衆議院

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第7号 平成18年12月5日(火曜日)

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平成十八年十二月五日(火曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 中山 太郎君

   理事 愛知 和男君 理事 近藤 基彦君

   理事 福田 康夫君 理事 船田  元君

   理事 保岡 興治君 理事 枝野 幸男君

   理事 園田 康博君 理事 赤松 正雄君

      秋葉 賢也君    新井 悦二君

      伊藤 公介君    石破  茂君

      越智 隆雄君    大村 秀章君

      加藤 勝信君    鍵田忠兵衛君

      柴山 昌彦君    棚橋 泰文君

      渡海紀三朗君    中谷  元君

      葉梨 康弘君    早川 忠孝君

      林   潤君    平田 耕一君

      深谷 隆司君    藤井 勇治君

      二田 孝治君    森山 眞弓君

      矢野 隆司君    安井潤一郎君

      逢坂 誠二君    岡本 充功君

      玄葉光一郎君    鈴木 克昌君

      田中眞紀子君    筒井 信隆君

      中川 正春君    長妻  昭君

      平岡 秀夫君    鷲尾英一郎君

      伊藤  渉君    石井 啓一君

      福島  豊君    笠井  亮君

      辻元 清美君    糸川 正晃君

    …………………………………

   議員           加藤 勝信君

   議員           葉梨 康弘君

   議員           船田  元君

   議員           保岡 興治君

   議員           枝野 幸男君

   議員           鈴木 克昌君

   議員           園田 康博君

   議員           赤松 正雄君

   衆議院法制局第二部長   橘  幸信君

   衆議院憲法調査特別委員会及び憲法調査会事務局長  内田 正文君

    ―――――――――――――

委員の異動

十二月五日

 辞任         補欠選任

  谷  公一君     鍵田忠兵衛君

  中野 正志君     秋葉 賢也君

  古川 元久君     鷲尾英一郎君

  大口 善徳君     伊藤  渉君

同日

 辞任         補欠選任

  秋葉 賢也君     中野 正志君

  鍵田忠兵衛君     谷  公一君

  鷲尾英一郎君     古川 元久君

  伊藤  渉君     大口 善徳君

    ―――――――――――――

十二月五日

 国民投票法案の反対に関する請願(金田誠一君紹介)(第七八六号)

 同(菅野哲雄君紹介)(第七八七号)

 同(重野安正君紹介)(第七八八号)

 同(日森文尋君紹介)(第七八九号)

 戦争のできる国づくり、戦争のできる人づくりを目指す国民投票法案反対に関する請願(穀田恵二君紹介)(第八四一号)

 国民投票法案の廃案を求めることに関する請願(笠井亮君紹介)(第八九〇号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第八九一号)

 国民投票法制定に関する請願(志位和夫君紹介)(第八九二号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日本国憲法の改正手続に関する法律案(保岡興治君外五名提出、第百六十四回国会衆法第三〇号)

 日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案(枝野幸男君外三名提出、第百六十四回国会衆法第三一号)


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     ――――◇―――――

中山委員長 これより会議を開きます。

 第百六十四回国会、保岡興治君外五名提出、日本国憲法の改正手続に関する法律案及び第百六十四回国会、枝野幸男君外三名提出、日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 本日の議事について申し上げます。

 本日は、去る十一月三十日に行われた小委員会での両案中の国民投票の対象、投票権者の範囲、投票用紙への賛否の記載方法及び過半数の意義、周知期間並びに国民投票無効訴訟等に係る事項の審査について、小委員長からその経過及び概要の報告を聴取した後に小委員である委員から発言していただき、小委員以外の委員各位にも小委員会における議論について認識を共有していただければと存じます。

 それでは、まず、小委員長から報告を求めます。日本国憲法の改正手続に関する法律案等審査小委員長近藤基彦君。

近藤(基)委員 日本国憲法の改正手続に関する法律案等審査小委員会における審査の経過及びその概要について御報告申し上げます。

 本小委員会は、去る十一月三十日、会議を開き、日本国憲法の改正手続に関する法律案及び日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案、特に国民投票の対象、投票権者の範囲、投票用紙への賛否の記載方法及び過半数の意義、周知期間並びに国民投票無効訴訟等に係る事項について、テーマごとに分けて自由討議を行いました。

 小委員会における議論の内容を本委員会全体で共有するために、その概要を簡潔に申し上げます。

 まず、投票用紙への賛否の記載方法と過半数の意義については、与党案では、賛成するときはマル、反対するときはバツを記載するとともに、有効投票総数の過半数で国民の承認があったものとされ、民主党案では、賛成するときはマルを記載し、反対するときは何も記載しないとともに、投票総数の過半数で国民の承認があったものとし、白票も賛否判断の基礎となる母数に算入することとされています。

 与党案提出者、民主党案提出者から、現在提出されている法案における方式よりも、国民の意思をより正確に反映する方法があれば検討したいとの発言があり、これについて、与党案提出者から、マル・バツを自書する方式ではなく、賛成、反対の二つの欄を設け、投票人はどちらかの文字をマルで囲むことによって投票する方式に変更するとともに、国民の多様な意見を酌み取るために、賛成、反対のいずれかの文字をバツや二重線で消すような記載についても柔軟に対応することとしてはどうか、その上で、白票は賛否判断の基礎となる母数には算入しないこととするとの提案があり、このような方法をとることにより白票の割合は相当減ずるのではないかとの意見が述べられました。

 この提案に対しては、民主党案提出者からも、選挙と異なり他事記載を厳格に排除する必要はないと考えており、投票者の賛否の意思が確認できるものをできるだけ無効票にしないような方式として、与党案提出者からの提案は検討に値するとの意見が述べられました。

