衆議院

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第12号 平成18年6月1日(木曜日)

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平成十八年六月一日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 中山 太郎君

   理事 愛知 和男君 理事 近藤 基彦君

   理事 福田 康夫君 理事 船田  元君

   理事 保岡 興治君 理事 枝野 幸男君

   理事 古川 元久君 理事 斉藤 鉄夫君

      安次富 修君    秋葉 賢也君

      井上 喜一君    伊藤 公介君

      石破  茂君    小野寺五典君

      越智 隆雄君    大村 秀章君

      加藤 勝信君    木原 誠二君

      坂井  学君    七条  明君

      柴山 昌彦君    杉田 元司君

      高市 早苗君    棚橋 泰文君

      渡海紀三朗君    中野 正志君

      丹羽 秀樹君    西銘恒三郎君

      野田  毅君    葉梨 康弘君

      早川 忠孝君    林   潤君

      平田 耕一君    二田 孝治君

      松野 博一君    安井潤一郎君

      山崎  拓君    小川 淳也君

      菊田真紀子君    北神 圭朗君

      近藤 洋介君    鈴木 克昌君

      仙谷 由人君    園田 康博君

      田中眞紀子君    筒井 信隆君

      仲野 博子君    平岡 秀夫君

      松木 謙公君    石井 啓一君

      太田 昭宏君    桝屋 敬悟君

      笠井  亮君    辻元 清美君

      滝   実君

    …………………………………

   参考人

   (コラムニスト)     天野 祐吉君

   参考人

   (社団法人日本民間放送連盟放送基準審議会委員・放送倫理小委員長)     山田 良明君

   議員           葉梨 康弘君

   議員           船田  元君

   議員           保岡 興治君

   議員           枝野 幸男君

   議員           小川 淳也君

   議員           鈴木 克昌君

   議員           園田 康博君

   議員           斉藤 鉄夫君

   衆議院法制局第二部長   橘  幸信君

   衆議院憲法調査特別委員会及び憲法調査会事務局長  内田 正文君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月一日

 辞任         補欠選任

  加藤 勝信君     西銘恒三郎君

  棚橋 泰文君     木原 誠二君

  中野 正志君     秋葉 賢也君

  早川 忠孝君     杉田 元司君

  松野 博一君     坂井  学君

  森山 眞弓君     七条  明君

  山崎  拓君     安次富 修君

  岩國 哲人君     仲野 博子君

  逢坂 誠二君     菊田真紀子君

同日

 辞任         補欠選任

  安次富 修君     山崎  拓君

  秋葉 賢也君     中野 正志君

  木原 誠二君     棚橋 泰文君

  坂井  学君     松野 博一君

  七条  明君     丹羽 秀樹君

  杉田 元司君     早川 忠孝君

  西銘恒三郎君     加藤 勝信君

  菊田真紀子君     逢坂 誠二君

  仲野 博子君     松木 謙公君

同日

 辞任         補欠選任

  丹羽 秀樹君     森山 眞弓君

  松木 謙公君     近藤 洋介君

同日

 辞任         補欠選任

  近藤 洋介君     岩國 哲人君

    ―――――――――――――

六月一日

 日本国憲法の改正手続に関する法律案(保岡興治君外四名提出、衆法第三〇号)

 日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案(枝野幸男君外三名提出、衆法第三一号)

五月二十九日

 国民投票法案の反対に関する請願(鉢呂吉雄君紹介)(第二四〇一号)

 同(笠井亮君紹介)(第二五三五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 参考人出頭要求に関する件

 日本国憲法の改正手続に関する法律案(保岡興治君外四名提出、衆法第三〇号)

 日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案(枝野幸男君外三名提出、衆法第三一号)

 日本国憲法改正国民投票制度及び日本国憲法に関する件(憲法改正国民投票法制と広告との関係)


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     ――――◇―――――

中山委員長 これより会議を開きます。

 日本国憲法改正国民投票制度及び日本国憲法に関する件、特に憲法改正国民投票法制と広告との関係について調査を進めます。

 お諮りいたします。

 本日、本件調査のため、参考人としてコラムニストの天野祐吉君及び社団法人日本民間放送連盟放送基準審議会委員・放送倫理小委員長山田良明君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

中山委員長 この際、両参考人に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、調査の参考にいたしたいと存じます。よろしくお願いいたします。

 本日の議事の順序について申し上げます。

 まず、天野参考人、山田参考人の順に、それぞれ十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対しお答え願いたいと存じます。

 なお、発言する際はその都度委員長の許可を得ることとなっております。また、参考人は委員に対し質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願います。

 御発言は着席のままでお願いをいたします。

 それでは、まず天野参考人、お願いいたします。

天野参考人 おはようございます。

 私は長らく広告の世界に関係をしている人間として、今度の法案を拝見して、意見広告の部分にちょっと疑問というか申し上げたいことがありまして参上したんですけれども、その要旨は、朝日新聞のコラムに書きましたものを提出しましたので、ごらんいただければそれで尽きるんですが。

 今回の法案で、マスコミは一切規制しないというのは、僕は大変な御英断だというふうに思いますが、果たして広告も全くそれと同じでいいのかどうかということについて多少疑問があります。それは、原則はもちろん広告についても意見広告も全く自由にやってよろしいというのが本来ではあるんですが、御承知と思いますが、新聞というメディアはそれなりの歴史もあるし、いろいろもめたこともありますし、そういう歴史の中で何とか一つの関係ができ上がっている。ところが、意見広告に関しては、放送媒体というものとはまだ非常になじんでいないというか関係が成熟していないというふうに僕は思っています。そういうところで、例えば全く自由に意見広告をだれでも出せるんだということになると、ある種の混乱が起きるのではないか。そのことが結果として、国民の財産でもある、公器でもある放送媒体というものが、国民に利益があるような形で機能しないんじゃないかなという心配がありますので、ちょっとその点について申し上げたいと思います。

 なぜ意見広告がテレビというメディアとなじまないか、少なくとも現状ではまだなじんでいないかという理由はいろいろありますが、一つは、放送法というものの縛りの中でやらなければいけないというところが大きな問題です。それから、歴史がまだ浅いということもあります。しかし、一番本質的な問題は、新聞広告と違って、活字という一回抽象された手段で意見を言うのではなくて、放送の場合はその人の肉声とか身ぶりとか表情とかそういうことを含めた非常にアフェクティブな、インフォーマティブというよりはアフェクティブな要素が非常に強くなる。それは放送の利点でもあるんだけれども、そのことが意見広告の場合には非常にいろいろな問題を含んでくるということがあると思うんですね。

 これは仮の場合で非常に極端な例ですが、例えばこの問題について意見広告をやろうとして、SMAPをタレントとして起用しようかということは全く不可能なことではないと思うんですね。SMAPを起用して、SMAPが承知するかしないかは全く別の問題ですが、そういう形で意見広告をやるということだって方法としては考えられる。

 テレビの場合には、反対する人、賛成する人が個人的に出てきて淡々と意見を述べるという表現は普通は余りとらないので、どちらかといえば、コマーシャルとしての効果を考えれば、テレビ本来の効果を考えれば、いろいろな表現手段を使って自分たちの意見を表明しようとする。意見を伝えようというよりは、表現しようとすることが多くなると思うんですね。

 そうなったときに、そんなことで改憲に賛成であるか反対であるかということの立場が変わるはずないだろうと思うのは割合理性的というか知性的な人であって、実際にはそういうことで動くケースもかなりある。例えば今度の問題に関して言えば、憲法の改定に賛成であるという方、信念としてそう思っていらっしゃる方が、仮の数字ですが四割いらしたとして、絶対反対だという方がまた仮に四割いらしたとする、しかし、実際の最終的な結果を握るのは残りの二割で、この浮動層という言葉がいいかどうかわかりませんが、そういうふうに、信念としてこの問題についてはこうである、マルである、バツであるというふうに考えていない人が、実は最終的にこれの成否を決定するかぎを握っているように思うんですね。

 そういう人に関して言えば、その人たちがいけないとか知的でないとかという意味では全くありませんが、例えばそういうSMAPを使った広告に影響されないとは言い切れない。むしろその辺をねらっていろいろな広告が出てくることになると、非常に大きな混乱を招くんじゃないか。そのことが、国民が本当にこの問題についてちゃんと考えて、ちゃんと行動しよう、投票しようというときの判断にプラスになるのかマイナスになるのか。それでも選挙に行って投票率を上げればいいという考え方もあるかもしれませんが、僕は、それはテレビが国民のための利器としてではなくて凶器みたいな形で作用してしまう危険が非常にあるんではないかなというふうに、テレビ以下の、放送そのものですが、放送全体ですが、危惧しているんですね。

 そういう点からいうと、この問題に関しては、まだ未成熟だから、意見広告は放送媒体になじまないから、今回に関してはそういう部分が成熟するまで意見広告は認めない、今回はさせないということも一つの選択肢としてはあると思います。

 でも、委員の皆さんがこれは大いに自由にやってもらおうというふうにお考えになってお決めになったことの御判断は、僕はそれはそれで正しいと思う。ただ、どこかでそういう公正なルールがつくられる、例えば広告が一般の報道と違うところは非常に一方的に意見をお金で買えるというところですね、この部分について公平性が失われないような、法的な規制というのじゃないけれども何か歯どめなり、あるいは民放各社に対する提言なり、そういうことをプラスしていただかないと、この辺が現実的には大変大きな混乱が起こるのではないかなというふうに僕は考えているんです。

 その点をいろいろお考えになられた上でこう決定されたんでしょうが、実は広告というものの力は思っている以上に強いもので、これは特に悪用すればマインドコントロールの非常に強力な手段になるものでもありますし、その辺についての緩い歯どめというか、あるいは放送業者に対する進言、提言みたいなものをつけ加えていただいて、業界を縛るというよりは、業界がこの際きちっと公平な意見広告のルールができるようにむしろプッシュしていただくようなことがあっていいのではないかなというふうに僕は思っております。

 ただ、一方に今回に関しては意見CMはやらない方がいいんじゃないかという声も業界の中でもあることはあります。それは本当に混乱を避けるためということですが。混乱を避けるためにやめてしまうというのは余り望ましいことじゃないので、この際、ぜひそういう共通のルールができるような形での、何か提言というのか進言というのかわかりませんが、そういう一項を僕は入れていただきたいなというふうに思っているんです。

 申し上げたいことは以上です。(拍手)

中山委員長 ありがとうございます。

 次に、山田参考人、お願いいたします。

山田参考人 本日は、発言の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 私は、日本民間放送連盟で、放送倫理マインドの向上、放送基準の運用について検討しております放送基準審議会の中の放送倫理小委員長を務めております山田でございます。

 本日は、憲法改正の手続を定める国民投票法案と広告放送について、放送倫理及び放送基準の運用の観点から意見を四点ほど申し上げたいというふうに思っております。

 一点目でございます。憲法改正と放送メディアの使命について申し上げたいと思います。

 言うまでもなく、憲法は国の骨格を定めるものでございます。その、国の基本法を改正する作業を実際に進めるために国民投票法案を成立させるとすれば、放送メディアの公共性、放送の使命、役割、またジャーナリズムやメディアの自律などの面から、法律に盛り込むこと、盛り込むべきでないことについてぜひ議論をさらに深めていただき、慎重な対応をお願いしたいと思っております。

 憲法改正に関する国民投票がどのように行われるべきかということについては、当然ながら前提として、憲法の基本理念である国民主権と基本的人権が保障されるものでなければならないと思っております。そのためには、何よりも国民一人一人がその権利を行使するための考える材料、討議ができる多様で多角的な論点が提供されることが不可欠であるというふうに思っております。

 そうした意味で、去る四月十三日に民放連の堀報道委員長がこの場で主張されたとおり、マスコミの評論、報道に対してはこれを規制すべきではないと私も考えております。さらに、罰則などによって表現の自由、報道の自由を萎縮させる可能性を生じることは、民主主義、立憲主義の観点からも逆行するものと考えております。

 我々放送メディアの使命、役割は、第一義に、国民の知る権利と表現の自由に奉仕し、その一翼を担うことにあるというふうに思っております。それは、本日私に与えられたテーマである、憲法改正国民投票法制と広告との関係、具体的には、法案の中にございます広告放送あるいは政党等による放送にあっても同じ土俵で考えるべき事柄だと考えております。

 二番目に、憲法改正国民投票制度と広告の関係について民放としての考え方を申し述べる前に、民放各社で日常的にどのようにCMの考査業務を行っているかについて若干御説明をさせていただきたいと思っております。

 民放連では、放送にかかわる者の基本精神を明らかにするために、NHKとともに放送倫理基本綱領を制定しております。その放送倫理基本綱領は、本日皆様にお配りしたこの小冊子、放送倫理手帳の一ページ目に掲載しておりますので、御参照くださるようにお願いいたします。

 その中で広告について次のように書かれております。「民間放送の場合は、その経営基盤を支える広告の内容が、真実を伝え、視聴者に役立つものであるように細心の注意をはらうことも、民間放送の視聴者に対する重要な責務である。」というふうに書かれております。

 また、民間放送各社は、放送法の三条の三に基づきまして、各社それぞれ放送番組の編集の基準、いわゆる番組基準を定めることが義務づけられております。各社がこの番組基準を定める際の一種のひな形として、民放連では日本民間放送連盟の放送基準を定めております。

 この放送倫理手帳の九ページ目をごらんいただきたいんですけれども、そこにも広告についての記載がございまして、八十九条で「広告は、真実を伝え、視聴者に利益をもたらすものでなければならない。」との基本姿勢を明らかにしております。

 こうした基本姿勢を踏まえて、以下百五十二条までの間に、視聴者の利益の保護を第一義として、六十四カ条にわたってさまざまな角度から広告に関する基準を定めております。広告の責任は第一義的には広告主が負うべきものと思っておりますが、公共の電波を使用して国民に届けているものである以上、その内容には番組と同じように公益性が求められているものと考えているからでございます。

 そして、それらの基準に基づいて、各放送局では、広告主、広告会社から持ち込まれるCMについて、企画段階、絵コンテの段階、また実際に搬入された素材の段階においてそれぞれチェックをしております。これをCM考査と民放業界では呼んでおります。CM考査においては、各種法令やそれぞれの広告主の業界で定めます自主規制基準に反していないかどうかというチェックを行うとともに、表現内容の変更を求めたり、場合によっては放送自体をお断りすることもございます。このように、民間放送はCMについても一定の品質管理を行っているわけでございます。

 もちろん、本日のテーマとなっております憲法改正の賛否に関する広告というのは、商品やサービスの広告ではなく、いわゆる意見広告に当たるものだというふうに思われます。したがいまして、通常のCM考査とはやや違う考え方をしなければいけないとは思いますが、視聴者のためになる情報かどうかという観点からその是非を考えていかなければいけないというふうに思います。

 三点目に、国民投票運動のための広告放送について述べさせていただきます。

 この調査特別委員会で審議されている法案では、国民投票運動を「憲法改正案に対し賛成又は反対の投票をし又はしないよう勧誘する行為」と定義をし、第百六条で国民投票運動のための広告放送を投票日前七日間禁止すると定められております。さらに、こうした制限規定が放送のみに定められておりますけれども、我々としては違和感を感じております。

