衆議院

メインへスキップ



第8号 平成18年12月7日(木曜日)

会議録本文へ
平成十八年十二月七日(木曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 中山 太郎君

   理事 愛知 和男君 理事 近藤 基彦君

   理事 福田 康夫君 理事 船田  元君

   理事 保岡 興治君 理事 枝野 幸男君

   理事 園田 康博君 理事 赤松 正雄君

      阿部 俊子君    赤池 誠章君

      新井 悦二君    伊藤 公介君

      飯島 夕雁君    石破  茂君

      浮島 敏男君    越智 隆雄君

      大村 秀章君    加藤 勝信君

      坂本 剛二君    清水清一朗君

      柴山 昌彦君    棚橋 泰文君

      谷  公一君    渡海紀三朗君

      冨岡  勉君    中谷  元君

      中野 正志君    中森ふくよ君

      長崎幸太郎君    野田  毅君

      葉梨 康弘君    早川 忠孝君

      林   潤君    平田 耕一君

      深谷 隆司君    藤井 勇治君

      二田 孝治君    森山 眞弓君

      矢野 隆司君    安井潤一郎君

      山崎  拓君    逢坂 誠二君

      岡本 充功君    玄葉光一郎君

      鈴木 克昌君    田中眞紀子君

      田村 謙治君    筒井 信隆君

      中川 正春君    長妻  昭君

      平岡 秀夫君    古川 元久君

      石井 啓一君    大口 善徳君

      福島  豊君    笠井  亮君

      辻元 清美君    糸川 正晃君

    …………………………………

   議員           加藤 勝信君

   議員           葉梨 康弘君

   議員           船田  元君

   議員           保岡 興治君

   議員           枝野 幸男君

   議員           小川 淳也君

   議員           鈴木 克昌君

   議員           園田 康博君

   議員           赤松 正雄君

   議員           斉藤 鉄夫君

   衆議院法制局第二部長   橘  幸信君

   衆議院憲法調査特別委員会及び憲法調査会事務局長  内田 正文君

    ―――――――――――――

委員の異動

十二月七日

 辞任         補欠選任

  越智 隆雄君     飯島 夕雁君

  柴山 昌彦君     赤池 誠章君

  棚橋 泰文君     阿部 俊子君

  早川 忠孝君     長崎幸太郎君

  山崎  拓君     浮島 敏男君

  古川 元久君     田村 謙治君

同日

 辞任         補欠選任

  阿部 俊子君     中森ふくよ君

  赤池 誠章君     柴山 昌彦君

  飯島 夕雁君     清水清一朗君

  浮島 敏男君     冨岡  勉君

  長崎幸太郎君     早川 忠孝君

  田村 謙治君     古川 元久君

同日

 辞任         補欠選任

  清水清一朗君     越智 隆雄君

  冨岡  勉君     山崎  拓君

  中森ふくよ君     棚橋 泰文君

    ―――――――――――――

十二月六日

 国民投票法案の廃案を求めることに関する請願(志位和夫君紹介)(第九七一号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一〇五七号)

 国民投票法の制定反対に関する請願(志位和夫君紹介)(第九七二号)

 国民投票法案の反対に関する請願(田島一成君紹介)(第九七三号)

 同(仲野博子君紹介)(第九七四号)

 同(土肥隆一君紹介)(第一〇五八号)

 同(鉢呂吉雄君紹介)(第一〇五九号)

 憲法改悪のための国民投票法制定に反対することに関する請願(日森文尋君紹介)(第一〇五六号)

同月七日

 国民投票法案の反対に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一一五〇号)

 国民投票法案の廃案を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第一一九三号)

 同(石井郁子君紹介)(第一一九四号)

 同(笠井亮君紹介)(第一一九五号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一一九六号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第一一九七号)

 同(志位和夫君紹介)(第一一九八号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一一九九号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一二〇〇号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一二〇一号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 日本国憲法の改正手続に関する法律案(保岡興治君外五名提出、第百六十四回国会衆法第三〇号)

 日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案(枝野幸男君外三名提出、第百六十四回国会衆法第三一号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

中山委員長 これより会議を開きます。

 第百六十四回国会、保岡興治君外五名提出、日本国憲法の改正手続に関する法律案及び第百六十四回国会、枝野幸男君外三名提出、日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。新井悦二君。

新井委員 おはようございます。自由民主党の新井悦二です。

 本日は、発言する機会をいただきまして、まことにありがとうございます。また、委員会の皆様方におかれましては、これから本格的にインフルエンザの時期を迎えますけれども、健康には十分気をつけていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 さて、日本国憲法に関する調査特別委員会は第百六十三回国会に設置され、七回にわたる論点整理の理事懇談会を含めますと、きょうまでに調査等の時間が約五十一時間、また、四回にわたる小委員会を含めますと法案審査時間が約二十五時間、合わせまして約七十六時間もの議論を重ねてまいりました。

 この日本国憲法の改正手続に関する法律案は、何よりも、国民が意思決定を的確に行い、また、意思決定を反映できるという投票制度でなければならないと思っております。そのために広く国民的議論がなされることが必要であり、自由で公正な国民投票運動が行われることが重要であると考えております。

 憲法改正国民投票法制の整備は、憲法制定権力の担い手である国民がその権利を行使する制度を整備することであり、憲法改正に対する国民の主権を回復し、真の国民主権を具体化することにほかならないと思っておりますので、その趣旨に従いまして順次質問をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

 まず初めに、投票の方式と過半数の意義についてお伺いいたします。

 与党案、民主党案それぞれについて、投票人が憲法改正に対する賛成または反対の意思表示を容易にできる仕組みとなっているのか、また、過半数の意義についてはどのように考えているのか、両提出者の方にお伺いいたします。

船田議員 新井委員にお答えいたします。

 国民投票におきましては、やはり発議された憲法改正案に対しまして正確な民意を把握することは最も重要なことだ、今御指摘のとおりでございます。

 そこで、私ども与党の原案といたしましては、賛成するときはマル、反対するときはバツを自書していただく、記入をしていただく、そして、白票は無効票とした上で有効投票総数の過半数でもって国民投票が決せられるべきだ、こういう考え方に立って立案をいたしました。しかしながら、やはり民主党あるいは他の政党の皆さんとの協議を行ってまいりまして、さらに、できる限り無効票を少なくして投票人の意思を酌み取ることを重視することが必要であると考えるに至りました。

 そこで、現時点で考えておりますことは、投票用紙にあらかじめ印刷された賛成または反対の文字をマルで囲むということとしたらどうか。ただ、賛成または反対の文字をバツの記号等で消したものについてもそれぞれ反対票、賛成票として有効票とカウントする、こういう方法が考えられるのではないかというふうに思いました。

 したがいまして、白票つまり賛成、反対いずれの文字に何の印もついていないものや、あるいは、賛成、反対の文字の両方にマル、あるいは両方にバツ、こういったような票は疑問票ということになるわけでありますが、そういうものは無効票ということでございまして、その無効票を除外したものを分母といたしまして、賛成票がその過半数であったかどうかによって国民投票の結果が決まる、このように考えていきたいと思っております。

園田(康)議員 新井議員の御質問に私ども民主党もお答えをしたいと思います。

 おっしゃるとおり、やはり私どもも国民の意思というものをしっかりとこの投票の方式によって酌み取る、そしてそれを反映させていくことが重要であるというふうに考えておりまして、当初の私どもの法律案におきましては、投票方式は、改正案に賛成するときはマルを記載する、反対するときは何も記載しないということとしておりました。ただ、この委員会の中でのさまざまな皆様方の御指摘を受けておりまして、いわば改正に対する国民の賛成あるいは反対の意思表示が容易にできる仕組みという形で、与党案提出者の方からもさまざまな御提案をいただいたところでございました。

 したがって、その審議の結果を踏まえまして、やはり憲法改正案に対して賛成するときは投票用紙に印刷された賛成の文字を囲んでマルの記号を自書し、そして、憲法改正案に対して反対するときは投票用紙に印刷された反対の文字を囲んでマルの記号を自書するという形、これはもう積極的に私どもも修正という形で検討してまいりたいというふうに考えております。

 そして、今、やはり他事記載というところを、無効票をどのように減らしていくかも一方で考えていかなければいけないというところで、反対、賛成それぞれにバツあるいは二重線を付して消すという形をもってその意思が明確になるということであれば、それもそれぞれ有効という形で考えていくことも検討してまいりたいというふうに考えた次第でございます。

 もう一点、過半数の意義についても御質問があったかと思います。

 これについては従来より、九十六条の過半数の意義というものをどのように考えるかという形で、賛成投票数が棄権票をも含めた投票総数の二分の一を超えたという形としているのではないかというふうに考えておりまして、いわゆる投票に行かなかった者、棄権した者まで過半数の分母に加えることはやはりこの九十六条の文言からすると難しいのではないか、適切ではないというふうに考えております。

 そして、投票所にわざわざ足を運んで投票したことをどのように考えるかというところで、これも憲法上の規定でも国民の承認と書いているところからすれば、投票所に足を運んでこの国会の発議に対して是という意思表示が示されなかった、これに関しては承認の意思がなかったものと判断するというふうに考えております。

 ただ、やはり白票を通した国民の棄権の自由をどのように保障していくかというところで、私どももここを積極的に考えたいというふうに思っておりまして、与党が投票方式について柔軟な対応をするということを前提に、過半数の意義については賛成投票数が賛成票及び反対票を合計した投票総数の二分の一を超えたことという形で、これまた私どもも修正するということを考えておるところでございます。

新井委員 次に、国民に対する情報提供についてお伺いいたします。

 憲法改正については、やはり国民が賛成か反対かが判断できるように情報提供が重要であると考えますが、判断資料は十分に国民に提供されているのかどうか、両提出者の方にお伺いいたします。

赤松(正)議員 今御指摘ありましたように、この憲法改正案について、国民の皆さんが判断をされる資料が十分に提供されるということは極めて大事なことであると思います。

 第一義的に、国会が国民に対して、発議する側としての憲法改正案に対する基本的な情報を提供する役割を担っているわけでございまして、その役割を担って広報協議会が発行する国民投票公報におきまして、客観的、中立的な記述文のほかに賛成意見、反対意見が公正かつ平等に扱われて、まず、憲法改正案に関する基本的な情報として国民に提供されるということがあると思います。さらに、政党等が行う無料の広告放送や新聞広告等において賛否双方の意見が伝えられるということになろうかと思います。

 さらに、本法律案では国民投票運動を原則自由にしておるということで、国会が提供する、先ほど述べた広報協議会等による基本的な情報にとどまることなく、憲法改正案に関するさまざま多様な意見が十分に提供されることになる、そんなふうに考えている次第でございます。

園田(康)議員 私どもも、当然同じく、国民の皆様方が賛成、反対の判断ができるようにしっかりと情報提供をしていかなければいけないということは同意でございます。

 そして、この国会における憲法改正の論議というもの、調査というもの、これがしっかりと国民の皆様に周知できるということを積極的に考えていかなければならない。一義的には、この法案によって設置される審査会の会議録、あるいは、それに対するマスコミ等の報道がきちっと正確に国民の皆さんに周知されることをまず前提としたいというふうに思っておるところでございます。そして、わかりやすいパンフレットの作成というものが広報協議会の中でしっかりと行われるということも私どもは考えておるところでございます。

 そして、その発議をされた後、各政党のさまざまな意見というものがあろうかと存じますので、やはり各政党も、国民から負託された国会議員、そしてそれで構成されている政党というものがその責任をしっかりと全うしていくという意味では、ここもさらなる国民運動の一義をなすものであるというふうに考えているところから、無料広告を通じて国民の皆さんに情報提供をしていくということをしっかりと考えていきたいというふうに思っております。

新井委員 ぜひともやはり国民にわかりやすい情報提供というものをしていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 次に、周知期間についてお伺いいたします。

 国会発議から国民投票の期日までの期間として少なくとも何カ月ぐらいが必要と考えているのか、両提出者の方にお伺いいたします。

保岡議員 今度の法案においては、六十日以上百八十日の期間ということに定めているわけですけれども、国民投票を行うに当たっては、国民が憲法改正案の内容を理解するのに必要な周知期間という考え方で法案を作成しております。

 どの程度の周知期間を置くことが適切かということは、憲法改正の内容やその周知のためのパンフレットの作成に要する日数等によって異なってくるということだと思います。例えば、憲法改正案の内容が多岐にわたって複雑なものであれば周知のためには約六カ月を要するであろうと思われますし、逆に、憲法改正案の内容が単純なものであれば二カ月あればそれで十分というケースもあると思います。

 投票期日まで最長でも六カ月というのは短過ぎるという御指摘もこの委員会でされたりいたしました。

 しかし、憲法改正の発議はある日突然になされるものではなくて、憲法審査会における慎重かつ十分な審査の後に行われるものである。審査会がスタートしてから三年間は憲法改正の要否あるいはその方向性、内容について十二分に議論をして、かつ、その後に憲法改正原案というものを多数で作成した後の審議というものも十二分にされる。そういった期間というものは公開されて、もちろん国会もその広報に努めなければなりませんが、マスコミ等で報道されることによって国民に周知される。

 そういった審査の過程は、国民がそういう期間にそういうプロセスの中で憲法改正の内容を承知していくということになりますので、このような点を踏まえると、六十日から百八十日という期間が短過ぎるということはないと思います。むしろ、発議から投票まで余り長い期間を置くことによって間延びをして、かえって国民の関心が薄れてしまう結果になるおそれもあります。

 このようなことも考慮して、ある程度幅を持たせて臨機応変に対応することができるようにしておくことが適切であるとの考えに基づいて、周知期間を先ほど申し上げたように六十日から百八十日とし、この間において、国会の議決において定める日に投票を行うものとしています。

 ただし、初めて行われる国民投票については、内容にもよるとは思いますが、それなりの周知期間を置くことにする配慮も必要かと存じます。

園田(康)議員 私どももこれについては同意でございます。

 すなわち、憲法改正を国民に発議した場合に、やはりその内容によっては、先ほど来お話がありますように、単純なものあるいは複雑多岐にわたるものという形で、それぞれに臨機応変に、このぐらいの周知期間が必要ではないかということをしっかりと考えて設置をしていくことが求められるのではないかなというふうに思っておる次第でございます。

 したがって、やはり私どもも、パンフレットの作成であるとか、改正案の内容に対して、しっかりとその周知期間というものをそれごとに定めてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。

 そして、この国民投票というものが初めて行われるというところに関しては、今保岡委員からも御指摘がありましたとおり、我が国で行われるということはいまだかつてなかったわけでございますので、これについては、やはりそれ相応の周知期間を置くことも考えられるのではないかなというふうに考えております。

新井委員 次に、特定公務員の国民投票運動についてお伺いいたします。

 特定公務員の全面的な国民投票運動の禁止について、与党案では特定公務員の範囲が選管職員等だけではなく裁判官、検察官、警察官にまで及んでおり広範に過ぎるように思われますけれども、この点について与党提出者の方にお伺いいたします。

船田議員 お答えいたします。

 今御指摘いただきました特定公務員の範囲でございますが、当初私どもの与党案におきましては、選管職員、裁判官、検察官、警察官などは、その職務の性格あるいは一定の強制力を持って公務を行う方々でございまして、投票人の意思決定に対しまして他の一般国民ではなし得ないような大きな影響を及ぼすおそれがある職種の人たちである、こういうことで、国民投票運動そのものは禁止をいたしたわけであります。

 しかしながら、本委員会においての与野党間の議論、あるいは、昨年あるいはことしの海外派遣による調査の結果等を踏まえますと、刑事罰を設けてまでこれらの方々の国民投票運動を禁止する必要性については疑問が残る、このように思いまして、裁判官、検察官、警察官等といった選管職員以外の方々については禁止の対象から外すということで修正をかけよう、現在こういう考え方でおります。

 特に、このような方々も、やはり意見を表明する権利は持っていると思います。意見表明の権利を行使することと国民運動を行うことはなかなか区別がつかないといった事態もありますので、ここはやはり、できる限りあいまいな部分はなくして、一般に広く国民運動が十分に行えるようにということを重要視して今のような限定を設けたい、こう考えたわけであります。

新井委員 それに関連して、公務員、そしてまた教育者の地位利用による国民投票運動についてお伺いしたいんですけれども、公務員、そしてまた教育者の地位利用による国民投票運動の禁止について、この地位利用の概念が少しあいまいなような気がするという懸念もあります。国民投票運動に関しては過度の規制を設けられるようなことはあってはならないと考えておりますけれども、この点について与党提出者の方にお伺いいたします。

船田議員 これまでのこの委員会における議論を踏まえまして、国民一人一人が萎縮することなく自由に運動を行い、自由闊達な意見を闘わせることが特に重要である、こういう観点から、公務員、教育者の地位利用について次のような修正の方向が考えられないか検討しているところでございます。

 一つ目は、対象となる行為が明確になるように、地位利用それから国民投票運動とは何かという定義を明確に規定することでございます。地位利用とは、その地位にあるために特に国民投票運動を効果的に行い得るような影響力または便益を利用するということでありまして、国民投票運動とは、憲法改正案に対し、賛成または反対の投票をし、またはしないよう積極的に勧誘する行為である。こういった具体的、限定的な規定に変更するということでございます。

 二つ目の修正につきましては、そのような地位利用による国民投票運動の禁止の規定に違反した場合でも罰則は設けないことにしたいということでございます。ただ、罰則は設けなくても、悪質な行為が行われた場合には、例えば公務員法制上の懲戒処分、懲戒の事由になるということで対処することが十分に可能である、そこで歯どめがかけられるのではないかということでございます。罰則を設けないことによって、国民運動が萎縮しないように配慮していきたい、こういう修正をしたいということであります。

新井委員 私も、やはりこの地位利用の概念というのは非常に難しいと思います。ぜひともそこら辺は真剣に対応していただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 また、投票日前の広告放送の制限についてお伺いいたします。

 憲法改正に対する多様な意見やその反論などは国民に十分に周知されることが重要であると考えられますが、本法律案においても、このような観点から、直前七日間以外は広告放送の制限は設けていないと承知しております。

 この点については、さらに規制の期間を長くすべきという意見がある一方、規制を緩めるべきとの意見もありますけれども、このことについて両提出者はどのように考えているのか、お伺いいたします。

船田議員 今の御質問はマスコミの広告放送の制限ということであると思いますが、この期間につきましては、やはり広告放送、特に電波というメディアを使ったものにつきましては、非常に影響力が大きいということでございます。ですから、その中で誹謗中傷が行われたり、あるいは事実と異なるような情報を提供され、あるいは非常に扇情的な状況で人々の心を動かしてしまう、こういったいろいろなことが想定されるわけでございますので、冷却期間を置こうということで投票日前七日間は有料広告放送の禁止を打ち出したわけであります。

 しかしながら、この問題につきましては、本当に七日間でいいのかどうかといった議論もございます。いわゆる期日前投票制度が例えば十四日前から行えるとすれば、七日ではなくて期日前投票の期間十四日に合わせるとか、あるいは私ども、後ほどいろいろまた議論があると思いますが、有料の広告放送については量的には無制限ということで考えているわけであります。

 ただ、この問題については、どのくらいのお金をかけるのかという問題や、あるいは金に糸目をつけず大量に有料の広告放送を行う政党が出てもこれは確かに困るなとも思っておりますので、総量規制ということもどこかで考えておかなければいけないんじゃないかというふうに思います。

 したがって、七日間あるいは十四日間の規制ということで一部間接的に総量規制ということにはつながると思いますけれども、さらに検討して、もう少し規制が必要であるという場合には、その期間をさらに延ばすということも今検討しております。これは与野党間で今後鋭意詰めていきたいと考えております。

園田(康)議員 私どもも、やはりこの広告放送については現段階では何らかの規制が必要になるのではないかなというふうに感じているところでございます。

 すなわち、今船田委員からもお話がありましたとおり、まず、無料広告放送の制限につきましては、私どもも同じく、今御指摘のあったとおり、七日間というふうに規定を設けているわけでありますけれども、これは、投票日前の一週間というものは冷静かつ慎重に国民の判断にゆだねるというところから七日間と考えた次第でございますけれども、その期間については、期日前投票等の制度も今ございます関係から、十四日ということも、確かに長く延ばして考えるということも一方ではあるのではないかなというふうに考えている次第でございます。

 これは、いわば政治的公平性の確保ということを、それ以外は規制を設けていないというのは政治的公平性というものをきちっと自主規制にゆだねるという意味で考えていたわけでありますけれども、ただ、商業広告という面におきましては、御指摘のとおり、さまざま優良な広告代理店というようなところのつながりによって、放送によるさらなる強弱がなされてしまうのではないか。

 それによって扇情的に誘導されるという点もあろうかと存じますし、賛成意見、反対意見がいわば公平に扱われるというところまで踏み込むということであるならば自主規制にゆだねてもいいのではないかというふうに思っているわけでありますけれども、先日の参考人からのさまざまな御意見もあったわけでございますけれども、この点についてはそれがしっかりと公平に行われることが担保できるのかなというところは、まだ私どもも大きな疑問を持っている次第でございます。

 したがって、ここに何らかの規制をかけていくということは考えられるのではないかな、むしろ考えていく必要があるのかなと今思っているところでございます。

新井委員 やはり広告放送というのは国民に対しても非常に影響力が大きいものでありますので、ぜひとも公平性を保ってやっていただきたいと思っております。

 次に、投票率の向上につきましてお伺いいたします。

 まず、投票率を上げるということはだれでも考えているわけでありますけれども、これはやはり非常に重要でありますけれども、そのための施策としてどのようなものを念頭に置いているのか、両提出者の方にお伺いいたします。

赤松(正)議員 投票率を上げるということにつきましては、先ほど御質問いただいた、情報提供をいかに国民の皆さんにしていくかということと密接に関連をしていると思います。したがって、先ほど申し上げました広報協議会による憲法改正案や、あるいはまた政党等による、先ほどお話に出ておりました広告等の、そういったものを十二分に使っていくということが第一義的にあろうかと思います。

 ただ、その前提といいますか前段階として、この法が予定をしております憲法審査会における憲法改正をめぐる、憲法審査会では前段階、一九四六年憲法の吟味という部分と、それを経た上での新しい憲法をどうつくっていくのかという二つに分かれようかと思いますけれども、そういった議論を通じて、国民の皆さんに憲法改正の必要性、重要性について深い理解を得ていただいて、これは自分が投票することが極めて大事だ、こんなふうな認識を持っていただくことが前段階の事項として極めて大事である、そんなふうに考えておる次第でございます。

園田(康)議員 私どもも、やはりこの投票率を上げていくというのは、国民の理解度が深まっていくことにつながるというふうに考えておりますので、投票率、すなわち国民の関心というものをしっかりと引き上げていくというか整えていくということは、やはり私たちも積極的に考えていかなければならない。

 やはり国会の中での審議、具体的には憲法審査会での議論というものをしっかりと国民の目に見える形で行う必要があるのではないかなというふうに考えておるところでございます。加えて、発議をされた後の実際の国民投票における工夫もさらに行う必要があるというふうに考えております。

 やはり周知期間の設定であるとか、あるいは広報協議会において改正案賛成意見、反対意見というものをしっかりとわかりやすく国民の皆さんに公報をつくっていくということ、それから、国民投票運動の保障というものをしっかりと担保し、国民が自由闊達な議論の中で関心を深めて、そして憲法そのものに対する意見も持っていただくという形の環境づくり、これはしっかりと行っていかなければならないのではないかなというふうに思っております。また、投票の方法、様式というものも明確に国民の民意というものが出されるように、先ほども議論が出ておりましたけれども、それにもさらなる工夫が必要ではないかなというふうに考えております。

新井委員 どうもありがとうございました。

 ぜひとも、国民の幅広い議論を行って、早期に成立を図っていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 きょうはどうもありがとうございました。

中山委員長 次に、近藤基彦君。

近藤(基)委員 自由民主党の近藤基彦でございます。

 我が自由民主党と公明党から提案されました憲法改正手続法案、それから民主党から提案されました法案につきまして、これまでこの憲法調査特別委員会やその下に設置されました小委員会において、真摯で実に濃密かつ建設的な議論が党派を超えてなされてまいっているところでございます。

 憲法調査会以来の中山太郎委員長の公正中立な議事整理は、きょうの野党の質疑時間を見れば一目瞭然かとは思いますが、その中山委員長のもとで、第百六十三回特別会の冒頭の昨年九月二十二日に設置されて以来、きょうまで一年二カ月余りの間に、既に約八十時間を超える国民投票法制の調査及び法案審査がなされてまいっているところであります。

 また、昨年とことしの二回にわたって、欧州各国を中心として九カ国、延べ二十七日間にわたる海外の国民投票法制の調査も行ってきたところであります。

 今国会に入ってからは、本委員会のもとに日本国憲法の改正手続に関する法律案等審査小委員会が設置され、私も小委員長としての役目を仰せつかって、参考人を交えながら、テーマごとに四回にわたって具体的な項目を詰めた議論を行ってまいったところでございます。

 十一月二日には国民投票運動規制・罰則について、十一月七日にはメディア規制・国民に対する周知広報に係る事項について、十一月十六日には憲法審査会その他国会法改正部分に係る事項について、そして十一月三十日には国民投票の対象、投票権者の範囲、投票用紙への賛否の記入方法及び過半数の意義等に係る事項について、それぞれ実に活発かつ建設的な議論を行ってまいりました。その議論の内容は、本委員会にその都度詳細に御報告申し上げているところでございます。

 さて、以上のような本委員会及び小委員会における議論を通じまして、かなり議論が詰まってきたと思っております。両法案の提出者からは、新しい提案や歩み寄りの発言があった部分もございました。本委員会に所属するすべての会派が知恵を出し合って、与野党の幅広い合意のもとによりよい法律案に仕上げていくことが、この天下国家の大法律案にふさわしく、また望ましい姿であると考えております。

 本日は、このような観点から、一つは、両法律案の提案者から、歩み寄りがあった点について改めて確認したい論点について、もう一つは、これまで必ずしも十分に言及されていない論点について、それぞれ法案提出者のいわば立法者意思をきちんと議事録に残しておくべきとの趣旨から、幾つか質問させていただきたいと思います。

 それでは、まず、小委員会においても集中的に議論がなされました国民投票運動規制と罰則関係について、両案提出者にお伺いをいたしたいと思います。

 まず、公務員の地位利用による国民投票運動について、与党案では罰則をもって禁止をしておりますが、萎縮効果を考えるとやや厳し過ぎるのではないでしょうか。修文の用意もあるとの御発言もこれまでなされておりますけれども、改めて現時点でのお考えをお聞かせ願いたいと思います。一方、民主党案では何らの規制も設けられておりません。公務員がその地位を利用して国民投票運動を行うような悪質な場合についても、何らの規制もかからないということでよいのでしょうか。

 与党案提出者から御答弁をよろしくお願いします。

船田議員 近藤議員にお答えいたします。

 公務員の地位利用による国民投票運動の禁止につきまして、与党案、今御説明いただいたとおりでございますけれども、その後、当委員会においての与野党間の議論を踏まえ、また参考人の意見なども十分参考にいたしまして、やはり国民一人一人が萎縮することなく、自由に運動を行い、自由闊達な意見を闘わせるということが特にこの分野においては重要である、必要である、こういう観点から少し修正を加えていきたいと考えた次第でございます。

 一つ目は、対象となる行為が明確になるように、地位利用そして国民投票運動という文言を、それが何であるかを定義づける、明確にする必要があるということであります。地位利用につきましては、その地位にあるために、特に国民投票運動を効果的に行い得るような影響力または便益を利用するということであります。国民投票運動とは、憲法改正案に対し、賛成または反対の投票をし、またはしないよう積極的に勧誘する行為である。こういう具体的、限定的な規定ぶりに変更するというのが一つ。

 二点目は、そのような地位利用による国民投票運動の禁止の規定に違反した場合でも罰則は設けないということでございます。もちろん、悪質な行為につきましては、罰則ではなくて、公務員法制上の例えば信用失墜行為などの懲戒事由に該当するものとしてその分野において対処するということが可能であると考えておりまして、罰則はないけれども、やはり公務員としてのさまざまな問題、公務員法上の規制というものが一般的にはかかる、こういうふうに考えております。

園田(康)議員 私ども民主党は、公務員あるいは教育者の地位利用における国民運動の禁止というものを規定すると萎縮効果が働くのではないかというところから、この規制は設けておりません。しかしながら、今修正の御提案があった部分に関しましては、やはり私どもも公務員の地位利用というものが悪質なというところでかんがみれば、起き得る可能性というものも確かに否定はできないのではないかというふうに考えているところでございます。

 したがって、今、議論の中では、地位利用とはどのようなものであるのかを明確にするということや、あるいは、先ほどお話があったように、罰則がかからないということの対応はさまざまな公務員法の規定等々の懲戒に当たるという形をもって行うということであるならば、私どもも、やはりそういった悪質なケースというものがきちっと明確にされていくということであるならば、それに対応するということは考えておるところで、積極的に検討をしてまいりたいというふうに思っております。

近藤(基)委員 両案提出者の御答弁からいたしますと、両者の立場に実質的な大きな隔たりは全くないと感じました。

 続いて、必ずしも十分に共通の認識が得られていないように思われる組織的多数人買収罪の要件について、与党案提出者にお伺いをいたします。

 与党案では買収罪を設けておりますが、その要件は、組織的多数人買収罪という名称があらわしているように、非常に限定されております。

 具体的には、「組織により」あるいは「多数の」あるいは「賛成又は反対の投票をし又はしないよう勧誘し」あるいは「投票をし又はしないことの報酬として」「賛成若しくは反対の投票をし若しくはしないことに影響を与えるに足りる物品その他の財産上の利益」といった、いわば通常の買収罪に比べて五重の縛りと言っていいんでしょうか、が設けられております。

 これらの要件の内容や趣旨はどのようなものか、お聞かせをいただきたいと思います。

加藤(勝)議員 私どもの提案させていただいております百九条に今の御指摘の各文言が入っているわけでありますが、一つ一つ順番に御説明をさせていただきたいと思います。

 まず、「組織により」という要件は、複数の行為者の間で、指揮命令に基づき、あらかじめ定められた任務の分担に従って構成員が一体として行動するということであります。例えば、仕事帰りの職場仲間が居酒屋で憲法談義を展開し上司が飲み代を支払った場合は、「組織により」という要件には該当しないと考えております。

 また、「多数の」という要件は、必ずしも何人以上が多数に当たるかは一概に言うことはできませんが、その行為がなされた具体的状況に応じて多くの者を対象とするということであり、その趣旨は、社会常識で許容される範囲を逸脱する悪質な行為を処罰しようというものであります。

 「勧誘し」という要件は、外形的な積極的勧誘行為を要することを要件としたものであり、その勧誘行為と財物、役務との結びつきを条文上要求することにより、罰則が科される行為を明確にして、萎縮効果を排除するために設けられたものであります。勧誘行為に至らない、単なる意見表明、憲法談義があっただけではこの要件には該当いたしません。

