衆議院

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第3号 平成18年3月9日(木曜日)

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平成十八年三月九日(木曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 中山 太郎君

   理事 近藤 基彦君 理事 福田 康夫君

   理事 船田  元君 理事 保岡 興治君

   理事 枝野 幸男君 理事 古川 元久君

   理事 斉藤 鉄夫君

      井上 喜一君    伊藤 公介君

      石破  茂君    江渡 聡徳君

      遠藤 武彦君    越智 隆雄君

      大村 秀章君    加藤 勝信君

      河村 建夫君    清水清一朗君

      柴山 昌彦君    高市 早苗君

      棚橋 泰文君    渡海紀三朗君

      中野 正志君    野田  毅君

      葉梨 康弘君    早川 忠孝君

      林   潤君    平田 耕一君

      二田 孝治君    松野 博一君

      三ッ矢憲生君    山崎  拓君

      吉田六左エ門君    若宮 健嗣君

      逢坂 誠二君    北神 圭朗君

      鈴木 克昌君    園田 康博君

      田中眞紀子君    筒井 信隆君

      平岡 秀夫君    三谷 光男君

      石井 啓一君    太田 昭宏君

      桝屋 敬悟君    笠井  亮君

      辻元 清美君    滝   実君

    …………………………………

   衆議院憲法調査特別委員会及び憲法調査会事務局長  内田 正文君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月九日

 辞任         補欠選任

  越智 隆雄君     清水清一朗君

  森山 眞弓君     江渡 聡徳君

  安井潤一郎君     若宮 健嗣君

  岩國 哲人君     三谷 光男君

同日

 辞任         補欠選任

  江渡 聡徳君     森山 眞弓君

  清水清一朗君     越智 隆雄君

  若宮 健嗣君     安井潤一郎君

  三谷 光男君     岩國 哲人君

    ―――――――――――――

三月二日

 憲法九条改悪のための国民投票法案反対に関する請願(菅野哲雄君紹介)(第五二〇号)

 同(重野安正君紹介)(第五二一号)

 同(仲野博子君紹介)(第五二二号)

 同(菅野哲雄君紹介)(第五二七号)

 同(重野安正君紹介)(第五二八号)

 同(仲野博子君紹介)(第五二九号)

 同(菅野哲雄君紹介)(第五三六号)

 同(菅野哲雄君紹介)(第五八四号)

 同(菅野哲雄君紹介)(第六二一号)

 同(鉢呂吉雄君紹介)(第六二二号)

 同(重野安正君紹介)(第六二四号)

 同(仲野博子君紹介)(第六二五号)

 同(菅野哲雄君紹介)(第六七五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日本国憲法改正国民投票制度及び日本国憲法に関する件


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     ――――◇―――――

中山委員長 これより会議を開きます。

 日本国憲法改正国民投票制度及び日本国憲法に関する件について調査を進めます。

 本日の議事の進め方について申し上げます。

 まず、保岡興治君及び枝野幸男君から、日本国憲法改正国民投票制度について、基調となる御意見を順次二十分以内でお述べいただきます。

 次に、各会派一名ずつ大会派順に十分以内で基調発言者に対する質疑または発言を行います。

 それでは、まず、保岡興治君。

保岡委員 自由民主党の保岡興治でございます。

 本日は、理事会での協議に基づきまして、日本国憲法改正国民投票制度に関する基調発言をさせていただくわけでございますが、一昨年十二月に私も共同座長の一人として取りまとめました与党案をベースに、昨年秋の海外調査で得た知見なども踏まえながら、私なりに論点を整理して御報告申し上げ、委員各位の御参考に供したいと存じます。

 ところで、中身に入る前に、ただいま言及しました与党案の現在の位置づけについて、一言申し上げておきたいと思います。

 さきの特別国会における本委員会での発言でも述べたところでありますが、この与党案は自民、公明両党の真摯な協議の結果であり、貴重な参考資料の一つとして議論の俎上にのせていただきたいとは思っておりますが、これから御報告申し上げるとおり、これにこだわるつもりは全くなく、とれるところはとり、捨てるべきところは捨てて、建設的な論議をしてまいりたいと思っております。

 このことを前提として、以下、順次、具体的な制度設計上考慮すべき主要な論点について、現時点での私の意見を申し上げたいと存じます。

 まず、国民投票の対象として、一般的国民投票も含めるか、それとも憲法九十六条に定める憲法改正国民投票に限定するかという論点でございます。

 個人的には、重要な国政問題について諮問的な国民投票にかけるというアイデアは非常に興味のあるところでございますが、昨年海外調査で訪問した国のすべてにおいて、国民投票は一般的な国民投票として構成されており、その中に憲法改正国民投票が位置づけられていたことも事実でございます。

 しかし、国民投票を一度も経験したことのない我が国の実情を念頭に置くとともに、海外調査でも多くの国の要人が口をそろえて言っておられた議会制民主主義における劇薬としての国民投票への慎重な姿勢というものにかんがみるとき、一般的、諮問的な国民投票制度の構築は将来の課題とすべきであり、当面は憲法によって義務的なものとされている憲法改正国民投票だけを対象にするのが適切であると考えます。

 次に、国民投票の投票権者の範囲をどうするかという論点でございます。

 与党案では、国政選挙の選挙権者をもって国民投票の投票権者とすることとしております。その理由を一言で言えば、いずれも国政に対する参加権、いわゆる広い意味での参政権として同一のものであり、その範囲を異にする積極的理由はないと思うからであります。

 確かに、昨年訪問した欧州各国においては投票年齢はすべて十八歳とされておりましたが、いずれの国においても、それは国政選挙の選挙権年齢や民法上の成人年齢と基本的に同じでありました。もし投票権年齢を十八歳としようとするのであれば、それはむしろ公選法の選挙権年齢も同時に十八歳とすべきであり、これとあわせて、民法の成人年齢や少年法等、その他いろいろな関係法令の改正も同時に検討して行うべきであると考えております。

 したがって、当面は公選法の選挙権者の範囲と同様として、速やかにその引き下げの検討を、成人年齢全体として検討していくことに着手するというところが適当かと存じます。

 第三に、国民投票の投票期日についてであります。

 具体的にどの程度の周知期間を置くのが適切かは、周知のためのパンフレットの作成に要する期間や、発議される憲法改正案の内容にも左右される部分があると考えます。むしろ、重要なのは、投票期日をだれが定めるかでございます。

 これは、憲法改正の内容をだれが周知、広報するのかという論点とも関連するものでありますが、憲法改正案を発議する我々国会議員がその内容を一番熟知しているはずでありますし、国会及び各政党こそが主体的に国民にその内容を周知、広報していくべきであることを考えますと、その投票期日も、民主党案に示されているように国会の議決で定めるのが適切であるように思われます。

 なお、与党案において憲法改正案を両院議長が公示するとしていた趣旨も、実はこれと同じ発想によるものでございます。

 第四に、投票の単位についてでございます。すなわち、同一の国民投票において賛否を問う憲法改正案に複数の項目が含まれる場合に、それらをすべて一括して賛否を問うのか、それとも個別の項目ごとに賛否を問うのかという論点です。

 国民の意思をできるだけ忠実に反映させるという国民投票の制度の趣旨にかんがみれば、当然に個別投票が原則ということになると存じます。したがって、例えば九条の改正と環境権の追加とを抱き合わせ販売のように一括して賛否を問うことが不合理であるということは明らかではないかと思います。

 しかし、複数の項目といっても、相互に関連する規定の改正案で、一方につき賛成、他方につき反対となった場合には論理的あるいは政策的、体系的に不整合が生ずるような場合、例えば道州制を導入するという改正と国会の一院を道州代表の議院とするというような、仮にそういう改正案を考えた場合、これは両者を一くくりの項目として国民に問うべきでありましょうし、また、前文を含めた全面改正というような場合には、それぞれを幾つかの項目に分割して個別投票に付すというわけにはまいらないケースもあるのではないかと思います。

 他方、例えば首相公選制と憲法裁判所の設置というような改正案があった場合に、これは強大な行政権のチェックという観点で関連していると見るのか、あるいは両者は別個の改正項目と見るのが適当なのか、議論のあり得るところではないでしょうか。

 要するに、この問題は、論理的、政策的にどこまでが関連する項目かということをだれがどういう基準で決めるかということに帰着する問題だと言うことができます。これを判断することができるのは、結局、憲法改正案を発議する国会自身しかないわけであります。となると、国会に憲法改正案の原案を提出するに当たっては、可分な項目はそれぞれ別個な議案として立案し、そのような議案を単位として国民投票に付するように努めなければならないということになるべきかと存じます。

 与党案におきましては、この点につきましては憲法改正の発議の際に別に法律で定めるものといたしたところでございますが、現時点では、少なくとも以上のような原則的ルールはこの一般法である国民投票法において規定しておくことが望ましいと考えております。

 第五に、憲法改正案の周知、広報についてでございます。

 与党案では、憲法改正案だけではなくて、その要旨や改正の趣旨を平易に解説した資料などを掲載したパンフレットのような国民投票公報を発行することが重要だと考えておりましたが、この点は、昨年の海外派遣の際いみじくもその必要性を改めて痛感したところでございます。会談した各国の要人は、口をそろえて、国民投票を成功させるかぎは国民投票にかけられる案についていかに国民の理解を深めることができるかにあるということを強調しておられたからでございます。

