衆議院

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第23号 平成17年7月4日(月曜日)

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平成十七年七月四日(月曜日)

    午前九時二分開議

 出席委員

   委員長 二階 俊博君

   理事 石破  茂君 理事 松岡 利勝君

   理事 柳澤 伯夫君 理事 山崎  拓君

   理事 中井  洽君 理事 原口 一博君

   理事 松野 頼久君 理事 桝屋 敬悟君

      大野 松茂君    大前 繁雄君

      奥野 信亮君    北川 知克君

      小杉  隆君    河野 太郎君

      桜井 郁三君    櫻田 義孝君

      柴山 昌彦君    園田 博之君

      竹本 直一君    中山 泰秀君

      葉梨 康弘君    萩山 教嚴君

      馳   浩君    松本  純君

      三原 朝彦君    山口 泰明君

      山本  拓君    青木  愛君

      五十嵐文彦君    伊藤 忠治君

      一川 保夫君    岩國 哲人君

      小沢 鋭仁君    大出  彰君

      川内 博史君    小宮山泰子君

      古賀 一成君    中塚 一宏君

      西村智奈美君    古本伸一郎君

      松崎 哲久君    山花 郁夫君

      若泉 征三君    石井 啓一君

      谷口 隆義君    佐々木憲昭君

      塩川 鉄也君    横光 克彦君

    …………………………………

   内閣総理大臣       小泉純一郎君

   総務大臣         麻生 太郎君

   法務大臣         南野知惠子君

   財務大臣         谷垣 禎一君

   文部科学大臣       中山 成彬君

   農林水産大臣       島村 宜伸君

   国土交通大臣       北側 一雄君

   国務大臣

   (内閣官房長官)     細田 博之君

   国務大臣

   (金融担当)       伊藤 達也君

   国務大臣

   (郵政民営化担当)    竹中 平蔵君

   内閣府副大臣       西川 公也君

   内閣府大臣政務官     木村  勉君

   総務大臣政務官      松本  純君

   政府特別補佐人

   (内閣法制局長官)    阪田 雅裕君

   会計検査院長       森下 伸昭君

   会計検査院事務総局次長  石野 秀世君

   政府参考人

   (内閣官房郵政民営化準備室長)          渡辺 好明君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  中城 吉郎君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  羽村 康弘君

   政府参考人

   (内閣官房内閣参事官)  齋藤  敦君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房長)   永谷 安賢君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房参事官) 山本 茂樹君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房会計課長)            大森 雅夫君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房政府広報室長)          林  幹雄君

   政府参考人

   (法務省刑事局長)    大林  宏君

   政府参考人

   (財務省主計局法規課長) 向井 治紀君

   参考人

   (社団法人全国地方銀行協会副会長・専務理事)   福田  誠君

   参考人

   (作新学院大学総合政策学部教授)         石井 晴夫君

   参考人

   (慶應義塾大学商学部教授)            跡田 直澄君

   参考人

   (ジャーナリスト)    安田 浩一君

   参考人

   (日本郵政公社総裁)   生田 正治君

   衆議院調査局郵政民営化に関する特別調査室長    石田 俊彦君

    ―――――――――――――

委員の異動

七月四日

 辞任         補欠選任

  左藤  章君     葉梨 康弘君

  園田 博之君     竹本 直一君

  岩國 哲人君     小宮山泰子君

  中村 哲治君     若泉 征三君

  馬淵 澄夫君     青木  愛君

  塩川 鉄也君     佐々木憲昭君

同日

 辞任         補欠選任

  竹本 直一君     園田 博之君

  青木  愛君     松崎 哲久君

  小宮山泰子君     岩國 哲人君

  若泉 征三君     中村 哲治君

  佐々木憲昭君     塩川 鉄也君

同日

 辞任         補欠選任

  松崎 哲久君     馬淵 澄夫君

    ―――――――――――――

七月四日

 郵政民営化反対、公共サービスの拡充に関する請願(山本喜代宏君紹介)(第三〇八九号)

 第三種低料郵便物を継続することに関する請願(岸田文雄君紹介)(第三〇九〇号)

 郵政民営化反対に関する請願(岩國哲人君紹介)(第三一〇七号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第三一八〇号)

 同(石井郁子君紹介)(第三一八一号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三一八二号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第三一八三号)

 同(志位和夫君紹介)(第三一八四号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三一八五号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三一八六号)

 同(山口富男君紹介)(第三一八七号)

 同(吉井英勝君紹介)(第三一八八号)

 郵政事業の民営化反対に関する請願(綿貫民輔君紹介)(第三一三六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 会計検査院当局者出頭要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 郵政民営化法案(内閣提出第八四号)

 日本郵政株式会社法案(内閣提出第八五号)

 郵便事業株式会社法案(内閣提出第八六号)

 郵便局株式会社法案(内閣提出第八七号)

 独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案(内閣提出第八八号)

 郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案(内閣提出第八九号)


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     ――――◇―――――

二階委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、郵政民営化法案、日本郵政株式会社法案、郵便事業株式会社法案、郵便局株式会社法案、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案及び郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案並びに山崎拓君外二名提出、郵政民営化法案、日本郵政株式会社法案、郵便局株式会社法案及び郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案に対する各修正案を一括して議題といたします。

 本日は、各案及び各修正案審査のため、参考人として、社団法人全国地方銀行協会副会長・専務理事福田誠君、作新学院大学総合政策学部教授石井晴夫君、慶應義塾大学商学部教授跡田直澄君、ジャーナリスト安田浩一君、以上四名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、各案及び各修正案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、福田参考人、石井参考人、跡田参考人、安田参考人の順で、それぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため参考人の方々に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 それでは、まず福田参考人にお願いいたします。

福田参考人 ただいま御紹介賜りました全国地方銀行協会の副会長・専務理事を務めております福田でございます。

 本日は、このような貴重な機会を設けていただきまして、まことにありがとうございます。せっかくの機会でございますので、今回の郵政民営化、中でも私ども地方銀行にとりまして影響の大きい郵便貯金事業の民営化に関しまして、意見を述べさせていただきたいと存じます。

 郵便貯金事業は、明治八年に国営事業として創設され、かつて民間金融機関の発達が十分でなかった時期におきましては、国民に簡易で確実な少額貯蓄手段を提供するとともに、郵便貯金が集めた資金を、財政投融資制度を通じまして社会資本の整備等への資金供給に活用するといった、いわゆる財投システムにおける資金調達の担い手として、一定の役割を果たしてきたものと認識しております。

 しかしながら、前者につきましては、民間金融機関のネットワークや各種サービスの拡充が図られ、民間金融機関で十分カバーできる状況となっておりますし、また、後者につきましても、財投改革によりまして郵便貯金の資金運用部への全額預託義務が廃止されたことから、いずれもその役割は終了し、もはや国営の郵便貯金事業を維持する意義は失われているというのが、私ども地方銀行のこれまでの主張でございます。

 御高承のとおり、郵便貯金は、現在も官業ゆえの特典を残したまま、約二百十兆円にも上る巨大な規模を有しております。こうした巨額の資金を市場メカニズムのらち外に置くことは、我が国の金融・資本市場の公正な価格形成をゆがめるとともに、経済の活力を高める効率的な資金配分を阻害していると考えております。

 そのような観点から、今回の政府の民営化案について申し上げますと、郵便局ネットワークという資源の有効活用や雇用面への配慮などを総合的にお考えになられた上で、郵便貯金銀行については、遅くとも平成二十九年までに政府の出資関係から切り離し、完全な民営化を実現するとされております。私どもといたしましては、こうした完全民営化によりまして公的金融部門の縮小が図られるという点で、今回の法律案を評価しているところでございます。

 一方、今回の郵便貯金事業の民営化に当たりまして、私どもが懸念しておりますのは、民営化が進む過程において、民間金融機関との公正な競争条件の整備が進まないまま、経営の自由度だけが高まり、これによって一層の民業圧迫を招くことになりはしないかという点でございます。

 民間との公正な競争条件を確保するためには、民間金融機関と同じように、納税義務を果たし、預金保険料を納めるのはもちろんのこと、これに加えまして、お客様の保護に欠かせない金融商品の販売ルールの遵守や、さらに、銀行業と他業とのリスク遮断など、民間と同じルールのもとで業務展開を行うことが不可欠と考えております。

 私ども地方銀行は、地域社会の持続可能な発展を目指しまして、いまだ厳しさが残る経済情勢のもとで、地域の中小企業や個人のお客様とのリレーションシップを大切に守り育てながら、地域経済の立て直しや地域振興等に取り組んでおります。

 こうした中、郵政民営化に伴い、仮に民業圧迫の深刻化が進んだ場合は、リレーションシップを維持しながら一生懸命に地域の中小企業経営や地域経済を支えております地方銀行の経営基盤に大きな影響があるのではないかと懸念している次第でございます。

 このため、今後の検討に当たりましては、このような懸念が払拭されますよう、少なくとも、これから申し上げます次の三点を踏まえて、郵政民営化の本来の目的に即した御議論が行われますことを改めてお願いいたしたいと考えております。

 まず第一の点でございますが、経営規模の縮小でございます。

 郵便貯金事業改革の主目的は、郵便貯金が肥大化を続けてきたことによる市場原理のゆがみなどを、民間でできることは民間にという行政改革の根本原則に則して、国民経済的な観点から是正していくことと認識しております。

 郵便貯金が現在の規模のまま民営化された場合には、世界にも類を見ない巨大な金融機関が誕生することとなり、地域金融の健全性維持に懸念が生じます上に、仮に郵便貯金銀行が経営困難に直面した場合、その規模の大きさから、金融システム全体に及ぼす影響は非常に大きいものであると考えております。

 私どもは、民間金融市場への円滑な吸収、統合を図るためにも、リスクの軽減を図るという観点からも、郵便貯金の巨大な規模を縮小させることが不可欠であると考えており、民営化を進める中でぜひ有効な施策を織り込んでいただきたいと考えております。

 第二は、民間金融機関との公正な競争条件の確保でございます。

 移行期間におきましては、郵便貯金銀行の経営の自由度の拡大と競争条件のイコールフッティングの確保が並行して進められていくこととされておりますが、私どもが最も懸念しておりますことは、公平な競争条件の整備が進まないにもかかわらず、郵貯銀行の業務範囲が拡大されていくなど経営の自由度だけが高まっていくことであります。

 とりわけ、郵便貯金銀行が政府出資の持ち株会社の配下にある移行期におきましては、政府の後ろ盾がある状態であり、純粋な民間の金融機関であるとは言えないものであると考えます。こうした状態は、お客様から見れば、実質的に政府による保証が付されているものと認識されてしまうものでありまして、競争条件は著しく公正を欠いていると言わざるを得ません。

 こうした暗黙の政府保証を後ろ盾にして郵便貯金銀行が規模、機能のさらなる肥大化を進め、それによって民業圧迫が深刻化するのではないかという点に危惧を抱いているわけでございます。

 申すまでもなく、金融機関の最大の経営資源は信用力でございます。この点で公正な競争条件が確保されなければ、幾らほかの条件整備が進んだとしましても、民間金融機関は郵便貯金銀行に比べて明らかに不利な状況に置かれるということになります。

 このため、政府の関与が残る間は、中小企業や個人に対する貸出業務への参入などの業務拡大は認められるべきではないと考えております。

 今回の民営化法案では、このような面につきまして郵政民営化委員会がチェック機能を担うものと理解しておりますが、このような機能は極めて重要であり、準備期の段階から民営化に向けたプロセスが始まる以上、その段階からこのような監視組織を設置する必要があるのではないかと考えます。

 また、今後の運営に当たりましては、中立的な第三者の意見に加え、私ども地域金融機関の意見もぜひ十分反映されますよう御配慮いただきたいと考えております。

 最後の点は、地域との共存ということでございます。

 お客様の立場からしますと、金融機関同士が互いに競争し、良質で多様な金融商品・サービスを受けられるということは本来望ましいことであり、私ども地方銀行も、お客様の支持を得られるよう今後とも切磋琢磨する所存でございます。

 他方で、今後、郵政民営化を進めるに当たり、我が国の金融システムの安定を損なったり、お客様に混乱を生じさせることのないよう、地域金融機関との共存を図り、郵便貯金事業を民間市場に円滑に統合させる視点も重要かと考えます。

 特に、先ほど申し上げましたが、政府の関与が残る間における貸出業務への参入などの業務拡大は、地域金融機関のリレーションシップバンキングの前提となる健全で安定した経営基盤を揺るがし、地域金融の円滑化に重大な影響を及ぼしかねないものであります。

 民営化を進めるに当たっては、地域経済に大きな混乱を生じさせないよう、地域との共存の観点にはぜひ十分御配慮いただきたいと考えております。

 以上のとおり、経営規模の縮小、公正な競争条件の確保、地域との共存の三点を中心に地銀界の考えを申し述べさせていただきましたが、いずれにいたしましても、郵貯改革は、単なる郵政公社の経営問題を超えた、将来に向けた我が国の金融システムの制度設計にかかわる極めて重要度の高いテーマであると考えております。したがいまして、資金の流れを含め、官から民へという基本軸を徹底し、真に改革の名に値する郵貯改革にしていただくよう期待いたしております。

 簡単ではございますが、私からは以上とさせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)

二階委員長 ありがとうございました。

 次に、石井参考人にお願いいたします。

石井参考人 おはようございます。ただいま御紹介にあずかりました作新学院大学教授の石井と申します。よろしくお願いします。

 お手元に簡単な連載記事の資料をお配りしましたけれども、これはあくまでも参考ということで、きょうは時間がございませんので、要旨をかいつまんで、そしてまたポイントを絞りながらお話をさせていただきたいと思います。

 私は、三年前の日本郵政公社法案の審議の際に、衆議院総務委員会で参考人として意見陳述をさせていただきました。あれからわずか三年で、今度は民営化反対の立場でこのところに立っております。法案成立からわずか三年で、日本郵政公社法が現在廃止されようとしております。まことに私も残念でなりません。

 日本郵政公社法案に対しましては、あれだけの国民的議論と、国会、政府、そしてまた総務省や郵政事業庁、また関係省庁等を巻き込んでさまざまな検討が行われて、その法律に基づいて二年前に日本郵政公社が設立されたばかりでございます。日本郵政公社は、国会の皆様方初め、関係者はもとより、国民各位の大変な努力によって創設されたわけであります。そのために、国会でも、そしてまた政府でも、さまざまなところで莫大なコスト、つまり税金と多大な時間を費やして、どうにか今日の軌道に乗ったシステムができ上がったわけであります。それも忘れないうちに、ましてや、今うまく事業経営が行われている組織体を分割・民営化して、将来的には解体も想定される郵政民営化の推進は、私にはどうしても理解できません。

 二〇〇五年六月三日の衆議院郵政民営化特別委員会、本委員会でございますけれども、ここに小泉総理も出席して、郵政民営化法案の審議が行われたわけであります。この法案に対しまして、与野党を問わずさまざまな皆様方から疑問、質問、問題点が提起されました。その後も今日まで、本委員会でさまざまな審議が進められ、さらに多くの問題点が明らかになったわけであります。

 このような問題点の多い法案をなぜそんなに急いで、あるいは、言われておりますけれども、本日本委員会で通し、あすの本会議に上程されるということなのか、多くの国民は全く理解できないでいます。逆を言えば、国民には本音を知らせたくないのではないかというふうに思われてしまうぐらい、今回の政府の答弁には具体性が欠けております。

 今回の郵政民営化法案の審議の中で一番私たちが理解できないのは、郵政民営化が実施され、それが仮に失敗に終わった場合、だれがどのように責任をとるのかが全く示されていない点であります。国会の中でも、地方議会や首長も、そして何よりも多くの国民が郵政民営化に慎重であるのに、強引に今国会で成立を図ろうとするこの小泉内閣は、二〇一七年までに郵政民営化が失敗した場合、その失敗の責任のとり方をまず国民に明らかにしてほしいと思います。

 将来じり貧になるからといって、今うまくいっている郵政三事業をあえて民営化し、いろいろなビジネスもできますよ、メリットも大きいですよと言われても、私たち国民にはぴんときません。むしろ、世の中の動きとは逆の方向にあり、民間金融機関は再編統合化の真っただ中にあります。規模の利益とコスト削減を必死で図ろうとしているのが現状であります。民間金融機関でもやらない事業分割や分社化、特に理解できないのは、窓口会社、郵便局会社と三事業を分けることであります。そして、委託契約によって事業を成り立たせるということであります。あとは経営者と職員の創意工夫と経営努力に任せるんだというのが、私たちは理解できません。

 小泉総理や竹中大臣あるいは政府の答弁を聞いて、郵政民営化後の姿や内容が具体的にわかったという国民は極めて少ないと思います。かねてから敬愛しております財界や金融界の先輩の方々からも、市場競争は必要であります、しかし、郵便局は地域社会の中で今まで長い間社会貢献や地域貢献を果たし、現在の法案の中でも基金を積むから大丈夫だというふうに言われても、それは心配でならないというふうに言われております。

 ましてや、今回の郵政民営化について、今までの国会やマスコミ等の説明や解説を聞いて、国民がどのくらい理解できたのか。政府はもっと時間をかけて国民に慎重な説明をする必要と責任があると指摘されております。つまり、政府が郵政民営化について説明すればするほど、今の郵政公社の民営化は必要がないのではないかというふうに国民にわかってしまうのではないかと思えてならないのであります。

 仮に、民営化がそんなにすぐれていて、郵政民営化の成功が確信できるのであれば、小泉総理や竹中大臣が完全民営化の成功まで経営者として責任を持って見届けるのが筋であるのではないかと思います。もしそれができなければ、もっと慎重に対応してもらいたいと思います。

 本郵政民営化特別委員会で、小泉総理は、郵政民営化が実施された場合の姿を聞かれた際、答弁の中で、郵便局でこんなものも売れるんだ、利用者は便利になりますよと言っています。しかし、現にコンビニや一般商店でも扱っているものを郵便局で改めて販売すれば、それこそ民業圧迫の何物でもありませんし、民間会社になるから民業圧迫にならないよといっても、今から郵便局でそのようなものを売っても利益を出せるはずがありません。ましてや、不動産仲介業、旅行代理店業、リフォームビジネスなどのマーケットは一番淘汰の激しい分野であり、もし政府で自信がおありでしたら、御説明に当たった政府の方々が経営者になって、責任を持ってやっていただけるとありがたいと思います。

 ましてや、コンビニでも利益が上がらない店舗はすぐに閉鎖、撤退してしまう状況の中で、同時に激戦の小売業や他業種に参入して十分利益が出せると言われるのでしたら、その根拠を明確に私たちに示してもらいたいです。

 政府は、郵政民営化のメリットやその効果を、総論ではなく、もっと国民にわかりやすく、具体的数値をもって示してもらいたいのです。同時に、現行の郵政公社の制度のもとでのメリットや経済効果あるいはさまざまな波及効果をあわせて算出し、両者を詳細に比較検討して、国民にその本質をあらわす責任があると思います。

 五十円、八十円の信書も市場競争によって安くなる可能性がありますよと総理は言います。しかし、政府の予想に反して、経営環境がますます厳しくなり、料金が安くならず、むしろ値上げされた場合には、政府はどのように責任をおとりになるのでしょうか。

 今ほど日本の将来の姿が求められているときはありません。資源の少ない日本は、まさに技術と知恵と資本力を出して社会基盤をこれからしっかり築いて、さらに国益を守ることが二十一世紀に本当に必要なことであると思います。

 郵政民営化はこうした国益と地域社会を根本から崩壊させるものであり、郵政民営化によって郵便局ネットワークが寸断されれば国民生活は破綻の道を歩むことになります。その危険性が極めて高い中で、大きなリスクを抱えてなぜあえて郵政民営化を断行するのか、私たち国民には理解できません。小泉総理の構造改革は国民を幸せにする改革であるということを、今でも私たちは信じております。しかし、残念ながら、この郵政民営化に関しては、国民を不幸にする改革であると言わざるを得ません。

 もう一つ大切な点は、安全と安心とは異なるということです。JR西日本福知山線の大事故もそうですが、事故現場にATS―Pという新しいシステムを導入したからといって、安全は確保されても、人々の不安感はそう簡単にはぬぐえません。郵便局を民営化しても、設置基準など幾つもの安全措置を講じるので、地方の郵便局はなくならず、心配は要らないと言われても、民営化されてしまえば、いつ自分の郵便局が不採算等の理由で撤退されるのかわかりません。国民は、地域の生活そのものを奪われる不安に常にさいなまれることになります。若い人々や転居が可能な方々は、大臣が言う、都心へ出てくることも可能であるかもわかりません。しかし、そのことによって地域社会はますます疲弊し、美しく安全で安心な日本が地方から崩れることになります。

 国営公社の郵便局は、普通局、特定局、簡易局を問わず、文字どおり地域社会に安心感を与えています。警察や消防と同じように、安心を担保するには、御存じのように、コスト、お金がかかるのです。このことを国会や政府の皆様方には改めて御認識いただきたいと思います。

 郵便貯金は、全国四千九百二十六万世帯のうち、四千二百二十二万世帯に利用されています。国民の八五・七%の人が郵貯を利用しています。郵貯利用の目的は、病気や不慮の備え、不治の病、老後の蓄え、子供の資金、国営であるから安心、さまざまです。郵貯法には、国民の福祉の増進を図り、あまねく公平に利用できると明記されています。つまり、小口、個人の利用がほとんどであります。郵便局は、国民のためを第一の目的として、さまざまなサービス提供と、地域、社会、国際貢献を実施しているのであり、民間金融機関とは根本的に目的が異なります。したがって、郵便局と民間金融機関とは、それぞれの役割に応じてバランスよく今日では私たちの生活に溶け込んでいるのです。

 一方、民間金融機関は、どうしても利益優先になりがちになり、取れるところから取る方式を基本にしております。その一例としては、土曜、日曜、平日夜間のATMの利用には百五円等の手数料を取っております。最近、幾つかの銀行では、個人客に対する手数料を値上げしているところもあります。郵便局も、民営化されれば当然そのようになります。

 竹中大臣は、郵政民営化によって郵貯は一般の銀行になるので、郵貯法を廃止し、従来の理念とは異なるスタンスでビジネスモデルを構築すると言っておられます。周知のとおり、一般の銀行になるということは利益追求の民間企業になることであり、ビジネスの基本は採算性で、株主のみに、あるいはステークホルダーのみに責任をとる経営形態に変わるということです。

 したがって、採算の合わない郵便局は廃止されることは目に見えております。都市部のみならず、地方部においても郵便局数が減ることは明らかです。設置基準では一市町村に一カ所以上と言われておりますけれども、市町村数は今までの約三千百カ所から千八百カ所程度までに減る状況にあり、過疎地に定義された約七千局の論議ばかりが先行しておりますけれども、実際は過疎地以外の地方都市の郵便局が危機に瀕しております。

 このように国民生活に直接影響を与える最重要課題については、幾つもの先進国で直接国民の真意を問う国民投票が行われております。もちろん、国会は国民の代表の場であることはよく私たちも理解しておりますけれども、私たちの生活に直結している郵政民営化の是非については、国民投票も視野に入れて考えていただきたいと思います。初めての試みとして、私は、ぜひこの国民投票ということも考えていただければというふうに思います。

 さまざまな問題点が明らかになっております。時間がございませんので多く語れませんけれども、あとは質疑応答のときに答えさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

二階委員長 ありがとうございました。

 次に、跡田参考人にお願いいたします。

跡田参考人 慶応大学の跡田でございます。

 本日は、一経済学者、財政学者として、なぜ郵政民営化が必要かを多少理論的に、理屈っぽく解説させていただき、それを踏まえまして、民営化法案に対する私の評価を述べさせていただきたいと思います。

 では、まず、郵政民営化が必要となります三つの理由につきましてお話しさせていただきたいと思います。

 まず第一の理由でございますが、これは、政府が何をすべきかという経済学の最も基本的な考え方から導き出されるものでございます。

 つまり、経済学の基本定理というものがございまして、そこが教えるところでは、政府がすべきことというのは、一つは資源配分の効率化を図るということと、それから所得分配の公正化ということ、非常に基本的なお話でございますが、この二つになるというふうに考えられております。

 この基本的な考え方の中にありますものというのは、営利企業が自由な市場で正しい競争を行えば、国民の生活は向上し、福利も向上する、政府がなくてもそういうことが成り立つというのが、まず、この基本的な考え方のところにございます。

 ここで言う正しい競争という言葉でございますが、これは、協調しながら競争して、土光会長がかつておっしゃられたように、社会の公器として国民のために切磋琢磨するということが競争ということの本質でございます。ですから、経済学が教える競争というのは、弱肉強食というような短絡的な考え方とは全く違っております。ですから、こういうふうに考えていただくのは経済学を専攻しておる我々としては非常に困ることでございまして、もちろん間違っても株式会社を否定するというようなことがあっても困る。我々は資本主義国家の中で生きておりまして、そういう自由な資本主義国家の中で生きていくためには株式会社を否定しないでいただきたいと、あえて申し上げておきたいと思います。

 第二の所得分配の公正化という点につきましては、これは個人間の問題でございますので、本日のテーマとは直接関係ありませんので、本題であります第一の資源配分の効率化と政府の関係にお話を限定させていただきたいと思います。

 では、第一の資源配分の効率化から、政府のすべきことというのは何か、つまり、政府の役割というものをまとめさせていただきたいと思います。この側面から考えますと、市場が成立していない、市場がないという場合と、市場が既に存在しているときとで、政府の役割が違ってまいります。

 もちろん、市場が存在しているときでも、市場をモニターするということは政府の役割と考えられます。また、市場がうまく機能していない、存在していてもうまく機能していないようなときには、介入したりルールをつくったりすることも政府の役割として正当化されます。しかし、市場が存在しているとき、市場が存在するというのは民間企業が存在しているということでございますが、そういう場合に、政府がプレーヤーとしてその市場に直接参入するということは経済学の論理としては正当化されないということでございます。

 他方、市場が成立していないとき、民間企業がいないときには、政府がプレーヤーとして参入し、みずから財やサービスを提供するということも許容されます。明治期に郵便事業とか郵便貯金事業を始めたということはまさにこれに当たるということでございまして、明治政府は正しく認識をされていたというふうに考えていいのではないかと思います。

 しかし、公益性の高いサービスでない限り、いつまでも政府が独占的に供給していくということがいいわけではございません。むしろできる限り民間事業者を育てて市場をつくり出し、政府は撤退していくということが政府の役割であります。

 健全な資本主義国家における政府のすべきことというのは、以上のように論理的にはまとめられます。これらの点から考えますと、郵政公社の持っている四つの機能、これを民間事業者がどういうふうに供給しているかというふうに調べてみますと、サービス供給が全く行われていないというものはございません。

 特に、貯金事業と保険事業は民間により、十分と言うと言い過ぎかもしれませんが、かなり供給されております。それから、郵便事業につきましても、小包については民間がかなり育ってきております。それから、ネットワーク事業につきましても民間で供給され始めております。したがって、どの機能につきましてもかなり市場が発達してきている、民間企業が出てきているというふうに解釈できるわけでして、もはや政府が直接参入する必要性というのはほとんどなくなってきているというふうに私自身としては考えております。

 この辺が第一の、政府の、論理的に考えたときに持っている役割から民営化ということが考え出されるということでございます。

 民営化の第二の理由といたしましては、やはり公社経営の限界という点にあると思われます。

 郵便貯金、簡易保険は、その資金運用面での制約もありますので、このまま続ければ、〇・二%の上乗せ金利という優遇措置を既に廃止しておりますので、こういう点も加わりまして、収支状況が悪化しまして、近い将来、かなり行き詰まりが予想されると計算上も出てまいります。また、郵便事業につきましても、Eメールの普及や宅配事業の発達によりかなり苦戦を強いられることになると予想されております。

 この三つの事業、個々の事業のリスクというものが他の事業に波及するおそれがかなりございます。金融が赤字を出し郵便事業の方の足を引っ張るということも考えられますし、郵便事業が赤字を出して金融業の足を引っ張るというような、金融業にとっては非常に問題のあることが起こる可能性があります。ですから、そうしたリスクを遮断するためにも、これまでの政府保証つきの郵便貯金や簡易保険というものは分離し、新たに四機能に応じたそれぞれの新会社を株式会社として設立するという現在の法案というのは、合理性がかなりあるというふうに考えております。

 もちろん、民営化して、各会社の経営にできる限り自由度を与え、できる限り他企業とのイコールフッティングを実現して、最初に申し上げたような正しい競争を市場で展開させようということをこの法案の中では考えているというふうに私自身は考えておりますし、競争ということをやはり我々自身がもう少し日本の中で正しく認識する必要があるんじゃないかと思っております。

 最後に、ただし、窓口ネットワーク会社につきましては、巨大なネットワークというものを保有しております。これは、今はやりの言葉で申し上げるならソーシャルキャピタル、社会資本として、むしろいろいろなところから活用していく方がいいのではないかということも考えるべきであると思いまして、思い切って民間に開放するということも今後の事業展開の中では検討していくべきではないかと思っております。

 基本的な公社経営というものを、うまく公社の形ではできないということで、民営化ということが必要ではないかというのが第二の理由でございます。

 そして、第三の理由といたしましては、私どもがここ十数年の間、いろいろな形で研究してきた中で一番問題として指摘したいのが、資金の流れというものを官から民に変えるためという点で必要だと。

 状況としましては、一九九〇年代に、家計から百七十兆円ほど郵貯、簡保に資金が流れ込みました。民間の金融機関にも百六十兆ほど流れておりますけれども、民間以上にこの間資金が流れ込むということが起こっております。そして、この資金が政府の財政赤字を補てんしたり、財投システムを通じて政策金融や特殊法人に投入されてまいりました。

 結果論ではありますが、民から官への資金の流れを郵貯、簡保が助長したというふうに言えます。もちろん政府全体の構造改革を進めることが必要なわけでございますが、民から官への資金の流れの最大の窓口であった従来型の郵貯、簡保というものをここで閉じるということは、避けて通ることのできない道ではないかと考えております。

 民営化後の新会社は当然、今までに比べて小さくなりますし、しかも、経営の自由度をかなり高めたものにしておくことがこれからの経営の上では重要ではないかと考えております。民営化の理由としての資金の流れを官から民に変えるという点で、郵政民営化ということも一つの役割が担えるのではないかと考えているということでございます。

 では、最後に、民営化法案について若干のコメントをさせていただきたいと思います。

 今回の民営化法案の最大のポイントは、民営化によって経営の自由度を発揮させるということと、従来から公社が担ってきた公共性というものを担保すること、この二つの点をいかにバランスさせるかという点にあるというふうに私自身は考えております。

 そういうバランスをとるという点におきまして、今回の法案の中では、旧勘定の分離とか、新郵貯会社それから新簡易保険会社という形の、完全に民営化を一たんするという株式の売却、こういうこともやはり想定している。民営化という本質的なところをまずこの辺できちんとやろうという点。

 それから、郵便事業会社、窓口ネットワーク会社を、民営化とは言っておりますけれども、まず株式に関しては持ち株会社が全部持っておくということで、一たん、完全な民営化にはまだ進まずに、ある意味では、特殊法人という形で政府の中に置きながら公共性の担保ということを少し考慮しているということ。

 さらに、その安全性といいますか、窓口ネットワーク会社の問題として、基金の設立による過疎地域での郵便局の維持というような点などにも配慮をされておりまして、政府案は、私から見ますと、かなりよく考えられた案だと高く評価しております。修正という形で若干の部分は入ると思いますけれども、基本路線としては、民営化ということでこういう評価をしているということでございます。

 あえて再度申し上げたい点は、健全な資本主義国家でも市場をいかにうまく機能させるかが政府の重要な仕事でありますから、市場が存在するならば、モニターすることは重要でございますが、政府がいろいろなことに口を挟んだり、いろいろなことを決め過ぎてはいけない。自由な資本主義国家であるということを基本にお考えいただきたいということでございます。

 持ち株会社の株主として、政府が結果責任として経営者にそれを問うということは将来的にも当然あり得ると思います。しかし、枠組みとして、経営者がむしろ自由に判断できるようなものをつくっておくことがまずは重要であります。つまり、政府は個々の問題についての経営判断に立ち入るべきではない。これは普通の資本主義国家ならごく当たり前のことでございますけれども、そういう点はきっちりとお考えいただきたい。

 一番最後に申し上げたい点としては、これだけ巨大な公的企業の民営化というのは世界史上にも例のない初の試みであります。そういう点で、ぜひこの法案をもって成功させていただき、世界に範を示していただきたいと申し上げて、少し早いようですけれども、私の陳述を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。(拍手)

二階委員長 ありがとうございました。

 次に、安田参考人にお願いいたします。

安田参考人 おはようございます。ジャーナリストの安田浩一と申します。よろしくお願いいたします。

 これまで理論と理屈による緻密なお話がございましたので、私はジャーナリストですから、情緒と感情を交えて、ねっとりお話ししたいと思います。

 私は、郵政民営化に反対でございます。その立場から意見を申し上げたいと思います。

 私は、当初から、官から民へというフレーズに対して非常にうさん臭いものを感じておりました。しかも、そうした言葉が官とこれまで歩調を合わせてきた政治家の方々の口から出るということに対して、これは警戒しなければいけないなということを感じるのはジャーナリストとして当然の反応であったと私自身は思っています。

 民にできることは民にというフレーズも同様ですよね。質と採算を度外視すれば、民間にできないことなんて何もないわけです。警察だって消防だって民間にできる。しかし、それをしなかったのは、やはり公共性という概念があるからこそ、皆さん、その仕組み、枠組みを守ってこられたんじゃないでしょうか。

 確かに、官から民へというフレーズは耳に心地よく響きます。どことなく、奪われたものを取り返すというニュアンスを感じなくもない。では、我々国民一人一人は郵政民営化という大仕掛けによって何を取り戻すことができるのか、何を取り返すことができるのか、何を得ることができるのか。もっと言えば、民営化は我々の生活、暮らしにどんな豊かさを与えてくれるのか。ほとんど何もないじゃないですか。

 何も私は、私自身に何もメリットがないから民営化に反対だと言いたいわけではありません。ですが、民営化のもたらすメリットって何ですか。これは極めて限定された場所に集中するわけですよね。当然でしょう。官から民へというフレーズの民というのは、あくまでも民間資本の民であって、国民の民でもなければ民間人の民でもない。そもそも民営化論議には当初から国民生活という観点があったんでしょうか。なかったですよね。

 思い起こしてください。民営化論議の端緒は何だったでしょうか。財投の問題だったでしょう、最初は。皆さん一生懸命、財投の問題、財投改革、財投改革と民営化推進論者の方はおっしゃっていたわけです。財投改革というテーマの中から郵政民営化が出てきた。言うなれば、底なしのバケツのような出口からじゃぶじゃぶと金が流れ出ていく。だから、その金の使われ方に問題がある、入り口を締め上げろ、そのような入り口出口論というかロジックが展開されていたと思います。

 これを少しばかり下品な表現に例えますと、私が出版社や新聞社からもらった原稿料を勝ち目のないばくちにつぎ込んで生活破綻してしまう。でも、その場合真っ先にするべきは私自身の更生であり、あるいはばくちの現場が違法カジノであればそこを取り締まったり手入れしたり、そういうことじゃないでしょうか。私のような不良ギャンブラーに原稿料を支払う新聞社や出版社がおかしいと、その事業にまで責任を求めるということは実際にできませんし、することでもない、すべきことでもない。

 つまり、財投を問題視するのであれば、その使われ方を真摯に議論して、例えば特殊法人はどのようにあるべきなのか、その目的と役割を明確化して改革すればいいだけの話です。金が集まるからいけないのだというのは余りにも乱暴な議論だと私は思っています。

 しかし、財投の義務預託制度というのは二〇〇一年に既に廃止されているわけですよね。郵貯で集めたお金が特殊法人に流れて焦げつくという構図自体はもう既に崩れているわけです。実際、自主運用されている資金の一部は財投債の購入などに充てられておりますから、しかし、郵政が財投債の購入をやめてしまえば、財務省はほかの名目を立てて国債を発行するだけの話ですから、今の状況においては、そんなことを言ってもしようがない。

 だから、国内の個人金融資産、これは全部で一千四百兆円あるんですか。その二五%に当たる郵貯・簡保資金の三百五十兆円、これを投資信託や株式などリスク経済市場へ放出させることで経済を活性化させようという新たなロジックが出てくるわけですよね。事実、政府は、「郵政民営化は、日本活性化です。」なんという大見出しの広告をことし一月、新聞各紙に掲載したじゃないですか。

 先ほど申し上げましたように、既に郵貯・簡保資金は自主的に運用できるようになっています。それでもやはり民営化を声高に言い続けるのは一体だれのためなのか。さんざん言われていることでありますけれども、あえて言いましょう。国内の銀行、保険業界、それから皆さんが最も大好きなアメリカじゃないですか。

 昨年十一月、日米財界人会議は、郵貯、簡保は本来的に廃止されるべきであるとする共同声明を出していますよね。そして、民営化後の新会社に対して、政府保証の廃止、民間と同様の税負担ということを求めております。これは、アメリカの通商代表部、USTRも、日本政府に対して、郵政会社の優遇は日米双方の企業にとって長年の懸念となっているということを訴えている。

 この優遇という点についても、これは政府の皆さんおっしゃっていますよね、民間ならば当然負担すべきものを郵政は負担していないと。当然じゃないですか、これ。民間企業ができないサービスを、つまり民間企業がやらない公共サービスを郵政会社は提供しているわけです。つまり、これを見えない国民負担という言い方に言いかえることもできるわけですけれども、だからこそ郵便法の第一条では、「公共の福祉を増進すること」という文言が郵便局の仕事の目的としてしっかりと明記されているわけです。

 例えば、社会政策制度としての第三種、第四種の郵便、これは障害者に対する割引サービスなどですけれども、毎年赤字が出ていますよ。二百億の赤字ですか。しかし、これは郵便法で言うところの公共の福祉のためにあえてその制度を存続させてきているのであって、それこそが公共サービスの真髄ではないんですか。

 郵便局は全国に二万四千局あると言われています。この数は全国の公立の小学校とほぼ同じ数だと言われていますよね。全国隅々に毛細血管のようなネットワークをつくり出し、最も身近な窓口として機能している郵便局。当然赤字も出るでしょう。特定局の赤字だけでも年間五百億円ぐらいに達するんじゃないんですか。それでもこのネットワークを維持してきたのは、やはり公共の福祉という概念があったからこそ、ここまで皆さん一生懸命守ってこられたんじゃないでしょうか。

 これまで郵便局に求められてきたのは、社会的に必要なサービスをあまねく公平に提供するという理念ではなかったんでしょうか。これは民間企業ではできません。また民間に求めるべきものでもないですよね。都市部も地方も僻地も差別しない、大金持ちも小口の貯金者も差別しない、金利に差をつけない、簡保でいえば職業によって差別をしない。つまり、郵便局というのは国民にとってぎりぎりのセーフティーネットであり、一種の社会保障制度なんじゃないですか。そうした理念によって維持されてきたのではなかったでしょうか。その使命はもう終わっちゃったんですかね。

 民営化によって、あまねく公平に提供されてきた郵貯そして簡保は廃止されます。そして新たな民間銀行と民間保険会社がつくられるわけですけれども、この新会社は、全国あまねく公平に業務を行わなければならないといった義務が明確に担保されているんですか。

