衆議院

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第15号 平成17年6月15日(水曜日)

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平成十七年六月十五日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 二階 俊博君

   理事 石破  茂君 理事 松岡 利勝君

   理事 柳澤 伯夫君 理事 山崎  拓君

   理事 中井  洽君 理事 原口 一博君

   理事 松野 頼久君 理事 桝屋 敬悟君

      井上 信治君    今村 雅弘君

      江藤  拓君    大野 松茂君

      大前 繁雄君    城内  実君

      北川 知克君    小泉 龍司君

      小杉  隆君    小西  理君

      左藤  章君    坂本 剛二君

      桜井 郁三君    柴山 昌彦君

      園田 博之君    竹本 直一君

      永岡 洋治君    馳   浩君

      松本  純君    三原 朝彦君

      宮下 一郎君    森山  裕君

      山口 泰明君    安住  淳君

      五十嵐文彦君    井上 和雄君

      伊藤 忠治君    一川 保夫君

      岩國 哲人君    小沢 鋭仁君

      大出  彰君    海江田万里君

      川内 博史君    古賀 一成君

      佐藤 公治君    辻   惠君

      中塚 一宏君    中村 哲治君

      西村智奈美君    古本伸一郎君

      馬淵 澄夫君    山花 郁夫君

      石井 啓一君    谷口 隆義君

      佐々木憲昭君    塩川 鉄也君

      横光 克彦君

    …………………………………

   内閣総理大臣       小泉純一郎君

   総務大臣         麻生 太郎君

   法務大臣         南野知惠子君

   財務大臣         谷垣 禎一君

   厚生労働大臣       尾辻 秀久君

   経済産業大臣       中川 昭一君

   国土交通大臣       北側 一雄君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     細田 博之君

   国務大臣

   (金融担当)       伊藤 達也君

   国務大臣

   (郵政民営化担当)    竹中 平蔵君

   内閣府副大臣       西川 公也君

   内閣府大臣政務官     木村  勉君

   総務大臣政務官      松本  純君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    阪田 雅裕君

   政府特別補佐人

   (公正取引委員会委員長) 竹島 一彦君

   会計検査院長       森下 伸昭君

   政府参考人

   (内閣官房郵政民営化準備室長)          渡辺 好明君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  中城 吉郎君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  竹内  洋君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  細見  真君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  伊東 敏朗君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  篠田 政利君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  羽村 康弘君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  齋藤  敦君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房参事官) 山本 茂樹君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房政府広報室長)          林  幹雄君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局経済取引局長)      伊東 章二君

   政府参考人

   (総務省自治行政局選挙部長)           久保 信保君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房統計情報部長)        鳥生  隆君

   政府参考人

   (社会保険庁次長)    小林 和弘君

   政府参考人

   (経済産業省製造産業局長)            石毛 博行君

   参考人

   (日本郵政公社総裁)   生田 正治君

   参考人

   (日本銀行理事)     稲葉 延雄君

   衆議院調査局郵政民営化に関する特別調査室長    石田 俊彦君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十五日

 辞任         補欠選任

  大野 松茂君     坂本 剛二君

  北川 知克君     永岡 洋治君

  小泉 龍司君     森山  裕君

  園田 博之君     竹本 直一君

  馳   浩君     三原 朝彦君

  小沢 鋭仁君     佐藤 公治君

  西村智奈美君     辻   惠君

  古本伸一郎君     海江田万里君

  塩川 鉄也君     佐々木憲昭君

同日

 辞任         補欠選任

  坂本 剛二君     大野 松茂君

  竹本 直一君     園田 博之君

  永岡 洋治君     北川 知克君

  三原 朝彦君     馳   浩君

  森山  裕君     小泉 龍司君

  海江田万里君     安住  淳君

  佐藤 公治君     井上 和雄君

  辻   惠君     西村智奈美君

  佐々木憲昭君     塩川 鉄也君

同日

 辞任         補欠選任

  安住  淳君     古本伸一郎君

  井上 和雄君     小沢 鋭仁君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 郵政民営化法案(内閣提出第八四号)

 日本郵政株式会社法案(内閣提出第八五号)

 郵便事業株式会社法案(内閣提出第八六号)

 郵便局株式会社法案(内閣提出第八七号)

 独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案(内閣提出第八八号)

 郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第八九号)


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     ――――◇―――――

二階委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、郵政民営化法案、日本郵政株式会社法案、郵便事業株式会社法案、郵便局株式会社法案、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案及び郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の各案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、参考人として日本郵政公社総裁生田正治君の出席を求め、意見を聴取し、政府参考人として内閣官房郵政民営化準備室長渡辺好明君、内閣官房内閣審議官中城吉郎君、内閣官房内閣審議官竹内洋君、内閣官房内閣審議官細見真君、内閣官房内閣審議官伊東敏朗君、内閣官房内閣審議官篠田政利君、内閣官房内閣参事官羽村康弘君、内閣府大臣官房政府広報室長林幹雄君、公正取引委員会事務総局経済取引局長伊東章二君、総務省自治行政局選挙部長久保信保君、厚生労働省大臣官房統計情報部長鳥生隆君、社会保険庁次長小林和弘君及び経済産業省製造産業局長石毛博行君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

二階委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

二階委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石破茂君。

石破委員 おはようございます。連日質疑が続いております。閣僚の皆様方に本当に敬意を表したいと存じます。

 私は、学生時代に清水幾太郎さんの書いた書物を読んだことがありました。その中に、政治家の仕事とは何かという一節がありました。そこの中に書いてありましたのは、国民が必ずしも歓迎していないこと、しかしながら国家の将来にとってどうしても必要なもの、そういうものは世の中にはあるのだ、それを国民に対して説得し、納得させ、そしてそれを実行する、それが政治家の仕事であるというような一節があったことを鮮明に覚えておるのであります。

 連日質疑が続けられておりますが、賛成の方も、そしてまた慎重に考えるべきだとおっしゃる方も、それぞれ本当に国の将来を真剣に考え、私利私欲なしに議論をしておられると私は思って見てまいりました。

 私は、総理がなぜこの郵政の民営化を強く主張されるのかということをずっと考えてきたのであります。

 先般、世論調査がございました。読売新聞でございますが、これの結果を見ますと、郵政の民営化に大いに関心があるという人が二四・二%、多少は関心があるという人が三七・七%、合わせまして六一・九%の国民が郵政の民営化というものに関心を持っているということであります。関心は余りないとか全くないとかいう人は三七・二%にしかすぎない。他方、今国会でこの法案を成立させるべきであるという人は一六・四%、慎重に審議すべきであるという方が六〇・八%、反対であるという方が一五・七%。これが今の国民の雰囲気であります。

 要は、関心を持っている人は非常に多い、しかしながら、この郵政の民営化というものの意味、そしてなぜやらねばならないかということについて、まだよくわからないという方が多いのだと思っています。

 当選一回のころに、私、国鉄の民営化ということに携わったことがあります。そのころは、国鉄というのはサービスもよくない、赤字は多い、ストはする、すぐ値上げはする、こんなものは民営化だと言う人が非常に多かったのであります。

 しかしながら、今回、郵政の問題を考えてみるに、世の中にあまたある機関の中で一番親切なのは郵便局である、これは間違いないですね。私が郵便局に行きましても、すぐ笑顔でいらっしゃいませと言ってくれる。そしてまた、電話をしても、国の機関でそんなものはどこも見たことがないのですが、はい、何々郵便局のだれだれですというふうに必ず名乗ってくれる。そういうように責任の所在をきちんと明確にしている機関というのもほかにないわけであります。便利で親切で、そして安全な郵便局、何でこれを民営化しなきゃいけないの、そういう思いの人もまだ国民の中には多いのだろうと思っています。

 私は、ずっと国会図書館で調べてみたんですが、総理がいつからこの問題を考えられたか、それは、大蔵政務次官のときから考えておられるということでございました。

 九六年に、総理は幾つか対談をしておられます。その中でもこういうことを明確に述べておられるんですね。それは、その当時、九十二特殊法人がありました。九十二ある特殊法人の三分の二が財政投融資制度による資金で事業展開をしている、その資金の源こそ郵貯、簡保、国民年金である、この巨額な資金があるので特殊法人は事業ができる、この問題は財政投融資制度そのものの必要性にもつながる、そのように御指摘をされ、その上でさらに、郵便局が新しい事業に進出することによって郵便局の仕事はふえるんだ、それによって郵便局は減らない、二倍にもなるかもしれない、そのようにおっしゃっておられます。

 そして、金融機関が競争相手の出現を嫌い、護送船団方式になれ切ってしまったことによって、国際化、市場化、市場経済重視の大競争時代に太刀打ちできなくなりつつあると指摘され、だれでも競争なんかしたくない、しかしながら、国民によりよい商品とサービスを提供できない企業は存続できないとの危機意識があって初めて競争は生まれるのだ、その意識改革が必要なのだ、その意識改革ができなければこの郵政三事業の民営化というものは理解されないんだ、それを九六年におっしゃっておられます。

 総理がこの郵政民営化ということを今初めておっしゃったわけではない、ずっと総理の持論であって、それを公約のメーンに掲げて総裁選を戦ってこられた。そして、四年前の総裁選挙に圧勝された。それは総理の公約であったわけですね。そしてまた、それを掲げて私どもは総選挙を戦い、参議院選挙を戦って、国民の信任を得た。やはり、特に小選挙区制になってから、公約を実現する、そのために国民に信任をしていただく、そういうような制度に変わったと思っているのです。

 私は総理を総裁にいただく政権与党の自由民主党の一員として、このことは本当に国民に納得をしていただいた上できちんと実現をしなければいけない。しかしながら、地域の郵便局の方の中には、本当に一生懸命頑張っている、公社の中で頑張っている。私、幾つもお手紙をいただきました。普通の公務員の二倍は働いている、朝早くから夜遅くまで、雨の日も風の日も雪の日も本当に一生懸命やっているのに、なぜこれを変えなければいけないのだ、そういう声は非常に強いです。私の地域は過疎地ですから、なぜこの過疎地から郵便局をなくすんだ、そういうような声も相変わらず多くございます。

 そこで、総理にまずお尋ねしたいのですが、九六年に総理がそういうことをおっしゃいました。その後、特殊法人改革がなされた、財投改革がなされた、郵政は公社に変わっていった、そういうような幾つもの状況の変化がございますが、総理のこの当初の御認識に変化はないかどうか、お尋ねしたいと存じます。

小泉内閣総理大臣 まず、その認識に変化はないかということでありますが、変化はございません。当初の私の主張がだんだんわかってきたな、理解されてきたなと思っております。そして、郵政民営化、賛成、反対、両論ありますけれども、私は、全体で考えれば、国民に今聞けば、郵政民営化、賛成か反対か、どっちが多いかといえば、必ず賛成論が多くなると確信しております。そこで、理由はいろいろあります。反対論も強いんです。私も、郵便局の職員の方が民間の銀行や金融機関よりも丁寧で身近で熱心だ、親しみを感ずる、同感であります。私は、郵政大臣をしておりますからよく知っております。

 しかし、基本的に、私が大蔵政務次官になったときに感じたのは、なぜ役所が、国会議員が、郵便貯金とか簡易生命保険の商品をあれがいいこれがいいと考える必要があるのか。まさに商売です。役所とか国会議員が、一商品のことについてそんなに真剣に議論する価値があるのか。商売は、役人よりも、公務員よりも、役所よりも民間の方がうまい。民間人の方がより国民の必要なサービス、商品というものをよくわかっているんじゃないか。私は、国家公務員なり役所なりが一商品についてこれほどまでに真剣に議論する必要はないんじゃないか、むしろ民間にできること、民間がやっていることは民間に任せた方がいいのじゃないかということを二十数年前から思っていたわけであります。

 そういう観点から、私は、郵便局職員の努力というものを否定しているわけではございません、経済全体の考えから民間にできることは民間にという、だったらば、これは民間にできるんじゃないかというごく当然なことを言っているまでであります。

 具体的な制度設計については、私は、株式会社がどうだとかどういう商品を出したらいいかというのは、一々役所や公務員が考えるよりも、民間のすぐれた経営者、そういう知識のある方によく考えてもらった方がいいのではないかと思っております。

石破委員 重ねて総理にお尋ねをいたしますが、私は、世間で言われる、一部で言われますように、この郵政の民営化というものが、それが目的化しているとは全く思っていないんです。郵政の民営化というのは、あくまで手段であって目的ではないのだ。それが自己目的になっているというのは、私は、それは誤解でありうそであると思っているのです。郵政の民営化というのは一体何のための手段であるのか、何のための手段として郵政の民営化を行わねばならないのか、そこがもっとも肝心なところだろうと思っているのです。

 総理が九六年からずっとおっしゃっておられるのは、安易な増税というものをしてはいけない、安易な増税によらずに経済の構造改革を行い、景気を活性化させて、そして税収を上げて、そして財政改革を図っていかねばならないということがずっと九六年からあると思っているんです。

 これは、地元で聞きますと、集会なんかで聞きますと、皆さん方で国債を買っている人はいますかと言うと、百人人を集めてもほとんど手を挙げないんですね。自分は国債を持っていますよという人はまずいないです。では、その国債は、これだけの巨額な残高になってきた、だれが保有していると思いますかと言うと、すぐ答えられない。それは皆さんの郵便貯金であり、あるいは皆さん方が預けている銀行の預金であり、それが財投に回され、そしてまたそれが国債の残高になっているのですよと言うと、ああ、そうなんですかというのが非常に多いわけですね。そこがよく見えないところなのだろうと思っています。

 安易な増税によらずに財政構造改革のきっかけを開き、経済の活性化を図っていく、そして税収を高めていく、それが今回の郵政民営化の目的なんだというふうに私は思っております。総理の御見解を承りたいと存じます。

小泉内閣総理大臣 確かに、郵政の民営化というのは、経済を活性化する、そして今ある郵便局サービスの利便性を向上させるという点について、国営よりも民間経営者に任せた方がよりよいサービスも図られるし、見えない税負担、これも民間と同じ仕事をするんだったら税の負担もしてくれるだろう。財政再建にも資する。さらに、今までの財政投融資の制度あるいは特殊法人の改革にもつながる。入り口、そして中間の財政投融資制度、そして出口の特殊法人、これの一貫した改革が必要であるということを私は一貫して主張してきたわけであります。

 そういう民営化の議論が出てきたからこそ、財投の預託制度の廃止もできた、そして特殊法人の改革も進んでいる。いわば、入り口、中間、出口の一貫した改革をしていく必要がある。ということによって、経済の活性化も図られるし、今後、過重な税負担も避けられる。同時に、公務員がしなくてもいい仕事は民間にゆだねられるという点で、民営化というのは、今後、日本の経済の発展のためにも、あるいは財政負担の軽減にも、さらに公務員の削減にも資する。いわば大きな将来の行財政改革、経済活性化の手段であると私は思っております。

石破委員 この委員会でも何度か議論になったことなんですが、国債は一体どこまで発行していいんだというお話なんですね。もう返さなくてもいいと言っちゃえばそれまでのことで、そういうわけにもいかない。それじゃインフレを起こすのかというと、それは年金生活者、所得の低い人、そういう人たちに物すごい負担をかけることになりますから、インフレ政策というものをとるわけにはいかないだろうということであります。では、どこまで出せるんだということについては、定説というものはございません。

 そして、世の中でよく言われるのは、アルゼンチンやそのほかの国のように外国から金を借りているわけじゃないんだ、日本の国債というのは、それは同時に国民の資産なのであって、それは問題ないんじゃないのという議論をする人もいますが、私は必ずしもそうは思っていないのですね。

 つまり、国民の貯蓄の範囲内であれば、確かに国内で消化はできます。しかし、国債の発行がどんどん膨らんでいって、国民の貯蓄を超えるようなことがあったとしたならば、それはひっきょう外債によらねばならないということになるわけですね。外債というものを発行し続けると、確かに出している国はあります、戦前の日本も出しました、アメリカも出しています。しかしながら、国内でもうさばき切れない、よって外債を出すということになりますと、これはどうしても金利は高騰するだろう、価格は暴落するだろう。それが日本経済にとって最も好ましくないシナリオの一つなのだと思っています。

 同時に、国債の発行額というものとGDPというものを比較して、それが倍にでもなれば、それは非常に危機的であるというお話があります。国債はやはり安易に発行し続けてはいけないのだ。財務大臣が何度も答弁をしておられますように、これから先どうやって国債を安定消化するかということは、さまざまな方策が考えられておるわけですが、私は、まず大前提として、国債をこれ以上発行すると、いつまでたっても大丈夫みたいな気がしています、金融危機も日本は回避することができた、しかしながら、それは豊富な日本の貯蓄によるものであって、これから少子高齢化によってだんだんと貯蓄が減っていく、そうすると、その最も考えたくないシナリオだって現実化するのではないかということはあり得ることだと思っています。

 竹中大臣の御見解を承りたいと存じます。

竹中国務大臣 石破委員御指摘になられましたように、今日本には比較的豊富な国内貯蓄がありまして、その国内貯蓄で財政部門の、政府部門の赤字、赤字というのはマイナスの貯蓄でありますから、政府のマイナスの貯蓄を民間のプラスの貯蓄が補ってきたという形になっている、それは御指摘のとおりであろうかと思います。

 しかし、その民間のプラスの貯蓄が、十年前、家計の貯蓄率が一四%程度あったものが、今、半分の七%台になってきている。高齢化とともに、そういう非常に大きな変化の中に日本は置かれている。何といいましても、これはもう財務大臣もかねて御答弁になっておられますとおり、その意味では政府の赤字、つまりマイナスの貯蓄を何とか抑えていかないと、これは未来永劫に今のような形を続けていくことはできないわけでございます。

 そういう観点から、国債をしっかりと抑える方向で管理していく。幸いにして、二〇一〇年代の初頭に基礎的な財政赤字をなくすという方向に向けて、この二、三年、しっかりと財政赤字は減り始めております。そういうことをマクロ政策として継続していくこと。

 一方で、そのお金の流れをそれに合わせて、今は郵貯という非常に大きな、国が集めて国債で運用する、国が集めて国で使うという非常に大きな存在があるわけでございますけれども、これをやはり国民の豊富な貯蓄を民間でも使えるように回していく、そういうお金の流れの改革が必要になっていると思います。

 郵政の民営化は、まさにその入り口として大変重要な意味を持っているというふうに考えております。

石破委員 これは安全保障の議論でもそうなのですけれども、多分こうなるだろうということでは、それはだめだと思っているんですね。今大臣がおっしゃることが本当にきちんとそうなっていくのだということを国民の皆様方に納得していただく必要があるのだろうと私は思っています。それは、そうならなければいけない。

 確かに財投改革もなされた。しかしながら、国債というのは余り減らないわけですね。初めて十七年度に減りました。四年ぶりに減りましたけれども、余り減らない。他方、やはり郵貯、簡保のお金がある、そのことがあることによって、ある意味、引き受け手がいてくれる、そういうような関係というのはあったのだろうと思っています。そういうものがあるから引き受けてもらえるんだ。

 しかしながら、今回、民営化の意義というのは何なのか。民営化の意義というのは、最終的に申し上げれば、そこのお金についてだれがそれを見ていくんだろう、だれがそのリスクを負担していくのだろうということだと思っています。

 つまり、公社のままでもそれはよいではないかという議論がある。財投改革をするためには、では、今一千万の限度額を減らして、それを、これはもう非常に難しいことですよ、ふやせ、ふやせというときはみんな賛成しますし、減らせというとみんな反対するわけですから。それは過去、何度も経験をしてきたことです。しかしながら、理論としては、理屈としては、この限度額を一千万から五百万に落として、そしてセーフティーネットというものを維持しながら、この貯蓄というものを維持していくべきではないか、財政構造改革にはそちらの方が資するのではないかという議論もございます。

 しかしながら、公社ではだめなのだ。なぜ変えなきゃいかぬのか。それは、いろいろなサービスが今のままでは法律に縛られてできないということもございます。しかし、もう一つ大事なのは、この国家保証というものを外していく。国家保証というものを外して、その責任を、株主であり、これはペイオフとも関連する議論ですが、預金者でもあり、株主や預金者がどうやって自分たちのお金、株、経営というものに責任を持っていくか。お金に色はついていないと言われますけれども、そのお金がどういう人たちの監視のもとに使われていくのかということは私はとても大事なことなのだと思っています。

 株主がおり、預金者がおり、やがてペイオフ制度も導入をされていく。そうすると、なぜペイオフ制度を導入したかといえば、それはきちんと預金者が経営者を監視する、金融機関を監視する、そういう意味があったと思うんですね。どうせ国家が保証してくれるということになれば、金融機関の経営というのはどうしても緊張感が欠けることになりがちである。そこを民営化することによって、このお金に、ある意味監視の目をきちんと光らせていく。そして、きちんと監視をしていくことによって、財投債、財投機関債、そういうものが安易に発行されるということも抑制されていく、そういうような緊張関係を持つということも私は民営化の大きな意義であるというふうに考えていますが、御見解を承りたいと存じます。

竹中国務大臣 今委員が丁寧に御説明してくださいましたように、今の公社が政府保証でお金を集めて、そして国債等々の安全資産で運用していく、そういう形で安全、安心を軸とした預金者の行動とか、社会的な、公共的な役割を果たすという意味では、それなりのやはり大変重要な役割を果たしてきたということは私は事実だと思います。

 しかし、安全、安心という言葉は大変重要な言葉ではあるんですが、今のような、国がやる、公社がやるということで、ではリスクはないのかというと、それはそうではないわけでございます。これはリスクはむしろ、そういう公的な部門が前面に出てくることによって、その先のものが見えなくなって、これがましてや官の非効率を助長させれば、将来的には大変大きなリスクとして国民の前にはね返ってくる可能性がある。

 その意味では、これも委員おっしゃいましたように、緊張関係という言葉をお使いになられましたが、やはりそれぞれの立場で、預金者も、資金を運用する者も、企業家も、そして政府も、一種の建設的な緊張関係の中でそのリスクをしっかりとコントロールしていく、その緊張感の中でさまざまな努力が促されて、多種多様な業務展開によって、そしてその市場経済の中で効率性を高めて、結果的に国民生活を豊かに安定的なものにしていくという仕組みづくりがやはり今私は問われているんだというふうに思います。

 そういう観点からの石破委員のお尋ねであるというふうに承知をしておりますが、結果的にやはり今これだけ大きくなった国民貯蓄を国民のためにより有効に使うためにも、そのお金の流れをさらにしっかりと規律あるものにしていく、そういう観点から、民営化というのはやはり必要であるかと思います。

 なお、一点だけつけ加えさせていただきますが……(発言する者あり)

二階委員長 御静粛に願います。

竹中国務大臣 やはり小口の預金者のセーフティーネットというのは、これはこれで大変重要な問題でございます。みんな市場の中で責任ある行動をとらなければいけないわけですけれども、小口の預金者については、これはしっかりと保護しなければいけない。その意味では、郵貯で、民営化されまして国家保証はなくなっても、できます郵便貯金銀行は預金保険機構に加入をいたします。したがって、一般の銀行と同様に、郵貯の限度額と同じ一千万円までの元本とその利息が保証される。

 したがって、小口の利用者の安全を保ちながら、社会全体として、委員おっしゃったような規律を確立していくということが大変重要であると思っております。

石破委員 預金保険と政府保証、同じように見えますけれども、実は全く違うものだと思っているのですね。つまり、だれがリスクを負担するかということが違うのです。預金保険ということであれば、それは国民全体すなわち預金者以外も負担をすることはないのだということですね。国家保証であれば、これはもう国民全体が負担をするというお話になりますが、預金保険であれば、基本的に預金者がそれを負担する。だれがリスクを負担するのかという点においてそれは違うのだと思っているのです。

 ですから、公社のままでいいではないかという御議論、それはそれなりに説得力がないわけではありません。しかし、同時に、やはりきちんと、株主、そして預金者、そしてそこの監視の目があることによる緊張関係、そちらの方が私はより重要なのではないかと思っておる次第なのでございます。

 そこで、今大臣がお触れになりました、では地方のネットワークというものをどう維持していくのかということでございます。

 地方のネットワークというのは、これは再三議論があるように、総務省令でもそうですし、法律においてもそうでありますけれども、これはネットワークは維持されるのだということになっている、それを旨とするということになっているわけであります。

 そこで、これは桝屋議員あるいは宮澤議員の議論にも啓発をされたところでございますけれども、では、そこのところはさらにどのように担保されるのだということでございます。ここは郵便局株式会社法に、何ができて、何をやるということになっているのか、つまり、その目的には二つあるわけですよね。片一方は、窓口業務というものを行うことになっている。もう一つは、ワンストップサービス、そのほかのものが、あるいは郵便局の窓口を利用して地域のいろいろな事業に貢献する、そういうようなもう一つのものがある。それが目的には書いてあるわけでございます。しかしながら、前者は「営むものとする。」となっており、後者は「営むことができる。」こういうふうになっているわけですね。

 そこをきちんと整合するためにどういうことになっているかというと、それは計画をつくるのです。会社はそれを尊重しなければなりませんということになります。そこの仕組みというのがまだよくわからない。すなわち、地域というものは何であり、つまり貢献計画ですね、そこの地域というものはどこであり、そしてまた有識者とはだれであり、その計画というのはどのように尊重されるのか、どのように尊重されたということをきちんと担保するような仕組みがあるのかという点について、いまだちょっと私はよくわからない点があるんですが、その点について御説明をいただければありがたいと存じます。

竹中国務大臣 郵便局のネットワークは、国民にとっての大変重要な資産でございます。この資産をしっかりと活用して、また、これが維持されるような仕組みというのが大変重要であるというように考えます。

 郵便局会社法でまず、あまねく全国で利用されることを旨として郵便局を設置しなければならないということをしっかりと明記いたしまして、その上で、その設置基準は総務省令で定めると。その総務省令、過疎地については、法施行の際に現に存するネットワークの水準を維持することを旨とするということも明記しまして、さらに利用者の利便、需要動向にしっかりと対応するような、そういうしっかりとした設置基準をまずつくるということが出発点でございます。

 その上で、では、局が設置されたとして、そこでどういう業務が行われるのか。これも委員御指摘のように、郵便局の窓口業務は、これは必ず行っていただく仕事でございます。この郵便局の窓口業務、いろいろ切手の販売、書留の受け付け等々ございますけれども、これはやはりそのベースにございます。その上でその地域の住民の利便に資するような業務、これは今でいいますと、やはり郵貯とか簡保とかが大変重要な役割を果たしておりますが、それがしっかりとできるような仕組みにつくってございます。

 その上で、委員の御指摘は、地域の金融サービス等々について、万が一にもそれが過疎地の最前線の赤字局等々でできなくなったような場合に、それをどのように担保していくのか、そのときの地域でありますとか有識者、計画というのがよく議論をされているけれども、そのことをわかりやすく説明しろということだと存じます。

 これは、まず地域貢献業務計画というのを会社につくっていただくことになります。これは、郵便局会社が過疎地等における金融サービスなど、まさに地域にとって必要性の高いサービスの提供を継続するために、資金の交付を基金から受けるためにこの業務計画を策定することとなります。持ち株会社の中にはその基金がつくられていて、そういった資金を必要になる場合には交付できるような仕組みがあるわけでございますが、それを受けるためにその業務計画をつくる。そして、郵便局会社は、三事業年度ごとに、具体的な地域貢献業務の内容とその実施に要する費用を盛り込んだ三事業年度分の地域貢献業務の計画案を策定いたします。そして、主務大臣が計画を認可する際に、その適切性、これは業務の内容でありますとか費用でありますとか、そういうことをきちんとチェックする仕組みをつくっております。

 また、地域貢献業務は郵便局を活用して行う業務であること等を踏まえて、郵便局株式会社が計画案を策定するに当たりましては、郵便局単位のきめの細かい地域のニーズを把握する必要がありますので、このために、地域の有識者等々の意見を聞いて、それを尊重するということを法律上義務づけているところでございます。

 そして、こうした要件を満たし得る有識者についてのお尋ねもございましたので申し上げますと、例えば地方公共団体の代表などが考えられると思いますが、これは地域の実情はさまざまでありますから、地域貢献業務計画の策定における地域の有識者等からの意見聴取の具体的な方法をどうするかということについては、この地域貢献業務等、各地域におけるその必要性を最も熟知しているのは郵便局会社でございます。まずそこでしっかりと郵便局会社に、実情に詳しい方に判断をしていただく。

 しかし、郵便局単位のきめの細かい地域のニーズが判断できるような形でこれが適切に行われているのか、意見聴取が適切に行われているのか、これが尊重されているか、これは制度的にも確保する必要がありますので、主務大臣が地域貢献業務計画を認可する際に、先ほど申し上げた所要の書類を提出させまして、地域の有識者等からの意見聴取の方法等につきましてこれをしっかりと担保していく、そういう仕組みにしているところでございます。

石破委員 今の大臣の御説明はよくわかりますし、何度か聞いたこともありますが、問題は、それぞれの地域、というのは、今のお話ですと、それぞれの郵便局ごとに、例えば特定局はたくさんありますよね、それぞれの局ごとに立てていくんだということ、そしてまた、有識者というのはやはりその地域の実情を知悉した人たちなのであるということ、そして、それは尊重されなければいけないということだと思います。

 それが、それぞれの局にとって、そのエリアにおいて有識者というのは一体どんな人なんだろう、そして、そこで何が議論され、どのように決まり、それがどのように尊重されていくのかということがいま一つ見えない部分があります。ここのところはきちんと今後の議論で詰めていただきたいと思っています。

 そこで本当に何ができるのかわからない、何が議論されるのかわからない、それがきちんと尊重されるという担保があるのかどうかわからないと言ってしまったならば、それは幾ら説得してもなかなか御理解は得られないだろうと思っております。まだ質疑の時間は相当あろうかと思いますけれども、そこにおいて、ここの点をきちんと明らかにしていただきたいと私は思っておるわけでございますが、どのようにお考えでしょうか。

竹中国務大臣 今委員御指摘のように、我々は枠組みをつくっておりますが、それを実効あらしめるための詳細なそれの施行というのは大変重要であるというふうに考えております。今委員御指摘のありましたような点をしっかりと踏まえまして、その実施計画認可等々で、そういう問題をしっかりと担保していきたいというふうに考えているところでございます。

 若干補足させていただきますが、先ほど窓口業務というふうに申し上げましたが、郵便窓口業務が必須の業務という趣旨でございます。

石破委員 そのような株式会社というのが世の中に本当にあるのかという御批判があるんですけれども、私はそれこそまさしく、今回郵便局というもののネットワークを維持する、そして過疎地や弱い人たちというものを見捨てることは決してないんだ、だから純然たる株式会社にしてしまえば、採算重視ですから、そういうところは切ってしまえばいいという議論もあるでしょう。だけれども、純然たる株式会社があるか、そのようなのがあるかと言われますけれども、そのようなことをやったらば過疎地や弱い人たちはどうなるんだということになりまして、したがって、今の大臣のようなお話が成り立つんだろうと思っています。したがって、そこをどうやってきちんと詰めていくかということです。

 それから、ではなぜ公社じゃだめなんだという話が先ほどからございますが、そこのところは、預金の保証というものを国家が行うのか預金保険でやるのか、そこが決定的な違いなんだろうと私は思っているんですよ。公社であり続ける限り、国家保証というのは消えないんです。そうであるとするならば、財政規律というものを実現することにはならない。したがって、公社のままでいいじゃないかという御議論もあります、それはそういう面もありますが、しかしながら、公社でなくて民間会社に移行するんだ、株式会社に移行するんだということは、まさしくそこの保証の問題というところが大きいんだと思いますが、再度御答弁をいただきたいと存じます。

竹中国務大臣 どうして公社ではいけないのか、今の石破委員の御指摘はまさにその本質であろうかと思います。すなわち、これは国が保証して国が集めているお金でございます。したがって、国が集めてその保証を国がしている、つまり、国民が全員幅広くしているということになるわけでございますから、それは必然的に、その使い道が安全資産に運用が限定されてしまう。安全資産というとこれは国債であり、かつては財投のような制度でございました。

 そうすると、繰り返し言いますが、それは政府がお金を政府保証で集めて、国債等を政府のために使う、あくまで官のお金を官で使う、そういう道になってしまう。それに対して、今度は民間機関として、預金保険には入っていただきますけれども、民間のお金として集めて、その意味で、しっかりと適正な判断のもとに民間のリスク資産にも投資ができるような、そういう形をつくっていくということが、官のお金を民に回すという観点から大変重要だということだと思います。

 それともう一点。やはり公社では限界があるということのもう一つの点は、これは国がやっている仕事でありますから、郵便局の窓口業務等々、できる業務というのが法律で限定して列挙されるわけでございます。これだけ経済の激しい波の中で、日進月歩していく中で、公社が生田総裁のもとで新たな例えばこういうことをやりたいというふうに考えても、それをやるには法律の改正が必要だということになる。柔軟な対応、スピード感を持った経営はできないわけでありまして、これは対応できない。加えて、これは国家の信用を背景としておりますから、分野によっては民業圧迫という批判が出るわけでございますから、これは民間になっていただいて、民間の市場で競争していただく、こういうことが大事であると思っております。

石破委員 ある学者が書いていましたが、やはりこの民営化というのは、日本の社会主義構造から脱却していかねばいけないんだということも含んでいるんだろうと思っています。

 リスクに正面から向き合う社会というのをつくっていかなきゃいけないんじゃないか。大臣がおっしゃったように、リスクに正面から向き合っていない、つまり、郵便局に預けていくということは、リスクがないということではないんだ、つい立てがあるだけのことであって、つい立てに遮られて見えないけれども、実はリスクはあるのだということだと思っています。セーフティーネットをきちんと確保しつつ、それに正面から向き合う、そういうような社会をつくっていかねばならないということだと思っています。

 もう一つ委員会の中で指摘をされていますのは、民営化をしたときに外資に侵食されるのではないか、もっと簡単に言ってしまうと、乗っ取られてしまうんじゃないかということです。

 日本の金融競争力というのはどうなんだろうかということを考えることがあるんですね。製造業でできることが、では何で金融でできないんだということなのだと思うんです。総理が冒頭おっしゃったように、護送船団方式ということでいった場合に、決して産業というのは強くならないんだと思っています。金融業でもそうです。そしてまた、郵便貯金、財投、そういう制度がどんと金融の真ん中にいる限り、きちんとした国際競争力というのはできないのではないかと思っています。

 これだけ金融資産があって、調達金利が安い場合、日本の金融業というものに本当に国際競争力は生まれないのかというと、私はそうではないと思っていますが、どのようにお考えでしょうか。

竹中国務大臣 これは著名な専門家から教わった言葉でございますが、産業を見ると、競争力のある分野と競争力のない分野があると。これは、個別にはいろいろな事情がありますけれども、一つの重要な背景は、競争してきた業種は競争力が強くなる、競争しないで保護されていた業種は競争力が弱くなる、これは大変重要な側面であろうかと思います。

 日本の自動車産業は、早い時期から国際市場で競争してきたからこそ、今日の競争力がある。金融に関して申し上げれば、日本は大変な国内の貯蓄がございます。あえて物づくりに例えれば、原料の部分を非常にたくさん持っている、むしろ優位にあるはずの産業である。にもかかわらず、不良債権の処理は何とかこなしましたが、いまだにまだ国際的に収益力についていろいろな議論があるのは、やはりその競争条件をさらに強めていって、健全な競争の中で経営努力によって競争力を獲得していただく、そのような必要があるんだと思います。郵政の民営化は、その意味でも大変重要な意味を持っていると考えております。

石破委員 最後に一つ承りたいと存じます。

 資金の流れを官から民へ、三百四十五兆にもなんなんとする資金を官から民へということが言われます。しかしながら、一方において、国債というものはまだ相当に残っている。発行を減らすのも、そう簡単に減らせるものではない。そうだとするならば、容易に官から民へ資金が移るということは、すぐぱっと魔法みたいに起こるわけではないと思っているのですね。やはり、需要がある限り供給というのは続いていく、その逆ということは余りないのだろうと思っています。そういうような関係というものは今後も続いていくのだろうと思っています。簡単に官から民へ資金が移るとは私は思っていません。

 しかしながら、やはり先ほどから申し上げているように、株式会社にすることによって、株主や預金者がきちんと選別をしていく、それによって安易な国債の発行が抑えられていく、それによって経済が活性化し、だんだんと財政の規律も確保されていく、そういうことが私は必要であろうと思っておりますが、いかがでしょうか。