 なお、憲法改正案の周知、広報に関しては、民主党案では、国会に国民投票委員会を設置して、これに憲法改正案の要旨や解説資料の作成等を行わせることとしていると承知しております。国民投票委員会という名称やその組織の構成、独自の事務局による補佐体制など、詳細は詰める必要がありますが、そのアイデアについては、まことに適切なものであり、真摯な検討に値するものだと思っております。

 第六に、国民投票運動の規制の問題がございます。

 まず、与党案の基本的な考え方を御説明させていただきます。

 与党案では、国民投票運動とは、国会において憲法改正案が発議され国民投票の実施が具体化された段階において、この国民投票に関し、憲法改正に対し賛成または反対の投票をさせる目的をもってする運動、つまり他人に対して積極的に賛成、反対を勧誘する活動と定義しております。これ以外の憲法改正に関する賛成、反対の言動は、すべて一般的な政治評論として自由であって、ここに言う国民投票運動ではないという整理になっております。

 その上で、積極的な他人への働きかけである国民投票運動ですが、これについても、国民投票の公正さを確保するための必要最小限度の規制以外は、だれがどのような形で行おうとも基本的には自由であると考えました。問題は、何をもってこの必要最小限度の規制とするかということになるわけであります。

 そこで、最初に考えた基準は、公選法のように人を選ぶ選挙とは異なり、国民投票は国家の基本政策を選ぶという投票ですから、公選法の掲げている規制の中で人を選ぶことにまつわるあらゆる規制はすべて破棄しようというものでございました。このような観点から、文書図画などの量的規制などはすべて設けないこととしたのでございます。また、人を選ぶことと直接には関連性のない規定であっても、国民投票においては余り弊害が予想されず、また、できるだけ政治活動の自由を保障し、国民の良識に任せるべきものとして、戸別訪問などの規制も設ける必要はないものと考えました。

 その上で、ぎりぎり存置すべきと考えた規制の一つは、投票事務に直接関係する選管職員など国民投票に関して公正を保つべき者の国民投票運動や、公務員や教育者などのようにそれぞれの分野において優越的地位に立つ者がその地位を利用して行う国民投票運動は、これを禁止すべきであろうということです。

 また、公選法にはない規定ではありますが、憲法改正は主権者たる国民の自主的な判断に基づいて判断されるべきであるとの考え方に立って、外国人の国民投票運動も禁止すべきではないかと考えました。ただ、現時点で詰めて考えまするに、ありとあらゆる外国人の国民投票運動を禁止することはやや行き過ぎであり、組織的で弊害があるようなものに限って規制をする方向で検討すべきではないかと考えております。

 次に、マスコミに対する規制であります。

 与党案では、憲法改正案に関するマスコミの報道は国民に対する情報提供の観点から極めて重要なものであり、各マスコミの自主的、自律的な活動を通じて、正確な情報が多様な見解とともに提供されることが望ましいと考えております。

 したがって、マスコミの活動に対する規制はたった二つだけ、すなわち、国民の判断を惑わすようなものとして、虚偽と知りつつ事実無根なことを報道してはいけない、マスコミの経営上の特殊な地位にある者が私的な立場からその地位を不当に利用したり、また財産上の利益の供与を受けるなどして国民投票に関する報道や論評をしてはいけないという規定だけを設けることとした次第です。

 ところが、これに対しては一部に誤解に基づく批判もございましたが、同時に、人を選ぶ選挙の場合と異なって、国民投票の場合には虚偽の報道というのはなかなか想定しづらいのではないか、評論と虚偽との区別がつきがたいのではないかという適切な御指摘も各方面から受けました。

 しかも、昨年の海外調査における欧州各国の制度をつぶさに見聞してきて考えてみますと、虚偽まがいの報道には真実の報道でもって対処して、それを国民の良識で判断してもらうということが大切であり、選挙の場合と違って国民に対して一定の周知、広報期間をとりさえすれば、それはさほど困難な問題ではないのではないかというふうに考えるようになりました。

 もちろん、そのためには、そのような言論の自由市場を確保する自主的、自発的な取り組みをマスコミの側でしていただくことなどは必要であると思いますし、また、国民に対して影響力のあるテレビやラジオなどの放送メディアが投票日直前になって扇情的な報道をすることの危険性などは払拭し切れないところもありますので、問題のある報道がなされても国民の冷静な判断によって淘汰されるだけの冷却期間を確保しておくことは必要であるようにも思います。

 次に、買収の規制であります。

 昨年の海外派遣でも、例えばオーストリアにおいても、国民投票に際してその賛成、反対の依頼をするために金銭を授受することは禁止されているとのことでありました。国民の最高の主権行使に当たって金銭が授受される、いわば票を金で買うことを禁止することは当然のことだと考えます。

 問題は、どの程度の行為を規制の対象とするかということだと存じます。オーストリアでも、選挙中にボールペンやノートといった粗品を配ることなどは許されているとのお話でした。我が国の場合、選挙に関する買収規定が非常に厳格に運用されていることがこの問題の論議を複雑にしている一因と思われます。

 選挙運動の場合と異なって、国民投票の場合には国民一人一人が運動者になり得るということを前提に、その政治的意見の表明を最大限保障するとともに、社会常識的な行為までが規制されることのないように、買収となり得る行為の範囲を限定する方向で検討していくべきではないかと考えております。

 以上、与党案をベースとしながら、これに一部修正を加えながら、現時点での私の考え方を申し述べさせていただきました。ただいまの御説明で不十分であった論点や触れられなかった論点については、質疑応答の中でお答えをしたいと存じます。

 最後に一言。

 本日、国民投票のルールづくりのための与野党の垣根を越えた真摯な協議がこの衆議院の正式な機関である本特別委員会で開始されたということは、大変に意義のあることだと存じます。各政党間の幅広いコンセンサスに基づく憲法改正国民投票法案が今国会中に提案され、成立されますことを願いつつ、私の発言を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

中山委員長 次に、枝野幸男君。

枝野委員 民主党・無所属クラブの枝野でございます。

 憲法改正国民投票制度に関連をして、現時点で民主党の考えていることについて発言をいたします。

 一部、私の個人的私見の入る可能性がありますが、その場合には主語を明確に使い分けようと思っておりますので、御理解ください。

 まず、憲法改正の国民投票制度の必要性についてでございますが、憲法に憲法改正の手続規定があり、そこに国民投票というものが求められている以上、本来、憲法附属法として、憲法の公布後、施行までの間につくられるべきものであったと考えております。今までなかったことが立法不作為に当たるとは考えませんが、しかしながら、本来、憲法を具体的に変える、変えないという議論とは切り離して国民投票制度は常に準備をされておくべき制度であるというふうに考えております。

 したがいまして、六十年放置をしていたのですから拙速に走る必要はありませんけれども、できるだけ早く、幅広い合意に基づいてこの国民投票制度が整備されるべきであると考えております。

 なお、この制度は、まさに国民の皆さんの判断を仰ぐための共通のルールづくりでありますから、憲法改正についての意見の違いを超えて、中立公正で幅広い合意に基づいてつくられるべきであるというふうに考えております。

 なお、この国民投票法制の整備について、憲法改正に向けた準備であるという見方がありますが、私はそう考えてはおりません。国民投票制度は、憲法改正を実現するための制度ではなくて、同時に、国民に憲法改正を否決する機会を与える制度でもある。その二つの側面があって、そのどちらを選ぶのかを国民に決めていただくという制度なのであって、その制度をつくる側が、国民投票を憲法改正に向けたものであるとかないとかということを我々が一方的に決めつけること自体が、国民投票あるいは国民主権という原理から、違っているのではないかというふうに思っております。

 さて、国民投票制度ということで、本委員会の本日の議題にもそう書いてありますが、中身に入ります前に、この国民投票制度は、国会における憲法改正発議ルールと一体的に議論をされ、一体的に整備をされなければ意味がないということを指摘しておきたいというふうに思います。

 国民投票制度があっても、発議のための制度がなければ発議がなされないわけですから、国民投票自体も発動されないということになります。したがいまして、国民投票制度だけをつくるということは無意味であると言わざるを得ません。

 また、発議のルールと国民投票のルールというものは一体不可分であります。この委員会におきましても、いわゆる一括投票か否かということがこの間も議論をされてきておりますが、そもそも発議においてどういう形で発議をするのかということ自体が、投票を一括で行うのかどうかということと連動してくる話でありますので、これを切り離した議論は不可能であるというふうに考えております。

 したがいまして、本委員会では、国民投票制度と同時に、発議のための国会議論のルールについてもしっかりと議論をする、そして同時並行で決定をしていかなければならないと考えております。

 さて、中身に入りますが、私どもは、憲法改正国民投票制度と一般的な諮問的国民投票制度を同時に一つの制度として制定すべきであると考えております。

 いずれも国民主権の直接的な発露ということでは同根であります。それが、あるときには憲法の改正の是非について国民が直接意思を示すということであり、あるときには国会の求めに応じて国民の意思を国会に対して諮問的に出すということでありますので、両者は同根であります。また、実際にそうした国民投票を行うとすれば、憲法改正手続のための国民投票であれ、一般的な諮問的国民投票であれ、そのルールのあり方について、違ったルールであるということの説明はできないだろうというふうに思っております。