 また、この論点に関連する論点である最低投票率制度については、憲法九十六条の過半数とは有権者総数の過半数であるとの見方もあり、最低投票率要件を定めるべきとの意見が述べられた一方、与党案提出者、民主党案提出者からは、それは憲法が要求する以上の要件を加重するものであり、憲法違反の疑いがあるとともに、ボイコット運動を誘発する可能性がある、また、憲法改正が予想されるテーマには国民の関心が高いとは言えないものが少なからず想定され、民主主義においては棄権する自由というものも考えられるといった否定的な見解が述べられました。

 次に、国民投票に関する訴訟については、与党案、民主党案ともに、国民投票が公正に行われ、その結果が適正に決定されることを確保するため、当該訴訟の制度が設けられております。

 憲法改正の限界と無効訴訟については、憲法改正の限界について憲法に明記している国もあり、憲法改正の限界を超える改正が行われた場合には司法審査の対象となることとすべきであるとの意見が述べられました。

 これに対しては、与党案提出者、民主党案提出者から、仮に、憲法改正の限界を超える改正案が発議され、国民投票で承認された場合、内容の是非を決定するのは発議権を有する国会、主権者である国民であり、司法審査の対象となることは想定されないとの意見が述べられました。

 無効訴訟の出訴期間については、与党案、民主党案ともに、法的安定性の要請から、国民投票の結果の告示の日から三十日以内と規定されております。

 これに対しては、憲法改正においては国民投票の結果の確定がおくれても政治的空白は直ちに生ぜず、また、行政事件訴訟法においても近時の改正で出訴期間が六カ月に延長されていることからも、出訴期間が短くてよいということにはならないとの意見がありました。

 訴訟の管轄裁判所については、与党案、民主党案ともに東京高等裁判所の専属管轄としているところでありますが、各地の裁判所への出訴も認めて国民の司法審査を受ける権利を十分に保障すべきであるとの意見が述べられましたが、これに対しては、与党案提出者から、国民投票の訴訟が複数提起された場合の併合の便宜等を考慮したものであり、迅速かつ統一的判断の必要性から東京高等裁判所のみに限定したとの発言がありました。

 次に、国民投票の対象については、与党案では憲法改正国民投票のみが対象とされ、民主党案では国政における重要な問題に係る案件についての一般的国民投票をも含めることとされております。

 与党案提出者からは、民主党案が規定する一般的国民投票に対して、間接民主制との整合性など慎重に検討すべき課題が多いことから、今回の法案では憲法改正国民投票に限定すべきであるとの意見が述べられましたが、一方で、国民の意思を推しはかる意味で、憲法問題などに限った予備的な国民投票は検討に値するとの発言がありました。

 これに対し、民主党案提出者からは、去る十一月十六日の小委員会、同月三十日の午前中の委員会での発言なども前提に、一般的国民投票の一類型として憲法問題などに限った予備的国民投票を検討したいとの発言があり、そもそも、民主党案における一般的国民投票は、政治が判断することのできない、しかし何らかの法整備は必要であるという問題、例えば脳死や代理出産について、法整備の大きな方向性を事前に国民に問う予備的国民投票的なものを想定していたとの発言がありました。

 さらに、予備的国民投票については、他党の小委員からも、民主主義を豊富化するものであるとの賛意が示されたところであります。

 そして、与党案提出者からは、憲法問題などに関する予備的国民投票の制度設計については、直ちに今回の法案に盛り込むのではなく、まずは憲法審査会における議論、運用の中で対処してはどうかとの提案がなされ、これに対し、民主党案提出者からは、そのような予備的国民投票に関する調査、検討が本法によって設置される憲法審査会の対象であることを確認できるものであれば、提案は検討に値するものであるとの応答がなされました。

 次に、投票権者の範囲に関しては、与党案においては二十歳以上の国民が国民投票の投票権を有することとされ、民主党案においては原則として十八歳以上の国民が国民投票の投票権を有することとされ、案件によっては国会の議決により当該投票権年齢を十六歳まで引き下げることができることとされております。

 与党案提出者から、国民投票法の本則で投票権年齢を十八歳以上と規定した上で、附則において例えば公布後三年までに成人年齢等に関する法制上の措置を講ずるものとし、当該措置が講じられるまでの間は二十歳以上を投票権年齢とすることを検討したいとの発言がありました。

 これに対して、民主党案提出者からは、本則で投票権年齢を十八歳以上と規定するとの提案に対し積極的に評価したい、また、成人年齢等に関する法制上の措置については定められた年限までに政府がきちんと措置を行う担保をとっていただきたいとの意見が述べられました。

 これに関しては、与党案提出者から、その趣旨に沿うべく政府と一体の与党として責任を持って知恵を出していきたいとの発言がありました。

 会議を通じての小委員長としての感想を申し上げれば、今回、第四回の小委員会において、小委員同士が個別の論点について掘り下げた議論を行ったことは大変意義深いものであったと感じております。

 議論の対象となった論点は国民投票制度の根幹となるものであり、また、それぞれの論点において、与党案提出者、民主党案提出者から特筆すべき大きな歩み寄りの発言がありました。

 具体的に申し上げますと、投票用紙への賛否の記載方法と過半数の意義について、投票用紙の様式及び運用の工夫により国民の多様な意見を投票に反映させるという与党案提出者からの発言及びこれに対する民主党案提出者からの検討に値するとの発言、国民投票の対象について、与党案提出者、民主党案提出者からの憲法問題などに関する予備的国民投票を憲法審査会において調査検討していくとの発言、並びに、投票権者の範囲について、与党案提出者からの投票権年齢を十八歳以上とすることを本則において規定し附則に関連法制の整備及びこれに伴う経過規定を設けるとの発言、及びこれに対する民主党案提出者からの高く評価したいとの発言であり、これらの発言はそれぞれが国民投票制度の根幹にかかわる重要な論点に対するものであるとともに、与党案と民主党案の大きな相違点となっていた部分に対する歩み寄りの発言であり、画期的なことであると感じました。

