衆議院

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第16号 平成17年6月16日(木曜日)

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平成十七年六月十六日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 二階 俊博君

   理事 石破  茂君 理事 松岡 利勝君

   理事 柳澤 伯夫君 理事 山崎  拓君

   理事 中井  洽君 理事 原口 一博君

   理事 松野 頼久君 理事 桝屋 敬悟君

      井上 信治君    今村 雅弘君

      江藤  拓君    尾身 幸次君

      大野 松茂君    大前 繁雄君

      城内  実君    北川 知克君

      小泉 龍司君    小杉  隆君

      小西  理君    左藤  章君

      桜井 郁三君    柴山 昌彦君

      園田 博之君    馳   浩君

      松本  純君    宮下 一郎君

      山口 泰明君    渡辺 博道君

      五十嵐文彦君    伊藤 忠治君

      一川 保夫君    岩國 哲人君

      小沢 鋭仁君    大出  彰君

      川内 博史君    古賀 一成君

      中塚 一宏君    中村 哲治君

      西村智奈美君    古本伸一郎君

      馬淵 澄夫君    山花 郁夫君

      若泉 征三君    石井 啓一君

      谷口 隆義君    塩川 鉄也君

      横光 克彦君

    …………………………………

   内閣府副大臣       西川 公也君

   内閣府大臣政務官     木村  勉君

   総務大臣政務官      松本  純君

   参考人

   (21世紀政策研究所理事長)            田中 直毅君

   参考人

   (東京国際大学経済学部長)            田尻 嗣夫君

   参考人

   (社団法人経済同友会代表幹事)          北城恪太郎君

   参考人

   (日本郵政公社労働組合中央執行委員長)      菰田 義憲君

   衆議院調査局郵政民営化に関する特別調査室長    石田 俊彦君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十六日

 辞任         補欠選任

  大野 松茂君     渡辺 博道君

  馳   浩君     尾身 幸次君

  岩國 哲人君     若泉 征三君

同日

 辞任         補欠選任

  尾身 幸次君     馳   浩君

  渡辺 博道君     大野 松茂君

  若泉 征三君     岩國 哲人君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 郵政民営化法案(内閣提出第八四号)

 日本郵政株式会社法案(内閣提出第八五号)

 郵便事業株式会社法案(内閣提出第八六号)

 郵便局株式会社法案(内閣提出第八七号)

 独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案(内閣提出第八八号)

 郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第八九号)


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     ――――◇―――――

二階委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、郵政民営化法案、日本郵政株式会社法案、郵便事業株式会社法案、郵便局株式会社法案、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案及び郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案の各案を一括して議題といたします。

 本日は、各案審査のため、参考人として、21世紀政策研究所理事長田中直毅君、東京国際大学経済学部長田尻嗣夫君、社団法人経済同友会代表幹事北城恪太郎君、日本郵政公社労働組合中央執行委員長菰田義憲君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、各案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、田中参考人、田尻参考人、北城参考人、菰田参考人の順で、それぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため参考人の方々に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 それでは、まず田中参考人にお願いいたします。

田中参考人 きょうは、民営化法案についての意見を述べさせていただく機会を得まして、大変光栄に存じております。

 私は、今回の民営化法案の柱は三つだというふうに思っております。

 第一は、四分社化を通じて金融業務を、従来、郵政事業一体であったものから切り出して、監督を金融庁のもとに置くということを決めたことであります。二番目に、提供している商品から政府保証を外し、民営化会社を倒産確率のもとでの経営に置くということ、これが第二点であります。第三点は、働いておられる方々を非公務員として、株主と経営者にとって経営の柔軟性を確保することが決まっていることであります。

 以下、なぜこの三つが重要なのかについてお話をさせていただこうと思います。

 仮にでありますが、郵政三事業が実質上一体として民営化後も行われるということが決まったといたしますと、それは国際社会に対して極めて衝撃的な結果をもたらすのではないかと思います。

 世界の経済が一体化するようになりまして、金融決済にかかわるリスクがある国で起きますと、それは世界に飛び火するわけであります。世界経済の安定も不安定化、いつ安定性が脅かされるかわからないという状況になるわけであります。このため、国際社会では、金融決済業務を扱う金融機関につきましては、それぞれの国ごとにではありますが、厳しい規律のもとに置くということを了解として決めているわけであります。

 現在、国民の金融資産のおよそ四分の一が郵政公社にあるわけですが、この郵政公社が三事業一体という形で推移するということになりますと、これは普通の金融・銀行業務ではないということでありますから、その規律は、我が国でいう金融庁のもとにはないということになります。

 日本の郵政事業はこれまでいろいろ歴史があって三事業一体でやってきたわけですが、世界のGDPで第二位を占める日本の金融の、国民の金融資産の四分の一を占める金融機関が一体とした金融秩序のもとにないということになりますと、それは一体日本でどういう改革をしようとしているのか、猜疑心が広がるわけであります。ジャパン・ポスト・ショックとでも言うべき状態が起きる可能性は極めて高いというふうに思っております。

 これは決済上の問題でありますが、もう一つは、我々の二十一世紀の社会を展望するときに、日本の資本市場が健全であるという必要があるわけであります。

 健全さは、幾つもの尺度がございますが、国債の値段が市場でもって、売り手と買い手との個々の取引を通じてではありますが、日々正確に、そして市場の情勢を反映し続けられているということが極めて重要であります。国債は、投資家にとりますとリスクが最も低いものでございますから、この国債の利回りというものが資本市場において尺度としての意味を大きく持っているわけであります。

 現在、日本郵政公社は、日本銀行よりも多く国債を保有されております。日本銀行が持たれている国債は、日本経済の安定的な運営のために保有されているわけで、金融情勢をどう持っていくのかという極めて透明な目的と透明な手続を通じて、この国債保有のあり方が決められているわけであります。したがいまして、市場参加者は、日本銀行が保有している国債についての猜疑心はございません。

 これに対して、日本郵政公社が保有している国債ということになりますと、これは運用益を上げるために保有しているわけであります。しかも、極めて多額の国債を保有しているということでありますから、運用益を上げるためにどういう形で公社が運用を行うのか、幾つかの仮説があるわけであります。

 日本銀行の行動を監視する、それを監視した上で市場に当たりをつけるということは、一般エコノミストができることでありますし、またそこを通じていろいろな手腕をエコノミストが発揮するわけでありますが、公社が運用上どういう課題を持っているのか、あるいは、流動性という点において、公社の手元流動性がどの程度必要なのかということをウオッチするということになりますと、公社ウオッチャーという存在が当然出てくるわけであります。

 そうした状態を長期間おきますと、日本国国債を国際社会では評価できない、いつ値崩れするかもわからないということであります。それは、ただ単に日本国国債の価格の安定性にとって問題だけではなくて、日本における資本市場全般の脆弱性ということになるわけであります。これは、ただ単に海外から日本の資本市場にお金が入りにくいだけではなく、我々勤労者が日々資金を積み立てております年金の運用先として日本の資本市場が適切なものであるのかどうかということは、年金の運用を委託しています一人一人の働き手にとっても極めて重要な問題であります。

 そういう意味からいきますと、金融市場を確固としたものに確立するためにも、民営化した上で、そしてこの規律を、金融業務として監視下に置くということが極めて重要であります。

 そういう意味では、高齢化、少子化時代に、我々の社会の根底をつくり上げるのに、これは極めて重要ではないかというふうに思うわけであります。地域社会をどのようにつくり上げていくかというのは我々にとっての課題でありますので、そのときに郵便局ネットワークがどのような役割を果たすのかということは広く国民の間でも議論されることでありますが、これは、ただ単に郵便局だけではなくて、地域社会が一体としてネットワークの役割を果たす場合にどういう位置づけになるか、これが議論の焦点になろうかと思います。

 民営化に伴って、三つのリスクがあるように思います。一つは肥大化リスク、一つは破綻リスク、それから三番目に業務中断リスクというものもあろうかと思います。

 肥大化リスクについては、実質上の政府の役割は減るはずでございますが、暗黙の政府保証が残っている時代に、これで肥大化の可能性はあるわけで、この問題にどう手当てをするのかというものは極めて重要だろうと思います。

 また、民営化された金融会社であります郵便貯金銀行それから郵便保険会社には、当然のことですが、倒産リスクがあります。格付会社は、民営化が実現した段階において、郵便貯金銀行及び郵便保険会社の倒産確率を当然のことながらはじき出すわけであります。そういう中で経営に緊張がもたらされるということでありますが、しかし、格付会社がはじき出す背景には、民営化した金融会社がいかなる収益モデルをつくり上げられるかについて、当然のことながら、厳しい目線が寄せられるわけであります。その中で、民営化会社の経営陣、そして働いている人たちが、この中でどういう形で規律を自己の内部化するのかというテーマがあろうかと思います。

 業務中断にかかわるリスクは、生田総裁が情報システム構築の問題として取り上げられた問題でありまして、これまでの郵政公社、あるいはその前の郵政事業庁時代を考えてみますと、明確な経営責任、経営者、民間企業でいう経営責任を持った持続的な経営幹部がいたというふうには断言はしにくいところでありまして、そういう意味では、業務をどのように効率化し、標準化していくか、そしてそれを情報ネットワークとして組み上げていくときにこのテーマをどうやってこなすのかということがあろうかと思います。

 この法案では、有効なマネジメントの確保のために二つの委員会が位置づけられております。郵政民営化委員会と、それから持ち株会社のもとの経営委員会であります。恐らく国会においてもこのテーマはいろいろ議論されると思いますが、私は、それぞれに、民営化に当たってそれなりの配慮がなされているものではないかというふうに思っております。

 ありがとうございました。(拍手)

二階委員長 ありがとうございました。

 次に、田尻参考人にお願いいたします。

田尻参考人 本日は、私ごときに発言の機会を与えてくださいましたことを大変光栄に存じ、感謝申し上げたいと存じます。

 私も、一国民として郵便局をさまざまな形で利用させていただいております。先日、私ごとでございますが、家内が年金年齢に達しました。その直前に、三カ月ほど前でございますけれども、地元の郵便局からお電話がかかってまいりまして、年金相談にあずかりたいというお電話でございました。銀行よりも早くコンタクトしてこられたわけでございます。

 それから一カ月間、私どもの家内の個人属性に関するさまざまな御質問をお電話、ファクス等で何度もちょうだいしました。それをもとに、社会保険庁に対して詳細なる調べをしてくださいました。そしていよいよ、土曜日に年金相談の日を設定しましたのでどうぞお越しくださいというお招きがございました。

 私、家内に同道いたしまして、どのような応対をしてくださるのかということで参りましたらば、そこでは二人の中年の係員の方が、まことに懇切丁寧に、社会保険庁とは比べ物にならないほど親切に教えていただいたわけでございます。そして、そのお話の内容が、複雑でわかりにくいと言われる年金制度の説明ではなくて、あなたの場合にはこうなります、しかも、これからあなたが選択をしなければならない二つか三つのチョイスがあります、それについて、これを選ばれればこういうプラスマイナスがありますからよく考えましょう。まことに懇切丁寧にわかりやすく、約一時間にわたって御指導を賜ったわけでございます。

 かといって、すぐに受け取りの口座を郵便局の口座にとはおっしゃらなかったわけであります。つまり、遠慮がちに、御主人様の受け取りの口座はどうなっておりますでしょうかという間接的な御質問でございました。

 いずれにいたしましても、土曜日のお休みの日にこれほど懇切丁寧なる指導をしてくださる郵便局の窓口というのが国民に支持されるのは、当然のことでございます。よく、国営事業の弊害ということが指摘されますけれども、JRの民営化問題とは全く質を異にいたします。ストの連続で、都内で三十八カ所も乗客が放火をするというような大騒ぎにまで至った、つまり利用者と提供者の間が極端に悪化した、だから民営化せざるを得なかったケースとは全く質的に異なるわけでございます。

 そういう意味で、まず、今回の民営化がなぜしなければならないのかということについて大方の国民が理解できないのは、私は当然だと考えております。

 さて、今回のこの郵政民営化法案でございますが、その制度設計の発想並びに具体的な政策をお選びになる手段、どのような手段を選ばれるかという政策選択の方法論、これなどをずっと拝見しておりますと、これは、国際社会が既に四半世紀前に卒業をした極めてクラシックな市場原理主義というものを、今、日本国が再びその失敗を繰り返す可能性が大きいトンネルの中に国民を導き入れようとしているという思いを強く持つわけでございます。

 それはいかなることかと申しますと、二十世紀の経済社会を引っ張ってまいりました政策原理というのは明確でございました。これは、東西対決の中で、市場メカニズムというものを極端に使うということから、人間を消費者、生産者ということに分けまして、そして安くてよいものが選ばれるということに情報を単純化いたしまして、その中で勝ち組と負け組とを選別していくというメカニズムでございました。この二十世紀型の市場経済の発想が、二十一世紀に入りまして、国際社会では大きく修正、転換を迫られておるところでございます。すなわち、人間を人間として、社会的存在として一人一人を丁寧にとらえていく、そうした新しい社会の枠組みとはいかなるものかということから政策変更が議論されているところでございます。

 したがいまして、政府の責任を最初から放棄いたしまして、市場メカニズムに丸投げすれば問題が解決すると言わんばかりのこの法案は、私どもは絶対に受け入れることができないというふうに私は考えております。

 二十一世紀の政府と企業の責任とは何かと申しますと、これは、社会に対する責任というものをその事業や組織運営の倫理として、モラルとして定着させる、そうしたことを前提に、そうしたことを可能にする市場機構というのはいかなるものかということを研究するのが私ども経済学の世界の責任だと考えております。

 そうした観点から申しますと、今日の法案の制度改革がいかなる理念のもとに行われているのかということになってまいりますと、まさに、二十世紀の周回おくれの市場原理主義を今強行なさろうとしていると私は思うわけでございます。

 金融システムとか郵便にかかわります情報システムというのは、客観的公正なものではございません。これは、制度を設計する、そのシステムを設計される方の発想、思想によって、それは国民の味方にもなり敵にもなるわけでございます。

 特に怖いのは、金融による所得移転と申しまして、金利をちょっと操作いたしますだけで、家計と企業と金融機関の間で、所得が見事にだれも気づかない間に移動してしまうわけでございます。増税ということになりますと国民的関心を呼びますけれども、金利の変更とか金融システムの変更というのは非常にわかりにくいために、国民の知らないところでとんでもない事態が進行するということでございます。

 今日、政府の失敗という観点からこの郵政民営化を急がなければならないというお話でございますが、政府の失敗も怖いことでございます。が、それ以上に市場の失敗はもっと恐ろしいということも御認識いただかなければなりません。

 いわゆる市場メカニズムというのは、倫理性とか社会的公平性とか客観性というものを持ち得ない仕組みであります。つまり、そこに公的関与があって、環境づくりがあって初めて機能するマシンでございます。したがいまして、その制度設計の基本理念は何か、原則は何なのかということを明確にしていただかないといけない。

 ところが、それはどこを読みましても、あの竹中五原則以外には存在しないわけであります。しかしながら、市場経済において、すべての人が得をし、だれも損をしない市場メカニズムというのは私はとても信じられない。そのような制度が本当にあるんだろうか、どこにそのような経済理論があるんだろうかというふうに考えるわけでございます。

 さて、民営化は決してただではできない。すなわち、情報システムの改修コストを初めといたしまして、郵政公社、すなわち加入者、貯金者に対して、最低二兆円、下手をいたしますと三兆円もの民営化のコストが押しつけられることになるわけであります。

 さて、それだけ負担をいたしまして、一体、加入者、貯金者は何を得ることができるのでございましょうか。都心にコンビニができることが、一体、三兆円の国民的負担の代償としてふさわしいものでございましょうか。二兆円と申しますと、消費税を一%引き上げられるに相当する国民負担でございます。

 そういったことを考えますと、得るものがない、どこまで国民は辛抱させられるかという我慢比べのために二兆円か三兆円のまず国民負担を強いられるというのが今回の法案の本質でございます。

