中心に将来過疎化が進行した場合にということでありますけれども、二千よりふえる可能性も相当といいますか当然あるということですから、百二十億円でおさまらないということも当然ありますよね。これは、百二十億円でおさまらなかったとしても、今想定されています地域貢献基金で支給は十分可能なんでしょうか。

細見政府参考人 私どもの考えといたしましては、実際の過疎にある無集配の特定局を中心に、実際にこの資金の交付を受けなければネットワークの価値が低下しているために金融のサービスを提供できないというものは、二千という交付対象局数である程度満たしているというふうに考えておりまして、この百二十億円で十分地域貢献事業を推進していけるというふうに考えているところでございます。

石井(啓)委員 いや、お尋ねしましたのは、それはそういうふうに想定をされているんだけれども、想定どおりにいかない可能性もあるわけですから、そういうときはどうされるんですかということを聞いているんです。

竹中国務大臣 今の想定は、いろいろな要因を考えまして、局ごとのあれも見まして、かなりしっかりと見積もったつもりでございます。

 我々は、したがいまして、今細見担当審議官が説明したようなことで十分足りているというふうに思うわけでございますが、もう一つ重要な点として、基金一兆円に対して一・八%の利回りを見積もっているわけでございます。これは低金利時代が続いた過去十年の平均利回りということでございますので、その意味では、この面でも非常にかた目に見積もっている。過去二十年をとりますと三%を超える利回りになるわけでございますので、幾つかかた目かた目に見積もって出している。我々は、その意味では、これでしっかりとした支えができるというふうに判断しているわけでございます。

石井(啓)委員 それから、この地域貢献業務の対象が郵便局会社法案の第六条三項にございますけれども、「次の各号のいずれにも該当すると認められるもの」ということで、一号で「地域住民の生活の安定の確保のために必要であること」、二号で「会社以外の者による実施が困難であること」、三号で「地域貢献資金の交付を受けなければ、その実施が困難であること」、こういうふうになっているんです。

 そういたしますと、先ほどの御説明では、過疎地域の無集配特定局を中心に考えているということでありますけれども、この法律の規定からすると、必ずしも過疎地域には限定されない、過疎地域以外であっても、こういう六条三項に合致すればこれは当然地域貢献業務の対象となる、こういう理解でよろしいんですね、確認のために。

細見政府参考人 お答えいたします。

 ただいま委員が御指摘のとおり、法律上、そういった過疎地でなければいけないというような規定があるわけではございませんで、都市部についても対象となり得るということでございます。

石井(啓)委員 過疎地域以外の都市部であっても、将来的に採算性が悪化して、なおかつこの第六条三項に合致すれば、それは対象になり得る、こういうことですね。もう一度確認。都市局でも対象になり得るかどうか。

細見政府参考人 法律に規定している条件を満たせば、都市部でも対象となり得ります。

石井(啓)委員 そういたしますと、今現状二万四千七百ある郵便局の中で、採算性が悪化して、なおかつこの六条三項に合致するようなところについては地域貢献業務の対象になるということですから、個々の郵便局ごとの採算性を明らかにしていくことが必要になってくると思います。

 現在、郵政公社で試算をされているようでありますから、どういう試算をされているのか、御紹介いただきたいと思いますし、また今後、民営化すれば採算性の試算の精度を高めていかなければいけないと思いますので、どういう取り組みをなさるのか、確認をいたしたいと思います。

山下参考人 お尋ねをいただきました郵便局ごとの採算性につきましては、公社の中期経営計画に基づきまして、平成十五年度分より、個別の郵便局損益を二つの方式で試算いたしまして、公表しております。

 その第一の方式は、全体損益方式でございます。これは、公社の年度決算全体の収益、費用を、郵便局ごとの人員、業務取扱量などに応じまして、各郵便局に配分して計算を行う方式でございます。この方式は、毎年度の公社全体の収益、費用全体を配分いたしますため比較的わかりやすいというメリットがあります半面で、毎年の公社の決算結果は金利、株価などマーケット環境によりまして大きく変動いたしますので、郵便局の損益が実態からかけ離れて大きく振れがちであるという難点がございます。

 もう一つの方式は、収支相償方式でございます。こちらは、費用の範囲を郵便局の活動に直接係ります人件費、物件費などの業務運営費に限定いたしまして、その費用に見合った収益を郵便局に配分しまして、全体としては収支ゼロの前提のもとで計算を行う方式でございます。こちらは、郵便局のパフォーマンスの管理会計の立場から毎年度安定的に見ることができるという点で、全体損益方式に比べましてメリットがあると考えております。

 十五年度決算データに基づく試算結果でございますが、まず全体損益方式では、トータルでは黒字局が約一万七千四百局、赤字局が約二千九百局でございまして、赤字局の割合が一五%程度となっております。また、その黒字局の黒字額の合計は約二兆五千八百億円、赤字局の赤字額の合計は約千百億円となっております。

 一方、収支相償方式では、全体では黒字局は約六千百局、赤字局が約一万四千二百局でございまして、赤字局の割合が約七〇%ということになっております。また、その黒字局の黒字額並びに赤字局の赤字額の合計は、それぞれ約三千六百億円となっております。

 ただいま御説明申し上げました郵便局損益試算の手法は、中期経営計画に基づく新しい試みでございまして、まだまだ改善の余地が残されているものと考えております。今後とも、民間の類似業種の事例なども参考にさせていただきながら、郵便局の損益の実態をより正確に把握できるよう、引き続き改善に向けて努力をしてまいりたいと考えております。

細見政府参考人 地域貢献業務につきましては、社会・地域貢献基金から郵便局会社に対し、その業務を効率的に実施するために必要となる費用を交付するということにいたしております。地域貢献業務は基本的に郵便局単位で行われるということでございますので、郵便局会社は、地域貢献業務の策定に当たりましては、郵便局ごとの地域貢献業務の実施に要する費用というものを算定していく必要があるわけでございます。

 ただいま公社の方から御説明がありましたとおり、公社は、現行の中期経営計画におきまして、管理会計の充実といった観点から、地域別損益管理の導入、郵便局の損益把握というものを掲げておりまして、この計画に基づきまして、先般、平成十五年度の郵便局別損益試算を公表したものと承知しております。これは、公社にとりまして郵便局別損益管理の第一歩ということでございまして、今後ともさらなる改善を図っていただくとともに、地域貢献業務計画の策定に当たってもこうしたデータを活用していただくことを期待しているということでございます。

石井(啓)委員 ちょっと大臣にお尋ねしますけれども、今郵政公社から御説明ありましたように、現在の試算では、全体損益方式と収支相償方式で赤字と黒字の数がまるっきり違ってきちゃっているんですね、全体損益方式では黒字が一万七千、赤字が二千九百ですか、収支相償方式では黒字が六千、赤字が一万四千ということで。だから、どういう方式をとるかによってこれだけ差が出るということは、今までやってこなかった新しい試みだからしようがないかもしれませんけれども、今後この地域貢献業務を詰めていくに当たっては、これだけ差があるのをどっちかを使うということでは、これはとても議論にたえられない。ここは相当これからも努力を要すると思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

竹中国務大臣 全体の収支か収支相償かというのはちょっとなかなか技術的でわかりにくいところもあるんですが、これは、現状はどうか、事実はどうかと聞かれれば、全体収支で見るということになるんだと思います。

 収支相償方式というのは、合計がゼロになるわけですから、等しく分布していれば、五〇%が黒字で五〇%が赤字と必ずなるわけですね。当然等しく分布はしていませんから、六〇%、七〇%という数字になるわけでございますが、ここは、公社としてもいろいろな工夫で精度を高めていらっしゃるということだと思います。

 我々としては、実情を踏まえて、実態をしっかりと判断して、その上で基金が有効に使われるように公社と協力してまいりたいと思います。

石井(啓)委員 それでは、最後の質問になりますが、地域貢献業務計画では、郵便局単位に地域の有識者の方の御意見を伺う、こういうふうになっておりますけれども、五月二十七日の答弁では、地域のことに詳しい、実情に識見を有する方ということでありますけれども、具体的にどういう方を想定されているのか、伺いたいと思います。

細見政府参考人 お答えいたします。

 公明党を含む与党との合意を踏まえまして、郵便局株式会社法案第六条第二項におきまして、地域の実情などに識見を有する方の意見を聞き、これを尊重して地域貢献業務計画を策定しなければならない、こう規定しているところでございます。この規定の趣旨を踏まえれば、意見聴取は郵便局単位の、地域貢献業務は各郵便局単位で行われるということでございますので、郵便局単位のきめ細かい地域のニーズを判断できるようなものであることが必要であるというふうに考えております。

 こうした要件を満たし得る有識者ということでございますが、例えばということで申し上げれば、地方公共団体の代表といったような人たちが考えられるわけでございますが、地域の実情はさまざまということでございますので、地域貢献業務計画の策定における地域の有識者などからの意見聴取の具体的方法につきましては、地域貢献業務と各地域におけるその必要性を最も熟知している郵便局株式会社の判断にまずはゆだねるものということではないかというふうに考えております。

 なお、制度的なことで申しますと、郵便局単位のきめ細かい地域のニーズが判断できるような形で有識者などからの意見聴取が適切に行われ、またこれが尊重されているかどうかということにつきましては、主務大臣が地域貢献業務計画を認可する際に、所要の書類を提出させて、これらを審査することによって担保していきたい、こういうふうに考えている次第でございます。

石井(啓)委員 以上で終わります。ありがとうございました。

二階委員長 次に、山花郁夫君。

山花委員 民主党・無所属クラブの山花郁夫でございます。

 まず、先ほどの同僚委員の質問の関係で、外資規制について、敵対的買収防衛策についての議論があったわけですけれども、商法等の関係もございますので、法務大臣の方にお伺いをしたいと思います。

 郵政民営化法案では、郵政の株式会社は、郵貯銀行、郵便保険会社の全株を処分する義務というのが課されておりまして、郵貯銀行の体力が弱って株価が下がってくると、長銀などのように外資が郵貯銀行や郵便保険会社の株を買い占めて支配するようなケースというのもあり得るのではないかと、先ほど類似の指摘がありました、いらっしゃいませんでしたけれども。

 それで、まず、ちょっと基本的なことから伺います。

 いわゆる敵対的買収防衛策については、それが過剰に認められてしまいますと、株主の利益というよりも経営者の保身に利用されるというケースが出てまいりますから、一般的に言って無制限に認められるということではないと認識いたしておりますけれども、そうした認識は間違いないでしょうか。

南野国務大臣 お答え申し上げます。

 必要性が認められれば、そのようなことに展開していくものと思っております。

山花委員 ちょっと答弁がよくわからないんですけれども、敵対的な買収というものに対する防衛策というのは無制限に認められるものではない、そういう認識でいいんですねということです。余り余計なことを言われると、何か、必要があれば全部できるとも聞こえますけれども、いいんですね。もう一回答弁をお願いします。

南野国務大臣 先生のおっしゃるとおり、それが無制限だったりということではございません。

山花委員 その上で、法務省と経産省との間での五月二十七日の指針については先ほど議論がありましたので、いいんですけれども、要するに、株主の共同の利益の向上であるとかあるいは維持であるとか、それに反するような、必要性があればということではなくて、反するような買収は防いで、逆に、株主だとかそういった方々の利益を向上させるようなものであればよい。しかも、株主共同の利益を向上させるかどうかというのは、それは株主みずからが判断する仕組みが求められるという考えでよろしいですね。これも確認です。