竹中国務大臣 委員御指摘のように、官から民にお金の流れを変えていくことは、大変重要な、経済活性化の観点からも必要なことだと思います。しかし、これは打ち出の小づちのようなものがあるわけではなくて、これだけやればすぐに変わるというものでは全くございません。いろいろな改革を重ねてやらなければいけません。

 最終的な資金の需要の構造を変えていかなきゃいけない。その資金需要の中で一番大きいのは政府の赤字、政府が赤字資金の需要者として存在しているということでございますから、これは先ほども申し上げましたように、財政の健全化というのを同時にやっていくことが不可欠でございます。また、その資金の需要者に関しましては、政府系の金融機関等、国、直接一般政府以外の公的な部門の資金の需要もこれは抑制していくことが重要でありまして、今、政府系の金融機関の規模をGDP比で半分にするという目標を掲げて議論をしておりますけれども、そういう改革を出口として一体的にやっていかなければいけないということだと思います。

 同時に、これは入り口の改革も必要で、ここに郵貯があるわけでございますから、この郵貯を民営化することによって、入り口での民のウエート、シェアを拡大するということも必要。そして、その中間の経路については、これは資金を流すためのノウハウの蓄積等々も必要ですから大変時間がかかりますけれども、これもあわせてやっていく。そのためにも、今回の郵政の民営化では移行期間を約十年ということでしっかりと確保しながら、その中で、しかし着実に資金の流れを変えていけるような枠組みを考えているわけでございます。

石破委員 国債の発行を抑えるのであれば、政府が決断をすればできるんじゃないのというお話もありますが、そんなことができていればだれも苦労はしないのです。それは、今まで何度も、財政をよくしなければいけないということはあるけれども、景気はよくしなければいけない、景気をよくするためには、それは借金してもやむを得ないのだ、そういうようなことがあったんだろうと思っています。欲望は無限ですし、財源は有限。しかしながら、今までそれはやれてきたけれども、いよいよ危険水域に達したのではないだろうかと思っています。

 準備期間が二年あって移行期間が十年ある、決して遅過ぎるということはないんだと思っています。やはり我々も、民主主義というのは、ある意味で財政の破壊的なメカニズムというのを内蔵しているところは、悲しいかな、どうしてもあるんだろうと思っています。経済というものも維持していかねばなりません。

 しかしながら、そこにきちんとした市場の論理を働かせていく、セーフティーネットを守りながら、国民の金融資産を守りながら、この財政の健全化のためにそういうようなことを導入していく。私は、そのためにも多くの方々の御理解をいただいて、この法案の成立のために努力をすることは私どもの責務である、このように考えまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

二階委員長 次に、三原朝彦君。

三原委員 おはようございます。三原でございます。

 もうこれまでたくさんの方々が議論されました。私自身も、議事録なんかを読ませてもらって、いろいろな人のいろいろな考えも聞かせていただきました。その中では、大上段に振りかぶった日本経済の問題とか、官から民への動きのこと、そういうことをるる言われておりますし、それを読ませてもらいましたが、私の視点は、もっと地元のレベルといいますか、そういうものから議論してみたいと思っております。

 それはどういうことかといいますと、二万五千から成る郵便の窓口があって、その中で簡易郵便局から特定郵便局から普通局からいろいろありますが、そういう中でも、私がよくつき合いのある特定郵便局の人たちの不安とか迷いとか、そういうことをこの場をかりて政府側から説明いただきたいと思うし、彼らの心情や彼らの気持ちも酌んでもらいたいな、そんな気持ちできょうはここに立っておるわけであります。

 しかし、私の心境は、歴史の平家物語に出てくるまさに平重盛の心境とでもいうようなものでありまして、御承知のように、平重盛は清盛の嫡男、立派な跡取りと思われておったわけですね。ところが、清盛はなかなか権力を振るうものですから、そのときの上皇、後白河上皇との鹿ケ谷の謀議あたりで、自分の言うことを聞かないやつはやっちゃおう、こういう気持ちになった。そうすると、父親のそでをつかんでいさめたという話がありますよね。その歴史を江戸時代になって頼山陽が、重盛の心境を、忠ならんと欲すれば孝ならず、孝ならんと欲すれば忠ならずと言った、こういうんですね。

 私は、別に重盛ほど知性、教養があるわけでもないし、文武に秀でたわけでもないし、上つ方の生まれでもないし、全くのそんじょそこらの一庶民でありますが、そこで、私がなぜ重盛の心境であるかというのは、私も、こうやって六十一年に政治に出させていただいて、十年頑張って、小選挙区で二回おっこちて、カムバックさせてもらった。それはやはり、今度の選挙でも総理にも来ていただきまして応援もしていただいて、党人として、そしてまた政権を担う、ほんの片隅にいる小さな路傍の石みたいなものですけれども、それでも私は支えておるつもりでもある。

 それと同時に、私は、選挙区のときに七年間苦労したときにも、一生懸命支えてくれた人があったから今日のこの私があるんだけれども、その中でも中核の一つが、実は郵便局の局長さんのOBの人たちでもあり、局員は政治活動ができないからというので、そこの奥さんたちが一生懸命私のことを応援してくれている、こうなったことも私は忘れることはできない。そこを思うからこそ、やはり忠ならんと欲すればまた孝ならずと。つまり、私を生んでくれた地元の人は孝みたいなものですね、それで党が忠とでもいうべきものであろうと思って、私はこの質問に立たせていただいたのであります。

 例えば、地元の特定郵便局長さんのOBの人とか現職の人でも、話をすると、実は郵便局というのは、その地域地域では特に、大都会ではどうだかわかりませんが、私が生まれ育ったようなところでは、一種の地域のシンボル的存在でもあったわけで、郵便局のあるところはその地域の、町の中心なんです、小さな村でも中心なんです。それで、その局長さんなる人は、我々の小学校や、何かのときには、入学式、卒業式、運動会にも必ず呼ばれて来賓の席に座るような地域の知名士でもあった。そこの郵便局には、げた履きで、それこそ奥さんやおじいちゃん、おばあちゃんが少額でも貯金をしに行く。僕らも小学校のときには、月に一遍、郵便局のおばちゃんが黒いかばんを持ってきて、貯金の日というのがあって、自分の小遣いを持っていって貯金をする、百円だ、二百円だとやっていた。そういう感じもあったわけですね。

 私のところは、山間僻地でもない、鹿児島本線の沿線だから、田舎ではあったけれども、そうそう離れた小島とか山間僻地でもなかった。しかし、私が思うに、二年ほど前に見た中国の映画で、山の郵便屋さんというのがあるんですね。それを見ましたけれども、それは、一週間かけて、かばんに郵便物を持って遠くまで行って、それでまた帰りに郵便物を預かって帰ってきているという、自動車はもちろん、何も通らない、行けるならロバか何かで行くようなところなんですね。それで、自分で寝袋を持って、山の間で寝ながら郵便に行くような、そういう過酷な人生を送りながら人間ができていく話の、山の郵便屋さんという、いい映画だと思います。

 そんなのを見ていて、それほどまでの苦労はないにしても、例えば、一昔前であるならば、九州は違っても、東北、北海道になると、雪の中でかんじきを履いてでも郵便をおくれぬように持っていく、そんなことをやったような経験のある地方の郵便局の局員さんや局長さんもいるんじゃないかと思うんです。また、特に地方に行って、東京あたりにもありますけれども、石板に、これは簡易保険の融資の建物ですよとか郵便の建物ですよというのがあります。ああいうのを見るにつけても、郵便のありがたみみたいなことも我々は感じてきたわけであります。

 そういうことからも積み重ねて、特に地域の特定郵便局の局長さんやOBの人たちは大いなるプライドも持って人生を送ってきた。そうしたら、ここに至って、彼らにとっては逆風の状況が今吹いてきている。そういう中で、私は、その人たちにどういう言葉を投げかけて、与えるべきなのか。

 我が国の領袖としての小泉総理大臣の気持ちというもの、彼らに対する気持ちというものを私はお聞かせいただきたい。まずお願いしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 私も郵便局の皆さんとは親しいんですよ、祖父が逓信大臣をしたんですから。祖父時代から支援してくれている特定局長さんもたくさんいますよ。そういう方々からは、何で、あんたのおじいさんが、又さんが逓信大臣で一生懸命やってくれたのに、お孫さんのあんたが民営化なんて言うんだ、今のままでいいじゃないかという陳情は何度も受けていますし、いまだに親しくおつき合いをしておりますし、その郵便局の皆さんが努力しているということもよくわかっておりますし、民間の銀行よりも、地域に親しみがあり、身近な存在であり、信用もあるということはよく承知しております。それと国民全体の問題を考えるのとは、やはり分けて考えなきゃならないんじゃないか。

 政治家ですから、候補者になれば、必ず多くの支援者なくしては当選できません。そして当選すれば、そういう支援者に感謝の気持ちを持つのは当然であります。選挙で応援してくれた方々の言い分というものは十分聞かなきゃいけない。その支援者に対して逆のことを言ったら次の選挙では応援してくれない、そういうのは避けようという気持ちは十分わかります。それは私自身も、実際の選挙を何回もやっていますし、そして郵便局の皆さんからも支援を受けているというので、よくわかっております。しかしながら、一たび政治家になれば、そういう支援者の声を聞くと同時に、国民全体のことを考えるのも政治家の責任であります。

 そういうことから、私は、今の郵便局の仕事、三事業、こういうものについて、民間にできることは民間にやらせようという今の大方の賛同を受ける問題について、果たして公務員でなくては今の郵便局の仕事はできないのか、民間の経営者では郵便局の事業は展開できないのか、サービスは国民に提供できないのかと考えると、今のすさまじい世界的な規模で考えなきゃならない各事業、これは、三事業しかしてはいけないという制約のもとで、果たしてこれから郵政公社のままで発展できるのかどうかということを考えると、私は、できるだけ早い時期にこれは民間に任せた方が新しい時代に適応できるのではないか、また多くの国民の要求にこたえ得る事業展開、サービス展開ができるのではないかということで、ごく率直に申し上げまして、民間にできることは民間にということを、各事業、国の仕事を見直そうということから出てきた発想であります。

 今の郵便局の皆さんが努力している、苦労している姿はよくわかっております。また多くの国民についても、世界の中でも、郵便屋さんというものに対して愛着を持っている、必要だという認識も私も持っております。そういう国民の郵便局に持っている愛着、利便性を阻害しないような民営化を今考えているわけであります。

 私は、今の郵便局の仕事は民間経営者に任せても十分国民に提供できる。さらに、今の三事業しかできない事業も、民間経営者に任せて民営化すれば、我々の想像を超えるようなサービス展開が期待されるのではないか。私は、この仕事というのは、役所がするよりも、公務員がするよりも、民間経営者、民間人に任せた方が十分できるような制度設計をしておりますし、今、郵便局の雇用についても配慮しております。民間に任せるから、今の郵便局の職員が首を切られるんじゃないか、そういうことは考えておりません。だからこそ、十年間の移行期間を設けて、今の郵便局の重要性をよく認識しながら、さらに、国民負担の軽減、行政改革、財政改革、特殊法人改革、そういうものに資するような民営化をしていこうというのが趣旨であります。

三原委員 約束していても、事情が変われば、それは契約でも、また話し合いに応じて変わるというようなことを契約条項なんかに入れる場合がありますよね。

 私がまだカムバックしていないときに、郵便局が郵政公社になったんです。そのときに、四年間やってみよう、こういうことになったわけですよね。その状況の中で、民間から新しい総裁も来られて、大いに努力もされ、やはりいろいろな意味での経済効率を上げて合理化もされて、利益も上げてきた。そういうことであれば、やはり現場にいる郵便局の人たちは、これで頑張ったから、いましばらく我々にも猶予を与えてくれるんじゃないかというような気持ちは大いに起こったと思うんですね。

 ところが、そうではない。今、総理は懇切丁寧に説明していただきましたけれども、そういう考えの方がよりエネルギーとして大きかった。それで、そっちの方面に今まさにこの委員会の中で議論して持っていこうとしているわけですけれども、そういいながら、現実は、十五年度、十六年度は黒字になっているでしょう。なっているにもかかわらず、いや、やはりだめ、こう言うのは、現場で働いている人たちにとっては納得、それは、大局的に考えて、我が国の今の赤字国債の状況とか、それだって私は、石破先生の議論もありましたが、大いにわかっているつもりであります。しかしながら、ある局面のところでは、僕たちはこんなに汗をかいて頑張って、こうやってプラスの面も出てきたのに、どうしてという、その気持ちはやはり否めないと思うんですよね。

 では、それについて、現場で汗を流している人たちに納得できるように、わかりやすく、私は、担当大臣の竹中大臣に説明してもらいたい、こう思うのであります。

竹中国務大臣 なぜ今民営化なのか、なぜこれを今の時点で急いでやるのかということについて、これは御指摘のとおり、公社の皆さん方、本当に頑張って生田総裁のもとで改善をしておられますし、そういうことが決算の結果にもあらわれていると思います。なぜ今なのかというような御質問は、私自身、地方懇談会等々で直接郵政の皆さんから、お話ししたときもやはり出される問題でございます。

 三原委員からはわかりやすくということでありますので、あえて箇条書き的に、大きく二つ、二点を申し上げたいと思います。

 第一の点は、やはり郵政事業を取り巻く環境は極めて厳しく、劇的に変化しているという点でございます。二番目が、この改革、民営化を行う場合、最終的な姿に至るまでやはり相当年数の準備期間と移行期間が要って、そのためにも早く着手しなければいけないということでございます。

 第一の、郵政事業を取り巻く環境の変化について若干付言させていただきますと、一つは郵便の事業。これは、Eメールの世界的普及などで、日本の郵便物数も毎年二%から二・五%減少しております。これが十年続くと三割ぐらい減るということにもなるわけで、やはりこの変化というのは大変厳しいものがあると思います。

 第二に、金融の技術革新。これまた通信の技術革新以上に速いものがありまして、民間の提供する金融サービスが非常に広い範囲かつ多様に展開される。そうした中で郵貯の残高も減少をしているわけでございます。

 第三に、物流サービスが今大きく変貌しております。ドイツやオランダでは郵便会社によります国際展開が進んでいる。近隣のアジアの市場というのは今大変伸びているわけでありますけれども、そういうところに今世界じゅうの競争の目が注がれている。公社の中期計画を見ましても、今後の経営見通しはやはり楽観が許されないところでありまして、このような環境変化に適切に対応するためには、業務範囲等に制約がある公社制度のもとではやはり限界がある、速やかにこれは民営化をする必要があるということだと思います。

 さらに、二番目の準備期間等々でございますけれども、これは、直ちに民営化に取り組んでも、準備期間を二年、移行期間を十年というふうに我々は考えておりますけれども、最終的な民営化の姿に至るまでは、そういう諸外国の例を見ましても、やはり相当の年数がかかる。そうしたことを踏まえまして、公社としての一期四年を経過した二〇〇七年四月から民営化を行う必要があるというふうに考えているところでございます。

三原委員 今、大きく分けて二つ答えられましたけれども、それでも、二つ目の準備期間等、移行が十年ぐらいかかりますよというのも、例えば旧国鉄みたいに、既に赤字でにっちもさっちもいかなくなって、それで変えなきゃという場面と、電電公社も新しい技術の波が襲ってくるのが目の前にわかって、我々にも一般人にも見えて、それで変えろというので変えた場面と、我々は経験しましたけれども、国鉄のときには、二十数兆円の赤字を国が責任を持つからというので新しく七つの会社がスタートして、今、曲がりなりにも、考えたとおり、三つの企業は頑張っているし、あとの四つは基金の中から何とか利子を得て頑張ってやっているということでもあります。

 ところが、今議論している郵政の問題に関しては、目の前に本当にそうなのかという危機的なものが、実は我々には、そしてまた現場で働いている人たちには、全然考えられない。確かに数%ずつ郵務事業のパーセンテージが減っています、こう言われてもおります。けれども、そういうことがあったとしても、現実の日々の生活の中では、我々の働いている状況が時々刻々おかしくなるような、そんな現実を雰囲気として現場の人は感じていないんですよね。

 それで一方では、大臣が今議論されてきたように、我が国の経済の全体とか、世界における我が国の状況とか、財政の事情とか、大局的な物の考え方というのはありますけれども、それがすべて大事の前の小事みたいな感じで、経済効率ということだけですべてを払拭していくみたいな、そういうことに対する不安とかおそれみたいなのが現場では大いにあると思うんですね。それを説明するのに、私は、今言われた変化がありますということだけではなかなか理解、納得しにくいというのはやはりあるような気がするんですね。

 それで、確かに私自身も、浅薄な知識の中から、公的なところにあれほどお金が預けてあったりすると、それが市場で自由に使えないで問題が起こってくるだろうというようなこと、起こるようなことは理解できるけれども、といいながら、目の前に今ある危機みたいな状況じゃないときには、そう言われたって説得力がなかなか乏しいんですよ。そこのところはいま一遍説明していただけますか。

竹中国務大臣 郵政民営化の必要性、よく国鉄等々の比較でなされるということも承知をしております。国鉄は大変な赤字であった。同時に、これは委員も指摘されましたけれども、電電公社は黒字でございました。電電公社は黒字であったけれども、通信の技術革新というものにやはり備えなければいけない。これは、民営化したからこそ、世界的なiモードのようなものも開発されたんだと思います。

 目の前の危機感という趣旨のことを、三原委員、お言葉を使われましたが、そういうものがなかなか見えにくいというのは御指摘のとおりかもしれません。しかし、これは私たちの試算等々でも示させていただいているんですが、今郵政は全体として郵貯、簡保、金融で大変大きな利益を上げている。その金融の条件が少しずつ変化していけば、例えば今、長期の金利と短期の金利のスプレッドが一・三%なわけでございます。ここで利益を稼いでいるわけですが、これが、一・三%が過去平均の一%に変化するということを仮定しますと、それだけで十年後、郵政の利益全体がほとんどなくなってしまう、そういう状況が試算としても示されております。

 その意味では、目の前の危機感ではなくて、将来的なことを考えることがやはり重要であって、まさに経済の環境が厳しい中で、黒字を上げている今のうちにこそこの改革に着手しなければ、これは後々国民に大きな負担を及ぼす懸念があるというふうに私たちは認識をしております。

 時間がかかること、そして黒字のうちにこそ、体力のあるうちにこそ、このチャンスを生かして、しっかりと改革を進めなければいけないということであると思っております。

三原委員 確かに国鉄も、これほどまでに我が国がモータリゼーションになって、それこそ今、日本で四輪車は、トラックも入れてですけれども七千万台ぐらいあるわけですから、一家に一台は車がある、地方に行けば二台も三台もあるようなところがありますよね。そういうことが急激に起こってきて、それで、JR、昔の国鉄ですね、利用客も、それと人口の都市集中で過疎化して、鉄道あたりももうやっていけなくなって、そういう状況は目の当たりにしましたから、確かにそれは説得力があるんですけれども。

 今の説明で、確かにこれから先、利子が一・〇まで下がったらというようなことも、それもみんなの議論の中で私読ませてもらって、そういうことが起こればそうなるんだなということはわかりますけれども、現場にいる人には、日本人の勤勉のなせるわざかもわかりませんが、努力して頑張っていれば必ずやというところはあるわけですよね。

 だから、そういう人たちが今、呻吟苦労しているということの中で、では民営化したら、つまりは局員の人たち、現場で働いている人たち、特定郵便局の局長さんやそこで働いている、まあファミリー事業みたいなものですね、そういうところの人たちが公務員から民間人になる。そしてまた、それによって、試練もあるかもしらぬが、どういう前向きな面、プラスが起こり得るであろうかということ。今までの議論を聞いていると、いろいろな事業展開もやって、うまく事業をやれば今以上に企業家として頑張りますみたいなことも言われた場面はありましたが、そこのところを、いま一面、現場の人たちにとっての幸せ度というか、確かに社会貢献を今やっているんですよね、公務員として。それがなくなった場合でもこういうプラスの面があるというようなこと、それをちょっと大臣から御説明いただきたいと思います。

竹中国務大臣 委員御指摘のように、まさに郵政の現場で働いておられる方々、この方々の御努力が今日の日本社会における郵政の信頼を築いてきたわけでございますし、今後、民営化を進めるに当たりましても、現場の皆さん方の御理解と御協力がないと十分な民営化の成果は得られないというふうに思っております。

 郵政民営化の制度設計に当たりましては、地域の郵便局で実際に業務を行っている職員の声を聞きまして意見交換を行うことは極めて大切なことだと考えております。これまでも地方懇談会やタウンミーティングそして郵政民営化TVキャラバンを通じて地域の方々と意見交換を行ってきたところでございます。

 特に、これまで郵政事業を支えてきた郵便局の職員を対象に、これは民営化のテレビキャラバンを行ったときに合わせまして、富山県や熊本県、静岡県等において、地元の郵便局長、労働組合等の方々とも私自身も意見交換を行ってきたところでございます。

 働く方々の立場を考えるということは大変重要でありまして、民営化に当たっては、改革案において、まず配慮原則、雇用に対する配慮原則というのを掲げました。そして、郵政民営化の基本方針に基づきまして、公社職員の新会社での雇用をまず法律によってしっかりと確保する、これを確実なものにしております。具体的に、この法案において、公社解散の際に公社に所属する職員は、承継計画において定めるところに従い、いずれかの新会社の職員となるという旨を、これは民営化法の百六十五条で規定しております。

 また、新設される各会社への具体的な職員の帰属については、主務大臣が作成します基本計画に従いまして、新会社の経営陣となる経営委員会が、ビジネスモデルに基づく各社の具体的な業務内容を勘案しながら承継計画において定める。その際、公社職員の帰属先につきましては、公社における就業場所や従事する業務など勤務条件に配慮して定められるということも法律で決められております。

 民営化の意義は、経営の自由度を拡大しまして、まさに創意工夫を凝らして、多様で良質なサービスを国民に提供するということにあるわけでございます。サービスの担い手である職員が安心して意欲的に働くことができるようにするということが何よりも重要でありまして、今申し上げましたような措置によりまして、職員の雇用の安定に十分配慮して、そして職員にとっても望ましい民営化をぜひ実現していただきたい。その中で、自由度の拡大で、創意工夫を凝らして、ぜひ多様で良質なサービスを提供していっていただきたい、そのように考えているところでございます。

三原委員 すべて経験に頼れば、それでは何も進歩がない、経験から学ぶことは前へ向かっている進歩なんですが。

 旧国鉄のときでも、今JRになって、確かに私の住んでいるJR九州のところでも、今までやっていなかったパン屋さんをやったりとか、駅前でラーメン屋さんをやったりとか、コンビニをやったり、もちろん新しいところが出てきたものだから、資本の大きいところが出てきたものだから、競争する既存の人たちは大いに刺激を受けて、いい意味でも悪い意味でも刺激を受けたわけですけれども、そういうことによって雇用を一生懸命生み出して、合理化したところをそっちに広げていったりしたようなこと、そういうこともあったことは、私は、実際に見てわかってもおります。

 いいか悪いかは別にして、公務員になるということは、定年まで大過なく働けば職を失うことはない、こういうことがやはり一面では安心、安全みたいなものですね。

 経済の教授というのは必ず、日本の戦後の成功物語の三つのあれは、企業内組合と年功序列賃金体制と終身雇用制、これが保障としてあったがゆえに、バブル前は、我が国の経済は、みんな忠誠を会社にして一生懸命働いた、それが日本の戦後経済復興のもとになったというようなこと、竹中先生もどこかで書かれておったんじゃないですか。そういうことがあった。それもそうだっただろうけれども、バブルが崩壊してから、グローバライゼーションの競争の中でそうもいかなくなって、やめさせられたり無理に転職させられたりというのがあったわけです。

 実は、今言いました、まじめに働いて、大過なく、法律に触れるようなことをしなければ、六十までは勤められた。それが、特にそんな大志、大望のあるような人じゃなくて、本当に地方で、郵便局で、対面でいろいろな事業をしている人たちの気持ちはそういうものもあったと思う。そして、地元に生まれて、地元に住んで、地元で家庭を持って、家を建てて、そして人生、平凡であっても平和に安定して生きていく、そのことが自分のささやかな幸せであっただろうと思うんです。そして、その後に定年したら、ちゃんと自分が納めた分だけの、契約した分だけの年金が返ってくる、それで生活的にも立てられる、人生八十年、これで自分の人生を送れるなという気持ちが断たれると思うんですね。

 それが一つには、よく地元で、竹中大臣、子供は少なくなったけれども、今でも長男は、田んぼがあれば、役場か農協に勤めて、土日は百姓しなよ、そういう感じが私の生まれ育ったところでもあったんです。そういうささやかながらも安定したものが崩れていく。

 なおかつ、次に、年金のことになると、国鉄が国鉄共済から移行したときも、確かに、国鉄をやめるときに二階級特進か何かして上へ上げておいて、それで、それはもう許されないと下げられて、その次はまた、新しく厚生年金に移るときにはもっと評価し直されてということになったんです。そういうことに対しても、私は、今現場で働く人たちの心配というのはあると思うんですよね。

 その面でも、年金の議論もここでありましたけれども、いま一遍そのことに関して説明していただきたい。財務大臣、お願いします。

谷垣国務大臣 郵政新会社職員に対する年金は、民営化すれば厚生年金に移っていくというのが一番基本でありますけれども、やはり円滑な労働関係の維持ということも考えなきゃいけないと思いますし、そういうことで、当分の間、国共済に残って、移行方法については具体的に詰めていくということになっております。

 具体的な移行方法については、公的年金制度の安定性とかあるいは公平性も確保しなきゃならない、またその時々の年金制度の財政状況も踏まえなきゃならない。要するに、移行する側、される側、双方の制度にとって妥当と考えられる方法を今後検討していかなきゃいけないわけです。

 今、国鉄の場合、随分大幅にカットされたじゃないかというお話をされましたけれども、国鉄は当時、満鉄から引き揚げてきた方とかいろいろ、失業対策と言ってはなんですけれども、引き受けたりなんかして、いわばOBの方が非常に大きくて現役が少ないという、頭でっかちと言ってはなんですが、そういう構造になっていたわけです。郵政公社では、現状、組合員それから年金受給者、大体そのバランスがもっととれた形になっておりますので、鉄道共済のような厳しい措置をしなきゃならぬという状況では全くないと考えております。

 そういうことが基本でありますが、今後、具体的な措置はきちっと詰めていこうということであります。

三原委員 財務大臣、つまり私の申し上げたいのは、今まで公務員であった人が今度民間に変わるんだけれども、そうなっても心配するな、私が君たちのことに関して責任を持つ、こういう言葉が彼らをして安心せしめると思うんですよね。だから、少なくとも、国鉄のOBの人も今は、それは自分たちが期待したほどには年金がいかなかったかもしれないけれども、やはり安定したものをもらっている、せめてその程度は責任を持ちますよ、こういうことなんですかね。

谷垣国務大臣 あのときの財政状況とは随分違うと思います。財政状況というのは、国鉄共済の財政状況と厚生年金の財政状況、随分違います。今は大体同じようなものですから、いろいろな制度をこれからきちっと詰めますけれども、そんなに急に変わって不安になっちゃうというようなことはない、こういうことだろうと考えております。

三原委員 例えば郵務事業、物を運んだりなんかするものでも、実は、現実を見ていたら、ある民間の企業が宅急便というサービスを始めたら、我々一般にとっての利用価値がすごくあったものだから、どんどんお客さんがふえた。慌てて郵便局でも宅配便というのを始めたんですね。そういうことから考えると、ある面では、自由競争をやることによって、我々の側は大いにサービスを享受できるということを十二分に認めておるわけでもあります。

 また、郵貯なんかでも、本当に都心部であれば、郵貯を使うより民間の銀行の方が今利子率がいいのもありますし、そういう選択もある。だから、一概にすべて郵便局がいいなんということでもない。

 やはり、いい意味での競争がそこに起これば、いろいろな意味で我々にとっていいことになると思っていますけれども、しかしながら、私はやはり、ここで言われる過疎地論とかそういうことから勘案すると、形としての郵便局というのは、何とかしてこれからの努力によってできないものであろうかという気持ちも、一抹の不安を持ちながらもあるんですね。

 とはいいながら、百十兆円の簡易保険と、今二百四十か二百二十になったとかいいますが、その貯金と一緒になって、それが市場の中で自由に使えなくて政府の保証する債券でやっているというようなことでは、これもある面では国の経済の全体を元気にするものではないと思いますから、その面でも私は、やはり何かの考慮も必要だなとも思うんです。

 だから、それから考えると、余りにも突拍子もない考えかもしれませんが、昔、老人の人のマル優というのがあったんですね。初め三百万までといったのがどんどんふえていったわけです。だから、その逆に、それこそ最高の額だけ決めておいて、ある部分だけぐらい、日本経済に影響を与えないぐらいの貯金を、トータルの貯金あたりは国民にもサービスしてやりますよと。そうすると、私は経済学者でも何でもないからそれが五十兆なのか百兆なのかわかりませんが、そういうような激変緩和じゃないけれども、そういうことからでもやれるという、やろうというような物の考え方というのはどうなんでしょう。おかしいんでしょうかね。

竹中国務大臣 今の三原委員のお話は、公社としての基本的な性格を維持したまま、その規模だけを縮小するということは考えられるのか、そういうお話だというふうに賜りました。

 公社のままで改革する場合は、先ほど申し上げましたように、やはりこれは公社という公の目的を持って国が設立しているものでございますから、おのずと行動に制約が出てまいります。これは資金の運用等々に、先ほど言いましたように安全資産に運用せざるを得ない、やはりそのような制約がどうしても残ってしまいます。

 そして、さらに重要だと思いますのは、どの規模が適正かということを、これは国が一律に決めるということの問題点があろうかと思います。私たちは、やはりそれは民間にゆだねて、民間の適切な資産負債管理の中で、市場の規律と経営の規律の中で最適規模を実現していただく方がよいのではないかというふうに考えているわけであります。

 国が強制的に上からの力でそれを決めるということは、これは最適規模を政府には判断できないと思いますし、そして今度は、縮小の規模のあり方によっては、急激に例えば半減するとかそういう大幅なものをやりますと、今の雇用に対してかなり深刻な問題が出る可能性がある。雇用のことを考えますと、やはり急激に規模を縮小させるということではなくて、まさに今ある資源を活用しながら市場の規律の中で最適な規模を実現していくということの方がはるかにすぐれているのではないか。そういう意味で、ぜひ今の政府の案についての御理解をいただければ幸いであるということでございます。

三原委員 最後に一言。

 しかし、竹中先生、日本人というのは、お金があったら、今一生懸命税制なんかの刺激策を与えて、直接投資、つまり株を買ったりすることをやりなさいよと言っても、なかなかお金は行かないんですね。みんなやはり貯金しちゃう。それも今、民間あたりは、貯金しても引き出しのときの手数料あたりでもしかして利子が低ければ持ち出しになるかもわからないけれども、それでも貯金しちゃう。

 同じように、それが全国津々浦々にある郵便局にあれば、郵便局は今手数料はないけれども、取られたとしても、やはり株じゃなくて貯金しようと。だって、今でも所得のうち一割以上、平均すると貯金するじゃないですか。一割五、六分やっていましたよね。それが何か日本人の意識でもあるんですね。

 そういうこともやはり私はどこか心の隅に入れておかないと、本当の意味での国民に幸せを与えるという政治にならないんじゃないかな、そういうことを最後に申し上げて、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

二階委員長 次に、谷口隆義君。

谷口委員 公明党の谷口隆義でございます。

 本日は、中間総括ということで、本法案に関しまして、総理に初めて質問をさせていただきます。何点か質問をさせていただく予定でございますが、よろしくお願いをいたします。

 まず初めに、この委員会で何回か出てまいったわけでありますけれども、郵便局の設置基準でございます。

 郵便局の設置基準、過疎地の問題もございますし、都市部の問題もございます。過疎地の問題は、ユニバーサルサービスということですから、離島、山村の方に十分な郵便のサービスを行っていかなければならないというのは非常に理解できるわけで、七千二百二十の郵便局、現状どおりだという方向で今やっていただいておるわけでありますけれども、一方で、都市部なんですね。この都市部、先日、予算委員会で総理もちょっと、若干減るんじゃないかみたいなことをおっしゃったんですが、後でちょっとお伺いをいたしたいと思います。

 私は、この郵政民営化の議論に入る前に、私の地元の、先日も申し上げましたけれども、普通局の局長さんだとか特定郵便局の局長さんと数回お話をさせていただきまして、いろいろな御意見をお伺いいたしました。また、組合の幹部の方にもいろいろなお話をお聞きいたしました。また、利用者の方にもお話をお伺いいたしたわけであります。

 そこで私が感じたのは、やはり地域に根の張った、さっきも総理もおっしゃっておられましたけれども、大変重要な仕事をしていただいておる、私が思っていた以上に大変重要な仕事をやっていただいている、こういう思いがいたしたわけでございます。

 それで、やっていらっしゃる業務は、郵便、郵貯、簡保といったような三事業以外に、ワンストップ行政サービスというようなものですね、戸籍謄本だとか住民票を取り寄せるといったようなこと。また、お聞きした特定郵便局長さんの中には、バスの回数券を、そのちょうど前にバス停があるものですから、売っているんだと。これも、聞きますと、三百局以上そういうふうなことをやっていらっしゃるところがあるようでございます。

 それだけではないんですね。どうも聞きますと、年金の相談に行くという人がいるんですね。来られたもので、ここは年金の相談をするところではないですよということでお帰しをしないで、一応わかる範囲でお答えをしている。こんなことだとか、ふらっと来られて道を聞かれたり、それも全部含めて、やはり国家公務員だというような志があってそういうようなことをなさっているということをお聞きいたしたわけでございます。本当に、現場にも行って、私視察もいたしましたけれども、よくやっていただいているという思いはいたしたわけであります。

 一方、総理が何回もおっしゃっておられるように、金融、三事業のうちの郵貯、簡保、我が国の一千四百兆円という個人金融資産の約四分の一を占める郵貯、簡保、三百四十兆円、これがやはり政府部門に滞っておって、民間部門に全部行っていない。そういうようなことで、これがすべて民間部門に行けば経済の活性化がより一層促進されるだろう、このようにおっしゃっておられますし、そのとおりだと思うわけであります。

 先日、きょう来ていただいておりますが、生田総裁のお話の中にも、十六年二月十七日の郵政公社の提出資料がございまして、その提出資料を見ましても、今後、今の郵貯、簡保が減少傾向にあるというふうな報告がございますし、生田総裁御自身も、ここ五年ほどしますと収益が低下傾向になるだろうということを先日この委員会でもおっしゃったわけであります。

 このようなこと、特に、先ほども申し上げました、郵便事業はユニバーサルサービスでありますから、これは一つの収益の柱にはならないわけですね。これはやはり国民の方に大変なサービスを提供するということですから、なかなか収益の柱にならない。しかし、今現状を見ると、収益の柱は郵貯なんですね。郵貯が収益の柱に今なっておる。だけれども、郵貯、簡保も、そういうように五年ほどたちますと低下傾向になるといったようなことになると、私は、民営化の考え方が出てきて、これは民営化にならざるを得ないところもあるだろうということで、党の中で……(発言する者あり)ちょっとうるさいですね。静かにしてくださいよ。うるさいんだよ。

 そういうように私は思うわけでありますけれども、しかし一方で、民営化するということは、先ほども申し上げましたように、公社の職員の皆さんに大きな影響を与えるわけであります。また、国民、利用者の利便に対しても大きな影響を与えるわけでありますので、そのような観点で申しますと、これは竹中大臣がおっしゃったわけでありますけれども、五原則を念頭に入れて民営化をやっていきたいということなんですね。

 この五原則というのは、一つは、経済の活性化ということは念頭に置かなきゃいかぬですよということと、あとは、構造改革全体の整合性もとらなきゃいかぬですよ、国民の利便性もよく念頭に入れなきゃだめですよ、また公社のネットワーク等のリソースを活用していかなきゃいかぬですよ、また職員の方の雇用への配慮ということ、これをやっていかないかぬ、この五原則を十分やっていただかなければならないわけでございますし、私どもの党も、代表を初め、五原則を念頭に入れてやっていただきたい、このように申し上げておったわけであります。