 「報酬として」という要件は、公職選挙法における買収罪の要件として、解釈上、報酬性、対価性が要件とされていることから、万が一にも拡大解釈されるなどの疑義が生じることのないよう、条文上明記することとしたものであります。

 「影響を与えるに足りる」という要件は、投票行動に影響を与えるに足りるだけの一定以上の価値、すなわち、社会的に相当な財貨性を有するもののみを対象とするという意味であります。この要件は、国民投票運動に随伴して配布されることが社会通念上許容されるビラ、うちわ、ティッシュなどのように著しく価値の低い財物の配布行為を買収罪の対象から排除するために設けたものであります。

近藤(基)委員 ただいまの五つの要件に加えて、船田提案者から、国民投票運動の意見表明として通常使われているものかどうかという点から、さらなる限定を加えていく用意があるとの御発言があったと承知しておりますが、その趣旨はどのようなものでしょうか。五重の縛りに加えて、さらにこのような限定を設けた場合、本当に十分な取り締まりができるのでしょうか。

船田議員 今近藤議員から御指摘をいただいたさらなる限定という部分でございますが、例えば、国民投票運動の一環として、コンサートの開催とか映画の上映、それから書籍、CD、DVDの頒布などが考えられるんじゃないか、こう思っております。このように、意見を表明する手段として通常想定される媒体を用いた国民投票運動については十全に保障しようという意思がございますので、それに沿った条文あるいは解釈にしていきたい、こう考えております。

 なお、国民投票運動における意見の表明の手段として、例えば、通常用いられないものであるかどうかということについては、その内容に立ち入って判断することなく、そのものの属性によって外形的に判断されるものというふうに理解をしております。

 このような限定は、十分な取り締まりをすることを念頭に置いたものではないわけでありまして、買収罪を設けない場合には、最も悪質なコアな部分まで放任することになってしまって、公職選挙法との法体系上のバランスを失することになるということに配慮しつつも、もう一方では、やってはいけないということを明確にして、国民が萎縮することなく国民投票運動を展開できるようにする、こういう従来の発想をさらに進めたものでありますので、ぜひその点は御理解いただきたいと思っております。

近藤(基)委員 ありがとうございました。

 国民投票運動及び罰則の規定について、両法律案提案者にお伺いしてまいりましたが、両法律案にはこれらの規定の適用について適用上の注意規定というかなり珍しい規定が設けられております。その趣旨はどのようなものか、両法律案提出者にお伺いをいたします。

赤松(正)議員 今近藤委員御指摘のように、国民投票運動及び罰則の規定の適用について、「適用上の注意」という、かなり珍しいという御指摘がありましたけれども、こういう規定を設けているというのは、一にかかって国民投票運動そのものが通常の衆参両院の選挙等さまざまな選挙の運動と比べて際立って主権者である国民の政治的意思の重要な表明であるという観点から、表現の自由、学問の自由または政治活動の自由といった人間の持つ基本的な自由の権利と密接に関連するというところから来ている、そんなふうに考えている次第でございます。

 今申し上げた、そういう表現の自由や学問の自由または政治活動の自由といったものを不当に侵害されることがないように慎重に行われなければならないという立法者の意思を明確にして、これを運用する当局に対して、くれぐれも趣旨に沿った法運用をすべきであるということを命じたもの、そんなふうな趣旨であると理解をいたしております。

園田(康)議員 おっしゃるとおり、大変珍しい規定でございまして、しかしながら、今赤松委員からもお話がありましたとおり、国民投票において主権者である国民の意思がしっかりと示される際には、やはり表現の自由、精神的自由権であるところの表現の自由あるいは学問の自由、そして政治的意見表明の自由、政治活動の自由というところがしっかりと担保されていかなければならないというところから、私どもも、やはりこの点については、同趣旨において、運用する当局に対して、しっかりとこれが担保されていかなければなりませんよ、注意をしていかなければなりませんよという意味での規定を設けさせていただいたという形でございます。

近藤(基)委員 次に、憲法審査会等の国会法改正部分について、両案提出者にお伺いをいたしたいと思います。

 まず初めに、内閣の憲法改正原案の提出権は認められるとお考えでしょうか、両案提出者にお伺いをいたします。

保岡議員 憲法改正原案の内閣の提出権でございますけれども、憲法制定権力は国民にあるということでございますので、その原案の提出権も基本的に国民の代表である国会議員に属するものと理解しております。いろいろ学説があることはそのとおりなんですが、多くの学説はそのように解していると思います。しかし、内閣にも憲法改正原案の提出権があるという学説もまたあって、その旨の内閣法制局の答弁もなされております。

 ただ、今回の立法は、議院による憲法改正原案の提出手続のみを定めたものでございまして、内閣の提出権については規定をしていないということで、内閣に提出権があるかどうかはこの法案では決しているというわけではありません。もし、今後、内閣が憲法改正案の提出を考えるのであれば、別途、内閣法や国会法の改正案について、国会の審議をお願いすればよいのではないかというふうに考えております。

園田(康)議員 同じく、私どもは、やはり最終的な決定権というものは主権者である国民にあるというところにまず原点を置いて、そして、正当な選挙によって選ばれた国会議員、国会によってその意思が示されるというところにこの国民投票、憲法改正の原案の提出というものはまず限定されるものであろうというふうに考えております。

 したがって、御指摘の内閣に関する提出権ということでございますけれども、私見になるかもしれませんが、やはり、国民主権の原理、あるいはその負託を受けた国会が憲法改正案をつくって、そしてそれを国民に最終的にゆだねるというところで、憲法そのものの本質からいくと、国家権力に対する抑制というところの原点に立ち返るならば、内閣による提出をして、そしてそれが、いわば恣意的に提出はされるかもしれませんけれども、最終的には国民が判断するというところの微妙な部分がまだ残っているのかなというふうに思っておりますので、その点では、やはり現時点では内閣による提出権というものは抑制的に考えておくべきであろうなというふうに思っております。

近藤(基)委員 私も、私見ではありますが内閣には提出権はないと実は思っておりますので、そういう点では両案とも同じ意味だと解釈をいたしました。

 続いて、憲法審査会についてお伺いをいたします。

 憲法審査会については、現在の憲法調査会を改組して設置されるものと理解しておりますが、このことを前提として、細目的ではありますけれども、重要な論点と思われる憲法審査会の権限及び組織体制についてお伺いをいたしたいと思います。

 従来、憲法調査会における具体的な議事のあり方については、国会法に定められている事項のほかは、憲法調査会規程という衆参各議院の本会議議決で定められておるところでありますけれども、例えば、通常の委員会とは異なって、会期中であると閉会中であるとを問わずいつでも開会ができる、あるいは会議は原則公開とする、独自の事務局を置くといったことが定められております。これらの点については、新たな憲法審査会にも基本的に引き継がれることになると思うのでありますが、提案者としてはどのようにお考えになっているんでしょうか。両案提案者にお伺いをいたします。

加藤(勝)議員 近藤委員の御指摘のとおり、憲法審査会の組織及びその補佐体制については、基本的に現在の憲法調査会の体制を引き継ぐべきものと考えております。ただ、憲法審査会は、憲法調査会とは異なり、憲法改正原案の審査、提出権限及び憲法改正手続法案の審査、提出権限が新たに付与されていること、また、これと関連いたしまして、その調査権限にも憲法密接関連基本法制の調査が追加されている、こういうことに伴いまして、幾つかの相違点が出てくるということになります。

 例えば、これまでもたびたび指摘されてきた両院の合同審査会とその勧告権限の規定もその一つでございます。また、憲法調査会規程を一部改正する形で規定することを予定している憲法審査会規程、これは仮称でございますが、における憲法改正原案審査の際の公聴会の開催の義務づけなどもその例であると思います。

 さらに、これらの新たな権限に伴って、事務局の体制についても、現在、衆議院事務局、調査局、法制局の合同した形での独自の事務局の設置、こういう基本は変えないことになると思います。ただ、法制的な職員による補佐、こういう体制については充実を図っていくことが求められていくのではないかというふうに考えております。

園田(康)議員 これにつきましては、私どもも同イメージを今持っております。すなわち、憲法改正の原案の審査、提出権限及び憲法改正手続法案の審査、提出権限がこの審査会には新たに付与されている。そして、この間も議論になりましたけれども、憲法に密接に関連する基本法制に対する調査というものが追加をされるということになりますと、これはやはり幅広い調査対象、審査というものがしっかりとこの中で行い得るものというふうに私も考えております。

 したがって、事務局体制も、これに従ってしっかりと担保していくといいますか、広げていくということをやはり心がけておく必要があるのかなというふうに思っておる次第でございます。

近藤(基)委員 憲法審査会は、設置されてから国民投票法本体が施行されるまでの二、三年程度は、改正の要否や方向性の検討のための調査に専念するものと理解しておりますが、その調査の具体的なイメージはどのようなものなのか、両案提出者にお伺いをいたします。

赤松(正)議員 憲法審査会の審査のありようといいますか、中身についての御質問でございます。

 具体的な調査の仕方は今後の議論によるところが大きいかと思いますけれども、基本的に、憲法審査会で行われる調査の具体的なイメージというのは、私見でありますけれども、例えば、去年の四月の衆議院の憲法調査会の最終報告書で多数意見として述べられたものについて、これは幾つかのグループに分かれておりますから、それぞれごとにいろいろな角度から、小委員会をつくってそれぞれの項目に従って徹底した議論、つまり、さきの憲法調査会は改正を前提としたものではなかったということでありますから、今度は改正をするとしたらどのようにしていくべきか、あるいはまた、法律で対応できて改正しなくても済むというものもあるのではないかというふうな観点で、具体的に、着実にその吟味をしていく、詰めた議論をしていく、そういうふうなことがイメージされるのではないかというふうに思います。

 いずれにしましても、憲法審査会ができて、直ちにその場に新しい、あるべき、例えば、政党によって違うわけですけれども、既に具体的なイメージとしての新しい憲法を持っておられる側からするとまどろっこしく思われるかもしれませんけれども、その前段階としての、今の一九四六年憲法のどこを変えて、どこを変えなくてもいいのかという議論を、二、三年というふうな、年数については多少の幅がありますけれども、少なくとも三年ぐらいの時間をかけて徹底的にきちっとした議論をしていく、そんなふうなイメージでとらえているところでございます。

園田(康)議員 やはり、この憲法審査会というものは、各党共通の場がしっかりと国会の中に設けられるということが前提にあろうかと存じます。そして、その共通の場において、これはやはり超党派でしっかりと憲法に対する議論を行っておくものであろうというふうに思っておりますので、やはり調査に専念するというのは私も同意見でございます。

 そして、その調査に関しては、やはりまず憲法改正をすることを前提に、憲法のどこを改正するのか、あるいは改正しなくてもいいじゃないかという御意見もありますので、そういったことも踏まえて超党派でしっかりと議論をしていくという必要が、私はこの場で求められるものである。そういった観点では、国会の中だけではなくて、参考人の方々、各層各界の方々からの御意見も拝聴しながら、そして海外調査もしっかりと進めながら十分な調査を行っていきたいというふうに思っております。

 今赤松委員からもお話がありましたように、私もやはり、一定期間が来たらすぐに、では改正原案ですよというような話ではなくて、まず憲法そのものに対する国会内の議論というものをしっかりと行って、憲法に対する共通の認識を持てるような努力をこの中でまずしていきたいなというふうに私は考えております。

近藤(基)委員 以上、私見を交えながら両法律案の提案者に質問をさせていただきましたけれども、これまでの本委員会及び小委員会における建設的な議論を受けて、双方の提案者から率直な御答弁をいただけたと思っております。

 両法案が提出された段階から、相違点は重要な点とはいえ、わずかなものであったと思っております。ただいまの御答弁からいたしますと、もはや一つの到達点に近づいてきつつあるのではないか、そんな私的な感想を抱きました。これからの委員会での議論におけるさらなる歩み寄りに期待をいたしたいと思います。

 私も、小委員長として、与野党を超えた幅広い合意形成に尽力をしてまいりたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げ、質問とさせていただきます。ありがとうございました。

中山委員長 次に、平岡秀夫君。

平岡委員 民主党の平岡秀夫でございます。

 順次質問をさせていただきたいというふうに思いますけれども、最初に、国民投票と他の投票、選挙とか住民投票といったようなものの関係についてお聞きしたいと思います。

 御高承のとおり、憲法第九十六条では、国民の承認というのは、「特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、」行われるということが定められているわけでありますけれども、今回の法案を見てみますと、第一条で言っているのは「国民の承認に係る投票に関する手続」ということで、憲法上の位置づけとしてはどっちの投票になっているのかなというところが必ずしも明確ではないんですけれども、私が個人的に受けている印象としては、憲法上の特別の国民投票の方にウエートがあるというか、そちらの方の位置づけなのかなというふうにも思うわけであります。

 そうだとすると、後段にあります「国会の定める選挙の際行はれる投票」ということについて、どういうふうに考えているのか。もしそれ自体を排除している法案であるということになると憲法違反というような問題もあろうかと思いますので、まず、その辺の位置づけをはっきりさせていただきたいというふうに思います。

 なお、私の質問は両法案担当者に聞くものがかなりありますけれども、まず与党案の提出者に答えていただいて、民主党提案者の方は、特に異論がなき場合は、時間の問題もありますので、異論ありませんという程度で答えていただければ助かりますので、よろしくお願いします。

加藤(勝)議員 御指摘のように、国民投票の実施につきましては、憲法第九十六条に、特別の国民投票、そして国会の定める選挙の際に行われる投票の二つが規定をされております。

 しかしながら、与野党が政権をかけて争う国政選挙と、国会の三分の二以上の勢力が協調して行われる憲法改正の是非を問う国民投票とは質的には異なるものであるというふうに考えられます。したがって、これを同時に行えば有権者の混乱というものを引き起こしかねない。こういう観点から、この法律においては、憲法改正国民投票と国政選挙を同時に実施するということは想定はしておりません。

 しかしながら、同時に実施することを禁止する規定を置いているわけではなく、国政選挙と同時には実施しないということは、発議機関である国会の政治的判断により担保するということにしたものであります。したがって、御指摘のように、憲法九十六条に違反するということにはならないのではないかというふうに考えております。

枝野議員 憲法九十六条は、「又は」ということでどちらかの機会にやれということであって、なおかつ、その発議をいつどのようにするのかということ自体は国会の自律に任されているわけでありますので、国会がどういうタイミングで発議をするのかという裁量の範囲の中に、どういうタイミングで国民投票が行われるのかということも私は含まれるというふうに思われますので、殊さら「国会の定める選挙の際行はれる投票」を排除するということでなければ、憲法の違反という問題にはならないというふうに憲法論的には理解をしております。

平岡委員 ありがとうございます。

 考えてみると、全国を見るといろいろなところでたくさん選挙とかが行われていて、たまたま国民投票をやる日に選挙をやらなければいけないような事情があるような地方公共団体が出てきたりするということも十分あるんだろうと思うんですね。その場合に、皆さん方が提示されている問題点というのが果たして生じないのかといったような点については御検討はされておられるのでしょうか。与党提案者にお聞かせいただきたいと思います。

加藤(勝)議員 当然ながら、国民投票が地方選挙等と同時に行われるということは想定される事態でございます。この場合、地方選挙や補欠選挙が同時に行われるという理由で公職選挙法に定める政治活動規制が働いて、当該活動のみに国民投票運動が制限されるということになると、大変不合理なことが生じるわけであります。

 そこで、この法律案では、そうした選挙が行われる場合であっても、公職選挙法による政治活動の規制は、「政党その他の政治活動を行う団体が、国民投票運動を行うことを妨げるものではない。」という旨を百八条において規定しているところでございます。

枝野議員 望ましいかどうかという観点からすれば、有権者、投票される皆さん、あるいは運動される皆さんの便宜を考えると、地方選挙等についても、国民投票とは別途していただいた方が望ましいのではないかと私は思います。

 ただ、それは、憲法改正国民投票については国会みずからが自律的に判断をするということでありますので、なおかつ、国政選挙との絡みということについては、我々自身のところでいろいろ調整することは憲法の範囲内で許されていると思いますが、では、逆に、憲法に特段の規定もないのに、国民投票があるから地方選挙をやるなみたいなことを立法することができるのかというと、そこはできないということになるというふうに思います。

 また、あえて申し上げれば、政権を争う選挙と憲法改正国民投票の違いという部分の理解、整理が混乱する可能性に比べれば、政治の仕組み、構造自体が違う地方選挙等との同時実施ということが仮にあったとしても、その混乱はそれほど大きくない、相対的には大きくないのではないかというふうに思いますので、今加藤委員の方から御説明のあった調整規定はちゃんと置いた上で、同時実施されることもあり得るということで立法をするしかないというふうに思っています。

平岡委員 同日実施じゃなくても、多分、発議されてから投票までの間というのは非常に長いんですよね。長いということになると、その間に地方選挙が行われる可能性も十分にあるということなので、もう少しその点の、どういう取り扱いになるかということの整理は、先ほどの与党案でいくと百八条ですか、それだけで本当に十分なのかどうかということは、そもそもの問題の、なぜ別にやるのかというところから、原点に立ち戻ってしっかりと検討しておく必要があるんじゃないかということを指摘させていただきたいというふうに思います。

 それと、憲法九十五条の地方自治特別法の住民投票に関してですけれども、この問題については前にこの委員会でも指摘させていただきましたけれども、最近行われていないということが非常に問題だろうというふうには私は思っています。例えば、今度米軍再編特別措置法みたいなのができて、新たに米軍再編の対象となっている地域に対して特別な措置が講じられるというようなことについて、やはり地域住民の方々の判断を求めていくというようなことは当然あってしかるべきだというふうに私は思うんですね。

 そうであるとすると、そういう投票をどういう構造で行うのかと考えたとき、今、公職選挙法の準用方式でやっておって、かなり今回の国民投票法案とは内容が違っているというふうに私としては理解をしているわけであります。ここは本当は政府に聞くべきなのかもしれませんけれども、この委員会はできるだけ政府を交えないで議員同士でやるということが何か一つの大きな柱になっているようでありますので、政府・与党という意味で、あえて与党の方にお聞かせいただきたいというふうに思うわけでありますけれども、この際、憲法第九十五条で行われる地方自治特別法の住民投票についても、国民投票法案に倣って整備すべきではないかということを私としてはお願いしたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

加藤(勝)議員 平岡委員が従前からそうした御意見をこの場においても展開されているということは十分に承知をさせていただいております。

 地方自治特別法のいわゆる住民投票については、現在、地方自治法に基本的な定めがあり、その委任のもとに地方自治法施行令において詳細な規定が設けられているというふうに認識をしております。

 御指摘のように、そのあり方については、私どもとしては、憲法改正国民投票の議論とは切り離して別途に議論されるべきものというふうに認識をし、今回はその対象としていないというところでございます。

平岡委員 そういう意味では、やはり政府に来てもらって、どう考えるかということをしっかりと聞かないといけなかったのかなというふうにも思いますけれども、とりあえずは与党提案者はそういう考えであるということでおいておきたいと思います。

 次に、投票権者の範囲で、十八歳以上の人に対する投票権の問題に入りたいと思います。

 せんだっての船田議員の発言をちょっと読み起こしてみますと、経過措置三年間という表現を使っておられて、経過措置三年間というと、普通は、三年後に施行されますよ、施行されるまでの間に何か途中で必要なことを定めるのが経過措置という表現なんですよね。

 ただ、よく発言の中身を見てみますと、船田議員の発言は、この三年間の間に、関係法令の年齢を十八歳に改正することとあわせて、それに伴い必要となる関連事項を整理する内容の法案というものを制定していくというように私は内容的には理解せざるを得ないんじゃないかというふうに思っているんですけれども、ある意味では、経過措置三年間という言葉でいけば、関係法令の年齢を十八歳に改正する法律を三年後に施行させるということをまず決めて、そして、その施行までの間の三年間でいろいろなことをやっていきましょうというやり方があるんだろうというふうに思いますけれども、船田議員に、経過措置三年間という意味がどちらの意味で使われているのかということについて、まず明確にしていただきたいというふうに思います。

船田議員 平岡議員にお答えいたします。

 今御指摘のように、私ども、二十ということを考えておりましたが、その後の与野党間の話し合い、あるいは諸外国の例をつぶさに拝見いたしまして、やはり十八歳選挙権年齢に改めていこう、こういう方向で踏み切ろうとしているわけでございます。

 この十八歳選挙権を認める場合に、関連する法令というのは、言うまでもなく公職選挙法、選挙権年齢を定める公選法、それから、成年年齢を定める民法を初めとして、数多く存在しているというふうに承知をしております。この法律が施行されるまでの、この法律というのは国民投票法案でありますが、それが施行されるまでの三年間の間に、政策的な整合性がとれるようにこれらの関連法令について十分に検討を加え、必要と思われる法制については適宜必要な措置を講ずる、このようにしたわけであります。

 ただ、三年間という一律の期間において立法府としてできるのはこのような法律の制定、改正までであって、その施行や適用がいつからとなるかは、公選法あるいは民法、少年法、その他の個別の関連法令ごとにそれぞれ必要な周知期間とか準備期間、経過期間はばらばらだと思います。したがいまして、これを一律に三年以内に施行するというのは適当ではない、このように考えております。

 ちなみに、国民投票の投票権と最も密接に関連をする選挙権年齢については、個人的には三年以内に施行されることが望ましいと考えておりますが、仮に三年という期限ぎりぎりに法改正がなされたとしても、その数カ月後から半年後には施行されるものと理解をしております。

平岡委員 今の答弁に関連してでありますけれども、本当に三年後にきちっと十八歳ということでいろいろな関係法令ができるのかというか、つくっていただけるのかという問題があるんだろうというふうには思うんですね。そういう意味では、それが実行される最大の担保というのは、今回の法案の中でしっかりと三年後に十八歳になるよという、三年後の施行という形の法律改正が行われているということであり、そして、それに必要な関連整理というのがその三年間の間に行われるという、そういう法律の中身なんだろうというふうに思うんです。

 そういう視点から見たときに、今の与党の答弁に対して民主党案提出者の方は同意できるのかどうか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。

枝野議員 御指摘のとおり、三年間たったら自動的に本則に戻るというか、本則十八歳がこの法律でもスタートするし、それから関連法令も三年後に同時にすべて十八歳成年で施行されるということにする方が私は望ましいとは思います。

 ただ、憲法改正に係る国民投票制度で、本則で十八歳と書かれていながら経過措置の時点で国民投票が行われるだなんということが政治的に行われるとしたら、そんな提案をしたら国会は国民からばかにされると思いますので、逆に言えば、もし三年後に十八歳本則適用になっていなければ国民投票はできない、政治的にできないということだというふうに思います。

 さらに言えば、少なくとも、十八歳成人のためのほかの関連法令の法律案は、恐らく本国民投票法が成立したらその数カ月後には必ず国会に提出をされる、もし政府がされなければ民主党が提出をすることになると思います。その法案が継続しながら三年間たなざらしにされて、なおかつ、本則十八歳なのに附則で国民投票を施行するだなんという話で国会の三分の二が合意するだなんということはあり得ないことですので、政治的には、三年後に十八歳になる、成人年齢を含めて全部なるということは、私は担保されているというふうに思っております。

 ただ、船田委員がおっしゃられたように、実はこれは平岡委員にも後で党内で十八歳成人の法案をつくるときにはよろしくお願いしたいんですが、いろいろな法律があり得る。なおかつ、それを全部十八にするのか。例えばたばこやお酒は、私見ですけれども、これは十八歳に下げるという話とは全然別次元の話。たまたま成人年齢とたばこやお酒は二十からというのが今一致しているだけであって、これが成人年齢、投票権年齢が十八になるから十八になるという性質のものではないだろうと思いますが、多分、いろいろなところに、成人年齢が変わることによって影響する法律が、隠れているものを全部ピックアップするのには相当なエネルギーがかかる。その中には例えば行政の組織法的な部分にかかわるようなこと、あるいは施行までの間にどれぐらいの期間が必要なのか、それこそ公職選挙法であれば多分数カ月だと思いますし、民法などであれば周知期間で半年とか一年とかで足りると思うんですが、しかし、それがすべて今の時点で予測可能か、ピックアップ可能かというと、そうではない。

 ということを考えると、例えばこの法律施行後の一年後に法改正ができても、そこから経過措置が三年ぐらい必要な法律がもしあったときにどうするのかという問題が残りますので、法律の組み立て方としては、先ほど船田委員がおっしゃられたような組み立て方をするのにも一理はあるのかなというふうに理解をしています。

平岡委員 それでは、次のテーマの過半数の話にちょっと入ってみたいと思うんです。

 先ほどの質問者に答えて、園田提案者の方からも、過半数の話について言うと、これからの話ということでありましょうけれども、憲法改正の成否を決める過半数というのは、賛成票、反対票を合計した投票総数の過半数というふうにしていきたいというか、そういうことを検討したいというか、そういうお話がありましたけれども、そういうふうにしていかざるを得ない一つの理由というのが、棄権というものをどう位置づけるかということにもかかっているんだろうと思うんですね。

 要は、投票所に行かない人は棄権ということがはっきりしているわけですけれども、投票所に行っても、例えば複数のテーマが憲法改正の内容としてあるような場合に、あるものについては賛成、反対があるけれども、あるものについてはよくわからないから棄権だという人もいる、そのときにその棄権をするという行為をどう評価するかという問題があるんだろう。

 その点に関して、枝野委員がこの前の委員会で概略こういうことを言っておられました。複数のテーマが国民投票に付されたときに、投票所まで足を運び、なおかつ特定のテーマについて棄権をするという自由をどう担保するのかということが問題であって、悩ましい問題だというような話がありました。

 それを踏まえて私なりに思うのは、例えば、今回の法案では明確には書いてありませんけれども、テーマ別の投票用紙を設けることも否定はされていないというふうに思いますけれども、そういう方式にして、それぞれ投票用紙の記載欄に棄権欄というのを設けていく。そして、その棄権欄に印をつけた棄権票については、通常投票所に足を運ばない棄権と同様に、投票数にはカウントしないというような取り扱いということも考えられるのではないかというふうに思うんですけれども、あえて、悩ましいと言われていた枝野提案者にその辺の御見解をお聞かせいただきたいというふうに思います。

枝野議員 御指摘のとおりで、従来の民主党案ですと、Aテーマについては投票したいけれどもBテーマについては投票したくないという人が投票用紙を受け取らないということで、立会人、あるいは周辺にいる、同じ時期に投票所にいる人にこの人は棄権をしているんだということが見えてしまうということで、投票所に足を運ばない棄権とはちょっと意味が違って、投票の秘密という観点から確かに適切ではない。そういう意味で、無効票が限りなくゼロになる可能性の高い前回の船田委員からの提案は検討に値するというふうに申し上げました。

 さらに、今の平岡委員の御指摘を踏まえますと、投票用紙を受け取っても、何も書かないで投票箱に投票するのと、何か書いて投票するのとではやはり違いますので、Aテーマについては賛成、反対の意見があるけれどもBテーマについては棄権をしたいという人が、投票用紙を受け取った上で、賛成にマルをつけたのか反対にマルをつけたのか棄権にマルをつけたのか、どれかにマルをつけたんだなということがわからない形でするということの方がより適切だと思いますので、賛成、反対欄だけでなくて、棄権の欄もつくって、どれかに印をつけるという形で賛成または反対の意思がはっきりしているものを分母とするという形がより望ましいのかなと思いますので、それも踏まえて最終的に調整したいというふうに思います。

平岡委員 憲法の九十六条を素直に読むと、ちょっと省略しますけれども、特別の国民投票においてその過半数の賛成を必要とすると。素直に読めば、投票総数の過半数だというふうに私は読めるんだろうと思いますし、憲法制定当時に連合軍最高司令部に提出された憲法英訳の中でも、その過半数というくだりのところは、リクワイア ジ アファーマティブ ボート オブ ア マジョリティー オブ オール ボーツ キャスト ゼアオンというふうになっているということで、投票されたすべての投票のマジョリティーだ、こういうような表現になっているということから見れば、立法者意思もやはり過半数の分母というのは投票総数、先ほど私が提案したような、棄権票というのがあるとすれば、それを除いたものが投票総数として分母となるべきじゃないかというふうに思うんですけれども、あえてこの点については与党の提案者の方にお答えいただきたいというふうに思います。

赤松(正)議員 憲法九十六条の過半数の意義ということにつきましては、賛成投票数が有効投票総数の二分の一を超えることとする考え方、あるいは投票総数の二分の一を超えることとする考え方、さらには有権者総数の二分の一を超えることとする考え方まであることは承知をいたしております。

 今おっしゃった、憲法制定当時の連合軍最高司令部へ提出された憲法英訳で、リクワイア ジ アファーマティブ ボート オブ ア マジョリティー オブ オール ボーツ キャスト ゼアオンとなっているということについては、単なる英訳文にとどまるものじゃないということは承知しておりまして、少なくとも規範的な意味における日本国憲法の正文は日本語である、こんなふうに理解をしております。

 本法律案では、国民投票において考慮されるべき民意というのは、あくまでも賛成または反対という意思を明確に表示した国民の意思である、こんなふうに考え、有効投票総数の過半数でもって国民投票は決せられるべきだ、こんなふうにしたところでございます。

平岡委員 時間がないので、国民投票無効訴訟の話に移りたいと思うんです。

 国民投票の無効訴訟の場合に、百三十三条を見ると「憲法改正の効果の発生の全部又は一部の停止」という表現があるんですね。ただ、これは具体的にどういう効果をもたらすのかというところが、この法律を見てもよくわからないように思います。

 投票が行われたら、そこで投票の結果が出るわけでありますけれども、片方では、通知が中央選管から総務大臣を通じて内閣総理大臣に行き、内閣総理大臣から衆議院議長とかに行くというような仕組みの中で、内閣総理大臣がそれを受け取ったら、公布の手続をとりなさいと。公布をすれば、多分、施行はいつなのかということも含めて書かれて、いつ施行となりますね。

 他方、訴訟が提起されると、いずれは訴訟の結果として、国民投票の結果は無効という結果も出るというふうに思うんですけれども、その前に憲法改正の効果の発生の停止というものがあったときには、これはどこにどういう影響を与えてくることになるのか、この辺が法律上よくわからないので、その辺の関係を与党提案者の方に説明をしていただきたいというふうに思います。

保岡議員 平岡先生の質問の趣旨がにわかにちょっとわかりにくいところもあるんですが、憲法改正の効果の発生の停止というのは、国民投票の結果を覆すものではないんですね。これを否定するものではない。国民投票の効力を否定するものではない。したがって、国民投票が有効であるという前提で進む手続はそのまま進んでいくんだろうと思います。

