衆議院

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第9号 平成18年12月14日(木曜日)

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平成十八年十二月十四日(木曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 中山 太郎君

   理事 愛知 和男君 理事 近藤 基彦君

   理事 福田 康夫君 理事 船田  元君

   理事 保岡 興治君 理事 枝野 幸男君

   理事 園田 康博君 理事 赤松 正雄君

      新井 悦二君    伊藤 公介君

      石破  茂君    今井  宏君

      小野寺五典君    越智 隆雄君

      大村 秀章君    岡部 英明君

      加藤 勝信君    清水鴻一郎君

      柴山 昌彦君    杉田 元司君

      棚橋 泰文君    谷  公一君

      渡海紀三朗君    中谷  元君

      中野 正志君    野田  毅君

      葉梨 康弘君    早川 忠孝君

      林   潤君    平口  洋君

      平田 耕一君    深谷 隆司君

      藤井 勇治君    森山 眞弓君

      矢野 隆司君    安井潤一郎君

      山崎  拓君   山本ともひろ君

      若宮 健嗣君    逢坂 誠二君

      岡本 充功君    玄葉光一郎君

      鈴木 克昌君    田中眞紀子君

      筒井 信隆君    中川 正春君

      長妻  昭君    平岡 秀夫君

      古川 元久君    石井 啓一君

      大口 善徳君    福島  豊君

      笠井  亮君    辻元 清美君

      糸川 正晃君

    …………………………………

   議員           加藤 勝信君

   議員           葉梨 康弘君

   議員           船田  元君

   議員           保岡 興治君

   議員           枝野 幸男君

   議員           小川 淳也君

   議員           鈴木 克昌君

   議員           園田 康博君

   議員           赤松 正雄君

   衆議院法制局第二部長   橘  幸信君

   衆議院憲法調査特別委員会及び憲法調査会事務局長  内田 正文君

    ―――――――――――――

委員の異動

十二月十四日

 辞任         補欠選任

  越智 隆雄君     岡部 英明君

  大村 秀章君     平口  洋君

  坂本 剛二君     若宮 健嗣君

  中谷  元君     清水鴻一郎君

  中野 正志君     杉田 元司君

  二田 孝治君     今井  宏君

同日

 辞任         補欠選任

  今井  宏君     小野寺五典君

  岡部 英明君     越智 隆雄君

  清水鴻一郎君     中谷  元君

  杉田 元司君     山本ともひろ君

  平口  洋君     大村 秀章君

  若宮 健嗣君     坂本 剛二君

同日

 辞任         補欠選任

  小野寺五典君     二田 孝治君

  山本ともひろ君    中野 正志君

    ―――――――――――――

十二月十一日

 憲法改正手続法案廃案に関する請願(笠井亮君紹介)(第一二二一号)

 憲法改正手続法案を廃案に関する請願(辻元清美君紹介)(第一二二二号)

 国民投票法案の反対に関する請願(笠井亮君紹介)(第一二二三号)

 同(阿部知子君紹介)(第一三三七号)

 同(石井郁子君紹介)(第一三三八号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一三三九号)

 同(山井和則君紹介)(第一三四〇号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一三四一号)

 同(重野安正君紹介)(第一三八九号)

 同(照屋寛徳君紹介)(第一三九〇号)

 同(保坂展人君紹介)(第一三九一号)

 国民投票法案の廃案を求めることに関する請願(笠井亮君紹介)(第一二七八号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一二七九号)

 憲法改悪のための国民投票法制定に反対することに関する請願(荒井聰君紹介)(第一二八〇号)

 同(菅野哲雄君紹介)(第一二八一号)

 同(重野安正君紹介)(第一二八二号)

 同(辻元清美君紹介)(第一二八三号)

 同(日森文尋君紹介)(第一二八四号)

 同(阿部知子君紹介)(第一三四二号)

 同(荒井聰君紹介)(第一三四三号)

 同(近藤昭一君紹介)(第一三四四号)

 同(保坂展人君紹介)(第一三四五号)

 同(横光克彦君紹介)(第一三四六号)

 同(照屋寛徳君紹介)(第一三九二号)

 憲法九条改悪のための国民投票法案反対に関する請願(保坂展人君紹介)(第一三八八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 閉会中審査に関する件

 日本国憲法の改正手続に関する法律案(保岡興治君外五名提出、第百六十四回国会衆法第三〇号)

 日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案(枝野幸男君外三名提出、第百六十四回国会衆法第三一号)


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     ――――◇―――――

中山委員長 これより会議を開きます。

 第百六十四回国会、保岡興治君外五名提出、日本国憲法の改正手続に関する法律案及び第百六十四回国会、枝野幸男君外三名提出、日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 議事について申し上げます。

 本日の午前は、去る十二日に行われた小委員会での両案中の国民投票運動規制・罰則並びにメディア規制・国民に対する周知広報に係る事項の審査について、小委員長からその経過及び概要の報告を聴取し、小委員である委員から発言していただいた後に質疑を行い、小委員以外の委員各位にも小委員会における議論について認識を共有していただければと存じます。

 それでは、まず、小委員長から報告を求めます。日本国憲法の改正手続に関する法律案等審査小委員長近藤基彦君。

近藤(基)委員 日本国憲法の改正手続に関する法律案等審査小委員会における審査の経過及びその概要について御報告申し上げます。

 本小委員会は、去る十二日、会議を開き、参考人として、日本放送協会理事石村英二郎君、読売新聞東京本社論説副委員長上村武志君、毎日新聞論説委員近藤憲明君、産経新聞東京本社論説副委員長中静敬一郎君及び日本弁護士連合会副会長吉岡桂輔君をお呼びし、日本国憲法の改正手続に関する法律案及び日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案、特に国民投票運動規制・罰則並びにメディア規制・国民に対する周知広報について御意見を聴取した後、これらの参考人に加えて、日本弁護士連合会憲法委員会事務局長菅沼一王君にも御参加いただき、懇談を行いました。

 会議における参考人の意見陳述の内容を本委員会全体で共有するために、その概要を簡潔に申し上げますと、

 石村参考人からは、

 まず、四月に出席した委員会において、放送のみを規制することには自主規制や第三者機関を設けたとしても表現の自由との関係から問題があると主張したが、この主張に沿って与党案、民主党案が報道を原則自由としたことは評価したい旨の発言がありました。

 次いで、自主自律の立場から公平公正に的確な情報をわかりやすく放送し、放送法等に基づき視聴者の要望にこたえるというNHKの基本姿勢が示されました。

 その上で、一般論としてメディアにおける意見広告は原則自由であるが放送される賛否の量が著しく偏らない仕組みが必要である、放送事業者の自主的、自律的な判断を前提としつつ投票直前の広告放送の禁止が適当かについてさらに議論が必要である、無料放送が認められるのが国会に議席を有する政党だけとするのが適当なのかさらに議論が必要である、無料放送の割当基準は賛否平等になるよう修正が検討されるべきである、広報協議会が国会に設置されることは理解できるが、報道の自由への配慮が必要であり広報協議会の構成や役割等については検討の余地がある、国民投票公報についてはさまざまな資料を多角的にわかりやすく掲載する必要があるとの意見が述べられました。

 上村参考人からは、

 まず、総論として、国民投票に当たっては幅広い自由闊達な論議が望ましいが、国の将来への責任、論議と投票の公正さのために必要な措置をとるべきである、メディアにおける意見広告を無制限に認めるかは新聞とテレビ、ラジオという放送媒体により異なるとの見解が述べられました。

 その上で、投票日の七日前からの広告放送の制限に関して、投票直前に投票の意義を損なう過熱した広告がはんらんしてはならないと考えている、政党のみに無料広告を認めるのは妥当である、無料広告の割当基準として賛否平等も理解できないわけではないが議席数案分にも理由があるのではないか、発議の段階である程度民意はあらわれており単純な平等と公正はイコールではない、広報協議会を国会に設置することや委員を所属議員数の比率にすることは妥当であるとの意見が述べられました。

 近藤参考人からは、

 まず、総論として、メディア規制は憲法で保障する報道の自由に反するものであり、あらゆる規制に対して基本的に反対する、憲法改正の賛否を問う国民投票は、主権者である国民が公正に判断するために自由な憲法論議を保障するような制度設計をすべきである、広告も表現の一形態であり、自由な意見表明、情報流通を阻害する規制には基本的に反対するとの見解が述べられました。

 その上で、メディアにおける意見広告を無制限に認めることの是非については基本的に規制すべきでない、投票日の七日前からの広告放送の制限については反対である、政党のみに無料広告を認めることの是非については基本的に政党以外の団体にも無料広告を認めることが望ましい、無料広告の割当基準については公平性の見地から賛否平等になるようにすべきである、広報協議会を国会に設置することの是非については、仮に国会に置かれるとしても最低限外部からの有識者委員を入れるべきであり、その構成については賛否の意見が平等に割り当てられるよう委員を選任すべきである、国民投票公報の内容については賛否平等とわかりやすさが原則であるとの意見が述べられました。

 中静参考人からは、

 民主主義と自由の維持、発展が言論機関の最大の使命であることから、憲法改正国民投票の実施に際し多種多様な情報や材料を正確かつ公正に国民に提供することが使命であるとの産経新聞の立場が示された上で、憲法改正手続法案には大きな意義がありその早期成立を期待するとの意見が述べられました。

 その上で、メディアにおける意見広告は幅広い情報や判断材料を提供できるものであることから制限を加えるべきでない、投票日直前は議論が最も活発になる時期であり広告放送を禁止すべきではない、無料広告が認められるのは政党を基本と考え政党以外については慎重に判断すべきである、無料広告枠の割当基準については、少数意見は最大限尊重されなければならないが基本的には憲法改正が各議院の三分の二の多数で発議されたことを尊重するのが望ましい、広報協議会は憲法改正案を客観的かつ中立的に周知広報する機関と理解しており、その構成については基本的には発議を尊重した基準が望ましい、国民投票公報には憲法改正の理由を説明した上で賛否を併記すべきである、特定公務員の範囲、公務員等の地位利用による運動禁止、買収罪については国民投票の公正確保のため与党案で問題ないとの意見が述べられました。

 吉岡参考人からは、

 まず、国民投票運動の規制について、憲法改正のための国民投票においては公職選挙法の手法による規制がなされるべきではなく、国民の自由な意見表明、自由闊達な議論ができることが重要であるということを前提に、特定公務員の範囲が裁判官、検察官、公安委員会の委員、警察官に及ぶのは反対である、公務員等の地位利用による運動禁止及び買収罪等の設置は自由な意見表明や活動を萎縮させる危険があり反対であるとの意見が述べられました。

 次に、意見広告の規制については、メディアにおける意見広告はできるだけ制限をしないで自由に認めるという原則に立ちつつ、賛成意見も反対意見も同等に扱うとともに資金力による不公平が生じないような工夫が必要である、無料広告は政党等以外の団体や市民も無料で利用できるための工夫が検討されるべきである、投票日前の放送規制は表現の自由の侵害として許されないとの意見が述べられました。

 最後に、広報協議会については、周知の公正性、平等性を担保するために賛否の意見が平等に反映されるように委員を選出すべきであるとともに、外部委員の選任も検討すべきであるとの意見が述べられました。

 このような参考人の御意見を踏まえて、小委員及び参考人の懇談が行われ、小委員及び参考人の間で活発な意見の交換が行われました。

 特に、今回のテーマである国民投票運動規制・罰則並びにメディア規制・国民に対する周知広報について申し上げますと、まず、公務員等、教育者の地位利用による国民投票運動規制については、職権濫用罪等が適用される場合以外に可罰性のある地位利用行為が実際上あり得るのか疑問であるとの意見が述べられた一方、与党案提出者から、萎縮効果を生じないよう定義を厳格化するとともに適用上の注意を規定することで対応しているとの意見が述べられました。

 次に、国家公務員法等の政治的行為の制限規定の適用の是非については、国民投票運動に関してはそのような規定を適用すべきではないのであり、先日の委員会において民主党案提出者から国民投票運動には国家公務員法等の政治的行為の制限規定を適用しないことを明記する修正を行う旨の方針が示されたが、この点について与党の態度は不明であるとの発言を受けて、与党案提出者から、与党としてもその旨の修正を行う方針であるとの発言がありました。

 次に、メディア規制・国民に対する周知広報についてですが、テレビ等における有料の意見広告の制限の是非については、資金量の多寡による実質的不公平が生じるのではないかとの問題意識から、賛否の意見が同じくらいの量になるような総量規制を工夫すべきであるとの指摘がなされました。

 この指摘に対して、賛否の意見の取り扱いの平等について配慮規定を設けることや、投票日前七日間の広告放送の制限が一種の総量規制として機能することに着目し、その期間を十四日間に延長することも考えられる、意見の内容に着目した規制を行うより、形式的に国会が憲法改正案を発議した日から投票期日までの間、広告放送を全面的に禁止することも考えられるとの意見が述べられました。

 全面的禁止については、表現の自由の侵害として憲法上許されず、まずメディアの自主規制にゆだねるべきであるとの意見が述べられた一方、権力との関係においてはメディアの自主規制が正当化されるとしても、市民団体との関係においてメディアが自主規制により恣意的に市民団体の表現の自由を制限することが正当化できるのか疑問であるとの意見が述べられました。

 政党等のみに無料広告を認めることの是非については、政党以外の団体にも認めるべきであるとの意見が述べられた一方、政党が中心となることは議会制民主主義のもとでは当然である、政党以外の団体のうちどのような団体に無料広告が認められるかの要件の設定が困難であるとの意見が述べられました。これを受けて、政党が指定した団体に無料枠を割り当てることも修正の方法として考えられるとの意見が述べられました。

 無料広告枠の割り当て基準については、賛否の意見に平等に割り当てられるべきであるとの意見がほぼ共通の認識であったと思います。

 広報協議会の業務については、民主党案提出者から、裁量の余地のないもののみを想定しており、説明会の説明内容等については裁量の余地があることから、民主党として説明会の規定を削除する修正を行いたいとの意見が述べられました。また、広報協議会の構成については、国民の議論をより喚起するため国会議員だけでなく外部の有識者委員を選任すべきであるとの意見が述べられた一方、広報協議会の業務が裁量の余地のないものであれば外部委員の選任は意味がないとの意見も述べられました。

 会議を通じての小委員長としての感想を申し上げれば、第一回、第二回の小委員会において、国民投票運動規制・罰則並びにメディア規制・国民に対する周知広報について、参考人をお招きして議論を行ったのに引き続き、今回、小委員会において改めて議論を行い、このテーマについて十分な議論ができたものと感じております。

 また、今回、与党案提出者から、公務員の政治的行為の制限規定の適用の是非について、その不適用の規定を修正で明記したい、無料の意見広告を政党のみならずその指定する団体にも認める修正を行いたいと見直しを行う旨の発言があったことは特筆すべきことであると感じました。

 他方、テレビ等における有料の意見広告の制限については、一方ではできるだけメディアの自由な表現活動に任せるべきであること、他方では資金力の多寡による賛否の意見の不平等が生じないようにするべきであること、この二つの要請のバランスをどこでとるべきかという問題意識を共有しました。ただ、投票日直前期における制限の是非及びその制限期間の長短と、賛否を平等に取り扱う旨の配慮規定の是非に関して、その具体的な制限のあり方についてはなお意見の相違があり、いま少し工夫が必要であると感じました。

 言うまでもなく、民主主義社会の基盤である表現の自由に基づいて、自由闊達な国民投票運動が展開されるとともに多様な観点からの自由な報道がなされることが、国民の知る権利に奉仕し投票に際しての判断に資するものであります。このような認識に立ち、各委員が知恵を出し合ってきたところであり、合意形成まであとわずかであると実感した次第であります。