 この制限規定につきましては、四月に民放連の報道委員会の堀委員長が参考人として申し述べましたとおり、投票日直前の期間において広告放送を法律によって禁止するという規定を法案に盛り込むということについてはやはり反対させていただきたいと考えております。

 もちろん、その間に流される複数のCMの内容によって、意見の強弱、賛否の強弱、あるいは著しくバランスを欠いたというようなことが生じた場合には問題となることは十分に承知をしております。しかし、放送法で保障されております放送の自律、すなわち、各放送局が自社が定める番組基準を日常的に運用する中で自主的に判断することで解決していけるだろうと思っているわけでございます。

 例えば現在の国政選挙の場合ですと、投票日当日の政党スポットの放送を各放送局が自主的に放送しないということが定着しているという実績を持っております。これは、政党スポットが実質的には選挙運動に近いものであり、公職選挙法では投票日当日は一切の選挙運動が禁じられているということ、また国民のためにも投票日当日は静ひつを保つことが望ましいということなどの理由から、自主的に判断をしていることでございます。

 民放連でも、既に、国民投票運動のための広告放送について、まだ具体的な広告放送の姿形がイメージできない中ではございますが、放送業界としてどのような自主的な取り組みができるのか、あるいは考査上どのような留意点が考えられるのかについて検討し、議論を深め始めておりますことも申し添えておきたいと存じます。

 四点目に、憲法改正案に対する意見の無料放送についても一言触れさせていただきます。

 現行の政見放送と比較してみますと、政見放送の場合には、選挙に立候補する人の人数に応じて時間数が決まっています。その意味で、どの政党に対しても門戸が開かれておりますし、立候補者を多く立てれば多くの時間数が確保できます。

 一方、この憲法改正案に対する意見の放送は、その時点での国会の議席数を踏まえて決めると法案に書かれております。放送法によって政治的に公平であることを求められている放送局としては、このことに若干違和感を感じております。国会が三分の二以上の賛成で発議したとしても、改めて国民の意思を問う手続を置いている以上、国民投票が実施されるまでの間は賛否ができる限り公平に扱われるべきであるというふうに考えております。この点について、実際にどのような運用がなされるのか、国会審議を通してぜひ明らかにしていただきたいというふうに思います。

 最後に、冒頭でも申し上げましたが、我々放送メディアの使命は、一つ一つの社会事象に対して国民に多様で多角的な論点、考えるための材料をわかりやすく伝えることにあると思っております。

 一方、我々のメディアは、放送法によって自律することが保障され、事業のあり方についてはさまざまに規定されておりますけれども、自主的に番組基準を策定し、それを自浄努力をもって運用してきております。NHKとともに放送倫理・番組向上機構、いわゆるBPOという第三者機関も設置しております。先ほど説明した日常的な考査業務も、でき得る限り時間と手間をかけて、視聴者の不利益となる内容にならないように、さまざまな留意、配慮をしながら実際の放送に結実させているところでございます。もちろん、完璧とは言えず、おしかり、御批判をいただくことも少なくございませんが、そうした努力に対し何とぞ御理解をいただきたいとお願い申し上げます。

 本日、私から述べさせていただきたいことは以上でございます。(拍手)

中山委員長 ありがとうございました。

 以上で両参考人の御意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

中山委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。葉梨康弘君。

葉梨委員 両参考人の皆さん、きょうは大変ありがとうございました。また、貴重な御意見を承りまして、大変ありがとうございました。ここのルールでございまして、顔が見えなくてなかなかお話ししづらいかもわかりませんけれども、横になってしまいますが、恐縮でございます。

 本日は、実は午後から衆議院の本会議がございまして、憲法改正の手続に関する法案が与党案、民主党案と両方出てまいりまして、初めて審議入りする、戦後の中では極めて歴史的な日であろうかというふうに思います。

 そこで、両参考人からきょうは特にCMの関係についていろいろとお話を承ったんですけれども、この国民投票制度への賛否あるいは評価ということについてまずお伺いしたいんですが、山田参考人の方は、前回、堀参考人からもお話ございましたけれども、民放連の立場としては、この制度についてどうこうというのは全体としてはなかなか言いづらいところもあろうかと思います。

 そこで、まず天野参考人には、この国民投票制度を持つことについてのお考え方、これは個人的な見解で結構ですけれども、それから、山田参考人については、先ほど投票日七日前の広告の禁止についてもやはり民放連としてはいかがかと思うというお話もあったんですが、いわゆる報道についての規制、それからいわゆる商業的な広告についての規制、これはやはり同列に考えるべきなのか、多少たがえてもいいというふうにお考えなのか、その点を山田参考人からお聞きしたいと思います。

 まず、天野参考人からお話を承りたいと思います。

天野参考人 お答えになるかどうかわかりませんが、基本的には、意見広告はさっきも申し上げたように自由にしたらいいと思いますが、それがどう公平であるか、公正であるかということのチェックは非常に技術的に難しいんですね。

 例えば、これは一九九三年七月の衆議院選挙のときの政党スポットをどういうふうにチェックしたかということですが、政党スポットというのは大体意見CMなんですけれども、自民党が出された、寄せ集めの政治にあなたは本当にこの日本を任せられますかというキャッチフレーズが、これはまずいんじゃないかということでいろいろ審議されて、ばらばらな主義主張が集まった不安定な政治にあなたは日本を任せられますかというふうに修正された。これでもまだ問題があるんじゃないかというので、最終的に、主義主張がばらばらで不安定な政治に日本を任せられますかというふうになって放送されているんです。これは初めのと終わりのは僕は全然変わらないと思うんですね。

 そういう文言のコピーの細かいところのチェックや考査の問題じゃなくて、国民投票制みたいなことについて広告でいろいろ意見を言い合う場合には、その土俵そのものをしっかり決めて、後はもう多少個々のコピーというか言いたいことについてのチェックは一々しない、そこはまさに自由に言ってもらう。ただ、全体の土俵が公正であるというふうな、公正な土俵づくりがなされているかどうかということが実は大きな問題なのではないか。

 その点については民放連の方にお願いすることなのかもしれない。民放連の方でしっかりその土俵づくりをしてくださいと言えばいいわけですが、しかし、この法案をおつくりになられる方も、その辺は民放連が勝手にやればではなくて、勝手というのは言い過ぎですが、御自由になさればと言うんじゃなくて、ある種のそういうルールづくりをしっかりと進めてほしいというぐらいのことを言っていただかないと、なかなか現実は動かないんじゃないかなというのが僕の意見で、そういうことが整備されれば、この憲法改正問題が国民に問われて、それについて意見広告が闘わされること自体は問題ないというふうに思っております。

山田参考人 この法案が発議されようとしている、それで、我々もやっと放送業界にとって大変なことなんだということを認識して話し合いを始めたところでありますが、これは、広告に限って言いますと、今までの選挙の広報とか広告とかそういうものとは比べるべくもない、つまり、放送業界にとって新しい、非常に大変なことを、もし広告をするとすれば引き受けてしまうことだというふうに思っております。

 議論の中でも、それは大変に責任を持てない部分もあるから意見広告は断ってしまった方がいいのではないかという意見ももちろんディスカッションの中では出ますけれども、やはり放送の使命、成り立ちを考えますと、こういうところで、ふだん国民のためにきちっと放送してきた我々の存在が、こういうことから逃げてしまっては絶対にいけないというふうに思っておりますので、よく話し合いをして、そして自主的なルールづくりをして、まだ漠としてどういう広告があらわれてくるのかもはっきりしておりませんけれども、そういうものに対処をしていくべきだというふうに思っております。

 報道についての規制がなくなったということについては、四月の堀委員長が意見を申し上げて、それを酌んでいただいて、報道を信頼していただいたということで、大変に感謝をいたしております。

 きょうは、広告についての規制について私は話をしたいと思います。

 投票日前七日間の広告の禁止ということでございますけれども、これも、なぜそれは七日間なのかということが、まだ我々の中でも全体が何日間でそれが七日間なのかもよくわからないところもございますし、その辺のところもよくこれから見きわめて御意見を申し上げたいと思いますので、今七日間ということの、それを法案に盛り込むことには反対を申し上げているということでございます。

葉梨委員 ありがとうございました。

 今、山田参考人の方からも、これから広告についても自主的なルールづくりをしていきたいという御発言がございました。そういうことになりますと、きょうの質疑は、またこれからも幾つかお聞きしたい点はあるんですけれども、今後民放連においてもいろいろなことを検討される、そういうことの御参考にも供するというところがあろうかと思うんです。

 そこで、先ほどの天野参考人からのお話と多少ダブるところもあるかもわかりませんけれども、先ほど山田参考人の方から、例えば民間放送連盟の放送基準、広告の考査についての御説明があったわけなんですけれども、現状のいわゆる広告についての考査はどういう点がまだ欠けている、あるいは成熟していないというふうにお考えになるのか、天野参考人から御意見を承りたいと思います。

天野参考人 現状の考査というのは、僕は具体的にその中身は知らない、後から発表された文書で知るだけのことですが、先ほど申し上げたように、意見CMの、意見広告のコピーに不公正なところがないか、他者を中傷するところがないか、そういうところで専らされているように見えます。違っていたら後で山田さんから御訂正していただいていいんですが。

 例えば、アメリカの例なんかだと、多少の中傷誹謗になるようなことは意見を闘わせているときにはしようがないわけで、どこからを中傷誹謗とするか、ここまでは正当な意見だという物差しは厳密にはないわけですね。それを今のままで、民放各社がそれぞれ自由に、今は共通のルールがありませんから、日本テレビは日本テレビで、TBSはTBSテレビで、それぞれ自社の判断で、これは正当な意見CMである、これはちょっと問題があるから放送できないということを各社ばらばらに決めるというふうな状態が起きていいのかどうか。

 それはもちろん、各社それぞれのジャーナリズムとしての見識ですから、A社がいいと言ったからB社もいいと言うというふうに横並びになる必要は何にもないと思いますが、しかし、その辺の判断基準がどうも今のところはまだ非常に不明確で、結局コピーを検討するにとどまっている。

 僕は、コピーはある程度自由でいい。それよりも、例えば時間的制限とか、アメリカの場合には御承知のように反論権というのがあって、ある意見が出たときにはそれに反論する権利というのがイコールタイム、イコールスペースでできるというふうなこともあったりするんですが、日本ではそれを民放連さんは認めていないので、その反論権というのはありません。しかし、何かそういうことがお互いに公平に言い合えるような、そういう場づくりの方をもっとちゃんとやっていただきたいなと僕なんかは思っているんですね。

 その辺がちょっと現状では、僕は、今の考査というのは、こういう言い方はちょっと極端かもしれない、僕は大体極端な物言いになってしまう人間なのでお許しいただきますが、どちらかというと枝葉のところでの考査は非常に精密にやっていらっしゃるけれども、一番根幹のところが何か余りはっきりしていないなと。

 もちろん、考査基準というのは各社それぞれにあって、拝見してみると、みんなそれはもっともなことをきちっと書いているんだけれども、現実にはそれをどう適用していくかというときに、非常に難しい表現の問題になってしまう。そこよりはやはり根本のルールづくり、根幹をちゃんとやっていただかないと困るし、それがないと、さっきから申し上げているように、実際には大きな混乱が起きるような気がしています。

葉梨委員 ありがとうございました。

 実は、先般、五月の二十六日ですか、自民党、公明党、それから民主党、それぞれ与党案と民主党案を国民投票あるいは憲法改正手続ということで出させていただいたわけですが、御案内のようにここについては七日前の禁止以外は広告についての規定は何もないわけなんですけれども、ただ、これはもちろんこれから国会審議等の過程で、我々提出者としても公正な国民投票が行われることを望んでいるわけですから、強制をするわけでもないし、また、法律に書くわけではないけれども、その裏にあるものとしては、やはり公正なルールというのがみんなでいろいろ考えてできてくるというような状態を非常に望んでいるということ。このこともまた国会審議の中で明らかにしていかなければならない問題だろうというふうに思います。

 そこで、山田参考人にお伺いしたいんですけれども、今天野参考人から、広告の考査について、特に意見広告であったら果たして各社ばらばらの判断でいいんだろうか、あるいは現在はコピーに判断基準が集中されている、冒頭、天野参考人から意見広告についてはやはり身ぶりとか手ぶり、だれが出るか、そういったものも非常に大きな影響があるんじゃないか、そんなようなお話もあったわけですけれども、この広告についての考査基準について、このようなお話を参考として今後どのような検討をされることを考えていらっしゃるのか。もちろん、まだ法律は成立しているわけではございませんけれども、山田参考人から御意見を承りたいと思います。

山田参考人 放送基準の中に、先ほども申し上げましたように、広告放送に当たってはということでいろいろな項目がございます。それは、私は決して枝葉ではないというふうに思っております。

 それから、根本のルールづくりというのはもちろん必要ですけれども、でも、番組もそうですけれども、コマーシャルもやはり表現の自由というのはきちっとあるわけでございますから、それを規制し過ぎてしまってはいけないというふうに思います。

 ただ、今回の国民投票の意見広告というようなことは、今までの放送基準の中のいわゆる広告放送に関する条文に想定をされていないというふうに思っております。ですから、これはやはりこれからどういうような具体的に広告が出てくるのかみたいなことを想定しながらみんなで話し合って、放送の公共性、中立性を保てるような広告を出していけるように、それは中身の問題もそうですし、量の問題もそうですし、そういうことを自主的にきちっとルールづくりをしていかなければいけないというふうに思っております。

葉梨委員 ありがとうございました。

 きょう、いろいろと天野参考人からお話を伺いまして非常によくわかったんですけれども、最初、この五月二十二日の朝日新聞だけ見ていると、天野参考人は一体どういう規制を考えていらっしゃるのかなというイメージがちょっとわかなかったんです。現実問題として、やはりテレビの広告、CMというのは非常に大きな効果があるということで、各国においての規制の立法例というのも相当違ってまいります。

 特に、昨年秋ですけれども、超党派で、この委員会の派遣で各国の国民投票制度を見させていただいたときに、非常に印象的でしたのは、フランスなどではテレビ、ラジオで商業広告自体が禁止されている。それからスペインですが、これは各議席ごとに割り当てるという形でテレビCMの枠を設けている。何でそういうことをするんですかということを聞きましたら、アメリカ型のコマーシャリズムが横行するということに対して非常に危惧を持っているというような意見だったんです。

 もちろん、選択肢の方法としては、フランスみたいに非常にきつい方法というのもありましょうし、またスペイン式の方法もありましょうし、また、それ以外の国で行われているように、オーストリアみたいに基本的には自由であるという方法もあろうかと思います。そして、私どもでも検討いたしましたけれども、ここまでテレビあるいはITが進んでいるという中では、テレビのコマーシャルというのを一律に禁止するということはなかなか厳しいかな、そういう中では、法律上は特に規制ということを設けないで、あとは先ほど申し上げました自主的なルールということを重んじていったらどうかなということで今回の法案の提出となったわけなんですけれども。

 これは確認までにお話を承りたいと思います。天野参考人、この国会で御意見を開陳されたわけですけれども、法規制のあり方としては特段の規制は設けずにしっかり自主的なルールをつくっていっていただきたい、そういう御意見であるというふうに解釈をしてよろしいのでございましょうか。一点、お伺いしたいと思います。