 ただ、憲法改正というのは、非常に根幹的な基本法でありますし、特にそれが場合によって施行された後覆されるというような結果になりますと、これは非常に重大な国政上の支障を生ずる。例えば、立法の機関のあり方についての改正であったり、例えば裁判所では、最高裁のほかに憲法裁判所のようなものを設けた場合、それが動き出した後、効果が否定されると大変ですので、そういった緊急性のある場合に限定してでありますが、憲法改正の効果の発生を一時停止するということでその支障、混乱を避けようとするものと理解しています。

平岡委員 今の答弁でいくと、結局、手続的なものは、例えば公布とか施行とかということについては全く妨げられないで、憲法改正の内容そのものが効力を持たない状態がしばらく続く、停止という状態で続く、こういう理解でしょうか。

保岡議員 そうですね。公布の効力とか憲法改正で定められた施行日には何ら影響しない。そういった制度、手続は、国民投票の結果を受けて進んでいくというふうに理解しています。

平岡委員 それで、この無効訴訟の中に、国民投票の一部無効の場合に国民投票の再投票ということが書いてあるんですけれども、全部無効の場合は再投票というのは非常にわかりやすいとは思うんですけれども、一部無効の場合は再投票の対象というのは全部が対象になるのか、無効となっている一部のみが対象になっているのか。もし一部の場合だとしたら、その部分についての手続――そこはいいです。全部が対象になるのか一部が対象になるのか、そこをちょっと教えていただきたいと思います。

保岡議員 一部無効の判決が確定したときは、その開票区に限って国民投票が無効になるので、更正決定が可能である場合を除いて、当該選挙区のみにおいて再投票を行う、その他の開票区の結果と総合して国民投票の結果を確定することになると思います。

平岡委員 そういうことですか。そういうことだとすると、例えば、ほかの投票結果がどうなのかということが新たに再投票する人たちにはわかっている状態で投票を行う、こういうことですか。

保岡議員 無効となった選挙区の結果が国民投票の結果の異動ということにつながるかどうかということについては、当然、ほかの開票区の結果がわかっているわけですから、ある程度承知して投票することにはなると思います。

 しかし、恐らく先生は、そういう影響もあるから全体をやり直せ、その方がもっと適切な制度になるんじゃないかというお考えで御質問されていると思うんですが、他の開票区では公正に投票結果が出ているわけですね。これを覆すまでの理由があるかどうかという点になりますと、すべての開票区において再投票をやり直すのでは、要する時間や人的、物的コストも甚大になりますし、一部無効の判決の対象になった開票区にて再投票を行うことは、そういった意味でも不正のあったところだけ正すということで合理的な制度設計になっているのではないかと考えます。

平岡委員 時間が来たのでやめますけれども、今の御説明について言うと、もうちょっと勉強させてほしいなというのが率直な感じですね。

枝野議員 一部無効判決が出るという場合は、どこかの開票区で不正があった。そこの不正がなかったとして、あろうがなかろうが、それ以外の公正に行われた開票区の票の結果で、例えば無効にされる開票区の票が全部が賛成、全部が反対になったとしても、投票結果が変わらない場合には一部無効にもなりません。つまり、最終的な全体としての賛成、反対の過半数という、どちらが過半数をとるのかという投票結果に影響を及ぼす場合にしか一部無効もありません。

 したがって、他の開票区における結果がはっきりしている場合といっても、つまり、他の開票区の結果ではどちらが勝ちになるのかはっきりしないという場合で、つまり、ブッシュ・ジュニアが初めて当選したときのカリフォルニアだかどこかのように、ここの結果次第によってすべての結論が決まるという場合でないと一部無効にはなりません。もちろん、他の開票区の結果というのは影響を与える可能性はあるとは思いますけれども、だけれども、やり直しは、あなた方の結果で全部決まるんですよという状況ではありますので、ほかの開票区の結果を知っているという弊害は小さく、かといって全部をやり直すとコストが大きく、という点からは合理性が認められるんではないか、こういうふうに判断しています。

平岡委員 また勉強させていただきたいと思います。

 以上で終わります。

中山委員長 次に、逢坂誠二君。

逢坂委員 民主党の逢坂誠二でございます。きょうはよろしくお願いいたします。

 この民主主義社会の中で、主権者たる国民の意思といいましょうか、判断というものを仰ぐというのはなかなか難しいものだなということを私自身実感をしております。多くの国民がAだと言っているからAのとおり政策を進めればよかったかというと、そうじゃないことがあったり、なかなか難しいところがあるんだなというふうに思っているところです。

 特に、民主主義というのは単なる白黒をつけることではなくて納得のプロセスだというふうにも思うわけでありまして、必ずしも合理性のある判断でなくても、納得というものがあれば国民はある程度ついてくるというか、そういうところもあるんだろうなというふうにも思っております。

 いずれにいたしましても、今回テーマになっています憲法九十六条における国民投票でありますけれども、私は、最終的にはこの憲法のような問題というのは国民全体の投票によって決めるということは非常に重要なことであり、これは合理性のあることだなというふうに思っています。

 しかし、例えば夏にこの委員会がヨーロッパ視察を行ったあの報告書の中にもあったとおり、この国民投票というのはおりから出した猛獣のようなものであるという指摘があったり、あるいはまた、投票にはある種の限界もあるのではないかというふうに思っています。

 したがいまして、国民投票を実施する前に、このある種の猛獣性のようなものだとか限界というようなことを国民が十分理解をした上で、やはりこの投票制度の実施に臨む必要があるのではないかなと思っております。

 こうした観点から、きょうは幾つかの質問をしたいと思います。

 自治体の首長選挙なんかを見ておりますと、まれではありますけれども、有権者、その地域の市民の想定外の候補者が当選することが実は間々ございます。もしかすると、委員の皆さんもそういう場面に出くわしたことがあるかもしれません。私の住んでいる町のそばでも、前回の統一地方選挙の中で、なぜこの人がと市民の多くが思っているのに当選してしまったという結果が出たことがございました。

 つまり、今回のこの憲法の国民投票ではなくて、一般的な選挙において民意と違った結果を投票というのは導くこともあるように私には思われるんですけれども、こういうことに対する認識について、与党、民主党それぞれの提案者から御見解を伺いたいと思います。

船田議員 逢坂議員にお答えいたします。

 今、例えば自治体の首長選挙などで有権者の想定外の候補者が間々当選することもある、こういう御指摘がございました。この点については、私どももそういう経験をどこかではしているような気がいたします。

 ただ、人を選ぶ選挙と、今回提案しておりますまさに憲法改正案を承認するかしないかというこれは政策を選ぶ選挙でございまして、その点、若干、土俵というか土台といいますか、もともとの考え方というのは少し違っているのかなという感じはいたします。ただ、御指摘のように、この国民投票においても国民の意思が適切に反映できるように幾つか私たちは努力をしなければいけない、こう思っております。

 一つは、憲法改正案の内容や分量にふさわしい周知期間の設定、長過ぎてもいけないし短過ぎてもいけないということだと思います。それから、国会に設置される予定の広報協議会における憲法改正案賛成意見、反対意見の広報をどこまで丁寧に行うことができるか。それから、自由闊達な意見を展開させるために国民投票運動というものをなるべく制限なしで保障していこうという点。さらには、正確な民意を明確に把握するためのわかりやすい投票の方式。そういうことについて、私どもこれまで修正も加えながら真摯に検討を続けてきたわけであります。

 このことをやっていけば、もちろん制度に一〇〇%というものはございませんけれども、相当なところまで国民の意思を適切に反映するということにかなり近づいてきたな、こういうふうに私自身は思っております。ぜひその点は御理解をいただきたいと思います。

鈴木(克)議員 民主党からも御答弁をさせていただきたいというふうに思います。

 基本的には今船田委員がおっしゃったのとほぼ一緒であるというふうに御理解いただきたいと思いますが、今逢坂委員は、民主主義は納得のプロセスだ、そしてまた、投票にはある種の限界があるんではないかと。このお話については、非常に私自身も同意といいますか賛意を示すものであります。

 ただ、船田委員がおっしゃったように、人を選ぶ通常の首長選挙、それからまた今回御提案させていただいておるのは政策を選ぶ選挙ということで、これはわかりませんけれども、民意と違った結果ということを判断するのは非常に難しいというのか、選挙の結果が民意だということになるのではないのかなというふうに思います。

 したがって、今船田委員からも、周知期間を徹底するとか、賛成意見、反対意見を公平に、いわゆる国民の皆さんにわかっていただくような、広報協議会でしっかりと議論する、そしてまた国民運動を保障する、そして投票方式も、様式も非常にわかりやすくする、そういう努力をすることによって、今委員がおっしゃったようなことを少しでも解消していくということが我々のできるプロセスではないのかなというふうに思います。

 繰り返しになりますけれども、そういうことの中で出された投票の結果というものは、やはりある意味では民意をあらわしたものだというふうに理解をしていくしかないのではないのかな、またすべきではないのかなというふうに思っております。

逢坂委員 今の話から、両者ともに、ある種、投票への限界ということについての認識はあるように感じたわけでありますけれども、私は、憲法における国民投票というのは重要なもので、これしかこの憲法改正のかぎを握っているものはないのだろうというふうに思う、その前提で話をしているんです。とはいうものの、やはり投票という方式には限界があるんだということを国民が知った上でなければ、本当の意味での納得というものは得られないのだというふうに感ずるわけであります。

 そこで、再度でありますけれども、憲法の問題ではなくて一般政策についてある地域で住民投票などを行った場合に、その結果、例えば白と出る、黒と出るというようなことがあるわけですが、その結果にその地域の住民はどんな反応を示すか。例えば、私が冒頭に言った、民意と多少ずれている結果が出てしまったというようなことであっても、出てしまった結果に対して住民というのはどんな反応を示すのだろう。いや、それはちょっと違うんだけれども、結果が出ちゃったからずっと拘束されちゃうよというふうに強く思うものなのか、それとも、そうではない、やはり民意とずれているから、これは直さなきゃいけない、これは守る必要がないというふうに思い始めるのか、そのあたりの認識というのは、両法案の提出者、いかがでしょうか。

船田議員 逢坂議員にお答えいたします。

 今御指摘をいただいた、いわゆる住民投票、一定の行政単位において行われるものでありますけれども、これは全国で相当数今日まで行われました。その結果については、確かに、今逢坂議員御指摘のように、その地域に住んでおられる住民の皆さんの意思が十二分に反映できたかどうかということについてはいろいろと解釈はあると思っております。

 ただ、やはり投票は投票でございまして、その結果をどう扱うかというのは、それぞれの地域の、要するに住民投票条例を制定したその首長であり、また議会がそれをどう制度設計するかにかかってくると思っております。その結果が、まさに諮問的である、まさに参考にするということで対応する場合もあれば、あるいは、その結果に拘束される、義務的と言ってもいいかもしれませんが、そういったものも制度設計としてはあると思いますが、それはまさにそれぞれの地域の政策判断である、こう私は考えております。

 それ以上申し上げるのはちょっと越権であるなと思っておりますので、このあたりにしたいと思います。

鈴木(克)議員 私も、やはり、その結果というのは一つの重要な参考資料になるというふうに思っています。

 御指摘のように、基地だとか合併だとかいうようなことで住民投票がなされてまいりました。しかし、そのことをどうその地域の首長が受けとめるか、また議会が受けとめるかということの中で、住民投票と違った形の進め方をされて、さらに問題になっていくというようなケースもいろいろあるわけですけれども、いずれにしましても、しかしそうはいいながら、やはり出された結果というのはある意味で非常に重要な参考資料になっていくのではないのかな、またそうあるべきではないのかなというふうに私は思っております。

逢坂委員 それでは次に、今度は、まさに憲法に関する国民投票における部分を聞きたいんです。

 憲法に関する国民投票において、いわゆる無効訴訟というようなレベルの問題ではなくて、手続的、法律的には全く問題がなかったという投票結果が出た。しかし、その結果が、結果が出てしまった後にどうも国民全体の思う方向と違っていたのではないかというようなことが出た場合にどうするかということについてお聞きをしたいんです。

 例えば、私が冒頭に述べた自治体の首長選挙などの場合、全国の例を見ると、リコールが行われたり不信任決議が行われたり、何らかのチャンスをとらまえて、四年の任期以外のところでそういうことが行われているケースが随分あるように思うわけであります。

 万々が一、憲法の改正における国民投票において、そういった民意と違った結果が合法的な中で出てしまった場合、そういう場合には何か手当てが必要だというふうに思うのか、思わないのか。あるいは、もし手当てが必要だと思う場合にはその手法というのはどうあるべきなのか。あるいはまた、そういう手当てというのは不要なんだ、合法的な手続の中で出てしまったからそれは必要ではないとした場合に、民意とのずれというのはどういうふうにして埋めていくのかというあたりについて、両者から見解を伺いたいと思います。

船田議員 今の御質問でございますが、その御質問の前提となるところで、若干私が理解できていない部分があるのかもしれませんが、国民投票の結果が出て、それが本来の民意とずれているのかずれていないのか、これをだれが判断するかというのは非常に難しいことだというふうに思っております。これを発議した国会が判断をするということになりますと、これまた民意を曲げるということにもなりかねないでありますし、それから、国民の皆さんに判断をしていただくとしても、一体どのくらいの割合の方がこれはずれていると思って全体でまたやり直そうということにするのか、極めて難しい問題が内包されていると思います。

 したがって、今我々がやれることは、現在提出をいたしております、与党案にしても民主党案にしても、それぞれ民意とのそごを生じさせないようにできるだけ努力をする、先ほど私申し上げたような周知期間というものをどのように設定するか、あるいは広報協議会でどのくらい丁寧に国民に広報していくのか、そういうことを手だてを尽くしてやっていくということが必要だと思っています。

 一〇〇%完璧な制度というのはありませんので、しかしそれに近づけるように制度を改良していくということは大事だと思っていまして、最初のこの段階において、民意とずれているという理由で明確に何らかの是正措置が必要であるというふうには現時点では考えておりません。

鈴木(克)議員 私も全く今船田委員がおっしゃった意見に近いわけでありますが、合法的に出された結果が民意と違っておった場合という御質問だったわけですが、まさにだれが民意と違うというふうに判断をするかということは非常に難しい問題だというふうに思います。

 ただ、冒頭、逢坂委員おっしゃったように、投票にはある種の限界がある、このことを私は全く否定をするつもりはありませんけれども、しかし、そういう中で、一つの制度の中で出された結果はやはり尊重をしていくべきだというふうに思っております。

 したがって、先ほど申し上げましたような、やはり公平な制度設計をしていくということが我々に課せられた最大の責務だ、このように思っております。

 以上です。

逢坂委員 今の両者の話からも、憲法に関する国民投票というのは、その結果の取り扱いにおいて相当に厳格なものである、かつまた、それであるがゆえに相当慎重に、通常の首長選挙ももちろん慎重なものでなければならないのですが、それ以上に相当慎重な取り扱いというものが必要なのだなというような雰囲気を私は感じました。

 次の論点でございますけれども、実は、憲法に関する国民投票法制に関しては、憲法改正の議論がいろいろと沸騰している時期に手続法の議論をするのは余り得策ではない、憲法改正の内容の議論が静かなときに、ある種、改正内容にかかわらず粛々と改正手続法の議論をすべきだという考え方がちまたにはあるようでありますけれども、これについては、両提案者、どのようにお考えでしょうか。

保岡議員 先生御指摘のように、憲法改正に関する国民投票法制というものは、憲法の改正内容に関する議論が静かな時期に改正内容にかかわらず粛々と進めるべきである、これは全く同感でございます。さらに言うと、そういった意味で、憲法改正国民投票法制は、本来は憲法制定直後にきちっと制度整備しておくべきものであったと考えます。

鈴木(克)議員 私どもも全くそのとおりだというふうに思っております。まさに静かな時期に粛々と進めていくべきだというふうに思いますし、今、保岡委員がおっしゃったように、憲法制定の直後にこれが整備をされておれば、今こういう形での議論はせずに済んだというふうに思っております。

逢坂委員 以上の観点からいたしますと、これも両者にお伺いしたいんですけれども、今我々がこの憲法改正の国民投票の議論をしているこの時期でございますけれども、この今の時期というのはこの議論をする上で適切な時期というふうにお考えでしょうか。この点について両者からお伺いします。

保岡議員 憲法制定権力の担い手である国民がその権利を行使する制度を早急に整備するということは、これは立法府としての大きな責任でありまして、改正に関する国民の主権というものを回復して真の国民主権を具体化することは、国民の代表者としての使命であると考えます。

 このような観点からしますと、憲法改正国民投票法制は、本来は、先ほど申し上げたように憲法制定の直後に整備されるべきものであったと考えますが、憲法改正案が具体的に国会に提出されていない現段階において、憲法改正の中身と切り離して冷静に論議することは、公正かつ中立な憲法改正国民投票法制を目指すという点からしても適当で、今まさにこれを審議しているところだと思います。したがって、憲法改正国民投票法制は、できるだけ速やかに整備しなければならないと思います。

鈴木(克)議員 具体的な憲法改正案の議論が熱くならない段階で、できるだけそれとは切り離して改正手続法の議論をすべきであった。現時点ではむしろ遅きに失したのではないかというふうにも思う部分もあります。しかし、そうであっても、今ならばまさにぎりぎり間に合うタイミングだ、このように私どもは考えておりまして、本法律案を今まさに出させていただいておる、こういうふうに御理解いただきたいと思います。

逢坂委員 今二人の話はまことにもっともで、私もよく理解できるわけでありますけれども、ただ、憲法改正の内容に関する議論が静かな時期に、改正内容にかかわらず粛々と議論を進めることがいいんだという考えがある一方で、憲法改正に関する投票法制を議論するということそのものが、いやが応でも憲法改正を前提にしてしまうんだという指摘も随分多いわけであります。

 ただ、私が後者で指摘した、紹介した考え方、要するに投票手続を議論することはいやが応でも改正が前提となってしまうんだという考えを前提にすれば、この改正手続をどんな時期に議論をしても、憲法改正の内容の議論を静かなときに粛々とやるという、この目的というか適切さが保てないような感じがするのでありますけれども、この点について両提案者はいかがお考えでしょうか。

保岡議員 本来制定しておかなければならなかった制定直後であれ現在であれ、これは、憲法改正の内容、例えばそれが改憲であり護憲である、いろいろな立場で改正について論議をしながら、その改正の内容を国民に問う結果になったとき、特定の案に有利なルールではいけないというのは時期にかかわらず当然のことであって、そういった意味で、本当に、現在は戦後六十年たって、終戦直後と今日とでは内外の状況は別世界というほど大きな変化を遂げていますから、それぞれの党でいろいろな改正案が論議され、改正案としての成案を得る動きが各党で行われております。しかし、そういうものとは全く切り離して冷静に、改憲であれどんな内容であれ、これは国民の憲法改正の内容についての判断、意思をゆがめるようなものであってはならないのは当然であって、そういう点で、現在仮にこの憲法改正の手続の法制を論議するにしても、そういった公正中立な立場で論議をしていくことが大切だと思います。

 先生がおっしゃるように、いつ論議しても同じような問題は当然生ずるんですから、今まさに、遅きに失したと先ほどお話もございましたけれども、できるだけ早く、この法制はよき制度として成立を目指さなきゃならないと思います。

鈴木(克)議員 私も基本的には同意見でありますけれども、ただ、我々が今制定しようとしておるのは、現在の憲法の中身をどうのこうのということではなくて、いわゆる国民投票法制なわけであります。

 確かに、どんな時期に議論しても、憲法改正というのが裏にというかあるというふうに見られれば、どんな時期に改正を提案しても議論を呼ぶというのは、そのとおりかもしれません。しかし、あくまでも国民投票法制でありますので、まさにこれは改憲の立場に立っても護憲の立場に立っても公正中立な手続を我々は今制定しようとしておるわけでありますので、そういう意味であるというふうに御理解をいただければ、時期がどうのこうのということではないのではないかな、こんなふうに思っております。

逢坂委員 両提案者のきょうの話を聞いて、私自身も、この憲法改正の手続というのは、やはり粛々と、改正するしない、内容にかかわらず進められるべきであるということを改めて強く認識をしたわけであります。

 しかしながら、極めて重要な問題であることは言うまでもありませんし、冒頭に述べたとおり、例えば、欧州の視察においても、おりから出した猛獣のようなものであるという例えがあったり、きょうの話からもわかるとおり、投票ということにはある種の限界があるというのも事実だと私は思うわけであります。したがいまして、主権者たる国民の皆様が、このある種の猛獣性でありますとか投票の限界というものを十分に理解をする、そうした上で、要するにこれまで議論されている憲法改正の内容を十分に周知した上で、投票する以前の、制度そのものに対する深い認識というものを持った上で、この手続が確立されていくことが重要ではないか。そうすることが、冒頭に私が述べた民主主義の納得のプロセスをより強固なものにしてくれるのではないかなというふうに思っているところでございます。

 私のきょうの質問は以上で終わりたいと思います。どうもありがとうございます。

中山委員長 次に、石井啓一君。

石井(啓)委員 公明党の石井啓一でございます。

 十一月三十日の、この特別委員会のもとの小委員会での討議におきまして、与党案と民主党案の大きな違いでございました、一つは投票用紙への賛否の記載方法、二つ目に国民投票の投票権者の対象年齢、三つ目には国民投票の対象について、歩み寄りの方向が示されたことは大いに評価をいたしたいと思います。

 すなわち、投票用紙の賛否につきましては、与党案提出者から、マル・バツを自書する方式ではなく、賛成、反対の二つの欄を設け、投票人はどちらかの文字をマルで囲むことによって投票する方式に変更する。賛成、反対のいずれかの文字をバツや二重線で消すような記載についても柔軟に対応する。これに対して、民主党案の提出者からも、他事記載を厳格に排除する必要はないと考えており、投票者の賛否の意思が確認できるものをできるだけ無効票にしないような方式として与党案提出者からの提案は検討に値する、こういうやりとりがございました。

 また、投票年齢につきましては、与党案提出者から、国民投票法の本則で投票権年齢を十八歳以上と規定した上で、附則において、例えば公布後三年までに成人年齢等に関する法制上の措置を講ずるものとし、当該措置が講じられるまでの間は二十歳以上を投票権年齢とすることを検討したい。これに対して、民主党案提出者からは、本則で投票権年齢を十八歳以上と規定するとの提案に対して積極的に評価したい、成人年齢等に関する法制上の措置については、定められた年限までに政府がきちんと措置を行う担保をとっていただきたい、こういうやりとりがございました。

 さらに、国民投票の対象については、与党案提出者から、憲法問題などに限った予備的な国民投票は検討に値するという発言がありまして、民主党案提出者からは、一般的国民投票の一類型として憲法問題などに限った予備的国民投票を検討したい、さらに、予備的国民投票に関する調査、検討が本法によって設置される憲法審査会の対象であることを確認できるのであれば、提案は検討に値する、こういうやりとりがございまして、非常に双方歩み寄りの方向が示されたというふうに思っております。

 私ども公明党といたしましても、もともと両案の相違は少なく、より幅広い合意を得るために、与党と民主党双方が一致した形での法案成立を目指すべきだというふうに主張してまいりました。

 そこで、両法案提出者にお伺いしたいと思いますけれども、この両案の修正合意をできるだけ早期に、できれば今国会中におまとめいただきたいと思っておるんですけれども、その決意、お考えをお伺いしたいと思います。

    〔委員長退席、愛知委員長代理着席〕

葉梨議員 お答えいたします。

 もともとこの法律案は、石井先生が言われるように、私ども対決法案だとは認識をしておりません。憲法調査会においては中山会長、さらに憲法調査特別委員会においては中山委員長の非常に公正な議事の進め方の中で、与野党、もっとも、社民党、共産党さんはそもそも必要ないと言われていたことはちゃんと付して申し上げておきますけれども、与野党が公正ないろいろな話し合いをしながら合意直前まで行ったものが、さきの国会においてそれぞれ提出していこうというような経緯であったものですから、これは対決法案であるという認識は持っておりません。

 ただ、私が個人的に思いますのは、理事懇談会とか理事会でいろいろと今までも協議が図られてきたんですけれども、この臨時国会において、法案が提出されて、議事録にも残る形で、また参考人もお呼びしながら、いろいろ意見を聞いて、国民に開かれた形で議論をする中で、先般の十一月三十日の小委員会、あるいは十二月五日の憲法調査特別委員会の発言にもありましたけれども合意形成が図られつつある、そういうような形というのは、私はむしろ、かえっていい形になったのかなというふうに思っています。

 この問題は対決法案ではございません。したがって、政争の具にするとかあるいは党利党略のために使うということではなくて、開かれた形で丹念に議論をする必要はありますけれども、やはり早期に合意をすべきであると思うし、合意したものについては、これはもう粛々と成立を図る方向に進んでいくべきものじゃないかというふうに思います。できるだけ開かれた形でできるだけ早期の合意をということを目指して、私どももお話し合いをしてまいりたいと思っています。

枝野議員 石井委員からの御指摘、それから今の葉梨提案者からのお話と、基本的な認識を一致させていただいております。

 この法案は、憲法本体に対する考え方の違いを超えて、内容について中立公正であるという共通認識を持つことが何よりも大事な法案であるというふうに考えておりますので、できるならばすべての会派が一致をして制定されるべき性格のものであるというふうに思っております。

 したがいまして、与党二党と私どもに加えて、さらに国民新党の皆さんにも賛同をいただける形にしたいと思っておりますし、そのほかの二党の皆さんについても、今つくるべきであるかどうかについての意見が違っていることはもうはっきりしておりますので、法案に賛成をしていただけないとしても、もしどこかの時点でつくるのであるならばこういう中身であるなという内容的な賛同はいただけるための努力を最大限図っていかなければいけないと思っておりますし、これまでも図ってきているつもりでおります。

 その上で、石井委員御指摘の三点について、考え方がかなり近くなってきているということは大きな前進であるというふうに思っております。

 ただ、あえて、若干メディアなどが先走っている部分がありますので改めて確認をさせていただきたいんですが、私は、今のような前提で、これは政治的な意見の対立でどうこうという話ではない性質、むしろ技術的な問題のところできちっと詰められるのか。手続法というのは実は実体法よりも重要であって、実体法の部分が仮に間違っていても、しっかりとした手続があればその手続によって実体の誤りを正すことができますが、手続が誤っていたら何度やっても正しい中身はつくられないということになりますので、手続法の中立公正さと同時に、これは初めて行う制度ですので、実際に運用してみたときに見落としがあって何かトラブルが起こったということは許されない仕組みであります。

 したがって、技術的に問題がないのか、見落としがないのかということを丁寧にやっていかなければならない。そここそが実はこの法案の最大の問題であって、政治問題の部分は実は余り大した話ではない。その技術的な問題をどうやってきちっとチェックし、詰められるのかということが最大の課題であるということを、私は特にメディアの皆さんに対してこの一年間繰り返し申し上げてきました。

 若干政治性を帯びる三つの点についてかなり考え方が近づいてきたということは大変大きな前進でありますが、技術的な部分で例えばきょう既に議論が出ているところでも、テレビのコマーシャルの話、無効訴訟の話等について、実際に運用したときに、あれ、こんなことが起こるとは思っていなかったなんということにならないかどうかということのチェックをきちっとしていかなければならない。これを丁寧にしっかりやらなければならないというふうに思っています。

 そういったことを含めてきちっとした制度を、私は一貫して、無理にいつまでにやらなきゃいけないということで急がなければならないとは思っていませんが、逆に言えば、殊さらおくらせることは全くよくないことであるし、意味のないことでありますので、今言った技術的な点がクリアできた時点で、恐らくこの委員会での採決ということになるのではないか。それは今国会中かもしれないし、その後かもしれないというのは、ひとえに技術的な問題だというふうに思っています。

石井(啓)委員 今枝野委員がおっしゃったように、技術的な問題を丁寧に詰めておくということは非常に大事かと思います。一方で、余り長々と議論をしておりますと、国民の皆さんが、法案は出たけれどもいつまで議論をしているんだということにもなりかねません。また、余り時間をかけますと、国民の皆さんの関心自体が薄らいでいくというようなこともございますので、丁寧な検討となるべく早期の検討ということで、よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 続いて、民主党案の提出者にお伺いしたいと思いますが、今申し上げた投票用紙への賛否の記載方法でございますが、与党から提案された方法、また、民主党さんも御主張されているように他事記載を選挙と同じように厳格に排除することまではないだろうということで、なるべく投票者の賛否の意思が確認できるように柔軟に対応することによって、無効票あるいは白票を少なくするということはできると思うんですね。そういった場合、過半数の定義については与党案の有効投票総数の過半数でよいのかどうか、この点について確認をしたいと思います。

小川(淳)議員 お答え申し上げます。

 委員御指摘のように、そもそも、公職選挙と異なりまして、厳格に無効票を排除して相対的な順位を競うという性質の案件ではないことから、私どもとしては、積極的な賛意を拾っていけば国民の承認を得られるのかどうか判断できるというところから出発したわけでございます。

 ただ、この間の議論、ごらんをいただきましたとおり、先ほど来技術的な詰めといったような議論も出てきております。例えば、複数のテーマについて何回か投票行動を行うときに、明確な棄権と明確な反対との峻別ができるのかどうか、そうした技術的な点もございます。

 したがいまして、御指摘のとおり、今与党案とのすり合わせの中で、有効投票総数の過半数という形で賛否の判断をしていく、この可能性については十分検討に値するものと判断をいたしております。

石井(啓)委員 続きまして、最低投票率制度についてお伺いしたいと思います。

 これについては、両案提出者から慎重な意見ということで、特に、憲法九十六条が要求する以上の要件を加重するものであり憲法違反の疑いがある、こういう指摘は私は説得力を持っていると思っております。

 ただ一方で、悩ましいところは、仮に一〇%、二〇%といった極めて低い投票率のもとで承認された憲法改正が、多くの国民の皆さんに本当に正当と受け入れられるのかどうかということについては、私は個人的にちょっと悩ましい点だなというふうに思っておりまして、両法案提出者は、極めて低い投票率の際の国民投票の有効性についてはどのようにお考えなのか、お伺いをいたしたいと思います。

葉梨議員 結論から申し上げますと、一〇%、二〇%にならないように、ちゃんとやはり努力しなければならないということだと思いますけれども、非常に悩ましいところでありまして、例えば大きな政治的なイシューになるような問題について、それほど低い投票率になるかというのは、私は個人的にはそうは考えていないのです。

 先般の憲法調査特別委員会の議論でもありましたけれども、この憲法審査会においては、相当長い時間をかけて、与野党の合意形成を図るためにいろいろな形での審議が行われ、そして国民の声を吸収するというような作業が行われる。その過程で、先般も議論になりました予備的国民投票という形もあるかもわからないし、少なくともいろいろな形での世論調査というのは丹念に行われていく。そして、その中で、例えば統治機構であるとか、あるいは国民が全くノーと言わないようなものについて、与野党も合意形成が図られて、非常に技術的な問題である。それについて国民投票をかけたときにどれほどの投票率になってくるかというのは、ちょっと私も自信が持てないところはあるんです。