 しかも、諮問的国民投票制度を準備しておくべき必要性は高まっているというふうに思っております。

 例えば、近時、一部、皇室典範についての議論が国会の外ではなされているようであります。この中身については立ち入りませんが、私は、いずれにしろ皇室典範、特に皇位継承順位についての決定を下すに当たっては、天皇が国民統合の象徴であるということにかんがみるならば、国民それぞれが自分もその決定に参画をして皇位継承順位が決まったという参加意識を持つことが、国民の統合の象徴であり続けることのために不可欠であるというふうに思います。

 したがいまして、国会で全会一致になるぐらい当たり前というか当然とかということであるならば別でありますけれども、例えば、国会の中で意見が分かれるような場合に、国会議員七百数名だけで物を決めるということでは、国民統合の象徴という天皇制の本質と私は食い違っていくと思っております。

 したがいまして、国会で全会一致でないならば、諮問的国民投票にかけて、国民の皆さん自身が自分が決めた皇位継承順位であるという認識を持っていただくことが不可欠であると思っております。

 さらにまた、これは敬愛する中山委員長と意見が違っているテーマでありますが、かつてこの国会で臓器移植の法律をつくりました。各党とも、党議拘束を外す、そういった意味では非常に柔軟な対応をなされました。私は脳死を人の死と定義せずに、成立しましたいわゆる中山案と言われるものは脳死を人の死と定義してというところが大きな違いでありましたが、いずれにしても、臓器移植が充実をしていく、臓器移植の機会が広がるということについては同じ思いでありました。

 残念ながら、臓器移植法が成立をしましたが、当初の予想に比べてこの臓器移植というものが広がっていないという現状にございます。まさに人の死にかかわるような問題、あるいは臓器移植についてどう考えるのかという問題、各政党が政党として国民の意思を統合していくということは、党議拘束を外したということからも明らかなように、なかなか困難なテーマであります。

 こうしたテーマについて、直接国民の皆さんに、諮問的国民投票にかけて御自身で考えていただいて、もちろんその結果は賛成、反対、いろいろあるでしょう。例えば、御自身で、当事者として一票を投じるに当たって、脳死や臓器移植について考えていただいた上でこうした制度をつくっていれば、私はこの問題に対する周知といいますか、あるいは関心といいますか、そういったものが現状よりさらに高く、臓器移植の普及ということにも役立ったのではないかと思っております。

 その他さまざま今私たち国会が議論をし決めなければならないテーマの中には、国民の皆さんに諮問的に意見を聞くことがさまざまな意味でプラスの効果を及ぼすというテーマはふえているというふうに思っておりまして、諮問的国民投票制度を早期につくる必要があると考えております。

 もちろん、国民投票には弊害があるということは、中山団長のもとヨーロッパを視察してまいりまして私どもも共通認識でございますが、諮問的国民投票で国会がきちっとコントロールをするといいますか、国会の多数で一致をして国民に直接聞いてみようというケースに限定をするということであれば国会がコントロール可能でありますので、その弊害は十分に除去できるというふうに考えております。

 さて、続いて、具体的な国民投票ルールについて意見を申し述べていきたいと思います。

 まず、投票権者の範囲でございます。ヨーロッパでの調査はもとより、各国の状況を調査しますと、世界のほぼコンセンサスと言っていいのが十八歳成人であろうかというふうに考えております。そして、十八歳成人のもとで、十八歳以上に、まさに主権者として最も重要な権利である国民投票に参加していただくということは、私は不可欠であるというふうに思っております。

 もちろん、他の制度との整合性、例えば公職選挙法あるいは少年法、民法その他の各種法律との整合性ということは重要であると思います。

 しかしながら、この十八歳成人に関する所管は、実は官庁は非常に多岐に及んでおります。しかも、成人年齢を決める主務官庁はどこなのかということについて、存在はしません。しないと言っていいんだろうと思います。民法は民法的観点から二十を成人としている。刑法は刑法的観点から二十を成人としている。省庁ではありませんが、法務省の民事局と刑事局との間ですら、この調整をすることには、あるいはどちらがイニシアチブをとるのかということには、なかなか困難があるのではないかというふうに思っております。

 まさにこれこそ国会が主導して決めていく、そして国会が主導して決めたことに従って各省庁が所管する法律を十八歳成人に合わせて整備をしていくというテーマでありますし、主権者の範囲をどうするのか、主権者として権利行使を直接具体的にできる範囲はどこなのかというのは、まさに我々が所管をしている憲法的テーマであるというふうに思っております。

 したがって、私は、最終的には二年、三年、関連法を整えるということの経過措置は必要かもしれませんが、少なくともいつまでに十八歳成人にするのかということをまさに決定する権限は憲法を扱っている私どものところにある、したがって私どもの責任で十八歳成人をここで議論して決めていくべきであるというふうに考えております。

 なお、これはヨーロッパ調査の報告の際も申し上げたかと思いますが、あるいは以前この委員会でも私見として申し上げましたが、私見として申し上げます。

 十八歳成人といった場合に、多くの高校三年生が誕生日によって、高校三年生だけれども投票権、成人を迎えるという人とまだ迎えていないという人の両方を抱えるということになります。酒、たばこについては成人年齢というものと横並びにすべきかどうかという、これは議論はあるかもしれませんが、成人年齢を十八にすれば、少年法その他の扱いはそこで区切られるということになるかと思いますが、あるいはまさに投票できるのかできないのか、同じ教室の中で、同学年、同い年と思っている者の中で、投票権を持つ者、持たない者、少年法の適用をされる者、されない者と分かれるのは、少なくとも社会常識的にはちょっと違和感を感じるのではないかと思っています。

 オーストリアだったと思いますが、選挙あるいは国民投票の投票権をその投票の行われる年に十八歳に達する者に与えるということで、実際に誕生日が来ているのか来ていないのかということではなくて、例えば二〇〇六年に誕生日を迎えて十八歳になる人は二〇〇六年の一月一日から投票権を得る、こういう説明を受けました。日本の場合は、例えば十八歳に達した最初の四月二日から投票権を有する、つまり、普通の、多くの人たちは高校を卒業した時点で投票権あるいは成人を迎える、こういった決め方もあるのではないか。これは私見でございますが、指摘をしておきたいというふうに思います。

 なお、投票権者の範囲としては十八歳成人が一番大きく取り上げられていますが、そもそも投票権者名簿をどうするのかという根本の議論がございます。

 有権者名簿でいいではないかという議論もございますが、いわゆる選挙の有権者名簿を使った場合には三カ月居住要件という大変ややこしい問題が出てまいります。選挙の場合は選挙区というものがございますので、その地に継続して三カ月住んでいることが投票の要件になりますので、三カ月以内に二度転居をした場合には二度目の転居から三カ月間はどこにも選挙権がないという状況になります。

 何年に一度行われるかわからない、しかも一番大事な国民投票について、そうしたことの事務的な手間という理由だけでこの人たちに投票権を認めないということでは、私は、それは違憲訴訟を起こされたら負けるというふうに思います。したがいまして、事務的な手間はありますが、その都度、投票権者については、いずれにしろ別の名簿をつくらなければならないだろうというふうに思っております。

 それから、これに関連して、選挙の場合は選挙権の停止の要件がさまざまございます。選挙違反等によって選挙権が停止をされるということは、これは当然だろうと思いますが、この間も議論されてきていますが、選挙において違法なことを行ったということが国民投票において権利行使をすることから外さなければならない直接の根拠になるのかというと、私は違うと思っておりますので、選挙権名簿と別につくるということであるならば、この点について柔軟な対応が可能であろうと思っております。

 次に、国民投票運動の規制について申し上げます。

 このポイントは、国民投票については意見の表明と運動というものを明確に区分することが不可能であることが根本的な問題であろうというふうに思っております。私はこんな憲法改正はひどいと思う、おかしいよねとがんがん言うことの方が、頼むから反対投票してくれないかとささやくよりも実は運動としては大きな効果があるという性質のものであります。

 そして、自分が憲法についてどう考えているのかということの意見表明については、これは規制をすることは許されないことであろうというふうに思っておりますので、そもそも国民投票運動の規制自体は原則不可能なんだという基本認識に立たなければいけないと思います。その上で、どうしてもおかしいと思うところについて何とか意見表明と運動とを区別する知恵を絞る、こういう発想でなければいけないのではないかと思っています。

 例えば、公務員の地位利用について言われています。特別職については別といえば別にすることは可能かもしれませんが、一般職の方を考えても、例えば外交官の方などが他国の外交官と話をするときに、日本の憲法、特に九条関連などについて、ああだ、こうだと意見交換することはないのでしょうか。

 まさに、その地位にあるから外国の外交関係者とそういった意見交換ができるのでありますから、地位利用であります。そこで意見を表明することが例えば他国の日本の憲法に対する認識、意見について影響を与え、その国のしかるべき人がメディア等を通じて発言をするということがあれば、これこそ大変大きな運動ではないのか。そして、まさに本体を規制するならば事前運動にほかならないということなので、以後、日本の外交官は外国の人と憲法について議論するなということになるのでありましょうか。