 小委員会も既に四回開催され、各回において濃密な議論が行われてまいりました。今回の小委員会における議論により、論点をおおむね一巡しようとしております。小委員会において各小委員からなされた活発な発言、特に、懸案となっていた重要な論点に関する積極的な発言があったことは、最終的な合意に向けての大きなステップとなると確信した次第であります。

 以上、御報告申し上げます。

中山委員長 次に、小委員である委員から小委員長の報告に関連しての発言をそれぞれ十分以内でお願いいたします。

 発言時間の経過につきましては、終了時間一分前にブザーを、また終了時にもブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 それでは、まず、葉梨康弘君。

葉梨委員 自由民主党の葉梨康弘でございます。

 十一月三十日に開催されました小委員会について、現在の近藤小委員長の発言を踏まえて、私も個人的感想として補足的な意見を申し述べたいと思います。

 まず、投票用紙への賛否の記載方法についてでございます。

 投票した方の意思を、その意思が明確であるならばできるだけ反映できる制度としていくことが必要ということについては、与党案あるいは民主党案の提出者とも同じ考えであるというような感想を持ちました。

 これについて、卑近な例を申し上げますと、私が想起いたしましたのは、私どもが行います催し物あるいはパーティーを行うときの出欠はがきでございます。出欠はがきの注意書きのところに、出席、欠席いずれかにマルをつけてくださいと書いたといたしましても、例えば出席を消す、欠席を消す、あるいは出席にバツをつける、欠席にバツをつけるというはがきが返ってきた場合でも、それは出席、欠席のいずれか、意思は明らかということで私どもカウントをしているということが現状ではないでしょうか。

    〔委員長退席、保岡委員長代理着席〕

 ただ、両方を消す、あるいは何も書かない、両方ともマルであるというようなはがきが戻ってきたときには、これはカウントすることができません。しかしながら、このようなカウントするはがきが返ってくることがあり得るかということですけれども、私はそれはあり得るというふうに考えます。

 例えば、来年の一月、二月、三月それぞれについての複数の催し物について出席、欠席を問うたときに、例えば二月だ、三月だというような催し物については国会の日程があるのでわからないといった場合には、一月のみについて出席、欠席を投函するということもこれはあり得るだろう。

 すなわち、例えば憲法においても、幾つか複数の項目について賛否を問うことがあった場合に、ある項目についてはわからない、けれどもこの項目については賛成である、この項目については反対であるというような方も当然いらっしゃるだろうというふうに思います。

 この点について、民主党の枝野委員から、投票所に行って意思を表明しない自由もあるのではないかということが意見として表明されたことは、私としては大いに特筆すべきことであるというふうに考えます。

 いずれにしても、この議論の経過を通じて、与党案あるいは民主党案の提出者の意思においては大きな開きはない、今後さらに合意に達することができる論点であるというような感想を持ちました。

 次に、最低投票率についてです。

 憲法改正については、大きな国民的なイシューである問題について憲法改正を行うということも当然あるわけですけれども、例えば統治機構、そして極めて技術的な改正として仮名遣いといったものについての改正も当然あり得るだろうというふうに私は考えています。

 憲法は、日本国の最高法規でございます。そして、美しい日本語で書かれている必要がございます。それが現在使われている日本語とかけ離れた仮名遣いになってしまった場合には、やはり当然のことながら、改正ということもしっかりと考えていかなければならない。しかしながら、そのような技術的な改正の場合に、本当に高い投票率が確実に期待できるかということは必ずしも明確には言えないのではないかと思います。

 その意味で、私自身は最低投票率ということを設けることには個人的にも反対でございますけれども、やはり投票率を上げるために国民的なイシューについてはしっかりとそこら辺のところの議論をしていかなければならないし、また、上げるための施策については憲法審査会等においていろいろと議論をしていかなければならないというような意見を持ちました。

 第三点は、国民投票に関する訴訟に関し、憲法改正の限界論という議論がございましたので申し述べます。

 自民党案について、自民党の憲法改正案草案というのが昨年の十一月に公表され、この自民党の憲法改正案について、これは憲法改正の限界を超えているんじゃないか、そういうような議論が野党の方からされています。

 ただし、私自身は、この憲法の改正の限界論は、司法の判断にゆだねるのではなく、立法府が立法府の責任として議論していくべきであるというふうに考えます。野党の方の中で、自民党の改正草案が憲法改正の限界を超えていると主張される方は、具体的にどの部分が憲法改正の限界を超えているのか、あるいは、どの部分は改正の限界を超えていないからオーケーなのかというような具体的な提案を意見として提示していくことが必要であると思います。

 具体的な提議を行い討議を行う、これがまさに立法府の議論である。社民党あるいは共産党の方々も、まさか、一言一句、憲法の文言を変えるというような変更が憲法改正の限界を超えているという主張をすることはないと思いますけれども、いずれにしても、立法府の責任において、しっかりと憲法審査会の中で、何が憲法改正の限界なのかということについても議論していくことが大切であるというような意見を持ちました。

