衆議院

メインへスキップ



第22号 平成17年7月1日(金曜日)

会議録本文へ
平成十七年七月一日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 二階 俊博君

   理事 石破  茂君 理事 松岡 利勝君

   理事 柳澤 伯夫君 理事 山崎  拓君

   理事 中井  洽君 理事 原口 一博君

   理事 松野 頼久君 理事 桝屋 敬悟君

      伊藤 公介君    大野 松茂君

      大前 繁雄君    奥野 信亮君

      北川 知克君    小杉  隆君

      河野 太郎君    佐藤  勉君

      坂本 剛二君    桜井 郁三君

      櫻田 義孝君    柴山 昌彦君

      園田 博之君    竹本 直一君

      玉沢徳一郎君    中山 泰秀君

      西田  猛君    萩山 教嚴君

      馳   浩君    早川 忠孝君

      原田 令嗣君    船田  元君

      松本  純君    三原 朝彦君

      山口 泰明君    山本  拓君

      五十嵐文彦君    伊藤 忠治君

      一川 保夫君    岩國 哲人君

      小沢 鋭仁君    大出  彰君

      川内 博史君    楠田 大蔵君

      小林 憲司君    小宮山泰子君

      古賀 一成君    鈴木 克昌君

      寺田  学君    中川  治君

      中塚 一宏君    中村 哲治君

      西村智奈美君    古本伸一郎君

      馬淵 澄夫君    松崎 哲久君

      山花 郁夫君    石井 啓一君

      谷口 隆義君    佐々木憲昭君

      塩川 鉄也君    横光 克彦君

    …………………………………

   内閣総理大臣       小泉純一郎君

   総務大臣         麻生 太郎君

   法務大臣         南野知惠子君

   財務大臣         谷垣 禎一君

   経済産業大臣       中川 昭一君

   国土交通大臣       北側 一雄君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     細田 博之君

   国務大臣

   (金融担当)       伊藤 達也君

   国務大臣

   (郵政民営化担当)    竹中 平蔵君

   内閣府副大臣       西川 公也君

   内閣府大臣政務官     木村  勉君

   総務大臣政務官      松本  純君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    阪田 雅裕君

   政府特別補佐人

   (公正取引委員会委員長) 竹島 一彦君

   政府参考人

   (内閣官房郵政民営化準備室長)          渡辺 好明君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  中城 吉郎君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  竹内  洋君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  細見  真君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  伊東 敏朗君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  篠田 政利君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房長)   永谷 安賢君

   参考人

   (日本郵政公社総裁)   生田 正治君

   参考人

   (全国銀行協会会長)   前田 晃伸君

   参考人

   (エコノミスト)     紺谷 典子君

   参考人

   (東洋大学経済学部教授) 松原  聡君

   参考人

   (郵政産業労働組合中央執行委員長)        山崎  清君

   衆議院調査局郵政民営化に関する特別調査室長    石田 俊彦君

    ―――――――――――――

委員の異動

七月一日

 辞任         補欠選任

  井上 信治君     山本  拓君

  今村 雅弘君     櫻田 義孝君

  江藤  拓君     河野 太郎君

  城内  実君     玉沢徳一郎君

  小泉 龍司君     船田  元君

  小西  理君     三原 朝彦君

  左藤  章君     坂本 剛二君

  桜井 郁三君     早川 忠孝君

  園田 博之君     佐藤  勉君

  馳   浩君     伊藤 公介君

  宮下 一郎君     奥野 信亮君

  岩國 哲人君     中川  治君

  中村 哲治君     寺田  学君

  古本伸一郎君     小宮山泰子君

  塩川 鉄也君     佐々木憲昭君

同日

 辞任         補欠選任

  伊藤 公介君     西田  猛君

  佐藤  勉君     竹本 直一君

  坂本 剛二君     左藤  章君

  玉沢徳一郎君     萩山 教嚴君

  早川 忠孝君     桜井 郁三君

  船田  元君     中山 泰秀君

  小宮山泰子君     古本伸一郎君

  寺田  学君     楠田 大蔵君

  中川  治君     鈴木 克昌君

  佐々木憲昭君     塩川 鉄也君

同日

 辞任         補欠選任

  竹本 直一君     原田 令嗣君

  西田  猛君     馳   浩君

  楠田 大蔵君     松崎 哲久君

  鈴木 克昌君     小林 憲司君

同日

 辞任         補欠選任

  原田 令嗣君     園田 博之君

  小林 憲司君     岩國 哲人君

  松崎 哲久君     中村 哲治君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 郵政民営化法案(内閣提出第八四号)

 日本郵政株式会社法案(内閣提出第八五号)

 郵便事業株式会社法案(内閣提出第八六号)

 郵便局株式会社法案(内閣提出第八七号)

 独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案(内閣提出第八八号)

 郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第八九号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

二階委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、郵政民営化法案、日本郵政株式会社法案、郵便事業株式会社法案、郵便局株式会社法案、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案及び郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案並びに山崎拓君外二名提出、郵政民営化法案、日本郵政株式会社法案、郵便局株式会社法案及び郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案に対する各修正案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、参考人として日本郵政公社総裁生田正治君の出席を求め、意見を聴取し、政府参考人として内閣官房郵政民営化準備室長渡辺好明君、内閣官房内閣審議官中城吉郎君、内閣官房内閣審議官竹内洋君、内閣官房内閣審議官細見真君、内閣官房内閣審議官伊東敏朗君、内閣官房内閣審議官篠田政利君及び内閣府大臣官房長永谷安賢君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

二階委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

二階委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松岡利勝君。

松岡委員 おはようございます。

 五月二十六日に提案理由の説明がありまして以来、きょうで三十七日目を迎えております。大変な長丁場の中できょうは締めくくり総括が始まる、こういうことで感慨深いものがございます。

 きょうまでのこの委員会におきます審議の経過を振り返ってみますときに、私は、委員各位の大変な御努力、御協力はもとよりでありますけれども、何といいましても、二階委員長の公平かつ的確な御采配はもとよりでございますが、野党の理事の皆様方、特にその中で、中井筆頭の、野党の司令塔として、かつまた議会人としての卓越した御見識とそれから御人格、これには心から敬服をいたしております。我が与党の代表であり筆頭であります山崎筆頭とのやりとりの数々を思い起こしますときに、これは理事会ですから表に出ないわけでありますけれども、この名場面の数々、恐らく国会史に残るそのような場面であるだろうと、私はこのように今思っております。このような世紀の大改革の場におきまして理事の末席として身を置かせていただきましたことは、非常に光栄であります。

 審議時間数にいたしましても、四日がいよいよ採決ということになっておりますけれども、そこまでいきますと百十時間前後に達する、こういうことであります。これは、振り返ってみましても、日米安保条約、沖縄国会に次ぐ時間数になる。まさに、時間数からいたしましても世紀の大改革にふさわしい議論が重ねられてきた、私はこのように認識をいたしております。

 そこで、今日までの議論を踏まえまして締めくくり総括をさせていただきますが、時間が十七分と限られておりまして、したがいまして、幾つかの基本的な点について確認をさせていただきたいと思います。

 まず、私は、この郵政大改革は、その郵政事業の大きさ、また広がり、そして国民とのかかわりの深さ、こういったことからいたしまして非常に重要な、大事なものであると思っております。したがいまして、国民の将来にとって、また、今日まで郵政事業を支えてこられました特定郵便局長の皆様方を初めとする関係者の方々の将来の安定や発展にとっても、何としても成功させなければならない大改革である、このような認識に立って御質問させていただきたいと思います。

 まず、この改革の意義と目的でございますが、今日までの議論の中で言われましたことは、どうもこの郵政改革は、小泉総理の異常なまでの思い入れが強過ぎるとか、何かそれによってなされているとか、与野党を通じてそういう御指摘もあったわけであります。そしてまた、国鉄は赤字の解消という大目的があった、NTTも情報改革という大きなそういう問題との関連があった、このように指摘されて、郵政改革はないんじゃないか、こう言われておるわけであります。そういった指摘もなされましたが、私は、審議を注意深く聞いてまいりまして思いましたことは、先ほども言いましたように、国民とのかかわり、この大きさや深さや広さにおいては、私はこれにまさるものはない、このように思います。そういたしますと、本当にこの改革の達成こそが、これは先ほど言いましたように、将来の国民の生活や経済活動全般にわたって大変重要な役割を持っておると私は思っております。

 したがいまして、そういう観点で見てみますと、まさに郵便事業というのは、日常の国民の全国津々浦々までの情報の伝達でありますし、かつまた、郵便貯金、簡保を合わせますと三百四、五十兆というこれは額であります。まさに、国民の金融総資産千四百兆と言われますが、その中の四分の一にも当たるような大きな大きな割合を占めております。それが、今日までは固定された、限定された運用、こういうことでございます。私は、これを自由な形で、そして幅広く発展可能性を大きく求めることによって、これは今までにない大きな可能性が生まれてくる。公聴会でも経済学の先生がおっしゃっておられましたが、これからの国民の経済活動全般にわたって、また生活全般にわたってやはり限りない発展の可能性がこれはある、そういったようなことが指摘をされております。したがって、そういった意味では、国民にとっての金融大改革、こういったような大きな可能性を含んだそういう目的と意義がある、私はこのように今認識をいたしております。そういった点につきまして、私は、まず、これはもう本当に国民の皆様方にも、なるほど、そういうこれは大きな目的と意義があるのか、こういう御認識、御理解をいただくことは重要だと思っております。

 そこで、総理のこの点についての御見解を賜れればと思います。

小泉内閣総理大臣 これまで長時間にわたりまして、この郵政特別委員会の理事、委員の皆様方、二階委員長の采配によりまして慎重に審議され、御協力いただいてきたことに対しまして敬意を表したいと思います。

 私に対しましても、異常な決意とか申されましたけれども、並々ならぬ決意と言う方が適切ではないでしょうかね。その郵政改革の持つ意義の大きさ、これは、今までの官の分野、いわゆる役所の改革をするのに避けては通れない改革だと思って、長年この民営化の主張を展開してまいりました。

 そういう中で、この改革をする際には、私どもは五つの原則を提示いたしました。それが一つが、いわゆる官から民へ、民間にできる仕事はできるだけ民間にやってもらおう。かつては、官は民の補完であるということがよく言われましたけれども、時代が流れるにつれて、現在では、民間にできることは民間にから、これは、公共的な仕事は官僚なり役所がやる、そうでないものは民間がやるんだというように言われましたけれども、公共的な仕事でも民間にできるものは民間にやってもらおう、一歩踏み込もうという時代になってきたと思います。そういう点から考えますと、この郵政三事業は決して公務員じゃなきゃできない仕事ではございません。

 そういう観点から、この官から民へ、これは、商売、仕事の面に関しまして利益を上げて事業をするということになると、公務員よりも民間の経営者に任せた方がいいのではないか、これが経済活性化原則、こういうことがまず官から民へということであります。

 これは、社会主義的な考え方でない方は、民間にできることは民間にということは、大方総論賛成であります。ところが、各論になるとこれは反対です。典型的なのが民主党の例ですね。そういう各論の反対を押し切ってこれをやるという、極めて既得権を手放すというところについては抵抗がある。これをやはり理解を得ながら進めていかなきゃならない。

 それと、今までの構造改革、二番目には、整合性をとらなきゃいかぬと。この郵政民営化というのは、まず行政改革にも資する、そして財政改革にも資する、なおかつ金融改革、これにも資するし、規制改革にも資すると。いわゆる全体の構造改革、特殊法人の改革がよく言われておりますが、そのような整合性を持ってこの改革を位置づけようということであります。

 三番目としては、この郵便局の民営化によって、地域経済に果たしてきた役割、今後もさらに進展される可能性を秘めている郵便局、今まで三事業だけに限られていたものが民営化することによって規制が緩和される、手足を縛られていたのが自由になるということでありますので、経営者の意欲を促せば、今まで我々が想像してこないような事業も展開して、それは多くの国民に利便性を向上させるんではないか、そういうことを目指していきたい。

 さらに、郵政公社が持っている、今の各全国に設けられております郵便局というのが貴重な資産であります。このネットワーク、これを有効に活用していく。

 そして、この郵政公社には多くの公務員が勤めておられます。その雇用にも十分配慮していかなきゃならない。別に首を切るわけじゃありませんので。

 そういう原則をもってこれからより多くの国民に理解され、そして、この民営化が日本の経済を活性化させていくという形で時間をかけて民営化をさせるということでありますので、私は、時代に即した世界の大きな変化に対応できるような体制を、この郵政民営化によって日本の基盤を整えていきたいと思っております。

松岡委員 そこで、今の目的と意義というのは、これは私は明快であると思いますが、さらにその背景をちょっと考えてみました。

 実は、私は農政関係にずっと携わってまいったわけでありますが、どうもいろいろ突き詰めて考えてみますと、農政と郵政、これは似ておるし一緒だな、最近そういう感を深くしております。

 といいますのは何かといいますと、私は、やはり農政、日本の農業は小さくて弱いものですから、大きくて強い外国の農業から守るには、これは守るしかない、こう思っていました。ところが、日本人の胃袋はどんどん減っていく、小さくなっていく、少子化ですから。そうなりますと、お客が減っていく店、商売ではこれは発展がない。そうすると、日本人の胃袋だけ当てにしておったのでは、これはなかなか発展性はない。そこで世界を見渡してみますと、これはまさに日本食ブームだし、中国なんかはもう巨大な胃袋がますます豊かになって、大きなこれはやはり可能性がある。そこで考えてみまして、これはやはり輸出の問題だとか、そういったことを今これは必要だと。やはり攻めてこそこれは守りがあるし発展がある、こう思っているわけです。

 郵便も、これを見ますと、もう最近はメールの時代、どんどんどんどんメールがふえていく。そうなりますと、これはやはり農政と似たような、これはどんどんどんどんやはり需要が減っていく。そうなると、私はこの前公聴会へ行ってまいりました、佐賀県。そこで、これは野党推薦の方でありますが、現状認識としておっしゃいましたことは、佐賀県には二百六の郵便局がある、そのうち特定局が百五十三だ、その特定局のうちの九割は赤字だと思う、したがって、市場原理からすれば撤退や統合は避けられないだろうと。それをどう守るか。

 そう考えますと、そういった弱いところが今まで以上に弱くせずに強くする、なかなか至難のわざである。それを思えば、強くできるところで、大きく展開できるところで大きくやって、そしてその分で弱いところを救っていく。私は、やはりそういった展開が必要なんではないかな、こう思うわけであります。そのことによって離島や過疎や、そういった地域をしっかり支えていく、それによって将来の安全と安心がそこにある、こういうやはり改革の方向が必要なんだろうと。まさにそういう意味で、農政と郵政、携わってみて、これはどうも一緒だな、そういう感を今深くいたしておるわけでございます。

 もうあと二、三分で終われという指令が今来ましたので、具体的なことにちょっと移りますが、そういう中で、国民の皆さんも非常に御心配、また、直接携わっておられる郵政関係者の皆さんも非常に危惧されておられます、地方の郵便局なくなってどうするんだ、こういうふうな話になりましたとき、やはりきちんとそこは、いやいや心配要りませんという答えが必要なわけであります。

 そこで、幾つかありますが、まさに過疎地やそういった地域の郵便局は、これは必ず残るんですよ、逆に、市場原理でこのままいくよりも、かえって今回の改革によって安全で安心だということが措置されたんですよと言うことが必要だと思います。それからもう一つには、これはやはり、まずユニバーサルの問題、これは全国一律ですよ、それから郵便局、これは身分は大丈夫ですよ、特定局長さんを初めしっかりと守られます、それから三位一体といいますか、事業の一体経営もこれは可能だし、できます、また外資、そういったことからする問題につきましても、きちんと敵対的な買収については措置がございます、安心です、こういった答えが必要だと思います。

 あわせて、最後になりますが、私はこの民業圧迫の問題についてもきちんとした配慮がなされなきゃならぬと思っています。例えて言いますと、旅行業とか観光業、こういったものは営々と小さく続いてきた。それがまたこういった郵便局の民営化によってそういったことが侵されないような、それがしっかりと守られるこういった配慮も大事である、こういった点についてお答えを求めまして、私の質問はこれで時間が来ましたので終わりますが、ひとつよろしくどうぞお願いいたします。

竹中国務大臣 松岡委員御指摘のように、決して縮小均衡的な守りの改革ではなくて、経営の自由度を広げた攻めの改革が必要だ、同時に、過疎地への配慮等々十分に行わなければいけない、そのような形にこの法案をつくっているつもりでございます。

 過疎地につきましては、とりわけ、あまねく全国において利用されることを旨として郵便局を設置するということ、これは都市部も含めて法律上位置づける、さらに省令において、具体的な設置基準としまして、過疎地については、法施行の際現に存する郵便局ネットワークの水準を維持することを旨とするということを規定するなど、きめ細やかな法制上の担保を行っているところでございます。万が一にもそういった利便に支障が生じないような適切な対応をしていくつもりでございます。

 その他、外資への対応、一体的な経営、民業圧迫をしないように、そうした点につきましてもこの法案におきましては非常にきめ細かく対応しておりますので、それをぜひ誠実に実行してまいりたいと思っております。

松岡委員 これで終わりますが、ぜひともよろしくお願いをしたいと思います、心配のなきように。

 それから、先ほど、冒頭ちょっと、政府の皆様方の御努力についても失念をいたしておりまして、敬意を表しまして、終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

二階委員長 次に、伊藤公介君。

伊藤(公)委員 自由民主党の伊藤公介でございます。

 小泉総理が三回の総裁選挙でこの郵政改革を訴えられて、そして、総理・総裁になられて既に四年を経過いたしました。衆議院の本会議壇上から、郵政改革が今までテーマにすらならなかった、こう壇上から激しくこの問題を提起されて、四年間いろいろな議論を積み重ねてこられました。いよいよその総括、締めくくりの質問、自由民主党の最後に立たせていただくことになりました。

 この改革を図って日本の全体の構造改革を進めるという、非常に大きなクライマックスに今来ていると思います。総理の胸の中にもさまざまな思いがあると思います。また、この改革は、三百四十兆という国民の汗した大切な金融資産を官から民へ、また、四十万という公社職員を民間にしていくという、まさに小さな政府への大きなステップにもなるわけであります。

    〔委員長退席、石破委員長代理着席〕

 これは、賛成、反対、特に反対というよりも、金融リスクというものに皆さんがいろいろな心配をされているんだろうと思います。私たちの党内にもいろいろな心配の声もあります。しかし、民主党の皆さんの中にも、特に若手の皆さんは、改革をすべきだ、むしろ十二年間もというのは長過ぎるという声も個人的にはちゃんと私は聞いています。ですから……(発言する者あり)

石破委員長代理 質疑を続けてください。

伊藤(公)委員 私は、個人的にさまざまな声があるということを十分聞きながら、私たちはこの改革を断固として進めていかなければならないと思います。

 そこで、問題は……(発言する者あり)

石破委員長代理 御静粛に願います。静粛に願います。

伊藤(公)委員 郵貯と簡保は、財投改革によって、郵貯や簡保を特殊法人へという資金の流れに改革のメスを入れられてきましたけれども、膨大な資金が国債を中心とした運用がなされている実態はほとんど変わっていないのであります。郵貯、簡保の五〇%はいずれも国債に運用されているのが現実であります。

 今、国際的にも、この郵貯や簡保がどういう状況になっているかということも、我々はこれまでの議論の中でいろいろなやりとりをやってきました。今、簡易保険は、ほとんどの主要な国にはありません。郵便貯金も、形はあっても、日本ほど大きな郵貯というのはほとんどの主要な国にはありません。

 例えば郵便貯金は、わかりやすい数字ですけれども、フランス、イギリス、ドイツ、ドイツは若干州にもいろいろな制度がありますけれども、それにしても、日本は郵便貯金だけでも二百二十七兆円ですから、この数字は明らかに、少なくとも日本は、私は、金融の異常国家だと言わなければならない現状だと思います。そして、郵貯、簡保の占めるシェアでありますけれども、今は国民の金融資産一千四百兆円のうちの何と二四%、これは郵貯と簡保であります。そして、その郵貯と簡保が国債の二五%、つまり四分の一を占めているわけですから、これはあくまでも、まさに日本の金融は異常な国家だと言わなければなりません。

 私たちは、今この改革をしっかり進めて、昨今は道路公団の問題もいろいろ指摘をされておりますけれども、既に小泉内閣では道路公団の民営化を果たし、そして今、本丸の郵政民営改革をなし遂げようとしています。

 そうした中で、この財投改革について、総理のまず御見識を伺っておきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 財投改革とこの郵政改革と特殊法人改革、これを一体的にとらえて改革していかなきゃならないということで、この郵政民営化を主張してまいりました。郵貯、年金等の財投預託制度は廃止されました。今は経過期間を持っておりますが、平成十九年度には廃止されるでしょう。そういう中で、財投の資金が、これは、公社である限り、やはり運用は限られてくると思います。

 そういう中で、私は、今後、官から民へ、役所が官の分野に資金を使うというのと、民間になって、そして、民間がこれからそれぞれの時代の変化に対応してどういう資金をどのように調達するか、また、どのように振り向けていこうかということについて考えると、私は、これは、官があれに使え、これに使えということではなくて、いわゆる民間によって、より経済の活性化に向けて、成長分野に向けて資金が官から民へ移っていく、それが日本経済全体の活性につなげていくべきものだと思っております。そういう官の分野、いわゆる、今までいろいろな国民から集めた資金というものが官の分野から民間の分野に大きく流れていく大事な一歩が今回の郵政改革でもあると思っております。

 そういう観点から私は今の時代を見ますと、統制経済よりは、やはり、民間の創意工夫を発揮できるような環境を政治がつくっていかなきゃならない。あれに使いなさい、これに使いなさいと一部の優秀な役所の方々が計画的に資金を振り分けるよりは、この時代の変化をグローバル的に眺めて、どうして国民のいろいろな要求にこたえるような、サービスにこたえるような資金を振り向けていくかというのは、私は、国家公務員よりも民間の方がはるかにすぐれていると思います。

 そういう観点から、私は、民間にできることは民間に、そして、資金も官の分野からより民間の分野へ振り向けていく大きな一歩になると私はこれは確信しております。

    〔石破委員長代理退席、委員長着席〕

伊藤(公)委員 ちょっと時間が限られておりますので、担当竹中大臣に単刀直入に伺いたいと思いますが、郵貯、簡保を含めて郵政は、現状ではかつかつ、マイナスにならないということを言われているわけですけれども、しかし、これはこれから、先ほどもちょっと議論がありましたけれども、どうも第二の国鉄になっていくかもしれないなどという心配もあるわけでございます。

 大臣は、ラブレターをもらったこともまた書かれたこともあると思いますが、今、若い人たちはもう手紙を余り書かなくなりました。そういう意味でも、最近、こういうインターネット化していくと非常に将来的には大変心配ではないか、こう言われているわけでありますが、時間がなくなりましたので、大臣、ちょっと後でこれをさせていただいて、先の質問を、もう時間がなくなったようですから。

 大臣、では一言だけ。これからの郵政民営化の必要性について、ちょっと端的にお答えください。

竹中国務大臣 郵政民営化の必要性のうちの非常に大きな問題である財投の改革、資金の流れの改革につきましては今総理からもお話があったところでございますが、もう一つの改革の必要性としては、郵政公社の経営自体の問題、それを取り巻く環境が激変しているということがあろうかと思います。

 今、伊藤委員も少しお話しになられましたが、郵便の取扱量が毎年二から二・五%減っている。これを十年続けると三割減るということになります。金融の技術革新がこれは通信革命以上に非常に早い、一方で、国際物流等々が特にアジアを中心に非常にダイナミックな動きをしている。そういうことに対応していくためには、やはり経営の自由度を持っていただく、そして民間と同じ競争をしていただく。公社という公的な機関にはおのずとその制約がある、それを踏まえて、どうしても私は民営化が必要であるというふうに思っております。

伊藤(公)委員 きょうは私どもの党の最後の質問であります。公社の総裁にもおいでをいただいておりますので、一言御答弁をいただきたいと思います。

 民営化をしなくても、いわゆる公社のままでもいいのではないかという議論もございます。しかし、総裁は民営化の必要性についてどう考えているのか。また、民営化によって可能なメリットなどについても総裁の生のお声を聞かせていただきたいと思います。

生田参考人 お答え申し上げます。

 ただいま政府に御承認いただいております中期経営計画というのが四年分あるわけでありますけれども、それを前倒ししながら経営しているということで、現在のところ、この二年間でかなり実績面でもそれを上回る格好で達成してきておりまして、その意味では、職員の頑張りが随分ききまして、いい実績、健全になってきているということは言えると思います。

 郵政事業だけを取り出して過去と今を比較すると健全化してきているんだけれども、それだけではいけないわけで、それを平面的に、市場の中でどういうふうになっているかというふうに、わかりやすく言えば、同業他社との比較で見ますと、実は大変劣後にあるわけでございまして、細かい数字は別としまして、郵便、物流関係でいいましたら、例えば、日通さんや佐川さんやヤマトさんなんかの二分の一とか三分の一とか、ひどいところは四分の一ぐらいの利益率しかありませんし、銀行で見ましても、三分の二とか半分とかというふうなことになっております。そういったことでございますので、なぜそうなるかというと、さっきもお話しありましたように、郵便はだんだん減ってくるということがありますし、金融関係はモデルが非常に不自由であるというようなことがあります。

 ところで、国民のニーズはあるわけでございますから、事業の健全化を図るためには、公社法のままでも自由度を高めていただくか、あるいは、民営化していただいて経営を自由にしていただくということで、ただし、民営化すれば必ずいいということではないわけでして、頑張ればよくなるような制度設計と強い経営力を入れていただく、こういうことが必要条件かと思います。

伊藤(公)委員 最後に、総理に質問したいと思います。

 この修正案が提案をされてきました。総理もかなり思い切った決断をされたんだろうと思いますが、実は、その中の、持ち株会社が将来連続的な保有をしていくというこの点ですね。つまり、三分の一の株を持った株式会社が、将来、郵便貯金銀行、郵便保険会社というものを、その株を一たんは売るわけですけれども、もう一度買い戻しができるという可能性をこの修正でするわけです。十二年後のことですから、そのときの経済とか金融の状況は大きく変わっていると思います。ですから、私は、可能な限りここは完全民営化、切り離していった方がいいと思います。

 ただし、多くの皆さんが心配しています。だから、リスクを冒さないという点でこの修正案を私は理解ができますけれども、十二年後、この改革が本当にいよいよというときには、むしろ私はここを切り離していくという状況がいいと思いますが、総理の御認識を伺います。

小泉内閣総理大臣 いや、それは今までの政府案と実質的には変わっていないんです。要は、妨げないというのを、できるということに変えたわけでしょう。妨げない、同じイコールフッティングですから、民間と。そういう場合には、ほかの民融機関にもできること、妨げないという文章をできると。妨げないとできるというのは同じようなものでしょう。決して義務づけていないんです。(発言する者あり)これも、文章を変えれば修正ですから。

伊藤(公)委員 困難を乗り越えて、ぜひやり遂げたいと思います。

 ありがとうございました。

二階委員長 次に、石井啓一君。

石井(啓)委員 おはようございます。公明党の石井啓一でございます。

 ちょっと場内が騒がしいんですけれども、私の質問ですので、静かにしていただきたいと思います。

 先日の地方公聴会で私は新潟県の上越市に行ってまいりました。郵便の父でいらっしゃる前島密翁の生誕地ということを伺いまして、大変えにしの深いところで地方公聴会をやらせていただいたなというふうに思っております。そこでお伺いしました陳述人の御意見を拝見しまして、まず一つは、過疎地ではやはり依然として、郵便局がなくなるんではないか、あるいは貯金・保険サービスがなくなるんではないかという不安が大変強いということを非常に実感をいたしました。

 そういう意見を伺いましたので、私も、いや、そうではなくて、この法案の中では、そういう心配に対応していろいろな工夫をしておりますよということで説明を申し上げたんですね。それは、郵便局の設置基準では、過疎地においては、現にこの法が施行する際に存在する郵便局のネットワーク水準については維持するということですとか、あるいは金融サービスについては、安定的な代理店契約あるいは社会・地域貢献基金を活用といったことを御説明申し上げたんです。

 そうしたところ、そういう法律的な枠組みは一応理解をしていると。ただし、理解はしているんだけれども、民営化すると、利潤の追求ということで、効率性の悪い過疎地については郵便局が撤退するんじゃないかという不安がぬぐい切れない、こういうお話でございました。

 そこで私は、このやりとりを通じて感じましたのは、やはりここは、丁寧に繰り返し説明することによってその心配を払拭していただくしかないなということを実感いたしたところでございます。

 さらに、別の陳述人の方からこういった御意見がございました。改革の原動力は国民の正確な理解からスタートをする、ただ、現状では郵政民営化の重要性が国民にはまだ見えていない、特に、資金の流れが官から民に変わるということをわかりやすく、根気よく説明をしてほしい、こういう要望も出されたところでございます。

 そこで、総理にお伺いをしたいところでありますが、衆議院の審議は残り少なくなりましたけれども、これから参議院の審議もまだ残っておりますので、今後の国会審議等で、引き続き、郵政民営化に関する重要性、必要性につきまして丁寧に説明をしていただいて国民の理解を広げていただきたいと思いますし、また、特に過疎地におけるこの不安の払拭に努めていただきたいと存じます。総理の御見解を伺いたいと存じます。

小泉内閣総理大臣 過疎地における郵便局がなくなるんじゃないかという不安があるということでありますので、そのようなことがないような規定も盛り込み、十分配慮して、現在の郵便局、全国に設置されておりますこのネットワークは資産として活用していかなきゃならないという配慮を十分いたしました。

 そこで、過疎地は、利益が上がらないから、収益が上がらないからこれはなくなっていくということでありますが、不安を持っている方は。現実に、どこの民間の商売でも、ある地域、地方、過疎地の支店あるいは営業所が利益が上がらないから果たしてなくすかというと、必ずしもそうじゃないですね。これは、全体を考えて、現在の宅配便の業者も、ある地域では利益が上がる、ある地域は利益が上がらない、しかしこの会社は、全国どこでも、利益が上がらないところでも配達してくれるということで、過疎地の営業所なり取次所というものを残しておく価値があるということで全国展開してきたわけであります。現に、今の民間のやっている宅配業者の中でも、全国あまねく配達できるシステムをつくり上げてしまった。

 そういうことから見れば、私は、今回の郵政民営化改革の法案につきましては、そのような過疎地の郵便局につきましては十分配慮するというような規定も設けておりますし、また都市部におきましても、郵便局のサービス、今までのサービスが十分機能するような配慮をするということも設けておりますので、民営化になれば切り捨てられるというような点の不安を十分配慮しているものだと。

 それで、この今回の郵政民営化の中で私はおもしろいなと思っているのは、批判する人は、政府案は中途半端だ、切り捨てないからおかしいという批判なんですよ。これはおかしいと思いませんか。国会の中で切り捨てるという議論は何にも出ていないんです。むしろ、切り捨てられると心配だから、切り捨てないようにしろ、切り捨てないようにしろというのが全部、全政党の要望ですよ。ところが、マスコミに出ている批判は、政府の考えているのは中途半端だ、切り捨てが足りないという批判なんですよ。こんなことは実際の政治の場ではあり得ないことなんです。そういう点を十分配慮したいい案が今回の政府の民営化改革案だと御理解いただきたいと思います。(発言する者あり)

二階委員長 御静粛に願います。質問続行中、御静粛に願います。

石井(啓)委員 今は過疎地の話をさせていただきましたが、今度は都市部の方の話をさせていただきたいと思うんです。

 六月三日の本委員会での総括質疑の総理の答弁を受けて、翌日の大手の新聞では、「都市部の郵便局「無くなる可能性出る」」という見出しが打たれて、何か、あたかも都市部の郵便局がどんどんなくなってしまうかのようなそういう誤解を与えた可能性があると思います。これまでの質疑でも確認をしておりますけれども、都市部で郵便局の統廃合が行われるということは、これは当然あり得ることでありますけれども、ただ、大幅になくなるということは、これは想定をされていないというふうに思っております。

 これまでの大臣答弁でも確認をしているところではございますが、改めて総理から、民営化後の郵便局の設置についての政府の基本的な考え方を確認させていただきたいと存じます。

小泉内閣総理大臣 都市部において、私は、郵便局は全部今のままだとは思っておりません。なくなる可能性もありますし、ふえる可能性もあるんです。

 それは、人口が多いところに対してこれはどんどん設置すれば収益も上がる、サービスの向上にもつながるというんだったらば、ふえていく経営者も出てくる可能性は十分ある。それは、当然、人口移動等か、あるいは地域の住民の要求はどうかというのは、これは各企業真剣に検討しますから、必要なサービスを展開するという意味においてふやす場合もあるし、ああ、ここはもうサービスする必要はないな、ほかの手段がある、十分機能できるというんだったらなくすところもあるだろうし、それは今のままということは当然考えられません。その点はよく御認識いただきたいと思います。

石井(啓)委員 それは私もそのとおりだと思います。ただ、その統廃合というのが、あくまでも国民の利便性に支障が生じない範囲でやるんだ、このことをぜひ確認をさせていただきたいと思いますので、もう一度総理、お願いをいたしたいと思います。

小泉内閣総理大臣 それは、民間におきましても、あるいは役所等におきましても統廃合というのはあり得ますが、この統廃合というのは、民間としていかに十分なサービスを展開するために必要かというその手段で行われるわけですから、統廃合されてサービスが低下するという場合も一部ではあるかもしれませんが、逆に、統廃合することによって、私は、よりよいサービス、料金にしても出る場合もあると。今のままで維持しようなんというのは、まさにもう既得権擁護そのもので、これはおかしいんですよ。当然、時代の変化に合わせて、なくなるところもあるしふやすところもあるという前提でないと、経営者に自由度を与えないことになりますから、それはその点御理解いただき、いかにいいサービスを展開するか工夫をしていただきたいと思います。

石井(啓)委員 国民のためにいかにいいサービスを提供するか、こういうことだということで確認をさせていただきました。

 続いて、修正案の提出者に確認をさせていただきたいと思います。

 今回の修正案におきまして、郵政民営化委員会の所掌事務について、三年ごとに郵政民営化の進捗状況について総合的に検証するから総合的に見直すということに改められたわけでありますが、この「検証」と「見直し」というのはどういう違いがあるのか、まず確認をさせていただきたいと思います。

柳澤委員 先生御指摘のように、今回の郵政の民営化におきましては、特に十年間の移行期間中に、民営化委員会は非常に大きな働きをいたします。諮問委員会ではありますが、意見の陳述を中立的な見地に立ってやる、こういうことになっておりまして、その中でも最も大事なのは、今の公社から民間各社になるときの承継計画、これについて意見を言う。そして、それで基礎が決まった後、三年ごとにレビューをしていく。基本方針では、レビューしていく、こう書かれておりました。これを法律の原案では、今先生御指摘のように「総合的な検証」という言葉にしてあったわけですけれども、「検証」ということになると、ただ事実を確認するということにとどまるわけでございまして、事実を確認したことについて意見を言う、こうなっておるわけでありました。

 ところが、今回、「見直し」ということになりますので、恐らく民営化委員会は、事実の検証をして、その基礎の上に立って何らかの改善策、誤りがあったら直す、こういうようなことについてまで意見を言うというふうになるだろうと。そういう意味で、ある意味で郵政民営化委員会の意見を申し述べる対象範囲はそれなりに拡大しているというふうに解すことができよう、このように思っております。

石井(啓)委員 見直すということによりまして、検証した上で改善策まで意見を言うという範囲に広がった、こういうことでございますが、それでは次に、政府に確認をいたします。

 では、その見直しの対象範囲というのがどこまでを含むのかということで、整理して三つ申し上げたいと思いますけれども、一つは、この民営化関連法の法律の範囲内での見直しということなのか、二つ目は、この郵政民営化法の基本方針の範囲内であれば若干の法律改正ということも含まれるのか、それから三番目、これは想定しにくいことではございますけれども、民営化そのものの見直しも含まれるのか、この三つのジャンルに分けてこの見直しの対象範囲というのを確認させていただきたいと思います。

竹中国務大臣 見直しの対象に関する具体的な御質問でございます。

 この郵政民営化法上、国は、法律が定める郵政民営化の基本理念にのっとって施策を実施する責務を有するというのがまず基本でございます。民営化委員会は、国の機関として設けられ、民営化を推進するための機関である推進本部のもとに活動することになります。したがって、修正が行われた場合の民営化委員会による進捗状況の見直しは、この郵政民営化法に定められた理念そして方向に即して郵政民営化が適切に進んでいるかどうかを見直すものであるというのが基本的な考え方であろうと思います。

 このような趣旨を踏まえますと、見直しの対象としては、郵政民営化法の基本方針の範囲内での見直しということになり、これは、法律改正を要するものも含まれることにはなります。

 なお、この見直しを受けた郵政民営化の推進のために必要な法律案の立案は、これは郵政民営化の推進本部が行うということになります。

 一方で、郵政民営化法に定められた理念とか方向に即して郵政民営化が適切に進んでいるかどうかを見直すということが「見直し」の趣旨であるわけでありますから、そういう点を踏まえると、民営化そのものの見直しは想定されていないというふうに考えるべきであろうと思います。