 あるいは教育者。教育者の地位利用はおかしいじゃないかというのは、一般論としては確かにそうかもしれません。しかし、大学の憲法の教官が憲法の授業をするに当たって、例えば、この規定は現行憲法の憲法改正限界を超えているんだと。ある学者が改正限界を超えているんだと判断をして授業でしゃべっていることについて、改正発議が出されましたら意見を言ってはいけないのか。そんなばかなことはないはずであります。

 したがいまして、まさに地位利用についての要件をもっと絞るのかとか、いろいろな議論はあるかもしれませんが、単純に地位利用による運動規制ということをやれば、こういった問題が出てきます。

 例えば外国人の運動規制。組織的なもので弊害があるものを外すというのは一般論としては正しいと思いますが、例えば日本の有力な同盟国である某国の大使館が、我が国の憲法を変えてもらった方が両国の安全保障関係の強化のためには望ましいと言うことで、事実上ロビー活動をしていませんか。そして、そうした活動は、まさに組織的な外国人による憲法改正についての意見表明であるのは間違いないし、事前運動と評価されかねないという問題になるのではないでしょうか。

 買収罪は、この間も何度も申し上げています。仕事帰りに飲み屋で憲法の雑談をして、ああだこうだ言った後で、だれかが、じゃあおれがきょうは持つわと言ったときを本当に排除できるのか。そういったことに対する萎縮効果を及ぼさないのかというようなことで、かなり知恵が必要だろうというふうに思っております。

 時間が短くなってきましたので急いでしゃべります。

 メディア規制についてですが、ぜひ考えていただきたいのは、メディア規制で新聞などの報道機関と言った場合には各政党などがお持ちの機関紙もすべてその新聞に入るんだ、このことをしっかりと認識しなければいけない。あるいは、テレビ、ラジオについては既に放送法でしっかりとした訓示規定がなされているということを頭に入れておかなければいけないだろうというふうに思っています。

 なお、大事なことは、これは保岡先生もおっしゃいましたが、広報活動です。広報活動について、周知を図ることについては、これは政府のやるべき仕事ではないということで、政府のいわゆる選管的な機能は投票日などの広報に限定すべきで、中身についての周知は発議をした国会が責任を持って行うべきであろう。

 そして、その周知、広報の公正さを担保するためには、全会一致発議でない限りは発議の反対者を三分の一以上含む何らかの機関を国会がつくって、そこがコントロールする形で周知、広報を行うべきであり、また、二択で国民に問う以上は、私も迷っておりましたが、二択である以上は、そうしたパンフレット等で周知、広報を図る際には、もちろん客観的にこういう発議がされましたという部分は別として、賛成論と反対論は対等なスペースで周知、広報を図るべきではないかというふうに思っています。

 なお、公費助成をこういった場合に行うかどうかということですが、国会が直接行う広報活動が充実した公平なものになるのであれば、そこに公費を使うということでいいのかなと。逆に、そこが機能しないとか、十分にやらないということだったら、それが必要かな、こんなふうなことを思っております。

 いずれにいたしましても、まだまだたくさんの論点がございます。最初に申し上げましたとおり、憲法を改正するためではなくて、憲法を改正するのか、それとも憲法改正発議を拒否するのか、国民の皆さんに決めていただくための公平中立なルールをつくるということについては、まさにルールづくりですので、幅広い合意に基づいて、拙速に陥らず、しかし急いでつくられることを期待したいと思います。

 以上でございます。

中山委員長 これにて、基調となる御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

中山委員長 それでは、まず、船田元君。

船田委員 自民党の船田元でございます。

 まず、私の基本的スタンスを申し上げたいと思います。

 既にお話が出ておりますように、憲法九十六条ではその改正手続が決まっておりますが、それを律するための国民投票法というものが六十年近くもできないという状態であります。これは明らかに立法府の怠慢であるというふうに感じております。

 もちろん、憲法を改正するかしないか、どのように改正するかは、すべて国民の判断であります。しかし、その国民の判断をする場所、意思表示の機会あるいは手段を用意しておかなければいけない、これが国会の大きな役割であるというふうに思っております。

 この国民投票法案は一般法でありますので、衆参過半数で成立をするということであります。しかし、今後の改正問題と密接に関連をするということでありますので、衆参両院においても三分の二以上の賛成によってこの法律案が通過、可決されることを私は望んでいるわけであります。したがって、できるだけ多くの政党の参加のもとでこの投票法案が決定されていくということを私たちは目指すべきであると思っております。

 具体的には、既に保岡委員それから枝野委員からもお話がありました、与党案それから民主党案、それぞれ出されております。我々与党としましては、この与党案を十分に踏まえながらも、民主党案、あるいはこれまでのさまざまな内外のシンポジウム等で議論されたこともしっかり踏まえて、柔軟に対応していくということが大事であると思います。

 次に、具体的な論点について、私見も交えてお話を申し上げたいと思っております。

 まず、一般的国民投票制度の是非でございますが、これは確かに、民主主義の手続をさらに充実させるということで大変有意義な制度になろうかと思っております。しかし、本特別委員会の審査権限を越える場所にあるということ、また、たとえこの一般的国民投票が諮問的に設計をされたとしても、その結果が国会の立法権を縛るものであれば、憲法に抵触をするのではないかということで、さらなる議論が必要であると私は思っております。したがって、当面は憲法改正の場合に限定をした国民投票制度を構築する、これが先決であると考えております。

 次に、投票人名簿につきましては、国民投票というのは国政の重要な決定の手続であると同時に数年に一回行われるかどうかわからない、そういう貴重な機会でありますので、できるだけ多くの国民が投票に参加できる制度にしたい、すべきである、こう思っております。

 そこで、年齢の問題でございますけれども、私は以前の機会において十八歳以上ということをかなり意識した発言をしておりますが、この点につきましては成年年齢の引き下げという問題とも関連をいたします。また、民法、刑法、少年法など、私が数えただけで二十五の法律を改正しなければいけない、こういうことにもつながります。したがいまして、すぐに十八歳からというのはなかなか難しいのではないかというふうに考えております。

 本則では二十歳以上とするが、例えば、附則で、公選法における選挙権年齢が十八歳に引き下げられたときには同時に十八歳以上とするということを何らかの形で表記をする、あるいは、十八歳に選挙権年齢が引き下げられるということについては、やはり早期の引き下げについて国会として何らかの意思表示をする、そのようなことで対応するのが妥当ではないかと考えております。

 それから、国民投票運動についてであります。運動主体の制限ということでありますが、公選法上の特定公務員、選管職員、裁判官、検察官、国家公安委員あるいは警察官、そういった人々は制限すべきであると思っておりますが、会計検査官、あるいは収税官吏及び徴税吏員は制限なしでもいいのではないかと感じております。

 一般公務員、教育者の地位利用による運動の禁止でありますが、これは公務員関係の法律によってほぼカバーできるのではないかということで、これについては制限は加えない方向で検討すべきではないかと考えております。

 外国人についてもこれまで言及がありましたが、これはやはり原則自由としても、投票の結果に影響を与える特別の目的を持って組織的に活動する行為というのは、これは制限をすべきであると思っております。なお、日本国内における外国公館の一般的活動については、これは除外をするなどの配慮は必要であると思っております。

 メディア規制でございますが、これは与党案では公選法を準用した形になっておりますが、私も、これはもう少し緩やかにすべきであると考えております。基本的に、メディアの規制についてはメディア側の自主的な取り組みにとどめることが妥当であると思いますけれども、少なくとも法案には、その公平、公正を保つための機関を設置するなどの訓示規定を明記することが必要ではないか、こう思っております。

 また、スポットCMというのがヨーロッパの国々でも行われております。しかし、これは、放送・通信の影響力の大きさを考えますと、投票日前、例えば一週間、例えば十四日間というのは禁止をする方向で検討すべきであると思っております。

 その他の各種の罰則規定でございますが、公選法との比較におきまして、基本的にはなるべく自由にすべきである、こう考えておりますが、例えば投票手続に関する罰則あるいは投票の自由を妨害する罪、こういったことについてはやはり残す必要があるのではないかと考えております。

 なお、罰則を設ける上におきましても、それらが表現の自由、学問の自由、政治活動の自由を制限するものと解釈してはならないというような解釈規定を全体にかぶせることによって、その国民運動がよりやりやすくなる、活発になるという配慮をすることも必要であると思っております。

 それから、無効訴訟の扱いということで、これは東京高裁による一定の条件のもとでの執行停止処分規定を設ける、こういったことが今検討されておりますが、この方向性は私は望ましい方向であると思っております。ただ、その際の無効事由、例えば、自由投票の妨げがあったというような事実、数の誤りであるということ、あるいは選管のミス、そういったことにやはり無効事由は限定をすべきである、このように考えております。

 なお、国会法との関係でございます。投票の内容そのものにかかわる国会法の規定はできるだけ国民投票法案に吸収をするということが必要だと思っておりますが、院の構成にかかわるものについてはやはり国会法においてきちんとその改正を行う、こういった仕分けが必要であると考えております。

 その中で、国民請願というのが民主党案の中にはございますけれども、これは発議内容をより充実させるという点では望ましい制度になり得るかと思いますけれども、議会制民主主義との関係で制度設計は非常に難しいと考えており、将来の検討課題としたいと思っております。