南野国務大臣 先生おっしゃるとおりでございます。やはり株主の問題点が大きゅうございます。

山花委員 また、企業価値だとか、つまり株主共同の利益を損なうかどうか、防衛策を維持するか排除するかといった判断は原則として株主が判断すべきものであるということでありますから、そうだとすると、今回の指針の中には、株主が最終的に判断する仕組みを担保するために、はっきりした指針が私は定められていないように思います。また、先ほども議論がありましたけれども、東証が公表した留意事項についても、この点も、必ずしもはっきりとこうだというガイドラインが設定されているという話ではありません。

 つまりは、この敵対的買収防止という措置は、国内企業であったとしても外資であったとしても、企業価値を損なうような、言いかえれば株主の利益を損なうような買収案というものを排除して、利益や価値を高めるような買収案というのは排除しない、そういう仕組みが求められているんだ。くどいようですけれども、また、その価値判断は最終的に株主が判断するのだということで、これも多分会社法のときに議論があったと思いますけれども、それでよろしいですね。

南野国務大臣 先生御指摘のとおりでございます。

 先ほどもお話があったと言われております、企業の価値、株主共同の利益の確保、また、何のために買収、あれをするかという、経済産業と法務省がつくった、これはあくまでもガイドラインでございますので、その中で、大きく三つのポイントを押さえてございます。

 そのポイントに、これはあくまでもガイドラインであるということを見定めながら、自分たちの会社というものを主体的に考えていただければいいと思います。

山花委員 つまり、結論として、郵貯銀行の株主に、先ほど指摘があったとおりでありまして、どれだけ企業価値を高めるというものであっても外国資本は絶対嫌だと、先ほど質問された方がうなずいていらっしゃいますけれども、そういう価値判断を株主みんながするなら話は別ですけれども、外資企業であるけれども郵貯銀行の価値が高まるんだからいいじゃないか、そういう判断があったとすると、外資を排除するということは、全くそれは担保がないという話なわけであります。今までの答弁を重ね合わせていくと、そういうことだということは指摘をしなければならないと思います。

 また、どうも竹中大臣とかの答弁を聞いていますと、郵貯というのは大体国民の大事な財産であるというところは認識は持っていらっしゃると思うんですけれども、利用者の利便だとか、ユニバーサルサービスはできるだけやった方がいいんだとか、それは、やった方がいいんだという、キャンですね、ビー・エイブル・ツーですよね、要するに。マストではなくて、やった方がいいんだという話ではあるけれども、制度的にそうしなければいけないという担保はどこにもないわけであります。

 つまり、どうも性善説のような話でありまして、株主というのは、きっとこうしてくれるだろうというようなことはわかるんですけれども、むしろ投資家という立場からすれば、郵貯銀行とか郵便保険会社の株主であれば、投資家として、収益性の向上だとか財務の健全性だとか、そういったことを重視して判断するのが当然のことでありまして、今まで説明があったように、外資による買収がこの防衛策によってある程度は防げるかもしれません、いわゆる解体屋とか乗っ取り屋みたいなものは防げるかもしれませんけれども、いわゆる戦略的買収という形をとられたときには、防衛できるという担保はまるでないんじゃないでしょうか。法務大臣、いかがですか。

南野国務大臣 郵政の民営化法における、そういうような買収防衛策をとることができるかどうかということにつながる御質問だというふうに思いますが、郵政民営化によりまして設立されます各会社は、これは会社法案に基づく株式会社であると考えられますので、会社法案で認められておりますあらゆる敵対的買収に対する防衛策をとることができるものというふうに承知いたしております。

 したがいまして、敵対的買収に対する防衛につきまして、一般の株式会社と同様の担保がされているものと考えているところでございます。

山花委員 つまり、先ほど、議論の最中いらっしゃらなかったかもしれませんけれども、一般の株式会社と同程度にしかできないんですよ。先ほど指摘しましたように、乗っ取り屋みたいな極めて悪質なものに対してはできるんでありましょう。しかし、そうでないケースでは、今るる指摘をいたしまして、大臣がそのとおりですとおっしゃっておられたように、外資が入ってきて、要するに株主が断固として、どんなに企業価値を高めてくれようが収益性が上がろうが、外国資本である限りは絶対嫌だという価値判断でもとらない限りは、外資を規制するということはできないはずのものであるということだと思うんですけれども、もう一回答弁いただけますか。

 つまりは、何か、あたかも完全に排除できるかのように聞こえたんですけれども、もう一度お願いいたします。

南野国務大臣 先生先ほどお話しになられましたとおり、会社法案の中では特に外資だからというような規制はございませんということです。

山花委員 つまり、そういうことなんですよ。

 だから、竹中大臣は、今まで答弁の中でも、窓口会社のネットワークというのは郵貯銀行にとっても大変価値のあるものだ、経営者はそのネットワークをフルに活用してビジネスモデルを採用する、何か当然の帰結のようにおっしゃっておられますけれども、私は、外資企業が本当にそんなことを思うのかというのは疑問だと思いますし、少なくとも制度としてその保証は全くないと思います。その点を先ほどの議論を聞いていてちょっと感じましたので、指摘をさせていただきたいと思います。

 その上で、ちょっと政府見解に入る前に、きょうは生田総裁もお越しいただいていますので、金曜日の特別委員会の中で、非常に、全国にテレビ中継をされているにもかかわらず、事実誤認と思われる発言がたくさん出ているのに私も聞いていてびっくりしたんです。

 まず、これは小泉総理大臣が宅配の話をしているんですけれども、今、民間の宅配会社は過疎地であろうが離島であろうが全部行っていますねというふうに言っているんですけれども、国交大臣、本当に全部行っていますか。その上で、ちゃんと住所地まで届けているんでしょうか。当委員会でも、いや、そうじゃなくて、例えば港まで行って、そこにとりに来てもらうと。(発言する者あり)そうです、玄界島の例を挙げてそういう議論がありましたけれども、この点、どういう御認識でしょうか。

北側国務大臣 民間の事業者ですね。民間の大手の物流事業者の場合、全国に宅配便を送っております。ただし、一部の離島等につきましては、港に届ける、そこに地元の業者の方々がとりに来るだとか、そういうふうな取り扱いがなされている場合もございます。

山花委員 そうだと思いますよ。

 実は、私もかつてコンビニエンスストアでアルバイトをしていたことがありまして、宅配便の受け付けをやっていましたけれども、ここは届きませんよということで拒否する地域というのはある程度ありました。もう十年以上前ですから、それでもそのエリアはある程度狭まってきたのかもしれませんけれども、まだそういうところがあると思います。

 郵政公社にお尋ねしたいと思いますけれども、最終の住所地までちゃんとお届けしていますよね。というのも、何かあたかも総理は、今の郵政事業でやっていることは、民間の事業者はそんなことは全部できるんだぞというようなことをおっしゃっておられましたが、私は、公社の場合は最終の住所地までちゃんと届けていると思っているんですけれども、ここはどうなっていますでしょうか。

生田参考人 お答えいたします。

 総じて言えばイエスということで、どこでもお届けするということでございます。道路の遮断があるとか、どうしても通れないとか、あるいは遠いところの山小屋とか、もちろんそういう例外がないわけじゃないですけれども、総じて言えば届けさせていただいております。

山花委員 つまり、総理は随分テレビの前でそういう何か誤解を与えるようなことを言っているわけですよ。これだけではありません。

 その指摘は後に回しまして、ちょっと今のこととの関係ですけれども、竹中大臣にお伺いしますけれども、民営化すると宅配事業者間の競争が起きてサービスはよくなる、こういう認識なんでしょうか。

竹中国務大臣 一般論でございますけれども、競争によって、それぞれその市場におけるマーケットのレピュテーションを高める、価格競争も起こる、そのようなメカニズムが働くというふうに思っております。

山花委員 私は、どこの局面を見るかにもよると思います、局所的にそういうことは起こる可能性は否定はしませんけれども。

 しかし、例えば、あるところまで運ぶけれども、そこから先は自力では無理なので今の郵便のネットワークを使って郵便で届けてもらうとか、そういうことをしないと、いや、私はかつてそういうケースがあったと認識しているんですけれども、これは、郵政公社を民間事業者にして物流でも競争させてしまうと、かえって、今ある事業者の間での競争は起こるかもしれませんけれども、新規参入というのは私はほとんどできなくなるんじゃないかと思いますよ。

 つまり、今あるところは、それがネットワークの価値だという議論はあるでしょう。しかし、いきなり全国あまねく展開できるような新規事業者というのは、私は想定できないんです。これで郵政公社が民間の企業になって、しかも小包についてはユニバをかけないというような話だとすると、そうしたら、民間の事業者なんですから、競業他社がこれから発達してくるぞと思ったら、それは値段を高くしたりとか、できるだけシャットアウトしようとする動きというのが出てくるんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。

竹中国務大臣 基本的には、今日では、大手の民間宅配業者、これは全国レベルでの物流ネットを形成する、そういうビジネスモデルに基づいて、過疎地においてもサービスを提供しているというふうに考えられます。また、この全国どこでも届くという安心感が、ここはまさにネットワークを持っているということが重要なポイントになっている。

 このネットワークとサービスイメージが既に確立しております今日において、これをやはり維持していくことが経営戦略上重要であるというふうに思われますので、大手の民間宅配事業者が、一定の地域について、例えば大手の業者がそれなりのサービスを提供できるということは確かではないかと思います。

 郵便小包もその中に入っていくわけでございますけれども、これは民間宅配便と同等あるいはそれ以上に全国でネットワークを構築してサービスを提供するというビジネスモデルが戦略上大変強みになるわけでありますから、過疎地等においても、これまた民営化された郵政が配達を、さらにサービスを提供していくということが想定されるわけでございます。

 一点、よく理解できませんでしたのは、新規参入がどうなるかという点でございますけれども、新規参入が民営化されたからしにくくなるということを山花委員は今御指摘になったんでしょうか。民営化されないと新規参入は可能だけれどもということなんでございましょうか。ちょっとそこら辺はよく理解できませんでした。

山花委員 つまり、今の民間事業者をモデルとしたときに、例えば個別の名前を出すと日通のペリカン便だとかクロネコヤマトだとかありますけれども、全国展開をしているじゃないかという議論はあり得ますし、それが民営化された後の郵便局会社ですか、競争すればいいじゃないかという議論は、それはそれとして、私は必ずしも賛成ではありませんけれどもあり得ると思いますが、ただ、今までの、そういう民間の事業者がここまで発達してくる過程の中においては、いきなり全国展開したわけじゃなくて、当然運べない地域もあって、それについては安い全国一律料金の郵便を使ったりとか間をつなぐことをして、今までこうやって発達してきたわけですよ。それは評価の問題じゃなくて、事実としてそうだったと思うんです。今回の法律でいいますと、小包についてユニバの義務がかかっていますかということでいうと、小包はまた別の話だと思います。

 そうだとすると、料金についても今までのような全国一律じゃなくなるわけですから、過疎地とか山間とか離島に届けるについては高くなる可能性はあるわけで、あるいはそれは民間事業者同士の競争ということになりますから、これから新規参入をしよう、これから何とか便というのを始めようという事業者に対して、今までのようなユニバの義務がかかっていないわけですから、そういう安価なサービスは提供しなくていいわけです。だから、そうだとすると、事実上、参入が難しくなるのではないですかという話です。

竹中国務大臣 大変申しわけありません、今の議論も半分ぐらいしかちょっと理解できなかったかもしれないんですが、御指摘のように、全国ネットワークするところがあって、そこに参入してくるときには、もちろん最初から全国ネットワークはないわけですから、エリアで実績をつくって、それで広げていく、ないしは、このエリアで最初やっていて、別のエリアでやっているところとネットワークをつくっていく、そういう形で民間が大きくなってきたというのは事実なんだと思います。