天野参考人 僕の立場からいえば、現実的には意見CMは今回は未成熟だからやらない方がクレバーだなというふうには思いますが、しかし、そんなことを言っていると、いつまでもテレビという国民にとっての大きな財産であるメディアが意見の展開というものに役立たないというふうなことになってしまうのは、これはもったいない。ですから、意見CMが公正に行われるような土俵づくりをしてくれれば大いに結構じゃないかというふうには思っているんですね。

 ただ、先ほど山田さんからも出たけれども、七日間というのは僕もよくわからない。例えば不在投票なんかが前にあるからそのことも含めるんだというようなことだったら不在投票も含むその投票日の前日までというふうに、自由にしろというんだったらそういうふうになさった方がいいんで、なぜ七日間なのかは、これは法案を見ている限り僕にも理解できませんでした。

 それから、例えばこの法案に対する賛否というのは、言ってみれば国民の意見を二分するような大きな問題なので、それに与えられるCMによって意見を表現する時間というのはイコールタイムであることが僕は必要だというふうに思いますね。それは議員さんの数によって決まることじゃない。これは政党CMの場合ですけれども。

 それから一般の場合には、これはもちろんお金を持っている人が勝ちというのは非常に不公平な話なので、賛成の意見CMも反対の意見CMも全く同じ分量で制限されてほしい、これは民放連さんの課題ですけれども。それから、放送される時間帯も、一定の時間の中で賛否が両方きちっと聞けるようなことでやってくれないと困る。

 そういう問題というのは、非常に技術的にも難しい問題を含んでいるんですが、早急に本気で取り組んでもらいたい。また、この法案がそういうことを促進するきっかけになってもらえればいいなというのが僕の考え方です。

葉梨委員 ありがとうございました。

 今、議席でというお話ありましたけれども、これはCM等を国費でやっていただくときの話で、基本的にそれ以外のものは自由であるということも御理解いただきたいなというふうに思っております。また、今回、国民投票法案という形で出させていただきましたけれども、広報の協議会が国会に置かれますが、その中には反対派の方もしっかり入っていただくような配慮もされているということも指摘をさせていただきたいというふうに思います。

 天野参考人から先ほど大変重要な御指摘ございまして、テレビのCMを認めていくということになりますと、お金で投票を買うと言ったら非常に語弊がありますけれども、お金のある者がどんどんどんどん広告を打って、そして、お金のある方の意見が国民の中で非常に多数を占めるという状況を招来しないかというような懸念を天野参考人から承ったわけですけれども、商業広告について何らの歯どめもかけない状況、そして、自主的なルールがどうなるかということはございますでしょうけれども、そのような懸念について山田参考人から御意見を承りたいと思います。

山田参考人 事国民投票の意見広告ということについては、お金のある方がどんどんとCMを流していくみたいなことは、放送がどうこうというよりも、まず国民がそれは許さないというふうに思っております。そういうことを念頭に置いて、我々がきちっとした話をしてルールづくりをするべきだというふうに思っております。

葉梨委員 そこのお金のということなんですけれども、実は商業広告については私どもの提出した法案上何らの規制もないということなんですが、お金のところで絡んでくるのは買収罪の点しかないんです。そして、私ども与党の法案の中で、買収罪というのも非常に限定した形で、組織的多数人の買収罪ということを書きまして、気持ちとして、やはりお金で票を買うとかお金でその運動を広めるとかいうことはなしにしていきましょう、お金で人の心を買うというのはなしにしていきましょうという気持ちを込めたつもりでもあるんですけれども、ここの点については、ちょっとこのCMの論点とは離れますけれども、いろいろ議論のあることも承知しております。天野参考人、山田参考人から、この買収罪というような規定を置くことについて御意見を承れれば幸いでございます。

天野参考人 済みません。御質問の趣旨がちょっとわからなかったので。

葉梨委員 はい。では、もう一度申し上げます。

 実は、マスコミの規制の部分というのは法案上相当削られていますので、ほとんど残っていないという形になるんですけれども、私どもの考え方としては、お金を持っている人間が人の心を買うというような形というのはあってはならないだろうということを考えております。

 そこで、多少論点は外れるんですけれども、この法案の中で、お金で人の心を買うということを禁止しようというのが一点、これが組織的多数人買収罪という形で与党案で提案をさせていただいている。これ自体は非常に限定的な形で限定を付しているわけですけれども、このような、いわゆる国民投票の票をお金で買う、しかもこれは組織的に多数の人に対してというようなことを禁止する規定を置くことについて、天野参考人あるいは山田参考人から、ちょっとCMの関係とは外れますけれども、個人的な意見で結構ですので御意見を承りたいと思います。

天野参考人 済みません。わかりました。

 お金で時間を買って意見を言うのが意見CMですから、その広告の時間をお金で買うこと自体は僕は正当な行為だと思うんですね。だから、それは取り締まるも何もない。現実には全CMタイムを買い占めるなんということはあり得ないわけで、もし自由に競争しろとなれば、実際にはお金をうんと持っている方が発言時間が多くなるというのは、これはやはり自然にそうなるんだと思いますね。

 だから、どういうふうにそこのところでの公平性というかそういうものが保たれるかというところは、まさにさっきから申し上げているルールづくりの問題であって、そこがしっかりすれば、今御懸念されているようなことは僕はないんじゃないかなというふうに思っておりますが。

山田参考人 お金を払って放送枠を買って広告をするということとお金をだれかに渡して買収をするということは、これは全く別のことだというふうに思いますので、それだけでございます。

葉梨委員 ありがとうございました。山田参考人からお話がございましたけれども、全くここのところは別のことであるというふうな感じを持っています。

 そこで山田参考人に、天野参考人から御意見の開陳があった点でちょっと確認をしていかなければいけないというふうに思っていることを申し上げたいと思います。今の質疑の中でも話は出てまいりましたけれども、しっかりここでちょっと確認をしていただきたいなと思います。

 一つは、これから国民投票法、憲法改正手続に関していろいろな形で国会の審議というのが始まってまいります。非常に丹念な審議になってこようかというふうに思います。その中で、マスコミの報道のあり方あるいは広告宣伝のあり方というのはやはり極めて大きな論点であろうというふうに思うんですけれども、これから出てくるであろう国会審議、国会での議論というのを、今後、民間放送連盟の放送基準あるいは放送倫理といったものを作成するに当たって十分に参考にしていただきたいなということを考えておるんですけれども、その点について山田参考人から御意見を承りたいと思います。

山田参考人 全くおっしゃるとおりだというふうに思います。

 我々自身も国会での審議をよく聞いて我々自身で議論を進めなければいけないと思いますけれども、もし広告をしていただけるとしたら、政党だけではないですけれども、政党を初めとしていろいろな方が広告主になるわけですから、今度の国民投票に関する意見広告についてはどういうふうな考え方をしていこうということは、我々自身が自主的にルールづくりをする中で、よりコミュニケーションをとって、意見を交わし合って、一つの具体的な形をつくっていくべきだというふうに思っております。

葉梨委員 この問題は、必ずしも憲法改正の国民投票に関してというものに限られないだろうと思うんです。

 きょう、天野参考人からもいろいろと御意見の御開陳ございましたけれども、基本的に、天野参考人が冒頭おっしゃられたのは、日本のテレビという文化の中で意見広告というものが成熟していないという御指摘は、非常に重く受けとめなければいけないなというふうに思っております。

 これは、放送法の問題、歴史の問題、あるいは新聞の広告と違って、身ぶり手ぶり、こういったものが非常に大きな影響を与えるものである。ですから、これはこれからずっと国会で審議が行われて、そして、この国会の審議と並行して民放の協会の中でも、今後、どういうふうな形であるべきだということをいろいろ多面的、多角的に議論がされるというふうに私自身は思うんですけれども、特に憲法改正の国民投票だけに限ることなく、日本における、我が国におけるテレビの意見広告のあり方について考える大きな契機としていただけたら私自身は幸いじゃないかというふうに思うんですけれども、天野参考人と山田参考人からそれぞれ御意見を承りたいと思います。

天野参考人 おっしゃるとおりだと思います。ただ、おっしゃるとおりなんですが、現実は、意見広告のルール、土俵づくりがそんなに早急にうまくできるとはちょっと僕は思えないですね。

 それは、僕もそういう世界の一員ですから、そういうルールづくりに手伝えることがあれば幾らでも手伝おうとは思っていますが、やはりいろいろな無理が現状の中ではあるように思います。そういう無理をある程度承知の上で、試行錯誤で多少けがしたりどうこうしたりするというようなことを通してだんだん成熟していくんだからいいやと、一遍にそんな理想的な状態はつくれないだろうというふうには思うんですが、一番初めのケースがこの憲法問題だということになると、そこでこれが試行錯誤の始まりということではちょっと済まないような気がするんですね。一般の選挙ならいいやというわけでもないんですけれども。

 特に今度の問題は非常に大きい問題だけに、よほど広告を受け入れる側としての覚悟は必要だし、その辺、非常に難しい問題を今広告業界は抱えてしまっているなというふうに思います。ここにはまた放送各社の利益という問題が絡んでくる。これはいろいろ複雑怪奇な世界でもあるわけで、そういうものに対して、公共のメディアなんだということが本当に実感できるようなルールづくりをきちっと議員の皆さんが見守ってくださるようにしてくれないと、これは大変な混乱が起こるなという……。

 ただ、そんなことを言っていてもしようがないので、混乱が起こらないようないい策をこれから練っていかなきゃいけないし、そのためにこういう法案が公共性をしっかり保障してくれるようなプッシュ、後押しをしてもらえるようになればいいなというのが僕の考え方です。

山田参考人 意見広告というのは商品を売ったりするものではないわけでございまして、これが本当に、具体的に今論議されているのは国民投票に関してでございますけれども、放送の中でこれからどういう形の意見広告が考えられていくかというふうに思うと、逆に放送の可能性というのがまた広がってくるような気もいたします。

 でも、それは一面大変に怖いことでもあるわけですから、そういうことを踏まえながら、本当に、これからこの国民投票というのを契機にして意見広告について民放連を中心にしてきっちり考えていきたいというふうに思っております。

 それから、天野さんがおっしゃった、我々が自主的なルールづくりをきちっとしていくことについて国会の議員の皆様がきちっと見守ってほしいということは、それはそのとおりだというふうに思います。エールを送っていただいているものだというふうに考えて、自律してきちっとやっていきたいというふうに考えております。

葉梨委員 憲法改正国民投票の問題に限らず、テレビCMにおける意見広告の問題も含めた、今、非常に大きな、挑戦すべき課題であろうかというふうに思います。私どもも、ぜひとも今後この委員会の場で今回の法案について丹念な議論を行ってまいりたいというふうに思います。そういった議論も参考にしながら、今後しっかりとしたルールづくりを行っていただきたいということを申し上げまして、私からの質疑を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

中山委員長 次に、鈴木克昌君。

鈴木(克)委員 両参考人、本当にありがとうございました。大変、まさに参考になるお話を聞かせていただいたなと思って喜んでおります。

 私は、大きく二点についてお伺いをしたいんですが、一点は、言うまでもない、放送の中立性ということ、二点目は今議題となっておりますスポットCMについてということ。

 まず、放送の中立性ということについて両参考人から御意見を伺っていきたいんですが、国民投票運動におけるメディアの規制ということについて、私ども民主党は、メディア規制は必要ないんじゃないか、基本的にはそういう考え方で参りました。また、与党の方は、虚偽報道禁止の自主規制という規定は必要なんだ、こういう立場であったやに私は理解をいたしておりますが、しかし、先ほどお話にもありましたように、放送連の参考人に来ていただいていろいろと御意見を伺う中で、民主党案、そして与党案はともにメディア規制を設けないというふうに、そういう法案として提出をされたということであります。

 私は、基本的にはやはり規制をしない方がいいんだと。それはなぜかといいますと、広く意見を取り入れて、中立公正な国民投票法制にすべきだという思いでそう思っておるんですが、そこで両参考人にお伺いしたいんですけれども、このような過程をどのようにごらんになっていたかということと、あるべき国民投票法制について、まず最初にお考えを聞かせていただけたらありがたいというふうに思います。よろしくお願いします。

天野参考人 昔の話ですけれども、アメリカのジョンソン大統領が立候補されたときに、向こうの民主党がやったコマーシャルがあるんですね。それは、少女がヒナギクを手に持って、花びらが何枚かついている、その花びらを、セブン、シックス、ファイブと、こういうふうに一つずつはがしていく。それがカウントダウンになるわけですね。それで、スリー、ツー、ワン、ゼロとなる。そうすると、カメラがずうっとその少女に寄っていくんですね。少女の目のアップになるんです。そうすると、目の奥でばっとキノコ雲が爆発しているというコマーシャルですね。こういう世界にならないためにというような意味のことがあって、民主党に投票してくださいと言うんですね。

 このコマーシャルは共和党が猛烈な抗議をして、余りにも一方的で、まるで共和党にすると世界じゅうを原爆で破壊するような印象を与える、こういうのはまずいんじゃないかということで抗議をして、最終的に、これは公正ではないだろうということで一回限りでその放送は中止になったんですね。

 だけれども、その一回限りで中止になった大騒ぎが、まさにそのコマーシャルの効果をすごく高めた。つまらないのを百回やるよりも、一回しかやれなかったけれどもすごく話題になったコマーシャルをつくる方が勝ちだみたいな、どうしても広告にはそういう競争本能がつきまとうんですね。

 だから、その部分が放送の公平性というようなこととどう相入れるのかというふうな問題があって、そういう今のような、結果的にそのときにはジョンソンが勝ちましたけれども。それで勝ったかどうかわかりませんが。とにかく、アメリカの場合は日本以上にコマーシャルによる勝負というのが非常に決定的に力を持っている部分がありますのでね。そういうときに、その表現そのものが公平じゃない、公正じゃないといってチェックし出して、どんどんチェックしていくと、最後はお互いに何か私たちは日本の将来を考えていますみたいなことだけで終わる、さっぱり意見だか何だかわからないようなことで終わる危険もあるわけですね。

 ですから、僕は、ある意味では、そこは表現の自由という部分がかなり尊重されなきゃいけないと。だから、そこでのチェックを余り厳しくするよりも、そこはある程度自由にしておいて、そのかわりイコールタイムできちっと相手もそういうことに対して反論できるような、そういう土俵をつくるのが公平ということであって、一つ一つのCMに公平性とか公正さというのを求める共通の物差しなどはないというふうに僕は考えています。

山田参考人 当初、報道を規制するような条項が検討されておりましたけれども、実際に提出された法案では、そのような条項が一切なくなっておりました。国民の知る権利や表現の自由を大切に考える放送に携わる人間としては、大変喜ばしいことだというふうに思っております。

 中立公正な国民投票法制をつくるべきだというお話がございましたけれども、全く同感でございます。きょうは広告の話でございますけれども、国民投票の中でテレビが何の役割が一番大切かといえば、やはり、活発な議論が国民の間で行われるような状況をつくり出すということが放送の一番の重要な役割だというふうに思っております。その中に意見広告であるとか政党の放送の時間とかそういうものは包括されて、そしてまた、報道とか解説とかそういうものと一緒になって、国民の方々が、今の憲法はどういうものなんだろうか、どういうふうに改正されるのだろうか、それが自分にとってどうなんだろうかという判断材料がきちっと行き渡るようにするべきだというふうに思っております。

