衆議院

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第13号 平成18年6月15日(木曜日)

会議録本文へ
平成十八年六月十五日(木曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 中山 太郎君

   理事 愛知 和男君 理事 近藤 基彦君

   理事 福田 康夫君 理事 船田  元君

   理事 保岡 興治君 理事 枝野 幸男君

   理事 古川 元久君 理事 斉藤 鉄夫君

      伊藤 公介君    石破  茂君

      遠藤 武彦君    越智 隆雄君

      大塚 高司君    大村 秀章君

      加藤 勝信君    河村 建夫君

      坂井  学君    柴山 昌彦君

      高市 早苗君    棚橋 泰文君

      渡海紀三朗君    冨岡  勉君

      中野 正志君    野田  毅君

      葉梨 康弘君    早川 忠孝君

      林   潤君    平田 耕一君

      二田 孝治君    森山 眞弓君

      安井潤一郎君   山本ともひろ君

      吉田六左エ門君    岩國 哲人君

      小川 淳也君    逢坂 誠二君

      北神 圭朗君    鈴木 克昌君

      仙谷 由人君    園田 康博君

      田中眞紀子君    筒井 信隆君

      平岡 秀夫君    石井 啓一君

      太田 昭宏君    桝屋 敬悟君

      笠井  亮君    辻元 清美君

      滝   実君

    …………………………………

   議員           加藤 勝信君

   議員           葉梨 康弘君

   議員           船田  元君

   議員           保岡 興治君

   議員           枝野 幸男君

   議員           小川 淳也君

   議員           鈴木 克昌君

   議員           園田 康博君

   議員           斉藤 鉄夫君

   衆議院法制局第二部長   橘  幸信君

   衆議院憲法調査特別委員会及び憲法調査会事務局長  内田 正文君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十五日

 辞任         補欠選任

  小野寺五典君     山本ともひろ君

  棚橋 泰文君     大塚 高司君

  松野 博一君     坂井  学君

  山崎  拓君     冨岡  勉君

同日

 辞任         補欠選任

  大塚 高司君     棚橋 泰文君

  坂井  学君     松野 博一君

  冨岡  勉君     山崎  拓君

  山本ともひろ君    小野寺五典君

    ―――――――――――――

六月五日

 国民投票法案の反対に関する請願(小平忠正君紹介)(第二五八二号)

 同(仲野博子君紹介)(第二五八三号)

 同(石関貴史君紹介)(第二七二六号)

 憲法改正国民投票法案反対に関する請願(辻元清美君紹介)(第二七二五号)

同月八日

 憲法改正国民投票法案反対に関する請願(笠井亮君紹介)(第二九六九号)

 国民投票法案の反対に関する請願(松木謙公君紹介)(第二九七〇号)

同月九日

 国民投票法案の反対に関する請願(赤松広隆君紹介)(第三〇三三号)

 同(岡本充功君紹介)(第三二三五号)

 同(田島一成君紹介)(第三四二一号)

 憲法を変えるための国民投票法案反対に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第三四一九号)

 国民投票法の制定に反対することに関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第三四二〇号)

同月十二日

 憲法九条改悪のための国民投票法案反対に関する請願(日森文尋君紹介)(第三六三二号)

 同(保坂展人君紹介)(第三六三三号)

同月十三日

 憲法九条改悪のための国民投票法案反対に関する請願(阿部知子君紹介)(第三七〇六号)

 同(照屋寛徳君紹介)(第三七〇七号)

 国民投票法案の反対に関する請願(阿部知子君紹介)(第三七〇八号)

 同(石井郁子君紹介)(第三九六五号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三九六六号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第三九六七号)

 同(志位和夫君紹介)(第三九六八号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三九六九号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三九七〇号)

 国民投票法の制定に反対することに関する請願(笠井亮君紹介)(第三九六四号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 閉会中審査に関する件

 日本国憲法の改正手続に関する法律案(保岡興治君外四名提出、衆法第三〇号)

 日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案(枝野幸男君外三名提出、衆法第三一号)


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     ――――◇―――――

中山委員長 これより会議を開きます。

 保岡興治君外四名提出、日本国憲法の改正手続に関する法律案及び枝野幸男君外三名提出、日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 本日は、議題となっております両案につきまして、各会派の委員から順次御意見を十分以内で述べていただいた後、両案の提出者より発言をしていただきます。

 発言時間の経過につきましては、終了時間一分前にブザーを、また終了時にもブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 それでは、まず、各会派を代表して一名ずつ大会派順に御意見をお述べいただきます。まず、愛知和男君。

愛知委員 自由民主党の愛知和男でございます。

 本日議題となりました両法案につきまして、本委員会における実質審議入り、これはある意味でいうと歴史的な一ページということが言えると思いますが、そのトップバッターとして発言させていただく光栄に浴しましたことを感謝申し上げたいと思います。

 まず、トップバッターの責務といたしまして、憲法改正国民投票法案に対する基本的なスタンスを委員各位とともに確認させていただきたいと思います。

 先日の本会議の趣旨説明において与党案の筆頭提出者である我が党の保岡議員が言われたとおり、憲法制定権力の担い手である国民がその権利を行使する制度を早急に整備することは立法府としての責任であること、そして、改正手続に対する国民の主権を回復し真の国民主権を具体化することは国民の代表者としての使命であること、これが冒頭に確認しておきたい第一の点でございます。その意味では、今回提出されました両法案は、民主党案の筆頭提出者である枝野議員が、本会議における趣旨説明でも同じ趣旨のことを述べられたと理解をいたしております。

 次に、この国家の基本ルールを定める憲法の改正にかかわる論議が、意見の異なる各会派の真摯な議論と協議の上に立って行われ、かつ、最終判断者である国民に対して正確な情報が提示される上でその判断がなされるようにすることが必要であります。そのためには、まず、その発議手続と国民投票の実施手続とが相互に体系性を持って構築されると同時に、その内容が公正かつ中立のものでなければなりません。すなわち、憲法改正国民投票法は、特定の改憲のためのルールでも、特定の護憲のためのルールでも、どちらでもあってはならない、これが第二の確認事項であります。

 この点につきまして、特に共産党、社民党の人たちなどは、憲法改正国民投票法制は九条改憲のための条件づくりだというような発言を時々されることがありますが、私どもの前に提案されております与党案、民主党案いずれも、憲法改正の内容とは切り離された、改憲でも護憲でもない公正中立なルールに関する提案になっていると存じます。与党案、民主党案いずれの案も、憲法改正を容易にするためとか、あるいは難しくするためとか、そのような発想で立案されたものではないということは一目瞭然であると言ってもよろしいかと思います。同じ趣旨のことを枝野議員も本会議で言われていると理解をいたしております。

 さて、以上の二点を確認した上で、以下、両案の相違点について若干の意見を申し上げたいと思います。

 第一は、両案における国民投票の対象でございます。

 私は、今回の法案はあくまでも日本国憲法九十六条の実施法として位置づけ、国民投票だけを対象とするのがいいのではないか、このように考えております。民主党案には一般の国民投票ということも含まれているわけでありますが、それを読んでみますと、その条文の基本的な構成は与党案と全く同じでございまして、まず憲法改正国民投票に関する条項を詳細に規定した上で、一般法であるはずの諮問的国民投票に関する規定は、この特例法であるはずの憲法改正国民投票制度に関する規定を準用するという仕組みになっております。民主党案の立案者においても、暗黙のうちに、本当は憲法改正国民投票法が基本で諮問的国民投票はそれの周辺的な事例なのだと考えておられるのではないかと思えてなりません。