 そのときに、今度は、いろいろなアライアンスを組む。組みやすい相手として、実は民営化された郵政というのが、郵便事業会社というのがそこにさらに入ってくるわけですから、いろいろなアライアンスを組む可能性は、新規の参入会社にとってもむしろ高まるのではないのでしょうか。

 郵便事業会社そのものは、まさに今でも離島まで届けられるというネットワークを持って、それを売りにして競争していくわけで、これはこれでしっかりとやっていただく。そのときに新規の事業者としては、その他の民間と組むかもしれませんし、民営化された郵政と組むかもしれませんが、それによって、それが民営化されたから新規の参入が果たして難しくなるのかということに関しては、これは必ずしもそういうことではないのではないかというふうにお伺いをいたしました。

山花委員 なぜわからないのかよくわからないんですけれども、同じ民間の事業者ですから、競業他社がこれから発達してこようというときには、それは助けてあげる必要は全くないわけですよ。むしろつぶしにかかったっていいわけですよ、民間の企業者なんですから。

 要するに、何か、民営化するとこんないいことがある、こんないいことがあるというような話ばかりされるんですけれども、結局、民営化しようがしまいが、例えば小包一つとっても、こんなにこれからいいことがあります、郵便だってこうなりますということだったら、民営化なんかしなくたって、どれ一つとったってみんなよくなるというようなバラ色の話ばかりされるものですから、ちょっとそれは違うのではないですかという指摘をさせていただいているわけであります。

 ちょっと時間が超過してまいりましたけれども、議論はともかくといたしまして、戻ります。金曜日の質疑です。

 小泉総理は、これもまた事実関係として、きょう本人はいらっしゃいませんけれども、訂正していただきたいことがあるんですが、これは野田聖子委員が質問をしたときです。

 私は、大臣のときに、公社がいいんだ、そしてこの公社の形が将来の日本の形になじんでいく、いわゆる公共性を極めて重視した、かつ民間的手法を取り入れた、ちょうどいい形の組織体ができたということで、民営化をしないと言い切った大臣の一人です、ちょっとこれも気になるせりふですけれども。そういう思いもありまして、突然解釈が変わったことにも驚きを禁じ得ないのですけれども、これも後で議論させていただきたいと思いますが、その公社に対して、どうしてだめなんだということを教えてくださいと。

 つまり、公社じゃだめで、何で民営化なんですかという質問に対して、現実の公社を見れば、かつての、公社以前の問題を見ても、かんぽの宿一つをとっても、あるいはメルパルク、ホテル一つをとってみても、あれは本当にやらなきゃならない事業なんですか。やってくれれば喜びますよ、みんな。負担がない、民間でもやっている。普通の民間の旅館よりサービスがいいし、料金も安い。それをつくってくれれば、それは民間の方々は、利用者は喜びますよ。しかし、同時に、民間でやっている人が、税の負担もない、赤字になればそれは補てんしてくれると言っていたんじゃ、これはまさに民業圧迫ですよ。第一、メルパルクも、都会には旅館とかホテルはたくさんある。そういうところに、なぜ公的なホテルやそういう事業を進出する理由があるのか。公社自体、かつての郵政事業の国営自体が、やらなくていい事業、分野に進出していたんですと。

 私はこれを聞いていてびっくりしたんですけれども、公社になってからこんなことはやっていないはずですけれども、生田総裁、今、メルパルクとかかんぽの宿とか、こんなことに公社になってから進出したり、そんなことしていますか。

生田参考人 お答えします。

 平成十二年でしたか、正確に覚えていませんが、閣議決定で、こういうのを一切停止するという御決定があった、そういう趣旨の御決定をしていらっしゃると理解しています。それをきちっと守っておりまして、増設とか新設とかいうのは一切いたしておりません。もちろん、物すごく老朽化して危ないとか、地震の関係で耐震補強をしなきゃならない、そういったものは今までも安全性のためにやっておりますけれども、先生御質問の趣旨における増設、新設はいたしておりません。

山花委員 つまり、これは、総理自身がテレビの入っている場面でこんなむちゃくちゃなことを言っているわけであります。

 生田総裁は、委員長から指名もないのに手を挙げて発言するようなことはされない方でありますので、そのときに、やらなかった、そういう発言はしていませんけれども、これはぜひ、委員長、こういう事実関係とまるで違うことを言っているわけですから、訂正する機会をつくっていただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

二階委員長 後刻、理事会において協議をいたします。

山花委員 その上で、持ち上げたり落としたり恐縮ですが、生田総裁、きのう、公社の数字が違っていたということについての質問をさせていただきました。この点について御説明いただきたいと思います。

生田参考人 五月二十五日に発表いたしました決算にかかわりまして、きのう、間違いがありましたので、訂正とおわびをさせていただきます。

 昨日、当委員会において山花先生から御指摘いただきました点について調査いたしました結果、昨日お配りしました資料「第二期 日本郵政公社決算の概要」の中の三角形の四兆二千六百億の方は正しかったんですけれども、先生に事前にお届けしておりました資料中の計数、三角形の四千二百億円は間違っておりました。ここに訂正させていただくとともに、おわび申し上げます。なお、この間違いは、恥ずかしいんですが、手作業の際の一けた違いによるものでございまして、合計額とか他の数字には全く影響はございません。

 今回の件につきましては、単に報道発表資料における誤った記載という問題があっただけではなくて、これを対外的に訂正し公表することなしに今回の資料を修正したことになりまして、決算数値の重要性に関する認識不足、説明責任上の問題など遺憾な点が多く、私自身の管理監督責任を痛感しているところでございます。今後、資料のチェック体制及び情報伝達、報告体制を改善し、このような事案の再発防止に向けまして社内の体制を確立してまいる所存でございます。

 今回の件に関しましては、特別委員会委員の先生方初め国会議員の皆様、報道資料やホームページをごらんになった国民の皆様、マスコミ関係の皆様に対しまして多大なる御迷惑をおかけしましたことを改めて深くおわび申し上げます。どうも申しわけありませんでした。

山花委員 続きまして、ちょっと前回の残した課題について進めていきたいと思います。

 昨日、中央省庁等改革基本法第三十三条第一項第六号について、これは、かつて大臣答弁で、将来にわたっても民営化しないのだ、そういった趣旨の答弁がある以上は、本来、この条項の改正案というのを提案し、かつ、それが議決をした上で今回の民営化法案というものが提案されるのが筋だという旨申し上げました。

 つまりは、中央省庁等改革基本法自体はまだ現在も生きている法律でありますし、また、法制定時にそういった議論が、答弁があったわけであります。政府としては、憲法上も法令は遵守しなければいけないという義務があるわけですから、それに従った形で、まず改正案を提案すべきだという議論をさせていただいたところ、答弁でいろいろありまして、政府の統一見解を出すということになっておりましたので、これは官房長官になるんでしょうか、お答えいただきたいと思います。

細田国務大臣 中央省庁等改革基本法の三十三条一項六号は、郵政事業について、国営の新たな公社を設立するために必要な措置を講ずる際の方針の一つとして民営化等の見直しは行わない旨を規定しておりますが、これは公社化までのことを規定しているものでありまして、公社化後のあり方を何ら拘束するものではありません。

 この旨、四つございまして、平成十四年五月二十一日の衆議院本会議における小泉内閣総理大臣からの答弁、平成十四年六月四日の衆議院総務委員会における片山総務大臣からの答弁、平成十四年六月四日の衆議院総務委員会における津野内閣法制局長官からの答弁、これらはいずれも公社化法の審議の際でございますが、平成十五年十月七日の衆議院議員島聡君提出日本郵政公社民営化の検討と中央省庁等改革基本法との関係に関する質問に対する答弁書、この四点におきまして政府としての見解を示しておるところでございます。

 また、中央省庁等改革基本法案の審議の過程で、法案の担当大臣である小里行革担当大臣は、法案第三十三条一項六号の趣旨について、「公社への移行を確実なものにするためにその前段として郵政事業庁というものがあるわけでございますから、したがいまして、これは」、すなわち公社への移行は、「民営化を行うものではありません。したがって、同法におきましても三十三条の一項の六号できちんとそれを記したものである、こういうことでございます。」と平成十年五月七日衆議院行政改革に関する特別委員会で答弁しているところであり、先ほどの政府の見解と異なるところはないと考えております。

 これが政府としての見解でございます。

山花委員 この点、全然私の質問に対して答えになっていないと思います。

 何となれば、私が聞いているのは、立法時、つまり法律をつくったときの答弁を問題としているわけでありまして、小里国務大臣が答弁をされているときに、これは平成十年の四月二十八日の議事録が手元にありますけれども、小里大臣は「これはこの形態でいきますよという精神をきちんと明記しておりますから、私は、あの精神を大事にするべきである、それがまた政治としても信義だ、そう思っております。」その後、直ちに自見国務大臣が「松沢委員の御質問でございますが、」ということで、「民営化等の見直しを行わないものとすることというふうに、これはもうはっきり法律に明記してあるわけでございますから、民営化の方向を目指すものじゃないというふうに私は思っております。」

 ここまでの質疑が割と出回っているんですけれども、松沢委員はこの後に発言をしていまして、「では、自見大臣、確認したいんですが、この法案を見る限り、小泉厚生大臣の言っている意見は間違いですね。それだけ確認させてください。はっきり言ってください。」これに対して自見国務大臣は「この法律の持っている基本的性格から考えて、私の言っていることがこの法律の基本的精神を体しているというふうに私は思っております。」と。これが当時の政府の見解じゃないんですか。

 したがって、その後の、つまり、国会で法案審議をするということは、この法律の意味はどうだということを聞いて、我々が答弁をもらって、そういうことであればということで賛成をしたり反対をしたりするわけですよ。その答弁をもらって一回議決したものが、こんな、平成十四年だか何だか知りませんけれども、後から変わりましたなんということを言われて納得できるわけないじゃないですか。

 その上で、まだもっと言えば、この五月二十一日の衆議院本会議以下のことを今長官は答弁されましたけれども、そのときの答弁をよく正確に見ていただきたいと思います。「郵政事業のあり方については、この条項にとらわれることなく、自由に議論を進めてまいりたいと考えております。」であるとか、あるいは津野法制局長官その他もそうなんです、議論すること自体はこの条項に反しないんだというのがこれまでの答弁なんですよ。

 今回の民営化法を出すに当たってどうですかという、そんな質問主意書が十四年に出るわけないじゃないですか。私が聞いているのはそういうことじゃないんですよ。それはさんざんこの間ここで議論になったんじゃないですか。こんな答弁、これが政府見解だと言うんですか。これじゃ、ちょっと納得できないですね。ちょっと協議してください、これは。

二階委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

二階委員長 それでは、速記を起こしてください。

 山花郁夫君。

山花委員 もう一度少し整理をさせていただきたいんですけれども、私が申し上げているのは、当時の法案の担当大臣である小里行革担当大臣はということで、何か五月七日のときのだけ示されていますけれども、そうじゃなくて、中央省庁等改革基本法というのはいろいろなことが規定されていますからさまざまな議論があったんですけれども、まさにこのことが問題となったときに、時の郵政大臣がこの委員会に来て、こう答えているというわけです。