 ユニバーサルサービスを維持するためとして、基金の創設を政府は法案に盛り込んでいます。これは株式の売却益、配当収入などいわゆる運用益で賄うと言っている。この運用益で足りますか。そもそも運用に絶対失敗しないという担保、またこれはどこにあるんですか。

 それから、民営化によってサービスがよくなるといいますけれども、これも本当なのかどうか、私わかりません。当然、これまで公共サービスとして提供してきたものの一部が、これももうかる分野だけなんでしょうけれども、厳しい競争社会の中にほうり出されます。

 しかし、もうかる分野で競争すれば、当然ながら、もうからない分野を値上げするか切り捨てるかしなければならなくなるのではないでしょうか。これでユニバーサルサービスが維持できるのかどうか。これはできないでしょう。例えば、国鉄がJRにかわり赤字ローカル線が廃止になったように、電電公社がNTTにかわり無料だった番号案内が有料化されたように、一部の便利さと引きかえに、必ず失うものが出てくるに違いないと私は思っております。

 私は先日、JR西日本の尼崎脱線事故、こちらを取材しました。いろいろ言いたいことはありますけれども、そこで目にしたのは、民営化以降、極端とも言える競争原理の導入によってゆがめられた安全軽視の企業体質です。誤解しないでくださいね。私、民間企業がいけないなんと言うつもりはさらさらありませんけれども、ただし、あの過密ダイヤ、無謀なスピードアップ、そして安全装置に対する投資の不足、これらはすべて利益のために導入された政策です。

 公共性の求められる事業がそれを放棄して利益一辺倒に傾いた場合、何が犠牲になるか。鉄道会社の場合には人命だったんですけれども、では、郵便局の場合どうなるか。我々の生活、暮らし、そうしたものに何も犠牲がないということを果たして政府は断言できるのか。

 実際、郵政公社は既に民営化を先取りするような政策を導入しています。いわゆるトヨタ方式という生産性向上システム、作業管理システムですか、公社ではこれをJPSと呼んでいます。これは評価はいろいろありますが、私は、このシステムの最大の目的は効率化ということにあると思っておりますし、事実、それがうまく機能していないと判断しております。

 埼玉県の越谷郵便局、こちらからこのJPSは始まりました。今や全国一千局にJPSは拡大されています。公社当局はこれを民営化の防波堤としているのか前哨戦としているのか僕はよくわかりませんが、いずれにせよ、質の高い多様なサービスが可能となり、数百億円のコスト削減に成功したと一応公社自身は評価しているわけです。

 しかし、現場を取材すると、全く違った声が聞こえてくる。郵便物の不着、おくれ、事故、これがふえたと訴える声が非常に強い。利用者からの苦情がふえている、そう訴える声もある。何よりも労働環境の悪化を訴える声が強い。サービス残業の増加、これは皆さん既に御存じかと思います。昨年十月から十二月、わずか三カ月間の間に三十二億円もの不払い残業代が判明している。これは年間で計算したら幾らになるんでしょう。しかも、このJPSの総本山を自称する越谷郵便局では、在職死した職員の遺族がつい最近、公務災害の訴えを起こしているわけです。

 こうした犠牲あるいはサービス低下という事態を招きながら、プレ民営化ともいうのか、このトヨタ方式導入が果たして成功したと言えるのか。人件費が減った減ったと喜んでいるのは公社当局だけでしょう。それはそうです。もう既に民営化は進行しているんです。一年間に一万人もの人がもう既に減らされているわけですね、要員が。

 しかし、当初、たった一つ、たびたび例に挙げるこの越谷局では、コスト削減が達成されたと喧伝されながら、去年十二月からゆうメイトさんを、これはアルバイト職員のことですが、内勤で十三名急遽採用している。そしてことしの二月には外勤のゆうメイトを二十二名、これまた急に採用している。さらに正社員、普通これは四月に入りますが、人が足りなくなって、慌ててことしの二月、本来四月に入るべき正職員を五名前倒しで採用している。人減らしをしながら、結局、維持、運営、管理ができなくて、慌てて人をふやしているわけです。今のままですと、満足なサービスが提供できないわけです。

 この時点で、もう既に、プレ民営化というかプチ民営化というか、民営化の実験は早くも職員からも利用者からも見放されているというのではないでしょうか。

 繰り返しますと、既に民営化の手法は取り入れられているわけです。人は減らされているし、小包分野でも、競合他社と激しく争っているだけでなくて、公社内部にも競争の原理が取り入れられ、成果主義が導入され、もちろん職員間の営業競争も常態化しているわけです。

 私たち国民の多くは、この競争に明け暮れる、こんな郵便局を果たして望んでいるのでしょうか。あるいは、こんなできの悪い民営化ではなくて、では、もっと姿形のはっきりしたもの、例えば郵便局がコンビニエンスストアになるとか、そんなことを果たして望んでいるのか。コンビニ、チケット販売、リフォーム業、これらいわゆる皆さんが言うところの多彩な事業へ進出できるなんということがさもメリットであるかのように論じられていますけれども、既にほかの民間企業が進出している分野に参入する必要が果たしてあるのかどうか。そんな必要性を感じていない人が多いからこそ、全国の地方議会で九割以上の議会が民営化反対あるいは慎重にという決議を定めているわけですよね。

 私、つくづく思うんですが、民営化を一生懸命に推進される立場にある方は果たしてどういう社会を目指しているのでしょうか。市場という枠組みの中に郵便局を追いやり、公共サービスを手放し、国民には自己責任と自己努力を求める、そういった市場原理に基づいた社会、例えば、これはアメリカの例を見てもそうですけれども、口座を持てない人が三百万人いるような社会、果たしてこれを求めているのか。そのような社会で構わないというのであれば、そういう説明をしっかりしていただきたいと思います。

 しかも、私は、特に保守を自認されている先生方に訴えたいのですけれども、先生方はいつも、国民を守る、国を守る、日本の伝統と文化を守るとおっしゃっているわけですよ。日本という国土の隅々まで届くネットワークを構築し、公平性、公共性を持って機能してきたこの郵便行政というのは、日本の誇るべき文化だと思いませんか、誇るべき伝統ではないんですか。国民を守るというのであれば、多くの国民が社会保障として認識している、あるいはそのために機能している郵便局をぜひとも僕は守っていただきたいと思う、体を張っても守るべきだと思う。それが保守の真髄でしょう。保守の矜持というものだと思いますよ。

 民営化というのは、さまざまな歯どめが用意されているとはいえ、民営化されてしまえば、当然ながら、何よりも利益優先の体質へと変わらざるを得ません。国民に安全と安心を与える、そう力説された先生方は、ぜひともその公約を守っていただきたいと思います。少なくとも、民営化が絶対に国民を不幸にしないという担保がどこにあるのか、そのぐらい明確に示していただきたいと思います。

 もう一度言います。国民生活の安定を脅かす郵政民営化には反対します。民間でやるべきことは民間で、これは当然でしょう。官でやらなければならないことは、責任を持って官が最後までその責務を全うしてほしい、私はそう思っております。

 以上です。ありがとうございました。(拍手)

二階委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

二階委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。葉梨康弘君。

葉梨委員 委員長、どうもありがとうございます。また、参考人の皆さん、朝早くから、本当にお忙しいところ、ありがとうございます。

 百時間を超えるこの郵政民営化の審議です。参考人の質疑ではございますけれども、本当に、自民党としては私が最後の質問者ということになりますので、気合いを入れて質問をさせていただきたいと思います。そしてまた、こういう機会を与えていただいたこと、大変光栄に存じております。

 そこで、まず、安田参考人に一問、質問を申し上げます。

 私自身も、いろいろな方がいろいろなことを言われていますけれども、個人的には、郵便局でいろいろなものを売ってほしいというふうに考えている一人ではありません。やはり郵便局においては堅実なサービスをしっかり提供してほしい、これからも郵便局には、郵便、金融それから保険、そしてそれに付随するといいますか、かたいサービスとして一定の公共的なサービス、そういったものがやはり私自身は国民から求められているんじゃないかというふうに個人的には思っております。

 安田参考人から御見解を伺いたいと思います。

安田参考人 まさにおっしゃるとおりだと思います。

葉梨委員 ありがとうございます。

 それでは、皆さん、お手元に資料は回っていますでしょうか。

 次に、石井参考人に何点か質問させていただきたいと思います。

 なぜこういう資料をつくったか。ずっとこの百時間ぐらいの質疑の中で、郵便局は大体小学校と同じようなものである、あるいは小学校と大体数が似ている、あるいは先ほど警察、消防と一緒だというような話があったんですが、私も若いつもりなんですけれども年を重ねておりまして、ちょうどかれこれ十九年か二十年ぐらいになります。昭和六十二年、六十三年なんです。昭和五十九年に中曽根行革において警察官の増員がストップしたんです。特に、交番それから駐在所、これは地域住民のための本当に社会のインフラだというふうに私は思います。その後、何とかこれの増員を回復しなきゃいけない。ただし、当時の大蔵省は大変きつうございました。当時私は警察庁でその担当の課長補佐をやっておりましたけれども、そこでこの設置基準というのをつくった。

 そして、ここに出ているのは数だけなんですけれども、駐在所、派出所については、大体七百世帯のところに一人置いてほしい、それから駅で乗降客があれば、大体五千人ぐらいのところで置いてほしい、そういうのをずっと緻密に積み上げまして、当時、最も治安が問題となっておりました千葉県、それから神奈川県、埼玉県、その三県について、約九百人程度の増員をやっと認めていただいた。その中で、いろんなインフラというのを考える機会を得ました。

 ここにもありますとおり、交番、駐在所の数というのは全国で一万四千一百一、警察署の数が千二百六十九です。郵便局については、普通局が千三百八、大体これが警察署に対応してまいります。それから、特定局が一万八千九百三十三。そして、よく言われる小学校が二万三千百六十。プラスとして、市町村の設置率がまだ九一%程度なんですが、これに公民館というのがあるんです。公民館が一万七千九百四十七。大体このレベルというのに合ってきているんです。これがやはり日本の地域社会なのかなということを感じたことがございます。

 そして、交番ですけれども、例えば交番の場合ですと、犯罪、被害に遭った人が車に乗っていくわけにもなかなかいきません。やはりある程度歩いていける範囲にあってほしいということがあるんだと思います。小学校、小学生というのは車を運転することができません。ですから、やはり歩いて小学校に行く、そういうような地域社会というのが一つあるんだろうと思います。そして公民館、これは御老人、子供のやはり文化の拠点です。ここにも意義というのは書いてありますけれども。そしてお酒を飲むこともあるかもわからない。ですから、やはりある程度の地域社会に一つぐらいは必要だろう。

 そして、郵便局というのは何かといえば、やはり今の現状においては、お年寄りが年金を受け取る、それから恩給を受け取る、さらには簡保を受け取る。そういったことで、大体一つのインフラとして同じようなところになっている。これが日本なのかなということを当時感じたことを覚えております。

 そこで、石井参考人に一つお聞きしたいと思います。

 郵便局は、私自身はこのような形で地域住民の社会生活を支える大切なインフラであるというふうに認識しておりますけれども、先ほどの意見陳述にもございましたけれども、この点、改めて簡単にお答えを願いたいと思います。

石井参考人 お答えします。

 今の委員の御説明そしてまた御指摘は全くそのとおりでございまして、警察の特に交番、小学校、公民館、郵便局は、まさに私たちの地域社会を守る一番の公的な拠点である。それで、小学校の場合ですけれども、同じ数が大体一・一キロ程度に郵便局も小学校も配置されているということはよく言われております。

 特に、ここでもう一つつけ加えたいのは、郵便局は、子ども一一〇番、こういったことを今進めておりまして、登下校の際に何かあったときには郵便局に駆け込むということも含めて、いわゆるその周辺の安心、安全を守る大きな拠点になっているということでございます。

葉梨委員 子ども一一〇番も存じております。実は、警察庁の少年課におりました当時、平成九年でしたか、岐阜県の可児市でやられていました子ども一一〇番を全国に紹介したのは私なんでございます。

 それで、事実関係についてさらにお答えを願いたいと思います。

 郵政公社になってからまだ二年なんですが、公社以前の郵政事業の姿ということなんです。ここは事実として石井参考人に認識を承りたいと思います。郵便貯金について、郵政事業庁、さらに郵政省において資金の運用を行っていたかどうか、この点、一点だけ事実関係を確認させていただきたいと思います。

石井参考人 お答えします。

 既に旧郵政省の時代から、金融自由化対策資金ということで、二割程度旧郵政省の方では資金運用をやっておりまして、その経験というのが二年前の日本郵政公社にも引き継がれ、そしてまた、さまざまな観点から資金運用のノウハウを蓄積しているということでございます。

葉梨委員 ちょっともう一度承りたいのは、その二割程度なんですが、あとの八割についてはどういう形でやられていたか、お答え願いたいと思います。

石井参考人 あとの八割程度は、御存じのように元金、元本を保証するということで、安心、確実、有利な運用を行うというのが郵貯の運用の基本原理だというふうに私は理解しております。

葉梨委員 先ほど石井参考人からお話がございましたけれども、廃止されたといっても、今ちょっと事実関係の確認ですが、郵政公社以前の話として、郵便貯金の運用は大蔵省資金運用部に任せていたのではないんでしょうか。お答え願いたいと思います。

石井参考人 そのとおりでございます。

 郵貯資金は、基本的には資金運用部に全額預託する。二割というのは、ちょっと御説明が不足しておりましたけれども、資金運用部の方から金融自由化対策資金としてまた戻していただいて、そして運用するというやり方でございます。

葉梨委員 一応、全額資金運用部に預託しておったということでございます。

 それからもう一つ、石井参考人に承りたいと思います。

 まさに郵便局というのは、警察、交番それから小学校と並ぶ、私自身も大変な社会生活のインフラだというふうに思っております。ただし、ここでやはり考えていかなければいけないことというのは、この質疑の中で、郵政公社のままだったらじり貧になる、じり貧になるという話がずっとあったわけです。ただ、じり貧になった後何があるかということが出てきていないんです。

 私は、官のままでいたとしても、郵便局の統廃合というのは、もしも郵政公社の経営がじり貧になれば起こらざるを得ないんじゃないかという考え方を持っているんですが、石井先生、そこら辺の御懸念についてお答え願いたいと思います。

石井参考人 お答えします。

 現在、日本郵政公社になって二年ちょっとになっておりますけれども、委員の皆様方にも資料が既に本委員会で配られていると思いますけれども、その間さまざまなサービス改善をやっておりまして、そしてまた新商品等も、例えば郵便でいえば、EXPACKという五百円で翌日配達というサービスも含めて、さまざまなサービスが導入されております。

 したがって、私はじり貧にならないというふうに思っておりますし、今回の郵政民営化の中で一番国民が不思議に思っているのは、これは政府の方から出していただきました骨格試算にもありますように、非常に大ざっぱな数値しか出てこないということで、相当各論の数値を積み上げで持っているんじゃないかというふうに思います。したがって、そういった各論の数値も出していただいて、そして現行の郵政公社の中でのシミュレーション、そしてまた民営化した場合のシミュレーション、これを比較するということが私は一番大事だと思います。

葉梨委員 先ほど安田参考人の方から、既に郵政公社においては民営化的な手法が行われているということを言われました。それで、今の、その試算を出してくださいということがございましたけれども、私は別に答える立場にはないんですけれども。

 郵政公社という形が続いたときに、皆さんじり貧、じり貧という形で言われるわけですが、石井先生はじり貧にならないというふうに考えるという見解でございました。ただ、郵便局が一局たりとも統廃合されないということを郵政公社のままでいたときに保証できる、そこを断言できる自信はありますか。

石井参考人 それは、先生もよく御存じのように、市場環境は刻々と変化しておりますので、きょうも申し上げたいのは、やはり官であっても、市場環境の変化に適応しなかったらこれは事業として成り立ちませんね。ですから、今の日本郵政公社の事業は、国営の公社でありますけれども、これは事業として全額収入でコストを賄っている、税金は一切入っていない、そこは事業で独立採算でやっているということを私はもう一度改めて申し上げたいと思うんですね。

 ですから、そこが基本原理でございますので、市場環境の変化に応じて郵便局の統廃合というのは当然考えられることだと思います。

葉梨委員 これはまさに、市場環境の状況に応じてということだったと思います。

 なぜ私がこういう質問をしているかということなんですが、先ほど警察官の増員ということで、派出所、駐在所の設置基準を当時つくったのは、一つには、やはり治安が非常に首都圏の近郊において悪化いたしまして、警察官を増員しなきゃいけないというのがあったんですけれども、もう一つは、ずっと従来行われておりました警察の中でのパワーシフトというのがあって、派出所、駐在所が統合されていたんです。三十年前に、昭和四十九年、派出所、交番の数は、駐在所を合わせますと一万六千九十七だったんですけれども、これが今現在は、ここにもありますとおり一万四千百一ということになっているんです。

 ですから、これはまさに税金を投入する分野でもやはりパワーシフトというのが起こってきまして、それで数が減らされてきました。私は、空き交番対策を言っているぐらいですから、そもそも今の警察官の人数というのは少な過ぎるんだろうというふうには思いますけれども、やはり何となく……(発言する者あり)裏金の話はここではしていない。交番というのはもっともっと津々浦々に広げていかなきゃいけないけれども、やはりリストラというのはどうしても起こってくる。まさに石井先生がおっしゃられましたけれども、独立採算制でやっていて、それで市場環境の中で統廃合が起こらない可能性というのはどうなのかなということを思っております。

 私自身は、むしろ、やはり郵便局の資金運用ということで今まで以上にもうけていただかないと郵便局のネットワークというのは維持できない、もうけるためには民営化というのも一つの手段なのかなということを考えている次第なんです。

 次に、跡田参考人にお話を伺いたいと思います。

 資料の二をめくっていただきたいと思います。これは、それぞれディスクロージャー誌及び有価証券報告書から合算したものでございます。郵貯及び民間預金に係る預貯金残高及び支払い利息の比較ということです。

 まず郵便貯金、これは二〇〇四年で残高が二百二十兆四百九十八億二千百万円です。これに対して総貯金の支払い利子が一兆二千九百八十億九千二百万円。これは定額貯金の分が高いということはよく知られていることでございます。それから各四大メガバンク、信託等を含みませんで、三井住友、東京三菱、みずほ及びUFJ、これは預金残高の高い順に示しているんですが、これを合算しますとほぼ合ってくる、二百二十一兆六千七百五億八千万円、これが総預金残高で、これに対する支払い利息が三千二百四十二億五千八百万円。

 跡田参考人にお答え願いたいのは、これは郵貯の方が利子がすごくいいわけですね。専門家として、何でこんなことが起こるんだろうか、率直に教えていただきたいと思います。

跡田参考人 郵貯が非常に努力しているからと申し上げたいところなんですが、やはり財投からお金を、金利分をいただくという形でこれまでやってきた部分、もう既に、財投が今改革が進んでおりますから、少し入ってくる収入が落ちている分、本当は払えなくなるような状況が起こるんですけれども、今までの場合にはやはり財投から〇・二%の上乗せ金利をもらっていたということが現状として高い預金利子を払うことになっているというふうに申し上げるのが一番的確かと思います。

 しかし、これは、契約が既に十年前から行われている分を払わざるを得ないですから、要するに平成五年ごろの金利が今よりも少し高かったということがこういう結果を生んでいるということとあわせてお考えいただけたらと思います。

葉梨委員 跡田参考人から、今、財投の上乗せ金利〇・二%という話がございました。実は、平成十五年なんですけれども、預託金というのは廃止になった、廃止になったといいますけれども、まだ残っております。この預託金が平成十五年ですと約百五十兆ほど残っていたというふうに記憶しておりますけれども、それの運用利回りというのは二・四%で回しております。ところが、一般の銀行で、この四行をそれぞれ見てみますと、いわゆる貸し金の運用利回りというか預金の運用利回りですけれども、大体一・九%なんですね。非常に有利な条件で回していただいているという預託金利が残っているわけです。まだこれも残っている。ことしも残っている。これが平成十九年になくなってまいります。

 預託金の廃止というのは、七年間なんですけれども、今、跡田参考人からもお話がございましたとおり、郵貯、定額貯金というのは十年なんですね。平成十九年からあと三年間というのは、相当ここら辺のところ、経営的にも逼迫という状況が考えられるんじゃないかと私は思うんですけれども、跡田参考人から御見解をお願いしたいと思います。

跡田参考人 私の研究室でいろいろ試算をした限りにおきましては、財投改革の終了する年、その年を相前後して、国債の金利分しか入ってまいりませんので、契約した金利をかなり下回る収入しか入らないということが生じますので、郵貯も手持ちの準備金のようなものを削らざるを得なくなりますし、簡保はさらに厳しい状況が早く起こり始めるというようなのが数字としては出ております。

 詳しくは、やはり資産構成をきちんと開示していただかないと、我々の段階で厳密な数字を出すことはできませんけれども、少なくとも現状よりも収支がかなり悪化するということは、財投改革が進みますと同時に起こるというふうに考えていただいた方がいいと思います。

葉梨委員 跡田参考人からのお話は非常に重要なのです。平成十九年以降は、今じり貧、じり貧と言っていますけれども、じり貧以下になっちゃう可能性がある。じり貧以下になったときに、先ほどのお話なんですが、郵便局の統廃合が起こらないかといったら、私はその可能性は非常に低いんじゃないかと思います。

 税金を投入するのか、あるいは独立採算でやっていただくのか、ここのところの分かれ道の中で、やはり独立採算でやっていただくとなれば、ある程度、今の定額貯金なんかの勘定というのを切り離して、そして、新しいところではもうけていただく、そのもうけをしっかりと郵便局ネットワークの維持に使っていただく、こういうことがやはり私は必要になってくるんじゃないかと思うんです。

 そこで、もう一点、跡田参考人に別の観点からお尋ねしたいんです。

 よく分社化ということで、分割されてしまうということが言われています。ただ、先ほど石井参考人の質疑にもありましたけれども、少なくとも郵貯については、この二年間は別として、それ以前の百三十年の歴史の中で、資金運用部預託は戦後ですけれども、郵政事業では資金の運用というのはやっていなかったんです。郵便局において三事業一体のシナジー効果と言いますけれども、郵便局でやっている仕事というのは何なんだ。貯金を集めること、それから支払うこと、そして郵便の窓口、まさに窓口のシナジー効果ではなかったかなというふうに考えています。

 これは、何でそういうことを言うかというと、まさに交番がそうなんです。すべてのことを受け付けて非常に効率的にやるけれども、専門のしっかりした取り調べは刑事にやっていただく、警備警察は警備をやっていただく、ただし窓口のシナジー効果というのは、まさにこの交番が、日本の国民から信用されているその基礎だと思うんです。

 郵便局において、今回、窓口会社となったのは、私はそこら辺の意図もあるのかなというふうに考えていますけれども、ここら辺のシナジー効果というのは、今までの郵政事業については、やはり窓口においてのシナジー効果だったんじゃないかというふうに私は感じております。跡田参考人から見解を伺いたいと思います。

跡田参考人 委員のおっしゃるとおりでございまして、今回、郵政公社の機能というのを根本的に見直したときに、四つの機能に分けられるんじゃないかというふうに出てまいりまして、三つは従来からの三事業でございますけれども、最後の点が窓口ネットワークといいますか、郵便局というもの、その存在がシナジー効果を生んでいる。

 その部分の機能というものをやはり我々は注目して、これをうまく使いながらこれからの苦しい状況を乗り越えていったらどうかというふうに考えたものが今の民営化法案に反映されているというふうに考えております。

葉梨委員 いろいろとやじも飛んでいますが、ぜひ民主党の方々にも、警察をいじめるだけじゃなくて、交番の増員もよろしくお願いを申し上げたいというふうに思います。

 最後に、福田参考人から伺いたいと思います。

 私は、民営化ということに関して見たら、民営化するとしたら分社化しかないかなというふうに思っているんです。何でかというと、これは分社化ではございません。地元でいろいろと話をしておりますが、これは新社化だと。つまり、この二年の歴史を除いて、今まで運用というのをやっていなかったところを切り離して、新しい会社をつくる。今のような窓口でのシナジー効果、これは確実に守ってもらうというところだと思うんですが、窓口会社と貯金会社を一緒にしてしまうと、やはりいろいろな問題点が出てくるんじゃないかというふうに思っております。

 そこで、福田参考人から二点伺いたいと思います。

 これは銀行マンとして、対立、競争関係にあるということじゃなくて、客観的にいろいろとお話を聞きたいと思うんですが、さっきも言いましたとおり、郵便局の窓口というのは、まさに地域と密着したインフラです。これだけ地域とずぶずぶの関係にある郵便局において融資業務を、どうしたって本局というのは、千二百六十九警察署、千三百八普通局、大体支店の数もそこら辺に見合ってくるだろうと思うんですが、そこで一緒になりますと、やはり融資業務をやれという話になる。

 まず前段の質問は、社会生活のインフラである郵便局の窓口でもしも融資を行うとなると、審査が甘くなりますから、不良債権の山をつくってしまうんじゃないかということが一つ。それから、次の質問は競争者としてお聞きしたいんですけれども、やはり地域の金融、これのルールというのを極めて乱してしまうのではないかというふうに考えます。

 この二点について、福田参考人から簡潔にお答えを願いたいと思います。

福田参考人 お答えいたします。

 郵便局が大変地域に密着したインフラであるということは、御指摘のとおりだと思います。

 そして、融資業務につきましては、やはり一朝一夕には、なかなか難しい面があるわけでございまして、当然審査能力を備えていなければなりませんし、それは当然のこととして、その後、融資実行後も、融資先の経営実態をよく把握して、その債権を管理していくという、いわば与信管理の体制整備も必要でございますので、本来は相当な準備が必要かと思うわけでございます。

 そういう体制整備がもし図られないままに融資業務に参入した場合には、まさに、その資金量が余りにも巨大でございますので、不良債権の山とはいかないまでも、かなり大きなリスクを抱えることになるのではないかというふうに思っております。

 それから、競争者としてということでございますが、民営化後の郵便貯金銀行がどのようなビジネスモデルをお考えになるのかまだよくわからないわけでございますが、もし融資分野に直接参入をされてくるということでございますと、冒頭申し上げましたように、地域金融の円滑化、あるいは今まで地域金融機関が、これは地方銀行に限りません、第二地方銀行、信用金庫、信用組合、あるいは農協まで含めて支えてまいりました地域金融にかなり脅威になるということは申し上げたいと存じます。

葉梨委員 私も個人的には、あの郵便局長さんたちに金貸しはやっていただきたくないなということを思っている一人でございます。やはり、地域に密着して、本当に地域に貢献する業務というのを行っていただく。そのために、民営化という中では、やはり融資業務と窓口での業務、これをしっかり分社化するというのは、私は郵便局長さんたちのためにも必要なことだというふうに思っています。

 そして、さっきも言いましたが、今回の分社化は、分社化じゃなくて、長い郵政事業の歴史の中では新社化だろうと思います。当然、これからいろいろな動きの中で見直しというのを行っていかなきゃいけないんですが、せんだって、六月二十三日の質疑で、地銀協の会長さんから、この新しい会社とは仲よくできないという御発言があって、民主党さんからは大拍手を受けたということがございました。ただし、今言ったような形でしっかり窓口と切り離す、そして民営ということを徹底した中で競争条件のイコールフッティングを図っていく、そして、ある程度ファンド的なものに特化するというようなことであれば、あながち地銀さんと仲よくできないということもないんじゃないかと私は考えますけれども、御見解を伺いたいと思います。

福田参考人 私ども銀行業界も、完全民営化後につきまして競争なり協調なりを否定するものでは全くございません。ただ、暗黙の政府保証がある間に一方的に業務拡大となりますと、いろいろ混乱を招くということでございます。

 したがいまして、将来のビジネスモデルとしてお互いに協調する部分があるということは、十分に可能性は考えております。

葉梨委員 ありがとうございました。

 いろいろとこの法案、修正になってもなかなかわかりづらいという意見が実は自民党の中でもあるんですけれども、私、個人的に思うに、運用部門の完全民営というのは、ある意味で、民間との競争を、イコールフッティングというのを確保するための男の美学なのかなという感じもしないではございません。

 しかしながら、ただ、やはりこれから考えていかなきゃいけないことというのは、政府の出資が残る、言ったら、民間とはいえ特殊会社としての郵便局、そこに対して、金融の代理店契約、それから保険の代理店契約、そういったものがしっかりと安定的に供給されるということがやはり私は必要だと思います。

 そういったような安定的な形での供給を行う、いわゆる貯金会社、それから窓口会社との関係、そういうようなスキームについて地銀協会さんとしては賛成されるという立場でよろしいのかどうか、御見解を承りたいと思います。

福田参考人 お答えいたします。

 私ども、郵便貯金銀行の民営化そのものに反対を申し上げているわけではございません。冒頭で申し上げましたように、規模をそこそこ縮小していただくということと、公平な競争条件を実現していただく、そして地域との共存という三つを特にお願いいたしましたが、そういう前提のもとに、民営化については評価しているものでございます。

葉梨委員 今後も、これが走り出した中で、地域の利便性、ある意味での公共性、社会生活のインフラの確保、それともう一つは民間とのしっかりした競争条件の公平な確保、そういった観点から、やはり我々もこの法律の施行状況というのをしっかり監視していかなきゃいけないなということを申し上げまして、私の質疑を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございます。

二階委員長 次に、石井啓一君。

石井(啓)委員 おはようございます。公明党の石井啓一でございます。

 参考人の皆様には、きょうは大変お忙しいところをお越しいただきまして、ありがとうございます。

 私にとりましても、本日の質疑で長いこの特別委員会の質疑が終了ということになりまして、参考人質疑も含めまして私は十回質問に立たせていただきまして、大変思い入れのある委員会になったことを申し上げたいと思いますが、それはさておきまして、まず、福田参考人から質問をさせていただきたいと思います。

 先ほど三点おっしゃった中で、まず経営規模の縮小のことをおっしゃいましたが、政府の骨格経営試算、あるいは採算性に関する試算によりますと、民営化移行期間十年間で郵貯銀行の残高が二百二十兆から百四十兆に縮小する、その後は百四十兆で維持していくという試算をしておりますし、また、この百四十兆のうち、約四分の一に当たる三十五兆をリスク資産で運用する。これは貸し出しだけではなくて、株式も含みますし、あるいは市場性の商品、資産担保証券あるいはシンジケートローン、さまざまなことが考えられているようですけれども、三十五兆円をリスク資産で運用する。

 これらの百四十兆あるいは三十五兆という規模についてどのように御評価をされるのか、また、地方銀行協会さんとしては、郵貯銀行の規模はどの程度が適正というふうにお考えになっていらっしゃるのか、この点についてまずお伺いをいたしたいと思います。

福田参考人 大変難しい御質問でございましたが、政府の試算におきまして郵便貯金銀行がどのような融資業務を取り扱うという想定なのか詳しくは存じておりませんけれども、融資などのリスク資産に運用されるのが今御指摘の三十五兆円ということでございますと、仮にでございますが、計数的に見ますと、地銀六十四行のこの三月末の個人向け融資残高が約三十九兆円でございます。ですから、郵便貯金銀行だけでほぼそれに匹敵する規模でございますので、このボリュームで地方に参入してこられますと、地方銀行としては相当な脅威であると申し上げざるを得ないところでございます。

 それでは、どれぐらいの規模がよろしいのかという、ますます大変難しい御質問でございます。

 民営化の時点でも百四十兆ということでございまして、私ども地方銀行のトップ銀行が十兆円いかないわけでございます。合計しても郵便貯金にかなわないということでございますので、ちょっとその規模が違い過ぎて、どれぐらいになっていただけばいいのかということを地銀業界の中できちっと議論したことがございません。各経営者ごとに少しずつお考えが違うかと思いますので、その辺については御容赦いただきたいんですけれども、大変抽象的に申し上げることをお許しいただければ、やはり円滑に民間の金融市場にソフトランディングしていただけるような規模というふうに言わせていただければと思っております。

石井(啓)委員 続いて、福田参考人にお伺いいたしますけれども、郵貯銀行については、完全民営化以降に、これは経営者の判断によりますけれども、分割が可能だというふうにされております。

 この委員会で一番最初に参考人質疑させていただいたときに、加藤寛先生がお越しになって、加藤先生は地域分割が必要だとおっしゃいました。地域で集めたお金を地域に還元融資するという意味で、地域分割が必要だというふうにおっしゃいました。

 また一方では、民間との競争条件をなるべく整えるという観点から、規模を分割した方がいいのではないか、こういう見方もあろうかと思いますけれども、郵貯銀行を将来地域分割する、あるいは、地域という形じゃなくて、例えば大企業向けの融資、あるいはリテールの融資というふうに、融資先といいますか機能別といいますか、そういうふうに分割をする。

 いろいろな分割のやり方もあろうと思いますけれども、郵貯銀行を将来分割するということにつきましてどういう御見解をお持ちなのか、お伺いをしたいと思います。

福田参考人 お答えいたします。

 第一の点でございますが、地域分割を行うことにつきましては、郵貯銀行の規模を縮小するための一つの有効な方法ではないかというふうに考えております。ただ、その規模は、先ほど申し上げましたように、百四十兆ですと、全国十数カ所のブロックに分けたとしても、それぞれに地方銀行のトップバンク並みの大きさのものができるということでございますし、また、小さければそれでよろしいかということもまだ十分議論できておりません。ただ、地域分割ということが一つの考え方であるということはそのとおりだと存じております。

 それから、業務のあり方として、例えば縦割り、機能別の業務遂行はどうかという大変興味のある問題でございます。

 これは、郵便貯金銀行の経営者の方あるいは経営委員会等でどのように判断されるかでございますが、ただ、昨今の銀行の業務展開は非常にさまざまでございまして、今、業態間の、あるいは業務範囲の垣根がどんどんなくなってきております。証券仲介業とか保険の窓口販売とかを行うときに、あるいはそれ以外の業務を行う場合に、その銀行本体で行うのか。

 あるいは、いろいろなことを考えますと、委託関係で、それぞれ優秀な他の金融機関に委託するということもあり得るわけでございまして、郵便貯金銀行さんについてはまずゼロからスタートするわけでございますので、全部自分で機能別に分ける方がよろしいという考え方もあろうかと思いますし、いや、苦手な部分は最初からアウトソーシングということもあろうかと思いますし、その辺はこれからいろいろな検討がなされるのではないかと思っております。

石井(啓)委員 福田参考人、最後の質問にさせていただきますが、先ほどの三点の御指摘の中で、公正な競争条件の確保、二点目におっしゃいましたが、その中で、移行期間中は中小企業や個人への貸出業務は認められるべきではない、端的に申し上げますとそういう趣旨のことをおっしゃったかと思います。

 この移行期間中の郵貯銀行の業務の拡大につきましては、郵政民営化委員会の意見を聞いた上で、持ち株会社の郵貯銀行の株の保有状況、どれだけ売却したかということ、あるいは、郵貯銀行の経営状態を考慮して、民業圧迫のおそれがない場合に主務大臣が認可をする、こういうことで考えられておりますけれども、この仕組みについてどういう御見解をお持ちなのか、あるいは何か御注文があればお伺いをいたしたいと思います。

福田参考人 移行期は、先ほど申し上げましたが、郵便貯金銀行が政府出資の持ち株会社の配下にあるわけでございまして、政府の後ろ盾がある状態でございます。民間金融機関との公正な競争条件が確保されているとは言えないのではないかと思っているわけでございます。

 こういう状況で経営の自由度のさらなる拡大を進めることとなれば、まさに移行期間中に民業圧迫が進むということが憂慮されるわけでございます。そういう民業圧迫を回避する上で、今御指摘の郵政民営化委員会は極めて重要な役割を担っておられますので、しっかりその機能を発揮していただきたいと考えております。

 また、法案によりますと、民営化委員会が三年ごとに郵政民営化の進捗状況について総合的な見直しを行うということでございますので、その際にはいろいろな御意見があると思いますので、ぜひ私ども地域金融機関の意見も十分にくみ上げていただき、くれぐれも冒頭申し上げたような民業圧迫の深刻化を招くことのないようにお願いできればと思っております。

石井(啓)委員 続いて、石井参考人にお伺いいたします。

 先ほどの意見陳述の中で、消防や警察と並んで郵便局は地域の安心のベースになっている、こういうお話でございました。また、特に金融については、民営化すれば利潤追求ということが中心になる、したがって、採算性が悪くなれば過疎地の郵便局は撤退する、こういう御指摘がございました。

 同様の御心配、実は先日、地方公聴会で新潟県上越市に参りましたときにも同じような意見をお伺いいたしまして、まだまだ過疎地の方、御自分の地域の郵便局が本当に将来とも存在するのかしら、また、郵貯、簡保といった金融サービスが維持されるのかという御心配を相当お持ちなんだな、これについては本当に丁寧に、不安が払拭されるように説明を続けなければいけないなというふうに思ったわけであります。

 この法案の中では、過疎地の郵便局については、まず設置基準、これは総務省令で決めますが、その総務省令案を政府は提示しまして、法施行の際現に存在する郵便局のネットワーク水準については維持するというふうに明確に示しておりますので、郵便局自体は、原則として過疎地の郵便局は維持されるということになろうかと思います。

 では、金融サービスはどうなのか。維持されたとしても金融サービスが撤退したのでは何にもならない、こういうことかと思います。

 金融サービスについては、まず、民営化する際に郵貯銀行あるいは郵便保険会社に免許を与えるわけですけれども、その免許の条件として、移行期間十年を超える安定的な代理店契約を結ぶことを条件とするということが一つございます。二つ目には、仮に民営化して採算性が悪化した場合は、社会・地域貢献基金からの資金拠出を受けるという形で過疎地の郵便局の金融サービスを維持しよう、こういう工夫がこの法案ではなされているわけでございますけれども、これについてはどのような御評価をされているのか、お伺いいたしたいと思います。

石井参考人 お答えします。

 まず、お答えの前段として、先ほど分社化のお話がございました。私は、やはり現在のさまざまなビジネスモデルというのは、再編統合と垂直統合をさらに強化していく、そういう時代の流れだと思います。

 それを今どんどん、アンバンドリングという言葉がありますけれども、機能別に分割していく。まずここで、郵貯銀行も、それから郵便保険会社も、これを分割していくということは、通常のビジネスモデルに反して、現在の状況とは異なる方向に行く。それはなぜかというと、ほかの公益事業、電力とか都市ガスとか、これも同じように分社化の議論があったんですね、競争導入のためにアンバンドリングの議論があった。しかし、これは見送られたということです。

 それで、JRの話も若干、前の方から出ましたけれども、地域に根づいた、地域にレールがあるとかそういうものについては、私は地域分割してもいいと思うんですね、それぞれの地域により依存する。

 しかし、郵便局のネットワークというのは、人で運んで、そしてまた通信網、あるいは郵便局のネットワークとしてのさまざまなデータ交換によるネットワークを分割するというのは、実態にそぐわないということだと思うんです。ですから、分社化の問題もそうですし、それからまた設置基準もそういうことです。

 そしてまた、国の、やはり国営の公社であるから、今皆さん安心して郵貯も簡保も利用している。しかし、これを分社化して民営化しますとどういうことになるかというと、国の信用がなくなる。そうすると、一斉に資金の引き揚げ、そしてまた、契約の解除とは言いませんけれども、契約の更改がなされないということで、先ほど来お話がありますように、縮小、再生産ならいいですけれども、どんどんどんどん縮小で破綻の道に行ってしまう。