 そこで、先ほど総理に申し上げました、都市部の郵便局の設置基準でお伺いをいたしたいわけであります。

 今までは、私は、多分総理も、都市部においてはかなりの郵便局数があるので、中には統廃合の対象になるようなところがあるだろう、減るかもわからない、またふえるかもわからないとおっしゃいましたけれども、そういうようなことで、マスコミを通じて、減るかもわからないというようなことがずっと広がっておるわけであります。

 それで、実は、この都市部でということは、私は、先ほど申し上げたように、現場で声を聞きまして、私自身が党の中で強くこれを主張したわけであります。強く主張したことで、いや、それは確かにそうだということで、党の中で取りまとめをしていただいて、与党間協議の中で合意ができて、この合意の中に、都市部の設置基準、都市部についても国民の利便に支障を生じることのないよう配慮するという文言を入れていただいたわけであります。

 これは私、もうちょっと積極的な意味合いで申し上げたいわけでありますが、一つは、民営化ということは、市場原理で動くということでありますから、当然収益性ということを念頭に入れなければなりません。

 そこで、地域全体のことでいいますと、確かに過疎地は必要でございますし、やっていかなきゃいけませんけれども、人口の集中しておる都市部においては収益性は一般的に高いと思われておるわけでありますし、一つは、ネットワークの価値なんですね。これは昨日、麻生大臣もおっしゃっておられました。窓口ネットワーク会社のネットワーク価値ということについて言及されたわけでありますけれども、ネットワークの価値、二万四千七百あるというこのネットワークの価値をどのように使うのか。これが減価するようなことのないようにやっていかなきゃいかぬ。

 あとは、郵便局の人たちは、行政の窓口として地域住民との間でいろいろな形で接触をされておられて、郵便局が住民との間のアクセスポイントになっている、こういうようなこと。また最近は、銀行が都市部において店舗を閉鎖しております。平成九年から十四年、この間で比べますと、約三千店舗減少しているわけです。ですから、そういう意味において、私は、都市部における郵便局の存在価値はある、上がってきたのではないか。

 それともう一つ、私は、政治家の前に会計をやっておりましたので、管理会計というのがありまして、竹中大臣はよく御存じだと思いますけれども、ここの中に機会原価、オポチュニティーコストという考え方があるわけですね。これは要するに、もうけ損なった利益も一つのその原価だと。これを考えていかないと、表面的な個別郵便局の損益だけで、ここは難しいなとか、これはやはり統合すべきだとか、こういうような形に短絡的にならないようにしていただきたいと思うわけであります。

 以上を踏まえて、総理に御見解、御答弁をお願いいたしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 都市部での郵便局がどうなるかという御心配だと思うのであります。

 過疎地域につきましてはあまねく設置するという義務づけがあるけれども、都市部はどうなんだということで、この前の委員会の御質問にも、減るところもあるだろう、統廃合されるところもあるだろうと。同時に、今まで進出していない便利なところ、もっとサービスなところ、恐らくデパート等に進出する郵便局も出てくると私は思っているんです。しかし、それでも、減るところもふえるところもあると思っております。

 しかしながら、これがどうなるかという予測をはっきりとするような私は能力もありませんし、それは民間会社になったら、どのようなところに郵便局を出せばお客さんの便利になるか、利益が上がるかということを考えるでしょう。そして、民間企業になれば収益性を考えるといいますけれども、現在の民間企業でも、一支店において収益がなくても、全体のネットワークをかければこれは必要だと思えば、収益性がなくても出している支店なり店舗はたくさんあります。だから、一部の地域のところだけを見るんじゃなくて、ネットワークの全体の点を見ながら民間企業だって考えているわけであります。

 私は、そういう点におきまして、今後、経営者の判断によってはふえるところもあるし、あるいは統廃合されるところもある。それはどうなるのか断定はできませんけれども、都市の皆さんにおきましても、現在の郵便局サービスが低下されることのないような配慮というものは十分なされると思っておりますし、そのような制度設計をしているわけであります。

谷口委員 総理、私が今申し上げたネットワーク価値というのはそういうことを言っているわけです。やはり一たん張りめぐらせたネットワークが、例えばそこで統廃合して減らしていきますと、また再びそこで必要だねといってもなかなかできない、今までの蓄積がありますから。そういうようなことも含めて考えていってくださいよということを申し上げたわけでありまして、ぜひその観点で今後進めていただきたいと思います。

 次に参りますが、きょうは生田郵政公社総裁に来ていただいておりますけれども、この法が成立して施行されますと、二〇〇七年の四月一日までの間、準備期間になります。この準備期間の間に、郵政公社の内部に日本郵政株式会社、持ち株会社を設立いたしまして、その中で経営委員会をつくられて、この経営委員会が承継計画を策定され、策定した承継計画を総理また総務大臣の認可を受けて、四月一日にこの公社事業を承継会社等に承継するというような流れになるわけです。ですから、経営委員会の権限というのは、設立準備行為が主な権限であります。

 それ以外に、やはり国際物流というのは非常に重要だからということもあって、準備期間中に国際物流事業を主たる目的とする会社に出資できる、子会社になるわけでありますけれども、この子会社より国内貨物運送業務を受託することができる、このようになっておるわけであります。これは、設立準備行為以外にこれができるということなんです。

 一方、郵政公社の方は、やはり郵政公社法の縛りがありますから、経営の自由度が認められておらないわけでありますから、なかなか自由にできないわけであります。本年の十月からは投資信託も行われるということを聞いておりますけれども、その程度であります。

 そこで、生田総裁にお伺いをいたしたいんですが、この準備期というのは、まさに移行期までの間の準備をする期間でありますので、公社においてもある程度の自由裁量の余地を与えることが必要なのではないか、私はこのように思っておるわけでありますが、生田総裁、このような自由裁量の拡大、もし望んでいらっしゃるならば、具体的にどういうことであるかということも含めておっしゃっていただければと思います。

生田参考人 お答え申し上げます。

 現在、公社は三つの経営ビジョンを立てまして、お客様の利便性、真っ向サービス、事業の健全性、働く職員への将来展望と働きがい、この三つの経営ビジョンを持ちまして努力している最中でありますけれども、今先生のおっしゃった御質問には、二つに分けてお答えした方がいいのかなと思うんです。

 まず、戦略的には、二方面作戦である。一つは、現在の公社法の枠内と現在の社会的規範の中で目いっぱい健全な経営に努めるというのが一つであります。もう一つは、民営化が国会で決まるとなると、そういう前提のもとで、民営化後に向けてどういう布石を今から考えておくか。こう二つに分けさせていただきます。

 第一の面からまいりますと、まず一番目に、郵便事業というのが今はまだ赤字構造です。辛うじて去年もおととしも黒字を出しましたけれども、これは正直言って辛うじてです。だから構造改革しなきゃならない、黒字構造にしなきゃならないということが大変な課題でございまして、例えば売上比率を、通常郵便とそれ以外、九対一という固定概念があるんですけれども、これをこれから先二年のうちに八対二まで持っていって、民営化になればもっとそれを比率を高めていくということになると思います。

 その手法として、ゆうパックとかメール便、私どもの言葉では定形外というんですが、これの品質向上。それから投信をやるとか、いろいろな具体的な案件があります。また、さっき申しました、公社法の枠内と社会規範があってもまだ改善し得る余地がありますので、それをこの二年間で目いっぱいやりたい。

 それから、民営化後に向けた布石を深めるということでは、一つのキーワードは、今の厳しい市場の中では、普通の人が普通にやっているとおりやったのではやはり市場で評価されない、同じ銀行なら銀行の中でも独創的な特色を持たないかぬ、そういう時代になってきております。

 そういった意味で、私は、郵便局窓口というのがワンストップコンビニエンスオフィスになるようにしようというのをこの二年間ずっと言い続けておりまして、ワンストップコンビニエンスオフィス構想です。これが時々間違えられてコンビニエンスストアになっちゃうんですけれども、私が申し上げているのはオフィス構想で、地方自治体の事務代行、先生がずっとおっしゃいましたよね、そういったこととか、それから、その中の一つの機能として、皆様のお役に立つミニファミリーバンクということで、今回投信を認めていただきまして、その一翼ができるわけであります。加えて、ファイナンシャルアドバイザー的な役割を果たす機能を高めておくということでありまして、これは、御家庭のお金回り、それは遺産であったり、お金の運用であったり、保険であったり、お金にまつわることは何でも相談してくださいというふうな機能をやっていきたいというふうなことでございます。

 金融分野につきましては、七年四月以降、新しいビジネスモデルが、これは新しい経営が考えることではありますけれども、とれるようにその体制を整備しておくということで、審査能力とかリスク管理能力、運用能力、もう間に合いませんから、人材も登用いたします。

 さらに、より具体的な分野としては、これも先生おっしゃった、郵便分野の将来の柱の一つになる国際分野の開拓ということでありまして、現在、人材の導入、育成から始めたんですが、ようやく対応力がついたと思います。それを受けて、来年四月からぜひ、この国際的にも大変おくれてしまっている分野での投資も含めた進出が可能になることを期待しております。

 この分野では実は全くのビギナーでございますから、初心者でございますから、一人で出ていくよりも、既に実績のある人と肩を組むといいますか、協力し合いながらやった方がいいのかなという考え方もあり得るというふうに考えておりまして、現在御審議いただいている法案が認められた場合には、来年四月からでもそれが実行に移せるように、現在、鋭意取り進め中ということで、ちょっと具体的に申し上げるのは数カ月後にさせていただきたいと思っております。

谷口委員 今、生田総裁の方から何点かおっしゃっていただいたんですが、所管省庁の総務省として、総務大臣の立場で、私は、この間にもう少しいろいろなことができるようなことを考えるべきだと思っておりますが、お考えをお伺いいたしたいと思います。

麻生国務大臣 前にも申し上げたと思いますが、大体役人なんというのは、金を稼ぐ能力がないのがみんな役人になっておるわけですから、それに金を稼ぐ方法を考えろと言ってもなかなか出てくるはずはない、まず基本的にはそう思っておいていただかぬといかぬところだと思っております。

 常識的に言って、こういった形で民営化をされるという前提に立った上で、今いろいろ公社の中でも物を考えておられるというのは、もう御存じのように、いろいろ今、国際物流の話が出ておられますけれども、この間、公明党の方だったか民主党の方だったか、ちょっと何党だったか正確な記憶ではありませんけれども、地元にありますいろいろな物産のことに関しての通販のお話がありましたけれども、やはりその地域においていろいろな特産物というものを産地直送ができる少なくともシステムと、小さな金を融資できる部分とか、それを回収する部分というものは既にいわゆるできるだけの能力というものがあるわけですから、そういったようなことがやれるというのも一つの方法でしょう。また、いろいろな形でそういったようなものを広げていくと、それにつながって、付随してまたいろいろ出てくるんだろうとも思っております。

 私どもとしては、今いろいろな形で、多分私どもの知らないところであっても、公社に対して、こういったアイデアはどうだ、どういったアイデアはどうだというような、システムとか商売というもののアイデアの持ち込みというのはきっとある、私どもはそう思っております。私が民間だったら必ずやりますから、そういったものもできますでしょう。

 また、今よく使われております中で、我々、似合う似合わないは別にして、このクールビズなるものをやらされておるんですが、このやらされておる方のもとは、これは目的ではありませんでして、本来は地球温暖化に資するという話がもとの話ですから、そこのスタートのために、温度を二十八度ぐらいに設定すれば、それによってクーラーの電力消費量が百五十五万本、ちょっと忘れましたけれども、とにかく下がるという話だそうです。

 そういった話でいきますと、今回のこの商売の中で、例えばいろいろな形で、谷口さんの自宅から送ってこられた、大阪なら大阪から送ってきた品物を東京とかいろいろなところに個人に宅配するときを調べますと、大体、全国平均で三・五回、宅配のトラックが来るんだそうです。我々が受け取るまでの間に三・五回。それは田舎なら多分一回ぐらいで、人がいますから行くでしょうけれども、都会だったら五回も六回も来ている可能性は十分にあると思うんです。そのときに、それを、一回来て、谷口さん、おたくに届いた荷物は最寄りの郵便局、高輪郵便局何々に預けてありますよということになって、紙一枚持って、身分証明書を持ってとりに来てくださいと言っていただければ、それを持ってとりに行かれれば、そこで間違いなく受け取れる。

 郵便局というのは、やはり信用というのは大きいものですから、何となくどこにあるかもわかっていますし、そういった形にするということは、トラックの動き回る回数が三・五が一回に減る、四・五が一回に減るということは、その分だけガソリンも減りますし、人件費も安いと思いますので、そういったことも考えられる。いろいろなことが考えられると思います。

 これは私どものような者でも考えるので、きっといろいろな商売を実際やっておられる方の方がもっと積極的にいろいろ考えておられるんだと思いますので、それができるような方向で私どもとしては考えてまいりたいと思っております。

谷口委員 ちょっと時間が限られていますので。

 最後に、郵政職員の各社への異動についてちょっとお伺いしたいんです。

 有識者会議のために骨格経営試算を出されておられます。現行は二十七万人の職員がおられて、郵便が十二万人、郵貯が五万七千人、簡保が四万二千人、共通のお仕事ということで五万人、合計二十七万一千人おられるわけであります。この方を、骨格経営試算では極めて機械的にやっていらっしゃるわけでありますけれども、職員の皆さんの四つの会社への異動については最大限配慮を払っていただかなければなりません。

 そこで、この承継計画の中で、どこの会社に何人程度、こういうことになるんだろうと思うんですけれども、しかし、実際の人事は公社がされると思うんです。公社が、あなたはここに行きなさい、ここに行きなさいというようなことをされると思うわけでありますけれども、公社で事前に準備期間を設けるといったようなことが可能なのかどうか、そういうことを考えられるのかどうか。

 あと、総理の方から、ちょっと時間がないので一言で結構ですけれども、雇用配慮原則を念頭に入れていただいて、職員の皆さんに大変大きな影響がございますので、一言お願いいたしたいと思います。

生田参考人 お答え申し上げます。

 法案を拝見いたしますと、公社の職員の帰属先は、形としては、公社における就業場所や従事業務などの勤務条件に配慮しながら、準備企画会社として設立される日本郵政株式会社が作成する継承計画において定める、こうなっているんですけれども、まさに先生がおっしゃったように、さはさりながら、実態的には公社の方で相当の準備をするべきだと思っております。

 やはり事業は人ですから、やはり人がちゃんと理解して、やる気を持ってやるような仕組みを絶対つくらなきゃならないと私はかたく思っておりますので、もし民営化がここで決議されるのであれば、早速いろいろなことを具体的に考えていかなきゃならないというふうに思っております。

 私として心がけなきゃならないのは、新会社の業務運行が支障なく、それも士気高く遂行されるということでございますから、継承計画作成以前におきましても、職員に対して、早い段階から民営化後に従事する仕事というものをできるだけ私どもの経営の方で区分いたしまして明らかにして、必要があれば訓練も実施する。職員が不安なしに新会社に移行できる、むしろ元気に移行していくという準備をやっていこうと思っております。

 民営化が決まれば、残された期間をフルに活用いたしまして、円滑な移行に努めて引き継ぐのが私どもの責務だと思っていますけれども、まだ具体的に法案がどういう形で最後に決着をされるのか決まっておりませんので、予備の勉強のまた予備はやっておりますけれども、具体的に取り組むというのは御審議の結果を見てということになると思います。

小泉内閣総理大臣 雇用についてですが、それは、御指摘の五原則の一つの重要な柱であります。十分配慮してまいります。

谷口委員 ありがとうございました。

 本当に、当事者の立場に立ちますと非常に重要なことであります。どうぞ最大の配慮をお願いいたしたいと思います。

 時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。

二階委員長 次に、海江田万里君。

海江田委員 民主党の海江田でございます。

 まず、小泉総理にお尋ねをいたしますが、きのうの新聞の世論調査、読売新聞の世論調査でございますが、「あなたは、様々な問題を抱える中で、「郵政民営化」を内閣の最優先課題としている小泉首相の姿勢に、納得できますか、納得できませんか?」という問いでございますが、ごらんいただければわかりますように、「納得できない」が三三・三%、「どちらかといえば納得できない」が三二・〇%、両方合計をしますと、六五・三%が納得できていない状況でございます。

 もう一つ、二枚目で、「郵政民営化関連法案を、今の国会で成立させるべきだと思いますか、今の国会での成立にこだわらず慎重に審議すべきだと思いますか、それとも、郵政民営化には反対ですか?」ということでございますが、これもごらんいただければおわかりになりますように、反対が一五・七%、やはり慎重に審議すべきだ、今国会にとらわれず慎重に審議すべきだというのが六〇・八%、こういう状況になっているということでございます。

 これは総理も恐らく自覚をされてのことだろうと思いますが、今この状況で、先ほどの冒頭のもそうですけれども、さまざまな問題を抱える中で、どうして総理は郵政民営化にこんなにこだわるんだろう。

 むしろ、さまざまな問題ということでいうと、ちょうど今から一年前が、総理も思い出していただきたいわけでございますが、この六月に年金法案、強行採決に次ぐ強行採決がありまして、そして成立をしたわけでございます。そして間もなく、その後参議院の選挙がありまして、この参議院の選挙で私ども民主党は大きく議席を伸ばすことができたわけですが、これはやはりかかって、その直前の、去年の六月の年金の問題で、総理が与党の責任者として、政府の内閣の責任者として国会に提出をしました、提案をしました年金法がいかに国民に受け入れられないものであったかということの証左だろうと思うんです。

 私は、今この時期に、やはり国民は、年金の問題をもっと真剣に議論してくれ、あれから一年たって事態はちっとも好転はしていないから、なぜ年金の問題を議論しないで郵政の問題ばかり血道を上げているのかと。この問題を、まず総理にお考えをお聞きいたしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 その世論調査の中で、十分慎重に審議すべきだ、今国会で成立させるべきというのが少ないということでありますが、私は成立させるつもりでこの審議に臨んでおります。そしてこれは、いずれ民営化されれば、ああ、やはり民営化してよかったなという状況になるような制度設計をしておりますし、そうなると確信しております。

 また、なぜこの郵政民営化にこだわるのか、ほかにやることがあるじゃないかということでありますが、それでは、郵政民営化をしないで、今こんなのはどうでもいい、これだけ反対が強いんだから今のままでいいじゃないかというような民主党の主張もわかりますけれども、公社のままでいいじゃないかということでありますが、私は、それでは、郵政民営化法案を出さなければ、今の年金問題におきましても、あるいは外交において北朝鮮の問題におきましても、あるいは国連改革の問題におきましても、それでは解決できるのかというと、そうじゃないんです。郵政民営化をしないで一生懸命やれば、そんなに単純に早期に解決できる問題ではありません。

 年金改革、社会保障改革一つとっても、これほど自由民主党が民主党に一緒に協議しましょう、協議しましょうと言うのに拒否し続けていたけれども、ようやく拒否するのはまずいなということで参加して、衆参一体の年金を含んだ社会保障制度改革の協議会ができた。これは当然、一月や二月でできる問題じゃありません。まさに慎重に協議して、国民の理解を得られるような年金改革、社会保障制度改革をしようということでやっているんです。これは郵政民営化をやらなければすぐできるという問題じゃありません。私は、外交、内政、問題が山積している、これと同時並行的に郵政民営化の重要性を考えてやっているわけであります。

 私は、郵政民営化の法案を出さなければこんなに皆さんからやじられることもなく、抵抗勢力、反対勢力からばり雑言を浴びることもなく、より穏やかに円満に政権運営できるのにという声も聞いておりますが、あえて新しい時代に対応できるような改革に邁進するのが小泉内閣の責務だと思いまして、困難な挑戦に挑んでいるわけであります。

海江田委員 ひとりよがりの演説が続きましたけれども、私は、やはり今この時期、二〇〇五年の六月という順番からいけば、年金の問題を先にすべきではないだろうかということを申し上げているわけで、郵政の問題だって、それはしっかりやらなきゃいけないですよ。だけれども、今この時期にやる問題は何なのかということで、そういう声がちまたにあふれていますよ。恐らくここにいらっしゃる皆さん方の中だって、さっき出た六五%以上の声がそういう声だろうと私は思っております。

 では、総理、年金をやっていると言うけれども、これまで何回、年金の衆参の合同会議が開かれましたか。そこでどういう中身が議論されているんですか。おわかりですか。

小泉内閣総理大臣 国会の運営のことについて私はとやかく言う立場ではありませんが、自由民主党から民主党の皆さんにも、この年金を含めた社会保障制度協議会に参加してくださいと。なかなか民主党が応じなかった、三党合意をしたにもかかわらず応じてこないけれども、ようやく応じてきて、この議院で何回か議論されているということは承知をしております。中身まで詳しくは聞いておりませんけれども、どういう議論が行われているかという概要については聞いております。

 そういう中で、各党が参加している年金を含んだ社会保障制度改革協議会、自由民主党の意見も、民主党の意見も、共産党、社民党そして公明党の意見も、それぞれ違う点もあります。それは今、これから精力的にやろう、民主党の皆さんが大いにやろうと言えば、どんどんどんどん審議が進むわけであります。自由民主党も、与野党合意でできた協議会だから自民党だけでやれやれと言うのはまずいだろう、各党参加したもとで協議した方がいいということで、民主党がどんどんやれと言うなら、自民党は大いに受けますよ。

 そういうことでありますけれども、どうか拒否しないで、審議拒否しないで、どんどん参加していただければ審議は進むと思います。

海江田委員 まず、私がお尋ねしたのは、何回ですかと。回数ぐらい知っていてもいいじゃないですか。知らないんなら知らないと言えばいいですよ。別に知らないことは責めませんよ。細かい中身じゃなくていいけれども、今どういうところが論点になって、何でデッドロックに乗り上げているのか。

 それから、民主党は拒否なんかしていませんよ。早くやろう、きのうだって会議を開いたじゃないですか。早くやらなきゃいけない、もう一カ月半も開いていないからということを言ったじゃないですか。そういうことも知らないんじゃないですか。だから、知らないんなら知らないでいいんですよ、知らないとおっしゃっていただければ。

 それから、では年金の問題で、私はこの間、二つ大変大きな問題が起きたと思うんですよ。一つは、やはり合計特殊出生率ですよ。ちょうど去年、一・二九という数字が遅出しでもって、審議でおくれて出してきて大変大きな問題になったけれども、これがついせんだって発表になりましたけれども、総理、この出生率がどうなったか知っていますか。まず、これが一点。

 それからもう一点は、国民年金の納付率ですよ。これも十六年度のが出ましたよ、速報値ですけれども。これは上がっているんですか、国民年金の納付率、下がっているんですか。それくらいは常識ですから、年金の問題に関心を持っているならそれくらいわかるはずですよ。メモを言っちゃだめだよ、わかっているかわかっていないかだから。

小泉内閣総理大臣 海江田さんは年金の知識も豊富ですし、私よりも恐らく随分知っているでしょう。しかしながら、知っている人にあえて答弁するのも失礼かと思いますが、私も大体のことは承知しております。海江田さんほどの知識は不足であるし、見識も海江田さんの方がすぐれているかもしれません。私の知能程度を試しておられるのかもしれませんが、出生率は大体一・二九、正確に言うと、二九にはいっていない、一・二何々々、四捨五入すれば一・二九という程度でしょう。

 そのほか何を知っているかというと、何でしたっけ、知識を試されているようですけれども、どういうことを聞きたかったんでしたっけ……。

 国民年金の収納率も、若干上がっているけれども、期待したどおりではないというふうに承知しておりますが、この年金の収納率を向上させるためには一段の努力が必要だと思っております。

海江田委員 よく聞いていてくださいね、興奮しないで。

 一つは、確かに出生率です。それで、確かにおっしゃるように、一・二八八八ですから四捨五入すれば一・二九ということですけれども、前年が一・二九〇五なんですよ。そこで、これも一・二九、四捨五入すれば。それから、一・二八八八も四捨五入すれば一・二九。だから、変わらないと言うけれども、厚生労働省はそういう説明をしているんですけれども、実は、そこはまだまだ低下傾向は続いているということで、これはやはり大変真剣に考えなきゃいけない問題なんですよ。

 それから、もう一つの納付率については、確かにほとんど変わっていない。少しよくなったと言いますけれども、これは実は去年の改革の中身にも触れてくるわけですけれども、免除の枠を拡大したわけですよ。だから、実際に納付をしている人の数は減っているんですけれども、免除を除外するから、結果的に数字のマジックで納付率は若干上がった。ただ、若干上がりましたけれども、当初、去年の国会で議論をしていたような予定のパーセンテージまでは届いていないというのが現状なんですから。

 私は、一年間に少しでも、去年改革をした、去年改正案を通した効果が出て、そしてそれが、年金の安定でありますとか、それから人々が、よしこれならばという形で年金にきちっと保険料を払ってくれるとか、そういう方向に動いているのならば、あとは議論に任せておいてもいいけれども、ここはかなり総理がリーダーシップをとって、国民が今一番不安に思っていること、不満に思っていること、不信を持っていることに対してきちっとした目くばせをやって、手を打っていく。総理はよく、信なくば立たずと言っているけれども、まさに国民の信を得るためにはそういう行動が必要なわけで、それが私は甚だ欠けているということを申し上げたいわけでございます。

 時間も限られておりますので、本題に、郵政の問題に入ります。

 六月の三日に、総理が出席をされまして、ここで審議がございました。あれからおよそ二週間弱たちましたけれども、私も会議録を読んだり、あるいは院内の放送を見たりしてチェックをしておりましたけれども、なかなかわかりにくい点がたくさんある。

 私、まず第一番目にお尋ねをしたいのは、郵便料金は本当に下がるのかどうなのか。六月三日の当委員会で、小沢鋭仁委員が総理と竹中大臣にお尋ねをしたわけですが、総理は、競争があるから値上げは難しいんじゃないだろうかと。値上げが難しいということは、現状かあるいは下がるか、競争があるからですよということを言っていた。ところが、竹中大臣は、生産性を相当上げないと郵便料金にはね返ってくるということで、これはどちらかというと上がるような答弁ぶりだったわけです。

 改めて、まず、郵便料金はこの郵政の民営化をすると上がるんですか、それとも下がるんですか、現状維持なんですか。どうなんですか、それは。

小泉内閣総理大臣 それは、予測を断定することはできませんが、郵便料金というのは独占分野ですから、これは私は、民間が参入してくれば、今の宅配の問題でも必ず下がっているという状況を見ると、独占がどこまで続くか、民間がどの程度参入してくるかにもよってくると思いますが、値上げは簡単にできないだろう。

 そして、将来どうなるかというと、断定はできません。下がる可能性もあるし、物によっては上がるものもあるであろう。しかし、競争によって、どういう価格を国民が欲しているか、あるいはどのような安い料金にしてより多くのサービスを展開できるか、収益を確保できるかというのはまさに経営者の判断であると思っておりますから、競争が必要だと思っております。

海江田委員 どうしてこういうことを聞いたかというと、総理や竹中さんは、郵政を民営化するとこんなによくなりますよということをずっと言ってきたわけですよ。

 だから、そうすれば、普通の人の郵政の接点というのは、これからお話ししますけれども、郵便貯金であったり簡易保険であったり、一番日常的なのはやはり郵便ですよ、郵便料金ですよ。確かに最近はメールも多くなっていますけれども、やはりいろいろな形で郵便局の郵便を使うケースが多いわけですから、その一番日常的な生活の接点のあるところの少なくとも郵便料金が、改革をすることによって、民営化をすることによって安くなるんだということでなければ、やはりインセンティブというのは働かないと思うんですよ、まず一番初歩的な。

 だから、そこのところで、そういうふうになるんだということをちゃんと説明してくれれば納得するわけです。今の話じゃ全然どうなるかわからない、断定できないと。断定できないということだけを断定しているわけじゃないですか。それは全然納得できない。少なくともこれは値下がりをするということはないわけですね。その可能性はあるわけですか。

小泉内閣総理大臣 お答えしたとおり、値下がりする可能性もあるし、物によっては値上がりする可能性は、可能性を言えば、私は断定できないと言っているわけであります。

 しかし、今までの例からいえば、宅配の業者の参入によって小包等は値下がりしているのも事実であります。

海江田委員 宅配と郵便とは、信書だとか何だとかとは違うんですよ。しかも、これはユニバーサルサービスで全国津々浦々に配達をするという話なわけですから。

 それはいいですけれども、もう一つ、では、郵便貯金の、例えばATMの料金でありますとか、それから振り込み手数料でありますとか、それから口座管理手数料でありますとか、こういうのはどうするんですか。今これは、郵便貯金は全然かかっていませんね。これはどうなるんですか。

小泉内閣総理大臣 これは、現在手数料はありませんが、民間金融機関の中におきましても、どの程度の手数料を取るか。あるいは、郵便貯金が民間会社になって手数料を取らないから、では、民間金融機関はほかも、そのような競争に太刀打ちできるように、同じように手数料を取らない民間金融機関が出ないとは断定はできません。そして、同じような、同一条件のもとで競争することによって、手数料がただの方がいいという人もいるでしょうし、手数料が若干払われても、ほかの金融機関で、よりよいサービスを考える金融機関も出てくるでしょう。

 手数料だけが預金や貯金の唯一の手段ではありませんから、国民の選択というのは、安全性、収益性、有利性、いろいろなものを考えますから、手数料だけで判断するのは、民間の企業から考えればそう単純ではない、いろいろな複雑な要件を考えていくであろうと思っております。

海江田委員 手数料が高くてもいいという人がいるという話も今出ましたけれども、例えば手数料、民間銀行の手数料、幾つか種類はありますけれども、例えば口座維持手数料とか口座管理手数料というのがあるわけですよ。これは大きな日本の銀行もみんな取っていますけれども、この考え方の一つは、預金をたくさんやっていただければ手数料は要りませんよ、あるいは手数料は低いですよ。だけれども、預金がわずかだったらその口座を維持するために手数料がかかります、お金がかかりますから、そのお金を負担していただきましょうよということで、外資系の銀行なんか幾らですか、二千円とか三千円とか取っているところ、二千百円ですか、シティバンクというところは。日本円及び外貨の残高が五十万円以下になった場合は二千百円取りますよ、これが実は民間の金融機関の、銀行の手数料の基本的な考え方なんですよ。

 だから、お金がたくさんある人はいいですよ。むしろ手数料なんかかからないんですよ。それから金利だって優遇されるわけでしょう、何億やれば金利高くしますよと。そこらじゅう幾らでもポスターが出ているじゃないですか。だけれども、零細の人には、金利も低いですよ、手数料もいただきますよ、これが民間の金融機関でしょう。それと同じになることをよしとしているわけでしょう、総理は。

小泉内閣総理大臣 それは、民間の金融機関は独自の考えがあるから、手数料を取っても預金してくれるというようなサービスも提供しているわけでしょう。それで郵便局も、では零細貯蓄だけかというと、そうじゃないんですよ。零細貯蓄は、六割ぐらいは零細というか三百万以下でしょうが、一千万円の限度がありますし、今、名寄せも全部できていない。一千万以上預けている方もたくさんおられるということが今の調査でもわかっている。

 そういうことから考えますと、郵便貯金がありながら、郵便局にも民間金融機関にも預貯金をしないで、たんす預金といいますか、手元に預けている方もいる。それはまさに、民主主義、自由の時代ですから、多様性であります。国民は多様性を重んじる。手数料がただだったらそこのところに行く、手数料を取るんだったらほかの安いところに行く。それは民間金融機関はたくさんありますから、これから競争して、いかにお客さんを獲得するか、あるいは収益性を上げていくかというのは、まさに民間経営者、民間企業が考えることであって、私は商売はよく知りませんので、そういう点につきましては、そのような枠組みをつくる、多様性を展開できるような制度をつくるというのが政治として重要だと思っております。

海江田委員 総理は郵政大臣になったときもそうでしたけれども、やはり郵貯の本来あるべき役割とか、それは確かに一千万円超える人もありますよ。あれは、定額貯金という商品があって、十年も置いておけますから、金利が五・五%ぐらい半年複利で回ると、十年たてば倍になっちゃうんですよ。そのときは国債の窓口販売なんかもなかったから、そのときいろいろな形で膨らんだとかいうようなこともあるわけですよ。基本的には、この郵貯というのは、やはり官は民の補完なわけでしょう。だから一千万も決まっている。でも、最初は一千万じゃなくて三百万だったり五百万だったり、ずっとそれは総理もよく御存じなわけですよ。

 それは、郵便局を利用している人も大金持ちもいるという話だけれども、確かにそういう人も中にはいるけれども、やはり本当に零細な預金を、私も今いろいろなところを歩いて、都議選もありますので、いろいろなところを回っていろいろな人の話を聞きますけれども、八十ぐらいのおばあさんで、大体郵便局に三百五十万ぐらいですよ、持っているのが。これがなけなしのお金で、あとは年金が入ってくる。その年金の受け取りも郵便局にしているという話が、こういうところがやはり現実の話であって、こういうものを無視してしまって民間にしてしまう。いいですよ、民間にしたら、民間は自由なんですよ。もうけることが目的なんですよ。それから株主に配当することが目的なんですよ。

 総理は、アメリカの動きで例えば金融排除とかいう言葉があるんですよ。そういう金融機関の取引から排除されてしまう。さっきお話をしたように、口座維持手数料が高いとか、あるいは最初から口座を開かせてくれないとか。だから、これじゃいけないということで、今アメリカなんかだって、それからイギリスもそうですけれども、もう一回見直しをしよう、やはりすべてどういう人も少なくとも口座を持たなきゃいけない、持てるようにしなければいけないと。ただ、アメリカなんかはまだ小切手の世界だからいいんだけれども、日本は小切手がほとんど行き渡っていませんから、やはり銀行の口座というのが大事なのです。

 しかも、これからは高齢化社会にどんどん向かっていくわけですから、そういうときに、やはりそういう零細な、官業が民業を圧迫してはいけないから、ダウンサイジングする努力はしていかなきゃいけないけれども、本当にお年寄りなんかが安心をして預けられる銀行があったっていいわけですよ。そういうものになるんですか。そういうものにはならないでしょう、これは。どうですか。

小泉内閣総理大臣 それは、金融機関はどこが安全かどうかというのは、これから国民がよく考えるべき問題であります。一千万円以下は保証されるということでありますし、私は、民間金融機関だから不安である、国営だったら安全であるという問題から論ずれば、国営というのは当然政府保証がありますから安全でしょう。しかしながら、民間金融機関だって安全なところはあるわけですから、それはまさに国民が判断する。そういうような健全なる金融機関というものに多くの経営者が努力していかなきゃならないというのは当然であります。民間だから不安であるという理屈は私はわかりませんね。(発言する者あり)

海江田委員 今、同僚委員から、総理は郵便局のATMを使ったこともないから全然実感がわからないのだろうという声もありましたけれども、まあ、それはあえて聞きません。

 私が言っていますのは、別に、郵便局は安心で、どこの銀行が不安だとか、そういうことを言っているんじゃなくて、そういうお年寄りの零細な人から、今言ったようなATMの利用の手数料もそうだし、口座維持管理手数料もそうだし、それから振り込み手数料もそうだし、そういうものがどんどんどんどん取っていかれるようになったらお年寄りの人たちはどうするんですかということを言っているのです。そういう銀行があってもいいんじゃないですか、そういう、ラストリゾートといいますか、最後のよりどころがあってもいいんじゃないですかということ。

 特に、これから高齢化社会で、お年寄りはみんながみんな金持ちじゃないですよ。お金ないですよ、本当のことを言って。それから、これから日本全体が、だんだん貯蓄率も下がっていって、お金がなくなってくるんですよ。そういうときに、どうしてそういう人たちのことをきちっと、これから十年先、二十年先はまさに超高齢化社会じゃないですか。そのときに、そういう金融機関をラストリゾートとして残しておいてもいいじゃないですか。そういう方向への民営化ならいいですよ。全然違う弱肉強食の民営化じゃないですか。

 それから、簡易保険についてもお尋ねしますけれども、簡易保険だって、実は今いいところは、医者の診断がなしで入れる。それからもう一つ大事なのは、職業の差別がないんですよ、区別がないんですよ。やはりいろいろな危険な仕事をやっている人というのは、なかなか民間の生命保険会社は契約を結んでくれない。ところが、簡易保険は、職業の差別なしに、区別と言った方がいいかもしれませんけれども、職業の区別なしにどんな職業でも入れるということで、利用している人もたくさんいるんですよ。