 それで、何かきのうの質疑の中でもちらっとそういうせりふが出て、また何か今の理事間の協議でもあったようですけれども、この政府見解でも、法案の担当大臣である小里行革担当大臣という言い方をしていますけれども、では、仮にこの時点じゃなかったとして、後の話だったとして、中央省庁等改革基本法というのはいまだに生きている法律でありまして、これを受けて、例えば行政審判制度、南野さんになってからじゃないですけれども、その前、野沢法務大臣のころに行政訴訟法の改正が行われました。主務大臣は、今総務庁長官はいませんから、では麻生さんかといえば、行政訴訟法の担当大臣というのは当然当時の野沢法務大臣だったわけで、その後、例えば八代さんだとか野田さんのときには、当然それは時の担当の大臣が答えた答弁だったと私は認識をいたしておりますし、自見さんと小里さんが答えられていて、しかも、自見国務大臣はこのように先ほど指摘したような答えを回答しています。内閣は国会に対して連帯して責任を負うというのは、これは有名な憲法の条項ですけれども、これが法案の担当大臣でないから意味がない答弁だというふうに言われてしまうと、本当にこれは審議に支障が出るような話なわけであります。

 そして、もう一回繰り返しますけれども、きのうの伊藤委員との議論でも官房長官も答弁されていましたけれども、私はあれは十分な話だとは思っていませんで、例えば、食糧庁だとかいろいろ役所の名前が最初こう書いてあったけれども、実際にはこうなったじゃないか、そのとき法律改正していないじゃないかという議論をされていました。私は、それはあり得る話だと思います。

 ただ、例えば、国会の議論の中で担当大臣が、食糧庁というこの名前は変えませんとか、何とか省というこの名前は絶対変えませんなんというような答弁をしていたとしたら、恐らくそれは、中央省庁等改革基本法を改正してからでないとそういう役所はつくれなかったと思いますよ。そういう話なわけですよ。つまり、別にそういう答弁もなくて、こういう趣旨の役所をつくりましょうねという議論だったからこそ、名称ぐらいどうなってもいいという言い方はあれですけれども、法律は変えずに直すというのは、それは与野党で議論があって決めていったことだと思います。

 今回のこれは、もう民営化しませんよという答弁までしっかりした上でさあどうだという話なわけですから、きのうの官房長官の答弁も十分だとは思いませんし、ましてや、今回のこの政府見解についても私は適切なものだとは思いません。

 そして、もう一回ちょっと繰り返しますけれども、十四年五月二十一日の衆議院本会議だとか十四年六月四日の総務委員会だとか、これは公社化法が議論になったときの話でありまして、あくまでも公社にするときに、小泉総理の答弁をもう一回読みます、「民営化問題も含め、公社化後のあり方を検討すること自体は、法制局にも確認しておりますが、法律上、何ら問題はありません。」こういう答弁なんですよ。

 検討することは、それはやってもいいでしょう、まあ多少微妙かもしれませんけれども。検討するという話と、既に法律で決まっていると大臣も答弁しているものと全く違った法律を出しますよという話はまるで別のことでありますから、今までこういう答弁がありましただとか答弁書がありますだとかいうことは、これは私は理由にならない。ゼロは幾つ足してもゼロでありますから、一、二、三、四と挙げられても、これは理由になっていない、こういうことであります。

 したがって、きょう、私の質問に対する政府の統一見解と称するものが出てきましたけれども、まるでこれは答弁になっておりません。改めて答弁をしていただきたいと思います。

細田国務大臣 もう一度申し上げたいと思います。

 小里行革大臣の発言は、繰り返しませんけれども、当時の中央省庁等改革基本法案の担当大臣でありますので、先ほどの趣旨の発言があったということは事実でございます。

 なお、中央省庁等改革基本法三十三条一項六号の規定につきまして、歴代郵政大臣の国会での御答弁があったことは事実でございます。それぞれそれらは、当時の郵政大臣としてのその時点における将来的な見通しあるいは政策のあり方について述べられたものと理解しております。

 ただ、ややその後の問題について、先ほど御質問があった点についてもうちょっとはっきりさせたいと思いますが、その後、郵政公社法案がまさにかかっているわけですね、国会に。まさに本会議、荒井聰さんの質問があって、こんな行革基本法の規定があるのに、何で今、何か民営化とかそんなことを言っているんだと。

 つまり、平成十三年の六月から小泉内閣は郵政民営化懇談会というのを始めたんですね。まさに、総務委員会における片山総務大臣の答弁は黄川田さんに対する答弁、津野内閣法制局長官の答弁は同じく黄川田さんからの質問に対する答弁なんですが、今何か内閣が民営化の議論を始めること自体けしからぬじゃないか、法律に書いてあるじゃないかということに対してはっきりと、法律論でいえばこういうふうに考えているんだということをお答えしてあるものでございまして、その後この郵政公社法案は国会を通過しておるわけでございますが、私どものその後の見解、郵政公社法案が通ってから後の見解は、当然、民営化についても検討し得るわけでありますし、それがよしとなれば案を提出するということであって、それは過去のそういった問題に縛られておらない、こういうふうに、しかも答弁ではっきりお答えしておる、こう考えております。

山花委員 何を言われたんだか私よくわからないんですけれども、先ほど指摘したとおりで、別に、公社化法がかかっているときに民営化問題も含めて公社化後のあり方を検討すること自体は、つまり検討することまで法律で禁止されているわけではないということはこちらも認めていますよ。検討するということは法律で言うところの見直しを行ったという話ではない、これもかなりグレーゾーンではありますけれども、その話と、民営化しますという法律案を出すということとは全然次元が違う話でありまして、今生きている法律に対して過去の法律案の審議の際に答弁されているわけですから、それで法的な意味はある程度決まってくるわけですから、今回のこの法案を提出するに際しては、ちゃんと中央省庁等改革基本法三十三条第一項の六号の削除の案というものを出していただかなければいけないということを申し上げているわけです。

 全然今のは答えになっていないじゃないですか。議論すること自体は当時はあり得たと思いますけれども、それが違法だなんて一言も言っていないですよ。今回出したことについてどうだと言っているんです。

細田国務大臣 民営化自体を検討を始めて結論を出したことについては御賛成いただいた、そのこと自体は何ら問題でないとおっしゃっていただいたことは、私、理解いたしました。

 それからもう一つ、大臣の発言の問題と条文の問題がございます。

 それで、条文の問題というのは、きのうもお答えしておりますが、そもそも行革基本法の法文自体が行革の基本的な考え方を全般的に示したものである、その中で、もちろん三十三条の問題は郵政公社のそのときの行革の考え方を示したものである、これは事実でございます。

 ただ、あらゆる条文は条文を変えなければその後変えられないのかというと、決してそんなことはない例といたしまして、食糧庁でも外局として規定されておるものが変わった。それから、きのう申しました総務省所管の……(発言する者あり)いや、法律論を申しているんですから、ちょっと行ってください。つまり、いや、ちょっと最後まで聞いてください。(発言する者あり)

二階委員長 発言中です。

細田国務大臣 御質問があったからお答えしているんです。

 法律に、基本法に書いてあるものはすべて条文を変えなければ新しいことはできないとおっしゃっているかのように聞こえますから、そうではありませんよと。(発言する者あり)いや、そこで答弁の方にひらりと変わらないでくださいよ。条文の問題を言っているんです。条文の問題は、あくまでも国会で御審議をいただく問題でございますから、どういう内容のものをお出しするか。それは、公正取引委員会の所管を変えるという法律案は、総務省の所管でないわけですから、もとの基本法とは真っ向から矛盾するように見えますけれども、これは法改正をお願いして、それでも基本法に反するからだめだとおっしゃるんなら、そのときに否決していただければいい話でございまして、それが法律案です。

 他方、大臣の答弁がどうであったかというと、先ほどの議論で、議論を仕分けしていただきたい、こういうことでございます。

山花委員 ちょっと、今のは何ですか、今のは。仕分けしていないのはあなたじゃないですか。ちょっと、こんな理不尽なあれじゃ質問できないですよ。(発言する者あり)

二階委員長 では、質疑を続行してください。山花郁夫君。

山花委員 ちょっと、こっちが指摘している話をちゃんと聞いていますかという話なんですけれども。

 つまり、食糧庁の話とかもありますけれども、さっき説明したでしょう、それは。別にあのケースはいいじゃないですかと言っているんです。ちゃんと仕分けしているじゃないですか。

 なぜかといえば、法律案の審議というのは、では何のためにしているんですか、何で大臣に聞くんですか。この法律の意味はこうでしょうということを確認して、例えばこれが実際、裁判の実務になったときに、新しい法律なんかは、議事録を見てこういう法律の意味なんだなということを確認して実務は動くんですよ。そのときの答弁がこうだったからというのは、いわば法律の中身と一体なわけですよ。

 何ですか、法律論と、解釈論と大臣の答弁とは仕分けしてなんという話でいいますと、だったら、法律案の審議のときに、そんな大臣の答弁なんかをもらったって後で全部ひっくり返されるという話じゃないですか。とんでもない話ですよ、それは。ちょっと訂正してくださいよ。

細田国務大臣 いや、私はきちっと仕分けして物を言っているつもりですがね。

 つまり、一項六号は確かにこう書いてあります、いろいろ。しかし、それは公社化をするときの規定である。今回出したのはその内容とは違いますよ、もちろん。民営化なんですから。違うことなんか何にも否定していませんよ。一項六号で書いてあることと今回法案で出したことは違います。なぜならば、郵政公社ではないんですから、今出している法案は。

 しかし、そういう法案を出しちゃいかぬのかという立法論でありまして、それは出していいんでしょう。いや、今回の法案も……(発言する者あり)

二階委員長 御静粛に願います。

細田国務大臣 いや、消さなくてもいいんです。消す必要はありません。なぜなら、前例でも消しておりませんから。

山花委員 その前例が違うと言っているんですよ。

 つまりは、例えばあなたは食糧庁だとかなんとか言いますけれども、では、当時の農水大臣ですか、管轄は、食糧庁という名前についてはこれは将来的にも変えませんなんという答弁をしていたんですかという話です。していないんでしょう。していないから、別に、おっしゃっているとおり、その方針に従って変えることは何ら問題ないわけですよ。わかりますか、それは。

細田国務大臣 おっしゃることが、答弁をしているかどうかという方に論点を言われますから、答弁をしているかどうかじゃない、条文に書いてあるかどうか。書いてあることが、後から出した法律で違うことを言っているかどうかという論点だけ。条文を見ると一見矛盾に見えるけれども、前の法文を改正したかどうかということを言っているんです。

 そして、今お出ししている法律案は前の条文とは明らかに違います。しかし、条文が違うという理由でそのようなことを否定することは、今までの例から見ても違うじゃないかということを言っているんです。

 それは答弁においてどういうことを言ったかということと関係なく、条文にどう書いてあるか、そして新しい法案における条文がどういう内容であるかということだけを言っておるわけでございます。

山花委員 それは、だから、いいですか、ちょっとこれは整理してください、委員長。(発言する者あり)

細田国務大臣 先ほど申し上げたわけでございますが、各歴代郵政大臣が御答弁になったということは、それぞれ当時の郵政大臣としての、その時点における将来的な見通しあるいは政策のあり方について述べられたものと理解をしております。

 他方、中央省庁改革基本法案の担当大臣は当時、小里行革大臣であり、小里大臣は、同法案の国会審議の過程においても、現在の政府統一見解と異なることのない答弁をされておるということを理解しております。

 そして、その後の公社法案の国会審議においても先ほど申し上げたとおりでございますので、決して矛盾をしておるとかそういうことではございません。

山花委員 とても理解ができる話ではありませんで、過去の大臣の答弁というのは、条項を示しながら、例えば、この基本法においては、民営化の見直しは行わないと明記していますから、必ず将来的に見直しは行われないということだと理解しておりますと。つまり、この条項はこういう意味ですよというふうな答え方をしているわけであって、見通しだとか、将来こうなるだろうなんという話で答えているわけじゃないわけですよ。