 ただし、郵政民営化は、国民の利便の向上あるいは経済の活性化を図ることを目的とするものでございます。仮に、その目的に照らし何らかの問題が生じるようなときには、民営化委員会はそのような問題についても見直しを行って、民営化推進本部に報告するようなことになると考えられるわけでありますが、それを踏まえてどのような措置を講ずるかについては、これは推進本部が判断をするということになるわけでございます。

石井(啓)委員 ありがとうございました。

 提出者の方、大変ありがとうございました、私の質問は以上でございますので。

 それでは次に、これまで私も六回ほど一般質疑をさせていただきましたが、その中で残っている問題にこの最後の時間を使わせていただいて、確認をさせていただきたいと思います。

 それは、株式処分、株の持ち合いの件でございますけれども、完全民営化した後に、特殊会社であります持ち株会社、郵便事業会社、郵便窓口会社が郵貯銀行、保険会社の株を取得する場合、ポートフォリオの一環であれば手続は必要ないんですけれども、資本参加する目的であれば、主務大臣の認可あるいは届け出が必要になります。

 ところで、ポートフォリオの一環なのかあるいは資本参加なのかという目的の区別は、これはどのように判断されるのか、確認をしておきたいと思います。

竹中国務大臣 これは、いわゆる移行期間終了後に、持ち株会社、郵便事業会社、そして郵便局会社が資金運用の一環として銀行や保険会社の株式を取得するということの想定だと思いますが、これにつきましては、何度も御答弁させていただきましたように、独禁法でありますとか銀行法、保険業法といったような一般的な規制の範囲内において特段問題ないが、これらの特殊会社が本来業務以外の業務としての郵便貯金銀行に資本参加することについては、これは、今申し上げた一般的規制のほかに、各特殊会社法に基づく主務大臣の認可または届け出が必要になるということに相なります。

 この場合に、その株式の取得が業務としての資本参加であるか否か、一義的には、会社がこれはどういう動機、意図を持って株式を取得、保有するのかということによって判断されることになるわけでございますが、それ以外にも、例えばその規模とか持ち方、態様、そして、株式を取得した会社との事業面での結びつき等、やはり他の業務との関係といったことを総合的に勘案する必要があるというふうに考えられます。今申し上げた、動機、意図、そして規模、態様、事業面での結びつき、そうしたことを総合的に勘案して、最終的にはその主務大臣が適切に判断していくということが求められるわけでございます。

石井(啓)委員 それでは続いて、郵政民営化法案の百五条それから百三十四条では、郵貯銀行、保険会社の株式を完全処分しない段階でも、政府が民間とのイコールフッティングが実現したと判断する決定をした場合は、移行期間中の制約は外れて、郵貯銀行、保険会社は普通の銀行、保険会社になります。この百五条、百三十四条を規定した目的、背景というのをぜひこれは御説明いただきたいと思います。

 また、この百五条、百三十四条の決定がなされる状況というのは具体的にどういう状況を想定されているのか、この点についても確認をいたしたいと思います。

竹中国務大臣 信用が重要であるがゆえに持ち株会社に株の完全処分を規定している、その義務を課している、その点については何度も御説明させていただきましたし、その点はまさに非常に重要なポイントであるというふうに私たちも認識しているわけでございます。

 同時に、この議論の過程で、経済財政諮問会議等においては、いわゆる民有民営の実現は、これは、内外の金融コングロマリットの状況など世界の金融情勢等を踏まえなければいけない、そして現実的に判断すべきであるという御議論がございました。これを踏まえまして、基本方針の中で、民有民営化実現の際には、「新会社全体の経営状況及び世界の金融情勢等の動向のレビューも行う。」というふうにされているわけでございます。これは基本方針にそのように示されている。

 これを受けまして、この法案におきましても、これは全株処分の前であっても、レビューの結果、民有民営実現と判断して、特例規定の規制、この移行期間は特例規定の規制があるわけでありますけれども、その規制を解除できるようにしているわけでございます。

 具体的に言いますと、この郵政民営化法案の第百五条または百三十四条において、内閣総理大臣及び総務大臣は、郵政民営化委員会の意見を聴取の上、郵便貯金銀行あるいは郵便保険会社について、内外の金融情勢を踏まえて、そして、銀行、保険会社に対する議決権の割合等、民間とのイコールフッティングの状況、さらには、他の民営化会社の経営状況、他の民営化会社と銀行、保険との関係等々を考慮して、この特例の規定をたとえ解除しても、他の民間の銀行や保険会社と適正な競争条件が保たれる、及び利用者への役務の適切な提供を損なうおそれがない、そういうことを認めるときには、この特例規定の適用を解除する旨の決定を行って、そこに民有民営が実現するというふうにしているわけでございます。

 二点目の、実際にどういうことが要件として考えられるかということでございますけれども、この株式処分等の民有民営が相当に進展をしました段階で、その時点におけます内外の金融コングロマリットの状況などのいわゆる金融情勢というのが一つだと思います。そして、政府出資等国の関与の度合いが相当低減して、イコールフッティングがおおむね図られているというふうに認定されること、認められることが重要、そして、各民営化会社がそれぞれの市場において自立している、そういうような状況に照らして、特例規定の適用を解除しても、他の金融機関または生命保険会社とのイコールフッティングや利用者への適切なサービスの提供が確保されると認められるときに、このような百五条、百三十四条の決定がなされるというふうに考えております。

石井(啓)委員 それでは、最後の質問をさせていただきます。

 この郵政民営化法案の百五条、百三十四条の決定がなされた場合は、郵貯銀行、保険会社の株式が多少残っていたとしても、郵貯銀行、保険会社は完全な普通の民間の銀行、保険会社となるということですから、完全民営化が達成されたという状況になるわけでございますので、私は、この二社の株式を必ずしも完全処分しなくてもいいんではないか、そういう考え方もあるんではないかというふうに思いますけれども、法案では、そういう状況でもやはり完全処分義務をかけております。その点について確認をさせていただきたいと思います。

竹中国務大臣 これは完全処分の義務をかけております。これは繰り返しになりますけれども、やはり国の信用の関与を断ち切るということが金融では大変重要であるというふうな基本的な考えに基づくものでございます。

 このため、郵政民営化法の第六十二条におきまして、持ち株会社は、移行期間中に、銀行と保険会社の「株式の全部を段階的に処分しなければならない。」というふうにしておりまして、これは、百五条または百三十四条の決定がなされた後も、この義務を解除はいたしておりません。

 これは、この信用力が決定的に重要であるということに基づくものでございますが、むしろ、郵政民営化法の第百五条または百三十四条というのは、このような株式の完全処分が確実になされることが制度的に担保されているということを前提にして、この移行期間の終了前に業務制限を撤廃することを可能としている、そういう法律の考え方になっているということでございます。

石井(啓)委員 そこは若干見解の違いといいますか、考え方に少し幅があるところかもしれません。

 私は、株式処分というのは完全民営化するための手段でありますから、完全民営化という目的が達成されれば余り手段にはこだわらなくてもいいのかなという感じを持っておりますけれども、そこは若干政策の違いというところかもしれませんが、そういう意見があるということを申し上げまして、最後、私の質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

二階委員長 次に、川内博史君。

川内委員 川内でございます。よろしくお願いいたします。

 きょうは二回目の質疑で、私としてはまだまだ質疑をさせていただきたいんでございますけれども、恐らく、私個人としてはきょうがもしかしたら最後になってしまうのかなという気もするんですが、何が起こるかわからないですから、まだ、いや、私は実は竹中大臣ともっともっと議論をしたいなというふうに思っておりまして、本委員会の議論をずっと聞いておりまして、もうかるとかもうからないとか、あるいは株式がどうとか、割と経済合理性というか、昨日も、我が党の小沢議員の質問に対して竹中大臣は、マクロ経済の観点とミクロの経営の観点と利用者利便の観点とあるというようなことをおっしゃっていらっしゃったわけです。

 しかし、私は、この郵政の問題というのは、国の形というか、我が国の歴史とか伝統とか文化そのものにかかわる重要な問題であるというふうに考えておりまして、地方の、大臣もよく自分も地方の出身だというふうにおっしゃるわけで、地方の小さな町や村に行くと、農協と役場と郵便局しかないわけですよね。ところが、役場は市町村合併でどんどんなくなる、農協も広域合併でどんどんなくなる、残っているのは郵便局だけ、そういう公的なセクターというのがある種必要なんじゃないかというのは、きのう総務大臣もちらっとおっしゃったわけでありますが、そういう観点でいくと、私は、この改革というのは、実は、日本の地域社会を壊してしまいかねない、大変に危険性をはらんでいるものではないかなというふうに思うわけです。

 また、そうじゃないんだ、大丈夫だというようなことで修正案が出されたりして、法案の原案を読めば、別に原案で十分読み込めることを、さっき総理も、言葉を変えただけだと図らずもおっしゃったわけでありますが、原案を読めば十分読み込めるものを、何かわざとらしく修正した、修正したと大げさに演じるのが政治家なのかなと思うと、大変悲しい思いをするわけでございます。

 まず、さっき竹中大臣は、じり貧になるから民営化することが必要だというふうに割と自信を持って言い切られたような気がしますが、しかし、NTTはみずから望んだ、JTもみずから望んだ、JRは大変な借金を抱えていて民営化せざるを得ない状況があった。

 郵政公社の生田総裁にまずお伺いしますが、郵政公社は民営化を望みましたか。

生田参考人 お答えします。

 私が郵政公社に入ったのは二〇〇三年四月一日、公社化のときですけれども、それ以前から、新聞やメディアを通じまして民営化論議が政治的に行われていることはもちろん承知していました。ただし、入りましてからは、きちっとしたスタンスで本日に至るも一貫しているのは、民営化するしないは、これは政治の問題であって、日本国全般のいろいろな視点からお考えになることで、公社自身としては、望むとか望まないとか、こうあるべきだということは、政策論議は差し控えてまいりました。

川内委員 いや、私は、望むとか望まないとかではなくてというふうにお答えになられたが、一度記者会見で、自分は民営化論者だった、しかし郵政公社に入って考えが変わった、公社のまま十分やっていけるというふうに記者会見で断言されていらっしゃいますよね。だから、民営化を望んだんですかということを聞いているんです。

生田参考人 公社に入ります前から、ディレギュレーション、規制緩和、そして、それこそ民でできるものは民がいいということで、一般論としてもちろん私は民営化論者でありましたし、今もそうであります。

 だけれども、個別具体的な、公社に入った後、特に自分の方から民営化を望むとか望まないとかいうふうなことは申し上げておりませんし、これは政治の問題ということでありますし、今申し上げてきているのは、公社のままでも、公社法の枠内目いっぱいで健全な経営にまだ余地が残っているから努力はするけれども、中長期、五年、十年のスパンで考えるとだんだん難しさが出てくる、楽観はできないね、こういう意見で一貫いたしております。特に望んだ事実はありません。

川内委員 それでは、NTTが民営化されて廃止になった営業所あるいは支店の数というのを、総務大臣、教えてください。

麻生国務大臣 NTTが民営化されました昭和六十年から今日まで約十八年近くがたっておりますが、これは、名前の呼び方やら何やら、随分、支社が支店に変わったり、電話局を支店に変えたりいろいろ言い方が変わっていますので、なかなか比較の仕方は難しいところですが、支店と呼びかえたものだけで見まして、支社というものを、今、平成十一年以降支社もなくしておりますので、これはなかなか比較のちょっとしようが物すごく難しいんですが、千六百八十七の支店、電話局何とかというのがあったのが、今は、NTTの場合、東と西とに分けておりますが、これは、手続なんか全部コンビニでいいとか振り込みになったとかいろいろありますので単純に比較はできないんですが、東と西もまた変わっておりまして、今、トータルで、平成十七年度末で、NTT東西突っ込みで三十三支店になっておると思います。両方突っ込みですよ。(発言する者あり)突っ込みという意味は、両方合わせてという意味です。

川内委員 済みません、いろいろなことにお答えいただいて、総務大臣、ありがとうございます。

 NTTの場合は、いろいろな事情はあるけれども、千六百以上の支店、営業所が三十三に統合されたということがあるわけです。さらに、私は、郵便局は、これはそういうことで統合されちゃ困ると思うんですよね。やはりきちっと担保されてなきゃいけない。

 それで、経済財政諮問会議の議事録の中で麻生総務大臣が、農協、漁協等の協同組合事業体、これは、政策目的を持った、法律で設置されているものでありますが、農協、漁協等の協同組合事業体を除くと、銀行などの店舗がない地域は五百五十町村、民間生保のない地域が千九百二十八町村に及んでおるというふうに報告をしていらっしゃいます。まず、この数字について確認させてください。

麻生国務大臣 川内先生、ちょっと町村合併が急速に進みましたので、その数字は今は多分違うと思います。

 ないところが合併されたためにふえたとかいうところもありますので、町村合併が最終的に終わります来年の三月三十一日に今現在でどうなるかという数字はちょっと今持っておりませんので、改めて提出させていただきます。

川内委員 町村合併が進んでいるから今正確な数字はわからないということでありますが、どちらにせよ、銀行がない地域が五百五十町村、さらには民間生保がない地域が千九百、要するに、過疎地域というのは郵便局と農協に頼っているわけですよね、金融機関としては。そういう中で、農協は広域合併でどんどんどんどん統合されているわけですから、郵便局が果たす役割というのは非常に大きい。ところが、今回の法案では、ユニバーサルサービスは郵便事業のみということになっています。

 では、郵便事業のみのユニバーサルサービスの場合、二万四千幾つ今局がありますが、幾つ局があれば足りますか、生田総裁。

生田参考人 お答えします。

 率直に申しまして、そういった的確な数字を試算してはおりませんので幾つという数字は申し上げられませんが、現状でいえば、三事業、郵貯も簡保も含めまして、三つの相乗効果で今の郵便局が維持されているということでありまして、地方へ参りますと、郵貯というものが大体コストの六割ぐらいは負担しているというのが現状であります。

川内委員 いや、今の生田総裁の御答弁は非常に不誠実ですね。日本郵政公社設立会議の第四回会議で、設立のメンバーの中のお一人が、郵便事業だけだったら五千局で足りるわけで、それ以外の郵便局には立地上も日常のゆとりがある、このようにお話をされていらっしゃって、これはだれも否定されていません、この会議録の中で。これは、私は、郵便局のネットワークが守られるか、守られないかということに関して非常に重要なことだというふうに思うんです。

 さらに論点を移せば、今回、この民営化法案の中では、地域貢献事業、社会貢献事業、基金というものがつくられているから大丈夫だ、ちゃんとその辺は目配りしているんだというふうに竹中大臣はおっしゃいます。では、社会貢献基金、三種郵便、四種郵便をきちっと担保できるのかという観点で見ると、今、三種郵便や四種郵便の赤字は年額どのぐらいですか、生田総裁。

生田参考人 お答え申し上げます。

 三種、四種で十六年度の赤字の幅は、三種が二百三十六億、四種が二十五億でございますから、足し算をしますと幾らでしょうか、二百六十一億ですね。昨年の平成十五年度でいきますと、合計で約二百四十六億ですから、まあ二百五、六十億円かなと思います。

 それから、ちょっと済みません、お聞きにならなかったけれども、さっきのは誠実にはお答えしているんですけれども、手元に数字がないということで、先生のおっしゃった五千数百局というのは、設立委員会とおっしゃいましたね、これは、公社化前の、どうやって公社化するかという議論をしたときの数字で、五千数百というのは集配局の数で、それ以外に窓口局がいっぱいありまして、その辺の採算性がどうなっているかというのは、私がお答えしましたように、三つの事業を兼ね合わせながら考えないと難しいということでちょっと付言させておいていただきます。

川内委員 三種郵便、四種郵便でも赤字が二百数十億あるわけですね。これで、果たして一兆円、二兆円の基金で、これは三種郵便、四種郵便だけでも大変な赤字補てんをしなければ、民営化するわけですから、赤字の事業をだらだらするわけにいかぬでしょうから、これは基金もとても足りないということがこれだけでも十分論証されるのではないのかなというふうに思うところでありまして、そういう意味で、竹中大臣、これからゆっくり反論はしていただきますので、そこで今に見ていろというお顔をしていらっしゃるんですが、それは今から反論していただきますが、私もきょう五十分しか時間がないので、きょうはちょっと私の言いたいことを大分言わせていただくんですが、この民営化法というのは余りにも見込みが多過ぎると思うんですね。

 先ほどの設置基準のところでも、松岡先生が、いろいろ心配だ、担保の答弁をせよという御質問に対して、設置基準については、法施行の際はとつくわけですよね。だから、法が施行されるときはその二万四千幾つがしっかりと維持されるが、その後は民営化されるわけだから、後は経営者の判断になるということはもうこれは自明の理であって、そうすると、先ほど申し上げたように、NTTが支店を千六百幾つから三十三に減らしたのと同様なことがやはり起きざるを得ないのではないか、そこを心配するわけであります。法律的にそこが担保されていないから心配するわけですよ、法律的に担保されていないから。

 竹中大臣、反論したいでしょうが、実はここから私の本題の質問に入りますので、ここは言いっ放しで終わらせていただきます。法律的には何ら担保されていないということを申し上げて、私のきょうの質問に移らせていただきます。

 先日のスリード社の折り込みチラシの件に関して、内閣府の官房長が大変重要なことをおっしゃられたので、その点について確認をさせていただいて、これは別にスリード社直接のことではなくて、法の解釈についてでありますから、確認をしておきたいと思うんです。

 会計法の下にある政令、国の物品等又は特定役務の調達手続の特例を定める政令で、第十三条、「他の物品等をもつて代替させることができない芸術品又は特許権等の排他的権利に係る物品等若しくは特定役務の調達をする場合において、」随意契約ができるということになっている。では、「特許権等」の「等」の中に著作権も入りますというふうに官房長がおっしゃられました。これは、財務大臣、政府見解として確認してください。

谷垣国務大臣 お尋ねの、国の物品等又は特定役務の調達手続の特例を定める政令、特例政令ですね。これは、政府調達協定の対象となる国の調達契約について、政府調達協定に従った調達手続を実施するため必要な特例を定めたものでありますが、その十三条第一項一号、「特許権等の排他的権利」、この規定は、政府調達協定第十五条一(b)の「特許権、著作権等の排他的権利」との規定を受けて制定されたものでありまして、政府調達協定において著作権が明示的に含まれておりますので、「特許権等の排他的権利」の「等」に著作権が含まれることは明らかである、こういう解釈でございます。

川内委員 そうすると、財務大臣、著作物というか、何か物が書かれてあれば、それはすべて著作権が発生するわけですよね。(発言する者あり)いや、発生するんですよ。そのすべて著作権が発生しているものに対して、「他の物品等をもつて代替させることができない」というただし書きがついている、条件がついているわけですね。この政令の十三条一項一号、「他の物品等をもつて代替させることができない」著作権は排他的権利として保護される。では、「他の物品等をもつて代替させることができない」著作権というものを客観的に担保をする方法は何があるんですか。

谷垣国務大臣 今おっしゃったように、特例政令第十三条第一項第一号、他の物品等をもって代替することのできない云々には随意契約をすることができる、こういう仕組みになっているわけですが、これは、調達しようとする物品または役務が、単に特許権等の排他的権利であることのみをもって随意契約ができるというんじゃないわけですね。特定の行政目的を実現するためには、特定の物品または役務を調達することが必要不可欠な場合において、当該特定の物品または役務が特許権等の排他的権利に係るものであるため特定のものしか供給できない場合には随意契約ができる、こういう意味でございます。

 政府調達協定第十五条一の(b)においてもそういう規定がございまして、「他に合理的に選択される産品若しくはサービス又は他の合理的な代替の産品若しくはサービスがない場合」というような規定になっておりまして、これも、同じように、特定の行政目的を実現するために特定の物品または役務を調達することが必要不可欠な場合という要件で縛られているわけです。ですから、こういうそれに当たるかどうかの判断については、これは、もちろん予算の執行に当たる執行官庁において先ほどのような要件があるかどうか判断してやっていただく、こういう形になっております。

川内委員 一般的に、財務大臣、他の物品等をもって代替することのできない著作権あるいは著作物であるということを合理的に担保をするための、国があるいは国のお役所がやっている方法というのはどういうふうな方法があるんですかということをお聞きしたんですけれども。

 いや、私が申し上げているのは、企画のコンペをしなきゃいけないでしょうということを申し上げているんです。

谷垣国務大臣 それぞれの特定の行政目的ということでありますから、それをやはりきちっと踏まえた上で、いろいろなやり方があると思います。一概にコンペかどうかわかりませんが、それはやはり、その執行の官庁においてきちっとその特定の目的を踏まえた上で審査をしていただくということに尽きると思います。

川内委員 そのやり方については所管の官庁が判断をするものであるということでありますが、では、内閣府の官房長、きょうは来ていらっしゃると思うんですが、このスリード社の企画書は他の物品等をもってかえがたい著作物であるというふうに判断をしたということでよろしいですか。

永谷政府参考人 お答えします。

 本件チラシの企画案は、ラフ案を含む企画書という形で提出され、著作権を有するものであります。その上さらに、その当該企画案については、全体として斬新なアイデアであり、かつ、他の者からの供給が想定されない、つまり、代替性がないというふうに判断しています。したがいまして、本件につきましては随意契約としたということであります。

二階委員長 官房長、その近くへお座りください。

 川内博史君。

川内委員 他の物品等をもってかえがたいと企画書を判断した、他の物品等をもってかえがたい著作権のある著作物であるというふうにこのラフ案を判断されたということであります。

 それでは、その企画書自体は他の物品等をもってかえがたい著作物だ、著作権だとおっしゃるのは、百歩譲って認めましょう。いいですよ、おっしゃるんだったら。でも、印刷の紙は何を使うかとか、どうまくかとか、あるいはどの新聞に折り込むかとか、そこまでは著作権の範囲じゃないですからね。

永谷政府参考人 ラフ案を含む企画書について著作権があるというふうに解釈しております。

川内委員 いや、今の官房長のお答えだと、もうこれからは、役所の人が、これは独創的だ、他のものをもってかえがたいと思えば、設計図書などもすべて随意契約できるということになります。財務大臣、よろしいですか。

 政府見解として、これからは、役所の担当者が他のものをもってかえがたいと言えばすべて随意契約できる、設計図書なども、ということになりますから、それを政府見解として確定させてください。そうしたら私も随意契約してもらいますから。

谷垣国務大臣 そんなことを政府見解であると申し上げるわけにはいかないんで、やはり、特定行政目的に照らして、本来合理的であるかどうかというのをきちっと判断していただかなきゃいけない。それは、行政もいろいろな目的がありますから、それぞれによって今一概にこうだと言うことは難しいですけれども、そこはきちっと判断してやっていただくということではないかと思います。

川内委員 それでは財務大臣、会計法を所管される大臣として一連の議論をお聞きになられて、内閣府官房長のお答えなどを聞かれて、内閣府の今回の政府広報室の行動が、この会計法の精神に照らし合わせて、ちょっと問題があるんじゃないか、若干、いろいろな発注の手続等について、印刷とかあるいは折り込みとか等について問題なしとはしないというぐらいは言わないといけないですよ。どうですか、財務大臣。

谷垣国務大臣 それは、具体的にまず判断するのは執行官庁で判断していただくわけですし、執行官庁が、どういう行政目的を持ってどういう手段が必要なのか、まずそれは第一義的にきちっと判断していただかなければいけないので、私は、その第一義的な判断について今云々する立場にはございません。

川内委員 これ以上この議論を、政府としては、自分たちのやっていることが間違いだ、あるいは法に違反していたとは口が裂けても言えないでしょうから、それはそういう言い方になるのかなというふうに思いますが、しかし、私ども一般の国民から見れば、この件に関しては、どう考えてもおかしな契約が行われたと言わざるを得ないというふうに思います。

 その辺は竹中大臣も、折り込みチラシに出ていらっしゃるわけですから少しは反省をしていただきたいというふうに思うんですけれども、どうですか、出たわけですから。契約のことはおれは知らぬかったと今までおっしゃっているわけですが、知らぬかったとしても、郵政民営化担当大臣として、いや、いろいろ聞いてみると契約の方法とかにやはりちょっと問題があったなとか、これは政府見解じゃなくていいです、個人的感想をちょっとお答えください。

竹中国務大臣 何度か申し上げておりますように、個別の契約について詳細を知る立場にはございません。決定権限外のことでございます。

 ただ、政府としては、その担当の部署においては、これは大変な時間的、費用的、そしてその制約の中で適切に対応してくれているというふうに思っております。

川内委員 この問題は多分引き続き同僚議員が聞かせていただくと思いますので、私は、著作権の、他に代替することができない著作物にこのスリード社の企画書が当たるということをどう客観的に、合理的に御説明をされるのかということをちょっとお聞きしたかったんですが、結局官房長からは、独創性があるというだけの御答弁しかなく、合理的な御説明はなかったというふうに御指摘を申し上げておきたいというふうに思います。

 さらに続いて、私は、先日、参考人で北城経済同友会代表幹事に来ていただいたんですが、北城さんは日本IBMの会長もしていらっしゃるわけで、日本郵政公社と日本IBMの問題について生田総裁にお伺いをしたいと思います。

 IBMは、公社からいただいた資料によれば、平成十二年度から現在平成十七年の六月十七日まで、累計で六百六十億円のコンピューターシステムについて受注をしていらっしゃいます。したがって、郵政公社の職員から見ると、北城代表幹事は日本IBMの代表取締役であるわけですから、国家公務員倫理法及び国家公務員倫理規程における利害関係者に当たるというふうに思いますが、生田総裁、郵政公社の職員から見ると、北城IBM会長は利害関係者であるということをお認めになられますか。

生田参考人 お答えします。

 北城さんには、二〇〇三年四月一日、公社スタートのときに理事になっていただきました。社外理事です。社外理事というのは、普通の会社でいうと独立社外取締役と同じであります。理事の任命権者は私なんですが、どういう方を社外の独立の理事で入っていただくかいろいろ考えました。

 それで、結局三人入っていただくんですけれども、一人は設立委員会の委員に入っていただこうと思いました。設立委員会をやっておられた経済界の代表に入っていただこうということで入っていただきましたので、利害関係は、社外の理事である限り、執行しませんので、執行役員じゃないので、利害関係はないと言い切れると思います。

川内委員 いやいや、済みません、ちょっと私の質問を混同されていらっしゃるようなんですが、IBMの代表取締役会長である北城さんは、郵政公社職員から見たら利害関係者ですねということを申し上げているわけで、それは、利害関係者ですとお答えにならないとちょっと変なんですよ。

生田参考人 取引があるかないかという意味におきましては、もちろん利害関係といいますか取引の関係はありますけれども、いわゆる法的な意味では、ないということをさっき申し上げたかったわけであります。

川内委員 いや、それはちょっと生田総裁、全然法律を理解されていないようで、後ろの人もよく教えてあげないとだめですよ。

 私が言っているのは、こんなことで時間をとりたくないんですからね、郵政公社職員から見て北城さんは利害関係者なんですよ、出入り業者のトップなんですから。それは利害関係者です、そうですと言ってもらわないと次に進めないんですから。

生田参考人 先生の御質問にそこに限ってストレートにお答えすれば、取引がありますから利害関係はあるし、職員は、取引がありますから、商売の関係はあるなと思っていると思います。

川内委員 いやいや、そこで、私が次にする質問で先ほどの生田総裁のお答えが出ればいいんですよ。まあ、私が説明しますから。

 「日本郵政公社役員の服務について」という文書があります。これは、郵政公社役員は特別職の国家公務員であるということでありますから、「特別職の国家公務員である役員の職務執行の公正性・中立性及び国民の信頼を確保」と書いてあって、「倫理の保持」というところには、「倫理の保持に万全を期するため、職務上関係のある業者等との接触に当たっては、」「国民の疑惑や不信を招くような行為をしてはならない。」と書いてあります。出入り業者のトップであった北城さんが理事につく、あるいは理事に任命するというのは、これは、郵政公社にとっては利害関係者を理事に迎えるということで、「日本郵政公社役員の服務について」というこの内規に違反するんじゃないですかということを次にお伺いしようとしているわけです。

 ここで、いや、そんなことはありませんと答えればいいんです。どうぞ。いや、間違っていましたというのなら、間違っていましたと言ってください。

生田参考人 先回りしてお答えしてしまって、おまけに回答の方法まで教えていただきまして、ありがとうございます。

 直接的に、表面的には利害関係がある、だけれども、さっき申し上げたように、社外独立理事だから、実際の仕事の執行はしないから、取引にはかかわらないということと、先生御指摘の服務規程というもの、ここで十分そういった法的な問題があることを排除しているわけでありますが、これを事前に十分お話しいたしまして、必ずそうするということで御就任いただいた。月一回だけで、大所高所の御意見だけいただくということでやりました。

川内委員 生田総裁、公務員の皆さんには大変厳しい服務規程がございまして、公正らしさという言葉もあるんですよ。要するに、少しでも疑われるようなことをしてはならない。そちらにいらっしゃる公務員の皆さん方は、まあ、スリード社に広告を発注した人たちは公正らしさを欠いていましたが、公正らしさ、ほとんどすべての公務員の皆さんは、少しでも疑われるようなことはしてはならないということで日々仕事に励んでいらっしゃるわけです。そういう中で、システムを発注している先の代表取締役を理事に迎えるということは、私は、公正らしさの観点からすれば問題があったのではないかということを御指摘申し上げたいというふうに思います。これは指摘するだけです。それは生田総裁は違うとおっしゃるわけですから、私は指摘します。

 ここで竹中大臣にお伺いしますが、これはなぜこんなことを言うかというと、本法案で郵政民営化委員会というものが設けられるようになっていますが、この郵政民営化委員会の委員の身分というものはどのようになるのかということを教えていただきたいというふうに思います。

竹中国務大臣 郵政民営化委員会の委員につきましては、郵政民営化法案の第二十一条におきまして、第一項、「委員は、優れた識見を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命する。」そして第二項、「委員は、非常勤とする。」というふうに規定をされております。身分は、非常勤の一般職の国家公務員というふうになります。

川内委員 一般職の国家公務員でありますから、それこそ公務員倫理法が適用を、あ、これは適用除外になるのかな。一般職の国家公務員ではあるが、例えば審議会のメンバーなんかと一緒だから倫理法の適用除外だと思うんですが、しかし、今の公正らしさの議論からいえば、竹中大臣、この民営化委員会のメンバーというものに、私は、言葉は悪いですが、経済団体の肩書を持って実は出入り業者の代表者が入っているとか、そういうことになっちゃいかぬというふうに思うんです。

 民営化法二十条で、「民営化委員会は、委員五人をもって組織する。」二十一条では、「優れた識見を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命する。」と書いてあるわけですが、この民営化委員会にどんな人が選ばれるのか。私どもはこの法そのものの廃案を目指していますから、実態としては、我々の思いとしては選ばれることはないわけですが、もし選ばれるとすれば、そういう利害関係者なり利害関係者と思われるような人は絶対に選ばれることはないであろうということをちょっと確認をしておきたいというふうに思いますが。

竹中国務大臣 そもそも、この民営化委員会をなぜつくるかということに関しましては、やはり専門性と中立性、この専門性と中立性ということを何回か国会の答弁でも言わせていただいておりますが、それをやはり確保する。意思決定をするのは政府でございますけれども、幾つかの重要な問題に関して意見を述べるわけでありますから、その際に専門性と中立性が大変重要であるというそれが、やはりこの委員会を設けるそもそもの趣旨であろうかと思います。

 当然のことながら、その趣旨にのっとった公正な人選がなされなければいけないと思っております。

川内委員 それでは、次の論点に移らせていただきます。

 私は、この郵便貯金銀行、郵便保険会社というのは、もう外国資本がうずうずして待っているんじゃないかというふうに思うんですね。実際にアメリカでは、この郵貯銀行、郵便保険会社を買収するためのファンドがもうできているとかできていないとかいう話も聞くわけであります。

 そこでお尋ねをさせていただきますが、まず、四大メガバンクの自己資本比率、そしてまた外国人の持ち株比率、さらには、大手生保と呼ばれる生命保険会社のソルベンシーマージン比率、さらには外国人の持ち株比率を、伊藤大臣から、もう時間がないですから、簡単に、いつも長いから、数字だけ答えてください。

伊藤国務大臣 四点について御質問がございました。

 簡潔にお答えさせていただきますと、まず、四メガバンクの外資の持ち株割合比率でございますが、平成十六年三月期の有価証券報告書によれば、普通株式による外国法人等の所有株式の割合は、みずほ、三菱東京、UFJ、三井住友各グループの平均で二四・四六%になります。

 次に、四メガバンクを含む主要行の自己資本比率でございますけれども、平成十七年三月期における主要行の平均の自己資本比率は、単体で一一・六四%になります。

 次に、主要生命保険会社の外資の持ち株割合でありますけれども、大手の生命保険会社九社のうち、相互会社形態をとっている六社を除く株式会社三社について申し上げますと、大同生命及び太陽生命の保険持ち合い株式会社でありますT&Dホールディングスについては、二二・六一%が外国法人等により保有されているものと承知をいたしております。

 そして、主要生命保険会社のソルベンシーマージン比率でありますけれども、生命保険会社のソルベンシーマージン比率については、全社平均で九二一・三%、大手九社を見ると平均で八八七・一%となっております。いずれの会社も前年度に比べて上昇し、五〇〇%を超える水準にございます。

川内委員 それでは、竹中大臣、平成十九年の四月一日、民営化スタート時点の郵貯銀行、郵便保険会社の自己資本比率、ソルベンシーマージン比率を教えてください。想定のものですね。

竹中国務大臣 発足時の、我々の試算等々で想定されている郵便貯金銀行の自己資本比率でございますけれども、これは、まず銀行について申し上げますと、一三・六%から一八・九%の間というふうに想定をしております。また、保険会社のソルベンシーマージンにつきましては、将来の逆ざやに備えて責任準備金を積み立てているわけでございますけれども、これに基づいてこの比率を計算しますと、骨格経営試算ベースで一四〇〇%弱になると想定をしております。

川内委員 今の竹中大臣の御答弁を、政府の民営化がスタートした時点の想定の自己資本比率、ソルベンシーマージン比率だとすると、これは超優良銀行、超優良保険会社、もう不良債権一切なしということで、外国資本はうはうは言って、大体、大分傷ついた四大メガバンクでさえ外資が二四%も株を買っているわけですから、これは、郵貯銀行、郵保会社は外資の大変なターゲットになるんじゃないかというふうに思われますが、竹中大臣、これは、外資が郵貯銀行、郵保会社の株を買い進んでくるというか買収する、買収するという言い方は変です、株を買う、かなりの割合で買うであろうということは、これはもう竹中大臣としても想定の範囲内だ、はやり言葉かもしれませんが、想定の範囲内だということになりますか。

竹中国務大臣 今の時点で、株式の売却先、購入者がどのようになるか、どのような方々になるかということに特定の想定を持っているわけではございません。

 いずれにしましても、売却処分がきっちりとなされるように、我々としては、枠組みをつくってそれを運用していくということが重要だと思っております。

川内委員 いや、どうも竹中大臣は、御自分の都合のいいときはいろいろ想定されるんですよね、ネットワークは守られるとか、そのまま安定的代理店契約は維持されるでしょうとか。しかし、私が、四大メガバンクそしてまた生保について、外国人の持ち株比率とかソルベンシーマージンとか自己資本比率とかを伊藤大臣に聞いた上で、郵貯銀行、郵保会社は大変優良な会社なんだから、外資は当然買いますよねということをお聞きしたらば、いや、そんなことは自分としては考えていないみたいなことをおっしゃられますが、ちょっとこれはひきょうじゃないですかね。

 民営化するということはグローバルなマーケットにオープンにするということなんだから、それは当然外資も買うでしょうぐらいは言わないとおかしいですよ。

竹中国務大臣 私は、どのような株主構成になるかということについて今から想定するのは難しいということを申しているわけでございます。しかし、制度上、こういう人には例えば内外差別をするとか、そういうことはもちろん設けてはいないわけでございます。

 想定できることはできるだけ想定してお話ししているわけでございますが、なかなかやはり時間の問題等々もあり、想定が難しい問題もこれはあるわけでございます。

川内委員 やはり竹中大臣はすごく頭のいい人だなというふうに思うんですね。すごい人だなと思うんですよ。いろいろ想定して、みんなをごまかすところは幾らでも想定して論理展開をし、それで私どもが、外資も買いますよね、それを買うことも考えられますねと言うと、いや、そんなことはわからないというふうにおっしゃる。これはちょっと、民営化の議論の本質を隠す意図を感じざるを得ないわけですね。

 あともう三分ぐらいしかないので、もう一つ聞かせていただきます。

 伊藤大臣、郵貯銀行、郵保会社には政府保証はないですよね。

伊藤国務大臣 政府保証のちょっと意味が、よく御質問の趣旨がわからないんですが、今回の制度設計に当たっては、政府の関与というものを断ち切るために完全処分というものを実施するということになっております。

 これはもう御承知のとおり、信用というものが銀行業あるいは金融分野にとっては極めて重要な要素でありますので、民間とのイコールフッティングを確保する観点から完全処分というものを実施するということでございます。

川内委員 では、聞き方を変えます。郵貯銀行、郵保会社は、銀行法あるいは生命保険業法の規制に係る一般商法会社ですね。郵貯銀行、郵保会社は、銀行法、生命保険業法に係る一般商法会社ですねということを聞いています。