 そうしますと、どうしても、採算が合わない、事業が成り立たないということで、どんなに設置基準を設けても、そしてまた、さまざまな安定的な代理店契約を免許の条件として付与しても、これは難しいということになって、ほかの事例を見ても、一方的に契約の解除というようなことになってしまう。そしてまた、そういう市場環境の中で窮状を訴えることによって、国会も含めてそれを御理解いただくというようなことになりかねないと思うんです。

 現に鉄道も、そしてまた路線バスも、需給調整規制の廃止、原則撤廃によって簡単に、一年前の廃止届け出で鉄道事業というのは路線の廃止ができるようになっている。路線バスは六カ月前です。

 ですから、どんどんどんどん地方の切り捨て、地方からの撤退というのが時代とともに、状況とともに、十年あるいは民営化後、二〇一七年という完全民営化の時期が示されておりますけれども、ここを待たずしてそういう撤退の状況というのは大いにあり得るというふうなことで、私は危惧しております。

 以上でございます。

石井(啓)委員 それでは、跡田参考人にお伺いいたします。

 この郵政民営化に関しては、公的金融改革の入り口である郵貯、簡保の改革より、出口である特殊法人なりあるいは政府系金融機関の改革をまず先にやるべきだという御意見がございましたけれども、私は、入り口が先か出口が先かという順序の議論は余り意味がないんじゃないかなというふうに思っておりまして、公的金融全体をやはり包括的に改革しなければいけない、こういうふうに思っております。

 実際に、これまでも、出口の特殊法人あるいは政府系金融機関の改革にも着手をしたところでございますし、特殊法人については経営形態を全体的に見直すということにしましたし、政府系金融機関、これから本格的な議論でありますけれども、少なくとも住宅金融公庫については、直接貸し出しから民間金融機関の証券化支援業務に特化していくという方向で大きく改革をしております。

 また、入り口と出口をつなぐ財投改革ももう既に着々と進んでいる、こういう状況でございますから、私は、今課題に上っております郵政民営化をまずきちんと実現し、引き続き、残されているいろいろな改革に取り組んでいくということが必要かと思いますけれども、先生の御意見を伺いたいと思います。

跡田参考人 お答えさせていただきますが、御意見、全く同感でございます。

 公的金融改革という形で、出口、入り口、そして真ん中というものを構造改革の一環として、本当は全部そろえて一気にというのが学者としては望ましいとは思いますけれども、やはり一個一個進められるところを先に進めているというのが今の構造改革ではないかと思います。

 財投は二〇〇一年から進めておりますので、二〇〇八年までに一たん終了はすると思いますが、今の改革もまだ最終改革とは言えない段階で、財投債に頼る部分が多いですので、これをかなり縮小していくということが必要であり、その財投債を小さくしていくためには出口を思い切り改革するということが次のステップで必要になってくると思います。

 そして、運用を全部そこでやってきた入り口の部分というのが、当然、ある意味では必要なくなるという部分もございますので、縮小論でいくということも一つの論法としてはありますけれども、やはり、金融というものが公的にサービスとして提供しなければいけないかどうかは、きょうもお話しさせていただきましたように、また別途議論がありますので、そういう点で、順次改革していく中の一つの、今回は郵政に限った、郵貯、簡保というところに限った部分で見れば、改革法案が出てきたというふうに考えております。

石井(啓)委員 時間が参りましたので、以上で終わります。

二階委員長 次に、一川保夫君。

一川委員 私は、民主党の一川保夫と申します。

 この郵政民営化特別委員会の衆議院の最終段階で皆さん方にお越しをいただいていろいろな御意見を拝聴するというのは、非常に申しわけないという感じもいたします。そういう中にあって、しかし、非常に貴重な御意見でもございますし、我々もいろいろな国会活動の中で、またいろいろな世論を喚起する面でしっかりと参考にさせていただきたい、そのようにも思っているわけでございます。

 そこで、まず最初に安田参考人に、ジャーナリストとしていろいろな世の中の動きに敏感な活動をされていると思います。我々の問題意識としましても、今日の郵政民営化に対する国民の世論というものは、依然として、今この時期になぜ民営化しなければならないのかということに対して十分理解が行き届いてはいないと思いますし、また、その必要性も感じていない人が非常に多いわけでございます。

 そういう中にあって、小泉政権はこれを一気に民営化しようということでいろいろ動いているわけでございます。先ほど来いろいろなコメントがございましたけれども、我々もこの質疑の中で、いや、小泉自民党総裁の任期の関係で急いでいるんじゃないかとか、いろいろな御意見もあります。

 要するに、今なぜこの民営化をこんなに急ぐかということについて、安田さんなりにそのあたりを整理されると、どういう感じを持っておられますか。

    〔委員長退席、松岡委員長代理着席〕

安田参考人 正直言うと、なぜここまで急ぐかというのは、私もよくわかりません。

 いろいろなことが言われていますし、いろいろなことが考えられるかと思います。一部で、例えば、これは対米公約の一つであるというような言い方もされていますし、もっと古い話になりますと、小泉さんも、もともとあの人も郵便局員の流れですから、何かそこに、彼の中にある種の考え方があるのではないかという見方もある。

 なぜそう急ぐかということに関しては、正直言うと、もう小泉さんに聞いていただくしかないわけですけれども、少なくとも、私たち、あるいは私たち国民一人一人は、なぜ今ここで急いで民営化しなければならないのかということをだれも説明を受けていないわけですね。

 私、取材先でいろいろな方に伺います。民営化、是か非かとストレートに問えば、是も非もない、みんなわからないわけですよ。少なくともそういう答えが浸透していない、問いかけが浸透していない。民営化になってどのようなビジネスモデルが浮かび上がるか、だれも頭の中に想起できていない、想定できていない。そういう状況の中で、こうやって急いで審議に持っていくということに関しては、私もよくわかりませんし、よくわからないものをやられるのはたまらないなというのが正直なところでございます。

一川委員 私たちも、今ほどお話のありましたように、なぜこの時期にこれだけ急ぐのかということが非常に理解しがたい点でございますし、また、国民の意見を具体的に表示するいろいろな意見書の提出なり、そういったことを見ましても、圧倒的にそういう意見が多いわけでございます。国会の動きと世論と相当乖離があるなという感じは持っておりますけれども、しかし、これは我々政治の責任でもございますし、特に、野党側にいる我々民主党としては、そのあたりはしっかりとした問題意識を持って対応しなければならないなというふうに思っておるところでございます。

 そこで、福田参考人にお聞きしたいのは、こういった特殊法人絡みの民営化の議論というのは十年ぐらい前に相当盛んに行われたわけでございますけれども、その後、経済の低迷の状況が長引いている等々、それから少子高齢化社会、いろいろな面で地方が疲弊をしているわけです。先ほど福田参考人の御意見をいろいろと拝聴していると、今回のこの民営化はそれなりには評価している、評価はしているけれどもいろいろと心配事も多いという、割と注文をつけられたような感じがするわけですね。素直に言うと、どうも今の民営化に余り賛成じゃないのではないかなというふうにも受けとめられるわけでございます。

 先ほど、例えば条件の中にも、郵便関係の規模を縮小すべきだとか、いろいろな三つの条件をおっしゃいましたけれども、そういうことも含めて、それだけ懸念材料が多いのであれば、今、現時点でこういう内容で民営化することに対して明確に反対の意思表示をすべきじゃないかなというふうに私は感じたわけですけれども、そのあたり、いかがでしょうか。

福田参考人 郵政の民営化の問題自体が大変な大きな問題であるということはずっと認識してまいったわけでございます。むしろ、なぜ急ぐということにつきましても、民間金融業界からはいろいろな局面で郵貯の肥大化についてお願い事をしてまいりましたが、残念ながら、政府あるいは国会で本当に御議論いただくまでに至らなかったということでございます。

 ただ、ここに至りまして、国民に簡易で確実な少額貯蓄手段を提供するということは、かなり民間金融機関側も努力いたしまして、ほぼ達成できたのではないかということと、それから、二〇〇一年の財投改革で政策金融機関側と郵貯の預託義務とが切り離されましたので、そこでもう動きが始まっておるわけでございますので、やはりここへ来て、このまま郵貯問題を放置していただくのは問題であろうということでまいったわけでございます。

 したがいまして、先ほど来申し上げておりますのは、政府の保証のもとに肥大化してきました郵便貯金制度については、もちろん廃止ということもございますけれども、少なくともインフラを生かすという、雇用の確保とか、いろいろなことを総合的に政府でお考えになって民営化という方針を出されたわけでございますので、これについて、私どもとしてはあえて非を唱えているわけではございません。

 ただ、先ほど来申し上げていますように、大変に難しい、時間のかかる問題でございますので、その移行期間について、政府の保証のある間に民業圧迫が進むようなことがありますと、真の民営化の意義が損なわれるのではないかということを申し上げたわけでございます。

一川委員 では、もう一点お伺いしたいわけですけれども、今、民業圧迫をしない程度に移行期間に条件を整えてほしいというお話だと思いますけれども、経営規模を縮小してほしいという意向が示されたと思いますけれども、地銀サイドから見ると、どの程度の規模をある程度目標にして縮小してほしいというふうにお考えなんですか。そのあたり、何か具体的な目標があれば示していただきたいと思います。

福田参考人 先ほども御答弁申し上げましたが、政府の試算で、民営化移行期間終了後、民営化当初で百四十兆円という規模が示されておりまして、私どもとしては規模の縮小をお願いしておるわけでございますが、余りにも規模が大きいものでございますので、それではどれくらいの規模がよろしいのかということについて、地銀業界内できちんとまだ議論をしておりませんし、恐らく各会員行の意見も少しずつ違うのかと思いますので、本日のところは、具体的にどの程度という目安については差し控えさせていただきたいと思います。

一川委員 では次に、石井参考人にお伺いいたしますけれども、今の公社がスタートする折にいろいろな面でかかわってこられたというお話も聞きました。

 それで、公社は公社なりの努力でこの二年ぐらい来ておるわけですけれども、片や、最近の我が国の経済社会を取り巻くもろもろの状況の変化なり、それから私自身は、やはり各種各分野の政策、国土交通分野の政策もあれば農林水産関係の分野の政策もあれば、教育関係とか自然関係、いろいろな政策のひずみとか政策の失敗めいたものの積み重ねが今回のこの郵政民営化の議論のときによく出てくるわけですけれども、そこは余りそういうことを話題にする人はいませんけれども、そういうようないろいろな政府全体の政策がこれまでうまく運営されてこなかったということが、今この郵政民営化の中でいろいろと議論されているというふうに私は問題意識を持っているんです。

 最近、それにプラスして、市町村合併だとか、特に地方の方、過疎化されている、今中山間地域と言われているような自然条件が厳しいところについては、そういういろいろな政策のひずみがもろに出てきているんだと思いますね。

 そこで今、最終的な一つの金融機関なり地域の拠点施設として郵便局というものがあり、また、全国画一的な料金でそういう郵便物が届くということは、ある面では非常に大きな役割を担っているというふうに思います。最近の、特に市町村合併だとか高齢化現象とか過疎化現象、こういう状況の中で、先生は今回の郵政の民営化ということについて相当厳しい見方をされていると思いますけれども、もう一度、そのあたりを整理してお話ししていただければありがたいと思います。

石井参考人 お答えします。

 大変大事な、重要な御指摘をいただきました。

 おっしゃるとおり、今、地方の方では、先生方もよく御存じのように、地方の切り捨てと言われる政策が、ある意味では政策のひずみ、失敗あるいは負担の押しつけというものが、どんどん地方の方にしわ寄せになってきている。その一つの象徴的なものが郵政民営化による郵便局の統廃合というふうに言われる。このことは私もそのとおりだというふうに思います。

 それで、一つ大事なことは、やはり東京の先生方も同じだと思うんですね、これは全員がそれぞれの地域から選出された代表者でありますし、日本国を形成するそれぞれの地域の代表者であります。ですからこれは、特にアメリカやカナダとかヨーロッパ先進国の国々では、そういう地方の方を大事にするという政策が具体的に進められているということはもう紛れもない事実ですね。ですから、公的な金融機関、公的な機関として郵便局が今残された最後の機関で残っているのに、なぜあえてそれをなくすようなことをやるのかという欧米の論調あるいはそういう識者の意見を私たちも聞くわけですね。うまくいっているものを、なぜ日本はそういうことで民営化して、それで危機に瀕するのかということだと思うんですね。

 ですから、そういったことも含めて、地方の方々というか、国民全体は本当に心配をしております。ですから、まさに国民に安心感を与えて元気を出させるというのが、今の政府の、そしてまた国会の役割であるし、責任だと思うんですね。それを、どんどんどんどん心配をかけて、そして、それに火に油を注ぐような郵政民営化を断行するということはどうしても納得できないというふうに思うんですね。ですから、その辺をやはりしっかり、国民の意見をもっとしっかり聞いていただくということが、これは私たちのお願いでございます。

一川委員 では、次に跡田参考人にお聞きしますけれども、私は、先生の御議論はある面では非常にわかりやすいお考えだと思いますけれども、しかし、現実、日本の現状の社会をいろいろと見たときに、非常に難しい問題をたくさん抱えておるわけです。

 確かに、民間であらゆることが、今いろいろな面で、いろいろな分野で事業が展開されております。そういう中で、できるだけ公的な官側の分野を減らして民間の領域をふやしていくということは、ある面では非常に大事なことなんですけれども、しかし、今ちょっと話題に出ましたように、地方の非常に厳しいところ、あるいは都会のど真ん中もそうかもしれませんけれども、経済の採算性、市場経済では勝ち抜いていけないようなところというのは当然出てきているわけですね。

 そういうところに対する対応というのは先生は基本的にどういうふうにお考えなのかということ、そこのところをちょっとポイントを絞ってお話ししていただけますか。

跡田参考人 きょう、最初のところで少しお話しした所得分配の公正という政府の役割のことに関する御質問かなと思います。

 これは、あくまでも個人の所得の再分配、要するに、社会保障的な面は考えていくという、それが政府の役割として出てきますけれども、こういう経済的な事業を必ず政府が国民に保障しなければいけないという所得分配の公正の役割から論ずるということは、経済学の論理としてはあり得ない議論です。

 社会保障というのは、やはり社会保障として、所得が稼得できない人たちないしは生活に困窮している人たちを助ける、そういう役割でございまして、郵便事業、貯金事業、そういうものを政府の役割としてやっていくということ自身は、私の習った経済学、普通の経済学ですけれども、そういうものからは全くあり得ないと私自身は申し上げたい。

 経済の採算性がとれない地域に対して一体何をするか。これは、これまで、従来日本の国民に対して提供されてきた公共性というものを担保するという意味で、今回の法案の中にはきちんと設置基準を設けて、そのサービスが少なくとも維持されるということを保証しているわけですね。これをさらに経営委員会で事後も監視していくということになっておりますから、私は、普通の感覚からすれば、何ら問題はない、かえってまだ手厚い保護をしている。

 これは、日本がこれまで社会保障面を事業的な展開に余りにもやり過ぎたために、その結果として今出ているのが、七百七十兆、八十兆という国債残高、長期債務残高というものになっているわけなんですね。ですから、今、構造改革というのは、そこをとめるということを何よりも重要な点として考えていただきたい。

 そういう中でもこの郵政の民営化というものは位置づけられるというふうに思っておりますから、保証は保証としてある程度今回の法案の中にはありますし、しかし、原理原則からするならば、そういうものはこれから日本は徐々に縮小していくというふうに私自身は考えております。今の法案はそうはなっておりません。

 以上です。

一川委員 福田参考人に、今回のこの法案の中で、郵便事業株式会社とか窓口ネットワークの株式会社は、経営が思わしくない場合には、地域貢献基金という基金から交付制度というのが検討されていますね。こういうことは、先ほど参考人がおっしゃったような、いろいろな面で公平な競争条件を整えていくという面からすると、若干異論があるような分野じゃないかなという感じもします。

 窓口業務でいろいろな代理店業務もできることになっているわけですけれども、そういう観点からすると、こういう制度についてはどういうふうなお考えでしょうか。

福田参考人 郵便局というインフラを今後とも活用していくという必要性と、それから郵便事業については、また郵便貯金事業と違う面もあろうかと思いますので、私の方から今の点についてコメントは差し控えさせていただきたいと思います。

一川委員 では、石井参考人に、今の、この基金からいろいろなものを援助していくというような、こういう考え方で民営化するということについてはいかがですか。

石井参考人 これも先例と申しますか、これは先生方にお配りしています私の資料の中にも書いておいたんですけれども、JRの民営化の際に三島旅客会社に、経営が成り立たないということで経営安定基金、これは法律に基づく基金を設けました。これは、十年かけて積み立てて、ゼロから積み立てていった基金でございます。大体一兆二千数百億円程度の基金が三島会社に積み立てられております。これは運用益で、営業損失を利息で経常利益を出すように、そういう、ある意味ではウルトラCの施策を導入しました。

 これもいろいろ賛否があると思うんですね。ただ、今三島会社はみんな、これは国会の中でも、三島会社も含めて全部、全社黒字だというふうに言っておりますけれども、JR四国あるいはJR北海道は、経営安定基金に今も依存しているということで、その体質は変わっていない。九州は新幹線ができましたので、これはどうにか成り立っている。今のこれは、それと状況が違います。郵貯銀行あるいは保険会社の株式を売却して、それで地域・社会貢献基金を積み立てるという、そのやり方は非常にリスクが大きいと思います。

 一つの問題は、実際に売れるのかどうかという問題もございますし、その部分だけを積み立てることができるのかどうか。では積み立てられなかったらどこからその資金を持ってくるのかということですね。

 それからまた、その配分の問題ですね。これも、三島会社の場合には配分先が三つで限定されています、法律ではっきり明記されています。しかし、今回の法案の中では、この地域・社会貢献基金の配分とかそういう細目についてはまだ決められていませんので、こういうやり方は非常に私は心配しております。

 以上でございます。

一川委員 安田参考人にも一点だけちょっとお聞きしたいんですけれども、先ほど、今もう既に郵政公社の中で民営化的な手法を導入していろいろと皆さん頑張っているけれども、いろいろなマイナス面が目立ってきている。もう既に民営化を試験的にやっているけれども、やや失敗の感があるというような感じを私は受けたわけだけれども、そこをちょっと端的にもう一回お話し願いたいんです。

安田参考人 先ほど申し上げましたとおりに、いわゆるトヨタ方式の導入ということで、JPSなる生産管理システムが二〇〇三年から郵政公社に導入されています。

 これは具体的にどんなものかといいますと、最初はトヨタから派遣された社員の方が、一番最初は埼玉県の越谷郵便局にトヨタの社員の方が常駐しまして、作業時間をストップウオッチではかったり、あるいはさまざまな工夫を重ねて作業の効率を上げるという多くの施策を打ち出したわけです。ところが、結局これがうまくいっていないということを多くの職員の方から私は聞いております。

 これは話すと長くなるんですが、例えば区分棚、区分函といいますか、区分けの作業をさまざまに変えてみたり、それまで座って作業していたものを立って作業してみるとか、いろいろ改革と称するものをやってみたんですが、結果的に、職員の疲労、過労が問題となり、郵便物の遅配、誤配というものがふえている。これは、実際に利用者の方から苦情の電話が相次いだということで、越谷郵便局の方から、私、報告を受けています。

 これだけじゃありません。郵便局というのは非常にばかばかしいことを今もやっていまして、この場でお話も幾分出たかもしれませんけれども、例えば、ゆうパックなんというものを空箱で職員同士で送り合ったりしているわけですよね。あるいは、バレンタインデーの日に男同士でチョコレートを送り合っているわけです。何でこんなことをしているかというと、実績を上げるためですよ。実績実績、成績成績ということを常に上から言われている。これはもう、民営化のためなのか、あるいは民営化しなくてもここまでできるからやっているのか、私にはよくわかりませんけれども、少なくとも、そういった民営化の手法を取り入れて、かなり職場が荒廃しているのではないかということを、私、何度か記事に書きました。これが失敗の要因の一つだと私は思っております。

一川委員 以上で終わります。ありがとうございました。

松岡委員長代理 次に、西村智奈美君。

西村(智)委員 民主党・無所属クラブの西村智奈美でございます。

 きょうは、参考人の皆さん、御足労いただきましてありがとうございました。

 まず最初に、石井参考人に確認という点でお伺いをしたいんですけれども、きょう、御丁寧に、参考人意見陳述参考資料ということで資料を出していただきました。ここにきちんと新聞社に掲載した記事のものであるというふうに記載をされておりますけれども、私も学生のときに聞いた話ですが、研究論文とか原稿を寄稿するときには、例えば前に書いたものを焼き直ししたり部分的に手直しして掲載するというときには、必ずそれを掲載しなさい、そのことを明記しなさいというふうに聞いたように記憶しております。それがいわゆる研究者としての最低限のマナーだというふうに聞いたんですけれども、そのことについて確認したいと思います。

石井参考人 お配りしました資料は、この新聞社の了承を得ております。

西村(智)委員 それでは、跡田参考人にお伺いをしたいんですけれども、私、実は、先週の金曜日にきょうの参考人質疑の参考人の方が決定をした後で、跡田参考人の最近お書きになったものを少し集めさせていただきました。

 まず一つは、慶応大学ディスカッションペーパー、ナンバー〇五〇二、タイトルは「郵政民営化・政策金融改革による資金の流れの変化について」というものでございます。これがことしの五月の発行ということになっております。

 もう一つが、「金融財政事情」の、これは二〇〇五年六月六日号ということになっておりますけれども、「郵政民営化・政策金融改革で資金循環はどう変わるのか」、こういうタイトルでございますけれども、これを実はじっくり私は読ませていただきました。

 そして、非常に驚いたことに、このディスカッションペーパー、ことしの五月に出されたものと、六月六日の「金融財政事情」に掲載されたこの論文、掲載論文と、非常に似通っているということでございます。

 どのくらい似通っているかと申しますと、ディスカッションペーパーの「要約」、この部分は次に出されますこの寄稿には載っていないんですけれども、あるいは部分的な経緯などということでカットをされているところがありますけれども、文章を語尾を変えて、ほとんど中身は同じく、文脈も同じく、こちらの方に掲載をされております。これはどういうふうになってこうなっているのでしょうか。

 例えば、一例を申し上げますと、一番最初の文のところでございますけれども、「日本では、バブル崩壊以降、短期的で緊急避難的に伝統的な財政金融政策が発されてきた。」というのがこのディスカッションペーパーの一文でございますが、こちらの文では「日本では、バブル崩壊以降、短期的かつ」、「で」が「かつ」に変わっております、「緊急避難的に伝統的な財政金融政策が」、「累次にわたり」というような文言が入っております、「発されてきた。」というのが「発動されてきた。」というふうに変わっております。

 この二つの原稿の関係について、まずお伺いしたいと思います。

跡田参考人 お読みいただいたようで、どうもありがとうございます。

 学者の世界としてディスカッションペーパーというものの位置づけをお話ししたらいいのかと思いますが、ディスカッションペーパーという制度は、これから正式にいろいろなところに投稿をしたり、それから週刊誌等も含めてですけれども、そういうところへ載せてもらう前の段階で、普通、昔からの用語で言えば、未定稿ないしはミメオというふうに書くような学問的業績でございます。

 ですから、それが正式なジャーナル等に載ったときには、批評家といいますかコメンターという人たちから若干の修正をしろと言われたところは修正することがございますけれども、基本的には著者の意向に従って載せてくれる、そういう手続でやっていく中の第一段階のものをディスカッションペーパーと呼んでおります。

 ですから、内容的にも、また文章的にもかなり近いものが出てくるというのは、我々の業界としてはごく普通のことでございます。

 以上でございます。

西村(智)委員 ありがとうございます。

 ほかの部分にも語尾を変えたり言い回しを変えたりしているところがたくさんあるということでございます。

 それでは、このディスカッションペーパーの中に、最後の方に「おわりに」ということで、こういうまとめがございました。「つまり、政府があまりにも極端な政策発動をし続けると、公的部門が無尽蔵にリスクを吸収できるとの錯覚を国民に抱かせてしまい、その結果、自ら進んでリスクを取ろうとする気概をも喪失させてしまうかもしれない。」というふうに記載されておりますけれども、私は、一点申し上げたいのは、「政府があまりにも極端な政策発動」というのは一体何なんだろうかというふうな疑問を持ちましたのと、それから、そういう政策発動をし続けてきたのはまさに政府・与党ではなかったのかということでございます。

 そして、ここから質問でございますけれども、これはつまり、国民がリスクをとらなければならないということを意味しているものなのでしょうか。この間、竹中大臣は一度も答弁の中で国民がリスクをとる必要があるなどというふうには答弁していないと私は記憶しておりますけれども、これは、国民が本当はリスクをとって、今までローリスクの郵貯、簡保であったけれども、これからはハイリスク・ハイリターンでどうぞおやりくださいということを言っているのかどうか。

 それから、跡田参考人、陳述の中で、分社化してリスクの遮断をするんだというふうなことをおっしゃっていられたかと思います。会社がリスクを回避して、利用者はリスクをとれということをおっしゃっているのでしょうか。参考人のおっしゃる正しい競争というのは、私は、本来であれば、最終ユーザーを守り、つまり国民を守って、失敗したときには経営者がその責任をとる、それが正しい競争のあり方だと思っておりますけれども、論理がずれてはいませんでしょうか。

跡田参考人 まず、基本的な認識として、リスクというものはあらゆる場にあるということですね。リスクのないなんというものはあり得ないわけです。その幻想を今まで郵便貯金に関してはつくり上げてしまった。今、国債というものもリスクのある商品になりつつあるわけです。余りにも大量な国債を発行していますから、格付が下がればそういうことも起こり得るんですね。

 ですから、リスクがないなんということはあり得ないので、みんなリスクをきっちりと認識してくださいということがその論文の最後のところで言いたかったことで、まあ、少し筆が滑っているところはございます。それは学者の言うことで、お考えいただきたいところもありますけれども。

 分社化というものでリスクを遮断するということは、これは、それぞれの事業会社はリスクを発生させる可能性はあるわけです。そのときに、郵便事業会社がリスクを発生させたときに、そのリスクの穴埋めに郵便貯金の収益をくれというようなことが起こっていただいては困るわけなんです。そうすると、郵便貯金を預けていた人たちがもらうべき利子が支払えなくなる。これは金融機関にとっては決定的な問題になります。

 民間の金融機関には絶対そういうことが起こらないように、リスクがほかから発生しないように遮断をして、そして民間の金融機関でリスクをプールする預金保険機構というものを政府も出資してつくるという形でやっております。ですから、リスクを遮断するというのは、ごく普通の当たり前の金融機関をつくっていきたいということ、そして、ほかの事業会社もそれぞれ自分でリスクを背負ってやっていってくださいと。

 消費者と企業との間のリスクはどうですかという形では、お互いにリスクは分け合っていただかないといけない。預金保険機構は一千万までしか保証しないということになっていますから、預金者側もそれに応じて対応してくださいというのが今、金融改革でやっと整ったわけです。ですから、それと同じ立場で、イコールフッティングで郵便貯金会社や簡易保険会社もやっていってほしい、そんなような考え方を申し上げたと思っております。

 消費者にだけリスクをとれなんということは決して申し上げた覚えはございませんので、重々お考えいただきたいと思います。

    〔松岡委員長代理退席、委員長着席〕

西村(智)委員 それでは、福田参考人にお伺いをしたいと思いますが、まずその前に、全国地方銀行協会の福田誠氏、本日の参考人でいらっしゃいますけれども、この方は、大蔵省を金融企画局長で退職されたいわゆる天下り官僚であります。業界の代表としてではなくて、まさに財務省や金融庁の代弁者としての御発言が先ほどの陳述でありました。政府の代弁者でしかない参考人を招致した与党の不見識を指摘しておきたいと思います。

 その上でお伺いをいたしますけれども、福田参考人、郵政公社の民営化については我が国の将来の金融改革にとって重要だと。つまり、金融改革にとってこの郵政民営化は重要なんだ、そういうことを先ほど陳述でおっしゃいました。我が国の将来の金融改革にとってこの郵政民営化が重要であるというふうにおっしゃいました。ですが、これは、全国地方銀行協会といたしまして、果たしてそれだけのコメントで足りるのかというのが私の思いであります。

 つまり、地銀協は、地域とともに発展する、これが大事な存在意義といいますか目的であるというふうに認識をしておりますけれども、地域コミュニティーにとってこの郵政公社の民営化がいかなる意味を持つのかということについての御発言はなかったのではないかというふうに思います。地域とともに発展するという地銀協のその使命から、この郵政公社の民営化をどういうふうに見ていらっしゃるのか、それを地銀協の副会長・専務理事としてきっちりお答えをいただきたいと思います。

福田参考人 御質問の趣旨を十分理解できているかどうか、ちょっと自信ございませんが、民営化をどのようにとらえているかということでございます。

 冒頭申し上げましたように、地銀、地方銀行以下、地域金融機関というのは地元密着の営業をしておりまして、資金調達につきましても運用につきましても、地元を離れてはない金融機関でございます。その意味で、銀行ができてから、それぞれ営々と各地で地元のために展開をしてまいったわけでございますその結果、お客様との関係でいいますと、貯蓄手段の提供なり、それから決済手段の提供なり、いろいろな意味で、明治時代に郵便貯金ができたころに比べますと十分に地域の方々におこたえできているのではないかということでございます。

 そういう意味で、余りにも肥大化した郵便貯金がこのままの形で存続されることは、冒頭申し上げたような意味で、金融市場をゆがめたり、さまざまな弊害があるのではないかということで、民営化に進むことについて是とするものでございます。

西村(智)委員 この間、この委員会の質疑の中で、株の連続的保有というのが一つの大きな焦点になってまいりました。

 四月二十五日の政府合意は、「株式の連続的保有が生じることを妨げない。」こういう文言だったわけでございますけれども、今回、与党から修正案が提出をされまして、持ち株会社が議決権行使ができるような形で株をずっと持ち続けることをねらいとして今回の修正が出されているわけでございますけれども、これは、地銀協がずっとこの間懸念されておられました暗黙の政府保証ということに当たらないというお考えでしょうか。つまり、この修正によって、よりイコールフッティングに近くなったと見るか、あるいは遠くなったと見るか、お答えください。

福田参考人 連続的保有の規定についてのお尋ねでございますが、私どもは、再三申し上げていますように、政府出資が残っている状態は完全な民営化とは言えないのではないかというふうに申し上げております。

 それはそうでございますが、今回の株式の連続保有がそれではどういう趣旨で設けられている制度なのか、どのように運営されるかということにつきましては、私どもからは、つまびらかでございませんので、この修正についてコメントすることは差し控えたいと思います。

西村(智)委員 どうしてコメントできないのかなということが大変に不思議なところでございますけれども、ここは地銀協のお立場からはやはりきちんとコメントをしてしかるべきではないかと思いますが、これ以上聞いても恐らくお答えは出てこないと思いますので、次の質問に移りたいと思います。

 実は、この郵政民営化で、民営化したらどうなるかということについて、骨格経営試算ですとか採算性に関する試算ですとか、いろいろ出されてきたわけでございますけれども、この採算性に関する試算ですね、これが非常にバラ色の話として出てきているわけでございます。

 これでございますけれども、例えば、コンビニで利益率が九%、あるいは保険の第三分野の新商品で二百三十万件、国内で活動している企業の一位と二位を足してもようやくその数字に達するかどうかというような、そういう新規の契約件数が確保できるんだというようなことになっております。

 跡田参考人、竹中平蔵経済研究所の理事でいらっしゃるかと思いますけれども、この採算性に関する試算についてはトリガー・ラボの方でごらんになりましたか。

跡田参考人 正確にはその研究所はトリガー・ラボという名前で登記されておりまして、そういう意図は若干持っておりますけれども、そういう研究所ではございません。

 それから、トリガー・ラボというのは、私どもが応援団としてつくっているものでございまして、そういうところで、基本的な政策立案というのですか、そういうものにかかわるものを大臣等ないしはその関係者とお話しするということは基本的にはあり得ません。私どもは単なる一つの研究所として、ポリシースクールというようなこととか、若手の公務員の人たちを少し元気づけようというようなことでやっているものでございまして、そういう採算性に関する試算というのは、基本的に、諮問会議等に出ていくという段階で、私も一応諮問会議の議員の先生方と少し交流がありますので、そういうときに意見を聞かれることはあるかもしれませんけれども、事これに関しては、全く私は見ておりません。

西村(智)委員 最後に、石井参考人にお伺いをしたいと思います。

 この郵政民営化関連法案の中で、先ほども一川委員が質問されておられましたとおり、私は、やはり決定的に欠けている議論があると。つまり、この日本という国の社会をどういうふうにデザインしていくかという、いわば公共部門と民間部門との役割の分担、あるいはそれらのこれからの方向性、これらについて全く議論が抜けていたというふうに思うんです。

 民営化法案はその中の一部であろうと思うんです。役割を分担する、こういう方向でいくという中のほんの一部であろうと思うんですけれども、これから全体的な議論をどういうふうに進めていくべきなのか、そして、この郵政民営化についてはその中でどういう位置づけとして置いて議論していけばいいのか、そこを最後にお聞かせください。

石井参考人 お答えします。

 今の先生の御指摘は、もう本当にそのとおりだと思います。

 日本の形がやはり今こそ問われているときはないと思います。その中で、具体的に国会や政府の方から国の形を示すという、構造改革とかいろいろありますけれども、全体像を示すというのがシナリオが出てこないというふうに思います。そこで部分的なところだけを議論しても今はもうだめだというふうに思っております。

 ですから、もっと日本のあるべき姿、特に、超高齢化社会を迎えるこれからの日本の形をどういうふうにつくっていくのかというのは、そのためにこの郵政民営化の議論というのは大きな大きな重要な課題なんですね。ですから、もっともっと慎重に審議をして、そして国民が理解できるような形を示すということが一番大事だと思います。

 以上でございます。

西村(智)委員 時間ですので、終わります。ありがとうございました。

二階委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 参考人の皆さん、本当に御苦労さまでございます。

 まず、地銀協の福田参考人にお伺いをいたします。

 先ほどの御意見の陳述の中で、三点、要求を出されました。一つは経営規模の縮小、二つは公正な競争条件、三つは地域との共存ということだったと思います。この法案が実際に地銀協のこの三つの要求に沿ったものなのかどうか、これは私は、根本的に違うものではないかという認識を持っております。

 まず、経営規模の縮小ということですけれども、確かに分社化はされますが、一体的経営は可能となります。これは移行期間だけではなくて、民営化後も実質子会社として株式保有ができる。しかも、政府が持ち株会社の株を三分の一保有、これがあるわけであります。

 したがって、これはイコールフッティングにはならず、非常に巨大な郵政コングロマリットができ上がるということでありまして、地銀にとっては大変脅威になるのではないだろうかというふうに思いますので、先ほどの御要望は実現不可能と思いますが、いかがでしょうか。

福田参考人 御指摘のように、移行期間十年という非常に長い期間がございますし、その間にいろいろな環境も変わってまいりますので、最終的に私どもが望む姿に本当になるのかどうかについての懸念がなくはないわけでございますが、法案を拝見しますと、例えば、先ほどの規模の縮小でございますけれども、移行期間十年という時間軸がございますから、その間に、例えば定額郵便貯金の満期が次々到来するわけでございます。その辺を貯蓄から投資に振り向けるというような大きな流れ等と、それから窓口での郵便局の方の顧客との接点が非常に大きいというようなことからすれば、いろいろな金融商品の販売等に向けることも可能でございますから、規模の縮小については、移行期間中にかなりしていただけるのではないかというふうに思っているわけでございます。

 それから、完全な民営化については、御指摘のとおり、政府の出資等が残っておりますと、暗黙の政府保証ということで、民間金融機関との信用力の格差が出かねないわけでございますので、そういう意味でいいますと、完全な民営化の暁には政府出資もゼロになるということを望んでいるわけでございます。

佐々木(憲)委員 そういう期待はかなり裏切られると思いますね、政府出資は残りますので。

 それで、金融という面に限ってお伺いしますけれども、縮小というふうにおっしゃいましたが、金融という面でいいますと、融資は今ゼロですから、これからプラスになって、どんどん広がるわけです。したがいまして、これは縮小どころか一路拡大というのが地域金融機関の目の前で起こるわけであります。しかも、郵便局は、さまざまな地域の細かな情報を把握しておりまして、どのところに融資をすれば最も有利な融資ができるか、これは大変重要な情報を持っているわけであります。

 そういう点でいいますと、これはイコールフッティングには私はなかなかならない。つまり、巨大な国のバックがあって、そのもとで、全体としての株式保有、一体的経営という方向が濃厚な、そういうものが、しかも地域に密着した形で融資活動を展開していく。まさに、これはイコールではなくて、本当に強力な競争相手が生まれてくる。

 このことに対してどのような認識をお持ちなのか、そしてまた、どのように対応されるというふうにお考えなのか、お聞かせいただきたい。

福田参考人 仮に、移行期と完全民営化と分けて考えますと、移行期につきましては、先ほど申し上げましたように、郵政民営化委員会という制度ができておりますので、ここで、民業の圧迫にならないような業務範囲について十分に慎重に取り扱っていただけるだろうと思っているわけでございます。

 そして、完全民営化、すなわち、政府の出資等が全くなく、そして税負担とか預金保険料とか全部負担は民間と同様、かつ、金融のルールも全部適用になるという暁には、これについてまで私ども、つまり、純粋に民営化された後の競争を拒否するというものではございません。

佐々木(憲)委員 郵便局、郵政公社というのは公共的性格が非常に強いわけでありまして、例えばATM一つとりましても、民間のATMと随分違うわけです。例えば、視覚障害者対応のATMというものが、郵便局の場合には、一〇〇%すべてのATMがそのような対応となっております。しかし、民間の銀行の場合は、平均してわずか一三%。しかも、地銀はもっと比率が低いわけでございます。

 そういう点でお聞きしたいんですけれども、地銀がATMについて視覚障害者対応が非常におくれている理由というものはどのように考えておられるのか、その理由をお聞かせいただきたい。

福田参考人 視覚障害者対応ATMの導入などのバリアフリー化への対応の御質問でございますが、この分野の重要性につきましては、地方銀行は各行とも十分認識しているものと存じます。そういうわけで、各行とも、ATMの更改、更新の機会などをとらえて、順次、視覚障害者対応ATMの導入を進めておりまして、今後、設置箇所は着実に拡大していくのではないかと認識しております。

 例えば、個別の例でございますけれども、ある大手地銀は、ことしの五月でございましたが、現在十二カ店にとどまっております視覚障害者対応ATMの設置箇所を拡大して、百八十五カ店全店に配置するという計画を公表させていただいております。

 各行によって若干差がございますが、そういうふうに順次進めているという事情をぜひ御理解賜りたいと思います。

佐々木(憲)委員 これまで進んでこなかったのは、やはり民間銀行としての限界というものがありまして、コストをなるべく削減していく、障害者対応の投資というのはやはりそういう中でおくれてきたというところにあると私は思いますので、そこは抜本的に改善するということでぜひやっていただきたいと思うわけであります。

 次に、石井参考人にお伺いいたします。

 先ほどのお話でも我々の見解とほとんど同じでございますが、ユニバーサルサービスが非常にこれで崩れていくと我々は思っておりますが、なぜ今このような形で郵政の民営化を急がなければならないのか。その理由、つまり、だれのために、何のために民営化をするのか、利益を受けるのは一体だれなのか、この点のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