 なお、個別発議、個別投票の原則ということについては、これはほぼ与野党とも合意ができることだろうというふうに思っておりますが、訓示規定として国会法の中に個別投票が原則であるということは書くべきであると思っております。

 ただし、個別といいましても、逐条ごとに問いかけるということを意味するのではなくて、内容において相互に関連する項目についてはある程度束ねて問うこともできるということが個別の内容であるというふうに思っております。これはやはり、賛否が分かれて虫食い状態になるということを回避する意味でも重要であると思っております。

 なお、例えば九条改正と環境権などの新しい権利付与の是非というのを一つの設問に入れるというような意図的な束ね方はすべきではないというのは、言うまでもないことであると思っております。

 最後になりますが、憲法を改正するか否か、これはまさに国民自身が決めることである、言うまでもないことであります。しかし、立法府としては、その機会を与えておくということ、その機会を国民に与えるという責任はきちんと果たす必要がある。これは一日も早く結論を出すことが重要であるということを改めて表明いたしまして、私の意見とさせていただきます。

 以上であります。

中山委員長 次に、園田康博君。

園田(康)委員 ありがとうございます。民主党・無所属クラブ、園田康博でございます。

 発言の機会あるいは質疑の機会をいただきましたことを感謝申し上げたいと思います。同時に、この調査特別委員会におきまして、中山委員長のもと、真摯な議論が進められていることに大変心から感銘と感謝を改めて申し上げたいというふうに思っております。そして、私からの立場も明らかにさせていただきたいと思っております。

 今回のこの憲法改正に係る国民投票法の調査でございますが、やはりこれは国民主権、あるいは国民の参加意識、こういったものがこの議論の中でさらに深まることをまず期待したいというふうに思っております。したがって、国民の理解が得られるような形でまず進められていくことが私は本則ではないかというふうに思っております。

 したがいまして、昨年から、調査会あるいは今回の特別委員会においての議論では、私も何度か主張をさせていただいておりましたけれども、幅広く国民にこの議論の過程が周知がなされることが私は肝要ではないかというふうに思っております。

 その中の一つの手法といたしまして、これは委員長あるいは理事の皆様、先輩方にもお願いをしておきたいわけでございますが、例えば、公聴会というのを途中で入れるということも一つの手でありましょうし、さらには地方での公聴会、これも同時に行っていただくこと、これは参議院と衆議院合同になるのか、あるいは衆議院だけになるのか、それはお任せをしたいというふうに思っておりますけれども、幅広く国民の議論あるいは国民の皆さんからの意見の聴取というものをかんがみれば、私は、地方公聴会というのもこの中において議論がなされてもいいのではないかなというふうに思っております。

 そして、きょうは発言の機会ということでありますけれども、若干私どもの私見も述べながら、先ほど自民党の保岡議員からの御発言がるるありましたので、それを確認する意味でも質問をさせていただきながら、私の意見を述べさせていただきたいということをまず申し上げておきたいと思っております。

 まず、一般的な国民投票との関連でございます。

 憲法改正のみならずでございますけれども、先ほど民主党の枝野委員からも御指摘をさせていただきましたけれども、やはり一般的な諮問である国民投票制度、これは大変重要なことではないかというふうに考えております。

 すなわち、昨今の国民の政治参加意識あるいはその必要度からすれば、国政問題に係る国民投票の実施、これをやはりどうしても考えていく必要があるのではないか。そこには個人的な興味はあるが慎重な姿勢をお示しされた保岡委員でございましたけれども、昨年暮れに訪問された欧州の各国の制度をごらんになられまして、我が国においても、世界の、あるいはこの社会の中における先例が幾つかあろうかと存じます。そういった意味では、一般的な国民投票制度の導入、これは憲法改正に限らず、我が国でもさまざまな問題を乗り越えて導入できるのではないかというふうに思っておりますけれども、その点は改めてお考えを聞かせていただきたいと思います。

保岡委員 先ほど、私は、今度の海外調査で、多くの国の要人が国民投票に慎重な姿勢を示したと申し上げました。

 例えば、オーストリアの国民議会のコール議長ですが、国民投票において本来のテーマに対する賛否が問われるのではなくて、むしろその時々の政府に対する信任、不信任案の是非を問うというものと判然としない投票の結果になるということを、非常に具体的な例を挙げて危惧、また、そういう問題点が非常にあるという指摘がございました。

 また、スペインの政治憲法研究所のクロサ次長でございましたけれども、欧州においてはスイスやフランスなどを除いてほとんどの国では国民投票を頻繁に行うことはない、制度としてはいろいろあっても、頻繁には行っていない。スペインにおいても国民投票は議会制民主主義を補完する二義的なものにすぎないという見方で、国民投票には、先ほど申し上げたような、端的に国民に聞いて、端的に国民の判断がわかるというような、そういった性質のものを求められるのかどうか。まあ、国民投票を行う難しさ、危険性。

 例えば、今度の小泉内閣が、解散をして郵政民営化法案一点を聞くという、そういう解散をいたしましたが、その結果が圧倒的な与党の勝利に終わったんですけれども、それが一体どういう内容の承認を得たものであるかどうかについてはいろいろな意見もあったりしたのは御存じのとおりであって、こういうふうに、国民投票を制度化するにはまだまだ議論を尽くしてみる、まずは憲法改正の国民投票を義務的、拘束的な面として、これは憲法が期待しているものでありますから、まずそこから始めるのが適当であると考えているゆえんでございます。

園田(康)委員 ありがとうございます。

 そういった面では確かに慎重な検討が必要かと存じますけれども、しかしながら、そういった国民の最終的な判断あるいは意見の聴取というものが、そういう究極的な場面で行われるということからかんがみれば、やはりこういった憲法改正と同時に一般的な国民投票の制度というものを制定することが私は望ましいのではないかというふうに考えておりますが、ぜひ今後この議論をさらに深めてまいりたいというふうに思っております。

 さらに、投票権者の年齢につきまして若干の御質問と、同時に、私の意見を述べさせていただきたいと思っております。

 これは、やはり十八歳の成人年齢という形でお示しをするのが私は適当ではないかというふうに思っているわけでありますが、これは今の日本国憲法の、いわゆる憲法上の要請、すなわち、幅広く国民主権の理念にのっとってこの国の形態をつくり上げていくということからかんがみれば、これは公選法上さらに拡大をしていくということであるならば、例えば公選法上の公民権停止をしている者あるいは在監者、これに関してもさらに拡大が見込まれるのではないかというふうに私は考えております。

 そういった形で、できるだけ多くの国民に投票権を付与するということを、これは具体的に検討すべきではないかというふうに思っておると同時に、さまざまな観点で、先ほど民法、刑法、少年法等々の二十五以上の改正も必要であるという御指摘もあったわけでありますけれども、やはり国政の選挙の投票権、これは公選法上でありますけれども、同時に十八歳以上に引き下げるということを、あわせて、私は検討の余地があるのではないかというふうに思っております。

 同時に、私ども民主党から提案をさせていただいておりますのは、ただ単にそれは十八歳以上という形で本則を定めるわけでありますけれども、時に少年の人権にかかわるような案件は、これは時に両議院、衆議院、参議院、あるいは他の機関の中において、両議院の総意に基づいて、発議に基づいて、この十八歳よりもさらに年齢を引き下げて、そのときの案件、具体的な案件について、特別に規定をして投票権を付与するという形も具体的にあってもよろしいのではないかというふうに思っているんですが、その点はいかがお考えでしょうか。

保岡委員 それは、私からも、また船田さんからも先ほどお答えしたことに尽きると思いますが、海外調査の結果でも、また資料でも明らかなとおり、憲法改正国民投票の投票権者というのは、成人年齢と選挙権も含めて一致させているのが国際標準ということでございます。

 私は、今、公選法以上に憲法の投票権は広くしたらどうかという、いろいろな御提言があっていることは承知しておりますが、それも、私は、十八歳に、選挙権その他成人年齢を含めた見直しをする中で総合的に検討して早期に結論を出すというような、船田さんがおっしゃったような御提案の中で考えて結論を出すのがいいのではないだろうか、そう考えております。

園田(康)委員 ありがとうございます。

 質疑の時間が参りました。私から最後に申し上げておきたいと思います。

 さまざまな報道の自由、あるいは我が党が主張をさせていただいております国民投票委員会における広報の作成方法等につきまして高い評価をいただいていることに感謝を申し上げながら、今後の議論を進めてまいりたいというふうに思っておりますので、どうかよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。

中山委員長 次に、石井啓一君。

石井(啓)委員 公明党の石井啓一でございます。

 先ほど保岡委員から御発言ございましたとおり、平成十六年十二月に、私ども公明党も国民投票法案骨子につきまして自民党と合意をして与党案を取りまとめたわけでございますが、私どもとしましては、これを今後の議論のベースとしていただきたいと思っておりますけれども、幅広い合意を得るためには、必ずしもこの案に固執するものではない、柔軟に対応していきたいというふうに考えております。この前提の上で、以下、保岡委員、枝野委員にそれぞれ御質問を申し上げたいと思います。