 第四点は、予備的国民投票でございます。

 憲法改正については、当然、予備的な国民投票というのもあり得ることであると考えます。しかし、今回の手続法の中においてこのような制度を設けることは、ある意味で予備的な国民投票を義務的なものにしてしまう可能性もあるだろうというふうに思います。今後、例えば、予備的国民投票といいましても、憲法改正についてですけれども、一般的に憲法改正の必要性について聞いていくのか、あるいは特定の改正案について聞いていくのか。先ほども申し上げたような、統治機構、仮名遣いなど、予備的国民投票が必要な改正案なのかどうか。ここら辺のところはやはりケース・バイ・ケースでないかと思います。

 この点についても、国民の意思の吸収の仕方も含めて、やはり憲法審査会において議論して、具体的に制度設計を考えていくべきではないかというふうに思いました。

 第五点、年齢でございます。

 今の近藤小委員長の発言のとおり、与党から投票年齢を十八歳以上とすることを検討するという発言があり、さらに民主党委員からもこの発言を高く評価するという意思の表明があったことは、私は画期的なことであるというふうに認識をしています。

 しかしながら、この点は憲法に関する教育をどのように行っていくかということと大きく関連いたします。憲法審査会においては、まず現行憲法について、そのよい点、時代に合わない点も含めて、国民の理解を深める努力を行うことが大切だと思います。

 先般の憲法調査特別委員会の議論においても、当初二年間、三年間はしっかりと今の憲法について耐震診断をしていくというような発言もございましたけれども、その過程において国民の理解を深める努力をしていくということが非常に大切だというふうに私は考えます。とりわけ、国民の理解を受けるためには、憲法についての教育をどのように深めていくかということがまさに中核の問題として議論されるべきであると考えます。

 個人的には、投票権年齢について、方向性として、より若い世代に国の行く末についての決定に加わってほしいということは私も同じ意見でございますし、大変よい方向であるというふうに考えます。加えて、憲法さらに国づくりのあり方についてしっかりした教育を行うことを議論していくための強力なインセンティブにもなってこようというふうに認識をしています。

 これからの若い世代について、今の憲法についてまず知っていただくこと、そして、今の憲法のよい点について、また時代に合わない点について、しっかりと認識をしていただくということは極めて大切なことであると考えます。

 以上、感想として申し述べましたけれども、全体としては、与党案、民主党案ともそれほどの大きな隔たりはない、やはり国の行く末について、みんなが参加をして、みんなの意思を表明していこうということについては同じ土俵に立っているということを、この小委員会の議論を通じて改めて認識いたしました。

 今後、論点を整理した上で、合意に向けたより建設的な議論が行われることを期待いたしまして、私の発言といたします。ありがとうございました。

    〔保岡委員長代理退席、委員長着席〕

中山委員長 次に、園田康博君。

園田(康)委員 民主党の園田康博でございます。

 私からも、先般行われました小委員会の補足的発言をさせていただきたいというふうに思っております。

 論点は幾つかにわたっております。

 まず、投票用紙への賛否の記載方法及び過半数の意義についてでありますけれども、この際において、記載方法については、私どもは憲法九十六条の条文にまず立ち返っていただくということを原点に始めたいというふうに思っております。

 すなわち、国民の承認を要求しているという観点から、国会の発議に対して積極的に賛成の意思を表明する票というものが、全体、すなわち、私ども民主党は、投票総数の二分の一を超えたかどうかにより承認があったかどうかを判断するのが適切であるというふうに考えております。つまり、賛成か反対かというものを問うのではなく、承認かそうでないかを問うというのがこの九十六条の文言解釈としては素直な解釈であろうというふうに思っておりますし、これが提案時の考え方でございました。

 しかしながら、今般の議論の中において、与党提案者からの、賛成、反対の二つの欄を設けて、それに対してどちらかの文字をマルで囲むといった、先ほどもお話がありましたけれども、そういった建設的な意見というものが柔軟に出されているというところの議論を踏まえて、今後、私どもも、国民の意思、すなわち承認か否かの意思をより完全に近い形で正確に受けとめることができる、そういう投票方法というものについて積極的に提起をしながら柔軟に考えていきたいというふうに思っている次第でございます。

 そして、議論の焦点といたしましては、過半数をどのように解釈するかという点がございました。今日まで、有権者総数の過半数であるとか、あるいは投票総数の過半数、あるいは有効投票総数の過半数と、これについては諸説あったわけでございます。

 投票に行かずに権利を放棄した者までこの過半数の分母に加えるということは、私も現時点ではやはり難しいのではないかというふうに考えている次第でございます。一方、わざわざ投票所まで足を運んで、かつ、国会の発議を是とする意思を示さなかった者、あるいは他事記載などで無効票となり意思を明確に示すことができなかった者については、これは承認の意思がなかったものと判断するのが自然ではないかというふうに考えております。

 したがいまして、有効投票総数と解釈して少数で決定するというよりは、どちらかというと、積極的な意思の表明で賛成が投票総数の過半数を占めることが要請されているというふうに解釈するのが、私は現時点では自然だというふうに考えております。

 そして、先ほども少し触れましたけれども、棄権する自由、投票の棄権ということに対して、これをどのように民主主義の中で考えていくかという問題にも少し触れておきたいというふうに思います。

 すなわち、私ども民主党案では、投票所まで足を運んで、かつ、国会の発議を是とする意思を明確に示さなかった者、これが承認しなかったという形で解釈をしているわけでありますけれども、投票そのものを棄権した者、すなわち投票所に足を運ばなかった者についてどのように考えるかという問題が残るわけでございます。

 この投票を棄権した者は、少なくとも承認はしなかったという国民の一つの意思表示と見ることができるのではないかという御指摘が先般もございましたけれども、私は、必ずしもそうとは言い切れないのではないかというふうに考えております。