 次に申し上げたいのは、郵貯の肥大化論とか、あるいは官から民にお金を流すのだという言い方がございます。しかしながら、現行の法案では、絶対に官から民にお金は流れないのであります。

 なぜかと申しますと、お金を一体だれが流しておるかということを考えてみますと、お金を方向づけているのは預金者、貯金者ではないんです。不良債権問題を発生させたのは、銀行に対する預金者ではないんです。それは銀行自身なんです。資金仲介をする責任者たちなんです。

 つまり、今回のこの郵貯におきましても、郵貯の加入者、貯金者が、財投の出口機関の放漫な部分の責任をとらなければならないという議論はないんです。それは、郵貯の資金や簡保の資金をお使いになって信用割り当てをし、資金配分をなさった政府並びに旧大蔵省資金運用部にかかわった方々の責任であります。それを、郵貯があるからという言い方は、不良債権をもたらしたのは銀行の預金者であるという暴論をおっしゃっているに等しいものでございます。

 そのような中で、国民に一体お金が流れてくるのかということでありますけれども、司令塔の考え方、司令塔の財政節度というもの、規律というものが確立されない限り、これは従来と全く変わらないわけであります。

 もし、市場メカニズムを通じて自主的に運用させることに民営化の目的ありとおっしゃるのであれば、私ども制度設計にかかわらせていただきました平成十三年度からの全額自主運用体制以降、それはもう実現されていないとおかしいんです。ところが、出口機関はほとんどそのままでございましたから、従来どおり財投の資金繰りに変化を与えない、激変を与えない経過措置なるもので、相変わらず郵貯、簡保が国債の引受機関という状態がますます強まってきておるわけであります。つまり、市場メカニズムを通じて資金効率を上げるんだという公約はどこへ行ったんでございましょうか。

 そういうことを考えますと、さらに、だれがお金を流しておるかということでございます。

 先ほど、日本銀行が国債を持っているのはまだしも、郵貯、簡保が国債を持っているのはという御議論がございました。とんでもないことでございます。中央銀行が政府の借金の証文をどんどん引き受けていくというのは、通貨を増刷する、通貨を供給する立場にあります中央銀行のやってはならないことでございます。これは、円の信頼を損ないます、そして、日本経済、日本国民の生活を根底からひっくり返すことでございます。

 しかも、日本銀行は現在国債をどういう持ち方をしておりますでしょうか。昨年末の時点でありますと、確かに八十五兆円程度でございます。郵貯、簡保に比べますと、六割とか七割程度であります。ところが、日本銀行は、償還期を迎えた国債は償還していただかなくても結構ですということでお待ちになっていらっしゃるわけであります。どちらが財政規律をだめにしているんでございましょうか。

 そういう意味で、私は、中央銀行が償還期の来た国債の返済を猶予してやるなどということを、絶対に受け入れてはならないことだと思います。しかし、そのことは、国民がほとんど意識されないままに、そういう状態が今年度も続けられるそうでございます。

 そのように考えますと、さらに郵貯、簡保が主たる資金源だ、財投出口への主たる資金源だとの言い方は、もう一つ正しくございません。なぜならば、統計を見ましても、民間の銀行、民間の保険業界、これらが持っていらっしゃいます国債の保有残高は、郵貯、簡保の保有残高とほぼ同額でございます。つまり、お金の出所が官であるか民の問題ではなくて、お金の流れが決まりますのは、そこに投資することがお金を出す側にとって有利かどうかということで決まってくるわけでございまして、自分が官であるか民であるかということは、お金に色は関係ございません。そういう意味で、たとえ郵貯を民間金融機関にいたしましても、現行の法案の枠の中では、事態は何にも変わりはないというふうに申し上げざるを得ないわけであります。

 さらに、この郵貯、簡保の問題で、郵便局ネットワークを維持できるかどうかというお話がございます。

 建物の郵便局に価値があるわけではございません。郵便局が提供する郵便貯金事業なり簡保事業なり郵便事業、その機能に価値があるわけであります。機能をいかに維持するかという問題と建物の数が幾つあるかということは、直接関係ございません。そう考えますと、つまり国民にとって必要なのは、郵便局の建物ではなくて、その金融サービスなり郵便サービスが必要なんです。これを利便性という言葉で表現なさるものですから、三軒あるうちの一軒がなくなってもまあ御辛抱くださいということになるのかもしれません。

 しかし、そうではないんです。つまり、金融システムの改革というのは、その変更によって社会のどの階層が利益を受けどの階層がしわ寄せを受けるのかということが全く欠落してしまうわけであります。つまり、これまでの日本版金融ビッグバンにしろ現在のリレーションシップバンキング論にしろ、すべて小口、個人の問題、地域金融の問題、あるいは零細な社会の年金生活者等のマイクロ金融の問題、そういった問題はすべて欠落しておるわけでございます。

 そういうことを考えますと、今日、国際社会においては、郵便のみならず、小口、個人の金融機会もユニバーサルサービスの対象にどんどん加えております。それを法制化しております。フランスに始まりましてスウェーデン、いろいろな国々にそれが広がってきております。ドイツですら、それをユニバーサルサービスの範疇に加えつつあるわけでございます。そうしたときに、私どもは、郵便局ネットワークがその機能をどこまで維持できるのかということになりますと、今日の法案の枠組みでは大変将来不安が大きいということでございます。

 利便性という言葉は市場経済の言葉でございます。つまり、コストを幾ら負担して、それに見合ったサービスが受けられるかどうかという相対的な基準でございます。しかしながら、五十円、八十円の通信の機会、あるいは貯金の機会、あるいはさまざまな社会給付を受け入れるための口座の維持の問題、あるいは極めてシンプルなリスクカバーの手段、こういったものは、いわゆるライフライン的なものでございます。これは、コストが負担できるかどうかという問題から決まってくる相対的基準ではなくて、国家が無差別に保障すべき絶対的基準でございます。今日、国際社会の考え方はその方向に大きくシフトしております。そうしたときに、日本国だけがそれに逆行いたしまして周回おくれの市場原理主義に立ち戻るというのは、まことに世界に目をふさいだ考え方だというふうに申し上げなければならないかと存じます。

 最後に申し上げたいのは、郵政公社だからできることというのがたくさんございます。あるいは、郵政公社でなければできない、公社経営でなければできないことがたくさんございます。その部分はほとんど議論されないで、公社ではだめだから、民間金融にすればこういうことができますとおっしゃっていることは、現在の公社形態のまま、すべて可能でございます。つまり、公社経営で何ができていないのか、何をなすべきかというところから議論の組み立てが行われるべきときではないかと思います。

 そういう意味で、私は、市場メカニズムに基づいたビジネスモデル何とかの二十世紀型の金融システム論ではなくて、社会のすべての階層が排除されない、しわ寄せを受けないで済むような仕組み、これは、企業だけではできないんです。企業と官の両方が補完して初めて可能になる仕組みでございます。いわゆるソーシャルファイナンスとかソーシャルバンキングサービスの世界を私どもはこれから構築していかないといけないときでございます。そのときに、日本郵政公社を企業の論理、株主支配の論理だけに丸投げをして、一体何をなさろうと考えておられるのでございましょうか。

 私どもは、そういう意味で、今回の法案は、郵政改革を考えていただくいいタイミングではあると思います。しかしながら、推進論者がおっしゃっておられるお題目と現実に目の前に提示されました法案との間は、全く質的に異なるものでございます。そのあたりをぜひ御理解いただきまして、何が国民のためなのか、一体だれのための何のための改革なのかということをぜひ御議論賜ればと存じます。

 失礼いたしました。(拍手)

二階委員長 ありがとうございました。

 次に、北城参考人にお願いいたします。

北城参考人 経済同友会代表幹事の北城でございます。

 私ども経済同友会は、経営者が個人の立場で参加している団体でございまして、この郵政事業の改革につきましても二〇〇〇年から議論をしてまいりました。そして、経営者の個人の立場でのいろいろな議論を通して、最終的には、郵政事業の民営化は日本の持続した経済運営あるいは日本の持続的な発展のために必要であるという結論に達して、提言を出しております。

 私たちの主張につきましては、お手元の資料、三枚の資料に書かせていただいておりますが、最初に、今郵政事業で行われております、金融事業、例えば郵貯、保険業務あるいは郵便、物流業務、こういった業務は、お客様からお金をいただいてサービスを提供する事業である。これは、いわゆる経済活動であって、本来民間が行うことのできる事業分野であって、私どもは、官が行う事業というのは、経済合理性だけではなくて、税金を集め、そして国でしかできない業務、あるいは官でしかできない業務を担当すべきであるという考えでおりまして、外交とか安全保障、こういった問題に関しては民間ができる分野ではないというふうに思っておりますが、金融事業とか物流事業は、本来民間ができる分野だというふうに思っております。

 現在の郵政公社は、生田総裁のもとに、多くの改革を通してサービスの向上あるいは収益の向上に努められておりますが、これも、民間の経営手法を導入して将来民間企業と競争できる環境をつくろうということで、経営者あるいは職員の方の大変な努力の結果成果が上がってきているというふうには思いますが、これは、やはり民間の経済合理性ということを追求する中での改革が進展してきたというふうに思っております。

 そうした中で、お手元の資料の三枚目に郵貯と簡保の資金の変化を書いておりますが、バブル崩壊の直前の一九八九年に郵貯と簡保の資金量は合わせて百八十兆円、それが、バブル崩壊以後、一九九九年には三百七十兆ということで、二倍に伸びておるわけです。郵貯の資金量と簡保の資産の合計を見てみますと、三百七十兆と十年間に二倍にふえておりまして、この資金の大きさは、郵貯に関していいますと、日本の四大メガバンクの資金量と同じだけの規模を持っている、そして、保険の資産の大きさも、日本の四大生保の合計の資産と同じである。非常に巨大な銀行あるいは保険業務が出ているわけです。

 本来、郵貯と簡保というのは、民業の補完のためということでできた組織だというふうに理解しておりますが、この間、金融の不良債権処理を初めとした金融不安の問題もあって、政府保証がある郵貯と簡保に多くの資金が流れたということではありますが、しかし、金融の正常化もあって、これまでどおりに郵貯、簡保に多くの資金を移していくということは、本来の経済活動としては好ましくないというふうに私どもは考えております。そして、こういった拡大した資金量というのは、資金が貯金分野からいわゆる株式であるとか投資信託等の市場にいずれ移っていくということを考えますと、これからは減少の方向にあるというふうに思っております。

 また、郵貯、簡保があったことによって集められた資金が、いわゆる出口として、政策金融であるとか、住宅金融公庫、都市基盤整備公団等の公団に流れていたわけですが、こちらがどのような経営状況にあるか、幾つかの不良債権の問題もあるようですが、こういった出口の改革も当然必要ではありますが、しかし、入り口の改革と出口の改革というのは一体の問題でありますので、まず入り口の問題を解決し、そして出口の問題にも対処していくことが必要ではないかというふうに思います。

 また、国民のニーズに対応するための郵便局ネットワーク、この必要性については十分理解しておりますし、こういったネットワークの維持の必要性、住民にとっての利便性の確保ということは大変重要だというふうには思いますが、私どもは、こういった利便性の確保は、民間の創意工夫によって確保するということが一番大事ではないか。

 まず、すぐに赤字になるから補助金を導入しなければならない、あるいは、今の郵政公社のような形で地方のネットワークが維持できるためにはお金を回さなければならないということでありますが、こうした国による支援、あるいは全体の中でそこにお金を回していくという考え方は、国の負担ということは結局税金による負担をするということでありますので、できるだけ、こういった地方のネットワークの維持にお金を投入しないで、創意工夫で維持をする方法を考えるべきだというふうに思っております。

 例えば民間の宅配事業者でも、ある例では、全国に三千の事業所があって、そのうち千の事業所は赤字だそうです。しかし、千の事業所があって初めて全体の事業が収益を上げられる。例えば、ある人が地方の、両親を含めて何かお歳暮を十カ所に送ろうとしたときに、三カ所の地域は赤字の支店がある場所であるとしても、その場所での事業をやめてしまいますと、そのお客様は、三カ所には送れないというような業者には荷物を持っていかないわけで、やはり全国に送ってくれる事業者のところに荷物を持っていくということですので、不採算があるからすぐ事業は撤退する、あるいは不採算があるからそこに補助金を導入しなければならないということではなくて、不採算が起きても、いかにして創意工夫でネットワークを維持するかということが大前提だというふうに思います。

 しかし、どのような努力をしても、例えば郵便のユニバーサルサービスのようなものは提供できないということがはっきりした段階で、それを提供する事業者を求めればいいというふうに思っておりまして、それが今の郵便事業を行っている郵政公社の民営化された姿であってもいいと思いますし、あるいはその他の業者であっても、国民に必要なサービスが提供される仕組みを考えるべきではないかというふうに思います。

 それから、株式の保有の問題ですが、私どもは、銀行あるいは保険業務に関して、政府が株を持っている、政府が関与する形で銀行あるいは保険業務が行われるということになりますと、ほかの民間の銀行あるいは生保に比較して優位な条件のもとに競争するということになりますので、金融業務に関しては、政府の関与のない形で、民間と同じような環境のもとで事業を行うべきだというふうに思っております。

 したがって、株式を全額民間に放出するということは必要だというふうに思いますし、それ以後買い戻すということは、結局、金融とか保険といった本来民間で活動している分野に政府の関与を残すということになると思います。

 海外の例を見ても、日本の郵貯と簡保のような、このような巨大な金融業務を国が行っている例は日本しかありません。海外を見ても、非常に小規模の事業を郵便局等で行っている例はありますが、このような、四大メガバンクを上回るような資金量を持った巨大な銀行あるいは保険を国が行っている例というのはほかの国にないということで、非常にいびつな形になっていると思いますし、今後、郵政公社が民営化に向かって活動する中で、民間と同じような競争環境、イコールフッティングというものを整備しながら進めていくことが大事だというふうに思っております。

 それから、民営化しますと当然ながら民間の創意工夫が働く組織になるわけですから、これまでのような、官のもとでいろいろな事業への参入に制限がありました、もともと民間の補完という色彩から、銀行にしろ保険業務にしろあるいは郵便事業についてもいろいろな制約がありましたけれども、これが完全に民営化されれば、民間と同じルールのもとに競争ができますので、いろいろな創意工夫ができる、今までにない事業に参入することもできると思います。

 また、預金業務から投資信託の販売とか、いろいろな新しい業務に参加することができると思いますが、官の、国の資本が入っている中でこういった新しい業務に出るということになりますと、常に官による民業圧迫の問題が出ますので、国の支配が及ぶという形を避けるべきだというふうに思います。

 また、新たにできる民営化会社のガバナンス、経営のあり方に関しては、経営者だけではなくて、国民の視点で経営が健全に行われていくということを確保するためのコーポレートガバナンス、いわゆる独立した取締役を導入し、経営の監視を高めるべきではないかというふうに思っております。

 さらに、今回の問題で国民の側に理解を難しくしている一つは、本来郵政公社が負担すべき税、利益に対する所得税の問題もありますが、固定資産税の減免等を通して本来公社が負担すべき税を負担していない。これは、逆に言いますと、その分を国民が税として負担しているということになりますので、いわゆる同じだけの税収を確保し国の財政再建に臨むとすれば増税を行ったのと同じ価値があるということですので、民営化を進めるとともに、出口に関する改革についても取り組んでいただいて、出口の特殊法人等でどのような資金の流れ、あるいは資産の状況があるかということは明確にしていただくとともに、この郵政民営化の利点についても国会で十分審議していただいて、国民に周知徹底していただく中でこの民営化が進展することを私ども経営者として望んでおります。

 以上でございます。(拍手)