 そうであるならば、この諮問的国民投票に付される案件というものは、憲法改正に準ずるような場面、例えば、ある特定の事項について国会が憲法改正の発議に向けた作業に着手することの是非を問うようなケースに限定するのが筋ではないでしょうか。日本の民主主義を成熟させるという意味で、民主党のアイデアを真摯に受けとめるにやぶさかではございませんが、基本的にはこれらのことは憲法改正論議の中で行うべき事項であると考える次第でございます。

 第二は、国民投票の投票権者の年齢要件でございます。

 私は、十八歳以上でも構わないというふうに思いますが、しかし、国政投票と国民投票でこの年齢要件を違えるということはどうしても理解ができません。両者で年齢要件を異なるものとする理由をあえて探せば、人を選ぶ判断能力は二十歳以上になってからでないと身につかないけれども、国家の基本政策をみずから判断する能力は十八歳でも大丈夫だ、こういうことになってしまうのでありますが、こういう理由が本当に合理性があるかどうかということについては疑問を呈せざるを得ないのであります。

 そう考えますと、年齢要件は、本委員会で論議すべき国民投票法制固有の問題ではなくて公選法の問題であり、また、民法その他の成人年齢一般の引き下げ問題に帰着すると考えるべきではないでしょうか。

 第三は、投票方法の問題でございます。

 与党案におきましては、本会議での質疑でも提出者からたびたび答弁があったとおり、他の選挙等における投票と同様に、国民の明確に表明された賛成または反対の意思をもって民意として理解しております。この立場からは、一般に、わからないとか賛否いずれでもないなどというような多様な意思が含まれていると思われる白票について、これを一律に反対の意思表示とみなすことは、民意を解釈するという許容範囲を超えて、民意をつくり出すことにもなりかねない危険を持っている方法ではないかと考えることになります。

 他方、民主党案におきましては、国民投票において問われる民意は、提案されている憲法改正案に対して承認するかどうかだと考えているようです。つまり、投票者全体の中における積極的な改憲への同意を測定するということでありまして、わからない、どちらでもいいということは少なくとも積極的な現状変更の意思ではないというわけであります。

 この民主党案の立論の一つの理由は、憲法九十六条が承認という文言を使っていることとされております。しかし、法令用語として承認というのは、提示されている原案にそれなりの合理性があることを前提にし、この原案を維持するか、それとも積極的に拒否するかという場面で用いられる例も少なくありません。つまり、憲法九十六条は、国民代表である国会の、しかも両議院において三分の二という特別多数で議決されたことの重みを基礎に、国民がこれを是とするかどうかということを承認するという用語で表現されているとも考えられます。

 そういう意味ではなかなかこれは難しい問題だとも思いますけれども、今後の論議の中で両者が折り合えるようないい知恵を出す必要がある論点であろうと思います。

 最後に、先般の本会議での趣旨説明、質疑において、与党案の提出者からも民主党の提出者からも述べられておりましたけれども、本法律案はいわゆる対決法案では全くありません。それどころか、我が党の甘利議員がいみじくも言われたように、ほとんど違いがない、わずかに残っている違いも乗り越えられない違いとは思えないというものでございます。準憲法的法律として、できるだけ幅広い会派の合意の上で成立されるよう、あらゆる会派を含めた委員全員の積極的な参加によりましてよりよい法律をつくることができるように、各委員の御協力、御理解をお願い申し上げまして、私の発言にさせていただきます。

 ありがとうございました。

中山委員長 次に、仙谷由人君。

仙谷委員 仙谷でございます。

 私は、民主党及び与党が憲法改正並びに国政における重要な問題に係る国民投票法案をこの国会審議に供した、このことは、国民が国の形、憲法について直接主体的に意思表示を行うための枠組みがつくられようとしている、そう積極的に位置づけるべきだと考えております。このことは、国民主権制の深化、日本の民主主義の豊富化としてとらえるべきだというふうに考えます。

 省略して、いわゆる一般国民投票法案というふうに言いますが、国民投票法案、この審議自体を憲法改悪の一里塚として、憲法改悪を阻止する運動論や政治論に基づいて、この国民投票法案の審議自体あるいは投票法案を論難するということは、論理的には国民の主権者としての憲法制定権限あるいは改定権限を否定することと同義であると言わなければなりません。

 いわゆる「護憲論者」が、生きている憲法秩序や憲法体系が幾ら変化しようとも、あるいは憲法事実が変転をしようとも、憲法条項の文言が変わらなければ憲法を守ったことになる、そういう立場から、そのために国民の主権者としての意思の最も根源的で直接的な意思表示を行うこと、すなわち国民投票の枠組みづくりを妨げるということになるのでありましたら、それは文言護憲の自己目的化にすぎないと言っても過言ではないでありましょう。

 また、他方、押しつけ憲法論に基づいた自主憲法制定論からする改憲のためにこの国民投票を提案したという人たちが存在するとするならば、それは余りにも古いアナクロニズムと言うべきでありましょう。国民を被統治者として固定し、みずからを統治者として、国民をただただ国家への義務を果たすべき存在としてしか見ないという傾向の色濃い人々が、ただただ改憲運動の入り口としてしかこの国民投票法案を位置づけないとするならば、これまた国民主権と立憲主義の関係についての理解を欠いたものと言うべきであると考えます。

 運動論や過度の政治主義から離れ、国民主権、すなわち民主主義の深化と豊富化のために国民投票を位置づけることに、合意形成がこの国会で行われるべきだと考えます。

 そのような合意形成が行われるとするならば、おのずからその投票権者の範囲はできるだけ広く、とりわけ世代的に、是非弁別能力のある者には未成年者であっても憲法の選択あるいは判断機会が与えられるべきであるというふうに考えますし、国民投票運動やメディアに対する規制はできる限り最小限度で、国民投票運動あるいはメディアの報道は最大限自由であって保障されなければならないというふうに考えます。そういう観点から考えますと、民主党の提出した法案は、その合理性あるいは妥当性が明らかになるのではないかと考えているところであります。

 私は、住民投票条例を市議会で成立させ、その条例に基づいて、吉野川可動堰の是非を問う住民投票運動の渦中に身を置いて運動を行って、住民投票で吉野川可動堰建設反対の意思を成就させた経験を持っております。この委員会でこの種の経験を持っている方々は余り多くないというふうにお見受けをいたしておりますが、つい最近、本年三月には、例の米軍の空母艦載機の岩国基地への移設計画に関する住民投票、これを我が党の同僚、平岡秀夫議員も経験したところでございます。

 私の吉野川可動堰是非を問う、住民投票条例制定と、そして住民投票、そしてその住民投票期間中の運動という経験から申し上げますと、当時、この条例制定と住民投票そのものに対して、自民党の中央政府の実力者やあるいは当時の自民党所属の建設大臣が住民投票条例制定と住民投票そのものに反対をして、さらに、徳島県や徳島市の可動堰建設推進派の人たち、自民党所属の地方議員やその支持者も大変多うございましたけれども、その可動堰建設推進派の人たちは投票ボイコットを呼びかけたわけでございます。

 今、平岡議員にお話を伺いますと、岩国基地への米軍空母艦載機移設計画住民投票運動の過程でも、ある種の人たちが投票ボイコットを呼びかけたというふうにお聞きしたところでございます。

 他方、現時点で、この国民投票法案を国会で審議していることに消極的であったり、投票法案そのものに反対の立場といいましょうか、否定的な立場をとられる方々の所属する政党及びその支持者の方々は、徳島市の吉野川可動堰建設反対の住民投票条例の制定と住民投票については強力に推進をしたわけであります。その結果、徳島市の住民投票は五四・九九五%の投票率、建設反対九〇・一四%、同賛成九・八六%という結果になりました。

 実は、ちょっと調べてみますと、一九九六年以降、住民投票というのがある種地方自治体でも盛んになってきたわけでありますけれども、現在まで十四件あると言われております。市町村合併関係の住民投票は約四百件あるというふうに言われておりますが、いずれもその時点での住民の賢明な政治意思が表明されているというふうに私は解釈をしております。