伊藤国務大臣 これはもう竹中大臣からもお答えさせていただいておりますように、民営化をすることによって一般の商法会社にするということでございます。したがって、その新契約においては政府保証を廃止するということでございます。

川内委員 その一般商法会社、普通の会社が、国の信用がある、国の絶対的信用があるとかいうのは、私は論理のすりかえだというふうに思います。普通の会社なんですからね。全然、何の政策目的もない普通の会社です、民間の会社。これはたまたま株主が国だというだけですよ、最初。たまたま国だというだけで、これを、国が株を持っているから信用があるという理論は、これは、新東京銀行とか一般の民間の金融機関でも公的資金が入っているわけですから、その論理は全く通用しないですよね。国が株を持っているから信用があるというのは通用しない。

 それで、民営化法上は、法律的には、これはもう郵貯銀行、郵保会社は全くの一般の会社であって、たまたま国が株主だ、いや違った、国が株主じゃない、日本郵政が株主だというだけの話、これに国の信用があるということは私は論理矛盾だというふうに思いますが、この郵貯銀行、郵保会社に国の信用があるということを法律に書いてありますか、竹中大臣。

竹中国務大臣 金融において信用が重要だと。その場合の信用は、法律に信用があるなしが書かれるわけではもちろんございませんで、市場における、それに対する市場参加者の認識、パーセプションの問題であろうかと思います。

 その意味で、商法の一般会社として設立するわけでございますが、一〇〇%国が株を持っているという段階では、これまでの経緯も踏まえて、やはりこれは国の機関がというその認識を多くの方々が持つのではないか。そういうような状況のもとで事業をスタートさせるわけでございますから、そのために移行期間を設けまして、移行期間を経て、その意味では国の信用、関与を完全に断ち切る。その移行期間に関しては、銀行法を適用される一般の商法会社ではございますが、特例的に幾つかの規制がかかる、これが郵政民営化の基本法の中に記されているわけでございます。

川内委員 みんながどう見るかが国の信用があるかどうかの判断基準であるというふうにおっしゃられる。そうすると、郵便貯金銀行、郵便保険会社に国の信用があるかないかというのは、みんなというのは具体的にはだれなのか。そしてまた、そういうアンケートをとったのか。そしてまた、それを証明する書類があるのか。全く理解に苦しむ御答弁で私にはあったわけで、いろいろ議論すればお互いの溝は多分埋まると思いますので、今後ともまだ議論させてくださいよ、大臣。

 与党の理事に、こんなものまだ採決、採決なんてそんなこと、明治以来の大改革なんですから、それだったら二百時間、三百時間やってもらわないと、本当に、これは、きのう自民党の偉い先生とエレベーターで乗り合わせたら、今のままでは後世の批判にたえられない、なあ川内君というふうにおっしゃいましたよ。今のままでは要するに議論が足りないんですよ。もうちょっとよく議論させてください。それだけお願いして、終わらせていただきます。

二階委員長 次に、大出彰君。

大出委員 民主党の大出彰でございます。

 私の方も、やっと質問をこの前一回やったと思いましたら、もう後ろの出口とかいう話が出てきまして、そんなことはあってはいけないということで、しっかり質問したいと思っております。

 この間、中央省庁等の改革基本法三十三条一項六号を質問いたしまして、入り口の質問をしていたわけですね。あのときに、一つは、私たちは、与党の理事の方々を含めて、今までの歴代の郵政大臣の皆さんをお呼びしてくれと、参考人という名前かどうかわかりませんが、そういう要求をずっとしてきているんですが、とうとう実現をしないで来てしまっているわけですね。ですから、まだ続くことを前提に再度要求をお願いしたいということを委員長に求めます。

二階委員長 理事会において協議をいたします。

大出委員 ありがとうございます。

 そこで、私はこの間のときに、民営化等の見直しを行わないと明記されているということで、六月八日に政府の見解が出ておりまして、それについて質問をいたしまして、当時の橋本総理が登場してこないあの紙というのはおかしいんではないかということを申し上げて、理事会で協議をしていただいたんですが、その後、政府見解は、いや、今までのままでいいんだということで直っていないようなんですが、ここについて、先ほどの参考人を呼んでいただくことと同時に、やはりおかしいんではないかと。

 その前提に、この間も議論いたしましたが、事実認識は共通にしておかなければいけないんだろうということを言ったわけですね。というのは、当時、橋本さんが総理のときは、将来にわたって民営化はしませんよというのが、そのときの政府の見解であり大方の理解であったわけですね。それを、政権がかわればというか、体制がかわって総理がかわったのだからと言うんならいいんですが、そうしたらそれで、事実的にはそうだったんだけれども、こういうふうに変えたんですよというのがないとおかしいんではないか、最初から民営化するのが当たり前だったかのごとく事実を認識するのはおかしいのではないかと思うので、そこのところの事実は確定していただけないかと。官房長官、お願いします。

細田国務大臣 先ほど御指摘の中で、確かに、六月の上旬にお出しした中には橋本総理のコメントがなかったわけでございますが、その後、御指摘がありまして、理事会に橋本総理の発言も含めた見解をお出ししておると思っております。

 また、この三十三条一項六号についての考え方は、常に私ども御説明申し上げているとおり、公社化をするに当たっての考え方を示したものであるという一項六号の考え方については、私どもとしては、政府として見解を一にしております。

大出委員 よくわからないです。理事会であれですか……(発言する者あり)言われていない、ああそう。何か理事間でどうも確認をしていないようでございますので、委員長、再度、あのとき理事会で協議をしますとおっしゃったんですので、お願いしたいと思います。

二階委員長 理事会において民主党理事から改めて御発言を願います。

大出委員 今、官房長官のおっしゃったことがよくわからないので、簡単な話でございまして、当時は、公社のままなんだ、民営化は行わないというのが多数意見であったということを事実として認めてくれと、こう言っているんですね。

 それは、この間、安住さんが総理大臣に質問をしたときに総理大臣が答えていますよね。「あのときは民営化を行わないという規定があったからこの民営化法案を出すのはけしからぬという議論はわかりますよ」と、「しかし、そういうことを前提に民営化の法案を出しているんだから、その時点でもう解決している。」つまりこれは、総理が自分になって変わって、自分は民営化論者だからそのときから方針が変わったんだよとこう言っているんだと私は思うんですが、ですから、それまでは、やはり事実的には公社のままで民営化はしないんだという全体認識があって、それについて我々は、だったら削除をしなさいと言っていますが、解釈の変更でそちらはやろうとしている。ここの根本事実の認識を一つにしておかないと、後から歴史事実まで変えてはまずいのでこういうふうに言っているんですが、どうでしょうか。

細田国務大臣 総理の答弁の中で、若干趣旨がはっきりしないところがあったことは事実でございます。その後、総理はしっかりと正式に答弁をしておられまして、ちょっと手元を今探しておりますが、そこでは、この六号の考え方というものは、これは六月三日の答弁がちょっと紛れがあったということで、その後の答弁で、六号というものの趣旨が、この公社を設立するときの考え方であるということを明確に御答弁申し上げていると思います。

大出委員 六号の解釈、公社前までなんだという解釈を示していただきたいと言ったのではなくて、総理が総理大臣になる前の橋本総理のときから日本全体の考え方は、公社の後は民営化をしないんだというこういう認識だったんじゃないか、その事実は認められなければできないんではないのかと、こう言っているわけですよ。どうでしょうか。

細田国務大臣 この問題は、さまざまな方がさまざまなお考えをお持ちであったという経緯は私も承知しております。

大出委員 こればかりやっても仕方がありませんので。

 訴訟も起こされておりまして、そのときやはり議事録を見るわけですよ、議事録を、経過を。だから、この間、私は、実は民営化論者の我が党の松沢さんだってそのときはこういう認識だったんじゃないかと申し上げたんですね。もし、その事実認識の事実確定ができないんだとすると、訴訟したとき困るわけですよね。訴訟をやっていて、いや、最初から民営化だったんだみたいなことで、当時もそうだったと言うのは、これは歴史を変えることだと言っているわけですよ。タイムトラベラーだって歴史は変えちゃいけないんですから。歴史を変えちゃいけませんから、事実的にはそうだったと。橋本さんの後の小泉総理になったから民営化ということを解釈で読み込めるけれども、事実はそうだったというその事実を認めていただけないかと、もう一回だけ申し上げます。

細田国務大臣 行革基本法で公社化についての方針を決めるときには、公社というものは民営ではないということと、そのときには、何人かの方あるいは議員の方の中においては、これ以上は行かないんじゃないかと思っておられた方がおられただろうということはわかります。しかし、それは六号の解釈ではないです。

大出委員 官房長官がはっきり答えていただかないと時間ばかり食いますので、これ以上進めませんけれども、しかし、大変困るのは、この間の六月八日の政府見解でも、総理大臣や歴代郵政大臣の国会での答弁というのはどうなんだと言うと、「その時点における将来的な見通し、或いは政策の在り方についてのお考え」だ、こう言うんですね。今、官房長官がお答えになったことも、このとおり「その時点における将来的な見通し、或いは政策の在り方についてのお考え」なんですか。

 もう一つ言っておきます。私たちが言っているのは、今の小泉政権の政府としての考えだというのが本当じゃないんでしょうか。どうでしょうか。

細田国務大臣 平成十年の四月の橋本総理の答弁があるわけでございます。衆議院本会議、橋本総理が「新たな公社に移行することとして、民営化等の見直しを行わないという結論に至りました。」「新たな公社に移行することとし、民営化等の見直しは行わないことといたしました。」これは五月二十二日の参議院本会議、この答弁については承知しておりますが、これについても、当時の認識として、私どもが今申し上げておりますように、また、小里行革担当大臣が答弁されていることと同一であると考えております。

大出委員 私は今その話を聞いたんじゃないんですね。その話はさっきの話で、私は、「その時点における将来的な見通し、或いは政策の在り方についてのお考え」なのかと聞いているんであって、それを今のような御答弁をなさるんだったら、小里さんの言ったことの中に、どこに公社化後民営化してもいいと書いてあるんですか。全然書いてないじゃないですか。そうでしょう。私の前の質問に戻らないでくださいよ。

 ですから、その答弁はまただれかがやるから置いておきますが、どうなんですか、政府の閣僚として答弁なさるときに、その発言というのは、そのときの政府、今でいえば小泉政権の考えを閣僚として述べておられるんじゃないんですか。それを聞いているんですよ。そうでないと話が進まないじゃないですか。

細田国務大臣 基本的におっしゃるとおりでございます。

大出委員 そうでないと困るんですよ。その時点における勝手な考えみたいなことだとすれば、一々それは政府のお考えですかと聞かなきゃならないわけですよ。そんなのおかしいでしょう。ですから、そうなると、やはり過去の郵政大臣だった方々をお呼びをしなければ、本当は、まともな、ちゃんとどう考えていたかということで呼ぶべきものなんだろうと思います。ですから、与党の側の方々が、はっきり申し上げて、邪魔をなさっておられるからお呼びできないんだということを指摘して、次に質問を移りたいと思います。

 もう一個、この間、この続きで組合との交渉について質問したんですよ。ですからここでも質問いたしますが、竹中大臣、その後どうですか、組合との話し合いはしましたか。

竹中国務大臣 私が連日いろいろ時間の制約があるということもありまして、その後新たに何かが進捗しているという状況ではございません。

大出委員 この間はお会いしたいということを言っていただいたので、あるいは話し合いをすべきだという。私は、総理大臣すら、話せばわかる、話せばわかると言っているではないかということを申し上げたんですね。

 だったら、この前、在日米国商工会議所やアメリカの生命保険協会の皆さんと、十七回、竹中さんじゃございませんがお会いしたというんですが、今は何回お会いしていますか。

渡辺政府参考人 済みません、数字にわたることですので、よろしいですか。(大出委員「呼んでいないんですが、呼んでいないんです」と呼ぶ)委員長、よろしゅうございますか。(発言する者あり)

二階委員長 それではちょっと。

 竹中国務大臣。

竹中国務大臣 その後、室長としては面会の機会を持っていないということでございます。事務的に課長のレベルとかでどのようになっているかというのは、また必要でございましたら、調査をして御報告をさせていただきます。

大出委員 必要であればと言っていただきましたので、課長の皆さんが何回お会いになっているのかをお出しいただければありがたいと思います。よろしくお願いします。(発言する者あり)では、委員長、お願いいたします。

二階委員長 理事会において後刻協議をいたします。

大出委員 よろしくお願いいたします。

 どうしても前のときに三十分しかお会いしていただいていないようですので、議論は始まったばかりだと思うんですが、もう何か後ろが見えているようなことになっておりますので、早急に、どうか衆議院で議論をやっている間に、従業員の皆さんのお話を聞くということは大変重要なことだと思って、それを聞かずに進んでいるというのは大変まずいことではないかと思っておりまして、お願いをしたいと思うんですが、どうでしょうか、大臣。

竹中国務大臣 機会があれば、必要に応じて適切に対応したいと思います。

大出委員 何かいろいろとありますので、今そういう話でしたので、ちょっと流れを変えて話をしたいんですが、アメリカ政府の日本政府に対する年次改革要望というのがございますね。私は、今回のを見ていると、今の話も絡んでくるんですが、アメリカの言うとおりに法案ができているなと思っておりまして、その辺を御説明いただきたいなと実は思っております。

 それと、逆に、やるべきことはおやりになっていないという意味で、というのは今の協議の話なんですが、ここに持っておりまして、二〇〇四年十月十四日の日米規制改革イニシアチブというものなんです。これの2―C―3というところがございまして、ここには何が書いてあるかというと、「民営化に関する施行規則および省令等の準備も含めて、パブリックコメント手続きが十分に利用され、また最終判断を行なうにあたり、そのコメントが考慮されるようにする。」と書いてあるんですよ。ところが、この項目についてだけおやりになっていないわけですよ。先ほど言った、在日米国商工会議所の皆さんにはお会いになっているのに、そうでないところ、この部分が抜けているんですよ、かえって逆に。これは履行すべきなんですよ。これはやっていないとおかしいんじゃないかと思っているわけですね。

 ほかにも実は、郵便貯金、簡易保険は民間企業と完全同一の競争条件としなさい、こう言っているわけですね。これはどこに書いてあるかというと、「民営化」の一番最初、「日本郵政公社の民営化」というところに、「九月十日に発表した」、日本がですよ、「「郵政民営化の基本方針」において、「イコールフッティング」の確立および日本郵政公社と民間企業との間の「競争条件」の均等化の重要性を確認することにより、重要な一歩を踏み出した。」最後の方に「反映されるよう求める。」と書いてあるわけなんですが、これにのっとってしっかりと進んでいるわけですよ。要するに、郵貯法、簡保法は廃止するわけですからね。そうでしょう。当然、民間と同じ法律を適用せよということで、銀行法、保険業法を適用していますね。

 政府の保有する株式を完全売却しろというのも載っているわけですよ。今、十年間で完全売却でしょう。それも言っているんですね。ありました、2―A―1―bというところに。「特に郵便保険と郵便貯金事業の政府保有株式の完全売却」と書いてあるんですね。「が完了するまでの間」点々々で、「暗黙の政府保証があるかのような認識が国民に生じないよう、十分な方策を取る。」これにのっとって完全売却と言っているんだろうというやじが飛ぶのはそこなんですよ。さらに、今の暗黙の政府保証の防止策、今のところですよ、当然、今回も暗黙の政府保証ということをおっしゃっていますよね。それにのっとってやっているじゃないですか。

 それで、郵貯、簡保とほかの業務との会計の完全分離というふうに言っているわけですよ。今回も、四分社化して会計は完全分離でしょう。どこで言っているかというのを指摘しておいた方がいいでしょうね。ここにありました。2―B―3、「関連会社の会計が分離、独立でありかつ完全に透明性のあるものとすること」、ここから来ているわけでしょう。

 もう一つ、要するに民営化委員会の話ですよ。民間との競争状況を調査する独立の委員会を設置せよと言われているわけですよ。そうしたら、ちゃんと民営化委員会をつくっているじゃないですか。言われているとおり、ちゃんと着実に進んでしまっているじゃないですか。違いますか。

 だから、それでいて、何でパブリックコメントの部分だけはやらないんですか。ここがおかしいな、こういう肝心なことをやるべきだろうという感じがしまして、お答えいただきたいと思います。

竹中国務大臣 言うまでもございませんが、郵政民営化は、日本の国民の利便に資するために、そして日本の経済全体のためにやっているわけでございます。だれかがどう言っているから政府がやっているというような性格のものでは全くございません。

 今、大出委員が、こういうことをアメリカは言っているではないか、言っているではないかというお話でございましたが、これは、いろいろなところがいろいろな意見を言っておられます。例えば、株式の完全処分をしっかりやれ、例えばですけれども、日経新聞がそういうことを言っている、だから日経新聞の言うとおり政府がやっているのかというと、そういうことにはならないわけでございます。

 一つ、アメリカに関しては、在日商工会議所の話、日米協議の話、そして生保協会等々の要求、ちょっと手元に資料がございませんので、混然一体と私の頭の中でなっているかもしれないんですが、例えばでありますけれども、よく言われるアメリカの要求の中なんかで、いわゆる民有民営が完全に実現されるまでは銀行や保険は新規の業務を一切やるな、やらせるなというような要望もそのどこかにあったというふうに承知をしております。

 しかし、私たちは全くそういう形にはしていないわけでございます。むしろ、公社にはできるだけ早い時期から新規の業務に挑戦をしていただいて、それをしっかりとイコールフッティング等を確保しながらやっていく、まさにそういう枠組みもつくっているわけでありますので、内容的にも、今申し上げたようなアメリカの諸団体が言っていることとはかなり違っておりますし、ましてや、そもそも論として、どこの国が言っているから民営化をやる、そういう性格のものでは全くございません。

大出委員 そういうのが全然説得力がないのです。というのは、今、利便性の話と完全処分の話が出ておりますが、何でこんなことをしなきゃいけないのか、諸外国を見たときにやっていなくて、日本の中でもそうでないのがあるのにおかしいなというのがあるので、これは後で質問します。

 利便性とおっしゃいましたけれども、確かにあれなんですよ、正直に利便性ということをおっしゃっていて、普通、利便性というと、一般人は便利になるんだなと考えるわけですよ。違うんですよ、この利便性の原則というのは。サービス欲しけりゃ金払えということですからね。そうでしょう。そうなんですよ。この利便性の原則というのは、サービスが欲しければコスト負担をしなさいよ、金を払いなさいよ、こういう意味なんですよ。

 ですから、利便性の原則、どうも一般はそう受けていないですよ。便利になるんだろうという話なんですね。便利になるという面も、例えばサービスという言葉を使うときも、今までのサービスは低下されるけれども、ほら見ろ、不動産の仲介もできるじゃないか、こういうことを言っているんですよ。種類がふえたじゃないか、だからサービスがふえたんだ、こういう話でしょう。

 そこでお聞きをいたします。どうも税金が、今回の改革という名前の中で、要するに、分社化するものですから、消費税が国民につくわけですよ、取られるわけですよ。この間も聞いたら、七百三十五億円ということでおっしゃられて、国民の皆さんには、消費税を取られるんですよということが、まずはだから税金で、私は二〇一六年は幾らぐらいと聞いたら、計算したりするのは適当でないというお答えが返ってまいりまして、それはどうなるか、どんな不動産仲介をやるのかクリーニング仲介をやるのかわからないからということはあるかもしれませんが、これを設計したときに、必ず二〇一六年ぐらいだったら広がりでこれくらいの消費税は取れるだろうと多分踏んでいるはずなんですよ。それをお答えにならないわけですよ。

 ただ、わかっていることは、〇七年に七百三十五億円を消費税で取られるということはわかっていまして、まずはだからこの案は増税なんです、最初は。さらにほかにも、先ほど言った利便性の原則のようにだんだん国民負担がふえてくるんですよ。

 ですからお聞きをいたします。郵便局がATMを使います。そのときに、日曜、祭日にATMを使ったら幾ら払いますか。竹中大臣、今。(竹中国務大臣「今ですか、公社に聞いてみましょう」と呼ぶ)無料なんです。無料なんですよ。それが、多分今度は、郵貯法をなくしましたから、郵貯法を廃止しますから、このATM手数料というのは取られることになるだろうと。これは当然なんですね。

 それで、振り込み手数料というのがあるんですね。この振り込み手数料というのは、郵便局の場合、総合通帳ぱ・る・るを持っていて、ATMを利用して振り込むとします。そうすると、ATMで振り込んだら幾らだという話ですよ。竹中大臣、わかりますか。

竹中国務大臣 今ちょっと資料が来ましたので、ATMで今の手数料でございますね。

 一万円以下、通常のものについては六十円、それで、一万円から十万円以下のものについては百十円……(大出委員「振り込みの方を見てください、百三十円のところを見てください」と呼ぶ)はい、わかりました。ATM利用の振り込みは百三十円で、それに対して、提携金融機関に対しては二百八十円でございます。

大出委員 今、百三十円なんですね。これ、東京三菱で同じように振り込み手数料は今幾らかというと、ATMを使うと四百二十円なんですよ。今、郵便局が百三十円、窓口を利用しても百四十円、ところが、今の東京三菱だと、振り込もうとすると四百二十円取られて、窓口を利用すると八百四十円になるんですね。要するに、これが民間になるということは、今まで安かったのが当然高くなってくるということなんですね。それをだから私は言ったんですよ。利便性の原則というのは、サービス欲しけりゃ金を払えというのはそういうことだと言っているわけですよ。

 そういう負担がどんどんふえてきて、では、両替手数料だって取られるかも、今は取られていないですよ、取られるんじゃないかというふうに思っているし、一番の問題は、いつも問題になっている、金融排除の話が出ますよね、いつも。要するに、口座の管理手数料も取るようになるんではないかという話なんですよ。そんなことはありませんとは言えないんですよ。なぜかというと、郵貯法を廃止しているわけですから。わかりますね。郵貯法を廃止していますから、一般の銀行と同じなんですから、そうすると、それも、ただ戦略的に取らないとか上げないとかいうことはあるかもしれませんが、これはどうしてもそうならざるを得ない。

 というのは、郵貯法には何と書いてあるかといえば、「この法律は、郵便貯金を簡易で確実な貯蓄の手段としてあまねく公平に利用させることによつて、国民の経済生活の安定を図り、その福祉を増進することを目的とする。」となっていますから、こういう国民サービスとしていい面が出ているわけですが、今度は全く民間になるわけですから、これは取られる可能性が高いということなわけですね。

 だから私が言ったように、負担が重くなるではないかと言っていて、現にイギリスでは金融排除が起こっておりまして、要するに口座を持てないというわけですよね。利子が低かったりして、二十万ではだめだとか、もっと多く預けていないとということで排除されていって、それが百五十万世帯とか三百五十万人とか言われていますけれども、それがやはり日本の場合には大丈夫だとは言っていられないのではないかというふうに思うんですね。

 さらに今度、そこで、このように福祉増進みたいなことになっているわけなんですが、民営化だということで今の郵便貯金のシステムがいろいろ変わり始めているんですよ。何が変わり始めているかというと、一つには、今まで郵便貯金における金利の計算方法を、一円未満の利息は切り上げてきたんですね。銀行は切り捨てるわけですよね。だから、例えば金利が〇・〇二かなんかで利息二十銭となると、切り上げるから一円、こうなったわけですよ。それを、今度民営化されるからという用意なんでしょう、〇五年度の四月からそれをやめまして、要するに切り捨ててゼロになった、こういう準備をしているわけです。つまり、もう既に次の準備に向かって動き始めざるを得ないのが、いわゆる郵貯法を廃止するということなんですよ。

 さらに、預金通帳、キャッシュカードをなくしたりすると再発行をお願いしますよね。今までは無料だったんですよ。ところが、昨年の九月からは有料になったんですよ。幾らぐらいかわかりますか。そんなことを聞いてもわかんないよね。五百二十五円になりました。

 ですから、このように、郵便貯金法を廃止するということはこういうことだって、そうですよね、御感想をどうぞ。

竹中国務大臣 今、大出委員、非常にたくさんの身近な例を挙げてくださいました。その一つ一つ、大変重要なことであるというふうには思っております。

 ただ同時に、民間でも、今、手数料等々を例にとりましても、いろいろな手数料設定がございます。口座維持なんかの手数料の問題意識を委員はもうお持ちだと思いますが、大多数の銀行ではこういう無料の預金口座を提供しているわけでございます。これは保険についても、無診査で、職業の選択を行っていないような、これは簡保だけではなくて、民間でもあるわけでございます。

 結局のところ、民営化によってこの郵貯と簡保の会社がどのような経営戦略なりビジネスモデルをとっていくかという、経営戦略の中で今委員の御指摘のような問題が解決されていくのだと思います。しかし、これは地域密着型の経営を行うわけでございますから、その意味では、今までの強みを生かしてサービスを強化していくということに当然なるのではないかと思われます。

 もう一つ、国民負担がふえるというふうにおっしゃいましたですけれども、これは、例えば今まで無料でやっていたということでありますけれども、経済全体のメカニズムから見ると、そのコストはどこかで何らかの形で負担がなされているわけでありますから、そういう観点からいいますと、その負担を個別にしていただくところが適当であれば個別でやればよいし、全体として別の仕組みで負担するのがあれば別の仕組みがよいし、そこはやはり、その仕組みのつくり方の問題であろうかと思います。

 ちなみに、国民の負担という観点からしましても、これは今度税金を払ってくださるわけですから、民営化されて税金を払って、その分国庫が楽になれば、その分、理屈の上からは国民の将来の税負担は減るわけでありますから、そこはやはりトータルで判断をしなければいけない問題であると思います。

大出委員 手数料の話であれば、こっちもいろいろ持っていますから。東京三菱銀行のスーパー普通預金だとか、一々言いませんが、シティバンクとかありますが、かなり今有料になってきているわけですよ。

 さらに、イギリスなんかの例も、日経の金融新聞なんかに書いてありますが、イギリスなんかも、平成十七年の四月十一日ですけれども、英国は既にATMの台数の約四割が有料型になっているんですね。消費者団体などからは、家計を圧迫すると批判の声が上がっているというふうになっていまして、何でイギリスの例を出すかというと、これが要するに我々の未来がそうだからですよ。そういう意味ですね。

 それと同時に、いろいろ調べましてトータルで見なさいというのは、私の方が言いたいですよ、逆に言うと。だって、今だって人件費の四兆二千億は税金で払っているわけじゃないでしょう、郵政の方々は。そうでしょう。それなのに、その部分はほっておいて、その部分が税金だって、むしろ国家財政に貢献をしているわけじゃないですか。そして、税金を取らなかったからといったって、それはぐるっと回って国民の皆さんに利益として、サービスとして還元されているわけですよ。だからATM無料であったりできるわけじゃないですか。その部分を言わないで今のような議論は、逆に私の方から、もう少しトータルで考えてくださいと言いたいですね。

 ですから、いろいろなことをお聞きしたいのですが、いつも気になっておりまして、というのは、見えない国民負担がということを言って、一・一兆円というようなこととか一・二兆円ということをおっしゃっていましたよね。竹中大臣、そうですよね、見えざる国民負担というのは。私は、その一・一兆円という、いろいろ銀行によって違うんですが、竹中大臣は多分一・一兆円というのをよく使っておりますから、そのことを、今度の場合、では、民営化された郵貯、簡保株式会社にはどれだけの税金から含めて負担があるのかなということを聞きたいんですが、法人税的には幾らなんですか。四千九百億円ですか。

竹中国務大臣 ちょっと、数字のことでございますので正確に申し上げたいんですけれども、見えない国民負担がどのぐらい大きいのかについては、いろいろな議論があるということも申し上げさせていただいたつもりでございます。

 これは、法人税、法人住民税、事業税、印紙税、登録免許税等については、今、御承知のように非課税でございます。固定資産税については二分の一の負担軽減でございます。また、預金保険料等々を負担していないというのもございます。これは、どこまで範囲に含めるかとか、どういうふうな前提を置くかによって数字が違ってまいります。それで幾つかの試算がありますけれども、それらによれば、数千億円から一兆円超の負担額と推計されているというふうに……(大出委員「全体でですね」と呼ぶ)全体です、承知をしております。

 そこで、これを民営化したらどうなるかというのが委員のお尋ねでございますが、骨格経営試算では、民営化初年度の納税額と預金保険料、そして保護機構負担金について算出をしておりますけれども、租税の計として約四千九百億円でございます。そして、今申し上げましたような預金保険料等々を含めて約五千五百億円というふうに見込んでいるところでございます。

大出委員 五千五百億円というのは何なんですか、これは。

竹中国務大臣 預金保険料と、それと保護機構の負担金、それを合計して、先ほどのと合わせて五千五百でございます。

大出委員 私がこの間聞いたときは、たしか預金保険料が四百億円で、保険機構の負担が今の段階では十億円とか聞いたんですが、そうじゃないんですね。五千五百ですね。(竹中国務大臣「合計でです」と呼ぶ)合計で。租税も含めてですか。(竹中国務大臣「そうです」と呼ぶ)わかりました。

 租税の方なんですが、これは郵便株式会社の方の固定資産税とかいうのは取っていないんですよね。どうなんですか。(竹中国務大臣「郵便事業会社」と呼ぶ)郵便事業会社、そうそう。

竹中国務大臣 お尋ねの固定資産税、租税等の中に含まれております。

大出委員 今ので、法人税や預金保険料あるいは保護機構の負担金その他で五千五百億ですよね。先ほどの七百三十五億円は国民にかかるわけです。そのほかに、これは架空の話ですが、基礎年金、要するに年金の話のときに三百五十億円という話がよく出るんですが、国が負担しなきゃならない部分というのを公社が見ているわけですよ。それは本当は、本来その三百五十億円というのは、見えない公社負担というか、これからまた聞きますが、そういう話だろうと思います。

 ただ、この中に本当は、この間も生田さんなんかのお話にあるように、システムを維持するのも結構かかっていますよね、三千億。毎年三千億かかるんですか、これ。その辺はどうなんでしょうか、システム維持費みたいなのは。

竹中国務大臣 日本郵政公社のIT関連費用は、平均して年間三千億円程度となっていると承知をしております。骨格経営試算等々、それに基づいて計算をしております。

大出委員 ざっとお話をしただけでも、片や五千五百億に三千億がかかっているから、もう八千五百は超えちゃっているわけですよね。そうではないんだ。

竹中国務大臣 今申し上げたのは、年平均して三千億円程度、そういう負担構造に現状なっているという意味でございます。

大出委員 そうすると、本当だと、新事業をやったコストとかどんどん考えなきゃいけないんだと思うんですが、それはおいておいて、二つ考えられるんですよ。つまり、今まで一兆円の、隠れていた、見えない国民負担だというのと比べたら少ないのかなと思ったりもしますし、あるいはほかの部分の計算をしていないのか、そこがよくわからないんですが、今までの一兆円だとか何兆円とか言っていたのは、それについてはどのような御感想をお持ちですか。

竹中国務大臣 その一兆円の試算というのは、例の、準備室に設けました専門家の委員会の中で出された数字だと思いますが、これは、預金の規模が減っていくわけでございますから、その減っていくということ等々に基づいている。そして、利益の金額は年によって変動いたしますけれども、この推計の当時は非常に高い利益であった。それが将来的に、民営化の時点、これは二〇〇七年度、そのときに利益が減っている、その下がっている法人税等の合計になりますので、そういうバックグラウンドの状況が違っているというのが一番大きな要因であろうと思います。

大出委員 要するに、見えない国民負担という議論というのをやってきましたが、正確ではなかったところもありますよね。

 それで、私は、法人税をもらいますよとか、今の公社が民営化して負担がかかれば、これは、今までと違って国民に負担を転嫁しなきゃならないわけですよ。そうすると、どうしたって上がってくるだろう。さらには、巨大な銀行なり保険会社なんですから、当然のこと、プライスリーダーみたいなことになりますから、ほかの銀行だって、ああ、郵貯さん、簡保さんの株式会社さんが上げてくれたんだから、では我々もということにならざるを得ないような状況なんだと私は思うんですね。そういう意味でよろしくないなと思っております。

 それで、今すっかり忘れておりました。南野大臣に質問をすることになっておりまして、南野さんに質問をいたします。

 というのは、先日、山花議員が質問をいたしましたときにペーパーが出てきているんですね。いただきまして、大臣、私が問題にしたいのは、有限会社スリード、オフィスサンサーラが、郵政民営化の合意形成コミュニケーション戦略ということで、ターゲット戦略というのにIQというのを使っているということなんですね。そこのときに、要するに知能指数を使っているというわけなんですよ。

 私は、民間会社でこれは有効だとかいうのはいいかもしれませんが、知能指数で、使っている……(発言する者あり)全然人に知られないで秘密にやっているとかいうならわかりませんけれども、そうでなく、その戦略を使って、国がこれに基づいて戦略を立てて、一千五百万部ですか、まいたということについて、これはまずいんではないかとすぐぴんとくるんですが、このことについて南野法務大臣はどのようなお感想を持っておられますか。

南野国務大臣 個別の文書自体の評価でございます。そういうものに言及することは差し控えさせていただきたいと思いますが、もとより、行政の遂行に当たりまして人権に配慮した取り扱いがなされるべきことは、これは当然のことだと思っております。このことは、法務行政のみならず、政府全体の課題として、今後とも十分な対応が図られるよう努力していきたいと思っております。

大出委員 問題は、政府がこれを使ったわけですよ。政府が使っちゃっていいんですかという感じですよね。法の番人ですよ、法務省は。これはちょっとまずいんじゃないかということで、何かもっと法務省としての見解はありますか。

南野国務大臣 個別具体的な問題につきましては、これはお答えをいたしかねるところでございますので、先ほど一般論として申し上げておりますので、何とぞ御理解をいただきますようお願いいたします。(発言する者あり)

二階委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

二階委員長 速記を起こしてください。

 大出彰君。

大出委員 理事会でという話を今していますが……(発言する者あり)していない、はい。

 このことについて、竹中大臣、どのようにお考えだか。今の、IQを基軸にしてこういうのをと、この間から質問が出ていますよね。今、南野大臣に質問したことですが、どのように思うんですか。

竹中国務大臣 それは会社、業者のつくった資料でありまして、政府のペーパーではございません。私自身、説明を受けたこともございません。広報室がそれに基づいて何らか意思決定したことはないと私は聞いております。(発言する者あり)

大出委員 責任者ですからね。(発言する者あり)整理をしてください。お願いします、委員長。速記をとめてください。

二階委員長 では、速記をとめてください。

    〔速記中止〕

二階委員長 速記を起こしてください。

 大出彰君。

大出委員 時間がないので言いますが、法務大臣にしても、個別問題で答えられないというのは、これは無理なんですよ、はっきり言いますけれども。

 ここに、昭和五十年六月五日の政府委員、つまり吉國一郎さんが言っているんですが、要するに、「内閣総理大臣その他の国務大臣の国会における答弁または説明のための出席義務というものは、まことに厳粛に考えなければならず、その義務を完全に履行するように努むべきことは当然の憲法上の義務であるという点については、全く仰せられるとおりでございます。」と言っていて、答えなくていい例が書いてありまして、それは、個人的な事柄や所管外の事柄やあるいは外交機密に該当することというふうになっていまして、個別だからというのは理屈にならないということを申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

二階委員長 次に、中塚一宏君。

中塚委員 民主党の中塚一宏です。

 本日は、修正案についてお伺いをいたします。

 修正案の提案者、おかけになっておりますが、まず、昨日も、山崎筆頭理事だったと思いますが、国民の懸念を払拭するための修正案だというふうにおっしゃっていたわけなんでありますけれども、この修正案によって一体何が変わるのかということですね。結局、今まで竹中さんの答弁では心もとない、これでは自民党の反対派も納得せぬ、だから修正案を提出するんだ、そういうことでよろしいんでしょうか。

柳澤委員 法案の内容については事前に自民党の中の論議がありまして、公明党さんにもあったわけですが、それらが集約をされまして政府・与党合意というものができ上がったわけでございます。その政府・与党合意では、あるものは法律に当初案の段階から規定をされたわけですが、そうでないものもあったということでございました。

 今回の修正というのは、政府・与党合意の中で法律化されなかったものについて、できるだけこれを法律に格上げして明確化を図る、より強い担保を確保する、こういうような意味合いで今回の修正案ができ上がった、このように御理解をいただければと思います。

中塚委員 重ねて、では柳澤先生に、久しぶりに柳澤先生と議論ができて大変にうれしく思っておりますけれども、お伺いいたしますが、では、これで自民党の中の反対派の皆さんは納得をされたんでしょうか。

 何か、きょうお見受けするところは、政府案と意見を異にする方はほとんどいらっしゃらないような、今まで、元気のいい、私どももそうだなと思う質問をされていた方はほとんどきょうはもう入れかわって、いらっしゃらないようにお見受けをするんでありますが、果たしてこの修正案で自民党の反対者の皆さんというのは、では、修正後には賛成するということにおなりになったんでしょうか。いかがでしょうか。

山崎委員 当然、賛成すると思います。

中塚委員 では次に、竹中大臣にお伺いをいたしますが、この法律、六本ですか、六本を担いでいらっしゃる立場として、今柳澤さんから答弁がありました、より強く担保するということでありますけれども、今まで竹中大臣がこの委員会でずっと御答弁になっていたことというのは、要は、寸分も変わらない、修正によって今まで竹中さんが御答弁になっていたことは変わらないということでよろしいんですか。