 ただ、いずれにしても、投票率が低いという状態は決していいことではないし、やはり上げるという努力をしっかりしていかなきゃいけない。

 ですから、そこは一に、この憲法審査会の議論の中で、こういう問題だ、こういう問題だということを国民にどういう形で周知徹底していくかということが必要でしょうし、また、憲法教育ということで、憲法というのは非常に大事なものである、国民投票にそれぞれ参画することは国民にとって非常に大事なことであると丹念に教育をしていくこともやはり必要なことじゃないかなというふうに思います。

 諸外国の例でも、なかなか投票率というのは、特に、大きなイシューであるとそれなりの投票率をとるのですけれども、必ずしもそうではない場合は非常に低い場合もやはり間々あるようでございます。外国の調査をした過程でも、イタリアの大学教授の方から、最低投票率は設けない方がいいんじゃないか、あるいは、設けるとしても極めて低いラインにしておかないと制度としては動かなくなるよというような御指摘があったこともつけ加えておきたいと思います。

小川(淳)議員 民主党案も同様でございます。投票率の高い低いに関しては、これは公職選挙の際も同じような議論が出てくるわけでございまして、やはり高いにこしたことはありませんし、低いことは望ましくないという全く同様の考えを持っております。

 そこで、投票率を上げていくように努力するというのもそのとおりだと思いますが、一方で、テーマによっても恐らく投票率が高くなったり低くなったり。

 しかし、投票に行かれるのかどうかも含めて、最後は国民の皆様の判断にゆだねていく。公職選挙の際も同様ですが、そこまで含めて国民の判断を信頼し、ゆだねていくというような腹づもりが私どもには求められるのではないかという気がいたします。

石井(啓)委員 投票率を上げる努力をそもそもしなきゃいけないというのは、もっとも、そのとおりだと思います。

 ただ、極めて低い投票率に陥った場合は、改正の発議をして、国民に周知、理解を広げてもらうことに成功しなかったと受け取ることもできるのかなという感じがしておりまして、ちょっと私、個人的にまだ悩ましいなというふうに思っていると申し上げておきたいと思います。

 続いて、予備的な国民投票についてお伺いしたいのですが、国民投票の対象として予備的な国民投票が検討の俎上に上げられておりますけれども、どうもそのイメージがなかなかつかみにくいところがございます。具体的にどんなテーマをどういう形で予備的な国民投票として国民に問うかということは、今後検討されることでありますから固まったイメージというのはまだこれからだと思うのですけれども、現時点で、自民党、公明党、民主党の各党の提出者はどういうイメージでとらえられていらっしゃるのか、お伺いしたいと思います。

 あわせて、この予備的な国民投票について、憲法審査会の議論の対象にすることを法案に明記をされるおつもりかどうか、両法案提出者にお伺いしたいと思います。

保岡議員 先生、憲法に限定した諮問的、予備的な国民投票というものの具体的なイメージをお尋ねなんですけれども、その前提として、まず、我々は、今までも申し上げてきたとおりですけれども、一般的国民投票制度というのは、その効果が、仮に諮問的なものであったとしても、事実上ほとんど決定的な拘束力があるということは否定できない。これは議会制民主主義の根幹にかかわる問題で、現憲法が国会は唯一の立法機関であると規定している趣旨からも極めて大きな問題だという認識があって、したがって、我々は、憲法改正国民投票と一般的な国民投票とでは本質を全く異にするというふうに考えています。

 ただ、今回は、憲法改正国民投票法制に特化した議論に限定して、一般的国民投票制度というものは、その意義はいろいろ考えられるので否定するものではない、そういった意味で別途検討というふうに考えているわけです。

 おっしゃるように、憲法問題に限った諮問的、予備的国民投票制度というのは、憲法改正事項に直接民主制を取り入れた憲法九十六条そのものの趣旨からすると、憲法の許容するぎりぎりの範囲内とも考えられるので、検討に値するかなと。

 その場合には、お尋ねのイメージなんですけれども、これは恐らく、憲法改正をするに際して、国会が憲法改正の発議の内容を検討し成案を得ていく上で、国民にどういう意識があるかということをあらかじめ知って重要な参考にするという意味と、もう一つは、憲法改正の環境、条件を国民に問いながら得ていくという二つの要素があると思いますが、いずれにしても、どういうことを発議できるのか、その発議の形式あるいは要件ということなど具体的な制度設計については、今直ちに本法律案に明記する段階には達していない。そういうことで、今後の憲法審査会の調査事項の一つとして、各政党間においてよく検討していくべき事項であると考えています。

 そういうことで、この問題についての取り扱いはまたよく相談をしなければならないと思いますが、どういう形で憲法審査会の調査事項の対象として議論していくことについての担保をするかは、お話し合いをする中で適当な考え方もあり得るんじゃないかというふうに考えています。

赤松(正)議員 各党からということなので、公明党の考え方を申し上げさせていただきます。

 憲法改正手続に関する有権的世論調査的なる位置づけとしての予備的国民投票は、従来この委員会あるいは小委員会でも私は申し上げさせていただきましたけれども、要するに、たびたび卑近な例で恐縮でございますが、憲法を家の建築に例えたら、全く新しい家を建てるのか、あるいは増改築をするのか、あるいは家を建てないでおくのか。こういうふうな選択のときに、施工主としての国民が、でき上がったものが自分たちのイメージしたものと違うじゃないかということにならないように防ぐということが第一義的にある、こんなふうに思うわけでございます。

 そういった意味で、イメージとして、あえて私見でございますけれども言わせていただければ、新築としての全面改正、そして改修、増改築としての加憲、全くさわらないといういわゆる護憲、こういった大筋の方向性というものは何らかの形で国民の皆さんにあらかじめ問う必要性はあるんじゃないのかな、そんなふうに思っております。

 したがって、本当にこれも全くの私見のイメージですけれども、全面改正を問う、あるいはもし改正をするならどのテーマがお望みですかというふうなことを問いかける、マルをつけていただく、あるいは全く変えないでいくべきだというふうなこと、こういった大枠三つぐらいの観点で国民の皆さんの意思を問うことが有権的な世論調査というような格好で行われてしかるべきじゃないかというふうに思っております。

 大枠、先ほど与党の筆頭理事の保岡さんが言われたとおりであるわけなんですが、これもあえて私的な考え方を言わせていただきますと、そういうふうな形にするということ、予備的な国民投票の必要性ということについて附則に盛り込んでいただければいいんじゃないのかなというふうに今考えているということを申し上げさせていただきます。

    〔愛知委員長代理退席、委員長着席〕

小川(淳)議員 民主党案についてお答えを申し上げます。

 この点は、まさに出発点においては与党案との間に相当な開きがあったところでございまして、私どもはそもそも一般的な国政問題に関する国民投票制度をこの際設けたらどうかという主張をさせていただきました。その意味では、御指摘の予備的な国民投票というのは、私どもの主張した一般的国民投票に非常に近いものではないかというふうに推察をしております。

 現時点でのイメージでございますが、やはり憲法改正の原案、原文、改正案が出ていって国民の信を問うというその前段階、そもそも、例えばですけれども首相公選制についてどうだとかいったようなことを、案文にする以前の段階でテーマとしてとっていくというようなイメージになるのではないかと予想をいたします。

 この具体的な制度設計についての法案化でございますが、これは今与党の方からお答えになられたと同様、現時点でどういった法的な扱いをするかについてはいまだ明らかではございません。さらに検討、議論を進めさせていただきたいと思っております。

石井(啓)委員 続きまして、十一月の十六日の小委員会において、公明党の赤松委員から、憲法審査会につきまして、憲法調査会は改正を前提としない広範な立場から自由に一九四六年憲法を議論した、それが終わった途端に憲法改正案の議論を常設の機関で行うのではなく、まずは、憲法調査会の次の機関としての性格を持った場所で一九四六年憲法を俎上に上げて、改正を前提とした上であらゆる角度からの議論をしっかりやらなければならない、それは憲法審査会の仕事を前半、後半に分けた前半の仕事ではなく憲法審査会とは別の場所でやるべき、こういった主張がされておりますけれども、これに関しまして、自民党、民主党提出者の見解をお伺いしたいと思います。

船田議員 石井委員にお答えいたします。

 確かに、十一月十六日のこの委員会のもとに置かれた小委員会におきまして、与党提案者の一人でもございます赤松委員から、今御指摘のような趣旨の御発言がございました。我々もこれは大変重要なことだというふうに考えております。

 要すれば、憲法調査会において、広範な立場から自由に現憲法の問題点あるいはすばらしい点、こういったものをお互いに確認し合おうではないかということで五年間やってきたわけであります。

 そして、その後どうするかということでございますが、いきなり憲法改正原案について議論をする、あるいは議決を行う、あるいは提案もする、こういうことはやはりなかなか想定しにくいことであり、むしろ、それは一定の期間そういうことを凍結して、改正ということを前提とし、あるいは改正の検討のための調査を深めていく、こういった第二段階が必要であるということは、私どもも従来から認識をしてまいりました。赤松委員の御指摘によりまして、さらにその気持ちが強くなったところでございます。

 ただ、私ども、現在修正をいろいろ考えておりますけれども、その一つに、国民投票制度本体部分が公布から二年間は施行されない、こういう期間がありまして、これに合わせて、二年間、今申し上げたような憲法審査会の中での憲法改正原案の審議を凍結するということを思っておりましたけれども、赤松委員からの御指摘もあり、第二段階というものをより丁寧に行うということを考えた場合には、二年ではなくてやはり三年程度必要ではないのかな、凍結期間を三年間にする、こういう前提でまた修正を加えていきたい、このように考えております。

 御指摘の点は、十分に認識をして、今後の修正案の中で真摯に協議をしていきたいと考えております。

小川(淳)議員 民主党案も同様でございます。基本的な調査をしっかりやるべきだ、あるいは別の機関でやるべきだという御主張については、それなりに力のあるものだと思っております。

 ただ、大きく違いますのは、国民投票法制がこの法案が成立した時点で完備をされる、つまり、いつどの段階でも改正について国民の賛否を問う実戦配備ができるわけでございます、手続的に。その前提に立ちますと、やはり議案の審議、あるいは提出、そして採決まで含めた憲法審査会というのが同時に実戦配備されるといったような位置づけは、法制的には必要なことだろうと思います。

 したがって、その法制的な位置づけを前提にし、かつ委員御指摘の基本的な調査をじっくりやるべきだということの要請、このバランスを考えたのがまさに二年ないし三年の凍結期間、そして基本的な調査に専念する期間というふうな位置づけを置いているわけでございまして、ぜひこの点は御理解をいただきたいと思っております。

石井(啓)委員 赤松委員に伺いますけれども、今両党からの答弁がございましたけれども、それを踏まえて、改めて御見解なり御感想なりをお伺いしたいと思います。

赤松(正)議員 私の言った趣旨は、この間、あの場で申し上げて、中山委員長からたしなめられましたけれども、ここの憲法調査特別委員会も、必ずしもこの法案の審議だけではなくて、いわゆる憲法にまつわる全面的な調査もするということがこの委員会の仕事に入っているわけですね。それから、もともとの憲法調査会も、繰り返すようですけれども、憲法改正を目的とした場ではなかった。

 ですから、そういう部分で、次の段階というときに私が言っているのは、一つの場としてのものを置くことによって今の一九四六年憲法というものをしっかり吟味するんだよということを国民の皆さんによくわかっていただくためにも、前の段階の延長線上にあるものとしての場が必要じゃないのかということを申し上げまして、憲法審査会の場のついでにやる前の、空白の二年間あるいは三年間にそれを当てるというんじゃないんだ、力点の置き方が違うんだということを言いたかったわけでございます。

 ただ、今両党の二人の委員がおっしゃったように、そういうことを十分に踏まえた上で、憲法審査会の場において、おまえの言ったそういうことを含めてやるんだよということでありますならば、あえて違う看板をかけるということにどこまでも固執するつもりはないと思います。

石井(啓)委員 これで最後にしますけれども、今船田委員の方からございました、凍結期間を二年から三年に延ばすということは結構かと思います。ただ、第二段階としての調査を行う期間が三年で最長だよということではなくて、私は少なくとも三年という位置づけで、三年たったらもうすぐに発議に向けての議論をやるんだということではないだろうということを申し上げて、私の質問を終わります。

中山委員長 次に、福島豊君。

福島委員 本日は、いささか抽象的なといいますか、私の問題意識についてお聞きをしたいと思っております。

 ただいま石井委員の方から、法案についての個別の論点について御質問がございましたが、私の方は、もう少し全体のプロセスを日本の今の社会の中でどう考えていくのかということをお聞きしたいと思っております。

 それに先立ちまして、まず何よりも大切なことは、与野党超えて合意形成を速やかに進めていただきたい、こういう要望でございます。そもそも、改正のための手続というものが存在しておらないという事態の方が一国の法体系としては私は整合性がないのではないか、そのように思っております。

 ただ、どのような手続によってこれを行うのかということについては、新しい制度を創設するわけであります。現在の日本の社会の状況、またメディアの著しい発展等々さまざまな状況が憲法の制定当時と大きく変わっておりますし、つくった後にここをこう改めればよかったなというようなことがないように、そこのところはよく議論をしていただいて、しかし、いつまでもだらだらやるわけにはいかないというのもそのとおりだと思っておりますし、迅速に合意形成に努めていただきたいというふうに思っております。

 この点についての与党また民主党提出者の両方の御決意を再度確認いたしたいと思います。

葉梨議員 先ほど石井委員にもお答えをさせていただきましたけれども、やはりこの問題というのは、政争の具にする、あるいは党利党略の具にするということではなくて、開かれた場でしっかりと早期に合意形成を図っていくということが必要だというふうに思います。

 もともと、与党案と民主党案に大きな差異があったというふうには認識していませんし、対決法案であるというふうにも認識していないんですけれども、幾つか対立点として、例えば十八歳あるいは二十ということで、ほかのいろいろな関連する法律にかかわるもので多少技術的な検討も必要だなというものもございました。

 また、一般的国民投票、予備的国民投票といったものを、では憲法改正の中で予備的国民投票というものが必要かどうか。そういった制度設計ということになりますと、現行憲法との絡みであるとか多少の時間もこれまた必要かなというような危惧を持ったんですけれども、たまさか今憲法審査会の議論が石井委員それから赤松委員からも闘わされましたけれども、二年ないし三年、少なくとも三年というお話が石井委員からもございましたが、その間は新しい憲法改正案について議論するわけではない。ですから、逆に言えば、この憲法審査会の中において、例えば十八歳、二十の問題にしても、予備的国民投票の問題にしても、技術的な、制度的な設計ができる、そういう時間ができたのかなというような感じを私は個人的には持っています。

 ですから、その他の問題について、やはり明確に合意できるところについては私は早期に合意すべきだし、そういった十八歳、二十、それから予備的国民投票、ほかの問題との関係で技術的な検討を必要とする問題については、やはり憲法審査会の場で今後も議論していくというような姿勢が必要じゃないかと思います。

小川(淳)議員 民主党も同様に考えておりまして、これは両党がそれぞれ案を提示したことで、かえって国民の皆様から見える場でいろいろな意見集約が進んできたというのが、この委員会審議の一つの成果じゃなかったかという気がいたします。その意味で、大分歩み寄りができてきたところもございますし、ある種の方向感をつかんできました。

 しかし、さらに技術的な詰めを要する点も残っているわけでございまして、とにかく、できるだけオープンに、できるだけ早期に、できるだけ幅広い合意を目指してこれからも協議を続けていきたいと思っております。

福島委員 今葉梨委員の方から御発言ありました、技術的にいろいろと詰めなきゃいけないものは引き続きやってという話だったんです。

 私は、二段階で基本的に共通している部分というのをきちっと確認して、幅広くというふうに民主党の提出者の方からお話があったんですが、何から何まで合意をするということではなくていいと私は思うんです。多少残す課題というのは技術的に詰めるということで、きちっとここまでのコンセンサスはできましたということで、一定の区切りをつけていくということが必要なんじゃないかなというふうに私は思っております。

 それから、前回の会議のときにも御質問したのでありますけれども、国民の憲法に対しての認識というのは、実はそれほど深くはないのではないか。何が問題なのかということについても、例えば集団的自衛権の問題にしても、どこまで認識をしてもらっているんだろうか。

 ただいま石井委員の方からありましたが、投票率が非常に低かったときにどうするのかということともつながってくるのでありますけれども、日本国の憲法の見直しのプロセスというものがまさに国民に根差した形でしっかりと行われるためには、その前提として、憲法自体が国民にどのように理解をされているのか、ここのところに改めて光を当てる必要があるんじゃないかというふうに私は思っております。

 そういう意味では、教育の問題が非常に大事だと思います。どのような形で教育の中で憲法というものが教えられるのか。そして、諸外国の憲法もさまざまな見直しが行われているわけでありまして、そういったプロセス自体がどういうものであるのかについても、私はやはりしっかりと教育をしていく必要があるというふうに思うわけであります。

 憲法について見直しを仮に行うとした場合に、国民一人一人がそうしたことについてどういうふうな視点で判断をするのかということについての土台といいますか、共通した認識といいますか、そういうものがやはり要るんだろう。これは、どの立場に軸足を置いてということで申し上げているつもりは全くないわけでありまして、一般論としてそういうことはあるのではないかというふうに私は思っております。

 この点について、与党提出者また民主党提出者それぞれのお考えを、お考えといいましても、多分一人一人相当違うのかもしれないなと思うわけでありますけれども、お聞きできればと思います。

赤松(正)議員 憲法をどのように教育の場で教えていくというか取り扱っていくのかということは、極めて大事なことだろうと思います。

 私は一九四五年生まれでございますので文字どおり戦後教育とともに歩んできたわけですけれども、自分の過去を振り返ったときに、憲法をどれだけ学校教育の場で勉強したのかなというと、ほとんど余りそういう記憶が、もっとも、ほかの問題についても覚えているわけじゃないんですけれども、余り記憶は定かでない。

 それは、よく今の教育基本法改正の流れの中で、あるいは今の未履修の問題等の中で、世界史、日本史、地理、こういったものの選択をどうしていくのかという流れの中で、特に歴史が、やはり現代史を教えるという部分で、教師の側の姿勢、人によっても大きく違うと思いますけれども、自信を持って教える人と、いろいろ意見が分かれるのでさわらないでおこうという、まあ、そんな教師がいるかどうかは別にしまして、こっちの受けとめ方としては、やはり難しい、ややこしいテーマなのでということで、どちらかというとほとんど学生にとって興味のないと言ったら怒られますけれども、古代から始まっていって肝心かなめの現代史に来たら時間切れというケースが多くて、ちょっと私、古い感覚で申し上げているかもしれませんけれども、そういう意味では、まさに日本史にとっても世界史にとっても、今を生きる人間にとって最も大事な規範である憲法のくだりになると、いろいろな意味で余りさわられないということが過去の実態じゃなかったのかなという感じがいたします。

 そういう意味で、これからまさにそういうタブーを置くことなく、憲法について、今福島委員が御指摘になられたように、日本国憲法の成り立ちについて、経緯とかあるいはまた中身についても、あるいはまた各国がどういうふうな憲法を持っているのか、まさに憲法調査会あるいは当憲法調査特別委員会に所属している私たちがこの数年いろいろ勉強をさせていただいたようなことの、そんな難しいことではなくてもっと簡略化した形、事実としてのそういう経緯、諸外国のありよう、また日本の現行憲法の、過去のいろいろな意見があった、そういう部分を並列的に吟味する材料、こういったことを学校教育の場においてしっかり教育するということが大きく取り入れられていくべきではないか。

 今、二十歳にするかあるいは十八歳にするかということで、十八歳という方向性が濃厚になってきているわけですけれども、そういう意味で、若い世代にとって極めて重要な関係のある憲法というものについて、若い段階というか年少の段階から、わかりやすい憲法の話というものを日常的な学校教育の中でしっかり取り入れていくことが極めて大事だ、そんなふうに考えております。

小川(淳)議員 今赤松先生から、世代を反映した御答弁がございました。

 私は四十六年生まれでございまして、やはりそれなりに公民教育とか憲法教育、社会科での授業は充実していました。しかし、振り返りますと、憲法というのはやはり変わらないもの、変えられないもの、変えてはならないもの、硬性憲法という存在感として教わったなと、これは私見ですけれども、そういう感覚がございます。

 今ここでこういう議論をしている以上、やはり憲法というのはそうころころ変えるものでは当然ありません。ありませんが、やはり時代に合わせて変わっていくもの、変えていくものという前提に立った動的なものとして、学校教育なんかでも憲法価値観みたいなことを議論したり、あるいは教えていくという、一つの時代の変わり目なのかなという気がいたします。

 私見で恐縮ですが、お答えにさせていただきます。

福島委員 私見でしかお答えできないようなことばかり聞きまして、大変申しわけなく思っております。

 次もそういった種類の質問なんですが、実際に憲法の見直しを行うプロセスの中で、メディアが果たす役割というのは極めて大きいんだろうなというふうに思います。そのときに、立法府としてどういう形で何を訴えていくのかということも当然あると思います。そしてまた、メディアに対してどういった報道を要請するというか、これも大変難しい言葉なんでありますけれども、どういうふうに全体のプロセスにメディアがかかわってくるのか。また、メディアとしての責任もあるんだろうなというふうに私は思うんですね。憲法という日本の社会の基盤であるところの法律を国民がどう判断するのかということを問いかけるときに、メディアが果たすべき役割また責任というものも恐らくあるんだろうというふうに思っております。

 こういったメディアの位置づけといいますか、具体的に法律でどうこうということではないのでありますけれども、全体的な考え方を、与党また民主党提出者の人にぜひお聞きできればと思います。

葉梨議員 今も教育のお話がありましたけれども、国民の間で憲法に対する関心を高めていくということ、それから憲法を改正すべきかしないべきか、そういったことについても有益な情報を提供していくという意味では、やはりメディアというのは極めて大事なことだと思います。でも、関心を高めるというのは、余り規制とかそういうような手法になりますと、やはり関心を高める方向に、お仕着せになりますと行かないわけなんです。

 ですから、メディアの位置づけというのは極めて大事だけれども、その手法においては、やはり自由な発想で、表現の自由を重んじて、自由闊達な議論をメディアの中でもしていただくということが当然のことながら重要になってくるだろう。そういうことで、この法律では基本的にはメディアの規制は行わないという形になっているわけなんです。でも、メディアというのは極めて大事であるというような位置づけになっております。

 ただ、現行放送法、特にいわゆる放送メディアについては、その影響力の大きさから、現行放送法で公正中立というような規定が現在あるわけで、私ども、今現在、提出者としてはこれで十分だというような意見を持っているわけですが、今福島委員からもお話がありましたように、例えば、賛成意見と反対意見が平等かつ正確に放送されるためには放送法の現在の規定のみで十分であるのか、そこら辺のところはまだ検討を加えていきたいというふうに思っています。

小川(淳)議員 私どもも同様でございまして、これは本当に、報道番組あるいはバラエティー番組を含めて、大変大きな影響力をメディアが持つことになるだろうという気がいたします。その上で、それをやはり信頼して、自律的、自主的な倫理観でもって報道に努めていただくということで、今回、特に規制を置かないという位置づけになっております。

 それこれ含めて、やはり一方で、新聞等残るメディアで冷静な議論、客観的な議論を進めていただく。一方で、大きく議論にもなりましたが、スポット広告などの扇情的な広告などについては、最低限の規制でもって、できるだけ国民の判断を冷静な方、客観的な方へ引き戻す。そういうバランスをとりながら、これは本当に死活的な、生命線的な役割を、このメディアには憲法論議に際しても果たしていただきたいと期待をいたしております。

福島委員 メディアはそれぞれの立場で、どういった見直しが行われるべきかという意見を当然持つ権利はあるんだと思うんですね。また、そういうことを表明する権利というのも当然あるんだと思うんですが、一方でどういった議論が行われており、またどういった意見が国民の中にあるのかということについては、バイアスを与えるということではなくて、提出者から御答弁がありましたように、できるだけ公平に客観的な情報を提供する、それに基づいて国民の投票行動はお一人お一人決めていただく、その媒介を果たすという役割も両方ある。

 ここのところを両方明確に、区分というのもあれなんでしょうけれども、一方でその意見を表明する立場と、そしてまた公平公正に報道する立場、この両方を両輪としてきちっと使い分けてというかバランスをとってやっていただくということが極めて重要なんじゃないかなというふうに私は思っております。

 続いて、憲法の見直しのプロセスの中において政党の果たす役割、これはメディアと同時に極めて大きなものがあるというふうに思っております。

 先般、審査会の役割に期待されることは多々ある、こういう話がありました。立法府として国民の意識喚起をすると同時に、また政党も一定の役割を担っていかなければ国民の意識喚起というものは十分行われないだろう。それはそれぞれの立場がありますが、それぞれの立場で取り組む必要があるんだろう、こういうふうに思っているわけであります。

 この点について、政党の果たす役割ということに関して、与党提出者また民主党提出者の方にお考えをお聞きしたいと思います。

葉梨議員 政党の果たす役割ということの御質問ですけれども、立法府においてはもう既に広報協議会などの議論が行われていますけれども、やはりできるだけ、発議機関の責任としてではあるけれども、賛成、反対、公正中立にというような形が今までの議論の中でもあるわけなんですが、政党というとさらにもう一つ加わってくるわけです。

 やはり政党というのは、立場を持っている政党ですから、それぞれの立場から、憲法の改正案あるいは改正しないということについていろいろな発言をしていくということが求められるわけなんですが、そこで一つやはり注意しなければいけないのは、憲法審査会の中でいろいろな政党が、まず当初は何年後になるのかわかりませんけれども、いろいろな形での、改正案なのか創憲案なのか加憲案なのか、そういったものを持ち寄ってきて、そして政党同士がいろいろと話をしながら、単なる妥協ということではなくて、より高次の段階、つまり弁証法の止揚、そういった形で何らかの合意形成が成るということは、もともとの自分たちの案とは違うわけなんです。このことをしっかりと政党というのは説明する責任がその時点においては出てくるわけです。

 なぜもともとの案よりもこういう形の案になったのか。こういう形であれば、我々の党としても、党利党略を超えてこれは日本の枠組みとしてしっかりとこれでやっていけるんだということを、やはり政党はそれぞれの政党の立場で説明しなければいけない。これは非常に重要なポイントであって、その時点においては政党というのは、統合のためのエントロピーを高めるのではなくて、やはりインテグレーションという形を考えた中で国民に説明していく。これをやると、それぞれの政党の支持者にとって憲法に対する関心というのは相当高まってくると思うんです。

 やはり、憲法の議論というのは、何か密室の妥協の産物で行われたのではないということを国民に対してしっかりと知らしめていくというのは、私は政党の責任だと思っています。

小川(淳)議員 民主党といたしましても、立法府あるいは政党に所属する者として、この国民の意識喚起というのは大変重要と考えております。

 まずは、議論を進めてきた内容、経過を一番よく知っている当事者として、この広報協議会あるいは投票公報の発行、それから無料広告枠を活用しての意識啓発に努めていく。これは直接当事者としてのそういった働きかけ、あるいは間接的には、先ほど委員の御議論にもございました、メディアの役割ですとか最低限の規制のあり方等々の議論を含めて、直接当事者あるいは間接当事者としての幅広い国民の皆様との向き合い方、おつき合いの仕方、これを立法当事者として考えていくということだろうと思います。

福島委員 最後に一点また御質問いたします。

 歴史認識の問題もそうなんですが、やはり私は、いまだに国民の中に大きな溝がある問題というのが幾つもあるんだろうな。例えば核武装の議論の問題とか集団的自衛権もそうかもしれません。そういった溝そのものが大分変わってきたのかなという気がしないわけでもないんですけれども、ただ、なくなったというようなことではなくて、やはり厳然として存在しているんじゃないか。そういったものが、憲法の見直しの中で、溝が溝として残ったままどちらかがどうだというようなことではなくて、私は、できればこういったものが昇華されていく、インテグレートされていくというプロセスが要るのかなという気もします。

 ただ、なかなかそれは実際難しい話なんだろうなというふうには思いますが、それは立法府の中でということもありますし、国民の意識としてどうかなというのもあるんですね。国民の意識としても、そういったあたりのことがどういうふうにインテグレートされていくのかということがあるんじゃないかと思うんです。

 ですから、そのためには、先ほど両提出者からもお話がありましたように、できるだけ公開の場で、開かれた形でいろいろな議論をしっかりと見せていく。その中で何がどういうふうに変わっていくのかというようなことが、ある意味でこういった溝、今まで、かたくななと言ってはいけないのかもしれませんけれども、ある意味ではそういう議論が繰り返されてきたわけでありますけれども、それをインテグレートするような議論がどれだけこれからまたできていくのかということが求められているんじゃないかというふうに思うわけであります。

 この点について両提出者の方から御意見を承って、私の質問を終わりたいと思います。

赤松(正)議員 今福島委員の御提起された問題は私も同じ問題意識を持っていて、極めて重要な問題提起だと思います。

 今、大きな認識の溝がある、そしてそれが昨今狭まりつつある、こういうふうに思えるという御指摘もございました。

 私が思いますのに、先ほど例として核武装あるいは集団的自衛権の問題ということを言われましたけれども、かつて日本の安全保障をめぐる国会における議論というのは、私なんか、かつて日本社会党で安保七人男なんというふうな名称で語られたりして、日米安保条約をめぐる国会における議論というのは、私が若いころ、極めておもしろいというか興味を引かれたテーマではありました。

 しかし、それはやがて年を経るにつれて、結局、体制選択、不毛の対立、要するに、全く国家観が違う人たち同士の議論というのは余り生産的でないなということがはっきりしてきたというふうに私は思います。ただ、それは今なお引き続き、そういう議論の必要性ということの、強くそういう観点に依拠しておられる人がいるということもわかっておりますし、その議論もまた大事だと思います。

 したがって、そういう観点からいくと、今の時点で必要なことというのは、やはりそういう大枠としての、私があえて言った、かつて不毛の対立と言われたのはそういう体制選択に絡めての話。そういったものは、それはそれとしてやる。もう一方で、やはり同じ土壌に立つ上で、どういうふうにしてこの国を守っていくのかという日本国防衛についての、同じ土壌の上に立って方法論が違うという人たちの議論と立て分けてしっかりやっていく必要性があるのじゃないのかなということを昨今痛切に感じる次第でございます。

 そこで大事なことは、要するに、国益とは何かということと国をどう守るかということと自分の所属する政党をどう守るかというのは全然違うということで、これはあえて私自身の体験を言いますと、かつて野党の時代に、国益という言葉に対してある意味で非常に生理的に嫌悪感を持った時代があった。しかし、今になってみれば、国益というのは大事だ、こう思うわけであります。