石井参考人 先ほどもそのような御質問がございましたけれども、やはりこれは、民営化法案の提出に当たって、政府また大臣、総理等からは、国民に利益をもたらす民営化だというふうに御説明がございます。ただ、これを聞いても私たちは、先ほど来陳述いたしましたように、全くわかりません。ですから、具体的なところをやはり説明していただかなければいけない。

 特に、国民に利益をもたらすということですから、官邸のホームページを見て、詳しく書いてあるのではないかなというふうに私は見てみたんですね。ところが、通信新聞の記事にも書きましたように、全く通常の言葉しかない、また総論しかないんですね。ですから、私は不思議だなと。そしてまた、本委員会でもやはり、答弁をテレビ等で拝聴していて、そして、同じような繰り返しの答弁で、具体的なところが出てきていない。

 そう考えますと、先ほど来申し上げましたように、その背後には何があるのかなというふうに国民は思うと思うんですね。そうすると、やはり今回の郵政民営化をして一番利益を受けるのは、特定の利害団体、利益団体じゃないかというふうに思わざるを得ないんですね。ですから、その辺を、それでしたらそれもまた明らかにしていただいて、そして全体をもっとこの国会の中で明らかにして、そして最終的に国民の判断を仰ぐということが私は一番大切だというふうに思います。

佐々木(憲)委員 特定の利害団体というふうに今おっしゃいまして、我々はこれはかなり日米の金融資本の意図が働いているのではないかと思いますけれども、先生はどのようにお考えでしょうか。

石井参考人 その辺も含めて、さまざまな観点から既に御指摘があると思います。ですから、そういった具体的な国際間の取り決めだとかあるいは話し合いとか、そういったことは私たち国民にはよく理解できないし、わからないんですね、情報もない。

 ですから、そこも、どういう話し合いが、十七回とか既にこの国会の中でも答弁がなされて、いろいろ話し合いがあったとかいうのを、私たちはマスコミ報道を通じてしかわからないんですね。ですから、そういう内容も具体的に教えていただいて、そして、国民の全体的な総意の中で議論をしていくということが大切だと思います。

佐々木(憲)委員 ありがとうございました。

 安田参考人にお伺いいたします。

 これまで、NTTの場合もあるいはJRの場合も、民営化された後、さまざまな問題が起こっております。特に、先ほどもお話がありましたように、JRの場合の安全性あるいは公共性が後退しているのではないかという問題がございます。

 この郵政の民営化によって、どのような事態が発生するかということですね。これは、私は国民にとってはマイナスが非常に大きいと思います。これまでの電電、国鉄の民営化などもいろいろ取材をされてこられたと思いますが、そういう問題も含めまして、一体どういう問題が発生するとお考えか、お聞かせをいただきたいと思います。

安田参考人 何もかも民営化がいけないと言うつもりは、私もさすがにありません。

 ただ、例えば、これまで国鉄からJRに移行するとき、これはもう皆さん、地元に帰れば十分御存じでしょう。ローカル線が全然なくなっちゃったじゃないですか。電車の本数がなくなっちゃったじゃないですか。駅のホームに今駅員さん、いらっしゃいますか。私、視覚障害者団体を何度も取材しましたけれども、今、転落事故が相次いでいるということを皆さん御存じでしょうか。駅のホームにだれもいないわけですよ、今駅員が。監視カメラで見ているだけ。人減らし、首切り、まだこれは解決していませんね。

 それから、JR西日本の事故の関連で言うならば、利益を優先する以上、当然もうけなくちゃならないから、もうけにならない部分は切り捨てざるを得ないという企業方針を打ち立てなきゃならないわけです。安全装置、これに対する予算の配分。JR西日本、当然国会でもいろいろ議論されましたから、皆さん御存じのはずです。それから過密ラッシュ、それから無謀なスピードアップ。スピードアップせざるを得ない状況に運転手が走らされていたという状況は、これもやはり皆さん御存じでしょう。これは私は、民営化が悪いというよりも、民営化に伴って企業の利益重視に走ったJR西日本会社の体質に起因すると思いますけれども、そういったものを引き起こしてしまう。

 これは電電公社も同じです。もちろん時代の流れ、さまざまなものがあります。電子メールの普及、それから携帯電話の普及、こういったものもありますけれども、今までただだった一〇四の電話番号案内、これは一気に百円に上がっているわけですね。それから、町から公衆電話がどんどん消えている。僕は構わないですよ、携帯を使っていますから。でも、この場合、だれが一番困るかというと、生活弱者と呼ばれる方々が今一番困っていらっしゃる。そんな方がどうでもいいというんだったら、そういう説明をすればいいわけです。

 郵政も同じかと思います。地元に小さな郵便局しかない、あるいは離島、僻地に住んでいらっしゃる方、さまざまな不安があるかと思います。いっそのこと、そういう人はどうでもいいじゃんと言えばいいわけですよ。そういう人を切り捨ててでも必要なものなのだという説得力ある言葉があるのであれば、郵政民営化にもそれなりの説得力がついてくるんじゃないでしょうか。

 必ず生活弱者は困るという事態になるかと思います。郵便貯金しか頼れない人というのは絶対出てきますでしょう。口座維持管理手数料みたいなものがばんばんばんばん出てくるような世の中にあって、やはりぎりぎりのところで、だれでも受け入れますというような金融機関がなければ、本当に安心してお金を預けることができなくなってしまう。困るのは果たしてだれなのか。困っても構わないということをはっきりと郵政民営化の推進論者の方は言うべきだと僕は思います。その上で議論すればいいじゃないですか。僕はそう思います。

佐々木(憲)委員 ありがとうございました。終わります。

二階委員長 次に、横光克彦君。

横光委員 社民党の横光克彦でございます。

 きょうは、四人の参考人の皆さん、それぞれのお立場からの貴重な御意見、本当にありがとうございました。

 まず、安田参考人にお伺いいたしますが、今、民営化されたら困るのはだれかということでございます。そういった意味で、公共性の重要性というものを先ほど説明をされました。そして、この郵政三事業が今や国民にとってはぎりぎりのセーフティーネットだという御意見もございました。私も本当にそういう思いを持っておるわけでございます。

 参考人は、ジャーナリストとして、一貫して郵政現場の声を紹介し続けているレポートを発表されております。またそういった中で、今お話ございましたように、民営化されたNTTあるいはJRでも、民営化に伴い、大幅な人員削減あるいは転籍、出向、こういうのが進められてきたわけでございますが、郵便局会社も郵便事業会社も、民営化後の経営状況の見通しというのは本当に不透明なんです。それだけに、人員整理あるいは賃金の大幅カット、さらには転籍や労働強化、非正規労働者への転換などのリストラが断行される危惧もあるわけですね。

 先ほど、郵便局の例を挙げて、現在、すべて公社は既に民営化を先取りしている、その結果、職員や利用者にとっては非常に悪影響を与えているという説明もございました。もし仮にこれが郵政民営化ということになりますと、郵政の労働現場というのはどのようになるとお考えでしょうか。

安田参考人 今郵政で働いている方、ほとんどは公共サービスということに誇りを持って働いていらっしゃる方が多いわけですよ。確実にそのモチベーションは下がります。もうかる事業に集中して仕事を振り分けられるということが当然起こると思いますから、公共サービスとしてのモチベーションは当然下がるかと思います。

 それからもう一つ、今進行している問題として、今、郵政の職場の中、大体どの程度の非正規雇用の方が働いていらっしゃるか、皆さん御存じでしょうか。これは正確な数字はなかなか出てこないんですけれども、大体十六万人と言われていますよ。これは郵政公社が発表していますけれども、将来的に、外勤職員は全員アルバイト、つまりゆうメイトさんにするということでしょう。正規職員を外回りから外すわけですね。今もう既にそうじゃないですか。現金書留であるとか内容証明であるとか、そういった郵便物以外はほとんど非正規雇用の職員の方々が配達しているという状況じゃないでしょうか。

 郵便というのは、責任を持って国家の隅々まできちんと配達するという使命感のもとに配られていると僕は思っているわけですけれども、何もゆうメイトさんがいけないとは言いません、一生懸命やられています。ただ、それだけの彼らの労働条件は保障されていませんし、不安定な労働環境の中で働かされている。そういう人ばかりを増大させ、なおかつ責任も求める。当然、職場は荒廃していくと思います。

横光委員 どうもありがとうございます。

 先ほど安田参考人は、現場で国民、利用者、あるいはいろいろな方々にアンケートをとって、この民営化に賛成か反対かという問いに対して、わからないという声が一番多かったという、これは大変な問題だと私は思うんですね。それほどに国民の中はまだまだこの民営化法案というものがわからない、ここに集約されているのではないか。このことを聞いたときに、本当にこの法案を今、国会で激しく早く進めようとしていることに、私は改めて危惧を感じております。

 次に、石井参考人にお伺いをいたします。

 参考人は、三年前の郵政公社の法案のときに、総務委員会での参考人として出席された、意見を述べられた。いわゆる郵政公社設立に対して意見を述べられたわけで、実は、今度はそれと全く違う法案が出たわけです。

 我々はこの委員会で、そもそも論として、当時、中央省庁等改革基本法の三十三条一項六号に、郵政公社は民営化しないと書かれているんですが、これはあくまでも、当時かかわったからよく御存じだと思いますが、政府一体となって、郵政公社設立以降のことだというのが当たり前の常識だったと思うんですが、それが百八十度変わった現在、このことについて参考人はどのようなお考えをお持ちでしょうか。

石井参考人 おっしゃるとおり、私も、三年前の日本郵政公社法案の審議の際に、当然、この中央省庁等改革基本法第三十三条第一項第六号の規定は公社以降のことだというふうに確信を持っておりました。

横光委員 重ねてお尋ねをいたしますが、きょうは地銀の福田参考人もお見えでございますが、銀行協会などの意見書を拝見すれば、郵政事業について、官業ゆえの特典は見えない国民負担に支えられているとか、あるいは、何か経営上の問題が起きても政府は必ず救済してくれる、また、万一経営困難な状況に直面した場合は莫大な国民負担が生じる可能性がありますなどとしておるんですね。しかし、これは公的資金漬けになっていることを棚上げするようなものじゃないかと私は思うんです。

 郵政公社に対し、官業ゆえの特典、見えない国民負担があり不公正だという批判があるわけでございますが、このことにつきましては先生はどのようにお考えでしょうか。

石井参考人 今の御指摘はそのとおりだと思います。

 したがいまして、現在の日本郵政公社、そしてまた今回の民営化法案の流れの中で、そういう重要な問題点というのが全く明らかにされていないということでございますので、そこを、やはり具体的なところを明らかにして、急がないで、時間をかけて、地方の声もきちっと聞きながら、先ほど上越市のお話が出ましたけれども、上越市も合併して大変な大きなエリアになりました。そこで、同じ一つの市町村というような範疇ではなくて、ひとつ、そういう地域性とかさまざまなことを、日本のあり方ということを先ほど申し上げましたが、そういったことも含めてこれから考えていっていただきたいというふうに思っております。

横光委員 石井参考人に重ねてお尋ねをいたしますが、現在、この郵政事業は、全国津々浦々まで設置された郵便局ネットワークを通じて、郵便貯金、保険、これに加えて、国民の日常生活に不可欠な各種のサービスを提供しておるわけでございます。国民にとっては生活インフラとして広く浸透しているわけですね。

 きょうのお話の中にも、郵便貯金の利用目的は、病気、不慮の備え、不治の病、老後の蓄え、子供の資金等々の安心であるということをおっしゃられました。つまり、郵便局の安全、安心の機能は、私は、生活者の最後のとりでだと思うんですね。ですから、ますます逆に重要になってきているんだという思いさえ私はしているわけでございます。

 そういった中で、この安心の部分が今回失われてしまうんじゃないか。私は、修正が行われても、成功すれば、巨大な民業圧迫の企業の誕生の可能性、失敗すれば、身近で便利な郵便局のネットワークの崩壊、どちらにしても百害あって一利なしの法案じゃないかという気がいたしておるんですが、先生は、この法案が通った場合、将来、郵便局の姿、ユニバーサルサービスと郵便局のネットワークがどのようになるとお考えでしょうか。

石井参考人 仮にこの民営化法案が通りましたら、私は、さまざまな問題というのが二〇一七年完全民営化の時期までさらに出てきて、二〇一七年までもたないんじゃないかと思います。

 今の郵政事業を四分社化して、それで、取引コストを今どこの事業体でもできるだけ少なくしようというふうに言っているのに、逆にそれで二千数百億円も、さまざまな見えない国民負担とかいうお話がありますけれども、私は、見える国民貢献、これもしっかり計測して明らかにするということが大事だと思うんですけれども、今の制度でいきましたら、いろいろなセーフティーネットという、法案の中に設けられておりますけれども、それも形骸化してしまって、具体的な事業としてこれが進んでいくかというと、私は、そうはいかないというふうに思っております。

 ですから、現在のこのバランスのとれたトータルな事業として、シナジー効果という御指摘も出ましたけれども、シナジー効果を出しながら、今の日本郵政公社のビジネスモデルの中で改革と改善とサービスアップを図りながら進めていければ、決してじり貧にはならないというふうに私は思っております。

 以上です。

横光委員 私も続けて聞こうと思ったんですが、今の郵政公社のままでこの改革は不可能ではないということですね。

 それでは、福田参考人にお尋ねをいたします。

 郵政三事業一体で効率的にうまくやっていると言ってもいいこの郵政公社、これをわざわざ分割・民営化することで、地域・社会貢献基金、今度の中でやはり二兆円という設立基金が必要だ、さらに消費税等が加わる。いわゆる民営化することによって、新たな国民負担が、結局利用者負担ということになろうかと思うんです。

 先ほど言いましたように、見えない国民負担を批判しております皆さん方の主張は、私はちょっときつい言い方をしますが、バブルでやりたい放題やってきた銀行、生保が、バブル崩壊で膨大な税金で助けてもらったにもかかわらず、公的資金漬けになっていることを棚上げにして、郵貯、簡保の三百五十兆円をよこせと言っているようにも聞こえるのですが、この件につきましてはどのようにお考えですか。

福田参考人 厳しい御指摘でございますが、私どもは、今の公社のままの形態で政府保証を裏打ちにした存在でありますと、肥大化に歯どめがかからないということを憂慮しているわけでございます。そして、もちろん民営化につきましては、大変大きな課題でございますから、時間もかかりますし、さまざまな法案に盛り込まれております手だても必要だと存じておりますが、いずれにしても、進むべき目標として公社でなくて民営化ということは、公社のままではやはり立ち行かない、あるいは弊害が大きいというふうに私ども考えているわけでございます。

横光委員 地銀協会の意見では、リスク遮断あるいは利用者保護を徹底する観点から、郵便貯金、簡易保険の株式はできる限り早期に市場で売却し、完全な意味での民営化を実現することが重要です、こういうふうにおっしゃられていますね。

 しかし、今度の修正ではなかなかそうはなっておりません。いわゆる完全処分した後、買い戻しすることができる。つまり、一体的経営が可能な道があるわけですね。皆さん方の主張とかなり違うのですが、このことにつきましてはどのような御意見ですか。

福田参考人 私どもの立場では、できるだけ早く株式の売却が行われて、完全に政府の影響のない民営化の形態にしていただきたいと立場上ずっと申し上げてきております。そういう意味でいいますと、いろいろな手だてのもとに慎重に進めざるを得ないということが、私どもからすれば、特に移行期間を含めて心配事でございます。

 それから、最終的な連続保有のお尋ねでございますけれども、これは連続保有を妨げないという規定でございましたでしょうか、できるということでございますので、それは、実際にその時点で連続保有の事態が実現するのかどうかよくわかりませんのと、仮に連続保有の事態になったときにも、その必要性が、政府側において何らかの事情で、少し、よりグリップを残しておきたいとか、あるいは、ちょっと考えにくいですけれども、投資有価証券としての保有ということもあろうかと思いますけれども、いずれにしても、その辺の制度の詳細な御説明についてはまだ十分理解できておりませんので、その程度の御答弁をさせていただきます。

横光委員 どうもありがとうございました。跡田参考人には、時間がなくて、大変申しわけございません。

 終わります。

二階委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。

 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

二階委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、内閣提出、郵政民営化法案、日本郵政株式会社法案、郵便事業株式会社法案、郵便局株式会社法案、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案及び郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案並びに山崎拓君外二名提出、郵政民営化法案、日本郵政株式会社法案、郵便局株式会社法案及び郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案に対する各修正案を一括して議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、参考人として日本郵政公社総裁生田正治君の出席を求め、意見を聴取し、政府参考人として内閣官房郵政民営化準備室長渡辺好明君、内閣官房内閣審議官中城吉郎君、内閣官房内閣参事官羽村康弘君、内閣官房内閣参事官齋藤敦君、内閣府大臣官房長永谷安賢君、内閣府大臣官房参事官山本茂樹君、内閣府大臣官房会計課長大森雅夫君、内閣府大臣官房政府広報室長林幹雄君、法務省刑事局長大林宏君及び財務省主計局法規課長向井治紀君の出席を求め、説明を聴取し、また会計検査院事務総局次長石野秀世君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

二階委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

二階委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。五十嵐文彦君。

五十嵐委員 民主党の五十嵐文彦でございます。

 総理にまず最初にお願いをしておきたいと思うんですが、総理のお得意の分野ですと大演説になりがちでございますので、手短に、的確に御答弁をいただきたいとお願いを申し上げておきたいと思います。

 都議会議員選挙が終わりました。私、六カ所ばかり、六人の候補者を応援いたしましたけれども、私のことですから、政府の郵政民営化案は百害あって一利なしということを演説してまいりました。六人とも、一人区も含めて当選をしていただきました。

 私は、この民主党が伸びて自民党が前回より五議席減らしたということから見て、総理の最大の課題と言われた郵政民営化について、この都議選の結果で、国民から承認をされたとは言いがたい、こう思うわけですが、一言だけ御感想をいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 都議会議員選挙の結果についてどう思うかということでありますが、これは、自民党がほぼ目標としていた、五十議席前後を目標とするということで、四十八議席、第一党の議席を確保することができた。公明党はこれまた二十三人、候補者全員当選。民主党も議席を伸ばした。共産党もほぼ現有議席を確保した。社民党は残念ながらゼロになってしまいましたけれども、大体、社民党以外はほぼよかったなと思っているんじゃないでしょうか。自民党と公明党の議席を足しますと、余裕のある過半数を確保している。また、都議選は国政とは別ですし、都政の問題と国政とはまたいろいろ違いがあると思います。郵政民営化法案は是か非かという選挙でもございません。

 また、四月の国政選挙、衆議院の補欠選挙におきましては、二議席とも民主党の議席であったのを自由民主党が、郵政民営化が必要だと私が訴えて二議席を確保することができた。そのときには、この補欠選挙は国政選挙である、これで民主党が議席をとって小泉政権交代の選挙だと訴えたけれども、国民はそうはとらなかった。自由民主党に議席を与えて、民主党の議席を奪ったということでありますので、これまた民主党はどう思われるのかとお聞きしたいと思います。

五十嵐委員 十九議席から三十五議席へというのは、これは大変な伸びなんですね。それは、きちんとやはり私は権力の側にお立ちになる方こそ謙虚に受けとめるということが必要ではないかということを申し上げておきたいと思います。

 それから、私自身は、郵政の問題を取り上げて遊説し、かなりそれが共感を得て、私が行ったところでは一人区も含めてかなり好成績で当選をさせていただいた。そういう意味からいっても、私は、必ずしも総理が手放しで自民党は過半数をとって勝ったんだということにはならないんだろうというふうに思います。

 そこで、端的にお尋ねを重ねていきたいと思いますが、以前、私、総務委員会で総理に、郵政民営化は、それ自体は目的ではなく手段だと思いますが、目的ですか、手段ですかということをお尋ねして、手段ですとはっきりお答えになられました。このことについて、再度ここで確認をしていただけますでしょうか。

小泉内閣総理大臣 郵政民営化法案は、小泉内閣におきまして重要な課題であり法案であります。もとより、いかなる政策も国民生活のためになると思って政府としては国会に提出しているわけであります。

 この郵政民営化法案も、経済の活性化、さらには、余り民間のやることに政府が口を出さない、民間の創意工夫を発揮させよう、民間にできることは民間にという方針にのっとって出している法案でありますので、これは大事な法案でありますが、この法案を成立させることによって、日本経済全体の行政改革、財政改革そして経済活性化に資する重要な法案だと思っております。

 もとより、政府の出している郵政民営化法案を含めて、すべての法案は、国民全体の利益になるというための一つの手段でございます。

五十嵐委員 手段というお答えをいただいたわけですが、私も当然それは手段だろうと思います。

 民でやれることは民でということを、あるいは官から民へということを盛んにお話しになられますが、それではちょっと角度を変えてお尋ねしますが、病院というのはどこでも、民間病院もございますから民でやれます。総理は、国公立病院は一切必要ない、民でやれるんだから民でやれるんだ、こういうことにつながっていくかと思いますが、私どもは丁寧に一つ一つ、公でやるべきこと、民でやるべきこと、病院でもいろいろな機能がありますから、これを一つ一つ見きわめて、公の部分もあれば民でやれることもあるだろう、こう思うんです。総理の言うようにべたっと一遍に考えてしまうと、民間でやっているんだから全部民間にやらせたらいいじゃないかということになるんだと思いますが、国公立病院は必要ないというお考えですか。

小泉内閣総理大臣 これは、国立でやるべきこと、民間でやるべきこと、全部一つの方針に基づいてすべてやれということではありません。民間でできない分野においては国がやらなきゃならない面もあります。

 仮に、特殊法人改革を打ち出したときに、統廃合、民営化をやるべきだといったときにも、全部民営でやれ、全部廃止しろという声が野党から出てまいりましたけれども、私は、そうではない、民間でできない分野もあるでしょう、民間にできることは民間にやっていただきましょう、どうしても民間でやれない、国が、あるいは地方自治体が、あるいは公的な機関がやらなきゃならない部分は、それはそれでやりましょうと。

 病院におきましても、地域の方々が、民間にやっていただくならばこれはやらないであろうという分野においては国がやらなきゃならないでしょう、あるいは公的機関にやってもらう方がいいだろうという点につきましてはやっていただきましょうと。

 何でも一律に方針に基づいてやる問題ではない。あらゆる原則、法則におきましても、例外のない規則はないということにもあるように、よく見きわめる必要があると思います。

五十嵐委員 いや、同じことなんです。郵政についても同じことだと思いますが、病院についても、何も特殊なことだけを国公立病院がやっているわけではありません、民間と全く同じこともやっているわけでございます。

 それは、やはり基本的に役割というものが、生活のインフラという面を重視すると、公の役割というのは厳然としてあるんです。民間と競合してもいいんです。競合する分野があってもいいんです。そういうものなんだろうと思いますね、私は。ですから、これは一律に官から民へというキャッチフレーズで全部を仕切ってしまうというのはおかしいことだろうと思います。

 株式会社化という話もあります。病院を株式会社化したいという小泉さんは論者だというふうに伺っていますけれども、株式会社化すると、小児科がなくなります、もうかりませんから。そういう方向が早くも予測できるわけですね。実際に、小児科をなくした大病院というものがございます。そういうことからいっても、生活のインフラとかあるいは社会インフラ、公共財といったものについて、もっと綿密に考える必要がある。

 それから、官から民へといっても、私はいろいろな考え方があると思うんですね。公社であるからだめだと。例えば竹中さんは、公社形態であったら、これは安定的な分野で運用せざるを得ないから、どうしても国債が多くなるんだ、こういうことをおっしゃったけれども、それは必ずしも一概にそうは言えないんではないでしょうか。

 例えば今の病院の例でも、公設民営という考え方もありますし、アウトソーシングという考え方もあるでしょうし、いろいろな考え方があると私は思います。それから、官から民へということでも、例えば今の民間銀行は、これは銀行法のもとにある一般の純粋に民間の会社、金融機関でありますけれども、これは民から官へお金を流しているんですね。この十年間にたくさんの国債を買い込んで、民間の資金です、これも郵便貯金と何の変わりもありません、国民の資金でありますけれども、それを大量に吸い上げては官に流しているんです。

 つまり、経営形態と民から官へ、官から民へは関係ないということです。そういうことですよね。経営形態と民から官へ、官から民へというお金の流れについては、金融の資金のゆがみということについては、何ら経営形態と関係ないということではありませんか、竹中さん。

竹中国務大臣 五十嵐委員御指摘のとおり、公的な財とかサービスとかをどのように提供していったらよいのか、これは非常に大きな問題でありますし、その場合の経営形態、形態としてはいろいろな工夫があり得るというふうに私も思います。

 そのときに、まさに公的な役割を果たすものと、原則として官が主体でやる方がいいのか、民が主体でやる方がいいのか、それが混合して競争する方がよいのか、民だけれども公的な役割を担えるような特殊会社がよいのか、そこは大変重要な政策手段の選択である。私どもも、そのような考えに基づいて今回の枠組みをつくっているつもりでございます。

五十嵐委員 ですから、例えば、前にも申し上げましたように、PPP、官民パートナーシップという考え方もありますよ。例えば、ソーシャルエコノミーというヨーロッパでは主流になりつつある考え方もあります。公と民が協力をしていくという考え方もありますね。それから、公社のままで例えば公民協力、公民協力といっても政治的な公民協力じゃないんですが、そういう考え方。

 お金の流れという面では、例えば、ローンポートフォリオといったものですね。地域の金融機関が持っている債権を証券化しまして、例えばそれを公社が買い取る。端的に言えば、アメリカで言う、ちょっと難しい話になりますけれども、フレディマックとかジニーメイ、ファニーメイといった、これは住宅の証券会社ですけれども、住宅に限らずこういう証券化システム、セキュリタイゼーションといいますけれども、こういうシステムを使ってお金を民間に流してあげる、民間、地域金融機関のそうしたものを証券化して買い取って市場に出すということによって、立派に官のお金が、あるいは公で集めたお金が民間に流れる仕組みというのはできるじゃありませんか。幾らでも方法があるんですよ。そういう新しい方法を模索するという手段もあったと思うんですが、何が何でもそれは官を民にしてしまえばいいんだというのは、私は非常に乱暴な、性急な考え方だと。これが非常に問題が多い。

 ですから、総理は上手ですから、自分に反対するのは全部悪い守旧派なんだ、こういう二分論で全部いっちゃうんですが、そうじゃない。自民党の中にも、経済や金融に詳しい方々が、これでは心配だということをさんざんこの場でも、総理はいなかったですけれども、ここで発言された与党議員のうち八割ぐらいの人は反対論、慎重論だったんです。それも総理が言っているような単に郵政族議員じゃなくて、経済をよくわかっている、金融をよくわかっている方々が、心配だ心配だ、反対と言いたいけれども反対と言わせてくれないから心配だと言っているんだということをずっと言っておられた。そういうこともあると。

 私が今申し上げたように、官から民へのお金の流し方というのもいろいろな工夫があり得るではないかということについて、竹中さんはどうお考えになりますか。

竹中国務大臣 まさに公的な役割を官が担うのか、そして民が担うのか、その中間的なものか、これはもういろいろな形があり得るわけで、各国とも、そのためのいろいろな努力をしておられるというふうに認識をしております。

 私どもが今回提出させていただいている法案というのは、まさにそのような新しい方法の一つとして、民営化を行いながら、しかし、公的な役割を担わなければいけない郵便事業会社とか郵便局株式会社については、これを特殊会社とする形にして、一方で、民の形態をより積極的に取り入れる必要があると考えられる銀行でありますとか保険会社につきましては、これは特殊会社ではなくて商法の一般法人として最初から設立する、そのようなまさに新しい方法、新しい工夫をしながら最大限の努力をして、この法案を提出させていただいております。

 官から民への流れ、その民の活力を最大限生かしながら、しかし同時に、公的な役割はしっかりと果たせるような制度的担保を行っていく、そのような制度設計の上で今回の法案を御提出させていただいております。

五十嵐委員 私が事前に手に入れている政府の想定問答集どおりのお答えなんですが。

 私は、非常に乱暴な議論なんだろうと思いますね。まず先に来なきゃいけないのは、先ほど言いましたように、まず、官の仕事はどこまでにとどめるべきなのか、公的金融の問題がここでも盛んに問題になってきました。いろいろな特殊法人やいろいろな事業団等が、それぞれにたくさんの融資事業をやっております。本当にどこまで必要なんだ、どこからが民間に任せていいんだろうか、あるいは、特殊法人のその他の事業そのもの、金融に限りませんけれども、どこまでが本当に必要で、どこまでが官が手を出すべきでない仕事なのか、そこをまず確かめる方が先なんじゃないでしょうか。

 それを確かめた上で、それでは効率的にやる方法としてどういう方法があるのかという経営形態論は後から出てくるべきもので、経営形態論を先にして、ビジネスモデルも何にもない、出たとこ勝負だというのは非常に危険だというふうに言わざるを得ないわけでございます。

 これは後からやるからいいじゃないかということを必ずお答え、そういう想定問答になっていますから、同時にやるんだとか後からやるんだという話になるんでしょうけれども、そうじゃなくて、先にやはり仕分けをすることが一番大事なんじゃないでしょうか。

 どこまでが官がやるべきことなのか、どこまでが公として手助けしなければいけないのかということを厳密に見きわめる、その仕事の仕分けをすることが先に来なければならないのに、それが本末転倒しているから、目的化しているんじゃないですかという批判をいつまでも国民から浴びているんだと思いますが、その点はいかがですか。

竹中国務大臣 今、五十嵐委員が特殊法人の例ということで、まさにどこまで官がやるべきかということが重要だ、これはもう私どももまさにそのような考え方に立っております。

 特殊法人について例を今お出しいただきましたので、どのような議論をしているか、二年前の諮問会議で、特殊法人の改革については、特に政策金融が例でございますけれども、公共性のまずある、必要なもの、つまり、一つのプロジェクトの公的な利回りといいますか、それと私的な利回り、それに大きく格差がある場合は、これはやはり政策として公的な部門が介入しなければいけない、その公共性の認定をまずやろうというような一つの基準をお示ししております。

 同時にそれを、じゃ、どのような手段で行うのか、政策金融の例でございますから、それを金融で本当に行う必要があるのか、税制なのか、その他のやり方なのか、その手段のこともチェックいたしましょう、その重要な基準がある。とりわけ一般の民間の市場では十分に消化できないような超長期の金融でございますとか、宇宙開発なんかが例だと思いますが、非常にリスクが高いものについては、これはやはり民間の市場ではリスクをとり切れないものもある、そういうものについては政策的な金融が必要である。

 そういうような基準を示した上で、機能をまずしっかりと議論して、そして組織を議論する、そのような方向を我々も考えているところでございます。その点においては、五十嵐委員がおっしゃった、まず機能である、そして形態であるというような考え方を私たちもとっております。

五十嵐委員 いや、先に郵政の民営化を考えているんですよ。それで、秋から、政府系金融のあり方についてはこれから検討するということになっているんですから、お話は少々違うんじゃないかなというふうに思うわけでございます。

 民間に、市場でやれることは市場でやったらいいということで、財投機関債というのが出ていますよね、それにできない部分が財投債という形で、国債として資金供給されているということなんですね。私は、財投機関債でやれるものは、本当にそちらの方は民間化してしまったらどうか、民間の市場でやれるわけですから。それから、公がやれる部分というのは、これは利子補給とそれから政府の保証制度ですか、融資保証等で対応していけばいいという部分もあると思います。

 いろいろな考え方を整理してから、そこで初めて、これはこういう形態でなきゃいけない。どうしても官がやるんだったら、官で直営やってもいいと思うんですよ。あるいは公共事業体みたいなものをつくって、そこを改革して民営化手法を取り入れるという方法もあるでしょうし、いろいろなやり方があると思うんですが、いきなり何でも株式会社にすればうまくいくんだというのは、やっぱり納得ができない。

 先ほど言いましたように、例えばローンポートフォリオを買い取ることによって民間にお金をいっぱい流せるじゃないかというお話をしましたが、それにはお答えいただけなかったんですが、いろいろな方法があり得るということはお認めになりますか。

竹中国務大臣 今、財投機関債での調達、そして利子補給、恐らくそれに加えて保証というやり方で政策を実行する場合もある、そういうことを五十嵐委員は御指摘なのだというふうに思いますが、今の問題に関して言うならば、これはいわゆる公的なお金の流れの出口の議論として、そういう議論をさらに今後大いにしなければいけないというふうに私たちも思っております。

 ただ、郵政民営化に関しましては、公的なお金の流れの入り口の問題でございます。その入り口に関して、政府が政府保証を付して、政府自身がお金を集めるということになりますと、その後のお金の流れが、勢い安全資産ということでどうしても限定されてしまう、このことはやはり逃れられない一つの問題であろうかと思います。そこに幾つかの金融手法を加味して幾つかの工夫をするということはあり得ることではございますが、それでもおのずと制約がある、公的な目的のためにつくられた政府の機関の行動としてはおのずと限界があるというふうに私たちは考えるわけでございます。

五十嵐委員 今の御答弁には二つの問題があります。

 一つは、入り口の問題として、民間化すれば入り口が解決するというものではない。先ほど言いましたように、民間金融機関に能力が欠けている、そして実質ゼロ金利政策を政府がとっている、量的緩和政策を政府がとっているということによって、いや応なく、だぶつく資金を民間金融機関は安全資産で運用せざるを得ない、つまり国債を買わざるを得ないということになって、民から官へのお金の流れを民間金融機関がつくっているんです。ですから、それはまさに入り口の問題、それで解決するという話ではありませんということを最初に私が申し上げたとおりでございます。

 それから二点目の方も、安全資産で運用せざるを得ないというと、例えば年金基金も同じなんですね。年金基金というもう一つの入り口もありますね。この年金基金も閉じなければ、そうすると民営化しないといけないということになるのではありませんか。

 それと同時にもう一つ、年金基金はリスク資産にも、実は郵便も全部安全資産じゃないんですよ。リスク資産運用もしていて、かなり実は優秀な資産運用をしているんではないかという話もあります。リスク分散すればいいわけですから、低リスクで運用することは可能なんです。パッシブ運用とアクティブ運用というのがありまして、長期の目で見れば、これはインデックス運用すれば、つまり、証券市場の全体的な流れの上昇に乗っていけば、国が下手くそな政策運営をしなければ、国がうまくやれば株価は上がっていく。全体の株価、一つ一つは違うかもしれないけれども平均株価は上がっていくので、それで運用すれば、実はかなり安全に、ローリスクでかなり高い利潤を上げるということも可能なわけであります。実際、二〇%以上のリスク運用を年金基金はしているんではありませんか。

 ですから、完全に、国債その他の公共債しか買うことができないというのは、私はごまかしの答弁だと思いますが、いかがですか。

竹中国務大臣 大きく二点、御指摘があったかと存じます。

 一つは、国がやると安全資産だというけれども、年金はどのように考えるのかという点、この点に関しては、期間のリスクをどのように転嫁するかというところにおいて、公的年金と郵便貯金の運用ではやはりおのずと違うということだと思います。

 公的年金の場合は、長期に預かって長期に運用するわけでございますから、その範囲でその運用が可能になる。しかし、郵便貯金の場合は、短期のものもございますし、長くて十年のものもございますから、その範囲で運用、それ以上のリスクを負うと、これは期間のリスクを負担できないということになって、やはりおのずと限界があるということであろうかと思います。

 次に、郵便もリスク資産にある程度運用しているではないか、これはそのとおりでございます。ただ、それも、そのリスクの程度が余り大きくならないように、幾つかのルールのもとでそのような運用が行われているわけでございますから、そこはやはり、幾つかの工夫があるにしても、おのずと公的機関としての限界があるというのが私たちの認識でございます。

五十嵐委員 今の答弁にもごまかしがあるんですね。年金は長期運用が可能だけれども、郵便は、定額貯金が十年だからそうじゃないじゃないかというお話なんですが、郵便貯金が買っている満期保有の国債は何年満期なんですか。長期じゃないですか。そうでしょう。それは全くごまかしですよ。

 もし、郵便貯金の、定額貯金の預金者たちが、いや、国が保証というけれども実際には危ないものだと言って引きおろし要求が出てきたら、応じなきゃいけません。そのときに、持っているのはほとんど国債ですから、国債を売り払わなきゃ要求に応じられないんですよ。これは大変なリスクじゃありませんか。つまり、長期資金だからそういう運用ができて、それで何の問題もなくて、短期資金だから国債だという、国債だって大変な問題が起きるし、実際には長期運用をしているということと同じことじゃないですか。これはおかしな話だと私は思います。

 それから、仕事の中身というのを、よく総理は、総理、よく聞いておいていただきたいんですが、保険は例えばみんな民間でもやっているんだから国が手を出す必要ないじゃないか、こう一概におっしゃる。私も、基本的にはそれは必ずしも反対しません。しかし、よく見ますと、本当に簡易保険というのは一般の民間保険と同じなんですかということも、すみ分けや役割分担していないんですかということもやはり考えなきゃいけない。

 私のこの資料をおめくりいただきたいんですが、これはかなり前の資料なんですが、何枚かめくっていただいて、四ページ目でございます。簡保の三差益というのを私が要求をして出していただきました。利差、死差、費差というのがあるんですが、利差は逆ざや、大変大きな逆ざやになっております。これに対して、これは生保もJA共済も同じなんですが、生保やJA共済は死差でそれを大部分補っているというのがおわかりになると思います。

 だけれども、本当からいえば、この生命保険事業というのは死差で余り稼いじゃいけないんじゃないですか。いわゆる簡易生命表の寿命と余り差が大きくあるようだったら、それはもうけ過ぎということになるわけで、それは、死差が少ない、むしろ簡保の方は死差でもうけないということを意図的におやりになっているということですね。そのかわり、簡易な検査で、厳密にだれでも入れるようにしようという、商品が違うんですよ、逆ざやになっている。基本的には逆ざや商品になっていて、これは一般の生命保険の商品とは違うすみ分けが私はなされていると考えることもできるのではないかというふうに思います。

 いいですか、一概に言いません、私は、保険からはある程度国は手を引いてもいいと思うんですが、実際にはすみ分けということも考え得るなというふうに思い始めているところなんです。これは国民のニーズが明らかにあるという考え方もできるということなんですね。そういうことができると思うんです。

 それは必ずしも民間圧迫になっていないんではないか、そういう側面も考えられるということなんですが、一概にこれを、民間もやっているんだから、同じ保険なんだからだめなんだ、やっちゃいけないんだと本当に言い切れるかという部分、すみ分けができるんではないかということについて、どうお考えになりますか。

竹中国務大臣 今の五十嵐委員の御指摘で、確かに、簡保と民間の生保会社では商品設計とか商品の構成とかが違っているというのは、これはもう私もそのとおりだと思います。そして、それが簡保なりのいわゆるビジネスモデルと言えるようなものになっているということだと思っております。

 同時に、簡保独自の商品設計と言われます、どのような職業の方もお入りになれる、そして無診査でお入りになれる、そのようなことに関しては、では簡保だけかというと、これは決してそうではなくて、民間でも類似のものがあるわけでございますので、そこは、それぞれの特徴を生かして今やっている。これは民営化をした後もそれぞれの特徴を生かしていただく必要があるわけでございますので、それを通して、国民の、加入者の選択肢が広がるということであれば、それはそれで、私は、国民の利便には資することであろうというふうに思っております。

五十嵐委員 逆に、まだ政府とのつながりが濃い間に、私は最後までつながりは濃いんだろうと思いますが、いろいろな商品の種類をふやすことが、それこそ民業圧迫になるのではありませんか、自己矛盾をするのではありませんかということなんですね。