 いいですか。そんな答弁されちゃったら、これから各委員会で質問をするときに、あなたはこの条文の意味を政府を代表してちゃんと答えているんですねと一々聞かなかったら、とてもじゃないけれども質問できないですよ。そういう答弁ですよ、あなたのは。

細田国務大臣 何遍でもお答えいたしますが、当時の基本法案の審議のときの担当大臣が小里行革大臣であり、先ほど申しました趣旨のことを申し上げたわけでございます。そのときに、まさに立法がかかっておるわけですから、そのときの政府の意思が明確にされておるわけでございます。

 そして、その後の御発言は、その法律そのものの審査ではございませんが、当然、歴代郵政大臣はいろいろな各郵政大臣の見通し、政策のあり方、お考えについて述べられたものと理解しております。(発言する者あり)

二階委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

二階委員長 では、速記を起こしてください。

 委員長から、発言、提案をさせていただきます。

 中央省庁改革基本法第三十三条第一項第六号の規定に係る小泉内閣の統一見解については官房長官から報告がありましたが、御指摘の過去の内閣における各大臣の答弁との整合性の問題については、別途整理をして理事会に報告をいたさせます。よって、質疑は続行していただきたいと思います。

 山花郁夫君。

山花委員 理事会でということですので、そちらに場を譲りたいと思いますが、ただ、今回のこの郵政の民営化法の所管大臣は、では、どなたになるんですか。

竹中国務大臣 担当大臣として、私が命じられております。

山花委員 担当大臣というか、法案についての法制的な答弁をいただける責任者は、竹中さん、あなただということでよろしいのですか。

竹中国務大臣 郵政民営化担当大臣の職務でありますけれども、これは、郵政民営化を政府一体となって円滑に推進するため、企画立案及び行政各部の所管する事務の調整でございます。その中には所要の説明責任を果たすことも当然に含まれていると解されますので、よって、担当大臣の職務の範囲内で法案に関する答弁もさせていただくということになります。

山花委員 いや、あなたの権限は何ですかと聞いているのではありません。この法案に対して法制上責任を持った答弁をいただけるのはどなたですかということです。

 そうでなければ、先ほど官房長官はああおっしゃっているんですから、伊藤大臣、麻生大臣にお伺いしても、参考意見として政治的信条は聞けるでしょうけれども、後で、いや、あれは違ったんだなんて言われたらたまりませんよ。だったら、参考意見としてお呼びすることはあっても、質問は全部竹中さんに答えていただく、そういう運営になりますよ。

 だれなんですか、担当大臣というのは。

竹中国務大臣 これは、私が担当大臣の職務として企画立案及び行政各部の所管する事務の調整がありますけれども、その中に説明責任を果たすことも当然含まれておりますので、法案に関する答弁は私がさせていただくことになります。

 なお、現在の郵政民営化担当大臣の職務範囲には、個別の法律に基づいて行政処分等を行うことは含まれておりません。基本的には、今申し上げました私の職務の範囲で、説明責任を果たすという中で、職務の範囲で法案に関する答弁をさせていただく、その意味で責任は私にございます。

山花委員 ちょっと竹中大臣に聞いても要領を得ませんので、官房長官、どなたなんですか、お答えいただきたいと思います。これは本当にこの後の委員会運営にもかかってきますよ。

細田国務大臣 まさに郵政民営化担当大臣は竹中大臣であり、総理から直接任命をしておるものでございます。

 ただ、ちょっと、しばしばそういう質問があるんですが、閣議請議とかその他執行のときに何で竹中大臣がサインをしたりしないのかということですが、これは若干誤解がありまして、もう昔からのルールでございまして、内閣府の担当大臣は、内閣総理大臣が全権的な責任を持っておりますので、個別の大臣、例えば、私も科学技術担当大臣でしたけれども、あるいは個人情報担当大臣とか、そういう者はそういった決裁行為に署名をいたしません。全部、内閣総理大臣。

 ところが、外務大臣とか財務大臣とか、そういう特別の権限をきちっと持っておる大臣はそれぞれサインをされますが、総理の傘の下でそれぞれが分担して国務大臣の職務を行っておるためにそういうふうな分担になっておるということ。これは先日松野先生の御質問の趣旨にあったのでございますが、そういう仕分けでございます。(山花委員「ちょっと済みません。質問に答えてください。だれなんですか」と呼ぶ)

 今回のこの法改正の郵政民営化に関する部分はすべて竹中国務大臣でございますが、当然ながら、国会においては、いろいろな、財務の関係、金融の関係等、流通とか、これは釈迦に説法でございますが、担当の大臣がございますから出席させていただいておりますが、それは専門の立場から出席しておりまして、お呼びになっていただいておりますから。

 ただ、郵政民営化の全般的な責任者は、この法律全体の責任者は、竹中大臣でございます。

山花委員 終わります。

二階委員長 次に、横光克彦君。

横光委員 社民党の横光克彦でございます。

 今の問題、私は非常に大事だと思うんですね。私も先般質問したんですが、いわゆる中央省庁等改革基本法の民営化しないという受け取り方で分かれているわけですが、それは、当時の大臣の考え、そしてその後の公社法のときの大臣の考えが違っているわけですね。その時々の大臣の見解とか考えは違っていても、その条文そのものは今なお完全に生きているわけですよ。

 ですから、その継続性というものは非常に大事なわけで、それと真っ向違う法案を今回出したわけですから、そのためには、最初のあの条文があったらどこから見てもおかしいわけですから、あれをまず削除なり改正して出すのが当然だと我々は言っているわけでございます。そこのところはどうしても、我々、もう最後までそこの問題は大事にしていきたい、このように思っております。

 先ほど自民党の委員からも、今回の法案の中での安定的な代理店契約ということについての質問がございました。私はどうしてもここがひっかかるんですね。きょう、またそこのところをちょっと詳しくお聞きしたいんです。

 まず、竹中大臣も総理も、今回の郵政民営化において、サービスの面では国民が困らない、困るようなことはないんだ、そのような答弁をしておりますが、それは本心でしょうか。

竹中国務大臣 本心でございます。

横光委員 その中で、郵政民営化法案第九十八条に言う安定的な代理店契約、これをサービスが低下しない理由の一つに挙げられております。いろいろと二重三重のことを言われておりますが、これも一つの理由ですね。

 窓口会社と貯金銀行が代理店契約を結ぶということですが、これは銀行法上の免許の条件として設けられているんですね。

竹中国務大臣 公社はずっと継続して営業しておりますから、二〇〇七年の三月三十一日まで公社として営業して、四月一日に新しい会社になります。そういう場合に、免許を申請して審査するということはできませんので、みなし免許の制度というのが銀行法上ございます。みなし免許を付与するときの条件として義務づけているわけでございます。

横光委員 銀行法上のみなし免許ということでございますが、銀行法の趣旨は、銀行経営の健全性を確保することにより預金者を保護するというもの、この大きな立法目的に基づいて制定されております。

 となりますと、安定的な代理店契約がそのような銀行法に基づくものであるならば、そもそも銀行経営の健全性を脅かすものであってはなりませんよね。そうすると、過疎地や都市部であっても、不採算であるような地域の郵便局においてこのサービス提供を義務づけるような免許条件は、そもそもあり得ないのではないでしょうか。

竹中国務大臣 御指摘のように、金融行政で、健全性、安定性という観点を重視して代理店契約を義務づけております。これは、店舗を持たない銀行でありますから、店舗を持たない銀行が安定して健全な経営、運営を続けるためには、やはり窓口業務をしっかりと委託するようなシステムになっていなければいけないということでございます。まさに、安定性の観点から、健全性の観点から、このような委託契約が求められる。

 その際に、委員の御懸念は、不採算のところはどうなるのか、そういう御懸念からの御質問だと存じますが、これは、全国津々浦々に窓口を持って、それを通じてネットワークを活用したビジネスを行っていくというのがこの新しい銀行にやはり一番期待されているところであると思いますし、この銀行のよって立つ重要な基盤だと思います。そういう観点からしますと、当然、三月三十一日まで営業していて、四月一日から、東京と大阪の中心にしか店舗を持たない、これはちょっと極端な例で申し上げていますが、そういうことは想定されないわけでございます。

 したがって、ネットワークの価値を活用してビジネスを営むという観点、まさに健全性、安定性の観点からも、全国をカバーする、広い、一括的な代理店の契約というのが想定されるわけでございます。

横光委員 何回聞いてもよくわからないんですが、今言われたように、ビジネスモデルを前提に、全国津々浦々をカバーする郵便局ネットワークを活用して業務展開をするから心配ないという趣旨でございますが、それでも不採算地域というのは絶対出てくる可能性があるわけですね。そういったところまで義務づけているということは、銀行経営の健全性を脅かすという、銀行法に外れるじゃないですか。このことを私は言っておるんです。

 銀行経営の健全性を脅かしませんか、不採算地域まで義務づけて。もう一度お聞かせください。

竹中国務大臣 それは、何度か議論をさせていただきましたが、やはりネットワークの価値というものをどのように考えるか。私たちは、このネットワーク価値というのが非常にある、だからこそ、これまで郵貯のシステムというのがしっかりと成り立ってきましたし、郵貯は銀行として郵貯銀行になった場合も、窓口のネットワーク価値を最大限活用してビジネスをしっかりと展開していく、それで健全性、安定性をもたらすということが想定されているわけでございます。

 私は、そのネットワーク価値を活用した銀行、そういうものを想定した上で、安定的な、全国をカバーする代理店契約、長期の代理店契約というのが、これはビジネスの観点からもそうなるでありましょうし、また、銀行監督の観点からもそのようになっていくというふうに考えております。

横光委員 それは、あくまでも竹中大臣のお考え、そうなるでありましょうし、こんなのはどこに担保があるんですか。

 では、不採算部門の郵便局であっても、委託しなければ免許は認可されないことになるんですか。

竹中国務大臣 基本的に、何度も申し上げておりますけれども、二〇〇七年の三月三十一日まで、全国のネットワークを活用して、それで行ってしっかりと成り立っている郵貯のシステムがあります。それが四月一日になって郵貯銀行となって、その場合に、やはり当然ネットワークを活用して、ほかに自社の店舗は少なくともその時点ではないわけでありますから、そういうものを活用してビジネスをやっていくということが想定されるわけでございます。

 これは、詳細は承継計画等々の中でしっかりと議論されていくことになりますが、私は、制度設計においては、今申し上げた、答弁させていただいたような姿を想定しております。

横光委員 今の説明では、基本的に、すべての郵便局における郵貯、簡保の委託を内容とするような契約の中身がこの承継計画の中に盛り込まれていなければ認可されないということになりますよね。

 当初は、恐らく今言われたように、そういう形になるかもしれません。しかし、この免許条件は、民営化法によれば移行期間中は常に義務づけられるものですよね。免許条件は、移行期間中は常に義務づけられるんですね。それで、この免許条件は郵貯銀行の経営状況にかかわらず付与されている。

 そうなりますと、たとえ郵貯銀行が赤字であっても、全国津々浦々をカバーする郵便局ネットワークを活用した、先ほど言われる業務展開は義務づけられるということになる。そこまで郵貯銀行のビジネスモデルを強制できるんですか。

竹中国務大臣 まず、免許というのは一度出したら免許を取得するわけでございます。その上で、それ以降についても、移行期間をカバーする、そしてそれを超えることを妨げない長期の契約を義務づけているわけでございますから、その間そういう委託契約が続くということになります。