 こういう、医師の診断がないとか、それから職業による区別がないという、今の民間のあれで職業の区別のないところがあったら教えていただきたいんですけれども、こういう簡易保険もなくなっちゃうんじゃないですか。どうですか。

小泉内閣総理大臣 それは私は、生命保険の商品にどんな種類があるものなのかというのは知りませんけれども、まさに民間の競争によって、国民がどのような商品を買いたいかというのは競争によって生まれてくる、それは国民の判断であります。

海江田委員 総理は一周おくれのトップランナーなんですよ。周りを見るとだれもいないから、みんな後ろを走っているからいいと思っているけれども、今、世の中の流れ、これから特に日本の流れ、高齢化社会の姿というものを見たときに、もう一度改めて、本当に民にできないことは何なのか、その民にできないことをどういう形で、一番費用の負担が少なくて済むのかというような観点に立って、やはりもう一回見直しをすべきですよ。そこを全部、競争に任せろ、競争に任せろと。ラストリゾートといいますか、最後のよりどころがなくなっちゃうじゃないですか。競争から落ちた人はどうすればいいんですか。それは競争は大事ですよ、競争は大事だけれども、そこでやはり最後のよりどころもしっかり守っておかなければいけないということですが、またどういう答弁が返ってくるかわからないので、時間も限られていますので。

 ちょっとこの、資金の流れの大きなあれで。これは実は、この後で問題にいたしますけれども、政府の、ことしの二月に広報しましたこういう折り込み広告。これは首都圏には余り配られていないんですけれども、地方に配った。実はこれが大変な、竹中さんに後で聞きますけれども、竹中さんの秘書官が関係をしてこれを配っているという事実があるわけです。

 まずその前に、お金の流れが官から民へ行きますよとしきりに言っていますね。三百四十兆、今、郵便貯金と簡易保険にあるお金。これは実はストックだけれども、このストックが今は、これを見ていただければわかりますけれども、こっち側ですか、郵便貯金に行って、郵便貯金から、ここの流れですよね、国に行って、そしてこれが財投機関。ただ、財投の改革なんかはある程度もう進んでいますから、本当はここをもっとしっかりやらなきゃいけない。だけれども、今度これが民営化をされれば、こっちの青い流れですけれども、ここの民間企業に行く流れが大きくなって、こんなに太くなっている。今は六兆円しか行っていないけれども、こんなに太くなって、そして、こっちの流れというものは官への……(発言する者あり)そうですか、はい。では総理に。こっちを見ればいい。

 これは政府広報であるわけですから、つくった本人がいるわけですから。それから、いつも言っているわけじゃないですか。お金の流れが、民営化されることによって官から民へ流れていくんだということを言っていますけれども、例えば、この政府広報でおかしいなと思うのは、まず、お金の流れと言っていながら、ストックだと。ストックで計算をしている、フローじゃないんですよ。だけれども、まあそれはいいとして、では、ここのところ、金額が入っていないんですよ、ブルーにも、線を大きくかいているけれども。

 今度、郵便貯金から民間企業に、これは大体幾らぐらい行くんですか。それと、あと、これはいつぐらいの時点でどのくらい民間に行くんですか。それから、ここの官への流れも、今よりはるかに細くなっているけれども、これも幾らぐらいなんですか。少なくともこの二つだけは教えてくださいよ。

竹中国務大臣 資金循環の将来予測をするというのはなかなか技術的に難しくて、どこの国でもそういうものはないのでございますが、今回、これはイメージ図として、それが変化するということを数字のことを除いて書いておりますが、その後、数字に関しましては、慶応大学の跡田教授らが私たちの前提に基づいて試算をしたものがございます。

 ちょっと細かい数字を今持ってきておりませんが、時点と数字、イメージだけ申し上げますと、二〇一六年度の時点で、これは家計の資産運用に関していいますと、今、大体家計から銀行に行っているのが五百十一、二百二十七。これを二〇〇三年度で私たちが再推計しますと、大体二六%が官に行っているわけですね。家計資産のうちの二六%が官に行っている。これが、必要な改革を行うことによりまして、二〇一七年度にはこの比率が五%にまで低下する、その分、民間のウエートが大きくなると数量的な推計がなされております。

 一方、企業の資金調達の方から見ますと、企業の資金調達に占めます官のウエートというのが今、一九%あります。これが、今我々が考えております郵政の民営化、さらには政策金融機関の改革等々を実施することによって、そしてプライマリーバランス、基礎的財政収支の改善なども織り込むことによりまして、この一九%のウエートが六%に低下する。

 つまり、家計から見ますと官のウエートが五分の一になる、企業から見ると官のウエートが三分の一になる、そのような改革が可能であると考えております。

海江田委員 今の数字は、前に五十嵐さんが質問をしたときにその数字を言ったんですよ。だから、私もどこにあるのかなと思って調べてみたんですよ。これは、ことしの六月六日の金融財政事情という雑誌の中に、専門誌ですけれども、この中に書かれているんですよ。

 確かに、家計が、二六%が官に流れていたのが五%になるというけれども、これは簡単な理屈なんですよ、郵便局が民営化したという前提ですから。だから、今の二六%のところは官なんですよ。これが民営化になったから、民に移ったから、百四十兆からのお金が民に移ったから、これが民のお金だ、こういう理屈なんですよ、これは。そういうことを言わなきゃだめでしょう。総理もよく聞いておいてくださいよ。二六が五%になる、みんなびっくりするけれども、何のことはない、今まで官だったのが、集めることは集めて、それが民になったから、要するに、今度、民勘定ですよという話なんですよ。

 それから、ここで指摘をしているのは、民間金融機関資産における国債、地方債のシェアが一六%から二八%へ増加をするということも指摘しているわけですよ。それから、企業貸し出しのシェアは一五%から一六%へと微増にとどまるだろうということで、今言った一番大きな、二六から五%と言ったのは今のような理屈でありますし、やはりここの論文が指摘をしていることというのは、この後も話をしますけれども、国や地方の借金をどういうふうにやって減らしていくのかということが、この官のお金を、今官に流れているお金を民に流していくのかという一番のポイントだということを指摘しているんじゃないですか。そんなことを、勝手なことを言って、だめですよ、これは。

竹中国務大臣 海江田委員、その論文を読んでいただいてありがとうございます。これは、私たちが制度設計するに当たりまして大変重要なものだと思っております。

 前半で海江田委員が言われた、郵政公社が民間になるから民のお金がふえる、それでいいじゃないのでしょうか。それこそがまさに官から民へではないのでしょうか。そういうふうに民の、これは民間の会社になるわけですから、それで官から民への、お金の流れが移るということになります。(発言する者あり)

二階委員長 御静粛に願います。

竹中国務大臣 今は、国債を持つかどうかに関係なく、家計の資産の中に占める割合でございますから、家計の資産に占める割合が官から民にそのウエートが行くということは、これは事実でございます。

 二番目の問題で、これは論文も指摘しておりますように、最終的な資金需要の中で官のウエートを小さくしていくことが必要だ、つまり財政の赤字を減らしていく、これは全くそのとおりでございます。これは、私たちもそういう方向で「改革と展望」等々をつくってそのことを示しておりますし、私たちはまさにそのつもりで財政の運営をやっているわけでございます。

海江田委員 今まで官だったのが民になったからいいじゃないですかという話ですけれども、だからさっき私は大きな図で尋ねたんですけれども、本当にここのルートでもって、太くなっているけれども幾らなんですかということを聞いたら、それについてはお答えをしなかったわけです。ここの図でいう、ストックでもって幾らなんですかという話。今のはフローの話ですからね、言っておきますけれども。こっちもストックなんだから、ストックで幾らですかという話についてはしなかったですし、これはできないんですよ、はっきり言って。イメージでしか言えないんですよ、これは。だから、言おうと思ったって言えない、ストックでは言えないはずなんですが、それはいいです。

 やはりここの資金循環で民に流れるためには、これももう竹中さんは専門家ですからよくおわかりでしょうけれども、この日銀の資金循環の勘定からいって、ここのところにある企業部門なんかが、これは今まだ過不足だから、余っておるわけですよ、借り手がいないわけですよ。だから、ここのところをもっと下げていく。企業部門がもっとお金が必要になるというような政策をとっていかなきゃいけないし、そういうことは私はほとんどとっていないと思います。

 それから、政府部門のところをもっと上げていく努力をしなければいけない。この政府部門を上げていくというのが、実はここで言っている、こっちでもいいですけれども、今仮に民間銀行になったって、その民間銀行は、貸出残高はどんどん減っていって、国債ばかり買っているじゃないですかということでしょう。国債に行けば、郵便銀行という民間の金融機関を通ったってその後国債に行ってしまえば、何のことはない、官のお金じゃないですか、民のお金にならないじゃないですか。

 それで、国債発行の残高も、これは言うまでもありませんけれども、財務省の試算でも、三十年度には九百十八兆、こういうとてつもないことになるので、ここのところをやはり減らしていく努力をしなければ、今言ったけれども、二六%が五%になる、郵便貯金に置きかえた、郵便局が官だったのが民になった、だけれども、仮に百歩譲って、そんなのへ理屈でしかないけれども、あなたの言っていることは全部へ理屈だけれども、百歩譲ってそれでいいとしたって、そこから先のお金のところは、官に停滞していたのでは、官に滞留していたのでは、官から民へと言えないじゃないですか。形だけはつくりました、やってみましたという話じゃないですか。どうですか。

竹中国務大臣 いやいや、その限りにおいて、財政の資金需要を減らしていかなければいけないという海江田さんの御指摘は全く正しいと思いますよ、私も正しいと思いますよ。そのことについては、「改革と展望」等でその管理をしっかりとやって、また先般の二十一世紀のビジョンにおきましても、そのことの必要性を専門家においてしっかりと強調するレポートを出していただいて、そのための準備、そのための財政再建の努力を我々はしっかりとしているところでございます。

 それによって、一方で、海江田委員、その間に、二〇一七年度までにデフレを克服して、名目GDPも大きくしていく、これがやはり民間の資金需要を拡大していく上で大変重要でございますから、その意味では、マクロの経済そして財政の再建、それを「改革と展望」の線に沿って、今着々と進めているところでございます。

海江田委員 いや、着々とじゃなくて、遅々として進まずですよ、これは。

 それから、もう時間がありませんので、このパンフレット、折り込みチラシですけれども、ことしの二月に、きょうテレビを見ている方で地方の方は、これは地方紙を主に配っているんですね。ターゲットが地方の、それこそ郵便局がなくなって心配だな、自分のところはなくなるんじゃないかなと心配しているような主婦や、それからお年寄り、シルバー世代を対象にということですが、実は、これはきのうも辻委員が質問しました。その前に、一番最初に言ったのは、五十嵐委員が六月三日、総理も聞いていたはずですけれども、五十嵐委員がこの委員会でこの問題を最初に提起したわけです。

 テレビを見ている人なんかは御存じないと思いますが、これが千五百万部刷られた。そのお金が一億五千万円ですけれども、この一億五千万円が、有限会社スリードという社員がたった二人だけの有限会社に、これは随意契約で契約が結ばれて、そしてこれが出された。

 しかも、この広報というのは政府広報がやっているんですけれども、自民党の皆さん方も実は大問題にしたわけですよ。法律がまだ通ってもいないのに、決まってもいないのに、二月ですよ、議論が活性化するから、これから国会で議論が活性化をするからその前につくらなきゃいけないなんて言っているけれども、実際に活性化しているのは、まだまだこれからじゃないですか。きょうだって、まだ活性化しているとは言えないんじゃないかなと私は思うわけでございますけれども、そんなに早く一億五千万円を使って、しかも言われておりますのが、これが、いいですか、竹中さん、よく聞いていてくださいよ、竹中さんの政務秘書官である岸さんの友人であるという、この会社の、スリードという会社の谷部さんというところにその仕事を随意契約でおろした。

 これは決算でいえば、一千六百万円以上の、それはそうですよ、一千六百万円以上のこういう広報、印刷物だとか何だとかは入札をしなきゃいけないのは当然ですよ、一般入札をしなきゃいけない。それを、ありとあらゆる法律の裏をかいくぐって随意契約をやったということがあるんです。

 いいですか、竹中さん、六月三日のこの委員会で五十嵐委員がこういうふうに聞いたんですよ。このスリードという会社は大臣の秘書官と何の関係もないんですかということを聞いたんですよ。そうしたら竹中大臣は、何も承知しておりませんということを言ったんですよ。聞いたのは、五十嵐さんが言ったのは、関係があるのかないのか、大臣の秘書官とこのスリードという会社は関係があるんですかないんですかということを聞いた。承知しておろうがしておるまいが、あれからもう十二日もたったから、当然、承知していないという答弁は出てこないものだと思いますけれども、改めて聞きますが、岸秘書官とスリードは何の関係もないんですか。

竹中国務大臣 秘書官に確認をいたしましたけれども、面識はあるけれども何も利害関係にはない、そういうことでございます。

海江田委員 面識はあるんですね。面識はある、何度か会っていると。いつごろからですか、その面識は。

竹中国務大臣 本人もいつ初めて会ったかということは特に覚えていないようでございますが、何度か面識はあるけれどもそれ以上の関係はない、そういうことでございます。

海江田委員 利害関係にないと言いましたね。少なくともこのスリードという会社は、竹中さんが出るこの政府広報でもって一億五千万円の収入を得ているということは事実ですね、これは。事実ですね、それは。いいですか、それは。いいですね。もうこれは当たり前ね。

 では、これの作成に当たって、岸秘書官は一切タッチをしていないんですか、それとも何らかの形でタッチをしているんですか。どうなんですか。

竹中国務大臣 その広報は私が出ているわけでございますから、私が出るに当たって、岸秘書官が私をサポートしてくれる、そのことは、秘書官としてそれはあり得たことだと思いますが、それ以上のことではないと思っております。

海江田委員 サポートしてくれるけれどもそれ以上ではないというのがよくわからないんですが、いいですか、もう一度確認しますが、では、このチラシを作成するに当たって、岸さんが谷部さんと連絡をとり合った、そしてもちろんあなたとも、竹中さんとも連絡をとり合った、こういう関係にあるということは認めますね。

竹中国務大臣 そういう企画をするときは、例えば、それこそ日程の調整から含めて、当然私はいろいろなことを相談しなければいけません。その相談に当たって、連絡役として、事務秘書官の場合もあれば政務秘書官もありますけれども、これは当然、大臣の秘書官ですから、そういうことはやっていただかなければいけないというふうに思います。

 それ以上の詳細については聞いておりません。

海江田委員 今また聞いていないというふうに逃げていますけれども、では、もし関係があったら、この谷部さんと岸秘書官との間に便宜を図るような関係があったら、あなたは責任をとってやめますか。

竹中国務大臣 先ほども申し上げましたけれども、秘書官に確認をしましたけれども、面識はあるものの何も利害関係はないということでございました。

海江田委員 それはさっきも聞きました。私が今お尋ねをしておるのは、そうやって国会で、しかもテレビ中継があるみんなの前で、秘書官に聞いたら関係がないと言っているんだから、責任を持って聞いたんだろうから、もしそこで谷部さんと岸さんとの間に何らかの関係があったら、これをつくるに当たって便宜を図らせていたとか、そういうような関係があったら、あなたは責任をとって職を辞しますか、そのことを聞いているんですよ。簡単な質問じゃないですか。

竹中国務大臣 もし何とかかんとかとおっしゃいますけれども、そういうことは、確認しましたけれども、面識はあるけれども何も利害関係はないんです。だから、もしも云々ということではなくて、利害関係はありません。

海江田委員 では、この内閣広報ですけれども、内閣広報をこのスリードという会社がやるに当たって、岸さんが何らかの形で口ききをしたことはありますか。どうですか。

竹中国務大臣 口ききの意味がよくわかりませんが、私の身の回りのことを、秘書官は連絡等々一生懸命やってくださっていると思っております。

海江田委員 口ききの意味がわからないですか。簡単な話ですよ。わかりやすく言えば、いろいろな会社があるわけですよ、いろいろな会社があるけれども、その中で、この会社でこういう企画をやらせてくれということを言ったのが口ききですよ。どうですか。わかったでしょう、意味が。もう一回答えてください。

竹中国務大臣 先ほどから申し上げているとおりでございます。利害に絡むような関係、何も利害関係はないということでございます。

海江田委員 これは、責任とると言えないわけですから、そこは調査が不十分なのかもしれませんが。

 では、きょうは政府側の参考人も来ていますけれども、まず十二月の二十七日に、いいですか、十二月の二十七日、記憶を思い出してください、御用納めの前の日ですよ。十二月の二十七日に、このチラシの件で、あなたは、竹中さんは岸秘書官と打ち合わせをした覚えがありますか。

竹中国務大臣 秘書官とは毎日、非常に長時間会っていろいろな打ち合わせをしておりますから、そのときに何を打ち合わせしたかということは覚えておりません。

海江田委員 では、ちょっと政府側に聞きますけれども……(発言する者あり)ためにじゃないですよ。まあいいです。

 いいですか、よく聞いていてください。岸秘書官は、二十七日に竹中大臣との打ち合わせがあったというふうに私は情報を得ていますけれども、岸秘書官は、大臣との打ち合わせの内容をその日のうちに谷部さんに伝えているんですよ、これは。そして、谷部さんはその翌日、二十八日朝……。ちょっとカメラ映してくださいよ、ささやいているのを。いいですか、あなたに聞いているんだからね。

 二十八日朝早く、谷部さんは、内閣官房羽村参事官、内閣広報室齋藤参事官にも同時通信していますけれども、メールを送っている、こういうことがあるんですよ。そしてそれが、羽村参事官は、十二月二十八日、御用納めの日、政府側に尋ねますけれども、谷部さんから二十八日にメールをもらわなかったですか、もらいましたか。どうですか。

林政府参考人 今の件につきましては、政府として承知いたしておりません。

海江田委員 いやいや、政府としてと言いましたけれども、このことを調べて、今言いましたけれども、二十八日にメールをもらいましたかということは、今聞いたわけですよ、通告もしていないんだから。それを調べもしないでわかるんですか。調べて、だけれどもそういう事実がなかったのか。調べもしないけれども、今初めて聞かれたけれども、とっさにそんなことはないと言ったんですか。どういう根拠で言ったんですか。ないということを言った根拠。

林政府参考人 私、今答弁いたしたとおりでございます。承知いたしておりません。

海江田委員 それでは、早速調べてください。早速調べてください、これは。いいですか。調べると言ってくださいよ。

林政府参考人 私どもは、そういうことを承知しておりませんということを申し上げるしかございません。

海江田委員 再三、国会で、この委員会の場で、調べてくださいということを言っているんですよ。調べるのか調べないのか、委員長、言わせてくださいよ。

林政府参考人 私は、何度も申し上げますけれども、承知いたしておりません。(発言する者あり)

二階委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

二階委員長 速記を起こしてください。

 海江田万里君。

海江田委員 これは、ぜひお調べをいただきたいと思います。

 私と、それからこの後、辻委員もこの問題について質問をしますので、そこで資料は出したいと思います。

 それから、本日の本委員会の理事会に、「折込チラシによる郵政民営化広報の経過について」という紙が配られまして、実はこれは、きのう、さっきのあの参事官ですよ、さっきの参事官が見積書は二十八日だと言っているんですよ。ずっと言っているんですよ、調べれば。それが、きょうになって出てきた紙によれば、一月十二日にスリード社から決裁に必要な見積書が提出されたと。うそをついているんですよ。

 これは、院の、委員会の権威として、そういううそつきな政府委員を置いておくということ自体大変重要な問題ですので、出席をぜひしていただきたいというふうに思います。

 では委員長、委員会で協議。

二階委員長 理事会で協議をいたします。

海江田委員 いずれにしましても、このスリードと、さっきもお話をしましたけれども、一億五千万円もかけまして、しかも一般競争入札でなしに随意契約を結んで、随意契約を結ぶためにいろいろなありとあらゆる理屈をつけまして、そして今、そのありとあらゆる言いわけが一つ一つ崩れつつあるわけですけれども、この問題は、郵政のチラシをやはりそういう形で本当に国会も通ってもいないのに出している。中身が決まっていればいいですよ。ここで書かれていることと随分違ってきているんですよ、今政府の案として出しました話についても。

 ですから、そういう重要な問題はぜひしっかりと真相究明をしたいと思いますので、それはぜひ理事会で取り扱いをよろしくお願い申し上げます。

 それからもう一つだけ。竹中さん、やはりこの間これも予算委員会で問題になりましたけれども、このフライデーという雑誌にも出ていますけれども、このマル平という、これは違反ですよ。

 きょうは、選挙部長、政府参考人で来ているはずですから、これが違反にならないのかどうか、みんながやっていいのかどうなのか、教えていただきたいと思います。

久保政府参考人 個別の事案につきまして、具体の事実関係を私ども承知しておりませんし、承知する立場でもございませんので、その点につきましては、御答弁は差し控えさせていただきたいと存じます。

 ただ、一般論で申し上げますと、御指摘の公選法百四十六条、これに違反するという場合には、まず、頒布または掲示された文書図画に候補者の氏名やシンボルマーク等が記載をされているということが必要でございます。それから、選挙運動用文書図画の頒布または掲示の禁止を免れる行為としてなされたものであるということ。そして三点目ですけれども、選挙運動の期間中になされたものであるという、この三つの要件を満たす必要がございます。

 記載の内容、あるいは頒布または掲示の時期、場所、方法等を総合的に勘案して判断するというふうに解されております。

海江田委員 これは選挙期間中であることはもう言うまでもないわけですから、これは……(発言する者あり)やっていませんよ。では、これをやっていいとは言えませんね。これを見てください。選挙期間中です、これは。

 それから、これだけじゃなくて、このマル平マークというのは、実は御本人もこうやってマル平マークを御自分の選挙公報に、選挙のリーフレットに使っているわけですよ。こういう形で使っている。使っているわけですよ、こうやって。

 だから、そういう三点、僕はそろっていると思うんですけれども、こういうことをやっていいんですか。

久保政府参考人 先ほどの繰り返しになります。

 個別の事案でございまして、具体の事実関係は私ども承知する立場にございませんので、答弁は差し控えさせていただきたいと存じます。

海江田委員 これは今、これから東京都議会の選挙もありますし、私どもも選挙をくぐり抜けているわけですから、やはりこの種の、名前がすぐわかる、平和だとかなんだとかと言っていますけれども、平蔵さんの平ですよ、これは。そういうふうにわかる、類推されるようなものを看板以外に、法定で決められた以外については、違法であるか脱法であるか、判断は取り締まり当局がするんでしょうけれども、決して選挙部長としても政府参考人としても、これは合法ですからとか言い切れない。言えないんですよ、そのことだけは。

 だから、そういうような、やはり金融の、今度、この郵政の問題もそうですけれども、フェアだとかいうことを言う人が選挙をするためにこういうことをやっておるんでは、私は、その人の言うことというのは本当に信用できませんよ。

 これは総理にもよく聞いておいていただかなきゃいけない。大事なこの郵政法案の担当大臣として不適格であるということを私は申し上げまして、持ち時間も過ぎましたので、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

二階委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

二階委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、参考人として日本銀行理事稲葉延雄君の出席を求め、意見を聴取し、政府参考人として内閣官房内閣参事官齋藤敦君及び内閣府大臣官房参事官山本茂樹君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

二階委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

二階委員長 質疑を続行いたします。辻惠君。

辻委員 民主党の辻惠でございます。

 昨日、一昨日と、郵政民営化問題に関連して、新聞の折り込みチラシの問題を中心に質疑をさせていただきました。まだまだ事実が解明されていない、そしてこの問題が、郵政民営化を、今法案審議に当たって、うそ偽りのない姿勢で審議が本当に遂げられるのかどうなのかということを確認するという意味においても重要な問題であるというふうに思います。そういう観点から、さらにいろいろお伺いさせていただきたいというふうに思います。

 午前中の海江田委員の質疑の中で、読売新聞の世論調査を引き合いに出されて、今国会でこの郵政法案を拙速的に解決すべきではないんだというのが六〇%を超えているんだという御指摘もありました。本当に慎重に審議をしていかなければいけない問題でありますし、そして、この郵政法案を世論に訴えかけるために、「郵政民営化ってそうだったんだ」という通信、チラシが千五百万部も折り込みチラシということで配布をされたという事実があります。これがどういう関連があってどういう意味を持っていたのかということは、やはり慎重審議をするに当たって検証しなければいけない問題だというふうに考えております。

 まず、竹中大臣に姿勢についてお尋ねしたいというふうに思います。

 二〇〇一年に設置をされた日米規制改革及び競争政策イニシアチブに基づく日本国政府への米国政府要望書というのが二〇〇一年から出ておりまして、二〇〇四年の十月十四日にもそういう要望書が出ている。この中で、郵政民営化についてアメリカ政府は強い要請を行っております。そして、とりわけ競争条件の均等化、公正な競争ということを日本の経済社会、日本の社会に導入すべきなんだということをうたっております。

 竹中大臣はこの基本姿勢については了とされているんでしょうか、そうではないんでしょうか、お答えいただきたいと思います。

竹中国務大臣 基本姿勢とおっしゃいましたのは、要望書が求めている基本的な考え方についてどのように評価しているか、そういう御趣旨だと存じます。

 これは、それぞれの立場でいろいろな要望があると思いますが、私たちは、あくまで日本のために、日本の国民のためになる改革をしているところでございます。

 その中で、公正な競争、一般論としてはそれはそれで大変結構なことだと思いますが、その中に書かれている、完全な民有民営になるまで一切の新規業務はするなとか、そういうことについては我々は全く違う考え方もとっているわけでございますので、一般論として公正な競争は大変結構だ、しかしそれは、個別の要望に基づくのではなく、あくまで私たちの立場で日本の国民のための改革を進めるというのが基本的な評価及び立場でございます。

辻委員 この米国からの要望書の内容等についてはまた別の機会に論議させていただきたいと思いますし、竹中大臣の全体についてのお考えについてもお伺いする機会があればいいというふうに思います。

 きょうは、今述べられた中で、少なくとも競争条件の均等化、公正な競争ということを尊重すべきなんだという姿勢を、大臣、表明されたわけであります。だとすれば、言うこととやることが違ってはいけない。その点についてはどうお考えですか。

竹中国務大臣 言うこととやることは一致していなければいけないと思いますし、公正な競争をしていくことがいろいろな意味で重要だと思っております。

辻委員 これは資料でもお配りしておりますが、「郵政民営化ってそうだったんだ通信」ということで、竹中大臣とテリー伊藤さんの対談形式のチラシが作成されて、結局、本年の二月の二十日に一千五百万枚が地方紙に折り込みチラシとして配布されたという事実があります。もともとは二月の六日を基本に予定をしていたんだけれども、報道によれば、自民党の総務会の方で、まだ法案の内容が固まっていないのに勝手にそういう内容で税金を使うのは何事なんだというような意見も出て、結局二週間配布がおくれたというような事実も存在するわけであります。

 竹中大臣、今私が、言うこととやることは違ってはいけないということについて、そのとおりだというふうにおっしゃいました。競争条件の均等化、公正な競争ということが郵政民営化の問題に当たっても強くアメリカから指摘をされていて、竹中大臣もそれはそのとおりだとおっしゃっている。だとすれば、その姿勢は、いろいろなところでやはり競争の公正というものを実現していかなければいけないというふうに思うんですね。

 問題は、このチラシについて、随意契約ということが行われたということが現実のものとしてあります。これについて竹中大臣に伺いたいと思いますけれども、まず、この千五百万枚を折り込みチラシとして有限会社スリードに発注する、そして一億五千万円強の代金を支払う、そして印刷日程の制約から緊急性を要するんだということで随意契約をしたんだという説明が今までなされてきたと思いますが、この概略については、大臣、こういう認識をお持ちなんですか。いかがですか。

竹中国務大臣 私、郵政民営化を担当しておりますので、例えば、個別にどういう契約の仕方等々になっているか、どことどのような契約をするかというようなところにつきましては、大臣としてつぶさに承知しているわけではございません。先般のやりとりを聞かせていただいた範囲ではもちろん承知をしております。

辻委員 これは、民主党の方で内閣の広報室の方々からお伺いした事実とか、それ以外に寄せられている情報を合わせて掌握した事実を整理しますと、第一弾としてはテリー伊藤さんとの対談形式でチラシを出すんだ、第二弾としては村上龍さんに登場していただいて、やはり同じく千五百万枚チラシをつくって折り込みをしようというような話も出ていた、それは竹中大臣の希望で、第一弾として、第二弾として、そして第三弾としてというようなことをおっしゃっていたという情報があります。これは事実なんでしょう。いかがですか。

竹中国務大臣 第二弾、第三弾をやるというような話をしたということは、ちょっと記憶をしておりません。その対談で、テリー伊藤さんと対談をさせていただくというのは、これは大変よいのではないか、そのように思った記憶はございます。

辻委員 このチラシの作成、配布というのは、竹中大臣の肝いりというか、もちろん民営化の広報のタスクフォースというものが十月に設置をされて、そこで出てきたということではありますが、竹中大臣がこれを積極的に推進しようということでいろいろ意見を述べられたという事実があると思いますが、それは間違いないということでよろしいですよね。

竹中国務大臣 肝いりとおっしゃいましたが、これは基本的には、事務方で検討をして、事務方で案をまとめて、そして私のところにこういうことを考えているという報告があったものでございます。その報告があったときに、ついては私に出てほしいという話がありまして、それは大いにやるよ、そのように申し上げたわけでございます。

辻委員 午前中の海江田委員の質疑の中でも、事務方との連絡について岸秘書官が当たられていたということでありますが、これは再確認ですが、このチラシをめぐる事務方との交渉は岸秘書官が窓口になってやられていたということでよろしいんでしょうか。

竹中国務大臣 秘書官は私の身の回りのこと一切を、いろいろなことをやります。これは、事務、政務それぞれ分担をして、いろいろなことをやってもらっております。

 このチラシに関しましては、今申し上げましたように、まず事務方から、昨年の十二月の二十日過ぎに私の方に、こういうことを考えているという報告、ついては私に出てほしいという報告がありまして、私は喜んでやるよということを申し上げました。そしてその後、これはそういう方向で当然事務方はしっかりと対応をしてくれたと思いますが、その中で、では撮影の日時をどうするかとか、そういうことがいろいろありますけれども、そういう中で、これは秘書官を通して連絡をしたこともあったというふうに思います。

辻委員 秘書官を通しても連絡をすることがあったと思うというのは、秘書官を通さない方法で事務方と連絡をとったようなことがあったということですか。この岸秘書官以外に、別のルートで事務方と連絡をとったことがあるということでしょうか。

竹中国務大臣 これは当然、事務方、つまり準備室等々からいろいろ、会議といいますか、大臣室に相談に来たりすることもあるし、会議の時間が持てないときは秘書官を通していろいろ調整をしたり、これは日常的にすべての業務においてそういうことがございます。

辻委員 事務方と岸秘書官が交渉される、窓口にされるということもあれば、大臣室に事務方が直接やってきて大臣と接触することもあるというお答えだと思うんですね。そうすると、竹中大臣サイドの補佐する人間としては、岸秘書官が専らその任に当たっていた、こういう理解でいいんですよね。

竹中国務大臣 秘書官でございますから、それは、時間によって事務秘書官がつく場合もあれば政務秘書官がつく場合もございますけれども、秘書官が力を合わせていろいろとサポートをしてくれております。

辻委員 井上秘書官がそのサポートに当たられることもある、そういうことでしょうか。

竹中国務大臣 これは事務秘書官でございますから、きょうもしっかりとサポートをしてくれておりますが、当然そういう場合もございます。

辻委員 冒頭で申し上げましたけれども、随意契約の問題、やはりこれは注目すべき問題だろうということを指摘したわけであります。政府が支出をしていろいろな契約を結ぶ場合、種類によっていろいろ限度額は違いがありますけれども、一般には、百六十万以下の少額については随意契約も可能である、しかし、百六十万円以上の分については一般競争入札を原則とすべきなんだ、これは会計法にうたってあると思うんですね。

 この件が随意契約とされたのはどうしてなのか。その点については、竹中大臣はどういう報告を受けているんですか。そして、どういう認識を持っていますか。

竹中国務大臣 私、決裁権者ではございませんので、どういうルールになっているかということもよく存じ上げているわけではございませんが、今回の件に当たりまして、限られた予算を効率的に使い、そしてどのような広報を行ったらいいかということで、会計の担当、契約の担当の方でしかるべく対応がなされたというふうに聞いております。

辻委員 私がお尋ねしているのは、随意契約にするということについて、どういう説明を受け、どういう認識を持っていたのかというのを聞いているんですよ。だから、内容について語ってください。

竹中国務大臣 先ほども申し上げましたように、私、決裁権者ではございませんので、どのような経緯でどのようになったかということにつきましては、詳細をよく承知しておりません。

 今この件に当たって聞いているところでは、これは早急に準備する必要があったんだけれども、この種の提案は検討を重ねる過程の上でほかになかったことから、このスリード社の提案のあった企画を採用することとしたというふうに聞いております。

辻委員 一般論として、政府の支出する契約については一般競争入札が原則なんだという認識は、大臣、その当時おありだったんですか。

竹中国務大臣 一般論としては、その一般的な知識は持っておりますが、私、この契約の責任者、決裁権者ではございませんから、この契約について、どういうことであったかということは承知をしておりませんでしたし、これは事後的に今申し上げたようなことになったということを聞いたわけでございます。

辻委員 そうすると、実際の責任者というのはだれになるんですか。

林政府参考人 先般もお答えいたしましたように、契約の責任者は私でございます。

 この件につきましては、会計法上に照らしまして、随意契約と判断いたしました。

辻委員 それはどういう職務ということなんですか、最終責任者というのは。答えてください。

林政府参考人 私どもの政府広報予算を使った広報でございますので、私、政府広報室長が責任者でございます。

二階委員長 林広報室長、まだまだたびたび答弁のようですから、もっと近いところへ席を置いてください。

辻委員 随意契約ということについて、竹中大臣、一応の説明は担当者なりから受けているんじゃないんですか。何でこれは競争入札にしなかったのかとか、そういう想定問答等は受けているんではないんですか。その点はどうですか。

竹中国務大臣 この企画そのものは広報上大変重要な問題でありますから、私もみずから出演してしっかりとお訴えしたいというふうに思った大変重要な企画です。

 ただ、私は、契約の仕方そのものについて、何といいますか、意思決定をするということではございませんので、報告を受けたかどうか、全くなかったかどうかというのはちょっと今記憶しておりませんが、これは意思を持って何かを私が決定したということではございません。企画そのものは大変重要だというふうに思っておりました。

辻委員 これは、想定問答集というのが作成されたという、存在は大臣は御存じなんでしょう。御存じないんですか、どちらですか。想定問答集、随意契約についての想定問答集。

竹中国務大臣 ちょっとそれは記憶しておりません。

辻委員 これは政府広報室の山本参事官に伺いますけれども、竹中大臣にあなたが作成した想定問答集をごらんいただいたという事実があるのではないんですか。

山本政府参考人 役人でございますのでいろいろな想定問答をつくっておりますが、今の随意契約についての想定問答を私から竹中大臣に直接上げたという記憶はございません。

辻委員 竹中大臣に直接上げたということではなくて、例えば井上秘書官を通して竹中大臣の手元に届くようにあなたの側で提供したという事実があるのではないですか。

山本政府参考人 申しわけございません、ちょっと記憶にございません。済みません、ちょっと記憶が確かでございません。

辻委員 では、後でその問題について改めて伺います。

 この問題、スリード社という、これは竹中大臣の秘書官をされている岸さんとスリード社の谷部さんというのが近しい関係であるということが伝えられております。そのスリード社は、二〇〇四年の三月三十日に設立された。したがって、去年の十二月の時点ではまだ一年もたっていない、資本金三百万の有限会社なんですね。だから、そういう有限会社、まだ一年も実績のない有限会社に随意契約をする必然性があったのか、そこがまさに問題なんですよ。公正な競争を標榜している竹中大臣がそのことに目をつぶって自分の秘書官の関係会社に発注を促しているとすれば、これは重大な問題なんですよ。