 今回のテーマである国民投票運動規制・罰則並びにメディア規制・国民に対する周知広報については、国民投票に際して国民の判断の基礎を提供する重要な問題であると考えております。本委員会におかれましては、小委員会における議論を踏まえて、さまざまな角度から国民投票運動規制・罰則並びにメディア規制・国民に対する周知広報に関する共通認識の形成を模索していただければと思っております。

 以上、御報告申し上げます。

中山委員長 次に、小委員である委員から小委員長の報告に関連しての発言をそれぞれ十分以内でお願いいたします。

 発言時間の経過につきましては、終了時間一分前にブザーを、また終了時にもブザーを鳴らしてお知らせいたします。

 それでは、まず、船田元君。

船田委員 自民党の船田元でございます。

 先ほど近藤小委員長から前回の小委員会での審査の経過の報告がありました。内容的に非常に整理されておりますのであえてつけ加えるところはないかと思っておりますが、若干、私の発言におきまして少し補足を申し上げたいという点が三点ほどございますので、申し上げてみたいと思います。

 まず一つは、有料広告放送についてであります。

 小委員長報告にもありましたように、この扱いにつきましては報道の自由あるいは表現の自由という観点からできる限り規制あるいは制限がないということが望ましい、このように考えますが、しかし一方で、やはり資金力の多寡によって賛否の意見広告の量が不公平になる事態も当然のことながら考えられますので、不公平がなるべく生じないように工夫をしなければいけない、この二つの要素のバランスをどうとるかということが現在においてもまたこれから先においても大変重要なポイントである、このように思っております。

 私ども与党といたしましては、両者の要請にぎりぎりこたえる方法ということで、原案としては投票日前七日間の有料広告放送の禁止を盛り込んだわけでありますけれども、先日の議論等も踏まえますと、やはり七日間というよりは期日前投票が行われるであろう十四日前にこの禁止期間を延ばすことによって、総量規制といいますか量的制限の一助となるのではないか、このように考えまして、十四日間ということで新たな修正を行いたいと考えております。

 なお、この議論の中で、ある委員からは全期間、多分これは発議をされ周知期間となる全期間と理解をしておりますけれども、全期間禁止をするということによって中身の問題に触れる必要がなく形式的な制限ということで済むのではないか、こういった新たな提案がございました。しかし、私は、全期間有料広告放送を禁止するということは、たとえ無料広告枠がありその他の手段があるとしても、やはり全期間の禁止ということは長過ぎる、こういう感じがいたしております。この点については、もちろん議論はこれからも続けたいと思いますが、現時点においては否定的な見解を申し上げざるを得ないということであります。

 それともう一つ、有料広告放送の中で私が新たに提案をした内容がございました。それは、量的にバランスをとることは難しいとしても、放送局あるいは新聞、メディアにおきまして賛否の意見をできるだけ平等に取り扱う旨の配慮規定を置いたらどうだろうかという提案をいたしました。これにつきましては賛同していただける方々も多かったと思っておりますけれども、一方で、その後の新聞報道を拝見いたしますと、私が申し上げた配慮規定が新たなメディア規制であるとやや批判的に取り上げられているということで、非常に私は残念に思っております。趣旨が少し誤解をされて伝わったのかなと思っております。

 私が申し上げた平等に取り扱う旨の配慮規定というのは、内容にかかわる問題ではなく、例えば賛否の意見広告において料金の違いを起こさないこと、あるいは、放送する時間帯や、新聞などであれば何面で取り扱うかとか何曜日に取り扱うかとか、こういったことについてできる限り平等に扱っていただきたいということでございます。

 したがって、決してこれは規制あるいは中身のチェックということではなくて、外見的なあるいは外形的な公平性を担保するための配慮規定、あるいは訓示規定と言ってはまた意味が強くなってしまいますけれども、緩やかな規定であると考えておりますので決して新たなメディア規制ということにはつながらない、このように私は考えておりますので、改めて申し上げてみたいと思います。

 次に、二番目の問題は無料広告でございます。無料枠の扱いでございますけれども、参考人からも、政党以外の団体にもこの無料広告を認めるべきである、こういう声が大変強く出されました。しかしながら、私どもいろいろ検討いたしておりますが、どの団体にこの無料枠を与えるのか、あるいは与えないのか、その要件の設定が極めて難しいということを指摘せざるを得ません。したがいまして、現時点におきまして、政党以外の団体に認めるとしてもあくまで政党が指定した団体に割り当てる、こういう形で原案の修正をしたいというふうに考えております。

 三番目に広報協議会の機能、役割ということでございますが、既に、広報協議会が作成をする公報の中に中立的な部分として憲法改正案の解説等という文言を原案に盛り込んでおりました。しかし、これまでの話し合いあるいは協議の中で、解説ということは裁量の余地を残す可能性があるということで、この解説という部分は削除するということで修正を加えたいと思っております。

 しかし一方で、広報協議会が主催をする説明会でございますが、これにつきましては、もちろん先日の議論においても、説明会自体の持ち方、開催場所、運営方法等々におきまして裁量の余地は確かにあるとは思っておりますけれども、この説明会は国民に周知する大変重要な手段として広報協議会の役割として残しておくべきだ、私はこう考えておりますので、この説明会の開催ということについては原案どおり存置をしたいと思っておりますので、御理解をいただきたいと思っております。

 以上でございます。

中山委員長 次に、園田康博君。

園田(康)委員 民主党の園田康博でございます。

 私からも、さきの小委員会における、先ほど小委員長からの御発言、報告があったわけでありますが、それに関して三点ほどつけ加えさせていただきたいというふうに思っております。

 まず、テレビ等における有料の意見広告の制限についてということでございます。

 私どもも、やはりメディア規制というものに関しては、マスメディアの報道の自由あるいは表現の自由というものをきちっと守っていかなければならないという立場に立ち、そして自主的、自律的な判断というものを尊重しつつ、禁止をすることの是非については検討を加えていきたいというふうに考えたわけでございます。

 その際には必要最小限度に抑えるべきではないかという観点から、テレビ等の広告放送につきましては、私ども民主党の原案においても、理性的な判断ではなくて感情的に訴えるという意味で扇情的な影響力を有するものであることや、あるいは広告を放送するには莫大な費用がかかるので資金の多寡によって格差が生じてしまうということなどから、投票日の七日前からの規制ということで考えておりました。

 これまでの御議論を皆様方から受けるうちに、先ほど船田与党委員からもお話がありましたとおり、まず第一点として、総量規制という形で期日前投票期間に合わせて投票日前の十四日間としてはどうかという御提案や、あるいはさらに、先ほどありました、十四日間とした上で賛否平等の取り扱いに関する放送事業者の配慮規定というものを置いてはどうか。これは内容的なものではなくて外形的なものであり、公平性をきちっと担保するというところからの配慮規定というふうにおっしゃっておられるわけでございます。さらに、憲法改正案の発議後投票日までの全期間、先ほど御指摘ありましたけれども、これもいっそのこと禁止してはどうかという諸案、さまざま御提示をされているところでございます。

 これに関しまして、メディア規制というものに関しての考え方の中で、広告も表現の一形態であることは当然のことであろうというふうに思っておりますので、報道の自由ということを念頭に置きつつ、原則、メディアの自主性や自主規制というものを尊重する立場には私どもも変わりはございません。

 ただし、テレビCMについての、賛成意見、反対意見を対等に扱う、あるいは時間帯や曜日などにおいても公平に自主規制で扱うということが本当に可能であるのかどうかという疑念はまだ払拭し切れていないのではないかなという思いがございます。

 加えて、例えば憲法改正案を発議するときに三つのテーマを同時に発議した場合に、A案、B案、C案すべてに賛成という意見、あるいは逆にすべてに反対という意見、あるいはABには賛成だけれどもCには反対、あるいはAには賛成だけれどもBCには反対、Aには反対BC賛成、AC賛成B反対、AC反対B賛成などという多様な意見表明というものが考えられるわけでございまして、これらを自主規制で公平に扱うことが本当に可能であるのかということも議論をしていく必要があるんではないのかなという気がいたしております。

 いずれにしても、今後、こういったさまざまなシミュレーションを現場において行われるということを念頭に置きながら、このような疑念を払拭する努力を私どもも続けてまいりたいというふうに思っておるところでございます。

 もう一点、政党等にのみ無料広告を認めるということに関してでございます。

 国民投票法案では、政党等は憲法改正案に対する意見を無料で放送することができると規定をさせていただき、テレビ等は政党等が録音あるいは録画した意見をそのまま放送するという、ある種、公職選挙法の政見あるいは経歴放送のようなものを想定いたしております。

 政党のみに無料広告を認めることは合理的理由がないという御批判がございました。国会が改正案の発議機関として主体的役割を担うということは、私は憲法自体が期待をしているんではないか、同時に、国会を構成している政党こそが議論の経緯を熟知し、そして責任を負うということを可能ならしめる団体であるという形で、国民に対して改正案に関する基本的な情報を提供するのは政党が望ましいのではないのかなと現時点でも考えております。したがって、政党が行う広告については公営で行うことといたしました。

 ただ、新聞広告につきましては、紙媒体のものとして国民投票公報が別途あるということから考えまして、あえて政党にだけ無料枠をつくる必要がないものと判断をいたしております。これは条文より削除するという方向で今検討をさせていただいております。

 また、これまでの議論や与党提案者からの御指摘を踏まえて、先ほど船田委員からも政党以外の一般の団体について各政党が指名する団体は無料枠を利用することができるという御提案がありましたけれども、これについては私どももそのように検討をしてみたいというふうに思っておるところでございます。

 三点目でございますが、広報協議会の構成と業務についてでございます。

 広報協議会に求められている仕事といいますのは、改正案やその要旨や新旧対照表の作成、そして賛成意見及び反対意見の枠、スペースが公正かつ平等になっているかどうかをチェックするというものでございます。したがって、裁量の余地のない部分をオーソライズするのが広報協議会に求められている仕事であろうというふうに思っておりますので、このような性格からかんがみれば、広報協議会の構成としては、国会内組織として設けられている以上、会派所属議員数の比率によることが原則、しかしながら少数会派には配慮をするということとしていきたいというふうに思っております。

 賛成、反対同数の委員数にするという御提案や御意見もございましたけれども、逆に、そういたしますと、改正案ごとやあるいは項目ごとによって賛成、反対の組織構成が変わるということも念頭に置かなければならないし、時に、全会派のうち賛成が九、反対が一という場合や、あるいは全会一致ということも場合によっては考えられるのではないのかというふうに思っておりますので、これについてはどのような構成にするのか疑問が残ってまいります。

 そしてまた、先日の小委員会におきましては、各参考人から、この委員に政党以外の外部委員、あるいは外部委員による専門部会、あるいは第三者機関というものの設置を考えてはどうかという御指摘がございました。これは国民の議論をより喚起させるべきという立場からの御意見であったというふうに受けとめさせていただきました。

 外部の有識者などの御意見を聞く機会というものは、この広報協議会の中、あるいは改正原案等々の質疑の中においても、しっかりと私どももこれは担保していかなければならないというふうに考えておるところでございますけれども、これの裁量の余地のない部分においては余り意味のないことではないのかなという御意見もあったことは御紹介をしたいというふうに思っております。すなわち、この広報協議会の仕事が賛成、反対それぞれの枠を形式的にオーソライズするという裁量の余地のないというところからすれば、これの中に外部の委員を入れて、あるいは反対の意見を入れてということを考えていくことには余り意味がないというふうに御指摘をされたものであると思っております。

 加えて、裁量の余地のない業務を想定しているということからすれば、先ほど説明会の議論がございましたけれども、これの説明の内容等については、やはり今のタウンミーティング等々の話からすれば、裁量の余地がこの中にどうしても入ってしまうという危惧を払拭することは難しいのではないかという形で、この規定については私ども民主党としても削除する方向で考えたいというふうに思っておる次第でございます。

 そのほかにも、公務員の政治的行為の制限規定の適用除外という御意見、御指摘もありました。これについては、私どもの主張に対して与党の方から一定の御理解を得ていただいているのではないかなという印象を持った次第でございます。

 私の方からは以上になります。

中山委員長 次に、赤松正雄君。

赤松(正)委員 公明党の赤松正雄でございます。

 先ほどの近藤小委員長の御発言に補足することはありません。また、船田与党提出者からの三点にわたる御自身の御発言、またその修正に関する御発言について、私どもとしましてもつけ加えることはございません。大筋了解でございます。

 以上です。

中山委員長 次に、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 十二月十二日の小委員会について、補足的発言として三点にわたって述べたいと思います。

 第一に、この間、与党案と民主党案をめぐって双方に歩み寄りがあったとか合意形成まであとわずかとかしきりに言われて、先週の委員会質疑では修正内容を確認し合うかのようなやりとりもありましたけれども、十二日の小委員会では、手続法は必要という参考人も含めて、すべての参考人から両案に対してさまざまな意見や疑問点、あるいは懸念や問題点が多岐にわたって出されたということであります。

 NHK、読売、毎日、産経、日弁連の参考人のだれ一人からも、これでおおむね結構という意見表明はなかったと思います。それどころか、特に有料の広告放送を投票日前一週間禁止するとしていることについては、社として改憲を推進する立場を表明している新聞社も含めて、すべての参考人が疑問を投げかけていたのは印象的でありました。

 また、昨日、政府はタウンミーティングをめぐるやらせ質問の調査結果をようやく報告し、その重大な実態と、世論誘導があったことを認めました。しかし、そのもとでも、今与党は教育基本法改悪を強行しようとしております。私は、教育基本法の改定案の撤回こそ政府・与党の適切な責任のとり方だと考えますけれども、こういう中で一昨日の小委員会において毎日新聞の近藤参考人から、広報協議会の事務の中に憲法改正案に関する説明会もやるとあるが、やらせ質問で問題になったタウンミーティングを想像するので、これと同じにならないような保障があるのかという疑問が呈されました。枝野委員からは、やはり裁量の余地があることなので民主党としては外そうと決めているとの発言がありましたが、この問題も重要な点だと思います。

 今与党と民主党が、両案の相違点を埋めるために互いに幾つかの修正を模索しているようでありますけれども、今明らかにされている修正がなされたとしても、国民の両法案に対する疑問や懸念は解消されないということを改めて確認した次第であります。

 第二に、放送や新聞の広告の無料枠を政党のみに認めることについて、NHKの石村参考人、毎日新聞の近藤参考人、さらに日弁連の吉岡参考人から疑問の意見が述べられたという問題であります。

 NHKの石村参考人からは、国会に議席を有する政党だけで適当なのかどうか、さらに議論が必要との意見が出され、毎日新聞の近藤参考人からは、基本的には市民団体にも無料広告を認めるのが望ましいが、どういう線引きが可能か知恵を絞るべきとの意見が表明されました。これらは両案の問題点を指摘したものであり、注目いたしました。

 このことは技術的に解消される問題ではなく、まさに憲法九十六条の基本問題であります。すなわち、国会は改憲案を発議するまでであって、その後は主権者国民が国民投票の主人公であり、政党の役割は言うまでもなく重要ではありますけれども、やはり意見表明の主体はあくまで主権者国民だということであります。

 この点で日弁連の吉岡参考人が、十一月七日の小委員会でも、政党等による無料の広告について政党にのみ認めることになれば国会での審議の内容がそのまま反映することになってしまうこと、憲法改正が最終的には国民投票による国民の判断にゆだねられることとされているのは、憲法改正の是非について改めて広く国民の中で自由闊達な議論をし、その結果、主権者たる国民一人一人の判断にゆだねようとするものだからだと述べ、さらに十二日の小委員会でも、九十六条の基本的問題として、憲法について、国民がみずからの憲法を選ぶということが重要であって、確かに発議する政党も重要だけれども、国民の側で自由闊達なこれに対する意見表明をして選ぶということは重要であると表明されました。このことは、憲法九十六条の理解にかかわる基本問題として重く受けとめるべきだと考えます。