鈴木(克)委員 ありがとうございました。

 続いて、両参考人にお伺いをしたいんですが、政党による放送についてお考えをお聞かせいただきたいと思います。

 私ども民主党の出した案の百五条に、憲法改正案に関する意見を無料で、これは国庫負担ということなんですが、政党は放映することができる、こういうふうに規定をされておるわけですが、もちろん、この制度というのは、政治的公平を確保するという意味において私は有効な制度だというふうに思っておるんですが、一方、これには当然のことながら税金を使っていくということなんですよね。この税金を使っていくということ、政党が税金を使ってこうした意見を出すということに対して、果たして国民の理解、まあ、理解を得られるというとちょっと過言かもしれませんが、果たして国民はそのことについてどんなふうにお感じになるのかな、私はそんなふうに思うんですが、そのことについて両参考人からお聞かせをいただければありがたいと思います。

天野参考人 国民の税金を使って広報活動をするというのは、例えば政府広報もその一つですね。政府広報というのは、基本的には、大きく分けると行政広報と政策広報と二つ種類があると思います。国によっては、行政広報は幾らやってもいいけれども、政策広報は禁止するという国もあると聞いているんですね。それは、ある一定の政策があって、それに対しては国民がさまざまな意見を持っているのに、一つの政策だけがいいということで税金を使ってやっていいのかという問題が生じる。行政広報というのは今度の選挙にはみんなで行こうとかいつですよとかというお知らせですね、そういう行政広報は当然国民にとって必要な情報ですから税金を使ってやっていいんだけれども、ある特定の政策を国民の税金を使って広報するということはいいのかというふうな問題がある。

 この問題については、かつて、それへの反論権を主張する団体があって、それで、その反論権を認めて、反論を出すというふうな団体があったやに聞いていますけれどもね。何かその辺の問題が絡むんですね。

 今度の問題は、日本の将来の形を考えるという非常に大きな投票になると思うんですけれどもね。そういうときに、国民の税金を使ってやってくれることに対してどれだけみんなが納得できるかというのは、まさにイコールタイムが保障されているかどうかということに尽きるんじゃないでしょうか。

 一方的に例えば反対意見の表明にたくさん税金が使われて、賛成意見の方はちょっと少なかったとか、またその反対もありますね、そういうふうなことで判断が……。まあ、量じゃないんだよと言われちゃうと、それまでのは質なんだということになりますが、やはりコマーシャルの場合は量の力というのはすごいのです。

 そういうことを考えると、そこでどれだけ公平性が保たれているかということで、初めて国民も税金を使ってこういうことをやっているんだということへの納得がいく。その保障はこの法案ではなされているのかどうか、ちょっと僕はしっかり読み込んでいないのでわかりませんが、その辺が大きな問題だろうと思います。

山田参考人 憲法改正案に対する意見の放送というのは、これも初めてのことなので、まだちょっと、具体的にだれがどういう言い方で話をしてくるのかなというのはイメージが定着していないんですけれども、現行の政見放送と比べますと、政見放送の場合は先ほども申し上げましたように選挙の立候補者数に応じて時間が決まっているということですけれども、今回の場合は、憲法改正案に対する意見の放送はその時点での国会の議席数を踏まえて決めると法案には書かれてあります。このことは、政治的に公平であることを求められている放送局といたしましては、若干違和感を感じております。

 国民投票が実施されるまでの間は、賛否というものはできる限り公平に扱われるべきだというふうに思っております。民主主義の中には、少数意見の尊重というのもございますし、それから、数年前に行われた選挙に基づく国会の議席配分というのが今の国民の意思をきちんと反映しているかというのも疑問に感ずる部分もございます。四月の委員会で、堀報道委員長が、報道に関しては発議をされた後も我々は賛否のバランスをとって考えていきたいというふうに言っております。国費が使われるとしたら、憲法改正案に対する意見放送についても、こうした考え方がベースになければいけないのではないかというふうに思っております。

 以上の問題が解消されるのであれば、我々も最大限協力をしてまいりたいと思っておりますし、納税者である国民の納得も得られるのではないかというふうに思います。

鈴木(克)委員 ありがとうございました。

 二つ目の論点でありますスポットCMについてお伺いをしていきたいんですが、まず最初に、今のお話にもありましたけれども、政治的なスポットCMについて山田参考人からお聞かせをいただきたいんです。

 御案内のように、政党が政治的なスポットCMを流すということが最近多くなってきております。政治的なスポットCMの現状を、お差し支えなければぜひ聞かせていただきたいと思うんです。例えば十五秒ぐらいのCMを政党が流した場合に果たしてどれぐらいの費用がかかっておるのかなということでありまして、また、去年の九月の総選挙で各党そういった政治的なスポットを流したんですが、それはどの程度放映されたのか。実績といいますか、差し支えなければ教えていただきたいと思うんですが。

山田参考人 十五秒のスポットがどれぐらいの対価であるかということは、これは各放送局によって、そのエリアの大きさ、視聴者の数、その放送局の視聴率の高さ、それから、放送時間帯がプライムタイムであるのか、朝の時間であるのか、深夜であるのかによって千差万別でございますので、幾らというようなことはちょっと申し上げられないと思います。

 それから、昨年の九月のCMの放送の実績でございますけれども、これは民放連として数字を把握しておりませんので、済みませんが、各放送局がどれぐらいというのも、ちょっと私の会社から聞いてきていないんですけれども。電通さんなんかに聞くと大体わかるのではないかというふうに思いますけれども、済みません、きょうは民放連の立場としてはお答えを控えさせていただきます。

鈴木(克)委員 費用も国民の側だとなかなかわからない、どのぐらい流されたかということもなかなかわからない、こういうことになってしまうのではないかなというふうに思うのですが、また私は機会をとらえてぜひ一遍勉強させていただきたいというふうに思っています。

 それはともかくとしまして、スポットCMの効果について、ちょっとくどいんですが、ぜひ聞かせていただきたいと思うんですけれども、これは両参考人にお伺いしたいのですが、昨年の総選挙で各党はCM放映に相当費用をかけたわけでありますが、実際にその効果に差があったのかどうか。この辺は、まさに参考として両参考人の御意見をお聞かせいただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

天野参考人 効果はありましたね。あったと思います。

 ここでこういうことを言っていいのかどうかわかりませんが、自民党はうまかったですね。それはコマーシャルの勝利ということも非常に大きい。もちろんそれだけじゃないですけれども。後ろからそのパワーを押しましたね、コマーシャルが。どうしてかというのは、言えばいっぱいありますけれども、それはやり方の問題ですね。表現手法の問題として非常にお上手だったというふうに思います。

山田参考人 スポットCMの効果については、放送局よりも広告をなさった政党であるとか広告主様の方が肌で感じていらっしゃるものだというふうに思っております。

 コマーシャルというのは、単体でこれを十五秒、何回流したからこういう効果があるということだけではなくて、いろいろな社会状況との相乗効果とかタイミングとの相乗効果とか、いろいろなものがあるんだと思います。それから、同じ十五秒でも、企画、アイデア、演出、だれが、タレントさんがどういうふうに訴えるかというようなことによって、視聴者への伝わり方によって、その効果というのはさまざまだというふうに思っております。

 我々は、放送を預かる者として、民放としてCMを糧にして業をなしている者として、CMの効果は絶大であるというふうに信じたいと思っております。

鈴木(克)委員 くどくなりますけれども、もう少し聞かせていただきたいと思うのです。

 これは山田参考人にお伺いをしたいと思うんですけれども、先ほど放送倫理基本綱領、日本民間放送連盟の放送基準、そういったものできちっと検証していく、チェックをしていく、こういうお話があったわけですが、実際には、いろいろな政党から出てきたコマーシャルを流してくださいということに対して、政党の間で差をつけたり、料金に差をつけたり、一方を大量に流すというようなことは本当にないんでしょうか。大変御無礼な言い方なんですけれどもね。いや、それがないためにいろいろ綱領や規定でやっているんだということかもしれませんけれども、現実には本当にそういうことがないのかどうか。どちらかといえば都合のいい政党の主張だけを流していくという、そんなような操作というのは全くないというふうに理解をさせていただいていいんでしょうか。

山田参考人 放送の中立性、公共性という成り立ちからいっても、つまり、どこの広告主様を優遇するとかどこの政党を優遇するとかいうことは全くございません。それから、本音としては、お金をたくさん持っているところからはたくさんとりたいということはございますけれども、料金で差をつけるということは全くございません。それから量の格差というのも、バランスを図ってやっていく。これは毎日視聴者の方々が見ていらっしゃいますから、そういうことが行われたらすぐクレームが入るというふうに思っております。

 自信を持ってお答えできると思います。

鈴木(克)委員 天野参考人にお伺いをしたいと思います。

 先ほど御開陳の中で、テレビのCMというのは使い方によっては強力なマインドコントロールの手段になる、こういうふうなお話がございました。そしてまた、CMというのは繰り返し繰り返し放映されるということについて、場合によっては暴力的にさえなるんだ、こういうお話もございました。このことについて参考人のお考えをもう少しお聞かせいただけたらというふうに思います。

天野参考人 今井参考人が、前に、ソ連のお話で、ダー・ダー・ニエット・ダーという、それを繰り返す、投票でマル・マル・バツ・マルというふうにしたらいいんだということを繰り返し繰り返しやったというお話をなさったと聞いていますが、そのとおりだと思いますね。単純なことを繰り返すというのがマインドコントロールのコツですね。僕はやったことがないのでわかりませんが。

 やはり、いろいろな複雑なことを論理をきちっとして言ったって、そういう言葉はそんなに届かない。特に、話し言葉じゃなく、何か書き言葉みたいなものをただ読んでいるみたいな、そういう政治家の方の言説というのは国民に全然届いていないと思いますよ、CMで幾ら叫ばれても。やはりどれだけ肉声で自分のすべての表現手段を投入して一点突破で伝えるかというようなことをやっているところが割合勝つんですね、結果的に。いい、悪いは別ですけれども。

 そういうことからいうと、ダー・ダー・ニエット・ダーというのは、まさにそのお手本みたいなことをやっている。それがいいか悪いかというのはまた別問題として、基本的には、どこかで広告はそういうマインドコントロールを大なり小なりは結果的にやってしまう。意図的にやっている場合もあるかもしれないけれども、結果的には、繰り返すということはそういうことなんですね。しかも、十五秒で言えることなんて、そんなたくさんのことは言えないわけです。

 ですから、これは昔の話で、今言っても別に構わないと思いますが、アメリカで調査したら、コカコーラとペプシコーラの販売比率が、六、四だったか七、三だったかという時期があったんですね。それはなぜかというと、コカコーラとペプシコーラのブラインドテストをすると、どっちがコカコーラでどっちがペプシコーラかわからない人が結構いるんですね。ところが、売り上げでは、はっきり七、三とか、六、四とかでコカコーラがある時期勝っていた。今はちょっと違いますけれども。それは何だろうというのでいろいろ調べた結果、結論はもちろんわからない、はっきりしたことはわかりませんが、両社の宣伝費の比率が六対四だったということがあるんですね。

 コークみたいなものというのは、余り商品の説明をしたり、それをつくり出すまでの苦労話をしたり、信念を述べてもしようがないんですね、コカコーラとかペプシコーラについては。いかにCMソングや何かで反復するかという効果をねらいますから。そうすると、そこでは当然マインドコントロール機能が働く。それが暴力的にならないということはどこかで歯どめをかけなきゃいけない。暴力的になっているとは言いませんが、非常に強い。それが非常に困った場合には、政治的にヒトラーのように意図的にマインドコントロールを使えば一種の暗示効果が全国民に働いてしまう例だって歴史上はあるわけですね。そこまで言うのは極端ですけれども。

 つまり、そういうものであるという認識がないとCMというものは理解できない。また、それがいけないんだと言っちゃったら、世の中で広告というものはすべていけないことになってしまうわけですね。そこをどういうふうにうまくコントロールしながらお互いのコミュニケーションをうまくやっていくかというような、理性的なそこでの判断というのが広告の場合には必要なわけで、その歯どめがないと、とんでもないことに広告が使われてしまう危険が十分にある。

 それがきちっとチェックされることが大事だ。法的規制かどうかはわかりませんが、何らかの形できちっとそれがチェックされることが、そういう意見CMが国民のためになるということの唯一の保障になると僕は思います。

鈴木(克)委員 最後の質問になるわけでありますが、天野参考人にもう一度お聞かせいただきたいと思うんです。

 天野参考人は、最近、新聞紙上で、いわゆる国民投票手続において投票日前七日間のスポット広告を規制しても意味がないんじゃないかということをおっしゃっておるわけでありますが、先ほどからおっしゃったように、いわゆる一定のルールが必要なんだということだというふうに思います。

 そこで、一週間前に規制をしても意味がないというその根拠というかお考えと、もう一つ、じゃ、例えばどのような形の規制が考えられるのか、その辺をお聞かせいただければありがたいと思います。お願いします。

天野参考人 法的な規制はないことが望ましいですが、報道に対する規制と広告に対する規制が全く同じ論理と同じ発想でやられていいかどうか、ちょっと疑問を僕はまだ持っているんですね。広告については何らかの歯どめがないと、さっきから申し上げているように、非常に暴走しかねない危険がある。それは、山田参考人はそれを民放連の方でしっかり歯どめをかけるとおっしゃっているので、であればそれに期待するということで話は終わるんですけれどもね。

 だから、これは僕が考えることじゃありませんが、例えば憲法問題についての賛否、その意見広告が放送される時間帯は、例えばある一定の時間である。一日じゅう好きなところにスポットCMを入れるというふうなことはできない。一定の時間内に、半分ずつ賛否が、一人十五秒じゃ全然これはだめだと思いますね。十五秒というのはあらゆる感化的手段を使って巻き込むしか結果的にはないんですね。とすれば、やはり意見CMの場合は最低一分というのが一つの単位になる。それから、意見CMは、国民がだれでも言える、やれるのが原則ですね、今の法案でいえば。例えば僕がやらせてくださいと言えばやらせてもらえるというのが原則だと思います、賛成にせよ、反対にせよ。

 その場合に、一般の人たちが自分としても意見を言いたいというふうなときに、その意見CMの料金が化粧品やチョコレートを売るときの料金と同じではおかしいと僕は思いますね。現に、アメリカでは意見広告は料金が安いという設定になっているところもいっぱいあります。とすれば、みんなが意見を言うためには、今みたいな高い料金はだれも払えませんよ、普通の人は。

 とすれば、だれでもが公平に意見が、だれでもがということはちょっと言い過ぎですけれども、かなりの人が、言いたいと思う人は意見が言えるようにするためには、意見CMについては料金制度を商品広告の制度とは変えるとか。それから、その発表の時間は、一定の、各局とも例えば夜の六時半から七時までとか決めるとか。あるいは、それが三十分間だったら、十五分間は賛成意見、十五分間は反対意見の場に充てるとか。今は思いつきで言っているだけで、これまた実際にやるとなったら大変なことだと思います、実際の局では。そんな時間帯、金づるの時間帯があけられるかという話になって、朝の四時からにしろみたいな話になりかねない。

 だから、そういうことも踏まえると、本当にそこのところを公平にするのは難しいけれども、それをやはり今回はやらないと実質的歯どめにならないんじゃないか。そういうことをやはり委員の方もしっかり見守っていただかないと。形式的にはやりましたで済んでしまってはいけない。僕も知っている限り民放連の方はそんな方じゃないので、ちゃんとやってくださるとは思うんだけれども、いろいろな弊害があることも事実なんですよね。だから、そこを乗り切るためには、この法案を考えられた方々もバックアップをしてくださらないとできないんじゃないかなというふうに思いますね。(山田参考人「委員長、一言いいですか」と呼ぶ)