 ですから、民間企業になり切るといいますか、私は最後までなり切らないと思うんですが、政府なりあるいは政府系の特殊会社とつながりが、グループ経営されてつながりが濃い間にいろいろな商品を出すことこそ、これこそ本当の民業圧迫になるのではありませんか、本来の民営化の趣旨に外れることになるのではありませんかということを申し上げたいと思います。

竹中国務大臣 保険会社と銀行に関しましては、経営の自由度をしっかりと確保していただくことと同時に、民間とのイコールフッティングを確保するということが、これは大変重要であり、今回の民営化全体の考え方、それをやはりしっかりとさせる意味で一番重要なポイントであるというふうに私も思っております。

 そうした点を踏まえまして、銀行と保険会社については、民営化当初は公社と同じ業務範囲から出発していただくということを決めておりまして、それ以降、民営化委員会で専門的、中立的な立場から、しっかりと経営の自由度、そしてイコールフッティングの確保、この両面のバランスをとっていただきながら、両社に問題が生じないような形で、民有民営、そして民間の市場経済の中への統合をぜひ図っていこうというふうに考えているわけでございます。公社のときと同じ業務から出発して、そして実態を見ながら、イコールフッティング、経営の自由度をバランスさせる、そのような制度設計にしているつもりでございます。

五十嵐委員 実際には、簡保商品も「ながいきくん」みたいな新しいものが出てきまして、少しずつやはり商品開発をして、商品の種類をふやそうとしているんじゃないかなと思う。ですから、そのお考えは、一概にイコールフッティングを守らせることができるというふうに言えないのではないかなというふうに思うわけでございます。

 それから、根本的な問題があるんですね。余り今まで出ていないんですが、この新しい四つの会社というのは、つぶすことはできるんですか。民間会社になるということは、経営に失敗したらつぶせる、倒産させるということと同義語なんですね、民間になるということは。ところが、この会社は倒産させられないんじゃないですか。

 なぜならば、大変重要な生活インフラである郵便事業を支える形になっているということから、倒産させられない会社。あるいは、大変大きな国債を保有し、あるいは運用する、保有していなくても旧勘定は運用するわけですが、そうする会社ですから、これは実は大きくてつぶせないという側面もあり、あるいは公共的な仕事を支えているという側面もあり、それから、成り立ちからして、公共的な会社といわゆるグループ会社として親戚関係にあるということからしても、つぶせない会社になる。つぶれそうになったら、これは公的資金を注入するなりなんなりして助けなきゃいけない会社になるんじゃないか、そう思いますが、そうすると、つぶせない会社はちっとも民間会社じゃないじゃないですかという議論になるんじゃないですか。

竹中国務大臣 まず、我々は、それぞれの分社化された組織が健全に市場経済の中で運営できるというふうに思っておりますので、もちろんつぶれるとかそういうことは想定は全くしていないわけでございますが、制度上の問題としまして、まず、これは分社化しまして、特殊会社としての持ち株会社と郵便事業会社、そして郵便局会社がつくられます。そして、旧勘定を管理する独立行政法人がつくられます。これらの組織につきましては、これは公的な役割を担っておりますので、特殊会社として、しっかりと公的な役割を担い続けるために存続をしていただかなければいけない。だからこそ、政府も、監督を含めてそれなりの関与をするわけでございます。

 それに対して、銀行と保険会社は商法の一般法人でございますから、あえて言えば、例えば廃業とかを禁じるというようなことが制度的に何か担保されているということではございません。民間の、まさに民有民営の会社として、しっかりと責任を持って運営していただく。それに対しては、銀行法、保険業法の適用を受けて、監督官庁はしっかりと検査監督をする、そのような枠組みの中で運用をしていただくわけでございます。

五十嵐委員 とにかく口では、それは表向きは民間会社の体裁を整えるということですけれども、実質的には、つぶすことができない、事実上の実は官営会社というか、半官半民会社に近い存在だということが言えると思うんですね。

 それだけじゃなくて、今の民間金融機関そのものが、これは大きいのも小さいのも、実は、予防的注入という制度を政府自身がおつくりになって、つぶせない仕組みをつくっちゃった、つぶさない仕組みをつくっちゃったんじゃないですか。これはまさに、今の金融機関は純粋な民間企業じゃないんですよ。私企業じゃないんですよ。半官半民に近い存在になっちゃっているじゃないですか。ですから、そのこと自体が、民間なら何でもいいんだというのは、いかに上辺だけのことかということの証明だと私は思うんですよ。

 そのことをつくったのはあなた御自身じゃないですか。私どもは反対しましたよ。こんな公的資金を無原則的に注入して、どんな失敗をした金融機関もすくい上げてしまうというのはいけないことじゃないですか、今までの柳澤さんの方針と違うじゃないですかということをさんざん言ってきましたけれども、あなたは強引に予防的な注入の制度をつくって、いわば金融機関を半官製化しちゃったんじゃないですか。民から官に変えちゃったんじゃないですか。そのことを反省なさらないで、官から民へ、官から民へというのは何かおかしい、私はそう思わざるを得ませんが、反論がありますか。

竹中国務大臣 民間の銀行に対する資本の注入に関しては、御承知のように、預金保険法百二条に基づく、これはシステミックリスクを防止するための措置というのが一方でございます。これはこれで重要な意味を持っている。五十嵐委員よくこれは御認識のように、危機を未然に防ぐという意味で重要な意味を持っているわけでございます。

 今御指摘のありました地域金融に関する予防的な注入に関しては、これは、地域金融機能の強化という観点から、金融行政上のシステミックリスクの防止とは全く違う観点から、しかも時限立法という形で、時間を区切って、弱体化している地域金融をさらに強化しようという特別の政策目的でつくられているものというふうに承知をしております。その意味では、決して銀行が半官半民にこれですべてなったという性格のものではないわけでございます。これはあくまで時限の、地域金融強化のための政策判断に基づく施策でございます。

五十嵐委員 拡大解釈すればどんなことでもできてしまうんですね。そういう意味では、そういう装置、セーフティーネット、厚過ぎるセーフティーネットをつくったということは変わりないわけで、厚過ぎるセーフティーネットは、私何度も申し上げていますけれども、これはモラルハザードを引き起こすわけでございます。そういうふうになっているわけですね。

 肝心なところに、今まで余り議論されていないところに入りたいと思っているんですが、イコールフッティングの話が出ていますが、イコールフッティングを本当にしようと思うと、どうしてもデファクトの政府保証というのは抜けないわけですね、先ほど言いましたように。そうすると、逆に民間の金融機関の方を半官半民のようなよくわからないグループに近づけてくるんじゃないか。

 つまり、他業禁止、金融機関に禁じられている他業禁止をかなり高スピードで解禁していってイコールフッティングするんじゃないかという疑いがぬぐえません。そうすると、金融機関が支配する社会にいつの間にか日本はなってしまいます。いいですか。いつの間にか金融機関がすべてを支配する社会に日本はなりかねない。この観点は余り出てきていないんですが、私は非常に重要な観点だと思っています。非常に重要な観点。議論がまだ足りないんです、実は。この議論について詳しく今までここで聞いていません。

 つまり、イコールフッティング、イコールフッティングというけれども、実際には他業禁止を急速に外していって、決めてもいない金融コングロマリット、金融コングロマリット化がいいというのは日本政府として決めているんですか、決めていないと思います。それを、金融コングロマリットを突き抜けて、何でもコングロマリット。明治初期のような、金融機関がすべてを、一般事業会社も持つ、そういう形態に突き進むんではないかという不安がぬぐえません。それについてどういうお考え方をお持ちか、はっきりと述べていただきたいと思います。

伊藤国務大臣 他業禁止を外して、なし崩し的にという御指摘がございましたけれども、今回の郵政民営化によって現行法令に反した取り扱いがなされるわけではございません。

 今般の郵政民営化は機能ごとに四分社化するものでありまして、一般事業のリスクを金融部門から遮断し、そして、郵便貯金銀行、保険会社の経営の健全性等が損なわれることがないことを確保していく、こうした対応をしているわけでありますので、こうしたことは金融コングロマリット化とは別のことであるというふうに考えているところでございます。

 いずれにいたしましても、分社化された郵便貯金銀行そして保険会社は、他の民間金融機関と同じく、他業禁止など一般の金融関係法令の適用を受け、それに従って業務を遂行することとなるわけでありますので、金融関係法令に基づいて、私どもとしては健全かつ適切な業務の運営が確保されるよう監督をしてまいりたいと思います。

五十嵐委員 郵政株式会社というもの自体が世界には類を見ない存在ですよね。一般事業と金融事業を同じ屋根の下に住まわせるという持ち株会社でございます。これは私は大変異常なことだと思います。

 前に金融の自由化という話があったときも、これは銀行の窓口で生保を簡単に窓販させると押しつけ販売があるじゃないかといって期限を延ばしたわけでしょう。そういうことが起きてしまいかねない。それなのに一般事業会社も一緒の屋根の下に住まわせるというのは、これは極めて異常なことですね。公社だからこそ許されるのであって、一般の民営化された会社でこんなことは許されないというふうに思います。

 それから会計も、金融機関の会計と一般事業会社の会計は違うでしょう。もともと貸方と借方の立て方自体が違うわけですから、これを一緒にやるというのは大変無理があるんだろうと私は思います。それはどうやってやるんでしょうか。例えば、連結決算をするんですか。それから、納税は連結納税を認めるんですか。どなたかお答えいただけますでしょうか。

谷垣国務大臣 連結納税のことをお答えします。

 連結納税制度、これは、今、事業会社と金融会社で違うじゃないかというお話でしたけれども、業種とか事業内容にかかわらず、それぞれの会社がみずからの経営判断でその適用を選択できることになっております。もちろん、選択した後、国税庁長官の承認が必要となりますが。そういう形でございます。したがって、金融会社と事業会社、双方が含まれたとしましても、この適用は制度上特別障害があるわけではありません。現実にもそういうものが既にございます。

五十嵐委員 いや、連結納税が今の制度で選べるということは私も存じ上げているんです。

 ただ、一般事業会社と金融会社が同時に存在をする、そういうことはないんですね。日本にも今までないと思いますよ。そういう持ち株会社は認められていないと思いますよ。それは会計上はどうなるんですか。

竹中国務大臣 会計上、決算をどのようにするかということだと思いますが、これは、特殊会社は特殊会社についての法律がございますから、それに基づいて行います。一般商法会社につきましては、一般の商法に基づいて、ないしはそれに関連する会計慣行に基づいて決算が行われることになるということでございます。

五十嵐委員 事前にいろいろなことを聞いたんですが、ほとんど、わかりませんというお役人の回答でございました。まだまだ決めるべきことは、全部大慌てでつくったものだから、全部後回しなんですよ、この会社の仕組みは。ですから、何もわかっていないんです。これらを全部明らかにしてからでないと、おっかなくてこんなものはつくれないというのが本当のこと。

 私どもは正直なんですよ。民営化してもいいけれども、何か行き当たりばったりで、出たとこ勝負でやるような話じゃ、今うまくいっている、小沢鋭仁同僚委員の指摘では、二十年間、政府の試算をもとにしても赤字になることはない、うまくやっている組織をわざわざどうなるかわからないところへ持っていくというのはおかしいんじゃないか。

 それから、いろいろな危ないところがあるんですが、例えば政府が盛んに言っている、言いわけをしている郵便局の設置基準についてお伺いをしたいと思うんですね。

 何回も言っていますけれども、例えば愛知県の富山村という二百数十人の村の簡易郵便局長さんのお話を私どもはお伺いをいたしました。

 その村には、もちろんコンビニなんかありません。一つの普通局と三つの簡易局があります。その三つの簡易局、簡易局長さんというのは民間人ですよ。十三万ぐらいの受託料で、そして、本当は町へ出ていってほかの職業についた方がいいんだけれども公共的な仕事でみんなに頼まれているから、あるいはこのままやっていればみんなから喜ばれ、そしてまた場合によっては叙勲も受けられるかもしれないというようなことでお引き受けになっている。名誉とボランティア精神でお引き受けになっている方がかなりおられるわけですね。

 この方々が、一般民間企業のためだったら、そんなもの、ばかばかしくてやっていられないといってやめることが当然考えられます。そのときに引きとめられないんですよ。簡易局も含めて設置基準にあるから守ってくださいと言ったって、一体、だれが守らせるんですか。もう既にその村にはふさわしい人が簡易局長さんをやっているんですから、ほかにかわりを見つけようったって見つけられっこないですよ。そのときに、四つある郵便局のうち、三つ簡易局がやめたといってやめちゃった場合、あと三つ、どうやって見つけるんですか。見つからなかった場合に罰則、処分をかけることはできるんですか。処分をかけることができるんですか。絶対に見つけられると保証できるんですか。

 僕は麻生大臣に伺いたいと思います。

麻生国務大臣 前にも御答弁したと思いますが、今でもそのようなケースはございます。昨年、実質で三十七、郵便局は減っております。おととしもたしか三十六、七減ったと記憶をいたします。

 例えば、今言われた中で、新しい町ができて、そこで郊外ショッピングセンターが廃墟となったために簡易郵便局が不要となったので、今の法律でもそういうことは十分に考えられるんだと思いますが、富山村という特殊なケースを使いましたので、富山村の実態をそんなに詳しく知りませんのでよく存じませんけれども、今の状態でもあるということを前提で法律は考えられないといかぬと思います。

五十嵐委員 いや、ですから、それがもっとひどくなるでしょうということを申し上げているんですね。民間になれば、民間の仕事になるわけですから、公共の役割を自覚してそのインセンティブを保っていた人たちが、それが保てなくなるでしょう。そうするとやめていく人がふえるでしょう。そのときに、やめさせない手段はないでしょうと。ですから、設置基準を省令で定めれば大丈夫です、なくならないんです、減らないんですというのは何の足しにもならないでしょう、自民党の皆さんはだまされているんでしょうということを申し上げているんですよ。

 実際、お答えになっていないですよ、今の麻生さんの答え。今でもやめているんだから同じだと言う。そうじゃないでしょう。民間になったらますます皆さんやめる。

 人の気持ちがわからないんですよ、学者さんたちは。今、私は、例えば特定局長さんのお世話にほとんどなっていませんけれども、特定局の皆さんとおつき合いもありますよ。そうすると、彼らは特定郵便局長会の会長にすごくなりたがるの。皆さんよく御存じだと思いますけれども。それは、局長会の会長をやると勲章が上がるんですよ、やはり叙勲が。だから、いわば名誉でやっているんですよ。単に特定局長さんたちはお金が欲しいからといってやっているわけではない部分があるんですよ。

 つまり、それは名誉、村の名士になれる、町の名士になれる、あるいは人のために役に立っている、そういう公共的な気持ちでお仕事されているんです。その気持ちが台なしにされるんですよ、単なる民間になるということは。それによってモラル的にも落ちる心配があるし、労働意欲というのも落ちる心配がある。ですから、設置基準が守られなくなるという可能性は非常に高いということを申し上げているんです。(発言する者あり)へ理屈じゃないですよ。へ理屈なわけがないじゃないですか。

 いいですか、設置基準を絶対に守らせる方法があるんですか。(発言する者あり)

二階委員長 御静粛に願います。

竹中国務大臣 郵政の皆様方には、引き続き、非常に高い誇りと意欲を持ってお仕事を続けていただきたいというふうに思っております。

 とりわけ特定局の局長の皆様方には、これまでのその地域での大変な役割を踏まえて、引き続き、これは公的な役割としては郵便認証司等々の資格も取っていただくようなことも含めて、しっかりと高い誇りと意欲を持ってお仕事を続けていただく必要があるというふうに思っております。

 この法案の中では、設置基準をつくるということに加えまして、しっかりと設置状況について毎事業年度郵便局会社から事業報告書を提出してもらって、そして総務大臣がそれを把握して、必要に応じ適切な措置を講ずるということも記しております。また、与党との合意を踏まえまして、郵政民営化委員会によります三年ごとの総合的な見直しの対象に必ずするということにしております。その結果、必要があれば、この委員会は政府に意見を述べて、総務大臣が必要な措置を講ずることが可能な仕組みにしているわけでございます。

 五十嵐委員、具体的な例で御懸念があるんだということをおっしゃられたわけですけれども、そのような事態が仮に生じた場合でありましても、会社が直営の郵便局を設置したり新たな委託先を確保するなど、いわば代替的な措置を講ずることによりまして国民の利便性を確保していくことは可能である。総務大臣の一般監督権限等によりこれをしっかりと担保していく考えでございます。

五十嵐委員 今のでも十分なお答えになっていないですね。

 一般監督命令しかできないんですよ。ですから、守られなかったら、郵政会社あるいは郵便局会社、郵便会社の社長さんに戒告だか訓告だか紙切れ渡して、やってください、やってくださいと言うことしかできないんですよ。だって、もし設置基準が守られなかったからといって、業務停止処分なんかできやしないんですから。そうでしょう。それから、免許の取り消しだってできないんですから。だから、それは同じことなんです。つまり、設置基準が守られなくてもなすすべはほとんどないということに等しいんですね。

 それから、そのときに、これも今までの議論に出ていないんですけれども、いわゆる地域貢献基金というのはどうやって配るんですか。

 私は、多分、今言ったような、過疎地の特定局や簡易局に受託費を割り増しして払う以外にこれを引きとめる方法はないと思いますね。ところが、普通の民間会社だったら、生産性が高いところにお金をつけてあげるのは当たり前であって、生産性が低いところにわざわざ割り増しのお金を、生産性の高いところと比べて低いところにわざわざ出すというのは、これは民間の論理じゃないですね。官の論理なんですよ。

 これから見ても、これは無理があるな、民間の論理じゃないですねということを言いたいんですが、これについてはどうですか。そういう配り方をされるんですか。配り方はどう考えているんですか。

竹中国務大臣 過疎地の郵便局、特に今簡易局を念頭に置いておられるんだと思いますが、それと基金の活用、これは経済合理性から説明できるのかということですが、貯金・保険サービスの業務量が小さい場合、そういう場合があり得るわけでございますけれども、これはネットワークの一環として簡易局で貯金・保険サービスを提供する価値がある、まさにネットワークの一環としてそれをやる価値があると判断すれば、郵便局会社が経営上もそこから得られる収入以上の委託手数料を支払うということはあり得るわけでございます。これはなぜかというと、まさにネットワークバリューを考慮すれば、そういう手数料を支払うことが経済合理性に決して反するものではないということになるわけです。

 仮に、過疎地の簡易局でこのようなネットワークバリューを考慮したとしても、貯金・保険サービスの提供が困難となる場合には、そこである意味で初めて社会・地域貢献基金を活用して地域にとって必要性の高いサービスの確保を図る、そういう二段構えで現実のサービスが確保されるように我々は考えているわけでございます。

五十嵐委員 それは公の理屈なんですよ、やはり。ネットワークを維持する価値がそんなにみんなどこのところにも同じように経済的な、価値といってもいろいろあるわけですよ、経済的な価値がないからそうなっているわけでありまして、経済的な価値はネットワークとしてすべての、隅々の小さな、今言ったようなところまでみんな同じようにあるわけがないわけでありまして、それは私は、むしろへ理屈のたぐいだろうと思って、納得はできません。

 それで、肝心な部分を先にしなければいけませんので、まず、竹中さんに改めて、総理、ちょっと退屈かもしれませんが、申しわけございません。

 竹中平蔵公式ウェブサイトというのを見せていただきますと、六月の二十四日付なんですが、ここで竹中平蔵さんの署名が入っていて、「むしろ、本件に関して、役所の内部からメールや書類等の情報が多数漏洩していることに強い憤りを感じており、厳正な対処が必要と考えております。」これはどういうことなんでしょうね。

 私どもは、正義感から法に反していることをちゃんと指摘してくれる方は立派な方だ。むしろ、この方々を守らなければいけない。これは公務員の守秘義務というようなことはありますけれども、これは違法性は阻却されます。大きな法の正義を実現するために内部告発をするということは、当然これは守られなければならないことであって、これがなかったら、権力がすべてを隠ぺいできるということになりますから、これは大変なことだと思います。

 このことを竹中さんが書いたこと自身が、私が前回提示した資料が内部から出たものである、つまり本物であることをお認めになったということでよろしいですね。

竹中国務大臣 御指摘の私のホームページの文言でございますけれども、これは私は、広報の事業に関して私なり政務秘書官が疑惑を抱かれるような形で関与した疑いがあるというような主張が一部でなされておりますが、そのような事実は一切ありませんということを基本的に書いております。その上で、本件に関して、役所の内部からさまざまな情報が漏えいしたことを感じており、厳正な対処が必要であると思うということを述べております。

 私は、この委員会の今回の議論を通じまして、内部の情報が外部に出されたと思わざるを得ないな、そういうことだろうなというふうに認識をしております。ただし、外部に出された情報がどのようなものなのか、これは私にはわかりませんし、またそれがどの程度正しいのか、間違っているのか、それも私はわからないというふうに思っております。内部情報管理体制の点検と管理を徹底してくれということは既に準備室長に指示をしたところでございますが、私自身はそのように認識をしております。

五十嵐委員 テレビの前の方も総理もよく認識していただきたいんですが、これは、千四百四十万部程度全国に配られた問題の広告チラシなんです。

 これは、最初から予算ありきだったんだろうと私は思っております。なぜなら、この中に含まれている、ページをあけていただきたいと思いますが、見積書が入っております。この見積書を、例えば、二十六ページをあけて見ていただきたいと思うんですが、私はこれをプロに見ていただきました。(発言する者あり)盗んではいません。余計なことを言わないようにお願いします。そういう失礼なやじはちょっと、許さないようにしてください。

 いいですか、この見積書が、プロに見ていただくとでたらめです。まず、例えば、コピーライターとエディトリアルライターを同時に使うことはありません。それから、エディターとディレクターとを、あるいはフォトグラファーも、こんなに一緒に同時に使うことはありません。

 それから、単価がめちゃくちゃ高いです。アシスタントフォトグラファーの単価が一人五万円になっているんです。これはプロの一人前のかなり有名なフォトグラファーでも大体四万円ぐらいですから、アシスタントフォトグラファーが五万円というのはあり得ないんです。めちゃくちゃです。

 それからこの日にちも、こんなにかかるはずがない。大体この程度の内容をどれぐらいでできますかと言ったら、せいぜい二百万円と言いました。これは一人の方ではありません、複数のところで二百万円。これを千三百四十万円で契約されております。

 これは、明らかに水増し請求の手段になっている、不当な利得を得ているというふうに思います。本当にこんなものを正当としてお認めになったんでしょうか。林さんが発注者として、広報室長が責任者かと思いますが、これは精査してお認めになったというふうにお答えになられましたけれども、本当にそうなんですか。私は、これはだれに聞いてもおかしいと言いますよ。こんな人数使うはずがない、この程度のものにそんなに要らないというふうに思いますし、紙も特殊なものではありません、紙も特殊だと言っていましたが。これは一億五千万という最初の予算ありきです。そうじゃないんですか、お答えください。

林政府参考人 お答えいたします。

 今、企画制作費が高いのではないかというお話でございました。私どもとしましては、企画制作費につきまして、会計の実務の担当者が、印刷、デザイン料金というようなものの、視覚デザイン研究所編というようなものを含めまして比較いたしまして、妥当と判断いたしたところでございます。

五十嵐委員 最初の時点ではほとんどまともな見積書も出ていないんですよ、ですから。二十八日に実質的に合意したと言っているんですが、二十八日に実質的に合意した時点では、こんな見積書は出ておりません。出ておりません。大ざっぱな、前にお示しした、メールに出ていた大ざっぱな金額しか書いていないんです。中身は精査をしておりません。ですから、これはインチキなんですよ、はっきり言って。

 この方は、スリード社という問題の会社はほとんど能力が、申しわけないけれども乏しいと思われます。なぜならば、ここに書いてあるでしょう、ページをあけていただければと思いますが、このコミュニケーション戦略案という十ページから始まるものですが、これはほとんどオフィスサンサーラの方の大嶋さんが書かれた内容ではありませんか。ですから、ラフ画というのもちゃんと、この間出されてきましたけれども、十九ページに、ラフ画を書かれたのは、大嶋というサインが入っている。ほとんどつくったのは大嶋さんの方なんですね。

 いわゆるインフォメーショングラフィックスというので引くと、大嶋さんの名前では二十二ぐらい検索でヒットします。ところが、この谷部さんの方は一つもヒットしません。つまり、全くこれは畑違いなのではないかなと思われます。

 つまり、これをつくったのはオフィスサンサーラ。この中にも出てくるんです。ですから、編集長にオフィスサンサーラの大嶋さんを据えてくださいと十五ページの一番下のところに、元宝島編集長、オフィスサンサーラの代表に、大嶋賢洋さんとおっしゃるんでしょうか、編集をさせてくださいというふうに出てくるんですね。

 つまり、これは、実質的なコンセプトを考えた方は大嶋さんの方であって、スリード社というのは、実質的にはほとんど中身にはかかわっていない。そして、オフィスサンサーラはこの仕事からおりられてしまったというふうに聞いています。

 そうすると、スリード社というのは何だったんでしょうか。何のためにこういう国の大きな仕事を、つくりたての会社、しかも、書かれている住所と実際のところが違うような会社、できたての会社、奥さんと二人だけでつくって、社員が二人の、自分を入れて二人しかいない会社にどうして国のこんな大きな仕事が発注されたんでしょうか。これは疑問だらけなんです。

 もう一度お答えをいただきたいと思いますが、これは実質的にスリード社が責任を持ってやった仕事とは言えないんじゃないですか。

林政府参考人 お答えいたします。

 十二月十五日付の企画書、これの、スリード社以外の、連名になっているとか、それからまた、十二月二十八日のラフ案についてのお尋ねでございますけれども、私どもとしては、スリード社につきまして、いずれにしましても、実質的な企画の提案は、一貫して私どもタスクフォースに対しましてスリード社によってなされたということと認めております。それで、同社と契約を結ぶことにしたものでございます。

 なお、今お話のありましたオフィスサンサーラの代表である大嶋さんという方につきましては、この折り込みチラシの編集長を務められた、そのことは承知しております。

五十嵐委員 実質的に、最初の二十八日に初めて出てきたラフ案ですか、そのラフ案についても大嶋さんが書かれたものなんですよね。

 今問題になっているスリード社の方ですが、これは、実際には広告の制作については経験がほとんどないのではないかなと思われる節があります。それは、折り込み会社の見積もりを待って、なかなか出てこないものですから、その最終的な見積もりが二月までずれ込んでしまった。これは、大手の広告制作会社ですと、それも含んで最初から契約をして、その範囲内でいろいろな広告会社とネゴをして、そして最終的な値段をむしろ決めていく、押しつけていくというようなやり方ですから、折り込み会社の見積もりが出るまで全体の見積もりが出ないなんということはあり得ないんですよ。それをやっていたということ自体が、多分スリード社というのはこういうお仕事に極めてふなれだったということが言えると思うんですね。

 なぜそんなふなれな会社が入ったのか。私が指摘をした中にも、メールの中にも、どこの馬の骨ともわからないところと契約をするのはいかがなものかという趣旨のメールが、これは広報室側から出ているんです。これはとても不思議なことなんですね。そのこと自体お認めになりますでしょうか、山本参事官に伺いたいと思う。

 私は今まで、室長以外の下の方にはお気の毒だと思って答弁を求めてきませんでしたけれども、そうやって室長がおとぼけになるんでしたら、一つ一つ確かめていかなきゃいけないと思いますが、山本参事官、お答えいただきたいと思います。

山本政府参考人 お答え申し上げます。

 今、五十嵐委員はメールのことをおっしゃいましたけれども、メールにつきましては、半年以上も前のことですし、毎日膨大なメールの送受信をしておりますので、申しわけありませんが、一々記憶しておりません。また、その当時のメールも機械に残っておりませんので、私としては確認ができない状態でございます。

 折り込みチラシの企画をめぐりましては、もちろんいろいろタスクフォースの中で議論はありました。それはそうですけれども、だから、すべてが初めから意見が一致していなかったことはあったように思いますけれども、少なくとも、一民間業者さんのことを馬の骨と役所の外に向かって言ったことはないように思います。

 いずれにせよ、十二月十七日にスリード社から説明を受けて以降、いろいろ議論をしてきた中で、実質的に二十八日にゴーサインを出した。これまで繰り返し御説明してきたとおりでございます。

五十嵐委員 はっきり申しまして、先ほどから言っていますが、内部告発者がおられるわけですよ。内部告発者は、一月初頭、上旬の段階で……(発言する者あり)言えるわけがないでしょう。上旬の段階でまだ広報室は迷っていた、ここを使うかどうか迷っていたということを言われております。それがメールの中にあらわれているんですね。ですから私は申し上げているんですけれども、これは大変無理なことだ。

 もう一つ重大なことは、これは最初、広報室が抵抗されていたのは、やはり電通さんと概括的なお話があって、電通さんにお仕事を最初お約束していたか何かなんだろうと思います。後で仕分けをやり直さなきゃいけないということで、その仕分けのメールが来ているわけですね、電通から。もうなくなってしまったと前回お答えになりましたけれども、その仕分けのメールが来て、それをお示しさせていただきました。

 そのときに、付随する言葉で、デマケーションという言葉を言いましたけれども、これは縄張り分けという意味です、縄張り分けをした後の電通から、電通扱いのテレビコマーシャルが幾ら、あるいは新聞の広告が幾らというのを出したわけですが、それに付随して出てきたわけです。電通のIさんという方からそのメールが来たわけですが、これは準備室に来たんです。そして、準備室から広報関係者のところにそれが転送されているんです。その転送された中に「現在の電通分の予算内訳を送付します。 なお、別添」その予算内訳の別添には「知識人対策の五千万は含まれていません。」ということが書いてあるんですね。

 これは、五千万というのはわけがわからないと言っていましたけれども、はっきり、これは内部メールです。先ほどお認めになりましたように、メールが流出しているという言葉が大臣からありましたように、知識人対策五千万円というのが使われている。これはまさに大疑惑ですね。第二の官房機密費、内閣機密費じゃありませんか。こんな形で、知識人対策で五千万がばらまかれている、そういう可能性が非常に大きいと思いますが、このことについてはっきりした御説明をいただきたいと思います。

林政府参考人 お答えいたします。

 先般もそのお尋ねがあったと思いますが、そのときにも、私、はっきり申し上げたのでございますけれども、知識人対策というんですか、そういうものはございません。そういう概念もございませんし、まして五千万とか、そういうことに関しては、ございません。使われたということがあるわけではもちろんございません。

五十嵐委員 ごまかしになられていると思います。

 今私が申し上げました。準備室から広報に渡されたメールだ、準備室から出たメールだということを申し上げているんです。準備室の方、お答えください。

中城政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の知識人対策という五千万の、このメールのようなものについては、承知しておりません。

五十嵐委員 これは非常に大きな疑惑です。

 それから、総理、そもそも緊急性がない。緊急性は、竹中大臣が二月の初めの予算委員会の本格審議前にまかなきゃいけないということが緊急性の理由だと言っていた。これは主観的な理由です。

 それからもう一つは、独創性があると言ったけれども、これは独創性がないということを、私、前回も証明させていただきましたし……(発言する者あり)証明になりましたよ、これは。インフォメーショングラフィックス、ありふれた手法ですから。これはどこでもできると言っています。どこの業者さんでもこれはできます。それを理由に随意契約ができるんでしたら、すべての政府支出は随意契約ができます。これは重大な問題なんです。これは全部、どんなものでも随意契約にできてしまうことになるんです。ですから、ここはきちんとしなきゃいけません。

 官房長官にお伺いしますけれども、これからもこのような契約をお続けになりますか。

細田国務大臣 政府も巨額の政府広報予算を使っております。これは、主として国民の皆様方に政策の内容等をよくおわかりいただけるように、いろいろ工夫してやっているところでございます。もちろん、随意契約もございますが、競争による、入札によるものもございます。

 基本的には、やはり競争によりまして発注することが最も適当な場合も多いわけでございますが、中には緊急性等によりまして随意契約という例も現に広報予算の中では多いわけでございます。

 ただ、今後の方向といたしまして、広報予算の執行あるいは契約につきまして、十分いろいろな面で注意をすべきは当然のことだと考えております。

五十嵐委員 私はいろいろなところで確かめましたけれども、一カ月以上も契約の日付をごまかしてさかのぼるなんということは、ほかに例がないんですよ。

 何でこんな無理をしたんだということなんですね。私は、スリード社にどうしてもそれをやらせたかったんだろうな、こう思うんですね。どうしてかなと思うと、一つは、谷部さんのお父様がやはり関係があるのかなと思わざるを得なくなってまいります。

 谷部貢さんの、スリード社の社長なんですが、お父様は谷部龍二さんという国税庁のノンキャリア組の大変な大物でございまして、熊本国税局長を務められまして、中央区で中央合同事務所という、筧栄一さんという検事総長と共同で法律会計の事務所を開かれています。

 そこで、竹中さんに念のためにお伺いをしておきたいんですが、竹中さんと、それから竹中さんの個人事務所、ヘイズリサーチセンター、これは奥様が今社長をされていると思いますが、竹中さん、もしくはヘイズリサーチセンター、もしくは奥様が、この中央合同事務所に税務の相談等、かかわりを持ったことはございますでしょうか。お伺いをしておきたいと思います。

竹中国務大臣 今の、私の妻の会社のことは、私はよく知りません。妻がやっていることですから、私は知りません。

 ただ、いずれにしましても、私の知る範囲では、もちろん、私自身の税務の相談も含めまして、今、初めてお伺いしましたが、その方ないしは事務所と、何か税務のことを委託しているとか、そういうことはないというふうに思っております。

五十嵐委員 いやいや、頭に、奥様がやられているけれども、ヘイズというのは平蔵さんのヘイでしょう。平和のヘイなんですか、これも。やはり竹中さんの個人事務所でしょう、私はそう思いますね。ですから、それは会社のことは自分と違うというのは、余り当てにならない話だと思います。

 そして、内閣広報室に推薦をされているのは、明らかに竹中さんの政務秘書官の岸さんなんですね。内部の告発者も岸さんからの推薦であったということを認めておられるんですが、岸さんを、ここにおいでをいただきたいということを何度も申し上げていますが、その辺についてはいかがなわけでございましょうか。

竹中国務大臣 何度か私の政務秘書官の名前が出ておりますが、政務秘書官と谷部氏は、面識はあるものの何ら利害関係はない。このことは以前から答弁をさせていただいております。

 それと、今、委員は、推薦をしたというふうにおっしゃいましたが、推薦をしたというような事実は全くございません。

五十嵐委員 確認をしなければわかりません。お呼びをしてお尋ねしなければならないと私は思っています。私は、ですから、この点は非常に重要な問題ですから、時間が足りないというふうに申し上げているんです。

 委員長に、時間がない中でありますけれども、お取り計らいをいただきまして、ここに岸さんをお招きしたいと思いますが、いかがでしょうか。

二階委員長 先刻の理事会でこの問題を協議しました結果、竹中大臣から答弁を願うということで決着がついているはずであります。

五十嵐委員 いろいろな疑惑が、やはりこの問題で、お金の、税金の効率的な使い方をしましょうというのが改革だといいながら税金そのものをこのようにいいかげんに使っていいのかというのは、やはり基本的な問題なんです。そういう姿勢を持っている方に改革なんかできっこないんですね。

 そこで、私は、もう一つ実は情報が入ってきたので、本当はどうしようか迷ったんですが、二階委員長にお尋ねをしなければなりません。

 六月十三日に麹町のNという料亭で、二階委員長と武部自民党幹事長と山崎拓自民党筆頭理事が、公明党の幹事長、国対委員長、それからこの委員会の理事さんとお食事をなさいまして、そしてその帰りに和歌山名物の有機レタスを、一メートルぐらいの大きさのものを三箱、お土産に配られた。そのうちのお一人が、タクシーで来ていたので、実は持って帰れなかったので、後から送り届けられた。その届けられたものを見たら、中に、レタスはおいしくいただいたんですが、商品券が入っていたので送り返したという事実があるようですが、これは事実でしょうか。委員長、大変恐縮でございますが、お答えいただきたいと思います。

二階委員長 どの程度のお時間をいただけるのか存じませんが、確かに、新種のレタス、つまり発光ダイオードを活用してできたというレタスでありましたので、地元の名産を仲間に紹介するという意味で持ってまいりました。それ以上の他意はありません。一箱千二百円ぐらいだというふうに聞いております。

 その他のことは私は全く存じておりません。

五十嵐委員 いや、レタスのことを言っているんではなくて、商品券を送り返されたという事実があるかどうかというのが重要なんですね。

 つまり、なぜそこまでして、大急ぎでいろいろな対策を、手を打って、無理やりにこの法案を通そうとされるのか。無理に無理を重ねられている証拠ではないかな、こう思います。

 総理にもお尋ねしたいのですけれども、今私がお尋ねしたことは、単に疑惑を追及するというのではなくて、やはり国民の大事な税金をむだにしないという観点から改革をしようとされるなら、まず身を正されるということが必要だと思います。

 私は大変な多くの疑惑、そのほかにも、竹中さんについては前回も、その著書の口述筆記料をめぐるお話もさせていただきました。こういうことがやはり幾つもあったらおかしいんですよ。ほかにもいろいろなうわさが出ていますよ。自民党幹事長から政治活動費が反対派の人に出されたという話も聞いています。

 そういうこともありますが、新聞に出たということも私も存じ上げていますけれども。なぜそのようなことをして急がなければならないのかということは、国民の皆さんみんな疑問に思っておられるんです。その政治姿勢といいますか、襟を正すということについて総理から伺って終わりたいと思います。

小泉内閣総理大臣 真偽定かでないメールはたくさんあると思います。私はどういう情報をもとにして疑惑を追及しているのかわかりませんが、私に対しても、一滴もお酒を飲んでいないにもかかわらず、酒を飲んで本会議に出席してと、民主党は私に対して懲罰動議を出したのですよ。そういうでたらめな、うわさとか情報だかわかりませんけれども、それを根拠にして私を懲罰にして、全く間違っているにもかかわらず陳謝もない、撤回もしない。まことに遺憾であります。慎重にしていただきたい。

五十嵐委員 私はでたらめのものは出しておりません。

二階委員長 五十嵐さん、あなたも突然先ほど私にこういう場所でおっしゃったのですから、私も反論する権利はあるわけです。ですから、時間がもうちょうどこういう時間になっておりますが、後ほど、幸い理事会は休憩にしておりますから、理事会において協議して決着をつけたいと思いますから。

 断じてあなたが疑問に感じておるようなことはありません。

五十嵐委員 ですから、委員長に発言の……(発言する者あり)

二階委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

二階委員長 速記を起こしてください。

 五十嵐文彦君。

五十嵐委員 私のメールは本物です、本物。私がお示ししたメールは本物であります。もし、それがうそだと言うのであれば、引き続き、この委員会を延長して、採決せずに引き続き行って、そして解明すべきです。そのことだけ申し上げて、同僚に譲ります。

小泉内閣総理大臣 私は、一般的に、メールでも真偽定かでないものはたくさんあるでしょうと。

 民主党においては、全くでたらめな、本会議場に私は酒を飲んで出席したということに対して、懲罰動議を私に提出している。何の根拠もない、当時のうわさだか知らないけれども、状況だか知らないけれども、全く酒を飲んでいないにもかかわらず、酒を飲んだといって懲罰動議を出すのはいかがなものか。でたらめなんだから陳謝してほしいし撤回してほしいというのに、いまだにしていない。余り無責任な発言をしないでいただきたいというのが本旨であります。