 第三は、公務員等及び教育者の地位を利用した国民投票運動を禁止するとの規定について、日弁連の参考人から、地位利用の定義を明確にしたり罰則をなくしたりなどの修正を行ったとしても、この規定を置くことによる弊害は解消されないことが指摘されたことであります。

 この問題について、私は、与党は地位利用と国民投票運動の定義を明確にするということと罰則を設けないという二つの修正でよしとしようとしているが、これらの修正を行ったとしても、この禁止規定は網羅的に公務員、教育者にかかり、罰則を設けなくても公務員法上の懲戒処分の事由になるということになれば、依然として萎縮効果は全く変わらないのではないかと質問しました。

 これに対して、日弁連の菅沼参考人は、地位利用の問題を限定できるのかということだが、職務権限に直接絡めて賛成投票もしくは反対投票をすることを強制するという事態については職権濫用罪という規定で規制が現実にできるわけだから、それ以外の場面でそもそも規制をしなければならない地位利用があり得るのか。罰則がなければいいかという問題では、ほかの法律でも、例えば公務員で言えば、罰則はなくても、それに基づいて通達を徹底させてそれに違反したら懲戒処分というようなこともあり得るわけで、この法律に罰則がないから萎縮効果がないということにはなりにくいと答えられました。

 読売新聞の上村参考人からも、地位利用の定義がはっきりしない、禁止されるべき地位利用とは一体どういうものなのかとの疑問が提起されたことにも注目しました。

 補足的発言の最後に、今度の小委員会のテーマでは、これまで二回の参考人からの意見聴取と懇談、また委員会での質疑等を重ねてきたわけでありますが、法案の持つ問題点は解消されないどころか、再三の指摘にもかかわらず、例えば憲法九十六条の理解にかかわる問題でも、原理原則を踏まえず技術面に走る姿勢が明らかになってきております。私は、法案審議の前提問題が問われているということを、今回のテーマ一つとっても痛感いたしました。

 このことを強調して、発言を終わります。

中山委員長 次に、辻元清美君。

辻元委員 社民党の辻元清美です。

 十二月十二日の小委員会の報告及び補足的発言をいたします。

 まず、報道や広告の規制については、報道の自由という観点から望ましくない、報道機関の自主的な判断に任せるべきという基本的な立場は参考人の方々に共通していたと思います。しかし同時に、意見広告を全くの無制限にすることで国民投票の公平さを損なう事態もあり得るという、これも共通の懸念として参考人の方々から提起がありました。

 石村参考人は、一律で厳格な放送の規制は好ましくないが、資金量によって放送される賛否の量が著しく偏るようなことがあればこれはさらに好ましくないと述べられ、吉岡参考人からは、放送媒体であれば賛否両方が同時間、新聞であれば同じ回数、字数にする工夫が必要という意見が出されました。近藤参考人からは、自主的に出す有料広告については、広告を受ける側だけではなく、政党を含めた広告を出す側も総量規制などの自主的ルールをつくるべきという提案があり、これは新しい提案であるということで検討の余地があると思います。

 また、テレビCMにおいては、制作段階から資金量の多寡が影響してくる点を私の方からも改めて指摘をいたしました。

 テレビCMの規制については、以前、民放連の方々が小委員会で、CMの内容によって意見の強弱などを生じた場合、放送法の規定にもある政治的公平の観点からどう考えるべきか、憲法改正案の賛否を視聴者にストレートに問うようなCMが日本の放送媒体になじむのかなど根本的に難しい問題があるという指摘がされたことを私の方から改めて紹介し、現実に民放連としても政党を除いてはなかなか今までも政治にかかわる意見広告がなかったという現状、今後どのように取り組まれるのか非常に難しい問題をはらんでいるという問題提起を改めていたしました。

 政党の無料放送枠の是非について、吉岡参考人は、資金力のある者のみがテレビなど影響力が大きい媒体を利用できるのは不公平という立場から、政党以外の市民や団体なども無料でテレビなどを使える工夫や、賛成意見も反対意見も同じ時間が使えるような工夫を凝らされるべき、そして、憲法改正の主体である国民の中においてこそ自由闊達な議論がなされるべきということを軽視しているのではないかという懸念も示されました。

 無料広告の割り当ての基準については、近藤参考人が述べられた、国会はあくまでも憲法改正を発議するまでで、発議後は主権者である国民が判断をすることであるという認識がまず議論の基礎になるべきだと私も考えます。

 また、石村参考人の、賛否の量がなるべく平等に、放送事業者が基準の一つとしている公平公正が望ましいという意見、これは、放送事業者が基準としている公平公正を意見広告にも厳格に適用すべきだという意見としてお聞きをいたしました。

 近藤参考人は、公平性の見地から賛否平等になるように割り当てるべきと述べられ、政党間平等はそのときの政治状況に左右されるため法律の条文としては不適当ではないかと述べられました。

 また、議席数案分という考え方の中に民意が既にあらわれているのではないかという意見に対し、近藤参考人は、憲法改正の国民投票は、有権者が人柄などの総合判断で候補者を選ぶという選挙とは違う、将来の国のあり方について国民に問いかけるものという反論をされました。

 公報物の内容についても、石村参考人からは、当然賛否の分量は均等、我々報道機関が求められていることとかなり似ている面もあるという意見も述べられ、吉岡参考人は、無料広告の時間や回数などが議員数を踏まえて定められているのは、国会における多数意見、少数意見がそのまま反映されることになり反対という意見が出されました。

 広報協議会については、検討の余地が多くあるという意見が大勢でした。

 構成については、賛成と反対の意見が平等に割り当てられるように委員を選任すべきと述べられた近藤参考人が根拠とした、憲法改正の賛否を判断するのはあくまでも国民という視点は、基本として何回も肝に銘じられなければならない点だと私も感じました。近藤参考人は、第三者機関として国会の外に置いた方がいいという考え方もさらに示されました。

 組織については、上村参考人が、国会内部のみで議論すべきことではなく、外部の意見を広く受け入れる組織なり機会を設ける配慮は必要と、これも提起を受けました。

 石村参考人は、広報協議会での決定が出席者の三分の二になっていることから、国会議員だけで構成されると当然憲法改正に賛成の意見が多くなると、公正さを欠くことへの懸念を示されました。

 参考人の方々からは、外部の有識者などから成る専門部会の設置や外部委員を入れるという提案が多く出されました。これは、広報協議会の役割やあり方について、両案から想起される姿と国民がイメージするものとの間に大きな開きがあるのではないかと、私はこの御意見などを拝聴しながら強く思いました。

 石村参考人は、広報協議会の役割が単に賛否両方の公平性を担保するものならば第三者機関にすればいいと述べられ、国民にいかに活発に改正論議の賛否を問うかを基本に、どうやったらそれが周知徹底でき、活発な議論ができるのかという点を議論の中心に置くべきとの問題提起がありました。

 菅沼参考人は、数の優位をそのまま持ち込むのではなく、それぞれの問題点を洗い出して国民に考えてもらうための材料をどうつくるかが主要な役割であり、委員構成はまだまだ議論が必要という御指摘でした。

 さらに、国民投票運動の規制についても御意見をいただきました。

 吉岡参考人からは、憲法改正手続においては公職選挙法の手法による規制がなされるべきではなく、いかに主権者である国民が萎縮することなく自由に意見表明ができるか、憲法改正の最終決定者である国民がいかに自由闊達な議論ができるかが特に重要であるという基本の指摘をいただき、公務員、教育者の地位利用による国民投票運動の禁止については、「地位を利用して」という概念が極めてあいまいなため、公務員や教育者が憲法改正についての意見表明や活動をすることはすべて地位利用に該当するという運用、解釈がなされるおそれがあり、教育者などの意見表明や活動を萎縮させる現実的危険性があるという指摘を受けました。

 さらに、吉岡参考人は、公務員がその地位を利用して賛否いずれかの投票を強制した場合は職権濫用罪その他既存の法規制にも抵触すると述べ、憲法改正手続に規定を置く必要はないと指摘を受けました。

 教育者についても、学校において憲法改正についての議論がタブー視される、そして、本来これからの社会を担っていくべき学生たちこそ議論してほしい憲法問題が学校では議論されないという現象すら生じかねないと大きな懸念が示されました。

 両案提出者からは、これに対していろいろな理解を示す答弁がありましたけれども、まだまだこの点についてはいろいろなケースを想定して議論が深められるべきだと思います。

 また、組織的多数人買収・利害誘導罪の創設について、吉岡参考人は、そもそも憲法改正国民投票に関して買収や利害誘導などがなされ得るのか、また罰則で禁止することは投票についての自由な活動を阻害しないのかなど、罰則規定を設けること自体に疑問が呈されました。

 最後に、憲法審査会についての参考人の意見も紹介します。

 吉岡参考人は、国民の間の関心はまだまだと思うので、憲法調査会を直ちに提出権がある審査会に改めるのはいかがなものかと疑問が呈されました。また、菅沼参考人は、本当の意味での広範かつ総合的な調査を行う必要があったのではないかと述べられ、議案提出権を持たないという前提でつくっている調査会を審査会にという連続性があるような立法はいかがなものかと疑問が出されました。

 この日のお話を聞きながら、テレビCMの広報のあり方についてはまだまだ議論しなければならないと深く感じました。また、発議後は中立にあらゆる面で取り扱ってほしいという国民から見た視点と、そして、国会からどのように広報協議会などのあり方をつくるかという点については、まだまだ視点の違いによる溝があるなというふうに強く感じました。

 こうした専門家の疑問に対して十分まだ答えられていないなという率直な感想があり、まだまだ議論を深めていくべき論点をたくさん出していただいたので、これから本委員会で議論していきたいと思います。

 以上です。

中山委員長 これにて小委員である委員からの発言は終了いたしました。

    ―――――――――――――

中山委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。幾つか質問したいと思います。

 まず、政党等による無料の放送、新聞広告について両案提出者に伺いたいと思います。

 私、この問題で繰り返し質問もしてきましたけれども、なぜ政党等にのみ無料枠を設けるのか、提出者の答弁を伺ってもどうも理解できないところであります。

 十二月七日の委員会で、私が、憲法九十六条の理解、つまり、国会は発議までで、国民投票の場面ではまさにその主体は主権者国民であって、政党も重要な役割を果たすことはもちろんだけれども、政党だけが中心になることは、やはり九十六条からするとその根本が問われることになるのではないかと質問いたしました。

 その際に、枝野提出者、枝野委員の答弁の中で、新たに出された説明の一つに、政党とそれ以外の団体とで賛成意見、反対意見の一時的受け皿となる当事者としての適格性をどう線引きするのかという観点からすると、裁量の余地なく明確に線が引けるということから政党に無料枠を設けることには合理性があるという趣旨だったと思うんですけれども、そういう趣旨でよろしいのかどうか確認したいんですが、いかがでしょうか。

枝野議員 そのとおりであります。

 政党以外の団体に適格性を認めるとすれば、何らかの基準に基づいて、しかも、その基準は多分形式的基準だけではやり切れないんだろうと思います。そうすると、そこに裁量の余地が入って、ここは認められたのにここは認められないという形式的アンフェアが生じてしまう。それは全体としての公正さを担保する上でゆゆしき事態であるというふうに思いますので、そこがある意味では最大の問題と言っていいかもしれません。

笠井委員 与党、自民党と公明党の提出者にもその点を伺いたいんですが、そういうことがやはり最大の問題点というふうに考えていらっしゃるでしょうか。

船田議員 今、枝野委員がお答えしたように、政党以外の一般の団体あるいは市民団体の皆様に枠を提供するということにつきまして、やはりその基準が非常に難しいと思っております。

 私どもとしては、広報協議会が何らかの緩やかな基準を設けるということで、これに基づいて各政党が責任を持って指名する団体について無料枠を利用することができるようにと、これを明確にした修正を加えたいと思っております。

 本来、発議者である国会が一定の役割、責任を持って、この無料放送等についても責任をとる必要がある、こういうことが大前提としてあるわけでございます。

 以上です。

赤松(正)議員 今の船田委員の発言に特につけ加えることはございません。

笠井委員 今、御説明というか答弁があったんですが、その理屈自体も、私、九十六条の趣旨に合致したものとは思えないんですけれども。

 その上で、果たして政党が国民の中にある憲法に対する意見の受け皿となり得るかということについても、やはり問題があるというふうに見るべきじゃないかと考えております。つまり、国民投票の運動期間中、国民は、その発議、提案された改憲案に対して、いわば賛成、反対などの結論のみを意見表明するのではなくて、自分はこういう理由で賛成、反対、あるいはわからないなどの意見を表明して運動することになるというふうに思います。提出者も、先ほどもあったんですが、賛成意見、反対意見というのは無数にあり得る、いろいろなことがあり得るということもありました。政党が指定する団体という修正の話もあったわけですけれども、国民の中には、既存の政党の中に自分の憲法に対する考えと合致している政党はないという人も結構いると思うんですね。そこは政党の活動というのが問われることになるとは思うんですけれども。

 しかし、そういう現実があるとするならば、それら国民の多様な意見を国会に議席を持つ政党がすべて代弁しているかといえば、そうではないのではないか。政党には酌み尽くせない国民の意見もあり得るわけで、憲法改正という場面で政党が国民の意見の一時的受け皿として適格性を持つという理屈についても、これはそのままで合理性があるというふうには言えないんじゃないかと思うんですけれども、そういう点については、提案者それぞれ、いかがでしょうか。

枝野議員 まず、なぜ政党だけが、政党以外のところにもいろいろな多様な意見があって、それは一定の理解をいたします。

 ですから、私どもも、まず紙媒体ということでは、別途、国民投票公報という紙媒体をつくるということにしていますので、あえて新聞広告枠ということについて政党にのみ優遇的な対応をする必要は、紙媒体はあるんだからいいだろう、紙媒体についてほかのところは市民団体を含めてみんな自由に平等にやるということでいいんじゃないかということですので、新聞広告の政党等無料枠は修正するというふうにします。

 ただ、テレビメディア媒体、放送媒体については、もし笠井先生の御主張に従ってなおかつ私の危惧を排除しようとするならば、やらないという選択肢かなというふうに思います。全く無料枠なし。逆に言ったら、その場合どうなるかというと、いわゆるスポットCM的なCMのところをどうするかという話がありますが、しょせん十五秒とか、長くても一分ベースぐらいの話です。あとは、電波を独占しているテレビ局等が自由に報道するという話だけになっていきます。

 それが国民の立場からどういう議論が国会で行われたのかなということについて、一応、一通りまとまった時間で、まとまった放送の中でそれぞれの意見をちゃんと聞くという機会を、なくてもいいというのであるならば、私は、一つの考え方で、テレビについての無料枠はなしということは一つの選択肢かなというふうには思います。

船田議員 ただいまの御質問についてですが、これは、そもそも論の話をきょうはするつもりはないんですが、政党とは何ぞやというところまでさかのぼる必要があるのかもしれません。

 各政党、今我が国でもそれぞれ活発な活動を続けておりますが、支持する政党がない、あるいは政党の中で自分の主張するものを酌み取れる政党はないという事態も確かにあると思います。しかしながら、政党の側では、そういった多様な意見もできるだけそれぞれの政党が取り入れて、それを国会の中で議論すべきであるということも、また一方の政党のあり方だと思っております。

 ですから、私は、政党が中心となるということが当然のことであるし、また、政党の意見と違う部分をなるべくなくしていくというんでしょうか、多様性は認めつつも、そういった多様な意見も取り入れるというのがまさに政党の望ましいあり方だと思いますので、そういう観点からは、政党が責任を持って指名する団体に無料枠を使わせる、こういう状況でスキームをつくることはむしろ妥当であると思っております。