 まず、投票権者の年齢要件と投票人名簿の件でございます。

 国民投票の投票人名簿は、事務コストや名簿調製のための期間確保等を考慮いたしますと、公選法上の選挙人名簿を用いることで結構だというふうに私は思っております。一方で、公明党はマニフェストで公選法の十八歳選挙権を主張しております。したがって、国民投票においては公選法の選挙人名簿を使用いたしますが、公選法そのものを改正して国民投票においても十八歳選挙権を実現してはどうか、こういうふうに考えますが、この考え方につきまして、それぞれお二方の御見解を伺いたいと思います。

保岡委員 そもそも、憲法の十五条で成年者による普通選挙の保障という規定がありますので、私は、国際標準に照らしても、成年者による選挙、成年者による国民投票というのが筋だと思っております。

 ただ、御指摘がありますように、国際標準も十八歳以上というものもありますので、また、今の公選法には公選法上の規制もありますが、それをそのまま国民投票に移さなくてもいいものもあるかと思いますが、そういったことも含めて総合的に、十八歳に引き下げることを検討する中で答えを求めていくということがいいのではないか。その点については、非常にすぐれて政治的ですので、政党間でよく話し合って、一定の期間を定めて努力して答えをしっかり出すというような方向性をお互いに共有することが大事ではないかと思っております。

枝野委員 今御指摘いただきましたうち、選挙人名簿、投票権者名簿については、実は、先ほど申しましたとおり、三カ月居住要件の問題がありますので、いずれにしろ別につくらなきゃいけないだろう。ただ、いわゆる選挙人名簿をベースに、国民投票が発議される都度、投票権者名簿をつくるという形で事務コストは抑えられるのではないかというふうに思っております。

 また、その上で、十八歳以上に投票権を与えるに当たっては、公選法も含めて十八歳以上にすべきであるというのは、公明党の御主張と我々は全く一致をいたしております。ただ、進め方として、例えば公職選挙法は中央選管というか総務省というか、事実上役所が後ろにある制度でありまして、そうなると、法務省はどう考えているんだとか、酒、たばこについてのほかの役所はどう考えているんだとか、いろいろなことでどうしても物事が進んでいくのがおくれると思います。

 それを考えますと、憲法改正国民投票制度、そして主権者としての直接的な具体的な権利行使をすることが、だれができるのかということはまさに憲法的課題と言えますので、私どもの委員会こそがリードをして、そして我々が十八歳と国民投票のルールを決めれば各役所もそれに合わせざるを得なくなる、こういう形で物事を進めていくのが現実的ではないかというふうに考えております。

石井(啓)委員 続きまして、国民投票運動に関するメディア規制についてお二方にお伺いしたいと思います。

 国民投票運動に関しましては、原則自由で、投票の公正確保のための最小限の規制を課すということを前提というふうに考えておりますが、その上で、新聞、雑誌、テレビ等の虚偽報道、不法利用に関しては、報道機関の自主規制に任せるということでよいのか、あるいは与党案にありますような最小限の規制を法律上定めた方がよろしいのか、これについてお二方の御見解を伺いたいと思います。

保岡委員 先ほどの基調発言でも申し上げましたけれども、憲法改正国民投票の場合は、それぞれの、利益団体も含めた国民全体が国家の基本政策について言論の自由市場の中で自由に意見を闘わせるということが非常に重要だ。したがって、虚偽まがいの報道というものには、反対陣営が言論で対抗することは困難ではないんじゃないだろうか。むしろ、そのような相互の意見の応酬こそが最も効果的、効率的に論議を深め、そして本質を見きわめていくことにつながるんじゃないだろうか。そういった土俵の適正さの確保も、報道機関の自主的な取り組みできちっと対処してもらえればいいんじゃないだろうか。それをマスコミの自主規制として期待をしたいと考えるに至ったところでございます。

枝野委員 今、保岡先生のお話は、大体、ほぼ同感でございます。

 基本的には、自主規制といいますか、公権力の側が規制を加えるべきではない。ただ、逆に国会が自主規制を求めるとか促すというのは、これまた日本語としても変でありますので、私は、少なくとも重立ったメディアというものは、我々の方から促したり求めたりしなくても、それぞれが見識に基づいて自主的に対応されるということでいいんではないかと。

 ただ、直接つながるかどうかわかりませんが、先ほど来出ていますが、テレビのCM、スポットCMについては、私自身も結論を出しておりませんが、もうちょっと検討が要るのかなというふうに思っております。

石井(啓)委員 それでは、最後の質問になりますが、投票用紙の様式でございます。

 これは投票方式にかかわるわけですが、私は、憲法改正案全体を一括で投票に付すよりも、関連する条項ごとに投票に付する方が憲法改正に関する国民の賛否を適切に判断することができるというふうに思っておりますけれども、したがって、投票用紙の様式も、そういった個別投票に適した様式にすべきであるというふうに考えますが、お二方の御見解を伺いたいと思います。

保岡委員 その件も先ほどの基調発言でかなり詳しく申し上げたつもりでありますが、政策的に何が可分で何が不可分か、どこまでが理論的に体系的に関連する項目かということを決めるのは、やはり、ほかならぬ憲法改正案を発議する国会自身だということになるのは当然なことだと思います。

 国会が憲法改正案を発議するに当たって、可分な項目は別個の議案として発議して国民投票に付するように努めなければならないというような原則的なルールは、しっかり今度の国民投票法の中に盛り込んだらどうだろうかと考えているところで、これは、今石井さんや、かねて公明党の御主張に沿うような、あるいは各方面からもそういう意見が非常に強いということを踏まえて、そこにできるだけいいルールを工夫して具体的な形で入れていきたい、そういうふうに期待しています。

枝野委員 実は、保岡先生の御発言と似ているんですが、ちょっと違うのかなと思っているところがあります。

 まず、可能な限り分けてということを言わないといけないだろう。つまり、分けることが不可能な部分はもちろん、一緒にしなきゃならない条文、ある条文とある条文が片方だけ賛成多数、片方は反対多数では論理的整合性がつかなくなるというケースはあり得ますから。しかし、分けられるならば、できるだけ分けるということにすべきであると思いますし、その上で、努力義務ではなくて、これは基本的には最後は政治の裁量で、司法の審査には服さないんだと思いますが、ルールとしては、努力義務ではなくて、可能な限り分けて発議しなければならないとすべきだろう。

 その上で、投票用紙は、例えば三つのテーマについて投票するということであれば、一枚の投票用紙に三つの投票欄ではなくて、一枚ごとに一つのテーマを投票するということで、例えば三つならば三回投票箱に投票する、こういう形が国民の混乱を避けて、適切なやり方ではないかと考えています。

石井(啓)委員 時間が参りましたので、以上で終わります。

中山委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 初めに、国民投票法案をめぐる論点協議という問題について一言しておきたいと思います。

 まず、本日の会議の案件でありますけれども、日本国憲法改正国民投票制度及び日本国憲法に関する件ということでありまして、先ほどちょっとありましたが、ルールづくりのための与野党の協議が本日の特別委員会で開始されたのではないということを明確にしておきたいと思います。

 憲法改正の国民投票法案は九条改憲の条件整備がねらいであり、我が党は、その審議を目的の一つとする憲法調査特別委員会の設置そのものに反対してきました。その後、現実に自民党の新憲法草案や民主党の憲法提言などが発表されて、また在日米軍の再編強化、自衛隊との一体化の日米合意が行われるなど、何のための国民投票法案なのかということを鮮明にする事態が進行しております。こうした中で、本委員会、そして理事会、理事懇談会で論点協議を行うことは、九条改憲の条件整備を一歩進めることになるので、我が党は反対であります。

 こういう立場で、きょうは、自民党、民主党からそれぞれの国民投票法案についての構想が、それから提案の話が述べられましたので、その前提となる問題について質問をしておきたいと思います。

 まず、保岡委員に伺いますが、自民党は昨年十一月の党大会で新憲法草案を決定されました。そこでは、表題に「新憲法」というふうに書いてありますけれども、自民党が目指しておられるのは憲法改正ではなくて新憲法の制定ということでよろしいんでしょうか。その点、いかがですか。

保岡委員 新憲法制定あるいは一部改正、憲法を見直す表現はいろいろ使われておりますが、憲法上は憲法改正ということで一つの言葉であろうと思います。

 そういったことで、我々の憲法草案というものは、憲法全体を見直すという視点に立っておりまして、憲法制定当時と今日とが内外とも別世界というような状況の中で、憲法も新しい理念や体系で、もちろん従来の憲法の踏襲すべき重要な基本は踏襲しつつも、新しい時代にふさわしい新憲法を立案するという、そういう考え方で対応して案をまとめたものでございます。

 ただ、今後、三党協議あるいは各党協議の中で、国会でコンセンサスを得ていくプロセスで、これを前提としつつも各党協議の成果を大切にすることは発議という手続がある以上は当然のことでございまして、そういう前提も踏まえて草案をつくったところでございます。

笠井委員 新憲法ということであるというふうにおっしゃいました。どういう中身を変えるかということは、いろいろあるんだと言われましたけれども、例えば前文を書きかえて平和原則を取り払って、九条改変で戦争をできる国にするということになれば、それ自体が憲法の基本原則、国の基本的価値ということを変更する、まさに新憲法たるゆえんということになるんだというふうに思います。