中山委員長 山田参考人、どうぞ。

山田参考人 一般の人たちが、お金を持たない人たちが、意見を言いたいというのは、これはいっぱいあると思います。そういう人たちの意見をこそやはり放送は乗せていくべきだと思います。これはだから、CMの枠ということではなくて、それこそがやはり放送がやっていかなければいけないことだと思いますので、それは番組と言えるのか情報と言えるのか広告と言えるのかは別として、そういう枠をきちっととって、できるだけたくさんの人たちがこの憲法改正について意見を言っていけるようにしていくというのは、本当に放送の責任だというふうに思っております。

鈴木(克)委員 どうもありがとうございました。

中山委員長 次に、桝屋敬悟君。

桝屋委員 公明党の桝屋敬悟でございます。

 きょうはお二人の参考人の皆さん、本当にありがとうございました。大変に参考になっております。政党としても参考になっておりますし、大分議論が進んでまいりまして、私も、実はきょうを迎えるに当たりまして、天野参考人のいろいろなお考えも事前にいろいろ聞かせていただきながら、読ませていただきながら、悩みながらきょうは来たものですから、お話を伺えて随分お考えを理解することができました。

 そこで、今、非常に重要なお話になっているのでありますが、同僚委員の質問で随分わかってまいりましたが、きょう、天野参考人におかれては、メディアの規制については原則全部取っ払ったということでそれは大いに結構だ、ただし、今もお話がありましたように広告放送あるいはスポットCM、とりわけ意見広告等については簡単ではありませんよ、本当に国会議員の皆さん方、これでいいんですかと。こういう、ある意味では警鐘を鳴らしたいというお気持ちできょうはおいでになったのかなと。こういうふうに理解しながら聞かせていただいたわけであります。とりわけ広告放送、スポットCMの効果というものは、今までるるお話がありましたように、我々が思っている以上に大きな影響、効果があるということを改めて認識させていただきました。

 そこで、先ほどお言葉もありましたけれども、今回の憲法改正投票法案の中で、いわゆる広告放送については無理してやらない方がいいんじゃないか、よほど公正なルールというものが確立していないとさまざまな問題を惹起しますよ、こういう警告だろうと思います。そこで、今おっしゃったのは、例えば具体的にルールとして放送の時間帯であるとか、あるいはまさに先ほどからおっしゃっていますイコールタイムを確保するとか、あるいは十五秒では足りない、六十秒ぐらい必要だなと。また、料金の問題についてはまさに放送との関係と天野参考人は今おっしゃいましたけれども、そうした御意見でありますが、これを今回法律の中で言うのか、まさに天野さんがおっしゃったように、これが自主規制として民放連の皆さんがそうした体制が組めるのであれば、そこは放送の役割として後ろ向きにならずに前に進んでもいいのではないか、こういう御意見かなというふうに承りました。

 そこまでおっしゃるその意見を聞きながら、山田参考人にお伺いするんですが、そうした自主規制というものが本当にできるのかどうか。憲法の改正というのは、通常の国政選挙、公職選挙と違いまして、一つ一つ事例を積み上げていくということがなかなかできないものですから、本当にめったにない作業になるものですから、事前にそうした自主規制というものが民放連の皆さんでできるかどうか。とりわけ一週間の規制そのものもある意味では反対をされておられるわけでありますから、そうしたお取り組みが本当に可能なのかどうか、山田参考人に伺いたいと思います。

山田参考人 自主規制はできます。やらなければいけないというふうに思っております。

 自主規制の体制をどういうふうにつくっていくかというのは、幾つかの段階が考えられるというふうに思いますけれども、第一に、国民投票のコマーシャルなり政党の放送なり具体的にどういうものが出てくるか、あらゆる可能性を考えて我々議論を深めるということ。それから、各放送局単位で運用上の内規を定めることを推奨していくということ。それから、民放連の放送基準において運用上の指針を何らか明文化していくということ。それから、広告主である政党または広告会社と国民投票の広告に関する意識を共有し、情報交換を密にしていくというようなことをきちっとやっていくべきだというふうに思っております。

 つまり、こういう自主的な規制というものは、ルールはあくまで自主的なもので、罰則みたいなものはございません。これは、やはり表現の自由にかかわる分野では自由に意見を闘わせることが大前提でありまして、罰則というのはなじまないのではないかというふうに思います。判断は、やはり視聴者や国民の世論にゆだねられるべきだというふうに思っております。

桝屋委員 ありがとうございます。自主規制はできる、あるいは逆に、しなければならないと。この委員会を通じて、前も民放連の皆さんにもおいでいただきましたけれども、随分、憲法改正の国民投票法制についても議論を開始していただいたというふうに思っておりまして、私は、その流れは非常にいいことだと思います。

 ただ、先ほどからおっしゃっていますようにめったにないことでありますから、今までの公職選挙や、あるいは、私も放送基準を随分見せていただきましたけれども、例えば児童向けのCMに関する具体的な留意事項あたりは相当積み上げておられる、相当の経緯を感じるわけでありますが、そうしたことは本当に今から、まあ、やってみなきゃわからないという、予想しながら、だれが希望されるかということも含めて、なかなか困難なことだろうと思います。

 天野参考人に伺いたいと思います。

 この席にいます我々国会議員に対して、しっかりそうした公平なルールづくりのためにバックアップをしてもらいたいと言われたわけでありますが、今の民放連の皆さん方のお考えも含めて、今の与党案、あるいは野党案も広告放送については同じ一週間前の規制ということでありますけれども、これでは不十分だ、やはりもう一重、公平なルールのために制度として法律として考えなきゃならぬというお考えなのか、それがなければ相当の困難、難しい問題が惹起されるというふうにお考えなのか、天野参考人に伺いたいと思います。

天野参考人 これは民放連のお考え次第だと思いますね。今、各社の判断なんですね、先ほど申し上げたように原則は各社の判断。統一判断という大きな枠はつくってあるんでしょうけれども、このコマーシャルは出せない出すという個別の判断は、各社の判断による。

 かつて、社民党さんがつくられたあるコマーシャルが、ほとんどの局では拒否されたんだけれども、ある局では放映されたという例もあります。それはその局の判断なんだからいいだろうと言っちゃえばいいんですが、その意見が偏っているかいないかという判断は非常に難しい。

 それは、例えば自民党の方から見れば社民党の意見はいつも偏っているというふうに見えるでしょうし、社民党の方から見れば自民党の言っていることはいつも偏っていると見える。偏っているんですよ、結局は。だから、それを寄せ合ってみんなでいい方法を探そうというのが話し合うということの意味ですから。みんなが同じにそろっちゃったら対立点も何にもなくなる。その偏りを認めない限り意見広告は成り立たないんだと僕は思いますね。偏りが非常にひどい中傷、誹謗、悪意に満ちている場合は、これはもちろん道徳的な問題としてチェックされなきゃいけませんが、そうじゃない限り、意見の偏りがあるというのは当然のことで、それを是正したら意味がない。

 だから、例えばさっきの社民党さんの広告は、僕は全局流してほしかった。別に社民党の肩を持つわけじゃなくて、意見広告のあり方としては流してほしかった。それがひどいじゃないかというんだったら、それはひどいじゃないかという反論のCMもあったり、それを今度は番組にして、ああいうことは言っていいのかというテレビ討論があればいいと思う。そういうことがないままどこかで意見が消えていくというのは、やはり僕は好ましいことだと思わないんですね。

 そういう現状がありますから、そこの現状を変えていこうというのは民放連さんとしても大変なことで、少なくとも、各社各様の判断ではなくて、今回に関しては民放連の統一的なルールづくりがないと、僕はちょっと混乱しないかなというふうに思っております。それをこの委員会の皆さんで法的に定めてくれと言っているわけじゃないんですけれどもね。だけれども、そういうことに対する、きちっとした委員会の広告に対する御判断もあって、危惧もあって、その辺での公正を期すようにというふうな、法的な規制という形じゃなくて、何らかの意向が示されることが最低限必要ではないか。そうでなかったら、やはり意見広告は今回見送った方がいいということになってしまうんじゃないかというふうに僕は個人的に思っております。

桝屋委員 ありがとうございます。よく理解できるお話をいただきました。したがいまして、民放連における自主的な取り組みということに強い期待をお寄せになっているんだろうと思います。

 ただ、制度として、法律の枠組みとして、我々随分議論した中で、やはりきょう御指摘をいただいたような懸念があったものですから、とりわけテレビ、ラジオの影響というものを考えますときに、国民へ与える心理的な影響ということを考えますときに、やはり一定の期間、きょうは一週間という話が先ほどから出ておりますけれども、欧米等の例も見ながら一週間前については禁止をするということが妥当ではないかと思っておりますが、先ほどから、その一定期間、この一週間というのは根拠が不明だ、こうおっしゃいましたが、天野参考人に重ねて伺いますが、それ前は自由ということに逆になるわけでありますけれども、そういう観点では一週間というのは長いとお考えですか、短いとお考えでございますか。

天野参考人 一週間前からはやるなということは、広告は悪影響を及ぼすという前提があるように見えるんですね。広告は自由にやっていいというんだったら、別にそんな一週間前からは黙れということはないじゃないかなという気が僕はしているんです。そうじゃないんだったら、やはりもっと……。広告をやるなというのならまだわかるけれども、自由にやっていいけれども一週間前になったら黙れよというのは、何のことだろうというふうにこの法案を見ていると思いますね。

 さっきから申し上げているように、それについての御説明がないんですよ、この法案には。なぜ一週間なのか。外国には二週間のところもあるんじゃないですか。何かそういういろいろなケースがあって、それぞれ何か根拠があるんだと思うんだけれども、この一週間については、ちょっと何か根拠がよくわからないですね。ですから、長いか短いかという問題よりも、この一週間というのは要るのか要らないのかということの方がむしろ……。

 ただ、わからないけれども、不在投票みたいなのは投票日よりも前からやったりする場合がありますから。そういうことも含めると、実質的な投票日じゃなくて不在投票の日なんかも含めてそれが始まる前日まででやめろというのは、もちろんこれはわかりますが。そうじゃなくて一週間というのは、どういう、こっちから御質問しちゃいけないということなので聞けないんですけれども、本当はそれは非常に疑問に思っているところです。

桝屋委員 その問題について私がお答えをするわけにはまいりませんので、この委員会で今の御指摘も踏まえてしっかり議論をしてまいりたいと思っております。やっときょうから本会議で議論が開始になるわけでありますから、御指摘を踏まえて議論したいと思います。

 もう一点、お二人に伺いたいんですが、最近、放送と通信の融合が進んでおりまして、意見広告、広告放送のみならず、ネット広告についても私は個人的には同じような影響があるのではないかと思っているわけでありますが、今のネットの状況をごらんになって、お二人の参考人、どのようにお考え、お感じになっているのか、伺わせていただきたいと思います。

山田参考人 この国民投票というのがいつの時点で行われるか、何年後に行われるかということにもよるんですけれども、ネットの広告というのはこれからますます大きくなっていくと思いますので、我々は今ここでテレビあるいは放送に関する広告について議論をしておりますけれども、ネットの広告で今までは考えられないような伝え方というか広告がこの国民投票に関してもできていくのではないかというふうに思っております。

 ですから、そういうものも一緒に包括して、そして、どういうスケジュールで、どういう内容で、放送も通信も含めて広告というものが具体的にあって、それをどういう形で国民に伝えるのが一番いいかというところの議論をみんなでしながら、ある具体的な形を探していくべきだというふうに思っております。

天野参考人 ネット広告というのは、御承知のとおり、媒体別の広告費配分でいいますと、今ラジオを抜いたんじゃないでしょうかね。四大媒体とかつて広告は言っていましたが、ラジオよりもネット広告の方がお金が大量に使われるようになっている時代ですね。そういうものをフルに使うと、思ってもいないような、今山田参考人からもお話出ましたけれども、これはインターネットをやっていらっしゃる方やブログをやっていらっしゃる方はもう常識ですけれども、今までの広告とは思いもつかないようなことがいろいろできるわけですね。

 さらに、ブログというのは、これは新聞を滅ぼすんじゃないかというふうにアメリカのタイムなんかは特集していますが、今までのマスメディアというものをブログはかなり破壊するだろう、殺すかもしれないというふうなオーバーな表現で特集をしていますが、ブログの持っている力というのは、非常にこれから急成長していくだろうと思うんですね。このブログを使ってこの問題についてどういうふうにいろいろな人たちが発信をし始めるのか、それがどういうパワーになっていくのかというのは、本当に予測が僕はつきません。これもかなり大きな問題になってくる。一つの大きな混乱を生む危険もあるし、非常にいい状態になるかもわからない。

 そういう意味で、少なくとも、意見広告もそうだし、ブログを含むネット広告もそうですが、そういう新しいメディアによって、この国の資質というかセンスというか、それが試されている時期だというふうに思いますね。だから、ブログを使って何か非常に他者を中傷、誹謗するような泥仕合みたいなことが起こるような民族なのか、あるいは、それをうまく上手に使って、本当にみんながいい意見を闘わせるような場になるか。そういう面では、インターネット広告やブログというのは、今度の問題に関しては非常に大きな力を持つに違いない。

 それと同じように、意見広告というのも本当に公正にできるのかどうか、テレビコマーシャルというのが国民のいい道具になり得るのかどうか、それが本当に試される時期ではないかなというふうに思っております。

桝屋委員 ありがとうございました。

 誤解がないように申し上げておきますと、私は個人的には、CMもネット広告についても、憲法改正の議論は多くの国民の皆さんに参画していただくということが非常に重要な観点でありますから、天野参考人が今おっしゃったような、あるいは山田参考人がおっしゃったような観点で、公平なルールというものをぜひともつくり上げて、これは法律でやるかどうかは別でありますが、十分に有効なツールとして活用できる方向を考えていきたいというふうに考えている一人でありますので、きょうの御意見を参考にしっかり取り組んでまいりたいと思います。

 きょうはありがとうございました。以上で終わります。

中山委員長 この際、お二人の参考人に委員長として一言お知らせをしておきたいと思います。

 先ほどからいろいろとお答えの中で、なぜ一週間という日数を限ったのか、それについてどうも理解できないという御発言がございましたが、これは、私どもの調査会で、ヨーロッパ憲法条約案の投票前に、この投票の方式がどうなるか、いろいろと調査をしてまいりました。その場合に、印刷物に限っては無制限にやってもよろしい、ただ、テレビの放送については、人間に与える情報の刺激というのが大き過ぎるということから、投票する一週間まではどんどんと放送をしてもよろしいけれども、投票する前の一週間は、それを聞いた人たちが静かに考える時間を与えることが人間の社会に必要じゃないか、こういうことが原則として述べられておりましたので、私から念のため御通知を申し上げておきます。

 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 きょうは、天野参考人、山田参考人、本当に貴重な御意見ありがとうございました。