笠井委員 それならば、いっそのことやらないということもあるという話だったんですが、やらないでいいのかという問題も逆に出てくるので、私はそのことはあると思います。

 船田委員からお答えがあって、政党とは何ぞやと。これは本当にそういう問題も大いに議論しなきゃいけないことだと改めて私も思っております。そういう意味では、憲法上も結社の自由ということで、二十一条ですけれども、その規定の中に黙示的に組み込まれた存在であって、その役割はもちろん重要だということであるわけですけれども、しかし、国民の立場から見ると、多様な意見が本当に政党に酌み尽くされていくのかというと、なかなかそこは、政党の努力の問題はありますけれども、しかし、現実にはいろいろな問題がある。そして、憲法改正という主権者国民が憲法制定権力を行使する場面で、やはり特別扱いをされるということについては合理性がないんじゃないかというふうに感じております。

 次に、放送広告の規制について質問いたします。

 十二日の小委員会でも議論になりましたけれども、法案提出者の側からも今悩んでいるという話がありました。政党以外の市民や団体による有料での放送広告を禁止することも検討しているという発言がありました。これについて、私も国民の表現の自由を制限することになるんじゃないかというふうにこの問題で指摘をしてきましたが、十二日の小委員会でも、NHKや新聞各社の参考人からも意見があって、日弁連の参考人は、一たび言論の自由を法律で規制できるのだというような例をつくってしまうと、民主主義社会そのものを揺るがす取り返しのつかない事態を起こしかねないとまで警告をされました。

 私は、法律によって憲法を規制してしまうような仕組みをつくることになれば、そのことが及ぼす影響は非常に大きいと思うんです。この点について法案提出者はどのようにお考えか。これは、自民、公明、民主、それぞれの提出者の方々から答弁を求めたいと思います。

船田議員 お答えいたします。

 今のテレビCM、有料広告でございますが、この点について悩み多いという状況ですが、私の方はやや悩みが解消してきているというふうに申し上げてもよろしいかと思います。

 全面禁止という議論も確かに出たんですけれども、こういうCMを行う、あるいは出稿するということについては、表現の自由、あるいはCMを行って自分の意見をできるだけ多くの人に聞いてもらいたい、見てもらいたい、そういうことを実現するための手段でありますので、これを全面的に禁止をするあるいは全期間において禁止をするというのは、やはり、表現の自由あるいは言論の自由ということを考慮するならば、ちょっと行き過ぎだなというふうに思っております。

 また一方で、全く制限なしというのでも、これは量的な問題がございます。その資金量によって賛成意見が極端に多くなったり、反対意見が極端に少なかったり、その逆もあるかもしれません、そういう量的なアンバランスというのをどう解消するか。これは、やはり一方では解消しなければいけない問題であると思っております。

 そこで、全く一〇〇%の解決ということではないんですが、私ども、投票日前七日間の禁止ということを原案としては盛り込んだわけでありますが、この期間を例えば期日前投票の期間に合わせまして十四日間の禁止ということで、これで形式的には全体の量的な制限ということにもなると思いますし、そういう点では、バランスを全面的にとるということになりませんけれども、一部それを実現させる手段としては妥当な手段である、こう現時点では考えております。

 それからもう一つ、私自身が前回の小委員会で新たに提案したことでございますが、これは、放送局あるいは新聞メディア等に対しまして、放送の時間帯、新聞では第何面を使わせるか、何曜日に広告をするか、あるいはまた賛成、反対において料金を変えるとか、そういった取り扱いの点で、これをすべてメディア側に任せてよろしいのかどうかという点は相当議論があると思っておりまして、やはり、取り扱いの平等ということについては何らかの緩やかな規定があってもいいのではないかな、こう考えております。これは決してメディア規制というものでくくれる問題ではない、非常に技術的であり、また形式的な問題である、このように感じております。

 以上です。

枝野議員 これも両取りはできないよねという世界なんですよね。つまり、何らかの規制をしなければ、賛否の量がアンバランスになるということはやむを得ないと考えるしかないんだろうと思います。

 私は、せっかくの船田先生の御提案なのでいろいろ考えてみたんですが、配慮規定といえども、やはり、放送局に対して法律で具体的中身に立ち入るような形での何らかの規制を設けるというのは余り望ましくないだろうなと。あくまでも自主規制だと。自主規制で賛否平等にしなさいと言われたって、テレビ局は困ると思うんですね。

 片方からは百件の放送コマーシャルをやりたいという申し込みがあって、片方から一しかなかったときに、百断るんですかと。あるいは、片方から百あって、片方から申し出がなかったら、申し出があっても受けないんですかとか、そういう話のことをテレビ局に自分たちで判断しろというのもこれまた無理を強いることなんであって、もし規制を加えないということであるならば、まさに民間でのマーケットメカニズムに基づいて、金を持っていたらたくさん放送される、それは仕方がないということを容認するしかない。

 そうでないならば、放送局に対して何らかの介入をするということである。介入をするんであるならば、中身に入る介入は最悪であるということであって、これは中身がいいから放送するとか、これは中身が問題あるから放送しないとか、そういうことはまさに表現の自由にかかわる問題であって、形式的に、この場所では表現してはいけません、この時間帯には表現してはいけませんという、内容のいかんにかかわらず、形式で表現の自由は規制があるとすればやるべきであるというのは、これは表現の自由に対する合理的規制のあり方として一番全うでありますから、やるんだとすれば、いつからいつまでは一切これに対しての放送はしないというやり方をするか、アンバランスが出ても仕方がないと思うか、二つに一つだと思いますが、私は、健全に国民の意思が反映されるということを考えるならば、全く自由に資本力によって量から何から大きな差が出るということの結果よりも、一定程度の何らかの形式的規制が入ることの方が国民の意思は正確に反映される結果につながりやすいというふうに思っています。

 念のため、特に船田先生からの御提案の中で、新聞は、一切これは、いずれにしても検討の余地がないんじゃないかな。ちょっと誤解があるんだと思いますが、新聞規制してしまいますと、自由新報に共産党が反対広告出せと言われたとき平等に扱わなきゃいけないし、赤旗に自民党が原稿出せといったときに平等に扱えということになってしまいますので、新聞には配慮規定とはいえども無理だというふうに思います。

 以上です。

赤松(正)議員 先ほどの船田委員の御発言に全く異議はないと言いたいところで、先ほどそのようなことも言ったんですが、この部分は先ほど社共お二方からの発言とも関連するんですが、確かに、前回の小委員会で、出席された皆さんがほぼ一様に、この投票日前七日間、現在の提出してある法案に書いてあることについて否定的な意見を述べて、その後で七日から十四日にするということについては、もう少し深く、今の枝野委員から非常に微に入り細にわたって述べられたこととも深く関係するんですが、若干検討の余地があるのかなというふうな印象を持っております。

 以上です。

笠井委員 いずれにしても、日弁連の参考人も警告されましたけれども、憲法が保障している表現の自由、言論の自由を法律によって規制する仕組みをつくるのかどうか、そして、つくるとなれば、そのことが及ぼす影響ははかり知れないことになるだろうというのが一つ。

 それから、今答弁の中で共通してあった問題でもありますが、船田委員もやや解消したのかなということで、十四日間の禁止ということですが、一週間ということでも前回の小委員会でも相当の異論が出たということがあるわけです。それから、取り扱いの点でも、すべてに任せるんじゃなくて、緩やかな規定等、配慮するということですが、それも、枝野委員が逆に言われましたけれども、介入ということにならないかという問題が出てくるわけであります。私は対案をここで言う立場にはありませんけれども、例えば十二日の小委員会では、参考人から、法律によって規制するんじゃなくて、放送事業者やマスメディアの関係者のこの問題での取り組みを注視していくとか、あるいはさまざまなシミュレーションをしてみるなどの工夫ができないか研究してみるべきという指摘もありました。

 いずれにしても、この問題一つとっても、短絡的に結論を出すべき問題ではないということを改めて感じているところであります。

 質疑時間がもう来たみたいなのであれですが、きょうの質問、わずかなことだけでありましたが、それだけでもまだまだ問題点があるということを痛感したということで、きょうは質問を終わります。

中山委員長 次に、辻元清美君。

辻元委員 社民党の辻元清美です。

 私も、前回の小委員会のテーマであった、特にCM放送における中立性の確保をどうすればいいかということについて、まず質問をしたいと思います。

 その前提で、前回私が質問いたしました、憲法改正をする場合、幾つぐらいの個数の発議といいますか、何カ所ぐらいを皆さんイメージして御発言なさっているのかということについてもう一度確認をしたいと思うんです。

 なぜかと申し上げますと、先ほど小委員会の報告で、園田委員の方から、A、B、C、三つの場合を想定しても、Aに賛成、Bに反対、Cに賛成、Aに反対、Bに賛成、Cに賛成とか、いろいろあるわけです。だから、賛否平等にといったときに、どういう扱いになるのかしらと。

 例えば、政党の無料広告もそうなんですけれども、無料枠のCMの話も先ほどから出ていましたけれども、政党によっては、Aに賛成だけれどもBに反対でCに賛成という政党もある。いろいろごちゃごちゃしてくるわけで、この発議が、今までは何か総括的に、こっちに反対か賛成かというので賛否平等というイメージで語られ、そこに引っ張られてきたように思うんですが、この間の議論で、やはり個別発議であると。関連する事項という御提案について私はまだ異議があるので、そこはまた議論していきたいと思いますけれども。シングルサブジェクトルールみたいなものが必要だと思いますが、それぞれ政党によって、ここは賛成だ、反対だとなってきますよね。そうしますと、賛成と反対を平等に取り扱う無料広告についても、その都度都度、このテーマについてはこの政党、この政党、この政党が集まってというように、攻守ところを変えてといいますか、賛否平等を形成するというイメージでお語りなのか。

 ということで、まず、この間の御発言では、民主党さんは、改正点は三つぐらいじゃないか、五つになると投票箱や何かの関係で多いかしらという御発言を引いて、園田委員は先ほど三つとすればという御発言だと思います。公明党の提案者の方は一つから三つというような御発言もあり、自民党の御提案者の方からも、そんな十も二十も物理的に不可能だしということで、たしか五つ以内ぐらいかななんという御発言があったんですが、まずここを確認して、もう一度議論を進めていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

船田議員 今の御質問ですが、前回、前々回ぐらいですか、お話がございました。そのときにも答えたことなんですが、現時点において、改正の部分といいましょうか、設問が何問になるかということをあらかじめ想定するというのは、私は、先の議論を縛ることになるので、これはやはり慎重であるべきだと思っております。

 ただ、外形的な条件としては、例えば、一つの設問ごとにブースをつくって、その投票箱を設け、記入の場所を設けて投票していただくということになるわけでありますが、現在、各選管が国政選挙あるいは地方選挙などで確保してあります投票所の大きさあるいはその物理的な条件などを考えますと、もちろん一問ということもあるかもしれませんが、数問、強いて言うならば三問程度から五問程度、その間かな、そういう感じがいたしております。

 それから、設問ごとに賛否がそれぞれの政党で違っていて、それで設問が多くなったとき、一体賛成と反対意見は平等といってもどう扱うのか、これは順列組み合わせみたいな問題になってしまうかと思いますけれども、私は、これを設問ごとに完全に平等にするということは、物理的にはかなり難しいことだと思います。これは全体において総合的に賛否というものが平等に扱われるということであって、設問ごとに多少のバランスのずれがあっても、それは許容の範囲内ではないかというふうに理解をしております。

赤松(正)議員 私どもは加憲ということでありますから、あとう限り少ないテーマ、一ないし三というふうなお答えを前回したようでありますけれども、私の現時点のイメージは一つ。もっとも、今、加憲のテーマ、何を加憲の対象とするのかという議論をしている最中でございますので、おのずとその議論の流れの中で若干その辺は変わってくると思いますが、非常に少ない加憲対象ということを考えております。

 なお、自由民主党の船田委員の方からは非常に少ないということは言われたんですが、私としては、えっという思いがいたしております、もっとたくさん変えようとしておられるんじゃないのかと。

 それで、実際に発議されたときは、今の現時点で言えば、政権を構成している公明党も自民党も、しっかりと、おのずとその発議に賛成をしてやるわけですから、どれが反対、どれが賛成、政党によって違いが出てくるということはない、そんなふうに思っております。

 以上です。

枝野議員 まず、発議の一回当たりの個数という話については、船田委員の御発言とほぼ同趣旨であります。

 ただ、後段は違います。というか、この法律の私の理解では、すべて発議ごとなのであって、一つの投票期日に例えば三つのテーマが投票にかけられるとしても、三つの国民投票が同時施行されるという位置づけになりますので、例えば政見放送類似の放送についても、三つのものが同時期に行われるということにすぎない。

 したがって、A、B、Cと三つのテーマがある、三つについてまとめてその放送が行われるんじゃなくて、きょうのこの時間はAテーマについての放送である、次の日はBテーマについての放送である、三日目はCテーマについての放送である、こういう形で行われるのであって、A、B、Cテーマがされるからといって、同時、一括でされるわけではない。

 その場合に、逆にその枠の中をどう使うかは、表現の自由との兼ね合いで、Aテーマの日にBテーマもCテーマもよろしくねということは規制をされないということになるので、事実上、受け取る側からすれば、まとめてされているのかなという印象を受けることが、政党の賛否がそろっていれば、なる可能性は高いだろうと思いますが、ただし、法的には、三つの発議が同時になされ、同時に周知手続が行われ、同時に投票日があるということだけにすぎないので、三つの手続は同時進行で別々に進むという前提で行われる。したがって、それぞれの発議ごとに賛成会派、反対会派の組みかえ、組み違えがあったとしても、何ら問題はないということになると思っています。

船田議員 先ほどの私の発言、若干私は誤解をしたかもしれませんので、ちょっと訂正させてください。

 先ほどの賛否の平等の扱いということで、これは各設問ごとにやるのか、それとも全体を勘案してやるのか、こういうことで話がありましたが、その話と、広報協議会のあり方をちょっと取り違えておりました。訂正をいたしますと、賛否につきましては、確かに若干の許容範囲はあると思いますが、基本的にはテーマごとに賛否平等に扱っていくということで対応したいと思っております。訂正いたします。

辻元委員 ということは、発議ごとにということで、先ほどの枝野委員からもありましたように、Aテーマ、Bテーマ、Cテーマによって賛否で政党の組み合わせも変わってくる、これは排除できないわけですから、自然な流れであるという御理解だと思います。

 そうしますと、広報協議会の構成なんですが、広報協議会の構成については、賛成、反対、それぞれ反対会派にも配慮をするとなっていますけれども、それぞれによって賛否が違ってきた場合、この広報協議会というものはどのように選定することができるのか。

 これはなぜかといいますと、もともと中央選管という話がありましたね、実際に私たちが選挙をするときには、非常にシンプルで、自分の言いたいこと、広報に載せてほしいことを、自分で企画などがありまして、審査を受けて、大体、中は自由で、決まりは写真のスペースは何センチとか若干ありますけれども、それを出して、集めて載せるんですよね。割とこれは、何かそこで大きな中立性を欠く行為があったということはないわけです。あえて広報協議会を設けるとしているわけですよね。

 そうすると、三つ発議されるということを考えた場合、どういうような組み合わせが想定できるのか。これは、この中立性ということで、今広報協議会と船田委員が取り違えたとおっしゃったので、では、広報協議会の方はどのようにお考えか、与党案、民主党提案者、両方にお聞きしたいと思います。