 この点について事実関係を、私は昨日も一時間半ぐらいにわたって質疑をさせていただいた。その中でいろいろ矛盾が生じてきた。そして、それについて政府の方で答弁を整理するようにということで、委員長の方の指示もあって、けさその文書をいただいたんです。それを突き合わせてみると、昨日の答弁と本当に百八十度違う内容の文書になっている。何でこういう文書になっているのか、その点について具体的に伺っていきたいと思います。

 「政府答弁のくい違い」ということでパネルを作成して、私なりにまとめてみました。

 まず、本件の随意契約は一億五千万強の金額のものでありますけれども、その見積書が、いつ、谷部さん、スリード社から内閣広報室なりしかるべき機関に提出されたのかということについて、昨日の委員会での答弁では、昨年の十二月二十八日であるということでありました。しかし、本日提出の文書を見ると、二〇〇五年の一月十二日なんだというふうに時日が変わっている。

 契約することの決定日、これについては一応、昨年の十二月二十八日であるということでありましたけれども、契約する意向をいつ決めたのか、いつ通知したのかどうなのかについては、昨日は、十二月二十八日であるのかないのかもはっきりしない、二十七日以前かもしれない、こういうような答弁でありました。

 そして、そもそもの契約の締結日について、二〇〇四年十二月二十八日というのがきのうの答弁であったにもかかわらず、きょうの文書によれば、二〇〇五年の一月十二日かそれ以降だということに読める文書になっているんです。

 決裁の判こをいつ押したのかということについては、昨日の答弁では、昨年の十二月二十八日である。しかし、きょうの文書では、それはいつのことなのか、それについては触れられていないということなんです。

 このように答弁の食い違いが存在しているということについて、食い違った答弁をきのう主要にされたのは林室長です。林室長、どうしてこういう答弁の食い違いが生じたんですか、説明してください。

西川副大臣 議論をわかりやすくするために、今までの経過をお話しいたします。そこで疑問点がありましたら、ぜひやってください。(発言する者あり)

 二月上旬に効果的な広報を行うため、一月早々に印刷用紙を調達しなければならないこともありまして、今般のスリード社との契約の実質的な両者間の合意は十六年十二月二十八日に終了しているところであります。

 しかしながら、その時点で決裁に必要な正式な書類を整える作業はまだ完了していないこともありまして、決裁を終了した後に、実質的な合意のあった十二月二十八日に決裁を終了したこととしまして、日付をさかのぼって契約を締結したものであります。この契約手続につきましては、適切とは言えませんが、事務手続に日数を要したことによるものでありまして、今回に関してはやむを得ない処理と考えております。

 なお、契約の履行が先行したとしても、契約締結前に支払いを行うことはなく、実際に決裁を了して契約を締結し、さらに契約内容が履行されたことについての検査、確認により、その対価を支払ったものであります。

 契約の日付をさかのぼって契約を締結することは好ましいことではないというのは事実でありますが、それのみをもって直ちに法律に違反するものではない、こう考えております。

 以上です。(発言する者あり)

二階委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

二階委員長 速記を起こしてください。

 林広報室長。

林政府参考人 私から、これまでの経緯を整理いたしましたことにつきまして、御説明させていただきます。

 この折り込みチラシによる郵政民営化広報の経過でございますけれども、昨年十月十五日に、郵政民営化の基本方針を受けまして、国民への説明責任を果たすための効果的な広報を検討するために郵政民営化広報タスクフォースを発足したわけでございます。

 そして、十月から十一月に、タスクフォースのメンバーが手分けをいたしまして民間有識者のアドバイスを求めた。その有識者の中に、有限会社スリードの代表取締役である谷部氏もいたわけでございます。

 十二月十五日に、谷部氏から折り込みチラシに関する企画案が内閣官房広報室の齋藤参事官経由で提出されました。齋藤参事官から他のタスクフォースのメンバーにも該当企画案が配付されました。

 それから、タスクフォースのメンバーで谷部氏にヒアリングをし、谷部氏より費用は約一億五千万円という話も参りまして、タスクフォースのメンバーと谷部氏とで打ち合わせを行ったわけでございます。

 それから、ここでございますが、そして十二月二十八日に、それまでの打ち合わせ等を踏まえまして、私、内閣政府広報室長がスリード社と契約を結ぶことを決定いたしました。そして同日、タスクフォースのメンバーと谷部氏とで打ち合わせをしたわけでございます。

 そして、そのときに政府広報室の山本参事官が谷部氏に対しまして契約を決定したということを伝えまして、内閣府とスリード社との間で実質的な契約合意に至ったわけでございます。

 これは、郵政民営化関連法案の国会審議に先立つ本年二月上旬までに広報を実施するために、一月六日までに用紙の手配などを実施する必要があったわけでございます。

 それで、一月十二日に、スリード社から決裁文書に必要な見積書が提出されました。その後、見積書の内容について詰めた後、実質的な契約合意に至ったときに、昨年十二月二十八日付の決裁文書を作成したわけでございます。

 以上でございます。

辻委員 質問に答弁者がきちっと、私は、きのう食い違いの答弁をした林室長に尋ねているんですよ。林さんがやはり答えるべきだったんですよ。だから、そういう議事の混乱を生ずるような妨害行為はやめるようにしていただきたい。

 それで、まず林さん、この見積書の提出日について、十二月二十八日に正規の見積書を受け取っていたんだ、それに類する書類をもしかしたらそれ以前にも受け取っていたかもしれないというような答弁だったんですよ、きのう。きょうのこの文書を見ると、ことしになって、一月十二日に見積書を受け取ったんだ。明らかに食い違っているじゃないですか。

 きのうの発言は何なんですか。何でそういう虚偽の事実を答弁したんですか。その理由について答えてください。間違いをちゃんと撤回しなさいよ。

林政府参考人 今の件、詳しく申したつもりでございますけれども、エッセンスを申し上げますと、十二月二十八日に、それまでの打ち合わせ等を踏まえまして、内閣府政府広報室の私、室長としまして、スリード社と契約を結ぶことを決定したわけでございます。そして、それをその日にスリード社に伝えたということを先ほど申し上げまして、ここで実質的な契約合意ができたわけでございます。

 そして、一月十二日にスリード社から決裁文書に必要な見積書が提出されまして、その後、その内容につきまして詰めました後、実質的な契約合意に至った十二月二十八日付の決裁文書を作成したということでございます。

辻委員 きのうの議事の未定稿がありますよ。見積書は十二月二十八日に受け取って、それで検討したということをきのう述べているじゃないですか。今の答弁だったら、ことしの一月十二日なんですよ。全く事実が違うじゃないですか。違うことをちゃんと認めた上で、なぜ違うのか、これについてお答えくださいよ。これでは議論ができないですよ。

林政府参考人 先ほどから申しておりますように、一月十二日にスリード社から決裁文書に必要な書類として見積書が提出されました。その後、見積書の内容を詰めて、実質的な契約合意に至った日にちであります昨年十二月二十八日付の決裁文書を作成したわけでございます。(発言する者あり)

二階委員長 速記をとめて。

    〔速記中止〕

二階委員長 では、速記を起こしてください。

 林大臣官房政府広報室長、再答弁。

林政府参考人 先ほど御説明しましたように、十二月二十八日には実質的な合意ができていたということについて、私は、それまでに具体的な事業の内容それから金額一億五千万円ということについて説明したつもりでございました。これにつきまして、昨日までコメントしておったつもりでございますけれども、誤解があったといたしましたら、大変申しわけない、謹んでおわび申し上げます。

辻委員 誤解なんかじゃないですよ。

 二回目の、これは未定稿の六ページで、「十二月二十八日に契約いたしております。」というふうに林政府参考人がお答えになって、それについて、十二月二十八日付の見積書が私の手元にありますよ、これを指摘したところ、林政府参考人は、最終的な正式な見積もりだ、それについては企画内容と並行して私どもは打ち合わせをしたんだ、こう言っているんですよ。

 だから、十二月二十八日に手元に見積書があったということをきのうはっきりと答弁している。ところが、きょうの文書では、ことしの一月十二日になっている。これは明らかに事実が違いますよ。この点、やはり撤回を求めたいというふうに思います。(発言する者あり)

二階委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

二階委員長 それでは、速記を起こしてください。

 辻惠君。

辻委員 先ほど私が読み上げましたように、十二月二十八日に契約をしたというふうにおっしゃっていて、これは林政府参考人が言っております。その時点で見積書が手元にあって、その内容について打ち合わせをしたと言っているんですよ。

 ですから、その点について明らかに違うということと、もし今の一月十二日だという説明であるとするならば、十二月二十八日に実質的な契約の合意をしたと言っているんですよ。では、これは見積書もなく実質的な契約の合意をしたというんですか。どういうことですか、これは。(発言する者あり)

二階委員長 御静粛に願います。

林政府参考人 まず、一つ申し上げます。昨日の答弁と本日提出いたしました資料の間の食い違いが指摘されておるわけでございますけれども、そのような誤解が生じましたことにつきまして、おわび申し上げます。本日の答弁が正確なものでございます。

辻委員 もう少し具体的に伺っていきますよ。

 契約書の最終責任者だというふうに林室長はおっしゃいましたよね。きょうのこの文書では、十二月二十八日に実質的な契約の合意をしたんだ、こうおっしゃっているわけですよ。契約をすることを決定したのは十二月二十八日なんだ、こういうふうにおっしゃっているんですね。そうすると、十二月二十八日の時点で緊急性をどのように認識していたんですか。この点はいかがですか。

林政府参考人 今の点についてお答えいたします。

 緊急性についてでございますが、先ほど申し上げた中にもあったつもりでございますが、郵政民営化関連法案の国会審議に先立つ本年二月上旬までに広報を実施するためには、一月六日までに用紙の手配などを実施する必要があったというわけでございます。

辻委員 一月六日までに用紙の手配が必要だという話は、いつ、だれから来たんですか。

林政府参考人 先ほど申しましたように、十二月二十八日の前に何回か打ち合わせをしております。それまでの打ち合わせ等を踏まえまして、私が契約を結ぶことを決定したわけでございます。

辻委員 質問に答えていませんよ。

 一月六日までに紙の手配をしなければいけないということで、十二月二十八日に緊急に随意契約をしたんだ、こういう説明をされているわけですよ。そうすると、一月六日に紙の手配をしなければ間に合わないんだという情報は、いつ、だれからもたらされたんですか。このことを聞いているんですよ。それにしっかりと答えてください。

林政府参考人 先ほどお話しいたしましたように、十二月十五日にスリード社の谷部氏から折り込みチラシに関する企画が参ったわけでございます。その後、谷部氏とタスクフォースの打ち合わせ等がございまして、谷部氏からの話として、一月六日までに用紙の手配をしないと間に合わないというようなことは、その中であったものと記憶しております。

辻委員 ちょっと再確認ですが、谷部氏からの一月六日までに手配をしなければいけないという話は、いつあなたのところに届いたんですか、政府に届いたんですか。

林政府参考人 先ほども申しましたように、十二月十五日、企画案が提出された後、タスクフォースのメンバーと打ち合わせ等をしております。その結果として、その中で伝えられたものということでございます。

辻委員 それは十二月二十八日よりも前、十二月二十七日以前に、タスクフォースの会議で紙の手配をしなければ間に合わないという話が出たということですか。それは谷部さんからそういう話がもたらされた、こういう理解でいいんですか。いかがですか。

林政府参考人 十二月二十八日までに何度か打ち合わせた中の情報の一つと理解しております。

辻委員 民主党にいろいろな情報が寄せられております。その中で明らかになっている事実があります。

 それは、このスリード社の谷部さんが羽村参事官に十二月の二十八日の午前七時七分にメールを送っている。そのメールについて、そのメールの内容について、用紙その他原材料の手配が非常にタイトであるというメールになっているんです。この点について御配慮いただきたいと。

 つまり、十二月二十八日の午前七時七分のメールで初めて政府には知らされているんですよ。だから、今、林室長が答えたのは全く事実と違う。随意契約の要件を欠いているにもかかわらず、十二月二十八日に契約を、しゃにむに進んだということがこの点で明らかになっているわけですよ。

 この事実について否定できないでしょう。いかがですか、林室長。

林政府参考人 お答えいたします。

 今の御質問のことに関しましては承知いたしておりませんけれども、そういう、例えば一月六日までに用紙の手配が必要というようなことに関しましては、今言いましたような打ち合わせ、いろいろな機会があったと思いますので、そういう中で述べられたものと私は理解しております。

辻委員 羽村参事官に伺います。

 十二月二十八日に谷部さんから今私が紹介したような趣旨のメールが届いたという事実がありますね。いかがですか。

羽村政府参考人 とっさのお尋ねですので、記憶に今のところございません。

辻委員 齋藤参事官にCCで送られていますが、齋藤参事官、この点確認できますか。

齋藤政府参考人 お答え申し上げます。(発言する者あり)

二階委員長 静粛に願います。

齋藤政府参考人 いろいろなメールを受け取っておりますので、具体的なものとしては記憶にございません。

辻委員 羽村参事官、そして齋藤参事官、これは事実問題ですから、これはきちっと調査をして委員会に報告することを求めます。

 委員長、これを確認いただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

二階委員長 後ほど理事会で御相談をいたします。

辻委員 山本参事官に伺いますけれども、羽村参事官から、今の谷部さんのメールが転送で、十二月二十八日の午後十二時三十二分に山本参事官のところに送られてきているという事実について、これは確認できますか。いかがですか。

山本政府参考人 申しわけありませんが、記憶にございません。

辻委員 この点についても、山本参事官、事実の確認を求めます。

 その点、委員会として、事実の確認の御手配をいただきたいと思います。委員長、お願いいたします。

二階委員長 後に理事会で協議をいたします。

 質問を続行してください。

辻委員 山本参事官、昨日から一貫して、記憶にない記憶にないということの答弁の連続であります。これは、審議はきょうに限らないわけでありますから、記憶を喚起して、きちっと整理をして、今後の審議の中できちっとお答えをいただきたい、このことを申し上げておきたいと思います。

 竹中大臣に伺いますけれども、この羽村参事官から山本参事官に対するメールの中で、岸秘書官と羽村さんは非常に相談をしているということを述べております。そして、大臣の意向として、一月六日に紙の手配ができないというんだったら随意契約でやれというふうに大臣の意向が述べられたということを、これは谷部さんのメールの中で指摘されているんですが、大臣、この点についてもう一度、そういう事実の指摘を受けて、記憶を喚起して、その点について事実確認をいただきたいと思います。いかがですか。

竹中国務大臣 今何か紹介していただいたもの、ちょっと私には中身はよくわかりませんが、そういう細かいことについて私が指示をしたというような覚えはございません。

辻委員 このメールについては、竹中大臣、ごらんいただいてもいいんですよ。ですから、この問題についても、事実問題として、今後、竹中大臣、もう一度、きちっと記憶を喚起して、まともにお答えいただきたいということを申し上げておきたいというふうに思います。

 先ほどからの経緯をお聞きになって、これは小泉総理にお伺いしたいというふうに思いますけれども、十二月の二十八日に実質的な契約の合意ができたと言っているんですが、随意契約を結ぶに当たっては、代金を幾らにするのかとか、契約の内容を詰めないと実質的な合意が成立しないんですよね。ところが、見積書は翌年の一月十二日なんだというような答弁が出ております。

 こういう事態について、総理としては、これは非常に不透明だというふうに私は思うんですが、どうお考えでしょうか。

小泉内閣総理大臣 私は、きのうだれから電話があったことまで忘れちゃう方ですから、十二月、去年の話なんてほとんど覚えていません。覚えていない方が多いですね。また、だれがどう契約したとか何かというのは、私、関与したことありません。適正にやっていただければいい、その指示だけです。

辻委員 記憶にない段階でどうのこうの言っているんじゃないんですよ。それが仮に事実だとすれば極めて大きな問題じゃないですか。その点はやはり、随意契約は、例外的に、一般競争入札の例外として、お手盛りを許さないという趣旨で、これは会計法二十九条の三で規定されているわけですよ。そういう趣旨からすれば、そういうあいまいな事実が仮に事実だとすれば大きな問題じゃないですか。それについての意見を伺っているんですよ。その点いかがですか。

小泉内閣総理大臣 今初めて伺った話ですし、事実かどうかも私はわかりません。

辻委員 事実であるとすればということでお伺いしているわけでありますから、そういう不誠実な答弁というのは、そもそも、今まで一貫して、小泉首相、木で鼻をくくったような答弁の繰り返しです。同じようなことをされるというのは極めて遺憾である。この郵政民営化法案を本当に国民の皆さんにしっかりと説明する意欲と見識、責任を持っているかどうか極めて疑わしいというふうに言わざるを得ません。強くこれは弾劾をしておきたいというふうに思います。

 きょう伺った問題については、多々、記憶を喚起してもらって、事実を確かめていく、重要な問題でありますから、今後の委員会でさらに審議を続行するということを申し上げて、私の質問を終わります。

二階委員長 次に、安住淳君。

安住委員 総理、連日御苦労さまです。

 きょう、私は、一時間十分質問させていただくことになりますが、六月三日の総理が最初に出ていらっしゃった委員会での質疑、それから二週間のこの委員会での質疑の中でさまざまな問題が出てまいりましたので、中間的総括という意味合いでございますから、そのことを含めて、法案の基本的な考え方や法案の問題点について質疑をさせていただきたいというふうに思っております。後でいろいろわかりやすい資料を出しながら説明しますので、よろしくお願いをしたいと思います。

 総理、私も実は、中央省庁等改革基本法の改正から民営化、今回の法案まで、総務委員会にずっとおりまして、郵政の公社化も含めて、当時は筆頭理事として質疑をしてまいりました。そんな中で、今回、こういう民営化法案を迎えまして、私はこの委員会には入っておりませんけれども、質疑をずっと、議事録等を見せてもらって、一言感想を言わせてもらうと、こんなに与野党ともに疑問やクレームのつく法案というのは珍しいな、つまり、筋の悪いということは、ちょっと国民の皆さんにはわかりにくいかもしれませんけれども、余りできのいい法案でないなという感じがしております。

 総理は、何かマスコミの皆さんへの会見では、こんなすばらしい法案はないということを連日言って、修正しろしろの与党の大合唱にもかかわらず、一切修正のつもりはない、世の中にこんなすばらしい法案はないと言わんばかりでございますが、私はちょっとそういう感覚ではないんですね。

 総理は今でも、この法案はよくできた法案だと思っていらっしゃいますか。

小泉内閣総理大臣 与党の自民党からも反対、野党の民主党も反対、共産党も反対、社民党も反対、そういう中で、この郵便局の重要性を認識しながら、民間にできることは民間にということを考えた案でありますので、よく多くの意見を取り入れながらできたよい法案だなと思っております。

安住委員 普通はここで与党から拍手が来るんですけれども、全く拍手が来ません。山崎さんだけ拍手していますけれども、山崎先生も当選したてで、感覚的にまだついてこられないところがあるかもしれませんけれども。

 総理、この問題を、議事録をずっと私は読みました。多分総理は読んでいらっしゃいませんよね。総理、議事録をずっと読まれましたですか、この法案の質疑が行われている、この経緯でございますが、いかがですか。

小泉内閣総理大臣 全部は読んでおりませんが、人によってはよく読んでおります。

安住委員 とにかく、いつも、質疑をさせてもらうとこの大ざっぱなやり方に負けてしまいますので、きょうは少し詰めた話をしたいと思います。

 結局、法案を読みますと、大別すると二つの問題が、総理、私はあると思うんですよ。

 一つは、やはり基本の考えの問題。これは結局、三十三条の六号に代表される問題です。今ここにお示しをさせてもらいましたけれども、つまり、中央省庁等改革基本法三十三条六号には、民営化等の見直しはしないというふうに書いてあるわけです。普通、国民の皆さん、これは常識的に考えたら、今回郵政民営化法案が出てきているわけですから、出てきているのにこの法律は残るわけですよ、これはおかしく思うのが、私は、中学生や小学生の皆さんが思ったって当然だと思うんですよ。

 普通は、民営化法案を出すのであれば、これはやはり改正するのが当たり前のやり方だと私は思うんですよね、総理。なぜこれは改正しなかったんですか。削除するのが普通じゃないですか。いかがでございますか。

小泉内閣総理大臣 私は、できるだけわかりやすく答弁しているんですよ。郵政公社にするまでは民営化を行わないという、そういう議論があったということは承知している、これは郵政公社ができるまでのことである。そして、郵政公社を法案提出した際にも、この議論が出て、私、答弁も、私の答弁も調べてみましたよ。きちんとしたいい答弁でしたよ。読みましょうか。

 私は、わかりやすく、もしそこまで行わないとしたら、一つの法律ができたら、ずっと改革できないじゃないですか。もう郵政公社はいい、そして、あのときは民営化を行わないという規定があったからこの民営化法案を出すのはけしからぬという議論はわかりますよ、議論は。しかし、そういうことを前提に民営化の法案を出しているんだから、その時点でもう解決している。詳しく言えというんだったら、ちゃんと議事録を読みましょうか。それは法制局にも確かめて出しているんです。

 私は、余り役人的な答弁はしたくないんです。わかりやすく、一般の人が聞いてもわかりやすい答弁をしているんです。だから、できるだけ、議事録がああだこうだ、言葉がどうだこうだという、言葉じりをとらえるような答弁はしたくないんです。

 だから、今、郵政民営化を行わないという議論が公社のときにあったということは承知している、しかし、そういう抵抗がある中で民営化法案を出しているんだ、だから、これでやっていけば今までの問題も解決するじゃないか。ところが、安住さん初め民主党は、これはけしからぬと。まず、民営化を行わないという法案、これを削除しろという議論も、反対する立場から見ればわかります。しかしながら、それよりも、法制局等によく問い合わせて、その問題は既に解決しているというところで私は答弁しているんです。

安住委員 私も総理とは何度か質疑をしましたので、多分総理はそう答えるだろうと思っていました。そう答えると思っていましたから、では、次の質問を聞きます。

 政治の話じゃないんです。私、総理、法律の話をしますから、法律的に答えてください、日本国の総理大臣として。

 それでは、総理、今の話の延長で結構でしょう。公社化までだって言っているんでしょう。では、総理、中央省庁等改革基本法、これは、法律的にいって、一府十二省庁ができましたよね、できるまでの法律ですか、それとも、それが設置された後にその体制を維持することも縛る法律ですか、どっちですか。いかがですか。

小泉内閣総理大臣 法律的にはともかく、政治論として、政治論として、私は、今までできた法律を政治的に改革しようという場合には、多くの方の議論、国会の議論を経てなされるべきだと。法律論でどうかといったら、専門家に聞いた方がいいですよ。

安住委員 いやいや、総理。総理は政治論や大ざっぱな話にいつも持っていくんですよ。しかし、私はそうじゃないんですよ。いいですか、総理。これは法律の解釈論だから、法律の解釈論として、実は学者も含めて議論があるんですよ。わかりますか。つまり、一言で……(発言する者あり)山崎さん、政府の言うことを聞いている法制局長官なんか今要りません。内閣の言うことをそのままただ言っているだけなんですよ。

 私の言っていることはそんなに難しい話じゃないんですよ。いいですか。一府十二省庁ができましたよね、総理。つまり、この基本法はそのつくるまでのことを命じているんですか、それとも、つくってできた十二省庁の体制を維持するところまで縛るんですか。あえてもっと言えば、その射程距離ですよ。どこまでを言っているんですか。法律的にはそこを聞いているんです。私はその後政治論のことを言いますから。

小泉内閣総理大臣 法律的にどうだこうだといえば、法制局長官が見えているんですから、それを聞いてくださいよ。

 私は総理大臣です。政治家同士の話をしようというんです。法律はどうかというのは専門的に聞いてくださいよ、専門家に。政治論として、一つできた法律について、これが続くかどうか、停止した方がいいか、改正した方がいいかというのは政治論でしょう。そう思いませんか、政治家同士の議論で。総理大臣を呼んでこういう議論をする場合に、わかりやすく質疑応答をした方がいいじゃないですか。(発言する者あり)

二階委員長 御静粛に願います。

安住委員 ちょっと静かにしてください。(発言する者あり)

二階委員長 御静粛に。

安住委員 いや、総理、技術的な話を聞いているんじゃないんですよ。私は、基本法をどこまで縛るのかというのは極めて政治家としての基本的な知識だと思っているから言っているんですよ。

 つまり、これは、総理、あなたは気色ばんでいらっしゃるけれども、これをちゃんとわからなければ、今度の、法律の中に出てくる、いいですか、皆さん、民営化等の見直しを行わないこととするということを本当は外すのか外さないかという議論にやはりいくんですよ。私はだから申し上げているんですよ、総理。そのことも全部丸投げしたら、総理大臣、それは政治家として私はちょっと首をひねらざるを得ないんですよ。

 なぜかというと、秘書官は何も言わないでください。総理、私の考え方で二つの道を言いますから、一つだけどっちか言ってください。もしこれが一府十二省庁ができるまでだとすれば、総理、これは私は改正しなくていいと思うんですよ。(発言する者あり)山崎さんでさえそうだと言っているんですから。改正しなくていいんだ。

 何でかというと、つまり、国家行政組織法を改正すれば多分済むんじゃないですか。総理、国家行政組織法を改正すれば多分民営化法を出せるんですよ。しかし、一府十二省庁ができまして、もしその後も縛るとなると、やはりこれを変えるのが、これは政府としては筋なんですよ、総理。いかがですか。

小泉内閣総理大臣 私は、そういう質問に対して法律的に間違いないように答弁してもいいけれども、これはわかりにくいんですよ。法律的にどう解釈するかというのは、法制局長官が見えていますから、それは法律の専門家に聞いてもらえばいい。総理大臣が出席して国会議員が質問している。私は、できるだけ政治論で、どういう考え方かというのを国民にわかりやすく説明したいと思っているんです。

 今、詳しくやれと言いますから、再度答弁しますよ。私は、こうやって読み上げて、法律論に間違いないように、一字一句言葉じりをとらえられないように答弁するのは、本当は私の好きなところじゃないんだ。しかし、あえて言うから答弁しますよ。

 中央省庁等改革基本法には種々の規定があり、必ずしも一府十二省体制の実現によってすべての規定が効力を失ったと理解すべきものではないと考えるが、郵政事業の民営化に関する基本法第三十三条第一項第六号の規定については、公社化までのことを規定するものであって、公社の発足をもってその規定としての役割を終えており、公社化後のあり方を拘束するものではないと承知している。

 これが正確な答弁なんだけれども、これを聞いてみて、一般国民がわかりやすいなと思ったと思いますか。(安住委員「いや、思いませんよ」と呼ぶ)思わないでしょう。こういう法律的な議論より、政治家同士の議論をするのが、総理大臣が出席して国民から選ばれた政治家が質問する委員会のあり方だと私は思っているから、あえてこういう法律論に間違いないような答弁をして果たしていいかどうか、それもよく考えていただきたいと思いますよ。

安住委員 総理、私はこれは法律の項目を聞いているんじゃないんですよ。つまり、法律というか政府としての連続性といいますか、法律の言葉には連続性なんて余りないんですが、これは継続性からいってどうなるのか疑問を感じているからなんですよ、総理。

 私は……(発言する者あり)いや、わかりやすく言うために私は総理にちょっと法律論を超えて今お話ししているんです。(発言する者あり)それがいいって、山崎さん、静かにしてください。(発言する者あり)いやいや、激励していないでしょう、全然。静かにしてくださいよ。ちょっと静かにさせてください。何を言っているんですか、本当にもう。

 総理、話に戻ります、私も時間がないから。総理、私は何でこのことにこだわっているかといいますと、結局、これはまた私の話だけで、郵政の準備室長の渡辺さんなんかには確認しているからあえてここで答弁を求めませんが、実はこの中に私書いたんだけれども、もう一つフリップを上げてください。つまり、総理はこうおっしゃっているんでしょう、あくまで公社化が実現するまでのものだと。これは国民の皆さんに申し上げます。

 もう一つ、二つ目が大事なんですよ。後法は前法を破るということを言っているんですよ、要するに。平たく言えば。そうですね。つまり、前の法律を、憲法規範にかかわるものでない限りは、後ろから追いかけてきた法案がオーバーランする場合はこれは認められるということを解釈としてとっているから、つまり今回基本法をつくったという話になるんじゃないですか。そういうことじゃないですか。官房長官、いかがですか。官房長官、質問通告していますよね。うんじゃなくて、答えてくださいよ。

細田国務大臣 まず、後法は前法を廃すという言葉、これは法学部に行った者ならだれでも聞く、教授から聞く初歩的な言葉でございますが、これは、同じ形式的効力を持つ二つの法形式相互間で、その内容が矛盾するときは、時間的に後に成立したものが優先するという意味の法諺、こういうことで、これは法律学辞典から引用した言葉でございます。

安住委員 しかし、ここで問題なのが、どこまで、最初につくった法案の射程距離というか、そこが全くないまま、いきなり新しい法案を次々つくって前の法案をつぶすというのは、これは法治国家としては実は余りやってはよろしからないことだということがあるんですよ、逆に言えば。

 今回、総理、実は私は三年前に、公社化法案のときは、今の中井先生と同じ立場で筆頭理事でやりましたから、あのときもさんざんっぱらこの話で議論しました。私はしかし、こう思っているんですよ。三年前の空気はどうだったかというと、実は、総理はもうお忘れかもしれませんが、民営化のための一里塚という話を本会議でするんです。そうでしたね。ところが、総理は委員会に戻ってきてから、あのときは八十時間やりましたですか、その間に二十時間ぐらい総理にお出ましいただいたんですが、その間に一里塚のイの字も言わなかったんです。

 この間、野田さんとの話を聞いていたら、政治家の我慢のしどころだと思ったから我慢していたというお話でしょう。だから言わなかったというんですね、総理。こういう話なら答弁しやすいでしょう、総理。いかがですか。

小泉内閣総理大臣 郵政公社化は郵政民営化の一里塚だというような趣旨のことは、はっきり答弁したことは覚えております。その後、どこで言ったか言わないかというのは、率直に言って覚えていないんです。(安住委員「言っていないんでしょう」と呼ぶ)言わなくても、一度言えば十分でしょう。

安住委員 いや、参っちゃいますね、この総理には本当に。いや、総理、そういう話を私は聞いているんじゃないんですよ。

 いいですか、総理。総理の気持ちとしては、民営化したかったのはわかりますから。総理は前からそれを言っているんですから。それしかないというぐらい言っているんですから。

 ところが、私が言っているのは、これは、法律的に言うとまだ三年前ですから。それで、公社がスタートしてからまだ二年なんですよ、総理。その三年前の雰囲気をいうと、やはり中期経営計画が過ぎる四年の間は、生田総裁のもとにいろいろな負の遺産を解消して、公社を、いわば親方日の丸と言ったら恐縮ですけれども、そういう中から、企業会計基準も入れまして、かなりの努力をしようということでやったんですよ、総理。それはお認めになりますか。そして、黒字にもなって、ずっと赤字だったんですから、郵便事業も黒字にもなって、真っ向サービスという話で生田さんも頑張って、そういう意味では、午前中からのお話にもあるように、公社というのは非常に順調に来ているというのが今の現状の二年なんですよ。

 そこで、二年の中で、総理は、前の法律を、余りできのよくない後の法律でジャンプして消そうということでしょう。私は、これはどうかなと思うんですよね、総理。いかがですか。

小泉内閣総理大臣 それは、郵政公社化法を出したときも、推進論者、反対論者双方から批判を受けたんですよ。反対論者は、もともと国営でいいのに何で公社にするのか、推進論者は、郵政公社は中途半端だと、両方から批判を受けたんです。しかし、どうにかこうにか皆さんの御理解を得て成立させた。

 その後、私もこの郵政公社よりも民営化の方がいいと思っていましたから、やはり手順を踏まなきゃいかぬな。私が総理大臣になって、民営化は絶対しちゃいかぬという自民党の決議があって、そして、与野党、郵政民営化なんかとんでもないという議論がある中で、まず外堀、内堀を埋めていかなきゃなかなか民営化の本丸攻めはできないな、時間をかけて、段階を踏んで、まずは国営の旧郵政省のままよりは公社化の方がかなり進んだ法案であろう、しかし、これは中途半端であるという批判があるから、そうだな、公社よりももっと大胆な民営化の方に持っていこうという我慢の四年間だったんですよ。ようやく民営化法案を、多くの反対、抵抗がある中で提出しているんです。

 そういう中で、私は、公社よりもできるだけ早く民営化した方がいいという推進論者もたくさんいますので、よく聞いてみました。郵政公社は確かに四年間でありますけれども、この間、二〇〇七年四月からやろうと思えば民営化はできる、民営化は早ければ早いほどいいという意見もありましたので、私も多くの方々の意見を聞いて、決して二〇〇七年四月というのは早くはない、私は二十年前からもっとやれと言っていたんですから、それに比べれば決して二〇〇七年四月に民営化するのは早いとは思っていない、そういうことなんです。

安住委員 多分そういう答弁だろうなと思っていましたので、ちょっと別の形で攻めたいと思います。

 ところで総理、他党のことで大変恐縮ですが、総理は、総裁の任期はいつ終わるんですか。

小泉内閣総理大臣 たしか九月だっけ、来年の。九月。(発言する者あり)九月ね。

 自民党総裁の任期は、来年の九月です。それまでは、総理大臣の職責を果たすように全力を尽くしていかなきゃならないと思っております。

安住委員 今、山崎筆頭理事が隣で、その後も続けると思うよと言ったんですけれども、そんな気持ちはあるんですか。(発言する者あり)いや、今言ったでしょう。ちょっと聞いてくださいよ。(発言する者あり)いや、だってここで今大声で、私の隣で大声で言ったんですよ。だから、総理、答弁してくださいよ。

小泉内閣総理大臣 それは、今、山崎拓さんがどう言ったか知りませんけれども……(安住委員「聞いていたでしょう」と呼ぶ)いや、聞こえなかったけれども、私は、来年の九月、総裁の任期が切れれば、もう即座に総理大臣をやめたいですよ。

安住委員 つまり、二〇〇六年の九月で任期が切れるわけですよね。総理、やはり郵政民営化は、この総裁任期が、つまりあなた御自身の任期がこの法案を急がせたということは事実なんじゃないですか。これがあるからやはりやられているんでしょう。

小泉内閣総理大臣 それもありますね。

 しかし、私はもっと早くやりたかったんですけれども、私は総理大臣じゃなかったから、みんなの反対につぶされちゃったんですよ。しかし、私が総理大臣でなかったら、この法案は決して国会に出ていなかったでしょうね。

 だから、私が総理大臣をやっている間に何とか成立させたいということで今頑張っているんですよ。

安住委員 多分そうだろうと思いますが、逆に言いますと、最初に総理が、非常に不愉快な思いをしているわけですよ、私がまじめな法律論を言ったら。しかし、そこでいきなり政治の話になったら、もう喜んでこうやって答弁している。対照的ですよね。だから、そこに安定感がない人だなと昔から私は思っていたんです。

 実は、何を言いたいかというと、公社ができましてわずか二年、つまり、ここでいきなり民営化という話は、実は公社発足から一年後にもう総理は出すんですよ。ということは、これは、竹中さんなんかが政府の宣伝と称して、国民の皆さんに向かって、また自民党に向かって、予防措置だ、今からどんどん郵政公社は悪くなるから今のうちから早く民営化した方がいいなんて、これは、理屈は後から貨車で来るという話なんですよ。

 本当は、総理の任期がもう終わりで、そして七年にはもう無理やり民営化しちゃう、そのために、機能を考えたら、商業の部分と金融の部分を分けて、そしていわば四分社化をして、それでさらに言えば、総理、実は一番のみそは、不可逆性を一番追求しているのはあなたですよね、とにかく戻れないようにしようと。そういうことじゃないですか、今度の法律は。

小泉内閣総理大臣 それもありますね。

 私が総理大臣をやめた後、また抵抗勢力が実権を持って民営化を阻止しようということがないように、この改革路線を軌道に乗せて、この改革路線を逆戻りさすようなそういう動きは何としてでも私が総理大臣在任中に封じておかなきゃいかぬ、改革路線を軌道に乗せておこうという気持ちもあります。

安住委員 私、今ようやく本音を聞けてよかったなと思うんですよ。つまり、法案が少々粗っぽくて雑でも、とにかく任期の間に何とか道筋をつけて、この法案を通してしまおうと。