 新憲法の制定ということになりますと、憲法九十六条の規定に基づく改正とはならないんじゃないか。憲法九十六条の第二項によれば、憲法改正について「この憲法と一体を成すもの」というふうに言われておりまして、そういう点で、全面改正は予定されていないと。改正の限界ということも、憲法学会でも言われております。ましてや、新憲法の制定となりますと、この規定に基づかないということになって、それ自体が国民投票云々にならないということは明白だと思うんです。

 そこで、もう一問伺いたいんですが、新憲法の制定というふうになりますと、それは、いわば革命とかクーデターとかあるいは戦争や内戦などによって政治体制が根本的に変化をする、変革が生じた場合に行われるのが通例だと。我々、御一緒にヨーロッパに調査に行ったときにも、各国でもそういうことをいろいろ聞きながら、改めて痛感させられたところで、これは共通認識だと思うんです。一体、この日本で、新憲法というふうに自民党が案を出されているわけですが、そういうものを制定しなければならないような政治体制の根本的な変革というのが生じているのか、戦後六十年という点で。この点についてはどういうふうにお考えでしょうか。

保岡委員 九十六条第二項の「国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、」改正していくという、これは解釈によっていろいろな立場がありますから、先生のような御解釈もあると思いますが、新憲法がこれで否定されているものとは我々は考えません。

 同時にまた、新憲法というものは、革命が起こった後に全く理念を異にする新政権ができたときに制定するものだという考え方も、政治論としてはそういう考え方も一部あることは承知していますが、私は、憲法改正、この憲法に言う九十六条の改正は決してそういうものだけではない、時代が大きく変わって、従来の憲法のいいところを残しつつ、新時代に合った内容の体系を新たに求めて憲法を制定する場合などは、新憲法という改正の形式で対応するということはこの憲法が予定しているところだと考えます。

笠井委員 今、そういうふうにおっしゃいましたが、憲法学会でいえば、九十六条の限界説というのはある、有力なものとして言われておりますし、そして実際に、時代が変わるといえば、それは、時代は十年単位、二十年単位、五十年単位、百年単位、二百年単位で変わるということはあるわけですが、にもかかわらず、政治体制というのが基本的に変わらなければ、そのもとで、戦後の政治の原点になった問題、こういう問題について、やはり、それは時代が変わろうときちっと守っていくというのが基本的な原則であり、それは大事にするというのが当然の常識であり、世界でもそうなっているというふうに思うんです。

 そういう点でいうと、国民投票制度ということが議論されていますが、そういう中でそういう制度ができたとしても、今自民党が言われているような新憲法草案というのが一体対象になるかといえば、私はならないというふうに今のやりとりからも感じたところであります。

 民主党の枝野委員に伺いたいと思いますが、民主党も憲法提言ということで出されております。この憲法提言は、拝見しますと、「大いなる国民的議論に資するための一つの素材」として取りまとめたというふうにされております。民主党としては、憲法を変えるか変えないかということはまだ決めていないんだと枝野委員も繰り返し言われておりますけれども、この憲法提言を拝見しますと、多くの国民が、そうはいっても、民主党は改憲を方向づけるものとして提言を出しているという印象を持つだろうというふうに思うんです。

 そこで質問したいんですけれども、枝野議員は、いろいろな場面で、全面改正というのはあり得ないんだと、九十六条の関係も念頭に置いていらっしゃるのかもしれませんが、ということを繰り返しおっしゃっているように私は記憶しているんですが、ところが、この民主党の憲法提言では「未来志向の新しい憲法を構想する」というふうになっていて、内容的にも、統治機構、それから国民の権利と責務、地方自治、安全保障と、全面的な提言になっているというふうに思います。全面改正はあり得ないという言明と、新しい憲法の構想という憲法提言の文言との関係というのはどういうふうに理解したらいいんでしょうか。

枝野委員 憲法という言葉が多義的なので、使い分けた方がいいのか、使い分けると専門家以外わけがわからなくなるのかということでいつも非常に悩むのですが、私どもの憲法提言で申し上げている「未来志向の憲法を構想する」といった場合の憲法は、実質的意味の憲法です。それから、全面改正はあり得ないと申し上げているときの憲法は、形式的意味の憲法、いわゆる憲法典です。

 憲法という名前の題のもとにある文言を全部変えるというのは、先ほど笠井議員もおっしゃったとおり、革命でありますから、民主党は革命政党ではありませんので、そういったことは志向はしておりません。ただ、実質的意味の憲法については、いろいろと変えなければならないことはたくさんあると思っています。そして、その論点は、憲法に規定しているあらゆる場面にあると思っています。

 この私どもの提言をよく読んでいただければ、私どもは、必ずしも憲法典、形式的意味の憲法の改正のことを提起しているのではない場面がたくさんあります。例えば選挙制度のあり方でありますとか、あるいは政官の癒着を防止するための政官の接触禁止の話であるとか、さまざま、実質的意味の憲法、公権力のあり方についてのルールということについて、憲法典事項と憲法附属法事項と、あるいはそれ以外の一般法事項とすべてを含めて、実質的意味の憲法について例えばこういう考え方があるんじゃないでしょうか、皆さんどうでしょうかということを提起しているということであります。

笠井委員 終わりますが、今の説明も、実質的、形式的というのはどうもわかりにくいなという印象を持っておりますが、さらに議論させていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

中山委員長 次に、辻元清美君。

辻元委員 社会民主党・市民連合の辻元清美です。

 まず初めに、前回、ヨーロッパの調査報告でも各党御意見がございました。その中にも随分たくさんそういう観点が出たのではないかと思われるんですが、国民投票制度、国民投票を考える際に何が大事かというところで、議会内のコンセンサスと強い民意の後押しというようなことは各党認識されて、ヨーロッパから帰ってきたのではないかと思います。きょうは、この点について保岡委員を中心にいろいろ御意見をこの際伺いたいと思います。

 その中で、議会のコンセンサスということなんですけれども、国民投票制度をつくるに当たって議会内の各党の意見ということでは、社民、共産は反対しております。そういう意味では、十分全党のコンセンサスができた状況ではないということをまず申し上げたいと思います。

 それからもう一つは、国民との意識の乖離ということを私は随分懸念しておりますけれども、国民の強い後押しがあるか、そして、この国民投票制度というものが憲法改正にどのような形で必要なのかということについての認識も、本委員会との間では随分温度差があるのではないかということは多々指摘してきました。

 その立場に立ちまして、これは、日本国憲法改正国民投票制度及び日本国憲法に関する件ということをこの委員会で取り扱うということで、先ほど保岡委員の方から与野党の協議というお言葉をお使いになりましたけれども、まだこの案件についてどういう議論が必要かということを各党が意見表明している段階であるという認識を私は持っておりますし、社民党としては、その認識の上にここに座らせていただいておりますことをまず一言申し上げたいと思います。

 その上で、国民との意識の乖離ですね、保岡委員も随分そこは懸念なさっていると思います。確かに、この委員会で議論されている方、またはその一部の方はかなり盛り上がっているんですけれども、外に出ますとなかなか盛り上がりに欠けるし、かつ、具体的な調査でも、昨年市民団体が行った調査でも、国民投票の改正の手続について、知っているという人が三四・七%、知らないという人が六五・三%、その中でも正確に答えた者は一六・三%という結果は、これは保岡委員も見ていらっしゃると思いますけれども、随分私は乖離があるという意識ですが、いかがですか。

保岡委員 憲法改正にしても、その手続を定めるところの法律にしても、国民の後押しが必要だという辻元議員の御見解は私も共有するものなんですが、ただ、憲法改正というのは、国民にとって日本の長い歴史の中で初めての経験であります。

 ましてや、その手続がどのように行われるかということについて、まだ国民の中に周知徹底されていないこともあろうかと思いますが、だからこそ、憲法改正の賛否をきちっと国民が歴史的に判断していく環境条件をどう整えるかということについては、精力的に各政党が真摯な努力をすべきではないだろうか、この議会の場は、そういう公正な国会という大切な場だというふうに考えております。

辻元委員 そういう意識は共有していただいているというふうに私も受けとめました。真摯な議論が必要なので、そこの乖離については特に懸念を表明しているわけです。

 そういう中で、先ほど保岡委員が、直接民主制、要するに一般的な諮問的国民投票制度について、ヨーロッパでの見聞も含めまして劇薬というお言葉を使われました。劇薬だという指摘があった。私もその発言を現場で一緒に聞いております。思ったよりもヨーロッパでは国民投票に慎重だなという印象を持って帰ってきたわけですね。

 そうすると、一方で劇薬である、そして、今、初めての国民投票の経験に対してどのようにルールづくりをするかという話がありました。そうなると、非常に慎重な意見があるからこそ、日本国憲法という国の最高法規であるものに国民投票をいきなりどんとやって、それも、先ほどから十八歳という、投票権者の年齢のことも議論されておりますけれども、下げ、そしていきなり最初の国民投票が憲法であるというのは、直接民主制の危険性ということからかんがみても、私は、憂慮すべき事態が想定されることは排除できないと思うわけですね。