竹中国務大臣 修正案の内容につきましては、これは政府・与党合意でございますけれども、その政府・与党合意、それと、これまで政府が国会において答弁をさせていただいた事項、それらにつきまして、その内容の明確化を図るものなどであるというふうに承知をしております。

 政府としては、このような議論の系統を真摯に受けとめて誠実に対応してまいるつもりでございます。

中塚委員 それでは、ちょっと修正案の中身について具体的にお伺いをしたいんですが、郵便局株式会社法案に対する修正案で、「第四条第二項第二号中「郵便局」を「銀行業及び生命保険業の代理業務その他の郵便局」に改める。」というところがございますね。これは、要は、この委員会でいろいろとまだ課題になっておりました、金融サービス、貯金、保険といったものが果たして本当に郵便局において提供し続けることができるのかどうなのかということだったわけでありますが、それを担保するためにこの改正を行ったというふうに推察をいたすわけでありますけれども、ここからが質問なんですが、だったら、何で、この郵便局株式会社法案の第二項じゃなくて第一項の方にこの「銀行業及び生命保険業の代理業務」ということを書かないんでしょうか。

 この第四条を見ますと、「会社は、その目的を達成するため、次に掲げる業務を営むものとする。」ということが書いてあるわけですね、第一項は。要は、いわゆるこれが、郵便局会社がやらなければならない仕事ということです。それで、その第二項に書いてあることは、「会社は、前項に規定する業務を営むほか、その目的を達成するため、次に掲げる業務を営むことができる。」要は、できる規定なわけですね。都会はもとよりですが、過疎地まですべて貯金、保険を今と同じようにやっていくということを担保するための法改正であるなら、何で二項じゃなくて一項に入れないんでしょうか。いかがですか。

柳澤委員 これは、私ども当初から大変苦労したところでございますけれども、要するに、郵貯銀行それから保険会社、こういうようなものは民間の純然たる金融業でございます。そういうものに義務づけをするということはできない、しからば、実際上の業務をしてもらうという実際上の担保をどうやってつくり上げていくか、非常に苦心をさせていただきました。我々なりに苦心をいたしたのです。そうして、反対側の郵便局株式会社の方、こういうようなものにやはりいろいろな工夫をして、できるだけやってもらおうという事実上の担保を積み重ねていこう、こういうような法律構成を政府側にも強く働きかけたのでございます。

 その結果、かねて竹中大臣がおっしゃるように、窓口会社、郵便局会社というものについては、これはユニバーサルに設置する義務を定めよう、それからまた今度は、貯金銀行と郵便局会社の代理店業務あるいは委託の契約、こういったようなものについてきっちり長期的な安定的なものにさせよう、それから、いよいよ財政的に少し困るというようなことであれば、基金でもって裏づけをしよう、それからさらには、我々自民党は強くそこのところを言ったわけでありますけれども、株式についても、それなりの関係を持って、一般の民間のグループ経営者が持つ程度のものを持つ、そういうことによってグループ経営を可能にしよう、これらの四つぐらいの事実上の担保措置といったようなものを構築した、これが原案でございます。

 それをやりながら、それを何回も竹中大臣もここで答弁させていただいたんですが、この郵便局会社の業務の中にはそれがもうちっともうたわれていない、これはやはり不自然ではないかということでうたうことになったわけでありますが、それはあくまで事実上の担保措置でやっているわけでございますから、これは「ものとする」ではなくて「できる」というグループに属するべきである、こういう位置づけになったということであります。

中塚委員 私は、当選来尊敬する柳澤先生が、何か竹中さんと話し過ぎてちょっと似てきたんじゃないかというふうに思うんですけれども、要は、結局今と変わらないということですよね。結局、今までずっと竹中大臣が言ってこられたことと変わらない。

 そもそも、ここで読み込むわけだったんでしょう。郵便貯金、簡易保険、ずっとやっていくということは、この第四条の第二項ということで読み込むという話、なおかつ、契約をするときに、安定的に、移行期間を上回っても構わないということもありましたが、契約を結ぶという話をされていたわけで、結局、今と何にも変わっていない、修正しようが修正しまいが何にも変わらないということでよろしいんでしょうか、竹中大臣。

竹中国務大臣 金融業としての性格を考慮して、銀行、保険に関してはユニバーサルサービスの義務は課さない、しかし、その重要性にかんがみて、現実的に各地域でそうしたサービスが提供され続けるようにさまざまな工夫をした。その工夫につきましては、今、柳澤委員からも御指摘をくださったわけでございます。

 今般の修正案では、郵便局を活用して行う地域住民の利便の増進に資する業務として営むことができる業務のうち、金融業及び生命保険業の代理業務について、具体的に法律上例示することによりまして郵便局会社の業務としての位置づけの明確化を図られたものと考えております。

 政府としては、このような議論の経緯等を真摯に受けとめて誠実に対応してまいるつもりでございます。

中塚委員 そもそも銀行業というのは、これは郵便貯金バンクだけのことじゃありませんね。銀行業だから、要は、都銀、地銀、第二地銀、何でもオーケーですね。銀行業ということだから、別に郵便貯金銀行ということを保証しているということではないということですね。

 加えて、生命保険業というのであって、簡易保険株式会社のことじゃないですね。生命保険業をやっていれば何でもいいわけですね。しかも、「できる」だからやらねばならない、「営むものとする」ということではないということですね。

 ということは、結局、今までと何にも変わっていない、修正したって今までと何にも変わっていないということですね。どうしてこれで反対していた人が賛成に回るんですか、山崎筆頭理事。

山崎委員 この点に関しましては、政府・与党合意を尊重する立場で修正をやってまいったわけでございまして、政府・与党合意の中で、この点につきまして、より国民の利便性を最大限に尊重するということを、向上させることを行っていくという明確な意思表示をさせていただいたということでございます。

 これにおいて、我が党内におきましては、皆さんがこの法案に安心して賛成していただける、こういうことになるわけでございます。

中塚委員 私の質問は実は午前と午後に分かれていまして、ちょっとペースの配分が難しいので、この話はそろそろこれぐらいにしておきたいんですが、最後に竹中大臣にお伺いをいたします。

 再度の確認ですけれども、要は、変わらぬということですよね。修正しようがしまいが変わらない。私が今まで言っていた答弁とそごは来さぬとさっきおっしゃったわけだけれども、答弁ももちろんのことながら、実態も何も変わらぬと。要は、この修正というのは、自民党の反対派のメンツを立てるためにやるんだというそれだけのことであって、国民を欺き続けるという意味では全くもって何にも変わらない、そのことは変わらぬ、そういうことでよろしいですね。

竹中国務大臣 銀行業及び生命保険業の代理業務について、具体的に法律上例示をすることによりまして郵便局会社の業務としての位置づけの明確を図られたものというふうに考えておりますので、このような議論の経緯等を真摯に受けとめ、我々は誠実に対応してまいるつもりでございます。

中塚委員 次に、ちょっと午後から株式の持ち合いの話を、ちゃんと時間が三十分ありますので伺いたいと思うんですが、その前に、この株の、バイバックするということですね、一回処分するわけでしょう。一回処分をして、それでしかも、継続的保有だとか何とかかんとかいろいろなことをおっしゃっているけれども、要は、売ったものを買い戻すということですね。バイバックするということだと思うんだけれども、まず、郵政ホールディングス、これは谷垣財務大臣に伺おうと思いますが、この郵政ホールディングスがまずは貯金と保険の全株を持っている、それで株式を売却するわけですね。では、この株式の売却益に対する課税というのはどういうふうになるのか、お答えをいただけますか。

谷垣国務大臣 これは、民間機関とのイコールフッティングというのを基本方針に書いてございますから、要するに、民間会社が株式等の保有資産を売却した場合に、その実現した利益に課税されるというのが所得課税の原則になっておりますので、今回の場合も、今の委員が御質問の場合も、同様に、子会社株式売却益に課税をしていくということになるはずでございます。

中塚委員 会社ですから、もうかる場合ともうからない場合がありますね、株式売却すると。全体でそれを通算して損が出れば法人税はかからないけれども、そんなことがあってもらっては困るわけだが、でも、売っ払ってもうかれば法人税がかかるわけでしょう。株式の売却益にも法人税がかかるわけですね。それは一体何%かかるんですか。あるいは、できれば、地方税も合わせてですが、幾らの税金を払うことになるんですか。

谷垣国務大臣 会社の利益の度合いによると思いますが、ちょっと調べさせます。――今のお尋ねは法人税の場合ですよね。そうすると三〇%でございます。

中塚委員 ということは、法人税は三〇パーですから、普通ですよね。あと、それに応じて地方税等もかかるということになってくるわけだから、実効税率で四割ですか。要は、売却益の四割は税金で納めるということになるわけです。

 さてここで、では、バイバックするということになる、だれがバイバックするんですかと。一遍売っ払ったもの、四割は国庫に税金として納める、六割しか手持ちがない。六割しか手持ちがないもので、何で一遍売ったものをもう一回買い戻すんですか。何で会社がわざわざそんな損をするようなことをやるんですか。おかしいんじゃないですか、竹中さん。いかがですか。

竹中国務大臣 これは何度も御説明させていただいていますように、金融の業務におきまして信用が大変重要でありますから、その国の関与を断ち切るということが大変重要だからです。

 なぜ売却するのかということに関しましては、国の信用、関与を断ち切るために売却をするわけでございます。その後に、経営判断として、通常の枠組みの中で、通常の制約の中で持つかどうかというのは、これは経営の判断でございますけれども、その場合は、これは当然市場から購入するということを前提に、民間の会社として通常の枠組みの中で行動をしていただくわけでございます。(発言する者あり)

二階委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

二階委員長 速記を起こしてください。

 竹中国務大臣、再答弁を願います。

竹中国務大臣 まず、株式を全額処分するということを義務づけている趣旨としては、これは信用を断ち切るためでございます。その上で再度株式の保有をするかどうかというのは、これは経営判断でございますけれども、経営判断も民間の企業として通常の制約の中でやっていただく。したがって、これは税は払っていただくことになります。

 そういう中で、今の委員の直接のお尋ねは、税金を払ってしまうとバイバックできないではないかというお尋ねであったかというふうに思いますが、これは常識的に、売ったものを全額買い戻すとそういうことになるわけでありますけれども、これはそういうことにはならないわけでございますから、現実には経営の判断の中でしっかりと対応をしていただけると思っております。

中塚委員 そんな人を瞞着するような答弁ばかりしてはだめですよ。全額だれが買い戻すなんて言いました。それは、竹中さんだって国の関与を断ち切ると言っているじゃないか。それは昼からの三十分でちゃんとやるんだが、私が聞いているのはそういうことじゃない。たとえ一株だろうが二株だろうが、売ったものについては税金がかかるわけですよ。四割税金を取られるんだ、六割しか手元に残らないんだ。六割しか手元に残らないもので、それを株を買い戻すという行為が、あなたは経済学者なんでしょう、果たして経済合理的なんですかという話を聞いているんです。そういう判断を経営者がするのかということを聞いているんですよ。どうですか。

竹中国務大臣 経営判断として、完全な民有民営になった後に、経営上それが必要であるというふうに判断をすれば、当然されるわけでございます。

中塚委員 経営上必要な判断というのは何ですか。経営上必要な判断というのは何なんですか。損を出してまで買い戻す、だったら売らなきゃいいじゃないか、ずっと持っていればいいじゃないか。損を出してまで買い戻す経営上の判断というのは一体何なんだ。

竹中国務大臣 完全売却は経営判断ではございません。これは法律上の制度でございます。完全処分は法律上の制度でございます。(発言する者あり)

中塚委員 今、自民党の委員から態度が悪いというふうな不規則発言がありましたが、では、この大臣の答弁は態度は悪くないんですか、委員長。午後からに質問を続けますけれども、ちょっとそこはちゃんと委員長から注意をしていただきたい、大臣にも委員にも。

 午後からの質問に譲ります。

二階委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時四分開議

二階委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。中塚一宏君。

中塚委員 それでは、午前中に引き続きお尋ねしてまいります。

 会社に損害を与えるような判断をするのも含めて、経営上の判断だ、私は全くもってそれは理解できないんですが、生田総裁、この間もお伺いして、委員会に求められれば就任になりますかということをお伺いしたわけなんですが、生田総裁、午前中の議論を聞いていて、一回株を売るわけです、だから税金を四割払う、四割払って六割しか手元にない。その株をもう一回買い戻すためにお金を使えば、損が出るのはもう明らかなわけですね。それが果たして本当に経営上の判断ということがあり得るんでしょうか。いかがですか。

生田参考人 お答えします。

 まず、経営者としては、できるだけ経営の自由度を持っていて、自分の判断で最適と思うことができると一番いいわけですけれども、多分、この新しく民営化される会社の経営者というのは、でき上がっている法的な枠組みの中でそれはきちっと守っていくと思うんです。だから、法的枠組みが売り切りということに決まれば、それはそれで粛々とやるだろうと思います。

 あとは、そのときの経営状態、自分の会社の。それで、とてもじゃないけれども、やはりもう持てないから独自で経営した方がいいと考えるか、あるいは、今の一般的風潮のように、コングリマットで少し持ち合いをした方がいいと考えるのか、まさにそのときの判断だろうと思います。

    〔委員長退席、松岡委員長代理着席〕

中塚委員 すごいこれはトリッキーな話だと思うんですね。しかも、竹中大臣が今までおっしゃっていること、継続的保有でありますとか、あと、処分をするということ、国の関与を断つということですね。あと、加えて一体的経営ということもおっしゃっているわけだけれども、これは、全部が全部どういうふうに関係するのかというのはいまだもってよくわからない。

 それで、そこに関係をする修正も今回されておるわけでありますが、ここでその修正案の提案者にお伺いをいたしますけれども、「郵便貯金銀行の定款には、少なくとも株主総会における議決権の行使に関する事項として内閣府令・総務省令で定める事項を定めなければならない。」ということが書いてある。私は、もうはっきり言ってこの修正案を見てびっくりしたんですが、「少なくとも」と書いて、内閣府令、総務省令で定める事項を定めなければいけないということなら、株主総会における議決権の行使に関する事項を一つや二つ例示するのが当たり前じゃないかと思うんですね。それを全くもって丸投げで内閣府令、総務省令に任せてしまう、こういう修正は極めて問題があるんじゃないかというふうに思うんですが、まず修正案の提案者に伺います。

柳澤委員 まず、持ち株会社が貯金銀行、保険会社、例を貯金銀行に絞って論を進めさせていただきたいんですが、これの持ち株をすべて処分をする、完全処分をする、これは、完全に民営会社にするという、そういう法律上の枠組みとしてそういうことが要請されているわけであります。

 一方、しかし、この持ち株会社も、会社として、例えばグループ経営の観点から等いろいろな考え方から株を買うという選択も、当然民間会社ですからあるわけでございます。そういうときにいろいろなケースがあり得るわけです。完全処分をした後しばらくたって、事業年度でいえば何年度かもたった後に買うということもあるけれども、同一年度内にまた新たな観点から買うということもある。そういうようなときに、議決権ベースでいうと連続的な保有になるということもあり得るわけで、それを禁じません、こういうことが政府・与党の合意であったわけでございます。

 それを具体的に確保しようということになりますと、要するに、株主名簿の登載の基準日というものがそこで問題になります。通常は、基準日というのは、年度末、三月三十一日ということが通例として多いという認識を我々持っているわけですけれども、そういたしますと、株式の売却が例えば一月だとか二月だ、もう非常に年度末に近くなってくるというようになった場合に、これは、なかなか基準日をとって株主名簿にその持ち株会社の名義を登載するということが難しくなる、これはもう時間的に難しくなるということもあろうと。そういうようなことを回避して、本当にそういう連続年度で株主になっているというそういう状態を確保するためには、原始定款でもって基準日というものをもうちょっとゆとりのあるものにしておく必要がある、こういうことを我々は細かく考えたわけでございます。

 そうして、そういうようなことについては、原始定款に書くということが確保されれば、そういった事態もしっかりと整備できる、こういう考え方で基準日について、内閣府令それから総務省令、共管でございますので、そこで定める、こういうことにいたしたということでございます。

中塚委員 一般論として、では、会社がどういう株式をポートフォリオとして保有するかということについては、それは、それこそまさしく経営上の判断だと思いますよ。ただ、要は、一連のこの委員会なりあるいは御党の中の議論で、継続的保有をするとか一体的経営を行うとかいう話の延長線上の中でこういった修正というものが出てきておるわけですね、現在。私がお尋ねしたのは、その中身のことよりも、こういった形で修正して、政令に任すようなことで果たして本当にいいのかどうなのかということをまずお伺いをしているわけなんですね。その件についてまずお答えをいただけていないんですが、時間の関係で先に進みますけれども、具体的に基準日をどのようにされる、どういう政令をおつくりになるつもりなのか。

 そもそも、定款で定めるべき事項を政令で定めるということだけれども、原案にはないことを修正されるわけなんだから、本来は、内閣府令、総務省令をどんなのをつくるんですかというのは政府に聞かなきゃいけないことだと思いますけれども、でも、これはやはり修正者の意思というものがあるはずだし、その修正者の意思と今までの竹中大臣の答弁というものは、さっき竹中さんは変わらぬというふうにおっしゃっていたわけだから、変わるものであってはいかぬ、私はそういうふうに思うんですけれども、それで、この定款で定めなければいけない事項についてちょっと具体的にお伺いをしたい。

 二〇一七年の三月三十一日までに完全処分をするということは、これは法律で決まっておるわけですね。完全処分をする、その後に基準日を定めて、要は議決権が行使できる日に株を持っているということなんですか、それとも持っていないということなんですか。そこはいかがなんですか。

 さらに言うと、二〇一七年の三月三十一日に完全処分をするということになるんであるならば、これは遅くともですが、例えばこの日、一番のタイムリミットに完全処分をするとして、基準日というのは、では、二〇一七年の例えば四月三十日であるとか五月三十一日であるとか、要は、通常開かれる六月の株主総会の前までが基準日だ、そういう理解でよろしいんですか。

柳澤委員 私どもはそのように考えているわけです。(発言する者あり)ですから、基準日は、基準日において株主名簿に登載されて、そうして一定の期間を置いて株主総会が招集される。恐らく、定款で何日前までにそれが到着しなきゃいけないというようなことが書いてあるだろうと思いますので、それの一番ぎりぎりのところを基準日にしておくというようなことが必要になるのではなかろうか、このように考えています。

中塚委員 これは竹中大臣にお伺いするんですが、竹中大臣、要は完全処分をするということをずっとおっしゃっていた。売却とかあるいは処分信託とかいろいろなお話をされていて、売却でも処分信託でも何でもいいんですけれども、要は国の関与を断ち切るんだということをおっしゃっていた。国の関与を断ち切るというのはどういうことなんですか。

竹中国務大臣 一義的には、国が関与してその意思決定なり株主としての権利を行使して、それで経営に影響を与える、これは関与の非常にわかりやすい例であろうかと思います。株主であって、それで株主権を行使して、そして影響力を与える、そういう状況を想定しているわけでございます。

中塚委員 ちょっと聞いたことに答えていないんですが、いや、竹中大臣は国の関与を断ち切るということをずっとこの委員会でおっしゃってきたわけですよね。それで、国の関与を断ち切るというのはどういうことなんですかというお尋ねなんですが、もう一回ちょっと答えてもらえますか。

竹中国務大臣 国の、株主として株主権を行使して経営に影響を与える、そういった関与を断ち切る。したがって、株主としての影響力が及ばないような形にすることが関与を断ち切るということになるというふうに思っております。

中塚委員 いや、それで、国の関与を断ち切るというのは、議決権を有しないということじゃないんですか。議決権を有しないということですよね。

 そこで、柳澤さん、提案者にお伺いをするんですけれども、この修正は、基準日を、要は、一七年三月三十一日をちょっと後ろにずらすことによって議決権が有せるようにするという改正なんですか。そこをちょっとお聞かせいただけますか。

柳澤委員 それは、冒頭申したように、連続して一六年度も一七年度も議決権を持つ、しかし、その間に完全売却が行われているというケースがあり得るということで、それを想定して、原始定款にそういうことが可能になるような基準日を定めておかなければならないということを決めたということでございます。

中塚委員 いや、ですから柳澤提案者にお伺いしますが、提案者の趣旨としては、議決権は、ずっと行使ができるような形でホールディングスが郵貯バンクなり郵貯保険の株を持ち続けるということですか。

 要は、ホールディングスが議決権行使ができるような形で株をずっと持ち続けるということをねらいとした修正をかけるということをおっしゃっているんですか。

柳澤委員 先ほど申したように、そのとおりであります。

 これ、何回も申しておるような答弁を繰り返しているんですが、一六年度も一七年度も議決権を行使できる株主になっている、こういう事態を確保しよう、こういうことであります。

中塚委員 では、竹中大臣、今まで、要は、「国の関与を断ち切るために、国の出資する日本郵政株式会社がその二つの銀行と保険の議決権を有しない状況とするということを意味しているわけでございます。」と答弁をされてきたんです。これは十七年五月三十日の議事録、北川委員、自民党の方だと思いますが、に対する御答弁なんですけれども。私の午前中の質問の冒頭で、答弁は変わりませんとおっしゃっていたはずなんだが、どうなんですか、これ。提案者の柳澤先生の今のお話を聞くと、法案のこれはすごい重大な部分が修正されるということであって、かつ、それによって竹中大臣の今までの答弁も変わっていくということでよろしいんですか。

竹中国務大臣 二〇一七年三月三十一日までに完全処分をする、二〇一七年三月三十一日までにその支配権、議決権を保有しない状態にするということでございますから、その点は変化ございません。

中塚委員 ということは、一遍全部売ってしまえば、後はもう野となれ山となれだということですか。

竹中国務大臣 二〇一七年三月三十一日までに完全処分をする、その時点で、支配権、すなわち議決権を有しない状況になるわけでございます。それ以降は、民間の会社として一般の法規制の中で行動していただくということでございます。

中塚委員 竹中大臣、それとあと伊藤金融担当大臣、午前中のうちの党の委員だったかにお答えになっていたと思うけれども、金融というのは、銀行や保険というのは、国の信用が背景であってはいかぬという話をされていたのは、それは移行期間だけのことじゃないはずでしょう。民営化するということは民間会社にするということでしょう。商法上、会社法上の会社にした上で、なおかつ、銀行法なり保険業法のもとで運用をされていくということなんでしょう、この二つの会社は。だったら、国の関与を断ち切るという竹中大臣の答弁は、二〇一七年三月三十一日だけのことではなくて、この郵便貯金バンクなりこの簡易保険会社がずっと国によって議決権は行使をされないということをお二人は答弁されたんじゃないですか。いかがですか、竹中大臣。

竹中国務大臣 私の答弁は、二〇一七年三月三十一日までに完全処分をする、それ以降は、民間の企業として一般法規の中で経営判断で持ち合いが可能であるということを一貫して御答弁申しております。

中塚委員 もう一度伺います。

 大臣がおっしゃっていたのは、国の関与を断ち切るということをおっしゃっていて、そして、それは移行期間だけじゃなくて、金融業というものは、銀行は、保険会社は、国の信用を背景じゃいかぬ、イコールフッティングじゃなきゃいかぬ、その脈絡の上で議決権を有しない状況とするということをずっと答弁されてきたわけであって、だから、この修正によって竹中大臣の答弁は変更になるんですよ。いかがですか。

竹中国務大臣 今までの答弁で一貫をしております。

 二〇一七年三月三十一日までに完全処分を行って断ち切る、それ以降は一般法規の中で経営判断で行動していただく、一貫してそのような答弁をしております。(発言する者あり)

松岡委員長代理 ちょっととめておいて。

    〔速記中止〕

松岡委員長代理 では、速記を起こしてください。

 では、まず竹中国務大臣、そして柳澤伯夫提出者の方から続いて答弁をお願いいたします。

 竹中国務大臣。

竹中国務大臣 この法律によりまして持ち株会社は、二〇一七年三月三十一日までに銀行と保険会社の株式を完全処分するということが義務づけられております。その意味は、信用が大切な金融業において国の関与を断ち切る、そして、断ち切って民有民営になった後については、これは、一般の法規に従って、経営判断に基づいて行動していただくということを重ねて私は御答弁を申し上げております。

 その際に、通常の株主総会との関係でどうなるかということについて柳澤委員が修正案で御提起をくださっているというふうに承知をしておりますので、その点につきましては、柳澤委員からのお答えをいただければよろしいかと存じます。

柳澤委員 要するに、持ち株会社も、三分の一を国が持っている特殊会社とは言い条、株式会社なんですね。株式会社ですから、いろいろな考え方で企業の株を買うということは十分あり得るわけでございます。

 そういうようなことで、株を買う、先ほど来、株を買い戻すとかというようなことで、あたかも持ち株会社が原始的な状態で株を持っている、これは管理あるいは支援と言っていますが、一般に支配と言ってもいいと思うんですね。そういうような考え方で株を持っている、こういう状態はもう断ち切られるということでございます。これが実現される。これは、法律の至上命題としてそういうことがうたわれているわけであります。

 しかし、これも会社でありますので、いろいろな考え方から株式を持つということは全く否定されてしまう、それはないわけでありまして、したがって、管理支配というようなことではなくて、違う動機で持つということは十分あり得るという考え方をいたしているわけでございます。(発言する者あり)

松岡委員長代理 ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

松岡委員長代理 では、速記を起こしてください。

 中塚一宏君、質疑を続けてください。

中塚委員 私は、この法案を、今まで竹中さんの答弁を聞いていて思ったのは、一七年の三月三十一日までに完全処分をするということだから、このときには全部売るのか処分信託か、それはいろいろわかりません。とにかく、全株、ホールディングスはこの二つの会社のものを吐き出すんだろうなと思っていた。なおかつ、基準日をまたいだ後に買い戻すんだと思っていたんですよ。

 要は、竹中さんは、この委員会でずっと、議決権を行使しない、議決権を有しない状況とするということを意味するんだ、国の関与を断ち切るというのが民営化であって、今もお話しありましたが、金融というのは信用が大事だ、だから国の関与を断ち切るんだという話をずっとおっしゃっていたから、基準日があって、基準日が終わった後にバイバックするんだと思っていたわけですよ。そうすれば、議決権は行使できない、株主名簿には載らない、でも、株主であることは変わりない。そこを、継続的保有とか一体経営ということをごまかそうとされているんだろうというふうに思っていたんだけれども、きょうの柳澤さんの御答弁、提案の提出、これによって、議決権についてもずっと連続的に保有するということなわけですよね。

 いや、一七年の三月三十一日は別ですよ。一七年の三月三十一日は別だけれども、その後、例えば四月の三十日を基準日に設定したとしたら、その基準日までに買い戻して、議決権が行使できる状態にして、その後はもうずっと議決権が行使できるような状態にしていくということをおっしゃっているわけですよね。そうですね、うん、うんとおっしゃっている。(発言する者あり)いや、そうなんです。おっしゃっているでしょう。黙って聞いていてください。柳澤さんはそういうふうにおっしゃっているんだ。議決権はずっと継続する、完全処分した後、バイバックして、買い戻しして、株主になるんだから議決権はずっと行使できるということをおっしゃっているわけです。

 竹中さんが今までこの委員会でおっしゃっていたのは、それは移行期間だけのことじゃなくて、移行期間が終了するときだけのことじゃなくて、民営化後もずっとそうだということをおっしゃっていたはずですよ。だから、私はお二人の答弁が違うんじゃないかということを申し上げているわけであって、ちょっとお二人で調整をしてちゃんと答弁をしてください。統一見解を出してください。政府・与党なんです。政府案に与党が修正をかけるんだから、統一見解を出してください。

竹中国務大臣 二〇一七年の三月三十一日までに完全処分を義務づけている、これは私も申し上げましたし、中塚委員もそのとおり言ってきたというふうにおっしゃられたと思います。

 それ以降について私は何を申し上げたかというと、「民営化後の各会社間の株式持合いについては、持株会社の下でのグループ経営を可能とするため、移行期が終了した後は、特殊会社としての性格を考慮しつつ経営判断により他の民間金融機関と同様な株式持合いを可能とする。その結果、株式の連続的保有が生じることを妨げない。」これは四月二十五日の政府・与党合意でございますけれども、この政府・与党合意に基づいて私は一貫して発言をしてきているはずでございます。

中塚委員 いやいや、そうじゃないですよ。だって、金融というものはということをおっしゃったわけですね。

 では、伊藤大臣にお伺いしますが、午前中もお答えになっていたと思うんだけれども、金融というものは信用が大事ですと、竹中さんの言うことをそのまま口写しでおっしゃっていたように思いましたが、金融というのは信用が大事だ、だから国の関与を断ち切る必要があるんだ、イコールフッティングだということをおっしゃっていたわけですよね。

 それというのは、郵貯バンクだろうが郵便保険だろうが、要は、民営化された以上は民間会社なんだ、国の関与は断ち切るんだということですよね。だから、ずっと議決権は行使されない。国の関与を断ち切るのが議決権を行使しない状態とする、議決権を有しない状況とするということを意味しているということをずっと答弁されてきたんですが、それは違うんですか。

伊藤国務大臣 私も答弁させていただいたのは、竹中大臣と同趣旨であります。

 それで、今回の法律においては、民営化、その趣旨を徹底していくために株式というものを完全に処分をする。そして、処分をした後は、これは民間のルールの適用を受けるわけでありますから、その中で経営判断の問題である。しかし、持ち株会社は特殊会社でありますので、その性格というものを考慮して経営判断というものはなされるということでございます。

中塚委員 いやいや、持ち株会社というのは特殊会社なんでしょう。それが株を持つことが国の関与なんでしょう。議決権を行使するということが国の関与なんでしょう。だから、それをもう持たない状況にするというのが完全処分ということであって、国の関与を断ち切るんだということでしょう。それが銀行、保険という金融にとっては必要だということをずっと答弁されてきたわけですよね。それは、移行期間の十年あるいは十年が終わったときだけじゃなくて、その後ずっとそうじゃないんですか。どうなんですか。

伊藤国務大臣 同じ答弁になって恐縮でございますけれども、今回の法律というものは、民営化の趣旨というものを徹底させるために、そのために完全に処分をさせる、実施をするということであります。

 処分を実施した後、その持ち株会社が郵便貯金銀行や郵便保険会社の株式を保有するか否かの問題は、特殊会社としての同社が、会社の目的や法律で認められる業務範囲を考慮しつつ、通常の民間金融機関の株式を保有するかどうか、保有するとすれば、どの民間金融機関の株式を保有するかといった経営判断の問題であると考えております。

中塚委員 それは経営判断だけれども、国の特殊会社なんでしょう。だから、それは国の関与になるんじゃないですか。

伊藤国務大臣 完全に民営化された後は、これは一般法令の適用を受けるわけでありますから、その中で持ち株会社が郵貯銀行あるいは保険会社の株式を保有するのか、あるいはその他の民間金融機関の株式を保有するのか、これはもう経営判断の問題である。そのことは一般の法令の中でできるということでございます。

中塚委員 だから、その辺は同じことを言われても困るんです。私は違うことを聞いているんだよ。それは国の関与じゃないんですかという話を聞いているんですよ。簡単なことですよね。特殊会社なんでしょう、国の。特殊会社が買うんでしょう。それは、買う買わないは経営上の判断、当たり前ですよ、そんなの。でも、特殊会社が持つということは国の関与でしょうということを聞いておるんです。

 だから、要はこの修正で変わったんでしょう、法律が。今までの御答弁と違いますよ。どうなんですか、そこは、伊藤さん。

伊藤国務大臣 繰り返しの答弁になって恐縮でございますけれども、今回の場合には、その民営化の趣旨というものを徹底させるために、法律において完全処分をするわけです。なぜならば、国営化されてきた、その国営化されてきた郵貯銀行そして保険会社、この政府の関与というものを断ち切って、そして民間の金融機関とイコールフッティングの状況をつくり出す、そのために完全処分をする。完全処分をした後は、これは一般の法令の適用を受けるわけでありますから、その中で持ち株会社が他の民間金融機関と同じように郵貯銀行あるいは保険会社の株式を保有するかどうか、これはもう経営判断の問題であるというふうに思います。

中塚委員 いやいや、国の関与かどうかを聞いているので、経営の判断なんというのは、そんなこと言われなくたってわかっているんですよ。国の関与かどうなのかということを聞いているんです。

 柳澤提案者にお伺いしますけれども、要は、議決権は継続しないと竹中さんはおっしゃっているんだけれども、それは、一七年の三月三十一日は一たんは全株処分するということになるわけです。そうすると、議決権は継続するとおっしゃっていますね、柳澤さんは。要は、それは、十年間も十年以降もずっと議決権は継続するんだと。それはそうですよね。だって、十年間は移行期間なんだから、要は、ホールディングスの子会社ですよね。それを、十年かけて、できるだけ早くだけれども、売ってしまうということだから、要は、議決権は十年間はあるということですね。その後売っ払ったって、議決権はずっと持つんでしょう。議決権を行使できるようにするわけですよね。一たん、すごいトリッキーだけれども、一七年三月三十一日に全株処分をする、それで、基準日までにまたバイバックして議決権が行使できるようにする。すごいトリッキーですよね、これって。昔、私が子供のころの、何か空白の一日みたいなプロ野球のあれがありましたけれども、全くそれと似たような話なんだけれども、要は、柳澤さんは、議決権を継続するわけですね、これは。十年も十年以降もずっと議決権は継続するということですよね。よろしいですか。いかがですか。

柳澤委員 これは要するに、もう初めからこのスキームというのは政府・与党合意の中にあったわけです。もうずっと四月二十五日からやっているわけです。それを、先ほど言ったように法律化して、より担保の強化を図った、これが今回の法律修正の意味ですよということを申し上げたんです。

 今、中塚さんも非常に巧妙な質疑の技術を行使しているんですが、関与という言葉を使われているわけですね、関与という言葉を。関与って一体何なんですかと。ですから我々は、要するに、管理、支援が持ち株会社がそれまで持ってきた動機あるいは目的なんです。そういうものは断ち切りますよと言っているんです。それでしかる後に、先ほど伊藤大臣も言ったように、一般の株式会社が、あるいは一般の株式会社に対してこの持ち株会社が株式を保有するようなそういう考え方で株式を保有することはあり得ます、それで連続的保有が成り立つこともあり得ます、妨げない、こういうことをもう初めから答弁いたしているわけであります。

中塚委員 必殺七色答弁なんだけれども、久しぶりに聞けてうれしいですが、いや、議決権は継続するとおっしゃったですね、さっき。議決権はだってずっと継続するんでしょう。結果として継続するでしょう。することができるように定款に書き込むべく、こうやって法改正をされているんでしょう。そうですよね。議決権を継続できるようにこういうふうにされているんですね。そこ、どうですか。

松岡委員長代理 質疑時間が終了しておりますから、短くお答えください。

柳澤委員 簡潔に答えます。

 要するに、この支配、管理のための持ち株会社が持っているそういう株式の多寡と、一般の株式会社が投資対象として株を取得、保有しようということの多寡が、あたかも同じぐらいのというような考え方で支配、管理が続くかのような前提というか、そういう先入観に基づいての質問のようにお受け取りいたします。そういうことはないわけであります。

中塚委員 いやいや、私、もうそういうことを言っているんじゃない。

 時間が来ましたが、柳澤さんは議決権は継続するとおっしゃっていて、それは支配とかいうことじゃなくても、支配とかいうことじゃなくたって、国は議決権を行使できる、ずっと継続できるわけですね。支配できるかどうかは別にしたって、議決権の継続はできるわけだ。竹中さんは議決権を継続しないとおっしゃっていたよ、さっき。

 委員長、ちょっと議事録を精査した上ですけれども、やはり継続するとしないと違うんですよ。だから、議事録を精査した上で統一見解を出していただきたい。それを理事会で検討いただきたいと思います。

松岡委員長代理 理事会で協議いたします。

中塚委員 聞きたいことの五分の一も聞けていないんですが、きょうは時間ですので、これで終わります。

松岡委員長代理 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 与党から修正案が提出をされました。それに関連して何点かお伺いをしたいと思っております。

 昨日お伺いしました修正案の趣旨説明では、郵政民営化に係る国民の不安感を完全に払拭し、懸念に対する対応をしっかり担保するため修正を行うとしております。国民の不安を払拭するものということでの修正案の趣旨を述べておられました。

 国民が不安に感じている問題、この法案の審議を通じても浮き彫りとなった問題の一つが、身近で便利な金融機関としての郵便局がどうなるかということであります。その根幹は、金融のユニバーサルサービスの問題であります。

 そこで、提出者にお尋ねをいたします。

 政府の法案では、この金融のユニバーサルサービスの義務づけがなくなるわけであります。この修正案では、郵便局会社の業務として銀行業、生命保険業の代理業務を例示するとしていますが、肝心の金融のユニバーサルサービスの義務づけはどうなるのか、この点をお伺いしたいと思います。

柳澤委員 金融のユニバーサルサービスを、法律上どこかの機関に義務づけてそれを実現するということ、なかんずく、郵貯銀行に義務づけてそれを実現するということについては、我々は、これはできない、このように当初から考えておりました。