 民営化された後、それにつきましては民営化委員会がその後の民営化の進捗状況をいろいろな形で検証することになりますので、その中で総合的な検証は当然行われていくわけでございます。しかし、契約を契約としてしっかりと結んで安定的なサービスは続けるような仕組みを持つ、一方で、検証の仕組みはしっかりとした活用をしていく、そういうことになります。

横光委員 いや、そうかそうでないかだけちょっとお聞かせください。

 今私が聞いたのは、たとえ郵貯銀行が赤字であっても、全国津々浦々をカバーする郵便局ネットワークを活用した業務展開は強制されるのか。どうぞ。強制されるかされないか聞いている。

竹中国務大臣 契約は履行しなければいけないということだと思います。その上で、総合的な検証は行っていくということでございます。

横光委員 そういった業務展開は強制されるという趣旨ですが、不採算地域で業務を実施し、その結果赤字となったことを理由に、今のような形でやるならば、銀行法上の業務改善命令を受けることはないわけですね。

竹中国務大臣 基本的には承継計画の中でしっかりといろいろな仕組みをつくっていくわけでございますけれども、その間について、これは銀行法が当然のことながら適用される銀行でございます。同時に、移行期間については、それに上乗せする形で、その間は政府の資本が入っているわけでございますから、幾つかについて許認可が要る等々特例がございます。そういうものをあわせて、法律としては適用されていくということになります。

横光委員 では、株の売却が早期に進めば、移行期間中十年経過しないうちに進めば、この免許条件は解除されることになるんですね。

竹中国務大臣 免許条件というのは、免許を与えるとき、免許を出すときに求められる条件です。それは、免許は一回出したらそれがずっと続くわけでありますから、免許を出すときの条件、それが長期の契約でありますから、その長期の契約というのは契約期間続くということになります。

横光委員 完全に売却してしまえば完全な民間会社になるんですよ、民有民営に。そうなったら、なぜここまで縛られるんですか、それでもなおこの免許の条件に縛られることになるんですか。では、いつまで。これは移行期間中の安定的な代理店契約でしょう。それを、完全に売却して、努力して完全な民有民営会社になったにもかかわらず、なおこれに縛られる、そんなおかしなことはないでしょう。

竹中国務大臣 なぜ長期の契約を求めるかといいますと、こういうビジネスモデル、安定的な代理店を持つということが金融の健全性、安定性の確保から必要だというふうに判断してそういうものがカバーされているわけです。別にその判断そのものは、その判断によって行われてこの契約が存在しているわけですから、その契約は当然のことながら法律的に続くということになります。

横光委員 免許の条件のときの期間というのは定められているんですか。どうぞ。

竹中国務大臣 代理店契約は、先ほど申し上げましたように、これは店舗を持たないということで移行期間をカバーする長期の契約ということでございます。その期間についても、それを上回ることも長期となることも可能でございますので、それにつきましては、それぞれがビジネスモデルをより詳細に検討して、当事者で合意して、それを当局が認可するかどうかという判断をするわけでございます。

横光委員 その期間なんですが、例えば、移行期間は十年となっておるんでしょう。十年までには完全に株を売却するという方針なんでしょう。その期間は十年と、免許の条件のときに委託契約期間は十年というふうに決まっておるんですか、長期となっておるんですか、どうなんですか。それとも、五年で一回やり直すとか、そういう方法になっておるかどうかお聞きしているんです。

竹中国務大臣 期間について、法律で具体的に何年ということを定めてはおりません。契約期間について最低限移行期間をカバーするものであること、これが条件でございます。

横光委員 では、郵貯銀行は、いわゆるそういったところから縛られるために、すべての株を売却するという努力をして、完全な民有民営化、自由度の高まる銀行を目指しているわけでしょう。期間が決まっていない、長期的とかそういうことであったら何ら努力しないということになってしまいますよ。そういった非常にあいまいな形で契約を結ばなきゃならない。どこが民間会社になりますか。民間会社と言いながら、そこまで縛ってしまうということで今私は伺っているんですね。

 ですから、確かに、先ほどから何回も、全体としてのネットワークバリューを高めるということを言っておりますが、どのようにすればネットワークバリュー、いわゆる価値が高まるかといった経営判断はだれがするんですか。当然ながら経営者がその判断をすることでしょう。経営者が判断した結果、免許条件としてそういった契約は結ばなきゃなりませんが、その後、要するに経営判断によって不採算地域の郵便局の委託をやめたり、あるいは結果としてネットワークが縮小したり、そういったことは当然起こり得るものと考えるが、いかがですか。そうでなければ民間企業と言えないと思うんですが。

竹中国務大臣 銀行というのは、そもそも信用システムの一角を担って大変重要な公共性を持っているわけでありますから、どの民間金融機関もいろいろな条件を付されて免許を与えられたり、財務についても御承知のようにいろいろな条件が付されております。

 これは、金融行政、まさに民間であるからこそ自由にやっていただこう、自由にやっていただく反面として最低限守っていただくことはきっちりと条件としてつけよう、そういう観点からこの安定的な契約を条件として付しているものでありますので、これは決して哲学的な縛るとか縛らないとかという問題ではなくて、この銀行にふさわしい、この銀行が民間としてやっていくために必要な条件を金融当局として付しているものでございます。

 その条件というのが、何度も申し上げておりますが、移行期間を十分にカバーする安定的な代理店契約、それは、この銀行が直接の窓口を持っていないということに根差してそのような金融上の判断をするわけでございます。

横光委員 きょうの午前中の参考人の方の御意見でも、企業の経営をやった方等の意見では、まず不採算地域あるいは利益が上がらないところには絶対に企業というものは参入するものでない、もしそういうことが起きたら撤退するものだ、そういう趣旨のお話がございました。

 当然ですよ、それは。もうからないところまで何でやらざるを得ぬのか。民間会社なんでしょう。株主もいらっしゃるんですよ。株主はより高い配当を求めていきますよ。では、そういった声は無視してしまう、もう民間会社でなくなってしまいますよ、そんなことをしたら。

 ですから、これは大変ここのところが、民間会社であると言いながら、私から言うと、これほど縛ってしまって、自分たちの、経営者の判断さえ使えない、そういう気がしてならない。

 だから、竹中大臣は、ネットワークバリューということで一括して契約するんだと前々から言っておりますよね。個々の窓口会社と契約するのではなくて一括でやるんだというようなことを言っておりますが、仮にこの委託契約が一括であっても、では、委託手数料、委託料の算定に当たっては、郵貯銀行が委託を希望する郵便局のみのコストを積み上げるのは当然だと思うんですが、当然そういうことでよろしいですね。

竹中国務大臣 実際の手数料の設定は、これは当然非常に複雑なものになるんだと思います。例えば、一定部分は固定にするとか、ある条件までは安くする、高くする、そういうことで、一概には申し上げられませんけれども、これはまさしく、代理を受ける側と代理をする側、当然にその経営者にしっかりと実情に合わせて話し合っていただくということになると思います。

 その際に重要な点は、持ち株会社がありますから、銀行と窓口会社の間でのしっかりとした調整、そして、結果的に郵政が全体としてしっかりとサービスをしながら利益を上げられるような、そういう総合的な観点からの調整はその持ち株会社が行えるというような形になっております。

 いずれにしましても、この手数料というのは、現実には非常に細かい実務の積み上げの中から、当事者がまさに経営的にしっかり判断して、そして持ち株会社もグループとしての戦略全体を判断するという観点から決まっていくものと思います。

横光委員 今のはちょっとわかりにくい説明。

 要するに、契約は一括であっても、委託手数料というものは一括じゃないんでしょう。貯金銀行がやりたいところの手数料を積み上げればいいんでしょう。やりたくないところまで手数料は払わなきゃいけないんですか。委託だから、撤退しないまでも、ここではやりたくない、やっても合わないので、ここはやりたくないので手数料は払わない、撤退はしないけれども手数料は払わない、それはできるんですね。

竹中国務大臣 私が申し上げている一括契約というのは、少なくともそういうイメージではないわけでございます。一括して全国をカバーして、もちろんその手数料の決め方は、今委員は非常に極端な例として払わない場合があるのかということをちょっとおっしゃいましたけれども、これは現実には、先ほど言いましたように、どこまで固定にするか、一定額までは手数料を高くするか低くするかとか、いろいろな形はあろうかと思います。

 いずれにしても、その手数料は別に個々の郵便局に行くわけではなくて、郵便局会社に手数料が払われるわけですから、それは、郵便局会社が一括契約、まさに一括して契約を結ぶ中でしっかりと経営上判断をされていくということだと思います。

 かつ、この手数料については、それぞれ業務の適切かつ円滑な承継を可能にするものであることを、承継計画の審査、認可の際に主務大臣がチェックすることになっておりますので、そういう観点からも、自立的な経営が確保できるよう適正な水準に定められていくものというふうに考えております。

横光委員 私がお聞きしているのは、郵貯銀行あるいは郵便保険会社が委託を希望しない局のコストまで委託料に含まれるのか、そうした場合は、結局窓口会社への利益移転になるんではないか、問題が起きるんではないかということを申し上げておるんです。

竹中国務大臣 ちょっと利益移転というのがよくわかりませんが、これはまさに先ほど言いましたように、窓口会社本社が、それぞれいろいろなところのサービス委託があるわけですが、それを総合的に判断して一括して契約をするわけでございます。

 その中で、郵便局会社としては、自社のこれまでのいろいろな窓口業務の中の大部分を金融が占めてきたわけですから、これはしっかりと続けたい、そういうインセンティブを持つ。銀行の方は、銀行もこれまた窓口を活用して、全国津々浦々のネットワークで活用したわけですから、そういうインセンティブを持つ。その中で、手数料の決め方については、固定があったり傾斜があったり、いろいろなことになっていくだろうというふうに思われます。

横光委員 貯金銀行が委託を希望しない局のコストまで委託料に含まれた場合は、窓口会社へのいわゆる利益移転となるんじゃないかと聞いたんです。

 つまり、銀行法の中のアームズ・レングス・ルールというのがあるんでしょう、御存じですね。つまり、兄弟会社の間で銀行に不利な取引をしてはいけないということがあるんですよ、銀行法第十三条の二。つまり、「銀行は、その特定関係者」、今回は窓口会社ですね、貯金銀行は窓口会社との間で、「次に掲げる取引又は行為をしてはならない。」それは、いわゆる「当該銀行の取引の通常の条件に照らして当該銀行に不利益を与えるものとして内閣府令で定める取引」となっています。

 つまり、やりたくないところのコストまで結局取られてしまうと、そこの分は窓口会社の不利益のプラスになっていく。この差額というものは利益移転に当たるんじゃないかということをお聞きしておるんです。

竹中国務大臣 それは利益移転に当たらないと思います。そこがまさにネットワークとしての価値ということなんだと思います。

 ネットワーク全体として契約するわけでありますから、ネットワークですから、これは非常に密度の高いところ、低いところ、いろいろありますが、しかし、そのネットワークとしての価値に基づいてこれは契約するということを想定しているわけですから、この部分が余剰な利益で、この部分が実質的な利益の移転、マイナスの利益である、そういうような考え方にはならないと思います。

横光委員 それでは民間会社、郵貯銀行というのは本当に手足を縛られてしまいますね、今のようなお話では。私はやりたくない、ここはもうちょっと御遠慮したいというようなところはあると思う。それでも安定的な代理店契約という免許の条件からして、委託契約は続けなければならない、しかし、委託する手数料まで、またやりたくないところまで払わなきゃならない、そういったいろいろな問題がこの郵貯銀行にかぶさってくるんですよ。