 すなわち、投票所に行かなかった者、あるいは行けなかった者というのもひょっとしたらこの中に含まれるかもしれませんが、当該の国民投票において自己の意思表明をあえてしなかったということであるため、承認する、しないということを一概に判断できるものではなくて、みずからの一票、これは賛成にも反対にもどちらにも使えませんという意思表示と考えるのが自然ではないかというふうに考えております。

 したがいまして、これを有効投票数という形までの分母に加えていくということに関しましては、私は適切ではないのではないかというふうに思うわけでございます。

 そしてもう一点、先ほども与党提案者の葉梨委員からも触れていただいておりましたけれども、最低投票率の設定の問題でございます。この議論の中においては、必ずボイコット運動の是非というものも議論に上がってきたわけでありますけれども、最低投票率制度を設けてはどうかという御提起がございました。

 確かに、投票率が低いということに関しては、私もこれは好ましいことではないという認識は共有をさせていただいているところでございます。しかしながら、先ほども触れさせていただきましたけれども、棄権する自由というものも民主主義の中においては考えておかなければならないというふうに思っておりますので、いわゆるテーマによっては投票率が大変大きく変わっていくということもある面想定をし、念頭に入れておく必要があるというふうに思うわけでございます。

 したがいまして、最低投票率制度というものを設けていきますと、いわゆるボイコット運動のように制度の趣旨を曲解した運動を誘発することにつながるということや、憲法上の加重要件ということも危惧されているわけでありますけれども、そもそも選挙権の本質というものは、私は、機関としての公務という側面と、そのような公務に参与することを通じて国政に関する自己の意思を表明することができるという個人の権利としての側面、いわゆる二元説でありますけれども、こういう形で解釈をさせていただいているわけでございます。したがって、自己の意思表明をすることを放棄するという形までこれを認めてしまうということになると、少し無理が生じてくるのではないかなというふうに思っております。

 また、先般、参考人の御意見もございました。発議自体が不適切な場合に、国民が判断できずに、その際は棄権するというようなこともあり得るのではないかという御指摘がございました。だからこそ、一定の意味を持たせるということで最低投票率制度を設けてはという御提案の趣旨であったというふうに受けとめさせていただいております。

 しかしながら、これも、やはり最低投票率制度というものを創設して対応していくということではなくて、そういう不適切な発議というものが起こらないように、事前に予備的な国民投票というようなものの制度を行って国民の意思をしっかりと把握しながら慎重に進めていって、あるいはまた、国民投票がされる場合における周知広報でありますとか、あるいは国民投票運動というものに対して私どもが工夫を行って投票率を上げていくということにつなげていかなければいけないのではないか。これが憲法の要請に従った考え方の自然なものではないかというふうに私は考えております。

 そして、三点目でありますが、国民投票の対象という観点でございます。

 今回、私どもも、国政における重要な問題に係る案件、いわゆる一般的国民投票という形で言われておりますけれども、これにつきましては、広く国政上の重要案件について法整備の大きな方向性を事前に国民の意思を問うという形で制度設計を考えていたところでございます。

 本特別委員会におきましても、御議論の中でも一定の御評価というものはいただいてきたのかなというふうに思っておるところでございますけれども、しかしながら、現行憲法の議会制民主主義、あるいは、国会を唯一の立法機関というふうに規定しているというところから、憲法に規定されている憲法改正のための国民投票というもの、そして、諮問的とはいえ事実上の法的拘束力を有するのではないかという可能性のある一般的国民投票とでは、質を異にするのではないかという御指摘が一方でなされているのは私も承知をいたしております。

 したがって、本法律案では扱えないということになりますと、今後の議論というものをどこの場所で行っていくのかということが言えるのではないか。すなわち、憲法改正国民投票の議論とそれを切り離して別途議論を行うということになりますと、所管委員会が実は見当たらないという危惧も持っているわけでございます。

 国政における重要な問題に係る国民投票の重要性や意義を見出していただけるのであれば、本法によって設置される憲法審査会での審査対象、そして、その中で調査検討をしていくということがいわゆる附則を含めた法案の中において位置づけていただけるということの検討になっていくかどうかということも見きわめておきたいというふうに思っております。

 その際、国会における有権的世論調査であるいわゆる予備的な国民投票というような制度を実際に行うことを考えた場合、この一般的国民投票制度を憲法問題に限定して行うという形式にした場合には法制度的に合致し得るものになっていくのではないかというふうに考えている次第でございます。ぜひ御議論をいただければなというふうに思っております。

 その他、投票権者の範囲の問題もあったわけでありますけれども、これについても、投票権年齢を十八歳以上とすることを本則において規定し、附則に関連法制の整備及びこれに伴う経過規定を設けるという積極的な御発言をいただいたというふうに思っておりますので、私どももこれを受けて高く評価させていただき、今後の議論に付していきたいというふうに思っておる次第でございます。

 以上でございます。

中山委員長 次に、赤松正雄君。

赤松(正)委員 公明党の赤松正雄でございます。

 私の方からは、先般の小委員会における小委員長報告に対する補足的な部分を簡単に申し上げます。

 私の関心は二点でございまして、一つは国民投票の対象、それからもう一つは投票権者の範囲、この二点に限って若干の補足発言をさせていただきます。

 国民投票の対象という問題につきましては、今、自由民主党、民主党両党の委員の方から御発言がございましたけれども、私は、第一義的に、この国民投票の対象、この委員会が対象にしております憲法改正に関する国民投票の問題につきましては、民主党の皆さんがおっしゃっている一般的国民投票の部分はやはり切り離すべきであろうと思います。切り離した上で、どこでどう議論するのかということが課題だという発言が今園田議員からありましたが、それは別途大いに議論する必要がある。先般、枝野議員が提起された脳死の問題あるいは代理出産にかかわる問題、こういう問題は極めて重要なテーマでありますので、別途検討するテーマであろう、そう思います。