 そういう前提の上で、しかし、事実上我々は金融のユニバーサルサービスということをできるだけ確保したい、それにはどうしたらいいか、こういう考え方のもとで、長期的な契約であるとか基金であるとか、あるいは、今大変問題にもなりましたけれども、後でまた問題にもなるかもしれませんけれども、株式というものを持つ、そういうようなことによって事実上この金融のユニバーサルサービスを確保しよう、こういうふうに努めているというのが実態であります。

塩川委員 金融のユニバーサルサービスについては、法律上義務づけできないという御答弁でした。

 念のため確認ですけれども、竹中大臣にも同じ点をお尋ねしますが、今回の修正案によって、金融のユニバーサルサービスの義務づけについてはどうなるのか、その点をお答えください。

竹中国務大臣 金融、保険のサービスの提供につきましては、法律上、ユニバーサルサービスの提供義務は課さない、この点は、政府案においても同じでございますし、修正案においても同じであるというふうに認識をしております。

 その上で、今、柳澤委員が御答弁されましたように、実体的に金融の重要なサービスが国民のために広く行われるようにするために幾つかの工夫をしている、その一つが、みなし免許付与に当たっての長期安定的な代理店契約の義務づけであり、また、その後もそうした自主的な契約が継続されるというふうに考えられますが、万が一にも、過疎地の一部などでネットワーク価値が低下をしまして、郵便局で貯金、保険のサービスの提供が困難となった場合には、基金等々を活用して必要のあるサービスを確保する、それを図るということにしているわけでございます。

塩川委員 金融のユニバーサルサービスをなくすことは変わらないということであります。

 竹中大臣の答弁にもありましたけれども、必要な金融サービスについては実体的に行われるように手当てをするんだというお話がありましたけれども、この委員会での審議を通じても、郵便局会社の業務として銀行、保険の代理業務を例示するというこの修正案の中身を見ても、郵便業務のような義務づけにはなっておらないわけで、「営むことができる。」というものであり、行わなくても構わない、それは経営者の判断次第という点は変わりがありません。また、移行期間を過ぎれば経営者の判断次第で、その点での保証もありません。国としての金融のユニバーサルサービスの提供義務を投げ捨てるものであり、このような修正案では国民の不安感を完全に払拭するものとならないことは明らかであります。

 この法案審議を通じて、郵便局が担ってきた、民間にはできない金融のユニバーサルサービスの豊かな内容が明確になってきたと思っております。

 一つは、都市部、過疎地にかかわりなく、不採算地域を含めて全国一律の基礎的金融サービスを提供していることであり、歩いて行ける距離に金融窓口を提供していること、第二に、少額の貯金を守る金融機関として、貯金の妨げとなる口座維持手数料を取らないことや、ATM手数料で平日時間外、休日を無料としている、こういうサービスを提供していることであり、第三に、すべてのATMを障害者仕様にするなど、特定の人を排除することなく基礎的金融サービスを保証していることであります。

 今日、民間任せにしてきた先進国の中では、金融口座を持っていない国民が生まれ、社会問題にもなっている中で、このような金融のユニバーサルサービスの義務づけこそ維持すべきだと思います。こういう修正案は何ら国民の期待にこたえるものではない、このことを申し上げたいと思います。

 それとの関連で、修正とはしておりませんけれども、法文と同じような重みを持つという答弁のお話がございました。この点で、郵便局の設置についてお尋ねをしたいと思っております。

 昨日の質疑の中で修正案提出者の柳澤委員は、郵便局の設置にかかわって政府に質問いたしました。この点で、確認の意味で竹中大臣にお伺いをいたしますが、その際、柳澤委員は、成立後の本法律の運用の上で、法文になったと同じような重みを持つ文言になるという認識のもとで、郵便局の設置について政府の基本的な考え方を竹中大臣に答弁を求めました。

 竹中大臣にお尋ねしますが、修正はしていないけれども、それに匹敵する重みがある問題として重要だとされた郵便局の設置について、柳澤委員に対しどのような答弁をなさったでしょうか。

    〔松岡委員長代理退席、委員長着席〕

竹中国務大臣 郵便局の設置については、あまねく全国において利用されることを旨として郵便局を設置するとの規定を踏まえ、都市部も含め、国民の利便性に万が一にも支障が生じないよう十分な配慮がなされることが最も重要と考えております。

 このため、あまねく全国において利用されることを旨として郵便局を設置することを法律上義務づけ、さらに、省令における具体的な設置基準として、特に過疎地について、法施行の際現に存する郵便局ネットワークの水準を維持することを旨とすることを規定するなど、きめ細やかな法制上の担保を行うというふうにしているところでございます。

 そして、このような法制上の担保の趣旨を十分に踏まえ、実際の郵便局の設置については、都市部も含め、国民の利便性に万が一にも支障が生じないように適切に対応してまいりたい、以上のような趣旨のことを申し上げたと存じます。

塩川委員 これは従来の答弁とどこが違うんでしょうか。今回、法文の修正にも匹敵するような重みを持つ答弁とおっしゃいましたけれども、これは従来の答弁とどこが違うのか。竹中大臣、いかがですか。

竹中国務大臣 あまねく全国において利用されることを旨として郵便局を設置するというその趣旨に基づきまして従来からも御答弁をさせていただきましたが、そうした点を、改めてできるだけ正確に御答弁させていただいた次第でございます。

塩川委員 この修正とともに、法文の修正にも匹敵するような重みを持つそういう答弁を期待された提出者にお尋ねしますが、これは従来の答弁とどこが違うんでしょうか、何が違うんでしょうか。

柳澤委員 これは、政府側と交渉したときのテーマに関係があるわけですけれども、要するに、党としては、省令で定めたことをそっくりそのまま法律化できないのかということで政府に迫ったわけであります。しかし、この点はやはり、逆に言うと、せっかく一般の会社になった、そういうことのよさも減殺をしてしまいかねないそういう懸念も他方にある、したがってこれは、省令にとどめておくべきだという意見も強く他方にありました。

 そういうようなことで我々は、それでは、省令で定めたことということが、国会答弁の形ではあるけれども、非常に高次の格を持つ文言だというようなことにすることによって、弾力性と同時に規範としての強さも確保しよう、こういうように考えたというのが背景であります。

塩川委員 お答えいただいておらないわけですけれども、要するに、法文並みの重みを持つということを、柳澤委員もその答弁を聞いたとおっしゃっておられたわけですよね。重大な答弁の変更なり重大な答弁としての前進があったと受けとめておられたと思うんですけれども、それはどこが違うんですか。従来の答弁と何が違うんですか。

柳澤委員 国会答弁がどのぐらいの重みを持つか。これはもう非常に重みを持ちます。しかし、私がそこで言ったことは、法律の修正に、本当は修正をしたいんだ、しかし一方、弾力性を確保しなきゃいけない、それでは、修正ではなくて、同じような重みを持つ改めての国会答弁をしてもらいたい、こういうことで言ったわけでありますから、一般の国会答弁と私の提起した枠組みの中での国会答弁がどこがどうかと言われれば、それは厳密な法律論に立てば似たようなものだということが言えるかもしれませんが、将来、我々がこの言葉を規範として扱う場合には、十分その面は考慮されるであろうと私は期待しています。

塩川委員 この委員会では、大臣の答弁の重みというのが大問題となってまいりました。この修正案を出すことによって大臣の答弁の重みは変わった、あるいは、柳澤委員以外の方への答弁と柳澤委員への答弁の重みが違うということをおっしゃっておられるんでしょうか。いかがですか。

柳澤委員 まあ、そういう揚げ足取りのような話は、塩川先生も十分御存じの上でなさっているんだろうと思いますけれども、我々は、いろいろなことを将来規範として考える場合に、どんな国会答弁があったんだろうかと検索もします、探索もします。そういうようなときに、私が政府側に与えたようなそういう枠組みでの答弁というのは、これはもうそういうものとして私は将来尊重されることになるだろうと。

 ですからそれは、塩川さんが今お聞きになったような、わかっていながらおっしゃっているんだろうと思いますけれども、そんな書生っぽい議論と言っては、これは取り消します、取り消しますけれども、政治の話としてはこれは十分あり得る話だというふうに私は考えています。

塩川委員 もともとこの間の委員会の答弁というのは、政府・与党合意文書に基づいて竹中大臣は述べられてきたわけであります。政府・与党合意文書には「都市部についても国民の利便性に支障の生じることのないよう配慮する。」と言っているわけですね。

 そうすると、昨日、柳澤委員の質問に対して答えた竹中大臣の答弁はどこが違うかというと、万が一にもという言葉が加わっただけなんですよ。万が一にもという修飾語が加わったというところが、これが修正並みの重みを持つ答弁だというお話になるわけであります。全くこれは、それこそ詭弁であります。こういう点が、これによって国民の暮らしを守る、そういうものには全くならないということも明らかであります。

 改めて公明党の桝屋委員にもこの点をお尋ねしますけれども、この間については、都市部への配慮……(発言する者あり)失礼。

 それでは申し上げますけれども、公明党からもこの設置基準については疑問の声が上がっていたわけですけれども、結果としては何ら変わるものがない。定性的な設置基準は今のものと変わらないわけで、定量的な設置基準が二万四千七百から七千プラスアルファへと大きく後退をしました。都市部での郵便局設置義務づけにも何の配慮もありません。維持されるという過疎地についても、郵便局はあっても、郵貯、簡保のサービスはなくなるかもしれないという疑念はぬぐえないわけで、こういう国会答弁の中身というのは、国民の不安を払拭するどころか、国民を愚弄するものでしかない、このことを述べて、質問を終わります。

二階委員長 次に、横光克彦君。

横光委員 社民党の横光克彦でございます。

 私は、まず地域貢献基金の件でちょっとお尋ねしたいんですが、この修正のことで。「一兆円を超えて基金を積み立てることを妨げるものではない。」となりました。これは、基金には上限はないということで理解してよろしいんでしょうか。

柳澤委員 文言どおりでございまして、積み立て方を問わないならば上限はないわけであります。

横光委員 この基金の原資は、申し上げるまでもなく、金融二社の売却益から来るわけですね。これは本来どのように使われるかと申しますと、当然のごとく、持ち株会社の経営のために自由に使える金なわけでございます。これが上限がないということを今御答弁されました。ということは、これは途方もない基金を積み立てることができるということにもなるわけで、それが実現する実現しないは別にして、そういうことが可能になるわけですね。この持ち株会社の自由度は全然なくなってしまう、民間会社と全く言えなくなると思うんですが、竹中大臣、この件についていかがですか。

竹中国務大臣 これはまさに地域貢献、社会貢献、経営判断に基づいて行っていただくということでございますから、これに関して政府が上限を設けることはしていないという趣旨でございます。

横光委員 確かに、その修正した目的は、やはり過疎地の赤字の郵便局を何とかして補てんして維持しよう、これはよくわかります。それは必要だと思うんです。しかし、片一方では民間会社の経営の自由度というものがある。これがもうことごとく侵害される。まさに、両方求めるから、私は、泥沼のような法案にどんどんどんどん陥っていっている、説明がどんどんどんどんつかなくなる、片一方は必要、こっちも必要というような状況の中でこの修正がなされたという気がしてならないわけです。

 それで、ちょっとお尋ねしたいんですが、いわゆる採算がとれない郵便局については、必ず基金から資金が交付されるんですか、柳澤委員。

柳澤委員 これは私が答弁すべき問いではないと思いますね。つまり、採算がとれない郵便局に基金が発動されて資金が供与されるというような仕組みには直ちになっていないということは、かねて竹中大臣がたびたび御答弁になっていたと私は記憶いたしております。

横光委員 それは、ネットワークとかビジネスモデルとかいうことで、個々のもう問題ではないということは説明されております。しかし、現実は個々の問題から発生するんです。

 例えば、地域貢献業務に該当するには、郵便局会社以外の者による実施が困難であることという項目がございます。前二項の第二ですね。この要件を満たす必要があるわけですね、資金を交付する場合。つまり、郵便局会社以外の者による実施が困難であるということは、郵便局の近隣に金融機関がある場合には基金からの資金の交付が受けられなくなる。この要件を満たせないわけですから、受けられなくなる。つまり、そういうことでよろしいんでしょうか、竹中大臣。

竹中国務大臣 地域貢献業務のスキームは、郵便局の維持を図るということを直接の目的とするものではもちろんないわけでございます。地域にとって必要性の高いサービスを確保するためのものでございます。郵便局会社以外の主体が同様のサービスを提供できる場合には、今銀行の例を挙げられましたが、基金を利用してサービスの確保を図る必要がない場合もこれは当然考えられます。そうしたことも踏まえて、郵便局会社以外の者による実施が困難であることというのを地域貢献業務の要件としております。

 ただ、こうした要件が求められたとしましても、この郵便局会社以外の者によって代替できないサービスは、これは地域貢献業務の対象となり得るわけであります。地域にとって必要性の高いサービスは、したがって確保していくことが可能であります。

 この要件の該当性につきましては、個々の郵便局が提供するサービスの内容でありますとかそのサービスエリア、そして、他の主体が提供するサービスの内容やそのサービスエリア、どこの地域でどういう主体がどんなサービスを提供しているのかということを踏まえて、他の主体が同様のサービスを提供することが可能かどうかというのを、やはりこれは個別のケースごとに判断する必要があると思います。

 したがいまして、金融機関が郵便局の近隣にあるからといって、一概にその郵便局の貯金、保険のサービスが地域貢献業務の対象にならないというものではないわけでございます。

横光委員 わかりました。その判断のしようはちょっとまだわからないんですが、要するに、たとえ郵便局が民間会社になって営業したとしても、赤字体質であるという状況であった場合は、一応私は交付金の対象になるかと思うんですが、それはあくまでも近隣に金融機関がない場合であって、ある場合でもその対象から外れるということはないというわけですね。

 いや、実はこの前、地方公聴会で佐賀の方の馬渡島というところへ行ったんですが、そこはもう三事業一体、現在でも赤字なんですね。これが民間会社になると、当然のごとく、もうやっていけないわけですよ。そうすると、恐らく交付金という対象になろうかと思う。ところが、会社以外の者による実施が困難であることで当てはまればいいが、すぐ三百メーターぐらいのところに漁協があるんですね。ですから、そうした場合は対象にならない可能性があるかと思ってお聞きしたんですが、そういうことはないんですね。

 もう一度お聞かせください。たとえ赤字経営の局であっても、すぐ近くに漁協があったとしても、基金の交付の対象にはなるんだということですね。

竹中国務大臣 これは、今申し上げましたように、そのサービスの中身によるということだと思います。これから金融機関、恐らく非常にそれぞれ特化をして、一概に、銀行、金融機関等々といっても、いろいろなサービスがあり得ようかと思います。したがって、その個々のケースごとに判断される必要があるわけでございますが、一概に、金融機関が郵便局の近隣にあるからといって、直ちにそのサービスが地域貢献業務の対象にならない、そういう性格のものではないというふうに考えております。

横光委員 実際行ってみて私も感じたんですが、ああ、これは本当に、まずこういうところが難しい場合は、言われているように、二重三重のセーフティーネット、いわゆる基金というものがあるので、これで何とか維持できるんだろうなと思ったら、この該当が、第二項があるものですから、すぐそばに漁協があるものですから、では対象から外れるのかなと思って、非常に心配して今質問をしたんですね。そういうことはちゃんと状況を見ながら勘案するということですね。わかりました。

 それで、提出者の柳澤さんにお聞きしたいのは、二兆というふうに、一応、ねばならないということになりました。しかも上限はない。(発言する者あり)いや、ねばならないになっていますよ。「積み立てなければならない。」というふうに、「計算した金額をもって」「政令で定めるところにより」、こうなっている。それで際限がない。

 これは、もちろん当然のごとく、全国でそういう必要に迫られるという思いがある。いわゆる赤字局が満遍なくふえて、そのことに対しては一兆では足りない、二兆は何とか必要、あるいはそれ以上も必要、そういうことでこういう修正を要求したんですね。非常にそういうことになる可能性が高いという認識があるんですね。

柳澤委員 正直言って、一兆ということを、我々はそれで何とか処理できるのではないかということを基本に思っておりましたけれども、私どもの党内論議では、やはりそれでは足りないという声が非常に強かったわけです。

 他方、まさに横光委員が指摘されたように、しかし、これは持ち株会社の利益の処分の一環で行われることでありますので、そうこれを野方図に基金に充てるということについては、やはり会社の経営者としては恐らく抵抗があるだろう、こういうようなことで私どもは、当座、それでは党内の議論を踏まえて二兆円にしておこうということで、政府・与党合意では二兆円ということをめどとして一応うたわせていただきました。

 今回は二兆円というものを法律化したわけでありますが、その法律の意図するところは、その積み立て方が最初の一兆と同じようなものでなければなりませんよと。つまり、配当について同じディシプリンというか、節度を課した上での積み立ての方式によって積み立てるということにした、こういうことでありまして、積み立て方について規定をしたと。政府・与党合意でうたった二兆円、上乗せ一兆円の積み立て方について規定をしたということに尽きるわけでありまして、先ほど、際限がないというのは、法律上際限がないということを言ったわけでございまして、そこに何か格別の意義があるわけではありません。

横光委員 そういうことができる可能性があるということでございます。

 経営の自由度はともかくとして、今言われたように、私は正直言って、やはりユニバーサルサービスを維持するためには、これは一兆で、例えば一・八%で百八十億ですよ。足りるわけがございません、私から言うと。二兆でも足りないでしょう、三百六十億。そういった意味で聞いたんです。際限なくなるんじゃないか、片一方は経営の自由度がなくなるんじゃないか、こういった非常に難しい問題だ。であるならば、今の公社でいいじゃないかということを申し上げまして、終わります。

    ―――――――――――――

二階委員長 引き続き、内閣提出、郵政民営化法案、日本郵政株式会社法案、郵便事業株式会社法案、郵便局株式会社法案、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案及び郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案並びに山崎拓君外二名提出、郵政民営化法案、日本郵政株式会社法案、郵便局株式会社法案及び郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案に対する各修正案を一括して議題といたします。

 本日は、各案及び各修正案審査のため、参考人として、全国銀行協会会長前田晃伸君、エコノミスト紺谷典子君、東洋大学経済学部教授松原聡君、郵政産業労働組合中央執行委員長山崎清君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、各案及び各修正案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、前田参考人、紺谷参考人、松原参考人、山崎参考人の順で、それぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため参考人の方々に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 それでは、まず前田参考人にお願いいたします。

前田参考人 全国銀行協会会長を務めております、みずほフィナンシャルグループの社長の前田でございます。

 本日は、本委員会にお招きいただき、意見を申し述べる機会を設けていただきましたこと、ありがとうございます。

 それでは、郵政民営化関連法案につきまして、全国銀行協会の意見を述べさせていただきます。

 まず、郵便貯金事業に関する基本認識と民営化の意義について、私どもの考えを申し述べさせていただきます。

 郵便貯金事業につきましては、一八七五年、明治八年、イギリスを範に産業振興の資金調達などを目的とした国営事業として創業され、民間金融機関の発達が十分でなかった時期において、国民に簡易で確実な少額貯蓄手段を提供してまいりました。さらに、こうして集めた資金を財政投融資制度を通じて社会資本の整備や企業などへの資金供給に活用するなど、これまで一定の役割を果たしてきたことは事実だと思います。

 しかしながら、郵便貯金事業の目的は簡易で確実な少額貯蓄手段の提供であるにもかかわらず、戦後から高度成長期を経て、郵便貯金の預入限度額は、一九七二年には百万円から百五十万円、翌年、一九七三年には三百万円、一九八八年には五百万円、一九九〇年には七百万円、そして一九九一年には現在の一千万円まで引き上げられております。

 このように、我が国の郵便貯金は、預入限度額の引き上げを繰り返してきた結果、郵便貯金残高は、一九七〇年には十兆円未満であったにもかかわらず、一九八五年には百兆円を突破、一九九五年には二百兆円を突破し、現在では約二百十兆円、個人預貯金の約三〇%を占めるなど、制度本来の目的を大きく逸脱して量的に肥大化をいたしております。

 経済が成熟期を迎えて久しい我が国におきましては、市場を通じた資金配分の重要性が高まってきており、財政投融資のあり方の見直しが求められるようになってまいりました。このため、二〇〇一年四月には財政投融資改革が実施に移され、その原資となってきた郵便貯金についても資金運用部への全額預託義務が廃止され、財政投融資の原資を集めるという民間金融機関にはない郵便貯金事業の特別な役割課題は終了したものと認識しております。

 しかし、現実には、郵便貯金はなお二百十兆円と私どもみずほ銀行の約四倍の数字を持っており、諸外国に例を見ない規模を有しております。例えば、イギリスでは、イギリス最大の民間銀行でありますHSBCの預金残高約六十兆円に対して郵便貯金残高は約十二兆円、ドイツでは、ドイツ銀行の預金残高約四十兆円に対して郵便貯金残高は約五兆円、フランスでは、BNPパリバ銀行の預金残高約三十五兆円に対して郵便貯金残高は約二十三兆円など、諸外国を見ても、郵便貯金が大手の銀行よりも多額の預金残高を有するといった状況にある国はどこにもございません。アメリカでは、既に一九六六年に郵便貯金は廃止されております。

 一方、二〇〇三年四月の郵政公社化された後の郵政事業におきましても、郵便貯金への無償の政府保証、納税義務の免除などの官業ゆえの特典は残されたままで、競争条件において民間金融機関よりも有利な状況が続いております。

 我が国のように巨額の資金を市場原理のらち外に置いている国はほかになく、このことが我が国の金融・資本市場における公正な価格形成をゆがめるとともに、効率的な資金配分を阻害していることは御高承のとおりであります。

 政府は、昨年九月に閣議決定された郵政民営化の基本方針において、一つは、公的部門に流れていた資金を民間部門に流す、いわゆる資金の流れの改革、もう一つは、いわゆる見えない国民負担の最小化を民営化の目的として掲げておりますが、ただいま申し上げました私どもの認識のもと、政府のこうした考え方については全く同感であります。

 民営化により巨額の郵貯資金が金融市場に開放されれば、それぞれの経済主体に市場原理に基づく資金配分がなされるとともに、新規参入や適正な競争を通じた金融サービスの革新が図られ、結果として国民の利便性が向上するといった効果が見込まれます。また、納税義務の免除や預金保険料負担の免除などの官業ゆえの特典がなくなれば、国民にとっての実質的なコスト負担が解消されることにもなります。全銀協の試算によりますと、こうした潜在的な国民負担は、最近十年間の累計で六兆円を超えております。

 次に、以上申し上げましたような民営化の目的を実現する観点から、制度設計に当たって私どもが特に重要と考える点、具体的には、最終的な民営化に至る移行期間のあり方について、二点申し述べさせていただきます。

 第一は、規模の問題でございます。

 政府は、小さな政府の実現を目指し、官から民へ、国から地方への方針に基づき、各分野で構造改革を推進されております。現在郵貯が行っている業務については、かなりの部分を民間金融機関で代替することが可能でありますので、少なくとも政府の関与が残る期間中は、民間にできることは民間にゆだねるとの構造改革の大原則にのっとり、郵貯事業の規模も縮小されていくべきものと考えております。

 なお、完全な民営化が実現した後の郵貯銀行の経営を考えた場合にも、二百兆円を超える巨額の資金について、運用、調達のリスクをきちんと管理しつつ、運用利回りを確保していくことは容易なことではないと思います。銀行経営に携わってきた経験から申し上げますと、郵貯銀行が新しいビジネスモデルを構築していくプロセスにおいて、ビジネスモデルとして適正に成り立ち得る規模までその大きさを縮小するという経営判断は、経済合理的であると考えます。

 第二には、郵貯銀行の業務範囲の問題でございます。

 政府は、移行期間において段階的に業務範囲を拡大する方針であると認識しておりますが、政府出資に伴う暗黙の政府保証が残る期間中に経営の自由度が先行して拡大されることになれば、実質的な官業の一段の肥大化を招き、問題を一層深刻化させかねないと考えております。

 したがいまして、全国銀行協会といたしましては、従来より、政府の関与が残る期間中は業務範囲の拡大に一定の制限を設けるとともに、それを監視していく仕組みを確保することが必要であると提言などで申し上げてきたところであります。

 また、郵貯、簡保は、約百五十兆円に上る大量の国債を保有しております。したがいまして、仮に、民営化に当たって国債市場への適切な配慮がなされなければ、需給悪化による急激な金利上昇を招き、財政再建や景気回復にも悪影響を及ぼす懸念もございます。

 さて、今回の法案を拝見いたしますと、民間金融機関との公正な競争を確保する観点から、二〇〇七年四月の民営化の当初から、政府保証の廃止、納税義務、預金保険機構への加入などの義務を負うとともに、適切なリスク遮断を行う観点から、新旧勘定の分離、四分社化と持ち株会社による郵貯銀行及び郵便保険会社株式の完全処分が規定されており、この点については望ましい方向にあると考えております。

 しかしながら、やや繰り返しになりますが、最終的な民営化に至る移行期間において段階的に業務範囲を拡大することとされている点につきましては、仮に、公正な競争条件が確保されないまま、経営の自由度が先行して拡大されることになれば、実質的な官業の一段の肥大化を招き、問題を一層深刻化させかねないとの懸念を持っております。

 特に、郵便貯金銀行の貸出業務への参入につきましては、あくまで民間にできることは民間にゆだねるとの構造改革の大原則にのっとって判断されるべきものと考えます。デフレが続く中、中小企業の借入金圧縮が続いているため、貸出残高は依然として減少が続いております。かかる状況のもとで郵便貯金銀行が新たに貸出業務に参入するには、相当の工夫と努力が必要になると思います。

 その点、法案では、移行期間中の業務拡大に当たっては、民営化の進捗状況に応じ、民営化委員会の意見を聞いて適切に判断することとされております。私どもは、民営化委員会のこうしたチェック機能は極めて重要であると考えており、今後の運営に当たっては、中立的な第三者の意見に加えて、民間企業との共存に向けて、民間金融機関の意見も十分反映されるよう御配慮をいただきたいと考えております。

 最後になりますが、これまでの議論などを拝聴いたしておりますと、最終的な民営化に至る過程で、新しいビジネスモデルの策定やシステムの開発など、民間銀行になるための課題が多々あることと思います。私どもは、公正で自由な競争が促進されることは歓迎すべきことと考えており、かかる観点から、完全民営化までの十年間という極めて長い移行期間に民間企業としていかにソフトランディングするかということは極めて重要であり、注視し続けることが大切だと思います。

 極めて長い移行期間を経た上で、当初の民営化の目的に沿った形で完全民営化がされた後は、同じ民間銀行の立場として、よりよい形で競い合いながら、お互いに切磋琢磨することは、利用者への金融サービス向上と我が国金融市場の健全な発展に大いに資するものと考えております。

 簡単でございますが、以上で終わります。ありがとうございました。(拍手)

二階委員長 ありがとうございました。

 次に、紺谷参考人にお願いいたします。

紺谷参考人 経済を専門としております紺谷と申します。よろしくお願いいたします。

 郵便局の民営化には反対でございます。

 だんだんにマスコミからの取材も、政局の移り変わりとともに質問が変わっていくんですね。基本方針についてどうお考えですか、法案についてどうお考えですか、修正についてはどういう御意見ですか。だんだんだんだん土俵が引きずられていきまして、そもそも論が忘れられてしまうんですね。ですけれども、私は常にそもそも論に立ち返るべきであるというふうに思っております。何となれば、改革というものはすべて国民のため、国のためでなければならないからでございます。権力者の個人的な好みで変わっていいとは私は思っていないんですね。

 そもそもから考えますと、郵便局の民営化の目的というのがくるくるくるくる変わっている。それは不思議だなと思うんですね。当初はたしか財投改革とおっしゃっていたはずですね。しかし、素人が考えてもわかることですけれども、財投改革、特殊法人が非効率だ、不透明だとおっしゃるんでしたらば、特殊法人をなぜ直接改革なさらないんですか。その方がよっぽど効率的で正しいやり方だと思うんですね。効率化が必要だとおっしゃりながら最も非効率な方法をとられようとしているのが、私には理解できません。

 さらに、財投改革するに当たって入り口論というのをおっしゃっていましたね。入り口を正すんだ、出口の資金の使い方がでたらめなんだから入り口を閉ざしてやるとおっしゃいまして、これは非常に乱暴な、論理も何もあったものじゃない議論なんでございますけれども、百歩譲って、入り口を閉ざすということが何らかの効果があったといたしましても、小泉総理がおっしゃっていたことは全く論理的ではありません。何となれば、入り口はもう一つあるからです。年金の積立金ですね。そちらに関しては一言もおっしゃらない。民営化はおっしゃらない。これまでも年金の問題がさんざんに言われてきたにもかかわらず、年金の民営化については言及なさらない。それは矛盾じゃないですか。片側の入り口はほうっておいたまんま、なぜ郵便局の民営化ばっかりおっしゃるのか。

 しかも、その理由が変わるということは、何らかの理由から民営化をどうしてもやりたい、理由も何もないから、ともかく民営化を実行したいんだというようにしか国民の目からは見えないんです。

 次いで、小さな政府だとか税収をふやすんだとかさまざまな御議論がありましたけれども、ここに銀行協会の会長の前田さんおいでですけれども、反対意見かなと思ったら賛成意見みたいに聞こえてしまったんですけれども、民業圧迫とおっしゃっていたにもかかわらず、巨大な銀行、巨大な保険会社をつくるということは民業の圧迫じゃないんでしょうか。農村で一生懸命商売しているよろず屋を圧迫するような郵便局のコンビニは民業圧迫じゃないんでしょうか。

 そもそも民間のコンビニが、この競争激化の中で、店を出せるところはどこでも出そうというようなコンビニ業界の動きがある中で、民間が幾らコンビニを出してもペイしないと思って出さない地域に官業をしてきた郵便局がコンビニを始めて成功するとはとても思えません。まして、コンビニがカフェレストランとか、それから旅行会社みたいなことを始めたりとか、そういうことを始めたからといって、村が活性化され、町が活性化され、都会に出ていった若者たちが帰ってくるから地域の活性化だと。ほとんど夢物語としか思えないですね。

 そういうことから考えますと、改革というのは一体何なんだろうかと思うわけです。どうすれば国民生活はよくなるのか、どうすれば国はよくなるのかという、その原点から今の現状を見まして、現状ここに問題ありということでなくてはいけないんじゃないんですか。郵便局の今どこに問題があるというんでしょうか。

 郵便局は、そもそも公的なニーズがあって始まったものです。経済が移り、国の情勢が変わることによってニーズが変わるということはあり得ます。だとしたら、これまで郵便局が担ってきた役割はもう失われたのかどうかということをまず議論すべきではないでしょうか。金融ビッグバンと必要もないような不良債権たたきによって、銀行はどんどんリストラを迫られて、銀行だけでもう店舗は二千以上でしたか、減っていると思います。農協まで入れればもっともっと減っているんではないかと思うんです。

 そういう中で、さらに郵便局までなくしてしまうような、そういうやり方が本当に国民生活のためになるのかどうか。高齢化を控えて大変だと、政府税調は増税案までこの時期に打ち出そうとなさっておりながら、そういう高齢化社会で、地方のお年寄りが年金を引き落とす場所がなくなるというようなことをほっておいてよろしいんでしょうか。

 そもそも、財投資金の原資となっていたわけですけれども、財投というのは、たとえいろいろ問題があったとしても、全部やめるべきものなのかどうか、それを考えるべきなんじゃないですか。その公的需要はどうなったのか、それを最初に議論していただいて、一つ一つの特殊法人なり財投機関なりを、きちんとその役割を見詰める。その役割が失われたんだったらばそこはやめる。これまでの役割の中で必要なものは残す。さらに新しいニーズが生じていないかどうか、公的に何をサービスすべきかということを御議論いただかなくてはならないんじゃないでしょうか。そうであるにもかかわらず、そういうことを一切やっていない。

 そもそも、郵貯、簡保の資金の三百五十兆は肥大であるとよくおっしゃるんですけれども、何をもって肥大とおっしゃるのか、私にはさっぱりわかりません。公的機関である郵便局なんですから、公的資金ニーズから比べて肥大であるかどうかという御議論があってしかるべきであるにもかかわらず、銀行の四メガと比べても大きいとか、大手の保険会社と比べても大きいとか、そんな御議論ばかりなんです。

 そもそも、郵便局というのは公的機関として存在しているんだという肝心なところをお忘れではないでしょうか。ですから、肥大かどうかということは、国の資金需要がどうなのかという点と比べて、余分に集まり過ぎているかどうかという観点しかあり得ないと私は思うんです。もしそれで肥大であったというんでしたらば、金利を下げればよろしいだけだと思っています。もし足りなかったら、金利を上げればいいんです。

 竹中大臣は、民活化するんだ、郵便局の資金を民活化するんだとおっしゃっているんですけれども、そもそも、国民は強制されて郵便局にお金を持っていっているわけではないんですね。やはり銀行は不安だとか、銀行が悪いんではなくて、政府が必要以上に金融不安をあおったからです。せっかく統合して安定したと言われていた四メガまでもつぶすと、わざわざ外国に行って発言なさって、国民の金融不安をかき立てたんじゃないですか。

 小泉政権以前にも不良債権はどんどん減っていたわけですよ。それなのに、あのあこぎなと言ったら、前田さん、ごめんなさい、銀行が残そうとしていた不良債権まで処理しろ、処理しろと迫ったわけじゃないですか。そのために日本経済に数々穴をあけていったということでありまして、激増させたものを少し減らしてきたからといって何の手柄にもならないというふうに私は思っております。

 そういう金融不安のある中で、保証されるのは同じ一千万円とはいえども、だけれども国が頼りというふうに国民が思ったということ自体を政府は反省すべきです。なぜ国民が三百五十兆も公的機関に資金を預けたのかということを金融大臣は反省すべきです。そういう反省がないままに、あたかも郵便局に罪があるかのようにおっしゃるわけですね。だけれども、違うじゃないですか。

 そもそも、財投に問題があるというのはもう国民周知の事実でございますけれども、その財投をいいかげんに運営してきたのは総務省なんですか、郵政省だったんですか。違いますね。財務省です。財務省の理財局が資金運用部という勘定にすべてを引き取って、それで特殊法人に資金を分配してきたんです。その見張り方が国会が甘かったという問題はあろうかと思います。

 しかし、聞くところによりますと、さまざまな特殊法人に、認可法人も含めてかもしれないですけれども、各省庁が予算をもらいに行くと、予算はつけてやろう、ついでに人材も派遣してあげるよと言いまして、財務とか経理に財務省から天下りが行く、他省庁の特殊法人にまで財務省から天下りが行くという現実があるわけです。道路公団で何年か前に天下り役人が汚職というような大きな事件がございましたけれども、だれだって建設省だと思うじゃないですか。ところが、大蔵省だったんですね。そういう、予算だけではなくて、財投資金まで自由に分配して、それをもって御自分たちの権限を拡大してきた、天下り先をふやしてきたという現実があるわけです。

 まずは、財投が非常に非効率だ、不透明だとおっしゃるんでしたらば、そこで何が行われてきたのか、だれがどういう意思決定をして、だれにどんな責任があるのかということを明確にしていただかなければ、財投改革にさえならないというふうに私は思っております。

 さらに、財投資金がある程度必要だということになったときに、今だって、国債は幾らになったとまるで自慢のように政府はおっしゃっているわけですけれども、しかし、国債を郵貯のお金、簡保のお金でたくさん持っていたりするわけですね。そういう公的資金の資金調達をどうするかという視点も重要だと思うんです。

 私、日本証券経済研究所に勤めておりまして、証券市場育成に微力ながら一生懸命頑張ってきたつもりなんですけれども、残念ながら、日本では、証券というのは好まれないんですね。そういう中で、国債だって、ほかの国に比べたら、国民が、個人が持つ割合は非常に低いわけです。まだ六十年前の、戦後、国債が紙になってしまったという記憶を残している方もおいでであれば、目の前のバブル破裂で証券は懲り懲りだ、しかも財務省が、金利が上がる金利が上がるというふうにあおっているわけじゃないですか。景気対策なんかやって国債を発行すると、国債の信頼が失われて、いつ金利が上がるかもしれない、裏返せば、いつ国債が暴落するかもしれない、そうやってあおられている中で、だれが国債なんか持とうというふうに思うでしょうか。

 そういう中で、郵便貯金というのは、私は、ある意味で第二国債だと思っているんです。証券を好まない、債券を好まない、株式を好まない日本人の中にあって、出し入れ自由な貯金という形態をとった国債だというふうに考えることができると思うんです。国債よりもある意味では出し入れ自由という便宜がついている分だけ割安の金利で資金調達できる、そういう国の公的資金調達の手段であるということを忘れてはならないと思うんです。国家がどれだけの公的資金を必要としているかということがあるとしたら、どういう資金調達方法が一番低利であるか、コストが低いかという観点も忘れてはいけないというふうに思うわけでございます。

 ですから、郵便局に関しましても、効率化を標榜なさる、改革を標榜なさる小泉政権であるならば、今現在ある二万四千七百の郵便局をもっと活用するということをお考えいただいてもいいと思うんです。せっかくある財産を解体してばらばらにして、価値をなくすようなことを考えるのが国民にとってプラス、本当の効率化とは私は思わないんです。