枝野議員 広報協議会は、同時進行で三つの発議が行われる場合でも一つつくられるということになります。

 ただ、その構成については、基本的には国会の会派の議席数をベースにやる。ただし、発議に反対した会派が入らないということになってはいけないということですから、例えば、済みません、現実にそうなるという意味ではありません、非常にわかりやすいので、A、Bについては社民党さんと共産党さんが反対して国民新党さんは賛成でしたが、C発議については国民新党さんも反対をされましたと、そうすると、どれか一つについてでも反対をしているということがある会派は必ず一枠は持つ、こういうことがこの法律の条文の意味。五つあれば、五つの発議のどれか一つについてでも反対をしている会派があって、その会派が議席数の割り当てでは一枠とれないというんだったら、必ずそこには一枠与える、こういうのがこの法律の趣旨であります。

船田議員 今の枝野委員の御説明と全く同じ見解でございます。

辻元委員 この広報協議会については、この間もたくさん意見が出ましたので、やはりもう少し今の点は議論を深めるべきであるなと私は思います。

 きょうは、具体的なことで幾つか引き続き聞いていきたいと思います。

 今、CMの問題について枝野委員から形式的規制ということの御提示がありました。結局、七日間規制するということは、十四日間にしたとしても、それから発議以降にしても、本質的には変わらないと思いますね。

 そこで、先ほど無料枠の中立性ということでそれぞれの枠によってとおっしゃいましたけれども、例えば一般の方々が出されるCMについて、民放連の方々などは量に偏りがないように賛否平等になるように配慮するとなっているわけですが、発議が三つあった場合は、三つについて、先ほど一と百という話がありましたけれども、Aについても賛否平等、Bについてもと、余計ややこしくなってくるように思うんですね。ですから、事実上難しいんじゃないかというように私は思うんですが、これについて与党案の提出者の意見を求めたいと思います。

船田議員 今の点につきまして、私どもは、七日間の禁止ということから十四日間ということに延ばしました。もちろん、これは量的な問題でございまして、質的な問題ではないだろうと思います。

 ただ、投票日前になってきますと、それぞれエキサイトする部分、あるいは出稿の量が急激にふえるというのが今までの国政選挙では通例でございますので、そういう点からすると、さはさりながら、七日間というものが十四日間になることはかなり大きな意味があると私は考えた次第で、このような措置をとろうと思ったのでございます。

 それから、確かに、賛成、反対を平等に取り扱うということは、この有料のテレビCMの分野では基本的に不可能だというふうに私は思います。ただ、不可能は不可能であっても、やはりどこかでそれは、これは規制ということではなくて、取り扱いそのものについてできるだけ平等にお願いしたい、こういったメディア側へのお願いという形は最低限とっておいた方がよろしいんじゃないか。しかし、そのお願いというのも、決して中身に触れることではなくて、これはあくまで放送時間とかあるいは新聞の何面なのかという、本当に外形的な条件だけの規定である、そういうふうに私たちは考えていきたいと思っているんです。

辻元委員 ことしの六月に、最初に民放連の方が参考人で来ていただいたことがあったんですけれども、このときに私が質問をいたしまして、今までどんな政治的意見広告を取り扱ったことがあるかという質問をいたしました。そうすると、意見広告と言われるものの中には、公共広告機構が出すようなものがある、しかし、これは政治的というわけではないというカテゴリーで出しているけれども、それ以外、政党の選挙のときの広告など以外は取り扱ったことがないというお返事だったんですね。

 ここは、実際に国民投票運動の過程で大混乱が起こる可能性もある点ですので、実際今までは取り扱ってこなかったというような御答弁でしたので、さらに慎重な検討をしていくべきだと思います。特に、個別発議ということになってきますとさらにややこしくなるということを、きょうの御答弁の中にもあったかと思いますので、検討をしなければならないと考えます。

 きょうは、もう一つ質問したいことがあります。残り時間はわずかですが、周知期間を六十日から百八十日にしているということについてなんです。

 この前は、一つの場合もあるし、それからテーマによってはわかりやすいというか簡単な改正の場合もあるというようなことで六十日からということだったわけですが、重要法案の審査日数をいろいろ調べてみました。例えば組対法をやったときは、法案提出から五百十七日成立までかかっています。情報公開法は三百九十七日、いわゆる盗聴法と言われた通信傍受法案は五百二十七日、障害者自立支援法は二百四十六日、周辺事態法は三百九十二日、NPO法は二百八十一日だったんです。

 例えば、この中の障害者自立支援法の場合を考えますと、二百四十六日。しかし、障害者の当事者の皆さんから意見をたくさん聞きましたが、これだけ時間があってもなかなか意味がよくわからなかったと。そして、運動するまでの時間がなかったという声をたくさん聞きました、当事者ですら。

 それで、どういうものが発議されるかということは今予想できないわけですから、百八十日でいいのかということも検討すべきだと思います。

 それと、例えば、私たち、議員の皆さんも、国政報告会とか年に一回のパーティーなどの催しをするときも、大体、半年前から計画を立てたり、一年前から立てる場合もあるわけですね。ですから、憲法改正というような一番大きなテーマですので、六十日から百八十日というのは、どういう発議がされるということを想定できない中で、私は百八十日上限というのは短過ぎるというように思います。

 与党案、民主党提案者の御意見を伺いたいと思います。

葉梨議員 時間もあれですので、簡潔にお答えします。

 先ほど個別発議で混乱されるというような御意見がありましたけれども、例えば今の院の構成を考えてみれば、まず、自民党、民主党、それから公明党、これはすべての個別発議で三分の二以上をとらなければ発議できませんから、それはすべてに賛成と。ですから、もしあり得るとしたら、共産党さん、社民党さんの方が、ある部分については賛成で、ある部分については反対というような形ですので、それほどの混乱が起こるということは多分あり得ないんじゃないかというふうに思います。

 それから、さらに申し上げますと、今の周知期間の話ですけれども、憲法審査会における議論が、まさに今言っていた障害者自立支援法の審議時間とか審議日数に当たってくるんじゃないかと思うんです。各党がいろいろな案を持ち寄っていろいろな話し合いがされる、それが国民の前で公開される、それは相当な長期の期間を要する形になるだろうと思います。そして、その中で国民の理解というのは深まった、そうして発議をして国民投票に付すというわけですから、今言っています六十日あるいは百八十日という期間というのは、私は、必ずしも短いものではないし、それを余りに長期にするということは、その前にずっと長い段階での憲法審査会の議論があるということを踏まえると、かえって間延びしてしまうんじゃないかというような感じを持っております。

枝野議員 大体趣旨は近いんですけれども。

 大体、国会で法案を審議しているとき、それが大事な法案であったとしても、いろいろなテーマが同時並行で国会で審議されています。あるいは審議されていないいろいろな政治的、政策的テーマ、例えば道路特定財源の話だって、国会には何も出てきていないんだけれども新聞やテレビではそういう政治的テーマがたくさん報道されたりします。ただ、例えば解散・総選挙になれば、すべての政治報道が解散・総選挙という一点に集中して、みんなもそれに関心を持ってということになります。

 国民投票の場合、何が望ましいかといえば、少なくとも発議をされてから投票日までの間は、他の政治的テーマでごちょごちょごちょごちょいろいろなことが出てくるということよりも、発議されてから投票日までの間はそのテーマに集中して政治家も国民もみんな議論しましょうということの方が私はむしろ望ましいことだと思います。

 そうすると、その期間が余り長いということになると逆に他の国政がすべてとまるということだし、とまらないでやろうとすると、目の前の予算をどうするとか何とかという話と何十年という将来にわたっての憲法の話とが同時並行でごちゃごちゃごちゃごちゃ議論をされると、これはまたわけがわからないことになる。そういう意味では、私は、発議をされてからの周知期間というのは、他の政治的テーマが全部一時的に棚上げになる、選挙期間中とほぼ同様な状況になるというふうに理解をしていますので、それは長くてもやはり六カ月程度ではないかというふうに考えます。

辻元委員 最後に申し上げたいんですが、今お二人の御意見を伺っていまして、議会からの発想になっていると思うんですね。ですから、国民投票法は、あくまでも国民から見たものであって、報道されるだろうとか国会での議論も伝わるだろうというのではなくて、国民から見たら発議後というのが何日間あるかということですので、私は、議会からの発想ではなく、国民の側から見た国民の権利の保障という観点から発議後の日数というものを、それまでの報道や国会での審議が伝わるだろうということに期待するのではなく、あくまで法律は発議後何日間かということですので、ここもこれからも議論させていただきたいテーマであるということを申し上げて、質問を終わります。

中山委員長 次に、糸川正晃君。

糸川委員 国民新党の糸川正晃でございます。

 まずは、双方の提案者に基本的な考え方についてお尋ねをしたいというふうに思います。

 国民一人一人が憲法について自由に論議をして、みずからの意見を広く訴えることができる環境をつくり出していく、こういうことが、憲法改正という主権者である国民にとっても最も重要な場面で最大限求められているということは言うまでもないというふうに思います。そうした国民の議論を実り豊かなものにするために、メディアが果たす役割というものは非常に重要であるというふうに考えております。

 両法案に関しましても、こうした考えを前提として制度設計を行っていると認識をしておるわけでございますが、国家の基本的なあり方を選択することとなる国民投票の運動に際してのメディアの役割について、ここで確認の意味も含めまして双方の提案者にお伺いをしたいというふうに思います。

葉梨議員 この国民投票においてはいかに有益な情報が国民に提供されるか、これがまさに国民が適切な判断をする基礎になるだろうというふうに思います。そして、メディアの役割、もうちょっと広く申し上げますと、先般の議論でもあったんですけれども、憲法審査会においていろいろと議論をする段階でも、しっかりとメディアに国民に対して周知徹底をしていただくということもやはり必要になってくるだろうと思います。

 そして、発議の後は国民投票ということになるわけですけれども、その段階では、これは基本的には自主規制というか、この法律では規制を設けているわけではないんですけれども、公平な形での、賛否に配慮した形でのメディアの報道ないし周知広報が行われるということが必要になってくるんじゃないかなというふうに思っております。

 私どもの法案では、現段階において、特にメディアについて何らかの規制を設けるということを意図しているわけではないんですけれども、国民投票の最後の段階、先ほど船田委員からお話のありました七日間あるいは十四日間という段階においては、余り財力の多寡によって賛否の公平性がゆがめられるというような状況は何とか防止したいなという形で所要の検討を今行っているところでございます。

園田(康)議員 私も、全くといいますか、同感な部分でございます。

 少し一般論というか、広く大きくとらえて申し上げますと、恐らく国民の表現の自由の一形態として知る権利というものがあり、それが享有すれば参政権という形へとしっかりと結びついていくものであろうと。その段階の中において、マスメディアがしっかりと公平かつ正確な情報をきちっと伝えていくというのは、これは報道という面では私は大きな役割を持っているというふうに思っております。

 ただ、報道という役割だけではなくて、あるいはもう一つには情報提供を積極的に提言、提案をしていくというのも、ある面でマスメディアの、新聞報道でもそうですけれども、結社の自由というものがありますから、各社によって主張する、それを提案し、提言をし、国民世論をもっと活気づけていくという役割があってもいいというふうに私は思っております。

 そういう意味では、ある面、情報における権力的な大きな役割を担っているというのが、このマスメディアの役割ではないのかなというふうに私は理解をしております。

糸川委員 では、投票日直前のテレビ等の意見広告の制限については、表現の自由、報道の自由の観点からは、放送媒体の当事者が常識と良識に基づいてその取り扱いを自主的に判断することが望ましい、こういうふうに考えられておるわけでございますが、放送メディアの影響力及び公平性の担保の観点からは何らかのルールが必要なんではないかというふうに考えられ、非常にこの点に対しては悩ましい点でもあるというふうに考えております。

 これまでの委員会の議論の中でも、テレビ、ラジオ広告というものは理性的な判断ではなくて感性に訴える性質を持つこと、現状においては、テレビ、ラジオ広告を利用するには実際には莫大な資金が必要であり、資金力の多寡によって影響力に格差が生じること等によって、意見広告を無制限に認めた結果、国民が自由に意見を形成することが困難になるんではないか、こういうような懸念する意見が述べられておるわけでございます。

 この点については、投票日直前という、国民投票運動が最も活発となる時期に規制を行うべきではないかという反対の意見が述べられた一方、法案提出者からは、広告放送というものが禁止される期間七日間を、先ほど葉梨委員がおっしゃられましたが、七日間の規制を十四日間に拡大する意見が述べられた。この意見広告の規制の問題についての考え方というものを双方の提出者からお伺いしたいというふうに思います。

船田議員 糸川委員にお答えいたします。

 今御説明がありました点については、大変認識を共有しているつもりでございます。

 そういう中で、今御指摘があったような報道の自由あるいは広告主としての表現の自由、そういう観点をできるだけ大事にしようという要請が一つある。しかしながら、同時に、資金力の多寡によって賛否不公平が生じる事態もできるだけ是正をしなければいけない。二つの相矛盾する要請があるというふうに思っておりまして、それをどういう形でバランスをとるか、これが非常に難しい点だなと思っております。

 我々としては、当初、投票日前七日間の有料広告放送禁止ということでございましたが、量的な制限といいましょうか、そういったことも考えますと、十四日間に延ばすということがより望ましい方向ではないか。ただし、全期間ということになると、これは先ほどの報道の自由とかあるいは広告主の表現の自由というものを侵害しかねないことですので、ここはやや慎重であるべきだという考えであります。

 なお、賛否の意見を平等に取り扱う旨の緩やかな規定を設けてメディアにお願いをするということは、これは新たなメディア規制という形では決してなくて、一つの公平性を担保するための必要な最低限の手段である、こういう考えでこの規定を入れたい、このように思っております。

 以上です。

園田(康)議員 これは先ほど来議論になっておりますように、大変悩ましい問題であろうというふうに思っておりまして、私ども民主党の中も、この点についてはもう少し議論をしてみたいなというふうには思っております。

 今与党提案者からもお話がありましたように、七日間から何らかの規制をかけていくということに関しては異論はないところでありますけれども、それが十四日間なのかあるいは全期間であるのか、あるいはその中に配慮規定を置くということが本当にいいのかどうかということは、もっと検討をすべきなのかなというふうには思っております。

 ただ、誤解のないようにしていただきたいんですけれども、これについては、あくまでも有料の商業広告、CMに関しての規制をどのように考えるかというところであろうというふうに思っておりますので、決してこれがマスメディア規制という形で報道であるとか報道主の報道の自由というものに規制をかけているというものではなくて、あくまでもこれはCMに関しての規制をどのように考えていったらいいのかというところで、今少し悩んでいるというのが現状だろうというふうに思っております。

糸川委員 実際に、CMというものに対しては、こういう規制をどういうふうにしていったらいいかということは議論しなければならないと思うんですけれども、全般的に、報道の自由というものも含めて、この点に関してはじっくりと広告も含めて議論していただきたいなというふうに思いますので、ぜひ民主党内でも自民党内でも、これは少しではなくてじっくりと悩んでいただきたいというふうに思います。

 次に、国民投票運動及びこの罰則の規定の適用については、与党案、民主党案ともに、「表現の自由、学問の自由及び政治活動の自由その他の日本国憲法の保障する国民の自由と権利を不当に侵害しないように留意しなければならない。」こういうような注意規定を設けておるわけでございますが、この規定の趣旨について双方の提出者にお伺いをしたいというふうに思います。

葉梨議員 もともとこの法律の立て方からして、国民投票運動が絶対に萎縮することがあってはならないように、本当に必要最小限度の形での罰則規定なりあるいは国民投票運動の規制規定なりを設けたつもりでございます。

 ただ、しかしながら、それがまた運用の段階において、例えば拡大解釈をされるとか、あるいは不当な形で萎縮させるような効果をもたらすとかいうことがあってはならない。したがって、運用担当者自身がその趣旨をしっかり理解した上で、この規制が設けられたのは本当に必要最小限度のものであって、もともと国民投票運動は自由にやっていただくものなんだということをわかった上で運用をしてもらわないと、これは絵にかいたもちになってしまう可能性があります。そこで、表現の自由、学問の自由、政治活動の自由と密接に関連する国民投票運動ですから、これがいやしくも不当に侵害されることのないように、このような規定を念のため設けているということでございます。