 どうしてもここで結論的に言わせていただきますと、大事なことは、まず改憲ありきとか、まず護憲ありきということではなくて、やはり、この国に生きている人間、政治家として、どうやってこの国を守るのかということについて、まさに政党の枠を超えてしっかりと議論していくということが、福島委員が提起された、共通の認識を形成していく上について極めて大事なことである。だから、言ってみれば従来のそういう枠を超える必要がある。

 ですから、核武装論なんかも、いわゆる大臣をしておられる人が言うのは問題があろうかと思いますが、そうでないところで普通の政治家がどんどんそういった部分についてはタブーを置くことなく議論するのは大事なことである。集団的自衛権の問題、つまり海外における武力行使、それと我が国をどう守っていくのかという部分における問題等をしっかりそれぞれにおいて議論していくということは極めて大事だと思います。

 以上です。

小川(淳)議員 ここもやや私見が入らざるを得ないあれかもしれませんけれども、御指摘のように、特に歴史認識とかあるいは核武装それから集団的自衛権、委員が個別に御指摘になりましたこういうものについては、まるで遠心分離器にかけたかのように議論がどんどん拡散をしてさらに対立が深まる。こういうのは、私もいろいろな有権者との接触の中でもすごく感じてまいりました。恐らくそういうことが、国会の中でも、例えば伝統的な改憲派とか護憲派とかいうところに影響を及ぼしているという側面は否めないんだろうと思います。

 ただ、二つ申し上げなければなりませんが、ひとまず国民投票のルールについては、特定の改憲派、護憲派どちらにもくみするものではないものとして整備をしたいということが一つ。

 もう一つは、おっしゃる国民の共通認識をつくっていくためには、ある意味これは痛みを伴う議論かもわかりませんが、私は、これまで議論が徹底的に不足をしていたか避けてきたかというところにやはり原因があるような気がしてなりません。我々国会議員が率先して、痛みを伴いながらしっかり議論を闘わせていくこと、これが唯一の、遠回りのようで一番の近道のような気がいたします。

中山委員長 午後二時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十九分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時二分開議

中山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 今国会も会期末が近づいてくる中で、自民、公明案と民主党案が、修正協議で合意とか、それから修正で合意とかというような活字が躍ったりしているような状況も一方であります。また、だらだらせずに今国会で採決かもしれないという話もありましたが、私は、今、論外だというふうに感じております。

 前回の委員会の発言でも申し上げましたが、両案の間には歩み寄りとか最終合意に向けたステップとかいうのがあるのかもしれませんが、主権者国民から見れば、手続法案の根幹にかかわる問題点といいますか、そういう意味では対立点というのは厳然としてあるということが言えるんだと思うんです。そういう点で、そもそもの問題を含めて幾つかただしていきたいと思います。

 まず、改めて、そもそも論といいますか、私は、当委員会でも、それから前国会の本会議の質疑の中でも、改憲手続法がないことで国民の権利が侵害された事実はなく、また、今日においても手続法を求める国民の世論も運動もないもとでなぜ今改憲手続法をつくろうとしているのかをただしてまいりました。

 それで、両案が国会に提出されてから、これは前国会で継続になっているわけですが、既に半年が経過しているわけであります。そして、法案提出者の皆さんは、本委員会での議論そのものが国民への周知のための重要な機会だというふうなことを繰り返し言われて、十月二十六日には、テレビも入って、国民にも知ってもらおうということで質疑が行われたということでありました。

 ところが、国会に寄せられる国民の意見はどういうものかということを冷静に見てみますと、参考人にも来ていただきましたが、日弁連を初めとする法律家団体やメディア関係者、それから自治体労働者の団体や教育者団体など、寄せられる意見書や要請書というのは手続法案に批判的なものばかりが圧倒的だと思うんです。それで、国会への請願も、これは間もなく今国会の状況がまとまるんだと思うんですが、圧倒的に、この手続法案、国民投票法案は反対とか廃案にせよというものが寄せられているということだと思うんです。

 そこで両案提出者に伺いたいんですが、今、この改憲手続法を求める国民の世論や運動はあるというふうに認識されているのか、それが高まっている、ぜひやってくれというのが国民の声だというふうにお考えなのかどうか。どうでしょうか、認識を伺いたいと思います。

葉梨議員 今回の国民投票の手続法ですけれども、これについての必要性、なぜ今必要かという議論については、もう既に何回もこの憲法調査特別委員会でもいろいろと議論をさせていただいております。

 そして、どちらかというと、私も、いろいろな形で選挙民の方々、それから選挙民以外の国民の方々ともお話しする機会が多いんですけれども、確かに労働組合を初めとして一部の団体、一部の政党から、国民投票法に反対しましょうというような紙が、私の事務所にもファクスが届くことはございます。ただ、現実にいろいろとお話をしてみますと、何でそんな国民投票の手続法が今までなかったのという声を私もよく耳にしますし、当然そんなものはすぐにでもつくるべきじゃないですかというような声もまた耳にします。改正の中身についてというよりも、現実に、私も肌で、選挙区を歩いてみて、またいろいろな方ともお話をしてみて、実際に、国民投票法というのはあって当然の話なんじゃないかという意識を多くの国民が持っているんではないかなというような感じを私自身は持っています。

 現実に、各種のインターネットのブログですか、ホームページ、そんなものを見てみましても、冷静な判断の中でこういうような議論が行われていて、そして、よりよいものをつくるべきだというような意見を表明しているインターネットのホームページというのは結構数多くあるというふうな形で私も認識していますから、国民投票法をつくるということについて、私は、国民の声はそういうのはあって当然のものなんじゃないかというような意見が強いんじゃないかという認識を持っています。

枝野議員 今の葉梨先生のお話のとおり、ないの、ないのはおかしいよねという声はかなり大きいと思っています。あえて言えば、ぜひつくってほしいという声があるかといえば、それは別にありません。では、国会はそれをつくらない方がいいのかといえば、いざというときのために必要な制度を用意しておくというのも政治の役割であります。

 いい例えかどうかわかりませんが、戦後六十年間、現行憲法下で、幸いなことに首にしなきゃならない最高裁判所判事はおりませんでしたが、首にすべき最高裁判事が出てきたときには、首にできるようにということで最高裁判官の国民審査という手続があります。これは、やめさせたいという裁判官がいなくても、制度としてつくっておくべきなのであって、この人はやめさせなきゃいけないという人が出てきてから初めて制度をつくるという話ではないというふうに思いますので、そういう意味では、ぜひつくってくれではないけれども、必要になったときに使えるようにつくっておくのは当然でしょうという意見、声が潜在的には多数だと私は思っています。

 もし、こういったものをつくるのはけしからぬという声が国民の圧倒的多数であるならば、この法律、両案においても、どちらの案によっても施行は三年後ですから、それまでの間に、そういった、つくるのはけしからぬという声が多数ならば、共産党が国会の過半数を得られるでありましょうから、そしたら廃止法をつくればいいんじゃないでしょうか。

笠井委員 廃止法をつくるって、今これからつくろうという話をしているときですから。とにかく、今お話ありましたけれども、一部の団体や政党から反対とか廃案にせよとあるかもしれないがというふうな話もありましたが、現実に国会に対して寄せられている、法律家団体を含めて、批判的なもの、あるいは実際に来ているものは反対である、これはおかしいというのが圧倒的なものであるということがあるわけで、潜在的には強いのではないかと言われるけれども、世論という点ではやはり明確なお答えになっていなかったんじゃないかというふうに思います。

 それから、あってしかるべき法制というふうなことを言われましたが、先ほども申し上げたけれども、憲法制定後、手続法がないことで国民の権利が侵害された事実はないわけです。それから、午前中もあったんですが、国民は憲法に関して関心がないんじゃないかというようなことを念頭に置いて発言が幾つかあったんですが、私は、憲法について国民は大いに関心を持っているし、これは大事だというふうに思っているという基本認識があると思うんです。

 改憲についても、賛成か反対かという点で議論があるというふうに、高まってきていると言うけれども、安倍政権に望む課題の中で、憲法改正というのはどの世論調査を見ても数%、十月二十六日に私も紹介しましたが、産経新聞は二・五%ということでありましたから、まさにそういう状況があるということが言えると思うんです。

 午前中も、今は改憲の議論が静かなときであるから今のうちにということがありましたが、私は、静かなどころじゃない、ぎりぎりだから間に合うということでもないということが言えると思うんですね。

 本来、制定直後につくられていればという話もありましたけれども、憲法はできたけれども、九十六条に基づいてという点では、もともと国民が必要と考えたときにつくればいいということがあって六十年間なかったんだろうと思いますので、結局、安倍総理が御自分で、総裁の任期中に改憲を目指したいと明確に言われた、所信でもそういうことでその意思を示されましたし、時代にそぐわない条文として典型的なのが九条という話も挙げて、「まずは、日本国憲法の改正手続に関する法律案の早期成立を期待します。」とまで所信で言われてきたということでありまして、今なぜ手続法なのかという点で言えば、昨年、この特別委員会で、法案を出される以前の段階で議論していたときとも、この一年間で明確に質的に違ってきている。一層、現に進行している改憲の動きと、しっかりその中に位置づけていくということで、それは紛れもない事実になってきているというふうに思うんです。

 この手続法をつくろうという動きについても、もう一つ、私、重大な問題として質問したいと思うんです。

 今、安倍政権のもとで、明文改憲に向けた動きだけではなくて、解釈の変更による集団的自衛権の行使についての検討、研究ということがなされようとしていることなんですけれども、総理は、いかなる場合が憲法で禁止されている集団的自衛権の行使に該当するのか、個別的、具体的な例に即してよく研究していくというふうに述べられて、政府がこれまで憲法上行使できないというふうにしてきた集団的自衛権についても行使可能なケースがないか研究しようという意思を示されたわけであります。

 そこで、与党の提出者に伺いたいんですが、こうした動きは、まさに憲法と現実との乖離をいわば政治力によって意図的につくり出そうとするものじゃないかと。特に自民党の皆さんは、憲法と現実との間に乖離があって、それを埋めるためにも改憲ということを言われてくるわけですが、その乖離を一層政治力によって大きくしようとする流れの中で手続法をつくるということは、ますます改憲の流れを強く推し進めることになるんじゃないかというふうに思うんですけれども、その点についてはどのようにお考えでしょうか。

葉梨議員 私どもはこの手続法についての提出者ですので、政府の見解、官房長官が答弁されたことになると思いますけれども、それについて、その内容をさらに詳しく答弁する立場にはないわけですけれども、国会の本会議においても塩崎官房長官からも答弁があったことを想起していただきたいんですけれども、研究はする、しかし今までの政府の解釈を踏まえて研究をしていくということで、そこのところは連続性ということに十分に配慮している答弁であるというような認識を私は持っていました。そして、それとの絡みで手続法であるというようなことであるとすれば、これは明らかな誤解でございます。

 この憲法調査会が二〇〇〇年にできて、そして、手続法を推進する、そういうような議員連盟の活動が中山会長の公正な指導のもとでずっと長いこと進められてまいりました。そして、その中で一定の信頼関係というのが、かなり大きな信頼関係というのが与野党の中ででき上がりながら、手続法についても合意形成に向けていろいろな話し合いをしていこうという流れがあっての今回の法律の提出ということです。必ずしも、安倍総裁、安倍総理がそのように言われたから今回この手続法をということでは全くないということは御理解を願いたいと思います。

笠井委員 今葉梨委員から答弁があったわけですが、官房長官のことを引かれましたけれども、今までの解釈というふうに言うなら研究は要らないわけですね。だから、そういう点では、変えていくという方向で研究する以外にないわけで、そこは一つ押さえるべき点だと思います。

 それから、後段のところで、この間の経過を踏まえてそういう問題と整備は別問題だということがありましたけれども、私はそうはならないというふうに思うんですね。やはりなし崩し的に解釈改憲を進めれば明文改憲の動きに直結するわけで、そのもとでの手続法整備というのは、まさに九条改憲のための法整備ということにつながってくる。条件づくりというふうに最初から言ってきましたけれども、現実の動きの中でまさにそういうことが示されているんだと思うんです。

 今、これはもうこれ以上言いませんけれども、イラクをめぐってもアメリカ自身が根本的手直しということで検討のチームでああいう文書が出されたりとか、いわば安全保障をめぐっても、国際的にも見直しとかといういろいろな動きが出ている中で、日本がそういう流れに逆らうような形での改憲につながるような手続法の動きというのは非常に重大だということを非常に感じております。

 さて、そういうそもそも論は幾らも議論したいんですが、法案の内容に即して幾つか聞いていきたいと思っております。

 私は、十月二十六日の委員会の中で、この法案の中身についても、改憲案を通しやすくする反民主的な内容になっているということを三点にわたってただしました。その後の委員会の審議を通じても、主権者国民から見た両案の内容の根本的問題点についても、私は何ら解決していないと言わなければならないというふうに感じています。

 第一の問題は、改憲案の承認に係る過半数の問題であります。

 私が一貫して提起して問題にさせてもらっているのは、与党案も民主党案も、投票率が例えば仮に五割台だった場合に、二割台の国民の賛成で改憲案が承認されかねない。午前中も、公明党の石井委員からも悩ましい点だというようなことが言われました。これでどうして国民の意思を酌み尽くすことになるのかという点であります。

 そこで、まず、与党案が過半数の意義を有効投票総数の過半数としていることについて伺いたいんですけれども、与党の提出者のこれまでの説明では、白票などを一律に反対の意思表示とみなすことは民意をつくり出すことになる、国民の本来の意思と異なる結論に結びつくことになりかねないので、有効投票総数の過半数で国民投票は決せられるべきだというふうなことだったと私は理解しております。

 そこで伺いたいのは、憲法九十六条に定める国民の承認というのがありますが、これは賛成だけではなくて反対の意思表示をも求めるものというふうに理解しているのかどうか、その点いかがでしょうか。

加藤(勝)議員 まず、憲法九十六条の過半数については、これまでも申し上げてきましたとおり、有効投票総数か、あるいは投票総数か、有権者総数か、どの二分の一かということでありまして、私どもは、国民投票において考慮されるべき民意というのは、賛成または反対という意思表明を明確に表示した国民の意思の表示であるべきであり、有効投票数の過半数でもって国民投票は決せられるべきであるというふうに考えているところであります。

笠井委員 どういう解釈があるかということだけれども、私どもはそう考えているというわけですが、私は、まさにそこに九十六条をいわば不当に解釈していると言うと言い方があれですが、そういうことになると思うんですね。つまり、過半数の承認を得るとなっているわけですから。だから、反対についても意思表示を求めるというふうに理解するというのは、素直に読めばそうならないというのが参考人からもありました。その点についてはどうですか。

加藤(勝)議員 もちろん、あくまでも国民投票においては、発議された憲法改正案に対して正確な民意をいかに把握していくかということが当然重要でありまして、そういう意味で、従前の答弁でも申し上げましたように、白票という中身にはいろいろな意味の意思が表示をされている、それを一概に賛成あるいは反対ということで決めつけるというのは結果として国民の民意というものをしっかり反映したことにならないのではないか、そういう意味で私どもは有効投票の二分の一ということで提案をさせていただいているということでございます。

笠井委員 いずれにしても、このテーマの最初に申し上げたような形で、先ほど石井委員からもありましたが、結果としては国民の少ない賛成によって改憲案が通るということになりかねないわけですが、それでもいいというふうに考えておられるのか。どうでしょうか。

加藤(勝)議員 その点については、そういう形にならないように、いわゆるこうしたところの議論からスタートいたしまして、あるいは国民投票運動を含めて、多くの方がそのみずからの意思をはっきりと表示をしていただけるように努力をしていかなきゃならない。

 そういう意味からも、今回、ここでのいろいろな議論を通じて、具体的な投票のあり方についても、当初は、私どもの原案では、賛成するときはマル、反対するときはバツ、こういうふうに記入をしていただこうということを考えていたわけでありますけれども、現時点では、投票用紙に印刷された賛成または反対に対してマルで囲んでもらうあるいはさらにはバツの記号等で消したもの、それぞれも反対、賛成という形で見ていくことができるのではないか。いずれにしても、そういう形で国民の方の民意を最大限引き出していこう、こういうふうに考えているところでございます。

笠井委員 そうならないようにということで記載方法の努力をするとか、先ほど来の質疑の中でも広報をやっていくとかあるいは運動を高めるとかというようなことが言われていますが、いずれにしても、ならないようにということでは何の担保にもならないわけでありまして、結果的に、そういう形によって、仕組みとして国民の意思を最大限酌み尽くそうという、そういう観点での過半数の意義について考えられていないんじゃないか。そういう点では、まさに九十六条についての不当な解釈によって、なるべく少ない賛成でも通るというふうにやろうとしているのではないかという批判が出るのも当然ではないかというふうに思うんです。

 民主党案の提出者にも伺いたいんですけれども、民主党案の場合は、過半数の意義を投票総数の過半数としたことの理由として、棄権する自由も認めるべきだということでありました。しかし、そのことを認めたとしても、少数の国民の賛成で改憲案が承認されかねないという問題をほうっておいていいという理由にはならないと思うんですけれども、これについてはどういうふうにお考えでしょうか。

枝野議員 先ほど笠井先生がおっしゃられたとおり、憲法が求めているのは承認の意思表示を求めるということですので、私どもの当初の案は、承認しないという人は、バツ印をつけようがつけまいが投票所に足を運んで承認の意思表示をしなかった者はすべて反対票ということで判断しました。その限りでは、私は笠井さんのおっしゃっているとおりだと思います。

 ただ、棄権をする自由というのは有権者にある。つまり、このテーマについては自分は判断をしない、ほかの人たちの判断にゆだねる、それが承認にも承認しないにもどちらにもとられたくないという有権者がいるのは間違いない。我々の案は、そういった人は投票所に足を運ばないという選択でそういう人たちの自由は確保できると思っておりましたが、これはこの間の議論を笠井先生もお聞きのように、一回の投票期日で複数のテーマといった場合には、その方の投票の秘密、つまり賛成にも反対にも意思表示をしないということがかなり見える形になってしまうということになるので、そこはちょっと考え直さなければならないなと。棄権をする自由、賛成にも反対にもカウントされないということの自由は確保されるべきである。

 その上で、そうした人たちを除いて賛成の意思表示をしたかあるいは承認しないという意思を持っている人の中で、承認をするという人の数が過半数ということであれば憲法の求めている要件は満たしているというふうに思いますし、自分はどっちでもいいよ、意見のある人たちで決めてくださいという人が結果的に多数であったとしても、それ自体私は民意であると。

 そうなったときに、余りにも低い投票率で、結果的に承認の票を入れた人の数が少ないということがあるとすれば、それはテーマにもよると思いますが、逆に言ったら、それは多分、承認に賛成の人たちも反対の人たちも合わせてだと思いますが、発議権を持つ国会の政治的な責任が問われるんだろうなというふうには思っております。

笠井委員 国会の政治的責任が問われるにしたって、結果的には、有権者から見ると、少数の賛成によって改憲案が通るという事態になってしまうわけで、そこのところは、国民の意思を酌み尽くすということで言うと、何をもって過半数の賛成とするかというこの部分で、やはり担保になるものはないなということを感じます。

 関連して、一昨日、葉梨委員が発言の中で、今テーマにもよるというお話もあったことに関連するんですが、統治機構とか技術的な修正とか、あるいは仮名遣いの改正などを例に挙げて、そういう改正の場合には高い投票率は必ずしも期待できるかどうかわからぬということを言われたわけです。それから、枝野委員も前の小委員会で私学助成とか裁判官の報酬の問題を例に挙げて、国民が関心を必ずしも持たないテーマもあるんじゃないかというふうに言われたんだけれども、しかし、そういうことが結果として、憲法という基本にかかわる問題で、国民の少数の賛成で承認されかねないという問題を、合理化する理由になるかどうかというと、これはならないんだと思うんですけれども、その点、葉梨委員はいかがお考えでしょうか。

葉梨議員 先般の発言を引かれてということなんですが、これは逆に、私が質問する立場ではないんですけれども、現実に、仮名遣いあるいは統治機構の問題といったことについて、それについて私は投票率を上げる努力を怠るべきだなんということを言っているわけではなくて、やはりしっかり憲法について知っていただいて、投票率を上げるという努力を徹底的にやっていかなきゃいけないというふうに思います。

 ただ、先ほど石井委員からの御質問に対して御答弁申し上げたように、それをやってもなかなか悩ましいという部分が出てきたときに、具体的に技術的な改正、あるいは今の世の中の動きに応じて本当に技術的にこの部分を変えていかなければいけないということが、最低投票率を設けたがゆえにできないということであれば、それは国として、あるいは立法府としても、なかなかそこのところは体をなしていない、変化にたえられないということにもなりかねないんじゃないかというふうに思います。

 もちろん、私は、基本的には、投票率というのは上げるように上げるように、しっかりそこのところは教育もし、広報もしていかなければならないものだと思いますけれども、先般引きましたイタリアの大学教授の御示唆にもありましたように、最低投票率というのは設けないか、あるいは設けるとしても極めて低く設定せざるを得ないというのが、これまでの歴史の中での人類の英知じゃないかなというふうに思います。

笠井委員 私は、こうやったらいい、最低投票率を設けるべきだとかという立場で言っているんじゃなくて、実際に今出されている案について、憲法改正という一番重要な場面で本当に民意を酌み尽くすことになるのかということを言っているのです。どうしたらいいかは提出者の皆さんがお考えいただくことです、繰り返し私は言っていますけれども。私はこうしたらいいという話じゃないので。

 だけれども、葉梨委員が言われた、たとえ技術的な問題とか低くなりそうな問題でも、そうならないように努力するんだ、あるいは広報したり教育するんだというふうに言われますけれども、石井委員もさっき言われて、いないからあれなんだけれども、悪い意味で挙げているんじゃないからいいと思うんですが、悩ましいというのは、まさにそういう点では担保にならないだろうということだと思うんです、制度上。努力するということも。

 しかも、葉梨委員はあえて仮名遣いの問題とか技術的な修正とか統治機構というようなことを挙げられたけれども、現実に自民党の皆さんが考えていて、表にも出されている例えば新憲法草案ということで言えば、仮名遣いを直すとかそういうレベルの技術的な話というようなことじゃなくて、まさに全面改正というか新憲法をつくろうという話をしているので、私は、実際に考えてやろうとしている動きの関係で言うと、まさにあえてごまかしの議論にすぎないというふうに言わざるを得ないと思うんです。

 過半数の意義について幾つか伺ってきたわけですけれども、結局、私は、いろいろな形で言われても、国民から見たらやはり少数の賛成で改憲案が承認されかねないというこの問題については、法案提出者は根本的なところで手をつけられていないという点で、それではこの間寄せられている国民の批判というのは、ある意味、ますます高まらざるを得ないということを指摘しておきたいと思います。

 内容上の問題で大きな二つ目の問題なんですけれども、広報のあり方あるいは広報協議会の問題であります。

 私、これはおよそ公正中立なものではないということで批判もしてまいりましたけれども、この間の審議を通じて、いわば新しく問題が非常にはっきりしたなと思っている問題があるんです。つまり、改憲案を発議する国会とそれを国民投票によって承認する国民との関係なんですね。

 両提出者に伺いたいと思うんですが、両案ともに、広報の主体というのは国会に設置するとされている広報協議会が担うというふうにされています。しかし、本委員会でも小委員会を含めて多くの参考人が言われたように、改憲案を発議する国会とそれを承認する国民との関係をどう考えるかということなんですね。

 提出者の答弁では、例えば中央選管などよりも国会の方がより公正中立だろうという御意見もありました。要するに、ほかにふさわしい担い手がいないというふうなことが挙げられていたように思うんですけれども、問われているのは、やはり九十六条の理解、どう解釈するかということだと思うんですけれども、改めて、両提出者は、この原理原則というか、この点についてどのようにお考えになっているでしょうか。

葉梨議員 先般の委員会でも、これは枝野委員の方からもお話があったんですけれども、私自身も、別に適当な機関があればそれはそれでいい可能性もあるだろうとは思います、個人的には。

 ただ、そこについて、共産党さんは案を出している立場ではないのでどこだということについて御提案はなかったわけなんですけれども、では、政府でいいのか、中央選管でいいのか、あるいは第三者機関でいいのかというようなことを考えてみますと、今ここの場で、憲法調査特別委員会で、この手続法についての議論は全く政府が関与しないところで行われています。そして、その経緯というのも、我々議員がいろいろと腹を割って、そして開かれた場所で話をしながら行われています。その経過と経緯というのを知っている人間が国民に広報をし、問いかけないといけないんではないか。

 これは、例えば公選法に手続が決められている選挙については中央選挙管理委員会である、あるいは、ほかのこと、政府提出の法案について何か聞くというのと違って、だれが提出するかといっても、基本的には国会が発議するわけですから、その発議までの期間に、相当長期の間、開かれた場で国会議員同士がいろいろな形で議論をして、その議論をしている当事者というのがやはりその経過というのを一番知っている形になるでしょうし、国会が発議をして、国会が広報をする、ただし、それは公平で中立な形でやっていくということが今の段階においては最もふさわしいんではないかと私は考えています。

枝野議員 まず、笠井先生はわかった上でやっていらっしゃるのかなとは思うんですが、ぜひ御理解をいただきたいのは、共産党さんはいかなる憲法改正も御反対のようですから、国民投票がもし行われるときには反対をするという立場、つまり投票において反対投票をしようという立場なんだろうと思いますね。自民党は具体的に改憲の草案のようなものを出されておるし、現に衆議院では単独で三分の二に近い数をお持ちだし、参議院でも過半数以上の議席をお持ちなので、多分、自民党の皆さんは、自分たちが反対に回るような憲法改正発議がされることは余り想定されてないお立場なんだろうと思いますね。

 ですから、そのどちらの党も、共産党の立場から見れば、自民党はできるだけ承認が得られる方向でいろいろなことを考えているんだろうと想像されるのは、それはなるほどなと思われますが、私どもの立場は、残念ながら今の時点で衆議院でも参議院でも非常に少ない議席しか持っておりませんので、私たちがこういう改正ならしてもいいんじゃないかと思っている改正が実現できるためには、今から相当議席数を、多分三倍ぐらいにふやさないと、我々がこれならばと思っている改正ができる立場ではない。そうならないように努力をしておりますが、もしかすると、我々の考え方とは違う人たちが三分の二を占めて憲法改正を発議し、我々はそれに反対をするという立場で初めての国民投票に臨むという可能性もかなりある立場なんですね。

 現に、今自民党が出されている草案は、これは私見ですけれども、私自身は、あの草案のどの部分を見ても、この発議に私が賛成する部分はないなというふうに思っておりますので、あの自民党の案をベースにして三分の二が形成されるときには、私は否決をしようという運動をする側の立場です。

 そういう立場から見ても、賛成、反対、どちらにとっても中立公正な制度とは何なのかということでありますので、先ほど少数の意見で承認がなされてしまうではないかというお話がありますが、逆に言えば少数の反対だけで否決ができてしまう。圧倒的多数の人は、皆、好きに決めていいよと言っているときに、少数の反対があるということだけで、賛成と反対では賛成の方が多くても否決をされてしまうというのは、私は、やはりアンフェアだというふうに思っています。

 その上で、広報協議会ですが、全く今の葉梨先生のお話と一緒で、別に国会に置くということにこだわっているつもりはありません。

 笠井先生がおっしゃるとおり、理想論からすれば、発議機関が国会であるということで、形式的に見れば発議機関でないところに広報のための管理機構があることの方が論理的にはベターだというふうに思いますが、現実政治の問題として、より中立公正さを担保できる制度はどこにどういうふうにつくれるかといったら、むしろその協議会の中に笠井先生や辻元さんがしっかりと入って協議をすると、もちろん、そこで多数決で物事を仕切るようなことになればその広報自体が公平さを疑われることになるわけですから、ある意味では、笠井先生御自身がそこに入られているということは、一番、今想定できる他のどの仕組みよりも中立公正さを担保できるという現実性があるというふうに思っております。

笠井委員 両提出者からお話が幾つかあったんですが、一つは、ほかにないからということで言われる点については、やはりこれは原理原則を踏まえないものだということになると思うんですね。

 それで、今、枝野委員が言われたように、ほかにあればそれが論理的にはベターだというのは、まさにその点で経過と経緯を知っているからやっていくのがいいという話にまでいきますと、これは九十六条とのかかわりで言うと原理原則の話になってきて、やはり発議するまでが国会なので、その後は国民の判断にゆだねる話になりますから、そういう問題が出てくるんだと思います。

 それから、出た憲法改正案に対してどういう態度で臨むかという話で言えば、私ども、あらゆる案について常に反対であるという話で言っているんじゃないんです。今の流れの中で言えば、今の国会の多数を占めて出そうとしている案について言うと、これは九条を変えていこうとか明らかに我々は反対する中身ですけれども、それはそういう問題であるということでありまして、そういう点で、我々が予断を持って想像して言うんじゃなくて、現実のそういう動きとともに、今まさに質問をやっている最中で申し上げていることですが、想像ではなく、実際にそういう改憲を考えている皆さんが通しやすいというふうな話になっているじゃないかというのが、問題点として言っている問題だというふうに思うんです。

 そういう点で言うと、国会の中に広報協議会を設けるという形になると、原理原則のかかわりがあるし、しかも、多数決にはならないというふうに枝野委員は言われるけれども、国会となれば、委員会運営となれば、これは多数で決めさせていただきますと、最後はいつも委員長が委員長の権限で判断するというような形でやれるとか、そういうふうになるのが国会なんですよね。だから、そこに入っているということが十分な担保になるかというと、少数会派がそこに一人いて頑張ったからといって公正中立になるかというと、これはそういうふうに国民からは見られないだろうという問題もあると思います。

 という点で、やはり原理原則をきちっとこの問題でも踏まえるということで、どうしたらいいのかというのを、手続法をつくられようとして提案されるんであれば、これは一カ月、二カ月じゃなくて、もっとかかっても、提出された方の責任で納得いくような形で出すというのが当然のことであろう、一年かかっても二年かかってもこれは必要だということになるだろうというふうに思います。

 その原理原則とのかかわりで、結果としてほかになかなか思い浮かばないからやるというようなことになると、そういう形で立法するという思想自体が、次に伺いたいこととの関連なんですけれども、国民との関係で弊害を生む要因になってくるだろうというふうに思うんです。例えば、政党等による無料の放送、新聞広告の利用の問題であります。これにもかかわってくるだろうと思います。

 政党の役割が大事であることは言うまでもない。そこはだれも否定しないと思うんですけれども。しかし、両案は、今取り上げた広報協議会に届け出た政党等のみに無料で意見の放送や新聞広告ができるとされているわけであります。それで伺いたいのは、憲法改正国民投票という場面で、なぜ政党等のみを優遇することになるのかということなんですけれども、どうでしょう。

葉梨議員 先ほど福島豊委員からも御質問がありまして、政党の役割というのは極めて大きいものがあるということを申し上げました。

 実際問題として、国会の場で自民党の案が、それは私も自民党員ですからそのまま通っていただければいいというのは党員の義務として申し上げますけれども、まず各党がいろいろと建設的に話をしていくということが非常に大事なことなんです。