 今回のこの憲法改正にまつわる国民投票の手続に関する法律につきましては、先ほど葉梨委員がおっしゃったように、私は、いわゆる予備的国民投票、有権的な世論調査ともいうべき予備的国民投票の必要性を強く訴えるものでありますが、ただ、これはこの法律の中に具体的な形でもって明記するということではなくて、先ほども御指摘がありましたように、今後三年ぐらいのスパンで議論をされる、どこをどう変えるか、変えないでいいのか、どのようにこの一九四六年憲法というものを位置づけ、そして新たな憲法をどういうふうにしてつくっていくのかという議論が行われるであろう憲法審査会的なるものの場において、国民の皆さんの憲法に関する意思というものを、あらかじめ何か具体的に、うまい方法といいますか適切な形を考え出して、皆さんに問いかける必要があるのではないか。

 そういう意味合いにおいて、今後、憲法審査会的なるものの中で議論されるべき対象としてのこの予備的国民投票という格好で、事前に、先に国民の意思というものを察知した上で、その後の憲法改正という問題に、具体的な企画立案といいますか、改正案の中身を決めていくというふうな、そういう相互作用というものがあっていいんじゃないか、こういうふうに考える次第でございます。

 二点目は投票権者の範囲ということでございますが、これは二十歳以上ということか、あるいは十八歳以上にするべきか、こういうふうな議論が先般の小委員会でも行われましたけれども、私どもは、基本的にはこのどちらであっても、いわゆる通常の国政選挙の年齢の規定、今でしたら二十、今度十八歳にするならば、同時に、この国民投票だけが十八ということではなくて、当然のことでありましょうけれども、通常の一般の選挙においても年齢を十八歳にすべきである、こんなふうに考えております。いろいろな議論が展開をされましたが、私も、今の時点で個人的にと申し上げますけれども、十八歳以上ということでいいのではないか、そんなふうに思う次第でございます。

 民主党の皆さんの議論の中で、案件によっては国会の議決により当該投票権年齢を十六歳まで切り下げることができる、こんなふうにされているということでございますけれども、事の趣旨、本来的に言う観点からいけば、私は十六歳に引き下げてもいいのではないかというふうに極めて個人的であるけれども思っております。

 といいますのは、何で十八か、何で十六かということでありますが、第一義的には、いわゆる義務教育というものが念頭にあるんだろう、そんなふうに思います。したがって、先ほど葉梨委員がおっしゃったように、日本の教育の現状の中でどのように憲法に関する教育というものをきちっと位置づけていくかということと極めて密接に関係をしてくるわけでございまして、現在は中学校までが義務教育となっておるわけですけれども、事の経緯、次第によっては十八歳までを義務教育ということも考えていっていいのではないかというふうに、あずかって日本の教育をどういうふうにしていくのかという問題と大きくかかわっていく、そんなふうなテーマも同時に解決すべき課題として浮き上がってくるのではないか、そんなふうに思います。

 今回のこの法案につきましては、今おおよそ議論がまとまってきておりますように、原則十八歳以上としまして、当面二十ということでもしばらくの間はいいというふうな形が、得られるべき合意の妥当な線ではないのかな、こんなふうに思っているということを申し上げまして、補足の意見表明にさせていただきます。

 ありがとうございました。

中山委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 十一月三十日の小委員会に関する補足的発言として、幾つかのことを述べたいと思います。

 先ほど来、前回の小委員会の討議をめぐって、与党案と民主党案の大きな相違点となっていた部分に対する歩み寄りがあったことは画期的なことだとか、懸案となっていた重要な論点に関する積極的な発言があったことは最終的な合意に向けての大きなステップだとか、しきりに言われております。場外でも、基本的に自民、公明と民主党の間で合意がなされたかの発言も出ていると承知しております。

 しかし、この間の両案提出者間の歩み寄りも、早期に手続法を成立させ、改憲論議を本丸にステップアップさせたいという改憲派の強い執念のもとでのことであって、主権者国民から見た懸案というか両案の根本的問題点については一向に解決していない。国民との関係では、何ら基本的な歩み寄りにも、最終的な合意に向けたステップにもなっていないというのが前回の小委員会についての私の一番の感想であります。

 実際、この間、法案審議が行われている最中に国民各界から次々と寄せられている意見書、要請書や請願は、いずれも、基本的問題点を解消するものとなっていないとか、国民の十分な理解も支持もないままその成立を急ぐことは手続的にも内容的に大問題とか、徹底審議して廃案にせよなどというものばかりと言っていい状況であります。国民的には法案成立をぜひという機運など全く盛り上がらない。それどころか、この間の委員会の出席状況を見ますと、国会議員の中にさえないのではないかという声さえ聞いております。

 我が党は、この法案のねらいが九条改憲の条件づくりにあることから、手続法をつくること自体に反対であるとの立場であり、同時に、法案の内容自体についても、改憲案を通しやすくする反民主的なものであることを法案審議を通じて追及してきましたが、前回の小委員会の討議でも改めてそのことが浮き彫りになった、特に二つの問題について指摘したいと思います。

 一つは、我々が法案の反民主性の最たるものとして問題にしてきた改憲案の承認に係る過半数の意義について、両案ともに少数の国民の賛成で改憲案が承認されかねないということに対して何ら道理ある説明はなされず、結局、どうすれば両案提出者の双方が妥協できるかに終始したことであります。