二階委員長 ありがとうございました。

 次に、菰田参考人にお願いいたします。

菰田参考人 日本郵政公社労働組合、略称JPUの委員長をしております菰田でございます。

 本日は、国会の委員会の場にお招きをいただきまして、郵政民営化法案に関して私どもの考え方を述べる機会を与えていただきまして、本当にありがとうございます。

 郵便局の労働組合、JPU、全郵政を代表して、理念なき民営化法案に反対の立場で意見を申し上げたいと思います。

 郵政公社で働く職員は、一九九八年に国会で可決成立した中央省庁等改革基本法三十三条で、郵政事業を公社化することにより、今後、民営化等の見直しは行わないと国会で決めていただきまして、その後、歴代郵政大臣から、そのとおりだ、民営化等見直しは行わないよという国会答弁を聞き、私どもは、非常に厳しい経営環境の中でございますけれども、心を一つにして、公社法第二十四条で定められた中期計画に基づいて、四年間の目標に一生懸命努力を現在も続けている状況であります。

 特に、この二年間は、厳しい経済環境の中でございましたけれども、おかげさまで二年連続の黒字を続けておりますし、生産性も向上いたしました。さらにはサービスも向上したわけであります。特に、郵政公社発足当時、郵便事業が赤字傾向にあったものでございますから、さまざまな改革をいたしまして、二〇〇三年度で二百六十三億円、二〇〇四年度で二百五十二億円の当期純利益を計上しているわけであります。

 こういう公社の職員の努力及び成績の向上に一切目を向けることなく郵政民営化法案を提出されることは、私ども郵便局で働いている者ばかりか、郵便局を利用しているお客様にも不安と動揺を実は毎日与えているわけでございます。新たな公社のユニホームを身にまとって、わずか二年前のことでございます。

 改革基本法三十三条が実は国会の論戦の中で議論になっておりますが、多少なりともかかわってきた私としても、百年戦争と言われる経営形態の集大成として一九九七年に橋本行革がありまして、終止符を打つということで、政治・政策判断で国営の新たな公社をつくることによって、今後、民営化等見直しは行わないということだと考えます。それを受けた歴代郵政大臣の国会答弁となるわけでありますから、その国会大臣答弁が、国会議論の中でもありましたように政治信条だったなどと言われれば、私たちは何を信用して法治国家の中で生活することができるのでしょうか。

 私たちは、官と民のよいところを取り入れた公社の改革でいくべきだと考えていますが、百歩譲って、民営化法案を提出するというならば、この基本法の項目を先に廃止して出されるというのが最低限のマナーであり、政治の責任だと私は思います。

 次に、改革するにしても、実践するのは私ども郵便局員なわけであります。その当事者を説得し納得させることは、経営に携わる人なら一番先に考えることですし、当然、法案担当大臣もその責務があるというふうに私たちは思いまして、早速、昨年の八月三十日に、政府の方針を決定する前に竹中大臣と私たち労働組合との会見を申し入れましたが、ナシのつぶてでございました。そこで、やむなく私どもは、閣議決定された後に記者会見をし、公開質問状を送付させていただいたわけであります。

 その後、十一月十六日だったと思いますが、やっと会見が実現をいたしました。冒頭、竹中大臣からこう言われました。いろいろな機会で、いろいろな会合を通して、労働組合と協議をしっかりやっていきたいという言葉をいただきました。会見は三十分程度の時間でありましたから、別途私たちから意見書を提出するということで会見を終了しましたが、その後、竹中大臣とお会いする機会も、回答をいただいたこともありません。

 この法案を作成する前に、担当大臣みずからが労働組合に話しかけ、納得させようとする行動をなぜとられなかったのか、全く理解できないわけであります。

 公社法との関連で申し上げれば、公社法第二十四条では、四年ごとに、四年を一期とする中期経営計画を定め、総務大臣の認可を受けるとともに、四年間の業務評価を総務大臣が行うことになっています。そのスタートの一期四年が終わらない段階でなぜ民営化なのか、実は理解できません。

 その上で、私ども郵便局で働く労働組合当事者として、この郵政民営化法案を何度も読み返してみました。何点か指摘させていただきたいと思います。

 まず、この法案の内容は、事業経営が成り立つビジネスモデルとなっていないことがあります。それは、郵便、貯金、保険の事業会社と郵便局を切り離すもので、例えば、一般の会社でいえば企画と営業を別会社にする、今話題になっております鉄道会社でいえば、列車会社と線路会社を分けるようなものです。しかも、これが成り立つシミュレーションは、可能性を示すものとされていますが、実は信頼性に乏しいものです。国際物流や貸付業務で試算されているような収益を上げていけるのでしょうか。

 私は、ぜひお願いをしたいのは、企業を設計するには、実績、数値に基づいて決めるのが常識だと思います。少なくとも、日本郵政公社の四年間の数値を見て初めて検討、検証が開始されるべきであり、郵政省時代の公会計から企業会計に切りかえた四年間の具体的データを検証した上で議論すべきだと思います。

 ビジネスモデルにしても、熾烈な競争市場の中であり得ない机上のバラ色試算と私は思います。だから、数値結果に基づかない経営形態を論ずることで幾つもの矛盾が出ていることは、この国会の質疑の中でも明らかではないのでしょうか。

 二つ目に、郵便局株式会社法案を読んでみました。その中に、郵貯、簡保の文字が全く見当たりません。これはどういうことなのか、三事業を担っている私たちは到底理解できません。

 郵便局は、局長と職員の二人の局から大規模の局までさまざまありますが、例えば小規模の局では、総合担務と申しまして、一人の外務職員が郵便配達、貯金、保険の仕事を一人で行っています。また、規模が大きな郵便局では、窓口に従事する人と後方で郵便作業をする人とが相互に応援したり、あるいはローテーションで順々にかわっていったりすることによって実は事業が成り立っているんです。

 コスト計算や机上の計算では人間の切り分けは簡単にできると思いますが、生身の人間を別々の会社に分けることは簡単ではありません。また、社会のインフラやネットワークの民営化は、多くの国で金融排除など失敗が指摘をされ、修復、復元のため多大なコスト、エネルギーがかけられております。にもかかわらず、なぜ今、日本でリスクを冒してまでも郵貯、簡保を切り離そうとするのか理解できません。

 第三に、仮にこの法案が成立すれば、特殊会社を含めて五つの新会社ごとに労働条件を決定して、要員の再配置を行っていくことになります。働く者の立場からすれば、これからの労働条件、新会社の帰属がどうなるのか、大きな不安でいっぱいです。

 法案によれば、来年早々に準備企画会社が発足をして、新経営陣が決まって、経営方針が定まってからの労使交渉になります。しかも、五つの会社の将来性などに対する職員感情や配置希望など、大変に悩ましいメンタルな部分を抱えながら、労働条件の策定や要員配置などの交渉に臨むことになります。これまでの公社時代の人事制度やキャリア形成との整合性など、大変数多くの交渉課題があります。

 労組法上の問題や意思決定手続などを考えると、どのくらいの作業と時間が必要なのか想像もつきません。現在は、郵政公社と労働組合との間には事前協議の協約というものがあり、そのルールに基づいた交渉もあります。したがって、労使交渉の視点から申し上げれば、実質的に二〇〇七年四月までの交渉成立はほとんど不可能です。

 私は、連合の副会長も務めておりますが、今、連合の組合員は、リストラ、二極化を伴った格差拡大、ニートやフリーターの増加と雇用問題、年金、介護、医療などの社会保障制度を最優先に取り組んでほしいと切実に思っています。郵政民営化法案を連合の中でも議論しましたが、連合の皆さんも、何が何だかさっぱりわからないと言われます。それはそうです。当事者の私が説明できないのですから、当然です。したがって、連合は、民営化ありきは反対でもう一度出直すべき、むしろ、民営化より、切実な福祉、雇用を優先していただきたいということで一致をしているわけでございます。

 二十一世紀社会を迎え、少子高齢社会などが生み出す多くの課題があります。こうした課題に対処するに当たって、私は、単に官だ民だではなく、公、パブリックの役割が必要だと思っているんです。全国津々浦々に張りめぐらされた郵便局ネットワークとサービスは、実は世界に類例を見ない日本の知恵と文化であります。この知恵と文化を、なぜそういうコストが必要なところに政治が生かせないのかといつも思っているわけであります。

 国会の中で、ある参考人の方が海外の例を発言されて、聞いておりましたが、その方はドイツの中央郵便局や都市部の郵便局だけしか視察されていないのではないでしょうか。日本の郵便局は、特定郵便局など小さな郵便局を中心に、メーンストリートではなく住宅地の隅々に多く配置するなど、生活にリンクをする独特の工夫と知恵を施していますし、まして税金を一切使っていない運営をしている。まさに、知恵と文化というのはそういうことです。ぜひ御理解をいただきたいと思います。

 最後に、郵政事業が提供するユニバーサルサービスは、国民生活の安定を図る上で不可欠なものであり、いわば生活の安全保障ネットワークなんです。現在の公社形態を維持しながらさらに改革を進め、独立採算のもと、自立的、弾力的な経営を推進していくことが重要だと思います。

 改めて申し上げます。国民のための郵政事業の推進には私ども全力を尽くしてまいりますが、理念なき郵政民営化には断固反対することを申し上げ、労働組合を代表しての意見とさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

二階委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

二階委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。尾身幸次君。

尾身委員 自民党の尾身幸次でございます。

 きょうは、自民党を代表して質問をさせていただきます。

 私は、この郵政民営化の議論を聞いておりまして、実に不思議だなといつも思っておりますのは、大体において議論の中身が、我が党の中もそうだったのでありますが、あれが心配だこれが心配だというような議論がなされておりまして、さあ、自由になったんだから何をしようか、あれをしようかこれをしようかという議論が実は何もなされていない。そこのところが、私は、大きな流れとしてちょっと問題があるのではないかというふうに思っております。

 そこで最初に、田中参考人と北城参考人にお伺いをいたします。

 民営化をするということになりますと、では、私は、郵政公社あるいは新しくできる会社ができるだけ自由にビジネスができるようにしてあげることが本来の民営化の趣旨であるというふうに考えているわけでございまして、そこのところをできるだけ確保してくれと、郵政公社の方も組合の幹部の方も、そういうふうに言ってくるのが本当の意見じゃないかなと実は思っております。今のままでいいという議論ならばそれはそれでいいんですけれども、新しい時代を改革していく、切り開いていくというときには、そういう考え方に立って改革を進めていかなきゃならないんじゃないかと思います。

 そこで、今のお二方に、規制はできるだけなくした方がいいと思いますけれども、私は、少なくとも郵便のユニバーサルサービスということの規制だけは、全国津々浦々、自分で手紙を出すわけにいかない、郵便ポストに入れて運んでもらうという極めて大事なニーズがありますから、これはやる。これは、民間の電気事業でも電気事業のユニバーサルサービスというのは義務づけてあります。しかし、これは民間事業でやっている。ですから、そこのところだけはぜひ確保していただきたいなと思いますので、そこは賛成なんでありますが、金融と保険までユニバーサルサービスをかける。むしろ、公社の立場というか、新しくビジネスをやろうと思う会社とかあるいは組合の立場からいえば、できるだけ自由にしてほしいと言われてもいいのではないかというふうに感じるわけでございますが、田中参考人と北城参考人にこの点についての簡単な御意見をお伺いしたい、短くお願いしたいと思います。

田中参考人 旧大蔵省時代に、銀行の店舗行政を大蔵省の取り決めから外すといいますかガイドラインから外しまして、個々の銀行の自由にいたしました。そのときから、先生が言われるように、自由なビジネス展開と金融機関のあり方とはそういう関係にもう既になっているんだと思います。そういう意味では、郵便貯金銀行、郵便保険会社が自由な創意工夫のもとで動けるようにするというのは極めて重要なことだというふうに思っております。

北城参考人 私も尾身先生がおっしゃるように、自由な活動ができるような環境整備をするのは非常に重要なことだと思いますが、その前提として、国の資本が入っていない、国の関与がない仕組みになったときに民間と同じような自由度を持つということになると思いますので、移行過程においては何でも自由にできるということではないと思います。しかし、例えば銀行業務に関して言えば、今も民間の銀行も手数料収入等を得るためにいろいろな商品の販売をしておりますし、また保険についても、死亡保障以外のいろいろな保険の販売が必要になると思いますので、できるだけ自由を確保するということは民間になった段階では当然のことだと思います。

 また、金融のユニバーサルサービスに関しては、ユニバーサルサービス、いわゆる金融サービスが日本全国で提供されるということは重要だと思いますが、その担い手が必ずしも郵政公社でなければいけないということではなくて、いろいろな仕組みを考えながらサービスが提供されるようなことを考えればよろしいというふうに私は思っております。

 以上です。

尾身委員 菰田参考人にいろいろお伺いをしたいと思います。

 まず、郵政公社の場合、現状は、郵便それから郵貯、簡保の三事業とも黒字と言われておりますが、郵便に関しては、IT化に伴ってどんどん需要が減っている、つまり郵便を出す人が少なくなっているというのが現状でありますし、それから郵便貯金は、これもピーク時から比べると大分減ってきて、昔二百六十兆だったのが今二百二十兆までになっている。それから、簡保も同じような傾向であって残高が減っているというようなことであります。

 そういう中で、今のままでいっていいのかということになると、今の二万四千と言われている郵便局ネットワークというのは、私は大変な財産だというふうに思います。

 財産だという意味は、これを活用して新しいビジネスを始めるという場合においては大変な財産である、だから、それをどういうビジネスにするかということをいろいろ考えていけば、自由に使っていいよ、民間企業であるから自由にしていいよということになれば、いろいろな工夫ができるというふうに考えておりまして、そういう意味で、むしろ、先ほど申しました意味の、新しいビジネスに挑戦をしてそこに活路を見出していくということを、今の郵政公社の皆さんあるいは特定郵便局の皆さん、それから組合の幹部の皆さん、組合員の皆さん、そういう方々が一体となって、新しい時代にふさわしい、日本全体における、郵政三事業を中心とした、あるいはもっと幅の広いことをやっていく、活路を見出す大きな枠組みをつくるチャンスだというふうに思うわけでございます。

 しかし、では、どういうことになっていくのか、どういうビジネスをやるかということについては、これは新しい民間会社ができるだけ規制を排除された形で自由にビジネスチャンスを探し出していくということがいいんじゃないか。むしろ、リーダーとしては、そういう方向に組合員の皆様とか従業員の皆さんとか、あるいは会社の経営者との交渉とか、そういうことをやっていく方が、そしてまさに自分の力で生き延びていく、自分の力で新しい活路を切り開いていくという方がいいのではないかというふうに私は考えておりますが、その点について菰田参考人の御意見を伺いたいと思います。

菰田参考人 お答えいたします。

 今でも実力で自分で生き抜いておりますから、そこを少し押さえてほしいのと、私どもの企業といいますか、なりわいは、公、パブリックを理念にしています。その公、パブリックを守るために、企業性、手段を対応している、こういうことでございますから、公ということを外して、ビジネスだけで走れば、それは民営化になるでしょう、民間になるでしょうけれども、とてもじゃないけれども、対応できない。あるいは対応した場合、また民業圧迫、こう言われるというふうに思います。

 したがって、先ほど田尻先生がおっしゃいましたけれども、公社法の範疇の中で私は十分できると思います。六月三日であろうと思いますけれども、自民党の皆さん方が公社法を改革する案を何か提出されたみたいですが、ああいう範囲の中である程度秩序を持ちながら対応していくというのがやはりモラルではないか、私はこういうふうに考えておりますので、よろしくお願いします。

 以上です。

尾身委員 公を守るというのは、それ自体目的かと。郵政三事業というものを中心として、民間の活力を生かして、国民のニーズに合ったようなビジネスを展開すれば、そこに雇用もふえるし、利益もふえるということになるのであって、公を守るということは、それ自体としては目的ではないと思います。

 例えば、郵便局のユニバーサルサービスというのは、これは目的だと思います。しかし、全体として、今の郵政公社のやっている事業は民間でできるし、むしろそこに新しい工夫を見出していった方がいいのではないかと思います。

 例えば、NTTは二十年前に民営化をいたしました。一九八五年の四月であります。そのときに大激論がありまして、ああいう形になって民営化をした。しかし、その結果として、例えば長距離の通話料金は四百円が八十円に下がっている。そういう中で、世界のビジネスの競争の中で、私はまだこれでいいとは思っておりません。