 私は、実はこういう提言をずっと何年も前からさせていただいておりまして、郵便局は利用の仕方があると。どういうことかというと、例えばボランティア貯金をやってほしい。今、郵便局がおやりになっているボランティア貯金というのは金利の一部を寄附するというものなんですけれども、そうではなくて、現実のボランティアを献血手帳のように積んでいくというものなんです。そうすると、何ができるかというと、エコマネー、地域マネーの全国ネットを張ることができるんです。そうすることによって、都会に出ていった息子や娘が御近所でボランティアした分を、その貯金をおろしてふるさとで年老いた両親が御近所の若者から世話を受けることができる、そういうネットワークとして郵便局を使えるわけでございます。

 さらには、もっと実質的に、ボランティアの窓口ということもできると思うんです。例えば、三国でオイル事件があった、それから阪神大震災、中越地震とか、その前には、鳥取西部地震もあったりしたわけですけれども、全国からボランティアが集まるんですね。どこへ行ったらいいのかわからない、どこへ行ったらば寝る場所があるのか、どこへ行ったらば御飯がもらえるのかということがわからないんですね。

 一部のマスコミは、そんなもの、手伝いに来たんだから自弁しろとおっしゃったんですけれども、なかなかそれは難しいわけでございまして、郵便局に行けば、どこそこのおうちが民泊させてくれますよ、どこそこでおふろに入れますよとか、そういうことを教えてもらえるというような、本当の意味でのボランティアの拠点というふうにすることもできると思うんですね。

 時間になってしまったので、とりあえずやめさせていただきます。どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)

二階委員長 ありがとうございました。

 次に、松原参考人にお願いいたします。

松原参考人 東洋大学の松原でございます。

 私の間に紺谷さんぐらいの拍手があるとうれしいんですけれども。

 そもそもの話から私もさせていただきますが、民営化は必要だとまず最初に申し上げたい。

 それは、今の日本郵政公社という形態を考えていただきたいんですが、日本の場合には、かつて三公社というのがございました。配付資料にちょっとまとめましたけれども、専売公社は大蔵省の専売局から、国鉄は運輸省から、それから電電公社は電気通信省からそれぞれ五十年以上前に公社になったわけであります。

 そこで、まず、その旧三公社がいずれも国営ではなかったです。国営じゃないために公社にしたわけであります。さらに、職員の身分も国家公務員ではなかったわけであります。その旧三公社でもだめなんだ、効率性と企業性を同時追求といったってだめだったんだ。だから、八五年から八七年にかけて旧三公社が、JT、それからJR、NTTと民営化されたわけです。

 その経験を踏まえますと、私のような経済政策を勉強してきた人間からすると、今回の日本郵政公社というのは、五十年前、半世紀以上前の公社よりももっと、端的に言うと、たちが悪い、質が悪いものでありまして、国営である。何のために国家行政組織の外に出したのか。働く人の身分が国家公務員である。そこで、本来の公企業の役割であるはずの公共性と企業性の両立というのはとても果たすことはできない。

 ですから、そもそも論で言うと、今の国営の公社のままでいいんだ、それを改革していけば済むんだということに対しては、その根本からしておかしいんだ、私はこのように認識しているわけであります。

 それから、分社化の問題についてお話しいたします。

 分社化というのがなぜ必要かというと、これは道路公団と違いまして、郵政三事業はいずれも民間と競合しています。民間と競合するということは、基本的にはイコールフッティングが実現されなければならない。

 その際に、民間に、信書、郵便、銀行業、それから保険業、これを同時に経営していいという法律がないわけであります。逆に、法律によって、それぞれの業法によって兼営は禁止されているわけですね。その中で郵政三事業が一体で経営している、それぞれが民業に対して圧迫している、この事実はやはり重大だと思っているわけでありまして、そうなると、民営化は必要であるし、かつ事業分割をまず行うことがどうしても不可欠だ、私はそのように考えているわけであります。

 問題は、そのような国営、三事業一体、それから国家公務員だということが事業展開にどのような悪影響を与えるか、ここであります。

 国家公務員だという身分、そのことによって郵政三事業それ自体の事業展開が大きく制約されていることは言うまでもないと思います。例えば、民間の宅配便は引っ越しをやっておりますが、さすがに国家公務員が引っ越しをやるわけにはいかないわけです。

 全国約二万五千の郵便局というものが、国営だから安心だという面が強調されていますけれども、実は、国営で国家公務員がやっているからこそそのネットワークが生かし切れていないんだ、ほかのことがやれるのにやれないんだ、こういうことであります。

 例えば、先ほど紺谷参考人が、ボランティア的な窓口を郵便局がやってもいいじゃないか、こういうお話がございました。しかし、御承知のように、国家公務員には服務規程がございます。私自身も、郵政三事業を何とか公的な形で生かせないかといろいろな議論をしてきたときに、例えば郵便配達の途中で道路の損壊箇所を見つけて報告するとか、それから福祉サービスとかいろいろなサービスがございましたけれども、それがすべて基本的には国家公務員の服務規程とのバトルになってしまって、本来やるべきサービスができていない。(発言する者あり)いや、これは、国家公務員が本来の仕事をやるべきものとして国からその仕事を任されているわけでありまして、いろいろな仕事をやろうというときに、民営的な方向での仕事をやるときにももちろん制約があるわけです。

 先ほど申し上げたように、引っ越しはできない、国家公務員が引っ越し屋をやるのはおかしい。それから、種々のボランティアサービスとかそのような福祉的なサービスをやるときにも、本来やるべき業務の時間を割いてやるという形になるときに、やはりすべてそのことが問題になるわけであります。

 そのような意味で、私は、現行の三事業一体で国家公務員が担うということをまず変えるということが基本的に大事だ、このように思っているわけであります。

 それから、次に触れなければいけないのが金融の問題であります。

 我が国では三百四、五十兆円のお金が郵貯、簡保を通して集められておりまして、その使い道が、二〇〇一年四月に財投改革は確かにございましたけれども、結果的には、財投改革の結果、強制預託が減っただけでありまして、その分を新たに設けられました財投債で補完されていることは御承知のとおりだと思います。

 よく一般的に、二〇〇一年四月で強制預託がなくなったんだから、もう郵貯、簡保は自由に運用しているとおっしゃる方がおりますけれども、そうではなくて、やはり従来と同じように、特殊法人、独立行政法人等にお金を流す仕組みをどうしてもつくらなければいけなかった。そのためにできたのが財投債でありますから、現状、二〇〇一年四月の財投改革を経た後も、依然として三百四十兆円のお金が官、パブリックの方に流れていることは、これは間違いないわけです。それで、そのお金をまた民間の方に戻していかなければならない、こういうことであります。

 それが国営の公社のままでは無理なのは、それは国が結果的に保証する形になっておりますから、これは現在の法律等で明記されておりますけれども、リスクがあるところに関しては運用できない仕組みになっているわけであります。ですから、国営の公社であって、国がその郵貯資金、簡保資金を保証している限りは、その流れて行く先は国債であり、財投債であり、地方債、そういうことを通して、国、地方、財投機関である特殊法人、独立行政法人に流れていかざるを得ないわけであります。

 そのお金の流れをやはり民間に振り向けていく必要がある、私はこのように考えておりまして、では、どのような形にしたら民間に移っていくかというと、これは最終的に、郵貯、簡保に対する政府のコントロールを外すしかない、このように思っております。

 政府のコントロールを外すということはどういうことかというと、二〇〇七年四月段階での民営化では不十分です。二〇〇七年四月の民営化は、国が出資した持ち株会社の下に郵貯、簡保が入っているわけでありますから、その段階では政府の意思がきく。ですから、二〇〇七年四月段階は、私は、郵貯、簡保は一種の政府系金融機関のような立場であって、そのままであれば、今までどおりに、政府が、国債を買ってほしい、あるいは手持ち国債を売らないでほしいと言ったときには売れなくなってしまう。そうであると、結果的に、二〇〇七年四月の改革でも、三百四十兆円のお金が依然として民から集めて官に流れ続けるというその流れは変わらない、こういうことであります。

 そうなりますと、最終的にその三百四十兆円のお金を民間に流すためには、郵貯、簡保の完全民営化が不可欠である。

 今の法律では、修正案の後も、二〇一七年三月までにすべての株を売却する。それから、それまで銀行業法それから保険業法等の特例として与えられていた地位も完全売却とともに終わる。ということは、二〇一七年三月までに郵貯と簡保は完全な民間銀行になる、こういうことであります。その点が今回の修正案でも担保されている点は私は評価したい、このように思っているわけであります。

 それからもう一つ、触れなければいけないのは、郵貯、簡保の規模の問題であります。

 例えば、民主党の案を見ますと、郵貯、簡保の規模を現行の経営形態のままで減らしていく、こういうような話が出ております。それから……(発言する者あり)そのような考えを聞いております。それから……(発言する者あり)

二階委員長 御静粛に願います。

松原参考人 それから、郵貯、簡保の規模を減らすという案に対しては私はおかしいと思っておりまして、どうやったら郵貯、簡保が減るかといいますと、それは一千万の規模を減らせばいい、こういう話になっているわけです。そうすると、事実上、地方の郵便局しか金融機関を持たない人たちにとっては、一千万の今まで預金をする権利が五百万になり三百万になってしまう。それは、結局、ネットワークを生かす、維持するということでなくて、地方の利便性を減らすことにもつながると私は考えているわけであります。

 ですから、郵貯、簡保の規模を減らしていって現行のままでいいというよりは、私は、その規模が結果的に減るかどうかはマーケットの問題でありますけれども、対等な競争条件を持って民営化していく、ひいては完全民営化していくということが一番適切ではないか、このように思っているわけであります。

 それから、今回の修正案に関しまして、先ほど申しましたように、二〇一七年の三月の末で全株を売却して、その段階で、郵貯、簡保に関する特例の、銀行業法それから保険業法の規定を変える。ですから、二〇一七年三月三十一日の段階で郵貯と簡保は完全な民間銀行それから民間の保険会社、生保になる、こういうことであります。

 しかし、今回の修正案で、その完全売却の後にもう一度株の購入が認められる、こういうことになってまいりました。この点に関しましては、私は若干の問題が残ると思っておりまして、要するに、二〇一七年三月末の段階で、郵貯と簡保はまさにみずほ銀行等と全く並ぶ民間の金融機関になるわけですから、その中の特定の郵貯銀行と郵便保険会社の株を、政府が株を持つ持ち株会社が買うということは不自然だ、このように思っているわけでありますし、それから、これは今から十二年先の話でありまして、恐らくそのような時期にはそんなとんでもないことを、持ち株会社がもう一度買い戻すといったようなことを許さないような国会の勢力とか世論が私は形成されていると確信しているわけであります。

 それでもう一つ、やはりここで問題点を申し上げたいのは、私は、二〇一七年で郵貯、簡保を完全民営化するというところを含めまして、基本的な方向性としては、今回国会に提出されている法案に関しまして支持する立場でありますが、幾つか問題点を最後に指摘させていただきたいと思います。

 一つは、郵便局を全国でネットワークとして維持する、そのこと自体は、二〇〇三年十月、経済財政諮問会議で諮られました当初の五原則の中で明記されているわけでありまして、そのこと自体は私は重要だと思っておりますが、しかし問題だと思いますのは、現在の郵便局を特定局制度という非常に高コストの体質のまま維持するということであれば、それは筋違いだろう。

 現在の郵便局は、御承知のように特定局と民間に業務委託型の簡易局がございまして、簡易局の方は低コストなわけであります。しかし、特定局と簡易局の間でどのような業務の差があるかと申しますと、それは内容証明の受け付けぐらいであります。そうであれば、郵便局を維持するという議論と、今の特定局みたいな形での郵便局をそのまま維持するという議論は、私は別だと思っておりまして、郵便局の数を結果的に維持するということと、その中の高コスト構造を変えて維持するということとの間には相当距離があって、現在の法案の中にはそのことが明確に示されていない点が不満であります。

 それからもう一点、信書の問題でありまして、信書便法は、民間も信書を配達していいということで国会で決まった法律でありますが、現実には全国配達の民間事業者が入れない状態であります。そのような信書便法は、当然、私は民営化と同時に、民営化というのは公社が郵便事業会社に変わる、株式会社に変わるわけですから、より対等な競争条件がつくられなければいけないのに、残念ながら、信書便法の高い参入障壁を変えるような法律改正の視点が今回の法案の中に出ていない点、これが私としては不満な点として残るということであります。

 以上であります。どうもありがとうございました。(拍手)

二階委員長 ありがとうございました。

 なお、この際、委員各位には、参考人の陳述に際しては、できるだけ御静粛にお願いいたします。

 なお、参考人の皆様には、他の参考人の意見陳述に対し、御批判等は御遠慮願いたく存じます。

 次に、山崎参考人にお願いいたします。

山崎参考人 郵政産業労働組合、郵産労委員長の山崎清でございます。よろしくお願いします。

 私は、現役の郵便屋さんで、郵便配達をしております。きょうは、年休をとってこの場所に来ております。労働組合を代表して、郵政民営化法案に対して反対の立場で意見を申し上げたいと思います。

 私は、高校を卒業すると同時に、郵政省の試験に合格して郵便局の職員になり、以来、郵便配達の仕事を三十八年間行ってきました。地域の皆さんと日々顔を合わせながら仕事をしております。

 この間、新潟の地震、中越地震で地域住民が避難を余儀なくされた際に、民間の宅配業者がサービスを停止する中で、郵便局が避難した住民の一人一人に郵便を配達してきました。そうした郵便配達ができるのは、私たちの仕事が地域と密接に結びついた仕事だと思うからであります。

 郵便配達だけではありません。郵便貯金や簡易保険も同じです。このことが典型的に示されたのは、阪神・淡路大震災のときです。震災で家がぺちゃんこになり、通帳や印鑑が持ち出せない、あるいは焼けてしまい身分を証明するものが何もないという方が大勢いらっしゃいました。そういう方々がみんな郵便局に駆けつけてこられました。このとき実施されたのが、通帳や印鑑や身分証明するものがなくても、だれか保証人を立てれば現金二十万円に限りお支払いを行うという非常払い措置です。地域の皆さんと顔がつながっているからこそできた措置だと考えています。

 郵便局を利用していてよかった、郵便局でないとこんなにすぐお金を出してくれないよねとの声が寄せられました。神戸のど真ん中で震災二日目から、神戸中央郵便局は、ATMを何時間か稼働させ、窓口をあけて住民の生活を守ってきたのです。

 神戸市内には大きな銀行もたくさんありますが、市内のビルはあちこち崩れたり倒壊したりしていました。郵便局も半壊したり全壊したりしています。店舗数の少ない銀行は、近くの支店が崩れているともうほとんど利用できません。郵便局は、近くのどこかの郵便局が利用できました。被災者が仮設住宅に移られても、どこへ行っても郵便局は利用できました。

 私たちの組合員も、この震災の中で、みずから被災しながら、避難先の遠い町から出勤をして仕事をしていましたが、できるだけのことをして役立ちたいという気持ちだったと話していました。私たちは公務員なんだな、そういう自覚と誇りを持ちました。

 私たちが行っている事業の基本的性格は、独立採算で、みずからの事業収入で自分たちの給料を初めとする費用を賄うものですが、公共の事業です。その特徴は、最近はユニバーサルサービスという言葉で表現される機会がふえていますが、すべての国民に公平に郵便や貯金、保険という生活に不可欠なサービスを行うことです。

 そのことは、私たちの事業の目的を示した郵便法、郵便貯金法、簡易保険法に書かれています。例えば、郵便貯金法は、その第一条で「郵便貯金を簡易で確実な貯蓄の手段としてあまねく公平に利用させることによつて、国民の経済生活の安定を図り、その福祉を増進することを目的とする。」としています。今回の郵政民営化は、民間にできることは民間にと言われておりますが、最初に述べた震災など災害時への対応を初め、法律に書かれている国民にあまねく公平に利用されるようにサービスを提供するということは、民間にはできません。これは、国会でも、事実で明らかにされていると思います。

 例えば、過疎地を含めて、全国どこに住んでいても、郵便、貯金、保険のサービスを受けられる郵便局があります。ところが、銀行の店舗がない市町村は五百五十に上ると言われています。そして、民間の銀行だけでなく、農協も含めて、金融機関の店舗はこの六年間で七千六百一も減らしていると言われています。

 郵便局のATMは、お年寄りや障害者にも使いやすいように工夫がされ、すべてのATMが視覚障害者に対応した仕様になっているのに対して、銀行のATMでは、そうした対応をしているATMは一三%にすぎないというふうに私ども伺っています。郵便貯金は、もちろん口座維持手数料も取っておりません。

 貯金や保険サービスは、もちろん民間でもやっています。しかし、日本のどこに住んでいても、貯金の額が少なくても、障害があっても、差別なく公平に受けられる貯金サービスを提供し、職業による差別なく加入できる保険を提供しているのは、郵便貯金と簡易保険です。こうした公的金融サービスを行っている機関がなく、すべてを民間に任せている先進国の中では、金融口座を持てない国民が数百万人も存在しており、社会問題になっています。これが現実だと思います。

 民間にできることは民間にというのは、国民をだましていると私は考えています。事実に基づかない、いわばそうしたお題目で郵便貯金法や簡易保険法を廃止して、三事業をばらばらにして、これまで三事業一体で成り立たせていた郵便局ネットワークをずたずたにし、差別なく公平に行われていたサービスをぼろぼろにしていく民営化法案は、断じて認められません。

 私たちは、このことを国民に伝えるために、ことし二月下旬から四月十五日まで、全国四十七都道府県キャラバン宣伝を行いました。私も、職場の仲間の協力で、年休をとって、四国四県と東北三県、東海二県、東京、合わせて十都県を回ってまいりました。

 四国では、高知県の室戸地方を回っていたとき、郵政民営化反対の宣伝に会えてよかった、テレビや新聞はみんな民営化賛成だ、あなたたち、もっと早く来なきゃいけないよと家から飛び出してきて訴えた主婦の方。徳島のある市議会議長と懇談したとき、その議長さんは、小泉さんの郵政民営化は一体だれのための何のための郵政民営化かさっぱりわからない、結局、国民の資産をハゲタカファンドに売り渡すものだと言っていました。鹿児島県のある議会の議長さんは、政治的立場が違うけれども、気持ちは皆さんと同じだ、頑張ってくれと激励されました。青森県の十和田市では、あんたら、東京さ帰って国会議員の皆さんに郵政民営化反対だと訴えてくれ、こう言ってきた御老人。そして三沢市では、御婦人が、キャラバンに会えてよかった、郵政民営化は絶対だめだ、つぶしてくれと訴えられました。

 地方に行けば行くほど、郵便局への信頼と郵政民営化に対する怒りが強い、このことを実感いたしました。

 キャラバンではビラを配り、署名もとりましたが、郵便局というと、どこの地方、地域でもビラの受け取りも非常によく、署名もよく集まり、キャラバン隊が驚くほどの反応を示しました。四十七都道府県議会、そしてほとんどすべての市町村議会で、郵政民営化に反対、あるいは懸念や不安を表明する意見書が採択されています。私たちは、全国キャラバンを通じて、地域住民の声がまさにこの意見書に反映しているということを実感しています。こうした声を無視して郵政民営化を行うことは、日本の民主主義を破壊するものと言わなければならないというふうに考えます。

 最後に、働く現場から見た郵政公社の実態について述べさせていただきます。

 国会の審議で、公社の経営が成功しているかのような議論が行われていますが、強い違和感を持っています。公社になって、これまで一万七千人の人員削減、リストラが行われてまいりました。現場の実態に見合わないリストラで、公社になってから大きなサービス低下が進行しています。

 これは総務省の資料にもあらわれています。ことしの予算委員会に提出された、普通郵便局に寄せられた市民からの苦情件数という省の資料では、郵政事業庁であった〇二年度、誤配達の苦情が全国で二十三万四千八百二十件だったものが、郵政公社になった〇三年度には二十六万五千八百九件と一三%増加し、不着や遅延も含めた全体の苦情数も四十一万三千四百三十一件から四十三万七千七百六十五件へと六%増加しています。

 しかも、こうしたサービスも労働者の犠牲で辛うじて成り立っているというのが実情です。犯罪である不払い労働、いわゆるサービス残業で支えられているのです。

 郵政公社が昨年十月から十二月に行ったサービス残業調査では、わずか三カ月の期間、しかも当局ににらまれながらの自主申告で、五万七千人、三十二億円のサービス残業の実態が明らかになりました。もちろん十月から突然サービス残業が始まったわけでもなく、申告できなかったサービス残業を含めれば、年間通して軽く百億円を超すサービス残業が行われていることは明らかです。そうした法律違反の不払い労働で郵便局のサービスは支えられているのです。

 それだけではありません。そうした数字にあらわれない過酷な労働で、次々と労働者が在職死亡、私たちは過労死だというふうに思っています。この間、公社が鳴り物入りで推進しているトヨタ方式、JPS方式の全国モデル局の越谷郵便局では、三十六歳の職員が在職死し、遺族がサービス残業と公務災害の訴えを行いました。十時間、四夜連続の夜間勤務を含む過酷な深夜勤務、私たちはフカヤキンと呼んでいますけれども、この導入で、東京中央郵便局では、その勤務に従事していた労働者が導入一年で二人も在職死しています。自殺する労働者も少なくありません。公社となった十五年度にも三十八人が自殺しています。

 不払い労働でサービスを支え、過労死や自殺まで追い込んでいる。その背景には、大事故を起こしたJR西で問題となった日勤教育まがいのことも郵便局で横行しています。

 また、東北の岩手県のある郵便局では、営業ノルマを達成するために、空き箱ゆうパックといって、自宅に中身の入っていないゆうパックを送ることが行われています。青森県のある局でも、四百五十円支払わせて、ゆうパックのラベルのバーコードを入力して、品物は何も渡さない、それで一個と換算をする、こうしたことで職員が自腹を切らされ、悩み苦しんでいます。

 こうした労働現場の無法状態は、民間と既にイコールフッティングとなっています。公社でも民間でも、労働者の基本的権利は守られなければならないと考えます。

 私たちは、国民とともに、郵政民営化には反対すると同時に、公社の労働条件を改善し、公社のサービスが改善するようにこれからも努力をするものです。このことを申し上げ、労働組合を代表しての意見とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

二階委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

二階委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西田猛君。

西田委員 自由民主党の西田猛でございます。

 きょうは、四人の参考人におかれましては、公私何かとお忙しい中、あるいは年休をおとりになられたような中でわざわざお越しをいただき、貴重な御意見を賜りましたことに心から御礼を申し上げ、敬意を表したいと存じております。それぞれの御自身の良識と経験に基づいてしかるべき意見の陳述をいただいたわけでございますので、私たちは、静ひつな中に全幅の敬意を持って拝聴させていただいたわけでございます。

 さて、そのような中で、まず、私は、今回の法案についてはネーミングもよくないというふうに考えております。郵政や郵便局が問題なのではないと考えております。むしろ、名前をつけるとすれば、国民資産有効活用法とかあるいは財政資金活用適化法とか、こういうふうな観点が必要だと思うんですね。その観点では、御意見を陳述されました四名の方の意見に大きな差異はない、私どもと問題意識を同じくしていただいているというふうに考えております。

 順番でお聞きをしたいのですが、この法案ないしいろいろの個々の特別委員会で議論されていることは、何も郵便局あるいは郵便事業、制度にひとり向けられているものではありません。むしろ、きょう全国銀行協会の前田会長おいででございますけれども、これは銀行を含めた日本の資本市場あるいは金融市場そのものに向けられた問題なのであろうというふうに考えているわけでございます。

 何となれば、郵貯も、入り口のところで、リスクのない、政府保証のあった、インタレストを生む機関であったわけですけれども、銀行も、ことしの四月からようやくペイオフが完全実施されましたが、それまではいろいろな形で政府が全額保証しということでございました。あるいは旧大蔵省の、いわゆるコンボイポリシーといいますか、護送船団方式があって、どこにお店を置くかということぐらいしか競争ができないというふうな状況が長く続いたのでございまして、何らそこに、預金者あるいは貯金者の意識において、預けたらリスクはないけれども利子がついてくるという思いは変わらなかったのだというふうに思っております。

 特に銀行におかれては、融資の面においても、十分な担保をとって融資をすれば、それはもう回収可能なんだ、土地の値段は上がっていくだろう、それであれば安心だという意識がおありだったので、バブルを招き、またかつ、逆に、バブルの崩壊の後、なかなか今日まで銀行業界も苦吟しておられるのではないかなというふうに考えております。

 やや、参考人に対しまして、失礼ながら辛口のことを申し上げましたけれども、そのような中で、今般、郵政事業の中における郵便貯金、そして簡易保険などなどが民営化という方向に向かっております。そういう中で、銀行とされましても、今後の新しい日本の資本市場あるいは経済社会全体におけるビジネスモデルなり、これからの国民社会あるいは日本の経済社会においてどういうビジネスの形態を展開していくべきであるというふうにお考えかをまずお話しいただきたいと存じます。

前田参考人 みずほの前田でございます。

 ただいま先生からの御質問、新しいビジネスモデルをどう持っていくかということでございますが、私ども、つい先日、四月に、私どものグループは三つの大きなキーをつけたグループに再編したいということで、グローバルというのを頭につけまして、グローバルリテール、グローバルコーポレート、それからグローバルアセット・アンド・ウエルスマネジメント、そういうグループに再編することにいたしました。

 この思いは、お客様がそれぞれ違いますので、どのマーケットにおきましても、我々は三つの銀行を再編統合いたしましたので、その統合してコストを下げた効果をお客様にお返しする、ベストの状態でお返しするというのが私ども経営者の務めだと思います。

 そういう意味で、そういうビジネスモデルに組みかえて、かつ、全体の時価総額を上げ、格付も上げて、先生がおっしゃったように、金融機関の信頼度をさらに高めたい、これが私どもの新しいビジネスモデルでございます。

 以上でございます。

西田委員 続けて前田参考人にお聞きしたいのですが、これから郵便貯金銀行というものができます。あるいは郵便保険株式会社ができて、そして郵便局株式会社のいわゆる窓口ネットワークが他の金融機関の業務の受託もできるということになった場合、もちろん個々の銀行の経営判断になると思いますけれども、あるいは、みずほフィナンシャルグループの総帥とされては、このネットワークに業務を委託してみようとお思いになられるかどうかをちょっとお話しいただけますでしょうか。

前田参考人 すべてが新しい形にでき上がった後、どういう形で民営化した後の郵貯銀行と、もしくはほかの機能を活用するかというのはこれからでございますが、既に、例えばATMにつきましては、民間の金融機関、かなりの金融機関がネットワークの提携をいたしております、支払いの提携をやっておりますので、ネットワークを、ある意味では郵貯のネットワークというのは国民資産でありますので、それを活用するという意味では既にそういうのが始まっていると考えればいいんだと思います。

 それ以外の業務を委託するかどうかというのは、これは個々の銀行が経営判断でお決めになることだと思います。店舗のネットワークが足りない場合にお互いに活用する可能性もありますし、足りている場合には自前で十分だということだと思います。

西田委員 ありがとうございます。

 続いて紺谷参考人にお伺いしたいのですけれども、参考人のお話を聞いておりましたらば、郵政民営化に賛成されるんだなというふうに私は思ったのですけれども、おっしゃっている、まず、財務省、旧大蔵省原罪論ないし、それから出口の改革が必要だというところ、そういうところは私は大きく賛同させていただけるところだというふうに考えております。

 これは、私どもの、長年政権にあり、これからもあり続けるでありましょう自由民主党の先輩方も、やはりいろいろな意味で反省しなければいけないところがあったのだというふうに思うのですけれども、財政投融資の資金が運用部に全額預託されて、それが、言ってみれば旧大蔵省の理財局なりの大きな意思が働いて配分されていたというところに、やはり民間の効率性はなかなか、犠牲にされてきたというところは否めないことだというふうに私は考えております。

 したがって、今、紺谷参考人がおっしゃったようなことを踏まえて、私はさらに御意見を伺いたいのは、でありましたらば、今後、郵貯の資金なりあるいは簡保の資金なりと、それから必要な財政資金の配分、そういうものの関連性はどのように制度としてつくっていったらいいというふうにお考えでしょうか。

紺谷参考人 まず最初に、私の意見が民営化賛成論のように聞こえるとしたら大きな誤解でございます。

 財務省は最大の問題の元凶であるというふうに私は思っておりますけれども、もしも今度の法案のとおりに巨大な銀行ができ、巨大な保険会社ができましたらば、それは金融庁の監督下に入るわけでございます。金融庁の大きな権限がさらに広がる。しかも、天下り先がふえるかもしれないということでありまして、大変不思議なことなんですけれども、金融庁はペイオフの実施だと。ペイオフの実施だというのは、国民が銀行をきちんと選ばずにどこの銀行にでもお金を持っていくから、だめな銀行がいつまでも温存されて日本の金融市場がよくならない、だから、国民は銀行をちゃんと自分で選びなさい、ディスクロージャーしてあげているんだから、それで選びなさいとおっしゃっているわけですね。

 しかし、公認会計士だってだまされるような粉飾決算もあるとお聞きしておりますのに、家庭の奥さんやサラリーマンや中小企業の経営者に銀行が選べるかどうかお考えいただきたいんですね。

 そもそも、そんなに簡単に銀行を選べるんでしたらば、なぜ大蔵省も日銀も、金融庁もですけれども、金融不安を未然に防げなかったんでしょうか。御自分たちの行政責任を自己責任だといって国民に放てきしながら、あるいは御自分たちの政策が間違っていたために金融機関の経営が怪しくなっているにもかかわらず経営責任だとおっしゃっておきながら、なぜ金融庁の予算と人員はふえるんでしょうか。予算委員会じゃないのに余計なことを申しまして大変申しわけないんですけれども。

 さらに、御質問の二番目は何でしたっけ。(西田委員「制度ですね」と呼ぶ)制度ですか。財政の話ですか。

 財政に関しましては、多分私はほかの方と意見が違うと思います。財政赤字が巨額だというんですけれども、それを増税や緊縮財政で何とかできるというふうには全く思っておりません。何となれば、不況の最中の増税や緊縮財政で財政再建に成功した国は一つもないからでございます。まずは、財政赤字の巨額になったその原因は何なのかという原因分析をおやりいただきたいんですね。原因分析もしないで何で対策が決められるのか。

 どういう原因かと考えますと、財務省が世論誘導しているように、公共事業ではないんです。公共事業は九八年以降激減しておりまして、一方、財政赤字はそれ以降激増しているという実態がございますね。さらに、景気対策のせいであると。しかし、景気対策のために使った国債は六十兆足らず、それなのに三百兆もそれ以上も巨額の赤字国債が発行されてきた、純増で出てきたということを考えてみますと、景気対策とか公共事業は財政赤字の積み増しに何ら、関係はないとは言えませんけれども、少なくとも重大な要因ではないということは明らかなわけでございます。

 では、何なのだといいますと、税収不足なんですね。税収が激減してきたということです。税収不足を補うために国債を出し、その国債の金利を払うためにまた国債を出しということが財政赤字の最大要因だったわけですよ。

 だとしたら、景気対策をおやりいただきたい。小渕政権の巨額のあの景気対策の後には財政は改善しているんですね、一度。それから、一昨年から昨年にかけまして輸出がふえた。これも一種の神様が下すった景気対策みたいなものだったんですけれども、事業の増加によって収入がふえているということがあるわけです。必要なのは景気対策なんだということでありまして、そういう意味では、医療保険であれ年金であれ、所得をふやすというのが一番の最大の財政の早道であるというふうに私は思っているんですね。

 どうしてか。保険料率なんか上げなくたって、国民の所得がふえれば掛金収入はふえるわけですよ。年金の積立金の運用利回りだってよくなっていくわけですね。そういう方策をお考えいただくのが一番かなというふうに思っております。

 もうやめた方がいいですか。はい、では、とりあえずやめます。財政赤字に関しては、ほかの人と違う意見を持っておりますということでございます。

西田委員 ありがとうございました。

 次に、松原参考人にお伺いしたいのですが、先ほど他の参考人の方もお話しになりまして、その入り口のところで、郵貯、簡保の資金とともに年金というものも、これもやはり忘れることはできないと思います。

 ただ、年金は、もちろん運用してそして利回りも生ぜしめるものではありますけれども、基本的な年金の問題構造は負担と給付をどうするのかということでありますので、そういう意味では郵貯、簡保と若干質は違っているんだと私は考えているんです。

 そのように私は考えておりますけれども、そのような中で、松原参考人は、入り口としての年金の問題をどのように考えておられるのかということが一つと、それからやはり、郵貯のように、もしも今後も政府の関与が続いた場合、入り口において、リスクがないけれどもインタレスト、利子を生むのだというお金が今後もあり得るということについてどのようにお考えになられるか、お話しいただきたいと思います。

松原参考人 まず、入り口で、いわゆる財投に入るお金が郵貯、それから簡保は財投協力でした、それから御指摘のような年金がございまして、今その入り口の改革については郵貯、簡保のみが行われていて、年金に関しては、恐らくこれから全体の制度の中でその運用の仕方等々が議論されていくんだと思います。

 私は、郵貯と簡保が完全民営化するのと同じような形で年金資金というものが完全に自由に運用されるべきものかというと、そこは、やはりある程度はリスクを勘案した範囲での運用が必要だと。ですから、全く同じような意味で、年金も運用に関して完全民営化しろという立場には立っておりません。しかし、それが、透明性が高くて、かつ、なるべく国民にとって合理的な方法だというような形は必要だと思っています。しかし、郵貯、簡保の二〇一七年のような完全民営化とは違う質になるんじゃないかと。

 そのときは、結果的に、今の財投的なものを完全になくすのか、それとも、例えば数十兆とかそのぐらいの規模で何らかの公的な資金の流れを残すのかということについては議論の余地はある、私はこのような立場でございます。

 それからもう一点、リスクとインタレストの問題でございます。

 実は、私はこの点、大変重要だと思っておりまして、現在は、郵貯はほかの金融機関と同様でありまして、異常な低金利のもとで調達コストがほぼゼロに近い状態になっている。その調達した資金を国債中心に運用していて、そのギャップ、利ざやを稼げているわけであります。

 しかし、国債的に見ますと、実は三年から五年物の定期性預金の金利と国債金利というものは実は大体同じになっていくのでありまして、そうすると、今の郵貯のような、定額郵貯の金利を国債運用で支払うということは、私はビジネスモデルとして非常に難しくなってくるんじゃないかと。

 ですから、今の御質問に対するお答えとしては、今のような形でリスクをとらずにインタレストを出せているというような状況は長くは続かない。逆に言えば、そのためにはやはり運用の先を広げる、あるいは直接融資するといったような一般銀行のような形の資金の運用の仕方を考えなければ、ビジネスモデルとしても成立しないんじゃないか。その意味で、私は、完全民営化の方向性が必要だと考えております。

西田委員 続けて、松原参考人にもう一問お聞きしたいのですけれども、特殊法人ということが問題になります。それで、これは紺谷参考人の方からも事細かに御懇篤な御説明がございましたけれども、特殊法人への財政投融資を通じた資金供与が不良債権化して、非常に大きな、潜在的なと申しますか、もうこれは顕在化していると思いますけれども、国民負担になっているのではないかというふうな議論があって、そのような事実も明らかになっております。この辺について松原参考人はいかがお考えでございましょうか。

松原参考人 特殊法人と独立行政法人が財投機関として郵貯、簡保それから年金の資金の受け手となっておりました。それで、それぞれの機関が受け取った公的資金が明確に返せるのかどうかということに関しては、実は不明確であります。事実上不良債権化を目の前ではしていないのは、全額返せているわけであります。しかし、返せるようにお金を貸しているような機関が非常に多くあることも事実でありまして、郵貯、簡保、年金の資金が流れた財投機関が実際どのような会計の状況にあるのかということは、私はこの分野をずっと勉強してまいりましたが、なかなかはっきりしてこない。ようやく例えば道路公団が、民営化の議論の中でそのようなところの数字が明らかになってきたわけであります。

 しかし、その一方で、特殊法人等情報公開法等が整備されておりますから、徐々にその中身が明らかになってくる。それと同時に、やはりそういうところにお金をほぼ無条件で流し続けてきた、あるいは、今は財投債を通して流し続けている現行制度に対する問題点というのは、いずれ明確に浮き上がってくる。ずばりどの程度が不良債権化しているのかは非常に難しいんですが、それは百兆ぐらいじゃないかとか、あるいは二百兆を超えているんじゃないかとかいういろいろな数字がございますが、私は今の段階でははっきり申し上げられませんが、相当多くて、ある日、そのお金が税金の負担によって賄われる。かつて我々は、国鉄のときに、旧国鉄が三十七兆のうち最終的に返せなかった二十兆円についてはやはり国民負担でそこを担保したわけでありますから、その第二、第三の国鉄が今の財投機関の中に相当多数ありそうだという実感は持っております。

西田委員 ありがとうございます。

 では、続きまして、山崎参考人にお伺いしたいのでございますけれども、大変琴線に触れるようなお話を伺いまして動かされた次第でございます。私も出身が阪神・淡路方面でございますので、そのときの御苦労話を聞きまして、大変心から敬意を表したいと存じております。