 我が党は、この国民投票法制という問題について言いますと、この法案は、今提出されているわけですが、九条改憲を焦点にしながら具体的に改憲を進めるということと地続きになっているということで、これをつくることには反対という立場なんですが。内容上も、私自身はいろいろ今検討させてもらっていて、改憲案を通りやすくしているものになっているなという問題点を多く感じております。きょうは、そういう意味では、そういう重大な法案を自民党は与党として公明党と出されているわけですが、この委員会でそういう重大な問題の議論をその一環としてやっていて、大分自民党席に空席があるので大変遺憾だと私は思っています。

 参考人のお二人が、いわば当事者としてCM、広告という問題について、本当に伺っていても、放送の意見広告の未熟さというか未成熟という状況の中でなじまないという御意見の開陳と、それから、天野さんからもありましたし、山田参考人からも、公平公正という点でいうと、前もありましたが、放送メディアという点では多様で多角的な情報を視聴者に提供する、そういう判断材料を提供するということで大事な課題ということで受けとめていらっしゃる。その点で具体的に本人も違和感を感じていらっしゃるということで、私は、広告という問題、あるいは放送ということで影響が大きいだけに、とりわけ憲法について判断を左右するようなことということで、緊張感を持ってきょういらしたのだなということを受けとめました。

 そこで幾つか伺いたいと思うんですが、両参考人から伺えればと思うんですが、一つは、先ほど天野参考人も強調されて、広告の力の強さということがありましたが、ちょっとそもそも論で勉強させてもらうことになりますが、そもそも広告というのはどういうものなのか、それから、国民は広告に何を求めているというふうに考えていらっしゃるか。特に放送広告ということで結構なんですが、基本的なことで申しわけないんですが、御意見をいただければと。それぞれお願いしたいと思うんですが、いかがでしょうか。

天野参考人 放送広告に国民が何を求めているかということですか。(笠井委員「広告とはということと、国民が何を求めているか」と呼ぶ)

 そうですね、少なくとも意見CMについて言えば、その人の言っている、そういう意見を持っている人の顔が見たいと思っているんじゃないですかね。顔が見たい、声が聞きたいと思っているんじゃないでしょうか。活字では顔が見えない。それは、顔が見えると、活字で言っていることと違う顔をしているなとか。そういうことは、テレビというのは一発でわかる怖いメディアですね。そこがまたテレビのすごいところでもある。どんなに活字の広報ではうまいことを言っていても、その人が出てくると、途端にそれはうそだろうというふうに見えてしまうことがある。そういうのは外見で判断するのはいけないのかということになると、外見は中身ですから、外見は中身とは違うというのはうそで、やはり中身は外見によくあらわれているものですよ。

 テレビをこんなに見続けてきた大衆というのは、そういう、あらわれているものの奥にあるものを読む、そういう能力は随分僕は感覚的についたと思っているんですね。これは過大評価かもしれませんけれども。国民は決してそういう意味ではばかじゃない、テレビの視聴者はばかじゃない。ばか面しているけれども、そこにあらわれているものの奥にあるものぐらいはちゃんと見えているというふうに僕は思っているので、そういう人の本当の顔が見たい、どういうつもりなのか会ってみたいというのがあるじゃないですか、手紙でやりとりしているよりも。そういうことを、僕は、この場合の意見広告に求めているように、期待するとすればそういうことだと思いますね。

 それで、例えば、またこういうことを言うと非常に不謹慎なんですけれども、憲法の改定に賛成か反対かというようなことを、さっき委員長から一週間考える時間を下さるためにCMをやらないんだとおっしゃいましたが、CMは考えるのを邪魔するかどうかという問題もまた出てくる。僕は、そういうことを考えると、もうちょっと国民を信頼してくれてもいいんじゃないかと思うんですね。考える能力がないわけではない。だめなコマーシャルはだめだと見抜くぐらいの力はありますから。僕個人としては、だから一週間というのは、おっしゃる意味はよくわかりましたけれども、必要かなということについては改めて思いますが。

 つまり、御質問の趣旨に最終的に答えれば、ちょっと激しい言い方になるかもしれないけれども、理屈で改正に反対か賛成か決めるんじゃないんですね。もちろん、そういう理屈は根本にはあります。どうしても改憲には反対だという信念の方、賛成だという信念の方、それぞれそれは理論的にきっちり考えていらっしゃるんですよ。だけれども、あとどっちかなと思っている人は最終的には気分ですよ。

 気分で選んでいけないと言われたって、女房だって気分で選んでいるみたいなところがある。そんな、全部論理で相手の女性を確かめて選んでいるわけでなく、お互いの連れ合いを見て気分で。気分というのは僕は大事だと思うんですね。それは気分みたいなものも含めて、その人の論理みたいなものを見たいんですよね。それには活字は非常に不便ですね。もちろん、活字にもいいところはあるんですけれども、活字では見えないものをテレビは見せてくれる。

 そういうものを、自分の理屈と気分と両方あわせてこの人側に信頼の票を入れようというふうに決める。そういう決め手になってくれるのが、テレビより意見CMであればいいなと僕は思っているんです。

山田参考人 広告とは何かというふうなお問いかけでございますけれども、我々民放にとっては、民間放送というテレビならテレビが成立する大切なお金のもとというか金主でございまして、これで我々は本当に日々番組をつくって国民の皆様に放送ができているわけでございますけれども、形としてあらわれる広告というものは、私は広告も番組も両方とも情報だというふうに思っております。

 ですから、視聴者の皆様の読み解く力というか握取力というか、どういうふうに受け取るかということはありますけれども、まあ、過剰になっているものもあるかもしれないけれども、それをどういうふうな情報として読み取っていくかというのは、視聴者、国民の読み取る力だというふうに思いますので、広告も大切な情報の一つだというふうに思っております。

笠井委員 それぞれ広告の持つ力というか大事さを言われたわけですが、だからこそ公平公正にということを強調されておっしゃっているんだと思うんです。

 山田参考人に伺いたいんですが、先ほど御紹介いただいた民放連の放送基準の問題でありますけれども、広告の取り扱いだとか表現の基準など、これは百五十二条のうち六十四条、条の比率でいうと四二%がいわば広告にかかわる問題で占められていて、その点からもこの問題の重要性というのがうかがえるわけですが、なぜこれだけの厳格な基準を設けているのか。天野参考人からは歴史がまだまだ浅いんだということを言われたり、だからなじんでいないという御意見もあるわけですが、いわば短い中にも歴史的な背景といいますか、それを含めてこの基準を設けていることの意味というか重要性について簡単に御説明いただけるでしょうか。

山田参考人 これは、放送そのものが国民のもの、みんなのものであり、それを我々が放送というものをお預かりしてやっているわけですから、そこにコマーシャル、広告を流すということは、どういう広告を流していいのか、国民のためになるのかということを、これでも足りないぐらいに規制をしてきちっとしたルールをつくっていかなければいけないというふうに思っております。

笠井委員 天野参考人ですが、先ほどは要はだれがつくっているか顔が見たいんだということでおっしゃったんですが、そういう点では、参考人御自身が、お金で買えるということで、たくさんお金を用意できる者が圧倒的に優位になると公平性が失われないかという危惧も言われました。山田参考人も、そういう点ではお金がある人が流すというのは国民が許さないだろうというふうな話もあったわけですが。

 先ほど民放連としてはなかなかおっしゃりにくかったかもしれないんですが、そういう意味では天野参考人に、例えばCMを流す場合にこういう規模の経費がかかるんだよというような、もちろんこういう場合にはほかの料金を下げてというお話もありましたが、今、常識的、一般的に、例えばどれぐらいのオーダーといいますか、夜九時台のCMを週一回流すと一カ月どれぐらいになるとか、何か例示的にも、先ほどのお話もありますから標準値とは言えないんでしょうけれども、例えばこれぐらいの規模のお金がかかるから、お金がある者が結果的にできるようになってしまうんじゃないかというような具体的なイメージが持てるようなお話をいただければと思うんですが、いかがでしょうか。

天野参考人 これはさっき山田さんもおっしゃったように、本当に局によって、時間帯によってばらばらなんですね。だけれども、ごくごく一般論的に言えば、本当にテレビでコマーシャルをやって、そのコマーシャルが、ある程度、かなりの人たちに見られた、見てもらったというふうに確認できるためには、期間にもよりますけれども、例えば一カ月間の間というふうに限定してみて、そこで五百万や六百万ぐらいじゃ何もやったことにならないでしょう。よっぽどすごいんだと、さっきのジョンソンのみたいのだったら別ですけれどもね。ああいう衝撃的なコマーシャルは一回でも話題になって、それがまた増幅されていきますけれども、普通はやはり一千万ぐらいじゃやったことにならないような気がしますね。とても届かないと思います、全国なんかに。

 では、どのくらいかというと、これまた難しいけれども、五千万なら届くかというと、それでもまあまあ。五千万使えば、ああ、見たよというふうに思ってもらうためにはよっぽど表現がすぐれているということが前提ですね。表現さえすぐれていれば三千万か四千万でも印象に残るということはありますが、よっぽど表現がすぐれていない限り、四、五千万でもそんなに行き渡るとは思えません。

 そういう意味からいうと、テレビで一般の人たちが意見広告を出すというのは、まずお金の面で閉ざされているのに等しいですね。あるいは、テレビメディアが市民の意見の時間というのをつくって、例えば毎週何曜日の何時から何時まではみんなが言いたいことを言い合う時間帯だ、そこは安いんだというふうな特別設定をしない限り、今の状態の中では一般の人たちが意見を言うというのはなかなか難しい。

 ですから、そういう意見を持った人たちが集まり合って団体になってやる以外にはやりようがないですね。その団体がおやりになる場合でも、これは今申し上げたように、これはわかりませんよ、そんな保証はないんですけれどもね、僕の勘ですけれども、やはり三千万や四千万は最低必要じゃないかという気がしますね。逆に言えば、僕に、どちらにしようかと迷っていらっしゃる方、有権者の中の五%を右なり左なりに動かしてほしいと頼まれたら、やはり五億ぐらい欲しい。まあ、五億はオーバーだけれども。二、三億くれたら、そのぐらいのことはできるかもしれませんねと言って請け負う人がいるかもしれない。そのぐらいやはり金がかかるんですね、今のテレビで広告するというのは。

 これは新聞広告も同じなんです。新聞も高過ぎると僕は思います。市民に全然開放されていないと思いますよ。

 だから、市民にそういうメディアが開放される、本当にこれは公共のものだ、市民のものだと言うんだったら、商品広告とは別の料金体系をぜひメディアにつくってほしい。そうじゃないと、本当にそういうメディアが市民のためになっていない、公共のものになっていないというふうに、金銭の面で締め出されていると言われても仕方がないんじゃないかなというふうに僕は現状を思っているんです。

笠井委員 今、国会に提出されているこの法案をめぐってなんですけれども、先ほど来お話ありましたように、放送メディアにかかわっていえば、一つは政党などによるテレビ、ラジオのCM、これは新聞広告もそうですが、無料で放送できる、掲載できるということがあるわけですが、時間やスペースということになると所属議員数を踏まえてということになっておりまして、つまり、総議員の三分の二以上の賛成で発議されるという改憲案ですので、そういう意味では改憲案に賛成した政党が圧倒的にメディアをスペース的に無料で活用できるという部分があります。

 それからもう一つは、有料の場合も、一週間前までというのは先ほどから御異議があって、それがいいか、私もそこには疑問があるわけですが、これもまさに今おっしゃったような、CM放送が意見としてどれだけ流れるかというと、資金の多寡によって左右される部分がある。

 率直に言って、こういう仕組みになると、改憲のキャンペーンと言うと言い方があれですけれども、それがぐあっと放送メディアを通じて広告というところで流れるということになるのではないか。そうすると、公平公正ということで、放送の公共性、中立性ということですごく努力されている面とのかかわりで非常に難しい問題が出てくるんじゃないかというふうに思うんですね。

 先ほど山田参考人も、この法律でメディア規制というのはなくなったけれどもということで、その点では大いに多様で多角的なものを提供していきたいということで、賛否のバランスもとってということで番組も努力されるという話だったんですが、他方で、放送広告の分野でいうと、圧倒的にいわば改憲の意見が国民の前には流れる。もちろん、質をいいものにすれば量より質ということもあるかもしれないですが、そういうことになってしまうんじゃないかということを危惧するわけですが、その点についてはどのようにお二人はお感じでしょうか。

山田参考人 意見の放送というものが、今、議席数に応じて時間が与えられるというような形になっておりますけれども、先ほども申しましたように、放送で表現する場合は、放送の公共性、公正、そういうものがCMにおいても番組においても一番先に立つものだというふうに思っております。ですから、事国民投票の賛否などに関しましては、これは、報道に関しても広告に関してもあるいは情報番組に関しても、きちっとした中立性、公正、それから、量的なことにも配慮されなければいけないというふうに考えております。

天野参考人 お答えになるかどうかわかりません。さっきちょっとおっしゃった議員数に応じてという問題は、僕はこの法案の中で何となくまだ釈然としないところなんですね。

 確かに、議員数が国民の意見をその分代表しているんだというふうなことは、理論的にはそうなんですけれども、僕個人の賛成、反対なんかはどうでもいい、国民全体の考え方としては割合国論を二分しているような問題に思うんですね、この憲法問題というのは。こういう問題についてはやはり賛否が同じ機会を与えられて意見が言われるのが原則で、さっきちょっと山田参考人もそうおっしゃいましたけれどもね。そうじゃないと、例えばある法案によっては九割九分、反対なら反対、賛成なら賛成側の意見だけで広告が占められてしまうということになる。まあ、少数意見としては尊重して一%はその分与えたよということにはなるけれども。しかし、テレビでやっている場合、そんな分量はさっき申し上げたように全然届かないということになりますから。

 広告の時間配分というのは、それぞれの政党に与えられる時間の配分の問題というのは、単純にそういう議員数の比率でいいのかどうかについては僕は疑問を持っています。

笠井委員 ありがとうございました。

 有料広告の分野についても、例えば今の現実でいえば、財界団体なんかも改憲ということで意見を打ち出されているので、こういうところもそれこそ資金力があるわけで、そういう場合に、放送メディアでもやるようなことがあったり、大きな企業が我が社は改憲に賛成ですという場合に、そういう問題も出てくると、草の根で改憲には反対だと思っている人たちは資金もないし、ほとんど機会もないということも含めて、やはりさまざま問題あるなということを私たちは感じているところです。

 きょうは、大変貴重な御意見ありがとうございました。終わります。

中山委員長 次に、辻元清美君。

辻元委員 社会民主党・市民連合の辻元清美です。

 きょうは、天野参考人、山田参考人、どうもありがとうございます。

 幾つかお伺いしたいんですが、先ほど例に出していただきました社民党のCMは、このような中身だったんです。あれはちょうど小泉総理が総理大臣に就任した直後の参議院選挙で、熱狂的な純ちゃんブームが起こっていたときに、キャッチコピーはたしかこうでした、「本当に怖いことは、最初、人気者の顔をしてやってくる」というキャッチコピーが引っかかりました。別にどなたかの人物の顔が映っているわけでもなく、ただ白い手袋をはめた手がたくさんの人と握手しているという光景を映しながら、このキャッチコピーが静かに流れたわけです。これが引っかかって、ほとんどの主要なキー局といいますか、放送していただけなかったんですね。