 例えばブロードバンドの接続料金も、今、日本の料金は世界一低い水準にまで来た。競争原理が働いているからであります。そして、では、NTT本体はどうなっているかといえば、黒字が出ている。もうかっているわけであります。これをもしあのままの体制でいったら、世界の大きな流れから取り残されて、日本の通信情報産業というのは競争力がなくなったに違いないと私は思っております。

 実を言うと、NTTの大きな四つの事業に分かれていますけれども、まだそれの間の垣根が取っ払われていないという、規制があり過ぎることが今問題であって、そういう規制をなくして、むしろ相互乗り入れをするようにした方が本当はいいのではないかというふうにNTTの問題について私は考えております。

 そういう例を見ても、私は、新しい海に乗り出していくということを積極的に考えていく方が、公社の職員のためにも、新しくできる会社のためにも、それから国民のためにもいいのではないかというふうに考えますが、その点はいかがでしょうか。

菰田参考人 お答えいたします。

 私ども郵政とNTTを一緒に論じられると、これはちょっと困ります。郵政事業はやはり公、ユニバーサルサービスネットワークが生命線なんです。その生命線をやるために、企業性ということで、できる限り、それはバランスの問題ですけれども、かなり企業性を入れて営業をしたり、いろいろなことをやっている。さらには、サービスで対応している。あるいはコンビニとアライアンスを組む、ほかのいろいろな業種とコラボレーションを組むということは可能性があると思います。

 そういうふうな方向がやはり日本には一番いいし、民間にいって、海外では全部失敗していますから、二度と日本ではそういう方向をとるべきではないというのが考え方でございます。

尾身委員 ユニバーサルサービスが生命と言いますが、NTTの電話回線も生命なんですよ。野中に一軒家を建てたから電話を引いてくれといったら、NTTは引かなきゃならない義務がある。電力もそうです。山の上の一軒家を建てたから電気を引いてくれといったら、引かなきゃならない義務がある。これを民営でやっています。

 ですから、ユニバーサルサービスということと純粋民間ということは私はちょっと違うと思いますが、郵政公社の場合も、ポストを置く場所あるいは郵便の受け取る場所を各村、町に必ず置いてくれというユニバーサルサービスというのは、私はわかりますから、これはやったらいい。それはいわゆる民営との間の調整をしながらやらなきゃいけないと思いますが、NTTや電力でできているユニバーサルサービスを、民間になった郵政公社、新しい郵政事業のところでできないということはないので、その点は、今菰田参考人のおっしゃったのと、私は、実態から見てももちろんいろいろ違いがあります、実態が違いますから違いがありますが、その原理というのは変わらないんじゃないかと思います。今、ユニバーサルサービスという点で違うんだとおっしゃいましたが、そうじゃないんじゃないでしょうか。

菰田参考人 お答えをいたします。

 郵便局でまず考えてほしいのは、ユニバーサルサービスの視点で、先ほど私は、冒頭、意見陳述で述べましたが、拠点のネットワークなんです。山村地域も含めてやはり郵便局が存在するのは、三つの事業できっちりと、要するに相互応援をしつつやっている。

 この拠点は、物の見事に、ドイツでも三万ほどあったのが一万二千でやらなきゃならないといって、ユニバーサル令で郵便局を設置したんです。そういうものが確実に実証されているんです。ニュージーランドでもそうです。ニュージーランドで料金が下がったかといえば、逆に上がりました。過疎の郵便料金は上がって大問題になって、もとに戻しました。それで、どうなったかといったら、普通の郵便は郵便局までとりに来なさいといって利便性が排除された、こんな実例が、郵便事業あるいは郵便を取り巻くいわゆる庶民というファイナンスのところでは確実に起こった事例がありますから、そういうことの方策は、NTTさんや電力さんと同じに論じてとるべきではないというのが私どもの考え方です。

尾身委員 ちょっと今の話はわからないのですが、今度の新しい法律でも各村の郵便局はなくさないということになっていると私は理解しております。だから、そういう意味で、今、菰田参考人のおっしゃったことは……(発言する者あり)

二階委員長 御静粛に願います。

尾身委員 今の法案の内容から見て、各村も全部置くということになっていると思いますが、そうじゃないんでしょうか。

菰田参考人 法律的な議論で、国会で議論されているのは承知をしていますが、例えば、私ども小さな郵便局の人件費というコストでいきますと、まず、郵便は約三、保険は一、貯金が六ぐらいですね、パーセンテージ。それで例えば過疎のところが成り立っています、これは事実。そういう拠点のところが、貯金は離れる、郵便が離れれば、これは成り立ちません。

 確かに十年間はいけるというような法律をつくっていただこうとしていますが、十年後あるいは十年の途中で、金融は市場経済ですから、激しい争いをしますから、そんなもうからない郵便局に金融会社が提携するはずないんです。その証拠が、銀行や農協がどんどん撤退をしているという状況ではないでしょうか。

尾身委員 ちょっと質問の視点を変えますが、JRの話であります。

 JRは、これも約二十年前、一九八七年に民営化したのであります。そのときもJRの組合は死に物狂いで反対した。NTTの組合も反対しました。一九八五年の、民営化の前は経常損失が何と一兆四千億も出ていた。大赤字で三K赤字の一つでした。そして、十五兆円以上の繰越欠損金があって、もうひいひい言っていたわけであります。

 ところが、民営化をしていろいろなことをやってみたら、結局、今のJR七社を合計して、中央の三社は非常に大きな黒字だし、それからその他の四社は幾らかの黒字ですけれども、トータルで三千八百億円も経常黒字が平成十六年に出て、税金も納めるようになっている。そうすると、毎年一兆四千億も赤字であった国鉄が、JRになって四千億もの黒字を出すようになった。そして今、みんなやはりよかったと思って働いているということは、あのとき反対した人も認めているんじゃないでしょうか。

 だから、そういうことを今の郵政公社がやっていこうということは、私は、新しい可能性を探るという意味において大変大事なことだというふうに思いますし、我が国、日本民族は、そういう困難を乗り切って新しい海にスタートをする、船出をするということがやれるんじゃないかと思っているわけでございますが、その点はいかがでしょうか。

菰田参考人 お答えいたします。

 私どもも間もなく全国大会ですから、答弁しているような感じになりますけれども。

 NTT、JR。JRは、御承知のとおり大赤字です。郵政は赤字でないんです。将来赤字になるだろうということは、これは想定です。赤字にならないために努力をしていますし、確かに郵便は減っていきますけれども、物流というところにウエートをかけていって、そこのところで経営を成り立たせることを、生田イズムで私どもは努力していますから、これは確実に伸びていくというふうに実は確信をしているわけです。

 同時に、私はJR、NTTの皆さん方とも友達ですが、当時、いろいろな悩みをして最後は賛成に回ったという労働組合の人たちと仲間でございます。

 そういう意味合いでいきますと、例えば三島基金は今どうなっているんですかと。さらには、私ども郵政の、あれは郵貯のお金だったと思いますが、国鉄のために一兆円差し出したのはどうなっているんですかと。そういうことも含めて、トータルで言っていただけないと、NTTあるいはJRと一緒に並べて今の郵政事業の民営化論をやられるというのは、私どもは理解ができない、このように思います。

尾身委員 今、郵政公社が黒字だということは私も知っております。しかし、大きな流れは、だんだん郵便需要が少なくなるとか……(発言する者あり)根拠は、数字ありますよ。根拠がないなどと言っているのは全く根拠がないので、ちゃんと数字もそうなっている。後で民主党の人はゆっくり質問していただけばいいんですが。

 結果的に、そういう状況のうちに、むしろゆとりがあるうちに民営化をして新しいビジネスにいって、そしてそこで働いている人が意欲を持って楽しく働けるようになる方が私は大変大事だと思います。

 もっと具体的に言えば、二十年前に、私もそうでありましたけれども、上野の駅とか東京駅の駅の通路で物を売っていて、お菓子を売っていて、あるいはコンビニもできて、お弁当屋も物すごく、何でも好きなものが食べられるというようなことになるなどということはだれも想像しませんでした。京都や名古屋の駅のビルにすばらしいホテルができて、そのホテル事業ももうかっている、そういうことになるなどということもだれも想像しませんでした。

 しかし、民営化したらそれができた。そして、やった。その結果として、少なくとも、JRもそれからNTTも、経営者はもちろんですけれども、そこに働いている人も、やはり民営化してよかったな、あのまま国鉄のままでいたら、我々の生活もそれから世間の見る目も悲惨なものになってしまったなと。

 私は、実を言うと、鉄道事業というのは衰退するんじゃないかと当時思っていました。自動車の時代が来る、飛行機の時代が来る、そういう中で鉄道事業は衰退していくんじゃないかと当時思っていました。しかし、民営化した結果、むしろ完全に生き返って、競争力を持って、そこに働いている人は物すごく喜んで働いている。

 今、JRの組合の委員長あるいはNTTの組合の委員長に聞いてみたら、やはり民営化してよかったと必ず言うと私は思います。そういうところが大事なんで、組合の委員長たるリーダーは従業員や組合員の将来の仕事や生活を守らなきゃならないのでありますから、いわゆる守旧派的に守るんじゃなくて、新しい海に乗り出して新しいビジネスをやって、そしてそこに活路を開いていくという守り方をしていかないと、大きな時代の流れに乗れないし、結果的には会社の人も、従業員も不幸にしてしまう。

 むしろ新しいビジネスを起こす方に積極的に取り組んで、そのかわり、できるだけ規制はやらないでください、民営化なんだからできるだけ自由にやらせてくださいということを政府や政党に要求していくという方が、私は、会社の事業の方もそれから組合の方も、リーダーとしての当然の責務じゃないかというふうに思っておりますが、その点についてはいかがか。これは議事録に出ます。二十年後になって議事録を見たとき、どういうふうにおっしゃったかということも考えながら、お答えをいただきたいと思います。(発言する者あり)

二階委員長 御静粛に願います。

菰田参考人 十年も先を見通せないわけですから、二十年なんか当然見通せないんですよ。

 それで、私が言うのは、尾身委員がおっしゃるように、よしんば言うんだったら、データを示してください。企業会計原則に基づいたデータで、こういうふうになって状況が悪くなる、あるいはこういうところにビジネスチャンスがあるんだという、ガバナンス、ビジネスモデルを示してほしいんですよ。例えば、コンビニをやったらいいと思いつきでおっしゃいますけれども、郵便局の周りはほとんど、百メーター以内にコンビニがあります。どうやってやるんですか。こういうふうなことも実はあるわけであります。

 それと、守旧派かどうかですが、労働組合はまさに革新派でありまして、当時、言うならば、営業なんてナンセンスだという郵政省時代に、私どもの方から、やはり営業時代だから営業をしよう、あるいは翌日配達もしよう、こういうことをどんどん提起しました。

 あるいは、コンビニのローソン様との提携もそうなんです。労働組合から提起をして、言うならば、持っている私どもの財産と民間ネットワークを結合することによって市場が活性化をしたり、国民がよくなるということをするのが我々の任務だという中で政策を提言していますから、決して守旧派とか抵抗勢力じゃなくて、どんどんこの国を考えた上でこの財産を活用する推進勢力ということでお願いするのと、JRの委員長は今会っていませんが、NTTの委員長にも、菰田さん、ぜひ民営化反対で頑張ってくれ、こう言われていますから、よろしくお願いします。

尾身委員 私は、JRの委員長とかNTTの委員長が、民営化しないでおけばよかったなというふうには本音で思っていないと思いますよ。やはり民営化して自由になってよかった、いろいろなビジネスができる。(発言する者あり)いや、今こっちの方からいろいろなやじを飛ばしていますが、私が言いたいことを言っているからやじを飛ばしているのであって、これだけやじが飛ぶということは、質問の内容が急所をついていることだと私は理解しております。

 そこで、もう一遍申し上げますが、今、お立場もありますから、こういうところで突然賛成しますとは言いにくいでしょう。しかし、組合員を抱え、その生活の将来を抱えている委員長としては、本当に、こういう時代の中で、新しい活路を切り開いて、そしてみんな働いている人たちが、特定局の皆さんも夢と希望を持ってやれるような体制づくりをしていかなきゃならない、私はそう思うんです。

 ですから、そういう意味で、もちろんわからないところだらけですよ。先のこと、わからないところだらけです。しかし、民間になっていったら、先ほど言いました、想像もできないように東京駅の中に、地下道にあれだけお店ができて活発にやっている。民営化して三、四年たったら、改札口の職員も顔つきがにこやかに変わってきましたよ。私は、それを非常に印象的に覚えております。

 ですから、そういうことを考えると、今いろいろやじを飛ばしている方々も、後で考えてみると、あのとき委員長として反対したけれども、特に小泉さんは何て頑固な人間なんだろうと思ったけれども、二十年後に振り返ってみて、あの小泉さんという人はやはり先見の明があったなというふうにお茶飲み話にするような時代になるんじゃないかと私は思っているんです。

 ですから、また逆に言うと、会社も組合もそういうふうにするように頑張ってもらわなきゃいけない。我々も政治の面から、できるだけ自由にして、活力を持ってビジネスをやれるようにしていくということが我が国の長い将来のためにどうしても必要だというふうに私は考えております。

 今、もちろん御意見は、私の意見に全部賛成しろということを言っても、そういうわけにもいかないでしょうから、私は今そういうふうに申し上げませんけれども、しかし、本当に今の郵政事業の将来を考え、会社の将来を考え、そしてそこに働く人の将来を考えたら、そういう形で活路を見出していくというのが、会社で働く人のためにも日本という国家の将来のためにも非常に大事なことで、必要である。むしろ、俗に言う、災いとは言いませんけれども、災い転じて福となすということを考えていかなきゃいけないんじゃないか。

 これは、今反対している方々も、実際の制度設計のときにそういうことも考えながらやっていかないと我が国がよくならない、そういうことを申し上げて、最後にどうぞ、委員長のお答えをお聞きして、私の質問を終わります。

菰田参考人 ありがとうございます。

 私ども郵便局は、当然、郵便局で働いている人たちの労働条件とか収益とか、それは必死に、労働組合ですから考えます。そして、いろいろなイノベーションをやっていこうとも考えています。それが中央省庁等改革基本法三十三条の自律的、弾力的経営の担保なんです。したがって、そこをどう解決していただくかということでやっていただくというのが一番の状況だと思うんです。

 むしろ、私ども公的企業といいますか公的産業で働く者の考え方は、尾身先生、要するに、この企業をもうけさすより先に、この国のあり方がどうなんだ、このパブリックでどうサービスできるんだという視点が常に常に頭の中に入っているということだけはお忘れのないようにお願いをしたいと思います。

 以上でございます。

尾身委員 質問を終わります。ありがとうございました。

二階委員長 次に、石井啓一君。

石井(啓)委員 おはようございます。公明党の石井啓一でございます。

 参考人の先生方には、本日は早朝から、お忙しいところ大変恐縮でございます。ありがとうございます。

 それでは、まず田中参考人から質問をさせていただきます。

 田中参考人の郵政民営化の必要性に関する著述をちょっと読ませていただきまして、その中で大変興味を引くコメントがあったものですから、きょうは改めてお伺いをしたいんですけれども、郵政民営化の必要性の一つとして、投資社会たらざるを得ない高齢化社会に備えるために必要なんだ、こういうコメントがございます。

 そこで、高齢化社会というのがなぜ投資社会にならざるを得ないのか、そして郵政民営化とはどういう関係性があるのか、この点、御説明をいただければと思います。

田中参考人 我々が働き終えた後、何年あるのかという予測をするときに、三十年ほど前でしたら、何ぼも残っていないだろうという前提だったわけですが、今日では、働き終えた後、二十年あるいは二十年以上あるという時代になりました。このことは、我々が勤労時代に積み立てておいた年金の基金が順調にふえなければ、我々の老後を保障することはできないということであります。そういう意味では、勤労者がすべからく投資家になるという時代になったのが現在の高齢化社会だと思います。