 その中で一点、お話の中で、そのような活動をされる、そして、ああ、自分は公務員だったんだなという感慨をお持ちになったというお話がございまして、大変心情を伺えたと思っておるんですけれども、これは、公務員でなくてもやはりこういうことはやっていただけるものだと、私どもは国民として、一人一人の地域に住んでいる人間としては信じたいのでございますけれども、そのあたり、いかがでございましょうか。

山崎参考人 私どもの組合員も実際に被災されて、先ほど申し上げましたように努力したんですけれども、やはり公務員、国民の皆さんに奉仕をする、そういう立場があるからこそ、大変な状況でもできるんだなと思っています。

 事実、阪神大震災でも、民間の宅配や銀行関係は店舗を休んでいる、配達もしないという状況がありましたし、本当に、やはり公務員として国民の皆さんに奉仕をするという立場で努力するからこそ、そういう仕事ができるんだなというふうに認識しています。

西田委員 ありがとうございました。

 それでは、まだまだお聞きしたいのでありまして、前田参考人にまた改めてお聞きしたいのですが、若干細かいことですが、先ほど窓口と銀行の業務のお話をお聞きいたしましたが、今の法案の中の説明によりますと、いわゆる今郵便局が持っているネットワーク、ATMネットワークシステム、これが、郵便局株式会社になったときには、実はATMシステムを保有するのは郵便貯金銀行だという今何らかの形の制度設計がなされているんですよ。もちろん、確たることは承継計画の中でこれから詰めていくわけですけれども。

 そうなると、例えば銀行が経営判断の上で郵便局株式会社に業務を委託したときに、郵便貯金銀行が、いや、ATMを扱ってもらったら困るというふうなことになったら、これはもうほとんど業務を委託する意味がなくなってくるわけですので、ATMシステムの所有は那辺にあったらいいのかということをどのようにお考えになられますか。少し細かいことで恐縮なんですけれども。

前田参考人 大変難しい御質問でございますが、私ども民間の金融機関はほとんどが郵貯とATM提携していますけれども、ATM提携がないとサービスが全く不足しているかということはないと思います。ただ、利便性という観点から、二万以上の支店をお持ちの郵貯と提携しているということでございますので、その所有の形態が四つのうち郵貯銀行でなくなったかどうかというのは、我々から見ると余り、今は既に提携していますので、提携関係は恐らく承継されるのではないかと思います。承継されない、もしくはどちらかに移ると、そちらの方ともう一回お願いするというようなことになるのではないでしょうか。

西田委員 ありがとうございました。

 続けて、やはりまた郵便局株式会社のことをお聞きしたいのですけれども、これは本当に明治以来の国民の資産であり、また郵便という制度そのものが本当に日本の誇るべき文化だと考えておりまして、このネットワークを活用していかない手はないわけでございます。

 そういう意味では、例えば、私たちは今、企業統治に関する委員会というのが自民党の総合経済調査会の中で甘利委員長のもとで行われているんですけれども、そこで昨今話題になりましたライブドアの堀江氏に御意見を聞きましたところ、世間は、なぜ自分がニッポン放送の株式を買おうと思ったかというと、例えば放送と通信の融合を目指したからだと皆思っていらっしゃると思うけれども、実はそうではないんだと。何が目的だったかといえば、ニッポン放送が持っているお客さんが欲しかったんだ、ニッポン放送についているお客さんが欲しかったから私はニッポン放送を買いたかったんだというふうなことをおっしゃったんですね。

 これは郵便局ネットワークについても言えることだと思うんですね。もうすばらしいお客様、地域の人たちがこの局にはいらっしゃるわけでございまして、これは、民営化される後に十分にいろいろな業態の人たちがこれを使っていかざるべけんやというふうに私は考えているのですけれども、この点について。例えば、先ほど紺谷参考人が、これだけ郵貯の残高が膨れ上がってきたことについて反省がないというふうなお話もございまして、なるほど、私もそうかもしれないと思ったのですけれども、そのあたりの郵便局ネットワークの活用と、それから、なぜこれだけ郵便貯金残高が膨れ上がってきたのかということについて、あわせて簡潔にお話しいただけますでしょうか。

紺谷参考人 なぜ膨れ上がってきたのかですか。それは、やはり国民が不安だからでございます。

 民営化して預金保険料を払わせるというのは、社会的なコストを上げることだと私は思っています。何となれば、郵便局が公社であって、国の機関であって、そうすれば国の信用を使っている。国の信用の使用料はただなんですね。だからです。そうであるにもかかわらず、預金保険料を民営化された郵便局から取るということは、それは結果的に利用者にコストとして転嫁されていくわけでございますから、社会的なコストをふやしていくというだけなんです。なぜ、国家の信用を無料で使えるのに使わないんですかということなんですね。

 ただし、銀行から預金がどんどん九八年以降郵便貯金の方に移ってきたわけでございますけれども、それはやはり金融不安が大きかったということです。ですから、今の状態がこれからもずっと続くかどうかわかりませんけれども、先ほども申し上げましたように、公的資金需要はどれほどあるのかと。それを資金調達するに当たって、どういう調達方法が最も国にとってコストが安いのかということをお考えいただいた上で、余分な資金が集まったらば金利を下げるということをおやりいただいて、金利で調整するというようなやり方があるんですよと。それが一番いい方法ではないかと私は思っていますということでございます。

西田委員 ありがとうございました。

 それから、これはまた前田参考人と松原参考人にお伺いしたいのですが、前田参考人は、十年という極めて長い移行期間というお話を二度されまして、この十年というのはそのように極めて長いというふうな御認識でありましょうか。

前田参考人 十年というのは大変長い期間だと思います。ただ、ここまで大きくなった郵便貯金それから簡易保険の、これをソフトランディングさせるためにはある程度必要な期間だと私も認識しておりますので、そのために、その期間に、その後、十年後に無事にいい形で民営化ができるような形でぜひ先生方にウオッチしていただきたいというのが趣旨でございまして、短くした方が早く解決する、そういう趣旨ではございません。

 もともと私の意見は、大きくなり過ぎたものが実は問題でして、郵貯の残高が例えば全部足して十兆円ぐらいの話ですと、多分こんな大議論にはならないんだと思います。この大きさに対する議論をぜひ先生方はやっていただきたい、そういうことでございます。

西田委員 それでは松原参考人にお聞きしたいのですけれども、先ほど前田参考人も御陳述の中でおっしゃられた、移行期間内に、イコールフッティングがしっかりとできるまでに、例えば郵貯銀行なりあるいは保険株式会社が大きな業務拡大をされる、これは困るというお話を何度もされたのですけれども、この期間の民営化委員会などなどによる監視そして見繕いについて、どのようにお考えになられますでしょうか。

松原参考人 移行期間の問題もありますし、むしろ移行期間に入る二〇〇七年までの問題もある、このように考えておりまして、そこがまさに一番経済政策としては難しいところで、規制が緩められていくということと残る保護があるわけですから、その絡みをコントロールするのが民営化委員会の役割になるだろう、このように思っています。

 しかし、現在の法律では、非常勤五人、事務局はありますけれども、そのような形で、果たしてそこが本当にそのような微妙な、ここまで規制を緩めたからここまで業務を拡大してもいいよといった非常に微妙な、事細かな判断をしていかなければいけないわけでありまして、ちょっとそこは組織として弱いかなという感じは持っております。

西田委員 参考人の皆さん方、ありがとうございました。

 終わります。

二階委員長 次に、谷口隆義君。

谷口委員 公明党の谷口隆義でございます。

 本日は、四名の参考人の皆様、大変貴重なお話をお伺いいたしまして、ありがとうございました。

 私、特に印象に残ったのは山崎参考人のお話でございまして、阪神・淡路の震災のことをおっしゃって、大変感銘を受けたわけであります。

 私は、今回のこの法案に当たりまして、普通局の視察を行ったり、特定郵便局長さんだとか職員の皆さん、労働組合の方にも、幹部の方にもお話をお伺いいたしまして、現場を視察させていただきましたけれども、大変頑張っていらっしゃるという印象を受けたわけであります。先日も、地方公聴会で佐賀県唐津に参りまして、玄界島の震災の折に、家が崩壊して避難所におられる方に顔を見ながら配達したというお話をお聞きして、大変感銘をいたしたわけでありますけれども、後ほど山崎参考人にはお伺いをいたしたいと思います。

 まず初めに、前田参考人、紺谷参考人、松原参考人にお伺いをいたしたいと思います。

 今申し上げました佐賀県唐津で地方公聴会を行いまして、そのときに中堅企業の経営者の方がお話をされたわけでありますけれども、会社の経営というのは会社を継続させることだ、これが一番なんだ、こういうふうにおっしゃったわけです。私も十分理解できるわけですね。会社は、利益を計上するといっても、これは一時的であってはだめでありますから、会社の利害関係者がたくさんいらっしゃいますから、継続というのが非常に大事であります。ですから、会社がゴーイングコンサーンを貫くためには、そこに経営の緊張感がなければならないということなんだろうと思います。この緊張感が極めて大事なものだというように私は思うわけでございます。

 そういう観点で、今回のこの郵政民営化の議論をする場合に、郵便事業、また郵貯、簡保と、この三事業があるわけですけれども、郵便事業は非常に重要な仕事でございます。しかし一方で、金融サービスのところは、郵貯、簡保を見ますと、これは代替可能でございまして、市場原理でやっていらっしゃる銀行のところに比べますと商品も限定されていますから、なかなか拡大というのは難しいんだろうと思いますが、現に郵貯で二百二十兆円、簡保で百二十兆円という、合計、国民の金融資産の四分の一が郵政公社に行っておるわけでございます。これは一つは、やはり政府が保証している、政府出資の郵政公社がやっているという安全資産選好の結果なんだろうと思うわけでございます。

 そんな状況の中で、まず初めに三人の参考人の皆さんにお伺いをいたしたいのは、今申し上げました経営のあり方、また金融サービス、私は今代替可能と申しましたけれども、金融サービスの動向といったような、この二点でお考えをお伺いいたしたいと思います。

前田参考人 経営のあり方ということでございますが、事業が四つに分かれますので、私ども、金融機関でございますので、金融という観点から申し上げますと、現在の郵便貯金制度は集めるのが目的でございまして、運用についてはすべて、ある意味では、かつては財投ということで、要するに、全部、丸ごと政府に預ける、そういう仕組みになっておりましたが、銀行になるわけでございますので、銀行になったときの発想の切りかえが最初から必要だと思います。

 銀行の場合は、運用先を先に確定しまして、それに見合った必要な資金を調達する、これが銀行の構造でございますので、その部分の、運用をある程度確定しませんで調達だけ一生懸命やるというようなビジネスモデルはございません。これは大変難しい、今までと違った形のハンドリングが必要になりますので、この点が新しい郵貯銀行の一番の課題だと思います。

 それから、ALMと銀行で言っておりますが、資産と負債の要するに調整をどうするか、それからリスクの分析をどうするか。ここは、運用サイドを今までやられていませんので、この点がやはり一番のポイントだと思います。

紺谷参考人 金融サービスということに関して申しますと、やはり先ほど山崎参考人からお話がありましたように、どんどんどんどん金融機関の店舗がなくなっているということは非常に重要な問題だと私は思っております。過疎地でもどんな小口でもきちんと利用客に相手をするという金融機関は、金融ビッグバンとか郵便貯金業務を民営化した国ではどこでも起きていることなんですね。ですから、そういう公的な必要性をどうサービスしていくかということだと思うんですね。

 だから、まず第一に、郵便局がこれまで行ってきた公的なサービスが要るのか要らないのかということを国民に問うべきであると私は思うんです。国民がイエスと言ったときに、では、それはどんな形態でサービスするのが一番コストが低いのかという議論を次にやるべきでありまして、初めに民営化ありきというのは議論の立て方がそもそも間違っているというふうに思うんですね。

 実は、私は、金融ビッグバンの陰の部分を見たいと思いましてアメリカに行ったことがあるんです。そうしますと、何が起きたかというと、アメリカでも、それからイギリスでもどこでも、金融ビッグバン等、郵便貯金を民営化させてしまったような国というのは、小口へのサービス料金が物すごく上がりまして、預金口座、貯金口座を持てなくなった貧しい人々がいっぱい出たんですね。

 アメリカなんか特に小切手社会でございますから、お給料も小切手で受け取るわけです。通帳を持っていれば、口座を持っていれば、そこに振り込んで全額カードで使えるんですけれども、口座を持っていませんと、もらった小切手を現金化しなくちゃいけないんですね。例えば、日本でいえばチェーンストアのクリーニング屋さんみたいな、何をやっているかわからない小さなお店が所々方々にあるんです。そこに小切手を持っていくと現金化してくれるんですけれども、当然割引料を取られるわけですね。あるいは下町の、非常に低所得の人が多いような地域では、スーパーマーケットが小切手を換金してくれたりするんですが、全部手数料を取られるんですよ。貧しい人ほどせっかく働いた給与を全額使えないというようなことになったりしているんですね。

 日本はまだそこまで小切手社会にはなっておりませんけれども、でも、やはり小口のサービス、過疎地のサービスということをどうするかということをお考えいただかないといけないと思うんです。

 そもそも、公的に行われてきた事業で、採算採算と言うのは間違いなんです、道路公団であれ何であれ。採算がとれることであれば、ほうっておいても民間がやるんですね。民にできることは民にと小泉さんおっしゃいますけれども、民間は必ずしも、小口や過疎地に関して、民間ベースで採算のとれないところにはサービスを行っていないわけであります。ですから、そういうところを国がサービスを行う。どういう形態でやれば、民間の自由競争を阻害しない形で国家が安く必要なサービスを国民に提供できるかという解を解いていくということになるんだろうと思うんですね。

 ですけれども、金融に関して言えば、今非常に問題の大きい状況にはありますけれども、ああ、時間ですか。では、今のはやめてもいいです。はい、では、やめます。

松原参考人 今の国営の日本郵政公社の経営の緊張感についていかがかという御質問だと思います。

 二点についてお話ししたいと思うんですが、まず一点は郵便事業であります。

 今回の改革では余りこの点については触れられていないというのは先ほど申し上げましたが、郵便事業に関しましては、私は先行きは大変厳しいと思っております。とりわけ、今の郵便収入の多くを占める公共料金等の請求書、クレジットカードの請求書等が電子メールに代替されていくと、大きな収入減が見込まれるということであります。それから、現在の郵便事業の人員構成を見ますと、やはりこれから高齢化が進み、人件費はかさんでいく。非常にこの先厳しいというのが私の認識であります。

 それに対して日本郵政公社がどのように対応したかというと、例えば信書便についての民間参入を促進するような改革は恐らくとめてくれということだったと思うのです。それが今回の法案にも反映されていると思っています。しかし、緊張感という点からいいますと、そのような状況になった民間企業は、まずリストラの前に本社ビルを移転したり、いろいろなことが可能であるはずなのに、依然として東京駅の駅前で郵便を区分けしている、こういうところにやはり国営の甘え、緊張感のなさがあると思います。

 それから、金融に関しましては、やはり、今議論に出ましたように、お金を集めるだけの金融機関でありまして、運用については、強制的なのかそうじゃないにしても、お任せの状態でありました。そうなると、今後そうではなくなるときには、今のように自動的に、相対的に優位な商品性を持つ定額貯金でお金をどんどん集めたときに、それ以上で運用できない限りは経営が維持できないわけでありますけれども、やはりその点についてどうしようかというような緊張感は、どうも今の日本郵政公社の段階では私は見られない。申し上げにくいのですが、やはり国営の甘えはどう考えてもある、このように判断しております。

谷口委員 生田総裁がこの委員会の審議の中で、五年ほどしますとやはりだんだん金融サービスの方の収益が圧迫される、こういうふうにおっしゃっています。あと、経営骨格試算におきましても、やはり二〇一〇年ぐらいからどんどんどんどん圧迫される。収益の柱が今郵貯でございますので、そんなこともございましてお聞きしたわけでありますけれども。

 それで、一番影響を受けられる全銀協の会長をやっていらっしゃる前田参考人にお伺いをいたしたいわけであります。

 先ほど、お話を聞いておりましたが、運用、調達リスクを管理し、運用利回りを確保するということは並大抵のものではないと。これは、二百兆円を超えるような資金を持っておられるわけですから。そうしますと、この巨大な資金で並大抵のものではないというのですけれども、大体どの程度の資金量が民営化後の郵貯銀行は望ましいと考えておられるのか、個人的な見解で結構でございますけれども、教えていただきたいと思います。

前田参考人 二百兆というようなすごい金額ですと、みずほの五倍、四倍とかですから、これはちょっと一つの銀行としては物すごい、世界一の銀行になるのですが。

 マネージできる範囲で、かつ運用の実績が現在のところないわけですから、そういう意味でいいますと、頭の中で考えますと、一つでいいますと、十兆円というような規模ですと地銀さんのトップクラスの銀行一個分です。この地銀さんのトップクラスの銀行がいきなり一個できるとなりますと、これは、地銀さんも例えば百年近くいろいろなノウハウをためてそういう姿になっているわけですから、これはおいそれと、あっという間にでき上がるということではございません。もちろん人材も必要ですし、いろいろなノウハウが必要ですので、一つの考え方のサイズとしますと十兆というのは非常に大きな単位だと思います。それ以上一挙にというのはもっと恐ろしいことだと思っております。

谷口委員 この郵貯銀行は、今は預け入れだけですけれども、先ほどおっしゃったように貸し出しも含めたリスク資産を与信としてやっていくという話であります。今、十兆円という話が出ましたが、大体、銀行協会全体の中で大きな影響を受けると考えられるのは、地銀のクラスなのか、協同組織金融機関の信金信組あたりなのか、または会長のところの大手の金融機関なのか、余り時間がございませんけれども、簡単にお答えをいただきたいと思います。

前田参考人 どういう運営形態になるかちょっとわからないものですから、どこが直接抵触するかというのは、政府の案を拝見しましても、どういうサイズで、どういう人員で、どの地域でやるというのはわかりませんので、ちょっと申しわけないのですが、お答えするのは大変難しいと思います。

谷口委員 なかなか言いにくいのだろうと思いますが。わかりました。

 それで、山崎参考人にお伺いをさせていただきたいのですが、まさに、私は現場を見せていただいて、一生懸命やっていただいております。それは、公務員だからというようなことで、今おっしゃったわけでありますけれども。

 今度の民営化案の中では骨格試算が出ておりまして、それで人員の切り分けの話が出ておるわけです。これは四つの会社、持ち株会社の下に、窓口ネットワーク会社と、あと郵便の会社と郵貯銀行と保険会社、このところの切り分けが今言われておりまして、どうも聞いておりますと、基本的な考え方の中に、分社化の時点では、基本的に郵便の集配業務を除く対顧客業務に係る郵便局員は窓口会社に帰属するんだ、現在の帰属部局にとらわれず、その業務の内容に応じ配分していく、こういうような基本的な考え方があるわけでありますけれども、現実に仕事をやっていただいておられる職員の皆様方の声を代表して、このような考え方についてお考えをお伺いいたしたいと思います。

山崎参考人 今、現場で、人員の切り分けというのはほとんどの職員が実際は知らないというのが実態なんですね。それよりも、民営化されることによって、雇用だとか仕事がどうなっていくのかという点での不安の方が非常に大きいというのが実態だと思うんですね。ですから、何とかしてもらいたいというのが率直な現場労働者の気持ちだろうというふうに思います。

谷口委員 私どもも、今回、民営化に当たっての五原則というのがあって、二十何万人を超える職員の皆さんが、雇用の面でいろいろな、大変な状況にならないようにやっていくべきだということを最優先で言っておりますので、今後、この民営化の議論の中でも申し上げてまいりたいというように思っております。

 それで、若干時間がありますので、紺谷参考人に、先ほどおっしゃった、証券関係のお仕事をされているということでございました。今、三百四十兆円という郵貯、簡保があり、あと民間の預金があるわけですけれども、政府としては、貯蓄から投資へというような形で、これを促進させるようなことをやっております。私も、数年前から、証券の活性化のプロジェクトの中に入ってやっておるわけであります。その中でも、やはり一番抵抗の強いといいますか、流れにくいのは、むしろ、郵貯でポケットがわりに貯蓄をやられておられる安全資産選好の国民の皆さんではないかと思うんですが、このあたりはどのようにお考えでございますか。

紺谷参考人 貯蓄から投資へということと郵便局の関係で申しますと、私は、十年以上前から、地域に金融機関が郵便局しかない、あるいは遠くまで行かないとほかの金融機関がないという地域が多いんですから、郵便局こそ証券を扱ってほしい、インデックスファンドを扱ってくださいというふうに申し上げてきたんですね。ただし、今は、インデックスよりももっと手数料が低くて、毎日ニュースを聞いていれば相場を言ってくれるETFというのが出ておりますから、ETFを一つだけ扱ってもらえばいいと思うんですね。

 しかし、今、郵政公社は、何か三つか四つか五つか、いろいろな投信を扱おうというようなことを考えていらっしゃるようでありまして、それはちょっと窓口の負担が強過ぎるなと。基本的な、基礎的な商品だけでいい、保険は簡保だけ、貯金は定額と通常貯金ということで、証券も、やはりほかに国債はもう扱っていらっしゃるわけですから、公社債投信とかそういうことではなくて、ETF、株式市場を丸ごと買うような、そういうチャンスを与えていただければいいかなというふうに考えております。

谷口委員 第二国債というようなことをおっしゃいました。要するに、貯金は個人向け国債と同じだと。この運用の方を、ETFみたいなもの、ETFですか、今、おっしゃったわけでありますけれども。

 地方公聴会に行ったときも、九州大学の教授が、やはりそういうようなこともおっしゃった方がいらっしゃったわけですけれども、そういうことは、極めて業務を制限した中で、現行みたいな形ではなくて、もっと制限すべきだというような観点で今おっしゃったんでしょうか。最後にお聞きいたしたいと思います。

紺谷参考人 郵便局は民営化しないという前提で過疎地でも小口でもサービスしているんですから、国民にとって必要最低限のサービスをなさってくださいと。

 それで、郵便局員の方たちは今でも非常に負担が重いんですね、公共的な立場で公務員としての使命感を貫くという立場であると同時に、収益性追求も課されているということでありまして。それから、郵便局はいろいろ批判が来るということもありまして、本人確認法なんて実は民間の金融機関よりもびっしり運用しているんですね。そのために、近所の顔見知りの奥さんが都会に出た息子のために通帳をつくりに来ても、委任状はあるかと。何言ってんの、うちの息子が大学行ったって知っているでしょうと言っても、いやいや、委任状が必要なんですと。委任状をもらって持っていくと、今度は委任状を受けた当人だという証明書を見せてくださいと。だって、あんた、うちの隣でしょうと言ってもだめなんですよね。

 そういうことで、地域の郵便局というのがだんだん住民から疎まれつつあるという部分もありまして、本末転倒になりかかっているわけです。(発言する者あり)そうですね。ですから、郵政公社というのを、本当にそもそも論に立ち返って、どんな役割を提供すべきかということでないと、今、郵便局員の皆さんも本当につらいと思います。

谷口委員 では、時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。

二階委員長 次に、伊藤忠治君。

伊藤(忠)委員 民主党の伊藤忠治でございます。きょうはありがとうございます。

 恐らく、四人の先生方も、急遽の日程で大変でございましたでしょうが、そろって御出席を賜りまして、また貴重な御意見を承ることができまして、心から感謝を申し上げます。

 日ごろ私の考えておりますことを含めまして質問をさせていただきたいと思うのですが、今回のこの特別委員会、郵政の民営化集中審議をやってまいりまして、あと残すところわずかになりました。来週の月曜日に総括質問が引き続きございまして、火曜日には本会議で採決ということになります。そんな大詰めに私たち呼ばれても、私たちの言った意見は一体どうなるんだという御心配があろうかと思いますが、それは引き続き参議院でもやりますので、参議院審議の中でも大いに皆さん方の……(発言する者あり)今そういう意見がございますが、衆議院で終わりだという意見もございます。恐らく、そういう意見というのは衆議院で廃案になるということの期待の意見だと思うのですが、一寸先は政治は暗やみでございまして、どうなるか、なかなか予見の域は出ませんが、いずれにしても、正常に考えまして、常識的に考えまして、参議院に行った場合も先生方の貴重な御意見は必ず生かしていけると私たち確信をしておりますので、どうぞひとつよろしくお願いいたします。

 それで、私はこう思うのです。小泉さんのやり方は、まず四つのルール違反だと言うんです。

 なぜかというと、根拠がございまして、一つは、中央の省庁再編がございました。これは九〇年以前ですが、橋本内閣です。その後、小泉さんが総理になられたんです。この改革基本法の中の第三十三条一項六号では、自民党の皆さんは、また民主党は言うか、こういう顔をなさっているわけですが、これは約束違反でございまして、私たちは今法廷でも争っておりますが、民営化は行わないということをわざわざ法文の中に書いたわけですね。

 ところが、この解釈は違うんだというので、いつの間にか、官房長官なんかは、それは当時の事業庁から公社に移るまでの間は民営化はやりませんよということなので、それから先のことはこの表現には当たらないと言うわけですよ。だれが考えてもおかしいので、当時の郵政大臣、これは所管大臣ですよね、所管大臣の三人の方が、三大臣が口をそろえて、民営化というのは将来ないんですよ、三事業一体の公社制度は堅持していくんですということを言っているんですが、なぜか所管大臣でもない内閣府の官房長官が出てきまして、いや、それはそうじゃないんだと。そうすると、法制局長官が出てきまして、有権解釈はこうだと言うんですから話にならぬわけですが、そういうことなんです。これがまずルール違反の一番大きな問題なんです。これは先生方もぜひとも御理解ください。

 二点目は、それに関連をしまして、公社法の第二十四条がございまして、これに基づいて中期計画を策定することになっています。これは政府の命令で公社に義務づけがございまして、四年間、今第一次の中期計画を実行中なんですね。それが毎年毎年、結果がどうであったのかということを国会にも報告というか紙を配ってまいります。それで、四年間終われば、ここで四年間の実績の評価と総括を国会でもやることになっているわけですよ。ところが、それも全く横に置いて、民営化でどんと行く、こういうことになっているわけです。

 紺谷先生の論文を私はずっと読ませていただきましたが、そこにこう書いてありますね。JRやNTTの民営化もこれまでやってきました、今日どういう問題点があるのか、利用者の立場に立ってどうなのか、あるいは国家の立場に立ってどうなのかということを総括すべき時期ではないのかという提言がございますが、そこまでさかのぼるかどうかは別にして、なるほど、私はそうだと思うんです。既にもう民営化して今日まで来ているところでもそういう問題点があると私も承知しておりまして、にもかかわらず、今四年間やっているこの最中に、その結果も見ずに民営化ありきで突っ走るというのは、これはちょっと無理じゃないのか。むちゃだ。これもルール違反の二つ目。

 三つ目は、国民世論は、竹中さんはこう言われるんですよ、意外と民営化賛成の人は多いんだと。しかし、慎重に審議してやっていけというのが六〇%いますということだから認めざるを得ない、認めざるを得ないんです。慎重審議をやれという声が圧倒的に多いんだと思うんですよね。

 私は、国民世論というのは、どの点をとって国民世論というふうに言うかと。言い方はいろいろありますが、地方議会をごらんください、一〇〇%に近いんですよ。都道府県は一〇〇%、市町村は九五%を超えているんです。この地方議会というのはおざなりで決められるものじゃないんです。きちっと地方議会のルールに従って、地方の立法府がそのように決めるわけですからね。これも全部無視。こんなことでいいのか。

 四つ目のルール違反。JRの民営化、NTTの民営化のときも、これは自民党内では割れなかった。いや、それはやらないかぬと。そういうことだったんです。今回の郵政の民営化では真っ二つじゃないですか。政権与党の地元がそんなに割れているというのは、私は民意の反映だと思うんです。民意と関係なく政党の中が割れることはないと思いますよね。民主主義だから割れているわけで、民主主義でないから親分が突っ走るわけです。そんなことはだめなので、だからこれも世論を無視。結局は、議会制民主主義を否定している。

 何かというと……(発言する者あり)やじがありますが、聞き流していただきたいと思いますが。小泉さんが一番天の声と思っているのは経済財政諮問会議なんですよ。経済財政諮問会議というのは、中央省庁再編の、あのときに私も理事をやりましたが、こんな声じゃなかった。総理の諮問機関ではありますよ。しかし、ここで国の基本が決まるんでしょうか、天の声になるんでしょうか。そこで決まったことは金科玉条。その下のいろいろな審議会とか議論の場はございますけれども、そういうところは一切聞く耳持たぬということなんです。

    〔委員長退席、松岡委員長代理着席〕

 これと並ぶかもう一つ上にあるのがアメリカでございまして、イニシアチブ、これできちっと出ておりますが、自民党の中の皆さん、これは配っているんですよ。イニシアチブに従うと、特徴的なアメリカが指摘しております日本に対する要望を六項目挙げまして、六項目はそのように全部これは完全実施になっています。今回の民営化法案、ぴしっと入っています。受けとめられたわけですね。

 だから、こんな格好で、言うならば国民の共有の財産である郵政事業の、とりわけネットワークが民営化によってどうなるかわからぬというところへ押しやられるということは大変問題だと考えておりますのが民主党の基本的な考え、スタンスでございます。まずこれを申し上げます。

 次に、私、思うんですが、一連のそういう小泉さんの政治姿勢を見ておりますと、市場原理万能主義です。そこには何か政治の食い込む余地がないような。政治家が市場競争原理でどんどん競争をやれということを主張したり、いろいろな施策でそういうものを打ち出したら、弱肉強食の論理が日本社会を踏みつぶしていくような気がするんです。だから、これが公共サービスの部分にまで入り込みまして、すべてこれは市場原理でやってしまうというところへ来ておるのが今回の郵政の民営化論だ、私はこのように思うわけです。

 これは、よく例に出されるじゃないですか。それをやったら必ず、アメリカのあのエンロンじゃないけれども、あんな格好になるよ。大停電事故があったけれども、競争がどんどん激しくなっていったら、発電の関係がおかしくなって、ああいう悲劇が出るよということが大きな一つの教訓としてあるんですが、ヨーロッパの教訓だとかアメリカの教訓には学ばずに、とにかく小泉さんは民営化ありきと、もう何か取りつかれたように、何が何でも民営化だということで走るわけで、これをとどめる方法はあるのかないのかということなんですが、私、体を張ってやりますので、これは本会議を楽しみにしていただきたいと思っております。

 それで、日本の将来はどうなるか、先生方に逆に私は教えていただきたいと思うんですが、二十一世紀の日本というのは一体どうなっていくんでしょうか。

 これは、評論家の皆さんというか、ゴールドマン・サックスの方が言われていますよね。二〇三〇年には、GDPの第一位はアメリカ、第二位は中国が来ました、日本は追い抜かれて三位、四位はインド。二〇五〇年、どうなるか。中国が一位で四十五兆ドル、アメリカが三十五兆ドルで二位、三位がインドで二十八兆ドル、日本はわずか七兆ドルで第四位でございます。そこまで日本の国力は下がる、こういう見通しが現実に数字で出ているわけです。

 なぜそうなるのか。人口がどんどん減ります。高齢化がそれに反比例して進みます。国力は縮小します。そうしたら、安全、安心のコミュニティーがここで崩壊をしたら、成熟社会なんて存立できるんでしょうか、私はそう思うんです。そこで、つまり競争原理で、弱いものは戦いに敗れて、結局、安全、安心の生活が、希望の持てる生活ができないとしたら、何を求めるのか、だれがそれにこたえるのかといえば、これは政治が果たす役割ではないのか、私はこのように思っているわけです。

 日本の郵政事業というのは、御承知のとおり、今もお話ございましたとおり、三事業が一体運営で明治以来百三十年の歴史を積み上げてきたと思うんですが、この国民の共有財産である郵政事業のネットワークが民営化によって破壊されたら、これは取り返しのつかないことになると私は思っているんです。そこが問題なんですよ。

 だから、小泉さんも、それから竹中さんも、何度か答弁に立たれますが、三事業一体運営は一言も言いませんよ。三事業をばらばらにするというのが民営化ですから。三事業というのは一体になる、郵便事業が柱で、金融サービスがそれを言うならばサポートする体制をつくってきたのが、三事業一体で百三十年続いてきているわけです。これがばらばらになったら、肝心の柱の郵便事業まで崩壊しますよ。

 郵便事業というのは、皆さん御承知のように、これは労働集約型の、言うならば余りもうかりません。利益率は二・四、五%しかないんです。だから、工夫をして、これは先進国のヨーロッパも同じようなことをやっていたわけですが、日本もそれをやってきて、やっとここまで発展をさせてきた。これはもう、この郵便局のネットワークは、特に将来にわたって安全、安心を考えたら、これを抜きに語れないというような社会的に重要な存在になっているじゃないですか。

 だから、そのことを据えるかどうかなんです。捨てるか守るかなんですよね。これまでの議論では、捨てる議論はありますけれども、守る議論というのは政権与党にはございませんので、我々は、情けないな、こんな気持ちで頑張っているわけです。

 そこで、なぜ民営化が必要なのか、なぜ民営化をやらなきゃいかぬのか、こういうことなんですが、これは議論の中ではっきりしたんですよ。

 生田総裁は、中期計画で我々努力していますと、随分これは汗を流してやられています、私たちも現場を知っていますが、十年ぐらいは公社のままでいける、こうおっしゃっているわけです。小泉さんや竹中さんは、先行きは厳しくなるから、今のうちに民営化しておかないと元も子もなくなるというような言い方なんですね。

 きのう同僚議員が、これは金融の専門家ですけれども、はじいてきました。骨格経営試算に基づいてやりましたら、十年後、郵便事業は二百五十五億円のマイナス、赤です。貯金は三千百四億円の黒、簡保は三千三百十億円の黒、全体で六千百五十九億円の黒字なんです。二十年後はどうなるか。これは、郵便貯金は赤がもう少しふえますが、ほかは全部黒で、締めて全体では三千四百十七億円の黒なんですよ。

 やっていけるんです。その中で、三事業一体をもたすために工夫をしていくその場というのが二十四条に言う総括の場なんです。ここでやれるわけじゃないですか。

 こういうふうなのも、私はどう考えても、それが本当のルールであり、正常な議会制民主主義のやり方だと思うんだけれども、これは絶対にやらせない、それを無視して民営化法案を出してきて一瀉千里に走るというこの辺について、順番にひとつ先生方にお伺いしたいと思うんですが、まず、前田会長さんから順番に聞かせてください。

前田参考人 これは法案を御提出された方にお尋ねするのが筋だと思います。

 私は冒頭で申し上げましたとおり、四つの会社にするのがいいとか悪いとか我々は全く申し上げておりませんで、資金の流れを、全体の流れを変える、こういうことによって民間の活力がさらによくなる、そういうことを申し上げておりまして、先進国の例を先ほど何度も申し上げましたが、これだけ肥大化した郵貯それから簡保、この部分を放置したままで矛盾を大きくするというのは、これは我々としては余りよくないのではないか、そういうことを申し上げていまして、郵便事業をやめていただきたいとかそういうことを言ったことは一度もございませんで、郵便事業は、必要であればぜひやっていただきたいし、私どもも利用させていただいています。

 そういう意味で、民営化すべきでないというより、私はやはり原点に戻って、これだけ大きくなったこの資金の偏った流れを是正するのにこういう提案をされていることについて、私どもは政府の提案はそのとおりだと申し上げております。

 ただ、ソフトランディングするのは容易ではないので、ぜひいい形でソフトランディングさせていただきたいと。そうしないと、民間にも非常に大きな影響が出ます。その点について、私どもは何の注文もございませんが、ぜひ、肥大化したものを正常化する過程で、民営化なしに肥大化をちっちゃくするというのはできませんので、この点を私どもは訴えたいと思います。

紺谷参考人 大きな話の御質問をいただきましたので、大きな話で答えさせていただきたいと思います。

 小泉改革の旗印は、官から民へ、中央から地方へなんですね。ですが、今までのところ、官から民へ、中央から地方へ移転してきたのは痛みだけなんです。負担だけなんですね。改革とおっしゃっておきながら、改革といったら何なんだろうかなと私は思うんですけれども、国民が安心して、将来に向けて明るい展望を持って生きていけるということではないのかなと思うんですね。

 ところが、医療保険改革も年金改革も、国民の不安をあおる。このままでは医療保険はパンクだ、年金ももたない。だから掛金も上げなきゃいけないし、給付も下げなきゃいけないし、窓口負担はふやしますよというような話になっていたわけですね。ところが、医療保険は、国保以外は黒字でございます。政府管掌保険も黒字、組合健保もならせば黒字ということなんですね。年金に至りましては、大黒字なんです。

 公的年金というのは賦課方式が原則でございますから、現在の働き手が支払った掛金を現在の高齢者に分配していく。原理的には、積立金はゼロでよろしいんです。民間の年金は、若いときに働いて積み立てていった分を年をとってからおろすということですから、積立金が足りないという話があっていいんですけれども、厚労省みずから、政府みずから、今は四人の働き手が一人の高齢者を支えているけれども、近い将来、一・五人に一人になるとおっしゃっていますね。これは賦課方式だということなんですよ。賦課方式だということを認めながら、一方で積立金が四百五十兆足りないというのは大いなる矛盾なんですね。民間の積み立て方式一〇〇%のときの計算で四百五十兆足りないとおっしゃる。一方で、賦課方式一〇〇%のやり方で若者の負担がふえるとおっしゃる。両方言わないでくださいなということなんですね。