 だから、総理、二〇〇七年のシステム統合についてこれだけ郵政公社内で疑問があったにもかかわらず押し切ったのも、実は多分そういうことなんでしょう。(発言する者あり)いや、できるじゃない。だって、やればできる、魔法の合い言葉と言ったのは総理じゃないですか。そうやって郵政公社に無理やり言ったんでしょう。いかがですか。

小泉内閣総理大臣 やればできる、魔法の合い言葉というのは、済美高校の校歌なんですよ。私が言ったことは事実でありますけれども、高校野球の決勝戦で、出たでしょう、その前の夏の休みで、私は高校野球を見るのが好きだから、テレビで見ていたんです。そうしたら、済美高校が勝ったときに、校歌で、やればできるは魔法の合い言葉、ああ、これはいい言葉だ、感動したんですよ。それで、私は、ある機会にその言葉を利用させていただいたんです。

 それで、このシステムの問題も、私は別に独断専行とか恣意的にやっているんじゃないんです。当初は、これはできない、二〇〇七年四月には間に合わないという議論もありました。それも承知しております。そういうところで、郵政公社の生田総裁とも話しまして、システムというのは、どの程度までのシステムならできる、この程度ならできる、ここまでいったらできない、いろいろあると。専門家の意見を聞いてみよう、専門家の意見ができるんならいいと。そういうことで、私は、それでは、できるということならやりましょう、できないんだったらできないと。

 極めて私は公平に決めたんです。これは生田総裁に聞いていただいてもわかりますよ。生田総裁との話し合いで、両方納得の上で、では、我々はこのシステムの問題について専門家ではないから、専門的な知識のある方々と相談して、できるんだったらやりましょうということなんです。

安住委員 総理、私はこう思うんですよ。来年の九月におやめになりますよね。これはさっきの……(発言する者あり)わからないという話もありますけれども、もうやめるとおっしゃっているんですから。それで、やめて、次の内閣や例えば次の政権が、多分民主党になると思いますけれども……(発言する者あり)だれかわかりません、それは。これは、やはり総理のやった四分社化は筋が悪いから、わずか一年だけれども公社に戻そう、これは法律をつくって出して成立したら、また公社に戻していいということですね、総理。いかがですか。

小泉内閣総理大臣 どういう法律をつくろうかというのは国会ですから、そのときの内閣なり国会が判断することだと思っております。

安住委員 つまり、私は、我が国ではやはり連続性というのを重視しながら判例等を積み上げてきて、また組織形態も、朝令暮改という言葉を我が党の小沢鋭仁委員も使いましたけれども、そうではなくて、私は何も、先々、未来永劫ずっと公社のままなんて思っている方もいらっしゃらないと思いますよ。いろいろな経営形態の中で、何年かしてからそれはまた公社の皆さん考えてみればいい。

 しかし、これは、四年間の中期計画はやはりしっかりやって、その結果を出した上でその後の経営形態を考えようというのが筋じゃないですか。自分の任期が終わるから、わらわらわらわら持ってきて、役人を百八人も集めて郵政準備室をつくって、A、B、C、Dと班をつくって法律までつくる。しかし、ここでもクレームがさんざんついている。自分の任期と自分の執念のためにそれでもやる。そういう話なんですよ。

 しかし、先ほど言ったように、前の法を後の法が破ることはいいという話ですから、それは本当は余りやっては、私はどうかなと思うんだけれども、総理自身がそれを破ったんだから、次に出てくる人がそうでもこれは仕方ないねという話でございます。総理、最後にいいですか、それで。

小泉内閣総理大臣 私は、今、可能性ということを聞かれたから、可能性ということであれば、一%の可能性でもあると言わざるを得ないんです。そうでしょう。そういう可能性の議論からいえば、それは否定できない。

 しかしながら、現実問題として、今多くの国民が現在の体制のままでいいとは思っていない。そして、この民営化法案が成立すれば、郵政公社の職員も民営化の準備を始めます。民間の企業も二〇〇七年四月から民営化に対応できるような体制を整備するでしょう。そういう中で、次の、私の後の政権が、やはり国営がいいということで国民の支持を得られるとは思っていないんです。そういう抵抗勢力が政権の座に着くとは思えない。

安住委員 余りこの話、この先を言ってもあれなので、では、最後に質問しますが、総理、要するにこういうことですか。

 総理は、みずからの後継、次の総理大臣や後継総裁は郵政民営化を推進してくれるというのは絶対条件なんですか。

小泉内閣総理大臣 私は、今、総理大臣の職責を果たすことに全力投球なんですよ。私がやめた後を指名するなんという気持ちは持っていないんです。私は、総理大臣の任期がある限りはこの責任を果たそうということで、毎日毎日一生懸命です。

 でありますから、後のことについてまで今言う立場ではございませんけれども、私が総理大臣在任中に実現してきた改革路線、これを軌道に乗せる方になってもらいたいという希望は持っております。

安住委員 わかりました。ちょっと話をかえます。

 総理、六月三日の質疑の中で、公社になってから郵便局を全然見たことがないんだと、総理に在任してからも。つまり、郵便局がどうなって変わったか、その目でごらんになっていないんだという話でしたけれども、それでよろしいですね。

小泉内閣総理大臣 総理になってから、郵便局に私自身が行ったことはありませんし、銀行にも行ったことはありませんね。

安住委員 私、その後の質疑の中で、もう一つだけちょっと確認をしたいんです。

 実は総理、離島、過疎地の問題で、離島にも全部行ってサービスをやっていますよという話をしたんです。今度は宅配会社です、私が言っているのは。実は我が党で、六月七日の質疑で、北側国土交通大臣は、実はそうでないんだ、船で港にまでは置くけれども、そこまでのサービスしかしていないんだという話をしているんですよ。(北側国務大臣「正確に言ってください」と呼ぶ)だって、そういう話をしていたじゃないですか。では、ちょっと言ってください。

北側国務大臣 ヤマト運輸とか日本通運、佐川急便等の大手の宅配便事業者におきましては、過疎地域を含む全国各地への配達がなされております。ただし、離島の一部においては、港にとどめたり、また地元の事業者がとりに来られるということがあります。

安住委員 だから、私が言っているのと同じじゃないですか。

 実は、我が党の山花委員は、余り個人的な話をすると恐縮ですけれども、大学を卒業してからフリーターをやっていまして、四年間コンビニに勤めていまして、要するに、宅急便の受付をやっていたんですよ。総理、私はその話を聞いてなるほどと思ったんですが、当時は、実はコンビニでは、集配しても配達できないところは受け取りを拒否しているんですよ、山花さんが言うには。この地域は、送ってほしいと言うけれども、うちのこの取扱店ではやっていませんと。

 だから、宅配会社が、全国津々浦々、全部のサービスを提供しているというのは、総理、誤解なんですよ。わかっていただけますか。(発言する者あり)いやいや、僕は確認しましたよ。わかっていただけますか。

小泉内閣総理大臣 それは何年前の話かはわかりませんが、現在では、ヤマト運輸の話によりますと、全国配達できるシステムができているというふうに私は伺っております。

安住委員 私は、つまり、現場感覚といいますか、過疎地の郵便局をごらんになったり、また都市部の郵便局をごらんになったり、そういう中から積み上げてきた話で民営化が必要だというところがやはり必要だと思うんですよ。ところが、残念ですけれども、総理も竹中大臣の話も、机上の空論に思えるんですよ。

 郵便局のサービスだって、ここでもさんざんありましたが、私も、実は近所に宮城県の石巻郵便局というところがありまして、そこなんかではATMはずっと土日もサービスをしている。これは総務省に調べてもらいましたが、全国で土日に大体二億件ぐらい、二億件ですよ、郵便局からATMでお金を皆さん引き出していらっしゃるんですね。それは無料なんですよ。無料でやっていらっしゃる。これをもし百円や二百円取ったら、皆さん、二百億や三百億円になるんですよ。しかし、それを取らずに過疎地なんかでも頑張ってやっているんですね。

 そういうサービスをしている、一言で言えば努力をしているという姿はやはりちゃんと認めなきゃいけませんよ。また、それを民営化したらもっとよくなるんだと言うぐらいだったら、それなりの根拠を示さないと私はだめだと思うんですよ。

 竹中さん、いかがですか。

竹中国務大臣 何度ももう申し上げておりますが、私も地方の出身者でございまして、地方の実情等々を踏まえて制度設計を行っているつもりでございます。

 郵便局そして郵貯というのは、やはり地域に密着した、全国津々浦々をカバーする、そして小口の預金、生活密着型の預金やそうした活動、それをまさにベースにしているビジネスでありますから、これは、民営化してそして競争になった場合はその強みをますます生かすような、そういう方向を目指すということが当然期待されるわけでございます。

 私は、その意味では、先ほど離島の配達の話もございましたけれども、今、郵政、郵便は、まさに全国津々浦々をカバーして、その地域密着型のビジネスモデルを強みとしているわけですから、民営化して競争になることによってますますその強みが発揮される、そのような制度設計をしているつもりでございます。

安住委員 そうでしょうかね。

 それでは、そんなにすばらしいビジネスモデルだったら、私ちょっといろいろ質問を逆にさせてもらいますから。

 麻生総務大臣、こうやって見ますと御商売を一番やっている方で、麻生総務大臣はコンクリートか何かの御商売ですか。セメントですか。ではまたいろいろ聞かせてもらいたいと思いますけれども。

 総理、骨格経営試算の中で、コンビニだ流通だ何だと、つまり試算をしているわけですよ。郵政公社が民営化をしたらこんなに利益が上がる可能性がありますということですよ。一例を一つずつ挙げていきますから、国民の皆さんにわかりやすく、これが果たして現実的なのか、それとも浮世離れしている話なのか、私はこれを国民の皆さんにちょっと聞いてもらいたいなと思っているんですよ。

 まず、国際物流。郵政の会社が民営化しますと、二百億円もうかるというんですよ。では、この数字はどういう数字かといいますと、個別の会社を出して申しわけありませんけれども、これは国際物流でですよ、日通、日本通運の経常利益を調べますと、アメリカ、欧州、アジア、オセアニアだけで、一年間で四十九億円しかもうかっていないんですよ。しかし、これは二百億円もうかるんでしょう。どうやってもうかるんですか。

 それからもう一つ、貸付業務。お金を貸すことです。郵便局の皆さんがお金を皆さんに貸す。日本の第二地方銀行、第二地銀全部で一年間での貸付額は、竹中さん、四十兆円ぐらいですよね。そうでしょう。これは郵便局で三十五兆円やるというんでしょう。そんなに金を貸す先を本当に見つけられますか。(発言する者あり)大丈夫だよと自民党は言っていますけれども、本当にそんな脆弱な根拠でできるんですか、これは。

 それから、生保ですよ、保険。二百三十万件契約すると書いてあるんですよ。ちょっと名前を出すと恐縮ですけれども、今急激に伸びている、業界で一位、二位、アメリカンファミリーとアリコジャパンを足してようやく一年で二百万なんですよ。そんなことをこの会社が本当にできるんですか。

 コンビニ。二百五十億円利益を上げると書いてあるんですね。私はNHKにいましたから名前を出すのは恐縮なんですけれども、ファミリーマートという会社は有名な会社ですね。一年間の経常利益は二百八十億ですよ。ローソンで三百六十億。

 いいですか。これはみんなプロで、みんなノウハウをわかって、失敗をし、苦労をして、戦後積み上げてきたノウハウの中でようやく利益を上げているのがこの民間会社ですよ。そしてこれだけの経常利益を上げている。

 事もなげにこれだけのお金を試算してもうかると書いてあるのは、私は、大変失礼な言い方ですけれども、見通しが甘いなんというものじゃなくて、詐欺的なんじゃないかと思っちゃうんですよ。

 麻生総務大臣、ちょっと御商売やっている立場からいって、聞かせてください。総務大臣じゃないですよ、御商売をやっている経営者として、こんな甘い見通しはいかがなんですか。

麻生国務大臣 セメント会社の社長としてお招きをいただいてありがとうございましたとお礼の一つも言わないかぬところなんでしょうが、この個別の新規業務に関してどれくらいの利益が出るか出ないかというのは、これは直接私はかかわったわけじゃありませんから、この内容を詳しく知っているわけではありません。

 ただ、いろいろな、これまでの担当を二年間やってこられた生田総裁の答弁の記憶でやれば、民間業務でやれば、この程度の大きさのものであれば約一兆円程度、多分これはケイツネ、ケイツネというのはちょっとわからぬ業界用語ですかね、経常利益。(発言する者あり)大丈夫、わかってなさそうなのがいっぱいいるから。経常利益のことをケイツネというんですが、経常利益で一兆円ぐらいという意味なんだと思いますが、利益は出さなきゃいかぬところだろうと述べておられますので、私どもとしては、十年かかっていろいろな努力をされるんだと思いますが、その結果、それくらいのものは出せるというようなことを考えておられるんだろうなと想像する以上、個別に新規業務がどれぐらいもうかるかというのに関しては、ちょっと正直、やぶさかではありません。

竹中国務大臣 試算について、個別に委員からお尋ねをいただきましたので。

 数字が大きいのではないかという点、ぜひ御理解賜れればありがたいのは、これは各分野の専門家のヒアリング等々も踏まえまして、しっかりとした試算を出したつもりでございます。それで、麻生大臣もおっしゃいましたように、生田総裁御自身、やはりこの程度の利益は目指さなければいけない水準であるということは言っておられるところでございます。

 今委員は四つぐらい例を挙げられたんですが、一つ、三十五兆円ぐらいの信用リスクビジネス、これはちょっと誤解があるといけないんですけれども、貸し出しだけで三十五兆という意味ではございません。利ざや一%取るような、そういう信用リスクのビジネスを、十年後の資産百四十兆の四分の一ということで三十五兆円ぐらい。実は、十年後でございますので、この間に日本の名目GDPは約一・五倍ぐらいになっている。GDPで二百兆から三百兆の拡大。その中で、民間の借り入れ、負債も実は二百兆のオーダーで拡大している。そういう中で三十五兆円程度の信用リスクビジネスをやっていくというのは決して不可能なことではなくて、生田総裁おっしゃるように、やはりそういうことを目指していかなければいけないということであろうかと思います。

 コンビニの利益水準等々もありましたが、これも若干誤解があるといけませんのですが、いわゆるフランチャイズチェーンを展開するフランチャイザーですね、セブンイレブンとかローソンとか、そういう利益率ではなくて、これは、それを受けて店舗を持っているわけですから、フランチャイジーになるわけでございますので、そうした点を踏まえて、利益率等々を専門家の意見に基づいて積み上げているものでございます。

 経済規模が大きくなるということ、そして何よりこれは十年後という時間の経緯の中でのこと、そして郵政自身がやはり大変な潜在力を持っているということでございますので、これはそういう形での試算でございます。

 加えて、これは可能性としてでございますので、これの十割できるのか八割できるのか五割できるのか、これは経営者にしっかりと対応していただかなければいけない問題だと思っております。

安住委員 私は、今の答弁を聞かれた国民の皆さんはやはり不安に思うと思いますよ。こういう試算の上に成り立って、これは民営化して商売ができるんだと。そういう中で、地方の郵便局を配慮します、それから都市部も何となくつぶさないでやれるんじゃないかみたいなことを言っているんです。つまり、やるからには相当シビアな試算がなきゃいけないのに、果たしてこういう試算でどうなのか。

 麻生大臣、午前中の質疑でこうおっしゃっているんですね、金を稼ぐのが苦手なやつらが役人になったと。間違いないですね、大臣。

麻生国務大臣 金を稼ぐのがうまい人は役人にならない方がいい、私は基本的にはそう思っています。金を稼ぐのがうまい人は商売人になるべきなんであって……(発言する者あり)それは、こっちは学者になったわけだから、ちょっとそれはまた違う別の方向へ行ったんだ。

 だから、そういった意味では、私は、お役人というものは本来お国のためとかいろいろなことを考えるのであって、損益ということはやはり実業界というのに行かれるのが常識だ、私自身はそう思っています。

安住委員 つまり、郵政公社のやる御商売は、武家の商法というんですか、総理、そうなる可能性があるというふうに麻生さんは指摘しているようなものだと私は思うんですよ。これは大丈夫ですか、総理。

小泉内閣総理大臣 だから民営化するんですよ。公社が商売する必要はない、国家公務員の資格のままで商売するよりは、民間人になって商売した方がいいでしょう。役所なり公務員が一々商売を考える必要はない。民間にできることは民間にというのは、そのことなんですよ。

 先ほども答弁したように、一商品のこと、一サービスのこと、ほかの民間金融機関がやっているのに何で役所がやらなきゃならないのか、何で政治家が考えなきゃならないのか、公務員が考えなきゃならないのか。だから、商売は民間人に任せた方が、いろいろいい商品も出してくれるだろう、いいサービスも展開してくれるだろうということで、大方の国民は、民間にできることは民間にということを支持しているんじゃないでしょうか。

安住委員 なかなか平行線でございまして、総理は、とにかく民営化して、郵便局を含めてバラ色になる、田舎も活性化するんだという話ですよね。

 そこで、総理、実は私は、国民の皆さんにちょっとわかりやすい議論というか、見てもらいたいなと思って、きょうは紙芝居を用意してまいりました。山崎筆頭理事にも了解を得まして、うちだけやったらちょっと失礼なので、総理、自民党の、これは総理肝いりでつくらせたんでしょう、紙芝居。武部幹事長がつくったのか、それを僕もきょう手に入れたんです。持ってきましたから。これは本物ですよ。

 時間がないから、まず、この紙芝居は何を訴えて、どういう未来を国民に語りかけているか、これをちょっと私かいつまんで話しますよ。

 何か聞くところによると、銀座で一回やってお蔵入りになったらしいんですよ、現実離れしているから。(発言する者あり)二回やったの。二回やったそうですよ、総理。

 実はこれは、「やればできる!」総理の好きな言葉、「あすなろ村の郵便局」の話というものなんですよ。総理、私、話の流れを今から言いますから。

 山合いにあるあすなろ村で、突然、郵便局の民営化の話が降ってわくんですよ。なぜか、その民営化を説明して、民営化推進をして、この紙芝居の案内役をやるのは前島密公なんですね。私はびっくりしました。前島密公はいつから郵政民営化の推進論者になったんでしょうか。著作権を得たんですかね、これは。前島密さんが出てきまして、新米郵便局員とあすなろ村に住んでいるおばあちゃんに、いろいろと郵政民営化はすばらしいという話をやり出すんですよ。

 まず一つが、今の郵便局と、もう一つめくってください、昔の郵便局、今の特定局ですね、これに案内するんです。そこで前島密公はうんちくを述べるんですね、郵便局の経緯を。その後なんです、その後。それでは、小泉首相のやっている郵政民営化がどれだけすばらしいか、わしが案内しようと言って、まず連れていくのがJRの駅ですね。もうJRも民営化でよくなって、NTTもよくなったと話すんですよ。NTTは、大阪―東京間の電話が四百円から八十円になった、こんなにすばらしいことはないんだ、民営化するというのはそれだけいいことだと。

 ところが、連れてきてもらった郵便局の新米局員の鈴木君は突然疑問を呈すんです、効率化したら小さい郵便局はつぶれるんでないでしょうかと。これに対して前島公は怒るんですね、そんな弱気でどうするんだと。笑っちゃいますね。それで次に行くんですよ、次に。

 次に行って、金融サービスがよくなると、今度は銀行に案内するんです。それで、おばあちゃんに向かって、古いうちを新しいうちにするために、おばあちゃん、郵便局で今度はお金を貸してあげるよ、ローンが組めるとやり出すんですよ、ローンが組めると。

 ところが、これに対してまた、若い鈴木君は疑問を呈すんですね。それでは、前島さん、民業圧迫じゃないですかと。すると、前島さんはまた怒って、時間をかけて説得すれば何とかなると言うんですよ。おもしろいですね。聞いているおばあちゃんはうなずきます。

 聞いているおばあちゃんがうなずいて、次に、前島さんはおばあちゃんを未来の郵便局に案内するんです。未来の郵便局でどういうことをやるかというと、コンビニ、コンサートのチケット、それから介護。今度はおばあちゃんに向かって、おばあちゃん、ハワイ旅行もできるんだよとやるんですよ。ハワイ旅行の切符、旅行代理店も。だから、郵便局が民営化すると、おばあちゃんハワイに行けるよと言うと、おばあちゃんは喜んでこう言うんですね。うれしいね、長生きしなきゃねと。本当なんですよ、これ、自民党がつくったんですもの。郵便局が今度生まれ変わって、前島公が言うんですよ、郵便局が生まれ変わると、田舎に若い人も帰ってきて過疎化がなくなると。やればできる、チャレンジ精神で頑張りたまえと言って前島公が出てきておしまいなんですよ。

 拍手しているのは山崎さんだけですよ。笑えますね。

 総理、前島公は本当に民営化推進論者ですか。違うんじゃないですか。私、調べましたよ。

 前島公は何と言っているかというと、民でやったらネットワークがだめになるから、官営でしっかりネットワークを維持して、それが世界の万国郵便につながっていくから、当時は頑張れということを言っているんですよ。そうですよね。私は前島公を出すのはおかしいと思うんですよ。

 そこで、総理、この郵政民営化法案を出したのはたしか四月二十七日ですか。いかがですか。そうでしたか。

小泉内閣総理大臣 正確な日にちは覚えていませんが、四月下旬でしたね、大型連休の前だったと思います。二十七日か二十八日か、今定かに覚えておりません。

安住委員 総理、実は四月二十七日は、皆さん、前島密公の命日なんですよ。大変失礼ですけれども、草葉の陰で怒っているんじゃないのかなと思うんですよ。

 そこで、こういうバラ色の詐欺的な未来、自民党はつくりましたけれども、私どもはこの二週間の質疑の中で、郵政民営化はそんな甘いものでないということを理解しましたので、民主党は、違うストーリーを今回紙芝居でつくりました。これは作家の野村正樹さんという方に御協力をいただいて、この芝居をつくりました。題は「あすなろ村の惨劇 そして誰もいなくなった」という話でございます。

 二〇〇五年、大変残念であるが、周囲の良識的な意見に全く耳をかすことなく、ついに小泉首相は民営化を強引に成立させた。これ、早くめくってください、見たくないですから。これは一応強引に成立させたんですね、総理が喜んでいる。ここからです、ここから。

 ここはあすなろ村の郵便局です。ここでは民営化の直後から、郵便局の空気は一変しました。これまで国民の福利増進のために公共性を重視していた郵便局が、民営化を境に利益至上主義に変わりました。過疎地の郵便局を残すと昔だれかが言った国会の答弁とは裏腹に、もうからない局はどんどん閉鎖の憂き目に遭います。

 この朝も、あすなろ郵便局では局長の大きな声が局内に響き渡ります。みんないいかい、売れるものは何でも売ってくれ、魚も野菜も住宅のリフォームも介護も住宅ローンもすべてやってくれ。周りの商店と競争しないと勝てない。もうけないと局は維持できないんだ。こうした利益主義は、村にあった間口一間の店を次から次へとつぶしていきました。まさに民業圧迫でありました。

 いっときの村の商店に競り勝ったあすなろ郵便局ではありましたが、状況はこの後一変します。みずから経営していたコンビニの収支が悪化し、それに人口減少、預金の減少、さらには郵便の減少が相まって、ついには閉鎖の憂き目に遭いました。おばあちゃんが出てきます。あんなに便利だったのにつぶれてしまって、金をおろすのも手紙を出すこともできやしないよ、困ったもんだねえ。

 あすなろ村のお年寄りは、今まで郵便局で受け取っていた年金を三十キロも離れた町の銀行に行っておろさなければなりません。孫の車での送り迎えも一苦労です。おばあちゃんは嘆きます。郵便局がなくなったら本当に不便だねえ、おまけにクリーニング屋さん、文房具屋さん、八百屋さん、とにかくみんな郵便局がつぶしちまって、本当に困ったよ。おばあちゃんの言うとおりだわ、毎日車で三十キロの道のりを行くのはガソリン代もかかって大変よ。小泉さんの言うことを信じた私たちが本当にばかだったわ。

 あの二〇〇五年の夏、前島公まで引っ張り出して自民党がつくった紙芝居を見てバラ色の未来を思い描いていたあすなろ村の人々は、今ほぞをかむ思いでおりました。そして、だれもいなくなった村には人けのない閉ざされた郵便局だけが廃墟で残されました。

 おしまいでございます。国民の皆さん、御協力ありがとうございました。

 しかし、これは笑い事ではなくて、どちらの未来が本当に明るいか暗いのか、どちらが事実をあらわしているのか、本当にそこは議論の分かれるところではないでしょうか。

 総理、私の紙芝居を見た率直な御感想はいかがですか。

小泉内閣総理大臣 これは、自民党のつくったあすなろ村の紙芝居と民主党のつくったあすなろ村の紙芝居を両方見てもらうとよくわかるんじゃないかな、自民党の方がわかりやすくておもしろいな、悲観論からは新しい挑戦は生まれないな、やはり未来に向かって努力しよう、やればできるという気が出てくる、そう思う人の方が多いんだと思っております。

 自民党の武部幹事長の肝いりでつくった紙芝居は好評だったんですよ。もうあっちこっち注文が来て。そうでしょう。全国、三十分の国会議員の郵政民営化の話よりもあの紙芝居の方がおもしろい、わかりやすいと好評で、もう各地区で紙芝居をやったということを聞いております。ぜひとも、自民党の紙芝居とこの民主党の紙芝居を一緒にやってもらって公平に判断していただきたいと思っております。

安住委員 私は、つまり疑念を払拭できないんですよ。疑念を払拭できないの。だって、この法案では四つの会社がばらばらなんですよ。つまり、こういうことがあるんですよ。

 最後に一つだけ細かい話をしますけれども、竹中さん、もし、例えばある県のA銀行が違う県で営業をやりたいといったときに、民間銀行がですよ、ちょっと名前を出すとあれですけれども言いましょう。では、秋田県の秋田銀行が支店が余りない例えば新潟県で何とか支店を広げたいというときに、これは窓口会社と契約を結べば、支店というか、取り扱いできますよね。(発言する者あり)代理店契約。

竹中国務大臣 これは可能でございます。

安住委員 一方で、窓口会社、つまり営業所と契約をしなくてもいいんでしょう、全部契約しなくても、銀行は。どうですか。

竹中国務大臣 郵便貯金銀行とは、みなし免許を出すときの条件として、一括的な契約、長期安定的な契約でございます。それが法律上義務づけられているだけでありますので、あとは別に排他的独占の条項があるわけでもございませんし、その他については当事者でのお話し合いということになろうかと思います。

安住委員 つまり、これからこれが民営化して、準備期間はあるにしても、窓口会社と金融と保険は別々の道を行く可能性があるんですよ。ばらばらになる可能性があるんですよ。一体サービスじゃないんですよ。

 それで、さっき総理は、何かデパートに支店ができるかもしれないと言っていました。そのとおりですよ。つまり、郵便局があるのにもかかわらず、それとは全く別の、郵便貯金銀行が銀行としての支店をつくるということはありますよね。どうですか。

竹中国務大臣 それもあり得ることでございます。

安住委員 今は、政治的に、配慮をするとか何とかをすることができるという法案で、それを根拠に竹中さんはうまく言っていますけれども、実はこの四つの会社は全く違う道を歩み出す可能性の方が高いんですよ。そして、郵便は減り続けて、窓口会社は本当に経営が大変になると私は思いますよ。これは特殊会社にするということです。

 一方で、この議論でも、きょうも出ましたけれども、総理、アメリカとは十七回意見懇談会をして、来る者を拒めないからといって十七回、アメリカの団体や政府と話をしたというんですよ。総理は国民と対話を一回もしていませんよね、郵政民営化については。(発言する者あり)やっていらっしゃらないですよ。就任してからこのことでタウンミーティングにお出になっていないんですよ。そうですよね、総理。

小泉内閣総理大臣 タウンミーティングでこの郵政民営化の議論をしたかどうかというのは覚えておりませんけれども、何度かの総裁選挙、衆議院選挙、参議院選挙、もう何回話したかわからない、この郵政民営化の必要性。私は、そういう話を通じて民営化の支持はますます強まっている、多くの国民が理解をしてくれると。

 前島密の碑は、我が地元横須賀市にもあるんです。前島密のときは飛脚よりも国営の郵便局がいいだろうということでやったわけですが、だんだん時代も変わり、民間の力もついてきた。そういう時代におきましては、民間にできることは民間にやってもらった方がいいと思っております。

安住委員 私は本当に、聞いたことに答えていただければこんなにクレームつけませんよ。前島密の話とか聞いているんじゃないですよ。国民に向かってタウンミーティングで話をしたかということを私は総理に聞いたんですよ。

 総裁選挙で自民党には話しているんでしょう、それは。つまり、やはり丁寧でないんですよ、大ざっぱ過ぎるの、総理は。(小泉内閣総理大臣「丁寧に答えているじゃない」と呼ぶ)いや、そうではない。国民の意見をちゃんと聞いて、公社になってからちゃんと実地に歩いて、そして今の公社の問題点を突き詰めてやって、その上でやはり将来の制度設計の話ということを我々はぜひ総理にやってほしいということをお願い申し上げまして、同僚の原口議員にバトンタッチをしたいと思います。

 ありがとうございました。

二階委員長 次に、原口一博君。

原口委員 民主党の原口一博でございます。

 主に総理に、この郵政民営化についての質問をさせていただきたいと思います。

 私も総理も同じ先生から教わっているんです。加藤寛さん。一九八〇年代。あのとき、民にできるものは民にということをおっしゃっていた。そのときは少しは理があったと思う。また、本に書かれていることもそう間違ってはいない。しかし、やはり一周おくれの改革になってしまった。そのために、きょう、まず質問に入る前に国民の皆さんにお願いしたいのは、郵政事業は国民の大切なインフラだ、このインフラであるということを確認させてほしい。

 ここに会計検査院の報告書を、総理、持ってきています。もう本当に悪事の山ですよ。税金のむだ食いの山。会計検査院は全体の八%を検査していますから、実は五千億ものむだがここで生まれているんです。このことを放置しながら、天下りをずっとやらせながら、そしてこの二年間一生懸命頑張っている優等生である郵政を民営化する、その理屈がわからない。

 多くの人たちが郵便局に感謝をしている、後で資料で示しますが。長年なれ親しんだシステムであるために、中には総理のように、そのありがたさを水と同じように感じていらっしゃらない方もあるかもわからないけれども、私は、郵政事業における国民の権利というのは一体何か、あるいは中央政府の責務は何かということを議論するのがここでの大きな柱じゃないかというふうに思います。

 そこで、総理に数点、さっきの紙芝居のどっちになるかということを国民の皆さんに御理解をいただくために、少し詰めた議論をしたいと思います。

 郵政民営化法案というのはやはり与党の中でも賛成少数で通されてきたのかなという印象を、私はよその党ですからよくわからない、だけれども、この委員会での質疑を理事として聞く中でも、ほとんど反対ですよ。賛成のことを言った、さっき石破さんがちらっとそんな話をされたけれども、中途まではやはりそれでいいのかなということですよね。三原さんに至っては、もっと郵便局を大事にしましょうという話でした。

 私はそこで、同じ先生から習う中で、ただ民にできることを民にすればいいというだけを教わったんじゃないんです。衆知を集めろということを教わりました。衆知を集めて、例えばこの法案の中にどれだけ各省協議がされているんだろうか。

 その最たるものが独禁法の九条です、総理。法案を提出したのは四月二十七日。その翌日に、ここでも何回も議論になりましたけれども、二十八日に、独禁法の九条に抵触するおそれがあるんじゃないか、抵触するんじゃなくて、抵触するおそれだと公取から指摘されているんです。法案を提出した後にこんなことが指摘される法律、あとずっと詰めていきますけれども、本当にこんな法律のつくり方でいいんでしょうか。随分お急ぎになったんじゃないか。

 十年間で株を全部売却する、完全売却するということを言っていました。さすがに十年間で完全売却というのは、竹中さん、なかなかやりにくいですよね。JRの例を見ても、NTTの例を見ても、経済状況によって違うんです。だから完全処分という言葉にかえたけれども、何でそんなことを十年間と限ってやらなきゃいけないのか。麻生さんが去年の暮れ、経済財政諮問会議で議論されているときには、ほかの有識者もそうだったかもわからないけれども、仮に総理のおっしゃるような民有民営といったことをやるにしても、どれぐらいまで株を持てばいいかという議論だったんじゃないんでしょうか。それが十年でばっさりと株をもう放出しなきゃいけないということになった理由は何ですか。随分急いでいらっしゃるな。それは、二度と逆戻りできない、つまり国会の方が信頼できない、自分が改革者で、ほかの人たちはまた別のことをやるから、そういうお気持ちですか。総理の答弁をいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 十年でできるかできないか、遅いか早いか、これは見方によって違いますが、十年よりもっと早くできる可能性もあります。完全売却可能の場合もあります。完全処分できる可能性もあります。それはやはり経済状況と関連してまいりますが、私は、十年というのはかなり余裕を持った期間だなと思っておりますし、貯金銀行にしても保険会社にしても、これは民間と同一条件にする。今の手足を縛られた制約条件のもとでやるよりは、早く、民有民営の本旨を生かして、お互い同一条件のもとに国民にどのようなサービスができるかということを考えてもらった方がいい。同時に、この四分社化におきましても、独自にリスクは負わないような形で創意工夫を発揮できるような形の方がいいなと思ってしたわけでございます。

原口委員 いや、よくわからないんです。莫大な資産を持っているこの郵貯銀行が貸し出しをしていなければ独禁法の九条にはかからないけれども、今総理がおっしゃったように十年間で株を売っていく、しかし、その間には二五%条項に必ずひっかかってくるんです。

 今総理は、十年になる前にも完全民営化ということがあるかもわからないとおっしゃいましたが、完全な民の銀行になってしまえば貸し出しはどうするんですか。郵貯銀行は、主に安全資産だけ運営していて、どうやって成り立つんですか。貸し出しを三十五兆ぐらいまで広げるというような話をされていますけれども、三十五兆といったら今世にあるメガバンクと同じような貸し出しじゃないですか。そんなものをつくる間に独禁法九条に必ず抵触すると思うんですけれども、そんな検討はされなかったんですか、総理。

小泉内閣総理大臣 当然、民間と同一条件ですから、それは金融庁の監督下に入ります。御理解いただけると思うのであります。

原口委員 いや、金融庁の監督下に入るから、一体的経営と言っているじゃないですか、一方で。グループで、持ち株会社があって、六事業会社があって、これが一体的経営をやるんだと。一体的経営をやっていれば、なぜ独禁法があるかというのを、総理、絶対読んでほしい。

 私は、総理の盟友の、私どもの同志ですけれども、神奈川の松沢知事ともいつもこの点で議論をしたんです。でっかい民、コントロールできない民をつくっちゃだめなんですよ。でっかい民は競争できないんですよ。競争できるから市場なんですよ。総理は競争で官のお金を民に変えようとされているんじゃないんですか。確認させてください。

小泉内閣総理大臣 今の原口さんの議論というのはわかりますが、相反する批判が出てくるんですね。でっかいものができるというものと、いや、そんなことはできないからどんどんどんどん縮小してできなくなるという、私は両方批判を受けているわけです。

 批判する立場はどうでもできますよ。右の方からの批判、左の方からの批判、真ん中からの批判。しかし、私どもの考えているのは、民営化になった会社もやはり成り立ってもらわなきゃいけない、収益を上げてもらうようなことにしなきゃならない。今の郵便局のネットワーク、これは財産ですから、これも活用してもらわなきゃならない、そういういろいろな意見を入れて考えた案であります。

 確かに、理論的に言えば、巨大化もあるでしょうし、縮小化、両方あると思います。しかし、民間の金融機関になれば、同じ民間の他の金融機関と同じような活動ができるようになっていく。また、してもらわなきゃ困ると思っております。

原口委員 私は右から左から質問しているんじゃないんです、総理。真っ正面から質問しているんですよ。

 それはなぜかといえば、大きな公であってもこれは独禁法にかかりません、公ですから。日本郵政公社は独禁法の対象にかかりません。公がやっているんですから。今度民営化するんでしょう。民営化した後も、継続的な保持といって一体化していくと言っているじゃないですか。大きなコングロマリットをつくるということじゃないですか。大きな民をつくると言っているじゃないですか。その瞬間に独禁法が発動しますよ。法律に沿わないことはできないわけで、では、独禁法を変えて、この郵便貯金銀行だけお目こぼしします、そういうことですか。