 したがいまして、我々が勤労時代に蓄積した金融資産が順調にふえなければ困る。それを順調にふやすのはどうかということになりますと、日本の資本市場が健全な発達をしていなければ困るということであります。

 では、どういう形で我々は勤労時代の投資持ち分をふやすことができるのかということでありますが、これは、二十一世紀社会においては、我々は、国際社会の中で横並びで比較してみますと、過分な平均賃金を得ているわけであります。同じ質の労働とは言いませんが、同じ種類の労働をしていても、なぜ近隣諸国に比べて数倍あるいは時には十倍を超えるほどの平均賃金が得られるのかということになりますと、これを維持するためには常に挑戦を続けざるを得ない。挑戦とは、まだ見ぬあす、不確実なあすに対して投資をするということであります。

 そのリスクを持った投資資金はどこから来るか。家計以外にそのリスク資産の持ち手はありません。政府がリスク資産を持つことはゆがみをもたらしますので、結局のところ、リスク資産を持つというのは、個々の家計が、自分がとり得る範囲内において、不確実なあすに対しての備えをするということであります。

 では、そうした投資社会をどうやって実現できるのかということになりますが、残念ながら、我々は、高齢化社会にふさわしい投資社会の絵姿を今日まででは持っていないというふうに思います。

 この数年、金融不安がございまして、銀行に対して公的資金が大幅に注入されました。日本の経済の回復の中で銀行の貸出資産の質も好転してまいりましたので、政府から注入を受けた個々の銀行がこれをもう一度返そうとしています。そのとき、いろいろな形がありますが、優先株を普通株に転換して、それを国がマーケットで売って、そして国庫にお金を入れるということになるわけですが、新規の投資家はどこに出てくるのかということになります。

 最近、国に対して返済された銀行を見てみますと、日本の投資家がやはりなかなか持ちたがらない。投資家が持たないものですから、外国人所有比率が、公的資金が注入されてそれをお返しになった銀行を見ますと、外国人投資家比率がふえています。ということは、まだ、これは外国人投資家と日本人投資家で、銀行あるいは日本の経済に対する見通しに差があるということであります。

 しかし、もうちょっと分析しますと、我々は本来だったらそういう分野に、自分で負える範囲内においてリスクをとるという慣行が広がらないことには、我々の二十一世紀はきれいな絵としてはかきにくくなっていると思います。

 そういう意味からいきますと、国民の持つ金融資産がどういう形で使われたらいいか。これはもちろん個々の国民が考えることなんですが、これまではたまたま、郵貯、簡保に政府保証がつき、そして、その分野にお金が流れました。このことが結果として、それだけがすべてではありませんが、そうした投資社会の条件づくりには不利だった。

 もう一度、もともと、例えば定額貯金をされている方々は、自分のお金ですからそれをどうするか考えられるわけですが、個人向け国債の購入を郵便局の窓口で勧められるから、個人向け国債を買われる方もあります。それから、今こういう金融情勢ですから、定額貯金をしていても、銀行預金も同じなんですが、ゼロ・ポイント・ゼロしみみたいな、しみみたいな利息しかつきませんので、これだったらもう少し考えてみようかという方がふえております。そういう意味では、現在の郵便貯金の残高、二百兆を超えているものがあるわけですが、私は、民営化時代に、恐らくこういう形で、多額のお金が民営化された郵便貯金銀行に残ることはないだろうと思います。

 そういう意味での意識変化が家計の側でも起きていますが、そのことは非常に重要なことで、そういう流れの中で、政府保証をつけた特定の流し口としての郵貯、簡保の役割は変化せざるを得ない、変化することが二十一世紀の投資社会づくりにふさわしいことではないかというふうに感じております。

石井(啓)委員 ありがとうございました。

 続いて、田尻参考人にお伺いさせていただきます。

 先ほどの参考人の御意見の中で、官から民へお金は流れないということで御説明がございましたけれども、私の理解では、資産運用という面では、民営化することによって民間部門に流れる部分もあるのではないか。すなわち、郵政公社では、政府保証がついておりますので、どうしても安全資産への運用という形にせざるを得ない、必然的に国債、地方債中心にならざるを得ない。これが、民営化をいたしますと、骨格経営試算でも挙げられていますように、持っている資産のうち一部分はリスク信用供与という形で民間部門にも流れていくという形で、資産運用という面では、民営化に伴って、全面的に民に流れるということはないと思いますけれども、一部分、民間にお金は流れるということはあろうかと思いますが、この点はいかがでございましょうか。

田尻参考人 郵貯の民営化の非常に大きな理由として、リスクマネーをふやすんだという御議論が今続けられたわけでございます。私も、リスクマネーが日本国にとって今不足しておるということは同じ思いを持っております。

 しかしながら、今の御議論を聞いておりますと、リスクマネーが足りないので、郵貯、簡保の中に入っている国民をたたき出せ、追い出せという追い出しの論理でございます。つまり、問題は、政府が考えるべきことは、そういう追い出しの論理ではなくて、今田中先生も御指摘ありましたように、リスク資産を少しはとってみようかという気持ちが動き始めているときでございます。つまり、これをうまく育てて、どう誘導していくかということをお考えになるべきでございます。

 どういうことかと申しますと、それは、日本の家計にとってリスクをとれない理由が厳然としてあるからでございます。なぜかと申しますと、日本の家計資産全体を平均的な姿で見てみますと、金融資産で持っておりますものは家計資産全体のわずか四分の一でございます。四分の三は、土地、住宅、マイホームローンづくりのために土の中に塩漬けになっておるわけでございます。

 したがいまして、我々の老後はどういうことになっておるかと申しますと、マイホーム比率は六十数%に達しました、富山県ではマイホーム比率が八〇%を超えております。アセットはリッチなんです。ところが、退職後のキャッシュフローと申しますか、現金収支が合わない。つまり、年金の問題、医療費の問題等々の不安が高まっております。

 これに対しまして、アメリカ人の家計の平均的な姿を見てみますと、金融資産で四分の三を占めております。ですから、リスクマネー、リスクをとれるんです。彼らは、塩漬けになっておりますマネーは四分の一でございます。ですから、政府がお考えになるべきことは、今なぜリスクがとれないのかというその根もとのところに手をつけられることであります。

 具体的に申しますと、このアセット、豊かなアセットを生命を全ういたしますまでの間にどう流動化し、現金化していけるのかという証券化市場の育成でございます、開拓でございます。いわゆるリバースモーゲージというのが都道府県庁段階では一斉に導入されましたけれども、いかにも使い勝手が悪い。そして、土地しか認めない、マンションは認めないなどというようなことで現実に合いませんので、全国的に見ましても、これは数百件の利用でしかない。つまり、リスクをとれないままにしておいて、郵貯の中に入っているお金をたたき出せばリスクマネーがふえるというのは、政治家のお考えになることでは絶対にないと私は思います。

 そういう点で申しますと、官から民へお金が流れない根もとは、お金の出し手がリスクをとれない状況を変えていただくということが問題なのでありまして、郵貯を預かっている機関が公営であるのか民間であるのかというのは、本質的問題と何ら関係のないお話であろうかと思います。

石井(啓)委員 続いて、北城参考人にお伺いをいたします。

 きょうの御意見の中で、二つお伺いしたいと思いますけれども、将来はすべての会社を完全民営化する方向に向かうべきであるということで、株式持ち合いによる一体性の維持は、国の関与が残ることにより民業圧迫の懸念がある。

 実は私、先日、竹中大臣に質問いたしまして、政府・与党の合意の中で、株式の連続的保有を妨げないというふうになっているんですけれども、これは、政府は積極的に認める立場なのかというふうにお伺いしましたら、これはあくまでも経営判断だと。政府としては、郵貯あるいは保険会社が完全民営化する、それは独禁法とか銀行法とか保険業法とか一般的規制はかけるけれども、それ以上の規制はかけない、こういう意味だということで、あくまでも経営者の判断なんだよと。

 これは、政府としてはある意味でぎりぎりの調整だと思うんですね。完全民営化を維持するということと一体的経営を進めるべきだという声とのぎりぎりの調整か、こういうふうに私は思っておるんですけれども、その点はどうかということ。

 もう一つ、将来的に郵便窓口会社も完全民営化すべきという御意見ですが、郵便についてはユニバーサル義務が将来ともかかるわけですね。そういうふうに法律で義務づけをするところの会社が完全民営化というのはちょっとなじまないのかな、ここはやはり政府が保有する特殊会社とせざるを得ないんじゃないかなと私は思っておりますが、その点はいかがでございましょうか。

北城参考人 お答えいたします。

 まず最初に、完全に民営化される会社というのは、保険と銀行業務、郵貯と簡保というふうに考えておりますので、郵貯と簡保の会社がほかの会社の株を持つということは通常考えられないと思いますが、私どもが懸念しておりますのは、そうではなくて、持ち株会社あるいは郵便ネットワーク会社、窓口会社が郵貯とか簡保の株を買うというのは、政府の関与が残る銀行ができる、あるいは生保ができるということになりますので、そうした会社が非常に大きく、なおかついろいろな商品を持って事業を展開しますと、官による民業圧迫という議論が出てくるということを心配しているということです。

 それから、郵便事業に関しまして、ユニバーサルサービスは私も必要だと思っておりますし、その実現のための施策というのは必要だと思いますが、私ども、三分の一の国の保有のもとで郵便事業会社あるいは窓口ネットワーク会社が順調に経営ができるということが確認された後では、ユニバーサルサービスが確保できればいいということであって、その会社は必ずしも国の関与がなければユニバーサルサービスができるかどうかということを議論していただいた上で、私どもは、現在これだけたくさんの拠点を持っているというのは一つの競争力になりますので、既にそれだけの資産も持っているということですので、そういった会社は必ずしも国の関与がなくてもユニバーサルサービスができるんじゃないか。もし、できないことが起きた場合には、それぞれの地域の住民の方がユニバーサルサービス提供のために必要なお金を出すというふうな方策を考えればいいのではないか、こういうふうに考えております。

石井(啓)委員 それでは、最後の質問になるかと思いますが、田中参考人、北城参考人にお伺いします。

 実は、先日の参考人質疑をやった際に、加藤寛先生の方から、郵貯、簡保を完全民営化するのは、これはいいことだ、ただし、地域分割をしなきゃいけない、地域分割をしないから五十点だ、そういうお話がございました。

 その理由として、それぞれの地域で郵便貯金とか簡易保険で集めたお金をそれぞれの地域に還元をする、地域で集めたお金を地域に還元をする、地域にも福祉サービスあるいは介護サービスを初めいろいろな資金需要はあるはずだ、そういう意味で地域分割が必要だ、こういう御意見がございました。

 また、加藤先生はおっしゃいませんでしたけれども、イコールフッティングとはならないかもしれませんけれども、民間と競争条件をなるべく合わせるという意味で、郵便貯金銀行、郵便保険会社というのはすごい巨額の資産規模を持つわけですね。試算によっても、完全民営化時点では、郵便貯金銀行が百四十兆、郵便保険会社が七十兆という大変な規模。そういう巨額の規模より、少し分割をして民間会社と競争できるようにしたらいいんじゃないかという意見もあります。

 そういうことを踏まえまして、郵便貯金銀行、郵便保険会社の地域分割ということについてどうお考えなのか、お伺いをしたいと思います。

田中参考人 現在の郵貯、簡保の残高を前提にすれば、巨大過ぎるから地域分割という議論が基本的にはあるんだろうと思います。しかし、私の見解では、たまたま郵便局に定額貯金として入っているものでも、これはのりづけされた非常に粘着性の強いお金というよりは、ウエーティングサークルといいましょうか、とりあえず棚として使っておられるという方が相当多いのではないかと思います。

 今後の展開でございますが、それを推計するに足る幾つかの材料はございます。この四月からペイオフの解禁になりました。これに伴って、決済用預金が各銀行、民間銀行でつくられたわけですが、四月でおよそ四十兆円、五月では残高五十兆ぐらいになっていると業界では推計しているんですが、これは、預金金利がつかない形で、しかし全額保全されるところに、心配だからと、同じAという銀行の中で、定期預金や普通預金から決済用預金というところに移された方が、自治体ももちろんあるんですが、五十兆。

 このお金は、ウエーティングサークルに入っている金がそれだけあるということでして、今は実質上ゼロ金利ですので、どの預金勘定に置いておいても同じようなものなんですが、これが事態が正常化する、数年たって定期預金に例えば二%あるいは二・五%という金利がつくようになった場合には、現在、瞬間的に五十兆円あるものが、当然のことながら、銀行の信用度を見て動き出すわけですね。

 そうすると、この五十兆のお金というのがウエーティングサークルにあることがわかりまして、これは多分、今郵便局にあるお金も、結局は、これは個々の国民にとりますと、国民にとっての資産ですから、どこに置くかは自分で決めるわけですね。自分で決めるときに、この民営化論の中でそういう発想がどんどんふえていますので、私は動き出すと思います。そのときに、現在ほどの過大な残高ではなくなっているんじゃないか。

 そこを見据えた上で、次の郵便貯金銀行の経営者が、残高の推移を見ながら、これはマネジメント上分割することの方が効率的だと考えられればそういう案が出てくると思いますが、その行く末を見据えた上でないと多分地域分割の議論は定着しないのではないかというふうに思っております。

北城参考人 私も田中参考人と同じ考えでございまして、現在、全国をネットワークとしてサービスを提供するということで経営が成り立っておりますので、急にこれを分割するということは、現実のシステムの運用のあり方、あるいは資金の運用形態をとっても無理があると思いますので、まずは一体として民営化会社になって、その上で、分割の必要があれば、その時点で判断をすればよろしいのではないかというふうに思います。

石井(啓)委員 大変ありがとうございました。

二階委員長 次に、川内博史君。

川内委員 おはようございます。民主党の川内博史と申します。

 きょうは、四名の参考人の先生方には、御高説を拝聴させていただきまして、ありがとうございます。御説に関しまして、幾つか質問をさせていただきたいというふうに思います。

 改革という言葉は不思議な魔力というか魔法を持っていて、改革すると言うとだれも反対をできない。しかし、その改革がだれのための改革であるのか、何のための改革であるのかということに関しては、その中身はしっかりと検証をされなければならないというふうに思います。

 先ほど、田尻先生の方からは、すべての人がよくなる改革なんというのはあり得ないんだ、よくなる人もいれば、それによって被害を受ける人もいる、そういうことをしっかりと検証することが大事なんだというようなお話があり、私もまさしくそのとおりであろうというふうに思うわけでございます。

 この間、さまざまな質疑が行われてきたわけでありまして、与党あるいは政府の方からは、民営化すればすべてがよくなる、悪いことは何もないんだというような説明が繰り返し行われるわけですね。しかし、私は、そんなはずはない、悪くなることもあるはずだ。それを、民営化するというのは、政府の方針としてされるのであれば、それはそれで結構だ。しかし、そうであるならば、この部分はマイナスが出るということを正直に国民の皆さんの前に提示をして、そして国民の皆さんに選択肢を与える、それこそが資本の論理というか、民主主義の大原則であろうというふうに思うんですね。ところが、全くそういう情報が私どもに何も出てこないわけであります。

 そこで、きょうは、現場を一番よく知っていらっしゃる労働組合の委員長にお運びをいただいておりますので、まず、この民営化論議の中で、最近は余りコンビニ、コンビニというのは政府もさすがにばつが悪いのか言わなくなっているんですけれども、最初は、コンビニやればいいんだというようなことで、いいぞ、いいぞというような議論があったわけでございます。政府の試算でも、十年後にはファミリーマートを上回るような年間二百三十億円の利益を上げるというような想定が政府の試算の中でされているわけであります。もう大変な苦労をして商品構成などをおやりになり、物流コストを考えてやっていらっしゃるファミリーマートが、やっと年間二百三十億利益を上げる。それが、郵便局会社がコンビニを始めたら十年後にはファミリーマートを上回るという政府の試算があるわけであります。