 つまり、国民主権あるいは住民自治、住民主権、その民主主義は、国の形、憲法や重要な施策の可否を決め得るというのは国民、住民である、簡明なこの原則が承認されなければならないのではないでしょうか。決定されるべきテーマ、政治課題に賛成であるからといって、あるときは国民投票法案や住民投票条例を推進し、そのテーマに反対である場合にこれを阻止したいということがいかに御都合主義的であしき政治主義であるかは一目瞭然であるというふうに考えております。

 日本の主権者は必ず賢明な選択、判断をすると確信しております。このことに疑念を抱くほど日本の民主主義の成熟度は低くはありません。価値中立的な国民投票法案をつくる、このことによって国民主権、民主主義が前進し、深化し、豊富化する、このことを述べて私の意見といたしたいと存じます。

 以上であります。

中山委員長 次に、桝屋敬悟君。

桝屋委員 公明党の桝屋敬悟でございます。

 六月一日の衆議院の本会議における趣旨説明そして質疑に続きまして、本日こうしてこの特別委員会におきまして審議が開始されることになりましたことは、委員長を初め与野党の理事の皆さんの熱心なお取り組みがあったと思っているわけでありまして、心から敬意を表したいと思っております。

 正直に申し上げますと、民主党の皆さんとは、今日まで真摯な議論によりまして、私どもとしては九〇%、うちの理事は九五%と言っておりますけれども、合意できているというふうに考えておりまして、できれば一つの法律案にしてこの場で審議をしたかったと思っておるわけでありますが、しかしながら、別の法律案をお出しいただいたということで、より国民の皆さんに論点が明確になることも事実でありまして、この特別委員会の場で、改憲を主張される方々も護憲を主張される方々も、そして創憲、加憲の立場の方々も共通に理解できる公平なルールができ上がることを念じまして、議論を進めてまいりたいと考えております。

 本日、審議が開始されるに当たりまして、基本的なことをまず申し上げてみたいと思います。すなわち、今憲法改正のための国民投票法制が本当に必要なのかとの国民の素朴な質問に対する私どもの姿勢であります。

 現行の日本国憲法は、日本国民の間にその理念、精神が浸透し、広く国民に受け入れられている。そういう実態の中で、憲法九十六条に規定されている改正のための手続法が定められてこなかったのはその必要性がなかったからだ、国民はだれも困っていないし、人権侵害を受けたということもない、こういう意見をこの場でも聞かせていただきました。

 しかしながら、憲法制定以来六十年近くを経た今日の時代の要請とともに、昨年までの中山委員長を初め憲法調査会での議論や努力によりまして、国民世論も大きく動き出したのは紛れもない事実であろうと思っております。そうした状況の中で、現行憲法が例外的に規定しております国民投票の具体的な手続を、国民主権の形として、その直結するものとして制度化することは、私は避けて通れない今日の課題であると思っております。

 今回の憲法改正手続法案の提出は、歴史的に見ても大変大きなことでありまして、評価すべきことであると考えているところであります。とりわけ、憲法改正の中身についてこれから議論を行います我が党といたしましては、改正の中身そのものが国民投票のルールづくりに影響を与えると言われているわけでありまして、この国会において法案が提出されたことを大いに歓迎したいと思っております。

 そこで、本会議でも発言をいたしましたけれども、ここで改めて我が党の現行憲法及び改正憲法に対する基本的な考え方を述べてみたいと思います。

 本会議でも申し上げましたけれども、我が党は、現行の日本国憲法はすぐれた憲法でありまして、戦後、日本の平和と安定、発展に大きく寄与してきたと高く評価しております。中でも、国民主権主義、恒久平和主義、基本的人権の保障の憲法三原則は、普遍のものとしてこれを堅持すべきだと考えております。憲法九条に関しても、我が国の平和主義の象徴であり、戦後の日本の平和と繁栄を築く上で極めて大きな役割を果たしてきたと認識しております。

 したがいまして、我が党は、憲法三原則と平和憲法の象徴であります憲法九条を堅持した上で、時代の変化に応じて現行憲法を部分的に見直し、新しい条文を加え現行憲法を補強していくという、いわゆる加憲という立場に立っております。具体的には、国民主権の一層の明確化、環境権の重視、知る権利やプライバシー権など新たな人権の確立、平和主義のもとで国際貢献の推進、地方分権の確立などなどであります。

 こうした我が党の加憲方式は、現行憲法が広く国民の間に定着をし支持されているという基本認識に立つならば、全部の改正論や逆に全く変えてはいけないとするかたくなな護憲論がともに国民の幅広い理解を得るのはなかなか難しい、時代の発展に伴って必要なものがあるならば、それを加えて補強していく方式の方が現時点では最も現実的な手法であるとの考えに基づくものであります。衆議院憲法調査特別委員会、この委員会におきまして、参考人質疑の中でも、加憲につきましては、広く国民の合意を得る上で現実的な選択肢ではないかとの評価もいただいたところであります。

 さて、もう一点、具体的な中身に入る前に申し上げておきたいと思います。それは代表民主制と直接民主制の話であります。

 もとより、我が国は憲法前文で「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、」とうたわれておりますように、九十六条に規定する国民投票は例外といたしまして、大原則として代表民主制をとっているわけであります。私は、ここで代表民主制と直接民主制の優劣を議論しようとは思いませんが、とりあえず二つのことを本日は申し上げておきたいと思います。

 一点は、今、憲法改正の国民投票法制、いわゆる直接民主制というものが脚光を浴びているのは、我が国の代表民主制への漠然とした、しかしながら大きな不信感、フラストレーションといいましょうか、こうしたものが背景にあって、その分だけ直接民主制への期待となってあらわれているのではないかと思うわけであります。と同時に、先ほど同僚委員からもお話がありましたが、私は、最近の地方自治体における住民投票の実態を見ながら、十分に議論が熟さないままに住民や国民による直接的な決定が行われるとすれば、それはそれで大きな危険性も有しているわけでありまして、とりわけ私は代表民主制への強い危機感を感じている一人であります。

 二つ目は、この危機感をどう乗り越えるかということでありますが、大事なことは、代表民主制のプロセスを十分機能させて、国民の意思決定ができるだけスムーズに形成されるよう努力をしなければならないということだと思います。直接民主制、この本来の機能が十二分に発揮するためには、代表民主制のこのプロセスが私は大事だと考えているわけであります。

 憲法は、国会の多数決によっては変えることのできないルールであり、国民自身が決定することを求めているわけで、主権者である国民が投票に至るまでの意思形成の過程が極めて大事であります。どのようにして国民の意思を決定していただくのか、そのルールがまさに今回の法案でありまして、今こそしっかりと議論をして結論を得ていかなければならない、このように思っているわけであります。

 直接民主主義の手法をとる憲法改正のための国民投票が本来の機能を果たすためにも、国民の代表である私どもこの特別委員会が真摯な議論を行い、より公正なルールとして法案ができ上がることを心から念願しながら、私の発言を終わらせていただきます。ありがとうございます。

中山委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 いよいよ今国会も会期末を迎えることになりました。こうしたときに、審議未了になることが明らかな法案をめぐる議論をこういう形で開始すること自体が異例であることをまず指摘しなければなりません。しかも、去る六月一日の本会議において、自民、公明両党及び民主党提出の改憲手続法案の趣旨説明と質疑を通じて、私は両法案を廃案にすべきだとの意をますます強くしております。