 そして、もともと政党というのはいろいろと案をつくり、その政党同士が、基本的には政党という単位の中で、国会の中で開かれた議論をして、より高次の合意が得られるものであれば合意をしていくということになるとすれば、国民に対する広報ももともと政党が非常に重要視してやっていかなきゃいけないんじゃないかというふうに私は考えています。

 ただ、そこのところは、十月二十六日の委員会で、笠井委員が新聞を挙げられて、こんなにちっちゃいじゃないかという、これは私も非常に印象に残っておりまして、やはりそれを国民が見たときにどう思うかというようなことは私も非常に考えます。

 ですから、その意味では、政党という形を基礎としながらも、現在、私どもあるいは民主党の中でも、政党等が行う広告放送や新聞広告の無料枠の取り扱いについてはできるだけ賛否平等となるような修正、そういった方向についても検討しているということを申し添えたいと思います。

枝野議員 まず、枠の大きさの話については、放送枠について賛成意見と反対意見がフィフティー・フィフティーになるようにということは、民主党としては、これは検討ではなくて、そういたします、党として決定しましたということを申し上げます。新聞についても無料枠をやるのであれば同じことにいたします。これも決定です。

 ただ、新聞の無料枠はなくてもいいかなという議論が若干出てきておりますので、これは検討したいと思っています。というのは、紙媒体は国民投票公報がありますので、あえて政党にだけ無料枠をつくる必要はないのかなと。ただ、紙媒体と放送媒体それぞれに、少なくとも、国民投票運動の期間中に国民に対して賛成論、反対論からのメッセージが届くということで、紙媒体の国民投票公報と公職選挙における政見放送類似の放送枠は必要だろうと。

 これがなぜ政党にかということですが、賛成である意見の方、反対である意見の方というのは、たくさんあり得るわけです、無数にあり得るわけです。例えば、外国の例などを見て、一年以内の活動実績とかいろいろな基準でいわゆる民間の団体を当事者とするということは理論的には可能だろうと思うんですが、ではどこの団体にそういうことを認めるのかということでまた裁量が必ず入るわけでありまして、そこでこっちはいい、こっちは悪いとかという判断をだれがするのかという話もあるわけであります。

 むしろ、間違いなく言えるのは、全会一致発議の場合は別として、国会内において賛成をした会派、反対をした会派というのは存在をするわけですから、それぞれが少なくとも一時的受け皿になるということであれば、当事者適格を持つ枠について裁量の余地なく確定できる。それで、例えば市民団体の皆さんとかそうした人たちの声を載せたいということであれば、それぞれ賛成をした会派、政党がそうした皆さんに自分たちの持っている枠を使っていただく、反対をした会派の皆さんが市民団体の皆さんにそうした枠を提供する、こういうことが可能な修正もしなければならない。現行提案でもできると思っていますが、そのことができるんだということを明示するような修正も、必要だったらしなきゃいけないと思っています。

 いずれにしても、適格団体を裁量で選択するということが適切ではないということが政党等に限定している理由であります。

笠井委員 スペースの問題は余りにひどいという話がある中で、フィフティー・フィフティーという話、手直しせざるを得ないという話になったんだろうというふうに私は理解しているんですけれども。

 政党のみという点では、両案の提出者からそれぞれ御説明があったんですが、だから政党等のみに認めるという理由にはならないんじゃないかなというのが依然としてあります。

 例えば井口参考人が小委員会で言われましたけれども、国会において、全政党、今まさに枝野さんがちょっと言われましたけれども、全国会議員が賛成して発議した場合ということで、これは例えば未来永劫にわたって共産党もそういうことがないのかといったら、そんなことわかりませんよ、だって、国民がやはり必要だと思ったら。天皇条項の問題だっていろいろあるかもしれない。だから、理論的には、全会派、全国会議員がやった場合ということもあり得るわけです。そうした場合に、政党等による無料の広告ということになれば、すべて改憲賛成の意見になる。だから、そこに反対の意見の政党の部分を市民団体に上げましょうという話にもならないのです。

 しかし、国会というのはやはり発議までで、国民投票の場面では、賛成意見、反対意見について十分な情報が与えられて、自由に意見表明や運動ができるようにすることが要請されるというふうなことがあるわけで、参考人もそういうことを言われたわけです。だから、政党のみ優遇するという理由にはならないというふうに思いますし、枝野委員言われた、政党の枠の中で市民団体に提供するといっても、やはり本質は政党優遇ということじゃないでしょうか。

枝野議員 もちろん、政党とそれ以外の団体とで扱いに違いがあるということを、優遇という言葉を使われるならば優遇だということだと思いますが、それが合理性を持つ優遇かどうかということが問われるわけでありまして、広報する賛成意見、反対意見の一時的受け皿となる当事者としての適格性をどういう線引きをするのかという先ほど私が申し上げた観点からすると、裁量の余地なく明確に線が引けるということで合理性がある。それはまさに合理的なことだと思います。

 なお、全会一致発議、まあ、共産党さんが憲法改正発議に賛成をされる可能性もあるという、大変歴史的な御発言に思っていますが、全会一致の場合も、賛成論、反対論フィフティー・フィフティーというこの条項は生きます。

 その前提で、なおかつ基本的には政党に割り当てる。賛成意見、反対意見を出した政党に割り当てるということとフィフティー・フィフティーとの中で、例えばテレビによる広報はやらなければならないではなくて、やることができるになっています。新聞広告もそうであります。ですから、私は、国会において全会一致の場合には、テレビの枠などについては中立部分のところだけでいいんじゃないか。それ自体は広報協議会で決定ができるということになります。

 それから、公報については、国会での議論の中で出てきた意見に基づくということで、例えば審議の過程における参考人とか公述人あるいは請願等の中にあれば、そうしたものを、これは残念ながら反対意見の人が入っていない広報協議会になりますが、そこでピックアップをして、賛成意見とフィフティー・フィフティーの量で公報をつくるということになるんだろうというふうに思います。もちろん、理念的には全会一致発議ということはあり得ますので、今のような手当てで、全会一致発議のときに賛成論だけの印刷物が有権者のところに届けられるということにはならない、そういう担保はつくってあるということであります。

笠井委員 今の全会一致の場合も含めてなんですが、先ほどの優遇で裁量という話も出てくるんですけれども、日本の中にはいろいろな市民団体、いろいろな団体の方々がいらっしゃるし、それで納得するかというところは、では私たちにはないのかというのは非常に問題だと思います。だから、そういう点では、これはよく考えないといけない問題ですよね、というのは間違いないと思います。

 関連してですが、有料の広告放送なんですけれども、きょう午前の質疑の中で、有料の広告放送については、投票期日前七日間は禁止するという規定から、期日前投票あるいはそれ以上の期間禁止するという修正を検討しているということが両案の提出者からありました。そうしますと、その期間は政党等による無料の放送広告のみが流されて、一般の国民は広告放送はできないということになるんでしょうか。

葉梨議員 そのとおりです。

 それで、先ほどの、政党優遇と言われますが、基本的に、案をつくる、発議をしてから後にどこが広報するかということについては、共産党さんは別の機関にした方がいいという意見は明示的には言われませんけれども、言われているわけですけれども、発議前のいろいろな議論をだれがするかということを考えると、やはりそれは政党が基本的にやっていくわけです。ですから、その議論を踏まえた形での公報の無料枠を割り当てるということですから、それは政党が無料枠、しかも、そこのところは賛否平等ということになってくるだろうと思います。

枝野議員 若干これは私どもにも責任があるのかなと思っているんですが、誤解がいろいろなところにあると思っていまして、いわゆるテレビの商業広告、テレビのコマーシャルと俗に言われている十五秒とか三十秒とかという話とテレビにおける無料枠という話は、全然違う世界の話のつもりで少なくとも提案者としては提起しています。

 つまり、無料枠というのはいわゆる政見放送のようなものを想定しているのであって、番組と番組の間に、さすがに十五秒はないでしょうが、一分間何か流れるとか、そういう枠を賛成、反対に同じ時間上げましょうという話ではなくて、政見放送のように、ある時間帯、例えば三十分間なら三十分間、三十分は長過ぎるかな、二十三分間ぐらいやって、三分間ぐらい中立公正な、今回はこれこれこういう発議がされて、何月何日が投票日です、いつから不在者投票ができますと、そこから先、あるときは賛成論がまず十分間、反対論が十分間の枠をもらう、次の日は逆の順番でやる、こういうのが無料枠の話です。

 スポット広告、商業広告は、いわゆるテレビコマーシャルは全然別の次元の話だと思っていて、その商業広告については、政党であれ何であれ禁止をかけるときには全部禁止されるということになる。その枠、禁止の範囲をどこにしようかということはまだ議論が残っているところである、こういうことです。

笠井委員 今言われたこととの関連で言うと、いずれにしても、政見放送的に政党等がやれるという枠があって、それは無料でやるわけですよね。片や有料の部分というのは、一定期間すべて禁止しちゃおうということになるわけですから、つまり、いずれにしても政党以外の人たちは電波では自分たちのオピニオンというか意見はできないということになりますよね。だから、そこは国民の表現の自由という点で言うと、これを制限することにならないかという問題が一方で出てくるということだと思うんですよ。

 それから、葉梨委員が言われた点で言うと、まさに一般の国民は広告放送できないというのはそのとおりと言われたわけですが、やはりそれも同じことになるわけです。しかも、発議するまでの話と発議後というのは明らかに違うのです、政党がやるからその後もと言われたけれども。だから、そこはやはり帰結するところは、国民から見れば表現の自由の制限ということになる。一方では政党は無料で流れる、無料枠でやるということになると、これは国民投票運動の主人公は一体だれなのかということにつながってくる問題になると思うんですね。だから、そこも本当に考えていかなきゃいけない問題というふうに私は思います。

 広報のあり方、広報協議会の問題に関連して幾つか聞いたんですけれども、改憲案を発議する国会あるいは政党とそれを承認する国民との関係についてたどっていくと、まさに九十六条の解釈、理解にかかわることに関連して整理されなきゃいけないし、されていないということがあるわけです。この点でも国民の批判は解消されないというか、されていないということを言わなきゃいけないんじゃないかと思います。そういう提起をしたいと思います。

 それから、内容上の三つ目の問題に行きます。時間があと八分ほどになりました。公務員等及び教育者の地位利用による運動の禁止の問題です。

 私、この問題で、こうした規定を設けることが公務員、教育者の自由な意思表明や運動を萎縮させる、また、あいまいな規定によっては濫用されかねないということを指摘してまいりました。この間の審議を通じても、この問題も解決していないんじゃないかと私は思うんです。午前中の質疑で船田委員から、地位利用と運動の定義を明確にする、罰則は設けないということで、二つの点で修正を検討しているという話がありました。

 そこで、与党提出者というか、船田委員がお答えになるんだと思うんですが、修正を検討すると言われても、この規定自身を残すということでは、今も公務員の不祥事があるという中で、不測の事態に備えるためにもと前も言われましたので、そういう規定が要るということなんだろうと思うんですけれども、私は、国民投票運動でそうしたことが起こるかどうか非常に疑問だとは思うんですが、しかし、そうした一部の不届き者のために網羅的に公務員、教育者の地位利用を禁止するという規定を設けるとなりますと、萎縮効果の影響の方が憲法改正における国民の自由な意思表明、投票運動にとってはるかに大きいものになっていくんじゃないかという指摘もあると思うんですね。この萎縮効果という問題にこだわるわけですけれども、にもかかわらず、なぜこのような規定を設けるのかということについて、私、どうしても理解できないんですけれども、説明いただけますでしょうか。

船田議員 笠井委員にお答えいたします。

 我々与党案では、当初、いわゆる特定公務員、つまり、一定の強制力を持って公務を執行する性格を持った人々、これは選管職員、あるいは裁判官、検察官、警察官などが挙げられまして、それで私どもは、このような人々が国民投票運動そのものを行うこと自体が国民に対して一定の影響力を与える、その方が強く憲法改正案等について議論する、あるいは運動すること自体、これは非常に影響が大き過ぎるんではないか、こういうことで原案をつくらせていただきました。

 しかし、この委員会でのさまざまな議論、野党の皆様からもそれぞれ、先ほど笠井先生おっしゃったように国民運動が萎縮することがあってはならないんではないか、このような貴重な御意見を踏まえまして、また、たとえ裁判官や検察官、警察官であろうとも、やはり一国民であることには変わりがないわけでありますし、その方々が意見を表明するということ自体は許されてしかるべきものである、こう思っております。逆に、国民投票運動と意見表明権というものが果たしてどこで区別できるかというと、非常にこの区分けが難しい、あいまいな部分が多い、こういったことも一方で我々は整理をしなければいけなかったのであります。したがって、特定公務員の中で国民投票運動そのものが禁止される人々の範囲というのはできるだけ少なくする、狭めるということにいたしまして、当面、選挙そのものを扱う選管の職員等に限定をしまして、裁判官や検察官等は国民投票運動禁止の対象とはしない、こういうことにいたしたわけであります。

 しかしながら、やはり、公務員全体あるいは教育者の皆さんが、午前中も説明いたしましたけれども、その地位を利用して国民に勧誘をする、こういう行動を行った場合には一定の影響力を持つというふうに思っております。もちろん、公務員、教育者の皆様が全く地位は利用しない、こういう事態であればこの規定を設ける必要は全くないのでありますけれども、先ほど話が出ましたように、不測の事態が生じては困るということを考えまして、私どもとしては、地位利用による国民投票運動の禁止ということで制限規定をしっかりと設け、何でもかんでも地位利用だと言うつもりは全くございません。

 先ほども申し上げましたように、国民投票運動の定義というのは、積極的な勧誘行為に伴うものに限定をする。それから、地位の利用ということにつきましては、その地位にあるために特に国民投票運動を効果的に行い得るような影響力または便益を利用して国民投票運動を行うといったことに明確化するということ。そして最後に、先ほども出ましたけれども、違反に対しての罰則は設けない、こういうことで萎縮効果というものがなるべく出ないようにしたということでございます。

笠井委員 今、船田委員から御説明がありまして、運動と意見表明権の違いはどこにあるかはなかなか難しい問題であると。まさに難しい問題だと思うんです。それから、地位利用ということについても、何をもって地位利用とするか、言われたとおりこれも本当に難しい問題になってくるんです。

 具体的にここで個々にこういうケースというのは、前にやったことがありますが、あえてまた繰り返しませんけれども、その上で、罰則を設けないようにしたからと言って、萎縮効果が起こらないようにと言うけれども、そういう規制を設けること自体が既に堀越事件などが起こるもとで、萎縮効果があらわれているというのが、小委員会で自治体の現場で働く労働組合の田中参考人も言われたとおりだと思うんですね。そうした現実の公務員や教育者をめぐる状況のもとで、地位利用ということを書き込めば、それ自体が一層の萎縮効果をもたらすことは明らかだと思うので、これは問題は全然解決されていないと思います。

 私、幾つかの点についてただしてきまして、早いものでもう一時間たってしまったんですが、まだまだいっぱいあります。本日の審議を通じても、法案がはらむ根本的な問題はやはり解決していないということが明らかになったと私は思います。むしろ国民にとってはより悪い方向で修正がされるということが出てきているんじゃないかとあえて申し上げたいと思うので、このような法案については、今国会で採決もありというようなことじゃなくて、それどころか、まさに審議未了、廃案ということで処理すべきだということを強く感じたということを申し上げて、質問を終わります。

中山委員長 次に、辻元清美君。

辻元委員 社民党の辻元清美です。

 両法案提出者に質問をしたいと思います。

 この間、両法案について、あらゆる面で公平な制度かどうか、国民の意見が正確に反映できるのか、国民が十分に考える時間があるのか、純粋な手続法であると言えるのか、そもそも国民投票の原理は何か、そして、国民が今必要としているのかなどの観点から問題提起をしてきました。私は、その過程で両法案の問題点がどんどん出てきたというように考えております。

 軌道修正の御発言もありますけれどもまだまだ不十分で、両法案提出者も、年末年始も迎えますし、つんのめって煮詰まるのではなく、ここで少し頭を冷やしていただいて、しっかりともう一度根本からこれでいいのかということを問い直していただきたいというように思っております。

 といいますのも、先ほどから広報協議会の公報物などの問題も出ていますけれども、私は、当初、公報物や政党の無料広告枠について、議席配分によるという案が出てきたというところは一体何が問題だったのかということを深く突き詰めていくべきだと思うんですね。

 そこで、もう一度お伺いしたいんですけれども、両法案提出者に、議席配分にした法案をつくった当初はどういう合理的な理由でそういうものをつくったのか、まず与党案提出者、そして民主党案提出者の方にお願いしたいと思います。

船田議員 辻元議員にお答えいたします。

 当初、私どもの与党案におきましても、広報協議会の広報のあり方、特に無料枠の割り当てにつきましては議席数案分ということで提案をさせていただきました。

 これは、国会における委員会の構成やその他国会の中での例えば国会議事堂のスペースの割り当て等々、こういうものはほとんど議席数の割合に応じて、あるいは踏まえて配分をされているという現実の問題がございました。したがって、広報という考え方につきましても、やはり各政党の意見を、政党が持っている議席数に応じてそのスペースを配分するというのが一番合理的ではないか、このように考えた次第でございます。最初はそういうことで決めたわけでございます。

枝野議員 当初の案を出した合理的な理由はありません。ないと思ったから修正することを決意したということでありますので、当初の案は合理的ではなかったと判断したということです。

辻元委員 お二人とも率直な御意見かと承るんですけれども、私は、今与党案提出者の方から議事堂のスペースの割り当てという例が出て、さらに憂慮の念が深まったんです。最初はそのような考え方で国民投票というものを取り扱っていたのかしらと、憂慮の念が深まったんですね。

 なぜそこにこだわるかといいますと、私はずっとこの間、原理原則は一体何か、憲法とは何か、そして憲法九十六条の三分の二というものの解釈をどうするのか、それから、国会は発議するという後、国民とどういうふうに向き合うべきなのか、そして、発議の後に国会はどういう関与をしていいのか悪いのか。主権在民や発議をする機関である国会との関係で国民投票の原理原則をしっかり考えるということを提起してきたんですね。

 いつもそもそも論で、憲法とは何かとか、三分の二の解釈はどうであるということを言い続けてきたのは、やはりそこの原理原則についての共通の認識の土台がない上では制度設計はできないと思ったからなんです。これはずっと、一番最初に本委員会が設置されたときからも、理事懇談会などで論点の出し合いをしたときからも、国会の役割は発議までではないか、そこからは基本的に公共空間においては賛否両論を平等に取り扱う、そこまで議席を引きずるのはおかしいということを言い続けてきたわけです。これは両案が出る前から言い続けてきました。

 これは国民投票というものを私たちがどう考えるかという非常に根本的なところで、にもかかわらず議席配分を引きずった案が出てきたということは、やはり国民投票というものに対する根本原理についての認識不足だったのではないかと指摘できると私は思っております。

 これはほかの面にもあらわれていますので、きょうは、原理原則に照らして、両法案の問題点はどこにあるかということを具体的にいろいろ議論していきたいというように思っています。

 これも前回申し上げましたけれども、例えば選挙の場合も、解散前の議席配分によって広報の時間が配分されるということはないわけですね。その後の、候補者の数であったり、後です。そこで一たんリセットされるというか、御破算というか、それと同じで、国民投票の場合は、その後というのは賛成か反対かという、候補者ではないんですけれども、二つしかないわけですね。そこのことをはっきりと私たちは認識していかないと、結局、後で、いろいろちょっと問いたいと思います、一括か個別かとか、いろいろなところにまつわってその認識の大切さというところが出てくるんじゃないかと考えています。

 さてそこで、船田議員、議事堂の面積と国民投票は全く別物の次元であるというふうに思いますが、いかがですか。

船田議員 ちょっと例が余り適切ではなかったかもしれませんけれども、当初、私はそのように考えたことは確かに事実でございます。

 ただ、人間は完全ではございませんで、その後、皆様からさまざまな御意見をいただきました。特に、辻元議員からも、賛否平等でいくべきではないか、あるいはまた政党平等という考えもあるのではないか、さまざまな角度からの御意見をいただき、私も心を入れかえることにしたわけでございます。

 引きずっているというお話でございましたが、過ちを改むるにはばかることなかれ、まさにその心境でございまして、私どもとしては、もう原案というものは一切引きずらないで、私自身としても、また与党としても、もちろん客観、中立的な記述の部分というのを設けることは別途あるとしても、賛否については全く平等で扱うということで現在私どもの修正も最終的に決定をした、こういうことでございますので、ぜひその点は認識を改めていただきますようにお願いいたします。私も成長をいたしました。

辻元委員 率直な御意見を承ったと思います。

 もう一つつけ加えておきたいと思うんですが、これは、例えば私が所属する社民党が小さな政党だから賛否、今の立場で言えば改憲については反対ですけれども、反対の政党が小さな政党だから申し上げているのではないわけです。原理原則のところで申し上げているわけですから、そこをきちっと確認していただきたいというように思います。

 その上で、公報物の内容について、前回も質問いたしましたけれども、広報のあり方については民主党の方がまず提案したというようなお話もありますので、先に民主党の提案者に答弁していただきまして、その後、必要であれば与党というふうにしたいと思うんですが、この要旨というのはだれが作成するのか。いかがですか。要旨、解説とあるんですけれども、要旨なんですね。

枝野議員 形式的には広報協議会ということになるんだと思いますが、事実上は多分法制局だと思います。要するに、どういうことをイメージしているのかというと、いわゆる白表紙、法案審議のときに法案の条文と一緒に要旨がどの法案でも皆さんのところに配られるわけでありますが、議員立法の場合には法制局がつくったものが配られるということになるわけですね。それは途中で修正されたり何かすればそこで手を入れなければいけないと思いますが、ここで言っている要旨というのはそういう種類のものであるということであります。

辻元委員 一つ一つ確認いたしますが、解説というのが、これもこの間、与党案提出者と民主党案提出者でちょっと見解が割れたように私は記憶をしております。この解説というのは、この前は自民党の新憲法草案の九条の例で申し上げましたけれども、例えば海外に自衛隊を出す場合の解釈をどうするかとか、非常に恣意的、または読む人によって違ってくるという種類のものだと思いますけれども、ここについてはいかがでしょうか。

枝野議員 もともと解説という文言で意図していたものが、辻元さんもこういうのがあった方がいいんじゃないかとおっしゃられていたあの新旧対照表的なもの、あるいは関連する参照条文、要するに白表紙を想定しておりますので、そういったことのつもりで提案をしておりましたが、若干言葉の読み方に対峙性があるというような問題点が指摘をされましたので、この部分のところの解説という言葉はより明確に、新旧対照表等とするのか最終的な文言は決めておりませんが、より紛れのない、つまり、裁量といいますか、要するに客観的なものに限定する意味であるということがより明確になるように文言を変えたいというふうに思っています。

辻元委員 この前の委員会では、たしか保岡提案者だったと思うんですが、改憲案をわかりやすく説明するというような趣旨の御発言があったと思いますけれども、与党案提出者はそれを撤回して民主党案提出者と同じような解釈なんですか。ここはいかがですか。

船田議員 今の御指摘の解説ということについては、もちろん客観的な解説というのも理論的にはあるんだろうと思っておりますけれども、ただ、今御指摘のように、解説という言葉が、ややその政党、あるいは賛成という立場を踏まえて解説をしてしまう、そういうことも考えられなくはないということで、私どもとしては解説という言葉はふさわしくないだろう、こういうふうに考えまして、削除したいと思っております。

 そして、具体的には、憲法改正案に関する客観的な記述として、一つは憲法改正案そのもの、それからその要旨、それから現行憲法の条文を含めた新旧対照表、そして、強いて言えば、これまでの議論の経緯を掲載する、その四つにほぼ限定されるべきものというふうに理解しております。

辻元委員 今また船田議員からふさわしくないという二点目が出たわけですけれども、十五分経過してもう二点出ているということを指摘したいと思います。

 次に、前回もやはりこの広報協議会のあり方や広報をどうするかということは、本当は白紙の段階から、先ほどから国会でやるべきかという議論も、委員の中からの指摘だけではなく、一般の国民の方から見たら、何で国会がやるのとか、選挙だったら選管でやりますけれども、何で政党が集まったところでやるのとか、何で議席配分なのとか。なぜということは国民の側から見たらですよ、私たちは議会の中におりますから。やはりそういう見え方があるということは、これは私だけではなくて多くの方が指摘した点なんですね。ですから、広報をどうしていくかということは基本になりますので、具体的にもう一点、この前もお聞きしましたが、説明会です。

 タウンミーティングのやらせ問題は、もう皆さん御承知のとおりです。まさかそんなやらせなんかがあるとは思いませんけれども、この前も指摘しましたように、いつ、どこで、どういう形でやるのか。例えば、沖縄でやるのか広島でやるのか東京でやるのか大阪でやるのかとか、それから議員というのは皆さん選挙区も持っているわけです。ですから、説明会が必要であるのかどうか。できるだけ広報協議会なるものがやることを限定していくという枝野委員の御発言もありましたけれども、説明会についてはいかがか。

 これはなぜかといいますと、以前、私は、日米新ガイドライン関連法のときに広島で公聴会をやったことがあるんです。このときも、ある団体が周りに押し寄せてくるということですごい警備で、さらには、行った委員は全員、外に一歩も、そこに泊まってそこで発言をしてすぐ帰るという、何かいろいろな事態があるわけですね。

 やはりどうしても、だんだん発議から時間がたってきますと、運動が加熱した場合に、自分たちと同じ意見を言う人を呼びたいとか、それからそれをテレビで撮ったときに、一般の人、賛否両論あるにしても、いろいろ恣意的な、誘導ではないですけれども、挟み込まれる余地があるんじゃないか。どうしてもこれをやる必要があるのかなという気もしますし、説明会についてはいかがですか。

枝野議員 前回もお話ししましたとおり、広報協議会でやることは裁量の幅のないことに限定をすべきであるというふうに思っております。説明会については、時間の配分とかなんとかきちっとやれば裁量の余地はないというふうに当初思っておりましたが、御指摘のとおり、どこでやるのか等というのはかなり意味を持つ分野だと思いますので、そうした意味ではここで含めることは適切ではないのではないかというふうに考えております。

 もし必要であるならば、それこそ国会内において議席を持つ政党が、この法律とは別途合意をして、では一緒にやりましょうかということなどがあれば、これは法律とは別に、やることは自由なわけですから、こうしたものが合意できるならばできるわけでありますから、広報協議会の役割としてのところからは外すという方向で検討したいというふうに思っています。

 なお、マスコミの皆さん向けに言うんですが、いろいろなものが、午前中もちょっと言いましたけれども、政治的な色を持っている部分については意見が我が党と与党との間で一致してきているものがたくさんありますが、こういったことなどをまだうちの党内でも全く議論をしておりませんので、多分、こういった論点がまさに残っている論点であるというふうに思っております。

船田議員 与党としても、いわゆる説明会、タウンミーティング、これはやれるのであればやろう、そういう考え方も持っておりますけれども、ただ、今御指摘のように、タウンミーティングを持つこと自体については、発言の時間を賛成意見、反対意見を平等に扱うとか相当工夫をし、そして慎重に行えば、これも一つ国民の理解を深める意味で非常に大事な手段であるとは思っております。だから、そのものを否定するつもりはございません。

 しかし、今お話しいただいたように、どこで開催をするのか等々、やはり非常に難しい点がございますので、広報協議会における仕事としては、国民投票公報、それからテレビ、ラジオの広告放送と新聞広告による広報に特化した方がいいのではないか。

 私も、その御指摘については傾聴に値すると思っておりますので、これは野党提案者とともに協議をし、さらに合意が得られるようにしていきたいと思っております。

辻元委員 次に、テレビ広告についてなんです。

 一般の方々、政党も含めてですけれども、テレビ広告、CMについては、やはり資金力による不平等性ということを参考人の方も指摘される方が多かったのは御承知のとおりなんですね。

 私もいろいろ考えてみたんですが、例えば放映権を買おうとしたら非常に多くの資金が要るということだけじゃなくて、テレビ広告というのは制作費も非常にお金がかかるわけです。だれかがビデオに撮って持っていって映したらいいという話ではなくて、例えば高い出演料で人気タレントとかスポーツ選手とか、これは例えばの話ですけれども、私がファンだから言うんですけれども、木村拓哉さん、キムタクとか、ちょっと前の世代の方は吉永小百合さんとか、スポーツ選手でいうたら元サッカー選手の中田選手とか、イチロー選手とか、いろいろな方がCMに出ていらっしゃいますけれども、例えば、数千万とか一億円かどうか知らないけれども、そういう人を起用して賛成または反対のCMを打つことだって考えられるわけですね。

 ですから、単に放映にかかる何分を買うという額だけではなく、テレビCMというのは資金力によって、自分のお金で買う意見の表明ですから極度に差が出てくる。この点の取り扱いについて質問をしたいと思います。

 まず、政党については使える資金の制限を設けるというような発言を、これも船田提出者でしょうか、ちらっと一番最初にされたと思うんです。政党については使える資金の制限を設けるとか何か、テレビCMについては制限が必要ではないかという御発言があったと思うんですけれども、この点はいかがですか。資金力との関係。

船田議員 先ほど発言した中で、今御指摘のようなことは私は言ったつもりはないです。ただ、要するに、お金に糸目をつけず大量にCMを買って報道する、あるいは広告を行う、そういうことが野放しでいいのかどうかという点については申し上げたわけであります。

 ただ、では幾らまでかを決めるということは、大変基準が難しい状況になりますし、そういう観点からすると、投票日前七日間は有料広告を禁止するという、これは別の要請でそういったことを考えたわけですが、そういうことが、結果として総量規制といいましょうか、そういうことに間接的に資することになるだろう、こういうことを私は申し上げたわけであります。

 もし、その総量規制というものが、間接的ではあれ七日間では足りないという判断があった場合には、例えば期日前投票の期間というのが十四日間ございますので、七日ではなくて十四日間は有料広告放送は禁止にするとか、禁止期間を少し拡大するということで、その結果として野放しに有料広告放送が行われることのないように、こういうことを考えてみたいということを申し上げたわけであります。

 ただ、これが根本的に、お金の多寡によってどうこうなるということを完全にコントロールするということは、しょせんこれは無理だろうとは思いますけれども。

    〔委員長退席、愛知委員長代理着席〕

辻元委員 今、お手元に資料をお配りいたしております。「各局のテレビCM支出」というので、これは二〇〇四年の参議院選時、出典は右下に書いてありますので、この出典による資料なんですけれども、これはこの方の調査による各政党のものなんですね。これも、私たち社民党が少ない、貧乏というか、お金がないから言っているわけではなくて、政党でもこういう差がありますけれども一般の社会においても同じような現象が極端に出るのがやはりテレビCMではないかという例として示しております。