 そもそも、政府は正しいことを何ら発表していない。つまり、先ほども参考人から、道路公団の会計はようやっと少し明らかになったけれども、ほかの特殊法人はわからないと。そのとおりでございます。特殊法人の会計報告をし、どうしてこんな赤字になったのか、ファミリー企業はどのぐらいもうかっているのかとか、そういうことをきちんと調べて、その責任を追及して、原因は何かということを明らかにして初めて特殊法人改革、財投改革だと思うんですね。

 同じように、医療保険が黒字だということも知らされておりません。しかし、もう七年前に医師会が、財政学者と公認会計士の協力を得まして、医療保険会計をずっと、それこそ連結決算みたいなことをやっていったところ、政府管掌保険は黒字であるとわかったということなんですね。たしか野党が国会で追及なさっていると思います。マスコミがきちんと報じなかったために大問題にならなかったということなんですね。

 年金に関してもさんざん議論いたしましたけれども、百四十七兆円の積立金というのがそもそもうそでございます。共済の年金の積立金の五十兆が入っていない、それから厚生年金の代行部分の三十兆が入っていない。百四十七プラス八十兆の積立金があるはずなんですね。一方、年金の支払い、給付の方に関しては共済の分も入れている、公務員の分も入れているということですから、話のつじつまが合わないんです。

 そういう、きちんと情報開示もしないまま、本当は黒字である医療保険、本当は大黒字である年金の財政危機をあおって、不況の最中に国民を不安に突き落として、それで国民負担をふやし、社会保障を削るということをやってきたんです。そして、それを改革と呼んだわけです。どういう意味で改革なんでしょうか。だれにとっての改革なんでしょうか。私は、財務省のための改革であるというふうに思うんですね。

 小泉総理は、当初、道路特定財源の一般化ということをおっしゃいました。これは、国交省と地方が一般道をつくるために使ってきた資金を大蔵省の支配下に入れるという話なんですよ。道路公団の民営化も大間違いだと思いますね。例えば災害が来たときに、大津波が来たときに、東海大地震、東南海・南海と連動して起こったときに、沿岸の住民が無事に逃げるだけの道路が確保されているのかどうか。国民の安全、生命を守るための道路でもあるということを忘れて、経済性ばかり議論したのが道路公団民営化委員会であったと私は思うんですね。

 何よりも、道路の役割というのは何なのか。採算がとれる道路はつくるけれども、とれない道路はつくらない。道路網と言うじゃないですか。道路はネットワークなんですね。つながって何ぼのものなのに、採算がとれるところが仮にあったとしてそれをつくっても、ネットワークは完成しないわけでございます。採算のとれないところも含めて、道路はネットワークなんですよ。

 そもそも、道路公団の民営化が借金を返すのが目的だったというのが大間違いでございます。国民の安全、安心のために行う改革で国民を不安に突き落としているという現実があるんですね。

 というのは、何よりも小泉改革には将来ビジョンがない。どうしたら国民が安心して豊かに暮らせるかという目標を掲げていない。財務省の言うがままに財政赤字だと言って国民を不安に突き落として、国民の負担を増すことばかりお考えで、だからこんなとんでもないときに、石税調会長があんなことをおっしゃるんだ。財政赤字はどうするんですか、皆さん、高齢化、少子化を控えて、医療、年金、介護をどうするんですかとおっしゃるんですけれども、そんなことを言われても困りますね。私に言わせたらば、財政赤字というのは、不況の最中に緊縮財政をとったり増税してきた皆さん方、財務省及びそのお仲間のせいではないですか。その人に偉そうに国民はどうするんだ、考えろというふうに言ってほしくないですね。

 そういう点から考えまして、これまでの改革と言われてきたものは、すべて財務省の権限の拡大なんですよ。政治家から他省庁まで傘下に置くと言われる財務省です。

 民主党さんもちょっと間違っていらっしゃるかなと思うんですけれども、年金のお金の入り口と出口は別々にしなくてはいけない、だから年金の徴収は国税庁にということをおっしゃっているかと思うんですが、間違いです。間違いなんです。

 何となれば、財務省がそうじゃないですか。税を押さえ、予算を押さえているわけですよ。それだけではなくて、理財局は国有財産及び財投を握ってきたわけです。さらに、金融庁は分断されたなんて大うそですね。金融検査権を持っているんです。さらには、公取まで押さえているわけですよ。しかも、独禁法の改正で、企業に何十億、何百億にもなるかもしれないような罰金を科そうというようなことをなさっているんですね。

 ここに年金の情報まで与えたらば、財務省暗黒国家になるんじゃないかと私は思っているんですね。だって、予算を押さえることで警察庁まで押さえているわけですよ。だから、長野証券局長が、局長だから、権限が広いからといって捕まらないで済んでしまう。権限が広いということは責任も重たいんですよ。脱税から収賄からいろんなことをおやりになった中島さんが捕まりもしない。そういうことでいいんですか。

 公正取引委員会だって、ちょっと大蔵省批判が持ち上がったらば、一番仲よしの検察から人を連れてきた、証券監視委員会も検察から連れてきた。本当に行財政改革をなさりたいんだったらば、大蔵省、財務省がお持ちの権限を分散する、政治の手に本当に取り戻すということじゃないですか。

 橋本行革で経済財政諮問会議をつくったのは、内閣の手に政治を、国会議員の手に政治をということであったと思いますね。しかし、大いに間違っていたと思いますのは、政治の手に政治をということをおっしゃりながら、一部の有識者を集めて暗やみの議論で二十一世紀の行政組織を決めてしまったことです。大いなる自己矛盾であったと私は思うんでございますけれども。ごめんなさい、あと一言。

 経済財政諮問会議は、今や大蔵省の傘下になっているというのは、知る人ぞ知る事実でございます。事務局長は大蔵省と非常に仲よしの先生がおつきになっているわけですね。最近、日経金融新聞なんかを読みますと、大蔵省の方が、いやいや、経済財政諮問会議に邪魔されて、我々の力は弱まっているんですよと言っているんですけれども、大うそでございます。そういううそをついてごまかさなければならないほどに大蔵省の権限が高まっているということです。

 一方、大蔵省は、これだけ税収を減らしながら責任をとらない、金融不安を起こしながら責任をとらない、それで民間の責任だとおっしゃっているわけですよ。そういう、今や財務省ですけれども、やっていたときは大蔵省だったんですけれども。大蔵省、財務省、金融庁も含めてですね、一番権限をお持ちの方の責任を追及していただく、それが本当の改革であると思っております。

松原参考人 大分大きな議論でありまして、一つ、ちょっと私が違和感を感じましたところを申し上げますと、まず、小泉さんが市場原理万能主義かというところからいきますと、今回の郵政改革法案のいろいろなスキームというのは、実は市場原理万能ではないと思うんですね。

 例えば、郵便局会社は未来永劫、政府の関与を受ける特殊会社であり、株の所有も受けるわけです。郵便事業会社も同様であります。その中で、唯一完全民営化する、まさに市場原理に乗せようとしたのが金融の二つの会社でありますが、その点についても、一兆円ないしは二兆円の基金を置いて、撤退するようなところについては、補助金を出すからそこに入れろ、そういう意味では、ここも市場原理じゃないんですよ。

 ですから、小泉さんが例えば今回の郵政改革について市場原理で突っ走って、つぶれるところはつぶれろという法案のスキームではそもそもないと私は思っていますので、ちょっと今の御質問に関しては違和感を得ました。

 それから、もう一点であります。

 しばしば今回の郵政改革について、民営化することによって国家公務員ではなくなる、逆に、国家公務員だから誇りを持ってやっている、だから公的なサービスが維持できるんだという御意見が多くございます。

 しかし、考えていただきたいのは、かつて、小包、宅配便のたぐいは、基本的には郵便小包しかなかったわけです。あとは鉄道小包のチッキです。そのときに、まさにきのう亡くなったヤマトの小倉さんが始めていった。もし国家公務員がやっていることの安心感があるのであれば、一民間事業者が始めた宅配便が郵便小包を凌駕して、全国サービスを、完全な全国ユニバーサルサービスを実現できるわけがないわけです。そこに負けた国家公務員が行っていた郵便小包とは一体何なのか。

 もし、信書に関しましても、参入障壁が下がったときに、民間の事業者が最初にサービスを、どんどんいいサービスを始めていったときに、利用者の方がどちらをとるのか。

 事業の継続性ということを考えたら、国家公務員がやっているときには自動的に事業が継続できちゃう。しかし、民間はそうではなくて、みずからが信用をかち取って維持しないと、全国サービスその他の事業の継続も難しいんだ。そういうことを考えると、国家公務員、国がやるから公的な性格が維持できて、民間がやったらそうじゃなくて、弱肉強食、もうからないところから下がるというのは誤解です。クロネコヤマトが最後に小笠原に便を出したわけですから。あれは一個運ぶごとに四千何百円の赤字なわけですから。ですから、そういうところで、私はちょっと見方で違いがあると思いました。

 それからもう一点、これは私は大変大きな誤解だと思いますし、今回の御質問で大変な違和感を抱いたのは、今後、郵便事業が赤字になる、私もその可能性は高いと思いました。それを三事業一体だからトータルでプラスになるという議論は、実は、今までの郵政事業のあり方からするとおかしいわけです。

 これは、国営時代から三事業の郵政特会、郵貯特会、簡保特会は完全に分けておりまして、郵政特会で郵便事業の赤字がたまったときに、それは郵貯、簡保から補助していないわけです。ですから、現段階で郵便事業が五千億ぐらいの赤字になっているのは、外から入れていなくて単独で赤字だからそうなったわけでありまして、その分をどうするかというときに、コスト削減でやるのか、料金を上げるか、こういうことです。

 ここが、私は考え方として大変問題だと思いますのは、もし郵便料金の結果としてたまった赤字を郵貯その他で補うとしたら、郵便事業と競合している宅配便は一体どうするんだと。どんどん赤字を出したって、どんどん郵貯からお金を応援してもらえる事業体と、対等での競争なんかあり得ないわけであります。

 そもそも郵政事業というのはそういう形で今まで会計をやってきたわけですから、三事業一体だから郵便の赤字を郵貯が持てるという議論は昔にさかのぼって大変な誤解がある、私はこう思っております。

山崎参考人 私は、現場で働いている者ですから、率直にお答えしたいというふうに思いますけれども、郵便、貯金、保険、この事業が三事業一体で同じ建物の中でやられている、特定局も総合担務ということで仕事がされている、だからこそ、効率的に運営をされ、やられてきているんだというふうに思っています。

 事実、ドイツでも、郵便と貯金が切り離され、一九九一年に二万九千あった郵便局が、現在では一万二千台に落ち込んでいるという話も聞いています。そして、郵便、ドイツ・ポストがドイツ・バンクを、株を買うというんですか買い取るというんですか、こういうことも行われている。それは郵便のユニバーサルサービスを守るためにこそ必要だということで、そういう見直しも進んでいるという話も聞いています。

 だからこそ、日本でも、三事業一体でこそ事業運営ができて、基本的通信のユニバーサルサービス、金融のユニバーサルサービスができるんだというふうに私は思います。

 それから、二十一世紀はどうなんだというお話がありましたけれども、私たち働いている側からすると、年々、労働条件も切り下げられ、賃金も切り下げられてきています。冒頭、陳述でお話ししましたように、過労死や自殺者まで出る、サービス残業が横行する、こういう状況になっています。本当に働く者が安心して働けられる、定年まで誇りを持って働けられる、そういう郵政の職場にしてもらいたい、これがみんなの、労働者の願いだと思います。

 私は、そのためにどうしても郵政民営化法案を、反対をして、国民の側から見てもつぶす必要があると思っています。ぜひ、先生方の御協力を得ながら、廃案にする闘いも私もしたいと思いますし、御協力をお願いしたいと思います。

 以上です。

伊藤(忠)委員 ありがとうございました。

 もう時間がございませんので、全員の先生方にお聞きすることは難しいんですが、全銀協の会長さんに、最後になりますが、この点だけお聞かせをいただきたいと思っています。

 つまり、二百兆という銀行が生まれますよね。これは、今の集中合併で大きな巨大銀行が四つかそこらあるんですが、まともに競争ということになりますよね。これは庶民銀行とか特定の性格を持たせた銀行じゃありませんので、だっと市場参入してまいります。そういう状況に入りますから、会長さんが言われたのは、十年間の移行期間に、民営化委員会というのができるわけですが、そこできちっとチェックしてくださいよ、規制を加えてくださいよ、でないと、十年後に完全に株式が、資本が切れたときにオールフリーでやられたんじゃ困るという心情だったと思うんです。

 ところが、議論はそうなっていませんで、つまり、郵貯銀行と持ち株とは資本関係は切れないんですよ。これはやはり永続的に保有する格好になりまして、そういう銀行なんですが、全銀協に加盟を認められるのかどうかというのが一点。

 二点目は、郵便貯金銀行というんですが、貯金と預金とは違いますよね。にもかかわらず、貯金銀行ということで参入するわけですが、これについてどうお考えなのか。感想で結構でございます。

 三点目は、貸付業務も、だから、新銀行は積極的に拡大していかないと経営の安定はできませんので、そうなりますと、地方銀行なんかは大変な市場競争に迫られるわけですが、こういう懸念はあるのかないのか。これも端的にお答えいただきたいと思います。

 それから次に、松原先生、時間がございませんので言っておきますけれども、今回、自民党の中で出ました修正案には賛成ですか反対ですか。そのことだけで結構ですから、お聞かせください。

 あとの先生方、お聞きしたいんですが、ちょっと時間がございませんので、失礼いたします。

 紺谷先生は、民主党のNCのメンバーにぜひともまた入っていただきますようお願いいたします。

 順番にお願いいたします。

前田参考人 たくさん御質問いただきましたので、順番にお答えします。

 まず、二百兆の郵貯銀行ですが、これは新勘定と旧勘定をお分けになると思いますので、いきなり二百兆の郵便貯金銀行ができて、それでそのまま営業するということではないと私は理解しております。

 それから、貯金と預金。これは、名前は根拠法が違うので違うんですが、性格は全く同じです。

 全銀協に加盟するかどうか。これは、純粋に民間になったときに御判断されればいいと思いますし、純粋に民間になったときに加盟申請されて、入らなかった銀行はないと思います。

 それから、貸し出しのところは、これはこれからやられる業務ですので、相当ノウハウとかが必要だと思いますので、逆に言いますと、何もなしでこの業務に進出するのは難しいと思います。

 以上です。

松原参考人 経済学者としてどうかと答えますと、これはやはり、一たん完全に民間の銀行になった、生保になったものの株を政府系の会社が買い戻すことを可としたことについては、大変な違和感があります。

 ただ、もしこの修正がなくては郵政民営化の法案が通らないのであれば、私はその修正については賛成でありまして、そこは、この民営化がまず行われることが大変重要なことであって、そのことについて、経済学者としての見解と多少違ってもこの点は私は認めたい、こう思っております。

伊藤(忠)委員 ありがとうございました。

松岡委員長代理 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 参考人の皆さん、本当に御苦労さまでございます。

 まず、全銀協前田会長にお伺いいたします。

 大手銀行よりも残高が多額の巨大な郵貯銀行というのが生まれる。貸し出しはこれからだということなんですけれども、今度の民営化法及び修正案では一体的経営というのが可能になりますので、これは単に一銀行が生まれるだけではない、巨大ないわば全体の一体的なコンツェルンが生まれるわけであります。そういういわば大変大きな競争相手が一民間経営として発生する。それが新たに銀行業界に参入をしてくるわけであります。

 これは、銀行業界にとってはやはり大変な脅威ではないのかと思うんですが、プラスなのか、つまり、銀行の経営にとってこういう事態はプラスなのかマイナスなのか、率直な感想をお聞かせいただきたいと思うんです。

前田参考人 一言で申し上げるのは大変難しいんですが、日本全体で考えますと、私は、プラスになると思います。

佐々木(憲)委員 全体で考えるとプラスだと。個々の銀行にとってはどうかというのがありまして、イコールフッティングという話があります。今回の法案を見ますと、あるいは修正もそうなんですが、国がバックにありまして、持ち株会社、三分の一を国が持つわけです。そのもとに実質子会社というのが、巨大な銀行が生まれるわけですね。

 こういう状況の中で、銀行業界は、それぞれの銀行と競争が始まるわけですが、こういう状況をイコールフッティングだというふうにお思いでしょうか。

前田参考人 先ほど申し上げましたとおり、政府の暗黙の保証が残るような状態であれば、イコールではないと思います。そういう意味では、二〇〇七年の時点で完全にイコールになったということではないと思います。経過期間を含めて、その期間にイコールになるような形で小さくしながらソフトランディングしていただきたいと思っております。

佐々木(憲)委員 移行期間が終わって民営化が完了した後も、いわば先ほど言ったような事態が続くんです。そういう状況ですので、これはイコールフッティングかどうかと。それは直らないと私は思っているんです。実際に法の仕組みはそうなっているんです。そういう状況をイコールフッティングだとお思いかどうか。

前田参考人 我々は、イコールにぜひしていただきたいということで、イコールになるまでずっとイコールにしていただきたいと申し上げるしかございません。イコールでない状態で競争しろと言われると、大変困ります。

佐々木(憲)委員 イコールフッティングには実際ならぬわけであります。

 次に、山崎参考人にお伺いいたします。

 先ほどのお話で、三十八年間郵便の配達をされてこられた。本当に職員としての誇りを感じました。

 そこで、配達をされている際に、いろいろな場面に行き合うと思うんですけれども、一番充実感を覚えるといいますか、どんな状況か、例えば具体的な事例をもし挙げられるとすれば、その辺も含めてお聞かせをいただきたいと思います。

山崎参考人 一番痛切に感じますのは、受験票だとかそれから合格の通知が来たときですね。私も、速達だとか、直接配達していますので、よく見ると、受験票なんかに部屋番号だとか住所が正確に記載されていないものが結構あるんです。それら、私は長く勤めていますので、結構詳しいことまで、子供時代から知っていますので、そういう住所が正確に記載されていないものを配達しますと、どうもありがとうございますということを言われますし、それから、やはり合格祝いを持っていったときに、小さいときから知っているお子さん、おめでとうございます、本当にうれしそうに、郵便屋さんありがとう、そのとき、本当にやっていてよかったなというふうに感じますね。そういうときですね。

佐々木(憲)委員 本当にそうだと思うんですね。

 地域のお年寄りの方々も、郵便の配達さんが来ることを期待しているといいますか、来てくれると大変うれしいという声も我々は聞いておりますので、本当に社会生活を支えていく、そういう意味でユニバーサルサービスの一環を非常に担っているというふうに思うんですね。

 それで、今回の民営化でそれが一体どうなるのかということでありますが、先ほど、全国をキャラバンで回られたということなんですが、反応は、いろいろな反応があったかと思います。議会、自治体、反対が多いというふうにおっしゃいましたけれども、そういう実態をちょっとお聞かせいただきたい。例えば、ぜひ民営化してほしいという声が本当にあったのかどうかも含めて、お願いしたいと思います。

山崎参考人 陳述で申し上げましたように、私は十都県行ってまいりました。

 直接県庁やそれから係の方に会ってお話ししたのが、岩手県だとか秋田県だとか、それから高知県だとか徳島県等でお会いしてまいりましたけれども、率直に言って、高知県では、山間が多い、山国の中で郵便局がなくなったらお年寄りは本当に困る、ライフラインにとってどうなるのか心配だ、ですから、郵政民営化には県議会でも反対の決議を上げていると言っていました。ぜひ頑張ってくださいと。それから岩手県でも青森県でも、県庁の総務部長さんとお会いしましたけれども、赤字局が多いという中で、本当に守られるのか、郵便局がなくならないのか心配だ、だから郵政民営化には賛成はできない、反対だという意見が多いでした。

 それから、私どもの組合員がそれぞれ、二十自治体ですか、歩いていますけれども、ほとんどの県が、やはり郵政民営化に賛成だというふうにおっしゃるところはありません。慎重に議論してもらいたい、やはり反対をしていかなきゃいけないというのが率直なところじゃないかなというふうに思っています。

    〔松岡委員長代理退席、委員長着席〕

佐々木(憲)委員 本当に全国の地域の皆さんの声というものは、今のお話の中にもその中身がよく伝わってまいります。

 それで、労働者の現場の実態ですけれども、先ほどかなり深刻なお話がありまして、自殺者が出るとか過労死がふえているという話がありまして、私はこれは大変なことだというふうに思いました。当然これは、公社の今の状況のもとでも正さなければならない改革の対象だというふうに思います。

 それで、民営化に対して現場の労働者の皆さんがどういう不安を実際に感じておられるのか。特に、例えば、会社が分かれると自分はどうなるんだろう、こういうものもあるんじゃないかと思うんですけれども、その辺も含めまして、率直な感じをお聞かせいただきたいと思います。

山崎参考人 先ほども人員の切り分けのときに質問がありましてお話ししましたけれども、今やはり、本当にどうなるのかということが全く見えない、将来がわからないということに対する不安、そして、現場の中で仕事がどんどんきつくなってくる、毎年毎年人が減らされ、非常勤と言われるゆうメイトの方々が大量に職場に入ってくる、そして、苦情が仕事では多くなってくるという中で、本当にこれでいいのかというのがいっぱい出てきています。そして、病気しても休めない、けがしてもなかなか休めない、そういうので体がぼろぼろになっている。昼休み、本当にみんな寝なければ体がもたない、毎日二時間、三時間残業をやらなければ仕事が終わらない、そういう状況が続いて、本当にこれでいいのかという不安や不満が大きく広がっているというのが私は今の全国的な職場の状況じゃないかなというふうに思います。

 以上です。

佐々木(憲)委員 今のお話を伺っても、生田さんのもとで公社がうまくいっている、利益が上がっているというふうに盛んに言われるんですけれども、これは、やはり現場の労働者の実態というのは相当深刻で、そういう犠牲があるから黒字になっているわけで、そういう意味では、もっと労働条件の改善をしっかりやらなければいけないというふうに思います。

 それで、次に紺谷参考人にお伺いをいたします。

 小泉さんは、民にできることは民にということで言っていますけれども、民にできないことを公がやっているというふうに紺谷さんはおっしゃっているわけでありますが、民営化を推進するこの論理が、小泉さんの言い方がくるくる変わるというふうにおっしゃいました。

 そうすると、何のための民営化か、本当の目的があるんじゃないかというふうに先ほどおっしゃいましたよね。その本当の目的というものは一体何なのか。何のための民営化なのか。私は、民営化によってさまざまなマイナスが起こるということは本当にそのとおりで、我々はそれは反対です。しかし、そういうものを押してまであえて民営化しなきゃならぬのだ、初めに民営化ありきなんだ、理由は後からついてくるとは、そこまで言いませんけれども、しかし、そういうような推進の仕方ですよ。だから、どこかにこれは目的があるんじゃないかと思わざるを得ない。

 率直なところ、どのように目的というものを感じておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。

紺谷参考人 私は、郵便局の民営化に本当の目的が隠されているとは思っていないんです。道路公団の民営化にはあったな、三位一体の改革にもあったなというふうに思っておりますけれども、郵政民営化の目的は民営化です。民営化すること自体が自己目的化しているということでありまして、理由は何かは小泉さんにお聞きくださいませ。私はお答えできません。幾ら考えてもわかりません。こんなことやらなきゃいいのになと思うばかりでございます。

佐々木(憲)委員 民営化自体が自己目的化しているという感じを持っておられるというのはよく……(紺谷参考人「感じではなくて確信を持っている」と呼ぶ)確信を持っているということであります。

 私は、この民営化をすることによって、いわば国民の財産である例えば郵便貯金あるいは簡保の資産、運用のノウハウがないわけですから、三十五兆円、それを運用しなさいといきなり言われても、そう簡単にできないわけであります。

 そうなると、当然それは、内外の投資顧問会社あるいは日米の金融資本が、いやいや、これはもう我々の方でやってあげましょう。ところが、これはリスクをとる運用であります。小泉さんはリスクをとるんだと言いました。リスクをとるとは、もうかるときはもうかるけれども、失敗したら大変な穴があいて経営そのものが危うくなる、そういうものだと思うんです。

 ですから、民営化というのはそういう危険性を伴うものであり、かつ、日米のそういう金融資本が食い物にする条件をつくってしまうことになるというふうに思うんですが、紺谷さん、いかがですか。

紺谷参考人 リスクをとるということでいいますと、国民はもう十分にリスクをとらされている、職を失い、町が寂れというさまざまな形で国民はリスクを負っていると思うんですね。

 それから、リスクマネーに移行していくのが大事というお話があるんですけれども、あたかも日本で十分にリスクマネーがないかのような御議論があるんですね。しかし、金融機関を通してリスクを負担してきたからこそ、日本はこれまで成長してこれたんです。経済のリスクというのはだれかが負うんですよね。個人が直接負う必要は全くないんです。

 日本人は、ほかの国の方たちよりも、先進国よりも、直接投資で自分が株を持ったり債券を持ったりではなくて、元本保証という形で、銀行にお金を預けるという形で持ってきたんですね。銀行が資金をプールしてリスクもプールするということで、国全体としてはリスクが小さくなっているということもあり得るわけなんです。リスクというのは、分散投資によって小さくすることができますから、個人で買える株式というのは銘柄数が限られますね、ETFを買うなら別でございますけれども。

 そういう意味で、金融機関を通してリスクを負担するという形でこれまでやってきたのでありまして、無理やり国民に、個人に、家計にリスクを負担させる理由は、竹中さんは何にも説明なさっていないということでございます。

佐々木(憲)委員 ありがとうございました。終わります。

二階委員長 次に、横光克彦君。

横光委員 社民党の横光克彦でございます。

 きょうは、四人の参考人の皆様方、それぞれのお立場からの貴重な御意見、ありがとうございました。

 まず、前田参考人にお尋ねしたいと思うんですが、銀行の業務が好調になったとはいっても、やはりこれは低金利、そしてまた手数料の引き上げ、あるいは不採算店舗の廃止、さらには貸し渋り、貸しはがし、こういったことで、いわゆる預金者やあるいは融資先に経営悪化のしわ寄せをしながら、みずからの庭先のみをきれいにしているだけ、そんな印象が私はするんですね。

 ですから、そもそもこの金融破綻処理に国民の税金がどれぐらい使われたのか。民間金融機関に三十八・四兆円投入した、しかもそのうち十・四兆円に及ぶ金が返ってこない、国民負担となっているわけですね。

 民にできることは民にと言われておりますが、これは、民でできることは民でできなかったという非常にはっきりとした一つの例だと私は思うんですが、こういう経過について、どのようにまず会長さんとして思われるか、お聞かせください。

前田参考人 金融機関が公的資金を注入されたことに関しましては、私も、我々のグループは注入されているグループでありますので、大変恥ずべきことだと思っております。

 我々のグループ、三つの銀行が一緒になりまして、今みずほフィナンシャルグループですが、三兆円の巨額の資金を注入していただきました。そのおかげで、その後の貸し渋りとかいろいろなことにつきましては、何とかなったと思っております。ただ、公的資金をそのままでずっとしていいとは全く思っておりませんで、この一年半で一兆五千億お返ししまして、あと二年で残りの一兆四千億もお返ししたいと思っております。

 これは、私ども、個別の銀行をお助けいただいたということではなく、むしろ金融システムを、あの時期に、システムそのものを壊さない、そういう趣旨で経営健全化法ができて注入されたと理解しておりますし、我々は、その窮地を脱して、後は利用者の皆様に統合効果をお返しする段階になったと思っております。

 店舗の統廃合をたくさんやってまいりました。おっしゃるように大量の統廃合をしましたが、実は、重複している店舗を統廃合したわけでございまして、ネットワークを減らしたわけではございません。ネットワークを減らしますと、むしろサービスは低下しますので、これは私どもは、合理化をした上で、むしろサービスは充実させたい、これが私どもの経営の理念でございますし、これからもそうしていきたいと思います。

 そういう意味では、二度とこのようなことがないように、金融機関としてやはり信頼を高めたいと思っております。

横光委員 どうもありがとうございました。

 松原参考人にお尋ねをいたします。

 松原参考人は、民営化は必要である、しかも分社化も必要である、三事業一体ではだめだというような趣旨のお話でございました。

 国家には損得を度外視してもやらなければならないことがあると思うんですが、つまり、松原参考人の御意見としては、公的な分野、ここはもう必要ないというふうにも受け取られかねないんですが、そのような思いさえお持ちなんでしょうか。

松原参考人 今の社会には、高齢化、少子化を初め、市場メカニズムでは解消できない分野がいろいろあります。そのような分野に対しては、私は、基本は一般会計的な、一般財政として担うべきで、企業体が中途半端な形でそれを担うということがいろいろな意味でゆがみをもたらす、このように考えております。ですから、郵政三事業が担わなければいけないサービスは、むしろ税金でしっかりやるべきだと。

 例えば、私は、第四種郵便みたいなものに関しては、全体の中でどんぶり勘定で見ろというのではなくて、その分に関しては税金を投入すべき、もしヤマト運輸がもっと安くやれますよと言ったら、そっちに競争入札で渡せばいい、基本的にこういう考え方でございます。

横光委員 三事業一体で今やってきている、これらの三事業はもうだめだという趣旨で、そうなりますと、今言われたような郵便事業なんて到底成り立ちません、そういうところは税金で国としてはやるべきだというお考えだというふうに受け取りましたけれども、それでよろしいですか。ちょっと違うんですか。

松原参考人 私は、競争的な場面でしっかりとイコールフッティングで競争をすべきだ、このような考えであります。

 その中で、今例えばということでお話ししたのは、郵便事業がオープンな競争のところでほかと競争している部分もある、それから独占の部分もある、しかし、その中で一定の公的な負担という形で三種郵便、四種郵便みたいなものを持たされている。どんぶり勘定で何とかやれということに対しては私は批判的であって、むしろ、きちんと競争するところは競争しろ、公的な部分を持たされるのであれば、そこには税金を投入したって、それから、より安くできる民間事業者があったらそっちに任せてもいい、こういう考えです。わかりましたですか。

横光委員 でも、今回の法案は、結局、基本方針から政府案、そして修正案となっておりますが、実際は、郵便はユニバーサルサービスということで義務づけております。参考人のお考えと大分違う形でこの法案が今できつつあるんですけれども、このことに対しては、どのようにお考えでしょうか。

松原参考人 国会で信書便法というものをつくりまして、その信書便法は、郵便のユニバーサルサービスであるけれども、新規参入事業者にもユニバーサルサービスを課して、そこで競争的な環境をつくろう、こういう仕組みは既に私たちは持っているわけであります。現実の問題は、残念ながら、信書便法の中に不備があると私は思っていまして、民間事業者が結果的に参入できないような、事実上欠陥の法律になっていると思います。

 私は、今回の郵便事業が株式会社になるときに、そのような弊害もなくしていくべきだと考えておりまして、その点が今回の法案の中で明記されなかった、あるいはその方向性が示されなかったことに関しましては不満を持っているというのは、当初申し上げたとおりでございます。

横光委員 民営化されたら株式の売却が始まります。そうしますと、アメリカのファンドが民営化で売り出された株式を買い占めてしまう、そういった多くの論調もあるんですが、この危険性についてはどのようにお考えでしょうか。

松原参考人 アメリカの投資ファンドは、これは日本の株だけではなくて、それはオイルであれ何であれ、一番もうかるところについてそのお金を持っていく、こういうことであります。

 それで、アメリカの投資ファンドが、日本の郵貯銀行及び郵便保険会社の株を魅力的と思うかどうかだけの話でありまして、もし、みずほ銀行の方が魅力的であればそっちの株を買い占める、そこは私は市場メカニズムの問題だと思っているわけです。

 その意味で、とりたてて、日本のほかの株より、あるいはほかの投資先より郵貯銀行とか郵便保険会社の株がより安く売られるような価格づけが基本的にはなされないと私は考えていますので、そこにぼんと入って丸ごと買い占めてやれというような行動は、市場メカニズム上もそんな心配することはないと思っています。

横光委員 私は、ちょっと逆で、本当に国民の膨大な資産が、例えば持ち株会社の株を買い占められて、この金がアメリカに行ってしまうんじゃないかというような危険性はかなりあると思います。ちょっと意見が違うんですが、どうもありがとうございました。

 次に、紺谷参考人にお聞きいたします。

 松原参考人と対照的に、民営化は必要ないということの理由を非常に明快に説明いただきました。お話をしますととまらないぐらいお話しいただきましたが、非常にわかりやすかったです。

 そこで、ちょっとお尋ねしたいんですが、郵政公社を民営化する必要はない、しかし、郵政公社のままでいいとも思わないと思うんですが、やるとしたらどのような改革が必要だとお思いなんでしょうか。

紺谷参考人 私は郵政公社のままで改革を進めていったらいいと思っておりますけれども、今、郵政公社の最大の問題は、公的な役割を十全に果たしていけばいいのか、あるいは民営化を視野に入れて収益事業の基盤をつくっていくのか、その辺が悩み深くてわからずにいて、ですから上層部も現場の方たちも非常に思い悩んでいてどっちつかずという形になっている。それが最大の問題だと思いますので、公的でいくということをしっかりお決めいただければ、あとはうまくいくのではないのかな。なぜならば、今までうまくいっていたからでございます。

 何でもかんでも市場メカニズムに任せていい、何でもかんでも自由競争でよろしいということであれば、政府は要らないんです。市場メカニズムではいけないところがあるからこそ、政府というものが存在しているんですね。そんなに何でもかんでも民がいい、市場メカニズムとおっしゃるんだったらば、まず小泉政権が解散していただくというのが一番いいのではないかと思っております。

横光委員 今の郵貯、簡保の三百四十兆に及ぶ巨額な資産を、前田参考人はやはり市場に流してくることを歓迎されるというお話でしたが、これは市場に流す必要はないというお考えなんでしょうか。

紺谷参考人 必要があるかないかということは、その時々の経済的な情勢によって変わってくると思います。先ほども申し上げましたように、公的資金がどのぐらい要るのかということにもかかわってまいりますし、今現在は、銀行も国債を持たざるを得ないぐらいに民間の資金需要が停滞しているということがあるわけですね。余りにも将来不安をあおられたので、これ以上のリスクは負担したくないということで国有銀行に資金を預けているという面もあるわけでございます。

 そういうことで申し上げるのでしたらば、金融不安というのは一銭も使わずに未然に防ぐことができるわけです。そういうことを私はずっと申し上げてまいりました。どうやればいいのか。政府が、銀行は絶対につぶさないと宣言して、その姿勢を貫くことでございます。もしも経営に問題のある銀行があったらば、経営責任だけ明らかにすればよろしいんですね。それを、銀行をつぶせとなったために、何の罪とがもない融資を受けている借り手が連鎖倒産に追い込まれる。大丈夫なはずの企業がつぶれたことによって、ほかの企業まで連鎖倒産に追い込まれる。そうやって融資がどんどんどんどん不良債権化していくことによって預金が過剰に傷つくと、余分な公的資金が要るということですね。

 これまでは国民のお金で金融行政の失敗を償ってきたわけです。ペイオフの実施というのは、金融行政の失敗をその銀行の預金で償うという方法であると私は思っているんですね。ですから、金融不安に関して、ぜひ国会の皆さんは、金融行政の失敗というのをしっかり追及していただきたいと思うんですね。

 一銭も使わないで金融不安は防ぐことができるんです。それなのに、金融大臣みずから、大銀行といえどもつぶすと。それをわざわざ外国に行っておっしゃる。そういうことをしますと何が起きるかというと、もともと、ペイオフであなたの預金は守られないかもしれませんよと言っているものですから、大丈夫な銀行だってうわさ一つでつぶれかねないんです。現にそういうことはたくさん起きているわけですね。おととしの佐賀銀行だってそうです。逆に国民を不安にし、金融を不安定にしているということであります。

 従来やってきたように、きちんと金融行政が責任をとって、銀行はつぶさないという姿勢を貫いていただくのが一番金融のコストの小さい方法だし、銀行も、不良債権処理だとかリストラだとか、そういう後ろ向きなところではなくて、竹中大臣がねらっていらした本当の意味での国際競争力を高める方向にそのエネルギーを使っていくことができるんですね。やりたくもない合併をさせられて、そのためにどれだけむだなコストと労力を使ってきたかということを考えていただきたいと思います。

横光委員 どうもありがとうございました。

 では、最後に山崎参考人にお尋ねいたしたいんです。

 今回の審議の中で、郵政公社は税金を納めていない、預金保険料を納めていない、こういったいわゆる官業ゆえの特典があるじゃないかという批判が出ておりました。こういったことに対してどのように、何か反論するお話ございますか。

山崎参考人 見えない国民負担とかいろいろおっしゃいますけれども、今なぜ郵便が、ユニバーサルサービスが保証され、全国的に二万四千七百のネットワークで事業展開がされているのか。それは、公共の福祉の増進を掲げて、国民のために努力をしている郵政三事業であるからこそ運営されているんだと思っています。

 ですから、私は、見えない国民負担といって、税金を払っていないじゃないか、消費税払っていないじゃないかという論法は間違いだというふうに思っています。

横光委員 終わります。ありがとうございました。

二階委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。

 次回は、来る四日月曜日午前八時四十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時十一分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.