五十嵐委員 質問とは関係ないことをお答えにならないで、質問に対して実のある答弁をしていただきたいということを申し上げて、終わります。

二階委員長 次に、原口一博君。

原口委員 民主党の原口一博です。

 総理、先ほどのメールは、その中身については、私たち、理事会で整理をして、そして事実を解明していこうと、これは与党の皆さんも一緒にやってきた話なんです。ですから、私たちが、ためにするためにメールを出してきたということではないんです。

 きょう、ちょっとパネルを持ってきました。総理、これは前も議論させていただきましたが、官から民にという、単純にこういう形でやっていいのか。

 委員長、お許しいただいて、このパネルの資料を配付させていただきたいと思います。

 私は、きょうは、理念なき小泉郵政民営化に、この法案を廃案にするという立場から議論させていただくんですが、今一番困っているのは、この官が、官製談合や天下り、利権、そして私物化、依存と分配の政治で私物化されていることが問題なんです。それを単に民にしてしまえばどういうことが起こるかというと、国会のチェックがきかない、あるいは巨大な民業圧迫が起こるだけじゃないかというのをこの間議論させていただいた。

 今、私たちが必要なことは、不公正で非効率で国民不在のその官を本当の意味での公に変えていく、公平、公正、平等で、安全、安心、安定、国民の権利を保障する、そういう公をつくっていくことだ、私はそう考えているんですが、総理の基本的な御認識を伺いたいと思います。

小泉内閣総理大臣 私は、民間にできることを公務員がやる必要はないと思っています。官から民へというのは民主党の主張でもあったんじゃないですか。だから、これは官でやるべき問題か、民でできるのかということをよく調査したり検証したりすることは必要だと思っております。

 同時に、民間でも公の仕事をやってもいいと思います。官は民の補完ということで今までやってまいりましたけれども、むしろ、民間でも公の部分の仕事をしている企業もありますし、民間人でも今や国家公務員と似たような仕事をされている方もおられます。ですから、私は、同じ仕事で公務員じゃなくてもできる仕事は民間企業なり民間人にどんどんゆだねていった方がよろしい。同時に、民間の方も公の分野で公共的な仕事もできるというんだったら手を挙げてほしい。

 そういう点については、官でできること、民でできることをよく調査しながら、できるだけ民間でできることは民間にゆだねていった方がいいと思っております。

原口委員 きょうは法務省刑事局に来ていただきました。

 今、道路公団の橋梁をめぐる談合事件で、皆さん告発をされていると思います。その内容について伺います。

大林政府参考人 お答え申し上げます。

 平成十七年六月二十九日、公正取引委員会からなされた告発事実の概要ですが、株式会社横河ブリッジ、三菱重工業株式会社、石川島播磨重工業株式会社の三社は、平成十五年度にあっては他の鋼橋上部工事業者四十六社とともに、平成十六年度にあっては他の鋼橋上部工事業者四十四社とともに、日本道路公団が競争入札により発注する鋼橋上部工事について、受注予定者を決定するとともに、受注予定者が受注できるような価格等で入札を行う旨合意し、もって、被告発会社三社らが共同して、その事業活動を相互に拘束することにより、公共の利益に反して、前記鋼橋上部工事の受注に係る取引分野における競争を実質的に制限したというものであると承知しております。

原口委員 総理、今刑事局長がおっしゃったように、私が伺っているのは、官をただ民にすればいいのではない。官というのは公僕ですよね。その公僕がまさに私物化されて、官製談合の山。つまり、本当の意味での公をきっちり確保しなければいけないんじゃないですかということを申し上げているのです。御異論がありますか。

小泉内閣総理大臣 別に異論はありません。官の分野の仕事、民間の分野の仕事、それぞれあると思います。

原口委員 その官の分野、道路公団を鳴り物入りで民営化されました。四月の頭に発表された道路公団の会長、新しく株式会社になるその会長あるいは社長、それはどういう人ですか。ほとんどがこの道路公団OB。そして、今刑事局長がお話しになった、いわゆる長い間官製談合をしてきた、あるいは、私たちは先ごろ独禁法をこの国会に提出させていただいた、まさに官製談合をとめるためにどうすればいいかということを私たちはやっていたわけですが、その談合にかかわってきた人たちが会長になっているんじゃありませんか。違いますか、総理。

北側国務大臣 正確を期すために申し上げますが、道路公団は十月一日から民営化されます。会長予定者の方は、すべて民間から候補を選ばせていただいております。

原口委員 道路公団のOBなんですよ。違いますか。そして、私が総理に申し上げているのは、ちょっと北側大臣、結構です、趣旨と違うことを。

 つまり、その談合の中の民間からもおとりになっているんだ。それでは本当の意味で私物化された官がさらなる私になるだけであって、国民の福祉、あるいは私たちの大切な今回の郵政事業。

 きょうも総理に申し上げたい。郵政事業における国民の権利というのは一体何なのか。郵便貯金法第一条、「この法律は、郵便貯金を簡易で確実な貯蓄の手段としてあまねく公平に利用させることによつて、国民の経済生活の安定を図り、その福祉を増進することを目的とする。」というふうに書かれています。簡易生命保険法の第一条についても同じです。つまり、国民の経済生活の安定と福祉の増進という政策目的があるわけです。

 これを廃止するということは、つまり、国民の側からいうと、この権利がなくなるということですか。中央政府の側からいうと、この権利を保障する責務を放棄するということですか。総理に伺います。

小泉内閣総理大臣 いつから民主党が公務員の方が信用できるという主張に変わったのか、理解に苦しみますが、民営化になっても郵貯サービス、保険サービスは十分機能されるという前提で民営化法案を提出しております。

原口委員 いや、本当に総理、私は昔、非常に尊敬していましたよ、議論がかみ合っていた。しかし、今のは何ですか。私たちがいつから公務員が信用できると言いましたか。さっき、違うじゃないですか、公の世界で、公務員の世界が私物化されているということを言っているんですよ。その私物化されているものを本来のパブリックサーバントに戻すべきだということを申し上げているんです。

 もう一回聞きます。郵貯法、簡保法は廃止ですね。そして竹中大臣は、ここは民営化するわけです、民営化会社に。つまり、中央政府が担ってきた簡保あるいは郵貯、私は視察に行ってきました。馬渡島という、私のふるさとの佐賀県の唐津というところに行ってきまして、地方公聴会ですけれども、この船で郵便を一日四回運んでいるんです。そしてそれも、先ほど五十嵐議員がお話ししましたように、まさに公的な事業だからということで、一生懸命皆さんが、ある意味ではボランティア的にやっていらっしゃる。

 ここの皆さんに私聞きました。過疎化とそして高齢化が一気に進んでいる、そういうところの郵便局というのはどんな役割を果たしているんだろうと思って、私たちはこの委員会で視察と公聴会に行ったわけです。

 すごいですね。災害のときの避難地。それから、公述人がおっしゃったんですけれども、佐賀県はおれおれ詐欺あるいは振り込み詐欺も未然に、未遂に終わるのが一番多いと。なぜか。顔が見えるサービスをやっているからなんです。簡易保険あるいは郵便貯金、そこの人たちが、さっきも葉梨さんが大変いいお話をされました、他業をやったりコンビニをやったりなんということを国民は求めていませんよ。むしろ自分たちのしっかりとした決済手段が守られることを国民は求めているんじゃないですか。安全、安定、安心の機関を求めているんじゃないですか。

 文科大臣、お見えいただきました。文科大臣にお伺いしたいのは、小学校、中学校、この設置基準。やはり、歩いて行ける距離にある、その中で大変、地域のコミュニティーの中心となっている、あるいは教育の中心となっている、この義務教育の学校というものをしっかりと、設置基準を持って、そして予算を持って、守っていくのが中央政府の責務だと思いますが、文科大臣の御決意を聞きたいと思います。

中山国務大臣 公立の小中学校につきましては、学校教育法によりまして、その地区の学齢期の児童生徒の必要に応じて学校を設置するということになっているわけでございます。全国、都市部におきましても、あるいは僻地におきましても、子供たちがいる限り必ず学校をつくる、こういうふうになっているわけでございます。

 文部科学省といたしましては、今話がありましたように、学級数とか、あるいは子供たちが歩いて通うということも考えまして、例えば小学校の場合には四キロメートル以内とか、中学校の場合には六キロメートル以内とか、そういう目安を決めまして、そして市町村の学校設置の支援をやっているところでございまして、こういったことを制度的、財政的に担保しているものが義務教育費国庫負担制度であると考えているわけでございます。

 御承知のように、今、中央教育審議会におきまして議論をいただいているわけでございますが、それに基づきまして、私どもとしては、義務教育についての国の責任をしっかり果たしてまいりたい、このように考えております。

原口委員 郵便局も、やはり地域においては大切な私たちの金融のインフラなんです。その金融のインフラというものは、何回もこれは竹中大臣も御答弁なさった、大切なものだ、決済のインフラというのは大切なものだ。この認識に変わりはありませんか、総理。

小泉内閣総理大臣 私は、今回の政府の提案しております郵政民営化法案というのは、郵便局をなくすものではありませんし、郵便局のサービスをなくすものでもありません。これは、民営化されても、民間の会社になっても、民間の経営者になっても、今のサービスは展開される。さらに、今の役所なり公務員がやっている事業よりも、民間の創意工夫を発揮していただければ、今では想像できないようなサービスも展開されるのではないか。

 私は、民間に任せても今の機能が落ちるとは思っておりません。むしろ制約が解き放されて、我々の想像以上のサービスなり商品の開発もしてくれるのではないか。だからこそ、今の郵便局の存在というもの、これはネットワークとして資源である、資産である、これを生かしていこう、そういう物の考え方から民営化していくわけでございます。

 公務員でできることと、公務員でなくても民間でできること、これは先ほどからお話がありましたけれども、十分検証していただくというのが大事なことだと思っております。

原口委員 総理、私が聞きたいのは、今は公社法の中で、中央政府の責務として、その国民の大事なインフラである郵貯、簡保というものについての規定が書かれているわけです。その規定をなくして、純粋な民間会社、持ち株も放すわけですね、ファイアウオール、リスク遮断をして、そして完全民営化後には中央政府のコントロールというのはなくなるわけです。ということは、私は端的に聞いているんです、それは中央政府におけるこの大切な郵貯、簡保という国民のインフラの提供責務を放棄することですかと。

 民間会社が何をやるかというのは、それは民間は株主のもの、その株主が三分の二の議決で定款を変えれば、どんなにでもやれるんですよ。総理が幾らネットワークの価値があると言っても、株主がネットワークの価値がないと言えば、いつでもやめられるんです。設置基準をつくるというような、後で今回の修正案をどういうふうに受けとめていらっしゃるのかお伺いしますが、幾ら設置基準があっても、それに伴う財政的な裏づけがなければ消えるのは当たり前じゃないですか。総理は割と率直に、非効率的なところあるいはなくなるところもあるというふうにおっしゃっているのはそういう意味じゃないですか。

 総理、端的に伺います。中央政府の、簡易保険事業あるいは郵貯事業を提供する、そのインフラを整備するという責務を放棄するんですか。

小泉内閣総理大臣 民営化された段階では郵貯法、簡保法は廃止されますが、私は、貯金サービス、保険サービスは、民間が国民に提供するようなサービスあるいは商品開発を展開してくれると思っております。原口さんが、それは公務員でやるべきだ、公務員の方が信用できると言うことに対しては、それは批判いたしませんが、私は、民間に任せても、今までやってきたサービスは維持されると思っております。

原口委員 私は、きょう総理や竹中大臣に伺いたいのは、希望やあるいは経営の判断をここで聞くつもりはありません、限られた時間ですから。きょう伺いたいのは、もう端的に、法律のどこにそれが担保されているのか、そのことを聞きたいんです。どこに担保されていますか。

小泉内閣総理大臣 それは、完全民営化されたときには義務づけしません、民間になれば。当然です。義務づけされていないものが、今まで公務員、役所がやってきたサービスを民間にできないということは断定できないと思います。

原口委員 つまり、簡易保険やあるいは郵便貯金という大切な国民のインフラを整備し、そして保持していくという責務を、あなたはこの郵政民営化法で放棄するということを言っているわけです。

 私は、公務員が信頼できるなんて言っていませんからね、民主党。(小泉内閣総理大臣「信頼しているじゃないか」と呼ぶ)信頼していませんよ。すぐそうやって、総理と議論するときは冷静にやらなきゃいけないので、公務員が信頼できないことをやっているというのを何回も予算委員会でもやり……(小泉内閣総理大臣「民間の方がいいじゃないか」と呼ぶ)そういう単純な話じゃないんです、総理。

 公務員は本来、信頼をかち得てやるべき、そういう仕事なんです。しかし、それをゆがめているのは、公務員自身じゃなくて、それを依存と分配の手段に使ってきた政治そのものじゃないですか。政治そのものを変えないで、公務員が悪い、もともとの公僕に戻りなさいということを言っているんですよ。御理解いただけますか。

 伺ったことに答えてください、総理。つまり、簡易保険事業と貯金事業については、中央政府は、自分に課された責務、それはどこにもなくなりますね。国は、簡易保険事業やあるいは郵貯事業というものを国民に提供する義務、完全民営化後、残りますか、残りませんか。

小泉内閣総理大臣 それは、国としては残しません。完全民営化して、民間がそのサービスを提供してくれるということでございます。

原口委員 私は、それでは本当に、安住さんがあの紙芝居をやりましたけれども、八千円の年金を、さっきの船のあれでもそうですけれども、片道八百円かかるんですよ。そして今、日本の中では、五百以上のところが、郵便局しかない市町村、金融機関は郵便局しかないというところですよ。過疎化が急激に進んでいて、そしてその上に高齢化が進んでいる。八千円の年金を引き出しに行くのに、千六百円もあるいは千八百円もお金をかけて行くんですか、それを国民に強いるんですか。

 総理、国民が本当に求めているものは、郵便局に何を求めているのか。離島の皆さんもおっしゃいました、玄界島の方がこうおっしゃいました。自分たちは、被災の後、九電体育館に避難をしました、その翌日から郵便局の皆さんが自分たちに励ましの手紙を送ってくれました、玄界島が復興されて、実際にそこへ帰ってみて、実際に金融機関がなくなったら私たちはどうなるんでしょうか、建物は復興されたけれども住めない島になるんじゃないでしょうか、そういうお話だったんです。

 総理は、民間企業は玄界島にも来ていると言われていますが、松野議員が明らかにしたように、馬渡島もそうでした。入り口のところまでですよ、あとは電話をかけてとりに来てもらうんですよ。

 中央政府でしかできないそういうサービスを放棄する理由が私にはわからないんです。それは、必要最小限、中央政府が国民に対して保障すべき責務じゃないでしょうか、それこそ公共じゃないでしょうか。そこまで民間に任せて、そして、郵貯や簡保は民間がやってくれるかもわからない。そんなことで、百時間足らずのこの質疑の中でしたけれども、どれだけここの閣僚の皆さんが答弁を言い直したか、あるいは謝罪をしたか。そして、さっきの郵政民営化準備室、広報室、この人たちがでたらめな答弁をしてきたか。私は、そういう答弁を聞きながら、この郵政民営化法案で国民が幸せになるという実感はどこにもなかったんです。

 今、八人の私たちと同じような考え方をしている同志が、それこそもういませんね。一緒に馬渡島に行った人たちもいませんよ。議事録をごらんになってください。どうか国民の皆さん、この委員会の議事録をごらんになってください。九割は反対ですよ。議事録をごらんになってください。

 私は、総理、もう一回聞きます。郵貯や簡保というものは、つまり、民間にゆだねる、それを提供するという義務も国は負わない、そういうことですね。

小泉内閣総理大臣 これはわかりやすくていいと思いますね。基本的な考え方の違いがここに出ている、原口さんは民主党を代表して質問されているんだから。

 私は、郵貯サービス、簡保サービス、これは国の義務としてやる必要はないと思っています。民間にいわゆる公的な、国民が必要としている分野をゆだねても、民間は十分なサービスを提供してくれると思っております。公務員じゃなきゃ、役所じゃなきゃそういう義務を果たせないというふうには思っておりません。ここは極めて基本的な考え方の違いだから、はっきりしておきます。

 だからこそ、民間に任せることは民間に。民間に、私は、そんな不信感を持たない方がいいと思います。民間に任せて、民間が今、実に多くの公の分野に進出してくれております。今回の民営化法案は、役所がやらなくても、役人がやらなくても、民間に任せれば今までやってきた以上のサービスもしてくれるかもしれない、また、してくれる余地を残した法案であります。私は、だからこそ民営化を推進しているんです。

 この国会の場で、郵貯サービスはどういうものがいいかとか、郵貯の商品、簡保の商品はどういうものがいいか、私は、こういうことは国会議員よりも民間人に任せた方がはるかにいいサービス、商品を提供してくれると思っています。そこら辺は民主党と私どもとは基本的に違います。

原口委員 私がなぜ文部科学大臣にお伺いしたか。それは、その気になればできることも、民にはできないことがあるんです。採算がとれないもの、株主利益につながらないもの。民間企業が責任を負うべきは、国民ではなくて株主なんです。営利追求のビジネスとしては成り立たない、そういう国民生活を守るための分野があるから公があるんじゃないですか。

 郵貯事業あるいは簡保事業というのはビジネスモデルが違う、きのうもお話がありました。それは、自民党の皆さんさえもそうおっしゃっているんです。営利追求のためには民にはできないことがあるからこそ、どの国にも政府が存在し、そして公的な公共サービスを行い、国民はその経費として税を払うんじゃないですか。その公のところを否定するというわけですか。

 修正案について後でお伺いしますが、総理、修正案については、文言を変えただけで実質的な中身は変わらない、こういうお考え方でいいですか。

小泉内閣総理大臣 そのとおりであります。実質的な内容は変わっておりません。文言は修正いたしました。

原口委員 修正案の提出者に伺います。

 皆さんの修正案は、郵貯・簡保事業が中央政府の責務として大事だ、そういう観点に立った修正案だと私は思っていました。しかし、それを受け入れたと思っていた、今の今まで思っていた総理は、そうじゃないと言っています。それでいいんですか。

山崎委員 総理の答弁のとおりでございますが、この修正案は、政府・与党合意に基づきまして、政府・与党合意を尊重する立場から修正案を作成いたしたものでございます。

原口委員 私は他党の合意に口を挟むつもりはない。だけれども、聞いたことを答えてください。

 皆さんの修正案の骨格は、中央政府において、郵貯事業、簡保事業、この責務を中央政府がまだ負うんだ、そういうことじゃないんですか。総理は、そんなものは民間だ、自分たちは関係ないとおっしゃっていますが、それでいいですね。(発言する者あり)

二階委員長 御静粛に願います。

柳澤委員 私ども自民党の中で、与党として郵政民営化関連六法案を審議いたしました。そのときに、民営化の基本は総理が今力説されたとおりなんだけれども、その中で、貯金それから保険のサービスを何とかユニバーサルにやらせる道はないのか、これは国民の、利用者の立場に立った見地です。もう一つの立場は、それを実際に経営する立場からの見解で、この民営化の基本と折り合う形で一体的な経営ができないのか、これを工夫する道はないのか。こういうことで、一貫してすさまじい深みと広さのある議論をした。これはもう私、代表質問でも申し上げたところでございます。

 そうして、金融のユニバーサルサービスを確保する道としては四つの方途を講じていただきました。これは今、山崎筆頭理事が言ったように、私ども与党と政府の間で合意をした四月二十五日の合意に基づくものでございます。

 それからもう一つ、一体的な経営というものができる道はないのか、民営化の基本の中で一体的な経営ができる道はないのかということでやったのが、今度のいろいろな形での、株の持ち合いを民営化と背馳しない形で盛り込むことはできないか、こういうことから出た結論でございます。

原口委員 具体的に、では法案で聞きますね。

 「郵便局を活用して行う地域住民の利便の増進に資する業務」として銀行業、生命保険業の代理業務を例示、修正案はこういう形になっていると思います。違うじゃないですか、総理がおっしゃったのと違うじゃないですか。

 つまり、総理は修正案に反対なんですね。つまり、中央政府が保険業あるいは郵便貯金業、これを中央政府の責務としてやることは反対でしょう。明確に言ってください。

小泉内閣総理大臣 それは、義務づけないということで、郵便局がそういう仕事はできるということなんですよ。親切でしょう。

原口委員 そうなんですよ。法案修正と言っているけれども、今までの法案ではどうなっているかというと、郵便局会社は、では今までの法案でもできなかったのか。できるんですよ、今の原案でも、銀行業、生命保険業。

 では、今回の修正案は何のためのものですか。

柳澤委員 これは、先ほど言ったように、設置義務であるとかあるいは基金であるとか、そういうような四つの工夫をして、何とか義務づけないでできるだけ実現できるような方法はないのかということで、実は我々、そういう手だてを講じたわけです。

 そうして、その手だてに基づいてこの金融の二つのサービスはやるようになったんですが、これをやるものとするということになると、これは義務づけができたということになりますので、そういうことはできない。しかし、いろいろな手だてで事実上ユニバーサルサービスができるようにしたということが実現できましたので、できるものとするという例示の中にその二つのサービスを入れたというのが、今回の改正でより明確化した。法律に書くことによって、ある意味でその考え方が強化されたということも言い得ようかと考えております。

原口委員 総理がおっしゃった方が正しいです。大体柳澤さんがおっしゃる方が正しいんだけれども、柳澤さんは正確に答弁する方ですけれども、今回は私は、総理がおっしゃったように、今まで可能であったが、この法文でより明確にした。つまりそれは、必須業務としない以上、やらなくてもいいんですよ。そうですね。

小泉内閣総理大臣 これは、郵貯・簡保サービスができないのではないかという不安があるから、そうではない、できるという今までの答弁をより明確にしようと。内容は変わっていないんです。(発言する者あり)

原口委員 今、中井筆頭がお話しになったように、今までも可能であったものを例示しただけであって、何ら法的な効力においての意味はないんです。それでよろしいですか。

小泉内閣総理大臣 内容は変わっていないんです。ただ、不安感を払拭するために、できますよ、心配しないでくださいと。小泉が修正は考えていないと言っているということをけしからぬと言っているから、文言の修正、不安感を修正、字句を修正するということは、内容は変わらないんだから、いいですよと。

原口委員 では、国民の皆さんはもうおわかりになったと思います。民営化された後は金融のユニバーサルサービスは義務づけされていないということです。

 それでは、修正案について伺います。

 郵貯銀行の定款は、その設立に当たって何かを盛り込む旨を義務づけたとしても、その後の株主の議決権により修正が可能ですよね。そうですよね。定款というのは三分の二以上株主がいれば変えることができるわけですから。逆に言えば、修正について認可の対象としない限り、設立後定款を変えることができるのであれば、修正も、さっきの総理の答弁と同じように、ここの条文ですね、百五条、百三十四条、これも法的な効力としては何の意味もない。つまり、総理のお言葉をかりれば、不安だからあえて文言を変えた、そういうことですね、総理。

小泉内閣総理大臣 そう、明確にしただけです。

原口委員 きょう私がここで伺いたかったのは、つまり、法案を私たちが議論していますから、法案によって何が法的な効力が変わったかということをここで明らかにしたいんです、修正案が出てきたのはちょっと前ですから。しかも、私たちが唐津の馬渡島で三メーターの波で本当にひっくり返っているときに、そこにも来ないで修正案を議論されるというのは本当に遺憾千万。自分たちの国会の外で、公述人についてもいろいろな話をしているときにこういうことをやられるというのは、まさに国会を軽視するということとしか思えない。

 もう一つ、私は、ここではまだほとんど議論されていないんですが、今までの私たちの資産、これはどう切り分けるんですか。総理、お手元に資料を差し上げていますけれども、郵便事業は五千億ぐらいの債務超過ですよね。そして、実質的には、郵貯事業、これでもってその後の民営化された株式会社の自己資本も補っていく、そのように考えていますが、これは事実ですか、総理。

竹中国務大臣 資産の切り分けでございますが、資産の切り分けにつきましては、これはどのように切り分けるかというのは、承継会社等の目的と業務に照らしまして、公社の財産、その他の業務、資産負債を各承継会社に適切に承継させる、そのことによって承継会社等の業務が適切に遂行されるようにする、そのような形を法律の中に盛り込んでおります。

 どのように分けるのかというお尋ねだと思いますので、具体的に、まず内閣総理大臣と総務大臣が基本計画を作成いたします。その上で、それに従いまして、新会社の経営陣になる方が経営委員会を構成しますけれども、この経営委員会が、これは公社の協力を得なければなりません、公社の協力を得ながら、より詳細な承継の実施計画を決定する。そして、それを主務大臣が認可する、主務大臣の認可を受けるという仕組み、そういう手順を決めております。そうすることによって適正に行われることになるというふうに考えております。

 また、この主務大臣、内閣総理大臣と総務大臣ですけれども、この主務大臣は、民営化委員会の資本の配分、これは資本の配分がどうかについて、そうしたことを含む意見を民営化委員会が言うことになっていますので、それを十分に聞いた上で承継計画の認可を行う、かつ、民営化委員会の意見は国会に報告される、そのようなオープンなプロセスで適切な切り分けを行うということにしております。

原口委員 村井先生にお答えになったことを今そのままお答えになったと思います。

 私が聞いているのは、これは、よく皆さん、総理も、官のお金だとおっしゃっていますが、とんでもないですよ。これは国民のお金ですよ。あなたのお金じゃないんですよ。国民のお金を、では国会承認も要らないで、国会承認もしないで、簡単にどこかに切り分けるということができるんですか。これは憲法上の財産権の問題じゃないですか。BISの自己資本をどれぐらいにするかわからない。しかし、民営化するというわけでしょう。では、この人たちに聞かなくていいんですか、国会の承認を受けなくていいんですか、総理。

竹中国務大臣 財産権のお話が出ましたが、まず、今申し上げたような形で、非常にしっかりと透明な形で、最終的には主務大臣がやるというような仕組みをつくっているというのが一つでございます。

 そして、その上で、郵便貯金銀行の自己資本比率というのは、これは承継計画に基づく資産負債の切り分けによって決まってまいります。その資産の安全性、財務の健全性が決まってくるわけですが、これは、公社の郵便貯金事業から継承される資産には多くのリスクアセットは含まれないと想定されますので、その意味で、BIS規制に基づく最低の所要自己資本比率は問題なくクリアできる水準、まずその財務がそうだというのが二点目でございます。

 その上で、もう一点重要なのは、独立行政法人の郵貯そして簡保の保険管理機構に前の旧勘定、政府保証つきのものは承継され、政府保証が継続される、これも重要な第三の点でございます。

 今申し上げたようなことを組み合わせて考えますと、民営化後におきましても、民営化前に預入された郵便貯金について、きちんと利払いまた払い戻しを行うということも言っておりますので、その意味で、預金者の財産権を侵害するものではないというふうに考えるわけでございます。

原口委員 総理、長々と答えられましたけれども、全然違いますよ。

 BISの自己資本、一四%ぐらいとおっしゃっていましたかね。一般の銀行の平均値を上回った部分、その部分は勝手に、そのお金はあっちに行け、貯金銀行に行きなさい、郵便会社に行きなさい、窓口会社に行きなさい、持ち株会社に行きなさいと、皆さん勝手にやれますか。それこそ国民が合意をしなきゃいけない。何でもかんでも自分らで勝手にやっているんです。

 私は、今回の郵政広報についてもけしからぬと思う。自分たちの政策目的を達成するためにまだ法案が通る前に予算をつくり、そして、私が不思議に思うのは、隣に座っていらっしゃる石破先生にも随分御苦労をおかけしましたが、どうしてできたばかりの会社が随意契約できたのか。一億五千万ですよ。そして、なぜ随意契約をやったかという理由書も付さなきゃいけない。その理由書を見たけれども、中身はどこにでもあるような中身。それがどうして契約できるのか。そして、一月十八日につくられたとされている想定問答集、なぜ一月十八日につくらなければいけなかったのか。私は不思議でならないんです。

 総理、ここにこの間の答弁資料を全部持ってきました。石破さんがうわっと言っておられるぐらいに、二転、三転、四転、五転しているんです。なぜか。あり得ないことが起こっているからです。

 会計検査院に伺います。

 会計検査院は、参議院の行政監視委員会で、荒井委員に対して、この事案、私は、郵政イエスと国民に対してイエスを求めるような、そういう広報のあり方自体、絶対あってはならないと思う。そして、この会計のやり方についてもおかしいと思う。会計検査院がどのような検査をされるのか、基本的な認識について伺います。

森下会計検査院長 お答えいたします。

 この政府広報契約につきまして、当委員会において数々の議論がなされておりまして、それは拝聴をいたしております。

 この件については、やはり一連の会計事務処理について実態を十分調査していく必要があると考えております。したがいまして、今後、検査を行う際には、当委員会での御議論などを十分念頭に置いて検査に当たってまいりたいというふうに思います。

原口委員 法務省に伺います。

 公文書偽造罪はどのような場合に成立しますか。そして、虚偽公文書作成罪はどのような場合に成立しますか。二つ、刑事局長に伺います。

大林政府参考人 公文書偽造の罪は、行使の目的で名義を冒用して公務員の作成すべき文書を偽造した場合に成立し得るものと承知しております。

 また、虚偽公文書作成の罪は、公務員がその職務に関し、行使の目的で虚偽の文書を作成した場合に成立し得るものと承知しております。

原口委員 竹中大臣、私は手元に、この会社の社長とあなたの岸秘書官が直接接触した証拠と言われるものを持っています。

 なぜあなたの秘書官が、あなたは郵政担当の事務をつかさどる、そういう大臣ですか。松野委員や多くの人たちには事務並びに調整をつかさどる大臣であるという答弁もされていますが、この委員会ではそうではないという答弁もされたように思います。どっちですか。

竹中国務大臣 私は、郵政民営化法案を担当しておりまして、その範囲で必要な説明責任等々を果たしていかなければいけません。

 郵政民営化法案の作成に当たりましては、非常に大きな法案でありますから、政府の中での調整、そういった問題も当然に入ってまいりますが、法案を作成して、それを説明して、しっかりと国民の皆様に納得をしていただいた上で成立を図る、それが私の役割だと思っております。

原口委員 あなたは、この一連の各省の事務、広報も含めてですが、その事務の責任者ですか。

竹中国務大臣 政府は大きな組織でございますから、事務そのものはそれぞれの担当でしっかりと対応してもらっていると思っております。

原口委員 わざと答えていない。事務の担当は、官僚がやるのが当たり前じゃないですか。それをまとめて責任を持つ、それが政治の責任でしょう。だから政治家を大臣にし、あなたは学者でいらしたときも大臣でいらっしゃいましたけれども、大臣の責任として所掌していますねということを聞いているんです。

竹中国務大臣 郵政民営化の法案の作成、それに必要な説明、必要な場合の調整、それが私の仕事でございます。

原口委員 広報や事務の調整もあなたの責任だという答弁があります。

 そしてここには、今回のターゲット層認知と強度から上記プライオリティー、竹中大臣から指示を受けています、当該社長が岸秘書官と直接話し、竹中大臣の意向を確認しました、こう書いてある。

 これを総理、ごらんになりましたか。これが小泉「郵政民営化フライヤー戦略」、今回のまさに一億五千万のチラシのメディア戦略の基礎となった考え方です。この考え方を採用しています。だから、今回のターゲット層の認知と強度から上記プライオリティーが指示された。

 これをごらんになってください。B層と言われるところ。A層は、さっき私が申し上げた道路公団、道路等の結果から小泉構造改革についてはネガティブだ、A層ですね。B層、「民営化の大儀と構造改革上の重要性 認識レベルを高めることが必要要件。」「大儀」の「儀」が間違っていますが、これは私が間違っているんじゃないですよ、政府から出されたのをそのまま資料として出しているんです。小泉内閣支持基盤、主婦層、子供を中心、シルバー層、そして、具体的なことはわからないが、小泉総理のキャラクターを支持する層、IQ軸ロー。何ということですか。

 官房長官、あなたは男女共同参画担当大臣ですね。こういう事態について、所見を伺います。

細田国務大臣 この企画書の中におきまして、国民の皆様あるいは各界各層の皆様をIQが高いとか低いとか、そういう表現を使っておること自体は極めて問題があり、私も不適切だと思っております。

原口委員 法務大臣に伺います。

 人権の、まさにそのつかさの長として、法務大臣がこういう人権侵犯のおそれのある事案について適切に対処しなければならない、私はそう考えますが、法務大臣の所見を伺います。

南野国務大臣 お答え申し上げます。

 法務省は、法務省設置法第四条第二十六号で定めるところにより、人権侵犯事件に係る調査並びに被害の救済及び予防に関する事務をつかさどることとされておりますが、これは、人権侵犯事件等として申し立てがなされた場合等において、その調査を行って、所要の措置を講ずることを意味するものであります。このような手続のほかにあります個別の案件につき一般論を超えて所見を述べることは差し控えさせていただきたいと考えております。

 なお、人権擁護は政府全体として取り組むべき課題であって、行政遂行に係る問題については、原則として、まずはそれぞれの所管府省庁において自身の責任において調査の上、これを踏まえて適切な判断を下されるものと承知しております。その上で、法務省といたしましても、人権に関する問題があれば、各部署の報告に対して、これに意見を申し述べることはあり得ると考えております。

 対象をIQによって分類したかのような記載部分については、法務大臣である私も行政が認容すべきものではないと考えております。

原口委員 石破さんからいただいた文書をそのまま読んでいただきましたけれども、では、あなたがお読みになったその二行目、何と書いてありますか。「予防」と書いてあるじゃないですか。単に人権侵犯事件として申し立てがなされた場合においてだけあなたたちが出てくるんじゃないんです。わかりますか、予防が必要なんです。

 そして、こういう主婦層、シルバー層、具体的なことはわからないが単なるイメージである、ファシストのやり方じゃないですか。自分たちの政策を、この郵政民営化法というのは、国民の中からわき起こってきた、そういう改革法じゃないんです。

 前に予算委員会で御一緒していた自見さんから檄文が届きました。「理念なき郵政民営化に反対する十の理由」、その中で、十七回もアメリカと協議を重ねて、アメリカのその要求どおりに法案をつくったとこの資料の中には書いてある。

 今の法務大臣の答弁では、今人権擁護法が議論されていますが、法務省の中にそのチェック機関を置くことはできません、そんなことをやったらだめですというのを答えているようなものじゃないですか。所管において適切さに欠いているから私たちはあなたに聞いているんです。所管がやったことが、今官房長官がおっしゃったように、まさに適切さを欠いているからあなたに聞いているんです。

 この事案について法務省としてどのような対処をするのか、明確な答弁を求めます。

南野国務大臣 今申し上げましたように、対象をIQによって分類したかのような記載部分については、法務大臣である私としましても、行政が容認すべきものではないとこれは考えております。

 特定の私人の行為について、調査を得ないで人権侵害に当たるかどうかを確定的に申し上げることは、これは適当ではないと思いますけれども、今伺っている範囲では、行政としてこれを容認すべきものではないと考えておるということでございます。

 今後とも適切に対処してまいるということは申し上げるまでもありません。

原口委員 私は、十分に調査をして、そして、さっきの修正案、六項目全部について伺おうと思いましたけれども、総理が看破されたように、ほとんど法的な意味はないんです。つまり、具体的なことは詰めずにイメージだけで物が進んでいけば、実際オペレートするときに困るんです。実際に国民の権利が侵害されたときにそれを回復できないんです。

 最後に、公社総裁に伺います。

 前回の私の質疑で、四千万ステップスでしたか、その中の一千七百万ステップスだけを、それだけを今回やるんだ、そして、それをやるためには前提があるんだ、政府がセーフティーネットを張ってくれることなんだと明確にお答えになりました。こんなことでやりたくないというお気持ちがにじみ出ていました。政府はセーフティーネットを張りましたか。

 そして、この修正案によって、今まさに法案が通る前にシステムの改変をなさっていますが、システムの改変は必要ですか。

 二点について伺います。

生田参考人 お答えします。

 公社全体のシステムの近代化、これは今、一生懸命取り組んでおりますが、民営・分社化に関する新規の開発というのは、これは要件が凍結できませんから、まだ一切発注も何もしておりませんで、動いておりません。

 今回の修正は、法案修正及び一部附帯的な省令は基本的なフレームワークは変わらない。変わらないわけでありますから、それによって、今私どもが考えている暫定対応の内容が変わるものではありません。

 いずれにしましても、今先生おっしゃったように、四千二百万ステップ分の千七百万ステップしかできないわけなんですから、いずれにしても、要件が凍結できましても、前提条件の、政府としてセーフガードをきちんと張っていただくということが絶対的に必要な要件であるというふうに考えております。

原口委員 総裁、私が伺っているのは、今の段階で、つまり、総裁がおっしゃっているのは、何もガイドラインとか、あるいは金融庁のさまざまな中身の内規を変えればいいというだけの話じゃないと私は思うんです。つまり、法的な担保もこの時点でもう終えていますかということを伺っているんです。

生田参考人 お答えします。

 主としまして、商法とか銀行法等による法律で決まっている提出期限までに決算書類が出ない等のできないことがございまして、これは、法的あるいは行政的に規則を緩めていただければ乗り切れるんだと思います。それを乗り切るために、今、準備室の副室長それから公社の副総裁及び山下専務が出まして、何をどういうふうにカバーすればいいかというのを詰めている最中でございまして、法案がもしこのまま通るとすれば、それでカバーし得る体制に、準備といいますか勉強が進んでいる、こう御理解いただいていいと思います。

原口委員 委員長もお聞きになりましたように、今勉強が進んでいる、そういうお答えであります。

 システムというのは、金融やさまざまな、あるいは保険といったものの心臓ですよね。その心臓がまさに、総理には申しわけないけれども、どこかのカルト教の教主を見ているようだと言う人がいました。私はそこまでは言わない。だけれども、本当に郵政民営化ありきで、そして何が何でも自分の、御自身の時代にやらなければいけない、そこが先に来ているから困るんです。

 本来であれば公を、私は、修正案の皆さん、これだけ苦労されたので、だけれども、法的に何の実効性もない。法的な実効性がなければ、三十三条についての大臣答弁だって法的拘束力はないと言っているわけでしょう。

 総理に伺います。総理は、この中央省庁等改革基本法の三十三条、これを取れとおっしゃいましたね、削除しろと。そういう働きかけをされていますね。

小泉内閣総理大臣 しかし、これはもう前にも答弁いたしましたように、法制局等で何ら問題はないということでありますので、民営化法案は、提出されたときにもたびたび御質問ありますが、今までの答弁と同じでございます。

原口委員 しかしということは、私が伺ったのは、それでも削除しろと御指示をなさったでしょうと。法制局に聞いてみて、まあこれでも何とかやれる、そういうお話だったけれども、削除すべきだ、そういう御指示をされたことはありますかということを伺っているんです。

小泉内閣総理大臣 それは覚えておりませんが、いろいろ議論した中でその必要はないと言うから、別にこだわらないということでございます。

原口委員 議事録にちゃんと、当時の片山総務大臣がお答えになっていますから、御指示されているんですよ。

 私は、この国会で、法律について答えている大臣答弁が、単にそのときの政治の信条を答えたとか、あるいは将来における政策の見通しを答えたという答弁が出てきて、それがまかり通れば、一回一回私たちは国会で聞かなきゃいけませんよ、大臣、今の答弁はあなたの信条を述べたものですか、法律に対する解釈を述べたものですかと。こんな審議をやってはならない。正々堂々と、本当に郵政民営化が正しいというのであれば、三十三条をまさに取ってからやればいいじゃないですか。