 この前から、民放連の方々の御発言にもこういう御発言がありました。CMの内容によって意見の強弱や賛否の強弱など著しくアンバランスを生じた場合に放送法の規定にもある政治的公平の観点からどのように考えるべきかなど難しい問題もはらんでおります。民放連も悩んでいるという意見の表明ではないかと受け取りました。

 その後さらに、国民投票運動にかかわるCMは憲法改正案に賛成か反対かを視聴者にストレートに問う形の、日本のCMでもこれまで余り例を見ない内容になることも想定される。こうしたCMがまず放送媒体になじむかどうかという検討が必要です。それから、これら意見広告の広告主の範囲というものをどのように考えるのか。政党だけなのか、市民団体や有識者なども想定するのかという検討も必要です。広告の出演者、特に有名タレントの出演などについてどのように考えるべきなのかということも検討しなければなりません。意見広告の放送時期をどのように線引きするのか、これは先ほどちょっと船田委員からも触れられましたけれども。

 また、憲法改正案が発議される以前の意見広告なども含めたあらゆるケースを想定した検討が必要です、この後もなんですけれども、それから量的、内容的な公正、公平性をどのように確保するのか、またそれが果たして可能なのかどうかという問題提起をされていて、私は、対象の民放連は、御発言を見る限り、非常に困難だし、なかなかCMについては現実的に判断しかねるというような意思がにじみ出ているような発言だったのではないかというふうに受け取ったんですね。

 一方、こういうこともおっしゃいました。これも同じ民放連の方が、天野祐吉さんにも来ていただいて、後で天野さんの御意見もちょっとまた改めて振り返りたいと思うんですけれども、その参考人のときの発言を例にとられました。天野参考人がおっしゃっていたんですけれども、スポットCM、十五秒、三十秒、六十秒、それ以上とございますけれども、今回の国民投票なんかの場合に十五秒のCMが果たして許されるのだろうかというようなことも御提起なさっていましたけれども大変参考になりました、少なくとも六十秒ないと意見広告はできないんじゃないかというような御発言もございました。

 そうすると、六十秒以上のものをまず基準とするということになると、六十秒買える人、また団体や組織というと、かなりのお金を持った人しか適用できないというような懸念を私はこのときさらに深めたわけなんですね。

 それで、枝野委員というか民主党、先ほど自民党提案者の御意見を伺いましたので、これらの意見を民主党提案者はどのように受けとめていらっしゃるか。

 表現の自由との関係を御指摘される方もやはりいらっしゃったんですけれども、お金で買う表現であるというところが、例えば、一般の報道とか表現の自由に権力が介入してはいけないという表現とちょっと違う性質を持っているし、これはなぜかといいますと、CMをつくったり出したりしたことがある人はわかると思うんですが、どの広告代理店に当たるかによって、広告業界は広告代理店の実力によってどの時間帯の何をとれるかというのが大きく変わってくるということは御承知のとおりなんですね。

 そういうことも総合的に考えて、率直な御意見をこの際伺いたいと思うんですが、いかがでしょうか。

枝野議員 私も、特に最後の点は、例で出された二〇〇四年の参議院選挙のときは党の選対本部の事務総長代理をやっておりまして、こういったことにかかわっていました。ただ、額はうちの方が少なかったんですが、このときはうちの方が票が多かったので、票は額に必ずしも比例しないなというふうに思ったりもいたすのですが、御指摘のような懸念があると私も思っております。

 ただ、率直に言って、迷いがあります。先ほど笠井さんからは、逆方向からのむしろ指摘というか御質問というのがありました。少なくとも、権力的に報道機関に対して規制を加えるということを、特に、今政権党である、内閣を持っていらっしゃる自民党や公明党が提起をされるということは望ましいことではないのではないか。つまり、全体的な報道機関に対する政府・与党と報道機関、メディアとの関係という意味で、そこが主導するということは望ましいことではないのではないかなと。

 私どもも、この法律が施行されるころにはそういう立場になっているつもりでおりますので若干そういう観点からも悩みがありまして、ぜひ、辻元さんから修正案を出していただければ、賛成する方向で党内をまとめてみたいと思っています。

辻元委員 同じ観点でもう一点。

 先ほど天野祐吉参考人の発言の一部を御紹介しましたけれども、今枝野提出者の方から悩ましいというような御発言がありました。この問題については、参考人でお呼びした方も、やはり資金力の多寡というところはあると御主張される方も、非常に悩みながらおっしゃっていることが特徴だったように思うんですね。

 天野参考人は、日本の中でも、テレビ業界、それから広告ということでの第一人者でいらっしゃるので参考人としてお呼びしたんだと思いますけれども、このように御発言されているんですね。

 実はテレビ広告というものの力は思っている以上に強いもので、これは特に悪用すればマインドコントロールの非常に強力な手段になるものであります、そういう御発言があったり、それから一般の場合には、これはもちろんお金を持っている人が勝ちというのは非常に不公平な話なので、賛成意見CMも反対意見CMも全く同じ分量で制限されてほしい、放送される時間帯も一定の時間の中で賛否が両方きっちりと聞けるようなことでやってくれないと困るのではないかという御発言があったり、それから、この問題に関してはまだ未成熟だから、意見広告は放送媒体になじまないから今回に関してはそういう部分が成熟するまで意見広告は認めない、今回はさせないということも一つの選択肢としてあると思いますという御発言もあったんですね。

 私は、日ごろ、天野祐吉さんがお書きになっているものなどを見て、表現の自由ということについては人一番敏感であり、深く考えていらっしゃる方のお一人だと思うわけなんですけれども、このような発言を本委員会でもされた点を、私はやはり重く受けとめざるを得ないのかなということで、やはりCM規制について、両法案提出者に、もう一歩進んで考えた方がいいのではないかということを申し上げたいと思うんです。

 これについては、また来週も参考人を呼ぶということになっておりますし、議論を深めていくべきだというふうに考えております。

 次に、いろいろあるんですけれども、発議の方法について引き続き質問をしたいと思います。

 発議の方法、一括か個別かという議論も本委員会でされてきまして、法案の中では「内容において関連する事項ごと」というような言葉で表現されております。

 まず基本的に、発議というのは、その後の投票の仕方にもかかわってきまして、投票箱に一個ずつ、一個ずつというか一テーマずつ投票するというイメージがこの法案ではおぼろげながら見えるわけですけれども、各党――公明党の提出者の方はいらっしゃいませんか。各党、発議は何個ぐらいと考えているかというたら変なんですけれども、例えばこの間も御発言がいろいろあったわけですね。この間、枝野委員の方からは私学助成の話が出ましたけれども、または公明党さんからは加憲という発言も出て、どういうイメージをお持ちなのかということをまず基本的にお聞きしたいと思います。

 それでは、まず民主党からお願いします。

枝野議員 具体的にどういう中身の部分をどう変えることが望ましいのかという議論は、これからの話でありますので、予断を持つような話は余りしない方がいいんだろうと思いますが、少なくとも一度の投票で十も二十もの項目について、さあ、それぞれ国民の皆さん賛成ですか、反対ですかという問いかけをするというのは、これは発議権者の立場として慎むべきであると私は、これは個人的な思いですが、思っております。一度の投票期日に有権者の皆さんがそれぞれについて賛成か反対かという判断をしていただけるのは、多くても五つぐらいのテーマではないか、一般的には三つ程度までではないだろうかというふうに私は個人的には思っております。

船田議員 「内容において関連する事項ごと」ということにいたしました。

 ただ、これは物の考え方でございまして、やはり実際の改正原案がどういうものになるか、またどのぐらいの内容を持つものかという点については、今あらかじめ決めることはできない、こういうふうに思っております。

 基本的に、二つの要請があると思いますね。一つは、個別の憲法政策ごとに民意を問うということ、もう全部を一遍にやるということではいけないということが一つあります。しかし、他方では、相互に矛盾のない憲法体系をつくる、こういう要請もあって、いわゆる虫食いというようなものがあっては困るのではないか、こういうことから、今申し上げたように「内容において関連する事項ごとに」ということにしたわけでございます。

 枝野議員から大体の目安ということでお話をいただきましたが、私もそう大きく異なるものではないと思っております。数が三つなのか五つなのかというのは、これは余り軽々には言えないことでございますが、例えば、現在、国政選挙において投票所として用意してあるもの、あるいは用意できる部分、場所というものは、これはやはり、当然、一つの設問に対して一つのブースをつくるということになると思いますので、それが例えば十とか二十とかというのでは投票所の会場として予定されている場所をもっといろいろな広いところにしなければいけない、非常に物理的に難しいものもあると思います。ですから、おのずからその数は限定されてくると思います。

 また一方で、これは公明党さんおいででございませんけれども、公明党さんは加憲ということでいろいろと党内での議論をされておるわけでございますが、私どもも、もちろん加憲という言葉そのものを使うつもりはないのでありますけれども、しかしながら、やはりすべての憲法改正、こことこことここを変えようということで、それを一遍でできるということは考えておりません。やはり何回かに、あるいは何日かに分けて国民に判断を仰ぐということもあるのではないかというふうに思っております。

 それが余り頻繁ですと、国民の皆さんの利便を考えると大変煩雑になりますので、そういったことは避けなければいけませんけれども、憲法改正ということについては、すべて一遍に行うというものでもないのではないか、こう考えております。そこにおのずから数の制限というのは出てくるんじゃないかなというふうに思っております。

辻元委員 私は、公明党の提出者にもお伺いしたいと思いますので、やはり、法案提出者が中座されて、トイレとかその他、何か特別な理由がある場合は別ですけれども、その場合は委員長に申し出て行っていただかないと。これ以上質問は続けられないと思います。両案提出者にといっても、やはり各党提出者にいてもらわないと困るわけですね。

愛知委員長代理 ちょっととめてください。

    〔速記中止〕

愛知委員長代理 速記を起こしてください。

 審議を再開いたします。辻元清美君。

辻元委員 ただいま、与党提案者の中で公明党の提案者の方に質問をしようと思ったら、提案者の席にいらっしゃらなくて。私としては、公式にこの場で、やはり提案者はしっかりいていただかないと、本委員会、大事だ、早く、何回もやろうと言っていらっしゃる方が提案者の席にいらっしゃらないということについて強く抗議したいと思います。

 これはずっと申し上げていますが、憲法について議論しているわけで、ほかの委員会と運営が違うということはずっと言い続けてきたわけです。ですから、少なくとも、提案者は特別な理由がない限り全員そろう、それを確認していただきたいというように思います。

 今、公明党のかわりの提案者がいらっしゃいましたので、先ほどの質問の続きをいたします。

 質問は、発議に当たって、各党、幾つぐらい改正点ということをイメージされているのかという基本的な質問でした。これはなぜお聞きしたかといいますと、各党それぞれいろいろおっしゃっているので、一体どういうことかということを確認したくて、公明党さんの場合は特に加憲ということをこの委員会でも主張されて、では、発議は幾つぐらいを具体的に想定されているのかとか、まずそれを基本にした後に、一括、個別、関連する事項はどうあるべきかということを議論したいと思い、問うたわけです。

 民主党、自民党のお答えはいただきましたので、公明党の提出者の答弁を求めます。

斉藤(鉄)議員 公明党の斉藤鉄夫でございます。

 まず、辻元委員の御質問にお答えする前に、公明党の提案者が席を外し、答弁できない事態になったことに心からおわびを申し上げます。今後、こういうことのないように提案者としてしっかり座っていきたい、このように思っておりますので、どうかよろしくお願いをいたします。

 御質問にお答えいたします。

 公明党は、個別発議、個別投票ということを強く主張してまいりました。内容にまとまりのある案件ごとに発議をされ、そして投票も、その案件ごとに一枚の投票用紙でそれぞれに対応した投票箱に投票する、このように考えております。

 したがいまして、国民の皆様に発議をする、そして国民の皆様がその発議を理解し判断をする、そういうことから考えても、また、物理的に投票所で一つ一つの案件に一つの投票箱が存在するということを考えても、その数は一つ、二つ、三つというのが妥当な数だ、このように思っております。

 最高幾つまで可能なのか、このように聞かれますと、ここで何個ということは断定的に言えませんけれども、先ほど申し上げた、国民が個別に判断をすること、そして投票所の物理的制約ということを考えれば、おのずと多くても数項目ということになるのではないか、このように考えております。

辻元委員 今、一つ、二つ、三つ、それから五つとか、いろいろ出ましたけれども、自民党の提出者にお伺いしたいと思います。

 先ほど、自民党としては、昨年お出しになりました新憲法草案が通れば一番いいんだがという御発言が提出者の方からありましたけれども、これは改正点が幾つあるんですか。

船田議員 我が党は昨年の十一月の二十二日付で新憲法草案というものを発表させていただきました。党内で慎重に望ましいと思われる部分について議論をして、それを、憲法の全面改正といいますか、そういう感じになると思いますけれども、一応発表させていただいたわけであります。

 ただ、前提となりますのは、私どもの新憲法草案そのものが国会の衆参両院それぞれ三分の二以上の賛成をもらえれば一番いいことだというふうに思っておりますけれども、現実の政治の世界におきましてはそれは不可能な状況であるというふうに思っております。現実の問題は、やはり各政党がそれぞれ思うところを持ち寄って、そして成案を得ていくということでありますので、私どもの憲法草案を土台として、どのくらい質問の数が出るのかということを議論するのは余り適切ではない、このように考えております。

辻元委員 今私は、これは一例として自民党の新憲法草案を取り上げているわけですが、新聞大で裏表にわたる改正点が多々あるわけですね。それぞれ、一括か個別かというときに、どういう改正をイメージしているのか。

 今、船田提出者の方から、全面改正のようなことは現実的には考えられないという御発言があったようですけれども、では、新憲法草案というのは自民党の望みというか、ただ、憲法については全面改正というのは考えていないということですか。

船田議員 全面改正という言葉が誤解を受けるかもしれませんけれども、我が党としては、決して今の憲法を全く停止しちゃって新しい憲法を出すということはもちろん考えておりません。あくまでこれは、現憲法にのっとった上で、その修正、改正を行う、こういうことでやっておりますが、たまたまその改正の部分が相当多岐にわたっている、こういうふうな状況に今なっているわけであります。

 ただ、それをどのように憲法改正原案として国会で三分の二以上の御理解をいただいて、そして国民に発議できるかどうか。この過程においては、当然、私どもの案がそのまま通るということは考えていないわけであります。通るように努力をするということはもちろん我が党としてするつもりでございますけれども、結果は、なかなかそれは厳しいなというふうに思っております。

 ですから、全面改正といいましても、それは個別具体的に、内容において関連する事項ごとに分断をしていく、そういう中でおのずから発議がされるであろう、このように考えております。

辻元委員 発議の方法についてはどういうイメージかということを最初に申し上げたのは、自民党とそれから民主、公明の間に、現実に提案されていることに非常に開きがあるというふうに強く思うからなんです。

 ちょっと具体的に、そうしましたら、次にこの新憲法草案を一例に質問をしたいんですけれども、「内容において関連する事項ごと」とあります。例えばこの新憲法草案を、自民党案として出しておられます。注目されているのは九条の部分だと思います。これを例に挙げますと、これが「内容において関連する事項ごと」に当たるかどうか、率直な御意見を伺いたいと思いますけれども、例えば九条の二で自衛隊を自衛軍にするというような内容の記述がございます。そしてさらに、趣旨を申し上げれば、海外で自衛軍の活動もできるようにするというような項目も入っております。

 例えば新憲法草案であるとするならば、これは内容において関連する、この自民党の新憲法草案をとれば、というような理解を自民党の提出者はされておりますか。

    〔愛知委員長代理退席、委員長着席〕

船田議員 今の御指摘の、我が党の憲法草案の現在の第九条にかかわる部分、そこで幾つかの、自衛軍の問題やあるいは海外での活動の問題、御指摘をいただきました。確かに内容的に関連するものと私ども理解はしております。

 ただ、これをこのまま憲法改正原案として提出できるかどうかということは現時点では何も決まっておりませんし、そのことに対して、これを一つにまとめてやるべきだと言う資格を私自身は持っていない、このように考えております。これ以上の詳しい内容につきましては、これはやはり各政党がこの国会の中であるいは憲法審査会の中で、憲法改正原案の凍結時期が解除された後にそこはきちんと議論をして、そして三分の二以上の賛成が得られたものについて、それを、ここで挙げておりますように、「内容において関連する事項ごと」という原則に従って切り分けていく、こういうことになると思いますので、現時点ではこれ以上言うことは適切ではないと思います。

辻元委員 なぜこれを例に挙げるかといいますと、わかりやすいからなんですよ。

 公明党の提出者にお伺いしたいと思いますが、例えば、今、自民党新憲法草案の九条の例を私申し上げましたけれども、私どもの立場は、九条は変えるべきではないという立場です。では、変えた方がいいという人の中にも、自衛隊を自衛軍にするのはいいけれども、海外で活動することを憲法に明記することには賛成できないとか、これは割と多いと思いますよ、賛成の中にも。または、海外で活動するといっても、武力行使をするのはこれはおかしいじゃないかと。

 例えばこの新憲法草案の九条の例で申し上げますと、私は、「内容において関連する事項ごと」という、果たして、今みたいな例であるならば、例えば自衛隊を自衛軍にすると、海外での活動、武力行使も含むとなった場合に、これは関連する事項と考えられるのかどうか、御意見を伺いたいことと、その後に、では、国民の意見を正確に反映するためにはどうすればいいかということなんですよ。この九条の例は、これは非現実的な問題を言っているわけではなく、国会の中でも、九条を論じられるときには、この点、自衛軍の話と海外での活動、武力行使と、何段階かあるわけですね。

 ですから、そのことも答えられないということで内容に関連する事項を一括するというのであれば、一体どういうイメージでこの内容の関連ということを論じていらっしゃるのかと私は疑問に思っておるわけです。

 国民の意見を正確に反映するためには、今の事例を挙げれば、いかがであるか。私はこんなのは切り離すべきだと思いますけれども、いかがですか。

斉藤(鉄)議員 大変難しい御質問かと思います。内容にまとまりのある、論理的一貫性のある範囲というのはどういう範囲なのかという御質問だと思います。

 そういう意味では、私は、日本の防衛そしてその防衛にかかわる実力組織に関しての記述は、いわゆる個別、細切れにすべきではない。ある意味では、防衛のための実力組織をきちっと認め、そしてその組織が海外で活動できるか否かということもきちっと書いて、それを一つのまとまりのあるものというふうにしないと、私は、論理的な一貫性なり説明はつかない、このように思いますので、これは私の考えでございますけれども、今、辻元委員がおっしゃったような分割というのは適当ではない、このように考えます。

辻元委員 自民党がお出しになったものについて、自民党の方はお答えするのが適当でないというような御発言で、公明党の方はこれは一括に当たるんではないかという御発言が出たというのは、やはり提出者それぞれ各党の方にいていただかないと、いろいろな観点の意見が浮き彫りになりませんので。今、そういう意見が出たように思います。

 私は、国民の意見を正確に反映する発議の方法というのはどういうことなのかということの観点から申し上げているわけですよ。

 民主党提案者にお伺いしたいと思いますけれども、先ほど私が申し上げた、例えば、自衛隊は自衛軍にしていいよね、でも、ちょっと海外ではなとか武力行使はなというのは割と多いと思いますよね。

 ですから、関連する事項ごと、そういう改憲案は想定しておりませんではなくて、例えば、この例でいったら、私は、これは関連する事項に入るのかどうか、やはりきちっと忌憚のない議論をしておくべきだというように思います。今までは、これは漠然とずっと語られてきたんです。しかし、両案が提出されたわけですから、提出者としては、それも、いや、そのときにならないとわからないというイメージで果たして提案をされているのかどうかという疑問もわきますので、いかがでしょうか。

枝野議員 まず、自民党の草案を例にお出しになっておられるものですから、理由はこの法案の審議の最初の本会議のときにるる申し上げましたので繰り返しませんが、論評に値しないというのが私の立場でございますので、それを例に挙げられますと答えようがございませんが、一般論といたしまして、自衛隊の組織をどうするのかという話と、自衛隊がどこまでの権限行使ができるのかという二つのことが一体不可分であるのか別々であるのかという話であります。

 純粋論理的に言いますと、現状において自衛隊と呼ばれている組織の名称をどうするのかというのは、実質的意味の憲法事項ではないということになります。実質的意味の憲法事項というのは、現状自衛隊と称されている組織の公権力行使がどういう条件でどこまでできるのかということであるというふうに思います。

 したがって、それはそもそも二つではない。実質的意味の憲法事項ではないことは、実は、変えることに意味がないというか、そのことを憲法に書き込むことに意味のない規定であるというふうに私は論理的には思いますので、そもそもが片方は憲法事項ではないことで片方は憲法事項ということで、例として余り適切ではないんじゃないのかな、そういうことだと思います。

辻元委員 今、三者の見解を伺いましたけれども、それぞれ何だか、まあ、例が例ですのでばらばらの意見というのは当たり前だと思うんですが、一括か個別か、関連する事項は何なんだという、なぜかといいますと、ここは有権者の皆さんが非常に関心のあるところなんですよ。これは最初からこの委員会で多くの委員が指摘してきたところです。

 今までの答えは、環境権と九条は一緒にしないよねぐらいの話は出てきているわけですけれども、さらに突き詰めて、ここをどう考えるのか、どう見るのかというのは、主権者というか国民というか有権者といいますかの意見を正確に反映する発議方法はいかなるものであるかということで、私はこれは議論が深まっていないと思います。

 私は、きちっとやはりこの関連する事項というものを具体例でもっと詰めて、ある意味縛ったり、それから、どういうことを言っているのかという、ここを漠然としたまま置くということは、本法案に対して先ほどの正確な国民の意見を反映するという観点からいって、さらに詰めなきゃいけない点だと思っています。

 きょうは途中で中断をして、時間が参りましたので、この点はまた引き続き問題提起はしていきたいと思っておりますが、この議論は今始まったばかりだと思います。ですから、私は、参考人の方やそれから一般の、言ってみれば主権者から見たらどういう発議のされ方が望ましいと考えるのかとか、先ほどから、例えば九条の例で申し上げても、国会の論理で言えば、安全保障の議論をしている中で私はこう思う、ああ思うというのはあるわけですけれども、一般の主権者の方から見たらどういう発議の仕方がいいのかとか、さまざま議論をしていかなければいけないと私は思っております。

 まだまだ、運動規制やそれからあと周知期間、今の点だけ申し上げても、この例を申し上げましたけれども、周知期間が短いのではないかとか問題がありますので、審議を深めていきたいと思います。

 最後に申し上げたいんですけれども、やはり国民投票とは何かという原理から、どうすれば正確な意見が反映され、国民が望む方法というのは何だろうということ。国会を引きずって、国会の中の発想だけで物事を考えずに、国民の視点に立つということはどういうことであるのかということを、やはり共通の土台の認識を私はもっと議論すべきだと思っております。そうすれば、おのずと態度も決まってくるでしょう。要するに、途中で抜けていなくなるとか、そういうことはなくなると思います。

 さらに、国民投票の原理原則というのは何なのかという議論を深めることを訴えて、質問を終わります。

中山委員長 次に、糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 冒頭、先ほどの二十分ほどの中断につきまして、私も、本日一時間という時間をいただいて、本当にこの時間の配慮に関しましては、少数政党にも配慮いただいたということで非常に感謝をしておるわけでございますが、もし斉藤先生がかわりに座られるということであれば、それで結構でございますし、今回のように提案者が各党が必ずそろうというような体制を整えていただければ、より充実した質問ができるわけでございますので、その辺もぜひ御配慮いただきたいと思います。

 それでは、質問させていただきますが、初めに、国民投票法案に関する基本的な姿勢について述べさせていただきます。

 日本国憲法が制定されまして約六十年が経過いたしました。憲法を取り巻きます情勢というものも大きく変化をしておるわけでございまして、我が政党、国民新党といたしましても、新たな時代に向けての新憲法制定が必要であるというふうに考えております。

 本法案は、憲法制定後初めて審議に付されたものでございまして、主権者の国民の声を国の基本法である憲法にどのように反映させるのか、こういうことにつきまして、極めて重要な意義を有するものであるというふうに考えております。

 私が、十月の二十六日、初めて与党案、民主党案の両案に対する質疑を行いましてから約一カ月がたったわけでございます。今国会の会期も終了間近というふうに思います。この間、法案の審議も進んでおりまして、委員会ですとか小委員会の場で両案の提出者から、かなり歩み寄ってくる部分というのもうかがえるのかなというふうに思っております。

 特に、前回の十一月三十日の小委員会では、投票権者の範囲につきまして、与党案の提出者から、投票権年齢を十八歳以上とすることを本則において規定し、附則に関連法制の整備及びこれに伴う経過規定を設ける、こういうような発言がございました。及び、民主党の提案者からは、これに対しては高く評価したい、こういうような発言がございました。

 これは、十月二十六日の私の質問に対する保岡議員からの、「我が国の将来を担う若い人たちについて、どのような権利を付与して、自覚を求めて、そして日本全体として基盤をしっかりしたものにしていくかということは十二分に考える必要がある。そういった意味で、十八歳以上ということについても、我々としてもよく検討していきたい」、このような答弁を踏まえたものであるというふうに思いまして、国民に開かれた国会の場において、法律案の実質的な内容について慎重かつ濃密な議論ができているのではないかなというふうには感じております。

 法案の審議の進展を踏まえて、本日は、まず全般的な事項について質問を行いまして、そして細かい部分、特に関心のある部分について質問を行いたいと思います。

 まず、これは本日三人の方も既に質問されておるんですが、どうしても私も質問をしなければならないと思いますので、冒頭、質問させていただきますが、憲法に主権者たる国民の幅広い意思を反映させるためには、今後の国会審議において、与党や民主党だけでなく、慎重な審議の上に、できるだけ多くの会派が一致した形での法案成立というものを目指していくべきだというふうに考えております。そのことについて双方の提出者はどのようなお考えなのか、双方の提出者にお伺いしたいと思います。

葉梨議員 糸川委員からはたくさん質問をちょうだいしていますので、簡潔にお答えを申し上げたいというふうに思います。

 そもそも、この法案については、対決法案ではないということについては最前も申し上げましたし、また、建設的な議論の中で合意に至るように努力をしていくべきだということも申し上げさせていただきました。

 これにつけ加えてなんですけれども、中山委員長の非常に公正な指揮のもとに、理事懇という中で今までいろいろと合意形成が図られておりました。ただ、理事懇ということになりますと、国民新党さんはその中に入ってこないというようなことにもなりますし、また、社民党、共産党さんもオブザーバーである。ですから、合意形成に社民党さん、共産党さんに私どもは入っていただきたいという気持ちはたくさんあるんですけれども、少なくとも、この論点整理、さらには合意形成に向けての努力の中にそういう政党の方々が一緒にいらっしゃって、開かれた中で議論をした中で与野党が合意に至るということは非常に望ましい方向であるというふうに考えています。

園田(康)議員 私は、民主党としてお答えをさせていただきますけれども、憲法に関する知識を深め、そして共通の認識、土台をつくっていくということでは、この憲法の特別委員会における議論というのは大変有益なものであろうというふうに考えております。

 また、きょうも虚心坦懐に、これまで与党提案者あるいは野党といいますか民主党提案者としてさまざまな御指摘を受けた中で、これは修正をしなければならないんだろうなというそれぞれの御発言というものはあったというふうに私自身も受けとめております。

 また、必ずしも自分たちの提案した法案がすべて一〇〇%間違いないものであるということは、そういった自信を持って提案をさせていただくわけでありますけれども、それが未来永劫ずっと続くということではなくて、その中で御批判あるいは御指摘があれば、それがきちっと合理的なものであるということで理解をさせていただくならば、それは修正をするということは当然のことであろうというふうに思っております。

 お互いのその修正の、ここは虚心坦懐にそれを受けましょうという発言が外向きには合意形成という形でマスコミ等を通じてそのようなことになっているのかなという感想は持ちますけれども、ただし、そういったことをもって意見が一致を見るということは大変私はいいことであるというふうには思っております。したがって、こういうオープンな場の中でそういうことをお互いに、あるいは全会派、あるいは全党さまざまな意見をこの中に盛っていくということの重要性というものは、今後も私も続けてまいりたいなというふうに思っておるところでございます。

糸川委員 ありがとうございます。

 ぜひ、与党の今回の十八歳以上に変えたという修正の部分も含めて、いろいろいいところはお互いに修正し合いながらこの法案の成立に向けていくということは非常にいいのかな、意義があるというふうに思います。

 ただ、その中で、今回、与党また民主党からこの国民投票法案というものが提出されていますが、このように審議を行っている中で、必ずしもこの国民投票法案が必要だというような声が高まっていないわけで、先ほど笠井先生の質問にもあったと思いますが、このような批判がされている理由についてどのようにお考えになられているのか、今後どのように取り組まれるおつもりなのか、これは双方の提出者にお伺いしたいというふうに思います。

葉梨議員 先ほど笠井委員の御質問にもお答えさせていただきましたけれども、私の認識としては、何でなかったのというような認識が多いのではないかというような気持ちを持っています。また、枝野委員のお言葉をかりますと、潜在的なニーズがあるというような発言もあったかと思います。

 ただ、いずれにしても、この国民投票の手続法というのは非常に技術的な面が多いものですから、どうしても、この場でいろいろな議論をしていても、国民の方から見たらバラエティー番組なんかと比べたらなかなか関心が高まらないというような面はあろうかというふうに思います。

 ただ、少なくとも国民の間で憲法についての議論をしようという関心が高まっている中で、まず一つ中身の問題として我々が議論していることは、国民の声をできるだけ丹念に拾うための仕組みがどうあるべきかということで、それは党利党略ではなくて議論しているんだということをしっかりと国民に対して広報をしていったり、あるいはテレビの中でも訴えていったりということは必要だというふうに思います。その中で、国民の中で関心がより高まってくることを私は期待しております。

園田(康)議員 憲法改正といいますか憲法に関する議論が高まっているといいますか、なされつつあるというのは、私は事実的な現状ではないかなというふうに思っております。ただし、それがどこをどういうふうに改正するんだとか、そういった個別具体的なところになると、まだまだ実はこの国会内においてもあるいは国民の間でもきちっとした共有的な認識というものがなされていないのではないのかなと。

 すなわち、先ほどの議論、九条論を私はこの場ではずっと申し上げてこなかったわけでありますけれども、九条に関してもさまざまな議論があって、あるいは誤解もあって、例えば刑法の三十六条の正当防衛と自然権の関係、あるいはそれと同じように自衛権の、自然権たる自衛権という論理をきちっと正確にこの中で言う形ができるかというと、必ずしも全員がそういう共通の認識の土台に立っているというものではまだまだないのかなという気はいたしております。したがって、政治力による憲法認識といいますか、逆に言うならばそれをもっともっと高めていく必要もあるなというところは私自身も感じているところでございます。