 三十日の小委員会で、私は、与党案、民主党案のいずれも、仮に投票率が五割台であった場合、二割台の賛成で改憲案が承認されかねないが、これでどうして主権者国民の意思を酌み尽くすものと言えるのかということを改めて提起しました。

 その上で、与党案は、第一に、有効投票総数の過半数としているが、これは投票方式とも結びついて、改憲案に対して、賛成の意思表示だけではなく、わざわざ反対の意思表示をしなければ過半数の母数には加えないという仕組みになっていること、第二に、しかし、憲法九十六条は、国民の承認を経なければならないと規定しているように、国会が発議した改憲案に対して賛成するかしないかを求めるものであって、反対の意思表示まで求めるものではないこと、そして第三に、与党案は、九十六条を不当に解釈して、過半数分母を小さくし、少ない国民の賛成でも改憲案を通せるようにしようという意図が露骨にあらわれたものと言わなければならないこと、この三点の問題点を述べました。

 私は、民主党案についても、投票所まで足を運び、かつ賛成の意思表示をしなかった者も国民の意思表示とするのであれば、投票を棄権した者も、少なくとも承認はしなかったという国民の一つの意思表示と見ることができるのではないかと指摘しました。

 その後の発言では、私は特に答弁を求めたわけではありませんでしたが、与党の提出者からは、反対の意思表示を求めることとしていることについて説明や言及はなく、投票用紙の記載の仕方によって無効票を減らせるのではないかと、与党案と民主党案との妥協点を探るような発言があり、そのことをめぐって与党と民主党との間でひとしきりやりとりがなされたという実態でありました。

 最低投票率の問題についても、私は、それを設けなければボイコット運動を誘発しかねないとの主張が提出者からあるが、そもそも憲法改正国民投票でボイコット運動が起こるのか甚だ疑問であり、仮に起こったとしても、国民の意思表示が多種多様であるとするならば、ボイコットも改憲案を承認しないという国民の一つの意思表示と見ることができることを指摘しました。

 さらに、十六日の小委員会でも、井口参考人が、不適切な発議に対しては国民は判断できず、その際、棄権をするということに一定の意味を持たせる、最低投票率などで対処すべきと述べたことも挙げつつ、与党も民主党も、国民の運動は基本的に自由と言いながら、憲法改正国民投票でなぜボイコット運動を規制しなければならないのか、合理的な理由はないではないかと提起しました。

 両案提出者からの発言は、九十六条が定める過半数とは何か、あるいは、国民主権との関係でこの問題が真摯に検討されているとは言いがたいという印象を持ちました。この点でも、両案の妥協点を探るような動きには主権者国民の立場が不在であると言わなければなりません。

 前回の小委員会で浮き彫りになったいま一つの問題は、両案が憲法改正案に関して国民の訴訟を起こす権利を不当に制限しようとしているということであります。

 私は、国会が発議した改憲案が改正の限界を超えたものなのかどうか、司法審査の対象になるような制度が検討されたのか疑問であること、また、提訴期間三十日間という問題も、その確定を早期に行う理由はなく、一般の行政訴訟より短くていいという理屈はないのではないかという問題などを提起いたしました。

 与党案提出者からは、限界を超えているか否かを含めて国会が発議し、最終的には主権者国民が判断するのだという趣旨の発言がありましたが、ここで問われているのは、発議後、国民投票に付される前の手続であります。つまり、国民が、国会が発議した改憲案は限界を超えている、国民投票に値しないと考えた際に、国民投票に付す前にどうするかという問題であります。

 実際、前々回、井口参考人が述べたように、国民が判断しようのない改憲案が発議された場合にどうするのかという問題は起こり得ることであります。しかも、自民党は、憲法観の根本的変更を迫る新憲法草案を公表しており、与党も民主党も、ボイコット運動はだめだ、最低投票率も設けないというわけだからなおさらであります。

 ところが、両案は、結局、国会が発議した改憲案に、国民はいやが応でも賛否の意思を表明せよというものだと言わざるを得ません。

 こうして、前回の小委員会で明らかになった問題点以外にも、改憲案を通しやすくするという本質的問題について、これは手をつけず、歩み寄りや妥協の余地なしという提出者の立場がこの間の法案審議を通じても見えてまいりました。

 広報協議会の構成、広報の仕組みの問題点、国民の運動規制についても、主権者国民からの疑問は解かれておりません。両案が、国会に憲法審査会を常設することでいつでも改憲案を発議できるようにし、両院の合同審査会や両院協議会を設けることによって、入り口でも出口でも衆参両院での三分の二以上の賛成を何が何でも形成し、改憲案を発議できる仕組みであることも明らかになりました。

 主権者国民の立場から見れば、法案の審議はまだ始まったばかりであり、さらに参考人を招致することも含めて徹底審議が必要であり、その上で、会期末の迫った今国会において廃案しかないことを重ねて強調して、補足的発言を終わります。

中山委員長 次に、辻元清美君。

辻元委員 社会民主党・市民連合の辻元清美です。

 本日は、十一月三十日の小委員会の報告及び補足的発言をいたします。

 まず、過半数の意義について議論がなされました。私は、余りにも低い投票率の場合、憲法の正統性がしっかり担保されたことになるのかという懸念を提起しました。また、政権がかわっても耐え得る憲法であるためには、圧倒的多数の人たちで承認されることが必要であるとも申し上げ、最低投票率についての検討も考えてみるべきだと発言をいたしました。

 これについて、民主党提案者からは、憲法九十六条に最低投票率などの規定がないことの意味として、棄権する自由があるのではないか、しかし、複数のテーマが区分され、一回の国民投票に付された場合、この棄権する自由をどう担保するのかは悩ましいとの発言がありました。