 自民党の紙芝居にもあったわけでありますけれども、全く机上の空論というか、まさしく紙芝居だと思うんですね。まさしく紙芝居。実体が何もない、物語というような、このコンビニやればいいんだというような政府の考え方に対して、現場を一番よく知っていらっしゃる委員長として、果たしてそんなことができると思われるかどうかということから、まずお聞かせをいただきたいと思います。

菰田参考人 お答えいたします。

 先ほども言いましたように、私どもは、コンビニとはアライアンス、連携をすればいい、こういうふうな経営スタンスでございます。

 それで、先ほども言いましたが、もう一度私も調べてみますが、郵便局と百メーター違わぬところにコンビニは全部あるんですよ。それでまた郵便局でコンビニをやって、今度は何を売るのかな、こうなるんじゃないでしょうか。それと、今の郵便局システムの中で、あのコンビニのような商品の入れかえを含めるPOSシステムが可能なのかどうなのか、そのシステムをつくる試算はどうされるのかというものが全然見えないわけですよね。

 そういうことも含めてきっちり数値でやってもらわないと、単純にコンビニやれと言われましても、大安売りをして赤字になるのが関の山かな、こんなふうに考えているわけなんで、もう少し慎重な議論をお願いしたいというのが本音でございます。

川内委員 今、慎重な議論をしてもらいたいという委員長のお話でございました。

 私も、まさしく今政府の出しているデータというのは何ら根拠のない希望的な数字あるいは憶測というものに彩られていて、これでは国民の皆さんに、郵政事業というのはきちんとした法律があって、郵政公社法以外に郵便法とか郵便貯金法とか簡易保険法とか、さまざまな法律のもとで政策目的、パブリックな目的があってやられている事業でありますから、それを民営化するというのはそういう政策目的を全部飛ばす、なくしてしまうことなわけですから、その政策目的をなくすに当たっては、じゃ、なくすかわりにどのようなことになるのかということを実際にしっかりと国民の皆さんの前に示していただかないといけないというふうに思うんです。

 そこで、菰田参考人に続いてお伺いをさせていただきますが、郵貯、簡保の民営化、すなわち郵貯、簡保の廃止であります。

 これは、金融の公共サービス、郵貯、簡保というのは銀行とも保険会社とも全く違うわけですね、今までは。政策目的がしっかりあったわけです。公共の福祉に寄与する、あまねくサービスするという政策目的が第一条に、郵便貯金法にも簡易保険法にも書かれていて、その目的がそのままなくなってしまうわけです、民営化するということは。

 それは、すなわち金融の公共サービスがなくなるということでありますが、特に過疎地やあるいは山間、離島の方々にとっては、この金融の公共サービスにアクセスできなくなってしまうかもしれないという可能性がある。それは、大都市のお金持ちの人たちは別に郵便局が民営化されようが何しようが全く関係ないかもしれないけれども、地方の人たちや、今申し上げたように、年金を近くの郵便局しか受け取りに行く場所がないというようなじいちゃん、ばあちゃんは困ってしまうんじゃないかなというふうに思うわけであります。

 それで、そういう人たちにさえも、例えば家族が病気になったりしたときに、すぐお金をおろす場所がない、車で遠くまで出かけて、タクシーを呼んで遠くまで出かけていって、預金担保のお金を借りることができないとすれば、民間の銀行が提携しているサラ金から大変金利の高いお金を借りなきゃいけないというような状況も想定をされるというふうに思うんです。

 こういう、金融弱者と言っていいのかどうか、金融の公共サービスを必要としていらっしゃる方たちにとって、こういう方たちを外国のハゲタカ、あるいは国内にもハゲタカがいると思いますが、そういうえじきにするような社会は、私は公正な社会ではないと思うんですけれども、田尻参考人のお考えを聞かせていただきたいというふうに思います。

田尻参考人 先ほどコンビニの議論がございましたけれども、少し御紹介させていただきたいんですが、オーストラリア、英国では、郵便局という英語の名前はポストオフィスと辞書には書いてございましたが、これがかなり以前に、独立採算に移行する過程でポストオフィスではなくなったわけでございます。オーストラリアではポストショップという看板にかけかわりました。イギリスではコンシグニア、わけのわからない言葉でありますが、それに変わりました。

 その結果、何が起きたかと申しますと、郵便局の現場ではベンディングマシンがずらっと並ぶ。あるいは、その地域でもうかるところにどんどんスペースを割いていきますので、結局のところ、伝統的な郵便局業務のコーナーというのはどんどん後ろへ、暗いところに押しやられていくという形になったわけでございます。

 ですから、郵政三事業の事業をコンビニに委託されるのならわかりますけれども、みずからコンビニ化するというのは、これは全く間違った考えだと思います。

 それから、先ほど菰田委員長からもお話がございましたが、現実のコンビニは、三千種類から四千種類の商品を時間刻みで入れかえるという形でようやく数百億円の利益が出ており、そして年間に五百カ所から六百カ所、多いところは八百カ所もの店舗のスクラップ・アンド・ビルドをやっておるわけでございます。

 それでは、民営化後の郵便局株式会社は毎年、一千か二千か三千か知りませんけれども、郵便局の統廃合をなさるんでございましょうか。つまり、郵便局のコンビニ化によって数百億円稼ぐんだというのは完全な絵そらごとでございます。

 もう一つ申し上げないといけませんのは、そうした中で本来業務というのは何なのかということを考えてみますと、やはり公的な介入がなければ維持できないという小口、個人の金融機会の問題がございます、あるいは郵便の世界がございます。郵便で競争状態をつくり出して成功したところはどこもありません。

 ドイツといえども、民間企業になりましたけれども、一社独占体制をどんどん先まで伸ばしておる。そして、売り上げの全体の中で郵便事業は三割しか占めておりませんのに、収益の七割が郵便から上がっておる。そして、この郵便局のネットワークを六分の一に削った。つまり、国民的な犠牲の上に得られた超過利得を海外に持ち出して、国際物流企業に転換をしつつあるわけでございます。これがなぜ成功でございましょうか。

 そして、ドイツ・ポストの子会社になりましたポストバンクというのがございます。これが郵貯の民営化のお手本だというふうに日本で紹介されていますが、真っ赤なうそであります。なぜならば、その彼らの資金量はドイツ全体の資金量のわずか二%であります。そして、これは何も日本の郵貯のように、国民の資産を形成するとか、財政資金を調達するためにやっておった事業とは全く異なる、一役所のための資金調達機関でございました。

 今、ドイツ政府は何をやっておるかと申しますと、資金量の三八%を占めております州立銀行並びに市町村立の公営の、直営の貯蓄銀行を今後も発展させていくということを堂々と国際的に公約しておるわけでございます。ドイツは紛れもなく公的金融重視型の路線を進めておるわけでございまして、民営化路線のドイツというイメージは全く間違いでございます。

 そのように申し上げますと、ヨーロッパでは、郵便業務だけではなくて郵貯業務、金融機関についてもユニバーサルサービスの例に挙げておりますのは、もはやこれは利便性という問題では解決できないほど深刻化いたしました、社会問題化いたしました。したがって、今日では、これは経済的市民権という言葉が使われ、金融的市民権として国家がいかに保障するかという法制度上の問題に入っております。

 例えば、フランスでは、民間銀行二つ以上から口座の開設を断られますと、中央銀行であるフランス銀行に駆け込みますと、強制的に中央銀行が民間銀行に対して口座を開かせる銀行口座権というのが制定されたわけでございます。あるいは、スウェーデン等その他のヨーロッパの国々でも、法制化に向かってどんどん動き出しております。

 そういうときに、もう一つ申し上げないといけないのは、こうした効率化、店舗の統廃合というのは、もうからないからやらざるを得なくなるんじゃないんです。仮に将来、民営化されました日本郵政公社が増収増益路線を走りましても、この巨大なずうたいでありますと、国際競争の中で勝っていかざるを得ない。そのためには、欧米でカウンターパートがやっておることをより強めてやっていかざるを得ない。

 つまり、何が行われておるかと申しますと、増収増益でありながら、店舗の統廃合や、低所得層やさまざまな社会的ハンディキャップを背負った人たちの追い出しにかかっておるわけであります。これが今の金融メカニズムの最大の問題として海外で取り上げられておるわけでございまして、郵政公社が民営化後もうかればうまくいくんだなんということとは全く違うということを、ぜひ御認識いただきたいと存じます。

川内委員 今、田尻先生の方から、世界の流れというものの御説明がございました。これは、金融に限らずあらゆる分野において経済、資本の論理が出過ぎていることの反省というものが世界的な流れになってきているわけですよね。ところが、日本だけがいまだに、資本の論理を貫徹させることがいいことだというような議論をいまだにやっている。これは本当に恥ずべきことだというふうに思うんです。

 私は、田中先生というのは非常に高名な尊敬する先生でありまして、この郵政民営化の議論についても、先生の在り方について考える懇談会、この在り方懇が議論の出発点になり、その後、経済財政諮問会議で議論をされ政府の基本方針が決定をされたというふうに理解をしておりますが、田中先生がおまとめになられたこの在り方懇は、非常に冷静に客観的にすばらしいことがたくさん書いてあります。

 この前も質疑の中で幾つか紹介したんですけれども、「郵政事業は国民生活に密着しており、郵政事業改革が弱者切りすてにつながる単なるリストラであってはならない。国民の利便性と事業としての経済合理性との整合を十分吟味しなければならない。」「費用・便益分析の観点においては、民営化による利点、「痛み」やコストを明らかにしたうえで、」「「痛み」やコストを明らかにしたうえで、民営化によって生じる「痛み」やコストが利点に比べて明らかに小さく、明るい未来の構築につながることが前提になる。」さらに、「高齢社会の到来を見据えれば、山間辺地や過疎地も含め、全国各地の高齢者一人ひとりの視点も盛り込まれる必要がある。貯金や日常的な金銭の自由な出納は、高齢者の物心両面での自立を支えるうえで重要な意味を持つからである。」さらに、「事業体としての魅力を高める実験的試みや新しい事業成立の蓋然性に関する研究が事前に行われなければならない。」このようなことが書いてあるんですね。

 ところが、経済財政諮問会議では一切このような議論は行われていません。それは田中先生もよく御承知だと思います。それらを踏まえた上で、在り方懇の先生のこのおまとめになられたものが全く無視をされている経済財政諮問会議の議論の流れについてどう評価されるか、お聞かせいただきたいと思います。

田中参考人 政府が二十一世紀において国民との間でどういう範囲で責任を持つ領域を決めるのかという問題がございます。

 政府の規模を大きくすれば税負担は当然大きくなるわけでありますから、政府ができるだけ、重要度の高いところから政府活動は退けませんので、民間に代替できる、あるいはこの点についてはもはや納税者の負担にするのはまずいと多くの人が判断するところで線引きするんだろうと思います。それからいきますと、郵便業務についてはユニバーサルサービスを、これはもう日本国民のほとんどの人がユニバーサルサービスは維持すべきだというのがあるわけですが、金融については、私はそれが一般的な意見だとは思いません。

 コミュニティーにおいて、実際に例えば魚屋さんが消えるところも出てきています。肉屋さんが消えるところも出てきています。しかし、それは魚屋さんや肉屋さんの経営の判断で、ここで経営を営むことが無理だと御判断されれば撤収される、そのことは国民は認めております。

 それでは、おっしゃる金融機能についてどのようなことが必要なのか。現在、ATM設置はどんどん進んでおりますし、たとえ郵便局が廃局になったとしても、その地域社会における金融サービスのネットワークは、地銀、第二地銀、信金、信組、それから農協、漁協を含めまして、調べてみますと、必要な限りのものが現在どんどん減っている、あらゆるところにおいて心配だということではありません。

 したがいまして、例えば保険商品についても、例えば電話で購入できる、契約まで持ち込めるという状態になっておりますので、金融弱者という言葉を軽々に使うことは、私は、実態上からいくと望ましくはないのではないか。特に、政府の規模を決めるわけですから、あるいは政府が保証する政府保証の傘はやはりできるだけすぼめるというのが、私はこの金融業務にかかわる基本でなければならないのではないか。

 政府が国民に対して保障しなければいけない、生活にかかわる、あるいは医療にかかわる、そういうものを重んずればこそ、コミュニティーが抱える課題は、個々の自治体ごとにコミュニティーのあり方についての議論が起きることが重要であって、私は、金融機能を政府が一律的に何か郵便局ネットワークとともに設置し続けるという、政府が義務を負うということをここで決める必要はないというふうに判断いたしております。

 御指摘ありました懇談会、これはメンバーの方が大勢おられまして、いろいろな意見がありました。それを取りまとめをいたしました。読み上げていただいたのは確かに私自身が書いた文章でございます。皆さんの意見を聞いて私自身が直接書きました。ですから、一文一文書いた記憶がございますが、これは、政府及び我々民間人も含めて、二十一世紀における郵便局ネットワークのありようについて勉強した上で、いろいろな議論を出した上で、そして国会の場でお決めいただくというふうに思っております。私どもも、ちっぽけな研究所でございますが、この郵便局ネットワークのありよう、あるべき姿について勉強を続けておりまして、その懇談会で書きましたことの内容をできるだけ事実に即してフォローできるように今日も努力を続けている次第でございます。

川内委員 私がお聞きしたのは、田中先生がお認めになられた在り方懇の指摘が全く経済財政諮問会議の中で反映をされていないということに関して、どう思われますかということをお聞きしたんですが、若干ちょっと違うお答えであったかなというふうに思うんですが、では、もう一点だけ聞かせてください。

 同じく経済財政諮問会議の、平成十六年八月二日、第十八回経済財政諮問会議で、田中先生御出席になられて、移行期間に「十年とかの時間をかけると、急速な赤字化、そしてネットワークの陳腐化が進むと覚悟せざるを得ない。」というふうにおっしゃっていらっしゃいます。

 本法案は十年移行期間を想定しています。そうすると、田中先生のお考えでは、急速な赤字化、ネットワークの陳腐化が進むということでよろしいでしょうか。

田中参考人 私、法案を読む限りでは、以内と書いてございますので、少なくともそれまでにやれという法案だと理解いたしております。

川内委員 まるで竹中平蔵さんの答弁を聞いているような感じで、はっきりおっしゃられた方がいいと思うんですよ、自分の考えと違うんだと。だって、ここは参考人質疑の場ですからね。何を言っても別に法的責任が生じるわけではないですし、法的拘束力が生じるわけでもないですから、御自由に、やはりちょっと今回の法案は問題があるかもしれないということは、田中先生の正直なお考えを聞くことがやはり国民に対する説明責任なんですよ、御自分で言っているわけですから。どうですか。

田中参考人 郵便局ネットワークの陳腐化は現実に起きていると私は思います。

 私どもの若い研究員が、日本列島のいろいろな場所、山村もそれから都市近郊も含めていろいろな郵便局及びその郵便局が設置されている自治体の関係者のヒアリングを行いました。私どものヒアリング結果をもし御要請があれば一度お持ちしようと思いますが、彼らの結論は、既に郵便局ネットワークは、国会で議論されているほど実質的な価値をコミュニティーにおいて失っている可能性が強いというものであります。

 例えば、ある県のある町を訪れまして、町とそれから県庁との間の文書に何を使っておられますかと言うと、ずっと前からもう宅配便にかえていると。郵便局は考えないんですかと言ったら、郵便局はサービスも悪いし、現実に御用聞きに来る民間事業者にゆだねていると。では、今後、郵便局について民営化の議論がありますが、おたくの町ではどういう検討をされるんですかというふうに聞くと、いやあ、そんな大した役割が果たされるとは思えないねという証言を幾つも拾っています。

 ということは、私は、郵便局ネットワークは、先生方が思っておられる以上に実は相当脆弱になりつつあるのではないかという懸念を持っておりまして、したがいまして、そんな……(川内委員「わかりました、時間がないので」と呼ぶ)はい。