 以下、三点について述べたいと思います。

 第一に、今なぜ改憲手続法の整備なのか、その根本の問題について提出者から道理ある説明は結局得られなかったということであります。

 与党の法案提出者は、改憲手続法制を整備することが国会議員の基本的責務であり、今日まで成立を見ていないことは国会の怠慢であると述べて、本法案が国会に上程され審議が始まったことを歴史的だと繰り返し発言されました。ところが、その審議を行った本会議場には、自民党席を中心に極めて多くの空席が目立ちました。提出者はこの現実をどう説明されるのでしょうか。

 法案の提出はまた世論の高まりにこたえたものとの説明もありましたが、一体どこに改憲手続法を求める世論の高まりがあるのだろうか。この間の世論調査では改憲手続法整備に反対ないし疑問視する声が多数であることは繰り返し紹介されたところであります。本委員会に付託された請願も、法案は廃案にせよ、あるいは反対というものばかりであります。

 私は、本会議質問で、この六十年、改憲手続法がつくられてこなかったのは国民が改憲を具体的に必要としてこなかったからであり、国民は改憲手続法の制定を国政の重要課題とは見ていないと指摘しましたけれども、まさに、国民はもちろん、与党の中にもそう見ていない議員がかなりおられることを示しているのではないかと私は受けとめました。むしろ、改憲機運を高めようというねらいから法案提出を急いだとのマスコミの指摘は、国民の要求のないところに無理やり法案提出を強行した政党の本音を言い当てたものだと思います。

 第二に、こうした状況のもとで両法案が提出され、会期末のどさくさにあえて委員会審議が開始されたことは、現実の改憲案づくりの動きと密接不可分に結びついたものであって、とりわけ九条改憲へと地続きでつながっていることがいよいよ明確になったということであります。

 実際、本会議では、与党提出者が幾ら改憲案の内容と手続法の議論は別個の問題と繰り返されても、自民党質疑者から、手続についての議論もいいですけれども早く憲法改正の中身についての議論に入れという注文が出されたのであります。とりわけ自民党の提出者は、新憲法草案に示された九条改憲についての答弁の中で、アメリカが起こす戦争に参戦することを目的とするものではないと言うものの、集団的自衛権の行使や、米国が世界各地で起こす戦争に参戦し武力行使を可能にしようということではないかという問いには否定がありませんでした。さらに、憲法に国民の行為規範としての役割、機能を持たせるなどの議論は、歴史的にも世界的にも全く通用するものではありません。

 他方、現実政治の舞台では、自民、公明の政府・与党が、日米合意に基づいて米軍と自衛隊を一体的に再編強化し、さらに自衛隊の海外派兵を本来任務に格上げする防衛省設置の法案を提出しております。まさに、海外で戦争をする国づくりに向けて実質的な九条改憲への道を進もうとしているのではないか。その上、改憲の動きと一体に、教育基本法改悪、共謀罪の新設など、自民党の新憲法草案を先取りする政治が推し進められていることを指摘しなければなりません。

 このような改憲をめぐる現実が進行する中で、幾ら両案の提出者、政党が公正中立なルールをとか公正中立な立場でと主張しても、また、党として改憲や加憲を決めているわけではないと言っても、改憲手続法案を提出しその成立を目指すこと自体が、結局、九条改憲の流れをつくり、促す役割を果たすものになることはいよいよ明らかではないかと思います。しかも、改憲手続の両法案に盛り込まれている憲法審査会の設置は、こうした改憲の流れを連続的に推し進めようとする、そういう仕組みにほかなりません。

 第三に、両法案ともに、改憲推進勢力にとって改憲案を通しやすい、可能なあらゆる仕組みを盛り込んでいることは否定しようもないということであります。

 与党案について私は、公務員及び教育者がその地位を利用して国民投票運動をすることができないとの禁止規定を置き、さらに買収罪などの罰則を設けていることの理由をただしましたが、提出者は規制は必要最小限のものと言うだけで、合理的な説明を聞くことができませんでした。

 両法案に共通している改憲推進の大キャンペーンができる仕組みについても、なぜ広報協議会の構成や政党の広告を所属議員数の比率で配分するのかただしましたが、反対会派に配慮しているという答えでしかありませんでした。

 さらに、改憲案の国民の承認に関する過半数の意味について、ハードルを低く設定し、最低限の国民の賛成で改憲案を通そうということではないかとただしましたが、いずれの提出者からも国民に納得の得られる説明は聞くことができませんでした。

 法案提出者は、改憲手続法の整備が国民主権の具体化だ、国民の主権を回復することだと主張されますけれども、このように改憲推進勢力にとって都合のいい法案を出しておいて、どうして国民主権の具体化などと言えるのでしょうか。

 こういう法案だからこそ、各界からも厳しい批判の声が寄せられております。

 例えば、本委員会委員あてに送られてきた第二東京弁護士会の五月三十一日付、憲法改正国民投票法案に反対する会長声明は、投票運動の禁止や罰則規定、最低投票率を設けていない問題などを指摘した上で、「今回の法案には多岐にわたって重大な問題点があり、当会はいずれの法案にも到底賛成することができない。」と結論づけております。

 地方紙でも、例えば五月二十七日付の信濃毎日新聞は、「国民投票法案 なぜいま、の疑問が募る」との社説を掲げ、「憲法論議が煮詰まっていないのに、なぜいま手続き法を決める必要があるのか分からない。」「五〇%未満の投票率でも成立し得る仕組みでは、問題を残す。」「国民投票法の制定を急ぐ必要はまったくない。」と主張しております。

 改憲手続法案をつくろうという機運が一向に盛り上がりを見せない一方、憲法九条の改悪に反対する国民の世論と運動は目覚ましい前進を遂げております。今月結成二周年を迎えた九条の会は、全国各地でその数が実に五千百七十四に広がっております。改憲手続法両法案をきっぱり廃案にし、本委員会を会期末で閉じることこそ、こうした多くの国民の願いにこたえる道であることを重ねて強調して、発言としたいと思います。

中山委員長 次に、辻元清美君。

辻元委員 社会民主党・市民連合の辻元清美です。

 先日の六月一日の本会議で、自民党、公明党提出の日本国憲法の改正手続法案と民主党提出の日本国憲法の改正手続及び国民投票法案の両案について問題点を指摘いたしました。これを踏まえ、さらに国民投票法と国会法との関係について本日は問題を掘り下げたいと思います。

 今回の両法案とも、国民投票法案の本則の条文の中に国会法の一部改正を規定しております。両者は憲法改正という一連の手続の中に位置づけられ、個別発議に関する条項や広報協議会の設置、構成及び権限に関する事項の存在という点などにおいて密接に関連するので一つの法案にまとめたと両法案提出者は説明しております。

 しかし、国民の意思を直接問う手続と、国会内で憲法改正の発議の要件や憲法改正原案の審査機関である憲法審査会の設置とは全く本質が異なります。両法案は、主権者である国民の意思の発現と国会の意思の形成とを同一の法律で処理しようとするもので、これは主権者である国民と立法府である国会との地位を混同するものであって、憲法体系の中で根本的に問題があるのではないかと一貫して社民党は主張してきました。憲法に関する法律については、便宜上の奇策を講じることなく、立法の王道に従った厳格な対応が求められます。両法案提出者には、その原則に立ち戻った対応を強く求めます。

 国会法四十五条は、各議院は、その院において特に必要と認めた案件または常任委員会の所管に属しない特定の案件を審査するため、特別委員会を設けることができると定めています。憲法調査特別委員会の目的は、日本国憲法改正国民投票制度に係る議案の審査等及び日本国憲法に関する広範かつ総合的な調査を行うであり、この特別委員会で審議できる議案は、国民投票制度に関するものだけであると考えるのが通常ではないでしょうか。「等」がついているから本特別委員会で国会法の改正まで審議できるというのは、国会運営の常道を踏み外していると考えます。

 また、常任委員会の所管に属さない特定の案件を扱う場合に特別委員会が設置できるとなっておりますけれども、国会法の改正は常任委員会である議院運営委員会の所管に属することは明らかな案件ですから、議院運営委員会で審議するのが正当な運営であると考えます。