 そうした場合、だから本来なら委託手数料は百払えば済むところを、ほかの委託したくないところの手数料まで含まれて百五十払わなきゃならない、そういうことだって、貯金銀行からすると出てくるんですね、そういった問題が。その五十の差額というのはどうなるのか。いわゆる利益移転になるんじゃないかということを私は申し上げたんです。

 そしてもう一つ、これは、今はそういったことがないと言われるので次の質問をしてもしようがないんですが、私はあると思っているので、そういった形で、払わなきゃならない以上のものを払ったことによって経済的な利益を供与したということになりますと、これはまた寄附金ということになってしまいまして寄附金課税の対象にもなる、こういった問題も出てくる。

 いずれにしても、私はきょうお話を聞いてもよくわからないんですが、要するに、本来竹中さんたちが基本方針でやろうとしたことは、いわゆる貯金、保険、この会社を一般の商法会社にするというのが目的だったわけですよね。しかし、結局のところ、与党の皆さんとの話し合いの中で、実質的なユニバーサル確保のためにこの安定的代理店というわけのわからない難しい言葉が出てきた。そこで非常に混乱が始まっているということです。

 そして、安定的代理店があるから大丈夫だと言いながらも、結局のところ最後は経営判断に任せられる、こういう法案になっている、肝心のユニバーサルサービスさえ担保されることはないんじゃないか、私はそういう気がいたしております。そのことを申し上げまして、質問を終わります。

二階委員長 次に、中村哲治君。

中村(哲)委員 民主党・無所属クラブの中村哲治でございます。

 委員長にまず確認をさせていただきたいと思います。先ほど、山花委員の質疑の最中に、委員長からお話がありましたことの確認をさせていただきたいと思います。自見大臣、野田大臣、八代大臣などの過去の大臣の答弁と現在の政府の見解との整合性は、政府から改めて理事会の方に回答させるということでよろしいですね。

二階委員長 そのとおりで結構でございます。

中村(哲)委員 あわせて、野田さん、自見さん、八代さんを参考人としてこの委員会でお話を、橋本さんも小里さんも、参考人として改めて意見を聞かせていただきたいと考えておりますが、お願いできますでしょうか。

二階委員長 後刻、理事会で協議いたします。

中村(哲)委員 私は、自分の質問をたくさん用意しておるんですが、今までの質疑の中で議論されている論点について再び確認をさせていただいてから、自分の質問をさせていただこうと思っております。

 今出てきた論点と申しますのは、中央省庁等改革基本法の三十三条一項六号の問題、公社法二十四条の中期経営計画の問題、それから国家公務員共済の厚生年金への移管の問題、この三点の問題を議論させていただいた上で、私が金曜日、事前通告させていただいた論点に入っていこうと思います。そういう構成でいきたいと思います。

 それでは、まず中央省庁等改革基本法三十三条一項六号のお話に入らせていただきたいと思います。

 中央省庁等改革基本法案の質疑における小里大臣に相当する、今回の法律である郵政民営化法案の質疑における担当大臣は竹中大臣である、その理解でよろしいですね。

竹中国務大臣 御指摘のとおり、私が担当の大臣でございます。

中村(哲)委員 これは細田官房長官に聞かなくてはならないのかもしれませんが、それでは、先ほどの細田大臣の答弁を前提にすれば、ここにいらっしゃる大臣のお話というのは、法律に関係のある、条文に関係のあることをおっしゃったとしても、それは政府としての統一した見解ではない、そういう御理解をされているということでよろしいでしょうか。

竹中国務大臣 法案については、一義的に私が御答弁をさせていただくということだと思っております。

中村(哲)委員 いや、私の質問にきちんと答えてください。竹中大臣の答弁が法案の答弁であるというのは、それは理解しておりますよ。私がお聞きしたのは、ほかの大臣がこの法案について御見解を述べられたときは、それは個人の政治家としての見解であるというふうに政府が思っていらっしゃるのかどうか、そこのことを確認させていただいているんです。そこの点、いかがでしょうか。細田大臣、答えられないでしょう。竹中大臣、答えられないんでしょう。

竹中国務大臣 法律の一義的な解釈等々、私の担当だと思います。そのほかの質問については、その質問の内容とかによるのではないかと思います。

中村(哲)委員 ほかの、場合によるとは、それはどういうことですか。どういう場合ですか。内容によるとは、どういう内容の場合をいうのですか。それと、さっきの官房長官の答弁との整合性を、きちんと答えてください。早く答えてください。

竹中国務大臣 郵政民営化は、内閣の最重要課題でございますから、各省に関連する問題がございます。その関連する問題等々については、これはそれぞれの御担当の大臣がいらっしゃるというふうに承知をしております。

 今回の提出させていただいている法案につきましては、私が担当大臣として御答弁をさせていただくということだと思います。

中村(哲)委員 それでは、関連する内容については各省庁が答弁する、各省庁に関連する内容については各省庁の大臣が答弁する、それは拘束をするということでよろしいですね。

竹中国務大臣 これはもちろん内容によりますが、関連するそれぞれの大臣について、公社法を所管される麻生大臣、銀行法を所管される伊藤大臣、そして財政を預かる谷垣大臣、そして国土交通関連の北側大臣、それぞれの御担当で、御担当の法律等々がございますし分野がございますから、その範囲において御答弁をさせていただくということだと思っております。

中村(哲)委員 その理屈であると、当時の自見郵政大臣というのは、中央省庁等改革基本法において、郵政省の関連している内容について、専門としているのが郵政省であったわけですから、当然、有権的解釈権が郵政大臣たる自見大臣にあるということになるじゃないですか。その点について、それでよろしいですね。

竹中国務大臣 郵政大臣の所管の法律についてはそのとおりであろうと思います。

 先ほど、私、銀行法について、金融について金融担当大臣は総理大臣からその任を受けてそれを担当するものでありますので、厳密な意味での所管ではございません。金融庁長官になります。御指摘のとおりでございます。

中村(哲)委員 私の問いに答えてくださいよ。

 中央省庁等改革基本法の担当大臣は自見大臣だったわけでしょう。先ほど竹中大臣の御答弁された内容を中央省庁等改革基本法の質疑に当てはめれば、郵政の改革については、専門大臣である、郵政大臣である自見大臣が有権解釈権があるということじゃないですか。それの、今のそういった理論的帰結と、先ほど官房長官がおっしゃった内容との整合性について、きちんと説明をしてください。

竹中国務大臣 行政改革基本法の御担当は小里大臣であったというふうに認識をしておりますが、その他の問題も含めまして、先ほど委員長から、きっちりと過去の発言について整理せよという御指示がございましたので、今の委員の点も踏まえまして、しっかりと整理をさせていただきたいと思います。

中村(哲)委員 有権的解釈権があるかどうかということを聞いているんです。その一点だけでも答えてくださいよ。

 それなら、もうここでは答えることができないと言っているわけですか。――では、もう一度。

 それでは、先ほどの質問に戻りますけれども、中央省庁等改革基本法で小里大臣に相当するのが、今回の郵政民営化法案では竹中大臣であるという御答弁がありました。そして私は、それならば、ほかの質疑に対してはどうなんですか、ほかの省庁の大臣はどういうふうな解釈権があるのですかということで、有権解釈権については、ほかの大臣の関連している内容についてはその大臣に有権的解釈権があるというのが竹中大臣の御答弁でした。

 では、そうじゃないというのなら、どういう内容ならば、竹中大臣ではないほかの大臣が御答弁されたことが政府の見解になるんですか。

竹中国務大臣 私は、それはその法律、ケース・バイ・ケースで、その質問の内容にもよると思いますので、ケース・バイ・ケースだというふうに申し上げているわけでございます。

中村(哲)委員 だから、ケース・バイ・ケースというのは、法律の解釈でそんなのありませんよ。

 それでは、野党の議員は、政府提出法案に対して質疑をやっているときに、あなたは、それは個人的な見解ですか、それとも政府の見解ですかと一々確認をして聞かないと、政府の解釈であるか確定的な答弁はいただけないということでよろしいですか。

竹中国務大臣 御提出している法案について、一義的に答弁をするのは私でございます。

中村(哲)委員 私は、竹中大臣に一義的に答弁権があるということを議論しているのではありません。それは当然の前提として、ほかの大臣が答弁されるときにどの場合が政府の見解なのか、そのことについて、それじゃどのように野党の議員は判断すればいいのか、そのことについて基準をお聞きしているんです。

竹中国務大臣 それぞれの御担当の問題は、それぞれの御担当の大臣がお答えになる。それは、どの大臣がお答えになるべき問題かということに関しましては、これはまさに質問の内容等、ケース・バイ・ケースだと思いますというふうに申し上げているわけでございます。

中村(哲)委員 私がお聞きしているのは、どういう場合においては大臣の見解が政府の見解になるのかということを言っているんです。ケース・バイ・ケースというふうに答えられたら、それなら、このケースはどうなんですか、政府の見解なんですか、それともあなたの、それこそきのう竹中大臣がおっしゃった、政治的信条なんですかと一々聞かないといけないんですか。そのことを申し上げているんですよ。

 国務大臣が国会において答弁するということは、どんな内容でも政府を代表して答弁されているんでしょう。自分の個人的な見解だというふうなことを改めて断らない限りは政府の答弁なんでしょう。それは当然じゃないですか。何がケース・バイ・ケースなんですか。それじゃ、憲法論から言いましょうか。冗談じゃないですよ。

 答弁、修正なさいませんか。

竹中国務大臣 私のキャパシティーでお答えできるのは、私がこの問題の担当大臣であるということ、そして、それぞれ関連する問題については御担当の大臣がお答えになるということ、私のキャパシティーで申し上げられるのはそのことだと思っております。

中村(哲)委員 いや、あなたが答えられないでだれが答えられるんですか。(発言する者あり)

二階委員長 御静粛に願います。

竹中国務大臣 私が申し上げていますのは、それぞれの大臣の所掌に属することはそれぞれの大臣がお答えになる、そして、それが、お聞きになる問題がどの大臣の所掌なのかというのは、それはケース・バイ・ケースでございましょうというふうに言っているわけでございます。

中村(哲)委員 私が申し上げていることに対して、答弁の内容が変わっております。

 それじゃ、竹中大臣、今、ケース・バイ・ケース、そのケース・バイ・ケースの内容というのは、扱っている内容について専門性が違うから、その専門性によって大臣が答えられるということをおっしゃいましたね。だから、答えた大臣というのは専門性を持っていること、自分の担当であるということで答えた大臣については、おっしゃった大臣の答弁というのは政府の答弁であるということで理解してよろしいですね。

竹中国務大臣 所掌の問題について、その政策的な問題、ないしはその法律を所掌している大臣でございましたらその解釈等々、それは御指摘のとおりなのだと思います。

中村(哲)委員 だったら、中央省庁等改革基本法案の質疑のときに郵政大臣たる自見大臣がおっしゃったことというのは、専門性に基づいて郵政大臣が答弁なさっていることということでありますから、政府の答弁であるということを申し上げているんです。もうこのことは、それでよろしいですね。

竹中国務大臣 中央省庁等改革基本法の問題に関しましては、先ほど委員長から御指示がありましたように、しっかりと整理して統一的な考え方をお示ししたいと思います。

中村(哲)委員 この問題については、以上の答弁を前提に政府見解をもう一度理事会に出されるということですので、ここで納得というか一段落、ひとまずおいておきましょう。

 三十三条一項六号のこと。細田大臣、いらっしゃいましたから、一点だけ確認しておきますよ。

 細田官房長官におきましては、先ほど山花委員の質問に対して、食糧庁とかそういうわけのわからない例を出されました。それでは、官房長官、一点だけ確認しておきますよ。三十三条一項六号の規定というのは、「民営化等の見直しは行わないものとすること。」ということで、明文で規定がされております。では聞きますが、食糧庁とか公正取引委員会の場合に、名前を変えないとかそういった内容のことはどこかに規定されていますか、法律に。