 もう一つ、社民党でヒットした広告もございました。それは、その前の選挙のときに、これで躍進したんです。躍進といってもうちの場合は議席でいったらちょっとなんですけれども、躍進しました。それは、土井たか子さんが駄菓子屋のおばさんの格好をしていて、そして、若い女の子が、おばさん、かえてよかえてよ、あめをかえてよと言うんですよ、土井さんがばっと後ろを向いて、変えられないわよと言って、変えません憲法九条、社民党というものだったんですね。これはかなり取り上げられたCMでした。こちらは放送されたんです。

 山田参考人にお伺いしたいんですが、別にうちが放送されなかったから文句を言うわけではないんですけれども、基準が明確ではないように私は思ったんですね。ですから、特にそういう政治や意見についての基準のポイントというのをもう一度聞かせていただきたいなというように思います。

山田参考人 明確な基準、それぞれが一つ一つの作品ですから、ここからここへ線を引くということはできないというふうに思うんです。

 例えばこれがイエスなのかノーなのかということは、その時代、そのときの社会の雰囲気とか、いろいろなものにジャッジする我々自身も影響されているところはあるというふうに思います。ですから、CMについて、政治についてという項目がきちっとあって、いろいろな言い方がしております。ですから、それはいろいろなとらえ方ができるというふうに思います。その条文の放送基準のとらえ方でも、全く意見が違う場合もあるというふうに思います。これを、これはだめということをもっと明確にしていくと、もっと窮屈な表現になっていくと思いますので、なるべくそれは、表現というものは自由にできる中で、その時々にみんなが判断していくべきものだというふうに思っております。

 そのCMが、私は見ていないので、今、ああ、それはいいじゃないですかとか、それはだめですよというのはよくわからないんですけれども。

    〔委員長退席、愛知委員長代理着席〕

辻元委員 具体的に、今どのような基準であるのかとか現状をもう少し山田参考人にお伺いしたいんですが、現状で、テレビでCMとして取り扱いされている意見広告と言われる事例というのはあるんでしょうか。この数年で結構です。いかがでしょうか。

山田参考人 意見広告というものは、政党の日常の活動を伝えるということで選挙のときなどにやられますものは意見広告の中に入っております。それから、例えば公共広告機構というのがありまして、それがいろいろと環境をどうしようとかそういうことをCMにして流している。これは意見広告だというふうに思いますけれども、いわゆる政治的な意見広告というのは、私の知る限りは、選挙時の政党の広告が現実にかかっているだけではないかというふうに思っています。ですから、今後、国民投票の意見広告というのは、全く新しいジャンルというか新しいカテゴリーに入ってくるんではないかなというふうに思っております。

辻元委員 ということは、今の現状では、一般の団体、グループとか企業などが何か商品を販売するなどの広告以外で自分たちの主張を、例えば今の段階はまだ議論の、実際的な実質的な国民投票をするとも何とも決まっていなくて、法案すら通っていませんし、私たちは法案制定に反対しておりますけれども、通るかどうかもわかりません。例えば今私たちは憲法を守りたいというような意見広告または私たちは憲法は変えるべきだというような御主張の意見広告が各種団体からテレビ局の方に作成して放送をということになると、今の現状の基準からいえば、先ほどおっしゃった政党とか政府の広告、まあ、公共広告みたいなものは受け入れているけれども、それ以外は現状ではないということですので、それは基準として受けないことにしているのか、それとも持ってこられたら意見広告も基準の対象にして現状でも取り扱うのか、門戸を開いていらっしゃるのか、どちらでしょうか。

山田参考人 門戸を開いていると思いますが、今のところありませんが、もうそれが現実になってきつつありますので、我々自身で、そういうものに対してどういうふうに対応していったらバランスのとれる広告がしていけるのかということを考えていかなければいけないというふうに思っております。

辻元委員 門戸を開いているということでもう一点お伺いしたいんですが。

 そうすると、今は別に国民投票日程が決まっているわけでもなく、現実的にそういう意味では改憲日程が上っていない。運動期間でもありません。そういうときも、その意見広告についての基準というのは、賛成、反対がある程度平等でないと受け付けられないという基準は同じでしょうか。

山田参考人 国民投票についての意見広告ということで言うと、今までそれは経験がないわけですから、これから始まるわけですから、いつその国民投票が行われてというスケジュールもまだわかりませんから、どこからそういうようなアクションが始まるかというのもわかりません。でも、それは、そういうものが始まって国民が関心を持っていくという、そこから全部のスケジュールを見ながら放送としてはバランスをとってやっていかなければいけないというふうに思っております、国民投票ということに。ほかにも意見広告はいっぱいありますから、それは全部政治的なもの以外の意見広告にバランスをとるということはできないかもしれませんけれども、国民投票についてはそういうことだというふうに思っております。

辻元委員 国民投票と申しますか、憲法そのものにかかわる賛否を明確に意見を述べる、または暗示するというような、国民投票をしようとかそういうんじゃなくて、今の段階はまだ国民投票以前の段階で、現状としてはそういうものも賛否両論必要なのかということなんです。

 例えば、社民党が、今、憲法九条を守りましょうというコマーシャルを出したい、私なんかは、例えば土井たか子さんが非常に深刻な顔でにらみつけていて、心配だ憲法九条とぱっと映るような広告を出してみたいななんて思うんですけれども。今でも、それはどちらか一方の意見でも受け付けられると考えていいわけですか、基本的に。

山田参考人 基本的には、放送はバランスをとって放送していきたいと私は思っています。そこまで具体的に議論はしておりませんけれども。

辻元委員 わかりました。ありがとうございます。

 もう一点、山田参考人にお伺いします。

 意見広告を出す際に、例えば商品広告ですとクレジットが出ますね、どこどこの提供とか。または、自分のところの会社の名前を売らなくちゃいけない。意見広告の場合、例えば憲法の場合などを考えてみても、どこがお金を出したかということが明記されるかどうかなんです。

 これはある国の事例で、どこの国だったかわからないんですが、お金を出したスポンサーが必ず明記される。そうすると、いっぱいお金を使って出しているところはどこだというのがわかりますので、それが投票に与える影響というのは、広告主が期待した方向に行くかどうかはわかりませんということなんですね。何かお金に任せてがんがん派手なコマーシャルを打つことがかえってネガティブになる場合もある。

 意見広告の場合は、そのようにスポンサーのクレジットは必ず入るとか、そういう基準はどうなっているんでしょうか。

山田参考人 放送基準の中にきちっと明文化してあります。特に政治にかかわるものに関しては、出したスポンサー元をきちっと表示するということ。それから、それに対する反対広告があれば、それも有料ではあるけれども受け付けなければならないという、これはバランスをとるということで、そういうのは明文化してあります。

辻元委員 天野参考人にお伺いをしたいと思います。

 昨今の、CMだけではなくて、テレビが大きく政治に与える影響といいますか、前の選挙もかなり大きな影響を与えたのではないかと思うんですね。そういう事態を先ほどからも幾つか言及されておりますけれども、どのようにごらんになっているか。

 いわゆる小泉劇場と言われて、この前、この場でもかなりそういうことが議論になってまいりました。これはなぜかといいますと、先ほど議席配分という話もありました、例えば選挙で選ばれた国会の状況と必ずしもそのときのキャンペーンのあり方とか、この間でしたら郵政民営化が争点で、例えばその議席でいけば憲法は全く争点になっていないわけですね。かつ、テレビが選挙に与える影響などもあって議席が決まっている。それと同時に、議席の場合は、小選挙区比例代表並立制という制度の問題もあります。票数でいえば、この間の選挙も与野党かなり伯仲しておったわけです。そういうさまざまな中で議席配分がなされている。

 ですから、私は、その議席配分と公共空間での特に憲法などについての賛否は一致していない場合が多々あるんじゃないか。これは私が少数会派にいるからそう申し上げているのではなく、客観的に見て、選挙で選ばれた議席というものと、一つの問題、特に憲法などについてねじれ現象がある。それは先ほどからも御意見を伺いました。

 そこで、この間の選挙を見ておりまして、テレビの与えた影響というのをどのように、かなり大きな影響を与えてきたのか、先ほどはCMに限定してお話がありましたけれども、どのようにごらんになっているか、伺いたいと思います。

天野参考人 こういうところで媒体の比較をしてもいけないんですけれども、新聞とかポスターとかあるいは選挙公報よりは、やはりテレビコマーシャルが決定的な役割を果たしているように僕には見えます。少なくとも前回の選挙に関して言えば、そういう印象が強かったですね。

 それは、だからテレビコマーシャルは怖いということなのか、あるいは危険ということなのかというと、そうじゃないと思う。これは、皆さんを前にしてこんなことを言うのは偉そうで失礼かもしれないけれども、やはり今の時代、政治家の方は、本当に国民に届く言葉というのをお考えになったら、テレビ的言語というものの理解なしにそんなことは言えないんじゃないでしょうか。本を書いて、読めと言ったって、そんなもの読めやしませんよ、普通の人たちは難しい本を。やはりテレビ的な表現、テレビ的な言語というものできちっと言葉を届かせていくということが、よくも悪くも今必要な時代になってきている。

 そういうものをうまくつかんだ方がたまたま総理になられたという感じが僕にはあるんです、本当の話。それがいけないと言っているんじゃないんですよ。それはそれですごいことじゃないんですか。テレビ的言語を持っていらっしゃって、それで届く言葉を発せられた。

 届く言葉というのは、具体的に政策とかそういう細かいことかというと、そうじゃないですよ。スローガンですよ。だけれども、そのスローガンしか言わないというのがいけないのかというと、今のテレビでスローガンを言わないで延々と考え方、政策を説明したって、みんな聞かないですよ。聞かない国民はしようがないと言ったって、それはしようがないんですよ。それは、スローガンの中に、どれだけスローガンを言っている人の表現の中に、表情の中に、その言い方の中に、その人の持っている、政策よりももっと大事な人間性みたいなものがにじみ出るかというところが勝負で、それがテレビ的言語の基本だと僕は思っているんですね。多くを語ることじゃない。そういう点では、前回の自民党さんのコマーシャルは、見事にテレビコマーシャル的だったということは僕は言えると思いますね。

 社民党はやらなかったんですが、今の時代にテレビのコマーシャルを使わないで自分たちの主張をみんなにわかってもらおうと思うのは、ある程度、だめだとは言いませんが、限界があると僕は思います。

 そうなると、さっき言ったようにお金がいっぱいないとできないということになっちゃうから、やはり、そういう機会の均等ということと、意見広告については料金を安くするとか、さまざまな制度の中でもう少しいろいろな政党があるいは政治家の方がテレビコマーシャルというものを本当の意味で活用してくださるようになることが、僕のような広告の世界にいる人間から見れば、広告の発展のためにはいいことなんですよ。

 広告というのは、どちらかというと悪のレッテルを張られていますし、現実には悪の権化みたいな部分もなくはないかもしれない。だけれども、だからといって広告というものを切って捨ててしまったのではいけない。それをもっとうまく使う知恵が今は必要だし、それを受け入れるだけのセンスは今の大衆は持ち始めているというふうに信じないといけないんじゃないかなと僕は思っています。

    〔愛知委員長代理退席、委員長着席〕

辻元委員 この間の選挙では、社民党の場合は資金力がなくて、つくるところまでいったんですけれども流せなかったという状況があります。

 テレビコマーシャルの場合は、放映をするための費用だけではなくて制作にもかなりお金がかかります。短い時間でメッセージが届くものをパッケージでつくろうとしたら、かなりの費用がかかる。そこの部分も、やはり資金力によって意見を言える人と言えない人が出てくるところではないかと思うんです。例えば討論会に出てお互いの意見を闘い合わすのだったら、自分が行って意見を言えばいいわけですけれども、CMという一つの作品のような形にするところの資金についても全体的な資金力の中に入るのではないかというように私は思っております。

 そこで、もう一点、山田参考人に。

 先ほどから各政党の議席によってCMの時間の配分には違和感があるという御発言が何回もありました。これは本当に、少数だから言うのではなく、率直な客観的な御意見ではないかなというふうに私は思いました。その際に、何かそれを公平にする基準とかアイデアがあるのか。

 要するに、選挙の場合は立候補者が多いと、これはある意味で合理的な理由があるんです。その立候補者を全部紹介するだけでも、五人出ているところと百人出ているところでは、同じ時間ではなかなか紹介できないので、確かに、立候補者が多いとか議席が多いところにはある程度の時間配分という理由を一時聞いたことがあるんですが、一つのテーマの意見ということになると、そうではないと思います。

 今後、基準をお考えになるということなんですけれども、どのような議論が今具体的にはあるんでしょうか。

山田参考人 その意見の放送というものの中身が、議員の方々がそれぞれ正面のカメラを向いてしゃべられるものなのか、それとも今自分が持っている時間を使って自由に、極端に言えばタレントさんとの対談の中で何かをやられるのかとか、そういうこともまだよくわかりませんので、つまりこちらは具体的な方策というのはまだないんですけれども。

 国民投票について言えば、イエスかノーかという二つの選択ですから、やはり二つの意見が平等に出ていくように放送としてはしなくてはいけないというふうに思っています。これは私がそういうふうに思っているんですけれども、いろいろな意見があるでしょうから、そういうテレビの公共性にかんがみながらこれからきちっと議論をしていきたいというふうに思っております。

辻元委員 ちょうど時間が参りましたので、これで質疑は終わります。

 ありがとうございました。

中山委員長 次に、滝実君。

滝委員 国民新党・日本・無所属の会の滝実でございます。

 きょうは、お二人の参考人の方には大変ありがとうございます。

 実は、今まで当委員会におきましては、マスメディアの自主規制ということについて、なかなかできにくい、法的規制は無論のことながら、自主規制そのものもそう簡単にできるものではない、そういうようなニュアンスで参考人の方々から御発言があったように私は受け取ってまいりました。しかし、本日の御意見を伺いますと、少なくともスポットCMを中心とした事柄につきましても、かなり自主規制ということに踏み込んだ御発言があったように思います。そういう意味では、大変新しい発見をきょうはさせていただいたように思うわけでございます。

 そういう観点から考えますと、しかし、全般的に自主規制というのはできるんだろうかということが片や心配になるわけですよね。先ほど来、天野参考人は、初めての自主規制というかこういうスポットCMが憲法というとてつもない大きな問題で試行錯誤の実験なしに入るということについての危惧感をお述べになりましたけれども、私もそういう感じで、今まで全体としてマスメディアの世界がこういう自主規制という問題について具体的には何も経験のない分野でできるんだろうかというのがまず第一の問題なんでございますけれども、先ほど天野参考人がおっしゃったことについて山田参考人にもう少し踏み込んでお尋ねしたいんです。

 もともと民放連としても、まだ検討を開始したばかりですから具体的なことはおっしゃられないとは思いますけれども、例えばCMの賛否両論の時間というものを平等にするように配慮するとか、あるいは料金の引き下げの問題について何らかの方法を提案していくとか、そんなようなことについて民放連として実際問題として検討できるのかどうか、そういったことについてまずお伺いをしたいと思います。

山田参考人 していかなければいけないと思っていますし、これから現実に、きょうも私、ここに参加させていただきまして非常に現実のものとしてとらえられるようになってきております。

 天野さんはNHKと民放でつくっておりますBPOの放送番組委員会の委員長というのをお願いしておりまして、日ごろから放送に対して忌憚のない意見をいただいております。天野さんのようないろいろな各界の方々が、日々、民放連のそういう組織の中で放送について率直な意見を交わされております。ですから、自主規制の、どういう形でプロジェクトチームをつくっていくのか、どういう委員会をつくっていくのかというのは、まだそこまではいっていないんですけれども、本当に国民の皆様の考え方が反映できるような、そういう形の議論ができる場を具体的に持って、そして、テレビの自律の中で自主規制というものをつくっていきたいというふうに思います。