 特に、法案成立の次の国会から憲法改正原案の審査を開始し、閉会中もその審査を継続し、憲法改正原案をつくれる憲法審査会の設置は、憲法改正という重大な事項に関するものであり、各議院の重大な組織変更です。このような組織の是非に関する議論こそ議院運営委員会の最も重要な専管事項です。

 憲法改正に関する公正な手続を議論するというのであれば、その法案の構成や委員会審議の取り扱いは、他の案件以上にだれがどこから見ても公正で厳格な取り扱いが求められます。したがって、本委員会は、国会法四十五条に厳格に従った運営がなされるべきであると考えます。両案とも国民投票法と国会法の改正を一つの法案にしているために、国会法四十五条を厳格に適用した場合、どの委員会でも審議ができない法案になってしまっているという指摘を両法案提出者は深刻に受けとめていただきたいと思います。

 また、私は六月一日の代表質問で、果たして今のような国会の状況で憲法に関する重要事項を論ずることができるのかと、立法府のあり方に警鐘を鳴らしました。それは、憲法とは国民の権利を侵さぬように国家権力の権力行使を制限する原則を定めたものであるという、憲法の意味を十分理解せぬままに憲法を論ずる、そのような発言をする議員が多数存在しているような立法府のあり方についての問題提起でした。

 いみじくも、この代表質問の日の本会議場の姿は、この立法府の深刻な姿を浮き彫りにしたように思います。廃案を求める社民党や共産党に対してだけではなく、法案を提出している民主党の法案提出者にまで自民党席からすさまじいやじが浴びせ続けられました。この姿は、憲法とは何かという認識以前に、国家の基本法である憲法という立法府にとって最も重要な案件を議論しているのだという自覚すらないようなありさまでした。このような状況では、憲法に関する議論が真っ当に進められるとは考えられません。

 また、私は、昨年発表された自民党の新憲法草案が、国民が遵守しなければならない責務を国家が規定しているなどの点において近代憲法の原理を逸脱しているという専門家からの指摘について、民主党案提出者の見解を求めました。

 民主党案提出者からは、この新憲法草案について批判が展開されました。自民党の新憲法草案は、憲法の定義を全く理解していない論外のものである、国民に対する命令と解される内容が含まれていること、これは憲法のイロハがわかっていない議論である、憲法によって命令を発する主体である国民が同時に命令を受ける客体であるなどというのは一種の論理矛盾であって、そんな論理矛盾のことを堂々と公党が提起されているだなんというのは全く信じられないというような、私から見ますと本質を突いた批判でした。

 これに対して、自民党案提出者からは、憲法は国家目標の設定あるいは国民の行動規範としての役割、機能も持ってくるものだという認識が示されました。

 両法案提出者の間で、憲法そのものの認識が百八十度違うのではないかということがはっきりいたしました。

 再三本委員会でも訴えてまいりましたが、私たちは憲法という最も重要な案件を取り扱おうとしているのであり、憲法とはという最低限の共通認識が築かれないまま議論を進めることは、憲法そのものを冒涜し、主権者をないがしろにすることになると私は考えております。

 以上、両法案には国会法との関係で法案構成そのものや審議の取り扱いに問題があるばかりではなく、憲法とは何かという共通認識が両法案提出者の間ですらばらばらであるという現状が明確になった、このような状況のままで審議に入ることはできないのではないかと考えております。

 今国会はあと数日で会期末になりますが、この際、両法案とも一たん廃案にして、私たちは立法府を挙げて十分な憲法認識を深める努力をまず行うべきであるということを訴え、私の主張を終わります。

中山委員長 次に、滝実君。

    〔委員長退席、愛知委員長代理着席〕

滝委員 国民新党・日本・無所属の会の滝実でございます。

 先ほどの六月一日の本会議における代表質問におきまして、与党あるいは民主党の提案者からそれぞれ御見解をお示しいただきましたので、そういうことも踏まえて本日は意見を開陳させていただきたいと存じます。

 まず最初に、今、辻元委員から、六月一日の本会議の様子についての御発言がございました。私も、この本会議における情勢といいますか状況というのは余り好ましくない、そういう感じがいたします。この場でそんなことを申し上げるのは恐縮でございますけれども、やはり意見は意見としてお互いに聞く、そういうような姿勢がなければ国会はそもそも成り立たない。それを、発言を抹殺するような言葉をかけるというのはいかがなものだろうか、こういうようなことをあえて申し上げておきたいと存じます。

 さて、今回の二つの国民投票法案でございますけれども、それにつきまして基本的な考え方を私はまず申し上げておきたいと思うのでございます。

 言うまでもございませんし、今さら言うのもどうかと思うのでございますけれども、民主主義は多数決の原則に基づいている、これは当然のことでございます。しかし、その多数決の原則というのは、ただ単に採決すればいいというものではございません。

 多数決の原則が成り立つためには、賛成、反対をめぐって十分な議論が尽くされる、これが前提でございます。そういう前提のもとにおいて初めて合理的な結論に達し得る人たちが二分の一以上になるという、いわゆる有名なコンドルセの定理というのがあるそうでございますけれども、そういうような確率論を背景にしている。これは直観的にみんなそう思っているわけでございますけれども、そういうことが前提だろうと思うのですね。

 そういう意味では憲法改正の国民投票も、十分な議論を尽くす、十分な意見をお互いに認識する、それでなければ二分の一以上の賛成を要件とする憲法九十六条の意味がないというふうにさえ思うわけでございます。

 したがって、一般の法案であればなかなか一般国民がそこまではいきませんから代表民主制をとらざるを得ないわけでございますけれども、あえて直接民主制としての国民投票制度をとる以上は十分な意見を認識してもらう、これが前提でなければならないということをまずお互いに共通認識として持つ必要があるのだろうと思います。

 そういう意味で今の出ております二つの法案を見ますと、やはりそこのところに若干の不徹底さがあるように思います。

 どういうことかと申しますと、例えば広報協議会の委員の数、あるいは政党ができる無料の広告放送時間、新聞広告、こういったものの割り振りは所属する国会議員数で割り振るということで共通をいたしておるわけでございますけれども、私は、当然、国民投票は国会における議決に拘束されてはいけない、やはり中立の立場から国民に賛否両論の趣旨の説明なりあるいは国民運動を展開することを保障しなければいけないように思います。

 そういう意味では、広報協議会の委員の割り振りについて若干の配慮があります、しかし、それはその程度ではいかがなものだろうか、こういう感じがします。それから、無料の広告放送時間あるいは新聞紙面の割り振りについても同じようなことがある。どだい憲法改正案が国民投票に付されるときには、国会においては三分の二以上の多数決で決まっているわけでございますから、当然反対派の意見は三分の一以下でしか国民の目に触れることができない。そういう前提の中で中立的な国民投票を保障することは不可能だというふうに思いますので、私は改めてそういうことについて検討をしていただきたい、そういうふうに思います。

 それから、その関連で申し上げますと、参考人質疑でもございましたけれども、有料のテレビ広告につきましては、憲法改正の賛成、反対派が公平に利用できるような対応を民放連としても考えたい、考えなければいけないという御発言がございましたけれども、当委員会におきましてもこの民放連側の対応を踏まえた配慮が必要だろう、こういうふうに思います。

 それから二点目の問題として、憲法改正によって憲法が変えられても、相変わらず憲法のいわば解釈、運用に恣意的なことがあるならば何のために改正したかわからない、こういうような御指摘に対して、与党の提案者も民主党の提案者も国会法の改正で予定しております憲法審査会でそのようなことを考えたらどうだろうかと、運用の抑制をどうするかということについてこういうような見解が示されました。私は、それは一つの考え方として、憲法審査会でこの問題を取り上げていくということは一つの大きな方法だろうというふうには思いますけれども、それだけで内閣の権限の濫用を抑制することができるのかどうか、極めてあいまいだというふうな感じがいたしますので、これについてももう少し検討をしていく必要があるんだろう、こういうふうに思います。