園田(康)議員 私どもも全く同感でございます。同感といいますか、その趣旨でつくらせていただいておりますので、これを運用する当局に対して、そのような恣意的な、あるいは、先ほど葉梨与党提案者からもありましたように拡大解釈をされることがくれぐれもないようにということでの確認規定というふうに言わせていただきたいと思います。

糸川委員 ありがとうございました。

 では次に、広報協議会のことについて数点お尋ねをしたいというふうに思います。

 与党案及び民主党案では、発議された憲法改正案というものを国民に広報するために広報協議会が設置されることとなっておりまして、この広報協議会は国会に設置される、こういうことにもなっておるわけでございます。

 広報協議会を国会に設置することについては本委員会でも議論がなされておるところでございまして、国会の役割は憲法改正案を発議するまでであって、国会は発議された憲法改正案を国民に対して承認を求める立場にあるのであるから、憲法改正案についての広報に国会はかかわるべきでない、こういうような意見が述べられたというふうに思います。

 他方、そうはいうものの、国会以外のどの機関に広報を担当させるべきなのか、そういうことを考えれば、行政機関ではより状況が悪くなる。第三者機関を設けることとしても、その人選において公平公正性というものを担保することが困難である。こういうことを考慮すると、国会が広報を担うこととした方が、少数派に対する配慮もより可能となるのであるから、よりよい選択なのではないか、こういう意見も述べられていたというふうに思います。

 これは両論ともにそれなりに理があるのではないかな、まことに悩ましい議論であるというふうに思いますが、この広報協議会を国会に設ける理由について双方の提案者にお伺いをしたいというふうに思います。

赤松(正)議員 今、糸川委員の方から、二つの意見を出されて、まことに悩ましいということがございましたけれども、国会が発議をする憲法改正案の中身について国民の皆さんによりわかっていただけるように周知徹底をするという観点からいくと、第一義的に国会の中に広報協議会を設置して、基本的な情報を、発議した側の物の考え方、その説明、そういった基礎的な部分をしっかりと提供していくのは、やはり国会をその基本に置くということが的確ではないのか、こんなふうな考えでいるわけでございます。

園田(康)議員 恐らく、先ほど来お話が出ておりますように、国会は発議をするまでであって、そのほかに関しては広報に携わるものではないというふうなお話も確かにございましたけれども、しかしながら、憲法改正案を国会の中で議論をし、三分の二の賛成をもって発議をする、そしてその経緯を、しっかりと責任を持っているのはやはり国会であり、国会議員であり、それで構成されている政党の役割であろうというふうに思うわけであります。したがって、国会内部での議論をしっかりと国民の皆さんに周知徹底を図って、その責任を主体的に担うのはやはり国会であろうなというふうにまず思うわけでございます。

 同時に、第三者機関にというお話もありました。しかしながら、これは消去法になろうかと思いますけれども、第三者機関になったときにはどういう形で選定をするんだというようなところも、幅広くまた恣意性がこの中に入ってきてしまうというところから、その選定にもかなりの不平等さが出てくるのは否めないのではないのかなというところから、そうなってくると、広報協議会の、先ほど来申し上げている、いわゆるアウトプットはあくまでも賛否平等にしますよ、その構成においては院内会派のそれぞれの勢力、議員数の割合に応じて行う、しかもそれは反対派の意見に関しても当然のごとく配慮をしながら運用していくということでありますので、そのことをもって、すなわち、外に出すのはふさわしくないというのは、私からすれば、ぜひとも私どもの考え方に御理解をいただければなというふうに思っております。

 と同時に、行政機関にというお話もありましたけれども、行政機関そのものはこの憲法の規定の中に書いているわけでもありませんし、行政機関がその主体となるのは、当然のごとくこの規定の中でもあるいは憲法の理念からもふさわしくないというふうに私は思っております。

糸川委員 園田委員の考え、私も同感ですので、よく理解しているつもりでございます。

 もうほとんど時間がございませんので、もう一問質問させていただきたいと思うんですが、与党案及び民主党案は、マスコミに対する規制というものは基本的に設けない、こういう原則のもとに立案されたものというふうに思います。また、法案提出者から、国民に配布される公報の内容というものをオーソライズすることが広報協議会の役割である、こういう説明があったというふうにも思います。

 その上でお伺いしたいんですが、憲法改正国民投票という未知の世界では、不測の事態が起こるのではないか、こういう可能性は完全には排除できない、これらの事態に対処できるような制度設計をしておく必要が当然あるというふうに思います。そこで、表現の自由、報道の自由に最大限配慮するためにマスコミ規制を設けない、こういう基本姿勢を維持しながら、不測の事態に対処するために、例えば広報協議会にマスコミを監視する権限を付与してはいかがかといった意見も国民の中にはあり得るのではないか、こういうふうに思います。マスコミが中立的な報道を行っているかどうかを監視するということが広報協議会の役割に含まれるのかどうか、これを双方の提案者からお伺いしたいというふうに思います。

赤松(正)議員 結論から言いますと、今糸川委員がおっしゃったような、そういうマスコミを監視する権限を広報協議会に与えるということはない、そういう機能を持たせるということは全く考えていない、このように申し上げて結論としたいと思います。

園田(康)議員 恐らくフランスにおけるオーディオビジュアル高等評議会、CSAを念頭に置かれておっしゃっているんだろうなというふうに思うわけでありますけれども、私どもも、当然のごとくマスコミを監視することを広報協議会の機能の中に持たすということは全く想定に入れておりません。

 ただ、御懸念の不測の事態が生じる可能性も排除できないであろうというふうに思います。これは、恐らく国民運動そのものをしっかりと喚起して、それが盛り上がってくれば当然のごとくそういったこともあり得るのかもしれませんけれども、それは後々にしっかりとマスメディアの中で当然淘汰されていくべきであろうし、国民そのものがそれを冷静に判断する機会は当然持っておるんだろうなというのを、逆に国民に対して期待したいというふうに私は思っております。

糸川委員 ありがとうございました。これで私の発言を終わりたいと思います。

中山委員長 午後二時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時二十四分休憩

     ――――◇―――――

    午後二時開議

中山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 午前に引き続き、第百六十四回国会、保岡興治君外五名提出、日本国憲法の改正手続に関する法律案及び第百六十四回国会、枝野幸男君外三名提出、日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 本日の午後は、議題となっております両案につきまして、まず、提出者よりそれぞれ十五分以内で発言をしていただき、後に、委員から順次御意見を十分以内でお述べいただきます。

 発言時間の経過につきましては、終了時間一分前にブザーを、また終了時にもブザーを鳴らしてお知らせをいたします。

 それでは、まず、両案の提出者より発言を求められておりますので、順次これを許します。船田元君。

船田議員 自民党の船田でございます。

 与党案提出者を代表いたしまして発言をさせていただきます。

 この国会におきまして、与党案、民主党案それぞれが提出になっておりますが、それに対して、委員会、小委員会等で真剣な議論が展開をされ、大変意義ある国会であった、このように理解をしております。

 その中におきまして、私ども、与党案原案を出しておりますけれども、さらによりよき法案となるために、幾つかの点におきまして、これまでも修正の方向性について論じてまいりました。これまでの委員会、小委員会での議論、そして私どもが修正を加えたいと言った部分について改めて整理をして御説明を申し上げ、皆様の御理解をいただきたい、このように考えております。

 皆様のお手元に要綱対比表がございます。与党案の原案と修正の方向を示した案でございます。それに基づいて説明をいたしたいと思います。

 まず、一ページ目でございますが、国民投票の投票権につきまして、やはり諸外国の趨勢、大勢が十八歳以上ということでありますので、そのような観点を踏まえまして、私どもとしても、本則十八歳以上ということで、日本国民で年齢満十八歳以上の者は、国民投票の投票権を有するものとする、このように改めたいと思っております。

 なお、三年間の経過措置というものがありますが、これについては附則に表現をしたいと思っております。

 次に、一ページ目の一番下でございますが、広報協議会につきまして、この名称につきましては、原案では広報をする対象物を取り上げまして憲法改正案広報協議会と称しておりましたけれども、広報の機会といいましょうか、何のために広報をするかということに着目をいたしまして、国民投票広報協議会と名称を変更したいと考えております。

 二ページ目でございますが、その広報協議会が作成をする公報の内容でございますけれども、私ども、原案におきましては、その一つに「解説等」というものを入れようとしておりましたけれども、解説ということにつきましては、恣意的な部分というのがなかなかぬぐえない、こういったことも勘案をいたしまして、「解説等」の部分を次のように変えたいと思っております。すなわち、「憲法改正案に係る新旧対照表その他の参考となるべき事項」、このように変更させていただきたいと思っております。

 二ページ目の一番最後でございますが、投票の方式であります。

 私ども、原案におきましては、マル・バツ自書式で賛否を表現していただくということでございましたけれども、これを改めさせていただきまして、投票用紙には賛成の文字及び反対の文字を印刷したものを使用したいと考えております。

 三ページ目になりまして、その上で、憲法改正案に対し賛成をするときは賛成の文字を囲んでマルの記号を付す、それから反対の場合には反対の文字を囲んでマルの記号を自書する、このようなことで賛否をあらわしていただきたいと考えております。

 なお、反対の文字にバツをつける、あるいは賛成の文字にバツをつける、こういうことでそれぞれ賛成、反対の意思表示をした場合にも、あるいはまた他事記載におきましても、賛否がはっきりわかるようなものについてはできるだけ有効ということにいたしまして、多様な表記を認めることといたしたいと思います。この結果として、白票あるいは無効票をできるだけ少なくすることが可能になるのではないか、このように感じた次第であります。

 次に、三ページ目の後段でございますが、公務員の政治活動の禁止規定の適用除外であります。

 国家公務員法と地方公務員法で政治活動禁止の対象が若干違っております。このばらつきをなくすという必要が生じているわけでございますので、私どもとしては、いずれにしても、政治活動の禁止規定の適用除外を修正として申し上げたいと思っております。

 具体的な文言としては、公務員が国会が憲法改正を発議した日から国民投票の期日までの間に行う国民投票運動については、国家公務員法、地方公務員法等の政治活動の禁止等に関する規定は適用しないものとすること、このように修正を加えていきたいと考えております。

 次に、国民投票運動の禁止される特定公務員の種類でございますけれども、四ページにありますように、これまで私どもは、選管の職員等に加えまして、裁判官、検察官、公安委員会の委員及び警察官の皆様については、これを国民投票運動禁止ということでございましたけれども、やはり国民運動が萎縮することを避ける意味でも、あるいは、そういう特定公務員の方々も、意見を表明する権利と投票運動とが非常にあいまいである、区別がつきにくいということも考えまして、裁判官、検察官、公安委員会の委員並びに警察官の部分を削除するということといたしました。

 それから、次の項目でございますが、「公務員等・教育者の地位利用による国民投票運動の制限」でございます。

 これにつきましては、原案よりもさらに要件を厳格化させていただくということで修正を加えたいと思っております。具体的には、「公務員等及び教育者は、その地位にあるために特に国民投票運動を効果的に行いうるような影響力(教育者にあっては、学校の児童、生徒及び学生に対する影響力)又は便益を利用して、国民投票運動をすることができないものとすること。」このようにいたしたいと思います。ただし、これまでの議論でもありましたように、違反した場合の罰則は設けないもの、このようにしたいと思っております。

 次に、広告放送の制限、有料の意見広告でございますけれども、これを投票日前何日間か制限をする、こういうことで、私どもは七日間を原案としては申し上げておりましたが、これにつきましては、先ほども話がございましたように、量的制限の一部に資するため、あるいは期日前投票の開始にそろえる、このような意味合いから、国民投票の期日前十四日に当たる日から期日までは禁止をする、このように修正をしたいと考えております。

 次に、「広告の条件に関する配慮」ということで、これは先ほども、量的なバランスをとるというのは難しいとしても、その取り扱いの平等を一定の規定として設けることが重要ではないかということで、具体的には、一般放送事業者等及び新聞社は、国民投票運動のための広報を放送し、または掲載するに当たって、料金その他の条件について、憲法改正案に対する賛成の広告または反対の広告のいずれであっても同等のものとするよう配慮するものとすることというような配慮規定を新設したいと考えております。

 次に、「政党等による放送及び新聞広告」、いわゆる無料枠の配分でございます。

 私ども、原案におきましては、議席数案分、議席数を踏まえて案分する、こういうことを考えておりましたけれども、これまたこれまでの委員会でのさまざまな議論の末、やはり賛否平等ということを原則としたい、このように考えております。

 具体的に、第一は、「国民投票広報協議会は、憲法改正案及びその要旨等の広報を客観的かつ中立的に行うものとすること。」こういうことで、中立部分をまず設けたいと思っております。第二には、「憲法改正案に対する賛成の政党等及び反対の政党等の双方に対して同一の時間数及び同等の時間帯を与える等同等の利便を提供しなければならないこと。」、賛否平等を書かせていただくこと。そして第三には、これもまた、政党以外の団体の皆様にもこの広報を行う機会を提供する、このような意味で、具体的には、「政党等は、当該放送の一部を、その指名する団体に行わせることができるものとすること。」というふうに新たな規定を設けたいと思っております。

 なお、新聞広告につきましては、放送の広告と同様の取り扱いとしたいと考えております。

 次に、五ページの後段部分でございますが、「組織的多数人買収及び利害誘導罪」についてでありますが、これにつきましても、やはりその影響力が大きいわけでございますので、十分に要件を限定した形で対応していくべきである、こう考えまして、次のような修正を加えたいと思います。

 「憲法改正案に対する賛成又は反対の投票をし又はしないよう勧誘し、」というのが原案でございましたが、私どもとしては、「積極的に勧誘し、」という修正を加えたいと思っております。また、「影響を与えるに足りる物品その他の財産上の利益」ということにつきましては、限定をいたしまして、「(国民投票運動において意見の表明の手段として通常用いられないものに限る。)」という限定をつけたい、このように考えております。

 次に、六ページ目になりますが、「国民投票の効果」というところで、過半数の意義ということがございました。

 原案におきましては、有効投票の総数の二分の一を超えた場合、承認されたものとみなすということでございましたが、表現上、有効あるいは無効という言葉をなるべく使わないというような観点から、ここに書いてありますように、「国民投票において、憲法改正案に対する賛成の投票の数が投票総数(憲法改正案に対する賛成の投票の数及び反対の投票の数を合計した数をいう。)」、こういう限定をつけた上で「投票総数」という言葉に変えたい、このように考えております。

 次に、七ページ目でございます。憲法審査会の設置についてでありますが、原案におきましては、憲法審査会の役割の一つとして、「日本国憲法の改正手続に係る法律案等を審査する」となっておりましたけれども、より正確な表現が必要であったのと、あるいは議論にもございましたけれども、予備的国民投票の検討もここでできるようにする、こういうことを取り込んだ形で、次のように修正をしたいと思います。

 「日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制について広範かつ総合的に調査を行い、憲法改正原案、日本国憲法に係る改正の発議又は国民投票に関する法律案等を審査するため、各議院に憲法審査会を設けるものとする」、このようにいたしたいと思っております。

 次に、八ページ目でございます。「附則」でございます。

 施行期日、原案では二年と考えておりましたけれども、これまでの議論の中で、この第二段階をできるだけ丁寧に行う必要があるということで、施行期日を「公布の日から起算して」二年ではなくて「三年を経過した日から施行する」、このようにいたしたいと思っております。