川内委員 学者とも思えないような情緒的な御議論をされるので、ちょっとびっくりしております。

 先生、全国の四十七都道府県議会、さらに二千六百を超える市町村議会から、郵便局のネットワークはすばらしい、これは残すべきであるという意見書が、地方自治法に基づいて総務省に対して提出をされている。したがって、今の、どこの町とか村とか具体的におっしゃられるのであれば、その話は信頼性を持ち得ますが、それは、ある町でとかある村でとか、そういうことを学者の先生がおっしゃるべきではないということを申し上げておきたいというふうに思いますが、田中先生、今度ちょっと個人的にじっくり議論をさせていただきたいというふうに思います。いや、本音はちょっと違うところに絶対先生はあるはずだと私は思っていますから。

 では、北城さん、ちょっと聞かせていただきます。

 北城参考人は、日本IBMの経営者であるというふうに思います。それで経済同友会の代表幹事である。それで「郵政民営化こそ日本を変える」と。この御本、私も読ませていただきました。

 私は、言葉は正しく使うべきであるというふうに思うんですね。郵政民営化こそ日本の資本家にとって都合がいいとか、日本の大資本にとって都合がいいとか、そういう正直な具体的な言葉を使うべきなんですよ。日本を変えるなどと、よくなるかのごとき言辞を弄するのは、私は間違いだと思いますよ。しかも、この著書は、北城さんがおまとめになられて、もう大資本の大企業の経営者が郵政民営化はすばらしいとおっしゃっているわけですよ。大企業の経営者がすばらしいと言うから日本がよくなると思ったら大間違いですからね。そんなことに何の論理的整合性もないですから。

 そこで、聞かせていただきますが、北城参考人は、郵政公社の理事を一年していらっしゃったと思います。それは任期は二年ですが、なぜ一年でおやめになられたのかということからお聞かせいただきたいと思います。

北城参考人 私は、郵政公社発足の段階で非常勤の理事に任命されまして、郵政公社の発足に、生田総裁を初め経営者の方々、職員の方々の改革のお手伝いをさせていただきました。

 その後、私、国家公務員倫理審査会の委員にも任命されまして、郵政公社の理事というのは国家公務員としての色彩もありますので、両方を兼ね備えるというのはいかがかということもありまして、さらに、一年間の進展を見まして改革が非常に進んだという認識もありましたので、生田総裁とお話をして退任をさせていただきました。当初から生田総裁には、発足のための準備委員会にだけ参加してほしいというお話でしたが、その後、ぜひ理事にもというお話があったものですから、できるだけ短い期間ということを当初からお話ししておりましたので御了解をいただきました。

 以上です。

 それから、当初に著書のお話がございましたが、これは、経営者が集まっている団体の経済同友会としてそれぞれが自分の立場で意見を言おうということで書いておるんですが、そのもとにありますのは、基本的に日本の国の運営を、すべて国が関与した経済活動を行うのか、あるいは民間を主体とした経済活動を行うのか。経済活動に関して言えば、やはり創意工夫する民間が最も効率のいい経営を行う。したがって、銀行業務であるとか保険業務であるとかあるいは物流業務というのは、本来民間がお金をいただいて提供する事業です。税金を徴収して国民のためにいろいろな機能を提供する役割とは違うのではないかという発想から書いております。

 したがって、私は、こういった郵政の民営化が進むことによって民間主体の社会をつくっていくということが日本の発展にも重要だということでこの本を書きましたが、一方で、過疎地であるとか弱者の方々に対するきめ細かい配慮、これもまた必要だと思いますし、企業も単に利益を上げるだけでは持続した発展はできませんので、今、企業の社会的責任ということも自覚しながら経営をしていかなければならない、こういうふうに思っております。

川内委員 いや、北城さん、私も別に北城さんの意見に異を唱えるわけではないです。それはそのとおりだと思いますよ。だけれども、郵政を民営化すれば被害を受ける人もたくさん出るわけですよ。そのことを一切ネグって、すばらしいことだということだけ言うから、その議論はおかしいでしょうということを申し上げているわけですね。

 北城さんのお会社は、日本郵政公社のシステムを、仕事を受注していますよね。受注の金額とか、あるいは今後民営化されるときに受注されるであろう金額なども大体わかっていらっしゃると思いますよ。どうぞ答えてください。

北城参考人 まず最初に、痛みを伴うことがあるはずではないか、私もそのとおりだと思いまして、民間の創意工夫を行う過程では、痛みを伴う場所も出ると思います。これは、例えば郵便局の配置が変わったということに伴って、都市部であれあるいは地方であれ、その郵便局の近くの方から見れば大変不便だということも出ると思いますし、また、郵政公社で集まった資金を利用した出口としての特殊法人等に関しましても、資金の流れが変わるということで資金調達が難しくなるというような負担もあると思います。

 ただ、私は、基本的にこういったことに対する配慮にどれだけお金がかかるのか、そのお金はだれが負担しているのかということをはっきりしませんと、国の責任で行うといった場合には結局そこにお金がかかっているわけですので、税金を集めているかあるいは税金を免除しているかは、いずれにしても国が負担をしている。国が負担をするということは税金がかかっているということで、全く費用がかかっていないということではありませんので、したがって、私は、過疎地での配慮が必要であれば、その地域の人たちが必要だという資金を負担する、その金額もこれだけかかるということを明示した上で、サービスを提供する組織を選べばいいのではないかというふうに思っております。

 それから、郵政公社へのシステムの導入ですが、私、今経済同友会の代表幹事をしておりますので、個々の案件には参加しておりませんので詳しいことは知りませんが、確かに私どももシステムを担当しておりますし、民営化に当たってもシステムのお仕事を受ける分野もあると思います。しかし、私は、決して自分の会社の経営のために言っているわけではありませんで、日本の国のために何が必要かということで同友会の活動をさせていただいております。

 以上です。

川内委員 いや、北城さん、日本の国のためにと。私が冒頭申し上げたように、改革という言葉はだれも否定できないですよ。日本の国のためにと言えばすべてが許されるわけでもない。だから、それは、美しい言葉に彩られて何でもできるかというと、そうじゃない。

 先ほど、地域の方々が何を望むかだ、その地域の方々から望まれたことをどう資金手当てをするかを考えていけばいいんだという郵政民営化法案の考え方を御披瀝されましたが、しかし、あまねく全国の地域の方々は、恐らく貯金も保険もサービスを望まれると思います。そうなったときに、では、社会貢献基金とか地域貢献基金が、しっかりとそのサービスを維持できるだけの資金量を持っているかということを考えたときに、そのような具体的なデータは本委員会には一切示されていないんですからね。政府が、大体百二十億ぐらいで済みますわと言っているだけですよ。そういう議論を本委員会で政府は堂々としているんですよ。

 北城参考人がおっしゃる議論でいくのであれば、そういう詳細なデータが示されて、大丈夫だということがわからなければ、我々は、それに、はい、そうですかと、ただ枠組みだけ示されて、地域の人が困ることはないと思いますよと言われて、わかりましたと言って法律を承認するわけにはいかないんだ。ですから、多分、北城さんは、竹中さんともお友達だし、生田さんともお友達だから、ぜひ、詳細なデータを国会にきちんと示すべきだということをおっしゃっていただきたいんですよ。

 今、システムの話も、ちょっとIBMの会社のことはよくわからぬということでございましたけれども……(発言する者あり)まあ、柳澤さん、よく聞いてくださいよ、きちんと説明しますから。

 今回の郵政民営化の議論というのは、委員長も聞いてください、物すごく情緒的なんですよ。郵政民営化情報システム検討会議報告、これが出て、二年で大丈夫だとか一年半で大丈夫だということになっているわけですね、暫定的には。

 これはどういうふうに書いてあるかというと、「はじめに」というところに、「管理すべき一定のリスクが存在するとしても、制度設計や実際の制度運用において、適切な配慮をすれば、情報システムの観点からは、暫定的に対応することが可能である」。二つ条件がついているわけですね。適切な配慮をすれば、暫定的に対応できると。これはもう、全くどうなるかわからないと言っているに等しいですよ。

 最後に、「おわりに」というところなんか、もっとこれは笑えますよ。行政の文書だとはとても思えない。「郵政公社がたびたび主張してきた不安とともに活動していくということは、まさに民営化の本質であると考える。直面する課題の困難さを十分に承知しながら、自分たちこそが未来を切り開いていく主役なのだという決意を、日本郵政公社をはじめとしすべての関係者が抱くことこそ、民営化の貴重な財産である。」「システムのリスク管理も、国民にとって何が重要であることを意識しながら、高い理想を持って取り組みを進めることが何よりもリスク回避の方策になる。」高い志を持って進めることがリスク回避の方策になると書いてあるんですよ、行政文書に。こんな情緒的な行政文書なんてあり得ないと思いますよ。

 システムの設計についても、経済同友会さん御自身も、二年でできるとか二年半で大丈夫だというような報告書をまとめていらっしゃる。しかし、北城さんのところのお会社は、生田総裁の大丈夫だろうかという問いかけに、最低でも五年かかると、北城さんの会社が言っているんですよ。この矛盾を最後、どう御説明されるかお聞きして、参考人質疑を終えたいと思います。

北城参考人 まず、私、システムの構築に関して、この委員会のメンバーではありませんので、先生が今お読みになったものについては私がつくった文章ではありませんが、しかし、民営化に当たってのシステムの構築について、二年の期間があるので達成できるはずであるということは、経済同友会として意見を出しました。私もそう思っております。

 そこで申しましたのは、暫定対応で、二年間の期間でできるものをつくるということでやれば対応できるはずである、郵貯と簡保、あるいは郵便事業のシステムは既に動いているので、それをもとに対応策はできるはずだということで意見を出しました。

 一方、郵政公社さんの方からは、本来、完璧とは言いませんけれども、理想とするシステムをつくるとすればどのくらいの期間がかかるかという御下問があって、私どもの営業部門が三年から五年というような答申を出したということですが、それは、きちっとしたシステムをつくるとすればそれだけかかると。私が言ったのは、暫定対応であれば二年と言ったことで、質問の内容が違っているために期間が違っているということと、それから、一つの例ですが、私は決して自分の会社と一緒になってこの問題に対応しているわけではありませんので、私どもの営業部門から情報を得て発言しているわけではありませんで、経営者個人の立場として考えて、何が必要かということで発言させていただいております。

川内委員 どうもありがとうございました。

二階委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 きょうは、四人の参考人の皆様には貴重な御意見をいただき、本当にありがとうございます。

 最初に、田尻参考人に何点かお伺いをいたします。

 一つは、金融のユニバーサルサービスの問題であります。

 先ほどのお話の中にもございましたが、今回の法案では、金融のユニバーサルサービスというのはそもそも世界でも例がないので義務づけないんだということで、その廃止がうたわれておるわけであります。しかしながら、田尻参考人もおっしゃっておられましたように、小口、個人向け金融もユニバーサルサービスの対象に加えつつあるというのが国際的な潮流だという話がございました。フランスの銀行口座権というお話も先ほど伺いました。その他の、例えばスウェーデンですとか英国の例ですとか、幾つか具体的な金融のユニバーサルサービスについての国際的な傾向についての実例を御紹介いただければと思っております。

田尻参考人 金融システムの中でも、小口、個人を対象といたしますリテールバンキングサービスというのは、基本的にもうからないビジネスというのが国際的常識でございます。つまり、八割のお客は必ず赤字、二割のお客から得た利益で何とか支えているというのが商業銀行における国際的な常識でございます。

 したがいまして、こういった金融システムをできるだけ効率化していこう、資本の回転率を上げようといたしますと、いろいろな無理が生じて社会問題化しておるということでございます。したがいまして、リテールバンキングにおきましては、公的な介入、関与というものが不可欠であるということでは、もう何ら疑問のないことでございます。さまざまの海外の文献、論文、レポート類を見ましても、それは立場を超えて共通の政策課題になっておるわけでございます。

 スウェーデンでは、キャッシュサービス法というのを制定いたしまして、例えば小切手を給料で受け取りますとそれを現金化する手段だとか、さまざまの小口の決済だとかいったようなことについての最低限の、ベーシックバンキングサービスと申しますが、それについては必ず提供しなければならないということを法律で義務づけたわけでございます。

 英国の場合には、幸いにも、戦後たくさんの地方中小金融機関を統合しまして、三つないし五つの大きな商業銀行に経営統合が行われたわけでございます。いわゆる金融排除といったような問題は、何とかこの商業銀行の経営者たちも支えてきたわけでございます。ところが、グローバリゼーションの時代を迎えました。そうなりますと、とてもそういった負担ができないということで、増収増益で決算を発表すると同時に、数百件単位の支店の統廃合を発表するということが当たり前になってしまったわけでございます。

 今日、英国におきましては、百五十万世帯が全く銀行口座から締め出されております。このことは、地域社会にとりましては、単に銀行の店舗がなくなったとか郵便局がなくなったということではございません。これは、日本でいえば、金融庁や財務省の問題ではなくて、環境大臣まで乗り出してくる、日本でいえば厚生労働大臣まで高齢者対策として乗り出さざるを得ないところまで来たわけでございます。したがいまして、民間金融機関と政府との間に契約を結びまして、最低限のベーシックバンキングサービス口座については、これは民間が補助金と交換条件に受け入れるということに同意をしたわけでございます。

 その他いろいろな国々でも、そういった公的な介入、公的な関与、あるいは法制度化という方向に大きく流れておるわけでございます。

塩川委員 今の点との関係で公的金融機関の役割についてお聞きしたいんですが、先ほどのお話の中でも、ドイツは公的金融重視型の路線をとっているというお話がありました。公的金融機関を通じて小口、個人の金融サービスを維持していくというドイツのスタンスについて、EUとの関係も踏まえてお話しいただければと思っております。

田尻参考人 ドイツは、申すまでもなく市場経済体制を堅持しておる国でございます。しかしながら、金融システムに関しましては、特に小口の個人の問題につきましては公的な関与が必要であるという点にはいささかの疑問も彼らは持っておりません。

 EUは、先般来、政府保証をなくすべきだというダイレクティブを出しました。これにドイツが従うかどうかで大きな論争になったわけでございます。結論としては、ドイツ政府は政府保証を公的金融機関から外すということには同意いたしました。しかしながら、州政府あるいは市町村が直接貯蓄銀行を経営するという資本関係は一切変えないということ、並びにその業務はこれからますます新しい金融商品やサービスを取り入れていくということを公約したわけでございます。

 つまり、ドイツの考え方というのは、市場経済で民間金融システムをどんどん自由化して国際競争に勝つ仕組みをつくると同時に、それをやればやるほど、社会的な問題、金融システムから脱落する問題が出てまいりますので、それに対する公的金融の役割と何ら変わりはないと考えておるわけでございます。

 そういう意味で、ヨーロッパ諸国全体といたしまして、中小企業金融、あるいは内職資金等を貸し出すマイクロ金融と申しますが、そういったものも含めまして、いわゆるソーシャルファイナンスについては公的な取り組みでやっていくという方向には全く疑問の余地がない。

 アメリカにおいてすら、クレジットユニオンと申しますが、これは国民レベルで相互助け合いの金融システムでございますが、国民の二人に一人がクレジットユニオンの会員でございます。あるいは、全米で八千を数えます貯蓄銀行が、日本でいえば信用組合よりもさらに小さいレベルでありますけれども、そういったものがきちんと庶民を支えておりますから、アメリカの中で金融システムから脱落した人たちが何とか受け皿が維持されているという現実でございます。

 ここで特に御認識いただきたいのは、金融システムから排除され、利用できなくなったら仕方がないねという問題ではないんです。利用できなくなった人たちをターゲットにする、食い物にするシャーク、金融シャーク、サメでございますが、この新しいビジネスがばっこいたします。これがどんどんどんどんヨーロッパでもアメリカでもばっこいたしまして、これをどのように規制するかという別の問題が出てきた。