 それから三点目に、これは愛知委員初め、国民主権に関連いたしまして、一般的、諮問的な国民投票制度について否定的な見解がしばしば示されてきたわけでございますけれども、もともと、例えば英米においては国民主権の徹底ということについてはかなり距離を置いてきましたね。だから、例えばアメリカでも憲法改正には国民投票を用いておりません。しかし、最近では、そういう英米流の国民主権の徹底についてはいささか疑問の観点から、抑制的に考えてきた英国でも一般的、諮問的な国民投票制度を導入しております。それからまた、オランダもイギリス、アメリカに近い格好をとってまいりましたけれども、そのオランダも一般的、諮問的な国民投票制度を導入する、こういうことになってきているわけでございます。

 もともと英米ではイギリスのエドモンド・バークの国民主権についての疑問的な政治哲学が根底にあってこういうようなことになってきたと思いますけれども、それが今、国民投票制度ということで、一般的にエドモンド・バークの考え方が修正されてきつつある、そういうふうに私は受けとめております。そういう意味では、この国民投票制度を憲法改正についてのみ考えるのではなくて、一般的な諮問的な制度を改めて検討すべきだ、私はこういうふうに思います。

 以上、主なところを三点ばかり申し上げましたけれども、もう一つつけ加えさせていただきますならば、公務員の国民投票制度についての取り扱いで相変わらず規制が従来どおり残っている、あるいは買収の規定についても事細かに買収の規定が残っている。私は、それはもう少し簡素あるいは規制緩和をすべきだろう、こういう感じがいたします。

 いずれにいたしましても、与党案、民主党案の二つの法案が出てきているわけでございますから、私は一本化するような努力を引き続きやるべきだということを申し添えて、発言を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

    〔愛知委員長代理退席、委員長着席〕

中山委員長 これにて各会派一名ずつの発言は終わりました。

    ―――――――――――――

中山委員長 次に、両案の提出者より発言を求められておりますので、順次これを許します。それでは、まず、保岡興治君。

保岡議員 提出者を代表しまして発言をさせていただきます。

 各党からそれぞれ憲法改正国民投票法案、憲法改正手続法についてのいろいろな考え方が述べられました。

 私は、ここに国会がこの法案を審議できる状況ができたということは極めて歴史的な大きな意義があると。この点についてはそれぞれ愛知先生や仙谷先生、滝先生等からの御発言にもあったとおりでありまして、私としても、趣旨説明の際に申し上げましたが、憲法制定権力の担い手である国民がその権利を行使する制度を早急に整備することは立法府の最大の責任であった、戦後六十年この法案がなかったということは国会の怠慢だと申し上げましたが、これが今国会で審議が始まることは、まことにこのような立法の怠慢に終止符を打つという歴史的な意義を持つものだと、私は本当に強く今国会における審議の重要性を認識しておるところでございます。

 また、この法案をそれぞれ与党、民主党から提案することになりましたが、そのプロセスで既に五十時間以上にわたる審議や論点整理をやってきた。しかも、海外の視察、昨年十一月のヨーロッパの各国の国民投票法制の調査を含めると五十時間は優に上回る、今まで国会で審議している重要法案と比較して極めて多くの時間を割いて既に論議をしてきているということが言えるのではないかと思います。しかも、その論議を踏まえて論点整理を行いました理事懇談会においては、立場の違いはあっても、共産党の笠井先生、社民党の辻元先生がこれに真摯に対応していただいて議論に参加していただいたことは、これまた憲法の取り扱いを国会がどのように対応していったらいいかということをつくっていくプロセスとして非常に重要なことだったと思っております。

 今後も立場の違いを超えて議論されて、いろいろ整理された論点整理を通じての共通点、相違点、こういったものをもとに、確かに共同提案で民主党と一緒に提案できればよかったのかもしれませんが、先ほどお話にもありましたとおり、違いを国民の前に明確にしてさらに議論を深めて、本質をしっかりとらえて、手続法を公正中立な、歴史に残る、国民に本当に信頼してもらえるルールとして確立するということができることもまた大きな意義を持っていると思います。

 したがって、これは社民、共産の先生からお話のあった、国民投票法制は必要ないという前提に立つ意見もありましたけれども、論点整理の場と同じように、今後も、例えば公正、厳格な取り扱いを発議の手続でも国民投票実施の手続でも工夫していかなきゃいけない。またさらに、なぜ規制を最小限度にしたのかとか、それから発議における反対派への配慮というものをもっと工夫して組み込むべきではないかという趣旨でいろいろなお話もあったかと思うんです。そういう点も含めて、この審議を通じて、社民、共産の先生方にもぜひ積極的に御議論に参加していただいて、できるだけ幅広い議論のもとに合意形成を図っていければと心からそう思う次第でございます。

 それは、中山委員長が調査会長時代、それで委員長になられてからも、そして、今日ですと野党筆頭の枝野理事初め、歴代の会長代理であられた民主党の野党筆頭の幹事の方などの長い努力と、信頼関係の醸成の成果がそこにあらわれている。

 先ほど国会における議員の憲法改正手続に対しての関心の低さの御指摘も、本会議場の様子を指摘された言及がありました。あるいはやじについての言及もございました。私は、意見の違いがあっても、むしろ意見が違うからこそ、徹底的に論議をすればこそ、問題の本質が明確になってよりよい案ができていく。これは滝先生もおっしゃったように、論議を尽くしてこそ、最終的には民主主義のルールで多数決で決めていくべきであるということの御指摘にもつながるわけでありますが、今後、この特別委員会における両法案の審議が、いわゆる対決法案ではなくて、与党案、民主党案ともに、国民投票法制の具体的な制度設計に関する本委員会における議論のたたき台というか素材というふうにとらえて、これは幅広い論議をして成案を得ていく必要がある、そのように思います。

 また、先ほど来、特定の護憲、改憲と結びつけることに関し御議論もありましたけれども、各党の先生が言われましたとおり、やはりそれとは切り離された公正中立なルールは何かという観点で議論していくということは当然のことですから、そのことについては皆さん一致しているんです。一致しているので、もしそれに不足する点があったら、どうぞいろいろな角度から指摘いただいて、さらに充実したものにしていく、先ほどから申し上げているとおりでございますので、ぜひ、公正中立なルールを確立するために、これだけ時代が大きく変わって、憲法制定当時と今日とでは別世界、もう甚だしい内外の状況の変化がありますから、制定憲法で完成されているものはない、必ず時代の変化とともにその改変は余儀なくされるというのは、アメリカの第三代大統領のジェファーソンだったと思いますが、そういうことを言っておられまして、これは本当に成文憲法、基本法の持つ運命だと思うんです。

 したがって、今日戦後六十年、憲法改正論議もこれだけ出てくるのは当然。そしてまた、それを守りたいところがあるという御主張も出てくるのは当然。そういった未来の日本を考えて、二十一世紀のあるべき日本の姿を、これから我々が新しい時代にふさわしいものにつくっていかなきゃならない。その国政、国家権力の行使の基本法をしっかり議論するためにも、手続法は、まだ国会に憲法改正案が出されていない今、やる以外にはない。そういった意味で、私は、この機会、この今国会に両案が提出されたことは、大変日本の将来にとって大きな意味がある一歩を踏み出した、そのように思っております。