 次に、「検討」の項目でございますけれども、私どもは、予備的国民投票というあり方について、これはきちんと憲法審査会においても議論する必要がある、このように判断をいたしまして、「日本国憲法の改正を要する問題及び日本国憲法の改正の対象となり得る問題についての国民投票制度に関し、」「検討を加え、必要な措置を講ずるものとすること。」と明記をさせていただきたいと思っております。

 次に、「法制上の措置」でございますけれども、これは投票年齢のことであります。十八歳とするときにも経過措置三年間ということを明記したいと思いまして、次のように修正をしたいと思います。

 「国は、この法律の施行の日」、これは三年後の意味でございますが、「施行の日までの間に、年齢満十八年以上満二十年未満の者が国政選挙に参加することができること等となるよう選挙権を有する者の年齢を定める公職選挙法、成年年齢を定める民法その他の法令の規定について検討を加え、必要な法制上の措置を講ずるものとすること。」といたしたいと思っております。

 なお、この点につきましては、経過措置としまして、以上のような措置が講じられ、年齢満十八歳以上満二十年未満の者が国政選挙に参加すること等ができるまでの間、年齢満二十年以上の者が国民投票の投票権を有するものとする、このようなことでただし書きを書かせていただきたいと考えております。

 最後に、四番目のところでございますが、「憲法審査会の憲法改正原案の審査権限の凍結」についてであります。

 これも、先ほど申し上げましたように、憲法改正原案そのものを議論する、あるいは議決する、こういう機会は三年後からということになりますので、当然のことながら、ここに書いてありますように、憲法改正原案の審査及び提出をこの三年間は行わず、日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制についての調査をなお行うということを明記させていただきたい、このように考えております。

 以上、修正案の方向につきまして、私ども与党として考えていることを整理して申し上げさせていただきました。

 この後、民主党の提案者からも、修正の方向性についてお話があると思っておりますが、お聞きをいただければおわかりになると思いますが、修正部分の隔たりというのはあとわずかである、このように認識をしております。今後、鋭意、検討あるいは協議をして、できるだけ早く修正部分の合意を得たいと考えておりますし、またそれは十分に可能である、このように考えております。

 次期通常国会におきましては、この修正合意の上に立って、衆議院において議決がなされ、参議院においても慎重審議の上結論がいただけるように心から期待をいたしておるわけでございます。

 以上、与党の提出者を代表いたしまして、修正部分についての説明をさせていただきました。

 ありがとうございました。

中山委員長 次に、枝野幸男君。

枝野議員 民主党提案者を代表して、本会期中の委員会、小委員会での議論を踏まえて、私どもとして提出しております原案の一部を修正すべきと判断いたしておること、あるいは修正を含めて検討していることについて整理して御説明を申し上げたいと思います。

 お手元に参考配付させていただいております対比表をごらんいただきながらお聞きをいただければと思います。

 まず、一ページ目、我が党が提起をしています国政問題に係る国民投票についてでございます。

 これについては、国会が唯一の立法機関ということとの兼ね合いから、若干誤解をされて受けとめられている部分等もございます。したがいまして、少なくとも国政問題に係る案件について一定の限定を加える、その限定についても、これは小林節先生から大変示唆に富む御発言をいただいておりますが、憲法改正に係る問題についての案件に限定をする、あるいは、どういう限定の仕方をするかということについて、若干、さらに深い議論、十分な議論が必要ではないかという観点から、さらに継続して本委員会においても議論を進めていくという担保がとれるならば、継続して議論を行うということもあり得るのではないか。

 こうした三つの考え方のいずれかを選択すべきではないかということで、党内でできるだけ早く結論を得たいというふうに思っているところでありまして、いずれにしても、この部分について何らかの修正を加える必要があると考えております。

 次に、投票権年齢でございますが、私どもは十八歳以上を原則とした上で、さらに、テーマによっては国会の議決でそれを十六歳以上にも引き下げることができるという原案を提出いたしておりますが、より広範な合意が得られる、十八歳以上ということでより多くの皆さんに賛同をいただけるのであるならば、それよりさらに下げる部分については無理をしないという判断をいたしております。

 次に、国民投票広報協議会についてでございますが、これは与党の案の同じ中身があるところについてでございますが、そのうちの「解説等」というところが、日弁連なども誤解をして読み取っていたようでありますので、誤解のなきように裁量的余地の小さなものに限定する、「新旧対照表その他の参考となるべき事項」と字句を改めたいと思っております。

 それから、ここにあります「説明会」につきましては、これはきょうの午前中の議論でもございましたが、説明会の開催については、さまざまな裁量の余地のある項目でありますので削除をしたいというふうに思っております。

 なお、若干の語句の修正でございますが、「その他憲法改正案の広報に関する事務」ということですと、何かいろいろなことができる印象になってしまいますので、説明会を外した限定列挙された事項その他これに付随する広報に関する事務ということに限定をさせていただいて、裁量的なことはやらないということを明確にしたいというふうに思っております。

 投票方式については、我が党は修正も含めて検討したいというふうに思っています。与党から提案がされております、投票用紙に賛成、反対の欄を印刷しておいて、これにマルをつける、あるいはバツをつける、さらにはそれに若干の他事記載があったとしてもそれを有効票として受けとめるという考え方は、私どもが国民の意思を正確に反映させるべきであるという観点から投票総数の過半数でいいということを申し上げてきた趣旨からは、高く評価できるものであるというふうに考えております。

 ただ、このことが合理性を持つ一つの意味として、棄権をする自由とでもいうべきものがあるのではないかという観点からすると、賛成、反対欄のほかに、棄権の欄も設けておいた方がいいのではないかというようなことを含めて検討いたしております。この辺は、実際にどういう記載がなされたらどういう有効、無効の判断がされるのか、若干、詳細な検討が必要だと思っておりますので、そこを検討して早急に結論を出したいというふうに思っております。

 次に、公務員の政治行為についてでございます。

 私どもは、この国民投票法制においては、特に公務員や教育者の国民投票運動の制限は設けることなく、公務員についての一般的な公務員法による政治的行為の制限等で足りる、そういう判断をいたしておりまして、これについての条項を設けておりませんでした。

 しかし、議論の中で、公務員法がそのまま適用されますと、特に国家公務員と地方公務員とで、地方公務員法の政治的行為の中に「投票」という文言があるものですから、文理上、国民投票がこちらでは適用されてしまう、国家公務員法の方は適用されないと判断できる余地が大変大きくある、むしろあべこべではないかということになります。したがいまして、そこのアンバランスを解消するためには、むしろ逆に、国家公務員法における政治的行為の制限は国民投票には適用しないという規定を設ける必要があると判断をいたしました。

 一方で、本来、私どもは公務員法に基づくいろいろな法制があるんだからこの法律では要らないと考えてきたわけでありますが、そちらを適用しないということになると、最小限の部分で何らかの配慮が必要であるということになると、与党が御主張されてきている地位利用による運動制限について明確な限定を加えた上で、さらに罰則を設けることなく、もしこれに違反をし、それが公務員法上の非違行為に当たる場合には、それは公務員法上のいろいろな措置はあるでしょうということであるならば、本来の私どもの趣旨よりもさらに限定された範囲でしか問題にならないということになりますので、こうした形でそれぞれについて修正を加えたいと考えております。

 次に、投票期日前の国民投票運動のための広告放送の制限でございますが、これはこの間何度も繰り返し申し上げてきていますが、率直に言って大変苦慮し、悩んでおります。

 原案は、投票期日七日前からとさせていただいておりますが、七日にどういう根拠があるのだという御指摘を受けまして、根拠ということを考えるならば、むしろ期日前投票が始まる十四日前からとするのが筋であるなということを考えております。

 ただ、賛否平等の扱いをすべきであるということも参考人の皆さん等からもいただいております。とすると、十四日前からの禁止だとすると、かなり長い期間広告放送が行われる、賛否平等の扱いに関する配慮規定を置く必要があるのかもしれない。ただ、きょうも申し上げましたが、こうした具体的内容に立ち入った規制よりも、むしろ形式的に全面禁止をした方が規制の程度としては弱いのではないかという考え方もありまして、単に十四日、十四日にした上で配慮規定を置く、あるいは全面的に禁止をするという三つの考え方の中で最終的に意見をまとめていきたいというふうに思っているところであります。

 政党等による放送でありますけれども、まず一つは、新聞広告については、紙媒体は国民投票公報があるという中で、政党のみにこうした無料の枠を与えることは必要ないということで削除をいたします。その上で、政党等による放送については賛否平等の時間を与えるべきであるというふうに議論の中で考え方を改めまして、そうした形にしたいというふうに思っております。

 また、政党以外の者が行うことができる余地を明確にするために、私どもは、政党に枠を与えるということですので、その枠の中で政党がそれぞれどういう人たちの協力を得てその枠を使うのかということは、もともとの原案でも裁量の範囲内かなと思っておりましたが、明確に、放送の一部を指名する団体に行わせることができるという規定を置きたいというふうに考えております。

 罰則についてであります。

 罰則については、私どもは、萎縮効果の観点を考えると、置かないということでやむを得ないのではないかという原案を提起いたしております。ただ、特に悪質なもので、そして萎縮効果のおそれがない場合においては、それを否定するものではないと申し上げてきております。

 与党から提起をされております組織的多数人買収及び利害誘導罪、きょう御発言にあった修正を加えた上でのこの形であるならば、本当にかなり極端に悪質なものに限定をされるのではないかとも思っておりますが、このあたりのところは、さらなる審議の中で、これで萎縮的効果が働かないかどうか、あいまいさが残らないかどうかということを最終的な審議の上での確認を得た上で最終判断をしたいというふうに思っております。

 投票の効果、国民の承認ですが、私どもは投票総数の半分ということでございますが、投票方式のところに賛成、反対の記載欄を初めから書いておいてということの場合には、投票総数の意味が賛成または反対の投票をした者の数ということになるということで、その場合は括弧つきで入れなければならないということになるかと思いますが、これはそちらとの連動ということになります。

 第三の「国政問題国民投票」の項目のところは、最初に申し上げたところと全部連動する話でございます。

 憲法審査会の権限についてでございますが、先ほど来、一般的国民投票等についての議論も行っていこうという与党からの御提起もございまして、私どもの一般的国民投票についての法案を可決していただいた場合であっても、これについて、今後、改正等を行う場合の審査機関が必要でありますので、これは個別の、内閣委員会とかそういうことよりも、むしろ憲法のところであろうということで、「日本国憲法の改正手続に係る法律案等」ではなくて「日本国憲法に係る改正の発議又は国民投票に関する法律案等」とさせていただきたいというふうに思っております。

 国政問題に係る案件の発議のための国会法の一部改正は、最初に申し上げた点と連動でございます。

 施行期日でございますが、私どもは、公布の日から二年を経過した日というのは、技術的に国民投票の準備のための期間として二年必要であると申し上げております。私どもは、いずれにしても、憲法審査会において調査を進めて、合意形成ができなければ発議はできないわけでありますので、念のために申し上げますが、調査に専念する期間ということは私どもから提案をしている話ではありませんが、与党の中から調査に専念する期間を三年程度置くべきであるという御主張があるのであれば、それを否定する理由はないと思いますので、それを受け入れて、三年ということにさせていただきたいというふうに思っております。

 なお、私どもは、その施行の日から十八歳スタート、十八歳から投票権ということで本則に書くということになっておりますが、これについては、より詳細に、それまでの間に一般的な成人年齢を十八歳に引き下げるということが法的に担保をされるということであれば、私どもも従来から十八歳成人を主張してきていますので、私どもの「法制上の措置」として当初予定していた文案よりも、十八歳成人が少なくとも三年以内に法整備がされるという担保がより明確になりますので、こうした形に修正をさせていただきたいというふうに思っております。

 以上のような修正を次の国会では私ども加えたいと思っております。幾つかの点、残っている検討、あるいは国会での審議を見て確認をしたいという点を踏まえて、できるだけ早く、広範な合意に基づいて国民投票法制が整備をされるよう期待をしております。

 特に、憲法改正国民投票と一般の国政選挙とが同時期日で行われるべきではない。これは憲法調査会以来この場での大方の議論になっていて、私どももそう考えておりますが、そういう趣旨から考えるならば、来年は夏に参議院選挙がございます、そこに近い時期になればどうしてもこうした問題についての議論はやりにくくなると思っておりますので、可能であるならば、ちょうど五月三日に憲法記念日がございます。参議院での審議のことについて衆議院議員が言うのは差し出がましいことでございますが、希望としては、来年の憲法記念日には国民投票法制が国会で成立をしているということを期待して、発言を終わりたいと思います。

 以上です。

中山委員長 これにて両案の提出者からの発言は終わりました。

    ―――――――――――――

中山委員長 次に、委員から順次御意見をお述べいただきたいと思います。

 それでは、まず、笠井亮君。

笠井委員 日本共産党の笠井亮です。

 今国会の審議を締めくくるに当たって、発言をしたいと思います。

 まず、そもそも論として、今なぜ改憲手続法の整備なのかという問題が今国会の中でも一層問われたということであります。

 私は、通常国会での本会議に続き当委員会でも、改憲手続法がないことで国民の権利が侵害された事実はなく、今日においても手続法を求める国民の世論も運動もないもとでなぜ今手続法をつくろうというのか、一貫してこの問題を追及してまいりました。

 法案提出者とその所属政党の委員の皆さんからは、国会での議論が深まれば国民の関心も高まるとか、法案審議が進めば注目が集まるとか、しきりに発言がございました。

 しかし、両案が国会に提出されてから既に半年以上になりますが、また、この特別委員会が設置されてから一年三カ月が経過しておりますけれども、現時点でどうかと言えば、十二月七日の質疑でも提出者の方が認められたとおり、積極的に手続法を求める国民の声はありません。それどころか、日弁連など法律家団体やメディア関係者、自治体労働者、労働組合、教育者団体などの意見書や要請書は手続法に批判的なものばかりで、当委員会に付託された請願十五種七十五件はいずれも反対や廃案を求めるというものばかりであります。

 また、法案提出者は、手続法を整備することは国民主権の具体化であるとしてきましたけれども、この点でも、手続法案に批判の声を寄せている国民はそのように見ておらず、別にねらいがあることを見抜いているのであります。

 私は、委員会審議の中でも、安倍政権が発足してからこの手続法整備のねらいが一層明らかになってきたことを指摘してまいりました。

 安倍総理が、総裁としての任期中に改憲を目指したい、時代にそぐわない条文として典型的なのは九条だと改正項目まで挙げて、所信表明演説では、「まずは、日本国憲法の改正手続に関する法律案の早期成立を期待します。」と表明しました。

 今、なぜ手続法なのか。それは、現に進行している改憲の動きをしっかりと位置づけていく、これはもう紛れのない事実であります。そして、安倍政権のもとで、明文改憲に向けた動きだけではなく、解釈の変更による集団的自衛権の行使についての研究がなされようとしている中で、手続法をつくることがますます九条改憲の流れを強く推し進めることになることはもはや明らかです。手続法整備に批判の声を上げている国民の多くの意見は、まさにこうしたねらいのもとに手続法が位置づけられることへの批判です。九条改憲の条件づくりとなる改憲手続法を国民は決して望んでおりません。

 次に、審議を通じて明らかになった法案の問題点について述べます。

 先ほど法案提出者から与党案と民主党案の修正の方向性についていろいろと発言がありましたけれども、そうした両者間の修正、妥協、歩み寄りはあくまで改憲を通しやすくする範囲内のものであって、その中に主権者国民の立場が存在しない。したがって、国民の側からの疑問や懸念、批判は解消されるどころかますます深まっていることが、全体を通じて四つの点で改めて浮き彫りになったと考えております。