竹中国務大臣 今原口委員が御心配になっておられるのはこういうことでしょうか。移行期間中に政府がまだ株を持っておりますが、持ち株会社が株を持っておりますが、それがある程度の株を持っている。一方で、貸し出しの業務がふえてきて、そのときに独禁法との関係はどのようになるか、そういう御質問ですね。したがって、移行期間中の話ですね。

 郵政民営化によって設立されるこの金融会社は、当初、一般の事業向けの貸し出し等を営んではおりません。そして、移行期間中、その業務範囲については主務大臣の認可等一定の規制が課されている、これも委員御承知のとおりだと思います。また、他の金融機関との合併が禁止されている等々の制約がございます。

 そういう観点から、現時点では、いわゆる資金に係る取引に起因する他の事業者に対する影響力が著しく大きいというふうには考えにくいということでございます。

原口委員 どうしてそうなるんですか。中途までは合っているんです。それは公取の考え方ですよ。ほら、後ろから言わなきゃいけないじゃないですか。

 総理、さっき安住さんに政治の話をしましょうと言われたから、私もきょうここで細かい話をする気はないんですよ。だって、郵便貯金会社は、私たちが負けてこの法案が通ったら民営化していくわけでしょう、株をその瞬間から放していくわけでしょう。放していく過程で一体的経営を六事業でやっていたら、独禁法は必ずかかるんですよ。逆に言うと、貸し出ししていなきゃいいですよ。三十五兆に貸し出しが残ると言っているから、独禁法のところが詰まっていないじゃないかということを言っているんです。こんなのは何も不思議な話でも何でもない。抵触するんですよ。

 では、逆に聞きます。三十五兆の貸し出しの銀行というのは、十分大きな影響力のある、独禁法九条に関連する一つの要件、あれは三つあるんですけれども、全部読みません、その中の一つの要件でしょう。公取、お願いいたします。

竹島政府特別補佐人 資金の取引に係って他の事業者に大きな影響を与える場合の資金の取引は、主なものはおっしゃるとおり貸し付け。

 これは、今見ますと、もともと都市銀行の規模を想定してこの規定が設けられておりますので、数十兆円というものだろうと思いますが、そこに比べて三十兆円というのはどう考えるかということがございますが、これはやはり、ただ貸付規模だけを考えているわけじゃなくて、それに伴う情報提供力とか、いろいろなサービスもろもろ考えていますから、一言で申し上げますと、都市銀行と同等の影響力を持っているかどうかというのをその時点で判断させていただくことになると思います。

 今、大きなメガバンクができてきておりますし、十年後に仮に三十兆ということであった場合に、今申し上げた、そのときの大きな銀行グループと同等の影響力を持っているかどうかはその時点で判断をするということになります。

原口委員 総理、お聞きでしょう。十兆とか十五兆のがメガバンクですよ。それの何倍もでかいものを貸し出しする。しかもネットワークで。ネットワーク価値というのを何回もこの委員会で言っているじゃないですか。今、公取の委員長は情報提供価値とか、そんなものだって比じゃないはずですよ、このモデルが成功すれば。そのときになって考えます、そんな無責任な話がありますか。

 ちょっと委員長、整理をお願いします。

竹中国務大臣 一点だけ。原口委員が三十五兆円の貸し付けというふうにおっしゃっておられますけれども、三十五兆円は貸し付けではございません。信用ビジネスでございますから、そのうち貸し付けがどのぐらいになるかというのは、これは経営者の判断等々によります。どの程度の貸付規模になっているかというのは。そのときに、業務を段階的に拡大しているわけでございますから、当然、主務大臣が認可を与えるわけですから、そういうことも踏まえてしっかりとした認可を与えているということになろうかと思います。

 繰り返しますが、郵政民営化によって設立されるこの金融会社は、当初、そういう一般の貸し出し等を行っているわけではない、そして、移行期間中、その業務範囲について主務大臣の認可等一定の規制が課せられている、そして、他の金融機関との合併が禁止されている等々、そういう条件がございますので、現時点で、資金に係る取引に起因する他の事業者に対する影響力が著しく大きい、独禁法の二五%云々ですね、それに抵触するとは考えにくいということでございます。

原口委員 まさか、そんなことを。

 総理、私は総理と議論したいので、委員長、資料を配付させてください。

二階委員長 はい、どうぞ。

原口委員 これの七ページ、インターネットでごらんになる方は、インターネットの私のホームページにアップしていますので、この七ページをごらんになってください。

 「準備室の新たな試算における新規業務」「貸付業務(貸出金残高三十五兆円)」と、これは資料を出しているじゃないですか。何を言っているんですか。

 いや、三十五兆円貸し出すんじゃないんだと。私は、そういうビジネスモデルをあなたたちが示しているから、他に影響のある、本当に一体として経営をすれば独禁法の九条にかかわる、それだけ大きな資本の会社になりますねと。手前の法律の解釈でああでもないこうでもないと言わないでほしい。

 総理、どう思いますか。これは私が出したんじゃないですよ。あなた方が出されたんですよ。

竹中国務大臣 骨格経営試算におきまして我々が示しておりますのは、民営化されてから十年後に資産が百四十兆円になっているというふうに見込まれる、そのうち四分の一をいわゆる信用リスクビジネスに進出する、そういう収支試算をやっているわけでございますけれども、その信用リスクビジネスの中の一つは貸し出しでございますけれども、ほかに、いわゆる担保つきの証券、アセット・バックト・セキュリティーでありますとかファクタリング、債権買い取り、そういうのを合わせてでございますので、この資料については、どこから出たどのようなものかについてはちょっと確認をさせます。

原口委員 本当に、国民の皆さん、郵政のこの委員会というのは全部これですからね。一つ一つの証拠を出せば、後で確認させます。一つ一つの法律のそごをやれば、後で確認させます、いや、あれは違いましたと。こんな人たちと本当に質疑ができるでしょうか。

 それでは後でやってください。あなたたちが貸出規模を三十五兆までやらないというんだったら、銀行はもちますか。

 総理、これは八年間求めてやっと出てきた資料なんです。小泉総理があのときは厚生大臣だった。そのときに、二階委員長が私どもの国対委員長で、これをとってこいとおっしゃってやったものですね。

 それは、各郵便局の収支なんです。六千の集配局の収支を出してくれと言ったら、出さないと言う。出さないでどうやって民営化の議論ができるんだというのでずっとやってきた。二年前、解散する前に出してくれと言ったら、出すという話をして、やっとことしの三月に出てきたものです。

 これをごらんになると、各県の皆さんは、今、国民の皆さんは、自分の目の前の郵便局がどうなるだろうか、それを思っていらっしゃると思います。この収支相償方式、これも皆さんのお手元の資料にお示しをしていますけれども、これ自体、収入と支出をそのままバランスさせていますから、この計算方法で本当にいいのかなと思うけれども、一応、やっと八年ぶりに出していただいたので、これをもとに計算してみました。

 一体、収益力が、黒字が赤字を大幅に下回るところはどこなんだろう。県名を申し上げて悪いけれども、島根県、黒字局はたったの四局しかなかった。赤字局は二百五十三局でした。秋田県、黒字局は四局、赤字局は二百六十九局。収支率をごらんになってください、一六七・九六%、これをどうやって埋めるんですか。

 この法案を見ると、簡単に言うと、この発足後からずっと積み上げていって、一年間にどれぐらいですか。最初に一兆円あるんじゃないんですよ。与党の皆さんは二兆円まで上げろというような合意を政府とされたようですけれども、これは最初から二兆円あるんじゃないんですよ。(発言する者あり)合意していないと言っていますね。何にも合意していないみたいですね。一兆円とか二兆円、本当に積み上がるのか。どうやってやるんですか。先ほど三十五兆円も、その貸し出しもしない、どうやってやるんですか。

 私が聞いたところによると、これも皆さんのお手元にあって、これは新勘定と旧勘定に変えるんですね。旧勘定のところは政府保証はついているんだけれども、政府保証がついていないのと同じように、この五ページをごらんになってください、5というところなんです。「新旧間のリスク遮断について」という資料でございますが、特別預金、百五十兆円ある。これは政府が保証をしていますね。ですから、預金保険の対象ではない。通常貯金、これはここから預金保険料を払うんです。

 ところが、この基金のもとになるのは何かというと、上の特別預金が預金保険を持っていると仮想して、百五十兆円ですから、最初千六百億円ぐらい持ち株に上納するんです。そして、竹中大臣の答弁では、十年間で最終的にこれで六千億円ぐらいになりますかねということだったんですね。私は、この特別預金から持ち株会社に上納する理由もよくわからない。

 ここはもう時間がないので聞きませんけれども、つまり、最初から基金は積まれているんじゃないんです。この基金、どうやって積んでいくんですか。その間に、さっきお示しをしたこういう赤字の郵便局、一兆円積まれていたら百八十億でしょうけれども、どうやって維持するんですか。この維持の仕方がわからないから出してくださいと言っていたんです。

 出てきた数字では、私はこれを足していったけれども、とても百八十億なんかじゃできませんよ。つまり、新たに税金を投入するか、それとも、そこをつぶすかしかないんです。どっちですか。これは政治の話です。

竹中国務大臣 まず、先ほど、ちょっと資料を検討させてくださいというふうに申し上げましたが、三十五兆円貸し付けと書いているではないか、これは今確認させましたが、準備室としてつくった資料ではないということでございます。これはちょっと、出所がどこなのか、引き続き私どもの方でも検討いたしますが、原口委員の方でもぜひ……(原口委員「いや、僕がつくったんです、皆さんの答弁で」と呼ぶ)貸出残高とは書いていないと思います。信用リスクというふうにきちっと書いて、その内訳も書いているというふうに思っているところでございます。

 それで、幾つかおっしゃいましたけれども、積み上げられるのかということについてまず申し上げたいと思うんですが、この積み上げの資金の源といいますのは、持ち株会社が持っている、銀行そして保険の株式を売却していくわけですね。一〇〇%処分をするわけでございますけれども、これの総額、これは骨格経営試算における資本の額で申し上げますと、銀行と保険合わせまして両方で三・九兆円、約四兆円ございます。したがって、これを売却すればそれだけは入ってくるということになります。それがさらに上積みされてどれだけ益が出るかということは、これはいろいろあろうかと思いますが、それだけの少なくとも株の売却を行うということでございます。

 それと、もう一つ。これも、持ち株会社は四事業から配当を受けます。骨格経営試算に基づきまして、十年間の税引き後の利益、その中の一定割合の配当を受けるということになると思いますが、十年間の税引き後の利益の額を合計いたしますと四兆円ということになります。そういうところから持ち株会社に入って、これが基金に積み立てられるわけでございますから、これは金額的には、一兆円積み立てるということは十分に可能な範囲であるというふうに思っております。

 もう一点、ぜひ御説明させていただきたいのは、赤字局がこれだけあるから、それでは一兆円の運用益百八十億では足りないのではないかという趣旨でございますが、ここは、この基金の趣旨というのはそういうものではございませんので、何とぞ御理解を賜りたいのでございます。

 まず、委員がお示しになった資料は、実は収支相償方式によるものでございます。実際にどれだけ赤字が出ているかどうかというのは、これは全体収支の方式で見なければなりません。全体収支の方式で見ますと、こんなに赤字局はないわけでございます。これが第一点。

 それと、これは、局ごとにいえば、赤字の局があっても、トータルとして、しばしば議論されておりますネットワークとしての価値があるわけですから、ネットワークでもうかるところでもうかって、これを補てんして全体のネットワークを維持するというのが通常の考え方でございますから、赤字局がこれだけあるからこれだけのお金が必要になるという趣旨ではございません。

 我々の考えております基金は、そういうネットワークとしての価値がそれでもなくなるような場合が、完全民営化後に万一過疎地の最前線等々で出てきた場合についてはその金融収支を見ましょう、そういうものでございますので、金融の、要するに、これは地域貢献として行うわけでございますから、局で金融の業務を行う、銀行の窓口業務そして保険の委託業務を行う。その金融の収支が、十分にネットワーク価値のなくなるような、過疎地の最前線のところで大きな損が出る、それを補うということの趣旨でございますので、その基金の御趣旨についても御理解を賜りたいと思います。

原口委員 いや、なかなか理解できないですね。だって、総理、全体収支という最初に出したものよりも、今私がお示しした方がより現実に近いんですよ。全体収支というのは中央でもうけているものじゃないですか。だって、民営化するんでしょう、窓口会社も。民営化して、なぜ各ブランチを出してくれと言っているかというと、そこの収支がわからなければ、今度、経営者、公でなくなった場合に、それをつぶすのか残すのかという判断がわからないからなんです。だから聞いているんです。

 では、あなたの答弁だったら、四兆円、株の収益がありますね。だったら、その四兆円で赤字のところも補てんして、一兆円の基金なんと言わずと、上限を決めないとおっしゃっているわけでしょう。基金の上限を決めないんでしょう。上限を決めたものじゃないとおっしゃっているでしょう。そこ、どうですか。

竹中国務大臣 まず、今全体として利益が出ているわけですね。全体として利益が出ている中で、それは個別の損益がどうなっていますかというのが全体収支方式でございますから、収支相償方式というのは、仮にその出ている全体の利益がゼロになったらどうなるか、平たく言えば、そういうことを仮定計算しているのが収支相償方式でございます。したがって、これは定義上、きちっとした規則正しい分布をしていれば、五〇%赤字になるし五〇%黒字になる、そういう収支でございます。

 したがって、全体収支で今の現状を判断するべきではないかということを申し上げたわけでございます。

 それとの関連で、委員が後半おっしゃった、金額全体を赤字補てんにすべきではないかというような趣旨のことをおっしゃったんでございましょうか。二番目の質問について、もう一度お願い申し上げます。

原口委員 本当に、こういうことで時間が過ぎていくんですよ。

 基金の上限は決めませんねと、それを聞いただけですよ、あなたに。

竹中国務大臣 失礼をいたしました。

 一兆円までは積み立てねばならないという義務がございますが、それ以上の上限について制限を設ける必要はないと考えております。

原口委員 ということは、株の収益が四兆円あるから、地方のネットワークはあなたたちの案でもしっかり守られる、そういう経営判断が行われるだろうということで理解します。

 次に、特別送達について伺います。

 特別送達のところは、非常に精緻な議論を、これは私の財務金融委員会の自民党側のパートナーである村井先生がなさっていました。総理、民にできることを民にというんじゃなくて、民でできないことまで民にさせようとしているんじゃないか、特別送達のところを。そう思うんです。特別送達は本当に民でできるんですか。

 法務省、特別送達は我が国の司法の根幹にかかわる大変大事な制度だと思いますが、どういうものですか。

南野国務大臣 お答え申し上げます。

 特別送達は、裁判手続において、訴状や判決等の重要な書類を名あて人に交付する、その人に交付するという行為でございます。この送達は、その書類の内容を当事者に知らせて、その者に手続の保障を与えるものでありまして、それを前提として以後の裁判手続が進められるということになります。

 このように、送達は、裁判手続上、重要な意味を有していると認識しております。

原口委員 今法務大臣がお答えになったように、もし仮に裁判所から訴状が届いていなくて、そして自分が知らなかったとなれば、有利になるのは訴えた方ですよ。何月何日までに出てこいということになって、そしてその送達について知らなかったと。

 だから、こんなことが本当に民でできるんでしょうか。民でできないからこそ、今度、郵便認証司の皆さんにも、それから配達される皆さんにも、みなし公務員という規定を設けているんじゃないでしょうか。いかがですか。

 わざわざ、民でできるんだったら、民間人にすると言っているけれども、特別送達がもし滞ってしまえば、我が国の司法制度、その運用が崩壊するから、だからみなし公務員じゃないですか。どこが民間人ですか。聞かせてください。

南野国務大臣 特別送達は裁判手続において重要な意味を有するということは先ほども申し上げましたが、民事訴訟法はその事実を明確にするため、送達をした者に対して送達報告書の作成を要求しておりますけれども、この報告書は高い証明力を備えたものである必要があります。

 今回の郵便法の改正案では、特別送達の業務に従事する者を刑罰の適用についてみなし公務員としておりますけれども、これに加えて、新たにその送達をした者を管理監督する地位にある者を郵便認証司として、その者が送達の事実を認証することとしておりますので、現在の特別送達と同程度に送達報告書の証明力があると考えられるところでございます。

 そこで、今回の郵便法の改正案では、新たに設けられた郵便認証司が送達の事実を認証するということとして、民事訴訟法における特別送達を維持することとしたものであります。

原口委員 これは本当に民間人にできないでしょう。民間の仕事じゃないんですよ。

 それで、今、郵便局の方が送達を送って、そして報告書を書いていますよ。そうすると、今の答弁だと、どういうことですか。郵便認証司、これは恐らく今の特定郵便局長さんたちを想定したものだと思うけれども、この方にも今お話しになったみなし公務員と同じものを与えて、そして二重に確認書類というのが出てくることになるんですか。

竹中国務大臣 これは郵便の話でございますので、私の方から当然答えさせていただきます。

 原口委員の御指摘は、大変重要な御指摘ではあると思います。つまり、これは大変重要な社会性、公共性を有している、そういう機能があるから、それを本当に民営化した場合にどのような形で担保していくかというのは、これは我々にとっても極めて重要な課題でございます。

 では、公務員でなければできないのかということでございますが、現行の民事訴訟法の九十九条の二項でございますけれども、「郵便による送達にあっては、郵便の業務に従事する者を送達をする公務員とする。」と規定しておりますけれども、この規定は、郵便の業務に従事する者が同法百九条の「送達をした公務員は、書面を作成し、送達に関する事項を記載して、これを裁判所に提出しなければならない。」との規定において、この書面の作成等を行わなければならないとされている送達をした公務員に該当する旨を規定したものでございます。

 そこで、これらの規定において、送達をする、した公務員という表現がとられておりますけれども、これは、現行法が採用している送達の実施機関が執行官と郵便の業務に従事する者、公社職員という、公務員であることを前提としているからでございまして、送達する者が公務員であることを義務づけるという趣旨ではございません。

 したがいまして、今回の郵政民営化に伴いまして公務員でない者が送達を実施することになるとしても、三点申し上げますけれども、特殊会社として総務大臣の監督を受ける郵便事業会社の法定業務として、これは法定業務として従来どおり特別送達の取り扱いの実質が堅持されること、送達の業務に従事する者を当該業務については罰則の適用に関し公務員とみなす、そして郵便認証司の送達についての証明がされる、そのような形で、委員御指摘のようなその公的な機能が担保されるように制度設計をしているわけでございます。

原口委員 総理、私は総理にさっき政治の話をしたいと言ったんです。だから、細かいことは大臣に聞いていますよ。二人、今度は手続が要るんですかという、そんな単純な質問に今全然違うことを答えているのですよ。政治の話ができないじゃないですか。二人要るんですよ。そして、それはみなし公務員じゃないと、文書偽造したときに、今度偽造された側が賠償しなきゃいけないんですよ。だから、これは公務員しかできないんです。わざわざ民にする必要ないんですよ。いや、しちゃいけないんですよ。

小泉内閣総理大臣 政治的にわかりやすく答弁しましょう。

 民間でできないものに対しては公務員並みの資格を与えましょうということであります。今、常勤公務員、郵便局、約二十七万人、短時間公務員十二万人、約四十万人。この中で、民間でできるものについてほとんど民間人になってもらいます。しかし、民間人ではできないものに対してみなし公務員、郵便認証司の資格を与えようということであります。

原口委員 やはり政治の話になると国民の方にわかりやすくなるので、そのわかりやすい答弁としてはあれだけれども、答えが間違っています。

 さっき法務大臣が読まれたじゃないですか、配る人もみなし公務員なんですよ。そして、今おっしゃった認証司もみなし公務員なんですよ。だから、今は総理は一部の人だけ、一部の人だけに、官でしかやれない人だけにその資格を与えると言われたけれども、配達する人もみなし公務員ですよ。

小泉内閣総理大臣 私の答弁、よく調べていただきたいと思いますよ。矛盾していないんです。

二階委員長 ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

二階委員長 速記を起こしてください。

 原口一博君。

原口委員 だから、総理は民間になる人をふやすと言っているんでしょう。(小泉内閣総理大臣「ふやさない」と呼ぶ)いや、ふやすんでしょう。(小泉内閣総理大臣「ふやさない。民間になる人はふやす、公務員はふやさない」と呼ぶ)ふやすでしょう。公務員をふやさないんでしょう。

 では聞き方を変えますけれども、特別送達を運ぶ人はみなし公務員ですね、みなし公務員でしょう。

小泉内閣総理大臣 約四十万人の公務員のうち、圧倒的に民間人になりますよ。しかし、配達するみなし公務員、これは四十万人に比べればごく少数です。それはみなし公務員ですよ。

原口委員 配達する人はみなし公務員ですね。それから、さっき法務大臣がおっしゃった認証司、これもみなし公務員ですね。

竹中国務大臣 そのとおりでございます。

原口委員 そうすると、やはり重大な問題が起こるわけですよ。これも、民間人になったという規定になっているから争議権が生じる、争議権が生じたときに、JRとかNTTもそうだけれども、争議が起こったときにとまりますよね、鉄道がとまる、NTTも随分困ったことになる。

 だけれども、特別送達のところは、じゃ、運ぶ人たち、今おっしゃったみなし公務員の運ぶ人たちがストを起こしたときに、だれが配るんですか。だれが配るんですか。さっきおっしゃったじゃないですか。総理、私、細かいことを聞いているんじゃないんですよ。これは司法の根幹にかかわることなんですよ。(小泉内閣総理大臣「細かいよ」と呼ぶ)何で。どうして。司法の根幹にかかわることがどうして細かいんですか。

小泉内閣総理大臣 わかりやすく答弁しましょう。

 法律的にどうしても必要なもの、民間でできないものに対してはそれなりの措置を考えます。しかし、民間にできるところはほとんど民間人になってもらいます。これは極めてわかりやすい答弁だと思います。

原口委員 私が言ったことを理解なさっていないんです。全然理解していない。無理無理こんなふうに多くの国民に対して民間人をふやすなんということを言っているけれども、実は、公を担う部分というのは郵便局にはたっぷりあって、それを無理無理みなし公務員にして、そしてストがあれば、じゃ、今度は郵便認証司が配って回るんですか。そうしたら、訴状が届きませんよ。訴状が届かなくなったら、我が国の司法制度の根幹が壊れると言っているんですよ。どこが細かいですか。法務大臣。

竹中国務大臣 郵便の事業というのは、これは委員おっしゃったように、大変公的な性格が確かにございます。そこで、労働関係調整法におきまして、公益事業というふうにされております。したがって、郵便事業株式会社等の職員は、郵便の業務について争議行為をする場合は、少なくともその十日前までに労働委員会及び厚生労働大臣または都道府県知事にその旨を通知しなければならない、また、緊急調整によって五十日間争議行為を禁じられるなど、一般の事業とは異なる特別の規制を受けることになります。また、労働争議の調停につきましては、優先的に処理をされるということになります。

 すなわち、郵便事業株式会社等につきましては、突然争議行為が起きて混乱する、その生じるおそれというのはないわけであって、仮に争議行為が避けられない、仮にそれが避けられない状態となった場合でも、事前の準備が可能でございます。

 したがって、争議行為下における内容証明、特別送達につきましても、管理者による処理体制を整備しまして、当日現に必要となる処理能力を確保するという対応がとられることになるものと考えております。

原口委員 ここの委員会で答弁したことを二度聞きしているんじゃないんですよ。事前に、仮に争議行為が避けられない場合でも事前の準備が可能だと今おっしゃいましたね。これも答弁にあった。だから、わざわざ繰り返されなくたって覚えていますよ。

 では、どうして可能なんですか。どうやって可能なんですか。多くのストが起こって、それは十日とか五十日ありますよ、それで全部が麻痺したときにだれが、管理者、どれぐらいいるんでしょうか。だって、公務員減らすとおっしゃったじゃないですか。

 特別送達というのはそんなに少ないものじゃないですよ。年間四百万件ぐらいあるんじゃないですか。一日一万通ぐらい配っているでしょう、今の郵便局の皆さんが。違いますか、法務大臣。

南野国務大臣 送達の件数については今知り得ておりません。

原口委員 今、知り得ていませんとおっしゃったんですか。統計出ているでしょう。四百万通ぐらい出しているじゃないですか。三百万から四百万あるんでしょう。(小泉内閣総理大臣「後で調べりゃわかるんだから」と呼ぶ)調べてわからないから、彼らしかわからないから聞いているんですよ、総理。あなたが大事じゃないと言ったから聞いているんですよ、総理。席からやじるのやめてください。

南野国務大臣 これは昭和六十三年のあれですけれども、約四百万でございます。

竹中国務大臣 特別送達の取扱件数、ちょっと急に数字が出なくて大変失礼いたしましたが、平成十五年度の推計で約三百六十三万通というふうに承知をしております。

原口委員 年間それだけ。だから三百六十何万だったら一日一万通ですね。一日一万通だれが配るんですか。

竹中国務大臣 先ほど申し上げましたように、ストが仮に生じる場合でも事前準備が可能なわけでございますから、これは管理者による処理体制の整備、さらにはストに参加しない方々の確保、いろいろなやり方があろうかと思いますが、郵便事業そのものが総務大臣の一般監督下にも置かれておりますので、これは協力をしてしっかりとした体制をとるということになります。

原口委員 国民の皆さんはよくおわかりだと思います。二万四千六百のうち集配しているのはどのぐらいあるんだ。

 生田総裁、今竹中大臣がそういう答弁をされましたけれども、本当にむちゃくちゃなことを言って、できないこともやると。私は、システムについても本当に考えにくいことをやっているなと思います。

 一問目は生田総裁、さっきの竹中大臣みたいな、準備ができるのかと言われたら、やりますと言う以外ないかもわからないけれども、しかし、本当にできないことはできないと言った方がいいですよ。システム開発についても、これも総理はむちゃくちゃ急いでいるんですよ。

 加藤委員会ではベンダーを呼んで、やり切れないことが検証されているじゃないですか。そこで、また総理お得意かしらぬけれども、逆転の発想で、二〇〇七年の四月までに間に合うものだけで暫定的にスタートしてほしいという強い要請があったので、生田総裁は、政府の御意思であればそれは甘受します、ただし、金融庁の規則だとか商法、会社法に対する不備が出てくるので、セーフガードを張っていただくことを前提に最善を尽くすこととしたというふうに言われています。

 この商法上あるいは銀行法上あるいは会社法上の不備、例えば、システムなんて中途半端でスタートして、いや万全だといってスタートした銀行だって、つい最近ありましたね。そして、その責任を問われて業務改善命令やさまざまな批判あるいは訴訟になるわけですよ。もしシステムがダウンして、これだけ巨大なシステムがダウンして、そして国民に不測の事態が起こったり、あるいは大きな損害が起こったときに、この責めはだれが負うんですか、生田総裁。

生田参考人 簡単にお答えします。

 システム問題をどうするかというのは、私は初めから本格対応でスタートするものだろうと思っていましたから、暫定とか本格というのは今出てきている言葉で、その意味でできないということを去年八月末から九月ごろ申し上げまして、最後は総理にお目にかからせていただいて率直に申し上げました。

 総理も大変率直に、そう言われれば、自分もシステム、そんなに詳しいわけじゃないから、第三者にきちっと見てもらってその結果をお互いに尊重することでどうだろうかと言っていただいたので、私は非常に公正だと思ったから、その場で、それはいいアイデア、私はそれはお受けしますということになって加藤委員会につながるわけですね。

 加藤委員会は、私が考えていたようなというか、今のいわゆる本格対応、四千二百万ステップスの開発が要るんですが、それはやはりとてもじゃないけれども間に合わないと。だけれども、これは政治日程でいらっしゃるのかなと思いますが、二〇〇七年四月にはやはり民営・分社化を進めたいという御意向があったのは、これは事実だと思います。

 そういったことで、それなら、四月までにできるもので何とか暫定でできないかというお話があり、これは加藤検討委員会も、一定の条件を満たせば、それで暫定でいけるんじゃないかというお話もあったので、私としては、やはり経営責任がありますから、中途半端なことはできないから、我々でできる応急手当てはいっぱいあります、例えば、窓口会社が新規開発はほとんど間に合わないとか、いろいろなシステムが間に合わないところは、マニュアルでできるものはマニュアルでやる、ただ、私どもの努力でできない面がある、それは法的なことあるいは金融庁のガイダンスであるとか、そういうことですから、そういったものは私どもの努力では手に負えないから、ひとつ政府の方できちっと、それで市場の信認を失わないようにセーフガードを張っていただく、そういう前提でお受けしましょう、こう申し上げたので、そういう前提でやっていただく限りにおいては私の責任だと思っています。万全を期すために努力を当然いたしていきます。

 ただ、今ちょっと心配しているのは、こんなところで余り率直なことを言っていいのかどうかあれなんですけれども、暫定対応千七百万です、四千二百万ステップス中の千七百万。これもやはり要件を凍結してから、これでやれと言ってから応分の期間が要るんですよ。とりあえずは二十カ月とか二十一カ月と言っていますが、多少縮められるでしょうけれども、余り結論が出るのが遅くなると凍結のタイミングがずれますから、これは暫定といえどもちょっとその分難しくなるのかなという感じがありまして、極力、できることならば、民営化するのであればそういう御指示をお早目にいただいて、要件を凍結して、それでテストランというのをやるんです、チョンボが起こらないように。それを六カ月予定していますけれども、それができるだけ短縮しない格好でやらせていただければありがたいなと思っております。

 万全を期しますけれども、もし問題があれば、やはり現場の責任者ですから、私の責任だと思っています。

原口委員 私は、これだけテロだ何だと言っているときに、お隣の中国の例を挙げて悪いけれども、資金は物すごい勢いであそこに集まっている、そして過熱している、もうPKOしなきゃいけない、あるいはいろいろなバブルも心配しなきゃいけない、あるいはテロリストが、まさに金融テロを企画している。そんなときに、暫定対応でスタートして、バグを入れられたり、あるいはテロリストでなくても、通常のオペレーションでも、それを、では、民間会社ですから、何か責めがあれば、私が損害を受けたとしたら、生田総裁に損害賠償請求をするんですね。賄い切れますか。

 私は、そんなことやるべきじゃないと思うんです。システムは万全になって初めてやらなきゃいけないんですよ。法案も通る前から皆さんはシステムを改変しているじゃないですか。私はこの法案は絶対廃案にするべきだと思っているけれども、修正の話もだれかがやっている。修正になったらまた別のお金をかけてやるんですか。私はこんな無責任なことはないと思う。

 今、これは国民の資産なんですよ。総理は民営化してもう民間会社みたいに思っていらっしゃるかもわからないけれども、国民の資産なんですよ。国民の資産を、法案も通らないのに、勝手に次のプログラムを進めていいんでしょうか。いかがですか。

生田参考人 責任がとれるのかというまず御質問があったんですが、責任、どうとるかという内容はもちろんありますから、私個人でとり切れない面もそれは多分にあると思いますけれども、やはり私が一応御要請を受けてお引き受けする、ただしセーフガードだけはきちっと張ってくださいよということをお願いしているわけですから、そこをきちっと張っていただき、また、今想定している応分の開発期間をいただいたら、第一義的には私が責任をとるべきだろうと思っております。

 ただし、先生御指摘のように、とれるような責任じゃないですからね、実際上、大きさからいったら。だから、私の心の中にあるのは、とにかく、暫定対応とはいえ、たった四千二百万分の千七百万しかできないんですよ。あとはマニュアルでカバーしたり、いろいろなことをやるわけです。だけれども、暫定対応とはいえ、とにかく事故が起こらないように万全を期すことであろう、かように考えております。

原口委員 いや、総裁、率直におっしゃっていると思いますよ。何かわからないけれども政治が無理無理やれと言うから、自分はそれを引き受けるけれども、率直に言って、総裁がおっしゃっているのは危ないですということじゃないですか。

 そして、セーフガードを張ってくれと今も繰り返しておっしゃいましたけれども、セーフガードは張られていますか。例えば会社法で、株主が総裁にあなたの経営責任だ、あなたは絶対間に合わないと言っていたけれども、小泉総理が早くやれとおっしゃったから、逆転の発想でやらざるを得なかった、こんな言いわけをされても株主は聞きませんよ。

 恐らく総裁個人の責任では払い切れないような損害といったことも場合によっては起こる。じゃ、そのときに何が起こるかというと、それは国民負担じゃないですか。総理がおっしゃった、政治がやった、だからそれは国家賠償ですという話になるんじゃないですか。私は、そんなことは絶対にやるべきじゃないと思う。無責任だと思う。

 総理が、公正に皆さんの意見を聞かれたと言うんだったら、できないという意見を聞くべきじゃないですか。できないと加藤委員会が言ったと今おっしゃったじゃないですか。じゃ、できないとやればいいじゃないですか、総理。

小泉内閣総理大臣 システムの問題については、先ほども答弁いたしましたように、私は専門家ではないから生田総裁と相談して、専門家の意見を尊重しましょうということで、これならできるということで、そのための制度設計をしたわけであります。

原口委員 いや、こういう無責任な答弁では私はだめだと思う。せっかく、公正に専門家の意見に耳を傾けようといったら、素直にそれを聞けばいいじゃないか。聞かないで逆のことをやる。

 さっきの三十五兆円についても、残高三十五兆円というのは皆さんの数字じゃないですか。これは、あなたのところが出した数字ですよ。あなたのところが出した数字を僕は加工したんですよ。本当に信じられない。違いますか。残高三十五兆円というのは、あなたの、政府が出した数字でしょう。私がつくった数字みたいに言うな。

竹中国務大臣 先ほど、こちらの方でも確認しますと申し上げましたが、私が申し上げたのは、貸し付け等信用リスクをとるビジネスで三十五兆、貸し付け等でございますから、その中には貸し付け以外のものも入っているわけでございます。先ほど独禁法との関係で貸し出しのことが議論になっておりましたので、貸し出しだけで三十五兆円ではない、貸し付け等その他のものでということで、こちらの資料のことを言わせていただきました。

 そのような趣旨でございますので、御理解を賜りたいと思います。

原口委員 では、貸し付け等の等をつけてくれと言えば済む話じゃないですか。

 では、貸し付けは幾らですか。

竹中国務大臣 信用リスクビジネスという枠組みで三十五兆程度ということを想定しておりますが、その中で、貸し出しに重点を置くのか、債権の買い取りに重点を置くのか、それはまさに、その時々の状況を判断した経営者の判断、ビジネスモデルでございますから、そういう経営者の判断に立ち入ったようなことは、私たちはしておりません。

原口委員 都合のいいときは自分たちの楽観的な数字を出して、さっき安住さんがやっていたけれども、骨格経営試算のところだっておかしいじゃないですか。おととい西村智奈美さんがやったけれども、コンビニで九%、むちゃくちゃな話じゃないか。一般の保険の皆さんが一生懸命汗を流していらっしゃる、その人たちと同じことを、いや、それ以上のことを私たちはやります。

 都合のいいときにはそういう数字を出して、今度は、独禁法とどれぐらいでかかるかわからない、都合が悪くなれば、それは経営者の判断です。あなたは、ほとんど経営者の判断じゃないですか。これも資料に、あなたがいろいろなところで、何でもかんでも経営者の判断なんですよ。本当にそれでいいんですか。片っ方で経営者の判断と言いながら、この新しい郵貯バンクには本当に大きな規制をかけている。縛りまくっている。

 そして、もう一個聞いておきますけれども、連続的保有とは何ですか。株を連続的保有する、これは何ですか。教えてください。

竹中国務大臣 試算は民間準拠でしっかりやっているつもりでございます。

 それで、連続的保有でございますけれども、これは、銀行と保険というのは信用が何といっても絶対的に重要なビジネスでございますので、国の関与というのをしっかり断ち切るという意味で、十年で一〇〇%完全処分ということを義務づけているわけでございます。

 その上で、完全処分された後につきましては、これは、通常の民間の会社でございますから、持ち株会社等々特殊会社におかれては、特殊会社のそれぞれの制約の範囲で、かつ銀行法、独禁法等の一般法規を適用されて、経営判断によって株式を所有することを妨げるものではない。結果的にそれが連続的保有を可能にするということを政府・与党の合意で確認しております。