 小泉内閣に求められているのは、国民の今置かれている現状をしっかりと認識するその立場であります。竹中さんがおっしゃっているリスクマネーがいいのか、私がきょうお話をした、安心、安定、安全のその金融がいいのか。廃案にするというんだったら解散だとおっしゃっていますから、ぜひ解散して、国民に信を問うてください。

小泉内閣総理大臣 成立すると思いますから、解散する必要はないと思っています。

原口委員 終わります。

二階委員長 次に、中井洽君。

中井委員 民主党の中井洽です。

 少し時間が押していますので、テレビ中継ですから共産党さんや社民党さんに御迷惑をかけちゃいけませんので、私の方で短くしながら、端的にお尋ねいたします。

 先ほど公明党さんから、もう十回目の質問だというお話がございました。私はきょうが初めての質問であります。したがいまして、思いを込めてお尋ねしますので、適当なはぐらかしをおやりにならぬよう申し上げます。

 当委員会で、自民党の方が延べ四十四人質問されました。かつてない数の多さであります。三十五、六人が、先ほどから話が出ましたように反対論であります。当委員会で終始法案に賛成を貫かれたのは公明党さんだけであります。公明党さんは、四年前には郵政民営化反対だったんです。いつどう変わられたかわかりませんが、最近では、自民党の法案反対者は選挙で応援しないとまで言われながら頑張っておられる、異常な雰囲気がある、こう思っております。

 また、私も国会にいささか長くおりますが、総理大臣というのは解散のことは口に出さない、口に出したらもう解散する、こういう慣例の中で育ってきたにもかかわらず、総理は、この法案が通らなかったら解散だ、解散だ、解散だとわめき散らされておる。(小泉内閣総理大臣「全然言っていない」と呼ぶ)いいえ、いいえ、言われています。(小泉内閣総理大臣「いや、全然言っていない」と呼ぶ)いいえ、言われておる。理事会においても、たびたびあなたの盟友からもお聞かせをいただきました。

 私は、政局だ何だということで解散をお考えになるということについて決して否定するものではありません。また、野党を牽制する意味でお流しになるというのも何回かあったと承知をいたしております。しかし、自分を総裁にお選びになった党を解散でおどかす、どういうやり方だ、このことをまず注意申し上げ、お尋ねしたい、こう思います。

 また、これで屈服する自民党さんもひどいじゃないか。自民党さんのいろいろな方に聞きますと、やはり選挙が弱い人もいらっしゃる。しかし、解散したら民主党と政権交代が嫌だという人がいらっしゃる。全然平気ですからと僕は思います。もう一つは、解散したら、小泉さんが来年九月でやめてくれるのがやめてくれなくなる、こういう人もいらっしゃる。

 そういうことを含めて、法案審議で国会や委員会を、本当に総理みずからが圧力を加えられる、こういうやり方は、ここで野党の理事筆頭として頑張ってきた者として大変残念だ、こう申し上げます。

 本当に法案が通らなかったら解散なさるんですか。

小泉内閣総理大臣 私も新聞報道等で、不成立なら総理は解散するという記事を読みました。しかし、これは私が言った言葉じゃないんです。だれだかわかりませんが、私と話した方々が、どういう今の郵政法案の審議をしているのか、党内の情勢はどうか、これは反対が強い、事によると衆議院本会議でも否決されるかもしれない、そういう話はいたしましたけれども、そういう中で、いろいろな展開をお互い胸襟を開いて相談することはあります。

 しかし、私は、最終的には、自民党も良識を発揮していただいて、今反対している議員も、時代を見誤らないで大局的判断に立っていただければ、この法案、賛成してくれるであろうということで、紆余曲折はあろうとも、最終的には賛成して成立するであろうという話の中で、恐らく、相手の、私の話を聞いた人は、あそこに山崎拓さんがいます、そういう状況の中で、雰囲気で、私の口ぶりでそう感じたんでしょうね。

 私は慎重ですから、解散するなんということは言っていないんです。これは成立するから解散する必要はないんじゃないかということを言っているのであって、解散するなどとは一言も言っていないんです。

中井委員 私は、総理大臣の持っている権限の重さというものを十分承知いたしています。しかし、本当に総理大臣を選ぶときというのは、もっともっと慎重にしなきゃ大変なことになるんだなと、今、野党ながら実感をしています。

 おもしろうてやがて悲しき鵜飼いかなという句があります。私の郷里、松尾芭蕉が生まれておりますから申し上げますが、総理の振る舞いを見ていると、やがて悲しきじゃない、やがて恐ろしき総理かなという感じがいたします。

 だって、公社化になって二年、そして生田総裁、これはあなたが任命された総裁、そのもとで、労使が本当に頑張られて、黒字で、民間との激しい競争の中で頑張っておられる。そして、三百四十兆円に及ぶ国民の資産を預かっておられ、それを国が国債という形で運用なさっている。そういう郵政、これを総理一人の我執、妄執みたいな発想で、解散を片手に徹底的に押し込まれる。総理の権限というのは強いな、このことを感じております。

 この委員会においても八人ぐらい反対の人がいて、自由民主党は公平な党だとか平等な党だとか言われておりましたが、いつの間にか、その八人はどこかへ行っちゃって、差しかえという形。百十時間ぐらいに及ぶ質疑のうち、苦労したのはその人たち、百時間、ここにいる人、何にも知らぬでやじっている人は十時間ぐらいだ。こういう形で委員会の質疑を終わろうとすること、まことに残念であります。

 私どもは、委員会におきまして、二階委員長、山崎筆頭に対しましても、大きな問題、国民もどうして民営化かよくわからない、こういう法案、徹底的に審議すればいいじゃないか、幾ら早くても、総理がサミットからお帰りになるまで中央公聴会もやればいい、あるいは、三十三条の問題で私どもがお出かけをいただきたいと言っていた五大臣、五人の元郵政大臣や総理大臣、お越しもいただければいい。あるいは、先ほどから五十嵐君や原口君がやりましたいわゆるスリード社疑惑、国民の皆さんはわかりにくいかもしれませんが、ここにあります議事録、四日分、全くむだになるような答弁と資料提供をなすって、私どもの質疑の妨害をされてこられた、こういう状況。こういう国会運営の中で、委員会運営の中で、どうしてそんなにお急ぎになるんだ、こういうことを申し上げてきたところでございます。それに対して、サミットに行かれるから、サミットに行かれるから、これ一点張りであります。

 サミットは大事なことでありましょう。しかし、この法案を通してサミットに行かなきゃならぬ理由は何なんですか。たびたびこの委員会でも、参考人も含めてみんなアメリカへ売り飛ばすんじゃないかと心配をいたしております。こうサミットに行くまでに上げたい、上げたいと言われるなら、やはりそれは間違いない、サミットでブッシュさんに約束を果たしましたよとおっしゃりに行かれるのかと思わざるを得ない、こう考えます。

 この点について、あえてお尋ねを申し上げますと同時に、この法案は、十年後、郵貯会社、簡保会社は外資系に買われても何も異議はない仕組みになっている、このこともあわせ御確認をいただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 私は、国会運営は、幹事長初め現場の理事の皆さん、執行部の皆さんにお任せしているんです。私が言っているのは、八月十三日までの会期内で成立させるように努力してほしい、そのためにどういうことが必要かというのは皆さんにお任せすると言っているんです。

 そして、この郵政民営化法案はブッシュ大統領へのお土産だと言っている人がいますが、ブッシュ大統領がアメリカ大統領になるはるか前から私は主張していたんですよ。(発言する者あり)お父さん、ブッシュ大統領の父親が大統領、その前から私は主張していたでしょう。それは、どんな批判するのもいいですけれども、そういう思い込みで批判するというのは、国民は信用しないでしょう。

 私は、外国のために郵政民営化を考えているんじゃない。日本国民のためになる、民間経済活性化のためになるということでこの民営化法案を提出し、成立に向けて全力を尽くしているわけですから、だれのために、お土産でなんということは全く考えておりません。

中井委員 はるか昔から総理が郵政民営化のことを言われていたのは承知をいたしておりまして、総理が郵政大臣のときに私は民社党の逓信委員会の理事でございました。あなたの発言で苦労して苦労して、何回委員会がとまったかわからぬのを懐かしく思い出しております。

 しかし、そのときに言われたことと今の理屈、そして、そのときに考えられておったこととこの法律は全く違う。特に、竹中さんが加わって、余計私の言ったようなことに近い話になっていると私は考えておる。これはあえて申し上げておきたいし、あした本会議、ゆっくりとおやりになって、総理がお帰りになるのを待たしていただいてもいいんだ、このこともあわせて申し上げておきたいと思います。

 今国会、先ほど本委員会のスリード社関係の議事録をお見せいたしましたが、大臣諸公含めて少し乱暴な質疑が多かった。二階委員長の御配慮によって、私も余り細かいことまでと申し上げたが、幾つか御注意申し上げてまいりました。調べましたら、ここにぶわっと入っています十八カ所、大臣の訂正であります。

 そして、総理大臣も、まあ総理独特の政治的御発言でありますから、とがめ立てをするつもりも余りありませんが、しかし、当委員会が終わるということになりますれば、参議院の質疑もございます。その中できちっとした質疑をやっていただきたい、こんな思いであえて申し上げますが、二カ所あります。

 総理は六月三日に、「デパートなんかに郵便局を出したいという経営者が出てくるかもしれませんよ、便利になるところ。」こういって、デパートやらにこれから民営化したら郵便局が進出できる、こういうことを言われております。しかし、もう既に全国百四十カ所のデパートに郵便局は出ておるんですよ。御存じなかったですか。ちょっとここのところは御訂正をいただきたい。

 それからもう一つは、盛んに、四十万の職員、あるいは二十七万の常勤公務員が民間人になる、こういうことを言われ続けてきたわけでありますが、原口君の質問に対して、ほとんどが民間人になる、こういう言われ方をいたしました。ほとんど民間人になる、これは僕はここだけ間違えたのかと思ったら、過般の予算委員会で、我が党の岡田代表の質問に対しても、総理はほとんど民間人になると言われているんですね。

 これは全部が民間人になるという認識じゃないでしょうか。ここは、お間違いになっていらっしゃるのか、総理が誤解をお抱きになっていらっしゃるのか。

 同時に、郵政公社四十万人、公務員から外れるんですよ、小さい政府ですよとおっしゃるが、我が党の松野君の指摘にありましたが、公務員の総定員法のほかにある、もう既に公務員の総数の中からは外れているんだ、このことを知っておられて、たびたび公務員が減るという答弁をなさっておられるのか、なさっておられないのか、このことについても確認をさせていただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 終わりの方の質問から答弁いたしますと、ほとんど民間人になるというのは、まあ正確に申し上げれば全部民間人になると。まあほとんど全部……(発言する者あり)大して違わないと思いますが、正確にと言えば、これは全部であります。全部民間人になる。(中井委員「はい、訂正」と呼ぶ)それはけしからぬと言えば、それは訂正いたします。全部民間人になる。

 それともう一つは、デパートに進出することができる、これは、今よりも多く進出する可能性があるということでありますから、別にこれは訂正する必要はないでしょう。さらに多くなる可能性があるということでありますから。

中井委員 総定員法についてはお答えになりませんで、知っておって今まで国民に公務員が二十七万人減ると言い続けられたんだな、このように思わせていただいて、これ以上聞きません。ほとんどと全部が一緒だと言った総理大臣はあなたが初めてであります。

 もう一つ、二つ総理にお尋ねをいたしますが、総理というのは何でもできると思っても、幾ら何でも法律やいろいろなルールがあると思うんですね。この広報を六億数千万お使いになって、できてもいない政策について国民に支持を得られるように広告をした。これは私どもの党も騒いだし、さすがに自民党の内部もおかしいといって騒がれて、六億五千万の政府の広報費の使いで終わった。ところがそれ以外に、準備室、そこにおられますが、去年の九月からでしょう。百人役人を集めていらっしゃる。そして民間人も十五人。僕はこれは全員この竹中さんのところの予算で人件費を払っておられると思ったら、全部もとの役所が払っている。こんなこといいんですか。郵政公社三十人、これは何にも稼いでくれないお金、十カ月、どういう法律に基づいて出したんでしょうか。

 これ、ほかの役所、それぞれ理屈がありそうなことと思いますから、農林水産大臣にお越しいただきました。六人出していらっしゃいます。農林水産大臣が郵政民営化準備室に六人出して、一千万以上の給料の人らを十カ月間農水省の予算で給料を払われる根拠はどこにあるんですか。

島村国務大臣 お答えいたします。

 六名とおっしゃいますが、正確ではありません。五名であります。一名は、これは既に退職した人でありまして、そういう意味では……(中井委員「あなたのところからもらった資料に六と書いてあるんですよ」と呼ぶ)室長の渡辺好明氏はもう既に退職した方で、総理の御判断で決められたことで、私どもではありません。

 また、担当参事官を初め当省から五名の職員が郵政民営化準備室に出向または併任していますが、これは郵政民営化という内閣の最重要課題に政府一丸となって取り組む必要があることから、他省庁と同様に内閣からの職員派遣要請に応じたものであります。

 なお、郵政民営化準備室の職員は、農林水産省の権限ではなく、郵政民営化準備室の権限に基づいて業務を行っており、何ら問題はないと考えております。

中井委員 そうすると、農水省や他の省庁が毎年毎年国会へ出される予算のうちの人件費というのは、何に使ってもいい、どこへ使ってもいい、こういうことでしょうか。あなたをいじめるつもりはありません。これは、総理が命令したら、内閣の重要施策ならどこの役所からでもぽっぽっと人を集め、広報費を使いまくってやれる、こんなシステムは聞いたことがありません。それじゃ、僕らは何のために予算審議をやるんですか。何のために分科会に分かれて一つ一つ確かめていくんですか。

 これは、郵政公社三十名、総務省十九名、財務省十九名。財務省十九名ですよ。農水省は五名だと言うけれども、僕らがもらった資料は六名になっておる。そうやってしょっちゅうこの委員会は資料やらを間違える。そのたびに時間をとってかなわない。僕らもいいかげんに言っているんじゃないんだからね、島村さん。これはめちゃくちゃじゃないですか、そんなことできるのなら。

 官房長官に答えてもらいますか。おらぬなら帰ってくるまで待ちますよ。だれが答えてくれるの、これが間違いないというのは。

竹中国務大臣 内閣官房のことでございますので、官房長官からお答えいただくのがいいのかもしれませんが、郵政民営化準備室ということで私の方から答えさせていただきます。

 内閣官房というのは、これは内閣の重要政策に関する基本的な方針に関する企画立案、総合調整等を行う。したがって、その人員をどうするかということが問題になるわけですけれども、これは内閣官房の活動を維持するために必要最低限の人員を除いては、その時々の重要政策、これは時々の重要政策は変わりますから、それに関する事務の遂行にふさわしい関係府省等の人員を柔軟、機動的、臨時的に併任することを基本としております。

 したがいまして、四月一日現在でございますが、郵政民営化準備室には関係府省等から百六名の人員が出向しております。公社もその中に含まれておりますし、農水省もその中に含まれている。そのような考え方に基づいているということでございます。

中井委員 そうしますと、参議院の質疑も十分おやりいただくんだろうと思いますが、この百六人の給料、それ以外に十五人、民間人をお雇いになっている。これは民間人の給料はお払いになっておる。しかし、僕らからすれば、この十五人の民間人の業界は、銀行協会とかあるいは流通業界とか、この郵政民営化でプラスをもたらされると思われている業界ばかりから出向しておる。ここの人たちの給料を払っていると言うけれども、私は、その業界から、あるいは会社から補てんが出ていると思っています。出ています。出ていなきゃ、来ないよ。

 そういうことを含めて、明細を私ども民主党へお出しいただくようお願いします。委員長、お取り計らいをお願いいたします。

二階委員長 後刻理事会で協議をいたします。

中井委員 スリード社の件につきましては、もうたび重なって行われました。

 私、一つだけ資料を見ておってふっと思ったものですから、これだけ、また後刻のためにあえてこの場で申し上げておきます。

 先ほど、電通が外されたというお話がございました。そうしますと、電通さんはその後、五千三百万で週刊誌一ページ四色の広告を随契でおとりになりました。おもしろいんですよ。これはNHKさんが中継してくれていますが、NHK「趣味の園芸」とかNHK「きょうの料理」というのが一番高い。どうでもいいことでありますが。

 これは定価でいきますと、ちょっと僕が尋ねましたら、大体この政府広報は定価の九掛けでやる、こういうルール、慣例で業界とやってきた。ところが、九掛けじゃないんですね。はるかに高い金額。それで、ここに二十五万値引きと書いてあるんですよ、正直に。ここに二十五万値引きだと言ったら、電通がまけてくれましたと。これは九掛けじゃない分ちょっとまけろといってまけたのが二十五万円だなと僕は思っております。

 今回の政府広報に関する六億数千万の使途、相手、あるいはマスコミに対する工作等、非常に不明朗で不愉快な形跡がある。このことを十分注意させていただいて、次の質問に移りたいと思います。

 郵便の方ですが、郵便は現在、債務超過が五千二百三十五億あります。本年三月の利益、そしてここからのやりくり等を見ていますと、当期純利益が大体二百八十三億円ぐらい。そうすると、この調子でずっといく。総理や竹中さんはたびたび、郵便は将来先細りだ、だから民営化をやるんだ、こう言っていますが、そうしますと二十五年か三十年かからないと、この債務超過というのは消えないんじゃないか。どうやってお消しになるつもりなんだ。

 総裁がお見えですから、私の質問で間違いないですか、お尋ねをいたします。

生田参考人 まず、簡単に御質問にストレートにお答えすれば、消えません。

 ただ、中期経営計画、政府で御承認いただいているものでは、公社一期四年の終わったところで、約五千八百億の累積債務でスタートしたのが、五千二百五十八まで落とすということになっていたんです。ところが、二年続けて黒字を出したので実は既に五千二百三十五億まで来ておりまして、多分、五千億の大台を切るところまでは持っていけると思いますけれども、もともと中期経営計画でも、これだけの累積債務を消すというふうな計画はなかったわけなので、そこはそのように御理解いただきたいと思います。

中井委員 そうしますと、少し観点を変えて質問いたしますが、生田総裁の強い御意思と御希望で、今回の法案に、国際流通業へ進出する、こういう項目がございます。私は、この項目だけならもう大賛成なんです。私の党内に反対者もおります。しかし、私は、それはそれで、ナショナルフラッグ的な役割を果たすべく御進出をなさるのは結構だと思っています。

 しかし、そのためには、ドイツだってオランダだってすさまじい投資をしている。あのアメリカの、世界じゅうの物流業者と対抗しようと思ったら、大変な投資が要るんじゃないか。直接投資じゃなくても、子会社をつくってやるにしても。そうすると、これだけの累積債務を持った会社がどうやって資金調達をなさるつもりだ。この点、どのようにお考えか、お聞かせをください。

生田参考人 お答え申し上げます。

 海外進出する、それも相当おくれて、一周りじゃなくて三周りぐらいおくれて出ていきますので、相当のお金が要るという御認識は正しいと思います。

 ただし、累積債務があるから投資できないというような法律はないわけで、我々としては、今やっと黒字のベースになりつつありますので、企業としては健全性があるということになろうと思います。それから、公社全体で見ればきちんと利益は出しているわけで、投資をする場合は、一年アヘッドして、来年の四月からさせていただきますけれども、公社として投資いたしますので、その意味では、投資の健全性はある、こういうことになると思います。

中井委員 本社で御投資をなさるとおっしゃるが、郵便は郵便、貯金は貯金、簡保は簡保、こういう会計分類になすって、それをもとに、十年かけて完全民営化、独立、こういう道を歩まれるんですね。それはちょっと、私は、御答弁が違うと。

 同時に、逆に、ドイツもオランダもみんな、国際物流で頑張るためには、郵便の会社と金融会社を一緒にされている。それは、大変な資本の調達が要ると同時に、国際物流の決済も要るんだろう。決済のためには、自分の金融会社を持っているというのが非常に有利に働くんじゃないか、こう私どもは判断していますが、総裁のお考えはいかがでしょうか。

生田参考人 できるだけ簡潔に申し上げます。

 大変なお金が要ることは事実です。ただし、これはできるだけ使わないで、まず、パートナーシップを組む等の方法で、簡便法で入っていくことをまず一、二実務的に考えています。

 それから、郵便は郵便で、これはさっき公社として投資するから健全だと申し上げたけれども、実際上投資するときは、バランスシート、貸借対照表上は郵便局そのものでやるわけですが、お金を借りる力は十分にあると思います。

 それから、三番目に、三事業の相乗効果を出してというのは、今、公社の中で、やはりお金を貸し借りしたような形で、金利を払うという格好をとっておりますので、それが今度は垣根を越えてということになるので、今まで以上に自立的に、厳しくはなりますけれども、シナジー効果は、持ち株会社の社長の配分さえきちっとあれば可能じゃないかなと思っておりますし、そう希望しております。

中井委員 国際物流に関してさらに申し上げますと、今回のこの法案で郵便のユニバーサルサービスは義務づけられておりますが、小包のユニバーサルサービスが外されているのであります。これはどうしてでしょうか。どうして小包は郵便会社のおやりになるユニバーサルサービスの中に入らないのか。

 離島や山間僻地、あるいは配達しにくいところ、もうからないところ、民間会社はやっていらっしゃる、やっていらっしゃると言うけれども日にちはかかる、場合によっては赤字覚悟で郵便局の窓口へ持っていって配達をさせているという提携をされている。こういう状況の中で郵便局もユニバーサルサービスを外すということは、国民の利便からいって大変おかしなことになるんじゃないか、こう考えております。

 特に災害のときには、無料で郵便局の窓口がお受け取りになられて、お配りになる。こういったこともなくなるんでしょうか。これについては、竹中さん、お答えいただけますか。

竹中国務大臣 まず、小包の件でございますけれども、郵便小包が大変重要な役割を果たしてきたということは事実だと思います。しかし、現状では、既に民間の事業会社が全国的なネットワークを確立している。さらに、現実に郵公社の小包のシェアというのは、今非常に低いものになっているわけでございます。

 そういう点を考えまして、民間の市場の中でぜひ有効な競争をしていただきたい、民間の事業者になることによってむしろ有効な競争をしていただけるというふうに考えまして、我々は、ユニバーサルサービスから外す、そして、民間の事業者として、健全な競争の中でよりよいサービスを提供していただくということを考えたわけでございます。

 ちなみに、平成十五年の時点で、宅配分野における一般小包郵便の公社のシェアは六%でございます。

 もう一つ、郵便事業と災害の点でございますけれども、被災地におけます集配施設の被害状況等、これは業務の実施体制が整うかも踏まえまして実際の御判断をしているというふうに思われますけれども、郵便事業は、手紙やはがき等を中心に年間二百五十億通の郵便を配達している。民間宅配業者に比べて、各世帯に対する配達頻度が高い。災害があった場合に、だれがどこに避難したかを把握するというような体制整備も整えて、比較的そのようにしておられる。その意味で、大変重要な役割を果たしてきたというふうに思っております。

 民営化後も、そうした災害時においても極力サービスを維持しようとする現在の姿勢は、維持されるものと思っております。

中井委員 万国郵便条約というのがあって、その中では小包もユニバーサルサービスで、条約にサインするでしょう。どうして日本は外れるんですか。そうすると、外国から来た小包は日本だけ別にお金を取っておやりになるんですか。

 あなたは、申し上げて失礼だけれども、郵便貯金の通帳もお持ちになっていない方だし、現場も一遍も行かれたことがない方だから、僕の質問がわからなかったらもう一度言いますが、災害のときに、災害で罹災された方々に郵便局は、NHKと一緒、無料で受け付けて無料で配っておるじゃないですか。それをやめるんですかと聞いているの。それを答えずに、なぜ延々とああいうばかな答えをあなたはやるんですか。

 もういいよ。あなたが郵便貯金も持っていないということだけ言うておけば気が済むからね。ちょっとひどいんじゃないかと僕は考えております。

 それで、今日までいろいろ議論をしてまいりましたが、郵便局、郵政事業にお勤めの方々が、私は、途中で、民営でもいい、こういう方向へ行ってくれればという条件でもおつけになるかな、こういう感じを持っていましたが、大変な認識不足でございます。郵便事業にお働きの方は、この法案はとんでもないと徹底的に反対なさっておられる。

 それは、公務員としてのプライドで今日までやってきた、災害のときに配達する、ありとあらゆる、大雨のときであれ、どんな苦労のときであれ、郵便物を届けるというのは、もうかるもうからないじゃないんだ、公務員としてのプライドと誇りだ、こう言っておられます。これを無視して、どうやって、きょう五十円のはがきを出したら、あした日本じゅうに着くという、世界でも一番優秀な精緻なシステムを守り通すんだ。僕はさっぱりわかりません。

 例えば、何か特定郵便局長さんには郵便認証司という噴飯ものの制度をおつくりになる、そして、法務省やらの特別送達はこの郵便認証司もサインをされる。今まで一人でサインしておったのを、郵便認証司の人は一緒について配達に行くんですか。違うでしょう。そういったことを含めて、何か、公務員じゃなくなった、かわいそうだから郵便認証司を当てるから我慢せい。そんなことで我慢するような苦労を今まで重ねていないんですよ。

 ドイツだって、株式会社にするときには、株式会社公務員というのをつくったんですよ。デンマークはどうしたんだ。民間になったときは給料を引き上げた。他の国々で公務員を民間人にしたときには、例えば売り払ったその株を優先権を与えて買わせた、優遇措置がある。何にもない。二十六万営々として働いてこられて、郵政事業を守ってこられた人たちに、この一年、小泉さんと竹中さんはもうぼろくそ言うて、プライドを傷つけて、そして何も処遇せずに、はい民間、そんな乱暴なやり方はどこにあるんですか。僕は、もう本当に気の毒で仕方がない。公務員がいいとか悪いとか、優遇されているかされていないかじゃないんです。

 それでは、これは大変な競争率を経て公務員で試験に通ったんですから、私は公務員でいたい、こういう人は公務員に残れるんですか。どうして一片の法律でばさっと民間人にするんですか。公務員に残してやればいいじゃないか。それこそ準備室でお雇いになればいい、そんなお金があるのなら。

 かつて、自民党の方々はJRの民営化のことをたくさん言われるが、JR、国鉄は、当時公社だったんだ。それで、民間へ行くのが嫌な人は、市町村や、あっちこっち役場はいっぱい採ったんですよ。ついこの間じゃないですか。公社の人を公務員で採用して、配置転換したじゃないですか。郵政公務員、国鉄はめちゃくちゃな赤字の中でやった、郵便局は大黒字、一銭も御迷惑かけていないじゃないですか、国に。ボーナスも税金も年金も、全部自分たちでやっている。その人たちを遇する道がこれですか、この法案ですか。私は違う。

 ここのところを少し、小泉さん、竹中さんのふだんの言動も含めて御反省をなさるべきだ。いかがですか。

小泉内閣総理大臣 中井さんの議論は議論として、公務員の今まで努力してこられた姿を強調するのは理解できます。

 しかし、これを聞いて民間の方々は憤慨しているんじゃないでしょうか。民間で使命感を持っていないとは私は思っておりません。民間人でさえも公的な仕事をして……(発言する者あり)

二階委員長 御静粛に願います。

小泉内閣総理大臣 いい例が小包です。郵政の小包のサービスも必要でありますが、民間の業者の皆さんが、これは当初は採算をとれないけれども、郵政小包、あるいは郵便局がやっていない小包配達をしようということで、多くの抵抗を排しながら、民間の業者の皆さんが今まで公務員しかできないという小包配達に参入してきた。結果はどうだったでしょうか。

 採算のとれないところにも、過疎地にも離島にも、民間の方々は公的な分野におけるサービスを展開しております。むしろ、夜間配達とかあるいは冷凍の食品というのは、郵便局がやるよりも民間が考え出したサービスであります。

 私は、民間の方々が、今中井議員の言っていること、公務員は使命感があるけれども、民間に任せられないということを聞いたら、さぞかし憤慨されると思っております。

 私は、今回……(中井委員「委員長、もうとめてください。聞くにたえません、こんな答弁は」と呼ぶ)だって答弁しろと言うから答弁しているんです。私は……(中井委員「違うことをこんな答弁している。違うことを言っちゃ……」と呼ぶ)違うことは言っていない。(中井委員「いつ民間がやらないと言いました」と呼ぶ)いや、それは、答弁をしているんですから。私を批判しているときは自由で、私が批判するとけしからぬというのはおかしいでしょう。(中井委員「じゃ、僕が言ったことに批判してくださいよ。僕は事実で批判しているんだから」と呼ぶ)私も事実を言っているんです。(中井委員「全然事実じゃない。僕の言った事実で批判してください」と呼ぶ)

 だから、公務員の皆さんが、公務員の身分を外されると意欲を喪失する、これは意外ですね。これは意外だ。私は、公務員であろうが民間人であろうが、仕事に使命感を持ってやってもらいたい。公務員の身分を外されたら意欲がなくなる、使命感がなくなる、そんな公務員ではないと思っております。

 だからこそ、私は、この郵便局、公務員も、民営化されても首を切るなんというのは一言も言っていません。雇用には十分配慮するということで、十分な配慮もしております。そういう点も御理解いただいて、民間の皆さんが公的な業務に参加して、そしていろいろな、公務員が考えられないようなサービスも展開していける余地を広げていこうというのが今回の民営化法案であります。

中井委員 私どもは地方公聴会にも参りました。新潟の大地震のときに、自分の家が壊れたにもかかわらず毎日毎日郵便を運んで、しかも避難されているところはばらばらですから、捜して顔見知りの郵便局員が行くということでやった。その地域の小包は二週間ほど全国から集荷するのはもうストップになって、郵便局だけが機能しておった、これが現状でしょう。

 これはこれでいいんですよ。民間は民間で、そういう非常時のときはなかなか機能しないときがある。また、もうからないところへは行かない。しかし、そこのところを頑張る。そのかわり、郵便やどこかで、一部のところで独占をさせてその体力をつけさせていく、こういうことでやってきたんじゃないですか。それを全部外して、公務員じゃないよ、一遍にぱあんとやっちゃって、そして、おい働け、首切らないだけましだというのがあなたの言い方じゃないか。そんなことで、だれが夜中まで、簡保の加入に行ったり、あるいは配達に行ったり、苦労をするんですか。

 何も郵政の諸君だけが働いていると僕は一回も言っていません。民間は民間で、公共事業を立派にやってくれている電力の方もおられる、NTTもそうでしょう。だけれども、電力やNTTさんは、電線を引っ張っておいたら、離島やあるいは過疎地へ職員がふだん行っていなくたって十分運用できる公共事業じゃないですか。もしそこが裁断されたら、都会からヘリコプターで今直しに飛んでいるんですよ。ところが、郵便だけは人から人ですから、人手が要るんですよ。機械じゃないんだ。その現場で働いている人たちが本当にプライドを持ってやれるのか、私はこのことを言っております。

 それじゃ、違う観点からいきます。例えば二十六万人、これをどうやって一年半で配置転換をきちっと決めるんでしょうか。今、労働組合と会社で配置転換、例えば私の東海支社なら東海支社で年間数百人でしょう。それも一年かけて希望をとっておやりになっていらっしゃる。今度はどうするんですか。みんな民間になる。四つの会社、どこへ行けば自分は一番いいんだろう、また、もうかるんだろうか、給料はずっと一緒だろうか、退職金もボーナスも一緒にしてくれるのか、みんな不安に思っています。これをどうやって労使協議で二十六万人分おやりになるんでしょうか。

 あるいは、一たん貯金会社へ、銀行の方へ行った、五年ほどたったら今度は窓口会社へ戻らせてくれるんでしょうか。これはそういったことも全然お考えにならない。(発言する者あり)移行期間の間のことを聞いておるんだよ。聞いていない、君らは。

 そういうことを、ルールも何にもなしに、竹中さん、労働組合と会ったこともないじゃないですか。あなた、ちょっと会って、はいと言ってくるだけだよ。何一つきちっと精査もせずにこんな乱暴な法案をつくって、どうやっていくんだ。どうやって国民の大事な大事な郵政三事業を壊さずに、あなたらの言うように夢とバラ色の世界へ導いていくんだ。僕はさっぱりわかりません。

 総裁、システム構築も一年半ではできないでしょうが、労働組合、これは二つある。この間共産党系も来られた。労働組合に入っていない人も数万人いらっしゃる。そういう中で、一体どういう形で四月一日までに労働者の配置転換をちゃんとやるんですか。あるいはまた、いつでも希望すればもとへ戻ったり、行き来可能にするんですか。労働賃金は一緒ですか。退職金も変わりませんか。これらのことについて、御検討いただいているならお聞かせください。

生田参考人 お答えします。

 組合といいましても、大きいのは二つですけれども、一般的な労働問題、かなり密接に常に話し合っておりますけれども、民営化を前提としてどういうふうにするという話し合いは、これはまだできる状態じゃありませんから、それはいたしておりません。

 したがって、今の経営を預かっている者としての想像といいますか、頭の中にあるものを申し上げれば、これは形としては、準備企画会社というんでしょうか、郵政株式会社、持ち株会社の母体ができたら、そこが権限を持って交渉することになると思いますが、それはまだ、若干といいますか、かなりおくれると思います。したがいまして、私どもとしては、その準備はしておいてあげる必要があるな、もし法案が通れば直ちに準備に入る可能性はあると思います。

 ただ、法案で既に、労働条件等あるいは退職金なんかも引き継いでいくんだというようなことはうたわれておりますし、そういったものを基本にしながら、いわば新しい、今までの打ち合わせとは枠組みを変えまして、法律で決まるのであれば、それに合目的になるように誠意を尽くしてお話し合いをしていく以外ないな、こういうふうに考えております。

中井委員 誠意を尽くされることは、あなたの御性格でありますから疑いません。しかし、二十六万人の職員の所属先とそれぞれの方々の納得を得た上でこの配置先を決めていくというのは大作業だ。やめたいという人はどうするんですか。退職金を割り増しするんですか。この間、もう公務員じゃないならやめたい、出てくると思うんです、僕。そういうのを含めてどうなさるのか、さっぱり見えてきません。

 もう一度、間に合うのか、労働条件どうするんだ、こういったことについてお答えください。

生田参考人 システムは、何ができないかがもうはっきりしていますので、かなりできない、これは政府にセーフガードを張っていただけばフルでできることになる。はっきりしているんだけれども、この労務問題というのはもっと難しいですね。だから、これは途方もなく大きく、難しく、困難な問題だと、私が多分、一番心の中では感じている人間だと思います。

 しかしながら、もし法律で決まれば、それに合わせていくように最善を尽くすのも経営者の責務だと思っていますので、今はそう申し上げる以外ちょっと方法を見出せないという感じです。

中井委員 私は昭和十七年に生まれました。シンガポール陥落の後でございます。それでこういう洽なんという名前を親はつけたんだろうと思っていますが、この時代の歴史を見たときに、日本はどうしてこういう戦を、戦いをやったんだろうと、いつでも残念に思います。その根幹に、撃ちてしやまんとか、なるようになるよとか、まあまあ、その場へ行けば何とかなるよという暴論で正論を抑え込むという日本人の悪い癖があった。これがちっとも直っていないじゃないか、戦後になっても。

 何ですか。システムが間に合わないと言ったら、間に合うようにつくれ。労使協議、全然間に合いません、間に合うようにやれ、間に合うようにやる以外にありません。これは総裁、あなたもお立場があって、よくわかります。できないことはできないと言われるべきだ。

 こんなむちゃくちゃな形で、そして国民の資産をつぶしてしまうような早急なやり方をされたのでは、一番迷惑をこうむるのは国民なんです。しかも、郵便局を一番お使いになっているお年寄りなんです。ここのところを総理はお考えにならなきゃなりません。これは、あなたの任期中にやる、あなたの支持率を上げるためにだけ、できないことを無理やり期間に合わせておつくりになった法案だ、このことを思わざるを得ません。

 こういう乱暴な法案、当委員会で附帯決議等のお話もありましたが、私どもは一切拒否いたしました。民主党は対案を出せ、どうして出さなきゃならないんだと。こういう乱暴な、こういう総理個人の妄執に対して、私どもは徹底的に反対する、この道しかない、このことを申し上げて、私の質問を終わります。

二階委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 日本共産党の塩川鉄也です。

 郵政民営化法案について、小泉総理にお伺いいたします。

 総理は繰り返し、民間にできることは民間にとおっしゃって、郵便事業も郵便貯金事業も民営化をすればいいとおっしゃってこられました。しかしながら、実際には、民間にはできない、公社でなければできないということがあるのではないか、このように思いますが、小泉総理、いかがでしょうか。

小泉内閣総理大臣 民間にできないこと、しかしながら、国として国民の利便性を考えながらやらなければならないこと、これは国でやらなきゃならないと思っております。

塩川委員 具体的に、郵便貯金事業でのことですけれども、郵便貯金法が廃止をされます。そのことによって、今までの郵便貯金事業において、民間にはできない、実際には公社でなければできないことがあると思うんですが、総理はどのようなものがあると。いかがでしょうか。

    〔委員長退席、松岡委員長代理着席〕

小泉内閣総理大臣 どのようなものを民間が国民に提供するかというのは、私は予想はできません。我々の予想を超えるサービスなり商品を民間企業なり民間の方々は開発してきております。そういうことを考えまして、今回、郵政民営化法案において民営化されれば、今まで公社がしていた以上のサービスも提供してくれる分野がかなり出てくるのではないかと思っております。

 また、どうしても民間ができない、あるいはやらない、そういう点において国として国民のためにやる必要があるという点につきましては、今後、十分配慮していかなきゃならないと思っております。

塩川委員 繰り返して述べてこられましたけれども、民間の創意工夫で利便が提供される、今まで以上にサービスが提供される分野もあるという話がありましたけれども、郵便貯金については、これは郵便貯金法も廃止をされて、まるっきりの普通の、一般の銀行と同じになるわけであります。それによっての違いというのは当然出てくるわけであります。公社ではできたけれども、民間にはできないことが現にある。

 資料でも配付いたしましたが、ここにありますように、郵便局と民間の金融機関の店舗の数の増減であります。過去六年間をとれば、郵便局は現状維持、というよりも、六十六、数がふえております。これに対して、民間金融機関は七千六百一、二割も民間においては店舗が減らされております。

 もう一つ紹介をしたいのが、郵便局と四大銀行のATMの引き出し手数料、土曜日、昼間の場合を具体的に取り上げております。郵便局では昔も今も無料でありますけれども、四大銀行、みずほ、三井住友、東京三菱、UFJ、これは三年前まではすべて無料でしたけれども、この三年間ですべて有料となって、百五円となっております。このように郵便局と民間の違いがくっきりしております。