 したがって、それをしっかりと行う上においても、こういう土壌の中できちっと議論をしていくというものは大変大切なことであろうし、あるいは、それをもって国民の皆さんに憲法というものをしっかりと御認識いただくためにも、それは積極的に行っていくべきであろう。あるいは教育による憲法認識を高めるという観点も、恐らく、先ほど午前中の議論の中でも少し教育の重要性というものに触れていただいた方もいらっしゃるわけでありますけれども、そういう教育による憲法認識を高めていくということも一方で必要かなと。

 そういうような中で、いわゆるこの国民投票法の手続法案でありますけれども、その憲法論議とは別に、しっかりと憲法改正の手続法も含めて、いわゆる主権者国民にあるところの憲法制定権の具体的な手続法というか、憲法条文上の規定を具現化されているわけでありますので、これをしっかりと公正中立な、どのような立場になっても国民の民意というものがしっかりと担保できる、すなわち、この制定権力が国民によってきちっと行うことができる、そういう手続法の必要性というものも、ある面、私はもっと周知広報をしていくべきであろうし、この委員会の中だけではなくて、さらにもっと大きく大きく外に広げていく必要もあるなというふうなものは感じております。

糸川委員 ありがとうございます。

 やはり教育基本法の改正のときも、国民が本当に改正が必要なんだという高まりというのは余り感じなかったんですね。ですから、今度のこの憲法改正のための国民投票法案も、必要性とかそういうことはぜひ積極的にアナウンスをしていただかないと、なぜ必要なのか、なぜこんなものをつくったのかということが理解されない。理解されないと、本当に憲法改正が行えるのかと。そういう中で強引に憲法改正を行っていくと、非常に危険性を伴うというふうに思いますので、ぜひ広報ですとか、そういうことで周知徹底をしっかりとしていただきたいというふうに思います。

 与党案、民主党案ともに、憲法改正国民投票と国政選挙が同時に行われることを排除する規定を置いていない、こういうふうに承知をしておるわけでございますが、憲法改正国民投票と国政選挙というものを同時に実施することは想定されていないのか、双方の提出者にお聞きしたいと思います。

葉梨議員 同時に行うことについては想定はしておりません。

 憲法九十六条は、「特別の国民投票」、「国会の定める選挙の際行はれる投票」の二つを規定していることも事実でございます。ただ、六十年間、憲法が公布されてから国民投票というのは一回も実施していないし、また、国民投票というのは我が国の国民が初めて経験するような制度です。そこで、与野党が政権をかけて相争うような全国規模の国政選挙と国会の三分の二以上の勢力が協調して改正の是非を問う国民投票、これは質的に異なるものであろうということで、これは政策判断の問題として、憲法改正国民投票と国政選挙の同時実施ということは想定はしておりません。将来的にどうだという話はまたちょっとおいておいてということはあろうかと思いますけれども。

 ただ、地方選挙あるいは補欠選挙、ここら辺については同時ということもあり得るだろうということで、所要の調整規定を置かせていただいております。

園田(康)議員 私どもも、やはりそれは同時に行うということは想定はしておりません。恐らく、政党あるいは候補者を選ぶ国政選挙と憲法改正に係る国民投票というものは質的に違うものであろうというふうに思っておりますし、また、運動規制等々についてもこれまた違う形になっているわけでありますので、それを同時に積極的に行うということは考えておりません。

 ただし、国民投票が行われている間に補欠選挙であるとか地方選挙なども行われるということはあり得る話であろうというふうに思いますので、今、葉梨与党委員からもお答えがあったように、その場合の調整規定というものは設けさせていただいておりまして、それによって国民投票運動というものが制限されるという形になるとまずいのではないのかなと。したがって、本法律案においても、それらの選挙が行われる場合であったとしても、政治活動の規制というもの、それから政党その他の政治活動を行う団体が国民投票運動を行うことを妨げるものではないという旨の規定をさせていただいたということでございます。

糸川委員 次に、憲法改正に関する予備的な国民投票の実施の是非に関して、与党案提出者から、適切な時期における予備的な国民投票の実施に前向きな意見がございました。

 他方、民主党案の提出者からも、一般的国民投票の対象を憲法にかかわることに限定することを党内で議論したい、その際には選択肢を柔軟にすることも考えたい、こういうふうな発言がございました。

 先ほど葉梨委員からは、六十年の、今までの間で一度も国民投票というものが行われていないんだと。ただ、我々国民新党からいたしますと、昨年の郵政解散というものは、ある意味で国民投票的な運用がなされたというふうにも言えるんではないのかと思うわけでございまして、その当否を含めまして、予備的な国民投票制度のあり方については十分に議論する余地があるんではないかというふうに考えておるわけでございます。この点につきまして、双方の提出者からお答えをいただきたいというふうに思います。

加藤(勝)議員 御指摘のように、憲法は国会を唯一の立法機関としているわけでありまして、憲法自身の中で、直接国民から声を聞く、投票してもらうというのは、憲法改正の国民投票など幾つかに限定をされているわけであります。他方で、いわゆる一般的な国民投票について、それ自体諮問的な形とかいろいろありますけれども、いずれにしても、国民が判断をしたということになれば、当然それによって国会そのものが拘束されるということは言えるんではないかというふうに思うわけで、その点を考えて慎重に私どもは議論する必要があるというふうにしてきたわけであります。ただ、国民投票そのものが、個別の憲法問題に関するというものも当然考えるわけでありまして、そういうことであればいわゆる憲法九十六条の周辺に位置するということで、そういう視点からの検討というのは十分あり得るんではないかというふうにも考えているところでございます。

 ただ、いずれにいたしましても、いわゆる一般的な国民投票制度については、申し上げた憲法のこれまでの考え方というものとどういうことになるのか、慎重に検討していく必要があるというふうに思います。

園田(康)議員 私どもは、これまでの議論の中で、先般の与党提案者からの発言で、私どもが考えている予備的な国民投票といいますか一般的国民投票、国政問題に係る重要な国民投票、さまざまな、若干ニュアンスは違いますけれども、とりあえず私どもが提案をさせていただいている国政問題に係る国民投票というものが、仮に憲法問題に限った形で行うという形をもってすれば予備的な国民投票というものの位置づけの中で行うことができやしないだろうかと今逆提案させていただいている。それが、いわばこの法案における、成立した後に設置をされる予定になっております憲法審査会の中で、直ちに今私どもが提案している国民投票というものがそのまま法案の中に入らないという形であったとしても、この審査会の中できちっと議論をし、そして運用の面で、この予備的な国民投票というものを将来的に行うことが担保されるという形であるならば、私どもは、そういった発言あるいは提案というものがあれば検討をさらに深めたいと考えている状況であろうというふうに思っております。

 いずれにしても、この国民投票というものは、一般的な国民投票というものをもう少し概念づけて、この委員会の中でも共通した認識を持っていただけるように私どもも主張させていただきたいなというふうに思っております。

糸川委員 ぜひ、この予備的な国民投票のあり方についてもう少し議論をする必要があるのかなと思いますので、今後、どこでもいいんですが、両党、両提出者から、もう少し詳しくお聞かせいただければありがたいなというふうに思います。

 冒頭私が申し上げましたように、与党案におきましては、投票権の年齢につきまして、二十歳とされていたものが十八歳に、本則においては十八歳以上と規定して、ある年限までは附則で二十歳以上とする、その年限内に他の法制における年齢規定の整理を行う、こう規定することを検討する旨の発言がございました。

 もともと与党案において二十歳以上としていた理由は何なのか、これは私は以前も質問いたしましたが、もう一回これをお答えいただきたいんです。与党案において二十歳以上とされていた理由、それから、先ほども申しましたように、本則において十八歳以上と規定され、ある年限までは附則で二十歳以上とされ、またその年限内に他の法制における年齢規定の整理を行うと規定することを検討する、こういう旨の発言に対して、その発言に至った理由と経緯についてお伺いをしたい。また、この案で与野党が、与党と野党が合意ができるというふうにお考えなのか、御答弁いただきたいと思います。

船田議員 お答えいたします。

 当初、私ども、国政選挙と同じ二十というものを投票権年齢として設定をいたしました。これは、国政選挙と国民投票というものは、いずれも国民主権のあらわれとして共通の基盤の上に立っている、したがって投票権年齢と選挙権年齢は同一であるべきだ、こう考えたわけであります。そして、現状の選挙権年齢が二十以上であるということから、投票権年齢もそれに合わせる、このように考えたのであります。諸外国の例を見ても、選挙権年齢と投票権年齢は一致しているというのがほとんどである、このように感じております。

 したがってそうしたわけでありますが、ただ、昨年やことしの海外派遣による調査あるいは文献調査、こういったものを見てみますと、これは国会図書館の統計で出ておりますが、調べられた国として百八十六カ国カウントされましたけれども、そのうちの百六十二カ国が既に十八歳以上ということになっております。これは国政選挙もそうですし、国民投票制度がある国も大体十八になっている、こういう状況があります。世界の趨勢というよりも世界の大勢であるということを我々はつぶさに観察することができました。

 そういうことから考えますと、そろそろ我が国としても、二十ではなくて十八歳以上、これは国政選挙も国民投票も同様に引き下げる必要があるのではないか、このように考えが至ってきたわけでございます。

 ただ、私どもとしては、二十から十八に投票権年齢、選挙権年齢を下げるということについては、関連する法律が相当数に上っております、一説によると二十五程度の法律がある、こういうことでございますが、そのすべてをこれに合わせる必要はないとしても、民法、あるいは、もちろん公職選挙法、あるいは刑事法、そういうところは当然のことながら関連をして改正をしなければいけない。ある一定の時間が必要であるということで、いきなりということは難しいものでありますから、三年間という経過措置を設けて、それでその間にできる限り、極力関連法の整備を行う、こういうことにしたわけであります。

 この一連の議論の中で、既に民主党案には十八以上ということが述べられておりまして、私どもは基本的にその民主党案を採用する、我々も採用する、こう考えたわけでございますので、与野党間の合意というのは十分に可能である、こう理解しております。

園田(康)議員 従来、私どもから、この投票権年齢について十八歳とするというふうに申し上げてまいりました。これが世界の常識といいますか、と同時に、我が国でもそれを早く公選法においても十八歳へ年齢引き下げと、これは公明党さんからもるる御指摘があったというふうに思っておるところでございますけれども、そういう主張をさせていただいてきたわけでございます。

 ここでようやく与党の、自民党さんを中心に、きちっとこのことを取り入れていただいて、本則十八歳、そして附則において三年間という年限の中で他の法令上も含めてしっかりと整備をしていくということを盛り込んでいくという、大変大きく私どもの案を評価していただいた上で、他の法令等々も踏まえてそういう御決断をしていただいたということに関しては私どもも評価をさせていただき、そして、これに関しても、党内においても、それが私どもの意見であるというところからすれば、これをよしとするというところまで至っておるところでございます。

 今後は、今法令の数が二十五と言われましたけれども、恐らく、これは議員立法でやるということは、きょうの午前中の議論でもありましたけれども、大変技術的にも難しい部分が出てこようというふうに思っておりますので、この三年間の間で、できたら内閣提出、刑法であるとか民法もそうですし、刑事法もそうですし、少年法もそうであろうというふうに思いますし、公選法もそうであろうというふうに思います、これらも含めて、できるだけ私どもも議員立法で提出できる体制を行いたいというふうには思っておりますけれども、かなりの労力を必要とするということからすれば、これは政府・与党の責任の中で、できましたら内閣提出という形で行っていただきたいなというふうに思っておりますし、それも御一緒させていただければ私どもも力を尽くしたいなというふうに思っておる次第でございます。

糸川委員 今の船田議員からの発言ですと、いろいろ調べた結果、十八歳が適当であるというふうにおっしゃられたと思うんですが、それであるならば、やはりこの法案を提出される時点で、恐らくいろいろ研究をされ、諸外国の例もいろいろ御研究なさったんだろうなと思いますので、今、変えられるというのはいろいろなところを見られてというふうにおっしゃられたので、それは評価いたしますが、ではほかは大丈夫なのかなという疑問を持ってしまう部分でもあるのかなと思います。

 ですから、今後、今二十五の関連のものがいろいろある、こういうものも検討しなければならない、すべてが十八歳にしていいのかどうかということも検討しなければならないということですから、これは今ここで議論することではないと思いますが、ぜひ慎重にまた審議をしていただきたい、議論していただきたいというふうに思います。

 投票方式につきまして質問させていただきます。

 この投票方式につきましては、与党案では、賛成するときにはマルを、反対する場合にはバツを自書することとされておりました。一方、民主党案においては、賛成するときにはマルを自書して反対するときには何も書かない、こういうふうにされていたというふうに思います。

 この投票方式の問題につきましては、先週行われたこの小委員会におきまして、与党案の提出者、民主党案の提出者双方から、現在提出されている法案における方式よりも国民の意思をより正確に反映させる方法があれば検討したい、こういうような発言がございまして、具体的には、与党案の提出者から、マル・バツを自書する方式ではなくて、賛成、反対の二つの欄を設けて、投票人はどちらかの文字をマルで囲むことによって投票する方式に変更するとともに、国民の意見を酌み取るために、賛成、反対のいずれかの文字をバツをつける、もしくは二重線で消される、こういうような記載についても柔軟に対応する、そういうことにしてはどうかといった意見が出ていたというふうに思います。

 諸外国では、例えばフランスでは、賛成と書いた投票用紙と反対と書かれた投票用紙の二つを交付されまして、投票者はどちらかを選択して、同じく交付された封筒に入れて投票する、こういうことになっているというふうに思います。このように、投票者の賛否の意思が正確に反映され、なるべく無効票が生じないようにすることにつきましてはいろいろな方法があるというふうに思いますが、この投票方式の部分の修正について、その検討状況を、与党案提出者、民主党案の提出者双方にお伺いしたいというふうに思います。

加藤(勝)議員 今まさに糸川議員の御指摘があったところでありまして、当初は賛成するときはマル、反対するときはバツということを記入していただこうということを想定していたわけでありますけれども、いろいろな議論の中で、本来どちらか意思を持っている、逆に言えば意思を持っていただけるように我々は国民投票運動等の活動をしていかなきゃいけないわけでありますけれども、その意思をその投票においても明確に示していただこう、的確に示していただこう、そのためにはどうしたらいいだろうかということをいろいろ議論を重ねていく中で、先ほどお話がありましたように投票用紙に賛成、反対というのを先に印刷をしておきまして、それに対して、基本的にはマルということになるんでありましょうけれども、バツ等々で消したものについても、賛成だ、反対だということでカウントしていこうという方法の方が、最初に申し上げたものより投票した人の意思がはっきりするのではないかということで提案をさせていただいているところでございます。

園田(康)議員 私どもも、当初は、自書でマル、それ以外は何も書かないという形の提案をさせていただいていたところであります。しかしながら、やはり同じく、国民の民意といいますか意思を正確にどのように反映していく方式があるのかなというところでずっと御議論をいただいていたところでございます。

 そこで、先般より与党提出者からも提案をされております、賛成、反対という欄があって、それにマルあるいはバツやら二重線をつけての意思を表明するという形があったというふうに思っております。それは、私どもも、無効票というものをいかに少なくしていくかという点では同じ方式といいますか、そういう方向性というものは評価できるのかなというふうに思っておりまして、きょうの午前中の平岡委員からも御指摘がありました、では投票所に行って棄権をする意思というものはどのように出されるのであろうかというところからすれば、もう一ついわば棄権をするという項目を設けて、そこに、もしマルをつけるならばマルをつけて入れていただく。すなわち、それによって、私自身は投票所には来たけれどもこの内容についてよくわからない、あるいは、自分の一票を賛成にはできない、反対でもないというようなところを、どちらでも使っていただけますよという形の、意思表示としての棄権をする自由を担保するという形で棄権をするという欄を一つ設けるというのは、より正確にその投票所に来た人の意思を反映させることにつながっていくのではないのかな。この点は、もう少しといいますか積極的に検討してみたいなというふうに思っております。

糸川委員 今、園田議員から棄権というものも書くんだと。書いて、賛成、反対、棄権と。こういうものをやられるのであれば、棄権に一定の意味を持たせたいという御意思であるならば、やはり最低投票率というものも定めていく必要があるんではないかなと個人的に私は感じるところでございます。

 憲法改正の原案の審査権限の凍結について次にお尋ねをしたいと思うんですが、憲法審査会の憲法改正原案の審査権限は二年間もしくは三年間凍結される、こういうようなことでございますが、改正の要否やその方向性の検討についての調査に専念をするためには、憲法改正原案の審査権限を有しない機関において、また、期限を設けないでじっくり調査するということが必要ではないかというふうにも考えるわけでございますが、この点につきまして双方の提案者はどのようにお考えか、お伺いしたいと思います。

船田議員 お答えいたします。

 今、糸川議員が指摘しましたように、私どもは、今まで憲法調査会というところで広範な、幅広い調査をずっとしてまいりました。その最終報告書というものもまとめさせていただいたわけでありますが、現在、第二段階といいましょうか、その手前で、この手続法を議論するために特別委員会というものを今動かしていただいている、こういう状況でございます。

 この法案が成立をし、公布されて、次の国会から憲法審査会が置かれるわけでございますけれども、この憲法審査会においていきなり憲法改正原案の審査とかあるいは採決とかそういったことは、やはり想定することは好ましくないということをはっきり私どもは認識することとなりました。

 現状では、この国民投票法案そのものが施行されるまでの二年間、これは準備期間なんでございますが、この準備期間はこの憲法審査会においては原案審査を凍結する、こういうことにいたしましたが、これまで公明党の皆さんあるいは民主党の皆さんとの協議の中で、二年というのは少し短いのではないか、この第二段階というものを少し丁寧に議論していくためには、やはり少なくとも三年は必要じゃないかということで、三年間凍結ということで修正を加えたい、こういうふうに考えが至ったということでございます。

 ただ、期限を設けないということになりますと、これは非常に先がわからないということもございますし、私どもは、既に憲法調査会においてどういう部分をどういう方向で改正したらいいかということについて多数意見というものをまとめさせていただいております。これが非常に大きな手がかりとなると思いまして、そういう最終報告書に示された、ある程度の方向性をさらに検討していく、さらに調査を続けていくということをやっていけば、おのずから、大体三年以内でこの方向性についてはある程度また具体的なものが出てくるのではないかと期待をしております。おおむね三年というのはそういう意味だと思っております。

 しかし、三年たったらすぐに改正原案を議論する、こういうことにはやはりすぐにはつながらないと思います。それぞれの政党が改正原案について意見を述べ合う、こういう機会があって初めてこの原案についての議論が深まっていくものと考えておりますので、この三年というのはおおむね妥当な期間ではないかなと考えております。

園田(康)議員 当初は二年というふうにしておりましたけれども、それが三年という形をもって、もう少し準備期間をつくろうという形であろうというふうに私自身も理解をさせていただきまして、それであれば期限を設けずにという御指摘もいただいていたわけでありますけれども、この審査会の審査権限そのものが、三年たったら今お話があったようにすぐ改正原案の審議に入るというような話ではないのかなというふうに思っております。したがって、では、権限がなければそこでじっくりとした議論ができるのかというところでもまた違うのかなというふうに思っておりますので、この期限というものには私は必ずしも縛られるものではないのかなというふうには思っております。

 ただ、一定の調査あるいはしっかりとした議論をした上で次のステップというものは想定されてしかるべきであろうし、そういう形の議論も一方では進めていかなければいけないのかなというふうには思っておるところでございます。

 したがって、この審査会そのもののあり方の議論でもるる触れておりましたけれども、やはり調査をしっかりと進めると同時に、国会内の合意、そして国民との合意、こういったものをしっかりと行っていく、いわば参考人の方ですとか、あるいはテレビ中継なども通じながら、その準備をしっかりとこの三年間はやっていく期間だろうというふうに私自身は考えております。

糸川委員 年限を一たん、例えば三年というふうに決められるのであればそれは構いませんが、各会派、各党が本当にこれで十分だというふうに感じられるのかどうかというのはまだわからないところであって、それは十分その辺を慎重にしていただいて、船田議員が先ほどおっしゃられたように三年たったからすぐ改正原案についてしていくんだということではなくて、その辺はしっかりと少数の意見も聞いていただいた上で御判断いただきたいなというふうに思います。

 次に、与党案、民主党案の双方におきまして、国民投票の無効事由を、管理執行機関の手続規定違反、多数の投票人が一般に自由な判断による投票を妨げられたと言える重大な規制違反、それから投票確定の誤りの三つに限定されているというふうに思います。この無効事由をこの三つに限定された理由について、双方の提出者にお伺いしたいというふうに思います。

加藤(勝)議員 国民投票無効の訴訟というのは、御承知のように、公職選挙法上の選挙訴訟などと同様に、法律によって特に提起することが認められるいわゆる客観訴訟ということになるわけですけれども、選挙の場合には、いろいろな選挙が定期的に頻繁に行われる、したがってさまざまな判例も蓄積されておのずと基準が確立するということが期待できるということにもなりますけれども、憲法に係る国民投票についてはそうした判例の蓄積が余り期待できない。そして、司法のいわば恣意的な判断、そういうことを防止する観点からも無効事由というものを明確にしておいた方がいいのではないか。

 他方で、憲法改正の限界あるいは改正内容等、これは主権者たる国民が判断できる、むしろ国民のみが判断できる事柄であるわけでありまして、こうした問題は訴訟の対象にすべきでないということがございます。そういう意味からも無効事由を明確に規定しておく。そして、今申し上げたような点は無効事由にならない。

 こういうことで、先ほど委員御指摘のあった三つの点に限定して無効事由を規定しているところでございます。

園田(康)議員 今与党提案者からも御説明がありましたように、客観訴訟、いわゆる通常の公職選挙法における選挙無効事例といいますか、それが判例によって積み重ねられてきているというのは御承知だというふうに思っております。すなわち、例えば定数の一票の格差の訴訟で、これは衆議院あるいは参議院でさまざまな形で、その一票の格差が大体二対一あるいは六対一というような形で定数の状況が決まってきているというのが判例によって積み重ねられてきている。

 ところが、この国民投票法に関しては、それぞれの政治状況あるいはそれぞれの事柄という形で、判例の積み重ねになじまないものではないのかな。同時に、いわゆる憲法制定権の、主権者である国民の意思に基づいてこれが最終的に決定されるというところからすれば、いわゆる司法による恣意的な形でこれが決められていくということは、判例の積み重ねによってほかの事例が決まっていくというような形になってくると、ちょっとこれはまずいのかなと。

 したがって、これを決めるというのは、やはり最終的な決定権者である国民が国民投票によって決めるという本則に戻っていくべきであろうというところから、この訴訟における無効事由というものを最初に三つ限定させていただいて、これ以外はその対象外ですよ、無効という形になるのであるならばそれは国民の判断にゆだねるという意味で三つに限定をさせていただいた、それが理由だというふうに御理解をいただきたいと思います。

糸川委員 ありがとうございます。

 この無効事由の議論に関連いたしまして、憲法改正の限界を超える改正について、先週の小委員会でも議論になったところでございますけれども、そうした改正が万が一行われた場合に、裁判所はどのように判断すべきだとお考えか、双方の提出者にお伺いしたいと思います。

加藤(勝)議員 先ほどの話と少しダブるところがございますけれども、この法案では、法律によって特に提起することが認められている訴訟として国民投票無効の訴訟を設けておりまして、裁判所が国民投票の無効を判決できるのは、この法案に規定しております事由に該当する場合のみということになるわけでございます。したがって、憲法改正の限界を超えることが本訴訟の無効にならないということは、逆に、条文上明らかにさせていただいているところでございます。

園田(康)議員 私どもも同意でございます。憲法改正の限界を超えるというものが、私どもは想定はしていないというかあってはならないというふうに思っております。

 先般より憲法改正の限界論に関していろいろ御議論があったところでありますけれども、私自身の持論を申し上げさせていただきますと、憲法改正の規定を設けている九十六条ですけれども、先ほども申し上げたように、主権者である国民の憲法制定権力というものは、今の現行憲法の枠外といいますか、自然権として、人間としての、国民としての生まれながらに持っている権力であるという形がまず想定されるのかなと。したがって、それを具体化しているのが九十六条の規定であって、それを奪い取るような改正案が提案されるということは、これはもちろん限界の枠を超えるものですので、当然認められない。

 しかも、それが行われるには国会の三分の二以上の賛成をもって発議をするというところからすれば、それは、すなわち国会自身がそれをとめなければならないし、あるいはそれが発議された後においても、国民のしっかりとしたチェックといいますか、最終的に決定するのは国民でありますので、それは国民が責任を持ってとめる。そんなことがあってはならないんですよということを、しっかりと国民投票によってお示しをしていくということがなされるものであろうなというふうに思っております。

 そして、憲法制定権力から派生してきているのが自然発生的に出てきているいわゆる三大原理と言われるものであって、国民主権、人権尊重主義、平和主義というものがこの憲法をつかさどっているあるいはつくっている原理原則でありますので、これを改正するということは憲法そのものの自殺行為に当たるというふうに考えます。すなわち、これは当然のごとくできないであろうというのが私の考えでありますので、それを超えるような改正原案というものがつくられ、それ自体が発議をされるということは想定をしていない、あり得ない、あってはならないというふうに思いますし、それがもしなされたとしても、国民がそれを打ち消すという形になるのではないかなというふうに思っております。

糸川委員 ありがとうございます。

 次に、これまでの私の質問の機会の中で関心を持った項目について質問させていただきたいというふうに思います。

 冒頭、この法案というものは、憲法改正国民投票制度というものは、主権者国民の参政権の行使の方法を定めるものであって、その重要性は言うまでもないということを申し上げたわけでございます。ただ、実際、国民の中で本当にその声が上がっているかというと、先ほど私が質問した中にもあったわけですが、そんなに高くないんじゃないかと。そのためには、ぜひ今度は周知を行っていかなければならないということをお話ししたわけでございます。

 十月の二十六日はテレビ入りで審議を行った。これは極めて適切であるというふうに私は思っておるわけでございますが、今後、この法案の内容を国民に周知する方法につきまして、どのようなことを考えられているのか、双方の提案者にお伺いしたいというふうに思います。

加藤(勝)議員 今後、いわゆる国民投票制度そのものの周知をどう図っていくかということになるわけでありますけれども、国会において法案をしっかり議論し、そうしたものを報道していただく、そういうことによって、本制度に対して、さらには憲法そのものに対する国民の関心、認識が深まっていくことを期待しているというところでございます。

園田(康)議員 国民への周知というものは大変難しいといいますか、だからといって逃げてはいけないわけでありますので、当然のごとく、憲法改正そのもの、あるいは憲法に対する議論の高まりは私は感じてはいるわけでありますけれども、しかしながら、この国民投票法に関しての認識というものはまだまだ低いのかなというのは、私自身も同じ意識を共有しているわけであります。

 したがって、この法案が全会一致あるいはそれに類するような形で成立をしたならば、あるいは成立する過程の中においても、しっかりと、さらなるテレビ入りであるとか、インターネット等々も通じながら、さらに参考人の方々の御意見を取り入れながら、もっともっと幅広く周知がなされるように、私どもも皆さん方と一緒になって頑張っていきたいなというふうに思います。

糸川委員 さらなるテレビ入りという私からの要求ということではなくて、ぜひ国民の皆さんにもっともっと知っていただく機会というものを、もちろん、教育の場で憲法について議論することもいいことでしょう。ただ、今回のこの国民投票法案というものをまず国民の皆さんに知っていただく、今、国会でどういう議論があるのかということも知っていただくということから周知をしていかなければ、本当にいいものはつくれないのではないかなというふうに思います。

 十一月三十日の委員会におきましては、憲法審査会とその他の国会法改正に係る事項について質問させていただいたわけでございます。憲法改正までにどのようなスケジュールを描いているのか、これは私が与党の提出者にお伺いをしたわけでございます。これに対して船田議員から、「今後、まず三年という凍結期間があり、」、先ほどの答弁もあったわけでございますが、「そして改正原案というものを慎重に審議していくために、なおある程度の時間が必要である」、こういう発言がございまして、先ほどの答弁と一致しておるわけでございます。

 そこで、幾つかの質問をさせてもらいますが、憲法改正原案の提出に当たっては、衆議院においては議員百人以上、参議院においては議員五十人以上の賛成を要するものとされておるわけでございます。

 憲法改正原案の重要性から理解できる面はあるわけでございますが、多様な憲法改正原案を国民に提示する機会を失うことは、憲法改正についての議論を活性化する上で妨げになるんじゃないかなというふうに思うわけでございます。この点につきましては、井口参考人も、少数派にむしろ提出の可能性あるいは修正の動議の可能性を認めることによって多様な選択肢を提示する重要性を指摘されたのではなかったかなというふうに記憶しておるわけでございます。

 そこで、憲法改正原案の提出のための員数要件を加重した理由について、双方の提出者にお伺いしたいというふうに思います。

加藤(勝)議員 憲法改正そのものは、各議院総議員の三分の二以上の賛成で国会が発議するということになるわけでありまして、そういうことを考えますと、原案の提出段階で相当程度の賛成者を得ていくことが現実的ではないかなというふうに考えるわけであります。

 そういう意味で、私どもの案におきましては、衆議院においては議員百人以上、参議院においては五十人以上の賛成を要するということで、まさに国家のあり方に係る大変重要な案件であり、先ほど申し上げたようなこともございますので、通常の法案等に比べ賛成者の員数要件を加重することが適切であるというふうに考えているところでございます。

園田(康)議員 これは手続要件というふうに御理解をいただければなと思いますが、しかしながら、政治的な背景からいきますと、どうしても憲法に定められた衆議院と参議院とで三分の二以上の賛成がなければ発議ができないというところからすれば、私自身も、少数会派、少数的な意見というものがどのようにか反映させていく制度づくりはないだろうかというふうには考えてはおりますけれども、しかしながら、政治的な現状、現実からすると、この三分の二以上をもって発議というものを考えれば、どうしてもこの百人という位置づけは動かせないのかなと。

 ただし、御承知のとおり、少数会派からのあるいは少人数での、いわゆる提案ではないですけれども働きかけがあって、あるいは、恐らくほかのところからも出てきたかもしれませんが、国民の請願などを受けて、それをもって多くの会派がそれに賛同しながら形成をしていって、憲法改正原案という形で提案をするということは可能になってくるのかなというふうに思っておりますので、必ずしも少数だからすべて切り捨てられているということには私はならないのではないのかなという思いもあります。

糸川委員 私も、憲法調査会の設置から憲法調査特別委員会までにおける議論におきまして毎回感じることは、少数会派に対しても十分な発言時間が確保されている。これは他の委員会にない配慮でございまして、ひとえに中山委員長の議事進行のたまものであるというふうにも思うわけでございますが、その精神を今後の憲法審査会においても生かされることを強く要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。

 きょうは、ありがとうございました。

中山委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二十二分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.