 そして、そういう悪徳業者ではなくて、世界企業、名立たる世界企業が何をやっておるかと申しますと、従業員が銀行口座を持っていないことがわかっております。すなわち、アメリカの低所得層の三八%は銀行口座を持っておりません。その人たちに小切手で週給を払いますと、どうやって現金化するんでございましょうか。つまり、キャッシュチェッカーと申しまして、たばこ屋のような両替屋さんがニューヨークでも労働者の多い地域に参りますとたくさんございます、猛烈な高金利で高い手数料でございます。では、そこへ行きたくなかったら、会社の経理ですぐ現金化してあげるよという仕組みをつくるわけであります。そして、その会社は毎週一枚の週給小切手を現金化するについて労働者一人から一ドル以上取り上げているという現実が、さまざまのレポートでも報告されております。

 つまり、金融システムから脱落していくというのは、さらにひどい収奪的な金融システムのターゲットになっていくというメカニズムがあることはぜひ御認識いただきたいと存じます。

塩川委員 ありがとうございます。

 田尻参考人と菰田参考人にお尋ねいたしますが、やはり、法案審議を通じましても、国民サービスの大幅な後退を招く、こういう重大な問題が今回の郵政民営化だと思っております。特に、一体経営の民営化という形態ではなくて、郵貯、簡保を切り出すという形での分社化での民営化について強い疑問の声が出されております。

 そういう点で、国民のための民営化でないことは明らかでありますから、こういう郵貯、簡保を分離する、外に切り出すという形での今回の民営化法案というのは、一体だれのための民営化なのか、何のための民営化なのか、この点についてぜひお二方にお聞きしたいと思っております。

菰田参考人 お答えをいたします。

 そこの、だれのための、何のためのが一切説明されておりませんから、私どもは解釈しようがないわけであります。

 そこで、四分社化、五分社化について私の考え方を言いますが、これは英国の鉄道の例で申し上げます。

 英国の鉄道の民営化は、もともと一元的に管理された鉄道サービスを上下分離、そして機能別に数十社、およそ四十だと思いますが、関連会社を設立してスタートしました。つまり、一本の列車を走らせるために数十社の企業が関係するという極めて複雑な形態に変化したわけです。そして、その中心的な存在であったレールトラックという会社が、ある脱線事故をきっかけにわずか五年で破綻をした。その処理と鉄道ネットワークの修復に多大な財政支出を要している経過にある。こういうことなんです。

 そして、それを郵便局の例でいきますと、一通の手紙が差し出されて配達されるまでの間、幾つもの会社を通らなきゃならない。そして、手数料もそれぞれ、利潤追求ですから変動する。そういうことになってきますと、この手紙はいずれ迷路に入っていく。こういうことになりますと、大事な通信と言われる部分がだめになってしまう。こういうことは確実に起こるわけで、起こってからでは多大なコスト負担になる。こういうことでございますから、もう少し、だれのため、国民のためのサービスということについてしっかりと説明していただいて、ビジネスモデルをやってもらわないと、失敗例がまたできるのではないかと危惧をしております。

 以上です。

田尻参考人 分社化の最大の理由として、リスク遮断ということが言われております。しかしながら、いかなる経営形態をとりましても、そうした経営形態のちょっとしたくくり方でリスクが遮断できるなどという金融論を私は聞いたことがございません。

 リスクというのはコントロールするものでございまして、あるセクションだけが全く無縁の聖域に逃げ込めるというようなものは、現代の資本主義経済の中には存在し得ないわけでございまして、分社化がリスク遮断の理由だということで、もし真実だといたしますと、今、日本の事業会社は金融子会社なり金融部門にどんどん連結対象の子会社等で進出しております。これはやめさせるのでございましょうか。つまり、そういう意味で、リスク遮断論というのは分社化の理由にはならないということでございます。

 それから、分社化して、さまざまの監視機構までつくって手足を縛った上で、十年以内に郵便貯金会社と簡保会社については株式を完全売却するということでございますが、これは一体幾らでだれが買えるのでございましょうか、このような会社を。つまり、これはたたき売りでございます。仮に高く売れましたといたしましても、何に使うのかは全く説明されておりません。

 過去におきまして、NTTやJTの民営化に伴いまして放出されました株式の売却代金は何にお使いになったのでございましょうか。つまり、この売却代金の半分から三分の二は、赤字国債の償還財源としてもはや雲散霧消してしまったわけでございます。JRが大変成功例だと言われますけれども、その一方で国民が失った資産というのはまた巨大なものがあるわけでございます。そういう意味で、株式売却と分社化という問題は、非常に危険な考え方であろうかと思います。

 もう一つ、国民負担が軽くなりますよ、だから分社化するんですよ、持ち株会社、民営化するんですよ、こういうふうに説明されます。これはまことにおかしな議論でございます。現在と民営化後の姿をお考えいただきたいんですが、こんなことは望むべくもございませんが、最初に田中先生からも警告がございましたように、国債の暴落ということは将来考えないといけません。

 では、そのときに民営化しておりましたら何が起きますでしょうか。郵貯会社あるいは簡保会社が、保有資産が一気に、仮にわかりやすく百億円持っていたのが五十億円になったといたします。これはもう破産でありますから、郵貯、簡保の利用者にはお金はほとんど戻らないかもしれない。つまり、国民はかぶらないといけないんです。

 今、公社で同じ事態に直面したとしますとどういうことになりましょうか。公社も確かに百億の資産が五十億に減りますので、左手では五十億の損失を計上いたします。ところが、ここで得をする人がいるんです。だれでございましょうか。これは財務省理財局でございます。今までなら百億円のキャッシュを用意しないと百億円の借金の証文である国債は回収できなかったのが、五十億円で回収することができるわけでございますから、これは財政再建万歳でございます。つまり、この五十億円の利益が右手で発生するわけであります。公社であれば、左手と右手を合算いたしますと、だれも何もしわ寄せは行かないんです。

 民営化するから国債暴落時点でその災難はすべて国民がひっかぶらなければならない、利用者、加入者が損失を受けるということになるわけであります。これは極めてわかり切った原理でございます。

塩川委員 田中参考人、北城参考人にお伺いしたいと思いましたが、時間が参りましたので、機会がありましたらまた改めてお願いします。

 どうもありがとうございました。

二階委員長 次に、横光克彦君。

横光委員 社民党の横光克彦でございます。

 きょうは、参考人の皆様方、それぞれのお立場からの貴重な御意見、本当にありがとうございました。

 田中参考人にまずお伺いをいたします。

 参考人が携わりました郵政三事業の在り方について考える懇談会、ここの最終報告でいわゆる三類型を提案されたわけですが、結局、第二類型、第三類型、これを土台にして今回の法案ができているのではなかろうかと私は思うんですが、この中で、二類型、三類型ともに「郵便局ネットワーク」のところでは「現在の全国一体の郵便局ネットワークが維持されるとは限らない。」二類型、三類型ともにそのように書かれております。

 今回の法案は、安定的代理店契約を結べばこのネットワークは確保できるんだということの答弁でございますが、このネットワーク維持、確保につきまして、この法案のそういった答弁につきまして参考人の御意見をお聞きしたいと思うんです。

田中参考人 ネットワークを稠密に維持するにはコストがかかりますので、ユニバーサルサービスが維持できる範囲内のところでネットワークの合理化を図るというのが当然だろうと思います。

 ということは、現在ただいまの郵便局ネットワークのすべてが維持されるわけではないと私は思っておりますし、今回の法案でも、すべてを維持するというふうには書いていないというふうに私は理解しておるんです。

横光委員 その次に、きょうのお話で、民営化に伴う三つのリスクがある、これを封じ込めなきゃならない、その一つに破綻リスク、このために経営の緊張が必要であるというお話でございました。つまり、当然のことでございますが、この経営の緊張ということは、経営の判断ですね。今回の答弁でも、代理店契約にしても、基金を使うにしても、最終的には経営者の判断で、経営判断だということで、緊張が非常に大切なわけですね。

 そうしますと、不採算地域というものが発生した場合、その経営の緊張というものが非常に重要になってくるわけですが、そういった地域で契約するということはあり得るのかあり得ないのか、そのことをまずお聞きしたいと思うんです。

田中参考人 民営化された場合の経営者の御判断、どういう形になるかわかりませんが、当然赤字を続ければ破綻の可能性が高まりますので、赤字を続けることはもちろんできません。

 そのため合理化をされるわけですが、合理化の、一般的に考えますと、お客様に対してのサービスを追求しながら、売り上げを確保しながら、かつ供給側としてはコストを下げるという手段は幾つもあるわけですから、それは当然追求される、供給側のネットワークの幾つかについて根底的な見直しをされる、それを通じてやっとこの破綻リスクを回避し続けることができる、そういう論理的な関係ではないかと思います。

横光委員 北城参考人にお聞きしたいんですが、同じ質問でございます。

 そういった、結局、最初は契約という条件つきの義務になっておりますが、これが徐々に徐々に、やはり契約していながらも営業しながらかなり厳しい状況になってきた、そういったときの経営判断ということを考えますと、それが不採算地域ということになった場合、どのような経営判断をされると思われますか。

北城参考人 基本的に、民間経営者の判断としては、お客様のサービスを維持しながらいかにコストを下げるということで努力をすると思いますので、まずは配置とか、同じ配置にしてもコストを安く郵便局を維持するような方策を考えると思いますし、ほかの事業へ乗り出すということも考えると思います。

 したがって、民間の経営というのは、赤字が出てもいかにそれを削減するか努力をするわけで、決して赤字が出たら補助金を要求するということではないと思いますので、まずは大前提として、ネットワークの維持には価値はあります。今、民間の銀行でも保険会社でも、全国に二万四千もの支店網を持っている会社はありませんので、そういう意味では価値があると思いますので、価値を生かしながらいかにして赤字が出ないように努力するというのが民間の経営だというふうに思います。

横光委員 今、そういった補助金等には頼らないんだ、民間の創意工夫、それは先ほども宅配便の件で御説明されました。

 しかし、今回、十年たってなおこのネットワークの価値が下がった場合には基金を使える、そういう措置をされているんですね。これは、ある意味では創意工夫より補助金に近い、いわゆる交付金に近いわけです。ですから、そういった形で措置するということは、今の先生のお話とはちょっと趣旨が違うんじゃなかろうかと思うんですが、いかがですか。

北城参考人 したがって、私は、そういった補助金に依存しないで経営をするというのが大前提だと思いますが、しかし、それでも経営が成り立たないということがあった場合には、本来は、それぞれの地域の人たちがどこにお金を優先的に使いたいかという判断のもとに、金融サービスあるいは郵便サービスのためにどうしてもお金を使う必要があるという御判断であれば、それにお金を使うべきだと思いますが、そのために基金を利用するという方策を考えられたのだというふうに思っております。

横光委員 結局は、言っていることと実態は、そうせざるを得ないというようなことに今なろうかと思います。

 先ほどちょっと、重複いたしますが、システム開発の件ですが、本当に検討会議の結論は、管理すべき一定のリスクが存在するとしながらも、対応できると言うのですから、これはある意味で、私から言うと見切り発車、とにかくやるしかない、やってみよう、こういうことだと思うんですが、果たしてこういうことで期限までに間に合うことができるのかというのが一つ。それが膨大な量ですからね。それともう一つは、本当にこのことによって、見切り発車することによって事故を起こすようなことはないのか、この二点についてお伺いをいたします。

北城参考人 これは民間の金融機関の合併においても同じですし、システムの構築は残念ながら全くリスクがないということはありませんので、それぞれの経営者はどのくらいのリスクがあるかということを判断しながらその期間に間に合うような方策を実行するわけで、その結果として問題が出たということはありますけれども、リスクが全くないということは民間経営ではありませんので、必ずリスクはある中でそれをどう抑えるかというのが経営だというふうに思います。

 したがって、今回のシステム構築に当たっても幾つか暫定的な対策、あるいは政府に税金の収納方法とか幾つかお願いをするというようなことはあると思いますが、基本的には、リスクがあってもそのリスクをどういうふうに管理するかというのが民間の経営のあり方ではないかというふうに思います。暫定のシステムというのは、常にリスクがある中で努力をしているということでございます。よろしいでしょうか。

横光委員 金融経済の動向というのは日々激変するわけでございますが、北城参考人にお聞きしますが、十年後まで決め打ちするような経営計画を立てる、経営者として、経験者としてそのようなことが果たしてあり得るのかどうか、まずお聞きしたいと思うんです。

北城参考人 おっしゃるように、十年先を見据えてすべての経営のケースをつくるというのは非常に難しいというふうに思いますし、また、ビジネスモデルをきちっと確立すればそれで経営がうまくいくということでもありませんで、やはり経営者と職員が努力をしながら事業の健全性を維持するということだと思います。したがって、幾つかの試算はできると思いますし、試算に向かって努力をするということはありますが、しかし、十年先を見据えるということは非常に難しいと私も思っております。

横光委員 次に、田尻参考人にお伺いをしたいと思います。

 北城参考人が、財投改革には、出口改革に先駆け入り口としての郵貯、簡保改革が不可欠だ、こっちの方が先だというようなお話をされました。お考えが、御意見が先ほどから真っ向違っておるんですが、この件につきましてもう一度、それはおかしいんだと言われましたのは、預金者の責任ではなくて、旧大蔵省、政府の方の責任だというふうな理屈を述べられましたが、そのことで、北城参考人の意見についての御意見をお聞きしたいんです。

田尻参考人 間接金融機関の資金仲介機能というのは、片方に預金者がおりまして、真ん中に銀行、大蔵省資金運用部がございまして、そして借り手である財投機関なり政府がいる、こういう形になるわけでございます。したがいまして、その預金者があくまでも相手にしておりますのはこの大蔵省資金運用部までのところでございまして、そこから先のことは、一般民間銀行におきましても、預金者はあずかり知らない、責任を問われることはない、これが間接金融の原則でございます。

 したがいまして、郵貯、簡保が存在するからということの実態論として、先ほど数字でも御説明申し上げましたように、郵貯、簡保がその主たる資金源であり、それが財政規律を乱したわけではない。つまり、それは民間銀行と民間保険会社の総額、国債保有残高を合わせますと、郵貯、簡保の国債保有残高と何ら変わるところはありません。それ以上に輪をかけて財政規律を乱すようなことをやっておるのが日本銀行でございますということを御説明申し上げたわけでございます。

 したがいまして、この基本的な構造をどうするかというところをお考えいただきませんと、お金を出す方が民間銀行になろうが公社のままであろうが、このお金の流れは基本的に何ら変わることはあり得ないということでございます。

横光委員 田尻参考人の御意見で、結局、国民主導型の郵政公社への改革、つまり現在の公社の経営形態の中で民営化法案にあるようなことはすべて改革できるんだというお話がございましたが、本当にそういうことが可能なんでしょうか。

田尻参考人 例えば物流で、民営化すると国際的に展開することができますというふうに政府は御説明なさっていらっしゃいますけれども、私ども、公社の制度設計をいたしました段階で、既にこの郵便については出資条項をきちんと盛り込んでおりまして、国際物流企業として展開できる体制をつくったわけでございます。

 したがいまして、民営化しなければできないことが何かあるかということで、政府がこんなことができますよとおっしゃっていることを全部見ましても、現在のままで何らできないものは私には見つけることができなかったということであります。もしできないということがあるのでございましたら、お教えいただきたいと存じます。

横光委員 菰田参考人にお尋ねいたします。

 事業に携わっている現場の声、ありがとうございました。

 今、田尻参考人が、公社の経営形態の中でもできるじゃないかというような御意見でございますが、現場で実際、日々事業に携わっている立場から、本当に公社の経営形態の中で、企業性を取り入れながら改革はできる、そういった御認識を確信できるかどうか、お聞きしたいんです。

菰田参考人 お答えいたします。

 郵便局は行政ではございませんで、ずっと事業をしていまして、市場の中で配達もしたり集金もしたり募集もしたりファイナンスに対する相談事もしていますから、そういう意味合いではもう肌感覚で、もっともっとすばらしいことが公社法の中でできるということで確信を持っておりますので、ぜひ公社法をベースにしつつ改革をしていただくというふうな形でまとめていただければありがたい、このように思っています。

横光委員 終わります。ありがとうございました。

二階委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三分散会


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