 いろいろ個別の問題についてはこの議論のプロセスで、本当に私は自分でも驚くぐらいですが、よくぞ意見の一致を見たと思える。例えば民主党の意見の中に広報協議会の提案があった、あるいはマスコミ規制については自由を御主張する議論が参考人からも委員の間からも出た、こういったことで両党の法案に広報協議会が共通の制度として出ていることとか、マスコミの規制の全廃が出たとか、その他いろいろありますけれども、相違点が八つもあったものが見事に一致した形になったというのは、これは非常に見事なプロセスであったと私は思っております。

 したがって、これをこの国会ないし次の国会における両法案の審議において広く委員間で議論する中で同様な成果を得ていくということを強く願いまして、みんなで真摯な議論ができることを心から期待しまして、私の発言とさせていただきます。

中山委員長 次に、枝野幸男君。

枝野議員 民主党・無所属クラブの枝野幸男でございます。

 私どもの日本国憲法の改正の是非を問う等のための国民投票は、決して憲法改正のための国民投票制度ではないということを強調して、その法案提出者を代表して一言発言をさせていただきます。

 まず、この法案の審議が、こうやって委員会での審議がスタートできたことについて、委員長を初めとする皆さんのこの間の御努力に対して感謝を申し上げます。

 その上で、先ほど来お話が出ておりますとおり、とにかくこの制度は、中立公正な制度をつくらなければならないという共通認識は十分に今できているんではないというふうに思っています。

 繰り返しになりますが、この制度は、もし将来この国民投票制度に基づいて発議をされた場合に、発議に賛成の立場、反対の立場、双方の者が納得できている制度でなければ日本の立憲主義にとっての自殺行為である。つまり、それで国民投票をやれば可決されるにしろ否決されるにしろ国民の意思が示されますが、その結果が出た後に、これは制度がよくなかったから国民の意思が正確に反映されていないんだなどという形で憲法の正統性について堂々と批判がまかり通るということになったのでは、まさに我々立場の違いを超えて立憲主義そのものの自殺行為になります。

 したがって、国民投票が行われて結果が出た場合には、それがみずからの考え方に沿った場合でも沿っていない場合でも、こういう公平公正な制度でやったのだから仕方がないということでお互いが納得できる制度にしなければならない。これは、私たちの歴史に対する責任であるということを強く強調してまいりたいと思っております。その上で、そういった中立公正な制度をつくるためには、それぞれ今自分が持っている立場と反対の立場に立ってこの法案の議論を進めていただきたいというふうに思っております。

 まず早期の憲法改正を主張されている皆さんにお願いをしたい。

 憲法を変えるといっても、皆さんが今変えようと思っている方向での改正とは限らない、いろいろな改正があり得るわけであります。皆さんが国会の三分の一以下の勢力となって、皆さんとは逆方向の憲法改正が発議をされることも論理的にはあり得るわけです。例えば、私も国会に議席を置かせていただいて十三年になりますが、十三年前の日本の政治状況とこの十三年間の動きなどを考えたら、そういうことが絶対に起こらないと……。例えば志位さんが内閣総理大臣になって、共産党が国会の三分の二の議席を占めて憲法改正を発議するということはあり得ないことではない。そのときに、この制度であるならば公正公平に国民の意思が反映されるであろう、そういう制度をつくるということを意識をしていただきたいんです。

 皆さんの案が発議されて国民投票にかかるということではなくて、例えば共産党が提案した発議案が、そしてなおかつそのとき皆さんは警察などの権力を持っていない、そのときでもこういう制度であるならば安心だという制度をつくる責任がある、このことをぜひ考えていただきたい。また、まさに憲法の議論をするというのは、そういった場合のことを考えた謙虚な姿勢で物事を組み立てていくということが憲法に対する姿勢であるというふうに思っておりますので、これは絶対条件だと思っていますので、ぜひともそのことを前提に今後の議論をお願いしたいと思っております。

 一方で、当面の憲法改正には反対であるということを主張されている皆さんにお願いをしたい。

 本当に国民の多くの皆さんが例えば今自民党などが提起をしている方向での憲法改正を望んでいないんだとすれば、まさに国民投票で否決するのが一番わかりやすくていいじゃないですか。そうすれば、それがもし国民が望んでいないことであるならば、そのことに不毛なエネルギーを使わなくて済むようになるわけですから。何といっても、それがどちらにとっても一番いいわけですよ。

 ただ、もちろん、確かに指摘をされるとおり、国民投票制度のあり方や、あるいは言論、表現の自由についてのあり方によっては国民の意思が正確に投票結果に反映されない可能性はある。だからこそ、そうならないように、入り口論ももちろん主張されるのは自由でありますけれども、国民の意思が正確に反映される制度というのはどういうことなのかということについて、皆さんの立場から見て、こういうところに心配がある、こういうところで民意がゆがんで結果に結びつく可能性があるということについて、具体的な問題点をどんどんどんどん出してきていただいて、それを一個一個今申し上げた姿勢に基づいてみんなで議論をしていくことが必要であるということをぜひお願いさせていただきたい。

 これを言うと、それを言っちゃおしまいよと言われそうですけれども、今、少なくとも衆参両院のそれぞれについて三分の二を超える議員の政党が国民投票制度をつくるということについては賛成をしています。したがって、多数決民主主義の原理からいえば、それが将来の憲法改正発議に向けても三分の二以上での合意が必要だということを考えたとしても、つくろうと思えば必ずつくれるという制度に今なっているわけですから、今、私たちはそうした真摯な姿勢で、皆さんが民意がゆがめられるのではないかという心配をされていることについて謙虚に受けとめたいと私は思っておりますので、ぜひそういった具体的な中身についての議論をお願いしたいというふうに申し上げておきたいと思います。

 さて、今後進めていく議論の中身でありますが、きょうもいろいろな御指摘をいただきました。

 念のため申し上げますが、私は、私ども自身が法案を出しておいて何だという指摘もあるかもしれませんが、今出している民主党案が完璧なものであるとは思っていません。何しろこの国で今まで経験したことのない初めての制度をつくるわけですから、それなりに、今保岡先生からも御指摘があったとおり、この場においても、あるいは理事会などにおいても、あるいは党内においても、相当な議論をしてきたつもりではありますけれども、経験をしていないことですから、私たちが気づいていない問題点、論点がまだまだ多々あろうと思っています。現に、先日の本会議での質疑あるいはきょうの御発言を聞かせていただいても、ああ、ここはそうかもしれないな、ここはちょっと考え直さなきゃいけないなということを幾つも感じております。ですから、これは完成品を出したものではないということをまず最初に申し上げておきたいと思っております。

 その上で、実は、残された問題は非常に技術的であるというふうに思っています。ただ、技術的であるけれども、そこがまさに本質につながっていく技術的な問題であるということであります。

 技術的な問題で、なおかつ、今までやったことがない制度であるということを考えますと、この場において、もちろん委員相互で活発な議論、やりとりをするということも重要であります、あるいは参考人に来ていただいて参考人の御意見を伺うということも重要でありますが、例えば、これは特に理事の皆さんは御承知のとおりですが、先日、弁護士会に各党理事が呼ばれまして、そこで国民投票制度についてシンポジウムがありまして、弁護士の皆さんからいろいろな具体的な問題提起がなされまして、私もそこで初めて、ああ、こういう論点があるんだななんということについて気がつきました。あるいは、前回のこの委員会で、CM規制のあり方について天野さんに来ていただいて意見を聞いて、私は、ヨーロッパなどの例を見て、一週間前の規制だけやれば十分かなと思っておりましたら、むしろ、ちょっと視点が違うんじゃないかという新しい視点をいただきました。我々自身が気がついていない視点を、それぞれの専門知識を持った皆さんが持っていらっしゃる。