 加えまして、株主の権利の行使という観点からは、これは何が一番重要かといいますと、やはり株主名簿に連続してその名前、株主の記載があって、配当を受けたり議決権を行使したり株主としての権利を行使するということでございますから、これが民有民営になる直前の年と直後の年とを連続してそういう状況になるために、株主の確定の基準日につきまして、そういうことがしっかりと確定されるような基準日のあり方を定款で定めるということを考えております。

原口委員 そうすると、では一回処分するわけですね。これは、処分信託とかそういったものですね。いわゆる完全売却、株を市場でみずから売却するだけじゃないというふうに理解していいですね。

竹中国務大臣 今も申し上げましたように、これを義務づける趣旨は、これは、信用が重要な金融業において国の関与を断ち切るというところに意味がございます。

 その意味では、売却を行って所有権がなくなるというのは非常にわかりやすいケース、典型的なケースでございますけれども、それだけに限らない。株式の相場等々で後々マーケットに売却を出す方が有利な場合もこれはあり得るわけでございますから、そういうことも想定されますので、完全処分としましては、所有権が何らかの形で戻ってこないような形の処分型の信託、信託といってもいろいろあるようでございますけれども、後々所有権が返ってくることがないような、そういう枠組みで決められた処分型の信託等々、そういう形も処分の中には含まれるというふうに考えております。

原口委員 私は、そこの合理性が全くわからないんですよ。

 連続的保有を認めるというんだったら、何で一回完全売却した、いや、処分という言い方にしてもいいですね、処分したものを買い戻さなきゃいけないんですか。買い戻すのにもコストがかかる。そして、あなた方の試算でいけば、右肩上がりの試算を示していらっしゃいますよね。皆さんがおつくりになる郵便のさまざまな六事業というのは右肩上がりに上がっていくわけでしょう。そうすると、十年後に完全処分をしたら、そのときよりも今度買うとき高くなるじゃないですか。

 結局、ここを詰めておきたいけれども、何%ぐらいまで買えるんですか。どれぐらいまで買い戻すということを想定しているんですか。それはもう、やはり経営者の判断ですか。

竹中国務大臣 完全民営化をしました後で、銀行、保険は、これは普通の銀行、普通の保険会社になります。そして、持ち株会社及びその子会社がその経営判断によって、独禁法とか銀行法等の一般法規制のもとで、各特殊会社という範囲もありますけれども、その規制の範囲内で銀行や保険の株式を取得することは、これは可能でございます。

 郵政株式会社及びその子会社が、例えば資産運用の一環として、普通の銀行、普通の保険会社になったところの郵貯銀行、郵便保険会社の株式を取得することについて、これは、各特殊会社法上特別な規制はございませんので、独禁法、銀行法等の一般的な規制で考えるということでございます。

 また、日本郵政株式会社、その子会社が、業務として銀行または保険業に資本参加するために株式をストックする場合は、これは、先ほど言いました独禁法、銀行法等の一般的な法規のほかに、それぞれの特殊会社に基づく主務大臣の認可または届け出が必要になるという根拠の法律がございます。資本参加の必要性でありますとか本来業務への支障があるかないかといったような点を総合的に勘案しまして、主務大臣がそれを適切に判断するということになります。

原口委員 連続的保有というのは、結局何のことかよくわからないということですね。これが答えです。全然わからないじゃないですか。高く買い戻さなきゃいけなくなるんじゃないですかということを言っているんです。そうでしょう。そうですと言えばいいじゃないですか。

 小泉内閣になって、よく竹中大臣はリスクマネーとおっしゃいますけれども、リスクマネーってなんですか。国民はリスクマネーを求めていますか。逆でしょう。安定的に自分たちの、暮らしのインフラをこれ以上もう破壊されたくないというのが国民の声じゃないですか。

 日銀の理事にも来ていただいていますけれども、小泉内閣になってからどれぐらい預金は減りましたか、一世帯当たり。そして預金を持っていない世帯はどれぐらいありますか、教えてください。

稲葉参考人 お答え申し上げます。

 今委員がおっしゃった傾向でございますけれども、金融広報中央委員会の調べ、データによりますと、二人以上の世帯一世帯当たりの金融資産の保有残高、これは預貯金も含みますけれども、十六年度調査では千五十二万円でございました。四年前の十二年調査では千二百四十六万円でございましたので、比較いたしますと二百万円ほど減少しているということでございます。これは、大きなところは貯蓄型の保険などが減っておりますが、預貯金だけを見てみますと約七十万円ほど減少しております。

 また、同じように調査で、貯蓄を保有しているかどうかという質問項目がございます。これはお金を持っているか持っていないかということではなくて、預貯金もある、あるいは、現金も持っているんだけれども積極的に貯蓄をしているかという問いでございますが、そういう意味で、貯蓄を積極的に資産運用としてやっているというふうに認識していない、つまり貯蓄を保有していないとお答えになった先が、十六年度調査では二二・一%でございました。

原口委員 預金を切り崩しているんですよ。日銀総裁がかつて我が党の岩國議員の問いにお答えになりましたけれども、この十年間で得べかりし利子を百五十四兆国民は失っている、こういう数字でした。

 私は、このお金が本当に民に流れると思っていないんです。この法案を精細に見ると、国債を保有できるような仕組みばかりをやっているんです。民間に流れる仕組みじゃないというのは、午前中、海江田議員が言いましたけれども、金融機関イメージ、ここに持ってきました。利用したい金融機関、一位、郵便局です。対応がよい金融機関、郵便局です。そして、簡保の例を持ち出すまでもなく、だれでもどこでも利用できる、これは国民のインフラじゃないですか。そこをわざわざリスクマネーをとる必要がありますか。

 私は財務金融委員会の筆頭理事ですけれども、さっきこれは海江田議員が出しました。銀行は貸し出しをどんどんどんどん落としているんですよ。国債ばかり保有しているんですよ。これと同じようなメガバンクをつくる理由がどこにありますか。今でも、公的資金を入れた、自己資本に注入した分だって、八兆円ぐらいは返ってきていないじゃないですか。

 それを一方で、ではまた大銀行と消費者金融、預金がゼロの人たちはどうやって暮らせばいいんですか。不慮の事故が起こったり、病気になったとき、どうやってやるんですか。一年間に銀行に百万円預けておいても、この間、〇・〇〇五という数字を麻生大臣はおっしゃったけれども、〇・〇〇三ですよ、三十円にしかならない。一方で、不慮の事故やいろいろなことでお金が必要になったら、最高二九・二%。御利用は計画的にと言われたって、計画できませんよ。

 いずれにせよ、これだけの国債残高、これは国内でだれかが持つんでしょうか、財務大臣。海外に持たせるんですか。つまり、公的なお金というのはここに張りついたままなんですよ。ここが改革の本丸なんですよ。

 総理、総理は松沢さんとの本の中で、郵貯の改革、郵便事業の改革というのは行政改革なんだと、まさに特殊法人に流れている金を遮断するんだとおっしゃっている。私も特殊法人の改革をずっと叫んできて、いろいろなものを取り上げてきた。だったら、財投債にことし四十一兆円も行っているんですよ、それをなくすのが一番じゃないですか。郵便局を民営化することじゃないんじゃないですか、総理。総理、今でもやれるんですよ。財投債の発行を予算から外せばいいんですよ。首を振っていらっしゃいますが、どうしてですか。

小泉内閣総理大臣 後から財務大臣が答弁いたしますが、それでは、今のままで官のお金が民に行くんですか。そうじゃないでしょう。財投債におきましても、急激に廃止することはできません。平成十三年度に預託制度を廃止しましたけれども、貯蓄から投資へという流れをつくらなきゃいけないというのは民主党も同じだと思います。そうでしょう。官のお金を民間に使う、これも同じだと思います。今の郵政公社のままで、安全な、リスクを伴わない資産管理をしなきゃならないといったら、必然的に国債に行くじゃないですか。

 今回、民間になれば、国債を買ってもよし、ほかの方に投資してもよし、より民間に資金は流れていく。それを一挙にやれなんてできるわけないじゃないですか。そのぐらいわかるでしょう。

原口委員 一気にやっているんじゃないですよ。逆にふやしているんです。

 それで、民のお金じゃないんです。官のお金じゃないんです。民に流すんだったら、ローンだって、いろいろなベンチャーローンだって組めるじゃないですか。それを野方図に流して国民を苦しめているのが小泉内閣だ。一刻も早い退陣をお願いしたい。そうでもないんだったら、解散して国民に信を問うてほしい。

谷垣国務大臣 今、原口委員が財投債のことをおっしゃいました。四十兆ぐらいの規模だとおっしゃいまして、これまで年間四十兆から六十兆出してきたのは事実です。

 しかし、これは、今まで郵貯、簡保から財投に預託されてきた、その預託金を返さなきゃならないということでやってまいりまして、平成十九年度で基本的に終わります。それで、平成十七年度の財投計画は十七・二兆でございますし、市中で発行している財投債は十二兆ですから、もう随分、委員のおっしゃる数字よりもスリム化してきているということを申し上げたいと思います。

原口委員 郵貯、簡保で買うなということを言っているんです。

谷垣国務大臣 財投債で引き受けるのは十九年度までということは、今度の法案にも明記をいたしております。

原口委員 では、特殊法人にその官のお金は行かないということじゃないですか。

二階委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 郵便局は、身近で役に立っている存在でございます。特に郵便貯金は、国民の零細な資金を安心して預けられる。一番多いのは二百万円程度の貯金でございます。家族の中でだれかが利用している。貯金の目的は、老後のため、不慮の災害や病気に備えてというのが一番多いわけですね。

 この国民の大事な財産である貯金を安全確実に運用してしっかり守る、そういう金融サービスをすべての国民が受けられるようにする、これが政府の大切な責務だと思いますけれども、まず、総理大臣の見解をお聞きしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 金融機関の健全性、信頼性、これは極めて重要なことだと認識しておりますし、そのような改革を今進めているところでございます。

佐々木(憲)委員 今、国民の中で、民営化して一般銀行のようになったら身近なところでそのサービスが受けられなくなるのではないか、こういう不安が広がっているわけです。

 前提として確認をしておきたいんですけれども、貯金事業が民営化した場合と公社を維持した場合、採算の見通しはどうか。まず、民営化した場合、骨格経営試算で郵便貯金銀行の二〇一六年度の利益は幾らになるか。長短スプレッド一%という厳しい金融環境になった場合の数字を示していただきたい。

竹中国務大臣 これは二〇一六年度ということですね。長短スプレッド一%の場合の収益は幾らか。郵政民営化準備室で、民営化後十年間の民営化四会社の収益水準を見積もるという試算を行っております。

 このスプレッドが縮まるという意味でリスクシナリオでは、二〇〇七年度から二〇一六年度までの移行期間に、そのスプレッドが一・三%から、委員の御指摘のような一%に縮小するという前提によりますと、郵便貯金銀行は二〇一六年度には六百億円の赤字になるというふうに試算をされております。

佐々木(憲)委員 六百億円の赤字になる、民営化したらそうなると。非常に大きな赤字であります。

 では、郵政公社が続いた場合はどうか。預金保険料も手数料への消費税も払わなくて済みますから、そのコストは千九百八十三億円少なくて済むわけですね。したがって、千三百八十三億円の黒字になる、そういう計算になりますね。

竹中国務大臣 まさに、民間に比べて、税金を払わなくていい、そして預金保険料を払わなくていいという優遇があるわけですから、その優遇があればそのような数字になります。

佐々木(憲)委員 今の答弁で明らかなように、郵便貯金事業の利益でありますが、郵政公社のままなら黒字が一千三百八十三億円、民営化された場合には赤字が六百億円、今大臣がお認めになったわけであります。

 郵政公社のままであれば、例えば納付金を納めた場合でも六百九十二億円の黒字になるわけであります。民営化された郵貯銀行の場合は、六百億円の赤字ですから、これは法人税も払えない、こういう悲惨な事態になるわけですね。金融環境が悪化しても、郵政公社の場合は黒字でやっていけるけれども、民営化された郵貯銀行は二〇一六年以降もずっと赤字が続くというのが今の答弁でございます。これでは、わざわざ赤字にするために民営化するようなものじゃありませんか。

 先ほど、新しい事業、盛んにそういうことをやるんだとおっしゃいましたけれども、果たして、新規事業をやるということで利益が出るんだろうか。

 総理にお聞きしたいんですが、六月三日、この委員会の答弁でこのようにおっしゃっています。公社でやる限りは制約があります、資金運用においても安全を重視しますから、なかなか、ある程度収益は上がるけれどもリスクをとるという場合については運用しにくいというふうに述べました。

 総理、リスクをとるということはどういう意味でしょうか。

小泉内閣総理大臣 公社である限りは、やはり安全運用が重要ですね。リスクなり、ある程度収益が予想されても、多少リスクのある資産運用はできないでしょうね。そういう点から、民間になれば、そういう点について経済的にも活性化させる作用が働くと私は思っております。

佐々木(憲)委員 活性化すると言いますけれども、非常に危険性を伴うんだと私は思うんですね。

 例えば、金融検査マニュアルがここにあります。リスクをとる場合の信用リスクというものは一体何か、これを規定しているわけです。こういうふうに書いてあるんです。「信用供与先の財務状況の悪化等により、資産の価値が減少ないし消失し、」つまり失われ、「金融機関が損失を被るリスクである。」リスクというものはこういうものなんだと。

 伊藤金融担当大臣、こういうことですね。

伊藤国務大臣 お答えをいたします。

 検査マニュアルにおきましては、今委員が御紹介されたような規定になっているわけでありますけれども、このように規定をいたしておりますのは、金融機関の役割が、信用リスクを初めとした諸リスクについて適切な管理を行いながら必要なリスクテークを行っていくことにあり、そうした機能を前提としたときに、信用リスクを適切な水準に管理し、リスクに見合った収益を確保するための管理体制の整備が求められているからでございます。

佐々木(憲)委員 つまり、大変大きなリスクがある、したがって、管理をきちっとしなさいよ、こういう話ですね。だから、信用リスクというのは非常に危険だということなんです。

 例えば民間銀行のホームページも、開いてみますと、こういうふうに書いているんですね。信用リスクは銀行が保有する最大のリスクであり、信用リスクの管理が不十分であると、リスクの顕在化に伴う多額の損失により経営に甚大な影響を及ぼしかねません。つまり、もうかるときはどんともうかるけれども、失敗をしたら大損害になる、これがリスクをとるということであります。簡単に言えばそういうことなんです。極めて危険なことでございます。

 今国民が求めているのはそういうものではないと思います。安心して預けることができるのが貯金でありますから、利幅が少なくてもいいから堅実で安心できる運用をしてほしいというのが、圧倒的多数の国民の皆さんの願いではないか。だから今そういう運用をしている。先ほど小泉総理も、公社の場合は着実に安全な運用をする、しているとおっしゃいました。それを国民がまさに願っていることではないんだろうか。

 新しい事業をやるといろいろおっしゃいましたけれども、新規事業の内容というのは具体的に何でしょうか。民営化準備室が出した資料、採算性に関する試算というのがありまして、この中に、新規事業の内容についていろいろ書いております。

 例えば、貸し付け、シンジケートローン、私募債、株式、クレジットスワップ、CDO、ABSなど証券化関連商品、ファクタリング、ローンパーティシペーション、保証業務、こういうふうにいろいろ書いているわけです。

 こうなりますと、これはもう聞いただけで頭が痛くてよくわからない。複雑で、極めて投機的な性格を持つものを含む、そういう運用先であります。もともと、郵貯銀行というのはこういう運用をやったことがないんです。それができる人材もノウハウもほとんどない。

 そこで確かめたいんですけれども、今私が紹介をいたしましたこの準備室の出しております運用先、この中で元本割れが絶対に発生しないというものはありますか。どれですか。

竹中国務大臣 この三十五兆円の信用リスクビジネスの例示として掲げておりますので、信用リスクビジネスでございますから、元本割れがしないというものは、これは当然ないわけでございます。しかし、これは決して投機的な商品ということではございませんで、リスクとリターンを適切に管理する、それを段階的にノウハウをつけながら行っていただくことによって、民間にもお金が回る、公社の収益力も高まる、そのような姿を想定しているわけでございます。

佐々木(憲)委員 今はっきり言いましたね、元本割れがしないものはないと。元本割れの可能性がある。つまり、国民が預けた零細な預貯金、零細な貯金ですよ。子供たちも正月にお年玉をもらって預けに行く、そういうものを本当に安心できるような運用をしてもらいたい、堅実にやってもらいたい、これが圧倒的多数の国民の願いです。ところが、民営化をする、そのときの運用先というのは、今言ったように、元本割れするものが、可能性のあるものが全部であると。元本割れの発生しない運用先は一つもない。

 ですから、私は、先ほど言いましたように、まずベースが民営化したら赤字になる。赤字になった上で、しかも、その上に今度は、元本割れする可能性のある運用をする。それは、もうかるときはいいかもしれないですけれども、しかし、やってみないとわからない。ある意味ではばくちみたいなものであって、これをやって元本割れしたら一体どういうことになるのかという点を考えなければならないと思うんです。

 ノウハウもないのに、元本も保証されないような運用をやる、それはできるわけがないわけですから、結局、この三十五兆円もの資金運用の大半を投資顧問会社あるいは金融機関などにゆだねる以外にはありません。結局、庶民の零細な貯金が食い物になるだけじゃありませんか。運用に失敗して貯金銀行が破綻したら、ユニバーサルサービスもずたずたになるんですよ。膨大な税金も投入しなければならない。そんなリスクを冒してまで、何で民営化しなければならないのか。

 私は、根本的なこの発想が間違っているというふうに思います。結局、郵貯、簡保など三百四十兆円の国民の資産を日米の巨大資本に明け渡すということになるんじゃありませんか。いかがですか。

竹中国務大臣 佐々木委員はばくちのようだというふうに言われましたが、信用リスクビジネスとばくちとは違います。これは厳然と異なりますので。

 これは、市場の経済の中でリスクとやはり正面から正しく向き合って、このリスクを適切に管理していくことこそが私たちの社会に必要なことであって、そのリスクを乗り越えていかないと、リスクを封じ込めたり、市場の一部を硬直化させてリスクを反映させないようなシステムをつくってしまうと、かつてのソ連邦のように崩壊をしてしまうということではないかと思います。

 やはりリスクをしっかりと管理していく、そのための適切な制度をつくっていくことが必要であろうかと思っております。

佐々木(憲)委員 リスクを乗り越えていかないととおっしゃいましたけれども、何でリスクをわざわざ導入しなければならぬのか。ソ連の問題を出しましたけれども、そんなのは関係ないですよ。

 今あなた方がやろうとしているのは、まさに公社を崩壊させようとしているんだ。民営化によって国民の貯金を、運用そのものを、ばくちのようだというのは、素人がやったらばくちになるじゃありませんか。そういういいかげんな民営化によって国民の資産を危険にさらす、絶対にそんなことは認められない。

 公社のままだと、例えば準備室の計算を見てごらんなさい、今から十五年先までずっと黒字が続くという試算が、あなた方の試算によっても明確になっているじゃありませんか。利益は少し減るかもしれないけれども安定した経営ができるというのが、政府の試算でもそうなっているわけです。

 我々は、今ある公社のさまざまな不十分な問題はあると思います。それは、公社のままで改革を進める。例えば、労働条件の改善、国民サービスの向上、こういうことをしっかりやっていくというのが本来の改革じゃないんでしょうか。それをやらずに、そういう危険な方向にのみ何か活路を求めるというのは、私は、改革とは全く違う方向に行っていると言わざるを得ません。

 公社の改革を進めながら、将来にわたって確実にやっていくということが本来の改革のあり方であります。今、例えばサービス残業の問題など、いろいろあります。ここでも塩川議員が指摘をして、改善の方法が出てきたけれども、そういう問題を解決していくというのが改革なんですよ。

 国民の財産を危険にさらすというのは改革ではない、民営化法案は廃案しかない、このことをはっきり申し上げまして、質問を終わります。

二階委員長 次に、横光克彦君。

横光委員 社民党の横光克彦でございます。

 総理に質問させていただきます。

 午前中も紹介されましたが、直近の国民の声がきのう読売新聞で示されました。郵政民営化を最優先課題にするということは納得できない、こう言った国民が六五%おるんですね。そして、民営化に反対あるいは慎重に審議すべき、いわゆる今国会にこだわる必要はないというのを合わせますと七六・五%。これは物すごい数だと私は思うんですね。

 その中でもとりわけ注目しなければならないことは、優先順位ですね、いつも言われている優先順位。十七項目中十六番目。これも、幾つ答えてもいいという問いなんですね。ですから、やってほしいことはいっぱいあるでしょう、三つか四つ挙げて、それでも郵政民営化を毎日毎日聞かない日はない、そうだ、郵政民営化もやってほしいなというふうにして書く人がおってもいい。しかし、何といないんですね。十六番目。一つに絞られているならわかりますが、幾つ答えてもいいというのにこういった結果でございます。なぜこのような国民の声が出たのか。私は、郵政公社そのものが信頼されているからではないか、このように思っているわけですね。

 その郵政公社は今どのような状況にあるか。つまり、国民から見て、郵政公社はうまく機能しているじゃないか、何ら不都合なところはないじゃないか、だから、不平や不満、あるいは民営化してほしい、早くしてほしいという声は上がらないわけですよね。この国民の声の裏には、郵政公社の皆様方の物すごい努力があったからだと思うんですね。国民の、地域の人たちの、利用者の信頼を得るために大変な努力をされてきた。これは、郵政事業庁から郵政公社の現在になるまで、何と三万人の人員削減、経営効率化に血のにじむような努力を総裁初め職員一体となってしてきているわけでございます。これが一つ。

 そして、いわゆる中期経営計画、総理がつくった法案です。総理が、中期経営計画を四年間やって評価して報告しなさいよ、しなければなりませんよ、そういった法律をつくっておきながら、それをほごにして、そしてちょうど中期経営計画の二年目でありますが、この間大変な改革に取り組んできた。そして、郵便は何と二年間黒字という形にまで持ってきた。こういった努力みたいなものがやはり国民の信頼へとつながっていると思うわけでございます。その郵政公社を総理は民営化しようとしている。そして、民営化しさえすればすべてがうまくいく、まるでバラ色のようなことをおっしゃっているわけでございます。

 仮に百歩譲って、九月の基本方針にのっとった法案であるならば、それはまた国民から見ると非常にわかりやすいと思う、郵政公社か完全民営化。非常にわかりやすい。しかし、残念ながら、今ここで審議されている法案は、政府の方が妥協に妥協を重ね、譲歩に譲歩を重ねて、まるで、白でもない黒でもない、灰色のダーティーな法案になって、中途半端な法案になっている。これがこの二週間の国会審議ではっきりしてきておりますよ。ですから、国民の皆様方にとって、公社ともとれる、あるいは民営化ともとれる、こういった中途半端な法案こそ国民にとって不幸なことはない、私はこのように思っているわけでございます。

 さらに、政府・与党が一枚岩で出した法案でもない。与党内の良識派の皆様方が修正を求めたり、あるいは地方や利用者のことを心配されている意見を質問されております。こういった、与党内にも良識のある方はたくさんおられる。そういうふうに、中身も手続も欠陥だらけであり、言えば、百害あって一利なしの法案である、私はこのように断ぜざるを得ません。このことを冒頭に強く訴えておきます。

 また、質問でございますが、官から民への資金の流れというのを冒頭お尋ねする予定でしたが、これは先ほどと重複いたしますので、ちょっと後に回させていただきます。

 いろいろと、民営化すればバラ色みたいなことをおっしゃっておりますが、それがいかに詭弁であるかということをちょっと例を挙げながらお尋ねしたいと私は思うんです。

 まず、郵政民営化が小さな政府の象徴として語られておりますが、郵政公社の職員を非公務員にするということで、国の負担、国民の負担が果たして減るのでしょうか。お聞かせください。

竹中国務大臣 郵政公社は、よく言われる、国家公務員であるけれども、その中の、みずからの資金でコストを賄っている、人件費を出している、そういう限りにおいて問題はないのではないかという御指摘と存じますけれども、二点申し上げたいと思います。

 公社としては、しかし、それでも例えば預金保険料を払っていない、ないしは税金等々の負担が軽い等々、国民から見ますと、形を変えた見えない補助金がやはりあるというように認識をしなければいけないのだと思います。そういう意味では、国民は常に負担をしているわけでございます。とりわけ政府が保証している、預金を保証しているということは、この瞬間も政府に保証債務が発生しているわけでございますから、これは国民の負担であることは間違いない。

 そういう点から、やはり小さな政府をつくる。国家公務員でなければできない仕事ではないわけですから、これをできるだけ民間にゆだねるという意味で小さな政府をつくる、その郵政の民営化というのはやはり重要なポイントであると思っております。

横光委員 まさに、それは国民への説明になっておりません。

 私は、国民の負担は減るのかと。例えば二十七万人の郵政の職員の皆様方、現在この給料は国の税金も補助金も一銭たりとも受けていないわけですね。給料だけではありませんよ。給料だけでなく、例えば年金の、基礎年金部分のいわゆる事業主負担分、それから国庫負担分、これも全部郵政事業の収入で賄っているんですよ。国には一切迷惑をかけていないわけです。また、郵政公社の職員は総定員法による定員管理の枠から既に外れているわけですよ。対象にはもうなっていない。そういった状況であるということでございます。

 ですから、郵政民営化で公社職員を公務員から民間人にしたからといって、国の公務員を減らす意味にはつながらない、国民の税負担が軽くなるということにはならない、そういったことだと私は思うんですが、意外と国民の皆様方はこのことを御存じないんですよね。郵便局の皆様方の給料は自分たちの税金ではないのか、それなのにあんなに一生懸命やってくれるのかと、今改めてそういった認識をされた方が多いんじゃなかろうかと思うんです。

 こういうふうに、あたかも非公務員にすればそれだけ税負担が減るんだというようなイメージをどうも与え過ぎている嫌いがある。こういったところが一つの説明不足という国民の声につながっている、私はこのように思うわけでございます。

 また、民間でできるものは民間で、確かにそのとおりだと思います。しかし、民間に任せるのは、民間にできることだけでなければならないと思うんですね。民間でもできない分野、採算を度外視して国民の生活を守るために必要な分野、例えば消防にしても警察にしても、そういうところはあるんです。ですから、そういった国民の生活を守るためには、国民は税金を払うことには何ら文句は言いません。私は、郵政三事業はそういった分野であろうと思うんですね、これまでの経緯からして。

 ですから、先ほど安住議員の紙芝居で、「そして誰もいなくなった」、残ったのは郵便局の廃局だけであるという紙芝居がございましたが、私は、そのような状態が絶対起きてはならないと思うんですね。つまり、北海道だろうが、沖縄だろうが、どんな離島だろうが、過疎地に住んでいようが、国民ひとしく同じサービスを受けることができる、これは一つは教育であり、一つは郵政三事業だと私は思うわけでございます。

 そういった意味で、国民からすると、説明不足によって、ああ、郵政の皆さん方の、局員の皆様方の給料はそういった状況なのかということが、そういったことも、やはりプラスばかり説明しないで負の部分も説明しなきゃいけない、こういうことを申し上げておきます。

 また、もう一つ、今度は、民営化によって大変新たなコストがかかるわけですよね。公社のままで、このままやれば何ら不平不満もない中で、一銭も国民の負担はかからないで済むことができるにもかかわらず、これを民営化することによって膨大な新たなコストがかかる。このコスト、これは民営化コストも一緒に議論しなければ公平でないと思うんですよ。国民は、このコストのことも意外と御存じないんじゃないかと私は思いますよ。ただただ、プラスの面だけは政府広報も広報誌でやりますが、こういったコストがどれだけかかるかということを意外と知らないと思うんですね。

 例えば、まず、郵政公社が民間に移る場合のコストの前に、民間でできることは民間でと言いながら、その民間の金融機関にこれまで公的資金がどれだけつぎ込まれましたか。四十六・七兆円もつぎ込まれておるんです。民間にできることは民間でと言いながら、民間でできないから公的資金を四十六・七兆円もつぎ込んでいる。しかも、そのうちの十・四兆はもう返ってこないんです。国民の負担ということが確定してしまったんです。まずこういった大前提がある、民間で民間でと言いますが。その上に、この郵政公社、郵政省の時代からのことですが、いわゆる国鉄の債務負担、これにかかわる、郵政特別会計から何と一兆円も負担をしておるんです。

 こういうふうに、非常に努力をしている、協力をしている、これは郵政公社の功績なんです。その郵政公社を今度は民営化する、そのときに、ではどれだけコストがかかるか。もう説明を聞く前に私が説明いたしますが、いいですか。

 まず、情報システム構築コスト、これに一千四百二億円。これに、事業庁から公社に移行したとき同程度の経費がかかる、百二十億かかっておるわけでございますが、これをプラスしますと、一千五百二十億円民営化するために新たなコストがかかる。しかも、これは二段階が想定されておりまして、こうしますと、ロスが六十八億円出る可能性がある。これがまず一つのコストですね。これはソフトウエア開発費のみ、これにハードウエアの増強が必要となれば、さらに負担が加わります。そして、郵貯会社あるいは保険会社の代理店契約の手数料に新たに消費税が加わる、これが何と七百億円、毎年ですよ。

 そして、金融サービスを維持しよう、そういった措置のために基金を積む。これは一兆円ということになっておりますが、二兆円までできると。そして、審議の中で、果たして二兆円でも足りるのかという質疑がございましたが、この膨大な基金は、本来なら、これは株の売却益ですから、持ち株会社が使える金であり、持ち株会社がこの分、自由度が狭められてしまうんですね。

 結局、こういった新たな負担がかかる。こういった負担がかかるんですが、これらは一体どこが負担するんですか。

竹中国務大臣 負担がかかる、コストがかかるというお話でございますが、先ほど申し上げましたように、既に今の状況でも、国民は負担をしているわけでございます。これは、法人税を免除している等々の形ないしは預金保険料を政府保証という形で債務保証して負担しているわけでございますから、これは見えないけれども、国民はそういうコストを負担しているわけでございます。

 これが、民営化することによってはっきりと、法人税等々を払っていただくことになる。その法人税等の額、骨格経営試算では、初年度だけですけれども、四千九百億、五千億ぐらい。これを、さらに新規の事業を拡大していただいて、納税額をふやしていただく、さらには、株の売却益等々も入って、結果的には、それは将来の国民の税負担を減らしていくわけでありますから、まさにそれはトータルとして国民の負担を少なくする方法になるということでございます。

 システム等々で五百六十三億円かかるということは事実でございます。そうしたことを、結果的には、もちろん公社がこれを負担しますけれども、その分、新たな事業を展開することによって、それをカバーできるさらなる収益力を高めていただくというのが今回の民営化のシナリオでございます。

横光委員 公社が負担するということですが、これは国策でしょう。国が国民の声を無視してやろうとしていることでしょう。本来なら、国が負担すべきことじゃないか。公社がやるということは、国民、利用者の負担につながるんですよ。そういうことを押しつけていいんですか、国民が望んでもいないことに。望んでいるならまだ理解できますが。そういったことですよ。それほどに、国民からすると、新たなおかしい、しなくてもいい負担がこれだけ出るということなんですよ。そこのところを国民の皆様方も、やはりそんなことなのかと。大体、こういうところは説明されていないんですよ。ですから私は聞いている、そして国民の皆様方に今お示ししているわけですね。

 こういうふうに、非常に国民からすると、なぜ現在の公社を民営化しなければならないのか、民営化すればどういうメリットがあるのか、まだまだわからない。

 そのうちの一つが、要するに、民営化の目的の一つに、資金の流れを変えて経済を活性化させることができる、このように言われています。資金の流れを多様化するためには、何も無理に無理を重ねて民営化しなくても、公社のままで改革し、そして経営の自由度を高めれば、私は不可能ではないと思いますよ。なぜ公社のままではだめなのですか。

竹中国務大臣 今、非常に大きな官のお金の流れがあるわけでありますが、郵政がその入り口に位置をしております。郵政は、郵貯、簡保等々、政府保証という形で非常に大きなお金を集めている。しかし、政府保証、政府のお金でありますから、これはおのずと安全資産でしか運用ができません。安全資産で運用できるということは、結果的に、それは国債、かつては財投等々もありましたが、国債等々に向かう。したがって、郵貯をそのままにしておく限りは、官でお金を集めて官で使うというこの流れを決定的に変えることはできないわけでございます。

 公社のままの改革、これは金融面では明らかに制約がある。その意味でも、郵政の民営化というのが大変重要な条件になってまいります。

小泉内閣総理大臣 先ほど来から横光さんのお話を伺っていましたけれども、慎重にすべきだという意見が多い、私はこれは当然だと思いますよ。審議を慎重にしなくていいという国民は少ないと思いますよ、聞かれたら。

 私、よく総理大臣、国会に出席しろと要求が出ておりますけれども、先進国、民主主義の国、調べましたよ。日本の総理大臣ほど国会に出席して答弁している首脳は、世界のどこにもありません。これは事実です。よく調べていただくといい。きょうも、朝九時から十二時まで、昼休み一時間とって、一時から今五時まで、ずっと私、居続けているでしょう、担当大臣も。しかも、今もう、既に今まででも、もう数十時間審議している。これからも慎重に審議しようとしている。

 そして、妥協に妥協を重ねていると言いますけれども、横光さんは、もっと妥協しろという議論じゃないですか。公社のままがいいと言うんだから。私は、妥協するなという批判ならわかりますよ。しかしながら、今の郵便局、過疎地等なくしてはいけない、これが妥協ですか。そうじゃないでしょう。今の郵便局の利便性を保持しよう、もっと発展しようという調整ですよ。横光さんは、民営化はいかぬ、公社のまま、今のままがいいと言うんだったら、もっと妥協しろということじゃないですか。そんな妥協はできません。

 今、郵便局という国民の財産、重要な財産、これをもっと生かそうとしているのです。郵便局は、今、三事業しかできません。民営化すれば、三事業以外のもっと有用な商品も提供できる、サービスも展開できる。隠れている、眠っている、今、郵便局の機能、資産を活性化させようというのが民営化ですよ。

 私は、そういうことから考えて、公社におきましても、今まで郵便貯金の資金があったからこそ特殊法人の活動ができたわけでしょう。これは、過去の例を見てもわかるわけです。公社になってからそれをやめましたけれども、民業圧迫というのは郵政省時代から民業圧迫していたのです。

 例を見れば、ホテルや旅館があるのに、何でメルパルクとかいうホテルをつくるのか。旅館があるのに、かんぽの宿とか、何でつくるのか。民業圧迫でしょう。公社になってからはなくなった、やめた。しかし、あれは郵貯の資金があったからこそああいうものをつくった。

 今、その投資に見合う収益が上がっていない。この負担は、結局、国でしなきゃならない。特殊法人の金というのは、郵貯の資金があったからこそできたんです。しかし、それは、郵便貯金をしている人に負担はできないから、税金で負担しているわけですよ。だから、見えない負担は、今まで官業の肥大でいかにしてきたか。

 やはり、民間にできることは民間にといいながら、民間にできることでも役所がやらなきゃいけない、国家公務員がしなきゃいけないというのは、共産主義的な思想を持っているならわかる、社会主義的思想から持ってくるならわかるけれども、総論は、民間にできることは民間にといいながら、この法案に反対するというのはわからない。

横光委員 しかし、総理がそう言えば、本当にそうであるなら、国民がこぞってそれを望むはずじゃないですか。それが、こんなデータが出ているじゃないですか。あなたの言っていることは国民には通じていないということなんですよ。

 最後に一言聞きます。あなたが長くしゃべり過ぎましたので、私が計算していた時間が過ぎてしまいました。一言お聞かせください。

 先ほど、この法案に、修正すれば賛成するとかなんとか言っていましたが、私は法案そのもの、民営化そのものに反対であるということが大前提なんです。しかし、与党と政府の間で修正がずっと続いている。そして、今なお修正協議がされようとしている。

 最後にお聞きしたい。総理はこれまでずっと修正はしないと言っている。山崎さんもこの前NHK討論でそうおっしゃいました。修正はするんですか、しないんですか。しないんですね。お聞かせください。

小泉内閣総理大臣 修正は考えておりません。

横光委員 終わります。

二階委員長 次回は、明十六日木曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二分散会


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