滝委員 その延長線で、引き続き山田参考人に伺いたいと思います。

 例えばCMの総時間数を一対一になるように、こういうような規制というか申し合わせをした場合に、問題になりますのは、今の辻元委員のお話じゃございませんけれども、憲法改正に賛成の側はCMの料金を自由に出せる団体もあるいはあるかもしらぬ、ところが、反対派の方はなかなかそれにおつき合いすることができないという場合には、一対一の申し合わせというのが現実問題として実現し得ないことになりますね。そうすると、料金を払えない側に賛成側が規制されてしまう。そういうことは民放連として必ずしも好ましいことではない。そういうことが実際できるのかどうか。

 要するに、料金を払えない側の事情でもってスポットCMが制約されていく、そういうことものまなきゃいかぬ、こういうことでございますけれども、そういった問題についても意見がまとまるんでしょうか。

山田参考人 まとめていかなければいけないというふうに思っております。だから、これはまだこれからですから、私が仮定で話しているので、そういう考え方を民放連はしているのかということとはちょっと違いますが、お金がある人とない人があったら、例えば料金を下げればお金がない人の機会がふえる、それで機会がふえたところに合わせれば一対一になるというような考え方もありますね。

 ですから、そういう機会均等、バランスをとるということの中で、どういうことが我々の中でできるのかということは、これから真剣に考えていかなければいけないというふうに思います。

滝委員 ありがとうございました。

 次に、先ほど委員長から投票日一週間前になったらCMスポットもやめというようなことのそもそもの説明が御披露ございました。委員長のおっしゃるように冷静に判断をする時間的な余裕も必要だという御紹介があったんでございますけれども、もう一つは、これは相手方に対する反論権だと思うんですね。反論のためのフィルムをつくる、物をつくる、こういうことだというふうな意味合いもあるように思います。

 要するに、前日までそれぞれテレビで流しておると最終的な番組についてなかなか反論できない、こういうようなことが出てまいります。これを一週間前に打ち切ったって同じような事態が出てくるのでございますけれども、そういった反論をするための素材、要するに番組、CMをつくる時間というのが必要じゃないだろうかなというところも、直前よりも多少間を置いて設定する理由になっているように思うのでございますけれども、そういうことは実際の放送の立場から見て可能なのかどうか。反論のための時間というものを設けるためにも事前に打ち切っておくというのが言われておりますけれども、そういうようなことはナンセンスなのかどうか。それについて山田参考人にお伺いしたいと思います。

山田参考人 放送基準の中に、政治に関する広告は、反論があればそれを受け付けるという条項がございます。七日間の中でできるかどうかというのは、この七日間というのがどういうスケジュールの中の最後の七日間かということが今はっきりわかりませんので、我々は疑問を呈しているわけでございますけれども、当然、ある意見広告があったらば、それに反対する意見広告というのは取り上げなければいけないというのは、放送基準の中にきちっと書いてございます。

滝委員 今の問題について、これは天野参考人から、この世界の事情にお詳しい立場から、そういう反論の機会というものをどういうふうに考えていくのか、投票日という時間設定がされている中で、ぎりぎりの反論の時間的なものの考え方、そういうものについての御意見があれば伺いたいと思います。

天野参考人 例えば、御存じの方が多いと思いますが、アメリカでたばこのコマーシャルをやりますと、そのコマーシャルをした時間の分だけたばこをやめようという団体に無料で時間を提供しなきゃいけないというのがあるんですね。例えば一カ月間で延べ一時間たばこのコマーシャルがあると、一時間分は喫煙禁止協会か何かそういうところがたばこがいかに害かということをただでやれる、そのお金はたばこを売った側が出すというスタイルのやり方です。

 こういうやり方とかをいろいろ試行錯誤して、みんなの意見がうまくテレビというメディアに反映するようにしようじゃないかという試みはあるんですが、こういうやり方にもまたいろいろな問題があるんですね。例えば、たばこの場合ならいいけれども、今度の場合、反論といったって、賛成側に対する反論というのは……。反対側に対する反論は賛成側が持っていて、両方が反論権を主張し合っていたら切りがないわけですね。

 ですから、最終的には、反論というよりも、僕は、両方に平等に発言のチャンスがあるというふうに考えるしか今のところ方法がないのではないかというふうに思っています。その機会が最後の一週間というのも、そうじゃなくて、それはもっと全体を通してやらなければいけない考え方じゃないかなというふうに思っていますけれども。

滝委員 ありがとうございました。

 次に、再び山田参考人に特に御意見を伺いたいと思うんですけれども、最近、民放連の国民投票法に関連する発言の中で、公務員に対する運動規制を公職選挙法と同じような延長線の中で考えるのはおかしいのじゃないだろうかな、こういうようなことを民放連の意見書の中で見たことがあるのでございますけれども、何となく民放連がそういうことをお取り上げになるのはちょっと異質な感じもするんですけれども、これは放送という立場から見て、そういう公務員の方々を番組に出場させるとかそういうようなことを考えての意見なんでしょうか。そんなことは議論されていないんでしょうか。それを伺いたいと思います。

山田参考人 私は存じ上げなかったんですけれども、先ほどの堀報道委員長の、「公務員、教育者、外国人に対する国民投票運動の禁止の規定も、一定の条件が付されているものの、こうした立場の人々が放送を通じて意見を表明することを妨げることにつながりかねず、」「疑問がある。」ということですね。民放連のこういう見解だと思います。

 私自身、ちょっと報道に詳しくないので、何かここで間違ったことを言うといけませんので、私はよく理解しておりません。申しわけございません。

滝委員 今の問題は、放送そのものの問題では必ずしもないと思いますから、難しいことをお尋ねしたかもしれませんけれども、ある意味では、私はもともと国民投票については公務員を公選法上の今までの流れの中でいろいろな規制をするのはいかがなものだろうかと考えてまいりましたものですから、特に民放連として具体的に実際に放送する際の障害が何かあるのかなということでお尋ねしたわけでございます。

 いずれにいたしましても、きょうは、天野参考人にいたしましても、山田参考人にいたしましても、今までにない実態を踏まえた意見をお聞かせいただきました。私は、少なくとも放送、テレビの中で自主規制ということが具体的にこれから検討に入られるということについて大変意を強くいたしましたので、これで質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

中山委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 両参考人におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきありがとうございました。委員会を代表して、心から御礼を申し上げます。

 この際、休憩いたします。

    午前十一時四十分休憩

     ――――◇―――――

    午後五時六分開議

中山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 本日付託になりました保岡興治君外四名提出、日本国憲法の改正手続に関する法律案及び枝野幸男君外三名提出、日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 順次提出者より趣旨の説明を聴取いたします。船田元君。

    ―――――――――――――

 日本国憲法の改正手続に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

船田議員 ただいま議題となりました自由民主党及び公明党共同提出の日本国憲法の改正手続に関する法律案につきまして、提出者を代表して、提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 日本国憲法はその第九十六条において改正手続を定めているにもかかわらず、そのための具体的な国民投票法制につきましては、日本国憲法が施行されてから六十年近くを経過しようとしている今日に至るまで、整備されてまいりませんでした。このような基本的な憲法附属法典の整備は、国民の負託を受けている私ども国会議員の基本的責務であると言っても過言ではありません。憲法改正国民投票法制の整備は、憲法制定権力の担い手である国民がその権利を行使する制度を整備することであり、憲法改正に対する国民の主権を回復し、真の国民主権を具体化することにほかならないからであります。

 昨年の特別会において設置されて以来、本特別委員会においては、憲法改正国民投票法制全般に関して、各会派からの意見表明、有識者を招致しての参考人質疑、委員間の自由討議など、実に活発な御議論をしていただいてまいりましたが、本年三月からは、これと並行して理事懇談会の場で具体的な法制度の設計に関する論点整理を進めてまいりました。その結果は委員各位にも資料にて御報告しているとおりでございますが、自由民主党、公明党及び民主党の三党間においては、法制度設計に当たってのほとんどの事項について共通の認識が得られるところまでまいりました。しかし同時に、なお幾つかの重要な点において意見の相違が確認されたところでもあります。

 今後は、お互いが現時点で最良と考える法制度について具体的な法律案の形で提出し、これを国会の委員会、本会議という国民に見える公の場において議論をし、かつ、これに対する御意見、御批判をいただきながら、さらに幅広い合意形成を目指してよりよいものにしていくことが、憲法という国家の基本ルールの改正に関する手続法の制定手続として望ましいと考えました。

 これが、本法律案の提出に至る経緯でございます。

 以下、本法律案の主な内容について御説明申し上げます。

 第一は、本法律案は、あくまでも日本国憲法第九十六条の実施法であり、憲法改正国民投票だけを対象としているものであります。

 第二に、国民投票の期日は、国会が憲法改正を発議した日から起算して六十日以後百八十日以内において、国会自身が議決した期日に行うことといたしております。

 第三に、投票権者については、日本国民で年齢満二十年以上の者としております。

 第四に、憲法改正の発議があったときは、憲法改正案の内容の広報活動を行うため、国会に両議院の議員各十名で構成する憲法改正案広報協議会を設置することといたしております。

 第五に、投票の方式については、賛成するときはマルの記号を、反対するときはバツの記号を自書することとし、白票は無効票としております。そして、賛成の投票数が有効投票総数の二分の一を超えた場合に国民の承認があったものとしております。

 第六に、国民投票運動についてでありますが、国民投票運動は基本的に自由とし、投票の公正さを確保するための必要最小限の規制のみを設けることといたしました。その上で、投票事務関係者や特定公務員の在職中の国民投票運動の禁止、公務員等や教育者の地位を利用して行う国民投票運動の禁止、国民投票の期日前一週間のテレビ、ラジオにおける広告放送の制限等に関する規定を設けております。他方、政党等に対するテレビやラジオ、新聞における無料広告枠の提供といった国民投票運動の一部公営に関する規定も設けております。

 第七に、罰則についても、投票の公正さを確保するための必要最小限の規定のみを設けることとしたほか、いわゆる買収罪についても、その対象を社会常識的な範囲を逸脱する悪質な行為に限定するべく、組織により、多数の投票人に対し、賛成または反対の投票をし、またはしないよう勧誘する行為であって、その報酬として金銭や投票行動に影響を与えるに足りる物品を供与する行為等に限ることといたしたところであります。

 第八に、憲法改正の発議手続を整備するため、国会法の一部を改正することといたしております。その内容は、憲法改正原案を発議する場合の賛成者の員数要件、憲法改正原案を審査する憲法審査会の設置、そして憲法改正原案という重要議案を審査することに伴う憲法審査会における審査手続の特例等であります。

 最後に、この法律の規定のうち国民投票の実施に関する部分は公布の日から起算して二年を経過した日から、また、国会法の一部改正の部分は公布の日以後初めて召集される国会の召集の日から、それぞれ施行することといたしております。

 以上が、この法律案を提出いたしました理由及びその内容の概要であります。

 委員各位におかれましては、何とぞ、慎重な御審議をいただきました上で、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。

中山委員長 次に、鈴木克昌君。

    ―――――――――――――

 日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

鈴木(克)議員 私は、民主党・無所属クラブの提案者を代表して、ただいま議題となりました日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案について、その趣旨を説明いたします。

 この法律案は、日本国憲法九十六条に規定する憲法改正国民投票に関する手続と、国政における重要な問題についての諮問的国民投票に関する手続とを一体のものとして定め、あわせてそれぞれの発議に関する手続の整備を行うものであります。

 憲法改正のための具体的手続は、本来、一九四六年制定の際、憲法附属法として同時に整備されるべきものでした。しかも、これら手続の整備は、本来、憲法改正そのものに関する議論と区別して中立公正に進められるべきです。改正が容易であっても、改正が困難であっても、偏った制度では国民の意思を正確にとらえることができず、ひいては立憲主義の自殺行為となるからであります。

 このため、具体的な憲法そのものの議論がこれ以上深まる前に、改正推進派も改正反対派も双方が納得できる制度を整えておくべきであると考え、本法律案を提起しています。

 ところで、憲法改正手続国民投票制度は、間接民主制を基本とする我が国政にあって、直接的に国民の意思を問う例外的な制度です。そして、立憲主義の観点から、直接的に国民の意思を問うことが望ましい案件は、憲法の条文そのものを改正するケースに必ずしも限られません。

 もちろん、国会の意思とは無関係に、国会の立法権限を法的に制約するような手続は認められません。しかし、特に立憲主義にかかわる問題について、国会がみずからの意思に基づき、諮問的に国民の意思を問い、その主権者の意思を十分に考慮しながら権限行使することは、何ら憲法に反するものではなく、むしろその趣旨にかなうことであります。

 このため、私たちは、一般法である諮問的国民投票制度の創設とその特例法である憲法改正国民投票制度の創設とを一本の法律として提案しています。

 以上が本法律案を提出するに至った経緯及び理由でありますが、以下、ポイントとなる点に絞ってその内容を説明します。

 第一に、投票権者の範囲です。

 我が党は、従来から、成人年齢そのものを十八歳に引き下げることを主張しています。このこと自体、速やかに実現すべきと考えますが、せめて少なくとも憲法改正国民投票に関しては、この国の未来に、より長期にわたってかかわっていく若い世代に可能な限り決定に参加する機会を認めることが必要です。このため、本法律案では、投票権年齢を原則十八歳まで引き下げ、さらには、案件によって、国会の議決に基づき、これを十六歳まで引き下げることが可能なこととしています。

 第二に、投票用紙への記載方法及び過半数の意義についてです。

 憲法九十六条は、国会の発議に対する国民の承認を要求しています。わざわざ投票所まで足を運び、かつ、是とする意思を示さなかった者については、承認の意思がなかったものと判断するのが適切です。このため、本法律案では、国会の発議を是としこれを承認する者が投票用紙にマル印を付すものとし、マル印を付した票が投票総数の過半数に達した場合に憲法が改正されるものとしました。

 第三に、いわゆる国民投票運動についてです。

 国民投票と公職選挙は、投票という行動では似ています。しかし、選挙においては政党や候補者という運動主体が事実上限定的に存在しますが、国民投票においては賛成または反対の意見を持つすべての国民が運動の主体となり得ます。また、国民投票では改正に賛成または反対の運動と政治的意見表明との区別がつかず、これを規制すると政治的意見表明そのものに強い萎縮効果が働きます。

 このため、少しでも萎縮効果の生じることのないよう、一つには、特定公務員の運動禁止規定や公務員、教育者の地位利用による運動禁止規定を原則として設けないものとしています。例外として、投票事務等に関与する公務員については運動禁止の規定を設けています。

 また、一票を金で買うような行為は国民投票においても許されるものではないと考えますが、萎縮効果が生じないよう、本当に悪質なケースだけが対象になる構成要件を設けることは困難であるため、買収罪の規定を設けないこととしました。

 以上が、本法律案の主な内容です。

 委員各位には、この法律案と与党案について、改正を目指す者と改正に反対する者の双方が納得できる中立公正な制度が創設できるよう、謙虚かつ真摯な議論をお願いして、趣旨の説明といたします。

中山委員長 以上で両案の趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二十分散会


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