 今後の議論のあり方として、法律をつくる法案審議の一般的な場合と国民投票法制について合意形成していくというプロセスは違いますから、必ずしも国会の従来の前例に何でも従わなければならないとは限らない。例えば一定の見識、知見をお持ちの方に、ここはどういうことになるんだ、ここはこうじゃないかと、我々に対する質問をしていただきたいと思っております。もちろん、委員の皆さんもそれぞれに御専門の知識を持って専門的な立場から今後私どもに質問をしていただくんだと思いますが、例えば弁護士会とか先日の天野さんのような立場の方とか、さまざまな方々にここに来ていただいて、意見を言っていただくだけではなくて疑問点を問いかけていただくとか、いろいろなことが今後必要ではないか。そういうことによって、我々の気づいていない論点、問題点というものを見落としなく制度をつくっていくということをやっていかなければならないというふうに思っています。

 最後に、まさにこの制度は、国民主権を直接行使をされる国民にとって、ある意味では直接生活には結びつかないけれども国民と直接結びついた制度であります。にもかかわらず、例えば憲法改正の手続について、少なくとも半年、一年前の世論調査などを見ますと、国民投票が必要であるということを知っていらっしゃる方が多いケースでも二割程度しかいないという現実があります。

 私たちのここでの議論そのものが、国民の皆さんに手続の流れそのものを知っていただくための、周知のための大変重要な機会であるということ。そして、そこでつくられた制度が、最初に申し上げましたとおり、中立公正であるという国民的な合意をつくらなければならない。つくった本人が中立公正であると思っているだけではだめで、国民的に、こういう開かれた議論で、こうつくってきたんだから中立公正だよねという合意をこの場でつくっていかなければならないと思っています。

 ですから、これまで、理事会、理事懇談会での論点整理を初めとして、さまざまな場でさまざまな努力を重ねてきましたが、今後、まさにこの委員会の場、インターネットなどを通じて今も生で見ていらっしゃる方がいらっしゃると思いますし、メディアなども、あるいは傍聴人の方も直接見ていただいているこの場において、どこをどう変えたらどうよくなるとか、ここはちょっと変えなきゃならないとかという、いわゆる修正協議をこの平場の中で実はつくっていくというような努力と知恵がないといけない。今、そのためにぜひ委員長を初めとして、委員各位の皆さんの御尽力、御協力をお願いして、私の発言を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

中山委員長 これにて両案の提出者からの発言は終わりました。

     ――――◇―――――

中山委員長 この際、御報告いたします。

 今会期中、本委員会に付託されました請願は六種百七十件であります。各請願の取り扱いにつきましては、理事会において慎重に協議いたしましたが、委員会での採否の決定は保留することになりましたので、御了承を願います。

 なお、本委員会に参考送付されました陳情書は、お手元に配付してありますとおり、憲法改正国民投票法案に関する陳情書外五件であります。念のため御報告をいたします。

     ――――◇―――――

中山委員長 次に、閉会中審査に関する件につきましてお諮りをいたします。

 保岡興治君外四名提出、日本国憲法の改正手続に関する法律案

 及び

 枝野幸男君外三名提出、日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案

並びに

 日本国憲法改正国民投票制度及び日本国憲法に関する件

の各案件につきまして、議長に対し、閉会中審査の申し出をするに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

中山委員長 起立多数。よって、各案件につきまして、閉会中審査の申し出をすることに決しました。

 次に、閉会中審査案件が付託になりました場合の諸件についてお諮りをいたします。

 まず、閉会中、委員派遣を行う必要が生じました場合には、議長に対し、委員派遣の承認申請を行うこととし、派遣の目的、派遣委員、派遣期間、派遣地等所要の手続につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

中山委員長 起立多数。よって、そのように決しました。

 次に、閉会中、委員会において、参考人の出席を求め、意見を聴取する必要が生じました場合には、出席を求めることとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

中山委員長 起立多数。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

中山委員長 この際、委員会の最終日に当たりまして、一言ごあいさつを申し上げたいと思います。

 本委員会は、去る一月二十日に設置されて以来、さきの第百六十三回国会に引き続き、憲法改正国民投票制度を中心に精力的な活動を行ってまいりました。

 まず、二月二十三日には、本委員会のメンバーをもって構成された欧州各国国民投票制度調査議員団の報告を聴取するとともに、調査に参加された委員から海外派遣報告に関連しての発言を行いました。欧州の多くの国で採用されている国民投票制度に関してこれほど体系的かつ詳細な調査を行いましたのは、恐らく国会史上初めてのことと存じます。改めて、調査に当たりまして種々御協力をいただいた関係者各位、特に多大なる御助言、御協力をいただいた駐日欧州委員会代表部大使ベルンハルド・ツェプター閣下に対しまして心から御礼を申し上げます。

 これに続く三月九日、十六日及び二十三日の三回の委員会では、各会派一名ずつ大会派順に憲法改正国民投票制度について基調となる御意見をお述べいただき、その後、基調発言者に対する質疑または発言を行いました。これによって各会派の考え方が他の会派の方々にも明確に伝わり、大まかではありますが、共通点及び相違点が明らかになってまいりました。と同時に、こうした委員会審議を重ねていくうちに、各会派の間から、憲法改正国民投票制度に関する論点を総ざらいして整理するべきであるとの声が徐々に高まってまいりました。

 こうした声を受け、各会派の理事、オブザーバー等の御協力を得て、三月三十日の午後、論点整理のための理事懇談会の第一回会合を、憲法にゆかりの深い憲政記念館において行いました。以後、この論点整理の会合は、毎週一回、基本的に委員会があった日の午後に開かれ、各会派が胸襟を開き、真摯にかつ集中的に議論を重ねてまいりました。計七回、九時間余りに及ぶこの論点整理作業の成果は、「各会派の憲法改正国民投票法制に関する論点整理対比表」として、折に触れ、参加メンバーの御了承を得て公表し、委員の皆様にもお届けいたしたところであります。

 ところで、この論点整理作業に入る前後から、憲法改正国民投票法制とメディアとの関係については種々掘り下げて考えなければならない論点があるのではないかという御指摘がございまして、各会派からお申し出がありました。憲法改正国民投票制度は、憲法制定権力の担い手である国民みずからが憲法論議に直接かつ終局的に参加する制度でありまして、その国民の憲法論議の形成にメディアがどういう形で関与していくかについては、当時、微妙な主張の相違が見られたからであります。

 そこで、四月十三日からは、四回にわたり委員会にメディア関係者を参考人に招致して、現場の生の声を皆様とともに聞かせていただくと同時に、同時並行的に行われました論点整理作業にもフィードバックすることにいたしました。その真摯な論点整理と協議の結果、当初は容易に折り合えないと思っておりましたこの論点につきましても、共通の土俵に立つ議論の可能性が見えてまいりました。

 さらに、論点整理作業の進展に伴い、憲法改正国民投票法制の要否の問題、そして憲法改正国民投票法制と広告との関係について、それぞれ五月十八日及び六月一日、委員会に参考人を招いての質疑を行いました。

 五月半ば過ぎ、理事懇談会における論点整理作業は一つの区切りを迎えました。そして、五月二十六日、与党から日本国憲法の改正手続に関する法律案が、また、民主党から日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案がそれぞれ提出されました。そして、皆様御承知のとおり、今月一日、本会議における趣旨説明、質疑に続きまして、本委員会でも両案の趣旨説明が行われたところであります。

 この両案は、我が国憲政史上初めて国民投票制度を定めるものとして国会に提出されたものであります。我々は、現在及び将来の国民にとって何が一番大切であるかという観点から、今まで以上に真摯な議論を重ねていかなければなりません。

 これからも、私は、憲法は国民のものであるという信念のもとに全力を尽くして公平に委員会を運営してまいる所存でございますので、委員各位の御指導、御鞭撻をお願いして、お礼のごあいさつにかえさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

 本日は、これにて散会いたします。

    午前十時二十五分散会


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