 また、与党案提出者からは、憲法九十六条が規定する以上の加重要件として最低投票率を設けるのは憲法上問題ではとの発言もありましたが、私は、そもそも憲法九十六条に何の過半数であるかは明記されておらず、全有権者の過半数という解釈も成り立つという専門家の意見もあることを紹介し、明確な規定が憲法にない中、本委員会で過半数の解釈を決定する以上、最低投票率を設定することは九十六条の範囲を逸脱しないのではないかと再提起いたしました。

 また、与党案提出者からは、最低投票率の設定がボイコット運動を誘発しかねないと懸念を示されました。また、民主党提出者からは、棄権者の意思についての問題提起がありましたが、私は、これに対し、賛成なのに棄権するということは現実には考えにくいのではないか、棄権の人たちの意思は反対または現状維持というように理解できるのではないかと述べ、また、ボイコット運動への懸念に対して、各地の住民運動の現状を見れば、最終的にボイコットだけでは運動自体が成り立たないという現状にあると指摘をいたしました。

 したがって、たとえどんな運動が起きたとしても、最低投票率がクリアされ、国民の意思がはっきり示されたということが、憲法の正統性をしっかり担保する上で大きな意味を持つと申し上げました。例えばイギリスなどが四〇%ルールを設けているように、諸外国でも根本認識をそこに持った上で国民投票制度を運営しているという事例もあわせて提示をいたしました。

 憲法を扱う上で過半数や最低投票率をどう考えるかということを委員会の中だけで決めようとするのではなく、さらに専門家や一般の主権者が、最低投票率のこと、そして過半数をどう受けとめているのかということも、本委員会はしっかり聴取すべきであると訴えました。

 国民投票の対象については、与党案提出者から、議会制民主主義と直接民主主義がせめぎ合う危険性を持つ一般的な国民投票は別途検討すべきという発言と同時に、いきなり国民投票というのは日本国民にとって初めての事態になるわけなので、なれていただく必要があるという見解が出されました。民主党案提出者からも、一事不再議の原理から、状況が変わったから同じものを提出するというのは困難なので、予備的な調査は国民との合意づくりになるのではないかという意見がありました。与党案提出者からは、主権者の意向をできるだけ踏まえるという意味で、国民の意思を知る有効なツールではないかと関心が示されました。また、脳死などのテーマを例にとった議論もなされまして、この一般的な国民投票の取り扱いについてさまざまな意見が出ました。

 私は、あくまで諮問的という前提で、国政の重要案件を国民投票にかけるシステムをつくっておくこと自体は、民主主義を豊富化する面があると述べました。

 また、いきなり憲法改正の国民投票を行うことは事務的にも多くの混乱が予想されます。これは既に、投票用紙の記載方法などをめぐり、この委員会でも議論が尽きないことでも明らかだと思います。そこで、まず一般的な諮問的国民投票案のみをつくり、国民投票をやってみてはどうか。そして、初めてさまざまな問題点もわかってくるはずなので、その後で憲法という一番大切なものの取り扱い方を考えても遅くはないのではないかと提起をいたしました。

 国民投票無効訴訟について、憲法改正の限界をどのように考えるかの議論もなされました。

 民主党案提出者からは、憲法改正の発議について、たとえ改正の限界を超えたとしても、民主的なプロセスを経ている以上は尊重されるべきと述べられ、自民党案提出者からは、異議申し立てが手続上本質的に無効にせざるを得ないものに限定すべきと述べ、超えているかどうかを含めて憲法改正の内容の是非を判断できるのは、第一義的には発議する国会であり、最終的には主権者であると述べられました。

 これに対して、私は、内容の是非を第一義的に判断できるはずの国会ですが、国会の良識がどこまで機能しているかという点を、私たち自身が常にみずからを省みる姿勢が大切だと訴えました。例えば、自民党の新憲法草案については、民主党案提出者からも以前かなり厳しい御批判がありましたけれども、そもそもの憲法観からの疑義ありという意見も多数出ているのが現状です。

 その中で、視察に行かれた皆さんは御存じのとおり、憲法改正の国民投票を行っているヨーロッパの諸国では、憲法改正の限界というものを非常に大切に扱い、強く意識されているということを学びました。ドイツなどではきちっと憲法に明記されておりました。したがいまして、主権者からの憲法改正の限界に関する異議申し立てについてもどのように取り扱うのか、これは十分検討する必要があるのではないかと再度問題提起をしたいと思います。

 また、私は、議論の大前提として、憲法は主権者のものであるので、主権者があらゆる点について異議申し立てをしやすくする道を断つべきではなく、東京高裁だけではなく各地での異議申し立てが行えるようにと主張をいたしました。

 さらに、国民投票の期日については、最長百八十日でありますが、大きな法案を一回の半年間の通常国会で成立させることが難しい場合もあります。これは教育基本法などの例を挙げて申し上げましたけれども、それは国会議員であれば日ごろ肌で感じていることであるかと思います。国民投票の期日については、国民が十分知り、考えるために、百八十日間を超える十分な期間を再検討すべきと主張をいたしました。

 最後に、与党案提出者からも指摘がされましたが、発議者である国会と主権者との意識のずれという点については、私も大変危惧をしている旨を再強調いたしました。今回報告しております小委員会のあり方についても、一部の議員で議論を深めているように見えますが、国民の理解との乖離がますます進んでしまうと私は懸念を深めております。あらゆる点において、一部の議員で議論を煮詰めようとするのではなく、国民の意見を聞くということをしっかりと私たちは肝に銘じて、そして、議論はまだまだなされるべきであるという感想を持ち、私の発言を終わります。

中山委員長 これにて小委員である委員からの発言は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午前十時五十六分散会


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