 ですから、そういう意味では、枝野委員から、直接民主制、要するに諮問的な国民投票についての提案もありました。まず、国民投票で幾つかの政治課題について投票できる、そういうことの経験を踏み、そして投票権者についても、十八歳については、国政選挙十八歳からの参加を認めるのであれば、それを適用して何回か選挙というようなものの経験を経た上で国の最高法規についての意思を問うというような、かなり慎重なプロセスを踏まないと、先ほどおっしゃった劇薬という言葉もございますので、一番最初に憲法憲法と急ぐのは、住民投票についてある方が民主主義の誤作動という御意見を出された方もいらっしゃいますけれども、非常に大きな誤作動につながりかねないという危険性を私は感じております。

 ですから、保岡委員にお伺いしたいのは、やはり一般的な国民投票や直接民主主義のあり方についてきちんと議論し、その経験も踏まえるということが私は大事だと思うが、いかがかという点が一点目。

 もう一点、ちょうど今岩国では米軍基地の問題についての住民投票のキャンペーンの最中です。これは自公、公明党の立場はわかりませんが、自民党を中心に国民投票制度を推進しようという声が大きいように私はお見受けするんですが、この岩国の投票については、政府・自民党を初め、この結果を尊重する必要はないというような意見まで耳にする機会がありました。一方で住民投票についてはネガティブで、憲法については国民投票制度を早くつくろうというような姿勢には、非常に大きな矛盾を感じます。

 ですから、一つ目は、いきなりの国民投票ではなく、広く一般的な国民投票制度についても一緒に考えていく、そういうお気持ちはあるのかどうか、そしてもう一点は、今の岩国の事例の矛盾に対してどのようにお考えでしょうか。二点です。保岡委員にお願いします。

保岡委員 憲法の改正の国民投票に先立って、一般的な国民投票制度の方を先行して論議したり制度化したりしていくべきじゃないかというお尋ねですけれども、私は、憲法九十六条の改正国民投票は、これは憲法のある意味で義務的な、決定的な基本的な法だと私は思うんです。ですから、これをまず整えるというのは我々国会の責任だと。先ほど船田さんも言われたように、立法がこれに対応しないことは怠慢だと言われてもやむを得ないという性質のものだと思います。

 一方、一般的な国民投票というものは、これは間接民主制をとる我が国の憲法とどういうふうなものとして調和させたらいいか、そのルールはどうしたらいいかなどは、今後検討すべき重要な課題だと存じますが、それを先行させていかなければならないということにはならないと私は考えております。

 また、住民投票のあり方については、この岩国の基地の住民投票がどういう形で問われているか、私は必ずしもつまびらかではないんですけれども、しかし、国の安全保障のような国策の基本にかかわることを住民投票に付すことが適当であるかどうかということなども含めて、これは、住民投票のあり方についてはこの憲法の調査会でも議論を重ねてきましたが、いまだいろいろな意見があって、我々自民党は多少慎重にこの点については対応しておりますが、今後、議論を深めて、しっかりした住民投票に対する制度の構築についての考え方をまとめていくべきだと考えております。

辻元委員 最後に一言だけ申し上げまして、終わります。

 憲法はその安全保障をも含めた大きな国の最高法規であるというふうに自民党も位置づけていらっしゃると思います。ですから、今の御答弁ではそこの矛盾は解消されないと思います。

 それともう一点、私たちは九月十一日に当選した議員が集まり、十月、十一月と特別国会、そして、まだ本国会も始まったばかりですので、私は、まだまだ広い観点からの議論が必要、そして、国民のコンセンサスをどのように得ていくのかという点については懸念がたくさん残っているということを申し上げて、終わります。

 ありがとうございました。

中山委員長 次に、滝実君。

滝委員 国民新党・新党日本・無所属クラブの滝実でございます。

 最初に、保岡議員あるいは枝野議員から基調となる御発言がございました。今国会、できれば国民投票法案を取りまとめたい、こういうような御意向を承りましたわけでございますけれども、私は、せっかく過去何遍も外国へ視察に行って事情聴取もされ、この国会でも議論をされてきた、やはりそろそろ具体的な議論を進めた方がいいというふうに思ってお聞きをいたしました。

 特に、昨年末のヨーロッパへ行かれたあの調査報告書を見てもわかりますように、大変詳細に調査をされ、そして、関係者の日程もとっていただいて議論をしてきた、そういう成果を、ここの国会だけじゃなくて、国民にわかるような格好で啓発する、周知徹底するということが一番大事なことだろうというふうに思ってあの調査報告書を読ませていただいたわけでございまして、そういう意味でも、議論をまず国会でやって、その都度その都度国民の皆様方に参加してもらえるような、そういう方法をぜひおとりいただきたいと思う次第でございます。

 そこで、保岡委員あるいは枝野議員から意見の開陳があったのでございますけれども、私は、枝野議員の指摘をもとに保岡議員に二、三点御意見を伺いたいと思っております。

 一つは、まず、公務員の地位利用に関連して、保岡議員の意見開陳の中では事実無根のものあるいは財産上の利益を与えて行うようなものは規制したい、こういうようなことでございましたけれども、枝野議員の方からは、特に公務員の地位利用ということに関連すると、なかなかそこのところの把握が難しいんじゃないだろうかな、こういう指摘がございました。私も、具体的に公務員の地位利用みたいなものを公選法と同じような格好で国民投票制度に同じ感覚で持ち込むということになると、なかなかこれは厄介な話じゃないだろうかなというふうに思っておりますので、その点について、まず第一点、どういうふうにお考えになるのか。

 それから二番目には、マスコミ規制の問題は、原則自由、ただし保岡議員はマスコミの自発的な規制を求めたいというような趣旨の御意見だったと思います。しかし、この点については基本的に自由でいいと思うのでございますけれども、フランスなんかの状況を見ますと、特にオーディオビジュアル評議会ですか、そういうことによっていわば形式的に中立が保たれるように、反対、賛成の議論がほぼ平等になるような規制というか勧告というか、そういう注意喚起ぐらいはした方がいいんじゃないだろうかなと思って最初から私は申し上げているのでございますけれども、そういった点について、改めて、フランスの状況をごらんになってどういうふうにお考えになっているのか、二番目にお伺いをいたしたいと思います。

 それから三番目の問題として、これは保岡委員あるいは船田議員もそうでございますけれども、一般的な国民投票制度については魅力を感じているけれどもなかなか難しいんじゃないだろうかな、こういうような御意見に対して、枝野議員の方からはやはり国民投票をやるからには一般的な投票がぜひとも必要だ、こういうようなニュアンスの御意見だったと思うのでございますけれども、私は、そこのところは少し議論をした方がいいんじゃなかろうかなという感じがございます。一方的に今の自民党の案だけでいくというよりも、そこのところがなぜ今難しいのかということを国民の皆さん方にわかってもらう必要があるんじゃないだろうかな、こういうふうに思いますので。

 以上、三点について御意見を承れればと思います。

保岡委員 まず、公務員の地位利用でございますが、これについては、意見表明というのは運動とはまた違うと思いますので、公務員もこれは自由だろうと。これは仮に地位利用の国民投票運動を規制しても、それは、枠の外にある、自由な範囲だというふうに思います。

 一方、そういうことを考えますと、公務員の一般的な政治的行為を規制する人事院規則、私は専門家ではありませんから詳しいわけではありませんが、かなり細かく規定しております。そして、これを読むと、相当、意見表明的なことも含めていろいろ規制がきめ細かく書かれております。ですから、この一般的な公務員の地位利用を取っ払って、公務員の政治活動の自由の規制を規則の方でやると、かえって規制は強く縛りがかかる可能性もある。その辺は、私は、公務員といえども、ある程度、意見表明も含めて規制は最小限度にしていかなきゃいけないんじゃないかということを考えておりまして、今後議論を深めてまいりたいと思っております。

 それから、フランスにおけるマスコミの規制の問題ですが、これは、運動主体というものが認められている政党あるいは団体等は規制がかかっていろいろ制限がかかるわけでございますけれども、一般の人は原則自由、集会等の若干の規制などはあるようですけれども、これも常識的な範囲ということで原則自由だというふうになっておって、御指摘のような、例えば放送ですね、テレビ、こういった国民に影響のある放送メディアは、投票日直前になって扇情的な報道をすることの危険性というものもありますので、これについてフランスは工夫をして一定期間は控えるということになっておる、そういう規制がかかっております。こういったことは、今度の国民投票手続法を我が国で考える場合にでも非常に参考になるのではないかと思っております。

 それから、一般的な国民投票、これは、確かに今の憲法では諮問的な任意的なものにする以外はないわけですね。それにしても、この間行われたオランダのEUの新憲法の国民投票は、これは諮問的なものでございました。でも、これはかなりの投票率で、かなりの高い反対の結果が出まして、政府や議会が多数で賛成している結果と極端に乖離するものになったわけでございます。

 こういったことを考えたときに、仮にそれが諮問的なものであっても非常に議会を拘束する、あるいは政府を拘束する強い性質のものであるということなどもよく考えて、間接民主制をとる日本の憲法の中でどういう一般的な国民投票制度が可能か、あるいは憲法改正してでもどういうふうな制度を構築していくのかということについては、よくよくの議論が必要だ、そう考えております。

滝委員 ありがとうございました。終わります。

中山委員長 次回は、来る十六日木曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十一時四十一分散会


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