 そこで、金融行政担当の伊藤大臣に伺いたいと思います。

 この郵便局と民間金融機関の違いというのはなぜ生まれているんでしょうか。その理由は何でしょうか。お伺いします。

伊藤国務大臣 これはそれぞれの経営判断の問題でありますけれども、郵便局につきましては、長年、窓口ネットワークというものを活用して、そして地域に密着した業務というものを展開してきたわけであります。また、民間の金融機関におきましても、利用者のニーズに応じて、そして手数料の設定というものを経営判断としてなされてきているわけでありますが、先ほど有料という御紹介がございましたけれども、それにつきましても、条件を付して無料化していく、そういうサービスというものも提供されておりますので、そうした中で、郵貯そして民間の金融機関、それが全体として、日本の金融機関の民営化を通じて、郵政の民営化を通じて、日本の金融システムの効率性、利便性というものを向上できるような形で改革が進んでいくことを私どもとしても期待いたしているところでございます。

塩川委員 重ねてお伺いしますけれども、私が聞いているのはこのことなんですよ。郵便局は局数を維持しているのに、なぜ民間では減らしているのか。それから、ATMの引き出し手数料についても、郵便局は無料のままなのに、四大銀行はなぜ上げているのか。個々のサービスの話じゃないんですよ、このことを聞いているんですよ。

 経営者の判断だとおっしゃいました。経営者の判断の根拠、理由、動機となっているのは何なんですか。

伊藤国務大臣 支店の設置でありますとか廃止でありますとか、あるいは手数料の問題、これはやはり経営判断の問題であります。利用者のニーズというものを的確に判断して、その中で、今お話をさせていただいたような、店舗をどうしていくか、あるいは手数料というものをどのような形で設定していくかということを判断しているというふうに考えております。

塩川委員 まるでお答えになっておりません。

 では、経営者がどういう判断をしているのか。具体的に、今、全銀協の会長銀行でありますみずほ銀行、みずほグループの「変革・加速プログラム」、発表されている文書、経営者の判断がどこにあるのか、はっきりと書かれております。

 「コスト削減の徹底的な前倒し」といって、「店舗統合と人員削減の徹底的前倒しによる強靱なコスト競争力の早期実現」ということで、今後一年半で百二十カ店の店舗を統合する、いわばコスト重視の観点から店舗を減らしますとはっきり書いてあります。また手数料の問題についても、「手数料水準の適正化による手数料収入の増強」とはっきり書かれ、収益力強化のために手数料収入をふやすことを目標にしているじゃありませんか。ここにはっきりと民間銀行経営者の判断があらわれている。

 郵便局数や手数料など、郵便局では現状を維持しているけれども、民間銀行では国民サービスが後退をしている。営利目的の民間銀行にはできないことがあるということは明らかだ。このことにもはっきり示されていると思います。

 もっとはっきりしておりますのが、障害者の方への利用サービスの問題であります。

 視覚障害者対応のATMの設置状況ですけれども、郵便局の場合には、すべての郵便局にありますATMが、視覚障害者の方が利用できる、そういう機能がついております。これに対して、民間銀行の場合にはわずか一三・二%であります。郵便局の場合には、二万六千台の郵便局のATMすべてに、視覚障害者の方が利用しやすい機能として、イヤホンが差し込める口があるですとか、受話器を使って、どちらの場合でも音声で具体的な使い方を教えてもらえるということですとか、あるいは、今ATMはタッチパネルです。タッチパネルには当然のことながら点字はありませんから、視覚障害者の方にどういうサービスをするかといえば、タッチパネルを使わずに、タッチパネルの横とかわきにある操作ボタン、これを使って具体的にキーボードで操作ができるようになっております。

 最近では、ここにも紹介をしておりますけれども、最新型の郵便局のATMでは、手元の受話器の操作ボタンで操作ができるようになるとか、郵便貯金の残高が点字で浮かび上がって、さわることによって確認をできる、そういう機能が郵便局のATMにはつけられております。こういう最新型も既に郵便局では五割まで普及しておりますが、当然のことながら民間ではゼロであります。

 そこで、郵政事業を所管する麻生大臣に伺いますが、先日、我が党の佐々木憲昭議員が、郵便局は一〇〇%、民間銀行は一三・二%、郵便局のATMすべてに視覚障害者対応がされているけれども、なぜ郵便局ではこのようなことが可能なのかと質問したのに対し、麻生大臣は公という意識の問題ではないかと答弁をされておられますが、改めて確認をさせていただきたいと思います。

    〔松岡委員長代理退席、委員長着席〕

麻生国務大臣 一〇〇%という事実で、どうしてそうなったかという御質問だったので、その当時それを決定された方がどの方かは存じませんけれども、公、いわゆる官と民との間に、パブリックセクターという言葉をさっき使われましたけれども、公という意識があったためではないかとお答えしたと記憶します。

塩川委員 麻生大臣がお答えになりましたように、公という問題、公共性を目的とした公社だからこそできることがあるわけであります。

 これは、何も視覚障害者対応のことだけで私は言っているわけではありません。郵便局は、あまねく公平に、だれにでもサービスを提供することを目的にしております。だからこそ、高齢者や障害者のだれもが利用できるようになっているわけであります。だれにでも利用できるようにするという公社の目的があるからこそ可能だということであります。

 そこで、改めて小泉総理に伺いますが、二枚のパネルを示しました。郵便貯金事業での郵政公社と民間銀行の違いを見てまいりました。営利目的の民間銀行ではできない、公社でなければできないことがあるということのあかしだと思いますけれども、そのことは総理もお認めになりますね。

小泉内閣総理大臣 公社でなければできないことと、民間であるからこそできるということと、両方あると思います。

塩川委員 民間銀行が利潤を目的とする、そういう中で、はっきりと店舗数が減り、手数料が上がる、経営者の判断としてそのようなことが行われているということをみずほ銀行の場合でも紹介いたしました。結局、営利目的の、利益優先の民間ではできないことは明らかで、公共性を目的とする公社でなければできないということがはっきりあらわれております。営利を目的とする民間企業の場合には最終的には株主のために働くわけですけれども、公共性を目的とする公社の場合は国民全体のために働くわけで、公社がこのような国民サービスを税金を使わずに自前で稼ぎ出して行っている、このことを大いに今確認をすべきときじゃないでしょうか。

 郵便局や郵政公社が民間銀行でできないサービスを提供しているのは、公共性を目的としている。その根幹に郵便貯金法という法律があります。簡易で確実な貯蓄の手段として郵便貯金が設けられているわけです。金額の多くない小口の貯金を大事にするために手数料は取らないようにしている。「あまねく公平に利用」とあるように、日本国じゅうどこででも利用ができる郵便局網がある。お年寄りや障害者の方にも、だれでも公平に利用できるようなATMが設置をされているわけです。

 それなのに、今回の民営化法案は、この郵便貯金法を廃止して、営利目的の普通の銀行にしてしまう。その要求そのものが、全国銀行協会が郵便貯金法の廃止を掲げ、アメリカ政府も郵便貯金法の廃止を掲げている、こういう中で生まれてきている。三百四十兆円の国民の資金を日米金融資本の食い物にするような郵政民営化法案をきっぱりと廃案にすべきだということを申し上げて、質問を終わります。

二階委員長 次に、横光克彦君。

横光委員 社民党の横光克彦でございます。最後の質問者となりました。

 確かに、本委員会で百時間を超える質疑が行われました。しかし、百時間を超えたとはいっても、その中身は本当に充実したものとは言えない。いわゆる政府の答弁は、誠実さも見られない、具体性も見られない。そして、審議の中で多くの問題点が浮き彫りになりました。しかも、その問題点の解決にはほど遠いというのがこの委員会の審議の実態であったということを、まず国民の皆様方に知っていただかなければなりません。

 多くの問題点の一つに、まず第一に、中央省庁等改革基本法において、郵政公社設立後は民営化しないという条文がありながら、その条文が今なお生きているにもかかわらず、現内閣は、これを勝手に解釈してねじ曲げて、何と郵政公社設立前までの条文だと言い張るわけですね。

 では、なぜ現内閣だけの意見を聞いて、当時の内閣の意見を聞こうとしないのか。橋本内閣の橋本総理大臣、そして郵政大臣であった自見庄三郎議員、さらにはその後の野田聖子郵政大臣、八代英太郵政大臣、これらの方々は当時、あれは郵政公社の後に民営化しないとはっきり述べられている。そういった人たちの意見をこの委員会ではとうとう聞く機会を与えてくれませんでした。この与党の公平さを無視するような国会運営があったということも国民の皆様方に知っていただかなければなりません。

 また、もう一つ、これは先ほどから同僚議員が何回も質問いたしましたが、竹中大臣の郵政PRのチラシ、これをめぐって随意契約の疑惑も今なお解決されておりません。竹中大臣の秘書官とこれを受注した広告会社スリード社の社長とが以前から知人関係にあったこと、これによって一億五千万円の国民の税金が随意に使用されたのではないかという疑惑が発生しているんです。これがなかなか解決されていない。

 さらに問題は、先ほどもございましたが、このチラシにおいて、主婦層や高齢者の皆さんがIQつまり知能指数の低いところに位置づけられております。これは何度も、国民の皆様方、知っていただかなければなりません。まさに、IQが低いところにいる人たち、ここの中に、主婦層、シルバー層、こういう人たちが位置づけられているんです。このことは、本当に国民の皆様方、しっかりと目に焼きつけていただきたいと思うんです。政府の広報活動でこういった位置づけをして、人権侵害に値するようなことを平気でやっている、このことを私は決して許してはならない、このように思っております。

 では、総理にお尋ねをいたします。

 このような余りにも問題点の多い法案を、なぜこんなに急いで成立させなければならないのか、多くの国民は全く理解ができておりません。民営化が実施されて、それが仮に失敗に終わった場合、一体だれがどのように責任をとるのか、まず国民の前に明らかにしていただきたいと思います。

小泉内閣総理大臣 この委員会におきましても、まれに見る長時間、慎重に審議が重ねられました。そういう中で、多くの議員の皆さんから賛成論も反対論も提言されていたわけでありますけれども、その点について我々としても十分説明したつもりでございます。

 また、失敗したらどのような責任をとるのかという御質問でありますが、私は成功すると思っております。

横光委員 何度聞いても、最後は、経営判断にゆだねる。ということは、成功することもあるでしょう、しかし失敗することもあるということを言っておるんですよ。だから私は聞いておるんです。余りにも無責任と言わざるを得ません。

 無責任といえば、総理、あなたの発言です。これも国民に対して非常に無責任。

 そもそもこの政府案は、基本方針とはほど遠い、譲歩と妥協の産物でありました。これをさらに修正するかどうかという動きがありました。六月十五日、私は本委員会で総理にこのことをお尋ねしました。修正するのか、修正しないのか。総理はこのときに、修正を行う考えはないとこれを否定されました。ちょうどそのときも、きょうと同じようにNHKのテレビは全国で中継をいたしておりました。つまり、これは、総理のあの修正をしないという発言は国民に対する約束なわけです。しかも、その後の政府・与党の修正協議の中で、この申し入れに対し、総理は、修正には応じられない、通らないなら廃案となってもいいと、実にわかりやすい、言えば小気味のいい、もっと言えば胸のすくようなたんかを切って、修正協議には一切、一歩も引かないような強い姿勢を示されました。

 それがどうですか。一夜明ければ、何とそれまでの威勢のよさはどこへやら、あっさりと修正案を受け入れて、しかもあっけらかんと、よくここまでまとめてくれた、いい知恵を出してくれたと、これをまた評価しておるんですね。これはないんじゃないでしょうか。こういうのを世の中では変節、変節漢と申します。国民への約束をほごにし、もっと言えば国民をペテンにかけたようなものでございます。国民に謝罪すべきだと思いますが、いかがですか。

小泉内閣総理大臣 私初め政府のこの案を批判している方々は、随分誤解している面もあると思うんですよね。後退している、自民党との合意は基本方針に比べて後退しているとか言っているけれども、野党の皆さんの意見は、後退しろ後退しろという意見ばかりじゃないですか。そうでしょう。

 政府案なり私の言っている案が一番進んでいるんですよ。一部の評論家が言っている議論を、もし国会の中で、政府の案が中途半端だと言っている政党は一つもないんです。マスコミのいわゆる私を批判している人たちが言っている、後退していると言っている。それじゃ、私より進んでいるという議論を出している政党は残念ながら一つもない。むしろ私の案が進み過ぎているから、後退しなさい後退しなさいという議論ばかりじゃないですか。

 そういう中において、私は過日、修正を考えていない、それははっきり言いました。当時は、そんな後退する修正なんというのは全く考えていない。当然であります。もしあのときに修正を考えていると言ったなら、野党の皆さんは、もう審議できない、修正を考えているなら出し直せと言うに決まっていますよ。そういう政治的な駆け引きも、私は長年の政治経験から十分わかっていますよ。

 そういうこともあって、自民党との議論におきまして、ここを修正しろ、あそこを修正しろ、修正しなかったら通さないという議論もありましたよ。しかし私は、内容、基本方針にかわる修正をしろということに対して、通らないんだったら通らないで結構だ、廃案で結構だ。しかしながら、骨格も基本方針も中身も全然変わっていない、字句の修正、今までの国会答弁で、わかりやすくする修正、不安感をなくする修正ならば結構です。

 中身は全く変わっていないんです。だから、本質的に全く、内容においては、中身は変わっていない。しかし、形式的に、字句の修正はありますから、その字句の修正というものを自民党の皆さんが評価していただいて賛成しようということですから、これはいいことだと思います。

横光委員 そういうのを二枚舌というんじゃないでしょうか。

 修正をしない、廃案になってもいい、それまで言った人が、次は、よくぞここまでまとめてくれた、ころっと余りにも変わり過ぎたら、では国民はこれから何を信じればいいんですか。一国の総理の発言というのは本当に重いでしょう。そのようにころころころころ変わられたんじゃ、本当にこれから総理の言うことをだれも信じませんよ。修正を考えていると言ったらまとまりっこない、こう言うのであったら、初めから国民にうそをつくつもりだったということになるじゃないですか。まさに国会軽視、国民軽視をみずからが認めたようなものです。

 次に行きます。

 総理は、民営化は改革の本丸である、このようにかねてから言い続けてまいりました。しかし、改革の本丸とは一体どういうことですか。

 私は、改革の本丸のまず一つは、その改革が国民がこぞって望むものでなければならない、でなければ本丸に値しない、このように思っております。

 ところが、どうですか。今回のこの改革案に国民は今なお関心が薄い。しかも、この前も申し上げましたが、北は北海道から南は沖縄までのすべての、全都道府県の議会で、反対、慎重の意見、決議がされておる。これは民意なんです。非常に重い。これが、どこが国民こぞって望んでいる法案ということになるんですか。これが一つ。

 次に、改革の本丸と意気込むのなら、政府・与党が完全に一枚岩となった改革でなければなりません。一枚岩になっていますか。今なお自民党の良識派は、百名を超える人たちが、どこが改革の本丸だと言って反対をしているじゃないですか。反対をしているでしょう。それをどうにかして賛成させるためにいろいろな恫喝をしている。解散をするとか、公認をしないとか、公明党は応援をしないとか、そういうふうにしておどしをかけているでしょう。おどしをかけなければ成立しないような法案が何で改革の本丸と言えるんですか、お聞かせください。

小泉内閣総理大臣 国民がこぞって賛成していないじゃないか、それは、民主主義の時代ですから、こぞって賛成するなんてまずないでしょうね。一党独裁の国ではありませんし、政府に反対する議論を言う人に対して妨害するような国ではありませんから、国民は自由に議論ができます、国会議員もそうです。

 賛否両論を問えば、これは、国民の多数は、郵便局の仕事は本当に役所じゃなきゃできないのか、国家公務員じゃなきゃできないのか、あるいは民間人に任せてもできるか、どっちがいいのかと聞けば、必ず私は、多数の国民は民営化を支持してくれると確信しております。

 同時に、全国都道府県議会は反対決議をしている。そうですよ。だから、都道府県議会がいろいろ考えて、この郵政民営化に反対の決議をしている、全国。国会もほとんど全政党が、私が総理になる前は反対していた。だから言っているんですよ。これを実現すれば、郵政民営化を実現すれば政界の奇跡だと。政界の奇跡を起こすように頑張って、国民のためになる民営化法案を出すと。

 私は、都道府県議会議員の反対決議、これは全国民の意見から比べれば遊離していると思います。一部の特定団体の言うことを聞くのはいいです。しかし、だからといって、都道府県議員がそういう決議をして反対のものを、私が、この民意というものと、都道府県議会議員、さらには国会の議論とどう違うかということをよく国民に見ていっていただきたい、そういうことで今日まで審議をしてきたんです。ですから、私は、国民の多数はこの郵政民営化法案を支持してくれていると思っております。

横光委員 今の一国の総理の答弁は、全く民意なんか関係ないと言ったようなものでございます。

 改革の本丸であるならば、その改革は国民の幸せにつながるものでなければなりません。今回の改革は幸せにつながりますか。まさに、郵政公社であって郵政公社でない、あるいは民営化であって民営化でないような、中途半端な法案になってきて、これじゃ、一番国民は不幸せになるわけでございます。

 答弁も、何を聞いても、最後は経営判断にゆだねる。これじゃ、やってみなければわからないということですよね。ということは、国民を実験台にするということなんですか、こんな大きな改革を。こんなことは許せませんよ。中身なんかどうでもいいんだ、とにもかくにも民営化という名のついた法案を成立させ、十年後、二十年後のことは知りません、後は野となれ山となれ、そう言っているようなものじゃないですか。

 私は、今回の法案は、骨抜き法案どころか、それにだめを押す骨なし法案であると言わざるを得ません。つまり、現在の国民、利用者から信頼されているこの郵政公社の経営形態の中で改革を推し進めることこそが、真の国民、利用者のためになるということを申し上げまして、質問を終わります。

小泉内閣総理大臣 今回の法案を骨抜き法案と言っていますが、むしろ、政府の案というのは骨がしっかり入っているんです、骨太の法案なんです。むしろ、反対している人たちが骨を抜こう、骨を抜こうとしているのを、骨をしっかりつくろうとしているのがこの法案であります。

横光委員 国民はそうは見ておりません。

二階委員長 これにて各案及び各修正案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

二階委員長 これより各案及び各修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。松野頼久君。

松野(頼)委員 私は、民主党・無所属クラブを代表して、郵政民営化関連法案並びに与党が提出をした修正案に対して、反対の立場で討論をいたします。

 政府が推進をする郵政民営化は極めて多くの問題を抱えているということが、本委員会における審議を通じて次第に明らかになってまいりました。以下、反対する理由を具体的に申し上げます。

 第一に、郵政公社は官だ官だと言われますが、一円の税金も投入されておらず、独立採算で運営され、かつ黒字を出している事業であります。そもそも今なぜ民営化が必要なのでしょうか。

 郵政事業は、橋本内閣が全精力を傾けて行った行革の一環として、中央省庁等改革基本法により業態を公社とすることが決まり、二年前にスタートを切ったばかりであります。一期四年の結果も見ずに、そもそも今なぜ民営化を急ぐ必要があるのでしょうか。各種の世論調査でも、今国会での成立を急がずじっくり検討するべきだとの回答が多く、それこそがまさに国民の声なのであります。

 骨格経営試算などの不確かな根拠と多くの想定や見込みをよりどころとして、拙速に法案を通そうという政府・与党の姿勢は、国民生活を守る責務を負う政治家として認めることができません。

 第二に、民営化等の見直しは行わないという旨を定めた中央省庁等改革基本法三十三条一項六号の解釈を強引に百八十度変えることによって、本条文の廃止を省略して民営化法案を提出したことであります。

 この点につきまして、中央省庁等改革基本法立法当時の橋本総理や小里大臣、自見、野田、八代各郵政大臣を当委員会にお招きし意見を伺いたい旨を、冒頭の理事会から再三再四要求してまいりましたが、いまだ実現には至っておりません。

 郵政事業を所掌する主任の大臣であった自見、野田、八代元郵政大臣と坂野内閣審議官による、将来にわたって民営化するものではないとの国会答弁を顧みずに、公社設立後のことを規定した条文ではないと強弁をする政府の姿勢は、将来に大きな禍根を残すことが確実であります。

 さらに、竹中大臣は、三名の元郵政大臣による委員会での答弁を、政府の見解ではなく政治家としての信条を述べたものと発言されました。阪田内閣法制局長官の、大臣答弁は法的に拘束力を有さないとの発言ともあわせ、国会審議の存在自体を否定し、議会制民主主義の存立を危うくしかねないこれらの発言を断じて許すわけにはまいりません。

 第三に、私どもは、法案が提出をされた四月二十七日の直後から、郵便局の設置基準や郵貯、簡保の預け入れ限度額など、制度の骨格にかかわる二百以上もの箇所が法案に書き込まれておらず、政省令にゆだねられているために、法案を再提出すべきであると強く求めてまいりました。

 また、法案の国会修正の問題については、委員会審議の終了間近になって修正案が提出をされるというありさまであります。本来であれば、当初私どもが主張したように、与党の部会できちんと議論を尽くして、結論を出してから、成案を国会に提出するべきであります。

 さらに、修正内容については、本日の当委員会で総理みずから、何ら中身は変わっておらず、法的効力には全く影響がないと答弁をされている、形だけの修正案であります。政府・与党合意に国会答弁によって担保をするというところがありましたが、国会答弁の法的拘束力が疑問視されることはさきに述べたとおりであります。

 また、地域・社会貢献基金や株式の持ち合いに関する修正については、法案の骨格には触れず、修正したという事実のみをもって反対派に配慮したというのが実態であります。

 第四に、そもそも公的な役割を担っている郵政事業を利潤を追求する民間企業が行うという制度設計の大枠自体に矛盾があり、無理があるわけであります。採算がとれない地域は、民営化された会社の経営判断により、民営化されたイギリスやドイツで起こったように、いずれ切り捨てられるのではないでしょうか。

 近くの郵便局はどうなるのか、郵便料金や振りかえ等の手数料はどうなるのか、ひとり暮らしのお年寄りへのサービスはどうなるのかといった国民にとっての関心事に、政府から明確な答弁は一つもありませんでした。

 郵便局は減るかもしれないしふえるかもしれない、郵便料金は下がるかもしれないし上がるかもしれない等々、国民生活へのプラスが全く見えない、単に看板だけを民営化、株式会社と書きかえる、郵政民営化が手段であって目的ではないことを全く忘れたものであります。

 第五に、制度設計に不透明な点が多々あるということであります。

 郵便貯金銀行と郵便保険会社に対する持ち株会社の議決権は継続されるのか否か、株式の持ち合いによって三事業一体的経営が実現するのか否か、代理店契約の内容は委託手数料の水準を含めてどうなるのか、地域・社会貢献基金の規模は十分なのか等々、制度の根幹にかかわる部分があいまいなまま放置をされています。

 明治以来の大改革というのであれば、政省令や承継計画、経営判断にゆだねるのではなく、制度の根幹は政府が法律の形で明確につくり上げ、その上で、国会審議に当たってはいささかの曇りもない答弁で対応する、それこそが政府としての国民への責任であります。

 第六に、政府広報の問題であります。

 本件は、法案が国会に提出をされる前に、閣議決定のみを根拠として約六億円以上もの広報を行った、まさに国民の血税を用いて議会を冒涜したという行為なのであります。

 加えて、地方における折り込みチラシの配布の問題では、政府はたびたび虚偽答弁を繰り返し、疑念は払拭されるどころかますます深まるばかりであります。

 何よりも、この問題は、条約でありますマラケシュ条約、また、国内法である会計法、予算決算及び会計令、国の物品等又は特定役務の調達手続の特例を定める政令等々の法的な側面から見ても、違法の行為のにおいが強いものであります。

 さらに、折り込みチラシの企画書には、驚くなかれ、小泉内閣の支持基盤である知能指数の低い主婦やお年寄りを対象としているというくだりがありました。国連の人権条約を批准している我が国がそうした特定の者を差別したかのような企画を採用した責任は大変重大であります。

 この点については、南野法務大臣が答弁を回避していることも問題でありますが、そもそも郵政民営化に関する企画立案の事務を担当するように小泉総理から命じられているのは竹中大臣であり、竹中大臣こそが本企画の実施及び実施時期について断を下す権限を有しており、その責任は重大であります。

 内閣法三条二項に基づく狭義の無任所大臣であるにもかかわらず、郵政民営化を担当するのは私だ私だと言っておきながら、不手際が生じると政府広報室等の事務方に責任を押しつけるという姿は、担当大臣としての資質を著しく欠くものであります。

 最後に、一言申し上げます。

 今後、我が国が一段と高齢化、過疎化への歩みを進めていく中で、郵便局が果たしている公の役割の重要性は一層高まってまいります。採算がとれなくても、地域の人々の生活を守るために郵便局のネットワークは支えなければなりません。同時に、そこでは今までのように、郵便だけではなく、庶民の金融、すなわち、郵貯、簡保のサービスが提供されなければなりません。政府案並びに与党の修正案はそのことを担保できずに、この国の形を大きく変えてしまうおそれがあります。

 我々政治家は、いずれ歴史の法廷に立たねばなりません。それが我々の背負った宿命であります。政府案並びに与党の修正案では後世の批判に耐えられないことを強く主張して、私の反対討論を終わります。(拍手)

二階委員長 次に、石破茂君。

石破委員 私は、自由民主党を代表して、議題となっております内閣提出の郵政民営化関連六法案及び自由民主党、公明党修正案について、賛成の立場から討論を行うものであります。

 簡素で効率的な小さな政府の実現は時代の要請であり、民間にできることは民間に、地方にできることは地方にという方針は、まさにこの小さな政府の実現を目指すものであり、経済の活性化を図る上で極めて重要であります。

 郵政事業については、その取り巻く環境が、通信、輸送手段の発達や金融の技術革新などにより劇的に変化しております。今や、郵便、郵貯、簡保、いずれの分野も民間企業が自由な経営のもとで同様のサービスを提供しており、これらは公務員でなければできない事業ではなく、民間による運営が十分可能になったものと考えております。今般提出された郵政民営化関連法案は、小さく効率的で質の高い政府の実現という時代の要請にこたえるものであり、以下申し上げる理由により賛成するものであります。

 まず、今般の民営化、分社化は、郵政事業の四つの機能、すなわち、窓口ネットワーク、郵便、貯金、保険の機能を、市場原理のもとで、それぞれ新たな四つの会社として自立した存在とすることとしておるものであり、これにより、四つの会社がそれぞれの業務に特化し専門性を高めるとともに、国の関与をできるだけ控え、民間企業と同一の条件で自由な経営を可能とすることにより、質の高い、多様なサービスが提供されるようになる。郵便局を通じて国民から集められた約三百四十兆円という世界に類を見ない膨大な資金を官から民へ流す道を開き、経済の活性化を図るとともに、預金者、運用者、株主の緊張関係を確立することにより、規律ある資金の運用を実現する。約三十八万人の郵政公社の職員が民間人になることにより、公務員ではなし得なかった創意工夫をさらに生かすことができるようになる。従来免除されていた税金が支払われることなどにより、財政再建にも資することになる。以上のようなメリットを引き出し、国民に大きな利益をもたらすものであります。

 現在の郵政公社の経営について考えるに、郵便事業については、郵便物数が毎年二から二・五%減少し、今後さらにその減少が加速する懸念もあるところであり、また、郵貯事業、簡保事業についても、残高等々の減少傾向が顕著となっておるところであります。このように、今後の経営見通しは楽観が許されず、こうした環境変化に適切に対応して、将来にわたって健全な事業経営を維持していくためにも、市場経済の中で民間活力による自由な経営を実現することが非常に重要であります。準備期間や移行期間に要します年数を勘案いたしましたとき、今これに着手するに早過ぎるとは決して考えておりません。

 他方で、郵政事業は、従来から、過疎地を含め全国の郵便局において郵便、貯金、保険のサービスを提供するとともに、第三種・第四種郵便物、特別送達等の公共的サービスを提供するなど、公共的な役割を果たしてまいりました。このような郵政事業あるいは全国の郵便局が果たしている公共的な役割につきましては、その重要性を十分に認識しておるところであり、民営化後においてもこのような役割が引き続き果たされることが極めて重要であります。

 今般の法案にはこのような公共性への配慮も十分になされており、郵便局の設置について、あまねく全国において利用されることを旨として設置することを法律上義務づける等の措置が講じられ、政府答弁においても、万が一にもそういった利便性に支障が生じないよう適切な対応をしていくとの強い決意が表明されておるところであります。

 このように、当委員会において審議いたしました郵政民営化関連法案においては、一方で郵政事業が果たしてきた公共的な役割については制度的に担保しつつ、他方で市場における自由で公正な競争により我が国の活力を最大限に引き出すことを可能とするよう制度設計に細心な工夫が凝らされており、両者の調和が図られたものであります。

 最後に、修正案について申し上げます。

 このような郵政民営化の目的、制度設計には大いに賛同できますものの、その趣旨を法案において明確にすべきであると考えられる部分もあり、修正案においては、株式の持ち合いについて、議決権の面で連続的保有を可能とするよう、議決権の行使に関する事項、基準日を郵便貯金銀行、郵便保険会社の定款に必ず定めなければならないこと、郵政民営化委員会による「検証」を「見直し」とすること等としており、政府案の制度趣旨を明確にするものであります。

 国民生活に深くかかわっておる郵政事業の民営化に当たっては、過疎地の郵便局は維持されるか、そうでない地域においても地域住民の利便性が損なわれることはないか、生活弱者にしわ寄せが行くことはないか、金融サービスはどうなるのか等々、国民の種々の不安を払拭する必要があり、この修正案は、政府案の基本的な枠組みを維持しつつ、国民の一層の理解と支持を得ていく観点から必要なものであります。

 以上、賛成の理由を申し上げました。

 郵政事業は、創設以来、国民の福祉と利便の向上に貢献するとともに、国家の繁栄に大きく寄与してきた輝かしい歴史を持っております。雨の日も風の日も、そして災害の中にあっても、歯を食いしばってその責務に邁進してこられた方々に、我々は心から敬意を表するものであります。

 明治以来の大改革であります郵政民営化に当たり、政府、郵政公社が不退転の決意を持って国民の期待にこたえ、日本のさらなる発展に向けこれを立派に成就されんことを希望いたしますとともに、それは我々本法案に賛成する者全員に課せられた責務でもあることを申し上げまして、六法案並びに自由民主党及び公明党提出の修正案に対する私の賛成討論を終わります。(拍手)

二階委員長 次に、塩川鉄也君。

塩川委員 私は、日本共産党を代表して、郵政民営化法案及び関連五法案について反対の討論を行います。

 多くの国民が慎重審議を求め、多岐にわたる論点がいまだに十分検討されないまま、事実上審議を打ち切り、採決を強行することに、まず強く抗議をするものであります。

 不十分とはいえ、審議の中で、郵便局が果たしている、民間にできない公共的サービス、いわゆるユニバーサルサービスの豊かな内容が明らかになりました。

 それは、第一に、貯金や日常の金銭の出し入れの妨げとなる口座維持手数料や平日時間外のATM手数料を取らず、庶民の金融サービスを保障していることであります。

 第二に、すべてのATMを障害者に使いやすい仕様にし、郵便局に点字ブロックの設置など、お年寄りや障害者にも差別なく利用できる金融サービスを保障していることであります。

 第三に、過疎地を含め、全国どこに住んでいても郵便、貯金、保険の基礎的通信・金融サービスが受けられるように郵便局を設置していることであります。

 こうした郵便局に対して、もうけ第一の民間銀行は次々と店舗を統廃合し、取れるところから手数料をどんどん引き上げています。また、お年寄りや障害者へのバリアフリー対応は遅々として進んでおりません。

 小泉首相は民間にできることは民間にと言いますが、まさに、民間にできない、国民生活に不可欠な基礎的通信・金融サービスを提供しているのが郵便局であります。民間にできないサービスを提供している郵便局を民間にすれば、できなくなるのは火を見るより明らかであります。

 法案に反対する第一の理由は、まさに、もうけ第一の民間ではできない、国民生活に不可欠な通信、金融のユニバーサルサービスを破壊するものだからであります。

 第二は、分割・民営化に伴い、二千億円のシステム開発コストや七百億円の消費税など、数千億円に上る不合理な国民負担が新たに生まれることであります。

 第三に、銀行代理店問題や株式の持ち合い問題など法案の中心点で竹中大臣が答弁不能になるなど、法案としても法案の体をなさない欠陥法案だということであります。

 なお、修正案は、原案を何ら変えるものではなく、全く問題にもなりません。

 国民生活の隅々に浸透し、土台から支えてきた郵政事業を根本から破壊する今回の郵政民営化法案は断じて認められない、このことを最後に強調して、反対の討論といたします。(拍手)

二階委員長 次に、石井啓一君。

石井(啓)委員 私は、公明党を代表して、内閣提出の郵政民営化関連六法案及び自由民主党、公明党の共同提案による修正案について、賛成の立場から討論を行うものであります。

 私ども公明党は、小泉総理が改革の本丸と位置づけられている郵政民営化について、二〇〇三年衆議院選挙に向けて策定しましたマニフェストで原則賛成する考えを表明し、国民そして利用者へのサービスを低下させないことを前提に、二〇〇七年四月民営化の政府方針を支持する考えを示してまいりました。

 なお、先ほど民主党委員の質問で、公明党が四年前に郵政民営化に反対していたとの発言がございましたが、党として郵政民営化反対を決定、表明したことは一度もございませんので、念のため申し上げておきます。

 今般の郵政民営化関連法案は、民営化のメリットを最大限に引き出すと同時に、郵政事業が果たしてきた公的な役割や国債市場への影響についても十分配慮されたものであると考えるものであり、以下の理由から賛成するものであります。

 まず、郵政事業は、従来から、過疎地を含め全国の郵便局において郵便、貯金、保険のサービスを提供するとともに、第三種・第四種郵便物等のサービスを提供するなど、公共的、福祉的な役割を果たしてきました。このような郵政事業あるいは全国の郵便局が果たしてきた役割については、公明党としてもその重みを十分に認識しているところであり、民営化後においても、このような公共的、福祉的な役割が引き続き果たされ、利便性が低下しないようにすることが極めて重要であります。

 今般の郵政民営化関連法案は、現在の郵便局の利便性が低下しないよう十分な配慮がなされており、例えば、過疎地を初め、公明党が配慮すべきことを主張してきた都市部においても必要な郵便局ネットワークを維持し、また、移行期間を超える長期の代理店契約や社会・地域貢献基金など、貯金、保険の金融サービスが低下しないよう制度設計にはさまざまな工夫が凝らされております。

 このように、当委員会において審議しました郵政民営化関連法案においては、市場における自由で公正な競争を通じて、民営化のメリットを最大限引き出すような制度設計が行われると同時に、郵政事業の果たしてきた公共的な役割、利便性の確保については確実に担保されるよう工夫されております。

 また、郵貯、簡保の約三百四十兆円もの資金について、官から民への流れを開こうとする今般の政府案については、郵政公社が大量の国債を保有していることを踏まえ、新旧勘定を分離し、旧勘定については、それに相当する資金を国債を中心とした安全資産で運用することを義務づけるなど、国債市場に及ぼす影響や、郵便貯金、簡易生命保険の既存の利用者に対する配慮も丁寧に盛り込まれたものと考えます。

 このように、郵政民営化関連法案は、民間の知恵や力を生かすことにより、我が国の力を最大限伸ばすものである一方、郵政事業の果たしてきた役割、利便性の維持、国債市場への影響、雇用の維持等について十分な配慮が行われており、郵政事業を改革するために必要な法案であると考えております。

 次に、自由民主党及び公明党の修正案について申し上げますと、この修正案においては、郵便局が行う業務について、郵便局を活用して行う地域住民の利便の増進に資する業務として銀行業、生命保険業の代理業務を例示すること、株式について、議決権の面で連続的保有を可能とするよう、議決権の行使に関する事項、基準日を郵便貯金銀行、郵便保険会社の定款に必ず定めること等が盛り込まれており、政府・与党間において合意された事項をより明確にするものであります。

 国民生活に深くかかわっている郵政事業の民営化に当たっては、過疎地だけでなく、都市部の郵便局はどうなるのか、貯金、保険はどうなるのかなどの国民の種々の不安を払拭する必要があります。この修正案は、政府・与党間で合意された事項をもとにし、国民の一層の理解と支持を得ていく観点から、必要なものであると考えております。

 最後に、政府においては、引き続き国民に対し、さまざまな場において、郵政民営化の必要性、重要性を丁寧に説明していくことを要請し、内閣提出の郵政民営化関連六法案並びに自由民主党及び公明党提出の修正案に対する賛成討論を終わります。(拍手)

二階委員長 次に、横光克彦君。

横光委員 私は、社会民主党・市民連合を代表いたしまして、郵政民営化関連六法案に対する反対討論を行います。

 委員会では百時間を超える審議が行われたとはいえ、郵政民営化をすればどういうメリット、デメリットがあるのかを真摯に説明すべきにもかかわらず、政府の答弁は誠意のかけらもなく、国民の不安の解決とはほど遠いのが実態でした。最初から最後まで、国民には本音を知らせたくないのではないかと思えるほどでございます。修正は考えていない、廃案になってもいいと明言した小泉総理が、一夜にして、よくここまでまとめてくれた、いい知恵を出してくれたと豹変するに至っては、何をか言わんやであります。このような問題点の多い法案をなぜそんなに急いで通さなければならないのか、多くの国民は全く理解できないままであります。

 小泉改革の本丸とされる郵政民営化は、成功すれば巨大な民業圧迫企業の誕生、失敗すれば身近で便利な郵便局ネットワークの崩壊という、百害あって一利なしの法案であります。しかも、審議をすればするほど、なぜ民営化が必要かの説明は矛盾だらけで正当性がないこと、公共性や利便性よりも採算性や経営判断が優先され、郵便局のネットワークとユニバーサルサービスががたがたになりかねないこと、数多くの民営化コストを国民、利用者に負わせること、サービスの質が下がるおそれがあること、アメリカの要求に基づき外資に国民の財産を売り払いかねないものであること、郵便ポストは減るが役員ポストはふえ、癒着と天下りの温床になること等の問題点が明らかになってきました。

 郵便局は本当になくならないのか、これまでどおり貯金、保険のサービスが郵便局で利用できるのか等の国民の不安や心配は全く解決されておりません。十年後、二十年後、一体だれが責任をとるのか。国民は小泉さんの実験台ではありません。今求められているのは、国民生活の安心や安全を提供する公的サービスを解体し、民間企業のビジネスチャンスのために無用なリスクを国民に強いることではないはずであります。公社のまま必要な改革をやることは十分可能であり、無謀な民営化は断じて行うべきではありません。

 私は、以上の理由で政府案に反対をいたします。

 なお、与党提出の修正案も、小泉総理が言うとおり、実質的に政府原案の本質を変えるものではなく、政府案同様、賛同できません。修正を考えていると言ったらまとまりっこないと国民をだました総理の発言でありますから、修正にだまされないように同僚議員に忠告をして、反対討論を終わります。(拍手)

二階委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

二階委員長 これより各案について順次採決に入ります。

 初めに、郵政民営化法案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、山崎拓君外二名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

二階委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。

 次に、ただいま可決されました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

二階委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

 次に、日本郵政株式会社法案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、山崎拓君外二名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

二階委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。

 次に、ただいま可決されました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

二階委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

 次に、郵便事業株式会社法案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

二階委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、郵便局株式会社法案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、山崎拓君外二名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

二階委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。

 次に、ただいま可決されました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

二階委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

 次に、独立行政法人郵便貯金・簡易生命保険管理機構法案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

二階委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、山崎拓君外二名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

二階委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。

 次に、ただいま可決されました修正部分を除く原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

二階委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました各法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

二階委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

二階委員長 本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三十二分散会


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