 第一は、改憲案の承認に係る過半数の意義についてであります。

 私は、与党案も民主党案も、投票率が例えば五割台であった場合に二割台の国民の賛成で改憲案が承認されかねない、これでどうして国民の意思を酌み尽くすことになるのかとただしてきました。両案の提出者の説明は、最低投票率を設ければボイコット運動を誘発しかねないなど改憲を望む政党にとっての弊害が理由であったり、テーマによっては高い投票率を期待できないものもあるなどと、いわばまともな答弁は何一つなかったと私は受けとめております。

 今、与党と民主党の間で、投票用紙の記載方法を変えるなどの修正が検討されようとしているようでありますが、そこには、改憲案に対する国民の承認とは何なのか、国民主権原理や日本国憲法が硬性憲法であることなど、本質的な問題に立ち返った議論は見られません。こうしたやり方は国民不在だと言わなければなりません。

 第二に、国会に設置されようとする広報協議会や広報の仕組みの問題です。

 私は、両法案が改憲派にとって都合よく改憲の大キャンペーンができる仕組みだとして、広報協議会の委員が所属議員数の比率によって選任されること、政党による放送や新聞を使った無料の広告が所属議員数を踏まえてとされていること、有料の広告は資金力の多寡によって左右されることなどを指摘してきました。無料の広告については、国民からの余りに大きな批判のもとで、あるいはそうすることがかえって改憲派にとって不利になるとの判断があったのかもしれませんが、賛否平等にする方向だということです。

 私は、こうした修正が余儀なくされたこと自体が、いかに原案に合理性がなく、改憲派にとって有利な反民主的なものであるかを提出者みずからが認めたことにほかならないと受けとめました。

 同時に、そうした修正をもって法案の問題点が解決されるわけでは決してありません。本質的な問題、憲法九十六条の理解にかかわる問題、すなわち、改憲案を発議、提案する国会と提案された改憲案を判断する国民との関係についての根本問題が依然として残されているのであります。両案の提出者の説明は、これも技術的な問題に終始して、結局憲法九十六条に立ち返った議論はありませんでした。

 第三は、公務員等及び教育者の地位利用による国民投票運動禁止の問題です。

 私は、こうした規定を設けることが公務員や教育者の自由な意思表明や運動を萎縮させ、あいまいな規定によって濫用もされかねないことを指摘してきました。与党の提出者は、地位利用と国民投票運動の定義を明確にするということと罰則を設けないという二つの修正でよしとしようとされておりますけれども、このような修正をもってしても、この規定が持つ問題点は一向に解消するものではありません。

 小委員会で自治労連の田中参考人が述べたとおり、憲法の遵守を宣誓して職務についている公務員や、憲法問題で生徒や学生の関心が高まる教育の現場でこそ、憲法問題に対する意見表明や運動が活発に行われるべきで、公務員や教育者の運動を規制する道理はありません。むしろ、現実に公務員などのビラ配布が権力によって弾圧される事件が起こっているもとでこの規定を設けることは、国民の運動を一層萎縮させるものとして国民からの批判は強まらざるを得ないでしょう。

 第四に、改憲の動きと地続きの憲法審査会の設置と両院協議会の問題です。

 審議を通じて、憲法審査会の常置に道理はないこと、憲法審査会の設置を含む国会法改正のねらいは改憲を目的とした憲法の調査や改憲原案の審査を常時行いいつでも改憲原案の提出ができる機関を国会に設けることにあること、改憲原案についても両院の意思が異なれば本来廃案になるべきものを、そうさせないために合同審査会と両院協議会によって入り口でも出口でも両院での三分の二以上の賛成を何が何でも形成することにあることなど、憲法が定める両院制の原則、憲法九十六条の趣旨に反する仕組みだということが明らかになったと考えております。

 以上、本委員会における法案の実質的審議は十月二十六日からでしたけれども、わずかな審議を通じても、九条改憲の条件づくりという法案のねらいに加えて、内容上もさまざま反民主的なものであることがいよいよ明らかとなりました。安倍総理が今国会の成立を期待すると言いながら衆議院さえ通らなかったのは、それだけの理由があるからであり、会期末が来たのですから、継続審査ではなく、きっぱり審議未了、廃案にして本委員会を閉じるべきことを強く主張して、発言を終わります。

中山委員長 次に、辻元清美君。

辻元委員 社民党の辻元清美です。

 今国会の締めくくり発言をいたします。

 私たち社民党は、今急いで国民投票法をつくる必要はないと主張してきました。それに対して必要性を訴える人たちは、中立公正な単なる手続法だとか、改憲とは切り離すと口をそろえて主張をされてきました。ところが、この間、審議を重ねるほど、公平中立とは言えない、改憲とは切り離せないということがどんどん明らかになってきたと思います。

 まず、両案提出者が改憲とは切り離された単なる手続法だと述べてきた点を検証します。

 両案が予定する憲法審査会とは、直ちに次の国会から改憲論議を恒常的に行い、改憲原案を策定できる機関です。単なる手続法だといいながら、改憲に向けて大きくこまを進めようとしていると私は再三指摘をしてきました。最近でこそ、両案とも審査の機能は三年間凍結の方向で見直しの検討に入ったようですが、これは、単なる手続法だと主張してきた提案者みずからが、この国民投票法案なるものが改憲への道筋とは切り離せないと認めたことにほかなりません。単なる手続法という看板に偽りがあったのですから、両案を取り下げて出直すべきだと思います。

 次に、賛成、反対の立場を問わず公平中立な制度だという主張を検証します。

 私は、改正手続を定める憲法九十六条の解釈について、十分議論をし、見解の統一が必要だと主張し続けてきました。ここで言う三分の二とは、多数の専制を防ぐ、つまり過半数ではできないというハードルですが、これは両院の発議までの要件であり、その後は主権者たる国民の判断にゆだねられます。この基本をしっかり押さえていれば、発議後はあらゆる場面で賛否平等が当然ということになるはずです。

 ところが、両案とも、何よりも公平中立が求められる広報のスペースや、政党によるテレビ、新聞等での無料意見広告枠が国会の議席配分によるとなっていました。しかし、国会内での議席配分と、国民が賛否を決するために参照する広報とは全く別物です。同様に、公平中立の観点から、広報協議会の構成の見直しの指摘もされております。両案とも議席配分によるとしていたのは、憲法改正における、国会は発議し、主権者がそれを判断するという根本原理を全く理解していなかったためと指摘せざるを得ません。

 与党提案者は私も心を入れかえることにしたわけでございますと言い、民主党の提案者も当初の案を出した合理的な理由はありませんと言って修正をされるようですが、私はこの根本原理への理解不足は両法案の致命傷だと思います。この一点をとっても、法案を提出する資格自体が問われているという深刻な事態であると思っております。

 また、主権者の意見が正確に反映されるのかという点でも疑問があります。発議方法については、「内容において関連する事項ごと」と定められています。環境権と九条がまとめられることはないとの答弁はありましたが、こんなことは当たり前のことです。両案では関連事項の判断基準はあるのか、これを導入するつもりがあるのか、いまだはっきりしません。

 アメリカなど多くの国では、一つの投票案件には一つの内容を盛り込むシングルサブジェクトルールの遵守が求められています。これは、無関係な争点を組み合わせることの防止のほか、議員間あるいは政党間のなれ合い防止等を目的としています。私は、このシングルサブジェクトルールを支持します。このような基準をあらかじめ十分議論しておかないと、主権者の意見が正確に反映できません。この投票の仕方は国民の関心の最も高い点ですが、あいまいなままです。

 次に、主権者に考える時間が十分保障されているのかという点も不十分です。

 日ごろ、私たちは法案審議を行いますが、重要法案の場合、提出から成立まで半年を超えるものが多くあります。きょうも指摘しましたが、例えば、盗聴法と言われた通信傍受法は五百二十七日、情報公開法は三百九十七日、周辺事態法は三百九十二日、NPO法は二百八十一日、障害者自立支援法で二百四十六日などです。

 法案が提出されることで正式に論点が明示され、討論され、賛否の運動が展開されるのです。発議前から報道などがされるので最大百八十日で十分という答弁もありましたが、国会の正式の発議前に国民の意見形成を強いることはできません。あくまで発議がスタートであり、ここでもけじめを持って検討され直すべきです。

 次に、だれでも自由にひとしく賛否の運動ができるのかという点です。

 国民投票は、主権者の意思を直接示すものであり、活動の自由や意見表明の自由は最大限に保障されるべきものです。

 与党案では、公務員や教育者の地位利用による国民投票運動の禁止や組織的多数人買収罪を設けていますが、何が地位利用や買収に当たるのかという基本の部分もいまだにあいまいです。見直しが検討されているようですが、このような規制の発想が出てきたこと自体、主権者の側に立った国民投票を考えていなかった証左であると言えます。

 だれでも運動がひとしく行える環境を整えるという点では、テレビCMをどう扱うのかの答えは出ていません。自由にという人も必ず、資金量によって左右されないようにとか、賛否に偏りがないようにといったルールの必要性に言及されます。果たしてそのようなルールをつくることができるのでしょうか。社会に影響が大きいこの点は、まだまだ検討しなければなりません。

 次に、民意が十分反映されるのかとの点について検証します。

 憲法に民意が十分反映され、正統性を担保するために、最低投票率を定める必要があると考えます。ボイコット運動が起こり得るというのは反対の理由にはなりません。イギリスなどでは四〇%ルールがあります。地域の政策を決める住民投票でも最低投票率を決めているところがたくさんあります。最も重要な憲法改正においても、これを定めるべきです。

 次に、司法判断を受ける機会が保障されているかという点です。

 両案とも、無効訴訟の管轄裁判所を東京高等裁判所のみとしていますが、情報公開法でも地方管轄が実現しています。経済的にも時間的にも、だれもが東京で訴えることができないために、このような規定が設けられているのです。最も重要な憲法についても全国の各高等裁判所で審理できるようにすべきです。

 また、憲法改正の限界なども司法審査の対象から除外する必要はありません。だれでもどこでもすべての点について不服を申し立てることができるのが主権在民の基本です。

 与党案と民主党案が提出され、マスコミなどでは投票権者の年齢など両案の違いばかりが報じられてきました。しかし、むしろここで述べたような両案の共通部分にこそ本質的な問題が潜んでいると言えます。

 私は、この間ずっと、今果たして国民投票法が必要なのか、必要性を訴えているのは一体だれなのかを考え続けてきました。やはり、早く改憲をという姿勢の人たちに引っ張られるような形で法案がつくられ、そのために、国民投票の根本原理の理解を十分深めることなく、むしろないがしろにしたような法案を提出してきたというのが残念ながら今の実情ではないでしょうか。本当の意味での、国民の、国民による、国民のための国民投票法とはほど遠いものであり、廃案を求めて、発言を終わります。

 以上です。

中山委員長 これにて委員からの発言は終わりました。

     ――――◇―――――

中山委員長 この際、御報告いたします。

 今会期中、本委員会に付託されました請願は十五種七十五件であります。各請願の取り扱いにつきましては、理事会において慎重に協議いたしましたが、委員会での採否の決定は保留することになりましたので、御了承願います。

 なお、本委員会に参考送付されました陳情書は、お手元に配付してありますとおり、憲法改正のための国民投票法案に関する陳情書外三件であります。念のため御報告をいたします。

     ――――◇―――――

中山委員長 次に、閉会中審査に関する件についてお諮りいたします。

 第百六十四回国会、保岡興治君外五名提出、日本国憲法の改正手続に関する法律案

 及び

 第百六十四回国会、枝野幸男君外三名提出、日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案

並びに

 日本国憲法改正国民投票制度及び日本国憲法に関する件

の各案件につきまして、議長に対し、閉会中審査の申し出をするに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

中山委員長 起立多数。よって、各案件につきまして、閉会中審査の申し出をすることに決しました。

 次に、閉会中審査案件が付託になりました場合の諸件についてお諮りいたします。

 まず、今会期中設置いたしました日本国憲法の改正手続に関する法律案等審査小委員会は、閉会中もなお引き続き存置することとし、小委員及び小委員長の辞任の許可、補欠選任につきましては、あらかじめ委員長に御一任を願いたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

中山委員長 起立多数。よって、そのように決しました。

 次に、閉会中、委員会において参考人の出席を求める必要が生じました場合並びに小委員会において参考人及び政府参考人の出席を求める必要が生じました場合には、出席を求めることとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

中山委員長 起立多数。よって、そのように決しました。

 次に、閉会中、委員派遣を行う必要が生じました場合には、議長に対し、委員派遣の承認申請を行うこととし、派遣の目的、派遣委員、派遣期間、派遣地等所要の手続につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

中山委員長 起立多数。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

中山委員長 この際、一言ごあいさつを申し上げます。

 平成十二年一月、衆議院に憲法調査会が設置されましてから、昨年四月までの五年余りの間に、二百人を超える参考人等を招致して、四百五十時間を超える調査を行った結果、同月十五日に、衆議院議長にその集大成である最終報告書を提出いたしました。

 そして、解散・総選挙を挟んだ昨年九月の特別国会において、本特別委員会が設置され、その最終報告書に盛り込まれた各論点について、憲法改正の是非及びその内容についての調査、検討を行う次のステージの整備を含む憲法改正手続法案の調査、審査が行われてきたところでございます。今日までの本委員会における調査、審査の時間は総計約八十時間、お招きした参考人は延べ三十八人に上っております。

 本委員会においても、さきの憲法調査会以来の伝統を踏まえ、憲法改正に関する立場の違いを超えて、議論の前提となる事実認識については海外調査等に基づく知見を含めて共有しながら、濃密かつ建設的な議論がなされてきたものと存じます。改めて、委員長として、委員の皆様の粘り強い御議論、そして国のあり方に寄せる危機意識と情熱に、敬服すると同時に感謝を申し上げる次第でございます。

 この七年間、微力ながら、私も、憲法調査会会長また本特別委員長の重責を担わせていただいておりますが、常に皆様の御協力を仰ぎつつ、公正円満な議事運営を心がけてきたつもりでございます。そして、今後ともこの姿勢を堅持してまいる所存であります。

 さて、今国会、本委員会は、さきの第百六十四回国会に引き続き、与党及び民主党からそれぞれ提出されております両案審査に全力を傾注してまいりました。

 まず、十月十九日には、本委員会のメンバーをもって構成され、去る七月に実施された欧州各国憲法及び国民投票制度調査議員団の報告を聴取するとともに、調査に参加された議員から海外派遣報告に関連しての発言がありました。

 これに続く十月二十六日の委員会では、NHKの全国テレビ中継のもと、両法律案の提案者から順次趣旨の説明を聴取した後、各会派一巡の質疑を行いました。これによって、国民の皆様の前に、国民投票法制に関する論点や両案の相違点などを明らかにすることができたものと存じます。

 また、この日、両案審査のため、日本国憲法の改正手続に関する法律案等審査小委員会が設置されました。この小委員会は、十一月二日から一昨日までの間に五回開かれ、憲法改正手続の制度設計に当たっての骨格となり、かつ技術的、専門的見地からの検討を要する事項について、詳細かつ熱心な審査を行ってこられました。私は、委員長としてすべての小委員会に出席しましたが、近藤基彦小委員長には、終始、公平円満かつ冷静沈着な議事整理に努められました。この卓越した手腕に特筆すべきものがあり、改めて、ここに感謝を申し上げる次第でございます。

 このように、小委員会における審査を踏まえながら、委員会におきましては両案提出者に対する質疑を重ねてまいりましたが、その成果は、ただいまの両案の提出会派及びそれ以外の会派に属する委員の発言により、余すところなく明らかになったことと存じます。

 と同時に、本日まで積み重ねられた本委員会の議論が、現在及び将来の国民にとって実り豊かなものになることを確信してやみません。

 これからも、憲法は国民のものという信念のもとに全力を尽くしてまいる所存でございます。委員各位の御指導、御鞭撻をお願いして、私の発言とさせていただきます。(拍手)

 本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五十八分散会


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