細田国務大臣 一項六号というのは、あくまでも郵政公社の設立の方針についての規定でございますので、その後のことを言ったとは思っておりません。

 そして、条文上の問題でいえば、公正取引委員会の所管が総務省であるということについて、当時の議事録を調べれば、なぜ総務省なのかということをさんざん議論しているはずです。その後も、公正取引委員会のあり方を見直して内閣の方に移したときも議論しているはずです。

 したがって、その基本法というものの性格については先ほど来あるいは昨日来申し上げているとおりでございまして、公社を設立する、しかもそれは法律をもって設立するわけですから、その後のことまで規定しているとは私は依然として考えておりません。

中村(哲)委員 きちんと質問に答えてください。私は、三十三条一項六号と同じような規定が公正取引委員会や食糧庁においてもあるのかどうかということを聞いているんです。ないんでしょう。

細田国務大臣 ですから、民営化の議論は、条文上の議論は、あくまでも郵政公社について規定することは法文を見れば明らかであります。だからこそ皆さん方は、国会の議論で、主務大臣がどう言ったとか、そういう方にまずよって……(中村(哲)委員「あるかないかで答えてくださいよ」と呼ぶ)議事録のことを言っているんですよ。これは……(中村(哲)委員「法文のことを言っているんですよ」と呼ぶ)関係がございません。

 つまり、この一項六号は郵政公社を設立するときの考え方を言っているということは政府の公式見解でありますから、その条文を……(中村(哲)委員「何を言っているんだ。法文にあるかないかを聞いている」と呼ぶ)そうではありません。(発言する者あり)

二階委員長 御静粛に願います。

細田国務大臣 その条文を変える必要があるかどうかの問題については、あたかも公正取引委員会や食糧庁や日本学術会議と同じように、変えていない、行革基本法を変えなければ対応できないということではなくて、あくまでも国権の最高機関である立法府の考え方だ、こういうことを申し上げているわけでございます。

中村(哲)委員 委員長、今、あるかないかということを私は聞いているんです。それについての答弁がありません。きちんと答えさせてください。

細田国務大臣 あるかないかというのは、ないに決まっているじゃないですか。それは条文をごらんになればわかるじゃないですか。何でそんな何遍も聞くんですか。

 ただ、なぜないか、なぜあっても変えられるかということを申し上げているんです。

中村(哲)委員 法律のことを余り御存じないようですので……(発言する者あり)

二階委員長 お静かに願います。質問中はお静かに願います。

中村(哲)委員 あなたは法律の専門家じゃないようですから申し上げておきますけれども、別表三の公正取引委員会とか食糧庁というのは、別に変えちゃいけないという規定はないんですよね、今官房長官がおっしゃったように。

 しかし、郵政の公社化については、三十三条の一項の一号から五号で公社化についての基本方針は書いてあるわけですよ。わざわざ入れたのがこの六号なんです。六号は、だからここは、「民営化等の見直しは行わないものとする」ということで、改めて縛っているんです。ここが食糧庁や公正取引委員会とは違うところなんですよということをお伝えしているんです。これを、もう憲法論までいってお話しするというのは、私も本当に情けない思いがしておるんですけれども。

 では、内閣が国会に法案提出を認められるその根拠法というのは何ですか。内閣の法案提出権を定めている法律上の根拠は、何法の何条ですか。

細田国務大臣 憲法だと思いますけれども、ちょっと何条か存じませんが。

 ただ、ちょっと誤解があると思いますよ。先ほど来、六号の問題は、公社化についての考え方を示したものであるということは何遍も総理大臣初め答弁しておりまして、そのことについておかしいとおっしゃっている意味はわかっているんです。わかっているけれども、おかしくないと申し上げているので、そこは見解の相違であると思っております。

中村(哲)委員 内閣法の五条のところにこのような規定があります。「内閣総理大臣は、内閣を代表して内閣提出の法律案、予算その他の議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告する。」つまり、内閣提出の法律案というのは内閣法五条で規定されているんですね。内閣法の五条の規定については、これは大体、憲法で、内閣に法案提出権があるのかどうかということは憲法上の議論になっています。御存じのとおりです。

 憲法の規定を読みますと、憲法第四十一条「国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。」国の唯一の立法機関ということでありますので、それじゃ、法案提出権というのは議会にある。それで、なぜ内閣にあるんだということは憲法学上の議論になっているわけですよ。

 それで、何でこの本を持ってきたかというと、有斐閣の「憲法2」という本なんですけれども、これは日本で法律を勉強される学生の非常にメジャーな法律書なので、これをお持ちしたんですが、そこにどう書いてあるかというと、「国会が、法律により、内閣に提出権を与えることは、国会の自己拘束として、議員自身による提案の一定の制限と同様に、憲法の禁じるところではないと解するのが適切であろう。内閣に法律案提出権を認めている内閣法五条は、かかる憲法解釈を基礎に理解できよう。」こう書いてあるわけです。

 つまり、自己拘束、国会の自己拘束として、内閣に法案提出権を内閣法五条で認めているというのが、憲法解釈、憲法学上の通説なわけですね。それを見解の違いとか言われるんだったら問題があるんですけれども。

 内閣法五条というのは、違法の状態で出されている、つまり、国会が改めて、中央省庁等改革基本法三十三条一項六号で民営化を行わないと改めて書いている、つまり内閣を改めて拘束している、そういった条文があるにもかかわらず法案を提出するというところまで認めていないんですよ。それが憲法学上の解釈の帰結なんです。それを見解の相違だと言うんですか。

細田国務大臣 そういう解釈をするために内閣法制局もございますので、津野内閣法制局長官が、公社化以後のことまでも規定したものではないと解されるということを国会に答弁を申し上げているわけで、この見解に基づいてお出ししているわけですから、特に、そういう議論、憲法論について無知で出しておる、そういうことではございません。(発言する者あり)

二階委員長 速記をストップしてください。

    〔速記中止〕

二階委員長 速記を起こしてください。

 中村哲治君。

中村(哲)委員 今細田大臣がおっしゃったことは、形式的な理由なんです。私が申し上げた憲法解釈を否定する実質的な理由について、きちんと論理立てて説明をしてください。

細田国務大臣 どうも趣旨が理解できませんが、内閣法制局は、国会でも何遍も、既存の法律、憲法を含むあらゆる法律の解釈を、政府としてどのように考えているかということをただし、国会からもただし、そしてそれに対して有権解釈を出す責任ある役所であります。そこの、責任ある役所の長官が、津野内閣法制局長官時代でありますけれども、これが公社化以後のことまでも規定したものではないと解されるということを言っておりますから、内閣法制局長官の解釈そのものが違うんだとおっしゃるのかどうかはわかりませんけれども、私どもは、それに従っても、決して何か違憲の行為をしているというふうには考えておりません。

中村(哲)委員 私は、まさに、内閣法制局長官が違う答弁をされていますからというのは形式的な理由にしかすぎないと言っているんですよ。私は、内閣法制局の長官が言っていることはおかしいと言っているんです。それを実質的に議論するために、今まで、憲法の本から、基本的なことを手とり足とり一から説明させていただいたんです。それに対する実質的な反論は一個もないじゃないですか。

 私は、どの点について私の申し上げていることがおかしいんですかということをお聞きしたいんですよ。それについて聞いているのに、さらに聞いてもまた形式的な理由をお答えになっただけじゃないですか。実質的な理由をお答えになりませんか。

細田国務大臣 そこが御不審な点があれば、実定法において有権解釈をする権能のあります内閣法制局長官に、この点の解釈をもう一度しっかりとお聞きいただきたいと思います。ここに条文がある、これはどうも、公社化に際しての考え方だと政府は称しておるけれども、そうじゃないんじゃないかということを御質問いただきたいと思います。これがまさに内閣法制局の権能でございます。

 そこで、私はちょっと今やりとりをずっとしてもあれでございますので、私どもは、先ほど理事の皆様方の、委員長のおさばきによりまして、きちっとこの整合性の問題については理事会に報告をすることをお約束しておりますので、その中でさらに詳細に述べたいと思います。

中村(哲)委員 実質的な議論についてはあなたはできない、だから後で理事会にまとめて答弁するということでよろしいですね。

 それでは、私は形式的なことの話をさせていただきますよ。

 憲法の第一義的な解釈権はどこにあるんですか。憲法の解釈権というのは国会にあるんですよ。最高裁の判例でも、合憲性の推定という言葉がありますよね。国民から直接選挙して選ばれた国会議員というのは憲法の解釈については基本的に間違わないだろう、だから国民の代表たる国会議員によってつくられた法律というのは合憲の推定が及ぶんだというのが、最高裁がいつも憲法判断をするときの原則じゃないですか。

 だから、内閣法制局に第一義的な憲法解釈権があるんじゃないんですよ。ここで、国会で議論するというのが、国会で憲法を解釈するというのが国権の最高機関たる国会の位置づけなんです。それはもう憲法を勉強した人には当たり前のことなんですよ。そこのことについて、違うとおっしゃるんだったら答えていただいても結構ですけれども、私はちょっとその感覚は信じられませんね。

細田国務大臣 あれだけ内閣法制局長官を呼んで、PKO法でも、歴史をさかのぼれば、憲法の問題、幾らでも聞いておられるのは、政府の行為が憲法に合っているのかどうか、その解釈権は、政府としてやったことについて内閣法制局長官が一義的に法文を解釈するという権能がありますから、それに基づいてお答えしている。もちろん、しかしその解釈が立法者の意思と違うという場合には、憲法上のさまざまな行為を国会がおやりになる、そういうことはあるわけですよ。

 しかし、国会が何百遍も何千遍も、この政府の行為は憲法に違反していないかどうか、この今例えば法案の提出の内容は憲法に抵触しないのかどうか、極東の範囲をどう解釈しているんだ、九条の問題をどう解釈しているんだと、現にみんな国会が質問しているじゃないですか。だから、そういう意味で私は申し上げていますから、どうぞお聞きになってください。

中村(哲)委員 何でPKOのときに議員が、野党議員が政府に、内閣法制局長官といって聞くのかというと、それは内閣の中で憲法解釈がずれていませんかということを聞いているだけなんですよ。憲法解釈の第一義的な権能は国会にあるんです。国会で憲法解釈はこうであると言ったら、そういうふうな見解になるんですよ。だから、憲法の体系上は内閣法制局よりも衆議院や参議院の法制局の方が権能は上なんです。そのことについて理解されていないんじゃないかということを私は申し上げているんです。(発言する者あり)

 今、非常に失礼なことを国会の衆議院や参議院の法制局の方に対して評価された不規則発言もありましたけれども、私は、国会議員として我が院の法制局の能力と見識を信じております。信頼もしております。そういうところに関して、本当にそういった認識で与党はいいのかなと改めて思わせていただくところでございます。

 本当にいろいろと質問をさせていただきたいんですけれども、結局、三十三条、最初のところで政府の統一見解を出さないとできないということですよね。

 きょうの質問はもうこれで……(発言する者あり)そうですね、この質問と、あと国共済から厚生年金という方に移ってもいいんですが、国共済の方も、きょうは厚生労働大臣に出てきていただけていませんから、これを今やるような環境にもございません。この国共済、国家公務員共済から厚生年金への移管の問題についても、機会を改めて、時間は残っておりますから、この時間の範囲内で、また後日させていただきたいと思います。

 質問を終わります。ありがとうございました。

二階委員長 次回は、明八日水曜日午後零時四十五分理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時四十五分散会


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